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1984-03-10 第101回国会 衆議院 予算委員会第六分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十九年三月五日(月曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月九日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       伊藤宗一郎君    熊川 次男君       田中 龍夫君    井上 一成君       木下敬之助君    瀬崎 博義君 三月九日  伊藤宗一郎君が委員長指名で、主査選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和五十九年三月十日(土曜日)     午前九時開議  出席分科員    主査 伊藤宗一郎君       熊川 次男君    井上 一成君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君       瀬崎 博義君    簑輪 幸代君    兼務 井上 普方君 兼務 小川 国彦君    兼務 岡田 利春君 兼務 佐藤  誼君    兼務 島田 琢郎君 兼務 松浦 利尚君    兼務 小川新一郎君 兼務 柴田  弘君    兼務 竹内 勝彦君 兼務 伏屋 修治君    兼務 小渕 正義君 兼務 米沢  隆君    兼務 中島 武敏君  出席国務大臣         通商産業大臣 小此木彦三郎君         国務大臣         (経済企画庁長          官)      河本 敏夫君  出席政府委員         経済企画政務次         官       山崎武三郎君         経済企画庁長官         官房長     窪田  弘君         経済企画庁長官         官房会計課長  遠山 仁人君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         通商産業大臣官         房長      福川 伸次君         通商産業大臣官         房審議官    棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業大臣官         房会計課長   山本 雅司君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    石井 賢吾君         通商産業省基礎          産業局長    野々内 隆君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         通商産業省生活         産業局庁    黒田  真君         工業技術院長  川田 裕郎君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁長官官房審議          官       松田  泰君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君         中小企業庁長官 中澤 忠義君         中小企業庁指導         部長      粟屋  忠君  分科員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部取         引課長     植木 邦之君         国土庁大都市圏         整備局整備部長 立石  眞君         法務省刑事局刑         事課長     北島 敬介君         大蔵省主計局主         計官      吉本 修二君         大蔵省主計局主         計官      中平 幸典君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      阿部 憲司君         農林水産省農蚕         園芸局繭糸課長 高木  賢君         農林水産省食品         流通局砂糖類課         長       高木 勇樹君         郵政省電気通信         政策局データ通         信課長     内海 善雄君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   福渡  靖君         建設大臣官房地         方構成課長   小野 邦久君     ————————————— 分科員の異動 三月十日  辞任         補欠選任   井上 一成君     松沢 俊昭君   木下敬之助君     滝沢 幸助君   瀬崎 博義君     簑輪 幸代君 同日  辞任         補欠選任   松沢 俊昭君     上野 建一君   滝沢 幸助君     菅原喜重郎君   簑輪 幸代君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   上野 建一君     井上 一成君   菅原喜重郎君     木下敬之助君   林  百郎君     瀬長亀次郎君 同日  辞任         補欠選任   瀬長亀次郎君     岡崎万寿秀君 同日  辞任         補欠選任   岡崎万寿秀君     辻  第一君  辞任         補欠選任   辻  第一君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   津川 武一君     瀬崎 博義君 同日  第一分科員松浦利尚君、竹内勝彦君、第二分科  員岡田利春君、小渕正義君、米沢隆君、中島武  敏君、第四分科員柴田弘君、第五分科員島田琢  郎君、小川新一郎君、伏屋修治君、第七分科員  井上普方君、小川国彦君及び第八分科員佐藤誼  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算  〔総理府経済企画庁)及び通商産業省所管〕      ————◇—————
  2. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりましたので、御協力のほどよろしくお願いを申し上げます。  本分科会は、総理府所管経済企画庁並び通商産業省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省庁所管事項説明は、各省庁審査の冒頭に聴取をいたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算総理府所管経済企画庁について審査を進めます。  政府から説明を聴取いたします。河本経済企画庁長官
  3. 河本敏夫

    河本国務大臣 昭和五十九年度の経済企画庁関係予算及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁予算額は三百十九億八千八百万円となっており、これは前年度予算額に比べて二百四億五千四百万円の増額であります。  また、財政投融資計画につきましては、海外経済協力募金に係る分として三千七百九十八億円を予定しております。  以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  第一に、経済協力積極的展開を図るために必要な経費として二百十億円を計上しております。  この内訳の主なものは、海外経済協力基金交付金二百九億九百万円であります。海外経済協力基金につきましては、経済協力の新中期目標のもとで政府開発援助の拡充に努めるため、事業規模として六千四百八十億円を予定しております。この原資としては、前述の交付金のほか、一般会計からの出資金が一千六百億円、資金運用部資金からの借入金が三千五百二十八億円、政府保証債が二百六十億円、自己資金等が八百七十三億円となっております。このうち一般会計からの出資金大蔵省に計上しております。  第二に、物価政策推進に必要な経費として二十六億八千四百万円を計上しております。  この内訳の主なものは、生活関連物資の需給、価格動向調査監視、その他各省庁の所管する物価対策を機動的に実施するための経費二十五億九千三百万円等であります。  第三に、国民生活政策推進に必要な経費として、二十五億五千六百万円を計上しております。  この内訳の主なものは、国民生活センター運営に要する経費十九億五千七百万円等であります。  これらのほか、経済動向調査分析内外経済対策推進、「一九八〇年代経済社会展望指針」に基づく諸政策推進等に必要な経費として、十七億円を計上しております。  以上、五十九年度における経済企画庁関係予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議のほど、よろしくお願いいたします。
  4. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 以上をもちまして経済企画庁についての説明は終わりました。     —————————————
  5. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位お願いを申し上げます。質疑の持ち時間はこれを厳守をされ、議事進行に御協力お願いを申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  6. 松浦利尚

    松浦分科員 いよいよ来年度予算衆議院通過目前でありますが、一月の二十日に大蔵省予算内示が出されました直後、河本経済企画庁長官は新日本製鉄会長斎藤英四郎さん、東洋大学教授新田俊三さんと対談をなさいまして、この五十九年度の予算経済成長への寄与率はゼロである、全くない、私もそのとおりだと思っておりますし、これからの所得いかんによってはマイナスに作用する場合だってあり得る、増税が含まれておりますから。そういった意味では河本長官発想に全く同感でありますが、今日でもそのお気持ちに変化はありませんですか。
  7. 河本敏夫

    河本国務大臣 変わりありません。
  8. 松浦利尚

    松浦分科員 それからさらにお尋ねをいたしますが、今度の本会議で我が党の井上議員の質問にもお答えになっておられるわけでありますが、一方で減税をして一方で増税をする、こんなことはやるべきではない、やるならもっと大幅な減税をやるべきである、かつての一兆八千億の減税昭和四十九年に行われたのでありますが、今日の経済規模に引き直すとそれは四兆である、こう言っておられるわけであります。また、アメリカの一九八四年度の減税額を見ますと五百四十億ドル、アメリカGNP比率で見ますと一・四八%、これを我が国の五十九年度のGNPの二百九十六兆に計算をいたしますと、まさしく四兆三千八百億。言われる四兆円というのがまさしく根拠を持った、我々としても大変理解できる、景気回復を願うところであれば理解できる数字でありますが、そのお気持ちは現在も変わりありませんか。
  9. 河本敏夫

    河本国務大臣 予算編成に際しまして一連の税制改革が行われましたが、その作業の過程で私が政府与党連絡会議発言をいたしましたのは、一つは、一兆円の減税をして一兆円の増税をするというようなことは余り見ない、むしろやめてしまった方がよろしい、しかしこれまでの経過もございますから、どうしてもやるというのであれば、次善の策として増税幅はできるだけ圧縮すべきである、第二に大衆課税にかかわる分についてはその幅をさらに極力圧縮すべきである、それから第三には投資減税についてはできるだけ大きく実施すべきである、こういう趣旨意見を申し述べたのであります。  それから、あわせて大蔵大臣と党の政務調査会長に対しまして、今後の課題として、今回の税制改革は余り経済にも影響がないので、もう一回大規模な抜本的な税制改革を早急に検討する必要があるのではないか。これは、私が経済政策を担当しておる立場から意見を申し上げますということを前提として若干のことを提案しておいたのでございますが、その一つが、税制の根本的な改革をするに際して抜本的な直間比率見直しをしたらどうだ、そのためには所得税の大減税、それから若干間を置いて景気がよくなってから間接税の増徴、こういうことを考えたらどうでしょう、そういうことを軸とする税制の抜本的な改革をこの際関係者の間で至急に検討していただきたい、こういう趣旨提案をしたことは事実でありますが、しかし正式に私が四兆円ということを言ったことはございません。それは他の場所で、所得税大型減税とはどういう意味ですか、こういうお話がございましたので、その一例として昭和四十九年の減税幅を挙げまして、そして昭和四十九年の減税幅は現在の経済規模に直すとおよそ四兆になります、それは一つの参考になりましょう、こういう趣旨のことを別の場所で言ったということであります。政府与党連絡会議では、正式な提案として言ってはおりません。
  10. 松浦利尚

    松浦分科員 今「増税なき財政再建」という枠を中曽根内閣ははめられておるわけです。それでは具体的に大幅減税をやるとすれば、今大臣が言われたように何らかの形で、どちらかで税収をふやさなければその四兆近くの対応する税というのは出てないはずですね。その根拠が今言われた直間比率見直したというふうにいみじくも——いみじくもではありませんが、常々言っておられる直間比率見直しだ、こう言っておられるわけです。  この三人の対談の中でも、今言われたように思い切って減税をする、増税減税を同時にやれと言っておるのじゃない、要するにまず減税をやれ、それから増税をしたらどうか、直間比率見直しをしたらどうか、こういうことをこの対談では述べておるのです。この記事によりますと、「私の考えでは、年の初めに大減税をやり、年の終わりに間接税増税を行ったらいい。一年の期間があれば、経済の状態がよくなっている。」こういうふうに言っておられるわけですね。端的に言うと、こういうことですね。
  11. 河本敏夫

    河本国務大臣 まあそういうことです。
  12. 松浦利尚

    松浦分科員 そうしますと、極端に言うと、経済運営を担当なさる大臣直間比率見直しをするということは、間接税、俗に言う消費税見直し大衆課税と言われておるそういった一辺の税を引き上げる以外に方法がない。その発言の裏づけとして、ずっと今までの政府経済見通し実績をチェックをしてまいりますと、これは当然の結果でありますが、租税弾性値というのは、名目成長実績乖離幅が狭まってきますと租税弾性値がずっと落ち込んでおります。乖離幅が開いてくると租税弾性値は上がるわけですね。ですから、名目成長が上がれば上がるほど現在の税体系の中でも税収はふえていくはずです、租税弾性値が上がってまいりますから。間接税を増徴するということは、私は物価に必ずはね返ってくると思うのですが、そういったことを考えると、実質的に、経済企画庁長官の言っておられる減税をまずやって、そして間接税見直しをやって増税をすればいいという発想の裏には、ある程度名目成長を確保したらいいという発想がおありになるのではないかという気がしてならぬのですが、そういうふうに理解をしてよろしいですか。
  13. 河本敏夫

    河本国務大臣 私がたびたび予算委員会で御答弁をいたしておりますのは、昨年政府が発表いたしました「一九八〇年代の展望指針」、これはこれからの経済運営基本方針を明らかにしたものでありますが、これによりますと、この八年間、五十八年度から六十五年度までの八年間平均四%の成長をする、実質成長が四%、名目は六ないし七%成長、これを目指す、こういうことが書いてあります。八年間の平均成長率であれば、私はそんなところでいいのではないかと思いますが、ただ経済は非常に激しく動いておりますので、時にはその間二、三%成長しかできないときもあろうと思います。しかし、時には五、六%成長ができるときもあろうと思うのです。過去四年間は第二次石油危機の厳しい影響を受けまして日本経済はずっと低迷をしておりましたが、幸いにことしになりましてからアメリカ経済等が上昇してまいりましたので、客観情勢としても大変よくなってまいりました。そこで、ようやく五年ぶりに日本経済も上向いてくる気配であります。条件が整いつつあると思うのであります。こういうときに、いろいろ工夫をして我が国潜在成長力が十分発揮できるような、そういう財政経済政策を展開したらどうかという趣旨のことを何回か申し上げてまいりました。  私の言いたいのは、我が国経済条件は他の先進国に比べて非常にいいわけでありますから、他の国よりも高い経済成長ができましても決しておかしくはございません。それが現在はできていない、こういうことでありますから、いろいろ工夫をして持てる力を十分発揮できるような、そういう経済政策を進めるについての絶好のチャンスではないか、こういうことを言っておるわけでございまして、結果的には実質成長もそうすれば高くなる場合もありましょう。あるいは名目成長も高くなる場合もありましょう。しかし、名目成長だけを高めるという目標経済政策を進めていこう、こういうことではございません。
  14. 松浦利尚

    松浦分科員 当然のことだと思うのですが、しかし税というものだけを考えていった場合には、名目成長が高まればその分だけ、実質成長との乖離が広がっていけばそれだけ税収というのはふえてくるということであります。ですから、経済企画庁長官がこの対談の中で言っておられるように直間比率見直しをして間接税を増徴するということは、逆に言うと物価にストレートにはね返ってくると私は思うのですが、そうすると、当然のように名目成長は高まってくるが実質成長は低いという結果になるかもしれない。しかし、言われるように確かに税収だけはふえていくわけなんですね。そのことをちょっと疑問視するものですから。
  15. 河本敏夫

    河本国務大臣 もし物価を上げて名目成長を高めるというような発想経済運営を行うとすれば、それは全く間違いだ、このように私は思うのです。そうじゃございませんで、経済の持てる力を十分発揮できる実質成長率を高める、そのことによって自然に名目成長率も高めていく、こういう政策をやるべきだということでございまして、経済政策を進めます場合に一番大事な点は何かといいますと、やはり物価の安定であります。物価が安定しておりませんと、すべての経済政策は自由にやれないわけです。したがいまして、あくまで物価の安定ということはすべての政策前提だ、私はこのように思っております。
  16. 松浦利尚

    松浦分科員 それでは、一部にあるうわさですが、調整インフレという発想ですね、そういうお考え方はこれからも絶対にとらぬ、そういうふうに理解をしていいですね。
  17. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりであります。
  18. 松浦利尚

    松浦分科員 さらにお尋ねをいたしますが、総理府統計局によりますと、昨年一年間の消費家計支出というものは、対前年度の比率で、一昨年が二・七%でありましたけれども、実質〇・六%に落ち込んでおる。GNPの約六割を占めておるのはもう御承知のように個人消費なんでありますが、その個人消費が全く停滞をしておる。ですから、個人消費停滞をしておるときに活を入れるのは減税政策だ、私はこう思うのです。まさしくレーガンはそのとおりの減税政策日本円換算で四兆三千八百億円、八四年度で行っておるわけであります。  そうすると、今年度の実質所得というのが一体どれくらい上がるかというのは、政府見通しは出されておりますが、今のベースアップにとどめるとか、要するに、財界が言っておる賃金の抑圧、抑えるという政策ではそうそう所得を期待するわけにはいかない。そうしますと、この一年間の経済運営の中で、この予算経済については寄与率は全くゼロである。民間活力に期待するということになるわけですが、その民間活力の約六割を占める個人消費拡大がなければ景気浮揚は望めない。結果的に経済摩擦を起こすかもしれないが、貿易に頼らざるを得ない経済運営が行われる。それを避けようと思えば、どうかして個人可処分所得をふやす政策をとらなければいかぬ。  今予算審議されておるさなかでのことでありますが、結果的に、こういう悪い経済運営状況の中で年末を迎えたとすれば、経済担当大臣としては極めて遺憾なことだ。大臣が主張したとおり中曽根内閣経済運営をやらなかったからこうなったんだ、こういうことだけでは済まされないと思うのですね。当然そのときには大幅減税なり何なりの措置を講じて景気浮揚個人消費拡大政策をとらざるを得ない。そういうものについての経済大臣としての御見解、あるいは私自身としては、もしそういうことになれば、そのときこそリーダーシップ経済運営についてはリーダーシップでありますが、発揮して補正予算大幅減税をやるんだ、そういう発想は今日お持ちですか。
  19. 河本敏夫

    河本国務大臣 最近の統計が発表されておりますが、今お述べになったとおりの実質所得の伸びだと思います。  五十八年度の経済一つの特徴は、雇用者所得政府の当初見通しよりも非常に落ち込んだことにあると思うのです。それが最近の統計になってあらわれておると思います。五十九年度といたしましては、雇用者所得が一人当たりは四・七%、それから全体として六・八%見当伸びる。五十八年度よりは若干伸びるのではないか、このように想定をいたしております。したがいまして、私どもといたしましては、この春のベースアップ人勧仲裁、こういうものの取り扱いは非常に重大な関心を持っております。  それから、後段お述べになりました補正予算その他の問題でありますが、ことしの経済運営基本方針といたしまして、予算編成最終段階政府自由民主党との間で最終的に打ち合わせいたしました基本方針といたしましては、まず第一に物価の安定を図る、それから第二に財政政策金融政策を機動的に運営する、さらにその後追加いたしまして、対外経済摩擦を早急に解決して保護貿易の台頭を抑える、こういう基本方針を五十九年度の経済運営指針といたしております。財政政策を機動的に運営するという意味は、これは経済情勢いかんでは財政の出動する機会あり、チャンスあり、こういうように私は考えておるのですが、先般の政府と野党との予算修正折衝の際に、自由民主党の方から、経済動きいかんでは補正予算を組んで公共事業を追加してもよろしいという趣旨答弁があったように聞いております。それは前提条件がついておりまして、経済状況いかんでは、こういう前提条件がついてはおりますけれども、そういう趣旨の回答があったように聞いております。要するにそのことは、別の言葉でいいますと、財政を機動的に運営する、こういう趣旨だと思います。  現時点では補正予算を組むとか組まないとかそういうことを軽々に申し上げる段階ではございませんが、経済情勢政府の期待するとおり順調に行けばそういうものを組まなくてもいいわけですけれども、順調に行かないという場合には、これはその段階でよく研究しなければならない課題だ、このように思います。
  20. 松浦利尚

    松浦分科員 今の答弁に付随して二つほど御質問いたします。  その第一点は、ことしのベースアップ、特に人勧仲裁、そういったものを非常に注目しておる、こう言われたのですが、現実に人勧が凍結されたり値切られたりしてきておる状況なんですが、人事院勧告あるいは仲裁、こういったものはある程度市場調査に従って、過去のデータに従って積み上げられてきた人勧であり仲裁なんですから、そういったものについては当然守るという原則がなければ、個人消費拡大の期待はなかなか難しい、そう思うのです。経済担当大臣としては、人勧を抽象的な言葉でなくて完全に守るべきだと考えられることが本筋だと私は思うのでありますが、その点についての御見解を承っておきたいと思います。
  21. 河本敏夫

    河本国務大臣 人勧仲裁は、制度の建前からいたしまして完全実施ということが基本原則でなければならぬと私は思います。それが制度の建前だと思うのです。ただし、国政全般の立場から考えますと、いろいろな要素もございますから、勧告等が出てまいりました段階で、国政全般の立場からこれを完全実施するための最大限の努力をしていくというのが政府の立場でなければならぬ、こう思っております。
  22. 松浦利尚

    松浦分科員 それから、アメリカ経済回復と対応して我が国がおくれておるのは、個人消費の中のポイントは、住宅建設が非常に停滞をしておるということだと思うのですね。これは経済企画庁の発表された海外経済動向指標でありますが、これを見ますと、一昨年、一九八二年の一、二月ごろは九十万戸程度の民間住宅建設状況でありましたものが、最近になりますと百九十万戸近くに上ってきておる。しかし、日本の場合はその住宅建設というのが全く滞っておる、ここにもアメリカと日本と違う基本的な大きな問題点があると思うのです。  これを調べてまいりますと、なぜアメリカでこれほど建設が伸びてきたかというと、まさしく思い切った減税があったからだと思うのですね。個人住宅の建設を促進するために、大臣としてはどういう手を打たれるのか。アメリカは御承知のように、住宅を建設した場合、ローンを借りた場合、そのローンの金利は減税をする。ですから、実質ゼロの金利で家を建てるような仕組みになっておるのです。ただ、自分の手持ち資金がなかったために住宅が停滞をした。それをレーガンが思い切って減税しましたから、その減税分とローンを借りることによって住宅がぐっとふえてきた。確かに住宅金融公庫等の資金融資、低利融資ということで努力はしておられるようでありますが、そういった抜本的な思い切った対策がなければ、土地問題を含めて住宅の建設は停滞をする、そのことが大きなブレーキになると思うのですが、そういう点について大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  23. 河本敏夫

    河本国務大臣 アメリカの住宅は、第二次石油危機の直前までは大体二百万戸の水準がずっと維持されておったわけです。それが今のお話のように、第二次石油危機の厳しい影響を受けまして、八十万戸、九十万戸に落ち込んでしまった。落ち込み方が非常に厳しかったわけであります。日本も第二次石油危機以前は百五十万戸前後の水準が続いておりましたが、今落ち込んで百十万とか百二十万とかいう水準で低迷しておるわけであります。落ち込み方は日本の方が少なかったのでありますけれども、それにいたしましても相当な落ち込みであります。しかし、住宅に対する需要は非常に大きい。それがなかなか進まないのは、やはり各家庭の資金事情からだ、こう思います。住宅政策が順調に進みますためには、政府のいろいろな援助等も必要でありますけれども、やはり個人の所得がある程度ふえていくということがこれはもう当然の前提条件だ、こう思います。
  24. 松浦利尚

    松浦分科員 やはり個人の所得がふえていくということの重要性を強調されたわけですから、何といっても人勧仲裁、そういったものについてはぜひ、先ほど言われたように完全実施という方向で経済企画庁はリードしてもらいたいというふうに考えます。  もう時間がなくなりましたから、最後に一、二お尋ねをいたしますが、昨年の八月九日ですか、OECDが対日審査報告をしたわけですが、その中の内容を見ますと、長官が言っておられると同じようなことをOECDが日本に勧告をしておるのですね。この内容を見ますと、「OECDは、景気のリード役を内需と外需に分けてみた場合、内需にはあまり期待できないとの見方を示している。インフレはおさまっているのに海外の高金利に引きずられて利下げ政策がとれず実質金利が高くなっていること、巨額の財政赤字を抱えて引き締め基調の財政政策を強いられているためだ。」そういうことを書いて、「その結果、日本の景気回復は世界経済、特に米国経済の持ち直しに助けられた輸出拡大にリードされるとOECDは指摘している。」云々ということを書いて、そしてさらに日本に対してどういうことをせよと言っておるかというと、内需を拡大をせよ、それから間接税の課税対象の拡大により公共投資の増加を図ること、そのことが財政再建を妨げずに経済に刺激を与える効果を持つ、こういうふうに勧告しておるのですが、このOECDの勧告は現状の日本の姿に当てはまっておるというふうに思っておられるか、それともそうではないと思っておられるのか、このとおりだと大臣自身も思っておられるかどうか、最後に。
  25. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本の経済のいろいろな条件は、先進国に比べて劣ってはいないのです。すぐれた点が非常に多いと思いますが、ただ一つ問題は、社会資本がまだ極めて不十分である。欧米諸国に比べて社会資本投資の累積というものが非常に不十分である、もうそれは周知の事実でございます。  そこで、できるだけ社会資本投資を充実していかなければならぬということで、政府の方では何回か五ケ年計画を立てまして、現在もその五ケ年計画を進めておるわけでございますが、ただ、それを間接税の増徴でやれというのも一つの案かと思いますが、そういうことよりも財政全体を強化する、その過程において社会資本投資を進めていくということだと思うのです。社会資本投資を充実するということは、これは私は賛成でありますけれども、その財源を間接税だけに頼れという意見は少し偏っておるのではないか、このように思います。
  26. 松浦利尚

    松浦分科員 最後に、御承知のように今円が非常に高くなっております。少し乱高下はありますけれども、大体安定した方向に推移しておる。この際思い切って公定歩合の引き下げをやる時期に来ておるというふうに思うのですが、これは当然日銀の政策にかかわる分野ですけれども、経済担当大臣としては、公定歩合引き下げについてどういうお考えを持っておられますか。
  27. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在の我が国物価水準から見まして、金利は非常に高い水準にあると思います。したがいまして、ことしの経済運営基本方針として金融政策を機動的に進めていくという趣旨は、条件が熟せば物価水準に合ったような低金利政策をとりたい、そういう趣旨であります。  しかし御案内のように、金融政策特に金利政策を進めます場合には、これを機動的に運営することを妨げておる内外の幾つかの要因がございます。その要因の一つがこれまでの円安だった、こう思うのです。幸いに一週間ばかり前から若干円高の方向になってまいりました。ただ、これが定着するのかどうかはもう少し様子を見ないとわかりません。定着すれば金融政策を機動的に運営できる一つ条件は整った、このように思いますが、これだけではございませんので、ほかの条件もございますから、私どもといたしましては、経済政策を進める上からいって物価に合ったような金利政策を進めたいと思っておりますけれども、諸条件が熟しませんとそれができませんが、もう少し様子を見なければ日本銀行も判断しにくいのではないか、このように思います。
  28. 松浦利尚

    松浦分科員 ありがとうございました。終わります。
  29. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて松浦利尚君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  30. 井上普方

    井上(普)分科員 私は河本長官にお伺いするのですが、先般お伺いいたしましたときには、予算編成の直後にあなたが御発言になった、閣僚がそういう予算編成の直後に大型補正予算を組むべきだと言うことについての矛盾を私は先般お伺いいたしたのであります。しかしきょうは、内閣の一員ではありますけれども、経済企画庁長官として、あるいはまた政治家河本敏夫氏としての経済政策運営についてお伺いいたしたいと思うのであります。  先般私は、人口問題アジアフォーラムの会議に出席いたしました。そのときに西ドイツのシュミット前総理がやってまいりまして、経済政策について延々と一時間半にわたる演説をぶちました。その演説を承りまして、経済政策にいかに精通しておるか、あるいはまたダイナミックな考え方を披露したのに私は一驚いたしたのであります。日本の総理大臣には、中には経済音痴と言われるような総理大臣もおられる。そういう点では厳しい内外の経済情勢の中において、日本の国としてはまことに情けないなという感をその時には深くいたしたのであります。  河本さんは、先般も申し上げましたが、「エコノミスト」におきまして経済拡大均衡論をお述べになったように私は承っておる。先ほども松浦君の質問に対しまして、機動的、機能的な経済運営をやっていくべきだというのが基本にあり、そのまた奥には、日本経済というものは底力があるんだ、それが発揮できていないというお考え方がすべての基礎になってのお話、拡大均衡論のごとく私は承っておるのであります。そこで私は、そういうような抽象的なことを仰せられましても非常にわかりにくいのでありますから、日本経済の底力、これが発揮せられないというのは一体どこにどういう点にあらわれておるのか、また底力というのはどこにあるのか、そこらあたり分析してお答えを願いたいと思うのです。いかがでございますか。
  31. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本の経済の基礎的条件アメリカその他の国々、先進国に比べてすぐれておることは御案内のとおりでありますが、その力が十分発揮できない原因はいろいろあると思います。その一つは、やはり国民の所得が伸び悩んでおる、ここに一つの大きな原因があると思います。それから第二は、物価は非常に安定をしておるけれども、その物価水準に見合ったような金利水準にないということ、これも一つの大きな障害になっておるのではないか、私はこのように思います。ほかにもいろいろあると思いますが、大きな点はそういうところではなかろうかと思います。
  32. 井上普方

    井上(普)分科員 所得が伸び悩んでおるあるいは物価水準に見合う金利になっていないところが日本の経済の力が発揮できないゆえんだ、こうおっしゃるのですけれども、いや私がお伺いしておるのは、日本の底力とおっしゃいますけれども、それは一体どこに由来しておるのか、どういう点が底力なのか、その点をお伺いしているのです。
  33. 河本敏夫

    河本国務大臣 底力という意味経済潜在成長力、こういうことだと思いますが、やはり私は、その第一は我が国経済の国際競争力だと思います。国際競争力は先進国の中では一番力が強い、このように思っております。技術水準も当然高い、こういうことであります。それから労働者の素質も非常にすぐれておる、労働力も豊富である、これも一つの大きな力だと思います。そういうことを背景といたしまして、貿易・経常収支とも極めて順調であります。さらに物価は世界一安定しておる、これも私は最大の強味だ、このように思っております。防衛費の負担も他の国に比べて、GNPに比べますと相対的に小さい。これも経済政策がやりやすい一つの背景のように思います。  そういうことを総合してみましたときに、経済の基礎的条件先進国の中では一番いい条件にあるのではないか、このように判断をしております。
  34. 井上普方

    井上(普)分科員 今のお話の、国際競争力が日本は十分あるんだ、それは国際競争力があるんだとおっしゃられましても、一体どこにあるのか私たちはわからない。その背後には、技術水準が高いんだ、すぐれておるんだ、あるいは労働力が豊富であり優秀なんだ、あるいは物価が安定していること、あるいはまたGNP貿易量を比べてみると貿易量の方がまだまだ伸びる可能性があるんだ、こうおっしゃる。しかしながら、国際競争力がそれほどあるのかというようなことを考えますときに、どうもそこまで、国際競争力という名のもとにともかく抑えられた経験が我々はある。  例えて言うならば、公害企業が、昭和三十四、五年くらいから高度成長政策が激しくなったことがございました。そのとき、私はある実業家の諸君に、あんたのところはなぜこのような公害を出すんだと言いましたならば、直ちに返ってきたのは、多少公害を辛抱してもらわなければ国際競争力が保てないんだ、だから国民の皆さん方辛抱してくれということを言われたのを私は記憶いたしておるのであります。国民にそういうような犠牲を強いながら、片方においては経済成長をやっていったのがかの高度成長であった、全部ではございませんけれども、それが一つの大きな原因であったと私は思います。したがって、公害問題がやかましく取り上げられ、公害規制が厳しくなりました昭和四十五、六年以降日本の高度成長は、もちろん石油ショックというような事件もございましたけれども、一応落ちざるを得なかった、私はこのように解釈いたしておるのであります。そして公害技術あるいは公害対策につきましては、先進国におきましては一、二の状況ができてきた。  私は、こういうようなことを考えると、それは技術水準の高いことも認めます。しかし、科学技術の水準というものは世界のトップレベルにあると申されないと私は思う。技術が突出しているところはあります。しかし、それは科学技術の一部分であって全体ではない。例えて言いますならば、アメリカの宇宙技術あるいはまた軍事技術が民間に開放せられた場合に、果たしてこれに対抗するだけの技術が日本にあるかということを考えますならば、日本の技術水準は、全体としては高うございますけれども、世界のトップ水準で突っ走っておるとは私には決して思えないのであります。この点についてまずお伺いいたしておきたいのであります。  第二点といたしまして、物価は安定いたしております。そのとおりです。物価は安定はいたしております。しかし、国民の生活というものはそう楽じゃない。ここらあたりを、労働力は確かに優秀だろうと私は思いますし、また豊富だとおっしゃいますが、まあ資本側から見れば豊富であるかもしれません。しかし、このことで国民の生活が先ほども申しましたように抑えられておる、国民所得が抑えられておる。この実態に対しましてどうお考えになっておられるのか。  それから第三点といたしましては、あなたは今、今の日本の拡大均衡をやるには経済は機動的に機能的にやらなければならない、こうおっしゃる。私もそのとおりであると思います。経済は生き物だと言われますから、そのとおりだろうと思いますけれども、一体現時点において何をなすべきか。円が為替で高くなってきた。今状況はかなり変わっておる。しかしながらこの状況、現在時点において一体拡大均衝をやるにはどういうような機動的な機能的な行動を経済政策としてとるべきか。  以上三点にわたって、河本さんにお伺いいたしたいのであります。
  35. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、今緊急の問題といいますと予算をできるだけ早く成立させていただく、こういうことだと思うのです。予算そのものは五十九年度の経済成長に対しましては果たす機能はゼロだ、こういうことをたびたび申し上げております。しかし、ゼロという意味は下支えはしておる、こういうことだと思うのです。ですから、それなりに大きな役割を果たしている、こう思いますので、やはり予算が計画どおり実施されるということが当面の最大の急務だ、このように思っておりますが、それをてこといたしまして、経済の動き等を見ながら財政政策金融政策を機動的に運営をしていく、こういうことを考える必要があろうと思います。それから、今日本の大幅な黒字から保護貿易的な動きが出ておりますから、やはり対外貿易摩擦、対外経済摩擦というものはもう緊急に解決する、これは焦眉の急だ、このように思っております。
  36. 井上普方

    井上(普)分科員 予算を早急に成立さすことが基礎的条件だとおっしゃいますけれども、わずか十日や二十日ぐらいおくれたところで大したことはあるまいと私は思う。これをもって経済成長のために予算を早急に成立させいというのはひきょうじゃございませんか。余りにもひきょうな経済政策だと私は言わざるを得ない。国家予算が国民の経済成長に及ぼす、GNPに及ぼす影響というものは何%あるのです。これはしかし経済成長率に寄与するどころか、成長に対してはゼロだということになっているけれども、それは基礎的条件だとおっしゃる、そのとおりだと私は思う。しかし、これは早急にともかく成立さすことが焦眉の急、緊急課題であるというような御認識のもとでおっしゃっておられるならば、あなたの経済政策は、私は噴飯物だと言わざるを得ないと思うのです。  それから、財政を基礎にして、そして財政経済政策を機動的に機能的に展開することなんて、まことに抽象的なお話じゃございませんか。財政経済政策を機能的に機動的に行うこととおっしゃいますのは、具体的に一体何を指しておるのか、このことをひとつお伺いしたのです。お答え願いたいと思います。
  37. 河本敏夫

    河本国務大臣 財政を機動的に運営するという意味は、これは経済政府展望どおりうまく進んでいけばいいわけですけれども、万一そうでない、こういう場合には補正予算も検討しなければならない、こういうことだと思いますが、それは先般の政府与党と野党の予算の修正折衝の場合も、自由民主党の方から、時と場合によりましたならば補正予算を組んで公共事業も追加を検討しましょう、こういう答弁もしておるわけでありますから、そのことと符合するわけでございます。  それから金融政策の機動的運営というのは、これは今内外のいろいろな制約から金融政策が非常にやりにくくなっております。政府としては、金融政策を機動的に運営するためには、その前提としてのいろいろな制約をできるだけ排除していく、こういうことが必要だと思いますが、幸いにその一つである円安がある程度是正の方向に動いておりますから、この点は一つ条件は取り除かれつつある、このように思います。
  38. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、もう少し河本さんというのは経済政策において大胆なことをお考えになっておるかと思っていました。しかし、今のお話を承りますと、私は失望と同時に落胆をせざるを得ないのであります。あなたは中曽根さんと何ら変わらない経済政策じゃありませんか。財政政策じゃありませんか。今のようにおっしゃるのであれば、補正予算自由民主党としては、あるいは政府与党としては、先日の予算修正要求に対する折衝の際に、補正予算を組む、何ら変わりないじゃないですか。あるいはまた、金融政策については円高になったから一つ制約が排除せられた。中曽根さんの経済政策とあなたの経済政策、まあ中曽根さんは余り経済については十分なお知恵はなさそうなんでありますが、もっと私は持っておられると河本さんに期待しておった。今のお話から承りますと、何ら変わるところがないじゃありませんか。中曽根さんの経済政策とあなたの経済政策との差はどこにあるのです。そのことを、口では拡大均衡論を唱えられて、我々もそうだ、我々の意見に一致するなと思って拍手をしておったのでありますが、分析をしていくならば、何ら中曽根さんの経済政策と変わるところがないように思われるのでありますが、その差をひとつ我々に解明していただきたい、お示ししていただきたい。お願いいたします。
  39. 河本敏夫

    河本国務大臣 どこが変わるのかと言われましても、これは大変困るわけでございまして、内閣は一体の原則でありますから、できるだけ先ほど申し上げましたような基本精神に沿って日本の経済が伸びていくような、そういう方針をこれからいろいろ工夫して進めていこう、こういうことでございます。
  40. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、あなたが、先ほども申しましたように政治家河本敏夫として経済拡大成長論を、均衡論を唱えられておるので、どういう点をやろうとするのか実は期待してきょう質問に立ったわけです。内閣の一員だなんというようなけちな考え方であなたはここで御答弁なさるのであれば、もう河本さんの経済政策それ自体について大きなことを言いなさるな。「エコノミスト」の論文を読んで、私は不思議だな、具体的な問題は全然ない。大型補正予算を組むべきだ、こういうようにあなたの論文が、お話が大きく出ている。国民は期待している。しかも、その期待はまさに絵にかいたもちであると言わなきゃならないじゃありませんか。  今のお話からして、この拡大均衡論をお伺いしてみますと、財政を機能的にともかく運営するのだ、こうおっしゃいますけれども、閣内一致のためには補正予算を組むべきだ、先日もこう言った。金融政策につきましても制約が多過ぎる。それは多いでしょう。アメリカの高金利に対してはどうするんだ、あるいは債務国の債務に対してはどういうような処置をとるのか、こういうような海外の政策につきましてあなたは一応の考え方を示しながら、国内政策においては所得減税を四兆円ぐらいやるべきだ、そしてその拡大した中において物価をどういうように安定するんだというお考え方が示されると私は思っておった。ともかく何らお示しにならぬということは、経済音痴と言われるどこかの総理大臣と余り変らぬじゃありませんか。ひとつ具体的にあなたのお考え方を御答弁願いたいと思うのです
  41. 河本敏夫

    河本国務大臣 その雑誌を例にしてのお話でございますが、それには、経済情勢いかんでは補正予算を組むべし、こういう趣旨のことでございまして、情勢いかん補正予算が必要になる、こういうことを書いてあるわけです。ですから、これは当然のことだと思います。情勢がよければ、条件がよければ補正予算を組む必要はないし、条件が非常に悪くなれば補正予算を当然検討する、これが私は財政の機動的な運営である、こういうことだと思うのです。経済は今非常な激動期でありますから、あらかじめ予見してこうだこうだと言い切るのは大変難しいわけです。その激動に合わせて適切な経済財政金融政策を進めていくというのが今一番大事な点だ、このように思っておるわけです。  それから税制につきましては、五十九年度の税制はいろいろな経過がございまして、私は、財政の面からだけ言いますと、これは万やむを得なかった、こう思っております。しかし、財政の面かからいって万やむを得ないといいましても、これは経済政策の分野から見ますと一考を要する点がある、私はこう思うのです。そこで、できるだけ早く抜本的な税制改革をひとつ検討してもらいたいということをそれぞれの担当責任者に提案をしまして、できるだけ早く結論を出してください、このようにお願いしておるというのが現状でございまして、今直ちに大規模減税をやろうといいましても、いろいろな手続がございますから、やはりそれは大蔵省やあるいは自由民主党の政務調査会、こういうところで十分検討いたしまして、そしてそこで意見を闘わしながら結論を出す、こういう手順が必要でございます。それに対しまして私は、政府与党連絡会議でこういう内容のことをひとつ至急に検討してもらいたい、これを経済政策の立場から提案をしておるということでございます。
  42. 井上普方

    井上(普)分科員 今の日本経済が少し景気はよくなってきておる、この状況において一体経済政策をどう展開するのがいいのか、これを私は先ほど来お伺いいたしておるのです、あなたのお考え方を。それを何ですか、内閣は一致しなければならぬからとかなんとか、私は河本さんの経済政策の手は見えたと言わざるを得ません。中身はありません。私は失望を禁じざるを得ないのであります。  税制については、今までの財政面からの制約のもとに今の税制はやむを得ない、こういうお考え方です。しかし、この税制経済面から見ると抜本的に改革しなければならない、こうおっしゃいますが、経済面から見て抜本的に税制改革させる、こういうのは、あなたの言われる間接税を導入するということをお考えになって、例の直間比率を見直せというお考え方に基礎があるのでございますか、どうでございますか。
  43. 河本敏夫

    河本国務大臣 私が提案をしておりますのは、直間比率見直しの過程において、とりあえず大規模所得税減税を検討してみたらどうか。今の経済情勢では、大規模所得税減税をやると経済は一年以内に回復するだろう、その回復した段階間接税の増徴をやる、そういう形で税制改革をやってみたらどうだ、そういうことを中心に研究をしてみてください、こういう趣旨です。
  44. 井上普方

    井上(普)分科員 そういうことはわかりました。お考え方もわかりました。しかしながら、この大型の間接税を導入するということになりますと、どういたしましても物価が上昇せざるを得ない、あるいは不景気にならざるを得ないという面が私は出てくると思います。イギリスにおきましても、間接税を増徴した四、五年前にはすとんと、とにかく経済成長率は浮き、かつまた物価は上昇したことは御承知のとおりであります。過去の例を見るとそういうことになってくる。諸外国の例を見て、大型の間接税を導入したときはそうなってきている。とするならば、一番底力の中心になっておる、あなたのお考えによると物価の安定というのが日本経済の底力の中心になっておるが、それも危うくなってくると私は思います。  しかし、実は私、先ほど来申し上げますように、河本経済政策財政政策というものは、日本の国民経済に対して明るい希望を持ち、将来に明るいものがあるであろうという期待を持って、この質問を希望いたしたのであります。しかし、残念ながら今まで私は、明るい将来を切り開く河本政策というものが見当たらないのであります。まことに私は残念であると同時に、何と申しますか、失望を感じざるを得ないのであります。河本さんの経済政策の底は見えた、私はこう思います。  そこで、続いてお伺いいたしたいのでありますが、公共料金がえらいこのごろたくさん上がりそうであります。特に東京におきましては、交通費あるいは水道費等々、公共料金がかなり上がっておるように思いますが、この公共料金の上昇が物価に対してどのような影響を何%ぐらい及ぼしてくるのか、ひとつお伺いいたしたい。  同時に、今度の予算の中におきまして、政府関係の公共料金がかなり上がっておるようでありますが、これが物価面に対していかに影響を及ぼすのであるか、これに対してひとつ具体的にお伺いいたしたいと思います。
  45. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 お答え申し上げます。  予算関係の公共料金、五十九年度につきましては、消費者物価を大体〇.三程度引き上げるいうふうに試算しております。それから、今委員が御指摘になりました東京都関係でございますけれども、これも新聞などに伝えられるところの内容を合計をいたしますと、大体〇.三程度かと思われます。それ以外に認可料金などがほぼ同程度ございまして、全体で計算をいたしまして、公共料金が五十九年度の消費者物価を押し上げるところは〇.九ぐらいだと思います。それに間接税などがございますけれども、これが一〇〇%を消費者物価に転嫁される。こういうのを全部合わせますと一%強の消費者物価に対する影響だ、こういうふうに試算してございます。
  46. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで、一%強の物価上昇率。そうするとそれは、このたびの経済計画の中の実質成長率あるいはまた経済計画の中に織り込まれていますか、どうです。
  47. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 「五十九年度の経済見通し経済運営の基本的態度」、これにおきまして消費者物価の上昇率二・八%、こういう見通しをしておりますけれども、それに織り込まれております。
  48. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、今の経済の中におきましては、もっとまた物価は上昇してくるのじゃなかろうかという気がしてならないのであります。もちろん、これから私も円高になることを希望いたしておりますが、その中において石油価格がどうなるかが大きな要因になることは、申すまでもないと思います。しかし我々としましては、物価安定ということがすべての経済活動の基礎条件でもありますし、これなくしては経済成長もめためたになってくる、国民生活もめためたになってくるということを考えますならば、物価安定に対しさらに御努力を経済企画庁お願いする、要求するということを申し上げたいのであります。  すべてにわたりまして物価が安定しているからということで、他力本願的な考え方に今立っておるように私は思われてなりません。この点を指摘いたしまして、私の質問を終えます。
  49. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。
  50. 岡田利春

    岡田(利)分科員 若干、経済関係について御質問いたしたいと思います。  初めに、政府経済見通し、今までも随分議論されてまいったわけですが、いわば政府経済見通し我が国財政金融政策にとってより望ましい経済を実現する一つ目標だ、こうかねがね言われてまいっておるわけです。しかし、最近の我が国経済見通しについては、年々民間の機関の公表が目立っておるわけです。最近はもう二十九機関ぐらいに達しておる。そういう意味では、それがそれぞれ報道関係を通じて発表されて、しかもどの機関が一番適中度が高かったかなんということが大変論議をされる、こういう新しい状況を迎えておると私は思うのです。いわば、経済見通し一つの市民権を持って歩いておる。したがって国民の側も、この政府経済見通しに対して非常に敏感な反応を年々示しておるのではないかと思うし、しかも政府経済見通しがどのような運用の結果その総括がもたらされたか、こういうことについても、やはり国民の政治信頼につながる非常に大きなファクターに、好むと好まざるとにかかわらずなってきておることは事実ではなかろうか、こういう感じが私自身するわけであります。  そうしますと、今まで経済企画庁経済見通しを発表してまいったわけですが、客観的な条件といいますか、そういう民間の動向ともあわせて判断をいたしますと、従来の考え方をある程度整理をする必要があるのではないのか。いわば政府が発表する経済見通し目標に向かって、政府自身が責任のある政策を展開してこの実現に向けて努力をする、そしてそれが国民に示されなければならない、こういう新しい状況下にやはり立たされてきたのではないかなと私は思うのです。そういう意味で、改めて政府経済見通しについて、好ましい経済の実現に対する姿勢、あるいは政策の展開についての基本的姿勢をこの機会に御説明願いたいと思います。
  51. 河本敏夫

    河本国務大臣 財政の力がある程度余裕がありますときには、確かにおっしゃるように政府の力をもって好ましい経済のあり方を展望することは可能でありますし、またそれが一つの理想でなかろうか、私はこう思うのですが、しかし最近は財政の力が非常に弱くなっておりまして、御案内のように五十九年度の予算経済成長に対してはゼロの力しかない、ようやく下支えをするにすぎない、こういうことでございますから、政府が自分の力で好ましい経済の姿を描いて、そして財政の力を投入していくという立場にはございませんので、民間経済の力ができるだけ十分発揮できるような環境をつくっていこうというのがせいぜい今の段階だ、このように思います。  そこで、ことしの四・一という成長目標は望ましい成長ではなく、民間経済中心の成長、それを政府がある程度経済活動がしやすいような客観条件をつくるという、そういう立場に立っておる、私はこのように思います。
  52. 岡田利春

    岡田(利)分科員 四月以降、この新しい経済見通しに従って金融、財政が動いてまいるわけでありますけれども、特に最近、この一週間、円高傾向が出てまっておるわけです。いわば十一円程度急騰している、こういう動向にあるわけであります。経済企画庁として、この円高の効果をどのように一体分析をしているのか。そしてまた、これからも円高の傾向は続いていくだろうという前提に立った場合でも、大体好ましい円の水準というものが当然あろうかと思うわけであります。これは五十九年度一年間、我が国経済運営するに当たって重要なファクターになるわけでありますから、そういう意味で、経済企画庁としてもこの円高効果の分析や先行きの見通しに基づく一つの考え方というものは当然今日おありかと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  53. 河本敏夫

    河本国務大臣 我が国経済の基礎的条件、さらに現状等から考えまして、これまでの円は、私は実力以下に評価されておった、このように思います。また、対外貿易摩擦等から考えまして、もう少し円高の方が望ましい、こういう感じも持っておりましたが、今回そういう方向に行こうとしておりますことは、大変私は日本にとっても結構なことだ、こう思っております。しかし、大体幾らが望ましいかということにつきましては、これは政府部内でも合意がございませんし、経済企画庁でも確たる数字を持っておりません。
  54. 岡田利春

    岡田(利)分科員 確かに、今まで円がある意味では安過ぎた、円安の修正がこの段階で行われたと見るのが私も大体妥当ではなかろうか、こう思うのであります。ただしかし、今までも円高による経済運営についてのいろいろな対応策は、過去二回にわたってとられておるわけです。いわばそういう意味では、この円高に対して我が国経済の対応は免疫性を持ってきておる。そういう経験を経ているわけでありますから、そういうことが言えるのだと思うのです。そういう意味では、前回と違って、大体円高の傾向で好ましい円の水準というものはある程度言えるのではないか、こう思うのであります。ある意味では、二百円が分岐点だと言う方もあるわけです。二百円を超すとむしろ経済運営に大きなマイナス面が出てくる、いわば損得勘定というものは二百円水準だと言う人もおるし、いや二百十円が大体妥当だ、こう言う学者もおるわけであります。大体私どもは、過去の経験からいえば二百十円前後が妥当ではなかろうか、こういう感じがするわけですが、経済企画庁長官として個人的な意見を述べることは難しいのかもしれませんけれども、もうちょっと突っ込んで見解を承りたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  55. 河本敏夫

    河本国務大臣 昭和五十三年以降数年間の円の足取りをずっと見ておりますと、一番円高の場合は百七十円台、一番円安の場合は二百七十円台、こういう非常に大きな幅で動いておりますが、そのざっと中間が二百二、三十円でないか、こう思います。したがって、若干円高になりましたけれども、これはいわば小幅な動きである、そんなに気にすることはない、私はこのように考えております。  さっきも申し上げましたように、政府の方で、また企画庁で、二百十円が望ましいのだとか二百円が望ましいのだとか、そういう立場にございませんので、その数字の点は御容赦願いたいと思います。
  56. 岡田利春

    岡田(利)分科員 大体この一週間の円高、これを率に換算すると六%弱ぐらいになるのだと思うのです。これを輸出輸入の関係で世界的にずっと見てまいりますと、特に輸入の面では一兆七千億程度になるのではなかろうか、こういう数字が出ておるわけであります。  そうしますと、この数字というのは、ほぼ五十八年度の石油五ドル引き下げの総額に匹敵するものだということになるわけです。したがって、今の円の水準がずっと一年間続いていくということは、昨年の石油の五ドルの価格の引き下げ、これと同じ効果が及んでくる。もちろん、油とは違った側面もありますけれども、大体そういう認識でいいのか、経済的な影響の面では、今私が申し上げた認識でいいかどうか、御見解を承っておきたいと思います。
  57. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 今のお話でございますが、基本的に立場を申し上げますと、具体的な数字の点は別といたしまして、円高がもし今後定着すると仮定いたしますれば、まず基本的には日本の物価に対しまして非常にいい影響を及ぼすということが考えられるのだろうと思います。さらには交易条件が改善いたしますので、企業収益の面でも改善が期待できるというようなことがございます。  ただ他方、経常収支の面で申しますと、円高がある程度定着するということになりますと、輸出については輸出数量の減少、輸入につきましては輸入数量の増という形で、経常収支につきましては、これは数量ベースで今申し上げましたが、むしろ黒字の減少要因になってくるということが考えられるのだろうと思います。したがって、トータルとして申し上げますれば、GNP全体として、この円高が定着すると仮定したときの議論でございますが、ふえるということに必ずしもならないかもしれない。しかしながら、成長の態様がやはりより内需中心の形になっていくであろうという意味では、日本経済にとりましては好ましい方向であろうと基本的には考えているわけでございます。
  58. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そうしますと、現在の円の水準が定着をすると仮定した場合、今答弁がありましたけれども、GNPの場合においても、当然内需が振興していくわけでありますから喚起されるわけであります。また、円が高くなるということは、実質金利は下がっていく傾向でありますから、そういう意味で内需が喚起をされる。こう判断をいたしますと、やはりGNPにおいても当然効果が出てくると見るのが本当ではないかと思うのですね。しかもまだ卸売物価、当初の見込みよりもむしろゼロになるのかマイナス的になっていくのか。あるいはまた消費者物価についても、二・八%というものがさらに若干下回る、普通、常識的にはそういう判断が当然ではないでしょうか。いかがでしょうか。
  59. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 基本的には先生のおっしゃるとおりだと思います。
  60. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そこで、民間のことしの見通しを見ますと、政府は出しておりませんけれども、円レートというのがずっと出ているわけですね。大体二百二十三円とか二百二十一円とか、もちろん二百三十五円というものもありますけれども、ほぼ二百二十三円から五円の予想というのが多いわけですね、民間機関の場合には。したがって、民間政府のいわば五十九年度の見通しの差というものは、はっきり言えば象徴的に出ておるわけであります。それは何といっても、経常収支、貿易収支の見方が当然違ってくる。これは大幅な違いがあるわけですね。政府は、五十八年の落ちつき見込みと同じような傾向を予測をいたしておるわけです。ところが、民間機関では最大なのは三菱総研で、経常で三百五十四億ドル、貿易収支では四百七十一億ドルの大幅な黒字を予想いたしております。そしてまた、OECDのアウトルックの34によりますと、経常収支は三百十億ドル、貿易収支は四百二十億ドルの大幅な黒字、こう国際的にも出ておるわけです。したがって、五十九年度の政府の経常収支、貿易収支の見通しというものが、願望なのか、無理があるという感じが非常に強くするのであります。私はそういう面から見て、本当に政府としてはこの程度におさめなければならないという願望の方が先に立っておるのではないかという感じすらするわけであります。こういう民間あるいは国際的な機関の予測と相反している低い水準で見ている経常収支、貿易収支について、この機会に率直な御意見を承っておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済見通しをつくりました一月前半の貿易収支、経常収支の動きから見ましてほぼ五十八年度と同じであろう、このように想定をいたしました。しかし、御指摘のように、民間では経常収支が三百五十億ドルを超える、政府見通しよりも百二十億ドル以上上回っているところもございまして、政府の経常収支と貿易収支の見通しが比較的低い水準にあるということも事実だと思います。これはもう少し、世界経済全体の動きを見ませんと何とも申し上げられませんが、今申し上げましたように、一月前半の動きがそのまま続けば大体そういうことになるであろう、こういうことを想定してつくったのでございます。
  62. 岡田利春

    岡田(利)分科員 民間政府見通しの中では、個人消費あるいはまた住宅あるいは設備投資、そんなに差がないわけです。ただ、住宅投資なんかは差がありますけれども、しかし、寄与度から見れば極めて低いわけですから、トータルして判断するとそのような大きな誤差にはならない、私はこう思うわけであります。ですから、一番違うのは海外要因です。海外需要、これが一番違いが出ておるのであります。  そうしますと、民間政府見通しの内需の面では大体同じような水準を見通しておるわけでありますから、もし外需要因で違うとすれば、これが民間のように伸びるとすれば、外需要因が政府見通しよりも伸びる、例えば〇.五が一から一・一になる、こう想定をすると、内需要因が大体同じ傾向でいくとすれば四・七%の実質成長は可能ではないか、こういう単純な判断も出るのでありますけれども、今長官からも答弁されておりましたが、外需要因をある程度修正をして考えるという場合には、私のようなそういう高い成長が達成できるという判断は間違いでしょうかどうか、ひとつ御意見を承りたいと思います。
  63. 河本敏夫

    河本国務大臣 内需の方が変わらない、それで経常収支その他が変わった場合どうかということでありますが、百億ドル経常収支がふえますと成長率はざっと一%ぐらい違いますから、我が国経済成長に非常に大きな影響が出てまいります。
  64. 岡田利春

    岡田(利)分科員 いずれにしても、国際経済から見ても円の水準というのは政府経済見通しよりも高い水準で定着をする、あるいはまたなだらかに高くなっていく、多少フロートが激しくてもそれでまた持続的に安定していくという傾向をたどっていくのではなかろうか、もしそれが大きく崩れるとすれば、アメリカ経済運営が当初見込みよりも大幅な変動があらわれたときで、それ以外はそういう傾向で参るのではなかろうか、こう判断されるのであります。そういう判断に立ってまいりますと、今の政府経済見通しというものは、いずれにしても中間的にもう一度見直す必要がある、そういう要因が既にあらわれている、こう思うのであります。河本長官は常に弾力的に機動的に対応する、こう言われておるのでありますけれども、そういう基礎的な条件から見ても、政府見直しというのは敏速に行われる必要があるのではなかろうか、こう思うのであります。この点、いかがでしょうか。
  65. 河本敏夫

    河本国務大臣 いろいろな分野で経済が非常に激しく動いておりますので、やはり若干時間が経過した段階政府見通しどおり経済が動いているのかどうかということをよく分析をいたしまして、動いておるとすればそれで結構ですが、動いてないということであれば、一体何をすればよろしいかということについて、その時点で機敏に判断をする必要があろうと思っております。
  66. 岡田利春

    岡田(利)分科員 五十八年度の我が国経済成長見込み、既に政府でもそういう修正が行われておるわけでありますけれども、もうここまで来ると、相当精度の高い落ちつき見込みが大体わかるのではなかろうかと思うのであります。政府の当初見込みよりも若干上回るのではなかろうか、こういう感じを持って私自身は見ておりますけれども、この点いかがでしょうか。
  67. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 現段階におきましては、昨年度の実績見込みといたしまして今回の五十九年度の政府見通しで申し上げました実質三・四%というものを変えるという状況にはない、こう考えておりますが、ただ近く十−十二のGNP統計等もございます。そういうものを見ながら、今後さらに検討を続けてまいりたいと思っております。
  68. 岡田利春

    岡田(利)分科員 大体強気というのですか、確実に三・四の実質成長は達成できる、むしろ若干それを上回るような傾向だ、今の動きは。そういう認識はいかがでしょう。
  69. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 三・四%確実に達成できるだろうということは、もう間違いなく申し上げられるかと思います。
  70. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私は、三・五ぐらいに落ちつくのではなかろうかという感じを実は持っておるのであります。  そこで、今年の政府予算の中で何といっても減税増税が相打ちをしたという形になっておるのでありますけれども、所得減税というものの効果について政府は盛んに宣伝をいたしておるのであります。したがって、この所得減税の効果というものを政府部内ではどのような評価をしているのか。例えばGNPではどのような効果が出て、成長寄与度についてはどういう寄与度を計算をしているのか、この点明確にひとつ御答弁願いたいと思います。
  71. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 数量的に計算することは極めて難しいわけでございますが、ただ、減税の内容をごらんいただきますとわかりますように、所得税減税の規模がそのままある意味では個人消費の可処分所得をふやすという効果が期待できるんだろうと思います。他方、これと同時に間接税あるいは酒税等の引き上げがございますのでマイナス効果がございますが、しかしながら額から見ます限り、減税の規模の方がはるかに大きいわけでございますので、基本的には個人消費にはプラスの作用をすると我々は考えております。ただ、今申し上げました間接税あるいは酒税等の上がることが物価の上昇という感じで、実質マイナスの意味で働くという要素はもちろんあるわけでございますが、額から比較いたします限り、個人消費につきましてはプラスの要素になるであろう。  他方、法人税を引き上げでございます。これが設備投資につきましてマイナスの要素に働くことはある程度考えられるわけでございますが、この点につきましても、他方御承知のように中小企業等に関します投資減税を実施いたしておりますので、その意味では、設備投資につきましては大ざっぱに申し上げまして、プラスマイナスの効果が相殺できる程度ではなかろうか、かように考えておりまして、全体として申し上げれば、ややプラスに働いておるんではなかろうかというふうに事務的には考えております。
  72. 岡田利春

    岡田(利)分科員 ある情報によれば、この今説明された内容、数字で言うと、GNPでは八百五十億円程度、寄与度で言えば〇.〇四程度、こう言われておるわけですけれども、こういう数字について、ある程度と言われた数字はこの程度のものでしょうか。
  73. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 数字につきましては、正直申しまして、これはそのときの経済情勢、いろいろなことが影響いたします。そういうことで、厳密に計算することが非常に難しいわけでございまして、今お示しの数字につきましては、私どもとしてそうだということを現段階で申し上げる自信はございません。
  74. 岡田利春

    岡田(利)分科員 五十九年度の中で、何といっても雇用者所得の動向がどうなるかということが、しばしば予算委員会でも問題になっておるわけであります。その要素をずっとこう考えてみますと、春闘で一体ベースアップがどの水準になるのか。しかし、一時金の動向を見ますと、大体景気がある程度上向いてくると、一時金というのは妥結額は上回っている。これは過去の例からいってもそういう状況ですから、春闘と違って一時金の額はふえるものというように想定できるのではなかろうか。所定外労働については、既にその傾向が顕著に出ておるわけであります。そして常用労働者雇用数も増になる。こういう分析をしますと、何といっても春闘の水準がどの程度の水準で落ちつくか、それ以外の雇用者所得では心配される要因はない、こう思えるのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  75. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 現在政府見通しでは、来年度一人当たり雇用者所得が四・七%の増と考えておるわけでございます。  今御指摘のように、我々が今、五十八年度よりも伸び率が高くなると考えております主要なファクターといたしましては、最近時間外手当が非常に増加の傾向にございます。今後景気が緩やかに回復いたしますれば、この時間外手当の増も依然として続くことが期待できるというファクターが一つございますのと、それから、今三月期の法人の利益というものは相当期待できる状況でございますので、五十九年度につきましては、ボーナス等々の増は五十八年度よりも多くなるのではなかろうか、そういう総合的な判断をいたしまして、五十八年度より五十九年度の一人当たり雇用者所得の伸びを考えておりますが、春闘につきましては政府として今の段階で申し上げるのは非常に問題がございますし、従来とも春闘について申し上げたことございません。むしろこれは、労使双方でお話し合いの上決定していただくものだと考えているわけでございます。
  76. 岡田利春

    岡田(利)分科員 五十九年度経済見通しの立場に立っていろいろ判断をいたしますと、いずれにしても個人消費の面でも若干の問題点を残しておりますが、ほぼ見通しどおりいくのではなかろうかという期待が持てる。住宅については、民間政府見通しを比べると、多少これはマイナスがあったとしてもそう大きなファクターではない。企業の設備投資については、今の傾向、中小企業の動向を見ても大体この方向でいける。民間とも意見が合致をいたしておるわけです。雇用者所得についても、これは民間政府の分析が大体合っているわけですね。ぴたっと合っているという点で、しかも、それにイ・イ戦争の動向はありますけれども、油は弱含みである、そして円は好ましい方向に、円高の傾向をたどっているとすれば、今の時点では五十九年度経済展望は明るい。これも、この成長でいいかどうかという問題は別でしょうけれども、四%高目の成長も可能であるというような明るい展望があるんだということが言えるのではなかろうかと思うのですけれども、総括的にいかがでしょうか。
  77. 河本敏夫

    河本国務大臣 この五十九年度の経済の発射台、いわゆるげたも五十八年度と違いまして相当高い水準にもございますし、それから社会経済全体が明るい展望にございます。円高傾向も、これも金融政策が機動的に運営できる前提一つだ、こう思いますし、いろいろなことを総合しますと、よほどのことがない限り政府見通しは達成できるのではないか、むしろ政府見通し以上の成長も可能である、このように考えております。
  78. 岡田利春

    岡田(利)分科員 その明るい見通しにもし大きな陰りが生ずるとすれば何であろうか。しばしば問題になっているように、ドルが急落した場合ということがしばしば言われているわけです。  そこで最後に、経済学的な面からこの機会に長官に見解を承っておきたいと思うのですが、普通、もしドルが急落した、これに対応する対応策としてはどういうことが考えられるか。経済学上の立場からで結構なんですが、もしアメリカのドルが急落をするような場合には、アメリカの国としては経済的にどういう対策というものがあるのか。限定されておると思うのですね。この点ひとつ承りたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  79. 河本敏夫

    河本国務大臣 もし、日本経済に大きな異変が起こるとすれば、やはりアメリカ経済だと思います。アメリカ経済が順調に、私どもが今想定しておるとおりの動きを続けるならば、先ほど申し上げましたような、私は、世界経済も順調に回復する、日本経済も順調な回復にあると思いますが、さて、ドルが暴落した場合の対策いかんということにつきましては、実はまだ十分考えておりませんし、分析もいたしておりません。
  80. 岡田利春

    岡田(利)分科員 普通、経済学的には、やはりアメリカ自体もまた金利を上げて資本の流入を促す。今度はインフレの問題が当然出てくるわけですね。あるいは財政の大幅な赤字をどうして削減するか。しかし、大統領選挙があって非常に難しいということは極めて常識的であります。  そこで第三番目に、輸入の規制で経常収支の改善を図るという問題があると思うのですね。もしそういう異変が起きた場合には、アメリカは一体どう対応するのか。これを短期的に輸入の規制で経常収支を改善するという場合には、かつてニクソン・ショックがありましたように、輸出課徴金制度というようなことがすぐ我々日本人には頭に浮かんでくるのであります。我々は、そういうことにならないように実は念願をいたしておるわけですが、そういう意味で、このアメリカの動向というものが、五十九年の我が国経済の動向に極めて敏感に作用するという気はします。  大変貴重な時間、いろいろ御意見をいただきましてありがとうございました。私の質問を終わります。
  81. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて岡田利春君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  82. 米沢隆

    米沢分科員 私は、経済運営のあり方について若干の見解を伺いたいと思います。  最近の我が国経済の推移を振り返ってみますと、昭和五十六年は三・五%、五十七年度は三・三%、五十八年度三・四%と、三年連続して三%台の低成長にとどまっており、ために日本の国民経済財政等にさまざまな面で多大な悪影響や矛盾が露呈いたしております。  第一に、昨年の企業倒産数は前年比で一一・八%増の一万九千百五十五件、過去最高でございまして、また完全失業率も過去最高の二・六%の水準に達しました。また、政府は、六年間にわたって本格的な所得減税を見送って、実質的な増税を国民に強いてきましたが、このことが実質賃金の伸び悩みと相まちまして、勤労者の可処分所得個人消費を低迷させて、まさに消費不況といった状況が生まれてきております。加えて、五十六年度約一兆四千億円、五十七年度約三千億円の法人税等の増税を強行したり、あるいは四年連続にわたる公共事業費のゼロ成長にとどめたり、投資減税を見送るなど、積極的な景気回復策に背を向けて、ただ民間の自律回復と外需のみに依存したために景気低迷からの脱却をより難しくしてきましたし、日本経済は世界同時不況による影響をもろに受けるような格好になったと言っても過言ではないと思います。同時に、この間地域間、業種間の景気の跛行性が拡大をし、地域経済は深刻な打撃をこうむっております。  第二の問題は、内需の冷え込みの影響は単に国内面だけにとどまらず、経常収支の黒字は五十八年度政府実績見込みでも二百三十億ドルに達し、本年度は政府予想とは裏腹に、今も議論がありましたが、さらに黒字幅が大きくなる可能性が強くて、対外経済摩擦を激化させていくであろうと予測されます。  第三に、経済成長率の低下に伴いまして、税の自然増収が伸び悩み、大幅な歳入欠陥が生じました。財政再建がおくれたわけでありまして、歳入欠陥は五十六年度で三兆三千億円、五十七年度六兆一千億円、五十八年度二千六百億円に達して、当初の財政再建目標でありました五十九年度赤字国債脱却は不可能になってしまったわけでございます。  このように、最近における経済財政運営を振り返りましたときに、確かに今日の低成長の原因が第二次石油ショックの影響や世界同時不況の影響なしとは申しませんが、私はこの経済不況の低迷は、我が国潜在成長力を引き出し得なかった政府政策不況、すなわち縮小均衡型経済運営によることが大である。結果論だから批判しやすいのではありますけれども、最近の経済状況を見ながら大臣見解を示していただきたい。
  83. 河本敏夫

    河本国務大臣 第一次石油危機から日本経済が立ち直りまして力を発揮いたしましたのは、昭和五士三年、五十四年の経済だと思いますが、それ以降再び第二次石油危機日本経済が落ち込んで、今お述べになりましたような経過をたどってまいりました。そして、政府のやり方が不十分であったではないか。なるほど世界同時不況という背景もあるけれども、政府のやり方はもう少し積極的にやればどうであったか、こういう御議論でございますが、今から振り返ってみますと、いろいろな反省すべき点が多々あったとは思いますけれども、その当時はその当時なりにいろいろな意見を総合いたしまして精いっぱいやった、しかし後から考えると不十分な点も多かった、こういうことでなかろうかと思います。
  84. 米沢隆

    米沢分科員 私どもは、こうした現状にかんがみまして、この縮小均衡経済から我が国潜在成長力を引き出す拡大均衡経済への転換を強く要請してまいりました。しかし政府は、御承知のとおり、今年度におきましても減税を上回る一兆三千億円の増税を断行されましたし、大幅な投資減税を見送っておられますし、公共事業費の二%削減など縮小均衡型経済運営をなおも踏襲されようとされておるわけであります。  こうした経済運営では、依然として低成長を余儀なくされることは必至でございまして、最近景気は穏やかに着実に回復を見せていると言われますけれども、これは原油価格の値下がり、世界経済の立ち直りによる輸出の増大によるものでありまして、内需主導による景気回復ではありません。政府は本年、経済見通しにおきまして実質四・一%の成長目標を決めましたけれども、しかしこの四・一%の見通し自体が、我が国潜在成長力から見まして余りにも低目の成長率の設定ではないか。この程度の成長で、企業倒産の防止や雇用情勢の改善など国民生活の向上に資することができるのかどうか。この点の大臣見解をお示しいただきたい。  同時に加えて、景気に対する財政の寄与度を全くゼロとされましたし、民間と輸出に依存した経済運営対外経済摩擦をなお一層激化させて、我が国に対する外圧の強化を招くことは必至だと言わねばなりません。対外経済摩擦を回避することは世界経済の一翼を担う我が国の国際的な責務でございまして、この面からも内需主導による経済成長が求められていると思うわけであります。総括的に大臣見解をいただきたい。  同時にまた、内需の主導による経済成長を達成するためには何事かがなされねばなりませんが、大臣はどのように考えておられるのか。今後の方針、内需を引き出す視点をどこに設定されておるのか。この三点について、まずお伺いしたいと思います。
  85. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年発表しました政府の「展望指針」、八年間平均四%成長、御承知のとおりでございますが、これを達成するためには、条件の悪いときには二、三%成長のときもありますから、条件のいいときにはやはり五、六%成長を達成しませんと、平均をして四%にはならないと思うのです。こういう激動期にきちっと四%八年間続くとはだれも考えておりません。したがいまして、五年ぶりで情勢がよくなりつつあるわけでありますから、やはりこの機会をとらえて日本経済潜在成長力が十分発揮できるような、そういう政策をよほどしっかり工夫して進めていくということが必要だと思います。  特に今御指摘がございましたが、五十九年度は五十八年度と違いまして内需に相当重きを置いた経済運営になっておりますから、私はやはり経済の実情に合わせまして、経済の動きを見ながら財政の機動的な配慮、それから金融政策の機動的な運営、同時に対外経済摩擦を早急に解決する、こういうことを並行して進めながら経済の実情に合った運営というものを機敏に進めていく、そして日本の経済の力が十分発揮できるようなそういう体制を常に積極的に機敏に考えていくということが必要だ、こう思っております。
  86. 米沢隆

    米沢分科員 今のお話をお伺いしますと、これから先の経済の動きを見ながら機動的に対処するという御見解のようでございますが、現段階において内需振興策としてしなければならないと思っておるような問題はないんでしょうか。今度の政府予算等を眺めた上で、足りない部分あるいはもし河本長官が総理であるならばやろう、やらねばならないと思っておるようなものはないんでしょうか。
  87. 河本敏夫

    河本国務大臣 さしあたり緊急に研究しなければならぬ課題は、予算が成立をいたしました段階公共事業の取り扱いをどうするか、こういうことだと思うのです。公共事業の総額はほとんど横並びである、むしろ減りぎみである、こういう状態でございますから、やはりこれをある程度前倒しをする必要があるのではないかと思いますが、しかし、まだ予算が通らない段階から軽々にこういうことを申し上げるのはいかがかと思います。しかし現状から見ますと、昨年、一昨年と同じように、私は相当大幅な前倒しについて研究していく必要があるのではないか、こういう感じを持っております。
  88. 米沢隆

    米沢分科員 今回の予算は、先ほども出ておりましたが、増税をもって減税財源に充てるという選択をされたわけでありますが、景気にとっては今とるべき道ではないと我々は考えるわけでございます。そこで、御案内のとおり私どもは修正要求をして、先般給与所得課税最低限を二万円くらい上げるくらいで、ある程度後の議論は各委員会で審議してその結論に従う、こういうことで決着したわけでありますが、今私どもが求めている減税の上積みという問題について、あるいは補正で、あるいは来年度の減税という観点から、経企庁としてはどのような御感想を持っておられますか。
  89. 河本敏夫

    河本国務大臣 今度の税制改革減税をして増税するということでありますが、財政の現状から見て万やむを得なかったと思いますけれども、経済政策の観点から見ますとこれはいかがかなという感じがいたします。  そこで、私もやはりこの際、税制の抜本的な改正が必要ではないか、しかも、それを相当早くやる必要がある、こういうことで政府と党の関係者に一連の提案をいたしまして、できるだけ早く大幅減税を含む一連の税制改革について検討をしていただくように、今お願いしておるところでございます。
  90. 米沢隆

    米沢分科員 今おっしゃいましたように、一方では税制の抜本的な改革の中で新しい大幅な所得減税を見出していくというお考えのようでございますが、ことしの段階減税を補正で上積みする、あるいは来年度、確実に減税をやることが、今後の日本の経済動向にとって重要であるというような御見解をお持ちではないですか。
  91. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本経済の力が十分発揮できない一つの大きな原因は、所得が十分伸びない、そこにあると私は思います。そういう意味で、減税を含む税制の抜本的改革ということを検討をお願いしておるわけでございますから、これは、ことしというよりも、できるだけ早くという意味は来年度からでも、こういう趣旨でございます。
  92. 米沢隆

    米沢分科員 これも先ほど出ておりましたが、このごろ急激に円が高くなり始めました。これがどれほど安定的に推移するかどうかを見定めねばなりませんけれども、おっしゃるような金融の機動的な運営という環境が整いつつあるような感じがいたします。  そこで、いわゆる公定歩合の再引き下げあるいはまた硬直的な金利体系の是正、そういうものに対して長官はどういう御見解を持っておられますか。
  93. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしは民間経済を中心にして経済成長も考えておりますので、その一番大きな柱は個人消費、それと民間の設備投資でございます。  民間の設備投資を伸ばすためにはいろいろな工夫が必要でありますけれども、まず第一番に、民間設備投資が伸びる客観的な条件が今熟しつつある、このように私は思うのです。だから、それをさらに加速するような方法。やはり投資減税をさらに拡大をするということも一つ課題でしょう。あるいは金利水準を物価に合ったように下げるというのも一つ課題だ、このように思います。それと、やはり相当長期間にわたって経済がいい状態が続く、こういう展望を持てるような経済運営をするということも一つのその背景だと思います。  その一つの有力な柱として、今御指摘のように金融政策があるわけでありますけれども、実際、設備投資という面から見ますと、もう少し物価に合った金利水準にしてもらいたいということは、私どもが強く期待をしておるのです。しかし、いろんな条件がございまして、円安とかあるいは国内の金利政策が硬直状態にあるとか、これはもう御指摘のとおりでございます。幾つかの要因がございますので、最近の円高だけで金融政策が機動的に運営できるのかどうか、そこらあたりは日本銀行や大蔵省で篤とお考えいただいておることと思いますが、いずれにいたしましても、金融政策が機動的に運営できる条件が熟することを私どもは強く期待をしておるというのが現状でございます。
  94. 米沢隆

    米沢分科員 最後に、地方経済の疲弊にどう対応するかという点について、御見解をいただきたいと思うのでございます。  確かに今、内需は上向きに転じておるということは、各種の経済指標を眺めておりますとわかるのでございますが、しかし、経済指標が上向きになりつつあるということと、我々が実感として感じる景況感はどうも一致しない、余りにも格差があり過ぎる、そんな感じがしてなりません。中小企業の皆さんとお話をしたりあるいは地域の経済を担う皆さんとお話をする段階では、一体、景気がよくなりつつあるというのはどこの国の話か、そういう言葉さえ出てくるほどに、どうも乖離が激し過ぎる。現在の経済指標そのものが、どうも実感として感じる景況感をあらわしていない。これは大変大きな問題ではないかという感じがしてなりません。  特に公共事業等については、先ほどから議論になっておりますように、五十八年度に比べましてマイナス二%の状況でございますし、これはもう四年連続横ばい、物価上昇を考えましたらこれは実質的には減額ということでもありますし、今度は二十八年ぶりのマイナス予算だ、こういうことになっておるわけであります。  また、この超緊縮型の公共事業予算の中身を点検しておりましても、治山治水事業、道路整備事業、林道事業あたりの減額幅が目立っておりまして、横並びとはいいながら、ちょっと減額が目立つ。一概に言えることではないかもしれませんけれども、このことは地方への公共事業の配分というものを総体的には厳しくするということにつながっていくのではないか、そう思うのでございます。  加えるに、地方の財政支出も、五十九年度は一・七%と、二十九年ぶりに低い増加だそうでございまして、地方単独事業債は、建設省の方は事業量はほぼ前年と同額ぐらいを確保したと言いますけれども、戦後初めてのマイナスの伸びになっておるわけでございまして、特に公共事業に依存するところの多い地域経済あるいは地方経済にとりましては、五十九年度予算景気に中立というよりも、まさに地方経済にとってはマイナスに働く、こういうふうに我々は考えておるわけですが、その点をどういうふうに理解をされておるのか。  また、今回は、緊縮財政の中で公共事業予算等も、単に従来の公共事業だけではなくて、大都市圏を中心にした民間主導型の大型再開発事業の推進民間活力を誘導するところに力点を置いた、こういうような説明がなされておるわけでありますが、果たして民間政府の計算どおりに一肌脱いでくれるかどうかという疑問は残りますが、しょせんはこういう問題も大都市圏を中心にした問題であって、間接的にはいろいろと影響はありましょうけれども、地方経済の活性化というものにダイレクトにつながらないという見解を我々は持っております。  また、昨年一年間の中小建設業者の倒産は、御案内のとおり、不動産を含めまして約六千件だ、こう言われておりますが、都市再開発の問題にいたしましても、結局は大手企業だけが恩恵に浴する、そういうもので、大体中小の建設業者あたりは全国で五十万強ぐらいあるというふうに聞いておりますが、このうちの九九%ぐらいを占める中小企業の建設業者等にとっては、決して手放しで喜べるような政策の選択ではない。こういうように、原点から見ると批判が多々あるわけでございます。  そういう意味で、経企庁は日本の総体的な景気の上向き等について責任を持たれる省庁であるかもしれませんが、特に地方経済、地方への個別対策みたいなものをやはり特別に、個別に、具体的におとりいただくことが必要ではないか、あるいはまた中小建設業者等に対するいろいろな対策等も、この際経企庁として何らかの形の提案があってしかるべきではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、大臣見解を伺いたいと思います。
  95. 河本敏夫

    河本国務大臣 二月の上旬に経済企画庁で全国十カ所の経済動向の調査をいたしました。そこで判明いたしましたことは、経済全体としては上向きになっておる、それは事実でありますけれども、同時に、地方地方によるばらつきが非常に強いということであります。いいところは比較的よくなっておりますけれども、悪いところは依然として悪い。特に、第一次産業と公共事業に依存した経済の地域、これは全国で三、四カ所ございますが、そういう地域は非常に悪い。それから同時に、業種によりまして、依然として悪い業種が若干ある。いい業種はすばらしくよくなっておる、悪い業種は依然として芽が出ない、こういう業種によるばらつき、地域によるばらつき、これが非常に目についたのでございます。  そこで、今の御質問は、特に地域経済対策というものを十分考えるべきであるというお話でございますが、その点は、私どもも同感でございます。したがって、第一次産業と公共事業に依存しておる地域の経済についてはこれから相談をすることになりますけれども、公共事業の配分等につきましては実情に合ったようなそういう調整が必要ではなかろうか、私はこのように考えております。いいところはほっておいてもよくなると思うのですけれども、そういう地域に対しては格段の配慮が今後も引き続いて大切である、このように理解をしております。
  96. 米沢隆

    米沢分科員 一応前向きの議論のような気がいたしますけれども、しかし、御承知のとおり地域間格差あるいは業種間格差、このあたりがかなり拡大しつつあるということはもう二、三年前から議論されてきた問題でございまして、そこらは、全然対策はなかったかと言われれば、それなりのいろいろな御努力もあったかもしれませんけれども、数年来こういうような問題が指摘をされながら、特に地域経済を活性化させるという意味での視点がちょっと余りにも足りない。今からそのあたりを相談されるというような議論でございますが、もっと具体的に地域経済活性化のための施策等について御研究をいただいて、今から配慮するという議論じゃなくて直ちに何らかの手を打つという積極的な姿勢みたいなものを私は大臣に答えてもらいたいと思っておるのですが、いかがですか。
  97. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済のこれからの動きを展望いたしますと、全体の力が非常に強くなると、その中でばらつきは自然にだんだんと減っていくと私は思うのです。しかし、何分にも今五年ぶりにようやく上方に方向転換をした、そういうときでありますから、若干のばらつきは万やむを得ないのではないかと思います。その対策としては、やはり経済をもう少し強力なものにする、全体を底上げしていく、こういうことが第一に必要だと思います。それと地域的な対策、こういうことだと思いますが、地域的な対策等につきましてはやはり地方と十分連絡をとりながら進めてまいりませんと、中央からだけこうしなさい、ああしなさいと言うわけにもまいりませんので、地方と十分連絡をとりながら善処をするようにいたします。
  98. 米沢隆

    米沢分科員 地方にとって、連絡するしないのいかんを問わず、公共事業の傾斜配分みたいなものはいろいろな知事会だとかあるいは市町村会等でも指摘をされておる問題でありまして、口ではよくそういう配慮をしたというようなことが書かれておりますが、実際に従来まで過去の経緯から見て、公共事業等、そのような地域経済をにらみながら傾斜配分をした事実みたいなものはあるのでしょうか。
  99. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 従来とも公共事業につきましては、そういう地域的な状況も勘案しながら決定されることになっておりますし、現実にもそうやってきたと思っております。ただ、御指摘のように十分でなかった点はあろうかと思いますが、ことしの公共事業の配分につきましても、御趣旨の点を十分生かしながら今後関係各省と相談してまいりたいと思います。
  100. 米沢隆

    米沢分科員 終わります。
  101. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて米沢隆君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理府所管経済企画庁についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  102. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 次に、通商産業省所管について審査を進めます。  政府から説明を聴取いたします。小此木通商産業大臣
  103. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 昭和五十九年度通商産業省関係予算案等の予算委員会分科会における御審議に先立って、一言ごあいさつを申し上げます。  我が国をめぐる国際経済環境を見ますと、世界経済は、二度にわたる石油危機による深刻な不況から脱し、ようやく回復に向かいつつあります。しかしながら、欧米諸国における保護主義の高まりが懸念され、発展途上国では多額の累積債務を抱えるなど、世界経済は依然困難な問題を抱えております。  他方、国内的には、情報技術を中心とする先端技術分野における飛躍的な技術革新は、我が国経済社会の各分野に大きな変革をもたらしつつあります。我が国は、民間活力を十分生かしつつ、このような変革の兆しを的確にとらえ、これに積極的かつ適切に対応して活力とゆとりのある社会を実現していかなければならないと考えております。  私は、以上のような内外諸情勢に対処し、世界経済の活性化に積極的な貢献をしつつ、英知と創造力をもって我が国の繁栄の礎を築いていくため、次の五点を中心に全力を挙げて通商産業政策を展開してまいる所存であります。  第一に、内需中心の経済運営と創造的発展基盤の形成に努めることであります。第二は、世界経済の持続的発展への貢献と調和ある対外経済関係の形成を図ることであります。第三は、長期的視点に立った資源エネルギー政策を着実に推進することであります。第四は、新時代に対応した中小企業政策を積極的に展開することであります。第五として、魅力ある地域経済社会の形成と多様で質の高い国民生活基盤の充実を図ることであります。なお、当然のことながらこれらの重点施策の遂行に当たっては、行政の効率化、合理化に十分留意してまいる所存であります。  昭和五十九年度の通商産業省関係予算案及び財政投融資計画の作成に当たっては、このような基本的方向に沿って、諸施策の具体化を図ることとした次第であります。この結果、一般会計は、五十八年度に比べ百八十八億六千三百万円減の合計八千十五億三百万円を計上しております。特別会計につきましては、通商産業省は石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計等五つの特別会計を所管しておりますが、五十九年七月から特許特別会計を創設することとし、機械類信用保険業務の中小企業信用保険公庫への移管に伴い十月から機械類信用保険特別会計を廃止することとしております。  また、財政投融資計画につきましては五兆八千六百八十六億円を計上しております。  通商産業省関係予算案等の内容につきましては、お手元に資料がお配りしてありますが、委員各位のお許しを得て説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  104. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 この際、お諮りをいたします。  ただいま小此木通商産業大臣から申し出がありました通商産業省関係予算重点事項説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔参照〕    昭和五十九年度通商産業省予算案等について  昭和五十九年度の通商産業省関係予算案及び財政投融資計画について御説明申し上げます。  まず、昭和五十九年度における通商産業省の一般会計予定経費要求額は、八千十五億三百万円でありまして、前年度当初予算額八千二百三億六千六百万円に対し、二・三%の減となっております。  また、昭和五十九年七月から特許特別会計を創設することとし、二百五十一億三千四百万円を計上しております。  これを含めますと、八千二百六十六億三千七百万円となり、前年度当初予算額に対し、〇・八%の増となります。  さらに、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計予定経費要求額は、五千七百七十一億九千二百万円で、前年度当初予算額五千八百十四億三千八百万円に対し、〇・七%の減、電源開発促進対策特別会計予定経費要求額は、二千百八十三億千九百万円で、前年度当初予算額千九百五十億二百万円に対し、十二・〇%の増となっております。  財政投融資計画は、五兆八千六百八十六億円でありまして、前年度当初計画額五兆九千六百五億円に対し、一・五%の増となっております。  次に、重点事項別に、予算案及び財政投融資計画概要につき御説明申し上げます。  第一は、創造的発展基盤の形成であります。  まず、高度情報化社会の実現を図るため第五世代コンピュータ開発に対し五十一億二千四百万円を計上する等所要の技術開発を推進するとともに、新たに地域の産業社会ニーズに即応したニューメディアコミュニティ構想推進のためのモデルコミュニティ情報化システム開発計画六千八百万円を計上しております。また、日本開発銀行において、いわゆるVAN、双方向CATVに対する融資を含め、情報化促進枠六百五十億円を確保しております。  また、資源小国の制約を克服し、技術立国の実現を図るべく創造的技術開発を推進するため、次世代産業基盤技術の研究開発に五十九億五千二百万円、大型プロジェクト、サンシャイン計画及びムーンライト計画に、一般会計、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計及び電源開発促進対策特別会計の合計で、それぞれ百十一億八百万円、三百六十八億千三百万円、九十五億五千八百万円を計上しております。  なお、大型プロジェクトにおきましては地球資源衛星のための資源探査用観測システムの研究開発に着手することにしております。  また、バイオインダストリー、ファインセラミックス等工業化の進展の萌芽の見られる新技術の活用基盤の整備を図るための予算を計上しております。  航空機開発については、民間輸送機YXXに十四億千五百万円、民間航空用ジェットエンジンV2500に四十億二千二百万円を計上し、国際共同開発により推進していくこととしております。  さらに、構造的問題に直面している基礎素材産業の活性化を引きつづき推進するため、産業活性化技術研究開発に六億九千百万円を計上するほか、新繊維産業ビジョンを踏まえ繊維産業の構造改善事業の推進に一億四千二百万円を計上しております。  第二は、世界経済の持続的発展への貢献と調和ある対外経済関係の形成であります。  まず、政府開発援助(ODA)については、新たにプラントリノベーション協力事業を開始する等合計百五十七億九千七百万円を計上し、その充実を図っております。  日本貿易振興会の事業運営には、貿易摩擦回避のため総合的輸入促進事業を大幅拡充する等合計百二十七億千三百万円を計上しております。  また、日本輸出入銀行については、製品輸入金融の拡充、強化を図る等、貸付規模一兆三千四百十億円を確保し、日本開発銀行においては、輸入体制整備及び対日投資促進のための融資の創設を行うこととしております。さらに、今後とも輸出保険事業の円滑な運営を図るため、輸出保険特別会計の資金運用部資金借入れ千百四十四億円を確保しております。  第三に、長期的視点に立った資源エネルギー政策の着実な推進であります。  まず、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計については、その財源となっている石油税収が、原油価格引き下げ等により大幅な減収となっております。  このような状況に対処し、今後ともエネルギー対策を計画的にかつ着実に推進するため、歳出面における徹底的な節減・合理化に努めるとともに、歳入面において「石油税収の石特会計繰入れ未済額」の最大限の取崩しを前提として、なおかつ、不足する財源につきまして必要最小限度の財源措置を講ずることとし、石油税の拡充を行うこととしております。  その結果、一般会計から石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計への繰入れは、四千四百億円を計上しております。また、本特別会計の総額としては他省分を含めまして五千七百七十一億九千二百万円を計上しております。  本特別会計の石炭勘定については、石炭鉱業合理化安定対策を引き続き推進するとともに、鉱害対策及び産炭地域振興対策の推進等を図るため、千二百八十二億千万円を計上しております。  また、石油及び石油代替エネルギー勘定については、四千四百八十九億八千二百万円を計上しております。  なお、同勘定のうち、石油対策としては、石油探鉱投融資事業をはじめとする石油開発のための経費千三百八十四億六千四百万円、国家備蓄の推進、九十日民間備蓄の維持等の石油備蓄のための経費二千三百九十億七千万円、重質油対策等の技術開発、流通対策等のための経費百五十億三千百万円の合計三千九百六十一億二千五百万円を計上しております。  他方、石油代替エネルギー対策としては、海外炭開発探鉱融資のための経費十六億円、コール・センター建設等の代替エネルギー利用促進融資のための日本開発銀行への貸付金五十四億円、石炭液化技術開発、共通基盤型石油代替エネルギー技術開発等の技術開発のための経費三百二十九億四千六百万円等の合計五百二十八億五千七百万円を計上しております。  電源開発促進対策特別会計につきましては、他省庁分を含めまして、二千百八十二億千九百万円を計上しております。  本特別会計の電源立地勘定につきましては、電源立地を引き続き推進するため、電源立地促進対策交付金四百十六億八千九百万円、電源立地特別交付金百十四億六千七百万円等合計で七百八十億五千四百万円を計上しております。  電源多様化勘定につきましては、水力、地熱エネルギーの開発を図る供給確保対策のための経費百四十七億四千四百万円、石炭火力建設費補助等のための経費百二十六億九千四百万円、石炭、太陽、地熱エネルギー等に係る技術開発のための経費二百二十六億千百万円、新型転換炉実証炉建設費補助等の原子力開発利用対策のための経費百八十一億三千七百万円を計上しており、科学技術庁分を加えますと総額で千四百二億六千五百万円を計上しております。  その他、総合的資源エネルギー政策の着実な推進のため、日本開発銀行において、資源エネルギー枠四千八百四十億円の貸付規模を確保しております。  以上のほか、一般会計においては、希少金属の備蓄を着実に実施するために十億九千九百万円を計上しております。  また、内外探鉱開発を図るため、中小鉱山等合理化指導等三十五億七千七百万円を計上しております。  第四は、中小企業政策の展開であります。  中小企業対策費につきましては、一般会計では政府全体で二千二百九十二億円を計上し、うち千六百五十八億四千八百万円を当省で計上しております。  また、財政投融資計画につきましては、政府系中小企業金融三機関の貸付規模を対前年度比約三%増に拡大することとしております。  まず、中小企業の活性化対策といたしまして、組合による研究開発の促進、マーケティング事業の強化等を図るとともに、組織化指導体制を充実するため、組織化対策として四十一億五千万円を計上しております。また、新分野の開拓の担い手としてのベンチャービジネスを振興するため、研究開発の促進等について、新たに三億四千万円を計上しております。中小企業の近代化対策、高度化事業については、新たに共同マーケティング事業等を含む総合的な構造改善事業を推進します。  人材の養成、技術力の向上等についても、中小企業大学校の地方校の建設(直方、旭川)を推進するとともに、構造改善上の技術課題をかかえている産業の活性化を図るなど、引き続きその充実を図ってまいります。また、中小企業の情報化を促進するため地域情報センターのオンライン化を推進するとともに、中小企業の国際化をすすめます。  中小企業の経営基盤充実対策については、商工組合中央金庫出資百億円、中小企業金融公庫補給金九十五億二千八百万円を計上するとともに、信用保証協会基金補助として三十億円を計上し、資金調達の円滑化を図ることとしております。また、下請企業対策として九億三千万円を計上するとともに、倒産防止特別相談室を五カ所増設する等、倒産防止対策を充実します。  中小商業・サービス業対策としましては、地域社会のニーズに根ざした新しい商店街づくり(コミュニティ・マート構想)を推進するため、モデル事業を新規に実施するほか商業近代化地域計画等を大幅に拡充するなど、十五億千万円を計上しております。  地域と共に歩む中小企業の育成のためには、地場産業振興センターの増設、同センター事業への新規助成制度の創設、産地振興対策及び特定地域振興対策の推進、さらには、地域の総合的な技術力向上対策としての地域フロンティア技術開発事業の地域拡大等、地域中小企業対策として、三十七億五千万円を計上しております。また、伝統的工芸品産業についても、その振興対策を推進します。  小規模企業対策としましては、経営指導員の増員、「むらおこし」事業の創設等を行うこととし、三百九十四億七千万円を計上するとともに、小企業等経営改善資金融資制度について、設備資金の貸付限度額の拡大を行い、また、小規模企業共済制度の充実等を行います。  最後に、魅力ある地域経済社会の形成と多様で質の高い国民生活基盤の充実であります。  テクノポリス構想関連事業を引きつづき推進するため、各種の予算措置を活用することとし、総額で十五億四百万円を計上するとともに、日本開発銀行及び北東公庫の地域技術振興融資の拡充、強化を図ることとしております。  また、工業再配置促進対策に九十九億二千八百万円を、工業用水道事業に百四億七百万円を計上しております。  次に、国民生活の質的向上の観点から、新規に集合住宅用新材料・機器システム技術の開発に二千二百万円を計上し、医療及び福祉機器技術の開発に七億二千四百万円を計上してがん対策の充実等を図ることとしております。  さらに、環境保全対策の充実及び産業保安の確保のため、休廃止鉱山鉱害防止工事に三十二億七千八百万円を計上する等既存施策の充実を図っていくこととしております。  以上の一般会計、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計、電源開発促進対策特別会計、特許特別会計のほか、輸出保険特別会計につきましては、予定経費要求額三千七十一億七百万円を計上し、機械類信用保険特別会計につきましては、機械類信用保険業務の中小企業信用保険公庫への移管に伴いまして十月から廃止することとしており、予定経費要求額百六億五千九百万円を計上し、アルコール専売事業特別会計につきましては、予定経費要求額歳入四百二十三億千万円、歳出三百七十一億六千三百万円を計上しております。  以上、通商産業省予算案及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明いたしました。
  106. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 以上をもちまして通商産業省所管についての説明は終わりました。
  107. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位お願い申し上げます。質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力お願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤誼君。
  108. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 最近の基礎素材産業、とりわけ電力多消費型産業と言われるアルミとか苛性ソーダとか合金鉄など、依然として構造的な不況状況が続いているわけであります。私は山形でありますが、山形の海岸の酒田市、この周辺も今申し上げたような素材産業の地域でありまして、構造不況地域、そして通称城下町法の適用を受けてまいりました。これは、地域にとっては素材産業の行方というのが、地域の経済活力あるいは雇用の問題、大変な問題を引き起こして重大な関心を呼んでいる業種であります。したがって、これら基礎素材産業の最近の業界の状況はどうなっているのか。いろいろございますから、今委員長からも御指摘あったように、特徴を端的にひとつお答えいただきたいと思います。  同時に、時間も制約されておりますから関連して申し上げますが、政府は、これら基礎素材産業、構造的な不況にあえいでいるわけですが、これら基礎素材産業を国の産業政策上どのように位置づけて今後対策を講じていくつもりであるか、この点についてお答えいただきたいと思うのです。特に、今後の対策についての決意は通産大臣よりまずお願いしたいというふうに思います。
  109. 野々内隆

    ○野々内政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の電力多消費型の基礎素材産業は非常に困難な状況に陥っておりまして、二度にわたる石油危機を契機といたしまして原材料とかエネルギーコスト、これが非常に上昇いたしてまいりまして、構造的困難に直面いたしております。ただ最近は、アメリカ景気が回復をしてきたということ、それから我が国景気も回復状況にあるということを背景といたしまして、全体としては改善の方向に向かいそうであります。  例えばアルミの地金で申しますと、一時、トン千ドルを割って九百ドル台でございましたが、最近ではまだ採算ラインにはいっておりませんけれども、トン千六百ドル台にまで回復をいたしてきておりますし、それから苛性ソーダなども昨年下期には需要が好転をいたしまして、生産もやや回復ぎみでございます。  これらの国内の景気の回復というのは、当然構造改善を進めております基礎素材産業にとっては非常に望ましい環境を提供するものでございますが、長期的な観点に立って一層この機会に構造改善を進めたいということかと思います。  政策面でございますが、こういう産業にとりまして私どもはまず過剰設備の処理、これが非常に大事でございます。それから事業提携、それから省エネルギー、エネルギー転換、というのはエネルギー対策、こういうことで構造改善を進めるように業界自身も努力をいたしておりますし、私どももこれを支援いたしております。例えばアルミの製錬業では過剰設備の処理のほかに、重油火力を石炭に転換をいたしますとか、あるいは電力を使わない溶鉱炉法の製錬技術の開発というようなことを行っておりますし、それから合金鉄では、効率のよい設備への転換とか、あるいは溶融還元製錬技術の開発というようなことを進めておりますが、こうした各産業の構造改善努力に対しまして引き続き特定産業構造改善臨時措置法、これを中心といたしまして支援措置を講じてまいりたい、かように存じております。
  110. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 政府委員答弁と多少重複いたしますけれども、特定産業構造改善臨時措置法は、二度にわたりますオイルショックからピンチに陥ったところの基礎素材産業の構造改善をいたすことを目的としたことは今さら申し上げるまでもございません。この業種が二十一指定したとされているわけでございますが、仕事は御承知のとおり事業の提携の促進であるとかあるいは過剰設備の整理、処理等をいたしておるわけでございます。景気はよくなった、よくなったとは言いましても、これが必ずしも思わしい状況にすぐなるというわけでもございませんし、中長期的な観点から政策を進めていかなければなりません。御指摘のように状況の悪い基礎素材産業を救うということで、今後も我々はその政策を展開していく所存でございます。
  111. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 基礎素材産業、それぞれ個々的な状況がありますけれども、全体として経済界の状況を反映して好転しつつある、なおこの際構造改善を進めていくんだ、こういう趣旨のお話ですね。それはそれで今の状況の中では理解できるのですが、ただ実態を見ますと、個別的にかなり違いはあるにしても、例えばアルミ生産などは七十万トン体制ということでずっと来ましたけれども、実態は大体三十万トンを割っておるというような状況だと思うのですね。ずっとこれが続いているわけです。それから例えば合金鉄のフェロシリコンなんか見ますと、三十五万トン能力、まあ五万トン減らすということはありますけれども、それなども大体概数十六、七万トンぐらいじゃないですか。そういう実態にあることは事実なんですよ。  ですから、これが先ほど言われたように構造改善を進めていく、省エネ転換だという。それはいいですけれども、このままずっといったって、趨勢的に見ると、極論でありますけれども例えばアルミなど日本から姿を消してしまうのじゃないか。それから今の製鉄業の行方等を考えて電力なんか見ますと、合金鉄などもやがて消えてしまうのではないか、こういう懸念を持たれるわけですよ。そうしますと、その努力は多としても、このまま推移していくと、アルミなりあるいは合金鉄なりというようなしかるべきものが日本から姿を消すということが、ナショナルセキュリティーの関係からいって、そしてまた国民生活の安定という観点からいって、そしてまたそれが地域に分散しておりますから、地域の経済活力、雇用という点からいって果たしてどうなのか、本当にどの辺で歯どめがかかるのか、かけられるのか。この辺あたりは私は日本の産業政策、通商政策の極めて重要なポイントの一つだと思うのですよ。  したがって、その辺の努力は多としながらも、非常に危惧される点でありますので、私は重ねてその点をお伺いしたいと思いますが、とりわけ今省エネということを言われましたけれども、これが国際的に競争するのに非常に重要な部分は何といったって電力ですよ。電力多消費型。電力コストですよね。今私、三業種申し上げましたが、これは程度の違いはあっても、ほとんど生産コストの中の電力コストが五〇%以上あるいは五〇%近い状況ですから、この電力料金をどうするのかという、これは全産業に響きますが、とりわけ今のような基礎素材産業を日本の政策上ある一定の歯どめをかけていくというならば避けて通れない問題がこの電力料金だと思う。したがって、その辺について重ねてひとつ見解をお伺いしたい。
  112. 豊島格

    ○豊島政府委員 電力料金につきましては、最近原油価格が下がるとかいうような要因もございますし、為替も若干円高になっているということもございますが、一方、五十五年に料金改定いたしまして以来、資本費の増高、それから諸経費の増高もございまして、それからさらに最近では中東の情勢も不安定ということでございまして、いろいろなマイナス要因あるいは不確定要因もあるということでございます。したがって、全般としては料金の長期安定ということが一番大事であるということで、それを一つの中心としまして慎重に対処していかなければいけない、こういうふうに考えております。  ところで、基礎素材産業については電気料金の負担が多いんじゃないかということでございます。確かにコストに占める比率は高いというわけでございますが、電気料金について基礎素材産業だけを特別にどうこうするというわけにはいかないわけですが、基礎素材産業におきましては負荷調整ということが非常に操業上可能でございますので、そういう負荷調整面での協力をしていただくということで需給調整契約というのを結んでおりますが、これを運用する、活用することによって実質的なコストの負担というのをできるだけ下げていくということで従来から努力をしておるといいますか、そういう活用の中で料金負担を下げるということをしておるわけで、今後ともそういうことで進めていきたいと考えます。
  113. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 電力コストの問題は素材産業にかかわらず企業種に影響を与えますが、特に先ほどもいろいろ議論されておりましたが、中小企業の問題、それからひいては景気浮揚の問題、それに非常に大きな影響を与えるわけです。特に今指摘しました素材産業には大変直接的な影響を与えるわけですよ、それは今あなたも言われたとおり。  そこで電力コスト、つまり電力料金の関係なんですけれども、今もありましたように電力コストの負担に大変苦しんでいる素材産業や中小企業が存在する一方において、電力業界は大変な好決算になってきている。そこで私は端的に働きたいのですけれども、この間出ました日本の九電力会社の昭和五十八年度中間決算において経常利益はどれだけになっているのか、それは前期中間決算に比較して何%ぐらいの増になっているのか、まずそれを聞きたいと思います。
  114. 豊島格

    ○豊島政府委員 五十八年度上期の中間決算は三千七百二十四億円という経常利益を上げております。これは五十七年度の千七百八十八億に対しましてほぼ倍増といいますか、倍以上の利益を上げておるわけでございます。
  115. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 数字が何よりも端的に示すように、経済界全体が好転の方向にありつつあると言いながらも、中小企業については大変な事態になっているのですよ。こういう中にあって、九電力会社の中間決算が三千七百二十四億、前期に比べて倍の利益を上げているということは、これは国民からいえば、あるいは電力コスト等に苦しむ中小企業や素材産業からいえば、果たしてそれでいいのかなというふうにひとしく疑問を持つのは私は当然のような気がするのですよ。  そこで続けて質問してまいりますけれども、私が得た資料によりますと、昭和五十八年の中間決算の経常利益、今言われましたけれども、その三千七百二十四億ですかのうち、原油値下げの利益が千四百七十五億円で経常利益の四〇%と言われております。それから、その中間決算以後も原油の値下がりはそのままずっと続いておりまして、昭和五十八年度の通期決算では原油値下げ利益が上期の二・五倍くらいに膨れ上がるのではないかという、そういう報道もあります。加えて円高差益、これもプラスの方向にある。円高基調にありますからね。これも一ドル当たり一円高くなりますと、それだけで電力業界の利益は百二十億前後コスト減になるのじゃなかろうか。つまり、逆に言えばそれだけ利益がプラスされるのじゃないかというふうに報道されております。これは報道でしか聞こえませんけれども。そういうような原油の値下げの状態がずっと二十九ドルぐらいで続いておりますし、今も続いているわけです。しかも円高利益ということになりますから。そういう状況ですから、したがって五十八年度の通期決算、期末の逆期決算では、先ほどの中間決算に比べてさらに好決算になることは間違いないだろうというふうに言われているのですね。  ところで、このような中間決算、それから通期決算、これは今後の決算にまつわけですけれども、このような中間や通期決算の利益や円高差益は、電気料金が認可制になっているという、このために需要者にはその利益が直接還元されないで、結局は電力会社にプールされるという形になる。そうでしょう。電力料金が許認可で下げられれば別ですよ。それがこのままずっと続いておるのですから、したがって電力会社にプールされるということになる。これが先ほど言った中間決算の三千七百二十四億円という利益。また、このまま事態が推移すれば円高利益も加わって通期決算がさらに好決算になるだろうというふうに言われているんだと思うのですよ。したがって私は、そういう原油の値下がりが市場のメカニズムを通じてメーカーなり直接需要者に自動的に料金値下げなりあるいは価格の値下げにつながっていくという、そういうメカニズムを通じて消費者に利益が還元されるというシステムならいざ知らず、料金が認可制になっていますから、この部分を何とかしなければ需要者なりに利益が還元されていかな  したがって私は、この際、この許認可権を持つ政府の行政指導で電力料金を含めて需要者に何らかの利益還元をされる方途を考えるべきではないか。これは電力料金は認可制になっていますからね。というふうに考えるのですが、その辺どうでしょうか。——ちょっと待ってください。これは通産大臣、私の質問の趣旨はおわかりだと思いますので、極めて政策的な問題だと思いますので、後で通産大臣からもお願いします。
  116. 豊島格

    ○豊島政府委員 先ほどの数字で若干説明を補足させていただきますと、確かに経常利益は倍増しておりますが、五十七年は実質的には相当苦しい中間決算でございまして、例えば税引き後の利益、五十七年度で見ますと九百十一億ということで、中間決算で配当する千三百億にも達しなかった。むしろそういう従来の利益を取り崩してやったというようなことでございます。したがって、五十八年度上期自身につきましても、必ずしも配当後の利益としてはそれほど大きなものではなかったんじゃないかということはちょっと申し上げておきます。  それからなお五十八年度につきましては、大体先生御指摘のような数字の油価の引き下げによる利益といいますかコストダウンがあったということで、大体上期で千五百億、年間で三千六百億くらいということは事実でございます。ただ円高につきましては、もう三月の決算締め切り前ごくわずかでございますので、五十八年度としてはそれほどプラスにはならないということであります。  それから、認可制であるから、そういう利益を還元すべきではないかというのが先生の御指摘で、どう考えているんだということでございますが、これは確かにもうかった分を値下げに回すということも、かつて五十三年に円高が出ましたときに一時的に半年だけ返したことがございましたけれども、五十五年には五割も値上げをしなければいけないということでございまして、電気料金は公共料金でございますのでなるべく長期安定ということで、今後コストの上昇に伴って料金を値上げする必要が出てくる、それをできるだけ先へ延ばすといいますか、そういうことで、電力会社として料金を長期安定ということで消費者に還元するというのが、この程度の利益の場合においては最も適当じゃないか。今後の推移がどうなるかはともかくとして、現状で見る限りは長期安定の方向でやっていくのが一番現実的で、また消費者のためにもなるのではないか、このように考えておるわけでございます。
  117. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 公共料金の安定ということは即国民生活の安定につながることであると思うのです。長期安定であれば国民生活も長期に安定するということでございますが、委員御指摘の数字等は事実でもございますので、今後の情勢の推移というものを当然我々は慎重に見きわめなければなりません。そういう意味で、勉強はいたしてみます。
  118. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 中間決算の数字の問題、それから見通しについては先ほど答弁あったような状況ですが、ただその中で前期の中間決算が落ちておったために、私の方の資料では千七百八十八億、落ちておったために前期に比べて非常に比率が高いという、こういう数字のことを言われましたけれども、それはそのとおりなんですが、ただ前期の通期決算を見ますと、これは前の年と余り変わらぬのですよ。つまり昭和五十六年の年度の通期決算が六千二百二十一億なんです。ところが五十七年の通期の決算を見ると六千百四十一億なんで、通期の決算としては余り変わっていませんから、したがって私は、この趨勢からいえば五十八年度の通期の決算はかなりいくだろうと思う。これは新聞の論調もほとんどそうなんですね。  そういうふうに考えていきますと、あれやこれや油の差益なり円高からいうと、電力会社に利益としてかなりプールされているんじゃないか。そうすると、今大臣も言われたけれども、そういうものはすぐ料金、まあ電気料金をいじるという意味じゃなくて長期安定ということでメリットを還元する、こういう趣旨のことを言われましたが、しかしそれは、行政サイドとしてそういう趣旨を言われることもそれなりの理由があるでしょう、電力会社も言っておりますから。しかし私は今日の、経済は若干上向きだとはいいながらも中小企業の倒産の実態や地域の経済の冷え込みの状態、ましてや生活苦にあえぐ低所得の世帯などを見れば、もう少し電力料金何とかならぬのかな、こんなにもうかっているんじゃないかという、これは偽らざる事実だと思うのです。特に、先ほども言ったように、素材産業の中で電力料金のコストは大変ウエートが大きいのですから、しかも中小企業は今のような状態になっているのですから、国民の生活が大変苦しいのですから、これだけもうかったら何とか少しはチャリンと音のするくらいのところは考えてやるというのが国民の常識だと私は思うのです。それを、ただ長期的に料金安定に資していくのです、そのためにプールのお金は使うのです、それから長期的に設備投資に使うのですというだけでは、この点電力会社は余りにも優遇され過ぎているのではないかという国民の声は正当な声ではないかと私は思うのです。そういう点を特に指摘をしておきたいというふうに思うのです。  そこで、重ねて通産大臣にお伺いしておきたいのですが、私は今のような考え方を持っているんですよ。そこで昨年の三月五日、同じ予算の第六分科会の中で、当時山中通産大臣だったのですけれども、そこで私が質問したことに山中通産大臣は次のように答えているのです。ちょうどそのときは一バレル三十四ドルぐらいがだんだん下がって今の二十九ドルに落ちつくころなんです。そのときに私は次のような質問をしているのです。  確かにこれからどれだけ値下げになるかということを見定めなければならぬけれども、しかし、九電力などいまから早々と、極端なことを言えばどんな事態になっても下げないなどという、こういうことはちょっと行き過ぎじゃないかと思うのです。それに対して山中通産大臣は、まさにおっしゃるとおりでございまして、電力会社はそれぞれにどの社長も勝手ほうだいなことを言っているようでありますが、困ったときだけ泣きついてきて、そして自分たちの好ましくない方向に行こうとする場合はそれに対して意見を勝手に言うという社長連の態度に対して、私は監督官庁の責任者として、いやしくも公共料金の中に入っているほどの公共性を持つ電力会社の社長の発言としては、大変苦々しく聞いております。 そのことを申し上げるだけで十分だろうと思います。こういうことをその当時答弁しているのです。そこで山中通産大臣は、この後に九電力会社と折衝した経過を私も知っているのです。いろいろ新聞で報道されました。  私が新聞で知る限りにおいては、九電力の社長は、最初こういうことを言ったけれども、しかしこれは中間決算を見て考えてみたいとか、あるいはやがてその後は今あったように長期安定料金でこたえたいとか、結果は具体的には何にもこたえなかったわけです。その中に、今のような中間決算の利益なり、通期決算の利益もずっと膨らんでいく趨勢にありますね。こんなようなことでいいのかどうか。山中通産大臣もこういう答弁をされていまして努力されたと思うのです。今の電力会社がどんどんもうかっていることは事実なんですから、そういう状況の中で長期料金の安定というだけの答弁では昨年の経過からいっても国民は納得できないと思う。したがって通産大臣、そこのところは、今すぐ具体的にどうこうと言わなくとも、一つの取り組みの姿勢としてやはり国民の期待にこたえる、そのためにはその点について電力会社と腹を割って折衝をしたい、こういうことが、中小企業対策、素材産業、これからの景気の冷え込みをむしろ加速的にプラスさせるという点からいっても、その期待にこたえるべきでないかと私は考えますが、通産大臣の決意のほどを伺いたい。
  119. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 電力料金、公共料金に対する考え方は先ほど述べたとおりでございますが、御指摘の事実等もございますし、さらに一層勉強をいたしてみます。
  120. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 勉強してみますと言うだけで、そこにとまっておったのではしょうがないじゃないですか。勉強して前向きに検討するとか、何かあってしかるべきじゃないでしょうか。私がきょうここで質問していることは、油の利益なり円高の利益というものをみんな見ておりますから、これは国民の非常に関心を呼んでいるところだと思うのです。通産大臣、もう少し何らかの答弁ないのですか。
  121. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 申し上げましたとおり、さらに一層勉強をいたしてみます。
  122. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 勉強して国民の期待にこたえる方向を私は要望しておきます。  時間もなくなりましたので、それじゃ今度は具体的な点でお伺いしたいのです。  中小企業とりわけ素材産業に焦点を当ててのことでありますけれども、今のような素材産業をある一定のところで歯どめをかけていく、中小企業に活力を与えるということで電力料金について、これはそこだけにメリットを与えるわけにいかぬでしょうけれども、そこを何とかやはりある一定のところで歯どめをかけながら活力を与えるという点で、脱力料金についてずばり政策料金とまでは言いませんけれども、それに準じた形で何らかの方途はないのか。例えば深々夜電力料金の導入などもさっきちょっと言われましたけれども、それなども一つの方法ではあろうと思います。しかし、それは負荷電力の平準化という経営上の観点も含めてのことでありますから、むしろさらに突っ込んでやはり今の電力会社の利益の状況から判断し、そしてさらに国策上の素材産業の歯どめをかけていく、中小企業に活力を与えるという観点から、むしろ積極的にそういう深々夜電力という考え方をさらに突っ込んだ形で、利益を還元するという、そういうことは何らかのお考えはできないのですか。
  123. 豊島格

    ○豊島政府委員 電気料金につきましては、全体のレベルの問題と、それから制度の問題と両方あるわけですが、料金制度につきまして公平の原則といいますか、特定の使用者に差別してはいけないという、これは法律上も書いてございますが、そういうことでコストを離れて特定の例えば基礎素材産業だけには特定の料金を適用するとか、そういうことは実際問題としてできないといいますか、そういう政策料金はできないと思います。ただし、先生御指摘のように、いろいろ工夫はできないかということでございまして、従来から需給調整契約につきましては瞬時遮断とか、それから土曜日をどう扱うとか、夏のピークをどうするとかということをやっておりましたけれども、先ほど先生もおっしゃいましたように深々夜電力という、従来深夜電力というのは夜間安い料金を適用して、これはコストが下がるわけでございますから、そういうことでございますが、今度は特に深深夜という分野を設けてきめ細かくメニューをつくって、そこへ移行すればさらに安くなる、これは基礎素材産業だけではないのですが、特に基礎素材産業については安くできるわけです。そういういろいろな工夫を現在もして、今折衝中だと思います、五十九年度から適用になると思いますが、さらに我々としてはそういういろいろなやり方がないかというのは今後とも検討していきたい、それによってコストの原則を貫きながらも実質的な負担を下げるという努力は検討をさらに続けていきたい、こう考えております。
  124. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 時間になりましたので、私は最後に、先ほどからの答弁にもありますように利益、円高差益、これらも含めて九電力の言うなれば中間、通期を含めて経常利益その他かなり好転をしていることは事実なんです。したがって、これはいろいろな考え方があるでしょうけれども、今の素材産業の置かれている立場、それから中小企業の下に苦しむ状況、国の政治的な政策課題である経済活力景気の動向、そしてまた国民生活では少しでも可処分所得をふやして需要の喚起を促す、こういうことを全体的に考えたときに、私は極めて政治政策的な判断として、やはり通産大臣など中心に電力会社とも腹を割って、そしてその辺具体的に国民のニーズにこたえながら長期的に電力のあり方を探っていく、そういう両面があっていいのではないかと思いますので、勉強すると言われましたけれども、その点についての御検討方を私の方で要望したいし、そういう形でこたえてもらいたい。これは要望として申し上げておきます。  それからもう一つは、今言った素材産業を私は取り上げましたけれども、これは日本のこれからの産業政策としてゼロにしてはならない産業だと思うのです。したがって、電力料金の関係でそこだけに利益を与えるわけにいかぬけれども、全体的な一つ政策の中で、これは選択の問題もありますから、今深々夜の電力料金のことも導入されたとありましたが、それをさらに敷衍する形で何らかそういうところにメリットを与えて、国策上そういう一つの素材産業の育成なり、ひいては中小企業もそうなんですけれども育てていく必要があるのじゃないか、このことを最後に申し上げながら私の質問を終わります。
  125. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて佐藤誼君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十二分休憩      ————◇—————     午後零時三十分開議
  126. 熊川次男

    熊川主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管について質疑を続行いたします。簑輪幸代君。
  127. 簑輪幸代

    簑輪分科員 大臣も御承知のように、今日ME革命とかコンピューター時代とか言われておりまして、通産省も五十九年度予算で高度情報化社会の基盤整備というところで、第五世代コンピューターというところに五十一億二千三百万円という、前年に比べて八八%もプラスした予算を計上しているわけですね。きょうはこのVDTの問題を中心にしてお伺いしたいというふうに思っております。  今、子供のゲーム機、それから職場の事務管理、パソコン、マイコン、そしてワープロと、非常に広範囲に短期間に普及してきているわけです。各種のコンピューターの端末機として使われておりますVDT、ビジュアル・ディスプレー・ターミナル、こういうものを操作しながら作業をする人々が非常に急速に増加してきておりまして、その現場で眼精疲労、頸肩腕障害とか内臓疾患、神経失調など健康障害が多発して非常に重大な社会問題となっていることは御承知のことと思います。今日、本格的な情報社会の到来を目前にして、一日も早くこの健康問題対策の確立が緊急の課題になっているというふうに思います。私は既に昭和五十七年の予算委員会分科会におきまして、この問題の重大性を指摘し、通産省、労働省に対策を要求いたしましたが、それぞれ一定の取り組みがなされまして、労働省では去る二月二十七日、「指標(ガイドライン)としての「VDT作業における労働衛生管理のあり方」」というものを出されました。そこで私はこれに関連して、去る二月二十二日の大蔵委員会でもお尋ねをいたしましたけれども、通産省としてこの問題についてこれまでとってこられた対策、それから今後どのように対処されるのか、お伺いしたいと思います。
  128. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御質問の中でおっしゃっておられましたように、現在日本の社会というのは急速に情報化の方向をたどっているわけでございます。それに伴いまして、例えばVDTの国内出荷額というものを見ましても急速に伸びてまいっております。五十五年度で申しますと、これは業界の調査でありますけれども、VDTの出荷額は五百五十億円でございました。それが五十七年度になりますと千百六十億円ということで、急速に伸びてきておるという状況でございます。それに伴いまして、職場のいろいろなところでこのVDTが使われるという形になっているわけでございます。  私たちといたしまして、恐らく日本の社会というのはこれからさらに情報化の道をたどっていくであろうというふうに思っているわけでございまして、そういった情報化が進んでいくに際しまして基盤になるべきいろいろな問題について検討していかなければいけないということで、いろいろな角度から検討しているわけでございますけれども、それの一環といたしまして、先生から御指摘がございましたVDTの問題について非常に重要な問題というふうに受けとめておりまして、実は私の私的諮問機関ということで機械安全化・無公害化委員会というのがございます。その委員会の中に昨年VDTの分科会を設置して、今いろいろな多角的な角度から検討しているところでございます。このVDTの分科会のヘッドには、東大の名誉教授でいらっしゃいまして、この関係で大変権威者というふうに言われております大島正光先生になっていただきまして、また労働省からも産業医学総合研究所の方に御参加いただきまして、そのほかいろいろ大学の医学部、医学関係の先生であるとか、あるいはハードの関係の専門家であるとか、多方面の方たちに御参加をいただいて検討を進めておるところでございます。特にその中でVDTに関します安全性の問題を検討しているわけでございますが、と同時に、私たち通産省としては、より疲れない、より人間にとって違和感を感じないVDTを求めて総合的に検討していきたいと思っているわけでございます。  今後、この分科会の成果を踏まえまして、関係業界あるいは関係各省と連携をとりながら適切な対策をとってまいりたいと思っております。私たちの予定といたしましては、この分科会の一応の結論を五十九年度中には得たいと思っております。
  129. 簑輪幸代

    簑輪分科員 通産省としての取り組みもそれなりに進んでいるようで結構だと思いますが、私は、このVDT作業に伴う健康障害についての対策というのは、労働省の方として既に出されたガイドラインだけではなくて、通産省が所管する機器そのものについての構造規格というような問題についてもきちっとした対策がとられることが不可欠ではないかと思います。  VDTについてはハードウエア、ソフトウエアの開発が一層進んでいくわけですけれども、今おっしゃったように作業者の安全と健康に関する人間工学的な見地等も踏まえて、いろいろな学問的研究もどんどん今後も進んでいくと思います。そうした中で、諸外国でも既に研究が進み、一定の対策が出されているということは御承知のことと思います。西ドイツなどにおきましても、その作業の安全基準だけでなくて、機器とデザインというような観点でいろいろな項目が既に出されているということで、こういう経験等も十分踏まえて対策が練られなければならないと思うわけです。  我が国では、このVDTよりも既に早くロボットが各界に導入されておりまして、このロボットがもたらす労働災害等が大きな社会問題になりまして、これに関連し、労働安全衛生の立場からいろいろな対策がとられてまいりました。そして、労働省にお尋ねするわけですけれども、これまで「産業用ロボットの使用等の安全基準に関する技術上の指針」というのが昭和五十八年九月一日に出されておりますし、労働省として、ロボットにはこのような一定の対策がとられてきましたけれども、VDTについてもロボットと同様に一定の基準というようなものを考え、法的にも対応される、そういう必要があろうかと思いますが、労働省の御見解をお伺いしたいと思います。
  130. 福渡靖

    ○福渡説明員 お答えをいたします。  私どもの方の取り組みといたしましては、既に今までの委員会で御説明をしておりますが、五十八年度を初年度にいたしまして産業医学総合研究所、それから産業医科大学に調査研究を委託をしております。その調査研究は一応三カ年をめどにしてやるということでございまして、その結果を踏まえまして、今御指摘がございましたような措置が必要であるかどうかということを具体的に検討してまいるというふうに考えております。  ただ、今御指摘がありましたように、こういう指針が必要かどうか、あるいは基準にするかということは、そのVDT作業が労働者の健康にどのような影響を与えるのかという程度にもよると思いますし、また内容にもかかわってくるかと思います。そういう点でどのような取り扱いにするかということも含めて現在検討中であるというふうに考えております。
  131. 簑輪幸代

    簑輪分科員 何もかも今後の課題ということになるようにお伺いするわけですけれども、既に一定のガイドラインを出されたわけですから、今後の実態調査を踏まえて、学問的研究も踏まえて、新たに出されてくるものは、より適切な法的な側面も含めたものになってこなければ意味がないというふうに私は思うのです。その点での法的検討ということも十分に頭に入れた対策が出される予定であると伺ってよろしいでしょうか。
  132. 福渡靖

    ○福渡説明員 そのとおりでございます。
  133. 簑輪幸代

    簑輪分科員 ぜひ、できるだけ早くそれを出されるように要望したいというふうに思うのです。通産省としても、このロボットについては産業用ロボットの安全通則ということで昭和五十八年三月一日に出されておりますけれども、ぜひVDTについても安全通則と申しますか同種の対応をしていく必要があろうかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  134. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 先ほど申し上げました分科会におきまして現在私ども——このVDTの安全問題と申しますのはいろいろな要因が絡んでまいります。例えば、大きく申しますと表示部、それから操作部、それから作業環境、それから運用管理、そういった四つぐらいの要因が絡んでまいります。その要因ごとに私どもといたしまして、外国においてどのような対応をとっておるかというようなことも調査してまいりたいというふうに思っておりますし、それから国内において国内メーカーがこういった点についてVDTについてどんな構造のものを出しているかという実態調査も必要でございます。それから、実際そのVDTを使っていらっしゃる方についての実態調査ということもやっていかなければいけない。私たちといたしまして、そういった広範な調査分析を踏まえまして所要の対策をとってまいりたいというふうに思っているわけでございまして、必要に応じてあるいはガイドラインというようなこともあり得るというふうには思っておりますけれども、なおこの分科会においてさらに検討の上、私どもとしてどのような対応が一番いいかということを考えてまいりたいというふうに思っております。
  135. 簑輪幸代

    簑輪分科員 このVDTがもたらす健康障害というのは、機器から発生するもの、環境から発生するもの、労働条件その他もろもろ総合的なものであることは私もよく承知しているのですけれども、通産省としてはやはりこの機器面に一つの市大な責任を持っていると思うのです。  マスコミ・文化共闘で、VDT問題についで「構造等の規格」というのが案として出されておりまして、今おっしゃったように、表示画面においては特に大きさを何センチメートル以上にするとか、あるいは前後、上下に動かすことができるものとするとか、傾きは容易に変えることがで要るものとするとか、反射防止の加工を施すというようなこととか、反射光線を防止するフードがつけられるとか、放射線の放出防止とか、さらにまた現在のような陰画表示でなくて陽画表示法をとるとか、非常に具体的に案が出されているわけですね。入力・操作装置の問題、作業卓、いすなどの設備、ソフトウエア、機器等の検査に至るまで「構造等の規格」案を出しているわけです。船働組合が不十分な中でも真剣に取り組んだ結果こうして出しているわけですから、これについて、通産省としてはこの五十九年度中に出される結論の中で最低基準というようなものを、ぜひ盛り込んでいただきたい、そしてできることならば、より望ましい基準というようなものもあわせて、業界を指導する立場にある通産省としての責任ある措置を含めた結論でなければならないというふうに私は思うのです。ぜひそういう方向でお願いをしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  136. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 先ほどもお答え申し上げたのでございますけれども、私たちといたしまして、より使いやすいあるいはより人間として違和感のない、そういうVDTというものを目指していきたいというふうに思っているわけでございまして、そういうことを十分踏まえながら検討してまいりたいと思っております。
  137. 簑輪幸代

    簑輪分科員 今までの議論を大臣にお聞きいただきましたけれども、このVDT問題は非常に重要な問題でして、通産省としても力を入れていただく課題だと思いますが、今私が申し上げましたようなこのVDT機器の構造についての最低基準と、それから推奨基準と申しますか、より望ましい基準とか、そういうものをきちんと含めたものにするようにぜひ大臣の方からも強く御指導いただきますようにお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。——局長さんの答えはわかりましたから、大臣に。
  138. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 とりあえず事務的な問題も若干ございますのでお答えいたします。  先ほど私からお答えしたことの中に、例えば、この検討の結果、必要であるあるいは適当であるというようなことであればJISを決めていくということも我々としては頭の中に入れているわけでございます。そういうことでお考えいただければありがたいと思います。
  139. 簑輪幸代

    簑輪分科員 それでは、その辺のところはJIS規格等も含めて積極的な対応をぜひお願いしたいと思います。  私がちょっとこの辺の判断に至る経過の中でぜひ御承知いただきたいと思いますのは、例えば三月五日の朝日新聞の「論壇」に投書がされております。ここでは、「私自身の経験を述べたい。一昨年六月、研究室に安いパソコンを導入した。データ処理に連日数時間使用した。時には一日で十時間に及ぶこともあった。三カ月ほどすると、肩がこり、まぶたがけいれんするようになった。さらに目をあけていられなくなり、ほおまでけいれんし始めた。」というようなすごい経験も投書されておるわけですね。  パソコンの使用者という人たちは案外こういう問題について十分承知しないまま、性能についてもよくわからないまま夢中になって使用するということもありますので、そういう点も含めた構造規格はぜひ必要だと思うのですね。  引き続きここで述べているのですが、「著名なパソコン開発関係の学者から、「現在の安価なパソコンは、一日八時間以上もの長時間使用は全く想定しておらず、その意味では、欠陥があることを承知して使ってほしい」との発言を聴き、自分の無知を悔やんだ。」こういうように書いてあるわけですね。こういう点はゆゆしい事態だというふうに思っております。  それからまた、テレビゲームの安全性という問題についても、子供たちが今こういうものに非常に熱中しているということから考えましても、ぜひ考慮に入れてやっていただかなければならないと思います。アメリカからの報告によりますと、テレビゲームを見ている子供たちの中にてんかん発作が起きたということも報道されておりますし、テレビゲームというものは小さなものだからとか、あるいは仕事と直接関係がないからということではなしに、やはり通産省が独自にこういうところにまできちんとした配慮をしていただきたいというふうに思いますが、その点について簡単にお答えいただきたいと思います。
  140. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 まずテレビゲームの問題でございますけれども、テレビゲームの安全性の問題と申しますのは、基本的にはやはりVDTの安全問題と同じ問題というふうに思っております。したがいまして、この分科会でVDTの安全問題を検討してまいりますけれども、その一環としてこのテレビゲームの問題も考えていく、こういうふうにやっていきたいと思っております。  なおもう一つ、連続して使うというお話がございました。VDTの安全問題というのは、先ほども申し上げましたけれども、構造問題と同時に、その運用管理の問題どこれは密接に絡んでまいります。したがいまして、私どもとしてはこの構造問題についていろいろと検討してまいりますけれども、同時に、運用管理面での指導、これはあるいはむしろ労働省の問題になるかもしれませんけれども、やっていくことが必要だろうというふうに思っております。
  141. 簑輪幸代

    簑輪分科員 OAの職場というものは非常に婦人が多いわけです。このVDTに関連して、アメリカ、カナダで妊娠、出産の異常等が報告されておりまして、日本の働く婦人の中からも大きな不安が提起されているわけです。このVDTから出される放射線というものにどんなものがあって、それがどういうふうな影響を及ぼすのかということは、まだまだ完全に安全性が証明されているというわけではございませんで、非常に疑問だらけのところだと思いますが、こういう現実が報告されているということから見て、今後きちんとした対応をしていかなければならないのではないかというふうに思います。  そこで、労働省にちょっとお伺いをしますが、これを専門に扱っている職場などでは、婦人が妊娠した場合に、労基法上の六十五条の三項によって、要求があった場合には軽易な作業に転換させなければならないと規定してありますけれども、これが適用されるというようになるでしょうか。
  142. 福渡靖

    ○福渡説明員 御指摘のような報告があることは私どもも承知をしておりますし、これから健康への影響というものがどのような因果関係を持つのかというようなことを明らかにしていくことは非常に重要な課題であるというふうに考えております。  そういうようなことで、私ども先ほど申し上げました調査研究も、そういう課題も含めてやっておりますけれども、今の御指摘の点については、これは事業者の方の判断になろうかと思いますが、VDT作業が連続して行われる場合にはかなりの労働負荷がかかるというふうにも言われておりますので、これも今後関係者と十分相談をしながらどのように取り扱っていくかということは決めていきたいというふうに思っております。
  143. 簑輪幸代

    簑輪分科員 大変重要な問題で、日本でももし異常出産とか障害児の出産というようなことになってまいりますと大変なことですので、早目にこういう規制というのはきちんととられる必要があると思います。そういう点も含めまして、今後の研究の中で適切な対応をしていただきたいというふうに思います。  妊婦についてこの放射線がどういう影響を及ぼすかということが心配になっておりますけれども、妊婦だけではなくて妊娠可能性のある婦人にどのような影響があるのか、あるいはまた男性の生殖機能にどのような影響があるのかというようなことまで心配されるわけですね。そういう点まで含めて総合的な研究というのをぜひしていただきたいというふうに思います。そして特に妊娠中の女性の場合にはVDTの職場で就労させてはならないところまでいくというふうにしていただかないと不安は除去されないように私は思うわけですので、ぜひ今後の研究の中で、妊婦に限らず婦人全体、そして男性も含めたそういう放射線の影響等についての研究調査ということをやっていただきたいと思いますが、それは入っていますでしょうか。それぞれに……。
  144. 福渡靖

    ○福渡説明員 初年度は実態把握ということが中心でございまして、二年度以降、具体的に実験的な研究も含めて調査を進めていくということになっております。どのような課題を設定するかというのは、五十九年度はこれからの問題でございますので、考えられる課題はできるだけそこに入れて検討してまいりたい、このように思っております。
  145. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 VDTから低レベルの放射線が出るということは言われているわけでございますが、いずれにいたしましても、そういった低レベルの放射線がどのように人体に影響するかということについて、必ずしも明確でないというふうに承知しております。ただ、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げております分科会の検討におきまして、そういう問題も頭に入れて検討していくという方針でございます。
  146. 簑輪幸代

    簑輪分科員 これまでの研究の結果出されたそのガイドラインについて、いろいろ読ましていただきますと、労働衛生管理体制ということの重要性が指摘されております。これについて、健康管理のためには不可欠なものだというふうに思いますので、ぜひこれがきちっと実施されるように指導監督をしていただき、そしてその状況を労働省としてきちんと把握していただきたいというふうに思うんですね。あわせて、このせっかく出されましたガイドラインをすべての労働者や事業主に周知徹底できるような手だてを、例えばチラシをつくるなり何らかのしおりをつくるなりしていただく必要があるかと思いますが、これについてお伺いします。
  147. 福渡靖

    ○福渡説明員 御指摘のように、労働衛生管理を進めていく基本は事業所における管理体制の確立であろうかと思います。そういうようなことで、私どもも常日ごろ関係者にそういう問題意識を十分に持って適切に対処するようにという指導をしておりますが、今後このVDT作業も含めて一層そういうような点を強く指導してまいりたい、そのように思います。  それからガイドラインの普及のお話というふうに今受け取っておりますが、私どもも都道府県労働基準局に対しまして、このガイドラインを参考にして十分な行政指導をするようにというように指示をしております。それからまた関係団体、特に労働災害防止団体が幾つかございますが、そういうような団体等関係団体を通じまして、これの理解を深めていくための努力もしてまいりたいというふうに思います。  また、私たちが関係いたしますいろいろな講習会、研修会というものがありますので、そういうようなところでは、これを参考資料に用いるというようなことで普及に努めていくつもりでございます。
  148. 簑輪幸代

    簑輪分科員 今後、労働省も通産省も引き続き調査研究を行われるわけですが、その際に、自分たちの承知している範囲だけではなくて、今一番緊迫感を感じております労働者本人それから労働組合、その他熱心に研究をされている学者の方々等、いろいろな研究の成果や提言もこれからどんどん出されてくると思いますので、そうしたものをぜひ率直に取り入れて、よりよい施策の実現を望みたいと思いますが、その点について各省庁一言ずつ……。
  149. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 先ほどもお答えいたしましたけれども、このVDTの分科会のメンバーの中には、労働省も入っていただいておりますし、またいろいろな大学の医学関係の先生方も非常に多数入っていただいているわけでございます。したがいまして、そういった方々の意見を総合的に伺いながら検討を進めてまいりたいと思いますし、その過程におきまして、ただいま先生からお話がございましたようないろいなところでいろいろな報告書を出しておられます。当然そういったものも参考にさせていただくということでございます。
  150. 福渡靖

    ○福渡説明員 御指摘のように、私たちもこの問題については積極的に取り組んでいくつもりでございますので、広く関係者意見を聞くようにしてまいりたい、このように思います。
  151. 簑輪幸代

    簑輪分科員 大臣にお伺いしたいと思います。  今までお話し申し上げてきましたように、この問題は一つの省の問題ではなしに多方面にわたるわけですし、さらに職場だけでなく、一般家庭とか学校などのところにもかなりVDTが普及しているという状況でございます。そこで、個別にあれこれ対応するという点では、いろいろな意味で不十分さが免れないと思いますので、ぜひこのVDT問題に対する総合的な対策を任務とするプロジェクトチームなどというようなものをつくって対処していただくことが必要ではないかというふうに思いますので、通産大臣として労働大臣にも呼びかけて、こうした今後の日本の未来にとって重大な問題として積極的な対応をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  152. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 簑輪委員おっしゃるとおり、今後必要に応じまして各省庁と連絡して対処してまいりたいと思っております。
  153. 簑輪幸代

    簑輪分科員 最後にちょっと文部省にお伺いしたいと思いますが、学校教育の分野でも、特に商業学科、工業学科等を中心にして情報処理教育が強化されて、義務教育の授業にもコンピューターが既に導入されているという実態になってきています。同時に、文部省の指導下にある各種学校それから専修学校、予備校等々学校法人の中で、児童生徒の学習の場にもVDTが広く普及しております。文部省では、こうした情報処理教育に携わる現場の教師に対して年間四十人、三十日の期間企業に委託派遣して特別研修をさせるとか、それから地方自治体の負担による情報処理教育センターでの訓練を行うなどの相性をとっているというふうに伺っています。ところが、こうした専門教師の間からも、VDTコンピューターに対する安全衛生教育が全く行われていないことに対して不安とか疑問が出されています。産業医科大学及び名古屋医科大学の実験結果によると、赤外線オクトノータを使った毛様体の疲労に関する実験調査では、連続二時間VDT作業を行った場合、目の疲労度は倍化し、特に若い人ほどその率が十倍から二十倍化するとのデータが出されています。さらに、なれていないほど休息をとっても疲労は容易に回復しないとの結果が指摘されて、発育盛りの青少年に大変大きな影響があるということで心配されております。  文部省は今後一層コンピューター教育を拡充するという方針のようですし、教育上も十分な配慮が必要だと思います。情報社会で必然的に生きていかなければならない子供たちに対して、教育課程の中で労働安全衛生教育がしっかりと位置づけられていないとゆゆしい事態になると心配いたします。現場の教員からも不安が出されているような状況ですので、早急に教育の場における労働安全衛生教育ということについての取り組みをお願いしたいと思いますが、文部省の見解お尋ねします。
  154. 阿部憲司

    ○阿部説明員 お答え申し上げます。  コンピューター操作に限らず、学校の教育における実験、実習につきましては、従来から安全とか保健衛生面につきまして格別に配慮するような指導を行ってきております。コンピューターにつきましても、社会の情報化の進展に応じまして今後学校教育においても取り組んでいかなければならない問題であるというふうに考えておりますけれども、その際、安全の問題をどうするかという問題がございます。現在の学校教育における情報処理教育につきましては、非常にハードな教育の場合でもコンピューターの実習時間が生徒一人当りにすれば極めて短いということもございまして、視力障害とかいったような問題は現在生じておらないわけでございます。しかしながら、先生御指摘のような点につきまして今後十分配慮しながら、教育の場における安全保健面につきまして十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  155. 簑輪幸代

    簑輪分科員 事が起こってからではすべて何事も遅いわけでございまして、そういう意味で、ただいま通産大臣の方からも御発言いただきましたように、他の省庁とも連絡をとってということでございますので、この問題の重要性を強く指摘し、一層の御配慮をお願いして質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  156. 熊川次男

    熊川主査代理 これにて蓑輪幸代君の質疑は終了いたしました。  次に、柴田弘君。
  157. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 私は、昭和五十六年の予算委員会においても質問をいたしましたが、まず第一に、中小企業大学校の建設の問題、これは、御案内のように中小企業近代化審議会の報告に基づいて全国を十二ブロックに分けて建設をする、こうなっておるわけです。この中小企業大学校は、中小企業に技術開発力をつけ、また近代的な経営管理法を取り入れる、こういうことで、より高度な経済社会環境に適応できる人材を育成をしていく、こういうことで計画が推進をされているわけであります。すでに昭和五十五年の六月には東京校が開議いたしました。五十五年の十二月には関西校、また六十年度には福岡県において開校の予定だと聞いております。また六十一年度は北海道の旭川で開校と、こういうことであります。今後の建設計画でありますが、五番目、六番目を愛知県の瀬戸それから広島と、こういうことで予定をされているわけであります。  私は愛知県でございますので、この瀬戸の東海ブロック校の建設についてお伺いをしていきたいわけでありますが、すでに昭和五十七年の七月に瀬戸市を建設候補地とすることに決まっておるわけでありまして、瀬戸の定光寺地区の愛知県労働研修センターの隣接地で三万平米、これは県有林と国有林ということだと聞いておりますが、予定をされているわけであります。今回この五十九年度予算案で、広島を含めまして両校で二千万円の調査費がつけられているというふうに聞いております。  私は具体的にお聞きしたいわけでありますが、この予算をもって建設基本構造策定事業を実施する、こういうことでありますが、その中身、特に地元等と何回となく今まで打ち合わせをしていらっしゃるわけでありますね。それで研修の中身をどうするかとかあるいは規模をどうするかとかあるいは講師の派遣をどうするか、あるいは運営方法その他いろいろと検討なさっているということを聞いておりますが、地元としても、今度そういう調査費がついたということで、建設に一歩前進したと非常にこれは評価をしているわけでありますが、そういった構想の策定の中身と今後の取り組み、これについてひとつ決意のほどをお伺いをしていきたいと思います。どうでしょうか。
  158. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、昭和五十九年度、来年度におきまして、地元におきまして建設候補地点が選定されております広島市と瀬戸市を例にとりまして、地方校の建設、運営に関します基本構想を策定するという予定にしております。  御質問の基本構想の内容でございますけれども、地方校が実施すべき研究カリキュラムの内容、研究スタッフの調達方法、研修施設のあり方、さらには地方校の運営等全般にわたりまして検討するわけでございますけれども、地元の支援体制の問題も含めまして、具体的内容につきましては今後十分地元と御相談してまいりたいと思っております。今後のスケジュール等につきましては、地方校の建設の具体化をどのような方向にするかということにつきましては引き続いて検討する予定にしております。
  159. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 ひとつ最大限の努力を要望しておきます。  それから、二つ目はファインセラミックスセンターの建設、これは大臣にお伺いをしていきたいわけでありますが、大臣も御承知のように、このファインセラミックスは超高温高圧にも耐え得るいわゆる特殊窯業製品であり、第三の素材であるというふうに言われております。電子部品、自動車部品、幅広い範囲をもっていま応用されているわけでありますが、御案内のように愛知県はファインセラミックスの生産高では全国の約五〇%強を占め、企業数でも全国一である。しかし、一方におきましては専門的知識を持った技術者が少ない、あるいはまた技術開発に巨額の費用を要する、こういうことで、ファインセラミックスという花形産業にはどうしても乗り越えなければならない問題も多いわけでございます。  こういった問題を解決し、全国的にもこういったセラミックス産業が本当に我が国の産業として経済の活性化をもたらすよう発展できるように、全国的の中核となるこういったセラミックスセンターというものを、やはり一番適地である愛知県、その中でも名古屋市が妥当だと思いますが、そういうところへ建設をしていただきたい。すでに五十九年度予算案におきましては調査費が七百万復活折衝でついておる、こういうことであります。こういったセンター設置の基本的な考え方について、ひとつ大臣の御見識をお伺いしておきたいというふうに思いますが、いかがでございましょう。
  160. 黒田真

    ○黒田政府委員 今先生の御指摘もございましたように、ファインセラミックスは新しい第三の素材ということで、今後非常に期待をされていることはそのとおりでございます。そして私ども、今後の健全なファインセラミックス産業の発達のためには、特に新しい素材でございますので、その材料の特性の試験方法あるいはそれを検査するということを統一的に行うことが必要ではないかと考えております。先生御指摘のように、かたいとか燃えないとかさびないとか、非常に新しい、あるいはセンサーに使われるという新しい用途がどんどん生かされておりますけれども、A社のかたさとB社のかたさを同じ基準で比較する、あるいは第三者がこれを検証してあげることが産業の発展の基盤としては極めて重要なことであるということで、試験センターを設けるということが今後の発展にとってのかぎだというふうに考えております。  そういう意味で、私どもセンターの必要性ということを痛感しておりますが、特に窯業の中心地でございます中部地域におきまして試験センターを設立しようという機運が大変盛り上がっております。そういう地元の機運も受けまして、五十九年度予算案におきましてはファインセラミックス試験センター調査研究費ということで予算を一応予定しておりますので、この予算が成立しましたならば、直ちに試験センターの組織、業務内容あるいはほかの機関との有機的連携体制、規模、設置場所というような具的体な構想づくりを行うという予定にしておるところでございます。
  161. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 今御答弁がありましたが、大臣、この設立準備会が既に地元でありまして、非常に今機運が盛り上がっておるわけであります。だから、大臣としても、このような我が国産業の将来の発展あるいは経済の活性化ということからぜひひとつ御認識をいただいて、前向きな取り組みを私はお願いをしたい、こういうふうに思うわけでありますけれども、一言で結構でございますが、御所見を聞かせていただきたいと思います。
  162. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 愛知県がセラミックスのことに関して非常に盛んな地域であることは十分承知いたしております。しかしながら、新しいものであるだけに人間の面でもあるいは設備の面でも、あらゆる面でいろいろな困難が伴うことは当然でございましょう。しかしながら、御熱意ある地元の気持ちにこたえて、予算が通った後には十分考えてみる所存でございます。
  163. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 それで、私が聞き及んでいるところによりますと、今後の建設計画でありますが、昭和六十年には設計を完了して後半に建設に着工したい、こういうふうにお聞きをしておりますが、この辺はどうかという問題、それからもう一つは組織は公益法人、こんなふうに聞いておったわけでありますが、その辺はよろしゅうございますでしょうか。どうでしょうか。
  164. 黒田真

    ○黒田政府委員 先ほど申しましたように、五十九年度予算におきまして、今後の試験センターのあり方をいろいろ検討をしてもらうわけでございまして、これが順調に進みますならば、六十年度以降、そういった調査研究を踏まえた上で民間主体の試験センター建設のための詳細設計というような段階に入ろうかと思います。これらがすべて順調に参りますならば、六十年度中にも建設に着手することは可能ではないかというふうな見方もあることは事実でございます。これは今後のいろいろな検討の進みぐあいにかかるというふうに思います。その場合の主体、民間の主体でございますが、当然公益法人のような形をとるというふうに私どもも考えております。
  165. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 どうかひとつ通産省としても前向きな取り組みを要望をお願いしておきたいと思います。よろしくお願いします。  それからもう一点、地元問題で恐縮でありますが、一九八五年ワールド・インポート・フェア・ナゴヤ開催の問題であります。  もう既に地元におきましては、何とか貿易摩擦を解消していきたいあるいは輸入を拡大をしていきたい、こういった要望を秘めまして、大臣御承知のように、名古屋オリンピックに敗れまして、何とかひとつ、東京、大阪——関東圏、関西圏のいわゆる真ん中にある名古屋、愛知県を中心とするこの中京圏の地盤沈下を食いとめよう、こういう意味もありまして、今、ファインセラミックスセンターの建設の問題もそうでありますが、やはり名古屋港を中心にいたしまして、ここに金城埠頭というところがあります。来年春に名港の西大橋が完成をいたします。これを記念してひとつ大がかりなこういったワールド・インポート・フェア、国際見本市を開いたらどうかという計画がありまして、既にいろんな構想案というものが今出ているわけであります。それを詳しくはここでは申しませんが、それで愛知県、名古屋市もこの負担金を二億ずつ五十九年度予算の中に計上いたしまして、何とかひとつ地域ぐるみでやっていこう、こういうことであります。  ぜひとも通産省の取り組みを私はお願いをしたいというわけでございますが、ひとつ通産大臣の意のある御答弁をいただきたいと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  166. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま先生からお話のございましたように、名古屋におきましてワールド・インポート・フェア・ナゴヤ85というものが計画されておるということは私どもも十分承知をいたしております。お話のございましたように、官民挙げて製品輸入の拡大に取り組むべき時期におきまして、名古屋におきましてこういう自主的な計画をおつくりいただいてお進めいただいておりますことは、私ども非常に力強く感じているわけでございまして、この点につきましては私どもといたしましてもできるだけ応援をさしていただきたい、かように考えております。
  167. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 大臣、これはジェトロの事業としてやられるというふうにも聞いておるわけですね。五十九年度予算案では、このインポートフェアの開催補助金というものが一億三千百万一応計上をされているというふうに聞き及んでいるわけであります。今御答弁がありましたように、応援もしたいということで私も地元の一人として非常に喜んでいるわけでございますが、ひとつ大臣お願いしたいのですが、二言御答弁いただきたいと思います。
  168. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 この問題につきましては名古屋の地元の方々が非常に御熱心であると聞いております。公の席で個人的なことを申し上げて恐縮でございますが、私も三十年ほど前に名古屋港で一年間働いておりましたので、金城埠頭その他の地域はよく存じております。こういう意味で、通産省といたしましても十分意欲的に研究してみたいと存じます。
  169. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 ありがとうございました。  それから、今のセラミックスのところでもう一つ、前後して恐縮でありますが、愛知県では地域中小企業の技術力を高め先端技術への適応を促進するために、いわゆる通産省の地域フロンティア技術開発事業のテーマとしてファインセラミックスを取り上げている。そして産学官が一体となって今技術開発に取り組んでいるわけでありますが、何かお聞きしますと、五十八年から通産省の方もいろいろとやっていただいているわけでありますが、五十九年度以降の取り組みですね。ぜひともひとつその推進というものをお願いしたいわけでございますが、ここら辺、簡単で結構ですから御答弁をいただきたいと思います。
  170. 粟屋忠

    ○粟屋政府委員 先生御指摘のように、地域フロンティア技術開発事業につきましては、それぞれの地域に存在する技術的基盤に着目いたしまして、こういった既存技術をベースにしてそこに先端技術を導入することによりまして地域の中小企業の活性化を図るということを目的といたしまして、昭和五十八年度に創設された制度でございまして、五十八年度には対象地域として十三地域が採択されたところでございます。愛知県につきましては、五十八年度にニューセラミック技術開発フロンティア事業というテーマで採択を行ったところでございまして、同県におきましては、既に開発体制も整いまして順調に研究開発を行っている状況と聞いております。  なお、愛知県におきましては、六十年までの三カ年計画でこの事業を実施することを予定いたしておりまして、私ども通産省といたしましても、予算の範囲内におきまして、所期の目的に沿った事業の円滑な遂行が図られますように、できる限りの応援をいたしてまいる所存でございます。
  171. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 よろしくお願いします。  では、次は中小企業対策についていろいろお伺いをしていきたいと思います。  五十八年中の全国の企業倒産は一万九千百五十五件であります。民間信用調査機関が調査を開始いたしまして、昭和三十九年以降最悪である。それからまた一月の倒産を見てまいりましても千四百九十四件、これはもう十三カ月連続して前年同月を上回っておるわけであります。確かに景気は回復しつつあるということはいろいろな経済指標等でわかるわけでありますが、やはりこういった倒産が多い。つい最近では大沢商会の倒産もありましたし、マミヤ光機の連鎖倒産もありました。  そこで私は、第一に、やはり内需拡大を中心とした景気回復というものをまず図っていかなければだめであろう、こういうふうに思うわけであります。それには、一つ大型減税の実施であります。また金融政策、例えば公定歩合の引き下げの問題もあります。それからもう一つは公共投資だ、こう思います。ところが残念ながら、政府予算案を見てまいりますと前年度に比べまして二%マイナスである。  そこで、きょう午前中の当分科会におきまして、この公共投資について河本経企庁長官は、五十九年度においていわゆる前倒しも必要であろう、こういうような初めての見解を明かされたというふうにお聞きをしております。それで、今後日本は高齢化社会、二十一世紀にはもう世界一の高齢化社会になります。当然貯蓄率が低下をしてまいります。しかも一方においては都市化現象が進んでまいる。社会資本の整備というのは、これは考えてみた場合には欧米各国に比べて非常に低下をしておるわけですね。そういった意味で公共投資の追加というのは非常に必要であろう、こんなふうに僕は持論を持っているわけであります。  そこで、今予算審議中でありますが、河本長官は前倒しということをおっしゃっておる。初めておっしゃったということでありますが、大臣経済閣僚の一人である、こういうふうに私は思いますが、この前倒し、そして息切れした場合の追加ということについてどういうふうにお考えになっているか、ひとつ御見解をお聞かせいただきたい、こういうように思います。
  172. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 おっしゃるとおり、我が国経済の現況を見ますと、中小企業におきまして倒産件数というものが非常に多い。まことにこれは憂慮すべき情勢でありますし、私たちも深刻に受けとめておる次第でございます。しかし、全体から見まして、非常に緩やかなテンポではございますけれども回復の兆しを見せていることもまた事実でございます。けさのこの分科会河本長官公共事業の前倒しということに言及されたことを承知しております。しかし通産省といたしましては、中小企業のために中小企業新技術体化投資促進税制というものを創設して民間設備投資を促して、そこで景気拡大を図ってまいりまして、内需を中心とした景気拡大、かような経済運営を今後心がけていくことが第一かと考えておる次第でございます。
  173. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 そうしますと、この前倒しは必要ないということですね、これが一つ。それからもう一つは、五十八年度の政府経済見通しは三・四%でありました。この三・四%は恐らく到達できると私は思います。その中身を見てまいりますと、初め内需の寄与度が三・四のうち二・八だった。ところが、残念ながら二・二であったわけです。そういう見通しになるわけです。ところが一方においては、輸出は〇.六であったのが一.二ということでありますね。同じ三・四の経済成長を達成をいたしましても、その中身が違うわけであります。でありますから、私どもといたしましては、四%台の経済成長ではだめだから、何とか五%台の経済成長を図っていかなければ景気回復というものも本物になってこないし、中小企業もこういった倒産が多い。  実は私は昭和五十六年に、今の幹事長である田中六助さんが通産大臣でありまして、中小企業対策についていろいろと本委員会において御質問いたしました。田中さんも、中小企業対策は非常に認識をしている、何とかしていかなければならない、こういうふうにおっしゃっておったが、結局三年たってもこのようないわゆる史上最高というべき中小企業の倒産が出ている。こういった現実にかんがみて、やりますやりますという口先だけではなくて、本当に中小企業の皆さん方のためを思った対策をしっかりと請じていかなければならない、こんなふうに考えております。いかがでしょうか。
  174. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 公共投資の前倒しが必要ないということを私は申し上げているわけではございません。通産省といたしましては、それはそれとして中小企業のための中小企業新技術体化投資促進税制というものを行って、そこに民間需要を喚起して内需の拡大をしていきたいということを言っているわけでございます。  それと、五%台の経済成長というものを目標にして頑張れという御意見でございます。しかし、過去三年間が三%台の成長率であったわけでございます。したがいまして、今後努力して四・一%の経済成長率を目指していくということが私どもの考え方であります。
  175. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 経済成長の問題でいろいろ議論をすれば、これはあと数分でありますからなんですが、今の財政というものは、一つはいわゆる所得再分配の機能を喪失している。五十九年度予算ですね。それからもう一つは、景気回復への機能というものをなくしておる。つまり、あとはもう民間任せだ。だから、今大臣はいわゆる投資減税云々とおっしゃったわけでありますが、私どもといたしましては、本当に中小零細企業のためを思うならば、今地域的にも、業種間あるいはまた規模別、こういった不況というものが起こっている、こういったときに、やはりここでできる限りの積極財政というものも必要ではないだろうか、こういうふうに実は考えて申し上げたわけであります。そして内需拡大景気回復というものを図っていきなさい、これが私どもの持論であります。その辺もひとつよく御理解をいただきたい、こういうふうに思います。  それからあと一つ、官公需の拡大の問題。それからもう一つは、倒産防止策の中でいわゆる中小企業倒産防止共済制度という制度がありますね。それで、これはいろいろとお聞きしておりますと、現在総理府統計によりましても中小企業と名のつくところが全国で六百二十三万ある。加入件数は五万九千八百六十三、もう一%にも満たない状況である。これはいろいろな事情があるかと思いますが、こういった実態をどう考えて取り組んでいられるか、あるいはいかれるか。  それからもう一つは、この中小企業倒産防止共済法の問題であります。これは五年ごとに見直しということでありますが、現在の状態は、掛金が五千円から五万円で、無担保、無保証、無利子、最高二千百万ですか、それで五年以内、こういうことでありますが、やはりこういった問題も制度改正が必要ではないか、私はこんなふうに思っておりますが、この官公需拡大等を含めて再度御答弁をいただきまして質問を終わりたいと思います。
  176. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 第一の官公需の確保の問題でございますけれども、政府といたしましては、中小企業向けの官公需確保につきまして逐年努力しております。五十八年度におきましても、率で申しまして三七・三%、過去最高の率を目標として定めまして、現在この達成に向かって最大限の努力を払っておるわけでございます。  第二点の共済制度でございますけれども、先生御指摘のように、加入件数は六万件弱でございますけれども、過去の貸付実績を見ますと、二万二千件、約九百億円ということで相当な効果を上げておるというふうに私どもは考えております。しかし、この制度の見直しにつきましては、昭和六十年度におきまして基本的な事項を含めまして見直しをするということになっておりまして、現在事務的な検討を進めておるところでございます。今後五十八年度の実績等が出てまいりますと、それを踏まえまして、六十年度の改正の内容の骨子につきまして検討に入ることにしております。五十八年度につきましては、民間金融機関を窓口に追加するというようなことで、前年に比べまして三割強の拡大になっておりまして、私どもといたしましては、この共済制度の普及につきまして今後とも努力してまいりたい、かように考えております。
  177. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 効果は上がっているとおっしゃるのですけれども、これは知らない人が随分おりますよ。テレビ等で宣伝してみえますけれどもね。それが一つ。  それからもう一つ、改正の方向ですね。具体的に掛金を倍にして枠を倍にするのか、そこら辺のめどは一体具体的にどういうふうな改正の方向であるのか、それを一遍具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  178. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 改正の検討項目の中には、先生御指摘の加入のための金額でございますとかあるいは倒産事由でございますとかあるいは貸し付けの限度額等々、私どもといたしましては幅広く検討してまいりたいと思っています。ただ、それぞれの項目につきまして、現在、あるめどを持っているかどうかということにつきましては、むしろ五十八年度までの実績を十分踏まえまして具体的に考えていきたい、かように考えております。
  179. 柴田弘

    柴田(弘)分科員 じゃ終わります。
  180. 熊川次男

    熊川主査代理 これにて柴田弘君の質疑は終了いたしました。  次に、松浦利尚君。
  181. 松浦利尚

    松浦分科員 私は、主として日米貿易問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、実は昨年の暮れでありますが、日本からのポリエステル化繊についてアメリカの商務省はクロである、ダンピングがあったということで五・二一%のペナルティーを課したわけでありますが、これはアメリカ説明によりますと、新アンチダンピング法七百三十一条に基づく決定である。これを受けてATMI、米国繊維製造業者協会が被害についての調査に入った。ところが、ことしに入りまして突然提訴を引っ込めまして、アメリカ商務省も米国繊維製造業協会も、事実はなかったという形ではありませんけれども、取り消した。調査も取り消したし、ダンピングの税率も取り消した。よくよく調べてみましたら、一月の二十四日にATMIが提訴を取り下げておるのですが、その背景を調べてみますと、実は対米輸出の自主規制を今年から二カ年間行うんだという、その自主規制をするという報道決定があったために実はダンピングというものが取り下げられた。  そこで、大臣にぜひお尋ねをしておきたいのですが、確かに日本とアメリカとの関係では、向こうが対日貿易赤字が二百億ドルを超えて、場合によっては三百億ドル近くになるかもしれないと言われておることは事実です。そのために日米摩擦が起こってきていることも事実です。しかし、恐らく通産当局から御答弁があると思いますが、本当の意味でクロということは、ダンピングがあったという決定でありますから、そういうアンフェアな輸出をしておったのかどうか、私はそういう余地は全くなかった、こう思っておるのですが、そのダンピングがあったという決定の時点でそういう事実があったのかなかったのか、我が方で調査してみて。その辺をお聞かせください。
  182. 黒田真

    ○黒田政府委員 ただいま御指摘のように、ポリエステルの長繊維繊物の対米輸出に関連をいたしまして、ATMIというアメリカの繊維業者の団体が、日本品の対米輸出にダンピングの疑いがあるという提訴をいたしました。昨年一年かかっていろいろな調査が行われたわけでございます。  ただいまのお尋ねの、商務省はダンピングありという認定をしたが、果たしてそういうダンピング輸出があったかどうかという御質問でございますが、これは先生も御承知かと思いますが、アメリカの場合は、アメリカの業者が提訴をいたしますと、それに対して日本側の輸出者が反論をするという一種の争訟手続と申しましょうか、争いの形でそれを第三者たる商務省が判定をするという、かような姿をとって結果が出るわけでございます。  実は、この調査の過程というもので、輸出品が国内よりも安く売られているというのがダンピングの本質でございますが、輸出品と国内品とは必ずしも同一のものではない。こういった繊維品の場合でも、輸出の柄と国内向けに売られているものとは柄も違いますし、場合によれば繊維の組成も違うということで、比較の問題が技術的に大変困難でございます。実は私どもは、そういう状況はございますが、安売りの事実はないというふうに考えておりますが、そしてまた、この比較の方法が途中で修正されるというようなことで、まことに好ましからざることもあったわけでありますが、どうも先方の採用いたしました比較の方法によりますと、先生御指摘のように、商務省は五・二一一%という差のものが国内品に比べて安売りをされているというふうな判定を先方がしたということでございます。  これは、いろいろその後争う余地はないわけではございませんけれども、そういう判定を一応の手続に従って行ったということでございまして、私どもは、役所の立場から申しますと、私ども自身が調べたわけではございませんけれども、そういうことはないというふうに確信はいたしておりますが、そういう疑いを持たれあるいはそういう計算の結果が出たということについては残念なことだというふうに考えております。
  183. 松浦利尚

    松浦分科員 大臣、確かに日本の輸出超過、それも非常に大きな輸出超過になっておることは事実です。しかし、取引する場合に、アメリカという国はすぐダンピングだ、ガットに提訴だ、こういう脅迫めいたことをするわけですね。そうすると、日本の方は二百億ドル以上の貿易黒字を抱えておりますために、対米黒字があるために消極的になる。現実に自主規制を今やっておるわけですが、その自主規制の杯そのものに今日では輸出が及ばない。なぜかというと、アメリカの消費志向というのが化繊から天然繊維に移ってきておるのです。ですから、自主規制してもその自主規制の量すらも今日の輸出状況というのは達しておらない。  ですから、今お話がありましたように、これは明らかにアメリカのやり方が間違っておると私は思うのです。やっぱり筋を通すところは通しておかないと、何かあると脅迫めいたことをする、さあガットに提訴するぞ、ダンピングだ、そのたびごとにこっちが対応する。今言ったように、我々の方はシロだと思っているけれども、アメリカが余りむちゃなことを言うから、それじゃ自主規制しましょうというようなことで一歩下がる、一歩下がればまた向こうが押してくるという、そういうやり方が果たしていいのか悪いのか。私は、これからの対米輸出の問題については非常に重要な意味を持っておると思うのです。国民の目に映るのは、何かもう日本が押されっ放しです。  ですから、先ほどの委員も質問しておりましたが、経済運営を転換して内需を拡大することによって経済成長を図っていく、その努力は現実にしておる。そういう努力をしておるにもかかわらず、なおかつ対米黒字がふえていくということは、アメリカ自体にも欠陥がある、そのことを抜きにして、ただひたすらこっちの方が自主規制だとかなんとかということは、将来のエネルギーというものを摘み取ってしまう形になるのではないか。私はこの際、大臣もかわられました、このダンピングが課せられたというのは今回が二度目だと私記憶しておりましたが、きのういろいろお話を聞きましたらこれが初めてのケースのようでもありますが、ぜひひとつこれからはこういう問題がないように、正しいことは筋を通して正しくアメリカに主張していくというような指導あるいはアメリカ政府に対しての要求、そういうものをちゃんと踏み分けていただきたい、ぜひ大臣お願いをしたいと思うのです。それでなければ、これからは向こうの責めに帰すべきことまでこちらが負担をしなければならないという事態に私は追い込まれていくような気がしてならない。ぜひ大臣のこの問題に対する御見解、同時に将来に対しての大臣としての御所見を承りたいと思います。
  184. 黒田真

    ○黒田政府委員 ちょっと事実関係について御説明させていただきますが、日米間の繊維貿易というものは、ガットの特別の規則でございます国際繊維取り決めというものに準拠いたしまして二国間の取り決めが行われております。そしてこの当該合成繊維の長繊維の織物というものは、それ自体対米輸出の総枠を設けるという形で従来から輸出管理を日本側で行ってきたところでございます。  そのうちの一部の品目が今回ダンピングの疑いありということで提訴され、商務省の段階ではダンピングのマージンがあるという認定をされたという事態になったわけでございまして、私どもといたしましては、輸出管理をしております立場から、もしこういう形でダンピング税が課せられる形になりますと、各社別に差があるというようなことで取引のルートが混乱をするという懸念もございましたし、いやしくもこういったところで混乱が生ずることはまことに好ましくないという見地で、従来ありました規制の中にもう一つ限度を設けるという形で規制を行ったということでございます。  数量に関しましては、今先生御指摘のように、若干内枠でありますから窮屈であるというのが前提でございますけれども、アメリカのマーケットの動向等は化学繊維から天然繊維に移行するというような状況がございますので、これ自身が直ちにあるべき輸出を非常に抑え込んでいるというふうにはなっていないのではないだろうかということで、おどかされたために身を引いたというわけでは必ずしもないわけでありまして、こういう状況下で混乱を防止するためには、私どもとしては、やむを得ざる若干の規制の強化、今まであった規制の中でのややきめの細かい規制の展開ということで行ったものということでございまして、そういう我が方の態度を先方が評価をいたしまして提訴を取り下げたという事実はございます。
  185. 松浦利尚

    松浦分科員 誤解のないようにしていただきたいので、私は何も数量が減ったとかなんとかいうことを言っているんじゃないです。自主規制をすることによって相手側がダンピングをおろしたという、そのことを指摘をしておるのです。これからもあることですから、ぜひ大臣にお聞かせいただきたいと思います。
  186. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 世界の経済が米国を中心として回復の兆しを見せているというときに、世界経済の活性化を促進するためには、やはり自由貿易というものを大いに促進していかなければならないことは言うまでもございません。保護主義が台頭してくればこれを何としても排除するということが我々の考え方であり、過日私がアメリカへ行ったときにも、あちらの政府高官と最終的には合意をしているところでございます。しかし、個々の難しい問題が両国の間にあることも事実でございまして、このたびも形の上で自主規制と言ってよろしいのか、そういうようなことがございまして、これが秩序ある輸出の確保ということのためには必要やむを得ない、必要やむを得ない場合以外は自主規制のようなものを絶対すべきでない、今後そのような方針のもとに私は適切に対処してまいりたいと存じます。
  187. 松浦利尚

    松浦分科員 それから大臣アメリカは何かにつけてガット提訴とかダンピングだという攻勢をしかけてくるわけですね。ありもしないことを攻勢をしかけてくるわけです。ですから、そういうものについてはぜひ真相をチェックして、こちらが一歩下がれば向こうは二歩前に進んでくるわけですから、そういうことのないような対応をしていただきたい。今言われたことでも十分ですけれども、さらにもう一歩突っ込んで、こちら側もそういう事実はないんだという強い経済外交を展開してもらいたい。向こうが言ってくれば、まあそうですか、それじゃ自主規制しますというような、そういうことはぜひやらないでいただきたい。そのことをお願いしたいと思うのです。
  188. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 それほど弱腰であるとは思いませんけれども、そのように対処してまいりますし、また逆の場合には我々も強く我々の言い分を主張してまいる、そういう方針でございます。
  189. 松浦利尚

    松浦分科員 弱腰でないと言われますが、大臣御就任になってこれから再三経験をなさることだと思うのですけれども、農林大臣が、アメリカ側で農畜産物の自由化問題についてガットに提訴するぞ、こう言った途端に、今月末までに輸入制限十三品目も含めて農畜産物の話し合いで一括決着をつけるというようなことを記者会見で言われる。  私が言うのは、確かにアメリカというのは日本にとって大切なお客さんであり、貿易の相手国です。だからといって、正しいことを正しいと主張していけないということではないわけですから、そういう意味で正しいことは正しいとあくまで筋を通す。向こうはダンピングだ、こう言ってくれば、我々の方はそうではない、それではガットで争おうというような、こちら側もそういう姿勢をぜひ展開していただきたいというふうに思います。大臣はもともと気性の強い人ですから大丈夫だとは思いますが、もう一遍聞かしてください。
  190. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 御指摘のおっしゃること、よく承知いたしております。
  191. 松浦利尚

    松浦分科員 それから次に、実は金の取引問題に関する事項でございますが、御承知のように、金が従来取引品目としては上場されておらなかったわけでありますが、余りにも金をめぐる社会的な不安あるいは問題点が多くなりましたために指定品目に上場されたわけであります。通産当局は、上場することによって、指定品目にすることによって、従来あったような問題点はなくなるだろう、正規の取引に返るだろう、こう期待をされておられたと思うのですが、私たちもそのことについてはそう思っておりました。  ところが、昨年の十月も、調べてみますと、商工委員会等で金の取引にかかわる不正について再三議論が展開されておるわけでありますが、依然として犠牲者が絶えない。特に退職年金を持っておられるお年寄り、こういった皆さん方をねらい撃ちするがごとくセールスマンが入り込みまして、朝から晩まで身の回りの世話をするような形をとりながら金の取引を勧める。金をあなたが持っておると盗難に遭うと大変だろうからというので、それにかわる証券を渡す。気がついてみたら、もう全部金(かね)は取られてしまって何にも残らない、そういう事態というのが非常に多い。最近特に西日本等で顕著になってきておるわけでありますが、通産当局は、この問題についてのいろいろなデータ等を把握しておられると思いますね、事故等についてもしそういうものがありましたらお聞かせいただぎたい。
  192. 山田勝久

    ○山田(勝)政府委員 先生御指摘の金にかかわる取引というものに関しまして、昔は国内の私設マーケットというものがございました。しかし、これが先生御指摘のように政令で上場商品となってからは、そのような私設マーケットは壊滅いたしております。それからもう一つ、海外の先物取引というものがございましたけれども、これもまた先般の海外先物取引受託規正法の施行によりまして、苦情件数はほとんどなくなっております。  そこで、現物まがい商法というものに関する苦情というのが依然として残っておりまして、現在通産省では、本省と地方の通産局に消費者相談室というものを設けて各種相談を受け付けております。そのデータによりますと、昨年の四月、つまり五十八年度に入りまして十二月までの相談件数、これは金以外いろいろございますけれども、全部で五千七百九十三件ございました。そのうち金の取引にかかわるものが八百四十二件、全体の一五%を占めでございます。そのトータルの金額を申し上げますと約十七億四千万円でございます。この中で、先生御指摘の金の現物まがい商法に関するものが相当含まれております。  では、この契約内容というのはどういうものかと申し上げますと、純金の注文書つまり金の現物の売買契約でございますが、と同時にその賃貸契約を結ぶ。そして現物は会社が保管し運用する。運用益は、一年契約の場合ですと価格の一〇%というものを前渡しいたします。それから期間は大体一年から五年でございまして、中途解約は原則としてできない。やむを得ない場合でも、違約金として三〇%、運用益の返還を求める、こういうような内容でございます。  こういうことに関しまして、私どもの相談室に問い合わせの具体例といたしまして、例えば、契約したがどういう会社なんだろう、信用できる会社なのか、一年間は大丈夫なんだろうかというような問題、あるいは契約書にサインしたら取り立てがしつこいのでどうしたらいいかという問題、あるいは金の現物を要求しても渡してくれない、あるいは解約に応じてくれないとか、三〇%の違約金は高過ぎるのじゃないか、こういったようなことがございます。これが実態でございます。
  193. 松浦利尚

    松浦分科員 大臣、今お聞きになったとおりなのです。せっかく通産当局が努力をしてそういうことをなくそうということで、なくなった。ところが、まがい商法が今度は出てきた。それで犠牲になるのは、最近年金生活者だということになりますと、やはり社会的にほっておけないと思うのですね。  この際、大臣お尋ねをしておきたいのは、こういうものに対して、たしか警察当局は調査に入っておるという報道もあるわけですけれども、具体的にチェックした、具体的に手入れをしたという報道はないのです。せっかく法体系が整備されて正規の取引に戻ってきておると思うと、こういう悪がまた出てくる。この際、徹底的に根を絶つ意味で、商工委員会やら国会でこういう議論が再三再三行われていくことは、それだけ国民に対して政府なり国会は何をしておるのだろうか、こういう疑いをかけるような結果になりますから、通産大臣もおかわりになりましたこの際、こうした把握された事実を警察庁にもお話しなさって、こういうものに対しての厳しい取り締まり処置、まがい商法に対しても厳然たる法的な規制あるいは現在の法体系の中でやれるものなら直ちに実施する、そういうことについての大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  194. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 国会でもたびたび論議されておりますこのようないわば社会悪を追い払うためには、委員御指摘のようないろいろな対策を考えまして、早急に処置いたしましょう。
  195. 松浦利尚

    松浦分科員 ぜひお願いしたいと思います。もう何遍もこのことで国会で大臣との間でやりとりをしても解決をしないわけですから、この際大臣に期待をいたします。もう二度と国会でこういうことが議論をされないということで、ぜひ今言われたように処置をお願いいたしたいと思います。  あともう残り時間がわずかですから、余り多くを申し上げませんが、実は昨年の十月二十八日ですが、この前内閣委員会で外務大臣にもお尋ねをしたところでありますが、実はこういうことがあってはなりません、絶対にあってはならぬことですが、ホルムズ海峡が仮にイラン・イラク戦争が拡大をして封鎖された場合の日本の対応可能日数はどうかというのを外務省の経済局資源第一課が発表したわけであります。備蓄のみで対応すると二百十五日、一〇%節約をすると二百七十二日、IEAスキーム発動の場合には七百十六日は大丈夫だという発表をしておるのです。それからまた別の意味で、ホルムズ海峡を通過しない、以外の国々から五百万パーデイの追加供給があった場合は、備蓄のみで対応する場合三百七十八日、一〇%節約し備蓄で対応するときは六百日大丈夫だという数字の発表を五十八年の十二月十二日になさっておるのです。この数字については、通産省の方は知っておられますか。
  196. 豊島格

    ○豊島政府委員 外務省が一つの試算としてある前提を置いて計算した、その中の数字は、先生今おっしゃったような数字を出したということは存じ上げております。
  197. 松浦利尚

    松浦分科員 それでは、前提として、こういうことはあってはならぬことです、しかし万が一あった場合、万が一ホルムズ海峡が封鎖された場合、外務省の言うように七百十六日は大丈夫だ、もちろんIEA、世界エネルギー機構からの発動があった場合の七百十六日でありますが、そういうふうに国民の側は理解してよろしいのですね。
  198. 豊島格

    ○豊島政府委員 外務省が計算する場合においていろいろの前提がございまして、例えば今回家備蓄を合わせまして大体百二十日分ぐらいありますが、これを全部取り崩してしまうというようなことを前提として計算しております。しかし、実際に石地の生産、精製、流通を行うためには、やはりどうしてもランニングストックというのは四十五日分ぐらい要る、石油のタンクから製油所まで運んでくるものもあるし、それから生産してすぐ停止しないで円滑にやるために若干ストックする。それからディストリビューションすればいいということですが、これはちょっと大き過ぎるといいますか、崩したのではどうにも経済が回らないということになろうかと思います。それからもう一つは節約をずっと一〇%続けるということを前提としておりますが、御承知のように、一次、二次の石油ショックを経まして相当節約が進んでおりまして、一〇%全部の分野で節約するということは非常に大きな問題でございまして、仮に一〇%の節約をするとすれば、大口需要家では一五とかそれ以上のものをしなくちゃいけない、こういうことでございまして、したがいまして、そういうこと等を考えますと、簡単に計算上二百日もつとか七百日もつということは一つの計算としてはできるわけですけれども、そういうことは大変なことになってしまうということでございまして、もちろん、いざそういうことが起こったときにはどう対処するかということについては、万全のいろいろな方法を考えていかなくちゃいけない。しかし、そういう非常に簡単なものであるということではない、こういうふうに理解していただきたいと思います。
  199. 松浦利尚

    松浦分科員 私も、今言われたことが本当だと思います。計算上は七百十六日という数字が外務省から出たんだろうと思います。  それでは、これも前提、こういうことがあってはならぬことですよ、決してあることを願っているわけではない、絶対あっては困る。では、仮にホルムズ海峡が封鎖された場合。何日可能でありますか。現状、何日日本の対応は可能でありますか。
  200. 豊島格

    ○豊島政府委員 まず、備蓄だけ取り崩すということで何日もつかという計算をしますと、大体は二十日のうち四十五日がランニングストックとしても七十五日。ホルムズ海峡を経由する日本の原油が大体六五%ですが、それで割り出しますと百十五日くらいということになろうかと思います。もちろん、そのほかにもホルムズ海峡が閉鎖されれば、その他の地区で生産余力のある国での増産ということはありましょう。しかし、そのうちでどのくらいが本当に日本に回ってくるのかということも計算上のいろいろな問題がございまして、なかなか一概には言えないわけでございます。  それからさらに、例えば節約をどの程度とういうタイミングでやるか、最初から節約をある程度頼むとか、それとも相当長期に続くということによってやるかということでございまして、この辺は現実問題として、百十五日よりは長くもつということは確実だと私は思いますけれども、それは事態の推移に従ってどういうふうに政策を展開するかということを含めて日数は延びるし、延ばしていかなくちゃいけない。しかし、やはりそれなりの影響というのは最小限にするような工夫もしなくちゃいけませんが、一概にこれだけはちゃんともつということではない。しかし、長く閉鎖された場合には、それなりの対応は別途法制的あるいは国際的なスキームでやっていく、最大限頑張れるようなことは考えていく、こういうことではなかろうかと思います。
  201. 松浦利尚

    松浦分科員 今言われたことが本当だとすれば、やはりホルムズ海峡というのは絶対に確保されなければならない。そうしますと、日本のタンカーが、カーグ島のイラク攻撃を控えてホルムズ海峡通過についてちゅうちょしておるわけではありませんが、今黄色信号を出しておられる、ゴーサインはないという状況なんですね。イギリスのタンカーは、何か攻撃を受けたということも報道されておるわけですが、このイラン・イラク戦争が拡大をしていってもらっては、日本はもう本当に困るわけですね。所管は外務省でありますけれども、資源外交としては通産大臣の果たす役割というものは大きいと思うのですね。六五%をホルムズ海峡に依存をしておる我が国の対応として、やはりそれはそれなりに努力はしておられると思うのでありますが、エネルギー担当相として、所轄する大臣として、こうした私大を防ぐために対応というものはやはり考えておられるだろうと思うのです。その点についてお聞かせをいただいて、質問を終わります。
  202. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 通産省の立場は、油に関しましては何としても国民生活に安心感をもたらすこと、あるいは国家経済を安定させるということが基本的な政策でなければなりません。そのためには、常に原油の安定供給そして多角的な供給ということに最大の努力をしなければならぬ。同時に、備蓄も行わなければならない。それは、IEAを中心としたところの国際協力という形でもって推進しなければならないところでございます。こういうあり方でもってホルムズ海峡の制約というものも、最大限影響を少なくすることに努めるわけでございますが、それ以上には、やはり外交ルートを通じましてイラクに対してはイランを攻撃しないよう、イランに対してはイラクに対して攻撃を控えるような努力を常にいたしておりますし、今後も努力を続けていく所存でまいります。
  203. 松浦利尚

    松浦分科員 先進諸国の中でイラン、もちろんイラクもそうですが、両方に外交ルートを持っておるというのは日本だけなんですね。そういう意味では、日本の果たす役割というのは非常に大きい。しかも、日本にとっては油という非常に重要な資源を抱えた地域ですから、通産大臣としても、イ・イ戦争の拡大を防止するために積極的に動いていただきたいと言えば、外務省がまた何か言うかもしれませんが、積極的に努力をしていただきたい、そのことを最後にお願いをいたしたいと思います。
  204. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 よくわかりました。
  205. 松浦利尚

    松浦分科員 私の質問を終わります。
  206. 熊川次男

    熊川主査代理 これにて松浦利尚君の質疑は終了いたしました。  次に、岡崎万寿秀君。
  207. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 私は、東京の大田、品川などいわゆる城南地域産業の振興の問題について、質問をしたいと思います。  御承知のように、ここはかつて日本の三大工業地帯と言われた京浜工業地帯の一環でございます。昭和五十六年の工業統計を見ましても、東京二十三区のうちでここの占める比重というのは、工場数で一五・四%、従業員数で一九・四%、製造品の出荷額で何と二一・一%という、極めて高い比重を占めているわけでございます。そういう城南地域産業の問題について、通産大臣はどういう御認識をなさっていらっしゃるのか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  208. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 ただいま先生が挙げられましたように、城南地区におきましても中小企業のカバレージというのは非常に大きな地位を占めております。中小企業の数あるいは雇用に占める面、いろいろな角度におきまして、地域経済に非常に重要な役割を果たしておるというふうに考えています。したがいまして、中小企業庁といたしましても、中小企業の振興を図る意味で、あるいは活力を維持する意味で中小企業政策推進に努力している次第でございます。
  209. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 中小企業の推進のために努力したいというお言葉なんですけれども、私は、城南地域産業の問題についてもっと深く重視していく必要があるように思っているわけです。  この大田区をとりましても、工場数約八千三百、昼間人口の就業人口の約四割がその工業に従事していますし、今おっしゃいましたように、その圧倒的部分が中小零細企業なんですね。そういう点では、言われるとおり、区民生活や地域経済に大きな比重を持っているわけですが、単にそれだけではなくて、日本の経済にとっても極めて大きな比重を持っている、この認識が必要ではないかというふうに考えます。  私は、ここに八一年二月十七日付経済雑誌の「エコノミスト」を持ってまいりましたが、その中で日本工薬大学の竹内教授がこの地域の産業を底辺産業と呼びながら、日本の自動車産業に例をとって、これは日本の自動車産業の強さを支えている極めて重要な分野であるということを強調しているわけです。  そのほんの一節だけを紹介しますと、「機械生産のための底辺産業は全国的にみると、京浜の地位が圧倒的に高く、京浜の中では大田区に集中している。」そして、「大田区の機械・金属工業は、底辺産業をベースに部門内で、あるいは部門相互間で複雑に結びつきながら、一大技術集団を形づくっている。」つまり、この大田を中心とする城南産業というのは非常に高い技術水準を持っているし、またそれが多種類の加工産業の地域的集積、工場デパートといいましょうか、そういう地域的なまとまりを持っているということから、そういう点で日本の自動車産業を初め日本の今の産業の発達の底辺部分をなす非常に大きな比重を持っているわけなんですね。こういう位置づけについて、通産省として異存なかろうと思いますけれども、いかがでしょうか。
  210. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 私どもが承知しております数字、統計等で見ましても、一般機械あるいは金属製品、電気機械というような産業が相当数この地区に存在しておるということは承知しております。中小企業の施策の面におきましても、その地域の中小企業の振興のために商工会議所等によります経営指導あるいは中小企業事業団によります高度化事業による資金貸し付け、あるいは東京都の体質強化資金というような各種の制度をこの企業等に対しまして行っておるという状況でございます。
  211. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 地域経済だけでなくて、日本経済に占める役割が非常に重要だということを私は強調したわけですが、そういう御認識だと思いますけれども、それならばこの城南地域産業についてこれを守り発展させる施策を、特にここはおっしゃるように中小企業が圧倒的に多いわけですから、その振興策を通産省としてどういうふうにおとりになっているのか、具体的な話を聞きたいと思います。
  212. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 各それぞれの地域におきます中小企業あるいはこれを含みます産業構造等につきましては、それぞれの地域地方公共団体等が、産業界等といろいろな計画を練って練り上げていくものというふうに考えております。私が申し上げますのは、製造業、商業あるいはサービス業を含めまして中小企業の振興というものは、日本経済にとりまして非常に重要であるという位置づけから、金融面、税制面あるいは地域の産業に対する施策というものを幅広く展開していくということでございます。
  213. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 対策について、私たちはこの問題を非常に重視しまして、私の前任者でありました榊利夫前衆議院議員も国会の質問でも取り上げ、また質問主意書を二回にわたって提出しました。それについては鈴木総理大臣の名前で、昭和五十五年の八月十九日付と十二月十九日付で答弁書が参っていますが、これは具体的に城南地域を指して私たちは質問したわけでございます。その中で「中小企業は、大都市地域を含め地域経済において生産活動等の面で重要な役割を果たしており、今後とも安定的な発展が図られるべきであると考える。」また、次の項には、「今後ともきめ細かな下請企業対策の充実に努めてまいりたい。」こういうふうに答弁されています。  しかし、実際にはどういう対策がなされたのか、後で私伺いたいと思いますけれども、こういう重要な城南地域産業というものが、工場再配置政策やあるいは大都市における工場、工業等制限法などによって、今は極めて経済地盤の沈下が憂えられている現状なんですね。これは直接には中小企業の倒産、閉鎖という形で進んでいるわけですが、この問題につきまして、先ほど私引用しました竹内教授の論文でも結びのところで「このような停滞の最大の原因は、まず行政が大田区南部などの技術集団に対する評価を誤り、魔女狩りのように工場の追い出しを進めてきたところにあり、そのため、資金力にまさる優良工場を排出させる結果となってしまった。」最後のところでは、「底辺産業をベースとした技術集団の育成強化に本腰を入れてかかる必要があろう。」こういうことも指摘されている状況であるわけです。  中小企業庁長官にお伺いしますけれども、中小企業振興法が制定されて二十一周年になるわけですが、この城南地域が中小零細企業の圧倒的な比重を占め、日本経済にも重要な位置を持っている、そういう見地からこれまでどういうことをやられたのか、またやろうとなさるのか、一般論じゃなくてその具体的なお話を聞きたいのです。
  214. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 先ほども申し上げましたように、それぞれの地域におきまして具体的にどのような集団化事業あるいは高度化事業を展開するかという問題は、やはり組合等の自主的な計画あるいはその地域の市町村あるいは府県というものの計画に即して行われるということでございまして、中小企業庁といたしましては基本的には制度を準備いたしまして、十分これが活用していただけるようにその普及を徹底するという立場でございます。  ただ、この地域に特殊な問題といたしまして、先ほど先生御指摘のように下請企業がすそ野を広く展開しておるということでございますので、この地域における一つの重要な政策の柱といたしましては、例えば親企業の工場移転等があります場合に、その下請企業が直ちに仕事がなくなるというようなことがあってはいけませんので、下請企業に対します下請取引のあっせんというような具体的な事業を、下請企業振興協会等の指導員を充実いたしましてきめ細かく展開するということでございまして、具体的に申しますと、そのような事業がこの地域におきまして有効にワークするというふうに考えております。
  215. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 今おっしゃいましたこと、具体的におやりになったのですか。
  216. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 具体的に申しますと、五十九年一月までの指導相談件数といたしまして、これは工場移転の関係での指導相談件数でございますけれども、全国で一万一千件、東京の場合にはそのうち六千八百六十七件というものが指導相談として成立しております。そのほかあっせん事業といたしましては、東京の地区で二千百五件というものが実績として出ております。ただ、城南地区に絞った件数にはなっておりません。
  217. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 そういう計算は出てないのですね。
  218. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 出ておりません。
  219. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 国土庁長官の方にお伺いしますけれども、日本経済新聞の昨年十二月三十一日付によりますと、国土庁としてこの京浜工業地帯の衰退に歯どめをかける策として、東京湾西部臨海地域の再開発構想について具体的なプロジェクトを盛り込んだ構想を進められているというふうにありますけれども、これはどういう中身でしょうか。
  220. 立石眞

    ○立石説明員 東京湾の西部臨海地域の再開発構想調査は、これらの地域におきまして既存施設の機能が転換するなどによりまして土地利用の混乱等が生じるとか、そういうような問題が最近生じているわけでございます。そのため、長期的な視点に立って適正な土地利用を図られるように、総合的な再開発構想を検討しようとするものでございます。
  221. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 土地利用の中でこういう城南産業地域ということについて十分留意されて、その産業振興の方にも具体的な配慮ある施策が望ましいと思います。  時間の都合で具体的な問題についてお聞きしたいと思いますけれども、この地域、羽田空港のすぐそばにあります合同製鉄株式会社、これは本社は大阪でございますけれども一部上場会社です。これが生き残るための策として、東京製造所を二月から閉鎖して船橋の製鋼所と合併する、買収する、そういう事態が進んでいるわけでございます。これは長い間この地域において社会性を持っていましたし、大勢の従業員や下請、孫請の会社や、あるいはスクラップの業者等も関係していたわけですが、そういう大企業の一方的な移転というのは、これは地域経済にとっても非常に大きな影響を与えるわけでございますけれども、そういうことが好ましいとお考えになるかどうか、これは通産大臣でしょうか、御所見を伺いたいと思います。
  222. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 地域経済にとりまして、中小企業の重要性というものが近年非常に見直されているということは当然でございます。中小企業の活力が維持されるということは必要でございますけれども、それぞれ、またその地域におきまして、いかなる形で産業が発展するかということは、国土の問題あるいは過密過疎、公害問題等々幅広い見地から決まるものと考えておりまして、中小企業あるいは通商産業の面からのみ即断することは非常に難しいというふうに考えております。
  223. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 その両面から考えるのは当然でございます。しかし、この合同製鉄だけではなくて、隣接した地域の三興製鋼といいますか、そこも平塚の方にこの四月に移転する計画が進んでおりまして、一部の報道によりますと、通産省の指導だということにも伝えられております。通産省の電気炉の製造業の構造改善基本計画によりましても、老朽施設等のそういうところは早く処理をして、生産の集中実現のために大いに進める必要があるという趣旨の計画でございますが、どうも合同製鉄などもこういう趣旨に従った動きのように受け取るわけですね。しかし、大企業や中堅企業等におきましては、それは大いにその政策によって保護されるでしょうけれども、取り残された中小企業やその関連の業者や区民はどうなるのかという問題、そこに私は問題があると思うのです。大企業が保護されるのは、それはそれなりに意味があると思います。同時に、大企業が社会性を持ち、地域的有機性を持った中で作業があったわけですから、当然中小零細企業やその他に対する十分な手当てをするように指導も必要だと思いますし、これが中小企業を見捨てるような施策になるということは、これは全く好ましくないと思いますね。その辺についてはどうなんでしょう。
  224. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 工場等の移転のみならず、企業の廃業、転業等によりまして、関連の中小企業者が影響を受けるということは間々あるわけでございます。私ども中小企業政策といたしましては、事業のあっせんでございますとか事業転換でございますとか、あるいは事業転換に至るまでの金融面あるいは信用補完面等々の政策によりまして、中小企業が受けます影響あるいは被害を最小限に食いとめるあるいは新しい角度での振興に転換するというような側面から、中小企業政策につきまして最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  225. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 今回の合同製鉄、これは相当の大企業ですが、その移転につきまして何か具体的に施策をおとりになりましたか。
  226. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 移転そのものにつきましての施策は、具体的にとっておりません。ただ、先ほど申しましたように……(岡崎分科員「移転に関して中小企業に与える問題についてですね」と呼ぶ)この件につきまして、特段新しい制度を特にとったという事実はございません。
  227. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 いずれにしても、冒頭で強調しましたように非常に重要な城南地域産業の問題です。しかもこの地域は、合同製鉄の地域というのは羽田空港のすぐそばのこの地域産業にとっては拠点的な位置を占めていまして、これが跡地がどう使われるかによっては、この地域の産業にとってはある意味では決定的とも言える意味を持っていると思うのですね。  そういう点で、これは二万一千坪ぐらいの跡地になりますけれども、これは当然工業専用地域でありますが、この跡地がほかの用途に変更されるのではないかということを住民は非常に懸念しているわけです。私は大田区長とも会いまして、この城南産業の振興の問題について懇談しましたが、そのときでも、何としてもこの跡地を伝統ある産業のために使いたい、変更してもらっては困るということを強調されていました。  中小企業庁長官にお伺いしますけれども、この跡地を工業専用地域として守って、中小企業特に先ほど言ったような重要な意味を占める地域の中小企業の育成振興のために役立たせる、そういうために努力されるかどうか、その点についてお伺いします。
  228. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 地域の中小企業の振興が非常に重要であり、かつ中小企業者にとりましては死活問題につながるということで、私どもとしては中小企業問題については万全の体制をとりたいと思っております。  都市内におきます大企業の移転後の土地利用という問題につきましては、私どもとしては、中小企業の振興という面につきまして十分な措置がとられることを期待しておりますけれども、基本的にはその地域におきます実態を踏まえて解決がされる必要があるわけでございまして、土地所有者の意向でございますとかあるいは地域住民の意見等々、地域の実情を踏まえた各地方自治体がどのような考え方を持ってこれを取りまとめるか、地方自治体が中心になってこれを検討すべきものというふうに考えておる次第でございます。
  229. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 地方自治体が独自の意思を持つということは必要でしょう。大田区長も先ほどのような意思表示をしていましたし、東京都の長期基本計画の中にもこの南部産業地域を重視した項目がございますが、そういう見地から見ますと、この地域が工業専用地域として守られるということは非常に重要だろうと思います。今言ったような諸条件を踏まえても、この地域が工業専用地域として使われていくということについて、これが中小企業振興策に役立つならば通産省としてもそういう方向で指導したいし、考えておきたいという見解を持たれるかどうか、お聞きしたいと思います。
  230. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 用地の転用あるいは用地の治川等の面につきましては、立地政策あるいは環境問題等々、非常に多角的な側面から検討されあるいは決定されなければならないと思っておりまして、中小企業施策からのみのコメントは差し控えたいと思います。
  231. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 中小企業施策というだけではなくて、私は冒頭に、これは日本経済にとっても非常に重要な位置を占めているということを申し上げましたが、きょうは地図を持ってきていませんし、そういう認識がないかもしれませんけれども、この地域の産業にとっては非常に重要な内陸部における残された工業専用地域なんですね。これをやはり守るということが、中小企業振興ということをお考えになっている役所にとっては非常に重要な問題だと思いますし、大企業が出ていった後、後は知らぬということは許されないと思うのですね。そういう点で、工業専用地域として守りたいという住民や区長やそういう関係者の意向を体して、ぜひ工業専用地域としてこれが使われていくように指導してもらいたいと思うわけです。  国土庁にお伺いしたいんですけれども、先ほど言いました東京湾の西部臨海再開発構想を今進められているわけでございますけれども、この構想でよしんばこのところがマンションなどの住宅地に変更されるような、そういうことなどはお考えになってないと思いますが、いかがでしょうか。
  232. 立石眞

    ○立石説明員 本調査は、五十八年度より三カ年計画で進める予定でございまして、本年度が初年度で始めた段階でございますが、この調査の中におきましては、城南地域の活性化を図るということが主要な課題一つであるというふうに考えているわけでございまして、中小企業の発展を阻害しないように十分配慮してまいりたいと考えておるわけでございます。ただ、具体的な個別の土地利用等につきましては、今後検討していく課題であるというふうに考えております。
  233. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 地域経済の活性化のために配慮した構想を考えたいということですから、当然これはこの地域を中小企業発展のために利用されるという内容と承りますが、そういう立場に立ちましで、この跡地等に住民が非常に強く要望しています技術情報センターなどの設置ですね、これは非情に望ましいと思いますし、中小企業が今後生き抜くためにはやはり技術が高くなくては、新しい技術進歩をどんどん取り入れてやっていく以外にはその振興はないわけでございますので、そういう中小企業の技術情報センターを設置するとか、あるいはプレスや鍛造や旋盤などを集めた工場団地をつくるなどそういうふうに活用するならば非常に生きた使い方になると思うわけですね。こういう点についての方途を、もちろんこれは東京都や大田区などがいろいろと考えることでもありますけれども、中小企業庁としてイニシアチブをおとりになるような、そういうお考えはないのかどうか。すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  234. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 中小企業にとりまして技術振興あるいは情報伝達が非常に重要であるということは、申すまでもございません。ただ、具体的に地域情報センターあるいは技術開発のための施設あるいは工場団地というような計画につきましては、それぞれ中小企業者の計画あるいは地域地方公共団体の計画というものが練り上がりまして、それを受けて中小企業庁といたしましては制度的な支援をするというここでございます。本件につきましては、まだ具体的な計画が固まっておるというふうに承知しておりませんし、また、地域情報センターあるいは県の施設等につきましては、それぞれ各地域に、各県に一カ所でまとまってスタートするというような実態にございます。したがいまして、具体的な計画につきましてはコメントを控えておきたいと思います。
  235. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 東京都の長期基本計画によりましても、地域中小企業振興センターの設置ということにして、南部地域に一カ所設けるという案もあるわけでございますが、もちろん南部のどこというふうに具体的に決まっているわけではございませんが、いずれにせよ、東京南部の産業地域、中小企業の密集した日本産業の底辺を支える非常に重要な地域に中小企業振興のための技術情報センターをつくるということは、極めて重要だろうというふうに思います。東京都などがイニシアチブをとってそういうことを進める場合、国として補助されることになると思いますが、そういう意思はございますか。
  236. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 この地域にどのような形でそのような計画が進められるか、現在の中小企業関係の予算につきましては、技術対策、情報化対策というのは中心的な課題ではございますけれども、既にそれぞれの府県におきましてスタートしておる施設等がございまして、この計画が具体化されるということにつきまして、現在の予算との関係でどのようなことができるかということは、慎重に検討した結果を待って判断しなければならない、かように考えております。
  237. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 慎重な検討の上、結構でございますが、先ほど言ったようなこの問題の占める重要性から、大いに前向きに検討してもらいたいと思います。  私が言いました工場団地につきましても、これは幾つかの試みがございますけれども、関係の業種が集まりまして、ここで相互に関係し関連しながら作業を進めるということは極めて効率的でございますし、中小企業の振興にとっても非常に重要な意味を持っているわけです。またそれが成功しますと、新規の工場の移転ということもあり得まずし、現在、くしの歯が欠けるような形で衰退しつつあるこの城南地域の産業の活性化にとっても、非常に重要だろうと思うのです。そういう点で、工場団地を設けることなど、もっと意欲的に、どこかが言ってきてからというだけじゃなくて、先ほど国土庁の方ではそういう構想等も検討されているわけでございますが、中小企業庁は中小企業振興のためにつくられた官庁でございますので、この中小企業の密集している城南地域に、先ほど言ったような技術情報センターをつくるとか、あるいは工場団地をつくるとか、そういう点についてはもっと敏感に意欲的にやる必要があると思いますが、こういう点、いかがでございましょう。
  238. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 中小企業施策は、私が改めて申し上げるまでもなく、自発的あるいは内発的な盛り上がりと申しますか、活力前提として、国がそれを支援するという立場にあるわけでございます。したがいまして、このケースにつきましても、具体的な計画がそれぞれ中小企業者の間で、あるいは地元地方公共団体の間で練り上がるのを待ちまして、中小企業施策として可能な限りの支援を行いたい、かように思っております。
  239. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 最後に一問。  これは通産大臣に最後に、今の議論をお聞きになっていまして、私はこの城南地域産業というのは日本の経済にとっても極めて重要な意味を持っているし、中小企業振興という点でも重要だ、そういう見地に立って幾つか質問をいたしましたけれども、通産大臣としての御所見を最後にお聞きして、終わりにしたいと思います。
  240. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 城南地域の中小企業、また城南地域の経済というものは、伝統あるいわゆる京浜工業地帯として繁栄してきたことは十分承知いたしております。しかし、委員のいろいろな議論、いろいろなおっしゃることを聞いておりますと、やはり地域の実態、実情というものを私どもの方でまだはかりかねている点が幾つかあると思うのです。したがいまして、そのような自治体を通じてさらに具体的な進展があった時点で我々は考えられることでございまして、具体的な手続等等がまだ生じてこない現在、我が方としても具体的な返事をいたしかねるということが真実だと思う次第でございます。
  241. 岡崎万寿秀

    ○岡崎分科員 具体的にもう衰退して非常に困っているのが現実でございますので、やはりその施策については通産大臣としても大いに留意され、努力されることを期待して発言を終わります。
  242. 熊川次男

    熊川主査代理 これにて岡崎万寿秀君の質疑は終了いたしました。  次に、島田琢郎君。
  243. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 産構法の制定に伴いまして二十一業種指定されて、これが昨年から実施に移されているわけであります。  きょうは砂糖のところを聞きたいと思います。大臣には総括する責任者であって、砂糖のところまでは手が回っていないでしょうけれども、きょうはちょっとおつき合いをいただきまして、後ほどひとつ大臣のお考えを聞きたいと思います。  まずその前に、砂糖の関係で進捗状況をちょっと聞きましょうか、どれくらい進んでいるのか。
  244. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 お答え申し上げます。  ただいま産構法の指定業種でございます砂糖精製業の構造改善の進捗状況、どうなっておるかということでございます。  先生御案内のとおり、昨年の十月に砂糖精製業の構造改善基本計画を策定いたしました。それによりまして今進捗をしているわけでございますが、砂糖精製業の場合一社一工場であるという実態がございまして、なかなか進みにくい面があるわけでございますが、現在のところまでに出てきました構想ないしは実行に既に着手されているものといたしましては、一社一工場でございましても、例えば共回生産会社をつくってやる、それから生産の委託をやるというような形で、一社一工場でも対応をいたしております。それから複数工場の場合には、工場の集約によりまして集中生産を行う。さらには、共通した問題といたしまして交換生産といいますか、それによりまして輸送コストを削減するというような対応をしております。  基本計画で定めております設備処理の量は、百万トンということでございます。現有の設備能力の約二六%に当たるものでございますが、設備処理だけの面でとらえてみますと、ただいま申し上げましたように構想中のものまたは実行着手のものということでございまして、まだ必ずしも結果が出ているものばかりでございませんが、ただいまのところかたく見て六割方の目標は、設備処理の面で達成をしつつあるのではないかというふうに見ているところでございます。さらに、構想等が具体化をしつつあるところもございますし、さらにはこれらが経過する中で経営の多角化をするというようなことで、砂糖精製業界の長期の安定化、活性化を図るという基本計画の目的を最終的には達成をいたしたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  245. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 六〇%方達成をした、こういう話で、量の面からいいますと今お話にあったように百万トン目標にしてやっていくんだ、そうすると六十万トン処理が済んだと理解していいのか。まずそこのところ、そういう理解でいいですか。
  246. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 ただいま申し上げましたように、構想中のものまたは実行が現在既に着手されているものを含めての話でございますので、かたく見て今の段階で言えるのは、六〇%方まず確実であろうということでございまして、すべて済んだということではございません。
  247. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 ですから、百万トンの量の面からいえばどれくらいになるのか。それは六十万トンの処理ができたということに理解していいのか。
  248. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 現時点でそういう御理解をされても結構だと思います。
  249. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 これは基本計画によると、六十一年九月三十日までに廃棄なんかについては実施完了、目標を達成する、完了する、こういう計画で進められているのでしょう。
  250. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 そのとおりでございます。
  251. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 ちょっとテンポが速過ぎるような気がするのだけれども。これがこんなに速く進むと心配されるのは、それに伴うリスクもまた大きいのではないか、こういうふうな心配があるわけです。具体的には関東、関西、地域によってのいろいろ進め方があるというお話も開いているのですが、地域別の達成はどのような達成率になっていますか。
  252. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 地域別の達成率というのは、先ほど申し上げましたようにかたく見て六割方達成したということでございまして、正確な数字を今はじいているわけではございませんが、どちらかといいますと、現在までのところ、業界の実態からいって設備の状況は東の方がどうしても過剰な状況にあったということで、現在実行に着手ないしは構想が具体化しつつあるところは大体のところが東の方の工場でございます。
  253. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 もう少し細かく聞かしてください。廃棄あるいは合併統合、いろいろな手法が用いられているんだろうと思いますが、東の方がやや過密の状態だということの今のお話からいうと、東の方はやや統合化を促進する必要がある地域だ、こういうふうに理解していいんだと思うけれども、その辺のところをもう少し会社の名前を挙げてでも説明してください。
  254. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 お答え申し上げます。  東の方というのは、大体東京それから川崎周辺を私ども念頭に置いておるわけでございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、複数工場の例で申し上げますと、三井グループと言われておる三井製糖につきましては三工場ございましたが、これを最終的には二工場に集約をしていくという構想が今具体化しつつございます。それから、台糖も三井グループの一つでございますが、二工場を一工場にするということで、これはほぼ具体化が終わって現実に実行がなされているものでございます。  さらに、これは一社一工場の例でございますけれども、塩水港精糖、それから東洋精糖がそれぞれ共同出資をいたしまして、共回生産会社をつくっております。これは太平洋製糖という共回生産会社をつくりまして、そこに両会社が生産の委託をするという形になっておりまして、その結果、東洋精糖の小名木川工場は廃棄をするということで、今現実に動いているわけでございます。  さらに一社一工場でございますが、中小の方でも動きがございまして、和田製糖と徳倉製糖所が、徳倉製糖所が和田製糖に生産を委託する、これは法的に言いますと事業提携ということでございますが、そういう形で今構想が具体化しつつございます。  大体今申し上げたような会社ないしはそれに属する工場は、すべて束の方に存在している工場でございます。
  255. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 事業提携も含めて工場の統合、それから共同化といいますか、こういうものが進められているようですが、事業提携に当たってそれはどういう形態でやっていこうとしているか。生産の共同化とかあるいは受委託というものもありましょうし、それから全くの共回生産の会社になるという、大きく分けると三つぐらいに分かれるのかな、そんな感じがしますが、この事業計画も大体そういう方向で進めているんですね。そうすると、今まで六〇%達成されたと言われている会社の形態は、これは分けますとどういうふうになりますか。
  256. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 先ほど申し上げましたように、複数工場の場合でございますと、複数工場三つあるのを二つに集約するというようなことでございます。そういう形態での対応、それから今先生御指摘ありました共回生産というような形態は、大体事業提携という形で行われているわけでございますが、その代表的な例が塩水港精糖と東洋精糖の例でございます。これは、共回生産会社太平洋製糖というものを共同出資で設立をして、法的にはそこに両会社が生産を委託するという形でございます。それからもう一つの例は、今申し上げましたのは共回生産会社をつくってのやり方でございますが、和田製糖と徳倉製糖所のやり方は、徳倉製糖所が和田製糖に生産の委託をするという形でやっております。大体先生のおっしゃられたような手法で、今取り組まれているということでございます。
  257. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 これは砂糖業界の体質というのは手に負えぬところがありまして、所管は農林水産省なんですけれども、しかし産業部門で言えば、我が国の砂糖の総需要量の一番多いときは八割以上もここで占める。今、国内糖は大分生産がふえてまいりましたからやや下降線をたどっておる、こういうことでありますが、ここが今こういう状態で体質改善が進められているということは、後ほど大臣にもお聞きしたいと思っておるのですけれども、中小企業の持っております宿命みたいなもの、縮図と言った方がいいのかもしれませんけれども、そういうものを持っておりまして、私も業界の体質改善、構造改善というのは、なかなかこれはスムーズに進んでいかぬのではないかと実は心配しておったのです。今お聞きしますと、えらい高木課長は胸を張ってこれは相当進んでいくというようなことを言っているわけですが、それだけにリスクがあるんではないかという点で私は少々心配が残るわけであります。  そもそも、五十五年に製糖工業会がみずからあなたの方に約束するような意味に、あるいは工業会自身の内部取り決めみたいなことで構造改善をやりますと言ったのですが、これがうまくいきませんで、これは御承知のとおりであります。なかなかうまくいかない。今度、産構法に乗って六十一年の秋までにやればいいのが、半年足らずで、まあ、半年少々ですか、そこで早くも相当の達成率だ。これは私は、こうした体質改善の進んでいく過程でやはり心配しておかなくてはいけないのは、こうした企業がそれぞれ今までは何といいますか、仲がよくなくて、お互いに相手が死ぬのを待っているような、しかも隣が増産すると負けずにまた増産するということで、なかなか砂糖企業というものは煮ても焼いても食えぬ、そういう体質を実は持っているわけであります。  こういう点を今までの経緯として考えてみた場合に、果たして今のようなグループの編成あるいは会社ごとの共同事業といったようなものについて、全く心配がないのかどうかという点について、農林省はこの方向で確実に構造改善ができる、目的が達成できるという自信の上に立って行政指導をされているのかどうか、その辺は問題全くなしという考え方で今おられますか。それとも、問題があるとすれば、ひとつこの際お聞かせを願って、我々もまたこの構造改善の行方をしっかり見詰めていきませんと、今までいつも苦い思いだけさせられてきているから、にわかに、あなたが六〇%方進捗いたしておりますと言われても、ちょっと私は信用ができないという気持ちがどうしても心の底に残っているものですから、一遍聞かせていただきたい。それは通産省に、これからもいろいろやってもらわなければならぬところがあるものですから、この際、大臣せっかくおいでだからお聞かせ願いたい、こう思っています。
  258. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 先生今おっしゃられました、今の手法で構造改善が達成できるのかということでございますが、先生まさにおっしゃられましたように、昨年十月に策定をいたしましてまだ半年でございます。  この構造改善基本計画を立てるに当たりましては、当然私ども学識経験者の意見も聞き、いろいろな業界の実態も踏まえて策定をいたしたつもりでございますが、現時点では今の手法で取り組んでいくということによって、特定産業構造改善臨時措置法のねらっている業界の長期安定化とそれから活性化が達成できるもの、こういうふうに思っております。そういう観点から指導も行っているつもりでございます。
  259. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 そうすると、ことしの秋で一周年を迎えたころには、もうこれは一〇〇%完成するな、今の状態でいったら。どうですか。
  260. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 これは特定産業構造改善臨時措置法は、あくまでも業界の自主的な努力というものを基本にしております。したがいまして、私どもそういうことでこれまでも指導もしてきたわけでございますが、今先生おっしゃられましたように、この秋口に一〇〇%、まあ、設備処理の量として一〇〇%達成するかどうかということにつきましては、これからのさらに業界の努力いかんでございます。したがって、これまでのいろいろな推移を見ながら、私ども、業界の自主的な努力というものがさらに進むようなことにいたしまして、これ自体、設備の処理の期限は六十一年の九月三十日まででございますけれども、業界を取り巻く環境は、砂糖の需要が低迷しているというようなことにも端的にあらわれておりますけれども、非常に厳しいものがございますので、できるだけ早い機会に設備の処理の面では達成して、さらに経営の多角化といいますか、そういうような点にまで乗り込んでいけるような体質にしたい、こういうふうに考えながらやっているところでございます。
  261. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 課長、もう余り時間がないから簡単に答えてください。  そこで、大変心配な面があるのではないか。例えば、ここで働く従業員、つまり労働者の扱いについてでありますが、今までなかなか難しくて、事業提携はおろか、全体の砂糖のキャパシティーを十万トン下げるのだってえらい苦労してきたのに、こんなにぱんぱん進んでいくというのは一体、これは産構法はすごい威力を持っているものだなと、私は今改めて聞いていて驚いているのでありますが、そういたしますと、例えばこの産構法第八条の二項に事業提携計画というのがつくられて、それによって、これは主務大臣といいますから農水大臣ですか、農水大臣がこれを認可するわけですね。この事業提携計画というものは、そんなに簡単にあなたの方で承認できるような内容になっているのですか。この議論をするとちょっと長くなるから、あなたの自信だけ聞かせてもらって、余り長い説明はひとつ遠慮してもらいたいのです、時間がもう何ぼもないですから。
  262. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 事業提携計画で現在具体的に出てきておりまして承認をいたしましたのは二件ございまして、先ほど申し上げました塩水港精糖と東洋精糖、それから和田製糖と徳倉製糖所、この二件でございます。それぞれ法的な要件に照らしまして適正であるということで認めた、承認を与えたつもりでございます。
  263. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 労働組合があるのですか、これは。
  264. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 ただいま申し上げました前の方の件、塩水港精糖、東洋精糖については労働組合がございます。これは当然のことながら、この法の要件にも、労働組合との協議といいますか話し合いを十分行ったものということになっております。そういう点は十分確認をしながら、チェックをしながら承認をしたつもりでございます。  和田製糖と徳倉製糖所の場合は労働組合のない場合でございますので、慎重に対応をして、その雇用の面で問題の起こらないように、まあ和田製糖と徳倉製糖所の場合ですと、和田製糖の方に徳倉製糖所の者が転籍をするというような形で雇用の確保が図られるように承知しております。転籍ですね、移籍して雇用の確保が図られるというように承知をいたしておりますので、そういう点は私ども十分チェックをしたつもりでございます。
  265. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 前者の場合は労働組合があるから労使の合意書というのは、とればとれますね。合意書とっていますね。
  266. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 合意書といいますか、その事業提携の中で計画をやるに当たりましては当然労使の協議がなされているわけでございますから、話し合いがなされておるということは十分確認をしております。
  267. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 確認をしている。  それで、今のお話で後者の方は労働組合がないですね。これは個々の従業員、この人たちの合意書というのはどうやってとっていますか。
  268. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 労働組合のない場合のことも法律で書いてございますが、その辺、例えば法の第十条には「労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者」というようなことになっております。     〔熊川主査代理退席、主査着席〕会社側が事業提携計画を出してきたときに、私どもはその辺は十分確認をして労働者の意向、さらに雇用の確保が十分なされることをチェックした上で承認を与えたつもりでございます。
  269. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 表向きはそうですね。第十条一項に従って、労働組合のないところは過半数を代表する者と協議をしてやるんです。しかし、ここのところは非常に抜け穴だと私は思うのですよ。問題は、労働組合があればそれなりの対応ができるし、また労働組合も会社に対しての対応ができる。ところが、労働組合のないところ、こういう人たちの身分というのは必ずしも保障されるとは限らない。ですから、過半数を代表するという、その辺のところが一体どういう認識で接触をし、対応しているのかというのが極めて私はいいかげんだと思うのですよ。そう思いませんか。ですから、そういうところは個々に一人ずつ意見を聞いて対応していくという親切さがないと、後段でいうところの「その雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と言ったって努められぬじゃないですか。大丈夫ですか。
  270. 高木勇樹

    高木(勇)説明員 現実問題としては、和田製糖なり徳倉製糖所の場合は従業員の数は大変少のうございまして、日ごろからそういう面では従業員の考え方なりは経営者は大体把握している、私どもも当然工場なりは見てきておりますけれども、そういう感じを持っておりますし、そういう常日ごろからコミュニケーションの図られやすい職場でございますので、私どもは先ほど申し上げたような点に問題はない、こういうふうに思っております。
  271. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 あなたはかなり高姿勢なことを言うな。大丈夫かいな。後で怒られないようにしてよ。「失業の予防その他雇用の安定」、こういった面で具体的な行政指導、私は前も言ったのでありますが、きょうは時間がなくなりましたし、大臣せっかく私の答弁をやろうと思ってメモを持っていらっしゃるから、最後答えてもらわないと失礼になるので、高木課長の方はやめますが、この具体的な行政指導について、ぜひ委員長、後ほど私の方に文書ででも出してもらうようにお願いをしたいと思います。できますね。
  272. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 この分科会での資料その他の申し出は、私どもから予算委員長の方に申し上げるようにしておりますので、そう伝えます。
  273. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 そのようにお願いします。  それでは大臣、砂糖の問題それから産構法の扱いは、大臣が直接手を染めるのじゃなくて、二十一社まとめてあなたのところが全体を見張っているだけの仕事でしかないのでありますが、せっかく小此木大臣と初めての議論でございますから、私はこの際二点ほどお聞きをします。  一つは、私も全体の予算を見ていて不思議に思っているのですけれども、三千八百万人から四千万人ぐらい中小企業の従業員がおるというのが通説ですね。しかし、ことしの予算を見ますと、去年もそうだったのですけれども、五・五%も予算が減っている。これはもう言わずもがなのことなんですけれども、我が国経済を支える大変大事な役割をこの中小企業は果たしているわけです。そういう点からいいますと、この予算で見る限り非常にお粗末だ。先ほども中小企業法制定二十周年というお話がございました。こうやってじりじり後退していくようでは、中小企業の皆さんに日本の経済や産業を支えるなんてお世辞にも言えないのじゃないか。もっと姿勢をきちっとして予算の面でも対応していただかないと困るのではないかと私は思います。  それから、今お聞きになっていたように、産構法の指定業種というのは今二十一社あるわけでありますけれども、これは表に出てきたところだけでありまして、表に出ない、なお深刻な状況に置かれている業種も数多いわけであります。したがいまして、前の不況法のときもそうでありますが、今度の産構法、二度にわたってこの種のものが考えられるということは、そういう小手先だけではなくて、それなりに我が国の産業政策を基本から見直すべきときではないのかと私は考えているのです。そういう点で、本当は産業政策の基本姿勢というのを聞きたい、こう思ったのですが、もう時間がなくなっちゃったものですから、大臣から一言だけお聞きして、後ほどまた別な機会にこうした問題について議論を重ねていきたい、私はこう思っております。
  274. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 ごく簡単に申し上げて恐縮でございますが、確かに中小企業対策費五・五%昨年より減ということは事実でございますが、厳しい財政事情のもとで要求額のほぼ満額を確保したということだけは事実でございまして、後ほどその詳細な数字等ごらんいただければありがたいと存じます。さらに産構法、御指摘のとおり確かに二十一業種指定されるところでございますが、今後も実情に応じて産業政策を展開してまいりたいと存じます。
  275. 島田琢郎

    島田(琢)分科員 終わります。
  276. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて島田琢郎君の質疑は終了いたしました。  次に、伏屋修治君。
  277. 伏屋修治

    伏屋分科員 私は、最初に貿易情報センターに関しまして二、三お尋ねをしたいと思います。  私どもの岐阜県は、御存じのとおり、刃物それから陶磁器産業が県内の地場産業でございまして、この地場産業の行方というものが県内の経済の活性化につながってまいりますので、そういう面からこの問題を取り上げたわけでございますが、ほとんど一〇〇%と言ってもよいほど貿易に依存しておる刃物業界それから陶磁器業界にとりましては、海外の市場の動向というものを非常に知りたいわけでございます。そういう面からも、県を通じまして国の方へは貿易情報センター設置の申し入れをしておるわけでございますが、いまだにそのような状況にないようでございますので、その辺あたりからお答えをいただきたいと思います。
  278. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま先生から御質問がございましたように、岐阜県は中小の輸出産業が多いということでジェトロが従来東京、大阪のほか全国二十八カ所で持っておりますような貿易情報センターを設置してほしいという御要望をお持ちということを私ども承っておりますが、実はジェトロという特殊法人等の内部機構の問題につきましては、全体といたしまして行政改革を進めなければいけないという昨今の事情のもとではなかなかその実現が困難でございまして、富山について認めたのを最後にここ数年、要求はいたしておりますが認められていないというのが実情でございます。私どもといたしましては、これからも海外に手足を持たない輸出関連中小企業の海外の情報入手をより容易にするという意味におきましては、こういうものの拡充を図ってまいりたいという気持ちは持っておりますので、引き続き努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  279. 伏屋修治

    伏屋分科員 私どもの党も行政改革推進するという立場で取り組んでおりますので、それに協力することにやぶさかではございませんけれども、やはり行政改革も不要不急のものを対象にしていかなければならない、そういう面で中小企業の企業経営の生死にかかわるようなこういう問題に関しましては、行政改革の中でも優先的に取り扱っていただきたいと考えておるわけでございます。中小企業事業団の中に地域情報センターというものがございまして、そこからも情報をいただいておるようでございますけれども、やはり県民感情といたしましては、県の中にそういう貿易情報センターがあるということがいかに心強いかということは、私も地元のいろいろな方と話し合いまして、しみじみと感じておるわけでございます。  そういう面で、今までの日本経済の下支えをしてきた中小企業の方々を守るという意味で、行政改革の中で不要不急のものはカットするけれども、そういう中小企業の振興のためにも今後貿易情報センター設置に対する御努力をお願いしたいと思いますし、幸い通産大臣もお見えでございますので、行政改革のさなかではあるけれども、富山が最後で今後の見通しが一体どうなるのか、そこらあたりを大臣からお答えいただければありがたいと思います。
  280. 杉山弘

    ○杉山政府委員 それではとりあえず私の方から、将来の見通し、方針等につきまして御説明をいたします。  先ほど御答弁申し上げましたように、私どもといたしましても努力はいたしておりますが、なかなか実現に至ってないというのが実情でございますが、引き続き努力はいたします。その間の措置といたしまして、先生御案内と存じますが、名古屋の貿易情報センターが岐阜県も管轄をすることになっております。比較的所員の数も多うございますので、できるだけ手を割きまして、岐阜県下の輸出関連中小企業の皆様方の海外情報入手をより円滑にするためにお役に立つようにいたしたいと考えております。
  281. 伏屋修治

    伏屋分科員 大臣の御答弁お願いしたいと思います。
  282. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 地域の事情に応じまして、地域の要請、熱望はよく理解できますけれども、行革推進等々の時期にかんがみまして非常に難しい問題であると考えます。
  283. 伏屋修治

    伏屋分科員 富山を最後ということでございましたけれども、それまでの御努力と今後の設置の見通しをもう少し具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  284. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、富山が最後でございまして、その後の経過から申しますと、実は秋田県の方が岐阜県よりは先に設置の御要望がございましたが、これもまた実現できていない状況にございます。その後に岐阜県の方からの御希望がございましたので、私どもといたしましては、実現しなければならない課題がかなり多い状況にございます。(伏屋分科員見通し」と呼ぶ)努力はいたしますが、今のところ、いつごろどうなるということについて残念ながらここで確たる御返事を申し上げられません。その点は御容赦をいただきたいと思います。努力はいたします。
  285. 伏屋修治

    伏屋分科員 見通しが確たるものはないということでございますけれども、先ほど申し上げたように中小企業の振興を図るという意味貿易情報センター設置の御努力はなお継続されるかどうかです。
  286. 杉山弘

    ○杉山政府委員 おっしゃるとおりでございます。一生懸命続けます。
  287. 伏屋修治

    伏屋分科員 では、話題を変えまして都市ガスの問題についてお尋ねをしたいと思います。  毎年都市ガス事業者の方から出されますこういう都市ガス事業報告書がございますが、その事業報告書の中を見ますと、いわゆるガス供給部門の報告書の中で勘定外ガスというのがあるわけでございますが、これは何を意味しておるのかお答えいただきたいと思うのです。
  288. 豊島格

    ○豊島政府委員 勘定外ガスとは、ガス事業者が工場から送り出すガス量と実際に需要家が使用しましたガス量とに若干の差が出ております、これを勘定外ガスというわけでございます。
  289. 伏屋修治

    伏屋分科員 通産省で、いわゆる勘定外ガスというものは最近のところではどれぐらいの量があるのか、つかんでおみえでしょうか。
  290. 豊島格

    ○豊島政府委員 年によっていろいろ違うわけですけれども、全国平均で最近では大体二%程度ということでございまして、五十五年二・二%、五十六年二・二%、五十七年はちょっと下がって一・七%でございます。
  291. 伏屋修治

    伏屋分科員 私も前の予算分科会でもこれに関連する問題を取り上げたことがございますが、今おっしゃったように供給源とその先のいろいろな誤差がある、そういうものが勘定外ガス、こういうように言われましたけれども、ガス導管というものの実態からすると、あながち今局長が答えられたものが勘定外ガスではない。それ以外に腐食した老朽管から漏えいするガス、あるいはジョイントのところのずれから生ずるガス、こういうものも勘定外ガスの中に入っておるのではないか、導管の実態からいいましてもそう考えざるを得ない。その辺はどうお考えになってみえますか。
  292. 豊島格

    ○豊島政府委員 勘定外ガスにつきまして、先ほど申しましたような送り出しと実際の使用との差ということでございますが、その中には確かに先生いろいろおっしゃったようなことがあると思いますが、一つは、見かけ上の差ということで、実際に送り出すところの計器と、それから使用したところの検針との差といいますものが時点が若干ずれる、検針は同じ日にやっているわけじゃないですから。それから温度によってもガスは若干膨張するということもございまして、そういう見かけ上の差。それから工事を行いますときに当然両方、端を閉鎖しまして取り出す、そうすると、その工事部分の中に含まれているガスというものがございます。それから第三番目としましては、確かに導管等のガス工作物から漏れておるというものもあるわけでございまして、そういうことからいいますと最後のそういう漏えいというものがあることは事実でございます。これはどのくらいかということはちょっと把握できないわけでございます。
  293. 伏屋修治

    伏屋分科員 そういう供給源のところと消費者のところの誤差、それから導管の老朽化によるところのガス漏れ、こういうものがございますけれども、そういうものをひっくるめて消費者は公共料金を支払っておるわけでございまして、そういう意味からするならば、消費者の立場に立ちながらこの勘定外ガスの量を減らしてまいらなければならないと考えるわけでございます。そういう面での通産のガスの方の対応はどういうふうにやっておられるか。例えば、私の聞いたところによりますと、中央管理センターのような形で導管の実態、そしてまた漏えいをしておる実態というものが一目瞭然わかるようにはしておるといいながら、ガス事業者はまことに原始的な方法でしか地中に漏れたガスの探知ができない、こういうような状況にもあるわけでございまして、ガス事業者が二人ないし三人ぐらいのグループを編成しながら定期的に地域を分けてガス探知をやっておるという実態もあるようでございますので、その辺の対応、いわゆる消費者の立場に立った対応の仕方、それをお聞きしたいと思います。
  294. 豊島格

    ○豊島政府委員 ガスの漏えい防止ということは基本的にはそもそもそういう配管を敷設することに関するところから始まるわけでございまして、ガス事業法でガス工作物については技術基準というものを設けておりまして、それによって材料とか構造とか腐食防止対策、折損防止対策等を規定しておりまして、ガス漏れが起こらないような措置を埋設時に義務づけておる。特に重要な導管等につきましては、工事計画の認可とか検査等でやっておる。その最初が肝心でございます。そこは十分やっておるわけでございます。  それから、埋設後どうしているかということでございますが、これも技術基準等によりまして定期的にガス導管等の漏えい検査を義務づけておるわけでございまして、その定期検査のやり方がどうかということでございますが、これはいろいろな方法がありまして、先生おっしゃったようなこともございましょうし、それから自動車を走らせて地上からの空気を吸い上げるといいますか、そういうことで検出するとか、必ずしもぶらぶら歩いてやっているわけじゃなくて、実際にある程度そういう機動的なこともやっておるわけです。しかし、それだけでは十分じゃないということもございます。年がたてば当然ガス管も腐食するということがございますから、それをどうやって健全性を診断するかというような方法あるいは修理の方法についても五十七年度から調査研究をやっておるわけでございます。なかなか難しい問題もございますが、その研究成果を踏まえまして、できるだけ未然にないしは早くそういう傷みぐあいがわかるような、そういう方法も開発してそれを大いに活用していくというようにガス事業者を指導していきたい、こういうふうに考えております。
  295. 伏屋修治

    伏屋分科員 公共料金を支払う消費者の立場からもそういうガス漏えいを防ぐという手だてを、今お話聞いたわけでございますが、それと同時に、静岡の駅前のガス爆発事故とかあるいは大阪のガス爆発事故等々ございまして、やはり国民の皆さんの生命、財産すら脅かされる危険性が常にガスには伴っておるわけでございますので、そういう保安面からの微に入り細にわたっての対応というものを十分なされなければならないのではないか、このように考えるわけでございます。  そこで問題になるのは、老朽管を老朽管と知りつつも、ガス事業者が設備投資をするための資金繰りというものもあってなかなかでき得ないというようなことも考えられるわけでございますが、事生命、財産に関することでございますので、そういう面で老朽管の取りかえとかというものに対して通産省はどういう指導をして、どういうような便宜を図ろうとしておるのか、その辺もお聞かせいただきたいと思います。
  296. 豊島格

    ○豊島政府委員 保安対策を強化するということでございますが、一方それだけ事業者負担がふえるということでございます。特に、中小ガス事業者ということになりますと、なかなか経営も大変でございます。したがいまして、中小ガス事業者につきましては、特にガス漏えいの検知装置等の保安設備ということになりますと、中小企業金融公庫の貸し付けの中として、産業安全衛生施設等の貸し付け、これは一般より安い七・一%の金利を適用する。もちろんガスの近代化その他の設備についても八・一%の金利の融資制度がございます。それからさらに、中小企業事業団で、高度化事業の中に安全衛生設備リースというのがありまして、ガス事業協同組合がその組合員たるガス事業者に金利二・七%で融資をするというようなことで、そういう保安設備をやるに当たりまして貸し付けないしはリース制度ということで経営上の負担を緩和する。精いっぱいやっておるところでございます。
  297. 伏屋修治

    伏屋分科員 今お話がありましたとおりでございますが、あらゆる法律を駆使して、あらゆる便宜を行使しながら、やはり国民の生命、財産を守るための老朽管転換、設備を新しいものにしていくということに今後さらなる努力をお願いしたいと思います。  前に私質問したときにも、地下の埋設管につきましてはもう何十年というような老朽管もある。しかし、それがどこを走っておるのかという実態についてはなかなか把握がされておらない。私どもの四十万都市の岐阜市においてすら老朽管がどれほどあってどのような配管状況にあるのかということは把握できない。いわんやこのような大都市、東京における都市ガスの配管網がどういう状況にあるのか、そういうことを考えると何か身震いするような怖さを考えるわけでございますので、そういう面での万全の対策を要請いたしまして、この問題は終わりたいと思います。  次の問題、溶接の問題について二、三お尋ねしたいと思いますけれども、溶接工がその仕事に従事する上においては、溶接工の技術証明書というものがなければいけないわけでございますね。こういう技術証明書というものも種類が一体どれぐらいあるのか、そしてそれをどういう方法で入手するのか、その辺からお聞きしたいと思います。
  298. 川田裕郎

    ○川田政府委員 いろいろグレードがございまして、日本溶接協会が実施いたしておるものでは、大きく分けますと四つほどございます。溶接の技術の検定、それから溶接技術者の資格認定、それから溶接構造物非破壊検査事業者の技術認定、それからガス溶接の機器の認定、そんなようなことで、大きく分けまして四つございます。
  299. 伏屋修治

    伏屋分科員 技術証明書はそういう種類に分けられて取得をしておるわけでございますが、これが一年ごとの書きかえですね。一年ごとに書きかえて、そのたびにやはり手数料を払いながら書きかえていかなければならない、三年を境にしてその技術証明書は無効になる、そして、もう一回新たに受け直さなければならない、こういうような実態であるわけでございます。行政改革が盛んに叫ばれておるときに、あるいは自動車免許すら三年というふうに延びておるときに、こういう溶接工のみは一年一年手数料を払ってやらなければいかぬ。そのたびに、企業家の方々は溶接工を日当を払いながらそこへ出向させなければいけないというような、非常に中小企業いじめのような感じがしてならないわけでございますが、こういう一年ごとの書きかえというものをしなければならない根拠、そしてまた、そういう一年ごとの書きかえを今後三年ぐらいに延伸する、そういう意思があるかないか、その辺をお聞きしたいと思います。
  300. 川田裕郎

    ○川田政府委員 その辺の実態につきましては、それぞれの地域によりまして認定の講習その他をやっておりますが、現在におきましては、各それぞれの地域におきまして、全国的な統一を受けながら講習その他を、それぞれのブロックごとに違った方式でやっておるようでございます。  なお、各年度ごとに千円ずつ取りまして確認をいたすという方式をとっておりまして、この辺につきましては、もしそういうようなことがございますれば、そういう点につきましては私どもの方でいろいろ調べまして、もし問題があれば検討してみたいと思っております。
  301. 伏屋修治

    伏屋分科員 答弁になっておりませんけれども、その一年ごとにやる根拠というものを、直轄指導官庁である通産省がどういうような根拠でそういうことを、日本溶接協会の指導官庁が通産省であるとするならば、通産省が確固たるものを持って日本溶接協会に臨んでいかないと、各地域で独自でやるんだというような野放しのようなやり方をやっていけば、結局は苦しむのは中小企業の方が苦しんでいくんだ、そういうことを十分に考えていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  それからもう一つは、一年ごとの技術証明の発行を延伸する意思があるかないか、その辺通産省がしっかりして、日本溶接協会に強固な行政指導を施して、中小企業の方を苦しめないようなそういう指導を強烈にやっていただきたい、このようにお願いをするわけでございますが、その辺どうですか。
  302. 川田裕郎

    ○川田政府委員 その点につきましては、私ども先生のただいまの御指摘の点も踏まえまして、溶接協会に対しまして各支部ごとの実態を調査させまして、その適正化を図るように努力してまいりたいと存じております。
  303. 伏屋修治

    伏屋分科員 そうすると今のところ、現時点では各支部の実態が掌握されておらない、こういうことですね。
  304. 川田裕郎

    ○川田政府委員 ただいまの時点におきましては、各都道府県に各支部がございますが、その各支部ごとに実情に応じてやっておりますので、その実態については正確には把握しておりません。
  305. 伏屋修治

    伏屋分科員 日本溶接協会から出しておる受験料とか、あるいはその継続の場合の手数料とか、あるいは試験官を派遣するときの旅費を受験者が負担しなければならないとか、あるいは出張する場合には新幹線であればグリーン車にするとか、いろんな細かいことが書いてあるこういう出版物があるわけでございますが、これは全国共通のものである、しかもこれは日本溶接協会が出したもので、全国共通のもので、これを柱にして地方の各協会が考えておるというわけでございますから、そういう面から言うなれば、もう少しこの日本溶接協会に対する通産省の掌握と、そしてまたその内容をよくよく把握して、それが中小企業の皆さんにどのような影響を与えるかという判断のもとに、強烈な行政指導があってしかるべきではないか、このように考えるわけですが、今の御答弁とかいろいろ聞いてみましても、通産省自体が掌握をされておらないようだし、また掌握されてないだけに指導の細かい手が行き届いておらない、こういう印象がぬぐえないわけでございますので、もう一度そういう意思確認をしたいと思います。
  306. 川田裕郎

    ○川田政府委員 ただいま御指摘の点を踏まえまして、私どもとしては溶接協会に対しまして、それぞれの支部の実態を把握させまして、その適正化を図るよう努力してまいりたいと思っております。
  307. 伏屋修治

    伏屋分科員 実態を掌握してないようですから、私の方でつかんだ範囲で申し上げますと、いわゆる溶接の技術には幾種類かありますけれども、少なくとも現場で仕事に従事するためには、アーク溶接であろうと、あるいはアーク溶接の中にも基本的なものと半自動、いろいろございますけれども、そういうような溶接のいわゆる技術証明を三種類を持っておらないと仕事に従事できないというのが現実ですね。ですから、その費用だけでも、継続するだけでも千三百円かかる、それの三倍、こういうことになるわけでございますし、また三年で御破算になりますと、もう一回改めて受験料を払いながら技術検定も受けてくる。大体そのお金だけでも相当なお金になってくる。また別の超音波のそういう技術ということについては、非常にその受験料も高い。三万円というような受験料であるとも聞いておるわけでございますが、これは全国共通かどうかはわかりません、今おっしゃったようなことからしましてもね。けれども、そういうような一地域におけるところの溶接の技術証明に対する実態があるわけでございまして、そういう面からももう速やかなる全国の各県別の協会の溶接技術証明発行あるいはそういう面に要する費用等々の掌握をして、そして溶接協会に対する行政指導を強烈にお願いしたい。  もう時間がないようでございますので、最後に、私が今申し上げたようなことを具体的に掌握をした段階で報告をいただきたいと思います。それと同時に、今私が申し上げたような技術証明の延伸、自動車免許でも三年なんだから、もうその一回受けたものは三年間は有効だ、せめて最小限そのあたりまで行政指導の手が施された結果が出ることを私は大いに期待をしたいと思います。そういう面で、今の全国的な掌握の報告書をいただきたいということと、その技術証明を三年延伸するという結果が出るような工業技術院の行政指導というものを最後にお願いを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  308. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて伏屋修治君の質疑は終了いたしました。  次に、小川国彦君。
  309. 小川国彦

    小川(国)分科員 私は、先日来、通産大臣あるいはまた貿易局長に、オレンジの割り当てをめぐる不当な現状、乱脈な現状、これを正すべきだということを取り上げてきているわけでありますが、きょう、大臣それから貿易局長に伺いたいのは、政府の特殊法人中央競馬会が告訴している藤井治、ここに最高のオレンジ割り当て利権を与えているという現状があるわけです。御承知のように、これはもう協会の中の公然の事実として、ここが一四%前後の我が国オレンジ輸入商社の中で最高の割り当てを受けている。第二位のスマル貿易が七%前後というふうにいわれているのから見ますと、第二位を倍以上引き離して、最高の八万二千トンの我が国オレンジ輸入枠の一四%前後を輸入している。これを試算いたしますと、最近のある新聞の中では、九億円の利益を上げている。私ども一カートン十七・五キロといわれるオレンジ一箱で千五百円の利益を上げたというふうに推定すると、年間十億円という利益を、国が与えているこのオレンジの割り当ての中で上げている。  そうすると、一方で農林水産省の特殊法人中央競馬会が一億九十七万余円の損害賠償請求を起こしている、金を返せという裁判を起こしている相手に、一方で通産省がオレンジの割り当てをしている。これは一つの日本の政府という考え方からいきますと極めて問題ではないか、こういうふうに思うのですが、この事実を通産省当局はどういうふうに理解なすっているか、まずお伺いしたいと思います。
  310. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま御指摘のございました藤井治商事に対するオレンジの割り当ての問題でございますが、私ども根拠になっておりますのは、外国為替及び外国貿易管理法、それに基づきます輸入貿易管理令等でございまして、その中では、割り当ての基準といたしましては輸入実績に応じて割り当てるということをやっておりますので、今、中央競馬会の問題で訴訟云々というお話がございましたが、それとは全く別の観点からやっております行政ということでオレンジの輸入割り当てをやっております。
  311. 小川国彦

    小川(国)分科員 私は、農林水産省も我が国政府の機関である、通商産業省も我が国政府の機関である、それぞれ一省一省である、国という観点から考えればこれは一つでなければならぬ。その一つの国が、一方で競馬において約二億円近い損害を与えられた、八千万円は返したけれども一億九十七万円はまだ返さないということで民事訴訟を起こして、その金を返せ、こう言っているわけですね。その金を返せと言っている相手に、片方ではいわば国が、商取引ではないけれども相手としてそれを認めて、そこに毎年毎年、年に二期ずつのオレンジの割り当てをしている。これは世間の社会的な常識から考えても、もし仮にA社という商社がBという商社に、金を返せという裁判を起こしている相手に、一方で取引させてもうけさせるということはやらないと思うのですね。これは通常の常識だと思うのですよ。いわんや国という機関においては、農水省が裁判を起こしている、そして通産省はそれを全く知らぬふりで毎年毎年割り当てを続けている。これは常識として通らないと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  312. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいまお答えいたしましたように、私ども法律に基づいて措置をいたしておるわけでございます。その中に、今おっしゃったような点につきまして割り当てを行うべきでないというような基準がございますれば別でございますが、そうでない現状におきましては、あるいは委員おっしゃいますような感情論としては解せないという点はあるかもしれませんけれども、これは法律の執行の問題といたしましてはやはり別の問題と割り切って措置をせざるを得ない、かように考えます。
  313. 小川国彦

    小川(国)分科員 とんでもないですよ。感情論じゃないですよ。常識論ですよ、これは。皆さんは法律とか規則になければいいという考え方なんです。そうじゃなくて法律や規則の以前に常識というものがあるわけなんです。常識が法律になってきているわけなんで、その常識において私はあり得ないことだというふうに考えるのです。  それじゃもう一つ、建設省の方では法律はどういうふうになっているか、建設省の方おいでになりますか。建設省の方に伺いたいのですが、建設省において、契約不履行があった、そういう企業に対してはどういう措置をおとりになるか、これをひとつお答えいただきたい。
  314. 小野邦久

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  私どもにおきましては、直轄の公共工事の施行に当たりまして、請負工事の施行上、過失により工事を粗雑にしたといったようなこととか、あるいは契約に違反いたしまして、請負契約の相手方として大変不適当である、こういったようなことがあるというふうに認められると判断いたしました場合には、建設省の内部基準に基づきまして指名停止をする、情状の猶予期間を定めまして指名停止をする、こういう措置をとっているところでございます。
  315. 小川国彦

    小川(国)分科員 建設省にもう一度伺いますが、皆さんの方はこの場合に、会計法に基づく措置と会計法に基づかない措置と二つあると思いますが、その点についても御答弁願いたい。
  316. 小野邦久

    ○小野説明員 会計法に基づきます場合には、当然契約違反があれば、私の方で会計法を受けました予決令の七十一条という規定がございます。これは「正当な理由がなくて契約を履行しなかった」とか故意に工事を粗雑にしたといったような要件でございます。こういうものに該当することとなった場合には、私の方の所管の公共事業の実施に当たりましては選定要領土登録を抹消する、有資格業者の登録を抹消する、こういう措置があるわけでございます。
  317. 小川国彦

    小川(国)分科員 今建設省からお話ありましたように、日本全国にたくさんの建設業者の方々がいる。それが国を相手にいろいろな工事の発注を受け、受注工事をしている。そういう場合に、今お話しのように契約違反があれば、会計法、予決令第七十一条によって、故意に契約の不履行があった場合には今おっしゃるように登録抹消の措置をとっている。それからさらに、これに準ずる措置としては、会計法、予決令七十一条以外の場合は指名停止を一定期間する、こういう措置をとっているわけですよ、契約違反があった場合。  今、特殊法人中央競馬会が藤井治商事を訴えているのは、明らかにこの契約不履行があった、契約違反があったということで裁判を起こしているわけです。その裁判を起こして契約不履行があったと指摘している相手に、通産省がこの九十六社の中に指名をし割り当てをしている。いわば登録と同じですよ。建設省では登録抹消するというのに、皆さんの方は九十六社の指名商社の中に入れて、しかも取引と同じ割り当てをしているというのですから、これはどう考えても私は矛盾であり、問題だというふうに思うのですね。  これはやっぱり通産省として、今、日米のオレンジ交渉がこれから、二十日には経済局長アメリカへ行く、場合によっては農林大臣も行くという交渉の前に、我が国のオレンジ輸入業界のトップを占める人が国の機関から訴えられていて、そしてそれが最高の割り当てを持っているというのは、どう考えても利権であり、何か政治的な絡みがあるんじゃないか、こういう疑惑を持たれても仕方がないのですよ。現にアメリカのいろいろな輸出商社は、日本の割り当て制というのは利権を生んでいるじゃないか、だから自由化しろというようなことまで言われている。日本の農民の立場に立ったら、この割り当て制度というものは守り続けていかなければならない。現行の枠以上に広げたら三十万の日本のかんきつ農家がまいってしまうという状況は、これはもう大臣おわかりだと思う。そういう立場から言うならば、この日本の国内の輸入割り当て制度というものはもっと厳正なものにしていかなければならないんじゃないか。行政としてもっと適正なものにしていかなければならないんじゃないか。そのときにトップの座にある商社を、そういうふうに国が告訴をしている。訴えて東京地裁で裁判を起こしているわけですよ。しかもこの間、第一回の法廷にも出てこないというような状況ですよ。同じような競走馬の輸入をやったもう一つの商社は、話し合いに応じますという和解調停に応じているわけです。支払うという意思を持っている。片方は支払うという意思を持っていないから告訴されているわけでしょう。そういうところに通産省がこの割り当てを続けるというのは、今の建設省の実態に照らしても筋道が通らないと思うのですよ。行政として筋道が通らないと思うのですよ。いかがですか。
  318. 杉山弘

    ○杉山政府委員 建設省からただいま御答弁のありました件につきましては、予決令、会計法といった法律に根拠がありまして、先生御指摘のようなケースについては契約の対象にしないことができるということになっているんではないかというふうに私は理解をいたすものでございますけれども、オレンジの輸入割り当て問題につきましては、これは先ほども御答弁申し上げましたように輸入実績に応じて輸入実績を持っている者に対して割り当てる、こういう基準になっておりますので、それ以外の点につきまして割て当てをしないというようなことはないわけでございますので、いわば法律上の羈束行為と申しますか、そういうことで割り当てをわれわれとしてはむしろせざるを得ない、こういう立場にあろうかと思います。
  319. 小川国彦

    小川(国)分科員 そういうことで皆さんが割り当てをやっているから、私がこの間、四例指摘したような問題があるし、それからまた私がこれから指摘するような問題があるんです。  これは大臣にとっくり聞いていただいて、後でひとつ大臣の明快な判断をしていただきたいと思うのですが、私は通産省に対して、このオレンジの割り当て業者、今貿易局長の言うように通関実績があり輸入実績があればいい、それだけで割り当てをやってきた。本当にこの一部分しか見ていないわけですよ。行政をする立場の人が広い立場から、その一つ一つの商社が適正な資格を持って輸入をしているのかということを調べないで、ただ通関実績だけ一つあればいい、それで無秩序に与えてきた。本社もないとか倒産同然とか、そういうようないろいろな幽霊状態にあるような実体のない企業に割り当てしている例は先般申し上げました。  その後さらに私は、あなたの方では、これはとってないと思うのですよ。とっておりますか、こういう各企業の登記簿謄本。
  320. 杉山弘

    ○杉山政府委員 前回御指摘のございました四社につきましては、私どもも全部謄本ないしはその写しを手に入れております。残余の百十数社の分につきましては現在調査中でございますので、まだ全部についておっしゃるような登記簿謄本を手にしてはおりません。
  321. 小川国彦

    小川(国)分科員 百二十一社のうち四社だけですか。
  322. 杉山弘

    ○杉山政府委員 四社だけ現在手にしておりますが、それ以外のものにつきましてもできるだけ手にすべく今通産局を通じて手配をしているところでございます。
  323. 小川国彦

    小川(国)分科員 百二十一社の財務諸表なり決算書は年度ごとにとっておりますか。
  324. 杉山弘

    ○杉山政府委員 現在までのところ年度ごとにはとっておりません。
  325. 小川国彦

    小川(国)分科員 年度ごとにはと言うのでは、何らかの時点でとったことがあるのですか。
  326. 杉山弘

    ○杉山政府委員 何らかの時点でとったことがあるかという点につきましては、突然のお尋ねでございますので、今ここで確答申し上げることはできませんが……。
  327. 小川国彦

    小川(国)分科員 これは大臣にも聞いておいていただきたいのですが、毎年半期ごとに割り当てしていく商社の、まず会社がそこにきちんと存続しているかどうかというのは登記簿謄本をとればすぐにわかるわけです。それでその登記簿謄本を、大変お金がかかる調査なんですが、皆さんの方がやらないので、私、これは東京都内のだけとってみたんですよ。約五十社ぐらいですね。全国散らばっているから東京都内だけやったのです。  その中ではっきり出てきているのは、今、藤井治商事が業界第一でそういう問題を抱えている。第二位のスマル貿易というのは、代表取締役が増田悦宏というのですか、それから同じく小川義信、それから取締役が松土尚雄というんですね。それで三商貿易というダミー、これがやはり松土尚雄、増田悦宏、小川義信、監査役が違うだけで全く同じメンバーが割り当てをもらっているんですよ。九十六社の中のまず二社というのは同一の法人だということです。同一の法人に皆さんは別な角度から割り当てしている。そうすると、例えば七%しかもらっていないと世間的に思われているのが、ダミーを加えたら八%になるのか九%になるのか、こういう実態がまずある。これは恐らく先般の新規参入のとき、そういうダミーがたくさん入り込んだということの事例の一つ。それは皆さん方がこういう登記簿謄本をちゃんととっていればわかることなんです。私どもが調べただけでそれくらいのことはわかるのだから。  それから、この調査の中からわかったことは、コスモフルーツというのがある。株式会社コスモフルーツ。これに皆さんの方は昨年末まで割り当てをしておりましたね。
  328. 杉山弘

    ○杉山政府委員 コスモフルーツについて割り当ての対象になっているかどうかにつきましては、ここでの御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  329. 小川国彦

    小川(国)分科員 差し控えさせてもらいたいというのは、逃れるための言い分だと思うのですが、コスモフルーツも、ジャパンフルーツも、ユニオンインポーティングというこの三社とも、皆さんの方が九十六社の中に入れて割り当ててきた、これは事実ですね。
  330. 杉山弘

    ○杉山政府委員 その点は事実でございます。
  331. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、それからさらに七グループのやつを、九十六社の中には七グループも入っていて、それを、グループの中の商社数も数えると百二十一社になる、これも事実ですね。
  332. 杉山弘

    ○杉山政府委員 そのとおりでございます。
  333. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、その中のコスモフルーツ、ジャパンフルーツ、ユニオンインボーティングというこの三社には、皆さんの方は昨年末まで割り当てをしてきた。ところが、私どもこの登記簿謄本で見ると、コスモフルーツは四十八年八月三十一日に会社が解散登記になって、そして五十三年四月二十八日に継続登記している。そうすると、この四年六カ月の間この会社は解散状態であったんですね。会社が一遍解散して、四年六カ月解散状態であった。ですけれども、皆さんは前の半期でも実績がなかったら次の割り当てをしないということなんだから、この四年六カ月の空白期間、会社が解散している間にも割り当てしていたということになるんですよ。  それから次のジャパンフルーツ、これも、中央区銀座にあるのですが、昭和五十六年一月十日に解散登記して、五十六年三月三十一日に清算結了して、会社を閉鎖しちゃったのです。会社閉鎖後もジャパンフルーツというのが百二十一社の中に入っているのだから、これも閉鎖された会社に割り当てしてきているということになる。  それからユニオンインポーティングという会社は千代田区有楽町にあるのですが、これもこの登記簿謄本で調べると昭和四十七年六月三十日に解散しちゃってるんですよ。解散して今日まで数えると約十一年。そうすると十一年前に解散した会社に依然として通産省は割り当てをしている。  私がちょっとこの登記簿謄本から調べ直しただけでこういう実態があるのですが、こういう実態をどうお考えになりますか。
  334. 杉山弘

    ○杉山政府委員 今先生お示しになりました三点のうち、私どもは現在の時点では最後に御指摘になりました点につきましては調査の過程で判明をいたしておりますが、先の二社の問題については現在確認をできておりませんので、その点についてのお答えは差し控えさせていただきます。もし先生が御指摘になりましたようなことが事実だということになりますと、これは私どもとしてはオレンジの輸入につきましてはその名前と計算において輸入をしている者に対して割り当てをするというのが基本的な大方針でございますので、その方針に反するということになります。それの確認ができていなかったということにつきましては、これは私どもの手落ちということでおわびをしなければならないと思います。  なお、事後の問題につきましては、今後割り当ての際幾つかの書類を徴求をいたしまして、先ほど私申し上げました自己の名と計算において輸入が行われているかどうかという点につきましては、厳しくチェックをしていきたい、かように考えております。
  335. 小川国彦

    小川(国)分科員 この三番目の点はお認めになりましたけれども、一、二の点はいかがなんですか。
  336. 杉山弘

    ○杉山政府委員 一、二の点につきましては、まだ私ども確認をいたしておりませんので、ここでの御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。早急に確認をいたします。
  337. 小川国彦

    小川(国)分科員 異名同人で、名前は違うのですが中身一つ、こういうのについてはどういうふうに措置をおとりになりますか。
  338. 杉山弘

    ○杉山政府委員 この点については非常に微妙な問題があろうかと思います。私どもがやっております割り当て実施につきましては、何度も繰り返すようで恐縮でございますが、その名前と計算において行われているということが基本でございまして、そういう原則との関係で、異名同人とおっしゃった、全く同一人の計算に帰属をするということでありますと、二社がそれぞれ別の名前で別の計算で輸入をしているということには相ならないかと思いますが、従来までのその点につきましての取り扱いを含めまして早急に検討いたしたいと思います。
  339. 小川国彦

    小川(国)分科員 私どももこれを調べていって、確かに中小企業のフルーツの経営者が、非常に価格変動の激しいかんきつ輸入業をやっていて大変だと思うのです。しかし、相場のように輸入物をやって、その結果失敗して倒産した。それで生きていく道は枠にすがりついているしかない。ですから、もう会社の実態がなくなってきたところが、あるいは今指摘したように実態のないところが、割り当て権だけが右に左に動いている。日本の貿易制度上、関税があり、もう一つ輸入割り当て制度というものがある。通産省はその二つを元締めしているわけですよ。関税はもちろん大蔵省。しかし、輸入割り当て制度というものは通産省がやっている我が国の国内産業を保護して国内農業を保護していく大事な政策なんです。しかし、その政策の実態が、今私が登記簿謄本で調べただけでこういう実態が出てきている。これは、この会社の財務諸表を調べていったら、さらに問題が出てくるのじゃないか。もう実質上倒産状況。  例えば、この大手の第一位の藤井治商事が金を貸している、あるいは商品を貸した商社が実質上倒産状態にある。そういうところの割り当て権を押さえて、そしてそこから上がる収入で吸収していく。割り当て権があるがゆえに、会社はつぶれても割り当て権だけが生きているという実例も聞かされるのですよ。ですから、この際、まずオレンジを突破口として輸入割り当て制度のあり方というものを見直さなければいけない。特にこの日米交渉の中で緊急の事態になっている輸入割り当て制度の中のオレンジの割り当て商社というものを、これは大臣、この間もこの予算委員会の一般の中で厳重に調査をするという方針をお立てになったのですが、今この実態をお聞きになって、局長自体ですら実態が把握できないものがある。あるいはもう十一年も前になくなった会社もある。そこに割り当てが行っていた。これは一体その割り当てはどこに行っていたのかということなんですよ。どこへ行っていたのか。会社の実態のないところに割り当てしていたんですから。この真相究明をしなきゃならぬと思うのですね。これは私が調べただけでこんなに出てきているのですから、もう割り当て商社の一割ぐらい問題が出ているのです。まだまだ私は出てくるような気がするのですよ。出てくると思うのです。大臣としても、やはりこの辺でこういう実態をにらんで、日米交渉の一つの国内の体制整備ということで、これに対する対処の方針というものをひとつお述べになっていただきたいと思うのです。
  340. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 先日の予算委員会小川委員の指摘、ちょっと議論が飛躍し過ぎていると思うのですが、小川委員は摘出された四社の実情等を述べられたので、私はそれが事実か否かということを厳正に調査してみましょうということで、昨日その四社に関して貿易局長がこれこれということを述べたわけです。ところが、通産省の実情調査とその前に小川委員がおっしゃられたことに多少の食い違いがあったことは事実であります。そこで、さらに残余の会社に対して調査をしろということであるならば、これは四社と同じような厳正な調査をするということは必要でございましょう。ただし、これをすぐやれと言ってもこれは時間的に無理な話でございまして、かなりな日数がかかることは御容赦願いたいと思うのでございます。  そしてまた、さらに基本的に申し上げまして、オレンジ輸入割り当て業者が自分の名前や自分の計算において輸入を行っていないというものの存在が今後はっきりした場合には、次回以降通産省といたしましては割り当てを行わない等の厳正な処置によって対処していきたい、私はこう考えております。
  341. 小川国彦

    小川(国)分科員 後段の大臣説明はわかるわけですが、前段の調査に日数がかかるというのは、私はやり方の問題だと思うのですよ。私が貿易局に申し上げたのは、貿易局は、割り当てをした会社が通関で一千トン割り当てを受けた、そして一千トンちゃんと輸入している、その通関実績だけあればいいという。割り当てを受けた会社がその後どうなっているか、どういう歩みをしているかというのは全然把握してない。これじゃ割り当てしっ放しで十一年前になくなった会社に割り当てしていたということになっちゃうのですよ。これはやっぱり早急にやらなきゃ行政としてはけじめがつかないと思うのです。  私は、貿易局にも言ったのですが、まずきちんと会社の登記簿謄本を百二十一社全部集めなさい。そしてその会社の住所、代表者の氏名、電話番号、それから担当社員の氏名、それからオレンジを担当している役員、職員は何名いるか、それから前期の輸入実績はどのぐらいあったのか、そして主たる販売先はどういうところへ販売したのか、それからその会社の財務諸表、この程度を調べるのに大臣、私だってこれは三日ぐらいかかってこのぐらいの調査ができるのですから、通産省の貿易局がやればたちどころにできることだと私は思うのですよ。百二十一社の財務諸表なんて集めるのは、私は三日もあればできることだと思うのですよ、豊臣秀吉の三日で城を築いたのじゃないんですがね。通産省はこのくらいのものを集めるのはすぐできることなのですよ。そういう基本的な資料をきちっと整備しておかないから、そういうものを目を通してないから割り当て制度の中身がぐずぐずになっちゃってるわけですよ。私はこれはやらなきゃならない仕事だと思うのですよ。当然の仕事だと思うのですよ。
  342. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 私は、時間がかかるということは、何もゆっくりやるということじゃありませんで、なるべく早くすることは少しも構いません。ただ問題は、委員のおっしゃるようなことが実際にない場合、私はその人にかなりな名誉を傷つける場合もあると思いますので、そこらあたりも委員に考えていただきたいし、私たちもそういう意味に立って厳正に調査いたします。
  343. 小川国彦

    小川(国)分科員 最後にもう一点だけ申し上げたいと思うのですが、例えば会社の有価証券報告書を集めるということは、百二十一社、株式会社であれば有価証券報告書が出ていると思うのですが、貿易局長いかがですか。
  344. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、我々としましては、新しい割り当てをやります場合には、先生御指摘のありました幾つかの書類、資料等について、その中の必要なものにつきましては今回からとりまして、事実を確認をした上で作業をしたい、かように考えております。新年度の割り当ての時期もかなり間近に迫ってきておりますので、その関係では、現在やっております調査及びそれの延長として今大臣からもお答えしましたようなことをこれからやらさしていただきたいというふうに思います。
  345. 小川国彦

    小川(国)分科員 最後に大臣に要望申し上げますが、いろいろ申し上げましたけれども、日米農産物交渉という非常に重要な交渉を控えている我が国の国内体側の整備でありますから、大臣もひとつ陣頭で今局長答弁なすったことを達成されるように御指導賜りたい、こういうように思います。
  346. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 よく承知いたしております。
  347. 小川国彦

    小川(国)分科員 終わります。
  348. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて小川国彦君の質疑は終了いたしました。  次に、中島武敏君。
  349. 中島武敏

    中島(武)分科員 国民経済の中で非常に大きな役割を果たしている家電産業の問題について賀川したいと思います。  周知のように、家電産業は生産から流通に至るまで寡占化が進み、メーカーの系列社がさまざまな社会問題を引き起こしております。とりわけ、量販店やスーパーなどの進出によって中小家電小売業、町の電気屋さんは転廃業、倒産などに追い込まれるなど、非常に深刻な危機が目立っております。これはNEBAの調査ですけれども、これによりますと、国内市場における量販店の売り上げのシェアですけれども、昭和四十七年千九百八十五億円、七・八%、これが五十五年には六千二百七十億円、一六%、二倍にふえております。スーパーも同じく六百八十八億円、二・七%から三千二荷二十五億円、八%、三倍にふえております。  メーカーの利益もこれまた大変なものでありまして、これは有価証券報告書で調べたのですが、松下電器は経常利益が五十八年千八百九十一億円、内部留保は同じく五十八年ですが八千八百八十一億円、日立は経常利益千五百七十一億円、内部留保が四千六百七十二億円、東芝が経常利益八百二十四億円、内部留保が三千百六十九億円、三菱が経常利益五百三億円、そして内部留保が千六百五十九億円、ソニーが四百十四億円の経常利益、内部留保は三千六百三十九億円、大変なもうけであります。ところが、町の電気屋さんは、これは後でも述べたいと思うのですけれども、非常に深刻な状態にあります。  そこで、まず最初に大臣に伺いたいのは、同僚議員でありました小林政子前衆議院議員が昨年の三月二日予算委員会で家電製品の流通問題を取り上げました。量販店はメーカーから五〇%ないし五五%で仕入れている。地域の小売店は標準価格の七四%ないし七六%で仕入れる。量販店の販売価格の方が小売店の仕入れ価格よりも安い。これでは小売店が太刀打ちできないのは当たり前じゃないかという問題を提起して、当時の山中通産大臣が調査を約束されました。その後どのような調査を行われたか、また、その調査に基づいてメーカーをどのように指導されたか、この点についてまず最初に伺いたいと思います。
  350. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、昨年の三月の予算委員会におきまして、小林政子先生から、ただいま御指摘がございましたような御質問がございました。山中大臣が調査を約束されました。私ども、それを受けまして調査をいたしました。一つは、小売価格についての調査分析でございます。それからもう一つは、メーカーの仕切り価格の調査分析でございます。  要点を申し上げますと、昨年の夏から秋にかけまして、カラーテレビ等の主要家電製品についての実態調査、それからメーカーからのヒアリング、そういう形で調査を行ったわけでございます。  まず、小売の実売価格に関しまして調査の結果を申し上げますと、これは一般地域小売店とそれから量販店、分けて対比をしたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、この調査結果を見ますと、小売店の間でも相当のばらつきがございます。それから量販店の中でもばらつきがございます。その両方のばらつきを比べてみますと、量販店と一般地域小売店との間にそれほど顕著な差がないという調査結果でございます。要するに、トータルとして見ますと、総じてみますと、量販店が一般地域小売店に比べて顕著に下回る価格で販売しているというのはなかなか言いがたいというような調査結果でございました。  それから次に、量販店と一般地域小売店との仕切り価格、要するにメーカーからの卸売価格でございますけれども、これについても調査をいたしました。これは規模によりまして、その対象機種の取引額の大小によって差が出てまいります。したがいまして、そういった取引額の規模というものも考慮して調査をいたしたわけでございます。その調査結果によりますと、一般的に申しまして、仕切り価格の差は月単位の仕入れ額の差が大きくなるほど大きくなる。例えば月商二百万円の小売店と月商三億円の量販店とを比較してみますと、一〇%程度の仕切り価格の差がございます。ただ、今度は月商一千万円の一般小売店と月商五千万円の量販店ということで比べてみますと、数%の差しかないというようなことでございまして、いずれにしましても、こういった差はボリュームディスカウントという関係で出てくる、そういうふうに考えられるわけでございます。  ところで、そのボリュームディスカウントと申しますのは、ある程度、ある限度の中では商慣行上認められているというふうに思われるわけでございまして、そういった点で月商額の差を考慮いたしますと、一般地域小売店と量販店との仕入れ価格の差について必ずしも不当とは言いがたいというような結果でございます。場合によりますと、例えばカラーテレビなどの一部では、系列小売店向けの専用の機種というようなものについて見ますと、むしろ小売店の方が安いというような例もあるわけでございます。また系列店について申しますと、むしろ系列店の方が家電メーカーからいろいろな形で援助を受けているというようなこともございます。そういったことも考慮していかなければならないのではないかと思うわけでございます。  以上が調査結果でございますけれども、以上の結果から申しますと、現状では、業界全体に対する行政指導の必要性という面から申しますと、特段の必要があるというふうにはなかなか言いがたいのではないかということでございます。ただ、いずれにいたしましても、不公正な取引方法を用いるといったような、流通秩序を乱すというようなことがあっては大変でございます。そういうようなことがないように公正取引委員会とも勉強をしながら、注意深くその動向を見守っていきたい、それで必要に応じて指導を行ってまいりたいと考えているわけでございます。
  351. 中島武敏

    中島(武)分科員 局長から答弁がありましたが、にわかに信じがたい点もあるのです。かなりの値引きをして売っているという事実が相当ありますので、そんなに値引きをして売って今のように差がないということは、果たしていかがなものかというふうに感じる点もあるのです。あるのですが、関連して質問を続けたいと思うのです。  中小小売の電気屋さんの実態というのは相当深刻なものでして、後で具体的に申し上げたいと思うのですが、東京北区の赤羽駅の周辺でこの三年ぐらいの間に転業が一件、廃業が四件。それから、安売り店が出てきてからは持ち帰り商品というのはほとんど売れない。お客さんも三〇%から五〇%減ってしまう。大変深刻であります。いろいろ企業努力をしなければならないというので、商品販売だけじゃなくて附帯工事の注文などもあわせてとるようにしているのですけれども、なかなかうまくいかない。従業員を減らさざるを得ない。それから後継ぎを何とか自分の息子にやってもらおうと思っても、とてもじゃないけれども、商売をやっているよりはどこかの勤め人になった方が収入は多いというので後継ぎもできない、生まれてこない、そういった状態なんですね。税務署がよく調査に入ったものなんです。だけれども、中小小売店はもうけがない、さっぱり売れないんだということがもうわかっているらしくて、最近は調査にも入ってこない、こういう実情なんですね。  ところが、具体的に申し上げてお尋ねしたいと思っておりますのは、株式会社イトーヨーカ堂ザ・プライス赤羽店というのが五十八年七月十二日に開店をしたわけなんです。ここが五十八年の十一月初旬に安売りのチラシ広告を新聞折り込みで配布しました。その新聞折り込みで配布された広告の中にはこうなっているのですよ。「十四日(月)・十五日(火)・十六日(水)限りのチャンス六時の市」の品の一つとして東芝据え置き型ビデオ(メ)、(メ)というのはメーカー希望小売価格でありますけれども、(メ)十四万五千円の品四・四割引き七万九千八百円、こういう表示がしてあるわけです。これは委員長、ちょっと失礼ですが大臣の方にお見せください。  それで、十一月の十日にAさんとBさんがザ・プライス赤羽店に行ってチラシ広告のビデオはどれかというふうに聞きましたところが、VS2型を指さして、これですと言ったわけです。それで、広告の日とは違うが売ってくれないかと言うと、店員の人がもっと新しい新製品があるからと言って別のビデオを持ってきたので、それを広告の価格で購入をした。持ち帰って調べたところ、いろいろなことがわかってきた。まず一つは、VS2型ではなくてVS3型であった。VS3型は五十八年九月十六日からオープンプライスになっておって、メーカー希望小売価格と表示できない品なのです。それから東芝の保証書の番号が黒く塗りつぶされていた。まことに恐縮ですが、また……。黒く塗りつぶされていた。それからさらに、使われた形跡のある中古品であったということですね。それで部品も不足していた。整合器と三百オーム・フィーダー線が不足していたということであります。それからさらに、東芝の附属品は七つあるのですが、同軸ケーブルとF型アダプターが接続されていた。これは本来接続されてないものなのですが、接続されていた。しかも、アダプターはナショナル製品であった。随分念が入っているんです。それで、これもちょっと……。これは写真にしてあります。それで、この東芝の保証書にはザ・プライスの判が押してなかったので、十一月十五日ごろ、Cさんの奥さんがザ・プライスに行って判を押してもらった。こういうのが一つです。  それから、十一月の十四日にAさんの息子さんと娘さんがチラシ広告のビデオを買いに行った。このときは、東芝の保証書に販売店であるザ・プライスの判をその場で押してもらった。持ち帰って調べたところ、また次のことが判明した。それは、一つはVS2型であった、それから中古品であった、部品も取りかえてあった、東芝の保証書の番号が削り取られて新たに七けたの番号が打ってあった。これです、七けたの番号です。それで東芝の保証書は八けたです。それから、ビデオ本体の番号も保証書の七けた番号に変えられていた。  さらに、同じ日なのですけれども、Bさんの姉さんが買いに行ったところ、広告のビデオは一台しかなく、売り切れました、展示処分の品だった、こういうふうに言うので、一台しかないとは広告に書いてないじゃないか、おかしいじゃないかと言いましたら、品物を取り寄せますということになって、約十日後ぐらいに品物が届いたという電話があったので受け取りに行った。そのとき店員は、新製品です、そういうふうに言った。持ち帰って調べたところ、品物は新品ではあるが、型はVS3で、五十八年九月十六日からオープンプライスになっている品であった。新製品というならばVS2またはVS1でなければならない。こういうことがいろいろと出てきているわけであります。  そこで公取にお尋ねしたいと思うのですが、オープンプライスになっている品物をメーカー希望小売価格と表示していれば、景表法四条二号違反になると思うのですね。過去にも幾つか事例があって公正取引委員会の方でも調べていらっしゃると思うのですが、どうですか。
  352. 植木邦之

    ○植木説明員 お尋ねの点でございますけれども、私どもの方は、昨年の十一月に、家電製品の二重価格表示ということがあるということで全国的に調査いたしました。そしてその結果をチェックしてみたわけでございますけれども、おっしゃいましたオープンプライスになったかならないかということで、旧型品でオープンプライスになったということになりますと、これは旧型ということで、従来のメーカー希望小売価格ではちょっと売りにくいということになっているわけでございますから、それで対比して二重価格表示をするということになりますと、先生がおっしゃいました私どもの方の不当景品類及び不当表示防止法の不当表示に当たる場合があり得るということでございます。
  353. 中島武敏

    中島(武)分科員 もう一つお尋ねします。  広告の品が一台しかなかったのにその旨を表示していなかったということは、おとり広告になるおそれはありませんか。
  354. 植木邦之

    ○植木説明員 私ども、景品表示法の関係でいろいろ告示を出しまして、こういう場合には不当表示になる、こういう場合には不当表示にならないというように細かく決めているわけでございますけれども、私どもおとり広告に関する表示というのを出しておりまして、通常の場合、ある程度、消費者といいますか買い手が来てこの品物が欲しいと言うときにはそれに応じるぐらいな台数は持っていなければ不当表示になるのじゃないかというように考えておるわけでございます。
  355. 中島武敏

    中島(武)分科員 それでは、さらに重ねてお尋ねいたします。  部品が取りかえられている、他社の製品がつけられているあるいは部品が不足している。この場合は相当御念が入っているのですよね。それで、実はこのケースだけじゃないわけです。全国電器小売商業組合連合会、ここで出している、パンフレットの中にも、この種のことについていろいろと「ちょっとご注意下さい」ということで、「保証書の改ざん、製品番号削除商品にご注意を……」というようなことでいろいろ書いているのです。ここだけで起きた問題ではないのです。  これもまず公取に伺いたいのですが、中古品を、しかも部品を他社のものと取りかえて売っている、部品も不足している。これはやはり景表法の四条二号違反となるおそれはあるのじゃないでしょうか。
  356. 植木邦之

    ○植木説明員 中古品を新品と言って売るあるいは中が変わっているというようなお話でございますけれども、この場合、私ども、家電製品の内容がどのようになっているかというのはいろいろ調べてみなければわからない問題も多くございまして、何せ非常に素人的な判断で申しわけないのですが、ある程度旧型品を新品と言って売るということになりますとどうかという問題はあろうとは思いますが、中古品あるいは部品が変わっているということについては、それを細かく調べてみまして、それでどういうことになるかというのを決めざるを得ないのじゃないか。大変申しわけないのですが、にわかにこれはどうだということはなかなか言い切れないということだろうと思います。
  357. 中島武敏

    中島(武)分科員 既に申告をしているかと思いますが、至急に調べていただけますね。
  358. 植木邦之

    ○植木説明員 先生おっしゃいました具体的な問題、私の方に申告が来ているということは承知しております。それで私ども担当課の方がそれを調べておりますので、結果がどうなりますか、これは現在の段階ではどうこうとは申し上げかねるのでございますけれども、景品表示法に触れるというような問題がありましたら、例えば是正の指導をするとかそのようなことになろうかと思います。
  359. 中島武敏

    中島(武)分科員 通産省はこういう場合どう考えられますか。これは当たり前だ、まさかそんなふうに思われるわけじゃないと思いますが。
  360. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 ただいま先生からいろいろ具体的なお話がございました。私も、そういったことが実際にあったのかどうかという点について今伺ったぱかりでございますのであれでございますけれども、もし仮にそのような問題があったとすれば、これはやはり公正な取引とは言いがたいというふうに私は思います。
  361. 中島武敏

    中島(武)分科員 保証書の改ざんの問題について重ねてお尋ねします。  先ほど申し上げたように、黒く塗りつぶしてしまってある。それから東芝の保証書の番号が削り取られて改ざんされている。ビデオ本体に、違う番号、本来の番号じゃなくてその保証書で偽造した番号ですね、そういうものを打ってある。これは先ほども言いましたように、全国電商連の方ではパンフレットまでつくって注意してくださいというふうに言っている問題なんですが、法務省いらっしゃいますか。私はちょっと伺いたいと思うのですが、法務省の見解では、これはやはり刑法でいう私文書偽造の疑いがあるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  362. 北島敬介

    ○北島説明員 御質問の事実関係から、むちにそれが何罪に当たるかあるいは当たらないかというふうなお答えは性質上ちょっとお答えいたしかねるわけでございますが、ごく一般論として申し上げますと、他人の作成名義の文書の内容に何ら権限のない者が勝手に変更を加えたというふうなことか存じますので、そういう場合には刑法の私文書変造罪が成立することがあり得るというふうに言えようかと思います。
  363. 中島武敏

    中島(武)分科員 それはわかりました。  それから、この問題に関連してもう一つお尋ねしたいのです。それは、この場合には四割四分引いて売るということをやっているわけなんですけれども、独禁法の不当廉売というのはどういう場合をいうことになりますか。
  364. 植木邦之

    ○植木説明員 私ども、独占禁止法に基づきまして不公正な取引方法というのを指定しておりまして、その中の六項にいわゆる不当廉売という規定があるわけでございますけれども、一般的にどういう場合かということを申し上げますと、まず、正当な理由がないのに商品あるいは役務、サービスでございますね、これの供給に要する費用を著しく下回る価格で継続して供給していくという状態を私どもの方で不当廉売ということで指定しております。つまり、お尋ねの点でございますけれども、整理して申し上げますと、廉売を行うのが例えば腐りやすい商品だとか季節外れの商品だとかいうような正当な理由があるかどうか、そこのところをまず見て、正当な理由がある場合には、それは不当廉売とならないということになります。  それから第二点としましては、費用を著しく下回っている、つまり採算を度外視したような価格である場合ということで、さらにもう一つは、独占禁止法は御承知のとおりに競争秩序にどういう影響があるかということで私どもは不公正な取引方法かどうかを判断するわけでございますから、そういう行為がどういうような影響を市場に及ぼしているかということを判断して決めるということになろうかと思います。
  365. 中島武敏

    中島(武)分科員 つまり、今のことは採算を度外視して、しかも継続的にやられているということでありますね。この具体の問題についても申告されていると思いますので、引き続き調べていただきたいと思うのですが、継続性という場合に、例えば二日間廉売した、それで一週間休んだ、また二日間やった、こういうのは一体継続性ということに当たるのか当たらないのか。これはもし当たらないということになりますと、一体どれが継続性ということになるのかということにもなってしまうわけなんです。そういう点で、この点はどうなんでございますかね。こういうのは抜け道がありますと、継続性のある話も実際どうかという気になってしまうのですけれども。
  366. 植木邦之

    ○植木説明員 継続性の問題でございますけれども、私どもの独上禁止法といいますのは、一つ一つ具体的な状況に照らして、そしてこれがどういうように影響があるのかどうかということを判断するわけでございますから、にわかにこの場合はこう、あの場合はこうということは非常に申しにくいのでございます。その行為の状況がどういうようになっているかということに照らして具体的に判断するということになろうかと思います。
  367. 中島武敏

    中島(武)分科員 時間でありますので終わりにいたしますが、大臣に最後にお尋ねしたいのです。  今聞いておられておわかりと思いますけれども、これは単に中小業省が大変だというだけではございません。新製品だというふうに偽って古いものを、しかも部品は欠除している、あるいは使った形跡のあるもの、あるいはよその社の製品をもって補っているというようなもの、こういうものが販売されているということになりますと、結局、中小小売店だけじゃなくて、実際には消費者が大変な迷惑を受けるということになると思うのです。私は、消費者保護の立場からいっても、こういうことがないように大臣の方でも、メーカーに対してもまた量販店、スーパーなどに対しても指導するべきじゃないかというように考えるのですけれども、いかがですか。
  368. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 中島委員のおっしゃることがもしも事実であるといたしますれば、これはまことに不公正な取引でございますし、また流通秩序を乱すものでございます。実情を把握いたしまして、必要とあれば関係機関と協議いたしまして指導もいたす所存でございます。
  369. 中島武敏

    中島(武)分科員 時間ですから終わります。
  370. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて中島武敏君の質疑は終了いたしました。  次に、小川新一郎君。
  371. 小川新一郎

    小川(新)分科員 通産大臣に若干の御質問をさせていただきます。  まず最初に、石油の問題をちょっとお尋ねしたいと思いますが、御存じのとおり、我が国のエネルギーは九〇%を超える石油エネルギーに依存いたしておりますし、エネルギー全体からいいますと七〇%を超えております。このエネルギーの問題につきまして、今石油業界では安売りをめぐり、また製品の輸入ということでガソリンとかナフサ、そういった問題が注目されております。  そこで、御存じのとおり、需要業界からはナフサだけでなくC重油やガソリン等についても安い外国製の輸入を自由に認めるべきだという声もある反面、石油大手はこれに対して、精製をしている立場から、これでは困るのだ。日本の資源エネルギーの保護育成の立場からも議論されておりますので、この点について業界では、石油業法の見直しを検討していただきたい、こういうことが前国会からの問題になっておりますし、御存じのとおり、宇野通産大臣は石油業法の見直しを検討するということでお約束をしておるやに聞いておりますが、私はこの間国会議員を浪人しておりましたのでよくわかりませんけれども、宇野大臣発言が事実であるならば、通産省としてはその取り組み、対応、どう対処していったのか、これは大事な問題でございますので、大臣に、ぜひともお尋ねしたいのは、石油業法の改正というものはどうお考えになっていらっしゃるのか、この点について伺います。
  372. 豊島格

    ○豊島政府委員 石油業法につきましては、以前から、法制定当時と事情が非常に違っておるということで、この問題については改正すべきじゃないかとかあるいは廃止すべきじゃないかという意見もございます。しかし同時に、現在の石油業法の運用等の実績を考えますと、石油といういわば基礎的な物資といいますか非常に大事な物資、その安定供給から、自由にしてしまっていいのか、こういう両方の議論があるわけでございまして、かねてからいろいろ議論されておるわけですが、石油審議会の中の石油部会、そこに小委員会が設けられております。その中で、石油葉法の取り扱いをどうするかということをこれまでもいろいろ検討していただいておりますが、今後さらに引き続き検討していただくということになっております。その中での結論を待ってどのようにすべきかを判断したいということでございまして、改正するとかしないとかというより、その取り扱いをどうするかということをまず検討していただく、こういうのが現在のスケジュールでございます。
  373. 小川新一郎

    小川(新)分科員 その段階はもはや終わって、宇野さんのときには、その段階も踏まえて薬法の改正の見直しを検討するということで我々は認識しているわけなのであって、審議会の、団体の意見を聞くとかどうとかという問題はもはや卒業した段階にあって、次の段階へ入っているんだというふうに私たちは認識しているわけですね。だから、もうそういうことは、大臣御自身の御意見としては、宇野通産大臣の御意見をどう評価し受けとめ、また御自身はどうあるべきなんですか。
  374. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 資源の少ない我が国の石油に関する問題は、まず第一に、何と申しましても安定供給ということが第一義でございましょう。したがいまして、宇野前通産大臣の御意見等々は別問題として、なおこの見直しはさらに一層検討を要すると私は考えます。
  375. 小川新一郎

    小川(新)分科員 見直しの検討というのは、今事務官の方からお答えになったことを検討するのか、もはやそういう段階を越えてもう一歩踏み込んだ改正に向かって検討なさるのか、どちらですか。
  376. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 見直しすることそのものに検討を要する、こういうことであります。
  377. 小川新一郎

    小川(新)分科員 ありがとうございます。前向きの御姿勢として受けとめておきます。  ドームの北極海プロジェクトについてでございますが、北極カナダのボーフォート海の石油開発事業は、日本側すなわち北極石油株式会社の協力によってやっているわけでございますが、この相手方の北極圏カナダボーフォート海は有望な油田と言われておりますが、一青で結構ですが、有望であるのかないのか、どっちですか。
  378. 豊島格

    ○豊島政府委員 今おっしゃいましたカナダ・ボーフォート海の石油資源というのは、残された有望な大型油田の一つであるということは事実でございます。
  379. 小川新一郎

    小川(新)分科員 しかも、この会社に石油公団が関与しておりますね。資本金はどれくらい出ていますか。
  380. 豊島格

    ○豊島政府委員 四億カナダ・ドルを向こうに融資しているわけですが、このうち公団投融資分としては六百十五億でございますが、出資は公団としては二百九十二億というのがこの北極右池に対する出資額でございます。
  381. 小川新一郎

    小川(新)分科員 二百九十二億のお金を投下し、これは公団だけですね、そのほか民間からも出ておりますね。総額約一千億近い金が投下されているわけですね、資本金として。しかも、その相手方の一緒にタイアップしてやっているドーム会社が今や倒産の危機に見舞われているという、これは事実ですか。
  382. 豊島格

    ○豊島政府委員 北極石油がドームに金を貸して以後、急速にドーム社の経営が悪くなりまして、現在、その再建に向けていろいろと案が練られておる、銀行と交渉されておるということで、そういう経営が非常に苦しくなった、それに対する措置というのが今考えられておるところでございます。
  383. 小川新一郎

    小川(新)分科員 経営が赤字になって倒産した場合は、関連倒産ということはないですが、国は我々の税金をこれだけ投下しているのですから、これはさらに、もしもカナダの対応が悪いときは、日本としてはこの経営を立て直すためにもっと金をつぎ込むのですか。
  384. 豊島格

    ○豊島政府委員 ドームに対して日本から四億カナダ・ドルの融資をしたということは、いわゆる探鉱という資金でございまして、これは、いずれにしましても成功するかどうかというのは探鉱の問題でございますが、一応返済されることになっております。  それで、その場合さらにこれに対して追加融資をするかということでございますが、開発が見通しがつく、ドームの経営が健全になるというようなことで確実に開発が進むということでもなければ、これ以上資金を投入することは考えておりません。
  385. 小川新一郎

    小川(新)分科員 倒産した場合には、では、つぎ込んだ金は全滅ですね。
  386. 豊島格

    ○豊島政府委員 経営が非常に苦しいということで、現在そのための措置がいろいろ考えられておりますが、もちろんこの四億ドルにつきましては貸し付けということで、一応返る契約にはなっておるわけです。それからフローティングチャージといいますか、一種の担保措置というのも講ぜられておるわけでございますので、倒産したら全部返ってこないかどうかというのは、これからのそういう債権保全の方法に依存する、こういうことになろうかと思います。
  387. 小川新一郎

    小川(新)分科員 ちょっとおかしいじゃないですか。公団ばかりじゃないのですよ。民間も出しているのですよ。しかも、この株式会社北極石油はそのために設立したのであって、この北極石油はほかに仕事をしていないのですから。相手のドーム社と提携して北極の石油をとろうとしているのに、今だめかどうかという瀬戸際に来ているわけでしょう。ところが我が国としては、皆さんとしては、これに対する資金の援助はしないのだ、相手任せなんだ。それが、相手がだめになったらどうなるかという、当然これは危機的意識を持つわけですから、これは無責任な答弁だと思いますよ。
  388. 豊島格

    ○豊島政府委員 北極石油は、先生御指摘のようにドームの石油開発のための探鉱資金というのを貸したわけでございます。したがって、その探鉱が成功しないといいますか、そうすればそれは一応返るのですが、倒産したらどうかというと、倒産したらその債権保全ができない範囲内では返ってこないこともあり得るわけです。ただ北極石油につきましては、一応民間としては出資という格好になっておりますので、そういう意味から言うと、公川以外から借り入れているということは事実としてないわけでございます。しかし、いずれにしましても、これは今後開発までにはもう少し時間がかかる問題でございますので、その間、北極石油につきましては極力その規模を縮小してむだな金は使わないようにするということで、そういうふうに指導し、会社の方もそういう債権確保上必要な最低規模を保つということで、その体側を変えておるところでございます。
  389. 小川新一郎

    小川(新)分科員 大沢商会が倒産したらマミヤが関連して倒産する、これは当然のことなんですが、日本の国の、石油資源が、北極石油という大きな株式会社をつくった、しかもその人事構成、これは時間がないから聞きませんけれども、非常にこれは大変な危険な状態に今あるわけですから、ひとつ十分なる御監督をいただかないと、これは決算の対象になりますので、よろしくお願いしたいと思うのです。  そこで、第二点としてアラスカ原油についてお尋ねしたいのですが、大臣、アラスカ州では日本にアラスカの原油を輸出したいと言っているのです。ところが、アメリカの上院では反対している。何も牛肉やオレンジを買うよりもアラスカの油を買った方が対米貿易の黒字解消には役立つわけです。こういう交渉、ただアメリカの議会の上院が反対しただけでなくて、レーガン・中曽根会談ではこの問題も出ておると聞いておりますので、大臣としてはどういう御所見があるのですか。
  390. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 おっしゃるとおりではございますけれども、しかし、このアラスカ石油の輸入に関しましては何よりも民間の行うことでございますから、民間の自主的な判断と意欲を私どもとしては優先して尊重するということになります。しかしながら、日本の資源が少ない実情あるいは石油の供給先がもっともっと多角的でなければならないという考え方からすれば、我が国としてはどうしてもアラスカ原油というものを輸入することがいいことであります。いいことではあるけれども、しかしアメリカの国内法がこの輸出を禁止しているという実情がある限り、現実にはアラスカの原油を入れることはできない。しかし小川委員おっしゃるように、昨秋レーガン大統領が来られましたときにこの問題が中曽根総理との話題になったことは事実でございますし、会談の中で真剣な議論になったことも事実と承知しております。したがいまして、今そのもとにおけるワーキンググループの中でその法の問題をも含めて何とか日本に輸入できないかというようなことを検討している最中でございまして、私どもとしては、この好転を期待しておるということでございます。
  391. 小川新一郎

    小川(新)分科員 通産大臣としては、どういう働きかけをいたしますか。
  392. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 何分にも法的な問題がある、あるいはアメリカの国内において例えば海員組合等がいろいろな意味でこの原油の日本向けの船にアメリカの船を使うべしというような議論等々もあることを聞いておりますので、非常に難しい問題ではございますけれども、やはり先ほど申し上げましたように安定供給あるいは多角的な供給ということを考えれば、当然これを行うことはよろしいことであると考えております。
  393. 小川新一郎

    小川(新)分科員 実際何らかのアクションを起こすわけですね。
  394. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 ですから、これも一番最初に申し上げたように、まず第一の問題は民間が自主的にこれを行うことを尊重するということでございます。ただし日本としては、何回も申し上げるとおり原油の安定的な多角的な供給ということは何としてもしなければなりませんので、通産省としては、法の改正等も含めてこれに対して意欲を持たざるを得ないというところでございます。
  395. 小川新一郎

    小川(新)分科員 ひとつ多角的、安定的でなくて、さらに供給するための安い良質な油であるということで鋭意努力をしていただきたいと思うのでございます。  次に、企業間のコンピューターをつなぎ、データ交換を合理化する問題でVAN、付加価値通信網でございますが、このサービスは中小企業向けのものは認められておりますが、大企業同士を結ぶ本格的なVANはまだ認められておりません。従来の論争としては、郵政省は通信の分野における一定の外資規制を行うためにも新法としてのVAN法が必要であると主張して、通産省は全く自由な情報処理業の分野であり新法VAN法は必要はないという主張でありましたが、今国会における郵政、通産両省の考え方をお聞きしたいのでございますが、まず通産大臣としては、一言で結構でございますが、この新法設定に賛成でございますか反対でございますか。
  396. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 何年か前におけるVANをめぐります通産省と郵政省との考え方の相違というのはただいま先生のおっしゃられたとおりでございます。現在、郵政省におかれまして電気通信事業法案という法案を検討されておられます。それについて現在政府部内でいろいろ検討が進められておるという段階でございます。  いずれにいたしましても、通産省といたしましては、この電気通信事業法案の中に実は第二種電気通信事業という事業が予定されているわけでありますけれども、この分野につきましてはVANを含めまして情報処理の分野に主としてかかわってくる事業であるというふうに思っているわけでございまして、そういった分野につきましては、これからの日本の経済の発展ということを考えてみますと、歳も民間の創意工夫あるいは技術力、技術の発展というものが反映されるべき分野であるというふうに思っているわけでございます。そういう意味合いから、民間が自由に活力を発揮できるように環境を整備すべきである、そういう観点に立ちまして通産省としての意見を申し上げていきたいというふうに思っております。
  397. 小川新一郎

    小川(新)分科員 郵政省は。
  398. 内海善雄

    ○内海説明員 一昨年の十月に臨時暫定郵政省令によりまして中小企業向けのVANというものが可能になったところでございますけれども、それは郵政大臣に対する届け出制ということでやっておりまして、非常に順調に発達しておるところでございます。現在、一年ちょっとでございますが、十七社二十一システムにも上がっております。  しかしながら、これは臨時暫定の制度でございますので、ぜひとも法制化が必要と考えているところでございます。現在郵政省におきましては電気通信事業法案というのを用意しておりますが、これでは電信電話その他ファクシミリ通信等あらゆる通信サービスができる第二種電気通信事業というものを考えております。このあらゆる通信サービスができる第二種電気通信事業を不特定多数のものにサービスをし、全国的、基幹的にやっていく、そういうサービスはこれから非常に重大な役割を担うところでございまして、こういうものを考えた場合、一番考えなければならないことは最終ユーザーで、ユーザーが自分の重要な個人の情報だとかあるいは企業の秘密というものをこの第二種通信事業者に預けまして通信をしてもらうということでございますので、安心してこのサービスが使えることということが一番であると考えておるところでございまして、このユーザーの利益を守りつつサービスが非常に健全に発展していくということが重要だと考えておるところでございます。それゆえ、安全性だとか信頼性の確保とかあるいは利用の公平というような措置を十分とるような法律が必要であるというふうに考えておりまして、現在政府部内で調整をしている最中でございます。
  399. 小川新一郎

    小川(新)分科員 大臣お聞きのとおりです。どう御判断しますか。
  400. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 そのような議論の分かれていることはもちろん承知しております。しかしながらこれは部内で調整中でございまして、この結論が円満にいくことを期待しておりますし、またそれに努力もいたします。
  401. 小川新一郎

    小川(新)分科員 政治はおくれてはならないということわざがありますが、大臣、円満解決結構、いつごろ見通しがつきますか。
  402. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 まだわかりません。
  403. 小川新一郎

    小川(新)分科員 郵政省は。
  404. 内海善雄

    ○内海説明員 現在の電気通信事業法案は、実は行政改革推進ということで電電公社の改革法案とあわせてやっておりますが、できたら三月末の提出期限に間に合うように調整をして出したいと考えております。
  405. 小川新一郎

    小川(新)分科員 郵政省は三月末をタイムリミットとして出したいと言っております。小此木通産大臣、いかがですか。
  406. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 まだ私はわかりませんと申し上げましたけれども、努力いたしておるところでございます。
  407. 小川新一郎

    小川(新)分科員 お聞きのとおりのことで、ここでかみ合ってしまってもしょうがないのですが、最終利用者である国民のために、利用者のために、ユーザーのために、一日も早く決着をつけるための三月末という郵政省の考え方に私どもも同意をせざるを得ないのでございますので、その辺の御判断をひとつよろしくお願いしたいと思います。  次に、コンピューターの高度情報社会に伴うソフトウエアの部分、プログラムですが、この関心が高まっております。著作権の問題とかいろいろとございます。コンピューターのコストに占めるソフトウエアの比重は、現在ハードウエア、電子装置を大きく上回って、大体七割から八割にも達しております。ソフト保護法案の廃止が報道されておりますが、これは事実でございますか。これが一点。  次に、産業育成の立場から、国産コンピューター購入に際して日本開発銀行の最優遇特利適用は延長するのかどうか。  三点目、税制面での対象は、どう償却期間を短縮して、利用促進を図る新しい政策を持つかどうか。  大きな問題でございますが、時間の関係上棒読みをいたしました。一つずつお答えをいただきたいと思います。
  408. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 まず、コンピューターのプログラムの問題から申し上げます。  コンピュータープログラムにつきまして通産省といたしましては、まさに技術先端的な工場製品であるというふうに理解をいたしておりまして、それを前提にいたしまして先生御案内のようなコンピュータープログラム権法というような法案を検討しているところでございます。きょう、一部新聞にそのコンピュータープログラム権法見送りというような記事が出たわけでありますけれども、これは私どもといたしまして、そういう判断を現在しているわけではございません。それが第一点であります。  それから次が開銀の最優遇金利、国産コンピューター購入に係ります開銀の最優遇特利を続けるかどうかということでございますけれども、続けるということで、現在御審議いただいております予算、財投の中に入っております。  それから、コンピューター導入促進のための税制面の問題でありますけれども、これにつきましては、やはり五十九年度から中小企業のための設備投資減税として、中小企業新技術体化投資促進税制という税制の創設をお願いしているところでございまして、この税制によりましてコンピューター及び周辺端末装置の設置促進をしてまいりたい、それによって中小企業の近代化を図ってまいりたいというふうに思っております。
  409. 小川新一郎

    小川(新)分科員 要約いたしますと、ソフト保護法案の廃止についての新聞報道は誤りである、二点目の産業育成の立場からの最優遇特利の適用は延長する、税制面での対象は新しく今考えておるということでございます。結構な御答弁でございます。  次に、私どもの公明党が出しております中小企業対策として、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律の一部を改正する法律案というのを出しておりますが、そこで三つお尋ねいたします。  大企業のダミー企業の除外をできるかどうか。二番目は、中小企業官公需特定品目の制度化、中小企業に発注をさせるための制度化でございます。三番目、官公需適格組合制度を十分機能させ、育成させるための考え方はどうか。通告してありますので、この三点について要点だけお願いします。
  410. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 先生ただいま御指摘の三点につきましては、基本的には現在既に閣議決定によって実施しております官公需の確保の中で、ただいま御指摘の特定品目あるいは官公需適格組合ということは実行いたしております。  また、ダミー規定の問題につきましては、現在までのところ、私ども、具体的にこのような苦情が出ているということは承知しておりませんけれども、仮に具体的な問題を生じました場合には、官公需法の第六条の規定によりまして、通産大臣から関係各省への要請ということで個別に対処ができるということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、官公需施策の推進は重要でございますけれども、閣議決定等によります実体的な推進を着実に進めていくということで十分であるというふうに考えております。
  411. 小川新一郎

    小川(新)分科員 埼玉県の建設業の倒産状況でちょっとお尋ねしますが、全国の倒産件数は昭和五十六年で建設業で一万七千六百十件。これは昭和五十六年ですから、対前年度比マイナス一・五%、減っております。同じく昭和五十七年は一万七千百十二件で、対前年度比マイナス二・八%でございます。ところが、昭和五十八年は一万七千三百三十八件で、対前年度比一七・七%倒産が全国的にふえました。ところが埼玉県の倒産件数は、全国的にはマイナス一・五%である五十六年度において既に四百四十八件の倒産で、対前年度比一〇・六%ふえております。同じく五十七年度は四百九十七件で、対前度化同じく一〇・九伸びております。昭和五十八年、去年の一月から十一月までは五百五十件、対前年度比で三一・九%も倒産がふえております。全くおかしな現象でございますけれども、全国的に対前年度比がマイナスであった倒産件数が、埼玉県の場合は、五十六年、五十七年では約一〇%を超えるほど倒産がふえております。しかも五十八年度には、全国平均一七・七に対して三一・九にもなっております。  非常に大きく埼玉県で問題になっておりますので、公共事業がマイナス二%シーリングの中で一体この問題をどのようにして中小建設業者が生き抜いていくかということで、今非常に懸命になって建設省または地建にこれを申請しておりますけれども、この対策が非常におくれておりますので、通産大臣としましては、こういう特定地域、首都圏、大都市圏の犠牲になっているような埼玉県、人口急増地帯、大臣のお住まいの神奈川県と全く似たり寄ったりの本県でございます。ひとつ、何らかの手段方法を講じていただかないとこれは大変なことになりますので、あえて申し上げました。特に、私は、この問題解決のために大企業と中小企業との調整分野、受注、発注の比率も、基準を一〇〇といたしますと、大企業が公共事業で受け持って仕事をやるのが約七割、中小企業は三割でございます。これを少なくとも五、五もしくは六対四に変えていただきたいことを思っております。時間の関係上、この問題についての御所見、御決意を大臣にお承りいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  412. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 日本経済は、景気の回復がやや持ち直しているというようなことを言われながらも、中小企業の倒産件数が非常に多いということは我々は憂慮いたしておりますし、また深刻に受けとめていることも事実でございます。おっしゃられた埼玉県の問題をもちろん含めて、今後通産省として、他の省庁協力しまして中小企業対策を推進していきまして、倒産件数等もこれ以上多くならないような対策等々を進めていきたいと存じます。
  413. 小川新一郎

    小川(新)分科員 それで、先ほど申し上げましたように、公明党の政策を出せば検討中だという、これでは全く自己相反する行動としか言いようがございません。どうかひとつ御勘案の上、埼玉県が特にそういう状態でございますのでお願いをいたしまして、終わらしていただきます。ありがとうございました。
  414. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて小川新一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、小渕正義君。
  415. 小渕正義

    小渕(正)分科員 通産省の関係では、特定業種関連地域中小企業対策臨時排置法または特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法、こういった両法案でいろいろと対策を講じられていることについては大変敬意を表する次第であります。  工業再配置促進法というのが昭和四十七年ですか制定せられて、もう約十年経過したわけでありますが、工業再配置促進法について、一つの区切りとして改めて現状との比較の中で見出すべきじゃないかという感じもするわけであります。その点についての通産省としての見解を承りたいと思います。
  416. 石井賢吾

    ○石井政府委員 四十七年に工業再配置法が制定されまして、これに基づきまして昭和六十年度を目標とする工業再配置計画を現在進めておる段階でございます。これが六十年度をもって終了いたしますので、五十八年度、今年度でございますが、このフォローアップ作業をいたしました。そのフォローアップ作業に基づきまして、五十九年度に改めまして新しい計画の策定について検討に入りたいというふうに思っておる段階でございます。その意味で、昭和四十七年度に発足し、かついろいろな地域の想定等も四十五年度の資料をもって決定しておりますので、そういった点についても十分検討してまいりたいというふうに思っております。
  417. 小渕正義

    小渕(正)分科員 六十年度を目指しての計画であったわけで、新しい見直しということで五十九年度の新しい計画を策定するということでありますが、先ほども申し上げましたように、特定関連地域対策として通産省は大変力を入れられておられるわけであります。  事長崎のことを例にとりますならば、実はこの工業再配置促進法によっては、長崎県は誘導地域に指定をされているわけでありますが、長崎市は除外されているわけであります。そこで、こういう特定不況地域、業種ということでのいろいろな対策を講じられておるわけであります。当時、誘導地域における工業集積度が二以上というのが一つの基準であったようでありますが、長崎市の場合を例にとりますならば、昭和五十四年度においては一・〇四というふうに工業集積度が実はもう下がってしまっておるわけでありまして、そういう点から、何らか長崎市における都市の活性化をするためには、誘導地域の指定を受けてそういう中で、ほかにもいろいろ対策はありますが、そういった誘導地域の指定を受けながら、あと一つ新しい都市の活性化を目指していこう、こういうことが現在いろいろともくろまれておるわけであります。  そういう意味で言いますならば、誘導地域の見直しといいますか、当時と明らかにもう数値的に状況が変わってきておるわけでありますので、早急にこういったものの見直しといいますか追加といいますか、そういうものを必要とするわけでありますが、この点についてはやはり五十九年度の新しい事業策定の中でしか考えられないのかどうか、この点についていかがでしょうか。
  418. 石井賢吾

    ○石井政府委員 ただいま御指摘の長崎市が誘導地域外ということになっておりますが、全国で一つの県が誘導地域とされました場合に除外されました市町村が八つございます。そのうちの一つが長崎市になるわけでございますが、これの考え方は、今先生御指摘のように、人口が大きいということに加えまして工業集積度が全国平均よりも二倍以上であった、あるいは人口の増加率が一五%以上であったというような当時の要件を基準に採択いたしまして、それによっていわば白地地域といいますか、誘導地域から除外する措置をとったわけでございます。  ただいま先生御指摘のように、長崎市の場合におきましては、造船業に依拠する産業構造であるがゆえに、その不振から相当悪影響を受けておるということは私ども承知しておりますが、現段階でもまだ全国平均よりはわずかではございますが高い工業集積度であるということが第一。それから第二に、これは御検討願いたいと思う点でございますが、実は人口五十万の都市は、アプリオリに誘導地域から除外をいたしておるのが現状でございます。その考え方と、四十五万という、ある意味では大規模な都市でございまして、極めて小さな市町村で、かつ工業集積度が一を下回っている市町村と、同列に扱うべきかどうかといったような問題もございます。  そういう意味におきまして、やはり全体の見直しの中で、その一環として検討いたしませんと、なかなか結論は出しにくい事情にあるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  419. 小渕正義

    小渕(正)分科員 実は、四十七年のこれらが指定される場合における状況と五十七年度の状況をちょっと申し上げますと、従業員数四人以上の事業所ということで調べてみました場合に、四十七年には長崎市は七百三十六の事業所があった。これが五十七年では六百二十に減少しているわけです。長崎周辺の方は逐次、ほとんど長崎市を除いては、そういう意味では少しずつ伸びていっていますから、工業再配置という意味での促進はされたわけでありますが、逆にこのような状況に立ち至りまして、人口は余りふえない中においてこういった工業集積度が低下していくという中で、しかも新しい工業団地の造成等もでき上がっておる中において、何ら都市環境を損なうことなく、いろいろと工場の再配置が可能な条件がかなりできつつあるわけであります。  そういう点から、先ほど申しますように、長崎は造船中心の経済基盤の町でありますし、それだけに、長く続いておる造船不況の影響をもろに受け、地域における影響も大きく、経済力が低下しておるわけでありますが、そういうもの等を何としてでも回復させるための一つ活力体としても、やはりここらあたりで誘導地域の指定を受けて、それも都市の再生への一つの大きな足がかりにしたいということで、実は強い要望を持ってお願いをしておると思うのであります。  したがいまして、確かに人口という面だけ見ますならばそういった面がございましょうけれども、市の財政的にも、事業所がこれだけどんどん市外に出ていってしまったということで、財政力もかなり逼迫してしまうような、かえって逆の現象が出ておるような状況でございますので、そこらあたりも考慮の中で誘導地域を新しく指定していただいて、そして一連の特定不況地域、特定不況業種、そういった諸方策が講じられておるわけでございますが、そういうものが有効に生かされるような形でしなければならぬのじゃないか、かように実は考えておる次第であります。そういう立場からこの問題をぜひお考えいただきたいと思うわけでありますが、その点につきましてはいかがでしょうか。
  420. 石井賢吾

    ○石井政府委員 さきに申し上げましたように、五十九年度におきまして、作業の見直し及び新計画の立案という作業を進めます一環として十分検討させていただきたいと思いますが、あわせまして、この誘導地域の制度を生かすためには、あらかじめ工業適地を決めておくことが必要でございます。そういう意味におきましては、市側においてもあるいは県としても十分な準備態勢が必要ではないかと思いますが、そういうこととあわせまして、五十九年度におきまして検討させていただきたいと思う次第でございます。
  421. 小渕正義

    小渕(正)分科員 通産省の行政指導の中で、そこらあたりもひとつぜひ指導していただいて、工場適地という点については、かなり条件が整ったところが私たちから見た場合には可能だと思っているわけでありますが、そこらあたり、行政の指導上で何とかよろしく御指導いただきたいと思います。  それから、先ほどの工業集積度の全国平均を、ちょっと数字を教えていただきたいと思いますが、幾らでしょうか、現在。
  422. 石井賢吾

    ○石井政府委員 大変古い数字で申しわけないのでございますが、昭和五十六年度の数値しかございませんで、五十六年度におきまして一・〇二五でございます。ですから、先生御指摘の五十四年よりもむしろ下回ったわけでございますが、これまでの統計で見ますと、五十五年には実は一を下回った時期がございました。五十六年に急速に回復したのではないかなと思うような数値が出てきておりますが、それ以後の新しい数値はいまだ計算できでないのが実情でございます。
  423. 小渕正義

    小渕(正)分科員 誘導地域の問題は、ひとつぜひ前向きにそういった形でよろしく御指導いただきたいと思います。  それから、同じく造船不況対策の中で、全国の関連都道府県の大きな要望の一つに漁船の輸出規制の緩和、それによる新規受注による漁船の建造促進という課題があるわけであります。御承知のように、こういった造船関連の、中小造船所は漁船を中心にして建造しているような状況でございます。ところが、これは他の、水産庁関係のそういった一つのあれからだと思うのですが、漁船に対する輸出規制が非常に行われているために新規需要というものが余り大きく期待できない、こういうことの緩和が実はこれらの造船関係都道府県の関係者の大きな一つの期待となって、これを何とかしてほしいという強い要望があるわけでございますが、この点に関して通産省としてはどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  424. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、漁船の輸出につきまして、輸出貿易管理令の第一条に基づきまして通産大臣の承認を受けなければ輸出してはいけない、こういう形になっているわけでございます。  なぜ、この漁船の輸出につきまして通産大臣の承認に係らしめているのかということでございますけれども、先生も御質問の中でちょっとおっしゃっておられましたけれども、国内水産業の健全な発展を確保する、こういう観点から、水産庁として漁船の輸出につきましていろいろな御判断をお持ちでございます。そういう観点で、漁船の輸出についての承認の運用について、従来から通産省と水産庁との間でお話し合いをいたしまして、私どもといたしましては、これは水産庁の意向も尊重しながらやらせていただいている、こういうことでございます。
  425. 小渕正義

    小渕(正)分科員 先ほど申しましたように、こういった造船関連の都道府県の中では、これの輸出規制に対する緩和、それによって漁船の新規需要が創出されるということでの非常に大きな期待を持っておるわけであります。確かに、水産資源といいますか国内の水産業を守るという立場から、一面そういう問題があるのかもしれませんが、逆にこういった造船関連の地域においては、そういった中小企業を振興させるためには規制を緩和させなくちゃいけないというような面が強く出ておるわけであります。通産省としては、この点について水産庁との連携の中で処理されておるように今お伺いをいたしました。ひとつこの点、輸出規制緩和ということについてどのような考えをお持ちなのか、お尋ねいたします。
  426. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 この問題は、なかなかむずかしい問題を抱えているわけでございます。一つには、先生おっしゃいますように、国内の造船業界が非常に苦境にあるではないか、そういう面からいえば、むしろ漁船の輸出を伸ばしていって、国内の造船業界の苦境に対して対策をとっていくべきではないか、確かにそういう御意見があると思います。他方同時に、国内の水産業の健全な発展という問題がある。結局、国内の造船業界と国内の水産業との利益調整の問題になってくるというふうに思います。私どもといたしまして、現時点におきまして当面緩和するという考えは持っていないわけでございますけれども、なお水産庁と協議しながら勉強を続けてまいりたいというふうに存じます。
  427. 小渕正義

    小渕(正)分科員 これは、ある意味においてはバランスの問題かもしれません。そういう国内水産業保護という立場からの一つの必要性と、逆に通産行政としては、国内の中小企業振興策という立場からこれをどうかみ合わせるかということになろうかと思うのです。  先ほど申しましたように、通産省は非常に積極的な姿勢で、これらの問題解決のために特定不況地域、業種についての諸対策を講じられておるわけでありますが、そういうものを本当に実効あるものにするためには、今私が申し上げましたような問題にも手を広げられてもう少し積極的になっていただかぬことには、せっかくいろいろな法律をつくって適切な処置と指導を行われて、振興対策をいろいろ考えられておるにかかわらず、それが本当に実のあるものとしてまとまらない、結実しない、こういうことであっては、表現が悪いかもしれませんが、まさにざるから水がこぼれるようなものじゃないかという気もいたします。そういう意味で、もう少しこの問題については積極的な姿勢でひとつ取り上げていただきたいと思うわけでありますが、この点はいかがでしょうか。
  428. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 先ほども申し上げたわけでございますけれども、まず国内水産業と造船業界との調整の問題でございます。例えば、国内水産業が衰退すれば、漁船についての国内の需要は減るわけでございます。そうすると今度は、漁船についての輸出なのか国内需要なのかという問題も起こってくるのではないか、そういったいろいろの問題を考えながら、先ほども申しましたが、水産庁とお話し合いをして勉強を続けていきたいと存じます。
  429. 小渕正義

    小渕(正)分科員 鶏が先か卵が先か、そういったものに似たような種類の問題とも関連いたしますけれども、そういった性格があることもわかりますけれども、せっかくの通産省としての中小企業の振興対策、特に造船関連都道府県に対する諸対策が本当に実効あるものになるためには、もう少し積極的な角度からこの問題をもう一度見直していただきたいということを大臣お願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思うのですが、大臣、ひとつ御見解をお伺いさせてください。
  430. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 水産庁との絡みもあり、いろいろ難しい問題もあるようでございますが、御指摘の議論等もございますので、検討してまいりたいと思います。
  431. 小渕正義

    小渕(正)分科員 どうもありがとうございました。
  432. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて小渕正義君の質疑は終了いたしました。  次に、竹内勝彦君。
  433. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それでは、生糸の輸入の自由化の問題等を入れて、今西陣を初め非常に不況にあえいでおる、そういう中で農林水産省あるいは通産省、この日本の大事な伝統産業、地場産業を育成をしていかなければなりませんし、そしてまた活力を得させていかなければならない、そういった意味から、ぜひ懸命な御検討をお願いしたい、そういった意味から若干の質問をさせていただきます。  昭和四十九年の八月に外国産生糸の一元輸入措置がとられて以来、国内の生糸価格が高値を続けていて、現在では国際生糸価格の二倍を超えている、そういった状況でございます。一方、価格差便乗の外国産絹織物あるいは絹製品、こういったものの輸入が増大し、我が国の伝統ある絹織物産地を直撃しております。そういう中で、今後この状態が長く続いていけば、これはもう途上国における絹織物業基盤の完全確立及び国内消費価格の高騰による需要の減退等から、我が国の絹業が再起不能の状態に追い込まれる、そういう状況でございます。  そこで、まず第一にお伺いしたい点は、農林水産省にお伺いしておきますが、蚕糸砂糖類価格安定事業団が買い上げた生糸の在庫状況、また金利、倉敷料等、事業団の経営というものがどのようになっておるのか、その現在の状況を概略御説明ください。
  434. 高木賢

    高木(賢)説明員 お答え申し上げます。  在庫数量は、五十九年一月末現在で十七万五千俵でございます。  それから経営の概況でございますが、この在庫の生糸を持っているがために、農林中央金庫からの借入金が千八百七十六億円ということに相なっております。この十七万五千俵を持ち続けます一年間の金利、保管料は、約百六十億円という状況でございます。これがために五十七年度決算におきましては、五十七億円の赤字を生じております。これは主として生糸の評価損が出たためでございまして、借入金の利子等は直接の関係はございませんけれども、五十七年度から繰り越しで欠損が出ているという状況にございます。
  435. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 この輸出の増進を図っていくには、海外糸価というものを常に念頭に置かなければなりません。それにもかかわらず、海外の糸価と遊離した安定帯が設定されているために、現状では全く輸出がされていないと言っても過言ではございませんね。むしろ逆に輸入増のために、生糸の輸入対策がここに組み込まれて運用されておる。そういう中でございますが、状況は、どういうふうにつかんでいますか、過剰在庫になった理由というものをお述べください。
  436. 高木賢

    高木(賢)説明員 私どもは、基本的には大幅な絹需要の減退ということが大きな原因だろうかと思っています。五十三年に絹の生糸ベースで換算しました内需は四十六万五千俵ございましたが、これが五十八年には二十九万二千俵ということで、何とこの五年間に四割もの需要減という、非常に急激な減少が生じました。これに対応いたしまして、通産省の御協力も得ながら、輸入の削減でありますとかあるいは需要の増進の努力というものをやってまいりましたし、生産の側もその間に約二割減りまして八割ぐらいの水準になっておりますが、いかんせん、需要の落ち込みが余りにも予期せざる大幅であったということのために、大幅な需給ギャップが生じたというふうに考えております。
  437. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 現在事業団として、先ほど御説明いただきました十七万五千俵、これは千八百億円でしたね、それだけの生糸の在庫を抱えておる。この倉敷料、金利、そういったものがさらに百五十億円からの赤字がかさんでくるわけですね。そうなってきますと、この解消のためにも、昭和五十九年度基準糸価の大幅引き下げを行うべきではないか、こういうように考えますが、現行一万四千円の基準糸価を少なくとも一万二千円以下に引き下げはできないのかどうか、御答弁ください。
  438. 高木賢

    高木(賢)説明員 五十九生糸年度に適用いたします基準糸価につきましては、先生御案内のように、三月末に蚕糸業振興審議会の議を経て決めるということに相なっております。この決める基準でございますが、生糸の生産条件、それから需給事情その他の経済事情から見て適正と認められる水準ということでございますが、現在生産費等のデータが実はまだ関係部局から出そろっておらない状況でございまして、まだ何事か私どもの方で申し上げる段階になっていないということを、まことに申しわけございませんが、そういう実情でありますことを御了解いただきたいと思います。
  439. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 下げるか下げないかはわからぬというわけですか、それとも下げる方向ですか、それをもう二度。
  440. 高木賢

    高木(賢)説明員 お答え申し上げます。  まだ何事も決めてないという状況でございます。
  441. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 これだけ、いままでずっと状況としては厳しい。こんなことは今に始まったことではないのですよ。それを、そういう論議さえもしていないのですか。
  442. 高木賢

    高木(賢)説明員 再三恐縮でございますが、蚕糸業振興審議会の議を経て決めるということになっておりまして、その公の論議の段階にもなっていないということでございます。  なお、一言つけ加えさしていただきますと、基準糸価につきましては、五十六年度に若干下げた経緯、それからその後物価上昇、あるいは生産費は逐年労働費の上昇等によりまして上昇しておりますが、これを据え置いているという状況にございます。そういう中で、養蚕農家の側からは、非常に経営が苦しいという声が強くなっているという状況も一方にございます。そのような、先生のおっしゃいましたような事情でありますとか、生産者側の事情というものを総合勘案して決定するということになるわけでございますが、現在ただいまのところは、先ほども申し上げましたように、まだ基準糸価を決める、あるいは何か方針を出すという段階になっておりませんことを、まことに申しわけございませんが、お許しいただきたいと思います。
  443. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 せめて基準糸価を下げないと、在庫赤字はふえる一方ですよね。したがって、それを待ってと言っておりますが、めどとしてはいつになるのですか。
  444. 高木賢

    高木(賢)説明員 基準糸価の決定は今月末をめどにしております。
  445. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 特に一元化輸入で保護政策をとってきた養蚕農家の実態、こういったものを説明していただきたいのですけれども、今まで続けられてきた一元化輸入制度をここで全く廃止、そういうような形に持っていった場合は、これは養蚕農家が大きな打撃を受けることは事実でございましょう。しかし、一元輸入という保護政策の中で、この十年間に二十八万戸の養蚕農家が十二万戸へ、五八%も減少していますね。これはもう御承知のとおりです。そして、一元輸入政策によっても養蚕業は維持できないことをこれは如実に物語っておるのではないか、こういうふうに感じます。  私も農家の生まれなんです。小さいころ、この養蚕を私の家でもやっておりました。私も手伝っておりました。そういう中で、今の養蚕農家の実態、いろいろございますけれども、もうこれだけに頼ってやっていけるというような時代ではございません。したがいまして、兼業がどんどん行われていっておりますね。しかし一方、養蚕農家の中には、大変苦労をして生産性の向上を図っている農家もございますし、それから外国産生糸に見られない高品質の生糸をつくっている製糸業者もいるわけでございます。  元来、本当の養蚕農家の保護とは、繭の価格を保証することではなくして、対等の立場で外国の養蚕業と競争できるような体質を国内養蚕業に与えることだ、こういった面が大事ではないでしょうか。しかし現実は、一元輸入制度の導入から十年経過し、今日依然として国際競争力を回復せず、なおこれを外せば壊滅するという養蚕業の体質に問題がございますね。それでもなおこの養蚕業に対して繭の価格保証といったものが必要なんだ、こういうものはもう国の助成によって価格差補給をしていかなければならないと思うわけですね。今の京都あたりを代表しておる西陣絹業に対して無期限的に、消費者である絹業にそれを転嫁していこうという政策というのは、これは誤りじゃないでしょうか。これはいろいろなところで指摘されておるとおりでございます。  そこで、一元化輸入で保護政策をとってきた養蚕農家の実態、過去十年間どのようになっていますか。概略で結構でございます。
  446. 高木賢

    高木(賢)説明員 戸数で申し上げますと、先生御指摘のように昭和四十九年には二十八万戸ございましたが、その後約十年経過した五十八年には十二万八千戸ということになっております。その間、農家の数の減少に反比例いたしまして、経営規模の拡大というものが進んでおります。ほぼ十年前の二倍の経営規模になっております。しかしながら、一番生産の規模の大きい農家、我々で言えば、整理上、繭を年間に一トン生産する農家を最大規模としてとらえておりますが、この農家を見ましても、平均ベースで見ますと、現在の糸価水準を割りましたところの繭の価格水準から見ると、まだ生産費を償っていないという状況にございます。そういうこともありまして、一元輸入ということで輸入の秩序化を図っている。それだけの原因でなくて、農家数が減少してきているという状況にあるわけでございます。  これをまた一方、農家所得、養蚕農家の所得という面から見ますると、かつて昭和五十年前後には、私どもが言っておりますいわゆる所得率、百円の粗収入があったとき一体本当の懐には幾ら入ったかというものが六割ぐらいであったのが、だんだん下がってまいりまして、五十年代の前半には五割くらいになりまして、今やそれが五割を割る、大体四割台の数字になってきております。  このように、経営規模の拡大により合理化努力を進めてきておりますが、なお、まだなかなか国際水準に到達するというには距離があるという段階であろうと思っております。
  447. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 通産省にお伺いいたします。  絹織物業の基盤、これを外国では完全に確立しつつある中、国内消費価格の高騰による需要の減退、こういったものから我が国の絹業が国際競争力を失っておる。一方、経営基盤が失われ、業界の倒産件数がふえている。深刻な状況でございますね。最近の西陣を初め全国の絹業の状況をどう把握しておりますか、御説明ください。
  448. 黒田真

    ○黒田政府委員 お答えいたします。  我が国の絹織物は、主として今日もなお和装、いわゆる伝統的な着物に大部分が向けられております。九割方が着物に向けられるわけでございますが、最近の生活様式が非常に変化をしている、あるいは人口構成が大幅に変化しておるというようなことから、需要が著しく減退をしております。そして同時に、高価格化あるいは輸入の問題というものが悪化要因に加わっているということは、御指摘のとおりだと思います。  それで、若干の数字を申し上げますと、絹織物の生産は減少傾向が続いておりまして、昨年の生産量は一億二千万平方メートルということでございます。五十七年に比べますと、一一%ほど減った数字になっております。十年前、四十八年は一億八千八百万平方メートル程度でございましたので、三五%生産の減少というような数字でございます。
  449. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 先ほど私が指摘した生糸の国内価格と海外価格の大きな格差、こういったものは外国産生糸の一元輸入に起因するということはもう明瞭でございます。西陣を初め我が国の絹業の将来的発展を期すためには、一元輸入措置の撤廃、まあ、業者が要求をしておるとおりでございますが、この生糸輸入の自由化によって生糸の国内海外価格差の解消を図る以外に道はない、こういうように考えるわけです。反面、価格差の解消は、生糸の国内価格の暴落を意味するわけですね。この生糸価格の引き下げは、長期にわたる引き下げ策にしろ、一時的な引き下げ策にしろ、生糸を原料とする国内絹業は、原料あるいは仕掛け品、製品の価格が大きく目減りしますね。さらに流通の混乱、経営に大きな被害を受けることは避けられない、そういう形になっていくでしょう。  しかし、今このままで、日本の伝統産業が活力を失っているこの状況に対して、西陣初め伝統産業の保護育成に対してどのような施策、今後の予算づけ、例えば今考えられるものとしては、生産、流通の秩序回復のための長期低利融資の実施、休機等生産調整資金の融資、こういったものを含みますね。それから、関連倒産防止のための救済資金融資の実施、転廃業資金のあっせん、こういった面ですね。もちろん今、これだけ構造的な不況の中でいろいろと考えられるものはあると思いますけれども、通産省として、まずどのような施策、そして予算づけを行っておりますか。
  450. 黒田真

    ○黒田政府委員 絹織物につきましては、ただいま申し上げましたように、いろいろな要因から需要が構造的に減少傾向をたどっているということでございます。したがって、私ども考えますのは、何とかしてそういった需要の減退の方向というものをとどめる、あるいは需要の喚起を図ることを考えようというふうに考えるわけでございまして、そういう点から通産省といたしましても、需要振興という観点から実は各種の施策を従来請じてきたところでございます。  若干細かくなりますが、産地の中小企業対策というような中小企業関係の制度を利用いたしまして、活路開拓あるいは新商品の開発能力の育成あるいは需要開拓というような産地の活動に、私ども応援をさせていただいているということがございます。また、これは主として和装の減退が大きいわけでありますので、何とか新しい洋装品の分野に絹製品の新たな需要を開拓できないものだろうかというようなことで、絹新製品開発施策費補助というようなものを設けまして、五十六年度以降、各産地の新しい織物の製織努力というものを応援をし、これを展示をする、あるいは海外において展示を行うことやジェトロ等の活動を支援する、あるいは国内においても、ひとつ絹の伝統的な我々の着物というもののよさを再認識してもらうことも必要ではないかというようなことで、百貨店協会等の協力を求めて大きなフェアを催しましたり、あるいは着物振興事業を応援するというような形で、各般の需要喚起策というものを従来講じてきたところでございます。  また、特に西陣という特定の産地のお話がございましたが、これは私どもの伝統的工芸品産業の振興に関する法律という法律に基づきまして、特に伝統的工芸品の指定を、法律が十年前にできました一番最初に取り上げて、五十一年以降指定しております。そして、西陣自身が振興計画というようなものを立てて、いろいろな努力をしておられるわけでありますが、これに、ささやかではございますが、私どもも後継者育成等を中心に応援をさせていただいているというのが、従来の私どもの応援の姿でございます。
  451. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 時間が余りありませんので、農林水産省にもう一点御答弁お願いします。  今、通産省の今後に対する施策あるいは予算づけ、そういった面で検討がなされておる面を御説明いただきましたが、農林水産省として、西陣を初め、我が旧綿業の将来的発展を期すならば、生糸輸入の自由化を図るべきではないか。一方、一元輸入で保護している養蚕農家も減っている現状では、その制度あるいは他の価格差補給等で保護するとか、いろいろなもので打開策は考えられないのか、そういった見解をお伺いしたいと思います。
  452. 高木賢

    高木(賢)説明員 今お話のありました価格差補給につきましては、価格の補給の幅をどう見るかによって違いますが、年間五百億円ないし一千億円ぐらいの補給の規模になろうかと思います。このような大きな規模になりますと、それをだれが負担するか、またいつまで負担すべきかというような非常に難しい問題が出てまいるかと思います。  いずれにいたしましても、繭糸価格安定制度全体のあり方につきましては、現在省内に学識経験者によります繭糸価格安定制度に関する研究会というものを設けまして、鋭意研究検討を行っていただいております。その結論を待ちまして、適切に対処していきたいと思っております。
  453. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 輸入自由化の件も一言言ってください。
  454. 高木賢

    高木(賢)説明員 今御指摘になりました一元輸入の制度は、先生御案内のように、昭和四十七年に政令で当分の間一元輸入できるということになりまして、それからさらに五十一年に「当分の間」ということで、これはいずれも国会の御発議によりまして、全会一致で成立した法律でございます。そういうことで、私ども行政当局が申し上げるのはいかがかという点はございますが、その立法の趣旨でありましたところの、輸入を秩序なしに続けたのでは我が国の蚕糸業は崩壊する、こういう御認識がその立法の背景にあったというふうに私どもは理解しております。そのような立法の背景は今日いささかも変わっておらず、蚕糸業をめぐる状況は先ほど申し上げましたが、非常に需給が大幅に緩和しているというような点でむしろ厳しくなっておるのではないかというふうに考えております。  いずれにいたしましても、そのような点も含めまして研究会で御議論いただいておりますので、その結論を待ちまして適切に対処していきたい、こう考えております。
  455. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 では時間ですので、大臣、この絹業の苦しい事態あるいは需要の振興、そういったものも含めて、今後の打開策をどのように考えておるのか、大臣の御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  456. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 絹の業界が、先ほど局長が申し上げた等々の理由でもって非常に困難な状況にあるということは、私も十分承知いたしております。したがいまして、今後我が国綿業というものが盛んになるように、需要の喚起、振興対策、さまざまなアイデア等を出しまして、我が国綿業が万全な体制になりますように、大いに努力してまいる所存でございます。
  457. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 ありがとうございました。終わります。
  458. 伊藤宗一郎

    伊藤主査 これにて竹内勝彦君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十二日午前九時から開会いたし、引き続き通商産業省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時散会