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1984-03-10 第101回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十九年三月五日(月曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月九日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       大村 襄治君    小杉  隆君       橋本龍太郎君    川俣健二郎君       矢山 有作君    草川 昭三君 三月九日  大村襄治君が委員長指名で、主査選任され  た。 ――――――――――――――――――――― 昭和五十九年三月十日(土曜日)     午前九時開議  出席分科員    主査 大村 襄治君       小杉  隆君    橋本龍太郎君       網岡  雄君    川俣健二郎君       土井たか子君    矢山 有作君       山本 政弘君    石田幸四郎君       草川 昭三君    春田 重昭君    兼務 池端 清一君 兼務 大原  亨君    兼務 竹村 泰子君 兼務 中西 績介君    兼務 松沢 俊昭君 兼務 近江巳記夫君    兼務 武田 一夫君 兼務 薮仲 義彦君    兼務 安倍 基雄君 兼務 青山  丘君    兼務 小渕 正義君 兼務 佐藤 祐弘君    兼務 野間 友一君 兼務 三浦  久君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡部 恒三君  出席政府委員         厚生大臣官房長 幸田 正孝君         厚生大臣官房審         議官              兼内閣審議官  古賀 章介君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省環境衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省援護局長 入江  慧君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  朝本 信明君  分科員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  加美山利弘君         大蔵省主計局主         計官      小村  武君         文部省大学局高         等教育計画課長 前畑 安宏君         厚生省医務局医         事課長     横尾 和子君         農林水産省畜産         局流通飼料課長 阿部 敏明君         運輸省自動車局         保障課長    越村 安英君         郵政省電気通信         政策局業務課長 品川 萬里君         建設省計画局民         間宅地指導室長 深沢日出男君         日本電信電話公         社宅内サービス         本部本部長 岩佐 直正君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月十日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     土井たか子君   矢山 有作君     山本 政弘君   草川 昭三君     柴田  弘君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     沢田  広君   山本 政弘君     横江 金夫君   柴田  弘君     春田 重昭君 同日  辞任         補欠選任   沢田  広君     加藤 万吉君   横江 金夫君     網岡  雄君   春田 重昭君     柴田  弘君 同日  辞任         補欠選任   網岡  雄君     矢山 有作君   加藤 万吉君     川俣健二郎君   柴田  弘君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   石田幸四郎君     草川 昭三君 同日  第一分科員大原亨君、近江巳記夫君、青山丘  君、第二分科員竹村泰子君、安倍基雄君、小渕  正義君、佐藤祐弘君、野間友一君、三浦久君、  第三分科員池端清一君、薮仲義彦君、第五分科  員中西績介君、第六分科員松沢俊昭君及び第八  分科員武田一夫君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算  (厚生省所管)      ――――◇―――――
  2. 大村襄治

    大村主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。何とぞよろしくお願いをいたします。  本分科会は、厚生省及び労働省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算厚生省所管について、政府から説明を聴取いたします。渡部厚生大臣
  3. 渡部恒三

    渡部国務大臣 昭和五十九年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算概要について御説明申し上げます。  昭和五十九年度厚生省所管一般会計予算総額は九兆二千四百九十一億円余でありまして、これを昭和五十八年度当初予算額九兆六百十四億円余と比較いたしますと、一千八百七十六億円余の増額、二・一%の増加率となっており、国の一般会計予算総額に対し一八・三%の割合を占めております。  御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には異例に厳しいものがあり、昭和五十九年度国の予算におきましては、制度の根本にまで踏み込んだ改革を行うなど経費の徹底した節減合理化に努め、特に一般歳出については、全体として前年度同額以下に圧縮することを基本方針として編成されたものであります。  厚生省予算につきましても、徹底した歳出内容見直し合理化を行う一方、高齢化社会にふさわしい効率的で公平な社会保障制度確立を図るとともに、障害者寝たきり老人等恵まれない立場にある人々に対する福祉施策につきましては重点的に配慮していくことを編成基本方針としたものであります。  このような方針のもとに、各方面の御理解と御協力を得ながら、幸い医療年金等につきまして制度改革案を提出することができ、また、厳しい財政事情のもとであっても、障害者等福祉対策を初め、保健医療対策等につきましても施策推進に必要な予算措置を講ずることができました。  この機会に、各位の御支援に対し衷心より感謝申し上げますとともに、責任の重大さに思いを新たにして、国民の健康と福祉を守る厚生行政進展に一回の努力を傾注する決意を表明する次第であります。  以下、昭和五十九年度予算に関連します主要な施策につきまして申し上げたいと存じます。  第一に、本格的な高齢化社会進展のもとで、社会保障制度国民生活の基盤として将来にわたって有効に機能するよう、制度改革を行うことといたしております。この観点から、医療保険につきましては、医療費適正化対策推進保険給付見直し医療保険再編合理化による負担公平化内容とする改正を行うことといたし、年金制度につきましては、基礎年金導入による制度の再編成給付負担公平化婦人年金権確立などを内容とする制度改正を行うことといたしております。  なお、拠出年金年金額を特例的に実施時期を繰り上げて引き上げるとともに、福祉年金及び戦没者等遺族年金等につきましても、同趣旨改善を図ることといたしております。  第二に、障害者寝たきり老人等恵まれない立場にある人々を支えるための福祉対策につきまして、きめ細かく配慮を加え、その拡充強化を図ることといたしております。具体的には、特別障害者手当創設身体障害者範囲拡大家庭奉仕員増員痴呆性老人対策推進等各種福祉対策拡充強化を図るほか、生活扶助基準引き上げ社会福祉施設運営改善等を行うことといたしました。なお、児童扶養手当制度福祉施策と位置づけ、これに伴い児童扶養資金創設を行うことといたしております。  第三に、国民保健医療を確保するための施策について、重点的に充実強化を図ることといたしております。特に、四十歳からの健康づくりを目指す老人保健事業及び対がん十カ年総合戦略に基づくがん対策を強力に推進するほか、保健所自主的運営促進するための補助制度改正母子保健対策難病対策救急医療対策等充実を図ることといたしております。  以上のほか、生活環境施設整備原爆被爆者戦争犠牲者のための対策、医薬品・食品等安全対策、血液・麻薬・覚せい剤対策環境衛生関係営業振興国際医療福祉協力等につきましても、引き続きその推進を図ることといたしております。  以下、厚生省所管一般会計予算及び特別会計予算概要を御説明申し上げるべきではございますが、委員各位のお手元に資料を配付いたしてございますので、お許しを得て説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、本予算成立につきまして、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
  4. 大村襄治

    大村主査 この際、お諮りいたします。  厚生省所管関係予算重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大村襄治

    大村主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔渡部国務大臣説明を省略した部分〕  以下、主要な事項につきまして、予算概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活扶助基準につきまして、一般国民消費水準動向等を考慮し、昭和五十八年度に比し二・九%引き上げることとしたほか、高齢者傷病障害者等が大部分を占める少人数世帯処遇改善男女消費実態に対応した男女差の縮小などの改善を行う一方、不正受給の一掃、医療扶助適正化等制度の厳正な運営推進することとし、一兆一千三百九十四億円余を計上いたしておりますが、これは昭和五十八年度に比し五五二十六億円余の増額となっております。  第二は、社会福祉費であります。  心身障害児・者の福祉につきましては、家庭地域で生活し易い条件整備するため、障害者社会参加促進事業在宅障害者デーサービス事業補装具給付事業日常生活用具給付事業精神薄弱者通所援護事業等充実を図るとともに、特別児童扶養手当及び福祉手当の額を引き上げることといたしております。  老人福祉につきましては、在宅寝たきり老人等に対する福祉サービス拡充強化するため、家庭奉仕員増員を行うとともに、デーサービス事業生きがい対策等についても引き続き充実を図るほか、痴呆性老人対策推進することといたしております。  また、母子福祉につきましては、母子寡婦福祉貸付金貸付原資増額及び児童扶養資金の新設を行うとともに、児童扶養手当制度福祉施策と位置づけ、給付額の二段階制都道府県負担導入等制度改正実施することといたしております。  さらに、母子保健につきましては、妊婦・乳児健康診査推進神経芽細胞腫検査実施等その充実を図ることといたしております。  社会福祉施設につきましては、特別養護老人ホーム心身障害児者施設等需要の多い施設整備老朽施設改築等を積極的に進めるとともに、特別養護老人ホームのうち痴呆性老人処遇技術研修指定施設養護老人ホームに併設する小規模特別養護老人ホーム身体障害者福祉ホーム整備等を図ることといたしております。また、運営改善につきましては、職員の勤務時間の短縮に必要な業務省力化等勤務条件改善費を計上するほか、入所者処遇改善として一般生活費引き上げることといたしております。  以上のほか、児童館母親クラブ等児童健全育成対策拡充民間社会福祉活動推進地域改善対策実施等につきましても、それぞれ所要措置を講ずることといたしております。  以上申し上げました社会福祉費総額は一兆九千九百九十一億円余でありまして、昭和五十八年度に比し八百七億円余の増額となっております。一第三は、社会保険費であります。  まず、社会保険国庫負担金でありますが、政府管掌健康保険につきましては、従来にも増して医療費支出適正化対策推進するとともに、昭和五十九年七月から給付負担見直し日雇い労働者に対する健康保険制度適用等制度改正実施することとし、国庫補助金繰入れ六千十六億円余を、船員保険疾病部門につきましては二十七億円の国庫補助金繰り入れをそれぞれ計上いたしており、昭和五十九年六月までの日雇労働者健康保険に対する国庫負担金五十四億円余を含め、総額六千八百十七億円余を計上いたしております。  次に、厚生年金保険及び船員保険年金国庫負担金につきましては、特例的に年金額を二%引き上げることとし、その実施時期を例年より繰り上げて昭和五十九年四月からといたしております。また、昭和五十九年八月から障害年金事後重症制度改善を行うほか、行革関連特例法に基づき、昭和五十九年度においても保険給付費国庫負担の一部を一時繰り延べすることといたしました結果、これらの経費として七千六百七十六億円余を計上いたしております。  次に、国民年金国庫負担金でありますが、拠出制国民年金につきましては特例的に年金額を二%引き上げることとし、その実施時期を例年より繰り上げて昭和五十九年五月からといたしております。なお、一般会計から国民年金特別会計への繰り入れ平準化を図るための特例措置を引き続き講ずることといたしております。  また、福祉年金につきましては特例的に昭和五十九年六月から年金額改善を行うこととしております。これらの結集、国民年金特別会計への繰り入れに必要な経費として一兆七千三百七十九億円余を計上いたしております。  国民健康保険助成費につきましては、総額一兆九千九百十八億円余を計上いたしております。国民健康保険につきましては、医療費支出適正化対策を強力に推進するとともに、昭和五十九年七月から、退職者医療制度創設国庫補助合理化等制度改正実施することとし、療養給付費等補助金一兆六千百十一億円余及び財政調整交付金二千九百十五億円余等所要経費を計上いたしたところであります。  以上申し上げました社会保険費総額は五兆二千六百三十七億円余でありまして、昭和五十八年度に比し四十五億円余の増額となっております。  第四は、保健衛生対策費であります。  生涯を通じる健康づくりのための施策の一環として、特に本格的な高齢化社会の到来に対応し、壮年期からの健康の保持を図るための疾病予防機能訓練等保健事業を積極的、総合的に実施することといたしております。同時に、この事業を円滑に実施するために必要な保健所機能強化市町村保健センター整備市町村保健婦増員市町村栄養改善事業婦人健康づくり活動等推進を図ることといたしております。なお、臨時行政調査会答申趣旨を踏まえ、保健所運営に関する経費につきまして、保健所の自主的な運営促進するため、補助金方式から交付金方式へ移行することといたしております。また、医療金融公庫につきまして、昭和六十年一月を目途に社会福祉事業振興会と統合することとし、所要経費を計上いたしております。  地域医療対策につきましては、救急医療体制整備僻地中核病院等を中心とする僻地医療体制計画的整備推進するほか、医療情報システム整備強化等を図ることといたしております。  特定疾病対策につきましては、循環器病がん、脳卒中、腎不全等に関する専門医療機関整備推進するとともに、小児医療に関する臨床的研究充実等を図ることといたしております。  また、看護婦等医療従事者養成確保につきましては、看護婦養成所整備夜間看護体制強化に伴う処遇改善等を行うことといたしております。  原爆被爆者対策につきましては、医療特別手当等各種手当引き上げ等を図ることとし、所要経費を計上いたしております。  以上のほか、精神衛生費につきまして、精神障害回復者社会復帰促進のための通院患者リハビリテーション事業拡充を図ることとし、公的病院助成保健衛生医療施設等整備費などを含めて、保健衛生対策費は、総額四千六百四十九億円余でありまして、昭和五十八年度に比し四百七億円余の増額となっております。  第五は、戦傷病者戦没者遺族等に対する援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等に対する遺族年金等につきまして、恩給の改正に準じて額を引き上げるとともに、併発死した者の遺族に対する遺族年金等改善を行うことといたしております。また、戦傷病者等の妻に対する特別給付金として、昭和五十四年に交付した国債最終償還を終えた者に対して、引き続き二年償還国債特別給付金として支給することといたしております。  中国残留日本人孤児対策につきまして、訪日肉親調査等親族探しの促進及び中国孤児定着促進センターの円滑な運営を図るなど、遺族及び留守家族等援護費として、総額一千四百四十四億円余を計上いたしております。これは昭和五十八年度に比し二十八億円余の増額となっております。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  水道施設整備費につきましては、簡易水道水道水源開発施設水道広域化施設整備等を引き続き推進することとして、九百十九億円余を計上いたしております。  廃棄物処理施設整備費につきましては、第五次廃棄物処理施設整備計画に基づき整備促進するとともに、引き続き広域廃棄物埋立処分場整備を行うこととし、六百四十四億円余を計上いたしており、環境衛生施設整備費総額は一千五百六十四億円余であり、これは昭和五十八年度に比し九億円余の減額となっております。  以上のほか、対がん十カ年総合戦略の積極的な推進を初めとして、心身障害発生予防及び小児慢性特定疾患治療研究等難病対策を含め、各種研究開発事業拡充国際医療福祉協力充実戦没者遺骨収集慰霊巡拝実施等につきましても、所要経費を計上いたしております。  以上、昭和五十九年度厚生省所管一般会計予算概要を御説明申し上げました。  次に、昭和五十九年度厚生省所管特別会計について申し上げます。  第一に、厚生保険特別会計につきましては、厚生年金国庫負担金につきまして、行革関連特例法規定に基づき、現行法規定により繰り入れるべき額の一部について引き続き一時減額を行い、一般会計から一兆四千六百八十五億円余を繰り入れることとし、各勘定歳入歳出予算を計上いたしております。  第二に、船員保険特別会計につきましては、一般会計から四百七十六億円余の繰り入れを行い、歳入歳出予算を計上いたしております。  第三に、国立病院特別会計につきましては、一般会計から一千二百九十二億円余の繰り入れを行い、各勘定歳入歳出予算を計上いたしております。  第四に、あへん特別会計につきましては、歳入歳出とも十八億円余を計上いたしております。  第五に、国民年金特別会計につきましては、国民年金特別会計への国庫負担金の繰入額の当面の推移等を勘案し、一般会計から国民年金特別会計への繰り入れ平準化を図るための特例措置を引き続き講ずることとし、一般会計から一兆七千三百七十九億円余の繰入れを行い、各勘定歳入歳出予算を計上いたしております。  以上、昭和五十九年度厚生省所管特別会計予算について申し上げました。  何とぞ、本予算成立につきまして、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。     ―――――――――――――
  6. 大村襄治

    大村主査 以上をもちまして厚生省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 大村襄治

    大村主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本政弘君。
  8. 山本政弘

    山本(政)分科員 昨年もこの分科会で、実は中国残留孤児中国からの引揚帰国者年金について質問いたしたわけでありますけれども、質問をする前にもう一遍厚生大臣に確認をしたいわけであります。  残留孤児あるいは中国からの引揚帰国者、この人たち戦争犠牲者であります。私はそう思うのですが、いかがでしょう。
  9. 渡部恒三

    渡部国務大臣 そのとおりでございます。
  10. 山本政弘

    山本(政)分科員 今大臣お話の中にも、戦争犠牲者対策推進をやる、こういうお話がありました。同時に、年金についても給付負担公平化について努力をしたいというお話もあったと思うのですね。私はきょうお伺いしたいのは、今基礎年金導入目的として、各種年金と言ったらいいんでしょうか、国民年金法厚生年金保険法、それから船員保険法改正作業が進められておる、そしてそれに伴って、懸案であった制度的な無年金者といいますか、今申し上げました中国引揚帰国者年金保障についても検討されております。そういうことが伝えられておりますけれども、この制度的な無年金者に対する年金権保障について、既に公表されておりますところの国民年金法改正案要綱によりますと、現行法適用除外期間をいわゆる空期間として取り扱うという措置が講じられておる、こういうことを承っておりますけれども、この点については間違いがございませんでしょうか、まずお伺いいたします。
  11. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の改正案においては、制度的な無年金者は解消するということを大きな目的としており、今御指摘の問題についても、帰国前の残留期間資格期間とすることにより老齢年金に結びつけるということにいたしております。
  12. 山本政弘

    山本(政)分科員 じゃお伺いしたいのですが、空期間を認める、それだけで事が済まされるのだろうかどうだろうかという気が私は実はするわけです。つまり過去にとられたさまざまな年金権保障措置、これは間違っておれば教えていただきたいのですけれども、十年年金とか五年年金とか、それから特例措置がございました。そういう人たちに比べて、今空期間というものを設けてそして救済をすると言うけれども、それだけで一体年金額というものは十分かどうかといえば、私はこれは大変不十分じゃないか、こう思うのですね。そういう点で余りにも不公平、不十分じゃないだろうか、私はそんな気持ちがしてなりません。  特に、こんなことを申して失礼かもわかりませんけれども、総理が、今や戦後の総決算の時期である、こうおっしゃられて、そして近く訪中されるときに、六百九十三人の方々に対して一括帰国をする努力をしよう、そしてそれを中国政府に要請をし、同時に中国の養父母に対して感謝の意を表明しよう、こういうお話があります、新聞で知ったわけでありますけれども。中国孤児というのは、まず日本人であるということがありますね。そして、今申し上げたように日本人の中で戦争犠牲者である。しかも、今申し上げたように各種救済措置があったけれども、その救済措置というものを絶対的に受けられる条件になかったという実態がある。それをただ単に空期間ということだけで救済し終わったと言っていいのだろうかどうだろうか。しかもその人たちは今申し上げたように人数は極めて限られておる、しかも帰ってきた場合に生活が不安定である、こういう条件があるわけですね。政府として予算的なことを考えればそんなに大した金額でもないだろう。それならば、そういう人たちに対してひとつ特殊な条件であるがゆえに救済をすることが必要であるのじゃないだろうか。しかし、それを今申し上げたように空期間というだけで足れりというふうにお考えになっているのだろうかどうだろうか、重ねてお伺いしたいと思います。
  13. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の制度改正案は、御承知のように社会保険方式を維持することが基本となっておりますので、残留孤児の皆さんに限らず、保険料を納めなかった期間について年金額に認めることは極めて困難であります。今の空期間を認めて老齢年金に結びつけることにしたことでも、これは山本先生からも幾たびが御指摘をちょうだいして、これは一歩前進したという評価をしていただいてよろしいかと考えておったのでありますが、今回の改正により、なお別途六十歳以後六十五歳に達するまでの任意加入制度を設けて、このようなケースについては年金額がなるべく低くならないような配慮をしておるわけであります。  ただ、これは年金制度の問題でありまして、今の中国残留孤児の皆さんに対する国としてやるべきことはまた別個の問題等もありますので、この年金の場合は制度全体のものでありますからここまでが精いっぱいじゃないかと私は思いますが、残留孤児の問題は、そのままでよいということではなく、これはその他の方法で政府として今後なすべきことはなしていかなければならないと考えております。
  14. 山本政弘

    山本(政)分科員 つまり私が申し上げたのは、残留孤児年金ということについて特殊な事情がある、つまり戦争犠牲者であるとか人数が限られておるとか生活が不安定であるとかということを申し上げたのですけれども、中国帰国者の問題に限ってそのことをやるということは制度的に大きな問題というものを残すから、別途にお考えになるというお気持ちがあるのかどうか、それが第一点。  第二点は、六十歳から六十五歳までの要するに掛金を掛ける期間、これを延長なさるということも、これもそのとおりにというふうに承っていいわけですね。
  15. 渡部恒三

    渡部国務大臣 はい。
  16. 山本政弘

    山本(政)分科員 じゃ、その第一点の方は。
  17. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今回の改正によって別途六十歳以後六十五歳に達するまでの任意加入制度を設けて、空期間でまず老齢年金につないで、そして今度金額をできるだけ上にするためには六十歳から六十五歳まで入っていただくという特別の配慮をしたわけでありますが、しかしそれによって、中国残留孤児の皆さんの場合は年金制度としては全体の問題ですからこれがぎりぎり精いっぱいだと思いますけれども、中国残留孤児の場合はその他の政策上の問題がありますから、今御承知のように、帰国孤児の皆さんには定着センターをつくってそこで日本語を覚えていただいたり、日本の生活慣習を覚えていただいたりして、できるだけ自立できるように世の中に出ていただけるようなお手伝いをし、また、どうしても三十八年のブランクという中でなかなか生活できない方については、それなりの政府としての御援助を申し上げてまいりたいと思います。
  18. 山本政弘

    山本(政)分科員 援護局の方、いらっしゃいますか。――残留孤児という場合に、その孤児というのは、年齢的に一体敗戦当時幾つぐらいの人を孤児と言っておるわけなんですか。
  19. 入江慧

    ○入江政府委員 終戦時において十三蔵未満の者を一応孤児というふうに考えております。
  20. 山本政弘

    山本(政)分科員 十三歳未満ですか。
  21. 入江慧

    ○入江政府委員 ですから十二歳以下でございます。
  22. 山本政弘

    山本(政)分科員 そうすると、仮に十三歳未満でも十二歳以下でもいいのですが、それから戦後三十九年たっているわけですね。そうすると、孤児と言われる人の最年長という人は今五十一歳か五十二歳、とにかく五十歳を超えているわけですね。
  23. 入江慧

    ○入江政府委員 足し算すればそういうことになりますが、現実に百六十九名の孤児の方がこちらへ永住帰国しておりますが、その中の五十歳以上というのは一名おりますが、大多数の人間は四十歳から四十二、三歳というところに集中しております。
  24. 山本政弘

    山本(政)分科員 大多数の人が四十歳代だとして、いずれにしてもその人たちが保険料を掛ける、そして六十歳から六十五歳まで五年間延長されるということで、これは厚生省からの資料としていただいたわけでありますけれども、帰国者の年金額でありますけれども、帰国時の年齢が、昭和六十一年四月とした場合に四十歳である場合に年金額の月額が幾らになるか、五十九年度の価格で六十五歳までに任意加入した場合に四十歳の人たちは三万一千二百五十円です。五十歳の人で二万二千五十八円。六十歳の人でちょうど一万円。大臣生活保護費は今幾らでしょう。生活保護費よりはるかに、ほぼ半分くらいの金額ではないだろうかと私は思うのですよ。それから老齢福祉年金は幾らか。これとそんなに変わらぬのじゃないでしょうか。
  25. 渡部恒三

    渡部国務大臣 二万五千百円です。
  26. 山本政弘

    山本(政)分科員 そうしますと、大臣のおっしゃった戦争犠牲者に対する対策推進というふうにこれはいえるのだろうかどうだろうか、話がもとに戻りますけれども。
  27. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今お話しのように、これは確かに基礎年金五万円というところにも到達しないわけでありますし、現在の老齢福祉年金は二万五千百円ですから、これは今予想される金額で生活が保障されるということには残念ながらならないと思います。ですから私が先ほど申し上げたように、中国残留孤児の皆さんが日本に帰国されるという場合、恐らく何千人という限られた人数ですから、その人たちに対する対策は別途、これは当然戦後処理の対策として、さっき私が申し上げましたようにこれは戦争犠牲者でありますから、その対策はその時点で講じられる、こう考えております。
  28. 山本政弘

    山本(政)分科員 一九八六年に年金の一元化をやると、そのときに基礎年金は五万円だ、こうなりますね。そうですね。そうすると、今私が金額を四十歳、五十歳、六十歳と申し上げましたけれども、その間には格差がある、その格差に対してどういうふうな対応をなされるのか。先ほどちょっと気にかかったのですけれども、センターをおつくりになったとか日本語を教えるということは別の次元の問題なのです。私が今お伺いしているのは年金の問題ですから、年金の問題について一体どういうふうな対応をお考えになっているのか、あるいはこれからお考えになろうとなすっているのか、あるいは何か具体的にお考えになっている点があるのだったらそれをお聞かせいただきたい。もしお考えがなければひとつ新たな提案をお考え願いたい、私は私なりにこう思って実は質問しているのですけれども、いかがでしょう。
  29. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今私どもの援護施策として当面することは、中国に残留している孤児の皆さんの肉親捜しを一日も早く完了させるようにこれを進め、またその人たちのそれぞれの御意見をお聞きし、帰国希望の皆さんには自分の母国に帰国できるように計らっていったり、あるいは今日まで戦後三十八年間育ててくれた養父母に対する感謝の道を開いていくとか、これが当面の援護施策でありまして、その後の老後保障というような問題は、これはまた別途に将来にわたって検討されていくべきものと思います。
  30. 山本政弘

    山本(政)分科員 私は、国交回復の翌年から実は帰国の問題に取り組んできたのです。そのときから言い続けてきたのは、一つは言葉の問題、一つは職業の問題、一つは住宅の問題、それから要するに日本の習慣に早くなれさせるというようなことで、これは当然その当時予想されたことなんですね。それからもう十年たって、今ようやく所沢にセンターができた。第一次の帰国者が来るということになったときからそういう十分な対応というものが考えられていい、私はこう思うのです。あえて申し上げますけれども、厚生省対策、それから各省の対策というのは後追いになっておるのではないか。そうすると、年金についても今から帰国者の老後についての考えというものをきちんとして、そして対策というものを立てておかないと間に合わない、そのときになって間に合わないというような感じもするわけです。だからあえてそのことをお伺いしているわけなんです。  例えば、沖縄の復帰の問題のときには過去勤務債務というのがありましたね。そのときは、復帰というものが予想されて沖縄では年金制度がつくられておった。しかし、沖縄の年金制度と日本の国民年金法、この間に九年間なら九年間の空白があった。したがってそれをどうするかという問題があった場合に、三分の一を政府が補助をして、そして本土側に右へ倣えをした、こういう事実があるのです。とすると、今度の帰国者の問題についても、制度としては私は大臣のおっしゃることはわかるけれども、別に何かその人たちに対する特別立法なり何なりというものは考えられないものだろうかどうだろうか、そう思うのです。制度制度、しかし帰国者については日本人なんですね、そして国の責任によって犠牲をこうむった人なんですから、そういう方法が考えられないものだろうかと私は思うのですよ。どうでしょう。
  31. 渡部恒三

    渡部国務大臣 政府委員からちょっと……。
  32. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先ほど大臣が答弁されましたように、年金制度としてこれを処理するにはおのずから限界があるのではないか、資格期間に結びつけるということ、この辺が精いっぱいではないか、こういうことでございます。  沖縄の特例があったことも事実でございますし、それから、先ほど先生も御引用になりました十年年金、五年年金というものもございますけれども、これはいずれも過去の経過的な措置であったり、さらには琉球政府が立法したものを本土政府が引き継いだというようなことでございまして、いずれも経過的な措置でございますので、これをもって中国残留孤児問題にふさわしい例として取り上げることが適当かどうかということにつきましては、いささか疑問を持つということでございます。
  33. 山本政弘

    山本(政)分科員 実は大変偶然だったのですけれども、けさ電話をもらったのです。極めて短い時間だったから詳しいことはよくわからなかったのですが、中国から帰ってきた人なんです。名前を申し上げてもいいのですが、カケガワさんという人です。昭和三十三年に帰国をして、三十五年から三十九年に勤めたわけですね。厚生年金をもらっているのです。そして五十年に肉親に再会をして、五十一年の三月二十五日に国籍を取得された。詳しくはわかりませんが、僕も聞く時間がなかったのですけれども、四月一日に就籍をした、こう言のです。三十九年から五十一年の間ブランクになっているのですが、さかのぼって十万円を払った、それも三回の分割払いで払って、今は年金をもらえる資格を取ることができました、こう言っているのですが、沖縄の話を出したのは実はそういうことで私は出したのです。だから、そういう法的な措置というものがとれないものだろうか。なるほど審議官のおっしゃるように、制度的な問題というものがあるからというお話はそれなりに私は理解ができますけれども、これは特殊な例ではないだろうか。ただ、あえて言いますけれども、その特殊な例というものを認めると制度が大変煩雑になり混乱をするということは理解できますよ。しかし同時に、この人たちは何といったって特別の例で、これは恐らくこの席にいらっしゃる方々は何人も否定しないだろうと思うのですが、その辺は再度お伺いいたしますけれども何ともなりませんか。
  34. 古賀章介

    ○古賀政府委員 中国残留孤児問題だけにとどまらなくなるのではないか、やはり海外からの帰国者全般の問題として処理せざるを得ないのではないか、そうなりますと恒久的な措置ということになるわけでございますので、海外に居住しているさまざまな方々の帰国時の多様な年齢に応じて年金額の優遇措置を講じなければならない、こういうことになると思います。  先生は、そういう海外からの帰国者全部ということではなくて、中国残留孤児については特別に考えられないかという御指摘でございますけれども、私どもはやはり、個別の事情というものを年金制度に持ち込むことはなかなか困難である、したがって海外からの帰国者全般に及ばざるを得なくなる、それは恒久的な措置にならざるを得ない、それは社会保険方式をとる以上は困難である、こういうことになると考えております。
  35. 山本政弘

    山本(政)分科員 要するに社会保険の原則というものがある、だからそれを中国残留孤児の問題に適用すると全般的に制度全体が難しくなる、こう言いたいわけでしょう。  では、ひとつ大臣に申し上げたいのですけれども、どうですか、別に切り離して基金か何かつくって、援護年金とかなんとかという名称でもいいのですよ、そして救済をするという方法はできませんか。例えば、センターなどでもそうだったのでしょうけれども、国が半分出す、民間も半分出す、そして帰国者にも保険料なら保険料というものを出してもらうというようなことで運営をしていくことができないだろうか。基礎年金は五万円、しかし帰国者については今申し上げたように仮に四十歳の人だって三万一千二百五十円しかもらえないということだったら、これはどうも納得がいかぬ、僕はこう思うのですけれども、そういう新たなることが考えられませんか、また考えられる余地はありませんか。
  36. 入江慧

    ○入江政府委員 御存じのように、私どもがやっております援護措置と申しますのは、戦死傷によりまして稼得能力を失った者に対する援護でありますとか、あるいは引揚者が円滑に帰還する場合のそれに関する措置ということになっておりまして、先ほど大臣から申し上げましたように、引揚者の老後保障の観点からの措置というのは、援護措置としてはちょっと枠を超えるのじゃないかというふうに私ども考えております。
  37. 山本政弘

    山本(政)分科員 援護というものの概念といいますか、そういうものを少し広く解釈できませんかね。あなた方は、センターをつくって風俗習慣をなれさせるということだけが援護だというふうにおとりにならないで、特別な条件のもとに三十数年間捨てておかれた人たちに対して何かするという気はありませんか。そうしなければ、その人たち年金は死ぬまで格差のついたまま終わってしまうということになるわけでしょう。僕は、そういうことが中曽根総理の言う戦後の政治の見直しなんでしょうかと聞きたいわけです、大臣
  38. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今それぞれから答弁がありましたように、年金制度にはおのずから年金制度としての限界がありますし、それから援護施策としては、これは与えられたその責務の枠があるわけでありますから、今のような答弁を政府委員からいたしたわけでありますけれども、これは政治という幅広い立場で考えれば、これは、悲惨な戦争の中で取り残されて三十八年間苦労してきた残留孤児の皆さん方を、国が今帰国する意思のある方については帰国するようにお勧めして、そういう施策をとっておるのでありますから、その人たちの将来にわたっての生活というものも、こういうものの枠を超えて、そういう人たちに対してこれからどうしていくかということは、幅広い大きな政治の立場で検討していかなければならないと思います。  今、山本分科員から御提案のあったことも、これは一つのそういう提案として頭の中に入れて、今後幅広い立場で、残留帰国孤児の皆さん方が安心して帰ってこられるような施策を講ずるように検討をしてまいりたいと思います。
  39. 山本政弘

    山本(政)分科員 私はこれで終わりますけれども、つまり制度上の問題だ、こうおっしゃっておるけれども、その制度上の問題ということは恐らく、これは私の推測でありますし、その推測は間違ってないと思うのですが、財政の問題に関連しているのだろうと思うのです。要するにこれをやれば在日の外国人の方々にどういうふうになるかということで、制度上の問題は大変大きな金額になってくるだろうという財政の問題だろうと思うのです。だから難しいのだ、底をたたけばそうなってくるのだろうと思うのですね。だったら、制度上の問題と切り離しでもいいから何か別途の措置を講じてほしい、またそうするのが政府の責任じゃないだろうか、こう申し上げたいのです。ぜひひとつお考えいただきたいと思います。  終わります。
  40. 大村襄治

    大村主査 これにて山本政弘君の質疑は終了いたしました。  次に、池端清一君。
  41. 池端清一

    池端分科員 私は、世に三船遭難事件と言われておりますものの一つ、泰東丸の捜索活動と遺骨収集問題についてお尋ねをしたいと思います。  昭和二十年八月十五日の敗戦の日から一週間後の八月二十二日、樺太(サハリン)大泊港、現在のコルサコフ港から小樽港へ向かう途中の引揚船泰東丸が、故国を目前にいたしまして、北海道の留萌管内の小平町沖で、国籍不明の潜水艦によって砲撃を受け、沈没をいたしました。  乗員七百八十人のうち六百六十七人が死亡する、しかもその大半が婦人やいたいけない子供たちであった、こういう痛ましい終戦後の遭難事件が起きたわけでございます。  本来、敗戦後でございますし、このような事件は起こり得ることがないはずでありますのが起こった。しかも国籍不明という、まことになぞに包まれた事件でございまして、私はまさに痛恨きわまりない遭難事件だと思うのであります。このほかにもいろいろ、泰東丸と同様に非戦闘員の方々が多く犠牲を受けたという例も多いと思うのであります。例えば、戦争末期に台湾海峡で撃沈されました阿波丸のケース、あるいは沖縄からの疎開学童を乗せて沈んだ対馬丸のケースといった多くのケースがございますが、この泰東丸と同じように今なお海底に眠る非戦闘員の数はかなりの数に上るのではないか、こういうふうに思うわけであります。  そこで、まず最初にお尋ねしたいのは、このようにまだ未確認のままに海底に眠っておられる非戦闘員の数は一体どの程度であるのか、その数字はどのように厚生省としては推定をされているのか。まず、その点を最初にお尋ねをしたいと思うのであります。
  42. 入江慧

    ○入江政府委員 私どもが把握しておる限りで申し上げますと、今お話しのありました樺太の三船を含めまして、二十七隻に乗っておりました非戦闘員が海上戦没者ということになっておりまして、その戦没者の概数を申し上げますと約六千八百名ということになります。
  43. 池端清一

    池端分科員 戦闘員、非戦闘員合わせて通常約三十万人の方が海没されているのではないかというような話も聞いておるわけでありますが、厚生省としては、このような犠牲者の確認なり遺骨収集の問題に今日までどのように取り組まれてきたのか、その対策をどう進めてこられたのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  44. 入江慧

    ○入江政府委員 政府派遣の遺骨収集の状況について申し上げますと、昭和二十七年度から政府による遺骨収集が始まったわけでございますが、最近におきましては、五十一年度から毎年おおむね五カ所程度について遺骨収集実施しております。  それで、遺骨送還の状況を申し上げますと、海外の戦没者概数、私どもが把握しておりますのは約二百四十万人、その中で遺骨が送還されたのが約百二十万柱ということで、残存遺骨は百二十万柱あるわけでございますが、この中には、今お話しがありましたように三十万程度の海没遺骨、そのほか特定地域にある遺骨で、現状で言えば収集不可能地域にある遺骨等もございますので、今残っております収集可能な遺骨は約五十万柱というふうに私どもは考えております。
  45. 池端清一

    池端分科員 それで、具体的に昭和五十九年度はどのような個所で遺骨収集の作業を進められようとしておるのか、その構想をお聞かせいただきたいと思います。
  46. 入江慧

    ○入江政府委員 ただいま御審議願っております五十九年度予算案で予定しております遺骨収集地域は、具体的に申し上げますとマリアナ・トラック諸島、フィリピン、ソロモン諸島、沖縄、硫黄島の五カ所になっております。
  47. 池端清一

    池端分科員 そこで、本件泰東丸に関して申し上げたいと思うのでありますが、去年の七月に全国樺太連盟、あるいはまた泰東丸の探索を進める会といったようなボランティア活動によりまして、実は沈没船が発見をされたわけでございます。こういった民間の手によって沈没船が確認をされた。私は、本来こういう問題は国の責任においてなされなければならないという性格のものだと思うのでありますが、それが民間の手によって行われているということはまことに遺憾だ、こういうふうに思うわけであります。もちろんこれまで国がこの問題について全く何にもしなかった、そういう極論を吐くつもりはございません。現に昭和四十九年から五十四年にかけて数回にわたって捜索活動も国の責任においてしておることもございます。特に昭和五十二年には千五百万円の予算で九日間にわたって大規模な捜索活動もなされた。しかし、沈没船は見つかったけれども、それは泰東丸ではなくて、かつて台風で遭難をした大浦丸という船ではないかという疑いも出てきておるということで、結果的にはこの捜索活動は空振りに終わったわけでございます。そういう経緯もございますから、厚生省が慎重になるということは私も理解できないわけではございません。しかし、この海域で五百トン以上の船で沈没しているのは、今申し上げた大浦丸と泰東丸、この二隻だけだと言われておるわけであります。そうするならば、昨年の七月に発見をされましたこの沈没船は泰東丸であるという可能性が非常に強い、こう見なければならないと思うのであります。ですから私は、この際厚生省が、従来の消極的な態度を捨てて積極的に、国の責任でこの捜索活動並びに遺骨収集活動を行うべきではないか、こう思うのでありますが、これについてはどうでしょうか。
  48. 入江慧

    ○入江政府委員 樺太から引き揚げて沈没しました三船のうち、小笠原丸と第二新興丸については遺骨収集が行われたわけでございまして、残る泰東丸につきましては、私どもも従来からその沈没船がどこにあるかということは鋭意探索を行ってきたわけでございまして、その経過は今御指摘のとおり、四十九年以来三回ほどやっておりますし、五十二年には海に潜ってやったわけでございますが、不幸にして船が違ったということでございました。このたび、財団法人の全国樺太連盟が昨年の八月、独自に海に潜っていろいろ調査をされたわけですが、その際の私どもが承知しております結果は、要するに船の名前が書いてある銘板とか、そのほか具体的に泰東丸であることを実証するような物的証拠は出なかった。ただ、その際に引き揚げたいろいろな遺留物から、泰東丸であるということが状況証拠から確認できるのではないかと言っておられるわけでございます。しかしながら、私どもとしましては、過去に一千五百万ほど使ってやったという経緯もありまして、確かに慎重にならざるを得ないということでございまして、現在のところ、連盟が昨年の夏の探索に伴って引き揚げましたいろいろな遺留物、こういうような資料を中心に、泰東丸と関係の深い方、例えば機関士、乗務員の方でありますとか船舶の専門家、あるいは造船会社、そういった方々の意見を聞きながら、また各方面から関係資料を得まして、現在確認作業も鋭意やっておりますので、その結果がわかりますまでもう少し時間をいただきたいというふうに考えます。
  49. 池端清一

    池端分科員 ただいま申し上げました去年七月に発見をされた沈没船、これが、いまお話しもございましたが、その後の潜水活動によって泰東丸であるという状況証拠はそろっているのではないか、私はこう思うわけであります。  例えば、昭和二十年八月三十一日に、この泰東丸所属の東亜海運株式会社の一等航海士の大脇さんが遭難後十日後に出されました事故報告書、これによりましても、沈没していた船の位置とこの一等航海士の方が出された報告書の場所が極めて近い。これは厚生省からいただいた資料でもそのことがはっきり裏づけられているわけです。さらに沈没船の船体構造、これは時間がございませんからいろいろ申し上げませんけれども、戦争中につくられた船であって、その船体構造も泰東丸に非常に酷似しているということ。あるいは、この沈没船から回収された回収品は約八十点ほどございますね。この八十点の中では、例えば未使用の機関砲弾あるいは蓄電池、それから新潟港で大量に積み込んだと言われている胴づきかっぱが多数発見されている。このかっぱというのは私は非常に重要な資料になるのではないかと思うのであります。ここにも新聞の写真がございますが、このかっぱというのは、実はこの泰東丸は、当初、千島を守備しておった部隊を撤退させるために千島へ向かう予定であった。そのためには、酷寒の地、千島で兵士を海岸から船に乗り込ませるためには、どうしてもこのような胴づきかっぱが必要であるということで、新潟で大量にこのかっぱを積み込んだわけです。ところが、八月五日でございますか、小樽港へ入って急に、千島へ向かうのではなしに樺太へ邦人引き揚げのため。向かえという軍命令が出て、そのかっぱを積み込んだまま樺太に向かった。これは当時の乗組員の証言で明らかなところですね。このかっぱが大量に発見されたということは、動かし得ない物的証拠ではないかと思うわけであります。  ただいま船名や船体番号は確認されなかったというお話でございますが、これらのいろいろな資料は、厚生省にもこの資料は行っていると思うのでありますが、当然泰東丸と判断できる有力な物的証拠で、しかもそれは生存乗組員の証言と全く一致するものばかりでございますので、これはもう泰東丸に間違いないという確信を私は深めているわけであります。そういう意味からも、重ねて申し上げるようでありますが、従来の消極的な姿勢を改めてぜひ前向きにこの問題に取り組み、積極的に捜索あるいは遺骨収集に当たるべきだと考えますが、お答えをいただきたいと思います。
  50. 入江慧

    ○入江政府委員 今御指摘になりましたいろいろな回収品、私どももそのとおり聞いております。  しかしながら、私どもは現在、例えば今のかっぱでございますけれども、そのかっぱも製造した工場というのを調査で把握できたわけでございます。そのかっぱに「大和」という商標がついていたそうで、つくったところまでは追跡できたのですが、そのつくったところから泰東丸に渡ったというところが確認できないというような状況でございます。そういうことで、回収品についてこちらもいろいろと追跡調査をやっておるわけです。  その中で今私どもが一番力を入れておりますのは、この泰東丸は戦時標準船の2E型という形に属するわけでございますが、泰東丸と同じ形の船が当時三百十六隻つくられております。したがいまして、その三百十六隻がその後どういう運命をたどったかということを今一隻一隻つぶしておるわけでございます。その三百十六隻のうち、樺太連盟が回収した中には耐火れんががございまして、その耐火れんがの製造月日が十九年四月となっておりますので、その船は少なくとも十九年四月以降につくられたものであろうという推定をいたしまして、その三百十六隻のうちから十九年四月以降の船を絞りますと二百七隻になります。その二百七隻について、それがいつ廃船になったか、どこで沈没したかという船跡、要するに船の運命を一つずつつぶしていっておりまして、現在百八十九隻、約九割までについてはそれぞれの船がどうなったかということを把握いたしました。したがいまして、あと十八隻残っておるわけでございます。その十八隻がどうなっているか、今鋭意詰めておるわけでございまして、できれば四月くらいにはめどをつけたいということでございます。少なくとも、今までの百八十九隻の船跡調査を含めまして泰東丸でないという証拠は出ておりませんが、あと残るところ十八隻でございますので、もう少し時間をいただきたいということでございます。
  51. 池端清一

    池端分科員 三百十六隻のうち二百七隻が大体同じようなあれだということですね。そのうちの百八十九隻が現在までに把握できて、あと十八隻残っている、その確認の作業を急いでいる、その確認の作業は四月くらいまでにめどをつけたい、こういうことでございますね。ぜひこの作業を急いでいただきたいと思うのでありますが、この作業で泰東丸であるというある程度の確証が得られたならば、五十九年度において、国の責任においてこの確認調査と遺骨収集の作業を進めるというお気持ちが厚生省としてはおありになるのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  52. 入江慧

    ○入江政府委員 今申し上げましたように、確認調査の結果泰東丸であるということが確認された場合、あるいは確認されなくてもかなり合理的な根拠によって推定されたという場合に次のステップに移ることになるわけでございますが、その際にすぐ遺骨収集にかかるかどうかということにつきましては、この船の沈んだ状況等につきましては、いろいろ調査した結果によりますと、かなり船体が大きく破損しておるということがございます。しかも沈んでおる地域が非常に潮流の激しいところである。また、その当時の一等航海士なり機関士の話によりますと、沈むときには、さっきおっしゃいました七百名余の方々は全部甲板におられたということでございまして、その証言によりますと、船内や船底に遺骨が残存しているという可能性は非常に少ないということでございまして、そういう推定ができた際に、直ちに遺骨収集に取り組むということには問題があると考えております。お聞きになっていると思いますけれども、沈んでいる場所が六十メートルくらいの海底でございます。六十メートルといいますと、要するに潜っていった人間が作業する肉体的な限界の深さだそうでございますので、事前に沈んでおります船の状況を調査いたしまして、残存遺骨の有無あるいは収集の技術的可能性も考えていかなければならないのじゃないかというふうに現在考えておるわけでございます。どういうふうな方法で事前調査をするか、その時期等につきましては、たび重ねて繰り返して恐縮でございますけれども、その四月の結論が出るまで時間をいただきたいということでございます。
  53. 池端清一

    池端分科員 確かに船体の破損もかなり激しいようでございますし、作業も非常に困難な場所だというふうにお聞きもしております。しかし、一方遺族立場から考えますと、本当に留萌の故国を目前にしたところで沈没したわけでございますので、一日千秋の思いで遺骨収集を国が積極的に進めてくれるようにと願っているわけであります。そういうことでございますので、そういう厳しい困難な条件はあろうとも、国が国の責任においてこの問題に取り組むという姿勢を示してもらいたい。予算がないからどうのこうの、あるいは船名が確認されていないから手をつけるのはどうのこうのという姿勢ではなしに、もっと積極的に取り組んでもらいたい。ですから、いきなり遺骨収集ということには至らぬ場合もあると思います。したがって、十分な事前調査をするということも必要でありましょう。いろいろ技術的な問題もあるでしょう。しかし、一応の確証が得られたならば五十九年じゅうでもやるのだ、こういう決意を私は大臣からひとつお聞きをしたいと思うのであります。
  54. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も泰東丸の経過、事件を聞きまして、平和がよみがえったはずの戦争終結後にこのようなむごたらしい惨事が起こったことに、三十八年たった今なお憤りを感じますし、また、その遺族の皆さんの心情をおもんばかると大変同情を禁じ得ない、こういうものもありますので、今援護局長から答弁いたしましたように、これはおのずからその気持ちはみんな同じでございますから、これを実際実施に当たる場合には、技術的な限界あるいは物理的な限界、そういういろいろな障害がございますが、それらの障害をできるだけ乗り越えていかなければならない、これが遺族の心情に対する、その気持ちにこたえることであります。今援護局長から答弁いたしましたように、またこれは確認されておりませんので、できるだけ速やかに確認されるように努力をしてまいるとともに、それが泰東丸ということで確認された場合には、そういう遺族の皆さん方の気持ちにこたえるように善処をしてまいりたいと思います。
  55. 池端清一

    池端分科員 今大臣からもお話がありましたように、これは太平洋戦争の戦火がやんだ八月二十二日の出来事でございます。しかも、文字どおり祖国を目前にしてこの船が撃沈をされた。私は、犠牲者の無念の気持ち、あるいは遺族の皆さん方の胸中いかばかりか、こういうふうに思うわけでございまして、そういう意味でもこの問題の解決は急がなければならない、こう思うわけであります。全国樺太連盟は、ことしも七月に改めて独自の調査を行うということを決めたようでございます。したがって、これらの遺族の方々にとっては戦後はまだ終わっていない。いや、戦後は終わっていないというよりも戦争はまだ終わっていない、こういう状況にあるのではないか、こう思うわけであります。国の名のもとにおいて遂行された戦争、その犠牲者でございますので、これは何といっても国の責任というものにおいて捜索をし、遺骨収集に当たる、これが当然のことだと思うわけでございます。  最後に、もう時間もございませんが、重ねて大臣の決意のほどをお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。
  56. 渡部恒三

    渡部国務大臣 遺族の心情をしっかりと受けとめて、善処をしてまいりたいと思います。
  57. 池端清一

    池端分科員 終わります。ありがとうございました。
  58. 大村襄治

    大村主査 これにて池端清一君の質疑は終了いたしました。  次に、春田重昭君。
  59. 春田重昭

    春田分科員 最初に大臣に、健保改正の問題につきまして大臣の率直なる御見解をお伺いしたいと思います。  今回の健康保険の改正につきましては、五十九年から本人負担を一割、六十一年から二割、さらに高額の療養費自己負担の限度額を五万一千円から五万四千円に強化しようという案を出しておるわけでございますけれども、今回の健保改正のいわゆる強化案というものが、今国会の空転の原因の一つにもなっているわけでございます。また、審議再開の糸口にもなったわけでございまして、その審議再開の糸口になった予算修正の項目の中では、この問題につきましては社労委員会の審議の結論を待って対処していく、こうなっておるわけでございますけれども、大臣の率直なるただいまの御心境をお伺いしたいと思います。
  60. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私が今国会に健保法の改正案を提出いたしましたのは、今日、国民の非常に大きな関心事である医療費の適正化、あるいは負担給付の公平、あるいは医療費の節減、あるいは制度間の格差、そして特に一番大事なことは、二十一世紀の将来の社会福祉の安定的な基盤をつくるために、現行の保険料率をこれ以上上げないように、国民負担が大きくならないようにするという、まさに医療改革の抜本的改正を求めておられた国民の世論にこたえて今回政府が提出した案が、これらの期待にこたえる最大、最善のものであるということで提出をいたしておりますが、当然今日、これらの法律は国会において審議せられ、国会の議決によってこれは生きていくものでありますから、今後社会労働委員会の審議において、我々の意図するところを国会議員の皆さん方に御理解が得られることを切に切に望んでおるところでございます。
  61. 春田重昭

    春田分科員 今回の改正国民負担はかなり大きくなるわけであって、医療改正が何も保険料を引き上げることによって抜本的であるわけじゃないわけであって、もっとほかにあると思うのです。  特に今回の改正案の中では、政府与党の自民党の中でも、例えば六十一年の二割の負担というのは無理であるとか、また高額の療養費の限度額、これについても据え置こうとか、そういった意見もあるわけです。また、医師会の方も反対であるし、国民の大半の方といいますか、ほとんどの方がこの改正案については反対の大合唱をしているわけです。そういった面で私は、今後社労委員会の場に移してその審議を待つというわけでございますけれども、大臣としましても、こうしたいわゆる背景を十分考慮しながら、改正反対の声を最大限に生かす大臣であってもらいたい。渡部大臣は、非常にかたい信念の大臣ということで有名でございますから、私は、こうした国民の声を吸い上げるかたい信念の大臣であっていただきたい、こう要請するわけでございますし、注文するわけでございますので、委員会審議の場において、いわゆる政府案だけを最大限に尊重しないで、どうか国民の声を尊重する大臣になっていただきたい、こう要望しておきます。  次に、新薬及び後発品の同等性試験のための健康人の臨床治験という問題があるわけでございまして、最近、後発品の同等性試験が五十五年の法改正で盛んになっておるわけでございます。このいわゆる治験医療受託機関ですか、こうした研究所といいますか会社というものが違法であるということで新聞に報道されておりますけれども、厚生省としてはどう対応なさったのか、御見解をいただきたいと思うのです。
  62. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話のありましたのは、メディセル研究所であろうかと存じますが、御指摘がございましたように、医療法に基づく所要の手続がとられておりませんでしたので、都におきましては、これに対しまして臨床試験の停止など必要な指導を行ったところでございます。その後、この研究所とは別に、都の指導に従いまして、医療法に基づく診療所の開設がなされております。
  63. 春田重昭

    春田分科員 こうした受託治験機関ですか、これは全国にどれくらいあるのですか。新聞では東京と大阪の二機関という形で報道されておりましたけれども、それだけなのか。  また、この受託治験機関に対してボランティアを送り込む業者も存在するやに伺うわけでございますけれども、こういった業者は全国に何社ぐらいあるのか、お伺いしたいと思うのです。
  64. 正木馨

    ○正木政府委員 医薬品の臨床試験につきましては、国公立の大学病院あるいは民間病院あるいは製薬企業内の診療所等で行われておりますが、そのほかに、先生のおっしゃいますように、いわゆる受託研究機関として民間の業者に委託しているものもございます。正確にはつかんでおりませんが、今のメディセルのような会社が数社あるというふうに私は聞いております。  それから、健康人のボランティアをあっせんする業者というのもあるようでございますが、正確にはその辺はつかんでおりません。
  65. 春田重昭

    春田分科員 数社というのは抽象的ですけれども、何社ぐらいなんですか、何社ぐらいつかんでいるのですか。
  66. 正木馨

    ○正木政府委員 東京のメディセルと大阪にもう一社ございます。
  67. 春田重昭

    春田分科員 先ほど言ったように、こうした民間の受託治験機関というのは、後発品の同等性試験を行う必要性が出てきてから、当然病院や大学や大手製薬の研究機関等でやっているわけでございますけれども、それでも足らないということでどんどん民風に流れていく傾向が強くなってくるのではないかと思うのです。国はこうした民間のいわゆる受託治験機関ですか、これを今後どういう形で見ていくのか、育成していくのか、いや余り好ましくないと思っているのか、どういうお考えをお持ちなんですか。
  68. 正木馨

    ○正木政府委員 医薬品の開発に当たりましての臨床試験の重要性は改めて申すまでもないわけでございますが、臨床試験を行うに当たってのポイントは二つあると思います。一つは、臨床試験のデータの信頼性の確保と申しますか、公正で適格なものであるということが一つ。それから、被験者の健康、人権の保護、そこに間違いのないように、その二点があると思います。  そこで、先生御案内のように、五十四年の法改正で薬事法の一部が改正されまして、法律の規定で治験の取り扱いが明文化されました。それに基づいて施行規則でもいろいろな規定を設けておるわけでございますが、私どもは、先ほど申しましたその二点が確実に実施をされるようにということを主眼に考えておりまして、やり方としては、企業内で行われる場合もございましょうし、あるいは大学、国立病院等に委託して行われる場合もありましょうし、あるいは営業の形で行われるのでありましても・そういった点がきちっと確保されるということが最重点ではないかというふうに思っております。
  69. 春田重昭

    春田分科員 私は、大阪の研究機関をこの前視察してきたわけでございますけれども、設備、またいろいろな対応等においては、私の見る限りにおいては、十分そういう環境は整っているということを感じてきたわけでございまして、むしろ病院や大学やいわゆる製薬会社の研究所みたいなのが灯台もと暗しで、そうした同意書の問題とかいろいろありますけれども、案外ルーズじゃないかという感じを持ったわけでございます。当然民間のそうした受託機関が国の流れによって必要になってくるわけでございますので、そうした十分な設備があれば今後国としても育成していく、そういう形で見守っていくという形でしていただきたいことを要望しておきたいと思います。  さらに、この東京のメディセル研究所が発端となりましてこうした臨床治験の問題が浮き彫りになってきまして、病院や大学やメーカーの研究所、民間のそうした機関に対しましていわゆる基準が必要じゃないか、規制が必要じゃないか、こういうことで、現在厚生省ではGCPの検討委員会等をお設けになって、こうした基準づくりをなさっているみたいに伺っているわけでございますけれども、いかなる内容なのか、今後のスケジュール、いつごろ発表し、いつごろ実施していくのか、そういった面でわかればお答えいただきたいと思うのです。
  70. 正木馨

    ○正木政府委員 先生おっしゃいましたとおりでございまして、現在厚生省の中に新薬の臨床試験に関する専門家会議というのを設けまして、その座長は日本医学会の会長の熊谷先生でございますが、この会議の中の重要テーマの一つといたしまして、GCPの分科会を設けまして、臨床試験の実施に関する基準について鋭意御審議をいただいております。座長は医療センターの小山名誉院長で、この専門家会議のメンバーのほかに外の学識者の方々にもお集まりいただいて、もう既にこの分科会だけで十回ぐらい御論議をいただいております。  その会議で検討しておりますのは、要するに、先ほど申しましたような被験者の人権、それから健康の保護といったような観点、それからもう一つは、臨床試験が公正適格に行われるようにということで、内部委員会をどう設置していくかとか、もうかなり具体的な問題について御論議をいただいております。私どもとしてはできるだけ早くいただきたいというふうに思っておりますが、今のところいつということはまだ申し上げる段階には至っておりませんが、できるだけ早く案をおまとめいただいて、これは各医療関係者等に関係いたしますので、そういった方面の御意見も十分聞いて・できるだけ早く実施に移したいというふうに考えております。
  71. 春田重昭

    春田分科員 夏ごろ大体案が発表できるのじゃないかという形で報道されている面もあるわけでございますけれども、この点どうですか。
  72. 正木馨

    ○正木政府委員 確かにそういう新聞報道ございましたが、私どもが会議の進行状況を見まして、もう少し時間をいただく必要があるのではないかというふうに思っております。
  73. 春田重昭

    春田分科員 さらに、民間のいわゆる受託機関はこの基準の中には入っていないような報道もされているわけでございますけれども、その民間のいわゆる受託機関はこの基準づくりの中では検討されているのですか。
  74. 正木馨

    ○正木政府委員 もちろん、委託先がどうなるかといった点も含めて議論をされております。
  75. 春田重昭

    春田分科員 今、基準づくりを急いでいるということでございますけれども、まだまだ時間がかかりそうでございます。当然この基準をつくるまでには、そういった治験のいわゆる臨床試験がどんどん行われているわけでございますから、現在野放しと言ったら悪いですけれども、そうした基準がないわけですから危険な面もあるわけです。そういった面でも、一つの案といいますか一つの基準ができるまでは、大臣なり局長なり、また次官でもいいですけれども、そういう通達を出して、一つのそうしたいわゆる統制をする必要があるのではないかと思うのですけれども、どうでしょうか。
  76. 正木馨

    ○正木政府委員 先ほども申し上げたかと思いますが、五十四年の法改正で薬事法に治験の扱いについての規定が入り、それに基づきまして薬事法施行規則で「治験の依頼の基準」が定められております。先生御承知のとおりでございます。この「治験の依頼の基準」の中で、治験を行うに当たりましては被験者から同意をとるようにということもきちっと言っております。その他基準を定めておるわけでございまして、治験の依頼に当たって同意をとることはもちろん、それからいわゆる渡り歩きによる健康の問題というものも生ずるおそれがありますので、そういった点は十分チェックしてもらうようにということを私ども指導しておるつもりでございます。これからもGCPができるまでほっておくということじゃなくて、被験者の健康なり人権の保護といった点で支障のないように十分指導を徹底してまいりたいと思っております。
  77. 春田重昭

    春田分科員 どういう形で指導を徹底していくのですか。
  78. 正木馨

    ○正木政府委員 この指導につきましては、私ども、県の衛生部長会議、業務主管課長会議でもこの問題についての指示をいたしております。また同時に、これは製薬メーカーが申請を出す場合の治験データということでございますので、製薬団体等を通じましても、そういった点の徹底を図るようにということをこれまでもやっておりますし、さらに徹底をしてまいりたいと思っております。
  79. 春田重昭

    春田分科員 先ほども言ったように、大学とか病院が案外そうした面で手を抜いている点があるのじゃないかという意見もあるわけでございますから、そういった面も十分指導を徹底していただきたいと思いますので、要望しておきます。  さらに、GCPでは治験の審査委員会が設置されるように聞いているわけでございますけれども、どういう構成、どういうメンバーの方がここに入っているのか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  80. 正木馨

    ○正木政府委員 これも今、GCPの分科会で検討されているところでございますが、臨床試験を公正適格なもので信頼性を確保していくというためには、一人だけでやるということはいろいろ問題もあろうかと思います。  そこで、お医者さんであるとか看護婦さんであるとか臨床検査技師であるとか、いわばチームをつくりまして、お互いに目を光らせて間違いのないようにするということが必要だろうと言われております。そういった面で、どういう構成にするのか、どういった委員会組織にしたらいいのかということを、今せっかく御論議をいただいておるところでございます。
  81. 春田重昭

    春田分科員 人数は別として医療関係以外の第三者、例えば弁護士とか宗教家、こういった点はアメリカでも採用しているわけですね。大阪にある医療機関、ここでもそういう形で倫理委員会というようなものをつくって、弁護士や宗教家、また先生でも文科系の先生を入れるとか、そして中心には医療関係の先生を入れて構成している、そういった面もあるわけでございますから、これは倫理問題ですから、私は第三者も当然入れながら考える必要があるのじゃないかと思うのですけれども、局長、どうですか。
  82. 正木馨

    ○正木政府委員 これも、先生おっしゃるとおりの議論が分科会でも行われております。外国では人権問題も絡むということで、弁護士といいますか法律関係の方も入っておられるところもあるようでございます。そういった点も含めて検討しておるのですが、また一方の御意見におきましては、この委員会をつくるというのは、個人だけで臨床試験をやるのではなくて、複数でお互いに目を光らせながらきちっとやるというところに重点を置くべきで、臨床試験というのはあくまでも医学、薬学的な問題なので、そういった関係者が複数でやることをもって十分足りるのじゃないかという御議論もございます。また、一方において、先生おっしゃいますように、そういう法律専門家等も入れるべきじゃないかという御意見もございます。まだ御論議の段階でございます。十分今後検討を重ねていきたいと思っております。
  83. 春田重昭

    春田分科員 倫理の問題ですから、当然医学、薬学の先生以外でも、文化系の先生やそうした法曹関係の先生たちも入れながら構成していくことが必要じゃないか、こういう意見を持っておりますので、その点も考慮していただきたいと思うのです。  さらに、被験者でございますが、ボランティア、この年齢制限、また男女の別、女性でもいいのかという問題、こういった点はどうお考えになっていますか。
  84. 正木馨

    ○正木政府委員 健康人はどういった年齢なり性別なりでいくかという基準、明文化した規定は、率直に申してございません。しかし、臨床試験というのは新薬の場合のフェーズⅠ、第一相試験、それから後発品についての同等性試験をまず健康人にやるわけでございます。健康人にやるということから、年齢も中堅層で元気な方を中心にやってもらうということが当然なことと思っております。これまでのところも、そういった面で特に問題があるというようなことは、私ども聞いておらないところでございます。
  85. 春田重昭

    春田分科員 女性はどうですか、
  86. 正木馨

    ○正木政府委員 これは、物によっては女性でなければ臨床試験ができない場合もあるいはあるかとも思いますが、事柄の性質からしまして、できるだけ若い世代の男性中心でこういったものをやっていくことが当然ではないかと思っております。
  87. 春田重昭

    春田分科員 最後に、大臣の御見解をお伺いしたいわけでございますが、いずれにいたしましても薬の臨床試験というのは、先発品はもちろんのこと、後発品にも必要性が課せられたわけでございますから、これからどんどんふえてくるわけでございます。そういった面で被験者、ボランティアが、ある薬については何千名という必要性も出てくるわけですよ。先ほどもちょっと話が出ましたけれども、あるボランティアが業者間を渡り歩いて、一回当たり二万四、五千円もらえるみたいでございますけれども、渡り歩いていくという倫理に反するような行為もあるわけでございますから、私は、早急にGCPの内容というものをつくって発表し、実施していくべきだと思うのです。今急いでいるというわけでございますけれども、ことし内に間に合うのか、年度内に間に合うのか。大臣、これは本当に大変なのです。そういう点で大臣はどんなお考えを持っているのですか。ただ急ぐだけじゃだめですよ。明確に言ってください。
  88. 渡部恒三

    渡部国務大臣 春田委員御指摘のように、臨床試験を行う場合、公正適格に行われること、また試験の対象になる人々の人権と健康が保護されるように万全を期していかなければならないことは当然のことであります。御指摘の御意見等も十分尊重しながら、何とか年内を目途にしてこれを取りまとめるように努力してまいりたいと思っております。
  89. 春田重昭

    春田分科員 時間があと五分ということでございますが、腎炎ネフローゼの問題について最後にお伺いしたいと思います。  この腎炎ネフローゼは、昭和四十二年ぐらいから急速に低学年の間から患者がふえてきた、そういう形で今日まできておるわけでございますが、もう十数年たっている。ところが、まだ原因が明確でない、また患者に対する治療も遅々として進んでいないわけですよ。この腎炎ネフローゼ、特にネフローゼの問題につきましては難病の中に入っておりますから、遅々として進まないのは、何といいますか、複雑性もあると思うのですけれども、国の対策がもう一歩突っ込んでいれば前進しているのじゃないかという感もあるわけです。  例えば、この原因究明から患者の治療をするという一貫した施策がとられていないという面があるのです。例えば研究は国立の医療センターで行う、治療は国立の佐倉病院で行う、また国立の小児病院の研究所の一角で行う、また病院内でも十四歳までは小児科で治療し、十五歳以上になったら内科の方に移される、追跡調査ができないという形になるわけですね。また、お医者さんによっても、薬の与え方とか薬の種類が違うという面もあるというのですね。また、尿検査を厚生省の場合は一歳半と三歳、文部省においては毎学年一回やっておりますけれども、この尿検査においてもぺーパーテストで非常に感度が悪いという意見が、この患者団体からも出ているわけですよ。そういった面で、何とかこの国立の腎センターをつくっていただきたい、それに似たような施設をつくっていただきたいという要望が再々されているわけです。ところが国は、予算の面でなかなか難しいとか、現在やっているあれで十分ですとかいうお答えになっているわけです。しかし、そうしたいわゆる原因究明がされてない、治療が進んでいないという点を考えて、私は、国立腎センターないしそれに似通ったセンターをつくっていただきたい。これが第一点です。  時間がございませんからもう一点だけ申し上げますと、患者の方たちは、入院の場合は公費負担でございますが、通院の場合は公費負担になっていないわけですよ。大臣、大半とは言いませんけれども、地方自治体では通院患者も公費負担しているわけです。年齢制限も解いているという地方自体もございます。難病の中で、例えば悪性の新生物とか糖尿病等については、入院はもちろんのこと、通院も見ているわけです。そういった面で、私は、この腎炎ネフローゼについても、通院の治療でも公費負担で一歩前進して見ていただきたい。  大臣、これやったら後世に残りますよ。この二点、あわせて御答弁をいただきたいと思うのです。最初局長が言って、大臣最後に言ってください。
  90. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 腎炎ネフローゼでございますけれども、お話にもございましたように、なかなか難しい病気でございますので、原因及び治療方法の研究を初めといたしまして、健康診査でもって早く発見をする、また、医療費につきましては公費で負担をする、そういう方策を多角的に今構じておるところでございます。お話にもございましたが、国立病院医療センターを腎疾患の基幹施設といたしまして、主としてこの慢性腎疾患の発生機序の研究を行っているところでございますけれども、今年の十月からは新たに国立小児病院に小児医療研究センターが発足することになっております。ここにおきましても、この治療の研究等大いに推進していきたいと考えております。今日のところ、そういういろいろな方面で多角的にやりますことを総合的にさらに推進する、こういう基本的な考えでございまして、一カ所で総合的なということは考えていないものであります。
  91. 吉原健二

    ○吉原政府委員 小児のネフローゼにつきましては、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象にしているわけでございますけれども、今先生お話ございましたように、現在は通院は対象にしておりません。入院だけを対象にしているわけでございます。改めて申し上げるまでもございませんが、もともとこの事業というのは、原因がはっきりしない、治療方法が確立していない、しかも医療費が相当かかる、そういう病気につきまして入院を基本として行っている制度でございます。  小児につきまして、現在九疾患を対象にしておりますけれども、例えば悪性新生物のように通院まで対象にしている疾病もございますけれども、なおぜんそくでありますとか腎疾患でありますとか心疾患、そういったものは入院に限っているわけでございまして、こういった財政状況のもとで通院にまで広げるということは、望ましいことではございますが、なかなか難しい面もあるということでいましばらく、何から手をつけていくか、優先順位等のことも考えまして今後検討させていただきたいと思います。
  92. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、それぞれの局長からお話がございましたが、ネフローゼ患者に対する対策は、原因、治療方法、これの研究がまず第一だろうと思います。さらに、我々のなすべきことは、早期発見のための健康診査の実施を行って、漏れないようにしていくことが極めて大事なことであります。さらに、今お話がありましたように、公費負担医療実施していくことで、今答弁したようなお話でありますが、これはできるだけ善処をしてまいりたいと思います。御提案のありました治療施設整備でありますが、これはいろいろ検討いたしまして、今日の情勢の中で、現在ある研究機関、施設等を有効に活用することによって御指摘の問題に対処できると考えておりますので、御了解をいただきたいと思います。
  93. 春田重昭

    春田分科員 終わりたいと思いますけれども、従来の見解から一歩も出ていないと私は思います。機会あるたびにこの問題をやっていきますから、厚生省ではひとつ前向きに検討していただきたいと要望しておきます。
  94. 大村襄治

    大村主査 これにて春田重昭君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。     〔主査退席、小杉主査代理着席〕
  95. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 はり、きゅう、マッサージ、大臣、これは日本の国ではかなり需要があるというか、今やもう大変普遍的なものになっているわけですが、その割に国の行政というのには乗らない。医療保険制度も、やがて法律審議をなされることでしょうが、どういうわけだろうかなと思って私は長年これを追及しておるんでございますが、さりとて、それでは日本の国民は、はり、きゅう、あんま、マッサージというものには余り世話にならぬかと言ったらそうじゃないんで、非常に不思議なんであります。大臣、あんまさんにかかったことありますか。
  96. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ございます。
  97. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 それで、限られた時間ですから幾つか質問をしていきたいと思うのでございますが、一体、これはどういうわけで行政に乗りにくいのだろうか、こういうことなんですが、まず担当官、これはどのくらいの組織、人員がいるだろうか。組織されてない方でもいいんですが、はり、きゅう、あんま、マッサージに従事されておる皆さん方が全国に何人くらいいるだろうかということと、それからもう一つは、片や行政側の窓口、そういったものの機構というか人員といったところを少し聞かしてくれませんか。
  98. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 あんま、はり、きゅう師、それぞれダブルで免許を持っておる者がありますので、実数ではございませんが、はり、きゅう師は約五万人、あんま、およそ八万人でございます。
  99. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そこで問題は、具体的に伺っていきましょう、局長、担当官でいいから。  私が質問したのは、それと、片やこちらの官庁側の人員、受付……。
  100. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 あんま、はり、きゅう関係、マッサージも入れまして、厚生省でその関係の仕事に関与しておる者、二十人程度かと思われます。
  101. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 だから局長でなくたっていいと言うのだ。二十人程度ということがあるか。こんなに行革が厳しいときに、一人だって「程度」なんと言う人がいるか。何言っているんだ。そんなことだからだめなんだ。はっきり言いなさい。
  102. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 いろいろの仕事をやっておりますので、専任ではございませんけれども……(川俣分科員「だから、その内容を言ってください」と呼ぶ)二十人が関与しております。
  103. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 どういう関与ですか。
  104. 横尾和子

    ○横尾説明員 ただいまの件について御説明申し上げます。  はり、きゅう、あんま、マッサージ関係の法律を所管しておりますのは厚生省医務局医事課でございます。これをどういう形で所管をしているかということを御説明申し上げますと、担当の補佐が二名、及び技官の補佐が一名おります。それから、その関係の養成所の指定、指導、都道府県知事に対する業務内容の指導を担当する係がございまして、これが三名でございます。それから、法律に関係いたしまして法令解釈等を行います者が二名おります。これが身分法にかかわるものの職員でございまして、これに加えまして、保険局の方で医療保険にかかわるスタッフが加わる、こういう実情でございます。
  105. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大臣、ここが非常に大事なところなんで、結局これだけあんま、マッサージの従事者が多い。そして需要も多い。しかも、文部省に聞くのだが、今度は四年制という制度が発足しましたが、それなのに割合に厚生省の方では受け入れ態勢というか、担当しているのが兼務等を入れると二十人ぐらいというのが担当局長の口から出るというところに、また、あんま、はり、きゅう、マッサージが行政に非常に乗りにくいというところをあらわしているのでございますが、その前に、それでは文部省、発足してみたらどういうことになっていますか。大体どのくらい学生がいるか、その辺を聞かしてもらえますか。
  106. 前畑安宏

    ○前畑説明員 お答えいたします。  この鍼灸大学につきましては、昨年も先生から御質問を賜ったのでございますが、五十八年の二月に認可をいたしまして、五十八年の四月から学生を受け入れておるわけでございまして、ただいま一年生だけでございます。  その状況を申し上げますと、志願者が二百五十五人ございまして、入学者が百二十でございましたが、現在第一学年に在学いたしております者は百十七という状況でございます。  なお、ちなみに五十九年度につきましては三百六十七人の志願者がございまして、百十九人の合格を発表した、こういう状況でございます。
  107. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 昨年発足だから二百五十人、もう二年目にして三百六十七人と、こういうようになっておりまして、これから文部省にもかなり世話になることですが、将来厚生省の認可のあれになることだと思いますので、その際に、発足に当たって非常にぎくしゃくした面があるのです。あのときには医師会の反対の声明書をめぐっていろいろ議論があったのですが、今落ちついて、一年間たってみて、学校が発足して応募学生もあるし、二年目に入ってみると、どうして医師会が反対したんだろうかなということを少しは検討されたと思うのです。ついでなんですが、文部省から見るとこれはどうですか。
  108. 前畑安宏

    ○前畑説明員 当時、医師会の御反対の御趣旨につきましては、日本医師会の雑誌等を拝見いたしますと、この大学が、当初の申請におきましては明治東洋医学院大学というような名称を付しておりまして、かなり東洋医学といいますか、そういった面についての色彩が濃いかったのではなかろうか。その点について医師会の雑誌等での医師会の御議論というのは、東洋医学を中心とした大学の設立、こういうふうな御意見も承っておりまして、そこで、その後私どもといたしましては、申請当事者とも相談をいたしまして、名称を明治鍼灸大学というふうに改めた経緯もございます。そういうことで、その後は格別お話を承っておりませんので、医師会側でも現在はこれを見守っていただいておるというような状況ではなかろうかとそんたくをいたしておる次第でございます。
  109. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 なかろうかという推測の域の中でお話を承ったのですが、それじゃ医務局長はそちらの方の専門の先生ですから、西洋医学と東洋医学の交通整理の問題があったんじゃないのかということでは済まされない問題があろうかと私も思うのです。どうですか、横尾医事課長さん、何となくそれ以外にあったんじゃないんだろうか。将来こういうものが四年制になって、ずっと四年制の――私は、将来は四年制にプラス二年制のインターンが出てきたりすると思うのですが、その辺を御遠慮なく、ひとつ思っていることをお話し願えませんか。
  110. 横尾和子

    ○横尾説明員 その当時のやりとりを全部承知しているわけではございませんけれども、一つには、現行のはり、きゅう、あんま、マッサージ法では、養成体系は、はり、きゅうに関しましては大体三年というのが一番長い期間でございます。そういう前提の中で、四年制というものをつくるというときには何をつけ加えるのか、現行三年ならもう三年でいいではないかというふうな御意見が一番最初にはあったかというふうに思っております。
  111. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大分遠慮して突っ込まないのですが、じゃもっと深くこちらから質問をしてみますと、やはり人間の体に触れる商売ですから衛生法の中でやる問題ですから、これはやはりある程度の教育を受けないといかぬのだという考え方からこういう学校制度に変わるわけです。しかも需要はある。需要者の方は衛生関係は余り意識はありませんけれども、供給側はかなりなければいかぬ。そうなると治療効果なども、頼む場合でも、いわゆる西洋医学である日本の一般医療と併施してというか、併施ということで私は言うのですが、並行してもう少し医学的に、今度は局長に聞くのですが、医学的に、今の日本の明治以来定着した西洋医学と並行して将来いくべきだと思っておりますか、それとも相入れないものだと思っておりますか。
  112. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 私は、西洋医学を学びましたのでございますけれども余り知識もありませんが、東洋医学につきましてはもっとないわけでありますけれども、東洋医学に関しましては大変な関心を持っておるものでございます。  先般中国へ参りましたときに、中国におきましては中西合作ということを盛んに言っております。西洋医学と東洋医学と原理原則が今のところ違っておりますけれども、それを統合をいたしまして新しい理論を生み出すならば、将来の医学の新しい体系ができるのではないかという考えであるようでございます。私個人といたしましては、伝統ある東洋医学と新しい理論に基づいた西洋医学とが合作をいたしましてそこに新しい医学が生まれてくるならば、人類にとって大変いいことではないかと考えております。
  113. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 やはり吉崎先生、私は西洋医学を学びましてということじゃ通らないんだな、そこに座っている以上は。医事課長が下にいるし、二十人がいるし、はり、きゅう、あんま、マッサージ師が日本に、先ほど言われた、万と数える人がいるし、需要があるしと、こうなると。  そこで、さらに内容に入ろうと思うのですが、これはだんだんなると医療保険制度の法案審議にも出るか思うのですが、健康保険等に乗る場合にどういう手続が要るのですか、これ。これは保険で処理する、こういった場合にはどういう手続ですか、局長
  114. 吉村仁

    ○吉村政府委員 現在、はり、きゅうの医療保険における取り扱いは療養費払い、こういうことに相なっております。そして、そのあんま、はり、きゅうを健康保険に適用するためにはお医者さんの同意が必要だ、こういうことになっております。したがって、今医務局長が申され、また先生が申されましたが、西洋医学と東洋医学を併施するような格好になってないわけでございます。まず西洋医学が主で、そして東洋医学が従というような格好に、保険だけではなしにこれは医事法制、医務関係の法制がそういうことになっておるために、私どもは、やはり健康保険におきましても西洋医学を主、それから東洋医学を従。したがって、もし先生がおっしゃるように現物給付というような形であんま、はり、きゅうを取り上げるとすれば、やはりあんま、はり、きゅうについて、現在保険医療機関というものを指定しておるわけでございますが、そういう指定をする必要がある、こういうことになろうかと思います。
  115. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 保険局長としては当然そういうことなんでしょうね。いわゆる併施できる段階ではない、しかし、お医者さんの方から同意書の判こを押せば払ってあげます、簡単に言えばこういうことだ。  ちょうど予算の大委員長の倉成さん、私も大変関心があるということで、元気を出して質問するのですが……。ところが、同意書の問題でぎくしゃくしておるのですね、なかなか。医事課長、どうですか。同意書に判こさえ押せば何ぼでも併施できるようになるんだよと、こう言う。保険を払う保険局長側としては、同意書を持ってきなさい、こう言うのですが、それじゃなかなかスムースにいかないという現場があるわけでしょう。どういうところなんですか、そこをひとつ。
  116. 横尾和子

    ○横尾説明員 先生の御質問は、なぜ同意書というような仕組みで動いているかという……(川俣分科員「ということと、同意書だけでなぜぎくしゃくしているかということ。同意書でどんどんスムースに処理すればいいのじゃないか。スムースにいかないから質問している。それを知らなければいい」と呼ぶ)  第一の方の御質問に申し上げますと、それは私ども、所管の法令の性質に由来するものだと存じますが、ある病気についてそれがどういう施術を行うかということの前に、その病気についての診断という行為が必要になろうかと思いますが、現行の法体系上は、診断という部分についてはこれはもっぱら医師でなければしてはならない業務というふうに規定されているわけでございます。そういうことから、診断をした上で、具体的な治療法の中で、今お話しのありました関係の技法というものが適応であるという場合にぞ札が認められるわけでございまして、診断部分をも鍼灸師、あんま、マッサージ、指圧師等に譲るというようなことは、法体系上もできないものであるというふうに思っております。  第二の問題については、若干保険の運用の問題もあろうかと思いますので、私としてはお答えできる立場にないので、お許しをいただきたいと思います。
  117. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 いや、お答えできる立場なんだ。たしか課長、診断書が物を言うのだから、診断害がないのに、何ぼ渡部厚生大臣が、はり、きゅうはよかった、この方は中国通だから、中国に行ったらとてもよかった、あれをひとつやってくれないかなと言ったって、医者は、だめだよ、しかし厚生大臣なら特例としてやろうかと、こういうことになるかもしらぬが、いずれにしても需要者はやってほしいということ、ただし、今は対象範囲は慢性の神経痛、リューマチ、頸肩腕症候群、それからいわゆる五十肩。ぼつぼつ我々がそうですな、大臣。そういうような対象が限定されていることと、不思議と期間とか回数が限定されるというのはどういうわけだろうか。十回なら十回で肩が治るはずだ、十回目までは保険がきいて十一回目からだめですよというのも、これも需要者側から言わせると、まことにおかしいなと。そうなると、お医者さんの同意書のところでひっかかって、弱って、私もこういうように質問しておるのでございますよ。だから、その辺を……。  さらに、そういう問題を踏まえて申し上げますと、先ほど局長は、二十人ぐらい、それから兼務しておる、医事課に散らばっておる、こういうことですが、ところが、需要が多い、はり、きゅう、マッサージの従事者が多い、同意書をめぐってぎくしゃくしておる、こういうことになると、当然頼りにするところは医務局医事課長横尾さん、これは一番頼りです。そのときに横尾さんのところへはり、きゅう、マッサージの人力、団体の代表が、三つか四つに分かれているけれども、目の悪い方のグループだとかマッサージも含めた人力とかいろいろあるのだが、やはりその際に、よくいらっしゃいました、ということにならなければこれはだめなんだな。ありゃまた来たな、こういうことじゃだめなんだ。その辺どうですか。ちょうど横尾さん御婦人だから、どうです、もっと……。
  118. 横尾和子

    ○横尾説明員 この関係の団体、団体の数が大変多いということもありますし、それに属されている方々の数も多くていらっしゃるということもありまして、大変足しげく厚生省にお越しになる方方だと私は承知しております。(川俣分科員「足しげく通っていますか」と呼ぶ)足しげくお越しになられる。十分な御相談ができているかどうかはそれぞれのお立場の方が判断されることかと思いますけれども、私どもとしてはできる限りのお話し合いなりさせていただくとともに、何かと御指導もいただいているというふうに考えております。
  119. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そうなんだ。足しげく通っていらっしゃる足跡は十分に私も認めるが、大臣、やはり横尾さんは特に詳しいし、女性だし、優しく受け付けをするんだが、ところが受け入れ態勢が少ないんだよね、行革のさなかにこういうことを言うのはどうかと思うが。しかし保険局長も、西洋医学と東洋医学とを併施すれば好ましい、それなら保険で取り扱いやすいということもおっしゃるし、そういうことを考えると、やはりもっと態勢を強めなければならぬじゃないだろうかと思います。  そこで中央官庁の厚生省、今度は地方の県庁がありますね。そこで福岡方式というのがかなり名をなしたのですが、福岡方式というのは一体どういうことでしたかね。
  120. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先ほど申し上げましたように、あんま、はり、きゅうの治療、療育というものは保険給付、現物給付の対象にしておりません。しかし、それに対する要望というのも非常に強い、こういうことで、保険の療養の給付ではなしに、同じ保険料を使うのでありますけれども、疾病の予防だとか、あるいは健康づくりのためにいろいろな保健施設をやっておるわけでございますが、その保健施設の一環として、あんま、はり、きゅうの療養を提供する方式でございます。したがって、健康保険でいう療養の給付として給付しておるのではなしに、保健施設として疾病予防活動、そういうようなものの一環として、結果的には同じようなことなんでありますが、あんま、はり、きゅうの療養を提供する、こういうのが福岡方式でございます。
  121. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 最後に、大臣に伺って終わります。  今保険局長がわかりやすく言ってくれたのですが、給付するということでなしに国民健康づくり国民保健という施設としてそれを受け入れている。そういうように公的になると、初めてそこから出発して、保険局長がさっき言ったように保険でも処理できる併施の状態になるんだ、こういうことになるので、いずれにしても、県にしろ国にしろ、行政側がはり、きゅう、マッサージというものが行政に乗りやすくなければならないのと、そういうムードをつくらなければならないという問題。保険局長さんにも西洋医学だけで頑張らないで、少し開いてもらって、厚生行政にはやはりこういう東洋医学と併施するという世の中が将来やってくるのだな――この二十一世紀の総理大臣のお言葉に、はり、きゅう、マッサージは余り出てこない。これは二十一世紀の課題だと思う。その辺は検討課題だと思うのですが、最後に締めくくりたいので、大臣のその辺の話を。
  122. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も中国に行って、はり麻酔のすばらしさを見学をしてまいりましたし、また、あんま、はり、きゅう等私もお願いしたことがございますので、川俣委員に負けずに関心は持っておるつもりでございます。  ただいま担当者からいろいろ答弁がありましたように、この問題は西洋医学と東洋医学、こういう医事法制上の政治が前提となっておりますので、これから学界、専門家等の意見をよく聞く必要があろうかと存じますが、これらの意見をよく聞きながら、ただいま川俣先輩御指摘の真情を十分考えながら、今後これらの意見を踏まえて善処してまいりたいと思います。
  123. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 ありがとうございました。
  124. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて川俣健二郎君の質疑は終了いたしました。  次に、青山丘君。
  125. 青山丘

    青山分科員 昭和五十九年度予算編成の焦点の一つであります医療保険制度の一部改正につきましては、昨年八月、当時の林厚生大臣予算の概算要求段階で二割負担導入を提示いたしましたことに端を発しておりますが、その後、被用者保険本人の給付率を五十九年度、六十年度は九割に抑え、六十一年度からは八割にするという、実に健康保険制度始まって以来の大改革案となって、今論議の集中しているところであります。  確かに現行の十割給付では、医療費が幾らぐらいかかったのか患者本人には全くわからずに、医療費はただという錯覚に陥りがちでありますが、これが毎年多額のペースでふえ続ける医療費膨張の大きな要因でありましょう。国民医療費は現在十四兆円を超えて、なお国民所得の伸びを上回る伸び率を示していることにかんがみて、今後も人口構造の高齢化が進むに伴い、医療費の増大は避けがたいと言わざるを得ません。現状のままでは医療保険制度が財政的に困難になってくることもまた避けがたいことと言えましょう。  そういった意味においては、医療保険制度を長期的に安定したものとするために、ある程度の改革はやむを得ないかとも思いますけれども、さきにも述べましたように、この制度始まって以来の大改革をこれほど短期間のうちに、しかも直接医療に携わる担当者たちと何ら協議も行わないまま決定をしてしまってよいものかどうかということです。  昨年の総選挙に際しまして、政府・自民党は、この制度改革について「保険本人の給付給付率を変えず、又厚生省案にこだわらず白紙に戻し、更に関係諸団体と充分に話合い決定する」、こういうふうに発言をされております。さらにこの一月六日、渡部厚生大臣の記者会見におきましては、一部負担の必要性は認めながらも、大蔵大臣や党三役、自民党社会部会関係者等とよく相談して詰めていきたいと述べておられます。  しかしながら、この法案、健康保険法一部改正法案は、二月二十四日閣議決定をされて、今国会でその成立を期すということでありますが、関係各方画から、事前協議がなかった、そういうことに対して公約違反だという声がわき上がっております。現に先ごろ、二月二十一日に行われた全国三師大会において元厚生大臣は、席上、公約を破ったという事実は無視できない、おわびします、こう言ってみずから認めておられます。政府・自民党が選挙前に発言をされたことは、単なる選挙用のリップサービスであったとは認めがたいわけでありますが、関係諸団体、特に直接医療を担当する現場の人々にとって、一言の協議もなかったということは、非常に混乱を招いてきております。現場の人たちに言わせますと、全く公約違反だ、言語道断である、私たちに対してむしろ背信行為だという声すら出ています。これに対する厚生大臣の御見解をまず伺っておきたいと思います。
  126. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私が厚生大臣に就任しまして、保険局から説明を受けた段階でのこの案は、五十九年度から患者負担二割、またビタミン剤その他を保険除外、あるいは食材料費を負担していただくとか、今政府案として提出しておる案よりはかなり厳しい内容のものでありました。しかし、今お話がありましたように、党がこの問題については幅広い立場で再検討をするというような話等もありましたので、その後、党三役あるいは大蔵大臣、行管庁長官等と相談をいたしまして、五十九年、六十年は患者負担一割、あるいはビタミン剤その他をもとに戻す、あるいは食材料費はいただかないといったように、かなり患者負担を軽いものにして改正して出しております。したがって、これは決して公約違反でもありませんし、選挙中、党が幅広い立場で再検討するということは、党三役と私ども協議し、十分その約束は果たされたものと考えております。  なお、医療担当者に全く相談がなく、あるいはこの問題が唐突に出されたということをよく聞くのでありますが、先生御承知のように、昭和四十年来、医療保険の抜本改正というものは国民の幅広い皆さんから強く求められ、むしろ厚生省は、その場その場の財政の一時しのぎの政策ではだめだ、もっと幅広い、二十一世紀の将来にわたっての検討、改革案を示せというおしかりあるいは励ましをちょうだいしてまいりました。昨年の八月、概算要求の時点でこの基本的な考え方ができ上がり、その後、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会、ここには医療関係の皆さん方も参加しておりますけれども、これは懇談会等で幾たびか御審議を願い、また厚生省の担当局等でも、医師会、歯科医師会といったような関係機関その他の関係機関に、概算要求の時点からこれらの案を示しておるという報告を聞いておりますので、決して何の相談もなしに唐突に出されたものではありません。  昭和五十五年にもこの問題いろいろ議論されたことがありますが、二十一世紀の将来にわたっての揺るぎない基盤を持った、確固とした医療保険制度改革しろ、また、今先生から御心配をいただきました医療費の適正化あるいは保険料率を今後できるだけ上げないようにして、国民負担を重くしないで、国民の健康を守っていくという国民の皆さんの期待にこたえて練りに練った案が今回の改革案でございますので、何とぞ慎重審議の上、ひとつ御理解を賜るようお願いしたいと思います。
  127. 青山丘

    青山分科員 大臣のお立場ではそのような御見解でしょう。ただ、実感としては、医療担当者にしてみれば、もう少し事前の話し合いがあるはずであった。これは昨年の選挙になる直前の新聞ですけれども、「厚生省案は白紙に」とか、「予算編成時に決定」をされる、つまり「医療保険の再検討問題」、これらを見ますと、「幅広く意見を聞き」云々というような報道がいろいろなされまして、あのときは十分にまたこの審議が重ねられるものだという実感がありました。ところが、選挙が終わったらだだっと出てきた、そういう印象が非常に強いのです。後でも少し触れますが、その辺、もう少し慎重に事を進めていただくべきではなかったかというふうに思います。  それから、医療費が著しい増大となっておりますが、このままでは医療保険制度が財政的に崩壊するかもしれないという危惧に立って、今のうちにそれに歯どめをかけておこう、本法のねらいはそんなところにあるであろうと思います。  ただ、そもそもその原因は一体何なのか。つまり、医療費が増大してくる原因は何であったか。その中には、人口の高齢化によって疾病構造が大きく変化をしてきた。それに伴って当然のように医療構造も変化してきたわけで、例えば心臓の悪い患者がペースメーカーを入れると、電池をかえないで七年間も延命できる。また、昔ならば当然死に至るような重症の腎臓病患者でも、人工透析で延命できるというようになってきたわけです。延命すれば当然それなりの医療費がかかるわけでありまして、高齢者にかかる医療費は一般成人の実に四・一倍の医療費がかかる。高齢による医療費増が今日の窮状を招いた原因の一つであるということは、これはよく言われていることなんです。  しかし、ここで注目すべきことは、例えば歯科をとってみた場合に、歯科疾患の疾病構造は高齢化とは関係がないということです。高齢者の歯科疾患にかかる医療費は、一般成人のそれと比べてむしろ低い。低くて軽癒、快癒されていく傾向にあるわけです。というのも、青壮年期にほとんど治療を終えている。治療を施してしまって、歯科においては、老人の疾患というのはむしろ点数の低い疾患が中心になってきているからです。ここに一般医療と歯科医療、医科と歯科の大きな違いがあるわけで、高齢化のために医療費増の原因をつくっているというのは、歯科の場合は当てはまらない。医科と同じ措置の対象になってきた理由がよくわからない。それはやはり認識に不足があるのではないか、私はこう思うのです。いかがでしょうか。
  128. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療費の増加原因につきましては、いろいろな原因があると思います。医科と歯科でもちろん違います。一般的には、先生御指摘のように、人口の高齢化あるいは疾病構造の変化あるいは医学技術の進歩というようなことが一つ医療費増高の原因、こういうことでございますが、医科と歯科の中身につきましては、確かに御指摘のように違う面がございます。歯科医療費の増加原因の最大のものは、歯科医療機関の増加、非常に高い増加率を示しておりますが、これが最大の原因ではないか、こういうように私は考えておるわけでございます。  医科と同じような対策を講ずるのはおかしいのではないかという先生の御指摘であろうかと思います。現在の保険の診療におきましては医科と歯科を区別して物事を考えてないわけでございまして、もし医科と歯科を全く別の医療機関あるいは保険の取り扱い上別の取り扱いをする、こういう決断をするならば、先生がおっしゃるようなこともできるかもしれません。しかし、診療報酬にいたしましても、初診料は医科、歯科同じ、それから保険医療機関の取り扱いにおきましても同じ、こういうことになってきておるわけでございますので、医科について行う保険診療上の対策というものは歯科にも同様にやるのが、現在の法制のもとにおきましては至当なのではないか、こういうように私は考えておるわけでございます。
  129. 青山丘

    青山分科員 基本的にはやはりいろいろな面で違っておることがありますね。  歯科の医療費増については後でちょっと触れますが、歯科医療機関の増加が問題であるということになってきますと、きょうは質問しないつもりでしたけれども、卒業生の増加が問題になってきますね。これは非常に深刻な問題として将来必ず出てきます。過去何回も私がお尋ねしたような問題が必ず出てきますので、これはひとつ文部省とじっくりお話し合いをいただいて、過剰歯科医時代が来ないように、このことは歯科医療行政の混乱にもつながってきますので、ぜひひとつ前向きに取り組んでいただきたい。  昭和五十七年度の政管健保の医療実態調査によりますと、歯科は前年度対比で一〇・五%の伸び、当年の医科の伸びが八%程度ですから、歯科の方は随分伸びていると言われているのです。しかし、五十五年六月から五十六年五月までの一年間と、医療費改定のあった五十六年六月から五十七年五月、この一年間ずつを対比してみますと、取扱件数が四・六%の伸びなのです。そして、医療費改定分の当然増とも言うべき五・九%の伸び、これはちょうど一〇・五%なのです。取扱件数四・六%の伸びというのは、歯医者さんたちが積極的に公衆衛生活動をして、歯科疾患の重要性をPRして、歯は大切ですよという健康に対する自覚を高めてきた努力によるものだ、そのことによって受診件数の伸びにつながったものだと私は思っています。さらに差額徴収はよくないとの視点に立って、以前より保険外給付のものを給付導入して努力してきた結果の一〇・五%であって、今まで厚生省で言われた薬づけ、検査づけというようなことが人為的にやられて伸びてきたものではないということです。  そういう意味では、自然環境のうちで伸びてきたということが数字の上からも言えるわけで、歯科の医療環境というのは医科のそれとは全く異なるものがある。このような歯科が、今回の改革で医科と同じ措置の対象になってきた理由が、現場の歯医者さんには全くよくわからない、理解できないという気持ちなのです。御見解いかがでしょうか。
  130. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに歯科の医療費を分析しますと、今先生が御指摘のような点があろうかと思います。  ただ、私ども、医療費全体で物事を考えてみますと、医科の医療費は、これは五十二年度から五十六年度までの五年間を平均したものでございますが、年平均増加率が九・九%程度でございます。それから歯科の医療費は年平均増加率が一六・五%でございます。したがって今回の改革案というのは、国民医療費の規模というものを適正水準にして、その医療費を公平に全国民で分担をしようではないか、そのためにはやはり給付も公平なものにしていくのが、二十一世紀に向かっての医療保険の基盤づくりの基本ではないかということを大臣が申し上げましたが、私どもそういう観点から見る限り、医科医療費に対しましても歯科医療費に対しましても、大筋としては同様な方策で臨む必要があろう。ただ、細かい個々の医療対策というような観点から考えますならば、医科と歯科は当然違ってくる面が生じてくるのではないか、したがって大筋としては私どもの政策は医科、歯科ともに間違ってない、こういうように考えておるわけでございます。
  131. 青山丘

    青山分科員 かなりすれ違っておるのですけれども、時間がなくて、まだ少し聞いていただきたいこともありますので、ぜひひとつ先に進ませてください。  医療費増大の要因として次の三点がよく挙げられております。まず第一に出来高払い制度、これについては従来より論議されているところでありまして、諸外国の制度を研究すると、現在の我が国の国情に最もマッチした方法であって、若干の手直し、見直しは必要かもしれませんが、この制度を崩したところで、医療費の増大を阻止できるものとは思わないわけです。次に、薬の乱用でありますが、これは薬価ベースの切り込みで既に整理がついたと私は思っています。  そこで第三点、最もよく言われるのが検査の乱用です。現在本人十割給付ですから、初診時に八百円さえ払えば、あとはただという感覚が強い。そこで政府は今回一割、二割の負担を患者に持たせることによって、不必要な検査はできないんだという自覚を持たせたいということだと思うのです。聞くところによりますと、血液だけでも七百通りくらいの検査項目があるんだそうですが、全部保険適用ではありませんけれども、まさに想像を絶する数値です。検査は確かに十割給付のかなりの部分を占めていますけれども、検査が必要かどうかということは、そもそも担当医を信用して、担当医の主観に任せるべきことであって、これが医学、医術の根本であると思うのです。これが制限されてくる、いろいろな形で患者さんに対する医者の配慮から制限をされてくるということになってきますと、そういう枠をはめていくということが根本的な間違いであって、これを健康無視、福祉軽視と言わざるを得ないと私は思うのです。医療費が増大したそのファクターである二つが片づいている、残りの検査づけをやり玉に上げるということは少し筋違いではないか。結局財源だけを横目で見ながらの発想だと言わざるを得ないんですが、どうでしょうか。
  132. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに、先生御指摘のように、検査というのは医師のあるいは歯科医師の判断、検査の必要があるかどうかという判断によってやるべきである、これはそのとおりでございますが、最近私どもが検査づけ医療ということで御批判を受けておるわけでありますが、その中身を見ますと、やはり適正な診断あるいは適正な治療、そういうものに結びつくために私は検査をするんだろうと思うのですが、そういうものと結びつかない検査がかなりたくさんあるんです。本人と家族あるいは国保、これは給付率がそれぞれ違うのでありますが、その給付率が違うために医療費が異なってくる。その主なところの一つに検査があるのです。本人の場合と家族、国保の場合を比べますと、本人の場合は二、三割高い。それから歯科においても同じでございます。歯科はもっと高くて、五割ぐらい本人の方が高い。こういうことになっておりますが、私はそういうような点を眺めてみますと、本当に必要な診断、本当に必要な治療のために必要な検査が行われておる、こう言うには少し何か心にひっかかるものがある、こういうように考えるわけでありまして、私は、原則は先生がおっしゃるとおりだと思います。全く必要にしてかつ妥当な検査ばかりかというと、そこには若干の乱用というようなものもあるのではないか、こういうように考えておるわけでございまして、今回の定率の一部負担というのは、やはりそういうところを少し是正できるのではないかという考え方を持ってはおるのでありますが、先生御指摘のように財源だけ横目で見て、財源だけの対策として定率一部負担を課した、こういうわけではないので、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  133. 青山丘

    青山分科員 吉村保険局長のおっしゃること、私よくわかります。しかし、私の言うことも本当なんですね。したがって、その辺の兼ね合いというのはよほど研究して、じっくり腰を据えて克服していかなければならない問題で、私は今回のこの措置というもの、法の一部改正というものが正しい結果が出てくるとはどうしても思えません。そういう意味で申し上げたのです。  実はまだたくさん質問をしたかったのですが、時間がありませんから、最後になっていくと思いますが、一つだけ。  私は、昨年三月にこの同じ場所において、健康管理という意味で患者を指導し、予防を充実させるべきであるとの質問をいたしました。これは歯科の欠損補綴の装着後におけるアフターケアの問題でしたが、これに対して政府の答弁は、指導については今後も中医協で審議をしていく、さらに充実させていくというものでありました。これに関して、今回の緊急是正においては、指導料については何ら触れられておらない。昨年の答弁については、具体的措置はまだということなのでしょうか、あるいは現在何らかの準備をなされておられるのか。なされておられるのなら、その進捗状況をぜひお聞かせいただきたいと思います。
  134. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに昨年の分科会で先生から御指摘を受けまして、私ども、検討する項目としてここでお答えを申し上げました。その後、私どももいろいろ検討をいたしております。今回診療報酬の改正をしたわけでございますが、これは緊急に合理化をする必要がある部分だけに限って三月一日からやったわけでございまして、その中には少なくとも先生御指摘のアフターケアの問題あるいは指導の問題というものは入れることができませんでした。残念ながらそうでございますが、現在中医協で引き続き診療報酬の基本問題も含めまして検討を続ける、そういうことで毎月一遍やっております。私ども、その歯科診療における重要な課題として、今先生御指摘のような予防なり指導なりアフターケアの問題、これを十分取り上げていけると考えております。歯科の中医協の委員の方々の一つの重要な問題もそこにありますし、私どももそこが重要な問題だというように認識をしておるわけでございます。
  135. 青山丘

    青山分科員 質問を終わります。
  136. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて青山丘君の質疑は終了いたしました。  次に、網岡雄君。
  137. 網岡雄

    網岡分科員 質問の時間が三十分ということだそうでございますから、私の方も要点をまとめて三点ほどに絞って質問をいたしますので、答弁の方もできるだけ簡潔に、要点をついて御答弁をいただきたいと思います。  私は、最近非常に問題になっています低肺機能、呼吸不全の問題につきまして、第一点には、この病気に対する実態調査がまだ正確に把握をされていないという現状から見まして、できるだけ早い時期に実態調査をしていく必要があると思うのでございますが、現時点において厚生省がどういう調査を今日までおやりになってきているのか、その点についてまずお答えをいただきたいと思います。
  138. 持永和見

    ○持永政府委員 御指摘の低肺機能の方々につきましては、肺活量が異常に減少して日常機能の低下があるというようなことで、身体障害者福祉法の面からこれを把握しておるわけでございますが、身体障害者実態調査を五十五年に実は行っております。  それで、現在身体障害者福祉法では、いわゆる健常者の肺活量が三千ミリリッターないし四千ミリリッターでございますけれども、三十歳の男子の方で二千百ミリリッター以下の方々をいわゆる呼吸器障害というようなことで把握いたしまして、身体障害者福祉法の対象にしておりますけれども、そういった形で実態調査を五十五年にやっております。これによりますと、いわゆる呼吸機能障害、低肺の方々と同じ範疇でございますが、そういった方々が四万七千人いるというような数字が出ております。
  139. 網岡雄

    網岡分科員 今御答弁がありました中に、身体障害者としての掌握でとらえておみえになるという答えでございます。呼吸不全の現状を見ますと、フランスとかヨーロッパの方ではやや趣が違っているようでございますが、日本の場合は、今から三十年ほど前に日本を席巻しました、亡国病とも言われた結核というものの後遺症が、呼吸不全の患者の恐らく六〇%から七〇%ぐらいを数えているのじゃないかというのが、今日における専門家の一般的定説と言われておるわけでございます。  そのことからいきますと、今までの社会状況といいますか、結核を一度思った方は、行政の面はそういうことは思っておみえにならないかわかりませんが、一たん勤めた職場を離れたくない、あるいは結核を理由にして首を切られたくない、こういうような関係がございまして、やはりなかなか本音というものを出しておらないという状況がございます。私は呼吸不全の患者の方ともかなり会って話をしましたが、ある人なんかの場合ですと、病気にはなっているのです。健康手帳も持っております。健康保険もかかっております。しかし、軽微な病気でありますと無理をして、自宅療養で病気を治して、そして自分がかつて結核患者であったということを隠しておる。したがって、四年か五年くらい健康保険にかからないわけでございますから、健康優良ということで表彰を受けているというような実態を私、本当にかつて結核患者であった方から聞いたわけでございます。  そういうことから言いますと、結核を思った人人というのは、今は大分違ってきているかもわかりませんが、かつてはやはり本音というものをなかなか出されていないという状況からいいまして、身体障害という観点からとらえていくということになりますと、呼吸不全の実態というものを正確につかんでいくということは少し難しいのじゃないかというふうに私は思うわけでございますが、この点についての現時点における厚生省の御判断はどういうものか、お聞かせをいただきたいと思います。
  140. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、肺機能障害、さらにはその進行した状態におきます呼吸不全というようなものについての掌握は、まず第一義的にそれぞれの原因となっている疾病、これの管理、そういったような角度から掌握される、これが一番医学的なサイドからの取り組み方でございます。ただ実態上は、肺結核も非常に大きな原因でございます。御指摘のとおりでございますが、そのほか閉塞性の疾患ということで慢性気管支炎、気管支ぜんそく等数多くの病気がございます。また、そのほか特殊な形態としては、じん肺とかそういったような領域もございまして、それぞれの分野で医学的な管理という一環で実態を掌握しながら適切な管理を行っていくという取り組みを、現在行っているところでございます。  全体を横断的に、およそ肺機能障害はということになりますと、先ほど答弁がございましたように、内部障害、身体障害者の取り組みという形でとらえるのが一つの全国的なとらえ方であろう。これは先ほど御指摘ございました四万七千というような一つの推定があるわけでございます。  以上のようなことでございますので、それぞれの部門におきまして今後とも、今御指摘のような方向で取り組みを一層検討してまいりたいと思っております。
  141. 網岡雄

    網岡分科員 今も御答弁がございましたが、そういう形でいきますと、やはり実態というものはなかなかつかめないというふうに私は思っています。  名前は言えませんけれども、この方面のある専門家によりますと、この人はかなり自分自身も調査をなさいまして、一つの推論でございますが、持っておみえになりますけれども、厚生省が御発表になった四万から五万の約三倍くらいに及ぶ、推定計算でいけば大体十四万から十五万ぐらい推定される。しかもこれは結核ということに焦点を当てて計算した場合ということでございますから、例えばぜんそくであるとか肺気腫であるとかといったような内部疾患の人たちも含めますと、この人数はさらに上回っていくのじゃないかと私は思うのでございまして、そういうことからいきますと、今の厚生省の掌握の仕方というものは必ずしも実態をつかんでいないというふうに思うのでございます。  そこで私、時間もございませんから、ひとつ提起をしたいと思うのでございますが、それは、現在保健所である程度結核患者に対する掌握をしております。これは日本の場合、結核に関する限りは世界一でございまして、結核患者の掌握は世界的にもトップのところにおるわけでございますから、そこでつかんでいるカードというもの、これは厚生省が全国的に一つの指示を出しながらこの実態をつかむということができるのじゃないかと思いますので、ひとつ参考にしていただきたい。  さらに、治ってしまっても五年間はカードを保管をするという義務があるそうでございますが、それを過ぎますと除外カードになるそうでございます。しかし、お調べをいただきますと、例えば名古屋市の千種保健所というところなんかではかなり古いカードを持っておりまして、それが非常な幸いをいたしまして実態を把握しているわけでございますが、そういうとこうは、全国的に見ましても、早いところ手を打てはまだあると思うのでございます。そういうところを頭に入れながら、直ちに保健所を一つの判断のところに入れて、実態郡代の一つの項目として処置をしていただけるならば、かなり正確な実態というものがつかめるのじゃないかというように思います。  それから二つ目には、病院関係を、これは行政上の配慮が必要でございましょうけれども、プライバシーの侵害に当たらない範囲でやっていただければ、かなりのものが出るのじゃないかというふうに思います。  それから三つ目は、呼吸不全の予備軍というのがかなり見えるわけでございますから、そういう人たちに、こういう症状があった場合には保健所に直ちにおいでくださいということを、都道府県の広報及び保健所の広報をもって出すことができたならば、そこでかなりやっていくことができるのじゃないか。これは費用もそうかからないことでございます。通常のニュースの中でひとつ知恵を使えばそれだけのことができるわけでございますから、やることができると思うので、ひとつ御判断をいただきたいというふうに思います。  それから四つ目は、成人病の検査が行われることになっておるのでございますが、そのときに肺活量検査というものを一項目加えることをすれば、これはかなり的確に呼吸不全の患者、あるいは危険性を帯びている予備軍というものをつかむことができると思うのでございますが、そういうようなことを検討されて、直ちに実態調査に踏み込んでいくような積極的な構えをされるかどうか。これは将来の問題もございますので、ひとつ厚生大臣から御答弁を賜りたいと思います。
  142. 渡部恒三

    渡部国務大臣 低肺者に対して網岡先生から大変積極的な、また建設的な御意見をお聞かせいただいて大変ありがとうございます。  今までそれぞれの政府委員から答弁がありましたように、低肺機能者の皆さん方の問題については、従来から身体障害者福祉法、また保健医療の両面からその対策を今日まで講じてまいったところでありますが、ただいまの御意見等も十分尊重しながら、より積極的な対策を講ずるように努力してまいりたいと思います。  なお、具体的な問題についてはそれぞれの政府委員から答弁をさせます。
  143. 大池眞澄

    ○大池政府委員 結核予防対策という観点からは、従前、まず結核そのものをなくする、結核菌を排除していくということが急務でございましたし、そういうことに精力的に取り組んでまいりまして、御承知のような成果を上げてきたところでございます。しかし、結核後遺症というような形でそういう問題が生じつつあるということは私どももよく認識しておるところでございまして、先ほどの御指摘のようなことも含めまして、現在登録者カードの活用方法、またその様式等につきましても見直しの検討もやっている最中でございますので、そのような御趣旨も踏まえて検討させていただきたいと思います。  成人病検査の件でございますが、現在老人保健法によりまして老人健康診査を行っておるわけでございますけれども、これは主として循環器疾患の早期発見というようなところに焦点を合わせた標準的な方式を展開しているわけでございます。これに御指摘のような呼吸機能検査というものを組み合わせるということは、いろいろ技術的に問題がございまして、そこがネックになって非常に長い行列ができてしまうとか、まだ検討しなければならぬいろいろな問題が残されているように思います。当面はちょっと無理じゃないかというように考えております。
  144. 網岡雄

    網岡分科員 次の問題に移らなければなりませんから、私は次の問題に移りたいと思いますが、列が長くなってということが言われましたけれども、それはいろいろなことを知恵を使ってやっていけばやれないことはないわけでございますし、あるいはあらかじめ文書によって、前に結核をなさったことがあるかとか、今呼吸が困難なのかというようなことをアンケート形式で回答をもらって、その人たちだけを肺活機能検査をやるとか、何かの方法があると思います。やるとすれば、そこの年齢のところがやはり呼吸不全の出るところなんでございますから、せっかく集まったものを逃がすというのは、厚生大臣、行政から見ますと落ち度ですよ。したがって、そういうところは人間の知恵を使いながらやってもらいたいということを要望しておきます。もし後で答弁があれば答弁していただきたい。  それから二つ目の問題は、急性増悪時における対策について。これは非常に重要なところでございますから、ぜひひとつ明確な御答弁がいただきたいわけでございます。  まずその前に、呼吸不全という病気は長期療養の必要があるかどうか、この点について専門家としての御答弁をちょっといただきたいのです。
  145. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 私の知識の範囲でお答え申し上げますが、長期療養の必要があると考えます。
  146. 網岡雄

    網岡分科員 そうなりますと厚生大臣厚生省の設置法によりますと、療養所の規定を読みましたけれども、療養所というのは「特殊の療養を要する者」こういうことに明確に明記されているわけでございます。私の調査によれば、国立療養所というのは百四十カ所近くあると言われておるわけでございますが、この百四十に及ぶ、かつては結核療養所であったわけで、その道の専門家の療養所でございますけれども、この療養所が、風邪を引いて、そして急性増悪という呼吸困難に陥って、救急車で駆け込んでみたら、とても満足な処置ができなくて帰したという例があるわけでございます。現に私、その人の声をじかに聞いています。仙台の人でございますが、もう息苦しくてたまらぬ、死にたい。ところが、あの地域ではとてもそういう病院はないんだ、療養所は行くところがないといって、名古屋の患者同盟の本部に直接連絡があったわけですけれども、地域地域でございますから、処置ができないわけでございます。  私は、こういう状況のところがかなりたくさんあると思うのでございます。急性増悪になった際にいわゆるIRCU、呼吸雑集中管理室というものが必要なわけでございますが、昨年の九月の時点でいきますと、北海道では札幌南にIRCUが二つある。これは一カ所です。それから東北地方は全滅です。したがって仙台はないわけです。それから関東はありますけれども、信越関係は全滅、こういうことです。それから東海地方は、東名古屋病院を初めといたしまして二、三あります。ありますが、例えば長良の場合ですと、これは小児専用ということで使えない、こういう状況です。それから福岡東の場合は、てんかん専門で、呼吸不全には使えない、こういう状況にございます。したがって、ここらにも問題があると思うのですが、せっかくあるわけですし、これもやはりかつては結核専門の療養所だったわけですから、こういう実態というものをひとつ厚生大臣よく知っていただきたいのです。それから近畿地方は、有名な大阪府立の病院がございますけれども、国立としては全滅です。それからあと九州は、南福岡に有名な病院がございますけれども、南九州は全滅という状況でございまして、これでは、もし急性増悪の患者が発生したときには死を待つよりしょうがないというのですね。運がよければ助かるかもしれない、こういう状況に陥るわけでございます。  厚生大臣、私の資料、後でお出ししますけれども、こういう状況に今あるのでございますが、これでは、患者が救急車を通じて駆けつけても満足な治療はできないわけでございます。したがって私、ひとつ提案でございますが、厚生省は直ちに検討されて、少なくとも各ブロックには呼吸器集中管理室を持った治療体制というものを早急に整備するということをひとつお約束していただきたいと思うのでございますが、この点について、まず最高責任者である厚生大臣の所信を伺いたいのです。
  147. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 低肺機能者の急性増悪に対する手当て、これはいわば医療の原点ともいうべき救急医療対策であろうかと存じます。  具体的にIRCUのことについてお話がございましたが、これは呼吸管理を中心とした集中管理を行う施設であります。国立療養所は結核対策に非常に大きな役割を果たしてまいりましたけれども、今日、結核は減少してまいりましたので、IRCUという形で持っておりますものは先生のお話しになりましたようなことでありますけれども、そのほかに、救急対策その他の対策のためにICUというものを広く設置をいたしております。これは、呼吸管理はもちろんのこと、そのほかに心臓管理その他もやる施設でございまして、呼吸管理も当然できるものでございます。これはブロックに一つどころではありません、もっともっとたくさん備えておるわけでございます。  そこで、冒頭にも申し上げましたけれども、救急医療対策は最重点施策として取り組んでおるところでございまして、五十二年度から年次計画で整備をいたしておりますが、今後もさらにこの充実を図ってまいりたいと考えております。
  148. 網岡雄

    網岡分科員 ICUも機能としては同じでございますが、私は、実は東名古屋病院を実際にこの目で見てきておるのでございます。呼吸関係の管理はできますけれども、いわゆる呼吸不全という病気は個人差がございまして、血液ガス分圧で酸素の圧力を測定し、炭酸ガスの血液中の圧力を測定して、その人の分圧に合うような酸素流量をきちっとセットしまして出さないと、心臓の場合のようにやたら酸素をふっと出したら、そのことによって死んでしまうのですよ。現にこういう事故があったことがあるのです。私どもはそれを承知しております。呼吸不全に陥った、救急車に乗った、呼吸が困難だから心臓だろうと思ってどんどん酸素を送ったのですよ。そうしたらそれが処置が悪かった、呼吸不全だったですから。ということですが、時間がございませんから説明を抜きますけれども、そういうことがあるのです。  したがって、今局長説明されたようなことでは、ICUがあると言ってもそれは間に合わないのです。間に合うのは、やはりIRCUというものがないと……。いわゆる血液ガス分圧にきちっとセットされた酸素流量がきちっと行くようにしなければ、これは呼吸不全に対する集中呼吸管理ということにはならないわけでございます。これができているのは恐らく、私の仄聞するところによると、国立病院では三つしかない。今言ったところにはこれは十か十二ぐらいあるのですけれども、ぱっと戦争に間に合うのは三つしかないという状況なんですよ、厚生大臣。したがって、これでは呼吸不全に対する対策は全くお粗末でございまして、早急にこれはブロックごとに一つはできるような体制というものをつくってもらわなければいかぬと思うのでございますが、改めて厚生大臣と、答弁なさった局長も結構ですから答弁してください。
  149. 渡部恒三

    渡部国務大臣 極めて専門的な問題ですので、今医務局長から答弁をさせたのでありますけれども、呼吸不全というような病状は、まさにタイムリー、時間が争われる問題でありましょう。今御指摘のように、これは少なくともブロックに――私は東北に住んでおるのですが、東北にそういうものがなければ、私がそういう病気にかかったときに間に合わなくなってしまうわけでありますが、それぞれのブロックごとにこれを満たしていくような医療機関が必要であることは言うをまたないと思います。私ども、医療法の改正をこれから提案しようとしておるのも、少なくともブロック別にはどんな難病にも対処できる医療機関を、適正にそれぞれの地域に配置して、それぞれの地域医療充実をさせていきたいという考えてありますから、御趣旨を十分踏まえて善処してまいりたいと思います。
  150. 網岡雄

    網岡分科員 もうあとはいいです。  次に、いろいろなことを申し上げたいのですが、一点、酸素による自宅療養の際の健康保険適用の問題について私は提起をしたいと思うのでございます。  仄聞するところによりますと、厚生省は難病四十三の研究班を設定されて、その中で最近呼吸不全に対する研究班がその調査の結果を報告なさっているということをお聞きするわけでございますが、その中に、酸素療養は有効であるという報告書が出されているとお聞きするわけでございます。これは三十秒で結構でございますから、報告の中に入っているかどうか、この点をひとつお答えいただきたいと思います。
  151. 大池眞澄

    ○大池政府委員 特定疾患調査研究の中におきまして呼吸不全調査研究班というのがございますけれども、最近その取りまとめを完了する時期に来ておりまして、その中身としては、御指摘のように、どのような場合に酸素療法が在宅で可能か、どのような場合にはやってはいかぬかというような適用禁忌の問題について、それを主軸にしたようなまとめを行ったところでございます。
  152. 網岡雄

    網岡分科員 酸素治療が有効であるということの報告が、厚生大臣、もう出ているのです。  そこで、私提起しますが、現に今大阪で百、沖縄で五十、京都で三十、東名古屋十、南福岡三十、東京都かで百、合計三百二十人の自宅療養者がお見えになるのです。これは三年からもっと長い人もおると思うのでございますが、きちっと酸素流量を計算をして、医者の指示に従ってちゃんと酸素治療をやってみえます。したがって、一例も事故がございません。すべて医者の指示に従ってやっているわけでございます。  ところが、自宅療養の場合は五万から六万自分で金を払っていかなければいかぬわけです。高い治療なんです。私は誤解があるといけませんから、これは全部に当てはめるつもりはございませんけれども、自宅療養と病院に入院の場合とでどうなるかというと、同じ症状の場合、酸素を吸入するくらいですから、その人は入院しておってもいいわけなんですよ。ところが入院の場合は四十万から五十万、自宅療養の場合はその一割くらいで治療することができるということで、これは、臨調は私は余り好きじゃございませんが、その精神に合うわけですよ。ところが、酸素は全部自分で払っていかなければいかぬのです。酸素は日本薬局方の規定によれば明らかに楽なんです。だとするならば、糖尿病のインシュリンだって健康保険が適用になっているでしょう。きょう私調べてきましたけれども、最近は血友病の抗血友病人グロブリン製剤、乾燥人血液凝固第九因子複合体、これは五十八年二月に健康保険適用になったばかりです。同じこういうようなものが健康保険の適用を受けているのに、なぜ酸素の吸入が自宅療養の場合に健康保険適用にならないのでしょうか。  私は、これは明らかにしていただきたいと思いますし、今やってないことは間違いないのです。この研究班も既に有効だというふうに言っているわけでございますし、医者の指示を厳密に受けることはもちろんでございます。それはやっておるのです。三百二十例で先進的な経験があります。これをやればやれることは間違いない、そういう状況に来ておるのでございますが、この健康保険適用について、厚生大臣、お答えいただきたいと思います。
  153. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先生御指摘のように、私どもも在宅医療推進する、これは一つの大きな目的にしております。したがって、今御指摘のようないろいろなものを点数の中に入れて保険の適用にしております。  今後の問題として、在宅の酸素療法も一つの検討課題にして、今検討をしております。ただ、現時点で申し上げますと、一つは安全性の問題、それから緊急時におけるお医者さんとの連絡あるいはその場合の管理の問題、それから高圧酸素ボンべの取り扱い、危ないものですから、そういう取り扱いに関する問題、そういう三つくらいの点を合いかに解決するかということで検討しております。私は、この辺が解決できるならば、遠からず在宅酸素療法を保険適用するということはそれほど難しいことではない、こういうように考えております。
  154. 網岡雄

    網岡分科員 ぜひお願いします。  質問を終わります。
  155. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて網岡雄君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十分開議
  156. 大村襄治

    大村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について質疑を続行いたします。竹村泰子君。
  157. 竹村泰子

    竹村分科員 私は、きょう初めて質問いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。  ここに一人のお母さんを御紹介したいと思います。この方は、広島に住む本畝淑子さんという方です。この方の書かれた本の初めをちょっと読ませていただきます。   赤ちゃんが高い熱を出しました。お父さんもお母さんも、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、みんなが心配して見守っていました。次の朝になったら、その幼な子は冷たくなって、二度とは笑わぬ人となってしまった、というのが、私たちの娘寿子(ひさこ)でございます。   昭和五十七年二月十九日、娘寿子は二歳八カ月という幼なさで帰らぬ人となってしまいました。   ほとんど病気などしたことのない寿子でしたのに、医者にかかりながら、投与された解熱剤と抗生物質を飲んでいて、わずか五日で急死したのです。「ライ症候群」ということでした。   寿子に投与された薬を一点一点調べ直していきました。私たち夫婦は、投薬証明書と診断書とを持ちまして、東京・九州・大阪・京都と、日本中あちこち尋ね歩きました。その結果わかったのは、寿子に投与されたどの薬をとりましても、ひどいものだったという事でした。インフルエンザに効くはずもない四種類の抗生物質、微熱なのに投与されたボンクール(これはアメリカでは十四歳以下の子供には使用禁止になっている解熱剤です)。   親が正しい知識を持たなければ、我が子の命さえも守っていけないほど、日本の医療の薬づけは、ひどい状態なのです。   ひと一人の命は地球よりも重い、という言葉を、すべての人々に、真剣に受けとめていただきたいのです。  このライ症候群というのは、軽い呼吸器感染、水痘その他ビールス疾患の回復期に見られ、激しい突然の嘔吐、けいれん、昏睡などを引き起こし、急速に死亡することの多い病気です。幸い死を免れても、時には植物人間になってしまう例もあります。  最近アメリカで公表された四つの調査結果では、サリチル酸製剤を含む解熱剤がその発病に関係があることが指摘されました。寿子ちゃんの飲まされたお薬は、幼児用PL穎粒、マドレキシンドライシロップ、バストシリンドライシロップ、ボンクールシロップ、アスベリンシロップ、アリメジンシロップなどです。  しかし、これはそう簡単にわかったことではなくて、本畝さん御夫妻が医師に日参して、しつこく請求し続け、あげくの果てに、おまえら金が欲しいのかとか、植物人間になるより死んだ方がましだろうなどとばり雑言を浴びせられた果てに、やっと手に入れた投薬証明です。あの日から一日として涙しない日はないという御夫妻が、命をかけて手に入れたものなんです。  人の命は地球より重いという言葉がありますが、今回のチバガイギー社の件についても、厚生省は、薬品会社と医師の方ばかりに顔を向けておられるように私たち国民には思えます。  先ほど申し上げましたレセプトはもちろん、投薬証明も、国民健康保険の対象者には出されないことが多いといううわさを聞きました。後で申し上げますが、札幌の一人の女性は、レセプトを個人で要求し、また弁護士会から要求し、地方裁判所から証拠保全で要求し、しかしいまだに出してもらっていません。憲法十三条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とあります。憲法に保障される命の尊厳、人間として生きていく権利、人権はどう保障されるのでしょうか。この点についてお答えください。大臣、お願いいたします。
  158. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今竹村先生からお読みをいただいた、薬害でかわいい子供を失ったお母さん、非常に苦労したということで、その御本を私も読ませていただきましたが、国民の健康を預かる厚生大臣としての責任を痛感させられました。特に、現場で国民の健康を左右する医師あるいは薬剤師、あるいは製薬会社、人の生命を預かるそういう者の責任の重さというものを私は痛感したのであります。  ただ、厚生省が、お医者さんの方や薬屋さんの方に顔を向けてはかりおるというようなことは絶対ございません。今お医者さんから大変おしかりを受ける法律を提出して騒がれておるところでありますが、常に厚生行政は、御指摘のように人間の命は地球よりも重い、その人間の命と健康を守っていくことをすべてに優先する考え方で今後も施策を進めてまいりますので、御理解を賜りたいと思います。
  159. 竹村泰子

    竹村分科員 厚生省がどちらを向いていらっしゃるか、それはいいといたしまして、先ほどのレセプトですとか投薬証明、カルテ、そういったものを知る権利が私たちにはあると思います。何を飲まされたか、何をされたか。これは間違っていますか。
  160. 正木馨

    ○正木政府委員 お答えいたします前に、先ほど先生、本畝寺子さんの例を出されました。非常に気の毒な事例ということで、私どもも十分承知しております。このお嬢さんはライ症候群ということで、先生の全くお話しのように、アメリカでいろいろな調査がございます。しかし、現在のところ、ライ症候群とアスピリンとの因果関係についてなお検討がなされておる段階であるということを一言申し上げておきたいと思います。  それから、先生の御質問のレセプトであるとかお医者さんにどのような治療を受けたのかということについての、患者はどういう立場にあるのかということでございます。改めて申すまでもなく、医療というのは、患者とお医者さんとの信頼関係に基づいて行われるわけでございます。患者さんが一体どういうような治療を受けたのか、どういったような内容のものであったのかということをお医者さんと十分お話し合いをいただくということは、それは自然な姿だろうというふうに思っております。
  161. 竹村泰子

    竹村分科員 自然な姿であるということは、出すべきだということですか。
  162. 正木馨

    ○正木政府委員 診療の内容についてお医者さんがどの程度まで公表すべきか、これはなかなか難しい問題を含んでおると思います。患者さんのいわゆる症状いかんというものもございますし、あるいは患者さんには知らせたくない事情といったようなもろもろの状況がございます。その点を十分踏まえながら、お医者さんと患者さんとの関係においての医療が行われるというのが通常の姿であろうというふうに思います。
  163. 竹村泰子

    竹村分科員 大臣、あなたは二月二十七日、薬害の人たち、クロロキン、スモン、未熟児網膜症その他の薬害の方たち八十人が全国から集まり、その苦しみと怒りをぶつけ、涙のうちに、厚生省は責任をどうとるかと迫ったとき、出席なさいませんでしたが、報告をしっかりお聞きになりましたか。本畝さんが、ライ症候群で死んだ五十九人の子供の五十九本の白いフリージヤ、今、血の出るような思いでリハビリに励んでいる十二人の子供の思いを十二本の赤いバラに託してあなたに届けられた花束を、どのようなお気持ちでお受け取りになられましたか、感想をお聞かせください。
  164. 正木馨

    ○正木政府委員 二月二十七日だったと思いますが、議員会館で、ライ症候群の本畝寿子さんの御家族の方その他、各団体の方々七、八十名が、先生もお立ち会いだったというふうに承知いたしておりますが、薬の問題について切実な要望、声を私ども担当の者が聞かせていただきました。今後、そういった問題について厚生省としてどういった対策をとっていくべきかということについてもいろいろ御意見をちょうだいいたしまして、その点については十分私どもとして把握をしております。
  165. 竹村泰子

    竹村分科員 私は、大臣に、どういうお気持ちで花束をお受け取りになりましたかとお聞きいたしました。
  166. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほども申し上げましたように、人間の命の尊厳ということは私どもにとり何よりも大事なことでありますから、これが薬害、副作用というようなことで人間の生命が損なわれるということは大変残念でありまして、私は、それらの…題を所管する厚生大臣として非常に胸を痛くしてその報告を聞き、また、こういうことが二度と起こらないように一生懸命厚生行政をやらなければならないという、その責めを痛感いたしました。
  167. 竹村泰子

    竹村分科員 どうぞよろしくお願いします。  昨年四月、大阪小児学会が、ライ症候群に関連して、小児にアスピリンを使用することに慎重でなければならないという通達を出しています。アメリカでは、サリチル酸系製剤がライ症候群を引き起こすのではないかという報告が一九六二年に出ています。そして、アメリカではその後、疫学調査が一九七八年から八一年にかけて三つの州で延べ三百八十人を対象に行われています。そして、アメリカの小児科学会では、昨年春、サリチル酸系製剤との因果関係が明らかになるまでは、小児のインフルエンザ、水痘時には使ってはならないという警告を出しています。一九八二年十一月に出された我が国の厚生省医薬品情報ナンバー九では、これらアメリカの情報に十分留意せられたいとあります。なぜここで使用制限できなかったのでしょうか。せめて要注意扱いにできなかったのでしょうか。この中で、一九六九年から七八年、十年間のライ症候群の疑いのある症例は百四十一件となっております。十年間に百四十一件、一年間に十四件というのは取るに足りない数なのか、何人なら使用禁止にできるのか、お答えください。  札幌に住む横関さんという女性は、造影剤モルヨドールの被害を訴えております。ヨード剤を含んだ薬、ゴールパーク、これは堀井薬品と聞きますが、それを注射され、全身にわたる被害を受け、レセプトを請求しても出してもらえない状態です。ヨード造影剤の毒性は昭和六年に既に紹介されております。三十三年、三十九年の資料には、二十年前に注入した造影剤が大小無数の粒になって組織内に散らばり、腫瘍状になっていたという結果が発表されています。今は使用禁止となった血管造影剤トロトラストについて、WHOが一九七七年九月に、トロトラストの被害は戦争の悲劇であると言っています。この薬は長い年月をかけて肝臓や脾臓、骨髄に蓄積され、がんなどを引き起こしているので、過去のもう済んだこととして片づけられるものではない。脊髄にマイジオールというヨード造影剤を注入されて亡くなった浜田さん、大阪の岩出さん外多くの症例がありますが、この造影剤は、厚生省副作用情報一九八一年度ナンバー五十二に「ショック等の重い副作用があらわれることがある。特に注意を要する。」とありますが、禁止にはなっていません。この造影剤の使用についてどう考えておられますか。私たちが体を心配してがんの検診などを受けるときに使われるもので、私の知る範囲では、ちょっと今ほかに、このヨード剤の入っている造影剤以外に安全なものがないと聞いておりますけれども、お教えいただきたいと思います。
  168. 新田進治

    ○新田政府委員 お答えいたします。  まずライ症候群の問題でございますが、先生御案内のように、昭和五十三年から五十六年にかけまして、米国の保健省によりまして、ライ症候群とアセチルサリチル酸の関係につきまして疫学調査を行ったわけでございます。それで、両者の関係について調査結果が発表されました。引き続きまして我が国におきましても、早速薬事審議会におきまして、副作用調査会におきましてこの結果を検討いたしました。その結果、我が国におきましてはまだアメリカで得られたほどの情報も得られておりませんでしたし、現時点で緊急に措置をとる必要はないという意見をいただいたわけでございます。  しかしながら、先生御案内のように、この問題は非常に重要な副作用の問題でございますので、昭和五十七年二月に医薬品副作用情報によりまして、私どもブルーペーパーと申しておりますが、これによりましてお医者さん等に内容を伝達いたしまして、使用時に十分注意していただくような措置をとったわけでございます。  それからさらに、厚生省でとりました措置といたしましては、昭和五十七年度から、久留米大学医学部の山下先生にお願いいたしまして、ライ症候群とアスピリンの関係につきまして疫学的な全国的な調査をお願いいたしたわけでございます。  なお、米国におきまして最初に実施されました疫学調査の結果につきましても、いろいろ学者の間から意見もございますので、アメリカの保健省では最近、因果関係究明のために新たな研究をもう一度やろう、こういうことになっておるようでございます。私どももこの問題につきましては非常に深刻に考えておりまして、国内におきます調査研究の推進を図りますために、さらに私ども研究調査を続行する体制で今用意をしておるところでございます。  それから、二番目の造影剤でございますが、確かにいろいろ、私どもの副作用の情報の中に、御指摘のような全く予期せざる副作用の事件がございます。これは御存じのように、造影剤という特殊な製剤でございまして、これにかわる、代替する造影剤がない、こういうこともございまして、医師が使います場合には非常に慎重な取り扱いを要する薬剤の一つの典型的な例ということで、特に使用上の注意を細かく設けて、私ども注意を喚起しておるところでございます。
  169. 竹村泰子

    竹村分科員 注意を喚起していらっしゃるけれども、今のところはそのヨードの入った造影剤を使わざるを得ないわけですね。
  170. 新田進治

    ○新田政府委員 特にヨード製剤でございますが、今現在、先生御案内のよう、特にそういう尿路血管造影とかいろいろの造影剤がございますが、この造影剤という薬の性格上、これにかわるべきものが今はない、しかも非常に分子量の大きいものを血管内に注入するわけでございますので、人体にとっては決して安全とは言えない、医師の十分な注意のもとに使うべきものだ、こういうふうに私ども理解しておるわけでございます。
  171. 竹村泰子

    竹村分科員 そうしますと、国ではがん検をしろしろと非常に奨励していらっしゃるわけですけれども、私たちも四十を超えたら必ず一年に一回とか、一年に一回では遅いのだ、半年に一回とかということを聞くわけですけれども、余りにがん検診を受けてはいけないという注意をどこかで出されているんでしょうか。不勉強でちょっと申しわけありませんが。
  172. 新田進治

    ○新田政府委員 ただいま私が申し上げましたのはヨード製剤による造影剤でございまして、今先生御案内の、例えば硫酸バリウム等の胃腸疾患等のレントゲン検査、これはまた用途も飲み方も違うわけでございまして、先ほど申し上げました例のヨード製剤につきましては非常に特殊な造影剤でございます。特に脳血管撮影とか、いろいろ今新しい医療機械が進歩いたしまして、非常に微妙な変化を診察いたしますために使われるいろいろのヨード製剤がございます。そういうものにつきましては特別の注意、医療上どうしても必要で他に代替するものがない、こういうふうな場合がございますので、そういう場合には医師の十分な監督のもとに使わざるを得ない、こういう状況があろうかと思います。
  173. 竹村泰子

    竹村分科員 危険なものを使って検査するというその矛盾ですね。私は一人の庶民として大変不思議に思うわけですけれども、その辺のところ、今後の厚生省の御検討、そして研究の進みますことを祈るしか今はないわけですね。  私はここで、チバガイギーの今回の事件及び富士見病院事件のことなど少し触れたいと思いましたけれども、時間の関係で、次に、医薬品被害者の救済基金についてお尋ねいたします。  本畝さんも、八三年五月にこの基金の救済請求を退けられています。それは、申請に必要な医師の投薬証明書がなかなか書いてもらえず、やっと厚生省の出している用紙ではなく別の紙に書いてもらったのに、現段階では因果関係が明らかではないとの理由で断られています。同時に、遺族一時金の支給も葬祭料支給も、同じ理由で断られております。現在、審査申し立てをしていらっしゃいます。  この救済制度については一九七九年三月の国会で決められたのですが、その目的は、副作用被害を起こさないためにと、被害者の迅速な救済となっています。メーカーから拠出される基金は、今年度末には六十二億ぐらいになると言われています。そして、そのうち支給されたのは四年間で一億に満たない、七千万程度とお聞きしております。これは、その条件が非常に厳しくて、医師が適正に使用したにもかかわらず副作用による被害が発生した場合ということ、救済を受けるための手続が医師の投薬証明など大変に困難であること。私はここに書類を持っておりますけれども、これだけの厚さ、これ全部じゃありませんけれども、これに近い分量の書類を書かなければなりません、提出しなければなりません。やっと手続書類が整っても、まず中央薬事審議会の調査会をパスし、その上同じく副作用判定部会でチェックされて認められなければなりません。一九八三年三月には菅直人議員が基金の無機能ぶりを指摘していますが、そのことをどうお受けとめになったのですか、お答えください。簡潔にお願いします。
  174. 正木馨

    ○正木政府委員 医薬品副作用被害救済基金につきましては、先生おっしゃいますように、先年菅先生からも御質問がございました。この制度は、先生御案内のように当たり前でございますが医薬品の副作用による被害を救済するということでございます。したがって、基金に救済給付の申し立てをする場合には、お医者様の診断なり証明なりを出していただくというものはどうしても必要になってくるわけでございます。現在まだ十分徹底をしておらないわけでございますが、この制度趣旨をお医者様方にも十分徹底をいたしまして、これをできるだけ促進していきたいというふうに私ども考えておるわけでございます。
  175. 竹村泰子

    竹村分科員 その医薬品副作用被害救済基金の法案が国会に提出されたときの議事録のコピーもありますけれども、その辺はちょっと時間の関係で省略いたします。  そこで、その判定ですけれども、どのような判定基準があるのか、厚生省にお問い合わせしましたけれども、判定基準は特にはないということです。ですから、これだけの書類を完璧に書いて出さなければならないわけです。今多くの薬害に苦しむ人たちは、医師から、これらの診断書や投薬証明書を何に使うんだ、警察を呼ぶぞとか、裁判所の指示以外には絶対に書かないとか、うちで出した薬で薬害になるわけはないのだとか言って、口汚くののしられて追い返されている事実を御存じでしょうか。  そして、この拠出金は、メーカーの売り上げの千分の一であったのが年々減って、今年度は千分の〇・一となっているそうです。この理由をお聞きしますと、予想外に被害者の数が少なかったから毎年減らしていったということですね。これは一体何のためにある基金なのでしょうか。被害者をいかにして助けようかというためではなく、いかにして被害者を認めないかという努力厚生省は一生懸命やっていらっしゃるとしか私には思えないのです。救済基金としてまるで機能していないのではないですか。  多くの国会議員がこのことで質問をしていらっしゃいますけれども、私たちは自分の、または愛する家族の体にどんな診断がなされ、またどんな投薬をされたのか、知る権利があります。これは人の生きる最低の権利、人権の問題です。投薬証明、診断書を医師が出す義務があり、それを厚生省が責任を持って指導することを約束していただきたいと思います。  大臣、あなたは去る二月二十七日、薬害の被害者の人たちが議員会館に集まり、そのとき出した要求書をお読みになりましたか、どう対処されるおつもりですか、そのことをあわせてお答えください。
  176. 正木馨

    ○正木政府委員 救済給付の申し出をいたしますと、先生御案内のように、基金の方は厚生大臣に判定を申し出ます。厚生大臣は、中央薬事審議会の意見を聞いて判定を行うということになっております。中央薬事審議会では、判定基準という一律のものはございませんが、個々の症状等によりまして、医薬品の使用が適正であるかどうか、健康被害が医薬品により発現したものであるかどうかを、専門的な立場で十分御審議をされるわけでございます。  ところで、申請手続につきましては私どもできるだけ簡素化を図っていかなければならないというふうに思います。できるだけ難しい資料はないように、この制度が本当に生きた使い方をされるようにしていかなければならないと思います。しかし、基本でございます医薬品と副作用との因果関係というものについてはどうしても不可欠のもので、お医者様にもその点を十分徹底していきたい。また、お医者様の方も十分この制度を御理解していただけない向きもございます。あるいは個別ケースでも御理解できない向きがあるということでありますれば、基金の方にも相談係をつくっておりますので、十分バックアップをして、何としてもこの制度が生きたものになるように私ども全力を傾けてまいりたいというふうに思っております。
  177. 竹村泰子

    竹村分科員 大臣、お願いします。
  178. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今業務局長が答えて、私の答えることは同じことになるわけですけれども……
  179. 竹村泰子

    竹村分科員 いいえ、そうではなくて、要求書とその回答書を半月以内ということです。
  180. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘の問題、これは非常に難しい問題ですけれども、やはり医師が薬を投与することによって副作用が起こってくるわけですから、その因果関係を証明するためには医師の証明というものを必要とする、しかしなかなか医師はそれを書きたがらないというところから、今のような非常に難しい問題が出ておると思いますけれども、薬害の起こった皆さん方をできるだけ救済するためにこの基金はできたものでありますから、その趣旨が十分に生かされるように、医療機関に対してこれから周知徹底、また理解を得られるように努力をしてまいりたいと思います。
  181. 竹村泰子

    竹村分科員 私の言ったのは、多分大臣は見ていらっしゃらないだろうと思うのですけれども、二月二十七日に薬害の人たちと本畝さんが要求書を出しているわけです。半月以内に回答をということですので、どうぞ後でごらんになって、しっかりと対処していただきたいと思います。  サリドマイドのアメリカでの発売を断固として許可しなかったアメリカ食品医薬品局、FDAのフランシス・ケルシー女史のことを御存じでしょうか。この人のおかげでアメリカではサリドマイドの患者が発生しなかった。こういう人が厚生省の中枢部に一人いてくだされば、何万人の命が助かったことだろうと思います。大変残念です。  薬害に関する私の質問を終わります。
  182. 大村襄治

    大村主査 これにて竹村泰子君の質疑は終了いたしました。  次に、野間友一君。
  183. 野間友一

    野間分科員 私は、食品添加物をめぐる厚生省の行政の姿勢についてこれからただしたいと思います。  御案内のとおり、BHAの使用禁止告示、これが延期させられたことに典型的にあらわれておると私は思うのですが、我が国の食品衛生行政、これが今根本的に転換させられた、こう言わざるを得ないと思うのです。国民の傘とか健康を守ること、これを第一義的な任務にしなければならぬ厚生省が、特に外圧、アメリカの貿易摩擦を口実とする市場開放要求、これに屈したというふうに私は考えるわけです。本来、食品衛生の行政というものを商品取引と同じ関係でとらえることは全く誤りでございます。  去年の三月二十六日だったと思いますが、「基準・認証制度改善について」この閣議の決定によりまして、食品衛生行政についてもいわゆるスタンダード協定、この要請ということで、日本独自の基準をすでに投げ出したのではなかろうか、私はそう思います。これがかかったのは八〇年の三月、私も外務におりまして、これに反対をしたただ一つの党でありましたけれども、このときの私の危惧が今まさに的中した、こう思います。  そこで、今から質問いたしますのは、新しく指定をいたしました十一品目、これを中心に質問をしたいと思います。  食品の添加物、これについては安全性が証明される、あるいは必要性、有用性、こういうものがなければならない。しかも、この中身の上において、健康や命を守るための必要性とか有用性あるいは安全性ということが、的確な、正確な判断ができるというための手順なり、あるいは手続として一定のルール、基準、これが必要だし、現に厚生省も持っておると思うのです。これは四十年七月十六日の食品衛生調査会の答申、この中に基準が書いてあります。それから五十年六月十六日、これは衆議院の瀬野議員の質問主意書に対する答弁として、認定する一定の手順、基準についてそういう方向が出ておりますけれども、それは今でも生きておると私は思いますけれども、まずその点から確認を求めたいと思います。
  184. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先生がお話の食品衛生調査会における四十年の基準でございますが、資料は「権威ある試験研究機関で作成されたものとする」という表現がございます。また、昭和五十年の質問主意書に対します回答の中で「採用する文献は、政府機関の研究所、大学その他権威ある研究機関で実施され」たものであるという表現がございまして、この原則につきましては私ども現在も変わるところはございません。
  185. 野間友一

    野間分科員 今あなたの方からお話がありました二つの基準というものは、いわゆる実験データあるいは資料ですね。これについては公的楼門のもの、政府機関の研究所とか大学その他の権威のある試験機関、それから安全性に関しては二カ所以上の国内の機関で作成されたものを必要とする、それから原則としてこれは公表されたものを用いる、こういうことに相なると思いますが、いかがですか。
  186. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 お話しのとおり、権威ある機関、そしてまた公表されたものが原則であるということでございます。
  187. 野間友一

    野間分科員 さてそこで、今度の十一品目の指定ですけれども、これは今局長が答弁し私も指摘した、こういう基準に従って審査の上で指定したものかどうか、この点についていかがですか。
  188. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 権威ある機関というものをどう考えるかということでございますが、先生御承知のように、最近国際的に多数国の専門家によって安全性を評価していく、あるいは資料を検討していく、それからまた、外国のデータにつきましても相互に受け入れていくというふうな機運が非常に高まっておるわけでございます。そういう中で、私どもといたしましては、権威ある機関をどう考えるか、それから公表の問題につきましても、例えばFAO、WHOの専門家会議が、これは非常に適当な文献である、立派な文献である、内容的に科学的評価に十分たえるということで評価をされた、そういう国際的な会議で評価をされた、そういったものについては私どもとしては十分活用していっていいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  189. 野間友一

    野間分科員 それらの問題については後でまた議論したいと思います。  それじゃ、今厚生省の基準でもありますけれども、その一つである毒性試験、毒性資料については原則として二カ所以上の国内の機関で作成されたものを必要とする、こういう基準がありますね、先ほど言ったとおりですが。ところが、今度のこの十一品目、これを見てみますと、国内の機関で作成された毒性資料、これが全くないものがあるわけです。実は私は、厚生省からこの審査のときの資料をいろいろもらいまして、これを一覧表にいたしました。これを主査、渡してよろしいですか。ちょっと見てください。  ちょっとこれを見ていただきたいと思いますが、これは、私が厚生省からもらった資料を整理したものです。この五のクエン酸イソプロビル、これは酸化防止剤で油脂やバターの防腐剤ですね。それから六番のグルコン酸鉄、これは着色補助剤。それから九番のプロピオン酸、これは保存料でチーズやパンなどのカビ防止ですね。これらは国内の研究機関で実験したデータ、資料は全くない、こういうことなんですね。これはまさに、先ほど私が引きました、毒性資料は原則として二カ所以上の国内の機関で作成されたものを必要とする、この基準に照らして全く合っていない、こう言わざるを得ないと私は思うのですが、これはどうなんですか。
  190. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先生お話しの昭和四十年の基準でございますが、すでにつくられてから二十年近くたっておるわけでございます。先生も御承知かと思いますが、この間非常に科学的ないろいろの面での進歩もございまして、例えば発がん性あるいは催奇型性といったような資料の作成については、非常に厳重なものが要求されるというようなことで、先ほど申し上げましたように、食品衛生調査会におきましては、この基準の基本的な考え方は踏襲をしながら、実際の審議の対象とする資料につきましては、今申し上げましたようなもっともっと厳しい内容のものを要求して、それがそろわないと審議の対象にしないというふうに、近年の時々刻々の科学の進歩に対応しながら実際の審査は行われておるわけでございます。  それから……(野間分科員「ちょっと、質問に答えてください」と呼ぶ)先ほど申し上げましたように国内の資料、それから、それと同じように最近は外国のデータの相互受け入れ、あるいは外国の専門家によって評価された資料、そういったものも適当なものについては受け入れ、審査の対象にしていくのが現在の実際の調査会の運営のやり方でございます。
  191. 野間友一

    野間分科員 私の質問に正確に答えてください。質問をそらしてはだめだよ。今私がこの表の五、六、九を指摘した、これには属内の研究機関で研究した資料は全くゼロ。これはあなたのところでつくった厚生省の資料の中で明らかだ。この事実は認めますか。
  192. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほども申し上げましたように、……(野間分科員「いや、事実を認めるかどうかだけだよ」と呼ぶ)それは私どもの方でお出しいたしました資料で、国内のデータはございませんけれども、それに該当するような外国のデータがついておるということでございます。
  193. 野間友一

    野間分科員 余計なことは言わなくてもいい。今あなたが認めたけれども、要するに国内の研究機関で研究したデータ、資料は全くゼロ。これが五、六、九の番号を私は振ってありますが厚生省の資料でも明らかだ。ゼロだということは、この基準の原則として二カ所以上の国内の機関で作成されたものを必要とする、この手順、手だてを全く無視したことでしょう。そうでしょう。国内以外のもののどうのこうのというのはどこにも何も書いてない。少なくとも二カ所以上の国内の機関で作成されたものが必要だ、これがみずから調査会が認めた基準でしょう。ですから、国内の資料は全くゼロとあなたは認めた。これはその基準に照らして違反しておる。これは事実そうでしょう。余計なことは言わぬでいいのだよ。
  194. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほども申し上げましたように、この基準については、添付すべき資料、用意すべき資料については、現在は必ずしもこれによらないで、この基準は非常に古いものでございますので、催奇形性、発がん性等については非常に厳重な現在の時点のものでやっておる。同じように、この時点では国内のものが中心でございますが、現時点では、国内のものと同じように評価できる外国の文献についても調査会で審査の対象にしておる。つまり、四十年の基準はそういうことでございますが、現在の知識で運営が行われておるということでございます。
  195. 野間友一

    野間分科員 冒頭申し上げたように、この基準というものは、発がん性があるかないか、つまり安全性とか必要性、有用性、こういう正確な判断をするための基準、手順、それらが手続的にも正しいことが行われなければならぬ調査会が、みずからこの基準をつくって厚生大臣がこれを了承した、承認した、そういう基準なんです、そういうみずからつくった基準を全く無視する。どうしてここに審査の公正さあるいは中立、こういうものが担保できますか。あなたの今の発言によるとこれは古い資料だと言うが、そうすると、基準は生きておるけれどもこの基準そのものは変えたとおっしゃるのですか。
  196. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 基本的な考え方は従来のもののとおりでございますが、科学の進歩に伴いましてもっと厳密な資料が要るということで、国際的にいろいろ議論もされ、OECDでもテストの基準を出しておりますが、そういうものを参照しながら、現代の科学の進歩に合った資料を要求し、それに基づいて審査をしておるということでございます。
  197. 野間友一

    野間分科員 だから、一たん基準をつくりながら、基準をそのまま生かしながらもしあなたが言うようなことであれば、それは基準、手順ですから、改正の是非は私は今言いませんけれども、正確なルール、基準に、もし実態と合わない場合にはそういうふうに直すのが当たり前でしょう。審査する者が審査の基準をみずから犯す、この基準に従わないということで、どうしてここに厚生省の食品行政の公正さや中立が保てますか、あなた。もし実態と違うならなぜ変えないのですか。現実には変えておるのでしょうが。
  198. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 この種の基準は、各国でもOECD等の国際機関でもございますが、それぞれのところで、科学の進歩に基づいて、書いてある基準をモデファイして、そのときそのときのその進歩に合ったようにやっていくんだというのが、どこの国でも、あるいはまた国際的なこういった種類の基準でも同じでございまして、したがって、その時点で最も科学的なものを資料として要求し審査をするというのが、どこの国でも実態でございます。
  199. 野間友一

    野間分科員 よそのことを聞いていないのです。みずからつくった基準をなぜ守らないのか、みずからつくった基準を守ることができないそういう調査会で、公正な審議、判断ができるかということを言っておるのです。手続をなぜ守らないのか。  厚生大臣、今お聞きのとおり、みずからつくった基準に従って、国内の資料が毒性の資料には必ず必要だという基準を設けながら、あれこれあれこれ理屈を並べ立てて、この基準をみずから厚生省は踏みにじっておるわけでしょう。厚生大臣、どうですか。今お聞きでしょう。――だめだよ、局長。僕は大臣に聞いておるんだよ。  それじゃ、別の角度から聞くけれども、基準そのものですよ、基準そのものと実際とが合っていないということは認めるのですね。
  200. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほどから申し上げておりますように、食品添加物の審査に際しては、その時点その時点で最も科学的なものを踏まえてやるということでございますので、例えば、この基準では発がん性の試験あるいは催奇形性の試験について十分な記述がない、それは現在の時点で必要な資料を催奇形性につきましても発がん性につきましても要求する、あるいは国内と内容的に同じように信用できる、同じように利用し得るものについては外国のものも最近は多く使われておるというのが実態で、それはそれなりに調査会ではそういう判断でやっていただいておるということでございます。
  201. 野間友一

    野間分科員 だから、みずからつくった基準が守られていないということでしょうが。いいのか悪いのか知らぬが、あなたの理屈がもし正しいとしたら、それに見合うような基準をつくるのは当たり前でしょうが。それをつくらずに、これを守らない。一体どこに公正さやあるいは中立性が担保されておるのか。これはそう思うのは当たり前でしょう。あなたはちっともまともに答えていないけれども。  もう一つの例です。これはアスパルテームの問題です。これは御案内のとおり甘味料ですね。砂糖の二百倍ぐらいの甘さを持っておるもの、これも認めたわけですね。これも厚生省の資料から見ますと、この資料ですけれども、これは味の素あるいは外国のサール社ですね。これはたしか、味の素が特許を持ってサール社と一緒に開発して、これから売ろうとしておるものですけれども。この資料を見てみまして私は驚きました。これも私がまとめて一番最後のところの欄に書いてありますが、例えばこの研究機関が国内が十二、外国が三十三、そのうちの民間機関のところを見てもらえばわかるように、民間機関のデータが十、そのうちの味の素が八ですね。外国の場合にはサール社、これはみずからつくっておるところですが、十六のうちで十がサール社のものですね。しかも問題は、公表か未発表かという欄がありますが、味の素の場合には八つのうちで未発表が三、サール社の場合には十のうち十分部が未発表、こういうことになっておるわけですね。おかしいでしょう。要するに、これから商品ルートに乗せて販売するというサール社あるいは味の素、これはまさにメーカーでしょう。このメーカーが出した資料が大部分だ。しかも未発表というのがサール社の場合には全部なんです、一〇〇%ですね。  先ほど申し上げた基準からしても、公表された資料によって審査をするというのが基本的な原則として貫かれておる。ところがこれに対しても、この資料の公平さあるいは中立さがどこに担保があるのですか。しかも未発表のものがほとんどでしょう。未発表のものがどうして正しいと言えますか。しかもこれはがたがたっとわずかの間に全部指定したわけでしょう。だから今、機関の問題、国内の問題を言いましたが、これらの基準、それからもう一つ公表かどうかということ、あるいは中立あるいは公平、こういう点から、民間機関とか特にメー力ーの資料が大部分、一体これでどうして公正さや中立が保てますか。これも基準に違反しているでしょう。
  202. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 公表ということをどう考えるかでございますが、アスパルテームの資料の大部分はFAO、WHOの食品添加物の専門委員会に出されて、そこで十分評価にたえ得るものとされ、かつまた、その結果をFAO、WHOの委員会が各国に公表をしておる、その中にサール社のものも味の素のものも入っておるわけでございまして、したがって、先生おっしゃるのは恐らく雑誌に出したかどうかということをおっしゃっておられるのだと思いますが、そういう意味では確かに雑誌には出ておりませんけれども、FAO、WHOの委員会で使われ、その結果を印刷物として各国に配付しておる、それを私どもが採用したということでございますから、そういう意味では公表の一つの形というふうに考えてもよいと思っております。
  203. 野間友一

    野間分科員 人をだますような答弁をしなさんな。君のところで出した資料だよ。ここに公表、未公表、ちゃんと区別が書いてあるんだよ。何を言っているんだ。しかも、今FAO、WHOの問題を言いました。しかし基準についてはいろいろな、あなたのところの基準はそういうものであっても、例えばA1リストに載っているものであっても日本独自の基準で審査しなければならぬ、これは建前としてそういう方針でしょう。その点からして、今申し上げた幾つかの問題は全く基準に合致していない、こういうようになっているでしょう。  それから、時間がありませんからあわせてお聞きしたいと思いますが、あなたの方ではよく国会での答弁でGLPの問題を出しております。ここの適合施設、ここで行われた実験データは活用していくんだ、こう言っていますよね。あなたも恐らくきょうの答弁をそういう趣旨で言われたと思いますが、では一体、この食品添加物についてGLPに基づく適合施設、つまり日米間でこういう取り決めなり口上があって、これは食添ですよ、医療品と違いますよ。それによって一定の基準をつくって、その基準に基づいてどこの施設が適合しておるというようなことを既に日米間で取り決めて、具体的にそういう施設を指定したものがありますか。言ってください。
  204. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 GLPは、先生も御承知のように、医薬品についてGLPという施設が指定されておるということでございます。私ども、食品添加物の場合も同じような化学物質でございますので、これは十分それを適用していけるのではないか。したがいまして、実際にFDA等から資料を調達いたします場合に、そこに出てまいりました施設はGLPに適合しているのかどうかというようなものは、個別に問い合わせをいたしましてやっておるというのが実情でございます。
  205. 野間友一

    野間分科員 OECDで一定の化学物質についての大枠のものはある。これはいろいろな農薬とか通産省所管の物質とかありますよね。そのことを私は言っておるのではなくて、日米間の医薬品です。この医薬品の場合でも、昭和五十八年四月一日以降の試験ですね。それ以降のものでしょう、取り決めは。これからでしょう。しかも食添については全くそういう取り決めはないでしょう。その点をまず確認しておきます。
  206. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 一つは、先ほど申しましたようにGLPというのは医薬品を対象にした施設である。それで私どもは、食品添加物についても同じような化学合成品でございますから、医薬品の制度を活用していくということでいいと考えておるというのが一点でございます。  それからもう一つは、先ほど申し上げましたFDAでございますが、OECDではございませんでFDAから例えばアスパルテームについての資料が来る。その場合に、それを実際にやった施設はどういう施設であるか、それは米国内でGLPの適合施設としてやられておるものであるかどうかというようなことを、個別にその都度聞き合わせてやっておるということでございます。
  207. 野間友一

    野間分科員 時間がないので残念だけれども、あなたはでたらめばかり言っておるが、食添についてそんな取り決めは全くないんだよ。味の素がGLPの適合施設、あるいはサール社がそうだというようなことがどこにあるか。もしそのGLPを使うならなぜ基準の中に入れないのか。何も入れてないでしょう。勝手なことを言うなよ。こういうふうに全くでたらめきわまる。それがいいか悪いかの評価は別ですよ、GLPを使うかどうかは。もし使うとすれば、それはそれで基準の中に入れるべきでしょう。大臣、そう思われませんか。一遍基準を検討してください。いかがですか。
  208. 渡部恒三

    渡部国務大臣 食品添加物の輸入については、これはあくまでも国民の生命に安全であること、それを優先にして今日までやってきたと私は確信をいたしておりますが、ただいま御指摘の問題等大変専門的な問題でありますので、私もこれから担当局長等から十分事情をお聞きして、あくまでも厚生省の基本的な食品添加物についての姿勢はまず安全性の確保ということでありますから、そういう趣旨でこの検討をしてみたいと思います。
  209. 野間友一

    野間分科員 るる言いましたように、みずからつくったルール、これが全く破られて、そういうものを国民が信頼すると恐らく大臣も思わぬと思うのです。中身の適正な判断、これはルールの点においても公正あるいは中立でなかったらいかぬ、これはもうそのとおりでしょう。そういう点から、今申し上げたことを幾つか、いっぱいありますからぜひ検討して、私はこういう十一品目の指定については再検討してほしい。この要求と、時間がありませんので、もう一つの問題を最後にまとめてお尋ねしてみたいと思います。  それは障害者問題であります。前置きは省きまして本論に入ります。  ミニファクスの使用料金の問題ですが、これは新年度に日常生活用具に指定される予定で、障害者の方がこれを設置するときには補助がつくようになるわけです。これは私も一定の評価をしておりますが、これをさらに進めまして、その使用料についても減免することが障害者に対して必要な措置ではないかと思います。既に日常生活用具に指定されておる福祉電話は、機種は幾つかありますが、それぞれ一般用と比べて、障害者用はいわゆる付加使用料が電電公社の手によって約半分に割り引かれておるわけです。ミニファクスの場合、これを電話に設置することによる月々の付加使用料は三千七百円かかるわけです。これをせめて半額程度割り引いてほしいという要求がありますけれども、これに対してお答えをいただきたいのが一つであります。  それから二つ目は、いわゆる要約筆記者の派遣事業についてであります。これは中途失聴者の要求として非常に強いわけです。御案内のとおり、講演会その他の集会などで講師の話す内容を参加した聴覚障害者の方々に伝える要約筆記者、これは手話通訳と同じように今非常に重要性が高まっております。ところが、手話通訳の場合には派遣すれば国の制度として派遣の事業の費用などが補助がつきますけれども、要約筆記者の場合にはそういう制度がないわけです。この派遣事業についても補助について制度化してほしい。これも非常に痛切な要求があります。ひとつぜひこの要望を聞き入れていただきたい。  それから三点目は、聴力障害者用の通信機器の互換性の問題です。今御案内のとおり、各種福祉電話とかファクシミリ、文字電話など、電電公社が中心になりましていろいろな通信機器が研究開発されておりますね。これは、今までは電話などには全く縁がないという方々にとって全くの朗報で歓迎されておるわけですね。これからは、こういう研究開発は大いに推進しなければならぬ。しかも、それぞれの通信機器が互換性がないわけですね。一人がファクシミリを持っておって片方が文字電話を持っておる、これは互換性がありませんね。技術的には非常に困難かと思いますけれども、こういう点についてはやはり障害者としては互換性を持ったものがぜひ必要だ、これもぜひ研究開発を速やかに進めてほしい、こういう要求が非常に強いわけであります。この点についてぜひ厚生省も含めまして関係諸官庁で、以上三つ申し上げたわけですが、お答えいただきたいと思います。
  210. 品川萬里

    ○品川説明員 お答え申し上げます。  ただいまのミニファックスの件でございますが、ミニファックスは福祉用機器ということではなくて、広く中小企業の方々にも利用される等にも見られますように、一般的につくられた機器でございます。したがいまして、料金につきましても一般的な料金として決められておるわけでございます。他方、福祉機器について、シルバーホンでございますとか今先生から御指摘がございましたが、これにつきましては福祉用機器ということで、耳や目の御不自由な方が使いやすいようにということで開発したものでございます。開発の趣旨も違ってございますので、料金は、公社の経営が独立採算制でいわゆる受益者負担という考え方でできておる以上、ミニファックスの方につきまして福祉的な料金というのはいかがかと私ども考えておるわけでございます。ただ、できるだけお使いやすく普及していただくということは大変結構でございます。これは福祉政策全体の中で進められるべきことではないかと思っておるわけでございます。  それから、新しい機器の開発でございますが、電電公社においても先端的技術を活用いたしまして、できるだけ進んだ機器の開発に今努力をしておるところでございます。郵政省といたしましても、その推進方を指導しておるところでございますが、互換性の問題につきましては、かなり高度な技術もこれから要するところでもございますので、これについても一生懸命技術開発に努めるよう指導してまいりたいと思っております。  以上でございます。
  211. 持永和見

    ○持永政府委員 御指摘の要約筆記奉仕員の問題でございますけれども、御案内のとおり、五十六年度から、障害者参加促進事業の一つといたしまして要約筆記奉仕員の養成事業を現在私どもやっております。ただ、現在のところ、まだ数が約四百人ということで少ないわけでございますが、この養成事業によってこういった奉仕員の方々をできるだけ養成する、養成した上で、先生御指摘のような派遣事業、これも確かに必要なことだと思いますので、そういった養成の状況を見ながら前向きに検討していきたいと考えております。
  212. 野間友一

    野間分科員 最後に大臣から二言。
  213. 渡部恒三

    渡部国務大臣 在宅重度障害者の日常生活を容易にするために、今野間委員から御指摘のあったような新しい機器がどんどん開発され、それが有効に活用されることは大変望ましいことであります。私も、今度の予算編成の際に非常に関心を持って当たったわけでありますが、今度国立リハビリテーションセンターを中心に福祉機器の研究開発に取り組んでまいりまして、十月一日にはその研究所も発足させるつもりでありますので、御趣旨に沿って、重度障害者の皆さん方の日常生活をできる限り容易にする福祉機器の開発のために力を入れてまいりたいと思います。
  214. 野間友一

    野間分科員 終わります。
  215. 大村襄治

    大村主査 これにて野間友一君の質疑は終了いたしました。  次に、石田幸四郎君。
  216. 石田幸四郎

    ○石田分科員 わずかな時間でございますからごく簡潔にいきたいと思うのでございますが、私は、本日、いわゆる植物状態患者、植物人間と言われる人たちの生活実態、特に家族を含めた生活の状態というものを考えてみますと、極めて気の毒だとしか言いようのない状態に追い込まれているのではないか、このように危惧するわけでございまして、そういう立場から質問をいたしたいと思うのです。  大臣もお聞きになっていらっしゃると思うのでございますけれども、いわゆる植物状態患者と言われる人たちは、通常本人の意識がないわけでございます。また、治療の問題もなかなか遅々として進まない、そういう現状にあるわけでございます。したがって、そういう患者を抱えていらっしゃる家族の方が、二年、三年、四年、五年というふうに、この患者の人たちを看護していくためには大変な苦労があると言われておるわけでございます。私は、五十七年の予算委員会でこの問題を取り上げまして、当時の厚生大臣でありました森下さん、また総理であられました鈴木さんから前向きの答弁をちょうだいいたしておるわけでございます。  まず、その後の進捗状況をお伺いいたしたいわけでございますが、厚生省が把握されている実態、これを伺いたいのと、時間の関係上まとめて御質問いたしますが、五十七年の答弁におきまして厚生大臣は、身体障害者福祉法による身障者対策の今後のあり方について、審議会においてこの超重度の心身障害者の問題も含めて審議してもらっているので、この答申が出れば厚生省内におきまして検討会を開きまして、そして今後の対策を検討いたします、こういうふうに御答弁をされておるわけでございますので、その対策の進捗状況についてお伺いをいたしたい。  それから、もう一つまとめてお伺いをいたしますが、この超重度の心身障害者医療対策、一体どうなっているか、ここら辺の問題も含めてお伺いをいたしたいと思います。時間の関係もありますので、ごく簡潔にお願いします。
  217. 大池眞澄

    ○大池政府委員 第一点の実態の件につきましてお答え申し上げます。  いわゆる植物状態にある患者さんの実情につきましては、かねてより研究班に実態の調査もいただいているわけでございまして、その成果によりますと、全国で二千人から二千五百人と推計されているところでございます。  また、患者家族の状況についてでございますが、同じ調査研究班におきまして昭和五十年に把握いたしました百七十八例について見ますと、家庭が破壊状態にあると答えた者が約一〇%、余裕なしと答えた者が六〇%、余裕ありと答えた家庭が三〇%というような状況となっております。
  218. 持永和見

    ○持永政府委員 第二点に御指摘の身体障害者福祉審議会の関係のその後の経過でございますが、たしか五十七年の二月に先生の御質問をいただいたわけでございますが、五十七年三月に身体障害者福祉審議会から答申が出されております。「今後における身体障害者福祉を進めるための総合的方策」という答申でございますが、この中で遷延性意識障害者の問題について触れられておりまして、「重症心身障害者及び遷延性意識障害者については、関連施策との調整を図りつつ、身体障害者福祉対策の観点から対応を検討することが適当であろう。」という答申が出されております。  なお、この基本的な答申を受けまして、具体的な施策のあり方について身体障害者福祉基本問題検討委員会でいろいろと検討していただいておったわけでございますが、その報告が昨年、五十八年の八月に出されております。この中におきましては、「身体障害者の範囲」の一環といたしまして「遷延性意識障害について」ということで、「専ら意識障害に起因する肢体不自由等を法の対象とすることは適当でないが、個々に身体の障害の状態に応じて法の対象とすることが適当である。なお、これらの者に対する援護措置は、例えば常時医学的管理を要しない者について、必要に応じて療護施設に収容すること等が考えられる。」というような報告が出されております。  私どもといたしましては、こういった二つの答申なり報告を受けまして、現在、医学的管理を要しない遷延性意識障害者、いわゆる植物人間の人たちにつきまして身障手帳交付など、身体障害者の範囲としてぜひ含める方向で今検討いたしておりますが、いろいろ専門的な問題もございますので、認定基準のあり方などにつきまして、昨年の十二月から、身体障害者福祉審議会の中の審査部会身体障害者等級問題小委員会において現在御議論をいただいておるという段階でございます。
  219. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 植物状態にある方々の医療の状況でございますけれども、残念ながら今日の医学におきましては不可逆的でございます。  お話にもございましたが、自力移動が不可能、その他六項目の症状が三カ月以上続くものを言っているわけでございますけれども、その状態もいろいろな程度がございます。それから、原因もまたいろいろございます。そういう状況に応じまして、各医療機関におきましてそれぞれ必要な手当てをやっておるというのが実情でございます。  なお、この問題は、御指摘にもございましたが、非常に重要な問題でございまして、特に人間の尊厳ということと関係がございまして、厚生省におきましては、生命と倫理に関する懇談会でも意見の交換をいただいておる状況でございます。
  220. 石田幸四郎

    ○石田分科員 その後の対策の一つとして、本年度の年金改正の際に特別障害者手当というものを出すことになっておりますね。そのことについてもちょっとお触れください。
  221. 持永和見

    ○持永政府委員 先生御指摘の特別障害者手当でございますが、これにつきましては、障害年を契機といたしまして、障害者の生活保障といったものを確立すべきだということの一環の中で生活保障専門家会議から答申がございまして、まずは年金の中におきます福祉年金と拠出制の年金の差をなくすべきだという御答申がございました。それを受けまして、年金制度の大きな改善の一つとして障害基礎年金、二級の人たちに月五万円、一級の人たちには六万二千五百円の基礎年金を支給するという改善を国会で今御審議をお願いしておるところでございます。それに合わせまして、現在重度の障害者の方々に出しております障害手当一万五百五十円を二万円にする、しかし対象を重度の方々に絞って再編成するということが生活保障問題専門家会議から出されておりまして、それと合わせまして、国民年金の中でそういった二万円の特別障害者手当を支給するということで今、国会に御審議をお願いしておるところでございます。
  222. 石田幸四郎

    ○石田分科員 大臣、結局これらの遷延性の身障者に対しても二万円の手当が出るようになろうとしているわけですね。これは、いわゆる福祉対策の一環としてそういう問題がなされておるわけでございますので、その対策について評価をしないというわけではありません。しかし、その看護する家族の方々の生活実態について見てみますと、余りにも不十分なのではないかという疑念を私は強く持つわけなんです。この実態調査を厚生省でもう少しおやりになったらいかがですか。  と申しますのは、恐らくまだ大臣お読みになってないと思いますが、二千から二千五百と推定をされた重度の心身障害者の中には、交通事故によりますところの人たちも入っているわけなんですよ。交通事故の対策センターで調べたこれらの患者の実態あるいは生活実態というものは、まことに悲惨なわけです。しかも、交通事故センターの方では、入院をしている人には日に三千円、月に九万円、それから自宅療養の人については日に千五百円、月四万五千円支給されているわけです。そういうような立場から考えてみましても、月に二万円では何ともならぬ。  若干申し上げますと、例えば自動車賠償保険の方から出ている人たちの生活実態の中で、受給資格者の六三%が入院をしておる、三七%は自宅で介護を受けているという状態。それから、今医療の状態についてもちょっと触れられましたけれども、多くの人が手術や専門の治療を受けなければならないために転院をするという状況があるのですが、何と病院側の都合によって転院を勧められたからやむなく転院をいたしましたというのも四一%に上っておる。  それから、介護の状況を申し上げますと、六一%の人々が家族のみで介護に当たっておる。それから、家族が介護にかかわる割合というものは、その他の交代者等を含めて実に八一%だというのです。身内の人たちの介護がなければ、ほとんどこれらの人たちの療養はできないという状態になっておるわけですね。  介護の内容を見てみますと、患者の体位交換は一日平均七・五回、三時間に一回の割合。食事は四七%がカテーテルによる鼻腔栄養である。残りの者はスプーンなどによってやわらかい食べ物を食べさせておる。ほとんどの者がおむつを使用しておるというような状況ですね。  それから生活状態を見ますと、看護婦の付添看護料等を含めて介護料が一月平均九万七千円。これはたしか五十四年度の調査かと思いますから、もっと上がっているはずです。それから、余病を併発すれば治療費を払わなければならないので、その場合でもやはり治療費が約九万六千円。両方含めると十九万三千円払っておるわけです。  それで、交通事故によりますところのこれらの遷延性身障者の場合は、平均の生存期間は三年一カ月ですけれども、かなり長くまで生存していらっしゃる人も最近は出てきている。  それから家庭の状況を見ますと、四九%がこの患者になった人が主たる家計を維持する者であった。九〇%の家庭が事故後生活が苦しくなった、こういうことを訴えておる。今の厚生省の御報告でもわかりますように、破壊状態にあるのが一〇%でしょう。それから余裕がないというのが七〇%でしょう。そういうような状態ですね。  だから、家族の人たちの悩みはどういうことかというと、介護のために家庭の中の仕事は全然できない、介護に疲れて病気がちで、かわりの介護をする人がいない、収入が少なくて生活が苦しい、介護費用に金がかかり過ぎる、もう実に悲惨な状態であるわけですね。ですから、月二万円のこの福祉関係の特別手当を出してもらったところでまさに焼け石に水、こういう状態ですね。  もう時間がありませんからどんどん申し上げてしまいますけれども、今度千葉に事故対策センターの方で専門病院をおつくりになりまして、この十月までに約四十人の人が収容されようとしているのですね。三月に九人入院されたということです。それらの実態が新聞などに報告をされておるわけでございますけれども、そういうものを見ましても、一つは、植物状態患者と言われる人はもうだめなんだというふうに医療から見放されているように思うけれども、そうでもない、多少希望が出てきた人、治療効果の出そうな人もおる、こう病院長さんが言ってらっしゃるのですね。それからまた、ここに入院しておる九人の方々は、すべて家族が付き添っておる。そういう状態で、原則的に宿泊が認められないから、遠方からの人が多いので負担も厳しくなってくる。場合によっては、病院のそばにうちを引っ越してこなければならぬのじゃないかというような状態が報告されておるわけですね。  こういう状態を見ますと、単なる福祉手当等で問題は片づかないのではないか、こう思うのですね。これは確かに、例えば事故対策センターでやっている介護手当の問題は、保険に入っているからというようなことで行われておるのでございますけれども、しかし保険の余剰金で手当てをしておるわけですね。そういう制度だから、九万円という費用が多いか少ないかは別としまして、それを基準にすれば、いわゆる厚生省関係で把握をすべき人たちは余りにも差があり過ぎるのではないか。法の平等という問題を考えてみましても、あるいは憲法二十五条で言われているところの健康で文化的な生活、あるいはまた行政としてこれらの福祉増進のために努力しなければならぬという義務規定、そういう問題から考えても、これは何とかしてもらわないと、厚生省福祉対策という観点、そういう観点からではこの問題は解決できないのですね。まさにこれはいわゆる政治問題ではないか。政治家渡部さんとして厚生の行政を預かるようになったわけでございますが、それだけにこの問題を何とかひとつ解決できないか、これは私のお訴えであるわけでございます。どうぞ御答弁をお願いいたします。
  223. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、石田委員から御指摘をいただきました、いわゆる植物人間と言われる重度の障害者が私も近親者におりまして、まさに先生のおっしゃるとおり、これは本人も悲惨であるし、また、これを介護していく家族も大変な状態になっておるのを目の当たりに見ております。  この問題は、今までそれぞれの担当局長から答弁がありましたように、医学的管理の問題、また介護費用等の問題、大変難しい問題を含んでおりますけれども、よく実態を調査し、関係部局等の連絡をとらせながら、総合的にこれに対処できるような検討を進めてまいりたいと思います。
  224. 石田幸四郎

    ○石田分科員 私は、運輸省関係の事故対策センターの実態調査を拝見して今までいろいろ議論してきたわけです。いろいろな病院のサンプル調査も厚生省ではおやりになっているようですが、厚生省としても、もう少し生活実態に踏み込んだ調査をぜひしてもらいたい。全国調査というのは難しいですからサンプル調査にならざるを得ないのですけれども、この実態調査をやってもらえますか。
  225. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今までお話のありましたように大変な問題でありますから、その実態をできるだけ把握するように調査を進めさせた上で、なおこれらに対する方針を検討してまいりたいと思います。
  226. 石田幸四郎

    ○石田分科員 調査をしていただけるというので、その調査にさらにまた御期待をすることといたします。  しかし、この問題、社会的な話題になりましてもう五、六年たっているわけでございますから、事態はますます悪化の方向をたどるであろうし、特にいわゆる老齢化現象というものを見ますと、これにたぐいした状況というのも今後ふえてくるかもしれません。そういうことで、これらのいわゆる遷延性と言われる患者に対する手厚い保護をしていかなければならない、これは健康である者の人間としての責務ではないかと私は思いますし、また、福祉行政を担当される厚生省としても重大な責任を感じていただかなければならないんじゃないか、私はこういうふうに思っております。  今までの対策をお伺いいたしますと、審議会等の経過も踏まえなければならぬというようなことで、また新たに問題に取り組むとなりますとすぐ四、五年かかるというのが通例でございますので、何とかひとつ早くその対策をもう一遍総合的に考えていただくことを御要望をいたしたいと思います。  最後に大臣の御決意のほどを承って、終わりたいと思います。
  227. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御趣旨を尊重して、大変重大な問題でございますので、十分にその実態の調査を進めてこれに対処する方策を検討してまいりたいと思います。
  228. 石田幸四郎

    ○石田分科員 終わります。
  229. 大村襄治

    大村主査 これにて石田幸四郎君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たか子君。     〔主査退席、小杉主査代理着席〕
  230. 土井たか子

    ○土井分科員 厚生大臣、あなた子供は大好きですか。
  231. 渡部恒三

    渡部国務大臣 はい、好きです。
  232. 土井たか子

    ○土井分科員 単に好きというんじゃなくて、大好きですか。
  233. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は人生五十年になりまして、幸いに自分の志してきた道を進んでおりますが、今振り返ってみますと、自分の子供が一人しかいないことが私の人生で一番痛恨事でありまして、もう三人か四人ぐらい欲しかったかなと今思っておりますが、そのくらい子供は大好きであります。
  234. 土井たか子

    ○土井分科員 それは大臣の個人的な御事情を含めてのことでありましょうが、世の中の子供は全部自分の子供ぐらいに大好きだとお思いになるでしょうね。どうですか。
  235. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私は政治家でございますから、自分の子供とよその子供を区別するような考えは全くありません。この地球上におる子供たちは全部大好きでございます。
  236. 土井たか子

    ○土井分科員 今度、児童扶養手当法というのが改正されるということが今国会で問題にされているのですけれども、これは中身を見ると大問題だと実は私は思うのです。一つ、二つの問題点じゃありませんで、基本的に大変な問題があるのではないかと思うのです。  母子福祉年金の補完的機能として発足したのが児童扶養手当制度だったのですが、これを本来のあり方から切り離して、全く別の児童福祉施策制度にしようということの理由はどの辺にあるのですか。これは大臣にお答えいただきましょう。
  237. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは土井先生御承知のとおり、この制度が発足したときと今日では母子世帯の客観的条件が全く異なっておりまして、この制度が発足したときは、母子家庭というものの大部分はまことにお気の毒な死別母子家庭が多かったのであります。したがって、生別母子家庭はわずかなパーセンテージでありましたが、その方々が福祉年金がもらえないということで、これを補完する制度として発足したわけでありますが、今日では条件が変わってまいりまして、生別母子家庭の方が非常に多くなってまいりました。これも一つの社会的ないろいろの問題を投げかけておりますけれども、我々政治を行う上で何よりも大事なことは公平であるということでありまして、そういう観点から今回その手直しを図っておるわけであります。
  238. 土井たか子

    ○土井分科員 要するに、離別母子世帯と死別母子世帯というのをまず区別して取り扱いを異にじょう、こういうことでしょう、簡単に言うと。
  239. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私はいつも申し上げているのですけれども、本人の責任によらずして不幸な立場になった人たち、夫に死別した母子家庭あるいは心身障害者、私どもの厚生行政は、まず優先してこの皆さん方のためにお役た立たなければなりませんが、離別した母子家庭を区別するという意味でございません。離別した母子家庭の中で所得の非常に高い人あるいはその夫の収入が非常に高額な人たち、そういう方は、憲法にも子供を扶養する責任、親の責任というものがあるわけですから、高額な所得を持っておる人たち、そういう人がみずからの責任を放棄して、それを国がお助けするのが当然だというような風潮は必ずしも立派なものでなく、まず親としての扶養の責任をとっていただき、またそういう状態にない母子家庭については国ができる限りお手伝いをさせていただきたいということでございます。
  240. 土井たか子

    ○土井分科員 いろいろおっしゃるのですが、この児童扶養手当というのはお母さんに手当として出すのですか、子供に手当として出すのですか、どうなんです。
  241. 渡部恒三

    渡部国務大臣 親でございます。
  242. 土井たか子

    ○土井分科員 児童扶養手当となっているのですよ。だれを対象に出すのですかと言っているのです。
  243. 渡部恒三

    渡部国務大臣 親でございます。説明政府委員からさせます。
  244. 土井たか子

    ○土井分科員 いや、これは説明じゃない、大体これは法の趣旨からすると事務レベルの話じゃないと思っているのですよ。大臣、どうぞ。
  245. 渡部恒三

    渡部国務大臣 子供を抱えているお母さんに差し上げるわけでありますが、その法的根拠等は事務当局より答えさせます。
  246. 土井たか子

    ○土井分科員 子供を抱えているお母さんと言うのですが、その子供を問題にして考えられた手当じゃないですか、本来。それはそうでしょう。大臣、どうです。
  247. 渡部恒三

    渡部国務大臣 子供を抱えていないお母さんには出しませんから、おっしゃるとおりでございます。
  248. 土井たか子

    ○土井分科員 その子供を考える場合に基本になる法は何でございますか。児童福祉法という法を読みますと、この中では第一条に、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」こうありまして、そのことを三条で、これを原理として、「すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない。」こうなっているのですね。それからしますと、お母さんが生別であろうと死別であろうと、その母子世帯の中における子供は、子供という意味においては変わりないのじゃないですか。お母さんが生別によって母子世帯になろうと死別によって母子世帯になろうと、これは子供にとってはかかわりのない問題じゃないですか。どうです、大臣
  249. 渡部恒三

    渡部国務大臣 土井先生のお言葉に言葉を返して申しわけないのでありますけれども、これは子供にとっては全く変わりない、当然のことであります。  ただ、親については、自分の力で子供を十二分に扶養できる人と、また残念ながら社会的な条件の中で親の力で子供を扶養することのできない人と別に考えて厚生行政というものを進めるのも当然のことだろうと思います。
  250. 土井たか子

    ○土井分科員 そういう厚生行政をお進めになるのに、今までどういうふうな調査を実際なすっていらっしゃるのですか、そういうことを大臣がおっしゃるのなら。これは今までいろいろな調査があって、見てまいりますと、それについて発表したものもあり、まだ未発表のものもございます。母子世帯ということに対して母子世帯でない世帯、つまり一般世帯と申し上げでいいのかどうか、これはちょっと表現の上でも問題があるかと思いますけれども、比較してどういうことになっているかというのは厚生省から調査結果というのが今まで出ているのですが、これが大体死別母子世帯、離別母子世帯、全部込みで出されている母子世帯の調査報告なんですね。そういうことを大臣が先ほどからの御答弁でおっしゃるのだったら、特に離別母子世帯だけの実態調査というのを今まで厚生省、なすっていらっしゃいますか。これはありはしませんよ。どこをどう見てもこれはないのです。
  251. 吉原健二

    ○吉原政府委員 母子世帯に関しましては、昭和三十六年から死別、離別をあわせた調査をしてきておりまして、三十六年、四十八年、五十三年、五十八年と母子世帯全体を、母子世帯になった原因別につきまして詳細な調査をしてきているわけでございます。離別母子世帯だけを対象にした調査というものはいたしてぶりません。死別、離別、それからその他の形の母子世帯、あわせて調査をしてきているわけでございます。
  252. 土井たか子

    ○土井分科員 そうでしょうが。それでいて、所得の多いところにはどうのこうの。大体、離別されているところはそういうことからすると死別とは別枠でこれを考えていっていいということが結果としてどうして出てくるのです、調査もろくすっぽしないで。
  253. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これはもう土井先生十分御承知のことでありますが、第二臨調等の御指摘もあり、税金をむだ遣いしてはならないという大きな国策の中でいろいろ検討した結果生まれてきたものでありますが、何か先生のお話を聞いていると、離別母子世帯と死別母子世帯と区別をするというおしかりでありますが、そういうことでなくて、死別母子世帯の中でお気の毒な方はお気の毒な方として厚生省は愛の手を差し伸べなければなりませんけれども、税金を皆さん納めて、大体常識的に百五十万以上の所得の皆さん方は汗を流して働いて税金を納めておるわけでありますから、その国民のとうとい血と汗の税金を使わせていただくことによって私どもの政策ができるわけでありますから、そういう観点から別に死別母子世帯を区別するということでなくて、死別母子世帯の中で本人三百万あるいは離別の際の御主人が今日の社会的な経済条件の中では十分の一、いわゆる上から数えて百人のうち十番目ぐらいに入る高額所得者のだんなさんには、それなりの親としての責任をとっていただこうという社会的な常識の中から今回の政策が生まれてきておると私は判断しておるのでございます。
  254. 土井たか子

    ○土井分科員 社会的常識というのは、国の財政の中で赤字がどんどんふえれば子供の養育に対してしわ寄せを持っていってもいい、今の御説明からすればそういうことを常識と言うのでしょうかね。お金に困っているからこういう方法をとるということも当然である、こういう物の言い方なのです。ところが、今の問題は、子供の養育、子供に対して福祉ということを大切に考えるということが基本であるというところから、国はどれだけお金に困っても出発するという出発点を忘れてしまっては困ると私は思うのです。大臣は一番初めに、子供は目の中に入れても痛くないくらいに大好きだと言われたのですが、今のお答えを聞いていると、どうもそうでもないような気持ちがいたします。  それで、あえて申し上げますけれども、これは今までにお取り扱いの上では、児童福祉問題懇談会が厚生省に設置されて、そこで、報告書が出されたことに基づいて改正をどうするかということでお考えになってきたという経緯もございます。また、社会保障制度審議会の答申もこれに対してあったようでありますが、このメンバーの中に女性の方がいらっしゃいますか。
  255. 吉原健二

    ○吉原政府委員 女性の方は、児童福祉問題懇談会にはいらっしゃいません。制度審議会の中にもいらっしやいません。
  256. 土井たか子

    ○土井分科員 大臣、どう思われますか、これは、母子家庭、母子家庭と言って。問題は、母親の立場を考えて、今所得がある場合は、今回は取り扱いを別にしてこうしたいということで、先ほどからの御説明があるのです。母親というのは女性なのですよ。一体どういう生活実態であるかということも、生別をいたしました離別母子世帯についての実態も、それだけの調査は厚生省でない。女性の声を下敷きにして改正案を考えられたそれぞれの審議会は今まで一つもない。大臣、これでいいとお思いですか、ちょっと聞かせてください。
  257. 渡部恒三

    渡部国務大臣 審議会に女性がおらなかったということは、私も大変不勉強で今承知したのでありまして、社会保障制度審議会等にこれから土井先生みたいに優秀な方にどんどん入っていただければよろしいと思っておりますけれども、ただ、そのことと今回の問題は別でありまして、幾ら土井先生からのお話でも、私どもは、この制度改革が子供を粗末にするという御言葉には残念ながら、はい、そうです、と言うわけにまいらない。土井先生以上に私どもは子供を大事に思っておる気持ちでは負けないと思いますが、今回は社会的な公正ということから三百万、こういうことになりますと、それ以下の所得の方でお母さん、お父さん、汗を流して働いて子供を一生懸命養育して、なおかつ税金を払っておられる人もおるわけですから、そういう税金を使って行うわけですから、今回の三百万という所得制限によって今度児童手当を受けられなくなる人はわずかに五%程度であって、むしろそれ以下の人たちは、今度はわずかでありますが手当の金額がふえてくるので、いわゆる上に薄く下に厚いという社会正義の理念に基づいての政策でもあり、土井先生からお褒めをちょうだいできるものだと私は思っております。
  258. 土井たか子

    ○土井分科員 大臣、そういうことをおっしゃるから困るのです。単に字面の数字だけ見て、それで上に薄く下に厚いということでこれは万々歳だなんという認識を持っていらっしゃるのでは、一つも血の通った問題の把握じゃない。離別母子世帯というのはどういうことかという実態を、一体どのように大臣は考えていらっしゃるのですか。  実際問題見てまいりますと、離別母子世帯というのは、死別母子世帯に比べて経済的な貧困というのは非常に深刻なのですよ。それは、離別した母子世帯であるということで出発点が非常に厳しいのです、状況は。そういうことからしますと、いろいろな調査を見てまいりましても、協議離婚をした夫婦で、夫から妻に金銭や物の授受があったというのは約半数です。残り半数は、何ら妻は受け取っていないというのが実情なのです。受け取っている場合でも、百万以下というのが大半ですよ。今回こういうお取り扱いを、特に六百万円以上の所得が離別をした男性側にあれば、これに対して手当は打ち切るということからいたしますと、六百万円以上の所得があったら大丈夫、そのことに対しては手当てができますという法的拘束性はないでしょう。子供の面倒を見るという義務を課す国側の法律の根拠は、今度の改正案のどこにあるのですか。  だから、大臣はどうも数字ばかりおっしゃって、そういう数字の上ではつじつまが合っているということ、それも私はおかしいと思いますけれども、おっしゃるからあえて申し上げますけれども、六百万円以上の収入のある夫が離婚のときに養育費の支払いを約束したとしても、我が国の離婚の九割以上を占めているのは、大臣御承知だと思いますが、協議離婚なのです。協議離婚で養育費を支払っている父親は三割にも満たない。しかも、その支払い約束の有無にかかわらず、今度の改正では一切手当の支給をしないというわけですから、夫が六百万円以上の収入のある場合は、調停離婚か公正証書を作成しておかないとこの手当はもらえない、養育費ももらえないという事態が十分に予測されるのです。それから、収入証書がつかない場合も不利益に取り扱われるということも予測されますね。養育費の支払いについて強制執行のできる書面が作成できたとしましょう。しかし、強制執行の手続というのが素人には非常に難しい、これまた時間がかかる、費用がかかるのです。支払いを確保するということは非常に困難ですよ。こういうことは御承知の上で今度のような措置をおとりになっているのか。  女性が働くといっても、離別であろうと死別であろうと、子供を抱えている女性が職場探しにどれほど難儀をしているかというのも、大臣は御承知だと思うのです。そういうことからすると、今回のお取り扱いというのはちょっとおかしいのじゃないですか。この点どうですか、大臣
  259. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ちょっと誤解をなさっている向きもあるかと思いますが、今回の改革は、やはり所得の高い方については親としての責任を第一義的にはお願いしようということであって、どのような状態になっても子供を構わないというような意味ではありません。また、六百万という金額にいたしましても、今度は、離別の際の夫が親を養育しているとかまた子供を抱えているとかいうような場合は七百万にするとか、その後の運用についてもいろいろ弾力的な措置で、まず所得の高いお父さんにはそれなりの責任を国としてお願いするのであって、その後子供を構わないというようなことではない、これから弾力的な方策をとっていこうと考えております。
  260. 土井たか子

    ○土井分科員 弾力的というのは、すなわち法的拘束力がないということですよ。幾らそういうことをおっしゃっても、これで離別をした父親から、六百万以上の所得があるから必ず出させるという保証はどこにもないのです。そういうことからいいますと、時間があれば十分言うのですけれども、今、離別母子世帯についての実態調査がないままでこれをお進めになっているということがそもそもおかしいので、実際問題、その中でどういう実態が起きているのかということを掌握されねば困りますよ。もう一度はっきりやってもらえませんか、厚生省として。厚生大臣、どうですか。
  261. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私も、この法律の説明を聞いたときに、離別母子世帯といっても、その内容によってはいろいろなことがあります。我々も隣近所見ておって、本当に奥さんがかわいそうなんです。おしゅうとさんにいじめられ、だんなさんは酒癖が悪い、あるいは暴力を振るう、本当に奥さんがかわいそうだなという離別もあります。しかし、また一方で、お互いのわがままで今日離別している問題等もあります。それらを区別するということは作業的にも極めて困難で、やはり夫の、お父さんの収入、所得というものの基準が、客観的にだれもが納得できる基準ということで始まったわけでございます。
  262. 土井たか子

    ○土井分科員 基準基準とおっしゃいますけれども、実態調査もないままで勝手に憶測した基準というのは通用しないのです。客観的にそれは説得性を持ちません。だから、ひとつ大臣実態調査というのを改めてやっていただかないと困りますね。第一、私たちが掌握している限りでも、毎年の離婚件数の九割を占める協議離婚の離婚理由というのは、妻の場合からの申し出は経済問題なんですよ。経済問題というのはどういうことかといったら、これはギャンブル、浮気、サラ金、アルコール中毒等々で夫が生活費を入れない、妻の稼ぎにまで手をつける、こういうのがどんどんあるのです。そういうことでやむにやまれず、もう我慢は限度だというので子供を連れて離別するという女性が大体多いわけなんです。その実態内容がどういうものかということを知った上で今度のような改正に踏み切られているのかどうか、私は本当に不信の塊になりますね。大臣、どうです、やってくださいよ。やらなきゃ――もう事務レベル、結構、やってないこと事実なんですから。どうです、大臣
  263. 渡部恒三

    渡部国務大臣 実態はそれぞれの都道府県の調査とか、今日までいろいろな調査もあります。そういうものを踏まえておるわけでありますが、ただ先生にも御理解いただかなければなりませんのは、踏み込んで、その離婚が正当なものであるかとか気の毒なものであるかとか、これを区分けすることになりますとプライバシーの侵害という問題等も出てまいりますし、全くおっしゃるとおりの本当に気の毒な場合、わがままな場合、いろいろなものがあるわけですけれども、そこで施策を行おうとすれば、やはり本人の所得というものを一定基準に置いて親の責任をお願いして、そしてその親がどうしても責任をとれないというようなこと、また養育費が取れないというような状態、そういうものに対しては弾力的に今後施策を講じていこう、こういうことでございます。
  264. 土井たか子

    ○土井分科員 一個一個のプライバシーにわたる問題まで発表しなさいと私は申し上げているわけじゃないのです。既に厚生省としては全国母子世帯等調査結果というのを出されているわけです。五十三年も出ています。昨年夏の調査があるはずですが、この結果はまだ未発表。この中では、一番最初に申し上げたように、離別、死別両方込みなんです。だから、離別の部分についてきちっとしたものを用意していただきたいと言っているわけですから、この辺がどうしてプライバシーの問題になるのです。大臣、それやってくださいよ。まずやってください。時間がないから大臣
  265. 渡部恒三

    渡部国務大臣 現在の厚生省の組織機能の中で把握できる母子世帯等の実態については、できる限り調査を進めた上で今回の政策が生まれておるのでありまして、これからはその離別母子世帯の中での詳細な調査というのはなかなか容易なことではないと思うのです。
  266. 土井たか子

    ○土井分科員 先ほど自治体の方でと言われましたが、今回の改正は自治体がやるのですか。そうじゃないでしょう。
  267. 渡部恒三

    渡部国務大臣 調査の資料、そういうものを……
  268. 土井たか子

    ○土井分科員 だから、その調査の資料といったって、厚生省として調査なすったわけではないんでしょうが。今までの母子世帯というものの調査は厚生省がやっていらっしゃるのですよ。母子世帯は、あくまで先ほど申し上げた込みなのです。今回こういう取り扱いをなさるについての基本に置かれている調査という点ではまことに不十分であり、その点が欠缺していると私は申し上げている、この意味はわかっていただけるでしょうね、大臣。どうですか。
  269. 渡部恒三

    渡部国務大臣 土井先生に畳みかけて言われると、なるほどそうかなというふうなことになってしまうのですけれども、これ、厚生省が調査するといったって、児童局長が北海道から沖縄まで歩くわけではありませんから、それぞれの市町村における調査とか都道府県における調査、そういうものを参考にすることは当然のことだと思います。
  270. 土井たか子

    ○土井分科員 それは当然でしょう。だけれども、今まで厚生省として発表されているのが申し上げたとおり込みでありますから、そういう改正厚生省改正案を用意されるのでしょうが。だから厚生省として、裏づけになるそういう調査というものが不十分じゃないかということを申し上げているのです。どういう資料を駆使されるか、そんなことまで私は申し上げておりませんよ。厚生省として責任を持った調査というものがないじゃありませんかということを私は問題にしているのです。大臣、どうですか。もう時間がないから事務レベル、よろしいです。大臣、どうですか、言ってください。これはやってくださいよ。まず必ず出してもらいます。改正案を出すに先立ってそれを出していただかないと、本当のところ改正案の審議ができませんよ。
  271. 吉原健二

    ○吉原政府委員 母子世帯につきましては、生別、死別をあわせましてできる限りの調査を昭和二十年代からやってきておるわけでございまして、五十八年の八月に行いました調査が一番最近の時点のものでございますけれども、その調査につきましても近いうちに詳細に発表ができると思いますので、その中でできるだけ死別、離別の世帯の実態というものを明らかにさせていきたいと思います。私は、離婚だけの、離別だけの母子世帯の調査をやるよりか、むしろ死別の世帯との比較あるいはその他の世帯との比較において母子世帯の実態をできるだけつかまえることの方がよろしいのではないかという考え方に、立っております。
  272. 土井たか子

    ○土井分科員 しかし、今回改正案をお出しになるのに対して必要な裏づけ資料という点からしたら、まことに不足のままで突っ走る格好になるのじゃないですかね。近い将来に出させていただきますという意味の御答弁ですが、それではだめですよ。改正案を出されるまでに、こういうことだ、ああいうことだということが納得のいく資料としてなければお話にならない。大臣、そうお思いになりませんか。これは順序ですよ。
  273. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今政府委員からお話がありましたように、もちろんこれは国の施策を立てることでありますから、私どもにとってはそれなりに納得のできる資料、調査、実態等を踏まえて行ったのでありまして、今局長から答弁ありましたように、それらの資料等はお求めがあればいつでもお出しし、また御説明を申し上げます。
  274. 土井たか子

    ○土井分科員 それでまた、密室でこそこそと男性ばかりが寄って、こうでもない、ああでもないと今回の改正についてお考えをなすったということがあります、審議会の経過からすれば。これ、ちょっと余りにも、片手落ちも甚だしいのじゃないですか。どうなさいますか、大臣、これからのお心づもりとすれば。このままで突っ走ったら、これはとんでもない話ですよ。
  275. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほど申し上げましたように、児童福祉問題懇談会で十五回にわたっての御審議をいただいております。ただ、女性がいなかったのだけ残念ですけれども、厚生省では政策課長が女性でございまして、児童扶養手当の改革に対しても大変な意欲を示して、理解を示しております。
  276. 土井たか子

    ○土井分科員 お役人だけでこういうことを決めて、お役人だけで政治ができるなんて、そんな話はないんじゃないですか。大臣、その御答弁ちょっとおかしいじゃないですか。これはもう一度やり直してもらわなければ困ります、この辺は。
  277. 渡部恒三

    渡部国務大臣 法律でございますから、当然国会で十二分に御審議をちょうだいしてこれを成立させていただくわけでありますが、これは一日も早く社会労働委員会の審議におろしていただいて皆さんからいろいろ御批判をちょうだいし、私どももお答えし、私どもは、これが今日、社会福祉のために進めなければならない法律であるという気持ちで出しておりますので、ひとつ御審議のほどをお願いしたいと思います。
  278. 土井たか子

    ○土井分科員 時間ですが、これは大事な問題です。もう一点だけこの問題について私は申し上げたいのです。  日本は国際人権規約に加盟をしております。批准したのです。日本は、日本国憲法の九十八条によりまして締結した条約は遵守するという義務がございます。これは大臣御案内のとおり。この国際人権規約というのは大臣もよくよく御承知だと思いますが、その人権規約のA規約第十条の3を見ますと、「出生その他の事情を理由とするいかなる差別もなく、すべての児童及び年少者のために、保護及び援助のための特別な措置が、とられるべきである。」ちゃんと書いてあるのです。それからしますと、今回未婚の母についてこれを打ち切るというのはおかしい話になりはしませんか。先日厚生省から説明を受けたら、道徳上の問題だと言われる。私はこれは二重におかしいと思っているのです。道徳、モラルの問題をどうして法律で規制するのですか。これが一つおかしい。  それから、国際人権規約を日本は批准している国なんですよ。それからすると、国際信義にもとります。国際的な趨勢からしてもおかしな取り扱いだということをはっきり申し上げねばなりません。外国では未婚の母の子を保育所へ優先的に入れることを考えている国すらあることは大臣御承知のとおりなんです。この点について大臣の感想を聞いておきたいと思います。横から事務レベルがぐじゃぐじゃ言う問題じゃない。政治家としての大臣の御所信ですよ。
  279. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは私どもの社会通念としては、男女が婚姻届を届けて夫婦になって、一般的に子供を生み育てていくわけでありますけれども、そうでない場合もあります。いずれもこれは人間として尊重していかなければならないこと、おっしゃるまでもなくこれは当然のことであります。しかし、その中に、やはりそれぞれの社会的な責任とかいろいろなものがありまして、これは保育所の今までの児童に対する取り扱い、そういうものの前例にならっておるものと承知しております。
  280. 小杉隆

    小杉主査代理 もう時間が参りました。
  281. 土井たか子

    ○土井分科員 これは考え方として私は大臣に申し上げたのです。だから、この点はひとつもう一度考え直しをしてもらわなきゃならない点であるということをはっきり申し上げたい。はい、はいと首を振らないで、マイクに向かって立って、もう一度考え直すとはっきりおっしゃっていただいて……
  282. 渡部恒三

    渡部国務大臣 私の尊敬する土井先生からの御指摘でございますので、十分勉強してまいりたいと思います。
  283. 土井たか子

    ○土井分科員 あと一分だけ。  私は、いろいろな事情が各自治体の方の窓口で起こっていることを聞き知りまして、これはちょっと困った問題だと思っていることを一問お伺いして、お考えをそれに向けていただきたいのですが、国民年金の中で任意加入の年金がありますね。これに加入しまして掛金をして、六十五歳になって受給資格ができたと思って御本人が受け取りにいらっしゃると、あなたは期間が少し足りませんということで受給できないという状況の人がかなりあるようです。これは窓口のミスと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、御承知の年金の複雑な仕組み、特に任意加入に対していろいろと期間を計算して大丈夫だというふうなことが、即刻その場所で受けつけて問題にできるということを強制するのはなかなか難しいです。だから窓口の責任にかぶせてしまうというのも、これは酷な話であります。しかしながら、加入をした本人にとっては、年金に対して非常に期待をしておるわけですから、こういう場合は掛金を返済するばかりじゃなくて、やはり期待権というのがあるので、利子をつけて返済するということをちょっと考えていただきたい。どうです大臣、これは検討しておいていただきたいと思いますが、検討していただけますか。
  284. 朝本信明

    ○朝本政府委員 ただいまの御質問でございますけれども、任意加入の被保険者につきましては、サラリーマンの被用者につきましては、空の、加入しておられなかった期間も資格の計算の基礎とする、これはもう先生御承知のとおりでございまして、任意加入の中で、国民年金に入っておられながら保険料を納められなかったごく一部の場合にそういうことが生ずるということは、先生おっしゃるとおり十分あり得ると思っております。が、国民年金の場合には、短期の遺族年金それから障害年金につきましてもその期間保障されているわけでございまして、お入りになりますときに制度の中身を十分知っていただくようにお話をするように指導をいたしておりますけれども、なかなかそれが複雑なだけに行き届かないというような面もあろうかと存じます。  しかしながら、そういう年金制度の建前上、なかなか保険料をお返しするというわけには、老齢年金だけについて保険料をお返しするというのはなじまないのではないかというふうに私ども存じております。
  285. 土井たか子

    ○土井分科員 大臣、ちょっとおかしいとお思いになりませんか。そのために掛金をしたのですよ。これは全然掛け捨てになっちゃう。受け取るわけにいかなくなる。それは返済するということと同時に、みんな期待して掛金をするのですから、六十五歳になったときに期間が足りなかったというのは本人の責任じゃないのです。本人は、受け付けてもらったから、それに対して期待をして掛金を一生懸命にやってきたという経過があるわけですから、今のようなぶつ切りみたいな御返答でそれは賄い切れる問題ではありませんよ。それは大臣少し勉強してもらって、これについてはやはりそれなりの措置というのを考えてみるということを御答弁くださらないと、もう時間を経過して、私はちょっと引くに引けなくなるのですがね。
  286. 渡部恒三

    渡部国務大臣 土井先生のお言葉でございますが、これは一つの約束事でやっておることでございますから、利子をつけてお返しするというようなことはなかなか容易でない。今政府委員から答弁のあったとおりだと思いますが、なお勉強はしてまいりましょう。
  287. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて土井たか子君の質疑は終了いたしました。  次に、小激正義君。
  288. 小渕正義

    小渕(正)分科員 私は、厚生省の行政の中における内容について、特にビル管理関係の行政指導等についてちょっとお尋ねいたします。  これは、五十八年七月二十六日厚生省環境衛生局長のお名前で通達が出されておるわけであります。「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録に係る監督者等の再講習の指定基準について」、こういう形でビル管理関係の仕事をなさっている人たちの再登録についての通達が出されておるわけであります。これでいきますと、五十六年五月より新しい形で発足した関係から、三年目の今年度が再登録をするこういうところに来ているような状態だと思いますが、このたびのこういった対象になる登録者は全国的に大体何名ぐらい存在しておるのか、まずその点をお尋ねいたします。
  289. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 今先生お話しのように登録制度昭和五十六年五月から始まっておりまして、五十七年末現在で登録営業所数が六千三百六カ所になっております。これが登録の有効期間が三年でございまして、ことし五十九年五月以降、再登録と申しますか、登録の更新と申しますか、そういう時期を迎えるわけでございます。そのときに監督者等について再度講習を受けていただくということに相なっておりまして、現在監督者等の人数は一万三千百八十三人でございます。
  290. 小渕正義

    小渕(正)分科員 再登録をするために必要なものとして再講習を受けて、それに立って再登録をするということが義務づけられているわけですね。そうしますと、この種の新しい制度が発足してから今回が初めてでありますので、この再講習のあり方について、それぞれの段階で若干いろいろな不安その他問題があるようにお聞きしておるわけでありますが、要するに、再講習を受けた者はすべて再登録される、このように理解していいものかどうか、その点はいかがでしょうか。
  291. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 一度監督者になっていただきまして、つまり最初に講習を受けていただきまして、三年目にもう一度再講習ということでございます。これは技術が日進月歩いたしておりますので、その三年間のそういった技術の進歩に対応して再度講習を受けていただくということでございます。したがいまして、最初の講習よりも期間もごく短縮をいたしますし、受講をしていただきますれば、特別の事情のない限り修了証をお出しするということに相なっております。
  292. 小渕正義

    小渕(正)分科員 特別な事情がない限りにおいては再講習を受けた人については再登録をする、こういうことですね。
  293. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 そのとおりでございます。
  294. 小渕正義

    小渕(正)分科員 実はこれ、先ほどお話がありましたように、本年が第一回目のそういった再講習の年次になりますので、まだ完全に五十九年度は終わってないようでありますが、一部昨年の十一月ごろから地域によって実施されているわけですね。そういう中で、実は非常に受講者の人たちが不安に思っておられるのは、県段階では今おっしゃられたような、再講習を受けられた方々についてはもう問題なしだ、再登録は問題ないんだというような指導といいますか、説明をなさっているようでありますが、実際にこの再講習を受けに行かれた人たちお話を承りますと、必ずしもそういうものではない。かなり厳しい再講習の中の指導が行われて、最後には試験制度導入されて試験を行われる。その結果いかんでは再登録はしないんだ。こういう形で講習の中でそういった強い姿勢の中で行われておるということは、こういった再講習を受けられた人の中には、かなりそういう意味で非常に熱心に、真剣に取り組んでおるとしながらも、再試験だというような形で受け取られておりまして、そういう意味での非常に不安感といいますか、危惧の感をお持ちになっている人たちがたくさんおられるわけでありますが、そういった点については、特別よっぽどの何かない限りにおいては、まじめに再講習を受けた者については再登録は間違いない、このようにはっきり理解していいですね。
  295. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 講習の中で、あるいは十分講習をお聞き取り、御理解をいただいたかどうかという意味でテストのようなことをやっておるのではないかと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、欠席をするとか特別のことがない限り、日程どおり受講していただければ修了証を出すということに、都道府県を再度また指導いたしたいと思います。
  296. 小渕正義

    小渕(正)分科員 その点はまだ今年度五十九年度完全に行われておりませんが、一部五十八年暮れから行われた中においては、今申し上げましたような、受講者の人たちに非常に大きな不安感を持たれたような現象が出ておったように承っておりますので、ぜひ今局長お話しになったような形での指導を徹底していただきたい、このようにお願い申し上げます。  それから、再講習の場所でございますが、私も資料をいただいておりますが、厚生大臣指定の再講習会の実施予定といたしまして、昨年の十一月から本年の十二月までそれぞれのコース別に出ておりますが、九州の場合には福岡に行って講習を受けるのが四カ月に一回くらいの機会しかない。大体これを見ると、一つのコースでは、一年のうちに福岡ではわずかことしの三月一回きりしかない。それを外すともう名古屋とか大阪とか東京に行かなくてはならぬ。コース別によって必ずしもそうでございませんが、空気環境測定実施関係について見ますならば、二月に福岡が行われ、あとは九州関係はもうない。それぞれ福岡なら福岡、九州を福岡だけに絞るならば、もっと福岡を、九州での福岡を年に数回でも設けられるならいざ知らず、そういう意味で一番身近な地域で受講しようとした場合に年にわずか一回くらいしか機会がない。あとは、もうそれを外すと、大阪なり東京なり名古屋なり、そういうところに行かなくてはいかぬというような状態になっているようであります。本年度最初、第一回のあれでしょうから、いろいろな御事情があるかもしれませんが、そういう意味での地域、行われる場所等を、もう少し回数をふやすか、何といいますか、受けられる方たちが余り経費増にならないで何とか再講習を受けられるような、そういう方途をもう少し考えていただかないことには、講習の中身を見ますならば必ず最低二日間はかかる。宿泊費を出して受講してしまうまでにはかなりそういった意味での経費負担増を課せられているような感じもするわけでありますが、この点についての何らかのもう少し御配慮、御検討、そういう意味での余地がないものかどうか、その点、いかがでしょうか。
  297. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 この講習会はビル管理教育センターという財団法人が実施をいたしておるわけでございますが、できるだけ受講者の方々の利便を考えて実施計画を立てるように言っておるわけでございますが、細分をいたしますと、受講者数が一単位が減りまして、そのために受講料の問題、コストの問題等が出てまいります。そういった点もございますが、これからが本番であろうかと思いますので、できるだけ受講省の方々の利便を図るようよく検討もし、指導もしてまいりたいと思います。
  298. 小渕正義

    小渕(正)分科員 またこれはスタートでありましょうけれども、受講者についての便宜を図られるような御検討、御配慮をぜひひとつお願いしたいと思います。  それから、参考のためにお尋ねいたします。  ビル管理教育センターが一手にこれを引き受けてやられておるようでありますが、このビル管理教育センターはこういった講習、教育、これを主体にするために設置されたものかどうか、このビル管理教育センターの設立の時期及びそれぞれの内容等について御説明いただければと思いますが……。
  299. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 ビル管理教育センターは昭和四十五年の八月に設立をされております。一般的に人材の養成でございますとかPR資料の作成とか、そういったことをやっておるわけでございますが、項目的に申しますと、今御議論をいただいておりますような各種の講習会の実施、それから二番目に飲料水の水質検査の事業、それから三番目に建築物環境衛生にかかわりますいろいろの調査研究の仕事、それから関係の図書の発行、そういったものがこの財団法人の主な事業内容でございます。
  300. 小渕正義

    小渕(正)分科員 わかりました。先ほど申しましたように、第一回であったからかもしれませんが、これら関係者は非常に今回の再講習のあり方について不安を持たれておった関係から、私も直接こういったお話を承ったわけでありますが、先ほど御答弁ありましたような形でこれからも善処されることをよろしくお願いしておきたいと思います。  次の質問に移りますが、実は昭和四十二年の三月一日、社会保険各省連絡協議会の名前で「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」ということで一つの通達が出されているわけであります。これは要するに健康保険の中における夫婦共同扶養の場合における被扶養者をどちらにするか、それの認定基準について出されているわけでありますが、まず第一に「被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、原則として夫の被扶養者とすること。」二つ目が「妻の所得が夫の所得を著しく上回る場合」ということで、この場合三〇%ということになっているようでありますが、その場合に限って妻の被扶養者として取り扱うことができる。それから三つ目に、なお「前記①及び②にかかわらず、当該被扶養者に関し、扶養手当又はこれに相当する手当の支給が行なわれている場合には、その支給を受けている者の被扶養者とすること。」というふうに三つ出ているわけですね。  したがって、これでいきますと、①、②、③と今私申し上げたのでありますが、これの解釈といいますか見解をめぐって、かなり実施段階において健康保険組合の中においての混乱が実はあるようでありますが、厚生省としては、四十三年に出されたこの通達のまず何といいますか、ねらいといいますか、これを、並列的に①、②、③というものを受け取るべきなのか、あくまでも①がまず一であり、それで②である、そして③であるというふうに受け取るべきであるのか。この点について厚生省当局自身の見解が若干当事者によってはまちまちのごとくにお話も承っておるわけでありますが、その点について、再度今私が申し上げたようなことについての御見解をひとつお示しいただきたいと思います。
  301. 吉村仁

    ○吉村政府委員 被扶養者の認定に関し、御指摘のような通達を出しておるわけでございますが、私どもこの通達を出しました趣旨は、被扶養者の認定を迅速にやる、だれかの被扶養者にしない限り保険の適用がないわけでございますから、被扶養者の決定というものを迅速にやるためにどうするかという基準を各省共済組合も含めまして協議をして、一つの結論に達しましてこの通達を出したわけでございます。したがって、この通達の目的というのは、被扶養者認定の事務処理を迅速にして、いずれの被扶養者にも属さないとかあるいはどちらの被扶養者に属するか不分明だというような事態をなくしたいというのが一つの目的でございます。  それから被扶養者の認定に関する基準としまして、今先生の御指摘の三つの基準がございます。私どもは、まず第一に給与の実態、つまり扶養手当が出ておるかどうか、これが一番確定的な形としても明らかなものでございますので、扶養手当が出ておればこれはその被保険者の家族にする、被扶養者にするというのがまず第一であろうかと思います。そして扶養手当が夫の方にも出ておるし、妻の場合にも出ておるというような状態があった場合には、まず原則として夫の方の被扶養者にするというのが第二番目でございます。しかしながら、法律の規定が生計維持関係というようなものを本人と被扶養者の関係として法定しておりますので、もし奥さんの方の所得が非常に高い場合には奥さんの方にする、そしてその奥さんの方と夫の収入の比較をいたしまして、三割以上奥さんの収入が高い、こういうような場合には奥さんの方の被扶養者にする、こういうことでございまして、私ども、被扶養者でございますからどの被扶養者になってもいいわけでございますが、少なくとも社会保険の取り扱いとしてはそういう形で被扶養者を確定していきたい、こういうことでやっているわけでございます。
  302. 小渕正義

    小渕(正)分科員 今の御答弁と通達とをあわせてみますと、今御答弁なさったようなことであるならば、まずそれを第一に挙げるべきでないですか。扶養手当が出ている者に対して被扶養者とするということをまず第一に出して、その次に先ほど言ういろいろなものが出てくるべきじゃないかと思いますが、今のこの通達をもって読むならば、いろいろありますが、「家計の実態、社会通念等を総合的に勘案して定めることが必要であるが、具体的には次により処理するものとする。」ということで、まず①には「被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、原則として夫の被扶養者とすること。」これがまず最初出てきておるわけですね。今の局長の御答弁であるならば、扶養手当を受けている者の被扶養者とするということがまず第一に出てこなければいかぬのじゃないですか。私ども、少なくともこういった条文を読む限りにおいては、今の答弁とこの通達とはちょっとあべこべじゃないかという気がするのですが、その点いかがですか。
  303. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに論理的におっしゃるならばそのとおりでございます。書き方は少しまずいのかもわかりません。①と②と③が並列のように通達を書いておるところが一つの誤解を招くゆえんかもわかりませんが、③というのは「前記①及び②にかかわらず、」ということで全部否定をしまして並列的な書き方になっておるということで、私どもの通達上の技術的な取り扱いということでございますが、もしこれが誤解を招く原因ならば、今先生御指摘のように順番を変えるべきかもしれません。
  304. 小渕正義

    小渕(正)分科員 私どももこの通達を何回も読み返してみたんですが、解釈論は二つあるのですね。①があり②があり、そして③は①、②に対する救済措置的な考え方から出てきておるのではないかという見方ですね。普通、法文上その他こういう規則、規定をつくる場合における考え方からいくならば、大体それが一般的じゃないかという感じもいたします。しかしながら、文章を子細に読んでみますと、③は①、②を否定してはっきり出しておるというところに一つの問題点もあるわけでありますが、問題は、それぞれ健康保険組合その他の保険組合において、それに伴うところのそういったいろいろの会社の中において扶養手当があるところとないところ、そういった問題等があるからこそ混乱してくると私は思うのです。  実は、共稼ぎの中で第一子は夫が扶養手当をもらって夫の健康保険の扶養家族にする。第二子は今度は妻の方が一別の会社ですから、妻の方は、所得税法で考えますならば扶養家族手当として制度があれば本人はそれはもらう資格があるわけですから、そういった意味で妻も扶養手当をもらっている、そういう場合に、今度第二子を妻の方の健康保険組合の被扶養家族として認定していく。要するに、こういった形でいきますならば、分離扶養ということをそのまま促進させるというようなことになりかねないわけでありますが、健康保険組合の本来的なあり方、趣旨からいって、そういった分離扶養といったあり方が好ましいのかどうか、その点はどのようにお考えですか。
  305. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先ほど申し上げましたように、扶養手当が出ておるかどうかというのをまず一つの基準にするといたしますと、今先生御指摘のように、もし第一子の扶養手当が夫の方で出て、第二子の扶養手当が奥さんの方に出ておる、こういう実態があるとすれば、これはそれぞれ分離して被扶養者の認定をせざるを得ない、こういうことになります。私どもは、それが好ましいか好ましくないかという判断よりも、第一子はだれの被扶養者になるか、第二子はだれの被扶養者になるか、だれの被扶養者になるかということを確定する方が、保険の保護を与える上からいって必要なんでありまして、分離扶養がいいか悪いかという判断につきましては、保険として判断すべき問題ではなかろうというように考えておるわけであります。技術的に、この子供はだれの被扶養者にして健康保険の適用をするか、この子供はだれの被扶養者にして健康保険を適用するか、こういうことを確定的に早くやることの方が、社会保険の事務としてはむしろより重要なことではないかというように考えておるわけでございます。
  306. 小渕正義

    小渕(正)分科員 今そのようなお話がありましたが、かつては厚生省としては分離扶養は好ましくないという形でずっと行政指導されておったことがあるのでしょう。今はそういう見解をお持ちですけれども、分離扶養については好ましくないという形の中で今日まである程度指導されてきて、いろいろな状況の中でこういう通達をつくらざるを得ないような形になってきたのではないか、私どもはこのように承っておるわけです。今ここにその証拠を示せといっても、ちょっと資料を持ち合わせておりませんが……。  それで、そういう形で考えて、なぜこういう問題を私は提起したかというと、厚生省は健康保険の改正法案を今度国会に提出されるわけですね。今健康保険組合自体が財政上の問題でそれぞれがみんないろいろと非常に真剣に苦労されておるわけですね。そういう中で、今申されたような方向で行われるということは、組合健保の中では、それぞれの健保の中身によって、財政上の関係で付加給付がいろいろ違います。そうしますと、そういう付加給付を比較しても、同じ組合健保の中でも非常に高い付加給付をやっているようなところもたくさんありますから、共稼ぎの場合、みんな被扶養者をいいところの健保に全部入れてしまうという傾向になっていったら、これは組合健保でも大変なことになるわけです。そういう意味で、何で改めて今私がこんな問題を出すかというようなことをお思いかもしれませんが、そういった影響が極めて大きいような内容を含んでいるものですから、この点に対する指導というのか見解というものをよっぽどきちっとしておかないと、それぞれの現場段階では非常に混乱していく、そういうことから考えまして、あえてこの通達の問題を実は引き合いに出したような次第です。  したがって、健康保険組合のあり方としては、分離扶養は好ましくないような方向で従来厚生省として指導されてきたという面もあるわけですから、それが今になってこういうような形で、今局長がはっきり言われるような割り切り方をしたことだけで果たしていいのかどうか。そういう意味では、健康保険組合関係の業界の中でこれがかなり大きな混乱を招く要因になりつつある、こういう状態にあるということをひとつ認識していただきまして、この点についてはもう少しいろいろ実態を見ていただいて、ただ扶養手当がもらえれば、それをもって被扶養家族にするということだけで簡単に割り切っていいのかどうか。そういったことをやることが、先ほど私が申しましたような傾向にどんどんなっていく可能性が非常にあるわけですから、そこらあたりはもっといろいろな事例の中での検討が十分慎重に進められなければならないと私は思うのでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  307. 吉村仁

    ○吉村政府委員 おっしゃるような事態を避けたいために、形としてわかるところから押していくのがいいのではないか。したがって、扶養手当が出ておるかどうか、こういうのは極めて形としてわかりやすい、そこがまず第一。そして、そこが出ておったり出ておらない企業もあると思います。したがってその場合には、原則として夫にいたします、もし夫よりも妻の方が著しく所得が高いという場合には妻にいたしますという形で処理するのが一番明確なのではなかろうかというように私どもは考えておる次第でございまして、個々具体的に何かトラブルが起こる。要するに被扶養者争いみたいなものが起こった場合には、私ども保険課長のところで十分そのあっせんをして、決定をするような努力をいたします。
  308. 小渕正義

    小渕(正)分科員 今局長が言われたその点を非常に重視されて、そちらを重点に指導されるならば、ここで言われている二項の、妻の所得が三〇%多い場合に妻の扱いにするとなっているわけですね。逆に、妻の収入が三〇%、四〇%夫よりも低いにかかわらず、扶養手当をもらっているからと言って妻の方で被扶養者扱いになる、こういう現象がどんどん出てくるわけですよ。だからそういう点、いろいろ考えますならば、今局長が言われただけで割り切れない問題がいろいろあるわけです。特に分離扶養については好ましくないという形でかなり指導されてきたというような過去の経緯等も考えまして、この点についてはもう少し慎重なる検討を要するのではないか。私はそういう意味で問題提起をしておるわけですから、そういった点でこの問題をもう一度とらえていただいて、ひとつ十分慎重な御検討をいただきたい、かように思います。
  309. 吉村仁

    ○吉村政府委員 十分御趣旨を踏まえまして検討させていただきます。
  310. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて小渕正義君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  311. 大原亨

    大原分科員 きょうは、原爆被爆者対策予算に関係をして具体的な問題についてお尋ねをいたします。  第一の問題は、新しい予算の項目としまして、原爆被爆者保健福祉施設運営費の中に、原爆被爆者実態調査準備費というのが二百万円計上されております。これは従来からいろいろと国会でも長い間議論をされてまいりましたことでありますが、これに関係してお尋ねをいたしたいのは、広島、長崎の原爆による死没者の人数、実態について、現在政府としてはどういうふうに事実を認識されておるかという点をお聞かせいただきたい。
  312. 大池眞澄

    ○大池政府委員 被爆によります死没者数についてでございますが、これまで行われました幾つかの調査の結果の数値がございますが、残念でございますが、正確な数値は必ずしも明らかでないという状況にございます。  昭和二十一年の広島市の調査課の調査によりますと、原爆投下による広島の死者は約十二万人と報ぜられておりますし、昭和二十五年の原爆資料保存委員会の報告によりますと、長崎では約七万人となっているところでございます。  なお、今日既に三十八年を経過したわけでございますが、今日の段階でこれ以上の資料を把握するということは技術的な観点から極めて難しいことであると考えております。
  313. 大原亨

    大原分科員 その死没者は、八月六日と八月九日の両日の被爆の瞬間的な死没者ですか。それとも原爆による数千度、百万単位と原爆の中央での温度は高いわけですけれども、しかし落下いたしました時点では数千度というように言われておりますが、この熱線あるいは爆風あるいは放射能、こういうものによる障害に起因をして瞬間的にあるいはその直接の影響で死んだ人、こういう点があると思うのですが、その範囲はどういうふうに限定をした数字ですか。
  314. 大池眞澄

    ○大池政府委員 広島、長崎のそれぞれの調査は、広島につきましては昭和二十一年に実施しておりますし、長崎におきましては昭和二十五年に取りまとめておるというような関係がございまして、ただいまの御質問につきましては若干幅のある時間帯での亡くなられた方の数値を掌握したものだと思います。  広島につきましては八月六日現在の在市者ということを前提に調査したという記載がございますけれども、御指摘のように、瞬間的に亡くなられた方もございますが、若干の日にちを置いて急性影響という中において放射線そのものあるいは熱線等々の被害の結果亡くなられたというものも先ほど申し上げました数字の中には入っておるものと考えております。
  315. 大原亨

    大原分科員 申し上げたように、熱線とか爆風とか、この風圧あるいは放射能の言うなれば直接的な影響、こういうものによって瞬間的に亡くなった人もたくさんある。しかし、その後吐血をしたり、血便を出したり、やけどをしたり、放射能の言うなれば急性の影響で死ぬる、こういう人があったはずであります。そうすると、時間的にはどういうふうに理解をして、十二万と七万の死没者を理解されておるのですか。
  316. 大池眞澄

    ○大池政府委員 全体を一つの調査で説明できるという資料は存在しておらないわけでございますけれども、裏返して申し上げますと、いろいろな当時の部分的な状況から先ほど申し上げましたようなことが想定されるわけでございます。  なお、昭和二十六年の日本学術会議の報告書がございますが、「原子爆弾災害調査報告書」によりますと、爆発直後二週間へかけましての死亡者は犠牲者の約九〇%に当たるとしておりますし、第三週から第八週までの間に残余の大方の方が亡くなっておられる、こういうような記載がございます。
  317. 大原亨

    大原分科員 国として対策を取り上げたのは原爆医療法ができた昭和三十二年でありますが、それから被爆者の登録や手帳の交付が始まったわけであります。恐らくそれ以降は、どういうことで死没をされたかということはわかると思うのです。しかし、それ以前の問題についてはしばしば今までいろいろな資料を整理してやったわけでありますが、そのことについてはお話しのように政府自体としてはこれを把握していないわけであります。ただ、旧ABCC、放影研にいたしましても。これはアメリカの占領軍が直後参りまして影響調査したわけですから、これは現在は放影研は日米フィフティー・フィフティーで経営をいたしておるわけですから、ずっと継続的な資料を追跡いたしてみましても、死没者の実態などというふうなのはわかると私は思うのであります。可能な限りわかる。あるいはまた直接の被爆の直後にどういうことのためにどういう症状を呈したかということについてもわかると思うのです。ですから、そういう問題を含めてやはり被爆の実態を調査することが必要である、こういうことをしばしば今まで議論してきておるわけですが、この政府の今回の実態調査は昭和六十年、来年にやる国勢調査に関連をした附帯調査に関する調査事項であると思います。ですから、急性の瞬間的な、あるいは急性の症状で亡くなった人、あるいはその後慢性の疾患で亡くなった人、私は専門家でありませんが、加齢現象とか老化現象が早く進むとか、治癒能力が劣るとか、そういう機能的な障害が被爆者には発生をしておる、こういうことであります。私は、唯一の被爆国である日本、こういうわけですから、そういう実態をできるだけ実態に近い形で追跡して、実態調査をして、そして原爆の影響というものに対する対応策を考えるべきであると思います。  そういう意味においては、後でまたひとつ最後に大臣が見えてから質問をいたしますが、この問題について準備費を二百万円計上されまして来年の調査についてどういう考え方で調査をしようとしているか、こういう点についてお答えいただきたい。
  318. 大池眞澄

    ○大池政府委員 国といたしましては、御承知のとおり、昭和四十年及び昭和五十年に、十年ごと被爆者の実態調査を実施してまいったところでございます。それぞれ昭和四十年、昭和五十年におきましては被爆者の方々の生活の実態、健康の状態等を中心にいたしまして全国規模におきまして調査を実施したところでございます。今回の昭和六十年に予定いたしたいとしております実態調査につきましては、この経緯を十分に踏まえまして、被爆者の実態を現時点で把握するという目的で、五十九年度予算をお認めいただきましたら、その準備のための専門家のお知恵を拝借するというところから着手いたします。そしてそこにおきまして、これまでの経緯を踏まえました上で、現時点で最も効果的に実態を把握できる方法あるいは調査項目等々種々御検討いただく、こういう予定をしているところでございます。
  319. 大原亨

    大原分科員 これは大臣にも聞きたいと思うのですが、来年は十年ごとの一つの節目の調査である。そういう意味において、放射能が瞬間的にあるいは慢性的に長期的にどういう影響を及ぼすか、あるいは熱線や爆風がどういうふうに健康上あるいは社会的に影響を及ぼすか、こういう問題を含めて、死没者等についても一つの考え方で実態を調査していくべきではないか、私はこう思いますが、それを含めてやる意思があるかどうかをお聞きいたします。
  320. 大池眞澄

    ○大池政府委員 放射線並びに放射線と同時に発せられました熱線等の影響につきましては、先ほど先生の御発言にもございましたように、ABCCの調査研究にスタートいたしまして、その後それを受けて日米、フィフティー・フィフティーということで放影研が精力的に取り組んできているところでございます。その研究の幾つかの主要な流れの中において、これまでも取り組んでおりますし、これからも継続的に計画的に取り組んでいくところでございます。  また、死没者の調査につきましては、先ほど申し上げましたような実情を御考慮いただきますと、なかなか実行は難しいということで、私どもとしてはこれは六十年の実態調査では考えていないということでございます。
  321. 大原亨

    大原分科員 昭和五十六年に調査をしたことがありますね。十年、十年の節目ではありませんが、昭和五十六年に調査したのです。その調査については発表するということだったのですが、いまだに発表していないわけです。これは、調査の仕方が悪かったのではないか、集計がうまくできていないのではないか、私は一般的にこういう疑念を持っているわけです。今度は新しく準備費として二百万円計上しまして、六十年に十年の節目ごとの調査をやるわけですから、私としましては今まで申し上げましたように、原爆による生命や健康や生活に対する影響、やはりそのことが反映できるような、掌握できるような調査の仕方をしてもらいたい、そう思います。いかがですか。
  322. 大池眞澄

    ○大池政府委員 御指摘のとおり十年目に行う調査ということで、その意義は大変重要なものと考えております。国内のみならず国際的にも注目を浴びる調査であろうかと存ずるわけでございますが、専門家の知恵も十分かりながら、できる限りの効果的な調査にいたすべく努力をしたいと思っておるところでございます。
  323. 大原亨

    大原分科員 五十六年調査の結果を発表すると言って発表しなかったのはどういう理由ですか。
  324. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ただいまの御設問の五十六年調査は、五十六年度予算ということで五十七年の二月に実施いたしたものかと存ずるわけでございますが、その後集計、突き合わせ等々若干時間がかかった点は大変申しわけないと思っております。これまでにおおむね集計も完了しましてまとまったところでございます。
  325. 大原亨

    大原分科員 発表するのですか。
  326. 大池眞澄

    ○大池政府委員 これは私どもとしては、部分的にはもう既に五十九年度予算要求等の資料にも活用させていただいておりますし、行政資料としては十分活用しているところでございますけれども、特に広く全国を調査したという性格のものではございませんで、広島、長崎だけに地域を限定して、ただいま申し上げましたような行政資料を得る目的の調査というようなことでございましたので、現在、特に発表の計画はございません。
  327. 大原亨

    大原分科員 それは今までは発表すると言ったのだよ、国会で。発表すると言ったのになぜ発表しないのか。  時間が惜しいですから、そういうことで、これはやはりへっぴり腰で調査したと思うのですよ。今度は、この厳しいときに準備費として二百万円新しく計上して実態調査の準備を進める、こういうことですから、私はやはり一つの節目として今までの研究成果を結集できるように、死没者を含めて、統計上もあるいは科学的にも、あるいはこれからの健康上の対策や生活問題からもやってもらいたい。  大臣、私はこの原爆の問題は、論議する長い時間はありませんけれども、今までの戦争というのは、やるにいたしましてもマン・ツー・マンで人間と人間。鉄砲もそうです。機関銃にいたしましてもそうです。飛行機から焼夷弾を落とすときもそうですが、やはり軍事目標主義というのがあったわけです。しかし、原爆というのは、今までこれは質疑応答で若干いたしましたが、瞬間的には二十万ないし直後の被害者を入れますと三十万。広島、長崎の二発の原爆で三十万。今手帳を持っておるのは三十七万人ですから、一定の条件の中で放射能や影響を受けている人が三十七万あるのです。ですから、これは非常に普遍的な、全面的な戦争形態に移ったことになります。非戦闘員をも対象にする。だから、マン・ツー・マンの今までのような戦時国際法の認識だけてはいけない。こういうことで国はこの原爆に対しましてはいわば国家補償の精神で、アメリカとかどことかということでなしに、国際法に違反する非人道的な手段によって被害を受けたわけですから、これは国家補償の精神でやるべきだと思うのです。  七人委員会では、大臣も間接的にはお聞きだと思うのですが、今までいろいろ議論してきました。田中二郎さん等亡くなった方もありますが、しかし非常に古い国際法の頭で議論している。国際法の常識が非常に古い。ヘーグの陸戦法規や海、空の法規ですが、基本的に言えば、そういう点の発想を転換して、これからはこういう原爆は許さないという観点で、唯一の被爆国である日本は立法上の、国際法上の解釈や要求もすべきだということでこの問題の処理をすることが重要であるというふうに私は考えておるわけであります。  これから法律の審議もあるわけでございますから、きょうは予算に関係したことだけを申し上げておきますが、この点についてひとつ大臣の、今まで聞いておられませんけれども、申し上げた点について所見をお聞かせいただきたい。
  328. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大原先生おっしゃるとおりだと思います。我が国はこの地球上において最初に原爆の被害を受け、むごたらしい惨状を受けた国でございまして、この被爆者対策というものは、国家の責任において、また世界の人道上の問題として、これは皆さん方、今御指摘されました大原先生のお考え、私も同感でありますので、今後も、この法律もできておることでありますし、その精神にのっとって万遺憾なきを期してまいりたいと思います。
  329. 大原亨

    大原分科員 今度新しく準備費を二百万円計上されて、昭和六十年に十年ごとの調査をやられるわけです。ですから英知を絞って、放射能とか熱線とか爆風とか、そういういまだかつてない障害原因による被害を受けたわけですから、そのことについて十分実態が、障害の影響が反映できるような調査を、遺憾なきを期してもらいたい。これは要望しておきます。大臣、簡単にひとつ。
  330. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今御指摘のように、今回の予算でも六十年度に被爆者の実態調査を実施するための予算も計上し、また五十九年度予算でも、先生方の応援を得まして市町村の範囲拡大等の予算も確保しておりますし、これからもその対策に対してはできる限り強く内容充実強化に努めてまいりたいと思います。
  331. 大原亨

    大原分科員 第二の問題ですが、今度の原爆関係の予算にはありませんが、原爆病院に千二百万円、原爆特別養護老人ホームに千二百万円新たに計上をされたわけでありますが、これは被爆者に対する福祉対策であると思います。治療福祉対策であるというふうに思います。これはなぜ原爆関係の予算に計上しないで一般予算に計上されたのですか。
  332. 大池眞澄

    ○大池政府委員 これはただいま御指摘のように、原爆ホームと原爆病院に対する補助でございますが、予算の整理の都合上、保健衛生施設等設備整備費ということで計上いたしておるところでございます。
  333. 大原亨

    大原分科員 私はこれをとやかく言いません、大臣もその当時大臣じゃなかったのですから。  去年、中曽根さんが広島へ行かれまして、原爆病院やあるいは老人ホーム等をごらんになったわけです。視察されたわけです。見舞いをされたわけです。それが契機でこういうふうに福祉予算を計上されたというふうに私は思います。そのときにいろいろ話がございまして、病は気からという話をしまして、それで被爆者の心情を逆なでするというようなことがございました。その罪滅ぼしてあるとは思いませんが、恐らくそういうことだと思う。  それとは別に、今広島市の船入町に原爆養護老人ホームというのがあります。最近狭隘になりましてから、牛田町という町の一角に老人ホームの支所ができました。船入町という旧市内のところは交通の便利もよくて、病院と併設されておりますから被爆者の人は非常に喜んでいるわけです。ただ、老人ホームを見ますと一部屋十名という部屋がある。恐らく中曽根総理大臣も行かれて見られたと思いますが、十名。それで、ベッドとベッドの間が非常に狭くて車いすも入らない。ですから、お年寄りや障害を受けている人が自分で自立の訓練をしたり生活をしたりする場合に非常に狭隘です。老人ホームなどは、これから新しいものは全部四名以下とか二名程度が基準であります。ですから私の希望は、皆さん方の希望でもあると思うのですが、そういう老人ホームの改善を将来やってもらいたい。そうして、人数がふえて足りなくなったものですからもう一つ老人ホームの文所を設けているのですが、それはいいのです。これは新しくてかなりいいと思う。それでこっちの方はもう少し、交通の便利のいいところですから、例えばデーケアとかいって、毎日毎日のケア、あるいはショートスデイサービスというふうな短期間の、一週間なら一週間被爆者が在宅している場合にそこで療養できる、保養できる、そういうふうなものも考えて、定員は十名というのでなしに四、五名程度以下にいたしまして、そういう施設をも改善するような近代的な、在宅ケアを中心としたそういう養護ホームのような新しい形態のものに改革をしてもらいたい、こういう希望を持っておる。せっかく千二百万円ずつ病院と両方にやられたわけですから、これは本年だけ、罪滅ぼしじゃないけれども、ちょっとそういうことでやったということでなしに、継続をして老人ホームの改善等努力をしてもらいたい、私はそういう希望を持っておるわけですが、いかがでしょうか。
  334. 大池眞澄

    ○大池政府委員 利用しておられます被爆者の方方のニード等も十分勘案しながら、また、御指摘のような点につきましては、施設設備面もさることながら、それに従事するためのマンパワーの確保等いろいろな問題点があるわけでございます。それからまた、現状につきましても、例えば被爆者の方で寝たきりというような状況になりますと、どうしても畳の上よりはベッドの形の方が介護をする上からも効果的に行える、そういうような事情もありまして、一部屋にあるいは多数の方がおられるというケースもあろうかと思います。ただ、一般的に、私どもの承知しております範囲では、私どもも、適切な基準面積というようなものを考えて、そういったものをもとにして必要な助成を行っているわけでございますが、その基準面積から見ますと、一応それぞれの施設が基準には合致しておるというような状況でございます。  なお、御指摘の点につきましては、いろいろと御要望の点も含めまして今後とも検討をさせていただきたいと思います。
  335. 大原亨

    大原分科員 原爆病院と特養の千二百万円ずつというのは、これで終わりじゃないでしょう。これは一年きりですか。そういうことはないでしょう。
  336. 大池眞澄

    ○大池政府委員 この経費につきましては、当面単年度という前提で予算案を計上しておるところでございます。
  337. 大原亨

    大原分科員 この後もやはり、そういうものについてはぜひ――大臣、原爆というのは一遍に非常に多数の家族とか家がやられるというふうな特徴が一つあるわけですね。それから病気自体が、加齢現象といって老化現象が早いということがあるわけです。それから在宅ケアの問題とか、孤老の問題とか、一人暮らしの問題とかいう社会問題があるわけですから、養護老人ホームや原爆病院についてはその特徴を考えて、一年きりというふうなことでなしに、中曽根さんが行かれたところが一千二百万円ずつつくというようなことだけではなしに、それを機会に設備が改善される、こういうふうに将来ともぜひとも努力をしてもらいたい、こういう点を大臣に申し上げます。一言だけ。
  338. 渡部恒三

    渡部国務大臣 いまお話しのありました原爆養護ホーム、また原爆病院等これらの設備を充実させ、また、入所者等の要望にさらにきめ細かく対応できるように、新しいそれぞれの設備等を充実していくこと等について、今後もなお一層の努力を重ねてまいりたいと思います。
  339. 大原亨

    大原分科員 終わります。
  340. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて大原亨君の質疑は終了いたしました。  次に、近江巳記夫君。
  341. 近江巳記夫

    ○近江分科員 私は、麻薬、覚せい剤等の問題についてお伺いしたいと思っておりますが、特に覚せい剤を中心としてお伺いしたいと思います。  御承知のように、戦後第三期の薬物乱用期と言われるほど、特に覚せい剤を中心といたしまして汚染が拡大しておる、青少年を初め一般家庭にまで浸透してきておる、こういう非常に深刻な状況に今なっておるわけでございます。こうした大変な社会問題になってきておるわけでございますが、この点をどのように認識されておられるか、まず担当局長、そして大臣から所感をお伺いしたいと思います。
  342. 正木馨

    ○正木政府委員 麻薬、覚せい剤禍の問題でございますが、先生おっしゃいますように、なかんずく覚せい剤禍の問題は非常に深刻な問題でございます。  覚せい剤事犯は、昭和四十五年度以降ほぼ一貫して増加をたどっておりまして、この一両年やや横ばいという状況でございますが、昭和五十八年の検挙者は約二万三千六百人に達しております。その内容も、先生おっしゃいましたように、乱用者は少年とか主婦など一般市民層にまで拡大しているということで、非常に深刻な問題になってきております。  そういったことで、覚せい剤禍僕滅対策につきましては、政府は、薬物乱用対策推進本部を総理府総務長官を長とするわけでございますが設けまして、国民に対する啓発活動の強化、それから取り締まりの強化、それから乱用者に対する措置、こういった三本柱、三つの基本方針のもとに関係省庁として取り組んでおるわけでございます。  厚生省としても、この問題について今後とも一層対策を講じていかなければならないというふうに考えております。
  343. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今業務局長から答弁したとおりでございますが、私もこの問題の重要性を認識し、なお一層これらの施策充実に努めてまいりたいと思います。
  344. 近江巳記夫

    ○近江分科員 三本柱とおっしゃっているわけですが、この啓発活動の強化、さらに取り締まりの強化、乱用者対策、これをもう少し具体的にお聞きしたいのですが、どういう対策をされておるのですか。
  345. 正木馨

    ○正木政府委員 国民に対する啓発活動ということでございますが、これは国民の一人一人が覚せい剤の恐ろしさということを知っていただくということでございます。そのためには、いろいろな各広報紙等を通じてのPRと同時に、私どもといたしましては、特に覚せい剤禍の多い県を重点といたしまして、推進対策強化県と申しますかそういった県を指定しまして、現在十七県指定しておりますが、来年度予算におきましてもさらに三県増加をお願いをいたしまして二十県ということで、こういうものを強力に進めていきたいというふうに思っております。  それから取り締まりの強化でございますが、取り締まりは、厚生省は地区麻薬取締官事務所がございますが、この地区事務所と警察当局の連係動作をさらに深めて、徹底していかなければならないということでございます。  それから乱用者に対する措置でございますが、先生も御案内のように、覚せい剤患者につきましては、現在のところ、精神衛生法の措置入院による措置でございますが、この措置だけで果たして十分なのか、これは公衆衛生審議会等でも御意見があったわけでございまして、私どもとしては、現状において措置の万全を期すと同時に、今後のあり方につきまして専門家会議でせっかく御審議をいただいておるということでございます。
  346. 近江巳記夫

    ○近江分科員 警察庁は今どういう対策をとっておられるのですか。
  347. 加美山利弘

    ○加美山説明員 お答えいたします。  先ほどお話がありましたように、昭和四十五年以来ほぼ一貫して増加を続けております覚せい刑事犯は、ここ二、三年その増加傾向が鈍化し高原状態を呈し始めているものの、昨年の検挙人員は二万三千人を超えております。昭和五十七年とほぼ同様の高水準を続けているというところでございます。また、先ほどもお話がございましたが、一般市民層、特に女子・少年へさらに広がる、そういうような乱用の実態でございます。また、覚せい剤乱用者による凶悪犯罪も依然として後を絶たない状況でございます。  一方、麻薬事犯でございますが、五十八年中は千四百八十四人を検挙しており、前年に比べてわずかに増加しているものの、全般に小康状態を保っております。この中で、特に大麻事犯につきましては、青少年を中心とした乱用事犯が後を絶たず、ここ数年千人を超える検挙者を見ているところでございます。  警察といたしましては、以上の状況を踏まえまして、今後とも覚せい剤、麻薬問題を治安上の重要な課題として受けとめ、密輸入事犯の水際での封圧、暴力団を中心とする密売組織の壊滅、そして末端乱用事犯の徹底的検挙、これを取り締まりの重点といたしまして、全国の警察が一体となり、また関係機関や外国捜査当局との連携を図りつつ、供給の遮断と需要の根絶を目指した強力な取り締まりを推進していく所存でございます。  このほか、覚せい剤、麻薬の恐ろしさを国民一人一人に周知徹底させるための啓発活動を積極的に展開してまいりたいと考えております。
  348. 近江巳記夫

    ○近江分科員 非常に難しい問題が多々あろうかと思いますが、関係各省、これだけ特に青少年、一般家庭にも浸透してきておるわけでございますし、力を入れていただきたい、このように思います。  それから三本柱の中で、乱用者対策、覚せい剤の中毒者につきましては、いわゆる精神衛生法による措置入院、こういうことになっておるわけですね。それから麻薬の場合は御承知のように六カ月ですか、そういう措置ということになるわけでございまして、この実態を見ていきますと、覚せい剤の場合はもう本当に入院してもすぐ出る、こういうようなことでございまして、自傷他害のおそれがなければいいんだ、こういうことで、ほとんど実体がないと言ってもいいのですね。そして、一たん乱用した者はそういう入院をしたってすぐまたやる、こういうことでございまして、そういう点で、こういう法律をこのまま、覚せい剤取締法と精神衛生法の二本立てということになっておるわけですが、こういう法体系でこのままでいいかどうかという問題、これについてはこのまま放置されるのですか。
  349. 正木馨

    ○正木政府委員 まさに先生御指摘のような問題点が覚せい剤中毒者についてはあるわけでございます。  そこで、先ほどもちょっと申し上げたかと思いますが、昭和五十七年の十一月に公衆衛生審議会から、覚せい剤中毒者対策に関する御意見が出されました。これを受けまして、現在、覚せい剤中毒者対策に関する専門家会議で鋭意御審議を願っておるわけでございますが、一体どういったことを審議しておるのかと申しますと、先生のお話とダブってしまうわけですが、覚せい剤中毒者につきましては、診断・治療といいますか、診断基準・治療基準というものももう一つ徹底をして、名お医者さんに徹底をしていかなければならぬという面が一つございます。それからアフターケアの問題においても、一たん覚せい剤中毒が治りましても依存性が抜け切れない、将来のアフターケアの問題をどうするかといったような問題がございます。それから地域医療で診ていく場合にも、暴力団等が関与しているためになかなか地域医療で受け入れがたい面があるというようなことで、いろいろ各方面の問題がありますので、この専門家会議では診断・治療のあり方の分科会、それから地域医療のあり方の分科会、それから再燃・再発の予防といったような面の分科会、それぞれの専門家がいろいろ審議をしていただいて、そうして、覚せい剤を撲滅するためには、取り締まりとそういう患者対策というものを一貫して行う場合にはどうする方法が一番適切なのかということを御審議いただこうということで、御審議を願っておるわけでございます。
  350. 近江巳記夫

    ○近江分科員 既にそうした法体系のもとで制度が動いておるわけですが、それは実態に合わなくなってきておるということは十分認めていらっしゃるわけですね。それをいつまでも、専門家会議ということで時間をそのように費やしておっていいかということですね。その点について、法改正をいつまでも待つわけにいかないと思うのです。いつまでにこの法改正をまとめて、提出されるのですか。
  351. 正木馨

    ○正木政府委員 現状において問題点が確かにあるわけでございますが、現行制度におきましても、取り締まり、さらには患者対策というものに、必要最低限の措置は十分とれるわけでございます。さらに進めて私どもとしては前進を図っていかなければならないということで、専門家会議にお願いしておるわけでございますが、先ほど申しました各テーマに基づいて審議をいただいておりますが、私どもとしては、そういった例えば診断基準がまとまった段階におきまして、これを実際に当てはめて、ケーススタディーをやって、これが実際実行可能なのかということも必要だと思います。そういう意味で、ケーススタディー等を中心とした予算、これも来年度お願いをしておるわけでございますが、私どもの気持ちといたしましては、明年度中ぐらいには専門家会議の結論がおまとめいただければというふうなことで、先生方に極力審議の促進、研究の促進をお願いをしておるわけでございます。
  352. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そうすると、五十九年度予算を今審議しておるわけですが、この年度中にその意見をまとめて、政府としては改正法案を提出する、こういうことですね。
  353. 正木馨

    ○正木政府委員 ちょっと言葉足らずでございますが、ケーススタディーの予算というのは五十九年度予算にお願いをしておるわけでございます。先ほど申しましたように専門家会議分科会で審議をされておりまして、それぞれの分科会での御審議をいただき、特に診断基準等についてはできればことしの夏くらいまでにおまとめをいただく、それをケーススタディーで当てはめてみる、そういったものを積み重ねまして、五十九年度中にめどがつけられればというふうな感じで私ども審議をお願いをしておるわけでございます。
  354. 近江巳記夫

    ○近江分科員 めどはわかったわけです。ですから、それを集約していわゆる改正法案を出されるわけですね。
  355. 正木馨

    ○正木政府委員 繰り返すようではございますが、専門家会議で十分御審議をいただきまして、現行法体系でこれは足りないのかどうかといった点も含めまして御審議をいただき、そしてその結論を踏まえまして、法改正措置を要するということになりますれば、私どもとしてはその方向に従って検討を進めなければならないというふうに思っておる次第でございます。
  356. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それは専門家の話を聞きましても、改正すべきだという声が圧倒的なんですよ。ですからちゅうちょする必要はないと思うのです。それだけのことがきちっとまとまれば政府としてはいち早く対応する、対応しなければいけない、このように思います。そういうことで、今局長はその方向でいきたいという答弁があったわけですが、やはり大臣も、これだけ問題を本当に心配していると先ほどもお話があったわけですから、一日も早くこれをまとめて提出をすべきだと思います。ひとつ大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  357. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今業務局長から答弁したとおり、法改正の必要、是か非かという問題をも含めて専門家会議の皆さん方の御意見を伺っておるところでありますから、それらの専門家の意見が、これらの対策を講ずるためにはどうしても法改正が必要であるということになれば、これに対処していくことは当然であると存じます。
  358. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大臣がおっしゃったように、早くそういう先生方にも推進していただいて、しかるべきそうした措置をとっていただきたい、このように思います。  それから、きょうはこういう分科会ですから余り時間がありませんので次々聞いていきますが、人工肛門、あるいはまたこうした人工臓器の問題でございますが、現在、内臓機能障害につきまして、心臓、腎臓、呼吸器、この三つの機能障害者につきましては身体障害者福祉法が適用されておるわけです。それで、身体障害者手帳を交付するとか医療費の公費負担各種施設利用等の対策があるわけですが、人工肛門あるいは人工膀胱、こういう方々には全くこの法律が適用されていない。こういうストーマ保有者というのは全国で最低でも五万人はいるだろう。全く野放しになっているんです。ここに袋をつけてどれほど苦しんでいるか、考えただけでも同情すべき問題であります。これが法的に放置されているということは全く許せないことであると私は思っております。政府としてどのように考えておりますか。
  359. 持永和見

    ○持永政府委員 人工肛門なり人工膀胱の造設者の方々は、先生御指摘のように日常生活に著しい制限を受けたり、あるいは大変御不便な生活をしておられる方がおられるかと思いますが、私どもといたしましては、昨年の八月に、身体障害者関係の検討委員会の方から、身体障害者福祉法の対象として、人工肛門なり人工膀胱の造設者を範囲に含める方向で検討してほしいという意見が出されたわけでございまして、それを受けまして、明年度以降こういった形で、人工肛門なり人工膀胱の造設者の方々を身体障害者の範囲に入れるよう法律改正を現在予定いたしておりまして、鋭意作業中でございます。近く国会に御提出申し上げて御審議をお願いしたいと考えておるところでございます。
  360. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それはこういう非常に困っておる人にとりましては朗報でありまして、これは厚生省としてはまあ遅きに失した感はありますけれども、しかし非常によかったと私も喜んでおります。  そこで、臓器のことですから非常に難しい問題もあろうとは思うのですけれども、日常生活に著しい支障がある人を対象とするというような考え方が厚生省の中にあるようでございますけれども、そういう著しい支障のある人、その対象者の認定基準というのはどういうように検討されるのですか。
  361. 持永和見

    ○持永政府委員 身体障害者の範囲と申しますか、身体障害者のいろいろな法律上の対象といたします方々というのは、いわゆる身体上の機能障害があって日常生活に著しい制限を受けるというようなことで、ほかの障害の方々も、すべてそういう形で身体障害者福祉法の範囲の中に含まれておるわけでございますが、人工肛門なり人工膀胱の方々につきましては、いろいろとそういった専門的な認定が先生御指摘のように必要でございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在身体障害者福祉審議会の中に専門家の意見を聞く場をつくっております。  昨年の十二月から、身体障害者福祉審議会の中に審査部会身体障害者等級問題小委員会というのをつくりまして、現在鋭意作業をしていただいております。いずれにいたしましても、法律を国会に提出いたしまして御審議をお願いするわけですが、この法律の成立後できるだけ早い機会にあわせて実施したいということで、本年の九月ごろをめどに、現在鋭意御審議をお願いしておるという状況でございます。
  362. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この排せつの障害というのはどのくらいまでを考えておられるかということですが、例えば脊髄損傷の一部の中にでもいろいろなケースがあるわけでございますが、どういう範囲まで考えていらっしゃいますか。
  363. 持永和見

    ○持永政府委員 現在私ども考えておりますのは、具体的な大綱と申しますかそういう形で申し上げますと、一つは、人工肛門として大腸を切除いたしまして腹部に人工の肛門を造設した方々、そういう人たちをまず考えております。それから人工膀胱ということを考えておりますが、これについては尿路を変更し、おなかの中に同じように人工の排尿口と申しますか尿を出す人工の臓器を造設した方々、そういう方を考えております。第三点といたしまして、二分脊椎によりまして膀胱なり直腸の機能に障害のある方、こういう方々も対象にしたいということで考えておりますが、具体的な対象者の詳細は、非常に専門的な事項にわたりますので、現在、先ほど申し上げました小委員会でそういった範囲も含めて検討をしていただいているところでございます。
  364. 近江巳記夫

    ○近江分科員 脊髄損傷から来るそうした人まで含まれるということを私も聞きまして、これは非常に喜ばしいことである。厚生省も今後そういう実態をよく調査していただいて、うんと適用範囲を広げてあげていただきたい、このことをお願いしておきます。  それから、こういう方々が身体障害者として認定されますと、どういうような福祉サービスが受けられるのですか。
  365. 持永和見

    ○持永政府委員 身体障害者福祉法による身体障害者の範囲の中に含められるということになりますと、いわゆる身体障害者福祉法に基づくいろいろな福祉サービスを私ども法律上あるいは予算上の措置として行っておりますけれども、まずこういった方々にとって一番大きな問題は補装具の交付ではないかと思います。そういう意味合いで集尿なり集便のための補装具の交付、こういったものが行われることになります。そのほかに、いろいろ在宅福祉身体障害者の方々のためのサービスがございますが、それもほかの障害者の方々と同様にサービスの対象となります。また、施設といたしまして、授産施設あるいは療護施設、そういった施設利用もできるというようなことになるかと思います。
  366. 近江巳記夫

    ○近江分科員 ひとつ一日も早く法改正を国会に提出していただきまして、そうしますと、それは国会の審議にもよろうかと思うのですけれども、実施は大体いつごろになるのですか。
  367. 持永和見

    ○持永政府委員 現在私どもで成案を急いでおります今回の身障福祉法の改正につきましては、一応私どもの方としては、五十九年十月一日の法律の施行ということを考えております。同時に実施したいというふうに考えておりますので、ぜひひとつ国会の方の御審議をよろしくお願い申し上げたいと思います。
  368. 近江巳記夫

    ○近江分科員 これは非常に結構なことでございまして、厚生省立場はそういう方々に常に光を当てていく、こういうことは一番大事だと思いますし、まだまだ隠れたそうした中で苦しんでいる人が多々いらっしゃると思います。そういう点で、今後大臣を先頭にうんとひとつ努力をしていただきたい、このように思います。  今局長からもきちっとした答弁もあったわけでございますが、大臣から重ねて、一層の充実ができるように努力をしていただきたい、その決意をお伺いして私の質問を終わります。
  369. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘の特に人工肛門、人工膀胱造設者等の問題について、私もいろいろお話を聞きまして非常に関心を持っておりました。近江委員のおっしゃるとおり、非常にお気の毒な立場の方でありますから、これらをできるだけ、おっしゃるとおりの施策を進めていかなければならないのは当然であります。  今社会局長から御答弁申し上げましたように、これはできるだけ早く改正のための法律を出しますので、先生にもお骨折りを願って、今国会にぜひこの法律を通していただいて、我々がその施策を実行できるように御協力を賜りたいと思います。
  370. 近江巳記夫

    ○近江分科員 では、終わります。
  371. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて近江巳記夫君の質疑は終了いたしました。  次に、中西績介君。
  372. 中西績介

    中西(績)分科員 福岡高等裁判所のカネミ油症問題について和解勧告が出されましたけれども、先般、残念ながら、三省協議の上これを拒否するという状況が出てまいりましたので、その後、我が党の川俣、湯山両議員から質問をしておりますが、その中で、いろいろわかりましたけれども、それぞれの大臣から二名の要請に対して種々回答はあっておりますけれども、私が最も関心を持っておりますのは、この中でダーク油事件、この問題を正確にとらえておればもう少し異なった回答でも出てきたのではないか、こう私は感ずるわけですね。したがって、さきの答弁の中で私たちが調査をした結果といろいろ異なる点がございますので、きょう農水省の石川局長あたりが出てきていただけばよかったのだけれども、課長しか出てこれないということでありますから、十分な討論になるかどうかわかりませんけれども、一、二をただしながら論議をしてみたいと思っています。  そこで、先般の答弁の中に、特に湯山委員の質問に対して石川局長が答えられた中に幾つかあるわけです。この点、本人じゃありませんからちょっと困難かと思いますけれども、問題指摘をしてみたいと思います。  まず第一は、ダーク油は精製の途中で、PCBをまだ入れない段階で抜いているものだからという点、これはまだ議事録が出ていませんから、私は要点を記述して確かめておるわけでありますけれども、この中で私が指摘をしたいと思いますのは、検査官は全製造工程を調査し検査しておるはずでありますけれども、その際にこういう答弁がされますと、製造工程を知らないのではないかという感じがするわけであります。なぜかといいますと、この問題について少なくとも問題として指摘できますのは、工程の中におきましてダーク油ができるその過程は、この答弁からしますと、PCBが混入されないという認識の上で答弁をしておるようでありますけれども、それはどういう結果においてそういうことが言えるのか、食用油の製造工程に目を向けたらこういう答弁は出てこないのではないかと私は思っております。この点についてお答えいただきたいと思います。
  373. 阿部敏明

    ○阿部説明員 お尋ねのダーク油事件は、昭和四十三年三月……(中西(績)分科員「そういうあれはもう要りません」と呼ぶ)はい。  飼料検査を行う職員といたしましては、当時飼料の品質確保の調査が職務内容でございました。異常なダークによりまして鶏に事故が発生したものでございますし、当時ライスオイルによる人体の異常等の情報は全くなかったわけでございます。また、ダーク油は食用油製造の初期の工程で採取されております副産物でございまして、食用油製造のほとんど最終工程、脱臭工程でPCBのような危険な物質が用いられているということはもちろんのことでございますが、脱臭工程で生ずる飛沫油だとか泡油等がダーク油に戻されることにつきましては、何らの説明も情報もなかったわけでございます。したがいまして、これらのことから、食用油の安全性に当時の職員が疑念を持たなかったことについても無理からぬところがあったのではないかというように考えておるわけでございます。
  374. 中西績介

    中西(績)分科員 そうしますと、こうした精製過程について、食品衛生監視員だとかこういう人たちも、これは厚生省の関係になると思いますけれども、年間十二回ぐらい検査をしなくちゃならぬ、しかし実質的には二回か三回しかしてないのですね。そういうことが明らかになっておる。ところが、今の答弁なんですけれども、これにはっきりしておりますのは、今言われましたダーク油を取り出すときに、その後に加熱、湯洗をしまして、それから冷却、ろ過、脱ろうをしまして、脱色しまして、脱臭の段階に入ります。そうしますと、今言われました商品名のカネクロールが脱臭の段階でPCB触媒として加熱し、その中でもって今度は油が入ってき、これがガス化していくわけですね。こうなってまいりますと、ガス化されたものが熱交換器で冷却されてスカム油になるのです。スカム油になって、これがダーク油にまじるわけなんですね。ですから、この初期工程ではこうした脱臭のために使うPCBの触媒機能というものはまだないという認識をしておりますけれども、これら全工程からしますと、これはだれしもが知っておらなければならぬというわけですね。少なくともこうした脱臭装置ではこうした化学合成された物質が使われるわけですから、これを全然知らなかったということになるとこれは大変なことだということなのです。ここは私は今度の答弁の中で大変な欠落ではないかと思っています。  先ほどのあれでは、その当時は知らなかったとかなんとか言いますけれども、それは工程の中でつくられておって、ちゃんと検査しなければならぬし、許可しなければならぬようになっているでしょう。それが全然されていないというところにこうした問題が出ているわけですから、この点、答弁が間違いでないということだけでいいから、もうあとの答弁は要りません、こういうように答弁したということだけ確認をしてください。
  375. 阿部敏明

    ○阿部説明員 ただいま私が申し上げたとおりでございます。
  376. 中西績介

    中西(績)分科員 いや、答弁というのは、前に石川さんが、ダーク油は精製の途中、PCBをまだ入れない段階で抜いているものだからここにはPCBがない、これを前提にして調査をしました、こう言っているのですよ。細かい文章のつづりというのは、まだ正式のものが出ていませんから抜き書きのもので私は言っているのですが、これはもう大変なことですからね。
  377. 阿部敏明

    ○阿部説明員 当時の石川局長の答弁の表現のところにつきましては、やや誤解があるのではないかと考えております。結果的にはPCB製造工程がライスオイル製造工程の最終過程であるということはわかったわけでございますが、当時は当然製造工程の初期の段階から出る副産物を調査したわけでございますから、そういう意味で、結果的に見ますとそこの段階までの情報は何らなかったということであろうかと思います。
  378. 中西績介

    中西(績)分科員 そういたしますと、PCBが混入するということを知らなかったということですね。よろしいでしょうか。
  379. 阿部敏明

    ○阿部説明員 そうでございます。
  380. 中西績介

    中西(績)分科員 それを確認します。  そこでもう一つは、この後に言っておることなんですけれども、油の事故と信じておったということがあるのです。概略ですけれども、指摘のあった海外文献については、担当官はいろいろと文献検索を行ったが気がつかなかった。これにも問題があるけれども、きょうはもう時間がありませんから除外しますけれども、事実を確かめておきます。  その後に、というのは油の事故と信じていたから、PCBの事故は塗料とかそういうものから入った事故のようなので、今から考えればもっと検索していればわかったのではないかという指摘があることも事実だ、こういうことで、これは全文章同じかどうかわかりませんけれども、概略は間違っていないと私は思う。そうしますと、油の事故と信じておった、PCB事故は以前は塗料とかそういうものから入ってくるものだったから、そういう例があったからそれを信じたということが、この前皆さんと討論する過程で私はわかったのです。  ところが、こういうものでなくて、結局油の変性、油が変質をした事故ではないかなどという言い方があるわけですね。ところが、このことは、先ほどの関連からいきますと、一連のものを全然抜きにしていますから、その中にまじっているのは全然わからぬわけですね。だから、何による事故かが全然わかってないという本質が大体ここに明らかになってきているのです。これはもう大変なことですね。ですから、これは答弁した本人でございませんのできょう確認をするのにちょっと気が引けるのだけれども、この要約は間違いじゃないと思います、抜粋してきてもらったのですから。そういうことで、ずっと最後になってまいりますと、知り得なかったのだという答弁になっていますよ。  ですから、こういう状況から、まず第一に、PCBがそこに混入をすること自体もう全く見抜けなかった。しかし本来なら、食品衛生法からいきましても、幾つもの段階でそうした点は手抜かりがないように押さえてあるのです。今条文を一々申し上げる時間がございませんから言いませんけれども、こういうような状況が一つ大きな問題としてあった、私はこう言わざるを得ないのです。なぜなら、食用油の全製造工程に目が向いておれば、こうはならなかったのではないかと私は感じています。  そこでもう一つ、油の変性事故、油の事故と信じておったというのですけれども、油の事故であるなら、実験か何か、例えば鶏に試食をさせたとかそういういろいろなことを油でやったのですか、どうですか。
  381. 阿部敏明

    ○阿部説明員 前段のお話でございますが、既に二度にわたる判決で認められておりますように、飼肥料検査に当たった職員は、その職務と法律上課せられている注意義務に対して懈怠があったものではないという考えに立っておるわけです。そういうことで局長は当時の事情を説明したと思っております。  第二段目の方でございますけれども、先般湯山委員から、一つは、家畜衛生試験場の職員の原因究明のための研究が不十分であったのじゃないだろうか、そのために被害の事故の拡大が防がれなかったのではないかという御質問がございました。それに関係することだと思いますので、この際御説明いたします。  ダーク油事故の病性鑑定を家畜衛生試験場に依頼したわけでございますが、その依頼を受けまして家畜衛生試験場の担当職員が再現試験を行いました。それで、鶏の事故の原因はカネミ倉庫のダーク油であることを特定いたしますとともに、当該鶏事故につきまして重金属等の無機化合物が関与しているかどうか、消去法によりまして関与していないことを確定したわけでございます。さらに、当該事故が伝染性のものでないということを明らかにいたしたわけでございます。ただ、家畜衛生試験場におきましては、残念ながら短期間でダーク油の毒性の原因がPCBであるということを突きとめることはできなかったわけでございますが、当時担当官は、当時の条件のもとで努力を尽くして病性鑑定に当たった、法律上課せられた注意義務を何ら怠ったものではないというふうに考えているわけでございます。その点を御説明したかと思います。
  382. 中西績介

    中西(績)分科員 時間がありませんから前段のは一応ここでおきます。  後段のをずっと調べてみますと、今あなたが言われたのがでたらめな鑑定であったということが明らかになったのです。なぜかといいますと、農林省家畜衛生試験場の小華和忠という人のずっと長いあれがありますけれども、その中で「畜産の目的は、人間に対して安全な畜産物を提供することにある」こういうことで、今度のこの問題については意識的に本人が避けたというような言い方をしているのですね。そして「中毒事故は加害者が被害畜生に内々に損害賠償すれば万事めでたしであった」こういうことを言っておるのですよ。そういう基本姿勢があって、今言うように「毒性物質の分析であるのに」、「無機性有毒化合物の混入は一応否定されるので、油脂そのものの変成による中毒と考察される」というような結論を出して、報告を送っておるわけですね。ですから、ここにもまた一つ問題があったと私は思うのです。短期間であったとかなんとか言うけれども、もともとが、こういう問題については事故が起こればそれを賠償すれば大体おさまるのだ、こういう基本的なものが一つあったということなんです。  そういうこととあわせまして、もう一つは、福岡肥飼料検査所が立入検査した結果について、ダーク油も食用油も同一原料、同一製造工程、同一工場、こういうところでやられたわけですから、その中身がこういうような簡単なものでないということ、そして、それが全体的なそういう工程の中における調査なり何なりがちゃんとされなくてはうそであったということが、私は指摘できると思うのですね。  こういうこと等からいたしまして、私は、少なくとも問題として指摘できるのは、今言うように一生懸命やったとは言いますけれども、もう一つ大事なことが抜けておるのですね。PCBで汚染された鶏というのは、二百万羽が影響を受け、四十万羽が弊死したわけですから、その中から食用の鶏十一万羽、採卵用十四万羽を市場に放出しているのですから。それすらもとめていないのだ。こういうことをずっと挙げていきますと、いずれの形にしても、こういう事態になっておる中身について、これを農水省がまず第一に厚生省なりに連絡を全くしていない、このことが一つ。  それからもう一つ大事なことは、今度の高等裁判所における証人によりまして、前回も湯山委員あたりから指摘があったと思いますけれども、大臣もそれをお聞きいただいたと思いますが、こういう中でだんだん明らかになってきたのですけれども、一つは厚生省の場合、環境衛生局食品衛生課、ここへ俣野景典という国立予防衛生研究所の所員ですけれども、ダーク油事件の報告と同時に、ダーク油を入手することを、研究したいからということを要請をしたのだけれども、これについて不可能だという回答をしています。ところが、これは後になって食用油の問題が出てきていろいろ調べ始めたところが、これが出てきているのですよ。ですから、この証言部分は、どこに問い、だれにただして、この入手は不可能と言ったのか。これが一つ。  それからもう一つは、課長補佐に、北九州あるいは九州で食用油事件が発生するかもしれないぞということを忠告していますよ。警告をしています。名前までわかっていますけれどもきょうはそれは言いません。そうであるにもかかわらず、ここで申し上げているように、食用油の監視なり、あるいは一回も検査もせずに、これはそのまま別のものであるとして手をつけていません。そして、これが今度は人体に影響が出てわかって、十月上旬、その人がやはり被害が出たということを本人に言っている。  今の二点からすると、これはどこに連絡をして、これは八月十九日にそういうことがあったのですけれども、入手要請をしたけれども、不可能だと言ったのか。これは課長補佐の人にこういうことを言ったんだけれども、そういうことを全然手がけなかったという厚生省の関係について、これはほかにもたくさんありますけれども、時間がございませんから、この点だけどうでしょう。
  383. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 お話しの俣野証言でございますが、二審の裁判の過程でそういう証言があったことは先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、この俣野証言についてどう判断するかということは、これはまだ裁判の経過のことでございますので、裁判所が御判断いただくことになるのではないかと思っております。  ただ、厚生省立場として申し上げますと、俣野証言によりますと、俣野さんが見えたのは八月十九日ということでございますが、先生も御承知のように、患者の発生は一番早いのが二月でございまして、十月まで少し出ておりますが、ピークは六、七、八であったというようなことでございますので、俣野証言によって、俣野さんのお話のことによってすぐ対応できたとしても、かなり時間的にずれがあるというふうに私どもは考えて、そういうことを裁判の過程で裁判所に申し上げております。
  384. 中西績介

    中西(績)分科員 私は、そういう裁判でどうだこうだということの前に、問題は何といっても行政の側のこうした問題に対するいわゆる公害、そして人命、それから健康、こういうものとのかかわりの中で、大変危険な中身が今充満し始めている、幾つもそういうものが出始めている、そういう中における行政の態度そのものが逃げの姿勢なんですよ。絶えず従だ。だから後追いになっていきますわね。だから、予防だとか予見だとかそうしたことを重視していく積極的な姿勢というのがそこになければ、こうした被害が出てから、さっきの言葉ではありませんけれども、やはり被害が出ましたねというようなことを言って、これは私は大変無責任な姿勢ではないかと思っていますよ。ですから、直ちにそれを手がけてなおかつ追いつかなかったということと、それを放置をしておいてやはり出ましたねというのとは違いますよ。だから私は、そういう行政の中における流れそのものが大変な問題を内蔵しておるとしか言いようがないわけであります。  時間が参りましたから多くを指摘することはできませんけれども、いずれにしても、こうした国の考え方なり行政の姿勢の誤りなり、そして、それから来る食品の安全行政の実態がどうなっておるかということ、そしてさらに、今度そうした結果生じたこういう幾つかの問題とあわせまして、カネミ油症問題がいよいよ今度は三月十六日に高裁の判決が出ますね。ただ一審と違うのは、一審の場合には退けられておりますけれども、今度の場合には和解勧告までされたという、そうした経過があります。ということは、そうした中身がある程度補完されて、行政に対するそうした手だてを尽くすべきではないかという、こうした要請ではなかったかと思うのです。したがって大臣、そうした中でのあれですから、この前は抽象的にはいろいろなことをお答えいただきましたが、そして八億円の云々ということもありました。しかし、これから後の問題ですから、今度の問題は十分慎重にこれらの問題について三省で打ち合わせをして、きょうはほかの省はもうありませんから、大臣一人ですから、大臣の方からそうしたことを十分言っていただいて、その措置をしていただくようにお願いをしたいと思うのです。この点どうですか。
  385. 渡部恒三

    渡部国務大臣 食品衛生行政において、食中毒事件など起こらないように未然防止のために最大の努力をしなければならないことは、厚生省として当然のことでございます。  ただ、今回の裁判の問題については一審で国側が勝訴しております。これは国家賠償という、国民の皆さん方の税金に大きな負担になる問題でございますから、したがって、法務付、農林省、厚生省、三省協議の上に今二審を争っておるわけでありますけれども、私どもはこれは純粋に裁判上の問題としてその経過を見守ってまいりたいと思います。
  386. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて中西績介君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦久君。
  387. 三浦久

    三浦(久)分科員 厚生大臣、カネミのことをちょっとお尋ねいたします。  一月の十七日に福岡高等裁判所で和解の勧告が出されましたね。もう内容は御承知のとおりであります。国は和解の勧告に応じなかったわけですが、その過程で大臣は初めてカネミの油症患者の皆さん方にお会いしたのじゃないかと思います。和解勧告に応じてくれ、そういう陳情が出されたと思います。十六年間油症で苦しめられてきました患者さんたちに初めてお会いした大臣の感想をまず最初にお伺いしたいと思います。
  388. 渡部恒三

    渡部国務大臣 患者の皆さん方から、写真やいろいろ被害を受けておる皆さん方の苦衷をお聞きしたり見せていただいたりいたしまして、こういう事件を二度と起こしてはならない、また残念ながらこういう事態になってしまった患者の皆さんには、法の許す範囲で厚生省としてはできるだけのことをして差し上げなければならないということを痛感いたしました。
  389. 三浦久

    三浦(久)分科員 そして、その和解の勧告というのはかなり厳しいものだったですね。私もカネミ油症事件介護団の副団長で国を提訴した張本人なんですけれども、私ら専門家から見ますと、この和解の勧告というのは、これは法的な責任も国にあるということを前提にしているというふうに思います。例えば、「国も油症被害の拡大を阻止し得る地位にあったものとして、その救済の一翼を担うべき責務があるものと思料する」、こうなっておるわけですね。ですから、厚生省としてはその点を十分に踏まえて和解を受け入れていただけるのじゃないかというふうに期待しておったのですけれども、大変残念に思っておりますが、二月の九日にそういう和解を拒否したということは、十六年近く、自分たちには何の落ち度もなく、健康にいいと思って食べた油のためにああいう被害を受けて苦しんだということなんですけれども、そういう被害者の救済や、また食品公害を絶滅するということを願っている多くの人々の期待に反した結果になっているのじゃないかというふうに私は思うのですが、その点いかがお考えでしょうか。
  390. 渡部恒三

    渡部国務大臣 食品中毒においてまず問われるのはその原因者の責任でありまして、厚生省としては、被害者の苦衷というものを解決するために原因者である鐘化側に対して幾たびか、テーブルに着いてこれらの患者の救済に当たるように勧告をいたしております。今後もこの姿勢を続けていくつもりでございますが、ただ、今御指摘の裁判上の問題ということになりますと、これは国家賠償責任という国民の皆さん方のとうとい税金の御負担をおかけする問題でありますから慎重でなければならないということで、しかもこれは第一審において御案内のように国に国家賠償責任なしという判決もちょうだいしておりますことから、法務省、農林省、関係省庁と相談の上、いまだ和解のテーブルに着く時期ではないと判断をいたした次第でございます。
  391. 三浦久

    三浦(久)分科員 一審でたしか二回勝訴していますね。ところが、それは地方裁判所の話でありまして、現在はその上級審での判断なんですよね。上級審でああいう勧告が出されているわけであります。ですから、私はそういう理由はちょっといただけないというふうに思っております。  また、拒否をした理由として、法的責任がないというようなこともおっしゃっておられますね。しかし、長い間かかって、本当に証拠に基づいて、慎重に審議に審議を重ねてきているわけです。もう裁判だけでも十四年もやっているのですよ。そういう中で高等裁判所が、新しい証拠等々に基づいて国の責任もあるのだということを前提にした上で勧告をお出しになっているわけでありますから、被害者の早期の救済ということを考えた場合には、私は、勧告に応じて和解のテーブルに着くいいチャンスじゃなかったかというふうに思っているわけなのですけれども、厚生大臣としてはどうですか。高等裁判所でもまた勝訴できるというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。
  392. 渡部恒三

    渡部国務大臣 一審の判決というものは、決して軽いものではないと思います。やはりそこで判決が得られた問題ですから、それなりに重い価値のあるものだと思います。  なお、それ以後のことについては、先ほど申し上げましたように、法務省、また農林省、厚生省、それぞれの担当の責任者、また法律に明るい人たちが協議して、考えに考え扱いた結果が前回の処置になっておるわけでありますから、私はその人たちのお考えを信頼してまいりたいと思います。
  393. 三浦久

    三浦(久)分科員 一審の判決は重いと言われましたけれども、しかし、高等裁判所の勧告も私は非常に重いと思うのですね、上級審ですから。  それで、お尋ねいたしますが、三月十六日に判決が出されます。私は、国が敗訴することはほぼ間違いないだろうというふうに確信をいたしておりますが、高等裁判所で敗訴してもまだ最高裁があるさというようなことではなくて、やはり二審の判断の方がかえって重いわけでありますから、そういう意味では上告を断念して被害者の早期救済に当たるべきだというふうに私は考えますが、その点どういうふうにお考えでございましょうか。
  394. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは今裁判が行われておるわけでありますから、二審で勝つか負けるかというようなことは予測できません。私どもは勝つものと思っておるわけでありますけれども、これに勝つとか負けるとかいうことを仮定して私どもがそれに対してお答えする時期ではないと思いますので、御客赦をいただきたいと思います。
  395. 三浦久

    三浦(久)分科員 それはちょっと私は違うと思うのですよ。仮定の問題みたいに言われますけれども、三月十六日ともうすぐなのです。勝つか負けるか、どっちかなのです。ですから、これはまさに現実の問題であって、まだどうかわからないからということでは私はおかしいと思うのですね。負けた場合にどうするか、勝った場合にどう対応するかということは、今から当然考えておかなければならないことでしょう、私らだって考えておりますから。そういうことでは私はちょっと納得いかないと思いますけれども、どういうおつもりなのですか。負けた場合は上告されるおつもりなのですか、されないおつもりなのですか。
  396. 渡部恒三

    渡部国務大臣 三省協議の上、今後の対処の仕方を考えていくものだと思っています。
  397. 三浦久

    三浦(久)分科員 何となく被害者の救済に熱意がないのじゃないかという感じが私はいたします。  私、この問題をかなり前から取り上げておりまして、四十八年三月六日の衆議院予算委員会分科会、ちょうど十一年前ですね。そのときに私は被害者救済の問題について御質問いたしました。そうしたら時の齋藤厚生大臣は、昭和四十八年度において食品事故による被害者救済に関する特別立法を検討したい。それで私は質問が終わってから厚生省と、いつごろ出すのだ、十二月ごろに提案したい、こういうお話だったのです。そして、当時の浦田環境衛生局長はその中身について、公害健康被害補償法というのがありますが、これに劣らない内容のものをつくるとおっしゃったのです。それがいまだできていないのです。それから二年後でありますが、五十年五月二十二日衆議院社会労働委員会で、カネミ問題で参考人質疑がありました。そこで再び質問をしましたが、そのときに当時の山下政務次官も、特別立法は早急にやるということをおっしゃっておられるわけなのです。ところが、最初に約束をされましてから十一年間たってもまだ食品公害の被害者救済の特別立法はできていないのですね。これではカネミの患者さんたちや国民をだましていることになるのじゃないか。約束したことはもっとびしっと実行する、そういう責任を持ってもらわなければならないと思うのですけれども、大臣、いかがでございましょうか。
  398. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 今、先生お話しの被害者補償制度の問題につきまして、政府部内においてもいろいろと検討してまいってきておるわけでございますが、御承知のように食品というのは本来安全なものとして提供されるということで、事故は一般的に営業者の過失による問題であるというようなことでございます。医薬品や何かと違いまして、そういう背景がございますので、いろいろ検討はいたしておるわけでございますけれども、なかなか結論を得にくいというのが実情でございます。
  399. 三浦久

    三浦(久)分科員 あなたたち、十一年前にやるという約束をしておって、それは難しい問題だから結論が得にくい、そんなばかな話はないじゃないですか。それはやらないのですか。――ほかの問題をやらなければいけませんので、それは後でやりましょう。国が敗訴した場合は患者さんの恒久対策ということも頭に入れておいていただかなければいかぬということを一言言って、次の生活保護者の問題についてお尋ねいたします。  生活保護適正化推進事業実施されてからもう一年以上たつわけですね。これは暴力団等が不正受給をしたというようなことがきっかけで、こういう適正化推進というものが行われているのだろうと思います。しかし、この一年有余の間、私、現場等々からの事情も聞きながら見ておりますと、行き過ぎが多いのじゃないか、弊害が非常に多い。私は、もちろん不正受給なんというのは防止しなければならぬと思っております。しかし、勢いが余って、本当に保護を要する人々の生活保護請求権といいますか受給権を侵害してはいけないと思うのですよ。その点、大臣、一言お願いいたします。
  400. 渡部恒三

    渡部国務大臣 生活保護制度国民の生存権保障の最後のよりどころでありますから、生活保護を受けなければ生きていけない立場の人が保護を受けられないというようなことがあってはならないことは全く当然のことでございますが、同時に、それだけ重要な国民生活のよりどころとして、とうとい汗を流して働いておる国民の皆さん方の税金を使って行うものでありますから、それが不正に利用されるというようなことは断じてあってはならないことであって、担当の者がそれらの不正受給に対して厳しい態度をもって臨むのも当然であるかと思います。
  401. 三浦久

    三浦(久)分科員 生活保護者の請求権がどういうように侵害されてきておるのかということを振り返ってみますと、こういうパターンだと思うのです。  まず、申請用紙を申請者に渡さないのです。ひどいところは窓口にも置いてない、すぐ面接でいきますから。申請用紙を申請者に渡さないで、ケースワーカーが面接で、おまえは保護が受けられる、受けられない、と振り分けてしまうということが一つ。もう一つは、やっと申請にこぎつけても、その後の調査をもとにいろいろ働きかけて取り下げさせてしまうということ。それから、受給させる場合も、最近は一カ月受給させるとか二カ月ないし三カ月というのが非常に多くなってきているのです。これは短期保護と言われています。福祉事務所でも、もう短期保護という言葉が使われているくらいです。四番目は、受給している者に対して検診命令を出しますね。これは一定の要件がある場合に出せるわけですが、検診命令を出して、そして軽作業可、中作業可とかいうような診断書が出ますと、それに基づいて就労指導がどんどん行われる。そして、就労指導に従わないということで聴聞、廃止、そういうパターンですね。こういうものがずっと一連の流れになって、生活保護を受給しようとする人々が大変困惑しているという状況が随所に出てきているわけであります。  それで、一番大きいのは母子家庭です。離婚をして保護の申請に参りますと、別れた夫に慰謝料を請求したかとか扶養義務の履行を請求したかというようなことを聞かれるわけです。それはお聞きになって結構だと思うのです。私も、親が子を養うのは当たり前の話でありまして、そんなものを放置しておけというようなことを言うつもりはありません。むしろ積極的に、親に子供に対する扶養義務を履行させるということは結構なことですよ。しかし、それをしなければ申請用紙を渡さない、それをしてからもう一回いらっしゃい、こう言って追い返すのですね。  これは私は法の趣旨に反していると思いますし、また、あなた方厚生省が出しております社会局長通達、昭和二十八年、これには、「申請の意志を有する者については、申請諸用紙を交付して、申請手続について援助指導し、保護申請書を受領すること。」そして、添付書類等々が足りない場合には後で提出するように指導しなさい。こういうことになっておるでしょう。そうすると、現場のやり方はこういうやり方と著しく違うと思うのです。今私が言ったような事例の場合は正しいのか正しくないのか、お答えいただきたいと思います。
  402. 持永和見

    ○持永政府委員 今、先生からいろいろ御指摘がございましたが、まず申請の問題でございますけれども、事実先生も御承知のとおり、生活保護の基本理念につきましては先ほど大臣からお答えしたとおりでございますが、生活保護制度の中には、要保護者の自立を助長するというような目的もございまして、できるだけ保護に頼らずに自立を助長していくということが制度目的になっております。  そういう意味合いで、まず福祉事務所の窓口に来られた場合に、ケースワーカーの方々がおられますから、そういった方々がまず相談に乗ってあげるというのが典型的なやり方でございます。その場合に、最初から形式的に申請書を交付してそれに書かせるということをいたしますと、いろいろと相談に乗ってあげた場合に、被保護者の方々が知らない他法他施策の活用の問題等いろいろな問題がございまして、申請書にお書きになったことがむだになるということもございますので、まずは福祉事務所の窓口で親切に相談に乗ってあげるというのが基本じゃないかと思います。
  403. 三浦久

    三浦(久)分科員 そんなことを聞いているのじゃないのです。相談に乗るのはいいのですよ。当たり前のことなんですよ。だけれども、今のように相談に乗って、いやあなた、まだ慰謝料の請求もしていない、扶養義務の履行の請求もしていない、だからそれをやってからいらっしゃいませと言って、受け付けないで帰してしまうということは正しいやり方でしょうかとお聞きしているのです。
  404. 持永和見

    ○持永政府委員 今先生御指摘の離婚された奥さんの場合でございますけれども、これについては先生もおっしゃったように、生活保護は扶養義務が優先いたしますから、まずは扶養義務を履行してもらうというのが前提でございます。しかし、その場合に、例えば前の夫に扶養能力がないということが明らかな場合でございますとか、あるいは所在地がわからない、前の夫との間で暴力関係があって逃げてきたという場合にあっては、これは扶養義務の履行の調査もできませんので、この場合にはやはり申請書を受け付けた後に一たん保護する、後ほど調査をするというのが行政のあり方だと思います。
  405. 三浦久

    三浦(久)分科員 何かいろいろ条件をつけられますけれども、そんなことないでしょう。だって、申請の意思がある人に対しては交付しなければいけないのでしょう、あなたたちの二十八年の通達によれば。例えば、所在が明らかであろうとなかろうとまず受け付けて、そして保護の決定をするのに二週間あるわけでしょう。その間に扶養義務者に対して、近くにおればあなたたちが面接をするとか、どの程度の扶養能力があるかとか、扶養の意思がどの程度あるかとか、そういうことをあなたたちが調査をして、それからまた、あなたたち自身が調査をするだけでは足りないと思えば、受け付けた後に申請者に対して、扶養義務の請求をしていらっしゃいとか、そういう指導をする、それは私は結構だと思うのですよ。それで指導に従わなければ保護の請求を却下するとかいうことはいいですよ。だけれども、はながら申請用紙も渡さないで、扶養義務の履行の請求をしてからいらっしゃい、それでなければ受け付けられませんということが正しいのですか。それ、はっきりさせてください。
  406. 持永和見

    ○持永政府委員 私ども、そういう事実はないと思いますが……
  407. 三浦久

    三浦(久)分科員 いや、あるんだから、そんなこと言っちゃいかぬですよ。また後から例をいっぱい出しますけれども……。
  408. 持永和見

    ○持永政府委員 先生おっしゃったように、申請の意思のある人については申請書は渡すべきものだと思います。
  409. 三浦久

    三浦(久)分科員 ですから、扶養義務の履行を請求してからじゃないと受け付けませんということはだめですね。
  410. 持永和見

    ○持永政府委員 ただ、その場合に、生活保護についてはまずは十分相談をして、ケースワークするというのが前提でございますから、まずは相談に応じていただくことが必要かと思います。
  411. 三浦久

    三浦(久)分科員 相談に応じるでしょうが。相談に応じないなんて言わないですよ。応じないなんて言う人はいませんよ。さっき言ったように、応じるけれども扶養義務の履行を請求してこなければ受け付けない、もう一回戻ってやってこい、そういうやり方がいいのかと聞いているのですよ。質問に答えてくださいよ、一つのケースですから。こういう態度だから――今行われているのですよ。
  412. 持永和見

    ○持永政府委員 先生のおっしゃったように、扶養義務の請求を先に履行してこいということで、もし申請に応じない……(三浦(久)分科員「申請用紙を渡さないのだよ」と呼ぶ)申請用紙は、それはケースワークの段階でいろいろ相談いたしますから、その段階であるいは相談の過程で、扶養義務者がいるのならばまずはその扶養義務者との間がどうなっているのか、その辺を御本人としても十分相談なり何なり乗ってもらうように相手方に言ってくださいという話はするかと思います。
  413. 三浦久

    三浦(久)分科員 では、それで追い返していいわけですか。あなたは、扶養義務の履行をまず別れた夫と相談をしてください。それてなければ受け付けられませんと言って帰していいのですか。そんなこと、二十八年の通達に反するじゃないの、おかしいよ。そんなでたらめなことを言っては困りますよ。もう一回答弁してください。
  414. 持永和見

    ○持永政府委員 今申し上げたのは、あくまで御本人が福祉事務所の窓口に相談に来られた場合に、ケースワーカーの人がまずはいろいろ相談をいたしますから、その段階で、扶養義務者がおられればその扶養義務者との関係はどうなっているのだということを聞くのは、これは当然だと思います。
  415. 三浦久

    三浦(久)分科員 聞くのは当たり前さ。帰していいのかということを聞いているのだよ。
  416. 持永和見

    ○持永政府委員 追い返すということは事実上ないと思っておりますが……。
  417. 三浦久

    三浦(久)分科員 ないじゃなくて、あった場合はどうかと聞いているのだ。なぜちゃんと答えないのだ。
  418. 持永和見

    ○持永政府委員 もしそういうことがあったとすれば、そういうことは遺憾なことだと思います。
  419. 三浦久

    三浦(久)分科員 時間ばかり食ってしょうがないじゃないですか。あなたは何でそんな答弁しているのですか。三十分しかない時間なんですよ。最初からそう言えばわかることでしょう。ちゃんとそういうふうに聞いているじゃありませんか。あなた、十分も時間を浪費させているじゃありませんか。  そういうことが現場で行われている。だから私がさっき言ったでしょう。まず受け付けて、それから調べて、また本人の扶養義務の履行の請求を指導するとか、そういうようにいろいろやって一定の結論を出すのはいいのです。しかし、あなたが何回も答弁しているように、生活保護者が保護の申請をしに来た場合に、ケースワーカーが全部そこでもって面接で振り分けるということをしたら、そういうことで不服申請ができないじゃないですか。いや、ケースワーカーのやり方に私は不満だと思った場合に、申請書も受け付けられてないのだから、そういうことが常態になっていれば不服の申請ができないですよ。不服申請の請求権すら奪ってしまうということになるのです。あなたがさっきそういう結論を出されたから、そのとおり現場でやってもらうように私も運動します。  もう一つは、短期保護というのがあるのです。これは、ひどいのは一カ月だけだぞと言ってやる。一カ月やる場合にどうするかというと、一日に保護の決定をして二日に廃止してしまう。そして償還猶予というようなやり方をする。これが果たして正しいのかどうか。それから、あなたは二カ月ですよ、三カ月ですよと言って、切って短期保護をさせる。そして、あらかじめ保護の開始をするときに保護辞退屈というのを出させておく。それは日付をおくらせて二カ月なら二カ月、三カ月なら三カ月後の日付でもって保護の辞退屈を出させておいて、その期限が二カ月なら二カ月、三カ月なら三カ月来た場合に、そこで辞退屈がもう出ているということでもって廃止決定をしてしまう。そういう例がいっぱいあるのですよ。そして、廃止した後にまたすぐもう困っているから申請するという、そういう全く無益な廃止というものが多くなっている。また、さっき言ったような短期保護でもってどんどん切られて、再申請しても受け付けられないというような問題も出てくる。こういう短期保護というものは法の制度としてあるのかどうか。そして、あなたたちがそのことを奨励されているのかどうか、そのことをちょっとお尋ねしたいと思います。
  420. 持永和見

    ○持永政府委員 生活保護におきましては、先ほど申し上げましたように、地法の優先あるいは自分の資産、能力、あらゆるものを活用した後に保護を受けるというのがあくまで前提でございます。したがって、申請時において多少保護を要する状態にあったとしても、近いうちに例えば稼働が見込まれるとかあるいはいろいろなほかの面での収入がある場合には、そういった意味で本人の了解のもとに事実上、一応このくらいの保護でどうですかということをやっている例はあるやに聞いておりますけれども、これはあくまで御本人の了解を得た上でやっておるわけでございますし、また、その期間が過ぎましても、期間が過ぎだから自動的に切るとか機械的に切る、そういうことはいたしてないと思っております。
  421. 三浦久

    三浦(久)分科員 もう時間がありません、分科会ですから守らなければいけませんから。  先ほどあなた、生活保護というのは自立を助長するんだ、こうおっしゃいましたでしょう。そのとおりですよ。しかし、それは保護を打ち切るとか保護を出さないことによって自立と言うのじゃないのですよ。法の第一条に書いてある「自立」というのは、保護をしなければ自立ができなくなってしまう人々を保護を受給させることによって自立の道を開いてやる、そういうことですから、それはあなた、誤解のないようにしてくださいよ、いいですか。  それから、いまの短期保護の問題でも、何もそういうことをやる必要はないのであって、それは確かに二カ月なら二カ月、三カ月なら三カ月後に保護を必要としない状況が来るということが明らかになっている場合であっても、本当にそうなるかどうかわからないわけですから、保護を開始したら、そういう保護の要件がなくなったのかどうかということを勘案して、その時点で廃止をすればいいわけでありまして、あらかじめ二カ月だとか三カ月だとかという短期保護というようなものはやるべきでないと思いますが、二言御答弁いただきたいと思います。
  422. 持永和見

    ○持永政府委員 これは、また先生におしかりを受けるかもしれませんが、一応明らかに就労が見込まれるとか、そういった収入が近いうちに来るという場合には、やはり御本人の自立意欲を助長するといいますか、福祉事務所の立場からいえば、自立を指導する上からも一応そういう目標を御本人にも持っていただくということが必要ではないかと考えております。
  423. 三浦久

    三浦(久)分科員 それでは、時間がありませんので、また直接交渉いたしますのでよろしく。
  424. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて三浦久君の質疑は終了いたしました。  次に、薮仲義彦君。
  425. 薮仲義彦

    薮仲分科員 説明をわかりやすくするために大臣に資料をお渡ししたいのですが、よろしいですか。
  426. 小杉隆

    小杉主査代理 どうぞ。
  427. 薮仲義彦

    薮仲分科員 私は、きょうは厚生大臣に、商科の問題に絞って御質問をさせていただきたいと思います。幸いなことに厚生大臣は奥様が専門の歯科医でいらっしゃいますから、私は大変心強く思いつつ質問をいたしますので、なるべく明快な御答弁をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  最初に、私は歯科とは全然関係ないのですけれども、なぜ歯科とかかわり合ったかということを、今後のために大臣にちょっと御理解いただきたいと思うのです。  資料の一番上、資料の一になっておりますけれども、大臣のには線を引っ張ってあります。私は静岡でありますけれども、「本人・家族別歯科診療の一件当たり点数の推移」、これは本人の表でありますが、静岡のところを見ていただきますと、四十三年二百三十四・三と出ております。同じく静岡が五十一年で五百十九・一。これは点数です。ちょっと下の方に福岡が出ております。四十三年が四百三十五・○、五十一年が千九十・四。これはどういうことかといいますと、本人が保険証を持って歯科の先生のところへ行きます。あなたの一件当たりの診療点数は二百三十四点まで保険で診療できますよということです。福岡では倍近い四百三十五点ですよ。五十一年もそういう推移でございます。  この問題を私に提起しましたのは、当時の県の歯科医師会長の子上さん、保険部長の山田先生という方、市の歯科医師会の大畑先生という方、それから庵之下先生、それぞれみんなまじめな先生方です。県民の歯科医療を何とか健全な形で適正な診療をしたい、そういう真摯な気持ちで、この保険のあり方というものは全国どこへ行っても公平な形で診療を受けられてよろしいのではないでしょうか、これは我々としては非常に心を痛めております、県民の健康増進のために困っております、この問題を厚生省の対応の中で十分考慮してほしいという御指摘がございました。私、この問題に五十四年からかかわりました。  それで、大臣、資料の二をちょっと見ていただきます。これは本人の五十六年のものが出ております。静岡が千百三十八点、福岡はまだ千七百九十四点出ております。全国の平均は千四百一点ですから、これでもまだまだ平均までいっておりませんけれども、静岡は十分といいますか、ある程度理解されて、適正な診療を県民が受けられるようになった。  大臣、今後この表をごらんになりながら、大臣のもとで行われる厚生行政は、全国どこへ行っても保険証を出せば適正な診療が受けられる行政であっていただきたいと私は思いますので、きょうはこの問題はこれ以上言いませんけれども、今後のために大臣、どうか時々これに目を通されて、全国公平な保険行政が適正に行われるよう望んでおきます。  次の問題に移るのですが、大臣、これは心が痛む問題ですが、しっかり聞いておいていただきたい。  厚生行政というのは、人間の生命といいますか人体にかかわる重要な行政でございまして、人間の生命にかかわる以上、厚生行政の最も重要なのは何よりも安全性というものが優先されなければならない、こう私は思うのです。ですから私は、申すまでもないことではございますが、改めて大臣厚生行政に対する、安全に対する御決意を冒頭伺っておきたいのでございますが、いかがでございますか。
  428. 渡部恒三

    渡部国務大臣 厚生行政国民の生命を守ることを大きな役割としておるのでありまして、これはいずれの場合においても生命に対する安全性が最も尊重をせらるべきことは当然であります。
  429. 薮仲義彦

    薮仲分科員 それを前提にして大臣に具体的にお伺いしたいわけでございますが、医薬品、薬ですね、それから医療用具、そしてきょう問題にしたい歯科材料、すべてこれは直接人体、人間の生命にかかわっている事柄でございます。そこで、やはり安全ということは、今大臣がおっしゃられたように最優先しなければならない事柄だと私も思います。  そこで、例えば薬品あるいは歯科材料あるいは医療用具にいたしましても、材料の安全性というのが完全に確認されない段階で人体に使用するということは、倫理的には許されないと思うのです。当然今日までの医学の進歩の中で、経験的にこれは大丈夫ですよ、安全ですという経験律に基づく安全性というのは尊重しなければならないし大切な事柄だと私は思います。しかし、最近、いわゆる国民感情として、大臣も心を痛めておると思いますけれども、古い話になりますが新しい課題としては、あのサリドマイドによる薬害もございました。また最近では消炎鎮痛剤のブタゾリジン、この問題もございます。こういうことは何かといいますと、人体にかかわる以上、古くても、また時間が経過したから大丈夫だろうと思っても、経験の上にさらに学問的な、学術的な安全性というものがどうしてもそこで要求されるんじゃないか。学問的にもこれは大丈夫ですよ、こういうことが絶対必要であろうと思うのでございますが、大臣はその辺の安全性、経験の上にさらに学問的な、学術的な安全性の必要性についてはどうお考えですか。
  430. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは、私が先ほど申し上げたように、安全性がすべてに優先して取り上げられるべきでありますが、これらはいずれの行政の場合でも極めて専門的な知識によって判断せらるべきことでありますかう、これらの学問的なオーソリティーをできるだけ集めて、その安全性の確保のために努力していかなければならないことも当然のことでございます。
  431. 薮仲義彦

    薮仲分科員 それでは、これは大臣にお伺いするより業務局長にお伺いした方がいいと思うのですが、業務局としては、「医療用具の製造又は輸入の承認申請に際し添付すべき資料について」という通達を昭和五十五年六月三十日にお出しになりました。簡単で結構でございますが、この通達に踏み切ったのはどのような理由で踏み切られたか、おっしゃってください。
  432. 正木馨

    ○正木政府委員 これは昭和五十四年に薬事法の改正がございまして、それを受けまして、医療用具につきましても同じように有効性、安全性について厳格な承認審査を行うということで、この通達を出しました、
  433. 薮仲義彦

    薮仲分科員 じゃ、重ねてお伺いいたしますけれども、問題になります歯科鋳造用ニッケルクロムの歯科材料としての承認の経緯を簡単に……。
  434. 正木馨

    ○正木政府委員 ニッケルクロム合金につきましては、昭和四十五年に鋳造物につきまして承認をいたしたわけでございます。それは、既に板と線につきましてJIS規格が定められておりまして、それと類似のものであるということで承認をいたしたわけでございます。
  435. 薮仲義彦

    薮仲分科員 それでは重ねてお伺いいたしますけれども、今まで大臣はいろいろと安全性について学問的な見地からも重要なことをお話しになられましたけれども、局長、JISの安全性について自信ございますか。
  436. 正木馨

    ○正木政府委員 歯科材料のJIS規格の制定につきましては、これは通産、厚生両省の共管になるわけでございますが、従来から日本工業標準調査会の専門委員会におきまして、歯科領域の基礎及び臨床の専門家が加わりまして、安全性も含めて審議が行われておると承知いたしております。
  437. 薮仲義彦

    薮仲分科員 それでは具体的にお伺いいたしますけれども、私の手元に、今業務局長の御答弁になった歯科用ニッケルクロム合金線、板のJISの承認がございます。少なくともここに書かれている内容、これは、日本工業規格というものがそもそもどういうものか。これによって今安全性が大丈夫だとおっしゃったのですね、業務局長は。  これをちょっと読んでみます、工業技術院の工業標準化関係法例集。まず、このJISの第一条にこう書いてあるのです。「この法律は、適正且つ合理的な工業標準の制定及び普及により工業標準化を促進することによって、鉱工業品の品質の改善、生産能率の増進その他生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図り、あわせて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」少なくとも「公共の福祉」というところを安全と置きかえて読めば読めないことはございません。これには各主務官庁がございまして、今共管とおっしゃったけれども、この歯科材料についての主務大臣厚生大臣です。  十一条に「主務大臣は、工業標準を制定しようとするときは、あらかじめ調査会の議決を経なければならない。」これだけのことです。これは何かというと、工業標準です。いわゆる化学的そして物理的な組成あるいは性質が標準的に製造されるということを重要視してできたのがこのJISの規格です。ここでは人体の安全、生命の安全、そういう問題についてはある意味では何も触れていない。確かに専門委員会で触れたとおっしゃるけれども、今おっしゃられた五十五年の通達を見ますと、これは大臣も聞いておいてください、庭科材料についてはこういう厳しいことを言っているのです。外国における使用状況あるいは急性毒性試験、亜急性毒性試験、それから発がん性試験、催奇性試験、このようにあらゆる学問的な見地の上から材料の安全性を確認しなさいとある。今、安全とおっしゃったけれども、当時のJISの中にこのような実験が果たして理論として存在したのか。こういう点含めますと、ニッケルクロムの安全性について、このニッケルクロムは危ないよ、使っちゃだめだよという形では言っておらぬです。でも、これは業務局長、御存じだと思うのですよ。  また通達をお出しになったでしょう。ニッケルの中にはどうしても分離できないベリリウムが入っているのです。どんなことをしてもベリリウムは抜けないのです。これは御承知のように、呼吸器に対して疾患を起こすのですね。あるいはニッケル鉱山は粉じんによって発がん性の患者が多いという症例もございます。ですから厚生省は、ニッケルを使うときには蒸気とか粉じんに十分注意しなさいよという通達をお出しになっています。ということは、ニッケルというものは、ある面では非常に安全性について注意しなければ危険な材料ですよということを逆に証明というか、裏打ちしていることです。  やはりJISというのは工業標準化法ですから、物理的、化学的な組成についてははっきりする。この表にもありますように、大臣、試験項目として出ているのは、外観検査、顕微鏡検査、引張試験、曲げ試験、これだけなんですよ。人体に対する、少なくとも歯科材料としての安全性については、JISの中で行われたという確定的な裏づけが何もないわけです。ですから、私は必ずしもこれらがすべて危険であるという判断ではなくして、今厚生行政に求められるのは安全性という事柄ですから、やはり歯科材料とあるいは歯科の治療に使われるすべての器材について、安全性について見直す必要があるのじゃなかろうかと思うのですが、大臣、いかがですか。
  438. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは、人間の生命を守る立場厚生省でありますから、それぞれの場合で安全性がより一層強化されるように年々歳々努力していかなければならないのは当然のことだろうと思います。  詳細は政府委員から答弁させます。
  439. 正木馨

    ○正木政府委員 JIS規格の目的は、先生おっしゃるとおりでございます。「鉱工業品の品質の改善」ということで、その中には安全性の問題も含まれておるというふうに私どもとしては理解をしておるわけでございまして、例えばニッケルクロム合金の線の性質等見ますと、有害な欠点がないことというようなことも入っておるわけでございます。ただ、この問題につきましては、先生昨年も当分科会で御質問がございまして、大臣も御答弁がありましたように、安全性の点については念には念を入れるべきであるという観点に立ちまして、五十八年の四月に中央薬事審議会の歯科用調査会におきまして、ニッケルクロムの品質基準の作成について審議を開始いたしまして、鋭意さらに安全性についての問題の検討を進めていただいておる次第でございます。
  440. 薮仲義彦

    薮仲分科員 局長のおっしゃったこと、ここに書いてあるのですよ、大臣。「性質 表面は金属光沢をもち、きれつ、きず、その他使用上有害な欠点がなく、かつ、異種物質で覆われていてはならない。」と書いてあるだけなんです。これがJISの承認なさったときの、いわゆるそれを安全性とおっしゃるならばそれで安全性なんですけれども、これは大臣、私も専門の理工学の先生、補綴の先生、いろいろな先生に、保存の先生にもお会いしました。いろいろ御意見伺いました。私は、安易に危険だという言い方は決してすべきではないと思います。ただし、今歯科材料の中に、ニッケルクロムだけ挙げましたが、でもそのほかに、コンポジットレジンだとかいろいろな歯科材料が、安全ということが保証されないままこれがどんどん入ってくる危険性と可能性は避けられないですね。コンポジットレジンあるいはアマルガムにつきましても水銀を使っているわけです。果たしてそれがどうなのか。これは確かに今までの経験の上からそう大きな被害は出ておりませんよ、すべて経験の上から成り立っていることであってと、それはそれなりに私、尊重はいたしますけれども、学者先生の間には、やはり材料の安全性というのはいろいろな角度で見直すべきだ……。  この安全性というのは、大臣先刻御承知のように、いわゆる臨床の安全性がございますね。その前に動物実験もあるかもしれません。でも、もう一歩先の安全性も必要ですよ。特に口の中に異物が入るわけです。金、銀、パラジウムにしてもニッケルクロムにいたしましても、今まで人体になかった異物が入ってくるわけです。口の中というのは、唾液等によりまして非常に酸性からアルカリ性への移動が激しいでしょうし、いろいろなものが溶出してくるわけです、金属材料の中で。果たしてそれが人体に影響しないかどうかは、慎重にかかわり合っていかなければなりませんよ。特に安全試験の中では、さっき通達がございましたけれども、急性毒性とか感作性、これはアレルギー性ですね。それから変異原性、これは発がん性です。こういうものを事前にきちっと系統的に、体系的にやっていかなければ、とても歯科材料の安全というものは、これからは確立てきないのじゃないか。  そこで、私は大臣にお願いしたいのですが、今局長もお答えになられました、いわゆる安全性の基準等を研究する研究班をつくりましたよ、これは一つの結果として私、評価いたします。予算はわずか二百万でございますね。大臣、これで十分なのができるとは私は思わないのですよ。もっとやっていただきたい。あるいは国立衛生試験所に療品部というのがありまして、歯科材料の研究をやっていらっしゃいます。でも、これもわずかなスタッフです。  もうこうなってまいりますと、やはり本当のところ、歯科の材料について絶対に大丈夫だという研究機関というものはまだございません。大臣がこうやって、日本の大学の中のどこが一体この材料についての安全性を本当に研究しているか、人体とのかかわり合いで。恐らく今度の研究班の班長になられた佐藤先生ぐらいだと思いますよ、あるいは大阪に川原先生という方がいらっしゃいます。本当に少ないのです、材料の毒性研究をやっていらっしゃるのは。そういう意味で、厚生省が責任を持って歯科材料を研究して、国民が安心して歯科材料を使えるような研究機関なり体制はおつくりになるべきだ。今の前段としての、研究班をおつくりになる、国立衛生試験所を充実する、JISの専門委員充実する、これは結構です。でも私は、行く行くはこういう歯科材料を初め、この医療品として使う材料についての国立の材料研究所あるいは国立の専門的な歯科材料研究所を将来のためにおつくりになることは必要であろうと思うのですが、大臣、いかがですか。
  441. 渡部恒三

    渡部国務大臣 前段の先生御指摘の問題は全く同感でございまして、これは口の中に、体内に入れるものでありますから、その安全性の確保のために行政としてできる限りの協力をしていくのは全く当然のことでありますが、それがすぐに新しい研究機関とか施設をつくるということにつながっていくかどうかということは、これは今御案内のように、厳しい財政の状態、また行政の簡素化等が臨調から強く指摘されておる問題、そういう中で、先生の御指摘の歯科材料の安全性をより一層確実なものにしていくためには、現在のいろいろの機関もあり、また新しい予算等もとっておりますから、これらの機関、研究所、これを活用することによってまず安全性の確保に努力してまいり、それてどうしても困難であるということになった場合、新しい機関を創設する問題は考えるべきことだと思います。
  442. 薮仲義彦

    薮仲分科員 大臣がおっしゃられたように、医学の進歩というのは日進月歩でございます。また技術も進んでまいります。特に、この歯科材料というものは非常に大事な要素の一つであろうかと思います。  これは今後の研究課題として、大臣、心にとめておいていただきたいのは、この下の号とか上の骨ですね、骨に、インプラントといいましてセラミックの材料を差し込んで義歯をやるのがもう新しい技術で出ているわけであります。しかし、インプラントという骨に直接埋め込むというのは、完全なる、材料というよりはある意味では薬に近いような範疇の中で安全性を調べていきませんと、単に今おっしゃられたJISだけでやりますと、物理的、化学的な性質だけでおやりになることは非常に危険なんです。特にコンポジットレジン、歯に充てんなさるわけですが、これによって歯髄が壊死したとかという例もございます。あらゆる化学的なそういう治療剤がどんどん開発されてまいりますけれども、今の体制では研究が追いつかなくなってまいります。大きな事故が起きてからでは間に合いませんので、この問題、大臣、材料の安全性についてはどうか心にとどめて、何とぞ大臣の時代にきちんと、この歯科材料の安全性について国民に不安を与えませんという体制はおつくりいただきたいとお願いして、指摘しておきます。  それから、もう時間がございませんので、これは大臣、この資料は大臣が見るよりも、おうちに帰って奥様に見ていただいた方があるいは正確かもしれませんのでお渡ししておきましたが、今度大臣が歯科の点数を改正なさいました。このことが果たしてどうであるのか。五十九年三月一日、ことしの三月一日改正されたのですが、ここで歯科の点数改正の要点として「良質な歯科医療の安定的供給の確保」、こうなっています。大臣も御承知のように、歯科の技術というものは、医科と違いましてほとんどが技術なんです。一般診療ですと、投薬が大体三〇%近く診療の内容を占めるわけです。ところが歯科の場合は、処置及び手術あるいはそういう技術料が六〇%、七〇%、ほとんど技術なんです。薬というのはわずかに三・六%なんです。ですから、技術料が改正されませんと歯科の経営というものは安定しないわけです。五十六年からずっと三年間、技術料は据え置かれたのです。今度大臣になられて、三月に胸を張って歯科の点数を改正されたとおっしゃるでしょうけれども、そこの資料の五をちょっと開いていただきたい。これはざっと申し上げます、時間がありませんから。業務局長、ちょっと開いてあげなさい、大臣は苦手のようですから。  そこをちょっとごらんになると、右側の方だけ言いますが、「上昇率」と書いてありますね、大臣。これは何かと言いますと、大臣にわかりやすいように、歯科点数表、これは青本というのですよ。歯科の点数表を一覧表にしたのです。これをずっと見てください。一・〇、一・〇、一・〇とありますね。これは五十六年から上がっていないというのです。上昇率がゼロということです、一倍ということはゼロですから。ずっと見ていってください。二枚目も一・〇、一・〇、一・〇です。何にも歯科の技術料は上がっていませんよ。三枚目も一・〇、一・○、一・〇です。間違いないでしょう。大臣が胸を張ったってだめなんです。一・〇、一・〇、一・〇、全部上がっていないのです。いよいよその次の四枚目ぐらいになりますか、番号で言うと三百番のところに来て初めて補綴診断料のところから上がっているわけです。三百番、大臣の方は上がったところにちょっと印がついていると思いますよ。それを見てください。あと印象採得のワンピース・キャスト・ブリッジのところがちょっと上がっています。またずっと一・〇が続いて、下の方に行って咬合採得でちょっと、番号で三百四番が上がっておるのです。それからまた一・○がずっと続いて、鋳造歯冠修復というところ、三百十一番で点数が上がっております。等々、上がっている箇所は非常に少ないのですよ、大臣。たくさん上げたように思うでしょう。これで見るとほとんど上がっていない。  これは何を言いたいかといいますと、大臣、その前の資料をちょっとごらんいただきたいのです。資料を行ったり来たりで大変恐縮ですが、資料の三番、四番、これはどういう資料内容かと言いますと、九州歯科大学の歯学、福岡大学の歯学部の補綴の研究室あるいは日本歯科医師会の経営診断等によって、歯科の先生がどの程度の経費がかかるかということを時間で出したり、いろいろなものを表にしたものですが、結論だけ言いますと、今度の中央社会保険医療協議会の五十六年十月の医業経営実態調査の中で、歯科の収入、院長さんの収入を出して、それで時間で配分して鋳造冠、がちゃっとかぶせるやつ、全部鋳造冠です。これにどれだけ実際にお金がかかるか出したのです。この費用が合計という欄に三万三千二百十一円と出ていますね。じゃ、それで請求できるのは何点かというと、一番右側の六百八十八点です。これを差し引きしますと、二万六千三百三十一円、全部鋳造冠は赤字になりますよという例なんです。  それから、もう一枚開いてください。これは総義歯、入れ歯です。大臣は歯がきれいだから入れ歯にならないでしょうけれども、入れ歯は今、歯医者さんにとって一番苦手な診療なんです。これも今と同じことです。いわゆる経費の合計でいきますと六万二千八百七十三円、これは上下両顎で六万二千八百七十三円。保険請求できる点数がここにありますように三千五百三十八点。差し引きしますと二万七千円の赤字、こうなっています。  もう時間が来たようですので、もっと詳しくお話ししたいのですが、きょうはやめておきますけれども、この資料の一番最後にいわゆる支払い側が出した資料がございます。歯科のお医者さんの経営がだんだん悪くなっていますよという資料をつけておきました。大臣、本当に良質な歯科医療をやるためには歯科の先生の技術評価をしてあげないといけない。歯科の先生はまじめな先生なんです。御苦労していらっしゃる。いろいろマスコミで騒がれる問題がございますが、日本の国には国民の健康を支えている立派な歯科の先生が数多くいらっしゃいます。そういう先生のために適正な技術評価を今後の点数改正で御努力いただくよう要請して、私の質問を終わります。
  443. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて薮仲義彦君の質疑は終了いたしました。  次に、松沢俊昭君。
  444. 松沢俊昭

    松沢分科員 最近、食べ物についての公害が出ているということで、いろいろな人たちがいろいろな問題を提起しておりますことは大臣も御承知のとおりであります。  これは全国農業新聞、全国農業会議所の出している新聞で、最近のものでございますけれども、東大の助手でありました人が、とてもこのまま黙っているわけにはいかぬということで、無農薬野菜をつくると言って宮城県の山の中に入って開墾を始めたという記事が載っているわけなんですね。こういうぐあいに、いても立ってもいられないという人が出てきたわけです。  それから、これも新聞に載っておったのですが、「これでよいのか輸入食品検査」こういう問題も提起されております。それから、  これは朝日の「ひと」というところに載っていたのですが、「食品添加物や農薬の遺伝毒性試験を、食べる側の資金で行い「千年後の子孫を守ろう」と訴える。」という人も出てきている、こういうことであります。  農薬だとか、それから食品添加物が危険であるかないかというチェックをやる政府機関というのは厚生省だと思いますが、私の知っている人も食品公害問題で大分一生懸命やっている人がおります。私は大臣も御承知のとおりつくる側でありまして(渡部国務大臣「私もそうです」と呼ぶ)食べる側ではないわけでございますけれども、最近、やはりつくる側も食べる側もそれから研究する側も一体になって、将来の子孫のために、日本民族の生存のためにこの問題を本当に真剣にとらえていかなければならない、こんなぐあいに実は考えているわけなんであります。  そこで一つお伺い申し上げます。時間がないわけでありますから、三十分で結論が出るとは考えておりませんけれども、最近米の減反が続いてまいりまして、減反が続いた二年後になりますと不作という年になりまして、不作が四年間続いたわけですね。だから、余っているというはずの古米が、逆に古米があったことによって国民に米の供給を政府がやることができた、古米に助けられたという珍現象が出ておりますが、要するにその古米が超古米で、五十三年産以前の古米を去年から使い出しているわけですね。農林省に聞きましたところが、昨年の米穀年度末、十月末で大体八十万トンあったと言うのです。そのうちの二十七万トンは五十九年のしょうゆ、みそ、せんべいという加工原料に回す。それから、ことしの米穀年度の需給計画を見ますと、やはり単年度需給はできませんから、十万トンから十五万トンくらいはその米を使っていかなければならぬのじゃないかということになって、大体ごとしで終わるということになるわけなんでありますけれども、この米を倉庫で保管する場合におきましては、常温の場合においては薫蒸しなければならない。それで、大体東と西に分けますと、西の方は虫に対するところの対策、それから私たち新潟とか大臣の方は、どっちかというと軟質米でありますからカビに対する対策ということで、薫蒸の薬品名も違っておりますね。軟質米の方はメチルブロマイドあるいはまたエキボンという薬品名でありますが、そういう二種類のものを使って薫蒸をやっているわけですね。  この薫蒸によっての毒性残留があるのかないのかという問題が今大きく取り上げられております。私も農林省にお聞きしましたら、ないようなことを言っておるわけでありますが、ないという証拠はどこにあるのか。だんだん聞いてみますと、ずっと昔一度総合食品研究所で検査をされたことがある、最近はやってない、こういうことであります。それで心配ないのだと言っているわけであります。一方また、それぞれの学会なんかもありまして、食品衛生学会の雑誌、これは八一年の十月に出されているわけでありますが、今申し上げましたのは塩化メチルのことですから、その塩化メチルで薫蒸をやった場合、米の場合においては大体四〇ppmの残留ということになるのじゃないか、こういうことが出されております。それから聖マリアンナ医科大学の余村、柴田という両先生が、臭化メチルの薫蒸食品に関するところの研究というのをやっておられますけれども、これもやはり残留すると言っているわけなんであります。  そうすると、この種のものは無害ではないということが言えるわけですね。しかも五十三年ということになりますと、一年に一遍ずつ薫蒸するということになりますと、もう既に五回薫蒸しているわけなんであります。そして、食品衛生学会の雑誌なんかによりますと、米は四〇ppmでありますけれども、しょうゆ、塩が同じ倉庫に入っているという場合、これは物すごい、二百何十ppmも入っているというような発表をやっているわけなんです。これは非常に重大な問題だと私は思います。要するにこの毒性検査、あるいはまたこれが有害であるか無害であるかという問題は、厚生省の方としてはどうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  445. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 今先生お話しの古米の薫蒸でございますが、臭化メチルあるいは酸化エチレン等等が使われておるわけでございますが、これはいずれも揮発性の高いものでございまして、そのものは大抵二日ないし四日で揮発消失をしてしまうということで、その点で安全性については問題ないと考えておるわけでございます。  ただ、先生今お話しの八一年十月の食品衛生関係の論文でございましょうか、四〇ppmというお話でございますが、これは臭化メチルが分解をいたしまして、臭素そのものがその程度残っておるということではないかと思います。
  446. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今局長から答弁したとおりでありまして、米の薫蒸剤は揮発性が非常に高いことから、その有効成分そのものは通常の使用方法のもとでは二日から四日程度で消失すると聞いておりますから、米は心配ない、特に新潟と福島の米は心配ないと私は承知しております。
  447. 松沢俊昭

    松沢分科員 今心配ないと言われましたけれども、心配あると言っているわけだ、民間の研究者の皆さんは。両方ともないということであれば結構な話なんですよ。供給する側の政府の方ではないと言って、供給を受ける側の方としてはあると言っているわけなんです。そこのところの食い違いが非常に問題だと私は思うわけであります。双方ともないということを言うならば問題ないわけですが、あるというのとないというのがある。しかも、ないという方が供給側の政府なんですよ。あるというのは食べる側なんでありますから。こういう疑問をどのようにして解消したらいいかというのが一つの問題だと私は思います。  それからもう一つ聞きますが、アメリカ産の小麦、日本はほとんどアメリカから憤っていますから、穀類の七〇%は外国依存、こういう状態になっているわけでありますから、その一番でかい商品であります。アメリカ産の小麦から農薬のEDBが検出されている、これもまた大きな問題になっているわけなんです。こういう問題は厚生省はどうお考えになっているのか、お伺いいたします。
  448. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 さっきの臭化メチルのところ、もうちょっと詳しく御説明させていただきますと、臭化メチルそのものは先ほど申し上げましたように揮発してなくなるわけでございますが、無機の臭素が残るというのが先ほどの先生のお話だと思います。  無機の臭素と申しますのは、実はいろいろの自然の食品の中にかなりの量含まれておりまして、自然の食品を食べても、一日大体十ないし十三ミリぐらいは普通人間の体に入ると言われておるわけでございます。FAO、WHOでは、五十キログラムの体重の成人一人当たりについて許容量五十ミリグラムとしておりますので、先ほどのお話の四〇ppmが仮に残ったといたしましても、十分FAO、WHOの許容量の範囲内におさまる、そういう意味で安全だということを申し上げたわけでございます。  それから、小麦等の穀類のEDBの問題でございます。これも実はEDBは揮発性のものでございまして、従来、私ども、かんきつ類につきまして最終の消費者のお手元に入りました場合にゼロになる、その目安のもとにガイドラインをつくりましてやっておるというわけでございます。  今回穀類が新しく問題になりましたので、穀類につきまして、まだわずかでございますけれども若干の調査をやりまして、現時点では、穀類につきましても最終製品ではEDBは検出をされていない。ただ、これはまだ検査の数が少のうございますので、至急に検査の数をふやしまして、必要がございましたら穀類につきましてもガイドラインをつくりたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  449. 松沢俊昭

    松沢分科員 さっきの臭化メチルの問題、これはいろいろ聞きますと、農林省の方では十年前ぐらいにやったことがあるようだという話であって、正確なデータをまだ出してきておりません。これは厚生省の方ではいつおやりになったのですか、毒性があるかないかということを。
  450. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 臭化メチルがどれぐらい残存するかということにつきましては、文献を調べまして、大体玄米では四十八時間ぐらいでみんななくなるというのを文献上調べたわけでございます。
  451. 松沢俊昭

    松沢分科員 だから私は困ると思うのですよね。それは心配ないというところの文献もあるだろうし、心配だというところの文献もあるわけだから、ちゃんとみずからの手によって検査をしなければならないんじゃないですか。それはあなた方の重要な職務なんじゃないですか。それをやらぬで大丈夫だ、大丈夫だという話はないじゃないか。  それともう一つ、アメリカから来るところのEDBの問題にしましても、それじゃいつ調査をされ、どういう方法で何件ぐらいやっているのか、やはり具体的に出してもらいたいと思います。
  452. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 臭化メチルの残存量につきましては、そういうことで文献上大丈夫だとは思っておりますけれども、農水省とよく相談をいたしまして、実際に調査するということについて検討を進めてみたいと思っております。  それから小麦のEDBでございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、まだ実際に私どもがやっております検体の数はごくわずか、十数検体でございまして、これだけでは不十分でございますので拡大をしていきたい。きのうでございましたか、予算委員会の方でも御答弁申し上げましたように、大体数カ月ぐらいのめどで調査を終わりたい、その上でどうするか、ガイドラインを決めるかどうかということを検討したいと思っております。
  453. 松沢俊昭

    松沢分科員 これは日本の民族にとっては非常に重大な問題だと思います。そして民間の学会の方から、いろんな研究者がいましていろいろ堤百をやっているわけだから、それはしっかりした検査をやって結論を急いでもらいたい、これはひとつ希望いたしておきます。米の場合も同じであります。  それから食品添加物、これも三百四十七とか許可が出ている、こういうことも聞いているわけなのでありますが、いろいろ資料を見ますと、内閣消費者保護会議、ここで危険性があるから再点検すると決めた食品添加物がたくさんありますね。これは再点検をおやりになっているのかどうか。それから、食品添加物再点検によって遺伝毒性が認められたもの、これも大分たくさんございますが、これは除外したのかどうか。
  454. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 食品添加物の再点検、再評価でございますが、昭和四十九年以来、過去に指定をいたしております食品添加物について再点検を計画的にやっておるわけでございます。例えば慢性毒性につきましては四十九年から五十七年度までの間に三十品目、あるいは催奇形性につきましては二十三品目、それからさらに変異原性試験については年間約五十件ずつくらい、検査、再評価を実施しておるというのが現状でございます。  それから次に、遺伝毒性というお話でございますが、遺伝子に変異を起こすという変異原性ということだろうと思います。これにつきまして、先ほど申し上げましたようにかなりの数を再点検、再評価をいたしております。ただ、変異原性試験と申しますのは、発がん試験のスクリーニングというような形で行われておりまして、変異原性があるというものについてさらに必要な場合に発がん性を調べる。ちなみに、変異原性試験はそういうことで非常に枠が広うございまして、例えば普通の自然の食品でございましても、お茶とかコーヒーとかしょうゆとかワインとか焼き魚、焼き肉、ワラビ、ウイスキー、漬物、そういったものはいずれも変異原性がプラスに出るというようなことでございますので、スクリーニング試験として使い、最終的には発がん性試験に移るということでやっておるわけでございます。
  455. 松沢俊昭

    松沢分科員 やっているというお話だが、これはいろいろなものがあります。読み上げてもいいのですけれども時間がないから読み上げませんけれども、要するに、そういう遺伝毒性というものが認められたものは除外したのですか。
  456. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほど申しましたようなことで発がん性試験に移るわけでございますが、現在までの段階では、発がん性があるということで除外をする必要のある添加物はまだ出ておりません。
  457. 松沢俊昭

    松沢分科員 いや、要するに認められるものということでちゃんと幾つか挙がっているのですよ。だから、それはあるのじゃないですか。時間がありませんから申し上げませんけれども、これは日弁連の公害対策委員の方からいろいろとまた提言も厚生省にあったはずなんですね。  そこで、食品添加物の件については、食品衛生法というのがあるわけでありまして、これの法の運用の仕方というものが問題だと私は思います。ここにも問題が提起されておりまするけれども、有害性が立証されなければ禁止しないという立場で運用するという方法のものと、疑わしきものは許可をしないという立場と、これは二つあると思います。だから、立証されない限りはいいのだということで許可をしていくとか、あるいはまた、要するにそういう消費者の会議で指定をして、これは遺伝毒性があるのじゃないかといったものも、まあ心配ないだろうということで除外しないということになったら、これはあれじゃないですか、これでは政府はとても信用できないというようなことで、だから、物理学者までがもう自分で要するに野菜をつくる以外にないということで山の中で開墾を始める、そういう状況になっているんじゃないですか。でありますから、はっきり申し上げますと、今の厚生省の公害に対する行政というものに対しては国民は信用、信頼をしていない、こう断定してもいいと私は思うのです。  そこで、私の方から提言したいのでありますけれども、やはり政府国民の不安を解消するために努力をしてもらう、そのためには安全と判断したものであるならばその根拠を公表するとか、それから国民の要求に応じて、こういう問題はどうですかと来た場合においては速やかにそれを分析できるような、これは金はかかると思いますがね、大臣。だから、各県に一カ所ばかりずつあれば一番いいわけでありますが、そうはできないにしても、東北に一カ所とかあるいは関東に一カ所とかあるいは関西に一カ所というふうに、日本全国幾つかに分けまして、そういうところで簡単に分析を迅速にやってくれるという、そういう分析センターのようなものを設けて国民の皆さんにこたえてやるとか、あるいはまた、民間の研究者だとかそういう機関が分析結果を出して、今申し上げましたように、政府の方は大丈夫だという、民間の方では大丈夫でないという、こういう食い違いがあった場合はその原因をきちっと調査して、こういうわけで心配ないんですよということを、ただ研究者に有害であると言わせっ放しでなしに、そういうことを言っておられるけれども私の方ではこういうわけで心配がないと思っておりますという、そういうものを国民の前に公表するとかというような方法で対応していくことが今必要になってきているのじゃないかと思われるわけでございますが、そういう点については大臣は一体どうお考えになっておりますか、大臣から答えてもらいたいと思います。
  458. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 いろいろの規制をやる場合の根拠の公表ということでございますが、特に私ども、食品衛生調査会が使用されました資料につきましては、御希望の向きには必ず全部閲覧をしていただいて結構であるというような形でやっております。  それから、今先生お話しの、国民の方々からいろいろこれは心配だ、これは分析したらどうかというふうなお話があった場合に、それをひとつ受けて分析をするなり何なりしてはどうかというお話でございますが、消費者の方々がお見えになりまして御相談をする場合には、できるだけ御納得のいくように私ども対応しておるつもりでございます。ただ、実際に分析をやるということになりますと、これはやはり十分お持ちいただいたり、あるいは抱いておられます疑念について科学的に十分話を伺って、整理をして、価値のあるものであるということでないと、経費の関係もございますし、なかなかできにくいかと思います。ただ、各都道府県にも私ども十分指導をいたしまして、そういった消費者の方々が不安を持っておられる食品その他について、できるだけ御理解いただくような相談と申しますか、そういうことを十分するようにということは指導いたしておるわけでございます。
  459. 松沢俊昭

    松沢分科員 大臣はどうお考えになりますか。
  460. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今政府委員から答弁がありましたが、これはまさに、松沢先生の御提案、国民の皆様は毎日食べ物を欠かせないわけでありますから、その食べ物に不安を持つようでは困るのでありまして、できる限り国民の皆さん方の食べ物に対する不安を解消していくように、国民の生命を守る、健康を守る立場厚生省として努力していくのは当然のことであろうと思いますので、今答弁がありましたようにいろいろ技術的な制約等あるようでございますが、先生の御提案の趣旨を踏まえて、できる限り国民の皆さんに安心していただけるような食品衛生施策を進めてまいりたいと思います。
  461. 松沢俊昭

    松沢分科員 これで終わりますが、とにかく公害問題というのは非常に大きな問題にされてきておりますから、十分に検討していただきたいと思います。
  462. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて松沢俊昭君の質疑は終了いたしました。  次に、安倍基雄君。
  463. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 私は民社党の安倍基雄でございます。  どうも現在、御承知のようにいわゆる厚生省所管の問題は非常に大切になってきております。医療保険の問題あるいは年金の問題、これからの二十一世紀に向けての一番大きな問題ではないかと思っております。医療保険の問題につきましては、御承知のように我が党は本人負担の一割あるいは二割負担の撤回をば求めております。この問題につきましては既に予算委員会でも一般質問で取り上げられたし、与野党の合意で社労委員会の討議の結果を待つという形になっております。したがいまして、私はここで取り上げるつもりはございません。年金問題についても同じでございます。  ただ、私が考えますのに、現在いろいろいわゆる老人問題が問題になってきておる。その中で特に寝たきり老人という問題が大きくクローズアップされているわけでございます。家族の中に寝たきり老人がいる、非常に大変でございまして、私も多くの事例を知っておりますが、政府が既に特別養護老人ホーム養護老人ホームあるいは軽費老人ホームというものを設けることを助けて、それに対して経営費、経常費についても補助しているということも知っております。  まず最初の質問でございますけれども、これらの施設に収容されておるいわゆる寝たきり老人の数、これはどのくらいいるのか。これは老人のうちの何%に当たり、そして在宅を含めた寝たきり老人のうちの何%に当たるのかということをお聞きしたいと思います。
  464. 持永和見

    ○持永政府委員 現在私どもの方で把握しております寝たきり老人の数でございますが、五十六年に行いました厚生行政基礎調査あるいは五十七年の社会福祉施設調査によりますと、寝たきり老人の総数は大体四十万程度でございます。そのうち寝たきり老人の方で特別養護老人ホームにどのくらい入っておられるかということでございますが、大体特別養護老人ホームの方々というのは寝たきりの方がほとんどでございます。特別養護老人ホーム入所者は現在約九万三千人くらいでございますから、おおむね寝たきり老人の二割ないし二割五分程度が特養の中で生活しております。また、六十五歳以上の老人人口は現在千百万くらいでございますから、千百万の中の四十万人ということで約四%程度、老人全体の中の四%強が寝たきり老人ではないかというふうに考えられます。
  465. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 在宅の寝たきり老人は大体何万人ぐらいでございましょうか。
  466. 持永和見

    ○持永政府委員 今申し上げましたように特養に入っておられる方々が大体九万三千人、全体の寝たきり老人が四十万人でございますから、在宅の寝たきり老人の方々は三十万人強ぐらいじゃないかと思います。
  467. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 これらの施設におられる寝たきり老人に対して国が支出している額、一人当たりどのくらいでございましょうか。また、特別養護老人ホームなどにつきましては、いわゆる入居者の数に対して職員の数が大体決まっておるように聞いておりますけれども、いかがなものでございましょうか。
  468. 持永和見

    ○持永政府委員 まず最初の、寝たきり老人の特別養護老人ホームの方々の処遇費でございますけれども、月額にいたしまして一人当たり大体二十万程度の措置費と申しますか、国が十分の八負担いたしまして都道府県が十分の二負担いたしておりますが、それが二十万程度じゃないかと考えております。  また、そういった特別養護老人ホームの職員の配置基準でございますが、五十人の定員の施設につきまして二十三人程度の職員が配置されているということでございます。
  469. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 そうすると、国の支出全体ではどのくらいか。
  470. 持永和見

    ○持永政府委員 老人ホームの運営費全体、これは先生御承知と思いますが、社会福祉施設費の措置費の中に全体組み込まれておりますが、この措置費の中で老人ホーム関係約三千億ございます。
  471. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 実は、こういった寝たきり老人に多く支出することはいいのですけれども、もし在宅の寝たきり老人を全部病院に収容するということになると非常な額になると私は思います。実は私の友人の中で、老人ホームから自分の家へ引き取ったという方がおります。そのときに彼が言うのに、老人ホームに入っているうちはいいけれども、自分の家へ引き取るともう大変なんだ、経費も随分かかる、ところが一向に税の方は控除してもらえない。そこで質問でございますけれども、老人ホームに入っているときと入っていないときと、年金あるいは税においてどういう差がございますか。
  472. 持永和見

    ○持永政府委員 年金につきましては先生御案内かと思いますが、各種の公的な年金につきましては、施設に入っている者も入っていない者も老齢年金としては同じ扱いをいたしております。税の面では老親、年老いた親を同居して扶養している場合には、同居老親等の扶養控除という制度がございます。
  473. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 それでいわゆる差でございますけれども、自分で引き取っている場合と老人ホームに入れたときと、税法上ある程度の差があるというように私はあれしておりますけれども。
  474. 持永和見

    ○持永政府委員 控除額が、今申し上げました同居老親等の扶養控除につきましては、所得税関係は五十七年度七万円の特別控除でございます。それから住民税関係が四万円の控除、こういうことに相なっております。
  475. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 大臣が来てからお聞きしたいと思っておったのでございますけれども、私が考えますのに、老人ホームには二つの問題があると思うのでございます。  一つは、在宅と老人ホームの人間との格差が余りにも激しいのではないかということでございます。第二の問題は、もし在宅の者を全員老人ホームに収容するとなるとすごい費用になる、この辺をどう考えるかという点でございます。――今大臣が来られましたからもう一度御意見を承りたいのでございますけれども、在宅している場合は税法上、これは地方税、国税ともに十一万円の控除がございます。それ以外は、同居している場合と老人ホームに入れた場合と全く同じでございます。老人ホームに入れた場合は年金ももらえる、一人当たり二十万の費用も出してもらう。これは本人に渡らないにしても一応そういったことになる。しかも税の控除は同居と病院で十一万しか違わない、これは余りにも格差が大きいのではないかという点がまず第一点でございます。  また、今四十万人のうちの九万人くらいしか病院に入っていない。九万人に対する経費だけでも年間三千億かかっておる。これは今回の酒税の引き上げだけでも三千億でございますから、増税分そっくりそのままがそっちに行っている。したがいまして、もう少し民間の資金というか全く国が全部出すという話になると、これは野党の質問というのは通常の場合はもっと甘くせいという質問が多いのですけれども、私自身考えますのに、不公平を是正するというか、もし全員老人ホームに入れるとなると一兆何千億という数字になる。このアンバランスをどう考えるかということでございます。
  476. 渡部恒三

    渡部国務大臣 寝たきり老人等の問題については、私どもの基本的な姿勢としては、おじいちゃん、おばあちゃん、自分の家で孫の顔を見ながらおることが一番幸せなのでありますから、なるべくは在宅福祉が望ましいということで、今ほど答弁申し上げたような、ホームヘルパーを増員するとかデーケアの施設をつくるとかいろいろな努力、またボランティア、地域の活動を強化していく等のことをとっているわけでありますが、今の先生御指摘のように、これは財政的に考えても在宅福祉の方が非常に望ましいわけでもございますから、そういう意味で税制の優遇とかいろいろな施策を講じておるわけでございますが、まだまだ今御指摘のような開きがあります。福祉本来の目的、また財政、そういうようなことを考えながらなお一層在宅福祉強化に努めてまいりたいと思っております。
  477. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 これとの関連で、実はある人間が有料老人ホームをつくりたいという話がございました。その際に、いわゆるこういった特別養護とか養護とかいうものについては、市街化区域であろうと市街化調整区域であろうと比較的自由にできる。ところが、有料老人ホームは市街化調整区域においてはなかなかつくれない、許可を要するということでございますけれども、事実でございますか。
  478. 持永和見

    ○持永政府委員 今の先生のお話しのように、いわゆる特別養護老人ホームでございますとかそういった福祉施設の範疇に属するものについては、市街化調整区域でもつくれることになっておりますけれども、有料老人ホームはまだそこまで認められておりませんで、市街化調整区域では一応規制の対象になっておる、お話しのとおりでございます。
  479. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 今私が提示した問題は、もっともっと民間資金を老人対策に活用すべきだというのでございますが、老人ホームなんというのは都会のど真ん中にあるよりはむしろ郊外にある方が環境もいいし、また地価も安いわけでございます。市街地でつくろうと思うとどうしても高くなる。そうすると有料の料金が高くなるわけでございます。したがいまして、市街化調整区域に有料老人ホームをつくろうとする人間に対しては、福祉施設の一環としてもっともっと自由につくらせたらいいのじゃないかと私は考えております。これについて私は建設省の御意見を承りたいと思います。
  480. 深沢日出男

    ○深沢説明員 お答え申し上げます。  いわゆる老人ホーム等につきましては、先ほど先生お話しのように、市街化調整区域等々ではいろいろな規制が加わるわけでございますが、お話しの老人養護、それから特別養護等々の社会施設につきましては開発許可の対象外としております。ただ、有料老人ホームにつきましては一応対象になるということでございます。  これは、市街化調整区域と申しますのは、一定面積以上の計画的な開発、あるいは地域住民の日常生活のために最低限必要な日用品店舗等々を調整区域においてどうしても設置しなければならないというような、やむを得ないものについて開発を認めるという一定の制限が加わっているわけでございまして、そういう一定の要件に該当するものについてのみ許可できることにしているわけでございます。その他のものについては、当面市街化を抑制するという観点から開発行為とか建築行為は認めないということでございまして、今御指摘の有料老人ホームにつきましては、確かに土地の環境がいい静かなところに入って老後を過ごしたいという御希望はわからないわけではないのでございますけれども、先ほど申し上げましたような観点から現在のところは認めていないという状況でございます。
  481. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 大臣、私は、この老人対策についてもっと民間資金を活用すべきだということをお話しいたしました。そうでなければ、例えば今の寝たきり老人を全部老人ホームに収容するだけで一兆円以上のお金がかかるわけでございます。でございますから、有料でつくろうという人間がいればそれにはどんどんつくらせたらいい、もっと民間資金を活用したらいいという考え方で、したがいまして、私としては、そういったことを厚生省として積極的に考えて、市街化調整区域でもつくっていけるのだというぐあいに建設省と話し合っていただきたいと思います。いかがでございますか。
  482. 渡部恒三

    渡部国務大臣 安倍先生のお話しはもっともだなと、私も今聞いておりました。日本の役所というのはそれぞれの役所に縦割りになっておりまして、厚生大臣としての私が市街化調整区域をどうこうするということの答弁はここでいたしかねますが、御意見はまことにもっともだと聞いておりましたので、建設大臣等にこの話をよくして、お願いしてみたいと思います。
  483. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 時間があと十分間しかございませんけれども、次に私は別の点をお伺いしたいと思います。  現在、国立あるいは公立の病院の経営状態が非常に苦しいと聞いております。大体こういった病院の中で、黒字計上をしているのは何%ぐらいでございますか。
  484. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お答え申し上げます。  昭和五十七年度について経常収支について見ますと、国立病院九十九カ所中三十九カ所が黒字でございます。構成比率にいたしますと三九・四%でございます。また、自治体立病院九百六十四カ所中四百四十四カ所が黒字、構成比率にいたしますと四六・一%でございます。
  485. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 経営困難の大きな理由は人件費の高騰であるというぐあいに私は聞いております。と申しますのは、私はいろいろ病院関係の事務長連中と会ってみると、どうもうまくいかぬという話で、その一つとして、私は、一つの病院で患者何名に対して医者何名、あるいは看護婦何名という基準が定められていると聞いておりますけれども、いかがでございましょう。
  486. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 そのとおりでございます。
  487. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 この規定はいつ決められたのですか。そしてその根拠は何でございますか。
  488. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 今日定められておりますところの基準の大もとは、昭和二十三年に現行の医療法が制定されるに当たりまして、当時の医療制度審議会の答申を受けまして、一定の従業者の数の基準を設けるべきである、こういうことで設けられたのでございますが、具体的な基準につきましては、医療法の施行規則第十九条で従業者の員数の標準として定められておりますけれども、これにつきましては、当時の医薬制度調査会におきまして十分検討され、そうしてさらに、病院の実情をもしんしゃくいたしまして、慎重に検討の上定められたものと承知をいたしております。
  489. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 その基準はずっとそのままでございましょうか。そして外国にそういう例がございましょうか。
  490. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 ただいま申し上げましたように大もとはそのままでございますが、ごく最近におきましては、これはやはり収容患者の態様に応じて考えるべきであるということで、老人を主とする病院につきまして特例を認めておる、こういうことがございます。  それから、外国に基準があるかどうかでございますが、ただいまつまびらかにいたしておりませんけれども、また国によっていろいろ制度が異なっておりますので、必ずしも同列に論ずることはできないかと思うのでございますが、確かに今後の医療政策を進める上で外国の事情も参考にすべきであると考えますが、そういう事情も調べてみたいと思っております。  基準についてはそういうことでありますけれども、研究者等が諸外国へ参りましてその事情を調べて帰って、その事情を聞きますと、まあいろいろな事情はありますけれども、例えば急性病院につきましては、日本より相当程度多い職員が配置されておるようでございます。
  491. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 時間ももうございませんから簡単に申しますけれども、大臣、実はこの基準は昭和二十三年に決められてからずっと同じなんです。単に老人病院とかあるいはほかの一、二の病気について基準が変わっているだけで、全然変わってないわけです。考えますのに、最近はよく、これからの医者の数をどうするか、こうするかという問題を考えておりますが、しかし、一番底の底の、患者一人当たり何人という規定がそのまま検討されずに、ずっと二十三年から同じ数字が使われているわけです。私は、これはいろいろ病気の状況にもよるし、あるいはまた、最近のように集中管理ができてきているというのであれば、看護婦とかあるいは医者の数はもう一遍洗い直してみてもいいのじゃないか。そうでないと、患者何人に対して幾らということを決めたままでずうっと来ているということになりますと、医者の将来の数というものはそれに根底的には規制されるわけです。この点大臣、時間もございませんのであれでございますけれども、今本当に大蔵省は税金を、私は大蔵出身なものですからあれですけれども、世論の袋たたきに遭いながら取ろう取ろうとしている。ところが、出す方は非常に意外なところに盲点がある。今の医者の数、あるいは看護婦の数ということで病院の経営が悪くなるということになると、いわゆる薬づけ、検査づけでそれを補おうとするということもあるわけです、人件費が上がっていくにつれて。私は、どの数字がいい悪いというのは専門家ではございませんからここで言うわけではございませんけれども、もう一度それを全部洗い直して、果たしてこれが正しいものかどうか、これは将来の医者の数にどう響くのか、あるいは保険の医療費もこれが水増し請求の原因になっているのじゃないかということをもう一遍洗い直していただきたいと思います。  私は、これは分科会で話すよりはむしろ一般質問で話した方がいいような話かと思いましたけれども、私はまだ新米でございますから分科会で聞くわけでありますけれども、この点についての大臣のお考えを私は承りたいと思います。
  492. 渡部恒三

    渡部国務大臣 安倍先生のただいまの御指摘、大変傾聴に値すべき意見として私も聞いておりました。時代が変化し、いろいろ医療体制に対するニーズも変わってまいりますから、しかしそれにしても、やはり患者が安心して入院したりあるいは医者にかかれるためには、病院経営の安定というのもこれは非常に大事なものでございますから、これらのことを考えて、今までも精神病院とか結核病院とかで弾力的な取り扱いをするように進めてきておるところでありますが、ただ、やはり、人間の生命を守る医療機関ということですから、ただ合理化で人を減らせばよいというわけにはまいりませんが、これらのことを十分勘案しながら検討してまいりたいと思います。
  493. 安倍基雄

    安倍(基)分科員 私は何も、現在のいわば当事者を責めているわけでは全然ないのでございまして、私もそういった席で大分つるし上げられた経験がございますので、決して責めているわけではない。やはり建設的に物事を考えなければいかぬ。しかも、さっきの有料老人ホームにいたしましても、それから医者の人数の基準にいたしましても、これはやはり世の中の変化に応じて弾力的に考えていかなければいかぬと思っております。どうぞ前向きな検討を両面においてしていただきたいと思っております。  私の質問を終わります。
  494. 小杉隆

    小杉主査代理 これにて安倍基雄君の質疑は終了いたしました。  次に、武田一夫君。     〔小杉主査代理退席、矢山主査代理着席〕
  495. 武田一夫

    武田分科員 私は、二つの問題をお尋ねいたしますけれども、大臣も大変お疲れのようですから、正確にしてしかも適切な答弁をいただければ早目に終わっても差し支えない、こういう気持ちでございます。  一つは精薄者の施設、ここに勤める職員の悩みをちょっと聞いてもらいたいなということでございます。  精薄者の方の中で就職をしたい、その職探しを職員の方々がやるわけでございますが、非常に苦労しているわけでございます。というのは、やはりそういう方々でございますから、どこでもいいというわけにいかぬ。また、受け入れる方もどこでも受け入れてくれるわけでもございませんから、その就職先を探す。探して就職したといっても、それが定着するのがまた心配だ。そうなりますと、そういう施設の職員の方は、アフターケアのために三カ月ないし六カ月に二、三回、年に二、三回というところもあるようですが、行かなくてはいけない。近くだといいのですが、私、宮城県でございますけれども、どうも遠くが多いわけです。例えば農村地帯とか漁村地帯とかというようなところで、単純な牛の世話をするとか、あるいは海に行ってワカメの海岸に上がったのを拾って、そういうものを運んだりするとか、そういう仕事をやっていますので、非常に遠い。宮城県は小さな県ですが、それでも二時間くらいかかるところがある。こうなりますと、そういう方々の苦労というのは、時間的な問題だけでなくて、そういうところにかかった旅費、そういうものは自分たちの職場の中の経費の中できちっと賄わなくてはいけないけれども、それも十分でない。それから、苦しい経営の中でそういうものもとらなくてはいけない。  それから今度は、そういう施設は定員が五十名とか百名とか決まっているものですから、就職したのだけれども途中で嫌になって帰ってくる、ところが、うちで引き取ってくれればいいのですが、どうかまた施設に入れてくれということになると、苦いたところに戻ってきて入れてほしいと言う。ところがもう満杯になっているから入れないということでありまして、いろいろ悩みがあるようでございます。  まず一つは、そういう職員の皆さん方の中に、私は学校の教員をやったのですが、就職担当の教員というのが必ずいまして、歩くわけです。顔つなぎしておかないと、やはり就職ですから、知らないのがぽんと行くよりは、顔を会わして、やあ、こういうふうなつながりになっているところが非常にいいわけです。また、それであれば就職を頼む方も気楽に来るということがあるものだから、それを専門的にやるような人をつくってもらえないものか。まあ専門外の担当の委員とかという、名前は何でもいいのですが、そういう職制をひとつ設けてもらえないものだろうか。その方が、就職を世話しながら、その後アフターケアもできるのではないか。こういう問題が一つなわけです。  それからもう一つは、そういう方々がかかった経費。私が行ったところは、そのために年間三十万円は出るというのです。それはどこからも来ないというわけです。こういうものを少し面倒を見てもらえないものか。  三つ目は、定員枠を二、三%とっておいて、万万が一そういうような方が戻ってきたときには温かく迎えてやるようなことをしていただけないか。こういう三つの問題なんですが、ひとつこの点についてお答えいただきたいと思います。
  496. 吉原健二

    ○吉原政府委員 精薄者の方が就職をして、独立した、自立した生活ができるようにすることは大変大切なことでございまして、そういった指導訓練をするということが、この精薄者福祉法による厚生援護施設、厚生施設なり授産施設の大きな目的であるわけでございます。そういったことで、私どもそういった施設整備努力をしてきているわけでございますけれども、一たん施設を出られまして、就職先を見つけられて独立あるいは自活の道を選ばれた、あるいはそういった可能性の出た方につきましては、従来の法律による精薄者の援護施設のほかに、通勤寮というような施設整備するという制度昭和四十六年に設けまして、現在はそういったところに入っていただいて、就職、通勤をしていただくというようなことを進めているわけでございます。  そういったところには、今おっしゃいましたような指導員の方も置いておるわけでございますが、原則として、最初の授産施設なり厚生施設における指導員というのは、むしろ施設の中で自立した生活ができるように、あるいは可能な授産についての指導をするということになっているわけでございます。就職先を見つける、その他のそういった活動につきましては、通勤寮の職員でありますとか、あるいは福祉事務所におります精薄の福祉司の方にお願いをしているわけでございます。そういった福祉司の活動あるいは通勤寮につきましては、今後ともさらに一周整備をしていきたいと思います。  それからもう一つ御質問の、そういった方々がもとの施設に戻ってこられた場合のために、定員に二、三%の余裕を設けておく、あけておいたらどうだという御指摘かと思いますけれども、そういったことができれば大変望ましいわけでございますけれども、現在、精薄施設は大体定員満杯でございまして、まだ待機者が相当おられるというような実態でございますので、戻ってきそうな方のためにあらかじめ定員の余裕を設けておくことは、実際問題として非常に難しいということがございます。第一次的には、施設がまだ不足してございますので、そういった施設整備に最大限力を入れてまいりたいというふうに思っております。
  497. 武田一夫

    武田分科員 その経費の問題はどうですか。
  498. 吉原健二

    ○吉原政府委員 経費の問題も、そういったための経費としては、正面からは現在ございませんが、施設措置費の中に、施設の職員の方がそういった指導という職責を果たすためにいろいろな活動をする旅費なり活動費というものはある程度認められておりますので、そういった措置費の内容そのものの充実ということで今後とも対応していきたい、できるだけ対応を図っていきたいというふうに思います。
  499. 武田一夫

    武田分科員 それは現実は違うのですわ。福祉司も忙しいために、だめだと言うのですわ。だから職員が出ていかなくてはいけない。職探しは、御承知のとおり大変なんです。それから経費もないのですわ。だから、どこか削ってやっている。その苦労というのは、これはちょっと一回調べてもらえばおわかりだと思うのですわ。一生懸命やっているところですから、子供が先生を慕ってまた来たいというその気持ちは、私はわかると思うわけです。ですから、そのときに二、三人や四、五人あるいは十人くらいでも入れてもらえればという職員の気持ち、我々は多少負担があっても受け入れて面倒を見たいという、その献身的な気持ちは大切にしたいと思うわけです。ですから、施設充実してもらうのも結構でございますけれども、もう少し弾力的に考えていただく。それは中には、それを悪用する者がいれば、これはチェックすればわかるわけですから、どうしてこれはふえているのかなと。そういうところはもう少しきめ細かい御指導、御鞭撻をしながら見てほしいな、こう思うのです。  大臣、これはもう大事な問題だと私は思うのです。聞きますと、こういう子供さん方はこれからどんどん出てきます。ですから、これは大臣からも今後の一つの――そういう授産施設というのですか、精薄者のそういう施設は、人数も多くなってきているわけなんですから、この対策をしっかり考えてもらいたいと思うのですがね。その点ひとつお願いしたいと思うのです。
  500. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変大事な問題でありますので、御趣旨の点を十分頭に入れて今後対処してまいりたいと思います。
  501. 武田一夫

    武田分科員 次に、腎不全の問題です。腎臓病の問題ですが、私は毎年この問題を取り上げているわけでありますが、年々歳々ふえていますわね。国の方でも、厚生省さんも随分お力添えをしていただきまして、患者の皆さん方も非常に喜んでいるのでございます。しかしながら、やはりまだまだやらなければならない課題がたくさんございます。人工透析の問題、腎移植の問題、特に私は、きょうは腎移植の問題について重点的にお尋ねをしたいと思うのですが、移植の技術等々非常に高度になりまして、今まで非常に御苦労なさった方々が命を延ばすことができ、社会復帰も可能な状況になってきたということでございまして、非常に結構なことだと思うのでありますが、ヨーロッパやアメリカなどに比べるとまだまだ対応が弱い、こういうことを痛感するわけでございます。  そこで、まず第一問目にお尋ねしたいことは、腎バンクの問題です。これはどういうふうになっているか。腎提供者登録制度実態、現況はどうなっているものか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  502. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず腎バンクの状況でございますけれども、現在、東京都を初めといたしまして六都道府県に設置されております。ごく最近には昨年十二月に奈良県にも設置されたところでございますけれども、御指摘もございましたように、これからこの腎臓移植を推進してまいりますためには、腎臓を提供していただく方がふえる、これが最も基本でございます。今後ともこの腎バンクの拡充には努めてまいりたい所存でございます。  それから、提供者のお話もございましたけれども、昭和五十九年一月末現在で、提供してもよろしいという申込者の総数が五万四千六百七十四人となっております。なお、これに対しまして移植を受けたいという希望著の総数は三千七百四十一人でございます。大体三年間ならしまして、新規の登録者が、提供者に対しましては約一万四千人、移植の希望者に対しましては約六百三十人となっております。
  503. 武田一夫

    武田分科員 こういう状態だと、希望者には十分にこたえられないわけです。三千七百人いるとなれば、提供者、登録者が五万四千ですが、この提供者も十数倍あるいは二、三十倍くらい必要ではないでしょうか。そうすると、まだまだこれはやらなければいけない。それで、国としてはこのために登録及び普及啓蒙をやっています。この経費はたった二百万です。しかも、これは昭和五十六年ごろからずっと二百万じゃないですか。これじゃちょっと寂しいのじゃないかな、私はこういうふうに思うのです。ことしも二百万のはずです。この点どうでしょう。
  504. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 お話のございましたように、普及会に対します補助金はそのとおりでございますが、そのほかにも、この事業は、先ほど申し上げましたように、腎移植を推進する上に極めて大事でございますので、厚生省としても独自の計画を持ちまして、テレビを使ったり広報紙を使ったり、そういう普及活動に努めておるところでございます。
  505. 武田一夫

    武田分科員 しかし、その効果は遅々たるものではないかと思うだけに、今後そういう患者さんにとっては非常に大事なんです。というのは、人工透析をやった場合と移植をした場合には、健康の状態からいろいろな面で随分違うでしょう。それのデータはお持ちでしょう、透析で済ましている場合と移植した場合の。どうですか、透析の場合と移植した場合を比較した場合。
  506. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 腎不全対策にとりまして、腎移植と人工透析は車の両輪でございます。確かに腎臓移植が成功いたしますならば、これは患者にとりましては大きな福音でございますが、いろいろな問題がありましてなかなか進まないというのが実例でございます。  今、データのお話がございましたので申し上げますと、一九七三年から一九八二年にわたる間におきます生体腎並びに死体腎の移植成績でございますが、二千百十一例につきまして、一年の生存率が八七・二%、土着率は六七・二%でございますけれども、一方、透析患者につきましては、例えば一九七七年の例について申し上げますと、生存率が七六・二%となっております。
  507. 武田一夫

    武田分科員 そのほか、社会への復帰率なんかも見てみますと、透析患者の場合は完全復帰が三五%に対して、移植者の場合は倍の七〇%です。これは移植が患者さんにとってはどれほど重要なものだか明らかにわかるわけです。ですから、この点の対応をもっと一生懸命考えてほしい。  それから、アメリカから輸入するものがありますね。US腎というのですか、これは希望者が非常にいる。しかし、高くていろいろ経費がかかるとか、全部自己負担でしょう。ところが、仙台のケースを見ますと、昭和五十六年ごろから五十七年、五十八年と大体十件くらいはあるのです。今まではこういうこともなかなかできなかったことで、要するに希望はあるのだけれども、登録者も少ないし、いつ自分に回ってくるのだろうというので半分あきらめがちの方が多かったのですが、US腎が入ってくることになってきたものですから、私にもチャンスがあるという希望を持つ方々がふえている。また、心の準備も体の準備も整える。  そういうことを考えますと、このUS腎の扱いについても、国は力をかしてやって一国内でそういう状況でございますが、国内はどんどん提供者をふやすことによって解消すると同時に、この問題に対する何らかの温かい御配慮が必要じゃなかろうかなと思うのですが、その点についてはいかがでございますか。
  508. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 アメリカからの腎臓の受け入れにつきまして、確かに御指摘のございましたように、自己負担でおよそ七千ドル程度ではなかろうかと承知をいたしております。基本的に、眼球などもそうでございますが、できるだけ普及活動に力を入れまして、腎臓移植に対する国民の理解を得る、これが何といっても基本的な方策であると考えておるところでございます。御理解を賜りたいと存じます。
  509. 武田一夫

    武田分科員 大臣にお願いしたいのですが、これは大事な問題だと思うのです。提供者が少ないし、PRしているのだけれども、遅々として進まないわけです。ですから、大体身内の人からの提供が多いとか、あるいはライオンズクラブとかいう方々がかなり協力しているけれども、国民一般のこれに対する認識がまだまだ弱いということで、そういう国内的な努力と同時に、そういうものが欲しい、大変高いのだが、ちょっと努力すればそういうものを使えるという方々に、何らか国としても配慮してあげたらいいのじゃないか。しかも、ヨーロッパ、特にアメリカなんかと比べますと移植率も十分の一とかと聞いていますから、まだまだ非常に低いわけでございまして、これは患者さんが年々多くなって大変な状況でございますので、そういう配慮をしてやらないと、こういう方々に対する施策の大きな後退というか行き詰まりが来るのじゃないかという気がするわけですが、大臣、どうでしょうか、今後の課題としてひと一つ検討していただきたいと思います。
  510. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今医務局長から、これは幅広い国民的な御協力を得なければならないというお話でありました。私も厚生大臣に就任して直ちに登録の手続をいたしましたが、今後も御指摘の点をよく踏まえてこれを推進していくように努力してまいりたいと思います。
  511. 武田一夫

    武田分科員 最後に、これも大臣にお願いなんですが、雇用対策の問題。これは労働省の管轄だというのですが、私は、そういう考え方はひとつ改めてもらいたい。やはり総合的な対策の中に、社会復帰という問題としての就職というのがあるわけですね。それは労働省だから、職業安定所やそういうところに行ってやってもらいなさいといえばそれまでです。ところが、そういう内部疾患の方々は、特に透析なんかやっていますと三時間、五時間とるものですから、確かに会社としては厄介な存在になるかもしれないけれども、働きたい、また働く体力はついたという方々が職業安定所に行っても、ちょっと無理でしょうと断られるのですね。市や県の試験を受けたとしても、身体障害者の分野で何%か使え、こういう規定があったとしても、その中からはみ出しているのですね。これじゃ、こういう方々が一生懸命健康な状態に、物すごく努力してなったとしても、社会が受け入れてくれないということになりますと非常な問題です。  ですから私は、労働大臣等々関係機関に厚生大臣から話をしていただいて、そうじゃなくて、もうとにかくみんなでそういう方を面倒見ようじゃないか、そういう気配りをひとつお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  512. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私は厚生大臣に就任して所沢の国立リハビリテーションセンターに行ったときに、病に侵された方が健康を取り戻して職業について社会復帰しようとする熱意、必死の姿、それに労働省の施設厚生省施設が極めて密接な連絡をとりながらやっておることに非常に共鳴をしたのでありますが、今の先生御指摘の腎患者の雇用問題についても、これは労働省に、御承知のごとく、身体障害者雇用促進法がありまして、その施策に基づいて頑張ってくれておりますが、これは厚生省としても極めて重大な問題でありますから、労働省と今後密接な連携をとりながら、御趣旨にこたえるように努力してまいりたいと思います。
  513. 武田一夫

    武田分科員 時間まだあるようですが、これで終わらせていただきます。ひとつよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  514. 矢山有作

    矢山主査代理 これにて武田一夫君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤祐弘君。
  515. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 保育の問題でお尋ねをいたします。  保育を考える場合、いろいろな側面があるわけですが、近年、働く婦人がふえる中で、実態として、保育に対する要望、非常に切実になっておりますし、また多様化をしております。と同時に、来年批准される予定であります婦人差別撤廃条約、今それに向けて男女雇用平等法の論議が行われておるわけでありますが、この差別撤廃条約でも、子供の養育は男女と社会全体の共同責任であるということが強調されております。婦人に対する差別をなくし、婦人の地位向上、婦人の社会的進出を保障していく上で、保育の充実は一層重要になっておると考えるわけであります。  厚生省も、「国連婦人の十年」に見合う国内行動計画、その後期重点目標に「育児等に関する環境整備」を掲げて、延長保育等需要の多様化への対応、乳児保育の充実などを内容とした保育対策を掲げておられます。その点は最初に確認をできますね。
  516. 吉原健二

    ○吉原政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  517. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 ところが、最近の保育をめぐる状況を見ますと、この厚生省の掲げておられるような目標にそぐわない事態あるいは逆行する事態さえ生まれていると私は思うわけです。  そこで、保育を本当に充実させる、そういう観点から幾つかの問題に、絞ってお尋ねをしたい。  第一は保育料の問題であります。  この四月から東京二十三区、一挙に平均四七%、そういう保育料の値上げが行われようとしております。父母の間に大問題になっている。私は、この背景には、国の保育関係予算、これはこのところ年々減ってきているわけです。ついに五十九年度の予算案では五十六年度の九割を下回るということになっております。  こうした中で、東京二十三区だけではなくて、ほかの都市でも深刻な事態が生まれております。例えば東京都かの小平市というのがあります。ここでは国の保育料の徴収基準額、いわゆる国基準、これに近づけよという指導が行われているわけですが、そのもとで年々保育料が引き上げられている。今東京で一番保育料が高いわけです。三歳未満児で最高が四万三千円になっております。  そこでどういう事態が起きているかということでありますが、保育料の値上がりに耐えかねて保育園をやめる、あるいは保育料の安いところを求めて引っ越すというようなことが起きている。さらに、保育料の滞納が五十七年度までで百五十六世帯、三千三百万円にも上っているのですね。私の地元の足立ても、一千七百万円を超す滞納があるわけです。先日もあるお母さんから訴えられたのです。千葉は保育料が高いからということで足立へ引っ越してこられた。そうしましたら、この足立ても四月から値上がりするというので、私はもう途方に暮れている、こうおっしゃっているわけです。ですから、保育料の引き上げというのが非常に深刻な事態を各地で生んでいるわけですね。このことについて、厚生省としては一体どうお考えになっておられるのか、そのことをまずお聞きしたい。
  518. 吉原健二

    ○吉原政府委員 保育所の運営に必要な経費につきましては、児童福祉法によりまして、原則として本人または扶養義務者から市町村長が費用の全額を徴収しなければならないということが明記をされているわけでございます。ただし、その場合に、本人なり扶養義務者がその費用の全部または一部を負担することができないと認められるときには、当該費用につきまして、国、都道府県または市町村がかわって負担をするということになっているわけでございまして、保育料につきましては、利用者といいますか、本人または扶養義務者の負担によるのが原則ということになっているわけでございます。そして、厚生省といたしましては、その場合の徴収の基準というものをつくりまして、本人なり扶養義務者が負担することが困難と認められる場合には、その一部につきまして徴収を免除して、公費で負担をするということにしているわけでございます。それが、御案内のとおりでございますが、国の定めた徴収基準というものでございまして、私どもはその徴収基準に従って市町村長が保育料を徴収していただきたい、国の国庫負担もその徴収基準に従って交付をする、こういうことになっているわけでございます。  今お話のございました東京都の例でございますとかあるいは小平市の例、いろいろございましたけれども、恐らく私ども聞いております範囲内では、今まで国の徴収基準よりもはるかに本人あるいは扶養義務者の負担を少なくしていた、それを最近になりまして、諸般の事情から国の徴収基準に沿った徴収をするということで、実質的に本人なり保護者の負担増というものが出てきているのではないかと思います。従来公費で賄っていた分を、保護者なり扶養義務者に徴収基準に沿った形で負担をお願いするということの結果、御指摘のような事例が出てきているのではないかというふうに思います。
  519. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 そういう説明をいただいても、本当は回答にはならないのです。そういう中で起きている事態をどう考えるのかということを聞いているわけです。どうも厚生省さんは実情をよくつかんでいらっしゃらないのじゃないかというように思わざるを得ないわけです。  別の角度からいいますと、このところ保育園の入所辞退、入所を希望しまして入所通知が来ます、ところがそれから辞退するというふうな、いわゆる入所辞退者が各地で出ているということがあるわけです。これは行管庁の調査ですが、五十五年四月から六月の調査ですと、その辞退理由に保育料が高いということを上げておられる方が二〇・九%あります。それ以外に母親の就労中止。これは本当は働きたいのだけれども、保育料が高いためにやめるということだろうと私は思うのですが、そういうものを合わせますと四〇%前後にもなるわけです。  この入所辞退問題について、これが全国で今十万人を超えているというような話もあるのです。私は、正確な数字を知りたい、実情を知りたいということで、先日厚生省に問い合わせたのですが、厚生省の方ではそんな調査はしていないという御返事でした。私は厚生省の態度は非常に冷たいと思うのですね、その点でいいますと。ともかく希望して通知が来て、これは大変喜ぶのですよ。なおかつやめていく、辞退する。そうしましたら、一体どんな事情があるのだろうか、このことはやはり調査するという姿勢が必要だと私は思う。本当に保育行政に愛情を持って進めておられるなら、そうしていただきたい。そうされておらないわけですね。  私がここで言いたいのは、保育料が高いために入所を辞退せぜるを得ない。そういうようなのはあの児童福祉法の二十四条、要するに「保育に欠けるところがあると認めるときは、それらの児童を保育所に入所させて保育しなければならない。」この義務規定。これが義務規定になっておりますのは、これが非常に肝心な点だから義務規定になっているのだと思います。これに反しているのではないかというふうに私は思うわけです。その点をどうお考えになっておられますか。
  520. 吉原健二

    ○吉原政府委員 私どもの基本的な考え方は、保護者の疾病なりあるいは労働のために保育に欠ける児童があれば、それは当然保育所に入所をしていただいて保育をするということでなければならないと思いますが、その費用につきましては、やはり法律に書いてありますとおり、本人なり扶養義務者の負担能力に応じて負担をしていただくということが大原則でございますので、費用についてはやはり原則的に定めた国の徴収基準に沿って市町村長は取っていただくということが必要だろうと思います。  その場合に、やはり保育料が高いために保育所に入れない、あるいは辞退をするというような事態というものをどういうふうに考えるかということでございますけれども、少なくとも私ども国として考えております徴収基準というものは、本人なり扶養義務者の負担能力というものを十分考えて決めているわけでございまして、もう先刻先生よく御承知のことと思いますけれども、生活保護世帯、市町村民税非課税世帯、それから市町村民税を課税している世帯、それから所得税を課税している世帯。所得税を納めている世帯につきましては、その所得税の額に応じまして、非常にきめ細かく保育料の徴収額を決めているわけでございます。  例えば四歳以上児についていいますと、実際に保育所の運営に必要な経費というのは月に二万二千円かかるわけでございます。ゼロ歳児につきましては一月に八万八千円という大変大きな額がかかるわけでございますけれども、そういった額に対しまして、入所者の保護者が生活保護世帯かどうか、あるいは市町村民税が非課税かどうか、あるいは所得税をどれだけ納めているかによって保育料を決めているわけでございまして、被保護世帯はゼロでございますし、市町村民税の非課税世帯も全くゼロということになっているわけでございます。市町村民税の均等割だけを納めている世帯につきましては、先ほど申し上げました二万円なり八万円なりのうちでも、五十八年度におきましては三歳以上児につきましては四千八百円、三歳未満児については七千百円。実際にかかる保育料の一割ないし二割程度の額から、その所得税等の納付額に応じて納めていただく、こういうことにしてございますので、決して今の徴収基準の決め方は、保育料が高いがゆえに保育所に入所をやめ、辞退せざるを得ない、あきらめざるを得ないというような徴収基準にはなっていないというふうに私どもは思っております。
  521. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 そう思っておられるという御答弁ですが、実態としては、保育料が高いためにということを理由に挙げて辞退する人がいらっしゃるわけですね。そこはやはり考える必要がある。厚生省というものは、本来国民福祉、健康、そういうものを親身に考える省であろうと思う。今負担能力の問題、徴収基準の問題をおっしゃいましたが、それに関連して、ではもう少し突っ込んでお尋ねしたいと思います。  現在、保育料は徴収基準――ここに持ってもきておりますが、収入の認定基準と徴収基準ですね。事実上所得税に応じて決められることになっているわけですね。ところが、六年間、いわゆる所得税減税がなかったために、実質収入は伸びないのに所得税は上がる、それに伴って保育料がどんどん上がるというのが実態として起きております。  夫婦とも国家公務員、皆さんと同じですが、国家公務員の行政職。この例で私は試算をしてみたのです。例えば七等級の四号俸、年齢は二十六歳、年収手取りで四百万円、四歳と一歳の子供を保育所に入れるという場合で計算をいたしましたが、今おっしゃった国基準で計算をいたしまして、昭和五十三年には年保育料が三十八万五千円だった。それが五十八年には六十五万四千円、何と二十六万九千円も上がる。倍率でいいますと一・七倍です。それから、もう一つ高いランクの六等級五号俸、これで結論だけ言いますと、五十三年が五十七万円だったのが五十八年には七十四万七千八百円、十七万七千円アップするわけです。  どうしてこういうことが起きるかということですが、まず国の基準そのものが年々上がるわけですね。それと同時に、同じ号俸なら同じ生活程度だ、これは本来の考え方だと思います。ところが、実質所得は上がっていないのに所得税は上がる。そのためにランクアップするわけですね。この例でいいますと、五十三年のときには、最初の例はD6階層ですね。それがD8になる。その上の階層の場合はD8がD10になっているわけです。だから、いわば二重の打撃を受けるという状態になっているわけです。先ほどおっしゃった徴収基準、これの一番のポイントのところは収入額に応じて、かつ実質的な生活程度、生活水準に見合って徴収するということですね。ところが実際はそうではない。所得税が上がるためにランクアップする。厚生省の基準とも矛盾する事態が起きているわけです。私は必要な是正措置をやって当然だと思うわけですが、その点はどうお考えですか。
  522. 吉原健二

    ○吉原政府委員 先ほどから申し上げておりますように、負担能力に応じて負担をしていただく、その負担能力というものを、所得税を納めておられる世帯については所得税の納付額を尺度として決めているわけでございます。したがいまして、所得税の額が上がれば当然それだけ負担能力が上がった、したがって保育料としての徴収額も一つ上のランクに行く。これは先生、やはり所得税の納税額が上がった、つまり所得が上がったために納税額が上がる、したがって保育料として負担していただく額もそれに伴って上がる。これは私はお許しをいただかなければならないことではないかと思います。
  523. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 そこが違うし、大事な点なんですよ。所得減税がなくて、だから実質所得が上がっていない。所得税額が上がったためにランクアップするのですよ。これはおかしいのじゃないですか。実際に計算して、同じ号俸で五年前はD6だったのが五年後はD8になっている。これはおかしいでしょう。
  524. 吉原健二

    ○吉原政府委員 その辺が私ども、必ずしもおかしいというふうには考えませんで、所得税の納付額に応じてランクを決めているわけでございますから、所得税の納税額が上がりますとランクが上がってくる、これは当然のことだろうと思います。
  525. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 そこばかりにとどまっておれませんが、結局本旨は収入、生活程度に応じてということでして、その場合に何をとるかということで所得税額を勘案して徴収する。一種の便法なのですよ。一番のポイントはそこにあるわけじゃないのです。その点で矛盾が起きているから検討すべきではないか、当然是正すべきだということを言いたいわけです。  残念ですが、ちょっと時間がありませんので次に移ります。  ゼロ歳児保育の問題。これも働くお母さんたちにとって、育児休業の制度部分的にしか確立されておりませんから、非常に切実なわけです。とりわけ産休明けからの保育、これは切実です。ところが、現在公的保育がその要望にこたえ切れていない。全国的に見まして比較的ゼロ歳児保育がやられております東京の場合でも、六カ月からとか八カ月からとかいうところが多いわけです。そのためにお母さんたちは無認可に預けるとかして非常に苦労しておられるわけです。あるいはベビーホテルが依然利用されているという状況があります。  ベビーホテルが大問題になったのは五十六年です。そのときに厚生省としても、それ以後ゼロ歳児保育について充実させる方向を出してこられたわけです。以前出されておった、三カ月に満たない乳児を保育所に入れるのは好ましくないという考え方も撤回をされたというふうに聞いております。つまり産休明けからの保育を進めるのは当然だということで来ているわけですが、そのことを含めまして、今後もゼロ歳児保育を必要にこたえて進めるという点は確認してよろしいですね。
  526. 吉原健二

    ○吉原政府委員 ゼロ歳児保育についての考え方でございますけれども、私ども、基本的にはやはりゼロ歳といった、生まれて間がない乳児の保育につきましては、できるだけ親御さんが直接保育をしていただきたい。それが将来の子供の心身の健全な生育のためにも必要である。同時に、やはり乳児期というのは病気なり事故等に対して極めて弱い時期でもございますので、そういった意味におきましても、生まれてすぐ保育所に預けるよりも、できればお母さんの手元で直接保育をしていただきたいという基本的な考え方は持っております。しかし、いろいろな事情でそういったことが無理な場合には、私はやはり保育所といったところで責任を持ってお預かりする体制というものを整えていく必要があると思います。  そういったことで、私どもゼロ歳児保育には特にここ数年大変努力をしてまいりまして、数字で申し上げますと、約十年前の昭和四十八年の時点におきましては、ゼロ歳児の措置児は一万三千九百二十人でございましたけれども、五十八年におきましては三万四千七万五十六人と三倍近い数になっているわけでございます。今後とも、先ほど申し上げましたような考え方を基本にしつつも、ゼロ歳児保育というものがきちんと責任を持って行われますように、いろいろな面で努力をしていきたいというふうに思っております。
  527. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 そういう大方針にもかかわらず、公的保育所でゼロ歳児保育をやっていない、拒否している自治体があります。私の地元の江戸川区がそうなのです。ここは東京二十三区中ただ一つやっていないのです。お母さんたちは非常に望んでおられるわけです。区長さんの考えで、区長さんは保育ママ制度というものをやっているからいいのだということで要望を突っぱねておられるわけですが、私は正しくないと思うのです。もちろん区長さんがそういう考えを持たれるのは結構といいますか自由であります。保育ママ制度にも一定のいいところがあるのだろうと思います。同時に福祉法二十四条では、公的保育所で保育しなければならぬということを言っておるわけでありますから、まずは法律でも決められた公的保育所でのゼロ歳児保育はやるという前提に立って、保育ママ制度もあるというのなら納得ができるわけです。その点がどうも違っているという感じがいたします。  それから加えて言いますと、東京都の保育ママ制度の場合には看護婦とか保母の有資格者ということがありますが、江戸川区の場合には、子供を育てたことのある婦人ならだれでもよろしいとなっているのです。それからもう一つは、保育室が二階でもよろしい。これは大変危険なことなのですが、そういうことがあります。もちろん保育ママさんを引き受けておられる方たちは大変御苦労なさっているわけですけれども、今申し上げたような問題点があります。そういうことも含めて実態を調査し、必要な指導を厚生省としては行っていただきたいといいますか、行うべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  528. 吉原健二

    ○吉原政府委員 東京都の場合、江戸川区がそういったゼロ歳児保育をやらないで、保育ママなりあるいは保育手当を出しておられるということは聞いておりますし、それはそれで考え方としては一つの考え方である。先ほども申し上げましたように、子供が小さいとき、特にゼロ歳児につきましては、なるべくお母さんが家で直接保育ができることが一番望ましいわけですから、保育所をつくって保育所でお預かりするといったことではなしに、家庭で保育ができるようにということで、保育ママさんなり保育手当を出すという江戸川区の考え方は、私はそれはそれなりに一つの考え方ではなかろうかと思います。そうは言いましても、それでは本当に十分保護者の希望あるいは期待にこたえ切れない場合があるのではないかと思いますので、そういった場合においては、やはり保育所で責任を持ってお預かりをするという体制は整えていただきたいという気持ちは持っております。
  529. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 ぜひそのように御指導もお願いしたいというふうに思います。時間がありませんから、保育ママ制度、具体的に余り言いませんけれども、要望は切実なのです。三人まで預かれるようになっているわけです。おやつも持っていかなければいけない。そうすると、おやつの見比べということが起きる。親御さん同士がですよ、子供たちはまだわかりませんから。ぜひ公的保育所でのゼロ歳児保育は実現していただきたい。  次に、第三の問題ですが、延長保育の問題についてお尋ねしたいと思います。  昭和五十六年五月二十八日の衆議院の社労委でも、「保育時間を午前七時から午後七時程度まで延長すること。」という特別決議も行われております。住宅事情など通勤が延びますから、これはいよいよ切実になっているわけで、私も早期の実現を望んでおります。これは厚生省としても努力をしておられるというふうにも聞いておりますが、現状はどうなっておるでしょうか。
  530. 吉原健二

    ○吉原政府委員 延長保育、それから夜間保育等につきまして、昭和五十六年から予算面におきましてもいろいろな措置をしているわけでございますが、率直に言いまして、必ずしも私どもが期待をしたほど、あるいは当初予想したほど事業が伸びていないという状況でございます。五十八年度で申し上げますと、延長保育につきましては、予算措置といたしましては全国で千カ所の延長保育の施設予算に計上したわけでございますけれども、実績としては二百五カ所にとどまっているわけでございます。
  531. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 これは意外な数字ですね。二百五カ所。達成率二〇%ということですね。ただ問題は、需要はあるわけです。要望は非常にあるわけですね。なぜできないのか、その辺はどう考えていられるのですか。
  532. 吉原健二

    ○吉原政府委員 これには実はいろいろな理由が考えられるわけでございまして、率直に言いまして、延長保育とか夜間保育というのは、口で言うのは簡単でございますけれども、逆にお世話をする側の立場に立ちますと、労働時間の延長の問題がございますし、やはり職員の方の御協力、御理解というものがどうしてもその前提として必要なわけでございます。そういった問題と、予算的に不十分だという声も聞かないわけではございません、予算的な問題。それから延長保育あるいは夜間保育、保護者の希望があるからといって、それをそのまま行政として受け入れ体制をつくっていくのがいいかどうか。余り長時間保育をいたしますと、子供に対していろいろな面で悪い影響が出てくるということも考えられるわけでございまして、そういったことも識者からの指摘もございます。やはり、余り長時間の保育にならないような配慮が必要だということもございますので、あれやこれやいろいろな理由で延長保育なり夜間保育というものがそれほど伸びていない、また伸びない事情だろうと思います。
  533. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 やたらな長時間ということではなくて、国会決議でも言っていると時から七時ということは、別に無理なことじゃない。切実な要望でもあるわけです。国会決議があるにもかかわらず、それまでも否定されるということではないと思います。その線でやっていただきたい。例えば、大阪の市長会が五十六年に厚生省に要望を出しましたね。それでも、いわゆる保育単価プラス一〇%ではとてもやれないんだということを言っておられる。今保母さんの話にも触れられましたけれども、その点は非常に大事だと私は思うのです。やはり保母さんの労働条件をしっかり守らないと保育内容が下がります。保育内容をよりよくする、保母さんの労働条件もしっかり守るということで、必要な措置厚生省として考えていただきたいと思います。  大臣、今私は全体の状況の中で新しい心配を一つしているのです。それは、ベビーホテルが大問題になって三年になります。その後一定の改善方向が示されて、厚生省の調査でもベビーホテルは減っているとか、ベビーホテル自体の内容も若干改善されているということをお聞きしております。しかし肝心なのは、十分目が行き届く公的保育を充実させるということだと思うのです。ところが、今の短時間の質疑でありましたが、明らかになったように、産休明けからの保育、それから延長保育、これがまだ十分やられていない、進んでいないという実情があります。また、保育料の値上げが入所辞退や滞納を生んでいるという事態もあるわけです。こういう状況が改善されませんと、保育を金もうけの手段にするということが再び起きてくる、劣悪な保育内容の保育産業がふえる危険があると思うわけです。現に都下でも、朝七時から夜七時までで月二万八千円、ゼロ歳児で二万八千円で預かっているところがあるのです。とても内容がいいとは考えられないわけですよ。保母さんも少ないわけです。  この問題では、昭和五十六年三月、やはり衆議院の予算委員会分科会で、我が党の簑輪議員の質問に対して、当時の園田厚生大臣がお答えになったことがあります。「すべての福祉行政がそうでありますが、特に子供の保育が金もうけにされては絶対にいけない。これは、金もうけのためにこういう営業をされる方もさることながら、国自体の財政上の見地から保育の問題が束縛をされることはこれに類したことであって、一番注意しなければならぬことだと思います。」こういうように答えている。つまり国の施策、補助なりの貧困のためにやれないということであってはならないということであります。もちろんこの見地は継承していただくと思いますが、冒頭に申しました婦人差別撤廃条約、この批准の上でも保育の充実が一段と求められていると私は考えます。その点、最後に大臣の所感、御決意をお伺いしたい。
  534. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今お話のありましたベビーホテルといったような、私も保育とか教育が、保育産業とかそういうふうに言われること自体が余り好ましいことではありませんし、この世で一番大事な、お互いのかわいい小さな子供が、金もうけのために危険な状態にさらされるというようなことがあってよいはずはないのでありまして、これは婦人問題企画推進本部でも、この民間の一時預かり施設についての規制というものがうたわれておりますが、この精神にのっとって進めてまいりたいと思います。  また、今いろいろ厚生省のやっておる保育事業についてのお話がありました。それぞれ先生のお話もごもっともでございますが、聞いておりまして、やはり吉原児童家庭局長の答弁も大変もっともなことなのでありまして、現制度の中では課税標準というのが、入所していただくお金の基準になるということも、これは当然のことであります。  また、国の安心した施設で小さな子供さんを預かるのも大事でありますが、一番いい環境は、ゼロ歳の小さな子供は、やはりお母さんの胸に抱かれておるのが望ましいことであって、しかし今日の婦人の職場進出といったようなことから、その保育のできない家庭のお母さん方の仕事を国がかわってするというところで保育所が生まれておるのでございますから、そういう点は十分これからも保育行政というものをますます強化していかなければならないと思います。  保育時間の問題にしましても、午前七時から午後七時まで、なるほどなと思いますけれども、今の八時間労働というような制約、また保母さんが全部昔の「おしん」のような気持ちになってくだされば、すぐにこれはできることでありましょうけれども、現在の労働条件等に厳しい職場婦人等のことを考えると、これは非常に大事なことでありますが、なかなか実現は容易でございません。しかし、それらの障害等も乗り越えて、できるだけ御趣旨に沿うように努力してまいりたいと思います。
  535. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)分科員 最後に一つ申し上げます。  厚生省で延長保育ですが、五十九年度幾つか実現しそうなところを御存じなんではないですか。
  536. 吉原健二

    ○吉原政府委員 東京都が五十九年度から相当箇所数延長保育をやりたい、そういう計画を持っているということを聞いております。
  537. 矢山有作

    矢山主査代理 これにて佐藤祐弘君の質疑は終了いたしました。  次回は、明後十二日月曜日午前九時から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十八分散会