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1984-03-12 第101回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月十二日(月曜日)     午前九時開議  出席分科員    主査 大村 襄治君       小杉  隆君    橋本龍太郎君       上西 和郎君    川俣健二郎君       小林  進君    永井 孝信君       浜西 鉄雄君    矢山 有作君       草川 昭三君    福岡 康夫君    兼務 上田  哲君 兼務 河野  正君    兼務 関  晴正君 兼務 田並 胤明君    兼務 広瀬 秀吉君 兼務 細谷 昭雄君    兼務 遠藤 和良君 兼務 斎藤  実君    兼務 坂口  力君 兼務 伏屋 修治君    兼務 横手 文雄君 兼務 米沢  隆君    兼務 中林 佳子君 兼務 簑輪 幸代君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         労 働 大 臣 坂本三十次君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官         兼内閣審議官  古賀 章介君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         厚生省保険局長 吉村  仁君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  朝本 信明君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働大臣官房会         計課長     若林 之矩君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       守屋 孝一君 分科員外出席者         大倉省主計局共         済課長     坂本 導聰君         大蔵省主計局主         計官      小村  武君         文部省初等中等         教育局幼稚園教         育課長     大谷 利治君         文部省大学局医         学教育課長   佐藤 國雄君         厚生省医務局指         導助成課長   柳沢健一郎君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    田辺 俊彦君         通商産業省機械         情報産業局電子         機器課長    島  弘志君         労働局労働基準         局労災管理課長 新村浩一郎君         労働省労働基準         局補償課長   佐藤 正人君         労働省労働基準         局安全衛生部長 小田切博文君         労働省労働基準         局安全衛生都労         働衛生課長   福渡  靖君         労働局労働基準         局賃金福祉部長 高橋 伸治君         労働省労働基準         局賃金福祉部福         祉課長     山口 泰夫君         労働省婦人少年         局不振労働課長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局特別雇用対策         課長      矢田貝寛文君         労働省職業安定         局障害者雇用対         策室長     藤原 正志君         労働省職業安定         局高齢者対策部         企画課長    佐藤 勝美君         自治省税務学府         県税課長    湯浅 利夫君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     兒玉 末男君   矢山 有作君     浜西 鉄雄君   草川 昭三君     福岡 康夫君 同日  辞任         補欠選任   兒玉 末男君     岩垂寿喜男君   浜西 鉄雄君     上西 和郎君   福岡 康夫君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     渡辺 嘉藏君   上西 和郎君     矢山 有作君   草川 昭三君     福岡 康夫君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 嘉藏君     小林  進君   福岡 康夫君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   小林  進君     上西 和郎君 同日  辞任         補欠選任   上西 和郎君     兒玉 末男君 同日  辞任         補欠選任   兒玉 末男君     永井 孝信君 同日  辞任         補欠選任   永井 孝信君     渡辺 嘉藏君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 嘉藏君     川俣健二郎君 同日  第一分科員田並胤明君細谷昭雄君、坂口力  君、伏屋修治君、第二分科員関晴正君、中林佳  子君、簑輪幸代君、第三分科員広瀬秀吉君、遠  藤和良君、第五分科員横手文雄君、米沢隆君、  第六分科員河野正君、第七分科員上田哲君及び  斎藤実君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算  (厚生省及び労働省所管)      ――――◇―――――
  2. 小杉隆

    小杉主査代理 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  主査が所用のためおくれますので、主査が御出席になるまで、指名により私が主査の職務を行います。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算厚生省所管について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜西鉄雄君。
  3. 浜西鉄雄

    浜西分科員 まず、身障者対策の問題についてお尋ねしますが、この問題は国際障害者年、こういう一つの時期をとらえてやるのではなくして通年的に追求していかなければならぬ大事な問題だと考えておりますので、次の点についてお尋ねしたいと思います。  障害者自身が、国の福祉に頼るのみでなく、みずからが自分の力で社会生活を営むためにその志を立てて、言ってみれば、それには立ち上がり資金ともいうべき資金が要るわけですが、現在社会福祉協議会貸し付け世帯更生資金というものがあるようですが、聞くところによりますと、これは最高限度額としても二百四十万円、実際には今の世相ではこれでは役に立たない金額ではないかと思う。つまり実情に合わないわけです。これの貸付枠拡大を図るべきだと考えるかどうか、まずそれが一つです。  それから、今申し上げましたように、社会福祉協議会貸し付け関係はありますが、身障者に対するところの特別貸し付け制度というものはないというふうに私は理解しております。この関係について特別貸し付け制度というものをつくる必要があると思うが、いかがなものでしょうか。
  4. 持永和見

    持永政府委員 御指摘のように、身体障害者方々ができるだけ御自分の力で自立更生をしていただくということは、大変大事なことだというふうに考えるわけでございます。  そこで、先生指摘身体障害者方々に対する更生資金でございますが、お話のございましたように、世帯更生資金制度の中で身体障害者方々のための更生資金というのがございまして、これは現在限度額も御指摘のように二百四十万円ということになっております。ただ、現在は二百四十万円でございますが、これも年々上げてきておるわけでございまして、例えて申しますと、五十五年度は百六十万田でございました。それを年々上げまして五十七年度の二百二十万円を、五十八年度は二百四十万円というふうに上げてきたわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、こういった貸付金につきまして、やはりおっしゃいましたように、身体障害者方々資金需要実態に応じまして限度額を引き上げるなり何なりの措置は必要かと考えております。五十九年度におきましても、実はこれは四月に入りましてから貸し付け条件改善を図るということに相なるわけでございますが、四月に入りましたらまた先生の御意向も踏まえまして、こういった身体障害者方々貸付金限度額の引き上げ、条件改善などについてさらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  5. 浜西鉄雄

    浜西分科員 それで、大体考え方はわかりました。  そこで、一、二点、身障者の保護というか、そういう立場施策についてお尋ねしますが、現在身障者が旅をする場合の割引はございますが、新幹線の特急料割引を考えることはできないか、これが一つです。  それから、重度障害者、一級から二級、この方たちに対する車いすなり、エンジンで動くわけですから、ガソリン税免税にすることはできないか。この二つについてお尋ねします。
  6. 持永和見

    持永政府委員 現在、身体障害者方々に対しましては国鉄運賃割引をいろいろとやっておりますが、御案内のとおり、特急料金については割引制度はまだございません。  ただ、現在、先生も御承知のとおり、国鉄自体財政再建ということで何とか国鉄財政を再建しなければならないというような全体の問題もございまして、現在の段階身体障害者方々に対します国鉄料金割引特急料金まで拡大していくということはなかなか難しい問題ではないかというふうに考えております。  また、おっしゃいましたガソリン税免税の問題につきましては、実は税の関係大蔵省所管でございますので、先生の御意向をお伝えしたい、こういうふうに考えております。
  7. 浜西鉄雄

    浜西分科員 確かに国鉄財政赤字を抱えて大変だと思います。しかし、これを利用する対象者の数というものは、全国民が利用する度合いから見ても、そう大きな影響を与えるものではないと思いますので、今後ともこの問題については検討を続けてもらいたいと思うし、今のガソリン税免税と同じように、これはそれぞれの所管のところで積極的にこれからもその立場検討を重ねてもらいたい、このことをつけ加えておきます。  さて、身障者の就職の問題でございますが、行政指導の効果がいろいろ地方でもあらわれておりまして、大変喜ぶべきことだと思いますが、内容を見ますと、軽度身障者採用ということに力点が置かれる、つまり一応の基準軽度身障者で満たしておるというか、そういう嫌いがあるのではないかというのが地方でよく聞かれることですが、やはり重度の者の採用についても採用枠拡大というか、そのことについて今後とも指導を強化していく必要があるのではないかと思いますが、この採用状況というものがわかれば、簡単で結構ですが教えてください。
  8. 持永和見

    持永政府委員 身体障害者雇用の問題をお話してございますけれども身体障害者方々雇用政策の問題は実は労働省所管の問題でございまして、私ども聞いているところでは、労働省におきましては、一定の枠の中で身体障害者方々雇用してほしいということを、それぞれの経営者方々に強く指導しているということを聞いておりますけれども、今お話しのように、確かに軽度障害者方々だけでなくて重度障害者方々もやはり自分の能力を生かして自立していくということは、社会的に非常に大事なことでございます。また、国際障害者年を契機とする身体障害者対策基本理念にも合うことでございますので、そういう意味から、先生の御意向労働省の方に十分伝え、雇用政策の場に生かしていただけるようにいたしていきたいと考えております。
  9. 浜西鉄雄

    浜西分科員 次に、身障者生活改善一環として、身障者用住宅建設がこれからも進められるという方向を示されておるわけですけれども、現場で私がよく聞くことですが、その居住性それから有効設計というか、これらを身障者意見が入らないままに、言ってみれば健全な人たちだけの頭の中で設計し、進めるものですから、建設後になって手直しということが起こってくることがよく見受けられるわけです。設計段階というか、建設前の段階身障者の声を反映するような、例えば建設委員会だとか、そういう事前に当事者本人たち意見を取り入れるような方針をこれから各都道府県に指導すべきではないかと思うが、いかがなものでしょう。
  10. 持永和見

    持永政府委員 身体障害者向け住宅建設につきましては、実はこれも、再度こういうことを申し上げて恐縮でございますが、基本的には建設省所管でございます。ただ、聞くところによりますと、建設省の方から、先生お話しのございましたように、身体障害者方々意向を十分聞くようにというような指導がなされているようでございます。  また、つけ加えさせていただきますと、厚生省におきます来年度の身体障害者対策一つといたしまして、一般住宅ではなくて、できるだけ身体障害者方々のための設備なりサービスが整った住宅と申しますかホームということで、身体障害者方々福祉ホームを来年度新たにつくることにいたしておりまして、そういった身体障害者方々のための設備あるいはいろいろなサービスができるような福祉ホームを、新しい身体障害者施策一環として来年度新たに実施するというようなことも考えておるところでございます。
  11. 浜西鉄雄

    浜西分科員 次に進みますが、最近の新聞でもいろいろ出ておりますし、これは社会的に底辺の問題として無視できない寝たきり老人関係、あるいは身障者を持つ家庭の破壊というか、大変悲惨な事件があるわけであります。これらを考えてみると、新しい提起となると思うのですが、家庭奉仕員派遣制度という問題について少しお尋ねしてみたいと思うのです。  重度障害なり、俗に言うぼけ老人と申しますかそういう寝たきり老人、手のかかる、介護を必要とする者に対しては、昨年の十月からですか、そういう制度が一部有料化でできたわけですが、実態はあくまで対象は低所得者ということであって、その中間的なボーダーラインにあるほとんどの家庭では残念ながらその恩恵を受けないで、みずからの家庭においてお互いに介護し合う、そういうことで、結局は働く女性の足を引っ張るというか、肩にかかってくるというような状態があると思うのです。そして、社会全体が核家族化してきて、昔のように何世代か一緒に生活するということがなくなって、相助け合うという中からの親孝行的な雰囲気、システム、これが現在の家庭から失われつつあると思うのです。したがって、そういう家で孝行したくともできない状態、つまり、共稼ぎしなければ家庭のローンに追われたり子供の養育費に追われたり、結局は家庭の主婦がパートその他でとにかく働きに出るという状態、それらをいろいろ総合的に考えてみると、家庭奉仕員派遣制度というものをもっと国の施策として、国全体が親孝行できるシステム一環としてこれを体系化するというか、完全に制度化する、そういうふうにすべきではなかろうかと思います。  そこで、現在各地方にある施設それから病院などでは、名称一つとらえてみてもまちまちであるわけです。例えば、病院では看護助手と呼ぶ病院もあるし看護人と言っておったり、あるいは補助看と言っておったり、それからそういった老人施設では指導助手、さまざまな呼び方で、統一された、いわゆる法的に認知された呼び方がない。つまり、福祉専門職としてまだ位置づけがされておらないと思うのです。  このようなことで、これからの老齢化社会の到来、今私が申し上げましたような、家庭で親孝行ができにくい状態にますます追い込まれている現状とあわせて、これらの福祉専門職というものを国の施策として体系的にきちっと整理をすべきではないか、確立をすべきではないかと思うが、まず基本的な考え方についてお尋ねします。
  12. 持永和見

    持永政府委員 福祉あるいは医療をめぐりましで、いろいろな専門職方々がいろいろな形で働いておられるわけでございますが、実は福祉関係をめぐりましてもいろいろな職種がございます。こういったものにつきまして、私どもといたしましても、やはりそういった方々職種の扱いなり体系化をどうするかといったようなことは非常に大事な問題だと考えておるわけでございますが、実はこういった問題につきまして五十六年に中央社会福祉審議会から答申が出されております。「国が家庭奉仕員の体系的な養成制度確立することについては、家庭奉仕員専門性の程度、周辺職種である老人ホームの寮母の採用要件に照らして問題があると考えるが、なお、長期的には諸外国の養成制度の動向にも配慮しながら、今後の課題と促して慎重に検討することが必要である。」というような答申が出されております。  現実に最近、ホームヘルパー方々の数が非常にふえてきておりまして、毎年度千五百人以上の増員をしておりまして、現在、二万人近くにも五十九年度にはなろうといたしております。そういった意味で、ホームヘルパー方々に大変幅広く福祉の第一線で活躍していただくということでございますし、また、こういった方々につきまして、先生指摘のように、これからこういった方々職種をいかにしてきちんとしていくかというのは大事な問題だと思いますので、私どもとして、今後の課題としてひとつ積極的に取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。
  13. 浜西鉄雄

    浜西分科員 二万人のホームヘルパー、そういった人たちがどんどんふえていくのは結構なんですが、私がここで提起をしている問題はそういったボランティア活動というか、地方ではボランティアセンターというのがあるのですが、それと家政婦派出婦会というのがありますが、これが仕事競合を起こしておって、県の福祉協議会においても、この派出婦会の運営とか維持に大変苦慮しておるようであります。これと家庭奉仕員派遣制度との競合という問題が起こっておるのではないかと思われるのですが、全国的に地方からその種のことについて問題が提起されているかどうか、ちょっとこれを伺っておきたいと思うのです。
  14. 持永和見

    持永政府委員 御指摘のように、ホームヘルパー方々とそれから家政婦方々と同じような仕事をするというようなこともございまして、仕事面での競合が起きておるやにも聞いております。私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、こういった問題につきまして、寝たきり老人方々あるいは身体障害者方々に対する家庭での社会福祉サービスのあり方はいかにすべきかということについては十分検討し、課題として取り上げていきたいというふうに考えるところでございます。
  15. 浜西鉄雄

    浜西分科員 今御回答がありましたように、地方では必ずしもこの問題がぴしっと整理をされて機能的に動いていない部分があるわけでして、例えば家政婦派出婦会に対する行政指導というもの、これは必ずしも明確でないのです。例えば労災雇用の面では確かに労働基準局なりあるいは職業安定所あたりに、それぞれそういった立場でのものはありますけれども、県や市に行政上それを指導監督するというか、つまり部局が全然はっきりしてないのですね、その話を持ち込んでも、どこでやっているのだろうかなあということで、そういう指導監督上の問題が明確でない。  したがって、私が提起をし、今質問をしておる要旨というものは、国家の統一したところの、つまり法で定められた介護職福祉専門職というものの位置づけ、そのことによって立派な仕事をしてもらう、つまり責任のある介護というものを実施してもらう。一定知識とか訓練、言ってみれば人体解剖的なことも含めてそういう統一的な指導訓練を行って、よりよい介護をするための基礎的な知識といいましょうか、そういう訓練を修了した者に対しては一定の資格を与える。そして身分格付、そして名称というものも統一して、今、冒頭私が申し上げたように幾つかの呼び名があるわけでありますから、それらを、病院でもそうでありますし、そういう施設でもそうであります、あるいは家庭に派遣する場合でも、統一した一つ専門職的なものをこしらえて、何回も言うようですが、身分なり格付なりその人たち労働条件なりなど統一して、国の機関としての任務できちっと整理統合して、新たに専門職としてのものをつくり上げることができないかどうか、この問題について。
  16. 持永和見

    持永政府委員 寝たきり老人方々あるいは身体障害者方々家庭介護するということは非常に大事な問題でございまして、また社会的にもこれは非常に大事なことだと思っておりますけれども、私どもの方の家庭奉仕員方々につきましては、御指摘のような資質向上がまず何よりも大事でございまして、そういう意味合いで、ホームヘルパー方々採用時に七十時間以上の受講をしてもらうということで研修を行っております。そういった研修を行った上で採用をし、かつ採用した後の定期的な現任訓練を行うというようなことで資質向上を図っているところでございます。一般的な家政婦方々については、そういった面でいろいろと問題もあろうかと思いますので、今後とも県なり市町村を私ども十分指導いたしまして、そういった寝たきり老人方々身体障害者方々につきましては、できるだけホームヘルパー方々を派遣するということで、やはり専門的な知識経験を持っておりますホームヘルパー方々による介護が必要であろうかというふうに考えるところでございます。  また、こういった方々身分の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり社会福祉審議会答申もございますので、今後の課題として十分検討していきたいというふうに考えております。  また、家庭奉仕員方々も、市町村の中ではまだこういった制度を実施しておらない、そういう市町村もあるようでございますから、まずは全国的に全市町村ホームヘルパー制度を活用するということを私どもとしては積極的に、強力に指導していきたいというふうに考えております。全市町村ホームヘルパー採用することになりますれば、そういったホームヘルパー方々を中心とした身体障害者方々あるいは老人方々家庭介護というものが、きちんと社会的に認知された形でできるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  17. 浜西鉄雄

    浜西分科員 この問題はかなりまだ、全国的に国の指導として統一し、名称その他私が提起したような問題、道は遠いと思いますが、今後とも私はその問題については追求をし、確立を図っていく立場を申し上げまして、この質問は終わります。  最後に、老人の生きがい問題なんですが、山口県の場合でも在宅で約千人くらい、老人ホームに八百三十名、病院に二千名くらい、いわゆる一般的なぼけ老人ですね、こういう方が入っておられるのですが、大変家庭の方に悲惨な状態もあるだろうし、いろいろあるのですが、できればそういう施設をつくるべきではないか。ただ死ぬのを待つというふうな施設でなくして、もっと若い者と交流ができるような、自分経験を、技術的なものを若い世代に伝えていくという、女性であれば組みひもの編み方あるいは漬物の漬け方、男性ならば植木剪定の仕方など緑化委員会的なものをつくったりして、そういう若者との交流、伝承のできる、あるいは年寄り自身が文化的な交流ができる、俳句を詠む、歌を詠む、あるいはナツメロ館があって「愛染かつら」が見れるというような、人生最後の死に行く前の、年金生活でよかったと言えるような施設をつくるべきだということを私はかねがね考えておるのですが、各地域に将来そういった本当の意味での福祉施設というか、人生最後の終わりをそこで、言ってみれば楽しく死ねるというか、そういう場所をつくるべきではないかということが一つ。  それから、末期医療の問題、これは大変難しい問題です。新聞にもきのう出ておりましたように、脳死の関係その他難しい問題でありますから、末期医療の関係は大変専門的になると思いますので簡単に申し上げますが、今、日本に臨床死学というものがあるのかどうか、それから、末期医療患者の発言権をどう扱うのかということについて検討されたことがあるか、その辺の状況だけをお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  18. 持永和見

    持永政府委員 最初の御質問老人の生きがいの問題でございます。  老人方々に生きがいを持って老後を送っていただくということは、御指摘のとおり大変大事なことだと考えるわけでございます。そういう意味合いで、厚生省といたしましては、老人方々の生きがい対策というものをいろいろ行っております。  お話のございました、老人が編み物をするとかあるいは園芸をするとかいうようなものの一環といたしましては、木工だとか陶芸だとか園芸、そういった生きがい創造事業というのを実施をいたしておるところでございます。また、老人方々がそういった生きがいを求めるために集まる場といたしましては、老人福祉センターというのを、各都道府県あるいは市町村の御要望があればつくっておるところでございまして、現在、全国で千四百六十五カ所の老人福祉センターがございますが、そういった老人福祉センターを各市町村なり何なりおつくりいただいて、そこで老人方々がお互い交流する、あるいは若い人たち交流する、あるいはその中でいろいろと生きがいの問題を求めていくというようなことをしていただければというふうに考えておりまして、こういった生きがい対策というのは、私どもといたしまして今後とも積極的に推進していきたいというふうに考えております。
  19. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話のございました末期の医療でございますけれども、御指摘のとおり、まことに重大な問題であると考えております。  二つお話がございましたが、臨床死学という学問につきましては、その存在を承知しておりませんけれども、医学は死を取り扱いますので、特に末期の場合、患者の意思をどういうふうに尊重していくか、延命一本やりではなくて、人間の尊厳というものをどうやって確保していくかというふうな意味におきまして、例えばホスピスとかそういういろいろな試みがあるわけでございます。また、この死に関しましては、かつて結核が死に至る病でありましたころ、国立療養所におきましてもいろいろそういう研究がなされております。今後広く国民の間でいろいろな意見の交換が行われるべき課題であると考えております。保それに関連をいたしまして患者の意思の尊重ということでありますけれども、発言権というふうにお話がございましたが、リビングウィルというふうなことであろうかと存じます。この問題は、新しい人類の経験といいましょうか、そういう非常に広い範囲にわたっておりますので、厚生省といたしましても、そういういろいろな問題につきまして生命と倫理に関する懇談会におきまして意見の交換をしていただいておるところでございますが、今後もそういう有識者の御意見を承りながら適切に対処してまいりたい考えでございます。
  20. 浜西鉄雄

    浜西分科員 もう時間がございませんからこれ以上質問いたしませんが、二十一世紀ということを安易に使うべきでありませんけれども老齢化社会に対する基本的な問題について、非常にタブー的なものもありますので大変難しいけれども、このことはお互いがとことん意を尽くして、人生最後を人間の尊厳を保って、やはり生きていてよかったという最後の問題については、何か尊厳死協会というのがあるようでありますが、場合によってはそういったところの資料をできれば厚生省としても取り寄せて検討してもらいたい。私も、今後とも時間をかけてこの問題について取り組んでいきたいということを表明いたしまして、終わりたいと思います。  御苦労さまでございました。
  21. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて浜西鉄雄君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤和良君。
  22. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 ただいま死に対する問題が提起されたわけでございますが、私の方は生に対する問題を初めにお伺いしたいと思います。  最初に、これはぜひとも厚生大臣にお尋ねしたいわけでございますが、先ごろ徳島大学の医学部で、患者の卵子を無断で使いまして体外受精の研究をしていたことが昨今の新聞に報道されております。学問研究の自由、これは守らなければなりません。国がみだりに口を差し挟むべきでない、これも承知いたしております。しかしながら、事は人間の存在や生命の尊厳にかかわる重大な問題でございます。したがいまして、この件につきまして国としては、一つは、調査団を派遣する意思があるかどうか。二つ目に、何らかの規制措置といいますか、実施基準あるいはガイドラインのようなものをそろそろおつくりにならなければならない時期が来ていると思いますが、どうか。三つ目に、その実施基準が守られているかを確認する意味で、第三者による監査委員会のようなものを設置する考えはないか。こういった三点につきまして、大臣の率直な御見解をお聞きしたいと思います。
  23. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ただいま御指摘のありました問題、私も毎日、こういう問題が起こるたびに考えさせられておるのでありますけれども、人間の尊厳と生命の科学、これがどこで調和されるか、そして人間の幸せ、また人間そのものの倫理を守っていくかということで、非常に難しい問題をはらんでおります。  今お話しの問題は、おおむね文部省所管の大学の問題ですから、文部省が直接所管する問題でありますが、私どもも、先生指摘の問題には非常に関心を持って、これから文部省当局ともよく相談をしてみたいと思います。  あと、具体的な問題は政府委員からお答えします。
  24. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 徳島大学につきましては、ただいま大臣のお答えのとおりでありますけれども、あと二点、ガイドラインと第三者機関のお話がございました。  大臣からもお答え申し上げましたように、体外受精の問題といいますのは、考える範囲が非常に広い問題だと思います。こちら側には、大変な福音だから希望者には全部やったらどうか、こちら側には、いやしくも生命の誕生に人為を加えるのはゼロにすべきであるということだと思います。その間に、いろいろな生命観、倫理観あるいは宗教、そういうものがあるのだろうと思います。  厚生省といたしましては、そういう問題につきまして、新しい人類の経験でございますので、大変難しい問題でございますけれども、お話のございましたガイドライン的なものといいますか、いろいろな事実が積み重なっておりますので、何らかのルールが必要ではないかというお考えもよく理解できるところでございます。産婦人科学会におきましては、そうした観点から、体外受精移植に関する見解を作成されておられます。また、厚生省といたしましては、生命と倫理に関する懇談会を設けまして御検討いただいておるところでありますけれども、そういう各界の御意見を伺いながら適切に対処してまいりたいと考えるわけでございます。
  25. 佐藤國雄

    佐藤(國)説明員 福島大学の問題につきましては、大学から私ども報告を聴取しております。  この体外受精につきましては、臨床研究に先立ちまして、昭和五十七年三月から五十八年一月の間に、大学の附属病院、それから徳島県内の三病院の協力を得まして、成熟卵の体外受精並びに未成熟卵の体外培養あるいは体外受精の研究を行ってきておるところでございます。  医学部附属病院におきます症例の多くにつきましては、患者の同意を得て採取したという報告を受けておるわけでございますが、先生指摘のとわり、生命の誕生に係る体外受精につきましては、受精以前の卵子等の取り扱いにつきましても、倫理面からやはり慎重を期すべきであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。御提案の調査団の派遣につきましては、文部省といたしましては、徳島大学から事実関係の報告を受けておるところでもございますし、今後も必要に応じて緊密な連絡をとって指導助言に努めてまいりたい、こういうように考えておりまして、調査団の派遣を考えてはおりません。
  26. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 これは大変重大な問題でございまして、今後もよろしく検討をお願いしたい、こう思うわけでございます。東京と箱根で三月に行われます世界の賢人会議、ここでの話なんかも、よく論議を見きわめた上で賢明な対処をお願いしたいと思います。  きょうは、本題はこれでございませんので、先に進みます。  はり、きゅう、マッサージに対する医療保険の取り扱いについてお伺いしたいと思いますが、なぜ医師の同意書が必要なんですか。この根拠を示してください。
  27. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、はり、きゅうにつきましては、現在、療養費払いということで保険の給付は一応ずる建前にしておりますし、現にやっておるわけでございますが、今先生指摘のように、その際になぜ医師の同意を必要とするか、こういうことにつきましては、現在の医事法制の体系の問題が絡んでおるというように思っておるわけでございまして、現在の医事法制におきましては・診断をし、治療方針を決定するというのは医行為とされておりまして、その医行為というのは医師でなければならぬ、その医師というのは、今の医事法制からいいますと、西洋医学を学んだ医師と、こういう建前になっておるわけでございまして、やはりその医師の同意を得て療術をするというこの建前は崩せないのではないかということで、私ども、療養費払いを認めるに際しまして医師の同意を必要とする、こういうことにしておるわけでございます。
  28. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 西洋医学といわゆる東洋医学、この問題になるわけでございますけれども、何かそこには東洋医学に対する偏見のようなものが残ってはいないか、こういう感じがするわけでございます。  私の手元に明治二十八年の第八回帝国議会の議事録がございます。ちょっと読み上げてみたいと思います。「実二今日東洋医ヲ興スト云フノハ時勢二後レテ居ルノデ、恰モ太陽ガ上ツチ明ルクナッテ来タ所二持ッテ来テ、薄暗イ行灯ヲ点ケルノト同ジコトデアル、又此医術ナルモノハ病二対スルノ武器デアル、然ルニ東洋医術ハ弓矢ノ如キモノデアル、日進医術ハ鉄砲ノ如キモノデアル、強敵タル所ノ――吾々同胞ガ襲撃サレル所ノ強敵二向ツチ、弓矢ヲ以テ防グト云フノハ実二怪シカラヌノデアル」こういうふうな論議が帝国議会で行われているわけでございます。  また、これに先立ちます明治七年文部省通達によります医制第五十三条を読みますと、「鐵治、灸治ヲ業トスル者ハ、内外科医ノ差図ヲ受ルニアラサレハ、施術スヘカラス、若シ、秘カニ真術ヲ行ヒ、或ハ、方薬ヲ与フル者ハ、其業ヲ禁シ、科軽重二応シテ処分アルヘシ、」こういうふうな、いわゆる明治以来の東洋医学に対する偏見というものが、医師の同意書を必要とする現在の厚生行政の中で今も残っておるのではないか、こういうことを私は感じるわけでございます。  こういう点、大変基本的な、厚生行政の根幹にかかわる話でございますから、こういう東洋医学に対する見識がどうなっておるのか、これを厚生大臣にお答えを願いたい、こう思います。
  29. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 確かに御指摘のとおり、明治の改革が行われた際に日本の医学というものが、新しい時代は西洋医学というような考えの伝統が今西の医療制度にかなり強い根をおろしていることは否定できないと思います。これがそれぞれ今日の制度や医療政策になっておるわけであります。しかし、また一方、私も実は中国に行って、はり麻酔のすばらしさをこの目で確かめてきたこともありますが、また、私は農村の育ちでありますので、子供のころから薬草に親しんで、それが健康を守ってきたこともみずからの体験を通じて承知しておりますし、やはり生命の神秘というような中で、今日の東洋の医学も人間の幸せ、健康を守るためには弾力的に取り上げられるべきである。そのことが、保険給付のことも医師の同意ということが前提でありますけれども、はり、きゅう等が取り入れられておるということになっておると思いますが、これからも西洋医学と東洋医学、これはいろいろな難しい法制上の整合性とかありますが、検討をしてまいりたいと思います。
  30. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 ただいま中国の話が出ましたけれども、私も行ってまいりました。この目で見てまいったわけでございますけれども、相当に進んでおるし、一つの学問として体系化されておる、こういうように感じるわけでございます。  この問題につきましては、昭和五十二年四月二十六日、衆議院内閣委員会におきまして我が党の市川雄一議員も触れておりまして、当時、医師の偏見を改めるという意味からも、中国に対して厚生省から調査団を派遣したらどうか、こういうような提案をしたわけでございますが、そのときの議事録を見ますと、答弁は、中国より資料を手に入れて検討する、こういうようなお答えではなかったかと記憶しております。その後の経過はどうなっておりますか。これは調査しましたか。
  31. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 西洋医学と東洋医学の関係でございますが、ただいま大臣からお答えのあったとおりでございますけれども、今お話しの件に関しましては、例えばいろいろなルートで中国と連絡をとっております。ことしじゅうに発足いたします旧市友好病院におきましても、中国側、日本側もそうでありますが、中西合作ということを大変大きな柱にしておるわけでございます。政府といたしましても、国立病院でも東洋医学の研究をやっておりますし、また厚生科学研究費におきましても研究をやっておりますが、また昭和五十五年度からは、五十八年度にかけまして科学技術振興調整費におきまして鍼灸につきましては経穴の効果機序を中心に、また漢方療法につきましては証に関する研究を中心に研究を進めておりまして、およそ三億円の研究費を使っておるところであります。五十九年度におきましても引き続き研究を進めてまいる、こういうことにいたしております。
  32. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 やはり百聞は一見にしかずということでございまして、単に資料を集めてきてやるというのでなくて、やはり現地に参りまして、どうなっておるのか徹底的に調査していただきたいと思うわけでございますが、厚生大臣どうですか。
  33. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今医務局長から答弁しましたように、今までも研究を一生懸命やっておりますが、今後も研究を続けてまいる所存でございます。
  34. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 研究を一生懸命やるのはよくわかるのですけれども、やはり厚生省として何らかの形で現地に明確な調査団を派遣されまして、その成果を発表されるなり検討する材料にされる、こういった明確な御答弁をお願いしたいわけでございます。
  35. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今お話し申し上げましたように、これから東西の医学知識あるいは医療研究、これがお互いの研究、お互いの交流によって、よりすばらしい人間の健康を守るためのものができ上がっていけば、これは大変望ましいことでありますから、これからも交流を続けてまいりたいと思います。
  36. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 今少々私、歴史的な問題あるいは中国との問題を申し上げましたけれども、日本の厚生省におきまして今なお東洋医学を独立した医学として認めておらぬ、この根本的な原因は一体どこにあるんでしょう、お伺いしたいと思います。
  37. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これも大変難しい問題ですが、先ほど私が申し上げました、また先生も申されましたように、これは明治の近代化にも、古い漢方医学より新しく入ってきた近代医学といいましょうか、西洋医学といいますか、これがこれからの人間の医学にとって大事であるという方向で日本は今日までずっと進んできたわけでありますから、また今医師も当然そういうことでできておるわけでありますし、やはり客観的な一つの科学的な評価とか基準、そういうものが助成等でやる場合は前提になるわけですが、そういう意味では西洋医学が科学的な、客観的な評価がしやすいし、東洋医学は非常に神秘的なものがありまして、先ほどお話ししました中国のはり麻酔にしましても、我々非常に驚嘆したんですが、恐らく先生も同じだったと思うのですが、それがどういう科学的な根拠を持っているかということになると、なかなか我々素人にわかっていただけるような説明はいただけなかったのではないかと思うのです。学者の場合もそういう点でいろいろ検討課題になっておるので、そういうことがなかなか東洋医学が、確かに長い歴史の中で人間の健康に果たしてきた役割の大きさを認められながらも、科学的、客観的なデータに乏しいとか、いろいろな事情があると思います。
  38. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 科学的、客観的な裏づけ、メカニズムの解明ですね、これができましたら、これは東洋医学としてはお認めになる、こういうことですか。
  39. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ちょっと政府委員から答弁させます。
  40. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに、今先生おっしゃいましたように、現在の東洋医学というのが西洋医学とは違った医療技術体系をなしていることは事実だろうと思うのであります。ただ、最近のように慢性病とか老人病というような、西洋医学でもなかなか解決の難しいような疾病構造の変化がある。それに対して東洋医学というようなものがその重要な治療手段として注目をされてきておるわけでありますが、なかなかそのメカニズムというものが明確でない。そこで、明確になったらどうするか、こういうことでございますが、私どもは、このはり、きゅう等に関する研究でその結論が出れば、やはりその時点で当然考えるべき問題だ、こういうように考えます。
  41. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 今、科学技術庁で研究をしております。先ほどちょっと話が出ましたが、「証、経穴の科学的実証及び生薬資源の確保に関するシンポジウム」という研究でございます。これは、私も中間報告のレポートをいただいているわけでございますが、この研究はまさに東洋医学を西洋医学の手法でもって立証しようという研究でございます。  これは今後も続くわけでございましょうけれども、もしこうした研究が行われまして東洋医学も西洋医学的手法によって立証された、こういうことになりましたら、今もお話がございましたけれども、これはどうしても東洋医学も独立した医学として認めざるを得ない。こうなりますと、最初の話に返りますけれども、医師の同意書を必要としなくても、独立した治療法として確立された医学であるから、これは保険給付も適用される、こういうふうに考えてよろしいですか。
  42. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私は、科学技術庁における研究の結論がどう出るのか、よくわかりません。研究の結果が、医師の同意を必要としないでもいいような本当に独立した医療体系だ、こういうような結論が出るならば、それは先生のおっしゃるとおりではないかと思います。その結論の出方次第でやはり考えてみなければならぬ問題だと思っております。
  43. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 将来の問題でございますから、この程度にしておきます。  地方自治体におきましてはただいまいろいろな工夫をいたしまして、一定条件をつけまして、はり、きゅうを国保の対象にするとか、努力をしておるところでございます。例えば愛媛県の今治市あるいは東京の杉並区、千葉県市川市、千葉県の船橋市、四日市市、岐阜、長野、千葉県の成田、いろいろな例がございますが、地方財政事情も大変厳しいわけでございますね。そういう中でなおかつ、国民の期待が大きいものですから、こういうふうに先駆的な努力をしておる。こういうことにつきまして、厚生省としてはどういう評価をされますか。
  44. 吉村仁

    ○吉村政府委員 ただいま先生指摘のように、各地方公共団体でいろいろな形で療術の行為を取り上げて実施をしておることは事実であります。ただ、保険の立場で法律的に申しますなうば、療養の給付としてやらないで、健康づくりなり疾病予防なり、そういうような保健施設活動の体系でやっておるのが多いようでございます。あるいは福祉事業の体系でやるとか、そういうような保険給付とは別の体系でやっておるわけでございますが、この問題についての一つの解決の方法であろうかと私どもは一応の評価はしております。  ただ、いろいろな財政状況の問題等もございますので、療養の給付の方を主体に置くか、そういう保健活動の方に財源を回していくかというのは、個々の市町村による選択の問題、こういうことになろうかと思います。私ども、決してこういう活動が悪いというような気持ちは持っておりません。
  45. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 国民の側から申し上げますと、国よりも地方公共団体の方が懸命な努力をしておるように映るわけでございますね。これは私は、ぜひともよろしく御努力のほどをお願いしたいわけでございます。  時間がなくなりましたので、もうそろそろ結論の方に参りますけれども、ただいま私の手元に、いわゆる西洋医学では治らなかったけれども東洋医学で治ったという体験談、これが各地から寄せられております。徳島県板野郡藍住町の松永憲造さん初め全国各地から、治療院並びに患者の皆様から寄せられております。これは大変貴重なデータでございまして、西洋医学では治らなかった難病がはり、きゅうで治ったという方も多いわけでございまして、ぜひともこういった問題を今後も周知していただきたいと思うわけでございます。  また、ただいま西洋医学のいわゆる乱診乱療、それから検査づけ、薬づけ、こういった弊害が言われておる折でもございますし、このはり、きゅうは薬を使いません。したがいまして、医療費の削減といった観点から申し上げても、ぜひもう一回見直さなければならないことではないかと思うわけでございます。どうか一日も早く、医師の同意書がなくても医療保険の給付が受けられますように格段の御努力をお願いしたいと思うわけでございます。  最後に、もう一点だけお願いしたいと思います。  ハンセン氏病の患者さん、この方々の中には目の見えない方が多くいらっしゃいます。この方々に使えるいわゆる音声時計、音の出る、声の出る時計でございますが、これをぜひとも一人一人の患者さんに給付していただけるようにという陳情が参っておりますが、これに対する御見解、いかがでございましょうか。
  46. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 御指摘のございましたように、全入所患者数七千九百九十人のうち目の悪い方が千七百二十三人、一二・九%おられます。厚生省といたしましては、従来から、この目の悪い方々の対策を重点的に進めてきたところでございますけれども、お話のございました音声時計につきましては、昭和五十八年度から三カ年計画をもちまして全部の方に行き渡るように措置しておるところでございます。
  47. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 そうしますと、六十年までには全員に行き渡る、こういうことでよろしいですか。
  48. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 そのような計画で進めております。
  49. 遠藤和良

    ○遠藤分科員 大変にありがとうございました。よろしくお願いします。  以上で私の質問を終わります。
  50. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて遠藤和良君の質問は終了いたしました。  次に、上西和郎君。
  51. 上西和郎

    上西分科員 私は、当選したばかりのまだ新人でございまして、こういう場が初めてでありますで、質問する内容あるいは言葉遣い等についてやや不用意な点が出てくるかもしれません。その点についてはそれぞれの皆さんにお許しをいただきまして、また、新人なりに親切にお答えをいたにきたいと思うのであります。  まず最初お尋ねをしたいのは、国民年金の保険科の膨大な値上げであります。来月から六千二百一十円になる。とりわけ夫婦で入っている方、さりには、全国で約百万近い、厚生省所管ではございませんが、農業者年金加入者等にとっては大変低負担になるのであります。今現に国民皆年金を厚生省が主張、強くアピールされながら、現実の問題として保険料の納付が不可能だ、こういう家庭が全国に続発している現状から見て、この保険科値上げを、少なくともここ当分抑え込むような御計画はおありや否や、こういうことのまず御見解を承りたいと思います。
  52. 古賀章介

    ○古賀政府委員 御承知のように、国民年金の場合は、その保険料は厚生年金のように報酬の一定比率ということではございませんで、定額制となっておるわけでございます。そこで急激な引き上げとならないよう、徐々に毎年度引き上げていくという方針をとっておるわけでございます。具体的には、これも先生御承知のように、原則として五年ごとに行われます財政再計算の際、次回の再計算までの間の各年度ごとの保険料額を法律で決めることにいたしておるわけでございます。また、この間に年金給付についての物価スライドが行われました場合には、一年おくれで保険料額にもスライドをするということも、これまた法律上決められておることでございます。  今後の高齢化社会を展望いたしますときに、険料額の段階的な引き上げというものはお願いせざるを得ないということでございますが、それが急激なものであったり過重なものとならないようにすることが大事である、肝要なことであるというふうに考えております。  今回の改正案におきましては、厚生年金と同じように将来の給付水準につきまして見直しを行って、毎年度の保険料水準の引き上げ幅をこれまでより緩和をいたしまして、昭和五十九年度価格で月額三百円の引き上げ幅といたしまして、急激な引き上げとならないようできる限りの配慮をしたということでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
  53. 上西和郎

    上西分科員 次に、給付問題について三点ほど次々お尋ねしたいのであります。第一点は、六十歳から認められております繰り上げ減額支給制度で、正直申し上げて、現在の国家公務員共済その他の共済年金の繰り上げ減額率に比べて著しく高い割合で引かれている。六十歳でもらうと四二%もカットをされる。これが同じ日本政府の公的年金かというのが素朴な疑問として、三千万近い国民年金加入者から出ていると思うのですが、これらについて改善緩和されるお考えはないのでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  54. 古賀章介

    ○古賀政府委員 国民年金の老齢年金の支給開始年齢は六十五歳となっておりますけれども、その繰り上げ支給につきましては、早期に繰り上げ支給を開始いたしましても、平均的に見て、本来の支給開始年齢から受給する場合と比べて損得が生じないように、その減額率を定めておるところでございます。  端的に申しますれば、六十五歳から受けた場合の元利合計と六十歳から受けた場合の元利合計、それが等しくなるように減額率を定めておるということでございます。  共済年金につきましても、本来の支給開始年齢よりも五歳前までの年齢から減額退職年金を受けることができるわけでございますが、昭和五十個年改正におきまして、従来減額率が一律でありましたのが改められまして、その考え方は国民年金と同様のものとなっております。すなわち、これも先生御承知のように、共済年金につきましては一年につき四%という減額率でございましたけれども、それが五年前につきましては三五%、一年前では八・五%ということで五段階に分けまして、国民年金と同様の考え方に立った減額率をすでに設定しておるということでございます。この場合、共済年金につきましては本来の支給開始年齢が六十歳でありますために、国民年金に比べて、平均的に見て生涯にわたる受給期間が長いという理由によりまして、本来の支給開始年齢より早く受給することによる年金数理上の影響は少ないということから、国民年金の繰り上げ減額率よりも低いものとなっておるわけでございます。五歳早いがゆえに影響が少ない、こういうことでございます。このような両制度の減額率の違いにつきまして、ぜひとも御理解を賜りたいと存じます。
  55. 上西和郎

    上西分科員 それでは、そういった御説明を納得するわけじゃございませんが、それなりにあるということで受けとめておきます。  次に、少し具体的な質問をしたいのでございます。それは国民年金の障害年金の給付についてでありまして、これは新進気鋭、大変張り切っていらっしゃる大臣から直接見解を承りたいのであります。  それは人工肛門、人工膀胱、尿路変更術等を受けたときの陣審年金の給付であります。少しく細かく申し上げますと、当然皆さんは御承知のことと思いますが、いわゆる腎臓障害で人工透析を受ける。人工透析を受けたときは厚生年金も国民年金も、第一回の透析を受けて三カ月たてば障害年金給付対象とする、これがもう運用その他で明記され、事実そのようにされております。今度は脳関係。脳溢血、脳梗塞、クモ膜下出血、いろいろございますが、そうした脳関係の病気で倒れたら、逆に厚生年金は一年六カ月たたないと障害年金給付しない、しかし国民年金は六カ月で障害年金を給付している、こういう現実があります。これは厚生省の御配慮で大変加入者は喜んでおることだ、こう思うのであります。  ところが、いま申し上げた人工肛門、人工膀胱の造設並びに尿路変更術等を受けた者については、厚生年金は造設と同時に、術を受けたと同時に障害年金の受給資格を確保できるのでありますが、国民年金の方はすべての障害と同じく一年六カ月経過をした、厳密に言えば少し微妙なところがあるかもしれませんが、少なくとも一年六カ月待つのが常識的になっている。こうした、同じ厚生省社会保険庁が所管をしておる公的年金の障害年金給付が、同一疾病について差別がある、不公平があるということはだれも納得できないと思うのであります。そうした意味合いで、大臣からこの点について明確に見解を承り、ぜひ厚年と同じように、造設と同時に、術を受けたと同時に障害年金給付の対象にしていただきたい。要望を込めてお尋ねします。
  56. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 いまの先生指摘の問題、私も厚生大臣に就任して説明を聞いたとき、同じような疑問を持ってただしたのでありますが、これは国民年金の場合は日常生活能力の制限度合い、いわゆる毎日の日常の生活をしているときの立ち居振る舞い、そういうものを基準にし、厚生年金はいわゆる労働者年金ともいうべき勤労者の年金ということで、職場で労働の意欲の制限度合いというようなことからいまの御指摘のような問題が起こっておるという説明を聞いたのであります。しかし、やはり年金というものは、先ほど先生から御指摘のあった官民格差、また厚生年金と国民年金、そういうものの格差をなくして、同じ条件でみんなが給付を受けるというのが年金本来の目的でありますから、今度私はそういうつもりで年金法の改正を提出しておりまして、これはぜひ先生に御審議を願って通していただいて、このような矛盾をなくするように、制度間の整合性を整えるように努力をしてまいりたいと思います。
  57. 上西和郎

    上西分科員 私は、年金法の改定提案が、その審議は別として、行われた時点で、今から少し申し上げたいこともあるのでありますが、そうしたいわゆる差別というか不公平が積み残しのまま、いわゆる厚年、国年の統合、六十一年四月に一元化ということが提案されているように見えてならないものですから、こうした大事なことを放置され、棚上げされているところに矛盾を感じて、分科会であえて御質問をしているわけです。  確かに大臣がおっしゃるように、厚年は労働者年金だから、労働能力の減殺で障害年金になる。国民年金は日常生活の不自由度ではかられる。それはわかるのです。しかし、人工透析は一緒でございましょう。人工透析と人工肛門、人工膀胱をなぜ不公平な取り扱いをされるのか。私は医者じゃありませんけれども、人工肛門をつけた方杯を私は随分お手伝いしてまいりました。みんなおっしゃるのです。最初はかぶれる、取り外しがきつい、悪いけれども、こほれたりして異臭が発する、もう人の前にいたくもない。とういうみじめなハンディを受けている方々が、なぜ一年六カ月待たなければいけないのか。これは日本政府の怠慢ではないかと私は言いたいのです。そういうことを放置していて一元化をされるから、私はあえて分科会で立って――私よりかわずか一つしかお若うありませんが、当選歴、政治歴が極めて豊富な大臣みずから、こういうことはそれぞれぴしっと、大臣のツルの一声でできることじゃないか。人工肛門を人工透析と同じようにする、それをぜひおっしゃっていただきたい。この法案改正と同時にでは――あの中に正直言って出てきていませんよ。私たちが今いただいている法案のレクチヤーの過程ではそれは入っておりませんから、そのことについては、大臣、あなたの責任ですよ。たばこも結構、原発も結構。人工肛門はあなたの所管だからやってくださいよ。
  58. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今申し上げましたように、そういう幅広い問題、そういうものの中で、これは私も最初に先生と同じような疑問を持ったのでありますから、そういう各般の問題について、やはり国民の皆さんに納得のいただけるような年金制度をつくっていかなければならないということで、今度年金の改革もこの国会に出しておるわけでありますから、当然・基礎年金の導入の際に、今の先生指摘のような問題は、私は大臣として改革するように努力をしてまいりたいと思います。
  59. 上西和郎

    上西分科員 では、法案審議の過程で、並行して、こうした不公平があるならば是正をしていく、こういう大臣の所信であり、見解であると確認してよろしゅうございますね。――ありがとうございます。さすがは昭和一けたの大臣です。心から敬意を表します。  次に、年金の給付の問題で、厚生年金の遺族年金の問題について少しくお尋ねをしたいのであります。  それは、各位御承知のとおり、厚生年金を含めて遺族年金の給付は、現在公的年金すべて、妻と子は即時支給でございますね。ところが、この受給権者が夫であり、両親であり、祖父母でありますと、共済年金、まあ法改正で一応原則六十歳になりますが、現実は運用の幅で五十五歳からですが、要するにその支給開始年齢が五歳下がりますね、現実の問題として。しかもその上、共済年金は、例えば夫なり両親、祖父母がその年齢に満たず――具体的に言いますと、つい先般、陸上自衛隊発足以来最大の不祥事で犠牲になった未成年の若い隊員がおりました。あの場合、両親は当然五十五歳未満ですね。この場合、両親が五十五を超える、こうなりますと、支給停止措置が解けて遺族年金給付開始になる。これは所管は別として、十分御承知と思います。ところが厚生年金の場合は、いわゆる加入者、被保険者が死亡した時点で夫、両親、祖父母が六十歳未満であるならば、永遠に遺族年金が支給されない。この現実について、厚生省社会保険庁当局はどのようにお考えなのか。こういうことが放置されたままで一元化をされるから、くどいようですが、私はあえて本分科会でお尋ねしておきたいと思うのであります。
  60. 古賀章介

    ○古賀政府委員 今回の改正におきましては、遺族年金について、十八歳未満の子を有する、有子の妻でありますとか、夫死亡時に一定以上の年齢に達しております妻に手厚くするなどのいわゆる給付の重点化を図ることを基本方針といたしております。こうした観点から考えますと、妻を亡くした夫の場合、男子の就業率というのは高率であるというふうに考えられますこと、それから、六十歳に到達した男子は自分の老齢年金を受給できるのが一般的であるということなどから、遺族年金の必要性と申しますか必要度というものは、女子に比べて低いと言わざるを得ないのではないかというふうに考えるのでございます。  共済年金との関係について申しますと、受給資格期間が一致していないということ、それから遺族の所得についての基準が異なっておることといった違いがあることについても、あわせて考えなければならないのではないかというふうに考えるわけでございます。このような両制度の仕組みの差異につきましては、今後年金制度の一元化の進行する中で十分協議し、調整をしてまいりたいというふうに考えております。
  61. 上西和郎

    上西分科員 重ねてお尋ねします。  労働省所管の、労働者災害補償保険の遺族年金は、夫、両親、祖父母の場合、五十五歳給付開始でございますね。そうしたことを含めて、厚生省が年金の一元化、将来の三十年先のことを見越してのいろいろなことを御提案なさるならば、少なくともマスコミがよく取り上げる官民格差、私は不公平という表現をとるのでありますが、そうしたことについてもう少しメスを入れる。同じ子供を失って、それが公務員であれば、両親は五十五を過ぎたら遺族年金をもらえる。片一方は、六十以前だったら永遠にもらえない。子を失った悲しみ、妻を失った悲しみ、こうしたことについては一体どのようにお考えなのか。  少なくとも、教育臨調だ、何だかんだとおっしゃる中曽根総理大臣の言動などを見ますと、そうしたところを非常に重視されているように見受けられる点もあります。ですから、すべてをドライに、金銭、経済で割り切れとは言いません。しかし、年金に加入していて資格を持っている者が死亡したときに、なぜそのような不公平が現存しているのか、これにメスを入れないのか、不思議でたまりません。今、審議官のお答えはお答えとしてそれなりに受けとめますが、限られた時間でありますので、こうした矛盾、不公平が積み残されている、このことを改めて大臣も御理解いたださ、先ほどの御見解の中で、やはり是正すべきものは是正し、そうして年金加入者に、よくぞ年金に加入していた、こういう制度にぜひしていただきたい、このように考えます。  あわせまして、今度、国家公務員共済並びに公共企業体等職員組合の遺族年金の給付についてちょっとお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、この二つの組合の遺族年金の給付については、四十八年の年金大改正のときに、従来十年以上だったのが、一年以上は遺族年金給付とか、大改正が行われたことは私も承知しております。  ただ、その時点から五十六年にかけまして、要するに配偶者が受給権者である場合は、端的にいいますと配偶者よりか高額の所得を持っている音あるいは二百四十万以上の年間収入がある者については遺族年金の給付をしない、あるいは配偶者以外の者が受給権者、両親、祖父母、子供ですね、仮にこういうときには、八十万以上の所得があったら支給しないとなっているやに承っておりますが、これはやはり公的年金の大変な後退ではないか。そういうことについて見解をお示しいただきたいと思います。
  62. 坂本導聰

    坂本説明員 今御指摘の点は事実でございます。ただ、先ほど厚生省の古賀審議官からもお話がございましたように、各年金制度、おのおの歴史や経緯を持っております。したがって、そういった違いが現在あるのは、これはもう事実でございます。  翻って、我が国家公務員共済制度におきまして所得制限を設けておりますのは、法律上は主としてその収入によって生活を維持してきた。これは共済年金でございますから、保険料負担をする者ど給付を受ける者のバランスを見ながら設定をしていくという過程で、こういう所得制限になっているわけでございます。しかしながら、先ほどもお話がございましたように、全体の年金について一元化をしていくという過程では、こういった諸制度個々の違いについて、おのおのの検討が行われるものというふうに考えております。
  63. 上西和郎

    上西分科員 それなりの共済課長のお話はわかるのでありますが、少なくとも、今度の国会で大変な物議を醸すであろう児童扶養手当、これは厚生省所管でありますが、児童扶養手当の受給資格は、現在年収三百六十一万以下でしょう。それに大蔵省は目をつけて、やっこらやっこらやるから、厚生大臣も押し切られた形で三百万にしようなんとされているのですが、無拠出の児童扶養手当でさえ三百六十一万で今支給されている。それを二百四十万で切る。  私のところには、初めて当選した後でも、新潟県の三条から手紙が来ているのです。主人が電電公社におりました。亡くなりましたがもらえません。涙ながらの未亡人からの訴えが来ています。しかし、やむを得ぬのですね。今法律はこうなっております、悪いのは中曽根総理大臣ですと私は書いてやりました。それを改定していくことがない限り、公務員の方々も、御自分のことなんだけれども、そこまではおわかりでない方が多いから、こういうところは改めるのは一日も早い方がいいです。ぜひ是正をお願いしたい。  同時に、先ほど審議官からお話があった遺族年金のことですけれども、一言つけ加えるのを忘れておりました。国民年金の寡婦年金は、御承知のように六十歳まで待ってくれるわけですね。そうでございましょう。同じ厚生省所管をし、渡部大臣ががっちり握っている厚生年金、国民年金の間で、国民年金は六十歳まで待って支給を開始する。寡婦年金に限って言えばですよ。厚年の遺族年金は一日たりとも待たない、こういう不公平があることも厳しく指摘をし、御勘案のほどをお願いしておきたいと思います。  次にお尋ねしたいことは、年金の支払い金融機関の問題であります。  昨年の初めから、都道府県の労働金庫まで支払い金融機関に指定をされました。日本全国にある金融機関ほぼすべて公的年金の支払いが受けられるようになりました。これは大変喜ばしいことであり、私たちも大変うれしく思っておるのでありますが、問題は、国民年金に限って言いますと、老齢年金は希望するどの金融機関でも支払いが受けられる。ところが、障害年金、寡婦年金、遺児年金等になりますと、特定の金融機関でなければ支払いが受けられない。これは大変な矛盾でして、たくさん知っている例を挙げますと、お母さん、お父さんが国民年金の老齢年金だ。息子さんが大工、左官等でけがをして障害年金だ。そうすると、所定の日にお父さん、お母さんは最寄りの農協の出張所とか特定郵便局とかでもらえるけれども、その息子さんの障害年金は、市町村の役場に一番近い特定の、日本銀行代理店とかなんとかいろいろあるようで、私よくわかりませんけれども、そうした資格のある金融機関の支店でなければもらえない。そういった現実が、少なくとも僕の選挙区ではたくさんあります。これは明らかに不公平であり、受給者、加入者に対するサービスを著しく欠いていると思いますので、これらは一気に改定をお願いしたい。  あわせて還付金の問題があります。例えば国民年金は年に四回払いですから、部落、町内会でまとめて納めます。ところが、途中で加入者がたまたま民間会社に勤める。そしてそこで二月なら二月で厚年に入る。そうすると、重複して徴収された。四月になってわかって市町村が保険料を返そうとすると、少なくとも社会保険事務所の所在地に限定して言えば、その還付金は社会保険事務所まで受け取りに出頭するようになっているのではありませんか。わずかなお金をわざわざバス質、電車賃、汽車賃をかけてもらいに行かなければならぬという現実がある。これらをどのように是正されるのか、お尋ねしたいと思います。
  64. 朝本信明

    ○朝本政府委員 まず国民年金の老齢年金を除く障害年金、寡婦年金の支払い金融機関の問題でございますが、年金給付の支払いを受けることができる金融機関は、都市銀行、地方銀行、信託銀行などのほか、お話のございました農業協同組合につきましても年金の支払いを受けることができるようになっておるわけでございます。ただし、農業協同組合一万五千四百四十二カ所のうち九〇%程度でできるというわけでございまして、他の協同組合につきましては、それぞれの協同組合側の御都合で、支払いはできることになっておりますけれども、まだそういうことが実施されていないというようなことで、先生が御指摘のような事例が生じているということは確かであろうというふうに存じております。  それから、そのほかの支払い機関につきましても、これを順次拡大ができるように、関係機関とも協議をいたしまして、なお一層の拡大ということを考えてまいりたいと存じております。  それから、最後にお尋ねのございました、保険料を二重に納めてしまったという場合の還付につきまして、バス代を払って社会保険事務所まで取りに行かせるのか、こういう問題でございますが、市町村を窓口といたしまして保険料をお預かりする、それがたまたま会社へお勤めになったために二重払いになってしまったという場合につきましては、既に国庫の中に入っておりますので、何とか被保険者の利便も考えてお返しをしたいということで、お話のございました社会保険事務所、それから御本人の口座等へ振り込みをさせていただくというような方法も講じております。しかしながら、郵便局は、行けば返してもらえるというような仕掛けになっておりませんので、そこは御指摘のとおりでございます。できるだけ国庫金という性格の範囲内で最大限の努力をさせていただいているつもりでございます。
  65. 上西和郎

    上西分科員 余り時間がありませんが、私田舎におりまして、借用組合その他で支払い機関としてほかの年金を受けられぬと言うわけですね。やはりすべての金融機関ですべての年金が受給できる、こういうことをぜひ前向きにお願いをしておきたい。  還付金につきましては、他の市町村はいいのですが、社会保険事務所があるところだけは直接払いになっているから、どっちも困っているわけです。金額は小さいし、社保も困っている、受給者一も一々そんなのもらいに行けるかというわけです。だから、これも振り込みが金融機関へできるように、こういうお願いをあわせてしておきます。  最後に、これは通告も何もしてないことなので、大臣にストレートにお願いをしておきます。  今、身体障害者方々で自動車の運転免許証を持っている方が大量におられます。その中で聾唖の方々から私たちのところに寄せられる声は、パトカー、救急車が来てもわからない。そして、ドンドン窓をたたいて怒られて、何だろうかと思うと、お巡りさん、消防士から、なぜのけないかとやられて大変困っている。全国で聾唖の方々の運転免許証所有者は結構おられると思う。鹿児島県でも一けたはおります。ですから、そうした方々の車両に「若葉マーク」のような識別できるものを、これは警察庁の所管かもしれませんが、やはりさっそうたる新進気鋭の渡部大臣あたりから提起をされて、この聾唖者の方々に利便を図っていただきたい。これは要望であります。  以上申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  66. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて上西和郎君の質疑は終了いたしました。  次に、横手文雄君。
  67. 横手文雄

    横手分科員 私は、在職老齢年金とその人の賃金の問題について矛盾点がございますので、この問題について御質問を申し上げ、その改正を御要望申し上げる次第であります。  実は、私のところにお手紙をいただきました。このような手紙であります。   私は定年退職をし、厚生年金(老齢在職)を受給しながら働いている六十二歳の男性です。会社での厚生年金加入期間三十八年、おかげさまで基本年金月額約十九万円年金を受給していましたが、現在は別の会社に守衛として再就職しましたので、基本年金支給率八割、十五万二千円受給しています。なお、月給は九万円であります。   今彼に四月から三、四千円昇給があると仮定すると、年金の支給率が八割から五割に変更になり、現在の三万八千円が九万五千円減額になります。公務員の共済年金では、幾ら高給でも減額はゼロだそうで、余りにも官民格差が大きいと思います。お願いします。せめて支給率をもう少し変更してほしいと思います。私たちはまだまだ健康です。働きたいのです。隠居したくはありません。働いていれば、規則正しい生活が送られ、健康が維持されるのです。六十歳から六十五歳の人で、減額のために勤めをやめる人が多くいます。一度やめれば、もう高齢者では再就職は望めません。どうか支給率の変更を関係官庁に働きかけてください。お力添えをお願いいたします。  こんなお手紙をいただいているわけでございます。冒頭申し上げましたように、かなりの矛盾点があると思いますが、まず大臣、いかがでございますか。
  68. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ちょっと局長から……。
  69. 古賀章介

    ○古賀政府委員 これは、先生御承知のように、老齢年金は、高齢になり、所得が得られなくなった場合の所得の補てんを目的としておるわけであります。このため、六十五歳に達するまでは、原則として退職を要件としておりますが、報酬の低い方については例外的に年金を一部支給しておるわけであります。これが在職老齢年金制度の趣旨でございますが、この場合、報酬の低い者には年金支給を厚くし、報酬の高い者にはこれを低減するということにしておるわけであります。  具体的には、標準報酬を区分いたしまして、区分ごとに定められている支給率、すなわち八割、五割、二割という現行三段階でございますが、その支給率をその者の年金額に乗じまして支給年金額を算出しておるわけでございます。したがいまして、対象者の標準報酬が上昇して支給率が変更するような場合には、どうしてもある程度の、年金と賃金を合わせた総受取額の低下が生ずることはやむを得ない仕組みになっております。支給率が八割から五割に変更される場合の減額幅と申しますのは、その者の年金額の太さきにもよりますけれども、年金が高い者についてはその減額幅がある程度大きくなるのは事実でございます。先生の御引用になりました例というのは、その年金額がやや高い方に属する、こういう例であろうかと思います。  このように、支給割合の変更点において年金と賃金を合わせた総受取額が下がることなど、在職老齢年金制度の問題につきましては、社会保険審議会でも、昨年七月の意見書を取りまとめますに当たりまして、現行制度にかわるべき各種の案も含めまして、さまざまな角度から基本的な検討がなされたのでございます。大体五つの方法を考えていろいろ検討したわけでございますけれども、これら各種の案につきましてはいずれも一長一短がございまして、なお検討すべき問題があるということで、今後の検討課題とされておるというのが現状でございます。
  70. 横手文雄

    横手分科員 一定の収入があれば年金を減額をしていく、この制度を前提とすれば、その一定の区切りのところでは、その人については何か矛盾が生ずるというのはある程度仕方のないことだろうと私は思うのです。ただ、現行のこれを見ましたら、年金と働いておるその賃金の合算額はその人の収入でございますから、一番高いのは、今のモデル年金十七万三千百円をとりまして、九万五千円直前の人が合算額で二十三万六千円。これを頂点にいたしまして、賃金が上がれば上がるほど合算額は減ってくるという実態ですね。これはどういうぐあいにお考えでございますか。
  71. 古賀章介

    ○古賀政府委員 今先生指摘になりましたように、支給率が下がれば総受取額が下がっていくということ、いわゆる右下がりになるという現象でございますけれども、この点につきましてはぜひとも是正をしなければならないということを考えております。支給限度額の引き上げを図ることによりまして、こうした不合理は今回の改正で是正をしてまいりたいと考えております。
  72. 横手文雄

    横手分科員 本国会にこれらの問題、年金の改正法案が出されておるわけでございますけれども、この問題について今御説明がございましたが、このように右下がりになってくる、こういう現象については、今回具体的な内容をもって改正をすることになっているわけでございますね。その中身はどういうことになっておりますか。今、現実のこの姿を見ますと、まさに何か妙なことになっておるわけですわ。この問題について具体的にひとつ御説明をいただきたい。
  73. 古賀章介

    ○古賀政府委員 今回の改正案におきましては、支給割合の変更となる標準報酬でありますとか支給限度となる標準報酬につきましては、政令に委任して定めるということになっております。したがいまして、今回の改正案では政令事項ということになるわけでございますけれども、一応私どもが考えておりますのは、その政令の中身でございますけれども、八割から五割に下がるところは据え置き、それから五割から二割になる。ところは三等級ほど引き上げる、それから二割からゼロになるところは、これは五等級ほど引き上げるということでございます。したがいまして、限度額は十五万から二十万になるわけでございますが、このようにして右下がりを是正し、総受取額が下がらないように、右に上がっていくというようにいたしたいと考えております。
  74. 横手文雄

    横手分科員 そうしますと、今ここにございますような、つまり賃金が高ければ高いほど年金との受取合算額は少なくなりますという矛盾点は、今度の改正で解決ができる、こういうぐあいに理解していいわけですね。
  75. 古賀章介

    ○古賀政府委員 そのとおりでございます。
  76. 横手文雄

    横手分科員 ただ、この下がり方がちょっと大き過ぎる。先ほども申し上げましたように、どこかの時点で矛盾をはらんでいるというのは、これはやむを得ないごとだろうと思いますけれども、ちょっと大き過ぎるのじゃないか。だから、このお手紙をいただいた方もその点について訴えておられるのでございまして、私もいろいろと調べてみました。つまり、在職老齢年金をもらっておられる皆さん方、あるいは事業主等々にも当たってまいりましたけれども、やはりみんなこの矛盾点を強く訴えておられるのであります。よく調べてみますと、あなたはあと二千円上がる、そうするとこれの支給率が下がってきます、したがいまして、どうしますか、上げますか、上げませんか、こういうようなことで高齢者の賃金が抑え込まれているという事実があるわけでございます。  大臣、ちょっと聞いてください。このお手紙の人のでは中の数字がちょっと違うような点がございますから、現在の厚生省が出しておられるモデル年金のやつでいきます。九万五千円直前の人、仮に九万四千円としましょう。そうしますと、この人は二十三万五千円の合算額をもらっておられるのであります。この春仮に二千円給料が上がったとします。そうしますとこの人は十九万円ということになりますね。実に五万円下がるのでございますよ。六十歳を超えた人たちにとって五万円というのは、家のローンに匹敵するわけです。そうすると、この人にしてみれば二千円給料が上がった、あらうれしやということでおったけれども、実はその合算額は五万円下がったということになると、これはやりきれない。家のローンの今までの支払いがどこかへ飛んでいってしまう。これは一体全体どういうことだということなんです。  したがって私は、今御答弁の中にありましたように、右下がり現象は何とか解消しなければならないということでございますけれども、一挙に五万円の収入減になるということは、これはやはり激変緩和措置をとらなければならない、もうその限度に来ておる、こういうぐあいに思うわけです。そうしますと、八割から五割、五割から二割という刻みがちょっと粗っぽ過ぎる、これをもう少し縮めてやればこんな矛盾点は起こらない、このように考えておりますけれども、いかがでございますか。
  77. 古賀章介

    ○古賀政府委員 もう一段階設けて激変緩和をすべきではないかという御提案であろうと思いますけれども、従来四段階制でありましたものを、事務処理の観点から昭和五十年の改正で簡素化して、現在の三段階制に整理したといういきさつがございます。また、細分化するということに。なりますと、例えば五割から二割の間にもう一段階設けるのかどうかといったことも考えなければならないわけでございます。――さらに、そういった一つとか二つの段階を加えるということによって、支給率の変更点において年金と賃金を合わせた総受取額が低下するという問題は解決をしないということもございます。先生は、いやそこまでは言っておらない、少なくとも現状よりは前進するように、落ち込み方を少なくするように緩和すべきではないかという御提案だと思いますけれども、総受取額それ自体が低下するという問題は、それによってもまだなお解決しないということがあるわけでございます。  そこで、先ほども申し上げましたように、社会保険審議会におきましても、五通りほどの案をもとにいろいろ検討したわけでございますけれども、ついに結論を得るに至らなかったというような経緯がございます。在職老齢年金制度のあり方を基本的にどうするかということについては、今後の課題といたしまして、業務処理体制をも含めて検討し続けていかなければならないのではないか。御指摘の点も含めまして、さらに検討させていただきたい。この現状をもってよしとするということでは必ずしもないわけでございます。
  78. 横手文雄

    横手分科員 いろいろと検討はなされているようでございますけれども、現実にその職場の中で二千円給料が上がるために五万円の減収になるということは、六十歳を過ぎた人たちにしてみれば耐えられないことですよ。今おっしゃるように、どこに持ってきても、刻みを小さくしても、そういう矛盾点はあるということを言われます。私は、こういった制度を続ける以上はこれはあると言うのです。しかし、五万円一遍に下がる、二千円給料が上がったら手取り総額が五万円下がるというのは、これは余りにも激変過ぎます。事務手続上大変繁雑になってくるから仕方のないことだ、こういうようなことではとても納得できるようなものではない、こう思うのでございますけれども、いかがでございましょう。
  79. 古賀章介

    ○古賀政府委員 事務処理体制だけではございませんで、事務処理体制ということも考えざるを得ないということでございます。  それでやはり問題というのは、受給者の現在の報酬と年金額とが必ずしもリンクしていないという現状におきまして、どのようにしたら公平な年金額を設定できるかといってとだろうと思います。報酬の多寡に応じた公平な年金の支給率を定め、細かに計算をしていくということは理想的ではありますけれども、仕組みとしてなかなか難しいということでございます。  それから、やはり事務処理体制ということ、これも考慮する一つの要素になるということでございますので、今回の改正におきましては、やむを得ないことでありますけれども部分的手直しにとどめざるを得なかった、こういう状況でございます。しかしながら、先生指摘の点は確かにございますので、今後の検討課題として、これからも十分私ども意を注いでまいりたいというふうに考えております。
  80. 横手文雄

    横手分科員 この人のお手紙の中にもございますように、今日まで公務員であった人とそうでなかった民間のいわゆる厚生年金の受給者との間に、同じような会社に就職をしていると、年金の受け取り方に大変な違いがあります、こういうようなことが訴えられておるわけでございますが、これをいわゆる官民格差、こう言うのでございましょう。厚生省は、六十一年をめどに、これら年金の統合の方向ということを出しておられますけれども、これらの矛盾についてはどうされるつもりでございますか。
  81. 古賀章介

    ○古賀政府委員 去る二月二十四日におきまして「公的年金制度の改革について」という閣議決定がなされております。これも先生御承知と思いますけれども昭和五十九年におきましては、厚生省所管の厚年、国年、船の三制度について、給付水準の適正化でありますとか基礎年金の導入といったような改正を行うということでございます。昭和六十年においては、共済年金についてもこの改革の趣旨に沿った制度改正を行う、それでこれらは六十一年度から実施するということにいたしておるわけでございます。  先生のおっしゃいました共済年金につきましては在宅がございませんし、また共済から厚生年金保険の適用事業所に再就職したときには給付制限がないといったような、厚年との制度間格差がございます。こういうものにつきましては、六十年以降の改正におきまして、各種制度間格差の解消というものを行っていくという方針が既に決められておるわけでございます。いずれにしても、それらの具体的な内容は六十年以降の検討というごとになるわけでございます。
  82. 横手文雄

    横手分科員 これから検討がなされるんでございましょうけれども、こういったことを放置しておくということは、現実に私どもがまだ頭の中で考えているうちは、いろいろ説明を聞けば納得できるようなこともあるわけでございますけれども、ただそれを肌で感じたとき、現実に隣の人と、私は二千円上がって五万円減ります、私はそのままや、二千円上げてもらった方がいいのだ、こういうようなことが現実に当たってくると、やり場のないような気持ちに追い込まれてしまう。そうすると、そこにやはり政治に対する不信感といったものも生まれてくる、こういうことが考えられるわけでございまして、この人の気持ちも痛いようにわかるわけであります。  今、できるだけ盾のないように、矛盾解消のために検討しますということですけれども、ただ矛盾のないようにと言われるだけでは、これは一体全体どうなるんだろう。ならば、厚生年金がいわゆる共済年金の方にばっとひっついていくんであろうか、あるいは共済年金が厚生年金の方にひっついてくるのか、あるいは真ん中まで両方歩んでくるのか、いろいろなことが考えられると思いますけれども、その大きな方向としてはどういうことになりますか。
  83. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 横手先生は年金問題に大変深く突っ込んだ御勉強をなされて、私も先ほどから傾聴をいたしておったわけでありますけれども、今回私どもがまさに世紀の改革案とも言うべき年金の改革案を出しておる思想は、今先生が幾たびかおっしゃられましたように、国民の間にある、今の共済年金と国民年金との間の、世上言うところの官民格差というものをなくして、国民ひとしくこの年金については給付と負担の公平を期していくという高い理想を掲げておるわけであります。ただ、御理解いただかなければならないのは、今日、御案内のように六・三人の現役が一人の老人を支えておるわけでありますけれども、これが二十年を経ずして四人の現役が一人の老人を支えなければならない。さらには、十五年たてば、三人の現役が一人の老人を支えなければならない。そういう二十一世紀の高齢化時代にも、年金制度の基盤というものを揺るぎないものにしていくための今日からの改正でありますから、これは全体としては御辛抱を願わなければならない点もございます。やはり今のままの制度の方が有利な条件の方が悪くなっていくというようなことで、御辛抱を願わなければなりませんが、それはあくまで高齢化社会に備えての揺るぎなき基盤というもの、今六人で支えているものが三人になるということで、御理解をいただかなければならないかと思いますが、制度そのものとしては、これは国民全部の皆さん方にかりそめにも不公平感を抱かせないようなものが我々の理念とするところであります。したがって、共済年金に国民年金が行くわけでもありませんし、共済年金が国民年金に下がってくるわけでもありませんし、いわばまさに二十一世紀の将来を目指しての新国民年金ができ上がるのだ、こういう御理解をちょうだいしたいと思います。
  84. 横手文雄

    横手分科員 もう時間も余りなくなってしまいましたけれども、私は、こういった年金というのは、国民ひとしく働いてきた、そしてそれが民であれ官であれ、それぞれの持ち場で働けるうちは一生懸命働いてきた、年金も一生懸命掛けてきた。だから、掛けた年数と金額によって差があるのは仕方のないことだろうし、むしろ当然のことだろうと思いますけれども制度間の格差というのは、今大臣がおっしゃいましたように、これからの日本の国の高齢化社会へ向けて私たちも真剣に考えていかなければならないことであろうし、あるいは辛抱してもらわなければならないときには、やはり政治は勇気を持って国民の皆さん方にその実情も訴えていかなければならないであろう、このことは承知をいたしております。  しかし、よく言われるように、足らざるを憂うるのではない、等しからざるを憂うるということは本当にたまらないことなのでございますから、これらの問題について、やはり国民の皆さん方の御納得をいただきながら進めるという、まさに民社党の主張でございます知性と勇気、これを持って進んでいかなければならないであろうし、その方向を期待を申し上げておきたいと思います。それでは最後になりますけれども、今くどくど申し上げてまいりましたが、つまりこの老齢在職年金を受給しておられる皆さん方にとって、この段差というものは余りにも大き過ぎます。だから、ことしの春、もう目前に迫っておりますが、賃金改定が行われますが、二千円ぐらいのことだったらもうやめておいてください。それでなければ、私の収入は五万円減るのでございます……。五万円といったら大きいですよ。六十歳過ぎた人が、来月からあなたの給料袋の中から五万円ずつ引きますということになってくれば、これはやはり大きな金額です。こういうことで、そのことが高齢者の皆さん方の賃金の抑え込みになっております。あるいは、そんなくらいならもう私は勤めはやめますということで、せっかく働いておりながら、この仕組みの矛盾のために職場を放棄しなければならない、こういった事実があることを十分に承知をしていただきたいと思います。私は、この人に御返事を申し上げなければなりません。厚生年金の今回の改正の中では、あなたの御要望に沿うわけにはまいりません。しかし、今、賃金が高ければ高いほど、先ほど言われた右下がりの状態が解消できるような原案が出されております。しかし、この段差が大き過ぎて、あなたは来月から五万円給料が下がるけれども、これはどうにもなりませんという返事を書かざるを得ないということなんでしょうか。そこらについて、この人にどういう形でこの問題については解消いたします、政府もこの矛盾点について承知をいたしております、だからこれは変えていかなければならないことだということを言明された、しばらくお待ちください、こういう返事をすればいいのでございましょうか。最後に御答弁をお願いいたします。
  85. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、非清に真剣な検討が審議会においても行われたわけでございます。その結果、今回は右下がりを食いとめるという部分的な手直しにとどまったということでございますが、より実態に合った、合理的でしかも現実的に十分対応可能な方法が考えられればそれにこしたことはないということで、私どもは誠心誠意これからも検討を続けてまいりたい、こういうことでございます。
  86. 横手文雄

    横手分科員 時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきますが、どうかこの人に、あなたのお手紙はかくのごとくにして花咲いてまいりますという返事ができるようにひとつ御検討をお願い申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  87. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて横手文雄君の質疑は終了いたしました。次に、関晴正君。
  88. 関晴正

    ○関分科員 きょうは、勇名をはせていたのか、変名をはせていたのかわかりませんけれども、大分名前を天下にとどろかせておられました厚生大臣に御質問申し上げます。  今、幼保一元化論というものが相当に出ておる。私は、この幼保二元化論というものは現場にどんな影響を与えているだろうかということを見るときに、非常に誤解と不安が現場にあるのじゃないだろうか。幼稚園に保育所が吸収されるのかしらという不安、あるいはまた、幼稚園が保育所に吸収されることになるのかしらという不安。そういうことで、幼保一元化論というのはどんなものなんだろうかということについての疑問。私は、この幼保二九化論というのは何かということを私なりに考えてみる場合に、幼児教育において、今日、二つの行政機関でやっている。おのおの特色があって、それぞれプラス点を発展させていけば、それなりに成果があるであろう。そのことがいずれも行われないままに一元化論というものが出ているんじゃないだろうかということについての、私なりの心配も一つあるわけです。  率直に言わせてもらうなら、幼保一元化論というものは、幼児教育における一つの学校制度として文部省が見ておる教育機関としての幼稚園と、保育に欠ける御家庭の子供さんを守るんだという福祉立場に立って、そうして子供さんの教育を親にかわって見てあげるんだという論、前者を教育的な論と見、後者を福祉的な論と見れば、それぞれに任務があり、それを担当されているんだ、私はこう見るのです。ですから、両者において欠けているものをここで満たすようにしてやるのが幼保一元論ではないだろうか、こう思うので、この際、幼保一元論というものについての基本的な物の考え方なり見方というものを新大臣にお伺いしたい、こう思うわけです。
  89. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先生指摘のとおり、幼稚園と保育所ではおのおのその目的、機能が変わっております。言うまでもなく、保育所は家庭における足らざる保育のお手伝いをするという目的でありますから、したがって、今幼稚園は二百二十日間の開所であるのに対して、保育所は三百日開所しておりますし、時間に至っては幼稚園は四時間です。これに対して保育所は八時間で、なお八時間でも足りないからもっと十二時間に延ばせというような強い要望があるものですから、幼稚園は保育所の機能を果たせないと私は思います。     〔小杉主査代理退席、橋本(龍)主査代理着席〕  ただ、幼保一元化というのがすぐ議論になるのは、最近は保育所の中で幼稚園的な機能を充実させることによって発揮するようになったものですから、何かあれは一つにしたらどうだというような議論が出てくるのです。したがって、無理に何でもかんでも一つにしろというなら、これは幼保一元化でなくて保育一元化、こういうことになるわけです。しかし、これもまた、今の幼稚園の状態あるいは財政的なそれぞれの状態というものを考えれば、簡単にできる問題でありません。御承知のように幼保一元化の問題は一度混乱しましたけれども、もうそういう事情がわかりましてからは、これはやはりすぐ一元化は無理だろうということ。ただ、やはり国民の皆さんから見ると、何だ、幼稚園に行っても保育所に行っても同じようなことをやっているんじゃないか、片方は厚生省、片方は文部省で縄張り争いかというような素朴な疑問等もありますので、そういう疑問に答えて、決して幼稚園と保育所が縄張り争いをやってむだな状態になっているというようなことのないように、今後文部省当局と密接に連絡をとりながら、幼稚園は幼稚園としての独自性、保育所は保育所の独自性を守りながら、お互いの適正配置によりむだのないようにしていくことが最善の策かと考えております。
  90. 関晴正

    ○関分科員 文部省の方、緊急にお願いしておいたのですが、おいでになっておられますか。それでは大変済みませんけれども、幼稚園は教育機能としてとにかく学校教育法に基づいて設置されている機関ではあるが、この機能が保育所の機能よりも見劣りがしてきたのじゃないだろうか、それは教育の時間にしても、それから行っている内容においても。  というのは、私どもの青森県内を見ますときに、子供が自動車に乗せられて幼稚園に運ばれる時間の方が非常に多い。園内で遊ぶ時間よりも子供が自動車に揺られる時間が多いのです。園にとどまっている時間よりも自動車に乗っている時間の方が多いのですね。ですから、ちっとも教育の機能を果たしていない幼稚園が出てきた。ところが、幼稚園は自動車があるからというので、うちの前から人さらいのようにさらっていくものだから、保育所の隣の子供までそちらに行ってしまうということが出てくるわけです。なるほど一元化論というのが出てくるのはこの辺にもあるんだなと私は思うのですね。横取りしているような格好ですね。私はやはり、この教育機能を果たすのに、幼稚園がちゃんと監督されなければならないと思う。何でもいいから子供の数を満たせばいいというので、四キロも五キロも六キロも向こうから、山の奥からでも子供さんをおいでおいでと言ってチャイムを鳴らしながら呼ぶわけですよ。子供集めもゴミ集めと似ているところがある。これは大変な格好だ。そういう意味において、幼稚園というものと保育所というものの機能が、保育所の方が集団教育においても多く時間をかけられておる。しかも近くに置いて守られておる。この辺についてやはり考えなければならないものもあるのではないか。  そういう点では、幼保一元化論というものも生かして、保育所と幼稚園がおのおの機能を発揮するように、おのおのが機能を喪失するような一元化論じゃなくて、機能を発揮するような一元化論を具体化するのが仕事ではないだろうか、こうも思いますので、文部省の方の幼保一元化論というものはどんなふうに考えておられるのか、ひとつお願いしたいと思います。
  91. 大谷利治

    ○大谷説明員 幼稚園と保育所の関係、大変難しい問題でありまして、地域によりまして大変様相を異にいたしております。例えば先生のところでございますと、幼稚園と保育所の在園、在所者は同じような人数の割合になっているのではないかと思いますが、地域によりますと保育所の方が圧倒的に多い、幼稚園にはほんの二割程度行っているというところ、あるいは逆にほとんどが幼稚園であって保育所が一割とか、あるいは一割にも満たないというようなところもあるわけでございます。  そういうような実態から見て、先生のお話にもございましたように、子供の立場、親の立場になれば、そこのところをもっとうまい方法がないか。広い意味での一元化――元化という中身にはそれぞれいろいろな意味があります。ですから、一元化を論じますときにはいつも、いわゆるというような言葉がつきませんと議論が大変混乱をするというようなことがございます。先生がおっしゃいますように、子供のためにいい保育なりあるいは教育の機関といいましょうか、あり方はどうあるべきかということかと思いますが、それを早急に一元化することは大変困難である。厚生、文部両大臣の私的諮問機関での御検討の結果も、簡単にはできないという結論であったわけでございますが、本当にいいあり方というものを何とか探り出せないか、そういう広い意味での一元化の問題ということであれば、今御議論になっております広い視野からの新しい教育問題について検討する機関というところでまた検討していただくとすれば、それは大変検討に値する課題ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。一にも二にも、この問題はやはり子供の立場、親の立場に立って、いいあり方を全体として探り出していきたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  92. 関晴正

    ○関分科員 まだまだこの論はきちんとやりたいと思うのですが、きょうはその論を展開するのが私の主目的でもありませんから。ただ、幼保一元化論というのは当然具体化しなければならない問題として今時代が求めてきた、私はこう理解していいのじゃないだろうかと思いますので、ひとつその点については十分にじっくりと取り組んで当たっていただきたい。それで、きょうは特に保育行政の問題について、やがて来る幼保一元化時代をも目指す意味からいけば、その体制を整えておくことが必要だろうと思いますので、質問していきたいと思います。  まず第一に、今ある保育所は、とにかく保育に欠ける子供を預かるんだ、こうなっておるのですが、保育所の中でがらあき状態もまた出てきております。欠員が出てきている。こういうような欠員が出てきている場合は、保育に欠ける子供でなくても、とにかく子供は親にさえ預けておればはいといった昔の観念の時代はもう終わったと思うのです。親だけで子供を育てておればいいような時代には今なっておりません。やはり子供の集団生活、それが人格形成において、子供の資質向上においてどんなに役立っているかわからないものなんです。そういう意味では、欠員が生じた生じたと言って心配していることよりも、もしも求めるならば、空きがあって希望するならば、保育に欠ける欠けないにかかわらず利用させる、そういう道を開いてもよさそうだと思うのですが、この点について大臣、いかに考えますか。
  93. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 この制度そのものは、保育に欠ける家庭の子供さんを国がお預かりするための政策として進んでいるわけですが、今先生おっしゃられたような実態、私は福島県ですが、私の方なんかにもいろいろありますが、これは父兄との話し合いによってかなり弾力的に活用されておると私は承知しております。
  94. 関晴正

    ○関分科員 そういう点で、私は、そういうことに道を開いてあげれば親も喜ぶし、保育園にもまた貢献できる。問題は、負担のところに若干問題が出てくるのだろうと思います。その場合の負担の持ち方、バランスを、国の方の負担よりもそちらの方の負担を幾らか比重を変えてやる。入れたいんだが、何せ保育に欠けるという証明書がないものだから入れられないでおるというところから、隠れてこっそり見てもらおうかというものよりも、堂々と、幾らか負担して入れてもらっているんですよ、入れさせているんですよという柔軟性のある措置を今してあげてもいいのではないか、これが新大臣の一つの勇気ある行政というごとになるのじゃないだろうか、こう私は思うのです。  今、うまくやっているようなところもあるというような、是認しているような格好の答えもあったのですが、そういうことが保育に欠ける子供をそっちのけにして入れるのはだめですが、余裕があって、五人でも六人でも採ってあげますよという場合はどうぞと、こうしてあげる道を開くようにできないものでしょうか。重ねてひとつ……。
  95. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは今申しましたように、先生からもおっしゃったように、これが行き過ぎて、保育に欠ける家庭の子供が入れないというようなことですとまた新しい問題ができできますものですから、これはあくまでも保育に欠ける家庭の子供たちが最優先すべきことは当然でありますが、しかし我々の地方のように、先生のところもそうでしょうが、がらがら空いておって、そしてそこに規則のために入れないでおるというようなことは矛盾でありますから、これは今までもかなり弾力的な活用がされていると思いますが、より一層、先生の今のお話を承って、弾力的に活用できるようにこれから検討してまいりたいと思います。  これについては局長も異論ないな。――大丈夫ということで、今のとおりでございます。
  96. 関晴正

    ○関分科員 大変ありがとうございます。  何せ言いにくい話で、こそこそという実情は相当あるわけなんで、やはり法的にも行政的にも裏打ちがあってやらないと、やる方もまたいけませんので、ただいまの大臣の意というものをひとつ今後の行政指導の中に盛って、それぞれ通達等が発せられるように希望しておきたいと思います。  次は、保育園の現状を見ますときに、今日、六十一名定数以上の保育園においては事務職員、これもささやかなる事務職員の金額でして、事務職員を配置していると胸を張って言えるような金額ではないと思うのです。そういう意味においては、事務職員を本当に配置できるような金に持っていかなければなるまいと私は思うのですが、あわせて、六十名定数のところには何らの措置もないわけです。現在措置されているというのは全部の保育所の数の七割方までいっているわけですが、あとの三割方が全然事務職員というものの配置についての配慮がない。これは計画的にいけばすでにとうの昔に実行できたはずなんですが、これをそのままに放置しているのが現状です。  ですから、少なくとも学校の例をとれば、大きい学校も小さい学校も、学校の事務というものについては、それぞれ所管庁に出す書類というものに変わりないのです。大きな保育園も小さな保育園も、市役所に書類を出すのには同じように変わりない。ですから、保育園の園長さんは、子供さんを見るよりも役所へ届ける紙の方を見る時間の方が多過ぎる。そういう事務の仕事を保育園の園長さんがして、子供を見るよりも紙を見る方が先になっちゃっている。子供の見回りも保母さんの見回りも園長さんがなかなかできない。給料をあげる仕事、役所へ届け出る仕事、変動があった場合に走っていかなければならない仕事、目が回るように保育園の園長さんが忙しい目に遭っている。何とか事務職員が欲しいなあ、こう言っています。残り三割です。今はもう七割方に配置されています。  しかし、先ほど申し上げたように、事務職員のためにあげている給料というのは、とそもとても、パートの今度税金の対象になるほどの金額の半分もいってないのですから、ですからそっちの金額もふやさなければならないが、また小さい保育園といえども、六十名のところでも四十五名のところでも、子供を見ないで紙ばかり見て机に向かってはかりいるようでは、保育園の園長さんの仕事が効果を上げてこない。こういう点について、ひとつことしのうちに配置するといっても、もう今度の予算の中にはどこを探してもありませんね。まあなければ仕方がない、ことしはあきらめましょう。でも大臣、来年度予算をつくるまでは大臣をやっているでしょうから、それまでにはひとつこれを間に合わせて、残り三割まできちんとやる、こう言えないでしょうか。
  97. 吉原健二

    ○吉原政府委員 保育所の職員につきましては、保母さんを中心にこれまで私ども増員に努力をしてきたということは先生にも御理解いただけると思いますけれども、今お話しの事務職員につきましては、五十三年から、規模の大きい保育所から順次非常勤の形で、ささやかではありますけれども事務職員の設置費を予算に計上してきたわけでございます。  確かに保育所の規模が大きかろうと小さかろうと事務的な仕事があるのは同じじゃないかというのはそのとおりでございますけれども、今私どもが保育所の予算につきまして最重点を入れておりますのは、事務職員を規模の小さいところまで広げるよりも、むしろ保母さん全体の勤務条件改善、特に勤務時間の短縮ということで、五十六年から四十八時間体制を四十四時間体制に持っていくための努力を鋭意続けているわけでございます。五十六年から始めまして、現在二百四十分のうち五十九年度で百六十五分まで勤務時間の短縮という計画が進んでおりますので、私どもとしてはこの計画をまず実現させる、来年度全部実現できればいいと思うのですが、あと二年は最低限がかるような気がいたしますが、これが実現できました段階におきまして、さらに保育所の事務職員なりの予算、どの点をどういうふうに充実していくか、その時点でまた先生の御意見も十分踏まえながら検討させていただきたいと思います。
  98. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 文部省は帰していいですか。
  99. 関晴正

    ○関分科員 文部省はいいです。  二百四十分の労働時間、言うなれば公務員並み、四十八時間から四十四時間にすれば四時間の時間があるから、四、六、二十四の二百四十分を何とか縮めよう。これも計画立てて何年になりました、五年目ぐらいになるでしょう。初めは、二百四十分縮めるのに八十分ずつ縮めようというので、三年でやる予定でやったのでしょう。あと、今のままでいっても七十五分ぐらい残りますね。百六十五分とおっしゃいましたから計算すれば七十五分残る。七十五分をまた三十分と三十五分と二年もかけて直すなんということでは、少し現場の保母さんに御迷惑だと思いませんか。そうして、そのために事務職員の配置を抑えておりますと言ってみたところで、そんなのは大した理由にならないと私は思うのです。一緒にやっていいことじゃないだろうか。ということは、既に七割方の保育園において、六十一名のところは事務職員の配置をさせているわけですよ。六十名のところは、今来るか今来るかと思って首を長くして待っているわけですよ、大臣。たった一名の違いなんです。まあ一名の違いたって金勘定すると大変な金になるから、だまされちゃいけないと思って考えておるのでしょうけれども、だますだまされないじゃなくて、せめて刻みを、今は六十名の次は九十名、九十名の次は百二十名という三十名刻みでやってきた、六十名の次は三十名刻みでいけば下が三十名になりますが、ここは四十五名というのと三十名というのとで十五名刻みになっています。ですから、六十名のところにやるためには来年度六十名、その次は四十五名、こう段階的にやればいい。労働時間の方も一度にやってもらえるならそれにこしたことはないのだけれども、やはり労働の負担を軽くするという意味からいって、そっちもそっち、こっちの方もこっちの方と、二つぐらいは一緒にやっていいんじゃないだろうか、こう私は思うのです。  そのことともう一つ、今、百二十名の定数のところで子供さんが欠けてきて百一名というふうになった場合にどうなるかというと、九十名の次が百二十名のために百二十名のところの措置費と同じ単価で、百一名に下がっても単価が変わらないわけです。そうすると、その前の九十名のところの保育所よりも二百八十万円も百二十名定数のところが損失になっているわけです。これは刻みの問題です。ですから、六十名から九十名、九十名から百二十名という三十名刻みをせめてその半分の十五名刻みにして扱ってくれれば、こんな大きな落差の損害を受けなくても済むんじゃないかというのが現場の声です。ですから、百二十名のところが今度百一名に減ったから、では十九名も減ったから九十名の扱いといってもこれはできません。ですから、今申し上げたように百二十名の扱いでは大変な損害になるので、その中間をとって、三十名刻みを十五名刻みにしておいて、九十名の十五名ですから百五名、百五名扱いにして百名の保育園についての措置費を面倒を見てあげれば、こういうことは相当に緩和されるであろう。同じように、九十名のところに六十二、三名しかいない場合、これも六十名の定数のところよりも三百万も損する。そういう状態が出てきておりますので、これについて、刻みの問題を、三十名刻みのところを十五名刻みにして扱ってあげてかばってあげる。現場はこのしとで大変に苦悩しております。ことし百一名になってしまった、二百八十万の損だ、関さん、どうしてくれますか、こう言うわけですから、まあ新しい厚生大臣がきっと考えてくれるでしょう、こう申し上げてはきましたけれども、ひとつこの場で、そういうものについても苦労はかけない、現場に損害は与えない、やがて一元化論で対等、平等の合併が行われるときにうまくいけるようにしてあげます。こういうことでのお考えをひとつ示していただけないでしょうか。
  100. 吉原健二

    ○吉原政府委員 現在保育単価の区分が六十人以上につきましては三十人単位になっている、これはおっしゃるとおりでございまして、なぜ三十人単位にしているかといいますと、やはり保育所の経費の、何といいますか大宗を占めるのが保母さんの人件費でございますので、保母一人当たりの受け持ち児童数が、四歳以上の子供の場合には三十人に一人、三十人ずつ子供がふえれば保母さんを一人ふやさなければいかぬという実態を踏まえまして、六十人の次は九十人、九十人の次は百二十人というふうに三十人刻みで保育単価を決めているわけでございます。  この保育単価の決め方は、おっしゃるように三十人では大き過ぎるので十五人刻みにしたらどうだ、あるいはさらにもっと十人にしたらどうだ、いろいろ御意見があるのは承知しておりますし、刻みを小さくすればするほど実態に沿う面があるということは理解をできますけれども、一方、私ども、今の保育単価の決め方が非常に複雑過ぎる、これは保育所の定員だけで決めているわけじゃございませんで、保育所がどの地域にあるかという、国家公務員の給与の調整手当の支給地域に準じて四地域に分けておりますし、それから専任の所長さんがいるかどうかによってまた分けておりますし、それから子供の年齢が何歳以上の子供であるか、四歳以上かどうか、三歳未満児かどうかというような、子供の年齢に応じて今刻みを大変小さくしておりまして、今でも全部で五百七十六の保育単価が決められている。市町村の事務当局、事務処理の面からいいますと、刻みが少し細かくなり過ぎているというような声もあるわけでございまして、そういった声と、今先生が御指摘されましたような問題、希望、要望とをどういうふうに調和さしていくかということが私どもとしては一番難しい点でございます。  そういったことで、せっかくの御指摘でございますけれども、今すぐ御希望のように改善できるということをこの場では申し上げることができないわけでございますけれども、今後ともそういった御意見も十分踏まえまして、この保育単価のあり方につきましては検討はさしていただきたいと思います。
  101. 関晴正

    ○関分科員 刻みの問題を直すということの意味は、今のような実害を救済するためにはそうせざるを得ないのじゃないだろうかという考えがあるわけです。そうせぬでも、下がった場合に少なくとも二百八十万も損をさせるようなこと、あるいは定数の少ないところと比べて三百万も来る金が不足になるなんということについては、これはさせない、そういう現実的な損害や影響を与えないという点についての配慮はしていただきたいと私は思います。これがまず一つ。  あともう一つ最後になりましたけれども、三十名の刻みでやるということの意味においては、四、五歳児が三十名につき保母さんの数が一名だからだ、こう言っていました。大体この保母さんの数だって、三十名につき一名だとか、三歳児では二十名につき一名だとか、そうして三歳未満児については六名につき一名だと言うけれども、この保母の定数だって変えなければならないでしょう。  ここは大臣に御答弁願いたいところですよ。今、幼児教育は非常に大事だ、こう言われています。子供の非行の多いのも幼児教育からいろいろ来る欠陥が多過ぎる、こう言っている。そういう幼児教育の完備をひとつさせるためにも、保母の定数を抜本的にここで是正することが大きな仕事だ。三十名の四、五歳児は二十名につき一名、それから二十名につき一名の三歳児についての保母の定数は十名につき一名、少なくとも十名ずつ上げていただきたい、未満児の場合の六名は半分の三名につき一名、そこまで保護育成の教育ということが整っていくようにさせなければならない、これが一番の仕事だ、私はこう思うのです。そういう点で、これは大臣でなければ答弁できない話ですからね。大臣は理想に向かって行政をしこうと思っておられるわけですから、これについてひとつ前進ある措置をとるように願うし、またお答えもいただければとこう思います。
  102. 吉原健二

    ○吉原政府委員 大臣がお答えする前に私から事務的なことでお答えをさしていただきますが、保母の定数の改善改定につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、私どもとしては最大限努力をしてきているわけでございますが、現在、四歳以上については三十人に一人、三歳児に  ついては二十人に一人、三歳未満児については六人に一人、さらに三歳未満児につきましては、階層の低い方については乳児の特別基準というものをつくって、三人に一人というところまで改善をされてきているわけでございます。  おっしゃいますように、少ない子供の数についてできるだけ多くの保母さんを置けるようにするということは、考え方としては大変結構な考え方かと思いますけれども、実際問題として、これ以上保母さんの増員を図るということは、保育所は公立施設がまだ多うございますし、私立の保育所につきましても公費で負担している金額が多いということもございますので、人件費をふやすことになるあるいは保母の増員、公務員の増員につながるということがございますので、なかなかそういったことは進めにくい、進めることが困難だ、むしろ抑えなくてはいかぬというような要請も強いということも御理解をいただきたいと思います。そういった、状況の中でどうやって本当にいい保育をできるようにするかは、さらにいろいろ考えさせていただきたいと思います。
  103. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 この内閣の至上命令が行政改革の推進ということでもあり、また御承知のように大変厳しい財政の中でありますが、そういう前提の中で先生の趣旨ができるだけ生かされるように十分検討してまいりたいと思います。
  104. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 これにて関晴正君の質疑は終了いたしました。  次に、福岡康夫君。
  105. 福岡康夫

    福岡分科員 私、昭和五十九年度の厚生省関係の予算案を見させていただきましたが、それによりますと、被爆者調査を行うための準備費として百六十六万円計上されておりますが、これは被爆者の方々の念願である原子爆弾被爆者等援護法実現への第一歩として考えてよろしいのか。まず、最初に事務当局の御見解をお聞きした後、厚生大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  106. 大池眞澄

    ○大池政府委員 五十九年度予算に計上いたそうしております被爆者実態調査準備費につきましては、昭和六十年度に実施する予定の実態調査を有効かつ円滑に実施するために、調査項目でございますとか調査方法など、具体的な内容につきまして専門家の方々に御検討いただく、こういうことを目的といたしまして計上しているところでございます。したがいまして、ただいま先生のお話にございましたような援護法の問題とは別のねらいの調査であるということでございます。
  107. 福岡康夫

    福岡分科員 それであれば、何の目的のためにこれを計上されたのか、事務当局の方の御見解をお示し願いたいと思います。
  108. 大池眞澄

    ○大池政府委員 被爆者の方々実態調査につきましては、御承知のとおり昭和四十年、昭和五十年と十年ごとにこれまで調査を実施してきた経緯がございます。被爆者の方々の高齢化は引き続き進んでおるわけでございますし、それに伴いましてのいろいろな生活の上での、あるいは健康の面での変化もあろうかと存ずるわけでございます。そういった被爆者の方々の最近の生活の状況とか健康の状況とかを、十年目ということでございますので、効果的に把握させていただいて今後の被爆者対策を一層充実させてまいりたい、こういうねらいの調査を予定しているところでございます。
  109. 福岡康夫

    福岡分科員 そうすれば、ただいま実施されている原爆関係の二法のままで、政府としては今後も推進していくつもりでございますか。
  110. 大池眞澄

    ○大池政府委員 基本的に私どもはそういう考え方をとっておるところでございます。
  111. 福岡康夫

    福岡分科員 厚生大臣、いかがでございましょうか。私は広島の被害者の方から、渡部厚生大臣は話がわかる人で、一応百六十六万円計上されておるのでこれ自体何らかの一歩前進があるのではないか、というようにお考えの方でいろいろ私も質問を浴びておりますので、これに対して、厚生大臣の今後のこの原子爆弾被爆者等援護法案推進の上の御見解、今までの原子爆弾被爆者対策についての御見解等をお伺いしまして、お示し願えれば幸せだと思います。
  112. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先生御案内のように、原爆被害というものが、他の戦争被害と異なって放射性の被爆によって後々まで人間の健康に災いを残しておる、そういう特殊性に着目して御承知の現行の原爆二法ができておるわけでありますから、この現行法を活用することによって、もとより原爆の被害、国が行った戦争によるむごたらしい被害、これは今日なお大きな問題として、今後より一層この対策は強化していかなければなりませんが、これは現行二法を最大限に活用することによって、内容を充実して対策を強化していきたいという考えでございます。
  113. 福岡康夫

    福岡分科員 今、大臣の御答弁の中で、内容を充実強化していくというお言葉があったわけでございますが、これが一歩前進することもあり得るという含みがあると御理解させていただいて結構でございましょうか。
  114. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今回の予算でも、皆様方の御要望にこたえまして、財政の大変厳しいところでしたけれども対象となる町村の拡大等いろいろなことを今やっておるわけでありますが、そういう意味で、現行法の中でこれはできるだけその対策を充実してまいりたい、こういうことでございます。
  115. 福岡康夫

    福岡分科員 大臣といたしましては、現行の原爆関係の二法で被爆者対策は十分賄い得ると御判断されておりますかどうか。
  116. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 現在のところ、そのように考えております。
  117. 福岡康夫

    福岡分科員 では、厚生大臣に御見解をお聞きしたいのでございますが、私は、昭和五十八年三月十七日に、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合から共同提案されました原子爆弾被爆者等援護法は、大部分の国民のコンセンサスを得た最上のものだと思っておりますけれども、厚生大臣の御見解はいかがでございましょうか。
  118. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ただいまお話のございました、かつて御提案をいただいております援護法についてでございますけれども、援護法で述べておられますのは、被爆者の遺族の方々に対する国家補償というような御提案でございますが、私どもの基本的な立場といたしましては、先ほど大臣も申し述べましたように、人類未曾有の原子爆弾という、一般の戦争被害とは非常に異なる特別の犠牲というようなことに着目いたしましての広い意味での国家補償、こういう立場に立ちまして、現行の原爆二法で運用しておるわけでございます。こういう原爆二法の中で、御提案の援護法の大部分の問題は現在実質的に対応させていただいているわけでございますが、遺族の方々への拡充という点につきましては、ただいま申し上げましたような戦争による一般の被災者とは異なる特別の犠牲という点に着目いたしますとその対象外であろうか、かように考えているところでございます。
  119. 福岡康夫

    福岡分科員 実は、私が考えるのに、ただいま事務当局の方で、国家補償の面からこれを考えたという形で現行原爆二法は十分だとおっしゃっておりますが、国家補償の立場から考えればこそ、昨年五十八年に共同提案した原子爆弾被爆者等援護法案が提案され、また御審議を政府側にお願いしたわけだと思うのでございますが、その点の御見解にちょっと違いがあると思うのでございますが、これに対して事務当局としましては、今までの原爆関連二法で国家補償の面が十分充足し得るものと御判断されておるのですかどうですか。その点の御見解をひとつお示し願いたいと思うのです。
  120. 大池眞澄

    ○大池政府委員 先ほども御答弁申し上げたわけでございますが、広い意味におきますところの国家補償的見地に立ってという考え方でございまして、実はこの件につきまして私どももいろいろと専門家の方々の御意見を承ったわけでございます。昭和五十五年に原爆被爆者対策基本問題懇談会の御意見もちょうだいいたしまして、そこにも指摘されておるわけでございますが、広い意味の国家補償の見地に立ってということでございまして、国の不法行為責任というものを問うものではない、あくまでも、先ほども申し述べましたように、特別の犠牲に着目した結果責任として、国家補償的見地に立って現行法の二法で運用させていただいておる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  121. 福岡康夫

    福岡分科員 私としましては、この原子爆弾被害者援護法を制定するに当たっては、先ほどから事務当局の御答弁では広い意味とかそういう発言をされておりましたが、広義とか狭義ではなく、国家補償のそういう範囲は別として、その基本姿勢として国家補償の精神をもって進めていかねばならないと思っておるわけでございますが、厚生大臣の御見解はいかがでございましょうか。     〔橋本(龍)主査代理退席、小杉主査代理     着席〕
  122. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは大変難しい問題だと思いますが、先ほど私が申し上げましたように、原子爆弾というものの特異性、これは一発で多くの人の生命を奪ったと同時に、生存者にも長い間まで健康上の放射線による非常な被害を与えておるわけであります。したがって、そういう特殊性というものを考慮して現行の原爆二法ができて、その特殊的な性格にかんがみて国として国家的に、これは国が戦争をやったからこういうことが起こったのでありますから、できるだけのことをしておるわけであります。  ただ、命を失われた者に対する国家補償、こういうことになれば、原爆で命を失った方もまたその他の戦災によって命を失った方も、やはりとうとい命を国が起こした戦争ということによって失っておるわけでありますから、そういう全体的な横並びの問題等も考慮をしていかなければならないし、現在のところは私は現行二法によってでき得る限りの施策を講じてまいりたい、こう考えておるわけであります。
  123. 福岡康夫

    福岡分科員 原子爆弾の被爆者は、我々は一般のとは違うんだ、二世、三世に影響を及ぼしておるという形でやはり別の国家補償を受けるべきだ、こういうお考えをお持ちの方が非常に多くございます。また陳情も多数に上っております。今後とも厚生省当局にお願いしたいのは、国家補償の立場をもってもう少しこの原子爆弾の被爆者の援護対策について積極的に推進していくことをお願い申し上げます。  次に、医療保険制度についてお尋ねしたいのでございますが、本国会に提出を予定されています健康保険法等の一部を改正する法律案によりますと、昭和五十九、六十年度については本人負担分は医療費の一割、昭和六十一年度からは二割負担となるとのことであります。現在、国民健康保険の世帯主と家族及び健康保険の被扶養者の通院の場合については医療費の三割負担となっておりますが、医療保険制度の整合性を図る上から早急に、例えば六十一年度から二割負担に底上げする必要があると思いますが、厚生大臣の御見解はいかがでございますか。
  124. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私はたびたび申し上げておるのでありますが、やはり年金とか医療保険制度は国民が等しく、負担と給付を平等にすべきが最も望ましい姿であるわけでありますが、ただ保険政策については健康保険制度というものの長い歴史と沿革があって、今御指摘のように全額給付の方、あるいは国保のように七割の方、あるいは八割の方、いろいろ給付条件が不公平になっておるわけでありますけれども、それならば一挙に全部八割とか八割五分とかそれに統一できるかというと、これは今までのそれぞれの既存の皆さん方の権益の保護というのもありまして、これはまた制度制度なりにそこでいろいろ生きている人がおるわけですから、一遍にこれを一つにするということはなかなか困難であります。  今回は御案内のように退職者医療制度というものをつくりまして、現役を退いて収入が減って一番医療にかからなければならない人については、国保の低い給付水準というような矛盾をなくして、この人たちの給付水準は高めるように努力したわけでありますが、私は将来は国保もあるいは家族もやはり同じような給付条件になる姿が望ましいと思っておりますけれども、今すぐ何年からどうするということはちょっと控えさせていただきたいと思います。
  125. 福岡康夫

    福岡分科員 健康保険法等の一部を改正する法律案によりますと、昭和六十一年度から健康保険の本人負担分が医療費の二割になるとのことでありますが、この二割負担ラインはリミット、すなわち限度であると考えていいものかどうか。まず事務当局の方の御見解をお聞きしたいと思います。
  126. 吉村仁

    ○吉村政府委員 御指摘のように、六十一年度から医療保険の給付率は八割にする、こういう法案を提出しておるわけでございますが、私ども八割というものを考えましたのは、一つは、今先生指摘のように、国保については七割、被用者保険は家族についても外来は七割、本人は十割というようなことで、給付率の上においていろいろアンバランスがある。これはやはり全国民の医療保障という観点から考えますと統一していく必要があるのではないか、これが一つでございます。  それから、今仮に全保険をガラガラ計算をしてみますと、仮に現時点で全体を統一するとすれば、大体今の保険料と国庫負担の基準で八割給付ぐらいということになるわけでございます。そこで私どもは、今後の医療保険制度を考える場合に、余り保険料の負担率というものを上げないで、しかも給付として公平で、かつ、非常に低い給付ではないラインというものを考えますと、やはり八割程度の給付率というのが今後の医療保険の給付率としてよろしいのではないか、こういう観点から一応八割程度というものを将来の医療保険の給付率の目標に置いた。その第一弾としまして、被用者保険の本人について六十一年度から八割、ただ一挙に八割というのは非常に急激な変化でございますので、五十九年度と六十年度につきましてはさしあたり九割で実施をする、こういうように決定をしておるわけでございます。
  127. 福岡康夫

    福岡分科員 事務当局の方の御答弁はわかりましたが、厚生大臣としての御見解はいかがでございましょうか。
  128. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今保険局長が答弁したとおりでございます。
  129. 福岡康夫

    福岡分科員 事務当局の御意見どおりだということでございますか。
  130. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 はい。
  131. 福岡康夫

    福岡分科員 では、厚生省の方に総括的な面でお聞きしたいのですが、現在の医療機関に対する厚生省当局の監査機能の全般的な問題について、ちょっと御説明願いたいと思うわけでございます。
  132. 吉村仁

    ○吉村政府委員 現在、私ども、保険医療機関等に対しまして指導監査をする体制をとっておりまして、中央におきましては医療指導監査管理官を初め医療指導管理官というようなものを置いて、全国的な監査に当たらせております。また、地方の保険課におきましては医療に関する指導医療官というものを配置し、また医療事務指導官あるいは医療専門員というものを置きまして、指導監査をやってわるわけでございます。  それだけでいいかということになりますと、なかなか人を得るのが難しいとか、あるいは現在の医学医術の水準というのは非常に日進月歩でございますので、新しい知識も導入をしなければならぬというような測点から、今度顧問医師団というものを設けまして、今私が申し上げました現行の指導監査組織に顧問医師団を加えた形で今後の指導監査の充実を図っていきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  133. 福岡康夫

    福岡分科員 今厚生省の事務当局の方の御答弁で顧問医師制度という問題が出ましたが、その問題についてお尋ねしたいと思うのでございます。  確かに濃厚診療の監視役として二十人の顧問医師を本年七月から本省に配置されるそうでございますが、これについてお尋ねいたします。  現在八人の医療指導監査官が本省に常勤されているとのことでありますが、この医療指導監査官と顧問医師との関係はどのようになるのか、具体的に御説明をお願いしたいと思うわけでございます。
  134. 吉村仁

    ○吉村政府委員 まず顧問医師団を設けます趣旨について申し上げますと、現在私ども指導監査をやるに当たりまして一番難しい問題は、医療上のその診療が適当か不適当か、こういう判断が一番難しいのであります。つまり、実際に診療に携わる医師の診療上の裁量権というものも絡みますし、現在の医学常識がどの辺の水準にあるかということも絡んでまいりますので、この診療が適当、不適当であるという判断が指導監査上の一番難しい問題、ネックになっている点であります。したがって私ども、顧問医師団というものを設けまして、それは医療各分野の専門的な医学水準の高い方々を顧問医師になってもらうように考えておるわけでございまして、少なくとも実際の医療を実施する場合における医学上の論争みたいなものはそこで解決をしてもらおう、こういうわけでございます。  したがって、第二点の御質問にあります現在置かれておる医療指導監査官と願門医師団との関係でございますが、私どもは、行政に携わる医療指導監査官と、それから専門的な学識経験者である顧問医師とが両々相まって相協力することによって、指導監査の一層の充実が図れる、また指導監査の適正実施が図れるのではないか、こういうように期待をしておるわけでございます。
  135. 福岡康夫

    福岡分科員 医療保険財政立て直しの効果があるレセプトの点検を強力に実施するには、来年度以降その人員増、それから都道府県等に対する配置転換、顧問医師制度の拡充強化を図ることが必要と考えるものでございます。今の医療費の十割給付が九割、八割という問題に絡んで、国民は保険財政について非常に注目しております。医療費の保険料を取る側の厚生省も大変だとは思いますが、また国民の方も自分で働いた血と汗と涙の結晶をお納めするわけでございます。その中で、今度出る分について厚生省がどういうように配慮していただけるかということに重大な関心を持っております。厚生省事務当局は医療費を出す側のことも十分御配慮していただきまして、最高の方法をお持ちになっていろいろ対策を講じていただきたいと思うわけでございます。  最後質問として私がお伺いしたいのは、この人員増、都道府県に配置する顧問医師制度の拡充強化を図るとかこういう全般的な問題で、どういうように厚生省がお考えになっているのか、国民の前にお示し願いたいと思うわけでございます。
  136. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療費の適正化につきましては、先生指摘のように、私ども行政の最重点課題として考えております。したがいまして、今申されましたように、指導監査体制あるいはレセプトの審査等医療費の適正化のためには、一つの万能薬があるわけではございませんで、いろいろなものをいろいろな形で総合的に実施することによって医療費の適正化が可能になるのであろうと思っておるわけでございまして、先生指摘の監査体制の実施、人員の増加につきましても、この苦しい中におきまして可能な限りの増員を図るような形で来年度も予算を組んでおる次第でございまして、そういう面から大いに努力をしてまいりたいと思います。
  137. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて福岡康夫君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十分開議
  138. 橋本龍太郎

    ○大村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について質疑を続行いたします。河野正君。
  139. 河野正

    河野(正)分科員 今日もそうですが、今後日本の医療が大きく転換をしようとするわけでございます。そういう中で、もう既に予算委員会でも触れられておるようでございますが、一体日本の医療の中で医師の適正規模はどうであるべきかというようなこと。これはやはり医師の過剰ということが一つのねらいでそういう議論になっておるわけでございますが、時間がございませんので端的にお答えをいただきたいと思います。  そこで、いずれにしても四十五年の構想が既に達成されて、このままいきますと七十年代には十万対比医師数が二百というような状況にもなろうとしておるわけですから、そういうことになりますと、医師の過剰が結果的には医療制度の混乱、あるいはまた一部で言われておりますように医療の質的な低下、こういうことが恐れられておるわけでございます。そこで、文部省も、既に大臣からもお答えがあっているようでございますが、もう少し突っ込んで具体的な御回答をお願い申し上げたい。文部省の方でも、定員は削減するけれども一体医師の適正な数はどれだけか、こういうことを前提として定員は削減されなければならぬ、こういう意図のようでございますから、したがって、現在の医師の適正数というものは一体どの程度であるべきだとお考えになっておるのか、その辺をひとつお答えいただきたい。
  140. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 御指摘のございましたように、医師数はそのときの社会の情勢に応じて適正であるべきであると考えます。  将来一体どれくらいが適正であるのかということにつきましては、検討すべき多くの課題があるように思います。基本的には、疾病構造あるいは需要の動向、医学の進歩あるいはいろいろな分野ではどうであろうか、各地域の特性等にどういうふうに対応していくべきであるか、考えるべき非常に多くの課題があると思うのでございます。そのために厚生省といたしましては、そういういろいろなことを考えまして適正数を検討していただく委員会を近く発足させまして、慎重に御審議をいただきたいと考えておるところでございます。
  141. 河野正

    河野(正)分科員 このまま放置すれば、今申し上げましたように、もう既に四十五年に樹立されました構想を大きく上回っておるわけですから、これをますます上回るということでございますから、そう猶予は許されないと思うのです。そういう意味でプロジェクトチームをつくって検討するということでございますが、文部大臣も既に六十年度を目標にして検討するとおっしゃっているわけですから、さしあたってどの程度で進むべきかということを具体的にお示しにならぬと、ただ研究課題、研究課題と言っても、その間どんどんと医者はふえていくわけですから、その意味でひとつ具体的にお答えいただきたい。
  142. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 昭和四十五年に立てました目標は、御指摘のように昭和六十年を待たずに既に達成したわけでございますけれども、そのときと今日とでは、先ほど申し上げましたようないろいろな事情が異なってきておりますから、百五十で直ちに過剰であるとは考えられないのでございますが、先生も御指摘のように将来はどんどんふえてまいりますので、また、さてふえたからといって医師の養成数を一気に減らすことは非常に困難でございます。また、これが大変大きな課題でございますので、私どもといたしましては、検討委員会にお願いをいたしまして、できれば中間的な御答申でもいただきまして、昭和六十年から間に合うようにできるところから計画的にやっていく必要があると考えておるところでございます。
  143. 河野正

    河野(正)分科員 六十年をめどと言われましても、一応六十年はこの程度の規模が適切であろうということを前提として定員が抑えられなければならぬ、減員されなければならぬ。ですから、一体六十年度についてはどの程度の規模を適正というふうにお考えになっておるのか、それを承っておかぬと、今から考えてそしてやろうと言っても、第一、学校当局も困るでしょう。突如として来年になったら定員が減少した、特に問題は私学ですよ。これは大変なことですね。それからまた受験者の方も、大体どのくらい減るのかということは当然、少なくとも一年前くらいには知っておらぬと、ある夜突如として定員が二割も減っておったということでは話になりませんので、やはり六十年をめどにしてお考えになるならば、六十年めどというのは一体どの程度の規模に置くのかということははっきり明確にしていただきたい。これは調整ですから、事情が変わればその都度その都度、例えば四十五年の構想というものが崩れたわけですから、それと同じようになるわけです。したがって、これは厚生大臣も微調整なんという言葉を使っておられるようですけれども、当面どれでいくんだということですね。これをまず具体的にお示しいただきたい。
  144. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今御指摘のありましたように、もう過剰傾向にあることは間違いないことだと思います。昭和四十五年に厚生省が文部省に適正な医師を確保するためにお願いした医学生の養成が六千人ということです。ところが、それが現実には八千三百人になってしまっておるわけですから、現在でも医科大学における定員がオーバーしておることは、私は、もうだれが考えても理解できることだと思うのです。ただ、今医務局長が言っておりましたように、将来の老齢化現象によって、最初に、四十五年に考えた十万人当たり医師百五十人というのが適正かどうかということにはかなり疑問がありますので、それを六十年目標にどのくらいの数値に置くものかということを検討したい。これは中間報告を得て六十年の施策に反映したいということを申し上げているわけでありますが、おっしゃるとおり六十年になってからでは間に合うことでありませんから、この検討をできるだけ急がせて、文部省としては今お話しのように私学というような場合は一遍に定員をふやすには難しい問題がございますが、幸いに文部大臣も文部省当局もこの問題には非常に積極的に考えてくれておりますので、我が方でもできるだけ適正な医師数の把握をして早急に対処してまいりたいと思います。
  145. 河野正

    河野(正)分科員 私が非常に時間を急げと言うのは、ただ数をいじったって、例えば今まで、四十五年に示されました構想が既に達成された、しかしながら、例えば地域格差というのは全然解消されてないわけですね。厚生白書にも示されておりますように、大体都市集中ですね。そして郡部と比較いたしますと、大体都市が三倍くらいですね。これは五十六年の数字がそうですから、今日はさらに拡大しておると思うのです。  そういう事情ですから、単に減らせばそれで国民のニーズに応じ得るということでないわけですね。なお僻地とか離島とか、何にも解決してないでしょう。そして一方では数が多過ぎると言ったって、一体僻地はどうするのか、離島はどうするのか、そういう地域格差が残っておるわけです。ですから、今のように、今からぼちぼちプロジェクトチームをつくって相談して六十年をめどにと言ったって、とてもじゃないが今の地域医療の格差が解消するような段取りにならぬですね。ですから、ただ数が多いから減らせばよろしいという単純な発想というものは、私は許されぬと思うのですよ。その辺については一体どうお考えになっているのか、ひとつ簡単にお答えください。
  146. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 その点はお話のとおりかと存じます。  先ほども申し上げましたけれども、医師数を考えます場合に考慮すべき非常に多くの事柄がございますが、その中に、この地域的偏在というものをいかに考えていくかというのも重要な事項であると考えております。  なお、私どもといたしましては、従来から僻地対策につきましては諸般の施策を講じまして、できるだけ早くこの問題を解決いたしたいと努力をしておるところでございます。
  147. 河野正

    河野(正)分科員 努力はなさっておると思うけれども、現実は、今のように数がふえた、ここで減らそうじゃないかというような単純な発想で今後の検討がなされるおそれがある。ですから、数は多い、数は余って仕方がないけれども、まだ僻地、離島なんかは、要するに他の国籍を持った医師というものが多数おいでになっているでしょう。そして足りないところは補完をしておる。こういう現状というものはあるわけでしょう。ですから、単に医師は過剰だから減らせばよろしいということでは、これは今の日本の国民の医療のニーズには応じ得ないと思うのです。どうも納得いきませんけれども、もう時間がないものですから先に進まざるを得ないと思うわけですが、特に、私どもが仄聞するところでは、文部省の方では大体百二十名以上の定員の大学医学部あるいは医科大学の減員をしていこうというような構想もおありかというふうに承っておるわけですが、きょう文部省から見えていますね。その辺、お願いいたします。
  148. 佐藤國雄

    佐藤(國)説明員 過剰だと一般に言われているけれども軽々に入学定員を削減する、こういうことはしてはいけないという事情は、ただいま厚生省の方からいろいろと御説明あったと思うわけでございます。したがいまして、私どもは、厚生省の方で御検討をいただいた後、その結論を得まして、いろいろな要素を考えながら入学定員の見直しということに適切に対処していきたい、こういうつもりでおるわけでございますが、この前、予算委員会におきまして文部大臣の方から御答弁申し上げているのは、入学定員が百二十名の一部の国立大学におきましては、従来から学生の臨床研修の充実等、やはり百二十名ではなかなかいい教育が行い得ないということで、各大学とも教育条件改善という要望が出ているところでもございますので、そういった点から、地元との調整あるいは各大学の対応等を見ながら、やはり教育条件改善という観点から検討をしてまいりたい、こういうふうにお答えをしているところでございます。
  149. 河野正

    河野(正)分科員 そこで私が厚生省に申し上げたいのは、今文部省からおっしゃったように、基本になるものはやはり日本の医師の定数がどれだけであるのが一番適当であるのか、そういう前提で大学の定員というものをずっと削減したいということのようですから、厚生省の方針が出ないと文部省の方は作業が進まぬと思うのです。それは教育の観点からいえば、小学校、中学校もそうですけれども、数が少ない方がより完璧な教育ができることで望ましいことでしょうでしょうけれども、私学の方はそう簡単にいかぬ事情もあるわけですね。入学定員を減らせば、一体後の学校の運営というものに対してどうしていかなければならぬのか。授業料が上がったりあるいは研究費が上がったり、いろいろなことが起こってこようと思うのですよ。そういう点もあるわけですから、私は、ふえたらふえたというところで、やはり日本国内の国民のニーズに合うような適正な数を確保すると同時に、地域の格差がいろいろアンバランスにならぬように、そういうことでやらなければならぬけれども、残念ながら今の厚生省のお話では、非常に作業がおくれておるのじゃなかろうかという気がいたしますね。  ところが、もう時間がございませんのでこれ以上多くを突っ込むわけにいきませんが、いずれにしても大体の、これでいきたいという、例えば恐らく何人何人じゃなくて一割とか二割とか削減というようなことになろうと思うのですね。大臣の微調整じゃないけれども、当面これでいくべきであろうというような点は具体的にお考えになっていないですか。
  150. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 確かに、御指摘のようにいろいろな問題があるわけでございます。そうして、養成数を考えます場合にも長い時間がかかりますから、計画的に進めていく必要がある。  それで、先ほど、六十年度からも間に合うように中間的な御答申でもいただきたいと申し上げたわけでございますが、できるだけ早くこの委員会を発足いたしまして、今私どもとしては、その委員会の御討議を待ってできるだけ早く対処すべきであると考えておるところであります。
  151. 河野正

    河野(正)分科員 毎々言うようでございますけれども、時間がございませんので多くを申し上げられませんが、とにかくこの医師過剰、さらには病院過剰という時代が実は今招来されておるわけですね。  それで、一方では医療経営というものが非常に厳しくなっておりますね。いずれ健保の改正案が出てくるということでございますから、その際ゆっくり私どもも御高見を承りたいと思いますが、それがなくても、今、国の総医療費というものが大きく伸びつつある。臨調の答申等にもあるので医療費等も抑制しなければならぬということでございますから、そういう情勢が厳しくなることは火を見るより明らかなんです。その中で、医師が多くなるあるいは病院が過剰になる、そういうことになりますと、また医療制度内の混乱というものが当然予測をされるわけです。  そこで、具体的にお答えを承ることができなかったことが非常に残念でございますけれども、一応その点はそれでとどめおきまして、それに関連して具体的な問題が二つございますから、それを簡単に指摘をして御見解をいただきたいと思います。  一つは、今大学関係が出てまいりましたが、福岡大学の医学部で第二病院をつくりたいというようなことで、これができますと地域の医療体系が崩れるというような点、あるいはまた国保の財政を圧迫する、大学病院が出てきますと医療費がかさばっていくものですから国保の財政を圧迫するというようなことで、今、福大の第二病院についてのいろいろな問題が起こっておりますが、これらについて御承知でございますかどうか。  また、これは文部省も関連があるわけですが、それに対してどういう指導をなさろうとされているのか、またなされたか。もう時間がございませんから、端的にひとつお答えをいただきたい。
  152. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 福岡大学医学部の分院計画につきましては、承知をいたしております。  福岡県からまだ具体的な相談を受けておりませんけれども、具体的な相談がありますれば十分検討して対処いたしたいと考えておりますが、基本的には、地域医療の実情を踏まえまして関係者が十分話し合うことが重要であろうと思います。  なお、この福岡大学は私立てございますので、これにつきましては、現在の公的病院の病床規制の対象にはなっておりませんけれども、今国会に提出を予定しております医療法の改正案におきましては、このような民間病院の新増設の問題につきましても、地域医療計画に基づきまして必要な措置が講じられるようにいたしたい考えでございます。
  153. 河野正

    河野(正)分科員 そこで、今いみじくも医療法の改正とおっしゃったが、それらの問題が出てくるからこの問題はさらに慎重に取り扱っておかなければならぬであろうというように私は考えるわけなんですね。ですから、そういう意味で、まだ地元から上がってきてないということでございますけれども、私どものところにはちゃんと陳情が来ておるわけでありますが、そういうことでこの福岡大学の大学病院の分院設立については、今申し上げますように、将来医療法の改正等が考えられるがゆえに、この際適当な解決をしておかぬとまたいろいろな問題が起こってくる可能性がございます。  そこで、この問題については、地元と大学の両者で解決することはなかなか難しかろうと思います。でございますから、そのことが県から上がってくれば厚生省でも適切な指導をしたいという御見解でございますかどうか、この点ちょっと大臣からひとつ……。
  154. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 もちろん、出てまいりますれば適切な助言指導等をしてまいります。
  155. 河野正

    河野(正)分科員 福岡大学も、三十七億で倒産した病院を買収したという話もございますから、簡単に引き下がらないと思うのです。そこで、先ほど申し上げますように、将来医療法の改正等も当然考えなければならぬので、この際慎重な解決策を講じておかなければ、またぞろ医療体系が混乱するような事態が起こる。しかし、大臣、適切な御指導をなさるということですから、それでひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  そこで、もう一つ、これも公的医療機関でございます。健保の改正も近いし、みんな今後医療経営が非常に厳しくなるぞという発想でいろいろなことが考えられておると思うわけですけれども、今、福岡市の市立病院の移転をめぐって地域におきまして非常に混乱が起こっておるわけですが、この点御承知でしょうか。
  156. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 承知いたしております。
  157. 河野正

    河野(正)分科員 承知をしておられるならば、この問題の解決についてどのような措置をとっておるのか、その辺の経過をお尋ねいたしたいと思います。
  158. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話にもございましたけれども、これは公的病院でございますから、病床過剰地域でございまして、最終的には厚生大臣の承認を得ることが必要でございます。ただ、そういうことがあることは承知をしておりますけれども、まだ県の方かもは直接にはこの相談を受けておらないのでございます。県の方も市から正式な相談を受けておらないと聞き及んでおります。私どもといたしましては、今後、福岡県から具体的な内容の相談を受けた上で十分検討して対処してまいりたいと考えております。
  159. 河野正

    河野(正)分科員 一つは、県の指導力にも問題がありますね。こういう問題をじんぜんと見送って、そして混乱が増大をして、その後で解決しようといったってなかなか解決するものではない。そういう意味では、先取りするわけじゃないけれども、この問題でいろいろ問題が提起されておるわけですから、そういう問題は、市から県が要請を受けるとか受けないとかは別として、いろいろございますけれども――今の日本の行政を見ておりましても、行政が時代よりも後におくれていろいろ対処される傾向があって、そのために事態をいたずらに混乱に陥れるような状況がございます。特にこの市立病院の移転は、一度五十一年に現地で建設しますと決定をしておったのです。それが突如として四百五十メートル北側に建設するようなこともあって、医師会の諸君が非常に騒いでおるということです。  同時に、ここで問題になりますのは、学校医を総辞退する、そういうことも決議をいたしておるわけです。ところが、学校医を辞退するような事例は今日まで東北の仙台に一件あっただけで、ほとんどそういう事態は出ていないわけです。しかも今、老人健診の問題もありますし予防接種の問題もありますし、また新学期を迎えまして学童の健診等もあります。そういう状況の中でこういったことが出てまいりますと、これは福大の病院じゃないけれども、一年、二年待っておっていいということじゃない。もう今そこに火がついておるわけですから、当然これは事前に解決しなければ、地域の医療体制にもあるいは社会的にも――子供たちの健診、もう新入学児が上がるわけでしょう。したがって、そういう意味でも重大な事態を迎えているわけです。  ですから、市から言ってこぬから知らぬというのでは、県も県だと思うのです。ところが厚生省も、県から言ってこようがこまいが、御承知のとおりですね。それなら県を督励でもして、どうなっているのだ、早く解決せぬか、もしそういうことが現実に行われたら大変だぞというくらいのサゼスチョンはなさらなければならないでしょう。混乱して混乱して、その上で解決しようといったって、こじれてなかなか解決するものではない。ですから、むしろそういう問題が大きくならない前に解決するような処置をとられるのが本当に血の通った行政じゃないでしょうか。そういう意味で、私どもちょっと不満ですが、どういうふうにお考えか、ひとつ御見解を承りたい。
  160. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 地域の医療の状況に応じまして、地域の問題は地域の関係者がよく話し合って解決するのが最も適当であると思うのでございますが、この点につきましては、先ほども申し上げましたけれども、御示唆もございますので、県の方にさらに事情を聞いてみたいと思います。
  161. 河野正

    河野(正)分科員 あと三分だそうですから、結論を急ぎたいと思います。  一つは、これは既に五十一年に、移転ではなくて現地で建てますという方針を決定しておった、そして今度は、その用地については国鉄と折衝してもう合意に達しておるわけですね。合意に達しておるわけでしょう。そうすると、用地については国鉄ともう合意に達しておるわけだから、市としては当然移らなければならぬ。ですから、私が言うのは、行政というのはもっと問題が大きくならない前に解決しないと、なかなか解決しにくい条件が出てくるわけですね。五十一年には現地で改築いたしますと言いながら、用地が国鉄ともう合意に達しておるわけでしょう。そういうことを御存じであったならあっただけ、これを余り火種が大きくならない間に解決するという行政指導が一番望ましいわけじゃないでしょうか。私は、別に混乱させるためにこの問題を指摘しているわけじゃないのです。今の福大の医学部の問題でもできるだけ早く円満に解決してほしいと思うし、それは両者ではなかなかうまくいかぬ。ですからそこで、時の氏神じゃないけれども、厚生大臣がおっしゃったように、できるだけ地元の事情等も聞いてあっせんしようという形でやっていただかぬと、この問題もじんぜんと経過するごとに問題がますます混乱していくと思うわけです。この点、大臣一言。
  162. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今、医務局長からもお話がありましたように、国立病院ですと我々がすぐ出ていく問題でしょうけれども、市立病院の話でございますから、これは当事者である市、さらに県、そして、そこで解決できない場合、私ども指導助言、お手伝いをするものというふうに考えております。
  163. 河野正

    河野(正)分科員 もう時間がありませんから、結論を申し上げます。  先ほど申し上げましたように、医師の定数の問題にいたしましても、微調整とかいろいろ言葉がございますように、早急に一つの案を出して、そして将来また修正しなければならぬ場合があれば修正するということでいいのじゃないでしょうか、何も、何で修正したのだということで問題になるようなことではございませんし……。  それから、今の医師過剰に伴って起こってきた関連した二つの問題、福大の問題と福岡の市立病院の問題がございますが、これは今おっしゃったように、地元で解決せいと言ってもなかなか解決するものではない。そこで時の氏神で、高いところにある厚生省が、こうやったらどうだ、こうやったらどうだと、それも後手にならぬように、なるたけ早いうちに手を打っていくということだけが私は解決を促進し得る道だと思うのです。そういうことで、よろしくお願い申し上げます。  以上です。
  164. 橋本龍太郎

    ○大村主査 これにて河野正君の質疑は終了いたしました。  次に、田並胤明君
  165. 田並胤明

    田並分科員 私は、厚生省所管にかかわります同和行政につきまして、つまり、その同和行政の中の大変重要な課題である福祉対策について、大臣並びに関係局長さんからお伺いをするわけであります。  大臣も御承知のように、本年は同対審答申が出されて、昭和四十年に出されましたから十九年目になりますし、その同対審答申を受けて特別措置法が施行され、途中で現在の地対法に変わりましたが、同対審答申の趣旨を法的に保障するための法律が施行されて、事業が開始をされてちょうど十五年目に当たります。一つの節目を迎えているのではないかと思いますが、この間、行政の皆さん、あるいは運動団体の皆さん、さらに国民の皆さんの御協力で、環境改善あるいは教育問題、福祉問題、各般にわたって部落差別を解消するための大変な行政が行われてきたということについては心から評価をするし、また敬意も表するわけであります。  しかし、どうも昨今の被差別部落を取り巻く情勢を見てみますと、この都落差別が根本的に解消するという事情になかなかないような気がするわけであります。例えば、大臣も御案内のように、差別図書と言われる部落地名総鑑、これは被差別部落の人たちを就職から締め出す、さらに一般の人との結婚も締め出す、言うならば社会からもあるいは職場からも締め出そうという、大変悪質な意図を持った差別図書と言わざるを得ないわけであります。こういうものがもう既に何十種類も出されているという今、状況なんですね。  しかも、差別図書にとどまらずに、まだまだ具体的に結婚差別が発生をしたり、あるいは陰湿な具体的な差別事象というものが後を絶たないという今日の状況でございます。そして、先ほど申し上げましたように、行政の努力にもかかわらず、例えば雇用面での格差あるいは大学、高校の進学率の格差、さらに母子家庭の増大、身体障害者の数が一般地区と比較をして依然として多いという、こういう実情が今もってあるわけでありまして、同和行政というのは、部落差別をなくすためにもう一歩力を入れてやらなければ深刻かつ重要な課題の解決ができないという、極めて今日的な状況にあるんだということをぜひ御認識いただきたいと思うのです。  そして、お聞きをしたい第一点は、昭和四十年に出されました同対審答申の中で、特に同和地区における社会福祉の観点、これは一般地区と違うんだ、差別と貧困という観点から同和地区における社会保障というものは考えなくちゃいけないんだ、このように指摘をしておるわけであります。また、昨年の予算委員会分科会の中でも当時の厚生大臣から、同対審答申の中の福祉対策についてどのような御認識をお持ちですかというわが党の質問に対してきちっとした御回答をいただいておるわけですが、同和地区の社会福祉のあり方について、同対審答申を再認識する意味で大臣のお考えをまずお聞かせを願いたいと思うのです。
  166. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今御指摘のありましたように、同和問題は憲法に保障された基本的人権にかかわる大変重要な問題で、福沢諭吉先生が「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と百二十年前に言ったことが、日本の新しい近代国家の礎になっておるわけであります。にもかかわらず、先生指摘のような問題がまだ残っておることは大変残念なことであり、一日も早くこれらの問題は近代日本において、現代日本において解消されるべきものであります。特に、御指摘の地域改善対策特別措置法の趣旨を体して福祉施策を今増進中でありますが、これは言うまでもなく、地区における社会福祉の問題は単なる一般的な意味での社会福祉ではなく、差別と貧困が問題になっておる同和問題としてこれはとらえるべきものであるという認識に基づいて、地区住民の生活の安定及び福祉向上を図るために今後とも関係施策の充実についてできる限りの努力をしてまいりたいと思います。
  167. 田並胤明

    田並分科員 大臣の御決意を聞いて、ぜひそうあってほしい、ひとつ一層推進をしていただくように願うものであります。  ところで、法施行以来、先ほど申し上げましたように十五年経過をしておるのでありますが、同和対策事業の中の福祉対策として、重点項目として十一項目ほど具体的に、こうあらねばならないということがこの同対審答申の中へ盛り込まれておるわけであります。ところが、この福祉対策の十一項目の中で、個別的に一つ一つ精査をしてまいりますと、残念ながら、具体的に言いますと七項目ほどですが、社会福祉調査と社会福祉計画の樹立てあるとかあるいは身体障害者老人福祉増進のための具体的な対策であるとか、専門ワーカーの養成と配置であるとか、細かな点から見てまいりますと、同和対策事業の中の福祉対策として、先ほど大臣が言われたように、特別対策としての施策が残念ながら七点ほど未実施の項目があるのではないだろうか、こういうふうに指摘をせざるを得ないわけであります。もちろん、同和対策事業の中の福祉対策ではあっても、一般福祉対策との整合性でもってやっている部分があるいはあるかもしれませんが、先ほどの大臣の答弁のように、差別と貧困という観点から同和地区における福祉対策というものは考えなくてはいけないのだという観点から十一項目にわたる重点項目を決めて、厚生省さん、ひとつ具体的にやりなさいよ、こういう同対審答申が出たわけであります。それにもかかわらず、その中の今言った七点ほどが未実施になっているということについて今後いかがお取り扱いになるのか、この点について、関係局長さんの方からで結構ですから、ひとつ御答弁願います。
  168. 持永和見

    持永政府委員 先生指摘のように、同対審の意見の中で、社会福祉関係の具体的方策をいろいろと提言されておるわけでございます。先ほど大臣も申し上げましたとおり、私どもとしては、現在、地域改善対策特別措置法の趣旨にのっとって、同和地区住民の生活の安定なり福祉向上を図るためにいろいろな施策をやってきておるわけでございます。  例えば、補助のかさ上げでございますとか、あるいは隣保館の設置あるいは保育所における保母の加配、医師による巡回相談、トラホーム予防のための保健対策あるいは妊婦の健康診査の回数増というようなことをやってまいりました。五十八年度からまた隣保館におきまして、身体障害者方々あるいはお年寄りの方々に対する日常生活訓練の事業を実施するというふうなこともやってまいりましたけれども、御指摘のような中身についてさらに一層私どもとして精査をいたしまして、今後とも地域改善対策特別措置法等の趣旨を踏まえまして同和問題の早期解決について、特に社会福祉政策は先生指摘のように大変重要な問題だと思いますので、なお一層努力を続けてまいりたいと思っております。
  169. 田並胤明

    田並分科員 今の局長の答弁で、やられている項目とさらに積み残しになっている項目について明らかになってきたわけでありますが、いずれにしても地対法が制定をされてことしで二年、五十九年度になりますと三年目に入るわけでありまして、残期間あと三年という非常にせっぱ詰まった現段階にあります。今まで物的な厚生省の予算というのはかなりあったのでありますが、こういう社会福祉、しかもソフト面というのが非常に残念ながら、全体予算の五%もしくは六%という枠の中で実際に行われてきたというところにその大きな原因があるような気がします。もちろん、国の行財政改革あるいは財政再建という厳しい財政事情であることは十分わかりますが、少なくも今言われたまだ手がつけられておらない福祉対策について、ぜひ積極的に来年度以降取り組まれるように一層の御努力をお願いするわけであります。  続いて、こういう社会福祉の予算の未実施の項目があるという指摘をしたわけでありますが、残念ながら同和対策の予算がどうも昭和五十七年度の予算を境にして毎年毎年減ってしまっているわけです。五十九年度の場合には対前年度比一八%削減になっております。果たしてこういう状態の中で、先ほど申し上げましたようにあと三年という地対法の適用期間の中で残事業の消化について自信があるのかどうかということと、削減の理由についてぜひひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。特にこの中で、新規事業として運動団体からも強く要請のありました障害者福祉センターの設置であるとか診療所の設置であるとか保健婦の配置であるとか、これらの新規事業については残念ながら五十九年度の予算では全部大蔵省によって見送られてしまった。厚生省としてはぜひということで強く要請をしたようでありますが、残念ながらカットをされてしまった、こういう事情もあるようでございますので、これらも含めて、以後の厚生省としての決意のほどもあわせてお聞かせを願いたいと思います。
  170. 持永和見

    持永政府委員 先生指摘のとおり、五十九年度におきます地域改善対策事業施設整備費、厚生省所管しております施設整備費は、五十八年度が五百十億円でございましたのが四百九億円ということで、八〇・二%の予算になっております。約百億円ばかりの減額になっておるわけでございますが、実は五十七年度以降の予算の執行状況を見てまいりますと、五十七年度の予算額が六百三十一億円でございました。これに対しまして執行額が三百八十一億円でございました。約六割の執行にとどまっておったわけでございます。また、五十八年度予算額も五百十億円という予算を積みましたけれども執行が四百億円ということで、約八割弱の執行でございました。そういった執行状況から見まして、私ども関係府県から五十九年度における事業量を的確に予想してあらかじめヒアリングをいたしております。できるだけ実際に執行できる予算額を計上するということで、五十九年度におきましては四百九億円という事業量を計上したわけでございます。  御指摘の残事業量との関係でございますが、御案内のとおり、地域改善対策特別措置法が五十七年に制定されまして、五十七年から六十一年までの五年間の事業量がそのときに確定いたしております。この事業量の総枠は千七百九十四億円でございました。千七百九十四億円のうち、今申し上げましたように五十七年度が三百八十一億円、五十八年度が四百億円を消化いたしておりますので、七百八十一億円が実施済みでございます。したがって、千七百九十四億円から七百八十一億円を引きました残事業量は千十三億円でございます。今後、五十九年度以降三年間ということで消化しなければならない事業量は千十三億円でございます。このうち四百九億円を五十九年度にそのまま地方公共団体が消化していただくとするならば、残りの二年間で消化しなければならない事業量は六百四億円ということでございますので、この事業量は現在の傾向でいくならば消化できる事業量であるというふうに考えております。  また、物的な予算はこのように減額いたしておりますが、非物的予算につきましては、先ほど来申し上げておりますように、こういったソフト面も非常に大事なことでございますので、ソフト面につきましては五十八年度の予算額三十九億円を五十九年度には四十二億円、六・八%の増を予算の中に計上いたしております。  また、今おっしゃいましたいろいろな新規の項目でございますが、これにつきましては、今後ともその必要性なりを私ども十分検討さしていただきまして、必要なものがあれば、それはできる限り実施に移していくという考え方で臨みたいと思っております。
  171. 田並胤明

    田並分科員 ただいま残事業の見通しと削減の理由についてお伺いをしたわけでありますが、今の局長の御答弁で、五十七年度予算が六百三十一億、執行が三百八十一億、さらに五十八年度が五百十億の予算に対して執行が四百億。これはどこに原因があるかということですね。  私も県の方におったものですから、いろいろ県の方に聞くのですが、どうも対象事業そのものが限られてしまっている。例えば各地方自治体で、これまではしてあげたい、これまではしなければいかぬのじゃないかというふうに思っても、どうしても国の方の対象事業の一定の枠があるということ。さらに補助単価というのが決まっておって、それ以上のものはどうも地方の超過負担になるのではないか。あるいは実際になっている。それともう一つは、採択基準の問題があって、これの改善ができればもうちょっと自治体の方でも同和対策事業についての拡大ができるのだがという話をよく聞くわけであります。したがって、今言ったような事情が原因で、予算が決められておってもその執行状況が悪いということになっておったのでは、本当に血の通った厚生行政とは言えないのじゃないだろうか、こういう気がいたします。ぜひそういうことのないように、とにかくあと残された三年の間にきちっとこの事業実施をするために、対象事業の拡大の問題であるとか補助単価の見直しであるとか、あるいは事業の採択についての基準の緩和であるとか、こういうものをひとつ押し広げていただいて、同和行政がより推進されるようにお願いをしたい、このように思うのです。その辺のことで何かございましたら、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  172. 持永和見

    持永政府委員 地方改善事業につきましては、国といたしましても大変重要な事業だという認識を持っておるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、先生も御案内のとおり、施設整備費などにつきましては、一般的な施設整備費は補助率が二分の一でございますけれども地方改善事業の場合は特に原則三分の二にするとか、地方公共団体の負担分について、本来は地方債をもって充てられない事業につきましても地方債をもって充てられるというように、財政上の特別な措置をいろいろと講じておるところでございます。  現在、予算の執行の残が大変多いということでございますが、これについてはいろいろと原因もあろうかと思います。最近いろいろと、用地の問題が難しいとかあるいは地方財政が厳しいとかいうような問題もあろうかと思います。ただ、これはあくまで国の行うあるいは公共の行う事業でございますので、おのずから事業対象その他についてはやはり必要なものというものに限定せざるを得ないかと思っております。ただ、実際の執行に当たっては、できる限り地方公共団体のそういったお立場を考えて弾力的にやっていきたいというふうに考えておるところでございます。
  173. 田並胤明

    田並分科員 ぜひひとつ今の答弁の方向で一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、同和地区における特に生活保護の実態、さらに老人実態要するにひとり暮らしの老人が大変多くなっておりますが、同和地区における老人の問題が一般地区と比較して今どういう状況に置かれているのだろうか。さらに障害者実態、母子家庭実態等々、厚生省の方で資料とかございましたら、一般地区との比較において明らかにしていただきたいということと、それを解消するための具体的な方策がありましたら、あわせてお聞かせを願いたいと思います。
  174. 持永和見

    持永政府委員 今、先生が御指摘ございました老人なり身体障害者方々、あるいは生活保護の問題でございますが、対象地域の実態をいろいろ調査しておりまして、六十五歳以上人口について見ますと、全国が人口比九・〇%でございますが、対象地域が八・五%。六十五歳以上人口は全国よりもやや低目でございます。  ひとり暮らし老人でございますが、ひとり暮らし老人について見ますと、六十五歳以上に対する人口比、全国が八・六%でございますのに対象地域は一三・八%、大変高い率になっております。また、寝たきり老人の割合でございますが、寝たきり老人につきましては、六十五歳以上に対する人口比でございますが、これも全国が三・一%でございますが、対象地域は三・七%というふうにやや高うございます。  それから、身体障害者関係でございます。特に十八歳以上の身体障害者方々は、人口比にいたしまして全国が二・四%でございますが、対象地域は四・五%と高くなっております。中身をさらに分析してみますと、構成比として特に全国よりも高いのが視覚障害を受けられた方々で、全国が全体の身体障害者方々の中に占める割合が一七%でございますが、対象地域につきましては二四・一%、視覚障害の方々が大変多いという関係になっております。  それから、生活保護でございますが、生活保護につきましては、全国の保護率が五十五年で千分比で一二・三でございますが、同和地区の保護率は五七・一と大変高い保護率になっております。  以上のようないろいろな問題がございますので、こういった実態を踏まえまして私どもといたしましては、隣保館、福祉事務所等関係機関による相談指導体制の強化、あるいは先ほど申し上げましたように、五十八年度から新たに隣保館において、身体障害者方々に、老人方々に対する日常生活訓練の事業を行っております。また、お年寄りの方々老人対策あるいは身体障害者方々身体障害者福祉対策につきましては、対象地域を有する市町村の要望に基づきまして、予算のできるだけ優先配分をするというような措置を講じておりまして、今後ともこういった対象地域の方々につきましての予算の優先配分についてはできる限り努めてまいりたいと考えております。
  175. 田並胤明

    田並分科員 今の局長のお話で、お年寄りの問題、身障者の問題あるいは生活保護世帯の問題は大体明らかになりましたが、これは同和対策事業特別措置法が制定された時点と比較してみてどんなもんなんでしょうか。私どもの調査では、さほど変わってないんじゃないかという気がするのです。生保世帯の一般地区との比較においても、障害者の割合についても、あるいは、今母子の問題は出ませんでしたが、母子家庭の発生状況なんかを見ても、一般地区のそれと比較をしますとかなり高率になっていますね、離婚あるいは蒸発等々を含めて。  ですから、大臣から一番最初例答弁ありましたように、同和地区の社会福祉の問題は、一般地区の社会福祉とはもう異なる中身なんだ。従来からの差別と貧困、要するに、学歴がどうしても低い状態に置かれてしまう、そのために就職もなかなかできない。あるいは特別措置法ができる以前というのは、御案内のように大変厳しい生活環境に置かれたわけであります。したがって、疾病率も高い。これらが積み重なって、そしてまた、今でもお年寄りのひとり暮らしが多いということ自体、一緒に暮らすととてもじゃないけれども生活ができない、このような事情にあるわけであります。したがって、同和対策の中の社会福祉仕事というのがいかに重要であるかということを、ぜひ再確認をしてもらいたいと思うわけであります。  そこで大臣、私は、言葉だけで言ったのではなかなか理解がつかないと思うのですよ。ですから、厚生行政の中における大きな一つの柱として、この同和対策の福祉対策に積極的に取り組むために、できれば被差別部落の視察などもぜひやってもらって、率直に各自治体の御意見なり、あるいは被差別部落の実態を目の当たりに見てもらって、より厚生行政の中に生かしていくということもぜひ考えていただきたい、このように思うのです。ひとつ大臣の御所見をお聞かせ願いたいと思うのです。
  176. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今私が答弁しましたように、これは差別と貧困、新しい今日の社会で、あってはならないことでありますから、これらを解消していくために福祉政策として特に重点的に進めていくのは当然のことでありますし、今も社会局長から答弁のありました生活保護世帯の全国の中での比率の大きさというようなことを考えますと、我々のなさなければならないことも大きいし、また地域の皆さん方に自助自立の努力をしていただかなければならないのも非常に大きな問題を含んでおりますし、私も大変関心を持っておるのでありますが、一応内閣全体の中では総理府総務長官がこの問題のいわゆる主管大臣になっておりますので、総務長官等とよく相談して御期待にこたえるようにしてまいりたいと思います。
  177. 田並胤明

    田並分科員 私の方としては、それは確かに所管が総理府でありますから、総理府が全体的な調整をするということで十分わかります。要望として、大臣の方も、今答弁がありましたように、大変重要な課題として重大な関心を持つ、こういうお話でありますから、御相談の上、大臣初め厚生省の各局長さん方、ぜひひとつ具体的な実態を見ていただくように強く要望をしておきたいと思うのです。  それとあわせて、ひとり暮らしの老人対策として、例えば三世代向けというのでしょうか、おじいさん、おばあさん、おやじ、おふくろ、それから子供。おじいさん、おばあさんからすれば孫まで、親子三代が一緒に住めるような住宅政策の見直しであるとか、あるいはペア住宅の見直しであるとか、要するに住宅政策全般も一つは見直さなくてはいけないでしょうし、あるいは生保世帯を自立更生させるためには雇用の問題が大変重大な問題でありますから、厚生省としても総理府等を通して、より広い立場で、文部省や労働省なんかとも一緒になってこれらの世帯をなくす自立更生に大いに手をかす、その中心的存在として厚生省が頑張っていく、こういう方策もひとつあわせて御努力をお願いしたいと思います。  時間がございませんので、最後一つだけお聞かせを願いたいのですが、児童扶養手当の関係であります。  今度、児童扶養手当が改正になるようでありますが、この中で特に同和地区の問題として御指摘をしなければいけないのは、「前夫の年収が六百万円以上は支給しない」あるいは「未婚の母には支給しない」こういうのが今度出ているわけですね。これは人権的に見ると非常に逆行するような気がするのです。例えば「未婚の母には支給しない」という項目について、国際婦人年の世界行動計画の精神として「片親の増加に鑑み、これに対しては可能なかぎり援助及び恩典を追加しなければならない。未婚の母は親としての完全な地位を認められるべきであり、非嫡出子は嫡出子と同じ権利と義務をもつべきである。結婚しているといないとにかかわらず、出産前後の母親に対し特別の養護施設や宿泊所を設置すべきである。」というように書かれているわけでありまして、これから見ると片親、どうも父親がはっきりしないから、結婚しないのに子供ができちゃったからというので、できた子供には罪はないわけでありますから、これは子供に対しての人権侵害になるんじゃないか、こんな気がいたします。先ほどの「前夫の年収が六百万円以上は支給しない」というのも、何か離婚をした奥さんに対しての人権侵害に当たるような気がするのであります。この二点について、特に人権という問題からお考えをお聞かせ願って、私の質問を終わりたいと思います。
  178. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今回の改正案は、臨調の答申等を踏まえて、国民の皆さんの汗を流して働いているとうとい税金を私どもは政策に使わせていただくのでありますから、年収六百万という基準は、国民の所得階層を十に区切りますと最上位の一〇%、百人のうち十人という高い所得の人たちの範囲に入るわけですが、その方々には、まず第一義的に、父親としての扶養義務というものを問うていきましょう。しかし、その後どうしてもそれが見つからなかったとかいろいろなことがあった場合は、やはり子供は大事でありますし、母子家庭は大事でありますから、弾力的な処置を講じております。第一義的には、所得の第一位に属する階層の人たちですから、そのお父さんには父親としての責任をまず社会は問わなければならないという考えに基づいておるのであって、決して人権に関する問題だとは私どもは思っておらないのであります。  また、未婚の母、こう言うと、何か私も非常に同情したいような気持ちになるのでありますけれども、今日の社会常識の中では、やはり正常なる夫婦関係の中で子供は生まれていき、そしてその子供が育っていくのが望ましい。今までのいろいろな施策の慣行が横並び的にそういうふうになっているということから今回の処置になったと思います。  なお、詳細が必要でありましたら、政府委員から答弁させます。
  179. 田並胤明

    田並分科員 時間がないようですから要望だけ申し上げておきますが、今の大臣の答弁では、私の方とはどうしてもすれ違いでございます。  特に、未婚の母の子供さんの問題は、子供に責任はないのですから、それはどういう格好でできたんだかあれですが、とにかくできた以上は、子供を健やかに育てるために、児童扶養手当の対象にするというのはごく当たり前の話なんじゃないだろうかという気がいたします。  いずれにしても、厚生省所管福祉対策の問題について質問をさせてもらいましたが、何回重言うように非常に大切な行政でございますので、今までの答弁にありましたように、これからも積極的に、この問題の解決のために全力を挙げて、前向きに取り組んでいただくことを要望して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  180. 橋本龍太郎

    ○大村主査 これにて田並胤明君質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  181. 米沢隆

    米沢分科員 私は、医療保険制度の問題と五十九年度の税制改正に関連する問題を中心に御質問いたしたいと思います。  まず最初に大臣に御質問をいたしますが、御案内のとおり、さきの与野党会談におきまして、健保法の修正については各委員会の審議の結果を踏まえて対処するという合意ができておりますが、給付率の修正あるいは高額療養費負担の引き下げ等々、このような野党の修正に対してどのような格好で取り組まれるか、そのスタンスをどういうふうにとられるか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  182. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今回の与野党の話し合いでの取り決めは、私どもは、健保問題は所管の委員会の審議を待つというふうに聞いております。つまり、私どもが出した法案というものは国会の審議を経て成立するものでありますから、これは全く当然のことでありまして、私どもは最善の案であるという考えで今国会に提出し、そして提出した法案に対してはそれぞれの担当の委員会で十二分に審議を尽くして御議決をいただく、こういうふうに理解しております。
  183. 米沢隆

    米沢分科員 まず最初に、医療保険制度の問題について御質問をいたします。  総括して御質問申し上げますので、各論については担当の局長さん、総括的に大臣の御答弁をいただければと思っております。  御案内のとおり、我が国の医療保険制度の最大の欠陥は、制度内、制度間で保険給付に大きな格差があることであります。  まず、被用者保険における本人と家族の医療給付の格差があります。本人給付率は、現在一部負担はありますが、十割給付、家族給付率は入院八割、外来七割といったぐあいに、著しい格差があるわけであります。また国民健保加入者の医療給付は、被用者保険の家族と同様、現行五万一千円を限度とする高額療養給付による補てんがありますものの、入院、外来とも七割給付でありまして、被用者保険に比べて著しく不利になっていることは御案内のとおりです。さらに出産手当金及び傷病手当金の給付率を見ましても、共済八割、健保六割、国保なしといった、歴然たる格差があるわけでありまして、一体これら格差是正をどうするのか、展望さえ示されないのは問題がある、これが第一点であります。  第二点は、他方、現行の医療給付は治療のみを対象としているものでありまして、予防、リハビリテーション、助産などは除外されており、医療本来の機能を果たしていないと私たちは考えております。さきの老人保健法の成立によりまして、医療と保健の統一的な考え方が一部実現を見ましたが、他の医療保険においてもその実現が求められていると思っております。このことは、医療費の適正化という見地からも緊急な課題であると思っておるわけでありますが、厚生省はどうお考えになっておられますか。これも将来的な展望を含めて御答弁をいただきたい。  第三に、差額ベッド料や付添看護料といった険外負担が家計を圧迫していることも社会的な問題になっております。保険外負担があるために、入院した場合の自己限度額は極めて重く、特に長期入院の場合は家計が経済的な危機に直面せざるを得ない、それはたびたび指摘をされておる事実でございます。したがって、このようなもとでは保険に加入したメリットはほとんどない。保険の目的から見ても極めて不合理であると言わねばなりません。この問題は、先ほど申しましたように、長年にわたって社労委員会その他の委員会におきましても緊急課題として問題提起がなされておりますが、政府は解消を約束しておるにもかかわらず、事態は一向に進展していない。ほかに策はないのかどうか、この点が第三点でございます。  なお、国民皆保険体制になっておるにもかかわりませず、救急医療の未整備、無医地区の存在、看護婦等医療担当者の不足など医療供給体制の整備が進まず、いつでも、どこでも、最良の医療が受けられるという医療保障の本来的な機能が損なわれていることも事実でございまして、この問題解決も遅々として進んではおりません。どう対処しようとしておるのか、これが第四点。  しかるに、このような医療保障の抜本改正に関する中長期的な具体的な計画を示すことなく、すなわち本来の厚生行政が示すべき先導的な指針を示すことなく、ただ本人給付率の削減を中心とした健保改悪だけを進めようとされておる。本国会において厚生大臣も懸命にいろいろと説明はなさっておられますし、わからぬわけではありませんが、しかし、やるべきことを棚上げして、緊急事態と称して単なる財政のつじつま合わせ的に、多年にわたる本来的な使命に即した給付である本人給付率を、国民合意のないままに政府が一方的に削減することは、到底容認できないと私たちは考えるのでありますが、大臣の御見解をお示しいただきたいと思います。
  184. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答えを申し上げます。  第一点の、制度間あるいは制度内の格差是正の将来の展望ということでございますが、私ども、全国民の医療保障という観点から考えますと、これは格差があるべきではない、したがって、将来給付の公平ということは目標としてねらっていかなければならぬ、こう思っております。したがって、今回の改正案におきましても、一応将来の目標というのは八割程度というようなところを一つねらいにして物事を考えていこうではないか、私どもはこういう考えを持っておるわけでございます。  それから第二の、治療のみ偏重した現在の医療保険制度を、予防治療、それからリハビリテーションというようなもの、そういう一貫した医療ができるような体制にすべきではないか、これはおっしゃるとおりでございます。私ども医療保険の立場では、診療報酬の点数表の改善というようなものを通じまして、リハビリテーションの重視あるいは在宅医療の重視というようなことで、少しずつ広げていっておるつもりであります。  なお、老人保健等につきましては、保健事業というものを一緒にやっておるわけでございまして、私ども老人保健事業というものが軌道に乗って拡大されることを望んでおるわけであります。  医療保険の立場におきましても、各種の健康づくり政策あるいは疾病予防活動というようなものをやっていきたい、こう考えております。  それから、第三番目の保険外負担の解消でございますが、差額ベッドそれから歯科の金属の差額徴収については、私どもこれを解消するようにいろいろ努力をしてまいっております。今後もその努力は続けてまいります。従来行政指導でもってこれをやってまいったわけでありますが、今回の改正案におきまして療養費払いのやり方を改善いたしまして、差額徴収について法的な規制が及ぶように、そしてその法的な規制というものを中医協におきましてひとつルールづくりをやっていただいて、その法的な規制によって今後強化をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  185. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 第四点でございますけれども、救急医療の問題、これはいわば医療の原点でございますので、昭和五十二年度から計画的にその充実整備を図っておるところでございますが、さらにその努力を続ける所存でございますし、また僻地医療につきましては、今日第五次の年次計画をもってその充実に努めておるところでございます。  看護婦の問題につきましてもお話がございましたが、確かに今日まだ看護婦が不足であると存じますけれども、今六十年を目標といたします年次計画でもって養成に努めておりまして、今日の予測では、それが順調に推移しておりますので、六十年には需給がおよそ均衡するのではないかと考えております。  さらに、今国会に提出を予定しております医療法の一部改正案におきましては、地域ごとに医療計画を作成をいたしまして、地域の実情に合った的確な医療が確保できるよう努めてまいる所存であります。
  186. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今政府委員からそれぞれ具体的な答弁がありましたが、先生指摘の今後の二十一世紀の医療制度、保険制度に対するしっかりしたビジョンを示せというお話、まことにごもっともで、今回私非常に残念に思っておりますのは、患者一部負担ということだけが表に出てしまって、我々の二十一世紀に向かっての医療改革の意欲というものの御理解をなかなかいただけないのであります。私も今いろいろな考えを持っておりますが、また担当職員にも、これはやはり皆さん方に納得していただける国民の皆さんに、今まで十割給付だった被用者保険の皆さん方に一割の御負担をいただくのでありますから、御負担をいただかざるを得ない、また、いただくことによって日本の医療制度というものがこんなに立派になっていくのだというきちんとしたビジョンを当然に示さなければならないと、今私も考えておりまして、これは委員会の審議でまた皆さん方の御意見を十二分にお聞きしながら、私は、この法律を成立させていただく前に、私どものしっかりしたビジョンをお示ししなければならない、こう考えております。
  187. 米沢隆

    米沢分科員 それぞれお答えをいただきましたが、第一の保険給付の統一という問題でありますが、統一の仕方は、上のものを下に下げる統一の方法もあれば、下のものを上に上げる統一のものもある。今お示しいただきましたのは、大体八割程度が適当ではないかという御見解でありますが、その前に私は、特に給付率の悪い国民健保、これは老人保健法や退職者医療制度の推移を見詰めていかなければなりませんし、同時にまた国保の経営基盤を強化することや、保険料徴収率を向上させる等々の経営の合理化も求めていかなければなりませんが、少なくとも第一段階で国民健康保険について、できれば被用者保険の給付内容と同一にするというような目標を設定して議論を重ねていくというようなことはできないものだろうか。これが第一。  第二に、第二番目のお答えはちょっと意味がわかりかねる御答弁であったと思いますが、少なくとも将来この医療給付の中に予防、リハビリ、助産等を入れていこうとする気持ちがあるかどうか、そのことをはっきりしていただきたい。  それから、差額ベッド料や付添看護料の問題であります。できれば法的な規制を含めて今後検討するというお話でありますが、一歩前進だと私は広います。しかし、これで一番問題になっておりますのは私立の病院ですよ、私学病院。たび重なる行政指導にもかかわらず、実態は半分野放し状態みたいなものであるわけでありまして、果たして法的規制をやろうと言うたときに、そこもを説得させるぐらいの法的規制が一体できるものだろうかどうか。今後の議論を待たねばならぬかもしれませんが、少なくとも入り口論でそのあたりをはじき返されるのじゃないかと思うのであります。したがって、法的規制とおっしゃる中身について、厚生省が現在考えておられる内容みたいなものをお示しいただければ幸いだ、そういうふうに思うわけです。以上、お答えください。
  188. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、将来の給付率につきまして、八割程度ということを考えております根拠、理由を申し上げますと、一つは、現在の医療保険を仮に現時点において統合をしてガラガラ計算をしたといたしますと、大体保険料で八割程度の給付ができる、八〇・三%ぐらいでございます。したがって、保険料の引き上げをすれば給付率はさらに上がるわけでありますが、私どもは、今後の租税それから社会保障負担率というようなものを考えましたときに、少なくとも医療保険における保険料の負担率というものは引き上げるべきではないんではないか、こういう考えを持っております。したがって、現在の保険料負担率でもって医療保険の給付率というものを考えていくとすれば八割程度になる、こういうことを考えておるわけでございます。  それで、先生の御指摘は、それならそれとして国保をまず考えていくべきではないか、こういうことでございます。私も、確かに国保につきまして給付率が劣悪だということは十分承知しておるわけでございますが、そういう長期ビジョンでやっていくということにつきまして、国民的な合意というようなものが成り立ては、これは国保について保険料の引き上げあるいは国庫補助の充実というようないろいろな手もございますし、また医療保険の一元化というような方向もいろいろ考えながら、国保の給付率の引き上げというようなものを考えていくべきではなかろうかというように考えておるわけでございます。現在、直ちに国保の給付率を八割に引き上げるというのは少し時期尚早ではないかというように考えております。国保の現実の財政状況等からいいましてそういうように考えておるわけでありまして、将来、国保の財政状態、あるいは今回の医療保険の改正の実施の度合い、あるいはその状況というようなものを考えながら、国保の給付率については考えていきたいと思っております。  それから、第二番目の、治療のほかに予防あるいは健康相談あるいはリハビリテーションというようなものを取り入れていくつもりがあるのかどうか、趣旨が不明確ではないかということでありますが、私は方向として、取り上げていくべき方向をとるべきだ。ただ、どういう形で取り入れていくかというのは、これはなかなか問題がございます。私ども、医療保険の立場におきましては、少なくとも診療報酬の改正というような形で、健康相談もできる、あるいは在宅医療の推進が可能になる、あるいはリハビリテーションも充実される、こういうような形で医療保険サイドからは物事を考えていきたい、こう申し上げたわけでございます。  それから、第三番目の差額徴収について、私立医科大学の差額ベッドの問題が一番大きな問題でございます。私ども昨年、私立医科大学といろいろ話をいたしまして、約三分の一ぐらいのベッドにつきまして差額徴収をやめさせる、こういうような進捗を見せたわけでありますが、なお今後力を入れてまいりたい、こう考えております。ただ、一つの問題は、私立医科大学の附属病院の経営問題がございます。したがって、この経営問題というようなものを頭に入れながらやはり考えていかなければならぬのではないか。この辺は中医協でもっていろいろな意見が出ておりますので、その論議を踏まえて、先ほど申し上げました法的規制のレールに乗っけていきたい、こう考えておるわけでございます。
  189. 米沢隆

    米沢分科員 次に、医療法人と五十九年度の医療税制の問題について若干質問いたします。  まず最初に、いわゆる一人法人制度の問題であります。医療法人は昭和二十五年に創設された制度でございまして、当時の社会的事情や診療所の実情等々、今日のそれとは格段の変化が見られるわけでありまして、特に今やお医者さんは一人といえども、看護婦さんや臨床検査技師さん等々パラメディカル・スタッフを多数雇用しておるという診療所がふえてまいりました。それぞれいろいろな言い方はあるかもしれませんが、この際、いわゆる一人法人制度を導入することにしたらどうだというような声が大変強いのでございますが、政府ではこの問題についてどう御判断をなされ、どう対処されようとしておるのか、これが第一点。  それから、これも長年の懸案でありました医業の承継税制の問題でございます。五十九年度の税制改正におきまして改善が見られるようになりましたことは、これは喜ばしいことでありますが、長年評価方式のあり方等について議論があっただけに、どのような軽減方式になるのか、どれくらいの軽減率になるのか、いつからの適用か等々について御説明をいただきたいと思います。  同時に、厚生省の方は、要求の段階では、取引相場のない株式等と同様に、類似業種比準価額方式との選択を認めることにより評価方法の改善を図れというような主張をなさっておられたやに聞いておりますが、今回の改正の中身とそごを来すようなことにならないのかどうか。中身等に相当開きが出てくるのではないか等々についてコメントをいただき、国税庁の方には、今後細目がどういうふうな日程で決められていくのか、その点について御答弁いただきたい。
  190. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 最初の質問の一人法人の問題ですが、これは私も各方面から、医療政策上の問題としての重要性をお聞かせいただき、これは確かに家計と経営が分離され、診療所の今後の近代化という面では大事なものだなあという考えを持っておりますので、今後国会の皆様方の意見をお聞きしながら、前向きの姿勢で取り組んでまいりたいと思います。  なお、税制上の詳細については、医務局長からお答えいたさせます。
  191. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 厚生省といたしましては、医療法人の出資持ち分についての相続税の課税の取り扱いにつきまして、一般の会社との均衡を考慮して要望しておったところでありますけれども、これまで純資産価額方式だけで評価してきたのを改めまして、中小企業の株式の評価方法に準じた方法により評価する、改善合理化でございますが、私どもの要望しておりましたことと本質的に変わりはないと存じております。  なお、具体的な内容につきましては、税務当局から通達される予定になっております。
  192. 米沢隆

    米沢分科員 税務当局、国税庁の方、来ておられませんか。――それじゃ仕方がありませんね。  一人法人は、大臣、早急に手をつけようという、結論はそういうことですか。一人法人制度の導入は早急に結論をつけて、やろうという前向きなのかどうなのか、ちょっと聞き漏らしましたので……。
  193. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 もちろん今後の問題でありますが、今御答弁申し上げましたように、国会のそれぞれの機関の皆さん方の御意見等も聞かなければなりませんので、それらの御意見を十分聞きながら、私は先生と同じような、近い考えを持っておりますので、前向きで進んでまいりたいと思います。
  194. 米沢隆

    米沢分科員 自治省の方、来ておられますね。今回の税制改正で、社会保険診療報酬にかかわる事業税の非課税措置の存続、それから医療法人に対する事業税の軽減税率の存続等が一応決まりましたが、この非課税措置についてはそれぞれさまざまな理由によってつけられたものだと聞いておるのです。その中身についてはくどくなりますから申し上げませんが、今回自治省が非課税措置を撤廃しようとした動きをなさったわけですが、どのような理由からか。それから今後、来年の税制改正についても同じような要請をなさっていかれるのか、最終的にはかち取りたいというようなお話なのか、その点について御答弁いただきたい。
  195. 湯浅利夫

    ○湯浅説明員 地方税の関係でございますが、地方税におけるいろいろな非課税措置なりあるいは特例措置につきましてはたくさんあるわけでございますが、税制の公平化という観点から毎年度その見直しを行えという御意見が各方面から出ていることは御承知のとおりでございます。そういう観点から、この社会診療報酬の問題あるいは医療一法人の軽減率の問題につきまして良かねてから各方面から見直しをしてはどうかという御意見一も§います。とりわけ医療法人あるいは社会診療報酬の特例措置につきましては、御案内のとおり昭和二十七年度にこの制度が設けられて以来かなり年月もたっておりますし、また所得税、法人税におきましては、昭和五十四年度において一定改善策と申しますか、是正措置が講じられまして今日に至っているわけでございまして、事業税だけが現在がなり大きな特例措置が講ぜられているということでございます。  昨年十一月でございますが、政府の税制調査会の中期答申におきましてもこの問題が取り上げられまして、今後見直しの検討をすべきであるという答申もいただきましたし、また昭和五十九年度の税制改正の答申におきましても、それと同趣旨の答申もいただいておるところでございまして、今後とも引き続きこの問題については検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  196. 米沢隆

    米沢分科員 時間が参りましたので、あといろいろと再質問等をやりたいのでありますが、一応終了させていただきます。  どうもありがとうございました。
  197. 橋本龍太郎

    ○大村主査 これにて米沢隆君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  198. 坂口力

    坂口分科員 久しぶりに厚生省質問をさせていただきますが、厚生省の方も久しぶりに歯切れのいい大臣が御就任になりましたので、きょうはひとつ歯切れのいい御意見をお聞かせいただきたいと思います。  ただいまも健康保険問題がいろいろと議論になっておりましたけれども、この国会におきます最大の目玉の一つは健康保険問題ということになっております。今回政府の方から提案になりましたこの改正案等を見まして痛切に感じますのは、健康保険の問題を、組合健保あるいは政管健保といった一つの枠組みの中だけの問題ではなくて、医療保険全体の問題としての御提示があれば、もう少し事はスムーズに運んだのではないだろうか、そんな気持ちを実は持っている一人でございます。  そうした意味で、先ほどからの議論にもございましたけれども、医療保険の将来展望というものはやはりお示しをいただかなければならない時期に来ているのではないかというふうに思う一人でございます。行政あるいは政治両方にとりましても、自分たち考え方の中に、将来はこういうふうな計画でいきたいというような気持ちを持っておりましても、国民の側からはそれはなかなかわからないわけでございまして、将来どうなるのであろうかという大きな不安があるわけであります。したがいまして、国民の前に、こういう大きな流れの中で今回はこうした問題を提示いたしますぞということを示す時期にあるのではないか、実はそんなふうに考えておる一人でありまして、きょうはまず医療保険の将来に向けてのあり方について私の意見を先に言わしていただきますならば、統合化への道ではないだろうかというふうに思っているわけでございます。医療にいたしましても年金にいたしましても、日本の場合には地域主導型と申しますよりも、今まではむしろ企業主導型と申しますか、働く場を中心にして発展してきたという歴史がありますだけに、医療保険も年金の方も、大きく分けても八つにも九つにも分かれているというような現状にあったわけでございます。いつかはこれを、どういう職種であろうと、どういう年齢であろうと、あるいはまたどういう地域であろうと、同一の保険にしていくということが一つの夢ではなかったか、一つの哲学ではなかったかというふうに思っているわけでありまして、その中で一歩先んじて年金の方が統合化の道をようやく歩み出したということは、これは中身を十分お伺いしないと一概には申せませんけれども、それなりの敬意を表しているわけであります。残された医療保険の方もいよいよ第一歩を踏み出すときが来ているのではないだろうか、その大枠のお話からひとつ厚生大臣にお聞きをしたいと思います。
  199. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私も今の坂口先生のお話、ほぼ同感でございまして、私が大臣に就任して保険局長から健保改正案の説明を受けたとき、おれはどうせ厚生大臣になるなら、十割給付を九割にするときの大臣でなくて、もう少し待っておって七割の国保の給付を八割にするときの厚生大臣になりたかったという話をしたのでありますが、先生指摘のとおり、国民の病気を治す大事な保険制度でありますから、お役人をしている人もあるいはお勤めの人も、農家の者も、零細な商工業の者も、あるいは家族も子供もみんな、老人は特別ですから別ですが、将来同じような給付を受けられるような保険制度というものが望ましい姿だと思います。  ただ、今先生おっしゃられたように、被用者保険には長い歴史と伝統と沿革がありますから、一挙にこれを一本化することが非常に困難な、ために、今回は御案内のように給付の引き下げだけが目立っておりますけれども、長年お勤めになって会社をおやめになられて、今度病気も余計かかるようになる、収入も少なくなったという人が、今までは七割給付の国保であったのが、今度は八割給付を受けられる退職者医療もつくるというような、ある程度のビジョンは示しておるのでありますが、先生おっしゃるように、今度の医療改革というものは、とにかくこれから経済成長がない低成長の中で、医療保険に対する国民の負担はできるだけ現行制度にとどめて、また将来国民が等しい状態で給付を受けられて、また二十一世紀の健康を守る医療はこうあるべきだというビジョンを示して、そして皆さん方にまた厳しい時代での御負担もお願いしなければならない。これが筋だという考えを最近持つようになっておりますので、これは各党間で、担当の社会労働委員会で十分に御審議をいただくことになりましたから、その審議の中で皆さん方の御意見を十分取り入れながら、この法案を成立させていただくまでには、私は私なりの今後の二十一世紀の医療のあり方に対してのビジョンを皆さん方にお示ししなければならないと、今勉強しておるところでございます。
  200. 坂口力

    坂口分科員 将来に対する統合化への道ということについては、私も大臣も考えはどうやら一致したようでございます。しかし、今回出ておりますこの健保の改正案だけを見ますと、その辺のところが明らかにわからない。その辺のところがもう少し明確になれば、別な議論もまた生まれてくる可能性があったというふうに私は先ほど申し上げたわけでございます。  そこで、将来に対する一つ考え方として、それが最終的に一元化するか二元化するかは別にいたしまして、統合化への道をたどっていくといたしますと、そのプログラムですね。私は、最初出していただいた昭和四十七年から実はこの問題を言っているわけでありますが、今お話しになりましたように、健保にはそれぞれの歴史がある。したがって、なかなか一度には一本化をしていけないというお話を伺って、実はもう十年以上たったわけであります。来る年も来る年も同じようにそのお言葉を聞いてきたわけであります。しかし、その言葉を繰り返していたのでは、これは実はなかなか前進をしない。確かにそれぞれの歴史はありますが、歴史があるだけに、逆にその歴史を踏まえてその統合化への道を歩まないと、片や老人なら老人のところでひずみが出てきたから老人保健法をつくるとか、次から次へいろいろとだんだん複雑にしていかざるを得ない。もう少しすっきりとした形で保険制度を持っていくということが、やはり現在の行政改革の方針に沿いましても、これは大事なことではないか。個々ばらばらにやっておりますと、それに必要な事務的な経費だけを見ましても、これは大変な額に上っている。この事務的な経費のいろいろの試算をしている人もございますが、かなりな経費に上っているのだろうということが言われているわけでございます。そのことを考えますと、いよいよ統合へのプログラムを示していただくときに来ていると思うわけでございます。  そこで、今回のこの健保の改正の背景に、もしもそのプログラムについての議論が何かあったとすれば、それは一体どんなことであったのか。もしなかったとすれば、今後その統合化へ向けて、これは例えば年金でも、十年なら十年の年月をかけて統合化していく、五年なら五年の年月をかけて統合化していくという一つの方針が示されたわけでありますので、少なくともそれぐらいのプログラムはやはり国民に示さなければならないときに来ているのではないか。そうして、年々それに向けて一歩一歩前進をしないと、歴史がありますからということを言っていたのでは、いつまでたってもこれは前進しない。その辺はどうでしょうか。
  201. 吉村仁

    ○吉村政府委員 将来展望とそれに至るプログラムについての御指摘でございますが、先ほど大臣から申し上げましたように、私ども将来展望を持っていないわけではございません。  まず第一は、少なくとも国民医療費の規模というものを将来にわたって適正にしていきたい。そして、国民の保険料負担というようなことも考えますと、大体国民所得の伸びと同じぐらいの医療費の伸びにとどめたい、こういう将来の展望を持っております。第一がそれでございます。  それから第二が、医療保険の給付率につきましては統一を図っていきたい、こういうように考えておるわけであります。  それから第三番目は、人生八十年型の社会に適応するような医療保険の構造というものを考え、負担の公平というものを考えていきたい。  こういう三つの目標を持っておるわけでございますが、第一の、国民医療費を適正規模にとどめていくということにつきましては、これはあらゆる手だてを講じて医療費の適正化ということをやっていかなければならぬ、こう考えておるわけでございまして、今回の本人十割給付の見直しもその一つでございますし、診療報酬の合理化あるいは薬価基準の適正化あるいは指導監査、審査の強化というようなものは、すべてこの線に基づくプログラムであるというように私どもは考えておるわけであります。  それから、給付の公平につきましては、先ほども申し上げましたが、将来は八割程度が適当なんではないか。それは、現在の保険料の水準というものを変えない、こういうことで考えるならば八割程度がいいんではないか、こういうことでございまして、本人の給付率につきましても八割を目標にして考えていく。それから、今回の改正案におきましては、退職者医療につきましては少なくとも八割というようなものを一つの目標に描いて、そういう給付率にしていく、こういうことで考えておるわけでございます。ただ、何年度に何をどうする、こういう具体的なプログラムを組んではおりませんが、八割程度の給付率に向かって少しずつ前進をしてまいりたい、こういうことでございます。  それから、第三番目の負担の公平ということでございますが、確かに坂口先生指摘のように、統合化への道というのは一つの大きな目標であろう、こう思いますが、大臣からも申し上げましたように、それぞれ歴史と実績を持っておる保険制度を一挙に統合するというのも、これは現実の問題としてなかなか難しいというのも、先生も御理解していただけるところだと思います。その点につきまして、私どもはまず老人保健制度をつくって、七十歳以上の者については共同で負担していこうじゃないかという制度をすでにつくったわけであります。それから今度は退職者医療について、少なくとも現職の労働者とOBの労働者との間の負担あるいは国保の被保険者との負担、そういうものを調整するために退職者医療制度をつくる、こういうことで全体的な負担の調整あるいは財政調整というような形で徐々に進んでおる。確かに、今一挙に統合しろという御意見もあるかもわかりませんが、私どもは、少しずつその辺を改善していく方が現実的なんでは方いか、こういうように考えた次第でございます。
  202. 坂口力

    坂口分科員 私も今すぐ統一に向けて一潟千里に進めと言っているわけじゃないのです。ただしかし、現状のような状態を繰り返しておりますと、十年たちましても二十年たちましても、また結局は同じことになるのではないだろうか。十年前もきょうの御答弁も同じであるというその現実を見ましたときに、やはりもう少しそのプログラムを明確にしなければならないときに来ているのではないだろうか。先ほどお話しいただきましたのは、我々は主に財政面からのプログラムを持っているというお話ではなかったかと思いますが、確かに財政を抜きにしては考えられませんので、財政上のこうしたプログラムを持つことも必要でございますが、ただ、財政的な面だけのプログラムでいいのだろうか。そうではなくて、財政は裏打ちされてはおりますけれども、やはり枠そのものについても統合をしていくプログラムというものを持たなければならないのではないだろうか。そうしたことがあって初めて健保の問題というのは理解されるのだというふうに私は思うのです。  先ほどお話もありましたように、財政調整等の問題が進んでおることも承知をいたしておりますし、これなんかはやはり一歩一歩、私は統合化への地ならしとしての意味はあるというふうに思っている一人であります。しかし、それもまことに微々たる一歩であって、全体を一つの統合化へ進めようとする力にはなってきていない。やはりもつ少し積極的な姿勢を厚生省としてお出しをいただく必要があるのではないだろうか。それは、厚生省がお示しになりましたら、またいろいろの抵抗はございましょう。しかし、どういうわけか、厚生省がこの問題については、よし、それではどんな大きな反発が起ころうと、一発やってみようという姿になかなかなられないのですね。だからひとつ厚生省の方が、よし、それでは一遍やってみようと立ち上がってもらわないことには、この問題はなかなか進まない。十年一日のごとく、百年一日のごとく進んでいくだろうと私は思うのです。しかし、それでは今回のこの健保論議のように、皆さん方から一生懸命案を出していただいてもなかなか理解が得られにくい。得られにくい裏側には、地域によって、あるいはまた勤め先によって、あるいはまた家族と本人とによっていろいろの差があるではないか。家族の中の差は、これは一家の大黒柱と家族との間に差があっても皆さんが認めるといたしましても、勤める場所によって、農業をなすっている方と公務員の方と、大きい企業の方と中小企業の方と、ばらばらになっているではないか、ここはどうするのだという議論が必ず出てくる。ここをひとつ、今はできないけれども将来はこうするんだ、こういうふうな道をたどるための一里塚として、今回この改正をするのだという言葉がなければ、なかなか多くの人を説得することは難しい。  そういうふうな意味で私は今申し上げているわけでございますがい何とかひとつ一歩前進を、優秀な現厚生大臣の間に何とかしていただくことができぬだろうか、政治家として、ひとつその辺の御答弁をいただきたいと思います。
  203. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今までの制度間格差の最大の問題は、やはり国保の給付率七割、また被用者保険十割、こういうのが非常に大きな難点だったわけで、今回の改正案を通していただければ、それぞれの保険における給付条件というものがみんな非常に接近してまいりますから、先生の御趣旨の方向に進むのに大きく展望が開けてくると私は信じております。
  204. 坂口力

    坂口分科員 大臣、下げる方のお話ばかりではなくて、これは下げなければならない、しかし上げる方の話は、たとえ今すぐはできないとしても、将来はこういたしますという考えのもとの一歩として下げるところから始めるとか、一歩として上げるところから始める、これは払いいかと思うのですよ。だけれども、下げることだけを明確にしておいて、ほかのところを明確にせずにおるところに問題があるというところを私は今指摘しておるわけで、大臣は自分のお気持ちの中で、これは一歩下げるのは将来に対する布石なんだと、御自身ではあるいは思っておみえになるかもしれませんけれども、国民の側から見れば、それはわかりませんね。だから、もっと国民の側から見てわかるような形にしないといけないわけで、そのためにはやはり大臣の姿勢の中で、こういう統合化への道を進めますという案を、ぜひひとつ五十九年度の間に今国会には多分間に合わぬでしょう――五十九年度の間にひとつ煮詰めていただくことはできませんか。
  205. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 最初に、私が坂口先生の御質問に対して、私は今回これは何か一番ひどいときに大臣になってしまったのですけれども、一期おくれて大臣になって、十割を九割にするのではなくて、国保の七割を八割にするときの大臣になりたかったなというようなことを申し上げたのも、私のそういう気持ちの一つのあらわれでありますが、御指摘の点、私も全く同感でありますので、何とか、単に被用者保険の給付率を引き下げるということが今回の改革案ではなくて、将来やはり国民の皆さん方がすべて平等に保険の恩恵を受けられるようなビジョンというものを、できるだけ早く示すように努力してまいりたいと思います。
  206. 坂口力

    坂口分科員 大臣がそのお気持ちになっていただきましても、やはり偉大な吉村保険局長のバックアップがないと、これはなかなかでき得ないことでありまして、保険局長、大臣がそのお気持ちになられたら、ひとつ大きくバックアップをして、どうしても前進をするように、何とか改革の一歩を踏み出せる何かを考えていただくという御答弁をいただけませんか。
  207. 吉村仁

    ○吉村政府委員 すでに大臣が答弁申し上げましたように、将来の展望について考えるという御下命を受けております。したがって、私は大臣の御下命に従って、これから御趣旨に沿うような中長期の展望というものを、医療保険だけではなしに、先ほどから申されましたように、健康全体の問題でございますので、医療保険だけにとどまらず、健康づくりの問題あるいは健康増進の問題、医療の供給体制の問題等を含めて、将来の展望を示す作業を進めていくつもりでございます。
  208. 坂口力

    坂口分科員 何回かもうくどいようで申しわけありませんが、医療統合化への道としてその第一歩を踏み出すべき考え方を示されるというふうに理解させていただいてよろしゅうございますか。
  209. 吉村仁

    ○吉村政府委員 統合というビジョンというものと直ちに結びつくようなプログラムができるかどうかは私もちょっと疑問でございます。あるいは統合という形でなしに、財源の一元化というような方法もございましょうし、財政調整という方法もございましょうし、その辺を含めてひとつ将来を考える道をいろいろと模索してみたい、こういうことでございます。
  210. 坂口力

    坂口分科員 そこへ行くと、どうも評がぼやけてしまうのですね。財政面からのことは今も皆さんはもうおやりになっている、こうおっしゃっている。我々の考え方と若干違うところはあるけれども、皆さんは財政面から一つの展望を持って現在やっているとおっしゃっている。しかし、それではいけないということを私は言っているわけでありまして、制度そのものの統合化というものをあわせて進めていかないと、財政面ばかり考えていたのでは複雑化するだけだということを指摘をしているわけでございますので、これはひとつ大臣の所信をお聞きをして、この問題はけりをつけたいと思います。
  211. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私の気持ちは今までの答弁の中で申し上げたと思うのですが、今局長からも答弁ありましたように、これは保険制度はもとよりのこと、やはり医療基盤の安定とかあるいは僻地医療の振興とか、いろいろ国民の健康を守り、また病気やけがをした場合、安心して二十一世紀までこの国の人たちが生きていかれる基本的な制度の改革というものについての構想は、私ども持っておりますから、できるだけ早い機会に皆さん方の納得のいくようなビジョンを示してまいりたいと思います。  具体的にそれが今すぐ制度を一本化というようなことになりますと、これはまだいろいろ、私どもも与党のそれぞれの都会の皆さん方にも相談しなければなりませんし、また社会労働委員会を通じて各党の、もちろん公明党の皆さん方にも御相談を申し上げておりますが、それぞれの党の皆さん方との相談も申し上げていかなければなりませんので、今しばしこの具体的なことについては御容赦をいただきたいと思います。
  212. 坂口力

    坂口分科員 あと一分半ばかりですが、国保の給付率のアップの問題も先ほどちょっと出ましたが、これはもう少し私も聞こうと思っておりましたが、ちょっともう時間がございませんけれども、今回の健康保険法の改正案が出ますときに、国保の方は上げますよという話が初めワンセットになっていたと思うのですが、いつの間にやら、セットになった方がどこへ消えたのやらわからぬような形になっていきつつあるような気がしてなりませんけれども、アップの方は一体いつごろから大体見通しとしてはできるのかということをもう一遍お聞きをしたいのと、それから時間がございませんので、あわせてもう一つ申し上げます。  一人法人の問題も、先ほど既にもう出ましたけれども、内容が少し違います。一人法人の問題につきましては、議員立法としてつくろうじゃないかというお話もあるやに聞いておりますけれども、これは政府から出される法律としてつくられるおつもりですか。それとも議員立法にゆだねるべきものだというふうにお考えになっておりますか。ひとつ両方ともお願い申し上げます。
  213. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先ほど保険局長からも、現在でも集まってくる保険料、また国庫の支出、給付、こういうものを一つに考えると八割程度の給付という話を保険局長から申し上げておるわけでありますが、先生の御趣旨に体していくものは、まず給付条件を、国民の皆さん方が等しくなっていくというのが大きな、先生指摘の問題にこたえる方向の一つであろうかと思います。そういう方向はできるだけ早く私も示すことができるようにしたいので、本当は今度も、私も、被用者保険の皆さんは一部御負担をお願いします、国保の皆さんは七割給付を八割に上げますというような案で大臣を務めていれば、もっとうんと国会討論会なんかに出ても楽だったのでありますが、まだそこまでいっておりませんが、できるだけそういう方向に行くのがやはり理想に近づいていく姿であるという認識は持っておるのであります。  また一人法人の問題は、先ほど申し上げましたように、私も大変重要な問題であると認識しておるのでありますが、これから提出予定の医療法は、前回廃案になりましたそのままのものを出しておりますので、政府提案の中には入っておりませんが、これからの審議で、国会の先生方と十分相談してその方向に進めたいと申し上げておるのは、そういう事由でございます。
  214. 坂口力

    坂口分科員 では、時間が参りましたので終わります。
  215. 橋本龍太郎

    ○大村主査 これにて坂口力君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして厚生省所管についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  216. 橋本龍太郎

    ○大村主査 次に、昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算労働省所管について政府から説明を聴取いたします。坂本労働大臣。
  217. 坂本三十次

    坂本国務大臣 昭和五十九年度一般会計及び特別会計予算のうち労働省所管分について、その概要を御説明申し上げます。  労働省一般会計の歳出予算額は四千九百三億二千二百万円で、これを前年度当初予算額四千九百五十億九千四百万円と比較いたしますと、四十七億七千二百万円の減額となっております。  次に、労働保険特別会計について御説明申し上げます。  この会計は、労災勘定、雇用勘定、徴収勘定に区かされておりますので、勘定ごとに歳入歳出予算額を申し上げます。  労災勘定は、歳入歳出予算額とも一兆六千二百七十九億六千百万円で、これを前年度予算額一兆五千七百六十一億九千九百万円と比較いたしますと、五百十七億六千二百万円の増加となっております。  雇用勘定は、歳入歳出予算額とも一兆九千五百六十億六百万円で、これを前年度予算額一兆八千三百六十四億五千九百万円と比較いたしますと、千百九十五億四千七百万円の増加となっております。  徴収勘定は、歳入歳出予算額とも二兆四千二百十六億五千九百万円で、これを前年度予算額二兆三千四百六十三億四千八百万円と比較いたしますと、七百五十三億千百万円の増加となっております。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計の石炭勘定のうち当省所管分としては、炭鉱離職者の援護対策等に必要な経費として百八十一億六千九百万円を計上しておりますが、この額は、前年度予算額百八十四億四千九百万円と比較いたしますと、二億八千万円の減額となっております。  昭和五十九年度の予算につきましては、限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、財源の重点配分を行うことにより、最近の雇用失業情勢にも十分配慮しつつ、きめ細かく、かつ、効率的な労働施策の実現を図ることこいたしております。以下、主要な事項につきましてその概要を御説明申し上げるべきではございますが、委員各位のね手元に資料を配付してございますので、お許しを得て、説明を省略させていただきたいと存じます。何とぞ、本予算の成立につきましては格別の御協力をお願いいたす次第であります。
  218. 橋本龍太郎

    ○大村主査 この際、お諮りいたします。労働省所管関係予算の重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  219. 橋本龍太郎

    ○大村主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――  〔坂本国務大臣の説明を省略した部分〕  次に、その主要な内容について概略御説明申し上げます。  第一は、高齢化社会の進展に対応した労働対策の推進に必要な経費であります。  高齢化社会の進展の中で、経済社会の活力を維持発展させていくためには、高年齢者に対し安定した雇用就業機会を確保することが重要であります。  このため、六十歳定年の一般化の早期実現に向けて、引き続き、取り組みのおくれている企業に対する行政指導の推進に努めるとともに、高年齢者職場改善資金の融資枠の拡大等各種相談援助措置の充実活用により、定年延長の推進に一層努力してまいります。  今後、高齢化の波は六十歳台前半層に移行し、この年齢層の高年齢者が大幅に増加するものと見込まれております。このため、五十九年度においては、特に六十歳台前半届の雇用対策に政策の重点を置き、短時間勤務を含む多様な形態による雇用延長を促進するための事業主に対する助成、短時間勤務による雇い入れを促進するための事業主に対する助成、退職前事業主による定年退職者等の再就職のあっせんを促進するための助成などの施策を講じるとともに、シルバー人材センターの拡充強化等、この年齢層の多様な就業ニーズに対応した雇用就業対策の総合的な整備を図ることとしております。  さらに、中高年齢者については、その職業能力の開発向上を図ることが極めて重要であります。このため、生涯訓練基本理念に立って、事業主等が行う中高年齢者等の教育訓練に対する生涯職業訓練促進給付金の活用や、公共職業訓練施設における高年齢者向け職業訓練科の増設を図る等、中高年齢者の職業能力の開発向上の推進に努めてまいります。  これらに必要な経費として八百七十九億八千二百万円を計上いたしております。  第二は、産業構造・就業構造の変化に対応した労働対策の推進に必要な経費であります。  現在、我が国産業界においては、マイクロエレクトロニクスを利用した技術革新が急速に進展しており、労働面においてもこれらの変化に適切に対応することが重要な課題となっております。マイクロエレクトロニクスを中心とした技術革新の雇用に及ぼす影響に対応するため、雇用職業総合研究所の研究体制等の強化を図るとともに、部門別雇用安定労使会議の開催による労使その他の関係者の意志疎通の促進を図るなど、積極的な対策を講ずることとしております。また、マイクロエレクトロニクス機器の普及に対応した職業訓練や、安全衛生対策の充実に努めてまいります。  今後、雇用拡大の見込まれる第三次産業の分野において適正な労働条件が確保され、安定した雇用の場が形成されることは極めて重要であります。このため、商業、サービス業等の事業主の団体を対象として、自主的労働条件改善モデル集団の指定と労働条件改善アドバイザーの設置等による指導援助を行うことにより、労働時間を初めとする労働条件の自主的な改善を促進するなど、産業社会実態の変化に即応した的確な施策を推進してまいります。  さらに、パートタイマーの雇用の安定、労働条件の確保等を目的とする総合対策を盛り込んだパートタイム労働対策要綱を策定し、これに基づいて労使に対する啓発指導に努めるとともに、パートバンク等を中心とした職業紹介体制の充実に努めてまいります。  これらに必要な経費として十一億七千三百万円を計上いたしております。  第三は、雇用失業情勢に即応した雇用対策の推進に必要な経費であります。  最近の雇用失業情勢は、なお厳しさを残しているものの、景気の回復を背景として改善の動きが出てきております。労働省としては、こうした改善の動きを確実なものとするため、失業の予防、再就職の促進を図るとともに、業種、地域における失業の実態に即した雇用対策を機動的に進めてまいります。  また、雇用保険制度については、雇用失業構造の変化に対応して、失業者の再就職の促進を図るとともに、制度の不合理な面を是正し、将来にわたる制度の健全かつ機能的な運営を確保することとしており、今国会にそのた凶の法律案を提出いたしました。  このほか、我が国の経済社会の著しい変化に対応して、労働力需給のミスマッチを防止するため、機動的な職業紹介を推進するとともに、雇用情報提供等の雇用サービス機能を強化することとしております。  これらに必要な経費として一兆三千九百六億七千七百万円を計上いたしております。  第四は、労働者の安全と健康を確保するための施策の推進に必要な経費であります。  働く人々の生命と健康を守り、快適な作業環境を形成することは、労働行政の最重要課題であります。  五十九年度においては、産業安全研究所の爆発・火災研究施設の充実などにより、爆発・火災による重大災害の防止対策の確立を図るとともに、機械等の安全確保、建設業における労働災害防止のための施策の促進、じん肺、振動障害等の職業性疾病対策を進め、労働災害の着実な減少を図ることとしております。  また、産業医科大学に大学院及び藤業生態科学研究所を設置するなどにより、産業医学の振興を図ることといたしております。  なお、不幸にして労働災害をこうむった方々や、その遺族に対しましては、適正迅速な労災給付を行うとともに、労災被災者の社会復帰の促進を図ることとしております。  これらに必要な経費として九千三百六十五億二千八百万円を計上いたしております。  第五は、経済社会の変化に対応した能力開発の推進に必要な経費であります。  産業構造の変化、産業技術の高度化等社会経済情勢の変化に伴い、職業訓練の果たす役割はますます重要となってきております。特に高齢化社会への移行の中で勤労者が生涯を通じて職業能力の開発向上ができるよう、民間、公共一体となった訓練体制の整備を図る必要があります。  このため、民間における能力開発を振興するため、第一で述べたように、生涯職業訓練促進給付金の積極的活用を図るほか、中小企業事業主等の行う認定訓練に対する助成の充実、地域職業訓練センターの増設等を行うこととしております。また、技術の高度化、多様化に対応した公共職業訓練を推進するため、総合高等職業訓練校の職業訓練短期大学校、技能開発センターへの転換を推進するとともに、職業能力評価体制の整備と技能尊重機運の譲成を図ることといたしております。  これらに必要な経費として六百七十九億五千八百万円を計上いたしております。  第六は、職業生活の充実と労働者福祉対策の推進に必要な経費であります。  労働者の福祉の増進を図るため、週休二日制の普及等労働時間短縮については、今後とも労使の自主的努力を基本に、経済動向、産業、企業の実情を踏まえ、その一層の推進に努めてまいります。  また、勤労者の貯蓄や持ち家などの資産形成を促進するため、勤労者財産形成持家個人融資制度を初めとして、勤労者財産形成促進制度の普及を図ることとしております。  このほか、最低賃金制度の推進、未払い賃金立て替え払い事業の充実等労働条件に関する施策を推進するとともに、中小企業退職金共済制度の普及促進、勤労青少年福祉対策の推進、勤労者のための福祉施設の整備等を行うこととしております。  これらに必要な経費として二百六十二億六千二百万円を計上しております。  第七は、雇用における男女の機会の均等及び待遇の平等の確保対策の推進に必要な経費であります。  雇用における男女の機会の均等と待遇の平等については、婦人差別撤廃条約の批准に向け、国内法制等諸条件の整備に努めることが、昭和六十年までの国内行動計画の後期重点目標の重点課題とされております。  このため、雇用における男女の機会と待遇の平等の促進のために必要な法制の整備が必要であると考えております。法制整備の内容については、現在、婦人少年問題審議会において鋭意検討が進められているところでありますが、その結論を待って、関係法案を今国会に提出する所存であります。  また、育児休業制度の普及を促進するため、特定職種育児休業利用助成給付金等の拡充を図るほか、再就職型等女子の就業パターンの多様化に応じた施策を推進することとしております。  これらに必要な経費として十二億千三百万円を計上しております。  第八は、障害者等特別の配慮を必要とする人々に対する施策の推進に必要な経費であります。  心身障害者等の特別の配慮を必要とする人々に対して、雇用機会を確保するための雇用対策を積極的に推進するほか、職業生活を援助するための施策の充実を図る必要があります。  このため、心身障害者対策については、身体障害者雇用率達成指導を強力に推進するほか、特に、就職の困難な重度障害者及び精神薄弱者については、重度障害者雇用企業の設置に対する融資制度の創設、地方公共団体の積極的参加のもとに、民間の活力を生かした第三セクター方式による雇用企業の育成を図るなど、雇用改善を促進するための条件整備を図ることとしております。また、障害者の職業的自立を図るためには、その職業能力の開発向上等が重要であります。このため、障害者一般の職業訓練校への入校の促進、入校者の障害の重度化に対応した身体障害者職業訓練校の整備を図るほか、治療から社会復帰までを一貫して行う総合リハビリテーション施設の設置計画を推進することとし、五十九年度においては医療部門の建設に着手することとしております。  このほか、建設労働者、季節・出稼労働者、同和関係住民、炭鉱離職者、母子家庭の母等、インドシナ難民等のための雇用対策についてもそれぞれ充実を図るほか、中国引揚者についても特定求職者雇用開発助成金を適用することによりその雇用の促進を図ることとしております。  さらに、失業対策事業につきましては、今回、その運営について見直しを行ったところでありますが、今後とも事業の適正な運営に努めてまいる所存であります。  これらに必要な経費として千四百十九億七千三百万円を計上いたしております。  第九は、経済社会の変化のもとでの労使関係の安定の推進に必要な経費であります。  今後の経済社会情勢の大きな変化に対応するためには、労使が広い視野から自主的に話し合うことによって、これまでに形成されてきた良好な労使関係を維持発展させ、問題の合理的、平和的解決を図る必要があります。  このため、今後とも産業労働懇話会等の場を通じ、政・労・使間の相互理解と信頼関係を一層深めることに努めるとともに、労使関係の実情に関する調査研究等を行い、これらの成果の普及を通じて、安定した労使関係の形成を促進することとしております。  これらに必要な経費として七億五千四百万円を計上いたしております。  第十は、変動する国際社会に即応する労働外交の推進に必要な経費であります。  近年、政治、経済、文化面での国際相互依存性が高まるに伴って、労働問題も一層国際化の度合いを深めており、我が国の置かれた国際的地位にふさわしい労働外交を積極的に展開すべきと考えております。  開発途上国の経済社会開発に対する援助協力を進めるに当たっては、特に人材育成への積極的協力が望まれております。このため、民間企業の行う海外職業訓練を援助するための施設として設置された海外職業訓練協力センターの運営開始、国際技能開発計画の充実等、民間の活力を生かした海外技術協力を推進するとともに、国際機関の行うアジア・太平洋地域技能開発計画への協力等、開発途上国労働者の労働能力の開発その他、多角的な技術協力の推進を図ることとしております。  また、先進工業国、開発途上国双方に、我が国の安定した労使関係に対する関心が高まっており、他方、貿易摩擦が激化する背景として、我が国の労働事情に対する各国の正しい理解の必要性が指摘されております。このため、従来から行ってきた先進工業国の労働組合指導者の招聘に加え、米国等の若手中堅労働組合指導者の招聘制度を創設するとともに、開発途上国の労働問題に対する我が国労使による協力の促進等、労働関係者の交流を推進し、相互理解の促進に努めてまいります。  これらに必要な経費として三十八億六千五百万円を計上いたしております。  以上のほか、総合的な労働政策の樹立と、労働行政体制の整備及び一般行政事務費等に必要な経費を計上いたしております。  以上、昭和五十九年度労働省所管一般会計及び特別会計の予算について概略御説明申し上げました。  何とぞ、本予算の成立につきまして、格段の御協力をお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  220. 橋本龍太郎

    ○大村主査 以上をもちまして労働省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  221. 橋本龍太郎

    ○大村主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  222. 小林進

    小林(進)分科員 今二時四十分、私に与えられた時間は三十分でございますから、三時十分を目途にして質問をやります。  質問の要旨はもう官僚のところへ行っておりますから、大体準備はされておりますが、駆け足でひとつ申し述べていきたいと思います。  第一番には、日雇い労働者の総数、これは職安に登録してあるだけじゃありませんよ。あとは、その実態並びに出稼ぎ労働者の総数及び実態。これは全部登録の人員を言っているのじゃないのだ。むしろ登録外の者も含めて、その総数を承っておきたいと思うのであります。     〔主査退席、小杉主査代理着席〕
  223. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 日雇い労働者数でございますが、五十九年一月末現在で百二十八万ということでございます。ここ数年大体百三十万人前後で推移いたしておりますが、これらの人のうち、産業別には建設業に最も多く、日雇い労働者の約五十万人前後が建設業での就業となっております。  それから出稼ぎ労働者についてでございますが、出稼ぎの定義はいろいろあるわけでございますが、一応私どもの方としては、一カ月以上一年未満居住地を離れて他に就労される、その就労期間経過後は居住地に帰る者、こういう定義で押さえております。これによりますれば、全国で約二十七万人となっておりまして、その就労分野は、建設業が約六割、製造業が約三割、こういうような就業状態になっておるわけでございます。
  224. 小林進

    小林(進)分科員 次は、私は建設業に対する日雇いとか出稼ぎの実態をひとつ聞きたいのでございますが、私どもの大ざっぱな短絡的な計算だけれども、全国には建設業者というものは大体五十万、それは超一流の大企業から吹けば飛ぶような土建業者を含めて五十万。そこで働いているいわゆる日雇い労働者等、遠くから来れば出稼ぎです。これを大ざっぱにつかんで五百万人と私どもは踏んでいるのですが、この数字はどうですか、間違っていますか。
  225. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 私どもがつかんでおります建設業、約四百万人、こんなふうにつかんでおります。
  226. 小林進

    小林(進)分科員 建設業で働いている方が四百万。私どもは五百万と踏んでいるが、百万の差がある。まあ、あなた方のベースに入って四百万と踏もう。その中で占めるいわゆる常用とアルバイトというか日雇い、臨時工。常職者と臨時工との差は一体どのくらいある。
  227. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 臨時、日雇いの割合が一八%、こういう数字をつかんでおります。
  228. 小林進

    小林(進)分科員 甘いね。それは計算も全然問題にならぬな。
  229. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 ちょっと追加いたしますと、総理府の労働力調査でつかんでおりますものは、建設業四百二十三万、そのうち常用が三百四十六万、それから臨時が二十五万、日雇いが五十一万、こういうことで、臨時、日雇いの割合を出しますと一八%という数字でございます。
  230. 小林進

    小林(進)分科員 それではお尋ねしますが、その建設業者の下で働いている四百五十何万の労働者の中に、一体農業者がどれだけ含まれていますか、農業者の比率。
  231. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 いわゆる出稼ぎという形でその中に農業者がどのくらい含まれるか、こういう形で私どもで調査いたしておりますものによりますと、出稼ぎ労働者の八〇%が農業者、こんなふうな数字をつかんでおります。
  232. 小林進

    小林(進)分科員 それは出稼ぎの中に占める農業者の比率は八〇%だが、私の言っているのは、建設業者に働いている日雇いの中に占める農業者の比率がどれくらいあるか。
  233. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 日雇いで働いておられる方のうちの農業者という形では、私どもつかんでおりません。
  234. 小林進

    小林(進)分科員 つかんでいないということをはっきりと言いなさいよ、小さい声で言わないで。そういうことを言ってもらいたいのだ、私は。  ところで、問題を詰めていきますが、出稼ぎ労働者で農業者が八〇%とわかったが、この建設業者に勤めている出稼ぎで日雇いの働いている日数――いや、時間もないから、ひとつ問題提起を別にしましょう。  今農村に農業者と称する者が、専業、第一種兼業、第二種兼業を含めて、大ざっぱに言って五百万戸を切れますけれども、その中に第二種兼業と称する者が、これは土曜日の農水大臣への質問でも明らかにしたのだが、七割を超えて八割近くにいっている。第二種兼業農家は、一年間の農家所得というものは、専業よりも第一種よりも多いのです。平均五百四十五万幾らいっている。しかし、その中に占めている農業所得というものは八%くらいしかない。九二%、九三%はみんな労働賃金ですよ。その労働者、第二種兼業が、五百万戸農家の七割か八割を占めているでしょう。その人たちは、数字は別として、四百万近くの農家は、農家という名前だけだ。農村に住んでいる、土地は持っている、資産家だ。土地を持っているから昔の小作とは違う。土地は持っているが、それは生産手段ではない。その土地から浮いてくる自己の収入というものはまさに七%か八%、四十四万円だそうだ。第二種兼業農家の五百何十万円の収入の中で占める農業所得は四十四万円だ。これは一体何だね。これを農業者と言い得るかね。  しかし、この人たちが一年間に働いている日雇い日数、いわゆる出稼ぎ日数はどのくらいありますか。いわゆる土建屋の下で働いている農家の日雇い者が一年間に働いている労働日数は、どれくらいありますか。これもわからぬかね。わからなければわからぬと言ってくださればよろしゅうございます。
  235. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 ずばりの数字としてはなかなかあれですが、私ども、今小林先生おっしゃるような似たような数字をいろいろつかんではおるわけでございます。現在、兼業従事者が男女計で八百十五万ございまして、その内訳としまして、これは男だけの内訳でございますが、恒常的に勤務しておるという方が三百十七万いる、主に出稼ぎへ行っておるという方が十一万ございます。それから、出稼ぎではないが主に日雇い、臨時雇いという形で結局農業以外のところに就業しておられる方が百一万おられる、こういうような数字がございまして、そして農村においでになりながら実は農業に従事する期間が二カ月以内、二カ月以下しか農業に従事しないという出稼ぎ者が、出稼ぎに行っておられる方の約四割は二カ月以下の農業しかやっていない、こういうような調査がございます。
  236. 小林進

    小林(進)分科員 大体僕はその数字も信頼に足る数字ではないと思っていますけれども、一応物を考える基準の土台の数字が出ているからそれはそれでいいと思いますが、第二種兼業と称する農家の収入が年間の所得の中のたった七%しか占めていないような人たちは、一年間で農業で働く期間は、二カ月以下とおっしゃったけれども、私は一カ月もないと思う。これは日曜百姓と言われたり、朝晩百姓と言われたり、じじばば百姓と言われていることなのだが、実際は農家じゃない。収入の面においてもたった七%じゃないですか。労働の日数においても、これはもう一年の大半は出稼ぎか日雇いか、いわゆる日々雇用で働いているのです。この諸君を一体どう位置づけるかということが、これから私はあなたに質問したいのです。  これを、農林水産省の主管において農家と位置づける規制も何もないのです。むしろこれは、労働省の労働政策の対象に持ってきていい人間なんですよ。それを言いたいのだ。それをあなた方ちっともやってないだろう。こういう出稼ぎ者の、出稼ぎして一年間毎日毎日働いている日雇い労働者に対する最低賃金は一体どうなっているかね、適用していますか。日雇い健康保険を適用しておりますか。失業保険を適用しておりますか。年金の加算にこれを計算していますか。年金はどこにいっている、この人たちの年金は。国民年金だろう、農家だから。最低賃金も適用になっていないだろう。日雇い健康保険も適用しているかね、してないだろう。失業保険をくれているかね。失業保険の対象にしているかね、していないだろう。  日雇いだとか出稼ぎというものは、労働大臣、私の言うこと聞いてください、人生における一番不安定な職業ですよ。不安定な職業に何百万という農業者がそこで働いているのだ。これに対する何らかの保護政策も法律の適用もない、社会保障の制度の適用もないというのは行政の怠慢じゃないかね。どうです労働大臣、今の農村はまさに荒廃に帰しただけだ。農地はあるけれどもちっとも生産手段じゃないのですよ。ただ農地という土地を持っているという自己満足で、働いているところが一番最低の一番不安定な職業に投げ出されている。なぜそれをあなた方手を打たないのですか、やってくださいよ。だから、旦展健康保険を適用していますかと言うのです。失業保険を適用していますか。年金の計算にそれを入れていますか。労働者の扱いもしてないじゃないですか。これは一体どうなっているの。
  237. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 確かにおっしゃいますように、農業政策の一応対象ということでありながら、農業そのものでは飯が食えないというような状態の中で、結果として都会地等へ出稼ぎに来ておられる、あるいはまた地元の公共事業等に日雇いで就労されておるというような事情があるわけでございまして、そういった点については今後十分また私どもも対策の手を伸ばしていかなければならぬ。  ただ、出稼ぎ対策あるいはまたその方々たちの出稼ぎ対策としてはやはり相当いろいろ問題もございまして、私ども安定機関としては現状においてできる限りの努力はいたしておる、あるいはまた建設労働者雇用改善法という形の中でできる限りの努力はしておるということでございまして、しかしそれで十分かと言われればまだ今後問題があると思います。現に今加入の状況のお話がございましたが、雇用保険の加入率は、これは出稼ぎなんかに行きました後保険をもらうという関係もありまして九三%になっておりますが、健康保険については約六〇%、それから年金の関係は一三%というようなことで、雇用保険以外は比較的適用が低い率になっておる、こんな状況でございます。
  238. 小林進

    小林(進)分科員 あなたの言っているのは、職安を通じたりして登録されている出稼ぎでしょう。それはそれで私は認める。けれども、出稼ぎには、あなたのいわゆる職安を通じない縁故の出稼ぎだとか、あるいは雇い主と長期の契約を結んでいって、職安も何も通じないで、百姓終わればぱっと飛んでいってそこで働いているとか、そういうのを全部あなた方は掌握していますか。してないじゃないですか。私が言うのは、そこまでも緻密にとらえてやれと言うのだ。あなた方は職安を通ずるいわゆる登録をした出稼ぎだけの話をしているから、それは白眉健康保険もある、失業保険もあると言うけれども、それではだめですよ。だから、もっと幅広く、働いている労働者の全部の生態をつかむような緻密な方策をやらなければだめですよ。  だから、今一番困っているのは、これを労働省の管轄に入れるか農水省か。農水省だって、こういう一年中日雇いで行ったり、出稼ぎで行ったりして、百姓仕事なんか一カ月もやらないような者も農業政策の対象にしてやるから、日本の農業政策はさっぱり生きたものにならないのです。世界的な農業の競争においていつも敗れて、春でも夏でも、農民運動、農業政策といえば、補助金よこせ、米価の値上げせい、もっと政府が手厚く保護せい、政府に対する要求運動だけだ。物もらい運動だ。こんなものが農業運動になってしまっている。それでは、第二種兼業までも農業で救済するなんてとてもできる話じゃない。実に半端なおかしな農業政策になってしまっている。そして、ミカンがどうの、オレンジがどうのといってやっているが、これは一方であなた方の労働政策がおくれているからなんだ。こういうのは農水省の所管から持ってきて労働省所管の中に入れて、まずきちっと調査活動、基礎活動から始めて、この人たちが主たる職業を通じて生活が安定するように面倒見なくちゃいけないじゃないですか。どうですか労働大臣、あなたは私の言っていることはわかりますか。わかるだろうな、頭がいいからな。わからぬと言っちゃ困る、労働大臣務まらないから。こういう重大なポイントがみんな外れているんだ。これはきちっとやってくださいよ。たった三十分しかない時間で大きな声を出していると終わってしまうから、私は強く要求しておきますよ。これは問題の提起なんだから、結論を出すのじゃない。これを私は提起をしておいて、今度はまた社労委員会に行ってぱちぱちやるのです。あなた方がこれに前向きの結論を出さないうちはどこまでもやるのです。私は人間がしつこいのです。問題を提起しておきます。  第二番目、今全国で三千有余の市町村がある、自治体がある。特に、農村に行って今農村の方々が一番困っているのは何だと思いますか。それはもちろん今申し上げました職業の不安定の問題、これは一番悩んでおりますよ。それは皆さん方の職安に登録してあなた方から保護されている者はまだいい、帰ってきたら三十日でも五十日でも失業手当をもらえるような身分の人はいいけれども、それから外れている者は惨たんたるものだ。しかし、農村へ入ってみるとそれよりもっと困っている問題がある。それは何だ。嫁がないということなんだ。人口が二千や三千しかいないようなどんな小さな農村に行ってみても、私は必ず聞くんだ。おい、ここで一体嫁のない男はどれぐらいいるか。大体三十五歳から四十歳以上の方々で、私の村に嫁のない者が八十名おります、あるいは百名おります、あるいは六十名おります。これは私だけでなく、大臣、あなたもお忙しいでしょうけれども、富山県の農村へ行って聞いてみてください。(坂本国務大臣「石川県」と呼ぶ)石川県へ行ってひとつ聞いてみてください。どこの農村へ行ったって、特に山間部なんかへ行ってごらんなさい。そういう質問をしたら、どこかで言ってたよ。嫁のないのは農村ばかりじゃありません、都会だって今なかなか嫁がいなくて、独身を楽しんでいる男がいて困りますと言った。都会における三十五や四十の男が嫁さんをもらわないのと、農村において嫁のないのとでは本質的に違うのです。この問題を一体どう解決するか。どの省がこれを解決するかと聞いてみてもわからないから、これはやはり働いている者は労働を主体にして働いているんだから、労働省以外に管轄するものはないだろうということになったんだが、どうして管轄すると言ったら、地方における職業安定所、あの中に結婚相談所という看板を塗りかえて、あそこでこの問題の解決を目指す以外にないだろうと言った。これは笑い話であるけれども、一番深刻な問題なんだ、基本的人権の問題だ。  どうですか、この問題。これは調査してもらえないかね。どこで調査したらいいかな。全国的に、三千有余の市町村の中で四十過ぎて嫁のない独身者が、しかもそれは、もらいたくなくてもらわないのはいいですよ、嫁がもらいたくてしようがなくてももらえない三十五歳から四十歳以上の男性がいわゆる農家の中にどれくらいいるか、調べてもらうわけにはいかぬかな。どこの省で調べてもらったらいいか、意見を聞かせてください。1時間がありませんから言いますけれども、この人たち自体は出稼ぎや日雇いで行っているのですから、労働省の管轄に入るのですよ。今までは農家ということで農水省の管轄に入ったけれども、本質的にはこれはあなた方の管轄に入る。この働いている労働者の配偶者の問題は関係なきにしもあらず、関係あるんじゃないですか。やりませんか。やる気がないならひとつこの問題の解決は閣議の中で決めていただきましょう。もう時間が来ましたが、これは深刻な問題ですよ。答弁なしですか。
  239. 坂本三十次

    坂本国務大臣 これは一行政府の役人ではとてもできない。小林先生も選挙区でよく御存じのとおり、私の選挙区にも、特に奥能登なんというところは出稼ぎ地帯なんです。行けば、一番深刻なのは、稼ぎの方はいいとして、最後は嫁さんと必ず言う。これは一番大事なんです。しかし私は、残念ながらこの嫁さんを必ず連れてきてやるぞとはなかなか言えませんよ。これだけは難しいね。政治家とすればいろいろ、就職の頼み事など駆けめぐって何とかお世話はしておりますよ。しかし嫁さんの世話だけは。いいお知恵があったものなら一遍御指導をいただきたいと、反対にどうかお願いをしたいと思います。何かいい知恵はないですかね。
  240. 小林進

    小林(進)分科員 もう時間もありませんから、これは行政がどこかで介入をして解決しなければならぬぐらい、問題は深刻であるということを皆さん方に認識していただきたいというのがお願いの筋です。  次は、もう時間が参りましたけれども、いわゆる婦人年、これは方々質問が出たと思いますからくどいことは申し上げませんけれども、総理大臣ともやっているのですが、来年の批准まで間に合いますか。間に合うかどうか。
  241. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生のお尋ねの問題は、国連の婦人差別撤廃条約についてというふうに理解いたしますが、これにつきましては、国連婦人の十年の最終年が来年でございますので、その批准に間に合わせるように労働省の法制の整備を、今国会の法案提出を目途に、現在鋭意婦人少年問題審議会において検討をお願いいたしておりますので、ぜひ批准に間に合わせたい、このように考えております。
  242. 小林進

    小林(進)分科員 私がこういう優しい人物のせいかどうかしりませんけれども、国会の衆参両院議員合わせて国際婦人の十年に対する推進議員連盟がある、会長さんは参議院議員の石本さんだけれども、私はその下の副会長なんですよ。私は、この問題には国会の中でそれほど重要な責任を負っているものですから、あえて御質問したのです。そのために私はこの前中曽根総理にも会って強く要望しておりますから、どうかあなたの今の発言が責任ある答弁として、大臣の答弁というふうに私は了解いたしますから、間違いのないようにひとつ推進をしていただきたいと思います。  なお、その問題に関連をいたしまして、一九八一年にジュネーブのILOでできたこの条約の問題です。これはいわゆる男女労働者、特に家庭労働者、奥さんでございます、家庭的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約百五十六号、これを日本政府は一体批准をされましたか。
  243. 赤松良子

    ○赤松政府委員 この条約につきましてはまだ批准はいたしておりません。
  244. 小林進

    小林(進)分科員 これは批准をされるお考えはありますか、ありませんか。
  245. 赤松良子

    ○赤松政府委員 この条約は、先生先ほどおっしゃいましたように一九八一年に採択された条約でございますから、まだ年が非常に新しいわけでございます。したがいまして、批准をするかどうかにつきましてはまだ政府としては結論を出していないわけでございます。
  246. 小林進

    小林(進)分科員 ちょっとお伺いしますけれども、もしこれを批准をするとして作業に入るとしたら、これに対するチェック、障害をなす点は何と何でございましょうか。
  247. 赤松良子

    ○赤松政府委員 国内法制とこの条約とが、どういう点が整合しているかしていないかということについてはまだ十分な検討をいたしておりませんので、個々の条文と国内法制とをもう少しよく検討いたしませんと、批准できる条件がどうかということがまだお答えできるような段階になっておりませんので、なお検討を進めたいというふうに考えます。
  248. 小林進

    小林(進)分科員 これで終わりますが、日本はしかしILOの理事国になっておる、非常に指導的役割を演じている国なのでございますから、八一年だってことしはもう八四年ですから、まだどことどこにネックがあり、どことどこに障害があるかということまで研究もされていないというのはこれは怠慢です。労働省は大変怠慢だ。  まあ時間が来ましたからいいけれども労働省の怠慢を箇条書きで挙げるとまだ幾つでも挙げられるのですよ。私は、一晩じゅう論ずるくらい幾つもの問題を持っているのです。これは坂本さん知らないでしょうが、私はかつて社労に立てこもって、ILO八十七号の批准問題で徹夜をして論じ合った経験がありますから、ずぶの素人じゃないのです。やはりこういう責任ある経済大国などという日本になりましたら、ILOのこういう新しい条約が出た場合には率先してちゃんと研究機関を設けて、何を言われてもちゃんと答えるような調査の作業がもう進んでいなくちゃいけませんよ、局長さん。
  249. 赤松良子

    ○赤松政府委員 先生の御質問について、一部分につきましてはこの辺は問題になるのではないかというところは実は用意いたしておりますが、これが全部条約をカバーして、すべての法制についての整合性の検討はまだ終わっておりませんので、もし時間がございますれば、現在問題になると思われる点は申し上げることができると存じます。
  250. 小林進

    小林(進)分科員 それならば、時間が来ましたからこれで終わります。  しかし、私は大まかに三つの問題を提起いたしました。  一つは、農村における農家、実情は名実ともにこれはもう労働者、日雇い、日々雇用の労働者になっているのだから、この数字をきちっとつかんで、この人たちに対する労働行政の誤りないような方向性をひとつ打ち出してもらいたい。これが一つです。  二番目は、農村の日雇いあるいは出稼ぎの人たちのいわゆる奥さんが見つからない。四十過ぎてもお嫁さんもないというような人たちがうようよしている。これはやはり行政の問題として取り上げるところまで事態は逼迫している。これはひとつ真剣に考えてもらいたい。これが二つ目です。  三つ目は、今申し上げましたように、いわゆる家庭における御婦人方の雇用の均等の問題に対する日本の政府の姿勢、これをもう少し早急にひとつ話を進めていってもらいたい。  以上三つ、質問に名をかりた私の要望ですから、どうかひとつまじめに受けとめて進めていただきたいと思います。  これで質問を終わります。
  251. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷昭雄君。
  252. 細谷昭雄

    細谷(昭)分科員 小林先生がいろいろ底辺労働者の問題について御質疑いたしましたが、私も大体同じような趣旨の問題を取り上げたいと思うわけでございます。  三つありますけれども、最初に労基法の問題についてお伺いをしたい、こう思います。  労働基準法といいますのは、明らかにこれは働く者の立場、そういった皆さん方の労働条件をいろいろ守ってやるという立場で制定されたという歴史を持っているわけでございますが、社会が進展すれば、それに連れて今まで予想しなかったいろいろな問題が出てまいるわけでございます。したがいまして、時代の推移からもきめ細かな対応というものが迫られてくることは当然であります。  私は、五十五年三月に、九十一国会の予算分科会できょうこれから取り上げる問題を取り上げておるわけでございます。労働基準法施行規則五十七条一項二号及び三号の規定、これは通称私傷病報告になっておりますが、この運用についてお伺いしたいと思うのでございます。  望月局長には、大阪労基局の局長さん時代に私も大変いろいろな点で御厄介になっております。特に出稼ぎ労働者の問題についても大変詳しい方でございますので、そういう点で、細かい説明は時間がないので省略しますけれども、端的に次のことについてお伺いをしたい。  この私傷病報告の二号といいますのは、事業の宿舎、工場の宿舎もありますし、出稼ぎの場合は飯場と普通言われております宿舎において、火災、爆発、倒壊、この三つの事故の発生をした場合は、使用者は届け出なければならない。そして三号とは、労働者が宿舎内で負傷し、窒息し、または急性中毒にかかり、死亡、休業した場合、これも使用者は労働基準監督署に届け出なければならない。遅滞なくそれぞれの事実を所轄労基署に報告することとなっておるのがこの規定でございます。  問題は、私が質問してから四年経過をしております。私の質問は、この二号、三号の中身だけではとても対応し切れないのではないか。年々労働者の年齢が高齢化してきております。最近の傾向としまして、出稼ぎ者は特にそうであります。今小林先生がお話をし、取り上げられました問題についても同様だと思います。したがいまして、宿舎内の病気、死亡というものが、全体の出稼ぎ者の数が減少傾向にもかかわらず、むしろこれはふえておるこそすれ少なくなっておらないというのが現状であります。特に東北、北海道、こういう寒冷地、そして九州が多いわけでありますが、その病気発症というものは、高血圧等の循環器系統、または心臓、血管障害というものが非常に多うございます。中には持病というものもあるでしょうが、仕事や業務に起因すると思われるこういう発症が、最近特に労基署によっても認められておるという傾向が強くなっておるわけでありまして、このことについては、どうしても二号、三号の内容だけでは対応し切れなくなっておるというふうに私は思うわけであります。  労基署によってこのような労務起因によるということで認定を受けた例というのは、遺族の方々は、命はもちろんお金にはかえられませんけれども、これは大変にありがたい制度であるということで、労働省に大変感謝をしておるという例もあるわけであります。しかし本人が死亡した場合、死人に口なしでありまして、この本人の申請という建前になっておりますこの申告は、どうしても家族が代理するというふうになっておるわけでありますが、実際問題として遺族がこれを届け出るということはなかなか難しい。したがいまして、その宿舎を所有しております使用者の恣意によってこの届け出がなされるという実情も当然であります。  そこでお伺いしますが、一つは、この施行規則の私傷病報告の三号の不備を埋めるために、すべての病死と入院加療を要する病気を加える考えはないか。二つには、このような法改正が難しいとすれば、病気、負傷のすべての届け出を法の運用でできないかどうか。この二つについてまずお伺いしたいと思います。
  253. 望月三郎

    ○望月政府委員 この問題は、かねがね先生の前からの御主張の点だと思いまして、私どもも真剣に検討をしているわけでございますが、規則の上では、やはり沿革がございまして、例えば寄宿舎の中で重い風邪を引いたとかそういう病気もありますし、いろいろありますので、業務上の疾病に発展するようなものあるいは死亡するというようなものに限って、ここでこういう表現で書いてあるわけでございます。  しかし、そうはいっても、御指摘の点、確かに御不安の点もあろうと思いますし、また寄宿舎というところは非常に特殊なところでございますので、これを規則というよりはむしろ、建設業の附属寄宿舎という特殊性をとらえて、寄宿舎におけるすべての死亡を含めるということで指導をしていくという運用は考えられるのじゃないか、そのくらいなら私ども検討をしてみるつもりでございます。
  254. 細谷昭雄

    細谷(昭)分科員 私がこの前、五十五年の分科会で同じ趣旨の質問をしたとき、当時の藤波労働大臣、現在官房長官ですが、これについてはいろいろ言っているわけであります。役所の皆さん方がしゃべっておることを受けて、大臣は、「御指摘の問題は、お伺いをいたしておりまして非常に大事な問題であるというふうに思います。」「本人がお亡くなりになれば、あとどういうふうな手続をとるかというようなことについては、なかなかスムーズに動いていかない面は多分にあるだろうというふうに私も想像いたします。御家族は見える場合もあるし、御家族が、病気になる、あるいはお亡くなりになって郷里から出てこられるような場合もありましょうし、いろいろな場合があると思いますが、さらに前大臣もいろいろお答えをしておるような向きもあるようでございますので、よく検討をいたしまして前向きに検討を進めてまいりたいと思います。」と述べている。この「前大臣」という意味はもっと前の労働大臣で、私の前任者であります栗林三郎元代議士が同じ趣旨の質問をしているわけです。そして同じような答弁をいただいておるわけですよ。今、坂本労働大臣にもこのことをお聞きしますと、恐らく藤波さんと全く同じような答えが返ってくるのじゃないかと思いますが、後で大臣にお聞きします。  問題は、今、局長がこういう運用はできるのじゃないかとお話ししましたので少しは前進したとは思うのですが、もう四年経過しているのですよ。時代が変わってきている。このことを踏まえて、これは何といいましても本人が申告すべきはずなんですが、それができない。この病気は労災かどうかということを認定するのは役所なんです。労働基準監督署なんです。したがって、すべてのものを吸い上げてそれを判断することが当然でなければならない。使用者である飯場の所有者に任せておるということは絶対にまかりならぬと私は思うわけであります。このことを強調しているわけでありまして、法改正できなければぜひとも運用の上でもっと前進した努力をしていただきたい、このことをお願いしたいわけでございます。総括的な点は、労働大臣に最後にお願いしたいと思います。  次に、私は。季節労働者の年次有給休暇の問題でお尋ねしたいと思います。  三月十一日の「朝日歌壇」にこんな歌がありました。「牛小屋の棟木が折るる豪雪に出稼ぎ飯場の部屋一つ空く」、岩手県の藤原さんという出稼ぎ者の歌でございます。私は身につまされるような感じてこの歌を拝見いたしました。  ことしの豪雪で、私は坂本大臣の出身地の石川県にも、せんだって災害対策の視察に行ってまいりました。新潟県の皆さん方、富山県の皆さん方、それぞれの出稼ぎに行った方々が豪雪で大変だということで職場から帰った例がたくさんございます。私も秋田でございますので当然でございます。問題は、これらの皆さん方が一体どういう形で帰っておるかという問題でございます。  この問題につきましても私は前に取り上げましたびこのたび労働省は、パート労働者の労働条件改善一つといたしまして有給休暇制度の導入を考えられておるというふうに報ぜられております。私は、大変時宜を得た施策じゃないか、ぜひ推進していただきたいと希望する者の一人であります。  そこでお尋ねいたします。五十五年三月に私もこの質問をいたしました。その当時の藤波労相も、積極的にこの季節労働者の有給休暇制度については検討したいという意思を表明しております。これは御存じだと思います。第一点は、有休休暇制度のその後の労働省内の検討はどう進められておるのか。第二点は、これからの改善の方策、計画、推進についてお伺いしたいと思います。
  255. 望月三郎

    ○望月政府委員 五十五年の三月に先生から国会の場で御指摘を受けまして、労働省といたしましては、その後、中央職業安定審議会の建設労働部会におきまして再三にわたって検討したわけでございます。  それで、いろいろな意見が出たわけでございますが、その部会におきましては労使の意見の対立がございまして、とうとう結論が出ないままに終わっておるというのが実態でございます。  反対側の意見の一番強いのは、年次有給休暇というのは、通年雇用された方に、一年たって、そこで八割以上出勤した場合に労基法がそれに対して六日間与える、こういう制度でございますので、期間雇用者にやり、そしてしかも、それを個々の労使の間で適宜決めるのはいいけれども、それを制度としていやだと言う事業主まで一律にやるのはどうかというのが、非常に強い意見だったように私は聞いておる次第でございます。
  256. 細谷昭雄

    細谷(昭)分科員 意見の対立があるということでございます。  労働大臣、突然こういう話をしますので十分御理解になれなくて難しいのじゃないかと思いますので、ちょっと敷衍しますけれども、こういうことなんです。  労働基準法では通年雇用、つまり一年以上を同じ職場で雇用された者については、次の第二年度目から六日間の有給休暇を与える、法律でそうなっているわけです。ところが、季節労務については、結局、半年なら半年の後で退職をするという関係で、年次有給休暇制度というのは全然法定化されておらないのです。しかし、私が言っているのは、年次有給休暇というのは労働者が労働再生産をするために必要だということでやるという法理論なわけです。ですから、家族と離れて同じ宿舎に拘束されておる、そして集団生活をしておるわけです。もう飯場をごらんになってみればすぐわかるのですが、二十人、三十人が一緒に生活するのですから、ごろ寝しているのですから。そんなところで、日中八時間ないしは九時間こういった重労働をしながら、そして個人の生活は全然ない、プライバシーがない、そういう中で拘束されておる。そういう人力の方がむしろ、労働再生産のための休暇が本来であれば必要なはずなんです、法理論からして。しかし、今の反対論で、一年以上になっておらないからというのは現行法規を前提にしておるからであります。ですから、私が一番最初に言ったように、社会の進展とともに法は変わるべきであるということなんですよ。そのことを私は強調しておるわけです。  大臣、おわかりになったと思うのです。藤波さんも、そんなばかなことがあるかという心境でございました。もう秋田の出稼ぎ労働者なんかは二十年、三十年、同じ会社に行っているというのが多いわけです。二十年、三十年ですよ。にもかかわらず一日もないのです。したがって、さっきの、牛小屋の棟木が折るる豪雪にまた一部屋あいたと。みんな出稼ぎ人が雪おろしに行った。これは全部、有給休暇じゃないのですよ。賃金をもらえない休暇で出ていかなければいけないのです。六カ月間も、たった正月だけなんです、うちへ帰るのは。こんな生酒ありますか。人間にとって最低の生活なんですよ。夫婦で別れ、親子別れして、そしてそういう人間らしくない生活を半年させられる。しかも制度として国家の保護は一つもない。こんなばかなことはありません。私はそのことを言いたいわけであります。  今回、私ども全国出稼組合連合会では、一月からこの二月いっぱいにかけまして、ずっと関東、関西の出稼ぎの現場の状況を見てまいりました。八十二カ所の中でこの年次有給休暇を出しておるところは民間で四つございました。皆さん、ぜひひとつ参考にしていただきたい。日本金属株式会社。それから日南金属株式会社、江東区です。それから日本鋪道株式会社。それから山崎製パン株式会社です。この四カ所。あとは、小さな会社でも、これは糊方の好意でありましたけれども、それは制度というものじゃありません。この四つの会社がきちっと労働協約の中で――組合でないから協約じゃないのですね。(「協定ですな」と呼ぶ者あり)そうですね。そういうふうにきちっとこれはうたっておるわけです。民間でもこういうところもあります。ありますが、大変少ない。  藤波さんは、ぜひとも使用者側、企業側の認識を高め、理解を深めながらこの問題にひとつ対処していきたいとおっしゃっておったわけであります。最後で結構ですから、労働大臣の坂本さんからも言ってもらいたい。ぜひともこの問題につきましてひとつ前向きで検討し、また、私自身は、自分の政治家としての一つのライフワークみたいなこととして、ぜひともこういう大方の有給休暇制度確立していきたい、こういうふうに思っておりますので、何とぞ御指導、御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。  最後の問題でございます。時間がなくなったので申しわけございませんけれども、建退共の問題でございます。  建退共の問題では、きょうは公団、事業団の方は来ておらぬと思うのですけれども、建退共の現状を見ますと、実際は加入しておる方々がかなり多いわけであります。私の手元にあるのでは、現在、全国で百四十四万八千三十四名、事業所としては十万一千六百六カ所が加入しておるわけであります。私はびっくりしました。一つの例なんですが、ことし私たちは八十二カ所の現場を回りましたが、その中で入っているのはたった二つなんですよ。それはさっきの日本舗道株式会社、それから亀井土建、これは茅ケ崎です。この二つの土建会社だけが全員加入させておりました。ところが、驚くなかれ、大企業と言われておる大手の土建会社の直属の常雇いの大方は、この退職金制度があることを知らないのですよ。これは一体どうしたのかということなんですよ。この問題については、もう時間がなくて皆さん方に詳しくお聞きできないのが大変残念でありますが、この建退共の現状をどう把握しておるか。そして、加入の実績をどう分析しておるのか。そして一番大事な点は、私たち労働省の皆さん方に、特に労働基準監督署の皆さん方に強く訴えておりますのは、この建退共に加入させておるかどうか。特に公共事業の場合は半強制的なんです。これは建設省も公団もきちっと認めておるのですよ。ですから、こういう加入者が多いのです。にもかかわらず、実際の労働者に手帳が渡っておらない。実益を受けておらないということなんですよ。これを監督するのはまさに労働省のお仕事なんですよ。それがなぜできないのか。  以上、私は三つお話ししました。第一は労基法の改正、そして第二は年次有給休暇の問題、第三は、この底辺の労働者にわずかであれ退職金制度を日の目を見せるように温かい行政をお願いしたい、この三つの点を申し上げましたので、まず局長のお考えを聞き、最後坂本労働大臣から御所見とこれを実行していく御決意のほどをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  257. 望月三郎

    ○望月政府委員 今の建設業退職金共済制度への加入の問題でございますが、私ども、この制度は、常用雇用ではない人たちに対してこういう特別な制度をつくっておるわけでございますので、確かに先生おっしゃるように、加入の促進ということについて大いにやらなければならぬと思っております。そういう意味で従来も相当のパンフレット等をつくってやっておりますが、任意加入という建前でございますので、これは統計によりけりですが、今のところは二割、建設省の許可業者数というのを分母にとると二〇・三ぐらいの加入率、それから事業所統計調査、これは総理府の統計局の調査によりますと三割強、三三・七%という計算が出てきますが、大体この真ん中ぐらいではないか。建設業許可業者数というのは、これは大企業も入っておりますしあるいは休眠業者も入っていますから、これよりはやや高くなるということだと思います。したがって、二割ないし三割ということだと思います。それ以外について、私どもはさらに加入の努力をしていきたいと思います。  先生おっしゃるように公共事業等では、発注に際しまして公共団体が必ず証紙を買わなければだめだということで、非常に協力をいただいておるわけでございます。そういう意味で徹底はしております。ですけれども、それが完全に張られるかどうかということを追う必要があると思いますし、その点については私どもは、全国の局長会議、課長会議で口を酸っぱくして、貼付の励行ということはいつも強く指示をしている事項でございます。そういう意味で、現場へ監督官等が立ち入ってそういう事項についても監督の際は必ずチェックしろという強い指示を出しておるところでございます。個別のケースでそういう事件があったらどしどし言っていただけば、私どもそれに対応してやるという姿勢でございますので、よろしく御理解のほどをお願いしたいと思います。
  258. 坂本三十次

    坂本国務大臣 ただいまの最後建設業退職金共済の問題でございますけれども、今局長が申し上げましたように、例えば公共事業などの関係の労務者には証紙を張るとかいうようなことを最近はきめ細かく進めておるようでございますが、おっしゃるように、特に零細企業などに雇われておるようなところは、その周知徹底がまだまだ足らぬのではないかとも思います。そこで、今各種建設業などの団体もございまするし、特にこの中小零細の方の企業に対してこの趣旨の徹底を図るように一段と私ども指導を強化していきたい、こう思っております。  それから、先ほどの監督署に事故や疾病のときの届け出。なるほど、家庭を離れて、ふるさとを離れて飯場で働いておるわけでありますから、普通の立派な企業へ行って立派な条件のもとに働いておるのとは違うわけですから、やはり使う人も労働者の健康には特別気をつけてあげなければかわいそうでありますし、家族も特別心配をしておるだろうと思います。ですから、監督署に報告すれはすべてが労災保険の対象になるというような、そんな窮屈なことを考えなくても、対象になるべきものはもちろんちゃんと対象にすればいいのですけれども、それだけ遠く離れて働いておるのですから、今局長の答えたように、死亡したときはもちろんでありますが、原因が労災対象になろうとなるまいと、それからまた、軽い病気ならともかくも相当重い病気のときなども基準監督署はそういう基準についての取り締まりだけというのじゃなしに、やはり労働省は日の当たらぬ人々に日を当てようという気持ちのある役所でありますから、そういう重病などのときもできるだけ届け出をするようにという周知徹底をきめ細かくやれば私は所期の期待にこたえられるのではないかな、こういう気もいたします。  それから有給休暇ですが、今局長の話とあなたのお話を聞いておりましたけれども、現在の状況がまだまだそこまで行っていないのに法で縛るというのも、またちょっと無理がかかるのではないかと思います。しかし一面、しょっちゅう変わる労働者だったらどうかと思いますが、大抵固まってやってきてくれる労働者というのは、事業主と人情も通っているし、仕事だってわかっていると思いますよね。そういうところは、事業主に少しお勧めしたり指導をしたりすれば、そういう気になってくるのではないかなと私は思いますので、そういう機運を助長するように労働省が根気よく指導をする、一段と指導力を強めてやっていければと思っております。
  259. 細谷昭雄

    細谷(昭)分科員 大変ありがとうございました。今、大臣の労働者に対する大変温かい、あるべき役所のあり方、こんなことをお伺いしまして、心強く思いました。なるべく長い期間大臣を務められまして、申し送りじゃなくて、在任中に坂本労政を築き上げられますように、そして底辺労働者に、ああよかったと思われる行政をひとつ確立していただきますことを強く希望いたしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  260. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて細谷昭雄若の質疑は終了いたしました。  次に、斎藤実君。
  261. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、最初に労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  我が国の心身障害者の数は大体二百万人と言われておるわけですが、これらの方々雇用問題については、社会的不公平の是正という立場から極めて重要な問題でございますので、順次お尋ねをしていきたいと思うのです。  社会参加のおくれている重度身体障害者、精神薄弱者の経済的な自立の必要性が随分叫ばれているわけでございますが、なかなか就職できない現状にあるのでございまして、これはデータではっきりしておるわけでございます。私は、一般雇用への道を困難にしているいろいろな条件を取り除く対策を立てない限り、一般雇用の道を確保するということはなかなかできないのではないかと思うのでございまして、特に障害者の特性に応じたきめ細かな対策を講ずることが必要と考えるわけでございますが、心身障害者雇用に対する基本的な考えを大臣から簡単にお答えをいただきたいと思います。
  262. 坂本三十次

    坂本国務大臣 確かにおっしゃるとおり、二百万人もの身体障害者がおいでになられて、ここ数年の民間の雇用率というものははかばかしく進まぬ、そういうことに対しましては、私ども、これはいかぬ、一段と努力をしなければならぬという気持ちを深くしておる昨今でございます。  こういうときでございますので、今までのいろいろな知恵を絞って、そして雇い入れ計画の作成を命令する制度がありますので、そういう制度をもっと活用したり、職業安定所の職業指導、職業紹介も進めてまいりたいと思っておりますが、特に重度方々については大変難しゅうございまして、これは新しい企画として第三セクターでやらないと、普通のことではとても難しいということで、今この第三セクター事業で重度方々の就職を進めていきたい。特に一生懸命やろうとしておるところでございまして、どうぞひとつ御指導を願います。
  263. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣もお認めのように、身体障害者本人はもとより、家族の方の言うに言われない苦労というのがありまして、これは少しでも雇用の場を与えることによってどれだけ家族や本人が生きがいを持つかということは、もう申し上げるまでもないと私は思うのです。  身体障害者雇用につきましては、全体として見ればまだ法定雇用率、これは大臣御承知のように、民間企業の場合は一・五%に達していないわけです。そこで、何とかこの法定の雇用率を上げるためにいろいろな努力が必要だと思うのです。法定雇用率をずっと見てみますと、企業規模の現状を見ますと、百人に満たない小さな企業の雇用率は一・七六%に達していまして、一・五%を上回っているわけです。雇用率が非常に高い、これは非常にありがたいのです。ところが千人以上の企業の雇用率は一・一%と、非常に低いんですね。だんだん実雇用率が低下する傾向にあるわけでございまして、この雇用率の未達成企業の割合が四六・五%と半分近くになっているのです。今後、こういうような身体障害者雇用状況に対して政府はどういう対策をお持ちになるのか、お尋ねをしたいと思います。
  264. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 御指摘ございましたように、最近雇用率の改善のテンポがやや暖まってきております。一つには、最近におきまして景況がずっと低迷が続いておるということで、全体として雇用抑制の中で身障の雇用もなかなか伸びないという客観情勢の問題もございますが、特に現在の一番の問題は、やはり重度障害者あるいは精神薄弱者などの雇用をどう進めていくかというところが一番ポイントでございます。  また、大企業につきましては、今御指摘のように、現在大企業での雇用率そのものはまだまだ低い。ただ、大分御努力を願っておりまして、最近大企業での雇用改善のテンポは一般よりも相当ハイピッチで進んでおる、こういうような状況はあるわけでございます。まず、こういう大企業につきましては特に指導を強めておりまして、例えば銀行であるとか自動車販売であるとか百貨店であるとかいうような業種につきまして、労働本省主宰によります業種別労使会議というようなことで、身障者雇用促進についての要請をいろいろな機会をつかまえて強く労使のトップに要請をいたしておるわけでございます。  それからまた、重度障害者につきましては、今大臣が申し上げましたように、第三セクター方式というものに大きな焦点を当ててやっておりまして、具体的に申し上げますと、例えば東京都、兵庫県、京都府、この三県で今具体的な第三セクター方式についての設計について関係者協議に入っておりまして、例えば東京でございますと、都内の大企業の系列事業所としていろんな情報処理関係の業務を、この重度障害者雇用する中で進めていくというような計画を目指すとか、あるいは兵庫県におきましては、第三次産業でのこういう重度障害者雇用を目指す第三セクターの設立であるとか、あるいは京都におきましては、重度障害者の授産施設との併設をいたしまして第三セクター方式を進める、こういうようなことで、特に重度に具体的な焦点を絞っての進め方をしておるということでございます。  それから、大臣申し上げました雇用率の関係でございますが、作成命令を具体的に基準を強化いたしまして、これまでは特に作成命令を明示いたしますのにつきまして雇用率の特に悪いということでやっておりましたものを、もう少し雇用率のいいところまで作成命令を広げまして、この作成命令をどしどし出していくというような、要件をさらに拡大をいたしましてことしは進めようということで、現在取り組みをいたしておるところでございます。
  265. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 雇用義務を誠実に守っていない、雇用率未達成の企業からは納付金を納めてもらっている。そこで身体障害者雇用納付金制度というものがあるわけでございますが、重度障害者多数雇用事業所の施設設置助成金についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、昭和四十八年から実施されたわけでございまして、モデル工場特別融資制度における事業所の数と融資実績を明らかにしていただきたいと思います。  また、五十二年から実施されました助成金制度による認定事業所の数及び助成金の支給額はどれぐらいになっているか、お尋ねいたします。
  266. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 まず、モデル工場融資、これは心身障害者を多数雇用しておる事業所に対する特別融資制度でございますが、これは四十八年度に創設されまして五十六年に廃止をされたものでございますが、その間の融資実績は百十八件で、融資額は七十一億円になっております。  また、昭和五十二年度から実施をされました重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金につきましては、五十八年十二月までの実績で二百十八件の百九十五億円となっております。  また、これによって雇用されました心身障害者は二千五百八十七人、うち重度が千百十二人ということで、特にこの重度障害者雇用促進に相当大きな役割を果たしてきたと考えております。
  267. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 先ほど局長からも、非常に経済状況が悪くて、世間一般で言われておりますように、長引く不況から今、中小企業の倒産が相次いでおるわけでございますが、この重度障害者多数雇用事業所におきましても、環境の悪化に加えて、原料高製品安で思うように利益が上がらないために赤字がかさむ一方だという状況を聞いておるわけですが、これまでに助成措置、融資じゃなくてとにかくお金を出しっ放しという、この助成措置を受けた事業所におきます倒産件数をどのように把握しておるか、お尋ねしたいと思います。
  268. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 いろいろ今御指摘がございましたように、二百十八件の中で、生産性の低下によるコスト増大であるとか不況による受注量の減少とかいうようなことによりまして、現在、銀行取引停止だとか和議申請だとか、あるいは会社更生法の適用申請というようなことで、事実上倒産の事態に立ち至っておりますものが十四事業所ございます。ただし、この十四事業所のうち六事業所につきましては、関係者の努力によりまして操業は再開されておりますので、事業を停止しておるという形のものは八事業所でございます。
  269. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 十四件のうち事業が停止しているのが八事業所であるという答弁でございますが、これは新聞報道でございますけれども、事実の明らかになっている企業があるのです。  例えば北海道のサッポロスープという会社ですが、これは五十五年八月に認定されまして、五十六年十一月に倒産している。国が助成金を一億五千万出しているわけですが、わずか一年三カ月か四カ月で倒産している。しかも、そのほか各地方自治体からも四千六百万円の低利融資を受けている。わずか一年やそこらで倒産をするということは一体どういうことなのか。埼玉県の日本プリントセンター埼玉工場は、五十四年十二月に認定されて、わずか二年半後の五十七年四月に倒産している。助成金も一億円、そのほか各銀行あるいは地方自治体から一億五千万の低利融資で限度いっぱいの援助を受けている。  そのほか四件ぐらいあるのですけれども、認定されてわずか二年や一年半で倒産をする、これは一体どういうことなのか、どこに原因があるのか。重度障害者を多数雇用してくれる事業所に対しての助成措置という制度本来の趣旨からいっても、企業の倒産によりまして多数の心身障害者雇用の場を失うわけでございまして、認定をするときに何かずさんというか、もっと助言というかそういったものが必要ではないかと私は思うのですが、この点についてどういうお考えですか。
  270. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 御指摘がございましたように、これができまして比較的わずかな期間にそういう倒産の事例が出ておりまして、まことに残念に思っております。結局、従業員一人当たりの固定資産投資額が、重度障害者を多数雇用するというような関係でどうしても一般企業に比べて資金負担が重いというような問題、あるいは収益力が小さいので運転資金を相当借り入れに頼らざるを得ないというような問題等もあるわけでございますが、やはり私どもの審査体制の上でも若干問題はあったのではないか。  具体的に申し上げますと、一年でこれらの申請が五十件とか八十件とか、こういういっときに申請がございまして、とても詳細な審査あるいは指導というものが難しいということで、ある時期書類審査というようなことで認定をしたケースもあったわけでございます。  今後私どもとしては、そういう書類審査ではなくて、まさにこういう事業をやる事業主、その人を呼びまして、個々の具体的な計画というものについでしっかりいろいろお伺いをしてそういうものに認定をしていくというようなことで助成小委員会というものを設けておりますが、助成小委員会の運用の仕方ももっときめ細かく具体的にやるということで今後はやっていかなければならぬ、今そういう方向でやることにいたしておるわけでございます。
  271. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣、助成金というのは国民の税金なんです。それはくれっ放しなんです。ですから、その趣旨からいきまして、これは書類審査だけではむだ金になってしまうし、不幸な倒産ということになってしまうし、それから心身障害者雇用の場を失うわけでございますから、こういう実例がありますので、最終チェックを厳重にしてもらいたい。そして、経営内容に立ち入って助言をするとかあるいはアドバイスをするなりしていかなければ、この法の精神は死んでしまうと私は思うわけです。ですから、今いみじくも局長が、認定審査は書類で審査したという答弁をされましたけれども、もう書類審査だけでは私はだめだと思うのです。  この審査に当たる助成小委員会というものがあると聞いているのですが、どういうメンバーでおやりになっていますか。
  272. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この身障問題についての学識経験者、あるいはまたこういう施設などのレイアウトについての専門家、身障者雇用主としての経験を持っておられる経験者、そういったような方々をこの認定のための小委員会のメンバーにしておるということでございます。
  273. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 局長、これは最高二億円の助成金という巨額な国民の税金なんですから、この事業所設立当時に十分な内容の把握なりあるいは現状認識をし、税理士や公認会計士の専門家も入れて十分取り組むべき問題ではなかったかと私は思うのです。だから、障害者雇用という問題に集中的に頭がいって何とかということで、こういう制度を安易に認定をしたということがこういう倒産につながったのだろうと私は思うのです。助成小委員会の中に税理士や公認会計士の専門家を入れたらどうかと思うのですが、どうですか。
  274. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 御指摘の点からも、メンバーについてもさらにそういう方向でよく検討いたしております。
  275. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 それから、倒産をしまして職を失った八事業所の方々がどういう状況になっているのか、この実情把握といいますか追跡調査といいますか、解雇された障害者に対してどういう手を打っているのか、状況を把握しているのか、お尋ねをしたいと思うのです。
  276. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 特にこういう倒産等がございました場合の最大の問題は、重度障害者がちまたにほうり出される、こういうことがあっては相ならぬということでございまして、その点につきましては、その当該事業所を管轄しております安定所あるいは都道府県、これが懸命に努力をいたしておりまして、そういうところの障害者につきましては、現在病気で休んでおられる方とかあるいは訓練校に入っておられる方以外は全員、再就職をお世話いたしておるわけでございます。
  277. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 重度障害者多数雇用事業に対する助成金認定の実績をデータで見ますと、国際障害者年ということから、前年の五十五年には八十件、九十億円の予算が組まれておるわけですが、五十六年には五十二件、金額は三十三億円という認定件数になっておるわけです。昨年はただの九件ですね。一昨年は四件ということで、非常に少なくなってきているわけです。国際障害者年が終わった途端に認定件数が〇・五%というような減り方になってきているわけです。どうしてこう極端に減ったのか。事業所の認定を受けようとする申し込み者が少なかったのか、あるいは、先ほど私が申し上げましたようなことでこれは大変だということで絞ったのか、この点はどうでしょう。
  278. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 御指摘のように、国際障害者年を契機といたしまして障害者雇用の関心が大きく盛り上がりましで、五十五年度あるいは五十六年度におきましてはこの助成金の申請が非常に増加をしたわけでございますが、五十七年度以降は、景気の低迷もございまして、全体として民間の投資意欲が減退をした時期にも当たっておって、申請の方も余り出てこなくなったということもございますし、あるいはまた身体障害者納付金会計の通過化もございまして、抑制の方向での助成金制度の運用もしておる。あるいはまた、そういう事故のないようにこの助成小委員会においても審査をしっかりやるというようなこと等々もございまして、件数が相当大幅に減ってきておるという事情でございます。
  279. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 今国会におきまして身体障害者雇用促進法の一部改正を行いまして、雇用促進事業団で今まで行ってきた身体障害者雇用納付金関係の業務を身体障害者雇用促進協会に一元化して行わせるということになっているわけですが、このように民間に委託をしますと、私が先ほど指摘をしたような弊害がますます出てくるのではないかと心配するわけでございますが、直接雇用促進事業団がやるのではなくて業務を促進協会に委託するという格好になります。この点心配ありませんか。
  280. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 今度移管をいたしますのは、雇用促進事業団でやっておりました業務をずばりそのまま身障協会の方に移管をいたしまして、身障協会にはまたそれができるような体制を法的にも整えるということでございますので、そういう御心配になるようなことはないと思います。し、それからまた、これまでのいろいろな問題点を踏まえまして十分な審査体制をとっていきたい、こう考えておるところでございます。
  281. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣、今までの議論をお聞きになっておわかりと思いますが、今まで国の助成金、国民の税金を十分に発揮したということは言えないと私は思うのですね。管理体制、指導体制というものがずさんで倒産に追い込まれ、しかもそれによって身体障害者雇用の場を失うという大変大きな問題だと私は思うのです。私が先ほど指摘を申し上げましたような事例もあるわけでございまして、大変残念であります。したがって大臣に、身体障害者に対する今後の助成の改善なりあるいは雇用の場を本当に与えるという、労働省としての基本的な改善策をお尋ねしたい。
  282. 坂本三十次

    坂本国務大臣 身体障害者の皆様方に対しては、今までの基本方針を踏まえて、そして時代の変化をよく認識をして、そして積極的に取り組まなければならぬとまず最初に委員にお答えをしたわけでございますが、それは口先だけではなしに、身体障害者の皆様はなかなか雇用は難しいのですから、人一倍の努力をひとつ労働省挙げて取り組んでいきたいと思っております。  それに税金のむだ遣いは、これは全く話にならぬわけでございまして、斎藤委員がたまたまおっしゃいましたけれども身体障害者の専門家といいましても、それは会社をつくって、そして大変な税金をいただいて運営するのですから、そういうときには、あなたのおっしゃったように、ずばり経理とか税理とかそういう専門家が入ってなかったらこれはしり抜けになってしまう、あなたのおっしゃったとおりだと思います。  それから、中央からはそう一々一生懸命やったってなかなか細かいところまで指導の目が届かないといけませんから、現地の都道府県などがもっと督励して指導して、そして中央地方一体となってやっていくというようなことが大事だな、こういうふうに感じた次第です。
  283. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 国民の税金が助成金として支払われて、それがまた十四件も倒産をして、大変な国費のむだ遣いたし、またそれによって倒産をされた経営者並びに従業員が多大な影響を受けているわけでございますので、ぜひともひとつ大臣、この問題について大きな関心を寄せていただいて、二度とそういうことのないように強く指導されますように御要望申し上げて、終わりたいと思います。
  284. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて斎藤実君の質疑は終了いたしました。  次に、広瀬秀吉君。
  285. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 私は、労働者災害補償法の適用問題について若干質問をしたいと思うわけであります。  それで、実は四カ月ぐらい、解散の大分前だったのですが、具体的に名前を挙げて、こういう問題での具体例について、労働基準局として、こういう事案について非常にごたごたしているようだからこの辺のところを調査してもらいたいと要請をしておったわけです。課長あたりのところに言っておけば間に合うだろうと思って言ったのですが、ちょうど課長なんかもいないというので、田中君という人に言ったのですが、これが二週間ほど前でしたか、二十日ぐらい前になりますか、この問題は、じん肺法は一級の認定はできておりますが、それは療養の補償ということにはなりません。それで、労災補償保険法では特例加入のいわゆる個人事業主の問題でございますので、その家族従業員である夫人についても、当然これは労災に加入しているということですから、その辺のところはどういう状況にあるのか調査をしてほしいと言ったわけでありますが、それについて、その夫人の問題はこれは労災に入ってない、そういう回答があったわけですね。  そういう程度の調査結果を報告されるなら、何も私も調査を要請しなかったのですが、その間その辺のところをどの程度にどう調査をされたか、まずその辺からちょっと伺いたいと思います。
  286. 望月三郎

    ○望月政府委員 先生質問のこれは大武さんのことだと思いますが、請求人につきましては、現在までに得られた調査結果及び医証によりますと、金属加工業の仕事に従事したようでございますが、確かに雇用労働者としてではなくて、事業主として工事を請け負っていたことが判明したという点が一点。また、現在請求人がじん肺症に罹患している旨訴えておるために、じん肺症の専門医療機関であります、先生御承知の珪肺労災病院で専門医による慎重な検査の結果、レントゲン写真像と肺機能検査数値等から、じん肺法で定めているところのじん肺病変は認められないという診断が下されております。
  287. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 そういうことのようですが、この個人事業主は大武攻君というのですが、これは栃木県の今市市の板橋というところに工場を持って、工場兼自宅ということで、一階が工場になり、二階に家族全員が住んでいる、そういうことでありまして、前には鉄骨組み立て業というようなことで、いわゆる労災の特例加入をして、その後、金属加工をやるようになった。こういうことで大体五十五年の九月ないし十月あたりから、堀江工業という、これも宇都宮にあるのですが、そこを通じて、そこが下請で孫請のような形で三菱製鋼から仕事をもらって金属加工をやった。そして、集中的にやったのは、検収報告書、受領証、こういうようなものを見ますと、ほとんど堀江工業時代のところも皆、本人が直接親企業に行って材料をもらってそれを加工あるいは研磨をする、ばり取りをやる、いろいろな加工をやる、こういうことで、ずっと三菱製鋼という宇都宮にある会社からの受注を受けて仕事をやってきた。  大体それが五十六年の六月あたりから始まっているのですけれども、それをずっと続けておるうちに、五十七年の一月あたりになりますと発病をして、大体どういう症状にあったかという本人の訴えがこんなに私のところへ来ているのです。太人の訴えだけでどうこうできるものでもないと思うけれども、事業をもはやどうにもやれなくなるというような状況が――五十六年の十月あたりから五十七年の八月まで仕事をずっと続けてやったわけですが、その八月に、もはやどうにも耐えられないという状態になって、九月二十四日の診断書がここにあるわけですが、珪肺労災病院に行った。これは今市と非常に近いところにあるわけですが、そこへ行った。  そのときの症状は、背中が痛くて眠れない、黒いたんが大量に出る、のどが痛いとか、雨が降るようなときには背中の痛みが激しい、肺の中が痛い、汗が出ない、目が痛い、目がごろごろする、血便、血たん、血尿、鼻血、こういうような外的症状もある、体が全体にだるい、膀胱の上のあたりに痛みが走る、髪の毛がすごく抜けてしまう、気持ち悪く上げそうになる、嘔吐しそうになる、のどが渇くというようなことを訴えて珪肺労災病院にかかったわけであります。それで、じん肺症の疑い、肝機能の障害の疑い。  こういうものが奥さんも同様に、主人の攻君と一緒に仕事を、全作業工程でほとんど両者協力で実際の仕事をやっている。奥さんもちゃんとあらゆる作業を一緒にやっている、こういうことなものですから同じような診断が、奥さんの場合には鉄欠乏性貧血の疑いというのが一番最初のあれでありますが、その後、今度は国立病院にかかっている。  そしてまた、国立病院ではさらに広範な形で診断をしてもらいたいというようなことで、珪肺病院先生から、こういうところを重点に診てくれというような、私見というようなものを添えて手紙を出しておられるというようなことがあっているわけなのです。その後、東京の新橋あたりにある芝病院というところにも来て入院もし、検査もしてもらった。そこではかなり正確な、非常に高度な検査を繰り返し繰り返しやったというようなことなのですが、そこからの診断書、そういうようなものは今ここに出ていないのですけれども、一週間ぐらいずつ夫妻で入院をして診てもらっておるというような状況のようであります。  そして、何か非常に手のひらが変色をして真っ黒になるという訴えをしているのですけれども、そういうことでことしの二月ぐらいに、自治医科大学というのがやはり栃木県にあるのですが、そこの病院に行って診てもらった。そうしますと、これはもう金属中毒の症状が丸々出ているな、すぐ入院しなさい、こういうように言われる。そういうようなことがあったりして入院をした。そのうちに上の教授の先生と相談をすると、今度は退院して結構である、こういうようなことを言われてしまう。こういうようなことを繰り返しておるわけです。  しかも、最初に珪肺病院にかかったときには、あなたは今の仕事をやっていると生命を保障できません、死んでしまうでしょう、だからその仕事をやめなさい、そう言われてやめざるを得なくなった。それで、体の方も全くぐあいが悪くなっているものですから、仕事をやめたままであっちこっちの病院で、早く労災を適用してくれないかな、特例加入でもとにかく入っておったのだから、そして奥さんも家族従業員という形で特別に加入をしているのだからということで、そういう手続を宇都宮にある井上労務事務所というところでずっと一切の手続をしてもらっておったのです。そういう状況の中で、そういう状態になればもう労災保険は適用されるものと本人は信じ込んでおるわけですね。ところが、本当にその職業、その作業、そういう仕事に起因するいわゆる業務上の起因性だとか遂行性だとかいろいろあるのでしょうけれども、判定をする場合に。その基礎をなすものはやはり医師の診断なんですね。そういう診断がなかなか的確に、この仕事によってこうだと言われて仕事ができないような、先ほど申し上げたような症状に至った、そういうものがなかなか証明されない。それで親企業の方に行っても親企業の方は、そうぐあいが悪いのならば、あなた、生活保護を受けなさいぐらいのところで、あとはちゃんとした証明書を持ってきなさい、そうでなければ手の打ちようはありませんよ、こういうまことにつれない返事しか返ってこない。こういうようなことで、今現在も大体同じような症状が続いているということを、これは経過をずっと追って書いてきているのです。  最近の、一月以降現在に至るのも、気持ちが急に悪くなる、意識がなくなってしまうぐらいの状況だ、突然ぴくっとなって息がとまるようなことがあるとか、体全体が冷たくなるとか、頭や顔の表面の皮膚が突っ張ってぴりぴり痛いとか、しびれるとか、たんが大量に出るとか皮膚が動かなくなる、筋肉があちこち硬直したような状況になる。こういうこととか目がかすむとか、胃腸のあたりの筋肉が硬直したように突っ張ってしまって、どうにもならない痛がゆい状況になる、こういう状況が今でも続いている。それから、時々便秘もするし、口中の臭みが非常に強いとか、背中とか腰あたりに非常に痛みを感じて筋肉が硬直する、そういう症状を訴えているわけなんです。仕事をやれるような状況であるのかと聞きましても、とても仕事をやれる状況ではない。こういう状況にもかかわらず、なぜ労災保険ができないのか、こういう訴えをしているわけなんです。  これに対してちょっと調査をしたようだけれども、じん肺症も1/0、じん肺の等級をあらわしているようですけれども、それはまだ療養給付するに値しない程度の軽症であるということのようですが、こういう状態で何の補償もない。しかも医者は、あんたこれをやっとったら死んじまうからやめなさい、こう言われて恐ろしくなってやめざるを得なくなった。そして、病院を転々として、どこの病院へ行っても的確な診断は得られない。こういう状況でいる場合に、こういう下請、零細業者が救われる道は一体何なのかということにならざるを得ないわけですね。  そういう点で、医師が的確な診断書を書かない。それがまた判定の基準、労働基準監督行政の中ではそれが唯一の頼りになるのだろうけれども、その辺のところは一体どういうことになったら――こういう症状があり、しかもそれだけのことは一応書いている。さらに、五十八年二月段階の国立病院の診断書は、「堅肺症疑」、「糖尿病」、金属を吸入したそのあたりから糖尿病は起きやすくなるということもあるようです。それから「肝障害」。「昭和五十七年八月二十七日、当院初診時、検診時胸部異常陰影を指摘、喀痰出現、十年間金属研磨作業従事」。既往症としては「小児結核の既往により精査のため来院した。血液、生化学、尿、胸部レ線、肺機能、心電図、喀痰培養、五百GTT、etcの検査結果より上記診断を得た。」ということだけしか書いてないわけですね。  そういうことで、今大変気の毒な、全く救いのない状況になっている。しかもその後何の仕事もできないで、親戚じゅうから借金をしながら、そこにおったら奥さんだけでなくて子供たちも、同じように鼻血が出たりいろいろな症状が出ているというようなことなので居を移した。それから、本人の申し立てによると、その工場の一隅に飼っておったシャモが食糧と一緒に金属片をついばんだりしておって、そのシャモがおかしな死に方をしたということがあったり、猫がおって、その猫が奇形の猫の子を産んだというようなこともあったようだ。あったということを本人は申しているのですが、私はそれを確認してないから、あったようだと言うのですけれども、本人はそういうことも申し立てている。  そういうような状況で、これは単なる労災ということ以上に、有害な金属物質を大量に、しかも長期間にわたって吸い込んだ、こういうところに問題があるのではないかと思うのです。そしてその発注元は、実は省エネルギーの問題でムーンライト計画というのを通産省の工業技術院でやっておるわけです。超高温耐熱ガスタービンというようなものの部品をつくっているのですが、それを発注している。それが三菱重工それから三菱製鋼、そして下請に、孫請に、こういう形で回り回っていっているわけですね。その後島津製作所の分析、県の公害課の分析、それから東京労災病院等で分析したものとか、こういうように全部そろえてあるのです。どれが有害物質であるというようなことを私どもなかなか言えないのですけれども、こういうように全部あるわけです。チタンであるとかコバルトであるとか、あるいはバナジウムであるとかタングステンであるとかジルコンであるとか、我々が常識的に、大量に吸い込んだら必ず有害であろうと思われるようなものが全部含まれているのです。そういうようなこともありまして、それでそういう状態になって、もうやめろと言う。やめたら後何もないということで、どうにもならない状況にある。こういうような場合に、なぜ労災適用にならぬのかという疑問を本人が持つのも当たり前だと思うのです。  それで、通産大臣にも午前中に質問をいたしまして、国が発注元である、そして末端では何の注意もなしにそういうものを長期間にわたって集中的にやらした、ほかのところには渡さないで、その種のものはほとんど全部その個人事業にやらせたというようなことで、その辺のところにも問題があるぞということを指摘しておいたわけですけれども、そういう状態だ。こういう場合に労災補償保険くらい適用されないで、一体こういう零細企業者が救われる道はあるのかという疑問を持たざるを得ないわけですね。その辺のところについて労働省としてのお考えはどうなのか、そのことを明らかにしていただきたいと思います。
  288. 佐藤正人

    佐藤(正)説明員 お答えします、  先生指摘の件でございますが、まず一つは労働者性の問題があろうかと思います。それから第二点は医証の問題があろうかと思います。  基本的には私ども局長が申し上げたとおりでございますが、まず労働者性でございますけれども先生指摘のとおり堀江工業あるいは三菱製鋼の下請ということで従事しておったことは事実でございます。ただし、その間は事業主としてそれぞれ保険関係を成立させておるという事実からいたしますと、この方はむしろ特別加入制度で救済されるべきではないかというふうに考えられるわけでございます。残念ながら、特別加入制度につきましては、建築事業は加入しておりますけれども、金属加工業の方は未加入という形になっております。そういう意味で、残念ながら労災補償の適用はないのではないかというふうに、現在までの調査結果から判断いたしております。  それから、もう一点の医証の件でございますけれども先生から御指摘がございましたように、確かに過去におきまして国立栃木病院あるいは珪肺労災病院で診断をいたしております。その結果から見ましても、特に権威ある珪肺労災病院意見書を見ますと、じん肺の症状はございますけれども極めて軽度で、じん肺の管理区分が一から四までございますけれども、その管理一に該当するというような診断結果が出ております。さらには、肺機能障害などにつきましても検査した結果がございますけれども、そういう障害も見られない。また、療養の必要性はないと考えるというような医師の意見書も出ております。また、先生から御指摘がございましたように、マンガン中毒の疑いもあるというようなことでございまして、これにつきましても私ども東京労災病院でもって検査をいたしましたのですが、その結果を見ましても、いずれの検査数値も正常値であるというような結果が出ております。  以上のことから判断いたしまして、現在までの私どもの調査結果では、労災保険法を適用することには非常に困難があるのではないかというふうに考えております。
  289. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 労災に加入していなかったというのですが、こういう書類が東京の芝病院から夫妻両方について出ているんですね。「傷病の部位及び傷病名 じん肺症 金属中毒」というようなことになっておるわけです。そういうように、建築関係ということで特例加入をしておった。建築の段階でも鉄骨組み立てというようなことを中心にやってきた。その後、金属加工ということになった。その点で、大体零細企業なんかはそういう事務手続、届け出、そういうものなんか不得手ですから、社会保険の労務士のところに全部頼んでやってもらっておった。本人はそういうことで、もう手続が済んでおるものと思っておった。そして領収書なんかも、かくのごとくは私はちゃんと労災保険料も納めでいますということで持ってきておるわけです。その辺のところがどうなっているのかという疑問もこの問題にはあるわけであります。  それと、その手続がおくれたというようなことなんかもあるいはあるかもわからぬけれども、いずれにしても、そういう先ほど申し上げたような国のプロジェクト事業についての仕事が、これだけの領収書の中で、これは私折ってみたのですけれども、その関係のものが大部分である。しかも、それ以外のところへは発注しないで、全部ここへ集中している。そして、これを全部見てみれば、どういう素材のものを削ったりして、金属粉じんが飛んで吸い込んだりというようなことが、これだけでも見当がつくはずなんですね。そういう有害金属を吸い込むようなことでそういう症状が出て、仕事ができない。それを続けていれば死んでしまうと医者に言われるような、そういうことにならざるを得ない。そして、そういう状態になったというものに対して何の補償もないということは、いかにもおかしいと思うんですね。  その辺のところについては、労働行政として、労災補償保険法をつくったものとして――その手続の遅滞の問題などは、そういう事務を頼んでおった人のミスというようなこともあるいはあるかもしれない。本人との連絡がどういうことであったか、そういうようなことも含めて、これはかなり綿密に再調査をして検討していただかなければならない問題であろうと思うのです。これはもう時間もありませんので、最後に大臣にお伺いしますが、どのようにお考えになりますか、大臣の所見をお聞きいたしたいと思います。
  290. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今のお話をいろいろ詳しく承りましたが、最後はやはり権威のある医学的な判断で決定せられることと思いますけれども、今広瀬議員、それほど詳しくおっしゃったわけでありまするから、事務当局にひとつ慎重に判断をするように指示をいたします。
  291. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 これは厚生省も実はその意味で呼んだのですが、もう厚生省にあえて質問しませんけれども、権威ある医療機関、そういうようなところできちっとした診断をしてもらうということなんですが、その権威ある医療機関、この種の問題についてはどこがいいのか、それすら本人自身はわからないし、どこにかかったらどうなんだ、そういう指導だって何もなされていない。監督署としても頭を抱えながらも、そういう点について、どこへ行ってこの分析方法を示してちゃんと診断をしてもらって、そこでどういう診断が出るかをやってくださいというような指導などというものが、これは現になされていないようですね。  そういうこともありますし、それで、なぜそういうことになっているのかということについては、現場の基準監督署にも、田中君からそういう返事があった段階で、それは本当に本人がよくわかるように説明してやってくれと言ったんだけれども、それをやった形跡が全くない。それから二十日近くたっているわけだけれども、全然やっていない。そういうようなことで、その点はもしどうしても労災補償保険適用が難しいのだとするならば、かくかくの理由で、あなたは今現在そうであろうとも、どういう点が証明されなければだめなんです、その証明をする機関はこういうところなんですということまで教えてあげる。珪肺労災病院に行きましてもあちこちやるだけで、そういうきちんとした指導というものがなされないということは、労働行政として、特にそういう気の毒な業務災害と思われる人にこういうものをちゃんと検討すれば、これはそれ以外の理由は何も考えられないんですね。そういう点を十分考えて、十分慎重に再調査もしていただき、またそういう親切な指導もしていただくように要望をいたしておきます。  これは大臣、最後にお答えをいただきたい。
  292. 坂本三十次

    坂本国務大臣 本人にもできるだけ納得のいくように親切に――医学的な問題でもございますから、これはやはりその判断は、だれが見てもここならば権威のある医学的判断だというようなことの納得のできるようなところから、監督署としてもやはり意見を聞くように、そうして本人にもできる限り親切にというつもりで、慎重に判断をさせます。
  293. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 若干時間が超過しているようですから、これで終わります。
  294. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて広瀬秀吉君の質疑は終了いたしました。  次に、上田哲君。
  295. 上田哲

    上田(哲)分科員 最近、ニューメディア時代でありまして、コンピューターの端末機、ワードプロセッサー、ビデオゲーム、パソコン、これで日本じゅうの人の目がみんな悪くなっちゃう。紙に書いた黒い字じゃなくて、光がつくる字で一億総眼鏡、特に子供からやられてしまうのではないかという問題があるので、この問題についてひとつ議論をさせていただきたいと思います。  特に、これにかかわっているマスコミで働く人たち、マスコミ・文化共闘といいますが、大臣、私十年その議長でして、今名誉議長でありますから、そういう立場でひとつ突っ込んで御意見を伺いたいと思います。  今VDTは急速な勢いで工場やオフィスを初め学校、家庭で普及をしているわけでありますけれども、どれぐらい設置されているのか、この普及台数がよくわからない。通産省はどういうふうにこれを把握しておりますか。
  296. 島弘志

    ○島説明員 お答え申し上げます。  実は、VDTの定義というのは必ずしも明確でないのでありますけれども、ブラウン管の表示装置等、いわゆるキーボードというものをあわせ持つ情報処理機器であるというふうに考えますと、汎用電子計算機の端末装置でありますとか、いわゆるパーソナルコンピューター、パソコンでございますとか、ワードプロセッサー、ワープロと言っておりますけれども、そういったものが代表的なものではないかというふうに思っております。残念ながら、VDTそれ自体の統計というものは、定義も不明確であるということからいたしまして、統計がないわけでありますが、今申し上げてみましたようなものの合計ということでおよその察しをつけるという以外にないわけであります。  それからもう一つ申し上げなければなりませんのは、その設置台数というのがまだはっきり我々つかんでおりませんで、出荷台数あるいは総生産台数からこれも察しをつけざるを得ない、こういうことでございます。  個々の機器について若干申し上げますと、例えばパソコンでございます。これが一番大量に普及し、なおかつ伸びているわけでございますが、これも業界の統計でございますが、国内向けの出荷台数が、五十六年度が二十八万台、それから五十七年度が七十六万台ということで、この間非常に飛躍的に伸びているというわけでございます。
  297. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 先生指摘の中でワードプロセッサーでございますが、ワードプロセッサーにつきましては生産動態統計で私ども把握していろわけでございます。     〔小杉主査代理退席、橋本(龍)主査代理着席〕 五十七年の生産台数で約三万五千台、五十八年で約九万六千台と急速に伸びております。ちょうど生産開始が五十七年ごろでございますので、この総計であります十二万一千台ぐらいが今普及していると推察していいのではないかと思っております。  さらにビデオゲームがございます。今、島課長も申しましたように、厳密な意味でのVDTではないと私ども思っておりますが、出荷台数について、統計がなかなか難しいわけでございます。これは警察庁の調べによるものですが、五十七年で約十九万台ぐらい出ているという数字になっております。
  298. 上田哲

    上田(哲)分科員 定義がはっきりしなければ、定義をはっきりさせるのがあなた方の仕事なのでして、まさにこの普及状況というのはもう全日本的な社会現象になっていると言わなければならないわけですから、もうちょっとしっかり調べてもらわなければ困る。労働省が先ごろVDTに関するガイドラインを出しているわけですから、そういう意味では、もうちょっと基礎になる数字というのは広範に、かつ深くつかむということは当然なことだと思う。まとめて後で大臣に伺います。  そこで、VDTの規格の問題ですけれども、VDT機器の安全性と労働者の健康対策を考えていくということになると、この規格がどうなっているかということは極めて重要でありまして、特に、マスコミ・文化共闘がVDTの構造規格について関係官庁に具体的な提案をした。この最大の問題は、まず目の障害ですね。眼精疲労、視力低下、こういうものを防止するという基本的な課題、そのために通産省がVDTの構造規格を定めるという立場が必要だと思うのですが、いかがですか。
  299. 島弘志

    ○島説明員 御指摘のように、本件につきましては私どもも非常に重要な問題だと受けとめておりまして、実は、昨年からでございますが、私ども局長の私的諮問機関、研究機関がございまして、これを機械安全化・無公害化委員会と言っておりますが、その中にVDT分科会を設置いたしました。各界の有識者の御参加をいただきまして、現有VDTに関する研究を鋭意行っているわけでございます。  検討の内容でございますけれども、まずは健康に影響を与えるだろうと考えられるようなさまざまな因子、これは数十項目にわたるわけでございますけれども、そういうものを抽出いたしましたり、諸外国の規制の状況その他ガイドライン設定の状況等々を検討いたしましたり、あるいは出回っております国産機の使用調査を行いましたり、あるいは実際にこれをお使いになっている方々のアンケート調査あるいは管理者にインタビュー調査を行うといったようなことを現在やっておるわけでございます。もちろんこの中で今御指摘のような安全性の問題というものにシャープに焦点を当てているわけでございますけれども、それに加えて、さらにやはり本質的にはより疲れない、より人間にとっても違和感を感じないようなVDTというものが非常に重要ではないか。まさに高度情報化社会における人間と機械との接点に位置するものでございますから、そういうよりすぐれた、人間にとって違和感を感じないVDTを求めて総合的な検討を行っているわけでございます。  今後この分科会での成果を踏まえまして、関係業界や関係省庁との連携を深めながら、適切な施策を講じてまいりたいと考えております。今御指摘がございましたような安全のための機器のガイドラインといったようなものも含めて検討をしておるところでございます。
  300. 上田哲

    上田(哲)分科員 演説は要らないから、前段は全部要らないので、御指摘の部分を含めて検討しておるというところだけが実質的な回答なんだ。どういう努力をしているかなんということは百万遍言ってもしょうがないから、聞きたいのはそこなんですよ。VDTの構造規格を定める、どういう腹なのかということを聞いているのだから、そこのところだけをきちっと答えてください。
  301. 島弘志

    ○島説明員 構造基準の設定ということも含めまして、現在検討を進めておるというところでございます。
  302. 上田哲

    上田(哲)分科員 はっきりしないですね。もっとちゃんと突っ込んだところでポイントを合わせてもらいたい。  問題は、具体的に言いますと、現在日本国内で使われているVDTの画面は陰画表示法なんですね。暗い背景に明るい文字を使う、これに大きな問題があるということが指摘されているわけですね。陰画表示法をやめて陽画表示法、つまり明るい背景に暗い文字を使う、こういうことを考えてみたらどうだ。これは外国では既にそういうことをやっているわけですから、そういう転換を考えてみたらどうだ。西ドイツでは陽画表示にせよということになっているわけでして、したがって、日本から向こうへ輸出する場合には陽画表示になっているわけですよ。外国にはその方がいいだろうというのでやっていて、国内でそのままというのはおかしいわけで、これは転換すべきだと思うので、科学的な立場からいっても当然そういうことになる。ドイツの人の目を大事にして日本の人の目を大事にしないなんてばかなことはないでしょう。労働省、通産省、これをどう思いますか。具体的に聞いているのだから、具体的に答えなさいよ。
  303. 望月三郎

    ○望月政府委員 先生おっしゃるように、陽画表示という方法もあるわけでございますが、日本の場合はまだ陰画表示ということが圧倒的のようでございます。そこで私どもは両方含めて、今産業医学総合研究所と産業医科大学の二カ所に共同で研究を委託しているという状況でございます。その結果が出るまでの当面の措置として、先般ガイドラインを通達して、これで指導するということにしたわけでございますが、もちろんそういう陽画表示の問題も含めて産業医学総合研究所と産業医科大学に研究の委託をしてございます。
  304. 上田哲

    上田(哲)分科員 そうすると、陽画表示法の方に向かっていく、そういう方向であるということですね。
  305. 望月三郎

    ○望月政府委員 そういうことも含めて考えております。
  306. 上田哲

    上田(哲)分科員 含めてはかりだね、さっきからの質問の答えが。含めてなんというようなことを言っていないで、含めるということは、二つしかないのだから、やはり陽画法の方へ行くのだという大きな方向があるということですね。(望月政府委員「はい」と呼ぶ)
  307. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 立って答えろ。
  308. 望月三郎

    ○望月政府委員 そういう方向も考えて検討を……
  309. 上田哲

    上田(哲)分科員 立つとまた言葉が……。含めてかどうかという二つしかないのだから、こっちでなくてこっちだったら、含めてもくそもないじゃないですか。大きい流れはそっちの方向だなということを確認しているのだ。座っているときはそう言っていて、立ったら急にまた変わる。だめだな、それは。委員長、指図してください。
  310. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 座っているときと立っているときと、同じに答えてください。
  311. 望月三郎

    ○望月政府委員 お言葉でございますが、含めてというのは、今はとにかく黒いバックに陰画表示こいうことで、現に行われているわけですから、これを当面やらなければならぬわけですが、もちろん陽画表示もこれは検討課題としてお願いをししいる、こういう意味でございます。
  312. 上田哲

    上田(哲)分科員 言葉をかえましょう、積極的は検討課題だと。
  313. 望月三郎

    ○望月政府委員 さようでございます。
  314. 上田哲

    上田(哲)分科員 はい、わかりました。ほかにも放射線障害の懸念とか、あるいは頸肩腕障害とか、背腰痛などの問題があります。これについては問題視していますか。
  315. 望月三郎

    ○望月政府委員 問題意識を十分持ってやっております。
  316. 上田哲

    上田(哲)分科員 きょうは時間がありませんから、そこを細かくはやりませんが、それについても十分にひとつ頑張っていただく。問題点があるわけですから。  VDTについては、ハードの面だけではなくて、ソフトウエアの改善についても重視しなければならない。これはマスコミ・文化共闘では、ソフトウエアについても十項目の提案をしているわけですが、この十項員の提案というのは大いに参酌するに値するというふうに考えて取り組みますか。
  317. 望月三郎

    ○望月政府委員 大いに参考にして、取り組んでいきたいと思います。
  318. 上田哲

    上田(哲)分科員 現在、ハード面で、必ずしも安全、衛生面での対策が十分でない。その中では、非常に大きなポイントになるのは労働時間です。VDTの使用者については、労働省のガイドラインで「VDT作業に常時従事する作業者については、」こういう線が出ているわけです。これは対象を限定しているわけですけれども、実際にはVDTと他の業務を兼業している人が多いわけです。そういう立場で考えると、専業者についてはVDT装置の操作時間を一日四時間以内、兼業者はその半分の二時間程度、こういうふうにすることが妥当だと考えるのですが、いかがですか。
  319. 望月三郎

    ○望月政府委員 確かにそういうお説もございますし、外国の例等も見ますと、アメリカは私どもが今出しているガイドラインにほとんど似ておるわけでございますが、印刷産業労働組合というのは一日四時間、一連続二時間というような基準を出しております。  私どもは、VDT作業に従事する作業者の場合、連続作業時間一時間について十分ないし十五分という休止時間を設けるということでやっておりまして、御指摘のような一日当たりの全体の枠を作業時間として制限を設定するかどうかという点については、労働省としても非常に関心がある点でございますが、VDT作業には種々さまざまな作業態様があることに注目すれば、今の段階で一律に作業時間の規制を行うということは、まだそこまでは確信が持てないということで、私どもは一時間やったら十分ないし十五分ということで当面は行政指導をしたいというのが適当である、こう思っておるわけでございます。
  320. 上田哲

    上田(哲)分科員 言っておることはわからぬことはないのです。一時間やってこれだけ休みなさい、それは非常に便宜的、過渡的なんですね。つまり、問題は、それ以上の時間続けてはまずいんだということを実は認めているからのことなんですね。そうであれば、全体的な労働時間をトータルで締めていくというのは当然なことになりますね。したがって、直ちに四時間、二時間、うんと言えと今言わぬけれども、今の一時間やったら十分、十五分ということは、そういう包括的な規制のための過渡的なところにあるのだということで理解をしていいですね。
  321. 望月三郎

    ○望月政府委員 お説のとおりでございます。その点は重大な関心を持ちながら、研究の成果を待ちたいということでございます。
  322. 上田哲

    上田(哲)分科員 いつごろ結論が出ますか。
  323. 望月三郎

    ○望月政府委員 五十八年から三カ年計画で研究委託をお願いしておりますので、六十年ころには出ると思います。
  324. 上田哲

    上田(哲)分科員 それから、労働省のガイドラインでは、作業休止時間についてまあまあ明確にしているのだけれども、休憩や休養の施設に触れてない。一時間やったら十分、十五分休めというのだけれども、その部分がないとどうやって休むのかという問題。つまり回復を保障する道がない。そういう意味では、休養のための施設というのは決して小さい問題ではないと思うのですね。これはいかがですか。
  325. 望月三郎

    ○望月政府委員 御指摘の点につきましては、事務所衛生基準規則によりまして、事務所におきましては労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めるということや休養室等を設けることとされておりまして、ガイドラインに示す作業休止時間をとる場合には、これらがより有効に利用できるように指導してまいりたいというふうに思っております。
  326. 上田哲

    上田(哲)分科員 何となくすぱっとはしていないけれども、そういう努力はしてもらいたい。  健康に対する影響度がどういうものかということが、なかなかはっきり今データが出ていないのです。出ていないから対策もできないということである以上、健康診断というのが非常に重要になってくる。これは大臣、当然そうですね。その健康診断についての有効な方途というものも十分にできていない、いわば未開の分野ですからね。そういう意味では、健康診断の内容の確立、それから特にその作業につく前の健康診断がないと、その差が出てこないわけですから。そういうことをきちっと体系的にやってもらわなければならない。  今のところそのVDT作業は安全規格がないということである以上、有害作業だと言わざるを得ない。認識の問題として。有害作業だという立場に立つのであれば、特殊健康診断、こういうカテゴリーの中で進めていかなければならないのであり、それが事業者にとっての当然の健康管理任務だ、こういうふうに思うわけです。安全衛生教育と安全衛生委員会の活動など、積極的に取り組まなければならないと思うのでありまして、有害作業である、特殊健康診断の必要があるという問題について、いかがでしょうか。
  327. 望月三郎

    ○望月政府委員 健康診断につきましては、特に配置前の診断が非常に有効だという点につきましては、今回私どもが示したガイドラインにおいても、配置前健康診断の項目として目の機能検査、指の機能検査等を取り上げて、その実施の指導を進めていくという方針でやっております。  また、事業者と作業者が一体となってこの問題に取り組むことを基本としておりまして、環境管理、作業管理、健康管理等の種々の対策を図るに際しては、労働者の代表が参加する衛生委員会等で、まずVDT導入による影響について予測評価を行うように指導をするつもりでございます。
  328. 上田哲

    上田(哲)分科員 配置前の健康診断の重要性を認められて、それでその辺の努力をしなければならぬというところを確認されたことは結構ですから、そういう体系的なことを、特に特殊健康診断カテゴリーとして進めてもらうということを強調しておきます。  そこで具体的に、目ですよ。光がつくる文字によって、大臣、本当に目をみんなやられてしまう。子供が好きですから、これは重要な将来の問題になってくるわけです。  どこに問題があるかというと、眼鏡というのは大体三十センチのところで物を読むようになっている。眼鏡屋へ行くとみんなそうなんですね。ところが労働省のガイドラインでは、VDT画面は、四十センチないし六十センチの視距離を保つようにとなっている。三十センチが適正距離になっている眼鏡と四十センチないし六十センチの間にずれが出てくるわけですよ。いろんな理屈をこねることはできないことはないのだけれども、少なくともVDT作業については、そのVDT作業に合った眼鏡の支給というのが当然必要になってくるのです。  そういう意味で、例えばスウェーデンなんというのは、VDT作業に適した眼鏡を用意するということになっているのです。だから、そういう実情に合わせた、事業者の責任における眼鏡、こういう処置が当然今可及的速やかにとられなければ依らない、そう思いますが、いかがですか。
  329. 望月三郎

    ○望月政府委員 眼鏡は三十センチメートルに合わされておるということと、それから私どもが今回ガイドラインとして指定したのは、ディスプレーの視距離について、現在の知見等から見て四十センチないし六十センチという一応の目安を暫定的に示したということで、その間のずれはどうするんだ、こういう御質問だと思います。その点につきましては、私どももさらに調査研究を進めまして、例えば、もしまだ全体の結果は出ないにしても、その点について中間的な研究成果があれば、今のガイドラインを直ちに変えることも決して抵抗を感じません。むしろそこを変えていくという姿勢でございますので、その点は御了解いただきたいと思います。
  330. 上田哲

    上田(哲)分科員 それは非常にいい答弁ですよ。せっかく出したガイドラインだけれども、問題があるというのならすぐ変えることに抵抗を持たない、これは非常にいいことですからね。  そうすると、追い込んで言うわけじゃないが、三十センチに適正な眼鏡と四十センチ、六十センチのところには問題があるなということが一つ。  それから、例えばスウェーデンがやっているように、その場合には事業者側が合わせた眼鏡を用意するということは当然出てくるだろう、こういうことはやはりそちらも考えていらっしゃるわけですね。この二点。
  331. 望月三郎

    ○望月政府委員 お説のとおりでございます。
  332. 上田哲

    上田(哲)分科員 それは結構です。ひとつぜひ具体的にやってください。  そこで、時間の問題もありますから、大臣、三点に絞って今の問題をまとめていきたいのでありますが、今いろいろ問題が指摘されました。一億総眼鏡になってしまったり、子供から順番に目がちらちらしてしまう、あるいはそれが将来の健康全体のレベルダウンにつながるというようなことになっては大変なことでありますから、そういう面では全社会的な問題として取り組まなければならない。今、私は幾つかの象徴的な問題だけを取り上げたのでありますが、この問題はこれからどんどん加速されてくる問題ですね。そういう認識をひとつしっかり置いていただいた上で……。  VDTの抜本点な基準について、労働省は三年ぐらいかかるというふうに言っているわけです。今の眼鏡のように、悪かったらすぐ変えることは構わぬよというふうに言っていることは私は歓迎をするが、今私が指摘した問題のみではなく、大きな問題、あるいはまだ隠れている問題があるわけだから、これが三年かかるというのでは手おくれになってしまうこともあるではないか。こういう意味では、構造規格、作業基準、この問題を具体化する期間を、三年をもっと早めるという御決意をひとつお持ちになっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  333. 坂本三十次

    坂本国務大臣 全社会的な問題であるということはよく理解ができます。それは職場だけじゃありません、家庭でも学校でもすべての面でございましょうから。私は眼鏡をかけておりますけれども、みんな眼鏡をかけてもらっては困ります。確かに私も眼鏡をかけて苦労しておるのですから、そういうふうになっては困りますので、確かに全社会的な問題として取り上げていくということは間違いはありません。  それから、基準に三年かかる、ところがどんどん全社会的に広がっておるのですからもっと早くできぬかということでありますが、これは役所の役人じゃできませんので、もっと高度の専門的な知識を必要といたしまするが、できるだけもっと早目に、時代はテンポが速いのですから、基準にゆっくり、三年は三年というわけじゃ――一年でも早くできるように、ひとつ私の方としても促進方をお願いをしていきたいと思っております。
  334. 上田哲

    上田(哲)分科員 前向きな御決意で結構であります。お役所的にならないで、今大臣直言われたように、これはただ近眼になって眼鏡をかけるというのと違うわけですね。もっといろいろな障害が出てくるわけです。しかもまだ分明されていない、わかっていない問題が出てくることがあるわけで、そういう面では「論語」、「孟子」を読んでいた時代の目の疲れとは違うわけですね。違った字が出てきている。光の字で、どういう障害が起きてくるかわからぬというところがあるわけですから、ただの眼鏡をかければいいというわけではない。しかも三十センチと四十センチ、六十センチの問題があるわけですから、そうした問題は画一的にやらないで、今の大臣の御答弁は結構ですから、できるだけ早くやりたい、そのできるだけ早くやりたいという包括的な「早く」と、部分的にはすぐにも手をつけられるところはすぐやるという御決意として受け取りたいのですが、いかがですか。
  335. 坂本三十次

    坂本国務大臣 結構でございます。
  336. 上田哲

    上田(哲)分科員 二番目の問題です。  そういう問題を考えていく場合に、さっきからいろいろ学識経験者、専門家の機関を経て討議をしていく、これは当然のことだと思うのです。同時に、ぜひ考えていただきたいのは、これに従事している作業者、労働者、特に具体的にはマスコミ・文化共闘ということもありますけれども、もっと包括的で結構ですから、その労働者代表といいましょうか、作業者代表というものをそういう検討の中に何らかの形で組み入れていく、こういうことを考えていただくことが非常に有効ではないかと思うので、いかがでしょうか。
  337. 坂本三十次

    坂本国務大臣 公、労、使の代表で構成される中央労働基準審議会なんというのがございますから、そこで各界の意見を反映できるのではないかな、こう思っておりますが、そのほかにもどんなふうなことがありましょうか、いろいろ広く意見を開いて、そして労、使は当然のことでありますが、そのほかでもやはり広く意見を聞くように努めていきたいなと思っております。
  338. 上田哲

    上田(哲)分科員 これも前向きな御意見で結構なんですが、問題は、今おっしゃったその中央労働基準審議会に何らかの形で労働者代表を加えていく道を開くという御決意はいかがでしょうか。
  339. 坂本三十次

    坂本国務大臣 中央労働基準審議会は、公益代表、労働側の代表それから使用者側の代表、この三者で構成されると聞いております。
  340. 上田哲

    上田(哲)分科員 私が言いたいのは、マスコミ・文化共闘というのがあるわけです。十項目を出して、それも評価すると言われる。そういうところの代表を加えていただきたいという具体的な考えはいかがでしょう。
  341. 望月三郎

    ○望月政府委員 中央労働基準審議会は、労働基準についての規制をやるときは必ずここの審議会へかけるわけでございます。この委員は、私どもが勝手にどの組合から出てくれということではなくて、労働組合に推薦方をお願いするわけです。それから経営者側もそうなんです。それで、その窓口が労使ともそれぞれあって、その中で話し合いをして適当な人を出してきていただく、こういうシステムになっております。慣行としてそういう格好になっておりますので、マスコミ共闘というわけには、ちょっと私どもとしては言えないという立場でございます。
  342. 上田哲

    上田(哲)分科員 これは、賃金を争うとかそういう問題じゃないわけだ。しかも、さっき大臣も言われたような、非常に大きな社会的な問題だということですから。これは公式でなくてもいいから、例えば大臣自身も、そういう作業者の代表である人たちに一遍聞いてみるということはいかがですか。マスコミ・文化共闘のようなマスコミで働く人たちに、非公式でもいいから、こういう実情について一遍聞いてみようじゃないかということはいかがでしょうか。
  343. 坂本三十次

    坂本国務大臣 それは、労働省はすべて開放でございますから、そういう御意見がございますれば喜んで承ります。
  344. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 時間が参りましたから、これで……。
  345. 上田哲

    上田(哲)分科員 では最後に一問。  これは非常に重要な文化課題だと思うのです。そういう面で私は、例えば労使が相争うとか、そつした問題よりもっと深い問題だと思いますので、非常に先進的な感覚をお持ちの大臣とお見受けしているわけですから、今の文化的視点からこの問題にどういう見解をお持ちかを総合的にまとのていただいて、ひとつ前向きな御見解を賜ると大変結構だと思います。
  346. 坂本三十次

    坂本国務大臣 私はマスコミ界ではありませんので、それほど詳しいことは存じませんけれども、よく家庭でも見るし、この間工場に視察に行きましたら周りでやっていました。これは大変だな、目が疲れるだろうな、ガイドラインが役に立てばいいな、そう思って帰ってきたところでございますけれども、確かに新しい技術革新の分野で、新しいそういう文明といいましょうか、新しい分野に属する情報の伝達、教育、すべての面にわたることでありまするから、そういう意味では私ども、もっともっと広い視野で検討せねばいかぬな、大方のお知恵をかりたいな、こう一般的に思っておるのです。
  347. 上田哲

    上田(哲)分科員 終わります。
  348. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 これにて上田哲君の質疑は終了いたしました。  次に、伏屋修治君。     〔橋本(龍)主査代理退席、矢山主査代理     着席〕
  349. 伏屋修治

    伏屋分科員 私は、隧道工事に従事してみえる方々のじん肺につきまして少々お伺いしたいと思います。  最初に、長大隧道を除きまして、中小の隧道工事に従事されてみえる方々がどういう環境のもとで工事に従事しているか、その辺の御認識のところをお聞かせいただきたいと思います。  もっと具体的に申し上げますと、例えばトンネルを請け負った下請、孫請、それから実際に従事しておるというような環境、どのように認識してみえますか。
  350. 望月三郎

    ○望月政府委員 隧道工事に従事している労働者の実態はどうなっているかということでございますが、これは建設業でございますので、あるいは大きなところが請け負ってその下請をやっている、また孫請をやっているというような重層下請という場合も多々あろうかと思います。
  351. 伏屋修治

    伏屋分科員 私の県の中で東海北陸自動車道が今建設中でございます。その中の隧道工事の実態は、請け負った大手の会社、さらにその下の下請がありまして、その下請の会社から今度はトンネル請負人という方がみえるわけですね。いわゆるグループを編成しまして、そしてトンネル工事を請け負っていく。そういうグループが、東海北陸高速道路の私の知っておる工事現場では二グループおりまして、それに従事しておる、そういうことでございます。それ以外に、私の県以外にもそういう中小の隧道工事の中で、どのような形で現場の工事に携わっているか、その辺の御認識を聞きたかったわけでございます。
  352. 望月三郎

    ○望月政府委員 そういうグループは恐らく隧道工事をやる専門分野というものを持っておって、そういうところを専門に、そういう重層下請の形で渡り歩いていると申しますか、工事の場所から工事の場所というような形で渡り歩いておる方々だと思います。
  353. 伏屋修治

    伏屋分科員 そういう方々の中にじん肺にかかっておられる方がおるというのが現実でございますので、そういう御認識の上でじん肺について考慮していただきたい、こういうように考えるわけでございます。  現在全国の中で、長大トンネルを除きまして、中小トンネルの作業に従事しておる方々の数というのは掌握をしておみえになりますか。
  354. 望月三郎

    ○望月政府委員 隧道工事に従事している労働者の数の全体につきましては、そういう統計をとっておりませんので把握しておりませんが、そのうち粉じん作業に従事している労働者数というのはつかんでおりまして、これは約八千四百人でございます。
  355. 伏屋修治

    伏屋分科員 その中で現在じん肺にかかっておられる方々の数、いわゆる管理区分の一を除きまして二、三、四、三のイ、ロを含めまして、その数はどのくらいあるか。
  356. 望月三郎

    ○望月政府委員 じん肺患者の総数でございますが、五十七年の統計によりますと、管理二と決定された者が三万九千三百六人、管理三と決定された者が九千六百九十三人、管理四と決定された者が千百七人でございます。
  357. 伏屋修治

    伏屋分科員 そういう中で、じん肺による死亡者の数、そしてまたその平均年齢はどのくらいになるか。
  358. 望月三郎

    ○望月政府委員 じん肺患者の平均年齢は、私ども労災保険の傷病補償年金の受給者に限ってみますと、およそ六十四歳となっております。ただ、先生がおっしゃるじん肺による死亡者の数及びその平均年齢についてはちょっとつかんでおりません。
  359. 伏屋修治

    伏屋分科員 そういうじん肺の方々を専門に、専門学的な立場から診察をされる医者は何人ぐらいみえますか。
  360. 望月三郎

    ○望月政府委員 専門的に扱う医者の数は全国でどのくらいいるのか、それはちょっと私どもわからないことでございます。
  361. 伏屋修治

    伏屋分科員 事じん肺という病状につきましては局長も御存じのとおりであると思いますが、それだけに、じん肺を専門にしておられるお医者さんが必要ではないか、このように考えるわけでございます。その辺の御認識がないようでございますが、そういう医者がいわゆる管理区分の認定をしていくわけです。その認定のしようというものは、現実どのようにして行われておるわけですか。
  362. 福渡靖

    ○福渡説明員 お答えをいたします。  じん肺健康診断というのが労働安全衛生法で定められておりますが、それに従いまして健康診断をした結果、じん肺所見が認められる方についてはじん肺管理区分認定申請、今度はじん肺法の方で所管をしておりますけれども、そういう形で地方労働基準局の方に申請が行われます。そこで、地方じん肺診査医という方をお願いをしておりまして、これはじん肺の診断あるいは治療に十分な学識経験を有する方ということでお願いをしておるわけですが、こういう方が各地方基準局におられまして、その方が判断をされる、その判断に基づきまして地方労働基準局長が管理区分決定を行う、こういうような形で行っております。
  363. 伏屋修治

    伏屋分科員 先ほど局長は、じん肺の専門医の数をつかんでおみえにならなかったわけですが、その認定区分をする人は、じん肺に関しては学識経験者であるという答弁があるわけでございまして、そうだとすれば、全国的にじん肺を認定する専門医の数はわかるのではないでしょうか。中央じん肺診査医あるいは地方の診査医があるわけですけれども、その方々が一応管理区分を認定するわけです。その方々は、事じん肺に関しては専門医であるわけですね。その辺……。
  364. 福渡靖

    ○福渡説明員 おっしゃるように、じん肺についての学識経験を有する方というふうに私どもは受けとめております。それで、じん肺に関する専門医ということになりますと少し立場が違ってまいりますので、そういう意味での正確な把握は行っていないというふうに局長が答弁をいたしました。御了解いただきたいと思います。
  365. 伏屋修治

    伏屋分科員 じん肺というものは、私の聞く範囲におきましては完全治癒は望み得ない、こういうふうに私は聞いておるわけでございますが、そういうことから考えますと、地方のじん肺診査医によってじん肺管理区分二であるとか三であるという判定をし、これは本人にも通知しなければならないと書いてあるわけでございますが、そういうものを受けた本人の衝撃はまことに大きいものがあると思います。それだけにそれを認定する専門医が、学識経験ばかりでなくて本当に専門とする医者でなければならない、このように考えるわけですが、その辺はどうですか。
  366. 望月三郎

    ○望月政府委員 おっしゃるとおりでございまして、管理区分を決めるにはやはり専門的なそういう権威のある先生でなければいけませんし、また、こういう粉じん現場の労働者の実態もよく理解した先生をお願いしているわけでございまして、そういう先生への信頼のもとに判断を下すという格好でやっておるわけでございます。
  367. 伏屋修治

    伏屋分科員 医療の面からはそういうような形で専門医が認定をするわけでございますが、工事現場におけるそういうじん肺の防止策は具体的にどのようなものを持って臨んでおられるわけですか。
  368. 福渡靖

    ○福渡説明員 基本的には粉じんを起こさないという対策を講ずるということにしております。ただ、作業によってはどうしても粉じんが起こってくることを防ぐことができない、こういうときにはできるだけその粉じんの量を減らすという考えで対処する。さらにもう一つは、労働者にその粉じんが暴露しない方法を講ずるという、いわば三段構えになっております。  隧道の場合にはできるだけ粉じんを起こさないように湿式の工事にするということを指導しておりますし、それから、やむを得ず起こるときには、特に長い隧道になりますとどうしてもどこかで粉じんが起こりますので、そういう場合にはできるだけきれいな空気を送って、あとの悪い空気を外へ排出するというような方法を講ずるということも指導しております。そういうようなことでやっておりますし、それから、労働者に粉じん暴露が起こらないというためには、防じんマスクの使用を徹底するように指導しているところでございます。
  369. 伏屋修治

    伏屋分科員 じん肺の防止策をいろいろとお聞かせいただいたわけでございますが、不幸にもそういう防止策があるにもかかわらずじん肺患者がふえつつあるというのが現実でございまして、そういうじん肺患者に対する管理区分によって仕事の適応性、対応性というのですか、そういうものはどのように計らっておられるわけですか。
  370. 望月三郎

    ○望月政府委員 じん肺患者に不幸にしてなった場合に、それが管理二とか三という段階ですと、特に管理三がそうでございますが、作業転換、もうちょっと軽易な業務につかせるということを指導しているわけでございますが、そういう形で、その人がより以上じんあいを吸わないような職場に配置がえをするという行政指導をやっておるわけでございます。
  371. 伏屋修治

    伏屋分科員 先ほど、長大トンネルの場合を除くと私は申し上げましたが、中小のトンネル工事に従事しておられる方々というのは請負制のような形でやっております。したがって収入、退職金等も余り保障されておらない、これが現実でございまして、そういう面から考えますと、今局長からいろいろな配置転換をするというようなお話もございましたけれども、それによって起こる収入のマイナスは非常に大きいものがあると思うわけでございますが、大体、中小のトンネル事業に従事しておる方々のいわゆるじん肺にかかりやすい現場、そこに従事しておる人たちの給与、それから配置転換になったときの給与、そこら辺はどのように掌握されていますか。
  372. 望月三郎

    ○望月政府委員 配置転換になった後の給与がどのくらいになるか、前と比べてどうか、こういう御質問でございますが、統計的にはそういう資料はございませんが、例えば若干下がる場合もございますし、また事業主の御理解によって現状は維持しようという場合もあろうか、こう思うわけでございます。
  373. 伏屋修治

    伏屋分科員 私の知る限りにおきましては、切り羽作業に従事しておる人たちの請負人的な小規模な方々の給与というのは、大体月収五十万程度でございます。退職金という制度は全然該当しませんので五十万。じん肺によって配置転換が行われますと収入が三十万くらいに落ち込んでしまう。二十万マイナスになる。こういうのが現実でございます。その辺を御認識をしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  じん肺にかかりまして、あるいは管理区分三のイあるいはロになってまいりますと、法的に勧奨とか指示ができる、こういうふうにありますが、現在それを指示、勧奨するのは地方労働基準局長でございますね。そういう方々が現実にどのような実態で行われておるのか。勧奨とか指示はどれぐらいの実態があるのかというようなことを参考にお聞きしたいと思います。
  374. 望月三郎

    ○望月政府委員 おっしゃるように、じん肺の管理三とかいうことになりますと、そのままほっておきますとえらいことになりますので、それにつきましては、都道府県労働基準局長から事業主に対して作業の転換をやってくれということで勧奨をするわけですが、現実には作業転換を行った者は二二%くらいの数字でございまして、あとの部分はちょうどそういうような適当な職場がない。中小企業の場合なんか特にそうでございます。  そういうことでございますので、そういった方々につきましては、やむを得ませんので作業時間の短縮だとか発しんの防止措置等の作業管理、環境管理の徹底を図る。そうして、できるだけじんあいを吸わないような施策を施すということしか手はないわけでございまして、そういう指導をやっておるというのが現状でございます。
  375. 伏屋修治

    伏屋分科員 地方における労働基準局長の勧奨とか指示というものが適切に行われないとじん肺罹病率は高まってくる、こういうことを考えるときに、やはり中央としてもそういう勧奨あるいは指示の実態というものは的確につかんでおかなければならないのではないか、このように考えますので、より一層の努力を要請いたしたい、こういうように思います。  次に、管理区分二または三という認定を受けた方々が、イ、ロ両方を含めてですが、そういう配置転換あるいはじん肺にかかったという通知を受けたことによって非常に大きな衝撃を受ける。そのことでもうトンネル工事を転職しよう、命にかかわるからもうやめようということで転職を希望するわけでございますが、仰せじん肺というのはかかったら治らないという不治の病でございますので、その管理二、三で転職が可能と考えておられるかどうかということです。
  376. 望月三郎

    ○望月政府委員 私どもは、医者の所見を聞いてみますと、管理二ないしは三という段階だと、確かに切り羽の先端で隧道工事をするということには向かなくても通常の作業には使える、大丈夫だというように聞いております。
  377. 伏屋修治

    伏屋分科員 通常の切り羽以外の仕事に従事するということでございますけれども、やはりそういう認定を受けて、通告を受けた本人にとりましては大きなショックでございまして、そういう面から、隧道工事の周辺でいわゆるさおを垂れておるような人、そういうような方々は大体じん肺にかかっておる、そういうふうに見て間違いがない、こういうような現場の声も私は聞いておるわけでございます。そういう二、三の方々がじん肺にかかった直接の原因は切り羽作業であったということから、やはりそういう隧道工事を離れるということになってまいりますと、そういう人に対しても手厚い手当てが必要ではないか。いわゆる肺機能が非常に衰えておるわけでございますから、そういう面から今後ともに考慮をしていっていただきたい、このように考えるわけでございます。  その次に、今現在そういうじん肺にかかっていわゆる障害補償年金、そういうものを受給しておられる方が大体どれくらいおられるのですか。
  378. 望月三郎

    ○望月政府委員 傷病補償年金受給者数は、これは昭和五十七年度末における数字でございますが、一万四千三百十七人でございます。
  379. 伏屋修治

    伏屋分科員 今そういう障害補償年金を受けられる管理区分の方々は、いわゆる管理区分四だけですか。
  380. 望月三郎

    ○望月政府委員 管理四でございます。
  381. 伏屋修治

    伏屋分科員 管理区分の二、三もレントゲンの結果でいけばかなりそういう症状が出ておるわけですが、そういう管理二、三、まあ二は除きましても、三の方々に対するそういうお考えはないかどうか。
  382. 望月三郎

    ○望月政府委員 現在のところございません。
  383. 伏屋修治

    伏屋分科員 じん肺の障害補償年金は、レントゲンの結果によっていわゆる年金の七級から十一級ですか、いわゆるエックス線写真の像型についてじん肺と認められる、そのエックス線写真の第二型から第四型に該当するものについていわゆる障害補償年金の七級から十一級に当てはまると認定される、こういうふうにあるわけでございますが、その込もう少し具体的に話してください。
  384. 新村浩一郎

    ○新村説明員 傷病補償年金といいますものは、療養中の者に対しまして支給するものでございまして、その療養後の結果、治癒しました段階におきまして障害補償年金を支給することになりまして、それは先生お話しのように大体七級から第十一級に該当するわけでございます。
  385. 伏屋修治

    伏屋分科員 一般の労働災害の方々と対比しましてちょっとじん肺の方が軽いのではないか、こういう印象を私は受けたわけでございますが、その込もう少し詳しく説明願いたいと思います。
  386. 新村浩一郎

    ○新村説明員 障害等級につきましては、各系列ごとに専門家を集めまして、そこで検討いたしまして今のような結論に達しておるわけでございます。
  387. 伏屋修治

    伏屋分科員 一般の労働災害と何ら変わらない、軽視しておるというわけではないわけですね。
  388. 新村浩一郎

    ○新村説明員 考え方といたしましては、同じ程度に補償いたしておるわけでございます。
  389. 伏屋修治

    伏屋分科員 管理四にはそういうような年金が手当てされておるわけでございますが、管理三もいわゆる合併症が生じた場合にはその対象になるわけですね。
  390. 新村浩一郎

    ○新村説明員 合併症につきましては、これは療養を要するということで、療養を経た後に治癒するわけでございますから、まさしく障害補償年金の支給要件に該当しますので、障害補償年金を支給いたしておるわけでございます。
  391. 伏屋修治

    伏屋分科員 現場の人の、トンネル工事従事者の方々の声を聞きますと、いわゆる管理四になった、そういう認定を受けた方々は少なくとも二、三年で大体亡くなっておられる。五年生きれば長い方だというのが現場の人の声のようでございます。その辺は当局としてはどういうふうに認識されてみえますか。
  392. 新村浩一郎

    ○新村説明員 障害補償年金をもらい始めましてからじん肺患者の方がどの程度平均的に受給期間があるか、ちょっとそれは数字をつかんでおりませんのでお答えできません。
  393. 伏屋修治

    伏屋分科員 また、その数字がわかったら教えていただきたいと思います。  そういう意味で、じん肺というのが不治の病である、管理四の人だけが年金対象者になっておる。いわゆる二、三の方々は一時金というような形で手当てを受けておるようでございますけれども、じん肺審議会というのがあるわけでございまして、そのじん肺審議会に、このじん肺患者の管理区分四以外に三の、少なくとも三のロぐらいまでそういう障害年金の対象者にするというようなお考えはないかどうか、お尋ねしたいと思います。
  394. 望月三郎

    ○望月政府委員 現在のところはそういう考えはございません。
  395. 伏屋修治

    伏屋分科員 大体、じん胚の管理区分が非常に高い人たちというのは、いわゆる昭和十四年、十五年生まれあたりの人が一番ひどいわけですね。ということは、最近は、先ほどお話がありましたように防じん対策というものが非常に行き届いてきて、そういうじん肺というものがかなり少ないというふうに認識されるわけですけれども、それ以前の防じん対策というものは非常にずさんであった。そういうことから、年齢で言えば四十四歳から四十五歳ぐらいですか、その方々がじん肺の管理区分の三のロあるいは四に認定されておるわけでございます。そういう意味からいいましても、先ほどもお尋ねしましたが、管理区分二、三の方々の転職というのは非常に難しいというようなことも加味しまして、そういう管理区分の軽い三、少なくとも三のイ、ロぐらいまで含めて、六十歳以後の者には手厚い手当てをするようじん肺審議会に諮る御意思はありませんか。
  396. 望月三郎

    ○望月政府委員 先生のおっしゃる非常に高齢になっている人たちのことはよくわかるわけでございますが、しかし、管理三は、もちろん罹患はしておるわけですが、医学的にも通常の業務なら働けるということでございますので、したがって、これに対してそういう年金を支給するというのは、ほかの職種の患者との関係のバランスというのもございますので、なかなか難しいことだというように現在のところは私ども考えております。
  397. 伏屋修治

    伏屋分科員 難しいという御答弁でございますけれども、そういうような方々に対する手厚い手当てというものを審議会等でより一層御審議をいただいて、そういう工事従事者を守るという意味からも、御審議の対象にしていただきたいということを最後に要請いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  398. 矢山有作

    矢山主査代理 これにて伏屋修治君の質疑は終了いたしました。  次に、中林佳子君。
  399. 中林佳子

    中林分科員 中曽根総理も、来年六十年には婦人差別撤廃条約の批准を約束していらっしゃるわけですが、それだけに今、婦人の労働条件の整備、改善が特に緊急に求められているときだと思います。  そこで私は、まず初めに、最近農村部で特にふえてまいりました建設現場で働く婦人の労働問題について御質問したいと思います。  私は島根県出身でございますので、島根県の例を出してお伺いしたいと思いますが、婦人の建設労働者は島根県の場合、昭和四十五年には二千八百六十四人、昭和五十五年には五千八百六十三人と十年間で二倍に上がっています。こうした建設現場で働く婦人が、どんな労働条件や作業環境で働いているかということを労働省としてはつかんでいらっしゃいますか。
  400. 望月三郎

    ○望月政府委員 女子についてだけ特別な統計は今持っておりません。
  401. 中林佳子

    中林分科員 男性も含めて結構ですが、どういう状況でしょうか。
  402. 望月三郎

    ○望月政府委員 済みません、ちょっとそれも……。
  403. 中林佳子

    中林分科員 それでは具体的に質問していきますので、その中でわかる点はお答えいただければと思います。  男性も含めてでないとおわかりにくいという状況があると思うのですが、私はずっと地元を回っていながらいつも気にかかっていることなんですけれども、婦人の場合、一日じゅう男性の中にまじって、雨の日もあるいは日照りの日も一生懸命働いても一月十万円にもならないという、非常に大変な条件の中で働いているわけですが、そういう中で改善すべき点がたくさんあります。しかし、それらすべてにわたってきょう御質問するわけにまいりませんので、特に作業環境の問題に限って御質問をさせていただきます。  労働安全衛生規則では休憩設備を設けるように努めなければならない、あるいは男子用と女子用に区別した便所を設けなければならない、こういうふうに定められているわけですが、土木工事などの建設現場においてこれらの点についてはきちんとした指導など徹底されているのでしょうか。
  404. 望月三郎

    ○望月政府委員 先生今おっしゃるように、事業場における休憩設備及び便所の設置につきましては、労働安全衛生規則に規定があるわけでございます。建設工事現場については、建設業が災害多発業種であることにかんがみまして、私どもは重点薬種ということで濃密な監督指導をやっておるところでございまして、先生の御指摘の点も踏まえて、もちろんトイレがなければおかしいし、またよっぽどの例外の場合でない限り男女別にできていなければならぬわけでございまして、その点については機会をとらえてさらに指導を徹底させるという方針でやっていきたいと思います。
  405. 中林佳子

    中林分科員 規則でも決まっているし、そういうことがあってはならないから指導も強めているとおっしゃるわけですが、私が最近調べてみますと、非常にひどい状況がたくさんある。挙げれば切りがないのですが、私が最近調べたところで実際の例をお聞きいただきたいと思います。  これは島根県の津和野町、あの有名な津和野でございますけれども、ここで働いていらっしゃる五十六歳の婦人の方なんですが、十五年間建設工事に行っている方です。休憩所というのは大概何らかの形であるけれども、今までトイレがあったためしがない。十五年間働いてですよ、ないとおっしゃる。ただし、先般隣接しております益田市の災害復旧工事に行った、そのとき初めてトイレがあった、トイレがあって本当によかったとそのとき思った、しかし、それも終わったのでまた別の工事現場に行ったけれども、またまたお便所などはない、こういうふうにおっしゃっておりました。  これは西の果ての話ですが、ちょっと海を隔てまして隠岐島がございます。そこに西郷町という町がございますが、ここの建設現場では、晴れた日は道路端でたき火をして休憩している、休憩所がないという意味ですね。雨の日はマイクロバスの中で休んでいる、もちろんトイレはない、こういうふうにおっしゃっております。  それから松江市です。松江は県庁の所在地でございますけれども、ここの現場で、婦人の人も含めてマイクロバスで運んでいる運転手さんの話です。婦人の人は三十五歳から四十歳くらいの人も働いておるけれども、皆さんやぶの中でやっていらっしゃるようだ、どうしてもという人は、近所に家がある場合、個人的にその家に頼み込んで用を足していらっしゃるようだ。  こういう全く人間として、特に女性として非常に残念な実態が余りにも多いということを私は知りました。私自身も、そうした道路工事とか建設現場で働いていらっしゃるところにこの足で歩いてみましたけれども、休憩所といってもまさに腰がおろせる程度の掘っ立て小屋、もちろんトイレはない、こういう大変劣悪な条件でございましたのこういう人間としての尊厳さえも守れないようなひどい状況、これが一例や二例ではないという状況をぜひお考えいただいて、今後労働省はどういうふうに御指導なさっていくのか、再度お伺いしたいと思います。
  406. 望月三郎

    ○望月政府委員 まあ、おっしゃるお話は特にひどいわけでございますので、私どもとしては、トイレはその辺でやってこいというのはやはり乱暴でございまして、安全衛生規則で定められている簡易なものでいいわけですからトイレを設置するという点、それから休憩所につきましては、解釈例規でも例えばいすなどがあれば足りるということでございますので、そういう簡易なものを使うというようなことも含めて、できるだけそういう非文化的でない方向に強力な指導をしていきたい、こう思っております。
  407. 中林佳子

    中林分科員 こうした全国の実態ですね、これはお調べになったことがあるのでしょうか。
  408. 望月三郎

    ○望月政府委員 便所についてだけの調べた実績はございません。
  409. 中林佳子

    中林分科員 こういうひどい状況というのが本当にたくさんある。私が歩いてみますと、国道沿いだとか比較的みんなの目に触れる場所では整備されているように見受けられるわけです。しかし、一たん県道だとか町道などに入りますと、もうそちらの辺では一切そういう状況にないという本当に大変な状況だと思うわけなんですね。ですから、そういう意味では改めて一度こういう調査を労働省としてもおやりになる必要があるのではないかと思うわけですけれども、調査をしていただくようなわけにいかないのでしょうか。
  410. 望月三郎

    ○望月政府委員 調査をするといっても、特定の地域だけならともかく全国的にやるというのは相当大変でございます。特にこういう予算のないときでございますので、私どもは、調査の前に、今おっしゃるようなことを末端の中小企業まで徹底をさせるということで当面やってみたい、こう思っております。
  411. 中林佳子

    中林分科員 大臣、多分大臣の地元でも同じような問題がひょっとして起きているのではないかというふうに思われるわけですけれども、この点、今指導徹底をなさるというお話でございましたので、大臣としてもぜひこの点を強めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  412. 坂本三十次

    坂本国務大臣 トイレがないというのは大変困ったことで、確かに、私の郷里もずっと山間部も多いですし、それから建設工事もありますけれども、しかしトイレがないというのはお気の毒ですね。やはりそういうどころもたくさんあるのじゃないかなと思いますね。特に零細企業の方々のやっておるような建設現場にはどうもあるかもしれませんね。あなたのお話を聞いてどうもそういう気がいたします。ですから、どうかそういうことのないように、特に零細な企業の方々にまで女性に対する配慮をするようにということを、ひとつ労働省の方からも指導するようにいたしましょう。
  413. 中林佳子

    中林分科員 ぜひその点を強めていただきたいし、先ほど言ったのはひどい例をよりすぐって言ったのではなくて、本当に余りにもたくさんあるものですから、その中での二、三の例を述べただけでございます。特に女性にとっては大変な問題だということをお考えいただいて、指導の方をよろしくお願いいたします。  それでは次に、看護休暇制度の問題についてお伺いしたいと思うのです。  ILO第百五十六号条約、つまり男女労働者、特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約、そして勧告が出ているところなんですが、労働省として看護休暇については必要であるのかどうなのか、その点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  414. 赤松良子

    ○赤松政府委員 御指摘の看護休暇というものにつきましては、労働者からこういう要求が出だして、あるいは国際条約などで取り上げるようになったということは比較的新しい問題でございまして、必ずしも私ども古くから取り組んできたといつものではございません。先生指摘の百五十六号条約も一九八一年に採択されたものでございますので、労働省といたしまして、まだ十分に個々の条文を研究をして、内容が国内的にまどういうことになっているかというようなことについても、まだ完全には取り組みが進んでいないのが実情でございます。
  415. 中林佳子

    中林分科員 まだそういう状況ではあるでしょうと思いますけれども、今のようないろいろな条件をお考えになって、労働省としてこれは考えていく必要があるかないか、その点についてはどのようにお考えなのでしょうか。
  416. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ILO条約全般につきましてできるところから取り組んでいくというのを基本的に私ども考えているわけでございますので、その一つとして考えていきたいというふうに思っております。
  417. 中林佳子

    中林分科員 既に地方公務員などでは看護休暇というものを実施している自治体もあるわけです。現在、そういう地方自治体も含めて看護休暇がどのような実情になっているのか、把握していらっしゃいますでしょうか。
  418. 赤松良子

    ○赤松政府委員 これにつきましてもいろいろな調査が実は余りございませんが、昭和五十六年に婦人少年局でいたしました、女子保護実施状況調査というものの中で調べたものがございます。この中では、産業別、規模別に看護休暇制度の有無及びその内容別事業所数の割合などを調査いたしております。
  419. 中林佳子

    中林分科員 私が調べましたところ、よくやっていらっしゃる地方自治体では、昨年の夏の時点でございますけれども、県の段階で二十四県ぐらい実施していらっしゃる、それからまた教員の場合でも、これも昨年暮れ末までの実績でございますけれども、二十四県で実施しているということなんです。大体三十日ぐらいを単位として、その中には長くて一年間というようなものまであるわけです。ですからこれは随分進んできたのではないかというふうに思います。  私は、きょうは特に教員についての具体的な問題でお尋ねしていきたいと思うわけですが、島根県の教職員組合が実情をまとめたわけです。ここでは退職者が年々出ているわけですが、その理由のトップに家庭の事情というのが挙げられているわけです。この家庭の事情とは何かといえば、父親だとか母親だとか年とった両親の面倒を見なければならない、まだ勤めたいのだけれどもやめざるを得なかったということが退職の理由。まあそれだけではございませんけれども、その中には多分にそういうのが含まれているというふうに聞いております。  そのほか、こういうひどい例もあるわけですね。御主人ががんになられた。がんでございますから命が限られている。三人の子供を持っている婦人の教師なのです。本当に余命幾ばくもなくて限られた命だから自分としては十分看護したい、しかし看護したくてもその制度がない。有給休暇をとったところで二十日間、しかもやめてでも本当は看護したいのだけれども、やめてしまえば再就職の道はない、三人の子供を抱えてやめるわけにもいかない、こういうときに本当に看護休暇の制度があったらどんなに助かっただろうか、こういうふうにおっしゃって、もう既に御主人は亡くなっておりますけれども、随分苦しい思いをされているわけです。  教員の場合は、例えば二十日間の有給休暇をとったとしても、実は三十日を超えなければ代替の教員は来ません。そうすると、そこのクラスの子供たちはどうなるのかといえば、隣のクラスの担任の先生が見るとか、あるいはそのクラスを各組に振り分けて、例えばお隣のクラス、クラスが五十五人を見ていくとかそういうことで、婦人教師が休む場合は、これは婦人教師ばかりとは限りませんで男性の教師もあるわけですけれども、子供たちに非常に弊害があるわけです。ですから、そういう意味では特に教師の場合にはこの看護休暇制度というのが非常に求められているという実情がございます。親が寝たきりになって十分面倒を見てやりたい、そういうときにその看護のしわ寄せが来るのはやはり婦人の方が多いわけなのですね。ですからそういう意味では、本当に婦人が男性と同様に均等に働くことができるようにしていくためにも、この看護休暇制度というのは特に強い要望になっているわけなのです。ですから、せめて三十日単位ぐらいで何とかそういう制度をつくっていただけないかという要望が非常に強いわけですが、その点についてのお考えはいかがでしょうか。
  420. 赤松良子

    ○赤松政府委員 確かに最近では、子供ばかりではなくて親が病気になった場合に面倒を見なければならないというような労働者がふえていることは、よく認識をいたしております。またその方たちにとって、先生の御指摘のような休暇制度があれば役に立つということも、それは言えるかと存じます。しかし同時に、先ほど御指摘の百五十六号条約は、男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約、名前もそのようになっておりますし、また、これを補完する意味で同時にILOで採択されました勧告も、やはり同様に男女労働者というふうになっております。その中に、看護休暇という名前ではなかったかと存じますが、そのような趣旨の規定があったかと存じます。  そういたしますと、これは女性だけの問題ではなくて、男女の家庭責任のある方への休暇というふうに受けとめるのが現在の条約の考え方なのではないかというふうに考えているわけでございます。
  421. 中林佳子

    中林分科員 もちろん、おっしゃるように私も男女ともにという考えでございますけれども、現在の日本の状況を見れば、看護ということになるとどうしても婦人の肩にかかってくるのですよ。婦人がそういうことを理由にやめていく例が余りにも多いものですから、だからこそ看護制度というものをつくっていただいて、これはもちろん女だけが休むんじゃなくて男性の方も休んで、そういうのは均等にやっていかなければいけない問題だと思いますので、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。しかし、こういう実態があるにもかかわらず国の対応は非常に遅いし、余り対策が立てられていないのじゃないかと思うわけです。  それで、人事院、自治省、文部省それぞれに、一体この問題についてどのようにお考えなのか、どのような取り組みをなさっているのか、お聞きしました。それをちょっと言いますと、人事院の場合、現在公務員制度の見直しということで給与、試験、休暇などについて検討しているが、看護休暇については検討課題になっていない、病気看護について昭和五十七年に民間企業を対象に調査したら二・八%が実施しているという結果が出ている、全然検討していないわけではない、こういうふうにおっしゃっているわけですね。それから自治省の場合は、自治体の中に看護休暇を設けているところがあることは知っているけれども実態は調べていない、こうおっしゃっております。それから文部省でございますが、看護休暇をやっているところもあることは知っているが実態は調べていない、文部省としては公務員全般にかかわることなのでどうこう言うべき立場にない、国に準じたあり方が望ましいと考えているが、独自にやることについてはとやかく言わない。こういうことで、やはりこういう問題は労働省が率先して制度化のための検討をしていただくことが必要ではないか、こういうふうに思うわけですけれども、大臣いかがでしょうか。
  422. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今、休暇制度を実際にやっているところも少ないので、実態の把握がまだそれほど進んでいないということを聞きましたけれども、これはお話を聞けば、そういう制度があれば本当に助かる人はたくさんおるだろうと思いますね。今婦人局長の答弁もありましたが、この問題についてはまだ新しい問題だから調査が進んでいないという話もありましたけれども、これは重要な問題も含んでおりますから、労働省としては、実態の把握を行っていきながら前向きにひとつ勉強をさせたい、こう思っております。
  423. 中林佳子

    中林分科員 新しい課題にはなっておりますけれども、これはもう随分前から問題になっていた問題です。それより以前に、育児休暇制度の問題など当面先に解決しなければならない問題などがありましたので、後回しになっている感はありますけれども、高齢化社会を迎え、本当にお年寄りの面倒を見なければならないという状況が家族に押しかぶさってきておりますので、ぜひ勉強もしていただき、検討課題に加えていただきたいと思います。  それでは最後に、個別の事例になるわけですが、山陽国策パルプ江津工場で働く婦人から私のところに訴えが参りましたので、その訴えについて御質問したいと思うわけです。  この訴えの中身といいますのは、現在この婦人は山陽国策パルプの特務従業員として就職しているわけです。しかし、三月二十日をもって退職し、岩国SKサービスという会社に再就職してくれないか、こういうふうに会社から言われた。自分としては、定年までまだ十三年もあり、このまま働きたい、第一、今やめると退職金は加算を含めても二百七十二万六千九百九十一円にしかすぎない。非常に低く見積もってこれから最低三千円の昇給があったと仮定して、定年でもらえる退職金は四百六十万三千八百七十二円、つまり百九十万円ぐらいの差が出てくる。仮に五千円の昇給だったとすると五百三十一万八千百十二円となり二百五十万円も差がつく。だから、SKサービスに行くと有給休暇は少なくなるし、賃金も日給制になるし、退職金はゼロだ、こういうふうに労働条件が大変悪くなる。今もし退職しないならば今よりもっと苦しい仕事をさせるなどと言って、いわば脅迫されている、何とか助けてほしい、こういう訴えでございました。  この岩国SKサービスというのを若干説明しなければならないわけですが、これは昭和五十四年にできたもので、山陽国策パルプが一〇〇%出資している会社で、社長も山陽国策パルプの事業部長がやっていらっしゃいます。事務所も山パルの中にありまして、これは岩国工場の中にはあります。しかし江津工場には、名前は一応岩国SKサービス株式会社江津事業所ということになっているわけですが、事務所はどこにもございません。つまり、形式的には山パルを退職してSKサービスに入社し、SKサービスの従業員として働くことになるわけですが、実際は山パルで今までと同じ仕事をし、賃金も今までどおりの人からもらう。山パルはこのことを、経営をよくするためだから退職せよ、こういうふうに迫っているわけですけれども、同じ仕事をもう一度するわけですから、決して人手が余っているという状況ではございません。考えるのに、山パルは労働者の賃金を安くするためだけにこのSKサービスというものをつくったとしか思いようがございません。こういう中で労働者に退職を強要するということは私は許されないことだというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  424. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 具体的なケースにつきまして私どもちょっと調べてみたんですが、土曜日ということもありまして十分つかめておりません。  まあ、今おっしゃるようなそういう前提で、ただ賃金を安くするためだけにやるということでございますが、また、実際にその人を管理する事務所みたいなものもその工場にはないということになりますと、むしろ問題は、労働法上、特に私ども関係でいきますと労働者供給事業との関係で問題はないかどうか、そういった観点からもう少し事情を調べましてその結果判断したい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  425. 中林佳子

    中林分科員 今御説明をいたしましたので、ぜひ事情を調べていただきたいと思いますが、職業安定法四十四条違反の疑いがあるのではないかということと、その前に労基法第六条の違反の疑いもあるのではないかと思われるのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  426. 望月三郎

    ○望月政府委員 今職安局長御答弁いたしましたように、もうちょっと詳しく調べ上げてからの方がよろしいかと思います。
  427. 中林佳子

    中林分科員 それじゃ、調査結果はぜひ私の方にお知らせいただけますでしょうか。
  428. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 承知いたしました。
  429. 中林佳子

    中林分科員 終わります。
  430. 矢山有作

    矢山主査代理 これにて中林佳子君の質疑は終了いたしました。  次に、永井孝信君。一   〔矢山主査代理退席、主査着席〕
  431. 永井孝信

    永井分科員 労働大臣に、いわゆる部落差別の問題を中心にしてお聞きをしたいと思うわけであります。  戦後、民主主義ということが叫ばれましてからもう三十八、九年たっているわけですね。それだけの長期にわたって民主主義を根づかせていこうという努力をあらゆる階層、あらゆる国民がしてきたはずでありますけれども、現実にはこの部落差別という問題がいまだになくなっていない。むしろ最近はこの差別問題が非常に陰険化しているのではないかと思うのでありますが、大臣は、労働者の雇用という問題を所管される立場から、その雇用問題について、現状そういう差別問題が依然として続いているという認識をお持ちか、あるいは今改善されているという認識をお持ちなのか、初めに大臣に所見を伺いたいと思います。
  432. 坂本三十次

    坂本国務大臣 この実情認識の問題でございますけれども、かかる差別などということはもう断じてあってはならぬことでございます。それは申し上げるまでもないことであります。それにもかかわらずとおっしゃるわけですね。実情は、労働省が努力をすると言ったにもかかわらず、相変わらずの差別が行われておるだろうという御質問でございますけれども、私どもとすれば全力を挙げて努力をいたしておるつもりではありますが、意識の差別、それが職業の選択に影響を及ぼしておるというような事実は残念ながらまだまだ残っておる。まことに残念だ、何とかしてこの改善に努力をいたしたい、こう思っております。
  433. 永井孝信

    永井分科員 現実に差別が今も残っているだろう、だからその解消のために全力を尽くしたいという大臣の所見をお聞きしたわけでありますが、今の現実というものは、私から見ても非常に残念きわまりないことだと思うのですね。古くて新しい問題と言えばそれまででありますけれども、旧態依然とした状態が今も続いている。  私は、かつて昭和五十六年にこの問題について質問をしたことがございました。そのときの大臣は藤尾先生でございましたけれども、その当時の藤尾労働大臣が、私の質問に対して非常に力強い決意を表明していただいているわけです。  例えば、その主なところをちょっと振り返ってみますと、労働省及び労働大臣の「権威において労働省全体の意向をもってこれはしては相ならぬ、」これはというのは差別のことですね。「こう言っておるわけでありますから、それでもやるというならやってごらんなさい、」「大臣といたしましての権威にかけて抗争してみせますから、恐らく絶滅するという私の主張は決して口だけで申し上げていることでなくて必ず実現できる、かように確信いたしております。」というふうに、当時の藤尾労働大臣が答弁をしてくれたわけであります、中身は省略いたしますけれども。そして最後の締めくくりに、労働大臣の「私の責任におきまして必ずあなたにまあまあよくやったわいと言っていただけるようにきちっとやらしていただきます」こういうようにも答弁いただいているわけです。その答弁の後で、実は労働省の通達が出ているわけですね。労働大臣の親書も各企業に出されました。その努力は多とするわけでありますけれども、そういう労働大臣の決意とかあるいは労働省局長通達とか、こういうものが次々出されていって大臣の親書まで出されていった。しかし、その結末は依然として差別が残っているということになると、これは労働省の権威にもかかわることだろうし、行政の信頼を失わせることになる、私はこう思うのでありますが、現実に今なお差別が残っている。残っているというよりも、もっと陰険化しているということを考えると、そういう過去の経緯からいって、現在の労働大臣としてこれからそういう事実があったらどういうふうに対応されるか、その決意を含めてお聞きしたいと思います。
  434. 坂本三十次

    坂本国務大臣 ただいまも申し上げましたように、藤尾大臣のときはいろいろなまことに残念な事件も起こったやに聞いております。それを受けて、当然これはひとつ絶滅をしてやろうという意気込みで努力をされたということも聞いております。しかし、その後完全に絶滅したかとおっしゃられれば、どうもそうでもなさそうだ、あなたのおっしゃるように陰険になってきておるのではないかということに対しましては、そういうことがあってはならぬのでありまして、これは派手な大きな問題はなくたって、ずっと地味に続いておるなんということでも見逃すわけにはいきませんから、私どもも、地味なら地味なりにこっちも根気よくきめ細かく努力をして、これが根絶のために頑張らなくちゃならぬという気持ちは藤尾大臣と同じであります。
  435. 永井孝信

    永井分科員 現在、この地域改善特措法というのが制定されまして、あと三年間しか残っていないわけですね。かつて同対審が答申を出しましてから、同和対策事業特別措置法ができて、結果的に十三年間その法が施行されてきた。そして今この新法と言われている地域改善法になっているわけでありますが、これがあと三年間しか残っていない。この法律は、内容的には、そのことによってすべての差別をなくするということに万全の法律とは思いませんけれども、少なくとも差別を排除し、本当の民主主義をつくり上げていくという立場で思想は貫かれているはずなんですね。この三年間にそういう差別を完全になくするような見通しを立てることができるだろうか、こう思うのですが、これは三年間までまだこれからありますから、今具体的に直ちに明確なことは言えないかもしれないけれども、今の感触として、行政の側に立っている立場からどういうふうに今後の三年間の見通しを持っていらっしゃるか、お聞かせいただけませんか。
  436. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 私どもとしては、特にこういう就職差別の問題、まさに根絶を期していろいろ努力をしておるわけでございます。そのための具体的な諸政策手段もとりながらやっておるわけでございます。法律があと三年間ということでございますので、とにかく現時点におきましては、その三年の間に何としてもなくすということで努力を傾注しなければならぬ、こう思っております。
  437. 永井孝信

    永井分科員 そこで、非常に時間が短うございますから具体的な問題をちょっとお聞きしてみたいと思います。  一九七七年二月に労働省は、いわゆる部落問題というものについて、どういう現状で生活がされているか、どういう雇用条件にあるかということを、大臣を先頭にして調査されました。その調査の内容で、ちょっと抜粋をしてみますと、「十五歳以上人口の就業・不就業の状態」という項目で見ますと、有業者が六〇・九%、無業者が三九・一%となっておって、全国の有業者に比較して割合がやや低い、こういう分析をされているわけですね。あるいは「十五歳-十九歳の若年層及び六十五歳以上の高年齢者の有業率が全国に比べて若干低い割合となっているがその他の年齢階層では全国と同程度の割合となっている。」というふうに、数字を挙げて分析をされているわけです。そうして、ここが一番重要なところだと思うのでありますが、労働省のそのときの調査によりましても、「不安定な就業状態にある臨時、日雇等についてその割合をみると一五・二%と全国の六・八%に比べ臨時、日雇等の不安定な就業状態にある者の割合が依然として高い水準にある。」このように分析をされているわけです。このときの調査は、年齢別とか学歴別とか、いろいろなことで調査をされているわけですが、就業率が高いとか低いとかというそのことで分析がされてきているわけです。なぜそうなっているかという根源については、この一九七七年二月の労働省の調査ではうかがい知ることがちょっと難しいわけですね。数字としては出ておるのですけれども、その背景にあるものの、なぜこうなったかという調査までは完全な分析になっていないのですね。  そこで、そのときの調査は調査としてそれなりに御努力をいただいたのでありますから、その数字をとやかく言うわけじゃないのですけれども、じゃその後、この調査の時点から労働省が、現状がどう改善されているかということについて把握をされているかどうか、安定局長、ちょっとお答え願いたいのです。
  438. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 私どもも、今御指摘のようなそういう調査結果を踏まえまして、例えば五十三年度から、日雇い等のそういう不安定就業者が多いということで、この常用雇用の促進ということを基本的な重点課題といたしまして、職業に結びつく知識、技能を修得させますために、建設機械の運転だとかガス溶接などにつきまして各種学校に委託して行う職業安定促進講習というようなものを実施するとか、あるいは五十五年からはこういう講習を受けやすくするための受講奨励金の支給をやるとか、あるいはまた五十四年度から、こういう地域におきまして新増設された事業所でこういう同和関係住民を軽い入れた場合などに雇用促進給付金を支給するとかというような施策を、それぞれ実施いたしておるわけでございます。  こういうことを通じまして、この制度の利用者も年々増加をいたしておりまして、そういうことを通じまして就業構造の改善は一応進みつつあると考えておるわけでございます。
  439. 永井孝信

    永井分科員 改善が進みつつあると考えているという御答弁でありますけれども労働省が調査をした、それから七年たっている現在、地域改善特借法はあと三年しか残っていないという今のこの重要な時期を考えると、七年前の調査の時点から現在はどのような状態になっているかということを具体的に把握されることがあっていいのではないですか。安定局長、どうですか。
  440. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 そういう点につきましては、私ども職業安定機関が例えば巡回職業相談指導、こういうことでそういう地域に出向きまして、個々の方々につきましてのいろいろ日常職業相談とか職業指導などをやっておるわけでございますし、また同和関係の、事業主に対する啓蒙教育ということで研修会等もいろいろ実施するというような過程で、いろいろ啓蒙指導をやりながら雇用を進めていただくような指導というようなものも進めておるわけでございまして、そういうような形で実際をつかみ、そしてまたその実際に応じて一人一人の問題としてきめ細かくいろいろ指導もやっておるという中で、特に日常そういう業務の中で現状把握をしながらやっておるわけでございますので、特に新たにそういう調査をするということについては、今のところ私どもは考えていないわけでございます。
  441. 永井孝信

    永井分科員 出先機関にいろいろな業務をやらせるのは当たり前の話でありまして、しかし、それだけでは前の一九七七年に調査した時点の取り組みの姿勢から考えると、かなり消極的な姿勢になっているのではないかと言わざるを得ない、私からすれば。  それは、例えばこの同対協の最終意見具申が昭和五十六年十二月十日に行われているわけでありますが、例えば中高年齢者の就職の関係で言いまして「中高年層を中心に不安定就労者の割合が高いこと等にかんがみ、今後においても引き続き雇用対策等を推進していく必要があること等を特記しておく。」こういうふうになっておるんですね。これを受けて安定局長の方から八二年四月付で、職発第百十八号通達が出されています。この通達の内容を見ると、「局和関係住民の雇用の促進と職業の安定に特段の御配意をお願いする。」と通達書面でなっているわけです。そして、あとそれに対して具体的なことが幾つかこの通達の中に書かれているわけでありますが、「就職差別の解消及び中高年齢層を中心とする不安定就業者の職業の安定化を図るため、事業主に対する啓発、指導及び技能習得に際しての援助に最も配意するとともに」「対象地域の住民の雇用の促進と職業の安定に努める必要がある。」こう通達が書かれているんです。これもあえて言えば、抽象的と言えば抽象的かもしれませんけれども、全国を対象とするのですからそれはいいといたしまして、この通達が出された後、具体的にそのことがどこまで本当に生かされているかということは、通達を出した側の責任として後追い調査をしていく必要があると思うのですが、これはどうでございますか。
  442. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 先ほど申し上げましたように、この巡回職業相談などを通じまして私どもも、臨時、日雇いなどの不安定就業者が現実にまだ多い、あるいは率が高いというような実態はまだ解消されてない、まさにそういう認識に立ちましてそういう巡回職業相談などもやっておる。あるいはまた、先ほど申し上げましたような職業訓練を現にやっておる。例えば五十七年でございますと、クレーンの運転とか建設機械の運転とか危険物の取り扱いとかガス溶接というようなことにつきまして、千四百名くらいめ方についての職業講習等もやっておるとかいうような、とにかく就業実態改善に向けて全力を上げていかなければならぬ状態にまだあるということで取り組んでおるわけでございまして、そういう取り組みを進めていくことがまさに重要でございまして、この際特に新たな調査を実施するということについては考えていないところでございます。
  443. 永井孝信

    永井分科員 新たな調査を実施することを考えていないのは、どうも私には納得ができないのです。  かつて七年前に労働大臣を先頭にして調査に入った。労働省は、雇用問題について差別が持ち込まれてはいかぬ、事業主が平等の権利を認めて、そうしてだれでもが機会均等で就職ができるようにということを、労働省挙げての願望として持っていることを天下に示したと思うのです。七年たって、現状が表には出てこないけれども、もっともっと差別問題が本当は悪質化してきている。例えば地名総鑑だってそうですよ、局長。私はよく言うのでありますが、地名総鑑があるから地名総鑑を利用するのじゃないですよ。これはわかっていますか。地名総鑑なんて、どこの本屋へ行っても売ってないですよ。私も地名総鑑を探して回りました。どこにも売ってない。しかし、地名総鑑を裏で欲しがる企業があるからやみで売られるわけです、だから、今なお地名総鑑を事実上裏で買い入れて利用している企業が随分あるわけなのです。そういう現状を考えるときに、七年間もたって、そして今この時点で調査をする必要はないという判断を持たれることは、労働行政上姿勢として大変後退しているし、今の近代社会において、民主主義が戦後三十八年も三十九年も看板を掲げてきたその状況から考えるときに、そういう姿勢は私はどうしても納得できない。  そこで、私の方で調べた若干の今の実態を申し上げましょう。これはサンプルですから、膨大な調査資料をここに持ってきておりますが、それを全部読み上げるわけにいきませんので、一応説明してみますと、これは昨年度の調査でありますけれども、大阪の実態をちょっと申し上げてみたいと思うのです。  例えば就労関係で言いますと、常用関係で、常用として職業についている人の割合は、大阪府下におけるいわゆる同和地区と言われている方々の就労状況を見ますと五三・五%、大阪府全体では六六・三%となっておりますから、かなり低いものがある。あるいは、そのうち中小零細企業に働いている人、いわゆる三十人以下の従業員を抱えている企業、そういうところを見ますと、そこに四六%の人が働いている。大企業には極めて少ないということですね。これは、かつて大企業が地名総鑑などを活用して就職差別してきたことと無関係ではないと私は思うのですね。あるいは退職金で見ますと、退職金の全くもらえない企業で働いている人が五〇・六%にも上っている。社会保障、全く何にもないと答えた人が一九・八%。福祉年金で見ますと、無拠出の福祉年金でありますが、それの適用を受ける人が四二・六%、大阪全体でいいますと二七・四%でありますから、かなり高い数字になってまいります、全国平均でも三二・二%でありますから。生活保護をもらっている人は一〇・五%であります。大阪府全体は一一五五%でありますから、大阪府全体の率と大阪府下におけるいわゆる同和地区の皆さんの生活保護をもらっている割合というのを倍率で見ますと、六・八倍にも上っている、これが我が方で調べた実情なのですよ。  きょうは文部省を呼んでおりませんけれども、ついでのことにちょっと申し上げておきます。これはゆゆしき問題だと思うのですけれども、教育を受けている人の実態を調べてみますと、義務教育の未就学が全体の二・七%もいる、数にして千六百九十三人、こんなこと常識で考えられますか。小学校の中退というのがあるのですよ、四・七%、二千八百七十七人にも上っているんだ。中学の中退、これも義務教育ですよ。これが二・九%、千七百八十三人にも上っている。きょう文部省を呼んでおりませんから、また別の機会に私は文部省にこの問題を取り上げてみたいと思うのでありますけれども、この状態を見るときに、同和地区と言われているところがいかに劣悪な条件で、まともに人間らしい暮らしができない状況が今なお続いているかということなんですよ。  労働省でありますから就労問題、雇用問題が中心になりますけれども、こういう現実を見たときに、それでもなおかつ調査の必要がないという判断を――あした、あさってやるという問題と別です。あすやる、あさってやるという問題ではないのですけれども、実情を再調査して、七年前の調査の時点から労働省があるいは政府が進めてきた同和行政というものがどこまで成果を上げたか、あるいは今なお成果が十分でないとするとどこにその隘路があるのか、どこにこれから対応すべき問題点があるのかということぐらいはやることが必要であるし、またやることによって政治への信頼もかち取ることができるのではないか、それが民主主義のもとにおける政府の基本的な姿勢であっていいのではないかと思うのですが、これは大臣と局長、両方からお答えいただきましょう。
  444. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 そういう五十二年の調査の実態を受けまして、労働省としましては就職促進のためのいろいろな制度も新しくつくったり、あるいはまた就職のためのいろいろな啓蒙指導もさらに強化をしてきておるわけでございます。そういう意味におきまして、私どもは、現状においてまだ完全に差別が根絶されたとは言えない、いつまた具体的にそういう差別が起こるかもしらぬような状態に対して、そういうことのないように今懸命な努力をし、そしてまたできる限り近代的就労の場への努力をしておるわけでございまして、そういう意味では私どもも今全力を挙げて取り組んでおるということでございまして、その成果がどの程度になっているか、どのぐらいいったかということについて具体的に数字的に把握することよりも、日常の個々の業務を通じて懸命にそういう状態の解消へ目がけて努力していくことが重要であり基本である、こういうふうに考えておるところでございます。
  445. 坂本三十次

    坂本国務大臣 今局長から答弁をいたしましたが、五十二年に調査をして、これではいかぬ、ギャップが大きいということで全力を挙げて今日までやってきたわけであります。まだあと三年努力期間が残っているわけでありますから、私にいたしましても、ここ当分は格差の解消のために一人でも雇用の安定、それからよりよき就労に向かうように第一線での全力を挙げての奮闘が大切ではないかな、こう思っております。
  446. 永井孝信

    永井分科員 今の御答弁聞いておりまして、くどいようですけれども、これは非常に大切なことですから、繰り返して恐縮なんですが、日常の業務で努力しておるのはそうなければいかぬし、これは当然の責任と義務ですね。そこで、日常の業務の努力というものがどういうふうになっているかということを検証することは、行政上極めて大切なことだと私は思っている。だから私は繰り返して言っているのです。努力はしていただいておる。私は、努力してないと言ってないのですから。努力してもらっているのですけれども、努力した結果というものは検証されて、そこで次の行政のとるべき施策というものが生まれてこなければいかぬ、私はそう思うのです。だから、その検証のあり方について再調査してもらいたい、こう言っておるのです。  もう時間がなくなりましたから多くのことは言いませんけれども、いわゆる同和地区と言われている地域の方々の――これは大阪だけじゃありませんよ、私は兵庫ですけれども、兵庫でも随分いろいろな問題があります。大阪、兵庫を初めとして、西日本にとりわけそういう地域が多うございます。これが民主主義の現状のバロメーターになっておるわけですから。そうすると、同和地域で生活をされている方々の、例えば今の賃金状況が世間のベースと比べてどうなっているかとか、女性の方の就労状況は他の女性と比べてどうなっているかとか、社会保障問題が実際にどのように適用されているか、あるいは実際の収入はどの程度で生活レベルにどうはね返っているかとか、私、今義務教育の問題を言いましたけれども、実際にそういう教育の問題にゆゆしき問題が潜在している、こういうものにどうやって対応するか。教育が十分でなかったら就労も非常にまた制約をされてくるわけであります。その面では教育も非常に大切でありますから、そういう幾つかの問題について労働省実態を把握する、その把握することが、今まで進めてきた行政の検証になっていく、こう思うのです。単に調査の必要はないということじゃなくて――今すぐにやれと言っているのじゃないですから、今大臣は三年間あると言われました。しかし大臣、ここ三年間済んでしまうと遅いのでありまして、三年間まだ残されている今の時期だからこそ、積極的な取り組みで、法の精神に従って行政が浸透していくようにしていかなければならないと思うのですね。こういう問題について、今大臣から御答弁いただいたのでありますが、実務を担当する局長から、私が申し上げた実例があるだけに、単に出先機関に任せるということじゃなくて、きょうは時間がなくなりましたから改めて別の場で、社会労働委員会ででも時間があれば私は取り上げますけれども、検証のあり方について前向きに検討してもらいたい、こう思うのですが、どうでございましょうか。
  447. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 この問題については、常にこういう実情を把握しながら行政を進める、あるいは実情を把握しながら本当に必要な対策は何かということで進めていくことは基本的に大事なことでございまして、そういう意味で、そのこと自身は否定しているわけではございませんが、特に新たに今、五十二年のような形での調査をするということは考えていない、こういうことでございまして、絶えず実情把握に努めながら行政を進めていくということについての努力は日常業務としてやっていかなければいかぬと考えております。
  448. 永井孝信

    永井分科員 時間がなくなりましたからおきますが、前回のような調査の方法でなくても、今できることは積極的に実情把握をしてもらいたいということもあわせてお願いをして、残念ですが、これで終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  449. 橋本龍太郎

    ○大村主査 これにて永井孝信君の質疑は終了いたしました。  次に、簑輪幸代君。
  450. 簑輪幸代

    簑輪分科員 大臣、今日、男女平等は国際社会の基本的原則であるということは十分御承知と思います。我が国においても平等意識はとみに高まってまいりましたし、今、男女雇用平等の立法などを含めて、その重要性は非常に関心の的になっております。たくさんの婦人がこれに非常に注目をし、特に婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約、これを一日も早く批准してほしいと願っております。  ところが、何が何でも批准さえすればよいというのではなくて、肝心なことはその内容であり、国内法において本当に男女平等が実現されるような法ができるかどうかということだと私は思います。日本は国際社会の一員ということを中曽根総理も強調し、GNPが世界で第二位ということでございますし、そういう中で非常に注目されているわけですね。我が国においては、財界から、特に平等法そのものを制定すべきでないとか差別撤廃条約を批准すべきでないとか、いろいろな発言がこれまで相次いでおりますけれども、これは本当にゆゆしいことだと私は思うのです。  先日、三月二日に日経連から労働大臣あてに質問書という形をとったものが出されました。それに関連して大臣にお伺いしたいと思います。  これまで、臨調答申でも当初、婦少局の廃止を求めるというような姿勢も示されましたし、労働省は労使問題に口出しをするなとか、雇用平等法の審議の過程においても財界から数々の申し入れなどもありました。いろいろな圧力がありました。行政介入と言っても言い過ぎではないほどで、私は目に余るものがあると考えております。  特に今回提出された質問書の第一は、一九八〇年七月に行われた差別撤廃条約の署名に関して日経連に事前に何の連絡もなかった、企業経営に大した影響をもたらさないとの考えだったかというようなことが言われております。何で事前に日経連にお伺いを立てないと判断ができないのかということで、労働省としては当然怒ってしかるべきだと思います。このような財界の態度こそが、そもそも労働省が財界に甘く見られているのを何か象徴しているように私は思います。  二つ目には、現行法の改正または新立法の際、条約批准の最低条件は何かという質問です。こんなことを今ごろ言うのは一体どういうことなのか。まことにふざけているとしか言いようがないと私は思います。財界はそれなりにこれまでもちゃんと婦人少年問題審議会にその代表を送って審議をしておりましたし、意見も十分述べてきたはずです。今日この審議の最終段階で、公益委員のたたき台が出されたというこの時期において、その要件は一体何かというのはまことに理解しがたいことで、審議会そのものが一体どうなっているのかと言わざるを得ないと思います。  大臣は、この審議会は見識高い人たちによって構成されているというようなこともおっしゃいましたけれども、こういう実態を見ますと一体どういうことなのか、私は疑わざるを得ないわけです。そこで当然労働省としては、行政の公平、中立、平等の原則に立ってこれに厳しく対応する心安があると思います。労働省設置法に明確に規定されておりますように、「労働省の任務」「労働条件向上及び労働者の保護」、それから「労働者の安全及び衛生の確保」「婦人の地位の向上その他婦人問題の調査及び連絡調整」等々、労働者を守る立場から仕事をするように、労働者の福祉を図るように仕事をするようにと規定されているわけです。日経連は今回、質問書という形をとった比力をかけてきたわけですけれども、私はこれは恫喝だと思います。だから、このような圧力に決して屈することなく、この労働省の任務に照らして適切な対処をお願いしたいと思いますが、日経連への対応を含めて大臣の御見解をまず最初に伺っておきたいと思います。
  451. 坂本三十次

    坂本国務大臣 日経連から文書で質問書を私のところに持ってこられました。それには、五十五年に署名した、そのときには時の政府から日経連に対しては連絡がなかったという話も書いてありました。しかし、これは、そのときの内閣、鈴木内閣であったと思いますが、世界の中の日本としての進むべき姿、男女平等についての基本姿勢ということについてかくあるべし、国民的な立場に立って、また国際的な日本の立場としても署名すべきであるという政府の責任において署名したものでございますから、それは事前に各界各層あらゆるところに根回しをした方がいいとおっしゃる方もおるでしょうけれども、そのときの政府の着任と我が国国政の進路の一端を示したものだということにおいて見識のある決定であった、こう思っております。  批准のための最低要件をどう考えておるかという御質問もありました。しかし、これは考えようによっては、いよいよ時代の流れ、政府の決意あるいはまたこの世論の盛り上がり、これは、いろいろ考えてみたら、どうもただ反対をしておったのでは通るまい、やはりこの条約批准はやむを得まい、そのときに当たってどんな条件が必要かということの勉強のためにも聞いてきたのではないかな、私はそう善意に解釈をしておるわけなんで、そう一概に恫喝だというふうには、私はそう怖く思っていないのですけれども、そういうふうに思っております。  これについてはいろいろな皆さん方の御意見があります。本当に各界各層の御意見もあります。年齢別もあります。それから男性と女性の具体的な今までの職場のあり方だとか経営のやり方だとか、いろいろ自分自分の命までの立場に立つと、随分違った御意見もたくさん出てきておることは事実でございますけれども、それを一々皆が圧力だなどと、私はそれほど思っておりませんので、皆の御意見だ、それをひとつ何とかしてここで皆さんで話し合いをし、そして時代におくれないように、日本の国際的地位にも恥ずかしくないように、いいお取りまとめをみんなでひとつお考えをいただいて、私どもがまた最後は責任を持って、そして批准をいたしたいな、そのための国内法は今国会にも出したい、こう思って今努力中であります。
  452. 簑輪幸代

    簑輪分科員 今の大臣の御答弁を伺っておりますと、財界の質問書について圧力と受けとめないということでいろいろ言われましたけれども、そういう認識では不十分であると同時に、見当違いだと私は言わざるを得ないと思うのです。これまで財界が言ってきたこと、やってきたこと、一連の動きを見ておりますときに、この最終段階でこういうことを言ってくることの意味、それをしっかり受けとめて、毅然とはねのけて労働者の権利を守るという立場に立っていただかなければならない、私は重ねて申し上げたいと思います。  時間がありませんので、残念ですが次に進んでいきます。  二月二十日に発表された公益委員のたたき台について二、三伺いたいと思います。ここでは、現状を考慮しつつも、法的整備に当たっては現状固定的見地でなく長期的展望の上に立って、というふうに前置きしておりますけれども、特に雇用という経済性、効率性が追求される分野では現状重視は前進が生まれないおそれがあるので積極的に現状を変えていく方策を、と言っております。しかし、結局のところ、女子が家事育児の家庭責任を負っていることを踏まえた措置は現状固定となり、平等実現の妨げとなるというふうに述べているのです。これは結局、経済性、効率性追求の財界の論理を優先して、女子保護規定を削ることを平等実現のためと、婦人に逆に恩を着せながら権利を剥奪するのを正当化しているとしか私は言えないと思うのですね。一体男女平等とはどういうことなのか、基本的なことが少しもわかっていないというか、ないがしろにされているというふうに受けとめます。男女差別撤廃条約に明確にうたわれているように、基本的人権、人間の尊厳を尊重する、これがしっかり踏まえられないといけないと思います。この観点が皆無であるというふうに私は言わざるを得ない。非常に重大だというふうに思うわけです。  ところで、男女平等問題専門家会議というところでさきに答申したいわゆる男女平等のガイドラインでは、男子を含む労働者全体の労働条件、労働環境の整備、特に労働時間の短縮問題などが指摘されておりますし、当然見直しの観点に含まれていなければいけないはずです。ところが、このたたき台の中にはこのような観点は全くなく、ただ単に男性の労働条件女性をそのまま合わせることが平等だというふうな考え方が示されております。現在でも三六協定があれば青天井というような男性の労働条件女性を右へ倣えさせるということは、まことに間違っている考え方だと言わなければなりません。特に母性を社会的機能と認め、男女ともに家事育児などの家庭責任を果たしながら、同時に、労働における機会均等、待遇の平等を確保するとの、家庭と労働の両立をはっきり目指している差別撤廃条約の精神とは全く相入れないこのたたき台の姿勢となっていると思います。  それで、最初にまず見てみますと、募集、採用の入り口において、労働大臣の作成する指針において行政指導を行うというふうに言っておりますけれども、この基本的なところが事業主の努力義務ということになっていて、強制的な力を持ったものになっていないわけですね。失業者が増大している現状等から考えてみても、採用段階で差別的扱いをされるというのは、もう耐えがたいことだというふうに思います。努力義務では男女平等の実現が不可能だということは、例えば勤労婦人福祉法で育児休業制度の普及というのが努力義務で課されておりますけれども、その実現状況を見れば、十年たっても、昭和五十六年の統計で何と一四・三%の普及率しかない。つまり、努力義務では事はなかなか進展しないし、平等の確保は到底考えられないということを私は指摘せざるを得ないわけです。  ところが、このたたき台で、実効性の担保ということで、採用において問題が生じたときには「迅速、簡便な紛争解決のため」「調停機関を新設」するというふうにあります。調停というのは、両方の言い分を取り持って取りまとめのために努力する機関ということですけれども、それは結局のところ、折り合いがつかないということは幾らでも考えられるわけです。  ところで、この二十五年間の婦人の差別反対闘争というものを見できますと、団事裁判などということでやってきた場合には、本当に迅速どころか、随分長い闘いの結果、やっとやっと実現するという経験を持っております。本当に平等を確保するための手だてを考える場合には、最終的にきちんとこの調停機関の中で、例えば行政命令まで発することができるような権限を持つものでなければ実効性は担保されないというふうに思いますが、その点も十分考慮されてこの調停機関ということが定められているのかどうか、その点をまず最初にお聞きしたいと思います。
  453. 赤松良子

    ○赤松政府委員 非常にたくさんのことをお答えしなければいけないわけですが……
  454. 簑輪幸代

    簑輪分科員 最後のところだけで結構です。
  455. 赤松良子

    ○赤松政府委員 最後のところでございますね。  調停機関につきましては、いろいろな考え方があり得ると思います。例えば三者構成の現在の労働委員会というようなものを考えに置いた案というようなものもいろいろなところから出されていることも承知いたしておりますが、簡便という点あるいは迅速という点を重く考えますと、あるいは現在行われておりますような、裁判に近いような形での審理というものがそれに該当するかどうかということは、かなり疑問なしとしないと思うわけでございます。そのような観点も、これまでの審議会の審議の過程では、公益委員の先生方は十分に考慮に入れて現在のようなたたき台の案を出されたものと私は理解をいたしております。
  456. 簑輪幸代

    簑輪分科員 ちっとも明確な答弁じゃないと思いますね。だけれども、私はこの際、労働省の方の姿勢として、この行政命令をしっかり持った機関、これで労働者を迅速に、簡易に救済していくという手だてをぜひとっていただくように強くお願いをしておきたいというふうに思います。  次に、妊娠、出産にかかわる母性保護については手厚く充実するというようなことがここでも言われておりますけれども、果たしてこのたたき台の措置で十分どお考えかどうかということですね。本当に母性の保護を充実するというのならば、当然人事院規則一〇―七に定められているいろいろな施策、それからまた勤労婦人福祉法の規定を受けて、労働省自身が行政指導を行っている指導基準というのがありますね。それの最低ラインぐらいまでは当然新たな法の中に規定されてこなければならないというふうに思うのです。健康診査等受診のための時間の確保、妊娠中の通勤緩和措置、それから休憩時間の設置など、こんなことぐらいは当然論議されてこの中に盛り込まれてきて当たり前だというふうに思うのです。  労働省昭和四十九年に行った調査がありますけれども、その結果を見ると、「勤務態様別にみると深夜勤務、交替勤務など特殊な勤務態様の者では後期(晩期)妊娠中毒症、流早産の徴候、流早産、分娩時の異常、低体重死出産など妊娠、分娩を通して異常が多くみられます」というふうに分析しているほどなんですね。私は、当然これらの考え方がこのたたき台の中に盛り込まれなければならないと思います。労働省が、まとめられた「母性の管理テキスト」という中には、さらに、「我が国の妊産婦死亡率が他の先進諸国に比較して高く、死亡原因が妊娠中毒症や分娩時の異常出血が大きなウエイトを占めている。健康管理についての本人の自覚もさること乍ら、職場や社会において個々の実情に応じた適切な措置が必要です」と明確に指摘されておられるわけですし、労働省自身の姿勢としても母性管理推進者などを設置し行政指導をしてきたわけですから、これを受けて、この平等法試案の中にこの程度のことが盛り込まれるのは当たり前だというふうに私は思いますが、その点はいかがでしょうか。労働省の姿勢としてお伺いしたいと思います。
  457. 赤松良子

    ○赤松政府委員 ただいま御指摘のいろいろな点は、これは勤労婦人福祉法のいわば努力義務に基づいてやってきたわけでございます。努力義務が、このような行政指導指導基準をつくったりする場合の根拠になったということは言えるのではないかと思うわけでございます。  それからまた、このたたき台の中に、母性保護に関しては従来の労働基準法の線よりも厚い保護というものを考えてたたき台が書かれたということも明らかでございまして、例えば、今御指摘の点の中でも、現在は、妊娠、出産後の方たちの就業制限が必ずしも十分ではございません。それについて、妊娠、出産後の母性保護につきましては、「妊産婦の時間外・休日労働及び深夜業を原則的に禁止することが適当である」というふうに書かれているわけでございまして、妊産婦が深夜業あるいは休日労働をするということについて、現在の基準法はこれらが例外になった場合の業種については何の規定も設けていないわけでございますから、これと比べれば、今のたたき台が母性保護についての配慮を考えているということになるのではないかと思っております。
  458. 簑輪幸代

    簑輪分科員 婦少局長がその程度の認識では、本当に婦人労働者の期待を裏切っていると思うのですね。確かにたたき台は、ある程度現行の労基法よりも母性保護の点で一定の前進をということを言っていることは、私だって承知した上で聞いているのです。ただ、これだけでは、新たな平等法案の中に盛り込まれる母性保護の充実ということにはまことに値しない。先ほど申し上げたような諸施策がきちんと入ってこそ初めて充実というふうに言えるのではないか。時代の要請にマッチしてないということを私は申し上げて、これで十分だとお考えかというふうに申し上げているわけですが、そのことについては十分であるともないともおっしゃらないけれども、ちょっと前進だ、こういうふうにおっしゃるわけです。私は、この程度の規定では、このたたき台自身が、既にある婦人の保護規定を全部取っ払っておいて、ほんのちょこっと母性保護を充実させてやるからこれで男女平等だなんて言ったら、今までの婦人が既に持っていた権利をすべて剥奪されて、そして既に確立した部分が多少法制化される程度にとどまる、何ら前進がないものだと言わざるを得ないと思うのですね。時間がないのでこれ以上申し上げませんけれども、どうしても、人事院規則あるいは勤労婦人福祉法で努力してきたその線ぐらいは入れるように、婦少局長は一生懸命努力していただきたいというふうに思います。  それから、今度、たたき台で管理職の問題について幾つか触れているわけですけれども、労基法上の四十一条二号の管理監督者の範囲についての基本的考え方ですね、いわゆる管理職というふうに言われておりますけれども、それと、たたき台に言うところの管理職というものが一体同じものなのかどうか、違うものなのかどうか、まずそれをお聞かせください。
  459. 赤松良子

    ○赤松政府委員 たたき台におきましては、比較的漠然と管理職及び専門職という言葉を使っているわけでございます。労働基準法の文言とは、文言も違いますし、全く同じということでもございませんし、また、どのような点が違うかということについては、たたき台の中に、「それらの範囲については別途具体的に検討する。」このようになっていることを申し上げたいと思います。
  460. 簑輪幸代

    簑輪分科員 労働基準法に規定されている管理監督者ということではなくて、実は、たたき台で言っているところの管理職というのは、労働基準法に規定されている「監督若しくは管理の地位にある者」のみでなく、業務遂行の最小単位の長としてその属する労働者に対して業務遂行上の指揮命令権限を有するもの(係長等)をいうものとする、というような、そんな考え方が論議されている。違いますか。これは特に私たちは、管理職というのが他の労働条件にとって、時間外、休日、深夜、決定的な差異をもたらすものだからこそ、このことは非常に関心が高いし、しっかりと定めていかないと大変なことになるという認識で伺っているわけです。今申し上げたような考え方が論議され、盛り込まれる可能性があるのではないでしょうか。違いますか。
  461. 赤松良子

    ○赤松政府委員 管理職の範囲につきましては、審議会の中で検討をされておりまして、その中にはいろいろな案があるということでございます。
  462. 簑輪幸代

    簑輪分科員 審議会でいろいろな論議がされておるかもしれませんけれども労働省としてはこうあるべきという考え方はないのでしょうか。
  463. 赤松良子

    ○赤松政府委員 現在の段階は、審議会の検討にゆだねているわけでございますので、労働省としての考えをそれに先立って申し上げることはあるいは適当ではないかもしれないというふうに思います。
  464. 簑輪幸代

    簑輪分科員 審議会任せということのようですけれども、例えば管理職の範囲については、これは別に婦人の問題ということではなくて男性の労働者も全部含めて、一体どこまでが管理職なのかということは重大な問題で、例えば金融機関の労働者などについては、大変な闘争の結果、この管理職の範囲を定める通達が昭和五十二年に労働省から出されているというような事態もございます。この管理職というのが無限にどんどん広がっていくということによって、実際には労基法で保障された権利が無限に剥奪されていくということを考えてみますときに、これは限定的に厳しく考えられなければならないというふうに思います。その点、管理職の範囲をどう定めるべきかという方向について、私は基本姿勢として、昭和二十二年ですか出された労働省の基本的な管理職の範囲の考え方というのがありますけれども、それを踏まえて考えられるというふうに承りたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  465. 望月三郎

    ○望月政府委員 男女平等法の方で管理職をどうとらえるかというのは、これはまた一応別の問題として、私からは、先生おっしゃるように、昭和五十二年に、金融機関の管理職について具体的な基準を定めたわけでございます。しかし、それはその直前に相当、銀行で、今おっしゃられたようにいろいろな紛争がございまして、昭和二十二年の基本通達では、もうちょっとブレークダウンしなければならないという部面がございましたので、それを非常に明確化したということでございまして、二十二年の通達を踏まえながら具体的に都市銀行その他各種金融機関に当てはめて考えますと、管理職というのは本部の課長以上の者、それから支店にあっては支店長のほか、大きな支店の場合は部課制をしいてありますので、部課制をしいてある場合にはその長である人、これは大体本部の課長以上のものと同格に位置づけてあるものりを支店の部課長でも管理職とするというような、基本的なメルクマールを決めたわけでございます。
  466. 簑輪幸代

    簑輪分科員 昭和二十二年ごろの理解の仕方は、例えば経営者とほぼ一体となって仕事をする者、それから出退勤が比較的自由で、それが勤務評定に左右されない者というような基本姿勢があるわけですけれども、それがそのまま引き継がれて、ただ具体化したと承ってよろしいですね。(望月政府委員「はい」と呼ぶ)そうしますと、同じ労働基準法の中で問題になるということですので、例えばこの四十一条の二号での管理職の範囲と今度たたき台の中で論じられている管理職の範囲とは全く別でございますというわけにはいかないわけです。労働基準法の中にそれが定められることになりますと、同じ管理職がこっちではこう理解し、こっちではこう理解しというふうに果たしてなるものかどうか。そして、企業としては、無限に管理職の範囲を広げて経済効率性を確保したいという考え方もあるわけですから、そういう中で限定的に考えていくという四十一条二号の考え方がこの男女平等法の中でもきちんと貫かれていかない限り、大変な問題になるというふうに私は強く指摘をしておきたいと思うのです。  と申しますのは、結局、男女平等という形によって婦人が深夜もさせられ、時間外も無限にさせられていく、さっき申し上げたように三六協定さえあれば青天井というところに婦人も全部入っていく、そういう中に管理職もどっと入っていくということになると、婦人は男女平等というようなにしきの御旗のもとで、結局は男性の長時間、低賃金に横並びさせられていく、あるいはそれよりも悪い条件で働かされることになってしまう危険性があると私は思うわけです。こういうことが男女平等の理想の姿だなどということは到底言えないはずです。母性をしっかり保護して、そして男女平等を確立していく、それをみんな注目をして見詰めているところでございます。  その点に関しては、日本の労働条件、長時間、低賃金の男性の労働条件が劣悪であることが貿易摩擦を生むとも言われておりますし、さらにまた男女不平等がこのような貿易摩擦の原因であるという指摘もあるわけですし、そうした中で世界に恥ずかしくない男女平等を確立していく、雇用平等法を実現していくことが今労働省に要請されており、それが非常に注目をされ、婦人はかたずをのんで見守っているわけです。そして、もう間もなくこの法案が出されようという段階でございますので、何としてもこのような基本姿勢をしっかり踏まえて、国際的にも、あるいは日本の婦人労働者、それからすべての婦人の願いにこたえられるような、批判にたえられるような男女雇用平等法を制定される、そのことを大臣に強く要求したいと私は思うのです。  最後に、私が今お願い申し上げました点を含めまして労働大臣の決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  467. 坂本三十次

    坂本国務大臣 この雇用における男女の均等、平等法というものは、考えによっては日本の文明史の中でも、あるいはまたもちろん経済、雇用関係の中でも、非常に大きな転機をもたらすものだと私は思っております。もちろん、基本的には憲法にもちゃんと書いてあるのですから、基本的人権の問題、ありましょう。  しかし、この理想を現実にどう生かしていくかということにつきましては、あなたも御承知のとおり、立場が違うともう正反対の意見もありますし、女性の中でもいろいろ意見がありますし、あるいは経営者の中でも意見が分かれているような点もございます。それは、それだけの大きな問題ですから、過去の自分らの立場だけでこの大きな転機に対しての指針を出せというところについては、今まだいろいろ意見が錯綜しておる段階だとは思っておりますが、しかし、私は潮どきだと思っているのです。女性の地位の向上はもちろんでしょうけれども、働こうという女性の意欲に社会がこたえることは、これまた日本の社会に大変な明るさも活力ももたらすことですから、これは非常に大事なことだと思っております。  しかし、最終は、皆さんの意見をよく聞いて、そして――そうかといって時間がないのですから、これはおととしからやっておるのですから、一生懸命にここまでやってきたのですから、いよいよ提出を目前に控えまして、私ども最後のコンセンサスを特にこの審議会においてもいただいたりして、そして今国会に提出をしたいな、非常に重大な意義を持っておるものだから非常に責任も感じてやっていく、あなたのおっしゃるように一部の圧力に屈するという気持ちは私は少しもありません。だけれども、各界各層の意見を集約して責任のあるものをまとめたいな、こう思っています。
  468. 簑輪幸代

    簑輪分科員 立場が違うといろいろ意見が違うとおっしゃいましたけれども労働省の任務はもうはっきりしていることでございますので、これに立脚してやっていただきたいし、それから、国際社会の一員として恥ずかしくない法律をぜひつくっていただきたい。そして、この歴史的な時期に労働大臣になられたわけですから、ぜひすばらしい仕事をしていただくように強く要望して、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  469. 橋本龍太郎

    ○大村主査 これにて蓑輪幸代君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、労働省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後七時二十八分散会