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○倉成
委員長 これより会議を開きます。
この際、
理事補欠選任に関する件についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い、現在
理事が四名欠員となっております。これよりその
補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、
委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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○倉成
委員長 昭和五十九年度一般会計予算、昭和五十九年度特別会計予算、昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
この際、各分科会主査より、それぞれの分科会における審査の報告を求めます。
第一分科会主査
上村千一郎君。
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○上村
委員 第一分科会における審査の経過を御報告申し上げます。
本分科会の審査は、去る十日及び昨十二日の二日間にわたって行いました。
質疑応答の詳細は会議録に譲ることとし、ここでは質疑項目のうち主なものについて御報告いたします。
まず、国会関係では、スタッフ制の導入等による議員の国会活動の強化策、遠隔地選出議員の航空機利用費負担等のための文書通信交通費の増額問題、議長経験者と首相経験者の叙位叙勲差等立法府と行政府の栄典授与基準の見直し、議会制度百年記念行事としての国際会議場の建設問題等であり、
総理府木府及び科学技術庁関係では、いわゆる男女雇用平等法案、人種差別撤廃条約の批准問題と地域改善対策、戦後処理の問題としてシベリア抑留者に対する国家補償及び旧軍人軍属の恩給欠格者の救済策、科学技術政策のあり方、筑波科学技術博覧会の会場整備及び輸送体制等の運営問題、原子力船「むつ」に関する漁業補償等と関根浜新港の建設問題等であります。
次に、裁判所及び行政管理庁関係では、民事及び家事調停
委員の任命のあり方、民事執行法に基づく不動産の競売手続の迅速化、行政改革推進に対する政府の決意、許認可及び補助金等の一層の整理合理化、総定員法の見直し、省庁間の配置転換の促進、日本船籍の洋上における船舶安全検査の簡素合理化、地方公務員の給与及び定員の適正化等であり、
防衛庁関係では、航空基地周辺の騒音対策、首都圏における防衛施設の利用状況と遊休地の有効利用、日米合同演習の実施計画、厚木基地にかわる夜間離発着訓練基地の確保問題及び自衛隊員の募集方法の見直し等でありました。
以上、御報告申し上げます。
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○相沢
委員 第二分科会における審査の経過を御報告いたします。
本分科会においても同様に二日間審査を行いました。
質疑応答の詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは質疑事項のうち主なものを申し上げます。
まず、大蔵省関係では、金融・資本市場の自由化の進め方、外国為替市場の円相場の先行き、防衛関係費の後年度負担額の増加、米国の合算課税に対する政府の対応、企業組合に対する課税のあり方、酒類販売業者の月別報告の簡略化、内職者に対する課税、農業所得の収入金課税方式及び記帳義務、ネズミ講訴訟の地裁判決に対する国税庁の対応、サラ金規制二法施行後の被害の実態、いわゆる睡眠預金の現状と処理、自動車損害賠償責任保険の保険金額の引き上げと運用利益の活用等であり、
次に、外務省関係では、国際人権規約の国内実施状況、人種差別撤廃国際条約の批准、非核三原則と事前協議との関係、核積載艦の領海通航と無害通航との関係、対米武器技術供与問題、朝鮮半島の緊張緩和のための環境づくり、日韓関係の強化、日朝民間漁業暫定合意の期限切れと漁業者の救済、フィリピンに対する経済援助のあり方、海外啓発活動の強化と留学生受け入れ体制の充実等であり、
最後に、法務省関係では、国籍法の改正における無国籍者の取り扱い、在日外国人の指紋押捺義務制度の改正、借地、借家に関する底地買い問題、衆議院議員の定数是正、死刑囚平沢氏の再審と特赦、九州産業大学の補助金不正受給等の不祥事件、部落差別事件の実態等であります。
以上、御報告申し上げます。
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○石原(慎)
委員 第三分科会における審査の経過について御報告いたします。
本分科会においても同様に二日間審査を行い、昨日終了いたしました。
質疑の主なものは、文部省関係では、幼保の一元化、幼児教育のあり方、青少年の非行対策、有害図書の規制、学習塾過熱化への対応、教育
委員の準公選についての見解、教育改革の進め方、私学助成の拡充、義務教育年限九年間の年度区分のあり方、教科書無償制度の存続、家庭科教育のあり方、学校給食の教育効果、豪雪地帯での通学道路の確保、過大規模校の解消努力、盲学校寄宿舎の給食職員の処遇改善、識字学級の実態と対策及び子供会の育成強化等の地域改善対策、学校施設の開放、危険校舎の改築促進、全寮制教育への見解、高校中退者への対応、障害児の高校進路保障、個性重視の高校教育、地方大学の学部新設、キャンパス移転と跡地利用、国立大学での情報処理教育のあり方、新設医大附属病院の整備と定員外職員の処遇改善、大学の格差と教授の資質向上、スポーツ指導員の増員、芸術文化の入場税の減免及び文化ホールの建設促進、沖縄首里城の復元等であり、
自治省関係では、地方財政計画での歳入見直し。と法人税収見込み、地方税徴収方法の見直し、地方債の許可制度の見直し、超過負担の解消、除排雪費に対する財政権置及び補助制度の創設、地域改善対策事業の進め方、児童扶養手当の一部地方負担、国民健康保険と国民年金の保険料徴収事務の一元化と徴収率、関西新国際空港建設と地方自治体の負担、年度末工期の平準化、公営競技事業の見直し、貸金業界の提出書類作成と行政藩士の業務の関係、衆議院議員の定数是正と地方議会議員の縮小、不在者投票制度運用の見直し、防災無線の整備状況と補助基準のあり方等でありますが、その詳細は会議録に譲ります。
以上、御報告いたします。
-
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○大村
委員 第四分科会における審査の経過を御報告いたします。
本分科会も同様に二日間審査を行い、昨日終了いたしました。
質疑の主なものは、厚生省関係では、中国残留日本人孤児に対する年金制度の適用、泰東丸の確認調査と遺骨収集、医薬品の臨床試験に関する基準及び医薬品の副作用防止、はり、きゅう、マッサージの医療保険上の取り扱い、食品添加物の安全性確保、原爆被爆者対策の推進、歯科材料の安全対策、精神薄弱者対策、寝たきり老人対策及び老人の生きがい対策、心身障害者の福祉対策、カネミ油症判決と国の対応、児童扶養手当制度の改正、幼保の一元化及び保育行政の充実、年金制度間の格差是正及び年金の一元化、医療保険制度の改正と今後のあり方、低肺機能者対策などであり、
労働省関係では、出稼ぎ労働者の労働条件の改善、心身障害者の雇用対策、じん肺予防と労災認定、VDTの健康障害予防対策、同和関係住民の雇用対策、女子労働者の労働条件の改善、男女雇用平等法の制定などでありましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
以上、御報告申し上げます。
-
-
○
武藤(嘉)
委員 第五分科会における審査の経過について御報告いたします。
本分科会も二日間審査を行い、昨日終了いたしました。
質疑の内容の詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは主なるものを申し上げます。
まず、環境庁の関係では、環境影響評価法案、湖沼水質保全法案及び地盤沈下防止法案の策定の手続とその提出の見通し、湖沼の環境保全策と富栄養化対策、地下水の汚染の実態とその対策、水俣病の認定業務における検診体制とその改善策、都市における自然保環境の保全対策、志布志湾の国家石油備蓄基地建設と自然環境保全との関連、ナショナルトラスト運動の推進と助成策等であります。
農林水産省の関係では、牛肉、オレンジ等農産物輸入に関する日米交渉における政府の方針、米の需給逼迫の懸念と水田利用再編第三期対策の考え方、米の需給の逼迫とその計画の策定のあり方、食糧の自給力の維持強化策、農家の経営規模、形態の実情とそれに対応する今後の農政のあり方、土地改良事業の推進、畜産業の経営改善策と子牛、生乳、乳製品等の価格安定策、養蚕業の衰退の原因とその振興策、特に蚕糸砂糖類価格安定事業団の在庫糸の解消策、分収育林制度の国有林野への導入、南アルプス及び青秋林道の建設と自然保護との関連、農山漁村における同和事業の実態と改善策、疑似加工食品に対する安全性と表示等の規制策、近海カツオ漁業の経営安定対策、韓国漁船の不法操業とその対策等について質疑が行われました。
以上、御報告申し上げます。
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-
○
伊藤(宗)
委員 第六分科会における審査の経過について御報告いたします。
本分科会におきましても二日間審査を行い、昨三月十二日終了いたしました。
質疑の内容の詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは主な事項を申し上げます。
まず、経済企画庁関係では、経済運営に当たっての基本的な考え方、政府の経済見通しの性格と内需拡大による実質経済成長率四・一%達成の見通し、景気の現状と公定歩合引き下げの必要性、円の対米ドルレートの上昇と国内経済への影響、五十九年度予算の減税及び増税効果と公共料金改定の国民生活への影響などでありました。
次に、通商産業省関係では、基礎素材産業の現状と今後の対策、いわゆるテクノポリス法の運用方針と進め方、対米武雄技術供与に関する日米交換公文と通商産業省の対応姿勢、コンピュータープログラム保護法の制定についての考え方、VAN法の制定見通し、VDTの普及と健康障害防止対策、ポリエステル化繊の対米輸出自主規制の経緯、オレンジの輸入割り当て制度の適正化、対米貿易収支の見通しと農産物輸入拡大の効果、中小企業倒産の現状と防止対策の拡充強化、絹業振興と生糸の一元輸入制度の見直し、中小旅館業の振興対策のあり方、石油備蓄の基本的な考え方と今後の進め方、石油業法改正についての考え方、カナダ・ドーム社に対する原油探査資金の融資とLNGの輸入問題、米国アラスカ原油の輸入見通し、割賦販売法の改正についての考え方、輸出保険支払いの現状と同特別会計の健全化の必要性、地盤沈下防止法の早期制定の必要性などでありました。
以上、御報告申し上げます。
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-
○
原田(昇)
委員 第七分科会における審査の経過について御報告申し上げます。
本分科会も各分科会同様二日間審査を行い、昨日終了いたしました。
審議内容は広汎多岐にわたりましたので、その詳細は会議録に譲ることとし、ここでは主な事項について申し上げます。
まず、運輸省所管について、鉄道関係では、国鉄の再建計画と職場規律の確立問題、地域別格差運賃の導入問題、特定地方交通線の廃止問題、北陸新幹線及び東北新幹線盛岡―青森間の建設促進、既設新幹線における新駅の設置問題、在来線の複線化の促進、首都圏の交通輸送体系の整備と通勤通学対策、駅前広場の整備と駅周辺の連続立体化事業の促進、貨物駅跡地の利用計画、国鉄用地の有効利用問題、青函トンネルの使用計画など、航空関係では、大阪空港騒昔公害訴訟、関西新国際空港建設に係る諸問題、米軍の軍事訓練空域の設定問題、民間機の航空路線の変更短縮、地方空港の整備及び建設の促進、東京空港ビル及び免税ショップに関する諸問題、軽飛行機免許の不正取得問題など、自動車関係では、自賠責保険の見直し、個人タクシーの車庫規制の見直し、自動車整備業界対策、道路運送法の免許に関する問題など、以上のほか、青函連絡船の存続問題、地下鉄の整備促進、漁船事故防止策と救命胴衣の開発など、
次に、郵政省所管については、電報事業委託費の問題、電話の単位料金区域の問題、郵便物の高速輸送化対策、第三種郵便物の規制緩和問題、放送衛星による離島の難視聴の解消、テレトピアの指定などでありました。
以上、報告申し上げます。
-
-
○
村田委員 第八分科会における審査の経過について御報告いたします。
本分科会においても他の分科会と同様に二日間にわたり質疑が行われ、昨日終了いたしました。
建設省及び国土庁に係る質疑の主たるものは次のとおりです。
道路関係では、高速自動車道の建設整備の早期促進、一般国道等の整備促進など、都市計画関係では、都市防災対策の推進、第五次下水道整備五カ年計画の目標達成、ニュータウン建設のあり方など、治水関係では、都市河川及び地方河川の改修と水害防止対策の推進など、住宅関係では、高齢化社会に向けての住宅政策のあり方、また、住宅・都市整備公団の空き家対策などであります。その他の分野では、公共事業の促進による景気浮揚、地域格差是正のための総合開発計画、また、本年が豪雪であったこともあり、雪害対策の推進などでありましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
以上、御報告申し上げます。
-
○倉成
委員長 以上をもちまして分科会主査の報告は終了いたしました。
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○倉成
委員長 これより
理事会協議による質疑をあわせ、締めくくり総括質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
井上一成君。
-
○
井上(一)
委員 前回私の質問に対して外務省の方からお答えをするのが私は筋だと思って、お待ちをいたしております。外務省の方からの回答を求めたいと思います。
-
○北村政府
委員 二月二十一日衆議院予算
委員会におきます外務大臣の答弁を外しまして、外務省より直ちに在京米国大使館に対しまして国会における論議を説明するとともに、昭和五十年の航空交通管制に関する合同
委員会合意第七条の原文の公表につきまして米側の意向を照会いたしました。これに対しまして米側からは、二十四日午前、合同
委員会合意の原文については従来から日米間で不公表扱いとする旨合意されており、原則論の問題として、本件合同
委員会合意第七条を含め、日米合同
委員会合意の原文の公表は差し控えたいという回答が参りました。
-
○
井上(一)
委員 私の質問の翌日の報道で、外務省は機密漏えいの問題を首脳懇談の中で発表しているわけです。私は、外務省としては非常にひきょうな一つのデモンストレーションだ、そんな揺さぶりをかけて、そんなことで外務省がこの問題をごまかしていこうという魂胆を持つことにむしろ不愉快を私は持つわけです。航空
局長が私の質問にお答えになりました第七条、これは機密漏えいに当たるのですか。外務省にその見解を聞きたいと思います。
-
○北村政府
委員 御指摘の航空
局長答弁は、ATC合意の一部についてその趣旨を敷衍したものであると理解しております。
-
○
井上(一)
委員 機密漏えいの箇所なり文章あるいは部分、そこはどこなんですか。私は
委員長の許可をいただいて、五条については私は提出しましたよ。どこをあなた方は今後調査されようとしているのですか。
-
○北村政府
委員 一般に外交上不公表扱いとすることが合意されております文書を相手国の了承なしに一方的に部外に開示することは国際信義に反するものであるということで、このような文書を相手国の了承なしには公表できないというのが国際慣例となっております。御指摘の航空交通管制、ATC合意というのもこういう外交上の文書でございまして、米側との了解に基づいて、概要は公表しておりますけれども、それ以上にその範囲を超えてその内容を一般に開示することはできないというふうに考えております。
-
○
井上(一)
委員 航空
局長の答弁はその範囲を超えているのか、超えていないのか。
-
○北村政府
委員 先ほど御答弁いたしましたように、航空
局長の答弁はそのATC合意の一部についてその趣旨を敷衍したものであるというふうに私どもは理解しております。
-
○
井上(一)
委員 航空
局長の答弁は、七条においてのみわが方の正文と私は理解するのですが、外務省はいかがですか。
-
○北村政府
委員 航空
局長の答弁は第七条の趣旨を敷衍したものであると私どもは理解しておりまして、それではそれが正文であるかどうかということに対しましては、私ども、先ほども申し上げましたように、合同
委員会合意というものは不公表ということで米側と了解をしておりまして、その先方の了解なしにそれを確認するということはいたしかねる次第でございます。
-
○
井上(一)
委員 私は、これ以上機密漏えい云々について、こういうばかなことをあなた方は策を弄するから、それは航空
局長の答弁をしたのは、七条については「便宜を図る」ということと「優先的取り扱いを提供する」ということの違いはありますけれども、あれは正文なんだよ、それを今ごまかしの答弁、矛盾だらけ、そんなことをしてちゃ大変なことになるよ、それを指摘をしてきたわけなんです。
本論に入ります。
私が指摘をした七条の、日本政府はいわゆる優先的な取り扱いを提供する、こう英文の原文に書かれているし、それはあなたが英語でここでおしゃべりになっているわけですね。それを「便宜を図る」という要約として国会に出されたわけなんです。どうしてもあなた方は、この私が指摘した優先的な取り扱いを提供するという英文の正しい翻訳をお認めになりませんか。私は、これは「便宜を与える」では正しい訳でない、「優先的取り扱いを提供する」これが正しい日本語の翻訳だと思うのです。この点はいかがですか。このことをまずもう一度、きょう改めてここで聞いておきたいと思います。
-
○北村政府
委員 合同
委員会の合意七条の中で、先回御答弁いたしましたように、「プロバイド プリフェレンシャル ハンドリング」という表現が使われております。これは、そのまま訳しますと「優先的な取り扱いを与える」ということでございます。
それでは、なぜその合意の概要を公表いたしました昭和五十年にそのままその文章を書かないで「便宜を図る」という表現になっておるかということにつきましては、まず先生よく御承知の経緯を申し上げたいと思います。
昭和五十年以前は、この関係の合意というのは、アメリカ側が米軍機に対して最優先権を与えるという表現でございました。それを、当時の政府が大変努力をいたしまして、そして先ほど申し上げましたように、プリフェレンシャル ハンドリングを与えるというところにまで持ってまいりました。このことは、先生が先般非常に御強調なさいましたような日本の空の安全、そして民間航空の安全、そして日本の裁量権というものを確保するということで政府が努力した結果でございます。したがいまして、その努力の結果の違いを明確にまたわかりやすく説明するということで、「便宜を図る」と概要をそこで表現した方が、前回の最優先を与えるという表現よりもわかりやすく、日本の裁量権があるということがわかりやすくわかるであろうという考慮でそういう表現になったものと承知しております。
-
○
井上(一)
委員 今、外務省は、私が指摘した優先的取り扱いを提供するということを初めてお答えになられたわけですね。そして、確かに昭和二十七年は「ファーストプライオリティー」、おっしゃるとおり英文も違っています。しかし、この五十年の改正に当たっても、決して便宜ではなく、優先的取り扱いを与えるということである。
もう一度確認します。英文の「優先的取り扱いを与える」ということは、私の指摘したとおりでございますね。
-
○北村政府
委員 英文の「プロバイド プリフェレンシャル ハンドリング」という意味は、先生が御指摘になりますように、優先的な取り扱いを与えるということでございます。ただ、なぜそれを公表するときにそういたしましたかということは、もう既にお答えいたしました。
-
○
井上(一)
委員 日本語で「優先的取り扱いを与える」ということと「便宜を図る」ということは、私はおのずから違う、こういうふうに思います。外務省は同じに置かれるのですか。違うのでしょう。概要の要旨として、便宜を図る、与える、供与する、こういうふうに訳したけれども、私は中身は違うと思うのです。もう優先的な取り扱いを提供するということを今お認めになったわけですし――念のために、「便宜を図る」ということと「優先的取り扱い」とは違うということ、これは外務省お認めになりますね。
-
○北村政府
委員 「優先的取り扱いを与える」ということと「便宜を図る」ということは、表現上異なっております。
-
○
井上(一)
委員 異なった表現を使って、国会にあなた方はごまかしをしていた、国民にごまかしをしていた、この事実が明白になりました。これは非常に責任のあることだ、非常に責任重大だ。決して私は責任を追及するものではなく、空の安全ということ、民間航空機の航行の安全ということに視点を置いてこれを議論をしているということは前回も申し上げました。余りにもあなた方の対応が不誠意きわまりないので、私は強くこれを訴えてきたわけです。
そこでお伺いをいたします。
雫石の事件が起こり、空の安全の確保が国民世論として沸き上がってきた。そして当然、当たり前のことなんですけれども、何とかより安全にしたいという政府当局の考えの中から、四十七年の三月一日、航空交通の安全を確保するための防衛庁との覚書の概要について、運輸省は改正をされております。それで、運輸省にお聞きをいたします。
改正をされた五条、今まで自衛隊機に対して、運輸大臣は「優先権を与えるよう努めるものとする」こういうふうに書かれていました。優先権を与えたがために雫石事件が起こったわけでありますから、その結果、反省の上に立って、空の安全を守るためにこれを「便宜を図るものとする」と、こういうふうに訂正をされた、このことは何を意味するのか。まず、訂正をされたことは間違いないですね。
-
○
山本(長)政府
委員 お答え申し上げます。
そのような覚書の改正が行われたということは事実でございます。
-
○
井上(一)
委員 これは何を意味するかということなんです。今私が指摘したいのは、米軍機と民間機とのいわゆる外務省の日米合同
委員会での取り決めと、運輸省と防衛庁いわゆる自衛隊機と民間機、この比較ですね。この比較を運輸省はどうとらえられますか。自衛隊機と民間機は少なくとも便宜を供与するということで同等もしくは民間機に支障のない範囲、こういう理解の中に私は立つわけです。米軍機はさらに一段上に優先的。このことは運輸省はどう比較対照されますか。私の言っていることが当然であるというのか。
-
○
山本(長)政府
委員 お答え申し上げます。
私たち実際に管制の運用をいたしております現場における仕事の仕方といたしまして、自衛隊機と米軍機との取り扱いについて、いずれに対しましてもその要請にかかわる航空機の運航の任務というものを尊重して、またその内容をも勘案し、また民間航空の安全とフローの確保ということをあわせ考えて、日本の管制の裁量の範囲内におきましてこれを取り扱う。したがいまして、任務の内容によりまして優先的な扱いをするという場合がございます。これも事実でございます。また、任務の内容によりましては相手方の要請をそのまま受け入れないということもございます。こういった任務の要請に応じまして管制の運用をやっておる、こういう実態におきましては両者においてさしたる差はない、こういう運用をいたしております。また、そういうふうな言葉の差異というよりは、実際の運用におきましてはさしたる差異はございません。
-
○
井上(一)
委員 航空
局長、あなたも前回の質問で七条をぽろっと言うてしまったし、今度は非常」に慎重な答弁なんだ。外務省は、便宜と優先的取り扱いは違う、こう認めたわけだ。それで運輸省にあなた方はどうしてこれを変えたのですかと。変えたことは私は賛成なんですよ。それで、自衛隊機よりも米軍機の方が優先されている今の約束事、このことについて比較したらどうなんだと私が聞いたら――私は少なくとも自衛隊機並みに米軍機も取り扱っていくべきであるという考え方を持っているわけなんですよ。ところが、何か今度は外務省に気を使うた答弁を今しているわけです。民間機に影響が出たということは私の前回の質問でもあなた答えているのですよ。また事実出ているのですよ。米軍に優先権を与えているがために、そのために、仮に運輸省があるいは現場当局がその米軍の演習訓練をもし時間的に猶予してほしいとかあるいはキャンセルをしてほしいと言ったって、何を言っているんだ、この七条、日米合同
委員会の取り決めがあるがためにあなた方はそういうことを言ってくる権利はない、そういう選択はできないのだということを言われているじゃないですか。そういう事実があるじゃないですか。何を言っているんですか。影響がないというような、今ごろ何を言っているんですか。とぼけたことを言いなさんな。私は、そういうふうに具体的な事例を一々挙げてあなた方を苦しめようなんて思っていません。素直に事実を認めて、そしてその実態をいかに変えていくか、そのことの方にもう少し力を入れてほしい。私は外務省に、今も言ったように現場では大変混乱が起こり民間機が迷惑を受けている、英語の翻訳で国民の目をごまかしたり、その責任問題を追及したりあるいはいろいろなそういうことをここで指摘するわけではなく、むしろ実態を変えていくためにどう努力をしていくか、そのことが私の本意です。
そこで、この空の安全確保のために米軍機に対しても少なくとも自衛隊機並みにするようにアメリカに対して話し合いを持つべきだ、こういうふうに私は思うわけですが、外務省の見解を聞いておきたいと思います。
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○北村政府
委員 ただいま
井上委員が御指摘になりました日本の空の安全の重要性、これは私どもも十分心がけなければならぬ一番大事なことであると感じております。また、私どもとしましても、日本に米軍の駐留を認めておる、そういう安保条約の効果的な運用も図らなければならない、その辺を調整して、あくまでも日本の裁量権の中でこの両方の要請を調和さしていくということが務めだというふうに感じております。
井上議員がいろいろ御指摘になられました点を十分踏まえまして対処さしていただきたいと思っております。
-
○
井上(一)
委員 そんななまぬるいことじゃだめだ。それ以前にまず先ほど指摘をした、国会に概要提出した「便宜を図る」という、そのことは優先的取り扱いを提供するということに概要がここではっきりなったのだから、もう改めてする必要はないとおっしゃるかもわからないけれども、外務省としては国内的には改めて訂正をする、そういう意思は当然お持ちでしょうね。
-
○北村政府
委員 先ほども御答弁いたしましたように、優先的な取り扱いを与えるということは、これはあくまでも日本の裁量権の範囲の中で行われるわけでございまして、そういう意味で「便宜を図る」ということの範疇に入ると思いますが、その点検討をさしていただきたいと思います。
-
○
井上(一)
委員 もう検討とかそういうことでは僕は済まされない問題だと思うし、もう既に明らかになったのだから、「便宜を図る」という、これはもう死んでしまったわけです。私はここで事務当局が、日本の外務省の職員なのか外交官なのか、アメリカの外務省の職員なのか、本当に日本の主権を守ろうとしているのか、日本の国益を考えているのか、日本の国民の安全をあなた方は考えているのかどうか、本当に疑わざるを得ないような気になるわけなんです。私は、ただ野党としての立場でこれを指摘して、行政府のまずさを指摘してそれで事を済まそうという、そんなことを楽しんでいるんじゃないのですよ。間違ったらいかぬ。行政府も、野党が言われたから一々それを取り上げてそんなことしておったら切りがないなんて、取り上げるべき問題、取り上げるに値する問題というのは、やはりこれは選択をしていかなければいけない。行政府のプライドがある。しかし、そういうこともあわせて考えていかなければいけないし、余りにも外務省は高い姿勢、高姿勢。話し合い、仮に米軍に話し合いをしても断られるかもわからぬ。だからせぬ方がいいだろう、あるいはひょっとしたら自衛隊はレベルを下げたけれども、自衛隊を上げてもろうたらいいんじゃないかとあなた方は思うているかもわからぬ、あなた方の腹の中では。そんなことをしたら日本の空はどうなっていくか。もう僕はわかっているのだよ。あなた方が考えて考えて答弁をしようとしていることになる。
総理、これは私が前回、今回と何を指摘をし、何をただしていこうとしているか、あるいは質疑の内容をずっとお聞きになって、もう本当に苦しい答弁を連続して、きょう初めて優先的取り扱いを提供するんだということでありますということを、これをお認めになったわけです。前回に認めておれば、きょう私が質問しなくてもよかったのですよ。もっともっとスムーズにこの
委員会運営ができたんですよ。今もまた私は、少なくとも空の安全、そのためにもアメリカに対して十分な、これは相手のあることですからね、非常に私は、交渉というのは難しい問題である、大変な御苦労があろうと、そのことも承知します。承知はしますけれども、やっぱり粘り強く空の安全と、大きな意味では我が国の主権ということにもかかわってくるであろうし、国内的には防衛庁と運輸省との覚書の取り交わしが優先的から便宜を図るに落としているんですからね。落としているといえば、覚書を変更しているのです。そういう意味から、むしろ事務レベルではどう答弁していいのか本当に困っていると思うのですよ。総理として、これはひとつ最高責任者でもありますし、ぜひアメリカと話し合いの場を持って十分に空の安全を守るべく努力をすべきだ。むしろ注意、督励を総理の立場でなさるのが至当ではないだろうか、私はこういうふうに思うのです。総理の見解、そしてお考えを踏まえて私の指摘にひとつお答えをいただきたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 井上議員がここで先般来御質問になりましたお考えが那辺にありやということは私もよく理解しているところでございます。自衛隊機と米軍機との取り扱いの差異というものについて、日本の主権その他の面からもお考えになり、民間航空の安全性という面も御配慮になっての御質問であると思います。
政府
委員の答弁を聞き、今航空
局長のお話がありましたが、表現的には確かに差がある。あなたの指摘したところは正しいと思います。ただ、実際上の取り扱いは裁量権の範囲内でありますから、航空当局はそのときそのときの事態に応じて、一番適切と思うという判断をしてやっているだろうとは思います。しかしながら、少なくともあなたが御指摘になったような差異があることは否定できない事実であり、あなたの御心配もなかなか妥当な御心配であると私は思います。そういう点も踏まえて、適切な機会に先方との話し合いも含めまして適切なる対応をするようにいたしたいと思います。
-
○
井上(一)
委員 ぜひ、一日も早くこの問題についての話し合いを進めてもらいたいと強く要望いたしておきます。
続いて、私は経済協力の問題について質問をいたしたいと思います。
御承知のように、経済協力は……。総理は――じゃ、質問をとめてください。
-
○倉成
委員長 それじゃ、ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕
-
-
○
井上(一)
委員 総理にお尋ねをしたいのですが、我が国の経済援助の
大原則として、相手国の民生安定を図っていく、このことはもう私が指摘をする必要もないと思うのです。
そこで、フィリピンに対する経済援助の問題でございますが、昨年フィリピンを訪問されて、日比関係の親善友好をより深めていくために大きな御努力をなされたということでございます。その後の経緯、アキノ氏が不幸にして暗殺されたあの事件、私は、その後のフィリピンはまさにマルコスの長期政権に対するフィリピン世論というものが、不満が爆発をした、表面化した、政治的にも社会的にも、フィリピンは現在不安定な状況である、こういうふうに認識をするわけですが、総理はどういう御認識を持っていらっしゃるのでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 アキノ事件が起きまして、不幸な事件でございましたが、新聞等の報道によりますると、一時は若干の混乱があったのではないかと思っております。最近は割合に鎮静に帰したのではないかという感じがいたしております。
-
○
井上(一)
委員 その安定を欠く一つの大きな要因はやはりアキノ氏の暗殺事件である。先日も真相究明
委員会のメンバーが日本に来られたわけでありますけれども、我が国として、総理として、やはりこのようなテロ事件に対しての真相究明にできるだけの協力をする意思を持っていらっしゃるのかどうか、この点について重ねて聞いておきます。
-
○中曽根
内閣総理大臣 我が国は外国の主権と独立を尊重するという建前を持っておりまして、外国に対する内政干渉がましいことは一切これは差し控えるべきであると思っております。しかし、外国政府が要請がありました場合には、我が国の独自の判断に基づきまして協力すべきものは協力すべきである、こういう判断で関係各方面をして実行させておるところであります。
-
○
井上(一)
委員 今回のフィリピンに対する経済援助、このことは、商品借款、つなぎ融資という、そういう形での経済援助に変わったわけでありますが、私は、このフィリピンに対する経済援助の性格が問題ではないだろうか、まず第一点に疑問を感じます。従来のプロジェクト借款ではない。今指摘したように商品借款であり、つなぎ融資に私は問題があると思うのです。我が国の経済協力の原則を変えることに今回なったのではないかと受けとめるのですが、いかがですか。
-
○柳政府
委員 お答え申し上げます。
今回の昭和五十八年度の第十二次のフィリピンに対する円借款の内容については、ただいま検討しておる段階でございますが、御指摘のとおりこの中に商品借款が含まれる予定でございます。
この商品借款と申しますのは、発展途上国の国際収支が非常に悪くなりまして外貨準備高が非常に厳しくなった場合に、民生の安定に必要なものを購入するために出すものでございまして、商品借款を出すということは、我が国の従来から守ってきておりますところの経済協力の基本原則に反するものでは決してございません。
-
○
井上(一)
委員 私が指摘をしたいのは、この際に商品借款なりつなぎ融資をすることが民生安定につながるのかどうかというその認識を総理、実は伺いたいのです。原則なんかわかっていますし、私の考えは、むしろ民生の安定に逆行する結果になるのではないか、そういうことなら
大原則を変えることになるのではないか、こういう認識をしているので、まずここから聞き出したわけです。
-
○中曽根
内閣総理大臣 フィリピンの問題に関して私の基本的な考え方をまず申し上げてみたいと思うのであります。
私は、昨年ASEAN諸国を回りまして、経済協力等のお話し合いもしてまいりましたが、ASEAN諸国は日本にとっては非常に大事な国である、そう考えております。ASEAN諸国も独立の連帯性を持ちまして、一つの地域的な連携を持って発展しようと思って懸命の努力をしておられる国々でございます。先進工業国として、発展途上国から抜け出した日本が、今発展途上国からさらに伸びようとしているそれらの国々に対しましてできるだけの御協力を申し上げたい、こういう考えは私は正しいと思います。歴代内閣もそういう考えでやってまいりました。
そういう意味におきまして、ASEANの諸国という国々は、我々はほかの地域の国々と比べて日本との関係において若干の差があると思います。太平洋戦争におきましては大変迷惑をかけまして、賠償等も行ってきたといういわれのある国国でございます。そういう意味におきまして、ASEANの諸国というものに対する考え方は、私はできるだけ相手方の意を重んじつつ協力していきたい、そういう一種の特別の地域であると考えておるわけであります。
フィリピンにおきましてアキノ事件が起きましたことは非常な不幸なことでございましたが、アキノ事件は政治的なアキノ事件としてこれはとらえまして、フィリピンの国民あるいはフィリピンの国民経済というものを考えまして、そして、もしそこにある大きな困難が出てきておるという場合には、私は、やはりASEAN諸国との特別の関係をここで考えておきまして、日本としては西欧の国々がASEANの国々に乗り出す以上にもっと親切な、情のこもった扱いをするということが日本の将来のためにも大事である、そう考えておるのでございます。
そういう意味におきまして、これはフィリピンだけではございません、ASEANの諸国につきましてもし万一そういうようなことが各国に起きた場合には、そういう配慮を持ってヨーロッパの国々、アメリカの国々等が考える以上に我々は懇切な扱いをすべきアジアの一国である、そう考えておる次第でございます。
-
○
井上(一)
委員 確かに、ヨーロッパやアメリカ以上にASEANの人たちとの友好を深め、かつ、理解を深めていき、その対応を誤らないようにしていく、その考えは私は決して否定いたしません。今回、今この時期に商品借款、つなぎ融資をすることがフィリピンの人々に対して本当に信頼を深めることになるのであろうか。政治と経済は別だ、こういうような認識であるとするならば、混乱した政治は不幸な経済をもたらすわけですね。いわゆる経済の混乱はマルコス長期政権の政治の大きくかかわるところだと私は思うのです。そういう意味からすれば、今回の商品借款はまさにマルコス長期政権の延命策に手をかすことに結果論としてなるのではないか。そのことは、逆にマルコス政権に対する不満が、独裁マルコス政権だというフィリピンの人たちの不満がより爆発をし、日本の経済援助にその爆発の矛先が向けられるというこの懸念を私は持ちます。だから総理、アキノ氏の暗殺がどういう形で行われ、そして日本にも目撃者がいるわけでありますし、いろいろな意味で日本がお手伝いをして本当に厚い友情を示すことがむしろフィリピンとの深いきずなをより強くしていくことだと私は思うのですよ。
今度の商品借款、つなぎ融資は少なくとも考え直すべきだ。経済援助の性格そのものの中の問題もありますよ。それもありますし、政治的にもそうなさることが中曽根総理として賢明ではないだろうか、私はこう思うのです。
-
○中曽根
内閣総理大臣 井上さんの御配慮も理解できないことではありません。そういうお考えも成り立つと思います。しかし、私は先ほど申し上げましたように、アキノ事件というのはフィリピンの内政事項でありまして、この事件の真相はフィリピン政府が今調査
委員会をつくって究明しておるところであり、いずれ真相がわかれば公表される性格のものであると思います。
しかし、一面におきましてフィリピン経済の困難というものは直接フィリピンの民生安定やあるいは失業にもすぐつながってくるという問題で、そういう国の状況を考えてみますと、そういう事件とは別にフィリピン国民全体を相手にして経済を維持し、あるいは福祉水準を低下させない、そういうために日本としてやるべきことがあるのではないか、これは私はASEANのほかの国々が見ていると思うのであります。いずれIMFとか国際的な協力体制ができまして、フィリピンを応援するという事態が十分あり得ると考えております。現にIMF等におきましては調査を行ってもおりますし、そういう構えております。
そういうような情勢も考えてみまして、やはりアジアの先進工業国である日本が太平洋戦争等の過去も考えてみまして、ASEANの国々に対しましてもやはりヨーロッパの国とは違った、一味違った政策を持つということは正しいと思いまして、そうして相手はフィリピンの国民でありフィリピンの国家である、一政権ではない、そういう考えに立ちまして、日本としてやれることはやってあげる、そういう措置をとるべきではないか、それをASEANのほかの国々はみんな見ているであろう、そういうふうに私は考えておるのであります。
-
○
井上(一)
委員 総理、私は十分な正しい認識を持った上での御判断というのが大事だと思うのです。
それで、経済援助も中曽根総理個人の金じゃありません。国民の血税からこれは我が国が協力をしていくわけでありますから、フィリピンの経済の混乱は、決してフィリピンの政治情勢を私は批判する立場ではありませんけれども、長期マルコス政権に対しての責任もそこにはあるわけであります。だから、政治と経済は大いなるかかわりがあるという認識に私は立っているわけですし、フィリピン国民が苦しい経済状況の中に置かれているという認識も持っています。しかし、本当にフィリピンの人たちが今欲しているものは何か。
私、きのう外務大臣にも言ったのですよ。この商品借款、つなぎ融資はよしなさい、今フィリピンの人たちが求めているものは自由であり、公正であり、そして本当の民主主義なんだ。民主主義陣営の一翼に加わってASEANの平和を願う我が国の中曽根内閣であれば、いましばらくこのフィリピンへの経済援助は見合わすべきである、それが賢明だ。
アメリカも下院の小
委員会では五月の総選挙が公正かつ公明正大にやられること、アキノ氏の真相が究明されること、それまでは留保するという決議までなされているのです。さっきの空の話じゃありませんけれども、何か言えばアメリカに追随をしていきたいわけです。このことに関してはASEANの一員と言う。非常に御立派な御認識だと僕は思っているのですよ。しかし、中曽根総理、アキノ氏の真相究明にもっともっと力を入れて協力をして、我が国ができる範囲内で、相手国の主権を侵さない、その範囲内で十分な協力をし、かつ、この経済援助についてはいましばらく留保すべきである。そうでなければフィリピンに基地を持つ米軍の――アメリカが直接やれないから、あなたがレーガンと約束をして日本がアメリカにかわって肩がわり援助をしたのだ、そういう誤解を与えることもあり得る。この問題は大きく展開をしていき、下手したら中曽根総理の秋の再選に大きく影響しますよ。あるいはアメリカの大統領選挙にもあなたの今回のこのフィリピンに対する経済援助は大きく影響しますよ。民主党に勝利を期待する私にとっては――むしろあなたが下手なことをやれば、それがずっと波及するわけです。そういうことでは済まされない。個人的な感情で国会で質疑はできない。やはり我が国の正しい外交関係を私は打ち立ててほしい。中曽根さんの再選を期待します、願っていますなんというそんなちょうちんは持ちません。しかし、そういうことになりかねない。それほどこのフィリピンに対する経済援助というものは非常に複雑であり、かつまた、慎重に対応すべきである。軽々に決定を下すべきでない、私はこういう考えなんです。
もう一度、何か近々に決定をしようという考えを持っていらっしゃるようでありますので、あえて苦言を呈して私の意見を申し上げて、総理のお考えをできれば改めてほしい、もう少し時間をかけてほしい、こういう考えを持っておるわけですが、総理、いかがでございますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 井上さんの御配慮も理解できないことではございません。しかし、内政不干渉あるいはフィリピンと日本との関係、ASEANとの関係。しかも、円借款は我々は既に約束しておることでございまして、ことしの分も額は決まっております。そういう枠内の話でございます。そういうような面から、普通の、通常の事務手続を進めまして物は進行しつつあるわけでございます。それで、今のようなフィリピン経済の実情から見まして、この困難な情勢というものを見ますと、困っているときに適切な処理をしてあげるということがフィリピン国民全体が将来記憶をしてくれることではないか、一マルコス政権の問題というよりも、日本国民とフィリピン国民という関係で私は物をとらえていきたい、そう考えておるのです。
このことがどういう影響を及ぼすかという御配慮を
井上さんはしていらっしゃると思いますけれども、私はもっと根底的な、フィリピン国民と日本の国民というものを考えまして、その与えられた枠の範囲内におきまして政府としてとり得べき政策があればとってあげるということが、ASEAN諸国全体が、いざ自分の国がこういうようになった場合に日本がどういう態度をとるか、西洋と同じような態度をとるのか、日本がアジアの一国として特別の関係、認識を持っているというやり方で見てくれるのかというような問題も考えまして処理していきたいと考えておる次第でございます。
-
○
井上(一)
委員 私は、決して経済協力をすべて中止しなさいという意見じゃないわけですね。従来のプロジェクト借款とかいろいろな形があります。あなたが訪問されたときに、サンロケの発電所の問題も約束をなされたというふうに聞いております。そういう形の経済援助なら、むしろフィリピンの国民も形の中で残っていくわけです。商品借款にしたってつなぎ資金にしたって、その金はどうなって、どう流れていくんだ。私がここで言わなくても、だれかの懐に入っていく、あるいはだれかだけが、限られた人たちだけが潤っていく。国民大衆は、この商品借款なりつなぎ融資を決定したときにむしろ大きな反日感情として爆発した、そんなことにでもなればどうなるのですか。そういう予測も私は危惧するのですよ。総理、そんなときに、しまった、それでは遅い。従前のプロジェクト借款でない、そこらにも大きな問題があるわけですから、もう一度総理の見解を聞いておきたい。
-
○中曽根
内閣総理大臣 ウィリアムズバーグのサミットにおきましても、発展途上国の問題あるいは経済困難に陥った国々、債務過大国に対するリスケジュールの問題とかという面でも間々話し合いが行われまして、先進工業国としてはできるだけ努力をしよう、国際協力もしよう、そういうわけで、ほかの南米大陸における国々あるいは中米における国々等々の問題も共同で処理してきておるところであります。そういう債務国に対する処理の一環としてフィリピンの問題も登場してきておるのではないかと思いまして、アジアの一国といたしまして、私たちは特別の関係をASEANの国々とは持っているという意識を持ちまして実はやりたいと思っておるのでございまして、
井上議員のお話につきましては、深甚の注意をいたしましてひとつ取り計らってまいりたいと思う次第であります。
-
○
井上(一)
委員 特に私は強調しておきます。総理、十分に配慮すべきである。十分に配慮しなければ、マルコス政権に対する不満が逆にむしろ日本の経済援助に対する不満に矛先が変わりますよ。そのときでは遅い。
私はそのことを重ねて申し上げて次の質問に入るわけですけれども、もう一点、アキノ氏暗殺事件についての問題で総理に聞いておきたいのでございますが、アグラバ
委員長一行が日本にお越しになりました。そして、声紋分析を含めていろいろと協力要請がなされたわけであります。私は個個の問題についてどうである、こうであるということは指摘をしません、もう時間もありませんので。我が国政府としては、あらゆる面で、フィリピン政府の協力要請があれば当然これを受けて協力をするという意思は持っていらっしゃると思いますし、これは当然だと思います。なおその上に、先ほど申し上げたように、我が国に目撃者を含めて関係者がいらっしゃるという事実もこれあり、我が国出先公館を通して口上書も含め、形式的なものも含め、積極的に我が国の協力意思を表明する、フィリピン政府にですよ。これは向こうがどういうふうに協力してくれと言うか、あるいはこれもまたフィリピンの主権の問題でありますから。しかし、我が国としては協力をする意思を表明するお考えを私はぜひ持ってほしい、こういうふうに思うのです。協力をするという意思は、もう前段のことは素直にお答えをいただきます。その上に、今申し上げたように、相手国の主権を侵害しない範囲、これはもう当然でございますが、在フィリピン大使館を通して我が方からこの真相究明に十分なお手伝いをしたい、お役に立つならばどうぞ申し入れてくださいというそういう意思表明を私は、総理としてとっていただけるのであろうかどうか、そういう御意思をお持ちであろうか、そのことを伺っておきたい、こう思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 その点につきましては、我が国の主権のもとに、先方の御要請に応じまして十分協力申し上げる意思を表明いたします。
-
○
井上(一)
委員 最後に、私は、障害者の問題について少し総理に御質問を申し上げたいのであります。
世の中、いろいろな立場の人がいろいろな立場で生きがいを持って暮らしていける、そういう世の中をつくるために政治があり、そこに政治の努力が評価されていく、こういうふうに私は思うのです。そういうことは、もう前段の私が申し上げたいことは省きます。総理も十分御認識をいただいていると思います。
それで、障害者、とりわけ全盲の方に対する行政のいわゆる受け入れの対応というか、全盲の人たちに対する対応の問題が少し欠けているのではないだろうか。これは、前回この予算
委員会で私は文部大臣なり
官房長官には御質問を向けました。そして一定のお答えをいただいたわけでありますけれども、役所へ行って何か申請をしたい、そのときに、点字で申請するというそのことは今現在受け付けをしないわけなんです。点字でしたい、受け付けをしない。いわば全盲の人に対する完全な市民権が十分保障されていない。いや、むしろ点字が市民権として十分な位置づけを持っていない。このことは私は非常に注目すべきことであり、このことは正していかなければいけない、こういうふうに思うのです。すぐにといったってなかなか大変なことだと思います。しかし、全盲の人たちの声が、あるいは全盲の人たちの申請の書類が、点字の中で、役所あるいはあらゆる社会の窓口でそれが素直に受けとめられるような、そういう世の中をつくってほしいと思うのです。いわば点字に市民権を与えようというのが私の考えでございます。
文部大臣は、いわゆる共通一次ですか、その試験にも採用し、さらには小中学校のいわゆる入学時の申請等についても、これは前向きに取り組んで一定の市民権を与えていきたい、
官房長官もそのようなお答えをいただいておるわけでありますけれども、これは文部省一省庁の問題でもなく、厚生省一省庁の問題でもなく、やはり政治全体の問題でありますので、私はぜひひとつ、今私が承知している範囲内では、何か文明機器、いわゆる先端技術の開発で、ワープロで、点字の書類がすぐにワープロを通して漢字になるとか、平仮名に変わるとか、それだけを窓口に置けば結構点字の市民権が確保されるわけでありますから、点字に対する市民権を与えてほしいというのが私の趣旨です。
多くを申し上げませんが、総理のお考えを私はひとつ聞かしてほしい。めくら、つんぼ、おしという言葉を、私はそういうのは差別用語だと言って指摘をして、目の見えない人、耳の聞こえない人、話せない人ということに法律を変える、大変なことだったわけです。僕は、それを変えたからといって差別がなくなったわけではないと言っているのです。これは本来は意識の問題であって、もっと意識を変えていくための手だてが必要なんです。それから始めて、初めて意識の変革がなされる、僕はそう思っているのです。だから、点字に市民権を与えたからといって全盲の人たちにすべての幸せがまんべんなく与えられるかといったら、そうじゃないのですけれども、せめて点字に市民権を与え、全盲の人が自分の訴えを、自分の考えを、あるいは役所の申請用紙に点字で出しても、役所が受け取り、あるいはそういうものが社会の中で認知をされるというのですか、十分な権利を発揮できる、そういうことを私はぜひ実現してほしい。
福祉というのは、きのうも私は自治大臣に申し上げたのです。福祉というのは思いやりだと今まで思われてきました。もうそうじゃないのです。十年前はそうであったかもわからない。今は当たり前のことなんです。
こんなことを議論しておったら時間がありませんので……。中曽根総理はみずからを鍛えるために座禅に時を過ごすということも聞き及んでいます。私は、すべての人に、総理としての当たり前のこと、当然すべての人に十分な権利が保障される、そういう世の中をつくるために、手始めに点字に対する市民権をひとつ保障していただけぬでしょうか。特にこれをお願いをして、お答えをいただきたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 井上さんのお考えに原則的に賛成であります。できるだけ点字に市民権を与え、政府といたしましても、あらゆる機関、あらゆる機会等を通じまして点字の世界を拡大していくように努力いたしたいと思います。
-
-
-
○
岡田(利)
委員 予定の質問に入る前に一、二点承っておきたいと思います。
きのう、去る一月十八日に三井三池炭鉱で発生しました八十三名の死亡者を出した坑内火災の事故調査
委員会の中間報告がなされたわけであります。
この内容を拝見いたしますと、火災の原因は、当初の予想どおり、ナンバー一〇ベルトコンベヤーの相互接触摩擦により可燃物が蓄熱をして発火したもの、いわば災害は極めて単純な原因であったということが言えるだろうと思うのです。だがしかし、この単純な災害が八十三名の死亡者を出した内容として、火災の発生防止の対策、早期の発見、通報、連絡指令体制の問題、あるいは消火作業の関係、あるいはまた、退避訓練その他について問題があったと指摘をいたしておるのであります。極めて当然であり、保安管理体制の責任は免れないと私は思うのであります。
だがしかし、ベルトコンベヤーというのはどこの炭鉱でもそれぞれの運搬経路に配置をされておるのでありますから、この報告を受けて、では直ちにどういう対策をとるのか、極めて重要であると私は思うのであります。同時にまた、この対策をとるに当たって、保安法の改正は必要はないでしょうけれども、石炭鉱山保安規則、あるいはまた谷山にある保安規程の改正に及ぶのではないのか、こう思うのであります。したがって、この報告を受けた通産大臣は直ちにどのような措置をとられるのか、この機会に承っておきたいと思います。
-
○小此木国務大臣 昨日、伊木
委員長から中間報告を私が受けました。そこで、通産省といたしましては、本日付で立地
公害局長から鉱山保安監督局の
局長にあてまして、事故調査
委員会の中間報告の対策等について周知徹底を図る旨の通達を発します。これを受けまして、鉱山保安監督
局長は鉱務監督官に命じて月一回の巡回検査あるいは保安に関する改善措置を行わせることにいたします。
なお、今、
委員のおっしゃった保安規程の改正につきましては、今後類似災害というものを防止していかなければならない、そういうことを検討する中でこの対策をやっていきたいと思っております。
-
○
岡田(利)
委員 三池炭鉱は去る昭和三十八年にも、これは総選挙中に、炭じん大爆発を起こした経験があるわけであります。このときもこの坑道は特免区域であるわけですね。今度の災害の発生した場所も特免区域なんです。北海道の炭鉱の災害の場合には炭鉱特有の災害が多いのでありますけれども、九州のこれらの大事故はいわば普通の地上の装置工業でもあり得るような原因で大きな災害が起きている。これが九州の炭鉱における特殊性であるわけです。それだけに、炭鉱特有の災害の原因ではありませんから、今回のこういう重大災害に発展したことは極めて悲しむべきことであり、また、関係者としては極めて力を落とすといいますか、そういう感じがするのであります。そういう意味で、今次災害、これはもう極めて原因が単純であるわけでありますから、今、通産大臣も述べられましたけれども、速やかにひとつこれらを徹底させることを強くこの機会に要望いたしておきたいと思います。
次に第二点として、本
委員会ではしばしば、来週中曽根総理が中国を訪問されるわけですが、いろいろな問題を取り上げて総理の見解もただしてまいったわけであります。しかし、来週訪中するに当たって、今回の訪中の系統的な基本的な方針というものも既に固められたのではないのか、こう存じますし、また既に各プロジェクトごとにずっと積み重ねられてきた第二次円借款についても、当然今度の訪中に当たって相当詰められた上で、サインするかどうかは別にして、この問題についても日本側の最終的な態度を表明するということに私はなるのではなかろうか、こう思うのであります。
アジアの情勢は非常に多くの問題が提起をされておる状況でありますから、その意味で今度の訪中というのは日本国民のみならずやはり国際的にも注目をされているのではないか。まして四月にはレーガン大統領が訪中をするという前提があるわけでありますから、それらの関連についてもやはり注目をされておると思うのであります。これらについて、ひとつ、きょう総理の方から御説明願えれば幸いであると存じます。
-
○中曽根
内閣総理大臣 国会の御了承をいただきまして中国へ訪問することができれば幸いであると思っております。
その際は、先般胡耀邦総書記がおいでになりまして諸般の話し合いをいたしましたが、その後も、いろいろ時日の経過もあり、また、趙紫陽首相以下の要人とも隔意なき懇談をいたしまして、日中友好を二十一世紀にわたるまで確実なものにするために努力したいと思います。
その際は、国際関係の諸問題あるいは日中関係の将来等々につきましてもいろいろお話し合いをしてまいりたいと思っております。
経済協力の問題につきましては、各プロジェクトにつきまして今いろいろ詰めの作業をやらしておりまして、私が中国へ参りましたときまでに間に合えば、その点についても話し合いをしてまいりたいと思っております。
-
○
岡田(利)
委員 私は、きょう特に総理から確認したい事項があるわけであります。
それは大型間接税の問題についてであります。大型間接税という言葉が今日市民権を持って歩いておるわけであります。しかし、税理論からいえば、間接税はありますけれども、大型か中型か小型かというのは定かではないのであります。しかし、国会ではもはや本
委員会では大型間接税という言葉を中心にしてそれぞれの見解が述べられておるのであります。この機会に私は、総理の言う大型間接税についての定義といいますか、総理のお考え方といいますか見解といいますか、この機会にお聞かせ願いたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 前に、この席であったと思いますが、直接税に対する間接税、小型、中型に対する大型、そういうお話を申し上げました。学問的な定義は知りませんが、常識的に私が頭にありまするものは、流通の各段階でちょうど投網を打つように普遍的にその過程で税金を取っていく、そしてそれがかなり大規模のものである、つまり各段階においてすべて網羅して取っていく、そういう性格のものを頭に置いておるわけであります。
-
○
岡田(利)
委員 政府税調の場合は、この大型間接税については、課税ベースの広い間接税、これを称して大型間接税と言う。同時にまた、既に五十四年十二月の国会決議で封じ込められている一般消費税、これも大型間接税の中に入る、もちろん欧米で既に実施をされている付加価値税についても大型間接税の当然範囲内である、こう理解するのが妥当ではなかろうか、こう思うのであります。今、総理の説明では、段階ごとといいますと一般消費税、付加価値税ということがすぐぴんと来るのでありますけれども、政府税調で言っている課税べースの広い間接税も大型間接税である、こういう理解でよろしいと思うのですが、いかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 課税ベースの広いとは何を意味するかというような問題もありまして、今の点は、私が今申し上げたようなことを私は頭に置いております、そういうふうに申し上げておるわけなんであります。
-
○
岡田(利)
委員 総理は、二月十七日の本
委員会において、大型間接税に触れて、大型間接税の導入は考えていないと述べられておるわけであります。さらにまた、二月二十三日のときには、私の内閣の続いている間、大型間接税の導入は避けたいと明確に述べられておるわけであります。したがって、この一連の総理の発言というのは、中曽根内閣として大型間接税は導入しないということを明確に国民に約束をしたもの、こう私は理解をいたしておるのですが、そういう理解で間違いがないでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 中曽根内閣におきましては、大型間接税と称するものを導入する考えは持っておりません。
-
○
岡田(利)
委員 そうしますと、大型間接税の導入はしないということは中曽根内閣の公約である、こう明確に言い切っていいですね。
-
-
○
岡田(利)
委員 そこで前段の総理の言う大型間接税の認識が問題になるわけです。一般消費税あるいは付加価値税、これはもう当然否定されているわけですから。政府税調の言う――政府税調ですよ、民間の団体が言っているわけじゃないのです。政府税調の言う課税ベースの広い間接税、これは大型間接税である、こう言っていますね。大蔵大臣、これは間違いがないでしょう。
-
○竹下国務大臣 政府税調で、課税ベースの広い間接税はすなわち大型間接税だとは言っておりません。
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○
岡田(利)
委員 政府税調の表現は、「課税ベースの広い間接税」、こう表現しているわけです。これを称して一般論的には大型間接税とこう言っているわけですよ。そうでしょう。そういう理解が正しいのじゃないですか。
-
○竹下国務大臣 その理解は間違っていないと思います。
-
○
岡田(利)
委員 そうしますと、中曽根内閣が大型間接税を導入しないということを公約をするということが明確になったのでありますが、総理の言う大型間接税には、今政府税調で言われている「課税ベースの広い間接税」、これは当然含まれる、こう解されることがもう極めて当然ではなかろうか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 課税ベースの広い間接税というのは非常に広い概念でありまして、内容は必ずしも定かではないと思います。いろんなニュアンスがあり得ると思います。私は、ですから、私が考えているものはこういうものでございますと申し上げて、流通の各段階で投網を打つように普遍的に税金を取っていく、そういうていの性格の間接税というものは考えておりません、これが私の考えておるところであります。
-
○
岡田(利)
委員 そうすると、大もとの蔵出しの段階だけですね。大もとの蔵出し段階で課税をする。庫出税といいますか、これはもう全体に及ぶわけですね。これは大型間接税でないと総理は思われておりますか。どうでしょう。
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○中曽根
内閣総理大臣 一つ一つ御質問いただいても、試験問題みたいなものでして、どういうふうにお答えしていいかわかりません。今申し上げた私の考え方をぜひお考えいただきまして御判断願えればありがたいと思います。
-
○
岡田(利)
委員 ここまでまいりますと、非常に国民は、もう少し具体的に聞きたい、こう思うのではないでしょうか。
せっかく公約をいただいたのですけれども、総理の言う、一般消費税、付加価値税は、当然これはもう大型間接税の中に入りますから導入しないということが明らかになりましたけれども、いわゆる一次的な庫出税を含む課税ベースの広い間接税というものは、どうも大型間接税なのかあるいはそうでないのかはっきりしないわけですね。ここが問題だと思うのです。
だから、少なくとも、一部の食料品を除いた全体の商品に課税をする、こういうものはやはり大型間接税と言うのがもう常識でしょう。そう使われておるわけであります。今私が言った意味では、そういう課税はしない、そういう税制は導入しない、せめてそういう理解は、私の述べたことについては、総理としても同じ意見であるということは言えませんか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 私は私の考えておる中身をかなり具体的に申し上げておるのでございまして、流通の各段階において投網を打つように普遍的に税金をかける、そういうていの間接税は考えていません、そういうことを申し上げているので、あとは、政府税調が言っておる幅の広いとかそういうものはまだ抽象性を持っておる言葉でありますが、私の申し上げているのはやや具体的に申し上げておるので、私の申し上げていることを御判断の柱にしていただきまして、それでひとつ御判断願いたいと思うわけでございます。
-
○
岡田(利)
委員 五十九年度に限って「増税なき財政再建」ということを総理は述べられた、こう説明されておるわけでありますけれども、今後、六十年以降についても、基本的な考え方としては、原則的な考え方としては「増税なき財政再建」路線をやはり追求していく、こういう姿勢については変わりがありませんか。
-
-
○
岡田(利)
委員 そうしますと、例えば税制の不公平ということでいろいろ問題になっておりますマル優制度、最近特にまた国民の人口の三倍の口座数に郵貯がふえるとか、いろいろ問題が出ているわけであります。この制度をもし利子課税を強化するという方針をとれば少なくとも二兆円とかそれ以上の財源を得られるであろう、こうも言われておるのであります。こういう点について、非常にこれまた国民の関心を持っているところでありますが、総理のこういう税制に対する、税制の改革に対するお考え方があれば、ひとつこの機会に承っておきたいと思います。
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○中曽根
内閣総理大臣 この点は自民党及び政府税調等におきまして将来御研究願えるという問題ではないかと思っております。中身がどうだということは今私からは申し上げられません。
-
○
岡田(利)
委員 次に、私は最近の円高傾向と経済の運営の問題について二、三お尋ねしておきたいと思うのであります。
もちろん、政府自体が好ましい円レートについて発言をするということは今までも差し控えられてまいったのでありますが、五十九年度の経済の運営を展望いたしますと、円の動向というものが非常に大きな影響を我が国経済に与えるということはもう明らかになってきたと思うのであります。
しかも、ドイツ・マルクの面で見ますと、一月の九日一ドル二・八四マルク、この安値から、二・五八マルクですから九%西ドイツ・マルクが上昇いたしておるわけです。昨年の初めは二・三七マルクでありますから、そういう意味ではまだ回復したとはマルクの場合には言えないのであります。これをもし円に当てはめた場合には、円は一月の九日で二百三十三円で、九%上昇と見ると二百十二円、こういうレートになるのであります。
こう判断してまいりますと、最近の円のフロートの状況というものは、依然として、一進一退は多少あるでしょうけれども、跛行的な状況は出るでありましょうけれども、傾向としては円高傾向の方向にある、こう言えるのではなかろうか、こう思うわけです。
河本
長官は分科会で私の質問に対して、円はここ五年ないし六年の間百七十円から二百七十円の間に変動して、黙って真ん中をとっても二百二十円になります。その意味を、私は、二百二十円以上二百十円以内ぐらいの線を考えられた発言ではなかろうかと私自身が勝手に受け取っておるわけであります。したがって、これからの経済運営を考えた場合に、間接的にでも円の動向についてやはりある一定の見解というものを持っておらなければならない時期ではなかろうか。四月一日から新年度が発足するのでありますから。そういう意味で、きょうは総理大臣にこの面に関する見解があれば承りたいと思うのですが、いかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 為替相場はそのときの国際情勢や市場の状況によって変動するものでございまして、我々はこれを統制しようという考えはもちろんございません。したがいまして、為替相場について将来を予測したり言及することは慎んだ方がいい、そう思っております。
-
○
岡田(利)
委員 では、逆に、今回の円レート、二百二十三円、その前後の状況でありますけれども、仮にこの水準が、レートが安定したと仮定して仮計算をした場合に、五十九年度経済に一体どういう影響があるのか。例えばGNPの面で、物価の面で、あるいは貿易の収支の関係で、その余剰分が貯蓄、内需に回るのかどうか。あるいはまた、公定歩合を引き下げなくても実勢金利は下がるという経済学の定説、これらがやはり動くのでありますから、仮計算で昭和五十九年度の政府経済見通しについてどういう影響が一体出てくるのか、大体の見通しは仮計算ができるのではなかろうかと思うわけであります。この点についてひとつ御説明をお願いいたしたいと思います。
-
○谷村政府
委員 お答えいたします。
円高がこういう傾向で続くと仮定いたしまして一般的に考えますと、まず内需の関係から申し上げれば、購買力が高まる、交易条件がよくなるというような見地から、消費あるいは住宅というような内需につきましてはいい影響を及ぼしてくるのではないか、こう考えております。
他方、国際収支の関係につきましては、輸出数量が減る、他方輸入数量がふえる、こういう感じになりまして、経常収支、当面はJカーブの影響もございますが、全体として眺めれば経常収支が減る方向に働くのではないか、かように考えておるわけでございます。トータルいたしまして考えますと、GNPにつきましてはほとんど影響がない、現在程度のものである限りにおきましては影響がないと考えておるわけでございます。物価につきましては、基本的には安定の方向に向かういい影響を及ぼすのではないか、かように考えております。
以上でございます。
-
○
岡田(利)
委員 極めて常識的な答弁でありますけれども、そうしますと、大体この水準で落ちつくと仮定すれば、ある計算の例からいいますと、昨年の原油五ドル値下げが行われましたけれども、その五ドル値下げ分に匹敵をする輸入代金の節約ができるというのが大体計算上常識であると伺っておるのですが、そういう理解でよろしゅうございますか。
-
○谷村政府
委員 今の点は、輸出数量についての影響をちょっと除外して考えますと、御指摘のとおりでございます。
-
○
岡田(利)
委員 政府の場合も当然五十九年度予算は円レート二百三十四円で計算をして、そして予算が組まれておるわけであります。予算執行以前から円高の傾向が出ておるわけですが、例えば円高が十円進んだ場合、予算上財政効果は、今年度、五十九年度予算上財政効果はどのようになるか、その試算について承っておきたいと思います。
-
○
山口(光)政府
委員 変動相場制のもとにおきましては、外貨関連の予算は一定の前提を置いて計上せざるを得ないわけでございまして、ただいまは、過去一年の為替相場の平均という意味で、予算編成直近の二つの基準外国為替相場の平均を積算上の外貨換算レートとして用いております。ことしについて、五十九年度予算について申しますと、一ドル二百三十八円でございます。今度、執行段階では変動相場制でございますから変わってくるわけでございますが、それに備えまして、支出官レート、ただいま申しました支出官レートで組んであるものにつきましては、実勢レートとの差を貨幣交換差減補てん金として円安の場合には支出する、さらに追加して支出する、それから円高の場合には貨幣交換差増として雑収入で取るということで調整する仕組みになっておるわけでございます。
ただ、これは直接ドル払いの経費でございますが、円払いだが例えば商社を通じて輸入するといったような場合に、積算の基礎にドルが入っておるというようなケースがございますが、こういうものにつきましては物価一般の変動と同じ処理になろうかと思います。
-
○
岡田(利)
委員 私は、質問を懇切丁寧に通告したのですが、大体試算の、額的にはこういう試算ができるということを実は聞きたかったのであります。まあ時間がありませんからいいでしょう。
そこで、昭和五十九年度の景気対策の問題としてしばしばいろいろ議論されておるのでありますけれども、過去三年間、五十六、五十七、五十八年間、いずれも公共事業については七〇ないし七五%の前倒しが行われてまいったのであります。今日景気がある程度上昇機運にあるとはいえ、地域別、産業別の跛行状況というものがまた一面非常に目立っている。中小企業の倒産件数も非常に強い傾向にあるわけであります。したがって、私は、やはり五十九年度についても従来同様の公共事業の前倒しをしなければならないのではないのか、そしてまた、そういう地域を考慮した予算の重点配分、こういうことも最終配分決定に当たって十分考慮しなければならない問題ではないのか、こう思うのであります。従来これは予算が成立をしてその直後政府として運用方針を決めるのでありますけれども、しかしもう予算の審議も三月中旬になっておるのでありますから、そういう意味では機動的に対応しなければならないという状況にもあるわけです。したがって、今年度は基本的にはどういうお考え方を持っておるのか、この機会に、これは総理でも結構でございますが、総理からですか――大蔵大臣から承りたいと思います。
-
○竹下国務大臣 今
岡田さん御指摘のように、五十六、五十七、五十八と前倒し、そして結果として不況地域への重点配分というようなことも、これは結果として確かにそうなっておると思います。今この下旬に、いわゆる予算現額、すなわち繰り越しが幾らあるか、大体数字が固まってくると思います。したがって、その時期から勉強を開始するということになろうかと思います。すべて心得ての御質問であることは承知しておりますけれども、やはり予算が通る前にこれから検討すべき課題を余り予見を持って申し上げることはいかがか、こういうふうに考えますが、私も、今のようなお考え方で、従来いわゆる執行方針の中で今おっしゃったような意見を加味して決めたことがあるかどうか調べてみますと、五十四年に「公共事業等の地域別配分に当たっては、地方公共団体との緊密な連携の下に、各地域の雇用情勢に配意するよう努める。」というような形で決めた例がございます、これらも参考になるなあと思っておりましたが、今の意見も聞きながら、補正予算の傾斜配分のときにも地域配分をかなり念頭に置きましただけに、参考にさせていただきたいと思っております。
-
○
岡田(利)
委員 先般、
大内委員の質問に、対して、文部大臣、厚生大臣が医師の過剰の問題で答弁をそれぞれされておるわけであります。しかし、都道府県別の無医地区の状況、これは現在でも千七百五十地区存在をしておるわけです。一番多いのは北海道、第二番目が広島の九十八地区、第三位が高知県の八十九地区、第四位が鹿児島の七十三地区、第五位は、山形と福島が同じで第五位にあるわけですね。また、全国自治体の病院協議会の発表によっても、まだ常勤医師は病院の場合で二千五百四十二人不足である。診療所の場合には百五十九人で、いずれも八三・八%、七八・三%の充当率であります。これをちょっと北海道に当てはめてみますと、こうなるのですね。北海道の場合には百二十七・四人でありますから、全国水準からマイナス一〇%であります。ところが、札幌圏と旭川の中部圏は百九十三・三人、百七十四・七人、いずれも全国水準を上回っているわけですね。ところが、南檜山地区になりますと四十二・二人、宗谷地区は四十六・四人、あの根室の地区は四十六・九人、三分の一以下、こういう水準にあるわけであります。
北海道の道庁では、医学就学資金貸付制度があって、月額七万三千円貸すのです。学校を出てきて三年間もしお金を貸りれば、その一・五倍の年数を勤めるとお金は返さなくてもいいと、大変な優遇措置を講じて、これを利用した人が、四十五年にスタートして百三十二人が利用したのですよ。ところが、地域医療についたのはそのうちわずか十五人で、あとはお金を返してほかに、町の方の病院に就職をした、こういう結果になっているわけです。
私は時間がありませんからずっと述べたわけでありますけれども、また、韓国、台湾の医師がまだおるわけですね。こういう状況の中で、大臣も、それぞれ問題点を若干指摘をしながら、検討
委員会で検討する、こう述べられておるのでありますが、医師の適正配置の問題はよほど大学病院の、人事権というのは大学病院が握っておるわけですから、本当に大学病院の協力、理解がなければできませんし、あるいはまた、それだけでも不十分であるとすれば、国立病院このものを基幹病院にして、ある程度医師は生涯教育を受けなければなりませんから、回って歩けるようなそういう制度的誘導をしない限り、十年たっても二十年たっても河清を待つだけだと思うのです。百年河清を待つと同じような状況だと思うのです。これは基本的に非常に重要な問題でありますから、医学部の定数を減らす、その結論を出すならば、同時に医師の適正配置をして、国民皆保険の体制の中で機会均等に医療が受けられる、こういう体制を築かないで部分だけをいじることは問題があると思うのであります。この点で両大臣から明確な見解を承りたいと思います。
-
○
渡部国務大臣 先生御指摘のとおりでございます。ただ、昭和四十五年に私どもとしては適正な医師数というものを考えまして、大体十万人に百五十人くらいが適当であろうという判断のもとに、文部省に医師の養成大体六千人程度ということをお願いしたわけでありますが、これは我々のお願いをはるかに超えまして、今文部省で養成しておる医学部の定員は八千三百人を超しておりまして、しかも我々の最初に目標とした百五十人を超す状態になっております。これからどの程度の医師数が必要かというようなことを考えながら、将来過剰にならないような対策を立てなければなりませんけれども、その前提としては、今、先生御指摘のように、一方で医師の過剰が論ぜられながら、先生の北海道や私の郷里の福島県や、まだ足りないところもあるのでありますから、まず過疎地帯等に適正な医師を配置するということが非常に大事なことになってまいりました。今度は今国会に医療法の改正案を提出いたしまして、しっかりした地域医療計画を策定いたしまして、今後、先生御指摘のようないわゆる医師の適正配置というようなものを十分考慮し、さらに高齢化社会に備えてどの程度の医師の必要が出るかとか、そういうものを十分検討の上、文部省当局にこの程度の医師の養成をお願いしたいということを今後申し上げるつもりでございます。
-
○森国務大臣 お答え申し上げます。
近年・医学部の新設に伴いまして、今、厚生大臣が答弁いたしましたように、当面の目標、六十年度までに九万二百五十人という、これは目標年度を待たずして達成されることはもう確実でございます。しかし、今、
岡田さん御指摘のように、現実の問題としては確かに自治体病院等では医師不足であります。今北海道あるいは福島というお話が出ましたけれども、例えば私どもの石川県におきましても、確かに金沢市などでは過剰でありますが、わずか三十分ほど参りました、私の父がたまたま町長をいたしております町などの病院では医師不足でございまして、お医者さんを招くためには社宅を建ててあげて、社宅といいましょうか、大変な厚遇をしなければお医者さんが来てくれない。それでも少しやるとすぐ帰ってしまうというような状態でありまして、現実の問題としては、地域の問題あるいは特にこの間も、
大内委員のときにも申し上げたのですが、領域的には足りないのですね、基礎医学など。解剖などは、変な話ですが獣医学をやった人がやっているというような事態もあるわけです。こういう医師の養成は、確かに厚生大臣が六千人でいいのに八千三百もあるとおっしゃっていますが、現実の問題としては、お医者さんがなぜこうした使命感を持って自治体病院などでやってくれないか、あるいは山や離島などでなぜやってくれないのだろうか、もっと基礎的な医学の分野をなぜやってくれないのだろうか。こんなことはやはり教育の問題でもあるかと思いますが、大学病院全体がやはり考えてもらわなければならぬ問題だと思っております。
したがって、そうした医師養成の規模については、これは先般も申し上げましたけれども、適正な医師数というものをまず厚生省が出していただくということが先決でございます。
私はこの間、
大内委員の御質問の際に申し上げましたのは、医学の研究を進めていく上において、いわゆる教育条件ということから考えますと、百二十人という定員では、やはりこの辺はいろいろな意味で疎通を若干欠くという面がございますので、こうしたところから少しは改善をしていく必要があるのではないか、こういうふうに申し上げまして、あくまでもこれは教育条件の改善という見地でございまして、医師の過不足という問題でこの問題を取り上げておるわけではございません。
ただし、念のために申し上げておきますが、これは当然地元との調整、地域医療との関係、それから各大学の対応を十分踏まえてやっていきたいということでございます。
一般的な見直しは、何度も申し上げますが、厚生省が医師の適正をきちっと出していただく、それからの問題であるというふうに考えております。
-
○
岡田(利)
委員 総理、恐縮ですけれども、今お聞きのとおりなわけです。総理の群馬県でも二十五カ所も無医地区があるわけでありますから。それで、厚生省は厚生省で、お医者さんの数が過剰になるということについて、お医者さん自体からもやはりいろいろ要請があるんだと思うのですよ。文部省は文部省で、今お答えになったとおりなわけです。自治体の方は、村長以上に町長以上にお金を払っても医師が来ない。ですから、そういう負担については自治体は積極的にやるわけです。お金の問題ではなくして、問題はやはり制度がなければいかぬのですね。政策的誘導がないとこの問題は解決しないわけです。各省にまたがる問題です。
がん対策について総理が一定の方針、政策を出されましたけれども、普遍的な健康管理、そして医療が機会均等に受けられる体制をつくる、その不断の努力を政治が行う、非常に重要だと私は思うわけです。ぜひこの点について、その方向について、総理から検討するよう指示を出していただければ一番幸いであるし、前進するのではないか、こういう期待を込めてお伺いをいたしたいと思うわけです。
-
○中曽根
内閣総理大臣 ごもっともなお考えであると思います。僻地等に対する誘導政策について積極的に取り組んでみたいと思います。
-
○
岡田(利)
委員 あと時間がなくなってまいりましたけれども、二、三、健保の問題について承っておきたいと思います。
もう既に分科会でも随分譲諭されておるわけです。いずれにしても、社保審の両論併記や、あるいはまた制度審では一本化しましたけれども、重要な点が意見として付加されているわけです。しかし、閣議では従来の基本方針どおりの内容で閣議決定をされた。今後の審議に待つところが多いのでありますけれども、これだけ重要な問題点が指摘をされておるのに、最終結論を出す以前に、解決すべきものを解決をして、新しい方針をつけ加えて、そして閣議決定をして、国会に出すべきであったのではないか、こう私は思うのでありますけれども、この点、まず一体どういう事情か承っておきたいと思うのです。
-
○
渡部国務大臣 前にこの
委員会で先生からいろいろ御心配をちょうだいいたしましたが、おかげさまで社会保障制度審議会においては、いろいろな注文、御意見等がありましたが、基本的には私どもの改革案が御理解をちょうだいできたと解釈をいたしております。また、社会保険審議会においては、医療費の適正化、退職者医療の創設、療養費払い、日雇い健保の廃止等、おおよそ我々の基本計画が御理解をいただきましたけれども、ただ残念なことには、患者の一部負担ということについては意見が一本化されず、両論併記という形で答申をちょうだいいたしております。意見が一致されないで両論併記という答申は、その判断を厚生大臣にゆだねられたと解釈して今回の提案となったのでありますが、なお、提案に当たっては、この答申の意思を尊重するため、五人以下の従来問題になっておりました小規模な商工業者が政管健保にこれから入れるようにとか、あるいは健保組合の退職者医療に対する意見を反映するとかの若干の修正を加えて、これが私どもが将来の国民の健康を守る医療改革の最善の案と確信して提案をした次第でございます。
-
○
岡田(利)
委員 今後こういう重大な、基本的な改革をする場合には、もちろん審議会には報告をし、意見を聞いておるとは言うけれども、やっぱり予算に組んでそして予算
委員会で予算を審議するわけでありますから、中間報告的なものを受けてそして国会に臨む、こういう慣行を確立しなければだめではないのかと私は思うのです。
同時にまた、今度の場合、政府はしばしば、重要な問題については政令で定める、こうなっておるわけですね。これは社労で審議する場合に、政令要綱については明確に初めから出して審議をお願いするということを明言できますか、いかがですか。
-
○
渡部国務大臣 各党の皆さん方に御相談をいただいて、この健保改革案については担当
委員会である社会労働
委員会で審議をちょうだいすることになっておりますので、できるだけ早くこの審議をちょうだいすることにお願いをいたしまして、その審議の中で、今御説のような御意見等が参りましたら、それぞれ対処してまいりたいと思います。
-
○
岡田(利)
委員 既に社制審の中でも、高額医療費自己負担限度額については、「所得に応じた仕組みを導入するなど今後その抜本的な見直しを図るべきである。」あるいは退職者医療制度創設については、「その実施に当たっては拠出者側の意向が反映できるような仕組みが不可欠である。」こういう指摘があるわけですね。そうしますと、これらの問題については、当然社労の中でも議論されるでしょうけれども、政府として考え方をまとめておかなければならない。
また同時に、政令に定める事項があるわけですね。審議が終わるまで出さぬのでは、審議ができないのでありますから、これだけ問題になった健康保険法でありますから、社労で審議を始めるときには、政令要綱についても同時に説明をして審議をお願いするということを約束できますかということを聞いているわけです。
-
○
渡部国務大臣 政令については、この法案の御議決をちょうだいして、七月一日までにまたそれぞれの審議会等の答申をちょうだいして私が定めることになっておりますけれども、今御説のようないろいろ問題等もあり、私どもは各党の皆さん方の御意見を十二分に尊重し、社会労働
委員会の審議を通じて、その中で私どもの考え方を示す必要が出てまいりましたら、その時点で対処をしてまいりたいと思います。
-
○
岡田(利)
委員 健康保険には、政府管掌と健康保険組合があるわけです。健康保険組合はそれぞれ財政事情は違うわけですね、組合によって。したがって、負担能力があれば、本人負担の一割分を健康保険組合が負担をする。従来も、家族七割であっても八割を負担する、こういうことが健康保険組合の場合にはとられてきておるわけです。そのことは自由であるということで理解はいいのでしょうか。
-
○吉村政府
委員 先生御指摘の点は、恐らく付加給付の問題かと思いますが、私ども付加給付につきましては、基本的には全国民の給付の公平という観点からいうと問題がある、こう考えておりますが。今回の改正におきましては、急激な変化を生じさせないというような点も考慮いたしまして、付加給付については各組合の自由に任せる、こういうことにいたしております。
-
○
岡田(利)
委員 したがって、中小の被保険者と健康保険組合に加入している被保険者のいわば自己負担の内容が変わってくるということが前提にあるということも非常に重要な問題点ではないか、こう思うのであります。
同時にまた、一割の自己負担の問題でいろいろ考えてまいりますと、二十万円の所得の人が傷病手当金で六割、したがって十二万円以下になるわけですね、それ以外にありますから。そして一カ月入院をすると五万四千円負担をしなければならぬわけでありますから、残りは六万六千円で家族四人が生活をしなければならぬ。生活保護基準以下なんですね。生活保護の場合には十四、五万の給与が保障されているのです。そして医療の関係も、医療給付を受けていますから、医療代は支払わなくても済むわけです。これがもし二カ月、三カ月続いていく大きな病気である、胃がんなんかの場合はそうでしょう、そういうような場合は、家族が生活ができないという実態が出てくるわけですね。この点についてしばしば問題になっておるわけでありますが、何らかの救済措置を考えるというお考えですか、それとも既定方針どおりで対処をするというお考えでしょうか。いかがでしよう。
-
○
渡部国務大臣 今回の改革案は、幾たびか私がこの
委員会でも申し上げておるように、基本的には保険者の負担をこれ以上重くしないように、現行の保険料率にとどめるというために、大変恐縮でございますが、被用者保険本人の皆さん方にとりあえず五十九年、六十年は一割の御負担をお願いする。これは大体平均にいたしますと、被用者保険加入者全体でいいますと一カ月六百二十円程度の御負担、また医療にかかる方の平均でも約八五%の方は二千円程度ということでこれをお願いしているわけでありますけれども、確かに先生御指摘のような問題もございますので、高額療養鈍の問題、また低所得者に対する今後の方針、これらの問題は私どもの改革案も、この改革によって不必要な、むだな医療は排除いたしますが、必要な受診は妨げない。国民の健康を守るということが前提でありますので、社会労働
委員会の審議の中でそれぞれの皆さん方の御意見をちょうだいいたしながら、そういう心配のないように努めてまいりたいと思います。
-
-
○
岡田(利)
委員 いずれにしても問題点が非常に多いということが、二、三の質問をしてもすぐおわかりになるだろうと思うのであります。特に五十九年度については、厚生省は一つの試算を出しておられるわけです。しかもその伸び率は、従来の傾向から言えば七・二%。しかし、五十九年度に限って診療報酬の明細書の関係やあるいはまたその他の措置をとることによって、それぞれこの伸び率が二・三、一・四、一%と下がって、極めて低位な状況にあるという試算が出されておるのであります。これは明らかに経済成長率以内におさまるわけでありますから、私は、五十九年度拙速主義でこの法案を無理やり通して実行に移さなければならないという逼迫した状況にはないではないか。これは厚生省が見通しを出しているわけです。ですから、そういう意味で、今国会で合意が形成できないのに無理やりこの成立をさせるというような愚は、厚生省としてはすべきではない。これは来年度を展望しながら慎重に審議をすべきである、こう私は思うのであります。この点の見解を承って、終わりたいと思います。
-
-
○
渡部国務大臣 御指摘のように、老人保健法等を実現させていただいた後、また皆さん方の御指摘の中で、厚生省が必死になって監査体制の強化とか医療費の適正化に努めてまいりまして、最近やや医療費が適正、低減状態にあることは、これは御案内のとおりであります。したがって、これをより確実なものにするために、この改革案を一日も早く実現させていただくことによって、さらに二十一世紀の医療行政をより揺るぎないものにしたいと思いますので、できるだけ早い御審議をお願いしたいと存じます。
-
○倉成
委員長 これにて
岡田君の質疑は終了いたしました。
次に、
上田哲君。
-
○
上田(哲)
委員 この一カ月の審議を通じまして、非常に重要な問題でありました非核三原則、日本の基本政策として総理はさらに明確にこれを守っていかれるという態度を表明されたと理解いたしますが、よろしゅうございますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 非核三原則は、これを国策として堅持してまいります。
-
○
上田(哲)
委員 長い課題でありますけれども、特にトマホークの搭載の問題と絡んで、最大の戦艦ニュージャージーが日本に寄港するという情報の中で、この問題はやはり三十年の一つの決着点といいましょうか、整理点を迎えていると思います。
そこで、まず一般的にひとつ伺っておきたいのでありますが、アメリカでは核の有無についてはこれを明言しないという基本政策を持っております。これが長い議論の中では、アメリカの国内法規マクマホン法によるものではないかという議論があった後、十年前の四十九年の十月十八日、木村俊夫外務大臣の見解として、マクマホン法によるものでなく、アメリカ政府の国防上の最高機密であり、基本政策である、こういうことになっております。この日本の基本政策である非核三原則とアメリカの基本政策である非核、核を明示しないという問題、その二つの基本政策が存在するとなれば、我が国が非核三原則の基本政策を貫いていくに当たって、アメリカのこの基本政策に拘束されないと私は思いますが、いかがでございますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 安保条約の効果的運用を図る、そういう面におきまして、日本側及びアメリカ側が相互信頼の上に立って運用していく、そういうことになると思います。
-
○
上田(哲)
委員 つまり、日本側としてはこの非核三原則を貫くことができるとお考えですね。
-
○中曽根
内閣総理大臣 日本は主権国家でありますから、非核三原則を堅持してまいる、こういうことであります。
-
○
上田(哲)
委員 結構です。
もう一つ伺っておきますが、アメリカの核抑止力に依存するという政策をおとりでありますけれども、アメリカの核抑止力に依存するということは、日本への核の持ち込みがなくてもできる、こういうふうにお考えになっておられましょうか。
-
-
○
上田(哲)
委員 この二つが確認されておりますので、私も大変安心をしてお伺いするのでありますが、ニュージャージーの入港を前にして、この
委員会で総理は去る二月十四日、我が党の田邊書記長に対しまして、夏ごろにニュージャージーが入ってくるという新聞情報がある、ニュージャージーはトマホークを装備するであろうと伝えられている、しかし、トマホーク装備の場合には核・非核両用のものがあり得る、そういうことも報ぜられておるが、ニュージャージーが仮に将来入ってくるというような場合には、その辺につきましてはよく確認をいたしたい。そして、非核であるということで我々は入港を認める、そういうことにしたいと思うと、大変すっきりしたお約束をなすっておられるのであります。私どもはこれを評価しているわけです。
じゃ、どうやってこの非核を確認するのかという問題については先ほど一般質問で議論をしたのでありますが、外務大臣は、アメリカ大使を呼んで非核であるかどうかを確認をする、こういうことに答弁をされたのであります。これも結構であります。
問題は、非核であることを確認をする。今回は確認しなければならないことになるわけでありますから、先ほど申し上げましたように、アメリカの基本政策である核、非核の有無を明らかにしないということになりました場合に、向こうから非核であるという助言が得られないという場合には、どのようにして先ほど来の非核三原則、持ち込ませないという日本の政策を貫徹されるのでありますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 非核三原則の運用につきましても、まず第一に、基本的には日米安保条約を効果的に運用する、そういう基本線はもちろん堅持しておるつもりであります。その上に立って、岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解、こういうことが貫かれていくべきであります。つまり、これは事前協議条項等はそういうふうに約定されておるところでございます。で、日米間はその安全保障条約を締結しておるというのは、あくまで相互信頼の上に立ち、おのおのの主権、独立を尊重していくという基本原則の上に立ってこれはなされておることでございます。
それで、ニュージャージーの問題につきましては、まだ来るか来ないかわかりません。向こうから来るなんということを言ってきたことでもございません。全くまたニュージャージーが来るか来ないかということは五里霧中の状態で、不確実性のもとにある問題であります。しかし、もし万一日本に来るというようなことが起こりました場合には、最初のトマホークを装備する、そういう戦艦が日本に来るということで、トマホークは、核・非核両用ということにもなっております。
したがいまして、まあ国会でこれだけ議論もあり、世論も割合に神経立っておるという状況でありますから、この状態をアメリカ側にも伝えて、念のために、もちろん相互信頼の上に立ってやってきて、アメリカはこれを遵守すると言っておるのでありますから、向こうから言ってこない以上はこれは遵守されておる、今までそういう運用できたわけで、一々向こうの船が来るについて、これを確認したり何かすることはしない、相互信頼の上にこれは約束を守るということでできていることでありますから、そういう原則の上に立って、言ってこない以上はそれは触れないのである、そういう信頼関係の上にこれを運用してきておるわけでございます。
ニュージャージーがもし万一来るという場合もこの原則は適用されて、今までの慣行どおりの原則の上でやっていきたいと考えておりますが、つまり最初のトマホーク装備艦ということでもあり、国会でも御論議がありましたから、アメリカ側に対しまして念のため、国会におきましてはこういう議論もあり、国民も関心を持っておることであります、あなた方の注意を重ねて喚起して、そしてよく配慮してしかるべく処置を願いたい、そういうことであると思っております。
しかし、先方は向こうの国家権限に基づきまして核、非核を明らかにしない、そういうことであればこれはやむを得ないことでありまして、それ以上、我々がこれを軍艦へ乗り込んでいって探査するというようなことは、これは国際法上できないことでもあります。そういうことで、向こうの国策がそういうことで明らかにできないという前提の上に立って回答があれば、それは今までの運用どおり相互信頼の上に立って行われる、そういうことで処理していくべきものであると考えております。
-
○
上田(哲)
委員 そうはいかないのです。それじゃ今までと同じなんです。総理はそうは言っておられないのです。ニュージャージーが入ってくるような場合には、「よく確認をいたしたい。そして、非核であるということで我々は入港を認める、」と、こうなっているのです。これだけじゃない。翌日の二月十五日にはもっとはっきり言っているのです。「向こうも我々の非核三原則も知っておるはずでもあります。そういうことでありますから、一々我々の方が言うことはやらなかったわけであります。」これはここまでそうなんです。これは今まで総理がおっしゃったとおり。「それは安保条約を有効的に活用するという意味からもそういう態度をとっているわけでありますが、ニュージャージーというようなものはいろいろ話題にも上っておりますから、日本の国内のこういう世論も伝えてそうして確かめる、」こう言っているのですよ。今おっしゃったのはこれまでです。
ニュージャージーが来るか来ないかわからぬとおっしゃる、それはそのとおりですが、ニュージャージーが寄港するであろうということはほとんどみんなの不安、確信的な情報の中にあります。しかも、今年の二月二日、レーマン海軍
長官がトマホークのニュージャージーへの配備を認める。これは核・非核両用ありますけれども、このときに核、非核、特に核つきということを否定しなかったということから、その可能性が強いじゃないかと言われている。こういう中で、非核三原則を厳守する日本で、この国会で特に総理がそれについて国民に答えるのは当然のことである。日本の基本政策を貫くという態度があるのであれば、総理が一歩踏み込んだ姿勢を私どもは評価するのです。
ところが、今全然もとへ戻っちゃった。しかし、あなたがこの前御確言になっていらっしゃるのは、いままではそうだったが今度はもっとしっかり確かめるとおっしゃっているのだから、今までとは違うのです。これはあなたのお言葉で私は聞いているわけですから、今度は確かめなければならない。そうではありませんか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 確かめるという言葉は、私の頭の中では、念を入れて、そうしてこういう議論もあることであるから、アメリカ側としては日本側のこういう議論によく注意をして、そして非核三原則が守られるように重ねて念を押して申し入れをする、あるいは話をする、そういう意味で申し上げたのであります。アメリカ側がアメリカ側の従来の国策に基づきまして核の存在というものを明らかにし得ないと、今までどおりそういう政策を持って来るという場合には、これは今までどおり、そういう信頼の上に立っておることでありますから変化はない、したがって非核である、我々はそのように判定をしてまいるということであります。
-
○
上田(哲)
委員 全然後退ですよ。そうはいかないのです。「非核であるということで我々は入港を認める、」と言っているのですね。これは論理的にはすっきりしていまして、今までは事前協議制というものを活用して、相手を信頼してという言葉でもって包んであったから、相手が核つきと言わない限り、つまり、通告をしてこない限り入港を認めるという論理だったのです。今度あなたのおっしゃっている、非核であるという「その辺につきましてはよく確認をいたしたい。そして、非核であるということで我々は入港を認める、」こう言っている意味は、今までは核つきだと向こうが言ってこない限り入港を認めた、今度は非核、核抜きであるということがはっきりしなければ断るということを言っているわけですよ、これは。そうなるじゃないですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 その辺のところは、舌足らずで誤解がありましたことは遺憾でございますが、私の真意は、今までの安保条約の効果的運用、日米相互関係、国際法、そういうものの原則の上に立ってそれは行わるべきであることはもとより当然であります。しかし、これだけ議論があったことでありますから、さはさりながら、念のために、これだけ議論があったんだからよく注意を願いますと、そういうことで先方に我々の方から話をして、にもかかわらず先方が我々の方へ来るということになれば、それは今までの信頼関係に基づいて非核であるということを私たちは確かめたことに結果的にはなり得る、そういうふうに考えておる次第でございます。
-
○
上田(哲)
委員 それは詭弁となりますよ、舌足らずなどということでは。この基本的な問題が舌足らずということであっては困る。この前言われたときは綸言汗のごとし、総理のお言葉が、あなたも基本政策だとお認めになっている。その基本政策を貫くということは、例えばさっき私は、だから確認をした。向こうの基本政策とこっちの基本政策がぶつかったときにはどうだと言ったら、こっちを貫くと言われた。非核であって、当然核の傘も問題ないと言われれば何にも問題がない。あなたはこの前言われたとおりのことをはっきりここでもってお約束になるべきなのであって、言われたとおりのことをなさればいい。この前言ったことが間違っていたということをお認めになるというのでは、これは私は、基本政策の放棄だということになると思いますが、いかがですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 基本政策は堅持しておるのであります。しかし、今までは、向こうの船が入ってくる場合に一々そういう注意もしなければ、そういうような行動を起こしたこともない。それは信頼関係の上に立っているから、向こうに対してはそういうことを必要がない、そういう考えでやってきたわけであります。
しかし、今回は、今までこういうふうに騒がれた問題でもあるから、念のためにアメリカ側に対して、これだけの議論が国会にあり、
上田さんも質問していらっしゃると、そういうことでアメリカ側に対しまして注意を喚起する。アメリカ側がそれを聞いて、しかもその上にアメリカ側が日本に入ってくるという場合には、従来の考え方に立ってこれは非核であると我々は判定する、こういう立場に立ってきておるわけです。
そういう相互関係の確信の上に立って日米安保条約は運用されているということは、前から私は申し上げておるところでございまして、今まで個別的な船が入ってくる場合にそういうことを注意を喚起するということはやらなかったのです。今度はそれをやって、そして向こうに対してちゃんと心構えを持って見てもらう、重ねて念のためにやってもらう、それを確認という表現で言ったわけであります。
-
○
上田(哲)
委員 押し問答しても時間がもったいない。どうにもならないのです。
じゃあ、もう一遍確認だけしておきます。つまり、私がさっき申し上げた、総理も舌足らずというような言葉で御自身の言葉を訂正されるわけだから、そうするとあなたのおっしゃったことは、これまでは核つきと言わない限りは認めたが、今度は核抜き、非核ということでなければ入港を断る、こういう意味を持っていた、それはあなたの言葉で言えば舌足らずだから訂正する、こういうことですね。
-
○中曽根
内閣総理大臣 非核でなければ断るというのは、今までずっと一貫して言ってきたわけであります。今回も同じことでございます。
-
○
上田(哲)
委員 総理、ラロック問題が出たときに世論調査が行われたときに、アメリカが核持ち込みをしているということについて、政府がそうではないと言っているのを信じるかというのに、信じない人が八〇%いましたね、これが朝日新聞。読売新聞で七七%いましたね。そしてこの一月四日に毎日新聞がやったのでは、核を持ち込んでいるかに対して持ち込んでいるという人が六五%、そうでないという人は五%しかいない。こういう状況の中で、相手にはっきりこれを確かめるとあなたは一応おっしゃった。それはやっぱり国民に対してそのことを貫くべきだと思いますが、いかがですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 これは、日米安保条約の運用の基礎ベースについて
上田さんと私と考え方、ベースが若干違うところがあると思うのであります。今まで安保条約運用につきましては、歴代の自民党内閣は私が申し上げたような解釈を申し上げ、運用も実行してきたわけでございます。我々は、ですから一貫してそういう立場に立っておるのでございまして、念のために今回の場合は、個別的な船が入ってくる場合に恐らく初めてでございましょう、注意を喚起して、そして我々の方の考えをはっきり言い、しかしアメリカがそれでも入ってくるということになれば、やはり相互信頼関係という今までのベースの上に立って行われることであって、それは非核であると我々は判定する、そういう意味のことを申し上げておるわけであります。
今までは、入ってきたからといって一々そういいう注意を喚起したということはないわけでございます。(「書記長に対する答弁なんだから再確認しなきゃだめだよ」と呼び、その他発言する者あり)
確認するという言葉の解釈の問題であると思います。我々の方は、今まで日米安保条約の基礎というものの上に立って、そして相互信頼の上に立って運用するということも何回も言ってきておるところで、外務大臣も私も言っておるところであります。そして国際法におきましては、外国の軍艦に対しては、これを臨検するとか中を捜査するということは国際法上できないわけであります。また、アメリカ側はアメリカ側で、従来どおり核の存在は公にしないという国策を持ってきていることも前提条件になっているわけであります。
そういう前提条件を前提としつつ、しかし、これだけ話し合い、問題になっておるところでありますから、念のためにそういう範囲内、そういう前提の上に立って私たちは努力をして、そして核がないということを我々は確信を持ってやるようにしたい、そういう意味におきまして、念のために向こうにそういう注意を促す、そして向こうがそれで入ってくるという形になれば、注意したにかかわらず入ってきているということは、我々はその軍艦を臨検、捜査するわけにはまいりません。また、アメリカにはそういう国策があって、その国策を尊重しつつ我々も安保条約を運用しておるわけでございますから、我々としてはそれ以上の処置はできないのでありまして、それはそういう前提の上に申し上げておる。念のために今回に限って、そういう個別的な船が入ってくる場合に注意を喚起して、我々はそれを心証を得る、我我自体がそれを心で確かめる、そういう意味も申し上げておるわけであります。
-
○
上田(哲)
委員 もうこれは長い長い……(発言する者あり)
-
-
-
○中曽根
内閣総理大臣 私がこの前御答弁申し上げました速記録を読んでみましても、
そうです。ニュージャージーの話が出ましたから、これだけ話題になっているという情勢のもとに、今のように日本の状態を話して、そして安保条約というものは相互信頼の上に立っておる、したがいまして、向こうも我々の非核三原則も知っておるはずでもあります。そういうことでありますから、一々我々の方が言うことはやらなかったわけであります。また、そういう態度は今後も続けていくつもりであります。それは安保条約を有効的に活用するという意味からもそういう態度をとっているわけでありますが、ニュージャージーというようなものはいろいろ話題にも上っておりますから、日本の国内のこういう世論も伝えてそうして確かめる、そういう一般論を申し上げたのであります。と、こういうふうに申し上げておりまして、要するに、相互信頼の上に立って今までずっとやってきた、しかし、ニュージャージーについてはいろいろ議論もあったことであるから、そういう日本の国論等も伝えて、そして確かめる、そういうことを申し上げました。
確かめるという意味は、ともかく日本側がこれだけ国会で議論もある、しかし今までの安保条約運用の原則の上に立ってやっているということで、これは一般論として申し上げているというふうに申し上げているわけであります。したがいまして、我々の方が、これだけ国会でも議論になっていることであるから、アメリカ側は非核三原則を知っていると思うが、念のためによく注意してくれと、そういうことで向こうに確かめてくれとあるいは言うこともあり得ると思います。それで向こうが、それにもかかわらずニュージャージーがもし入る場合には、入港さしていただきますと、そう言ってきた場合には、では核を持っているか持ってないかということは、アメリカ政府の国策として世界に発表しないということになっているわけですから、ニュージャージーは持っていますとか持ってませんとか、そういうことは向こうは言えないわけであります。そういう状態のもとで入ってくるということでありますれば、これは非核である、従来の相互信頼関係に基づいて我我はそう判定する。そういう手続を経て、我々自体が従来の安保条約運用の上に立った心証を得るということを確かめる、そういうふうに申し上げている次第でございます。(
上田委員「時間だけはっきりしてくれ」と呼び、その他発言する者あり)
-
○倉成
委員長 時間は
理事で調整します。――あと十五分。
-
○
上田(哲)
委員 いまの答弁は大変不満でありますけれども、
委員長のお取り計らいで
理事会で討議していただくそうでありますから、そっちへゆだねます。
次の問題に入ります。先般の議論の中でシーレーン問題について幾たびかの議論がありますが、先般
防衛庁長官の御答弁で、シーレーンについての概念が違うのでその点を詰めてからでないと議論にならない、こうおっしゃっているわけです。私どももそのことは大事だと思います。総理とひとつしっかりシーレーンについての概念を明らかにしたい。
それで総理は、二月二十一日の当
委員会答弁の中で大変示唆に富んだことをおっしゃっておられる。私はそれはいいことだと思っているのですが、ややともするとこのシーレーンを航路帯と訳し過ぎる、そうではなくて海上防備活動であるということで例示されておられるわけであります。私はそれをいいと思います。少なくとも共通の土俵でなければ話が進んでいかないわけですから。それでこのシーレーン問題は、私自身が七五年に取り上げたところから始まっているのです、言葉としては。しかしここで、例えばこの問題に詳しいとされている日本戦略研究センター、前の海幕長の大賀良平さんの言葉を引用いたしますと、「昭和四十年代の後半から、船団編成の直接護衛方式だけでなく、航路帯を選定してこれを間接的に護衛していく方式が検討され、「航路帯方式」として仮称され、記者クラブなどにも用語として広がっていった。昭和五十年代に「シーレーン」の用語が導入されたとき、訳語として「海上交通路」「航路帯」というそれまで使用されてきた用語がピタリであったため、深く内容を検討せず使用されてきた。」こういう経過が指摘されているわけです。確かにその辺の経過があるだろうと思うのです。ですから、総理が言われるように、航路帯と訳し過ぎるのだという指摘は正しいと私は思う。
そういう意味では、その話がひとり歩きをして、例えば、石油や物資を守るんだということのために、八二年の四月十九日の衆議院決算
委員会では、
鈴木総理が、最低限の生活を営むための総輸入量の問題である、そして一億九千万トンなんてことを言われたわけです。これは昭和五十一年度の通商白書をベースにした総輸入最六億二千万トンの、割り算をしたら三分の一なんですね。こういう話がひとり歩きをしておる。これでは私は実際の防衛論議にならないだろうと思うのです。したがって、私は総理が発言をされたあの表現をひとつぜひ踏み込んでとりたいと思うのです。
そこで、シーレーンの言葉を総理がここで何と言われているかというと、
ややもすると「航路帯」と訳し過ぎるのですね。そうじゃなくて一般に「海上防備活動」、そういうふうに訳すのが正しいのでありまして、その中には哨戒もあるし、護送もあるし、あるいは沿岸防衛、港湾の防衛あるいは海峡防衛も入るわけです。その総合的、複合的効果として防衛を考えているわけですね。その中の一つとして、もし将来航路帯を設けるという場合には大体千海里の範囲内で設ける、こう言っているわけです。
これで私は一つはっきりしておると思うのです。だからここを、内容、概念がはっきりしないから議論できないというのじゃなくて、私は乗りますから、そういう形で今後の議論を、おっしゃるそのとおりの言葉をこういうふうに整理したらどうでしょう。フィリピン以北、グアム以西の海域において、哨戒、護送、沿岸防衛、港湾の防衛あるいは海峡防衛など、その総合的、複合的効果を目指すものだ。これは総理の言われている言葉を言葉として整理したのです。なお、シーレーンを航路帯、海上輸送路、海上交通路という用語は適切でなく、その中の一つとして、将来航路帯を設ける場合には大体一千海里の範囲で設ける意図を持つのである、こういうふうな言葉でくくれば、そこから一つ具体的な議論ができるんじゃないか。シーレーンとはそういうものだというところを出発点にしたいと私は積極的な、前向きなといいましょうか、提起をしてみたいのですが、いかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 おおむねいいと思いますが、しかし、こういう条件がございます。それは、今お読みになった文章をちょっと頭で聞きますと、千海里以内は全部そういう型でカバーされるというような誤解を与える。しかし、我々が御答弁申し上げたのは、周辺数百海里、もし航路帯を設ける場合は千海里以内ということで、もし航路帯を設けるという場合に千海里に延びるわけです。一般的には周辺数百海里、しかもあとは複合的効果という点では一致しております。そういう意味で、千海里全般をカバーするのではない、そういう御認識をしていただきたいということ、それからそのことは日米双方で海域分担をやるという意味ではないということ、そういう留保条件をつけさせていただけば結構であると思います。
-
○
上田(哲)
委員 じゃ、その言葉は訂正します。もう一遍ゆっくり読みますから、これでシーレーンの概念を規定して審議をしたい。
フィリピン以北、グアム以西の海域においてと私は言ったが、それは取りましょう。フィリピン以北、グアム以西において、哨戒、護送、沿岸防衛、港湾の防衛あるいは海峡防衛など、これは全部総理のおっしゃっておる言葉です。その総合的、複合的効果を目指すもの。なお、シーレーンを航路帯、海上輸送路、海上交通路の用語としては適切でなく、もし、これも「もし」とおっしゃったから、もし将来航路帯を設ける場合には大体一千海里の範囲で設ける意図を持つ、これでよろしいですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 その場合に、フィリピンという名前が出ることは適当でないと思います、フィリピンまで行かないのですから。フィリピン以北というとフィリピンの領海外まで届くような印象を与える。そういう点で、フィリピンという場所を示すことは余り適当でないと思います。
それから、今申し上げた二つの条件を留保いたしまして、つまり、海域分担ではないということと、千海里全部をカバーするものではないと、そういう条件で、それならば賛成申し上げても結構だと思っております。
-
○
上田(哲)
委員 じゃ、フィリピンを取ればいいのですね。日本周辺数百海里において、これでいいですね。じゃ、もう時間がないから繰り返しません。そういう言葉で、これがシーレーンなんだというところで一緒に議論を始めるというところは合意されるわけですね。
-
-
○
上田(哲)
委員 その上でちょっと確認しておきます。五六中業は、
伊藤防衛庁長官時代の説明のときに、その基本的性格は「防衛計画の大綱」に基づき作成する、こうなっているわけです。今度五九中業が間近に迫っておりますから、この五九中業ではやはり同じように大綱までを目指すのでありますか、それとも今おっしゃった、もしという場合の一千海里シーレーン防衛まで含むものでありますか。
-
○栗原国務大臣 五六中業、五九中業におきましては、いわゆる今いろいろ問題になっておりますシーレーン防衛、これももちろん入りますけれども、そのほかに陸海空各自衛隊の防衛力の整備をどうするかということを含んでおりますので、ただいまの御質問について直接こうだということはお答えできないところでございます。
-
○
上田(哲)
委員 どうもよくわからないのです。シーレーンというのは、いま総理との間でこういうものをシーレーンだと考える。これは議論はきっとあると思いますよ。そう言うけれども、ここからはみ出るじゃないかとか、これはこれからの議論です。後に譲りますが、少なくとも今総理との間には、シーレーンはこういうものだと考えることにした。航路帯一千海里も「もし」だということであります。
そこで私は、今始まろうとする五九中業について聞いているわけで、五六中業までは大綱を目指すものであった、五九中業はどうだと言ったら、
防衛庁長官も大綱を目指すものだというお話であったのだが、その五九中業に今合意のできた意味でのシーレーン防衛は含むのか含まないのか、そこを総理、はっきりしてください。
-
○中曽根
内閣総理大臣 五九中業の中身につきましては、今専門家がいろいろ勉強していただいているところでありまして、私はまだそういう専門的知識もないし、また報告もまだ受ける段階に来ておりません。したがいまして、今現在我々がはっきり申し上げることは、前から申し上げたように大綱の水準に近づく努力を懸命にしている、そういうことでありまして、それ以上の問題について、五九中業においてそれが対象になるかならぬか、オーバーするかしないか、新しいものを目指すか目指さないかというような問題は、これはまだ全然仮定の状態でありまして、これからどういう姿勢で臨んでいくかという問題で、決まっていないと思います。それで当面、ともかく防衛庁及び政府といたしましては、国会で申し上げられることは、大綱の水準を目指すために着実に努力してまいりますということを申し上げることができると思います。
-
○
上田(哲)
委員 それはちょっとあいまい過ぎるのです。シーレーンという概念、このために聞いたのではなくて、これは私の長いこれからの議論のために、シーレーンの合意が確定されたことは結構だと思うのですけれども、そこまで踏み込んで今五九中業が始まる。問題は、五六中業が二七%の達成率でしかないわけです。その上で、やるとすれば大綱達成までが五九中業でも精いっぱいだというのが常識なんですが、それを大綱までではなくて、場合によってはほかへ行くかもしらぬ、まだ決まっていないと言われることになれば、これは大綱を超えてもっと先へ行くということを示唆したということになってしまうのです。私は、明確に政府の方針として、五九中業も大綱までだと言われるのかそうでないのかということをはっきりしていただかなければならないと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 大綱の水準を超えるということを示唆したということはおりません。まだ全く未定である、いろいろ専門家が基礎的な調査あるいは討論をしておる最中でありまして、その辺については私のところへまだ報告も来ておりませんから、私からは申し上げられないし、
防衛庁長官も、まだそういうふうな点は未定の状態でありまするから、恐らく答弁はできないであろう。五九中業の内容についてもう少し作業が煮詰まって、そして外に責任ある答弁ができるような状態になったら、中身について御答弁申し上げられるだろうと思います。今のところは、今の大綱水準との関係については未定である、そういうことで御了解願いたいと思います。
-
○
上田(哲)
委員 では、質問を変えますが、現在の五六中業の達成率からすれば、到底五九中業では大綱を超えるということは常識的に考えられないというふうに思われているわけです。その常識をどうお考えですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 そういうふうにお考えになるのは、
上田さんの軍事知識からお考えいただいたのだろうと思いますが、防衛庁はどういうふうに考えておりますか、もう少し専門家の意見も聞いて勉強してみたいと思います。
-
○
上田(哲)
委員 それでは非常に不満でありまして、これはやはり客観的に言うと、五九中業は大綱までだと言い切らないというところに非常に大きな問題があるというふうに思いますので、議論を後に譲ります。
最後に一つ。総理は近く訪中されるそうでありますので、この前の議論の中で厚生大臣、閣僚その他からの御意見を伺っておるのでありますが、中国日本人残留孤児の問題であります。
現在、六百九十三人の方々が訪日を希望しておられる。しかし、今の予算では、五十九年度八千万で百八十人しか呼べない。これでは四年半かかるのでありまして、何とかしてこれを早く来てもらいたいということ。それから、数字の挙がっていない方々にまだ隠された多くの、数千とまで言われる孤児の方がいらっしゃる。こういう問題についてもひとつ、中国側の御協力を得でぜひ事前調査もさせていただきたい。このことは中国側の意思に大いにかかっているわけであります。総理の訪中に期待するという閣僚答弁がたくさんございましたので、ここでぜひひとつ総理、お約束をいただきたい。みんなが涙を絞ったこの問題について、戦後処理の一番大事な部分としてお約束をいただきたい。
第一は、中国に行って養父母に対して十分な謝意を国民を代表していただきたい。伝えられるところでは扶養費の問題もあるそうでありますから、十分な裏づけを持った謝意を表していただきたい。
もう一つは、今希望されておる六百九十三人については、一括来日することができるように、中国側の配慮をぜひひとつ要請していただきたい。
もう一つ。その方々を含め、なお明らかにされていない数千人とも言われる孤児の方々の来日してからの問題だけではなくて、向こうへこちら側からの係員等々を派遣した事前調査というものを進めさせていただきたい。
こういう問題について中国側に、日本国民の総意としてぜひ要諦をし、お願いをしていただきたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 いわゆる残留同胞につきまして、中国政府がいろいろ温かい御配慮をしていただいていること、並びに養父母や御家族の方が非常に大切にしていただいてきていることにつきましては、厚く感謝を申し上げ、訪中の際にもまたお礼を申し上げてまいりたいと思っております。
それから、残余の残留同胞につきましては、日本におりまする者も先方におられる者も一日千秋の思いで、本当の肉親に会いたいという気持ちでおると思います。そういう状況もよく中国政府と話し合いをいたしまして、できるだけ御期待に沿うように努力してまいりたいと思っております。
ただ、お互い主権国家でありまして、いろいろな事情もあると思います。養父母については、もう四十幾つになって一家の柱になっている人が突然取られて日本へ返されてしまうということになれば、生活問題がすぐ参りますし、生活問題だけではなくて、人間の愛情の問題という大事な問題がございます。養われて大きくしていただいたまでの恩強というものもございまして、単に一片の国籍が違うからということで日本に飛んで帰る、気持ちはわかりますけれども、そこにはやはり義理人情というものもございましょう、あるいは中国社会に対する影響というものもまたいろいろございます。そういう機微な点もやはりよく配慮をいたしまして話し合いをしていきたい、こう思うわけでございます。
-
-
○
上田(哲)
委員 趣旨として結構でございますから、ひとつ明確にもう一遍お願いしたいのでありまして、十分な謝意を伝える、それから、この一年間に百八十人というだけでなくて、できるだけ早く来日していただけるような措置をとっていただくことと、事前調査をこちら側から深めさせていただきたいということを、具体的に国民の気持ちを代表して中国側に要請をしていただきたい。
非常に具体的にお願いをしておりますので、ぜひひとつそれについて総理のお気持ちを再度伺っておきたいと思います。
-
-
○中曽根
内閣総理大臣 最初の二つは結構ですが、事前調査というのは何を意味するか。先方に対するいろいろ主権の問題もございますから、その点につきましては向こうがお調べになることでございましょう。我々の方から行って毎戸調査をやるというわけにはまいりません。そういう諸般の状況もありますから、ともかく日中友好の精神に立ちまして、そして皆様方の御期待にこたえるように、最善の努力をしてまいりたいと思っております。
-
-
○倉成
委員長 これにて
上田君の質疑は終了いたしました。
午後現時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時七分休憩
――――◇―――――
午後零時三十三分開講
-
○倉成
委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。
川俣健二郎君。
-
○川俣
委員 農産物輸入から入ろうと思ったのですが、肝心の外務大臣が外交案件で、ポーランドの議長さんですかね、後にします。
林政審議会の問題をちょっとただしたいと思います。
大分、各同僚
委員から数々の質問が出ましたが、せっかくの林政審の答申なるものが出ておるのに、忠実に対処しようとしていないと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、一部法律案になってこの国会に出されておるのですが、何といったって先立つものはでございまして、しかも答申の前書きは政府全体で考えろ、こういう御丁重な提言が入っておるだけに、私はどうしても締めくくり総括で確認しておきたいと思います。
ちょっとその前に、せっかく林野庁、今宮島の山火事ですね、これその後どうなっていますか。そして、出火原因はどういうことだったのでしょうかね。もし消防庁がおられれば、これは大変なことにもなるし、あそこは文化財等もある島でもあるし、その辺を極めて簡単に報告してくれませんか。
-
○砂子田政府
委員 宮島町の林野火災についてお答えをいたしたいと存じます。
出火場所は、広島県の佐伯群宮島町須屋浦附近でございます。
出火の日時は、昭和五十九年三月十一日十一時ごろということになっておりまして、消防で覚知いたしましたのは、同日の十一時六分でございます。
出火原因につきましては、現在まだ延焼中でございまして、消防職団員がこの消火に当たっておりまして、火勢の鎮圧後に調査をいたすことになっておりますが、地元では、一応たき火ではないかというふうに言われております。
これに対しまして、今現在のところ鋭意消火に当たっておりまして、総員千五百十七人、陸上自衛隊の職員六百七十七人を含めまして、これだけの人員によりまして消火活動あるいは空中消火によって現在消火中でございます。
いつごろ鎮圧するかという問題でございますが、こういう状況でございますので、なるべく早く消さなければいかぬことは当然でございますが、今のところまだ見込みが立っておりません。
-
○川俣
委員 まだ見込みが立ってないということですが、これは国有林地ですか。出火の原因その他その辺どうですか。今のところはどの程度焼けちゃったのですか。
-
○秋山政府
委員 出火の土地は民地というふうにただいま伺っております。
なお、現在二百八十ヘクタールと聞いておりますが、うち二百七十八ヘクタールが国有林でございます。
-
○川俣
委員 それは大変なことになるだろうと思いますので、ここ一番、国を挙げて鎮火を急いでいただきたいと思います。
先ほどの林政の問題ですが、山づくりは、わが党の党首会談の際にも第一項目に、総理の考え方にも合わせて提唱しておるのですが、当の林野庁でもかなりいろいろと策を考えておるようでございます。今度は国有林にも育林というテーマで、これから国民向けに一口五十万でいかがですか、こういう、国民に山を愛されるという気持ちもあって、さらに財政の確保ということもあるんだろうが、さらにまた、ここに私は「林政の窓」というのを持っておるのですが、こういうこともやっておられます。
中野良子さんを借りて高野國夫指導
部長、いい顔して二人で対談しておるのです。かと思うと、
斉藤ゆう子さんが甕林政
部長と、これまた山というものを国民に理解してもらおうという非常にあれですが、全国林業改良普及協会発行、社団法人ですが、林野庁が編集協力、こういうことでございます。
こういうように、気をもんでいるだけではどうにもならないので、私はここでちょっと、私らの簡潔にまとめた文書で確認させてもらいたいと思います。
これは「国有林野事業の難局を打開するためには、わが国森林・林業の将来展望を切り開くための政策努力が必要不可欠だとし、政府全体がこの非常事態を認識して取り組むべきだ」と思います。これは皆さんも異存ないと思います。
「そこで答申が提起している一般林政等の充実強化と財政措置を中心とした新たな政策展開の内容はきわめて不十分なものとなっている。」これは私らが考えますとそのように思えるのです。したがって、次のようなことが確認できるかということです。「その提起されている検討課題」、林政審がせっかく提起されておる問題は、一つは「改善期間の延長と一般会計資金、財投資金の導入継続」、それから二つ目は「財投資金の借入条件の改善」、今大変に高い利子で四苦八苦なんだ。三つ目は「要員調整に必要な資金的措置」、四つ目は「公益的機能の高いいわゆる非採算外分等の経費分担」、採算がとれない林の分の経費をどういうように負担するか、こういった問題を検討せいという提起で、極めて至当な今回の林政審の答申だと私は思っております。
ところが、この国会に提案されておる法律を見ますと、一つ目の「改善期間の延長と一般会計資金、財投資金の導入継続」、これと三つ目の「要員調整に必要な資金的措置」については、今国会に特別措置法の改正を出されておるので多とします。しかしながら問題は、肝心の「財投資金の借入条件の改善」、利子を緩和しろとか、将来山が黒々となるわけですから、したがって会計も黒々となるわけですから、こういった長期の展望を見ないと山の収支というのはわからぬのだ。さらに、非採算株分、いわゆる公益的機能の非常に高い部分ですが、この経費負担についても内容が全然具体化されて法案として出されていない。したがって、政府は、この財政措置を具体化し、国有林野事業の難局打開のための政策努力を払うべきだと私は思います。
また、答申によると、「国有林野事業の難局を打開するためにも一般林政等の充実強化が重要である」とし、「林業の担い生育成確保としての林業労働者の労働条件の改善及び安全衛生の拡充」、二つ目「木材需要の維持拡大」、三つ目「木材価格の下落・低迷、林業の収益性低下に対する歯止め策」等々について指摘をしております。
そこで、今までの総括質問あるいは一般質問、そして分科会、こういったことを見ますと、どうもその具体化に努力しておるとは思われない。したがって、答弁の中では、やろうとしておる、先ほど一つの例に出しましたが、非常に努力をしようという気持ちはわかるが、やはり具体的にここへ出してもらわなければならぬのだろうと思いまして、これはどうしても担当の山村
農林水産大臣、サンソンと説もうとしたのですが、山村
農林水産大臣にぜひお気持ちを聞かしてもらいたいと思います。
-
○山村国務大臣 御指摘の答申で提起されております財政措置事項等のうちで、改善期間の延長、退職手当に係る財政措置につきましては、国有林野事業改善特別措置法の改正を今国会で審議していただくこととしておりますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。そのほかの諮問題につきましては、その方策について引き続き真剣に検討してまいる所存でございます。
また、国有林酢事業の経営悪化は、我が国林業全体を取り巻く構造的な問題とも深くかかわっており、こうした構造的問題の改善、打開を図るために、答申で提起されている問題等についてあわせて検討し、その施策の充実強化に努めてまいる所存でございます。
-
○川俣
委員 そのほかのという問題で、非常に大事な問題ですが、これは今のような
農林水産大臣の考え方であれば私は確認されると思います。
そこで、これはひとり農林水産省の、林野庁だけの問題ではとても実現できるものではない。しかも、先ほど申し上げましたように林政審の答申を見ますと、非常に重要な問題だから、ひとり林野庁のみならず政府全体が、国有林野事業の非常事態を認識してこれに取り組むことを期待すると述べております。というのは、とりもなおさず、先ほどの二つ目と四つ目、「財投資金の借入条件の改善」、それから「非採算株分等の経費分担」、これはどうしても先立つものとの相談になるので、その辺、担当の大蔵大臣、どのようにお考えであるか、確認したいと思います。
-
○竹下国務大臣 林政審議会答申「国有林野事業の改革推進について」昭和五十九年一月十一日、この答申に沿って改善に向けて所管省の農林水産省が今後努力されるところで、今の答弁でも明らかになっております。しかも、今御指摘のように、この問題は政府全体としての取り組みというのが期待されておりますので、私どもとしましても、今後農林水産省それから林野庁とも十分協議してこれに対処してまいりたい、このように考えております。
-
○川俣
委員 大蔵大臣がそのような認識のもとで、協議に前向きに対処していくという発言であれば了とするわけですが、この
農林水産大臣と大蔵大臣の答弁で総理大臣、いかがですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 林政の問題は非常に重要な問題であると、前に川俣さんにお答え申し上げたとおりであります。私も、日本の森林の状態について憂いを抱いておる一人でありまして、やはりある程度力を入れて林政を推進していく必要があると思っております。ただいま
農林水産大臣及び大蔵大臣の御答弁のとおり、私も大いに努力してまいりたいと思います。
-
○川俣
委員 そういう考え方で、ぜひ前向きで進んでもらいたいと思います。
それから、通告しておる二つ目ですが、養蚕業の問題でございます。
これも日本の国の歴史的な経過を見ますと、このように米をつくる田んぼが開拓される前はほとんど桑畑という歴史があっただけに、日本の養蚕業、そしてひいては絹、こういう関係は日本の歴史を形成してきた非常に大きな問題ですが、最近の蚕糸薬をめぐる情勢というのはどうなっているだろうか。この前、我が方の同僚議員がこの問題で質問しておる際に、認識がちょっと違うのじゃないかというような感じがしましたので、蚕糸業をめぐる情勢の認識を聞かせてもらいたいと思います。
-
○小島(和)政府
委員 我が国の蚕糸業、かつてに比べますと農業生産の中に占めるウエートは低下してまいりましたけれども、依然として養蚕が中山間地帯における重要な作物であるという認識は持っておるわけでございます。しかしながら、近年の情勢を申しますと、絹全体の消費量が年ごとに減少しておるという状況でございます。昭和五十三年ごろでも、大体四十六万俵ぐらいの消費がございましたが、昨年の場合で申しますともう既に三十万俵を割っておる、こういう情勢でございます。
こうした情勢の中で、何とか絹の消費の維持増進を図る、また輸入数量についても、輸出国と協議をして輸入数量の縮減を図る、あるいはまた国内の製糸業の構造改善を進めるなど需給改善の努力を積み重ねてまいりました。
〔
委員長退席、松永
委員長代理着席〕
しかしながら、依然として需給の基調は変わりございませんで、蚕糸砂糖類価格安定事業団の買い入れ在庫は十七万五千俵、国内産の一年分に近づくほどの在庫増大に相なっておるわけでございます。こういう厳しい情勢の中で繭糸価格安定制度を維持するためには、何としても本年の追加的な買い入れを回避する必要がある、こういう認識を持っておりまして、五十九年産繭については相当程度の減産をお願いせざるを得ないということで、ただいま生産者団体等と協議を進めておるという状況でございます。
-
○川俣
委員 ちょうどこの問題を伺っておる際に、うちの方の
稲葉委員が、全国蚕糸生産者大会危機突破、こういう大会に行ってこられたというので資料を渡されたのですが、それによると、やはり大きく取り上げられているのは、「絹織物、生糸、繭等の輸入を即時停止、日本の蚕糸業を守れ」、スローガンですからこういうように簡明に書かれていると思いますが、やはり輸入を削減する方向から持っていかなければならないような気がするのですが、その辺はどうですか。
-
○小島(和)政府
委員 私どももそのように考えております。しかし、蚕糸業関係の品目、これは繭も生糸も絹製品もそうでございますが、日本の生糸産業の輸出競争力が非常に強かった時代におきまして既に自由化をいたしました商品でございまして、輸入数量の縮減のためには輸出国との話し合いをベースにせざるを得ないということでございます。また、輸出国のほとんどはいずれも発展途上国でございまして、輸入数量を縮減するための交渉というのは大変難しい交渉をやっておるということも、ひとつ御了承をいただきたいと存じます。
いずれにいたしましても、品目は農林、通産両省にわたっておりますので、通産省の御協力も得ながら今後とも輸入交渉は進めていくつもりでございます。
-
○川俣
委員 輸入相手国は発展途上国だから大変難しいということで言おうとしておるのだが、それじゃ、農産物輸入のアメリカは発展途上国じゃないからもっと頑張ってもらってもいいかなと思うのだが、まだ外務大臣も見えてないので。
それじゃ、これは通産ですかね。我が国の蚕糸業を守るためにも繭糸価格安定制度があるわけですが、これはどうもぐらつき出したのじゃないかというふうに言われておるのだが、これを堅持していくというかたい決意があるか、これは大臣ですな。
-
○山村国務大臣 繭糸価格安定制度は当方、農林水産省でございまして、先生おっしゃいましたように、この安定制度の運営が極めて厳しい状況に置かれております。これを踏まえまして、伝統ある我が国の蚕糸絹業、これらの健全な発展を確保するという観点から、今学識経験者から成る研究会を開催して、検討していただいておるところでございます。私といたしましては、我が国蚕糸業の基本的な制度である繭糸価格安定制度につきましては、その検討結果を見まして対処させていただきたい、そういうぐあいに考えております。
-
○川俣
委員 検討中であれば、なおさら言っておかなければならぬけれども、養蚕業者の方から言わせると、この価格安定制度がむしろ命の綱なんですよ、農林大臣が言うように。これをやはり踏まえるんでしたら、検討結果を見てからというんじゃなくて、もう少し担当大臣の決意表明でもあったっていいんじゃないですかな。どうですか。
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○山村国務大臣 しかし、せっかく学識経験者で研究会をつくっていただいてやっているところでございますので、その研究結果を見て、前向きに検討してまいります。
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○川俣
委員 大臣、あなたはどうですか。そちらはどうあろうとも、あなた自身はどう思いますか。
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○山村国務大臣 私といたしましては、伝統ある我が国の蚕糸絹業でございますので、何とかして守っていきたいという基本姿勢でやってまいります。
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○川俣
委員 そういうことであればいいんですよ。検討結果に任せようなんと言うから、ちょっとあれなんです。
それから、通告をしておるわけですが、ここでも取り上げられて、一般質問でしたか、植物特許という問題で最終確認をしたいと思うのです。
この植物特許、もし世に制度化確立、普及化したらどういうことになるか。これは我々、特に僻地寒村、みちのくの奥にいる者として周りが農山村の関係もあって――その前にちょっと総理の気持ちを聞きたいのは、議員の定数是正にどうして関係あるんだろうかなと思われるだろうが、これは関係あるのですよ。どうしても農山村では植物特許というのは気になる問題で、農山村の方が代議士の頭数が減るという傾向になる、人口が少ないから。
さきには国鉄、運輸大臣もおられるのですが、今度僻地寒村は乗り手が少ないから運賃を高くする。一キロ当たりの単価に格差をつける。これは「汽笛一声新橋を」から始まった国鉄、もしも国営、国管の価格をその地域によって変えるということになれば、我々の周辺はみんな米をつくっておるんだから、田んぼの脱穀機からすぐうちへ運べる、米びつへ運べるという運賃も倉庫料も大してかかっていないところと、東京都のようにうんと運賃がかかるところと同じ米の値段を変えてもいい考え方につながるのかな、こう思ったり、あるいはまたこういうことを考えると、どうもこれから、外務大臣来られましたが、農産物の輸入でどうしても犠牲になるのは農村地域の経済であります。それは間違いない。さらに、定数是正もどうしても農山村の方が減って都会の方はふえる、こういう傾向は否めない。
そこで総理大臣、ちょっと一言、横道にそれて聞くようだが、一票の重みと軽さ、これはやはり人口で割り切れる問題だろうか。面積、農家、家畜の数、山村、田んぼ、これはすべて……(「家畜まで入れるのか、タヌキまで入れたらいい」と呼ぶ者あり)タヌキまでは言わないんだが、一億国民の食糧全体を賄う農山村はどうしても定数是正は減らされる方の土俵に入っているだけに、総理、その辺、一遍聞いてみたいなと思うのですが、これはどうですかね。
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○中曽根
内閣総理大臣 この問題は総理大臣として、行政府としては答えにくい問題で、今各党各派の間で党として、議会政治の基盤をつくる問題でありますから、話し合いをしている問題でありますので、ここで私から所見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。
ただ、衆議院と参議院の場合には多少性格も違ってきておるように思います。参議院の場合にはやはり基礎というものが地域的に一つ設定されておる、衆議院の場合でも潜在的にはやはり基準数、基礎数というものが決まっておって、それにプラスアルファというものが加重されている、そういう性格を持っておると思いますが、参議院の場合の方がそういう地域性がかなり明確になっている、そういうように感じております。
-
○川俣
委員 せっかく切り出したんだからもう少し聞きたいけれども、二名がいいとか六名がいいとか増区するかとかという問題じゃなくて、私の聞きたいのは、一般論としてやはり人口数だけで割り切っていいものなのか、政治というのは、原野その他もあるわけですから、田んぼもあるわけですから、そういうものをある程度加味すべきだ。非常に博識で能のある総理ですから、その辺をちょっと聞かしてもらったって、これは別に今の各党間の話し合いを左右するものではないと思うのですがね。
-
○中曽根
内閣総理大臣 やはりそういう点も、これは各党でいろいろお考えも違いましょうし、ゆっくり話し合っていただくべき問題であると思います。
-
○川俣
委員 しかし、総理の個人的な考え方というのはあるんじゃないでしょうか。これはどうでしょう、博識なところを。
-
○中曽根
内閣総理大臣 総理としては、行政府が国会にそういう干渉がましいことは言わない方がいいと思うのです。ただ、総裁として言えと言われると、これは今各党でやっている最中ですから、自民党だけ先に独走するようなことはこの際慎まなければいかぬと思っております。
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○川俣
委員 それでは
中曽根康弘個人としては教えてもらうわけにいかないですか。
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○中曽根
内閣総理大臣 せっかく今自民党の内部でもいろいろ研究をやっている最中でございますので、この際、個人的意見の表明は差し控えさしていただきたいと思います。
-
○川俣
委員 このやりとりで一時間になってはえらいことになるから、それでは本論に戻りますが、植物特許は一体どうするのですか。あれだけ一般質問で詰められた問題だからここで言うことはないだろうと思うが、総理がおられなかったから、皆さん各大臣がおられなかったから言いますけれども、特許庁、来年は百周年だそうです。大変な功績を日本の国に残された特許庁でございますが、植物特許を許せというのが舞い込んでびっくりしたわけでしょうが、特許庁もびっくりした。
ところが、この植物の特許というのはなじまない。なぜかなれば、特許というのは物に特許する権を与えるわけですから、しかもそれは最低十五年間権利をもって保護されるわけですから。したがって、もしこれが植物に特許権を与えられると、その特許料の入った種を買ってきた農業側、菜園家でもいいのですが、それが田畑にまく、それを来年の春まく種を取る、その種を自家採種できるという今の日本の種苗法、これが国際的な種苗法につながっておるんで、農林省管轄の種苗法で処理した方がなじむのではないかというのが一般的な通念です。
ところがこれは、この種苗法をこの五、六年前の五十二年に農林水産省で制度化する際に、この問題は篤とやった問題です。私もそれに関与しましたが、篤とやった問題ですが、やはりこれは種商法で扱った方がいい、こういうように一応落ちついたと私は思うのです。いや、落ちついてない、それはまだ平行線だということであれば、そのことを一言ってくれませんか。
それから、五十三年に種苗法をつくった問題というのは偶然にできたのではなくて、この例に出された日本新薬の回虫駆除剤、このヨモギというものが昭和五十二年に特許庁に申請されたことから種苗法というのが検討されて、五十三年にでき上がった。したがって、その問題は一応落ちついたというように一応農業側あるいは関係者側、種苗協会等が考えておったのが、どうやら許可をしようかという動き、これを全部言えというなら僕は言いますよ。そこまでは暴かないけれども、そういう特許庁の挙動があるので、これはおかしいぞ、こういうことでいろいろと調べてみました。
〔松永
委員長代理退席、
委員長着席〕
したがって、ここは皆さん考えなければならない。これをもしも植物に特許権が与えられたら、かなり混乱すると思う。したがって、百年たった特許庁に植物特許という一つの例をとられると、これが突破口になって、それはへそ曲がりの種屋がいないだろうとかなんとか、せんだって議事録は訂正されていないと思うから、へそ曲がりと、あなたの方、
特許庁長官が言ったへそ曲がりを使うのですが、そのへそ曲がりがいなくたって、特許権を与えてしまわれたら、与えてもらったら十五年間権利があるわけだから、したがってそこは運用の妙味というわけにいかない。運用の妙味でいかせるために種苗法がなじむのだというように先人は教えておるのだろうと思いますので、その辺はいかがにしたものだろうか。
これは、特許庁いわゆる通産大臣、種苗法いわゆる
農林水産大臣の縄張りの問題なら、おまえら適当にやれということで、何もこんな貴重な時間を割かぬでもいいのだけれども、これは非常に根が深い問題だと思う、この機会に特許を植物に一回与えられてしまったら。こういうことで私は、非常に大事な問題であるために、ここでどうしても再度ただしておきたいと思います。
結論から言いますと、特許庁は前のいきさつその他等考えて、一たんは申請を受け付けたけれども、やはりこの辺で検討を要する問題であるなというように考えられておれば、私はこの質問を終わります。
-
○若杉政府
委員 お答え申し上げます。
五十三年当時、種苗法の改正と関連をいたしまして、国会の場あるいは農林省、特許庁でいろいろな議論が行われました。その結果をまとめますと、種苗法と特許法は両方カバーするけれども、特許というのは非常に新規性といいますか、進歩性が強くなければ認められないので、現実問題としてまずめったなことでは植物を特許法で認めることはあるまいに、こういう認識のもとに、そしていずれにいたしましても、農林省と通産省はよく緊密に連絡をとって今後運用とか処理をしていきましょう、こういうような前提といいますか、考え方のもとに行われました。
そこで、ただいま具体的な問題になっているヨモギの件でございますけれども、これは確かに出願は五十二年でございました。したがって、五十三年当時はもうそういう問題を織り込んで、そういうものに特許しないという前提でやったのじゃないかというお話がございましたが、これにつきましては、実は我々の制度は、ちょっと細かくなりますが、一年半の間は、出願がありましてもそっと俗に言えば寝かしておきまして、一年半たつと公開するというような状況であります。しかも一年半たってから審査に着手するというような状況でありまして、そういう存在自身、あるいは仮に存在自身がわかっていても、どういう内容のものかということは、実ははっきりした状況ではありませんでした。そういうのが経緯的な問題でございます。
そこで、本件につきまして特許庁といたしましては、いろんな問題、今後の問題もありますので、従来からそうでございますが、引き続き農林水産省とも十分連携をとりまして慎重に対処してまいりたい、今のところかように考えているわけでございます。
-
○川俣
委員 長官、あなたは随分弁解がましい。それは弁解でよろしいんだが、それじゃ、こういう認識は間違いですか。これは新聞記事で、それから追っていって私も確認したのですが、「「五十三年種苗法」が制定され、また「植物新品種保護に関する国際条約」への加盟(五十七年批准)もあって、その過程で、特許庁と農水省の間には新品種開発案件の取り扱いについては、原則として種苗法によるとの合意が確立されていたし、新品種国際条約に対応する国内法は種苗法という認識の統一もできていた。」このあれは違いますか。
-
○若杉政府
委員 基本的には、非常に難しいのですけれども、特に品種というものについては大体問題なく農水省の種苗法でいくということだと思います。そのときも実は、やや詳しくなりますが、品種というものについて特許性があるケースはまずなかろう、こういう前提がありました。それから現実に、私も正確な数字は持っていませんけれども、五十三年当時から今までに一品種で認められたものは約五百ぐらい種苗法で登録になっているそうでございます。特許法では一件もございません。ですから、原則として品種については種苗法でいくんだという考え方は当時からもあり、今もあることは当然だと私は思います。
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○川俣
委員 そこまで聞かせられるのなら、何も特許でやるかどうかという検討の外じゃないですかね。これはどうですか。特許で取り上げなければならないという理由が私にはわからぬのだよ。これはどうなんです。
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○若杉政府
委員 問題は、通常の種商法というと語弊がありますけれども、俗に言えば品種交配等を中心にした品種の開発育成という問題は、当然のことながら特許法の対象にはいたす考えはないわけでございます。ところが、なぜこのヨモギの問題が起こったかといいますと、やや具体的に細かになりますけれども、そこに非常に技術の進歩性といいますか、俗に言えば格段の画期性というもの、さらに具体的に言えば、染色体数を調整して、そうして新しいものをつくったという非常な進歩性が格段に違うので議論になっている。もちろん現在ペンディングでございまして、今ここでやるやらないというのは私も答えられないのでございますけれども、いずれにしても農林省ともよく相談して対処していきたいというのが我々の基本的態度でございます。
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○川俣
委員 よく相談してということであれば私もそうかなと思うが、やはり今のいわゆるバイオテクノロジーですか、新種がつくられる時代だけに、ルールを確立しておかないと開発者とその利用者に困惑というか、不便を非常に感じさせると思うので、ぜひそういう考え方でやってくださいよ。
あなたの話をずっと聞いておると、何も特許庁で取り上げぬでもいいなというように感じられるが、さりとて、こういうような問題もあるので農林省と相談をしたい、こういうように問題でない問題を投げかけようとするから、最初から種苗法で取り上げてこの点は特許庁にも相談しようかなということなら、あるいはあなたのストーリーを聞いているとわかるんだが、これはとてもじゃないけれども、わからない。したがって、まだ間があることだろうし、協議の段階だというからこれ以上詰めませんけれども、これはぜひお願いしておきたいと思います。その辺はどうですか。
通産大臣、あなたは特許庁にあいさつに行ったこともないし、あなたの判こで処理しなければならない特許庁の業務は何もない。給与と人事異動だけだと思う。だけれども、やはり管轄は通産大臣だから、これどうですか。
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○小此木国務大臣 私はこう思うのです。特許という制度は特許法に基づいた百年の伝統ある制度であります。その制度がある以上、特許庁としてはそれを生かすべく考えて対処していかなければならないと思います。しかし、その制度を生かす余りに日本の農家経営というものに大打撃を与えるようなことになれば、これは欠きた問題だと思うのです。したがって、この問題は今後農林水産省と密接に連絡いたしまして、十分協議して対処していきたい、かように思います。
-
○川俣
委員 外務大臣がお帰りになっているのですが、農産物に入る前に、飛び飛びになるのですが、今ちょうどこういった大事な時刻であえて言うのですが、給与所得最低控除額アップに伴ういわゆる二万円ですね、これは議員立法ということで与野党が合意を得た。ところが一方、今政府が税法で提案していも問題と当然その議題は競合するわけでございまして、したがって、この議員立法をいつやるか。この国会でできるかどうか。それは一事不再議の問題があるからできないという考え方と、いや、これは法制
局長官に伺いたいんだが、私らもいろいろと検討してみると、今の政府が出された法案が衆参で当然処理されて法律になるわけですが、処理されて法律になった後ならば同じ議題であっても国会で改正することができる、手直しすることができるという、こういう会議原則というのを私らは知っておるのです。
この辺は、私らが知っておる会議原則と、一事不再議ではこの国会では無理なんじゃないか、こういう問題が非常に気になる。特に予算
委員会の出先
理事としては、せっかく合意を得たわずかながらの修正案かもしらぬが、これを大事にとっていかなければならない。さりとて、この国会でできなくて、そして臨時国会もない、年末調整が終わる、こういうことになったんじゃ大変な問題だなと思ってあえて申し上げるのですが、この辺はどうなんでしょうかね。
-
○茂串政府
委員 お答え申し上げます。
ただいま御質問にありましたいわゆる一事不再議の原則でございますが、これは御承知のとおり、会期の定めのある合議体におきまして、その審議の円滑な運営あるいは促進を図る見地から、同一の会期において一度議決決定をした事項につきましては、特別な事情もないのに重ねて審議することは許されないという原則でありまして、合議体内部の一つの条理上の原則であると言われております。国会の議事運営について見ましても、これは憲法、国会法などには明文の規定はございませんけれども、この原則が一つの慣例として確立していると伺っております。
そこで、御質問にありました、今回与野党間でいろいろ御折衝のありました給与所得控除の引き上げに関する問題でございますが、何分にも、この問題がどのような形で推移しているかということを私、十分に承知しておりませんし、また、今
委員もおっしゃいましたように議員立法ということで、もともと国会内部のお取り扱いの問題でもありますので、今申し上げました一事不再議の原則の趣旨を十分に踏まえられた上で、国会内部で御議論の上、判断されるべきものであると思います。したがいまして、この席で私から断定的な御意見を申し上げることは差し控えたいと思いますので、御了承をお願い申し上げます。
-
○川俣
委員 長官も、よく御存じなのに言わなければならないという立場もわからぬでもないのですがね。
この会議原則をちょっと読み上げてみましょうか。「前に議決されたと同一の問題であっても、既に議決のあった事項が法律として制定された後は、同一会期であっても、これを更に改正し、廃止することは一事不再議とはならない。」こういうようにはっきりうたっておる問題です。「内容的には同一の問題であるとして法律となった以上、その法律を改正し廃止することは、又別箇の議院の意思であって、所謂一事ではないからである。」というようにちゃんと出ているじゃないですか。どうなんですか、これは。それじゃちょっとぎくしゃくするのじゃないか、この最終場面において。
-
○茂串政府
委員 ただいまお読み上げになりました御意見につきましては、私、どこでどのようなことがルールとして決まっておるのかは、残念ながらつまびらかにしておりませんが、まあ確かにこれまでに、同一会期内におきまして、同一の法律の同一条項について、特別の事情があるということで再度議決が行われた例も若干はございます。ございますが、これらはいずれも後の案件が前の議決とは全く異なった趣旨、目的あるいは客観的な事態のもとで提案されたケースであるというふうに伺っております。
したがいまして、今回の給与所得控除の引き上げにかかわる議員立法が、このような従来の前例等に徴しまして果たしていわゆる再議決になじむものかどうかという点は、先ほど申しましたように、これは議員立法でございますから、十分に国会の中で御議論の上で御判断をしていただくのが適当ではないかと思います。
-
○川俣
委員 今、国対
委員長会談が開かれようとしておるから、当然そういうことは議員同士になるだろうが、やはり先例をとうとぶという国会ですから。
これはこれ以上やりませんから、もう一遍申し上げますよ。「同一の問題であつても、」と、こう書いてある。「前に議決されたと同一の問題であつても、既に議決のあった事項が法律として制定された後」ですよ。今じゃだめですよ。衆議院、参議院を通って制定された後は、「同一会期であつても、これを更に改正し、廃止することは一事不再議とはならない。」と、こう書いてありますので、これは
委員長、私は時間があれですから、うちの方の持ち時間の間にこれを検討してもらって、この現物をあなたに上げますから、後で返事をしてください。
委員長、いいですか。
-
-
○川俣
委員 そこで今、日本の国、特に農業関係者だけじゃなくて日本列島を揺さぶっておる農産物の輸入の最終段階に入ったんだが、これは一体どうするつもりか。さきに総務審
議官塚田さんが行ってこられたのですが、この感触はどうでした。
-
○
塚田政府
委員 お答えいたします。
私、先週訪米いたしまして、米国通商代表部及び農務省の幹部と会談してまいりました。
第一の目的は、今後の交渉の進め方を議論することであります。そこで、御案内のように協定の期間もあと三週間ぐらいしかございませんが、今後の交渉の進め方としては、三月二十二日から二、三日の間、第六回目の佐野経済
局長と
スミス次席代表との間の協議を行う。それから農産物貿易、牛肉、かんきつだけが問題であるわけではございませんで、ガット上の協議に持ち込まれております十三品目についても議論をしよう、幅が広がりますので予備的な協議も必要であろうということになりまして、あさっての十五日、十六日に私どもの方の事務当局と米側の通商代表部の事務当局との間で予備的な協議を行うということに決まったわけであります。
そこで、米側の考え方でございますけれども、通商代表部の意見で特徴的なことを申し上げれば、何としてでも三月末の現行協定の期限切れまでに新しい協定をつくりたいという意欲が強く見られたということであります。そういう意味でも米国側としては第六回目の佐野・
スミス協議に、その結果に強く期待をかけているという感を抱きました。
それから、米側の牛肉、かんきつについての態度でございますけれども、一月の末に訪米されました
安倍外務大臣の御努力もありまして、米側の態度には私どもが事務ベースで行った一月のときよりも柔軟性があるというふうな心証を得て帰ってきたわけであります。しかしながら、御案内のように私ども国内の農業の抱える問題も相当なものでございますから、そういう意味で次回の交渉がどうなるかということについては、これはなかなか難しい交渉になるのではないかというふうに見通して帰ってきたわけであります。
-
○川俣
委員 そうすると、中身はどうでした、感触は。具体的に言うと、けさのNHKでしたか、トン数まで言っていましたけれども、その辺は確認できますか。向こうの最終的な指し値というか、そういったのはどうでした。
-
○
塚田政府
委員 いろいろの事項につきまして忌憚のない意見の交換をしたわけでございますけれども、米側の本音というような部分は私としては感受できなかったというふうに思っております。ただ弾力性は明らかに感受できましたけれども、米側としてここが最終ラインとか、そういうような意味での本音はちょっと私としては見定め得なかったということでございます。
-
○川俣
委員 塚田さんとしてはそれ以上、あるいは立場上、職責上、トン数まで出ただろうが言えないと思うが、外務大臣の御努力のおかげでと、こうおっしゃるんだが、外務大臣、どういう御努力をなさったのですか。
-
○
安倍国務大臣 努力の結果がどういうふうになりますか、アメリカ側も農産物交渉については非常にかたかったのですが、少し柔軟な姿勢で対応してくるということだけはアメリカの態度としては確認してまいりました。その後、交渉が今始まっておるわけでございますが、しかしまだ両者の間には相当の開きもある、こういうふうに聞いております。
-
○川俣
委員 開きもかなりあるというけれども、御努力のおかげで柔軟性を感じだということは、当初の一万トンの堅持が七、八千になったとか、あるいはきょうのニュースをかりると、かなりトン数が下がっておる、こういうことがあって初めて外務大臣はなるほど御努力なされたと、こうなるだろうが、ただうまくやってくれやといって旅費をかけて来るわけじゃないでしょう。やはり何かあったのじゃないですか。外務大臣、どうなんですか。
-
○
安倍国務大臣 これは、私は別に数字を示して交渉をやったわけじゃありませんで、やはりアメリカ側が農産物交渉については非常にかたくなでありまして、そしてむしろ日本が一方的に譲るべきだ、こういう態度でしたから、それでは交渉というものは決着がつかない、日本も相当困難な中で妥協していこうということであるから、それならばやはりアメリカ側にも汗を出して妥協してもらわなければ話にならぬじゃないかということを強く主張いたしまして、初めはアメリカもてんで話にならないような状況でしたけれども、やはり農産物交渉を円満に妥結するということが今後の全体の日米関係、いろいろ懸案もありますが、そういう問題もまた解決への道が開けてくる、こういうことでアメリカ側としてもある程度弾力性を持ってこれに臨まなければならない、こういう方向に全体の空気がなってきた、私はこういうふうに感じておるわけでございます。
しかし、これは今、目下交渉中でございますから、この交渉がどういうふうになりますか、それぞれの国の立場がありますし、日本もまた譲ることのできない農政の立場もあるわけですから、そういう点でこれからの交渉を見守っていかなければならないと思います。
-
○川俣
委員 そうすると、これは佐野さん、どういうことですか、二十二日から二十四日、佐野
局長と
スミス次席代表の間で協議を詰める、これが最終段階でしょうね、三月末ですから。そうなると、今交渉中だから数字は言えないということなのか、全然ゼロと一万トンと突っ張っているというのか、その辺、これはどうなんですか。少し聞かしたっていいでしょう。
-
○佐野政府
委員 お答えいたします。
現在のところ、まだ二十二日からの協議にいかなる数字を用いるかということをお話しできる立場にございませんが、ただ二十二日からの協議に臨むに当たりまして、農林水産
委員会が御決議という形でガイドラインをお示しいただいておりますので、私といたしましてはその線にのっとって協議に当たるつもりであるということをお答えいたしておきます。
-
○川俣
委員 今度は観点を変えるのだが、農林大臣は、決着は三月末にこだわらない、こういう表明をしたことがあると思ったのだが、これはどういう意味ですかね。
さらに、期限が切れたらどうなるんだろうか。ほっておいたらどうなるんだろうか。ほっておけば向こう側はガットに提訴するだろう。提訴されたらどうなるんだろう、今でも提訴されている問題があるんだから。一億の国民をまさか監獄に入れるわけじゃないだろうし、やはり開き直って闘うという姿勢があるのだろうかな、こういうように思ったりして、その辺を伺いたいのですが、農林大臣、どうですか。
-
○山村国務大臣 私が三月末にこだわらないと言いましたのは、それには実は前言葉もございまして、三月いっぱいに妥結をすべく全力投球で努力をいたします。ただし、無理な要求等があった場合に、期間にこだわって三月いっぱいということで無理な要求をのむなどということはいたしませんという意味での三月いっぱいにこだわらないということでございます。できれば何とか、前
金子大臣もお約束したことでもございますし、三月いっぱいで妥結をしたいという気持ちでございます。
詳細につきましては、ガットの問題は
局長の方から。
-
○川俣
委員 それじゃ
局長、ついでにガット問題を少し聞かしてもらいたいのと、それから、これがもし急転直下妥結された場合には、当然この予算
委員会も終わっているわけですが、貿易管理令で処理されてちょん。そうすると、国会議員というのはこの問題の審議の場はない、こう見ていいわけですな、農林水産
委員会も含めて。どうですか。
-
○佐野政府
委員 お答えいたします。
私どもといたしましては、大臣からもお答えいたしましたように、三月末までに妥結をするということを目途にして、精いっぱい精力を傾けて協議に当たりたいというふうに思っておりますので、もし不幸にして三月末までに妥結できなかった場合にどうなるかということについて軽々しく予言することは差し控えたいと存じますが、現に三月末までは有効な協定が存在するということが、日本に対していろいろ過激な議論をする人たちに対する一種の歯どめとして機能をしておるわけでございますので、その意味では、もしそういう不幸な事態が起こった場合には、四月以降どういうことになるかということについては予断を許さないというふうに存じております。
ただ、アメリカ側がガットの紛争処理手続に訴える可能性を示唆しつつ、恫喝めいた交渉態度で臨んでくるということは、現在までのところ起こっておりません。
塚田総務審
議官が訪米いたしました際にも、先方はガットの紛争処理手続に言及することは差し控えておったようでございます。
それから、現在の輸入数量制限の枠の設定は、先生御指摘のとおり政令で処理されております。
それから、合意ができました場合のこの取り決めは、国会の承認を要するものにはならないというふうに存じております。
-
○川俣
委員 そうなると、政令で処理することができる、国会の承認を得なくともよろしい。そして、相手がぼつぼつ数字を示して下がってきた。急転直下になろうと思うが、その際に総理が、いつかの議事録に、専門家の間において決着されるのが一番望ましいと思っておる、この農産物輸入というのは、通産省管轄の工業製品の輸出ラッシュが絡むだけに非常に気になるところですが、これは具体的に言うと、
農林水産大臣で責任を持って――専門家の間で話の決着をされるのが一番望ましいと、こうおっしゃるんだが、これは担当の
農林水産大臣はどう感じますか。周りに、右左に小じゅうど大じゅうとがいるようですが、一切あなたの権限で最終場面は判こを押し合える、こういうように認識しておりますか。それとも、やはり内閣全体の問題ですから、家へ帰ってきて総理の決裁を仰いで、そうは言ってもということになるんだろうかどうだろうか。もうこの審議の場からはなくなった段階で決まるだろうと私は見通したので、ちょっと最後に聞いておきます。
-
○山村国務大臣 担当大臣が私でございますので、これは私の責任で解決すべき問題と考えております。
-
○川俣
委員 終わりました。ありがとうございました。
-
○倉成
委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。
次に、大田俊君。
-
○
大出委員 この国会で核の問題、何回か質問をさせていただきました。また、景気の問題あるいはビールの税金の問題、夫婦別れされた寡婦の皆さんの寡婦控除の問題、いろいろ聞かしていただきましたが、締めくくりという質問でございますから、余り深く入らずに承りたいと思っているわけでありますが、大分皆さんが眠そうでございますから、最初に一、二問承っておきたいことがあります。
総理、日本に核は持ち込まれていない、アメリカを信頼しているから核は持ち込まれていない、しんからそう思っていますか。
-
-
○
大出委員 随分そらぞらしい答弁をなさいますがね。どうも閣僚の皆さんの顔を眺めていても、核を三回とも続けて聞いてきましたが、どうも皆さんの顔色を見ていると、持ち込まれていないんだ、こう信じているなんという人は、当の答弁の責任者の
安倍外務大臣が強いてそうお考えになっているぐらいのところじゃないかという気が実はするのであります。
そこで、ラロック証言が大きな問題になりましたが、これをもう一遍振り返って見ておきたいのであります。
ラロックさんという方は、皆さん御存じのとおりに少将でございまして、退役をされているわけでありますが、サイミントン
委員会で証言をされて、これは大きな騒ぎになりました。このときは、米上下両院原子力合同
委員会軍事利用小
委員会、一九七四年九月十日、サイミントンさんが議長で進行をいたしました。長いわけでありますから、とかく見落としているところもあるのでありますが、ここで、まずサイミントン
委員長が、
今まで我々が討議したのは陸上の核兵器のことであった。TNT火薬何百万トンにも相当するものが地中海その他の大洋を含む全世界に散在している我が海軍の手元にあるという事実をラロックさん、あなた以上によく知っている人はいないと思うが、そうではないか。ラロック前少将はここで答えまして、全くあなたのおっしゃるとおりです。少しばかりそれにつけ加えましょう。核積載能力つまり核兵器を積める空母のほかにも、核兵器は多くの場合、いやほとんどの場合、フリゲート艦、駆逐艦、潜水艦そのほか多様の種類の艦船に積載可能であり、積載されています。多くの人たちはこの事実に気づいていません。安全保障上それらの艦船は核兵器積載可能だという以上に申し上げられませんので、私は殊さらに慎重にならざるを得ません。だがしかし、私の経験から言えるのは、核兵器積載の能力を持っているすべての船は核兵器を積載しているということです。それらの船が日本など他国の港に入るときも核兵器を外すことはありません。核兵器積載可能ならば、オーバーホールあるいは大修理をするとき以外は通常いつも核兵器を積載しています。こう言い切っていますね。
そこで、ラロックさんが言っているこの議会証言、これは間違いだとでもお考えでございますか。外務大臣、いかがでございますか。
-
○
安倍国務大臣 もちろんこれはアメリカの議会の証言ということになれば、ラロックさんの責任においての発言であろう、こういうふうに思います。
-
○
大出委員 ラロックさんの責任においての御発言と言うのだが、間違っているとでもおっしゃるかと聞いているのですが、いかがでございますか、大変お答えいただきにくいのだけれども。私がこれが間違いだとでもおっしゃるかと聞いているのですから、いかがでございますか。
-
○
安倍国務大臣 これは間違いでないとかあるとかいうのは我々の判断するところでないので、ラロックさん自身がやはりアメリカの議会での証言ですからそれなりの責任を持って証言されたのであろう、こういうふうに思います。
-
○
大出委員 もう一つ指摘をしておきたいのでありますが、
金門・馬祖島事件のとき、これもサイミントンさんが聞いているわけであります。
金門・馬祖島事件のとき、これは一九五八年でございますけれども、とてもおもしろいことが起こりました。米国が介入し、中国を爆撃しなければならないかもしれないという事態でした。国防総省は太平洋軍司令官にメッセージを送り、通常兵器で中国を攻撃をする準備をせよと伝えました。司令官はすぐに打ち返して、まあ電報でございましょう。
打ち返して、通常兵器で中国をたたく作戦計画などはない。そこで国防総省の方からも、それなら計画を立てよと打ち返した。そうしたら、司令官が再び打ち返してきて言うには、立案したいが私の指揮下の全空母は核兵器しか持っていない、通常兵器はほんの少ししか積んでいない、こう返電を打ってきた。
さて、そこで、これは一体何たることかということに国防総省はなって、全世界に散らばっている米国の空母にメッセージを送って、通常兵器をどれだけ積載しているかと問い合わせた。そうしたら、何と我が攻撃型空母全部を合わせても一隻半分の通常兵器しか積載していないことがわかったのです。このころは、ちょうど十年前でございますから五八年、このフォレスタル級の空母だけで十隻ありましたから、おおむね十八隻ぐらい空母があったはずであります。ところが、全部合わせてみても通常兵器は一隻半分くらいしかない、これがわかった。ラロックさんというのはプロビデンスという巡洋艦の艦長でございましたから、核の専門家でございます。
さて、そこで、どうしてこんなに核の積載が多くなっちゃったか、そこを説明しているわけでありますが、
国防総省はこれまでに空母は漸次通常兵器から核兵器に装備を変更するという政策を出したことはない、しかし、官僚も技術者も核兵器がいかに重要か、核兵器がどれだけ我が国の戦略的立場を強化したかという政府声明に耳を傾けた人たちが、空母が造船所に戻ってくるたびに核兵器の量をふやしていったのです。また、通常兵器用の弾薬庫を減らすよう改修したのです。核兵器用の倉庫に取りかえてきたのだ。だから、どんどん艦船に対する――これは、サイミントンさんの言うとおり米海軍についての核、この最高の権威者と言われるラロックさんの証言なんですが、どんどん核が艦船にふえていってしまった。これが今日まで続いている。
さて、アメリカを信じておいでになるという総理でございますから具体的に承りたいのでありますが、横須賀に攻撃型の原子力潜水艦が今日までどのくらいの数が入っていますか。
-
○北村政府
委員 お答え申し上げます。
昭和三十九年から昭和五十九年二月九日までの間の原潜の我が国寄港状況は、三十三隻、二百七回でございます。
-
○
大出委員 それは間違っていませんか。三十三隻ですか。ちょっともう一遍調べてみていただけませんか。回数。
-
-
○
大出委員 それを横須賀、佐世保、沖縄に分けますとどうなりますか。
-
○北村政府
委員 佐世保が二十一回、横須賀百六十九回、沖縄十七回でございます。
-
○
大出委員 横須賀に百六十九回入っているわけですね。昭和三十九年十一月十二日にシードラゴンが佐世保に入りましてから三つの港に入ってきているわけでありますが、百六十九回、その他の港を入れますというと、三つ一緒にいたしますと概略二百回。この攻撃型潜水艦というのには、ここに資料がございますけれども、ちょうどスレッシャー型のサブロックの試射が成功いたしました年、一九六五年の二月にアメリカ海軍省が、今後つくられる攻撃型原子力潜水艦には全艦サブロックを搭載すると発表している。この根拠は、申し上げておきますが、服部学さんの「原子力潜水艦」、これに書いてある。
そこで、承りたいのですが、約二百回攻撃型潜水艦、核を積んでいる、サブロックを積んでいる。サブロックはすべて核であることは、国会で海原答弁で明確になっている。また、ここに軍艦事典のそれぞれの艦の資料がございますが、全部調べてみましたが、横須賀に入っている、あるいは佐世保、沖縄に入っている攻撃型潜水艦「兵装」というところに「トルペドチューブ」、つまり発射管とサブロック、ぴたっと全部「兵装」には「サブロック発射管」、こうなっている。
さて、そこで、これだけたくさんサブロックを積んでおらなければならぬ潜水艦が入ってきているわけでありますが、まさか皆さんは、この大変たくさんの回数入ってきた潜水艦が、いつもサブロックは積む必要はないから積んでいなかった、こうお考えでしょうか、それともどこかで降ろしてきたということになるのでしょうか、いずれでございましょう。
-
○北村政府
委員 お答え申し上げます。
国会で何度も政府が申し上げておりますように、核兵器のいかなる我が国への持ち込みも事前協議の対象でございますので、事前協議がない限り核兵器の持ち込みはないというふうに考えております。
この点、昭和四十七年四月二十一日の内閣
委員会でございますが、
大出先生の御質問に答えて、当時の私の先輩になります北米
局長から答弁をいたしております。
再三アメリカ側と話をしたわけでございます。
先方は、いずれにせよ、この問題については非常に軍の機密も含まれておるから、したがって、文書で申し入れてくれても答えることはできない、したがってこの問題はともかく口頭でお互いに解決しようではないか。そして私の質問に対しては、あくまでもいま申し上げましたとおり、サブロック搭載型の潜水艦であっても、サブロックを搭載していることも、またしていないこともある、これが先方の返答でございます。という答弁をこの際いたしております。
-
○
大出委員 それは私の質問ですから私が一番よく覚えております。ですから、以来今日までとうとう二百隻にもなってしまった。積んでいるときも積んでいないときもある、それを信用してもいいのですよ。いいのですけれども、二百回入ってきた、ところが全部積んでないときだった、これは成り立たないでしょう。専攻撃型潜水艦で日本に入ってくるものは、攻撃型潜水艦というのは限られているんですよ、Pという表示ですよ、パシフィック。ここに全部ございますが、名前も全部わかっている。念のために申し上げておきますと、ロサンゼルス級九回、スタージョン級八十一回、スレッシャー級百十回、こうなる。これはいずれもサブロック搭載攻撃型潜水艦。約二百回入ってきたのだが、いつも積んでないときばかり二百回、そんなばかなこと考えようがないでしょう。いかがですか。おろしてきたことになりますか。
-
○
安倍国務大臣 これは、今
局長が答弁しましたように、日米間には厳然として日米安保条約がありますし、そしてまた安保条約では事前協議条項があるわけでございます。そしてこれは日米間で厳守している。核持ち込みは事前協議の対象でございますし、日本はその場合にはノーと言うことははっきりしておるわけでございます。したがって、今日まで事前協議を求めてきてないということでございますから、日米安保条約を我々は確信しておりますし、そういう日米間の信頼関係の中で核の持ち込みはあり得なかった、今後ともあり得ないと我々は信じております。
-
○
大出委員 そういうことになるから実は私はこの国会で核の質問をしてきているのです。つまり、きょうは締めくくりですからと初めから断っでありますから本当に細かいところまで入ることは避けますけれども、つまりいずれの時期かでこれは決着をつけなければならぬときが来ているという気がする。
トマホークが入ってくる、目の前に。核トマホーク、六月以後、これが四千発来るというのですから、日本の周辺は核トマホークだらけになってしまう。今の筆法でいったら、日本に核トマホークを積んだアメリカの艦船がやたら入ってしまうことになる。そこでここに大きな虚構がある、うそがある。
それはどういうことかというと、今ここに一つ新聞を私持っておりますが、昭和三十九年九月二日の朝日新聞ですが、時の
官房長官
鈴木善幸さん、サブロックは核であるというのは国会でも石橋質問に海原防衛
局長が答えてしまっている。全部核だ。アメリカはすべての攻撃型に核を搭載すると言い切ってしまった。さあ、そこで日本に入ってくる。これは苦しい
官房長官の政府の見解、「従ってサブロックを積載した原子力潜水艦が寄港しようとする場合は、日本の領域外でサブロックを他の艦船に積替え、はいってくることになろう。」だから日本に入ってきているのは、皆さんが信じているとおり積んでないというのなら、日本の領域外のどこかでサブロックを移しかえたんだ。
さて、ではどう移しかえるか。ここも私の質問が中心ですが、困った議論であります。それでは一体どうやってサブロックは移しかえるのだ、こうなった。そうしたら、海原さんいわく、大抵第七艦隊だから潜水艦がたくさん攻撃型がいる、その後ろの方に潜水母艦か弾薬艦がいるというんですよ。だから潜水母艦か弾薬艦に移しかえる、平常な海上の気象状況ならば移しかえは可能です、こう答えた。これは昭和三十九年九月九日。
ところが、では今度は、具体的にどうやって移しかえるんだと私が詰めた。そうしたら、こうなっている。サブロック、これは長さ六メートルだ、重さが一・八トン程度のものだ、だから通常の魚雷と長さは同じでございますし、重さは約四百キロ程度軽いんだ、だから兵員が六人程度の者が付き添えば、これは持ち上げておろせる、こう言う。後でよく考えてみたら、これはつじつまが合わないんですね。一・八トンを六人でおろすとなると一人三百キロですよ。そうでしょう。三、六、十八だ。高見山は三百キロないですよ。あんな大きなものを、一人で三百キロも抱えておろせやしませんよ。しかし、そうやっておろしてくる、こうなった。なったまま今日になった。そうでしょう。政府は移しかえてくると言っているんだ。移しかえる方法はどうだと言ったら、六人ばかりたかれば一・八トンだから移しかえられると言うんだ。一人三百キロ担がなければいかぬのだ。そんなことはできませんでしょう。これは昭和三十九年十二月十八日の私の質問です。そのまま今日になった。
これは、日本の領域内に来て、第七艦隊に所属しているのだから途中でどこかというわけにいかないんだ。そうすると、この攻撃型潜水艦というのはサブロックを積んでいてどうもぐあいが悪いな、日本の領域内に来て、横須賀に来て。これはちょっと移しかえようじゃないかなんということをやっているとすれば、二百回入ってきているんだから。海軍軍艦事典によると、常時積んでいることになっている。そうすると、そんなことを長い年月やりっ放して、移しかえてばかりいて二百回も入ってきちゃっているとすれば、どこかでだれかの口の端に、あそこでサブロックか何か移しかえていたよとかなんとかという話ぐらい出てきそうなものでしょう。どなたでも、そんなことを聞いてみたことがありますか。だれも聞いてないでしょう。我々の耳にも入らない。私の選挙区というのは、追浜のところまで行きますと田川さんのところですよ。田川さん、横須賀はあなたの選挙区だから、どこかでサブロックを外していたよなんという話を聞いたことがありますか。私の隣の選挙区で、目の前に見えているんだから。田川さん、いかがですか。
-
○田川国務大臣 見たことはありません。
-
○
大出委員 田川さんは長年やっておられる。私より一期先輩だから九回でしょう。私が二十一年目だから、それにまた二、三年余計おやりになっている。この長い年月、お聞きになっていない。横須賀というのは、船が着けばみんな兵員は上がってきてしまいますよ。上がってきてそこらで一杯飲んでいるんだから、いやひどい目に遭った、きょうは横須賀へ入ろうと思ったら取り決めがあって入れない、だから領海の外の方へ行ってサブロックをおろせと言う、潜水母艦か弾薬艦に。きょうはひどい目に遭ったなんという話が出てこなければおかしいでしょう、この長い年月。そうでしょう。
総理、ラロック証言はうそですか。大修理かオーバーホールしかおろすことはない、こう言っている。それでもなおかつあなたは、いかがですか、総理、いや約束でございますからそういうことは一切ございませんとおっしゃいますか。もう一遍答えてください。少しそらぞらしいんじゃないですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 ラロック証言を論評すべき立場に私はございません。
-
○
大出委員 いやどうも、進行不能になっては締めくくりだけに困るわけですから、さっきから申し上げておるように深いところまで入りませんが、私がこの核の問題をなぜ追っているかというと、こういう状態のままでこれからトマホークが四千発もつくられる。しかも、通常のトマホークというものは欠陥があってどうもうまくない、いつできるかわからない、今ニュージャージーに積んであるものは特例で、欠陥トマホーク、通常のトマホークを積んでいるんだ、こう言う。そうすると、核トマホークの方が先につくられて配備されちゃうんですよ、この間の軍事情勢報告によれば。ということになると、幾らなんでもこれはどこかでけりをつけるべき筋合いだうろと私は思う。
そこで、総理にもう一遍承りたい。園田外務大臣がライシャワー発言のときにこういう答弁をいたしておいでになります。
午前中に私が一番最後の方でむにゃむにゃと答えましたことは、大体三つの意見があるが、いまはわれわれの判断はいまの状態を必死になって守ることが最適であると考える、将来はよくよく努力をしてこれをだんだん締めてかたくしていく、それをいまやることはかえってやぶからヘビを出すことのおそれがある、今ここでアメリカに四の五の言うのはやぶ蛇だと言うのですね。
ここに、これは総理もよく御存じの方だろうと思うのですが、ナサニエル・セイヤーさん、ジョンズ・ホプキンズ大学の教授、ライシャワー大使の広報担当補佐官をおやりになっていた方、この方が今度の軍艦事典が表に出たときに新聞に論評しておられます。米大使館は頻繁に外務省に出向き、通過や寄港は核持ち込みに当たらないと解釈しており、かくのごとき米国の立場を何回か説明している、だから日本政府は核を積んだ船が寄港していたということはよく知っている、こう言っておいでになる。軌を一にしていますね。一つうそを言うと次々にうそが重なる、うそ八百ということになるのでしょうが、ここまで来たら、ここらのところはやはり国民の皆さんの心配ですから、トマホークが入ってくるのですから、政府にそれなりの決意があってしかるべきだと私は思う。
私は昨年の議会で中曽根さんに、非核三原則は国是である、この問題になかなかお答えにならない、重ねて私が御質問申し上げて国是をお認めになったわけでありますが、その基本的な立場に立って、どういう方法がいいかということは政府の皆さんにお考えいただかなければなりません、総理みずからお考えいただかなければなりませんが、この一つの虚構と考えざるを得ない、今私が例示をいたしましたことについてそれなりの、対国民という意味で、総理の対応が必要なときに来ているのじゃないかと私は思う。
せっかく
鈴木善幸前総理も答えておりますように、国会の議員が全部で非核三原則あるいは武器技術輸出禁止の三原則を決議したということは、国民全部を代表する全部の議員であるという意味で国是である、こう言っているわけでありますから、その上に立ってここのところを、たまたまニュージャージーについては確かめるという御答弁が一つございますが、そこらのところから敷衍して、これは一遍御検討願わなければならぬ時期に来ている、こう思うのでありますが、総理、いかがでございますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 非核三原則は、これをあくまで遵守してまいるつもりでおります。
トマホークについていろいろ御論議がございましたが、トマホークにつきましても核・非核両用のものがあるということであると聞いております。ともかくアメリカに対しましては岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解、あるいはそれ以後の長い間築いてまいっておりまする日米関係の安保条約を有効に機能させる相互信頼の上に立ってこれを行う、そういう基本線で対処してまいりたいと思います。
-
○
大出委員 ここは総理の発言のなかなかむずかしいところでございまして、ここを詰めるとまたおかしなことになりそうでございますから、避けて通りますが、私の言わんとするところはおわかりだと思うわけであります。(「避けるな」と呼ぶ者あり)避けるなという声がございますけれども、前回私が二つ資料をお出ししたりいたしまして詰めております点について、ここで改めて立証した上で、軍艦事典の訂正ということを言っておられますから、そこらのところは今後のやりとりに残したい、こう思っておるわけであります。
前から何回か詰めておりますレギュラスⅡ型、これは実用に至らなかったというアメリカの言い方を信用するということなんでありますけれども、実はたくさんの情況証拠がございます。
特に米軍の機関紙と言っていいのでしょう、スターズ・アンド・ストライプス、星条旗でございますが、これは軍の新聞でございます。あるいはニューヨーク・タイムズ、アメリカの海軍協会あるいはボルチモア・サン、いろいろなものがございますけれども、ずっとこれを追ってみたわけでありますが、こういうことになります。全部訳したものを差し上げた方が親切なんですけれども、そうもいきませんので、締めくくりでございますから、一つだけこれを、英文と和訳とございますから、皆さんにちょっと配ってください。それは英文と和訳と二枚セットでございます。
まず、ここに出てまいりますのは一九五八年三月八日、スターズ・アンド・ストライプスでございますけれども、グレイバックがカリフォルニア州のバレホのメア・アイランド海軍造船所から金曜日に就役した。レギュラスⅡ型ミサイル二基を持ち、その一基は展望台の前部に搭載されている。写真が載っています。ここから始まります。そして、これはアメリカの海軍協会が写真入りで説明をしております。なるほどここには展望塔の下にレギュラスⅡが積まれております。
委員長、これは総理にだけ一つ差し上げておきたい。いいですか、
委員長。
-
-
○
大出委員 これはどういうことかといいますと、皆さんに印刷したものを差し上げておりませんけれども、アメリカの海軍協会、権威ある六万人からの軍人も入っております。この写真の一番先の見出しが「ビジネスエンド・オブ・レギュラスⅡ」、これはビジネスエンドがわかりませんで、いろいろ調べてみましたら、「ビジネスエンド・オブ・レギュラスⅡ」というのは、ビジネスエンドというのは一番先っぽ、先端だというわけです。なるほどレギュラスⅡ型の先端がこの写真の展望台の下に全部出ている。ここで、レギュラスⅡ型の先端という説明の写真つきで「最新の武器の発達に合わせて米海軍は最近メゲア島で誘導ミサイル潜水艦グレイバック、SSG574を就役させた。このクラスの別の潜水艦は翌月就役するものと期待されている」という。レギュラスⅡ型を積んで就役をした。
それから「一九五八年八月の三十一日、レギュラス、ムグから発射される。」ムグというのは所の名前であります。「カリフォルニア州のオクスナード発、この海岸の町の近くネバダ砂漠のポイントムグから二番目のレギュラスⅡ型ミサイルの発射に成功した。アメリカ海軍は木曜日に第二の発射を行った。ミサイルは四百五十マイルかなたのネバダ州トノパ近郊の内陸部試射場に引き込み式の着陸装置で安全に着陸した」云々、下の方がありますけれどもやめておきますが、ここで成功した。レギュラスⅡであります。
そうして、ちょうどこの中間で、これは九月でございますが、今お手元に差し上げておりますスターズ・アンド・ストライプスの記事が出てまいります。軍のこれは新聞です。実は訳を二枚つけなければいけないのでありますが、節約をいたしまして一枚だけにいたしましたが、ちょうど真ん中のところに「サブ ツー ファイア レギュラスⅡ フロム パシフィック ツー ユタ」、こうなっておりますが、この左の下に線を引っ張っておりますのが、英文の方です、御関心をいただきたい場所であります。これが「イズ スーン ツー ビー イン オペレーション」、間もなく作戦任務につく、こういう表現でありますが、その訳が表にある訳でございますが、和訳の方だけちょっと読み上げておきますが、「ポイントムグ、カリフォルニア州、合衆国の内陸地帯の上で、潜水艦からのミサイルの最初の発射が水中水爆爆撃機」、「アンダーシー・Hボンバー」という表現でありますが、つまり水中水爆爆撃機、大変これは高く評価しているわけでありまして、「水中水爆爆撃機グレイバックによって行われるであろう。」これは行われる予測の記事であります。もう間もなく行われるのでありますが、「千マイル以上の射程を有する核兵器レギュラスⅡ型誘導ミサイル」云々というところから始まりまして、下の方を見ていただきたいのでありますが、「グレイバックは姉妹艦として、既に進水したグロウラー、」さっき申し上げた翌月進水することになっておりましたのがそうでありますが、その後今度は原子力艦ハリバットがつくられるわけであります。レギュラスⅡ型専用のハリバット、「同艦は四個のレギュラスⅡを搭載でき、間もなく作戦任務につく。」前の二つはついている、後のハリバットもやがて作戦任務につく、こういうわけであります。そしてこの下に、「また、水中発射の千五百マイルポラリスを持つより長い射程のミサイルを発射できるより大型水中爆撃機が建造中である。」。つまり、ここから先、やがてレギュラスⅡが一億ドルの経費の節約ということで中止になるのでありますけれども、それはポラリスとかわるという形なんでありますが、この場面では訳しておりませんけれども、今の英文のしまいの方を読んでいただきますとおわかりになりますように、「グレイバックは今月そのならし航海を終了すると」というところから、ならし航海の記事が載っております。つまり、だんだん準備ができていくわけでありまして、そしてここで予告している発射実験が次々に成功してまいります。九月十七、十八日の新聞に細かく発射実験の成功が報ぜられております。一つはボルチモア・サン、ここにありますが、細かく読むのは時間の関係で省略をさせていただきますが、これはスターズ・アンド・ストライプスでございますけれども、いま予告をされているカリフォルニア州のネバダにある試射場に向かって潜水艦からレギュラスⅡ型ミサイルを発射をした、そして、これが成功しだということが報ぜられているわけであります。
この後実験が幾つか続きます。そして、防衛年鑑の記載にございました、私が取り上げましたキング・カウンティーという揚陸艇、これからしまいの方になりますというとレギュラスⅡ型の発射が成功する、これが大きな記事でございますが、キング・カウンティーの上からの発射成功でありまして、だんだんこれで月日がたっていくわけであります。そして、アメリカ議会の議事録を読みますと合計二十三回ほどここらの実験が、試射が行われまして、それから作戦任務につく、こういうふうに運ばれていくわけであります。
私が取り上げました防衛年鑑の福井さんの所説の中に、キング・カウンティーが昨年就役任務について、これはレギュラスⅡ型をそこから発射するためにつくられたものだというところから始まって、ポラリスができた、議会が強要する形でポラリスをつくらせるように予算も組ませた。そして、レギュラスⅡ型は「既に約二百個の整備を終つたので、これを訓練実戦両方に使用すれば当分十分あるとみて、以後は次のミサイルの開発と生産に全力を注ぐ」ことになったという福井さんの記述がございますが、すべてこれぴたりとこの経過の中で載ってまいります。
アメリカ議会の議事録を読みますと、この数のところは斜線を引いたり点々になりましたり、なかなか難しい状況であります。
そして、五八年の年が暮れる。そして、このキング・カウンティーからの発射は十二月でございますから、翌年五九年、一九五九年からが前回私が和文にして差し上げてあるグロウラーの記述でございます。このグロウラーの記述を見ますと、一九五八年の四月五日の進水式から書いてありまして、そして五八年の年を越えた五九年の二月の十九日、プエルトリコのルーズベルト・ロードの海軍航空基地に到着をする。そして、ポーツマス港に帰る。ならし訓練をずっとやってくるわけであります三月カリブ海に向かう。そして、今五八年の御説明をしましたが、翌年の九月七日に第一二潜水艦隊の旗艦となるべくパールハーバーに投錨する。そして、その後レギュラス・デターレシドミッションがすぐその後の一九六〇年三月十二日から行われて、これが六三年の十二月まで続く、こうなっている。
私が細かくずっと調べてまいりましたが、今日ただいま米海軍軍艦事典をいとも簡単に、軍艦事典の記載が間違いだから直すというような経過にはなっていない。この点について後からひとつ外務省の皆さんの方と――これが皆さんの回答であるとすれば、直接いただいておりませんけれども、この中で書いてある、軍艦事典は訂正するのだ、こうなっておりますが、これは一体いつどういうふうに訂正するのかというのはない。そこらのところを念のため詳しくお答えをいただいておきたいと思います、今の点につきましては。いかがでございますか。
-
○北村政府
委員 私どもがアメリカ側に照会をいたしました結果、米国政府はレギュラスⅡは潜水艦において実用段階に至らなかったということを述べまして、その点で軍艦事典の記載は誤っておるということを申しておりまして、目下この軍艦事典は逐次改訂中であるというふうに聞いております。軍艦事典はずっと一部から続いております。この記載があるのは第三部であると思います。目下一部を改訂中であるという返答を得ております。
-
○
大出委員 それから、もう時間がありませんから、レギュラスーは核である、この点はもう既に皆さんに和文でお示しをしておりますように、バーク海軍作戦
部長が、「海上対海上の誘導ミサイルは現在二個のタイプがある。すなわちレギュラス型とポラリス弾道型とである。レギュラスーは現在潜水艦と海上艦に搭載されて海に出ている。これは核弾頭をつけたターボジェット推進の音速ミサイルである。」というこのくだり。これに対して外務省の皆さんが何か言わなければならぬからいろいろおっしゃるのだと思いますけれども、おっしゃっているのが幾つかございますが、実は専門家の方々、英語のよくわかる方々等といろいろ相談もさせていただきましたが、だれがどう考えてみても、今私が示したこれ以上にバークさんのこの文章は訳しようがない、この中から外務省がおっしゃっている次のくだりの答えが出てくるなどということは考えられぬ、異口同音に皆さんがそうです。したがって、私はこれは譲るつもりは毛頭ありません。
そのことを明確に申し上げて、さて、あなた方の方で何か最近問い合わせをしたようにここに書いてあるようでありますが、それは一体どういうことなんでございますか。
-
○北村政府
委員 最近私どもが米側に照会したと書いてあるとおっしゃいましたのですが、それはどの文章でございますか。
-
○
大出委員 時間がありませんから簡単に言いますが、十二月二十九日が一遍でしょう、一月二十六日が一遍でしょう。二月二十四日があるから聞いているのです。それはここで答えてないですよ。
-
○北村政府
委員 二月二十四日に確認をいたしましたのは、これも全く念のためにアメリカ側に照会いたしましたところ、アメリカからは、実験段階のレギュラスⅡを搭載した潜水艦がパトロール行動を行うというようなことはそもそも考えられないところ、現にそのような事実はなかったという、そういうくだりでございます。
それから、レギュラスーについては核・非核両用があるという回答も得ております。
-
○
大出委員 実はレギュラスーというのは防衛年鑑の四十年版、三十八年版を見ますと、どっちもレギュラスーは核なんですね。ページ数を言っておきましょうか。四百二十八ページ、一九六三年、昭和三十八年、ここにレギュラスー「有翼艦載用SSM。一九四八年から開発が開始され、五四年に実用化。五百発以上生産後一九五八年生産を終了したが未だ当分使用されよう。現在潜水艦五隻、巡洋艦二隻に配備されている。核弾頭。」こうなっている。それから四十年版も、ちょっと違いますが、同じ表現で「核弾頭。」こうなっている。
それから、これはついでだが、おたくの方の米和軍用辞典、これはおたくの方じゃないですかね。レギュラス、水上対水上、サーフィス・ツー・サーフィスですよね。ジェット動力誘導弾、核弾頭を装備し浮上した潜水艦または巡洋艦から発射する、こうなっているのですがね。念のために申し上げて、これはひとつ改めて皆さんと詰めたい。私の主張は譲りませんが、時間の関係もございますから、改めてやりたいと存じます。
そこで、時間が大変短くなりましたが、ここで二つ聞かしていただきたいことがございます。
一つは、どうもアメリカ
局長、外務
委員会の議事録を見ますと、私に対する答弁をどこかでしかるべく処置をさしていただきますとかなんとか、何をしかるべくどうするのかわかりませんが、質問したのは私でございまして、ここで答弁されたのをほかの
委員会でどうも妙なことを言われたのじゃまことに迷惑で信用ならぬことになりますが、後からついでがあればそれを答えてください。
そこで、武器技術輸出の交換公文、ここで「武器技術以外の防衛分野における技術」、それからその次に「原則として制限を課されていないことを確認し、」汎用品を指すのだろうと思うのですが、これが第一点。「関係当事者」とありますが、これはだれなのかというのが二点。「関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術」、これはアメリカの側を指しているのだと思う。「防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。」ここで「防衛分野における技術」が二つ出てまいりますが、この二つは中身が違う。どう違うのか、三点目。それから、あなたの今までの答弁では、JMTC、武器技術共同
委員会、ここが識別をするのである、これは武器であり、これは汎用品であるという識別をする、こう言っておいでになる。さて、その識別。武器というのは定義があるはずでございまして、少なくとも日本の法令規則に基づくわけでありましょうから、附属書にある武器の定義、あわせて武器の技術の定義、これ以上のものはないはず。貿管令の一九七から二〇五までございますが、ないはずだと考えますが、その四点お答えください。簡単で結構です。
-
○北村政府
委員 第一点についてちょっと十分聞き取れなかったのでございますけれども、汎用品についての省令云々のことでございましたでしょうか、取り決め……
-
○
大出委員 わかっているのですか、中身は。
この公換公文のニページのちょうど真ん中ごろに、一つは「防衛分野における技術の相互交流を図ることを決定」した、ここに「防衛分野における技術」がございますね。その隣の隣に「武器技術以外の防衛分野における技術」がございますね。ございますでしょう。わかりましたか。これはあなたは汎用品と答えておられますが、そこで今度はこの二ページに、一番終わりから一行目、「防衛分野における技術」がございますね。これはアメリカの側でしょう。アメリカは武器技術という狭い概念を持っていない、武器という概念、汎用品も何もひっくるめて防衛分野の技術と考えているという答弁が前回私にありましたね。そういう意味の違いが中身にあるのでしょうと聞いているわけです。
-
○北村政府
委員 お答え申し上げます。
この取り決めの中で、
委員御指摘のように「武器技術」という言葉とそれから「防衛分野における技術」という言葉が出てまいります。「防衛分野における技術」というのは、先ほども御説明を申し上げましたように、これは防衛に関連する技術の総称でございまして、日本側の制度におきましては武器技術とそれから防衛に関連する汎用技術、両方が防衛関連の防衛分野における技術ということになるわけでございます。アメリカ側には武器技術という定義とかあるいはそういう範疇はないわけでございますから、アメリカ側から申しますと全部それは防衛分野における技術ということになるわけでございます。それが第一点……
-
○
大出委員 だから、そうなると、アメリカからはJMTCに、日本側は汎用品と考えているものが入ってくる可能性がある、その場合選別する。選別する基準は何かというと、時間がありませんから単刀直入に申し上げますが、附属書に書いてある、つまり三木さんのときですね。附属書に書いてある「千九百七十六年二月二十七日の武器輸出に関する日本国政府の方針に定義する「武器」の設計、製造又は使用に専ら係る技術をいう。」と定義がありますね。これしかないのでしょう。そして、貿管令がここに載っていますね。一九七から二〇五、載っていますね。ここで言う武器、武器技術、これはここで言っているこのことに限られるのか限られないのかと言っているのです。
-
○北村政府
委員 お答え申し上げます。
武器技術という定義は、ただいま
委員が御指摘になりましたように、附属書に定義を書いてございまして、これは今、
委員がおっしゃいましたように「輸出貿易管理令別表第一の第一九七の項から第二〇五の項までに掲げる物品のうち軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」、それが武器でございますが、その武器の設計、製造または使用に係る技術、これを武器技術という、これが識別の表示基準になるわけでございます。
-
○
大出委員 端的にわかりやすく言うと、汎用品を持ってこられて――要するに、あなた、答えていないでしょう、土井君が外務で質問していますが。例えばここにある電波吸収フェライト、日本電気ですね。あるいは音声認識装置、日本電気。それから、IRCCDですか、三菱電機、ミサイルなどの追尾ですね。CUC、これは炭化銅繊維というのですか、日立製作、ございますね。こういうものは本来今までの議論からすれば汎用品でしょう。向こうが欲しいのはこれなんだ。だから、これ全部当たって参っているのだ、ミッションが来て、そうでしょう。これが出てくる。そんなものをJMTCにのっけて持っていかれては困るのですよ、日本の民間企業ということを考えれば。だから、JMTCで何を決めるか、汎用品じゃない、武器だ、武器技術だ、その武器技術はここに書いてある武器技術ですねと念を押したら、そうだとおっしゃるから、それ以外のものはJMTCには入ってこない、そうでしょう。
-
○北村政府
委員 お答え申し上げます。
JMTCと申しますのは、今回政府が決定いたしました対米武器技術供与についての協議機関でございます。したがいまして、その識別の対象は、あくまでもこれは武器技術でございます。
ただ、アメリカ側には武器技術であるとか汎用技術であるという、そういう区別はございませんので、アメリカがこういうものが欲しいと言ってくる技術の中には、あるいは日本の定義からいえば汎用品に属するものも含まれることもあろうと思います。したがいまして、そういう場合には、これは汎用品であるからJMTCが識別すべき武器技術ではないということをアメリカ側に知らせる、こういうことでございます。
-
○
大出委員 念のためにもう一点聞いておきましょう。
北村さん、外務
委員会で土井
委員が質問しておりますように、例えば高速コンピューターとか超LSIとか光ファイバーとか、そういう先端技術、それから電波吸収フェライトとか音声認識装置とかCUCとか、これは汎用品ですな。旧来、私も長くやっていますが、そういう認識なんだが、あなたの方はいかがです。
-
○北村政府
委員 委員せっかくの御質問でございますが、私、その技術の具体的なものについての知識は非常に乏しゅうございまして、恐らく今おっしゃいましたものは汎用品に属するのであろうと思いますけれども、また関係のある当局から正確な御答弁をお願いしたいと思います。
-
○
大出委員 通産省、ひとつ答えてください。通産大臣でなければ
局長、どちらでも結構です。
-
○杉山政府
委員 ただいま例を挙げてお示しになりました技術にっきましては、私どもは、恐らく汎用技術であろうというふうに考えておるところでございます。
-
○
大出委員 大臣に承りたいのですが、汎用技術は、この交換公文でも、一月十四日以前も、今日も、将来も、これはJMTCの対象じゃない、汎用技術だと明確になっているのですから、お守り願えますな、ここのところは。やはり企業の立場をお考えいただく大臣だから、きちっと答えてください、アメリカの都合で持っていかれては困るのだから。
-
○小此木国務大臣 対象ではございません。
-
○
大出委員 つまり、それはJMTCの対象ではない、こういう意味ですな。いいですか、大臣。
-
○小此木国務大臣 よろしいです。
-
○
大出委員 ところで、もう一つだけ。
北村さん、あなた外務
委員会で妙なことを言っているのだが、これはどういうつもりなんですか。私に答えたのは、つまり「どういう技術をどういうふうにアメリカ側に提供したかということは、これはある程度今までも実施細目取り決めの概要は公表したことはございます。」こう言っているのですが、今までどうも武器輸出禁止三原則があったのですから日本から出ていくやつはなかったはずなんですが、ここのところは一体どういうことになるのですか。概要といったって満足な概要は出したことはないんだから。
-
○北村政府
委員 外務
委員会で、ここの予算
委員会で
大出委員に対して私が答えました答弁について土井
委員から御質問がございまして、それに答えたわけでございますが、御指摘の答弁、「どういう技術をどういうふうにアメリカ側に提供した」云々、ここのところは言葉が抜けておりまして、この点をまずおわび申し上げます。
ただ、この点につきましては
大出委員と私、この答弁の前に三回、実施細目取り決めについていろいろやりとりをしておりまして、
大出委員には御理解いただいておると私は思っておりました。
-
○
大出委員 抜けたとおっしゃるなら、後から、こう抜けているのだというのを持ってきてください。いいですな、
委員長。
-
-
○
大出委員 それじゃ
人事院総裁に承りますが、総裁が公務員共闘の皆さんにお答えになっているのがございます。人事院勧告は、労働基本権制約の代償であるので完全実施されるべきだと考える、見送り、抑制が続いて遺憾に思っている、本当にこう思っておりますか。これが一つ。
それから、人勧の凍結、抑制などの事態がさらに続けば労働基本権の問題を含めて人勧制度自体が議論されることもあり得る。
二番目、臨調答申は人勧制度の維持尊重を前提とし、総経費抑制のための合理化努力を求めているので、人勧の抑制を求めているとは考えていない、これをひとつはっきりしていただきたいということ。
このお答えからすると、昨年と本年、前から続いておりますが、四・四四%残っておるわけでありますが、そこで、ことし、前と同じ方法で、四月一日の風速調査等をされて、中位数等をとって決められて勧告をなさる、このシステムは変わっていないのですね。いないとすれば、これは本年、六%、六・五%、七%という民間の要求が出ています。民間準拠と、こうなる。そうなると、例えば六%なり六・五%に乗れば、常識で考えると一〇%前後あるいはそれを超えるかもしれない勧告になるはずなんです。という状態になったときに今のこの総裁答弁が生きてくるわけでありますが、これまた凍結だあるいは輪切りにするというようなことが続いたんじゃ人事院は機能しない。その辺まで含めて、調査方法、そして将来この辺についてどうお考えかをまずお答えをいただきたい。そうですな、先に答えていただきましょうか。それで後、総理に締めくくりに二問だけ御質問いたしますが。
-
○内海政府
委員 人勧に関しまする基本的な私の考え方は、ただいまお述べになりましたようなところでございまして、今後ともそういうふうな考え方で向かっていかなければならない。
ところで、今度八月ごろに行われるであろうと思います勧告でございますけれども、これは在来、非常に試行錯誤を重ね、いろいろ検討した結果今到達しておる調査方法でございますから、私の代になったからといってそういう調査方法を変えるというふうなことは、かえってこれは適当でない。したがって、そういう線上において考えなければならない。その結果がどういうことになるか、そのことはやってみないとやっぱりわからないことでございますけれども、恐らくは積み残したもの等がまた今度の四月の春闘結果等と相重なった形であるいは格差として出てくるかもしれない。私が今こいねがうことは、政府においてできるだけそういうものを尊重して実施していただきたい、これだけを現時点ではこいねがっておるところでございます。
-
○
大出委員 前の方法を踏襲してやる、こういうお話で、結果がどう出るかはわからぬが、相当なことになるだろう、積み残しがありますから。こういうことなんでありますが。そこで総理、産業労働懇話会、ここにおいでになって、人勧の実施については五十九年度については誠意を持って最大限努力いたしていきたいというふうにお述べになっておいでになります。私は、今のような状態が財政の事情がという理由で続くとすれば、六十五年までに赤字国債をゼロにする、こういうわけですから、まずもって六十五年過ぎなければ当面財政事情がよくはない、当面こう考えざるを得ない。そうすると、だから私はかってあなたに質問をしたことがあるんだけれども、昭和四十五年、総理がちょうど
防衛庁長官で閣内においでになるときでありますが、財政事情のいかんにかかわらずということでルールをつくった。こういう時期があった。財政事情を理由にされれば、またあれ以前に戻って当分の間これは積み残しだらけ、機能しない。
今の産労懇のお答えとあわせてどういう御決意を、御家族の方々含めて公務員の諸君、あわせて恩給、国家公務員共済、地方公務員共済、あるいは私学共済、農林漁業年金等を含めてたくさんの方々おいでになるんだが、生活保護関連の方や、あるいは全教協傘下の救護施設においでになる職員の方みんなに響くわけですが、どうするおつもりでございますか、御決意を承りたい。
-
○中曽根
内閣総理大臣 人事院勧告制度につきましては国家公務員法に設けられておるところでございまして、政府といたしましては、勧告につきましては誠意を持ってこれを守るように努力してまいる、これは一貫して言っておるところでございまして、今日においても同様でございます。
-
○
大出委員 これで終わりますが、一貫しておっしゃっておるけれども、凍結したり、輪切りにしたり、二・〇三だなんということになったり、続けているわけでございますが、私には昨年この国会で、最大限努力する、こうおっしゃった。今度産労懇では、誠意を持ってがくっついて、最大限努力する、こうおっしゃっておる。もうちょっと何か言いようがあるのじゃないですか。みんな心配しているのですけれども、いかがですか。何とかもうちょっと前に出なければいかぬじゃないですか、これは。
-
-
○中曽根
内閣総理大臣 これは総務
長官が前にも申し上げているとおりでありまして、あれが内閣の考え方でございます。
-
-
-
-
-
○
二見委員 お仕事もおありでしょうから、ちょっと順番を変えて、最初にVANと電電のことから入りたいと思います。
最初に、総理にお尋ねしたいと思いますが、現在電気通信事業法の法制化が進められておりますし、電電公社も今度は電電株式会社へと衣がえをされるわけであります。ことしはINS元年だとも言われておりますし、この成り行きに大変注目しているわけであります。私は、第一種電気通信事業については許可制とし、外資比率を三分の一未満とするという郵政省の案はやむを得ないと思いますけれども、特別第二種電気通信事業である大型のVANについてこれを許可制とし、外資比率を原則二分の一未満としたことに実は若干の異論を持っております。
総理は二月二十日の本
委員会で、我が党の
草川委員の質問に対しまして、「機密の保護とかあるいは公共の福祉という面から、制限的にあるいは規制しなければならぬ面も出てくるかもしれぬ。しかし、その場合でも、各省同士が、自分たちの方で取り組もう取り組もうというような垣根争いとか、そういうことは許さない。やはり大局的見地に立ったそういう機密とかあるいは公共福祉という面から、もし行う場合には限定的に規制すべきであって、原則自由、そういう立場を貫いて、思い切って競争させた方がいいと思っておるわけです。」と御答弁されております。ところが、大型VANについて、郵政省案では「その社会的・経済的重要性に鑑み、許可を要するものとする。」となっております。これは総理の原則自由と抵触するのじゃないかと私は思いますし、また、けさの新聞報道によりますと、アメリカはVANの全面自由化を我が国に要請してきている、こういう報道もなされております。総理としてはこの点はいかがお考えになっているか、改めて御見解を承りたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 その考えは前に申し上げたとおりで、今でも変わっておりません。ただ、今法案を作成中でありまして、各省間で調整をしておる最中であり、党におきましても一緒になって調整、努力をしておるところでございますから、その調整の過程を、今仕上げの段階に来ておるようですから、見守っていきたいと思います。
私はやはり、できるだけこの分野は自由化した方がいい。恐らく日本の今後の経済発展を見ますと、この分野が相当な景気の牽引力にもなりますし、GNPの中に占める比重も相当拡大する、そう見ております。そういう意味におきましても、できるだけ自由化して競争原理を導入し、いわば百花繚乱のようにいろいろな商品も出たり、そして民衆に利便な、民衆が選択するという立場に立てるような方向に持っていくことが賢明である、そういうふうに考えております。
-
○
二見委員 これは省庁間で協議されているところでありますので、これ以上総理に突っ込んだお答えを求めるのも無理かと思いますけれども、大体の総理のお考えは、私理解できる感じがいたします。
それで、これは電電公社にお尋ねしましょうか。郵政省案ですと外資比率を原則二分の一未満にしておりまして、これに対して郵政大臣は本
委員会で、「特定VANが一社独占であった場合、国がこれによってこうむる形というものは、万が一の場合大変なことになるということを想定して」いるんだ、こう答弁されておるわけでありますけれども、電電公社としてはもし完全自由化した場合、ATTやIBMによって日本の市場が独占されてしまって、新しく衣がえをした電電株式会社というのは手も足も出ないような事態になるというような御判断をされているのかどうか。それとも、郵政大臣のいろいろな御配慮はわからないわけではないけれども、電電株式会社としては心配ないという見通しを持っておられるのか、その点はどうでしょう。
-
○真藤説明員 今御質問のような状態になりますと、相当な強敵であることは間違いないのでございますが、私どもがやはり一種業でありながら、私ども自身あるいは子会社でそういうことが、VANができるということになりましたら、席巻されてしまうということにはならないようにする自信はございます。
-
○
二見委員 あわせて外務大臣にお尋ねしますけれども、アメリカがVANの完全自由化を要請してきた。郵政省案では二分の一未満という規制がある。どうなんでしょう、もし外資規制をした場合に、国際的な影響というのは外務大臣としてどういうふうにお考えになられますか。
-
○
安倍国務大臣 アメリカもいろいろと要請をしております。これは先ほど総理が答弁をいたしましたように、経済の自由な交流、自由貿易体制を守るためには私も基本的にはやはり自由化を進めるべきである、こういうふうに思うわけでございますが、今ちょうどアメリカの要望等もあり、そういう中で日本政府全体の中で調整をいたしておる段階でございますから、私としての意見を述べるようなことは差し控えたい、こういうふうに思います。
-
○
二見委員 郵政大臣にお尋ねしたいわけでありますけれども、郵政大臣は私の大学の先輩でもあり当選した年次が一緒でもありますので、実は
奥田大臣に味方をしなければならないのではないかと思いますけれども、多少今度は立場が変わっておりまして本当に申しわけなくも思いますが、その点は私的な問題は抜きにさせていただいてお尋ねいたしますが、私はやはり特別二種というものに対して規制を設けるのは好ましくないと判断しております。ただ、これは省庁間で今協議をしている真っ最中でございますのでそれ以上申し上げませんけれども、そういう考えを持っております。
それで、そうした立場からもう一点伺いたいのですが、例えば原則二分の一未満ということに対して相互主義によってアメリカの企業には自由な進出を認めるんだという含みもあるのだ、そういう報道もなされておりますし、大臣がそういうお考えを持っているというような報道がなされておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。そして、アメリカに対してもしそういうことで含みを残すということになると他の諸国は一体どうなるのだということになります。あわせてお答えをいただきたいと思うのです。
-
○
奥田国務大臣 相互主義の立場はとっておりませんし、その点は発言したことはございません。ただ、二分の一規制をすることができるという、政治的には最小限の政策的な担保を残しておることは事実でございます。原則的にはあくまでも自由で公正なVAN市場を濶達な市場に育成していくことは好ましいわけでございますけれども、御存じのとおり特別第二種は全国的なネットの規模であり、不特定多数という要因、全国ネットという要因、そういった大型VANに対する市場形成が非常に厳しい情勢になるのじゃなかろうかという懸念を持っておるわけでございます。原則は自由で、今健全な競争市場が形成される限りにおいては緩やかな規制でやっていこうというのが基本的な姿勢でございます。
-
○
二見委員 私は、特別第二種というものを設けて許可制と外資比率二分の一未満とかという規制を設けること旧体がこの分野に対しては競争は認めない、一般二種はいいけれども、この特定VANというか特定二種については競争原理は認めないんだという考えじゃないかと思うのです。それはまずいのじゃないかというのが私の考え方であります。ただ、これは省庁間でこれから詰められますので、でき上がった法案の顔色を見て改めて質疑をしたいと思いますけれども、そういう考え方だということを御理解いただきたいと思います。
それで大臣、お尋ねしますけれども、私が第二種にそうした規制は不用じゃないかと言うのは、第一種には規制があるわけでしょう。第二種はその一種の回線を借りていろいろサービスするわけでしょう。既に大もとで規制があるのだからその下は規制する必要ないじゃないかというのが基本的な考え方なんですけれども、もし規制するとすると特別二種と一般二種との間にどういう線を引くんだということになる。例えば今抽象的には不特定多数でどうのこうのとあるのですけれども、具体的に言ってこれはどうだ、これはどうだといって線を引き出したらわかりはしない。例えば電電公社が既に扱っている全銀協のデータ通信網というのがありますね。これは一体、全国の基幹的なシステムですけれども、特別二種に当たるのかどうか。ホームバンキングは一体、将来できた場合にホームバンキングというのはどうなのか。それから、クレジットカード・サービスというのがありますね。いろいろな異種のクレジットカードのVANができるわけでしょう。それは一体特別になるのかどうか。一つ一つ個別の問題で決めていったらば、特別二種と一般二種というのは境目がきちんとつけられなくなるのじゃないか。だから、むしろ全部一般二種扱いにした方がわかりやすいし、いろいろな紛争も起こらないのじゃないかと思うわけですけれども、例えば今私が具体的に申し上げたようなことは一体どうなるのか、改めて御答弁をお願いしたいと思います。
-
○小山政府
委員 ただいま御質問にありましたところの現在電電公社でやっております全銀協のデータ通信でございます。これはいわゆる為替交換のための電報を送受する通信サービスということでございます。現在の電電公社がやる場合においてはこれは第一種電気通信事業になるわけでございますけれども、民間企業が同様のものを行う場合には為替交換機構に加盟した金融機関という特定された顧客を対象として行うサービスでございますので不特定多数には当たりませんので一般第二種電気通信事業者、こうなるわけでございます。また、ホームバンキングとかクレジットサービス、これは振り込みとか振替等の資金決済あるいはクレジットの与信限度額管理のカード資金の決済等のサービスを行うものでございまして、これらはコンピューターにおいて計算情報の加工をいたしまして、これは顧客とこの情報業者との問のいわゆる通信でございますので他人の通信を媒介するに当たりません。したがいまして、民間事業者が回線を借りて行う場合には電気通信事業法の適用は受けない、とういうことになります。
-
○
二見委員 この問題、これは法案ができないでまだ郵政省案の段階でございますし、各省庁間で協議されている真っ最中でございますので細かい質問は差し控えたいと思いますし、むしろ逓信
委員会でやるべきが筋だと思いますのでこれ以上この問題は論及いたしませんけれども、ただ私は、果たして今でも特定第二種を規制することがいいかどうかということについては疑問を持っているわけです。私、規制すべきではないという考え。ちょうどここに電電の総裁がいらっしゃるから、当事者として電電の総裁の方はどうですか、この問題は。
-
○真藤説明員 この問題は、私ども一種業者のお客のあり方についての問題でございますので、できるだけお客が自由に大幅に私どもの回線を使っていただけるようにしていただくことが私どものお願いでございます。
-
○
二見委員 大変慎重な言い方でございますけれども、いずれにいたしましてもこうした議論を踏まえてさらに法案の検討をお願いをしたいと思います。
真藤総裁に重ねてお尋ねいたしますけれども、新しく衣がえする電電株式会社というのは、資本金は幾らぐらいで純資産は幾らぐらいになるのでしょうか。相当大きな会社だと思いますけれども、どうでしょう。
-
○真藤説明員 現在の公社のバランスシートからまいりますと、固定資産が九兆五千億、それから純資産という目で見ますと約十兆円でございますけれども、これは会社になりました場合と随分分計の仕方が違いますので、大ざっぱに会社の方に引き直してみますとまあ一兆円ぐらいが最高限度じゃなかろうかというふうに私どもは常識的に考えておりますが、詳細には法案が通りました後、創立
委員会で検討していただく問題だと思います。
-
○
二見委員 電電公社というのは、現在の電電公社は膨大な技術スタッフを中心にした三十数万の職員と全国を網の目のようにカバーする通信ネットワークを持っておりまして、しかも通信機器だとか設備はすべて民間企業から調達している。そのために大手企業、大手の通信機器メーカーから下請企業に至るまで、電電ファミリーというのは物すごい姿だと思います。そして、そのいわゆる大きな電電ファミリーがそのまま電電株式会社に衣がえするわけですけれども、しかも衣がえをした新会社というのは、投資の自由があるために、傘下には新たな通信機器会社をつくることもできるし、VANサービスの子会社を設立することもできる。ですから、新電電、電電株式会社の総体の姿というのは、日本の情報通信の各分野を担当する相当大きな、巨大なファミリーになるのじゃないかというふうに私は思います。
それで、この分野に新規参入が計画されてくるわけでありますけれども、総裁にお尋ねしたいのは、京セラであるとか国鉄であるとか日本道路公団であるとかが新規参入を意図しているようでありますけれども、ここいら辺が電電公社としては強敵なのか、それとも取るに足らぬ相手なのか、そこら辺は、ちょっとこれは言いにくいかもしれないけれども、どうでしょう。
-
○真藤説明員 今、新聞紙上にはいろいろな案が出ておるようでございますが、問題は、現在の私どもの料金体系をこのままに置いておくと、新規参入というのは非常に入りやすい状態にあるということです。新規参入が入ってくる状態になりましたときに私どもが一番先にやらなければならぬのは、長距離料金を中心にしました現在の料金体系というものを、皆様がもっとお使いやすい姿にどれだけ早く合理化していくかということが、新規参入のあり方に非常に大きな影響が出てくるということは確実でございます。私どもがそういうふうに持っていく時間が長ければ長いほど、新規参入は強力なものが入ってくる可能性はあるということでございます。そういうふうに今私ども見ております。
-
○
二見委員 そういたしますと、真藤総裁としては、実はこれは国民にとっても大変な関心事なんですけれども、具体的に言うと電話料金は安くなるということですか。今、特に遠距離の料金の話がされておりましたけれども、総裁は、これは二月十三日だったかな、某紙の夕刊のインタビューで、今の料金体系ではINSに進んでも使い物にならない、だから遠近格差を縮めなければならぬと言われておりました。ですから私は、今の料金体系では新規参入がしやすいだろうということは、裏を返せば、だから電話料金は下げるのだ、特に遠距離の料金は下げるのだという方向になるのかということです。それがまた国民にとっては一番の関心事なんです。衣がえをしても料金が下がらなければ何の意味もないのだから。その点は下がるということになるのか。その下げ方もいろいろありまして、一通話十円というのがありますね、三分間十円。これを例えば値段を高くして、そのかわり見合いで遠距離を安くするというやり方もある。私は、基本的には一通話十円というのをさらに、三分間十円を四分間十円とか五分間十円とかという形でこれも下げる、さらに遠いところも下げる、そうした形での遠近格差を少なくするのが一番いいと思っているのだけれども、そういう料金体系をどうお考えになっているか。さらにもう一度繰り返しますけれども、電話料金というのは衣がえしたことになって安くなるのかどうか、どうでしょう。
-
○真藤説明員 私ども基本的に、今度の臨調の答申に基づく私どもの経営形態変更の問題は、今御質問にありましたように、現状よりも全体的に料金を下げる方向に持っていくというのが御趣旨というふうに了解いたしております。そのために競争の原理を導入し、新規参入を許可するということだと思っております。長距離料金が外国の先進国に比べて非常に高かったのでございますが、現在、既に過去三年にわたって三回料金を下げまして、ことしの夏もう一遍中距離料金を下げることに予定されておりますが、それができ上がりますと、市外電話料金は大体世界の先進国の安い方の部類に属するという形になります。それから市内料金の三分十円というものは、これは日本はけた違いに安いのでございます。日本の次に安いのがアメリカでございますが、これは三分二十円近い値段になっております。
そういうことで、市外と市内とをどういうふうに調整しながら皆様のお役によりよく立つように、また競争の原理にたえ得るようなことに持っていくかということは、これから長い目で料金体系というものを考えながら進んでいかなければならぬと思いますが、ずっと郵政省あるいは国会の御指導を仰ぎながら今日まで変化してきておりますが、まだこれから先前途遼遠でございます。
ただ一つ、この席をかりまして御説明いたしておきますが、日本の三分十円というのはさっき申しましたように非常に安いのでございまして、三分十円というとそうでもないのですが、一時間お使いになって二百円でございます。こんな公共料金、世界どこに行ってもございませんので、これをできるだけ守りながら、あるいは修正するにしても最小限度にしながら、三分十円の通話区域が東京と地方と非常に大きな格差がございます、そういうことを調整しながら、通話区域を広げながら、三分十円というのをできるだけ守りながら、調整していきながら長距離料金を下げていくということでございますから、経営の立場で見ますと非常に大変なことになるわけでございますが、要するに総経費を落としていくよりほか方法ないのでございますが、しかしながら、落としていけるように自由に動けるようにしていただかないと、今度の臨調というものの趣旨が通らないことになるということで、その面につきましては関係方面にいろいろ御説明しておるところでございます。
-
○
二見委員 自由に動けるようにというお話でしたけれども、じゃ、それに関連してちょっと郵政大臣にお尋ねしますけれども、電電公社は衣がえする以上自由にやりたい、動きたい、できるだけ国民のニーズに合うようにサービスに努めたいという御答弁だったと思います。郵政省は、新会社に対する政府の関与は、他の類似の特殊会社に対する関与のあり方をも考慮しつつ、必要最小限度にとどめるものとするとお述べになっておられます。そして政府の関与の方法というのは、一つは毎事業年度の事業計画、取締役及び監査役の任免を郵政大臣の認可事項とすることだ、こうなっております。しかし、私は全く無関与でいいとは思いませんけれども、問題は、この関与の仕方がかなり厳しいということになると衣がえをした意味がなくなってしまうし、民間の活力を利用するというかそういうことは逆行する方向になってしまうと思います。
郵政大臣、これはどうなんですか。認可をするということは、要するに大臣に拒否権や修正権があるということになりますか。電電公社が事業計画を持ってきた、こんなんじゃだめだということになるのか、あるいはこうこう直せということになるのか。これがかなり強力にきいてきますと、電電公社の新しい会社、民間会社としての活力というのが失われると思うのですけれども、そこら辺はどうお考えになりますか。
-
○
奥田国務大臣 政府の関与はできるだけやらないような方向で新法案をつくっておるわけでございます。特殊会社としてほかの例と比較していただければ一目瞭然わかるわけで、事業計画にしても認可条件だけになっておりますし、例えば予算権あるいは投資その他に関してもある程度のフリーハンドを認めてやっていくという形になっております。特に給与総額制においてもこれを廃止するという方向でやっておりますし、役員の許認可の件だけは他の特殊会社と同等に扱っておる、つまりKDD並みということですから、ほかの特殊会社と比べると決して関与は厳しいわけではありません。
-
○
二見委員 KDDに対する郵政省の監督というのはかなり強烈だったのじゃないですか。どうなんですか。私の記憶が間違っておったら申しわけないけれども、KDDは、たしかここで問題になったときに、郵政省のKDDに対する監督権は非常に強かったはずですよ。それはどうですか。
-
○小山政府
委員 KDDに対する監督の問題でございますが、いわゆる形式的な認可事項と申しますのは、ただいま大臣から申し上げましたように、事業計画の認可でございます。したがいまして、その中にあります資金計画とか収支計画というのは、あくまでもその年度に行いますサービスの計画内容、それからそれに伴います設備内容、それの裏づけになります程度のものを形式的に資金計画、収支計画としてとっておりまして、法的にとっているわけではございません。これにつきましては、そのほかの七つございます特殊会社の中では一番緩い方になっております。
また、役員の任免につきましても、例えば日本航空の場合におきましては、取締役の選任、解任、それから監査役の選任、解任が認可事項になっているほかに、さらに代表取締役の選任につきましてもこれが認可事項になっておりますが、KDDの場合はそのような条件にはなっていないというわけでございます。
-
○
二見委員 もちろん私はここでKDDの経営形態を議論しているわけじゃないのだけれども、要するに郵政大臣の認可事項ということでもって新しい衣がえをした会社を縛ることは十二分にできるわけです。そこを私は恐れているわけです。私の記憶では、KDDに対する郵政省の監督権限は非常に強かったと思っているのです、いろいろ御説明があったけれども。まあKDDはどっちでもいいのだけれどもね。要するに認可することに対しては、それじゃあ郵政大臣は、出てきた書類にはOKと、ぽんとみんな判こ押すのですか。これはだめとか、これはこう直せとかいう拒否権、修正権はどうなるのですか。
-
○小山政府
委員 行政庁の認可でございますので、潜在的といいますか、観念的にはそのような修正要求というのはございます。ただしかし、今まで、現在までそのような形で修正要求をしたというような例はございません。
-
○
二見委員 それからもう一つ、これは真藤総裁にお尋ねしますけれども、これは某紙の夕刊で、総裁は、「もし有効な新規参入がないならしようがない。独禁法があるのだから、AT&Tの経験をもとにして自己解体をやるより方法がないわけです。」、こう述べておられます。実際これはスタートしてみなければわかりませんけれども、ある一定時期を見て、新規参入がない、あるいは新電電というのはガリバーです、入ってきたのは小人みたいなものだということになった場合に、これは分割されますか、どうです。
-
○真藤説明員 今からそういう状態に移っていきまして、新規参入のあり方というものによって、私どもは、それと公正な競争をやるためにおのずと再編成をしたりいろいろな努力をしながら、公正な競争をしながら世の中により役立つような形にいくべきだと思っておりますが、もしそういう有効な競争の新規参入がなかったとしますと、そこのところでやはり政府として、いろいろ問題があれば、いま申し上げたようなステップをお踏みになることもやむを得ないような状態が起こるかもしれないというふうには思っております。
-
○
二見委員 もう一点、ちょっと細かくなりますけれども、これは郵政大臣と総裁にお尋ねしますけれども、相互接続というのがありますね。電電の回線に借りるわけですね、ちょっと接続させてくれと。例えば京セラが電話回線やる場合なんか。郵政省案の三十三条で、第一種電気通信事業者間で協議が調わない場合には、郵政大臣は協定を締結せよと命ずることができますね。その命令をしたけれども、なお料金やその他で折り合いがつかない、電電の方が法外な料金を吹っかけるとかいろいろなことがありまして折り合いがつかない場合に、どちらか一方が裁定を申し出る、それに基づいて大臣は裁定を下すことができることにこの郵政省案ではなっておりますけれども、新電電が命令や裁定を拒否した場合どうなるのかということを郵政大臣の方にお尋ねしたいのと、総裁はそうした場合には、大臣から命令あるいは裁定が出た場合には拒否することなく受け入れるのかどうか、このことを総裁の方にお尋ねしたいと思います。
-
○真藤説明員 今の段階でははっきりしたことはもちろん申し上げられませんけれども、今御質問の中にありましたように、接続をするときに、その接続地点から最終のエンドユーザーのところまで行く料金を、私どもの料金だけいただければ私どもには何らの損害がないという形に、私ども自身が変身しておればいまの問題は全然起こりません。
ですけれども、現在のように長距離料金を高くして地方の料金を非常に安くしておきますと、実質上地方の料金はそれだけ自立いたしておりませんので、長距離料金の利益の一部で市内料金なり近距離料金の通話料の赤字を補てんしているのが現在の我々の姿でございます。その姿が残っておりますと、そのつなぎ込んだ局からエンドユーザーまでの間の私どものその地方の料金にプラスアルファをいただかないといかぬという、いわゆるアクセスチャージということの問題が出てきますと、そこで今の御質問のようなトラブルが出てくるわけでございます。
ですから、現在の私どもが地方の加入者線を全部持っておりますし、今度の政府から出ました十一項目にもそういうものをきちっと保っていく義務が課せられておりますので、さっき申しましたような、料金体系を合理化していくことによってアクセスチャージを取らぬでもいいような方向に私どもが持っていけば、何にも問題はないわけでございます。そこのために、さっき申しましたように、地方の近距離料金というものを今の形から相当大幅に修正していけばこの問題は起こらない。ただしかし、その場合でも、あくまでも近距離を値上げして長距離を下げる、こういう平面的なやり方ではだめなんでございまして、そこにやはり、フレキシブルな企業体の合理的なコストダウンというものが実現され得る形にしていただいて、私どもが実現していく義務があるというふうに心得ております。
-
○
奥田国務大臣 法案の具体的内容については目下詰めている最中でございます。ただ、裁定を行うというような今の御質問でございますけれども、そのようなときは、公共の利益の点を特に重視して、意見を十分聞きながらやりたいと思いますけれども、新会社といえども公共的性格の強い会社でございますから、新会社が郵政大臣命令を拒否するようなことは想定しておりません。
-
○
二見委員 もう一点、やはりちょっと細かくなって申しわけありませんけれども、これは現在一〇〇%政府出資でスタートするけれども、ある時点で売るわけですね。それで、まず、いつから売るかそれも大変興味があるのですけれども、売った後の売却利益というのをどうするのか。聞くところによりますと、郵政省としては特別会計をつくりたいと。しかし特別会計をつくる場合にはスクラップ・アンド・ビルドが原則ですから、現在郵政省が持っている三つの特別会計のうちどれか一つを落とさなければなりませんね。そうしたことを考えて、この特別会計については郵政省と大蔵省、どちらがどういうふうに考えているのか、これは両方の御見解だけで結構であります。
-
○
奥田国務大臣 目下関係機関と、法案策定の過程の中で詰めておるわけでございます。ただし、電電を民営化するという条件は、財政再建という形で役立てようという形で行われるものじゃないわけでございます。しかしながら、今日の緊急的な財政事性もこれあり、それらのことも当然勘案してまいることになろうかと、両省間で詰めてまいります。
-
○竹下国務大臣 まさに今、関係省間で協議が行われておるさなかでございます。ただ、株式の売却収入については、私どもからすれば、このような財政事情下でございますので、電電改革に随伴して財政再建の一助とならないものかなあという期待感は持っておる。その辺できょうは……。
-
○
二見委員 この問題についてはこれで終わりたいと思います。真藤総裁、大変お忙しいところありがとうございました。これは各省庁間で詰めておる問題でございますので、これ以上細かい議論をしてもしようがありませんし、本来は逓信
委員会でさらに詰めるべきだと思います。
次に、防衛問題について若干お尋ねをしたいと思います。
総理は、
防衛庁長官もおやりになられ、防衛問題はベテランでございますので、余り難しく答弁されますと私も大変困りますので、わかりやすく御答弁をいただきたいと思います。
アメリカは最近、北西太平洋に大変関心を持っているような感じがいたします。去年もおととしもあそこで空母の演習が行われたように聞いておりますし、日本への原潜の寄港の回数もふえていることから考えると、北西太平洋での展開も近年とみにふえているのじゃないかと私は思います。これはアメリカの立場からすれば、ソ連の太平洋艦隊が日本海に面したウラジオストク、それから北西太平洋に面したペトロパブロフスクに集中しているということ、しかも極東におけるソ連の軍事力が最近増強されているからだ、そのために、今まで関心をそれほど示してこなかった北西太平洋にも、特にこれはカムチャツカのこっちの方になりますから、アメリカがここに展開をしているということも、アメリカの立場からすればそういうことになるのだと思います。
我が国政府としては、アメリカが北西太平洋に力を入れるということについてはどういうふうにお考えになっているのか。我が国にとって好ましいのかあるいは全く無関係なのか、その点はいかがでしょう。
-
○中曽根
内閣総理大臣 最近、北西太平洋に対する関心が深まったということは事実であるだろうと思います。
その大きな原因としては、想像されますのは、ソ連の極東における軍事力の増強が極めて顕著でありまして、大体総軍事力、陸海空について三分の一程度の兵力を極東へ展開してきておると想像されております。特にバックファイア、SS20、こういうようなものの展開が顕著で、増強されつつあります。それから、オホーツク海というものはソ連が持っておるほとんど唯一というべきぐらいの内海でありまして、千島列島群によって外海と遮断されておる、そういう意味において、ソ連側から見ればあそこは非常に安全な地域になってきておる、戦略的価値が変わってきた。それから北極洋の氷の下を潜水艦で往来する、あるいは北極洋自体が、普通の輸送船、砕氷船等を使って往来して、貨物輸送等が可能になりつつある等々の状況等もありまして、北の側が今までと状況が非常に変わってきたという面があるだろうと思います。
これに対する評価いかんということでございますが、これは全世界的スケールにおける戦争抑止という面から我々は考えなければなりませんが、そういう点においてアメリカが、北側において抑止力を醸成して均衡を回復し、抑止力によって平和を維持しようという努力を片方でやっているとすれば、これは破綻を起こさないという意味において平和維持にある程度貢献しつつある、こういうことではないかと思います。
-
○
二見委員 それでは重ねてお尋ねいたしますけれども、アメリカはことしの夏以降、核つきトマホーク、いわゆるTLAM―Nを水上艦や潜水艦に装備すると伝えられております。当然北西太平洋に展開する原子力潜水艦にも近い将来配備されると思われますけれども、この核つきのトマホーク、TLAM―N、それを記術した原子力潜水艦が北西太平洋に展開するということは、同様の理由から、日本にとって好ましい、平和を維持するのに貢献するというふうな解釈になるわけでしょうか。
-
○北村政府
委員 お答え申し上げます。
ただいま総理から詳しく御説明がございましたように、この極東方面における最近のソ連の軍備増強という一貫した動きがございます。それに対しまして、アメリカとしては、その極東における軍事バランスを維持するために、また、その抑止力を確保するための努力をしておるというふうに私どもは認識しております。そういう努力の一環としまして、先ほど
委員が御指摘になりましたような原潜に対するトマホークの配備というのも、そういう努力の一環であろうと私どもは考えておるわけでございます。
もちろん、日本は唯一の被爆国でございます。したがいまして、政府といたしまして、究極の目標は、これはあくまでも核軍縮にあるということでございます。しかし、この地域の現実の情勢から考えますと、現在のアメリカのトマホーク配備というものの必要性は、これは私どもとしては理解できるところでございます。
-
○
二見委員 北村
局長、要するに私は、アメリカがトマホークを配備した原子力潜水艦を展開させることの現情勢から見て必要性は理解できるという、アメリカ側がやるのが理解できるじゃなくて、それは日本にとって好ましいのかどうかということ。アメリカがそう展開するのは理解できるじゃなくて、そういう北西太平洋にトマホークを積んだアメリカの原子力潜水艦が存在するということが、日本にとって好ましいという判断をされているのかどうか。ソ連の軍事力に対抗するためにアメリカがこうやっているんだ、これはわかる。それは日本にとっていいのか。
-
○北村政府
委員 アメリカの防衛目標というのはあくまでも抑止にある、そういうことで、この極東方面における軍事力のバランスというものを維持するための努力をしておるということがございます。
そこで、日本の安全保障というものは、これは日本自身の防衛力をできるだけ整備していくということが一方にありますと同時に、やはりアメリカの抑止力というものに依存しておるわけでございます。そういう観点から申しますと、アメリカの抑止力というものに対する信頼度が高まるということは、これは日本の安全保障というものに対してもプラスであるということはございます。ただ、私先ほども申し上げましたように、日本はあくまでも究極の目標としては核軍縮というものが達成されることが望ましいと考えておるわけでございます。
-
○
二見委員 要するに一言で言えば、究極は核軍縮であるけれども、現在の情勢では好ましいということになりますね。今の答弁はそういうふうに理解していいですね、好ましいと。究極の目的は核軍縮だけれども、現状においては好ましいのだと。いいですね。それでよければ私はそれを前提にしてこれから論議するわけですから、違うなら違うと言ってください。よければ私、このまま進みますよ。いいですか。
-
○北村政府
委員 日本の安全保障はやはりアメリカの抑止力に依存しておるわけでございまして、そのアメリカの抑止力が高まるということは、これは日本にとってプラスであります。そういう意味で、決して好ましくないということではございませんし、日本の安全保障から見ればその信頼度が高まることは結構なことであると思います。
-
○
二見委員 要するに私は、日本の周辺にアメリカであれ、ソ連であれ、いろいろな核がごろごろされているのは大変迷惑なんです。究極の目標ではなくて、私は直ちにでも核軍縮をやってもらいたいと思っている。ところが今の政府の答弁では、現状においてはアメリカがさらに核を強化する、トマホークを北西太平洋に展開するのは好ましいのだということになると、これは核による抑止力をさらにこれからも、日本としては核は持てないけれども、アメリカが核兵器を強化するというか、核の抑止力を強化するということに日本としてはかなり支持をしているということになる。私はこれは日本の安全保障にとって将来大変大きな問題になってくるだろうと思います。
それはそれとして、さらにもう一点お尋ねいたしますけれども、アメリカがTLAM―Nを配備することによって、ソ連の軍事力の増強に対処してアメリカがトマホークを配備する、そうするとそれに対して今度ソ連が負けちゃいけないというのでまた配備してくる、そういうことが当然考えられると思いますけれども、それはどうですか。
-
○
安倍国務大臣 今先ほどから答弁がありましたように、ソ連の軍事力が強大になってきた。そういうものに対して、アメリカが抑止力、平和と安定のための軍事力、トマホーク等の配備を行った。そうなればまたソ連がこれに対抗してさらに核軍拡とか、あるいは軍備の増強をやる可能性はあるわけですから、今一番大事なことは、そうした核軍拡ということがこれから無制限に行われないようにINF交渉であるとか、あるいはまたSTARTの交渉であるとか、そうした核軍縮の中断している交渉が再開されるということが今最も望ましいと私は思っております。
-
○
二見委員 確かにそのとおりなんで、アメリカが軍事力を増強する、それに見合ってソ連がまたやってくる、それに対してまたアメリカがやる、これでは際限がないわけです。しかもその際限のない核軍拡がどこでやられるかというと、日本の周りでやられる。これは日本人にとって非常に耐えられないことだと私は思います。ところが一方では、ソ連との軍事力バランスという観点から見て、トマホークが北西太平洋に展開することは日本の安全保障にとってプラスになるのだという
局長の答弁のような考え方があれば、それは私は、大臣がいやそうならないために核軍縮交渉が必要なんだとおっしゃっても、現実はそうならないのじゃないかという感じがいたします。そうした日本の周りで米ソの核軍拡というのかな、これがこれからもトマホークを配備する、それに対してソ連がさらに増強してくるという形での増強というのは、大臣、これはどう思いますか、素直な感じで。
-
○
安倍国務大臣 日本の立場から言えば、これは核が絶滅する、なくなるというのが一番望ましいわけですが、ただ世界の現在の現実というものは、残念ながら均衡と抑止というものによって平和が成り立っておるという状況であります。そういう中でソ連が軍拡を極東で急激に行ってきた。これに対抗するために、やはり均衡の理論からあるいは抑止の理論から、アメリカとしても世界戦略の立場からある程度の軍拡を行わなければならない、こういう状況になっておるわけですが、やはり究極は核がなくなるということなので、そのためにも、現実的にとにかく中断しております交渉を再開させるという世界の平和への努力、核軍縮交渉再開への努力というのが今一番望まれているのじゃないだろうか、私はそういうふうに思うわけです。
-
○
二見委員 ちょっと、このことについてはどういうふうに分析されるのでしょうか。昨年の一月、ベッシー統合参謀本部議長が議会に提出した「軍事態勢報告」の中に「太平洋地域はその資源、政治的影響力および位置から、米国の利益にとって焦点となっており、NATOへのソ連の攻撃を抑止するための重要な役割を演じている。攻撃に先立ってソ連は、アジア側の安全を固めることを求めている。」こういう文章があるわけですけれども、そうすると今度北西太平洋にトマホークをアメリカが配備する。そうした原子力潜水艦が展開するということは、極東における軍事バランスだけではなくてNATO地域というか、ヨーロッパにおけるソ連のNATOへの攻撃を抑止するという、そういう意味合いもこれは持っているのですか。アメリカはそう考えているわけですか。
-
○北村政府
委員 私どもは、ソ連が同時に複数の正面で戦争を遂行する能力を持っておるとアメリカとして考えておるというふうに思っております。
〔
委員長退席、三塚
委員長代理着席〕そういうことで、我が国を含む北西太平洋地域というもの、これはアメリカ自身にとっても非常にその安全保障にとって大事な地域でございまして、その地域におけるソ連の軍備増強に対応して、今その軍事バランスを維持するための努力を続けておるということは、先ほどから総理や外務大臣から御答弁のあったところでございます。
そこで、アメリカがこの地域において軍事バランスを維持するために努力しておることは、決してNATO正面に対するソ連の攻撃を抑止するためということではなくて、やはりこの地域における平和と安全、さらにはアメリカ自身の安全保障にとって重要な地域を守るという、その抑止の考えから出ておるものだと考えております。
-
○
二見委員 どうも私はこれを素直に読んでそうは思わないんだな。もう一度言いますよ。「太平洋地域はその資源、政治的影響力および位置から、米国の利益にとって焦点となっており、NATOへのソ連の攻撃を抑止するための重要な役割を演じている。」こうなっている。「NATOへのソ連の攻撃を抑止するための重要な役割を演じている。」それが太平洋地域なんだ。そこにトマホークを配備した原子力潜水艦が展開をされるということは、極東での軍事バランスもさることながら、敵は本能寺で、NATOへのソ連の攻撃を抑止することの方にもねらいがあるんじゃないかとしか考えられないのですがね。どうなんでしょう。
-
○北村政府
委員 御指摘の報告の記述は、私どもといたしましては、これは米国のグローバルな、いわゆる世界規模における戦略の観点に立って極東方面における軍事的なバランスというものを維持するということが、それがやはり世界全体におけるアメリカの戦略における利益になる、それはNATOの方面におけるソ連の攻撃を抑止するという、そういう面にも役に立つという、非常にグローバルな観点でこの文章が著かれておるというふうに解しております。
-
○
二見委員 私は敵は本能寺という感じがしてしようがないのですけれども、これはどうせ水かけ論になりますのでこの程度にとどめますけれども、さらにもう一点、トマホークを配備した原子力潜水艦がこの北西太平洋に展開されるということになりますと、この地域における米ソの緊張脚係というのは今よりもさらに高まるのではないかというおそれを私は抱いております。アメリカのニューズウイーク誌の一月二十三日号には、大韓航空機撃墜事件の後、米ソは北太平洋で一時一触即発の状態に入っていたという報道も私は目にしたことがございますけれども、この地域での米ソの軍事的な緊張感というのはどうなんでしょう。また、報道されているように一触即発の状態なんというようなことがあったのかどうか。どうでしょう。
-
○
古川政府
委員 お答え申し上げます。
戦後平和が一貫して維持されておりますのは、抑止という理論の正しさを示しておるわけでございまして、現在の世界の情勢というものが東西、ソ連とアメリカを軸といたします東西の関係に分かれております際に、片っ方の方が力を増した際に、一方がじっとしておったのでは、抑止が破れる可能性があるわけでございます。先ほどから議論になっておりますお話は、あくまでもソ連が核及び通常の兵力を極東において極めて急速に増強さしておるというのが、これが大前提でございまして、それに対応するためにアメリカがいろいろな対応策を講じておる、その限りにおきましては、私はこの抑止の理論からいいまして平和はかえって維持される、ほっておいたのではかえって危なくなる、これは、戦後の歴史の事実が証明をしておる次第であろうと私は考えるわけでございます。
-
○
二見委員 私はそんなことを聞いているのじゃない。要するに、北西太平洋における米ソの緊張関係は今後かなり高まるのかどうかということを聞いている。また、アメリカのニューズウイーク誌の一月二十三日号には、大韓航空機撃墜事件の後、米ソは北太平洋で一時一触即発の状態に入っていたという報道があったということを私は読んだことがあるから、そういうことがあったのかということを聞いている。力には力なんという話は聞いていない。
-
○
古川政府
委員 お答え申し上げます。
確かに昨年の九月のKALの事件の際には、米ソ関係というのは一時緊張したという事実がございます。しかし、現在は御承知のとおり鎮静化しておるわけでございます。
今度の、先生がおっしゃいましたトマホークの配置等々によって米ソの緊張が極東の地域において高まるかという御質問に対しましては、先ほど私が申し上げましたとおり、戦後正しさが証明されておるこの抑止理論によって、アメリカがそれ相応に必要な対策をとっておる以上、私は戦争の危険性は薄まる、そういうふうに考えております、
-
○
二見委員 要するに、米ソの緊張は薄くなるのですか。
-
○
古川政府
委員 大規模戦争が勃発する可能性はそれだけ減少する、そういうことでございます。
-
○
二見委員 それではもう一点伺いましょうか。このトマホークと日本とのかかわり合いで非常に関心を持つのは、この核つきのトマホークを配備した原子力潜水艦が日本に寄港するかどうかというのが、日本にとっては一番切実な問題となってくるわけです。
それでアメリカの軍事態勢報告には「日本は、アジア・太平洋地域の安定維持上死活的な役割を果している。」これは去年のですね。こう書いてありますし、ことしのやはり軍事態勢報告でも、「日本の米軍基地は今後とも米軍の当該地域に対する継続的アクセスを確保する上で死活的に重要な戦略的役割を果たすことになる。」この書いてあるわけです。
そうすると、北太平洋に展開したTLAM―Nですね、核つきトマホークの配備、それを持った原子力潜水艦が日本に寄港しないでフィリピンの方に寄港するということが戦略的、論理的に考えられるのか。
素直に考えれば、要するに「日本はアジア・太平洋地域の安定維持上死活的な役割を果している。」という認識があり、しかも「日本の米軍基地は今後とも米軍の当該地域に対する継続的アクセスを確保する上で死活的に重要な戦略的役割を果たすことになる。」こうアメリカで言っているのだから、核つきのトマホークを持った原子力潜水艦は、それは日本が非核三原則がありますから入ってきませんよ、今までの公式見解はそうだけれども、私は、やはり日本に入ってくるのがアメリカにとっては戦略上最も正しいし、アメリカにとっては正しい行動ではないかなと思うのです、日本にとっては甚だ迷惑だけれども。どうなんですか、黙って入ってくればわからないのだから。
-
○
安倍国務大臣 これは何回もお答えしておりますように、やはり事前協議なしにアメリカが入ってくるということはあり得ないわけなんですから、これは日米安保条約、それに基づく関連取り決めがあるわけであります。そして、日米間というのはかたい信頼関係で結ばれておりますし、そういう中で日米が事前協議条項は守るということをお互いに何回も確認し合っているわけですから、ですから核つきの原子力潜水艦の入港は事前協議なしにはあり得ない。そして、事前協議があった場合には日本はそれにノーだということはアメリカ側も十分承知をしているわけですから、ですからこれまでもそうでございますが、今後とも、日本に非核三原則がある以上は、日本の港に入ってくるということはないということであります。
-
○
二見委員 確かに公式見解でいけばそうなる。ですから公式見解でいけば、北西太平洋で展開している原子力潜水艦のうち、核を持っている原子力潜水艦はフィリピンの何とかという港の方に行って、核を持ってこないのだけが日本に来る。選別することになる。公式見解からいけばですね。両国の信頼関係からいけばそういうことになる。
じゃ重ねてお尋ねしますけれども、アメリカは核兵器の存在についてはいかなる国の政府に対しても肯定も否定もしないということを基本方針としてきましたですね。ところが、一九七三年にアメリカの上院外交
委員会のスタッフがつくった報告書の中で、NATOの諸国に対しては一九六七年以来国防
長官から関係国に対して、年次書簡の形でもって、核兵器の型だとか数量だとか爆発力だとかあるいは配備場所を詳細に情報として知らせていたということが明らかになりましたですね。
このことは本
委員会でも取り上げられて、これに対して北村北米
局長は、非核三原則を堅持して核兵器の存在しない我が国と、アメリカの核兵器の配備を認めている一部のNATOとを同一の次元で論ずることはできない、こう答弁されておりますね。これは二月十四日です。
そうすると、いかなる国にも核兵勝の存在については肯定も否定もしないという基本方針というのは、これはアメリカの抜け穴だったわけですね。どうなんですか。
-
○北村政府
委員 ただいま
委員御指摘の米国上院外交
委員会の資料というものは、これは米国政府の資料ではございませんので、私どもは米国政府の見解を照会いたしたわけでございます。
そこでアメリカ政府からこういうことを我々に通報してまいりました。米国政府からは、米国がみずからの核兵器を配備しているNATO諸国に対して、米国政府とこれらのNATO諸国との共通の核戦略の調整あるいは立案、そういうものに必要な範囲内において、しかもそれらの諸国に配備されている米国の核弾頭の所在等について極秘のベースで、一般に知らせない公表しない極秘のべースで情報を提供しているという説明を受けたわけでございます。
そこで、先生御質問の、それではアメリカの、今までの核の存在を明らかにしない、否定も肯定もしないという一般のアメリカの政策と矛盾するではないかという御指摘がございましたが、ただいま御答弁いたしましたように、これはアメリカの核が配備されているその国に対して、その国とアメリカとの間の核政策、そういう共通の核政策を調整したり立案したりするのに必要な範囲内で極秘で知らせているということでございますので、これは一般の、核の所在を一般に公表しないということとは矛盾しなというふうに考えております。
-
○
二見委員 これについてちょっと一点お尋ねしますけれども、日本政府はこれは知らなかったわけですな。アメリカに問い合わせたわけだから、今まで知らなかったわけですね。それが一つ。
それから、NATOとは核兵器の協定があるから、NATOには極秘ベースで報告するのだ、日本は確かにアメリカとの間に核兵器についての協定はありませんね。日本は非核三原則だから持ち込んでこない。しかし日米の関係で、日本が問い合わせた場合に肯定も否定もしないじゃなくて、日本には、日本に入る原子力潜水艦には核は積んでおりませんとか、明言してもいいのじゃないですか、これは。
-
○北村政府
委員 第一の御質問は、政府はこの上院の資料が出るまではこのことについて知らなかったのではないかという御質問でございます。私どもも、アメリカ側にはっきりした確認をとったのは今回が初めてでございます。
それから第二の御質問は、これは先ほど外務大臣からも御答弁がありましたように、日本といたしましてはいかなる核の持ち込みというものも事前協議の対象でございます。したがいまして、アメリカから事前協議がない以上は、これは核の持ち込みはないということでございますので、こちらから特に非核、核の点を照会するということは必要ないと考えております。
-
○
二見委員 韓国にも核が存在すると言われておりますけれども、韓国とアメリカとの間にはこの情報交換はやられておりますかね。どうでしょう。
-
○北村政府
委員 私どもといたしましては、米韓間にどのような情報交換が行われておるかということについては承知はいたしておりません。
-
○
二見委員 じゃ、もう一点お尋ねしますけれども、韓国には核は配備されておりますね。
-
○北村政府
委員 かつて、これは一九七五年ごろでございますが、米国が韓国内に核兵器を配備しているということを示唆するような発言があったことは事実でございまして、私どもも承知いたしております。ただ、現在韓国内に核兵器が存在しているか否かということにつきましては、米国または韓国のいずれからも私どもとしては情報を得ておりませんので、承知していないわけでございます。
-
○
二見委員 今から九年前、一九七五年に、シュレジンジャー米国防
長官が韓国にも核があるのだということを発表されたわけであります。それで韓国には核があることが明らかになったわけでありますけれども、その後、核兵器が撤去されたという報道も聞いておりませんし、核兵器が撤去されるような、あそこが穏やかな状況になったとも考えられません。
類推すればあそこにも核があるんじゃないかなと我々は想像するわけでありますけれども、こうした想像の上での議論というのは大変危険な面を含みますので、余り好ましくないかもしれませんが、実は総理が中国を訪問されて南北朝鮮の問題について対話しようというような大変前向きの姿勢をお持ちになっていらっしゃるということを伺っておりますので、そういうときに、もしシュレジンジャー米国防
長官が今から九年前に公式表明したことがそのままずうっと続いているということになると、これはどういうことになるのかなというふうに考えておりまして、この点についてはどう判断するのか。また、シュレジンジャー国防
長官の発言したことがそのまま続いているということになると、それが日本の安全保障という関係から見ると一体どういうことになるのだろうかということを大変心配するわけでありますけれども、この点は総理大臣はどういうふうに御判断になりますか。
-
○
安倍国務大臣 日本としましては、とにかく朝鮮半島の緊張が緩和をするということを心から期待をしておるわけで、今そのためのいろいろな動きが出ておるわけですから、その動きを助長するとか、あるいは緊張緩和のための環境づくりのために日本が努力していくということで、朝鮮半島問題については中国側とも話し合いをしたい、こういうふうに思います。
-
○
二見委員 この問題はちょっとまた事実関係がはっきりしない上にやると誤解を招きますので、ではこの点でおさめたいと思います。
ニュージャージーの問題でもって、総理は、先ほども
上田委員の議論もございましたけれども、ニュージャージーが入ってくる場合にはその辺のことも問い合わせるという御答弁があって、それに対して答弁の食い違いがあるのじゃないかとちょっとトラブルがあったわけですけれども、これから原子力潜水艦はトマホークを、ことしの夏以降、すべてじゃないにしても積む可能性が非常に強いわけです。原子力潜水艦が入国するときには、黙って入ってくれば、これは――要するに核を積んでいる場合には事前協議の対象になるからわかるけれども、黙って入ってくる以上は別に事前協議をしているわけじゃないから核は積んでないんだ、日米の信頼関係からそういうことになるのだというのが政府の公式見解でございますけれども、要するにアメリカの極東戦略というか世界戦略でもって、トマホークを原子力潜水艦ばかりか水上艦にもこれからどんどん積もうという時代でございますから、改めて原子力潜水艦が日本に寄港するとき、あるいはニュージャージーが日本に入ってくるとぎには、核の有無、核つきトマホークの有無ということは、事前協議の対象というしち面倒くさいことじゃなくても、外交ルートでも何でもいいからきちんとした問い合わせをしてしかるべきなんじゃないだろうか。そうしてアメリカ側から、いやこれについてはアメリカの方針としては肯定も否定もしないのだというすげない答弁でもって引き下がるのじゃなくて、日本の国内の世論の高まり、核に対する日本のアレルギー、核軍縮に対する日本人の期待、核に対する日本人の憎悪、そうしたことを踏まえて、イエスかノーかの回答を求めてもよろしいんじゃないかと思うのですが、そのことは、これはやはりできないのでしょうか。
-
○
安倍国務大臣 これはしばしば答弁しておりますが、日米間の安保条約、その関連取り決め、さらにまたこの岸・ハーター交換公文とかあるいはまた、藤山・マッカーサー口頭了解によりまして、いわゆる核の持ち込みというのは事前協議の対象になるわけでございますし、この事前協議があった場合に、日本の立場は非核三原則ということで明快でございます。そういう実情につきましては、アメリカは十分これを承知をしておるわけでございます。したがって、日米関係、この信頼関係の中において、アメリカも事前協議を守る、あるいはまた安保条約、その関連取り決めは誠実にこれを遵守するということをアメリカ自身も何回か正式に回答しておるわけでございますから、我々としましては、アメリカの原子力潜水艦等が入ってくるという場合におきましても、事前協議の通告がないという以上は核の持ち込みはあり得ない、こういうふうに信じておるわけであります。
ただ、今のトマホークの場合におきましては、これからの問題ですが、ニュージャージーが、いつ入ってくるか、さっぱりまだ今のところ何らの消息といいますか、通告も何もないわけでございますが、そういうときになれば、これは国会での今日の非常な論議がございましたし、また、日本国民の核に対する、今おっしゃるようないろいろな危惧感という問題もあるわけでございますし、トマホークの問題というものがありますから、新しい事態であるというふうに考えまして、そのときには日米間で、今私が申し上げましたような確認といいますか、念には念を押すという意味におきまして、アメリカの入ってくるニュージャージーが非核であるということを日本が認識をして、そういう中で入ってくるということになると思うわけです。これは、一般的にこれまでやってきたことをさらに念を押すということはあり得ると思うわけですが、そういうことをこれから――しかし一般的にしょっちゅうやっておるわけではないので、一般に入ってくる場合においては、これまでの日米間の信頼と、そうしたお互いの確認、そういうものに基づいて我々は入港を認めておる、こういうことであります。
-
○
二見委員 ニュージャージーには確認はするけれども、原潜もやはり同じように確認されますか。
-
○
安倍国務大臣 ニュージャージーにつきましては今日までの論議の過程がございますから、それを踏まえて、特に念には念を押すという意味におきましてアメリカの政府と話し合いをしたい、こういうふうに思うわけでございますが、その他の寄港等に、つきましては、私はそれ以上のことをする必要はない、こういうふうに思います。
-
○
二見委員 ニュージャージーはここずっと議論されておりますから、確認するのはその議論を踏まえて確認するということですけれども、原子力潜水艦にトマホークが配備された、それが日本にしばしば寄港するということになると、それは国会で議論される、それで、そうした議論が盛り上がってくれば、改めて原子力潜水艦に対しても確認をすることになりますか。今はまだ配備されてないから、今は確認してもしようがないのだけれども、夏以降配備されるわけでしょう。何隻配備されるかそれはわからないけれども、配備される船もあれば配備されない船もある。それが議論になってくれば、ニュージャージーと同じように議論になってくれば、やはり外務省としては、例外ではあるけれども、今まで余りやったことはないけれども、原子力潜水艦についてもトマホークを積んでいるかどうか、そうした意味での確認をすることになりますか。
〔三塚
委員長代理退席、
原田(昇)
委員長代理着席〕
-
○
安倍国務大臣 これはこれまで、園田外務大臣のときも、また私のときになりましても、去年エンタープライズの入港、さらにまた三沢におけるF16の配備、そういう問題をめぐってマンスフィールド大使との間で私は話し合いをしたことがございます。これは、一般的な意味での確認をいたしたわけでございますが、そうしたことを今回も、ニュージャージー、これはいつ入ってくるか入ってこないかわからないわけですけれども、そういう場合はやらなければならないのじゃないか、こういうふうに判断をしておりますけれども、それはそれでもって私はもう十分である、その他の脱船の入港等につきましては、日米の信頼関係、さらにまたこれまでの一般的な合意、確認事項、そういうものに基づいて入ってくるということで十分である、こういうふうに思うわけです。
-
○
二見委員 これは私は、アメリカの極東戦略というか世界戦略を考えて、トマホークを積載した原子力潜水艦がふえてくる。積んでいるかどうかわからぬけれども、原子力潜水舵が日本に入港してくるということになれば、ちょうどニュージャージーに対して外務大臣がおとりになろうとしていると同じように、私はやはり確認をしてもらいたいと思います。ただ、これはこれ以上議論はいたしませんけれども、希望だけを申し上げておきたいと思います。
時間がなくなりましたので、
防衛庁長官にまとめてお尋ねいたしますので、まとめてお答えいただきたいと思います。
いわゆる五九中業ですけれども、
長官としては事務当局への作業を指示するのはいつごろこれを指示するのか。それから五六中業、五十八年から六十二年ですね、これの達成率は現在とのくらいなのか。五六中業の達成は期間内にはおおむね困難という見方があるようですけれども、見通しはどうなのか。それから五九中業の基本的な考え方、構想、今国会でも取り上げられたいわゆるシーレーシ防衛能力の強化を最重点項目にすると伝えられておりますけれども、五九中業の中心というのはシーレーン防衛強化を念頭に置いたものになるのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
そして、頂ねてこの問題に関して総理大臣に改めて伺いたいわけでありますけれども、この五九中業というのは五六中業を大幅に上回る経費が見込まれております。まだ策定されませんから正式にはわかりませんけれども、こういう予想がされております。防衛費のGNP一%を突破するのは当然として、かなり大幅に突き出るのじゃないか、毎年の予算の伸び率もかなり大幅になってくるのじゃないかということが懸念されておりますけれども、総理は五九中業中でも、いわゆる一%についてはお守りになるのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。この質問を終えて、あと若干財政問題について大蔵大臣の御見解を承りたいと思うのです。
-
○栗原国務大臣 五九中業、いつかということでございますが、これは当
委員会で既に申し上げましたが、今のところ、いつというように決めておりません。ただ、五六中業は四月の末に出しております。したがいまして、そこら辺も踏まえて、どうするかということを考えようと思いますが、今のところ、時期については決まっておりません。
それから、五六中業は何%達成したか。この五十九年度予算を通していただきますと二七%ということでございます。それじゃ五六中業の達成は極めて困難じゃないか、できないのじゃないか、そういう御意見だろうと思います。ただ、今度の予算で相当、いわゆる俗に言う目玉的な装備につきましてはいろいろ御配慮をいただくようになっております。したがいまして、二七%というのは我々にとって厳しい数字ではございますけれども、我々としてはぜひともこの五六中業を達成をいたしたい、そのために懸命の努力をいたしたいと考えております。
また、五九中業の中で、いわゆるシーレーン防衛というのをどうするか、あるいは優先度をもって、最優先をもってやるべきじゃないか、優先度ですね。シーレーン防衛について優先的に取り扱うべきじゃないかというように言われておるけれども、その点はどうか、こういうことでございますが、先ほどの総理答弁にもございましたような、いわゆるシーレーン防衛、これは非常に重要でございます。ただ、五九中業ではこれだけを取り上げるというわけじゃないわけであります。シーレーンの問題まで含めまして陸海空の防衛力の整備充実、そういうことを考えておりますので、特にここにアクセントを置いておるというようなことを今のところ考えておりません。
-
○中曽根
内閣総理大臣 防衛庁長官がお答えしたとおりでございます。五九中業についてはどういう実態でどういう年次でいくかというそういうこともまだ決まっておりませんので、一%云々という問題に言及することはできない。我々は、今まで申し上げましたように五十一年の三
木内閣の閣議決定の方針を守っていく、こういう考えで参りたいと思っております。
-
○
二見委員 五九中業については、作業が進められ、明らかになってから改めて批判すべきものは批判し、検討するものは検討したいと思いますけれども、いずれにいたしましても、防衛費のGNP一%という枠は、これは防衛に対してそれぞれ立場の違いはあるけれども、少なくともこの一%という枠だけは厳守をしていただきたいということを強く要諦してこの問題を終わりたいと思いますし、また改めて、私は防衛の専門家じゃないので質問はったなかったかもしれないけれども、ただ日本の周辺にアメリカが核を展開し、それに対抗してソ連が核をさらに増強してくるという事態は、それは核の抑止力によって日本の安全が結果として守られるのだというような御答弁があったけれども、日本の周りに核がうじゃうじゃいるというのは到底耐えられるものではない。それは核軍縮というのはセンチメンタリズムではできないのだというような御見解も総理にはおありのようでありますけれども、私たちとしては日本の周辺にそうしたものがうじゃうじゃいる現状というものは耐えられないものだということを
長官に御理解をいただきたいと思います。
限られた時間ですけれども、今
委員会でいろいろ議論された財政問題について整理しながらお尋ねをしたいと思います。
本
委員会で財政論議で明らかになったことはというと、先ほども
岡田委員からの質問もありましたけれども、大型間接税は考えていないという総理大臣の答弁が明確だったということ。じゃ一体どうすれば財政再建ができるのかということになると、大蔵大臣は制度、施策の根本にさかのぼって歳出削減の努力をするということだけで、じゃあどうすればいいのかという具体的なことは何もおっしゃらなかったというのが今
委員会の特徴だと私は思います。いや、そうじゃない、私はちゃんと具体的なことを申し上げたのだと言うならば後で述べていただきたいと思います。
それで、じゃ大型間接税とは何かということになりまして、これは課税ベースの広い間接税だということになると思う。これも総理大臣に確認いたしますけれども、実はこれは大蔵省からいただいたものなんですけれども、課税べースの広い間接税の諸類型というのがありまして、一つは単段階課税。一つは製造者消費税、これはカナダでやっているようであります。それからもう一つが卸売売上税、これはオーストラリアとスイスで実行しているようであります。それから小売売上税、これはアメリカ州小売売上税、カナダ州小売売上税というからアメリカとカナダのどこかの州でもってやっているのでしょうかね。そういうのが課税ベースの広い間接税だと言われています。
もう一つは多段階課税ということで取引高税。例えば日本で昔やった旧取引高税、これが一つ。それからEC型付加価値税これは西欧諸国でやっている。それからいわゆる一般消費税(仮称)、これが課税ベースの広い間接税の諸類型ということで、これが大型間接税だというふうに私は考えておりますし、総理がおっしゃったのもこういう意味合いだろうと思います。
時間がありませんので質問を先に進めますが、もし、いや私の言う大型間接税は
二見さんの言ったのとちょっと違うんだよというところがあれば改めて御指摘いただきますけれども、御指摘がない場合はそうだというふうにこちらで判断させていただきたいと思います。
それで大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、仮定計算をお出しになりましたね。この仮定計算というのは大変いろいろなことを物語っておりまして、一つは借換債を発行しないわけにいかないということがこれを見るといや応なしにわかるわけです。私は借換債を発行せざるを得なくなった政治的責任というのは大変重要だと思っておりますし、問題だと思っておりますけれども、この仮定計算ではどうしようもありませんというのが明らかになった。それからもう一つは、定率繰り入れを実施すると、仮定計算では実施しておりますね、六十年度の国債費というのは前年比三二・六%増の十二兆一千四百億円になる。歳出予算は、一般歳出を五%の伸びにした場合で前年度比、要するに五十九年度比一〇・一%アップ、そうなりますね。一般歳出をゼロ%でも六・九%アップになります。五十八年度の歳出予算は一・四%の伸びで五十九年度は〇・五%ですから、一般歳出をゼロ%に抑えても六十年度予算というのは相当大幅な増加になるということになりますね。そうすると、去年もことしも低く抑えたのに、来年は一般歳出の伸びをゼロ%にしても予算は七%近い伸びになるんだということになる。そこで考えられるのは何かというと、六十年度にも果たして定率繰り入れをやるのかどうか。できないのじゃないか。定率繰り入れを入れなければ、五十九年度末の国債残高百二十兆ですか、その一・六ですから二兆円近くの国債費が浮くわけになりますね。これは仮定計算では定率繰り入れをやることになっているけれども、財政の事情からいくと六十年度も定率繰り入れはできませんよということがこれから明らかになると思うのですけれども、大蔵大臣どうですか。
-
○竹下国務大臣 今おっしゃいましたように、試算を見て
二見さんは、いわゆる「中期展望」の分を見れば、まさに借換債を発行したケースと発行しないケースとで見ればこれだけ差がある、したがってこれは借換債がやむを得ないということを示す一つの指標ではないか。それからもう一つの仮定計算については、これを見てみればまさに定率繰り入れするとしないとで大違いだ、これが如実にわかるではないか。私どもの考え方は、やはり中期的展望を持って財政運営を考えていくことが必要でございますから、したがって基本的な考え方と同時に「財政の中期展望」をお示しした。しかもこの問題につきましてはいろいろ難しい問題がございましたが、まず借りかえ問題から申しますと、昨年度から国会の問答等を通じながら、一つは借りかえやむを得ないということに、財政審の御意見も承った上でそういう方針を決めたわけでございます。
二番目の問題につきましては、これはやはり財政審でいろいろ議論していただきましたが、基本的には現行の減債制度の仕組みはこれを維持するのが適当である、したがってその年度ごとでその問題については総合的に勘案して決める、こういう方針をとっておるわけであります。
今おっしゃいましたが、言ってみればこういう「中期展望」なり仮定計算、これらをもとに双方が議論する中で国民の選択する合意はどこにあるかということを見詰めていこうという基本的考え方でございます。
-
○
二見委員 大蔵大臣はこの
委員会でも、議論を見ながら国民のコンセンサスを見ていこうということを再三言われているわけです。例えばこれは
大内委員に対する御答弁だったと思いますけれども、大蔵大臣は「この国会での議論とかを通じながら、国民の皆様方のコンセンサスを得るには一体どういう組み合わせがいいかということはその時点で考えるべきことであって、」というふうに言われておりますし、各所でこういうふうに言われているわけですね。だから、大蔵省としては特別考えがなくて、最終的には国会にげたを預けているのじゃないかという感じがするわけです。
それで、じゃ私はさらにお尋ねいたしますけれども、大蔵大臣が言うどういう組み合わせがいいかということの中にはいろいろな組み合わせがあるわけ。歳出をカットする、当然これはありますね。その歳出をカットする場合、大蔵大臣は何と言っているかというと、制度、施策の根本にさかのぼって歳出削減の努力をしなければならない、こう再三言明されている。ことしも、五十九年度でも補助金をカットした。四千幾らの補助金をカットした。一方で伸びるのは六千億円以上ある。一方で一兆円の補助金をカットした。そういう努力をされているわけです。そうすると、この組み合わせの中にいろんな組み合わせがありますね。一つは増税という組み合わせもこの中に入ってくるのかどうか。それから、組み合わせですから増税オンリーじゃありませんよ。それから補助金の整理だけではなくて、例えば補助率そのものの見直し。二分の一を三分の一にするとか四分の一にするとかという、大変これは地方公共団体にとっては厳しい要求になります。そういった補助率の見直し、あるいは地方交付税率三二%ですね、ここら辺の見直しもこの組み合わせの中に入ってくるのかどうか、さらに、定率繰り入れも六十年はやめておこうやというようなこともこの組み合わせの中に入ってくるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。時間もありませんので、申しわけありませんが、簡潔にお願いをしたいと思います。
-
○竹下国務大臣 これは確かに組み合わせの中には、おっしゃいましたように、まずは歳出削減、「増税なき財政再建」というものをてこにしてこれをやっていこう。その意味におきましては、補助金カットなども当然制度、施策の根源にさかのぼってかなり協力をいただきながらやりましたが、なお、これのたがを緩めるわけにはいかぬ。そうなれば、いわゆる補助率の問題も、補助金の体系の一つでございますから、もとより我々それも見詰めていなければならぬ問題。
それから次は負担増の問題。増税あるいは社会保険料、いろいろございましょうが、それらももとより組み合わせの中にもございましょうし、そうして今おっしゃいました定率繰り入れも、その年度ごとにことしはどうでもだめだということになれば、それもあり得よう。そういう組み合わせをどうするかというのをやはりお互いの問答の中でコンセンサスを求めていこう。しかし、我々の方が何にも勉強しないで完全にげたを預けているというわけのものではない、こういうことであります。
-
○
二見委員 こういう組み合わせをやって、なおかつ要調整額が出るということになると、そこで税に手をつけるということに順番としてはなってくるのじゃないかと思います。
税については、端的に伺いますけれども、一つはいわゆる物品税ですね。これは個別の最終消費財にかけるというのが今までの原則でございまして、業務用品にはかけないということになっていた。ですから、ことし五十九年度でOA機器だとかワープロにかけたいという大蔵省の意向があったようだけれども、それは最終消費財ではない、業務用だということでこれは外されましたね。そうした物品税に対する考え方というものは、最終消費財ということだけじゃなくて、変わっていくのかどうか、それをひとつまずお示しいただきたいことと、私は、税制のあり方を論ずる場合に、まず不公平税制の是正を図ることが先決だと思います。例えば貸倒引当金や退職給与引当金といった大企業優遇措置の縮減を図るべきだと考えておりますけれども、このことは六十年度政府税調の中で大きな課題として検討をするのかどうか、利子配当課税はことしの夏に結論が出るようでありますけれども、この点についてはどうなるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
それから、この御答弁をいただいてから、借換債について若干お尋ねを、時間の範囲内でしたいと思います。
-
○竹下国務大臣 端的に申し上げます。いわゆるこの最終消費段階に近い業務用品への物品税課税、この問題でございますが、この五十八年十一月にいただきました中期答申では、「物品税の課税対象については、現行の考え方のように狭い範囲に限定することなく、消費の持つ担税力に着目して課税するという物品税の基本的性格に立ち返り、最近における消費の実態等を踏まえ、その範囲を拡大していくことを検討する必要がある。」そういう御指摘がありました。
そこで、いろいろ検討いたしましたが、結論から申しますと、なお時間をかけて検討しよう、今回は課税対象として追加することを見送った、それが事務機器類等についての結論でございました。
そうして、次は不公平税制の問題でございますが、確かに毎年国会等の議論を通じながら、正確にこのことを税調に報告していろんな改善措置をやってまいりまして、合理化を進める余地はかなり狭められたとは思いますけれども、六十年度以降においても、社会経済情勢の変化に対応して必要な見直しをこれは引き続いて行っていく。そこで、きょうこういう議論が出れば、当然それは税調に正確に報告いたしますし、それは議論のこの俎上には上る、こういうことであります。
-
○
二見委員 もう時間もありませんので、かいつまんで借換債についてお尋ねをしたいと思います。
私は、今度借換債を、昭和五十一年から五十八年までの借りかえ禁止規定を一片の法律でもって全部ちょんにしてしまうというこのやり方というのは大変けしからぬやり方だというふうに思っております。それはそれといたしまして、要するに、借りかえ後の公債というのは、今度は国債整理基金特別会計法第五条に基づいて発行されることになるわけですから、制度的には特例公債も建設公債も区別がなくなるわけでしょう。要するに、飲み食いの費用を借金で賄うための特例公債と資金見合いで発行される建設公債とでは、基本的には性格が異なるけれども、制度的には同じになりますね。ですから、これもまとめて質問いたしますけれども、財政節度を維持する観点からも、借換債を含めた公債残高について、特例公債にかかわる分は幾ら、建設公債にかかわる分は幾らというふうに表示をしておくことが財政の節度を守るためによろしいのじゃないかというふうに思うのが一つです。
それから、公債残高について、「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」の中では、国民総生産に対する公債残高の比率を極力低くとどめるように努力する、こう書いてありますね。そうすると、具体的にはどのような国債残高のめど、国民総生産に占める国債残高のめどというのはどの程度に考えていらっしゃるのか、それもお示しいただきたいと思います。
それから、一・六%の定率繰り入れをやってきましたですね、これは建設公債は一・六で特例公債はもっと別の比率かなと思ったらば、そうじゃないんですね。一六%の定率繰り入れというのは、例えば五十九年度の場合には、五十八年度末の国債残高、特例も建設公債も全部ひっくるめた残高の一・六%であります。この一・六%というのは、例えば建設公債の場合には、六十年間で、六十年たてば建設公債の場合には借りかえなしで償還ができるというのが一・六%の担保でしょう。ところが、特例公債も一・六だったんですね。十年間で、借りかえなしで、借りかえ禁止規定を置いておいた、借りかえしませんと言ってきた特例公債も一・六だったということになると、私はこれは議論するつもりはありませんけれども、赤字公債を発行したとき、もうすでに十年後無理じゃないかなという考え方があったのじゃないかというふうに思います。
それから、借換債の償還財源。金がないから借換債やったのだから、その償還財源をどうするかということになると、そのためのまた公債を発行しなければならぬということで、ちょっと自己矛盾に陥るわけですけれども、それをどう考えているのかということと、借換債の借換債というのがあるのかどうか、これはどうなんですか、一体。これをまとめてお尋ねをしたいと思います。
そうした上で、改めて総理大臣に、私は今五十九年度予算をここで論議しているわけでありますけれども、これは単に五十九年度だけじゃなくて、六十年度にまで連動する問題だと思いますので、最終的に総理大臣の御見解を承って、この質問を終わりたいと思います。
-
○竹下国務大臣 まず一つは、借換債の借りかえ後の公債と特例公債、建設公債の区別の問題でございます。
これは、発行根拠法によって区別することはできません。御調のとおりです。だが、財政審の報告にも書かれてございますので、何らかの方法で国民に示すことが示唆されておりますだけに、六十年度をめどにその具体的な表示方法、例えば国債の発行残高のうち特例公債及びその借換債に相当する額、そういうものを何らかの形でお示しできないか、これは検討を進めます、六十年の大量発行が始まるまで、こういうことであります。
それから、対GNP比の問題でございますが、これは最終的に申し上げますならば、毎年度着実にまず新規債の発行を縮減していく、それによってGNP比の上昇テンポを落として、そしてその第二段階として、できるだけ速やかに今度はGNP化水準自体を引き下げていく、まずはやっぱり、今赤字公債ゼロということを申しておりますそのいわば発行額自体を引き下げていくということで、それが第一段階、第二段階が対GNP比の引き下げを行っていく、こういうことであろうと思います。
それから、いわゆる定率繰り入れの百分の一・六の問題でございます。これも、財政を取り巻く環境の変化から、遺憾ながら特例公債の借りかえは行わないとの従来の方針を見直さざるを得なくなったわけでございますが、この問題については、今
二見さんのおっしゃった、やっぱり一度一度きちんきちん国会をクリアすべきだとか、そういう議論をいろいろした上で、私どもはやはりこれは一つの大きな政策転換だということで御理解をいただこうではないか、こういう方針でございます。
それから、借換債そのものの発行の問題でございますが、これからいわゆる公債発行の種類の多様化とか、そういう問題も含めてこれは検討をしていかなきゃならぬ課題だというふうに考えております。(
二見委員「借りかえの借りかえ」と呼ぶ)それも幅広い角度からこれは検討していかなきゃならぬ。いわゆる仮に短期債とかいうようなものがあった場合には、トータルの中でございますが現実としては観念的には借りかえの借りかえになりますから、それらも幅広い角度から検討していかなきゃならぬ課題だと思っております。
-
○中曽根
内閣総理大臣 二見さんがおっしゃったような問題は、単に五十九年度の問題だけでなくして、六十年度あるいはこれからの八年間にわたる赤字公債ゼロまでの努力の過程にみんな響いてくる問題でございまして、今おっしゃったような諸般の問題を慎重に検討しながら、最も効率的なしかも財政健全化の方向に向かう方法をいろいろ探求してみたいと思っております。
-
-
-
○
小平委員 まず、与野党の政策協議問題につきまして、中曽根総理大臣にお伺いいたしたいと思います。
先般の施政方針演説の中で、中曽根総理大臣は、野党との関係につきまして次のように述べておられます。「野党の皆様とも政策面における対話と相互理解を深め、重要国策の推進、円滑な国会運営、我が国政局の安定に向かって懸命の努力を行い、国民の皆様の御期待におこたえする決意であります。」また、「
内閣総理大臣の諮問に応じて」教育「改革案を調査審議する新たな機関を設置すべく検討を進めてまいりたいと思います。広く国民各位の御助言と各党、各会派の御協力を切にお願いをいたします。」以上述べましたように、施政方針演説の中で野党との協力をうたっておられます。これは従来にないことであります。
さらにもう一点、重要な発言があります。それは、先般の本会議における我が党往々木
委員長の質問に対しまする答弁であります。
我が党の佐々木
委員長が、重要な政策課題について与党、野党間で政策協議の場を持つことを検討する意思があるのかどうか、ただしたのに対しまして、総理は次のように答弁されました。すなわち、国政の重要問題について与野党の協議機関を設置せよとの提言は大変勇気のある発言と敬意を表する、行政、財政、教育改革、平和外交、総合安全保障などについて、その場で協議し、各党のしかるべき機関に持ち帰って協議する、このような場ができれば国民は喜ぶことでありましょう、画期的な提言に誠意を持ってこたえたい。
以上、るる引用いたしましたように、総理は野党との協力、特に政策協議について積極的に取り組む姿勢を打ち出されたのでありますが、これはどう具体化される方針でございましょうか、お伺いいたします。
-
○中曽根
内閣総理大臣 ただいま
小平さんが御指摘になりました点は、選挙の結果人心の帰趨がいずくにありやというような点も洞察いたし、また、国政を円滑に推進させるという面からも一つの転機に来た、そういう考えに立ちまして申し上げた次第で、その考えは私は一貫して今日も持続しておるわけでございます。
それで、各党みんなおのおのの政策をお持ちでございましょうから、必ずしも私たちの政策と完全に合致するというわけにはまいらぬと思っておりますが、個々の政策につきまして、妥当と思われる諸問題につきましては、各党一つ一つと我が見とお話を願いまして、そして、意見がどの程度合うか合わないかすり合わせをやってみて、そして、非常に隔たっていてこれはすり合わせが非常に難しいと思われる、そういう場合にはやむを得ませんが、すり合わせが非常に可能である、非常に近い接近点まで来ている、そういうような場合には、十分すり合わせもして、できたら法案をつくる前の段階でそういうお話し合いをしつつ協力し合っていけば、非常に画期的なことになるのではないか、そう思っておるわけです。例えば、先般来この
委員会で問題になりました少年の精神環境保護の問題とかあるいは教育問題とか、こういうような問題はもう早速挙げられる問題ではないかと思っております。
-
○
小平委員 極めて前向きな御答弁であります。ぜひ与野党間の当面する重要課題について率直に話し合ういわゆる政策協議の場をつくっていただき、推進してもらいたいと思います。
次に、予算編成の事前協議の問題についてお伺いいたしますが、この問題も政策協議の一つの対象になるのではないかと思うのであります。これまでのように、大蔵原案ができましてから、内示直前に形ばかりの党首会談や政調、政審会長会議を開くのではナンセンスであります。
〔
原田(昇)
委員長代理退席、
委員長着席〕
本年も一月二十三日、内示直後に与野党の政調、政審会長会談が持たれておりますが、その席上、藤尾政調会長は、昭和六十年度予算編成に当たって少なくとも七月ごろから事前協議の場を持ちたいとたびたび主張されたやに承っておるのであります。つまり、概算要求が決まる前の段階で野党の意見を聞く場を設けるべきだと考えるのでありますが、その用意はございましょうか、まず大蔵大臣に伺います。
-
○竹下国務大臣 先ほど総理からもお答えがあっておりました基本的なお考え方の後に、予算編成に当たりまして、まず党首会談、これは私は一月十七日のいわば大蔵原案の内示前であったのは大変よかったことだと思っております。私もその席に
官房長官と一緒に政府側からは参加させていただきました。それから、政調、政審レベルの会合が、やはり時間が短かったから今御指摘なさったとおり二十三日でございました。したがって、その際藤尾政調会長が申したという話は、今御指摘のとおりでございます。実際問題として、私も、大蔵大臣がその会合に参加させていただくということになるというような問題につきましては、一応党に対して御協議申し上げなければならぬ。おまえついてこいと言われれば、当然のこととして行かなきゃならぬ。その方が私どもとしても何かにつけて好都合じゃないか、こういうふうに思っております。
-
○
小平委員 今の政党内閣制からいいますと、政府と政権党である与党とは一体でなければならない。そういう意味で、与党の政調会長が極めて積極的な事前協議の話をされておるのですから、やはり一体である財政の担当の大蔵大臣は、進んでそのような事前に話し合いをするということが、絶対不可欠の要件であろうと私は思うのです。そうやっておりますれば、先般のように予算修正問題で重要な国会が三日も空白になるというようなことが避けられると思うのです。ぜひそのような、すなわち概算要求が固まる前に野党の意見を聞くというような方向にひとつ前向きで検討してもらいたい、このように思うのであります。
-
○中曽根
内閣総理大臣 概算要求の前に与野党で協議したらというお話でございますが、私は検討してみたいと思います。
ただ、概算要求という場合には、各省庁がまだ不安定な状況で、一定の枠のもとに請求するということであります。政府はその際に閣議決定をもって大体概算要求請求の枠を決めます。ゼロシーリングであるとかマイナスシーリングであるとか、あるいは機構、人員については概算要求はこういうふうにやってほしいとか、そういうような枠を決めます。少なくともこういう枠のつくり方等については、あるいは話し合いの対象になるのかな。あるいは概算要求の枠の中で機構、人員というような問題がありますが、例えば補助金の問題であるとか、あるいは人員の削減、定員問題であるとか、こういうような問題は与野党で一致点があるいはあるのかもしれぬ。補助金の問題については、メニュー化であるとかいろいろな御要望がございました。また、人員につきましても、民社党等におきましては、我々に対するはっきりしたお考えをお持ちのようでもございます。そういう意味におきまして、枠をつくるその一つのアイテムとしてこういうことが考えられるかなという意味におきまして、検討させていただきたいと思っております。
-
○
小平委員 総理からただいま具体的な話がありましたが、抽象的でなく、政策協議にふさわしい具体的な問題を総理はいかように考えておられますか、さらに伺いたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 私は、これからは、ともかくこの間の選挙以降というものは、虚心坦懐に国策について与野党が話し合うのは好ましいと思っております。ただ、各党はみんな各党の、党の政策なり党是というものを持っておりますから、話し合いにしても、どの程度寄りつき合えるかという限度をみんなお持ちであると思います。そういう自分たちのスタンスを持ちながら、しかも共通の広場をつくっていく、そういう合意形成の努力を行うということを国民は好ましく歓迎していると思っております。そういう点におきまして、これからは新しい発想に立って新機軸のアイデアを実践していくときである。その新機軸のアイデアを具体的にどういうふうに編み出していくかということも、与野党の有志が話し合ってみて、こういう新しい企画やらあるいはこういうアイデアでやったらどうだろうかというところからスタートしても非常に好ましいことではないか、私はそう思っております。
-
○
小平委員 わかりました。ぜひ前向きに、国会の正規の機関は機関として、さらにかみしもを脱いでざっくばらんに話し合いをする場をつくり、推進をすべきだと考えます。
次に、予算編成過程におきまする公開財源または調整財源について大蔵大臣に伺います。
御承知のように、昭和五十九年度予算の大蔵内示の際に表面に出ますのは、公開財源は公共関係で八百億、一般で八百億、計千六百億円でありますが、このほか各省庁の官房調整財源なるものが約七百億ほどあるようであります。このような公開財源や調整財源が、復活折衝を通じまして各種団体や圧力団体の陳情合戦を巻き起こして、そのよしあしが問われておりますが、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
-
○竹下国務大臣 恐らく
小平先生は、予算時期になりますと地方からたくさん上京してきまして、陳情合戦というような印象を与えることに対しては適当でないとお考えになっておる、私もそのように感じております。ただ、年々それは少なくなっておるということもまた言われておるわけでございますけれども、調整財源等から見てみますと、各省庁の要求は複雑多岐にわたっておりますので、予算の全部について財政当局の見積もりどおりに、事項別内訳まで一度の内示で確実に確定させるということは、現実問題なかなか難しゅうございます。場合によっては、一定の枠を示して、各省の優先順位を各省の中で決めていただかなきゃならぬというような場合もございます。したがって、そういうのを決めていただきながら、各省と協議して逐次詰めていきますので、やはりそうした段階は通らざるを得ぬのじゃないかな。結局、長い間やってきました、まあ言ってみればある種の知恵みたいなものがこういう調整財源という形になって今日に至っておるのではなかろうか、こういうような感じが私自身も長い経験からいたしておるところであります。
ただ、地方の陳情合戦とかあるいは圧力団体とか、そういうことに対する最近の傾向は、私どもが承る側で見る限りにおいて、だんだん減ってきたと申しますか、あるいは正常化してきたと申しましょうか、そういう印象は持っております。
-
○
小平委員 各省庁の官房調整財源というものが、ただいま大蔵大臣御説明のように、過去の例をとってみて必要だというのでありますれば、あえて私はこれに対して反対をするものではありません。同時に、公開財源も長い間の慣例です。やはり復活折衝を通じて中身をさらによりよきものにするという意味から、公開財源もその運用の仕方によっては決して悪いとは思いません。思いませんけれども、公開財源が公共と一般で千六百億、一般会計の総予算の五十兆から見まするならばわずか〇・三%ぐらいのものでしょう。これでは、公開財源として本当にコントロールを図る、調整するなんということにはならぬのではなかろうか。もしどうしても必要とするならば、少なくとも一般会計総予算の一%ないし二%、金額にして五千億ないし一兆ぐらいの公開財源を有効裏に運用するということが適切ではないかと私は思います。大蔵大臣、いかがでしょうか。
-
○竹下国務大臣 何回か議論をしてみた問題でございますが、調整財源は幾らがよいか、こういうことになりますと、確かにいろいろな御意見がございます。結局、考えてみますと、先ほど来御意見いただいておりました、私どももそれが非常に頭の中へこびりついておりますが、いわばシーリングをやって、そして各省がその中でそれぞれの形で重点事項を積み上げていって、そして今度は大蔵省との調整作業の中で、言ってみれば大蔵原案ができます。そうすると、おおよそそれが一年なり前からいろいろ議論をされておりますと、重点施策というものはその中へ形の上である程度の姿は出てくる。そうすると、最終的には私は、〇・三%程度といえば低いようでございますが、各般の意見を聞きながらそこへ最終的な上塗りをするというようなことで考えてみますと、今の財政状態の中等から考えれば、今の額がおおむね適当ではなかろうか。確かにこの議論はあることは十分承知いたしておりますが、したがって、前広に重点施策の意見交換等がより重要であるという意見にもあるいはなろうかと思います。
-
○
小平委員 この問題は、さらに財政当局におきましても十分に検討いただきたいと思います。
次に、教育臨調設置法案についてお伺いいたしますが、御承知のように、教育制度の改革は当面最も重要な政策課題でございます。中曽根総理の強い意思も受けられて、森文部大臣も鋭意努力中と拝察いたしますが、現在との程度作業が進んでおりましょうか。
-
○森国務大臣 お答え申し上げます。
新しい機関の組織、構成その他具体的な事項につきまして、今文部省が中心になりまして鋭意検討中でございます。でき得れば、今月末にはそれらを含めました設置法案を作成いたしまして国会にお願いをいたしたい、こう考えておりまして、ただいまその方向で懸命な作業をいたしておるところでございます。いろいろな意味でこれから国会の御審議をいただきまして、各党の皆様方の御審議をちょうだいし、幅広い国民の皆さんの御協力やまた御意見等ちょうだいしながら、新しい教育の展開をぜひ実現してまいりたい、このように考えております。
-
○
小平委員 本問題は、我が民社党もいち早く提唱いたしまして、ようやく実現の方向に進んだのでありますが、一部には、御承知のように、教育の中立性を侵すものだという強い反対もあります。それだけに私は、本問題こそ国民的課題であります、したがって、一部に反対があるからといって遠ざけ、あるいは話し合いを避けてはいけないと思う。したがって、この法案の骨子が固まってからでは遅いと思うのです。
今のお話では、本月末を目途にということでありますが、その法案の骨子が固まる前に我々野党の意見も十分聞いて、そして、この教育臨調設置法案をよりよきものをつくるために、その話し合いの場をつくる考えはありましょうか。
-
○森国務大臣
小平先生、そしてまた、これまでの予算
委員会の総括あるいは一般質問、また分科会等の審議を通じまして、いろいろと御意見をちょうだいいたしております。総理もたびたびお答え申し上げておりますように、憲法をしっかり守って、そして教育基本法にのっとりまして新しい教育をぜひ見直していきたい、このような考え方でおりますので、今その法案の検討をいたしておりますが、その法案の検討をいたしますその過程の中で、でき得る限り各党の皆さんの御意見をちょうだいするような機会をぜひつくりたい。恐らく、先ほど総理からも予算編成等に関係しましてお話がございましたように、それぞれの党の考え方もございますので、党を通じましていろいろと御指導いただくような、そうした考え方をぜひしてまいりたい、こんなふうに今考えておるところでございます。どうぞ、また各党の皆様方にもいろいろと御指導いただくことが多いと思いますが、よろしくお願い申し上げたいと存じます。
-
-
○中曽根
内閣総理大臣 文部大臣が今御答弁になりましたように、文部省といたしましてもいろいろ今素案を構想しておるところでございます。提出以前に各党と個別的に我が党の政調の皆さんでお話し合いを願いまして、御意見を十分承り、直すべきものは直し、また、積極的に取り組むべきものは取り組むようにいたしまして、できるだけ合意を形成した案をつくり上げて、それを法案化して、そして国会に提出する、そういう段取りで進みたいと思っております。党の方でもそういう心がけをもちまして、この予算が衆議院を通過いたしましたら、各党ごとにそういうふうにお話し合いを願う機会があるのではないかと思っております。
-
○
小平委員 次に、外交、防衛問題について若干お伺いいたしたいと思います。
まず、日ソ間の関係改善についてでありますが、総理は、日ソ関係の改善について、先般我が党の
渡辺委員の質問に答えまして、チェルネンコ政権の外交方針がどう固まるか見守っていると答弁しておるのでありますが、方針が固まっていない現在こそ私は積極的に働きかける必要がある、このように思いますが、いかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 チェルネンコ新政権は、今政策形成期にあるだろうと思っております。しかし、世界平和を達成して核軍縮を貫徹し、そして世界の緊張を緩和して軍事費を少なくしていく、そういうことは全世界の願いであると思うし、日本国民の願いでもあり、我々の願いでもあります。そういう意味において、日ソ間におきましてもでき得る限り緊張を和らげ、そして問題を解決し、友好親善の道へ進み得るような環境をお互いの努力でつくり上げていくべきであると思っております。もちろん、両国の間には領土問題という非常に根本的な問題がございまして、それを避けて通るわけにはまいりません。しかし、一方において、我々はそういう基本的な立場を堅持しつつ、また、相手の出方にもよりましていろいろ話し合いを広げていく。糸口を広げるという表現を私は使ったり、また、打開していくという表現も使っておりますが、そういう考えに立って前進していきたいと考えております。
-
○
小平委員 二月二十八日に、パブロフ大使の要請に対して衆議院の福永議長は、議会レベルの日ソ交流の再開について前向きの姿勢を示されました。
総理は、議会レベルの交流再開についてどのように考えておられますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 私は、総理大臣として、国会の動きについてとやかく申し上げる立場にはございませんが、自民党の総裁として、あるいはまた行政権の側において外交というものを考えるという面から見まして、国会の側におきまして、そういうようにソ連ともいろいろ友好関係を促進するということをおやりになるのは、適切なことではないかと判断をいたしております。
-
○
小平委員 そういたしますと、政府としては、国会が再開に踏み切った場合には何ら異論を挟むものではない、このように理解してよろしゅうございますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 もちろん、国会がおやりなさることにつきまして異議を申し上げる立場にもなく、むしろ今のような状況のもとにおいて議員外交というものは極めて意義のある成果を生むであろうと考えております。
-
○
小平委員 私はなぜこのことを伺ったかといいますと、過去に先例があります。国会で積極的に進めようといたしましたが、政府の方で足を引っ張るというか、ブレーキをかけたことがあるのであります。やはり国会の自主的判断に政府は協力するという態度が必要でなかろうかと思うから、あえて申し上げたのであります。
次に、三月十日の新聞及び外務省筋の報道によりますと、山村農水大臣がソ連からの要請によって近く訪ソをすると伝えられておりますが、その訪ソの目的、会談の内容、外務大臣、どのような中身でございましょうか。
〔
委員長退席、
原田(昇)
委員長代理着席〕
-
○山村国務大臣 お答えいたします。
昨日、ソ連の大使館を通じまして訪ソ招請が正式にございました。その内容は、一週間程度、私の都合のよい時期に訪ソし、日ソ間の漁業問題について協議を行いたいというものでございます。
私といたしましては、日ソ漁業関係につきこれまでも両国大臣の協議を通じていろいろな問題の解決が図られてきたところでございますし、この訪ソ招請について受け入れたいということを考えております。
その具体的な時期については、国会等の今後の政治日程等を勘案しながら、外交ルートを通じて調整したいと思っております。
また、その協議事項、これにつきましても検討の上、外交ルートを通じて調整していく、そのような方針でまいりたいと思っております。
-
○
小平委員 本問題について外務大臣は承知されておるのですか。
-
○
安倍国務大臣 大変結構じゃないかと思っております。
-
○
小平委員 今日日ソ間が御承知のように冷え切っておるというこの現実を打開するためにも、かつて鳩山総理が、日中間の親善友好並びに日中の平和条約の締結をどうして推進するかという質問に対しまして、それは当事国間の人事の交流を盛んにすることだということで、私は記憶に新たなものがありますが、そういう意味からも、招請を受けると受けないにかかわらず、積極的な人事交流を民間もあるいは国会も政府も進んでやるべきじゃなかろうかと私は思うから、あえて申し上げたのであります。
北方領土の返還につきましては、全国民多年の念願であります。北方領土の返還なくして戦後はないと私は思うのであります。そのような見地から、この北方領土返還なくして平和条約の締結もありませんし、ソ連側は相も変わらず解決済みという答えが返ってまいります。そういう中において、総理は具体的にこの北方領土返還についてどのような方策が一番望ましいとお考えか、承ります。
-
○中曽根
内閣総理大臣 これはもう、うまずたゆまずあらゆる機会を通じて日本国民の正当なる考え方を先方に伝え、また国際世論の支持を得て、そしてうまずたゆまず努力を続けていく以外にないと考えております。
-
○
小平委員 次に、防衛問題についてお伺いいたしますが、政府が「防衛計画の大綱」を定めたのが御承知のように昭和五十十年であります。その当時に比べまして、現在我が国を取り巻く国際情勢、特に極東ソ連軍の増強をどのように認識されておられるか、お伺いいたします。
-
○栗原国務大臣 防衛大綱を決めたときと今日と国際情勢に大きな変化があったか、そういうような意味の御質問かとも思います。
私は、五十一年に「防衛計画の大綱」を決めたときの国際情勢と、基本的に枠組みは変わっていないと思います。すなわち、あの当時も米ソの間でいろいろ問題がございましたし、また、世界各地でいろいろの紛争があった、あるいは米中ソ等におきましても一触即発の状態ではなかった、そういう状況でございます。
しかし現在、そういう意味合いで国際情勢の基本的な枠組みは変わっておりませんけれども、御指摘のようにSS20とかバックファイアとか、そういうものが非常に極東方面にも増強されましたし、またアフガニスタンの問題等ございまして、国際情勢の中に厳しさを増してきた、アクセントがついてきた、そういうように認識をしております。
-
○
小平委員 さらに伺いますが、五十八年の防衛白書には、極東ソ連軍の増強を潜在的脅威の増大と明記しておるわけです。この極東ソ連軍の増強のうち、具体的に言う潜在的脅威の増大、こういうのはどのように認識されておるのですか。
-
○栗原国務大臣 脅威というのは、御案内のとおり能力と意思、そういうことですね。能力があり意思がそれに伴うということになりますと、これは顕在的な脅威になります。能力があっても脅威が顕在化してない、そういう場合、いろいろな客観情勢から見て潜在的脅威ということを使っておるものと思いますが、ただいま防衛白書の中で潜在的脅威という点は、SS20とかバックファイアとか、そういうものが極東の方に来ておる、あるいは最近で言いますとノボロシスクというものがウラジオストクの方へ来る。そういうことを総括的に見まして潜在的脅威、こういうように考えております。
-
○
小平委員 防衛大綱は、我が国周辺の国際情勢が当分の間大きく変化しないことを前提としてつくられたものであります。そうすると、こうした極東ソ連軍の増強は大きな変化ではないのですか。
-
○栗原国務大臣 先ほども申しました。ように、「防衛計画の大綱」をつくったときの世界の国際情勢といいますか、その当時の国際情勢の基本的枠組みというものは変わっていない。ただ、先ほど来申し上げておるとおり、いろいろなアクセントがついておる、極東についてはその点、私どもは非常な関心を持っておる、こういうことでございます。
-
○
小平委員 そんなことはありませんよ。今
防衛庁長官も、結局防衛大綱をつくった昭和五十一年ごろは、SS20もバックファイアもその当時は配備されていないのです。これは大きな変化じゃないのですか。
-
○栗原国務大臣 あのときの情勢というのは、米ソ両国を基軸といたしましたグローバルな国際情勢、そういうものを基本としていろいろと分析をしておるというふうに認識をしております。
-
○
小平委員 そうすると、極論的に言いますと、つまり五九中業の完成年次である昭和六十五年、一九九〇年までは防衛大綱は見直さない、こういうことですか。
-
○栗原国務大臣 当
委員会で申し上げているとおり、五九中業についてはまだ私から
長官指示を出しておりません。そして、どういうようなことで五九中業を出すかという詳細につきまして出しておりませんが、基本的考え方といたしますと、この厳しい国際情勢下にありまして質の高い防衛力というものを考えなければならぬ、正面と後方とのバランスをとらなければならぬ、また、計上されるべき事業につきましては、その必要度あるいは優先度、そういったものを効果的に考えてやらなければならぬなというふうに思っておりますけれども、今のところまだ
長官指示を出しておりませんので、防衛大綱の水準を超えるとか超えないとか、そういうことを諭ずる段階になっておらないということを御了承賜りたいと思います。
-
○
小平委員 極めて苦しい答弁でありまして、これ以上追及いたしません。
私は、最後に総理に伺いたいのは、昨年十二月十二日の記者会見で、総理の私的諮問機関であります平和問題研究会、それにおきまして防衛体系全体の見直し作業をやってもらいたいということを発言しておるようであります。見直し作業とは一体どういうことなのか。すなわち、防衛大綱の見直しに手をつけない防衛体系の見直し作業なんかは、私はあり得ないと思うのです。いかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 平和問題研究会の皆様方には、ともかく平和を維持していく、そういうものを探求するということを中心課題といたしまして、現在の国際情勢あるいは米ソの戦略体系、そういうような問題も十分見直していただくし、また、日本や世界の平和維持のために物的面、経済面あるいは防衛力の整備面、そういう面からもいろいろ検討もしてもらいたい、そういう考えに立ちましてお願いをいたしておるところでございます。
-
○
小平委員 それでは、角度を変えて伺いますが、現在ソ連は、SS20の配置でありますが、百三十五基から百四十四基に拡大しようといたしております。これは我が国にとりまして重大な潜在的脅威だと思うのであります。
こういったソ連の極東におきまする戦域核の展開に対しまして、その撤去が実現しない段階におきましてそれに対抗し得る米国の戦域核の配置は、抑止力の形成という見地から必要だと認識しておられるのですか、伺います。
-
○
古川政府
委員 先ほどもお答えしたかと思うのでございますけれども、一貫したソ連の極東におきますところの軍事力の増強ということに直面をいたしまして、アメリカはいろいろな措置をとっておるわけでございまして、その対抗措置の一つがトマホークの配置ということもあるいは言えるのかもしれないと考えておりますけれども、これは結局、抑止というものを効果的に働かせるという意味において、私は平和の維持につながるものであるというふうに考えております。
-
○
小平委員 外務大臣、今の考え方に異存はないですか。
-
○
安倍国務大臣 情勢の判断としてはそうだろうと思います。
-
○
小平委員 大体政府当局の考え方はわかりました。
そこで最後に。現在の防衛大綱というもの、いわゆる脅威を想定しない防衛力整備計画などは、まことにナンセンスだと私は思うのです。没脅威論に立ったような防衛大綱、これは世界に全く例はないと思うのです。そのような意味合いから、防衛大綱を定めたのは五十一年当時でありまして、現在我が国を取り巻く国際情勢は大きく変化いたしております。したがいまして、この際政府は速やかに防衛大綱の見直しに着手すべきであると私は思うのであります。これは何回繰り返してもあきませんから、以上、党の方針でもあり、私の基本的な考えてありますから、強く申し述べておきます。
次に、農政問題について伺います。
まず、山村農水大臣に伺いますが、一つは、農林水産関係費の一般会計予算総額に占める割合。二番目は、食糧の自給率について、特に穀物で結構ですが、最近十カ年間の自給率。三番目は、米価決定の推移と現状、これは過去五カ年間で結構です。伺います。
-
○山村国務大臣 農林水産省予算の占める割合でございますが、御存じのとおり、財政事情厳しい折から、年々減ってきております。昭和五十九年度予算では、一般歳出に、占める割合が一〇・六%となっております。
そして、穀物自給率の推移でございます。過去十年を見ますと、主食用穀物については、十年前から約七割の自給率を維持しております。しかし、飼料用穀物についてはその全量を海外に依存しております。このため、飼料用穀物輸入の増大に伴って、主食用に飼料用を加えた穀物全体の自給率は低下傾向にありましたが、五十四年以降は三三%で横ばい状態で維持しております。
それから、米価でございますが、十年と申しますと四十九年から申しますと、政府買い入れ価格、四十九年産米で六十キログラム当たり一万三千六百十五円、これが五十三年になりまして一万七千二百五十一円、そして五十八年には一万八千二百六十六円ということでございます。
-
○
小平委員 総理大臣、ただいま主管大臣山村農水大臣説明のとおりです。一般会計の中で農林関係費の占める割合は、昭和四十五年が一一・五%でございました。それが昭和五十九年度はわずか六・八%、毎年ダウンの一途をたどっております。いかに農林関係予算が低下しているかというのは、この数字によって明らかであります。さらに、自給率につきまして穀物だけをもって見るのに、これまた今三三%と言う。国会では両院で自給率のいわゆる増強拡大を決議いたしておりますが、一向に自給率は高まらない。さらに、主食であります米価の決定のごときは、食管法第四条、第五条の決定を政府みずからが無視している。これは食管法に明確に規定いたしておりますように、そのときの時価価格によって決めなければならぬ。それは食管法で明記されているのですよ。それが御承知のように、他の物価、賃金は上昇する中で、四年も五年も据え置きになりました場合には米作農家の経営が行き詰まって、負債が累積するのは当たり前です。
こういうような状態に対しまして、総理は日本の農政の実態をどのようにお考えですか、伺います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 日本の農業を国政全体の中でバランスのある発展を遂げさしていくということは、国政の重要な要目であるだろうと思っております。
御指摘のように、食糧につきましては、飼料穀物のほとんど全部を外国に依存しているかげんから、穀物について三三%程度の自給率でずっと低逃しておりますことははなはだ残念でございます。米が大体一〇〇%自給できているという点がせめてもの慰めでありますが、今後は、そのような日本の比較的劣位にある部面につきましてもこれから力も入れ、生産性も向上させてバランスのとれた食糧政策、安全保障的見地からも非難されないようなそういうバランスのとれた食糧政策というものをとっていかなければならないと考えております。
-
○
小平委員 今の日本農政の実態というものは、主管大臣である山村大臣が述べたとおりなんです。本当に、今日本の気象条件というものは、定期台風常襲地帯、冷災害、地震、そういうものによって被害をこうむり、大変なときであります。こういうような状態に対しまして、一部から政府は農村を過保護であるとか甘やかし過ぎるとかと言うのは、言語道断である。それは、根本的に食糧というものが、現在世界人口は四十五億、百年後には百億を突破するというような情勢であります。食糧問題こそ、人間の命を守る重要な問題であります。食糧の安全保障、安定的供給ということを考えてみた場合に、もっと政府が農政に対して本腰を入れていただきたいと思うのであります。
次に、農林大臣に伺いますが、現在農畜産物の生産調整を続けておりますが、今後どのような考えでございますか。
-
○山村国務大臣 農畜産物の生産調整でございますが、御存じのとおりの経済成長の鈍化に伴うところの農畜産物需要の伸び悩みがございます。この中で、米を初め若干の農産物が供給過剰基調ないし需給緩和の状況下に今あるわけでございますが、このために農産物につきましては、それぞれの事情に即し需要の拡大策とあわせ生産調整を実施している次第でございます。特に米につきましては、水田利用再編対策の実施を通じて、需給の均衡を保ちながら、米から国内自給率向上の必要性が高い麦、大豆、飼料、これらの作物への転換を進めているところでございます。
今後とも、何しろ限られた国土資源でございますので、これを活用して、農産物の需要と生産の長期的見通しを踏まえて、需給の動向に応じた農産物の再編成を行っていきたいというぐあいに考えております。
〔
原田(昇)
委員長代理退席、
委員長着席〕
-
○
小平委員 現在の食糧に対する生産調整は、私はなってないと思う。昨年のごときは、米の端境期に政府の在庫が十万トンしかないというので非常にろうばいした。ところが、何とか新米を繰り上げて配給を行ってあの事態を収拾したのでありますけれども、ことしも長期予報がこの間気象庁から発表されました。本年も冷夏と予想されております。そういう中で、今度は米の配給をいわゆる減額する。一方において生産調整で転作を強要し、高額な転作奨励金を出しておる、で米の配給を減額する。まさに本末転倒でありませんか。こういうような政策を続けておりますならば、日本農業はだんだんと追い詰められて、そして結果的には今後食糧問題に重大な事態を招来すると私は思うのです。私は政府当局に重大な警告を発しておきたいと思う。
さらに私はこの機会に、牛肉、オレンジ問題を初めいわゆる農産物の輸入自由化問題が貿易摩擦の一環として今大きく政治問題化しております。本件に対しまして、今のような現状を続け外圧によって日本の食糧が圧迫されれば、これは大変な事態であります。したがって、全国の牛肉、オレンジの生産者だけでなく、食糧の生産者は一斉に立ち上がって、断じて日本はアメリカの余剰農産物のはけ口ではないんだよ、今まで最大の協力をしているじゃないか、これ以上に今の牛肉、オレンジを、仮にアメリカの要求どおりやったといたしましてもわずか五億ドルくらいでしょう、対日貿易赤字の何のプラスになるのですか。そういう見地に立って近く山村農水大臣は渡米をして本問題の解決に当たろうということでございますが、どのような決意でございますか、重ねて伺います。
-
○山村国務大臣 先生おっしゃいますとおり、日米貿易全体から考えますと、農産物の問題はほんの一部分でございます。今まで日米間では農産物貿易は全体として非常に良好かつ友好的にやってまいったわけでございます。牛肉にいたしましても、アメリカが輸出しておる全輸出量の六割を日本が輸入しておりますし、そしてまたかんきつにしましても、アメリカの全輸出量の四割を日本が輸入しております。これらのことも繰り返し米側関係者には言ってまいりました。また特に、アメリカの農産物輸出全額のうちの一五%を日本が輸入しておる、一番いいお得意さんでもあるわけでございます。しかし私は、今回日米の話し合いにおいて農産物貿易がなされるということが、アメリカのいわゆる対日強硬分子に対する抑止力といいますか、歯どめにもなっておるということもございますので、何とか
金子前農水大臣がお約束いたしました三月いっぱいの決着に向けて全力を傾けてやってまいります。
しかし、私の基本姿勢といたしましては、日本農業を守るという立場を堅持してやってまいります。三月いっぱいだという期限にとらわれまして無理な決着をするというようなことはないように、我が国農業を守るという立場でやってまいるつもりでございます。
-
○
小平委員 山村農水大臣に重ねて申し上げますが、ひとつ腹を据えて、日本の農業というものが、食糧事情というものがどうなっているかよく説明をして、今民間の農業団体も現地に赴いてよくPRをいたしておりますから、ひとつ腹を据えて頑張ってもらいたい。
時間が余りありません。したがいまして、あとの問題につきましてせっかく通告いたしておきました関係上簡単に申し上げますから、簡潔に御答弁をいただきたいと思うのであります。
第一は、青函隧道の完成後におきます有効利用の問題であります。
世紀の青函隧道は、いよいよ二年後にその完成が迫ってまいりました。世界最長の海底トンネル、六千八百九十億という巨費を投じ、約二十年の歳月を費やして、いよいよ本州と北海道が直結されるわけでありますが、これによって我が国に残された唯一の未開発資源の開発というものが、本当に本州との交流が本格化するのでございます。しかるに、完成後の有効利用について具体的な方針が決まっていないと承っておりますが、細田運輸大臣、どうなっておりましょうか。
-
○細田国務大臣 お答えいたします。
世紀の大事業と言われる青函隧道の本隧道がもう間もなく開通をすることになりまして、取りつけ部分を含めまして、六十二年には線路が全通して使える状態になるという状況までやってまいりました。
ここでこれをどういうふうに使うことが最も有効であるかということにつきまして、運輸大臣の私的諮問機関でございます青函トンネル問題懇談会というもの、また、その下に研究会を置きまして、細かく実際に当たってどう活用することが一番いいかということについて御検討いただいて、近く結論を出していただくことになっております。
大体のところを申しますと、ただいままでの方向といたしましては、国有鉄道の在来線として北海道と本土とを結ぶ。そして特に、カーフェリーが北海道と本土の間にたくさんございますが、カートレーン、隧道の中を自動車を、トラックを通す、トラックが廃棄物を出さずに通れるわけでございますので、それに特に重点を置いた青函間の輸送をやったらどうか。
ただ、ここで一つ問題がありますのは、工事費が高いものでございますから、国鉄がもし借りた場合には、計算上は年間八百億ぐらいな借り賃が要るということになっておりまして、この問題をどう扱うかということは、国鉄の御案内の監理
委員会と、国鉄の経営形態の問題とも関係をいたしますので十分相談をしておるところでございます。
しかし、いずれにしましてもこれは大変な仕事でございまして、世界に誇るような大きな仕事でございますので、これはできるだけ活用していく、金がかかった減価償却とかあるいは借り賃とかいう問題は一応抜きにしても、とにかくこれを使っていくということで考えたいと思っております。
-
○
小平委員 そういたしますと、今の運輸大臣の説明によりますれば、在来線を通すということなんですね。そこに問題があるのです。在来線を通すということは、将来新幹線を通すということを考えていないのか。私は、次の問題にも触れてお伺いいたしたいと思うのであります。
現在、新幹線とか高速道路というものが依然として中央集権的な域を脱してないと思うのです。あの世紀の青函隧道完成の暁には、札幌まで新幹線は通るように計画しておるのです。もう予定線も決まっておる。これは単に本州と北海道をつなぐだけでなくて、新幹線の問題につきましては、やはりこれは九州や四国、北海道のように遠隔の地にあるものが、高速道路の場合もしかりであります。遠隔の地ほど――本当に日本は極東の、アジアの東に位する南北に細い列島でありますから、本当に国民が福祉施設でも公共施設でも平等にその恩恵に浴するというのが政治の要諦でなかろうかと思うのです。
そういう意味から申しますと、今のような状態では、札幌まで新幹線が通り、あるいは
福岡・博多から鹿児島まで通るのは何年後になるのですか。そういうことを考えますと、さらに高速道路もどうしても、重ねて申し上げますが、やはり中央集権的な域を脱してないために、地方に行けば行くほどおくれて、ずたずたと、まあネズミの食いかじりのように手はつけておるものの進まない。こういう現状は、国家財政との関連もありますけれども、私はやはり採算を度外視して最優先的に本問題は推進すべきであると思うのでありますが、運輸大臣、建設大臣あるいはこれに最も主導権を握る総理、いかがにお考えでしょうか。
-
○細田国務大臣 申し上げるまでもございませんが、今回できます青函トンネルのトンネル部分につきましでは、新幹線がいつでも通し得る規格でできでおるわけでございます。したがって、これは将来新幹線を通すということをもとにして穴が掘られておおわけでございます。これはもう申し上げるまでもございません。
ただ、直ちに新幹線を通せということを申しましても、御案内のように、今盛岡まで東北線が行っておるわけでございます。したがって、盛岡からさらに北に延ばす工事をどうするかということにつきまして、我々としては積極的に考えたいと漂っておりますが、何しろ御案内のような財政事情でそれが思うようにいっていないという状況でございますので、南から順を押して新幹線を延長していくという方向で考えていかなければならないと考えておる次第でございます。
-
○
水野国務大臣 高速自動車道路は七千六百キロという予定路線を定めておりまして、先生のおっしゃるように、均衡のある国土の発展と国民生活の向上を図るために、今ネットワークを一日も早く完成しようということでやっております。しかし、この完成のためには大変膨大な資金が要るわけでございまして、どうしても交通需要の多いところからやっている、それが御指摘のようなことであろうと思いますが、今後効率的にやっていこうと思っております。
なお、大体現在まで、高速道路は本州及び九州の縦貫道、いわゆる縦の道路が概成しておりますが、既に北海道でも札幌を中心に約百三十キロが供用済みでございます。
なお、これは高速道路ではございませんが、北海道の一般国道の問題としまして、御質問とはちょっと違いますが、いわゆる整備状況から申しますと、全国平均で約六割が概成しておりますが、北海道は八五%、いわゆる一般国道の面では大変整備が整っているということをつけ加えて御報告申し上げておきます。
-
-
○
小平委員 いいです。
最後に、我が国の治
山治水事業についてお伺いしたいのでございますが、もう時間がありません。そこで、治山事業については場を改めて、非常に重要な段階に今参っておりますから、林野庁の今後の最大の努力によって現在の治山事業というものを促進してもらえると思いますが、きょうは治水事業についてのみお伺いいたします。
今建設大臣が答弁されたので伺いますけれども、御承知のように、我が国は細長い島国、列島であります。中央山脈を分岐点にいたしまして二分されております、いわゆる日本海、太平洋に。毎年毎年、自然の猛威によって日本の各大中小河川、さらに公共施設あるいは港湾、個人住宅あるいは農産物等々に受ける被害というものは連年莫大なものがあるのです。ところが、災害復旧で毎年毎年繰り返しておりますこの経費のむだなこと。
ですから、私はこの機会に、現在の治水事業に特会がありますけれども、この特別会計を最も有効裏に使って、そして我が国の治水事業というものを本当に本腰を入れて進めなければならない、このように考えますが、最後に、主管大臣であります建設大臣の決意のほどを伺いまして、私の質問を終わります。
-
○
水野国務大臣 治水事業につきましては、昭和三十五年以来、治
山治水緊急措置法という法律を制定いたしまして、これに基づいて今日まで六次にわたる五カ年計画を策定して推進をしてまいりました。現在お願いをしております昭和五十九年度予算案の中では、第六次治水事業五カ年計画の第三年目の年度といたしまして、最近の激甚な災害発生の状況にかんがみまして、特に緊急を要する災害対策、都市河川対策、土石流対策などを重点に、総額一兆二千八百億円余をもって計画的な治水事業の推進を図っております。
しかし、先生の御指摘のように、なおかつそれでも全国の災害発生が多くて不十分な点がございますが、今後とも総力を挙げてこの対策に取り組んでいきたい、かように思っております。
-
-
○倉成
委員長 これにて
小平君の質疑は終了いたしました。
次に。
梅田勝君。
-
○
梅田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、締めくくり総括でありますから、予算
委員会で問題になりました幾つかの問題につきまして、総理大臣並びに関係閣僚に質問をいたしたいと思います。
日銀総裁が来ておられると思いますが、まず初めに、公共料金の問題に入ります前に、若干一円高の問題につきましてお伺いをしておきたいと思います。
御承知のように、今日、一ドル当たり二百二十円から二百二十三円程度で推移をいたしておりますが、この点につきましての日銀総裁としての御見解を簡潔に述べていただきたいと思います。
-
○前川参考人 円相場は、先週来、従来より円高の方向に推移しております。しかし、一時は二百二十円近くまで参りましたけれども、その後やや円安の方向に振れておりまして、ここ一両日二百二十四円台ということでございます。まだ市場の相場観が固まっていないということでございまして、この先、市場のことでございますからどういうふうに振れますか、もう少し様子を見ないとわからないというのが現状でございます。
-
○
梅田委員 いずれにいたしましても、現状の円相場というものは我が国の経済大国としての基本的な力というものをある程度反映していると思いますが、その点はいかがですか。
-
○前川参考人 いわゆる日本の経済の基礎的条件である、物価が安定しておるとかあるいは国際収支が黒字である、経済成長率がプラスであるということから、かねがね私どもも円高方向にもう少し進むのが適当だろうというふうに思っておりました。
なかなかそういうふうにまいりませんでしたのは、海外の金利が高いとかいうようないろいろな事情があったと思いますが、最近になってこういうふうに円高になりました大きな背景は、そういうふうな、私が申し上げましたような経済の基礎的条件ということが見直されておるのだというふうに思います。
-
○
梅田委員 日銀総裁も現在の円相場が我が国の経済の実力に応じてそんなに不相応なものではないというような御見解だと理解をいたします。
そこで、公共料金の問題でございますが、総理大臣にお伺いをしたいのでありますが、新年度予算におきましては、健康保険の問題、国鉄運賃の値上げ、国立大学授業料など公共料金の値上げというものがたくさん盛り込まれております。
政府の物価上昇見通しは、経企庁の方で二・八%で、公共料金のそのうちに占めます割合というのは〇・三%程度で大したことないのだ、こういうことであります。しかし、公共料金というものは、生活実態からいたしまして、所得の低い人ほど家計費に響く度合いというものが大きいということだと思うわけであります。
総理府統計局の「家計調査年報」によりましても、五分位階級別の公共料金の支出額、その割合というものを見ましても、例えば年収二百八十二万円以下の低所得の家庭におきましては、米、食塩、たばこを加えました公共料金の支出というものは、収入対比におきまして一七・八%に上っております。これは年収が六百三十二万円以上の七・一%と比べますと倍以上の負担感を覚えているわけであります。
そういう点で、公共料金が上がるというときでありますだけに、低い所得の方々に対してどう手当てをするかということにつきまして、一言お考えを示していただぎたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 公共料金を上げざるを得なくなっているということは、まことに遺憾千万でございます。財政窮乏の折から、至るところにおきましてできるだけ経費も節減もするし、あるいは利用者負担をお願いもして独立採算制の方向に持っていかざるを得ないという状況でありますので、との点はぜひ御理解をお願いいたしたいと思っておる次第でございます。
確かに、公共料金を上げるということは低所得者層に対しまして重圧を加える結果になるのでございまして、こういう逆進性につきましては、我我は今後とも大きな関心を払い、できるだけそういう効果を及ぼさないような考え方で処置していかなければならないと考えております。
-
○
梅田委員 具体的に何か手を打つべきではないかと申し上げておるのでありまして、今の御答弁では手が打ててないと思うのであります。
そこで、私は一つの提案として、公共料金の代表格であります電気料金の値下げをしてはどうかと思うわけであります。
八〇年の四月に電気料金は値上げをしたわけでありますが、これは大幅、五割の値上げをした、しかも水増しであったということが言われているわけでありまして、政府の認可の査定は、一バレル当たり三十二ドル強、円レート二百四十二円と計算しております。ここに表がございますが、つまり、一バレル当たり七千七百四十四円で原油を購入するということが値上げ認可の前提であったわけであります。しかし、この値上げをやった後どうなったかといいますと、御承知のように電力会社は大変なぼろもうけをしたわけであります。
昨年、原油の価格が五ドル値下がりをした、またことしに入ってから円高傾向だ、これはますます顕著になるということでありまして、お手元に資料をお配りしたわけでございますが、計算によりますと、円は二百三十三円八十三銭でありますから、一バレル当たり六千八百九十五円となっております。これはことしの一月、そういう実態になっていますね。ですから、単純に計算をいたしましても八百四十九円もうかっているということになるわけであります。現在はもっと事態は進行しておるわけでありますから、仮に二百二十円だとしたら千二百五十七円安くなる勘定であります。
円が一円上がったら、年間にいたしまして電力会社は百二十億コストダウンになると言われておるわけでありまして、通産省も、電力会社は、昨年の決算が出てきておりますが、約五千億の利益を上げていると。今後円高が進みますとさらにふえてくるわけでありまして、それらを入れますと七千億から七千五百億電力会社はもうけるのではないかというような計算ができるわけであります。
これは、政府が所得税減税を今回やりますが八千七百億、これと比べましても相当の大きな金だということになります。ですから、私は、少しでも国民の暮らしを助ける、こういう点で政府にお考えがあるなら、今思い切って電気料金の値下げを断行すべきではないかと思うわけであります。
通産大臣にお伺いするわけでありますが、電気事業法第二十三条によります通産大臣の変更指示権、これに基づいて、今こそこれを発動して電気料金の値下げをやってはどうか、そういう時期だと思いますが、いかがですか。
-
○小此木国務大臣 これはもうしばしば申し上げていることでございますが、電気料金の引き下げ等そういう取り扱いにっきましては、確かにおっしゃるように油の値下げという要因もございます。しかし反面、資本費等のコスト増あるいは国際情勢、とりわけ中東情勢は非常に不安定である、しかもその中東に依存度の高い我が国の油の供給構造、そういうことを考えますと、そう簡単な問題ではないと思うのです。
したがいまして、今後の為替相場の動向というものを見きわめながら、やはり何といっても長期安定ということが一番必要でございますので、その線に沿って慎重に検討いたしたいと存じます。
-
○
梅田委員 そういうことを言うから、いつまでたってもこれは解決しないのですよ。せっかくこういう条文があるのになぜ変更を指示しないか。今後いろいろな計画があって金も要るだろうということをおっしゃいますけれども、しかし、実際の問題としては、いろいろの事情で電気代を上げなければならぬというときには簡単に上げるわけでしはう。ところが、今度はもうかっているということがはっきりわかったときに全然それをやろうとしない。私は、これは問題だと思うのです。せっかくの条文がありましても、これは空文になってしまう。電力会社がもうかっていないなら別ですよ。通産省、あなた方も五千億はもうかったということは認められているわけでしょう。
ここで一つの新聞の記事を御紹介しますけれども、ことしの三月一日の日本経済新聞に経済企画庁の物価調整
課長が「公共料金政策の新たな視点」という一文を書いておられますけれども、その中に「好調な業種は値下げ検討を」、こういう見出しをつけまして、「赤字になれば一定の条件の下でとはいえ料金引き上げが認められる業種では、黒字の場合にも原則としては料金引き下げを検討すべきであろう。」ということをはっきり言っておられるわけです。もうかったときには配当はどんどん出す、配当が赤になったら、ひとつ値上げしてくれ、こんなばかな話はないと思うのですよ。いかがですか。
-
○豊島政府
委員 先生御指摘のように、コスト的に石油の価格が五ドル下がる、あるいは為替が一円上がれば百二十億というお話でございまして、確かにそういう面のコストの低減要因はございますが、同時に、電力の供給安定ということで設備の増強その他を図っておりまして、これの方面のコストの増加というものがあるわけで、先ほど大臣がお答え申し上げましたように資本費の増高等いろいろな要因があるということでございまして、トータルとしてどうなるかということが問題で、下がる方だけ見て、それだけ収益がよくなったということには必ずしもならないかと思います。
なお、電気事業法二十三条によりまして通産大臣は権限があるではないかという御指摘がございましたけれども、これは「著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認めるとき」ということで、現在の状況がそれに当たるかどうかということについては、必ずしもそうは言えないのじゃないかということでございまして、いずれにいたしましても、ただコストが下がった面だけで直ちにこの条文の発動をすべきであるということにはならないかと存じます。
-
○
梅田委員 そういうことを言うているから、この条文は空文化して発動されないことになるのです。経常利益で九千三十億も九電力がもうけていみじゃないですか。そういう姿勢では国民の暮らしは守れないということを申し上げておきたいと思います。
時間がございませんから次の問題へ行きますが、国鉄総裁に、国鉄再建と青函トンネルの問題、今も問題になっておりましたが、これにつきまして御質問申し上げたいと思います。
国鉄の財政再建というのは非常に重大な問題になってきております。約二十兆に上る長期債務、しかし、これは約八割までは実質的には設備投資のために借金をしてきた内容ではないかと私は思うわけであります。ですから、今後国鉄を国民の足として立派に再建していくためには、国が国鉄に対してどういう方針を持つか、どういう援助をやるか、これをしっかり確立することが大事だと私は思うわけであります。
そこで、青函トンネルが、今、世紀の大事業として完成しつつあると言われておりますが、あの昭和二十九年の台風十五号によりまして、国鉄の連絡船洞爺丸そのほか五隻沈んだわけでありますが、それらを契機にしてトンネルをつくってほしい、確かにそれは北海道や本州の方々の夢であり、悲願でもあったと思うのです。本四架橋も今やっておりますけれども、四国の方々にとってみればああいうものができたらいい、それはやっぱり一つの夢としてあると思うのです。
ところが、こういう大きな工事をやります場合には当然資金がついて回るわけでありまして、その資金をどうするか。莫大な資金を投じて、その設備投資の効果ですね、安全性も考慮した経済性、採算、こういうことをよく考えてやることが必要であります。果たして青函やあるいは本四架橋の場合に、建設に当たって慎重に計算されたのかどうかということが私は問題だと思うのです。もしそれをいいかげんにしてやったとすれば、実現を望んでいる方々に対して夢を無残に破ることになる。そういう点で、初めが肝心だと思うわけであります。
具体的に青函トンネルの内容についてお伺いしたいわけでありますが、青函トンネル建設決定に際して、国鉄はその資金コストや収入、経費の見込みなど、その収支採算、投資効果、こういうものを計算されたのですか。
-
○仁杉説明員 青函トンネルの建設ということは、御承知のとおり鉄道敷設法で予定路線の中から工事線にするというようなことでございますが、これは日本鉄道建設公団が担当した事業でございます。それで、調査を四十二年ごろからいたしておったようでございまして、その結果、もちろん国鉄も協議に乗っておりますが、最終的な報告が出ておりますが、その中では、当時の輸送量に対しまして、大きい場合には五倍というような数量を見込んでおったようでございます。
私どもも、国鉄といたしましても、もちろんこれに参画をいたしておったのでございますけれども、その見込みについては必ずしも十分な自信を持ったわけではございません。それは、実は昭和四十五年九月の鉄道建設審議会におきまして、
委員でございます当時の国鉄総裁から、このプロジェクトは国民的プロジェクトと考える、この実施部隊を持っている責任者としては、これの運営に関しては政府、国会等の皆様方から十分御配慮をいただいて、国鉄の財政負担のかからないようにということを特にお願い申し上げているというようないきさつがあるわけでございます。
-
○
梅田委員 国鉄自身として責任を持って厳密に計算したのかということを聞いたんですよ。実際していないんでしょう。国鉄はほとんど責任を持って計算していなかった。あなた任せでやっていた。ところが、実際は青函は鉄建公団がどんどんと進めておるわけですよ。十九年目にして完成のめどが立ってきた。ところが、鉄建公団の有償貸付線につきましては、昭和三十九年三月二十三日に大蔵省と運輸省との間で覚書が締結されまして、「鉄道施設の建設費の財源として借入金を使用する線は、当該鉄道施設をその完成後、公団が有償で貸付けることについて、公団及び国鉄が当該鉄道施設の建設着工前において確認した線とする。」というようになっておりますけれども、国鉄総裁、この確認を公団とやりましたか。
-
○仁杉説明員 この青函トンネルの問題につきまして、この覚書に基づく有償線区の確認は行っておらないようでございます。
〔
委員長退席、松永
委員長代理着席〕
-
○
梅田委員 これは重大ですね。国鉄は確認していないと言う。大蔵大臣、大蔵省と運輸省の間で覚書を結んで、こういうことをやりなさいと言っているんだ。これはやっていないというなら重大じゃないですか。公団の計算に、よりますと、資本費のみで青函トンネルは年間約八百億円。国鉄はこれらの経費を負担しつつなお経営を維持することは極めて困難である、このように国鉄当局が言っているんですよ。多額の資金を入れて、そして実際は列車が走らなかったらどうするんですか。今採算採算と言っていますけれども、これだけかかった経費をむだにしたとしたら大変なことになりますよ。大蔵省は、こういう国家的な大事業だというので、国鉄に対しては無償線区としてただで使わせてやるんだ、そういうつもりで確認をとらなかったのですか、どうですか。
-
-
○
梅田委員 大蔵大臣に聞いているんですよ。大蔵大臣に聞いているんだ。
-
-
○
山口(光)政府
委員 この覚書に基づく確認は、今国鉄総裁が御答弁申し上げましたように、しなかったわけでありますが、青函トンネルを有償貸し付けとすることにつきましては、このトンネルの工事実施計画の認可が行われました昭和四十六年、鉄建公団の事業計画において明らかにされているところでございます。この事業計画を運輸大臣が認可するに際しましては、鉄建公団法に基づき、公団と国鉄の間及び運輸省と大蔵省の間における協議を経ているところでございます。
-
○
梅田委員 大蔵大臣、今の答弁では不十分ですよ。ちゃんと運輸省と大蔵省でこういう工事をやるときには相談せよとなっているのに、やっていないんだから、確認していないんだから、その責任をどうとるのですか。
-
○永光政府
委員 大蔵省と運輸省の覚書の件でございますので、私の方から答えさせていただきますが、御指摘の覚書は、鉄建公団が、公団設立当時におきまして、無償資金で建設するAB線といわゆる有償資金で建設するCD線とございまして、これを両方ともいわゆる鉄道新線として取り扱って鉄建公団がやっていこう、こういうことで発足したわけでございますが、そのAB線とCD線を区別して建設を進める必要がありますことから、有償線区であるCD線について確認を、建設する方とそれを引き受ける方とあらかじめやろうということでこの覚書ができたということでございまして、その後のこういう大規模プロというようなものについては、これは当然有償資金でやるということで話が進んでおりまして、先ほど申しましたように事業計画等でも明らかになっておりますので、この両省の覚書の範囲の外であるというふうに我々は解しておるわけであります。
-
○
梅田委員 それなら覚書を頭から政府と公団はぐるみで無視しているんじゃないですか。違法行為じゃないですか、これは。こんなばかな話はないですよ。津軽海峡線は幽霊線なんですか。一応確認しておるんでしょう。それで、有償線にするかあるいはただでいくのか、なぜ確認しなかったのですか、工事着工前に。これは去年、トンネルの先進導坑が開通したときに、その当時総裁でありました高木さんが新聞の中にも書いているじゃないですか。この問題については文句たらたらですな。「いささか慨嘆に耐えないことがある。」こういうことであって、いわゆるAB線というただで貸すやつがあると。国鉄の場合は今でも赤字赤字といって責められているわけでしょう。だから、負担区分が決まらないまま事が進んでいくことについて憤慨しているわけです。国鉄総裁が憤慨するようなことをなぜやったのですか。
-
○細田国務大臣 今永光鉄監
局長からお答えいたしましたが、大蔵省と運輸省との覚書というのは、実物をごらんになっておると思いますけれども、これは
局長同士の覚書、申し合わせでございます。大臣でも次官でもございません。
そこで、どうしてこれをつくったかといいますと、これはCD線とAB線と分けるのにつくったものなんです。青函というのは、簡単に言うと別格なんです。別格でございまして、当時のつくるときの計算では、もっと北海道と本土との間の数量がうんと伸びるという計算にこれはできておるのです。それでもなおかつ借料の半分は出してもらわなければこれはやっていけませんよ、相当数量が伸びても、ということでこれは進められておる。したがって、仮に半分にしてもけしからぬじゃないかというお話があれば、これは、その点はごもっともと言わなければならないかもしれません。しかし、数量の見通しというものは、かかったときと情勢がすっかり変わっておるということも御理解いただきたいのでございます。結果的には非常に今問題でございますので、これを国有鉄道の経営との関係においてどうするかということを、先ほど私は
小平先生に御答弁申し上げたように、どうするかを決める、これは大問題でございまして、国鉄総裁としては、簡単に八百億なら八百億の借料を払ってはこれはできないぞと言うのは、これはごもっともなことだと思っております。
-
○
梅田委員 総理大臣、今お聞きのとおり、ああいう大きな計画をするのにも、後で計算が間違いであったとか、需要がなかったとか、国家的大事業として国が出資してやるのか、それとも借料を払ってやるのか、ここらあたりの大事なことがちょっとも詰まらないうちに事が進行した。これは全く無責任ですよ。なぜこんな政策決定をしたか。それは、やはり自由民主党の、言うなれば大規模プロジェクトをやって企業をもうけさすというねらいがあったんじゃないかというように思うのですよ。全く無責任な計画だ。
確かに、トンネルそれ自体をつくりたいというのは住民の悲願ですよ。その悲願を着実に実現さしていくためには、科学的な民主的な決定、これが必要じゃないですか。せっかくつくったのですから、この際、鉄建公団法の第二十三条の一項には、運輸大臣は無償貸与ができる、こういう条項がありますが、これをひとつ活用していただいて、国鉄にそんな大きな負担をかけないようにしていただきたいと思うのでありますが、総括の責任者としての総理大臣の御見解を承りたいと思います。
-
○細田国務大臣 総理の前に私からお答えいたしますが、国有鉄道がそのまま八百億の使用料を払ってこれを経営するということは、考えることができないと思います。別途な方法を講じなければならない。そうしなければ、国鉄の赤字がここでまたぼかんと八百億ふえてしまうということになりますので、そういうことがないように、どうしたらいいかということを今懇談会で検討しておりますし、大臣といたしましても、これを無理やりに国有鉄道にそのままの形で、八百億出す形で経営しるということは言えない、かように考えておる次第でございます。
-
-
○中曽根
内閣総理大臣 青函隧道というのは北海道の道民の長い夢でありまして、あれで北海道は内地になる、トンネルで続ける、そういう長い間の夢を実現したので、私は、世紀の大事業であった、よくあれを、鉄建公団、国鉄の皆さん方、隧道に従事した方々、技術力については敬意を表するものでございます。
ただ、今の状態になって、採算という問題になりますと、御指摘のとおり確かに問題がありまして、これについては、今運輸省を中心にいろいろ検討していただいておるということであります。
-
○
梅田委員 政府の責任においてこれは起こった問題でありますから、しっかりとした財政措置をとっていただくように要求をしておきたいと思います。
次の問題は、軍事費のGNP一%枠の問題でございますが、これはたびたび議論されておりますが、総理は、軍事費の対GNP一%枠について、昭和五十一年の三
木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針についてはこれを守ってまいりますと繰り返し言っておられます。しかし、もともと三
木内閣の閣議決定というのは、「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」と述べておりまして、閣議決定自体が、「当面」とか「めど」とか、こういう含みを持っていると思うのであります。
そこで、総理にお伺いしたいのでありますが、総理が言われた、あなたが守っていくと言われた三
木内閣の閣議決定の「当面」となっているこれについて、総理大臣にとって「当面」とはいつまでと理解していいのか。あなたの総裁の任期が十一月までとか、総裁に再選されれば来年以降までずっと続くのか、それとも新年度の人事院勧告実施についての決定をするまでということなのか。もし最後のことを意味するのであったら、総理自身、あなたは何も守るということにならぬ、守るという約束をしていることにならぬと思うのでありますが、この点、はっきりとお答えをいただきたいわけであります。
また、「めど」というのは一%を超えないということでありますが、少しは超えても「めど」の中に入るというようにお考えになっているのか、これもはっきりとお答えを願いたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 三
木内閣の五十一年の閣議決定の方針を守ってまいりますと私は申し上げてきておるのでありまして、これからの経済の情勢、つまり分母と分子の関係等々非常に流動的な要素もございまして、今、当面をいつの時期に当てはめるかということはなかなか計算できない。ともかくこれを守っていく、こういう考えに立って実行していきたいと思います。
-
○
梅田委員 結局、予算
委員会で繰り返し繰り返しこの問題を議論してきたけれども、今のようなお答えですと、少しも問題ははっきりしないと思うのですよ。結局はなし崩しにつぶしていくのじゃないですか。今の御発言を聞いておりますと、人事院勧告は尊重すると一方では言っておられる。しかし、それをやればつぶれていく。これは矛盾しておりますが、そこのところをはっきりしないから、私は総理の態度というのは重大な問題だと思うわけであります。そういうことでは、いわばあなたの言われていることは信用ができないというように言っても差し支えがないと思うわけであります。
そこで、予算修正の問題に移りたいと思いますが、御承知のように、三月八日の深夜に自民党幹事長が野党側に口頭で回答した内容がございますが、これにつきましてお伺いをしたいと思うわけであります。
パートの労働者について給与の最低控除を二万円引き上げるといいますが、これは給与所得納税人員見込みの三千七五三十二万人の中で何人ぐらいが対象になっているのか、まずこれをお伺いします。
-
○竹下国務大臣 給与所得控除の最低限度額二万円引き上げによる影響対象人員三百万人程度、減収額百億円程度であります。
-
-
○竹下国務大臣 給与所得控除の最低控除額二万円引き上げによる減収額の試算、これが六十億円、それから控除対象配偶者要件の緩和、これによるものが七万人で四十億円、合計百億円、こういうことです。
-
○
梅田委員 総理にお伺いいたしますが、今お聞きのように、さらに減税を、予算修正の問題を話し合って二万円が出てきたわけだけれども、全体としては極めてわずかだと思うわけであります。これでは、パートの労働者が非課税にとどまろうといたしますと、時間給が五百円の人で言いますと年間四十時間ほどが余分に働けるだけですよ。月当たりにいたしますと三時間、一日当たりにいたしますとたった十分ですよ。今回、給与所得控除最低額は五十七万円となったわけでありますが、現行の五十万円は昭和四十九年度の改正でありまして、その当時と今日、昭和五十七年の消費者物価指数の対四十九年度の対比を出してみますと、一六五・二%なんです。ですから、その率でいきますと八十二万六千円で相当なんですね、長い間掘え置いていたわけですから。それから見ましても、今回の二万円というのは引き上げ幅が余りにも低いのではないか、もっと引き上げるべきだと思いますが、いかがでございますか。
-
○竹下国務大臣 給与所得控除額の水準を今回御審議いただいておる改正案で見ますと、この年間給与所得が三百万円の者の場合は百六・五万円、だから控除率にすると三五・五。五百万円の場合は二九・九。給与所得控除の最低控除額は五十五万円でございますから、これが控除率は四〇%という水準になります。これは御案内のように、いわゆる給与所得者の勤務に伴う経費を概算的に控除するという給与所得控除の本質から見ますと、これは相当な水準でございます。でございますから、この水準自体が相当に高いものである、とういうふうに御理解をいただきたい。
-
○
梅田委員 いや、実際の物価上昇からいくと極めて低いじゃないかというように言っているわけですから、これでは全然話にならぬです。一六五%物価が上がっているわけでしょう。その率でいったら八十二万六千円。余りにも低いという点を考えていただきたいと思うのですよ。
そこで、今回の話し合いの中で健康保険や児童扶養手当、酒税、物品税はそれぞれ各
委員会における審議の結果に従って措置するというように回答しておりますね。これは各
委員会の審議を待つということだそうですけれども、一体これはどういうことなのか。
委員会は自民党が多数でしょう。その自民党の態度はどうなのかで結論が異なってくるわけです。
そこで、自民党総裁としての総理にお伺いいたしますが、まず
委員会で審議して、修正が出てきたら修正に応じられるかどうかということですね。具体的には、酒税、物品税について言えば、これは増税を撤回するのか、実施時期をおくらすのか、あるいはもう修正しないでいくのか、三つに一つだと思うのですね。これはどうなんですか。健康保険について言えば、本人負担一割を撤回するのか、二年後の二割はやめるのか、それとも一割のままでいくのか、あるいは無修正でいくのか、これもどれか一つしかないと思うのですね。一体どうなんですか。
〔松永
委員長代理退席、
委員長着席〕
-
○竹下国務大臣 政府といたしましては、今提案しておるものを国会で御審議いただいておるわけでございますから、原案どおり年度内に成立することに絶えず期待感を持っておる、この一語に尽きると思います。
-
○
梅田委員 これは大蔵大臣や厚生大臣に尋ねるというよりも、自民党が野党に言われたわけですから、自民党の総裁としての、総理・総裁としての中曽根さんに私ははっきりとした御答弁を願いたいと思う。
-
○中曽根
内閣総理大臣 政府といたしましては、今提出して御審議願っている案が最善のものであると我々としては考えて、成立を期したいと思っております。
-
○
梅田委員 それはおかしいじゃないですか。それではなんでこんな回答をしたのですか。総裁としてこの回答をお認めになったのですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 もちろん、各党と我々の方で樽俎折衝をいたしましてそういうような合意が成立いたしまして、予算成立の上は各
委員会の動向等も注視いたしまして、その約束は誠実に守っていきたいと思っておるところでございます。
-
○
梅田委員 繰り返しになりますけれども、
委員会は自民党が多数でいらっしゃるわけだ。一つの政党として自由民主党が多数でおる。そこである結論を出す。自民党の多数の意思によって決まるじゃないですか。それに対して何一つ答えられない、具体的に答えられないということになりますと、結局、この自民党の回答なるものは中身のない回答だと言わざるを得ないわけであります。だから、我が日本共産党・革新共同は、この自民党の回答は受け入れられないということで拒否をしたわけであります。
今日の国民の暮らしを守るためには、まさに軍事費を削り、財界向けの予算を削って、それを国民の暮らしを守るために福祉の充実や教育予算を増額するとか、そういう方向へ予算を持っていく。ですから、重ねて私は、そういう方向で予算の修正を考えるということについて総理に要求をいたしたいと思いますが、いかがですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 何だかイデオロギー万能で何でも反対しているようなことを国民がどういうふうにお考えになるでしょうか。やはり国民の皆様方は、一歩でもいい方へ予算を改めてもらうように願っているのではないかと私は思っております。
-
○
梅田委員 イデオロギー万能、何ということを言うのですか。私はそんなことを言ってないですよ。むだな軍事費を削ってこっちへ持ってきたらどうですか、暮らしの方に持ってきたらどうですかと、具体的に言っているのだから。海外協力の問題でも、どんどんどんどんふやして、今日、中小企業対策費よりも多いわけでしょう。二倍以上になっちゃっている。ですから、そういうぼろもうけをしている企業に対する予算を削って、そして困っているところへ回したらどうだ。これが何がイデオロギーですか。国民の暮らしを考える立場に立っての要求じゃないですか。
時間がありませんので、最後に大型間接税の問題につきまして要求して御答弁を願いたいと思うのでありますが、きょう、大型間接税の問題につきましても、中曽根内閣が続く限り導入しないということは繰り返し答弁されたわけでありますけれども、そうだったら、政府税調の言うておりますところの課税ベースの広い間接税の検討、これが避けて通れないと言っているこの部分は、総理の大型間接税は入れないという発言によってもう返上されたというように理解いたしますけれども、いかがですか。
それから、今後、大型間接税以外の大型増税をやらないのかどうか。利子課税強化等々あるいは所得型付加価値税、こういった問題が言われておりますけれども、その点、いかがですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 大型間接税というものにつきましては、先般来御答弁申し上げたとおりでございます。
なお、「増税なき財政再建」、これを守っていくように努力していくつもりでおります。
-
○
梅田委員 大蔵大臣、税調のその部分は総理言明によって帳消しになったというように理解していいですか。
-
-
○竹下国務大臣 勉強は絶えず続けるべきものと、これは一向に変わりません。
-
○
梅田委員 結局、こんな重大なことを勉強勉強で、勉強して、最後やろう、こういう魂胆という気がいたしますが……
-
-
○
梅田委員 そういうことでは国民の暮らしは守れないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
-
○倉成
委員長 これにて
梅田君の質疑は終了いたしました。
この際、申し上げます。
本日、
上田委員質疑の際、
委員の指摘された点は重要な問題でありますので、今後さらに議論を深めていただきたいと存じます。
また、川俣
委員の提起された一事不再議の問題につきましては、
理事会において解明されましたことを御報告申し上げます。
これにて締めくくり総括質疑は終了いたしました。
以上をもちまして昭和五十九年度総予算に対する質疑はすべて終了いたしました。
―――――――――――――
-
○倉成
委員長 この際、日本共産党・革新共同
工藤晃君外二名から、昭和五十九年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。
これより、本動議について提出者より趣旨弁明を求めます。
工藤晃君。
―――――――――――――
昭和五十九年度一般会計予算、昭和五十九年度特別会計予算及び昭和五十九年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
-
○
工藤(晃)
委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和五十九年度予算三案につき、政府がこれを撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、提案理由及び概要を御説明します。
動議の案文は既にお手元に配付してありますので、簡単にいたします。
まず、撤回、編成替えを求める理由について述べます。
政府提出の来年度予算は、第一に、米レーガン政権への軍事的公約実行のため、軍事費を異常突出させた軍拡最優先予算であります。第二に、国民には減税よりもはるかに重い増税、増負担を押しつけるとともに、健康保険を初め生活のあらゆる面で社会保障の制度的改悪を一斉に進める予算であります。第三に、行政改革と言いながら、巨額の利益を上げている大企業への補助金を急増させるなど、財界、大企業のための浪費、放漫を新たに拡大する予算であります。
今日、財政再建の見通しが完全に立たなくなっておりますが、その最大の責任は、軍拡、大企業奉仕を聖域として守り続ける中曽根内閣の基本姿勢にあります。そして、財政危機の新しい段階に入ろうとしているとき、今後も財政破綻のツケはもっぱら国民に押しつけていけばいいという無責任さは、これ以上続けさせるわけにはいかないのであります。
以上述べたように、政府提出の五十九年度予算は、この年度間だけでなく、それ以後長期的に国民にとって極めて危険なレールを敷く内容を持っており、それだけにその根本的な編成替えが必要であります。
次に、編成替えの主な内容について述べます。
その第一は、軍事費の大幅削減であります。
F15戦闘機、P3C対潜哨戒機など正面装備増強費の全額削減、日米共同演習などの費用を中心としての後方支援費の大幅圧縮、対米思いやり予算の全額削減などにより、軍事費を一兆二千億円削減することであります。
今日、中曽根内閣の日米軍事同盟強化、シーレーン防衛など対米軍事的公約実行の軍拡路線が、国民と我が国の安全に寄与しないばかりか、米レーガン政権の限定核戦争構想のもと、我が国を核戦争の戦場とする危険を大きくするものであることは冷厳たる事実であります。今こそ国民の平和と安全を守るために、このような軍拡路線を実質的に中止させるにふさわしい軍事費の大幅削減が必要であります。
さらに、財政破綻がかつてない深刻な段階へ進もうとしているとき、すでに実質五兆円を超えるに至った軍事費の急増を推し進めることが無謀きわまりないことは明白であり、それが将来国民へもたらす災いを防止するためにも、軍事費の大幅削減が必要なのであります。
第二は、国民生活防衛のための予算を拡充することであります。
まず、所得税減税、住民税減税をそれぞれ一兆四千億円、六千億円に拡大し、二兆円減税を行うことにしています。さらに、酒税、物品税、中小企業法人税、石油税、自動車税、軽自動車税などの引き上げをやめることなどであります。
次に、健康保険制度の改悪案を撤回し、本人十割給付を守ること、年金、恩給の物価スライドを実施し、年金制度改悪案を撤回すること、児童扶養手当制度の改悪をやめること、私学助成の大幅削減をやめることなどの内容を盛り込んで、社会保障、教育、雇用・労働、農漁業、中小企業、生活基盤公共事業、地方財政対策な左に計二兆六千五百億円を追加することにしております。
第三は、大企業のための助成、浪費、放漫及び大企業、大資産家のための優遇税制などを徹底して見直すことであります。
まず、巨額の利益を上げている大企業への補助金、原子力船「むつ」という典型的浪費を生み出しているエネルギー対策費、米レーガン政権の世界戦略を補完しつつ急増している海外協力費などの洗い直しと縮小、公共事業の大型プロジェクトなどの縮小、その他の浪費、放漫の徹底的除去により、計一兆一千五百億円削減することにしております。
次に、法人税関係では、貸倒引当金、退職給与引当金、海外投資損失準備金など引当金、準備金、特別償却制度、受取配当益金不算入、外国税額控除など、所得税関係では、有価証券売買益原則非課税、利子配当分離課税など、大企業、大資産家向け優遇課税を徹底的に是正するなど、二兆五百億円の歳入増を見込んでおります。
なお、赤字国債の発行額は、さらに五千億円減らすことにしております。
以上、私は編成替えを求めるの動議について、提案理由と概要を説明しましたが、これが国民大多数が強く願う平和・軍縮、国民生活防衛と安定、地方自治の拡充、財政の民主的改革の出発点となることの確信を表明し、
委員各位の御賛同をお願いして、提案の趣旨説明を終わります。(拍手)
-
○倉成
委員長 これにて本動議の趣旨弁明は終わりました。
―――――――――――――
-
○倉成
委員長 これより討論に入ります。
昭和五十九年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。
討論の通告がありますので、順次これを許します。山下徳夫君。
-
○山下(徳)
委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十九年度予算三案について、政府原案に賛成し、日本共産党・革新共同から提出された編成替えを求める動議に反対の討論を行います。
御承知のとおり、近年における世界の同時不況という停滞する経済の中で、ひとり我が国は国民の英知と努力によって見事その荒波に耐え抜いてまいりました。この間、我が国の財政は、大量の公債の発行という非常手段によって、景気の回復と国民生活の安定向上を図ってまいったのであります。
しかし、公債発行残高の累増は財政の対応力を著しく弱める結果となりました。今や我が国の財政は、本来期待されている諸機能を十分発揮し得ない状態になっております。
したがいまして、今後の我が国経済の発展と国民生活の安定を揺るぎなきものにしていくためには、財政改革の推進を通じて、新しい時代の要諦にこたえ得る財政の対応力を回復させることが、ぜひともやり遂げなければならない喫緊の政策課題となっているのであります。
かかる観点から、以下、私は、五十九年度総予算に賛成する理由を申し述べます。
第一に、この予算が財政改革を一層推進するため、特に歳出構造の徹底した見直しを行うことを基本として編成されていることであります。
特に、中長期的な展望のもとに、医療保険や年金保険及び地方財政対策等、既存の制度、施策についても抜本的な改革に着手しております。まさに、二十一世紀に向けての本格的な取り組みとして高く評価されるべきものと考えます。
また、補助金等についても、すべてこれを洗い直し、制度改正を含めて積極的に整理合理化が行われております。
さらに、中央の十省庁の内部部局の再編合理化を断行するとともに、国家公務員の定員についても、増員を厳しく抑制し、三千九百五十三人に上る大幅な縮減を図っております。
この結果、一般会計予算の伸び率は〇・五%と、昭和三十年度以来の低い水準にとどまったのであります。
第二に、歳入面において、本年度一兆一千八百億円に上る所得税及び住民税の大幅減税を行うことによって、広く国民の願望にこたえることとしたことであります。しかしながら、現下の厳しい財政状況をこれ以上悪化させることのないようにするため、これに見合う財源の調達を赤字公債の増発によることは避けて、法人税、酒税、物品税等の税率の引き上げ等に求めることとなったことは、必要かつやむを得ざる措置であったと理解いたしたいと存じます。
以上の歳入歳出両面にわたる努力の結果、公債発行額は、前年度当初予算に比べ六千六百五十億円の減額を行い、公債発行依存度は二六・五%から二五・〇%と改善されたのであります。
第三に、この予算は、制度の改革を行うなど経費の合理化、効率化が図られておりますが、その中にあっても、社会的、経済的に弱い立場にある人々に対しては、重点的、効率的に福祉施策を推進していることであります。
すなわち、老人や身体障害者に対する在宅福祉施策等の充実、健康診査等の保健事業の推進、さらに、特例措置として年金額の改定を行うなど、きめの細かい配慮がなされているのであります。
第四に、国際社会における我が国の地位向上に伴い、各国の我が国に寄せる期待と要請は年々大きくなっておりますが、本予算はこれにこたえて特段の努力を行っているのであります。
すなわち、経済協力費は、開発途上国への協力を積極的に推進することとして重点的に財源を配分し、七・九%増となっております。中でもODA予算は九・七%増であり、我が国の国際的責務を果たさんとしているのであります。
また、防衛関係費については、他の諸施策との調和を図りつつ、質の高い防衛力の整備を行うこととしております。野党の諸君は、防衛関係費の伸び率六・五五%をもって突出と非難しておりますが、まず国家にとって大切なことは、独立を維持し、国民の生命財産と文化を守り、侵略を許さないことであります。
以上、私は、五十九年度予算について賛成する主な理由を申し述べてまいりましたが、幸い、今日ほど財政について国民の関心と理解が盛り上がっているときもございません。今こそ国民の総力を結集して、「たくましい文化と福祉の国」づくりを目指して真剣に取り組むべきであります。
私ども自由民主党・新自由国民連合は、国民の皆様の一層の御理解と御協力のもと、政府と一体となって、あらゆる困難に立ち向かい、渾身の努力を傾けて、国民の負託にこたえる覚悟であります。
なお、日本共産党・革新共同提出の編成替えを求める動議は、到底現実的な提案と言いがたく、反対であります。
以上をもって、私の賛成討論を終わります。(拍手)
-
-
○
矢山委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました政府提出の昭和五十九年度予算三案及び日本共産党・革新共同提出の同予算三案の組み替え動議のそれぞれに反対する討論を行うものであります。
政府予算案は、強者迎合、弱者切り捨て、国民生活犠牲の上に、アメリカの対ソ戦略の一環を担う軍備拡大を一層推し進めようとするものであり、絶対に容認できないものであります。
以下、反対する主な理由を四点にわたり申し上げます。
第一の反対理由は、不公平な税制改正と財政再建の展望が立たない予算となっていることであります。
国民が切実に求めてきた所得税減税等が七年ぶりに実施されるのでありますが、その財源確保のため酒税、物品税、自動車税等の大衆増税が行われ、減税効果は半減するのみならず、第二、第三の税金と言われる社会保険料、公共料金の負担を加えると、総計は実質負担増となるのであります。しかも、所得税、住民税において最低税率を引き上げる一方で、所得税の最高税率を七五%から七〇%に引き下げることなどは、高所得者優遇、低所得者層冷遇以外の何物でもなく、到底公平な負担を実現するための税制改正とは言えません。あまつさえ、減税と増税の抱き合わせは財政再建の課題に取り組む上で欠かせないと言いながら、特例国債の現金償還の約束をほごにし、借換債を発行しても財政再建の見通しが立たず、大増税を展望していると思われる政府予算案は、財政政策の完全な破綻を示すものであります。
第二の反対理由は、景気浮揚に積極的施策が見られず、内需主導型成長への転換が十分に期待できず、対外経済摩擦、とりわけ日米貿易摩擦の解消が困難な予算となっていることであります。
個人消費増大のための所得減税は実質的効果がなく、人勧、仲裁裁定による公務員等の賃金改定にも消極的、その上、公共投資関係費の減額では、景気刺激どころか、せいぜい中立でしかないのであります。これでは、来年度実質経済成長の九〇%近くを内需でとする政府の見通しは実現不可能で、貿易摩擦の激化は避けられないのであります。
第三の反対理由は、行政改革と財政再建を理由に福祉と教育へのしわ寄せを強め、国民生活の不安を高める予算となっていることであります。
健保法の改悪による被用者本人の給付率の切り下げ、高額医療費の自己負担限度額の引き上げ、児童扶養手当制度の改悪等、その与える打撃は深刻であり、弱い者いじめの行革予算そのものであります。福祉、教育費を国民に転嫁し、国の財政負担を地方自治体につけ回しするといった行革予算は容認できるものではありません。
第四の反対理由は、軍備増強予算であり、我が国の軍事大国化を進める危険な予算となっていることであります。
一般会計の伸び率を前年度比〇・五%に抑えるという超緊縮予算の中で、防衛関係費は四年連続の聖域扱いで、前年度比六・五五%という突出ぶりであります。ここ数年の防衛関係費の異常な伸びは、レーガンの対ソ戦略に積極的に加担する軍備増強のためのものであります。特に、防衛関係費の扱いが米国により実質的に決定されている状況を見るとき、防衛関係予算編成権の放棄の感を抱かざるを得ないのであり、文字どおりとめどもない軍拡の道を歩むのではないかと危惧するものであります。我が党は、かかる軍備増強を断じて容認することはできません。
以上が、政府提出の予算案に対する反対理由であります。
なお、日本共産党・革新共同提出の予算組み替え動議につきましては、賛否相半ばする内容が含まれている一方、改革に当たっての可能性と現実性の点で欠陥を持っているものであり、賛成できないことをつけ加えて、私の反対討論を終わります。(拍手)
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二見委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度政府予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
まず私は、予算修正問題について一言申し上げたい。
与野党伯仲を選択した国民の意思を受けて、我が党を初め、共産党を除く四野党が現実的な予算共同修正要求を提示し、この実現を迫ったのに対し、政府・自民党は給与所得控除の最低控除額を二万円引き上げ、パート収入者等の減税上積みを確約したにとどめてしまったのであります。
私は、このような政府・自民党の姿勢は、国民に対する背信行為であると断ぜざるを得ないのであります。
この際、私は、政府・自民党に対し、今国会においてパート収入者等の減税上積みのための立法措置を速やかに講ずるよう要求するとともに、四党の共同要求である大衆増税の撤回を強く要求するものであります。
また、私は、健保改悪についてはこれを行わないよう、改めて求めるものであります。
以下、昭和五十九年度政府予算案に反対する主な理由を申し述べます。
反対する理由の第一は、政府予算案が、当面の緊急の課題である景気回復に消極的な取り組みしかしていないことであります。
すなわち、政府予算案は、公共事業費を五十八年度当初予算に比べ、マイナス二%も削減したのを初め、所得税、住民税減税を平年度ベースで一兆円にとどめ、しかも、その財源を大衆増税に求めるなど、積極的な内需拡大策が全く見当たらないのであります。
内需の停滞が、失業、倒産を高水準のままに推移させ、また地域間、業種間格差の拡大をもたらしていることは御存じのとおりであります。さらに、対外的には貿易摩擦の激化をもたらし、また、景気回復のおくれが財政再建の障害になっていることも重大であります。
景気回復を速やかに実現し、我が国経済を安定成長軌道に乗せるためには、今こそ強力な景気対策が必要であり、これに背を向ける政府予算案を認めることはできないのであります。
反対する理由の第二は、国民的要求である所得税、住民税減税を大幅に圧縮した上、減税を逆手にとり、大衆増税を強行していることであります。
しかも、酒税、法人税などの増税の合計額が所得税、住民税の減税額を上回っていることは、見過ごしにできません。
政府が所得税、住民税減税額を圧縮した結果、家計における減税による負担軽減は、酒税、自動車税の増税、医療保険の本人負担の強化、国鉄運賃、消費者米価など公共料金の値上げによって帳消しにされてしまうのであります。
反対する理由の第三は、財政再建に名をかりて福祉、文教関係費を削減し、一方的に国民にその負担を押しつけていることであります。
医療保険制度の改革は、サラリーマンなど被用者本人の健康保険給付率を九割に引き下げ、高額療養費自己負担限度額の引き上げなど、国民に、負担増加を迫っております。
医療保険制度の改革が、このように単なる財源対策にとどまり、制度改革の中長期的な展望が示されないまま、医療費の国の負担を一方的に削減することは、到底理解しがたい暴挙と言わざるを得ません。
文教予算についても、同様であります。私学助成は、国民の教育を受ける権利を大きく保障してきたものであり、父兄の負担増につながる一律的な削減を図る前に、私学経理の公開、会計の厳正化を図りながら、補助配分基準の見直しなどを進めるべきであります。
反対する理由の第四は、財政再建について六十五年度赤字国債脱却の目標を掲げるものの、その方途と手順を全く示していないことであり、加えて、安易な赤字国債の借りかえを強行し、財政民主主義を踏みにじろうとしていることであります。
総理は、私の内閣の間は、大型関接税の導入はしないと言われていますが、赤字国債脱却の方途と手順が具体的に示されない限り、国民は増税への不安を解消できないのであります。
政府が早急に経済の安定成長、行財政改革、不公平税制の是正などを柱とする財政再建の手順と方途を明示されることを強く望むものです。
反対する理由の第五は、一般歳出の伸び率をマイナス〇・一%に抑え込みながら、防衛関係予算の伸び率を六・五五%と異常に突出させていることであります。
防衛関係予算は、二兆九千三百四十六億円に上り、そのGNP比も〇・九九%まではね上がりました。防衛力増強政策の歯どめであるGNP比一%突破も時間の問題となっているのであります。
周知のとおり、防衛関係予算のGNP一%以内という決定は、言うなれば軍事大国の道を歩まないという我が国の姿勢を内外に明らかにした指針であります。
総理は、国民の大多数が、GNP一%枠の厳守を求め、防衛予算の突出に厳しい反応を示していることを謙虚に受けとめるべきであります。
私は、あくまでも、防衛関係予算は、他の予算と同様に抑制するよう、強く要求するものであります。
以上、五十九年度予算三案に反対する主な理由を申し上げましたが、最後に、日本共産党・革新共同から提出されました組み替え動議に賛成できないことを付言して、私の討論を終わります。(拍手)
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木下委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております昭和五十九年度予算三案に対し、一括して反対の討論を行います。
我が党は、かねてより政府・自民党に対し、経済運営をこれまでの縮小均衡型から拡大均衡型へ転換するよう提唱し、その第一歩を踏み出すべく、来年度予算を「増税なき財政再建を目指す拡大切衡型予算」とするよう強く主張してまいりました。
しかるに、政府・自民党が、来年度予算においても、減税効果を相殺する増税の強行、公共事業費の削減、大幅投資減税の見送りなど、景気回復に逆行する措置を講じ、既にその破綻が立証された縮小均衡型経済運営をなおも踏襲しようとしていることは極めて遺憾であります。このような経済運営によっては、速やかな内需主導型の景気回復も、我が国経済の潜在成長力の顕在化も望めず、それに伴う税収の伸び悩みが「増税なき財政再建」を不可能とし、早晩、大増税が余儀なくされることは必至と言わなければなりません。
これが我が党が政府予算案に反対する第一の理由であります。
第二の理由は、総選挙中における増税を行わないとの公約にもかかわらず、減税財源確保の名のもとに、減税総額を上回る国、地方合わせて約一兆三千億円の増税を行おうとしていることであります。
減税との抱き合わせであれば、酒税、物品税、自動車関係諸税などの大衆増税並びに法人税、エネルギー課税などの企業課税の強化を行っても増税ではないとの中曽根内閣流の解釈は、国民を欺く詭弁と言わなければなりません。
我が党は、来年度予算を契機として、政府が今後増税による財政再建路線へ一層突入していかぬよう強く警告するとともに、国民への公約違反について政府に猛省を促すものであります。
反対する第三の理由は、臨調答申の指摘にもかかわらず、政府がこれからの財政再建をいかに進めていくかについての具体的手順と方策を全く明らかにせず、昨年政府公約をしたばかりの昭和六十五年度赤字国債脱却のための約一兆円の赤字国債減額を初年度から放棄していることであります。
これは、政府の財政再建に対する熱意と国民への公約の履行に対する責任感とがともに欠落していることを物語るものと言わなければなりません。
我が党は、政府が、今後の財政再建についての具体策を早急に明示し、国民が抱く将来に対する不安感、不透明感を払拭するよう、強く求めるものであります。
反対する第四の理由は、公務員の大幅純減、補助金の整理、不公正税制の是正などの行財政改革がいずれも不十分なものにとどまっていることであります。
行革与党を自認する我が党が、行財政改革推進のための具体策として、退職者不補充措置の拡大による公務員定数の約一万七千人純減、特殊法人に対する補助金の削減、貸倒引当金等の見直しなどを強く主張してきたにもかかわらず、政府がこれを軽視したことは遺憾であります。行革三昧を語る中曽根総理が、今後その言に十分値する本格的な行財政改革に速やかに着手されるよう、強く求めます。
反対する第五の理由は、社会保障の理念や展望を明らかにしないままに、健康保険制度の改悪など福祉の後退を図っていることであります。
今回の政府の健保改正案は、今後の医療保障制度の中長期的なビジョンを何ら示すことなく、しかも国民の選択を問うことなく、一方的に医療保険の根幹を崩すものにほかなりません。
これに対して我が党は、本人給付率の削減撤回、高額療養費自己負担限度額の引き上げ見送り、国庫負担の導入による退職者医療制度の創設及び医療費のより一層の適正化などを政府に強く要求したのでありますが、政府がこれらの要求に十分こたえず、問題解決を先送りにしたことは極めて遺憾であります。
我が党は、今後あくまでも健保改悪を阻止するため、全力を傾注する決意であることを特に強調しておきたいと思います。
反対する第六の理由は、政府が臨調答申の指摘に反して国債費の定率繰り入れ等の停止、住宅金融公庫の利子補給金の繰り延べ、住宅・都市整備公団補給金の予算計上見送りなどの財政技術的操作による表面的な歳出抑制を行っていることであります。
このような一時的ないわば緊急避難的な措置は、財政体質改善の見地からは何の意味もないばかりか、むしろ財政の実態を国民の目から覆い隠すという意味で極めて問題であり、到底容認できません。制度の根本的改革につながらない実質的赤字国債の発行は今後行わず、既応の措置は早急に解消するよう求めるものであります。
以上が、反対の主な理由でありますが、最後に、先日与野党間で協議され、自民党が野党側に約束した給与所得控除の改正、健保問題の措置、公共投資の追加などの諸点については、誠実にその約束を履行するよう政府・自民党に強く求め、また、内容的に賛同しがたい共産党提出の組み替え動議には反対であることを明らかにし、私の反対討論を終わります。(拍手)
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瀬崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提案の五十九年度予算三案に反対し、日本共産党・革新共同提案の予算組み替え動議に賛成の討論を行います。
我が党は、一月の党首会談において、軍拡路線から軍縮断行の路線に転換して軍事費を大幅に削減すること、二兆円の所得減税と社会保障改悪計画の撤回など国民生活防衛を貫くこと、大企業本位の仕組みや財政浪費にメスを入れて効率的な国民奉仕を行政改革の最大の基準にすること、以上の基本方向で予算編成を根本的に再検討するよう強く求めました。この方向こそ、国民の期待にこたえる道であります。ところが、政府の予算案は、それとは正反対に、軍拡、福祉切り捨て、国民負担増を強行するものであり、断じて認めることはできません。
以下、政府予算三案に反対する主な理由を述べます。
反対の第一の理由は、対米配慮を最優先させて軍事費を前年度比六・五五%増と、四年連続で異常突出させていることであります。
後年度負担を加えれば実質五兆円を上回る軍事費のとめどない増強は、軍拡こそ国民生活破壊と増税の最悪の元凶であることを一層鮮明に促したのであります。中でも、正面装備費は九・六%も急増し、要撃戦闘機F15十七機、対潜哨戒機P3C八機など前年度以上の調達量となっています。我が党の不破
委員長は、米第七艦隊の倍にもなるP3C保有計画は、米軍の対潜作戦を日本に肩がわりさせるものだと指摘しましたが、一千海里シーレーン防衛を日本の国策として八〇年代中に達成するよう求めた米国防報告を肯定した中曽根首相の当
委員会での発言は、まさに我が党の指摘の正しさをみずから証明したものであります。
政府予算案は、日本をアメリカの限定核戦争構想にますます深く組み込んでいく極めて危険な道であります。我が党の予算組み替え案の柱となっている軍事費一兆二千億円削減こそは、日本の平和と安全、国民生活を守る上で最大不可欠の課題であることを改めて強調するものであります。
反対の第二の理由は、福祉、教育など国民生活関連予算を軒並み大幅に削減し、減税財源を口実にした大増税など国民負担増を強行していることであります。
特に重大なことは、今後長期にわたる低福祉高負担をねらう制度改悪が次々と進められていることです。健康保険は制度発足以来の
大原則である本人十割給付を崩すなど、社会保障に攻撃が集中されており、中曽根首相の言う戦後政治の総決算が福祉制度の総破壊であることを如実に示したのであります。その他、国民生活にかかわる予算の削減はメジロ押してあります。
他方、歳入では、減税財源を口実にして、酒税などで一兆円の増税を国民に押しつけようとしています。そればかりか、中曽根首相は、「増税なき財政再建」は五十九年度は守ると述べて、六十年度以後の大増税路線を示唆したのであります。
軍拡と大企業本位の大盤振る舞いによる財政危機のツケを国民に押しつける本予算案は、絶対に容認できません。
反対の第三の理由は、巨額の浪費を温存したまま、民間活力の活用の名目で新たな財界奉仕が組み込まれていることです。
私は、公共事業費削減の中で本四架橋など大型公共投資は急増しており、それらが主として大企業を潤していること、同時に、大企業や高級官僚天下り会社による官公需の大幅ピンはねなど、巨額な浪費についても具体的に追及しました。不破
委員長が指摘した欠陥原子力船「むつ」問題を初め、これらの国策的部門での浪費にこそメスを入れ、特定大企業への補助金や開発援助費を削減するのが真の行政改革であります。
反対の第四の理由は、既に破局的相様を呈している財政危機を一腰深刻化させる予算案となっていることです。
特に、政府が六十年度からの第二次財政危機を赤字国債の借りかえで乗り切ろうとしていることは、我が党の
工藤議員が指摘したように、財政危機を破局に導くものであります。
私は、ここで、議会制民主主義の根本にかかわる重大な問題を指摘しておきます。
一つは、予算
委員会の運営が特定の政党間の協議によって左右された問題です。
予算修正はまさに予算
委員会の任務であり、修正問題の取り扱いは当然本
委員会
理事会において協議されるべきであります。二月二十九日の
理事会には日本共産党・革新共同から軍事費一兆二千億円削減を含む組み替え要求が、翌三月一日の
理事会には社会、公明、民社、社民連四党の共同修正要求が出されたのであります。自民党の回答は中間報告の形で六日の
理事会に示され、我が党は再検討を求めましたが、その後、この修正をめぐる協議は予算
委員会
理事会では実行されないまま、加えて、予算
委員会の運営までが、
理事会においてではなく、国会の機関を離れた特定の政党間の協議によって左右され、予算
委員会がこれに追随したのであります。国権の最高機関はあくまで国会であり、特定の政党間の協議をその上に置くことは許されないことであります。
いま一つは、日本共産党・革新共同提出のロッキード事件に関する証人喚問動議の
委員会提出が、
理事会において封じられた問題であります。
昭和五十一年十一月二日の灰色高官に関する政府報告で、いわゆるロッキード資金三十ユニットを受け取ったと指摘された
田中角榮、二階堂進、
加藤六月の各議員は、直後のロッキード問題調査特別
委員会でこれを全面的に否定し、例えば二階堂議員は、同
委員会で、私は天地神明に誓って金銭を受け取った事実はありませんと弁明した上、さらに昭和五十六年八月四日の議院運営
委員会においても、天地神明に誓って金銭を受け取った事実はないとの上申書まで提出したのであります。
一方、本年二月二十三日全文が公表されたロッキード(丸紅ルート)事件判決では、ロッキード資金三十ユニットの授受に関し、証拠を挙げて次の事実を明らかに認定することができるとして、金銭授受の事実のあったことを認定しています。
こうした判決文が公表されているにもかかわらず、金銭授受を否定する関係議員の弁明を放置することは、かつて、衆参両院議院決議及び衆参両院議長裁定において、ロッキード問題に関する真棚解明と政治的道義的責任の究明は国会の責務とされていることからも、絶対に許されません。
ロッキード調査特別
委員会が設置されていない今日、予算
委員会がその任に当たるべきであり、我が党は、三十ユニットの授受に関し、政治的道義的責任を解明するため、来る四月十三日、当
委員会に二階堂、
加藤、
田中の各氏ら七人を証人として喚問することを求める動議の提出を強く要求しました。この動議の
委員会提出が本
委員会
理事会によって事実上封じられたことに対し、私は強く遺憾の意を表明するものであります。
最後に、日本共産党・革新共同は予算組み替え動議を提案しておりますが、我が党の予算組み替え動議こそは、日本の平和と安全を守り、国民生活の向上を図り、真の財政再建への出発点となるものであります。
私は、我が党提案の組み替え動議に賛成、政府提出予算三案に重ねて強く反対して、討論を終わります。(拍手)
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○倉成
委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○倉成
委員長 これより採決に入ります。
まず、
工藤兄君外二名提出の昭和五十九年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
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○倉成
委員長 起立少数。よって、
工藤晃君外二名提出の動議は否決されました・
次に、昭和五十九年度一般会計予算、昭和五十九年度特別会計予算、昭和五十九年度政府関係機関予算の三案を一括して採決いたします。
右三案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
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○倉成
委員長 起立多数。よって、昭和五十九年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました昭和五十九年度予算三案に関する
委員会報告書の作成に、つきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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○倉成
委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○倉成
委員長 これにて昭和五十九年度総予算に対する議事は全部終了いたしました。
この際、一言ごあいさつを申し上げます。
去る二月十日、昭和五十九年度総予算の審査を開始いたしまして以来、延べ一カ月余にわたる審議を行ってきたのでありますが、その間、終始真剣なる論議を重ね、本日ここに審査を終了するに至りましたことは、ひとえに各党
理事並びに
委員各位の御理解と御協力のたまものであります。
委員長といたしまして衷心より感謝の意を表する次第でございます。
ここに、連日審査に精励されました
委員各位の御労苦に対し深く敬意を表し、感謝の意を申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手)本日は、これにて散会いたします。
午後七時十分散会
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