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1984-06-20 第101回国会 参議院 科学技術特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十日(水曜日)    午前十時二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高木健太郎君     理 事                 古賀雷四郎君                 林  寛子君                 本岡 昭次君                 塩出 啓典君     委 員                 江島  淳君                 後藤 正夫君                 志村 哲良君                 福田 宏一君                 安田 隆明君                 小野  明君                 松前 達郎君                 伏見 康治君                 佐藤 昭夫君                 野末 陳平君    発議者          本岡 昭次君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      安田 佳三君        科学技術庁計画        局長       赤羽 信久君        科学技術庁原子        力局長      中村 守孝君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君        運輸省船舶局長  神津 信男君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        国土庁土地局土        地利用調査課長  武智 敏夫君        海上保安庁警備        救難部航行安全        課長       高橋 義典君    参考人        日本原子力研究        所理事長     藤波 恒雄君        日本原子力研究        所理事      吉田 節生君        日本原子力船研        究開発事業団理        事長       井上啓次郎君        日本原子力船研        究開発事業団理        事        野澤 俊彌君        日本原子力船研        究開発事業団企          画部長      小川 健兒君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本原子力研究所法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○日本原子力船研究開発事業団解散に関する法  律案本岡昭次君外二名発議)     —————————————
  2. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  この際、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案審査のため、来る六月二十二日茨城県へ委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員等決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 日本原子力研究所法の一部を改正する法律案及び日本原子力船研究開発事業団解散に関する法律案を議題といたします。     —————————————
  6. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日の委員会日本原子力研究所理事長藤波恒雄君及び同理事吉田節生君、日本原子力船研究開発事業団理事長井上啓次郎君、同理事野澤俊彌君及び同企画部長小川健兒君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、まず日本原子力研究所法の一部を改正する法律案審議に重大な関係を持っています原子力船むつ」の存廃問題についてただしていきたいと思います。  我が党の本会議質問に対し、中曽根総理は、「むつ」の処理については自民党内に特別委員会をつくり、夏までに結論を得られるようにしているが、この結論の結果を見て原子力委員会あるいは政府におきまして適切な措置を講じたいと考えている、このように答弁されています。我が党は、廃船こそが最も適切な措置であると判断し、その英断政府に求める一方、原子力船研究開発事業団解散を行う法律案を提案をしております。  そこで、お伺いをいたします。自民党内につくられた特別委員会は、今どのような検討をしておられるのか。夏までにということでありますが、その結論を得る時期は何月何日ごろというふうに目標を定めて検討をされているのか、そのあたりをまずお伺いをしたいと思います。
  10. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) ただいまの御質問でございますが、自由民主党の中におきましての原子力船むつ」に関する検討委員会は、ただいま関係方面の御意見を聴取し、あるいは現地を調査をし、あるいはまた海外における諸国の実情の調査等をいたして、つい最近その海外調査も終了して帰国をいたしたところでございます。これから党の方においては、検討委員会がさらにそのようないろいろな現在までの調査の結果を踏まえまして検討を続けていかれるものと思っております。  結論をいつ出すかということでございますが、これは私ども政府立場といたしましては、来年度の六十年度の概算要求に間に合うように結論をお出しをいただき、かつまたこの検討委員会は、自民党の中のことを申し上げますと、検討委員会で一応の結論が出まして、さらにそれは党の方の全体の意思決定という過程を経て初めて政府との最終的な話し合いになる、こういうことでございまするので、私どもはいずれにいたしましても来年度の概算要求に間に合うような結論をお出しをいただければ幸いであると、かように考えているところであります。
  11. 本岡昭次

    本岡昭次君 これは以前から私どもが主張をしてきたのですが、結論を得る時期が夏まで、概算要求までに結論出したいということでありますから、夏と言えば現在もう夏であり、概算要求をするにしましてももう今そういう問題が既に出始めている段階でありまして、原子力船むつ」の存廃がはっきりしない段階でこうした法案審議をすること自身問題がある、このように私たちは申し上げてきたんです。しかし、今もう既にこうした審議が始まっているわけです。  そこで総理も、「むつ」の廃船あるいはまた存続、どちらにせよ二者択一だと思いますが、その結論が出たときに適切な措置をとるというふうにおっしゃっているんですが、存続する場合はどのようにこの予算をつけていくかということになろうかと思うのですが、廃船という結論が出た場合に、長官として総理の言う適切な措置はどのように考えておられるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  12. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) お答え申し上げます。  現在、「むつ」の今後の活用のあり方につきましては自民党での御検討が行われておるところでございますし、さらに国会等の各方面の御議論を聞きながら政府としての方針を決めてまいるわけでございますが、今の御質問につきまして、廃船という結論が出たらどうするのかという御質問でございますが、いずれにいたしましても関根浜の港につきましての建設ということが 「むつ」を回航するということでの当面の最大の課題でございますので、それをまず実行するということになろうかと思います。その廃船方法をどうするかというようなことにつきましても、十分にどういう方法が一番適切であるかというようなことも検討してまいらなければならないと思いますが、今まだ廃船ということを想定しているわけでもございませんで、具体的にどうということを御説明し得る状況にございません。
  13. 本岡昭次

    本岡昭次君 今、関根浜の地域においては附帯陸上施設をつくるための土地買収がもう既に行われております。その陸上施設として予想されておるのは、「むつ」のための核燃料貯蔵あるいはまた廃棄物処理棟あるいはまた安全管理棟等は、「むつ」によって原子力舶用炉研究を続けていくために必要な附帯陸上施設として想定をして、土地の収用、買収も進めているということではないかと思うんですが、その問題と、廃船ということになった場合はそこには矛盾は生じないんですか。
  14. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 土地取得につきましては、既に一昨年から地元方々と交渉をしてまいりまして、昨年、この「むつ」の廃船等も含めましたあり方につきましての検討ということが始まります以前に、土地契約というものも現在まで取得しましたものについては完了しておったということもございますが、廃船の場合におきましても、陸上施設というものが全くないということではございませんで、船から引き上げます廃棄物問題等もございまして、また港の後背地ということで、いきなりその海岸から港というわけにもまいりませんので、港の後背地として当然必要になる部分もあるわけでございます。  現在、買収しておりますところは、もちろんその当初の計画によって土地を、必要な部分を決めておりますので、その意味では「むつ」の研究継続ということを前提といたしました土地でございますけれども土地取得についての契約が昨年にもう既に行われており、かつまた港の後背地として、またかつ廃船の場合にも、廃船に必要な廃棄物処理その他の陸上施設設置場所として必要な土地として活用してまいるということでございます。
  15. 本岡昭次

    本岡昭次君 また後ほどその問題は詳細にただしていきますが、今、関根浜の周辺で起こっている問題というのは、原子力船むつ」の存廃問題、存続させるのか廃船にするのかという問題で自民党内でも意見が分かれているというふうなこと、国民の中にも壮大なむだ遣いをやめるべきだという声も多く上がっている。そういう状況を目の前にして、既成事実だけをとにかく早く積み上げていかなければならない、ここまでやってきたんだから「むつ」は廃船にできないんだというふうな、これは事業団の焦りに似たような気持ちがあって、どんどんどんどんと関根浜の設備について購入のためのいろいろな国費を、国のお金を投入していくというふうなことに今なっているのではないかということを私は思うんです。  だから、初めにも申し上げましたように、廃船にするのか存続にするのかという問題をはっきりさせた上でこの種の法案についても審議をしなければ、無用な地元の混乱なり、また不必要な金を政府が使わなければならぬ、事業団によって使わされたというふうなことになりかねないという心配をしているわけなんです。その点について長官はどのようにお考えになりますか、今、私の言っていることについて。
  16. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) まず、原子力船研究開発に関する基本的なことを申し上げておきたいと思います。  御承知のように、日本はいわゆる資源小国でございます。特にエネルギー資源においては、石油につきましても九九%と申しますか、ほとんど一〇〇%近いものを海外から輸入しなければ成り立たない国家であることは御承知のとおりでございます。そのようなことで、私どもはできるだけ石油へ対する依存度を減らしてまいる、そして代替エネルギー政策を強力に推進してまいらなければならない、こういう国情、そしてまた日本国民生活の向上と繁栄、平和のためにも、基本的にこの政策は私はこれからも続けていかなければならない重要な課題であろうと思っております。したがいまして、日本といたしましては原子力平和利用ということに徹して、そういう中において海運国家貿易国家造船国家立場からも舶用原子炉というものはぜひ研究をしていかなければいけない、開発をしていかなければならない、このような考え方は従来とも持ってまいりました。そしてまた、今後ともこれは続けてまいりたいと考えているところであります。  そういう中におきまして私どもは、原子力船むつ」による舶用炉研究開発、そして将来の日本に備えていく、こういうことで進めてまいったわけでございますが、残念ながら放射線漏れ事故等がございまして、その修理、安全な段階になるまでのいろいろな手だてを講じてまいりました。しかし、そういう中におきまして、各方面からは極めて貴重な御意見、御議論も出されてまいりました。私どもはそのような実態を踏まえて、そしてまた原子力船むつ」による研究開発が非常におくれていることに対してはまことに申しわけないと考えております。  しかしながら、このような研究開発は特に地元方々の十分な御理解と御協力がなければ実行ができない状態でございます。そういうことで私どもは、原子力船むつ」の港として大湊をぜひお願いをしたいということで努力をいたしてまいりましたが、なかなか地元の方の御理解が得られない。そうしていろいろな折衝をいたしました結果、関根浜原子力船むつ」を移すということでようやく地元方々とのお話し合いができた、いわゆる五者協定でございます。この五者協定は私どもは忠実に、誠実に実行してまいらなければならないと考えております。そういう中において関根浜は、これが今後の原子力船むつ」に関する自民党検討はもちろんのこと、国会の御審議等を十分に踏まえて適切な対応をしなければなりませんが、とにもかくにも地元方々との五者協定を忠実に守るという立場からは関根浜という港をつくっていかなければなりません。  この関根浜の港をつくるに当たりましても、私どもはただいま最終結論がまだ出ておりませんので、いずれにいたしましても大湊から移さなければならないというお約束は守っていかなければならない。したがって、関根浜結論がどうあろうとも最小限度の姿においてまず着工し、そして五者協定を忠実に守るという実行をしていかなければならない。こういうことで私どもは今後とも関根浜の港は誠実に五者協定の精神に基づいてこれをやっていく、こういうことでございますので、来年度の予算要求におきましても、結論がどうありましょうとも、やはり関根浜の港をつくっていく、それに必要な土地買収等も行っていかなければならない、こういうことで今後とも進めてまいりたいと思いますので、御了解をいただきたいと思うのでございます。
  17. 本岡昭次

    本岡昭次君 長官理解をしてくれとおっしゃいますけれども、私は理解ができないんですね。結論はどうであれ五者協定を忠実に守って関根浜には原子力船むつ」の母港をつくるんだと、こういうことを長官がおっしゃるというのは、どうも余りよくないと思うんですね、結論はどうであれと。その結論が私は大事なんであって、その出た結論によって一体関根浜母港というものはどうあるべきかということになるので、大臣の発言としては私は不適切だと、こう思うんですね。  今やはり必要なことは——ここまでもめ続けている原子力船むつ」、廃船存続か、そしてもともと母港であった大湊からも見放される、そういう状態になったわけでしょう。そして自民党の中でも、そうした問題が国民世論を受けて廃船にしてはという結論も一方では出るということがあった。だから私は、「むつ」の後始末ですよ、はっきり言えば。ここまで私たち言葉けちがついて、もうどうしようもない。大体けちがつき始めるとこれはどんどんついてどうしようもない。やはりこうしたことはみんなに祝福されてスタートをして、そして祝福されてその結論を得るというふうな形にならなければならないものなんですが、けちのつき続きでいったものをどこまで持っていくのか。  もう「むつ」は「むつ」でここで後始末をどうするかという問題をやって、そして長官のおっしゃる舶用炉研究開発、これは私たち基礎研究というものはやっていかなければならぬということについて反対をしていないわけです。必要だということは認めているわけです。だから、「むつ」のこういう状況舶用炉研究開発をさらに原子力研究所一緒になってやらしていくという、そこのところに問題があるというんですから、切り離していけない問題かという問題ですよ。どうですか、長官、「むつ」は「むつ」で切り離して、そしてあなたのおっしゃる舶用炉研究開発というのは、基礎的なものから国民的な論議を巻き起こしながら、そういうものに支えられて原子力研究所が初め再スタートしていく。まあボタンのかけ違えがこういうことになったんだという言葉もありますように、そこのところの英断、決断、これが政府に今求められているのじゃないかと思うんですね。  もともとこういう科学技術開発というのは失敗がつきもの、あるいは不成功というようなこと、うまくいかなかったということがあって当たり前だと思うんで、民間の企業であればそうなれば莫大な損失をこうむるから、やはりそういうふうなものは国家的な事業でやらなければならないだろうということは私も理解をいたします。それだけに国民の支持というんですか、そういうものを得ていかなければいけないということを思うんですよ。失敗をしても失敗にめげずに頑張れという国民世論が沸き起こってくるような状態の中でこの種のものをやっていかなければならない。だめならだめであっさりとそれは撤回をする、終結をさせる、そしてまた新しく出直していく。民間ではできないけれども、それは国家的なこういう仕事ではできるのじゃないんですか。それを何でいつまでもこれにこだわっているのか。もう船もつくってから十何年過ぎようとしているし、だんだんその船体自身もいろいろな面で老朽化もしてくるだろうし、脆弱化の問題も出てくる、そういう状況を踏まえて長官がやはり英断をすべきだ。まあ検討委員会がありますけれども、その点再度お伺いしておきたいと思います。
  18. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 大変貴重な御意見ありがとうございます。  特に私は、ただいま本岡先生の御発言で大変心強く思いましたのは、原子力舶用炉研究開発が必要であるということを明確におっしゃったことは、これは社会党さんの従来原子力に対するいろいろなお立場から見まして、大変貴重なしかも重要な御発言で、私どももこの点において意見の一致を見たということは大変私は心強い、極めて重要な御発言でございまして、今後ともこのような共通な意識ができたことを心から喜んでおる次第であります。  また、研究開発に当たって不成功失敗と、こういうこともあるのもこれはやむを得ないことだ、あってはならないけれども、あっても仕方がない、それを基礎にしてさらに研究開発を粘り強くやっていくべきだ、こういうお話もこれもまた大変貴重な御意見として承った次第でございます。  さて、当面の原子力船むつ」でございますが、これは結論継続になるのかあるいは廃止になるのかということが、ただいま自民党の中でも検討されておりまするし、国会でもいろいろな御議論が出ているところでございます。特に社会党さんにおきましては廃船という明確な政策路線も打ち出しておられるわけでございます。そのようなことを十分に踏まえて、私どもは最終的に対応をいたしてまいりたいということでございます。  いずれにいたしましても、仮に廃船という結論が出たにいたしましても、原子力船むつ」は大湊に置いておくということができないのでございます。これは長年かかつて地元といろいろお話をしてまいりましたけれども、それは現実の問題としてできない、こういうことでございます。したがって、これを関根浜に移していかなければならない。となりますと関根浜の港をつくっていかなければならない。  また、廃船という具体的なことをどのようにやっていくのかということになりますと、これから検討結果を待って私ども対応しなければなりません。ただ関根浜に置いておけばいいのか、あるいはこれは炉心をどういうふうに処理をするのか、いろいろなことがございます。といたしますと、最小限度やはり何年かは関根浜原子力船むつ」というものを置いておいて、そしてそれの対処をしていかなければならないと。こういうことでございますので、最小限度どもはそれを念頭に置きつつ、継続が必要となればそれに必要な地上の施設等もやっていかなければなりませんし、港の規模についても検討もしていかなければならない。  こういうことでございますので、関根浜は、ただいまのところは結論が出ておりませんけれども、どうか最小限度対応だけはさしていただかなければならない、こういうことで五十八年度の予算執行、五十九年度の国会で御承認をいただいた予算執行はやらしていただかなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。
  19. 本岡昭次

    本岡昭次君 私が言ったのは、この法案の中で、統合して原子力船むつ」も一緒業務の中身として抱え込むというふうなことをやめよと、舶用炉研究をするということと原子力船むつ」を使っての業務を持ち込むということを切り離すということはできないのかということを今尋ねているんです。
  20. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 現在御審議をいただいております法案につきましては、これは行政の各般にわたる簡素化効率化を進めるという見地から五十五年のときに法改正が行われまして、その際に昭和六十年三月三十一日までに他の原子力機関統合するということを法律でお決めいただき、そのもとで現在御審議お願いをしておるわけでございますし、原子力船の「むつ」の廃船なり継続なりが決まってからということにつきましては、統合の諸準備もございますので、早く法案をお認めいただき、今から諸準備にかかりたいということで出しておるわけでございますが、廃船を例えばずるということで廃船部分は別な法人ということで切り離すということは、また新しい別な法人存続するなり必要になるということでもございますし、現在のところその統合をする原研におきまして研究材料として「むつ」を利用するという方向で検討をするのが、方策を進めるのが諸般の情勢から最も効率的であろうと、こう考えておる次第でございます。
  21. 本岡昭次

    本岡昭次君 この議論をしておったらそれだけでかかりますからやめますが、私が言っているのは、「むつ」の廃船存続がという論議の問題も含めて、「むつ」はもう始末してしまえということ、だから「むつ」の存廃の問題と原子力研究所舶用炉研究を続けていくのと切り離してしまえということを私は言っているんですよ。だから、二つの事業体を一つにまとめるというそのことに、事業団のやってきた「むつ」もその事業団一緒仕事として抱え込むなと、「むつ」は「むつ」で切り離してしまえと、こう言っているんですよ。私の意見として言っておきます。そういうことが今一番大事じゃないかと思うんです。  それから今長官が、私の質問の中で、社会党舶用炉研究に賛成してくれるのかということなんですが、私が言ったのは、舶用炉基礎研究というものを続けていくということを否定していないということを言っているんですよ。将来の問題として一体どうするのかという問題で、基礎研究というのは当然進めるべきであって、そのことまで我が党は否定したことは今までないわけです。そういうことだけは今はっきりさせておきます。  それから長官も、「むつ」による舶用炉研究開発あり方について、次のように本会議答弁をされておりますね。当庁といたしましても国会の御論議はもとより関係方面の広範な御意見を承りつつ適切に対処する所存と、こうおっしゃっているわけで、今はもちろんそのことをやっているということになろうと思うんですが、それでは、いつ、どのような方法関係方面の広範な御意見を、国会はもとよりと、こうおっしゃっているので、今私が言っているような議論をどの場で国会としての意見をまとめようとなさっているのか、お伺いをしておかなければならぬと私思うんです。
  22. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 何と申しましても、私ども行政を進めてまいる上では、国会が最高の権威を持っておりますので、国会であらゆる場において御審議をいただくということであろうかと思いますが、しかしその中心はやはり担当の委員会が中心ではないだろうかと思います。そしてまた、予算委員会というものもございました。ことしの予算委員会においても、かなりの時間が原子力船むつ」についても審議をされたわけでございます。あるいはまた、本会議も当然重要な審議の場であろうかと思っております。そのように私は、国会のあらゆる機関を通して十分な御意見をちょうだいをいたし、そしてそれに対して対応をする、こういうことであろうかと思いますので、この上とも当委員会におかれましても十分な御審議を賜りたいと思っております。
  23. 本岡昭次

    本岡昭次君 はい、わかりました。  それでは次の問題に移ります。  先ほども言いました土地買収等にかかわる諸問題なんですが、最近の新聞に次々と「むつ」新母港になる関根浜周辺の問題として、用地買収あるいはまた漁業権にかかわる迷惑料あるいは漁業補償金の配分の問題などについて報道がなされております。  まず、その中の一つですが、陸上附帯施設や道路の用地買収に、新聞の言葉をそのまま引用しますと、裏金一億円などと報道されています。またそのことが国土利用計画法に違反するのではないかということで、国土庁が調査に乗り出しているということも書かれてあります。  そこで、原子力船研究開発事業団並びに国土庁、その事実の状況なりあるいは調査した結果、一体これはどういうことなのか、ここで明らかにしていただきたい。
  24. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) 土地買収につきましては、事業団といたしまして青森県の土地開発公社、理事長は山内副知事が務めておりますが、そこに全面的に業務委託をしておりまして、最初からその線で交渉を続け、しかも取得をしていくと。取得契約につきましては事業団みずからが相手方と契約するわけでございますが、この際にも青森県の土地開発公社に立会人になっていただいてすべて進めておるということでございます。  ただいま新聞報道につきましてお話がございましたが、御存じのように、事業団は国の原子力船開発のプロジェクトを実施している機関でございまして、そういうふうな意味では貴重な国家予算で進めているわけでございます。したがいまして、裏金とかあるいはつかみ金とか、そういう種類のものは一切ございません。これは私は事業団の使命としてそういうふうに考えておりますし、そういう報道はございますけれども、この点につきましては事業団の姿勢ということにつきまして御理解賜りたいと思うわけであります。
  25. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) お答えいたします。  本件につきまして、五月の二十六日の新聞報道で事実関係を知ったわけでございまして、直ちに青森県庁、これは国土利用計画法によりますと、一定規模以上の土地取引につきまして届け出が要るということになっておりまして、本件につきましては大体二十一ヘクタール、全体の構想がそういうことでございますので、原則としてすべての土地取引につきまして届け出が要るということになっておるわけでございます。その届け出を受理し、さらに処理するのは青森県でございますけれども、その青森県に対しまして事実関係調査を依頼いたしたわけでございまして、今日わかっております状況に基づきまして御報告いたしたいと思います。  青森県庁は、いわゆる届け出の対象者でございます事業団、それから地権者会の代表、それから先ほどお話ございました買収交渉に当たりました青森県の土地開発公社から事情聴取を行ったわけでございます。  その事情聴取の結果に基づきますと、新聞で報道されている点、主として二つあろうかと思いますが、一つは立木補償の問題でございます。立木補償が約一千万強支払われておるわけでございますけれども、個人の所有地につきましてはこれは通常の立木補償が行われております。それから、問題となりましたいわゆる共有地につきまして、これは防風林でございますけれども、防風林につきましては防風林の機能に応じた補償が行われておりまして、それぞれ対象土地は違った土地でございます。片一方は個人が所有する土地でございますし、片一方は共有地でございまして、それぞれ違った土地でございまして、新聞に報道されておりました二重の補償というようなことはないということでございます。  それから、これらの補償につきましては、いずれも公共用地の取得に伴います損失補償基準等によりまして適正に行われておるというように聞いております。  それから、もう一つ問題であるというふうに報道されております生活環境整備資金として支払われました三千万円の問題でございますけれども、これらの生活環境整備資金につきましては、代替地の選定ですとかあるいは集会所、部落集会所でございますが、それらの整備ですとか、あるいはその地権者会の事務費等の費用として支払われているということで、土地代とは区分されておるというふうに報告を受けております。  なお、三千万円のうちの一部、二百万円強でございますが、現在これらにつきましては個人に配分されずに積み立てられておりまして、いずれ近い将来集会所の整備に充てるというふうにも聞いております。  それからもう一つは、これまでに締結された土地売買の契約でございますが、約七十人強あるわけでございます。この生活環境資金が支払われる契約ができましたのはことしの三月十六日でございまして、現実に三月の十九日に支払われておるわけでございますけれども、大部分契約はそれ以前、昨年の五十八年の三月以降今日まで行われておるわけでございますが、生活環境資金の支払われる協定以前に大部分契約が行われておるというふうな事実もわかっております。  それからもう一つは、地権者会に一括して支払われておりまして、その支払われた資金につきましては先ほど言いました二百万円強を除きましてそれぞれ配分されたわけでございますけれども、それら地権者会に属した人たちだけに支払われております。これが約四十人強でございますが、そのほか既に用地買収に関連しまして契約した方々、約七十人ぐらいいるわけでございますが、したがって一部の方々、それらはまさに土地買収に協力したというような名目で支払われたというようなことでございます。  こういった状況を前提といたしまして、県といたしましては、少なくともその土地、平米当たり六百六十円で売買されたわけでございますけれども、それの上積みとしては考えられない、したがって国土利用計画法上の問題はないというふうな報告を受けておるところでございます。  国土庁といたしましても、この県の調査結果に基づきましていろいろ検討いたしたわけでございますけれども、我々としてもこのラインは妥当であるというふうに考えておるところでございます。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 今、問題なしというふうに国土庁の方は報告されるし、それから事業団の方は裏金など一切ないと、こういうことです。裏金があっては困りますし、また問題があっては困るんですが、しかし問題にしなければならないことははっきりあるんです。  今も出たように、一平米当たり六百六十円という土地代に対して、生活環境整備資金の名目で一平米当たりその土地に対して百九十八円、防風林補償の名目で一平米当たり四百四十二円、合計六百四十円が上積みされて、結果として一平米千三百円というふうに私の持っているこの資料からは計算ができるんです。私の持っている資料には、その地権者の一人がどういうふうにして補償を受けたかということがここに詳細載っております。だから、一平米当たり千三百円ということが初めにあって、それにどうつじつまを合わすかということで、生活環境整備資金あるいは防風林補償というものがそれぞれつけられて土地代に換算されてそれが支払われたということは事実であるわけだ。一体、国土利用計画法というのは何を目的にして制定されておるんですか、国土庁。
  27. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) 投機的取引の防止と合理的な土地利用でございます。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 六百六十円の土地という値段がそこについて、その上にどのような名目で土地代に換算してどんどんとつけても、生活、防風林またはいろんなものをつけて、結果として土地買収費の六百六十円の二倍になろうが三倍になろうがそれは違反にならぬというお考えですか。土地代というものが初めに六百六十円とか七百円とかあれば、その上に土地代に換算していろんな名目のものをどう積もうとそれは全体として土地代というふうに見ない、こういうことになるんですか。
  29. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) お答えいたします。  土地代はあくまでも土地代でございまして、例えば建物つきの土地を売買するときに、法律では土地について価格審査することになっておるわけでございますが、要は上物の、建物の評価を非常に高くして土地について安くするというような懸念もございますので、そういう場合に上物についても評価をしまして、その上で土地が高いか安いかについて判断いたすことになっております。  本件につきましては、先生御指摘のように、土地代のほかに生活環境資金とそれから立木補償が行われておりますけれども、立木補償はこれは通常全国的に立木補償が行われるわけでございますし、生活環境資金につきましては若干の、何というんですか、県の報告にもございますけれども土地の面積に応じて配分したというところに問題といいますか疑惑を招いた点があるというようなこともございますけれども、いずれにしてもそれぞれが理由のつくお金でありますれば、要は国土利用計画法は土地代について審査するということでございますので、そこのところは区別して考えなきゃいかぬというふうに考えております。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 立木補償は別になってるんでしょう。土地代というものと立木補償は別になってるんですよ。私は何も立木補償のことは今全然言ってないわけです。今言った千三百円の上に立木補償があるんでしょう。
  31. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) 千三百円というのは、少なくとも我々聞いております限りではあったというふうには聞いておりません。交渉の過程でいろいろ千三百円要求されたですとか、もっと高い価格ですとか、いろいろあったというふうには聞いておりますが、千三百円ありきからすべてが出たというふうには我々理解してないところでございます。  土地代につきましては、原野につきまして平米当たり六百六十円ということでございまして、先ほど言いましたとおり、いわゆる個人の所有地につきましては立木補償として八百五十万円弱出ております。それから防風林につきましては、これは共有地でございますので五千五百万円ぐらいが出ておるということでございまして、これは土地代とは別でございますが、例えば個人がそれぞれ国土利用計画法に基づきまして報告される際には、立木については、立木は公共補償の基準によるというようなことで別途出ております、出ておりますといいますか、価格審査は受けるというふうな建前になっております。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうしたら、これはどう理解したらいいんですか。生活環境整備資金の支払いについてという、こういう公文書があるんです、五十九年三月二十九日付。こういうことが書いてある。このたび生活環境整備資金(名目上の肩書ききであり考え方としては税金相当分であります)、こういうふうに書いてある。これは何ですか。
  33. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) 我々が県から報告受けております限りにおきましては、要は生活環境資金としまして三千万円出したわけでございますが、そのうちの一部は先ほど申しました部落集会所の建築等に充てることにいたしたわけでございますが、要は事業団から支払われた金の内訳につきましては、それぞれの代替地の選定ですとか、あるいは集会所の改築ですとか、あるいは地権者会の事務費に充てるということで支払われたわけでございますが、いわゆる地権者会の内部の役員会におきまして、一部は保留し、残りはそれぞれ配分いたしてそれぞれの必要なものに充てるというようなことになったというふうに聞いております。その一部でと申しますか、税金対策につきましては、ちょっと我々必ずしも聞いておりませんが、そういう名目をたまたま地権者会の内部であるいはそういう名目にしたのかなというふうに理解いたしております。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 あなたのそれは報告に基づいて言ってるんで、私の言っているようなことが事実であればどうなんですか。私の言っているようなことが事実であるかどうか。あなたは県からの報告に基づいて私に答弁してるわけだ、あくまで。しかし、私は違う事実を今ここで言っているわけなんで、もし私の言っているように生活環境整備資金というものが税金対策として土地の三〇%と、計算したらきちっと合うわけだ。合うんですね、百九十八円が、六百六十円の。それで合計金額も合うんだ、トータルの。それで一方、防風林補償というものも、言ってみればその計算の根拠に、立木補償したものもまたその基礎になって計算されてそこに出ている。その合計が四百四十二円、合わしたら六百四十円になるというふうに答えがあって、それに対する基礎的な数字を後から当てはめたということになっている。  もし私のこの今持っている資料どおりが事実だったら、一体国土庁はどういう判断をされますか。その県のじゃなくて、私の今言っていることでどうですか。あわせて事業団は、私の言っている事実は事実であるのかないのか、言ってください。
  35. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) 先ほど申し上げましたとおり、国土利用計画法、これは県が処理することになっておりますので、一義的には県の判断にゆだねたいというふうに考えております。  それで、先生おっしゃいました今のそういう加味があったといたしますれば、と申しますか、我々もそういうことは耳にしたものでございますので、県にも確認いたしたわけでございますが、要は税金との関係等については県はそういうことはないというように我々は聞いております。  防風林の点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、個人の所有地につきましては立木補償をやりまして、それから共有林の部分について防風林補償をしたということになっておりますので、土地は、個人所有地の部分を持っておる人が場合によってはまた共有地を持っておるということも考えられますので、そういう場合には両方からもらうということはあり得ると思いますが、いわゆる土地に着目したときには、個人所有地については立木補償、それから共有地につきましては防風林補償というふうに我々は県から報告を受けております。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 ちょっと正確に答えさしてください。県からの報告に基づいて言ってくれと言っているんじゃないでしょう。県の報告を受けた国土庁の見解なり判断はわかったんです。私が言っているようなことが事実であるとすれば、それはどうなるんですかということをあなたに尋ねているんですよ。なぜ私の質問に正確に答えないんですか。私が調べ、私が今ここで言っていることが事実であれば、国土庁としてはどう判断しますか。
  37. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) 防風林と立木との関係につきまして、同じ土地につきまして、立木でも補償をもらい、かつ防風林でも補償をもらっておるとすれば問題だというふうに考えております。ただし、我々は県からそういう事実はないという報告を受けております。  それからもう一つは、税金の問題につきましては、これはいわゆる生活環境資金として出されたのが土地代であるか否かということでございますので、我々といたしましては、そこのところについては、地権者会から名目を税金というふうに仮にしたとしましても、我々としては問題はないんじゃないかというふうに考えております。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうしたら、これは土地の税金分だからといって、土地の上にいろんな名目をつけて積み重ねて、結果としてその金額がどうなろうと、この国土利用計画法で言っているように、この法律土地の投機的取引や地価の高騰を抑制しと書いてある、その地価の高騰を抑制しという問題について抑制することになりますか。土地代はこれだと、しかしその上にどんな名目をつけても、実際支払う側は土地買収するために支払う金になるんですよ。歴然たる土地代でしょう、どう言おうと。それではこの国土利用計画法というものが土地の高騰の抑制に役立つということには全然ならぬじゃないですか。いろんな名目をつけて、結果として支払えば、それでもとの土地代そのものが低ければ問題はないとあなたはおっしゃっているんですが、一体これはそんな意味のないざる法なんですか。
  39. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) 先ほど申し上げましたとおり、国土利用計画法はまさに土地の投機的取引を抑えるということでございますので、いわゆる先生おっしゃるとおり、その土地代は土地代として低く評価いたしまして、そのほかにいろいろな名目をつけて、何というんですか、土地代の裏金的な経費として出すということも懸念されるわけでございます。したがいまして、我々の指導といたしましては、いわゆる名目のいかんを問わず、土地と関連して金を出しておる場合には、届け出の中にその報告書を書かせることにいたしております。書かせることにいたしておりまして、それにつきましてそれぞれ審査しまして、その一つ一つが説明がつく合理的なものであるかどうかについて審査した上で、土地代としてはそれが適切であるかどうかということを判断いたしておるわけでございます。  ところが、本件について申しますと、先ほども申し上げましたとおり、いわゆる届け出は昨年の一月ぐらいから逐次出てきております。現在まで七十人ぐらい出てきておりますが、先ほども申し上げましたとおり、この生活環境整備資金につきましては、ことしの三月十六日に決定しまして十九日に支払われたものでございます。したがいまして、それぞれの届け出が出た段階におきましては、当然にこれは、生活環境改善資金につきましては、その事実がわかってないわけでございますので、審査できていないというような問題はございます。  でございますけれども、そこのところにつきましては県も若干の反省がございまして、要は、先ほど言いましたとおり、土地にまつわった金については事前に本来チェックするということが建前でございますが、本件の経過にかんがみますと、後から出てきたというようなこともございまして、そういう体制についてはこれから厳しくチェック体制は確立していくというようなことを言っておりますし、我々もそういうラインで指導したいというふうに考えております。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 私が今言っているようなことについて事実かどうか、再度その調査をするということをここで約束していただけませんか、まず第一点。
  41. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) 先生の御指摘の点については、再度県から照会したいと思います。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 国土庁の土地利用計画法というのは余り当てにならぬということはようわかったんですが、事業団はどうですか。  今私が言ったように、初め千三百円ありきで、いろいろな名目でつじつま合わせをしていったという、私はここに、だれたということは言えませんけれども、ある地権者の計算式から公文書みたいなものから全部持っておるんですが、そこにさっき言ったようなことがきちっと書いてあるんですよ。あなた方はそういうことで順次つけていったんでしょう、これ。説明つかぬでしょう、ここに書いてあることは。どうなんですか。
  43. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) ただいま先生の御指摘の、千三百円が最初にあったという話は全然根拠のないことでございまして、土地の交渉というのは非常に時間がかかりまして、特に地権者会で四十八人もいろいろの方がおられますと、これはいろいろの議論をされて、長い間かかって話し合いをつけたわけでございまして、決して最初にこれだけのものを出すのだという意味で計算は一切しておりません。  したがいまして、土地代あるいは立木代、生活環境整備資金、これはそれぞれ理由がありまして、算出根拠も我々としては努力をいたしましてそれで出したものでございますので、先生の今御指摘のような意味の趣旨のものは事業団としては全然ございませんので、御理解を願いたいと思います。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 生活環境整備資金の問題はどうなんですか、私が先ほど言った問題。
  45. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 生活環境整備資金を出すに至るまでの経緯について御説明いたします。  今お話にありましたように、ことしの三月十九日付で当事業団は三千万円を生活環境整備資金として、これは一括して地権者会に支払いました。個々に支払ったわけではございません。  これを出すに至りました経緯につきましては、当事業団は、五十七年の七月以降、用地買収交渉の業務を青森県の土地開発公社に委託していたわけです。青森県の土地開発公社は、五十七年の九月から地権者との交渉を開始しております。翌五十八年の三月、昨年の三月でございますが、地権者会が設立されまして、交渉の窓口として同地権者会の協力を得ながら買収業務を進めてきたわけでございます。  その交渉の過程におきまして、地権者会から、代替地を探す経費だとか、あるいは土地譲渡についていろいろな打ち合わせのための費用、例えば東京に働きに出てきている人の交通費だとか、そういったものの負担等についていろいろな要望が出されました。地権者会がこれらを取りまとめて土地開発公社と折衝に当たっておりましたが、本年三月に同地権者会から事業団に対しまして、地権者の生活環境整備のための資金の必要性というものにつきまして要望書の提出があったわけでございます。  事業団といたしましては、土地譲渡に伴ういろいろな必要となる経費があるという地権者会の要望、その中には理解できる事項もあるというふうに判断いたしまして、地権者会の積極的な協力姿勢にこたえるということで、本年三月十九日に生活環境整備資金として三千万円を地権者会に支払ったものでございます。  この資金の金額につきましては、話し合いの結果合理的な線でまとめられたと思っておりまして、決してつかみ金というような性質のものではないと考えております用地権者のいろいろなケース、地権者の中にはいろいろの職業の方がおりますので、いろいろなケースについて検討した上で妥当性を判断して決定したものでございます。この生活環境整備資金は、地権者会が会として地権者個々の実情を踏まえて、同会の事業として同会の責任によって適正に運営するということになっております。  以上がこれを支払うに至りました経緯でございます。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、税金相当分でこれは名目上の単なる肩書だと、生活環境整備資金というふうなことが書かれてあるということは、これは勝手にここの責任者が書いて地権者にみんな文書として流したということになるわけですな。
  47. 小川健兒

    参考人小川健兒君) われわれはそういう文書が出ているということは全然承知しておりません。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 私もこの人の名前を言うわけにいかぬから、ここであなた方にこれを見せるわけにいかぬが、現に書いてあることは間違いない。私も国会でうそを言うわけにいかぬからね。  いずれにせよ、新聞に書かれているようなそういう事実というものがあった。もちろん土地買収は難しい、わかっています。また、土地を売らなければならない人の立場というものも僕はよくわかる。わかるけれども、やはりその根拠というものが明確になって、そしてつかみ金がばらまかれたというふうな状態にならないようにだけはしなければならぬと、これはだれしも思うことなんです。しかし、ここに書いてあるように、何かを上積みせにゃいかぬ、何かいい名目はないかなということで名目探し、そして税金のその分もしてもらわなければいかぬじゃないかというふうな形で、国のお金がいろんなところに使われているとしたら私は大変だと思うんです。だから、今までの国のお金によって事業団がいろんなところに補償金をやってまいてきたけれども、一体どういうふうにやってきたのかということを本当に全部一遍調べ上げたいと、これを見て思っているんです。  これだけやっているわけにいかぬから次の問題に入りますけれども、やはりこれはあなた方はその話し合いの中で最後に決着させるために税金分ということで払ったということは事実なんですよ。あなた方はここで認められないかもしらぬけれども、はっきり書いてある。何ですか、理事長、けげんな顔してはりますけれども、事実なんですよ。あなた見せてくれと言ったら見せますよ、この文書。見せましょうか、そこへ行って。ごらんになりたいですか、今。それなら見せましょうか。
  49. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) いいえ、結構でございます。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 事実なんですよ。理事長、これが事実だとしたらそれはどういうふうにあなたお考えになりますか。あなたは先ほど、貴重な国費を使って、国家予算を使わしていただいております、裏金なんて一切ありませんと。これは裏金がどうかということはまたいろんな判断のあれがあるでしょうが、しかし、名目なんかはどうでもいいんだと、事実はこうなんだというふうな形で国のお金が使われているということを一般の人が知ったらどうなりますか。  生活環境整備資金というものが本当に必要なら必要として使えばいいじゃないですか。集会場が要る、何が要る、こうしてくれということでもって使われるならいいじゃないですか。それが名目になって土地代に加算されてばらまかれた、税金用にと。それが問題なんですよ。もしそういうことであればどうですか、理事長
  51. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) 今、土地代に対する税金相当分というお言葉がございましたが、これは土地を売買すれば当然それなりの税金を払う、これは当たり前のことでございますが、我々がこういうふうな折衝を重ねてきたときに、税金相当分という意味で計算をしたことは一度もありません。これは当然払うものは払う。これは売った人が払うわけでございますので、事業団としましてはそれの相当分を補償するという意味は全然ございません。  したがいまして、今お話もございましたが、我々といたしましては生活環境の整備、これでもってお話し合いを続けて現在に至ったわけでございますが、これは地権者会の中にも非常に土地代を高く買えという議論もあったと私は聞いております。しかし、それは県の指導価格で土地代は決まっております。したがいましてそういう関係で積み上げたものではございません。したがいまして私といたしましては、土地代に加わるものではないと私は申し上げたいと思うわけであります。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 あなたがそうおっしゃっても、土地代に加わったものになっているんですよ。平行線ですから次の問題に進みます。  また、この事業団は、「むつ」の新母港建設工事にかかわる工事作業船の通過についての補償金を払っておられます。新聞では迷惑料と言っておりますが、五十八年、五十九年度にどれだけを支払われましたか。
  53. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 五十八年度分として一千十万円、それから五十九年度分として六千六十万円でございます。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 五十八年度、五十九年度、それぞれ一千十万円、六千六十万円の積算根拠というのですか、計算の基礎になるものは何ですか。
  55. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 航路設定にかかわります積算の考え方についてちょっと御説明させていただきます。  港湾工事をやるための作業船用の航路の設定に伴いまして、これは実損を補償するというのは当然のことでありますが、これは二つの面から補償を考えております。  第一点は、航路設定区域、これは航路と申しますと共同漁業権内で幅五百メートルあります。それから長さが大畑の漁協では三・七キロ、これは共同漁業権内にある区域です。面積で言いますと百八十五ヘクタールあります。それから石持漁協の方は、幅はもちろん同じ五百メートルでございますが、長さが二・五六キロメートル、面積といたしましては百二十八ヘクタールございます。それらの航路の設定区域の中では、底建て網をやっている方々とか何とかは皆網を上げなきゃいけない。そういう漁業操業が制限されることに対する制限補償があります。これが第一点でございます。  それから、作業船が航路内を通過することによって航路の近接海域、これは航路から両側二百メートルを考えておりますが、その作業海域での漁業操業が一時影響を受けること、これに対する影響補償というものがございます。  この二点を考慮いたしまして補償額を算定いたしました。  で、補償額の算定に当たりましては、現在の漁業実態を調査した上で、国の定めました基準、これは公共用地の取得に伴う損失補償基準でございますが、それに基づいて算定を行っております。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 五十八年度は、それでは漁業をする区域を通過したとか、あるいは作業船が通過することによって仕事を制限したとか、通過することによって周辺に影響を与えたとか、そういうふうなことは五十八年度中に工事期間として何日あったんですか。
  57. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 五十八年度の基礎捨て石工事の着工は二月の二十二日でございますが、それの網上げやなんかを始めたのは、予算政府原案が通過した時点、一月の二十五日だったかと思いますけれども、それでその時点で関根浜に港をつくるということですぐ作業に入りました。したがって、二月初めごろからもう既にその航路設定のためのいろいろな網上げとか、そういう作業が始まっております。したがって、約二カ月間そういう航路を設けたということになります。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 えらい細かいことを言うようですが、そうすると二カ月間ということは、二月の初めから三月の末ごろまで石をそこに運ぶ仕事が行われたということですね。
  59. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 実際に着工いたしましたのは二月二十二日で、三月の、日にちは覚えていませんけれども、二十四日、五日までかかったと記憶しております。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、一カ月の補償が約五百万円、それで五十九年度は一年間で六千六十万円、こういうふうに考えたらいいわけですか。
  61. 小川健兒

    参考人小川健兒君) さようでございます。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、これからいつまでこの補償は続くのですか。
  63. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 関根浜の港の工事が続く限りと申しますか、港の工事のために航路を設けている限りその補償をいたすことになります。
  64. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、毎年六千六十万ですか、それが六十年度、六十一年度、六十二年度、こういうふうに続いていくというふうに理解していいですか。
  65. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 一年間航路を必要とする年であれば六千万程度の補償はやることになります。
  66. 本岡昭次

    本岡昭次君 一年間工事をするんだったらと。そうすると、その工事が終わった後で何日通過したからどれだけ迷惑かけたとか制限をさせたとかいうことじゃなくて、初めの計画に従ってこのお金は支払われるという仕組みになっているんですか。
  67. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 工事をやるために作業船が通過するためには共同漁業権内では航路を設けないと船が通れませんので、事前に先ほど申しました区域には底建て網とかそういう網を入れないようにしてもらっているわけです。そのための実損補償と考えております。
  68. 本岡昭次

    本岡昭次君 実損補償だから、ことし一年とれだけ実損を与えたかということを計算して事後に払うのか、それとも今計画を想定して、一月五百万円だからといって六千万円を払うのかということです。
  69. 小川健兒

    参考人小川健兒君) それは、先ほど申し上げました制限補償と影響補償、これにつきまして、公共用地の取得に伴う損失補償基準というのがありまして、それに基づいて算定しております、その制限する区域の制限補償と影響補償につきましては。
  70. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、もう少し理解してください、私の質問を。  六千万円を払うのが……
  71. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 申しわけありません。一年間の損失の見込みとして補償しております。
  72. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、結果としていろんなことが起こりますな。非常にその年は天候が悪くて、あるいはいろいろな情事によって作業船が就航したのが六カ月ぐらいしかなかったということがあっても、一年の初めに六千万円を出せばそれは六千万円だということに結果としてなっていくということですな。そういうふうに理解せないかぬわけですよね。  だから、そういうところに、何かもう細かいことを、目の中に手を入れたような話で私も嫌なんですけれども、こういう問題についても結局税金が使われているのですね、国の金が全部。そこでぼったくりじゃないかということも当然周りから出てくる。その問題について新聞等を読めば、実際は一千万程度なんだけれども、いろいろやっておったらしまいに六千万円になったというふうなことを事業団の幹部が本音を出しているというようなことも出ているから、こんなことにまでいろいろ原子力船むつ」をどうしても早くそこに就航させねばならぬということでやっているのかと思うと嫌になるのですよ、私は話を聞いておって。そういうことになりますね、理事長
  73. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) ただいま先生の御指摘になった、事業団の幹部が年間一千万円じゃないかというお話がございますが、これは新聞報道ではそういうふうに伝えられております。しかし私どもでは、それにつきまして現地の幹部及び関係者に尋ねましたら、そういう一千万というような数字でセットしてそれの掛け算だと、つかみ金なんだというようなことは一切ございませんので、私といたしましては、新聞報道のやり方といいましょうか、そういう問題はあるかもしれませんが、事業団といたしましてはそういうことは一切ございませんので、御了解願いたいと思います。
  74. 本岡昭次

    本岡昭次君 この補償の問題について私ももう少し勉強もして再度質疑をやってみたい、こう思います。工事作業船の今言いました補償も、私は補償じゃなくて迷惑料ということで、やはりつかみ金というものがそこに出てきているという新聞の報道の方が僕は正しいという立場をとります。だけれども、ここでやっても水かけ論だからまたそれは適当な機会に譲るにしまして、次の問題にちょっと触れてみます。  そこで、工事作業船の基地になるのは大畑漁港ですね。そこで作業船が石なんかを運ぶための岸壁が要るわけなんですが、何か岸壁は新しく大畑漁港の防波堤の外側にそれをつくった。六億円かけてそれが新設された。しかし、実際にそれを使用するとなると、あのあたりは冬になると海が荒れて港の中でなければ、外にそういう岸壁をつくったのでは使用に耐えないんじゃないか、一体、事業団では何というところに岸壁をつくったんだというふうな話を聞くのですが、これは事実なんですか。
  75. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 大畑の漁港に六億円で整備しましたけれども、あそこの恐らく一番東側の岸壁が荒れるというふうに今お聞きしたのですが、港湾の専門家に聞きましたら、冬場は北西の風が吹くわけです。だから漁港内よりももっと静かでもっと使いやすい。逆に大畑の東側の岸壁が使えないときは関根浜で工事はできないというふうに聞いておりまして、むしろ大畑の漁港内よりもそっちの岸壁の方が波は静かだと聞いております。それは北西の風の冬場の話でございます。
  76. 本岡昭次

    本岡昭次君 責任を持っての今の答弁だと思いますが、これは事実を、事態を見守っていかなければ仕方がないわけで、私たち素人にしてみたら、なぜ港の中につくらずに港の外に岸壁を新しくわざわざつくったんだということが腑に落ちないですね。  それで、幾ら使ったんですか、その岸壁をつくるのに。
  77. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 六億円でございます。
  78. 本岡昭次

    本岡昭次君 今いろんなことを言いましたけれども、これは長官に聞いていただきたいんですが、このように補償というのは本来実損補償であるべきなんですが、それが実損補償でなくて、政治加算あるいはつかみ金、やはり相手の要求に応じていかなければならぬというところで、実損の補償とかなり違ったものがそこに実態としてあるということからこういうことが起こっているんだと思うんですが、やはりその大もとは「むつ」の新母港建設で十八億円の漁業補償金というものを関根浜漁協に渡したという事柄が私は根っこにあると思う。  衆議院の科学技術委員会でも、この十八億円の補償の根拠、何を根拠にしてこの十八億円というものを漁協に渡したのか、その根拠を示せということをわが党の委員が執拗に迫っておりますが、頑としてそれは言えないと、こういうふうにして突っ張られております。  問題は、そういうところから派生して、とにかく根拠がないんだから、言うだけ言えば、吹っかけるだけ吹っかければいいじゃないかというふうな風潮が私は流れてくるんだと、こう思うんですよ。だから補償というものはみんなが納得する根拠というものがあって、それを何も天下国家に公表する必要ないですが、必要なところにはきちっとそれを公表して、それに基づいて必要な補償がそれぞれの対象者に行われる、そこには何ら問題が起こらないというふうにしていかなければならぬじゃないかと、こう思うんです。  それで、その補償金の配分を十七日に決めたようなんですが、まず初めに、うまくその配分の問題がいったのかどうか、これはいかがでしょう。
  79. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) 十八億円の関根浜漁業組合における配分は、一応臨時総会で、先生の御指摘のように、この十七日に議題になり、大筋において決定をしたということを聞いております。  具体的には、これは協定書にもございますが、組合長の責任において公正に行う、適正に行うということになっておりまして、事業団といたしましてはその報告をまだ受けてはおりませんけれども、適正に行われるということを信じております。
  80. 本岡昭次

    本岡昭次君 新聞の報道するところでは、今答弁になったように、適正に行われたと言えるようなものではとてもない、私はこう思うんです。何が適正かどうかということがはっきりしないのは、その積算の根拠がはっきりしないから何が適正かどうかがわからないんですね。新聞では、幽霊会員がたくさんいて、その者に、本来渡さなくてもいい者に渡した、本来漁業を一遍も営んだことのない人が会員になって、その人にも均等配分が三百二十万円行われたというふうなことが出ているし、一体何がここで起こっているのかという事実を私は本当に知りたいと、こう思っているんです。それはまた別の機会にして、やはりその根幹は、今言いましたように十八億円なら十八億円という補償をどのような根拠に基づいてやったのかということがわからぬという、政府が示せないという、そこに私は最大のやっぱり問題がある、こう思うんですね。どうですか、科学技術庁。
  81. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 十八億円の漁業補償金の積算根拠を明らかにしろと、こういうお話か衆議院の科学技術委員会の方で出され、それにつきましては、この積算につきましては現在漁業組合の中で配分も行われている段階でございますので、従来から青森県等でそういう際には、漁業補償の配分が終わり、しかもその資金が支払われるときまでの過程においてはそういうものは公表しないということが従来からの慣例になっているんで、そういうものを出すことは好ましくないという知事からの要請もあり、県からのお話もあり、事業団の方ではお出しできないという立場をとってきたものでございます。  その積算根拠につきましては、基本的には、先ほどのときにもございましたが、国の定めました補償基準のベースにのっとりまして、漁獲高をベースに、それに収益率とか漁業に与える影響率、そういったものを掛け合わせて算定するということになっておりますので、それらに基づいて算定しておりますし、そのもとになるデータ等については事業団の方で市場調査をしたり、実際の収益等について調査をした結果等を参照し、かつ県の水産部等の御意見も聞いて、妥当な数字として算定したものと私どもは聞いておる次第でございます。
  82. 本岡昭次

    本岡昭次君 その今おっしゃった収益が今までどおり上がらなくなるだろうとか、漁業を営んでいく上にこういう影響が出るだろうとかという幾つかの項目それぞれに、十八億円のうち六億円とか五億円とか三億円とかいう項目がついておれば、それに基づいて地元で配分されれば何ら問題ないんですが、今おっしゃったそれ一つ一つに対して十八億円はどれだけの割合をもって積算されているんだということも言えないんですか。
  83. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 今の段階で具体的な数字の内容につきまして御報告できませんが、これは従来の県の慣例によるということでございます。  それから、配分の問題につきましては、先生の御指摘はいわゆる漁獲高に応じて配分するというお話になろうかと思いますが、このお払いした補償金は、漁業組合が有します共同漁業権の消滅という、いわばその権利を買い取るということに対する補償として支払われておるものでございまして、その権利は現在実際に漁獲高を上げている者に必ずしも比例するものじゃございませんで、その組合員の基本的には共通の財産でもあるわけでございますので、その配分が補償額で示した漁獲に応じて配分するということが妥当であるかどうかということについてはまたいろいろ議論のあるところかと思いますし、その配分につきましては、先ほど申しましたように漁業権のいわば買い取りに伴うものであり、漁業権については組合員全員の共通の財産であるということもございますし、これはあくまでも組合の内部で組合員の方々がお話し合いになって配分されるという筋合いのものであろうかと私ども考えております。  そういう意味で、私どもは一切この漁業補償の配分の問題について我々が漁業組合の方に、まあ早く問題解決していただいた方が我々の立場としてもよろしいわけですが、だからといって漁業組合に何か行動を起こしたり、あるいは県に何するというようなことは、先ほど言ったような趣旨からいって一切いたしておりません。
  84. 本岡昭次

    本岡昭次君 その漁業権の価格が十八億円というのが正当であったのかどうなのかというその問題を私は論議をしなければならぬと、こう思っているんで、どう配分したかという問題には私はまだ触れてないわけなんで、その漁業権というもののその価格、私は素人ですから尋ねているんですが、それはどういうふうにして決めるんですか。十八億円が正当で、十億円がこれは低過ぎて、二十五億円じゃ高過ぎるというふうな、一体漁業権とおっしゃるものの価格はだれがどのようにして決めるんですか、教えていただけませんか。
  85. 小川健兒

    参考人小川健兒君) 漁業補償金十八億円の算定に当たりまして評価した項目、次に述べます五点ございます。  その第一点は、消滅補償でございます。これは港ができますと港の防波堤などの港湾構造物で囲まれる区域及びその構造物の維持管理に必要な区域、これは構造物の外側五十メートルを考えておりますが、そこで漁業権が消滅することに対する消滅補償であります。これは漁業権を買い取るわけですが、その消滅補償、今回の十八億円の消滅補償区域は面積として六十九・八ヘクタールございます。  それから第二番目は、制限補償と申しまして、港湾の建設工事の期間中に漁業を制限する区域でございまして、これは構造物の外側三百メートルを基本としています。そこで漁業操業が制限されることに対する補償でございます。これは面積で申しますと、この場合は六十七・六ヘクタールということでございます。  それから第三番目が漁場価値減少補償と申しまして、港湾構造物の建設によりまして反射波が周辺海域の漁業操業に影響を及ぼす、そのための補償です。これは面積として百四十五ヘクタールでございます。  それから四番目でございますが、港湾建設工事それから作業船の運航等によって周辺海域での漁業操業が影響を受けることに対する影響補償。  それから最後に、漁業の制限等による漁具その他資本に関連して通常生ずる損失、通損補償でございます。  この五点を考慮しまして、先ほど申しました公共用地の取得に伴う損失補償基準に基づきまして算定しているわけでございます。
  86. 本岡昭次

    本岡昭次君 大分わかってきましたが、その五点のその一つ一つがまあいわば十八億円の基礎になっているんですが、ひとつ五項目の各項目ごとに、それでは十八億円というものはどういう割合で算定をしていったのかということは言ってもらえませんか。
  87. 井上啓次郎

    参考人井上啓次郎君) 先生のせっかくの御指摘でございますが、今申したような項目でそれぞれ計算しております。その基準といたしましては、平年漁獲金額、それに収益率、漁場依存率あるいは被害率というものを決めまして算定したものでございます。  特に申し上げたいのは、この平年漁獲の金額とか収益率というのは、漁業実態を調査した上で数字を出しております。しかも、この漁業実態を調べるときに、これは関根浜漁業協同組合の役員会の御了承を得て各人に照会をし、いろいろなデータをいただいたわけでございます。したがいまして、そのときにもその数字は公表しないでいただきたいということで、我々もその点は十分了解しておりますので、今申し上げたような算定基準とか、あるいは計算式というものはきちっとございますけれども、それぞれの補償項目の金額を言えということにつきましては、先ほど来言っているような事情で、この際は差し控えさしていただきたいと思うのでございます。
  88. 本岡昭次

    本岡昭次君 衆議院でもおっしゃらなかったんだからここでも言わないだろうからやめますけれども、とにかく「むつ」そのものが、今言ったように、もう国民挙げての壮大なむだ遣いだと、もう廃船にしてしまえという、そういう声が上がっております。一方で、「むつ」の新しい母港になる関根浜周辺でまたここでいろんな金が、国の大切なお金がむだ遣いされているんじゃないかと、あるいはまた既成事実をたくさん積み上げていくために次々といろんな補償をやっていって、「むつ」の存続ということについての基盤を政治的につくろうとしているんではないかと、私はそういうようなことを非常に今の実態の中で心配をしております。そこで、この問題は、あとまだたくさんやらにゃいかぬことがありますので、一応この程度にしておいて次の問題に移ります。また次の機会に「むつ」問題についていろいろ論議の場をつくっていただけると思いますからそこに譲ることにしまして、次の問題に入ります。  それで、長官にお伺いするんですが、「むつ」の存廃問題について広くこれから論議をしてくれ、こうおっしゃっても、「むつ」をこのまま存続させてこれから研究開発をするについて一体どのぐらいのお金がかかるのかという問題は、その論議をするについて非常に必要な要件ではないかと私思います。前回もその問題を質問しましたけれども政府としてはそうした試算はないと、こうおっしゃいます。事業団として一応の試算として一千億円というものはあるようだがというお話であります。どうですか、政府としての、このまま「むつ」を存続させるとすれば研究開発にこれだけのお金がかかるんだということを、政府の責任において一応の概算、試算をここで明らかにしていただけませんか。
  89. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 「むつ」の開発計画につきましての資金でございますが、この点につきましては現在のところ、従来お話し申し上げておるように、事業団で試算をいたしまして数字として約一千億円の計画があるわけでございます。  この計画は、関根浜に港を建設いたしまして、そこに陸上附帯施設をつくり、当然のことながら出力上昇試験を行いまして、そこで合格の証書をいただいた後、実験航海を二年ほどやります。さらに引き続き、炉心をかえまして、新しい改良型の炉心を設置しまして、それからさらに四年程度いろいろな航海実験をするということで計画されておるものでございます。港の建設費につきましては、そういう意味で約六百億円、それから廃船費も含めましたいわば研究開発費が約二百四十億、その他船の乗組員あるいは本部の従業員等、さらには定係港の管理その他の関係での経費等が二百億円、それで約千億というような見積もりをしておるわけでございます。  政府立場といたしましては、現在いろいろな方面の御意見も聞きながら検討しておるわけでございますが、その実際の数字、いろいろな今後の「むつ」の扱いについてどうするかということに応じて資金も変わってくるわけでございまして、実はまだ前提条件が明確になっていないということでもございますし、いろいろな勉強はしておりますけれども、数字をここで幾らとまだお示しし得る段階にないわけでございますので、その点ちょっと御了解いただきたいと思います。
  90. 本岡昭次

    本岡昭次君 科学技術庁の方から今言われた約一千億という言葉が出て、そして港湾あるいは陸上施設をつくるのに六百億、実験に二百四十億、その他人件費等々含めて一千億は要るであるということを明らかにしていただいたわけですから、それをもとにしてまた今度論議をこれから進めていきます。  それから次に、この遮へい改修工事の契約の問題なんですが、その中で瑕疵担保期間の問題を前回のこの委員会質問をいたしました。その中で局長は、その期間の延長問題についてメーカー側と事業団側が今交渉を行っております、延長については基本的にメーカー側も了解しているが期間等についてはさらに詰めを行っている段階でありますというように答弁をされています。その後の交渉経過がどうなっているかということをお聞きしたいんですね。というのは、六月の二十九日にその期間が二十四カ月というのが切れるという状況を間近に控えて、一体交渉はどのようになっているのかということをお尋ねいたします。
  91. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) お答えいたします。  事業団といたしましては、遮へい改修の瑕疵の有無を確認する際には瑕疵担保が保証されているということが必要と考えておりますので、こういう考え方からメーカーと現在鋭意交渉中でございます。  今お話しのように、メーカー側も基本的には原子力船開発というナショナルプロジェクトへの協力という立場で我が方との交渉に対応しているわけでございますが、いろいろな問題点もなくはございません。これらを総合的に勘案いたしまして、実質的に支障のないような取り決めを結ぶべく最終的な努力を払っている段階でございます。
  92. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう少し詳しく報告していただけませんか、ちょっと抽象的に過ぎると思いますが。
  93. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 交渉の経緯といたしましては、実際にお話が始まりましたのは昨年の十月から交渉を開始しております。その間、五十九年度の予算編成に当たりましていろいろな問題提起がされまして、事業団の置かれている立場としてはかなり基本的な問題点というのがこの中で提起されているわけでございます。したがって、将来に対する見通しとしては必ずしも明確でない点も残されているわけでございます。そういうような問題点を含めまして、先ほど申しましたように事業団といたしましては、遮へい改修の瑕疵の有無を確認する際には瑕疵担保が保証されていなければならないという観点で、現在最終的な努力を、メーカー側と折衝を続けているということでございます。
  94. 本岡昭次

    本岡昭次君 前回の経験から考えられますことは、「むつ」が実験を始めるまでこうした瑕疵担保期間を延長するということがなければどうにもならないんじゃないかという気がするんですが、その交渉というのは「むつ」が実験を始めるまで延ばすということを基本に置いてやっておられるのですか。
  95. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 申し上げましたように、事業団といたしましては、遮へい改修の瑕疵の有無を確認する際には瑕疵担保が保証されていることが必要であるというのが基本的考え方でございます。しかしながら、出力上昇試験によります瑕疵の有無の確認となりますと、かなり現在の想定では大幅な延長ということが予想されます。これは一般的な商習慣上必ずしもなじむ話ではないことは御了解いただけるかと思います。さらには他の一般的な契約への影響もございましょう。  しかしながら基本的には、先ほど申しましたように、原子力船開発というナショナルプロジェクトに対する協力という観点から、いろいろな問題点はございますけれども、これらを総合的に勘案いたしまして、実質的には先ほど申しましたような瑕疵担保保証ということに実質的に支障がないような取り決めを結ぶという方向で現在最後の詰めが行われているということでございます。
  96. 本岡昭次

    本岡昭次君 この点について、科学技術庁のお考えをひとつお伺いしておきます。
  97. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 交渉経緯を明快に御説明しろという先生の御質疑に対して、ちょっと奥歯に物の挟まったような言い方をさせていただいておりますが、交渉事でございますので、その点でちょっと御容赦をいただきたいと思いますが、私どもも基本的に現在既にこの瑕疵担保の期限が目前に迫っておるわけでございまして、事業団を督励して答えを出すということを指導しているわけでございます。  現在最終的に言いますと、瑕疵が確認できないというのは、いわば出力上昇試験が行われていない、その際において遮へい性能面に何かあらわれたときに、その原因が請負メーカー側の瑕疵によるものであるかどうかということの点が確認されていないということが残るわけでございますので、その点につきましてまだ「むつ」の取り扱いがどうなるかということもわかっていないときではございますが、将来出力上昇試験を行ったときに遮へい性能に異常が見られ、その原因が請負メーカー側の瑕疵であるということが明らかになれば、その際にはそれをしっかりとメーカー側の責任において対処させるようなことはきちっと保証させたい、そういうことで臨んでおるわけでございます。  具体的な問題として、現在の契約そのものの変更をするという形にするのか、または別な形にするのか、この方法につきましてはまさに請負メーカー側というか、商慣習上のいろいろな慣習との関連もございますので、そこら辺のことも総合的に勘案して、町方が納得できる形で問題を解決したいということでございまして、基本的には請負メーカー側も原子力船開発という国策に自分たちも協力するという立場は明らかにしておりますので、妥結点が見出されるものと思っておる次第でございます。
  98. 本岡昭次

    本岡昭次君 今お示しになったような方向でぜひこの話は詰めておいていただきたいと思います。私は廃船の方を望んでおりますから、廃船になれば今のことは問題にならないわけですが、そこでもう時間があと十分余りしかありませんので、ちょっとはしょって質問をあと二、三点さしていただきたいと思います。  それで、この事業団統合というのは、行政の簡素化効率化を進める見地からということで、行政改革の一環として進められております。とすれば、一体今回の統合によって行政の簡素化効率化という観点の中の一つである予算とか経費とかいったものがどのぐらい削減をされることになるのかという点についてお伺いをしておきたいと思います。
  99. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 今御提案している法案ができました際における統合のメリットでございますが、まず統合によりまして、原子力研究所が有します高度な技術的能力を舶用炉開発の上に有機的に活用できる、今まで二つの法人に分かれておったというものが一体的に運用されるということで、その効率化、高度化が図られるということは当然のことでございますが、具体的な問題といたしましては、役員につきましては統合前は両法人合わせまして予算定数ベースで申しますと十六人でございます。これが統合後十三人ということになりまして、三人の縮減が図られるということになるわけでございます。  それから、さらに統合によりまして、例えば一般管理関係等についての業務というのが調整し得るものでございます。研究の方につきましては、むしろ全体的に原子力研究所自体も研究規模の拡大等に伴って増員をしなければならないような状況にもございますので、具体的に実際上の定員が減るとかいうことにはなかなか結びつかないかと思いますが、これらの点につきましては、六十年度の予算編成の際に十分検討してまいりたいということでございまして、今具体的に一般管理部門でどの程度の調整ができるかということにつきまして数字的なことを申し上げる段階にございません。
  100. 本岡昭次

    本岡昭次君 ちょっと素人じみた質問をいたしますが、先ほどの答弁の最初の方に、原子力研究所統合した方が舶用炉研究がより充実をして成果を上げられるようになるんではないかという意味の答弁がありました。そうしたら、なぜ最初から舶用炉研究あるいは「むつ」というふうなこの実験船をつくるというふうな問題を日本原子力研究所で一貫して行って、この基礎研究として含めて行ってこられなかったんですか。
  101. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 原子力船開発事業団として発足しましたときは、先生御高承のように、いわば原子力第一船をつくって実際に動かしてみる、いわゆるデモンストレーションをして、後は民間に引き継ぐという、いわば時限立法ででき上がったものでございます。  その後、「むつ」の放射線漏れを契機にいたしまして、経済情勢の変化等も考慮しまして見直しいたしますと、いわゆるそういう「むつ」というものが単なるデモンストレーションの船ということではもはや適当なものではなくて、むしろ「むつ」放射線漏れの経験等も生かしまして、「むつ」を徹底的にいわば実験的なものとして使うという方にすべきじゃないか、それにあわせて研究開発機能というものも付与していくべきじゃないかということで五十五年に法改正をしていただいたわけでございますので、性格的にも非常に原研のいわば基礎研究的な方向というものが非常に強く加味されてきておりますので、五十五年度の法改正の際もそういう意味で六十年三月に他の原子力関係機関と統合しろと、こういう法案をお認めいただいたということと理解しておるわけでございます。  そういう意味では原子力研究所がいいのか、動燃事業団がいいのかという議論につきましてはいろんな議論はありましたが、先ほど来申しましたような趣旨で、原子力研究所が、いわゆる船を開発してすぐ実利用ということに結びつくというよりも、基盤的なデータの取得という方向に向かっているということを考えれば、日本原子力研究所がそういう意味では適当だということで今回の法案を出させていただいている次第でございます。
  102. 本岡昭次

    本岡昭次君 原子力研究所の方もおいでいただいておるんですが、責任者にお伺いいたします。  今のように、舶用炉研究はもともと原子力研究所で行っていけばよかったんだけれども、実験船というものをつくってデモンストレーションをやるには原研では無理だろうからというので事業団をつくってやってみた。ところが、大変なお荷物があそこにできて、またそのお荷物を背負って今度は帰ってくるということで、私は原研にとったら非常に迷惑であろう、ありがた迷惑じゃないかという気が正直言ってするんですね。原子力研究所基礎的なそういう原子力問題についての研究をしていく上について、正直なところどうですか、今問題になっているこの原子力船むつ」もその業務の中に加えてこれからやらなければならないということについて、率直なひとつ感想か御意見をいただければありがたいと思うんですが、どうですか。
  103. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 原子力研究所の理事長藤波でございます。  お尋ねの点でございますが、原子力船事業団統合する先として原研がよろしかろうという方針が打ち出されました趣旨は、ただいま原子力局長からも話がございましたが、現時点で考えると、今後の原子力船開発は、第二船、第三船の建造をというぐあいに急いでやるよりは、「むつ」を実験台として、実験船として段階的に基礎研究を重ねて、将来に備えてのデータ、経験を蓄積するというところに重点を置くべきであると、原子力委員会の見解もそのように出ておるようでございますが、そういう方針に基づいて決定されたものと我々理解しておるわけでございます。  したがいまして、今後この国会において統合法案決定された暁におきましては、我々としては、ただいま申し上げましたような理解に基づいて、その趣旨に沿うように着実に研究開発を進めてまいりたいと、こういうぐあいに思っておる次第でございます。
  104. 本岡昭次

    本岡昭次君 最後に一点お伺いしておきますが、統合すれば副理事長が二人になるということなんですが、この二人の副理事長というのは、「むつ」を伴ってこれから業務としてなるであろう原子力船の問題についての担当ということで副理事長が二人制ということになっているんですか。
  105. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 現在の原子力船事業団におきましては、いわば代表権を有する理事といいますのは理事長と専務理事ということで、対外的な代表権を行使して対外折衝その他をやってきておるわけでございますが、現在原子力研究所には副理事長がお一人で、非常に原子力研究所仕事も広範多岐にわたっており、副理事長業務というのは非常に多いわけでございますので、それに加えまして「むつ」の業務、「むつ」といいますか、原子力船開発業務事業団から引き継がれ、今まで代表権を持つ理事長、さらに専務理事という二人の体制でやっていたような仕事を引き受けるわけでございますので、今までの副理事長お一人のままではとても原子力研究所の運営に支障を来すのではないか、そういうことで一名を増員させていただいたということでございます。
  106. 本岡昭次

    本岡昭次君 長官、もう時間が来ましたから、最後に御意見を伺って終わります。  きょうは主として「むつ」の新母港になる関根浜の問題を中心に取り上げました。「むつ」自身が現在まで六百億、将来一千億というふうな形で壮大な国のお金を投入してやっている。それが、会計検査院も指摘しているように、むだ遣いではないかということで、直接には言っておりませんが、再考を促すということではないかと私は思います、予算執行上も。そういう観点で、関根浜にも予算執行上本当に正しい予算執行であったのかどうかという問題で疑惑を生むような状態、私は事実問題がある、こう判断しております。  そういう状況もあって、とにかくその「むつ」そのものにかかわる問題というのは、どうしても初めに言いましたように、この法案と切り離して、「むつ」は「むつ」の後始末ということで別途考えて、統合の際に「むつ」まで持ち込まない、最低そうした判断を長官の方でしてもらうことが必要ではないか。それは自民党の中で検討しているんだとおっしゃるけれども長官がその立場に立ってもらうことがまず基本的に大事であろうと思いますので、最後にその点について長官の決断をお伺いできればありがたいんですが、御意見を伺って終わりたいと思います。
  107. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 大変貴重な御意見、御指摘もちょうだいいたしまして感謝申し上げたいと思います。  また、一千億という数字につきましては、前の委員会でも申し上げましたように、私どもはこれは事業団が最善の研究開発、実験を終わっていきたい、そういうことから出てきている数字だと承知をいたしております。これはしかし、私ども政府として承認をしている数字でもございません。今後いろいろな御議論の結果、最終的な対応をする場合には、この一千億、仮に継続するといたしましても、私ども国民の貴重な税金を背景とした国費を投入してまいるわけでございますから、むだのないように最小限度の資金で対応していかなければならないと考えております。  しかも、今回の統合法案は、これは行政改革の一環でもありまするし、さらにまた効果的に原子力船むつ」というものの研究開発を対象とし、第二船、第三船は考えない、こういうような対応で今回の統合お願いをいたしているわけでございますので、せっかくの御提案ではございまするが、統合法案統合法案としてぜひ御審議をいただいて、国会で通過ができまするように御協力をお願いしたいと思っておる次第であります。
  108. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  109. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) ただいまから科学技術特別委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、日本原子力研究所法の一部を改正する法律案及び日本原子力船研究開発事業団解散に関する法律案を議題とし、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  110. 伏見康治

    ○伏見康治君 伏見でございます。  原子力船に関する法律が変わることにつきまして、原子力船については過去いろいろなまずいことが重なりまして、どなたも大成功であったということは言えないような状態でございますが、これは日本科学技術的プロジェクトにとって非常に大きな汚点になっているわけでございまして、多少とも関係のある者といたしましては大変残念に思っているわけでございます。しかし、そういういろいろな失敗があったといたしますというと、その失敗を十分吟味いたしまして、その原因がどこにあったかということを十分尋ねるごとによって、今後の日本科学技術政策に少しでもプラスになるように努力するのが我々として課せられた課題であると考えるわけでございます。  そういう意味で、私の質問の最初の段階は少し古いお話になって恐縮でございますけれども、古いお話ですから今ここにおられる方々の大部分は直接その時代にはおられなかったわけで、本当の意味の責任のある御返答は実は期待できないのかもしれないのですが、過去にさかのぼってどういう点が悪かったかという点を少し吟味していきたいと思うわけでございます。  大変話が古くなりますが、ことしは一九八四年で、ちょうど三十年前のことを考えますというと、ことしは日本原子力について極めて記念すべき年になったと思うのでございます。それはちょうど三十年前の三月の初旬に、現在は総理大臣になっておられる中曽根さんがまだ改進党の一代議士であったときに、原子炉予算というのをおつけになりました。そこから日本原子力が始まったわけでございますので、そういう意味でことしは日本原子力にとって記念すべき年になると思います。何か長官の方でその日本原子力のあけぼのを記念するような行事をあるいはお考えになっているかと思うのでございますが、私自身にとりましてもこの三十年目というのは一つの記憶を新たにするべき年に当たるわけでございます。  それは、その中曽根予算対応いたしまして、その何年前からか日本学術会議の場におきまして日本原子力研究をどういうふうにするかという議論をしておりましたが、そこにその中曽根予算お話が出てまいりましたので、日本原子力開発というものを正しい軌道に乗せると申しますか、そのことのために幾つかの制約が必要であると考えまして、日本学術会議の場でいわゆる原子力平和利用の三原則というものが確立されたわけでございます。幸いその当時の政府が、学術会議の唱えました原子力平和利用三原則、つまり公開の原則、自主の原則、民主の原則というものを全部その年の暮れから翌年の正月にかけてできました原子力基本法の中に取り入れていただきまして、それ以来日本原子力研究開発というものは、いろいろ技術的にはまずいことがあったかもしれませんけれども平和利用に限定するというその大きな線ではそこから逸脱することなくしかも日本国民に対して石油危機の中でもそれにかわる原子力エネルギーを供給することができたという、原子力平和利用の線で立派な仕事をしてきたということが考えられるわけでございます。  ことしはそういう意味において、中曽根さんにとりましても私にとりましても記念すべき年になるわけでございますが、この原子力船というものにとりましてもちょうど三十年前というものはやはり一つのきっかけをつくった年であると私は考えます。それは、先ほて申し上げましたように、日本学術会議において原子力開発をどう進めるかということはその三十年前よりももうちょっと数年前から議論しておったわけでございますが、ちょうど三十年前の二月の末に、つまり中曽根予算が言われる直前でございますが、直前に学術会議におきまして原子力に関するシンポジウムが開かれまして、そのシンポジウムの席上で、日本の造船界の大御所的存在でございました山懸昌夫先生が原子力船の可能性について講演をなさいました。そのときのお話が私にはいまだに非常に印象深く頭に残っているわけでございます。  山縣さんのお話の大要はこういうことであったと思うんですが、つまり、新しいエネルギー源を既存のエネルギー源の中に取り込もうとするときには、必ずやその競争相手をいわば排除していかなくてはならないわけですから、新しいエネルギー源としての特徴が最もよく発揮される場所にまずそのエネルギーを使ってみるべきである。原子力の特徴というのはどこにあるかというのはいろいろの考え方がもちろんございますが、一つは、石油や石炭と違って空気を必要としない動力源であるというところが非常に大きな特徴である。そこで山縣先生は、この原子力というものを最初に使うべき場所は潜水船であると。潜水船というものは、実は水上を浮かんでいる船に比べましていろんな特徴があるわけでございますが、山縣先生の長年の御苦労は、水面を浮かぶ船というものは造波抵抗というものがございまして、ハイスピードでもって進行しようといたしますというと余計に波を立てるためにエネルギーを非常に消費するわけでございますが、潜ってしまいますと造波抵抗がなくなります。したがって、エネルギーを余り消費せずに進むことができるという意味において潜水船というものは非常に特徴があるわけですが、ただ、その潜水船が従来十分に開発されなかった根本的な理由はどこにあるかというと、海の底に潜ってしまってなおかつ空気を取り入れるということが非常に難しいからであります。原子力が出てまいりまして水中で酸素を必要としないエンジンができたということになるわけでございまして、それで山縣昌夫先生は、原子力の一番大きな特徴は空気を必要としない動力源であるというところにある、したがってそれは潜水船の形で使うのが一番よろしいという、そういうお話でございました。  私は、このお話に非常に感銘いたしました。というのは、そのころの日本原子力に関する議論というものは、実はネガティブな方向の議論が大部分でございまして、積極的に原子力を前向きに使って見せようというようなお話はほとんどないような状態でございました。学術会議の場でも大体そういう傾向であったと思うのでございますが、その中で山縣先生がひとり前向きの姿勢を示されたということに対して私は非常な感銘を受けたわけであります。  そのころから私は、原子力船というものに対して強い関心を持っておったわけですが、具体的には何もしておりませんけれども、歴史の流れの中では原子力船がどういう動きをするかということを見ておったわけでありますが、その山縣昌夫先生が最初抱いておられましたようなそういう非常に大きな観点で物事を考えるということが、その後原子力船が具体化すればするほど見失われてしまって、だんだんつまらないプロジェクトに成り下がっていったような感じがいたします。特に、予算がとれて、そして実はその予算ではとても足りないということになったような段階で、海洋調査船といったようなやや前向きの考え方がいつの間にか変形いたしまして、特殊貨物船でしょうか、何かそういったような形になって、原子力というものとその船とがどういう意味で結びついているのかということの意味がほとんど行方不明になってしまったような形になってしまった。  その辺あたりからだんだんいわゆるボタンのかけ違いが始まってきたのではなかろうかと思うわけですが、こういう意味で今後のプロジェクト、科学技術庁となさいましても今後いろいろな大きなプロジェクトを打ち立てていかれることと思いますが、その際に、こういう最初の発想というものが極めて大事だと思うのですが、そういう点について長官どういうお考えをお持ちでしょうか。
  111. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 中国の言葉に「井戸の水を飲む人は井戸を掘った人のことを忘れない」という言葉がございますが、まさにただいま伏見先生から日本原子力についてのその淵源のお話をちょうだいいたしまして、私も大変感銘深く伺った次第でございます。日本が敗戦から立ち上がっていく段階において、やはり長期的な視点に立った日本のエネルギーあるいは海運国家としての日本ということを考えたときに、先ほどの山縣先生のお考えというものは大変貴重なものであり、これはいまだに私は生きているものと考えていきたいと思っておるわけでございます。  ただ、この潜水船ということになりますと、とかくイメージが原子力の潜水艦というようなイメージが持たれがちでございますが、私自身、実は私にも船舶関係の友人もおるのでございますが、お話があったように、海の上を走るよりは海の中を走った方が抵抗が少なくていいんだと、こう私の友人の船舶の専門家も言っておりまして、これは私、若いときからその話を聞いておるわけでございます。そういうようなことで私は、この山縣先生の非常に先見性のあるお考えというものは、今後とも日本原子力船というものを考えた場合には十分に生きているものとして考えていかなければならないということをまず申し上げたいと思います。  しかも今日、軽薄短小の時代に入ってきております。したがいまして、大型の鉱石でありまするとかあるいは油でありまするとかコンテナでありまするとか、こういうものは潜水船には向いていないと思いますけれども日本がさらに先端科学技術というものが進んでまいればまいるほどミクロの世界に入っていく、いわゆる軽薄短小の時代、これが日本の貿易そして日本の生きる道でもあろうかと思います。そういうときには潜水船という構想は、私は十分にこれからの研究課題として大事ではないだろうかという感想も持っているわけでございます。  そういう中におきまして私どもは、最初にボタンのかけ違いがあったというようなお話もございますが、やはり当時の日本とすれば、高速船として航続性の長い、特に日本は大変多くの地球上のいろいろな国から長距離の輸送をしなければならないという地政学的な立場がございますので、したがって、潜水船という構想のほかに、新たに潜水商船というようなものも十分に可能性のあるものとして研究開発に値すると、こういうことでスタートしたのではないかと思っておるわけでございます。そういう意味におきまして、私どもはこれからも各方面の御議論を十分にちょうだいして、誤りのない日本の方向を定めてまいりたいと考えておるところでございます。  なお、冒頭に、ことしは記念すべき年であるというお話がございました。まさに記念すべき年であろうかと思います。ただ、私ども原子力の火がついた、そこに実は重要な一つの節口を考えておるわけでございます。しかし、もちろん冒頭に申したように、井戸を掘った人のことを忘れてはならないという意味において、まさに原子力船むつ」の問題を契機として、この日本原子力平和利用というものがどのような姿でスタートしたかということに深く思いをいたしながら、今後とも謙虚に、そして原子力平和利用を強力に、進めてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  112. 伏見康治

    ○伏見康治君 長官ありがとうございました。今後もいろいろと長官のもとでいろいろなビッグサイエンスのプロジェクトが打ち出されていくと思いますが、その際に、この原子力船の初期のころのいろいろな事態を想起されまして、そこで起こった過ちを再び繰り返さないように戒心していただきたいと思うわけでございます。  その二番目ぐらいのところに出てまいります問題の中に、事業団ができまして原子力船を発注なさるという段階になりましたときに、事業団側は一括して発注したいという希望を持っておられたのでありますが、それがそういう受注者があらわれませんでして、ついに船と原子炉と別々の会社に発注されて、いわば分割発注という形になりました。この「むつ」のいろいろな失敗については、御承知のように俗称大山委員会というのがございまして、そこでいろいろな検討がなされておりますが、その大山委員会の報告書の中にも、この分割発注になったということがいろいろなトラブルの起こりであるように記されております。  この一括発注の状態と分割発注の状態とでは、事業団に対して極めて大きな変化を要求するものであったと思うわけです。一括発注の場合には、そのできる原子力船の技術的全責任というものはその受注者の方に移ってしまうわけでございます。ところが分割的に発注なさいますと、その部分部分については受注者が責任をとられるでしょうけれども、全体としての責任というものは事業団それ自身がとらなければならないことになるわけでありますから、当然その分割発注しなければならなくなったという段階において、事業団の方が自分の陣営をすっかりつくり直さなければならなかったはずだと思うわけです。つまり、それまでは余りそれほど技術的に十分な陣営を持たなくても、要するにメーカー側が十分力がありさえすればそれに頼むということができたでありましょうけれども、自分で話をまとめるということになりますというと、事業団自身が技術的能力を高く持っていなくちゃならないはずでございまして、そういう意味で、発注形式が変わった段階事業団というものは体質改善をしなくちゃならなかったと思うんですが、それが十分に果たされなかったというのが大きな欠陥であろうと思います。  そしてその二つの受注者の間での連絡が不十分であるために、これは大山委員会言葉の中にあったと思うんですが、要するに二つのものの継ぎ目の間でいろんな故障が起こるものでございます。放射線漏れといったようなものはまさに原子炉と船との間の継ぎ目のところに起こった技術的なことであったと思うんですが、その当時のことを今の事業団方々はあるいは御存じかどうかよくわかりませんが、その辺のところはどういうふうに見ておられるか、伺いたいと思います。
  113. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 最初に私の方から申し上げたいと思いますが、大山委員会にお触れになったわけでございますが、この大山委員会の提言というものは、「むつ」の放射線漏れを契機として重要な役割を果たしていただいたわけでございます。これは単に「むつ」に限らず日本原子力政策をどのように進めるべきかというような非常に広範な、そして深く広く示唆に富んだ貴重な御意見であったと思います。したがいまして、私どもはこの提言に基づきましていろいろな対策を講じたわけでございますが、そういう中に今の分割発注といったようなこともございますが、これはまあ事業団の方でまたお答えをいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、この大山委員会結論というものは非常に貴重なものであって、したがって、私どもは十分にこれを反省の材料として生かしていかなければいけないということで、まず行政庁の立場においては安全規制の担当体制が一貫性を欠いていたということ、あるいは人事面においては事業団の技術開発体制というものが必ずしも十分ではなかったということ、そういうようなことから今のような問題も起こったと思うわけでございます。さらに、地元との関係においても必ずしも十分な意思の疎通がなかったと、こういうような点を指摘され、私どもも十分に反省をいたしたわけでございます。  そういう中で私どもは、まず安全体制について、従来は原子力委員会が担当しておったわけでございますが、これを新たに安全委員会というものを別につくった、そしてそこにチェック・アンド・バランスの体制をつくった、これは画期的なことであったと思います。そしてそれが今日十分に作用をいたしているのではないかと思うのでございます。また、技術系の職員の増員、そして質の向上ということにも努力をいたしてまいりました。また、責任体制についても十分にこれに応ずるような体制をつくって今日に至っているところでございます。また、地元関係におきましては、もうたびたび申し上げておりますように、港の選定その他については十分な理解を求めつつただいま現実に進めているということでございます。今後とも、この大山委員会の提言というものは大変大事な指針でございますので、これを生かしてまいりたいと考えておるところでございます。
  114. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) ただいま先生からお話がございました大山委員会の指摘事項でございますけれども、これにつきましては事業団といたしましても大いに反省いたしまして、今回の遮へい改修工事につきましては万全の態勢で対応したつもりでございます。しかしながら、今回の遮へい工事に当たりましては、建造当時既に分割発注になっておりましたので、それの技術的経験を踏まえて工事を実施するという必要がございますし、また一方では部分的な改修ということもございまして、既存部分との取り合いという点もございますので、結果的には分割発注ということで実施せざるを得なかったわけでございます。  そこで、技術的責任の明確化という観点から、事業団といたしましては、原因究明はもとより、JRR4でのモックアップ実験あるいは解析コードの整備等、すべて事業団が主体となって実施してまいりまして、その結果を踏まえまして基本設計をまとめたわけでございます。したがいまして、事業団としては基本設計にかかわる遮へい性能につきましては事業団が全面的に責任をとる、メーカーはその基本設計に基づいた工事を実施するということで責任の明確化を図ったということでございます。
  115. 伏見康治

    ○伏見康治君 長官、どうもありがとうございました。  大山委員会というものは、実際あの種の政府審議会としてつくられたものとしては珍しく政府のいろいろな体制に対して批判的なことを遠慮なく言っておられて、そういう意味で、まさに長官の言われるとおりに、非常に尊重すべき貴重な作品であったと思うんですが、一方、いわば体制的欠陥といったようなものを摘出するのに急な余りに、かえって「むつ」のやり損ないました技術的な面の追求というものが必ずしも十分でなかったように私には思えるわけです。  いわゆる放射線漏れということは、これは現象としては極めてささいなことでございまして、どうして新聞、ジャーナリズムがあれだけ大騒ぎして一大失策とはやし立てなければならないかということが私たち科学技術者にとっては理解しがたいところでございますけれども、しかしとにかく予想しないような放射線漏れを起こしてしまったというのは、これは技術的な一つの失策であるということには疑いがないわけです。それで、その失策がどうして起こったかということは技術的にやはり究明すべき問題であると私は考えるわけですが、その究明が必ずしも大山委員会の報告では私は十分でなかったように思うわけです。一体、放射線漏れがどういうふうに起こったかということについての何か技術的な御説明といったようなものがあるわけでございましょうか、事業団の方。
  116. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 放射線漏れの実態について、やや時間をかけて御説明したいと思います。  御案内のとおり、原子力船むつ」は、昭和四十九年八月二十六日に大湊を出航いたしまして、二十八日に臨界に達しております。二十八日から九月一日まではゼロ出力の臨界試験を実施しております。ここは炉心の設計値との照合ということがねらいでございまして、核計装のオーバーラップ試験であるとかあるいは停止余裕の測定であるとか減速材の温度、圧力計数の測定といったようなことが行われております。  実は、九月二日以降には低出力におきます各部の放射線計測ということが試験計画では予定されておりましたので、九月一日、その前日でございますけれども、九月一日には計装の校正が行われております。原子炉出力〇・七%におきます核計装の校正試験を終了いたしまして、次いで一・四%におきます核計装の校正試験を行うために同日五時から原子炉出力を〇・七%から徐々に引き上げていく途中で、十七分後にアラームが鳴ったというのが現象でございます。  その後、出力を保持しながらモニターがまず正常であったかどうかというのをチェックし、これは正常であることがわかりました。その後、出力を〇・六%に保持したままで船内各部の放射線測定を実施いたしまして、原子炉室上部方向へのレベルが高いということが判明したわけでございます。翌日以降は〇・六%の出力のままで二次遮へいの上部の放射線測定を実施した結果、二次遮へいから外部へのガンマ線の漏えいというのは、二次遮へいの間隙から来るものではなくて、中性子の捕獲ガンマ線によるものであるという可能性が強く指摘されたわけでございます。  その後、科学技術庁、運輸省合同の「むつ放射線しゃへい」技術検討委員会が設置されまして、その指示に基づきまして事業団は九月八日、九日、十日と三日間、原因調査のための運転を行っております。その結果、放射線漏れは主として圧力容器と一次遮へいの間隙を伝わって漏れてくる高速中性子によるストリーミングに原因するということが判明したということでございます。
  117. 伏見康治

    ○伏見康治君 大体の経過を伺いましたのですが、途中極めて慎重に出力を上げながらいろいろな部分での放射線の測定をなさって、そして原子炉上方の方に予期以上の放射線が出ているといったようなことを途中で認めておられながら、その検討をその段階で十分なされなかったというおそれがあるように思うのでございますが、その点はどうでございましょうか。
  118. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 当然のことながら各部にモニターがございますので、放射線レベルというのは常時データとしてウォッチされていたことは間違いございません。「むつ」は格納容器の中、横方向でございますけれども、中性子線モニターが一個設置されております。それの測定値はかなり高いことを運転員は認識しておりましたけれども、それが設計値に比べてどの程度高いと判断すべきものなのかどうか、あるいはこの程度一次遮へいからは中性子線が出るものなのであるかどうかという点については必ずしも確たる技術的バックグラウンドがなかったわけでございます。それで、格納容器の中の中性子線レベルの許容値から見ますと、その時点ではまだかなり余裕があったということでございます。したがいまして、一・四%まで出力を上げて次の翌日の原子炉内各部の放射線計測が可能であると判断したと思われます。しかしながら、その前に上甲板にございますガンマ線エリアモニターが設定値を超えだというのが実際でございます。
  119. 伏見康治

    ○伏見康治君 お話を承りますと、まあそういうことであったろうと想像ができるわけですが、今からの結果論にもちろんなりますけれども、その当時の測定やなんかに従事された方が放射線の遮へいについての十分な基礎知識を持っておられなかったというような感じもするわけでございますが、そもそも原子力の動力としての利用は船で始まったわけでございまして、ノーチラスでその原子力の動力としての利用が始まったと思うんですが、最近私は「ザ・ニュークリア・ネイビー」というアメリカの原子力潜水艦の発達史みたいなものを読み返しているんですが、リッコーバーがその原子力潜水艦という構想を持ってからいろんなことを研究し、それまでの原子力研究所の人々と会いながらどうしてそれを動力化することができるかということを探求している間に、一番初めに大きくぶつかったのがその遮へいの問題なんですね。  これは陸上で原子炉を動かして発電するという原子力発電所の場合には遮へいが幾ら重くなっても余り大した問題にはならないわけですが、船に載せるとなればいかにして遮へいを少しでも少なくするかということが技術的に非常に大きな課題になる。つまり、それが船に原子炉を載せる場合の一番大きないわば技術的な課題であったわけでありますから、その原子力船をおつくりになる方々にとっては、遮へいということが技術的な課題としてはやはり中核の課題であったと思うわけですね。  実際、その以前の準備段階仕事を考えてみますというと、例えばJRR4というような東海村にありますスイミングプール型の原子炉をつくって遮へいの実験、遮へいのモックアップ実験ですか、何かそういうことをなすっていたわけなんですが、そういう段階、そういうことを積み重ねられておりながら、なおかつ先ほどのようにいささか知識不足といったような感じのようなことになったのは一体どういうわけなんでしょうか。野澤さん、いかがでしょうか。
  120. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 先生御指摘のとおり、基本設計が完結する前にJRR4によります遮へいのモックアップ実験を行っております。昭和四十年の七月から四十二年の六月にかけて実施をしております。  このJRR4によります遮へいモックアップ実験の目的は三点ございます。まず一つは遮へい構造材の配置の確認、それから設計計算法の妥当性の確認、それから詳細設計のための基礎資料の取得、この三点が目的になっております。  内容といたしましては、一次遮へいと二次遮へいに分かれておりまして、一次遮へいにつきましては、円筒、平板の比較、それから平板多重層の透過試験、それから炉心斜め方向の放射線分布、制御棒の遮へい効果、それから中性子のコンクリート透過、この五点が一次遮へいについてのポイントでございます。それから二次遮へいにつきましては、ダクトの貫通部のガンマ線ストリーミング、それからストリット部と申します接合部でございますけれども、遮へい接合部のガンマ線の測定、これがJRR4におきますモックアップ実験の内容でございます。  それで、一次遮へいにつきまして多少ストリーミングに関係のあると思われますことは、三番目に述べました炉心の斜め上方向の放射線分布というのがございます。これは、垂直方向は十分水がございますし、水平方向にも十分な水がございます。ただ、斜め方向には一次冷却水が貫通している部分がございますので、その配管と遮へいの貫通部分の間隙にどういう放射線分布が起こり得るかというのを測定したわけでございますけれども、当時といたしましては測定としてはサーマルだけに注目しておりまして、ファストニュートロンについては必ずしも十分な配慮がなされていなかったということは、後になって言えば言えることかと思います。したがいまして、当時の基本設計をまとめるに当たってのモックアップ実験としては、何と申しますか、当時の技術レベルとしては十分な実験が行われたというふうに言えるのではないかと思っております。
  121. 伏見康治

    ○伏見康治君 できる限りのことをなすったという印象は受けるわけでございますが、そもそもJRR4というのは水泳プール型でございますので水がいっぱいあるわけでございます。したがって、そこでできる実験というのは専ら遅い中性子になってしまうということは初めから明らかであったと思うんですが、そういう意味で、速い中性子のことが初めから脱落していたというのが、皆さんの頭から抜けてしまっていたというのがこの真相ではないかという感じがいたします。  自分の話をするのも変ですけれども、大阪大学の菊池研究室で中性子に関する実験を昔やったことのある一科学者といたしましては、中性子は初めは速いものであったわけでして、それをパラフィンや水などを使ってようやく遅い中性子をつくるということになりましたので、遅い中性子が非常に大きな効果をあらわすものですから、遅い中性子の方に皆さんの関心がとらわれてしまったということは十分あり得ることだと思うのですけれども、同時に、そもそも中性子はできたときには速い中性子である、それをちゃんとコントロールしなければいけないんだというようなことが皆さんの頭の中にもしなかったとすれば、それは極めて残念なことであったというほかはないんでございます。  もう一つ、いろいろなチェックの段階が船をおつくりになるまでにあったと思うんです。うわさによりますと、原子炉をおつくりになった会社の方は、いわば技術的な相談役であるウエスチングハウスまで設計を持っていってそれに対して勧告をもらったと。その勧告の中には遮へいが不十分であるといったようなことが指摘してあったといううわさを伺うのでございますが、それは本当でございましょうか。
  122. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 「むつ」の基本設計につきまして、三菱原子力工業を通じてウエスチングハウス社のチェック・アンド・レビューを二回受けておるわけでございます。今の先生の御指摘のように不十分であったという、そういうレコメンデーションはございませんでして、遮へい材料としてリモナイトコンクリートの方がいいのではないかといったような表現のところが一部ございます。  リモナイトコンクリートと申しますのは、結晶水をたくさん持った褐鉄鉱のことを言うようでございますけれども、結果的にはその結晶水をたくさん持ったものを骨材として使った方がベターであるという背景には、ファストニュートロンに対する考慮というものをもっと重く考えるという意味であったというのが後でわかったことでございまして、当時はそこまでの、何と言いますか眼光紙背に徹するようなところまでは行っておりませんで、鉄でもよかったかもしれないし、単なる重コンクリートでもよかったかもしれないというような判断に終わったのではないかというふうに考えられます。
  123. 伏見康治

    ○伏見康治君 過ぎ去ったことですからどうでもいいようなことなんですが、そのウエスチングハウスの勧告といったようなものは我々は見ることができるんでしょうか、できないんでしょうか。
  124. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 事業団としては直接ウエスチングハウスにチェック・アンド・レビューを頼むということも考えておったようでございますけれども、あくまでもライセンサーとライセンシーとの関係ということで、三菱原子力を通じてのチェック・アンド・レビューの契約という格好に終わっておりまして、その当時の契約の中では外部への発表は一応禁じられた格好で契約が結ばれておりますので、今この席で即座に公表というこざは申しかねるわけでございます。
  125. 伏見康治

    ○伏見康治君 冒頭に申し上げましたように、日本原子力は三つの原則で支えられてきたと思っておりますので、できるならばいろいろな技術的なことは少なくとも公表の方へ持っていっていただきたいと思うんです。特にこのようなお話はもう十年以上も前のお話でございまして、いろんな意味で秘密にしなければならないという要素は取り去られていると思うんですね。それで、できればそういうものを拝見することによって私たちも「むつ」の失敗に対する経験を十分吟味させていただいて、それと同じようなことを繰り返さないようにするためにも、何かの機会にそれが我々の目に入るような仕組みを考えていただきたいと思うんですが、これはお願いでございます。  放射線漏れのお話はその程度にいたしまして、放射線漏れ以外の技術的な問題についていろいろ伺っていきたいと思うのでございますが、船に原子炉を載せた場合の特殊性といったようなものの中に、船がいろいろ動揺したり振動したりする、そういうことに対して原子炉がどういう影響を受けるかといったようなことを調べなくちゃならないんだというようなことが、例えば今の「むつ」を存続していろいろな実験をやりたいといったようなときの主要な研究テーマになっていると思うのでございますが、しかしいやしくも原子力船を設計なさった方々は、事前にそういう原子炉に対する振動とか動揺とかいうものの影響というものは、理論的にもあるいは何か部分的な試験的なこととかいろんなことをやっておられるはずだと思うのでございます。そういう意味での準備的な研究というものはどの程度行われていたのでございましょうか。
  126. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 「むつ」の原子炉の設計に当たりましては、御指摘のとおり振動、動揺というものが非常に大きな眼目になるわけでございます。したがいまして、「むつ」につきましても基本設計をまとめるに当たりまして、いろいろな実験及び解析を実施しております。  今、先生の御指摘の振動及び動揺ということに限定いたしますと、まず昭和四十二年に船所との共同研究で、船はそもそも波浪中でどういう振動なり動揺なりを受けるのかという実際の船での測定を行っております。当然それに並行して水槽実験も行っているわけでございます。そのデータに基づきまして、主として当時行いましたのは計測器関係でございまして、エリアモニターであるとか比例計数管であるとか、そういったような主として放射線監視あるいは運転に必要な制御系の機器を実際の船に載せて、その系統がどの程度影響を受けるのか受けないのか、性能にどういう影響を及ぼすのかどうかといったようなことを実際の船に載せて基本的なデータをとっております。  それからもう一つは、舶用炉の動揺、振動に関する基礎研究ということで、原子炉の機械的部分、配管その他の機器類の耐振動性あるいは炉心の中の流動の模様といったようなものを、これは船舶技術研究所が独自で実施したものが、昭和三十三年から四十三年にかけて実施されております。あと衝突がどうとか原子力船に及ぼす外力の影響がどうとかという、振動、動揺以外にも何点かの実験が行われているわけでございます。
  127. 伏見康治

    ○伏見康治君 今あるいはおっしゃったのかもしれないし、聞き漏らしたのかもしれないんですが、例えば燃料棒から冷却水に熱が伝わっていく、その熱伝達の問題が船の動揺によってどう変わるかといったようなことも恐らく準備研究なすっただろうと思うんですが、そうだったんですか。
  128. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 先ほど申しました流動試験は流動抵抗が主体になっておりまして、今先生のおっしゃいました伝熱という面に注目しての動揺の影響というのはちょっと今のところ見当たっておりません。
  129. 伏見康治

    ○伏見康治君 「むつ廃船論に対する「むつ存続論の一つの大きな支柱というのは、原子力船に載せる炉というのは、やはり船の特徴である振動とか動揺とかいうものを受けたときにどういう影響があるかということを調べなければその目的は達せられないということが非常に大きなファクターになっていると思うんですね。ですが、それが重要であればあるほどそれを事前にちゃんと研究しておくということもまた重要であったと思いますし、それから部分的にはそれほど大げさなことをしなくてもできるはずであるという感じを受けるわけです。  例えば、今野澤さんの説明された計器類がちゃんと働くかどうかといったようなことは、実際の船に載せて何かテストなすったように承ったのですが、例えば冷却水が動揺によってどういう動作の変化をするかといったようなことならば、電熱か何かで熱した燃料棒のそばに水を流すという、それほど大げさでない装置を普通の船に載せることで十分知識が得られるのじゃないかと思うんですが、「むつ存続論の支えになっているような問題、技術的問題を解くためというのが、実はそういうことでみんな済んでしまうのではないかという印象を私は受けるんですが、それはどういうふうに考えておられますか。
  130. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 先ほどの設計前の実験内容についてちょっと訂正さしていただきたいと思います。  昭和三十三年から四十三年にかけまして舶用炉の動揺、振動に関する研究というテーマで運輸省の船舶技術研究所で実施しました研究の中には、今先生のお話で出ておりますように、熱をモックアップいたしまして、ヒービングと申しますか、上下運動による加速度の変化に対する伝熱試験の変化というのを実験していることを申し添えたいと思います。  今、先生の言われました、部分的に押さえておくべきことは徹底的に部分的に陸上でもあるいは船上でもやっておくべきだというのは、おっしゃるとおりだと思います。しかし、それはそれなりの限界があるわけでございますので、やはり総合的なシステムの性能あるいは健全性といったようなものはやはり全体を組み込んだ上での動揺なり振動試験というものが必要になると考えております。
  131. 伏見康治

    ○伏見康治君 コンポーネントのそれぞれの健全性といったようなものをテストするということと、それからシステムとして考えてそれが全体としてうまく働くかどうかということとはもちろん違った問題でございますが、しかしそのシステムとして働くというときには全体が要するに決まっていなければ話にならないのですが、事業団の先ほど社会党の方の御質問に対して言われたところを拝聴していますというと、事業団の将来計画の中には、これはまだ国でオーソライズされていないのだろうとは思いますけれども、途中で例えば燃料棒を交換なさるといったようなことが含まれているわけですが、燃料棒が丸い棒のものが何か平べったくなるといったような変化が起こるといたしますと、そうすると非常に大きな変化でございまして、丸い棒でやったその経験が平べったくなったものについてそのまま通用するとはとても私には考えられないわけで、それを移して考えるということのためにはいろいろな計算的なシミュレーション的な操作が必要なのだろうと思うのですが、そういうことであるならばもう初めからシミュレーションで十分なのではなかろうかという感じもするわけなんですが、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  132. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 事業団はこの数年来セカンドコアをどうするかということについての予備的な調査を実施してまいりました。その中には今先生がおっしゃったような平板状の燃料というのもスコープの中に入ってはおりますけれども、現時点でそれをどうのこうのという、それを具体化する段階にまだ至っておりません。したがいまして、単なる既存のデータの勉強という段階にとどまっておりますので、お話がもうちょっと具体的になりました段階で、今先生のおっしゃったようなシミュレーションなりあるいは部分的な照射試験なりあるいは流動試験なりというようなものが当然計画されるものというふうに考えております。
  133. 伏見康治

    ○伏見康治君 存続論、廃船論の議論の役に立つかと思うのでまたもう少し伺いたいのですが、よく言われるように、原子力船の先輩格としてオット・ハーンとかサバンナとか引用されるのですが、そのオット・ハーンとかサバンナでのいろいろな経験、技術的な経験といったようなものは相当程度公表されていると私は思うのですが、そういうものでは十分な知識が得られないとお考えになるわけでしょうか。その辺のところをひとつ。
  134. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) オット・ハーンにつきましては、かなり詳細なデータが公表されております。サバンナにつきましてはまとまった資料というのはほとんど公開されておりません。どちらかといいますと詳細なデータの公表がありますオット・ハーンについて申し上げますと、出入港のときの出力変動はどの程度であったか、あるいはそれが一次系に対してどういう影響を与えたかといったようなことは、詳細なデータとはまいりませんけれども、一応グラフ的なものについては既に公表されておりますので、我々の勉強のためにはかなり従来役に立っていたというふうに考えております。
  135. 伏見康治

    ○伏見康治君 いろいろ細かい点をありがとうございました。ただ、私の印象を申し上げれば、そういう他の方法で得られたいろいろな知識を集大成すると、原子力船を必ずしも動かしてみせなくってももう半ば話が済んでいるのではなかろうかという印象を受けたということだけを申し上げたいと思います。  次に、少し話題が変わりますけれども、遮へいが足りないということで長崎に、佐世保に持っていってそして遮へいについての改修工事をなすって、そのときあわせて安全性総点検をなすっていろいろなところに手をお入れになったというふうに伺っているわけですが、その概略と申しますか、総点検でどういうことをなすったかということのごく概略でよろしいんですが、それをまず教えていただきたいと思います。
  136. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 安全性総点検のポイントは三つございます。  一つは新しい設計思想を取り入れて検討を加えること、それから二番目は原子力発電所の運転経験を考慮してチェックを行うこと、それから既存の機器が健全であるかどうかというのを点検すること、以上三点が安全性総点検のポイントでございます。  一番最後に申しました昨存の機器の健全性は、これは維持管理でもって絶えず更新しておりますので、ふぐあいな点を順次直していったという程度のことでございますが、設計面についてのチェックあるいは発電所の運転経験に基づく総点検というのが補修工事、それに従いまして必要な補修工事を実施したということでございます。  項目で大くくりにに申し上げますと、一番大きな点は非常用炉心冷却設備の改良、それから安全保護系の改良、モニター設備の改良、それから格納容器バウンダリーの改良、それから工学的安全施設作動設備の改良という、以上五点に分けることができるかと思います。  ECCS、非常用炉心冷却設備の改良は、これはTMIの事故からの点検でございまして、言うなれば大破断もさることながら中小破断に対する配慮を十分にするという、そういう点で新たに高圧系のポンプを新規に増設したということでございます。  それから安全保護系の改良は、多重化がされていなかったところを多重化にするとか、あるいは運転中でも性能の確認ができるように改良するといったようなものでございます。  それからモニターにつきましては、当然のことながら時間がたってまいりますと、いろいろと各種分析がオンラインでできるような装置というものが開発されておりますので、トリチウムであるとか沃素であるとかといったようなものをオンラインで測定するように改良をしたということ。  それから格納容器バウンダリーの改良につきましては、これは格納容器を貫通する配管がたくさんございますけれども、これの前と後ろに当然隔離弁が設置されますけれども、これの事故時の対応として自動閉鎖機能というものの改善を図ったということ。  それから五番目の工学的安全施設作動設備の改良は、これもTMIの反省でございますけれども、新しく格納容器の圧力が高くなった場合、あるいは炉内の圧力が異常に低くなった場合のスクラムというものを加えたということ。  それからさらに発電所の運転経験から申しますと、蒸気発生器の細管のリークというのが経験されておりますので、それに対応するための水質管理の方法を改善したとか、あるいは新しい火災防護に関する指針に基づくアラームの増設、それからサブクール計の設置といったようなことが概略の安全性総点検補修工事の内容でございます。
  137. 伏見康治

    ○伏見康治君 いろいろ詳しく御説明をありがとうございました。  一番大事な点は、「むつ」をおつくりになってから長い年月がたって、その間に陸上の方の発電用の原子炉についてはいろいろな経験が積まれまして、安全性に対する考え方が相当変わったというか、発達したと言うべきか、という変化が起こっていると思うのですね。その間「むつ」の時計は完全にとまっていたのに近い状態なわけですから、今の要するに原子力技術の常識と食い違っているところがたくさん出てきていて、それに照らして安全性総点検をなすったというふうに理解できるわけです。  ただ、私が心配いたしますのは、それはそれで大変結構なことだと思うのですが、大湊の方の地元の方との何かお約束のようなことがあって、原子炉の核心部分にはいわば手が触れておられないのだろうと思うんですね。いわば安全性総点検でいろいろなことを変えられたのは、原子炉の外側の方だけをいろいろ直しておられるだけであって、一番大事な核心部分にはそういう意味の近代化と申しますかが行われていない、そこのところが何か非常に危険なような感じがするのでございます。中でも先ほど水質検査によって水系統の健全性を何か確認するといったようなお話がございましたけれども、恐らく陸上の発電炉の場合にはそういうところまで目で見るというような工夫があって安全性を守るのに役立っていると思うのでございますが、その辺のところを少し説明していただきたいと思います。
  138. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 先ほど水質管理と申し上げましたのは、二次系の水質管理でございまして、陸上の発電所でしばしば見られます蒸気発生器の一次系からのリークに対抗するために水質管理を燐酸ソーダからボラタイル処理に変えたということを申し上げたわけでございます。  一次系の中についての健全性の確認というお話でございますが、いろいろな事情がございまして、圧力容器のふたをあけることが現時点では不可能でございます。現時点では陸上におきますサンプルの水につけた試験での腐食の進行度のチェック及び水質管理によります腐食の防止ということで健全性を保持しているつもりでございますけれども、やはり出力上昇試験を実施する前には燃料のチェックということが必要だと考えておりますので、その時点になったところでふたをあけて燃料の健全性を改めて直接チェックをしたいというふうに考えております。
  139. 伏見康治

    ○伏見康治君 その一番核心部に結局手がつけられないということが非常に頭の痛い話であると思うのでございますが、安全審査の一般論みたいなことになるおそれもございますが、そういう総点検のいろんな補修をなすったりした後で、原子炉としてこれがいいかどうかというのは、もちろん原子力安全委員会その他の安全審査を受けられたんでしょうね。ですが、いわゆる安全審査を受けられたかどうかという、それがどういうことであったかということをまず伺いたいと思いますが、しかし審査という意味ですと、前の放射線漏れを起こしたときにも審査を受けたわけですね。審査を受けたものは安全とは限らないということになりかねないんですが、その辺の安全審査の仕組みというものについて少し高いところから説明していただけないでしょうか。
  140. 辻栄一

    政府委員(辻栄一君) 御指摘のように、昭和四十二年にも安全審査を行っておりますし、それから最近に行いました遮へい改修に関しましても昭和五十四年に安全審査を行っており、さらに昭和五十六年には安全性総点検についての安全審査が行われているわけでございます。昭和五十四年の遮へい改修工事に関する安全審査におきましても、特に問題が中性子のストリーミングというところに問題意識が強く認識されていたわけでございます。  この間において、昭和四十二年以降五十四年の間における遮へい改修、こういった放射線防護に関する知見というものがかなりの程度の進展を見たということが一つ言われると思います。これは国内において当時大山委員会において指摘しておりましたように、遮へいの問題における専門家、我が国全体の技術水準がまだ十分でなかったという反省があったわけでございますが、国際的にもその後、例えば今度の新しい遮へい改修において用いられました遮へい計算コードが、この期間においてアメリカの研究機関によって開発されたTWOTRANという遮へいコードを使いまして、特にこのコードによってこういった中性子の問題がよりよく解明できるというような技術的進歩を背景といたしまして、またその間における我が国のこういった面の専門家の技術進歩というものも背策にいたしまして安全審査を実施したわけでございます。  さらに安全性総点検の問題に関しましては、先ほど先生御指摘がありました陸上発電炉の技術的蓄積の問題を反映させようという観点から、この安全審査におきましては、まあ法令的に適用されるわけではございませんけれども陸上の発電炉に使われております例えば発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針であるとか、あるいは発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針であるとか、軽水型の動力炉の非常用炉心冷却系の性能評価指針、こういったものがこの間においていろいろ改定もされあるいは新たに新設されておるというような背景もございます。  さらにこの間におきまして例のスリーマイルの事故が起こりまして、安全委員会が中心になりましてTMI事故を教訓としました我が国の安全確保対策に反映させるべき事項といったようなものも決めておりますので、こういったもので舶用炉に適用される事項について検討を加えた、こういうようなことが昔の安全審査の際のチェックと最近に行われましたチェックとの違いではないかというふうに私ども認識いたしておりまして、現在の我が国の技術水準におきまして最高の安全審査を行ったというふうに考えている次第でございます。
  141. 伏見康治

    ○伏見康治君 つまり、安全審査の方法も相当近代化されているというふうに伺ったと思いますが、それで、そういういろいろな環境条件が整った上で原子炉を、例えば原子力船の原子炉を働かせようといったような段階になってまいりますと、その準備段階でいろいろなことをなさらなくちゃいけないことになると思うんですが、先ほども野澤さんがちょっと言われていたような点があったと思いますが、それに関連してもう一つ承っておきたいのは、近代化されたものの中にインサービスインスペクションという概念が発電炉の場合にはあると思うんですね。つまり、もう動かし始めてしまった炉、余り簡単には近づけない炉で、しかも故障の起こりそうなところを十分インスペクションができるような仕組みを初めから考えておくというような意味での近代化が行われていると思うんですが、「むつ」の原子炉はそういう考え方の出てくる前にできてしまっているものですから、そのインサービスインスペクションをやろうと思ってもできないのじゃないかという感じを受けるんですが、できるんでしょうか、どうなんでしょうか。
  142. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 今、先生おっしゃいましたように、インサービスインスペクションはまだ実際にアプライ完全にはされておりませんで、これから順次陸上の発電所でもそういう考え方に基づいて当初から設計をしていくという方向になっていることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、「むつ」はもうでき上がっているものでございますので、現行の基準でインサービスインスペクションを行うということは大変困難を伴うわけでございます。しかしながら一部、例えば蒸気発生器の伝熱管の探傷試験をエディーカレントによって実施するというようなことは遠隔操作で行うことを一部行った経験は持っておりますけれども、さらにベッセルの圧力容器の内面についてのインサービスインスペクションになりますと、現状では、相当大がかりな開発試験を実施しませんと現在の「むつ」炉では困難かと思っております。
  143. 伏見康治

    ○伏見康治君 まあいろいろ考えなくちゃならないことがたくさんおありで頭が痛いだろうと思いますが、私が心配いたしますのは、原子炉を今の状態で寝かせておくのはいかにも時間の空費でございますので、その間にできることは少しでもやっておくべきだと思うんですね。つまり、安全性の点検といったようなことはやっておくべきだと思うんです、技術的な観点からは。で、原子炉の中ものぞくということの方がいいのではないかと私は思うんですが、そういう安全性を守る上での技術的な要請に対しても、何か地元との協定のようなことで原子炉のふたがあけられなくてそれもできないという状態だというふうに承っているんですが、そうなんでしょうか、どうなんでしょうか。
  144. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 当然長時間停止したままでございますので、その維持管理につきましては、考えられるあらゆる考慮のもとに万全の維持管理を実施しているつもりでございます。これは保安規定に基づきまして、それぞれの部分について正確に規定したものに従って現在本船では維持管理が実施されております。当然のことながら一次系の水質管理もその最たるものの一つでございます。  ただ、今先生がおっしゃったような炉心の中を直接のぞくということは現状ではできません。例えばファイバースコープを使ってどの程度チェックができるかというようなことも考えられるかと思いますけれども、ファイバースコープを使って中へ挿入するのには限界がございまして、欲しいところを、見たいところを確実に見るというような構造に残念ながら炉内構造物がそうなっておりませんので、それも技術的に不可能でございますので、炉心につきましてはあくまでも二次的なチェックで健全性を十分に保持していきたい。それは先ほど申しましたように水質管理が一つと、それからもう一点は、同じサンプルが燃料装荷以来実験室の中で保管されておりまして、それの状況というのが絶えず観察できるようになっているということ、さらに原子炉の各部からサンプリングをいたしまして、クラッドといいますか、不純物がどの程度フィルターにかかっているかどうかといったようなことまで含めまして、考えられるいろいろな手段で一次系の健全性をチェックしているつもりでございます。
  145. 伏見康治

    ○伏見康治君 皆さんお聞きのように、技術者の方は与えられた条件の中で困難なことを何とかしてやろうという非常に熱心な検討をされていると思うのでございますが、私がお聞きしたのは、実は地元との協定に絡んだ問題でございまして、技術以外の問題を含んでおりますので、中村さんからちょっとその技術的な要求、安全性を守るための技術的な要求というものと地元の要求というものが衝突したときにどうなさるおつもりかということを伺いたい。
  146. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 今、先生から御指摘がございましたように、原子力船むつ」の各部の健全性のチェックにつきましては、現在でも冷態停止状態におきます各部の機器類の動作試験、そういったようなものは随時やっておるわけでございます。ただ問題は、先ほどから説明がありますように、現在大湊に停泊中におきましては冷態停止状態を保つということが地元のお話し合いの結果でございまして、ただ、もう先に「むつ」の研究開発継続するというような方向に方針が決まりまして、さらに関根浜の港の建設状況等が進んでまいりますと、地元方々とまた御相談する機会も出てこようかと思いますが、現段階においては少なくとも冷態停止状態に保たなければならない、そういうことでございまして、原子炉のふたをあけて燃料その他を直接点検するということはできないわけでございます。  それにつきましては、今事業団の方から申し上げましたような種々な方法でその健全性を確認しておるわけでございますが、関根浜の港に移しました後に、実際に出力上昇試験に入る前には当然入念なチェックを行うということでございまして、それまでの間大湊におきまして何もしないのかということにつきましては、状態の進展におきまして、できれば冷態停止状態からさらに進んだ例えば温態停止状態におけるチェックとか、そのぐらいのところまでできるようになればということも考えておりますが、現段階ではこれは地元のとの御相談が必要なことでございますので、今後の「むつ」の取り扱い方等を見きわめ、また関根浜の工事の進展に合わせて検討してまいりたいと考えております。  いずれにいたしましても、出力上昇試験に入る前には関根浜の港におきまして入念なチェックを行った上でステップ・バイ・ステップで先へ進めていくと、こういうことを考えておるわけでございまして、関根浜の港でそういう実験をしていくということにつきましては、その母港として決めていただいた、あるいは漁業補償の段階等々におきましてそういうことを母港として実験をし、さらには廃船に至るまでのことをやらせていただくということは地元にも御説明をしておるわけでございます。
  147. 伏見康治

    ○伏見康治君 今のお話を承りますというと、やはり「むつ」の時計はとまっているんじゃないかという感じを受けるわけです。つまり、普通の科学技術プロジェクトでございますというと、一刻も惜しんで、早く成果を上げたいと思って研究者は非常に時間を惜しんでいるわけですが、それなのに「むつ」に関して完全に寝てしまっているというのは少し異常過ぎるのではないかと私は思います。  大湊地元方々がどういうお考えであるか知りませんけれども、ただ邪魔をすればいいといったようなけしからぬお考えで言っているのではなくて、原子炉に伴う危険を心配していろいろおっしゃっているのだと思うんですね。そうすると、原子炉を動かすのではなくて、原子炉の安全を増すためのいろいろな操作をするんだということであれば、地元の御了解は得られるはずだと私は思うんですが、そういうことにはならないんでしょうか。
  148. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 先生御指摘の件につきましては、放射線漏れ直後のことはこれは異常な状態でございますのでそのときの話は別にいたしまして、新しい母港大湊以外のところに探さなければいけないということで各地の調査もいたしました。それが結局、適切な港というものが見出せないまま日にちがたって、それよりも前にやはり「むつ」の修理を先にすべきじゃないかということで佐世保に回航をしたわけでございますが、その佐世保に回航した際におきましてももちろんいろんな条件がございました。安全性についてはもうるる御説明申し上げ、現地に人まで張りつけていろいろ地元に御説明等もしたわけでございますが、結局いわゆる核封印という形でなければ佐世保の港には受け入れるわけにはいかない、こういうことでございまして、佐世保の港でもそういう状況になり、冷態停止状態ということで修理をしたわけでございますので、いわゆる原子炉のふたをあけない状態で修理をするということになったわけでございます。さらに、制御棒の駆動試験等につきましても難しい問題になったというようなこともございます。  今回、その修理が終わって大湊に回航するにつきましては、これはその前に、修理がまだ終わらない段階でございますが、中川大臣のころに、大湊を再母港化するということでるる御説明もし、御協力もお願いしたわけでございます。結果的には大湊に受け入れることはできない、関根浜に新しい港をつくる間仮に入れることはいいだろう、ただし、その際もやはり原子炉には一切手を触れない、いわゆる冷態停止状態にするというのが条件であるということ、それからあくまでも大湊は仮の場所であって、関根浜の港をつくるから受け入れたのに関根浜の港をいつまでもつくらずに大湊にただ長居をされたんでは困るよという強いお話がございました。実際にも大湊に回航するにつきましては、関根浜の港の漁業補償の問題、土地の問題、そういった問題についていろいろ見きわめをつけてからでなければ大湊にも受け入れないというような地元の事情もございました。安全性その他についてはもうそのたびごとにるる御説明をしてきておるわけでございますが、それが御理解が得られて、その先の原子炉関係の装置を点検するとか動かすとか、そういうことについての御理解というのはなかなか得られないというのが現状でございます。
  149. 伏見康治

    ○伏見康治君 御説明ではございますけれども、なお皆さんのそういう意味での御努力、つまり原子炉の連鎖反応を起こさせるという意味において原子炉を動かすということは、それはその土地の方にとって非常に御迷惑なことであるのかもしれませんので、それをやらないという約束はしても私はいいと思うんですが、原子炉の内部に安全性を高めるために手を入れるというようなことに対してまでいわば素人の方々にその条件をつけていただくというのは、何か間違ったことをしているとしか私には思えないわけでございます。リーズンで物事がわからないというのは非常に困ったことであると思います。  それで、今まで何か動かすような方向での技術的な準備のようなお話をしてしまったんですが、もう一つの可能性としては廃炉にする可能性というのがあるわけなんですが、その炉をやめてしまうという、そういう方の条件としては、その前提として今「むつ」の原子炉がどれだけ汚れているかといったようなことが問題になると思いますが、長い間に「むつ」の周りにいろいろと放射能で汚れたものが、水のようなものがたまっていたりするんですが、その辺の状況、つまり「むつ」の原子炉をめぐっての放射能物質の状態はどんなふうになっているかというのを教えていただきたいと思います。
  150. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 御案内のとおり、直接測定は無理でございますが、解析の結果によりますと、現在「むつ」が炉心にためております放射性物質の全体の量はFPとして一キュリーと評価されております。
  151. 伏見康治

    ○伏見康治君 ほかに燃料のウランとしての放射能もあると思いますが、いずれにしてもごくわずかな放射能だと私は考えるわけですが、今の状態でならば原子炉を廃炉にするということは比較的易しいことなんでしょうか、それでもなおかつ一キュリーのものが入っていると非常に難しいことなんでしょうか。
  152. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 全く技術的に考えますと、全体三千何百本の燃料棒が保有しておりますFPの量が一キュリーでございますので、全く技術的に考えますと、燃料のハンドリングというのはまあ容易なはずでございます。しかしながら、一遍臨界試験を経験しておりますので、取り扱いとして使用済み燃料という取り扱いになる可能性も多分にあるかと思います。したがいまして、これをどう処置するかということは、やはり具体的な方策を決めた上で規制当局の御判断をいただいてからでないと、どの程度容易か困難かというのはにわかには申し上げられないというのが現状でございます。
  153. 伏見康治

    ○伏見康治君 お役人の方に伺いますが、そういう廃炉にするといったような話がもし決定したとすると、規制的にはどういうことをやればいいのですか。
  154. 辻栄一

    政府委員(辻栄一君) 原子炉等規制法関係の法的手続を申し上げますと、もし仮に廃船という場合には、まず廃止届を提出することになっております。廃船にするためには原子炉の廃止届を内閣総理大臣に提出しなければならない、これは規制法の六十五条でございます。原子炉の廃止届をいたしました場合には、原子炉設置者は核燃料物質等を譲り渡し、汚染を除去する等の措置をとらなければならないこととなっております。また、これらの措置に対しましては、内閣総理大臣が災害防止のための必要な措置をとることを命ずることができるというふうな規定がございます。  さらに、原子炉を解体するということになった場合には、これは原子炉の解体届を提出するということになっておりまして、これは規制法の三十八条に規定がございます。届け出がありました場合には、総理大臣は災害防止のための必要な措置を講ずることを命ずることができるということになっております。  以上が法令上の手続でございます。  しかしながら、廃炉につきましての一般的な技術基準というものは具体的にはまだ決めていないというのが実態でございまして、現在日本原子力研究所のJPDRを使いまして廃炉についての研究をやっておるところでございまして、こういった研究の成果もベースにいたしまして、今後具体的な事例が出てまいりました場合に安全委員会におきまして十分検討していただきまして慎重に対応してまいる、かように考えているところでございます。
  155. 伏見康治

    ○伏見康治君 規制上からいってそれほど非常に難しい、困難な問題ではないというふうに私は印象として受けましたが、それはその辺で技術的な問題はおしまいにいたしまして、本論であります今度出ております改正法案そのものについて御質問申し上げたいと思います。  いろいろあるんですが、まず十四条、十六条あたりに、役員の欠格条項あるいは兼職禁止といったようなことについて触れてあるわけですが、それの意味を説明していただけますか。
  156. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 「役員の欠格条項」、十四条でございますが、これを今回改正しました趣旨でございますが、一つは事業団の、従来から特殊法人業務の遂行につきまして幅広く人材を活用していくということが必要でございますし、一方におきましてその事業団事業活動と密接に利害を有すようなところの人がその役員になるというのもこれもまた問題があるということでございますので、従来原子力研究所法ではそれらを排除しておいたわけでございますが、原研法は昭和三十一年の法律でございますので、その後こういったものの取り扱いにつきまして、もっと広く人材を活用していくという観点から見直されるべきだということで、その後の立法においてはこれと違った形で規定されておるわけでございます。  そういう意味で、今回の改正におきましては、例えば政府及び地方公共団体の職員については、職務に専念する義務を有しているので、特殊法人を含め一般の事業活動にも従事するということは禁止するということはございますが、国会及び地方議会の議員、政党の役員につきましては、一律に禁止すべき明確な理由がないということで、その後の立法におきましてもこういう方々は役員欠格の対象とするということでないように法律でなっておりますので、今回の法律改正におきましてもそのように最近の立法例に倣って直しておるわけでございます。  それから、十六条が「役員の兼職禁止」の条項でございまして、これにつきましても最近の立法例に倣いまして、一律に禁止するのではなくて、個別にケース・バイ・ケースで検討し、その役員が当該法人業務と営利目的で密接に関係がないというような方々まで一律に禁止するのではなくて、個別に審査をし承認をしていくということで運用していくことが適切である、そういうことで広く人材を活用していくということがいいのではないか、こういうことで最近の立法例に倣いまして兼職禁止条項についても修正を行った次第でございます。
  157. 伏見康治

    ○伏見康治君 実は余りよくわからないんですが……。  次に、全体を通じて総理大臣というのと運輸大臣の名前が出てまいりまして、その両大臣の共管というような形になっているかと思うんですが、その辺の関係もちょっと説明していただきたいと思うんです。
  158. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 原子力船研究開発につきましては、従来から原子力という面からのアプローチといたしましては科学技術庁が所掌し、船舶という観点からは運輸省が所掌し、船舶研究所等においても原子力船関係研究開発もしてきておるわけでございますので、そこで原子力船研究開発につきましては、従来から科学技術庁と運輸省で共同していろいろなプロジェクトの管理もしてきておるところでございます。原子力船研究開発事業団につきましても、そういうことで運輸省と科学技術庁とが、科学技術庁の場合総理大臣でございますが、共同所管大臣としてこれを監督してまいったわけでございます。  今回、原子力船研究開発事業団原子力研究所統合するに際しましては、その原子力船研究開発業務というものが原子力研究所の方に持ち込まれるということでございますので、その部分につきまして運輸省と内閣総理大臣とで共同で管理をするということにいたした次第でございます。
  159. 伏見康治

    ○伏見康治君 ここだけではございませんけれども、一般的に言って、今度の原子力研究所原子力船事業団を合併するのは、いかにも機械的に切ってつないだという感じを受けるわけですね。せっかく一つのインスティチュートに統合なさるんでしたら、昔の成り行きみたいなことに構わずに、新しい法律として統一されたものであるべきだと私は思うんですが、その原子力の船のところだけ何かいかにも切ってはいだようにそこだけ色が変わっているというのは、一つのインスティチュートとしては随分やりにくいお話だろうと思うんですね。船があるから、運輸大臣にお世話になるからというだけでございますれば、ほかに船を持っている、例えば東大の海洋研究所なんて船を持っていると思うんですが、あれは別に運輸大臣が顔を出しているわけじゃないと思うんですがね。それはどういうわけですか。
  160. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 別に船を持っているからということだけではございませんで、原子力船研究開発行政というものが運輸省のいわば将来のこういう実用になったとき等における海運船舶行政、そういったものの観点からそれを必要と認めて研究開発を進める、あるいは運輸行政の将来を見越してこういった研究開発にどう取り組んでいくかという問題でもございますので、そういう意味で共同で管理をさせていただいておるということでございます。
  161. 神津信男

    政府委員(神津信男君) ただいま原子力局長からも御説明いたしましたように、原子力船研究開発につきましては、従来からも「むつ」の乗組員を中心といたしました出向者の派遣であるとか、あるいは民間資金の拠出の指導、「むつ」建造、改修に関する造船所の指導及び舶用原子炉研究開発に当たりましての海運造船業界からの知見、技術、経験の提供等の協力を行っておるわけでございまして、今後ともこういう共同関係を続けることが効率的に原子力船研究開発を進める上で非常に望ましいことであると考えておりまして、こういう形をとっておるわけでございます。
  162. 伏見康治

    ○伏見康治君 押し問答になりますのでその辺で次に移りますが、原子力委員会原子力安全委員会が登場するところなんですが、第二十四条。第二項では原子力安全委員会が入っていないんですね。その前には入っていたと思うんですが、それはどういうわけですか。
  163. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 先生御指摘の件は、原子力開発及び利用に関する基本計画と、原子力船開発のために必要な研究に関する基本計画にかかわるものかと存じますが、第一に、まず二十四条第一項に書いてございます原子力開発及び利用に関する基本計画は、我が国の原子力開発利用政策の全体について定めるという形で従来から運用されておりまして、その全体的な原子力開発利用政策の中で原子力研究所というのが基礎研究部門を担うところでございますので、全体を踏まえて原研としての研究が進められるべきである、そういう観点でつくられております。このためその基本計画の中には、単に原子力開発利用を促進するというそういう面からだけではなくて、安全を規制するという側面につきましても、原子力船の安全規制のための安全研究も含めまして基本計画の中に織り込んでおるわけでございます。そういうことでこれらの安全規制にかかわる事項が入っておりますので、安全委員会にもきちっと御意見をちょうだいをする、そういうことに相なっておるわけでございます。  一方、原子力船開発のために必要な研究に関する基本計画の方の定め方といたしましては、原子力船研究開発推進のための具体的な計画でございまして、当然その研究開発をしていくことに付随して出てまいります——安全と開発というのは裏腹という点からでは当然付随して安全の問題というのは入ってくる、安全研究は入ってくるわけでございますが、積極的にいわゆる国の安全規制という観点からどうあるべきかということでの研究その他、そういったことについての事項は含まないという形で従来から運用してきております。今回の改正におきましても、そういう意味で今後の基本計画を決める、そういうことであれば安全委員会が直接関与される部分がないのではないかということで、この点については外しておるわけでございます。  それで、日常の安全研究を推進する上で例えば特別な施設が必要になる、その施設が安全的に大丈夫かどうか、そういうことにつきましては当然のことながら原子炉等規制法によりましてチェックされるわけでございますので、その過程におきまして安全委員会が関与してくるということはこれは当然のことでございます。ただ、原子力船研究開発のための基本計画の中では、安全委員会が直接関与する部分がないということでこういう差が出ておるわけでございます。
  164. 伏見康治

    ○伏見康治君 今の件は了解いたしましたが、同じ第二十四条の第一項と第二項で、片方では「議決」という言葉があり、片方では「尊重」ということだけになっているんですが、その違いは何によるのですか。
  165. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) この点もちょっと確かにおわかりにくい点かと思うわけでございますが、実は一項の方が「議決を経て」で、二項の方が「尊重」するというのは、原子力委員会にしろ原子力安全委員会にしろ、これは内閣総理大臣の諮問機関であるわけでございまして、運輸大臣の諮問機関にはなっていないという組織上の違いがございます。  したがって、その原子力委員会なり安全委員会の御意見というのを直接運輸大臣が承るという形になってない、あるいは運輸大臣が直接諮問されるという組織ではないわけでございますので、そういった組織法上の違いから表現を変えておるということでございまして、実質的にはいずれの場合にも当然議決を経てということであればその御意見を尊重するという形で内閣総理大臣は義務づけられておりますし、原子力の基本計画につきまして運輸大臣もその意見を尊重するということでございまして、行政府としてこの両委員会の御意見を尊重するという意味においては何らの変わりがないというぐあいに我々理解しておるわけでございます。
  166. 伏見康治

    ○伏見康治君 やはりそこにも二つの要するにインスティチュートをただ切ってつないだという印象が濃厚なんですけれども、これで全体として一つのインテグリティーのあるものになるのだろうかという懸念を感ずるんです。  次に、第二十二条ですが、そこで言う原子力船というのは、具体的な「むつ」というものだけが対象になっているのでしょうか。例えば将来話が発展して、今の「むつ」以外に新しい原子力船をつくるというふうなことにもしなったというときには、それは入っているのか入っていないのか。それからついでに、その「むつ」という言葉の中には、例えば今入っている原子炉を取りかえて別の原子炉、あるいは炉心だけでもいいですが、炉心だけでも取りかえるというようなことがあったときには、それは「むつ」ではなくてほかの原子力船になるのかどうか、その辺について御説明いただきたいと思います。
  167. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 原子力船に関します業務の範囲の規定につきましては、二十二条の第一項の第二号で、「原子力に関する応用の研究を行うこと。」ということがございまして、この中で、「原子力船開発のために必要な研究を行うことを含む。」ということで、この中に原子力船研究開発が入っているということと、それから第四号で、旧日本原子力船研究開発事業団法の規定により建造された原子力船に関する業務を行うことということとで、主としてこの二つがあるわけでございますが、四号の方はまさにこれは、端的なわかりやすい言葉で言えば「むつ」に関することということでお読みいただいてよろしいことでございます。  一般的に、次の段階におきます舶用炉研究開発等、将来に向けての応用の研究を進めることにつきましてはこの二号で読むわけでございます。さらに一般的ないわゆる基礎研究ということになりますと一号になるわけでございますが、先生御指摘の「むつ」の原子炉を取りかえることはできるのかということにつきましては、この二号でも四号でもいずれの号でも読むことができるというぐあいに我々は理解をいたしております。  ただ、第二船、第三船をつくるということにつきましては、現在これは予定をしていないということでございまして、特に四号で、こういう「むつ」に関する業務を行うことと、従来は一般に原子力船に関する業務を行うことということを、特に原子力船研究開発事業団法の規定により建造された原子力船に関するということに限定したという趣旨からも、一応のこの法律としては第二船、第三船を原研でやるということを想定をしていないということでございます。
  168. 伏見康治

    ○伏見康治君 そういう御説明を承ると、この今度の法律案というのは、まさに現在ある具体的な「むつ」という原子力船後始末を原研にお願いするというような感じにますますなってきたと思うんですが、その辺のところは原子力研究所側ではどういうふうに受け取っておられるのか伺いたいのですが、理事長さん。
  169. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 原子力船むつ」の取り扱いを含む今後の原子力船開発の基本的方針につきましては、今後政府から我々の方に示されるというぐあいに了解をしておるわけでございますが、午前中の御質疑に関連しても私申し上げたところでございますが、もし統合ということになりますれば、原研が総合先として選ばれました趣旨と申しますか、とにかく基礎的な知見を着実に蓄積していくという態度でやってまいりたいと、こう思っておるわけでございます。したがいまして、原子力船むつ」の取り扱いいかんによっては内容は相当変わるわけでございますけれども、いずれにしても、「むつ」というものは一つの実験研究あるいは研究開発の方便というか手段というような考え方で対処してまいりたいと、こんなぐあいに考えておるわけでございます。  我々の方は、御承知のとおり、総合研究所といたしまして、過去二十八年間基礎研究から応用研究に至るまで極めて幅広い研究開発活動によりまして相当な技術的蓄積もしておりますし、人材も蓄えてまいってきております。また、いろんな原子炉の設計、建設、運転を通じましてのいろいろな開発手法なり実験手法、安全の確保手法といったようなことについても相当の経験を保有しておりますので、こういうものを有効に反映をいたしまして、与えられた一つの基本方針の枠内におきましてできるだけお役に立つように努力いたしてまいりたい、こんなぐあいに考えている理段階でございます。
  170. 伏見康治

    ○伏見康治君 私は、原子力研究所というものは長い歴史を通して非常によくやってきたと思うんですね。自民党の先生方の一部の中には原研に対して非常に何かまずい感情を持っておられる方があるようにも思えるのですけれども、私は、全体としては原子力研究所というものは日本原子力研究開発の中軸としてずっと立派な仕事を果たしてきたと思うわけです。特に、安全性に関する研究といったようなものは世界的に評価されるべきだと思いますし、その長い研究の伝統というものを、今度の法改正で「むつ」を引き受けたために、その原子力研究所のよき伝統が損なわれるようなことがあっては非常にまずいと思うんですね。  原研は、幸か不幸か余り地元とのトラブルがなかったわけでして、東海村の皆さんが非常に協力的であったことなんでしょうけれども、そういうもので余り時間を費やすということなしに、比較的恵まれた環境で皆さん本当の科学技術研究にいそしんでこられたということがあると思うんですね。ところが、船の方はまさに地元との政治的なトラブルの泥沼の中に入ってしまった。そういう意味では原研にとっては非常に異質的なものを抱えるということになるわけだと思うんですね。そのために、いわば非常に楽園であった東海村が泥水をかぶってしまうようなことが万一起こると、せっかく日本が長い間築き上げてきた原子力のメッカが台なしになるおそれがある。  私は、そういう意味で、理事長さんが、東海村の従来の研究体質といったようなものを損なわないように、新しく引き受けられたお仕事はできるだけ上手に取り扱っていただきたいという感じが切なるものがあります。しかし同時に、原子力研究所が長年培ってこられたことのいい方、よい面を「むつ」の事件を処理する上において使っていただきたいということも非常に切望したいわけでして、「むつ」を処理したためにもとが台なしになるようなことは避けていただきたいけれども、同時に原子力研究所の持っていたいい方の面を使って「むつ」の問題を立派に処置していただきたいということを期待したいと思うんです。  私としては、別に「むつ」そのものを廃船にせよということを申し上げるつもりもなし、ぜひ存続させろということも申し上げるつもりもないので、これからはどこか別のところでお決まりになるその線に沿って、原研がどちらに転んでも立派にやっていただきたいと思うんですが、その際私が特にお願いいたしたいのは、科学技術者の立場というものがいつも判断の根本にあるような形で物事を映していただきたいというわけですね。  先ほど来、大湊との協定の問題で何度か御質問申し上げましたが、そこでは科学技術の方はずっと影を潜めてしまって、専らけしかるとかけしからないとかいうような議論だけで話が決められてしまっている。原子炉の安全性を確かめる技術者の言うことといったようなものが地元の方にもし耳に入らないとすると、それは私は、何といってもそういうことを説山できない今までの当事者の失敗であったとしか思えないわけなんですが、科学技術者の立場というものがもっとちゃんと使われるように、そういうふうに今後原子力研究所原子力船の問題を処理されるように心から希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  171. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 日本原子力問題の草分けでもあります、また原子物理学の最高権威である伏見先生から大変貴重な御所見、御指摘を賜りまして、大変私も感銘を受けて質疑を承っておりました。  そういう中におきまして、私、一つだけつけ加えて申し上げたいと思いますが、大湊に仮に停泊をいたしております原子力船むつ」について、科学技術研究者として一日も早く何かをやっていきたいという気持ちを持っているだろうというお話は、大変私はそのどおりだろうと思っております。ただ、先ほど申しましたように、「むつ」の原子炉のかぎを県の方にお預けをしているという、まことに残念な、私どもから見れば残念でございますが、地元との関係から言えばやむを得ない現状になっているわけでございます。  私は、就任直後、一月早々に青森に参りまして、そして五者協定についての再確認をいたし、そしてまた、関根浜の港に着工するということについても確約をいたして、そして着工した後においては地元とさらにできるだけ大湊の港にいる間でも何らかの前進が見られるようにということで、原則的なお話を申し上げ、そして地元の五者協定に参加された皆さんも、着工ができた後においては政府側から協議があればその協議には相談に応じてまいります、こういうお話も承って帰ってきたわけでございます。  しかし、その後各方面の御議論があって今日のような状態になっているわけでございますが、私どもは、検討委員会あるいは国会の御審議、各方面の御議論、その結論対応して、私はさらに地元原子力船むつ」の現状で凍結した状態であるということは国民に対して申しわけない、科学技術者に対しても申しわけない、世界的に見ても私は恥ずかしいことではないだろうかという気がいたしております。そういう意味で、今後の結論を踏まえまして、そのような科学技術者の立場、そしてまた日本の大事な舶用炉研究開発に一歩でも前進をしていくように、また安全性を確認しながら何らかの方法も考えていくのが責任大臣としての立場であろうと、こう考えているところでございます。  また、原研に統合することによりまして原研の本来の仕事が阻害されるということがあってはならないことでございます。私どもは、従来の原研に対するただいま先生の高い評価、これはまことにありがたいお言葉であります。私どもも原研が今日まで日本原子力平和利用に果たしてきたその成果、そして権威、評価というものはさらに高めていかなければならないと思っております。そういう中において、やはり長期的な視点からの舶用炉研究開発、これについては原子力研究所の従来の蓄積された最高のものを十分に活用していただきたいと、かように考えておりまして、従来の原研の分野というものはさらに十分に発揮していくような中において原子力船むつ」の統合の姿を描いていきたいと、こう考えておりますので、この上ともよろしく御指導を賜りたいと思います。
  172. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 法案審議に先立ちまして、まず「むつ」問題、特に関根浜港の問題について私も若干お聞きしたいと思いますが、私は、六月の二十四日から二十六日まで三日間、衆議院の工藤議員とともに現地を調査をして、重要な事柄を多々見聞をしてまいりました。これらの問題はおいおいこの委員会でも取り上げてまいりたいと思っておりますが、まず、政府関根浜港の多目的利用ということをしきりに言うわけでありますが、これは「むつ」が廃船になる場合、存続をする場合、いずれの場合も多目的利用を考えたいと、こういうことでしょうか。
  173. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 関根浜新港につきましては、「むつ」を係留する港として建設するわけでございますが、    〔委員長退席、理事古賀雷四郎君着席〕 まあ、仮の話でございますが、廃船するとしても数年はここに係留していろんなことをしなければいけないのでございましょうし、継続するといたしましても、そう二十年、三十年と今の「むつ」を使うというこになるかどうか、むしろもっと短い時期に使命を果たして廃船ということになるということも考えられるわけでございますし、そういう意味で、今すぐということではなくて、将来この港を大いに活用していくという意味でほかの目的にも利用できるようになる方が、港として多額のお金をつぎ込んでつくる港でございますので、そういう形で利用できればいいなと、こういうことで検討しているわけでございます。
  174. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、最近下北半島に核燃料サイクル基地を建設をしようという問題が登場してきていますけれども、多目的利用というこの考えは、この核燃料サイクル基地構想、これとのかかわりが念頭にあるんですか。
  175. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 関根浜新港はあくまでも「むつ」の停泊港として建設をしているわけでございまして、特にその使用済み燃料あるいは放射性廃棄物を積みおろす港として利用するということとの関連において考えておるわけではございません。そのことは地元方々にも御説明をしておるところでございます。
  176. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 この核燃料サイクル基地構想というのが、下北半島ということでありますけれども、具体的にどこということまではまだ明らかにもなっておらない、そういう段階でありますからなおさらのことではありますけれども、将来どこに決まるか、そのことに応じて今後ともかかわりはないと、関根浜港は核燃料サイクル基地建設構想とは今後ともかかわりないというふうに、ここではっきり確認をしておいてよろしいでしょか。
  177. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 関根浜新港をいわゆる使用済み燃料の積みおろし港というようなことで私どもは考えておりません。
  178. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 念のため大臣、同じ意見でしょうか。
  179. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 今政府委員が答弁したとおりでございます。
  180. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 次に、八二年の三月、事業団関根浜立地調査結果を発表いたしまして、これに対してむつ市当局がそれをいろいろ検討し、その結果を四月、中間報告としてまとめて、十項目の指摘事項、十一項目の疑問事項というものを事業団側に提起をしたわけでありますが、これに対して業事団は四月の三十日、一定の回答を出しています。しかしその内容は、私としても果たして科学的な検討がどれだけなされたか多々問題を感ずるわけでありますが、私はこの会期延長前の当委員会で、この関根浜港が気象、海象の面から見て「むつ」の定係港として不適当であると、例えば「むつ」の初代船長、八一年当時事業団の理事であった折原洋氏が発言をしている、こういう問題を取り上げました。  別の例で聞きますが、事業団はこの海象、気象条件は大丈夫と、こうしているのでありますが、この八二年立地調査報告をまとめる段階で、例えば津軽海峡周辺海域での海難発生状況、これをどういうふうに押さえてあの結果をまとめているんでしょうか。
  181. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 海難事故につきましては、海上保安庁の詳細な統計表がございます。それからさらに、あそこにはフェリーが常時運航されております。連絡船も常時運航されております。そういったようなもろもろの条件を総合的に勘案いたしまして、あの地区が船舶の航行に対してふぐあいな点があるというふうには判断しておりません。
  182. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 海上保安庁の資料を参考にしているということでありますが、報告書をまとめたのは八二年三月ですね。ですから、八一年度は年度途中でありますから、きちっとした数字が出るのは八〇年度。昭和五十五年、現実に津軽海峡でどれくらいの海難事故が起こっていますか。
  183. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 今先生御指摘の点につきましては、手持ちの資料がございませんので、後ほど調査いたしまして御返事したいと思います。
  184. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それならば海上保安庁にお尋ねしますけれども、最近五年間ぐらいの津軽海峡周辺海域での海難発生状況、これをちょっと数字的に御説明ください。
  185. 高橋義典

    説明員(高橋義典君) 御説明いたします。  最近五年間におきます津軽海峡を中心といたしました海域でございますが、太平洋岸約八十マイル、それから日本海側約五十マイルの範囲内の海難件数でございますが、昭和五十四年に私ども海上保安庁が取り扱った海難で救助を必要とした海難、これの件数は、隻数にいたしまして五十四年九十三隻でございます。五十五年百二隻、五十六年八十四隻、五十七年百隻、五十八年百十隻、以上のようになっております。
  186. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 今説明があったような、そういう救助を必要とする海難発生件数はこういう数。この数で明らかなように、一年の日数の四分の一をはるかに超え、三分の一近いこういう海難が発生をしておるという状況ですね。にもかかわらず、津軽海峡周辺海域、関根浜港大丈夫と言う。こういうところへ本当に十分な科学的検討が加えられて、そこでそういう結論が出されているのかというふうに言わざるを得ない一つの問題として、私は大きな不安を表明せざるを得ないわけです。  問題を少し変えますけれども事業団の回答の中で、むつ市の問いに対して太平洋からのうねりを加味した検討を今後行うとか、活断層調査は東北電力の調査の結果をそのまま使いましたと、こうなっているんですが、ひどいものだと思うんですけれども、詳細調査を今後行うとか、あるいは新定係港へのドックの併設の必要性の有無について検討するとか、幾つか約束をしておるんですけれども、ところが私、実際に現地へ参りましてむつ市の市長さんにもお会いをしてきたんですけれども、この約束に基づくきちっとその後のいろいろな返事がないというふうに市長はおっしゃっておられるんです。そこで現地で、野澤さんもおられましたけれども事業団へ参りましたときに、一体どうなっておるんですかと言ったら、いやいや説明はしていますと言うんですが、実際にどうなっておるんですか。この約束はきちっと果たしているんですか。
  187. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) ただいま先生御指摘の点につきましては、うねりの推算も含めましてむつ市には再度にわたって詳細な説明を行っております。それらの総合的な調査結果をもとにいたしまして、「公有水面埋立免許手続の一環としての環境保全に関し講ずる措置を記載した図書」というもので、文書によって回答を行っておりまして、それに対してむつ市からは、さらにそれ以上の異議なり指摘事項はないものと承知しております。
  188. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そのようにおっしゃるけれども、私は現にむつの市長さんから今申し上げたようなことを耳にしてきたわけです。当時、六月現地へ行きましたときに、本当にそういうふうに言われるならばどういう文書でむつ市に再回答をしているか、それをひとつ資料として提示いただけますかと言ったら、しましょうということだった。ところがきょうに至るも、きのう質問通告でその意味も含めて資料提出を求めてきたんですけれども、資料の提示がないんです。それなら、はっきりお尋ねをしますけれどもむつ市に対しての再回答ともいうべきその関係文書、きちっと提示してもらえますか。
  189. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) その件につきましては、ただいまお答えいたしましたように、「公有水面埋立免許手続の一環としての環境保全に関し講ずる措置を記載した図書」ということで、公開資料になっているものでございます。
  190. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そううものであれば、それは提示はしてもらえますね。
  191. 野澤俊彌

    参考人野澤俊彌君) 今読み上げました図書は、極めて膨大な資料でございまして、公開されているものでございます。
  192. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それならその提出を求めます。それをよく見た上でまた意見を申し上げましょう。  次の問題ですが、この関根浜の用地買収に当たって膨大な裏金が支払われたということについて、午前中、本岡さんの質問でも取り上げられてきたところでありますが、事業団も国土庁も、別に問題はないということで言い張っているのでありますが、念のために国土庁にお尋ねをいたします。  政府関係事業団、この原船事業団を含めまして現在十七ほどあると思いますけれども、この十七ほどある政府関係事業団で、今回のように用地買収をするに当たって別名目でお金の別途支出をしたという、こういう事例はないんじゃないですか。私は、調べた限りないと思っておりますが、どうですか。
  193. 武智敏夫

    説明員(武智敏夫君) 最近におきましては、私の知る限りではそれほどないと思っております。それほどといいますか、耳にいたしておりません。
  194. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ということが示すごとく、いや、別に違法じゃない、適法だということを国土庁もおっしゃった、それから事業団の理事長は顔を赤くしてそのことをおっしゃっていたけれども、ほかに例がないということが示すごとくやっぱり異常なんですよ。ですから、もう具体的な事実の中身は本岡さんの質問で詳しくやられていますから、私は繰り返しませんけれども、やっぱり異常だということで事柄は重大だと思いますね。  科技庁にお尋ねします。  科学技術庁は、この原子力船事業団がこういう支払いをするということについて事前に承知をしてたのか、事後報告ですか、どうですか。
  195. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 当庁、私は、事業団から生活環境整備資金といいますか、そういう形で地元の方に支払うということにつきましては、払う前に聞いております。
  196. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣はどうだったんですか。大臣は、事業団がこういう支払いをするということについて、もう既に大臣に就任されて以降の支払い、大体ごとしに入ってからの支払いだと思うんですけれども、事前に承知されておったのか、事後報告が。
  197. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) その程度のことは担当の局長が責任を持ってやることでございますので、私はまだそのときには聞いておりません。
  198. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そのときには大臣は聞いてなかった、局長の決裁事項だと。私は、そういった性質の問題で流しておいていいかどうか。これは言うまでもありませんが、昨年の五十七年度決算に関する会計検査院の報告でも、「むつ」をめぐっての大変な国費の乱費があったということについて強く指摘もされておる。    〔理事古賀雷四郎君退席、委員長着席〕 しかし、依然事業団科学技術庁も、検査院のこの指摘をまともに受けとめて、そういった方向でひとつ貫徹をしていこう、襟を正していこうという気持ち、そういう反省が全くないということのあらわれじゃありませんか。  それで、この事業団予算、その中での国からの補助金等が占める比率というのは事実上一〇〇%に等しいわけでしょう。ですから、大いに国としてもよく目を向けて、本当に公正な会計の執行が行われるかどうか、その点については心を配っておるのは当然のことだ、こう思うんですが、大臣、とにかく事実はこういうことで、国土庁も確認されたごとく、他の十七ほどある事業団には例のないことが起こっているんですよ。何か感ずる問題ありませんか。
  199. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 原子力船むつ」にかかわるいろいろな経費の支出につきましては、従来とも適正に行われてきていると私は確信をいたしております。  ただ、その研究成果が十分に上がってないというような観点から、検査院からも厳しい御指摘をいただいていることは厳粛に受けとめて、そのような御指摘に対しては今後とも十分に配慮していかなければならないと戒心をいたしているところでございます。  また、ただいまの土地買収に関連しては、その時点においては私は局長に一任をいたしておきましたけれども、その後、正式に支払いをするという段階においてはこれを承知をいたしております。そしてまた、これにつきまして各方面からの御意見もあったわけでございますが、これにつきましては、事業団あるいは県あるいは国土庁、それぞれが十分にこの点についての検討をされました。その結果、これは妥当であるという報告も受けて、私もそのように承知をいたしておりますので、この支出は適正なものである、適正な支出である、かように考えているところであります。
  200. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 会計検査院の指摘も踏まえ、今後の執行については本当に厳格でなければならぬというふうに口では言われている。しかし、ほかの事業団には例のないようなことが今原子力船事業団でやられたということについて、いや、これは適正でございます、こういう言い方では、たとえこの時期にそのことを知っていたか知っていなかったかということの時期の前後はあっても、大臣も結局それを認めておる、同罪だというふうに私は言わざるを得ないんです。私は、強くこのことを指摘をして、今後の後々のこともありましょう、まだまだ今後もいろんな補償問題も出てくるかもわからぬ、こういうときに、本当に国費が一〇〇%を占めるこの会計が公正に執行されるかどうかというこの問題について、私は大臣に重ねてこの立場を強調をして、引き続き今後とも反省のほどを見届けていきたいというふうに思っていますので、大いに留意をしていただきたいと思います。  次の問題でありますが、原子力研究所の理班長さんおいでになっていますのでお尋ねをしますが、まず、政府が今次法案を三月の段階国会に提出をしたわけですけれども原子力研究所としては、いつ、どのような会議で、この法案の提出に、今後の原子力研究所の運営に重大なかかわりを持つこの問題について同意をなさったんでしょうか。
  201. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) この問題につきましては、昨年の秋に原子力委員会で今後の原子力船開発あり方について懇談会を設けて討議をされまして、その結果を受けまして原子力委員会の見解というものが出されております。で、原子力委員会がその統合先として原子力研究所を適当と考えるという提言をなされた、これがたしか十二月ごろであったかと思いますが、その当時に私も懇談会のメンバーとしてもちろん参画しておりましたが、その結論につきましては、原子力委員会並びに科学技術庁の方から連絡を受けて、しかるべく心得よという連絡を受けておるところでございます。  それから、もちろん法律の作成の段階におきましては、いろいろと原子力局の方からは連絡も受けますし、またいろいろと原研としての意見等も聴取されておるわけであります。原子力委員会についても同様でございますが、当然法律案閣議決定段階、あるいはそれ以前の段階政府が行政 改革の一環としての原船事業団統合問題に対する閣議決定をなされたわけですが、その際も通知を受けておる次第でございます。
  202. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ちょっと念を押してお尋ねをするようで失礼な点はお許しいただきたいと思うのですけれども原子力研究所にさまざまな機関、組織がございますね、この理事会初めとしていろんな。どの組織でいつごろこういう方向でよろしいという形で原子力研究所としての同意を政府側に意思表示をされたんでしょうか。いや、そんなようなことはないと、今おっしゃったように、原子力委員会としてこういう方向が決まった、政府としてこういう方向が決まったということで、上からそう言われたら従わざるを得ないということであります、お金をもらっておるからそうならざるを得ぬと、こういうことなのかどうか。
  203. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 原子力委員会あるいは原子力局との関係につきましては、常時原研の研究開発活動方針等につきましては意見交換の場があるわけでございまして、本件につきましても当然のことながら随時そういう意見交換という場は経過としてあるわけでございますが、法律案作成につきまして、これについて原研は同意するか、同意するといったようなことを、例えば文書で正式に交換をするというようなことはないわけでございまして、政府の方で決められた方針に基づきまして原研という特殊法人は国の必要とする研究開発を受け持つべき性格の法人であると我々心得ておりますので、そのように御了承願いたいと思います。
  204. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく、監督庁の方からそういう方向が出たらそれに従わざるを得ないというふうにおっしゃっているんだというふうに私は受け取っておきます。それでいいですね。何遍お尋ねしても、どういう機関でいつごろ決めたかということはお答えがないから、そういうことなんですね。
  205. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 原研は、法律でも定めておられますように、原子力委員会の方針を踏まえて国が定める方針に従って業務を行うべきと定められておりますので、その一環と考えております。
  206. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ということでありますと、私は、原子力研究所として今回の統合が原研の将来に何かこういうメリットが出てくるという積極理由があったのかなかったのか、そこがよくわからないんですけれども、そういう点はどうでしょう。
  207. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) まあメリットと一口に言われましても、なかなか一口にお答えしにくいかと思いますけれども、先ほども私、伏見先生の御質問に対してお答えした中でも触れましたけれども、原研は総合研究所でありまして、すでに二十八年間もろもろの幅広い基礎研究、応用研究、あるいはそれのすそ野の上に立ちましたプロジェクト研究もやってまいりまして、非常に多くの蓄積を持っており、人材もあるわけでございますので、こういうものを有効に活用する分野が一つふえたという見方をすれば一つの前向きの面ではないかと存じております。
  208. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 御存じのとおり、八月に向けて「むつ」の存廃問題についての結論が出されていくわけでありますけれども、これもちょっとどなたかから出ておったかと思いますが、もしも「むつ」が廃船と、こうなる場合、そういう場合に言うなら厄介な「むつ」の廃船処理業務、これを殊さら原子力研究所が買って出る、こういうことになるわけですね、もしも廃船ということになる場合。で、廃船にするかどうか、存続をするかどうか、これが八月に向けて議論がされるということは、法案提出の段階ではもうよくよくわかっておったこと。ですから、そういう廃船処理業務原子力研究所が買って出るというのは、何か特別の理由があるんですか。
  209. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 「むつ」の廃船業務を買って出るということに特に我々重点を置いて考えているわけではございません。けれども、仮に廃船という業務につきましても、これは原子炉である以上はやはり慎重なる計画に基づいて相当な重要なる仕事になるわけでありまして、我々実は現在、日本で初めて発電を二十年前にやりました試験用原子炉というものを持っておるわけでございまして、現在、所期の目的を達しましたので、それを今後原子炉の解体をするというプロジェクトに変更をいたしまして、今その準備的な調査研究あるいは解体設備の試作と、もろもろのことをやっておるわけでございます。そういう準備を積み重ねた上で、一両年後から実際の解体にかかりたい。その解体作業自体も一年で終わるわけでなくてやはり数年かかるといったような大きな作業になるわけでございます。  「むつ」はどういう形で廃船にするか、いずれは廃船にするわけでしょうが、すぐ廃船にするか、あるいは実験データを相当にとってからやるかによっても内容は変わってこようと思いますけれども、そのようなぐあいで、廃船処理ということ自体もやはり相当な業務量、質的にも内容を持っておるというように私どもは考えておるわけであります。
  210. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大変苦しい答弁をなさっていますけれども、正直に、何も原子力研究所が買うて出たわけでありませんというふうに正直におっしゃった方がいいと思うんですけれども、にもかかわらず、もしもこういうことでいけば廃船処理業務を押しつけられるということになる可能性が半分あるわけですね。  もう一つの可能性、もしも八月の決着で「むつ」が存続と、こうなる場合に、絶対に事故の再発のようなことはない、こういうふうに確信を持ち得る原子力研究所としての独自の検討はあったんですか。
  211. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 「むつ」をこれから実験船として実験を再開するとか、あるいは廃船仕事をするというような場合に、我々考えますのは、安全問題はもちろん十分に慎重に検討しながら、安全を確認しながらステップ・バイ・ステップに仕事を進めていきたいというぐあいに考えておるわけでございます。  まず、私が思いますのは、こういう仕事をやる場合に、「むつ」はまず実験船である、しかもこれから試運転を始めるものであるというわけでありますので、一般のあらゆる機械設備でも同様でありますように、初期のいろんな手直したとか修理だとか、そういうものが起こる可能性というものは当然あり得るというスタンスで構えていかなきゃならぬ。一々そのたびに慌てるのでなくて、適切にそれを処理しながら段階的に進めていくという態度でいきたいと思っております。もちろんその段階ごとに安全は確保しながら、外部への被害は絶対ないようにという形でやっていく、こういうやり方でやっていきたい。  我々は、過去長きにわたりまして原子力研究所の東海村あるいはその他の事業所におきましてもそういう態度で研究開発を進めてまいりまして、地元との関係も極めて良好に理解をいただいてやってきておる実績がございますので、もしこの法案が成立をいたしまして原研に統合されるといった暁におきましては、この原子力開発も従来の原研の研究開発と同様な姿勢でやっていきたいと、こう思っておる次第でございます。
  212. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 原子力研究所の今日までの基本的な姿勢、また仕事の最重点に原子力平和利用の安全性研究、これをやってきた、今後ともその精神でやっていくんだと、そのとおりだと思います。思いますが、今回のこの受け入れを、またこれは国会に対する案ですけれども、こういう統合ということを、その中には一つの可能性として「むつ存続、こういうことも含む今回の統合原子力研究所として、案の段階ですけれども、引き受けるという、これに当たって、二度と事故が起こらない、こういうことについての独自の検討をやったというわけではないですね。  いろいろちょっと意地の悪いような質問を幾つかしましたけれども、私は本当に今こそ日本原子力研究所が、言われておるごとく今日までの使命を今後とも貫徹をしていくためにも、主体性を大いに持ってもらう必要があるという立場でいろいるお尋ねをしたわけです。  最後に、そういう角度からもう一つお尋ねをしますけれども、今回の統合の問題について、労働組合との間、職員の皆さん方との間での意見一致はできているんでしょうか。研究所の職員すなわち労働組合の皆さん方との話し合いはやられているでしょうか。
  213. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) この統合問題は大変重要な問題でございますので、私といたしましても、随時部長など研究所の幹部職員を招集いたしまして、状況の説明をした上で、その意見も聴取するとともに、職員一般に対しましても適時所信を表明してきたところでございます。  御質問の点は、労働組合という組織への対応の問題と存じますが、これにつきましても、研究所におきます従来のやり方、慣行に従いまして誠意を持って対応することが肝要であると考えておりまして、適時に説明を行い、資料を提供するなとして理解を求めてまいったところでありまして、今後ともさらに努力を続けてまいる所存でおるわけでございます。
  214. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 適時に研究者や職員にいろいろ資料、情報を配付をしておるとか、今までの慣行これあってと、こういうふうにおっしゃっておるわけですけれども日本原子力研究所にとっては、本当に始まって以来とも言っていいような研究所のあり方、今後の運営についての重大な変更を含むようなそういう大問題が降ってわいておる、こういう時期でありますから、したがって冒頭にお尋ねをしましたように、本当にそういう大問題なるがゆえに、一定の研究者の方々を含むそこでよく議論をされて同意をされているんでしょうかということを、念を押すような意味でお尋ねをしたゆえんもそういうところにあるわけです。  同様に、労働組合というのは、私から今さら申し上げるまでもないと思いますけれども研究者の方々を含む労働組合でありましょうし、同時にこのことは、当然いろんな労働条件の変更も起こり得るわけですね。それはいまは原子力船事業団の職員の方々の労働条件と原子力研究所の皆さん方の労働条件、全く均一ではないでしょう。それは当座は今までの姿をずっと持続をしていくということになっても、ある将来にいけばやはり一つの体系をつくらなくちゃならぬ、その段階で一定の変更は起こり得る。青森にも事業所もできるということになれば転勤ということもあり得る。  こういう点で、当然この統合の問題について職員の代表、労働組合の皆さん方ともよく話し合うということがあってしかるべきで、とにかく研究所始まって以来の大問題が起こっているという、こういう事態の上に立って、ひとつ理事長としては、本当に職員との協調、団結の体制をどうやってつくっていくかということについて、大いに考えていただく必要があるということをもう一遍強調しておきたいと思いますけれども、所見はどうでしょうか。
  215. 藤波恒雄

    参考人藤波恒雄君) 今お話に触れられました労働条件の問題等、これからだんだんに具体的に出てまいりました場合、当然労働組合との交渉によって協議を進めるべきものと考えておりまして、組合ともそのような約束をしておるわけでございます。今後とも努力したいと思います。
  216. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 本日は終わります。
  217. 野末陳平

    ○野末陳平君 今回の改正案は、行革という立場から見ると適切だと思いますけれども、「むつ」の問題があいまいなだけに賛否を判断するのは非常に難しい、微妙だという気がしますね。ですから、原子力全般に対するいろいろな質疑を続けていきながら考えたいと思うんですけれども、先ごろ総理府が「原子力に関する世論調査」を発表しましたけれども、あれを見ますと、国民原子力に関してやはり何らかの不安を抱いているという結果が出ておりますけれども、それについてまず、当局としてはあの調査の結果でどういうふうに感じましたか。
  218. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 総理府の統計調査につきましては、原子力発電所について気になることがあるか、心配なことがあるか、不安があるかと、こういう設問に対しての答えで、回答者の七〇%の方が心配なことがある、不安なことがある、こういうことでございまして、やや最近の原子力発電所の安定した運転状況等から見ても、その意味では意外な結果であるというような見方もあるわけでございます。  その不安があるということの理由の中には、やはりまだまだ原子力の実情といいますか、例えば放射線の影響についてよくわからないから不安である、それから原子力発電所の仕組みがよくわからないから不安である、あるいはほかの人が危険だと言っているから不安であるというようなものが相当な比率も占めておるというような状況でございまして、一方、それでは発電所の安全対策が現状で十分なのかという設問とか、あるいは十分でないのかという設問に対して、十分であるという答えについては前回よりもふえておるし、十分でないという答えはむしろ前回より減っているというようなこと、あるいは原子力発電所の比率を今後減少させるべきであるというようなものにつきましては、その比率が極めて低いというようなことでございまして、全体的に総括いたしますと、原子力発電所は不安だから何か原子力発電所はもうやめるべきだという方向ではなしに、やはり原子力発電所というのは今後ともエネルギーの供給源として確保していかなければならないと。そういった点については、やはり原子力の安全性ということについての問題というもの、重要性というものを認識してきた方が多いと、そういうふうに理解しております。  特に十分に原子力の知識がないということで漠然とした不安を持っておられる方という数が相当な比率を占めておりますので、今後ともその安全性についての御認識をいただくということについて、我々としても御理解をいただくということについての努力をしていかなければならない。それは単なるPRだけでなくて、原子力発電所自体の安全運転の実績というものを今以上に積み上げていくことが必要であろうと考えておる次第でございます。
  219. 野末陳平

    ○野末陳平君 確かに国民の間には漠然たる不安とか、それからまた難しいですから、わかりにくいというか、ですから、知らないということがまた不安原因の大きな部分を占めていると思ったりしますけれども、しかし、そういう不安感がずっとあるということは、やはりこれから科技庁が仕事を進めていく場合に、これをどうするかというのは非常に重要なことですから、今言った実績もさりながら、PRの方もこれから力を入れてもらわなきゃならないと思いますね。  特に僕が気になりましたのは、この同じく総理府の調査の中で、要するに放射性廃棄物の問題で、保管とか処理、処分に関する不安、この場合、高レベル、低レベルというようなことを分けずに、とにかく放射性廃棄物が何か心配だというような結果だろうと思うんですが、これが調査のたびにふえている、数字の上ではっきりそうなっていましたね。ですから、この辺もやっぱり漠然とはいうものの、基本的なPRすら行き届いてないと、そんなふうに感じたんですね。  そこで大臣、どうでしょうかね、やはり今まで国民の認識を改める、改めるというのも変ですが、いろんな知識を正確に持ってもらう方法が十分でなかったという気がするんですが、これからこの調査を受けて、何か科学技術庁としてこんな方向を考えているという、そんなことありますか。
  220. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 原子力発電所の安全性を初め、原子力の知識の普及につきましては、政府でも最近は非常にパンフレットのいろいろな種類のものを作成して、それを単に政府が印刷して配布するということでは限りもありますので、それを積極的に民間の各機関で活用してもらって、刷り増ししてもらっては各方面に配るとか、あるいはテレビ等で大臣に御出演いただいて話をしていただくとか、あるいは週刊誌の広告欄で原子力発電を中心にしてPRするとか、その種のことをいろいろやっておるわけでございます。なかなか対象が広うございますし、我々の使うマスメディアというものに限りがありますので、やはり新聞での情報の伝達というのが極めて効果的になされるものでございます。  そういう意味で、先ほどの放射性廃棄物処理、処分の問題につきましても、これは私ども原子力発電を推進してきた中で、非常に原子力発電所の方は安全に運転してきたけれども地元における問題としてもいつまで発電所の中に廃棄物を管理しておくのかというようなことを初めとして、バックエンド対策というものが非常に重要な問題として前々から認識しておるわけでございますが、一層ある意味で緊急の課題になってきているということは十分承知しておるわけでございます。  それで、この問題につきましても、我々はさらにもう少し積極的に関係者に知ってもらうということも含めまして、この放射性廃棄物処理、処分の現状等につきまして近くフォーラムを開いて、関係者に集まっていただいて、そこでいろんな情報を交換し合う。それを場合によってはマスメディアを通じて各方面に広めてもらうというようなことも考えて対応してまいりたいと考えておるわけでございます。  さらには、廃棄物の問題につきましては、実際に保管の問題につきましても非常に安全でないんじゃないかという不安を持たれているような向きもございますので、できるだけそういう実証試験的なことをやって、それでそういう結果を皆さんにお知らせをする、あるいは住民の方々の近くで安全に保管されるということを試験的にやってごらんに入れるとか、そういうようなことを計画はしておるわけでございますが、その試験的に実施するということにつきましては、何分にも地元関係方々の御理解がないとできない、まずそこが一つの段階になっておりましてできていないというような状況もございますが、我々としては一層の努力をしてまいりたいと思っております。
  221. 野末陳平

    ○野末陳平君 これからこの問題は非常にまた重要になってくると思いますが、それにしたって、やっぱり新聞や雑誌に広告出したとか言っても読まないからね。ですから、僕自身がよくわからないのに、一般の人がそんな読んで理解してというふうにも思えませんから、それだけじゃやっぱり十分でなかろうと。非常に頭痛いところですね。  そこで、今話に出てきました高レベルの放射性の廃棄物、これをどうしていくかという、これについて詳しく説明をしてほしいと思うんですね。わからない点はまたただしたいと思うんですが、これを処分するのに、まず第一段階で固体にするということでしたけれども、固体にしていくまでの経緯というのを簡単に説明してください。
  222. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 高レベルの放射性廃棄物と申しますと、いわゆる使用済み燃料の再処理施設から出てまいります廃液がその対象でございます。この再処理工場から出ます廃液は、低レベルのいろいろな廃棄物に比較しますとその量は非常に少のうございます。現在は東海村の再処理工場から出てまいりますものを東海再処理工場内の廃液のタンクに貯蔵しておるわけでございます。ただこれは、液体の状態でいつまでも貯蔵するよりは、やはり長期間保存するためには固体化をすることの方が取り扱い上便利であるということもございますし、最終的な処分をするまでには、実は高レベルの放射性廃棄物からは原子核の崩壊に伴いまして熱を発生しますので、その熱が相当出る間は地下に埋蔵しても周辺の岩石にいろいろ熱的影響を与えるというようなこともございますので、やはりある期間、これは三十年から五十年程度と考えておりますが、しかるべき貯蔵施設において保管、管理するということが必要になるわけでございます。そういう長期の保管、管理をするためにやはりガラス固化といいますか、固体化をしておくことが必要じゃないだろうかと。  それで、現在この技術につきましてはガラス固化法というものが世界的にも一番いいものということで、既にフランスでは実証的につくられております。我が国におきましては、現在既に放射性物質を含まない状態で成分を同じくする廃液を模擬的につくりましていろいろな試験をやっております。これはコールド試験と呼んでおりますが、これをやっておりまして、さらに、この試験はほとんど終えたところでございまして、実際の廃液を使って現在動燃事業団のところで小規模ながら実験をいたしております。これの成果を受けてガラス固化するためのパイロットプラントを建設し実証したい、そういうことで昭和六十五年ごろにはそういうパイロットプラントを完成し、運転させたいということで諸準備を進めておるところでございます。
  223. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうすると、今のところその廃液はどのくらいの量があって、大体これを固体化して実際これを貯蔵していくというまでにはかなり先なんですか、これは。
  224. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 今申し上げましたように、パイロットプラントを運転するのが六十五年ごろでございまして、当面東海村の再処理工場から出る廃液につきましては、そのパイロットプラントで、処理プラントそれから貯蔵プラントのパイロットプラントをつくりますが、それで十分賄っていけるということでございます。  ただ、フランス、イギリスに再処理お願いをしている分が、委託をしている分がございまして、そこで再処理された使用済み燃料から出ます高レベルの廃棄物につきましては、これは先方で、フランスの方でガラス固化いたしまして、それを日本に送り返してくるということが一応予定をされております。まだそうするということで確定しているわけじゃございませんが、いつごろということまでまだ決まっているわけじゃございませんが、そういうことが予定をされております。  現在日本の東海再処理工場にあります廃液は百五十四立米程度でございます。
  225. 野末陳平

    ○野末陳平君 さて、その固体化した廃棄物をどういうふうにして保管、貯蔵していくかというのにいろいろな方法があるようですが、日本の場合それのどれをお使いになるかこれからお聞きしますけれども、とりあえず諸外国の例などを中心に、要するに固体化したものをどういうふうな管理、貯蔵をしていくのが一番安全だと、そして実績が上がっているかというようなことでお聞きしたいんですけれども、最初には何かコンクリートの円柱にしちゃうという話があったんですが、あれはどこでやって、どういう方法なんですか。
  226. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 高レベルの廃液につきまして先生今御指摘のコンクリートで円柱化するということ、ちょっと私承知しておりませんが、今この高レベルの廃液で一番進んでおりますのがフランスでございまして、いわゆるガラス固化をするということでございます。それで、ガラス固化といってもどうするかということでございますが、ほとんど概略的でございますが、例えば直径四、五十センチ、高さ九十センチから一メーター程度の鉄のキャスクをつくりまして、その中にガラス状のものを流し込んでそこで固化をするということでございます。そのキャスクに入った固化体を適当な間、空間を離しまして建屋の中で貯蔵する。それでそれを空冷といいますか、空気で冷却をして、そこから出る熱は除去するというようなことで処理をするということでございます。  それから、大体が、アメリカでもガラス固化が中心でございますし、フランスはそうでございますし、西ドイツもガラス固化法を今考えております。英国もガラス固化法でございます。というようなことで、大体がガラス固化法を中心にやっております。
  227. 野末陳平

    ○野末陳平君 それで、ガラス固化法でやりますね。それで最終的にそれを今度とうしていくんですか。そこから先が一番——ずっと先のことでしょうけれども
  228. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 先ほど申しましたように、ガラス固化したものを熱が出る間冷却をしておくというのは、約三十年から五十年ぐらいの期間そういう状況でございますので、そういう形で貯蔵保管しておきまして、それから先はいわゆる最終処分という形で、大体これは各国ともそういう方向で検討しておりますが、地下数百メーターの深い花山岡岩の層だとか岩塩層というような比較的安定した地層の中へそのキャスクをおさめているということでございます。そういうことのために、まだどこも実行しているところございませんで、そうすることについての岩盤への影響等についていろいろ模擬的に実験してデータを集めているという段階でございます。
  229. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうすると、そのキャスクを安定したところへ埋めるという、海中か地中かどちらか。日本の場合は、国土の関係あるいは地質の関係、そういうのを考えていくと、日本の場合は制限が出てくると思うんですが、どういう方法日本では考えられますか。
  230. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 現在我が国の社会的な、地理的条件に見合った処分方法研究を進めているという段階でございまして、確定的なことを申し上げる段階でございませんが、各種の地層の賦存状態を現在調べておるわけでございまして、花崗岩層等というようなものもそういう地層処分の対象になり得るわけでございますので、我が国の国土の中でも十分地層処分ができるところを確保できるというぐあいに思っております。
  231. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこがどこかになるとまたそこでいろいろと不安が出てくる。ずっと先のことのようですけれども、やはりこれはもうすぐ現実になりますから、研究を早くしてもらいたいと思うんですけれどもね。ただ、どうですか、日本国土以外でも考えないと、果たして適当な場所が見つかるかどうかもわからないんでしょう。この場合、海なんというのはどういうことで考えられますか。
  232. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 私ども海の底ということは今直接的に考えておりませんで、やはり陸上のしかるべきところを優先するということで各種地層の賦存状態を調べておりますし、それからまた、今の段階ではいきなりホットの放射線の入ったものを使って研究するというわけにまいりませんので、放射線の入らないもので模擬的に熱を出すようなものもつくりまして、そういうものでいろいろな岩に与える影響等々も調べておるという状況でございます。我が国ではまだそういう意味で海洋底処分ということにつきまして具体的に検討しておりませんが、国際的にはこういった海洋底処分というものの可能性についても検討はされております。
  233. 野末陳平

    ○野末陳平君 以前の話になりますけれども、太平洋で沈めようとかして問題になったこどありましたね。あれはどういうところに誤解があったんですか。
  234. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) 太平洋をいわゆる試験的な海洋投棄の場所として検討してまいったわけでございますが、これは高レベルでございませんで、いわゆる原子力発電所から出ます低レベルの廃棄物でございます。この低レベルの廃棄物をドラム缶に詰めましてコンクリートで十分固めたものでございまして、これにつきましてはいろいろな長い間の実験を行いまして、海底下のかなり水圧も加わったところでどういう影響があるか、またいろんな衝撃に対してどういう反応をするかというようなことも十分調べ、そういう実験の結果を踏まえて、原子力安全委員会の方でも安全評価をしていただきまして、六千メーター程度の海底に投棄するということで安全上支障がないという安全評価の結果も出ておるわけでございます。  しかし、何分にもやはりこの問題につきましては理論的に難しいと申しますか、一般の方にはなかなか理解できないということで、これは危険だ危険だと言う人の方の見解の方がわかりやすいということもございまして、十分な理解が得られないことと、一つは太平洋というものにつきまして、太平洋の島の住民の方々、やはり魚類を食糧としているというようなこともございましてということやら、どうせやれるのなら日本の例えば東京近くでやったらいいじゃないかとか、いろいろな感情的なものも加わったりしておりまして、そういう地域の方々の御理解が得られていないという状況でございます。
  235. 野末陳平

    ○野末陳平君 低レベルのものについてすらなかなかそうやって理解が得られないわけですから、将来この高レベルの放射性廃棄物処理というのは非常に難しくなってくると思うんですね。ですから、早いうちにいろんな形で万全なPRをしてほしいと思います。  もう一つ、低レベルの話が出ましたけれども、低レベルの場合でも、高レベルと低レベルと分けてどっちが安全かというようなものじゃありませんから、低レベルの話で言うと、これは結局気体として再処理工場の煙突から大気中に出ちゃうわけですね。出るわけですから、この汚染度といいますか、これについてはどのように考えたらいいんでしょうかね。全く問題ないのか、それともある種の人といいますか、どの部分はちょっとこれがやはり問題なのか、その辺のこともはっきりしてほしいんですがね。
  236. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) いわば低レベルの廃棄物の中には、気体状で出るもの、液体状で出るもの、それから固体のものとあるわけでございまして、気体状のものにつきましては、先生御指摘のように高い煙突等から放出しておりますが、その放出する以前でモニタリングをして、そこの出る気体の中にどの程度の放射能のものがあるかということを十分にチェックしまして、その施設を設置した段階でその安全審査もしておるわけでございますが、煙突から出て拡散をして、その発電所なり再処理工場の周辺、サイト外の方々の年間の被曝量が、発電所の例で申しますれば年間五ミリレム以下になるようにということで、気体状のものの排出についてはコントロールをしておるわけでございます。  それから、液体上のものにつきましても、放射能の濃度が法律で定める許容濃度以下になるということを外に捨てる手前のところで十分にモニタリングしまして、安分限度以内であるということを確認した上で川なり海なりに放出するということをいたしております。そういう意味で、現在気体状のもの、液体状のもので周辺の方々に特に問題になるような形での廃棄ということは一切やられていないということでございます。  低レベルで一番問題になっておりますのは固体の廃棄物でございまして、これは紙とか布というような燃えるものとか、あるいはガラスとかゴム手袋のゴムだとか、いろいろ各部分の機械類のナットだとかそういったもの、金属の廃棄物が出てくるとか、いろいろなものがあるわけでございますが、これらの雑固体につきましては、ドラム缶に詰めまして現在発電所あるいは再処理工場のサイト内に保管をしておるということでございますが、これらにつきましては、例えば燃えるものにつきましては燃やして灰にしてしまうというような減容処理を行っておりますし、できるだけ量が少なくなるような形でサイトの中に現在は倉庫をつくりましてその中に安全に保管をしております。  これにつきましても、発電所の周辺の住民の方々の認識では、それは一時的な貯蔵という認識がございまして、いつまでもその発電所の中に置いておいていいのかという意味での御批判があり、それが不安につながるというようなこともございますので、これを発電所外のサイトに集中的にかつ長期的に貯蔵管理するということが一つの解決策として考えられるんではないかということで、その具体化を図っておるわけでございます。これはいわゆる敷地外の施設貯蔵という言葉で最近呼ばれている性格のものでございまして、電気事業者連合会が青森県の下北に立地を申し入れた廃棄物の貯蔵保管場所、それはこういったサイト外の施設貯蔵のためのものでございます。
  237. 野末陳平

    ○野末陳平君 命の説明を聞けば専門家はそれで納得するかもしれませんけれども、まあ一般の人には非常にわかりにくいだろうと思うんですね。僕も理屈じゃそうなのかなと思いますけれども、それじゃ今の説明で不安がなくなるんだ、あるいは安全対策の信頼度が増すんだということになるかというとなかなかそうはならない。非常にその辺が当局つまりそちらの当事者とそれから一般の国民の間のギャップだろうと思うんですね。で、これを埋めなきゃならないんで、これを埋めることができなければ、次の総理府の調査はさらにまた不安が出てくるかもしれないし、特に今の高レベル、低レベルを問わず、やはり漠然たる不安ということでいくならばどんな説明もなかなか通用しないだろう。  そこで大臣、僕が心配するのは、政府の安全対策に任しておけば大丈夫だというふうであればいいんですが、いろいろないきさつが今までにもありましたので政府そのものへの信頼感がいま一つ足りないわけですよね、特にこの原子力の安全対策については。だから、PRも必要だが、そのほかにももろもろと頭の痛い問題があるんじゃないかと思っているわけなんです。それで、きょうはとりあえず総理調査について二、三お伺いしたんですけれども、やはりこの原子力に関して国民が抱いている漠然たる不安というものは非常にこれは重要で、これがある限り常に原子力発電所を初めとして原子力の利用についてはぎくしゃくした問題がつきまとうと思うんですね。  そこで、大臣に最後にお伺いしますが、やはりこの世論調査を踏まえて、この漠然たる不安が七〇%になったけれども、どうしてかちょっとわからない面もあったり、専門家としてはいろいろこの調査結果の分析は難しいんでしょうが、少なくもこの政府のやり方に対する信頼度を増すことと、もう一つは、やはり漠然たる不安をなくすために、ただのPRだけでなくて、いろんなことを考えてもらわなきゃならないんです、これから。何をしろ、こうしたらいいというふうに僕もそんないい案があるわけじゃありませんが、これからその辺のことも十分に考えていただかないとまずいなと思うんですね。まあ、きょうは時間ないんですけれども、それについて。
  238. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 大変貴重な、これからの原子力平和利用について大事な問題についての御指摘をありがとうございました。  世論調査で七〇%の不安という答えが出たことにつきましては、私どもも実は意外に思った点もございます。それで、これは設問の仕方にも問題があるのかどうか、これも私ども検討しなければならないと思っております。  七〇%の不安の中を分析してみますと、放射能というものがよくわからないとか、放射能は怖いという印象を持っているとか、あるいは発電所の安全性の仕組みがよくわかっていないとか、そういったような十分な原子力の安全性についての、あるいは放射能、放射線に対する十分な理解が行き届いてない、そういう点からの不安というものの中身が出てきております。と同時に、ただいま御指摘の放射性廃棄物、これに対しては一体どうなるんだろうか、こういう不安、これは私は大変大事なポイントではないかと思っております。  したがいまして、分析をしてみて初めてその不安の七〇%がどういうものなのかということを説明しないと、ただ七〇%、前回の不安よりもふえた、こういうことでは、国民は本当に原子力というのはおかしいものだ、不安だ、こういうような方向に国民は思いがちになっていきます。これは私は何か工夫が必要なのではないだろうか。分析して、解説して初めてわかってもらう、こういうことは世論調査としては私は問題があるのではないだろうか、こういうこともこれから検討課題として関係省庁ともよく勉強さしていただきたいと思っております。これが第一でございます。  それから、もちろん国民への理解を得るためのいわゆるPRと申しまするか、PRというよりも、むしろ大事な理解を求めるということでは、国はもちろん当然前面に出てやらなければいけない第一の責任者であると思います。しかし、国が出ていくと、何かもう初めから目的を持ってやるのではないかという先入観でなかなか受け取ってもらえないという悲しさと申しまするか、宿命的なものも日本の風土の中にあるわけでございます。しかし、国はやはり責任を持ってその信頼を得るような、安全性に対する国民理解を根強く、忍耐強く、細かくやっていく必要があろうかと思っております。  と同時に、民間方々の活動というものも大変大事であろうと思います。最近、原子力発電所には原子力発電の仕組み、安全性等についての展示物がたくさん出ております。しかし、これもまた行けばなるほどと思いますけれども、と同時に、それは電力会社の経営の問題からやっているのじゃないかと、疑えば幾らでも疑えてくるような、そういう面もあろうかと思います。しかし、あらゆる分野でそのような理解を求める行動が必要であろうと思います。  と同時に、私は、学校教育の分野でも教科書のあり方あるいは指導要領のあり方、これについてもさらに客観的な記述、そして誤解のないような持っていき方ということについても、これは政府として、また民間の専門家の方々がそういうものをおつくりになるわけでございまするから、偏見のない、客観的な立場から原子力というものに対する教育の場でも私は配慮をこれからもしていただかなければならない点があるのではないかと、こう考えているわけでございます。  また、具体的な立地につきましては、公開ヒアリングという制度がございまして、これにつきましても、もちろん反対の立場からいろいろな行動をなさる方もございますが、つい先日も玄海の三号、四号機についての安全性に対する公開ヒアリングが行われました。これもおかげさまで関係の皆さんの御協力のもとに静かに公開ヒアリングの実績が上がったと思っております。もちろん反対の立場からは反対であったと思いますけれども、しかし公開ヒアリングの会場の中においては静かに細かく安全性の問題についても討論がなされたという報告を受けているわけでございます。したがって、このような制度を十分に活用しながらやっていくことが必要であろうと思います。いずれにいたしましても、あらゆる分野から積み重ねて、そして細かくやっていく必要があろうかと、かように考えております。  私自身のことを申し上げて大変恐縮でございますが、先般高知県に参りました際に、原子力の安全性についてという講演を頼まれました。このような難しい問題については、まあ数十人の方がおいでになるのならば結構じゃないかと思っておりましたところが、七、八百人の大勢の方がおいでになって、会場がもういっぱいで中に入れないという方までおられまして、一種の大臣が直接公開ヒアリングをやったようなことでございました。私は専門的な知識は少ないものでございまするから、安全局長を同行いたしてまいりましたけれども、結局私が全部二時間余り応答いたしました。その結果、自賛ではございませんが、東京に帰ってまいりましたら、いろいろな感想が寄せられてまいりました。大変よかったと、大臣があそこまで言ったら大変私ども安心をしたと、こういうようなこともございまして、これからはやはり政府も大きな役割を果たしていかなければいけないということを痛感いたした次第でございます。  そのようにして私どもは今後とも努力をいたしてまいりまするので、国会の先生方におかれましても、十分に今後御指導と、また国民に対してあらゆる機会において御指導を賜りたいと思う次第でございます。
  239. 高木健太郎

    委員長高木健太郎君) 両案に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時二十九分散会