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1984-03-12 第101回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月十二日(月曜日)     午前九時開議  出席分科員    主査 武藤 嘉文君       小渕 恵三君    谷垣 禎一君       上野 建一君    島田 琢郎君       竹内  猛君    松浦 利尚君       渡部 行雄君    市川 雄一君       岡本 富夫君    木内 良明君       権藤 恒夫君    斉藤  節君       沼川 洋一君    兼務 上西 和郎君 兼務 兒玉 末男君    兼務 佐藤  誼君 兼務 富塚 三夫君    兼務 和田 貞夫君 兼務 森田 景一君    兼務 木下敬之助君 兼務 永江 一仁君    兼務 瀨長亀次郎君 兼務 野間 友一君    兼務 山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  山村新治郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁長官官房         審議官     大塩 敏樹君         環境庁長官官房         会計課長    廣重 博一君         環境庁企画調整         局長      正田 泰央君         環境庁企画調整         局環境保険部長 長谷川慧重君         環境庁自然保護         局長      山崎  圭君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         食糧庁長官   松浦  昭君         水産庁長官   渡邉 文雄君  分科員外出席者         防衛施設庁施設         部連絡調整官  八木  秀君         環境庁自然保護         局企画調整課長 佐々木喜之君         環境庁水質保全         局企画調整課長 片山  徹君         大蔵省主計局主         計官      吉本 修二君         大蔵省主計局主         計官      寺村 信行君         文部省社会教育         局社会教育課長 藤村 和男君         文化庁文化財保         護部記念物課長 田村  誠君         厚生省環境衛生         局水道環境部水         道整備課長   森下 忠幸君         農林水産省構造         改善局建設部水         利課長     國廣 安彦君         通商産業省立地         公害局公害防止         指導課長    咲山 忠男君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      高木 俊毅君         資源エネルギー         庁石油部備蓄課         長       岩田 満泰君         資源エネルギー         庁石炭部炭業課         長       安藤 勝良君         資源エネルギー         庁石炭部鉱害課         長       井上  毅君         資源エネルギー         庁公益事業部水         力課長     高木 宏明君         運輸省港湾局管         理課長     山田 幸作君         運輸省港湾局計         画課長     上村 正明君         海上保安庁警備         救難部会場公害         課長      伊美 克己君         建設省河川局開         発課長     志水 茂明君         参  考  人         (水準源開発公         団理事)    川本 正知君         参  考  人         (水資源開発公         団理事)    岡本 克己君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     竹内  猛君   斉藤  節君     岡本 富夫君   小平  忠君     横手 文雄君 同日  辞任         補欠選任   竹内  猛君     上野 建一君   岡本 富夫君     新井 彬之君   横手 文雄君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   上野 建一君     土井たか子君   新井 彬之君     木内 良明君   米沢  隆君     横手 文雄君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     松浦 利尚君   木内 良明君     沼川 洋一君   横手 文雄君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     渡部 行雄君   沼川 洋一君     市川 雄一君   米沢  隆君     小平  忠君 同日  辞任         補欠選任   渡部 行雄君     島田 琢郎君   市川 雄一君     権藤 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   権藤 恒夫君     春田 重昭君 同日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     斉藤  節君 同日  第一分科員瀨長亀次郎君、第二分科員佐藤誼君  、富塚三夫君、永江一仁君、野間友一君、第四  分科買上西和郎君、兒玉末男君、第六分科員木  下敬之助君、山原健二郎君、第八分科員和田貞  夫君及び森田景一君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算総理府環境庁)及び農林水産省所管〕      ――――◇―――――
  2. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  主査が所用のためおくれますので、その間、指名により、私が主査の職務を行います。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算総理府所管環境庁)について、政府から説明を、聴取いたします。上田国務大臣
  3. 上田稔

    上田国務大臣 昭和五十九年度の環境庁関係予算案について、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十九年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、環境庁予算要求額は四五二十五億三千三百十八万円であり、これを前年度の予算額四百四十八億三千三百九十六万二千円と比較すると、十三億七十八万二千円の減額となっております。  次に、予算要求額の主要な項目について御説明申し上げます。  第一に、公害対策について申し上げます。  まず、環境保全企画調整等経費については、新たに、安らぎや潤いのある快適な環境を創造するための計画策定等を行うとともに、環境の健全な利用を図るための環境利用ガイド策定を進めることとしております。  このほか、従来に引き続き、長期的、総合的視点に立った環境政策の展望を検討するための経費環境影響評価法制度の効果的な実施を図るための経費瀬戸内海環境保全対策推進する経費公害防止計画策定推進する経費及び地球的規模環境問題に関する調査費など、これらをあわせて七億七千六百二十二万円を計上しているところであります。  次に、公害健康被害補償対策費については、公害健康被害補償制度の適正かつ円滑な実施を図るほか、水俣病認定業務を促進することとし、これらの経費として百七十億九千九百三十六万円を計上しております。  公害防止事業団につきましては、事業団事業運営に必要な事務費等助成費として四十一億九千六百万円を計上しております。  次に、大気汚染防止対策経費については、新たに、粉じん発生施設に係る規制強化のための検討を進めるほか、従来に引き続き、粒子状物質対策等各種大気保全対策策定するための調査を行うとともに、窒素酸化物対策として、総量削減計画の達成を図るための調査検討及び健康影響調査等実施することとしております。  また、交通公害防止対策については、新たに、全国沿道騒音実態調査実施するなど総合的な交通公害対策検討を行うとともに、自動車公害についても、新たに、自動車走行実態について調査実施し、現行走行モードについて検討を行うこととしております。  さらに、騒音、振動及び悪臭についての対策推進するため所要の調査実施するなど、七億七千六百二十四万円を計上しております。  水質汚濁防止対策経費については、新たに、湖沼水質保全に関する総合的なモデル計画策定のための調査を行うほか、海域の窒素及び燐に係る環境基準類型指定のための調査を行うとともに、地下水汚染状況の把握、汚染機椎の解明に係る調査を行うこととしております。  さらに、生活雑排水対策として、新たに、地域の特性に応じた生活雑排水処理モデル計画策定するとともに、瀬戸内海富栄養化対策強化赤潮防止対策推進するための調査を行うなど、八億五千三百四十一万円を計上しております。  このほか、地盤沈下防止及び廃棄物対策費として一億六百三十七万円、土壌汚染防止及び農薬対策費として一億八千五百二十五万円をそれぞれ計上しているところであります。  次に、公害監視等設備整備費については、地方公共団体監視測定体制等整備に必要な経費として十億三千六十二万円を計上しております。  公害防止等に関する調査研究推進のための経費については、科学的な調査及び試験研究を促進するため、総額三十八億九千七百十万円を計上しております。  このうち、国立試験研究機関等公害防止等試験研究費として二十九億一千百七十二万円を環境庁において一括計上し、各省庁試験研究総合的推進を図ることとしております。  また、光化学スモッグに関する調査研究費及び公害による健康被害大気汚染水質汚濁自然保護等に関する調査研究費についても八億八千五百三十七万円を計上し、必要な調査研究を進めることとしているほか、環境保全総合調査研究促進調整費として一億円を計上し、関係省庁が所管する各種環境保全関連する調査研究総合的調整を図ることとしております。  さらに、科学的な行政を推進するため、国立公害研究所の機能を充実強化することとし、これに必要な経費として四十五億六百四十七万円、国立水俣病研究センター運営等に必要な経費として四億一千六十九万円、公害研究所に必要な経費として九千六百五十九万円をそれぞれ計上しております。  第二に、自然環境保全対策及び施設整備について申し上げます。  まず、自然環境保全対策及び自然公園等維持管理等に関する経費については、自然環境保全施策を適切に推進するため、第三回自然環境保全基礎調査を初めとする調査研究実施するとともに、国立公園等保護管理強化を図るために必要な経費として十七億三千五十六万円を計上しております。  また、鳥獣保護については、新たに、エゾシマフクロウ等保護対策を加えるなど国設鳥獣保護区の管理強化を図るほか、特定鳥獣保護事業及び渡り鳥の保護対策推進するなど、一億九千二百七十一万円を計上しているところであります。  さらに、自然公園等整備を図るため、新たに、身近な自然活用地域整価事業を加え、施設整備費として二十八億六千百八十六万円を計上しております。  以上、昭和五十九年度環境庁関係予算案概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ本予算案成立につきまして格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
  4. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 以上をもちまして総理府所管環境庁)についての説明は終わりました。
  5. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  6. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 私は、今御説明のありました中で、特に湖沼法関連をして、霞ケ浦をめぐる諸問題について質問したいと思います。  歴代の環境庁長官は、就任されると必ずというぐらいに霞ケ浦に来られて状況を見られて、これはひどいということを言われてお帰りになるけれども、その後、期待をしているようなこともなかなかなされない。そういうときに、茨城県としては霞ケ浦富栄養化防止に関する条例をつくって、去年の九月一日より実施をしているところです。第九十八同会に湖沼法提案をされて、それが審議未了となったということは甚だ残念なことですけれども、今度はこれをまた出して通過をさせると同時に、今御説明のあった予算というものがどの程度湖沼法には関連をしているのかという二点について御質問します。
  7. 上田稔

    上田国務大臣 先生御案内のとおり、昨年の五月でございますが、湖沼法を提出させていただいてその成立を期してきたのでございますけれども、昨年の暮れにありました臨時国会におきまして国会が解散に相なったのでございますが、そのときに、この法案審査未了ということに相なりまして廃案と相なったのでございまして、これはひとつぜひとも今度また出させていただきたいと念願をいたして、今その手続を進めておるところでございます。  さて、この予算につきましては、事務当局の方から説明をさせたいと思います。
  8. 佐竹五六

    佐竹政府委員 いわゆる湖沼法案につきましては、現在、昨年提案いたしましたとほぼ同じ内容提案を考え、政府内部検討しているところでございますが、これの予算措置につきましては、モデル湖沼計画策定費につき予算措置を講じているわけでございます。と申しますのは、湖沼法案内容といたしまして、都道府県知事水質保全計画策定することを予定されております。その策定のための方法論といたしまして、類型別それから地域別に数湖沼を選びまして、その計画策定費につき国が各都道府県に委託する、それに必要な経費として一応予算措置しているところでございます。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 そうすると、その法案自体には予算はないのですね。
  10. 佐竹五六

    佐竹政府委員 これは現在政府内部検討中の法案でございますので、申し上げることもいかがかと思いますが、昨年提案されました湖沼法案におきましては、国または都道府県はその湖沼水質浄化のための諸対策が円滑に実施されるように努めなければならない旨の規定が一応入れられておりまして、この規定趣旨を受けまして、私ども、ただいまのような予算措置も講じているわけでございます。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 そこで、この湖沼法では富栄養化の問題は関係していくけれども窒素、燐についてはなかなか難しい、こういう意見があるのですが、これはどうですか。
  12. 佐竹五六

    佐竹政府委員 私ども窒素、燐につきましては、水濁法に基づきまして規制をするべく、その必要な手続について中公審に諮問いたしまして、現在中公審の御審議と並行して、政府内部でも関係各省と折衝中であるわけでございます。  湖沼法案につきましては、もちろん湖沼の最大の問題が富栄養化であることは御指摘のとおりでございまして、その富栄養化原因窒素、燐に由来するということもまた学識経験者等の大体一致した御意見であろうというふうに考えております。しかしながら、湖沼法につきましてはその手続そのものが、都道府県知事水質保全計画策定し、さらにそれを内閣総理大臣が同意する、同意するに当たっては公害対策会議の議を経るというような手続を予定しておったわけでございまして、今度提案する法案につきましても、ほぼそのような内容にしたいと私ども考えているわけでございます。したがいまして、おのずから対象湖沼等も限定せざるを得ないわけでございまして、これに対して、一方、富栄養化防止が緊急に要請される湖沼と申しますものははるかに数が多いわけでございますので、基本法である水濁法の体系の中でこの窒素、燐の規制をいたしたいということを環境庁としては考えまして、現在各省と御協議申し上げている、かような段階にあるわけでございます。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 大変湖沼も多いわけですけれども、それでは日本弁護士会から出された意見、あれはどういうふうに吸収しましたか。
  14. 佐竹五六

    佐竹政府委員 日本弁護士会よりの御意見は私どもも十分承知しているところでございます。その内容骨子といたしましては、昨年度提案いたしました湖沼法政府案と著しく異なった点は二点ございました。一点は、湖沼法特定施設の新増設について許可制をしけ。これはいわゆる瀬戸内法にそのような法制がとられておるわけでございますが、その点が一点。それから第二点といたしましては、湖沼周辺について地域を指定して土地利用規制を行うという点。第三点として、これが一番基本かもしれませんけれども湖沼水質保全のための法律ではなくて、湖沼水質保全を含む湖沼環境保全のための法律制度策定せよ。こういう御趣旨でございまして、その骨子は、かつて湖沼環境保全につきまして中公審から私ども答申をいただいておりますが、その内容とほぼ同じではないか、かように考えておるわけでございます。  ただいま申し上げました点につきましては、まず第一点の許可制につきましては、私どもは新増設について届け出制をとることといたしております。それから、第二点の周辺土地利用規制につきましては、特段に新しい制度を設けるということではなくて、従来の都市計画法あるいは自然公園法森林法農地法等の諸法律活用して湖沼周辺環境保全に努めるという趣旨規定を設けまして、特段に新しい制度を設けることにはいたさなかったわけでございます。さらに、第三点の湖沼環境保全という点につきましては、我々といたしましては、当面最も必要である湖沼水質保全に絞って法律制度を立案した、かような経過があるわけでございます。  私どもも、中公審の御答申につきましては、その後政府部内で種々検討いたした結果、今のような結論に達したわけでございまして、特に一点お断り申し上げておきたいと思いますのは、湖沼周辺土地利用保全につきましても、これは中公審自身土地利用規制のための新しい制度検討すべきであるという御答申でございました。一応既往の制度についてやってみて、それだけで足りなければそういう新しい土地利用規制制度を設けることを検討すべきである、かような御答申でございましたので、私ども種々検討した結果、これ以上屋上屋を重ねるよりも、現在の諸制度運用に留意することで十分目的が達せられるのじゃないか、かような判断をいたしたわけでございます。したがいまして、基本的な点におきましては、私ども弁護士会の御意見というのも十分法律の中に盛り込まれているとも考えておりますし、また運用に当たっては、御指摘いただきましたような点も十分配慮しながらこの法律運用に努めてまいりたい。国会成立させていただいた暁にはそのように運用に努めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 これは運用してみなければ成果はわからないわけですから、とにかく要求としては、この湖沼法はないよりはある方がましだ、こういう意見が非常に強いのです。  そこで、霞ケ浦に関する限り去年の九月から県の条例が施行されておる。ここにこういう本がありますけれども霞ヶ浦周辺には、霞ヶ浦を守ろう、よくしようという住民団体がたくさんできています。県も上からやっておりますけれども、自然発生的に各地から出て、大変な努力で勉強をしている。特に、労働組合も中に入って各河川汚濁原因を調べている。霞ケ浦栄養化防止条例が適用されてから一年にはなりませんが、「一年後」という形でこういう集会も持たれているし、それから桜川という霞ヶ浦に入ってくる最も大きな川がありますけれども、そこでもこういうふうなパンフレットが出て、これはもう既に二十号です。お医者さんや主婦や筑波大学の関係者や多くの人々が関係をしておりますから、地元は非常に関心が高い。そこで、湖沼法ができた場合に県の条例との関係はどうなるのか、この点はどうですか。
  16. 佐竹五六

    佐竹政府委員 私どもも、霞ケ浦を所管されている茨城県、琵琶湖を所管されている滋賀県等におきまして、既に条例富栄養化防止のための諸措置が講じられていることは十分承知いたしております。法律国会成立させていただいた晩には、その条例内容骨子を県の知事策定する水質保全計画内容とする、かようなことになろうかと思うわけでございます。そのような意味では、既に先駆的に茨城県にしても滋賀県にしてもやっておられることになる、かようなことになろうかというふうに考えております。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 続いて、霞ケ浦用水の問題について御質問します。  霞ケ浦用水事業公団事業国営事業の二つで進められておりますが、その全体の進捗状況の中で公団事業の方はかなり進んでいるけれども国営事業農林水産省努力にもかかわらずかなりおくれているというのが現地の実情だと思うのです。本年も相当努力をされたにもかかわらずまだそういう状況である。聞くところによると、来年度からは国営事業に財投の金を入れる。ほかにもそういうところがありますけれども、この財政上の取り扱いはどうなるか。そして受益者はやはり一定の時期に水が必要であると考えておりますから、その辺の状況について御説明をいただきたい。
  18. 國廣安彦

    國廣説明員 お答えいたします。  昭和五十八年度までの国営事業進捗率は三・八%でございまして、公団営事業の三三%と比較いたしましておくれていたことは先生指摘のとおりでございます。昭和五十八年度になりまして国営事業推進体制が確立されましたので、先ほど先生もおっしゃいましたように、五十九年度予算案におきましては、この国営事業特別会計事業に振りかえることに予定いたしております。予算額におきましても、公共事業費マイナスシーリングのもとで、五十八年度に比べまして二七〇・八%、十九億五千万円の予算を計上さしていただいているところでございまして、五十九年度までの進捗率は、これによりまして五十八年度の三・八%に比べて七・一%と大幅に伸びる体制ができたわけでございます。最終的な工事費が幾らになるかというのは、現在では予測するのは非常に困難ではございますけれども工事費増高を私どもの所管している国営かんがい排水事業で見ますと、五十七年度から五十八年度に比べまして労務資材費の上昇は一%程度でございますので、非常に安定してきております。したがいまして、今回予算を計上さしていただいております特別会計制度活用をいたしまして、事業早期完成ということで農家負担をできるだけ軽減してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 これはぜひ同時決着ができるようにいろいろ努力をしてほしい、これは地元要求です。  続いて、霞ケ浦漁業補償の問題について質問します。  何か事を起こすたびに漁業権者と称する者が補償を求める。これはちょっと調査をしてもらわなければならない面もあるかもしれませんけれども霞ケ浦における漁業権者というのは一体どういう資格を持った者で、それが何人ぐらいいて、その配分がどうなっているのか。それから、今まで霞ケ浦のいろいろな事業に対してどれくらいの金が出ているのかということについて、本当は総体が知りたいわけですが、きょうはちょっとそれは無理かもしれない。したがって、この問題についてはできるだけの範囲できょう説明していただきたいが、説明のできない部分については調査をしてほしい。  私はこれは非常に不明朗だと思うのですね。不明朗な問題について会計検査院にでも調査をしてもらって明らかにしない限りこの問題は解明できない、こういうふうに考えている。国会に出てからもう十年になるけれども、この間に漁業補償の問題で明らかになったことはない。県会においてもこれは常に握りつぶしをされている。熊本の方では、九州電力がいろいろな仕事をする場合には、年間九十万円以上の収入がない漁業者には補償しないと言っている。ところが、網をちょっと持っているだけで漁業権者だ、ちょっとした船を持っているだけで漁業権者だといって補償要求して、それにわけのわからない金を出している。こういう不明朗な問題は、この委員会の課題ではありませんが、そういう問題があるということをまず冒頭に申し上げて、当面、水資源公団が補償している基準なり内容について報告してもらいたい。
  20. 志水茂明

    ○志水説明員 霞ケ浦に関します漁業補償につきましては、先生御承知のとおり、この完成後に常陸川水門の操作によりまして生ずるいろいろな障害の漁業に与える影響等を、公共事業の公共用地の取得に伴います損失補償基準要綱に従いまして算定をして、それによります額を補償として支払っておるわけでございます。現在、霞ヶ浦関係の漁業関係者は約四千五百名と言われておりまして、その団体として三十七の団体がございます。この中で、現在私どもでは三十六の団体に対しまして漁業補償が終わりまして、総額が約二百六億円の補償を行っております。なおもう一団体残っておりますが、これにつきましては現在交渉を続けておるところでございまして、極力早急に解決をしたいと思っております。  それから、先ほど相手の資格等の御質問がございましたけれども、一応私どもとしましては、漁業法によりまして漁業権を持っております団体を対象として漁業交渉をやっておる次第でございます。  以上でございます。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 水資源公団の方は、今やっている漁業補償についてはどうですか。
  22. 川本正知

    ○川本参考人 ただいま開発課長から御答弁申し上げましたように、一つ漁協が残っております。高浜入りに関係する漁協でございますが、それについて鋭意折衝を進めてはおりますけれども、まだ妥結には至っていないというのが現状でございます。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 この問題は話をすると切りがないから余りこれを追及することは避けたいと思いますが、私はこの問題については非常に不明朗だと思っているのです。だから、このことだけでまた改めて問題にしなくちゃならないほどにこの霞ケ浦漁業補償ははっきりしない。漁業権者というものも、あそこは魚がほとんどいなくなっているんですね。それにもかかわらず補償だけは要求する。こんなふざけた話はない。  次に、沖宿というところにある霞ケ浦第一漁港の改修が非常におくれている。調べてみると、きょうも土浦の市議会で問題になっているけれど罰も、なぜあれがおくれているのか、いつになったらできるのか、この辺についてはどうですか。
  24. 川本正知

    ○川本参考人 沖宿の漁港につきましては、水資源開発公団が実施しております霞ケ浦の開発事業補償工事の一環といたしましてその改築を計画しているものでございます。その工事の予定区域の中に民有地がございまして、その民有地の所有者の方と鋭意用地折衝を進めておるところでございますけれども、現在のところ、残念ながらまだ交渉妥結という段階には至っておりません。今後とも一層地元の皆さん方の御理解を得まして、円満に工事に着手できますように最大の努力を払ってまいりたいと思っておるところでございます。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 これは地元の方の関係がいろいろあることも承知をしていますが、第三者でも入れてできるだけしっかり話をしないと、いつまでたっても対立をしたままでは解決しませんね。何とか努力をしてもらいたい。こういうことについては要望します。  続いて、時間がだんだん迫ってきますから、高浜入りの問題について。高浜入りの干拓が中止になった。ちょうど岡本さんが次長のころに大分骨を折ったところですけれども、その後、地元ではこれを水郷筑波国定公園に繰り入れてほしい、こういう運動が起こっている。既に石岡、玉里あるいは玉造等々の町村から自然公園にしてくれないかという運動が起こっております。聞くところによると県がそれを受けて、県から申請がなければいきなりはだめだ、こういう話だそうですが、この辺のことはどうなっていますか。
  26. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 国定公園の区域の指定なりあるいは拡張につきましては、法律に基づきまして、都道府県の申し出に基づいて長官が審議会の意見を聞いて区域を定める、こういう法律上の規定がございますので、それに従うということでございます。環境庁といたしましては、茨城県からの申し出があればこれについて検討してまいりたいと思いますが、聞くところによりますと、幸い茨城県におきましても今先生指摘のような姿でございまして、当該地域を水郷筑波国定公園に編入するための前提としての諸調査実施しているということでありますので、この申し出があればこれを受けてやってまいりたいと考えております。
  27. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 あと二点について要請したり調査を求めたいと思うのですが、昨年、私は、土浦の市内に高架道路をつくることについて二回質問をしたのです。住民が大変迷惑をしているのにかかわらず、建設省も県も地元も強引にこれに着工した。その結果、今この高架道路をつくる中で、商売ができなくて店の主人が出稼ぎをしなければやっていけない、こういうような悲劇が起こっている。きのうも調査をすると、それが六十余世帯に及んでおります。  ところで、私の事務所もその被害の一つで、この間帰ってみたら、そこに穴を掘って、水道料金が月間千八百円の料金で済むものを一万四千数百円の請求が来た、おかしいじゃないかということで事務員が市役所に話をしたら、竹内事務所、払えというわけだ。何で工事の被害について被害者が払わなければならないか。こういうばかなことを言う。これは金額が少ないからこれで済むけれども、大きな被害だったらどうするか。つまり、商売をやっている者は物が売れなくて非常に困っている、こういうようなことがあります。これは工事が進んでいるからやめろとは言わない。やめろとは言わないが、その工事によって起こっている被害者に対してほおかぶりでいるということはおかしい。  それからもう一つは、環境庁長官は建設省の大先輩だからよくわかると思うのだが、そういう高架をつくる場合に民家から二十メートル離れなければいけないということになっているけれども、いや、それは別にこの法律で罰則がないから構わないのだということで、二十メートルもない、七メートルぐらいのところにそういう道路をつくってどんどん進めている。これが市の助役の発言なんだ。罰則がなければ何をしてもいいか、建設省の通達や何か無視したって構わないのかどうなのか。こんなばかな話はないです。これについてはぜひ調査をしてもらいたい。  それからもう一つの問題は、これは通産省とも話をしたのだけれども湖沼法というのは、やはりきれいな水と美しい緑というものが恐らくねらいだと思うのですね。環境庁も当然、環境をよくするためには緑というものを守らなければならない。ところが筑波山の周辺は、特に南筑波の方は、今、採石で山がほとんどなくなるぐらい石をとっている。それは許可されたことだからある意味ではやむを得ない。それは企業が先に手を出して、後で国定公園になったから十年間、六十一年まではこれは認めているけれども、きのうもその現場一行ってみたけれどある地域では大変乱暴に石をとって古くからいるところの住民が怒っている。こういう点について、誠意のない、事後処理のない、石をとった後のことについても改修しない、つまり木を植えたりその後の手当てをしないような、そういう不誠実な業者は押さえてもらわなければいけない、こういうふうに考えているのです。これは調査をしてもらいたいと思っておりますので、これについて簡単でいいから答えていただきたい。
  28. 高木俊毅

    高木(俊)説明員 先生のただいまの御質問についてお答えいたします。  御案内のとおり、採石業者につきましては採石法で規制されているわけでございますけれども、この採石法の施行は県にほとんど一任されているというのが現況でございます。それで採石法によりますと、岩石の採取によります土地の崩壊による災害防止だとか、あるいは採石業の健全な発展を図るために、採石計画を県に提出してこの認可を受けなければいかぬ、こういうことになっているわけでございます。この認可に当たりましては、当庁で定めました技術基準によりまして認可が審査されるわけでございますけれども、当然のことでございますが、この中にも、先生指摘のいわゆる跡地の利用あるいは跡地の処理につきましては記載しているところでございます。  それで、この跡地でございますが、原則といたしまして、いわゆる植生可能な場合にはなるべく植生をするというのが私ども基本方針でございますので、その点、先生よろしくお含みをいただければありがたいと思います。
  29. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 これで終わります。
  30. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて竹内猛君の質疑は終了いたしました。  次に、岡本富夫君。
  31. 岡本富夫

    岡本分科員 先に長官にお聞きしたいと思うのですが、今国民の健康、要するに医療費をめぐって盛んに論議があるわけです。毎年一兆円から一兆四、五千億の膨大になっていく医療費、だから政府は、本人一割負担、あるいは健康保険料を上げてくるとか、いろいろそういうことをやっておりますけれども、何と申しましても病気にならないようにする、人間にとって幸福の源泉はやはり健康だと思うのです。その健康を守るために、厚生省だけではだめだということで昭和四十六年に環境庁ができた。環境庁に対しては非常に世論も高まり、また代々の内閣も、中には三木さんのように副総理を環境庁長官に充てるというような、環境庁に対する期待あるいは責任というものは非常に大きい。したがって、今回の中曽根内閣においては上田先生のようなすばらしい実力者を環境庁長官にしたのではないか、こういうように考えるわけであります。  そこで、懸案としてアセスメント法あるいは湖沼法、地盤沈下法、こういうものが環境庁の課題としてずっと残っておるわけです。役人さんに書いてもらったものをただ読むのじゃなくして、環境庁長官としては、総理にあるいはまた閣議で、国民の健康という立場からこういう問題を提起していく、そして必ず実現していくという立場でなければならぬ。私も実は四十二年からこの環境の委員会に所属しておりまして、当時は毎日毎日よく質疑をしたものです。この三法案は必ず提出をして、しり抜けのものはだめですけれども、ちゃんと国民の期待にこたえていくという決意があるかどうか、これをまずお聞きしておきたい。
  32. 上田稔

    上田国務大臣 ただいま岡本先生から、環境庁の任務の問題について非常に適切な御意見があったのでございますが、私ども環境庁といたしましては、環境影響調査法というのはもうどうしても出さなくちゃいけない、アセスメント法案というのはどうしても出していただかなければいけないと、今関係各省と連絡をいたしまして鋭意努力をいたしておるところでございます。非常に残念なことに、昨年の末の国会におきまして解散とともに廃案と相なったものでございますから、手続に非常に手間取っておるわけでございますが、私も早速出すように手続を進めていきたいと今やっておるところでございます。  また、湖沼法につきましても、各湖沼を調べますと非常にその汚濁程度が進んできておるというか、改善されておりませんので、これも早く提出をさせていただいて、赤潮が起こったり、あるいはまたにおいのあるような水ができないようにしていきたい、こういうふうに念願をして進めておるところでございます。  それからもう一つの地盤沈下法は、これも早く進めなくちゃいけないのでございますが、これは国土庁の方で御担当をいただいておりますので、環境庁長官としてお答えをするのはちょっと妥当ではないと思いますけれども、これにつきましては、私も建設省におりまして前に一応関係をさせていただいておったものでございますからちょっとお答えを申し上げますと、地盤沈下の激しいところにおきましては、条例その他をつくりまして、沈下の防止に努めてきたところでございます。効果が大分上がってきておりますので、今そういうことを込めて検討をしておるところでございます。  以上でございます。
  33. 岡本富夫

    岡本分科員 大臣、一遍もう少しよく勉強してもらって、公害対策基本法の中には、地盤沈下もちゃんと環境庁の所管としてあるわけですね。これは国土庁の問題ではない。まあ、突然のことですから少し不勉強もあったと思いますけれども環境庁の役人さんは皆一生懸命やっておるのですよ。ところが通産省や建設省で皆つぶされてしまう、調整庁だということで。要するに、厚生省だけではだめだということで総理府とくっついて環境庁をつくった。この大切な環境庁を、あなたの政治生命をかけて国民の健康を守る意味からやってもらいたい、きょうはこれを要望しておきます。  そこで、きょうは地下水の問題について若干お聞きしておきたいと思うのです。  地下水は、御承知のように生活用水、工業用水、農業用水として非常にたくさん使われておりますけれども、そのうち、生活用水としての利用は年間二十九億五千万立方メートル、全生活用水の二三・九%に達している、こう言われております。この地下水が非常に汚れてきておる。地下水が汚れますと取り返しがつかなくなる。そこで昨年でしたか、環境庁で地下水の汚染の実態調査をなさったと思うのですが、ひとつ簡単に御報告いただきたいと思います。
  34. 佐竹五六

    佐竹政府委員 昭和五十七年度に環境庁実施しました地下水実態調査は、全国から大都市を中心に十五の都市を選び、それぞれの都市においておおむね百検体、全体で千四百ばかりの地下水等をサンプリング調査いたしました。これらに含まれるトリクロロエチレン等の有機化学物質十七物質と、硝酸性及び亜硝酸性窒素の計十八物質について分析を行ったものでございます。  調査の結果といたしましては、自然界に広く存在します硝酸性及び亜硝酸性窒素を除きますと、地下水中からの検出率の高い物質としては、トリクロロエチレン、それからテトラクロロエチレン、クロロホルムというような物質が挙げられます。また、この結果をWHOのガイドラインと比べますと、このガイドラインは案でございますが、これを肥えた検出率の高いものとしてテトラクロロエチレン、トリクロロエチレンが挙げられるところでございます。
  35. 岡本富夫

    岡本分科員 この調査対象を十八物質しかやっておりませんが、同時にもう一つ申し上げたいのは、全国で大体百五十万本ぐらいの井戸があると言われている。今回やったのは千三百余りですね。この結果を私も見せてもらいましたけれども、それでもうこれだけ出てきておるわけですね。兵庫県の太子町、ここで実はこの問題が起こったというので私は調査に行きました。その上から一遍ちょっと私は質問したいと思うのですが、その前に厚生省、通産省、それぞれ恐らく環境庁からこういう実態調査の報告を受けたと思うのですが、これに対してどういう考えを持っておるのか。
  36. 森下忠幸

    ○森下説明員 御説明いたします。  水道の立場からいたしますと、水道の水源の約三〇%が地下水でございます。また家庭用の井戸としても広範に使われておるものですから、このような環境庁の御発表につきましては、私ども大変重大な問題として受けとめております。昨年御発表になりましたこの中身につきまして、私どもも事前にいろいろと教えていただいたものでございますから、このような家庭用井戸につきましては、問題のところはその時点でできるだけ早く水道に切りかえを行うということにいたしました。それから、私ども厚生省の方から、水道の水源に使われております井戸につきましては、これについて汚染実態を早く把握しろということ、それから飲料用につきましても、これについて問題のあるものは切りかえろというふうな指示をいたしました。  本年の二月でございますが、環境庁の御調査の結果、大変検出率が高かったと申されておりますトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、それから私ども独自の判断で1・1・1トリクロロエタン、この三物質につきまして暫定の水質基準を定めまして、地下水汚染に対しまして飲料水の安全対策を進めるということをしておるわけでございます。
  37. 咲山忠男

    ○咲山説明員 ただいま環境庁からの御説明にもございました昨年八月公表になりました地下水汚染実態調査の結果につきましては、重要な御指摘が含まれていると私ども認識しておりまして、十分これについて検討をしてまいりました。今後でございますが、本調査結果も参考にいたしまして、通産省といたしましても、地下水汚染問題に適切に対処してまいりたいと存じております。
  38. 岡本富夫

    岡本分科員 そんないいかげんなこと言うたのではだめですよ。あなた方は、この一つの問題が起こって環境庁からこういう示唆が出たのに対して、また環境庁環境庁として、ただ報告してこんなのあったですよじゃなくして、これに対する対策を恐らく要請したと思うのですよ。例えば、厚生省の水道部長さんは早速通達しているのです。トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンあるいはトリクロロエタンですか、これの暫定基準を決められた。もっと早くからこういった三物質については、環境庁の方も、あるいはまた皆さん方も御存じだったと思う。  私が二月の六日にここに調査に行った。そうしたら慌てて、これは国会対策のためにやらなければいかぬというので、二月十七日ですか、国会対策のためにこういう基準を決めるのじゃなくして、健康を守る立場から基準を決めなければいかぬ。そういうふうに考えられる節があるわけです。しかも、太子町ではこの三つが問題になったわけですから、早速三つだけ暫定基準を決めた。ほかに、例えばトリハロメタン、これは僕は前に委員会でやって、暫定基準が決まったわけですね。四塩化炭素あるいは1・2ジクロロエタン、1・1ジクロロエチレン、こういうものはWHOで既に暫定基準案といいますか、出ておるわけです。これは発がん性物質だというわけで暫定基準を決められておる。今度厚生省で決めたのは決して毒性検査をしてやったのじゃない。恐らくWHOのガイドラインをそのまま適用したに違いない。そうしますと、非常に遅きに失した。  同時に、問題が起こってからこういう暫定基準を決めるということはどうなるかといいますと、この太子町にしましても、今まではここに工場が二つありまして、十年前からこういう有害物質をどんどん流しておったわけです。それで環境庁の今度の調査があったというわけで、厚生省の方からこういうのを調べたらどうだということで出てきたと思う。しかし太子町の方では、トリハロメタンの検査ということで水質検査を上水道について出した。そうすると、どうもトリクロロエチレンとかテトラクロロエチレンというのがあるらしいというわけでもう一度今度は保健所に出して、そして初めてわかった、こういうことなんです。それまでは知らずにどんどん飲んでいる。要するに、町水道としてどんどん流して皆に飲ましているわけですよ。何か問題が起こってからこういった暫定基準を決める。町の方では、またこれは基準が決まってないものですからどうにもならない。  長官、私たちPCB問題で環境委員会あるいはまた科学技術委員会で化審法をつくったわけですが、このときも、後追い行政でなくして先にきちっと暫定基準を決め、あるいはまた基準を決めて健康を守らなければいかぬということを随分何遍も言うた。なのに今度の厚生省の通達を見ましたときに、これが国会対策では話にならぬと考えざるを得ないですよ。したがって、あとの物質についても、まだ調査の結果が出てないからやらないというのではなくして、先にこういう基準を決めて各地方自治体に示さなければならぬ、私はこういうように思うのですが、いかがですか。
  39. 森下忠幸

    ○森下説明員 ただいまのトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンにつきましては、私どもといたしましては、WHOのガイドラインの案の中にもあったということで、実は五十七年から厚生大臣の諮問機関でございます生活環境審議会の水質専門委員会で十分これは検討していただきまして、一年余をかけまして今回これがWHOのガイドラインと同じものが決まったということでございまして、そのほかに私どもは独自の立場から、今後トリクロロエチレン等が変わっていくだろうという、1・1・トリクロロエタンにつきましても、我が国独自の基準を定めたわけでございます。おっしゃいますとおり、WHOでは二十一項目の化学物質について案を示しております。私どもの方では、こういった化学物質が我が国でどんなふうに使われていくか、今後の推移等を見まして、あるいは汚染の実態も調査いたしながら、今後私どもの独自の調査並びに国際的な情報の交換、こういうものを踏まえまして、必要に応じまして水質基準の追加あるいは見直しというものをしてまいる所存でございます。
  40. 岡本富夫

    岡本分科員 まず、厚生省にもう一つ言っておきますが、この通達によりますと、原則として一年以内ごとに一回定期的水質検査を行うことと書いてあるんですよ。私は太子町のこの調査に行きましたところ、高濃度の二万PPbですか、あなたの方の基準では三十PPbですね、そういう井戸がある。この井戸は使ってはいけませんということでこれをやめますと、ほかのところから今度は高濃度の水が出てくるのです。こっちにふたすればこっち、とにかく地下水というのは下でこう動いておるわけですね。ですから、こっちのものを今とって何ぼだと思いますけれども、今度こっちをとらないとこっちがふえてくるというような状態ですから、私は、水道事業者あるいはまた水道用供給事業者に対して、あるいは専用水道の設置者に対して、今、もっとたくさん検査をする必要がある、こういうふうに見ているわけなんですが、この通達では、原則一年に一遍やったらいいんだと。町にしても、こういう水道事業者にしましてもなるべく費用のかかること、この太子町だけでもこの水の関係でわずかの期間に約二億ぐらい使っている、あっちに導管をやったりして。そして、県の方に聞き明かすと、これは曝気すればいいんだというわけで大きな水道管を引いてやる。ところが、曝気でやりましても三分の一ぐらいしかとれないのです。実際にとるのはやはり活性炭、これをやりますと相当とれる。だが、活性炭は相当高くつく。今姫路は市川の方から水をもらって、それであれしているわけですけれども、この費用も相当ばかにならぬ。したがって、なるべくならそういうところへ黙って流しておいた方がいいというのではないけれども、こういう状態なんです。ですから、年一遍だけではなくして、こういう問題のあるところはもっとたくさん検査の必要があるということをやはり指示すべきだと私は思うのです。  こういう問題もやはり厚生省が行って調査をして、町長、来い来いと呼んで、岡本さんのところへ行くなよと言うたんじゃないだろうけれども、とにかく実情はなるべく隠してやろうというような考え方では、国民の健康というのは守れないんですよ。長官、これに対してどうですか。
  41. 上田稔

    上田国務大臣 先生指摘のとおり、地下水が非常に国民の間で水道の原水として、また飲用の井戸水といたしまして使用されておりますし、また、そのほか工業用水にも農業用水にも非常に便利に使われております。そして、日本じゅう至るところにそれがあるものでございますから、もし、それに害を与えるようなものが含まっておりますと大変だということで、実は積極的に環境庁の方で五十七年に調査をさせていただきまして、五十八年度に成果を得て調べてみましたところ、トリクロロエチレンとかテトラクロロエチレンとかあるいはトリクロロエタンというようなものが入っておる、これが割合に分布されておるということがわかったものでございますから、これにつきまして危ないところ、中にも特にWHOの基準を超えたようなものがありましたから、これは東京都内でございますが、早速水道の方の原水を厚生省にお願いをしてかえてもらうように手当てをしてもらったのでございますが、こういう物質が、先生はほかにもあるのではないかと御心配をいただいております。  環境庁といたしましても、そういうおそれがあるのではなかろうかということで調べにかかっておるのですが、何分全体で化学物質というのはたしか数万の数がございまして、その中で地下水に入りそうなものが二千ぐらいでございますから、そういうものにつきまして順次調べていこう、特にそういう全国的にありそうなものについて選んで調べていこう、こういうことでやりかけておるところでございます。したがいまして、これからも引き続いて調査をいたすわけでございます。  トリクロロエチレンの太子町につきましては、これは原因がまだはっきりはいたしておりませんけれども、とにかくああいうものが入ってきた場所、場所ははっきりわからないのですが、井戸は汚染されているからわかっておりますので、それにつきましては手当てをして、これは使用しないということにしていきたい、こういうふうに考えております。
  42. 岡本富夫

    岡本分科員 通産省は恐らく現地の調査をされたと思うんですがね。現地の状態をきょうはお聞きしようと思ったけれども、恐らく何にもやっていないんですよ。だから、きょう御質問申し上げても答えることができないと私は思いますので、次の機会にもう一遍かっちり廃棄物の処理及び清掃に関する法律上の問題とか、あるいはまた今後の対策、これについてひとつもっと詳しくお聞きし、対策を立てていただきたい。  そこで最後に、水質汚濁防止法第十四条の第五項「排出水を排出する者は、有害物質を含む汚水等(これを処理したものを含む。)が地下にしみ込むこととならないよう適切な措置をしなければならない。」ただこれだけの法律だけでは、恐らく今後もこういう問題が解決しないと思うのです。要するに、地下水対策に対する公共用水とかあるいはまた河川湖沼に対するものはありましたけれども、地下水に対するところの制限あるいはまた措置法律がはっきりしていなかった。我々も実はこの法律審議したときに、ここまでまだわからなかったわけですが、これについての最後の見解をお聞きしておきたいと思うのです。というのは、トリクロロエチレン、これも相当出荷しているわけですよ。PCBと同じぐらい出ているわけですよ。ですから、法改正、これもひとつ検討するかどうか、これをひとつお聞きしておきたいと思います。
  43. 佐竹五六

    佐竹政府委員 御指摘の十四条の五項でございますけれども、これは有害物質ということで、現在私ども、これは水濁法の解釈上は、排水規制をしている物質、こういうことになっております。先生もう既に御案内のように、トリクロロエチレンにつきましては、現在排水規制していないわけでございます。今お話にもございましたように、これは一般中小企業等でも溶剤あるいは金属洗浄剤として非常に使われている物質でございまして直ちに排水規制を行うのは難しい面もございますが、いずれにいたしましても放置できない問題でございますので、御指摘法律上どういうふうな手当てをするかということも含めまして五十九年度には予算措置もなすべく現在御審議願っているわけでございます。私ども今後、御指摘の点、制度的な措置も含めまして早急に検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  44. 岡本富夫

    岡本分科員 終わります。
  45. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて岡本富夫君の質疑は終了いたしました。  次に、上野建一君。
  46. 上野建一

    上野分科員 私は、湖沼の浄化の問題を中心にして、その前提になるいろんな問題を含めてお伺いいたしたいと思います。  まず、上田環境庁長官が我が千葉県の手賀沼を先般視察された。長官としての行動力に私は大変敬意を表するものでありますけれども、視察された感想をまず最初にお伺いしたいと思います。     〔谷垣主査代理退席、島田(琢)主査代理     着席〕
  47. 上田稔

    上田国務大臣 最初に、実は手賀沼を見せていただいたのでございますが、湖沼の中で、これは大変失礼でございますけれども、ワーストワン、一番汚れておるのがどうも手賀沼であるということをお聞きいたしましてぜひとも私も実際に目で見て悪い状態を把握したい、こう思って実は行かしていただきました。まず私は、印旛沼の程度よりもう少しくらい悪い程度かなと思って行ったのでございますが、思ったよりも非常に悪い状態でございました。ちょうどあの日は前に雪が降っておりまして、その雪解け水が大分手賀沼に入っておったようでございます。しかしながら、底からぶくぶくとメタンガスか何かわかりませんが、そういうものが出ておりましたし、まだ青い色が幾分残っているような、夏はアオコが発生するのですが、冬になってもまだそんなような状態を感じたのでございます。早速手ですくってにおいをかいでみますと臭い、こういう状態になっておりますので、これは放置することができないのではないか。農業用水にお使いになっておりますし、また、あの下流のところは利根川に入ってすぐに千葉の上水道の水源になっておりますし、これは放置ができない、こういうふうに感じた次第でございます。
  48. 上野建一

    上野分科員 手賀沼の汚れのひどいことを御理解いただいて、行政というのは実態から出発しなければいかぬと思いますので、その意味では行政の最高の責任者であります長官がごらんになったことは大変結構なことでございます。どうか今後ともそういう現場を、まだ多くあると思いますので、ぜひとも視察をいただいて、その実態をどう改善するかということに御努力をお願いしたい、こう思います。  そこで、今国会湖沼水質保全特別措置法案、前に廃案になっておりますけれども、これを出されるというように聞いております。さらに、環境影響評価法案、アセスですが、この法案も提出されるということでありますけれども、いつごろどういう内容提案をされるのか、お聞きしたいと思います。
  49. 上田稔

    上田国務大臣 湖沼法並びにアセスの法案でございますが、これはいずれも昨年末の国会におきまして解散ということが起こりましたときに廃案となってしまったものでございますが、いずれも環境上早急に必要なものでございますので、これを出させていただくということで今進めておるところでございますが、何分廃案になりますと最初からやり直さなければなりませんので、各省また関係の方といろいろと折衝をさせていただいております。予算関係法案が大体終わってまいっておりますので、三月の末ごろをめどにただいま折衝を急いでおるところでございます。
  50. 上野建一

    上野分科員 内容は前国会に出されたものと同じだ、こういうお話でございますが、実は前の法案について、出すものとしては大変後退をしている、私どもはこういうとらえ方をしておった点がございますので、この点についての考え方を少しお伺いしておきたいと思います。  まず第一に、一昨年の一月末に中央公害対策審議会から答申が出されて、それをもとにしてこの湖沼法がつくられた、こうお伺いいたしておりますが、その中で特に答申から法案に変わる際に変化がございます。私どもはどうしてそうなったのかとかねがね思っておりましたが、一つは、「環境保全」となっておったのが「水質保全」となる、それから周辺の工場の新増設をする場合には許可制にする、こういう答申があったと覚えておりますけれども、その点が前回出された湖沼法案には抜けている。したがって、私どもは後退をしたと判断いたしておりますが、その点はいかがでしょうか。  それから、この際新しく出されるというなら、この答申を踏まえた形で出せないものなのか、出せないとすればどこに障害があるのか、この際、明確にお願いしたい、こう思っております。  それから、アセスの方は開発の環境に及ぼす影響を事前に調査をして予測評価を下す、そして、その上に立って統一的なルールをつくるというのが公害を未然に防止する目的でありますから、そういう意味で私どもはこれに大変期待をかけておりますけれども、この内容についても今言った公害を未然に防止するという意味での役割としてはどうなのか、今度出される中にはそこら辺は万全を期してあるものかどうか、その点をお伺いをいたしておきたいわけであります。  さらに、その次の問題としては、環境庁、これは私ども役所の中でも大変期待をいたしております。その環境庁の動きを見ていると、率直に言って中曽根内閣の政治姿勢も大体わかりますし、ある意味では自民党長年の政治のいろいろなしわ寄せなり欠陥をどう克服するのかという意味でのやる気があるのかないのかも判断される、そういうふうに思います。しかし、残念ながら予算の総額からいくと四百二十五億円、予算全体から見ると千分の一になっているそうで、これを人口一人にすると四百円にしかなっていない。こういう状態で、長年国土が荒廃されてきた、それを何とかしようという環境庁予算にしてはまことに少ない。  それから、前の二つの質問とも関連するのですけれども、これからそういういろいろな対策をするとすれば、建設省や運輸省、建設省の方は上田長官が出身のところでありますからいろいろな協力を得られるかもしれませんが、そのほか運輸もあり、農水省その他の官庁の全面的な協力を得なければできない問題だ。ところが最近は、どちらかというと、各官庁は環境庁の足を引っ張る側に立っているというふうに言われているのですけれども、そういうことも含めて長官はどう考えられるのか、でき得れば決意のほどもお伺いをしておきたいと思います。
  51. 佐竹五六

    佐竹政府委員 冒頭に、中公審答申との関係、これは若干経緯にわたることでございますから、私から御答弁申し上げます。  確かに御指摘のとおり、その法案の名称が「環境保全」から「水質保全」に限定されたということでございますが、これは御案内のように、中公審答申を得ましてから昨年提案に至るまでは、政府部内でかなり長い検討期間がかかったわけでございまして、その際に政府部内でコンセンサスを得られましたのは、広く環境保全ももちろん大切だけれども、当面湖沼法としてやらなければならないのはやはり上水道等の水源になっている水質の保全、こういうことではなかろうかということで、当面喫緊に必要な目的に絞るというようなところから、湖沼水質保全法という形で御提出申し上げた、かようなことでございます。  それから、第二点の新増設許可制でございますが、御案内のように、湖沼周辺は中小企業が大変多いところでございます。この新増設許可制は、かつて瀬戸内法でそのような仕組みをとられておるわけでございますが、瀬戸内海につきましては、御案内のように、我が国有数の大企業が沿岸に立地いたしまして、瀬戸内海汚濁原因の相当部分はこれらの産業系の排水によっていたわけでございます。そのようなところから特に許可制というような仕組みを設けたわけでございますが、湖沼につきましては、ただいま申し上げましたような事情から、届け出制と勧告、こういうような仕組みに変えたわけでございます。これは法律の仕組みが変わっても、実態の運用といたしましては、先生も御案内のように、許可制をとろうと届け出、勧告制度をとろうと、変わりないような運用を十分してまいりたい。また、関係の工場、事業所の経営者の方々も湖沼水質保全のためには十分御協力いただけるというふうに私ども考えておりますので、今のような仕組みにしたわけでございます。  今回、提出をどのようにするかということにつきましては、大臣から御答弁していただきます。
  52. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 大臣の御決意、御答弁をいただく前に、官房長の加藤でございますが、アセスメント法、いわゆる環境影響評価法案関係とそれから予算額について御質問ございましたので、簡単に事務的なことを御答弁申し上げたいと思います。  まず、アセスメント法でございますが、現在、御承知のとおり政府部内の調整を鋭意進めておるところでございます。これは先ほど大臣も言われたとおりでございますが、御質問は、これでしっかりやれるのか、総括しますとそういう御質問かと存じますが、アセスメント法、現在政府部内で準備を進めておりますのは、先国会におきまして審査未了となりました内容と同趣旨検討を進めておるわけでございますが、それで十分かというお話でございますけれども、まず、これは手続法でございます。一つの公害発生の未然防止、かつてのようなことにならないように事前に環境影響を評価しておこうというための手続法でございまして、いわばルールづくりでございます。その面から見まして、十分というとあるいはちょっと言葉がきっ過ぎるかもしれませんけれども、そういう枠組みという点におきまして、私ども、現時点で求める姿としては一応完結したものと信じております。なお政府部内で関係各省と折衝を進めてまいりたいと思っておるところでございます。  それから、予算の点につきまして一言御答弁申し上げたいわけでございますが、御理解もいただきたいわけでございますが、予算額、確かに四百三十五億でございます。ただ、先生、先刻御承知と存じますが、いわゆる事業予算ではございませんで、端的に申し上げますと、研究それから調査それから具体的な方策の検討、それから各省庁に集まっていただきまして、一緒に、いわゆる調整と申しておりますが、それぞれ事業官庁がおられますので、各事業官庁で膨大な予算を計上していろいろな事業を執行される、あるいは民間でもいろいろなことをされるのに対する指導の基礎となることをするいわば事務的な経費でございます。私ども予算常識として考えましても、俗に事務的経費と申しておりますが、そういう経費といたしましての四百三十五億というのは、多いと胸を張るわけにはまいりませんが、相当なものであると確信いたしておりますので、御理解のほどをお願い申し上げます。
  53. 上田稔

    上田国務大臣 まず、湖沼法でございますが、「環境保全」ということから「水質保全」ということに変わったというか、そういうふうに水質保全の方を重点に持っていこう、こういうことで出させていただいたのでございますが、それについて、環境の方が重要ということは、これは当然のことでございますけれども、そういうことについては他の、例えば自然公園法とかそういったような考え方によってもできるような体制にあるんじゃないか。水質保全の方が今ないから、これは何とかしなくちゃいけないんじゃないかということから、湖沼水質保全というような名前に変えさせていただいた。したがいまして、この前のときにああいうことで流れたものでございますから、これをもう一回出させてもらって、これは早く決めていかないといけないんじゃないか。赤潮が出たりあるいは水質がだんだん悪くなってくるおそれもあるので、これを決めさせていただいて、早く計画ができて、その計画関係各省にみんな了解をしてもらって、そうしてそれを進めていく、大いに進めるということをやってもらうのが一番必要ではなかろうか、こういうことで水質保全を重点に出させていただきたいと念願をいたしております。  次に、アセスの方でございますけれども、これも大きなプロジェクトあるいは大きな建設工事、そういったものにつきましては、今現在、実際に事業官庁でおやりになっていただいておるのでございます。それのやり方がいろいろまちまちでありますので、これをひとつやはり法律的に決めさせていただいてやった方がはっきりしていいのではなかろうか、こういうことで実は出させていただきますので、ぜひともお願いを申し上げたいと存じております。  予算の点については、今官房長の方から御説明を申し上げましたように、調整官庁でございますので、これからの環境行政をどう進めるかということについてこれを使わしていただいていくということに重点を置いて持っていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  54. 上野建一

    上野分科員 後退した点は、今もお話がありましたが、率直に言って、私はそれだけではどうも納得がいかない。特に湖沼の場合には、川の問題も同じですけれども、やはり総合的な対策がなければ、これは進まない。水だけで済むなら、それぞれ水質保全法もあればいろいろ法律もあるので、各地方自治体もやっているわけですから、その意味ではもうとっくにきれいになっていなければおかしいわけなんですけれども、その点は率直に言って、今日の環境庁の置かれている条件その他から考えて、後退したのだなと判断をしておりますが、しかし、この湖沼法をさらに強化していくためにはどうしても「環境」に変えなければだめだろう、そこまで広げなければだめだろう、こう思いますので、その点はそうあるように少し要望しておきたいというふうに思います。  そこで、特に水質の関係においては、これは既に滋賀県の琵琶湖における条例もできまして、特に問題は洗剤に集中した嫌いがございますけれども、その洗剤の追放という意味で、現在進められておる粉石けんを使う運動、これについてはどのように評価をされておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  55. 佐竹五六

    佐竹政府委員 確かに御指摘のように、合成洗剤が湖沼富栄養化等に、それから河川水質汚濁に非常な影響を持ってきたということは御案内のとおりでございまして、これにつきましては既にABSからLASへ、非常に分解しにくいものから分解しやすいようなタイプに変える、それから、さらにまた性能向上剤としての燐、燐酸塩をゼオライト等に切りかえ、無燐化を進める、こういうことが、メーカー自身もそのような方向に持ってきているわけでございます。そういうことを進める上で、一般住民の方々が積極的にこの問題に取り組まれて一定の成果を上げられたことは事実であろうと思うわけでございまして、私ども、通産省を通じて業界にもお願いしたことが無燐化等については実現し、現在大体九割が無際化しておるわけでございますが、その点は、そういう広範な一般の住民の方々のお力添えがあったことは私どもも大変感謝しているわけでございます。  たださらに、無燐化した場合においてもなおかつ植物プランクトンとかあるいは魚類に悪い影響があるのではないか、そういう運動を進められている住民団体の方々がいらっしゃることは私どももよく承知しておりますし、また、そういう運動を支持されている見解をお持ちの先生方もおられることも否定できないわけでございます。ただ私ども、今度は合成洗剤を粉石けん等に切りかえる、確かに分解する面では非常によくなるわけでございますけれども、逆に同じような洗浄効力を上げようといたしますと量をふやさなければならない、こういう問題もございまして、そうなりますと有機汚濁が進む面もある、こういう意見もあることも否定できないところでございまして、現在この問題につきましては、国立公害研究所で三年間にわたりまして取り組んでおりまして、その結論が五十九年度には出るわけでございますが、その結論を待って私どもは判断いたしたい、かように考えているわけでございます。  なお、合成洗剤の安全性の面につきましては、これは厚生省の方で、一応通常指示されている使い方を守るならば人体には影響はないのだ、こういう結論を出しておられるやに伺っているわけでございます。
  56. 上野建一

    上野分科員 そこで、公害研究所で結論を出されるということでありますが、その点で、燐に集中をしているのですね、条例もそうですし、それから環境庁の指導もどうもその点にある。ただ、事実いろいろな学者からもあるいは民間の研究所からも、無鱗化しておっても洗剤そのものが問題だ、特に表面張力というものを水の面から抜いてしまうものですから、そうするともういろいろな生物、単細胞の生物に洗剤が入っていく。そうなると、水が入っていってそれがパンクしてしまう、そういうことから生物がどんどん死んでいくという状態が洗剤から起こっていると言われているわけで、そうすると、人間の手なら手袋で皮膚を守るという手もありますけれども、単細胞の場合にはそれができない、そこに湖沼などが浄化能力を失ってくる大きな原因がある、こう考えられているし、事実そのようだと私も思うのですけれども、そういう意味では、疑わしきは使わずという意味で、もっと環境庁は積極的に粉石けんを使う運動を指導するといいますか、そういう面があってもいいのではないだろうか。どうも環境庁は本来我々の環境を守るということですから、事前にいろいろなことを防止していかなければならぬ役所で、しかし、見ているとどうも後追いになっているわけですね。これはやむを得ない面ももちろんありますよ。ありますけれども、これからの国土を考える場合には、何といってもきれいな空気、おいしい水、騒音と振動のない暮らし、これが環境の原点だろうと思うのです。そうだとすれば、それを事前に防止するという意味では、住民運動や何かをもっと先取りして、あるいは住民運動が示した方向がいいというなら、それを積極的に取り上げていく、そういう行政指導の姿勢というものがあってもいいのではないだろうか、こう思うのですけれども、そういう意味では洗剤から石けんに切りかえる、そういうことに対してもらと積極的に指導する意思はないかどうか、この点は長官にお伺いしておきたいと思います。
  57. 上田稔

    上田国務大臣 ただいま局長から申し上げましたように、国立公害研究所調査をやっていただいておりまして、五十九年度、もうすぐでございますが、その結論が出るわけでございますので、その結論を待って私どもはやりたい、こういうふうに考えております。もっと先に、ずっと長くかかるならいろいろ問題もありますが、もうすぐ来年度中に――来年度といいましても、もう来月からでございますから、その間に出るということでございますので、それを待ってやらせていただきたいと念願をいたしております。     〔島田(琢)主査代理退席、谷垣主査代理     着席〕
  58. 上野建一

    上野分科員 その辺のところがどうも私は納得いかない点なんですけれども、これ以上申し上げてもいい返事が出てきそうにないので、その点は要望にとどめておきたいと思いますけれども、いずれにせよ、出てくる湖沼法もアセスも、どうも一般の住民特に自然を守ろうとする人たちから見ると不十分だ。出される前にそう言っては申しわけないのですけれども、しかし前国会に出されていますから、それと同じものだとすれば、これは期待についてはいささか期待外れの面も多いということが言われているわけで、そういう意味で、長官は新しい長官ですから、ひとつ新しい法案を出すときには、今問題になっている点を、私から申し上げた点も含めて、ぜひ前進されるように期待をしておきたいというふうに思います。  それから、ついでに要望しておきたいのですが、実は上田長官が建設省御出身ですから御承知の東京湾横断道の問題がございます。これは建設省など関係官庁、それから地元も挙げてこれをつくろうという方向に熱が上がっている段階なんですね。ただ問題は、これをつくるにいたしましても、東京湾の環境調査、アセスが非常に重要な問題なんです。これを建設する側に任せておいたのでは、私は率直に言って客観性を欠くように思います。したがって、これは今後の課題としてぜひやっていただきたいのですけれども、東京湾に橋がかかったら一体東京湾の生物あるいはその他の環境全体についてどうなるのか、これをぜひとも環境庁としてやっていただきたい。それができるかどうか。これは東京湾の橋の問題だけひとつお答え願って、私の質問を終わりたいと思います。
  59. 上田稔

    上田国務大臣 先生指摘の東京湾の横断橋でございますが、これは東京湾の水質が、以前大分悪くなっておりまして、魚のいない死の世界になっておった水質のところが最近漸次よみがえりつつあるわけでございます。したがいまして、今の橋によりましてまたぞろ死の区域と申しますか、そういう区域がふえていくというようなことになりますと、これは大変なことでございますので、私どもといたしましてはそういうことのないように、水流につきましても十分調査をして、そういうことにならないような事前調査、アセスをやりたい、こういうふうに考えております。また、環境面におきましても十分に考えていかなければならない。ただ、環境画になりますと非常に難しゅうございまして、そのものができることによって非常によくなるというふうなお考えをお持ちの方もありますし、両方ありますので、この辺をよく考えてやりたいと考えております。
  60. 上野建一

    上野分科員 どうもありがとうございました。
  61. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて上野建一君の質疑は終了いたしました。  次に、木内良明君。
  62. 木内良明

    木内分科員 まず初めに、さきの二月六日の施政方針演説の中で、中曽根総理は、「心の触れ合う連帯と文化の地域社会づくり」ということに触れられまして、社会資本の整備、災害対策等と並んで、「花と緑に囲まれた快適な潤いのある生活環境の創造に努めて」いく、このように述べておられるわけであります。緑化の推進自然環境の保全、こうした問題というのは、いわば国家的緊要な課題と言えるわけでございます。  そこで、都市部における自然保護についてきょうはいろいろお尋ねをしてみたい、このように思います。  開発による無機的な都市形態、人口の密集化、複雑化する人間関係等の要因を勘案すれば、都市部における自然保護の意義は、例えば緑の持つ環境保全機能、保健休養機能に加え、心理的効果としての修景機能、安息機能等の点から、今後ますます重要性を持ってくる、私はこのように考えるわけであります。  こうした点から、今後の都市における自然環境の保全ということについて、まず環境庁長官の御所見を伺いたいと思います。
  63. 上田稔

    上田国務大臣 木内先生の御質問にございました自然環境、自然保護ということをどういうふうに考えるかということでございますが、首都圏であるとか近畿圏、中部圏、こういう大都市圏をつくりましたときにおきまして、こういう地域に非常に人口が集中をしてきて、そして都市が非常に膨張をしてくる。そういうことによって都市部に、膨張してきた中にお住みいただいておる住民の方々が自然に触れ合う場がなくなってくるじゃないか。そしてまた、近畿圏なんかにおきますと、周辺の山のすそ野からずっと山の方に向かって、非常に樹木の生えているところに向かって、それを崩して住宅地を造成する、見晴らしがいいから、こういうこともあるのでしょうが、そういうふうなスプロールが行われてまいりました。  これに対しまして、これは大変なことだ、こういうふうに無秩序に開発をされたのでは困る、こういうことから、大都市圏におきましては近郊緑地という制度を実はつくらせていただいたのでございます。その近郊緑地に栄きましては、緑をもちろん保全をするとともに、その近郊緑地に、大都市圏にお住みになっている方々においでをいただいて、そして緑に親しんでいただく。例えば大阪でいいますと、六甲山であるとが生駒山、それから東京でいいますと、多摩の奥の方であるとか鎌倉でございますとか逗子の方とか、あれは半島の方でございますが、あっちの方へ出かけていっていただいて緑に接していただく、自然の景色に接していただく、そういうことを考えて実はつくったのでございます。  ところが、そうやってつくってずっとまいりますと、大都市圏の中の都市の密集状況ということによって、その中にお住みになっておられる方々がなかなかそういう近郊緑地までも出かけていけないような状態にも相なってきておりますし、そして子供さんたちが自然に接するということが少なくなってきておりますので、これに対して何とかやらなくちゃいけないじゃないか、手当てをしなくちゃいけないじゃないか、こういうことから、国土庁あるいは建設省の方においてもいろいろとお考えをいただき、環境庁の方でもそういう対策をいろいろと考えてきたのでございます。  都市公園とかいろいろやったのでございますけれども、それでも都市公園的な考え方にさらに自然の考え方をやはり入れなくちゃいけないじゃないか、自然に接するようなことをやはり考えていかなければいけない。こういう考え方に立って環境庁は、これからの方向として、自然に接するようなそういう施設を考えていかなくちゃいけない。したがいまして、今幸いにまだ残っておる、例えば野田のあたり、あるいはまたもっと近くのところにも残っておりますが、あの辺では山と言いますけれども、これは森みたいなものでございます。武蔵野の森のようなものがまだ残っておるところ、こういうところに自然を観察するような施設をひとつつくっていこうじゃないかというようなこと。また、小鳥が大いに飛んできてさえずりをするような場所、そういうような林づくりと申しますか、そういうものをひとつやって自然を維持するとともに、自然環境を創造して、自然の生き物にそこに大いに飛んできてもらう、そして、そこに住民が行きまして安らぎを得るというようなことを考え、また各御家庭におきましても――オランダに行きますと、よく先生もごらんになっていただいておると思うのでございますが、アパートというかマンションというか、そういうところにいろいろ花をお植えになられて、住居の状態というものを非常に潤いのあるものにしておやりをいただいておる。また、林にもそういう花をふやしていただく。こういったようなことを考えてやらなくちゃいけないということで、環境庁もそういう面に力を入れてこれからやらしていただきたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  64. 木内良明

    木内分科員 今長官の方からるる自然保護行政、とりわけ新しい展開におけるいわゆる小動物との接点、いろいろと見解を伺ったわけでございますけれども、同時に、いわゆる大都市部における自然保護という点についてお聞きしていきたいと思います。  近年、全国的な都市化の進展の中で、樹林地等の緑地が次第に少なくなっているということも現実の問題だろう、このように思います。したがって、今後、都市域の自然環境を積極的に保護育成していくことが、快適な環境づくりの上から要請されることは言うまでもないことだと思います。今も申し上げましたように、大臣の所見を伺ったわけでありますけれども、残念ながら、今後に残された課題というものがまだまだあるわけでございまして、必ずしも快適な都市環境とは、今の段階では決して言えないのが我が国の現状であろう、このように思います。  昨年六月に実施されました内閣総理大臣官房広報室の緑地推進に関する世論調査によれば、緑を守りふやしたい場所として、公園の緑というのが三九%で最高の数字を示しているわけであります。  ところが、ある資料によりますと、社会資本整備水準の国際比較によって、一人当たりの都市公園面積を欧米先進諸国と比較してみますと、調査時点での多少の差異はあるわけでございますけれども、アメリカのワシントンは四十五・七平米、イギリスのロンドンは三十・四、西ドイツのボンは二十六・九、比較的小面積のフランスのパリでも八・四平米であるのに対しまして、我が国の東京はわずか一・九平米にすぎないという現実があるわけであります。公園面積の比較の問題は、ストレートに環境庁のみの所管たり得ないとは思いますけれども、都市域の緑地保全、さらには育成という観点から、環境庁長官としてこうした現状をどう認識しておられるか、この点についてお聞きします。
  65. 上田稔

    上田国務大臣 確かに、日本におきます都市公園の比率というものは、今先生から一・九平米という御指摘を受けたのですが、もうちょっと進んでおるようでございますけれども、建設省が一生懸命やっておりますが、なかなかその比率が進んでいかないというのが実態でございます。  これを何とかしなくてはいけないということでございますが、一方、それでは住宅で全部詰まっているのかというと、都市公園にはなってないけれども緑の部分があるところも割合に広い範囲にございまして、これを何とか生かすようなことを考えていかなくてはいけないと私は思うのでございますが、そういうような点を拾い集めていきますと、全体の三割か四割ぐらいのものが、あるいはロンドンぐらいと言った方がいいかもしれませんが、そういうものがあるのではなかろうかと思うのでございます。しかし、それは水田や畑地になっておったり、部分的に樹木の栽培地といいますかそういうものになっておったり、あるいはその他の緑のものであったりするわけでございますが、いろいろ事業をおやりになります関係省とよく御相談を申し上げまして、それを緑として活用できるようにしていきたい。  それからもう一つは、都市にも河川がありまして、その河川を何とか生かしていくような方法はないだろうかということを考えております。都市河川というのは今まで汚濁が非常に激しゅうございまして、臭い、だから、ふたをしろというお声が強いのでございますけれども、水質を何とかよくしていかなくてはいけないので、市長さんあるいは知事さん、そういう方々とよく御相談をして水質をよくしていくようにして、水辺に親しめるようなことを考えていかなければならない、こういうことを考えております。隅田川におきましても、一時は本当に臭くて人が立ち寄れなかったのでございますけれども、最近はやや水質の点もよくなってまいりまして、お魚も、十分ではありませんけれども、大分帰ってきつつあるという状態に変わってきておりますので、こういうような点を大いに進めていきたい、こういうふうに考えております。
  66. 木内良明

    木内分科員 都市公園面積ということで言えば、欧米先進諸国に比較して極めて不十分な現状である、これは今また大臣の御答弁にもあったわけでございますけれども、同時に、今もお話がございましたように、わずかではありますけれども都市部における樹林地等の自然環境は、いわば快適な都市環境づくりというテーマを考えれば不可欠の要素である、このように思います。  そこで、環境庁が所管しているものとして国民公園というのがあるわけでありますけれども、緑地の少ない都市部においてはそれらの存在は極めて貴重なものである、私はこのように考えます。また一方、国民公園は広く国民に利用され、親しまれ、国民の福祉に寄与するものとして本来設置されているものである、このように思うわけでありますけれども、国民公園の定義を含めて、本来あるべき性格についてどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  67. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、皇居外苑、新宿御苑及び京都御苑というものが国民公園ということでございまして、戦後国民に開放された旧皇室苑地であるわけでございまして、現在は北の丸地区を皇居外苑の一部に含めまして、国民公園といたしまして一般の国民の利用に供されているところでございます。  これらの国民公園は、閣議決定がございまして、国民庭園としてあるいはまた森林公園として整備する、そして広く国民の利用に供するということで、国民公園ごとの特色なりあるいは伝統を生かしながら、それを含めた管理方針というものが示されておるわけてございまして、大きくはこれに従ってそれぞれの国民公園の運営を行っている、これが現状でございます。
  68. 木内良明

    木内分科員 運営あるいは管理に当たりましては、国民公園における自然あるいは緑地の保護という一面と、同時に、国民に利用され親しまれなければならないという一面、両面の配慮が必要だと思います。また、そのための苦心も関係者によって繰り返されているのではないかと思われます。こうした両面の目的を満たすための整備、運営ということに関連して、具体例を挙げてお聞きしたいと思います。  今も局長のお話がございましたが、国民公園である皇居外苑北の丸地区、いわゆる北の丸公園でございますが、実は先日私はここへ行って見てまいりました。現地の管理事務所の皆さん初め関係者の方々の御努力が実を結んで、非常によく整備されていたのが印象的でございました。  ただ、残念なことに、冬場、芝地は、その芝生の保護ということから幅一・五メートル程度の通路以外、一定期間全く立ち入ることができないようになっておりまして、いわゆる利用者とこの公園の管理といいますか、自然との触れ合いという形が若干まだ問題として残っているなという感じがいたしました。  同国の整備方針、管理運営が現在どのようになっているか、お聞きしたいと思います。
  69. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 北の丸公園は、昭和三十八年五月でございますが、閣議決定に基づきまして森林公園として整備する、こういう基本方針でやってまいっておるわけであります。  冒頭、先生も御指摘いただきましたように、近年都市の緑の減少、こういう状況にもかんがみまして、北の丸公園を森林公園という名前にふさわしい公園とするようにせっかく努力を重ねているところでありますが、先般も有識者による検討を持ちまして、公園の中央部を、落葉樹を主体といたしますいわゆる武蔵野の森の復活ができないか、こういうことを目指しまして植栽方針を検討してもらいまして、その方針のもとに、これは民間団体の御協力も得たのでありますが、五十七年度から三カ年計画整備を進めているところであります。  御指摘の芝生地につきましては、何とか多数の方の御利用にも供したいという面と、先生指摘のように、一方で保護をやらなければいかぬという難しい問題があるわけでありますが、多数の利用者がそこに入り込みまして踏圧といいますか、踏み荒らしといいますか、こういうことによって芝生がはげてしまう、裸地化してしまうというおそれがありますとか、あるいはまた冬場、霜柱によって凍上現象が起こるわけでありますが、それをまた入って踏んでしまいますとうまくいかない、こういうようなことで、何とか芝生を保護するために冬期間だけは立ち入りを禁止しているというのが一応の原則になっておるわけであります。
  70. 木内良明

    木内分科員 自然の保護、管理と相まって、国民、利用者とこうした緑地との接触のあり方というものが、自然性が薄くなって、単に視覚でとらえた平板的なものにならないよう、すなわち受動的なものとならないよう、自然とより親しみやすい形態が考えられてよいのではないか、私はこのように考えます。  例えば園地の一部については、理想としては、部分的にせよ一年を通じて常時自由立ち入りを認めて、例えば子供たちがその上をはねたりできるような光景が見られるようにすることもあるいは必要なのではないだろうか。同時に、局長が今言われたように、自然保護という立場から見ればこれもなかなか微妙な点があると思いますけれども、しかしながら、広大な園地の一画については、常時子供が出入りできて気兼ねなく跳んだりはねたりできる、いわばちびっ子広場的なものを設けて、土に親しむ機会の少ない都会の子供が遊べるようにするのも、同時にこれは大きな意味があるし、また、自然との接触のあり方ということからすれば大事なことである、このように思うわけでありまして、何とかこういう御配慮が願えないのかと思います。いかがでしょう。
  71. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 申し上げましたように、北の丸地区は森林公園として整備するのが政府の一貫した方針であるということが一つと、また、各世代の方々に広く利用していただきたい、こういう観点もございまして、何か施設などを設けまして子供用の広場を設けるという考え方はちょっと現段階ではとりがたいとは思っております。しかしながら、子供たちがはだしで土に親しむ、こういうような場が必要ではないかという御指摘、御質問の御趣旨は十分理解できることでもあります。そういうようなことで、現在の芝生地のうち一部の適地につきまして、例えば冬季間の立入禁止も解除してあるいは通年開放とすること、こういうことについて具体的に前向きにひとつ検討させていただきたい、こういうふうに考えております。
  72. 木内良明

    木内分科員 ただいま局長から大変前向きの御答弁をいただきまして、一定の前進があったというふうに私は思います。施設等の設置は必要ございませんし、むしろ今の段階で、局長も言われたように、肌で自然と接触できるようなそうしたスペースの確保等、ぜひひとつ前向きに御検討いただければと思います。この点について、大臣、局長と同じお気持ちだろうと思いますけれども、一言で結構ですから御答弁願いたいと思います。
  73. 上田稔

    上田国務大臣 実は、京都御苑におきましてはちびっ子広場というようなものを一部つくっておるのでございます。これは、そんなにたくさん施設を置いておるわけではなくて、ただ単に広場にして、そこのところは木がちょっとないというような状態でつくらしていただいておりますので、そういったような考え方でこちらにもつくりまして、特に芝生の上は非常に子供は喜んで遊ぶものでございますから、そういうような点も今度はいろいろ考案もしてみたい。しかし、それには、芝が枯れますからそれに対する予算は要りますけれども、非常に狭い範囲であれば予算はそう大したことはないのじゃないかということで、検討いたしたい、このように考えております。
  74. 木内良明

    木内分科員 次の問題に移ります。  豊かな物質文明を求め続けた結果、自然の喪失を生み出したというのが近年における特徴であるというふうに思います。また、複雑な人間関係あるいは無機的なものに囲まれた空間をつくり出してきたということを申し上げることができると思います。こうした環境から離れ、人間の心情がよるべき心地よさとして、花鳥風月の存在というのはまことに貴重であるというふうに思います。  そこで、環境庁自然保護局の自然環境研究会が「蝶や蛍が舞い野鳥がさえずる都市をめざして」と題するビートルズ・プランというものを発表されているというふうに聞いておりますけれども、これはどんな内容でしょう。
  75. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 ビートルズ・プラン、カブトムシの名前をとって名づけたものでございますが、私どもの局の若手職員が中心になりまして自主的に研究した結果のものでございます。環境庁自身の計画ではないわけでございますけれども、その内容をかいつまんで申し上げれば、先生今御指摘のように、都市において小動物と共生する環境を形成する、このことによって近年次々と姿を消しつつあるチョウや蛍、野鳥、こういった親しみやすい小動物を呼び戻すことができないか、そして緑豊かな、潤いのある都市を実現したい、こういうことを提唱したものでございます。これによって都市に季節感あるいは個性というものをもたらし、とりわけて子供たちに自然体験を通じた自主性、創造性の涵養に大きく貢献するではないか、こういう指摘がある、そういう内容のものでございます。
  76. 木内良明

    木内分科員 都市における自然保護という観点から考えまして、一歩踏み込んだ画期的なプランであるし、これをぜひそれぞれの立場でそれぞれの地域において実現できるよう私は望むものでございますけれども、特にこのビートルズ・プランと関連いたしまして、超高層ビル街の密集したところでもございますし、あるいはまたにぎやかな盛り場と隣り合わせになっております新宿御苑が都心の新宿にございますけれども、ビートルズ・プランによるカブトムシ、スズムシ、蛍、トンボ、バッタ等を招き寄せる計画といいますか、生息させる計画に、環境庁はこのビートルズ・プランを基本にいたしまして着手しておられるわけでありますけれども、その新宿御苑整備構想の進捗状況は今どんな状態でしょうか。
  77. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 ビートルズ・プランにおきまして小動物と共存できる都市空間づくりというようなこと、その一例といたしましてあの報告書では新宿御苑を取り上げているわけでありますが、これは新宿御苑についてそれができるかできないかという問題の検討の前に、このビートルズ・プランの考え方あるいは実践のための手法をわかりやすく説明するために例として挙げた、こういう理解をしておりますので、あそこに具体的に実現の可能性まで踏み込んで研究されているものではない、現段階ではそういうふうに考えておるわけであります。
  78. 木内良明

    木内分科員 いずれにしましても、都市の自然を再生し、潤いのある都市生活を取り戻すために、こうしたビートルズ・プランの具体化等もひっくるめてぜひ御検討、さらに推進をお願いしたいし、施策にも生かしていただきたい、このことを要望申し上げたいと思います。  時間が限られておりますので、最後に一点お聞きするわけでございますけれども、先日新聞に環境庁の柿澤政務次官みずからが新宿御苑に赴きまして、野生のニホンリスを放した記事が掲載になっておりました。実はこれにつきましては、随分地元のPTAあるいは児童等の意見を聞いてみましたところ、大変好評でございました。今後これがさらに拡大され、あるいはまた放し飼いにされるリスのほかにもまだいろいろな小動物が考えられるのではないか。今後のプランも踏まえて、簡単で結構ですけれども、お答え願いたいと思います。  また、これが最後の質問でございますので、きょういろいろと環境庁長官初め関係者、自然保護局長にもお聞きした点、都市の自然保護並びに利用者との接点という形で、ぜひこれを格段の御配慮をもってお進めいただけるようお願いを申し上げます。
  79. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 お尋ねのリスの件でございますが、都心の緑の中で小動物との触れ合いができるようにするための一つのささやかな試みでございます。とりわけ子供たちにとっては自然への理解を助ける一つの好個な素材ではなかろうか、こういうふうに思いましてああいうことをしたわけでございます。  ただ、初めての経験でございますし、このリスを放した後どういうことになるか、今いろいろと研究者の協力も得まして追跡調査も行っている、その生態観察もしておる、こういうような状況でございまして、こういうことが一つの刺激剤となっていろいろなところに波及していただければありがたい。これがまた先生お尋ねの都市の線あるいは小動物との触れ合い、こういう御質問の御趣旨にもかなうものではないか、こういうふうに考えておるところであります。
  80. 木内良明

    木内分科員 以上で終わります。
  81. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて木内良明君の質疑は終了いたしました。  次に、瀨長亀次郎君。
  82. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 最初に、文化庁に質問します。  ことしの一月に、沖縄の国頭村、例の山原地域と言われておりますが、ここでヤンバルテナガコガネという新種が発見されて、これは大型昆虫でありますが、非常に話題になっております。  ヤンバルテナガコガネというのは我が国最大の甲虫と言われておりまして、これは琉球列島の昆虫相成立やその地史との関係を解明するのに非常に貴重な存在だと言われておりますが、文化庁はこれを調査されたことがあるかどうか、この一点。  まとめて申し上げます。  もう一つはこの保護対策、これが必要だと思うのだが、文化庁としてはどういうふうな保護対策をされるおつもりか。  もう一つは、これが新聞に発表されましたら、ヤンバルテナガコガネ、この昆虫を採取、販売する業者がふえまして大変なことになっているんですよ。そこで、これはいかぬということで県の文化財保護審議会では、県教育庁からの諮問を受けて審査して、二月十六日付で県の天然記念物に指定された。ところが、あっちこっち調べておれば、これでもなおやまないんだな。売れば相当値段も高くつくらしいんですよ。そういうことがありますので、これはどうしても文化庁で徹底的に調査してもらって、そして国の天然記念物としてやはり指定するということが必要だと思いますが、文化庁いかがでしょうか。
  83. 田村誠

    ○田村説明員 ヤンバルテナガコガネについてでございますが、ただいまお話がございましたように、既に本年の二月十六日に沖縄県の教育委員会は沖縄県の天然記念物として指定し、沖縄県として保護措置を講じているというふうに承知しているわけでございます。  国の天然記念物の指定についてでございますが、文化庁では動物、植物及び地質鉱物のうち我が国にとって学術上貴重なもの、学術上価値が認められて、なおかつその中で重要であるというものにつきまして、それが我が国の自然を記念するものということで天然記念物に指定し、その保護を図るということを行っているわけでございますが、このヤンバルテナガコガネを国指定とするかどうかにつきましては、現段階ではその生態あるいは分布等がまだ詳細には明らかでございませんし、学術的価値についてもなお見定める必要があると考えておりますので、生態や分布の把握あるいは関係の学界の動向等を踏まえて検討してまいりたいというふうに考えております。  実態調査についてでございますが、ただいま申し上げましたように指定するということになりますと、なお生態あるいはその分布なども調べなければいけないということがあるわけでございますが、昆虫の生態を調べる、分布状況を調べるというようなことになりますと、適当な時期ということもあるわけでございますが、沖縄県教育委員会と十分協議し、あるいは専門家の意見も聞きまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  84. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 文化庁で独自に調査したことはないですね。
  85. 田村誠

    ○田村説明員 現在までのところ、ございません。
  86. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 今までわかったことだけでも、ヤンバルテナガコガネ、この昆虫だけでも約九百五十種ある。その三分の一が沖縄固有のものらしいんですよ。沖縄だけでないとすめないというほどの貴重なものであるということがわかっているわけなのです。これがわかっていながら、文化庁自体として調査しないと、天然記念物、これに該当するかどうかという場合に自信を持って当たれないと思うんだな。だから、私、希望しますが、早目に独自に文化庁で調査していただきたいと思いますが、いかがですか。
  87. 田村誠

    ○田村説明員 先ほど申し上げましたように、このヤンバルテナガコガネにつきましては、近く学術的な報告もなされるやに聞いているわけでございますし、また、これも先ほど申し上げたわけでございますが、成虫になりましたころがこの分布状況等を調べるのに最もふさわしい時期ではないかというようなことでございます。時期的に言いますと、九月に入ったころが適当ではないかというふうな話も聞いているわけでございますので、ただいま先生のお話がございましたけれども、その辺のことも考えまして、沖縄県の教育委員会と十分協議いたしまして、その辺検討してまいりたいというふうに考えております。
  88. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 これは希望ですが、今まで申し上げましたが、新種が発見されますと、業者は金もうけのためにいろいろなことをやるんですよ。だから、九月ごろと言わないで早目に調査してこれを保護しないと、後で申し上げますが、この山原地方というのは演習場もあるんですよ。こういった問題、例えばノグチゲラとか新種がいろいろあり、さらにヤンバルクイナ、これは全国的に有名な鳥ですが、これはそういったような地帯ですから、九月と言わずにひとつ早目に調査して、文化庁独自に天然記念物として指定するという保護を徹底的にやるというふうにしてほしいと思いますが、いかがですか。
  89. 田村誠

    ○田村説明員 繰り返しになるわけでございますが、その分布状況等を把握するということになりますと、成虫になっておりませんとなかなか発見も困難でございますし、十分な調査もできるかどうかというようなことがございますので、なお十分検討はしてみたいと思いますけれども、現在のところ、そのように考えているということでございます。
  90. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 そうすると、九月以降ということをここで約束できますか。
  91. 田村誠

    ○田村説明員 天然記念物に指定する、あるいはそれをどういうふうに保護するというようなことについての調査は、関係都道府県、市町村等に調査費を補助することによって実施するというのが、現在文化庁のとっております方法であるわけでございます。沖縄県につきましては、八割の補助率でこれを実施しているわけでございますので、このような現在ある制度利用しまして実施したいと思っておりますので、沖縄県の教育委員会とも十分協議いたしまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  92. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 この問題は環境庁長官とも非常に関係がありますので、実は長官に要望したいことがあるのです。  この山原地方というのは、俗に東洋でのガラパゴス島と言われているような地帯なんです。ダーウィンが新種を発見したところですね。それほど貴重なところであるので、沖縄が復帰したのが十二年前、その五月十五日のメモで、演習場は全部そうはなっていませんが、山原地方では特に五・一五メモで訓練場を使用する条件の中に「合衆国軍は、本施設及び区域内にある指定された水源涵養林並びに指定された特別保護鳥及びその生息地に対し損害を与えないよう予防措置をとり、水源涵養林に大きな形質変更をもたらすような計画をたてる場合には、事前に日本政府と調整する。」国内法に基づいて保護鳥類とか区域を指定されたら特段の配慮をするということが五・一五メモに書かれているわけです。(瀨長分科員、資料を示す)長官、沖縄に行かれたことがあるかもしれませんが、この赤線が演習地なんです。ここにノグチゲラとか有名な鳥類が主にいるのです。だから、これを絶えさせちゃいかぬということで今申し上げましたような条件がつけられておるのです。  ところで、私、昭和四十七年にこの合衆国政府が行った条件、これに基づいて五十六年四月九日に内閣委員会でも質問したときに、政府御答弁で、今後の指定があれば五・一五メモの指定されたものになると判断していると述べ、そういった判断に基づいて、日本国が区域を指定する、あるいは鳥獣を天然記念物に指定するとアメリカはこれを尊重するのだというふうに答弁しておりまして、私、長官もそういった考え方に立っておられると思うのですが、いかがですか。これは根本的な問題ですからね。
  93. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 御指摘のように、四十七年五月十五日の合意メモと呼んでおります北部訓練場に関する合意におきましては、指定された特別保護鳥及びその生息地に損害を与えないように予防措置をとる、こういうことになっておるわけでございまして、これは米軍においても十分注意を払っていることだ、こういうふうに考えておるわけであります。  御案内のように、私ども、ノグチゲラなりヤンバルクイナについてはいろいろな保護対策を進めてきておるわけでございまして、特殊鳥類に指定いたしましたりしているわけでございますが、鳥獣保護区の設定もその一つでございまして、既に鳥獣保護区を五カ所あの北部地域において設定を見ているところでございます。今後ともさらにこういう保護対策強化に努めたい、こういうふうに考えております。
  94. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 鯨岡環境庁長官時代にちょうどヤンバルクイナが発見された。そのときにお会いしまして、長官がはっきり言われたのは、今のテナガコガネ甲虫のように見つかったものだから捕獲する人が出てきまして大変なことになるというので、これは演習場に多いのですが、長官はこういったことでもし絶滅でもしようものなら大変なことになるので早目にその手だてをやりたいとおっしゃった。  問題は米軍なんですよ。とにかく米軍の関係になると日本政府は消極的になる傾向がこれまである。ところが、消極的になる必要はない。ちゃんと国内法に基づいて指定すればやると言われておる。もちろんこれは言うまでもないのですが、自然環境保全法第二十六条でははっきり書かれていますからね。「環境庁長官は、特別地区内における特定の野生動植物の保護のために特に必要があると認めるときは、自然環境保全地域に関する保全計画に基づいて、その区域内に、当該保護すべき野生動植物の種類ごとに、野生動植物保護地区を指定することができる。」問題は保護地区なんですね。これは、条件はあるにしてもどうしてもアメリカとの折衝が必要になってくるのですよ。そういった意味で、環境庁は保護区の設定を早目にやってほしいと思うのですが、これはどうなんでしょうか。
  95. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 先ほどもちょっと触れましたように、沖縄本島北部に生息する鳥獣の中にはいろいろ非常に貴重なものがあるわけでありますが、一般原則としまして、鳥獣保護及狩猟二関スル法律に基づきまして、一つは先ほど申しました鳥獣保護区の設定を行っている。これは現在五カ所、千五百二十二ヘクタールを設定しておるわけであります。それから、お尋ねのノグチゲラあるいはヤンバルクイナにつきましては捕獲が禁止されているところであります。それから、ノグチゲラにつきましては昭和四十七年でございますし、ヤンバルクイナにつきましては昭和五十七年、発見直後でありますが、特殊鳥類に指定いたしまして譲渡等の規制を行う等の措置を講じてきたわけでございます  そういったことでございまして、今後ともこういう施策の強化を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  96. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 それはいいですが、保護区域の設定なんですよ。特に、こう赤線で示しましたね、ここにいるのですが、ここを保護区域にするといったような指定がまだなされていないでしょう。なされていますか。
  97. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 ただいま申しましたように、五カ所の鳥獣保護区が北部地区について行われておりまして、西銘岳、佐手川、伊部岳、安波、与那覇岳とございます。その中で、先生今御図示の赤線の部分でございますか、訓練場の中にそういう鳥獣保護区が設定されておりますのも二カ所ある、こういうことでございます。
  98. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 特に伊湯岳周辺はヤンバルクイナが一番多いところなんだな。そこら辺が天然記念物のノグチゲラの格好な繁殖場所である。演習がどんどんやられるということになりますと、どうしても演習場内を、これは伊湯岳というんですよ、そこら付近もあわせて今の保護区域に設定しないと完全な保護はできないと思うのです。そこら辺はどうなんですか。
  99. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 伊部岳は訓練場に重なって入っておるわけでありますが、ヤンバルクイナは、五十七年あるいは五十八年にかけまして専門家に調査を依頼してやったのでございますが、その分布域は相当広い範囲、沖縄の北部全体にあるのではないか、こういうのが結果でございまして、現認したのはたったの二羽だけでございましたけれども、死体が見つかったとか、あるいは目撃したというような分布域を調べてもらいますと、北部全体にまたがっている、こういう調査結果でもございます。そのようなことで、鳥獣保護区の設定状況は今申し上げましたとおりでございます。今後ともこういう状況いかんによりましてはさらに検討を重ねてまいりたい、こういうふうに考えております。
  100. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 最後に長官の方に、一言でいいから。  今指摘した問題は伊湯岳の演習場内にあるんですよ。また、ここら辺がヤンバルクイナの生息地として有名なんだな。アメリカに遠慮されないで、独立国だから、実際は演習はやってもらいたくないんですよ。演習場をあっちに置くこと自体が問題なんですよ。また、そこが水源地でもありますし、水源地の涵養林の問題もあることでありますが、そういった鳥獣保護地域の問題はとりわけはっきりさせて、これは沖縄だけの問題じゃありませんよ。世界的に有名な自然の多いところなんです。そういった点を、長官としてもぜひそういう方向に努力をするといったぐらいはひとつ答弁をお願いしたいのです。いかがですか。
  101. 上田稔

    上田国務大臣 私も実は沖縄には何回も行かしていただておるのですが、この沖縄本島の北部の方につきましては、実は残念ながら余り行かせていただけてないのでございます。私が行きましたときは、道路も、ずっと周辺を回れるような道路はありませんでして、塩屋からちょっと先のところの北の方まで行かしていただいたんですが、山の方へはちょっと入る道がなかったし、入れなかった。ただ、ここに先生お話しのとおり水源地がありますので、私もその水源地を見せてもらいたいと申し入れたのですが、ちょうどそのときはだめだということで行けなかったのでございますが、お話しのとおり、演習の地域とこのヤンバルクイナのおります地域とがある程度ダブっておりますので、その中で、先生から伊湯岳の周辺が非常に重要だというお話をお聞きいたしましたのですが、これは沖縄の知事さんともよく御相談をさせていただいて、その実態についてよく承知をさせていただいて、そしていろいろ措置をさせていただきたい、こういうふうに考えております。
  102. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 長官、今道路もずっとよくなっていますよ。那覇から三時間もあれば奥まで行けますから、ぜひ行ってもらって、ははあ、ここら辺はやはり指定しなくちゃいかぬなということを実感されますから、早目に行ってほしいと思います。  次に、廃油ボールの海洋汚染について。海上保安庁おられますか。――昨年からことしにかけて、沖縄本島西海岸及び周辺の離島、宮古島北東海岸一帯に廃油ボールが漂着、関係漁場等漁港及び沖縄海岸の国定公園、こういったところを直撃し、汚染している。今は全部取り払われておりますが、私が聞きたいのは、何が原因で広範にわたってそういう廃油ボールが海岸に押し寄せてきたのか。これは漁業だけじゃなしに、サンゴ礁、サンゴというのは生きていますからね、こういったことまで非常に関係する。  だから、何が原因となってこういった廃油ボールがあちこちに押し寄せてきたのか、その原因ですね。これはもちろん第十一管区海上保安本部関係の方でやっておると思いますが、原因がわかるのかどうか。これはインドネシア産原油であるということまで言っておりますが、まだはっきりしないのですよ。この原因は何であるか、これが一つ。  それから、海上保安庁としてこのようなことが再び起こらぬような措置をとってほしい。  最後に、これは環境庁長官との関係もありますから、環境をどういうふうに保全するか。  最初に、海上保安庁の方から、原因は何であったかという点を明らかにしてほしいと思います。
  103. 伊美克己

    ○伊美説明員 まず先生御質問の第一番目の、廃油ボールがどういう原因でできて、それが沖縄周辺海域に流れ着いたかという御質問についてお答えをいたしたいと思います。  廃油ボールがどういう原因でできるかということについては、必ずしもはっきりしているわけじゃございませんが、今の時点での研究調査等の結果言われておりますのは、タンカー、油を積んだタンカーでございますね、このタンカーのタンククリーニングの洗浄水あるいは水バラスト、こういうものを洋上で、油分を含んでおるものを流した場合に、それが漂流する過程でいろいろもまれるといいましょうか、それがだんだんボール状になりまして、浮遊して、それが潮流、海流、風等等、いろいろな状況から、場合によっては付近の沿岸に流れ着く、こういうふうな原因が考えられております。  それから二番目の、沖縄本島、宮古島等に廃油ボールが最近流れ着いたということについてでございますが、先生指摘のとおり、昨年末からことしの初めにかけまして、宮古島の東岸それから沖縄本島の西岸に大量の廃油ボールが漂着をいたしました。海上保安庁の調査によりますと、三十六カ所、延べ約三十キロメートルの海岸線に約七千五百キログラムの廃油ボールが流れ着いたというふうに推定されます。宮古島の東岸、沖縄本島の西岸ということでございますので、当時の海流あるいは潮流等々を考えますと、それから廃油ボールを分析した結果等を考えますと、東シナ海の、それもかなり南の方の海域で、先ほど言いましたような水バラストであるとかあるいは洗浄水であるとかいったようなものが洋上に投棄されて、それがボール状になって流れ着いたんではないかというふうなことが推定できます。  それから、二番目の御質問でございますが、沖縄本島等に流れ着いた廃油ボールはどういう種類の油かということでございますけれども、海上保安庁で分析いたしました結果、インドネシア産の重油ということが判明しております。これは、先生は原油とおっしゃいましたけれども、インドネシア産の原油の中で沸点の低い部分、ナフサとかガソリンとかいったようなものをとった後のものでございますインドネシア産の重油というふうに判明をしております。それで、私ども海上保安庁といたしましては、これらの種類の油な積載して本邦に入港したタンカー等をリストアップいたしまして、現在捜査を継続中でございます。  それから三番目の御質問でございますけれども、これらに対して海上保安庁としてどういうふうに措置あるいは対処をしていくのかという御質問でございますが、海上保安庁におきましては南西諸島、沖縄周辺海域におきます部分はタンカールートもございますし、廃油ボール等々も洋上に浮遊しているというような調査結果等々もございまして、これらに対する強力な監視取り締まり体制をしいていくということから、第十一管区海上保安本部の監視取り締まり体制強化を図ってきております。  現在巡視船艇十五隻、航空機七機が十一管区に配備されておりまして、任務を遂行しておるわけでございますけれども、海上公害関係だけについて言いますと、昭和五十六年に第十一管区海上保安本部に海上公害課を設けまして、体制整備強化しております。  今後につきましても、これら船艇、航空機の効率的な運用を図りまして、海洋汚染事件に対する監視取り締まり体制の万全を期していきたい、かように思っております。
  104. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 もう時間が参りましたのでこれでやめますが、ただ、沖縄自然環境の保護との関係もあるので、環境庁長官も各省庁と協力して抜本的にひとつその対策、これまでのような廃油ボールの来ることのないようにしてほしいと思いますが、いかがですか。
  105. 上田稔

    上田国務大臣 ただいまの廃油ボールの問題でございますが、これは本当に大変な、なかなか取り締まりの難しい問題だと私も思うのでございます。しかしまた、お話しのとおり、環境の面におきましてこういうようなものが大変美しい沖縄の海岸に到着をして、その風景、自然を非常に乱す、環境を乱すということについても、これも大変な大きな問題でございます。  したがいまして、環境庁といたしましては、海洋汚染防止法という運輸省が所管をしておられる法律がございますが、たしか昨年の秋だったと思いますが、それが大分強化をしていただいておりますので、こういう法律によりまして取り締まりを厳にしていただいて、今まだ原因調査していただいておるということもお聞きをいたしておりますので、私どももそういう成果を見て考えたいと思うのでございますが、運輸省に対して今お願いをして、そういう点を十分考えてやっていただきたいということを申し入れていくつもりでございます。
  106. 瀬長亀次郎

    ○瀨長分科員 これで終わります。
  107. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて瀨長亀次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、森田景一君。
  108. 森田景一

    森田(景)分科員 公明党の森田景一でございます。  私は、手賀沼の浄化対策と自衛隊下総基地の問題についてお尋ねをしたいと思っております。  最初に、手賀沼の浄化対策でございます。長官も御存じのとおりこの手賀沼は湖沼汚染ワーストワンということでございまして、先般長官もわざわざ現地へ調査においでいただきまして、地元の代表として心から敬意を表する次第でございますが、環境庁長官がこの手賀沼を視察されまして、どうしたら手賀沼が一日も早くきれいな沼に回復できるか、そういう点についてどう感じられたか、その辺のところから最初にお尋ねしていきたいと思います。
  109. 上田稔

    上田国務大臣 先生指摘のように、手賀沼はワーストワンだ、湖沼の中で一番悪い沼であるということを私お聞きいたしまして、これはやはりどうしても湖沼法をお願いする以上、一番最初に見せてもらわなければならない、こういうことで実は視察をさせていただいたのでございます。これを見ますと、水は大分腐っておりますし、においが非常に強うございますし、そして一部分がぶくぶくと泡が出てきておるというような状態でございます。お魚はいるのか、盛んにエアレーションをやっておられましたので、あの付近に行きますとあるいはまだフナとかそういうものがいるのではなかろうかとは思いますけれども、これは放置できないような状態になっておる。特にあの手賀沼の水が利根川に入りまして、すぐにあそこから千葉県の水道の用水取り入れ口になっておるというような関係もありまして、これは放置できないと実は思ったのでございます。  私は、これは環境庁長官としてよりも、むしろ建設省で前にやっておりました経験から申し上げるのでございますけれども、以前に隅田川の非常に腐った状態が、ちょうど日本でオリンピックを開かれる直前にその状態があったわけでございますが、これを水を担当されました河野大臣からおしかりを受けまして、何とかこれをおまえらの手でやれということで、どうしようかということでいろいろ相談をしましたところ、とても下水を進めるといったってそんな急にできるはずがないということから、これはとりあえず荒川の水を入れようじゃないか、こういうことで東京都に話をして、荒川の水を毎秒二十トンでございますが、入れさせていただいたのでございます。そうして、これだけで恐らくにおいは消えるだろう、こういうことでやらせていただいたのですが、確かにその効果があらわれまして、においは除くことができました。しかし、それ以上の浄化ということは、大量の水が要りますのでこれはできない。やはりどうしてもその上流の新河岸川の水質を変えなければいけない、それには下水道を推進しなければいけないということで、東京都に対して下水道の推進ということをやったわけでございますが、もうそれと同じ手法をとらなければいけないようになっているのではないか。  特に手賀沼の流域を見ますと、水源に山岳地帯がほとんどない、こういうことでございますので、結局は生活雑排水、東京都の周辺に人がたくさん張りついたわけでございますが、そういう関係から非常に人口がふえた、町がふえた、したがって生活雑排水がうんとふえてきて、それが手賀沼にほとんど水源として入るようになってきた。そういうことが大きな原因であるということを考えますと、下水を全部やってしまえばこれは私は非常によくなるのではなかろうかと思いますが、今すぐにはとても間に合わない。これには、今建設省の方でちょうど利根川から導水路を計画していただいておりますが、あれを早く進めて利根川の水を一遍入れて、においを消して薄めて、そしてやらなければいけないんじゃなかろうか、それがまず最初の手法であろう。それを進めていただくとともに、今度は下水道の工事を進めていただく。また、一部たまっております汚泥といいますか、それを取ってもらうということを、建設省の浄化対策の一つでございますけれども、これをひとつぜひともやっていただくようにしたい。もっとも、これは千葉県知事さんもそういうお考えにならないといけませんけれども。そういうようなことをやっていただいて、そして浄化を図っていくということを進めていけばいいのではなかろうか、こういうふうに、拝見をさしていただいて考えたのでございます。  しかし、こういったようなことは知事さんもよく御研究をいただいておりますので、私ども湖沼法を早く制定していただきたいというのはそこにあるのでございまして、そういう浄化方法というものを一番悪い湖沼ごとに決めさしていただいて、この計画というものは関係各省に全部了解をいただいて、その了解に基づいてその工事を進め、促進をしていくということを早くやりたい。環境庁実施官庁ではありませんので、そういう実施官庁にやはりそういう認識をしてもらうということが私は必要でなかろうかと思うのでございます。そういう感想でございます。
  110. 森田景一

    森田(景)分科員 今長官からお答えいただきましたけれども、この手賀沼は千葉県では印旛沼とあわせまして二つの大きな湖沼でございます。歴史も古い沼でございまして、どうしてもこの自然を立派に残していきたいというのが地元の我々の要望でございます。千葉県としましても、長官もこの間知事にお会いなさいまして要望も状況もお聞きになられましたから御存じと思いますが、一生懸命浄化対策に取り組んでおりまして、昭和四十年代のようなきれいな沼にしよう、こういう事業を進めているわけでございます。ここではホテイアオイといった水生植物もたくさん植栽いたしまして、燐とか窒素とか、こういったものを除去する努力も重ねているわけでございますが、なかなか思うようにいきません。その原因は、今長官おっしゃいましたように、手賀沼に入ります川が、大堀川と大津川という大きな川がございますが、これが全部今汚染されておりまして、汚い水ばかりが入ってまいりますから、幾ら頑張ってもきれいになりません。そのために北千葉導水路、今長官のお話ありましたような導水路を今建設省で計画して建設も進めているところでございますが、これが完成しますと、利根川の水、全部ではありませんが、この導水路を流れる水のうち毎秒十トン手賀沼に放流する、こういうことでございますから早く建設してほしいということを要望するのですが、建設省は建設省の計画がありますので、なかなか思うようにいかないわけでございます。  そのほかにヘドロのしゅんせつ、これは大変お金のかかる仕事でございますし、また捨て場等の問題もありまして、やはり国の大きな援助がないと、地元の千葉県や柏市あるいは沼南町、我孫子市といったところでは到底実現ができる内容ではございません。あるいは手賀沼流域下水道、これはもう本管の方は供用を開始しておりますが、これに付随した公共下水道の促進とか、あるいは生活雑排水緊急モデル事業の導入とか、あるいは窒素、燐除去の技術開発の促進とか、それから先ほど長官おっしゃいました湖沼法の早期制定、こういういろいろな問題が考えられ、全部早く足並みをそろえて実現できるようにというのが地元の大きな願望でございます。長官今おっしゃいましたけれども実施官庁ではないというこの辺のところが私は非常に弱みであろうと思うのです。しかし、長官のお立場でどうかひとつこういった、特に環境庁長官は御出身が建設省ということでございまして、建設省の仕事が大変大きなウエートがかかっておりますから、そういう点、早期の完成ということに向けて格段の推進方をお願いしておきたいと思います。  時間の関係がございますので、手賀沼のことはもっと申し上げたいと思いますが、この辺で一応終わらせていただきます。  次は、自衛隊下総基地についてでございます。この下総基地のことにつきまして環境庁長官に質問するというのは少し筋が違うのではないか、こう思われるかと思いますが、実は分科会の性格上、私、こちらの分科会で質問することになっておりますので、関連しまして環境庁長官にも大変関係がおありだろう、こう思いますので、あえて質問いたします。  御存じのとおり、航空機騒音の基地公害をめぐりまして訴訟が今日までたくさん行われてまいりました。これらはいずれも航空機騒音によって生活と健康が破壊され、被害は受忍限度を超えているということが争点となっていることは環境庁長官もよく御承知のことだと思います。この航空機騒音、これはやはり騒音公害に該当している、こういうふうに私も理解しているわけでございますが、特に公害対策基本法第一条それから第四条、これについて長官はどう考えていらっしゃるのか、お尋ねしておきたいと思います。
  111. 上田稔

    上田国務大臣 公害対策基本法の第一条におきましてはその目的を掲げておりまして、第四条におきましては国の責務が定められておるのでございますが、航空機騒音につきましては公害対策基本法の第九条の規定に基づいて、生活環境を保全し人の健康の保護に資する上におきまして航空機騒音に係る環境基準というものを昭和四十八年の十二月に定めておるのでございますが、この基準を達成するために発生源の対策であるとか民家の移転であるとか、あるいは民家防音工事等の周辺対策など諸般の対策を行っておるのでございまして、環境庁といたしましては、環境基準の達成を図るために航空機騒音対策関係機関に要請して達成をしていこうということでやってきておるのでございます。  今後とも航空機騒音対策推進につきまして、関係機関に積極的に働きかけてまいらせていただきたいと考えておるところでございます。
  112. 森田景一

    森田(景)分科員 特に自衛隊、アメリカの艦載機の騒音ということで、厚木基地公害訴訟の判決が五十七年十月二十日ですか、出ております。これによりますと、「一部の住民に受忍限度を超えた被害を及ぼしている場合には、法の根本原則である衡平の観念に照らして違法である。」こういうことが判決理由の中に述べられておるわけでございますが、厚木基地公害訴訟判決、あるいは先日大阪空港訴訟で和解がなされたという報道がありました。こういう問題について長官はどうお考えでしょうか。
  113. 上田稔

    上田国務大臣 厚木基地に行われております問題につきましては、これは問題になっておりますので、どこか代替地をというようなことを防衛庁の方でも調査検討をしておられるというふうにお聞きをいたしておるのでございます。そうして、厚木の周辺騒音というものを緩和、緩和といいますか、なくしていきたい、騒音公害をなくしていきたい、こういうことをお考えのようでございます、というふうに聞いておるのでございます。
  114. 森田景一

    森田(景)分科員 どうも質問の趣旨がよく伝わらなかったようでございます。  長官、ちょうど厚木のお話が出ましたので改めてまたお尋ねしますけれども、厚木基地がいろいろと周辺の住民に騒音公害をもたらしているので、これにかわる基地を防衛施設庁は関東周辺に探している、私、千葉県でございますが、地元の新聞にたびたびこういう報道がされております。特に鎌ヶ谷市と沼南町にあります自衛隊の下総基地がその候補地になっておる、こういう報道がされておるわけでございますが、これは事実でしょうか。これは、防衛施設庁がおいででございますので、八木連絡調整官にお答えいただきたいと思います。
  115. 八木秀

    ○八木説明員 森田景先生の御質問にお答えさせていただきます。  厚木飛行場でいわゆる艦載機のための夜間訓練が行われておりまして、そのために周辺に大変いろいろと騒音上の御迷惑をおかけしておるわけでございます。先生も御承知のように、厚木飛行場周辺は大変に都市化しておりまして、特に艦載機の訓練というのは五十七年二月以降かなり激しく行われるようになりました。そのことから、私どもは防衛施設という意味で、この種の訓練というものが艦載機のパイロットの練度を高める意味において非常に重要なために、どこか関東周辺あるいは関東内陸部、そういうところの既存の施設で少しでも分散してやれるところはないであろうか、あるいはまた関東周辺で新たに施設をつくること、飛行場のごときものをつくることができるところはないであろうか、また、浮体工法によりまする施設を利用して、私どもでNLPと申し上げておりますが、夜間の着艦訓練ができるようなところはないであろうか、こういうことで大変頭を痛めておる次第でございます。  その間におきまして、今先生おっしゃっておられます、海上自衛隊が使っておる下総基地も使われるのではないだろうかというふうなことで、五十七年十月以降は継続していろいろと陳情も受けております。
  116. 森田景一

    森田(景)分科員 この下総基地を艦載機の離発着訓練には使わないでほしい、こういうことが千葉県知事からも要請があり、また県議会からの意見書、周辺の各市長からの意見書、こういうのが届いておると思いますけれども、それは御存じでしょうか。
  117. 八木秀

    ○八木説明員 お答えいたします。  重々よく承知しております。つい最近も、三月七日だったと思いますが、沼田千葉県知事も来庁なさいまして、防衛施設庁長官にもるるそのことについてお話しになっておられます。
  118. 森田景一

    森田(景)分科員 そういう事情でございまして、時間の制約がございますので余りお話しできないのでございますが、簡単明快に申し上げますと、下総基地は厚木基地の代替基地にしてもらいたくない、こういうことなんでございます。それはここでお約束できましょうか。
  119. 八木秀

    ○八木説明員 その点は、私どもの方としては先ほども申し上げましたとおり、関東にございますいろいろな飛行場の中でどういうところが厚木の集中化を少しでも避けることに役立つことができるであろうかということを検討中でございまして、今先生がおっしゃられた特定の、例えば下総は使わないと言われるかということについては、遺憾ながら差し控えさせていただきたいと思います。
  120. 森田景一

    森田(景)分科員 長官のかわりにいらっしゃっているので、ここでそういう結論は御無理かと思いますけれども、そういう強い意思がある、これは私一人ではありませんで、千葉県知事も、先ほど御説明がありましたようにお願いに行っているところでございますから、そういう点を十分お酌み取りいただきまして検討していただきたい、このように申し上げておきたいと思います。  それで、環境庁長官でございますが、いずれにしても厚木で騒音がひどい、だから今度はそのひどいのを千葉県の下総基地に持ってくる、こういう考え方は環境庁長官として道理にかなっていると思いますか。
  121. 上田稔

    上田国務大臣 環境庁といたしましては、航空機騒音にかかわる環境基準というのを設定をいたしまして、そして騒音対策に係る行政上の目標をお示しを申し上げておるのでございます。そして、自衛隊機その他につきまして、米軍のも込めてでございますが、そういうものにつきましても騒音といいますか、エンジン音の軽減低下ということはなかなか困難でございますけれども、音波対策あるいは航空対策というようなものにつきまして消音装置を使用してもらうとか、飛行機の飛行方法を規制するとかいうような配慮をやっていただくとともに、駐留米軍に対するものとしては、日米合同委員会等を通じてひとつ協力方を要請申し上げたいと申し上げて、そしてまた一方、周辺対策といたしましては、防衛施設周辺の生活環境整備等に関する法律によりまして助成、整備、補助等を実施していただいて、御住民に対して騒音による環境基準を全うしていただくようにということをお願いをいたしておりますので、そういうことを防衛庁の方でも十分御勘案になりまして、そして代替地の設定については御配慮をいただける、私どもは今のところはどこということは決まっておりませんので、まだそこまでは考えておらないというところでございます。
  122. 森田景一

    森田(景)分科員 時間が余りないようでございますので、要望を申し上げておきます。  この下総基地は厚木基地と都市状況が同じでございまして、周りに柏市、我孫子市、鎌ヶ谷市、それから沼南町、船橋市と非常に人口過密になっておる状況でございまして、そこに厚木基地のかわりに持ってくるというのは、これは本当に不合理きわまりないわけでございまして、せっかく環境庁長官も手賀沼まで視察においでいただいたのですから、今度は厚木基地を、発着訓練をやっているときに、私もお供いたしますので、ぜひ現地を調査なさいまして、なるほどこの騒音はとても我々には耐えられないのだという認識をお持ちにならないと、この航空機騒音公害はなかなか解決できないだろうと思います。事実、今おっしゃったような問題で艦載機がそんなことをしたら飛べないのですね。ですから、非常に失礼でございますが、やはり手賀沼をごらんになっていただいたと同じように現状を認識していただきまして、この下総基地は代替としては不適当である、したがって防衛施設庁についてもここは外すべきであるという強い姿勢をお持ちになることが環境庁長官としての大きな役割じゃないだろうか、このように考えてあえて私はこの問題をきょう持ってきたわけでございますので、どうか格段の御努力をお願いする次第でございます。
  123. 上田稔

    上田国務大臣 先ほども申しましたが、自衛隊機並びに米軍の飛行機に対しまして、いろいろ私どもの方は騒音防止の面におきまして防衛庁に申し入れをいたしておりますので、それを十分に考慮して代替地を御検討いただける、こういうふうに確信をいたしておるところでございます。まだ具体的にそういうお話はございませんので、今のところはそういうふうに考えておるところでございます。
  124. 森田景一

    森田(景)分科員 終わります。
  125. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて森田景一君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十分開議
  126. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上西和郎君。
  127. 上西和郎

    上西分科員 私はまず冒頭お断りしておきますが、全く当選したばかりで、こうしたところでの質問もきょうが初めてでございますから、質問する内容あるいは言葉の表現等で不適当なものが出るかもしれません。あらかじめそうした点についてお許しをいただくよう前置きをしておきたいと思います。  さて、私はまず冒頭、環境庁長官基本的な環境行政に関する姿勢についてお尋ねをしたいのであります。それは、私自身の選挙区になりますが、鹿児島県大隅半島志布志湾の埋め立て問題であります。  昭和四十六年十二月、今参議院議員におなりになっている金丸三郎さんが鹿児島の県知事のころ、日産百万バレルという一大石油コンビナートをつくる、そういうことで第一次試案が発表され、以来今日まで十二年余り、計画が変遷をいたしまして、途中三十万バレルに縮小、さらには三転して、金丸さんが参議院に当選された後は、現在の鎌田知事の時点で、そうした石油コンビナート誘致不可能という判断のもと、国家石油備蓄基地をつくる。しかし、目的がどう変わろうと志布志湾を強引に埋め立てる、この基本的な姿勢は鹿児島県当局、一貫して持っているようであります。  私は関係住民の一人として、過去、日本で最も民主的な行政府の一つ環境庁という信頼のもとにいろいろ私自身運動に携わってまいりました。よく許可権、認可権が少ないところほど民主的で公平な行政府だと言われるのでありますが、環境庁はその最たるものだと深い信頼を寄せながら、まず環境庁長官に、このようない志布志湾のようなすばらしい白砂青松、子々孫々にまで残さなければならない自然の保護という観点に立って、どのような所信をお持ちかお考えをお示しいただきたい。
  128. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  今志布志湾の問題を取り上げてお話があったのでございますが、前に、石油コンビナートとして大々的に志布志湾を使いたい、こういう県からのお話があったのでございますが、環境庁はそれに対しまして、そういう国立公園のところにそういう大がかりな、大規模な計画はなじまない、こういうことでお話をしてきたところでございます。いろいろと方向を変えておいでになられておるということをお聞きしておりますけれども、まだ正式には何にもお聞きをいたしておりません。
  129. 上西和郎

    上西分科員 私、ちょっとそこでひっかかるのであります。ざっくばらんに言って、鹿児島県はアセスメントを発表して、三日の日から縦覧期間に入っているのでありますが、何も降ってわいたようにきょう始まったことじゃないのですね。今申し上げたように十二年間の長い歴史の間、環境庁を含めていろいろなことがあったわけです。私、行政の手続も何も素人で全然わかりませんけれども、鹿児島県民にとっては少なくとも大変な問題であるこの環境アセスメントを鹿児島県がまとめて縦覧に入っている。ところが、今の長官のお話では、まだその内容をよく聞いていない、極端に言えば接していない。そういうことになりますと、行政のあり方としてやはり素朴な疑問が出てくるのです。  少なくとも二転三転しながら終始一貫白砂青松の地、志布志湾を埋め立てようという計画が強引に鹿児島県の手によって推し進められようとしている。過去環境庁を初め関係省庁あるいは石油公団等もこれに何回かその議論の過程で携わってきているわけですね。ところが、いやそれはまだ手続上寄せられておりません、その資料も取り寄せようとしない、内容検討しようとしない、いずれ正式に回ってきてから我々は対応し検討する、それじゃ不公平な行政と言われてもしょうがないじゃないか。そういった点について、行政上の手続じゃありません、十二年間本当に天下周知の事実になっているこのことについて、そういう態度で環境行政は正しく推進できるのかと私は素朴な疑問を長官にぶつけたいと思います。
  130. 上田稔

    上田国務大臣 実は鹿児島県では公有水面埋立法に基づいての御計画をお立てになっておられるようでございますが、そにつきまして、公有水面埋立法によって埋め立てをおやりになる場合におきましては、アセスメントを先に行うということがたてまえになっておるのでございまして、それのやり方に基づいていま鹿児島県としては正式にお進めをいただいておるようでございます。したがいまして、正式ということになりますと、環境庁の方にはまだ届かないということになるわけでございます。
  131. 上西和郎

    上西分科員 ここで私、長官と水掛け論をやろうと思いません。しかし、少なくともいわゆる日本列島改造論によって日本列島をずたずたに切り刻んだ深い反省に立つならば、自然保護を所管事項とされる環境庁としては、正式手続その他は別として、少なくともそういう事実が発生をした、そうならばやはり遅滞なく情報を入手をし、あらかじめできる限りの検討やらそういった情報の収集に当たるのが行政府としてあるべき姿ではないか、こういうことで、そのことについて改めて長官以下関係の皆さん方に私は強く要望しておきたいと思うのであります。そのことなくして国民の信頼が環境庁に寄せられていくか、私は素朴な疑問として、あるべき行政の姿として強くそのことを要望し、以下若干具体的な質問を申し上げたいと思います。  まず第一点は、今度の鹿児島県の発表された環境アセスメントによりますと、千八百億円の投資をやり、埋め立てをし、国家石油備蓄基地をつくる、こうなっております。  私、思うのです。大変な財政難だ、中曽根首相初め政府関係者は口を開けばお先真っ暗だ、こういうこととされておるときに、果たして志布志湾、それこそ外海です。太平洋に面して波浪高きあそこに千八百億もの巨額の投資をし、国家石油備蓄基地をつくる、その効率といいますか効能といいますか、その点について関係当局はどのようなお考えでおられるか、お答えいただきたいと思います。
  132. 岩田満泰

    ○岩田説明員 国家石油備蓄基地の建設につきましては、我が国のエネルギーの供給構造が非常に弱いということを踏まえまして、五十三年に総合エネルギー調査会の御答申を得まして、三千万キロリットルの国家備蓄を進めようという御指示がございまして、それに基づいて推進しているところでございまして、そのための一環といたしまして、通産省といたしましても、できることであれば志布志に国家石油備蓄基地をつくりたい、このように考えておるところでございます。
  133. 上西和郎

    上西分科員 基本的に長官がおっしゃったように、正式なアセスの内容も来てないというところで余り突っ込んでお尋ねしても一緒だと思います。ただ私としては、正直申し上げて、もう小さいときからよく見ている志布志湾でございますから、かつて世界無敵を誇った帝国海軍の連合艦隊がすっぽり入っておつりが出るほどの広い志布志湾、深い志布志湾を埋め立てようとされる、そのことについて今この時期に果たして千八百億の投資が是か非か、こういうことに素朴な疑問がありますので、そのことだけは重ねて申し上げて御留意をいただいておきたい、このように考える次第です。  次にお尋ねしたいのは自然の破壊です。  実はこのアセスメント、私も今手に入れているのでありますが、鹿児島県の発表したアセスメントの内容でいきますと、自然の破壊などは極めて微々たるものでほとんど変化がありません、こういうことなんでありますが、このような埋め立てを大規模にやった場合に、果たしてそのとおりで済むのかどうか。いわゆる海底を含む、まあ専門的には浸食とかなんとか言うそうでありますが、私たちに言わせると、自然を荒らさないで済むのか、そういう点について御見解を承りたいと思います。
  134. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 先生も御指摘のように、この問題につきましては、いろいろの経過の中でこういう今日の状況を迎えておるわけでございます。私どもの目から見ますと、自然環境を含めまして環境の破壊ということが一番気になるところでもありますし、それを何とかなくすれば一番いいわけでありますが、仮にあるとしましても最小限度のものにとどめたい、これがもう私ども基本線というわけであります。  そういうことで今までの経過の一端を申し上げれば、例のFS案というものが登場したこともあります。それは沖合二百メートル程度の沖出しをねらったものでありまするが、それではどうも私どもとしては納得しかねるというか、景観あるいは景観等に与える影響が大き過ぎる、こういうようなことで、さらに五百メートル沖に出してもらった、こういうような経過もあるわけでありますが、そういうことにもあらわれておりますように、私どもは、国定公園を守るためにそれなりに努力はしてきたつもりであります。  要するに、今後そういう基本線に立ちまして、今までの経過の中で、最後のいわば公有水面埋立法という正式な手続に入っておるわけでありまするから、その手続の中で、運輸大臣から環境庁長官に対しまして環境保全上の意見が求められることになります。その際に、当然にアセスメント書を中心に私どもは慎重に検討を加えまして審査をし、対処をしてまいりたい、これが基本線でございます。
  135. 上西和郎

    上西分科員 では、その点について少しく私が知り得た実情をここで申し上げまして、今後のそうした検討上の参考にしていただきたいと思うのです。  それは、現在志布志港が拡大の工事の過程でありまして、増強工事をやっているのでありますが、そこの業者の方々の実情をいろいろお聞きしますと、まず砂を吸い上げてやらなければいかぬ、砂を吸い上げてしまうと岩盤が出てくる、岩盤までぶち抜かないと大きく増強できない、岩盤をぶち壊してみるとまた砂が出てくる。今度の、今鹿児島県が進めようとしている国家石油備蓄基地の規模に比べますと、格段に狭小といいますか狭隘というか、小さな部分でやられている志布志港の埋め立てでさえ、増強でさえ、私に言わせると、それだけ海底を含めて自然を破壊しなければならぬ。そうすると、今度の国家石油備蓄基地は大変な規模になりますので、鹿児島県がつくっておりますこのアセスメントの作文とは比較にならない海底の破壊などが続く。そうなりますと、与える影響は大変なことになっていきますので、そういうことを環境庁にあらかじめこの場をかりて申し上げ、ぜひそうしたことを含めての御検討をいただきたい、このことをお願いしておきます。  三つ目にお尋ねしたいのは、かつて我が党の土井たか子議員からも質問いただき、そのことについて私たちが現地にいて聞いたのでは、関係省庁の皆さんが大変あわてられたということもあったそうですが、権現山から見る視点を入れる、入れない、このことについてきょうはくどく申し上げようとは思いません。しかし、少なくとも世界に冠たるあのクロマツの防風林、ああいったものを取りつけ道路の関係等で切り刻む、そうしたことを含めて――長官も現地においでになったかと思いますが、おいでになったらぜひ見ていただきたいのですけれども、本当に大変な景勝の地です。我々から言わせると、ここを切り刻んでしまう、そういうことがされようとしておりますが、このアセスでいきますとそれはほんの微々たるもので景観上支障がない、作文は大変便利なもので、そういうふうになっておりますが、この景観といいますか美観という点についてはどのような御見解が、参考までにお尋ねしておきたいと思います。
  136. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 景観の問題につきましては、五十七年の二月の時点におきまして、自然公園法における国定公園に所在するものでありまするから、ほとんどは外なのでありまするが、そういう意味で、あの志布志、白砂青松との絡みで景観がどういう影響を受けるか、こういう目でいわば先行的に判断をしたわけであります。その判断の中では、五百メートルというような沖に出すということもありまして、確かに景観上全然影響がないと言えば、これはそういうことはありませんが、あの時点における判断としましても、それは決定的なダメージを与えるということにはならないだろうと私どもは一応考えたわけでございます。  今御指摘の権現山につきましても、当然権現山も展望点の一つとしてどういう影響が出るか、これも考えておったわけでありますし、権現山だけではなくて、柏原といいますか、あの湾奥一体、あるいは北の志布志の方から、あるいはまたさらに海上からというようなところでいろいろ展望地点を選択させる、こういうようなことで、私どもいろいろとやり方につきましては県に十分指導をしてまいった、こういうことであります。
  137. 上西和郎

    上西分科員 県に対して大変慎重な、適切な御指導があった由で、大変うれしく思っておりますが、ただ問題は、学者に言わせると世界一のクロマツ林だ、こういう定説すら、一部国際的にも高められている、固まりつつある、ああした柏原の防風林、クロマツ林を切り刻んでいくこと自体、既に私たちは大変な問題だと思っているのです。ですから、そうした意味合いで、さらに一層いわゆる環境庁の自然保護というきちっとした基本を据えての的確な鹿児島県当局に対する指導、助言を、改めて重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。  四番目にお尋ねをして確認をしておきたいのは、ざっくばらんに申し上げますが、第一次案は百万バレル、第二次案は三十万バレル、そしてそれがいつの間にか雲散霧消して、ある日突然国家石油備蓄基地を、こういうことで関係住民は、あそこの埋め立てに賛成する者も反対する者も、県当局あるいは日本国政府に対して極めて強い不信感を持っているのです。というのは、第一次の百万バレルなら、工業高校を出る子供たちはみんなあそこへ勤められる、こういうバラ色の幻想を振りまいたのは、金丸三郎現参議院議員ですから。私たちに言わせれば、彼はそれがだめになったから敵前逃亡して参議院議員になったという説さえ、私ではありませんけれども地域ではあるくらいに、大変な夢をばらまいた。ところが、あに図らんや国家石油備蓄基地だ。雇用力その他、大変な問題になってきますから、何のことはない、結局政府・自民党のペテンにかけられて、かけがえのない自然を失っていくのかという素朴な疑問が出てくるのもやむを得ぬと思うのです。  そうした観点で、みんなが非常に深く心配しているのは、安楽川以南、志布志港に近いところまで野放しで埋め立てを認めていくのじゃなかろうか、こういう不安、疑心暗鬼といいましょうか、これがあることは事実でございますので、この辺については、かつて歴代の環境庁長官からもお話があったわけでありますが、新しい長官としても、この辺については明確にお約束をいただき、少なくとも関係住民の安堵をぜひ与えていただきたい、このように希望するものです。
  138. 上田稔

    上田国務大臣 歴代長官がお約束をいたしておりますとおり、私もそれをお守りをしてまいります。
  139. 上西和郎

    上西分科員 では、安楽川以南については、埋め立ては絶対させない、そう確認してよろしゅうございますね。
  140. 上田稔

    上田国務大臣 そのとおりでございます。
  141. 上西和郎

    上西分科員 大変ありがたく、良識ある環境庁長官の今後のご健闘を私は心から期待をしたいのであります。ぜひよろしく。  最後に、これはこの場で議論するのが妥当かどうかは別として、事実あった現実の姿をこの場で少し申し上げまして、今後の環境庁並びに関係省庁で御検討いただくときに御参考にしていただきたいと思うのです。  実は志布志湾の埋め立て問題については十二年を超える歴史があると申し上げました。その過程でいろいろあったのです。ただ、今度私、非常に気になっているのは、ここに鹿児島の地元の新聞、三月四日付を持ってきているのでありますが、この中にこう書いてあるのです。まず一つの問題は、縦覧の文書が非常に難しく「難解な用語ずらり」で、一体だれが見てわかるかという基本的な批判があります。これについては、お役所がやることですからとやかく申し上げません。しかもその後半に、告示、縦覧の開始日の問い合わせには、前日の三月二日も、近く行いますが言えませんと、土本部長を初め関係者はその日時を秘密にしたまま、何をやったか。翌三日土曜日の十時過ぎ、鹿児島県政記者クラブに、本朝午前八時三十分から縦覧を開始した、こういう発表をしたのであります。縦覧場所は、ちょっと地理的におわかりにくいと思いますが、鹿児島県、それから大隅半島の鹿屋市、東串良町、高山町、この四カ所でやったわけですが、マスコミの皆さんを初め、その日に出たわけですから、昼のテレビでわかったとか。大方の人が、土曜日でございますから、月曜日にこの四カ所のところにそれぞれ走ってみた。恐らく、三日のあの時間の発表だから閲覧者はいないだろう、こう考えて行ってみたら、何と、特定の建設会社の関係者は三日の午前八時半縦覧開始と同時に四カ所くまなく縦覧をされているのであります。  これは鹿児島県内で大変な話題になりました。志布志湾の埋め立てに絡む一千八百億の公共工事費に絡んで特定業者との癒着ではないか。少なくとも県の土木部長が前日までしらを切ってわからない、こう言いながら、次の日朝八時半にはその四カ所全部に特定の業者の社員が縦覧に行っている。こうしたことは、放置すれば大なり小なり行政に対する不信につながっていくのではないか。  したがいまして、私は今度帰りまして、マスコミの皆さん、関係者に当たりましたら、異口同音に言いました。これを書いた記者も含めて各社一斉に言いました。だからおかしいんだ。結局、石油コンビナートに名をかり、このごろは国家備蓄基地の名をかりてしゃにむに埋め立て、自然をぶち壊し、特定の業者の懐をぬくめるだけ。私は丸丸ぬくんだなんて言いませんけれども、何か過去いろいろあってきた事実に照らし合わせて、関係住民が、鹿児島県民が、あるいは心ある日本国民がそうしたことで不信感を持っていくのではなかろうか。私はそのことを率直に憂えるがゆえに、あえてこの事実を申し上げ、地元の記者は署名入りでそのことを指摘をしているのであります。  ですから、こうしたデータ等もあらかじめ入手をされ、そして県が出されたことが形式的にどうあれ、周辺にそうした事実があったことも十二分に把握をされて、関係省庁の皆さん方がこのことについて御審議をいただきたい、私はこういう要望を込めたお尋ねをしたいのでありますが、こうしたことについて環境庁なり関係のところではどういった情報収集といいますか、あるいはお考えがあるか、あるいは事実とするならばどうされるか、こういった点について御見解をいただきたいと思います。
  142. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 ただいまお尋ねの縦覧の日時の問題につきましては、私自身初耳でございまして、初めて伺うようなことでございます。  公有水面埋め立て免許手続全般につきましては、形式的なことを申して恐縮でありますが運輸省の所管するところでもございます。この件に関しましてはそういうことでございますので、当庁としましてはそれについてのコメントは差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  143. 上西和郎

    上西分科員 事は一鹿児島県のことだとお考えかもしれませんけれども、行政に対する基本的な信頼感の問題なんですよ。事は小さいようですがやはり大きいと思うのです。しかも十二年間、大げさに言えば荒れに荒れてきた志布志湾の埋め立てでございますから、私は自分自身の立場は別にしても、関係住民と県を含めての関係省庁、いろいろなことがありますので、やはりこういった事実については、アセスが上がってこようとこまいと関係省庁が事実をびしっと押さえ、必要ならば適切な指導助言をし、信頼を回復する措置をぜひとっていただきたいと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  144. 上田稔

    上田国務大臣 ただいまお話しの点につきましては、私ども初耳でございますけれども、担当は今のお話のとおり運輸省でございますので、運輸省の方に私の方からもお伝えをいたしまして、運輸省の方で善処していただく、お調べをいただくということにしていただきたいと考えております。
  145. 上西和郎

    上西分科員 それは結構です。ただ、これが事実だとしたらどうなさいますかということを私は一言お聞きしたいのです。
  146. 山田幸作

    ○山田説明員 事実かどうかという点につきましては、これは調べてみないとはっきりしないわけでございますけれども、私どもが今まで聞いておりますところでは、事前に一部の特定の人に教えたというふうなことはないというふうに鹿児島県から聞いております。
  147. 上西和郎

    上西分科員 鹿児島県はそう言うでしょう、県議会でもそう答弁していますから。ただ、私が申し上げたいのは、議会でどう言おうと、あるいはここでどうおっしゃろうと、現実に責任あるマスコミがクレジット入りで、けしからぬじゃないか、おかしいじゃないかと書いている。この事実は関係者はみんな知っているわけです。だから、鹿児島県が何と言おうとやはりきちっとした調査をされ、もし事実であるならば、そうした点については改善を指示しあるいは助言をする、そうしたことが必要ではないでしょうか。事実だとしたらどうなさいますか、重ねてお尋ねしたいと思います。
  148. 山田幸作

    ○山田説明員 私ども、まだ現実にどうであったかということを承知しておりませんので、さらに調査をしてみますが、私どもとしてはそういうことはなかったのだろうというふうに信じております。
  149. 上西和郎

    上西分科員 お信じになるのは自由ですから。ただ、調査をし、的確な処理をぜひお願いしたいと思うのです。  最後に申し上げておきたいのですが、実は志布志湾というのは御承知の方もおられるかと思いますが、日本の沿岸漁業の残された最後の宝庫の一つなんです。ただ残念なことに、柏原あるいは高山町の波見港というのが大変小規模な漁港で漁業上大変な不便を感じている。戦後三十年余り営々として関係漁民は波見港の改築、極端に言えば増強ですね、これを盛んに訴えてきた。ところが、それが一顧だにされないまま、ある日突然国家石油備蓄基地に絡んで埋め立てが話題に上ってきたら、あなた方が賛同してくれるならば波見の漁港も立派にします、だから同意してくれということでいろいろあっていることは事実であります。ところが、このアセスメントを見ますと、五年かかって完成するが波見港の完成は最終年度になっているのです。もちろん、皆さん方が関係のことということはここで申し上げませんけれども、何か漁民を、漁港をよくするぞ、よくするぞと、あめで引っ張っていって、結果が出てくれば何のことはない、埋め立てが最優先、漁港は最終年度、こんなやり方をされていますから、これに賛成をした漁民の中でも、一体鹿児島県や政府は何をしているのかという素朴な疑問、不信、それが高じて怒りに変わっていくという危険性があるのであります。このことについて、もし関係の方からこの漁港が最終年度に回っていることについて何かお答えいただけるならば大変ありがたいと思うのであります。
  150. 上村正明

    ○上村説明員 漁港の整備がどのようなテンポで考えられているか、私自身承知しておりませんけれども、港湾の整備手続をちょっと恐縮でございますが申し上げますと、港湾管理者、この波見港の場合は鹿児島県でございますが、そこで、港湾管理者である鹿児島県が波見港の整備についてこうしたいというような要望が我々のところへ出てまいります。その段階で、その要望が全国の他の港と比べて緊急性があるかどうかというようなことを判断した上で私ども予算をつけるということになっておりますので、まず第一番目に鹿児島県の方が我々にどのような要望を投げられるかということにかかってくるわけでございます。
  151. 上西和郎

    上西分科員 念を押しておきますが、当初一番強く反対をしていた関係漁民の方々が県の説得に応じて賛成していった過程には、これを認めれば波見港がよくなるのだという強い説得の材料があったわけです。ところが今度アセスが発表されて、まだ届いてないそうですけれども、この中には五年目にしか波見港はよくなりませんとありますので、まさにえさで釣り上げてそして同意書の合意を取りつけておいて結果的には埋め立てしか優先しない、こういうことでありますから、それらを含めて関係省庁でこのアセスについての御論議、御検討をいただくときには、そうしたペテンにかけられたといってよい状態に近い漁民の実情があることもぜひこの場で強調し、御参考に供していただきたいと思います。  長官からは大変ありがたいお言葉をいただきました。今後志布志湾の自然、否、日本全国の自然を守るために、環境庁長官以下の関係の皆さん方の御努力を心からお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  152. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて上西和郎君の質疑は終了いたしました。  次に、沼川洋一君。
  153. 沼川洋一

    沼川分科員 水俣病の問題について何点かに分けてお尋ねしたいと思います。  まず、きょうは環境庁長官が御出席でございますので、冒頭にちょっとお尋ねしておきたいと思います。  御案内のように、三十一年に水俣病が公式に発表されましてからちょうど二十八年がたっわけでございますが、御承知のように、水俣病を取り巻くいろいろな問題がございます。どの一つをとっても大変な問題が山積みされておるわけでございますけれども、長官が御就任になりまして、この水俣病問題に対する取り組みの姿勢といいますか、それをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  154. 上田稔

    上田国務大臣 水俣病公害病の原点と申しますか、公害ということが考えられるようになってきた一番のもとでございます。私どもはこの問題を、患者に対する対策を敏速に公正にやらしていただきたいと念願をいたしておるものでございます。  水俣病は無機水銀が有機水銀に変わって被害を与える、体を侵すというようなことは思いもかけなかったことでございますが、そういうようなことが大きくなりましたので、今後は、こういう原形の形では被害が起こらないものが変形をしてくると被害を与えるというようなことも起こり得るということを考えて、公害がそういう形で起こってこないように、これからも厳に注意をして環境庁はやらせていただきたいと考えております。
  155. 沼川洋一

    沼川分科員 そこで、ちょっとお尋ねしておきたいと思いますが、現行の認定制度の中で、現時点で申請者の数あるいは認定、棄却等、この数字をちょっと教えていただきたいと思います。
  156. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答え申し上げます。  水俣病の認定申請は、御案内のとおり、熊本、鹿児島、新潟県、新潟市、三県一市で行っておるわけでございます。水俣病患者であると思われて申請される方々の総件数を申し上げますが、取り下げの件数を除きまして、総件数といたしましては一万四千二百四十八件でございまして、その処理状況でございますが、総件数で認定が二千六百五十二件、棄却が五千八百八十九件、いわゆる処理が済んでおります件数が八千五百四十二件でございます。したがいまして、未処理の件数といたしましては五千七百六件、これは五十九年一月末現在でございますが、そういう形になってございます。
  157. 沼川洋一

    沼川分科員 今、未処理が五千七百六件、こう伺ったわけでございますが、御案内のように、現在この認定制度をめぐって、一方では不作為損害賠償の訴訟が行われております。また一方では患者の検診拒否運動が行われておりまして、率直に申し上げまして、現行認定制度の中で認定していくということは非常に困難じゃないか、こういう面の心配がございますけれども、現行認定制度について国の方ではどのように見ていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  158. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 水俣病の認定審査に当たりましては、五十二年の関係閣僚会議申し合わせに基づきまして、国におきましても県と十分連絡をとりながら各種体制整備を進めておるところでございます。特に検診、審査体制の充実強化ということで、私ども県と連絡をとりながらそれなりの体制を整えておるところでございますが、先生のお話にございましたように、検診拒否というような動きもございまして、なかなか順調に推移していない状況でございますが、基本的には県とも相談しながら、私ども、この現在あります検診を受けていただきまして、審査会で審査をきちっとやる。その検診、審査体制については、さらに患者の方々、申請者の方々の理解を得ながら、これを進めてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  159. 沼川洋一

    沼川分科員 既に申請者とか関係者の中から、この現制度自体がもう破綻しているんじゃないか、このように言われております。熊本県でも、御案内のように、過去に二度破綻宣言をしたことがございまして、そういう中で、これは率直に言って厳しいと私たちは思います。  そこで、現在の認定制度で、先ほどおっしゃった五千七百六件の未処分があるということですけれども、では、これを全部処分するとすれば環境庁では大体どれぐらいかかると見ていらっしゃるのですか。
  160. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 審査の見通しにつきましてのお尋ねでございますが、見通しはなかなか難しい問題でございます。先生も御案内のとおり、現在地元におきましてはいろいろな事情等によりまして検診をなかなか受けていただけないという事情等もございますので、なかなか一概に言えないわけでございますが、五十二年の関係閣僚会議申し合わせに基づきまして、検診を受けてさえいただければ、私ども県とも十分連絡をとりながら、毎月百五十人検診、百三十人審査体制というものを整備いたしまして、審査のスピードアップを図ってまいりたいというぐあいに思っております。
  161. 沼川洋一

    沼川分科員 検診さえ受けていただければということですけれども、これは一応表面上の理由として言えるかもしれませんが、ではなぜ検診を受けないかということについてはどういうように受け取っていらっしゃいますか。
  162. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 検診をなぜ受けないかというお尋ねでございますが、検診を行うに当たりましては、申請者の方々のいろいろな事情等があるわけでございますので、そういう面で必ずしも十分な配慮が行き届いておらなかったというような経緯もあろうかと思っておるわけでございます。したがいまして、そのようなことで最近県と国におきましていろいろ協議をいたしまして、患者さんといいますか、申請者の方々の御都合をお聞きしながら、御都合に合わせて検診、審査の体制を組もう。あるいは寝た切り等の方々につきましては、なかなか検診を受けに行かれないというような方もいらっしゃるわけでございますので、そういう方々につきましては、いわゆる往診といいますか、出かけていって検診をやるというような組み合わせを考えながら、できるだけ審査を受けやすいような形で進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  163. 沼川洋一

    沼川分科員 現在、審査の率というのは大体三〇%前後だと聞いておりますし、だんだん減少しているということですが、実際そうですか。
  164. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 私どももそのような話を聞いておりまして、非常に憂慮いたしておるところでございます。そのような実態でもございますので、何とか申請者の方々の御都合を聞きながら御都合のいい日に検診を受けられるような形の体制を整えてまいりたいと思っております。
  165. 沼川洋一

    沼川分科員 いろいろおっしゃいましたけれども、やはり結論としてはっきり言えることは、現行認定審査制度というのはもう完全に破綻しているというのが大方の見方じゃないかと思います。今のどれくらいかかるかということについてのお答えがないわけですけれども、過去の例から見て早くても三年、恐らくは十年以上かかるのじゃないか、現行認定制度における認定の今後の推移として考えた場合の時間的な問題として、そういうように私は思うわけであります。特に老齢者が非常に多くなっています。ですから、一口で言うなら年とった方にとっては死ぬまで待て、こういった制度に思えてならないわけです。そこでこの問題、いつまで論議しても始まりませんので 申請中の患者で死亡して解剖を受けられた方の数と認定数まどうなっているか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  166. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 申請中に亡くなられまして、解剖を希望されて受けられまして、その後の認定、棄却の件数のお尋ねでございますが、全国で二百八十七人、認定の方々がそのうち百五十三人でございます。なお、熊本県につきましてはそのうち二百六十二人でございまして、認定が百四十四人ということでございます。
  167. 沼川洋一

    沼川分科員 今おっしゃった数字で、ちょっと熊本県のだけ見ましても、これは死亡の場合の認定率というのが大体五五%になるわけですが、亡くなられて解剖で認定された方の中で、一回棄却されて認定された方は何人くらいいらっしゃるのですか。
  168. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 一たん棄却されまして再申請中に亡くなられた方々に関するお尋ねでございますが、全体の数については把握いたしてないところでございますが、五十八年におきます熊本県の数字で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、五十八年中に解剖された方々が二十六人おられまして、そのうち十四人が認定されておられるわけでございます。その中をさらに区分いたしますと、初回の申請中で亡くなられて認定された方が五人中四人、それから、初回の申請で保留中解剖認定されました方が十一人中八人、先生お尋ねの再申請中に解剖され認定された方々と申しますと、十人中二人ということになっております。
  169. 沼川洋一

    沼川分科員 私が承知しているだけでも大体十五人の方がいらっしゃるというように聞いておるわけでございます。  そこで一つ最近の実例を、これは大臣にもぜひ知っていただく意味でちょっと申し上げてみたいと思いますが、坂本武喜さんという七十二歳の水俣市の袋の方です。昨年二月に亡くなりましたが、この方は四十七年に申請しまして四十八年の十二月に棄却されております。それで四十九年の一月にさらに再申請をやって、五十年の水俣病第二訴訟の原告の一人でもございます。五十四年三月に熊本地裁の判決がございまして、裁判所が二人の医学部の教授に鑑定を依頼したわけです。一人の教授の場合には、手足に感覚障害があると認められる、あるいはまた運動失調があるということでクロという判断、もう一人の方は、それらの症状は一切認められないということでシロ。結局裁判所はこちらの判断をとって、これは水俣病ことでクロという判断、もう一人の方は、それらの症状は一切認められないということでシロ。結局裁判所はこちらの判断をとって、これは水俣病とは断定できないということになったわけです。そこで、この坂本さんが五十八年二月に死亡しまして、家族の了解を得て解剖しました結果十一月に水俣病患者として認定されております。  ここで申し上げたいのは、何と申請から十年以上も待たされておる。しかも、行政でも裁判でも認められなかったのが死亡して初めて認められた。こんな悲しいことがあってもいいものだろうかという気がいたします。  それからもう一つ。これは最近の事例ですけれども、名前はBさんとしておきます。四十二歳、やはり水俣市の袋の方です。四十八年六月に申請して、審査会に三回かかっているけれども答申保留で現在まで来ました。大体十年間ぐらい振り回されておるわけです。この方が五十八年の三月首つり自殺をしました。家族の了解を得て解剖した結果、十二月に認定になりました。  こういった事実がございますが、私が非常に残念に思うのは、先ほども申しましたように、行政でも裁判でも認められない。死んで初めて水俣病と認められる。死んで認められたのではどうしようもありません。生きているときの問題なのに、死ななければ認められないという今の認定制度、大臣、どうですか、率直に言ってどのようにお考えになりますか。ちょっと大臣に一言お聞きしたいのです。
  170. 上田稔

    上田国務大臣 医学上の大変難しい問題を御質問でございますが、私ども、こういう問題につきましては県当局とよく相談をいたしまして、その対策を立てさせていただいておるところでございます。これからもそういうことの起こらないように早く認定を進めていきたいというふうに考えております。
  171. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 水俣病の認定についてでございますが、水俣病の発生の当初でございますと、いわゆる激症型ということで医学的な判断等がしやすい事例が多かったわけでございますが、近年先生お話しのように加齢という現象も加わりますし、さらに水俣病そのものにつきましても症状の判断が非常に難しい事例がふえてまいっておるわけでございます。そのようなことで、審査会等におきましても保留の回数が非常に多くなっておる現状にございます。高度な学識と豊富な経験を持っていらっしゃる審査会の先生方におきまして最近とみにふえてまいっておりまして、先生のお話にございますように非常に時間がかかっておるという状況にございます。  先ほど先生からお話しございました患者さんの事例についてでございますが、確かに先生お話しのように第一回目の申請におきましては棄却をされましてそれが裁判におきましてもさらに水俣病ではないという判断を受けたわけでございます。当時のその方の資料を詳細に拝見いたしますと、非常に時間がかかっております。申請から裁判におきます鑑定の時期までの所見をごらんになって裁判においての判断をお出しするわけでございますが、その方につきましては裁判の進行中に再申請がございまして、再申請から死亡までの間におきますいろいろな病状変化等があるわけでございますので、そういう病状変化を踏まえながら、病理所見を参考にいたしまして最終的に五十八年十一月に審査会において水俣病であるという判断をされたケースでございます。  先ほどのもう一例の自殺なされました方につきましても、先生もお話しございましたように何回も審査を繰り返し、保留、保留ということで判断に非常に迷っておられたケースでございまして、病理所見を参考に加えまして最終的な判断をされたというぐあいに私ども了解いたすところでございます。
  172. 沼川洋一

    沼川分科員 その死亡解剖の場合、御案内のように脳を解剖して細胞が有機水銀の影響を受けているとわかっていても、一定の基準があるわけで、その条件を満たさなければ認定されない。いわば解剖の判断基準についても生存者同様非常に厳しいわけです。  そこで、病理解剖による場合の判断基準の明確化ということで、たしか二、三年前だったと思いますが、環境庁の方で策定するということを聞いたことがございますけれども、その後この状況はどうなっておるか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  173. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 病理解剖の判断条件の必要性についてでございますが、先生もお話しございましたように、過去に専門家に依頼をいたしまして検討したことはございます。この病理所見のとらえ方につきましては、専門家の間で特に意見の差がなかったために特別なそういう判断条件をつくる必要はない、それぞれ先生方が同じような判断といいますか物の見方をされるということで、特別な判断条件を作成する必要はないという御意見を承っております。
  174. 沼川洋一

    沼川分科員 解剖の問題ですけれども、解剖の判断条件も非常に厳しい中で、先ほどちょっと件数をお聞きしましたが、五五%という高い認定率を示しているわけです。言ってみれば半分以上が認定されておるということは、逆にかえって現行の認定制度を見た場合に、生存者で棄却された人とかあるいは未申請の人の中にも相当数の患者がいるという一つの証拠じゃないか、こういったことを指摘する人がたくさんございます。この点についてはどうですか。  さらにもう一点。この点から考えますと、これはたしか最近の五年間の統計だったと思いますが、認定率が一番低くて六%、高くて二四%というふうに私は承知しております。このような現行制度とこの死亡解剖の場合の五五%という率を比べた場合に、やはり現行制度自体が余りにも厳し過ぎるのじゃないか、こういう指摘があるわけですが、どうですか。
  175. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 水俣病の認定につきましては、臨床医学的に健康被害があるかどうかという点で行われるものでございまして、病理所見はそういう面では臨床所見を裏づける参考資料ということで取り扱っているものでございます。水俣病の認定申請者が死亡後に解剖されて水俣病と認定されたケースにつきましては、先生のお話のように数字の上では非常に高い割合ということになっているわけでございますが、あくまでも臨床所見に病理所見を加えて総合的に判断した結果であるというぐあいに考えております。  いずれにしましても、死亡後に認定されるということにつきましては、公害健康被害者の迅速な救済という観点からすればまことに残念なことでございまして、私どもといたしましては県とさらに連携をとりながら、生存中に救済されるよう今後とも認定業務の促進に努めてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  176. 沼川洋一

    沼川分科員 今の御答弁で生存中に救済されるように努力をするということですけれども、これは熊大の原田正純助教授がおっしゃっていたことですが、現在は水俣病判断基準をすべてそろえている人はもう本当に少ない、汚染された住民の症状というのは非常に多彩でございまして、水俣病を従来の狭いハンター・ラッセル症候群だけで見るべきでない、こういったことを指摘されておるわけでございます。また、これは県の幹部でお医者さんでもございますが、感覚障害だけで水俣病はあり得る、こういった発言があっていろいろと問題になったわけでございますが、私はこれは医者として率直な常識上からおっしゃった言葉だと思います。要するに、よく御案内のように、水俣病自体の病像そのものが非常に不透明である、そういった部分が多いということで、現行の認定基準とそのような被害の実態の間に余りにもギャップがあるのじゃないか、こういったことをどうしても感じますけれども、どうですか。
  177. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 後天性の水俣病の判断条件につきましては、五十二年の時点で保健部長通知という形でお示ししているところでございますが、その判断条件につきましても、その後私どもいろいろな研究を進めながら、あるいは専門の先生方の御意見を伺いながら、その見直しといいますか再検討というのをいたしておるわけでございます。  現時点におきましては、専門家の先生方の御意見を伺いますと、この判断条件でよろしいといいますか、それについて訂正をする必要はないという御意見を承っているところでございますので、この判断条件につきましては、現在もそのままの形で各県、地区の方に指導いたしておるところでございます。
  178. 沼川洋一

    沼川分科員 今おっしゃっておる現行の認定基準ですけれども、これは五十二年七月、五十三年六月、要するに後天性の水俣病の判断条件を新次官通知で行われておるわけですが、たしか四十六年だったと思いますが、旧の次官通知によれば疑わしきは救済せよというような、あの時点と比べると一段と厳しくなっておる、このように感じますけれども、その辺はどうですか。
  179. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 ただいまの御議論につきましては、従前から国会等におきましてもいろいろ御議論を重ねておるところでございまして、私どもといたしましては、四十六年の次官通知、五十二年の保健部長通知、五十三年の次官通知というものは全部基本的には同じ考え方でありますというぐあいに御説明いたしたところでございますので、御理解いただきたいと思います。
  180. 沼川洋一

    沼川分科員 しかも五十三年六月、この新しい次官通知の後に、要するに審査拒否運動、検診拒否運動が起こってきております。だから、そういった一概に審査に応じられないということだけの理由では、私は現行認定制度の中での認定促進は不可能じゃないか。やはりああいった患者さん方が現行制度に反発するにはそれなりの理由があるということをもう一度よく検討する必要があるのではないか、このように思います。  特に現在の認定制度は、水俣病であるかどうかということについて、医学の概念とは無関係補償に値する被害かどうか、極端な言い方をしますと、救済ということよりか、単に補償金などの受給資格を得るための手続にすぎなくなっておる、こう言えるのじゃなかろうかと思います。医学上水俣病と思われても、おかしいことには認定されなければ水俣病じゃない。医学上から見て、これはおわかりになると思いますが、そういう点に私は何か非常に矛盾を感ずるわけです。ですから、例えば医学上一〇〇%でなくても、あくまでも例えの話です、八〇%ぐらいの水準で見るとか、あるいは行政の立場としては、冒頭に大臣がおっしゃったように、現在の健康被害者法の迅速に広く救済するという、こういった法の趣旨からもっとその辺を考えてみる必要があるのじゃないか、このように思うのですが、どうでしょうか。
  181. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 水俣病の認定についてでございますが、五十二年の関係閣僚会議申し合わせに基づきまして、県と一体となりまして検診、審査体制の充実を図った結果、五十三年、四年という時点におきましては、検診を受けられた方々、それに伴いまして審査をされた件数というものなどがいっときかなりふえてまいっておったわけでございますが、五十五年前後から検診を受けられない方々がふえてまいりましたために、実際に現在は検診が思うようにいってないという状況にあるわけでございます。そのようなことで、私どもできるだけ申請者の方々の理解を得ながら、さらに検診、審査を進めてまいりたいというぐあいに思っておるわけでございます。  なお、水俣病の判定の要件といいますか判断条件に関するお尋ねでございますが、私ども五十三年の次官通知に基づきまして、蓋然性が高いという判断でございますが、これにつきましては、その前の時点で当時の長官からの国会におきます答弁におきましても、医学的に五〇、六〇、七〇というような疑わしいということにつきましては、一般の方々が使っている疑わしいというものと医学的に疑わしいというものにつきましては、おのずから差があるのでございます。医学的に疑わしいという場合につきましては、蓋然性が高いというようなことで判断をしていくというようなことでお答えになっていらっしゃるわけでございますので、そのような考え方に基づきまして私ども現在も進めておるというぐあいに理解いたしております。
  182. 沼川洋一

    沼川分科員 ここで大臣に一言お伺いしておきたいと思います。  いろいろと今問題提起しましたけれども、現行の認定制度は非常に問題が多い。そういう中で、ここらで抜本的に改正をする必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。
  183. 上田稔

    上田国務大臣 この認定業務でございますけれども、熊本県その他の県、市におきましていろいろおやりをいただいておるのでございます。非常に難しい時期に立ち至っておることは事実でございますが、しかし、今やっておるところをまたさらにお進めをいただくとともに、私どもの方にもよく御連絡をいただいておりますので、御意見等もよくお聞きをいたしたい、こういうように考えております。
  184. 沼川洋一

    沼川分科員 時間がございませんので、あと何点かお尋ねしたいと思いますが、簡単な御答弁で結構でございます。  今、水俣病認定の申請者治療研究事業がございますが、この事業を今後とも継続されるのかということが一つ。  それからもう一つ、予算措置の面で国がたしか五十八年の補正予算に組まれてないということで、熊本県でその辺の心配があるわけでございますが、この予算措置について従来どおり県に補助されるのかどうか、これをお尋ねします。
  185. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 治療研究事業についてのお尋ねでございますが、御質問が二つあろうかと思うわけでございます。  まず一点は、熊本県の治療研究事業につきまして認定業務が予定より進んでないというようなことから、五十八年度医療費に不足を来すおそれがあるというような話が新聞等にも載っておるわけでございます。私どもそのような連絡を受けておりまして、県とも連絡をとっておるわけでございます。県におきましては、五十八年度の請求分につきましては年度内の予算で対処できるよう努力されているところでございまして、国としても申請者の方々に御迷惑をおかけすることのないよう県とも十分連絡をとりながら対処してまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。  なお、この治療研究事業を今後とも継続する必要があるかどうか、予算措置はどうかというお尋ねかと思うわけでございますが、治療研究事業につきましては、水俣病認定申請者が申請から処分までに非常に長期間にわたる場合もありますことから、申請者の病状の変化を把握するために治療等に要した経費の一部を助成することを目的としているものでございます。  この事業の果たしてきている役割につきましては、国といたしましても十分認識いたしておるところでございますが、いずれにしても処分を受けてない方々の問題につきましては、できるだけ認定の促進を図ることが基本的に大事なことであるというぐあいに考えておるところでございまして、今後とも申請者の方々の検診に対する理解を得ながら、認定促進に最大限努力してまいる考えでございます。その結果、なお処分に至らない申請者の方々につきましては、今後ともそういう面でこの治療研究事業の必要性はあるというぐあいに考えております。  治療研究事業の今後の動かし方でございますが、さらに適正に運営するということで、必要な経費につきましては、その確保に十分努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  186. 沼川洋一

    沼川分科員 時間が余りありませんので、チッソ県債とか、そういう問題もお尋ねしたかったわけでございますが、最後に一言大臣にお尋ねして終わりたいと思います。  よく御案内のように、水俣病の問題について、これは三十二都府県にわたるという問題もあります。認定制度の難しさ、はっきり言いまして、熊本県が、これは県の処理能力を越えた問題であるとして、国でやってくれということを再三言ったことがございます。したがいまして、今後の対策として、どうも地方から見ていますと、何か遠い水俣の問題というとらえ方がまだあるんじゃないか。これはいつも私思うのですが、もし東京湾で起こっておったら今ごろどうなっているんだろう、制度にしてもいろいろな面にしても、まだまだ変わっておったんじゃないか、こういう気がしてならぬわけでございますが、今後この問題を国の最重要課題として取り上げていかれるのかどうか、このことをひとつお答えいただきたいと思います。
  187. 上田稔

    上田国務大臣 水俣病の処理につきましては、これは重要課題として私は考えてまいりたいと思っております。
  188. 沼川洋一

    沼川分科員 国の最重要課題として取り組んでいかれるわけですね。
  189. 上田稔

    上田国務大臣 その覚悟でございます。
  190. 沼川洋一

    沼川分科員 以上で私の質問は終わります。  ありがとうございました。
  191. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて沼川洋一君の質疑は終了いたしました。  次に、野間友一君。
  192. 野間友一

    野間分科員 私は、限られた時間の中で、今盛り上がりつつありますナショナルトラスト運動、これについて若干の質疑をいたしたいと思います。  昨年の十月の十六日、環境庁、そして和歌山県、田辺市、この後援を得まして、ナショナル・トラストをすすめる全国の会が、先駆的な運動を進めております田辺市において開かれました。その大会宣言の中に、この  運動の推進・定着をはかるためには、あくまでも住民が主体であるという基本的立場を堅持すること、そのうえに立って国民共通の資産である自然環境や歴史的環境の保護には、国および自治体が、責任をもって取り組むと同時にナショナル・トラスト運動への積極的な援助の責務をはたすべきであるということであった。なかでも住民生活と密接な関係のある自治体の協力が必要であることが確認され、大会宣言の中に盛り込まれております。  私も全くそのとおりだと思いますが、まず最初に、これについての環境庁の所見なり考え方を聞かせていただきたいと思います。
  193. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 昨年秋、天神崎においてといいますか、田辺市において行われました大会でそのような決議がなされたということは承知しております。  先生指摘のとおり、あくまで住民主体の運動であるということの確認と、これを進めるに当たって国なり自治体がそれぞれその分野におきまして責任を持って援助をしてまいる、こういうことだろうと受けとめておりまして、国のレベルにおきましても、私ども環境庁が、ナショナル・トラスト研究会というようなもので有識者の方々にお集まりいただいて御検討いただいた。こういうようなことも含めまして、国としてなし得ること、助言なり指導なり、そういうことで各自治体とも歩調を合わせてこの運動の育成を図っていきたい、こういう基本的な考えを持っておるところであります。
  194. 野間友一

    野間分科員 当日、和歌山県立田辺高等学校の二年生の重岡紅というお嬢さんが起草しまして、妹さんであります重岡昌さん、この人が朗読した「天神崎からのアピール」、この中では次のように訴えております。   今、母なる地球が泣いている。声にならない声をあげ、私達人間の愚かな行為に泣いているのです。産業の発展と、物質的な豊かさだけを追い求めてきた人々によって、青い海は埋め立てられ、緑の山は切り崩され、母なる地球は泣いているのです。   さんさんと降りそそぐ太陽の光の下で元気よく駆け回る幼い子は、草むらから跳び出すバッタを見つけて、自分以外の生命が大地に生きて  いることを知って驚き、その小さい命を可愛いと感じ、大空の星の輝きや、青い海の水平線に沈む夕日を見ては感動します。そして自分よりもっと大きく、奥深い神秘なものがこの世に存存し、それによって人間は他の生きものと共に生かされ育てられているのだと悟るのです。こうして大自然の大切さ、尊さを知ることによって本当の人間らしい人間に成長していくのだと思います。   日本中の皆さん、どうか人間だけがおごり、高ぶり、ついにはこの世のすべてを破壊するような愚かなことはしないで下さい。自然を大切にすることは、私達人間自身の存在を大切にすることです。どうか私達次の世代を担うものに素晴しい地球の明日を手渡して下さい。これは一部省略しましたけれども、こういうすぐれたアピールがなされまして、これが採択をされておりますが、私はこれを聞きまして大変感動しました。  大臣、これに対する所感を一言述べていただきたいと思います。
  195. 上田稔

    上田国務大臣 田辺の天神崎において行われましたその大会におきまして、和歌山県の若き少女の方からそういう御意見が出たということは、大変に私もうれしく存ずる次第でございます。  ナショナルトラストという考え方は日本では非常に発展が遅くなってしまっておるのでございますけれども、こういう国民の皆様方のお声によってナショナルトラスト運動というものを大いに起こしていただき、環境庁といたしましては、これをできるだけ支援をしていくように、伸びていくようにいたしたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  196. 野間友一

    野間分科員 そこで、天神崎の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、詩人の野口雨情が「落ちる夕日は天神崎の遠く海原夕焼ける」と歌ったところで、これは県立自然公園の一部なんですね。このすぐれた自然環境を守るためにたくさんの人たちが身銭を切って運動を進めております。  御案内のとおり、外山八郎さん、天神崎の自然を大切にする会の事務局長は、守ることの意義についてこう言っておられます。これは朝日新聞の「論壇」等にもありましたが、  天神崎は平凡な海岸のようであって、実は重要な自然である。海・磯・森が一体をなし、豊かな自然環境を形成し、黒潮の影響を受けて、海陣とも生物相が極めて豊かである。   便利な場所に、幼児にも安全な広い磯が干潮ごとに現れ、森や湿地と共に自然の絶好な観察場として残されていることは、教育的に重要なことである。 保全の目的は  優雅な観光のためではない。子供たちが自分の目で探求し、考える人間に育つ貴重な学びの場を残すためである。   ナショナルトラストヘの道は、共に生きるための連帯の道である。海と陸が、磯と森が、動物と植物が、支え合い深い関連の中で、大自然の絶妙な営みを続けている。人間もその仲問に加えられて、共に生かされている。 これを守るのがナショナルトラストヘの道だ、こういうふうに指摘をされて運動を進めておられます。  そこでお伺いするのは、今指摘をしたような目的のためにやっておられるここの運動、これをどのように評価されるのか、一言お聞かせいただきたいと思います。
  197. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 私自身も昨年の秋の大会に出席させていただきましたし、天神崎の現地も見させていただきました。外山先生が御指摘のように、天神崎は田辺市から非常に近いということが一つあると思いますし、そういう近いところにありながら森と磯と海が一体となった地域である、こういうことでもありますし、とりわけて野外教育の場として、近所のお子さんたちがよくその場に来られて地元市民に親しまれている、こういう印象を強く受けたわけでございます。  天神崎はそういうことでございますが、我が国のナショナルトラスト運動はまだ萌芽の段階にあるという印象を持っておりますけれども、いろいろ各地で多様な展開を示しておるわけでありまして、そういうような中で天神崎はあれはあれで大変結構なもの、こういうふうに考えております。
  198. 野間友一

    野間分科員 文部省に一言お伺いしますが、この場所に将来、財団法人自然保護協会が教育的な見地から子供のための自然観察センターをつくる計画を持っておりますが、これに対する国とか自治体の補助制度はあるのか、ないとするならばぜひこういう制度が必要だと思いますが、いかがですか。
  199. 藤村和男

    ○藤村説明員 今、学校教育、社会教育を通じまして、自然の中で子供を育てていくということが大変重要な課題であるという考え方に私ども立ちまして行政を進めているわけでございますが、今先生からお話がございましたような事柄については、補助制度というのはないわけでございます。現在文部省が行っております補助は、地方公共団体が少年自然の家とか青年の家といった、青少年を対象にした施設をつくる場合の建物の補助というのが一つございます。それから学校教育の中では、自然教室と称しまして、学校の教育課程の一部として生徒を連れて山などで学習をする場合に、その運営費の一部を補助するというのがございますが、今お話しのような自然観察点を設けるための補助は現在のところございませんので、これはしかるべき形で自然保護協会などがやってくださるのであれば大変ありがたいことであると思っております。
  200. 野間友一

    野間分科員 ぜひしかるべく国とか自治体が補助するような制度をひとつ研究してください、考えてください。
  201. 藤村和男

    ○藤村説明員 現今の財政状況を考えますと新たな制度をつくるのは大変難しいかと思いますが、ただ、私どもは、学校教育、社会教育を通じまして自然の中で子供を育てることが大事であると考えておりますので、将来どういう政策を進めていくかという課題の中で、そういったことも検討点の一つとして取り上げていくことはできるかと思います。
  202. 野間友一

    野間分科員 文部省、もう結構です。  ところで、天神崎の場合、県立自然公園の一部でありますが、買い取りをしているところは第三種の特別地域ということになっております。そこで、今の法制度の上では、買い上げあるいは保全管理について特別の優偶措置がないわけですね。そのため、運動されておる方々は大変な困難に直面をしております。  今日まで、五十一年三月に海岸線の一部、これは二千三百九十平米、三百五十万円で購入されました。五十三年十一月に六千百七十六平米、これは五千万で買い上げたわけです。このうち二千五百万円は県、五百万円は田辺市が出しまして、募金で集まった二千万を足して五千万、これをそっくり田辺市の所有地として所有権の移転登記をしているわけですね。目的地の買い上げにあと一億数千万集めなければならないと、今懸命な努力が続けられておりますが、話を聞きますとその労苦は大変なことなのですね。何しろ手探りの仕事でありますし、事業主体を一体どうするのか。あるいは知床の連動でもそうですが、いわゆる白地地域なのですね。ここには税制上も特別の優偶措置がありませんので一層深刻であります。  そこで、当面の問題に絞ってお伺いいたしたいと思います。  まずその一つは、事業主体の問題であります。財団にせよ社団にせよ、公益法人をつくりたいという場合に活動資金を集めるのが大変で、とても基本財産の確立まで手が回らない、これがどこでも今の実態なのです。そこで、仮に都道府県の許可法人とする場合、特にこれらに便宜を図る措置、方法が一体ないのか、このことでありますが、いかがですか。
  203. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 事業主体の問題について言えば、確かに財団法人化を図るということが一つの手段であろう、こういうふうに考えております。今もお話しのように、天神崎の運動などではそもそも資金的余裕がないのだから、基本財産の形成ということ一つを見てもそれ自身がなかなか困難ではないか、こういうことであります。しかし、一般的に、知事さんの許可で法人化を図るということが十分考えられるわけでありまして、私どもといたしましても、都道府県担当者の会議その他を招集いたしまして、各地で行われている事例なども参考に紹介いたしながら、これに対する都道府県のいろいろな知恵の出し合いといいますか、そういうものに十分相談に乗って特段の配慮を加えてほしい、こういうことは常日ごろ都道府県にも申しておるところでございまして、またそういうことで、例えば北海道における小清水町などはその財団法人化に成功したというようなことでもあるわけでございます。今後とも、そういう点でいろいろと御相談に乗りつつアドバイスを申し上げていきたい、こういうふうなことを考えております。
  204. 野間友一

    野間分科員 あなたの方で強力にお願いされている文書を見ますと、これについては少額のものも額としては認めるとか、財産の種類については金銭でなく相当の土地も認める、こういうことなどで可能な限りの配慮ができないものかどうかということを各都道府県に対して一定の提起をされておりますが、さらにこれを継続して、いい意味での指導をお願いしたい。今うなずかれましたが、ぜひお願いしたいと思います。
  205. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 御指摘のように、私ども、先ほども申しましたように、地方公共団体にはそのような要請もしておるところでございまして、継続してそういう努力を払ってまいりたいと思います。
  206. 野間友一

    野間分科員 次に、税制度上の問題として、自然環境保全のための物の取得とか維持管理の面で非常に困難を伴っております。仮に財団法人をつくりましても、税制面で考えますと、先ほど申し上げたように、いわゆる白地地域でありますから優遇措置が受けられない。しかしながら、ナショナルトラスト法ができるまで手をこまねいておるわけにはいかない、こういうことであります。そこて、寄附金の控除あるいは相続財産を法人に寄附した場合非課税にする。これについては、今の制度では試験研究法人に限られているわけですね。自然環境保全を目的とするような法人にもその対象を広げることが必要だと思いますが、この点についてはいかがでしょう。
  207. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 確かに税制の問題がいろいろあるわけでございまして、私どもといたしましても、今御指摘のように、財団法人をつくっただけではなかなかうまくいかない面もあります。そういうことで個別、実態的に、試験研究法人になり得るような道を模索するということも一つの運用の問題として大事なことだと思いますが、一方、税制の問題といたしましても、今年度の予算を形成していく過程におきまして、税制改正についての要望を環境庁として取りまとめて税務当局にも要望してきたのであります。その中の一つといたしましては、今御指摘のように仮に自然環境保全法人というようなものを考えて、そういうものにつきましてはその寄附金に対する課税の特例を新設してもらいたい、こういうことによって寄附金の集まりぐあいがうまくいく一助になれば、こういう考え方に基づくものでございます。これは今後とも引き続き要望を重ねてまいりたいと思っております。
  208. 野間友一

    野間分科員 同時に、地方税の場合でも、固定資産税とか不動産取得税なども同じような隘路があるわけですね。つまり、今の制度では、試験研究法人という狭い枠の中でしかこういう措置がないということで、自然環境の保全を目的とする法人の場合には新たに非課税の対象法人にするということも必要だと思いますし、さらに土地の買い上げが価格が高いので非常に難しいという場合には、地主から借りて自然環境保全の法人が管理するというケースもあるわけです。こういう不動産についての固定資産税あるいはその不動産を相続によって所有した場合の相続税の減免措置なり猶予の制度、これもあわせて必要ではなかろうか、こういうように思いますが、この二点についていかがでしょうか。
  209. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 昨年、税制当局に対して要望した点のうち、今御指摘の取得した不動産に対する固定資産税の非課税措置の新設もお願いしておりますし、それから、自然環境保全法人に対しまして仮に相続財産を贈与した場合の非課税措置の新設ということも含めまして、いろいろとお願いしておるところでございまして、何とかそれを理解してもらいたい、こういうふうに考えております。
  210. 野間友一

    野間分科員 そうしますと、今局長がお話しになりましたように、税制上の問題については大体四つばかりに絞りまして私お尋ねしたのですけれども、これについては環境庁もそのとおり評価して、こういう措置が必要だということで大蔵当局には税制上の措置の要望を五十九年度はやったんだ、これからも環境庁はこれを続けてやるんだ、こういうことですか。
  211. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 そのとおりでございまして、大蔵省のみならず自治省に対しましても、地方税の扱いがございますので、その努力を継続してまいりたい、かように考えております。
  212. 野間友一

    野間分科員 冒頭に大会宣言を引いてお尋ねしたのですが、国同様、地方自治体、都道府県あるいは市町村が積極的に関与して、これらの運動の成功のためにできる限り指導援助するということが大変必要であるし、これは、環境庁のナショナルトラストに関する研究報告書の中にもそういう位置づけをされておると思います。ついては、地方自治体に対しましてこういう運動に対する適切な対応をさせるためにガイドラインをつくるとか、あるいは広範な意味での財政上の措置も含めた指導方針、そういうものを出すべきじゃなかろうかと私は思うのです。  先ほども多少聞きましたけれども環境庁がおつくりになりました「国民環境基金運動の支援のためにどのようなことが考えられるか」という書き物を私も持っておりますけれども、これを運動の実態と合わせてさらに補強しつつ、運動が全国的に容易に進められるように、今指摘をしたことも踏まえてぜひ今後とも努力を続けられたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  213. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 冒頭、大臣からもお答えいたしましたように、ナショナルトラスト運動が全国的に広まっていくことを願っておるわけでございまして、そういう意味から申しましても、まだまだ初期的な段階にありますこの運動を何とか育成してまいりたいという気持では全く先生と同じでございます。  そういう意味で、研究会の報告にもありますように、自治体がいろいろと相談に乗ってやるということがまず第一に必要だと思いますし、私どもはこの運動をさらに普及させる、そういう啓蒙的な活動も必要だと思っております。そういうような背景の中で自治体がこれに取り組んでいく場合に、私どもも自治体に、今お話しになりましたような当面考えられる方策その他についても会議を開いていろいろと物を申し上げている、こういうようなことでございまして、こういう努力はさらに続けてまいりたいと思っております。
  214. 野間友一

    野間分科員 そこで大臣にお聞きしたいのは、たしか各国で多種多様の運動が起こされておりますが、イギリスの場合にはかなり古くから伝統がありますが、ニュージーランドとかオーストラリアあるいはアメリカ、各国でこういう運動が相当今起こりつつあるわけです。そこで日本の場合にも、いろいろな運動を踏まえた上で、最も効率的、効果的な財政上あるいは税制上の措置も含めまして、こういう運動が成功するような法律がぜひとも必要ではなかろうか、私はこのように思うわけであります。前向きにぜひ検討していただきまして、立法化をぜひ進めていただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  215. 上田稔

    上田国務大臣 我が国におきましては、イギリスと違って、いろいろな面のナショナルトラスト的なものが行われておるわけでございまして、これを一本に絞るということもいろいろ問題点がありますし、よく検討をしないといけないのではなかろうかと思いますが、方向としてはこれは大賛成でございますので、このいろいろな今の面を踏まえまして一つにして、そして立法の両を考えていくという方向に進んでいきたいというふうに考えております。
  216. 野間友一

    野間分科員 最後に大臣に重ねてお伺いしたいのですが、天神崎の運動、これは確かに先駆的な役割を果たしている運動なんですね。ここで天神崎の自然環境が一体どういうものであるかということと、その運動を、ぜひ学んでいただいてすぐれた法律をつくっていただきたい。ついてはぜひ現地を大臣在任中に一遍ごらんになりまして、いろいろな現地の実態とか、あるいは運動されている方々からも話を聞いて、そしてすぐれた環境行政、自然を守る行政に資していただきたい。ぜひ一遍お越しいただきたい。また私もお供申しますし、運動体の方々も御案内をしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  217. 上田稔

    上田国務大臣 田辺市の住民の団体である天神崎の自然を大切にする会が行っておられます地主運動でございますが、非常に大々的におやりいただいておるということをお聞きをいたしておりまして、私も実は京都でございまして、近畿圏の全体の総合計画と申しますか地域計画をやらしていただいたこともございますので、非常に関心を持っておらしていただいております。機会があればぜひとも行かしていただきたいと念願をいたしておりますが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
  218. 野間友一

    野間分科員 機会をつくってぜひ来ていただきたい、重ねて。
  219. 上田稔

    上田国務大臣 機会をなるべくつくりまして行かしていただきたいと念願をいたしております。
  220. 野間友一

    野間分科員 終わります。
  221. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて野間友一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理府所管環境庁)についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  222. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 農林水産省所管について、一昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市川雄一君。
  223. 市川雄一

    市川分科員 農林省にお伺いしたいと思います。  最初に、蚕糸砂糖類価格安定事業団が現在持っております生糸の在庫量をお伺いします。
  224. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 事業団の在庫は、この二月末現在で十七万五千俵でございます。
  225. 市川雄一

    市川分科員 この事業団の適正在庫量をどういうふうに見ておられますか。
  226. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 かつて、事業団の在庫が今日ほど膨れ上がります前におきまして大体五万俵ぐらいと申しておりました。今日では全体の需要の規模が当時よりも縮小してきておりますので、五万俵よりやや内輪な数字が適正なのではないかと思っておりますが、具体的に何俵ということを掲げておるわけではございません。
  227. 市川雄一

    市川分科員 五万俵よりも内輪な数字ということは、下という意味ですね。五十八年の暦年で見ますと、国内の生糸の生産量が約二十万八千俵、したがって、今の事業団の持っておる在庫量は一年間の生産量の約八四%という在庫量になっているわけです。この在庫の数は異常に過剰な在庫だと思いますが、農林省はそういう御認識ですか。
  228. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 私どももそのように思っております。
  229. 市川雄一

    市川分科員 基本的にこの在庫をどうする考えですか。
  230. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 今日の異常な在庫が積み上がりました背景といたしましては、大体五十三年ぐらいをピークといたしまして消費量が年々減ってきたことに最大の理由があるわけでございまして、五十三年当時を一〇〇といたしますと、今日の内需は大体六割ぐらいという水準まで落ちてきております。この間において何とか需給の改善を図るべく、輸入数量を減らすという努力、さらには絹の需要を維持拡大をするという努力、さらには製糸業の構造改善、あるいは三年ほど前に基準糸価の切り下げ、あらゆる努力をしてまいったわけでございます。しかしながら、需要の方は結果的にはなお毎年じりじりと減っておる状況でございまして、これに反比例をいたしまして、買い支えをしております事業団の在庫が膨れ上がってくる、こういう経過になるわけでございます。  したがって、在庫減らしの決め球が今のところあるわけでございませんで、基本的には需給改善を図って需要を高め、供給を減らす、こういうことによって在庫を減らす方向に持っていくよりしょうがないのではないかというふうに考えておりまして、実は、これまで繭の減産については余り強力な指導をしてこなかったのでございますが、本年産の繭については相当程度の繭減産をする必要があるということで、ただいま生産者団体等と相談をしておる最中でございます。
  231. 市川雄一

    市川分科員 在庫が異常にふえた、その原因はシルクに対する需要が減ったからだ、こうごらんになっているわけですか。しかし、需要が減ったことも事実ですが、農林省の行政に問題があったのではないかと私は思うのです。その辺の責任というか、御認識は全然ありませんか。
  232. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 絹の全体消費量がどれくらいかというのは、これは見方に大変意見が分かれるところでございますが、従来の絹の需要についての見方は、需要が波を打って変動しておる、こういう前提に立っておるわけでございます。事実これまでも、蚕糸砂糖類価格安定事業団が安値のときに買い支えをしたという経験を幾たびか持っておるわけでございますが、その後需要が持ち直しまして在庫が一掃された、こういうことで今の価格安定制度運用されてきておるわけでございます。今回の場合には、需要が波を打っておるというよりは毎年じりじりと減ってきておるわけでございまして、その背景には、消費者の着物離れというのが非常に大きく影響しておるような気がいたしておるわけでございます。  そういう長期的な需要の減退をあらかじめ見通すことができなかったのかどうかということになりますと、これは私どもの見通しが甘かったということになるわけでございますが、当時としては、この需要減退もまたいずれ持ち直す時期があるだろう、こういう見方をしておったわけでございます。したがって、現時点におきましては、その当時の見方が間違っておったかどうかということの反省ももちろんございますけれども、今後どうするかということにより一層の努力をすることが私どもの行政責任を果たすゆえんでもあろう、かように考えておるわけでございます。
  233. 市川雄一

    市川分科員 需要が減ったのが原因だ、長期的に需要減というものを見通せなかったという意味においては責任を感じておる、こういう御答弁だと思うのですが、しかし私はそう思ってないのですね。やはり農林省の行政に非常に問題があったと思うのです。  一つの具体例を申し上げたいと思うのです。例えば、昭和五十五年の三月二十四日、農蚕園芸局長名で繭生産目標八万六千トンという通達を出していますね、ここにコピーがございますけれども。五十四年に前年比で約五%増の八万一千三百トンの繭が生産された、これは昭和四十八年以来六年ぶりの増産である、農林省は増産を非常に高く評価しておるわけですね。同時に、五十四年に八万一千三百トンという繭が生産されて、六年ぶりに繭がふえてよかった、来年はひとつ八万六千トンにふやそうじゃないか、こういう意味の通達を出しておるわけです。ところが、五十四年に既に在庫は九万俵になっておるわけですね。農林省の言う適正在庫五万俵を四万俵超えた在庫を既に五十四年度に持っておるわけです。適正在庫を超えた在庫がありながら、六年ぶりにふえた、だから来年は八万六千トンにふやそう。ところが実際は八万六千トンになりませんで、七万三千トンですかで終わるわけですけれども、その年に、五十五年に一挙に在庫が十四万八千俵にふえてしまうわけですね。これは増産すべきでなかったときに増産をしたということです。しかも基準糸価を五十五年まで上げ続けた。これは事業団が買いやすい、あるいは在庫がふえやすい要素です。一方で、適正在庫を超えて九万俵も在庫がありながら繭の増産を呼びかける、しかも基準糸価を上げる、こういうことをやればだれがやっても異常在庫になるのじゃないですか。五十五年に繭の増産を指示した、しかも五十五年までは基準糸価を上げ続けた、こういうことに全然責任をお感じになりませんか。     〔谷垣主査代理退席、島田(琢)主査代理     着席〕
  234. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 当時の物の見方といたしましては、当時、既に需要の減少というのは傾向としては始まっておったわけでございますが、ここまで需要の水準が落ち込むとは予想してなかったということが一つあろうかと思います。同時に繭の国内生産が、かって十万トン以上あったわけでございますが、傾向としては繭の生産額がどんどん落ちてきておるわけでございます。したがいまして、国内で足りないということになりますと、これは当然輸入の問題が出てくるわけでございますので、需要はもちろん波を打っておりますけれども、その絶対水準というのは今日の時点よりは相当高い水準に維持されるであろうという前提のもとに、ある程度の自給度を維持しなければならぬという問題意識から、当時としては繭の生産をふやすという指導を行ったものというふうに見ておるわけでございます。  価格のお話もございましたけれども、当時引き上げました価格、これは狂乱物価というふうな時期は別でございますけれども、その後の価格は、その当時の需給事情を反映させまして、生産費の上昇傾向から見ればかなり内輪のものに抑えながら運用してきておったわけでございまして、価格面から増産を刺激するというふうなことにはなってなかったように思っております。
  235. 市川雄一

    市川分科員 ちょっと御答弁になっていないと思うのですが、五十四年、既に九万俵の在庫をつくっているわけですよ。五十四年は、事業団で五万六千俵買い入れながら売り渡したのは一万七千俵、約三万九千俵の売り残しをつくっているわけですよ。ですから、これはやはり需要が落ち込んできたという兆しは出ておるわけですね、赤信号がはっきりと。なのにまだ農林省はその時点では、繭が増産されてよかった、六年ぶりにふえたふえた、よかったよかった、来年もふやそう、こういう認識なんです。在庫がふえたぞ、適正在庫五万俵を四万俵もふえちゃったぞ、ちょっとこれはおかしいぞ、これ以上やると在庫がふえちゃうぞと、本来なら繭の生産をある程度抑えなければいけないと思うのです。抑えるか、増産なんという意識は少なくとも持つべきじゃなかったと思う。しかも基準糸価は上げているじゃありませんか、五十五年までは。今おっしゃっている。しかも異常、過剰の在庫ができたのは五十五年度じゃありませんか、結局は。五十五年に十四万八千という在庫をつくってしまったものがずっと今年度まで来ているのじゃありませんか。その後異常にふえたということはないじゃありませんか。このときに一番異常在庫がふえているじゃありませんか。ということは、このときの農林省の考え、農林大臣どうですか、これはやはり農林省の現状認識が明らかに甘い、見誤ったと私は思うのですね。
  236. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 これは先生おっしゃったとおり、確かに甘かったというのは認めざるを得ないと思います。
  237. 市川雄一

    市川分科員 甘かったというか、ちょっと意図的なものがあったのじゃないかというぐらいに僕は思っておるわけです。  そうなりますと、この在庫を、さっき何か新しい需要を起こしてなんとおっしゃっていましたけれども、要するに、シルクというものの値打ちが落ちたとは私は思っていないのです、日本人の需要が。要するに高過ぎるのです。和服をつくると六十万とか百万とか、高い。だけれども、実際はもっと安くできるはずなんですね。十四万八千俵の在庫を持ちながら、しかも中国産の生糸は安い、韓国産の生糸も安い。したがって、今養蚕農家も困っているし、繭をつくっている人も困っているし、蚕種業者も困っているし、製糸業者も困っているし、また織物をつくる機屋さんも困っているし、みんなが困っているわけです。要するにこれからどうするのか。三割程度の減産という御意向のようですけれども、減産がまずできるのかできないのかという問題がございます。恐らくできないだろうと僕は見ているわけですけれども、また来年も減産減産。要するにもうちょっと長期展望の、これから繭を一体どうするのか、こういう農林省の基本的な考えが今ないのじゃないですか。それとも今つくろうとしているのですか。その辺をひとつ大臣、お聞かせいただけませんか。
  238. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 先ほど申し上げましたように、需要の絶対水準が落ちてきたという問題ももちろんございますし、それから需要の構造といいますか、従来のように波を打っているというふうな状況ではなくなってきているのではないかという問題意識もございまして、ただいま繭糸価格安定制度に関する検討会をつくりまして、学識経験者を中心に、今後の繭糸価格安定制度をどのように考えていったらいいのかという問題について検討を煩わしている最中でございます。この検討会は昨年の八月に発足いたしまして、既に七回ほどの会合を持っておりまして、なるべく早い時期に考えをまとめてもらおうというふうに考えております。この結果も見定めました上で、これを踏まえて、さらに今後の繭糸価格安定制度及びその前提となる蚕糸業をどう考えるのかということについてはっきりした考えをまとめていきたい、かように考えております。
  239. 市川雄一

    市川分科員 当面減産という話が出ておるようですが、どのくらいの減産を目指しているのですか。
  240. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは私どもとしましては、大変荒っぼいものでございますけれども、繭の需給推算を基礎といたしますと、大体五十八年産の基準収繭量の三割ぐらいのものは要るのではないか、こういう問題意識を持っておるわけでございます。ただ、減産というのは官民一体となって指導を展開するということによって達成されるものでありますから、繭生産者団体がどの辺ぐらいまでならば狩っていけるかというふうな実践的な見通しというものとすり合わせをする必要があるわけでございます。生産者団体においても組織内討議が現在行われております段階でございますから、その結果を見まして、役所の方とすり合わせをした上で目標を決定したいというふうに考えておるところでございます。
  241. 市川雄一

    市川分科員 減産効果が上がるというふうにお考えですか。
  242. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 上げたいと思っておるわけでございます。
  243. 市川雄一

    市川分科員 五十六年、既に農林水産省は減産を打ち出しましたね、減産目標六万二千トン。しかし実績は六万五千トン。五十七年、六万一千トンくらいと思ったのですが、これがやはり六万三千トンに結果としてなってしまった。また五十八年、五万九千トンくらいというふうに思っておったのが結果として六万一千トンになってしまった。減産といいながら減産になってないですね。どうするのですか。何か具体的な担保があるのですか。実績で見ると減産できない。それをまたことしも三割減産、こう言っているのだけれども、具体的にこうできますという何か担保があるのですか、どうなんです。
  244. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは、繭も農産物でございますから、豊凶変動というものもあるわけでございます。また、非常に多くの生産者によって生産が担われておりますので、工場生産のようにとこの工場で幾らまでというふうなことをはっきりと決めるということも大変難しいわけでございます。ただ、従来やってまいりました計画生産推進は中央段階で意識統一をする、この数字をおろしましてもせいぜいブロック程度までということにいたしておりましたが、本年の場合には都道府県段階、さらにはその下の生産者団体のところまで目標をおろしていくという考え方でございますので、従来に比べれば相当本腰を入れたつもりでおるわけでございます。もちろんこのとおりできるかどうか、そのために絶対な担保があるか、こういうことでございますれば、大勢の方々の協力を得て展開する対策でございますから、そういう意味で、間違いなく決めた数字の中におさまるということについての確実な担保はないわけでございます。
  245. 市川雄一

    市川分科員 担保がない。この三年間繰り返してきた、減産目標を立てながら実際結果は増産に終わる、私はこういうことになるんじゃないかという気がしてならないのです。  次にお伺いしますが、いわゆる中国の繭は今一キロで五百円くらいと見ているのですが、どうですか。
  246. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは私どももいろいろと研究をしておるのでございますが、中国の場合の生産費がどれくらいかということはなかなか推定が難しいわけでございます。ただ、明らかになっておりますことは、農業労賃として見ました場合に、日本の農業労賃の十分の一以下であるというふうな感じがいたしております。反面において、繭を生産するための労働投下量、いわゆる労働生産性という見地から見ますと、日本の方が相当に高い、こういうことも明らかでございます。それらを彼此勘案いたしますれば、中国の繭の原価は五百円以下であるということは間違いなく言えると思います。
  247. 市川雄一

    市川分科員 中国の繭はキロ当たりで五百円以下です。これを日本の計算方法でキロ当たりの生糸価格を出してみますと、約三千九百円から四千円ぐらい。ところが事業団で買い入れている価格が一万二千円、商社を通していますけれども。一方では京都の丹後ちりめんみたいに、韓国が中国の安い糸を買って、韓国の最近日本に近づいてきた技術をもって表生地をつくってしまう。したがって、丹後の業者は、事業団からもらう一万二千円程度のものなら何とかやっていけるけれども、いわゆる需割り分ならやっていけるけれども、一般売り渡し価格になるともうちょっと高くて一万四千円くらいになってしまう。とても太刀打ちできない。  これは二つの点で問題があると思うのですね。要するに、事業団でやっていることとはいうものの、中国の糸を高く買ってあげ過ぎている、中国をもうけさせている、言ってみれば。生糸は恐らく国際価格七千円くらいでしょう。それが日本は約一万二千円くらいで事業団は買う。本来は四千円程度です。そうすると、中国をもうけさせ、しかも事業団の在庫をふやし、日本の機屋さんに打撃を与えておる、こういう問題が一つは起きているわけです。ですから、時間が十分あればもうちょっとその辺突っ込みたいところなんですが、今、異常在庫という在庫を持っているわけですから、一万二千円程度、いわゆる需割りで機屋さんに渡す程度の価格で思い切って機屋さんに在庫を出してあげたらどうですか。そういう考えはないのですか。
  248. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 機屋さんの側から見れば、せっかく在庫はあるわけでありますから、それを大幅に安くして出してくれ、こういう御要望があるということは私ども承知いたしておるわけでございます。ただ、事業団の在庫を安い値段で大量に出しますれば、今売れております国産の糸がその分だけ売れなくなるということは明らかでございますから、その分が再度事業団に持ち込みになるということになりますと、在庫の絶対量はちっとも変わらぬという結果になるわけでございます。  そこで、事業団もいつまでも在庫を持っているのは本意でございませんから、新しい需要を開拓するということについて効果のあるような用途につきましては、これは時価よりも安い水準でお出しをするということの制度を一昨年以来設けていただきまして、昨年秋以来それを運用いたしております。過去の約一年数カ月の間に一万俵近いものを既にその方策で出しておるわけでございまして、今後もそういうものについては積極的に支援をしていきたいというふうに考えております。
  249. 市川雄一

    市川分科員 コストを割って売ってはいけないということだろうと思うのですね。新規販売用には売ってもいい。しかし、その新規販売用というのは全然ふえないじゃないですか。わずか一万俵でしょう。  もう一つ伺いたいのですが、事業団は、特に五十四年から当期利益金を蚕糸業振興資金としてプールして、養蚕農家に助成という形でお金を使ってきたと思うのです。五十四年に七億六千万、五十五年に十二億五千万、五十六年に二十五億七千万、五十七年に七億六千万。一方では過剰在庫を五十四年以降抱えながら、しかも中国から安い糸を高く買ってあげて、またそれをさらに機屋さんに売って、ある意味では機屋さんの犠牲において上がった利益、これを農家に回す。しかも、事業団の在庫は今度は逆にふえていく。評価損でいうと、五十八年度で事業団は四十三億円のマイナス、赤字になっているわけです。だれが考えても矛盾していると思うのですね。事業団にそんなゆとりがあるのかと言いたいわけですよ。積立金も全部つぶして、しかも四十三億円の赤字を出しながら、一方では、かつて上げた利益を留保してそれを農家にどんどんばらまいてやっていくというやり方。養蚕農家を保護する、守る、そのこと自体に異議はありませんけれども、これはもう完全に過保護、しかも機屋の犠牲、消費者には高い絹織物、したがって消費者は絹織物から離れていく、需要が減っていく、まさに悪循環そのものじやありませんか。  これはたしか第二臨調でも、事業団というのは根本的に見直せという答申が出ておるはずなんですけれども、大臣どうですか、審議会にのんきにお任せしておくような事態ではないんじゃないですか。何かもう少し機動的に、今行政でできることをてきぱきと手を打たないと大変なことになるのじゃないですか。その辺についての大臣のお考えはどうですか。
  250. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生おっしゃいますように、現在の蚕糸をめぐる情勢というのは本当に厳しいものがあるわけでございますが、とりあえず、いろいろ努力をしてまいりましたが、繭糸価格制度が危機に瀕しておるということで、生産者の皆さんともお話ししながら、減反を御協力いただくということを今協議しておるわけでございますが、繭糸価格制度これ自体もどうあるべきかということで、研究会をつくっていろいろ研究を進めていただいております。その結果が出た上でということですが、先生は、そんななまっちょろいことをやっていてはだめだ、もっと早く行政として手の打てることはということでございましょうし、行政として手の打てることは早速にでも手を打っていきたいというぐあいに考えております。
  251. 市川雄一

    市川分科員 さっき言っていた中国から高く買わされている、これは農林省もう御存じですね。中国はガットに入っているのですか。ガットには加入してないのじゃないですか。
  252. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 加盟いたしてないはずでございます。
  253. 市川雄一

    市川分科員 中国との二国間協定というのはどういう必要性で持った協定ですか。
  254. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは、一元輸入制度という制度ができたわけでございますから、幾ら買うかということについては、法的な立場では日本国政府が随時決められる、こういう形になっておるわけでございます。しかし、現実の貿易は生糸だけではございませんで、絹糸とか絹織物とかいろいろなものが絹関係でも交易をされておるわけでございます。     〔島田(琢)主査代理退席、谷垣主査代理着席〕 したがいまして、ガット上、中国が提訴する機能を持っているかどうかということとは関係なしに、二国間の通商問題として話し合いをベースにして運用していく、こういう考え方から、生糸、絹製品につきまして二国間の取り決めをいたしておるわけであります。
  255. 市川雄一

    市川分科員 それならもうちょっと国際価格に近づけたらどうですか。国際価格より高く買うというのはおかしいじゃないですか、それじゃ。
  256. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 中国がヨーロッパに輸出しております価格、これはリヨンの取引価格として表に出ているわけでございますが、大体キロ当たり七、八千円ぐらい、時によって多少の変動がございます。日本が買っておりますものの価格、これも時期によりまして多少の変動がございますが、大体一万円から一万一千円ぐらいということで、確かにリヨン相場に比べますとかなり割高でございます。私どもといたしましては、事業団が買う糸をできるだけ安くしたいというつもりがございますので、交渉の都度、中国に対してはもう少し出し値を安くしてくれるよう要請をいたしておるわけでございます。  中国側には中国側の言い分がございまして、リヨンの相場というのはいわばフリーマーケットの相場である。日本も自由に生糸が貿易できるということであれば、リヨン相場に近いようなものでお出しするということができようけれども、日本の場合には、中国の希望数量よりは相当低い水準で数量を抑えておるわけでございますから、日本に対してこれ以上安く売るということは難しいというのが中国側の基本的な考え方でございます。  今後も毎年、交渉の都度、日本向けの輸出価格、日本で見れば輸入価格でございますが、この問題については討議を進めていくつもりでございます。
  257. 市川雄一

    市川分科員 終わります。
  258. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて市川雄一君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  259. 木下敬之助

    ○木下分科員 まず一番最初に、今最大課題であります日米農産物交渉についてお伺いいたしたいと思います。  いろいろな新聞報道がされておりまして、皆さん大変心配しております。三月末に決着がつくとかつかないとか、最終的には農水大臣みずから訪米されるとか、いろいろなことが言われておりますが、もう十分おわかりでしょうから、大臣の決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  260. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 せんだって予算委員会の第一委員室におきまして、木下委員に御説明申し上げましたとおり、我が国農業を守るという立場を堅持してこの交渉に当たってまいる。実は昨日までの間に、一昨年十月から五回にわたって日米間で事務レベル協議をやってまいりました。この間、アメリカ側は交渉態度をだんだん和らげてはきましたけれども、しかし、まだ依然として日米の間には大きな隔たりがあるというのが事実でございます。  ちょうど昨日塚田総務審議官が帰国いたしまして、アメリカ側との相談の結果、眞木国際部長とネルソン代表補との非公式協議を三月十五、十六日の両日、サンフランシスコで行う。そしてさらに、これを受けて、三月二十二日から二十四日にかけて、ワシントンにおいて佐野経済局長とスミス大使との間で非公式協議を行うことにより、牛肉、かんきつの輸入量に関する現行の日米合意の期限である三月末までに何とか合意をしたいということで今努力をしている最中でございます。この佐野・スミス会談によりまして進展が見られ、妥結が図られるというような見通しがありますれば、私は直ちに飛んでまいりたいというぐあいに考えております。
  261. 木下敬之助

    ○木下分科員 大臣は、「よど号」のときにお見せになりましたように、大変勇気のある方でございますから、どうぞひとつ農家のために一肌脱いでいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。  それでは次に、内水面漁業対策についてお伺いいたします。  ダム建設によって魚が上っていくことのできなくなった河川に対する漁業振興上の対策はどのようにしているか、お伺いいたします。
  262. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 河川等におきましてダムが建設されますと、多くの場合、魚類の養殖に支障が出るわけでありますが、その河川におきますいわゆる魚の生態系の保全のためには、基本的には、私どもの考え方としましては、建設業者によります魚道などの構築によりまして、必要な設備をつくることによりまして、従来の生態系をできるだけ維持するというのが私ども基本的な考え方でございます。  さらに、場合によりましては、ダムの建設によりまして造成されました水域、内水面ができるわけでありますが、そういうところにつきまして漁業の振興を図る必要がある場合には、別途、内水面漁業振興対策事業というのがございますので、それによりまして種苗の生産施設とか遊漁者のための施設とか、あるいは増養殖のために必要な各種の施設等につきまして、従来の経験によりますと、県等と協議をしながら、関係の漁業者といいますか、内水面の組合の御要望も承りながら措置をしてきたというのが従来の経過でございます。
  263. 木下敬之助

    ○木下分科員 その種苗をつくったりいろいろしたときの魚の種類なんというのは相当もとに近い、自然に近いものが保護できるのですか。また、魚道の効果というのはどのくらいあるものなんですか。
  264. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 これもケース・バイ・ケースでかなり違うと思いますが、地元の漁業者として見れば、従来扱っていた魚、例えばアユが主体であればアユをというふうに望むのはやはりごく自然でございますので、可能な限りその要望にこたえるような形での設備投資をおつき合いしてきたわけであります。  別途、魚道の設置が一般的に考えられる手法でありますが、これはダムの高さ等によりましてかなり差があるようでございます。割合低い堰堤のような場合には、素直な緩傾斜の魚道をつくることによって措置できますが、ある程度一定以上の高さになりますと、切り返し式とからせん式とかという形で徐々に。上の方に魚が上っていくという、かなり大きな投資が必要になる場合もあるようでございまして、そういった場合には、むしろそれよりも、でき上がった内水面の中で、別途増殖場をつくりまして、放流等によりまして従来の漁業類似のことをやっていくという道を考えるというようなことも多いようでございます。
  265. 木下敬之助

    ○木下分科員 魚道がつけられれば一番いいけれども、それができないときに放流やらいろいろなことをしているけれども、しかし放流等では、自然に戻すというのは大変だと思うのですね。そんな中で何か新しい方法、八十メートルもあるようなところでも前の生態系が保護できるようなことを研究なさっているとか、そういうことはないのですか。
  266. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 先生はその件、大変お詳しいと思いますが、何十メートルということになりますと、技術的には階段式あるいは折り返し式あるいはらせん式ということで、理論的には可能のようでございます。ただ、それに伴います設備資と、それによって遡上した魚が大きくなりまして得られる経済価値とのバランスということを考えますと、多くの場合なかなか難しい。特に、ダムをつくりまして水をためて、発電のために隧道をつくって下の方の発電所まで水を流すとしますと、ダムの下に相当の部分、水が通らない状態ができますと、まずそれをやることが不可能になりますので、そういった場合にはやはり上の方でやる、でき上がった湖の上でいろいろ考えるということよりほかにないのではないかというふうに思っているわけであります。
  267. 木下敬之助

    ○木下分科員 経済面から考えれば、漁業だけ考えれば当然そんなものだと思います。  ちょっと私の考えを申し上げてみますと、ダムをつくらなければこういった問題は起こらないのでしょうけれども、そうはいきませんで、エネルギー資源の乏しい日本にとって水力発電は大変重要なエネルギー源であり、そのためのダム建設は万難を排してなし遂げていかなければならず、また治水ダムも国土の保全、人命に直接関係もあり、何が何でもつくり上げる必要があろうか、このように思います。しかしまた、今人間を取り巻く自然環境の重要さも改めて見直されており、また子供たちの育っていく教育上の環境から見ても、自然に親しむということは大変必要なことである、このように言われております。エネルギー政策を優先するか自然保護を優先するかといった問題は、その時代その時代で優先の順位も程度も異なってくる、このように思います。そういった時代の変化によっていろいろな問題が起こっているわけですが、今後大きな問題になってくると思います。  具体的な例で申し上げますと、大分県宇目町に北川ダムという大きなダムがあります。このダムは、昭和三十五年六月に着工して、三十七年八月に発電開始をしているのですが、その当時、このダム建設に際し、地元の漁協はわずか百五十万円で、その後何らの要求もしないとの文言の入った補償契約書を交わして、積極的に協力をいたしております。ところが、今この宇目町、大分過疎化してまいりまして、町のそういった状況を憂えております心ある人たちは、この山奥の宇目町の最大の資源が自然であり、昔どおりに小川に小魚がいっぱいいてくれたらな、こういう思いでいっぱいになっております。この宇目町の何とかして自然を取り返したいという人たちの気持ちはまことに大事なことであり、文明の発達とは、時代時代を経ながらエネルギーと自然保護の問題も必ず両立すべく解決していく方向にあると確信いたしております。  そういう点で、こういったダムを所管しています建設省、通産省、それぞれのお考えをお伺いいたしたいと思います。つくってしまえばもう終わりということはないと思いますので、何らかの救済の道があってよいと思いますが、どうでしょうか。
  268. 志水茂明

    ○志水説明員 北川ダムにつきましては、先生指摘のとおり、三十七年度に洪水調節と発電の多目的ダムとして建設されたものでございます。三十四年六月六日に大分県電気局長と宇目漁業協同組合長との間で漁業補償に関する契約書が締結されているのも先ほど先生の御指摘のとおりでございます。これを見ますと、第二条に「魚道並びに鮎の降下装置を設備しないこと」で両者了解しているということになっております。これは北川ダムの下流の約五キロ地点に下赤ダムという調整池があるわけでございますが、これにも魚道をつけてほしいという御要望が地元から出ているわけでございます。これにつきましては、上流の流量が少ないといったようなこと、それから魚道の効果に凝固がある、事業費に比べまして効果に疑問があるといったようなことで、両方が納得の上でこのような契約になったものと聞いております。  私どもといたしましては、このような補償の契約書がある以上、その後のいろいろ地元の御要望は聞いてはおりますが、補償問題として考えるというわけにはちょっとまいりません。いろいろお聞きいたしますと、大分県の方でも水産振興策をいろいろおとりになっているようでございますし、それから当時の電気局、これは今企業局でございますが、ここもその一環といたしましていろいろ助成をいたしておるようでございます。それからまた、建設省といたしましても、北川ダムのこういう地域に与えます影響が非常にあるというようなことから、今度五十九年度から新しく貯水池周辺環境整術事業というものに着手する予定にいたしております。この事業は、貯水池といたしまして買収しております土地のうち、余り浸水のおそれのない上の方、これは常時満水位以上の土地で、大体二ヘクタールと言われておりますが、これの整地を行いまして芝張りあるいは植樹、それから水飲み場だとか簡易便所、案内板、こういったようなものを設けまして、憩いの広場というような施設として、広場にそういうものを設置いたしまして、そうして自然環境との調和を図り、同時にまた一般利用者へのレクリエーションとしての活用を図るといったようなことを五十九年度から着手する予定にいたしております。こういったことで、私どもといたしましては、河川環境保全ということにつきましては今後ともできるだけの努力をしてまいりたい、このように考えております。
  269. 高木宏明

    高木(宏)説明員 通産省でございますが、水力発電所の建設をいたします場合に、当然地元の御了解、御同意をいただいてから初めて始めるわけでございますが、もちろん運転開始後におきましても地元の御理解を得て発電をしていかなければならぬ、これは当然のことだと思うわけです。  そこで、いろいろと地元から御要望がある件、一般的にもいろいろその後ございますけれども、そういった問題については、まず第一義的には、当事者間で両方の立場を尊重しながらお話し合いの上、正しい解決を求められるべきだと思います。  それで、私どもといたしましても、当然ニーズがその後変わってまいりますから、したがって、水力発電所に対する周辺への諸影響が変化してくるわけでございますけれども、そういったものに対処いたしますために五十六年度から水力施設周辺所在地交付金というのを設けておりまして、それでそういったものに対して、市町村の事業に対して交付をしようということになっております。特に五十九年度から稚魚の生産施設でありますとかあるいは養殖施設に対してもその交付金が使用できるように使途の拡大を図ることを考えておりまして、そういったことでできるだけ私どもとしてもその後のいろいろなニーズの変化による環境への諸影響に対して、そういったことで緩和をしてまいりたい、そのように思っているわけでございます。
  270. 木下敬之助

    ○木下分科員 補償はもう済んでいるから補償という考えじゃないけれども、前向きに環境整備のためのいろいろなことはやっていきたい、そういう話だと承っておきます。補償そのものも、百五十万というのはほかのその当時のいろいろな例を見てもちょっと安過ぎるのじゃないかということで、その辺にまたメスを入れて論議すればまた別の論議になると思いますからそれはいたしませんけれども補償は済んでいるとしても、地域の人たちの環境に対する前向きの要望にはぜひこたえていただきたい、このように思います。  環境庁にお伺いいたしたいのですが、今のはそういった通産省や建設省の立場、また内水面漁業の振興という経済面からの立場ですが、環境庁はこの問題を生態系の保護とかそういう目で見たときに、魚道のないダムをもうつくってしまった、しかし前向きにはもとに戻していかれる努力をなさっていくべきじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。この問題どう考えられますか。
  271. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 私どもといたしましては、自然が一遍失われますとなかなか復元が容易でないという場合が多いわけでございますので、公共事業等行われます場合には十分に調査をされまして、アセスメントの結果によりまして措置していくことが基本だと考えております。しかしながら、一遍失われたものを事業者なり地方公共団体の立場で自然生態系をそのままになるべく維持する、あるいはもとに戻すような努力をする、こういうような配慮をされることは大変結構なことだと考えております。
  272. 木下敬之助

    ○木下分科員 されるのは結構だで、あなたの言われることもわかるのですけれども、まして取り組めば大変困難な問題です。私もこれは特に北川の八十メートルという高さのことやら考えれば、そんな簡単なことだと思いませんけれども、やはり前向きに前向きに前進していく必要があるし、この問題は環境庁環境保全という立場で前向きに取り組んでいただくのが一番いいのじゃないかと思うのですが、どうですか。もうできてしまったものは仕方がないで、よそがやるのはそれはいいことだというのじゃなくて、環境庁自身もこの問題にもう少し興味を持って、何かそんなに金のかからない、例えばちょうど季節季節にその下の水を魚に傷つけないようにくみ上げる方法を研究するとか、せめて海外の例やらを研究なさるぐらいのことはなさっていいのじゃないかと思いますが、どうですか。
  273. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 御質問の御趣旨は大変ごもっともと承るわけでございます。ただし、実は私どもの研究なりがそこまで及んでない面がございまして、ごく本当の一部でございますが、国家的な学術的価値があるというような植物の復元、例えば尾瀬の湿原の失われた植物の復元のような事業をわずかやっておりますが、ほんの一部でございまして、まだまだこういうような水産動物の問題までは、なかなかそこまでは行ってないという状況でございます。
  274. 木下敬之助

    ○木下分科員 大変いいヒントをいただきました。サンショウウオなんかのすばらしいものが見つかったときにはまたお願いするということにいたしたいと思います。この問題はそのくらいにさせていただきたいと思います。どうぞ各省庁、よろしくお願いいたします。お忙しいところ、ありがとうございました。  それでは、次に水田利用再編対策についてお伺いいたします。  五十四年十月末には二百十六万トンあった米の備蓄が、昨年は一時は十万トンを切り、米不足になるのではないかとまで言われましたが、政府はこのような事態を予測していたのか、また近年の不作の状況に対して水田利用再編対策はどのように対処してきたのかをお伺いいたしたいと思います。
  275. 松浦利尚

    松浦政府委員 四年連続の不作ということで、現在在庫水準がかなり下がってきていることは事実でございます。五十八米穀年度、五十九米穀年度、いずれも翌年度に十万トンずつの繰り越しという状況になっておりまして、決して高い水準であるとは思っておりません。将来これを適正な在庫水準まで持っていこうという考えでございますが、ただいま先生お尋ねのそこまで予測していたかということでございますけれども、四年連続の不作までは予想していなかったということでございます。
  276. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 後段のお尋ねでございますが、水田利用再編対策におきましても、米の在庫事情をにらみまして転作等目標面積を決定いたしております。まず、五十五年の大冷害ということにかんがみまして、五十六年から発足予定でございました第二期対策におきましては目標を六十七万七千ヘクタールというふうに想定し、決定したわけでございますが、五十六年の目標は、四万六千ヘクタール減じまして六十三万一千ヘクタールということで運用いたしております。また、その翌年も不作でございましたので、五十七年目標は六十三万一千で据え置いております。さらに、三年続きの不作ということで在庫事情も非常に低下してまいりましたので、五十八年の目標におきましてはさらに三万一千ヘクタール減じまして在庫復元を図るという観点から六十万ヘクタールということに、初めて目標を実質的に落としたような経過でございます。
  277. 木下敬之助

    ○木下分科員 そういう状況の中で、昨年十一月に水田利用第三期対策が決定されたわけですが、それによりますと各年平均四十五万トンの在庫積み増しを行う計画となっています。昨年までの冷害による見込み違い等、既にもう十万トンしか在庫がない、こういうことを考えると、四十五万トンずつの積み増しては少ないのではないかと考えますが、どうでしょうか。
  278. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 在庫だけの事情から考えますと、例えば五十九年単年度で百万トンなら百万トン在庫造成をいたしまして、その後は、在庫がある程度できるわけですから、今度は転作目標の方をふやしていく、そういう対応というものも一つの選択としてはあり得るのではないかという議論が三期水田対策の議論の過程で行われたわけでございます。しかしながら、転作を実施する農家の側からいえば、五十九年は大幅に目標が緩和されるけれども、次年度以降はまた目標がふえるということになりますとなかなか対応が難しくなりますし、実際問題として、次年度にまた目標がふえるということが明らかでございますれば転作目標の引き下げ効果というものも余りないのではないか、こういうふうな懸念もございまして、やはり三年間に平均的に積んでいく、その結果三年間転作目標は変えないでいくということの方が農家側の現実にマッチした対策ではないか、かような考え方から三期の需給の枠組みを決定したわけでございます。
  279. 木下敬之助

    ○木下分科員 そういうふうにおっしゃいますけれども、しかし、平均的に計画からどのくらい少なかったかということを見ますと、五十五年から五十八年でも七十六万トン少なくて、一番近い五十六年、七年、八年の三年間は五十五万トンですね。これはほとんど三回ともそろって五十万トン。このことを考えると、初年度四十五万トンの積み増しをして、しかも今十万トンしかないと考えると、百三十万トン一遍にするなんというのは少し行き過ぎで、農家の方も調整に困るにしても、ちょっと四十五万トンずつというのは、少し間違えれば米不足になる可能性を含んでいることをやっている、こんなふうにとれるのですが、その点。  それから、仮に四十五万トンの在庫積み増しができなかったときに、その積み増しのできなかった分を次の年に足すとかして、三年間で最終的に百三十五万トンを目指しているのか、一体適正な在庫はどうあるべきだと考えておられるのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  280. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 適正在庫論の問題は、後ほど食糧庁長官からお答えを申し上げます。  前段のお尋ねでございますけれども、確かに今御指摘のように、百万トンと言わぬまでももう少し考えられないか、そういう考え方もできないことはないわけでございます。ただ、この第二期対策におきまして、先ほど申し上げましたように、初年度四万六千ヘクタールの軽減をいたしたわけでございますが、これはあくまでこの年限りである、翌年以降は二期の目標である六十七万七千ヘクタールに戻るということがはっきりいたしておりましたので、現実の転作は六十七万ヘクタールぐらいのところまで実施されてきておるわけでございます。これには農家の保有水田の規模とか形状等の関係からなかなかその目標どおりぴったりはいかないというふうな問題もございますけれども、同時に、来年になったらまた目標はふえるという意識がございまして、相当な超過達成になっているということも事実でございます。もちろん予定どおりの米が生産されなかった背景といたしましては気象条件が悪かったなどという理由があるわけでございますけれども、同時に、目標がかなり超過達成になっているということも米の実収にある程度影響を与えていることも事実でございます。  そういう観点からいたしますと、仮に初年度において何かドライブをかけるというふうなことをやりましても、次年度以降においてはそれがまた転作目標でふやされるというふうなことが明々明々であるということになりますと、なかなか農家側の対応も難しい。こういうことを大変重く見まして、四十五万トンを三年間平均的に積んでいく、こういう考え方が一番いいのではないかというふうな結論に落ちついたわけでございます。
  281. 松浦利尚

    松浦政府委員 適正在庫についての私どもの考え方について御説明をいたしたいと思います。  先ほども申し上げましたように、確かに現実の在庫水準がかなり低いという状況になっておりますし、また、お米は国民の主食でございますから、その安定確保あるいは円滑な需給操作ということを考えますと、できるだけ多く在庫を持つということが適当だろうと思います。  しかしながら、一方におきまして、やはりお米の在庫が非常に多くなるという場合にはそれなりに食管の経費負担というものも非常に多くなりますし、それからまた、よく考えておかなければならぬことは、第三次の過剰が起こってはまた大変だということでございます。今のような時期でございますから、余りそのようなことが論議されないわけでございますが、例えば昭和五十年から五十三年までの四年間、そのうちの昭和五十一年は実は作況指数九四という状態でございました。ところが、その残りの三年間で六百五十万トンの過剰がたまり、かつ二兆一千億のお金が国民の血税で払われるという状態でございます。したがいまして、このような三たびの過剰を発生しないということ。それからもう一つは、消費者の新米志向ということも考えておかなければいかぬということもございます。  さような立場から、在庫水準はどの水準が適当かということは、作柄なり需要なりを見て決めていかなければならぬと思いますけれども、よくその点を考えまして、先ほど農蚕園芸局長が答えましたように四十五万トンを毎年積み増す、これが一番妥当だというふうに考えた次第でございます。
  282. 木下敬之助

    ○木下分科員 いろいろ大事なことがあるでしょう、あれも大事、これも大事。しかし、二兎を追う者一兎も得ずといいまして、特に大事なことは、万難を排してそれをするというのが大事だと思います。そんな中で、日本人の米を足らないようにはさせない、これはやはり大事をとって、後で償いのつくものなら、そういうことの絶対ないような方針でやられることが大事だ、このように思っております。  もう時間がなくなりましたので、一つ二つ一緒に申し上げます。  今、古米ができるとかいろいろなことを言われましたけれども、東南アジアやアフリカの発展途上国への援助米を打ち切るとの決定に対しても相当な反発と突き上げが起こっているように聞いています。だから、まず我が国民のために余裕を持って計画をしていく。それもひどい余裕というんじゃないですよ。過去の三年と同じだけの不作だったときにはもう赤が出るじゃないか。まして、ことしはこんな雪の状況でしょう。これからの天候もどうなるかわからないのに、そんなすれすれのことを初年度からやらなくていいじゃないかという、ごく当たり前のことを私は言っていると思うのですね。その程度の余裕を持ってやって、もし、それ以上にとれたときは喜んで援助をすればいいじゃないか、このように思います。古米というか、そういう過剰にとれたときの対策としてこんな方法が一つある。  それからもう一つは、他用途利用米というのをまたやるようになったわけですね。だから、この米は備蓄の方へ回す、もしくは備蓄の古米と取りかえて、新米志向ならそちらで食べてもらってやったらどうですか。これは表現としては、一遍他用途にしたものを人間に食わせるのかという論議もあろうかと思いますけれども、物は同じものですから、ちゃんとやりさえすればできるのじゃないかと私は思いますので、いわゆるお役所仕事にならないように、その辺は絶対わかっていただける大臣と信頼しておりますから、どうぞよろしくお願い申し上げまして、もう時間になりましたので、最後に、新稲作運動に対する大臣のお気持ちをお聞かせいただきまして、私の質問を終わりにいたしたいと思います。
  283. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 新稲作運動につきましては、たくましい稲づくりということをうたっておりますが、御存じのとおり米が構造的に過剰基調にあることは否めません。そうかといいながら、水田利用再編対策を遂行することによって過剰基調を抑えることができるわけでございますが、また同時に、需要に見合ったものを供給しなければならないわけでございます。  そこで、四年連続不作というときに、確かに天候不順というのが一番大きな原因であったかもしれませんが、栽培技術の低下等もございました。それらを含めて今官民一体となって、せんだって全国知事会、市町村会、そしてまた農業団体にお願いいたしまして御協力をいただくことになりましたが、これらのいろいろな不良条件を克服するような、そんな稲づくりということでこれを打ち出したような次第でございます。
  284. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて木下敬之助君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤誼君。     〔谷垣主査代理退席、島田(琢)主査代理     着席〕
  285. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 時間がありませんから、ずばり聞いていきます。  最近の畜産経営、全体的に大変でありますが、その中で特に肉用生の肥育牛経営及び子取り経営の現状とそれの問題点は何と考えておるか。
  286. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 まず、子取りの方の経営から申し上げますと、これは五十四、五年ころ非常に価格が高うございまして、その時点におきましては経営収支等もようございましたけれども、大体五十七年の後半から価格が大変下がってまいりました。したがいまして、五十七年以降の繁殖経営につきましては経営状況が悪化をいたしております。  ただし、こういうこともおもんぱかりまして、御承知のように、子牛価格の安定基金制度がございまして、値下がり額の九割はこれによって補てんをいたしますとともに、それ以外に子牛生産奨励金を交付しておりますから、農家の実質手取りは、その値下がりほどのことではございませんが、ある程度の補てんをいたしております。ただやはり価格が低迷いたしますと生産農家は生産に関して弱気になりますものですから、いろいろ子牛の買い付けを増加させますための施策、例えば御承知の家畜導入事業とか、そういうことのほかに、昨年は特に秋に雌子牛を買い入れますことを促進します臨時の助成事業等をいたしまして最近ようやく回復基調にございますが、なおやはりもう少し手当てが要るのではないかと思います。  肉用牛につきましてはその反対でございまして、子牛価格が高い時点、五十四、五年の高い子牛を買いました経営につきましては実はかなり問題がございました。御承知のように、五十七年に負債整理等をいたしまして経営の負債に対する重圧を除いてあげたわけでございますが、子牛価格の低迷の中でいわば購入資材に当たります子牛価格が下がってきたこと、価格が比較的安定してきたこと、それから飼養頭数が増加してきたこともございまして、肥育経営につきましては、最近はどちらかと申しますと安定化の方にたどっておると思います。簡単でございますが……。
  287. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 今も答弁ありましたように、言うなれば子牛価格ですね。資料によれば昨年の十二月などでも二十五万を下回っている、そういう状況にありまして、例の保証基準価格二十九万二千ですか、これから見ると標準価格は、特に雌が低いのですけれども、そういう形が昨年末もずっと続いておりますね。それは今も言われたようにそれなりの政策上の努力はされておっても実態はまだそういう状況にある。したがって、全体的に所得もそんなに高くはない。これを見ますと、肉牛の方は負債もかなりありますね。しかも、全体的に経営上の所得も低い。若干いい兆しは見えてきたとはいいながらも、全体的には肉牛の経営はもう一つぱっとしない、こういう事態にあると思うのです。  ですから、そういう点でいろいろな施策はされてはきていることは私も承知はしておりますけれども、やはりいま一段の政策上の配慮と努力が必要だと思うのです。私などもそういう子取り、肥育業の経営の地域に住んでおりますけれども、そういう要望が極めて強い、このことはぜひ皆さんの方に、当局の方に私の方からも申し上げておきたいと思うのです。  そこで、こういう厳しい肉牛経営の中にあって、今度は農畜産物の自由化の圧力がかかってきている。言うならば、まさに前門のトラであり後門のオオカミだ、こういう状況下にあるわけですね。この事態は大臣も御承知のとおりです。そういう厳しい環境の中で農畜産物の輸入自由化の圧力がかかっている。その中で我々休んでいるわけにいきませんから、今後の肉牛の政策をどう持っていくか、非常に知恵と努力を必要とするところだけれども、この辺のところはまず農水大臣に決意のほどをお聞きしたいのです。  何といっても当面する外圧、言うなれば、牛肉の輸入枠拡大の圧力がかかってきますね。これは今もありましたような日本の肉牛の経営とそれから生産性の向上とでもいいましょうか、そういう点からいってこれは当然のことながらこの枠拡大というものに対しては私たちは絶対抑制をしていくべきだ。これをやられたら、野放しになっていったらせっかくの経営の好転もそれから生産性の向上もみんなめちゃくちゃになっちゃうわけですよ。ですから、これは言わずもがなでありますけれども、まず、そこのところがきちっとしなければ、どんな努力をしても水泡に帰するということでございますので、その辺も含めた大臣の決意のほどをひとつお願いしたいと思います。
  288. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 牛肉につきましては昨年成立いたしました酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律、これに基づきまして合理的な国内生産による供給を基本とする、そして円内生産で不足するものを計画的に輸入するというのが輸入の基本でございます。私も農産物の輸入に関しましては、国内の農産物の需給動向、これを十分踏まえた上で、日本農業というものが着実な進展を続けるというものと調和の合った形で輸入がされるべきものというぐあいに考えております。  そこで、今回の農産物の交渉に際しましては、一昨年四月の農林水産委員会の決議、また本年一月の農林水産委員会からの申し入れ、この趣旨を踏まえまして、農業者が犠牲にならないように、我が国農業を着実に進展させていくということを念頭に置いてこの枠の交渉はやってまいります。
  289. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 決意が具体的な成果になってあらわれてこなければ、これは農民が納得できないのであります。  ちょっと具体的な点で入りますと、御承知のとおり東京ラウンド、昭和五十八年度の輸入枠十四万一千トン。アメリカの言い分は高級肉一万トンですか、それから一般肉一万トン、そういうことで合計しますと二万トン、そういう要求立場。これが四年間となりますと、十四万一千トンに合わせますと四年後には二十二万一千トンになる。これは国内生産の三十三万八千百トンから見ますと、これの六五%ぐらいになるのですね。ですから、これは大変な数字になるわけです。今大臣は、国内生産で不足するものを輸入するのだと言ったけれども、とてもじゃないが国内生産の六五%も輸入されたら、不足どころか壊滅的な打撃を受けるわけですから、これはとても我が方としてのめるような代物ではないと私は思うのです。ところが、きのうきょうの新聞などによりますと、日本側の提案だと言われるものが、ガットとの絡みでいろいろと新聞で報道されているわけです。これは信憑性は確かではありませんけれども、ある報道によれば、高級牛肉五千五百トンですか、私も情報はどうもはっきりわかりませんので、仮に一般牛肉もそれ相応のものだとすれば、合計しますと、大体四年後には四万四千トンですか、それで、十四万一千トンに四万四千トンですから、十八万五千トンぐらいになりますから、そうすると、先ほどの国内生産の三十二万八千百トンの大体五五%に相当するというふうに見られるわけですね、私のこの資料なり計算が合っているかどうかわかりませんけれども。  もしそうだとするならば、先ほど言われました国内生産の不足するものということに五五%相当が――国内生産に対して輸入がですよ、これが相当数のものであるのかどうか。この資料の信憑性が一つありますけれども、この辺のところがはかりかねているわけですよ。したがって、その辺の信憑性の問題とそれについての考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  290. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 まず、アメリカが言っております数字と申しますものでございますが、これは御承知のように、交渉の中身をお互いに公にしないということになっておりますけれども先生おっしゃったような大きな数字でございますと、私ども需要の伸びをある程度想定し、国内生産もある程度伸びるという前提でいろいろと想定するわけでございますから、到底そういう大きな数字が、何と申しますか、需給の中で説明できる数字ではないと思っております。  それから、昨日でございますか出た新聞の数字でございますが、私どもそういう数字につきましては一切関与しておりませんで、私どもは、大臣が今申し上げましたように、需要とそれから国内生産の見通しの間をどのように調整をつけるかということでいろいろ試算はいたしますけれども、そういう具体的な数字として何か公にするようなものを持っているわけではございませんし、また交渉にかかわることでございますので、一切その種の資料には私どもとしては責任を持てないわけでございます。  それから、考え方でございますが、国内生産がそのままとまっておりまして輸入だけがふえるというような試算は私どもにはございません。私どもは、需要もある程度過去の経緯等を比べ、それから現実の牛肉の消費の伸びを見ましても需要は伸びておりますが、その場合に、国内生産も当然のこととしてある程度伸びていく、その間でどういうような需給関係ができるかということでございます。  もう一つ申し上げておきたいのは、実はこの種の問題は一定の見通しを立てることも一つ必要ではございますけれども、何と申しましても、こういうものの生産というのは、何か当初予定した数字のとおりにいくわけではございません。例えば、東京ラウンドの時点で申し上げましても、協定を結びました五十三年の次の年は、実は国内の牛肉生産が思ったほど出てきませんで、結果的に輸入を大幅にふやした経緯もございますが、逆に昭和五十六年のように、国内の酪農の駄牛淘汰の進行によりまして国内生産が大変伸びましたときは、私どもは前年に比較して輸入量を減らしてきたという経緯もございます。  したがいまして、単なる数字の伸びということだけではなくて、大臣からもお答えしましたように、需給の動向を見ながら適切に輸入をするというのが私どもの方針でございます。
  291. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 需給の動向を見ながら適切に対応すると言ったって、結論は数字の問題になってしまうわけです。ですから、ここではっきりした数字は出せないにしても、やはりそれ相応のところに落ちつかせなければならぬと思うのですが、こういうアメリカ個の総力を展開したような外圧の中で、こちら側では反対だ、阻止だと頑張っているのですけれども、どうですか大臣、所を得るような形でこれは決着できますか。額のことはいいですよ。まあまあこの辺だったらということで落着させる自信がありますか。
  292. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生御存じのとおり、前大臣、金子先生も三月いっぱいで決着をつけるということを何遍も申しておりますし、前大臣のお約束ですから、できるだけそういうぐあいにしたいと思っております。  それで、今先生おっしゃいました適当なところで決着をということでございますが、これはやはり農林水産委員会の決議、申し入れ、これを念頭に入れてこの交渉に当たってまいります。
  293. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 決意のほどはよくわかるのですが、ただ、これは単なる農畜産物の輸入自由化あるいは牛肉というレベルの問題ではなくて、言うなれば、日本だって四一%、相当今までも入れているのですし、向こうだって輸入の規制をやっているわけですから、そういう絡みの中でまさにエンドレスな圧力であり、交渉だと思うのですよ。そうすると、全体の枠組みを考えますと、単に農畜産物あるいは農林という分野だけで解決できない、まさに国益のぶつかりみたいな問題だと思うのですよ。そうすると、これはすぐれて産業構造の言うなれば日本の工業製品輸出突出型というか、そういう輸出の、産業構造のところまで触れていかないと、まあまあ落ちついたというところにならぬのではないかという感じ、そこまでやはり根の深い、エンドレスな問題じゃないかという感じがしてならないのです。私も昨年の八月にジュネーブに行ったときに、当時のガット提訴の担当である池田公使でしたかと会っていろいろ話をしたのですが、それも絡めた大変幅の広い、極めて政治政策的な問題なんですね。その辺の判断を大臣はどう見ていますか。
  294. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私といたしましては、今からこれは交渉に当たるわけでございますが、今申しましたような決意のもとに交渉に当たってまいります。
  295. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 決意のほどの披瀝がありましたので、それ以上のことは今の段階でちょっと無理だと思いますので、大臣に、日本の農畜産、特に肉用牛の生産者は非常に期待をしておりますので、決意を新たにしてこれについては折衝してもらいたいということだけ申し添えておきたいと思います。  それでは、引き続いて漁業の問題についてちょっと質問していきます。  日本の漁業は、二百海里体制に入ってから年々厳しい状況になってきておりますが、私も海岸に住んでいる者の一人として、実感として受けとめているわけであります。特に漁業は狭められて、漁船は沿岸水域に集中してきている。しかも、その船はほとんど機械、大型化ということで、魚はどんどんとりまくるといいますか、漁獲努力量が増大して魚の資源はどんどん少なくなってきている。そういう中で、したがって漁船の水揚げは少ない、油代は高い、魚価は低迷している、こういう状況の中で、全体的に資源がなくなってきている、それから漁業経営者も経営が苦しくて倒産が出てきているという状況が随所にあるわけです。私は、昔からのノルウェーと並ぶ日本の水産国として、また魚を食べてきた民族として、このまま放置はできないと思うのですよ。  そういう点、努力はされているわけでありますけれども、今申し上げたような日本の食生活の改善、沿岸漁業を守るという点から、従来もやってきたところの栽培養殖業に重点を置いて沿岸漁業の振興にやはり一段と力を注いでいかなければならぬ課題ではないか、そしてまた、これからの漁業というのは、とりまくる略奪の漁業から、育てて、しかも資源を大切に有効利用するという育ててとる漁業に変えていかなければならぬのじゃないか。そういう点では、一口に言えば資源管理型漁業といいますか、そういう方向をやはり志向していかなければならぬのではないかというふうに二点私は考えるわけでありますが、その点についての見解をひとつお聞きしたいと思うのです。
  296. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、二百海里体制移行後既に七年をけみするわけでありますが、その間、第二次オイルショックで油代が上がるというようなことで、おっしゃったように、日本の漁業は非常に難しい局面に逢着しておるわけであります。御指摘のように、沿岸漁業の重要性は、国際漁業がそういう格好になりますと、国民に対するいいたんぱくの供給源としても重要性はますます高まってくるわけでございまして、かねてから、御指摘の栽培漁業あるいは養殖業等を含めましたいわゆる沿岸漁業の振興、先生、つくり育てる漁業とおっしゃいましたが、そういうことについては力を入れてきたわけでございます。  若干内容につきまして最近の私どもの考え方を申し述べさせていただきますと、沿岸漁場整備開発事業という事業がございまして、これにつきましては、実は公共事業として位置づけられ、金額がセットされましたのが昭和五十年代に入ってからでございまして、まだ年代も公共事業の中では一番若いということもございます。反面、若いということで年々伸び率だけは各公共事業に比べますとよく面倒は見てもらってきておるわけでありますが、絶対金額としましてはまだまだ御要望を十分満たすほどには育ってきていないというのが現状でございます。しかしながら、来年度の予算につきましても各種公共事業の中では最高に近い金額を、財政当局の御協力をいただきましてセットしていただいたわけでございます。  そういったことで、今後の増殖あるいは養殖事業を行うための場をつくるということで、畑づくりとしての沿整事業は今後とも力を注いでいきたいと思っております。  また、そういったできました場を利用しましての海の養殖事業等のための種づくりといいますか、御案内の栽培漁業につきましても今三本立てで仕事をやっておりまして、一つは、技術開発を中心にいたしまして国の栽培漁業センターを各所に配置をしてまいりました。五十九年度におきましては、まだ太平洋中区というところだけが欠如をいたしておりますので、太平洋中区にできますれば栽培漁業センターをつくりたいということで調査をいたしたいと思っております。  それから、北陸地方では若狭湾の国の栽培センターの事業場が五十九年度に開設に至るものと思っております。  県営の栽培センターにつきましても、各県にほぼでき上がっております。  国、県、さらに末端までいきまして漁協、市町村におきます。そういった仕事の助成につきましても地域パイロット事業としてやっておりますが、いずれにしましても、こういった仕事を地道に積み上げることによりまして、ただいま先生指摘がございましたような沿岸漁業振興というものに着実な努力を払ってまいりたいと思っております。
  297. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 それで、取り組む姿勢、決意がわかりましたが、第二次とありますように、沿整事業は非常に重要なこれからの事業でありますが、同時にまだ若いわけです。ですから、沿岸の漁民は非常に期待をしておりますし、この点大いに努力をしていただきたいと思うのです。  ただ、今予算のことについて触れられましたけれども、五十九年度を含めて事業ベースで大体三〇・九%なんですよ。六年間のちょうど真ん中ですから五〇%ぐらい行っていなければいかぬはずです。ところが、三割くらいですから、大臣、これは予定からいうとまだまだおくれているわけです。極めて重要な事業なのに事業ベースでいうと三分の一ですからね。  言葉では決意と言ったって、やはり予算がないことにはどうしようもないわけですから、これはぜひ予算の点からも裏づけて、将来にわたる沿岸漁業の振興と、昔からのたんぱく質を魚に求めるという、これにこたえていかなければならぬのじゃないでしょうか。  特に、私も海岸におりますと、いろいろな並み型魚礁の問題から大型から小規模増殖場いろいろあります。私も山形県の日本海の沿岸に住んでおりますが、例えば小規模養殖場ですか、アワビの養殖など大変大きな期待があるわけです。それなりの成果を上げているわけです。  ですから、これはぜひひとつ考えてもらいたいし、ずっと経過を見できますと、ひがむわけではないけれども、どちらかというと太平洋の方が先行しまして日本海側がおくれている感じもいたしますので、その点は栽培センターも含めてひとつ十分配慮していただきたいというふうに思います。  それからもう一つは、今魚を食べることを言いましたけれども、実はことしの三月三日の読売新聞を見ますと、「コレステロール・ショック」ということで、日本人が二十代くらいでアメリカの同年代よりもむしろコレステロールが多い。それは子供のときから出てきている。いずれ日本人は成人病に子供のときからかかるのではないか。そういうことがずっとありまして、そのくだりの中に、日本人の食事がヨーロッパ側に非常に偏っていっている。だから、もう一度日本の昔からの食事を見直さなければならぬのじゃないか、もっと野菜と魚を食え、簡単に言うとこういう趣旨なんです。しかも、子供のときから食わせなければだめじゃないか、こういう言い方であるわけです。私もこれは大いに賛成です。私も子供のときから魚、特にイワシなどはボリボリ食べてきた方ですから、いまだに私もコレステロールは少ない方です。この中にもありますけれども、魚は動物性脂肪であるけれども、コレステロールを上げる心配はなく、むしろ下げる働きをする不飽和脂肪酸を多く含んでいる。こういう新聞記事があるのです。  専門的なことはわからぬけれども、そういう点からいうと、子供のときから魚を食べさせる。それも小骨のある魚ですよ。すぐ焼くとか、面倒であれば何か加工するとか、しかもイワシなんか八割はえさに持っていくのですからもったいないわけです。こういう魚を食べる習慣をつけ、子供のときからきちっとした丈夫な子供をつくる。そのためのたんぱく資源である魚は日本人がつくった魚を食わせる。これをやはりやらなければならぬのではないかと私は思いますが、その辺、大臣どうですか。
  298. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生がおっしゃいましたように、日本型食生活をもっともっと定着させる、そういうことで努力いたしております。特に水産庁長官と私で「ザ・サカナ」ということで、魚を食べるように一生懸命奮闘してまいります。
  299. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 大臣の決意のほどを聞きまして、私も海岸に住む者として大変心強いのですが、これは日本人の将来にかかわる体力づくりですから、私は、ぜひひとつ考えていただきたいということを特に希望しておきます。  最後に、肥料価格安定等臨時措置法のことについてちょっと触れておきたいと思います。  肥料価格安定等臨時措置法は六月末で期限が切れることになっているわけです。過去数回延長されてきたわけですけれども、この時限立法はまたもこのたび延長する動きだということが報道されておりますけれども、その中で一般の世論として、この法律は実際は農民に高い肥料を買わせてきたのではないか、また今農産物生産費の低コストが求められているときに延長することは問題ではないか、こういう議論も一方にあるわけです。これから審議をされていくわけでありますけれども、私は農家の皆さんにより安い肥料を安定的に供給するということは、食糧というものを育てる肥料ですから、その点非常に望まれると思うのです。より安い肥料を安定的に供給するということは農業の基本ですから、そういう点から見た場合に、このたびの肥料価格安定等臨時措置法をまた延ばす積極的な理由といいましょうか、これはどの辺にあるのか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  300. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 今お話がございましたように、この法律の目的は、一つは、国内の肥料工業のコストに基づいて全農と生産者団体が価格の取り決めをいたしまして、それによって肥料を供給していくということでございます。いま一つの目的は、輸出と内需の調整ということで内需優先を図る、こういう二つのねらいを持って今の法律ができ上がっておるわけでございます。  それで、輸出調整のための手段といたしましては、既に硫安輸出株式会社が解散をいたしておりますので、これは別個の法律によって今後対処することにいたしまして、コスト主義に基づく価格の取り決めという条項を内容とし、名称も変わりまして、肥料価格安定臨時措置法というふうな形で今国会にお出ししたいと思っております。  この法律のメリットでございますけれども、今お話しのように、メーカー側で合理化を進めましてその効果を農家に還元をしていくということと、いま一つは、輸出もございますけれども、輸出によって生じた赤字がありましても、原価主義による価格で、これを国内価格には転嫁させない、こういう価格形成上のメリットがあるわけでございまして、過去の推移を眺めてまいりますと、石油ショックのように原材料価格が非常に上がったときは別でございますけれども、おおむね毎年取り決め価格は引き下げの効果が上がっておるわけでございます。  ただ、農協関係者の中にもいろいろ御議論はございまして、この法律の再延長を政府にお願いするかどうかという際に、系統内部でいろいろ議論の経過があったことは承知をいたしておりますが、最終的には系統全体として延長すべしということで意見集約がなされたものというふうに理解をいたしております。     〔島田(琢)主査代理退席、谷垣主査代理     着席〕
  301. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 いろいろな議論のあることは今も話したとおりで、私もその点は理解しておるのですけれども、ただ価格の面だけで比較してみると、こういうように矮小化されるのもどうかとは思うのだけれども、端的に数字を見ると、昭和五十七年などを見ましても、輸出価格が国内価格のざっと六〇%ぐらいですか。ひどいのになりますと、昭和四十六年には三六%ぐらいだと言われているのですよ。適用期間の十九年間の平均が、輸出価格が国内価格の七一%という数字も出ている。これは、運賃とか保管経費とか包装費等、これを算入しますとどのぐらいになるのか、もっとその差はなくなるのだろうと思いますけれども、いずれにしても、これは事実として差があるわけです。  そうすると、このたびの延長問題について、ここに朝日新聞の論調などもあります。高価格押しつけを延長するなみたいな、こういう論陣なりがかなり新聞に出ているわけです。ですから、これは全中でそういう要望を出されたということも報道されておりますし、また一面、今のような延長するなという議論もありますし、要は、その辺十分慎重に対応しなければならぬと思いますが、いずれにしても、これから日本の農畜産物が低価格を求められている国際環境の中で、やはり安い肥料を供給するということが基本だと思うのです。しかし、同時にもう一面、先ほども言まれましたけれども、ナショナルセキュリティーの関係やらあるいは日本の食糧の安全という点からいって、一定量の安定供給ということもこれまた必要だと思うのですね。その辺が非常に難しいのだろうと思いますが、ぜひ十分見直して、そういう各界の期待にこたえるような形で論議を尽くしていただきたい、このことを最後に申し上げたいと思うのです。  大臣からひとつ感想をお聞かせいただきます。
  302. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生言われるとおり、農産物のもととなる肥料でございます。できるだけ安い、安定した価格でこれをお渡しすることができるように努力してまいります。
  303. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 では、終わります。
  304. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて佐藤誼君の質疑は終了いたしました。  次に、権藤恒夫君。
  305. 権藤恒夫

    権藤分科員 私は、福岡県大和町の地先、有明海の海底の陥没問題、それから大牟田、柳川、大川市その他三町にわたりまして地盤沈下がいたしております、その海の生態系あるいは影響等につきまして御質問をいたしたいと思います。  「有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし」、これは、大臣も御承知のとおり、有名な百人一首の歌でございます。そこで、山村大臣、ムツゴロウなるものは御承知でございますかな。
  306. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 有明海にいる、あの目玉の大きな、泥の中にいる小さな魚というのは知っております。
  307. 権藤恒夫

    権藤分科員 これは私の選挙区に同居しているものでございまして、非常にかわいいものでございますが、有明海というのは海底陥没海だろうと言われているわけです。流入河川が非常に多く、それとあわせまして栄養分のたくさんある土砂が流れ込んでまいりまして、ここは日本でも非常に珍しい海で、潮の干満が約五メーターと言われております。ですから、干潮時は干潟になりまして、たくさんの魚介類が生息をいたしております。今申し上げましたムツゴロウ、それからワラスボ、エツ、クチゾコ、これは有明海だけにしかいない。朝鮮だとかビルマあたりには生息していると言われておりますが、日本ではここだけだろうと思います。それから、メカジャ、シャミセンガイなど、ウミタケ、アゲマキ、タイラギ、アサリ、エビ、カニ、大変な海の宝庫と言われておるわけでありまして、この天の恵みであります海を生活の基盤にいたしまして、漁民の方が約七千世帯で、人口にしますと一万八千人ぐらいおると言われております。したがいまして、海によって町が成り立っておる、そういう有明海が私たちの生活に非常に密着したところでございます。  ところが、これが昭和三十八年ごろからだんだん海底が陥没し始めたわけなんです。したがいまして、漁民の方たちも陥没によって貝類がとれないようになってきた、天然の産物がなくなってきたということで、ノリの養殖にいろいろな研究をなさってきたわけなんですよ。現在では大体ノリが年間に二万三千五百トンぐらい、これは日本の生産量の約半分になろうとしておるわけです。それから貝類が一万八千五百トン、その他甲殻類、いわゆるエビ、カニ等でございますが、これが二百トン余り生産されておるわけですけれども、先ほど申し上げましたように海底が陥没いたしまして、ノリがつくれないようになってきた。深刻な問題が起きておるわけでございます。  そこでお伺いしたいのですが、この陥没の実態と漁業被害の実態について御承知かどうか、また、この陥没の原因が一体何なのかということについて御質問をしたいわけであります。
  308. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいま先生指摘のように、有明海地先は大変重要な漁場、豊かな漁場でございます。現在、ノリで約四千ヘクタール、アサリ漁で約二万トン近いものが揚げられておるわけですが、福岡県からの報告によりまして私どもが承知しているところによりますと、石炭採掘の影響によって海底の一部が陥没をすることによりまして、ノリは御案内のように支柱で栽培しておりますために、深くなりますと支柱が非常に差しにくくなる。それからアサリの採取にしましても、深くなった分だけ非常に作業がしづらくなるというような、漁業活動に対する影響が出てきておるわけであります。  そこで、原因者であります三井石炭鉱業株式会社が従来も有明海の漁業協同組合連合会と協議をいたしまして、漁場の復旧のための工事、結局埋め戻しということだと思いますが、それから必要な漁業補償などを行っておるという報告を県の方から聞いておるわけであります。私どもといたしましても、今後とも当事者間の協議が円満にいくように見守ってまいりたいと考えております。
  309. 権藤恒夫

    権藤分科員 今報告を受けましたけれども、大体どのくらい海底が沈下しているか、具体的におわかりでございますか。
  310. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 約三千九度ヘクタール、四千ヘクタール近い第一種漁業権の中で約二千ヘクタールに陥没が生じたということで、その大部分、約千五百ヘクタール程度は、五十センチ程度ないしはその未満ということで、陥没よりもむしろ沈下ではないかという見方もあるようでございます。しかし、それ以外の五百ヘクタール分につきましては、それ以上、もっと深い陥没といいますか、地盤の低下というものが見受けられるようでございます。
  311. 権藤恒夫

    権藤分科員 もっと具体的に申し上げますと、五十四年から五十八年までの四年間の調査ですよ、それで、一メーター以上陥没したところが五百五十七万平米なんですね。それから二メーター以上が三十万平米。二メーター以上、深いところでは八メーターぐらい陥没している、これが約三千平米と言われている。これは部分的に引っ込んでいる。実際私が見てきているわけですけれども。五十四年からの調査でこれぐらいなんです。私どもは代々ここに住んでおるわけでありまして、子供のころからこの海の実態をよく知っておるわけでございますけれども、三井鉱山が昭和三十八年から補償を始めているわけですね。そういうことから考え合わせますと、もう全般的に二メーターないし三メーター下がっているというふうに私は考えておるわけなんですよ。  先ほど申し上げましたように干満の差が五メーターぐらいございまして、以前は潮が引いたときは沖の方までずっと干潟になりまして、そして先ほど申し上げましたムツゴロウだとかたくさんの魚が生産されて漁獲高があったわけですけれども、年々減ってきておるわけなんですね。ところが、幾ら漁民の人たちが原因者であろうと言われております三井鉱山等に補償の申し入れをいたしましても、とにかく漁獲が減った分だけの補償じゃなくして、ノリひびを立てるときに竹ざおを使います。竹ざおを使ったときに、年々陥没していくものですから昨年使った竹が使えなくなるということで、ノリひびに使う竹の買いかえというようなものが補償の対象になっているわけなのです。ところが、もうこれから先どうなるかわからないということで、後継者も育たないというような、想像以上の深刻な状況であるということをぜひ御承知していただきたいと思うわけであります。  そこで、今鉱山の方も、原因者でございますから、何とかして漁民の方たちの気持ちを理解するという意味で埋め戻しを始めました。私は、五十三年の予算委員会のときにこの話をいたしました。当時、海を埋めるのですかという笑い話であったのですけれども、鉱山の方も河口のしゅんせつをいたしまして、その廃止を盛って部分的に、約三千平米と言われておりますが、五メーターあるいは八メーターも陥没したところに対しまして埋め戻しを始めているわけです。全体の埋め戻しじゃない、部分的な埋め戻しなのです。ところが、土が足らぬようになってきたということで、ボタ、いわゆる砂岩ですけれども、これを砂状にしまして大きく陥没したところに埋め戻しを始めようとしたわけですが、これが、やはりボタでございますからいろいろな二次公害が出るのではないかというような心配があるわけなのですね。研究をしてあるやに聞いておりますが、その成果はいかがなものですか。おわかりであれば御答弁願いたいと思うのです。
  312. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 私ども承知しておりますのは、いわゆる白ボタを使うという話ではないかと思うのです。今までは海底の泥を海をつくるために作澪をして埋めるということで、それなりの合理性があり心配は少なかったと思うのですが、白ボタを使うということが海の各種の生物に今後どういう影響を与えるかという点につきまして、率直に言いまして私どもも心配をいたしております。  現在私ども承知しておりますのは、三井石炭鉱業株式会社でいろいろ調査をしているという話を聞いておりますが、ただ、調査の結果等についてはまだ十分承知しておりません。関係省庁とも連絡をとりながら、それを実行するまでの間には福岡県にも問題が起きないようによく指導したいと考えております。
  313. 権藤恒夫

    権藤分科員 通産省、お見えになっておりますか。今の件について答弁してください。
  314. 井上毅

    ○井上説明員 ただいまの件についてお答えいたします。  埋め戻しの材料として海底しゅんせつ土砂のかわりにボタを使用できないかということにつきましては、ただいま水産庁の方からお答えがございましたように、当事者でございます企業の方におきまして調査をいたしておりまして、この調査に当たりましては、大学の専門家の方はもちろんのこと、地元の漁業関係者の代表の方々にも入っていただきまして、慎重にやっていくという話を聞いておるところでございます。調査の結果実施に移るまでにはなお一年以上の検討が必要というふうに伺っております。
  315. 権藤恒夫

    権藤分科員 実態はそのようでございます。  それで、先日もその調査員、研究員の方にお会いしていろいろと伺ってきたのですけれども、研究の成果はかなりいいのじゃないかということなのです。  と申し上げますのは、アサリの稚貝、これは干潟の方に、潟の方に太陽の光が必要なのです。そういう関係で、今陥没しておるところがちょうど一番アサリの稚貝が定着しやすいところだということで、ボタを砕きましてそこで実験をいたしております。稚貝の生息も非常にいいという報告はあるのです。ところが、それは広範囲に及びますから、アサリはいいのですけれども、ノリのさおを立てるときに、砂の中ですから立たないのです。ぐちゃぐちゃしまして、今度はノリがだめになってしまう。だから、砂とヘドロとまぜたらいいのじゃないかという研究もなされていると思うのです。  いずれにいたしましても、この問題は漁民の方方の死活の問題でございますから、ひとつ鉱山の方だとか県の方を大いに指導監督、激励いただきまして、生産が現状のままでされるように格段の努力をしてほしい、こういうふうに思うわけでございます。何かございますか。
  316. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいまの先生の御指摘を踏まえまして、今後問題が起こらないように十分努力してまいりたいと思います。
  317. 権藤恒夫

    権藤分科員 それから今後の問題でございますけれども、陥没は恐らく炭鉱が続く限り私は続いていくと思います。と申し上げますのは、あそこには、この前非常にお気の毒なことになったわけでございますけれども、有明炭鉱そのほか坑口が三つございます。そして、今日本で生産されております石灰が一万一千八百万トン、その中の約三分の一は大牟田で生産されております。年間の出炭量は四百九十万トン、それにボタが百七十万トンございます。それと、地下水が約一千七百万トンくみ上げられておる。海の真下でございますから水の量も多いのでしょう。ですから、海底の石炭を掘る場合の影響調査でございますが、そういうことは具体的になされておるのだろうか。その辺のことにつきまして通産省の御答弁をいただきたいと思います。
  318. 安藤勝良

    ○安藤説明員 お答えいたします。  石炭の採掘に関しましては、海底に限らず、陸上においても地上物件等に影響がないように、採掘計画段階で、具体的には施業案の認可という段階で検討することになるわけでございますが、現在平均的に申しますと、実際の炭量の大体四割程度しか掘っておりません。ということは、そういった地上物件等も十分考慮しまして全部は掘らない、あるいは一部影響ないように埋め戻しする、要するに充てする、そういったことも十分配慮した上で掘らせているというのが実情でございまして、これは過去のいろいろな実績も十分研究した上での計画ということになっておるわけでございます。
  319. 権藤恒夫

    権藤分科員 埋め戻しの充てんというお話がございました。私も何回も何回も入って見てきているわけですから、これ以上のことは申し上げませんけれども、先ほど申し上げましたように一年間に六百万トンも石炭と土を出して、一千五、六百万トンも地下水がくみ上げられたら、幾ら部分的に残したといいましても上に影響がないということはあり得ないのです。私どもは科学者でございませんから、科学的にどうだということは申し上げませんけれども、もう親の代から住んでいるところでございまして、大体地形がどういうふうになっているかということは百も二百も承知の上で今日までそれなりに対応した生活をしてきているわけでございます。  ですから、これから先の問題については、先ほど申されました保安法による海底の特別掘削計画、いろいろなことがあると思います。十分なさっていると思うのですけれども、海によって生活をしている人たちは何もかかわりがないのですから、それだけの補償がきちんとなされればいいのです。けれども、先ほど申し上げましたように、さおを立てかえるくらいの補償で、後継者も育たないという深刻な問題なのです。だから、ちゃんと充てんをしておると言うが、充てんなんか今しませんよ。カッターでばしゃっと切って、後全部落としていくのです。砂を入れたり土を入れたり水で充てんする、そんなことは今やらないのです。だから、今後陥没が続いてきた場合に、いよいよ生活のめどが立たないようになってくる。それに対して何か考えることはないのかというのが私の質問の趣旨でございます。もう一回お願いします。
  320. 安藤勝良

    ○安藤説明員 ただいまの御質問の趣旨、十分我我も理解した上で炭鉱等を今後とも指導してまいりたいと思います。
  321. 権藤恒夫

    権藤分科員 それでは通産省の方にお尋ねいたしますけれども、無資産の炭鉱の鉱害につきましては石特あたりで十分予算もつけて、今鉱害復旧がなされておるわけなんでございますけれども、有資産のものについては何か考慮する必要があるのじゃないか。  と申し上げますのは、御承知のとおり国内炭というのは外炭に比べましても全く赤字なんですから、同から補助を出さなければ炭鉱が成り立たないというような実情であるわけであります。そのために三井も非常に困っている。石炭は掘れ振れと言われる。しかし、こういう鉱害がたくさん出てくる。本当に困っているのが実情だろうと思うわけであります。今、川をしゅんせつしまして、そのヘドロによって陥没地帯を埋めておる。年間七億かかっておるわけなんです。それから、漁民に対する鉱害補償だ、いろいろな補償等について相当の出費がなされておるわけなんでございますけれども、無資産の鉱害に対しては国から災害復旧をやっておる。しかし、無資産と同様な、国から補助金を出さなければならないというような炭鉱の実情に対して何か補助をするような、そういう手だてはないものでしょうか。いかがなものですか。
  322. 井上毅

    ○井上説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問は、いわゆる陸上の農地あるいは家屋等、鉱害復旧を臨時石炭鉱害復旧法に基づいて私どもやっておりますが、その対象に海底の鉱害についてものらないのかどうかという御趣旨が一つ入っておるのではないかと思います。この点につきましては一昨年の復旧法の期限延長問題について審議をいたしました石炭鉱業審議会におきましても種々検討されたところでございますが、「公共的見地からの復旧になじまないこと等にかんがみ、復旧法の対象とすることは適切ではない。」という大変厳しい答申を私どもいただいておりまして、残念ながら復旧の対象に法律を改正をして加えていくということが現時点では難しいということを申し上げざるを得ない状況にあるわけでございます。  ただ、私ども政府といたしましても、石炭企業に対しまして臨鉱、臨時石炭鉱害復旧法にのらないものにつきましては、鉱業法の規定に基づきまして、当時者間の話し合いによって従来から賠償責任を果たしてもらうということでやってまいっておりますが、企業が負担いたします賠償資金につきまして、政府といたしましては石炭鉱害事業団を通じまして極めて長期低利の融資制度を従来から行っております。また、一昨年からの法延長の時点におきましても融資条件等の改善を行っておりまして、かかる助成措置を通じまして今後ともこの種の鉱害賠償の円滑な処理、解決に努めてまいる所存でございます。
  323. 権藤恒夫

    権藤分科員 環境庁にお尋ねいたしますけれども、先ほどから申し上げましたように、この有明海というのは海の特殊性から考えまして、またそこに生息するいろんな魚類、いわゆる魚介類ですが、日本では珍しいものばかりでございますが、この有明海地区は遠くは雲仙岳を望んでおりまして、向こうは国立公園でございますけれども、何かそういう特殊な地域として指定をするような、そういう考えはないものかというふうに考えるわけですが、いかがですか。
  324. 片山徹

    ○片山説明員 お答えいたします。  今先生指摘の有明海全体の水質につきまして、私ども水質規制課でございますので水質に関して申し上げますと、有明海の全域をCODの環境基準に照らして見ますと、環境基準の達成率が九四%という非常にいい達成率を示しておるわけでございます。したがいまして、現在の水質汚濁防止法の適用によりまして、あるいは公共下水道の整備等によりまして現在の水域の水質保全が確保できる、このように考えております。  なお、今問題になっております大和町地先海域の水質につきましては、福岡県が常時監視を行っておりまして、このCODの環境基準に関しては満足をしております。そういう状況でございます。
  325. 権藤恒夫

    権藤分科員 時間がないから次に行きます。  先ほどもちょっと触れたのですけれども、大牟田、柳川、大川、それから山門郡の大和町、これが六千六百ヘクタールにわたりまして、今一メーターから二メーターぐらいずっと陥没をしておるわけでございます。これは既に県の方では調査をいたしておるところであります。この原因について通産省、農林省も調査をしておられるようでございますけれども、これについてお答え願いたいと思います。
  326. 森実孝郎

    森実政府委員 まず大和干拓の問題でございますが、御案内のように五十七年十月に福岡通産局に六名の学識経験者から成る専門委員会が設置されておりまして、私どもの方からも、干拓とか軟弱地盤の専門家、地下水の専門家、農業土木の専門家、三人の学者の方に参加していただいております。この結論を待って必要な措置を考えるということで、原因の解明についてもこの結論を待っております。  もう一つは、背後地の六千六百ヘクタールの問題でございます。これも実は御案内のように地盤沈下を生じておりまして、排水不良とか田面の不等沈下を生じておることは御案内のとおりであります。これはことし、つまり五十九年度から正式に地盤沈下の調査を行う決定をいたしまして、現在御審議中の予算にも必要な調査計画費を計上しております。鋭意その現象の定量的把握と原因の解明に努め、その調査結果をもって処理を考えていきたいと思っております。
  327. 権藤恒夫

    権藤分科員 委員長、ここに写真があるのです。今非常に簡単に御報告がございましたけれども、大和干拓は農家が約四百世帯、そこに住んでおる人は一千人以上なんです。大和町の約十分の一に当たるのです。これが今原因がはっきりしませんので、自分の力で埋め戻し、いわゆる客土を盛ったり排水口を変えたりしていかないと米麦がつくれないということで、今努力をいたしております。その費用が約一億近いのです。それから麦、米がとれない、つくれないということで約二億五千万程度の被害を受けておるわけなんです。  干拓に入って、そこで一生懸命に農業をやろうと言いながら、もう何年もたたないうちに米がつくれないようになるというのは、農家にとっては大変なショックであるわけでございます。町当局といたしましては、今必死になって原因の究明に当たろうとしておるわけでございますけれども、利害関係が絡みまして、一年を過ぎましてもなかなか結論が出ないということなんです。だから、これは責任を持って結論を出して、ひとつ農家の人が再生産できるようにしてほしい。  最後に、答弁は要りません。大臣にお願いでございますけれども、先ほど申し上げました有明海の陥没でありますとか、あるいは六千六百ヘクタールにわたりまして陥没をしている、そのために多くの住民が行く先非常な不安を持っておるわけでございますので、一回ぜひとも大臣御在職中にこの有明海陥没地帯を視察をして、そうしてつぶさにその実態を御認識いただければありがたいなと思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  328. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 国会でも終わりましたらすぐにでも見させていただきます。
  329. 権藤恒夫

    権藤分科員 では、また大臣がお見えになりましたときによく実情を御説明申し上げるようにいたしたいと思います。そして、とにかくできるだけの善処を心からお願い申し上げまして、質問を終わります。  以上です。
  330. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて権藤恒夫君の質疑は終了いたしました。  次に、松浦利尚君。
  331. 松浦利尚

    松浦分科員 それでは、時間がありませんから、簡潔に質問をして、御答弁いただきたいと思います。  大臣初めそれぞれ農水関係の皆さんは、日米農畜産物交渉で日夜大変御苦労だと思います。御案内のとおりに、今牛肉需要の三割がもう既に輸入になっておりますし、ミカンにいたしましても、五十八年度が三万ヘクタール、五十九年度は一万ヘクタールの減反をしてなおかつ供給過剰という状況で農家はもう四苦八苦しておるというのが現状であります。これは新聞報道によるところですから正確ではありませんが、アメリカが十三品目についてガットに提訴をいたしました。当初政府はアメリカがガットに提訴したのなら受けて立つ、正々堂々とガットの場でやろう、こういう主張をしておられたはずでありますが、今回牛肉、オレンジ交渉にひっくるめて一括十三品目についても妥結の道を図りたいというような報道がなされておるのでありますが、その点は事実でございますか。
  332. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 実は、昨日、当省から派遣いたしました塚田総務審議官がアメリカから帰ってまいりました。そして、これからの日程として、アメリカ側と協議しました結果、眞木国際部長とネルソン代表補との非公式協議を三月十五、十六の両日サンフランシスコで行い、さらにこれを受けて三月二十二日から二十四日にかけてワシントンにおいて佐野経済局長とスミス大使との間で非公式協議を行うというような日程を立ててまいりました。これでやってまいりますが、実はきょう御存じのとおり分科会でございますので、塚田審議官がどのような話をしてきたか詳しいものはわかっておりませんで、私もまだそれについては新聞紙上だけでございます。
  333. 松浦利尚

    松浦分科員 十三品目も妥結をするということになりますと、御承知のように加工品についても農家に非常に影響のあるものでありまして、牛肉、オレンジにさらに十三品目が加わってきますと、農家というのはますます窮地に追い込まれるわけです。御存じないということでありますが、絶対に当初の方針を変更してもらっては困る。十三品目については堂々とガットの場でやり合ってもらいたい、私はそう思うのですが、大臣どうでしょう、御意見は。
  334. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 恐らくそれをどうこうということではないと思います。これを全部やるということで話をつけるというのなら私のところへ必ずその前に話があるわけですから、恐らく議題になった程度ではないかと思いますけれども、私はまだ話を聞いておりませんので、どうと言われても、これは……。
  335. 松浦利尚

    松浦分科員 私がお聞きしておるのは、お話を聞いておらなければ、もう大臣の明確な所信をここで明らかにしていただければ結構だと思います。やらないのならやらない、こう言っていただければ結構です。
  336. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私の農産物の輸入に関する基本姿勢としましては、国内の農産物の需給動向を見た上で、わが国農業が着実に発展するということと調和のとれた形で農産物というのは輸入すべきだということでございますので、十三品目の話が出てきましても、私は従来の規制はそのまま、当衆議院の農林水産委員会の決議、申し入れもございますので、これを踏まえてやってまいります。
  337. 松浦利尚

    松浦分科員 アメリカ自身が十三品目のウエーバー品目を持っているわけでありますから、何も我が国だけがそういうことをする必要はないと思います。ですから、今大臣が言われたように、十三品目については農林水産委員会の決議どおり方針を貫くということでありますから、それを承って安心いたしました。  二番目の問題は、御承知のように来年度の予算に牛肉資金供給事業として五十億円計上いたしておられます。それから、ミカンについては消費需要を拡大するその他で十億円計上しておられるわけでありますが、この牛肉振興資金供給事業というのは五十億円に市町村の二十四億をプラスしますから七十四億を実は来年度の予算に計上してあるわけです。計上しておるということは、輸入枠を拡大するということを前提にして私は予算措置がされておったと思いますね。大臣、その試算根拠というのはおわかりでございますか。
  338. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私は、そういうようなのが根拠ということではないと思います。  担当局長がおりませんもので、後でまた詳細、資料でも持って上がります。
  339. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のございました畜産振興資金供給事業は国費で五十億円、それから温州ミカンの消費拡大十億円の計上をそれぞれしております。  事業の具体的な内容は御承知のとおりでございますが、先生指摘のような日米農産物交渉に関連するというふうな性格は全く持っておりません。全く国内問題として所要の事業量を考えて予算計上しておるということでございます。
  340. 松浦利尚

    松浦分科員 私は今お話しになったとおりだろうと思います。  そこで、大臣、これは日米間の交渉でありますから、アメリカもレーガンの再選を目指して必死だと思います。我が国も輸入枠拡大を絶対阻止するという一定の条件で話が進むと思うのですが、しかし、これはあくまでも話し合いの結果でありますから、ですからある意味で我が国が譲歩しなければならぬという結果が出るかもしれない。しかし、今百われたように、五十億円プラス市町村の二十四億、七十四億で足りれば私はいいと思うのですが、それ以上の打撃を受けるというような結果が出てくる可能性というのも想像されるのですね。アメリカの輸入枠拡大の数量が一万トンでありますから、ですから相当大幅な輸入枠拡大を我が国に要求してきておるわけでありますから、場合によっては大変な犠牲を農家がこうむるようなことが出てくると思いますね。そうすると、ミカンの需要拡大に十億円あるいは十年間無利子で三年据え置きの資金五十億円政府出資では足らないという事態が出てくる可能性すらあると思いますね。そういう場合は、大臣、思い切ってさらに予算の追加とかなんとかをして、農家が絶対に困らないように手当てするんだという保証をしていただけますか。
  341. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先ほど予算課長から申しましたように、これは農産物の輸入とは全然関係ない金だということでございますし、私自身も衆議院の農林水産委員会の決議、そして本年一月の申し入れ、これを踏まえて我が国農業が着実に発展するということを念頭に置いて交渉してまいります。
  342. 松浦利尚

    松浦分科員 それで、打撃を仮に加えるような事態になったとき、そういうことは万々ないと思いますが、もしそういう状況になったときの農家の救済措置というのはぴしっと考えておかないといかぬと思いますね。ミカンたった十億円では、私のところのミカン農家なんか救われませんですよ。宮崎県はミカン農家は多いのですが、畜産も非常に多いところです。これはそんな資金じゃ足らないです。
  343. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私の方は、あくまでも我が国農業に決定的な打撃を与えるというような交渉はやらないつもりでやってまいります。しかし、先生今それで足りないと言いますけれども、それはもう輸入とは全然関係ないということはよく申しておるとおりでございます。
  344. 松浦利尚

    松浦分科員 大臣、私が言っておることが御理解いただけないと思うのですが、輸入と関係があるかないかじゃないのです。輸入枠が仮に拡大されるような結果になったときには、宮崎県の農家も全国の農家も大打撃を受けるわけですよ。その場合には、畜産、ミカン農家は大変な打撃を受けるわけですね。なければゼロですけれども。そういうものに対しては政策的に資金的に対応してくれますね、結果が悪かったときには。いや、絶対そんなことをさせぬと言われるのなら、それで結構です。男山村、絶対そんなことはさせぬ、あの「よど号」事件のときの努力をするのだ、農家の皆さん安心しなさいというのなら、私は別段こういうことは申し上げません。
  345. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 何にしても相手のあることでございますし、私もこの委員会の趣旨を踏まえて、その趣旨にのっとって交渉してまいります。結果が悪かったらそのときはどうするのだと先生言われても、それはまだ答えるのはひとつ勘弁してもらいたいと思います。
  346. 松浦利尚

    松浦分科員 既に牛肉は市場の三割が開放されてきておるわけです。あしたは自由化反対の農家の、生産者の集会が都市センターでまた持たれます。生きるか死ぬかという気持ちで生産者は必死になっておるわけですから、そういう意味では、今言われたように、打撃を与えるようなときにはもう絶対に交渉を打ち切ってでも帰ってくるのだ、やらないのだ、そういうお気持ちが出されたので非常にうれしく思うのです。
  347. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 ちょうどこの前の予算、第一委員室での島田先生の御質問にもお答えしましたとおり、いわゆるむちゃな要求、無理な要求があった場合には、何も三月いっぱいで決着をつけるということで期限にとらわれてそういうことをのんで帰ってくるということはしないようにいたします。
  348. 松浦利尚

    松浦分科員 今言われたように、絶対に三月決着でなくても、延ばしてでもいいというお答えがありましたから、その他の各委員が全部質問したでしょうから、この今言われた締めくくりの大臣の御意見を私たちはバックアップをして、ぜひそうであってもらいたい。農家に犠牲を強いるようなときには、三月決着でなく先に延ばす、そういうことをはっきり言われましたから、そのことを承って、次の質問に移ります。  実は、これも、私は農林水産委員ではありませんが、本委員会で再三議論があったと思うのですが、これは農政の失敗と言ってしまえば農林水産省のお役人には大変失礼だと思うのですが、余っていたはずのお米が足りなくなって、ことしは手持ちが十万トン程度に減ってしまう。ですから、超古米と言われる昭和五十三年のお水もこの際売り渡すというような方針を出されておるわけですね。しかも、これも新聞の報ずるところですが、政府売り渡しを削減する。食い延ばしをするということだと思うのですが、削減をする。米不足に対していろいろな政策をとっておられるのですが、その状況というのはちょうど昭和三十九年から四十年にかけての不作のときと全く同じですね。当時、農林省の皆さん方はカリフォルニア米の試食会をされまして、そのときの米はカルロースという非常に長いカリフォルニア米ですが、それを試食されて二百四十九万トン輸入なさったという経過がありますね。間違いありませんか。
  349. 松浦利尚

    松浦政府委員 年次については先生おっしゃられるとおりでございまして、確かにその際に準内地米という形でカリフォルニア米を輸入した経過があるということはよく承知しております。
  350. 松浦利尚

    松浦分科員 そのときに試食をやっておられますね。農林省のお役人が試食をしておられるのです。そのことは御存じありませんか。
  351. 松浦利尚

    松浦政府委員 私、当時食糧庁におりませんでしたので、その経過は知っておりません。
  352. 松浦利尚

    松浦分科員 当時、事前に試食なさって輸入をなさったのです。ところが、最近もカリフォルニア米の試食が非常にはやっておるのです。昨年の十月に消費科学連合会、主婦の代表二十四人がカリフォルニア米の試食会をやりまして、非常においしい、こういう発表を新聞になさったのを御記憶だと思います。ここにデータが出ております。一昨年と昨年、全糧連、全国食糧事業協同組合の代表の方がカリフォルニア州に行きまして試食用の米を持ってきまして――全糧連というのはお米を売るところの事業協同組合でありますが、役員が十名おられます。しかも、そのうちの二人は農林省のOBであります。その人たちがカリフォルニア米の試食会を開いたことについては、長官、御記憶ですか。
  353. 松浦利尚

    松浦政府委員 私、全糧連が組織としてそういうことをやったということについては聞いておりません。
  354. 松浦利尚

    松浦分科員 大臣、食糧庁長官は御存じないでしょうけれども、全糧連という米を売る側の事業協同組合の全国組織の十人の皆さん方、その中に農林省のOBが二人おられるのですが、その人たちが一昨年、昨年とカリフォルニア米を持ち帰りまして試食会をやっておるのです。米を売る側はそういうふうにカリフォルニア米を入れる試食会までしておるのです。そして、それまでカリフォルニア米を入れようという動きをしたかどうかは別にして、ことしの二月二十七日に政府に対してカリフォルニア米の輸入は要求しないということを理事会で決めたのです。これは私が調べたのですから、間違いない事実なのです。そういうことは御存じないですね、食糧庁長官も。
  355. 松浦利尚

    松浦政府委員 そのような決議をしていたということも存じませんし、もちろん私のところにはそういうものは持ってきませんでした。
  356. 松浦利尚

    松浦分科員 お話ししましたように、政府が知らない間に既に消費科学連合会の消費者あるいは御商売をしておる全糧連、こういったところがカリフォルニア米の試食会をやっているのです。御承知のように、アメリカに行ってお土産にカリフォルニア米を百キロまでは持って帰れるのですね。しかも、最近はそれがアメリカに行く人たちの間に広がりまして、どうもお米が不足するらしいということで、しかもササニシキとかコシヒカリのようにおいしいというので持ち帰るような動きが出てきておる。しかも、その名前が固定というのですね。カリフォルニア米のことをアメリカは日本に向かって国宝と言っている。そういう事実も御存じないですか。
  357. 松浦利尚

    松浦政府委員 カリフォルニアでそういうお米がございまして、試食会をあちらこちらで、組織というふうには聞いておりませんけれども、いろいろなところで持ち帰って食べているという話は新聞その他の情報で聞いております。ただ、その場合にはあくまでも試食、試しに食べているということで、別段それをもって今後輸入してほしいというようなところまでは言ってはいないと考えておりまして、また、私の方にもそのように言ってきていないわけでございます。
  358. 松浦利尚

    松浦分科員 長官、最近の各新聞社の投書、朝日新聞の「論壇」にもはっきり載っておりました。今、まさに十万トンの手持ち米しかなくなった。五十三年度の超古米を出すような状況になってきたということを受けて、消費者の間には盛んにカリフォルニア米を輸入したらどうかという世論づくりが始まっておるのですよ。私はこの世論づくりが怖い。そうすると、いつの間にがお米も不足するのだから輸入するのが当たり前ではないかという世論ができてしまって、それが農水省、食糧庁に対してカリフォルニア米の輸入という状況になってきたらどうなるでしょうか。  私は、今ここにアメリカの作付状況を発表した資料を外務省の北米二課からもらってきておりますけれども、アメリカ自身が過剰生産のために減反減反減反と、こう来ておるわけですね。当然のように米食民族に対してカリフォルニア米の輸入を迫ってくる条件というのをアメリカ自身がつくりつつあるわけですね。それを受ける側の日本にそういう状況が出てくるということは、私は大変なことだと思う。牛肉、オレンジ、十三品目、そしてお米までそういう土俵をつくられてしまったのでは、もう農家は生きる道はありません。知らないでは済まされない。そういうバックグラウンドがつくられつつあるということをぜひ調べていただいて、絶対にそういうことはしないんだ――主食を自由化するということは、輸入するということは国策上も許してはならぬことです。今は食管法という法律もあるし、自由化するなどということは言うはずがありません。しかし、そういうバックグラウンドがつくられつつあるということについてもどこかで歯どめをかけておかないと、政府なら政府が反論を加えておかないと大変なことになるんじゃないか。これは政策的なものを持ちます。  私は、この際、山村農林大臣から、そういうバックグラウンドについては絶対に許さぬのだ、そういう事実があるとすれば食糧庁なり農水省が反論をする、加州米を入れろというような世論に対しては反論をする、そういう意味において政治的なお答えをいただきたいと思います。
  359. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私は、米の輸入などというのは全く念頭にも置いておりません。そして、米というものはあくまでも、少なくとも国内ですべてを自給する、そういう基本方針で参るつもりでございます。御心配なく。
  360. 松浦利尚

    松浦分科員 食糧事務所のOBの人たちまで試食に参加しているのですね。残念なことです、これは。お役所を離れたら途端にそうなるのですね。それが怖いのです。いつの間にかバックグラウンドができ上がってしまうのですよ。牛肉とオレンジがなぜこうなったか。内需を拡大せずに、対米黒字は二百億ドル以上、場合によると二百五十億ドル近くになるかもしれない、三百億ドル近くになるかもしれない。アメリカから見れば大変な対日貿易赤字でしょう。その犠牲が全部農家に来るんですよ。その気合いやよし、意気込みやよし、農家を守るためにやる、この意気込みやよし。しかし、結果的に今日こういう状況です。牛肉、オレンジでもあっという間にこういう状況です。お水もそうならないという保証はないのですよ。だから、ぜひそれに対応する政策というものを消費者に向かっても真剣に言ってもらわないと、御商売をする人たち、消費者である人たちで既に試食会は進んで、そういう世論づくりができているわけですから、これはゆゆしきことですよ。
  361. 松浦利尚

    松浦政府委員 ただいまの先生の御心配、もしも我が国がお米を輸入するということになりますれば大変なことである、今大臣が御決意をお述べになったとおりでございます。  そこで、私どもとしては、まず米の需給を安定させるということがこれにこたえる一番重要な道であるというように考えます。したがいまして、四年連続の不作のもとでございますけれども、需給の操作には万全を期しまして、とにかく米の不足というようなことが起こらないようにすることを考えておるわけでありますし、それから先の問題といたしましても、御案内のように第三期の米の需給均衡化の対策の中におきましては、四十五万トンの在庫というものを毎年つくっていくということを考えているわけでございまして、これは消費者の方にも生産者の方にも皆さんに申し上げている次第でございます。  さらに、山村大臣が御提唱になりましたある程度まで天候が悪い状況においても技術水準というものをあまねくすることによりましてたくましい稲づくりというものの運動を展開いたしまして、生産の面におきましても問題がないようにするという政策を展開しているわけでありまして、私どもといたしましては、お米の輸入ということを心配する前に、まずそのような事態が起こらないということのために需給の万全を期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  362. 松浦利尚

    松浦分科員 言われることはいいのです。将来に向かってぜひそうしてください。ところが、そうしなかったからいまツケが来よるわけですよ。そうしておればこんなことにならないわけですよ。今までの農政はこうでしたけれども、今度は大丈夫ですと言われても、今までそういう状況だから心配をするのです、私たちは。だから、言やよし、意気込みやよし。しかし、結果がこういった結果になるのでしょう。こういう結果になったからといって、あなた方を追及してももうもとに戻らないのですよ。結果が起こっておるのですから。これが怖いのです。だから、将来に向かってのあれはいいです、他用途米をちゃんとする、そういう政策もとるというようなことを言っておられるわけだから。四十五万トンの備蓄もする、百三十五万トンですか、やるということを言っておるのだから、それはそれで結構です。ぜひ間違いないようにやってもらいたい。いや天気が悪かったから、不作だったからという言いわけは聞きません。長官はいいです、大臣。
  363. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 米の自給につきましては、農林水産省として責任を持ってやってまいるつもりでございます。御安心ください。
  364. 松浦利尚

    松浦分科員 大臣が安心してくださいと言うと、本当に男山村で、何か安心するような気持ちになるのは不思議な魅力だと思いますけれども、しかし、ぜひひとつ大臣、食糧というのは大変なことですから。そういう意味では、ぜひもう二度とこういう事態が起こらないように、消費者に対してカリフォルニア米など輸入することは危険なんだということを責任を持って農林省がPRをやってください。ぜひ要望として申し上げておきます。要望ですから、お願いしておきます。もしやらないときには農林水産委員会に乗り込んででもまたやらしてもらうつもりです。  最後に、私はNHKの放送を見まして、ハイブリッドライス日本をねらうという本がたまたま本屋にも出ておりましたから、それを読ましてもらいました。ところが、このハイブリッドライスというのは一代雑種しか使えない。二代、三代は全然だめ。ですから、種子をつくったらその種子だけを使わざるを得ない。アメリカのハイブリッドコーンと同じ状況だそうであります。  ただし、心配をしますのは、種もみを海外から輸入することは禁じられておりますね。ところが、たまたまそのNHKの報道を聞いておって指摘をされておるので私は調べてみましたところが、韓国と台湾、朝鮮半島及び台湾は植物防疫法によりまして輸入禁止先から除外されておるわけです。大正三年の旧日本時代の植物防疫法の残存がこの植物防疫法施行規則の中に入っておるのです。「朝鮮半島及び台湾を除く」。ですから、種子の輸入は確かに禁止されておりますが、朝鮮半島、台湾からは輸入できるのです、植物防疫法からいえば。これは私が調べたわけではありませんよ。そのNHKの本を見たら、アメリカのある食物メジャーがすでに韓国に三カ所ハイブリッドライスの試験地、作地を指定いたしまして、そこで種子の採種を始めようとする実験に入ったという報道がされておるのです。アメリカから種子が韓国に行って、韓国で種子がつくられてその種子が日本に上陸をしてくる可能性がこれにあるのです。ハイブリッドライスは単収が二倍あるそうでありますから、非常に種子の値段が安い。そうすると、米の種子までアメリカに依存をする、韓国経由で依存をするという事態になりかねないのです。  こういう状況になってほしくないから私は質問しているのです。大臣、どう思われますか。将来に向かって非常に危険のある法律です。
  365. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私も先生のおっしゃるとおりの意見でございます。  あと、詳細は事務局から……。
  366. 松浦利尚

    松浦分科員 もう終わりですが、これは改めておく必要があるのじゃないかという気が私はします。その点についてもあわせて事務当局から御説明ください。
  367. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 植物防疫法上は、種もみにつきましては、ほとんどの国が植物防疫上輸入禁止地域になっております。と申しますのは、今おっしゃいました韓国、台湾以外の国におきましては、日本にまだ知られていない害虫並びに病原菌類が種もみに付着して入る可能性が非常に大きい、こういう意味において禁止になっております。また、今おっしゃいました台湾、韓国につきましては、そういう心配がないという意味におきまして植物防疫法上は輸入禁止となっていないわけでございます。  ただ、種もみといえども食管法に言うところの米穀でございますから、もう一つくさびがかかっておりまして、先ほど御引用なさいました食管法の規則によりまして、百キロを超えるものについては食管法上の許可が要るということになっておるわけであります。それで、種もみにつきましては国内自給を原則にしておりまして、食糧の安全保障という意味からも、国内で安定的に供給するというのが建前でございます。  また、現在諸外国ではいろいろ改良いたしておりますが、我が国におきましても百年の長い歴史を持っておりまして、我が国の気象条件、国民の嗜好に即した非常にすぐれた品種をつくってきておるわけでございまして、品種の面から見て外国から買わなければいかぬという必要性も全くございません。また、育種に必要な遺伝子の収集という意味におきましては、外国産のもみにつきましても実験的な意味で少量を輸入いたしまして、それを国内の育種の素材等に活用するという努力はいたしておりますが、いずれにしましても、国内で種を自給していくという方針についてはいささかも変わりございません。
  368. 松浦利尚

    松浦分科員 もう時間がありませんからこれで終わりますが、いずれにいたしましてもハイブリッドライスというのは、この種子は単収が倍になりますし、しかも安い。そういった意味で、将来日本上陸をねらっておるのだそうですから、あなたは淡々と言ってのけておるけれども、日米関係というのはそんなに淡々といかないのです。どこでどういうふうにくるかわからない。そういう問題についてもぜひはっきりした認識を持って、種子といえども絶対に輸入させない、そういう配慮をお願いしたいということを最後に申し上げまして、委員長、少し時間をオーバーしましたがお許しいただいて、私の質問を終わります。
  369. 谷垣禎一

    谷垣主査代理 これにて松浦利尚君の質疑は終了いたしました。  次に、富塚三夫君。
  370. 富塚三夫

    富塚分科員 富塚であります。新米ですからひとつよろしくお願いいたします。  もう何人かの方があるいはお話しされたと思うのですが、私の選挙区の神奈川県もミカンの栽培が非常に多いところでありまして、農産物の自由化の枠の拡大について、政府の本音は一体どうなのかという点で大変心配されている。したがって、新聞紙上などで拝見するところ、大臣がかなり最後のまとめ役をするんじゃないかというふうに伝えられておりますから、そういう点についてお尋ねをいたしたいと思うのです。  御案内のように、三月末の東京ラウンド交渉は大詰めの段階を迎えているということで、オレンジの場合には何か毎年一万五千トンの増ですか、そして四年後には現在の八万二千トンから十四万二千トンぐらいに枠が膨れ上がってしまうのじゃないか。そこで、足柄などを中心に私の選挙区の今の状況を見ると、ミカンの木があってミカン畑があるからそれを枯らすわけにはいかない、栽培しないわけにはいかない、採算はほとんどとれない、出血であるという状況のもとで先行き非常に不安になっているのです。これは、自由化の枠の拡大の問題のけじめをつけることと相まって、ミカン栽培業者などの今後のあるべき姿、どういうふうに転換を試みるかということが非常に大事な問題だと思うのです。どうも風聞するところ、中曽根さんももう約束しているし、あるいは安倍外務大臣もアメリカに行ってかなり約束して、与党の内部でもいろいろ議論が出ているというふうに承っているのですが、一体どんなふうに解決をされる腹構えでいるのかということについて、神奈川県の特に農業関係者はかなり強い関心を持っているように思いますので、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  371. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 ミカンの問題につきまして政府の方の考え方といいますものは、担当大臣は私でございますので、私の考え方ということになろうかと思います。私、昨年末の就任でございますが、しかし、私の就任する前にも衆議院の農林水産委員会で決議が行われております。それは「農畜水産物の輸入自由化反対に関する件」という決議でございます。そして私が大臣になりまして、本年一月にも「農畜水産物の輸入自由化・枠拡大問題に関する申し入れ」ということでございまして、この趣旨は、我が国の農水産物が被害を受けないように、被害を受けないようにというのは、我が国農水産物の着実な発展があるような形で農水産物の輸入はすべきだという趣旨でございます。私は、今回のこのアメリカとの交渉に関しましてもその趣旨を踏まえて、これを念頭に入れて、我が国農業を守るという立場でこの交渉に当たってまいります。  現実に今行われておりますが、この三月、今月いっぱいで一応何とか決着をつけたいというのが前大臣からのアメリカとの話し合いでございます。一昨年十月から五回にわたって日米間の事務レベルで折衝してきました。この間アメリカ側は、交渉態度はかなり柔軟にはなってまいりましたが、しかし依然として事務当局の交渉に関するところでは、日米間の考え方には大きな隔たりがあるということでございます。  そこで、本省の塚田総務審議官をアメリカへやりまして、きのう帰ってまいりました。そしてアメリカ側と相談した結果、眞木国際部長とネルソン代表補との非公式協議を三月十五、十六の両日行う、これはサンフランシスコで行います。さらにこれを受けて、三月二十二日から二十四日にかけて、ワシントンにおいて佐野経済局長とスミス大使との間で非公式の協議を行うことにより、牛肉、かんきつの輸入数量に関する現行の日米合意の期限である三月末日までに何とか新たな合意を得るべく努力をしたいというのが相談の結果でございます。私としましても、最終的な佐野経済局長とスミス大使との間での協議を踏まえてやってまいりますが、ただ、せんだって予算委員会島田先生から御質問もいただきましたが、期日にとらわれて、前大臣が幾ら三月末に決着をつけるというようなことを言ったにしても、無理な要求を決着をつけるんだということで無条件に受け入れるとか、そういうようなことはしませんということを答弁しております。いずれにしても、我が国農業を守るという立場を堅持してこれに当たってまいります。
  372. 富塚三夫

    富塚分科員 今強い産業が海外に出る。電機産業でも自動車でも強い産業が出るかわりに弱い産業がねらわれる、これはある意味の必然性があると思うのです。やはりどうしても農林水産大臣の方に関係をする所管がねらわれるという必然性を現状持っていると思うのですね。やはり中期的とか長期的、中長期の展望に立って、貿易摩擦の解消の問題もありますが、どうも弱い産業だけがねらい撃ちされる、そして弱い農民にしわ寄せになるみたいなことのないようにしていくことが、私はこの問題の解決の上で非常に大事なんじゃないか。ラウンドの協定切れ更親交渉ですから、もちろん政府も責任ある立場に立ってやるのは当然だと思いますが、今大臣申されましたように、積極的にひとつ政府も頑張っていただいて、同時に、農民にあるいはみかんを栽培されている方々に安心できるような中期的な、長期的な一つの展望、政策を示してもらいたい。これはぜひその点について強く要請をしておきたいというふうに思います。  二つ目の問題は農業問題なんですが、農業振興、これも今の問題に関連をいたしまして、どのように基本的な政策を考えられているかということなんですが、その中で、減反政策をもうちょっと緩和をしていくということはできないのかどうかという問題についてお尋ねをいたしたいと思うのです。  御案内のように、畑の生産力から見れば水田の方が非常に高い生産力を持っているという点で御案内のような減反政策の状況になっているのですが、家畜のえさ米をつくるとかそういったことで水田の転換を試みるようなことを考えていくようにすべきではないのかという点で、国産食糧による自給率が非常に低いわけですけれども、とりわけ穀物では三三%になっておるなどと聞いておりますが、もうちょっと減反政策を緩和していくという点で、ひとつ農林省のそういう方向は打ち出せないものかというふうに思います。その点についてお考えをお聞きをいたしたいと思います。
  373. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 日本の水田の生産力というのは大変高いわけでございまして、現有の水田で全部米をつくるということになりますと、毎年三百万トン以上の米が余ってくる。二、三年を出ずして古米の山ができるという現象が起こるわけでございます。したがいまして、需給均衡を図るという観点とあわせて、水田で米以外の、日本で自給度の非常に低い麦とか大豆とかというものもつくっていこう、こういう考え方で数年前から水田利用再編対策実施いたしておるわけでございます。  五十九年度からそれの第三期対策になるわけでございまして、大変単純に需給推算いたしますと約七十万ヘクタールぐらいの水田が余剰である、こういう結果が出てくるわけでございますが、今次対策におきましては、毎年四十五万トンの在庫積み増しを図るということで、目標面積を六十万ヘクタールということに定めておりまして、この線で三年間いきたいと思っているわけでございます。ちなみに五十八年の転作の実施面積は六十四万ヘクタール程度ございまして、したがって、実地面積と来年の目標ということで言いますと、なお四万町歩ぐらい減らし得るということはございます。  さらに、この第三期対策におきましては、転作等の目標面積の内数といたしましておおむね一割の面積で、他用途利用米ということで加工原料用の米を、少し価格は安くなりますけれども、水田の高い生産力を利用してこれも国内でつくっていこうということにいたしておりますので、実質の転作面積ということになりますと五十四万ヘクタール程度ということになるわけでございます。五十八年の実績とことしの目標ということになりますと、約十万ヘクタール程度ほど狭い意味の転作は減ってまいる。こういうことを中に織り込んだ需給計画策定いたしておるわけでございまして、ただいま委員御指摘のような趣旨というのは三期対策の中において生かされておる、かように考えておるわけでございます。
  374. 富塚三夫

    富塚分科員 カリフォルニアから米を買った方が安く上がるとか、あるいは財政再建という置かれている環境からいうとなかなか減反政策そのものの転換までに及ばないみたいな、その感じはわかるのですけれども、やはり農業政策のこれからの展望というものを、もっと確信を持てるような方策を私は大臣に打ち出してもらいたいというふうに思うのです。  そういう中で、目下二十一世紀論争が内外でされておりますけれども、発展途上国がかなり人口がふえる、食糧難あるいはエネルギー不足、環境破壊という問題がこれからの問題になってくるということを言われているのですが、今回も政府は開発援助について予算はかなり前向きにふやしているようですけれども、もっと農業政策の振興を図るという展望は、海外、つまり発展途上国に食糧を援助していくというふうな、そういった展望に立って再建をしていくことはできないのかどうか。私は、このままでいったら農民の方は自信をなくしてしまうのじゃないかと思うのです。加えて、弱い産業が海外からねらわれる、その筆頭に立つわけですから、そういう点についてお考えを苗大臣に聞かしていただきたい。
  375. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生言われたことというのは恐らくお米の問題であろうと思います。米を国内でつくって発展途上国へ援助という形。実は外国の米と日本の米の値段が余りにも違いまして、これを国内でつくって、そして援助するということになりますと、財政上もどうしても許されないような状況にもございます。  ただ、今後の我が国の農業ということにつきましては、少なくとも需要の動向に応じた農業生産の再編成ということも行っていかなければなりません。それとまた大きいのは中核農家の育成、確保、これを中心にして行いまして、そして経営規模の拡大、農業基盤の整備、農業技術の開発向上等を図りながら生産性の向上を目指していくということ、そしてまた、特に農村における就業と生きがいの場というような豊かな村づくりというものを今提唱して、これを進めております。  詳細につきましては、事務局の方から御報告さしていただきます。
  376. 松浦利尚

    松浦政府委員 前段大臣がおっしゃいました援助米のことにつきまして、若干御説明いたしたいと思います。  我が国のお米の輸出につきましては、実は過剰米処理ということの一環でこれを実施してきたのでございまして、実はことしをもちまして過剰米はなくなってしまうという状況になっております。そこで、新たにお米をつくって、それで外国に援助する、特に発展途上国に援助するということになりますと、ただいま大臣がお答えになりましたように、価格に非常に大きな開きがございます。大体国内価格にいたしますとトン当たり三十四万円になるわけでございますが、これが外国に出します場合には七万五千円から八万円という状態でございまして、非常にギャップが多い。その分を財政的に援助しないと輸出ができないということがございます。  かてて加えまして、実は発展途上国も含めまして、例えばビルマあるいはタイ、それからパキスタンといったような国はお米の産出国でございます。こういったお米の輸出先をこのような援助によりましてなくしてしまうということになりますと、発展途上国の間にも非常に大きな問題が起こるわけでございます。つまり、補助金つきで輸出をするという問題が起こるわけでございまして、実はこれらの国々とは過剰米の処理ということで事前に十分に御連絡をいたしまして、それで輸出ができておるという状況でございます。  したがいまして、このような財政負担の問題あるいは発展途上国内の米の輸出国との関係といったような面から、お米をつくって輸出するということはなかなか難しい状況にあります。
  377. 富塚三夫

    富塚分科員 すぐの問題というよりも、中期的、長期的にどういうふうに政策転換を考えていくかという問題なんですが、時間がありませんから多くは申し上げませんけれども、多面的な角度からやはり検討を加えていく、そういう政府の姿勢があっていいと思うのですね。ですから、その点はぜひ前向きに検討していただきたいというふうに思います。  そこで、何か天気予報によりますと、ことしは非常に冷害が出てくるのではないかというふうに予想されて、いち早く農民の方はかなり心配されているわけです。天候ですから結果を見なければわからぬという問題もありますが、既に大気予報図などでそういうことを想定されているので、あらかじめやはりそういうことに対応する政府の手だて、こういうものを考えていただきたいし、具体的な点についてひとつお考えがありましたらお知らせをいただきたいと思います。
  378. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 確かに、このところ四年ばかり不良な気象条件に見舞われておりまして、予定どおりの米の生産が上がっていない、そういう事情にございます。そういうことを背景といたしまして、先ほど申し上げましたように、明年度以降の水田利用再編対策もそれなりの考えを盛り込んだつもりでございますけれども、同時に、予定されている米の必要量というものを確保してもらわなければならぬという問題があるわけでございます。  長期予報はその性格上、過去の事例を見ましても必ずそのとおりになっておるということではございませんけれども、過去の事例もございますので、ひとつ農家にも稲作のための基本技術を励行してもらう、同時に、最近は農家の様子も非常に兼業が進む、あるいは老齢化が目立つなど変わってきておりますので、稲作の生産のために必要な生産組織を活性化していくということを内容といたしまして、山村大臣提案に係りますたくましい稲づくり運動というのをことしは強力に推進いたしたいというふうに思っているわけでございます。現にこれまでそのような運動をやってまいりました県も数多くございますけれども、昨年までそういう運動をやってなかった県におきましても、ことしは稲作運動を一生懸命やる、こういう機運も出てきておるわけでございますので、さらに関係県、農業団体等と連携を密にいたしまして、何といたしましても必要量は生産をするということで指導を強めてまいりたい、かように考えております。
  379. 富塚三夫

    富塚分科員 どうなんでしょう。冷害による不作の現象が出てから政府補償するということよりも、やはりいかに予防措置を考えるかということの問題を少し大事にされた方がいいのではないか。地方自治体やあるいは農業団体関係者と十分相談をして、事前に冷害の被害を最小限に防ぐという点で、お金も出してそういう対策を考えられた方がいいというふうに思うのですが、その点一つ。
  380. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 四年連続不作ということもございまして、たくましい稲づくりというのを提唱いたしまして、今委員おっしゃいましたような各県知事会の方それから全国の市町村会、これは全部連絡をとりまして代表の方に来てもらいましてたくましい稲づくりという運動を提唱いたしました。そしてまた、農業団体の代表の方にもおいでいただきました。そして、いわゆるこの不作というのは一番大きいのは何といっても天候不順ということにあると思いますが、それと同時に、栽培管理の不徹底というものもあったことは否めない事実でございます。それらを含めてこの悪天候にも耐え得るような、当初の計画どおりの収穫が得られるようなということで、今先生おっしゃった各市町村、農業団体、これに全部連絡をとって御協力いただいておるところです。
  381. 富塚三夫

    富塚分科員 最後に、時間の関係がありますから、相模湾の漁業の振興問題についてちょっと政府の御努力をお願いをしたいという点で申し上げたいと思います。これは地元の新聞です。  一般的に、最近漁獲量がどの漁港でも減少傾向にあるということは十分承知をしていますが、とりわけ相模湾は非常にひどいような状況になっている。一つは、海水が汚れる汚染の問題があるようです。そして、化学洗剤などを使っているために海藻も育たないといったことなどもあり、また相模湾は西湘バイパスがありますものですから、自動車のライトなんか照ると魚が寄ってこないということなどもあるように思います。また、水洗便所の処理方式も三次方式ぐらいまですればにおいも消せるのだそうですが、現在、二次処理ぐらいになっている問題もありますが、そういう点の海水汚染をどういうふうに取り除くかということの問題が一つあります。  それから二つ目には、遊漁船といいますか、釣り舟がどんどんと出まして、小田原などは五十そうぐらい入っておりまして、まだ育たないうちにどんどんと釣りをしていくものですから魚がとれなくなってしまう。そういう点で、遊漁船などの野放しを規制するようなルールというものも必要なのではないのかというふうに言われていますが、同時に定置網、定まったところに置く網ですが、これなどもうまくいかなくなったということなんです。  神奈川の知事の方からも恐らく水産庁に問題提起があると思いますが、相模湾の漁業振興問題についてどうお考えになっていますか。あそこだけの問題ではないと言われるかもしれませんが、しかし特に相模湾は西湘バイパス、つまり観光地とのかかわり合い、あるいは遊漁船というか釣り舟が非常に多いということなどの関係でそういった問題があるものですから、その点についてひとつお考えをお聞きいたしたいと思います。
  382. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 遊漁のお話、それから相模湾の汚染といいますか漁況の変化のお話、幾つかあったわけであります。  遊漁につきましては、御案内のように、昨年、健全な国民のレジャーということで釣り人が大変ふえてまいりまして、一千万をはるかに超す、一説によると一千五百万を超すのではないか。それに伴いまして遊漁者を海の上に運ぶための遊漁船の経営者、これもかなりの数に上っております。その結果、先生指摘のように、幾つか漁業者との間のトラブルもしくは資源上の問題を惹起しておるわけでありますが、そういったことを踏まえまして、何とかこの健全なレクリエーションとしての釣りと沿岸漁業者の利害もしくは資源問題との適正な調和を図れないかということで、数年来私ども腐心をしておったわけであります。  現実には、結局漁業者と遊漁する人たちあるいはそれをお世話する人たちとの間の話し合いを進める場をつくるというのが基本的に大事だろうということで、その旨の努力を事務的に続けておったわけでありますが、さらにそれを法制化をしようということで、昨年の国会におきまして関係の法令を改正いたしました。両者の話し合いの場をつくる、それについて都道府県が乗り込む、場合によっては勧告するという制度もつくったところでございます。  そういうこともありまして、例えばこれは一つの例でございますが、相模湾の東部地区におきましては、関係漁協あるいは釣り人をお世話する舟宿もしくは釣り人の中でも代表的な方たちとの話し合いの場をつくりまして、夜間の遊漁、釣りをやめるとか、底についているいその底魚に対して生きえをまいて魚をとるということをやめるとか、八月から十二月の間のキスの釣りをやめるとかいうようなことの取り決めが行われるというふうに聞いております。     〔谷垣主査代理退席、主査着席〕  いずれにしましても、そういったきめ細かい行政をすることによりまして今後両者の両立を図っていくということが必要になってくるわけでありまして、来年度の予算におきましても、私どもそのための行政を強化するという意味で、遊漁調整指導官というものの設置を財政当局から認められたところでございまして、今後そういった行政の仕組みの方も力を入れながら、両者が成り立つようにさらに一層の努力をしてまいりたいと思っておるわけであります。  それから、汚染の問題につきましても若干御指摘があったわけでありますが、これにつきましても相模湾については、環境庁調査の結果等を私どもが聞いた限りにおいては、特に東京湾なんかに比べて、あるいは三重あたりに比べますとはるかにいい状態ではございますが、全国レベルを若干下回る汚染状態にあるようでございます。これにつきましても関係法の適正な運用を図る、あるいは水産庁にも若干ではございますが、漁場をきれいにするための予算もございますので、そういったものの活用を図りながら、従来の漁業生産が円満に続けられるように努力をしていきたいと思っております。  それはそれといたしまして、そういったことを踏まえまして、いわゆるつくり育てる漁業といいますか、栽培漁業の振興あるいはタイ等の放流等につきましても、伺いますと県もかなり力を入れてやっているようでございますので、私どもの方もできるだけそれをバックアップしてまいりたいと思っております。
  383. 富塚三夫

    富塚分科員 もう一つ、市場外流通、市場の流通を通らずにスーパーとかマーケット、そういうところでどんどんと魚の販売がされるという問題がまた地元ではかなり問題になっておるものですから、ぜひひとつお願いをいたしたいのは、もちろん今おっしゃいましたいろいろな努力はされていると思いますけれども、実際問題として、自治体の努力する分、県あるいは市町村が努力する分もありますが、根本的にどうしていくのかということの問題を少し皆さん方ぜひひとつ調査に出ていただきたい。と申しますのは、後で建設委員会でやるのですけれども、道路の建設はどんどんと進める、こちらはまた容赦なくバイパスの改造問題とかいろいろやるわけですね。そういうものとの調和をどうするかという問題が行政の上で非常に問題なわけですね。ですから、その点を含めまして、御足労を煩わせましてぜひ調査をして懇談をする。一回でそんなにうまくいくとは私も思いませんが、そういう点でひとつ御協力をお願いいたしたいというふうに思います。
  384. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 相模湾は漁業の上でも大変大事な場所でございますので、せっかくの先生のお申し出もございますので、神奈川県庁当局とも十分御相談の上、必要に応じまして担当官を派遣するというようなことも考えてみたいと思っております。
  385. 富塚三夫

    富塚分科員 ありがとうございました。
  386. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて富塚三夫君の質疑は終了いたしました。  次に、永江一仁君。
  387. 永江一仁

    永江分科員 私は、蚕糸事業団の赤字問題及び生糸の一元輸入の問題につきまして、消費者の立場で、我が党が推進しておりますところの行政改革、すなわち、税金のむだ遣いをやめてもらいたいという立場から御質問をさせていただきたいと思います。  これはもういろいろなところで従来から論議されておるわけでございますが、例の蚕糸事業団には既に十七万五千俵の生糸が在庫しておる。しかも、過去十年間で三倍以上にふくれ上がっておるわけでございますね。これらの費用が、五十六年度三十九億円、五十七年度が五十七億円、五十八年度が見込みとして七十五億円、こう言われておるわけでございまして、農林中金から借入金が千八百七十六億円、こういうことで、この一年間の金利及び保管料が百六十億円になっておる。第二の食管赤字であるとさえ言われておるわけでございます。  従来から今日までの財政赤字の原因、三K問題と言われること、国鉄にしろ健保にしろあるいは食管赤字にしろ、ある意味でこれは国民にとって必要な一面もあるということはよくわかるのでございますけれども、生糸というある意味ではぜいたく品の産業を保護するために、今後ずっと我々の税金をしょい込んでいくということに非常な疑問を感ずるわけでございます。この蚕糸事業団の在庫を減らすための思い切った措置をとるべきではないかと思うのでございますけれども、今日の現状とこれからの見通しにつきまして、局長の御答弁をお願いしたいと思います。
  388. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 現在の事業団基本的な仕組みでございますけれども、過去におきまして絹の需要は循環的に変動するという傾向がございまして、値段の安くなりましたときに事業団が買い入れをいたしまして価格を定める、反面におきまして、需要が旺盛になりました場合にそれを放出いたしまして価格を冷却する、こういうのが基本的な仕組みでございます。で、過去におきましても何遍か買い入れをし、また放出をしたことがございますけれども、結果的には事業団としては赤字を生じたことはございませんで、事業団の創立の際に若干の出資をちょうだいいたしておりますが、毎年の赤字等について政府がこれを補てんするという仕組みにはなっていないわけでございます。  しからば、どうして最近在庫がふえてきたのかということでございますが、大体五十三年ぐらいを境目にいたしまして、今申し上げました循環変動のパターンというのが変わってまいりまして、大体毎年需要が落ち込むという傾向になってきておるわけでございます。ちなみに、五十三年ごろの絹の総消費量は大体四十六万俵秋度でございましたけれども、その後毎年減少いたしまして、昨年ではついに三十万俵を切った、こういうことになるわけでございます。  その減少する過程におきまして、もちろん私どもも輸入を減らす努力でありますとか内需振興策とかいろいろなことをやってまいったわけでございますが、結果的には需給改善の効果があらわれませんで、その消費の減退の中で班業団が買い支えをしてきた。いま一つは、一元輸入制のもとにおきまして事業団が輸入しまして、これは当然売れるものと想定をして外国と契約したわけでございますが、毎年需要が落ち込んできている環境の中で、売ることができないということで事業団が抱えておる。両方合わせまして今御指摘のような数字に、なっておるわけでございます。  どうしてそういうことをやっているのかと申しますと、我が国の生糸のもとになります養蚕は大体中山間地帯の、ほかになかなかつくれるものがないという地域でのいわば特産物的な作物でございます。戦前におきましては約七十万町歩ということで、米に次ぐ第二の作物だった時代もあるわけでございます。もちろん戦後かなり減少いたしてきておりますけれども、それでも地域によりましては大変重要な作物であるということに着目をいたしまして、今申し上げましたような仕組みをとっておるわけでございます。したがって、今後そういう需要の動向が変わらないといたしますと、これはなかなか容易なことではないわけでございまして、私どもとしましても、これまでは国産を積極的に減らすという対策は余りとってこなかったわけでございますが、本年は国産についても相当な減産をしてもらわざるを得ない、かような観点から、今生産者団体等と協議を進めておるところでございます。何といいましても、需給の改善が図られなければ在庫の放出もできない、こういうことでございます。  しかしながら、その中におきましては、何とか少しでも在庫を減らそうという問題意識もございまして、一昨年のこの繭糸価格安定法の一部改正におきまして、新規の用途等に対しましては時価よりも安い価格で在庫を売れる、こういう制度も創設をしていただきましたので、その制度活用して、単に在庫減らしということだけではございませんで、それによって新しい需要開拓の刺激剤となる、こういう意味から、一昨年十一月以降、約一万俵ほどの売り払いもいたしているわけでございます。今申し上げましたような各般の施策を組み合わせまして、何とかこの危機を乗り切っていきたいと考えているわけでございます。
  389. 永江一仁

    永江分科員 その在庫減らしのためにある程度は安くして吐くということですけれども、結局そういうことをやれば、今のところ、局長の御答弁では蚕糸事業団自体が赤字累積にはならないということであっても、買い入れ価格よりも安く売ればその分は当然税金で賄わなければならないという結果になるわけでしょう。この点は将来の見通しの中でどうなりますか。
  390. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 今申し上げましたように、事業団の売買の結果出ました赤字については、食管制度のように当然帳じりを一般会計が負担する、こういう仕組みにはなっていないわけでございます。したがいまして、何とかして赤字の幅をより小さくするという積極的な努力をする必要があるわけでございまして、先ほど新規用途等について安く売っていると申しましたのも、黙って持っておりますと金倉がかかっていくわけでありまして、当然在庫のコストがかさんでいくわけでございます。それよりは新規用途等に売った方がまだ赤字の幅が少なくて済む、こういうふうな意図でやっておるわけでございます。  委員も御高承のとおり、我が国の絹の需要と申しますのは九割はもう和服用の需要でございまして、和服の需要というのももちろん大変大事でございますので、着物についての消費者のいろいろな意識を啓発するとか、あるいは着やすい着物をつくるとか、着つけの教室をやるとか、いろいろ和服自体についても努力をいたしておりますけれども、反面、これまで余り使われておりませんでした洋装分野あるいはインテリア等の分野というものも、量は小そうございますけれども、まだ需要拡大の望みがある分野でございまして、そういう分野に売る分におきましては、通常流通しております国産のマーケットを余り侵害しない、こういう意味もございます。結果的にこれが刺激になりまして消費量がふえますれば、需給改善にかなりな役割を果たすという意味でやっているわけでございます。もちろん短期的に見ますならば、これはコストよりは安い価格で売っておるわけでございますから、その分の赤字というのは当然出てまいりますけれども、より大きな赤字を避けるためにはこの方がまだいいのではないか、こういう選択をいたしました。
  391. 永江一仁

    永江分科員 大臣、今の蚕糸事業団の赤字の問題から、私は冒頭申し上げたのですが、消費者の立場で御質問しておるわけでございますけれども、和服を中心とする絹の需要が非常に減ってきて、そうして養蚕業者も守らなければいかぬ、製糸業者も守らなければいかぬ、こういういろいろな複雑な絡みの中でこうやられておるということは一応はわかるわけでございます。しかしながら、この仕組みや何かを調べれば調べるほどまことに伏魔殿的な、三重苦的な問題が出てきておる。従来からいえば、養蚕業者を守るのであればこの九年間の中で守られてきたかというと、今御答弁があったように、現実には今回は養蚕農家に対しても生産の調整をやらなければいけない。一番守るべき人に対してもそこまで来ておる。それ以外の製糸業者も、絹織物業者も、そして我々都会地の消費者も実は少しもよくなっていない。ここに最大の問題があると思うのですね。何かの制度で一方がよくなれば片一方がしわ寄せを食うということ、これも問題はありますけれども、これはこれなりにまだ理屈が立つ場合がある。しかし、今日の生糸の一元輸入の結果としては、どこもよくなっていないというところに深刻な問題が非常にあると言わざるを得ないわけです。  そこで、昨年もいわゆる日絹連が生糸の一元輸入が諸悪の根源であるという立場から十日間程度の、労働運動で言えばこれはストライキですね、こういうような深刻なこともやっておる。汽車が三日とまれば新聞が大騒ぎしますけれども、この日絹連の絹織物業者が十日間近くもストライキをやっても、経済欄には載ってもそれほど社会問題にならないからあれですけれども、しかし、これは非常に大きな問題だと思うのです。そういう中で自由貿易に反する、あるいは諸悪の根源と言われるこの生糸の一元輸入というものをこの際一遍考え直してみる必要があるのじゃないかと思うわけでございますが、御所見を伺いたいと思います。
  392. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 この一元輸入でございますが、これは先生御存じのとおり、昭和四十六年十二月、両院の総意に基づき創設されたものでございまして、いろいろな難しい問題はございますが、少なくとも現在の厳しい蚕糸絹業の状態からやはり必要ではないかというのが農林水産省基本的な考えでございますが、先生言われるようにいろいろな問題はあろうかと思います。そしてまた、いろいろ今減反そのほかの問題もございます。これもまた今生産者といろいろ相談しながらやっていただかなければならないということで今相談中でございますが、また、事業団のあり方これ自体が今研究会を持ってどういうぐあいにするか進めておるようでございますので、その出てきた結果を待ちまして、今先生言われたいろいろな問題がございますので、ひとついろいろな考え、これを中長期的なものとしてひとつ持っていきたいと考えております。
  393. 永江一仁

    永江分科員 今大臣おっしゃったように、これは議員立法ということで、我々消費者から突き上げられても、これは結局はあなたたちがやったことだ、これはお役人さんもそうおっしゃるんですね。大臣の千葉県は養蚕業はどれくらいおありになるかわかりませんけれども、我々の消費者の側から言うと、これは全くどこへも持っていきようがない。私なんかしょっちゅう責められておるのですけれどもね。今おっしゃったように、確かにこれは議員立法によって繭糸価格安定法がやられたわけでございますが、この一元輸入については、当初五十一年三月に改正されたときには「当分の間」、こういうふうになっておるのでございいますが、既にしかし八年、九年目を迎えようとしておる。この「当分の間」とは一体いつまでか、これをお聞きしたい。御答弁、どうお答えになるかわかりませんが、「当分の間」ということになると、やはりそれなりに一定の期間を置いて再検討すべき問題だと思うのでございますが、どうでございましょうか。
  394. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、五十三年がピークで、それからずっと需要が減りっ放し、著しい減り方だということでございますので、そういうような長期の見通しは狂ってきたわけでございます。そういう意味での「当分の間」だということでございます。「当分の間」とは何年かと言われてもちょっとあれですが、あと局長の方からちょっと御答弁いたさせます。
  395. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 「当分の間」という立法例は、恒久的なものではないという意味と同時に、その終期につきましては、新たなる立法をもってその制度が廃止されるまで生き続ける、こういう意味だろうと思います。
  396. 永江一仁

    永江分科員 そこで、「当分の間」の中で、今御答弁があったように、養蚕業全体、流通過程も含めて少しもよくなっていないというところに問題があるわけでありまして、先代、先々代になるのですか、武藤先生より以前ですか、亀岡農林大臣がたしか国会で、このことについては善処するという御答弁があった記憶があるわけでございます。しかしながら、その後さらに悪化する中で何ら制度的な面が変更されていないということの中で、一遍生糸の一元輸入についてこのことも含めて再検討すべきではないかと思うのでございますけれども、いかがでしょうか。
  397. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、ただいま繭糸価格安定制度に関する研究会をつくっておりまして、その中で今後の繭糸価格制度のあり方を検討願っておるわけでございます。一元輸入制度そのものにつきましては、先ほど申し上げましたような経緯がございまして、なかなか役所側でこの問題を取り上げるということは難しい背景はあるのでございますが、制度検討ということになりますと、一元輸入の問題について何も触れることなく検討するというのもこれまた難しいわけでございます。その意味では、ただいま進められております研究会の議論は、蚕糸絹業すべてにわたります問題について広範な見地から検討が進められておるわけでございます。また、そういう大変広い範囲にわたります問題でありますだけに、なかなか短時日に結論が出せないという悩みもあるわけでございまして、私どももじんぜんと日を送るつもりはございませんで、できるだけ早い時期に結論が得られますようにさらに努力いたしたいと思っております。
  398. 永江一仁

    永江分科員 昨年十一月には京都市議会でもこの一元輸入制度の撤廃の決議もされておるわけでございますし、先ほど日絹連のお話もいたしましたけれども、その点を避けてこの問題を検討するということは非常に難しいと思いますので、研究会の中で大きな課題としてぜひひとつ早急に結論を出していただきたいと思うわけでございます。  そこで、需要がどんどん減ってきた、これには理由がいろいろあると思うのでございますが、やはり安ければある程度買うというのは経済の原則だと思いますね。ただ、繭糸価格だけでなくて、流通過程の中で着物の値段が高くなるという説も確かにある程度説得力があるわけでございますけれども、しかし、やはり一番のもとの値段が下がればある程度そういうことでの需要を喚起するのではないかと思う点から、本年度、編年度というのは六月一日からだそうですが、現在の基準価格一万四千円をそのままに据え置くのか、あるいは引き下げる考えはないのか、この点お答えいただきたいと思います。
  399. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは繭糸価格安定制度に基づきまして、審議会の議を経まして、また法律の条件に則して決定をすることになるわけでございまして、現段階ではまだいかようとも方針を申し上げられる段階ではございません。
  400. 永江一仁

    永江分科員 その審議会の結論は、ことしの分については大体いつごろ出るわけですか。
  401. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 蚕糸業振興審議会は例年三月の月末に開いておりまして、本年の場合にもおおむねその月末に近い日ということで、まだファイナルに日付を決めておりません。
  402. 永江一仁

    永江分科員 これは答えにくいかどうかわかりませんが、一万四千円据え置きという傾向が強いとお考えですか。
  403. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは繭糸価格安定法の規定によりまして決定するわけでございまして、ただいま私どもの耳へ入っております話としましては、需要者側からはできるだけ基準糸価は安い方がいいという声もございますし、また蚕糸関係者からは、いよいよ減産までやらざるを得ないというふうな厳しい際であるから何とかしてこの価格は守ってくれという声もございます。いろいろな意見が出まして、最終的には審議会の議を経て決定される、かような運びになると思います。
  404. 永江一仁

    永江分科員 この問題は、本当にいろいろな利害が絡み合っておって大変難しいということは我我もそれなりに承知はするのでございますけれども、いずれにいたしましても、業界、消費者も含めてだれもが非常に困るというような状況はやはり一日も早く改めるべきだと私は思うのでございます。  そうして、どういうふうに改めるかということになれば、さらにこの統制を強めていくのか緩めるのか、結局二つに一つだと思うのですね。これは大臣の方が自由主義経済者であろうと思うし、我々民社党はかつては若干は社会主義なんて言っていたぐらいでございますから、いささか道なんでございますけれども、しかしながら、こういう蚕糸の問題を見れば、いわゆる統制経済というのがいかに非合理的であり、非能率的であるか、これは実は世界の経済状況が教訓として我々に教えておるわけであります。やはりすべて自由経済という見えざる手で動くところに結局は一番合理的な結果がもたらされておるということを考えますと、この蚕糸事業を守らなければいけないというその出発点の意味はわからぬでもありませんけれども、今日のようにもう上げ下げならないように追い込まれた最大の原因が、言うならば自由主義体制を誇る我が国においてここだけが統制経済だ。私は、これはいろいろ調べるにつけましても、蚕糸事業だけでよかった、統制経済をもっと広げておったら日本はえらいことになっておったとつくづく思うわけであります。本当にそういう意味においては、この蚕糸事業の問題をある意味で合理的に解決していくためには、自由経済の体制の方向に、自由経済の利点を取り入れる、民間活力を導入する、この方向に持っていく以外に解決の方法はないと私は感ずるわけでございます。  そういう意味で、今急にすべてを自由にせいと言っても、これはいろいろ問題があることはわかるわけでございますけれども、例えて言えば、ことしも繭については六百トンの輸入ということだそうでございますけれども、この総枠は一応守るといたしましても、今のやり方は、特に繭なんかは、もう六百トン決めたから、その後の行き着く先まで全部お役所がお決めになるというかタッチしていく、これが経済的に大変いびつになっておると思うのでございます。そういうことで、せめて繭の六百トンのことしの分につきましても、総枠の蛇口は調整する、後についてはいわゆる民間企業の活力導入、自由というものを導入するお考えはないか、お尋ねいたしたいと思います。
  405. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 自由主義経済ということで、自由でということですが、蚕糸絹業の健全な発展を図るという意味から、ある程度のということでこういう規制があったと思います。少なくとも今度の輸入問題につきましては、いろいろな難しい問題はあるようでございますが、私としては縮減の方向で進んでまいりたいと思います。難しい問題はある、かなり今まで努力してきたようですが、それにつけても、農林水産省としてはその縮減という立場でやってまいります。
  406. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 ちょっと補足を申し上げます。  繭につきましても、これは自由化商品でございまして、かつて、五十三年ぐらいは四千トンぐらい輸入をされておったわけでございます。生糸や絹製品につきましていろいろな形で輸入を抑える政策をとっておりますが、繭のところだけがしり抜けということになりますとそこから制度が破綻を来すという問題がございますので、数年前から、事前確認価という形で繭の輸入総量を抑える政策をとっておるわけでございます。ただ、輸出国もございまして、なかなか一遍にゼロというわけにはまいりませんものですから、輸出国の要望をある程度満たしながら、同時に、国内におきましては、本当に繭が必要な人の手に確実に渡るということにいたしておりまして、そのために、今の実需者と輸入商社をドッキングさせるというふうな仕組みをとっておるわけでございます。御指摘のように、総量だけを抑えておいて、あと国内自由に売らせるということになりますと、輸入繭が一種の浮動玉の形で国内を流通するということになりますので、それはまたそれで新しい問題も出てくるということからただいまのような仕組みをとっているわけでございまして、その輸入の事前確認制度運用につきましては、いろいろ改善工夫を凝らしながら今後運用してまいりたい、かように考えております。
  407. 永江一仁

    永江分科員 もう時間がございませんので、御答弁は要求いたしませんけれども基本的には、大臣は縮減というふうにおっしゃいますけれども、いずれにいたしましても前段の自由体制こそが経済の基本であり、しかもこれが養蚕業も含めて近代化につながる、このことだけは、いかに農林大臣といえども頑迷固陋に守るということだけが養蚕業者を守ることじゃないということだけは、一言だけ申し上げさせていただいて、質問を終わりたいと思います。
  408. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて永江一仁君の質疑は終了いたしました。  次に、兒玉末男君。
  409. 兒玉末男

    兒玉分科員 農林省に対しまして、当面の緊急な解決を迫られている農畜産物の自由化の問題、それから、これは地域性で私の方の問題でございますが、水産庁関係で、カツオ・マグロ魚価の低迷なりあるいは莫大な負債を抱えるために自殺者が相次ぐという非常に深刻な問題が起きております。同時にまた、畜産農家なりあるいは私の方の県南では早掘りカンショというのがございますが、これの課税問題で農民が大変心配しているという、この三点についてお伺いしたいと存じます。  まず第一点は、オレンジ、牛肉類のいわゆる自由化問題をめぐりまして、アメリカからは肉類が一万トン、オレンジ類は一万五千トンの上積みの要求が出ているわけでありますが、先般大蔵省の発表によりますと、対米関係の輸出入関係が約二十一億五千万ドルも輸出超過だ。その要因はほとんどが工業製品でございまして、そういうことがさらに拍車をかけながら、収支不均衡から経済摩擦の解消という立場で農産物の自由化問題がさらに拍車がかけられるという状況でございますが、農林省としてはこの自由化問題にどのように対応されようとしているのかまずお伺いしたいと存じます。
  410. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生御存じのとおり、金子前大臣が、本年の三月、いわゆる今月末決着をつけるということで今まで何遍も米側との約束もしてきておるわけでございます。それに沿いまして一昨年の十月から五回にわたって日米間で事務レベル交渉をやってまいりました。しかし、この間アメリカ側の交渉態度はだんだん弾力的にはなってきましたけれども、依然としてまだ日米間の考え方には大きな隔たりがあるということでございまして、せんだって塚田総務審議官を渡米させましてアメリカ側といろいろ相談させました。きのう帰ってまいりまして、そしてその結果、眞木国際部長とネルソン代表補との非公式協議を三月十五、十六の両日サンフランシスコで行う、そしてさらにこれを受けて、三月二十二日から二十四日にかけてワシントンにおいて佐野経済局長とスミス大使との間で非公式協議を行うということに今のところなっております。  私といたしましては、農産物に対しまして、これを輸入するということは、やはり我が国の農産物の需給動向を見た上で、そして我が国農業が着実に発展していくということを念頭に置きながらこれに対処していかなければならぬ。農業者が犠牲にならないように、これを念頭に置いて我が国農業を守るという立場でこれに対処してまいるつもりでございます。  今先生言われましたように、円米貿易で日本側が二度十六億ドルも黒字になってしまっているとかいろいろございます。しかしまた、日本側としますと、アメリカの牛肉総輸出量の六割もこっちで買っておるじゃないか、またかんきつにしましても、アメリカが外国へ出しておる総輸出量のうちの四割も日本で買っておるじゃないか、これらの状況もよく話しながら、日本の農業の実情というものをよく説明しながら、日本農業を守るという立場で交渉に当たってまいりたいと思っております。
  411. 兒玉末男

    兒玉分科員 畜産局長お見えですね。局長は私の宮崎県の状況はよく知っているわけですが、一昨年、年間通しまして平均十万円以上の値下がりが実は子牛価格の現状であります。これはやはり何といっても自由化という背景があることは否めない事実でありまして、特に南九州における基盤は何といっても畜産であります。そういう点から、アメリカが要求している一万トンの上乗せが決まるならば、さらに子牛価格の低迷に弾みがつくということはもう避けられない現象かと存じますが、主管である畜産局長としてはこの問題にどのように対応されようとしておるのか、局長の御見解を承ります。
  412. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 国内の牛肉生産あるいはその基礎となります子牛の生産につきましては、ここ数年来の努力でだんだん力もついてまいったわけでございますが、まだ残念ながら、特に子牛生産、繁殖農家の経営規模だとかあるいは経営の内容とかいうのは必ずしも強固になっていないわけでございます。  したがいまして、昨年、御承知のように酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律という形で制度整備いたしますとともに、特に子牛につきましては、従来民法上の法人でありました基金協会を特別法人にいたしまして、さらに財源的にも相当の手当てをしたつもりでございます。したがいまして、現在、今先生指摘のように値下がりはいたしておりますものの、農家の手取りにつきましては下落の九割を補てんしますと同時に、生産者に対する奨励金等も交付しておるわけでございますので、農家の実質的な手取りはある程度確保しておるとは思いますけれども、やはりこのような安値が長く続きますと生産者の意欲にも大変影響があるわけでございます。御承知のように昨年の暮れには、特に雌の子牛の導入のための臨時特例的な援助もしたわけでございます。昨年の暮れから若干好転の気配が見えておりますが、まだやはり十分ではないと思っております。私どもとしますれば、当然、今度の牛肉の問題につきましても、そういう生産者が生産の意欲を欠くような事態になっては困るわけでございますので、需給の動向を的確に把握しまして、しかもそういう年々の需給の動向も十分把握した上で輸入が現実に行われるような形でこの交渉を片づけたいと思っております。  先生も御指摘のように、東京ラウンドの際におきましても、例えば五十六年のように国内の生産が伸びまして輸入の量自身に問題がありましたときは、対前年に比べて減少をさせたという実績もございます。逆に予定しました数量を超えた事態もあったわけでございますが、まず長期的に安定的な輸入が確保されると同時に、また短期的にはそういう変動にも対応できるような形でこの問題を解決したいと考えております。
  413. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは自由化等の関係は直接ないと思うのですけれども、私の南九州、特に都城の周辺においては、多頭飼育の畜産農家が非常に多額の借入金と金利返済のために、もしやめたら全部農協に取り上げられてしまう、夜逃げをすれば親兄弟に迷惑がかかる、こういう金融面の緊急的な対応に非常に迫られている。そういう点から、条件のいい方向に一時切りかえをしながら若干の据え置き等を行うなど、このような負債農家に対する対策をしていかなければ、これは大変な状況に置かれていることを、局長等十分御解理していると思うのですが、このような負債農家に対する対応として、当面どういうような対策をとるようにされているのか、お伺いしたいと思います。
  414. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 五十四、五年の、子牛が非常に高い段階でこれを仕入れまして肥育いたしました農家に負債が累増しましたことがございまして、昭和五十七年度の価格決定の際に、肉畜経営改善資金という制度を設けまして、総額六百五十億の金融措置を講じたところでございます。そのことによりまして、かなり多くの農家につきまして経営改善の兆しが見えているわけでございます。その後は、どちらかといいますと、子牛価格が下がり、資材も安定し、製品価格がほぼ通常でございますので、肥育農家の方は一息をついておるわけでございますが、今度は繁殖農家の方が、子牛価格が下がったことによって所得水準が下がった。これにつきましては先ほど申し上げましたように、下がりましたものの九割は補てんをされ、そのほかに生産奨励金が、一万円から二万円程度の金が出ておりますので、今のところ私どもの方は、全体として所得水準が大変下がったという事態ではないと思います。  しかし御指摘のように個別の農家では、その間に例えば資本装備を高度化するための借入金を行ったというようなものもございますので、個別の農家の再建のためには自作農資金等を活用いたしまして、できるだけそういう負債が累増している者を救うというようなことも考えなければならないと思っております。
  415. 兒玉末男

    兒玉分科員 自由化の対象で、牛肉とそれからオレンジが関係があるわけでございます。私の方は両方とも主たる生産地を形成しておりまして、ミカン等は農協経済連がジュース工場を持っていますが、何万本も倉庫に備蓄されている。そういうことが園芸農家に対して生産意欲を非常に減退させているという点等からも、自由化問題が、もしこれが要求どおり決まればいよいよ園芸ミカン作農家は決定的打撃をこうむる。こういう点から、今回の自由化問題に対しては、農林省の交渉に臨む基本的な姿勢というものがあいまいではないか、新聞報道等を通してもその感を深くするわけでございますが、ひとつ大臣がここで、農林省の態度はこうだという一貫した姿勢でいかなければ、あっちへ行けばひょろり、こっちへ行けばひょろりでは困るわけです。あさって、全国の自由化反対の集会がございますが、そういう生産農民の立場を十分踏まえながら、農林省としての基本的な姿勢をこの際明らかにすることで対米交渉においても有利な結論を引き出すことができるのじゃないか、そういう点から、大臣の毅然たる表明を期待するものでございます。
  416. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私は、日米農産物交渉に際しまして、日本農業を守るという立場を堅持してまいります。  特に、一昨年四月二十二日、農畜水産物の輸入自由化反対に関する件、そしてまた、本年一月の、農畜産物の輸入自由化・枠拡大に関する申し入れ、これを衆議院の農林水産委員会からいただいております。これは農業者を犠牲にしないように、我が国農業を着実に発展させていくということが御趣旨であろうと思います。その趣旨を踏まえまして、我が国農業を着実に発展させるということを念頭に置いて交渉に当たってまいります。
  417. 兒玉末男

    兒玉分科員 私が特に御要望したいことは、対米関係のアメリカ側のいわゆる輸入超過というのは、農産物は全く関係ないわけですね。ほとんど工業製品にある。その点、交渉の過程で強く農林省側の意向を訴えるべきであって、そのことがなければこの問題の解決はできないということを、ひとつぜひ担当者が念頭に置いて不退転の決意で臨むように強く要望します。大臣のそれに対する決意……。
  418. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 それは先生おっしゃるように、農産物が日米の貿易摩擦の原因になっているのではございませんで、これは日米関係で、農産物関係ではアメリカの全輸出量の一五%を日本で買っておるわけでございます。言うなれば一番いいお得意さんであるわけでございまして、農産物の場合は貿易障害ということには一これは他の方の輸出でそういうようなことが出ているわけでございまして、先生言われるとおりでございます。牛肉につきましても、アメリカが輸出しておる牛肉の六割を日本で買っております。また、かんきつにしましても四割を日本で買っておる。いろいろな事情も説明します。日本の農業事情等も説明して一生懸命頑張ってまいります。
  419. 兒玉末男

    兒玉分科員 山村農林大臣に期待いたします。  次に、水産庁関係でございますが、先ほど、大臣のお手元にも新聞のコピーをお配りしましたが、現在カツオ、マグロ等の魚価が低迷しておるところでございまして、それで私の県南の地区は非常にカツオ、マグロ漁業の盛んなところでございますが、新聞に載っているとおり、負債返済をめぐってとうとい犠牲者が出ております。問題は、水産庁が先般海外まき網漁業についての操業をめぐって、許可条件として、国内には水揚げしないという条件で認可をされたと聞いております。ところが、現実にはそれがほとんど実行されていないということで、国内への水揚げが魚価低迷の大きな要因である。また、水揚げ量も海外まき網船による水揚げが膨大な数量に上がっているという点等について、水産庁としてはどういうふうな対応をされようとしているのか、お伺いしたいと存じます。
  420. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 お答え申し上げます。  カツオあるいはマグロ類の値段でございますが、ミナミマグロ等の一部を除きましては、御指摘のように魚価が低迷している現状にあるわけであります。しかし、これは事カツオ、マグロに限ったことではございませんでして、最近の水産物の価格動向を見ますと、特に五十八年に著しい現象でございますが、全般的に各漁業種類ともいわば大豊漁でございまして、一方、魚の消費が伸びないということもございまして、全般的に価格が一割ないし二割下がっておるという現状にあるわけでございます。  カツオの場合には、これにさらに加えまして国際的な一御案内のようにカツオはもう国際商品でございまして、国際的な市況の低迷というものがこれに加わって、特にその点が顕著に出ていると私どもは理解をしておるわけでございます。  こうした魚価の低迷に対処するために、御存じのようにカツオ、マグロの関係業界が昨年の夏ごろから鋭意検討会を開きまして各種対策を講じたわけでありますが、なおその効果が上がらないということで、さらに、ことしの一月に入りましてから再度関係者が集まりまして議論が行われ、幾つかの取り決めがなされたわけであります。  御指摘の、海外のまき網――海まきと言っておりますが、海まきについて、ある種の条件が付されているけれども、その条件を実行すれば云々という御指摘でございますが、私ども必ずしもそう思っておりませんで、御案内のようにカツオは海外に揚げるという条件ではなくて、魚獲物その他その製品の陸揚げに関しまして、水産庁長官が必要な指示をしたときにはこれに従えというような制限条件がついておることは事実でございます。したがいまして、水産庁から指示をすれば海外で水揚げをするように努力するということに相なるわけでありますが、そういった制限条件を発動することに伴う効果が上がるかどうか、あるいはそうすることが当該漁業に対してどういう影響を与えるかということも慎重に考えてやらなければいけないことだろうと思っておるわけであります。  例えば、現在カツオの価格は、もちろん国内も下がっておるわけでありますが、世界的に低迷をしておるわけでありまして、アメリカにおきます価格の報告等を見ましても、一昨年に比べまして昨年はかなり大幅な値下げになっております。ごく最近におきましても百円台ということでございます。  その原因はいろいろあるわけでありますが、現象的に見ますと、フィリピン、タイからの対米カツオ缶詰の輸出が膨大にふえております。そのために日本のフィリピンに対する缶詰の輸出が激減をしておるわけでありますが、数字の上で見ますと、アメリカのカツオの缶詰の輸入量がこれまた大変な増加になっておるわけでありまして、そういった中で、主として買っておりますアメリカのカツオの買い入れ価格というのが暴落をしております。海外に水揚げをするということは、それを海外に水揚げしてアメリカに売るということを意味するわけでありまして、もしそのことを行えば自動的に、フィリピンがアメリカに輸出をしております缶詰の原料のカツオは日本からフィリピンに輸出をしておるわけでありますので、そういたしますれば、めぐりめぐってまた日本のカツオの値段を引き下げる効果にしかならないわけであります。  そういう意味で、世界じゅうにカツオが豊漁であり、缶詰の生産が特に開発途上国において激増をしておるということがめぐりめぐりまして日本のカツオの生産、あるいは供給自体はさほど変動はないわけでありますが――変動がないといいますのは、昨年の生産が約三十五万トンと想定されますが、過去におきましても三十五万トンを超える年もございました。そのとき特に価格が大きな騒ぎを起こさなかったときもあるわけであります。それから、一昨年に比べまして昨年は数万トン増加しておりますが、一方輸出増、日本が魚価が下がっておるということで輸入減等を加味しますと、実質上の供給増というのは余りないわけでございます。そういう中で価格がさえないというのは、一にかかって国際的なカツオ価格の動向というものが現在の問題の基本ではないかという私どもの理解でございます。  したがいまして、海まきに対する制限条件を発動しても、ごく短期的には何らかの反応があるかもしれませんが、めぐりめぐりましてまた海外カツオ、マグロが魚価が下がった分だけ操業努力をして、それが海外に対する輸出につながりますと、予期以上のカツオ価格の暴落を招くということにもなりかねませんので、私どもとしましては、昨年の八月ないしことしの一月に関係業界が取りまとめられました対策の実効というものを見守っていきたい。そういったことがことし一月に決められたばかりでございますので、その効果もまだ芳しいものとして数字の上では出てまいっておらないわけでございますが、一月に比べれば二月の価格状況というのはやや好転をしているという統計もございます。もう少し様子を見てみたいというのが私どもの率直な感じでございます。
  421. 兒玉末男

    兒玉分科員 長官、いろいろ説明はわかりますが、現実に海まきを許可する場合、一本釣りの関係者は猛烈に反対しているわけです。海まきはみんな大手資本ですから、とても太刀打ちできないわけです。そこにやはり漁場の制約とか、あるいは今申し上げたような海外への水揚げ、さらにまた現実に資料を読みますと、長官も御存じだと思うのですが、焼津等での水揚げ量が五十七年で五万五千トン、五十八年では実に九万トン、恐らく五十九年度は十二万トンを超えると予想されます。そうすればいよいよ零細な一本釣りのカツオ関係の業者は、もう一家心中か死ぬ以外にないという深刻な受けとめ方をしているわけです。長官としては、この逆境に悩む一本釣りのカツオ漁業、マグロ漁業等に対していま少し思いやりのある行政指導をすべきではないのか。  それから、全般的な意見を聞くと、例えば水揚げの期間を五日を七日に延ばして実際の操業期間をできるだけ少なくするとか、あるいはまた、本当に自殺者が出ておるように、死の直面にあるこういう関係者の借入金の返済条件等について、例えば二年ないし三年据え置きにしてその間金利だけの返済とか、そういう緊急的な措置をとるべきではないのか。  さらにはまた、フィリピンの話が出ましたが、これから新たにこの水域についても、外交上のルートを通して、一本釣りカツオ漁業者等がこの水域等での操業ができる道等も考えるべきではないのか。  当然大洋等の大手が海まきの大半でありまして、その辺の調整というものをしていかなければ今後零細な漁民の生きる道はないのではないか、そういうことをするのが水産庁の仕事ではないかと私は思うのですが、これについての御所見を承りたいと存じます。
  422. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 先ほど来数字を申し上げたので、水産庁の対応が大変冷たいような御理解をいただいたかもしれませんが、決してそうではございませんで、私ども毎日のように関係者と会い、その対策に苦慮をしているのは先生御案内のとおりだと思います。  海まきの話が出ましたが、数年前に水産庁が海外まき網の許可をしたときには、確かに釣りの関係者からいろいろ反対が出たようでございまして、それに対応するために、総漁獲量がふえないという形で、例えば海まきを四百九十九トン型を一隻認める場合に遠洋カツオ五隻分の許可をつぶしてこなければまき網の許可は与えない、あるいは百十六トン型の北部まき網船についても同様でございまして、遠洋カツオ一隻と近海カツオ一隻の廃用を条件とするとか、そういうような形によりまして、数字では、つぶしたというか廃用させたカツオ釣り漁業の漁獲能力と新規に許可をしました海外まき網の漁獲量がイコールになるような形での処理をして許可をしたというふうに私ども伺っているわけであります。  ただ、その後、漁海況の変化によりまして、年によりましてはカツオの総生産量というのは三十五万トン、例えば五十三年のごときは三十七万トン、問題になっている昨年が三十五万三千トン、五十五年が三十五万四千トンと、過去において三十数万トンの年も幾つかあるわけでございまして、原因を客観的に冷静に見れば、やはりそれは海外問題ではないかというのが私どもの結論であるわけであります。  しかし、それはそれとしまして、御指摘のようにこれに関係をいたします漁業者の現在の苦境というものについての配慮は、当然のことながら私どもの仕事でございますので、例えば経営維持安定資金等の金融措置あるいは公庫資金、近代化資金等の償還条件の緩和等につきましては、各県とも相談をしながら現在鋭意進めているところでございます。
  423. 兒玉末男

    兒玉分科員 畜産局長と大臣に最後に質問しますが、この前予算委員会第二分科会の大蔵省所管のところで申し上げましたけれども、豚の標準価格の問題です。  福岡は農家の収入標準が五千円、熊本、南九州の宮崎、鹿児島等は八千円と、それなりに養豚農家も努力しておるわけですが、この課税の面で不合理があってはならない。これはもちろん大蔵省との調整でしょうが、下部の農協団体等もひとつ十分な行政指導をされながらこの問題に対応していただきたい。  同時にまた、これは畜産ではございませんが、早掘りカンショが、大変な努力をして、マル南法等の制定を通じながら一生懸命生産を上げているわけですけれども、やはり税金問題となると、農家はどんぶり勘定でございますから、この問題についても経済連等に対して農林省の方から適切な指導をされまして、課税の公平を欠くことのないようにひとつ格段の御配慮をいただきたい。これについて見解をいただきたいと存じます。
  424. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 課税というのは適正に行わなければならないのは当然でございますが、農業者というのはとかく税金問題は不得意でございます。そこで、今後とも農業団体の意見もよく聞きまして、国税当局とよく相談をしてひとつやってまいりたいというぐあいに考えます。
  425. 兒玉末男

    兒玉分科員 局長、どうでしょう。
  426. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘の、南九州と北九州の間で養豚経営につきましてその評価の仕方が相当違うということがございまして、経営の格差ということもございますけれども、どうもあの大きな差というのは、このことだけで説明し切れないような気がいたしますので、税務当局ともよく相談をいたしまして、適正な形になるようにいたしたいと思っております。
  427. 兒玉末男

    兒玉分科員 終わります。
  428. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて兒玉末男君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  429. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 まず、農林水産大臣にお伺いいたしますが、去る八日にアメリカのブロック通商代表が報道陣の質問に答える形で、牛肉、オレンジの輸入枠拡大をめぐる日米交渉に言及しまして、日本が早期解決に動かなければアメリカは自衛措置に踏み切らなければならないと強い調子で日本側の譲歩を迫ったと伝えられておりますが、この自衛措置とは一体何を意味しておるのか、その中身について、具体的な問題としては何を予想できるか。この点、大臣の御所見をお聞かせ願いたいと存じます。
  430. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 ブロック通商代表のこの御発言、これは直接聞いておるわけではございませんが、仮に三月末までに合意が成立しなかった場合、米国が何らかの措置を講ずるということは十分考えられることではございます。しかしながら、アメリカ側も三月末決着を目指して現段階で一生懸命――実は先生、きのう帰ってきた塚田審議官がアメリカ側と相談した結果、眞木国際部長とネルソン代表補との非公式協議を三月十五、十六の両日、サンフランシスコで行いたい、さらに、これを受けて三月二十二日から二十四日にかけてワシントンにおいて佐野経済局長とスミス大使との間で非公式協議を行いたいということを申し入れてきているところでございまして、このガットの提訴等の具体的措置検討しているということは、我々農林水産省としては全然聞いておりません。そしてまた、私としましても、今月末の前大臣金子先生のアメリカ側との約束もあるわけでございますので、それに向けて精力的に動いてまいるつもりでございます。
  431. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この日本とアメリカの間の輸入協定というのは三月末で期限切れになると言われております。そこで、今お話がありましたように、これは三月中に大臣もアメリカに行って直接折衝に当たるわけですか。
  432. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 最終的には佐野経済局長とスミス大使との間の会談というものを見た上で決めたいと思います。
  433. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そうすると、大臣が出る幕というのは今のところ考えていない、こういうふうに受け取っていいですか。
  434. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 いえ、そういうことではございませんで、私としてはできれば三月いっぱいに決着をつけたいという考えでございます。
  435. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、日本は今までアメリカとこういう輸入をやってきておるわけですが、アメリカはどうも不公平な取引である、こういうことを言っております。大臣は日本の今までの輸入に対する態度というのはガットに違反しておると考えているのですか。
  436. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 先生も御承知のことと存じますが、十三品目につきまして日本側で行っております輸入制限措置について、アメリカ側がガット十一条第一項違反であると称して、現在二十三条一項の協議が行われている段階でございます。言うなれば係争中の案件でございますので、私どもとしてアメリカ側との間の攻撃、防御のやり方についてこの段階で子細に私ども意見を申し述べることは差し控えさせていただきたいと存じますが、少なくともアメリカ側から見れば十一条一項違反であるというふうに認識をしておりまして、場合によっては二十三条二項の過程に移行しかねまじき状態であるということだけは申し上げます。
  437. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これはアメリカだけがそう考えるのか、日本の側でも若干その疑いがあると考えているのか、その辺が私は非常に重要だと思うのですよ。日本の側では絶対にガットには違反していない、そういう確信があれば何もそれほど恐るるに足らぬということですが、その辺は一体どうなんでしょうか。
  438. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 まさにその点でございますが、二十三条二項の過程に移行いたしますと、パネルの前でその問題について応酬をしなければならなくなるわけでございまして、そういう彼我の応酬をしなければならない事態が予想される現在の段階で、その点についての私どもの見解を立ち入って御説明することは御容赦いただきたいと思っております。
  439. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 最後にガットに提訴された場合は、一体どういうふうに対処するおつもりなんですか。
  440. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私どもとしては、そもそも現在のガット十一条一項の規定というのは、アメリカが多数の品目について自由化義務免除を享受しておるという状況のもとでは著しく公平を失する事態になっておりますから、そういうところから説き起こしまして、ガットの中にいろいろ私どもとして利用可能な条文もございますので、そういうものを援用しつつ、我が方の立場を弁護してまいるつもりでございますが、それ以上立ち入った防戦の仕方につきましては、先ほど来申し上げておりますようにお許しをいただきたいと存じます。
  441. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 新聞なんかではもう既にある程度考え方が煮詰まったというような報道も一部あります。例えば牛肉なんかは五千五百トンですか、そういう枠まで出ているのもあるのですが、そういう点ではある程度三月いっぱいに一煮詰まる可能性はあるのですか、自信のほどをひとつ
  442. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私どもといたしましては、三月末を目途として決着にこぎつけたいという心づもりで準備をいたしております。しかしながら、相手のあることでございますから、必ず決着できる自信があるのかと問い詰められますと、率直に申してそこは先方がよほど弾力的に対応してくれないといけないというふうに思っておる次第でございます。
  443. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 問題は決着の仕方でありますが、それはこちらが限りなく譲歩すれば決まることは当たり前であって、問題は日本の農民の立場をどう守り抜くか、日本農業の立場をどう守り抜くかという一つの限界があるわけです。それをきちっと守って当たる覚悟ができていると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  444. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 その点につきましては、大臣から機会あるごとに御答弁がございますように、衆議院の農林水産委員会から、その対処の仕方につきまして私どもが心得るべき事柄を決議という形でお示しになられておりますので、私どもとしてはその御決議を体して交渉に当たる所存でございます。
  445. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、ずっとアメリカの態度を見詰めておりますと、私は非常に勝手過ぎるのじゃないかというふうに思えてならないわけです。例えば、日本がアメリカに自動車を輸出しようとすれば、自主規制という名の輸出制限を押しつけてきているのは御承知のとおりでございます。それはつまり裏を返せば輸入制限と同じことでございます。しかもそればかりではありません、そのほかにいろいろな不平等な条約あるいはその他の取り決め等があるのも事実でございます。例えば航空協定にいたしましてもそうですが、その他いろいろな分野でアメリカと日本は必ずしも平等、対等に物事を取り決めていない。こういう問題を引き合いに出しながら、不平等のものを一つ一つ直していく努力があらゆる面からなされなければならない時期に来ていると私は思うのです。  今度の農産物交渉に当たっては大臣は特にそういう点をお考えになって、日本農業を断固として守るというかたい決意で当たっていただくならば、私は農民は大臣のそういう姿勢を心から支持するものと思いますが、大臣の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  446. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生おっしゃるように、農産物につきましてもアメリカでいろいろな制限を行っておるということで、それを一方的に我が国へというようなこともございますし、それらにつきましては、今まで聞いているところによりますと、それは交渉のたびに言っておるようでございます。同時にまた日本は、他の輸出するものと違いまして、少なくとも農産物に関してはアメリカの一番の大得意であることも事実でございます。アメリカの全輸出量の一五%というものを日本で輸入しておるわけでございます。牛肉につきましてもアメリカの輸出の六割、かんきつにしましても四割。これらの点についても先生おっしゃいますように十分にアメリカ側に申しますし、そしてまた我が国農業の今ある現実の立場というものも申します。そして、先生おっしゃいました我が国農業を守るという立場を堅持してこの交渉に当たってまいります。
  447. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 よろしくお願いします。  それでは次に生産者米価問題についてお伺いいたしますが、昭和五十九年産米の生産者米価を決定する際に、政府はどのような算定方式でこの米価をはじき出すおつもりなのか。例えば生産費の物価、賃金スライド方式とか、また限界地生産費方式とか、あるいは昭和五十六年以前の生産費及び所得補償方式を若干修正するとか、その他もしありましたら、その算定方式について御説明願いたいと思います。
  448. 松浦利尚

    松浦政府委員 五十九年産米の生産者米価につきましては、まだ何も決めていない段階でございまして、これは例年どおり、食糧管理法の規定に従いまして米価審議会の御意見を聞いて決定するということでございます。  ただ、ただいまおっしゃられました幾つかの方式につきまして若干コメントさせていただきますと、物価スライド方式と先生まずおっしゃったのでございますが、この方式につきましては、最近二年間に農業団体の方が御主張なさっておられる方式であるというふうに私、受けとめたわけでございます。この方式につきましては、稲作に投入されました資材価格あるいは家族労働評価賃金の上昇に見合うだけ米価を引き上げてほしいという御要求であるというふうに思います。かつて農業団体が三〇%近い大幅な引き上げ要求を、生産費所得補償方式のもとでそういう名前においておっしゃってこられたという状況から考えますと、この方式については、厳しい米をめぐる状況に配慮して行われたという意味で、ある意味では評価できる面もあるわけでございますが、しかし、米価は資材価格とかあるいは賃金の動向だけではなくて、生産性の向上あるいは需給事情等も総合的にしんしゃくする必要があると考えますので、やはりこの方式には題があるのではないかと今の段階で考えておるわけでございます。  それから次に、先生限界地生産費方式とおっしゃいましたけれども、恐らく先生の頭の中におありになる方式としては、五十七年に全中が出した「日本農業の展望と農協の農業振興方策」という冊子がございました。その中で記述されている方式ではないかと私、理解したわけでございます。その内容をここで申し上げる必要はないと思いますけれども、この方式の採用の可否につきましては、団体の内部におきましてもいろいろ御議論があるというふうに承知しております。かつ加えまして、その本にも書いてありますけれども、この算定の要素あるいは方式につきましては内部的にもいろいろと検討を要するということが書いてございまして、私どもも相当な詰めをいたしませんと、この問題はなかなか採用が難しいのじゃないかなという感じがいたします。  それから最後に、五十六年以前の生産費所得補償方式を使ってはいかがかという御質問ではなかったかと思うわけでございますが、この五十六年以前の方式と申しますのは、現在非常に大きな潜在生産力が米についてはございます。つまり、このままフルに水田を活用するということになりますと三百万トン余に上る過剰な生産が行われるということでございますので、さような需給の動向というもの、特に潜在生産力というものを考えながら米価を決定していくということになりますと、五十六年以前の方式は必ずしもこれに適合しないのじゃないかという感じがいたすわけでございます。  さようなことで、私どもとしましては、基本的に生産費所得補償方式と言われている方式を具体的に五十九年産米に適用してどうなるかということを考えていくのが筋ではないかと考えてはおりますけれども、何分にも先ほど申し上げましたように何ら決めておらないわけでございまして、今後食管法の規定に基づいて生産費、物価その他の経済事情を参酌しながら、また米の再生産を確保することを旨としてどのようなことで決定していくか、これから検討していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  449. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ただいまの御答弁を聞いておりますと、生産費及び所得補償方式を中心にして、その他の条件を勘案しながら決めていきたい、こういうふうに受け取っていいと思いますが、その際、米価を決めるときに一体何を一番重点に考えられなければならないのか。その点はいかがでしょうか。
  450. 松浦利尚

    松浦政府委員 ただいまも御答弁いたしましたように、五十九年産のお米につきましては、まだ何も方針を決めておりませんので、生産費所得補償方式であるかどうかということにつきましても、よく考えてみなければいかぬと思いますが、基本的にやはりそういう考えで進んではどうかというふうに今の段階で思っておるということを申し上げた次第でございます。  その際に、何を重点にするかということでございますが、生産費、特にその中での資材費とかあるいは労賃とか、こういうものの上がりがどうなるかということも十分に見きわめなければならぬということもございますが、一方では、やはりお米の需給ということも十分に考えて、その需給事情もその中に反映するような形で考えていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
  451. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 お米の需給関係も考えると言われましたが、昨年は端境期に非常に米不足を来して、そして保有米まで出せというような指示があったということを聞いておりますが、こういう需給を満足させることがなかなか困難ではないか。ある意味では、非常に危倶される状況の中で米価というものをどういうふうにお考えなのか。  それからもう一つは、資材と労賃ということを言われましたが、労賃は、恐らくことしは人事院勧告も実施されて公務員の賃金も上がるだろうし、また、この春闘で民間の賃金も上がるだろうと思います。そういう環境の中で米価は、五十九年産米は当然上げなければならない客観的事情があるのでないか、こういうふうに私は思いますが、その点はいかがでしょうか。
  452. 松浦利尚

    松浦政府委員 ただいま先生需給事情についての御解釈をおっしゃられたわけでございますが、私ども需給事情と考えておりますのは、そのような単年の、毎年毎年の需給事情ということを頭に置いておるわけではございませんで、基本的には潜在的な需給事情をどう考えるかということが非常に重要でおるわけでございます。  御案内のように、第三期の米の需給均衡化対策を考えました場合にも、そのまま水田を完全に活用するということを考えましたならば千三百七十五万トンからの生産ができるということでございまして、一方需要は千四十万トンしかない、そういう均衡の状態でございます。さような潜在的な需給事情というものを抜きにいたしまして米価というものは考えられないというふうに考える次第でございます。  そのようなことで、いろいろこれから考えてまいるということでございまして、その最後の姿につきましては、まだ到底お話ができるような段階ではないということでございます。
  453. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 需給事情の潜在的な一つの力というものをつくり上げるには、相当長期にわたっての備蓄というものがなされなければならないと私は思います。ところが、今それほど余裕ある備蓄はされていないと思いますし、そういう点では、ランニングストックというのですか、そういうものについては確固たるものがないのじゃないか、こんなふうに思うのです。そういう点で生産者米価の値上げというものはある程度こういう場所で示唆してもいいのじゃないか。それは確かに米価審議会を無視したというような話になりかねませんけれども、ここは国会ですから、審議会とは格が違うのですから、ある一つの方向性を示して、ことしは少し上げてやるから農民ももっと本気になってやらぬか、こういうことで農民に希望を与えるような示唆はできないものでしょうか。
  454. 松浦利尚

    松浦政府委員 ただいま在庫のお話をなさいましたので、その点をまずお話し申し上げますが、在庫につきましては、確かに現在の在庫水準というのがそう高いものであるということは言えないと思います。十万トンの持ち越しで五十八年から五十九米穀年度でも移りましたし、五十九から六十にかけましても在庫水準が十万トンということでございますので、私ども、もちろん三たびの過剰米の発生であるとか、あるいは在庫保有に伴う費用負担の問題とか、あるいは消費者の新米嗜好といったような問題を当然考慮しなければならぬということでございますが、在庫水準を適正水準に持っていくということでいろいろ考えまして、今回の第三期の対策の中では目標の転作面積を十万ヘクタール減らしまして、四十五万トンの在庫の積み増しをするということを考えておるわけでございまして、このような状態というものは昔から米価の中にもいろいろと考えてきておるわけでございます。  ただ、ただいまの状況の中で一体上げるか上げないかということにつきましてここでお答えを申すということになりますと、これはもちろん国会の格というものは私十分存じ上げているわけでございますが、当然米例審議会の御判断ということも伺わなければなりませんし、何分にも計数的にもまだ何ら詰めていない状況でございますので、そのような判断を今申せということにつきましては、ひとつお許しをいただきたいと思う次第でございます。
  455. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この問題は、在庫があるかないか、あるいはその需給が完全に安心してできるかどうか、そういう需給計画についての話は時間がありませんからこれ以上やりません。しかし、決してこれは納得したわけではありませんから、他の機会があったら大いにこれを掘り下げてやりたいと思います。  そこで、次に移ります。今度水田利用再編第三期対策と他用途利用制度というのが抱き合わせで実施されることになったわけですが、この他用途利用米は普通の飯米とどういうふうに違うでしょうか。品種が違うとか、何かそういうことが画然と見分けることができるような措置があるのかどうか。
  456. 松浦利尚

    松浦政府委員 これは本質的に申しまして、現在の段階におきましては、他用途利用米と主食に回すお米の間とでは区別はございません。にだ、私どもは、先生御心配の横流れの問題、これにつきましては十分に配慮いたしまして、食管制度基本にもかかる問題でございますから、その点は十分に注意をして処理をするつもりでございます。
  457. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、私は勘ぐり過ぎるのかどうか知りませんが、結局米の需給が非常に不安定である。だから、他用途米に頼ってその不安定な部分をある程度埋め合わせる、そしてもう一方の役割は、米価をちょっと上げたにしても、この他用途米を一俵一万円で買っていけば、これは米価を下げた役割を果たす、そういう両面作戦をとっているのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  458. 松浦利尚

    松浦政府委員 ただいまの御質問に対しましてお答えをいたします際に、まず御理解をいただきたいと思いますのは、この他用途米の導入の趣旨でございます。この趣旨は、水田の持つ高い生産力というものを十分に発揮していくということが必要であると考えましたこと、それから、従来までこの他用途米に充てます加工原材料のお米、みそとかせんべいとかをつくってきた米でございますが、これは過剰米をもって充ててまいりました。ところが、過剰米の処理は終了いたします。したがいまして、加工原材料のお米につきましては、そのまま放っておきますと、これは輸入をしなければならないということになります。しかしながら、大幅な生産調整を行っている中で、他用途利用米とはいえ、お米を輸入するということは適当ではないということからこの導入を図ったわけでございまして、加工原材料のお米につきましてこれを導入したい、こう考えたわけでございます。  そこで、お尋ねの点でございますが、まずこれは何かお米が不足するためにこんなことを考えたんじゃないかという御質問でございますけれども、この点につきましては、確かに五十八年産米が四年連続の不作であったということはございますが、しかしながら、この他用途利用米を使って米の需給の操作をしなければならぬという状態ではございません。したがいまして、それを想定して他用途利用米をつくったということは全くないわけでございます。また、先ほど申し上げましたように、四十五万トンの在庫をつくっていくということも考えておるわけでございます。  それから今一つ、米価の実質引き下げじゃないかという御質問でございますが、これは他用途利用米というのは、主食用より低い供給価格であれば一定の加工用のお米の需要があるということを前提にしてつくってくださる農家がある、こういうことが前提でございまして、七万円の助成もしながら、いわゆる自主的な流通の中において価格を形成していただくということでございます。したがいまして、あくまでもこれは主食用のお米とは違うわけでございます。主食用のお米は、先ほどから御答弁申し上げておるように、政府買い入れ価格につきましては従来どおり食管法の規定に従って適正に決めていくということでございまして、これは全く違う体系であるということで御理解をいただきたいと思います。
  459. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 時間が参りましたので、最後に、大臣にその決意のほどをお聞かせ願いたいわけですが、日本農業の展望について明るい期待が持てると確信されますかどうか。そしてまた、今一番困っておる後継者問題についても早晩解決できると思っておりますか、その確信のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  460. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 日本農業の将来の展望に明るい見通しが持てるか、私は持てると思います。そしてまた、持たさなければいけないとも思っております。特に、若い農業者が将来に夢を持ち、意欲を持って農業に取り組むことができるように、とりあえず中核農家の経営規模の拡大、農業生産基盤の整備、技術の開発普及、また、村のすべての住民に就業と生きがいの場を与える豊かな村づくり、これらを推進して、今後の我が国の農業の体質強化と農村社会の活性化に努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  461. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 どうもありがとうございました。
  462. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて渡部行雄君の質疑は終了いたしました。  次に、和田貞夫君。
  463. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 それでは、大臣はおりませんが、これは大臣にも聞いてほしいわけですけれども、私は長い間国会を離れまして、地元におる中でいろいろなことに出くわしたわけです。農林省、食糧庁は、生産者に対して減反政策をやったかと思ったら、今もお話が出ておりましたように、他用米の奨励をやるとかということで、どうもわけのわからぬように思うわけでございます。いい悪いは別といたしまして、食糧管理という立場に立って行政指導に当たられておるのですが、消費者に向けての米の流通ということにつきましては、そのこととは逆に、むしろ放任し過ぎておるのじゃないか、こういうように私は感じるわけです。特に消費者に向けての流通についてそれでいいのかどうか、放任しておっていいのかどうかということをまずお答え願いたい。
  464. 松浦利尚

    松浦政府委員 食糧管理制度は、生産者に対しまして適正な価格における生産をしていただくということが前提になっておるわけでございますが、同時にまた、これが適正に流通の過程に乗り、消費者に適切な値段でこれが売却されるということが前提でございまして、食糧庁といたしましては、あらゆる段階を通じて責任を持って食管制度の運営に当たっていかなければならぬ、そのつもりでおるわけでございます。
  465. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 建前はそうであろうと思いますが、現実の姿としてそうでないから私は言っておるわけなんです。  五十七年に食管法が改正されて、もう二年になるのです。米の不正規流通を規制して、そうして流通秩序を確立するために法改正がなされたわけですね。ところが、今なお全国的に大方一万六千の不正規小売業者が存在する。私は大阪でありますが、大阪におきましても、いまだに二千軒以上の不正規小売業者が存在している、こういう姿です。  そこで、正規の許可を受けた業者にしてみれば、五十五年から続いております米不作で、米が一体売れるのかどうか、米が確保できるのかどうか、消費者の皆さんに迷惑をかけないで済むのかどうかということで、非常に深刻な問題であります。ところが一方では、許可を受けておらない、やみ米屋さんというか無許可業者というか、その店には米が山積みされておる、こういう姿は一体どういうことかと言いたいのです。一体何のために法が改正されたのかということを言いたいわけです。  大阪の不正規流通で最も特徴的なのは、他県に見られないような、許可卸売業者と許可小売業者との間に実に百四十六に及ぶ中間卸という制度がある。そういうものが存在しておれば、これはいわゆる小売における無許可業者を皆無にするということにはもう絶対にならない。大阪府下でこの中間卸によって取り扱われている量が実に一五%から二〇%に及ぶというように推定されておる。そういうようなことをいつまで許しておくのか。せっかくまじめに許可を受けて小売をやっておられる皆さんに迷惑をかけながら、全く行政の怠慢でありはしないかというように思うのですが、一体どう対処していくのか、お答え願いたいと思います。
  466. 松浦利尚

    松浦政府委員 先生おっしゃられますように、確かに新しい食糧管理法、改正されました食管法は、その大きな目的の一つが守られる食管法ということでありまして、また守っていただかなければならぬ食管法ということでございます。さような観点から、私どもも不正規米の流通につきましては今まで努力をしてまいったわけでございます。  ただいま先生のおっしゃられましたいわゆる中間卸の点につきまして御説明を申し上げますと、大阪におきましては確かに昔からの商慣習と申しますか、あるいは正規の卸売業者と申しますか、これが非常に大手であるということから中間卸というものが存在してきたということは事実でございます。改正後の食管法に基づきまして大阪府知事の許可を受けました小売業者の中に、他の比較的小規模の零細な小売業者からの委託を受けて、卸売業者からの米穀の受け入れあるいは玄米の搗精等の行為を行っている、こういう人たちがおるわけでございまして、これがいわゆる中間卸と言われている人たちでございます。私の知っている限りにおきましては、この中間卸が約四十業者程度あるというふうに聞いております。  先ほどもちょっと申し上げましたが、中間卸というのは大阪の特殊な形態でございまして、商習慣等からこういうことになってきたわけでございますが、旧食管法時代には、卸売業者から仕入れて精をいたしました上で、比較的規模の零細な小売業者に袋詰め精米等を売り渡すという実態的な卸売業務を行っておるということは事実でございます。これが今まで中間卸と言われている状態になっていると思います。  しかし、先ほども説明しましたように、私どもはこの中間卸の業態というものは、新しい食管法に基づきまして卸、小売の二区分をしていくということで、米穀の適正な流通を図っていこうという食管法にも抵触するということから、改正食管法の施行後におきましては、五十七年六月以降、販売業者の一斉許可の際に、大阪府がその業務運営の適正化の指導を行いまして、いわゆる小売業者からの委託を受けて卸売業者からの米穀の受け入れあるいは玄米の搗精を行う等の行為に限ってこれを認めていくという形にいたして、それによって小売業の許可を行っているという状況でございます。したがいまして、現在の中間卸は、改正食管法のもとにおいて適法な形に切りかえられているというふうに私どもは考えておるわけでございます。  ただ、このような大規模小売業者が大阪府の指導に従って業務を行っている間においては問題はないわけでございますが、実態的に卸売業務を行うといったようなことになりますと、これは当然食管法に抵触するおそれがございますので、大阪府とも十分連絡をとりまして、卸、小売を通ずる米麦の適正な流通が確保されるように今後とも一層指導していくというつもりでございます。
  467. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 これは今長官自身が認められているように、大飯の特殊的な事情としてこういう中間卸制度というのが慣習になっておる、これは不思議なことなんですね。それでもう二年たっておるのです。確かに改正食管法以降、今言われたように、改めるべきところは改められておる。しかし、まだ現存しているということはあなた自身が認めておるとおりなんです。この二年間に食糧事務所なり大阪府がどういうような指導をしたか。私の知る範囲では、この二年間に警告をなされたのはわずか一件ですよ。それで適切な指導がなされたのかどうかということです。
  468. 松浦利尚

    松浦政府委員 私ども、大規模小売業者と申し上げますけれども、あるいは通称中間卸と現在の段階でも言われておるかと思いますが、このような業者につきましては、あくまでも改正食管法の枠内において業務を行っているということでございまして、いわゆる卸売業務といったようなことはやってもらっては困るということで指導をいたしておるわけでございます。特に、このような業者の中で、違反していわゆるやみの業者にお米を卸すといったようなことがありますと、これは非常に大きな問題でございます。大規模小売業者は正規の業者ではありますけれども、しかしながら、その業者の扱いでいわゆるやみ米屋と申しますか不正規の流通を行っている米屋にこれが流れるといけないということで、かなりきつい警告の処分もいたしておりますし、さらに加えまして、私の知っている範囲内におきましてはたしか二件であると思いましたけれども、実際に政府米あるいは自主流通米の販売を制限するといったような非常にきつい措置もとって処理をしているはずでございます。
  469. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 改正食管法では、無許可営業に対しては三年以下の懲役または三百万円以下の罰金ということになっておるのですよ。許可業者が不正規流通に関与した場合には一年以下の懲役または百万円以下の罰金ということになっておるのですよ。確かにそういうようにして流通機構を制度化させようという努力のあらわれとしてこの食管法改正になっているのです。ところが、現実的には、この二年間にこれが適用されるような告発というのは少なくとも一件もない、あるいは業務指導命令を出したことも一件もない。ただこの二年間は適切な行政指導をやってきたということだけなんですよ。無許可業者に対しては国が責任を持つのか県が責任を持つのか、一体どっちなんですか。許可業者が不正規流通に関与した場合に一体どこが責任を持つのですか。どういうように対処しようとしているのか、お答え願いたい。
  470. 松浦利尚

    松浦政府委員 不正規業者に対する対処でございますが、まず責任の所在につきまして申し上げますれば、小売業の許可をおろすのは都道府県でございます。しかしながら、これは当然都道府県としての責任を持って不正規業者に対応していただきたいということもございますけれども、食管法の基本的な執行ということの責任は農林水産省にあるわけでございまして、農林水産省都道府県とが一体になってこの不正規業者に当たるということが建前であるというふうに考えております。
  471. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 しかし、現実に、先ほども申し上げましたような罰則規定があるにもかかわらず、いまだに業務命令が出されておらない、一件も告発されておらない。そういう事実があるから、これは不正規業者にしてみたら、法律はできたけれども怖くないわい、何もよう言えないやないかということで、あなた方自身がなめられておるのですよ。都道府県の行政担当課におきましてもなめられておるのです、怖いことはないわいと。このままならば改正食管法は寝てしまうじゃないですか。幾らたってもこれを繰り返すじゃないですか。いつまでたってもこれは解決できないじゃないですか。ただ従前どおりの行政指導だ、それが適切な行政指導だということでこれからもなお過ごされようとしておるのですか。
  472. 松浦利尚

    松浦政府委員 従前までの行政指導につきましては、大阪の場合でございますけれども、無許可販売業者二千七百に対しまして、延べ一万件強の口頭による中止指導、それから四千件の警告書の交付といったことで中止指導を強力に進めてきた次第でございます。やはり無許可業者に対する指導は段階を追って進めていかなければならぬということでございまして、さようなことで処理してまいっておるわけでございます。  また、許可業者が不正規の流通に関与するという点につきましても、これは厳重注意を行うと同時に、先ほども二件ほど申し上げたわけでございますが、いわゆる自主流通米の販売制限あるいは停止あるいは政府米の販売の制約といったようなことをやってまいってきたわけでございます。だんだんとその指導の内容強化したわけでございます。  そこで、今後の対応でございますが、もちろんこの問題につきましては行政指導を徹底していく、それによってできる限り自主的にこの無許可の販売業者が不正規の販売にあずからないようにするということが必要であるわけでございますけれども、私どもは最終的には、警察の当局とも十分に相談をいたしまして、告発も辞さずという態度で処理をしてまいりたいという気持ちは持っておるわけでございます。
  473. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 大阪の小売業者の皆さんは、私の聞くところでは、縄をかけてみたら自分らの身内であったと言われるようなことがあるかもしれぬ。しかし、それを押して、これを厳重に取り締まりをしてもらって、業務命令を出してもらうなり告発でもしてもらうということでなければ、将来にわたって自分たちの営業にも差し支えがあるという強い決意を持って、あなた方の方にも具体的に名簿まで提出して、こういうものがまだあるんだ、まだ現存しておるんだということで陳情これ努めておるというのを私は聞いておるわけですよ。にもかかわらず、業務命令や告発もしないで、せっかく法の方に罰則規定がありながら、それを適用させるために取り締まりを強化するということでなくて、従来のような行政指導だけで事足るというふうには私は思えないのですが、どうですか。
  474. 松浦利尚

    松浦政府委員 私ども、不正規の業者、特に無許可の業者に対しましては、とにかくその中止というものを徹底的に行政指導していこう、最終的には告発も辞さないというその毅然たる態度は持っているわけでございます。私どもとしましては、できるだけ納得のもとにおいてこの不正規の業者をなくしていきたいという前提でございますが、いざという場合には食管法の、ただいまおっしゃられましたような規定を現実に適用するということも考えながら実はやっておるわけでございます。  なお、改善措置の命令につきましては、大阪の例はございませんけれども、全国では四十五件、改善命令を不正規の業者に対して出しております。さような措置はとっておるわけでございます。  なお、私一言申し上げたいのでございますが、不正規流通の問題というのはただ単に、もちろん私どもも取り締まりを強化してまいりますが、取り締まりだけでは解決できない面があると思っております。と申しますのは、無許可の業者が販売を中止することによりまして消費者の利便が損なわれるようなことがあってはならないわけでございまして、やはり適正な店舗を許可の業者の方々が展開していただいて、不正規の人たちがつけ入る余地がないようにできるだけ地域に密着した自主的な、活発な商活動をやっていただくことによってこういった消費者に対する米の供給に万全を期して、実質的に不正規な米が出回らないようにすることもまた一つ必要じゃないかと思います。さような業界の対応と我々の取り締まりの強化、これによって初めて不正規米の流通は抑えられるのじゃないかというふうに考えていることも御理解いただきたいと思います。
  475. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 業界のそういう自主的な活動ということも必要であろうと思います。今長官の方から消費者に対する配慮の言葉がありましたけれども、むしろ消費者に甚だ迷惑がかかっている事実がある。だから、言うとるのです。  昨年の十一月だったと思いますが、私はちょうど新潟の弥彦におりました。そこである催しがございまして、現地でコシヒカリの新米をこうこうの値段でということで、値段を見てびっくりしたのです。コシヒカリというのは新潟は産地ですね。私ら、米のことは素人ですが、産地の方が大阪の小売価格よりも高いのですよ。これは一体どうしたことかということで聞いたり調べたりいたしますと、これは本物のコシヒカリでなかった、だから安いんだとわかったわけです。コシヒカリだとかササニシキだとかそういう銘柄物であるような宣伝をし、広告を出して、そして消費者が真に受けてそれを買っているということは、消費者に迷惑をかけているのじゃないですか。むしろ消費者のことを思うのであれば厳重に取り締まるべきですよ。これを見てください。これはやみ米屋さん。大阪でコシヒカリ、ササニシキをこんな値段で売っているのですよ。これで売れるはずがないでしょう。こういうようなことがあるから結果的には消費者に迷惑をかける。だから厳重に、ただ行政指導だということだけで終わるのじゃなくて、どこかの店を一つぴしゃっとやれば、これはうかうかしてられぬな、改正食管法によって処断されるなどいうことで襟を正すことになりはしないかと私は思うのです。だから、私は言っているわけです。無許可業者がある限りにおいては、そういうふうに品質保証ができない。消費者に甚だ迷惑をかける。また、価格の点についても、不当表示があったりこのように誇大広告で消費者をまやかし、だましておるという現実の姿、こういう姿を解決をするためにも厳重に取り締まってもらいたいということを私は言っているのですが、大臣どうですか。
  476. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 米の不正規流通、これは厳しく排除しなければならない問題だと思っております。五十六年秋以来、都道府県と農林省が一体となって指導に当たってきましたけれども、特に悪質というようなものに対しましては、一罰百戒ということもございます、警察への告発も辞さずということで毅然たる態度で今後臨んでまいります。
  477. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 わかりましたが、先ほども申し上げましたように、消費者の立場に立ってもらう、消費者に迷惑をかけないようにしてもらう、そして正規の小売業者にこれまた陸だ迷惑をかけないようにしてもらう、そういう立場に立ってぜひともひとつ対処してもらいたい。きょうは大臣そういうように言っておられましたが、私はまた別の機会に、幾らか期間がたった後に、これはこの問題が解決するまで、私は議席がある限り何回も何回も執拗に開きただしていきますので、きょうまでの経過、きょうの答弁、これがまた同じようなことを繰り返されないようにしてもらいたいということを私は希望するわけですが、大臣、もう一度。
  478. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生のきょうの質問がむだでなかったというぐあいに、出るように、ちゃんとさせます。
  479. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 それじゃまた回を重ねてこのことを繰り返したいと思いますので、どうぞ消費者の立場に立って、正規の小売業背の立場に立って、都道府県の方にも督励してもらって、あなた方の方も率先してもらって、一日も早い解決のために努力してもらいたいということをつけ加えさせていただきまして、終わりたいと思います。
  480. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて和田貞夫の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  481. 山原健二郎

    ○山原分科員 近海カツオ・マグロ漁業経営の危機打開の問題で質問をいたします。  二回にわたる石油ショック、また二百海里問題、需要の伸び悩み、これによりまして魚価の低迷が続いておりまして、大変厳しい生産環境に置かれておることは御承知のとおりだと思います。その原因は、無秩序な輸入、海外まき網の漁獲の増加、これが原因となって魚価が低迷をし、このまま推移すれば近海カツオ・マグロ漁業の経営は破綻の一途をたどる以外に道はない、こういうふうに関係者は言っております。省エネ、省力化あるいは販路の開拓、漁場の確保などに最大限の努力はしておりますけれども、事態は極めて深刻な状態にあります。カツオ、マグロは鯨と違って資源は豊かだと言われておりましたが、最近は青信号から黄信号へ変わっているのではないかという心配が起こっているわけでございます。  静岡県の焼津港に水揚げされる南方のカツオの体重、体長の測定調査を見てみましても、最近大手水産会社や九州、東北などの漁業者に普及しているまき網船のカツオの小型化が目立つと言われておりまして、十分に成長しないうちに乱獲されているのではないかという心配が起こっているわけでございますが、これらについて水産庁はどういう認識をしておられるか、最初に伺っておきます。
  482. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のようなことがございまして、日本の漁業は全般的に内外ともに大変厳しい情勢にあるわけでございます。  その中で、カツオ、マグロの魚価の動向についてのお尋ねでございますが、カツオ、マグロという世界の中では、ミナミマグロなど一部の魚を除きましては魚価は全般的に低迷しておるわけでございます。これは、カツオあるいはメバチ、キハダというようなグレードの低いマグロだけに映っての低迷ではございませんでして、五十七年と五十八年との対比で申しますれば、全般的に各魚種とも漁獲が順調というよりもむしろ豊漁でございまして、それに応じまして需要が伸びればさほど問題は起きなかったのではと思うのですが、需要の方はどちらかと申しますと伸び悩みの状況にございますために、魚価が押しなべて、魚種によっても違いますが、一割ないし二割近い低下というものがあるわけでございます。その中でカツオ、マグロ、特に冷凍カツオの世界でその現象が際立って見えるわけでございますが、これは先生も御案内のように、カツオ、特に冷凍カツオというのは国内だけで魚価が形成されるものではなくて、完全に国際商品となってしまっているわけでございまして、海外、特にアメリカへ輸出されます価格、あるいはアメリカでの缶詰の消費の動向等によってカツオ価格が非常に変動するわけでございます。  そういう意味では、カツオは世界的に幾らふえたかということはよくわからないわけでありますが、最近フィリピンあるいはタイ国等のアメリカに対する缶詰の輸出が急増しております。逆にいいますと、日本の対米缶詰の輸出は激減をいたしておるわけでございますが、反面、フィリピン、タイ等のアメリカに対する増加する輸出缶詰の原料となる冷凍カツオは日本からそれらの国に輸出されているわけでございまして、これは非常にふえておるわけでございます。まさに三つどもえといいますか、ぐるぐる回りの状態になっている典型的な国際商品でございまして、そういった世界的なカツオの需給緩和というものが日本の国内に及んでいるというのが一番基本的なカツオ価格の動向の原因ではないかというのが私どもの認識であるわけでございます。
  483. 山原健二郎

    ○山原分科員 長官の話が少し聞きづらいところもありましたけれども、私のお聞きしたところでは、昨年のカツオ漁獲量は業界の推定で二十七、八万トンということで、前年に比較しますと七、八万トン上回っておる。過去最高であるけれども値崩れがひどいという状態のようでございます。刺身あるいはたたき用のカツオが一キロ当たり平均二百五十円、かつおぶしや缶詰などの加工用が百九十円、これは十年前の水準に近づくというか、逆戻りしているということが言われております。  私の県は、いわゆるカツオのたたきと言って、これからカツオのシーズンで一番うまい時期を迎えるわけで、これは名物なんですけれども、高知のカツオ船の実態を見てみますと、昨年一隻当たりの平均水揚げが二億五千万ぐらいです。これに油代あるいはえさ代、人件費、販売手数料あるいは金利、この金利が非常に比率が高いわけでありますが、これを含めた船の償還費を合わせますと、大体二億七千万か八千万が採算のぎりぎりと言われておるわけでございます。それが二億五千万、こういう形になっておりまして、魚価の安定対策は非常に重大な問題となっております。  一方、海外まき網は、三十二ヶ統と呼ぶんだそうでありますが、昨年、一昨年十九隻ふえておりまして、そのときに相談があっておりますが、一本釣り漁業の方ではこれに対して反対をし、内地の魚価が下がるようならば外地に水揚げすることを指示する許可条件を入れたわけでございます。外地水揚げが果たして適切にこの値崩れの中で行われているかどうか、いろいろ困難な問題はあることはわかりますけれども、外地水揚げ体制を確立するなどの供給抑制策を講じてほしいというのが業者たちの強い要求でございますが、これはなぜできないのでしょうか、端的にお答えをいただきたいのであります。
  484. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御質問は二点あったかと思います。  一つは、海外まき網を許可したことによって供給量がふえた、したがって値が下がったんではないかという御指摘でございますが、お言葉を返すようで大変恐縮でございますが、五十八年、私どもの推定では三十五万トンあるいは三十六万トンぐらいになるかもしれませんが、五十三年は三十七万トンとれております。このときにも刺身用で二百四十円、冷凍で百八十円という価格が五十三年にも現出しております。五十五年にも三十五万数千トンとれまして、このときは大豊漁であるにもかかわらず価格は非常に堅調であったわけでございます。昨年は一昨年に比べますと確かに数万トン増加はしておりますが、一方輸入の減が一万トン以上、輸出増が対前年約三万トン近くあるというようなことを考えますと、総供給量におきまして昨年よりごくわずかの増加であるにもかかわらず、通常の我々の経験からいたしますと、その程度の数量増であれば大したことはないであろうと思われるそれ以上に大幅な価格の下落が、しかも比較的長い期間続いているというのが今日の状態なわけであります。  これの原因につきましては、海外まき網だけがその責めを負っているようなことがあるわけでありますが、私どもも陳情にいらっしゃった方には申し上げるわけでありますが、もちろんカツオの一本釣りに比べますとまき網の方がはるかに能率的な漁法でございますから、単位当たり、漁獲量当たりのコストというのは安いわけであります。しかし、それを野方図に許可をした場合には一本釣りの漁業者が大変困るという事態を踏まえまして、数年前に今御指摘のように約三十統の海外まき網を許可するときには、既存の例えば遠洋カツオ釣りの船を五隻つぶせば一隻許可をするとか、あるいはまき網一隻を、遠カツ一隻と近カツ一隻をつぶせば百十六トン型の海まきを許可するとか、要するに釣りの方の漁獲努力量を減らしたと数量的にはイコールのまき網船を許可するという、総漁獲努力量において変化がないような措置をして数年前に海まきという漁業が認可側になったわけであります。  もちろん漁業でございますから、海まきが行く地方の海況がよくてたくさんとれるとか、釣りの方がよくて釣りの方がよくとれるとかということはもちろん年によって差はあるわけでありますが、総体としてみますと、先ほど申しましたように、去年度の漁獲量が過去の経験に比べて数字が異常に大きいというほど、私どもそういう認識はしておらないわけであります。むしろ原因は、先ほども若干触れましたように、完全に国際商品となっておりますカツオ、特にその中でも冷凍カツオにつきましては、現在アメリカに対する開発途上国からの輸出が大変激増をしておりまして、アメリカに対します日本の缶詰の輸出は激減するという裏腹の関係にあります。また、開発途上国からのアメリカに対する缶詰の輸出の原料は別途日本のカツオが輸出されておるという三つどもえの関係になっておるわけでございまして、そういう意味におきまして、もし仮に海外まき網に御指摘のような外地への水揚げを指示した場合には、それはすべて缶詰という形でアメリカに行くことにつながるわけでありまして、そういたしますと、フィリピンに対する日本の輸出のカツオの価格はまた暴落をするということにつながるわけでありますので、今のように国際的にある意味では大増産で価格が全般的に下がっているような場合に、御指摘のような措置を講ずることが日本国内における価格の引き上げにつながるかといいますと、そういう効果はなかなか求め得ないのではないかというのが私どもの現在の判断でございます。  それはそれといたしまして、カツオ漁業者の関係団体が数回体集まりまして昨年の夏とことしの一月と二回話し合いを持っておりますが、その話し合いの実行につきまして私どもの方も御協力できる点はでさるだけ協力するという態度で、現在その推移を見守っているところでございます。
  485. 山原健二郎

    ○山原分科員 いろいろ説明をお聞きしたわけですが、私も専門の方ではありませんけれども、しかし漁民の感情としましては、私は何カ所かに電話をしてきましたし、また現地へも行って聞きますと、多少感覚が違うのですね。海外まき網については、転換時の約束によりカツオ魚価の安定を図るために政府が外地水揚げ等の指示ができるよう措置されておりますから、それを早急に実行してもらいたいという要求が強いのです。問題はそこだけにあるのではないということかもしれませんけれども、しかし、南方におきまして根こそぎとってしまうわけですね。しかも、漁民の感情としては、海外まき網はいわゆる大きいところがやっているんだ、農林大臣もしたり、鈴木さんの名前も出てくるわけで、そういう人がやっているんだ、だから、結局一本釣りなどという弱いものがいじめられるんだという感じを持っているのです。これは抜きがたい感情になっておりまして、そういう意味で政府努力要求しております。その点、私は当然だと思っています。  さらに、細かいことまで要求しておりまして、三十二ヶ統の海外まき網が三十五日操業している。これは毎日焼津へ入ってくる。供給過剰になるのは当たり前だ。これが近海カツオ漁業の足を引っ張っているんだ。これに対していろいろ話し合いも持ち、要求しておるけれども、それをやってくれない。せめてスピードダウンをしてほしい。最高速度で行ってとってくるという形態ではなくて、せめてスピードを落としてもらいたい。あるいは在庫期間を延ばして、現在五日間焼津の港におるとすればそれを七日間にするなどという措置をとってもらえないのかという細かい要求まで出ているわけでございますが、そういうことは御存じでしょうか。また、それについて手を打っておられるでしょうか。
  486. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいま先生指摘のように、特にカツオの釣りの関係の漁業者の方がまき網の漁業者の方に対してある種の感じを持っておるということは私どもの方もよく理解しておりますし、海外まき網に従事しておられる方たちも、釣りの方たちが自分たちにそういう感じを持っているということはよくわかっていると思います。  今先生指摘のように、行き帰りのスピードをダウンするとか、あるいは内地に水揚げをしたときに通常であればトンボ返りでまた漁場に行くのを何日間か休むとか、そういうことについての話し合いが四団体との先ほど申しました話し合いのときに出たということは私どももよく存じております。例えば、ことしの一月になりまして第二回目のお話し合いがあったときに、漁場の往復時における航力調整とか在庫時間の引き上げとか、あるいはドック時期をなるべく長くするとかというようなことについてのお約束が団体間で取り交わされたということも存じております。一月に取り決められたばかりで、まだ十分な効果が実績として出てこないわけかとも思いますが、御質問がございますのでちょっと関係団体から聞き取りましたところ、速度、これをやりましたから価格にどう響くかということはなかなか難しいことでございますが、従来十二・五マイル平均で走っておったものを十一マイルないし十一・五マイルにダウンしたというのが八隻あるとか、あるいは在庫日数、要するに水揚げのために日本の港に来たときにトンボ返りで帰っておったものを二日間延長したとか、あるいは一日延長したとかというものも数隻の報告が出てきておるわけであります。いずれにしましても、関係団体の話し合いの結果を海外まき網の団体としましてもその会員である漁業者に周知徹底を図るという努力も積み重ねておるようでございます。  一月に取り決められてまだ二月いっぱいしか経過しておらないわけでございますので、これからもその推移を見たいと思いますし、また、それ以上に、全体として価格の引き上げについての何らかのうまい方法があれば私どもの方もそういう団体と一緒になってやりたいとは思いますが、今のところ国際的な価格の動向がもろに響いているというところがなかなか対応しにくい点であるということも御理解いただきたいと思います。
  487. 山原健二郎

    ○山原分科員 いろいろお考えになっていることもわかりましたし、また、これから、ぜひ努力を続けていただきたいと思います。  時間の関係がありますので、次に、今回の減反に伴う第三期計画の中の他用途米の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  この問題は新しい問題でして、現地において大変混乱を起こしておりますし、随分矛盾に満ちた中身になっておると思います。例えば私の県では、ハウス園芸の農民あるいはイグサに転作した農民たちを含めますと一つの県で一万戸の農家がこれに関係を持っておるわけでございますが、他用途米についての規格がないためにいわば買いたたかれているという感じがするわけでございます。一万円ちょっとの価格で買い上げるというわけですが、他用途米にふさわしい規格をつくる必要があるのではないかというのが私の考え方でございますが、その点とういうふうにお考えになっておるか、伺いたいと思います。  それから、他用途米については一等、二等のいい米を持ってこい、こういうふうに言われているわけでございますけれども、実際には災害もありまずし、また台風その他による水浸しというような問題がありまして、結局それだけよい他用途米をつくることができない場合にそれは受け取らないということですから、また別のお米を提供しなければならぬという不安感も現在出ておるわけでございます。その意味で非常に矛盾に満ち、いろいろな要求がこれから出てくると思いますが、これについては、私は農民の要求を聞いてこの問題に対処してもらいたい、こう思います。  例えば、私の県でこれが一番影響しできます土佐市波介という地域がございますが、ここはイグサをやっております。イグサに転作した面積が八六%です。残る水田面積は一四%になっておりますが、この一四%では飯米にも足らないという状態ですが、八六%のイグサに転作したその一割の他用途米を要求をされるわけでございまして、しかもその中に來雑物が入ってはならぬという条件でございますから、大変な事態なんです。しかも三等米以上でなければならぬ、こういうことになりますと、みそ、しょうゆ、せんべいなどに粉砕して使う米は五等米でもいいんじゃないか、それほどのものを要求する必要はないんじゃないかという声が出ておりますが、こういう声はお開きになっているでしょうか。
  488. 松浦利尚

    松浦政府委員 幾つかのお尋ねでございますので、一つずつお答えをいたしたいと思いますが、まず検査規格の点についてお答えいたしたいと思います。  農産物検査法に基づきまして米の検査規格というのは決まっておるわけでございまして、これはもともと主食用に想定したものでございますが、他用途米につきましては、やはりこれまでの加工原材料用のお米との連続性もございますので、通常の主食用の米と同様の検査を行うという方針で団体の方にもお話をしたわけでございます。これに対しまして、確かに他用途利用米につきましては従来の検査規格と異なる検査規格をつくってほしいというお声があったことは私も承知いたしております。ただ、私どもはこれにつきましてどうしてもそういうことは難しいのだということを御説明いたしたのでございますが、その理由は次のようなことでございます。  つまり、現在、お米につきましては御案内のように一等から三等までの検査の上での規格がございます。これは主食用でございますが、等級がそれから下の米ということになりますと、これはいわゆる特定米穀と言われているお米になるわけでございます。これは、くず米あるいは砕米あるいは規格外米といったようなお米が含まれておるわけでございます。これの分野につきまして、他用途利用米につきましてもこの分野の一部を取り込んで、例えば三等米の下に四等米をつくるといったような検査規格をつくってほしいという御要望になりますと、従来までこの特定米穀の世界というものは自主的に流通していた分野でございまして、全く回の財政負担はないということで自主流通をしていただいているという状況でございます。ところが、先生御案内のように今回の他用途利用米につきましてはトン当たり七万円の助成をするという建前になっておりますので、もしも四等米といったようなことになりまして特定米穀の世界にまで入り込むということになりますれば、自主的に流通していたお米、つまり政府の財政負担がないお米につきましても政府が負担をするという形になるわけでございます。これは到底現在の厳しい需給事情あるいは財政事情から御同意を求めることができないような、そういうシステムをつくるということになりますので、どうしてもこれは、三等米ということまでは考えられますけれども、それ以下の規格をつくるということはできないのだということを十分に御理解をいただいて今日まで来ているわけでございます。  そこで、私どもとしましては、何も一等米、二等米を持ってこいというようなことを申し上げているわけではございませんので、その点につきましては従来の規格の中でこの他用途利用米を出していただくということを皆さん方に申し上げている次第でございます。  それから、第二に災害の問題でございますが、確かに災害がございますれば、その際に収量が落ちるといったようなことが他用途米についても生じてくると思います。しかし、これは一般の主食用の米と同じように作況に応じまして、規格ではございませんけれども、数量についてこれを変動させるということは当然考えておるわけでございまして、災害時に調整を行っていくということを前提にしている、これも皆さんにお話をいたしているところでございます。  それから最後に、土佐市のイグサの話をなすったわけでございますが、確かに地域によりましてなかなか一律の割り当てということが困難なところがあろうかと思います。私どもは各都道府県に対しまして、一応転作面積の中で約一割の他用途利用米をつくっていただきたいということで、一割を目途にお願いしたいということをお願いした経緯はございますが、現実に各県の状況を見てみますと、県全体としては一割を確保するということでやっておいでになりますけれども、町村別に見ますと、県によっては町村にも一割でおろしたところもございますが、やはりその中で特に各地域地域の実情を勘案いたしまして、例えば青刈りの地帯には余計にこれをつくってもらうとか、そういうこともやっているところがございまして、決して一律で強制をしようというつもりでやっているわけではございません。
  489. 山原健二郎

    ○山原分科員 その言葉はよく聞いておきますけれども、これは高知県ではございませんで島根県の例ですけれども、県の方から市町村に対して、県なり市町村が導入を拒否した場合は、その県、市町村は加工原材料用米の輸入を理解したと解釈される、農業団体は輸入阻止を宣言しており、他用途利用米は責任ある集荷がなされると考えているというふうな通達が出ているのです。恐らくこれはあなた方の方で指導したのじゃないかと思いますが、そういうふうに市町村に対しては一種の脅迫とは言いませんけれども、アメリカから入れますよ、そのためにやりなさいよ、こうなっているのじゃないかと思う。これが一つです。  もう一つ、輸入の問題が出ましたから、山村大臣がせっかくおいでになりますので、農産物の自由化の問題について最後に一言伺っておきたいのです。  現行輸入協定がこの三月末で期限を迎える中で、日米農産物問題が重大な局面を迎えております。この点について、五十八年の我が国の貿易収支を見ますと、対米貿易収支は百八十二億ドルの大幅黒字となっています。これは前年度に比べて一・五倍、日米貿易摩擦は数字の上では解消に向かうどころか一層拡大しているという状況にあります。ところが、農林水産物の対米貿易収支を見ると、八十四億六千万ドルの入超となっておりまして、若干ながら前年度に比べても赤字幅がふえております。このように工業製品の輸出が急増する一方で農産物の輸入はふえ続けているというのが冷厳な事実でありまして、日米間の貿易摩擦があるとすれば元凶は工業製品の輸出ラッシュにあるのであって、その矛盾を黒字減らしに貢献さえしているところの農産物に転嫁するのは全く道理に合わないやり方だし、それでは日米貿易摩擦の根本的解消にはならないと思うのでございます。  農林大臣は先日の予算委員会で無理な要求はのまないつもりだと述べられておりますが、改めて大臣の日本農業を守る決意を伺って私の質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
  490. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 私は、予算委員会、農林水産委員会等でしばしば申し上げておりますように、この農産物の交渉に関しましては我が国農業を守るという立場を堅持してまいります。特に、一昨年の四月には決議、本年一月には申し入れを衆議院の農林水産委員会からいただきました。この趣旨は、農業者が犠牲にならないように我が国農業を着実に発展させていくようにという御趣旨であったと思います。この御趣旨を念頭に入れましてこの農産物交渉に当たってまいります。先生が言われましたように、今月どうしても決着をつけなければならぬというような期限にとらわれて、無理な要求があった場合にこれをのむわけにはまいりません。
  491. 山原健二郎

    ○山原分科員 頑張ってください。  ありがとうございました。
  492. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて山原健二郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言あいさつを申し上げます。  分科員各位の御協力により、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後七時二十九分散会