○工藤万
砂美君 そこで、
試験炭鉱の問題については従来からいろんな提言をなされたり、あるいはまた夕張新炭鉱が閉山をする
時点で夕張新炭鉱を
試験炭鉱にした方がいいとかいろんな地元の要請がありましたり、いろんな学者からの御提言もあったことも私は伺っておるわけでございますけれ
ども、ただ、参考人としてお招きをしてお聞きした中で、例えば有吉参考人は、稼働炭鉱においてそれぞれテーマを与えて
研究していくべきだという御意見がございましたし、それからまた、伊木参考人は、
試験炭鉱ができたら、その山での成果そのものは上がるけれ
ども、他の山に適応できるとは限らないし、国費のむだ遣いだというような厳しい御
指摘もいただいておるわけでございます。さらにまた、一方磯部参考人に言わせますと、炭量の少ない
日本であり、このままの状態で稼行するならば、いわゆるあんパンの中のあんだけ食べてしまって、乱掘をされて石炭資源が多く投げられてしまう、
日本の石炭産業の寿命を縮める結果になる、したがって資源を大切にする
意味からも採炭
技術、保安
技術の完璧を期するためにも
試験炭鉱は必要であると、こういうふうに仰せられているわけでございます。
ただ私考えまするに この
試験炭鉱たまたま今三十万トン程度と言いましたか、その石炭の産出を進めながらということのようでございますけれ
ども、これは提言の中身を見ますと、
建設費としては百五十億円かかると言っておりますね。さらに年間の維持費たるや七十億円かかるんだ、こういうことでございます。ですから、十年間で合計いたしますと八百五十億円程度かかるわけでございましょう。それからまた、準備
期間が恐らくは三年ぐらいはかかると思われますね。そうすると、七年間というものは三十万トンを出炭するといたしましても二百十万トン、販売価格一万二千円で
計算していきましても差し引きで大体六百億円ぐらいの金を使うことになると思うんですよ。これは概算ですから、果たしてこのとおりいくかどうかわからないにいたしましても、これは大変な金だと思うわけでございます。
したがいまして、私は決してこの
試験炭鉱の設置に反対するものではなくて、必要性は私は認めると申し上げても過言ではございませんが、ただ考えなければならないことは、山というものは毎日地下で動いている、いわゆる生き物でございます。毎日毎日が生きている、こういうことでございまするし、しかも、
日本の炭鉱で、二十八炭鉱ございましょうか、その炭鉱の
一つ一つの坑内
条件というのは全く違っているわけでございます。
例えば、第一点で考えてみますと、地質的に盤圧の強いところ、いわゆる上盤が押す、下盤が盤ぶくれをするとか、したがって崩落
事故が多く、そしてまた運搬災害が頻発する地質の炭鉱の落盤を優先して考えていかなければならぬ炭鉱もございましょう。また、二点目としては、ガス袋が非常に多い、ガス帯が多いために、常時ガス突出防止等の
対策をしていかなければならぬ。それで今専門にガス抜きをやらなければならぬという炭鉱もございましょう。さらにまた、三点目としては、深部に入ったために坑内
温度が非常に上がって、黙って放置しておきますと四十度以上になってしまうということであるから、そんな労働
条件が劣悪化していく中で働くことは困難である。だから、その
温度の低下についてはどうするというような
研究もしなきゃならぬ。さらにまた、四番目には、恐ろしい坑内出水というものの
対策をどうするか。さらにまた、その五番目としては、賦存する炭鉱の枚数によって坑内骨格構造を策定するための方策というものがそれぞれ違ってくるわけですね。これは石炭
部長御存じでしょう。そういうこともございます。それからまた、六点目は、平層でありますとか緩傾斜、あるいはまた急傾斜、立て樋、あるいはまた薄層の稼行の
研究も一体どうしたらいいんだという問題もございましょう。さらにまた、七点目でございますけれ
ども、原料炭山と一般炭山とはっきりしておりますけれ
ども、これは同じコストがかかりながら手取りが違ってくるわけですね。したがって、どこに生産目標を置いたらいいかという
経済性というものを考えながらやっていかなきゃならぬというふうに、非常に難しい問題が多々ございます。
ですから、これだけの
条件が、
一つの例えば
試験炭鉱をつくったからといって、
日本の全炭鉱全部適応するということは全くこれはあり得ないわけでございますね。そういう観点から恐らくは伊木さんあたりも国費のむだ遣いではないのかといったような御
指摘をなさったと思うんでございますけれ
ども、私
ども実態として考えてまいりまする場合に、もっといい方法がないものかと。例えば、国の方で一生懸命やっていらっしゃるようでございますけれ
ども、当面はそれぞれの抱えている炭鉱の特色に対する
研究テーマを指定して、
テスト炭鉱という言葉を使ってなんでございますけれ
ども、
テスト炭鉱としての坑内の稼行地域を指定して保安
技術あるいはまた採炭
技術というものを
究明していく。そしてまた、炭鉱の第一線の係員の徹底した教育を重点的に考えていかなければならぬし、さらに加えて、従業員の方々の総合的な教育を推進することによって、私はある程度
試験炭鉱の目的はそういうことで達せられると思うわけでございます。
例えば、我々、私自身も炭鉱の
経験ございますし、現在もなおやっておりますけれ
ども、
一つの高抜けをした、落盤、崩落
事故が起きたという場合には、我々のときには、言うならばカラコを組んで、カラコというのはサドルですが、サドルを組んで、山の安定したのを見計らいながら抑えていく。ところが今は、もう落盤したら、高抜けしたら、全部高抜けしてしまって山が落ちつくまで待つ、その間一週間かかろうが十日かかろうが放置しておく、だから災害が大きく拡大されるという問題もございます。そういう
技術なんというのは、実は今の炭鉱マンにはなかなかできないことでございますから、そういうこともあわせかねて教育をしていくとか何とかやっていくことの方がよりベターであるということから考えますと、やはり今までのいわゆる預けた各テーマにもっと積極的にお取り組みいただいて
予算化もしていただく、こういうことになる方が私はベターだと思いますけれ
ども、いかが考えますか。簡単で結構です。