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1984-03-01 第101回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月一日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    甘利  明君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    大村 襄治君       海部 俊樹君    金子 一平君       近藤 元次君    自見庄三郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       高鳥  修君    玉置 和郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       平沼 赳夫君    平林 鴻三君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 一成君    稲葉 誠一君       上田  哲君    大出  俊君       島田 琢郎君    清水  勇君       武藤 山治君    矢山 有作君       湯山  勇君    草川 昭三君       斉藤  節君    木下敬之助君       小平  忠君    塩田  晋君       工藤  晃君    佐藤 祐弘君       瀬崎 博義君    藤木 洋子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房地域改善対策         室長      佐藤 良正君         公正取引委員会         事務局長    妹尾  明君         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         科学技術庁計画         局長      赤羽 信久君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房会         計課長     國分 正明君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省体育母長 古村 澄一君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生大臣官房審         議官         兼内閣審議官  古賀 章介君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         厚生省保険局長 吉村  仁君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         食糧庁長官   松浦  昭君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電波監理         局長      鴨 光一郎君         労働省労働基準         局長      望月 三郎君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 台   健君         自治大臣官房審         議官      吉住 俊彦君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第三局長  秋本 勝彦君         日本専売公社総         裁       長岡  實君         日本国有鉄道常         務理事     須田  寛君         参  考  人         (住宅・都市整         備公団総裁)  大塩洋一郎君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     平沼 赳夫君   上村千一郎君     自見庄三郎君   奥野 誠亮君     平林 鴻三君   武藤 嘉文君     近藤 元次君   山口 敏夫君     甘利  明君   小平  忠君     塩田  晋君   三浦  久君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   甘利  明君     山口 敏夫君   近藤 元次君     武藤 嘉文君   自見庄三郎君     上村千一郎君   平沼 赳夫君     石原慎太郎君   平林 鴻三君     奥野 誠亮君   塩田  晋君     小平  忠君   藤木 洋子君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 祐弘君     田中美智子君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  3. 矢山有作

    矢山委員 まず最初に、経済協力の問題からお伺いしたいと思います。  経済協力といいましても、きょうお伺いしたいのはいわゆる政府開発援助ODAの問題でありますが、どうも最近のODA実績から見ておりますと、新中期目標達成が難しくなったのではないかというふうに感じております。  そこで、今日までの実績とさらにこれが達成する見通しについて、それぞれの担当のところからまずお伺いいたします。
  4. 柳健一

    柳政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の新中期目標でございますが、一九七六年から八〇年までの五カ年間の実績約百七億ドルを、八一年から八五年までの次の五年間に倍以上にするという目標でございます。ただいままでのところ、初年度である八一年と第二年目でございます八二年、二年間の実績が出ております。最初の年が三十一億七千万ドル、二年目が三十億ドルそこそこでございまして、ただいまのところ二年の結果しか出ておりませんが、目標全体から眺めますと、かなり困難な点も出てきておるわけでございます。  ただ、何と申しましてもこれは五カ年間の計画でございますので、まだ二年間の実績だけでその見通しについて確たることを言い得る段階ではないと私ども考えておりまして、今後も新中期目標のもとで拡充努力していきたい、こう考えておるわけでございます。
  5. 矢山有作

    矢山委員 二年間の実績で大体六十二億ドル弱の実績でありますが、まだ二年間済んだばかりだからまだまだ大丈夫だ、達成できる見通しだ、こう言うのですが、しかし、このテンポでいっておると、私は達成できなくなるんじゃないかと思うのです。ですから、達成できる、できると言いながら、五年目になったときにやれませなんだということのないようにしていただかぬと、これは国際公約ですからどうもならぬので、事務当局発言だけでは責任の所在が将来はっきりしませんので、あなたの方から御答弁いただきます。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、これは倍増というのは日本も国際的にもそういうことを言っておりますし、そのために今努力を重ねておるわけでありますが、今局長から言いましたように、ことし、五十九年度は九・七%と全体の予算の中では異常に突出するほど伸びたわけでありますけれども、しかし、それでもなおかつ、今のこの伸び率をそのまま横並びに……(私語する者あり)
  7. 倉成正

    倉成委員長 お静かに願います。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 来年、六十年以降やっても、確かに倍増にはならない。恐らく六十年度二〇%くらいの伸び予算を伸ばさないと倍増ができないのではないか、こういうふうに思っております。全体的に見ますと、今の財政状況の中からなかなか容易ではないと思いますが、しかし、我々としてはこれをあきらめないで、これからもひとつ最大努力は重ねていきたい、こういうふうに思っておるわけです。
  9. 矢山有作

    矢山委員 政府は、とかく一応目標を立てて、やります、やりますという空約束が多いのですが、あなたが今おっしゃったように、この調子でいくと八五年度は二一%以上組まなければならぬわけでしょう。それでやれるのかというのが一つは非常に問題だと思うんですよ、国際公約であるだけに。  そこでお聞きしたいのですが、五十七年だったと思うのです。五十七年の十月ごろに、DACの対日審査があったと思うのです。そのときに、日本ODA倍増計画達成に対して大きな懸念が表明をされまして、それでこのODA拡充などを最優先させるべきではないかというような要請が強く出されたというふうに私ども聞いておるのです。そこで、そういうことが事実あったのか、また、そういう要請まで出てきておるわけだから、それにはっきりこたえられるのか、責任ある答弁を願いたいのです。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国際的には日本もそういうことを言っておりますし、国際機関等でも日本経済協力、特にODA拡充充実に対しまして強い期待があらゆる機会に表明をされておりますが、しかし、日本努力しておるということもそれなりに評価もされておりまして、五十九年度の九・七%ODAを伸ばしたという点については、アメリカを初め先進国、さらに開発途上国等もこれを評価する意見も随分あるわけでありますから、私たちはこれからも目標に向かって、とにかく財政状況が厳しいわけですが、最大努力は重ねていかなきゃならぬ、これが日本国際責任を果たしていく当然の道である、こういうふうに考えておるわけです。
  11. 矢山有作

    矢山委員 なぜこういうふうに二年間の実績の結果、達成が危ぶまれるような状況になったのか、その理由ははっきりしていますか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 去年もことしもですが、予算編成の中では、特に五十九年度の予算では、全体の財政がこういう緊迫した状況にある中では大変な御配慮をいただいて、五十九年度も九・七%、こういうふうに伸ばしたわけですから、日本政府としましてはそれなり努力を行って、その成果はそれなりに国際的にも評価されておる、そういうふうに考えております。
  13. 矢山有作

    矢山委員 国際的に評価されておれば、DACあたりでそういういろいろな注文が出てこないので、国際的に評価されてない、しかも今後日本が公約した中期目標達成が危ないぞと思っておるからそういうような意見が出てくるんだから、余り楽観しない方がいいんですね。  それで、ちょっと答弁が私の今聞いたのと外れておるのですが、どうしてこういうふうに実績が上がっていかないのか、その理由を聞いたわけです。
  14. 柳健一

    柳政府委員 お答え申し上げます。  二年間を通じまして共通一つの大きな理由は、国際開発金融機関に対する出資金伸びなかったことでございます。  その理由は、国際開発金融機関に対する出資先進国が集まりまして合意して決めるものでございますが、これの合意がおくれてきたということでございます。  それから、第二番目の理由は、特に八二年度についてでございますが、支出実績目標ドル建てで暦年でやっておるわけでございますが、実は第一年目に比べまして円ドルレートが十三%円に不利に変わってしまいましたので、それが大きく影響している。裏から申し上げますと、一般会計で賄っております二国間援助に関する限りは、最初の年も二年目も相当の伸びを示しておる、こういうことでございます。
  15. 矢山有作

    矢山委員 この点は、後でちょっと関連して聞きます。  そこで、もし達成できなかった場合にはというので、何か中期計画目標が一応達成できたんだという名分を繕うために、いろいろ外務省あたりで今後のやり方を検討しておる、つまりODA中期倍増計画について何か修正をやったらいいんじゃないかというような話も漏れてきておるようなんですが、その点、どうなんですか。
  16. 柳健一

    柳政府委員 そういう事実はございません。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、まだ二年の結果しか出ておりませんので、全体を判断するのは時期尚早と考えておるからでございます。
  17. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、現在のところは、五カ年計画じゃ無理だから七カ年に延ばすとか、あるいは国際機関向けを除いて二国間の援助だけで倍増を目指すとか、そういった修正の検討は始めてない、こうおっしゃるわけですから、そういうふうに理解をしておきます。  それから、もう一つ伺いたいのは、レーガン政権対外援助政策の基本的な考え方というものが従来よりかなり大きく変わってきておるのじゃないかと思うのですが、この点は御存じでしょうね。どういうふうに変わっておるというふうに受け取っておられますか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的にアメリカ海外援助政策がそう大きく変わったということが言えるかどうかは、ちょっとはっきりしない面もありますが、しかし、少なくとも今の状況を見ておりますと、アメリカ多国間の援助ということでなくて、どちらかというと二国間の援助ということですね。そしてそれはいわばアメリカ世界戦略といいますか、そういうものに裏打ちをされた二国間援助、そういうものにやはりウエートがどちらかというと置かれる姿勢が強くなってきておる、そういう感じは率直に言って持っております。
  19. 矢山有作

    矢山委員 そのとおりだと私も受け取っておるのです。やはり外務大臣がおっしゃったように、これはアメリカ世界戦略的な立場からこの援助を考えておるという点は、はっきり出てきたと思いますね。ですから、それにつれて国際機関に対する出資、つまり国際機関を通ずる援助よりも二国間援助の方がよりアメリカ考え方を貫きやすい、つまり戦略的にいい、こういう判断になっておる、そういう受け取り方は私も事実だと思うのです。  そのことは、やはり今までの経過で見ると、レーガン大統領に立候補したときの共和党の綱領だとか、それ以来のヘイグ国務長官国連演説だとか、あるいはレーガン大統領のフィラデルフィアの演説だとか、あるいは近くは昨年の二月ですか、シュルツ国務長官あたりの下院の外交委員会の証言で出ていますね。私はそれらをずっと見てみて感ずるのは、あなたがおっしゃったように、今や東西対立の中でアメリカ世界的な立場からソ連に対する戦略展開をやっておる、そういう中での援助というものをはっきり位置づけておると思うのですね。そこで、このアメリカ援助に対する従来と際立った考え方転換、それが私は日本援助にも色濃く反映しておるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけです。  その理由を申し上げますと、まず八一年の五月に鈴木レーガン共同声明が出されましたね。これを私は読んでみたのですが、こういう仕組みになっておると思うのです。鈴木総理とそれからレーガン大統領両者はともに、ソ連軍事力増強、アフガニスタンへの軍事介入等第三世界におけるソ連の動きに憂慮の念を示した、ともに憂慮の念を示した、その立場に立って、共通認識に立って、世界の平和と安定の維持のためには開発途上国の政治的、経済的及び社会的安定が不可欠であることを相互に確認しておるわけです。そして今度は鈴木総理は、日本政府が新中期目標のもとで政府開発援助拡充に努め、また、世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化していく、こういうようにはっきり言っておるわけです。はっきりこの共同声明でうたっておる。  それを私は受けたんだと思うが、「一九八〇年代経済社会展望指針」の中で「経済協力拡充」という部分がありますが、そこでどういうことを言っているか。いろいろ言っておりますが、「西側一員としての立場に立ち、今後ともアジア以外の諸国に対する経済協力も積極的に推進する。」こううたっておるわけですね。  これを考えてみますと、私が今言いましたこの共同声明、さらに中曽根総理はこの日米共同声明を再確認した、そしてその上に立って日米運命共同体だ、こう言っておるわけです。そこでそういう流れの中からこういう「展望指針」の中にこう打ち出されてきた。そうして見ると、日本援助というのは明らかにアメリカ世界的な対ソ戦略に追随をした援助という方向転換をしてきた、こういうふうに私は思わざるを得ないのです。我が国の従来の援助基本方針は、御存じのように、つまり人道的な立場相互依存関係に基づく援助という、まさに普遍的な援助理念に基づく援助だったわけですね。それが大きく転換をしておる、そういうふうに私は思わざるを得ないわけです。  したがって、こういうようなことになると、今後の日本援助というものは、アメリカ世界的な戦略を背景にしながら、いわゆる紛争周辺国援助と言われておるようですが、そういうような援助がどんどんふえていかざるを得ない、そういうことになると思うのですよ。結果はどうなるでしょうか。私は、そういうことをやることが逆に紛争を助長するし、東西対立米ソ対立関係をさらに激化し、そしてしかも被援助国国民の利益にはならぬ、こういうことになるのじゃないかと思うのです。  したがって、アメリカ戦略展開がどうあろうと、少なくとも日本平和国家を標榜しておるわけですから、その基本的な立場に立つなら、援助基本方針というものはあくまでも人道的な援助相互依存関係を樹立する、そういう立場に立ち返るべきじゃないか。アメリカに追随した、アメリカ世界戦略を補完するような援助、そういう方向に動いていくということは私は間違いだと思う。外務大臣、どうですか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに今矢山委員のおっしゃるように、アメリカがいわゆる多国間援助といいますか、国際機関に金を出し渋るという傾向はあるわけで、IMFとかIDAとか、そういうものに対してアメリカがなかなか金を出さないということで、日本としてもアメリカとの交渉の中で、もっと積極的にそうした国際機関多国間援助を進めるべきじゃないかという日本の主張は伝えておるわけなんです。そうして日本アメリカとの間で経済協力等についても話し合っておりますが、しかし、あくまでもアメリカアメリカ経済協力立場があるわけですし、日本日本経済協力立場があるわけで、私はシュルツ国務長官経済協力問題について話し合ったときも、日本のいわゆる人道という立場に立つ、同時にまた相互依存という立場に立って行ってきた今日までの経済援助の枠組みは将来にわたって変えませんということを表明をしてきておるわけでございます。そういう中で日本はこれまでも経済援助あるいはまたODAも続けてきておりますし、今後ともその方針は変える考えは毛頭ないわけであります。  ただ、日本の場合は、今国際的に非常に大きな発言権も持ってきておる存在にもなってきた、力も出てきたというだけに、アジアだけではなくて世界各国開発途上国からも日本に対する援助要請が強い、そういうこともありまして、そうした世界的視野に立った、もちろんアジア中心ですが、世界的視野に立って援助というものは進めていかなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。
  21. 矢山有作

    矢山委員 防衛問題と同じで、こういった問題になると政府がいつもおっしゃるのは、アメリカアメリカ立場でやるんだ、日本日本立場でやるんだ、だから基本線は変わることはないんだ、こうおっしゃるのです。しかしながら、現実の問題としてはやはり基本線は変わりつつあるんじゃないですか。変わらなければ、何でわざわざ「展望指針」の中で、こういう私が先ほど言ったようなものがどんと出てくるんですか。「西側一員としての立場に立ちこと、西側一員ということを極めて強調するわけですね。西側一員を強調するということは、東西対立関係、その中心米ソ対立でしょう、その中にあって西側一員を強調するということは、そしてそういう方向援助を持っていくということは、やはりアメリカの基本的な立場に基本的には従っていっているということなんでしょう。  あなた方、いつも言うときは日本日本立場だ、こうおっしゃる。それだったら「展望指針」でわざわざこんなことを言わなければいい。だから、あなた方の言うのは、そのときどきの国会の質疑を何とか切り抜ければいいという姿勢なんですよ。それはけしからぬと思いますよ。事実、そういうふうに動いているんだから。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもう全くの誤解でして、日本の場合は援助方針はあくまでも人道、相互依存、これは私も、国会での外務大臣としての演説でも、去年、ことしにかけてはっきりと申しておりますし、これまでの長い日本一つ指針方針というものは、これまでも一回も変えたことはありませんし、今後とも変えない。そして、アメリカにもちゃんと日本援助立場基本方針というものははっきり言ってあるわけでございます。  日本西側一員であるということは、今の世界の情勢の中において、日本一つのあり方ということから見れば、外交的な面においてもあるいはまた自由経済という圏内における経済の面においても、そういうことは言い得るわけであります。そういうことですから、結局、サミット等においても日本が積極的に参加してこれを表明しておるということでありますから、西側一員ということが、必ずしもアメリカにべったりだ、経済援助政策もアメリカと一体となってやっているんだ、こういうふうに考えられることは全く短絡的でありまして、援助については、日本日本立場を毫末もこれを揺るがせるという考え方はありませんし、今後ともないということははっきりと明言しておきます。
  23. 矢山有作

    矢山委員 この議論は幾らしても私はすれ違いになると思うのです。私が幾ら言ったって、いや、アメリカ戦略的な立場を踏まえた援助に切りかえましたと、あなた方は口が腐っても言えないだろうと思う。だからその程度の答弁になると思うので、これでやっておりますと水かけ論になりますから。  最近、外務省は「経済協力の理念」とかなんとかというのを出されましたね。それの解説というのですか、「経済と外交」で経済協力局の政策課長、当時の政策課長だと思うのですが、八一年当時の松浦という人が書いているのですね。それを私は見たのですが、その中で、最近力を入れておるのは紛争周辺国に対する援助だということをはっきり言っておるわけですよ。紛争周辺国に対する援助要請というのはアメリカの方から盛んに出されてきたんだということは、今まで新聞読んでいれば、はあやはりアメリカ紛争周辺国への援助をやかましく言っているなというのは、だれだってみんな知っているわけですよ。  じゃ、紛争周辺国への援助というのが最近どういう状況になっておるか、ちょっと御説明願いたいのです。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 具体的には局長から答弁させますが、確かにおっしゃいますように、日本としても、例えば矢山さんのおっしゃるのはカリブ、中南米、あの辺の周辺国、ジャマイカとか、そういうところに対する日本援助等について今お触れになろうとしておるのじゃないかと思いますが、確かにそういう周辺国に対して、これはアフリカにおきましてもあるいはアジアにおきましても協力をしておるわけでありますけれども、あくまでも人道と相互依存という立場に立ち、同時にまた世界の平和に日本が貢献をしていかなければならないという考えに立ってやっておるわけでございまして、日本援助方針を変えていっておるとか、そういうことでは全然ないということを申し上げておきます。
  25. 柳健一

    柳政府委員 ただいま委員の御指摘になりました紛争周辺国、当時の松浦政策課長の書いた文書につきましてのお答えを申し上げます。  一九七九年にソ連がアフガニスタンに武力侵入をいたしましたときにこの概念ができたわけでございまして、ただいままでのところ、紛争周辺国と私どもが概念いたしておりますのはパキスタン、それからタイ、それからトルコ、この三カ国だけでございました。いずれも先ほど大臣が申し上げましたように、世界の平和と安定に貢献するための援助ということで、近隣に紛争国がありますとどうしてもその余波を受けまして、経済的、政治的に不安定になりがちなものでございますから、私どもは、そこに経済援助をすることによって安定化を図っていくという考え方から、この三つの国についてやりました。  ただ、トルコにつきましては、OECD全部の加盟国の協調のもとにいたしまして、もう昨年度で援助は終わっております。  それから、パキスタンにつきましては、いまだに侵略が続いておりますので、援助を続行しております。  それから、タイにつきましても、インドシナの問題がございますので、これも引き続き援助をやっている。これが現状でございます。
  26. 矢山有作

    矢山委員 私もさっと見ただけだから詳しいことはわかりませんが、私がちょっと見てみて、例えばタイに対する援助は今でも続いておるのですが、これが五十三年に一遍に二倍ぐらいになっていますね。このときは例のベトナムのカンボジア侵入があったときでしたね。それからパキスタン、五十四年に三・七倍ぐらい。これはおっしゃったアフガニスタン侵入を契機にそれだけふえた。それから、トルコは五十六年に九・六倍に一挙にふえた。これは御存じのように、NATOの中で一番弱い腹と言われておるのがトルコですね。したがって、これを強化しようというのがアメリカ対ソ戦略上の重大な課題なんです。これが五十六年に一遍に九・六倍にふえた。それから、ジャマイカには五十六年の三月にやっているでしょう。五十八年六月にもやっているんじゃないですか。それから、ホンジュラスは五十八年五月ごろにやっているんじゃないですかね。それからエルサルバドルもやっているんだと思いますがね。それからドミニカもやっているようですね。これは五十八年ごろじゃないですか、ホンジュラス、エルサルバドルともに。それからドミニカも同じです。同じ時期にこれもやっているんだ。ハイチもやっているんですね。  ところで、人道的な援助だ、世界平和のためだと言うのなら、中米、カリブ海諸国にやる場合でも、なぜニカラグアにやらないのですか。ニカラグアはその後も八〇年に援功が停止になっています。その後もニカラグアの方からは援助を頼むといって申し出ているはずですよ。ところが、これを拒否しているんだ。なぜかというと、アメリカ対立関係にあるでしょう。だから拒否したんじゃないのですか。だから、あなた方が人道的だとか平和主義の立場に立ってだとかいろいろおっしやるのなら、この中米、カリブ海地域でなぜニカラグアだけ拒否するのですか。あそこだって大変に困っているんだ。人道的に、世界平和のためにやるというのなら、ニカラグアだって同じに扱ったらいいんじゃないですか。私はその点がちょっとおかしいと思うのですよ、外務省の言っていることと実際にやっていることと。どうなんですか。
  27. 柳健一

    柳政府委員 お答えいたします。  私ども援助を出しますときには、委員御案内のとおり、その国との相互依存関係、人道的考慮を考えて出すわけでございますが、同時に私どもは、出した援助資金なり物資が効果的、適正に使われるような状況にあるということを十分考えて出しておるわけでございます。ですから、ある被援助画が政治的にも非常に不安定で、援助資金なりまたは援助で出かけた人たちが安心して援助の仕事に携わることができないというような状況のもとにあった場合には、それはしばらく見合わせるとか、またはおくらせるということがございます。
  28. 矢山有作

    矢山委員 あなた、そんな出たとこ勝負のような答弁をなさるけれども、じゃ、エルサルバドルは安定しているんですか。ホンジュラスは安定しているんですか。ニカラグアも同じじゃないですか。安定してないじゃないですか。効果的に使われるようにと言う。じゃ、今までの海外援助は皆効果的に使われてきたのですか。余り効果的に使われてないから、こちらは一生懸命経済援助をやっておるのに、例えば東南アジアの方に総理が行くと、反日運動が盛り上がったり、いろいろな問題を起こしているのでしょう。だから、一概に効果的に使われておるというふうに断言できないのじゃないですか。  きょうは、時間がないから個々の問題について効果的に行われてませんよということを指摘できないけれども、例えばインドネシアの賠償の問題にしたって、ソウルの地下鉄の事件にしたって、いろいろ探してみると、必ずしも効果的に使われてない。悪くすれば反動的な権力を支えることになったり、あるいは権力を握っておる者に懐へ金を突っ込ませるようなことになったり、いろいろな問題が起こっているでしょう。かつての台湾の曾文渓ダムだってそうですよ。だから、そんな言い逃れのような答弁をなさってはだめですよ。どうなんですか、それは。外務大臣
  29. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本援助につきましては、多少は問題が出たところもなきにしもあらずだ、私はこういうふうに思います。しかし、全体的に見れば、世界、特に開発途上国の安定と民生の向上には、これはもう非常に貢献をしてきた、こういうふうに思います。  これは東南アジアにおきましても、かつて非常に日本援助政策についての批判もあったこともありますけれども、その後日本援助というものが地道に続いた結果、今日におきましては、大体、我々が東南アジアの諸国を回っても、日本援助というものに対して非常に感謝をしておる、これはもう政府だけじゃなくて、国民の中にもそういう空気は浸透しております。私は、それだけやはり日本援助というものは、開発途上国の発展には、全体的に見れば非常に大きく貢献をして今日に至っておる、こういうふうに考えておりますし、この援助基本方針、そしてまた援助の拡大は今後とも貫き、拡大をしていかなきゃならぬ、こういうふうに私は確信をしておるわけであります。
  30. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 先ほど先生の御指摘ございました中南米の諸国でございますが、エルサルバドルに対しましても、人道的な立場から水害援助は八二年にも行っております。ニカラグアに対しても同様でございまして、ただ開発援助は、最近は紛争中でございまして……(矢山委員「やってないでしょう、ニカラグアは」と呼ぶ)公的にできないということで、両方ともやっておりません。ただ、人道的な援助はニカラグアに対しても八二年にやっております。(矢山委員「いつ」と呼ぶ)八二年でございます、水害援助でございますけれども。(矢山委員「それからやめてるね」と呼ぶ)はい。
  31. 矢山有作

    矢山委員 だから、いろいろおっしゃるけれども、これは個々のケースに当たって論議をしなきゃ、私はすれ違いになるおそれがあるということは十分承知しております。しかしながら、今議論してみても、やはり人道と平和的な立場に立ってやっているんだということを盛んに強調されるけれども、紛争周辺国への援助というのは、背景にはアメリカの強力な要請が常に出されてきておる。それに応じて紛争周辺国援助というものが拡大をされておるというのは、やはり事実的な経過じゃないですか。それで、しかもその場合にはっきりするのは、八二年には水害援助をやられたとおっしゃったけれども、ニカラグア等に対しては、ジャマイカやホンジュラスやあるいはエルサルバドルなんかとは違った扱いになっておるということも、これは事実なんです。だからそういった点は、私は特になぜこういうようなことを言うかというと、少なくとも日本平和国家平和国家と言っているんだから、アメリカ援助方針の変わったことにつられて日本援助方針が変わっていくというようなことが絶対にあってはならぬ。そのことはかえって、先ほど言ったように、紛争を助長することになるし、対立関係を激化することになるからということを私は申し上げているわけです。  そこで私は、援助を考える場合に、やはり二国間援助というのは問題があると思うんですよ。一番いいのは、理想的なのは、国際機関を通じた援助というのが一番いいと考えるのですが、アメリカは、先ほどもあなたもおっしゃったように、やはり援助アメリカ世界的な戦略から立てるということから、二国間援助の方に重点がかかって国際機関への援助が軽くなっておる、後退しておる、これはあなたがおっしゃったとおりなんです。私は、やはり援助のあり方としては、二国間よりも国際機関を通じての援助というのがあるべき姿だと思うんですが、どうなんですか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、これまでも戦後ずっとそういう方向で続いておりますが、二国間援助、それから多国間援助という形で援助政策は先進国の間で行われておりますが、これは私は、この形はそれぞれ特色がありますし、それぞれまた有効である、こういうふうに思っております。両々相まって一つの大きな役割を果たしていくんじゃないだろうかと思うわけで、ただ、二国間援助だけですべて援助政策がそれに集中するということになると非常に弊害も出てくるし、多国間援助ということだけではなかなかその国の考え方というものが徹底しないといいますか、通らないという面もあって、これはやはり両々相まってということがいいんじゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけであります。  アメリカなんかが言っているのは、多国間援助をしますと、どうしても受ける方の側が、結局どこの国から受けるということじゃなく、多国間ということになるわけですから、その辺に非常に何か靴の裏からかいているような感じを持っているのじゃないか、そういう感じが出てくるということで不満が出てきておるわけなんで、我々もやはり多国間援助というものは日本の場合は大事だ。ですから、日本の場合も二国間援助とともに多国間援助というものを同時並行的に進めていくのが、これが、これまでやってきましたけれども、今後も援助政策としては正しいあり方ではないだろうか、こういうふうに考えるわけです。
  33. 矢山有作

    矢山委員 最後におっしゃった多国間援助というのが正しい行き方だというのは、私もそう思うのです。  ただ、私が恐れるのは、先ほどあなたも指摘されたように、アメリカというのは戦略的な立場からこの援助を考え出した。したがって、二国間に重点を置いて多国間援助を減らしてきている。アメリカ国際機関への出資多国間援助を減らしていけば、先ほどおっしゃったように、先進国間の拠出の問題でやはり日本も減らしていかざるを得なくなるのじゃないか。日本だけが突出させるわけにいかぬでしょう。そうなると、援助を今後目標達成に向けていく場合に、多国間援助よりも二国間援助に必然的に重点がかかっていかざるを得ないという構成になっていくわけです。こういう筋道になっていくわけです。それじゃ大変だ、それじゃますます日本援助というものは人道的な援助だとかそういった基本的な立場をずるずると離れて、アメリカ援助方針方向にこの足並みをそろえていくことになる危険があるのじゃないか。現実にあるでしょう。私は短絡的なことを言っていない。じっと筋道を立てて言っているのですよ。そう思いませんか。  だから、それをなくするためには、やはり援助というのは自国の意向をその被援助国に押しつけるだけじゃだめなんですから、もちろん二国間援助も必要だが、それのみに重点を置いて自国の意向を他国に押しつけるということは、これは改めなければならない。そうすると、やはりアメリカにも言うことはきちっと言って、本当の世界平和のためには多国間援助というものを重視しなければいけないんだということを日本政府立場として、あなた方、かなり今日本は大きな力を持っているとおっしゃるのだから、それを言うべきじゃないですか。最後にこれを聞いておきます。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは全くおっしゃるとおりだと思います。やはり多国間援助といいますか、国際機関に対する拠出でアメリカの占めるウエートというのは世界で一番大きいですから、そのアメリカがそれを締めできますと、どうしても連動して第二番目の日本もこれは抑えていくということにならざるを得ないわけなんで、そうすると、その国際機関からの援助総額というものがぐっと落ちてきておる。そうすると、全体のバランスをとるためにはやはり二国間援助日本なんかもウエートを置かざるを得ないことになってくるわけですが、それはやはり援助政策全体を非常に歪曲することになると私も思います。したがって、やはりアメリカに対しては我々は言うべきことはきちんと言わなければならぬ、こういう立場日本アメリカに対して、国際機関に対する拠出あるいはまた多国間の援助というものはこれまでどおりきちっとやってもらいたいということを、日米の首脳会談あるいは我々外相会談のときも必ずと言っていいほどこれは主張して、いわばアメリカにそういう点では反省を促しておるというのが現実の姿でございます。そして、これは今後とも我々はこの姿勢は変えずに続けてまいる、こういう決意であります。
  35. 矢山有作

    矢山委員 外務大臣、非常にいい人で、率直に問題点をお認めになったわけだから、しかもあなたは将来の総裁候補でもあるし、大いに頑張って日本の主張を通すところでは通すということでやって、この援助というものが曲げられた方向に行かないように、大きな期待を持って見ております。  そこで、経企庁長官のお時間の都合があるようですから、ちょっと順序を変えまして、今度海外経済協力基金に五十九年度に赤字補てんのために二百九億を交付金として予算化されておりますね。私は、今の海外経済協力基金の仕組みを見ておりますと、これはこのままのやり方でやっていると赤字は幾らでもふえていくと思うのですね。今後この対策をどうする考え方でおられるのか、ひとつちょっと承っておきたいのですが。
  36. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御指摘の点は、援助のための資金コストが相当高くなったということと、それから援助の条件がソフト化されまして、こちらの負担がある程度重くなったということ、それから金額全体が非常に大きくなっておりますから、したがって赤字なども相当大きな金額になりつつございますが、さてこれをどう解決するかということにつきましては、今関係各省の間で意見を調整中でございます。
  37. 矢山有作

    矢山委員 これは私が制度の中まで立ち入って言わぬでも、長官よく御存じだから。このままじゃふえていくだけでしょう、赤字が。そうすると、早急にこれは対策を立てなければいかぬと思うのです。やり方としてはいろいろあるのでしょうが、赤字が出たから、赤字が出たたびに埋めるというやり方をするのか、それともそういう制度上の欠陥を直していくのか、あるいは制度はそのままにするというのなら、積極的にもう初めからこれを予算化していくのか、これはやはり援助に対する取り組みの姿勢としては大きな相違が出てくると思うのですね。その点、どうお考えですか。
  38. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かに解決方法といたしましては御指摘のような点もあると思うのです。しかし、ほかにもいろいろ案がございまして、幾つかの案を持ち寄りまして、関係各省で将来抜本的な対策をどうすればよろしいかということにつきまして今調整中でございますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  39. 矢山有作

    矢山委員 私、恐れますのは、こういう状況で推移しますと、「展望指針」の中にも色濃くにじみ出ておりますが、援助について選別ということが非常に強く出てくるのじゃなかろうか、そうなった場合を私は心配するわけですよ。やはり援助というのは高度の政治的な判断でやるという要素もありますから、それができなくなってくるというような欠陥も生まれできますから、この問題については今検討中だということでありますからこれ以上申し上げませんが、ぜひ援助中期目標達成に支障にならぬように、なるほど日本平和国家として世界の平和と安定のために援助問題に正しく取り組んでおるという姿勢を示すために御努力いただきたいと思います。どうぞ、結構です。  それから、引き続いてお伺いいたします。  外務大臣、一月の訪米のときにシュルツ国務長官といろいろ経済協力の問題で話し合われたように、私どもは新聞報道でしか承ることができませんが承っておりますが、一体具体的にどういう話し合いがなされたのでしょうか。お教えをいただければと思います。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、日本のいわゆる経済援助政策とアメリカ経済援助政策についてお互いに話し合ってみようじゃないか、こういうことが実はシュルツさんの方から前々から提示をされておりました。したがって、予算の原案も大体固まったわけでありますので、今度行きました機会に、日本援助関係の予算はこういうことになっておる、同時にまた、予算援助方針はこういうことだということを私の方からも基本的に説明をしました。シュルツさんも、これに対してアメリカとしての援助基本方針についての説明があったわけでございます。  その際、やはり議論になったのが、先ほどから申し上げましたように、アメリカはどうしても国際機関拠出という援助方式あるいはまた多国間援助ということよりは、むしろ二国間の援助にウエートを置くというアメリカ考え方が出てきておったものですから、私は、それは世界全体に対する援助のあり方としては反省をしてもらわなければならぬのじゃないか。やはりもっと多国間の援助というものにアメリカが力を注いでほしいということを強調したのでございますが、同時にまた、日本援助基本方針というものは、これは前々からアメリカに言っておりますが、これはこれまでのとおりであるし、今後ともこれを変える考えはないのだということを強調して、具体的には事務当局同士で、援助を具体的にアメリカ日本がどういうふうにやっておるか、そして、場合によっては日本アメリカが相共同してやらなければならぬ援助もあるのじゃないか。これはタイとかフィリピンでやっておりますが、日米の共同の援助プロジェクトがあります。そういうものについてもさらに、これがうまくいけば積極的に日米共同のそうした援助プロジェクト等は推進していこう、そういう点については事務当局間で話をもう少し詰めよう、こういう話をいたしておるわけであります。
  41. 矢山有作

    矢山委員 ではお聞きしたいのですが、最近フィリピンに対する援助というのがたびたび表に出てくるわけです。これについては、アメリカとの間の話でも私は出ておるのじゃないかと思うし、またいろいろ報ぜられるところによりますと、アメリカ側からもフィリピン援助はかなり強く要請してきておるのじゃないかというふうに私ども承知をしておりますし、これは一体どういう扱いにすることに決まりましたか。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本とフィリピンの関係は、御承知のように、同じアジアの国々として大変深い関係にあります。特にフィリピンはASEANの一国としての立場を持っておる。わけでございます。したがって、日本はこれまでフィリピンに対しましては年々多額な経済援助をいたしております。無償供与、それから政府開発援助、円借款とか、そういう積極的な援助を進めております。これは相当高い水準に達しておるわけでございますが、そのフィリピン自体が、今マルコス政権の非常に不安定な状況から経済、金融面でも動揺が起こっておる、こういう中で、確かにフィリピンから日本に対する協力の呼びかけがあるわけですが、日本としては今我々が進めておる援助政策、そして援助の具体的な今の実施の状況、これを踏まえてそれを進めるということで話し合っておるわけでありまして、具体的に今ここで特別に日本がフィリピンに対して何を新しくやるというような立場といいますか、そういう状況にはないというふうに考えております。
  43. 矢山有作

    矢山委員 何か今までのフィリピンの出方というのは、かなりの多額の援助を要求しておるようですし、それから商品借款を強く言ってきているようですね。どうされるのですか、これは。  それからまた、公害が起こるというので住民の反対が出ておると言われるサンロケ発電ダムのプロジェクトがありますね。こういうのは一体どうされるつもりですか。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 後で具体的に局長からも答弁させますが、フィリピンに対しては、基本的にはフィリピンの経済、金融、財政、それが行き詰まっておるというか、非常に困難な立場にありまして、これに対して日本も何らかのフィリピンの民生の安定、経済の回復のために役に立ちたい、こういう気持ちはもちろん当然持っておるわけでございますが、それじゃどういうことでこれが協力ができるかということになりますと、なかなか困難であります。今そこで、たとえばIMFがいろいろ調査をして結論を出すのを待っておるわけで、そうした結論が出てフィリピンのこれからの再建計画等が明らかになれば、その段階に応じて日本としての援助を、今やっております。その援助の中で、協力すべき点はその枠内における協力を進めていこう、その一つの協力の方法として、今までのプロジェクトに対する援助を商品借款という形に切りかえよう、こういうことも今検討をいたしておることは、これはもう事実であります。
  45. 柳健一

    柳政府委員 サンロケ・ダムにつきましては、昨年中曽根総理大臣がフィリピンを訪問されましたときに援助要請がございまして、ただいま調査を実施しておる段階でございまして、円借款の要請はございません。
  46. 矢山有作

    矢山委員 私は、今御答弁を伺って、いろいろ私どもが報道で承知しておるよりも、外務省はかなり慎重なんだなという感じを受けました。  私は、商品借款を供与するという場合は、従来日本が商品借款供与としてとってきた一つの原則がありますね。それはフィリピンに私は当てはまらぬと思うのです。それから、先ほど言ったサンロケの発電ダムの建設の問題は、今私が言ったように、非常に地元住民の間に問題があるようだから、そういった問題を踏まえ、さらに長期にわたるマルコス独裁政権のもとで、アキノ氏の暗殺以来非常に政治的にも不安定な状況になっていますから、そして国民のマルコス政権に対する批判も実際行動にも出ているわけですから、だから、こういう中でフィリピン援助を軽々しくやるというのは、私は非常に問題を残すと思うのですよ。いわゆるマルコスの長期独裁政権を支える、こういうことになっちゃって、フィリピン住民の立場からすれば、私はかなり食い違ったものが出てくるんじゃないかと思うので、その点は私は極めて慎重な扱いをすべきだし、むしろこのフィリピンの現状なら、フィリピン援助を私はやるべきじゃないと思いますよ。どうですか。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 約束したことは、これはやっぱり二国間の約束ですから果たしていかなきゃならぬ、こういうふうに思います。  同時にまた、フィリピンは何といいましてもアジアの一国、ASEANの一国でありますし、日本とのこれまでの深いつながりから、あの国が今政治的には確かに不安定な面もあると思いますが、これが経済あるいは金融、財政といった面で崩壊をする、そして国民の生活が危殆に瀕するということは、これは我々としても見るに忍びないことでありまして、一マルコス政権というよりは、むしろフィリピンのそうした国民生活のこの苦しい状況からの脱皮というか安定のために、何らかやっぱり日本がやるべき援助は、協力はしなきゃならぬのじゃないか。これはアジアの隣国としてしなきゃならぬのじゃないかと思いますが、しかし、それはおのずから限界というのがあるわけでありまして、今の日本がフィリピンに約束した枠の中でこれをもっと有効的に使えるということになれば、その方向で改善といいますか、考えていくということではないだろうか、こういうふうに思っておるわけであります。その辺のことは、我々としても十分配慮しながら、全体的に見て慎重に取り扱っていきたいと考えております。
  48. 矢山有作

    矢山委員 これは今結論が出てないわけですから、すぐ具体的に議論するというわけにまいりませんが、おっしゃったように、私は、フィリピンの現状からして、慎重な取り扱いを特にお願いをしておきたいと思います。  それからもう一つは、私はちょっと大きな関心を持って新聞を見たんですが、五十九年度から援助米の輸出を打ち切ることを決定したと、こういって発表になった。これは私は、援助米を従来受けておった方の国からすれば、食糧事情が好転しておるわけじゃないし、大変な問題だと思うんですよね。これに対する考え方はどうなんですか。外務省にも関係あると思うし、両方から。
  49. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 お答えいたします。  実は、過剰米の輸出処理ということで今まで対処してまいったわけでございます。昭和五十四年度からおおむね五年にわたって処理するということを、これを当初から過剰米処理計画の一環として取り進めてきたところでございまして、これが五十八年度で予定どおり終了するということでございますので、五十九年度打ち切りを決定というのではないので、その点、御理解をいただきたいと思うのです。(矢山委員「五十九年度、何」と呼ぶ)五十九年度に打ち切りを決定したということではございませんで、五十四年度から五十八年度五年間で過剰米を処理するということを原則として当初から言っておることでございます。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の余剰米の輸出といいますか、援助方針については、今農林大臣が答弁したとおりですが、日本のいわゆる食糧援助計画、食糧援助方針は、今後ともこれを維持し、そしてこれをむしろ発展をさせていきたい、こういうふうに思っております。  ただ、食糧援助の内容として、日本の米を使うか、あるいはまた日本の米はもう使えないということになれば、ビルマ米であるとかあるいはタイ米であるとか、むしろそういうものが使えることにもなるわけでございますから、その点は、むしろああしたASEAN諸国の米の余っておる国々にもかえって喜んでいただくことにもなる、こういうふうに思うわけで、食糧援助計画は、これはアフリカなんかでも今の食糧は大変危機的な状況にあるわけですから、この食糧援助計画は進めていこうというのが日本の考えです。
  51. 矢山有作

    矢山委員 私はやはり、米が余っておるから、はけ口に困っちゃってどうにもならぬから余った米は援助してやろう、そして今度足らなくなったら、もうおれのところも足らなくなったからやめたんだ、これはまさに手前勝手な援助なんで、私はそういうことは絶対にやるべきじゃないと思いますよ。そして農林大臣は、打ち切ったわけじゃないとおっしゃる。打ち切ったわけじゃないといったって、いままでやってきた食糧援助というのは、現在の日本の米の需給から見たら、できないことははっきりしておるんだから、今までの農林省が考えてやってきた援助はできないんだ。そこで、先ほど言ったような手前勝手な援助で、余ったからやろう、もう足らなくなったからやめたじゃ済まぬ。それはまさに外務大臣御指摘のとおり、済まぬと思う。  そこで、外国米を手当てをして援助に回そうという、これは私は、国内ではどうか。減反政策を推し進めて、国内の米の需給は逼迫してきた。今まで余り米を援助しておった。これを打ち切ってしまったらぐあいが悪い。じゃ国内米でやろうといったってできない。外国米を買って援助、これは私は、国内の農業政策との展開の関係でも非常な重要な問題を含んでおると思いますよ。きょうはこの問題を論議の焦点に置いておりませんから言いませんけれども、また機会をかえて私はそのことは申し上げたいと思うけれども、こんな矛盾したやり方というのはない。  だから、私は、援助米の打ち切りということについては、このままにすれば、恐らく相当な国際的な批判を受けると思う。したがって、外務大臣がおっしゃったような方途をとるということもやむを得ない場合があるが、しかし、農林大臣に考えてもらわなきゃいかぬのは、国内の米の生産というものをこの際根本的に考え直す、そういう立場にもこの援助一つを取り上げてみても立たされておるのじゃないかと思うのです。そうでしょう。
  52. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 お答えいたします。  先生おっしゃるのはよくわかるのですが、実は、このまま先生か言われるように、それじゃ国内で米を生産してということになりますと、実は国内価格ですと、精米一トン当たりで三十四万円ぐらいにつきます。ところが、国際価格ですと約五万九千円、六万円ぐらいのものでございますので、余りにも膨大な財政負担ということになりますので、先生の言うのはわかりますが、国内米をやるということは、ちょっと農林水産省としては考えられないことでございます。
  53. 矢山有作

    矢山委員 私の言った論点は、そういうことを言っているのじゃないのですよ。そういう状態が生まれてきた。一方、国内では需給逼迫という状態になっておる。そういう中での今後の日本の農政の展開が減反一本やりでいていいのか悪いのかということを言っているわけで、必ずしも私は、日本の国内でつくった米を何でもかんでも山さにゃならぬ、そんな議論をしておるのじゃないのですよ。これはちょっと後ろの方から何かぶつぶつ言っているようだから、そういうふうなことを言っているのじゃないということを申し上げておきます。  それから、もう一つお伺いしておきたいのですが、レーガン政権が、日本政府の資金援助による韓国の浦項製鉄所の建設など、そのほかにもあるようですが、海外の大型のプロジェクトに対して、日本援助世界的な設備過剰を助長するというので、これはかなり批判をしておるようですね。OECDでもやっておる。それでまた、この問題で日米間で公式に協議しようじゃないかということが言われておるというのですが、この点は何かこの前行かれたときに、小此木通産大臣との方の話か何かあったのかどうか、あるいは外務省ではそういうことに対してどういう対応をしようとしておるのか、ちょっとお伺いしたいのです。
  54. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 私は直接その話を聞いておりませんけれども、そのような批判があるいは事務方の方にあるかもしれませんので、その事実関係を説明させます。
  55. 柴田益男

    ○柴田政府委員 ただいま大臣から答弁申し上げましたように、事務的にはいろいろの場で非公式に、米国が鉄鋼プロジェクト等に対する援助について懸念を有しておるというようなことは承知しております。  以上でございます。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が訪米したとき、その他私のルートではそういうことはまだ聞いておりませんし、今事務当局にもちょっと問い合わせましたけれども、外務省に対して正式なアメリカ政府からの話はないということであります。
  57. 矢山有作

    矢山委員 それは、私はないのが当たり前だろうと思うのですよ。しかし、これは新聞報道の誤りということになるのかもしれませんが、私どもが拝見しておるところでは、OECDの会議アメリカやカナダあたりからこの問題が持ち出されたということを見ておりますし、それから小此木さんがこの間行かれたときに、この問題で話し合いがあるんじゃなかろうかということも言われておったわけですから、私はその知識に基づいて言っておりますから、そういうことはないとおっしゃるなら、これは私の思い過ごしであり、思い過ごしをするようなネタを与えた新聞報道の誤り、こういうことになるのだろうと思うのですが、それはそれでいい。  しかし、もしそういうことがあるとするなら、私はアメリカというのは身勝手だと思いますね。全く身勝手だと思う。韓国に対する経済援助をやれやれと言って、あなた方はやれと言われたからやったんじゃないとおっしゃるかもしれぬけれども、かなり韓国援助というものに対していろいろと言ってきて、そして日本は韓国に対する援助をやった。その中での浦項製鉄所の援助なんかが出てきているわけですね。今度は自分のところの方が、そういった中進国の輸出がふえてくると自分のところが都合が悪い、これは日本援助するのはけしからぬ。こんな手前勝手なアメリカのやり方というのはないですよ。つまりアメリカというのは、防衛だろうが経済援助だろうが、すべては自分の国益中心です。どこの国だって自分の国益を中心に考えないところはないと思うのですが、国益中心だ。だから、言いたいほうだいのことを言っているわけですね。それに対してあなた方はずるずる引っ張られて、引っ張られているのはけしからぬじゃないかと言うと、いや、日本日本の独自の立場でやっておると、こうおっしゃるんだが、しかし、全体の流れはそういうふうに行ってしまっている。  私は、繰り返しになりますが、ひとつ外務大臣、先ほどおっしゃったように、あなたは言うべきことは言うというのだから、言うべきことは言って、ただ言いっ放しで向こうが聞かないでけ飛ばされて、ああ仕方がありませんというのじゃ、これはまたもとのもくあみですから、大いにひとつ、こういうようなアメリカの身勝手な行き方に対しては十分言うことは言って、日本は少なくとも日本立場、私は国益という言葉は嫌いですが、日本の民益を守るためにひとつ御努力をいただきたいと思う。民益を守るため、同じです。  そこで、この質問はこれで終わりまして、もう時間が限られてまいりましたので、赤字国債の借りかえの問題についてひとつお伺いをいたします。  御案内のように、政府は五十年以降赤字国債を出していますが、その後毎年度巨額な発行をしてきたわけであります。現在、残高はどのくらいになっておるのか、また十年たったら償還することになっておったのですが、六十年から六十五年ぐらいまでの各年度の償還額はどうなっておるか、承りたいと思います。
  58. 山口光秀

    山口(光)政府委員 赤字公債、特例公債の残高は、五十八年度末で約四十七兆、五十九年度末では約五十四兆になると見込まれます。  それから、六十年以降の要償還額でございますが、申し上げますか、数字を。
  59. 矢山有作

    矢山委員 よろしい。大体、あなたの方の資料をいただいていますから。
  60. 山口光秀

    山口(光)政府委員 六十年が二兆二千八百億でございます。
  61. 矢山有作

    矢山委員 政府は、これまでたびたび、赤字国債は財政支出の消費的経費だから、これは孫子の代にまで負担を押しつけてはならぬ、したがって満期到来時には現金償還をすると、繰り返して言ってきたわけですね、毎年毎年。また、毎年度の赤字国債発行の根拠法にもちゃんとそれを明記をしてきた。ところが、今回これをほごにして、借りかえをやらなければならぬ、こう言う。一体どういうことなんですか。
  62. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、国会の議論を踏まえまして、その国会からの御要請に基づいて、毎年度特例公債発行に関しましては借りかえ禁止規定を設けて今日まで至ったことは、これは御指摘のとおりでございます。いよいよ六十年、いま主計局長から申し述べましたように、言ってみればいよいよ本格的な償還期に入る。もとよりこの償還そのものは、これをお持ちの方には現金償還をしなければならぬ。その手段はどうするかということで、財政削減か負担増か借りかえかというのを去年あたりから、矢山さんともこうして議論をし出した。そこで、私どもそれを財政制度審議会の方で御相談いただきまして、これは借りかえせざるを得ないという結論に到達いたしまして、今日この借りかえをお許しいただく財確法を今国会で御審議をいただいておるさなかである、こういう経過であります。
  63. 矢山有作

    矢山委員 私は、そういう説明は無責任だと思いますよ。今まで現金償還ということについては、たびたび国会で毎年のように議論されてきておるわけですね。そしてまた、その現金償還ができるようにするための財源確保をどうするんだ、償還計画を出せと、こういう議論がしょっちゅう繰り返された。ところが、そのたびにあなた方は、いや、現金償還でやるんだ現金償還でやるんだ、今度はとうとう現金償還ができそうになくなってくると、財政審議会の御意見を聞いてと、こうなってくるわけだ。これは余りにも無責任過ぎやしませんか。今まであなた方が言ってきたのは、まるでうそですね。
  64. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは御理解いただいているところでありますが、あくまでも現金償還はいたします。その現金償還をする手段として、いわゆる借換債を含む債券の発行によるか、負担増によるか、歳出削減によるかということで、この借換債を発行することを現金償還の手段としてお許しをいただく、こういうことであります。
  65. 矢山有作

    矢山委員 あなた、現金償還の言葉をそんなところへ持ってきちゃ困りますよ。今まで言われてきた現金償還というのは、借換債を出して現金償還するという意味で議論してきたのじゃないでしょう。期限が来たものを現金償還できますかと、借換債は発行しないという前提で議論をしてきたのですよ。それを、現金償還ができなくなったからいろいろ財政審で意見を聞いた、こういう方法がある、借換債をやって現金償還と、それはあなた、全然議論が違います。今まで言ってきたのは、借換債は出さぬのだ、赤字国債は十年で返すのだという前提のもとに、現金償還ができるのかできぬのかという議論をしてきておるのですよ。そんな、話をすり違えてはいけませんよ。だから大蔵大臣ずるいと言うんだ、あなた丁寧なんだけれども。
  66. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、いわゆる借換債は発行しない、こういうことで一年一年、この特例債の発行に際しましては、法律にそうちゃんと書いて、そうして御審議いただいたわけです。したがって、六十年にいよいよその償還期が参りました、いろいろな努力をいたしました、しかし、やはり現金償還をするその手段として、その借りかえ禁止規定というものは今後、その都度努力規定によっていろいろな工夫はいたしますものの、設けないことにいたしましたし、そして従来発行したその借りかえ禁止規定もこの際消させてくださいと、こう言って今お願いしているわけです。だから、現金償還をするための手段であって、しかしおまえが言うことは、借りかえはしないという前提がその前に発行の段階からついておったではないか、それはそのとおりです。
  67. 矢山有作

    矢山委員 そうでしょう。だからあなた、うまいこと言葉の先でごまかしちゃだめだと言うのです。私が言いたいのは、この借換債をやらなければ、そして現金を調達しなければ現金償還ができないのだということは、いつごろわかったのですか。たった去年ですよ。去年の審議までは、やらない、やらない、現金償還だと言ってきたのですよ。いつわかったのですか。
  68. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いつわかったとおっしゃいますと、それは、踏み切ったのは財政審の御答申もいただいた後踏み切ったわけでありますが、やはり国会の議論等を重ねておる間に、歳出削減もこれ以上はなかなか難しい、そうしてまた、それによって負担増を求めることも難しいということになると、第三の手段としてこの借換債によらざるを得ないという、いつわかったか、いつ決断したかとおっしゃれば、今年度、御審議いただいている五十九年度予算編成の段階において決断をした、こう答えざるを得ません。
  69. 矢山有作

    矢山委員 まあ、そう言われると、そうですか、ことしになって決断したのですかということになりますが、そんな目先の見えないことで財政運営がやれるのですか。しかも、あなたの部下には、官僚の中でも最優秀という部下がそろっているのでしょう。その部下を持っておって、去年までは借換債はやりません、現金償還でやりますんじゃと言ってきて、どうも危なくなっちゃった、ことしになってから、これはできそうにないので財政審にかけて、財政審の助けをかりて借換債をやるのだ、こんな目先の見えないような財政運営をやっておって、国民に対してその責任が果たせるのですか。私は、もう不思議でかなわぬね。  しかも、今度発行するという赤字国債、これは建設国債と同じような六十年を考えているのでしょう。すると、今まで言ってきた、建設国債と赤字国債の区別はここにあるのだと言ってきたことは、あなた、まるで消し飛んでしまうじゃないですか。建設国債も赤字国債も一緒になっちゃう。そういうふうに解釈していいのですか、同じなんだと。
  70. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは歴史的に見ますと、最初特例公債の発行をお願いするというときには、借りかえ禁止規定はつけないでお願いをした。しかし、こういうものは、先ほどおっしゃった論理と一緒でございます、資産も残らない、いわば借金だから、後世代にツケを回すのだから、一度一度やはり厳しさを身をもって立証するためにも借りかえ禁止規定をつけるべきだ、こういう国会の議論に基づいて借りかえ禁止規定をずっとつけてきて、そこでこれが本格的に始まります六十年までに、三つのうちのどの手段にするかということを考えなければならぬと思いますというのが、大体おととしぐらいの答弁からそういうふうになってきております。  それで、昨年は明快――明快じゃございませんが、とにかく三つの方法を考えざるを得ない状態になりました、国会の御論議等を承りながら、しかるべきところ、結局財政審を頭に置いておったわけですけれども、そこで議論をしてもらって結論を出しましょう、こういうことになってその結論が出たわけでございますから、確かに六十年度ということが念頭にあったということ、そしてやはり絶えず厳しさを持ち続けていかなければならぬというので、去年も借りかえ禁止規定をつけたのでお願いしているわけですから、その二つのはざまの中で苦悩して出してきた結論がこういうことだ。だから論理一貫しないじゃないかという意見は、そのまま私は素直に承るべきだと思っております。
  71. 矢山有作

    矢山委員 私は、何も大蔵大臣をこんなことで責めているんじゃないわけなんですが、これまで現金償還だ現金償還だとおっしゃるから、借りかえは禁止ということになるわけです。何も国会の方で借りかえ禁止せい言うたからといって国会に、責任転嫁されてもらっちゃ困るので、現金償還やるとおっしゃるから、現金償還やるのなら当然借りかえはやらぬのだから、だからそこに必然的に借りかえ禁止ということが出てくるので、私はこれはやはりあなた方の責任だと思うのですよ。  そうすると、結局建設国債も赤字国債も先ほど言ったように一緒だ、これから一緒の扱いだというふうに解釈していいのですか。
  72. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国債の償還に対しては、同じような考え方で御了解をしていただく、しかしながら、一方努力規定というもので、その都度都度の財政事情に見合って対応していく、これが今度お願いしておる法律案の内容でございます。
  73. 矢山有作

    矢山委員 そうおっしゃるだろうと思ったのです。努力規定を置いたのが建設国債と赤字国債の相違だとおっしゃるのですが、なるほどここに置いてありますね、努力規定は。しかし、今まで現金償還を言い続けてきて、借換債はやらぬと言った、そのあなた方の姿勢から見て、今度はできる限りやらぬようにやるんだ、ここが建設国債と赤字国債の違いだと言われたって、はい、そうですかと私は引き下がるわけにはいきません。できる限り行わないようにやるといっても、どういうふうにしてやるのですか、これは。今までだってできなかった。ちょっとしつこいようですけれども、やはりこれは財政に対する態度をきちっとせなければいけませんから。
  74. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そこが、その年度年度の予算編成に当たって、財政経済状態全体を見ながら、あくまでも努力規定というものを背中に置いて、その都度都度決めていく、こういうことになるわけであります。
  75. 矢山有作

    矢山委員 これは、こんにゃく問答みたいなものだな。ところが、いろいろ言っていらっしゃるけれども、どうもとどのつまりは、借金の返済は後送りだ、それをやりたいので、もうどうにもならぬから何とかこれを認めてくれ、こういうだけの話だろうと思うのです。  そこで言いたいのは、これはこの前もちょっと問題になったと思うのですが、政府が提案した法律案のように五十年度から五十九年度まで一括して赤字国債の借りかえを認めるというような方法、これは私はやめるべきだと思うのです。できるだけ償還の努力をやって、やむを得ず残った額を借りかえする、こういうふうに私はきちっと改めるべきだと思う。  そしてもう一つは、毎年度予算編成段階で歳出の削減を初め財源の捻出に努める、これを国債償還に充てて、たとえ借換債を発行するにしても、毎年度特例公債の借りかえに関する法律案というものをちゃんと出して、政府のできる限りの努力を証明して借りかえを求める、私はこうすべきだと思うのですが、改めてお考えを承りたいと思います。
  76. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、この法律をお願いする前の省内といいますか、私どもの議論の中でも、今までかつてやった議論の中の一つとして、例えば特例債を出すときに当分の間というようなことを考えてみたこともあります。しかし、それはやはり一年一年お願いして借りかえ規定をつけて厳しさを立証すべきである、こういう考え方で一年一年やってきた。それを今度は、ここに、この期に及んでとでも申しますか、いわば過去のものをさかのぼって全部借りかえ規定をなくなしてしまう。だからその年度年度ごとに、いわゆる償還期の来たものに対してその額を決めて、一度一度ずつ国会の協賛を得るのが厳しさの継続性の中においては妥当ではないか、こういう議論だと思うのです。  私もその議論はいたしました。しかし、今年度発行するものにいわば借りかえ規定がついていないわけですね。そうすると、これから発行するものに借りかえ規定がないものをここでお願いするのに、過去のものを借りかえ規定のついたままに――償還の来るのは過去のものが来るわけですから、それは法律として一つの整合性がないではないかという議論が一つありました、これは法制局との段階で。  それから、いずれにしてもこうなると、五十年以来今日まで来ておりますもの全体をどのような形で、その都度国会の協賛を得てやるということになると、借りかえしていくわけでございますから、やはり全体を一度借りかえ規定のないものでがっちりと把握して、それをその年次の財政経済の状態に応じてやっていくという方がやはり法体系上も自然ではないかという結論に達しまして、そこで今の議論が出てくるであろうことを当然本当は予測をいたしながら、努力規定というもので法制局と詰めまして、それをもってお願いをしよう、こういう結論に到達したわけであります。
  77. 矢山有作

    矢山委員 そのことは、この間の御答弁でも私は伺ったのです。そこがおかしいじゃないか。なるほど法体系から見れば、五十九年度分とそれからその前の扱いが違う。やはり一緒にしてしまって法体系上整備する、こういう考え方でしょう。私は別にそれにこだわる必要はないと思うのですよ。今までだって極めて不自然なことをやってきているわけですから。第一、現金償還を主張して、そしてそのための借りかえ禁止規定をつけながら、今まで、借りかえはやりません、現金償還だと言って突っ張ってきた。それを今度借りかえを認める方向に変わるのですから、これの方がよっぽどおかしいので、そういうことをやっておることから見るなら、私は、その年度年度に最大限の努力をして、そして五十年度についての国債は、最大努力をしてみたがどうしても償還できない、そこでそのときになって借りかえを認めてくれ、こういうふうにしてくるのが財政の節度を守る上で重要なんじゃないか。それを一括やってしまって借りかえを認めるということになっておると、今までの例からして、また赤字の垂れ流し、こういうことになっていくんじゃないかと思うのですよ。その点は私は考え直していただきたいと思いますね。やはり、その年度ごとに償還のために現金償還の努力をする。どうしてもできない、これだけはできないんだから借りかえを認めてもらいたい、その年度ごとにやってくるというのが、私はあくまでも正しいと思うのですがね。
  78. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も、今の矢山さんの議論は、一度ならず自分の心の中でそしゃくした議論であります。その上でやはりこれからのことを考えていくとすれば、まさに考えようによれば、ことし発行するものも、またこれは償還が先だから借りかえ禁止規定があって、十年後に借りかえ禁止規定を外せばいいじゃないかという議論もしてみました。が、やはり、これからいわば三つの選択の一つの現金償還の財源として借りかえをもお認めいただきたいという大きな政策転換をするということになれば、努力規定というものが今、財政の節度なり厳しさに対する背景であって、したがって、いろいろ議論した結果、これでもって国会の御論議をいただこうということにしたわけであります。
  79. 矢山有作

    矢山委員 これはすれ違いのようですが、今までの財政運営の節度のなさ、借換債の発行に踏み切らざるを得なくなった、しかもこういうことになるんじゃないかという議論を積み重ねてきた結果、それはならぬ、現金償還でやる、とうとうできなくなって借換債の発行になった、この経過を見ると、やはり私は、財政的な節度をつける、また責任をみずから負うということをきちっとやっていくことで、少なくとも国の財政に対する国民の信頼をつなぎとめることができるんじゃないかと思いますので、私はあくまでも年度ごとにやるということを主張いたしますが、これはすれ違いのようですからこれでやめておきます。ぜひ私は、申し上げたような方向で御検討願えるものなら御検討願って、それなりの措置をとっていただきたいと思います。  そこで、最後にお聞きしておきたいのでありますが、五十七年度から引き続いて五十九年度も定率繰り入れをやらぬわけですね。そうすると、いただいた資料で見ると、六十年度も定率繰り入れをやらぬということになると、国債整理基金は六十一年度には底をつく、こういう状態のようであります。そうすると、私は、円滑な国債償還ということにも支障が出てくるおそれがあるんじゃないかと思うし、国債の信用度にもかかわりますね。そこで、一体これを今後どうなさるのか、それをお聞きしておきたいと思います。
  80. 山口光秀

    山口(光)政府委員 定率繰り入れを中心といたします総合減債制度というものは、基本として今後とも維持しなければいかぬということでございますから、ここ三年財政事情がきついもので、やむを得ず整理基金の状況も勘案しながら繰り入れを停止せざるを得なかった、五十九年度については今御審議をお願いしているわけでございますが、そういうことをせざるを得なかったわけでございますが、だんだん整理基金の状況も底をついてまいりますので、その運営の状況を見ながら、財政状況と兼ね合いでございますが、十分検討しなければいかぬ、基本はやはり守るべきだという考えでございます。
  81. 矢山有作

    矢山委員 そこで、私の言っておるのは、繰り入れをやる、基本を守るということになれば、五十九年度はもうやらぬのですが、六十年度から繰り入れをやるのでしょうが、またこの「中期的な財政事情の仮定計算例」を見せていただきますと、毎年度の財源不足というのですか、これもかなりの額に上るようですね。そういう中で、六十年度からの繰り入れということがやり得るような状態であるとお考えになっておるのですか、どうですか。そしてやろうというのか、やるとするなら百分の一・六でいくのか、それを変えようとするのか、その辺をちょっと話してくれませんか。
  82. 山口光秀

    山口(光)政府委員 今回お出しいたしました「中期展望」にいたしましても「仮定計算例」にいたしましても、現行制度を前提としておりますから、すべて定率繰り入れはするという前提に立っております。その前提で、今ごらんいただいておりますような大きな要調整額が出てくるわけでございます。これをいかに処理するかということは、大臣たびたび答弁申し上げておりますように、大変難しい問題であると存じます。
  83. 矢山有作

    矢山委員 それでは、六十年から定率繰り入れは何らかの方法でやるというふうに確認しておいていいのですか。
  84. 山口光秀

    山口(光)政府委員 ただいま申し上げましたとおりでございますが、「仮定計算」のつくり方といたしまして、あるいは「中期展望」のつくり方といたしまして、現行制度を前提にするということでございますから、そういう意味で、ある意味では機械的に定率繰り入れは現行制度であるわけでありますから、それを前提にして計算しておる。では実際にどうなるかは先ほど申し上げたとおりでございまして、基本として守ってまいりたいということでございます。
  85. 矢山有作

    矢山委員 初めの答弁はなかなかよさそうだと思っておると、しまいの方では行く先どうなるかわからぬ、こういう逃げ道がちゃんとこしらえてあるようですが、私は、やはり国債整理基金の残高というものはきちっと確保して償還財源を維持しておかぬと、大変な事態になると思います。これから借換債もたくさん出るときですから、恐らく国債管理政策全体としても、この際かなり検討しなければならぬ時期に来ておるのだろうと思いますから、もうこれ以上言いませんが、その点を十分配慮しながら対処していただきたいと私は思います。  それから、時間がなくなってまいりましたので、ずっとはしょらせていただいて、一つお伺いしておきたいと思います。林業関係です。  この林業関係で、国有林野事業の現況というのは、日本の森林・林業を取り巻く全体的な構造的な要因からこういう問題が起こっておる。したがって、この森林・林業を取り巻く全体的な構造的な要因を解決しなければ国有林野事業の改善もできない、こういう意味の答申になっておると私は思うのですね。そうなると、そこで問題になるのは、森林・林業全体を取り巻く構造的な要因を解決するということを全力を挙げて取り組みませんと、それの方が後回しになってしまって、国有林野事業に対しての合理化だとか要員の縮減だとか、そういったものだけが先行していきますと、これは大変なことになると思う。まさに国有林に対する手抜けが起こる、そのことが民有林に対しても悪影響を及ぼす、そして木材生産にも障害が出るし、公益的な機能を維持するということも難しくなってくる、こう思うのです。したがって、やはりこの森林・林業全体を取り巻いておる構造的な要因を解消するということを先行させながら国有林野事業に対処すべきだと私は思うのですが、その点、お考えはどうですか。
  86. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生御存じのとおり、本年一月の林政審議会で基本方針が示されたわけでございますが、農林水産省といたしましては、この答申を尊重いたしまして、不退転の決意で、各方面の御理解を得ながら国有林野事業の改革推進を図っていくということでございますが、特にこの答申の中にも示されておりますように、国有林野事業の改革を進める上でも、一般林政の充実強化、これは不可欠ということでございますので、これについても積極的に取り組んでまいります。
  87. 矢山有作

    矢山委員 あなた、私が言っておる肝心のところに答えてください。つまり、森林・林業に対する構造的な要因の解決が先行しないで、国有林の合理化や要員縮減や、そういったものだけが行われていくということになるとこれはだめですよ、大変なことになりますよ、こう言っているのです。ですから、あくまでも森林保林野事業に対するこの衰退の構造的な要因を取り除くことを焦点にしながら、それを先行させながら国有林野事業の改善を図っていきなさい、そうならなきゃだめじゃないですかということを言っているわけです。
  88. 倉成正

    倉成委員長 林野庁長官、簡潔に答えてください。
  89. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣から申し上げましたとおり、経営改善を進めるに当たりましても、同時並行的に林政問題についても積極的に取り組んでまいりたいと思います。
  90. 矢山有作

    矢山委員 答弁不十分ですが、もう時間がありませんから、時間厳守というのは大事なことでしょうからこれでやめておきます。そして問題は、質問通告をしておりました案件が残りました。まことにきょう御列席をいただいておきながら申しわけないことになりましたが、また分科会等もございますので、その際にお聞きをさせていただきたいと思いますので、これでやめさせていただきます。
  91. 倉成正

    倉成委員長 これにて矢山君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  92. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  私は、まず今回上程をされるであろう健康保険法の改正案の内容に立ち至ったことから質問を始めさせていただきたい、こう思います。  今度の閣議でも決定をされたようでございますけれども、健康保険法の改正案というのは、サラリーマンのOBを対象に八割給付の退職者医療制度、あるいは国保への国庫補助をこれによりまして四五%から三八・五に引き下げる、あるいは先端技術を含む高度医療に一部保険を適用する、このことによって差額診療というものが将来拡大をするのではないだろうかというおそれもあるわけでございますが、いろいろとたくさんの問題点が盛り込まれております。  このたび行われました社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会、いろいろと賛否両論があったようでございますが、もう少し今回のような抜本的な改正については国民の理解と納得を得ることが必要ではないだろうか、こういうように指摘されておるわけでございますし、私どももいろいろと勉強させていただきますと、何といってもこの医療制度改革の長期ビジョンあるいは中長期的な展望が示されていない、こういうような不満が非常に強いわけでございますが、この点、まず厚生大臣にどのようなお考えがお伺いをしたい、こう思います。
  93. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 御指摘の問題でありますけれども、私どもは、二十一世紀の今後増大する高齢化社会に備えて医療保険制度をより確実なものにするために今回の改正を行っておるのでありまして、第一の私どもの考え方は、今の国民の皆さん方の医療費の保険料率、いわゆる負担をこれ以上なるべくふやしたくない、そのために医療費の適正化を図る、また国民の皆さん方に健康に対する関心を持っていただき、また厚生省としても、今度の五十九年度の予算でも、マイナスシーリングという極めて厳しい情勢でありましたけれども、この国民の健康増進のための予算は大幅に増額をするというふうに、二十一世紀の将来展望に備えて国民の健康を守り、国民の医療をより確実なものにするために今回の改革案を出したわけであります。
  94. 草川昭三

    ○草川委員 大臣、二十一世紀はいいんです。十分わかりましたが、問題は、厚生省が唱えてみえる二十一世紀に向けての国民の医療費の推計というのがあるわけです。これは実は保険局が出しておるわけでございますが、いろいろと供給サイドだとが受け手の側の需要サイド、あるいはモデル計算、いろいろな計算をしておるわけでございますが、厚生省のモデル計算でいきますと、八十年で七十四兆五千億という現在の五倍の医療費の推計数字というのが発表されておるわけです。これが今大臣が言われた二十一世紀の話であります。  ところが、現実の医療費の伸びというのは最近非常に抑えられてきておりまして、例えば昭和五十五年度の国民医療費の伸び率というのは九・四%でございます。十一兆九千億。五十六年になりますとこれが七・四に下がり、五十八年の推計は四・六と下がってくるわけです。そして五十九年度の推計は二・五%と下がってきておるわけです。これは老人保健なり薬価引き下げ等いろいろな理由があるわけでございますけれども、少なくとも私ども、五十八年の四・六を五%と計算をしても、八十年には四十二兆五千億という数字になってまいります。あるいは五十九年度の推計の二・五%ということになると、医療費は二十五兆円という数字に下がってくるわけです。  だから、今大臣がおっしゃった二十一世紀七十四兆は過大な推定計画を出しておるのではないか。今国民の皆さんは、毎年一兆円ずつ医療費が上がってくるから大変だ大変だという前提でこの健康保険法の改正を我々は審議しよう、そういうところへ来ておるのですが、実は私が今言った実態の数字でいくと、少なくとも二十一世紀、厚生省がお考えになられている三分の一の医療費の伸びではないだろうか。そういう推定値なら、今回の健康保険の改正についてもいま少し別の立場から議論をしなければいけない。二十一世紀はいいんですけれども、まず根本的なスタンスが、数字が間違っているのではないですかという議論をしたいと思うのですが、その点、どうでしょう。
  95. 吉村仁

    ○吉村政府委員 医療費の推計につきましてはいろいろな方法がございますし、また疾病構造がどう変化するか、あるいは医学技術の進歩がどういう経緯をたどるか、いろいろな難しい要素がございます。確かに先生おっしゃいましたようにいろいろな推計がございまして、私どもの方でやりました一つの推計として、昭和八十年度で七十四兆という推計もあることはそのとおりでございます。  ただ、先生今御指摘の五十八年度の四・六%、それから五十九年度の二・五%という国民医療費の伸び率というのは、五十八年度におきましては老人保健法を実施いたしましたし、五十九年度におきましては今回の改正案を実施することによってこれだけの医療費の伸びにとどまるということでございまして、将来ともにこういう伸び率を示すということについては、私どもはそういう見込みをとってないわけでありまして、ちなみに五十九年度もし何にも対策を講じなかったということになりますと七・二%の増加になると私どもは推計をしておるわけでございまして、いずれにいたしましても、私どもが重視いたしておりますのは、国民所得の伸びよりも国民医療費の伸びの方が高い伸び率を示す、こういう傾向があるということでございまして、この点に重点を置いて私どもは対策を考えたわけでございます。
  96. 草川昭三

    ○草川委員 いずれにしても、いろいろな意見があると思うのですけれども、厚生省がモデル計算をしました八十年の七十四兆五千、こういう数字は、私は伸び率からいっても少し過大ではないだろうかということは、今の御答弁程度では納得ができません。同時にまた、現実には、政管健保等を見ておりますと、今度の場合でも大幅な黒字を出しておるわけでございまして、二年間で当初予定をいたしました第二次棚上げ分の返却ということを繰り上げて償還をしておるわけでございまして、私は着実に医療費は抑制傾向のレールに乗っておるのではないだろうかと思うわけであります。  そこで、ついでにちょっと聞いておきますが、昭和四十九年度以降の政管健保の累積赤字、いわゆる第二次の棚上げ、これを二年間の黒字で埋めたわけでございますけれども、当時累積赤字解消のための千分の一の保険料というのが適用されておったわけでございますが、一応これで解消をしたのではないかと思うのでございますが、これは千分の一を引き下げることになるのかどうか、お伺いします。
  97. 坂本龍彦

    坂本政府委員 政府管掌健康保険の保険料率でございますが、今御指摘ございましたように、昭和四十九年度から昭和五十四年度までの累積赤字の償還に充てるために取っておりました千分の一につきましては、四十九年度から五十四年度までの累積赤字の償還が終わりましたことに伴いまして、ことしの三月分の保険料から千分の一を引き下げまして、現行の千分の八十五を千分の八十四にすることにいたしたわけでございます。
  98. 草川昭三

    ○草川委員 では、とにかく三月から千分の一は引き下げた、こういうことでございますね。  それで問題は、医療費抑制のために自己負担というものが今回打ち出されてきたわけでございますけれども、いわゆる受診抑制につながるのではないかという質問があったわけであります。ところが、これは二割負担、三割負担という保険制度もあるわけだから、特にそういうことではないという御答弁でございましたけれども、老人保健の状況等を見ておりますと、やはり現実の数字としては医療費の抑制になっておることは間違いございません。  そこで、お金を取れば医療費が抑制をされるというこの発想が、このような近代国家において哲学として果たしていいのかどうか、一部負担をさせれば患者は減るだろうというような発想というのは、非常に貧弱な大衆べっ視の考え方ではないだろうか、私はこういう感じがいたします。審議会等においても、一割本人が払うということになりますと総額の医療費がわかるからいいではないかということになると思うのでございますが、こういうように窓口でこれから全員が一割負担なり二割負担なり三割負担をするということになりますと、非常に事務も混乱をするわけでございますし、端数を切り上げるのか切り下げるのか、これまた非常に重大な問題になってまいります。あるいはこの一〇%の本人負担ということも、これはあくまでも率を厚生省は主張するのか、あるいは額をある程度頭に入れる用意はあるのかどうか、ここら辺も私は非常に重要な問題だと思うのでお伺いしたいと思うのですが、その点どうでしょうか。
  99. 吉村仁

    ○吉村政府委員 定率か定額がという問題でございますが、私どもは、定率と定額を比べまして、定率というのはかかった医療費がよくわかる。例えば、一割負担であるとすれば、十倍をすればその日の医療費というものがわかるわけでございます。また、お医者さんの方からいえば、患者負担というものが医療費によって左右されるわけでありますから、経済的な処方というようなものを導くインセンティブが働くのではないか、そういうようなことからやはり定率がいいのではないか、こういうように考えておるわけでございます。なお、家族や国保の被保険者につきましては既に定率をとっておるわけでございまして、医療機関のサイドとしてもこれはある程度手なれた方式ではないか、私はこういうように考えておるわけでございます。  なお、一割負担をすることによって受診抑制になるのではないかという御意見でございますが、国保あるいは家族、これは約三割の一部負担を取られておるわけでありますが、それと比較しまして、十割の本人は受診率が変わっておりません。それからまた、大体一月の医療費の八〇%が二万円以下の医療費であります。したがって、一割を掛けても二千円ぐらいの負担になるわけでございまして、現在の国民生活の水準からいいまして、二千円ぐらいの自己負担を取られる、それが八割以上でございますが、八割以上の人が二千円以下で済む、こういうことになるわけでありますが、こういうことによって受診抑制につながる、こういうようには考えていないわけでございます。
  100. 草川昭三

    ○草川委員 わずかの金額だからとおっしゃるなら、思い切って額にしたらどうか、こういう意見だってあるわけです。これは大臣、ぜひ答弁していただきたいのですが、今のような局長答弁ならば、額でもいいじゃないか、こういう発想が出てくるわけです。厚生省はどうしても額では受け入れられないのかどうか、お伺いしたい。これが一つ。  それからもう一つ、立法技術というのですか、法制上の問題については私はわかりませんが、今回の提案はまず二割ということですね。そして六十一年度までは一割、こういう提案ですね。こういうことでしょう。これは例えばの話ですが、立法技術というのですか、法律のつくり方でお伺いをしますけれども、例えば一割負担ということに切りかえるというようなことがあるならば、これは簡単に切りかえられるのですか、ということをお伺いしたいと思うのです。これは大臣が答えてください。
  101. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 定率か定額がという問題ですが、今回の社会保険審議会での患者一部負担についての御理解も、患者がかかった医療費がすぐわかる、これは極めて大事なことでありますから、このためにはどうしても定率でなければならないということで、これはぜひ御理解をいただきたいと思います。(草川委員(「いや、その法律の解釈、一割と二割は」と呼ぶ)これはこの前も草川先生に申し上げなかったか――御承知のように、昨年の概算要求で最初出した案は二割負担ということ、これは制度間格差の是正とか将来にわたってのいろいろなことで考えられた数字でありますが、その後、私が厚生大臣に就任しましてから各方面の意見を聞き、また党の意見を聞きながら、今まで全額であったものを急に一挙に二割ということはいかがかということで、国民生活の激変緩和というような意味で、当面五十九年、六十年を一割としようということで、基本は二割ということであります。
  102. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、基本が二割だけれども、激変を緩和するために一割だと言ったんですけれども、私が今申し上げましたように、医療費全体がダウン傾向になってきておる。しかも将来展望はかなり過大な見積もりであるということになるならば、一割がそのまま行くということもあり得るわけでしょう。大臣、答えてください。
  103. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは財政問題もありますけれども、現在、農民の方とかあるいは零細な商工業者の皆さん方は七〇%である。また、被用者保険でも家族の皆さんは八〇%であるとか、そういうようなものを全部勘案して二〇%という方向を打ち出して、しかし一遍に、今まで全額だったものを二〇%というのはいかがかということで、一応当面の措置として一割ということにしておるわけでありますから、今回の改正案の基本の考え方は二割、こういうことでございます。
  104. 草川昭三

    ○草川委員 基本は基本、当面は当面ということですから、当面ということが長く続くこともあり得る、こういうわけですね。  それで問題は、この一割負担ということに結論的にはなったわけですが、患者にとりましては非常に重要な問題があるわけでございます。私ども、かねがね薬の値段のことを主張しておるわけでございますが、一部負担ということになると、今おっしゃったように医療費の計算ができますわね。そうすると、ドクターが投与してくれた薬の中身を調べてみると、同じ成分で同じ効能の薬だけれども、値段がAランク、Bランク、Cランク、D、それぞれ違うわけです、銘柄によって。ですから私は、一部負担を緩和させるために、ドクターに、この薬はAランクの薬ですか、Bランクの薬ですか、Cランクの薬を集ってもらいたい。例えば恐らく、前回の委員会でも質問したのですが、東大の病院の場合だと、上位、高い銘柄の薬を投与するわけです、Aランクの薬を。ところが、私は東大の病院へ行って、一部負担になりましたから、先生、Cランクの薬を投与してくれ、こう言った場合にドクターは、処方権について要らぬことを言ってくれるなというようなことがあくまでも言い得るのか、患者の要求によって、中身が同じならCランクの安い薬を投与するようになるのか、この際明確に、これは一回、東大関係ですから、大学局の方から答えていただきましょうか、処方権の問題について。
  105. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 まず一般論でございますけれども、医師はみずからの良心と学識と経験に基づきまして医学上適切妥当な診療を行うべきものでございまして、医薬品の選択を含めまして、具体的な治療方法につきましては医師の裁量に任されていると解されるものでございます。ですけれども、ただいまお話のございましたような、患者からそのような申し出がありました場合には、何といいましても医師と患者との信頼関係が医療の基本でございますから、医師はその医薬品を使った理由等につきまして十分説明することが望ましいと考えております。
  106. 草川昭三

    ○草川委員 それは答弁になりませんが、これはなかなか簡単に出ません。こういう問題、出るんですよ、一割負担になれば。我々だって今度言うわけですよ。一割負担はなるべくコストの意識を高めようという目的があるんですから、患者にとってコストがわかるわけですから、中身が同じなら安い薬を使わせると言ったときに、今のような答弁では国民は納得しませんよ。そういう周辺の問題がたくさんあるわけです、今度の健康保険法の改正には。  あるいは限度額の問題に行きましょう。今度三千円アップしました、五万四千円に。財政に対するはね返りはわずか三億です。一割負担を国民に与えるならば、財政へのはね返りわずか三億ぐらいならば、いわゆる限度額は私は従来どおりに据え置いてもおかしくないと思うのです。ところが、あえて今度三千円アップを持ち出されました。あるいはこの限度額は診療科目ごとに決まっておるわけですから、二つの病気でたまたま五万四千円をアップする場合があっても、二つの診療科目にかかっておったとするならば、これはだめですね。適用になりませんね、一つの診療科目ごとの五万四千円ですから。だから私は、そこら辺はトータルでくくって、今厚生省はくくるということを大変得意な言葉としておりますから、限度額についても複合する診療科目を合わせてもいいのではないかと思うのですが、これも簡潔に答弁をしていただきたい。
  107. 吉村仁

    ○吉村政府委員 まず限度額の引き上げにつきましては、賃金、所得等の伸び率を勘案しまして引き上げをした、こういうことでございます。  それから、総合病院等で各科ごとに五万四千円の最高限度額がかかるではないか、こういうことでございますが、私ども、少なくとも入院につきましては各科ごとのレセプトの額を合算して、それを一まとめにして取り扱うというような弾力的な取り扱いを行っておるところでありまして、いろいろな工夫はしてみたいと思いますが、現在でも入院につきましてはそういう各科ごとのものを総合して弾力的に取り扱う、こういうことをやっておりますので、こういう取り扱いは今後ももちろん継続をしていくつもりでございます。
  108. 草川昭三

    ○草川委員 では通院の場合も、個別の検査がどういう検査になるかわかりませんけれども、弾力的な対応があるやに今の局長答弁を受けとめていたい、こう思います。いいですか、それは。通院の場合は。
  109. 吉村仁

    ○吉村政府委員 外来の場合につきましては、いろいろな工夫をしてみたいとは思いますが、外来でそれほど大きな額になるものは非常に少ないと私どもは考えております。ただ、たとえば人工透析等で外来の診療を受ける、こういうことは十分あるわけでございまして、そういう特殊なケースにつきましてはそういう工夫を加える余地はあろうかと考えております。
  110. 草川昭三

    ○草川委員 では、次に行きます。  いわゆるOB保険ですね、退職者医療制度の問題です。これも時間がございませんので簡潔に申し上げますけれども、新しい制度ができた、そして一面的の財政調整になる、一つのプラスの面もあると思います。ところが、御存じのとおり国の負担というのはないわけです。国民皆保険あるいは国のこれだけの制度というものに対して国の支出というもの、負担というものが一銭もないというのもいかがなものかという感じがするわけでございますが、我々野党の方もこの点については昨日修正案を出しておるわけでございます。国としての負担をこの中にすべきだ、こういう意見を持っておるわけでございますが、これは全く政府の方は妥協する余地がございませんか。
  111. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 委員御承知のように、これは被用者保険に加入しておられた方が退職して次の老人医療につながるまでの間、被用者保険よりもはるかに財政状態の悪い国保に加入して、その支給を受けるということの矛盾を是正するために今回退職者医療制度を創設し、これは国保の窓口を借りますが、この退職者医療というものはあくまで被用者保険の範疇に入っておるものでありますから、現在の被用者保険の財政状態は国民の血税を投入しなければならないほどの状態でない、こういうことでございます。
  112. 草川昭三

    ○草川委員 これは少し時間がかかりますので、問答になってしまうと思うのですが、非常に厚生省としては厳しいということですね。これは一つのワンセットで流れてきておるからという、こういう前提があるわけですね。それじゃ忘れないうちに聞いておきますけれども、付加給付は個別の保険組合で認める方向でございますか。それだけ簡単に。
  113. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、給付というのは全国民を通じて公平、平等であるのが一つの理想の姿だと考えておりまして、そういう観点から考えますと、付加給付というのはやはり問題があるというように考えておることは事実でございます。ただ、各保険組合が自分の自主的な判断でそれに伴う必要な付加保険料を取るということが前提ならば、またかつ、その付加給付をやることによって、その健康保険組合の全体としての経営努力が保たれるというようなことがあるならば、あえて現在行われておる付加給付を禁止することはないのではないか、こういうように今考えておるわけでございます。
  114. 草川昭三

    ○草川委員 余裕があればいいのではないかというのは、結論的に言いますと、平等給付の見地から問題が残ることは事実だと思います。やはりこれも納得できない点があるかもわかりません。  それから、差額医療のことに移りますが、当初厚生省は、特定承認医療機関というものを承認をして、先端医療技術で治療を受けた場合、差額というのですか、保険給付を認める、こういう言い方をしておったわけでございますが、後ほど、保険を入れて、特定承認保険医療機関というように考え方を変えておるわけでございますが、この原因は一体何か。あるいは筋としては今回提議をされた先端医療の適用を受けるということは納得できるのでございますけれども、これが認知をされると、今後登場するところの新しい技術がどんどん保険の対象外に置かれてしまう。お金持ちというのですか、余裕のある方だけが高度医療を受けられるということになっていくのではないかと思うのですね。それじゃ、我々は逃げる方法で民間の保険に加入せざるを得ないという方向にならざるを得ないと思うのでございますが、差額がこれ以上拡大する方向を持っているのかいないのか、これも明確に、これは大臣から答えていただきたい、こう思います。
  115. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 まず、最初の保険医療機関ということに、今度答申をいただいた後にこれは幅広く修正して提出したわけでありますが、これの詳細は、御必要があれば政府委員から答弁をさせます。  それから第二点の問題、これは私どもは、今回は自由な患者の診療、自分の金を払っても新しい高度な先端医療を受けたいとか、あるいは自分の金を払っても一人部屋のベッドで治療したい、そういう患者の意思をできるだけ尊重できるように、しかもなおかつ、そういう方でも、検査とか保険の対象になるものはこれはできる限り保険の対象になる。今まで明確でなかったものをきちりと明確にする。そういう患者の便宜を図って行ったものでありまして、このために、この制度ができたから、新しくどんどんどんどん開発されていく新医療、これが保険の対象になるのがおくれる、そういうような御心配はないように今後善処してまいりますので、御安心を賜りたいと思います。
  116. 草川昭三

    ○草川委員 この差額の問題は、将来の自由診療につながっていくのではないかという心配が私ども非常に多いわけです。ですから、ただいまの時点はこれはこれなりの提案ですが、これが一たん認められたらという心配を我々はしておるわけであります。これは非常に将来を私どもも心配をしておるわけでございますので、いまの大臣の答弁というものを我々は非常に大きな歯どめとしていかなければいけないと思うわけですね。これは十分我々の意向ということを聞いていただきたいと思います。  それで、今度は日雇い健保の方へ行きますが、七千四百億棚上げをするわけです。棚上げをしてもこれは利子がつくわけです。そして健康保険勘定に入れるわけです。財布としては政管健保が受けるわけです。  ことし大蔵省は、単年度の赤字分で二百八億利子補給という形で入れたわけですね。ところが、これは法律的な問題というよりは、大蔵省なり理財局に関係があるのですが、健康保険の第一次の棚上げというのが今でも残っておるわけです。これは財政投融資というよりは資金運用部の短期の借りかえということでそのまま残っておるわけでございまして、五千八百億になっておりますね、五十七年末で。これは利子がついたままほったらかしなんです。棚上げをしたときには、一般会計から入れるよという言葉にはなっておるわけです。  今度の日雇いも、七千四百億一般会計から将来入れるよという受け皿はあるのだけれども、恐らく大蔵省は、今の財政状況から、入れる気はないと思うのです。入れる気があるならば――第一回の棚上げ分に一銭も入れていないわけですから。やがてこの日雇い健保も政管健保の黒字で埋めていくのではないだろうかという心配があるわけです。  それが証拠に、何回かお話を聞いたら、大蔵省は――本来ならば、五十九年度の概算要求で、厚生省は七千四百億一般会計で持ってもらいたいという概算要求をすべきです。それはできない。そこで、とりあえず二百八億なら二百八億、あるいは単年度の赤字だけは埋めてあげるよというやり方にしないといかぬと思うのです。  大蔵省に聞いたら、厚生省が要求してこないから別に手当てをしなかったというのが大蔵省の答弁です、事前のレクで。そんなばかなことはないと思うのですけれども、私は、厚生省はもう少し大蔵省に払うべきものは払えと言ってもらわなければ困ると思うのです。そして赤字国債が多少ふえるかもわからぬ。それはかえって国民の日には財政の健全化になるわけです。今のように資金運用部の短期の借りかえでごまかしていくというやり方は、財政が不健全になってくると思うのです。不明朗だと思うのです。その点、どうですか。
  117. 坂本龍彦

    坂本政府委員 日雇い健保の赤字の補てんを要求しなかったではないかということでございますが、何分にも、今御指摘ございましたように、これまでの日雇い健保の累積赤字分、非常に巨額に上っておりまして、五十七年度末で六千五百億、五十八年度末の見込みが七千四百億に達すると考えられております。私どもとしても、こういった赤字と申しますか、過去の累積債務をできればなるべく償還をしたいという気持ちは持っておるわけでございますけれども、何分にも現在の財政状況のもとで、いわゆるマイナスシーリングという非常に厳しい状態のもとで厚生省の予算も編成しなければならない、こういうときに、もちろんこういった赤字の償還の重要性は十分認識しつつも、厚生省所管の予算全体の中でどのように考えるべきか、こういう難しい問題に直面するわけでございまして、今回の利息の一部としての二百八億円、これは私ども、現在の段階でできる限りのことをして少しでも累積赤字の利子がふえていくのを抑えていこうということで今回の数字になったわけでございまして、非常にこの点については私どももいろいろ悩んでおりますけれども、そういう状況でこの大きな額を償還するということは、現実になかなか難しい状況にございます。  しかし、今後とも、予算全体の中ではございますけれども、そういう点についてもさらに検討を進めまして、できるだけ適正な運営ができるように考えてまいりたいと思っております。
  118. 草川昭三

    ○草川委員 適正な運営ができるわけがないのですよ、これで。どんどんどんどんふえていくのですから。しかも、それを政管の連中だけが受けるような形になっていくのです。現実に過去の一回、二回の棚上げについては、二回分はいわゆる自主努力で埋めたわけです。国は全然一般会計から入れてないわけですよ。そこでこの第一次の棚上げが残り、さらに今度日雇いの七千億というのが毎年利子を生んでいくわけです。だから、これはもう厚生省だけの問題ではなくて、国の一般会計への対応が間違っておるという責任を我々はこの際明確にしておきたいわけです。我々だけがなぜ持たなくてはいけないのか、こういう問題だと思うのですよね。これは少しきちんとしておいていただきたい。  同時に、この日雇いのなくなった後、例えば失対労働者はどういう取り扱いを受けるかというと、例えばどこかの県庁へ行って失対事業をやりますと――民間会社で草むしりをやった場合には、その民間会社の健康保険組合が受けるわけです。いわゆる特例被保険者扱いになるわけ。県庁へ行った場合には、共済組合を除いて、その県の政管健保が日雇いの方々の特例被保険者扱いを受けるわけです。これだって官民格差になるわけです。だから、細かいことを言うと――きょうはこういう場ですから細かいことを言いませんけれども、物すごい矛盾点がある。だから、そういう矛盾点は今後私どもも修正案の中でいろいろ言っていきますから、厚生省、これは絶対的な案だと言わぬでおいてください。随分矛盾点が多い。こういう矛盾点は聞くか聞かぬか、どうですか。このままで押し通すのかどうか、これは大臣、一言だけ。矛盾があるならば聞く、矛盾があっても聞かない、どっちか答弁してください。
  119. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今回の改革案は、私どもが昭和四十年以来皆さんから御指摘を受けて今日まで来た医療制度に対する抜本的な改革の最善の案という考えで提出し、また、いろいろの審議会等の御意見も聞いて提出いたしておりますので、私どもは最高最善の改革案であると考えております。
  120. 草川昭三

    ○草川委員 その肝心の審議会の先生方が怒っておるわけでしょう。今回のこういう唐突な、予算が決まってから出されたってだめじゃないかといって怒っているわけですよ。それは厚生大臣、だめですよ。そういう答弁では、私どもの声というのも聞いていただけないのではないかという心配が多いわけであります。  それからもう一つ、私はお医者さんの、ドクターの立場に立つというわけではございませんけれども、今病院経営というのは非常に危機だといって騒がれているわけです。今までは病院というのはうまくいっておったという印象ですが、いろんな、薬価改定の問題もあるでしょう、あるいは人件費の高騰もあるでしょう、経営が非常に悪くなってきておりまして、病院の倒産ということもあるわけであります。これを救うのは、正当な技術料を引き上げる以外にはないわけです。ところが、この点については、今回技術料引き上げがございますが、わずかでございますから、とても病院の危機を解決するわけにはいかない、こういうことになっておるのでございますが、厚生省として、今の病院経営が非常に危機になっておる、倒産件数があるのかないのか、このことをお認めになるのかどうかという質問。  それからもう一つ。今の保険の事務は電算化になっておるということを前回も指摘をしたわけでございますが、レセプトの請求からドクターのところへ返ってくる間、結局、治療が終わってから二カ月の期間があるわけです。労災保険の場合は一カ月でドクターのところへお金が来るわけでございますが、それを少し前倒しにして、少なくとも一カ月なりあるいは一カ月プラスアルファ程度で医療機関に支払う金額が手に入るような方法ぐらいなら、今の状況でもできると思うのです。そのことの二点を質問したいと思います。
  121. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 病院の倒産についてでございますけれども、民間の信用調査機関による調査でございますが、負債額一千万以上の倒産件数は、昭和五十五年三十九件、五十六年三十五件、五十七年四十二件、五十八年四十七件となっております。  その実情、いろいろございますけれども、機器設備等の過剰投資が大きな原因でございまして、放漫経営ということがございます。そういうものが多いように承知をしております。今後、この病院の経営状況につきましては、十分注意を払ってまいりたいと考えておるところでございます。
  122. 吉村仁

    ○吉村政府委員 診療報酬の技術料が低いのではないか、こういう問題でございますが、これにつきましては中医協でもって引き続き検討をするということになっておりまして、病院経営の立場からもいろいろと御意見を賜って検討をしてまいりたい、こう考えております。  それから、医療費の医療機関への支払いの迅速化の話でございますが、確かに労災は先生御指摘のように翌月払いでございますが、私の方の社会保険におきましては、まず例えば二月分の診療は三月の十日までに支払基金に請求が来る。そして審査に二十五日ぐらいかかるわけでございまして、どうしても翌々月にならざるを得ないわけでございまして、労災と比べまして私の方の請求件数が非常に多いということもございますし、コンピューター化ということを御指摘賜りましたが、現在まだ完全なコンピューター化ということが完成されておりませんので、現在の請求支払い事務の実態あるいはそういう仕組みというものを前提とする限り、翌月払いというのはなかなか難しいのではないか、こういうように考えております。
  123. 草川昭三

    ○草川委員 翌月払いでないにしても、今お話をしましたように、労災は同じようなことをやっておるのですから、二カ月の支払いを少しでも前倒しにするようにぜひお考え願いたい、こう思います。  それから、ここ最近、開発中の新薬の臨床試験の問題をめぐりましていろいろな話題が出ております。ヒト試験というのですか、臨床データ収集のために試験台となるアルバイト学生を集める新しい会社が出たとかあるいはチバガイギーの問題とかというのがありますが、まず一つ、公的病院を初め大手の医療機関が臨床試験にかかった費用の一部を健康保険を適用して請求するという例があるという指摘があるわけでございます。これは現在、国立大学だとか国立病院等ではいろんなこともやっておるようでございますが、公的病院を含めて、治験薬の投与に伴う検査料の費用以外に、それも治験薬そのものはメーカー持ちになっておりますけれども、治験薬を投与するに当たって付加する薬、たとえば点滴の場合のブドウ糖だとか、胃を保護するためのその他の薬だとか、極端なことを言うならば、患者に治験薬を投与するならば入院代全部メーカー持ちにしたっていいじゃないか、その薬だけではだめだ、こういう意見があるわけでございますが、その点はどういうように保険局の方としては考えておるのか、これをお伺いしたいと思うのです。
  124. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども治験薬を保険請求をするというのは、これは不正請求ということで認めておりません。先生御指摘のように、保険診療の対象になる診療の中にそういう治験薬のようなものがまじっておるという場合にどうするのか、こういうことでございますが、私どもとしては、個々のケースについて調べてみないとわかりませんけれども、恐らく治験薬の投与だけを単独にやるというケースは少なくて、普通の一般の治療と一緒にそういうことをやっておるのではないか、こういうように考えておりまして、その治験の部分については保険請求は認めませんけれども、他の一般の保険医療の対象になる治療部分についての請求が行われたとしても、これはある程度やむを得ないのではないか。ただ、治験薬を使う場合にいろいろ混同をされるとか、なかなか難しい問題がございまして、もし振りかえ請求みたいなことが行われておるのだったら、これは私ども厳正に対処するつもりでございます。
  125. 草川昭三

    ○草川委員 特に今回から本人の一部負担ということがあるわけでありますから、本人にしてみれば、例えば私が入院した場合に、私がモルモットというのですか治験の対象になったら、一割負担までして何もメーカーに協力する必要はないじゃないか、こういうことですから、治験をしますよという一つの報告があるならば、これは丸ごとメーカー負担が当たり前ではないか。アメリカなんかでは逆に協力費を払っておる例があるわけですから、その点は保険局長、はっきりしておいていただきたい、こう思います。  これもまた同じような問題になりますけれども、新薬の臨床試験に関する専門家会議の、GCPというのですか、この検討委員会というのが厚生省で今行われているわけであります。これは昭和三十九年のヘルシンキで開かれた世界医師会の総会でも採択をされたものでございまして、「ヒトにおける生物医学研究に携わる医師のための勧告」、こういうので、今厚生省の中でもいろいろな検討をされておると思うのでございますが、今申し上げたヒト試験の業者なんかの規制も私はこの中に盛り込まなければいかぬ、こう思うのでございますし、骨子も、いろいろと文書あるいは文書に準ずる方法で同意を得るとか、あるいは医療機関の中に審査委員会をつくるとか、大学の教授だとか病院長とメーカーの直接取引をやめて、製薬メーカーと医療機関の間で契約を締結するとかというようなことが言われておるわけでございますが、これがいつごろ発表されるのか、あるいはこれを監視、実行させるために第三セクターをつくってこの問題を扱っていくのか、この点についてお答えを願いたい、こう思います。
  126. 正木馨

    ○正木政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃいますように、一九六四年の、昭和三十九年でございますが、世界医師会で採択したヘルシンキ宣言、これは医師の倫理指針を定めたものでございますが、その中で、臨床試験に関する医師の取り組み方というものも明記をされております。私ども、このヘルシンキ宣言も十分踏まえながら臨床試験のあり方というものもいろいろ研究していかなければならぬというふうに考えております。  先生おっしゃいましたように、現在臨床試験に関する専門家会議、これは熊谷先生を座長とする会議でございますが、臨床試験全般について御論議をいただいております。その中で、小山国立病院医療センター名誉院長を座長としまして、GCP、臨床試験の実施に関する基準を今御審議をいただいております。  臨床試験の実施については二つの観点があると思いますが、一つは信頼性の確保といいますか、公正的確にやってもらうということが一つ。それからもう一つは、先ほど来先生のお話にございますように、被験者の人権保護あるいは健康の保護、こういった両面から考えていかなければならないということで、現在いろいろ御論議をいただいております。先生からの御質問の中に御指摘をいただいております点すべて。そういった点も踏まえながら御論議をいただいております。私どもとしてはできるだけ早く成案をいただきたい、そして、これは医療関係者その他関係者がありますので、十分その方々の意見も聞いて実施に移したいというふうに考えております。(草川委員「いつごろですか」と呼ぶ)現在のところまだ専門家会議の中で議論をされておりますので、取りまとめがいつというところまではいっておりませんが、現在鋭意御審議をいただいております。  それからもう一点、先ほど先生お話のございました第三セクターの問題でございます。これもこの会議でいろいろ議論をされておりますが、これにつきましては、臨床試験に関する、何といいますか、メーカーの研究開発に関する関与の仕方、あるいは制度的にどう仕組むか、いろいろ問題点がございます。現在のところは、専門家会議の御意見としては、第三セクターの設置というものについてはまだもうちょっと慎重を要するのではないかというような御意見のようでございます。
  127. 草川昭三

    ○草川委員 それから、これはけさほどの新聞にも出ておりますが、きのう薬事審議会の方でいろいろな御論議があったわけでございますが、チバガイギー社の消炎鎮痛剤のブタゾリジンとタンデリールの副作用禍の問題でございます。  日本国内で十八件の例があったと言われておりますが、それが十四になり、最終的には三例でございますか、というようなことで特定をされてきたわけでございます。事の内容は別といたしまして、日本の国内で被害が出たと言われる方々の名前というのは、厚生省で十分調べていただきたいと思うのですね。今厚生省は知らぬと言っているのでしょう。それを調べて、少なくとも患者に、あなたはこのブタゾリジンとタンデリールによるところの副作用でかくかくしかじかになったということを通知をすべきだと思うのです。そしてたまたま、これは少しさかのぼらなければなりませんけれども、今被害者救済基金制度というのがあるわけでございますが、これが稼働がなかなかうまくいっておりません。昭和五十九年の一月で請求件数百九十四件、支給件数が百十件、不支給が十七件、取り下げ件数が九件、審査中五十八件ということでございまして、五十七億の積立金があるわけであります。まさしくこの基金というものを適用すべきではないか、こう思うのでございますが、その点、どのようにお考えになっておられるか、お伺いします。
  128. 正木馨

    ○正木政府委員 お答えいたします。  チバガイギー社の消炎鎮痛剤の副作用問題につきましては、先生おっしゃいますように、昨日、中央薬事審議会の副作用調査会が御審議の結果、結論を出されております。  ケースにつきましては、日本人の死亡例は、この資料では十八例ということでございましたが、先生おっしゃいますように重複もございまして十四例ということで、その中で因果関係等いろいろ精査しますと、先生おっしゃるような数字になるわけでございます。  ところで、死亡例につきましては、厚生省におきましては氏名等把握しておらないわけでございます。と申しますのは、先生も御案内のように、副作用情報というのはプライバシーの問題もありますし、何よりも問題になりますのは、医療機関等の協力を得ていくという面から申しまして、固有名詞というものが出てくるとなかなか実際問題として副作用情報というのがとれない。やはり安全対策というものを講ずる面から、名前、固有名詞というものを出さないでいいからとにかく報告をしてくれというのが副作用情報でございます。私どもといたしましては、そういったことでできるだけ副作用情報というものをありのままを出してもらおうということでございますので、氏名等については把握をしておらないわけでございます。  それから、医薬品の副作用基金との関係でございますが、これも先生御案内のように、この法律ができまして、この法律の施行前の事故につきましては、この救済基金制度というものが拠出金をもとにした一種の保険システムによっておりますために、制度発足前の発生事故については対象になっておらないというのが実情でございます。
  129. 草川昭三

    ○草川委員 今の答弁を聞いておりますと、プライバシーの問題はそれはありますよ。だけれども、死んだわけですよ。薬害で亡くなったわけですよ。亡くなったというデータが上がってくれば、何のだれべえさんが薬局で買った薬で死んだのか、だから要指示になったのか、薬局ではなくて病院で投与されて亡くなったのか、これは当局者として調べるのが当然じゃないですか。そして、これはやはり患者の家族の方々にそのことを具体的に教えてあげなければ、何で亡くなったのかわからぬでしょう、これは昭和四十何年に亡くなった人ですから。特にメーカーの方々も、こういう結論だから生産、販売は続けると言っておりますけれども、私はおかしいと思うのですね。やはりいま少し反省をするという態度がなければだめです。  それから、今問題になっておりますこの二つの薬だけではなくて、実は同じような薬でございますけれども、チバガイギーの方からボルタレン錠という、成分はジクロフェナクナトリウムというのがあるのです。同じような解熱消炎鎮痛剤です。こちらの方は販売額は今二百四十二億も年商売っております。これも副作用情報で、日本の国内で一人亡くなっておるという例が挙がってきておるでしょう。こっちへ挙がってきておるわけですよ。だから、そういうのは早く、クイックアクションでつかんで、二百四十二億も売っているんだから、ボルタレンの方を本当は我々の方は薬事審議会で調べてもらいたいのです。その点はどうですか。
  130. 正木馨

    ○正木政府委員 お答えいたします。  チバガイギーの製品でボルタレン錠というのがございます。先生おっしゃいますように、成分ではジクロフェナクナトリウムと申しますが、ボルタレン錠は五十七年度で見ますと二百十九億円、これは後発品も含めまして約二百二十億円でございます。このボルタレン錠は、ブタゾリジンとかタンデリールに比べまして比較的新しい製品でございます。薬理作用はかなり強いが、副作用面についてはむしろ緩和ではないかということが現在では言われております。  それから、先生おっしゃいました死亡例でございますが、五十七年度の副作用モニター報告で一件つかんでおります。この症例は、小腸軸捻転、空腸切除術施行後の発熱に使用されたものでございますが、副作用として過敏症及び肝障害があらわれたということでございます。この点につきましては、副作用調査会でも慎重に評価、検討がなされたものでございますが、不可避的な症例というふうな判断もございまして、使用上の注意を十分考えながら施用するようにということで今日来ております。  ただ、先生おっしゃいましたように、消炎鎮痛剤は、今回の二剤だけではなくて、非常に数多いわけでございます。副作用調査会の御意見でも、当面この二剤についての措置を決めるが、消炎鎮痛剤全般についての安全性に関する評価、検討を進めるということを言っておられます。私ども行政の側も、消炎鎮痛剤全般についての検討をこれから真剣に進めてまいりたいというふうに思っております。
  131. 草川昭三

    ○草川委員 もうきょうは時間がないから、私、委員長にもお願いするし、厚生大臣にも申し上げますが、とにかく副作用で亡くなったという情報が挙がったら、フォローアップすべきです、これはもう人権上も。名前をつかんでないなんということは、これはおかしいですよ。それで、一人の命というのをやはり大切にしてもらいたいと思うのです。副作用情報は聞くだけ聞いてほったらかしである、今の現状を聞いていると。国内で、例えば併用作用があったかもわかりませんけれども、とにかく十八人も亡くなっているわけです。だったら、もっと私は、その併用は何かというのは厚生省として徹底的に追及していくことが必要だと思うのです。それが、先ほどから申し上げておる薬に対する信頼性の問題です。薬事行政に対する安心感なんです。それがないところに今日の医療問題の本質的な問題があると私は思うので、これは私、非常に強く要望しておきますから、厚生大臣として責任を持って処理をしていただきたいと思います。  それから、文部省にちょっとお伺いしますが、薬がどんどん下がってきましたね。薬価が下がったので、この三月一日から新しい薬価になったのですが、値下げ交渉に入るということはこの前御答弁がございました。ところが、値下げ交渉をするんだけれども、すぐ交渉ができません。前回の例だと大体三カ月から四カ月かかるわけです。その間国の方は、文部省なら文部省、大学病院ですけれども、東大病院なら東大病院は仮納入という形をやるわけであります。ところが、官報では既に入札の告示が出ているわけです。これこれの薬を買いますからどうぞ問屋の方々おいで願いたいということをやるわけでございますけれども、今の会計法上はそういうような仮納入という立場を認めていないんです。あるいは概算契約ということも認めていないわけです。会計法二十二条で概算払いの制度があるということは事実でございますけれども、概算契約というのはない。ところが、実質的にはこの概算契約で処置をし、後で何をやっておるか知りませんけれども、何らかの形で処理をしておるわけでございますが、入札もやらないということになるわけです。これは少し問題があるのではないかというのが私の指摘です。これはどう答えられか知りませんけれども、問題点は問題点なんです。そのことを一つ答えていただきたいと思います。  同時に、公取に保お伺いをいたしますけれども、今回薬価が下がりまして、各メーカーがこれは大変だというので、納入価格をダウンをしないように、薬価を下げて納入をしないという非常に強い態度が出ております。依然としていわゆる業界のカルテル体質というのがあるのではないか、こういうことについてどのように公取は見られるのか。  あるいはもう一つ。メーカーから卸問屋に卸して、卸問屋が病院に薬を納入するわけでございますが、コンピューターシステムをどんどん採用するようになりまして、メーカーと卸の間がオンラインの交換システムをつくろうという話があります。これはいわゆる製薬協のデータ交換システムの構想というのでございますが、これがもし実現をされるということになりますと、メーカーの支配、介入というのが非常に強くなると思うのでございます。この点もあわせて公取から御意見を賜りたい、こういうように思います。  以上、文部省と公取から御答弁願います。
  132. 森喜朗

    ○森国務大臣 お答えいたします。  医薬品の購入につきましては一般的には値引きが行われているのが実態でございまして、国立大学附属病院でも購入者の立場で適正価格で購入するように努めておりますし、今後ともそのような趣旨で指導していきたいと思っております。  それから、今先生御指摘をいただきました点につきましても、国立大学附属病院の使命等がございますし、医薬品の購入を中断させるということができないわけでございます。そういう特殊事情があるというのも先生十分お調べであろうと思います。そうは言いますけれども、やはり会計法令に従った手続で購入すべきものであると考えておりますし、今後ともそのような指導をしてまいりたいと思っております。
  133. 妹尾明

    ○妹尾政府委員 お答えいたします。  医療用医薬品の価格形成の問題につきましては、昨年六月、独占禁止法違反の行為があったということで、メーカーの団体に対しまして独占禁止法に基づく審決を、これは是正措置を命ずる審決でございますが、行いますとともに、卸売業者の団体に対しまして警告を行いまして、問題のないよう是正措置をとってもらったところでございます。その後におきましても、医薬品の価格が自由に形成されますよう、業界の動向につきまして注視を続けておるところでございます。薬価基準の改定に関連いたしまして、事業者団体等におきまして独禁法に違反する価格協定等の違反行為につきまして具体的な端緒がありました場合には、法律に従いまして厳正に対処してまいる所存でございます。  それから次に、先生御指摘のオンライン構想の問題でございますが、業界におきまして御指摘のような構想が進められておるということは私どもも承知しております。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕 ただ、業界におきます医薬品流通の実情について私ども承知いたしておるところでは、いろいろ取引のあり方あるいは価格体系のあり方等につきまして、自由な価格形成の見地から、私どもの立場から見まして若干懸念される問題があるところでございます。既に一部につきましては是正措置をとってもらった点もございますが、こういった問題をそのままにいたしまして御指摘のような構想が進められてまいりますと、競争政策の見地からいたしましていろいろ問題が生ずるおそれもございますので、私どもといたしましては、まあ医薬品の流通につきましては薬価基準等いろいろ公的な諸制度もありまして、その影響もございますので、主務官庁である厚生省と十分連絡をとりながら問題のないよう今後適切な指導をいたしてまいりたい、こういうふうに存じております。
  134. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ公取委にはそういうスタンスで臨んでいただきたいわけでございますし、文部省に、今会計法に基づく概算払いをしておるのか、概算契約をしておるのか、入札をしておるのかどうかは、きょうここで深追いはいたしませんので、とりあえずあとどのようなことをやられておられるのか、後ほど経過について御説明を求めておきたいということで、この件は終わりたいと思います。  次に、前回私はここで、いわゆるがんの問題についてたばこの問題、たばこの害を取り上げたのでございますが、いわゆる間接喫煙、副流煙のために周囲の人にどれだけ害を与えているかということがなかなか理解をされていないということを、私、申し上げる機会がなかったわけでございますが、これはきょうは専売公社もお見えになっておられますから申し上げますし、それから厚生大臣にも、直接のたばこの善そのものよりも、間接喫煙の害ということについて厚生省、本当に御理解になっておられるのかどうか、これをまず厚生大臣にお伺いをしたいと思うのです。  それから専売公社に、そういうような状況の中で東南アジアへたばこを輸出をしようじゃないかというようなお考えで、実は国産たばこの海外輸出の新しい会社を四月に資本金五億五千万円で設立をするというような話があるわけでございますが、これは今アメリカの方からいろいろと対日要求がございますが、日本のたばこがそんなによければアメリカで堂々と勝負をすればいいのに、アメリカで遠慮して東南アジアへまず目を向けるという発想は、これは私は問題があるのじゃないか、こう思うのでございますけれども、その点、専売公社どういうお考えか、まず二人の方から御答弁を願いたい、こう思います。
  135. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 この前も草川委員にお答えしましたとおり、たばこの吸い過ぎが健康のために好ましくないということは、もう共通理解であると思います。ところが、このことはみんなわかっておると思うのですけれども、やめようとしてもなかなかやめられないのがたばこということでありますが、しかし、せっかく禁煙しようという人たちに余り邪魔になってはなりませんので、厚生省としては、今まで国立病院等についてはきちっと喫煙場所をつくる、その他は禁煙というような指導を行ってきたわけでありますけれども、今度はさらにこれを広げて、自治体立病院等にもそういう指導を行ってまいりたいと思います。したがって、委員御心配をいただきましたが、厚生省としては健康を守るということのためにそのような処置をとっておることを御理解いただきたいと思います。
  136. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  この四月からたばこの輸出会社を設立する予定になっておりますが、ただ、若干誤解がございまして、現在まで私ども既に公社としてたばこの輸出をやってまいっております、それほど大きな規模ではございませんが。その経験に照らしまして、輸出先の国によりましていろいろと商取引の慣行その他が違うわけでございます。なかんずく長期契約等が行われないと取引ができないというような国もございまして、草川委員も御承知のように、私ども公社の予算は単年度予算で、毎年度国会に提出をいたしまして、御承認を得た上で発効するという性格のものでございますので、どうもその辺がうまくフィットしないということで会社を設立したわけでございまして、これから新たに東南アジアその他の国に向けて輸出するという性格のものではございません。  しかしながら、御指摘の点は私どもも十分に気をつけてまいりたいと考えておりまして、各国によってもろもろの規制その他の相違はございますけれども、私ども、その国の実情にマッチするように、その国に迷惑を及ぼさないような取引活動を行うように、新しくできます輸出会社に対しまして公社の立場から十分指導してまいりたいと考えております。
  137. 草川昭三

    ○草川委員 公社にも、広告宣伝費の過去の十年の執行状況などを見ておりますと、今二十四億まで伸びてきております。十年前に比べると、四十八年が二億九千三百万ですか。外国の例を一々言うわけではございませんけれども、先進諸国というのはたばこの害については非常に明確な割り切り方をしておるわけでございますので、いま少し我が日本も恥ずかしくないようにしていただきたいと思うわけであります。  それで文部省にも、初等中等教育局長は昨年の九月に、小学生あるいは中学生低学年の喫煙率が飛躍的に今高まっておるわけでございまして、善処をすると約束をしております。あるいは国鉄にも運輸省にもお願いをしたいわけでございますが、駅の構内での喫煙ということ、あるいは飛行機の中あるいは飛行場、こういうところでいわゆるたばこを吸わないという、公的な場所での禁煙ということをもっと広めていく必要があると私は思うのです。そういうことについての考え方はどのように持っておみえになるのか、簡潔に御答弁を願いたい、こういうように思います。
  138. 森喜朗

    ○森国務大臣 お答えいたします。  文部省におきましては、中高校の教科書あるいは保健体育、特別活動の機会に、いろいろと細やかな指導をいたしております。中学校指導要領にも、嗜好品としてのたばこの常用、それから吸い過ぎによる健康障害についてもきちんと指導するようにいたしておりますし、中学校の教科書などは、かなり詳しくたばこに対する害を述べております。  簡潔な答弁をしろということでありますが、未成年の場合は法律に触れるということも明記してありますし、それから、嗜好品の中にたばこと特記をいたしまして、いわゆる吸い過ぎると慢性の中毒、慢性気管支炎、動悸、視力低下、手の震え、不眠などが起こる、紙巻きたばこは肺がんや胃潰瘍の原因になります、こういうことも教科書にはきちっと書いてございます。指導要領には約二十ページにわたりまして、たばこをやめるようにということについても十分指導をいたしております。  ただ、非行少年の一つのきっかけはたばこにあるというふうに私ども感じますが、いま草川先生から御指摘をいただきました小学校への指導というのは、これは当然のこととはいえ、その辺は文部省としてもまだ取り組んでないような感じを私、事務当局からまだ聞いておりませんが、しかし、お父さんがおいしそうに吸うと、やっぱり子供は何かおいしいのかなという感じはするのではないか、あるいは三浦友和君あたりがテレビでおいしそうに吸っていると、やっぱり影響を受けるかなという感じは個人的に私はいたします。文部大臣といたしましては、たばこは吸わないことを申し上げておきます。
  139. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  汽車、電車、それから自動車、航空機、そういった乗り物の中、それから待合室というような大勢の人が集まるところにおいては、ただいま御指摘のように、だんだんと禁煙の場所をふやすという空気が非常に濃厚になってまいっておると思っております。したがって、私ども通勤電車等は全部やっておるわけでございますし、ラッシュアワーのホーム等は相当な程度やっております。また航空機について言いますと、国際航空は半分、それから国内は三〇%禁煙席というように逐次やってまいっておりますが、これをできる限りふやしてまいるという方向でいろいろ検討をさせております。  具体的には、さしあたって、新幹線については国鉄からちょっと説明させますが、禁煙の車をふやすような方向で考えておりますし、私は国内航空の禁煙席は、時間が実はそう長くないので、できればもっとふやしてまいる方向で考えなければならぬのじゃないか、かように思っておりますが、御趣旨はもう全く私どもそういう方向で考えてまいりたい、かように思っております。
  140. 須田寛

    ○須田説明員 お答え申し上げます。  ただいま大臣からも御指摘がございましたように、現在国鉄では、通勤時間帯の列車と特急の自由席を中心に、約一万本余りの列車に禁煙をやらしていただいておりますけれども、ただいまお話がございましたように、私ども極力これを拡充いたしてまいりたいという方向でこれからも努力いたしたいと考えております。  それから、新幹線につきましては、現在自由席一両だけの禁煙車になっておりますけれども、コンピューターの端末を近く取りかえることが可能でございますので、それを前提といたしまして、指定席にも禁煙車を広げるような方向でこれからも頑張ってまいりたいと思っております。
  141. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひその方向で進めていただきたいと思います。  残り時間が十分でございますので、最後に公正取引委員会中心として談合問題について触れていきたいと思います。  二月二十一日に公取が公表した、公共工事にかかわる建設業におけるカルテル問題で指針が出たのですけれども、これは今までの公取の考え方からかなり後退をしておる、談合を許容することになるのではないか、公取はこのようなことについてもっと談合問題には厳しく取り組むべきではないかというのが趣旨なんです。  これは、だから後で答弁をしていただきたいのですが、具体的な事例として筑波の問題を簡単に申し上げます。筑波が例の科学博を前提といたしまして、これは住宅公団お見えになると思いますが、住宅公団がデベロッパーとしていろいろな事業をやっておみえになるわけですが、その一つとして筑波研究学園都市に第三セクターをつくったわけであります。この第三セクターというのが筑波新都市開発株式会社であります。これは公団が出資をしておるわけでございますけれども、これが今回研究学園都市にショッピングセンターを七十二億で、日本でも有数な一流施工業者に契約をしましてやりました。この契約をやったのが十二月二十四日、去年のお話であります。ところが、この契約に当たりまして落札がなかなかうまくいかなくて、五回入札をしたわけですが、ついに落ちなくて、不落で随意契約になりまして七十二億になりました。この金額が当初第三セクターが予定をしておった予定価格より上回った金額だと言われておるのでございますが、ちょっと話の前提で、予定価格を上回って契約をしたのかどうかだけ、公団の方からお伺いをしたいと思います。
  142. 大塩洋一郎

    ○大塩参考人 御指摘のように、予定価格、当初低く抑えておりましたその額よりも上回って契約いたしております。
  143. 草川昭三

    ○草川委員 それがおかしな話でございますけれども、実はテナントで入るところの、これも日本で一流のスーパーが、この施工業者を優先順位第一位、第二位に推薦するから、ぜひ新都市開発に指名を願いたいというような、いろいろな要望書もあるわけでございます。その要望書があることがおかしいかどうかは別といたしまして、さらにこの入居するところのテナントは、自分が業者を推薦するんだけれども、相当の金額のはね返り協力金を払わなければいかぬものですから、全然違う業者に安く入札をしてもらいたい、安く入札をさせておいて、そしてその人に落札をさせると困るのですが、自分たちが推薦した業者に落札をするように取り計らってもらいたい。いろいろ複雑なことをやっておるわけであります。いわゆる公取が認めておるところの業者の情報交換というのは、もうむちゃくちゃに筒抜けになっておるわけであります。我々が承知をし得ないところでございます。  しかもおかしなことには、この十二月の二十四日に随意契約を七十二億でするのでございますけれども、四日たった二十八日に業者とこの第三セクターとが話し合いをいたしまして、設計変更を実はテナントが言ってきたのだから、ひとつ三億円ほど減額をしてもらいたいというような確認書を取り交わすわけでございますが、そういう確認書があることを公団は御承知でございますか。
  144. 大塩洋一郎

    ○大塩参考人 そのような契約というか、そういう申し入れをしておるということは聞いております。
  145. 草川昭三

    ○草川委員 そういうことでございますから、きょうはこれは時間がございませんから余りくどくどと申し上げませんけれども、業界の談合というのは相変わらず不可思議なことが行われます。なぜその契約を下げるのかということについては本日は触れませんが、第三セクターというのは民間企業ではございますけれども、いわゆる公共投資がもちろん対象になっておるわけでございますが、純然たる民間会社とは言い得ません。  そこで、これは会計検査院にお尋ねをしたいと思うのでございますが、今私が触れたこの筑波の研究学園都市のショッピングセンターの建設は第三セクターであることは間違いがないわけであります。この第三セクターが入札不調であったために、予定価格を超えた金額で随意契約をするということが、少なくとも国の場合なり地方ではあるのかどうか。さらに、この随意契約の際、わずか四日後に三億円の設計減額をするというような確認書を取り交わしているという全く納得のいかない事実があるのでございますけれども、このようなことは検査院は、今申し上げたように検査権限の外の問題ではございますが、これは承知をしておるのでございますが、国など公的機関でこのような取り扱いが許されているものかどうか、また現に行われた例があればお答えを願いたい、こういうふうに思います。
  146. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 お答えいたします。  国とか地方公共団体あるいは公社公団等の公的機関におきましては、法令制度上、予定価格を超えて随意契約をするということは認められておりません。したがいまして、そういう事例は見たことはないわけでございます。  それからもう一点でございますが、設計変更の点でございますけれども、契約後いろいろ必要な事情が生じた場合に設計変更をするという条項は必ず入るわけでございますけれども、当初から一定の金額を定めてそういう念書を取り交わすというようなことも、これもまた考えられないことでございますし、見たこともないわけでございます。
  147. 草川昭三

    ○草川委員 検査院の方からは非常に明快な御答弁がございました。設計変更があるならあるで契約をしなければいかぬわけです。あらかじめ概算で確認書をつくるというようなことは、とても許されるべきことではないと思うのです。こういうことが現実に筑波で行われておるわけでございますので、これは公取が変な後退をするようなことであっては相ならぬと思うので、公取からの決意と、それから住宅公団側から、公団としてこのようなことを今後も放置をするのかどうか。あるいは私ども聞いておる範囲では、裏ジョイントが行われておるとか、あるいは設計変更するならば確実な契約書を取り交わしてやるべきだとかいうことが必要になると思うので、まあ時間が来ましたので、公取とそれから公団の総裁の方から意見を求めて私の質問を終わりたい、こういうように思います。
  148. 妹尾明

    ○妹尾政府委員 お答えいたします。  公正取引委員会としましては、従来から、公共工事にかかわります建設業のいわゆる談合行為等によりまして競争が実質的に制限されるような場合には、法に従いまして厳正に対処してまいったところでございます。  先般公表いたしました建設業の公共工事に係るガイドライン、これは昭和五十四年八月に当委員会におきまして公表いたしました事業者団体の活動に関する一般的なガイドラインの内容を踏まえまして、その中の情報提供活動、経営指導活動、これを中心にいたしまして、これは原則的に問題となるおそれの少ない行為でございますけれども、これにつきまして建設業界の実情に即しまして、わかりやすい形で原則として問題とならない行為を例示したものでございます。しかし、この例示につきましても、受注予定者を決定したり、入札価格を決定するようなことになれば問題となりますよということも明らかにしておるわけでございまして、受注予定者決定等の違反行為につきましてのこれまでの法律上の扱い、解釈を変えたものではございません。今後におきましても、具体的に独禁法違反に該当するような事案がございました場合には、法に従いまして厳正に対処してまいる所存でございます。
  149. 大塩洋一郎

    ○大塩参考人 この工事が、結果的には、今公取からお話がありましたように、一般の公共工事の契約においては通常起こり得ないようなやり方をやった。また、せざるを得なかった事情はあるにせよ、その間の背景を見ますと、昭和六十年三月の科学博覧会の開催の前に開業したいという、しりを押さえられた工程でございまして、急いだ余りということがあったにいたしましても、その段取りのとり方、あるいはテナントとの連絡の悪さということを反省いたしております。したがいまして、今後もこういった工事が行われますので、以後かかることのないように十分指導してまいりたいと思います。
  150. 草川昭三

    ○草川委員 最後になります。これで終わりますが、マイナス三億円をやりながら、五十九年度の予算では、さらに第三セクターに公団は三億円を基盤整備という名目で支出をするわけであります。この問題は追及すればするほど不可思議な点が出てきますが、きょうは時間の関係でこれで終わりますが、せっかく日本の、それこそ二十一世紀に向けての、筑波でこれから科学博をやるわけであります。第三セクターにわずか平米当たり十九円の契約であります。ところが、科学技術庁がきょうは答弁願えませんけれども、貸す金は、平米二百五、六十円で公団は貸すわけであります。これなども私ども納得のいかない点が山ほどございます。  きょうはこれで終わりたいと思いますが、公団がデベロッパーの大将でございますから、厳重な対応を立てられることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  151. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五分休憩      ――――◇―――――     午後二時四分開議
  152. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上一成君。
  153. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、総括で留保した空域問題については、委員長御承知のように改めてその質疑は続行しますから、きょうは一般質問ということで。これはよろしゅうございますね、私の前回の質問に対する質疑は改めてやる。
  154. 倉成正

    倉成委員長 わかりました。
  155. 井上一成

    ○井上(一)委員 よろしいですね。  まず最初に、これは我が国だけでなく、ヨーロッパを初め、草の根運動として静かな輪を広げている反核運動についての外務大臣の御所見を聞いておきたいと思います。
  156. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 反核運動といいますか、核をこの地球から絶滅するということについては、日本としても我々としても、何といいましても広島、長崎で最初に原爆の体験を受けた民族として心からこれを熱願しているわけですが、ただ、世界でいろいろと起こっている反核運動は、イデオロギーの問題とかそういうものがいろいろ絡んでおるわけでございまして、やはり私は、本当に世界から核を絶滅するという、イデオロギーを超えた、あるいは国家というものの壁を超えたそういう高まりがこれから世界にとってはまさに求められでいかなければならぬ、ただ、これは、一般的な反核運動もそういう意味では大事ですが、国際連合とかあるいはまた国際機関、そういうものを適じまして我々も努力をしていかなければならぬ課題である、こういうふうに思います。
  157. 井上一成

    ○井上(一)委員 のっけから大変失礼かもわかりませんが、三月一日、きょうはどんな日だと思っていらっしゃるのですか。
  158. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 教えていただきたいと思います。
  159. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は反核運動の所見を聞きました。十分な軍縮に向けての我が国外交の指針を持っていらっしゃらないことを非常に残念に思います。  きょうは、ビキニの水爆被災の三十年に当たるわけですね。御承知のように、アメリカの大規模な水爆実験で焼津市のマグロ漁船第五福竜丸が死の灰を浴びた。そして、それは久保山さんが亡くなった年である。そんなことは被爆国家である我が国としては本当に忘れられないことであるし、そういうことを肝に銘じながら一つの大きな反核運動の先頭を外務大臣は切るべきだ、こういうふうに私は思うのです。このことは、東京の杉並の一婦人がともしてくれた原水爆禁止の小さな運動、小さな力が今日の草の根運動、世界に広がった反核運動になっていることは事実なんです。そういうことを教えていただかなければわからない。今や世界の国々に巨大な反核運動が広がり、核戦略の前に大きな力となって立ちはだかっている、そういう一人一人の力は弱くても。そういう意味では、中曽根総理もことしは軍縮の年だと言われているのです。  再度お聞きしますが、中曽根総理は反核運動を、私はその質問を直接まだぶつけていませんけれども、センチメンタルなものにこのような運動を位置づけていらっしゃるように私は受けとめています。抑止と均衡、そういう中で軍縮を考えようとしている、それが中曽根総理のお考えではないだろうか、そのことは核保有国の論理ではないだろうか。核非保有国の、さらには被爆を受けた世界で唯一の我が国の核軍縮に向けての取り組み、まさに世界に広がるこの反核運動がセンチメンタルなものだと位置づけられるのかどうか。外務大臣いかがですか。
  160. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、三月一日がビキニのあの福竜丸が被爆した日である。私も実は新聞記者を当時しておりまして、大変強烈なショックを受けた思い出がありますけれども、今すぐお答えができなかったことは非常に残念に思います。  反核運動については、確かにこれは世界の中で相当大きく動きが出ておるということは事実であります。特に、西ドイツとかフランス等で相当国民運動として動きが活発になっておるということでもありますし、日本にも根強いそういう動きがあることは事実でありますが、ただ、政府という立場から見ますと、この反核運動というのは、やはりそうしたもっと現実的な立場で、世界から核を絶滅するための動きというものにつながっていかなければならぬ。これはイデオロギーを超えたものであるし、あるいは国家というものを超えたものでなければなりませんし、そして、それはまさに国連の場とかあるいは国際機関とか、そういうものを通じてこれが核の禁止というものに向かって着実に進む動きでなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。それだけに、世界の核を絶滅しようという空気が世界の中で盛り上がることはそれなりの意義があると私は思いますけれども、しかし現実問題としては、これを世界的な規模に結びつけるにはもっと新たな角度から取り組んでいかなければならぬのじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  161. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務大臣、私は国会における外務大臣の外交演説も聞きました。しかし、聞くだけでは心に残るものがなかった、打たれるものがなかった。そして文書でも読みました。非常にきれいな文章を書かれている。「外交活動に対し国民の幅広い理解と支持を得ていくことが不可欠」だとか「我が国を取り巻く国際情勢は、まことに厳しい」とか、いろいろなことが書かれているのですが、この外交演説でここだけはどうしても国民に言いたいのだというところを示してくれませんか。教えてくれませんか。努力をいたします、努めます、そういう箇所が何カ所あると思いますか。それで全部終えているのですよ。今も具体的に取り組みます、具体的にどう取り組むのですか。その人たちと反核の話し合いを持ったのだとか、あるいはそういう人にも会ってみたいとか、具体的にあなたは何をなさろうとしているのか。この外交演説で何を訴えたいのですか。これは言葉じりをとらえて非常に悪いのですけれども、努めますとか努力しますとか、そんなところが二十一カ所出てきているのですよ、こんな短い文章に。国民は、努めますは当たり前のことで、外交が大切でございます、大切だからこういうことをやるのだ、こういうことをやりたいのだ、よし、それならやってみなさい、それはおもしろいぞと、そういう激励も送りたくなるわけです。  私は、期せずしてきょう三月一日に質問に立って、今ビキニの話、反核の話に入ったわけです。私はもっと前に質問の時間があったわけですが、それは保留になっているのです。その保留の分はよろしいから、今私が言ったことについて、ひとつ大臣どうぞ答えてください。ここだけはしっかりと、そしてこのことをやりたいのだと。
  162. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この外交演説につきましては、日本外交がこれまで取り組んでまいりましたその実績努力、そしてその基本的な考え方、取り組みの基本的な姿勢、そういうものを日本はどういうふうに日本外交として今後とも取り組んでいくかという課題につきまして一つ一つ挙げて、その点について私の方針を明らかにしたわけであります。  例えば日本アメリカとの関係、これはやはり日本外交の一つの基軸であるということもはっきり申し上げております。あるいはまたアジアとの問題において、日本アジアの一国であるという立場を踏まえて外交を展開していきたい。さらに対ソ関係につきましても、基本的な対立する問題はあるけれども、やはり対ソの対話というものに力点を置かなければならぬ時代に入ったのじゃないか。あるいはイラン・イラクに対する日本の外交の貢献、そうしたものを全体的に外交演説という形でお述べしたわけであります。
  163. 井上一成

    ○井上(一)委員 何ページの何行目に安倍ビジョンというものが記されているのか、後でゆっくり、終えるまでに答えてください。国際情勢を羅列して、それらの緊張緩和に努めます、努力をいたします、厳しい国際情勢であります、平和外交を守ることは大事であります、そんなことでは私の期待する外務大臣ではない。またそんなことでは、日本外務大臣として、まことにもって失礼だと思いますけれども、もうちょっとしっかりしてもらわないと、もうちょっとしっかりした外交指針世界に示してもらわないと私は非常に残念である、困るのではないだろうか、こういうふうに思うのです。そこで、それは何ページの何行目が、後で聞かしてください。  そこで、非核三原則、いわゆる核の問題で私どもがここ何回か強く指摘をし、また国是とも言うべきその三原則を守っているのかどうか、非常に古い話でそれはわからぬ。国民の大多数は恐らく持ち込まれているであろう、陸揚げをされたかされぬかは別として、そういう強い疑問を持っていらっしゃる方が大多数だと私は思うのです。同僚議員が質問をしていますからあえて深く追及はいたしませんが、外務省にお聞きをしたいのです。  横須賀に核搭載艦が寄港した、このことは米海軍の軍艦事典に記述されておったということであります。もちろん安保改定前後ですね。それで何回かの質疑の中で、口頭で訂正を検討しているというお話がアメリカからあった、こういうふうに私は受けとめているのですけれども、ちょっとここで念のために確認をしておきたい。
  164. 北村汎

    ○北村政府委員 お答え申し上げます。  これは、アメリカのグレイバック及びグラウラーという潜水艦がレギュラスⅡという核ミサイルを搭載して横須賀に寄港したというふうな意味にとれる記載が、先ほど御指摘になりました米海軍事典の記述にございましたので、私どもは、念には念を入れるということでアメリカ政府に照会をいたしました。それに対してアメリカ政府は口頭で、グレイバック及びグラウラーは核搭載能力は有しておった、しかしながら、本件記述はこれらの艦船が横須賀寄港中に核兵器を実際に搭載していたということを意味しないという点と、それから本件海軍事典の記載は誤っておって、米海軍としては本件海軍事典の改訂を検討中である、グレイバック及びグラウラーは、通常の展開の一環としては横須賀に寄港したことはあるけれども、海軍事典に言及されているレギュラスⅡ型ミサイルは潜水艦において実用段階には至らなかったということを言ってまいりまして、三番目に、米国政府は安保条約及びその関連取り決めに基づく米国の義務を誠実に遵守している、こういう回答がございました。
  165. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは外務省は、この記載事実については訂正を必要とするという認識ですね。
  166. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま申し上げましたように、レギュラスⅡ型ミサイルは潜水艦において実用段階には達しなかったというアメリカ側の回答がございましたので、そのレギュラスⅡ型を積載して横須賀に寄港したと解されるような記述、これは当然訂正されるものと考えます。
  167. 井上一成

    ○井上(一)委員 わかりました。この記述は訂正されるべきだという認識だ、こういうことです。この問題についてはまだ疑問の点がいろいろありますが、外務省も訂正すべきだという認識であるということがここで明確になったわけです。  それでは、もう一点聞いておきたいと思います。  既に新聞には報道をされています。今度は神戸に核ミサイル艦が入った。このことは御承知でしょうね、報道されていることは。
  168. 北村汎

    ○北村政府委員 これは二十四日付朝日の報道を御指摘のことと思いますが、政府といたしましては、報道にあるアメリカの巡洋艦ロサンゼルスが一九六一年に本邦、神戸に寄港した際にレギュラスⅠを装備していたかどうかということについては承知いたしておりません。
  169. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは委員長、よろしゅうございますか、このパンフをお見せして。
  170. 倉成正

    倉成委員長 それはどういう資料でしょうか。
  171. 井上一成

    ○井上(一)委員 これは、ロサンゼルス号が神戸に入港した折に、その巡洋艦ロサンゼルス号の艦長が日本語でここにごあいさつを書かれているわけです。それは一部新聞にも報道されているわけですけれども、「本艦はレギュラスⅠ型誘導、ミサイルをつけております」というくだりがここにちゃんとあるわけなんですね。今レギュラスⅠ型ミサイルを装備していたかどうかは承知していないとおっしゃるものですから、これをお見せしましょう。これは艦長が書かれたことです。あなた方は知っていると私は思ったのだけれども、どうぞ。委員長、よろしいですか。
  172. 倉成正

    倉成委員長 結構です。
  173. 井上一成

    ○井上(一)委員 わかったらこっちへ返しておいてもらおう。いや、欲しければ幾らでもなにですけれども、あなたはレギュラスⅠ型を積んでいたかどうかはわからない、それは承知していないと言う。これで承知しましたか。どうぞ。
  174. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいまお見せいただきましたパンフレットは、艦長の名前で、恐らく公開の資料で人々に配られたパンフレットであろうと思いますが、そのパンフレットの中にレギュラスⅠを搭載しておるということが書いてあるということは承知いたしました。
  175. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、当然外務省はこういうものは承知している、こう思っていたのですが、今明らかに承知をしていただいたと思います。恐らくレギュラスⅠ型は核、非核両用でございます、こういう答弁が返るのですけれども、これはまさに核を搭載して神戸に寄港をした疑いが持てる、私はそう思うのです。いかがでございますか。
  176. 北村汎

    ○北村政府委員 レギュラスⅠ型ミサイルは、私ども政府といたしましては、昭和三十五年以来ずっと核、非核両用のミサイルであるというふうに承知をいたし、またその旨のアメリカ側からの確認を得ております。そこで、仮にこのロサンゼルスという船がレギュラスⅠを搭載して神戸に入りましたとしましても、これはやはり核、非核両用の兵器であるということでございます。  さらに、もしこれが核専用のミサイルであるということといたしますと、この艦長は、そのパンフレットを配ったことによってここに核があるということを一般に知らせたということにもなるわけでございます。したがいまして、それはアメリカ政府が従来から、もうその当時から核の存在は明らかにしない、肯定も否定もしない、こういうアメリカの一般的な立場には反するといいますか、そこと抵触が出てまいりますので、そういうパンフレットに書いてあるという事実から見ましても、レギュラスⅠは核、非核両用のミサイルであったというふうに考えるわけでございます。
  177. 井上一成

    ○井上(一)委員 今、私が提示をしたパンフレットで、レギュラスⅠ型ミサイルは核、非核両用である、私はそういう答弁は予想していましたし、そう答えられるのは当然だと思います。それで、それ以外の何らの非核であるという根拠は外務省はお持ちでないでしょうか。持っていらっしゃいますか。これは核でないというその証拠、いわゆる物的な根拠があればひとつここでおっしゃっていただきたい。
  178. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども御答弁いたしましたが、レギュラスⅠは核、非核両用のミサイルであるということについて、アメリカ政府から何度も確認を得ております。極めて最近も、この新聞報道がございましたのでアメリカ側に照会をいたしました結果、レギュラスⅠは核、非核両用であるということをまた確認をいたしてまいりました。そういうことで、私どもはこれは核、非核両用であるというふうに確信しております。
  179. 井上一成

    ○井上(一)委員 核、非核両用であるということはよくわかっているのです。それで、今ちょっとわかったのだけれども、ごく最近新聞の報道によって、向こうへ確かめた、そういうふうに今お答えになったわけですが、私は、何か根拠があってこれは神戸港に入ったときは非核である、核抜きのミサイルである、こういうような証拠がおありなのかどうか聞いたわけです。それがなければないで結構です。そしてアメリカに問い合わせられたのも、口頭で問い合わせた、そしてそれは核抜きなんだというふうに答えがあったのかなかったのか、どういう答えがあったか。僕は素直におっしゃっていただいたらいいのですよ、時間が大変もったいないから。どうぞおっしゃってください。
  180. 北村汎

    ○北村政府委員 これは井上委員よく御承知のように、核のいかなる形における持ち込みというものも事前協議の対象である、これはもう私ども、日米安保条約に基づく条約上の義務としてアメリカが誠実に遵守しておるということは、一九六一年でございますからもう条約のできた後でございます、したがって、事前協議がないからこれは非核であるということは確信しております。
  181. 井上一成

    ○井上(一)委員 あなた方は、事前協議がないからこれは核抜きである、こういうふうな理解だ。ここで私がいろいろなものを出して、おい、これはこうこうだと言ったら、また問題になって、それがどうだとか、秘密漏えいだとか、いや、そうだとか、私はきょうはそういうようなことはいたしません、後の質問がありますから。  それで、むしろあなた方は、事前協議がなかったからこれは核抜きミサイルである、こういうお答えなのです。重ねて私は、この神戸港に寄港したロサンゼルスは核搭載をしているという艦長のこのごあいさつはあるけれども、これは核抜きのミサイルであったのだ、実戦用核抜きミサイルである、こういう外務省は理解をしている、これでよろしいでしょうか。
  182. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほどから御答弁いたしておりますように、事前協議がなされなかった以上は核の持ち込みはなかったというふうに確信しております。
  183. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃひとつ、僕はまだ総括で質問が残っていますので、悪いけれどもちょっと調べておいていただきたい。  新聞の報道にもありますように、「航空機取り扱い書リスト」というものがあります。さらには、一九六四年に出版されたレギュラスⅠ型の整備や逆用についての文書がたくさんあるわけですね。さらには、弾頭部分に関するそういう文書もあるわけです。ここにも記載をされている「11N」、この記号ですね。この「11N」で始まる文書、「11N」というこの記号は一体何を意味しているのか。「11」さらには「N」、これは外務省はわからぬと言うでしょう。だから僕は時間をかしてあげましょう。ぜひ次の質問までに調べておいてほしい。いかがですか。
  184. 北村汎

    ○北村政府委員 今井上委員御指摘の資料は、当方としても対米照会を含めて鋭意調査したわけでございますが、これはネーバル・エアロノーディックス・パブリケーションズ・インデックスというアメリカ海軍の航空機に関する文書の索引であるというふうに承知いたしており、先ほども委員がおっしゃいましたように、航空機の装備とか部品に関する文書をリストアップした資料であると、そこまでは承知しておるのですが、その資料自体を入手することができておりませんので、その内容の詳細については承知しておりません。
  185. 井上一成

    ○井上(一)委員 承知してないということはわかりましたので、今後、この「11N」で始まる文書、ひとつあなた方堪能な、時たま英語を日本語に正しく訳していませんけれども、「11N」で始まる文書を私は日本語で訳して提出をしていただきたい、こういうふうに思うのですが。
  186. 倉成正

    倉成委員長 井上君、その資料をひとつ出していただくと、外務省もやりやすいと思いますが。
  187. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務省に、「11N」で始まるもの、調べたらわかりますからね、「11N」でね、それを調べてほしい。  防衛庁長官に、この「11N」、防衛庁も非常に関心がおありだと思いますし、この「11N」の記号、ひとつぜひできるだけ早く私の総括の質問までにお調べをいただきたい、こういうふうに思います。よろしいですか。
  188. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今外務省に要望された点を防衛庁にも要望する、こういうことでございますね。
  189. 井上一成

    ○井上(一)委員 はい。
  190. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 はい、わかりました。
  191. 井上一成

    ○井上(一)委員 一応私はお願いをして、このことについてはまた総括のときに質問を続けます。  外務大臣、いかがですか。何ページの何行目を特にと御指摘ございませんか。
  192. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今申し上げましたのは、全体を通しまして私の演説のいわば骨子でありまして、全体の文脈にみなぎっておる考え方でございます。
  193. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務大臣、これは全体だ、山なしの平面だ、そしてどこもかしこも皆大事や、こういうことだ。それはあなたがそういうお答えたから深く追いません。特に、この中には、世界各地での紛争が多発している、事情はその国その国によっていろいろおありでしょうけれども、そのことが我が国の経済や政治、さらには社会に多大の影響を及ぼす状況となっている、こういうことを言われているわけです。このことは私は全く同感なんですよ。  そこで、それじゃこのような国際紛争の多発に対してどういう手だてをしていかなければいけないか、何がしっかりしなければいけないか、どこをしっかりさせるのだ。僕はやっぱり国連だと思うのですよね。国連。世界の国々が国連に期待したその過去における、キューバの問題だって、いろいろな問題がありますね、国連に対する期待というものは大きいと思いますし、国連の強化というものにはぜひ日本は力を入れていかなければいけない。ところが、今の国連はいろいろな紛争を解決するその力は余り効果を出していない、国連に力があるのやらないのやらわからぬ、こういうふうに私は思うんです。何がそういうことにしているのか、何が原因になって、国連が何かガス抜きの場であり、言いっ放しの場であり、何か国連が物足りなさを感じる。一体何だろうか。外務大臣はどういうところに国連の非力を感じられますか。
  194. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連は、第二次大戦を経て、世界一つの平和希求、やはりあれだけの戦争を経験して、再び戦争をしない、すまいという世界の国々の一つの英知のあらわれだ、こういうふうに思うわけであります。そういう中ででき上がった国連ですが、当初はそれなりの役割は十分果たしておったのじゃないかと思いますけれども、今おっしゃるように、最近ではどうも地域紛争等に対する国連の効果的な活動というものが行われていないということは、これは事実であります。特に国連の平和維持機能というものが少しさびついておるというふうな感じがしてならないわけで、国連が世界の平和を確立する上において大きな役割を果たさなければならぬという立場日本はとっておるだけに、国連の力、特にまた平和維持に関する国連の機能というものをもう少し強化をしなければならぬと私も思っておるわけでございますが、国連がなかなか思うように動けない一つの大きな原因の中には、やはり安保理の拒否権という問題が一つの大きな問題としてあるのではないかということも率直に言って感ずるわけであります。
  195. 井上一成

    ○井上(一)委員 おっしゃるとおり、あなたの演説集の十四ページの中ほどに「国連の果たす役割は大きなものがあります。我が国は、この観点からも、国連の平和維持機能の改善強化に引き続き積極的な協力を行っていく考えであります。」とある。確かに、安保理の米ソの拒否権が国連の地盤沈下の大きな要因になっていると私は思う。安保理の地盤沈下なり総長の権限の弱体化なり、あるいはこういうアメリカソ連の拒否権の問題、今後国連を本来の姿に維持機能を改善強化するために我が国は一体どうしていったらいいのか、アメリカに対して、ソ連に対して、拒否権の問題を含めて日本はどうしていったらいいのだろうか、こういうことが私は大事だと思うのです。そういうことをひとつ聞きたいわけであります。これが具体的な取り組みだと思うのです。いかがですか。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連の平和維持機能についての能力というものが低下して今日に至っていることは事実ですが、しかし、今依然として国連が世界の中で唯一の国際的なあれだけの大きな連合組織でございますし、日本も国連に対して積極的に国連外交を展開しているわけですから、やはりこれから今の国連の失われつつある力がさらに失われないように日本として役割を果たしていかなければならぬのじゃないか。残念ながら今、日本は安保理の理事でもありませんけれども、しかし、国際社会においては日本は相当な発言権あるいはまた力を持ってきておりますから、日本日本なりの今の国連内における力が認識され、また期待されておるだけに、これからの積極的な努力によって、今以上落ち込まない、さらにこれをむしろ向上させるための努力を外交活動を通じてやっていけるのではないか、またやらなければならない、こういうふうに思っております。
  197. 井上一成

    ○井上(一)委員 両国の安保理における拒否権に対して何か提言をされたのでしょうか。
  198. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題はしょっちゅう国連の中でも論議されておるというふうに聞いておるわけでございますし、日本としてもこの常任理事国の拒否権が世界のそうした平和活動、平和維持という機能にむしろブレーキをかけるということに対しては非常に批判を加えております。きょうも、安保理からの報告によると、レバノンの決議も拒否権が発動されたということでございます。そうした今一番大事な世界紛争地域の平和すら国連は何ら手が出せないということはまことに残念でありまして、やはり拒否権問題等については、今の世界における力関係からいいましてもなかなか困難なことではありましょうが、しかし、日本日本なりの世界の地位が向上しているだけに、その力の上に立って努力は重ねていかなければならぬ課題だと思います。
  199. 井上一成

    ○井上(一)委員 今後、この拒否権の問題については、日本として新しい提言をする決意をお持ちでしょうか。
  200. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 現実的に、具体的に今、戦後の枠組みをそう基本的に変えるということは困難であろうと思いますが、国連憲章の改正の討議等も行われておるわけでございますから、その中で日本なりの意見を述べなければならない、こういうふうに思います。
  201. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務大臣は私と全く同じで、私も国連の重要性というものはさっきも申し上げたとおりです。  そこで、一点伺っておきたいのですが、アメリカが国連のユネスコからの脱退宣言を行ったのですね。これに対して日本としてはどう思っていらっしゃるのか。僕は事実関係は承知しませんが、一部報道の中で、ユネスコが第三世界寄りの姿勢をとっていることに対してアメリカが不満を表明して脱退したとも言われているし、いろいろななにがあるのですけれども、ともあれ、アメリカの脱退、このことについて日本としてはどう思っているのか。国連の地盤沈下がさらに進んでしまうのではないか、第三世界との溝がさらに隔たっていくのではないか。アメリカのユネスコ脱退なんて反対なのだ、こんなのけしからぬ、むしろ脱退を取りやめるようにこんな努力をしたのだとか、いや、そうじゃないのだ、アメリカの言っていることに理解を持って、これはしょうがないのだと思われるのか、ここらはユネスコ脱退について外務大臣はどんな見解を持っていらっしゃるのですか。
  202. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカがユネスコを脱退するという宣言をいたしております。これはアメリカアメリカなりの言い分があるわけでありますけれども、しかし、国連を尊重しなければならない、国際機関を大事にしていくという立場に立つと、我々は極めて残念だと思います。そこで、アメリカに対しましても、ユネスコ脱退に対して何とかその意思を翻すことができないかということも日本立場として申し入れをしておるわけでございますが、アメリカアメリカなりの今の立場からいうと、その主張を変えるという考えはないわけでございます。しかし、日本はユネスコのメンバーとして、これからアメリカが脱退したとしても努力を重ねて、そしてまたアメリカがカムバックするように、かつてILOにもそういうことがあったわけですが、アメリカが帰ってくるように努力を重ねていかなければならぬ。  今、残念ながら国連とアメリカとの関係が少しぎすぎすしているということは確かにあるわけでございます。それがやはり国連の地盤を沈下するわけになるわけでございますから、日本アメリカとは友好関係にありますけれども、そうしたアメリカの姿勢に対して我々は反省を求めて、何とか国連の中にあってアメリカは我々と一緒になって世界の平和と安定のために努力していくことを我々は心から希望し、期待をするわけであります。
  203. 井上一成

    ○井上(一)委員 アメリカの脱退は非常に残念だ、今後復帰するように努力をする、こういうお答えだと理解をします。  さらに、報道なのですけれども、南北問題の重要な話し合いの場であるUNCTAD、ここからもアメリカが脱退する意向を表明したというふうに報じられているのですね。これは事実なのかどうか。これもまた、アメリカが脱退すれば、これこそ南北問題の亀裂というのですか、世界平和を志向する我が国にとって逆な方向に行くのじゃないか。アメリカの都合主義によって我が国の平和外交に非常に障害を与えているというか、支障を来している。これは事実なのかどうか。あるいはもしそういうことがあれば大変なことになると私は思うので、この辺あたりも外務大臣の所見を聞かせていただきたいと思います。
  204. 山田中正

    山田(中)政府委員 井上先生の最初の報道が事実であるかという点についてお答え申し上げます。  そのような報道がなされたことはもちろん私ども承知いたしておりますが、私ども、アメリカと連絡いたしております過程におきまして、アメリカが脱退をする意向であるということは承知いたしておりません。  ただ、アメリカは、UNCTADの中でも、例えばUNCTAD本来の経済の南北問題を離れた政治化の傾向とか、それから国際連合諸機関の間での仕事の重複とか、いろいろ改善すべき点がある、そういう点については努力していきたいということは言ってまいっております。
  205. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま局長から答弁いたしましたように、まだはっきりアメリカが腹を固めたわけではないと思いますが、しかし、UNCTADに非常に批判的であることは事実であります。しかし、アメリカがUNCTADから脱退をすれば南北の亀裂、対立はますます激しくなる可能性が出てきますから、むしろ南北問題を進めていく上においてUNCTADは大事であるという立場をとっておる日本としても、アメリカにそういう挙に出ないように外交的に働きかけていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  206. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は今、国連の地盤沈下の問題の要因、アメリカのそういう問題について指摘をしてきました。しかし、そうかといって、国連がすべて機能を果たしていないかというと、そうじゃないと思うのです。やっぱり一定の機能を果たしてきた。そういう一つの具体的な事例として、十年近い年月をかけて、今回、今世紀の最重要課題である海洋に関する新しい国際秩序、国際海洋法、この条約が成立した。これは非常に意義が深いと私は思うのです。  しかし、これもちょっと残念なことなんですけれども、世界の宇宙船の船長というのですか、先頭を切るアメリカが、ゴールへ来て、ゴール寸前で反対してしまった。カーターの時代はそうでもなかったのですよ、これは。レーガンに入って、まさに力を背景にするレーガン政権の強引な――大体むちゃくちゃやと私は思っているのですよ、日ごろから。むちゃくちゃやと思っているのだけれども、結局それが今回通ってしまった。こんな大国のしたいことがまかり通ってしまうという、そんなことが一体いいのかどうか。海洋の国際憲法と言うべき条約だと私は思うのですが、外務大臣はこのアメリカの反対をどう思っていらっしゃるのか。けしからぬと思っているのか、言葉は別として、気持ちは。私は、けしからぬ、こんなことは許されぬ、十年もかけて一生懸命頑張ったのにと。外務大臣は、けしからぬと思っているのか、これも、まあまあアメリカのするこっちゃさかいしょうがない、ついていかなきゃしょうがない、こういうふうに思っていらっしゃるのか、どっちなんですか。
  207. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 しょうがない、ついていくという考えでは毛頭ありませんで、海洋法については日本はいち早く調印をいたしております。アメリカとは全く立場が違います。それから、アメリカに対しましても、世界でこれだけの各国が署名をし、調印をして、そして批准をしようという状況にある、世界の中でやっぱり海洋秩序というのは大事になってきているので、大国アメリカがぜひともこれに参加するように何回も呼びかけておりましたが、やはり意見が合わないで、それぞれ違った道を歩むことになったわけであります。残念ながら西ドイツもそういう状況でございますが、これは今後我々は何回か話をして、世界全体が海洋法に積極的に参加するという方向に進むことを期待をし、そのための努力はこれからも重ねていきたい、こういうふうに思います。
  208. 井上一成

    ○井上(一)委員 レーガン政権は去年の三月に、この条約に盛り込まれている経済水域二百海里、これを抜き出して、一方的にアメリカはこの経済水域二百海里を宣言してしまったのです。いわばいいところだけ先につまみ食いしてしもうた。大国主義の典型的なエゴイズムというか、勝手主義だ、私はこういうふうに思っているのです。けしからぬと、これもまた、これはどう思っているんだ、そういうふうに僕が思っているやさきに、きょうの新聞に、ソ連も専有権を宣言、二百海里経済水域の地下資源。ソ連もやってきよった。アメリカだけだと思っていたが、アメリカもけしからぬが、ソ連もけしからぬ。私は、まさに日本世界平和外交に対して毅然と、やっぱりしっかりと、けしからぬ、こんなことは許されないんだ、こういうことを言い切っていかなければいけないと思うのですよ。一年前にレーガンがやったからソ連も一年後にやった。アメリカソ連も全くもってけしからぬ、こんなことは許されぬ、こういうことを私は思うのです。それでひとつこのことに対しての大臣の見解を聞いておきたい、こういうふうに思います。
  209. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 どうも、ソ連アメリカもそうですが、一方的に経済水域を二百海里設定するということは、国際的にお互いにコンセンサスをつくっていこう、そして現在の海洋法もそういう方向で進んでおる時代に、大変我々は遺憾であると思います。したがって、アメリカに対しましても、あるいはソ連に対しましても、現在各国が多く署名しておりますこの海洋法の秩序を重んずる、こういう方向でこれからこの問題を解決するように強く申し入れをしたいと考えております。
  210. 井上一成

    ○井上(一)委員 我が国は署名をしたわけです。それじゃ、アメリカが参加せずに反対をし続けた場合、日本は批准をしますか。  さらに、今まで大概我が国は、こういうような国際条約は、アメリカの態度に対応して、アメリカと同じような歩調をとってきたわけなんですね。これは今度、アメリカソ連もけしからぬと私は言っているのだし、大臣もそういう立場に立たれているわけですけれども、これは通常六十カ国が批准したら一年後に発効していくわけなんです。進んで六十カ国の中に日本は入っていくのか。署名だけして、あとは、批准はおくもしてもいいねん、アメリカも反対やねんからと、そういうような今までのアメリカ追随の姿勢をとろうとされるのか。この点について、六十カ国が批准をして、発効してから、いやそろそろ入ろうか、それからでも入ろうかというような対応なのか、進んで六十カ国の中に入っていこうとするのか。いかがですか。
  211. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この海洋法の問題については、アメリカ日本に追随してもらいたいと実は思っておるわけでありまして、そのためにアメリカに対しても何回か働きかけをいたしております。残念ながらアメリカは依然としてこれを拒んでおるわけでございますが、したがって、私たちは、署名をした以上は早く批准をするためにこれからも努力を重ねていく決意であります。日本は何といっても海洋国でございますし、今の海洋法によるところの世界秩序というものが、普遍的な、アメリカソ連も、その他世界的な中で一日も早くこれがコンセンサスとして固まることを念願しております。そのためにこれからあらゆる面で努力を重ねる決意であります。
  212. 井上一成

    ○井上(一)委員 ということは、あえて六十カ国の中へ入り込んででも、一日も早くこの批准に日本努力する、こういうことでございますね。
  213. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、日本は、積極的な批准の努力、そして世界の全体がこれに参加するように積極的に呼びかけていくということであります。
  214. 井上一成

    ○井上(一)委員 実はこの条約を批准するにはやはり国内法の整備も必要なんですね。これは御承知だと思うのです。私は、この条約を批准する場合、特に問題が一つあると思うのです。大臣、いかがですか。何か一つやはり問題がある。いかがですか。何だと大臣はお考えでしょうか。
  215. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろとあると思いますが、やはり海底資源の問題が、これはアメリカを初めとしてソ連もそうでしょうし、あるいはまたヨーロッパ、日本とも一番大きな注目を払っておる課題でございます。もちろん、それ以外に海洋関係のあらゆる秩序というものが包含されるわけです。
  216. 井上一成

    ○井上(一)委員 大臣、そんな答弁では私は納得できないです。私は、そういうものは解決できると思う。そんな問題じゃない。やはり日本がこの条約を批准する場合に特に問題になるのは何か。それは竹島問題なんです。竹島の問題ですよ。竹島問題を抜きにして日本も韓国もこの条約は批准できない、私はこう思っておるのです。竹島問題を抜きにしてこの条約が批准できますか。私は、我が国が批准ができない最大理由は何かと聞かれれば、やはりこの竹島の問題だ、こういうふうに認識をするわけです。いかがですか。
  217. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 条約的なことは私専門家でありませんが、先ほど海底資源と言いましたのは、今世界的に、例えばアメリカが批准できない、調印できない、あるいはまた西ドイツが渋っておる、こういう世界的な立場で海洋法条約で一番大きな問題は何かと言われたものですから、これはやはり海底資源の問題だというふうに申し上げたわけでございます。  もちろん、日本がこれに批准をするということになりますれば、竹島の問題というのもあるいは起こってくるかもしれません。これはしかし日本の領土であるわけでありますし、それから今我々は、経済水域二百海里はこれからの課題としても、いわゆる漁業専管水域では、二百海里は日本としても、例えばソ連との間でもこれをお互いに実施しているわけでございます。その間に北方領土問題も、漁業水域については二国間で話をつけておるわけでございますから、それはそれなりに、これからもちろん条約上の問題としてはいろいろと問題はあると思いますけれども、解決ができない問題じゃないのじゃないか、こういうふうに私は思っております。
  218. 井上一成

    ○井上(一)委員 竹島の問題を抜きにしてこの条約は批准できない、私はこういうふうに認識しているのです。だから、あなたは批准に努力をする、こういうことだから、そこは自信がおありだと、我が国の領土だと。しかし、現実には韓国は独身として軍事施設をつくっているのでしょう。あなたが日韓外相会議だとかいろいろな機会に口上書を出すぐらいでしょう。じゃ、必ず次の日韓外相会議のときに、日韓の政府間レベルのときにこの話を持ち出して、友好的な中で批准が進められるように努力されますね。――違うよ、大臣だよ。大臣に聞いているのだ。
  219. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、政府委員に補足を許していただきたいと思いますが、竹島問題について、私は、これまで日韓経済閣僚会議だとかあるいは外相会議だとか、そういうたびに日本立場を鮮明に主張をして今日に至っております。日本にとりましては、そういう意味では極めて重要な領土問題である、こういうふうに認識をいたしておるわけであります。
  220. 井上一成

    ○井上(一)委員 昭和五十年の四月に外務省が「「領海の幅が距岸十二カイリとなることにより我が国の領海内に含まれる国際海峡」について」という、そういう資料を提出されているわけです。それによれば七十二カ所の水路を列挙して、「海洋法に関する国際条約における国際海峡の定義が未だ確定をみていないのでここの七十二カ所のどれが国際海峡かは確定できないとこれには書かれているわけです。それで、今回海洋法条約が採択されて、第三部に国際海峡について記されているわけです。「国際航行に使用される海峡」。それで、五十年四月二十八日に外務省が出された七十二カ所のうち、どこが我が国の国際海峡になるのか、これをちょっと教えてほしい。これはそっちでいいです、大臣はわからぬから事務方で。七十二カ所のうち、どこが国際海峡なのか。今までは国際法が成立してないから七十二カ所書かれておったのですか。
  221. 小和田恒

    ○小和田政府委員 お答えいたします。  井上委員御指摘のように、新しい海洋法条約によりますと、第三部で、国際航行に使用される海峡についていわゆる通過通航という制度が導入されるわけでございます。そのどれが該当するかということにつきましては、条約の条文の解釈その他の問題もございますので、条約批准のための準備作業の一環として目下検討中でございます。
  222. 井上一成

    ○井上(一)委員 当然あなた方はそういうことを言うだろうと思った。それなら七十二カ所のうちのどこなんですか、今検討しているのは。どこなんですか。
  223. 小和田恒

    ○小和田政府委員 検討の対象となりますのは、この三十四条以下の規定に該当するような海峡ということでございますので、この海峡に該当するかどうかという問題を含めて検討しておるわけでございます。
  224. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ私の方から聞きましょう。  対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡、大隅海峡、これはどうですか。検討していらっしゃる国際海峡の対象に入ると思われるのか、いやそうじゃない、もう入らないんだと思われるのか、どっちなんですか。
  225. 小和田恒

    ○小和田政府委員 政府部内において検討している対象としては、日本の周辺でその規定に該当する可能性のあるものを全部検討しております。
  226. 井上一成

    ○井上(一)委員 じゃ、私が今申し上げた海峡はどうなんですか。
  227. 小和田恒

    ○小和田政府委員 最終的にどういう立場になるかということは別といたしまして、検討の対象としては入っております。
  228. 井上一成

    ○井上(一)委員 もちろん、国際海峡といっても条約にもちゃんと明記されていますが、海峡沿岸国の領海内であれば主権が及ぶと、こういうふうに私は認識するわけです。それは間違いございませんか。
  229. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいまの御質問の趣旨を私が正確に把握しかねたかと思いますが、この条約に規定する国際海峡に該当するということになりますと、この条約のもとにおける特殊な国際的なレジームのもとに服するということになるわけでございます。
  230. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう一度。国際海峡といっても、その海峡は、例えば我が国の国際海峡は我が国の主権が及ぶと私は認識するのですが、いかがですかと、こう言っているのです。
  231. 小和田恒

    ○小和田政府委員 国際海峡の種類、それからその幅、それから我が国の領海がどのように定められるか、いろいろなことによって決まると思いますが、いずれにしても、この条約に定めるところの通過通航が認められる国際海峡というものは、この条約の定める特定の国際的なレジームに服するということになるわけであります。
  232. 井上一成

    ○井上(一)委員 あなた方は自分だけがわかっている、そういうことでは質疑にならないわけです。私の言っているのは、いわゆる国際海峡なんというのは、やはりそこは通過できるようにしようということでしょう。本来が通過できない。上からか下からか、右からか左からかとってしまったら、そこは通れぬようになってしまう、お互いに。だから、ここは国際海峡にしようということで国際法で決めているわけです。そうなると、その領海内は当然その沿岸国が主権を持つべきだ、主権が及ぶのだ、こういうことを聞いているんですよ。わからない、私の質問がわからなければ、絵を描いて私は説明してもいいんだよ。我が国の領海内であれば、我が国が国際海峡と位置づけた、検討を合しているその海峡の領海内は我が国の主権が及ぶと私は思うのですが、いかがですかと。国際海峡はもう領海内であっても主権は及ばないんだというのか、主権が及ぶというのか、そのどっちなんですか。
  233. 小和田恒

    ○小和田政府委員 たびたび繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、国際海峡は今度できます新しい国連海洋法条約の規定に従って特別な制度のもとに服することになるわけでございます。その制度の内容としては、国際法上の観点からする制約というものが加わってまいりますので、そういう条約に基づく国際法の制度のもとに服した特別の海峡ということになると思います。
  234. 井上一成

    ○井上(一)委員 いわゆる通過通航の制度が設けられたのが国際海峡でしょう。ここは通過できるのだということで国際海峡が設けられたんでしょう。一問一答でいいですから、どうぞ答えてください。ここはもう狭いんだけれども、通過するんだ、そのための制度でしょう、国際法は、海洋法は。
  235. 小和田恒

    ○小和田政府委員 この国際航行に使用されるための海峡という制度は、従来の一般国際法上認められております無害通航権という概念がございます、その無害通航権よりも若干強いと申しますか、新しい制度として国際海峡の通航に関しては制約を受けない通航ができる水域ということで、この条約によって新しい制度が認められたわけでございます。
  236. 井上一成

    ○井上(一)委員 それで、そういう制度が設けられた。それで、少なくとも領海内はその沿岸国の主権が及ぶのか及ばないのか、こういうことです。
  237. 小和田恒

    ○小和田政府委員 沿岸国の主権が及ぶ水域というものが領海の定義でありますという限度におきまして、この領海内における制度は、沿岸国の主権が及ぶと申し上げてよろしいと思います。ただ、非常にわかりにくい説明で恐縮でございますけれども、私が先ほどからいろいろ申し上げておりますのは、主権と申しましても、その具体的な内容が何であるかということはいろいろございますので、この条約に基づく特定の制限に服するものであるという趣旨を申し上げているわけでございます。
  238. 井上一成

    ○井上(一)委員 私があと何を質問しようかということはよくわかっているわけだ。私が、領海は主権が及ぶのかと言うたら、くどいことを言わなくたって、及ぶのですと言えばいいんですよ。  そこで、大臣、これは非常に政治的な問題ですので。わが国の領海内に国際海峡ができるわけです、津軽にしても宗谷にしても検討しているという。この国際海峡、これはもう自由に航行さすための、国際海峡というのはそういう趣旨なんですよ。ところが、我が国の領海内です。この領海内は非核三原則の適用が及ぶのか及ばないのか、問題はここなんですよ、私が聞きたいことは。そういうことをわかって、予測して、いろいろと何かわけのわからぬような、理解のできない答弁をしているわけです。私は、国際海峡、当然これは我が国の主権の及ぶ領海内に国際海峡がつくられるわけです、そのときにその国際海峡は非核三原則の適用が及ぶと思うのか及ばないのか、及ばないとしたら理由は何なのか、そういうことをひとつ大臣に聞かせていただきたい。
  239. 小和田恒

    ○小和田政府委員 井上委員御承知のとおり、この問題につきましては従来から国会で質問がなされ、政府答弁をしております。政府の一貫して答弁しておりますのは、我が国の権限が及ぶ限りにおいて非核三原則は適用されるということでございます。
  240. 井上一成

    ○井上(一)委員 我が国の権限が及ぶ範囲内で適用される、これは私は非常に大きな問題になろうと思うのです。どういうことになるかというと、もうそこでは核を積んで通過を、我が国が国際海峡と指定をしたそういう場合には核を積んで通過通航ができなくなること、こういうふうになるのですよ。だからこのことは、総括もありますし、きょうここで、今の答弁でわかりました、及ぶということだからね。僕は、及ばないというふうに答えられると思っていたけれども、及ぶということだから、これはまたこれで問題としてとらえて、さらに質問を次回にこれはします。
  241. 倉成正

    倉成委員長 条約局長、大事なことですから、もう一回補足していただきます。
  242. 小和田恒

    ○小和田政府委員 誤解がないようにもう一度私が申し上げたことを繰り返して述べさせていただきたいと思いますが、私が答弁いたしましたのは、我が国の権限の及ぶ範囲内において非核三原則を厳守するというのが従来から政府が申し上げております基本的な立場であるということを申し上げたわけでございます。
  243. 井上一成

    ○井上(一)委員 領海内には当然我が国が主権を持つのだから権限が及ぶわけだし、そこが非核三原則の適用の範囲だということであれば、それはまた次の機会にやりましょう。  余り時間がありませんので、外交問題ばかりではなにでございますが、外務大臣、ちょっとお尋ねをしたいのですが、素直に、私は、これは我が同僚の上田哲議員が先日総理に質問をされたわけです。まあ、もちろん国際的には軍事同盟だ、こういうふうに言われた。僕は議事録を、きょうはまだでき上がってないんですが、ちょっと速記録を起こして、そういう中で、いわゆるどういう質問かというと、日本がこれまで結んだ他国との軍事同盟というのは三回あった日英同盟と日独伊三国同盟、この違いはどこにあるんだ、こういう質問に対して、外務省のある有能なる公務員が本を書いた、そこには、日本がアングロサクソンと提携してきたときは常に成功し、平和を維持し、そして日本は繁栄してきた、しかしアングロサクソン以外の国と同盟関係に入ったときは非常に不幸なことである、これは日独伊三国同盟の差をそういうような表現で書いてあった、こういう性格からしてそういうふうに定義づけてある、私はこの点にも多少――多少ですよ。同感な点がありまして、ここで申し上げるのですと、多少同感だと。つまり、アングロサクソンと同盟を結んだときは成功したと。ラテン、ゲルマン、いろいろあるわけですけれども、まあまあね。それからさらに続いて、英国とかアメリカの場合は、あれはみんな海洋国家でありまして、アメリカは大きな大陸ではあるけれども、あれは海洋国家だと私は思います、これは総理がですよ。貿易でやっぱりやっております、そういう意味で海洋国家と大陸国家というのは、自分の本でも書いて分析しておりますが、これは総理ですよ。海洋国家というものは貿易で生きていくものですから平和を非常に欲する、こういうことです。割合に平和を欲するということ、非常に開放的である、したがって民主主義的である、そしてそれは主として海軍が強くなる、それが海洋国家である、これは自分の本に書いてある、と。ところが大陸国家の場合は割合に自給自足ができる、したがって云々と言われて、陸軍が強くなる、全体主義、独裁主義という傾向に入ってくる、そういう傾向にあると言う。海洋国家である日本が提携した、そこに日本の悲劇が生まれたという面がなきにしもあらずであると私は見ておった、そういうことを本に書いたことがありますと。  それで、何を私は言いたいかと言えば、やはりこれは非常に怖い、危険な発想だと思うのですね。人種選別の発想、アングロサクソン、ラテン、ゲルマン。世界平和を、濃淡はあろうとも全方位外交、あなたの親分である福田さんがそうおっしゃったのだ。これは非常にいい、大きい国であろうが小さい国であろうが、強い国であろうが弱い国であろうが、富める国であろうが貧しき国であろうが、すべて仲よくしなければ。人種を超越して、宗教を超越して、そういうところに平和というものがつくり出されるのだ。アングロサクソンがどうだとか、私は非常に――あの方は、また総理に聞きますが、非常に答弁はうまく、さあっと耳で聞くだけだと非常に何かうまい答弁、名答弁だ。しかし、よく考えれば、かみしめれば非常に危険である。大陸国家、内陸国家。中国はどうなんですか。海洋国家なんですか。ひょっとしたら半分半分や言うでしょう、中曽根さんだったら。  そこできょうは、中曽根さんの発言に対して、外務大臣の所見を承っておきたい、こういうことでございます。
  244. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も中曽根内閣のもちろん一員でありますから、中曽根総理大臣の発言というものについては閣僚としてこれを支持するものでありますが、ただやはりそれぞれ政治家の場合、特に総理大臣になるような人は個性がありますから、やはり言葉のニュアンスというのがいろいろとあるのじゃないか、言葉のニュアンスがそれぞれあるわけです。  したがって、私なんかは、例えば今の日本の外交政策でも、おっしゃるように、濃淡はあっても、全方位外交というのは日本の外交だと思うのですね。ですから、その言い方がいろいろあるので、基本的にはそれは変わっていないと思っております。濃淡はあるけれども、全方位外交は今、日本はとっているわけです。これまでもとってきたし、今もとっているわけですし、中曽根総理発言も結局はそういうところに落ちついていくのじゃないか。  ただ、それぞれの個性のある発言、ニュアンスはそれぞれ違いますから、そういうとらえられ方はいろいろあったとしても、日本の現実の外交というのはそういう外交をとっていることは間違いないわけで、そしてこれは今後ともとっていかなければならぬ外交だ、私はこういうふうに確信しております。
  245. 井上一成

    ○井上(一)委員 これは私はまた中曽根さんに、総理に苦言を呈します。それで、ひとつ一国の総理、日本の総理、日本外務大臣として、いかなる国とも平和外交、そして友好関係、そういう気持ちを持ち続けるということを忘れないでほしい。人種選別の発想、これは教育にでも持ち込まれたり、あるいはもうすべてそういう発想で世の中が支配されたときに危険な社会状態に陥っていく、私はこういうことを指摘をしておきます。  時間がありませんので、あとぜひこれは提起をし、お答えをいただきたい点があるわけです。  けさのニュースで埼玉の与野市の鈴谷小学校でしたか、全盲の少女が普通学級に入学ができた。非常によいことでありますし、もちろんお母さんと本人の努力、大変だったであろうと思いますし、さらには環境の整備なり、あるいはすぐれた個性を引き出していった協力を惜しまなかったたくさんの人に拍手を送りたいし、ぜひそういう機会が、一人でも多くの子供が持てるようになってほしい。障害者が健常者の社会の中に溶け込んで一緒にお互いが仲よく協力をし合って暮らしていく、それがやはり社会だと思うのです。仲よしというのを一つ目標にして、仲よしというのはどういうこっちゃ、これはいまの外交にも通ずるのですよ、アングロサクソンであろうがラテンであろうが。  そういうことで、私は文部大臣に、今、点字というものが十分な市民権を持ってない。何かの申請を点字ですることができるのかどうか。例えば入学の手続であろうが、あるいは役所に対するいろいろな申請を全部点字でやった場合には、点字を漢字か平仮名か何かそれはわかりませんが、それを書きかえて、正式な、公式な役所で受け付ける文書としては書きかえた形になっていると思うのです。点字に市民権を与えるべきである。点字についても当然役所は点字のままで受け付けて、そしてその点字を理解できる職員がそこで対応できる受け皿を整備すべきである、そういう条件を整備していく、それが世の中であり、それが社会だと私は思っているんですよ。全盲の子供を全部入学をさせなさいとか、あるいはこうさせなさいなんて私が言っているのではないのです。努力をして、どうすることがこの子供の幸せであり、どうすることがこの子供にとって社会の中で生きていく幸せを、生きる勇気を持ってもらえるのか。そういう意味で、入学のことは別にして、私は点字というものに対する市民権をぜひこの際――これはきょう朝のそのニュースを見、私は前々からこの点字、障害者の問題については強い関心を持っているわけですけれども、今コンピューターの機器が開発されて、何か点字をすぐに漢字なりに直すワープロというのですか、そういうものも開発されているということを聞いています。それを福祉事務所なり市役所なりあるいは文部省の窓口なりいろんなところに置いたり、あるいはそういう点字を理解できるような対応がひとつぜひ必要だ。選挙の投票の場合を除いて、一般の公文書としての受付は点字は拒否されています。これはまさに障害者に対して、点字に対して十分な市民権を与えていないということであり、何の福祉だ、何の平等な公平な社会だと言えるか。金や物じゃないのだ。そういうことを考えると、まず文部大臣にひとつ、私が今指摘をした点字に市民権を、ぜひそのことを申し上げておきたい。  まずこの点字の問題について大臣からお答えをいただき保たいと思います。
  246. 森喜朗

    ○森国務大臣 井上さんの御指摘のけさのニュース、私は残念でありますが見なかったのですが、市民権をということは、これは文部省の私どもで今判断を示すということは適当ではないと考えますが、学校教育におきます中で点字というものをできるだけ認める方向にはやはり努力をしていかなければならぬ。そしてまた、けさのような例もございますし、大変な努力をして、御本人はもちろんのこと、家族の皆さんも大変な努力をされた、その努力をされて、これから学校で相当御苦労も多いと思いますけれども、それをされていかれるというそのプロセスがとても大事な教育だろうというふうに感じました。  現在、今調べてみますと、高校、大学等では点字は受け付けていないようであります。ただ、共通一次試験と、それから高校の学力検定は地域によっては点字での受験が可能であります。小中学校については、これは各都道府県で考えて処理されなければならぬ問題でありますから、文部省としても一つの問題点として前向きで努力して指導していきたいと考えております。
  247. 井上一成

    ○井上(一)委員 官房長官、私はこれは一文部省だけの問題ではないと思うのです。それで、内閣としての姿勢をね。  私は前に、めくらだとかおしだとかつんぼという表現は差別表現だということで指摘をしている。これは一定の文言を変えたわけです。私はきょうは、そのことも大事であるかもわからぬけれども、それを変えたからといってすべての差別がなくなったわけでない、むしろ意識の変革が大事である、意識を変革さすために私はそこの問題を指摘したわけです。だから、差別なんというのは何から起こるか、意識の問題だと思うし、意識を変革していって、そして差別の実態を、取り残されている実態、あるいはどんな差別の事象があるかということを個々にきっちりと把握していかなければいけない。そういう意味では、私自身は何もかもここで一挙に解決ができるというふうには、それはやってもらえばありがたいけれども、なかなか難しい問題もあるでしょうけれども少なくとも今言う点字での公文書の申請、都道府県、市町村、学校、いろいろなところにありますが、社会全体でそういう点字を受け入れていくという、私はおえて市民権という言葉を使いました。私は、点字に市民権を与えるべきである、内閣として取り組む決意をぜひ促したいし、持っていただきたいので、その御決意を聞かしていただきたいと思います。
  248. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 心身障害者の方々に対する先生の温かいお気持ちと具体的な御提案を今承らせていただいたところでございます。お一人お一人の障害者の方々がまさに一般の方と一緒になって自立をし、力強く生きていく、そういう御努力をいただいているわけで、社会全体としても関係の方方に対してそういう構えができていなければいかぬ、そのことは先生のただいまの御提案と私どもも全く志を同じゅうするものでございます。  ただ、具体的に点字に市民権を与えるということにいたします場合に、それがどういうことをしなければならないのかというようなことについて、今急に御提案をいただきましたので、私もそれがどういうことになっていくのかという心の準備ができておりません。政府といたしましては、先生のお気持ちを体して、今後の検討課題としてこの問題について取り組ませていただきたい、そのように思いますので、今のところこういう御答弁で御了承をいただきたいと存じます。
  249. 井上一成

    ○井上(一)委員 もうあと時間がありませんので、私はまた次の機会にいろいろと教育と福祉については申し上げることがたくさんあります。個個の問題でなく、やはり一つのとらえ方として、哲学を質疑の中で意見交換をしていきたい。  私は、今ふっと思うのです。民主主義はやはり、言葉は悪いけれどもでこぼこがあるわけです。できる子供、できない子供、一生懸命やることが大事であり、取り組む意欲を持たせることが大事である。今、教育改革、私は立場、所属する政党は違っても、今の教育の荒廃を憂えます。しかし、どうしたらいいんだということに対して一言も政府側の考えがない。  あなた方はこれで同じようなアタッシュケースをつくろうとしておる。ふろしき教育論。私はここにふろしきを持っておる。これは便利なんですよ。小さいものでも大きいものでも、四角いものでも丸いものでも、どんなものでもこれはうまく活用できる。人間とはそうでなければいかぬ。教育というのはそういうものだ。ふろしき教育論。あなた方の考える、一万円も二万円もするさっきから私の質問に答えているかばん、こんなものにつくったら、そんなことじゃだめなんだ、教育は。教育は、アタッシュケースの教育、画一された教育を論ずるのではなく、その人その人の持てるふろしき、その人その人が大事にするふろしき――私はこのふろしきを大事にしていますよ。中に大切なものがたくさん入っている。だから、そういうふろしき教育論。民主主義はでこぼこであって、いろいろな識見、いろいろな違い、いろいろな物事がそこに生きていること、それが民主主義。考えの違いがあっていいのです。しかし、お互いにこの考えは正そうじゃないかというのがこういう国会での議論の場だと思うのです。  だから、中曽根さんがどんなお考えを持とうと結構でございますけれども、一国の総理が余りにも、ふっと聞いているときは気分よう聞けますけれども、かみしめたらとげがあってしょうがない。これが非常に私は、いらっしゃらないところで余り――また、いるときに同じことを言います。官房長官、だから答弁をよく考えておいてほしい。  そういうことで、時間が来たので、まあきょうはこれぐらいにおきますが、ひとつせっかく渡部厚生大臣も御出席をいただいたから、私のふろしき教育論、さらには、障害者、健常者がともに生きる、そういう喜びの持てる社会、そういうものをつくるために厚生省が一生懸命頑張ってもらう。幼保一元化というか、幼稚園と保育所を一緒にしなければいかぬので、今はばらばらや、二元化やから、この教育改革の一つの必要性を言われている……
  250. 倉成正

    倉成委員長 井上君、時間が参りました。結論をお急ぎください。
  251. 井上一成

    ○井上(一)委員 だから、渡部大臣にひとつ所見を聞いて、きょうの私の質問は終えます。
  252. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 まことに傾聴すべき御意見であると思って今謹聴、拝聴しておりましたが、私の社会福祉政策にもそういう考え方を生かしてまいりたいと思います。
  253. 倉成正

    倉成委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、塩田晋君。
  254. 塩田晋

    塩田委員 私は、日本の社会保障につきまして、特に、その中でも最も根幹をなす健康保険制度、年金制度の改革につきまして、厚生大臣並びに大蔵大臣に御質問申し上げます。  まず、その質問の前提といたしましてお答えをいただきたいことがございます。  それは、去る二月九日、我が党の佐々木良作委員長が本会議におきまして中曽根総理に相当思い切った提案をされましたことは両大臣とも御存じのところでございます。  委員長は、教育の改革はもとよりでございますが、国民的コンセンサスを必要とするような問題について与野党の間で協議機関を設置して話し合う、そしてお互いにこの一致点を見つけての努力を傾けてみてはどうか、こういう提案でございました。  それに対しまして中曽根総理は、行革、財政改革、平和外交、安全保障などについて与野党のしかるべき機関が相談をし合い、成果を生み出すことができれば国民は喜ぶでしょう、佐々木委員長のこの画期的な提案に対しまして、党機関と相談の上誠意を持って回答いたします、こういう非常に中身のある、まじめな答弁があったわけでございます。  これにつきまして各方面でかなりの波紋を起こし、また、自民党におかれましても、内部におきましてもいろいろな反応があったことは御承知のとおりでございます。このことにつきまして、次の総理あるいはその次の総理をねらわれる、またねらうべきだと言われております竹下大蔵大臣の御所見をお伺いしたいのでございます。
  255. 竹下登

    ○竹下国務大臣 本会議における佐々木委員長の御質問の中、御意見を交えての御提言に対して、総理が今おっしゃいましたとおりの答えを述べたことは私どもも承知しております。議会制民主主義というのは、そしてそれがなかんずく法律には規定されていないものの、政党政治というのが我が国の議会政治の中に定着しております今日、そのような考え方で臨むべきものであると、総理大臣の考え方と一緒であります。
  256. 塩田晋

    塩田委員 渡部厚生大臣はいかがでございますか。
  257. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今大蔵大臣がお答えしたとおりでございます。
  258. 塩田晋

    塩田委員 総理大臣が答えられたのと全く同じであるということでございます。それはそういった面期的な提案に対しまして賛意を表明されたものと受け取ります。  まあ人間でございますから、また経歴、生い立ちも皆違いますし、そこには当然人柄といいますかカラーというものが出てくるはずでございます。全く同じではなかろうと思いますが、若干そういったニュアンスの違いも含めてもう一回ちょっと御発言をいただきたいと思います。大蔵大臣。
  259. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今、私は中曽根内閣の一員でございますし、まさに本会議という公式の場所において佐々木委員長の御見解を交えた御質問に対して総理がお答えしたわけですから、この正確なお答えとすれば、まさにそのとおりでございますと言うべきであろうと思っております。政治家個々の持つニュアンスというのは、やはりそれの基本的な、一致した考え方の中で多少接触の段階で手法が違うとかいうような形では出てくるであろうと思いますが、中曽根内閣の一員としての考え方は、基本的に先ほど申し上げたとおりと言わざるを得ません。
  260. 塩田晋

    塩田委員 全く同じであるということでございますので、この佐々木委員長の提案に賛意を表せられたものといたしまして、次に移りたいと思います。これを前提といたしまして、国家国民のためになるような政策、その国民的コンセンサスを求めての協議には、誠実にこれに対応していただけるというふうに受け取って、次に進みたいと思います。  そこで、日本の社会保障の水準につきまして、現在の水準というものは先進諸国との比較におきましてどのような段階にあると認識しておられますか、お伺いいたします。厚生大臣。
  261. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 我が国の社会保障、本格的に政策遂行になったのは西欧の諸国に比べて遅いのでありますが、今では国民皆年金、国民皆保険、また老齢年金の受給額も十一万、ほぼ西欧並みの水準に近づいておりますし、各国に比べて決して遜色のあるものではございません。論より証拠と申しますが、昭和二十年、五十一歳程度の平均寿命が、今日まさに短期間の間に八十歳に近づくということをもって戦後の我が国の社会福祉が進んでおる状況は御理解いただけるのではないかと思います。     〔委員長退席、松永委員長代理着席〕
  262. 塩田晋

    塩田委員 我が国の社会保障水準は、先進諸国と比較して急速に追いついてきた、決してその水準は他の国と遜色のあるものでないということを回答されましたので、これを確認しておきます。  そこで大蔵大臣にお伺いいたします。細かい数字につきましては事務当局からお願いします。  各国、特に先進諸国と言われ、また大国と言われる国を含めまして、その国家予算の中に占める社会保障の経費、財政措置ですね、これと防衛費、他の国では軍事費と言っておると思いますが、それとの比較を、主な国について数字の上で国家財政の中にそれぞれどれくらいの比率を占めておるか、そしてまた最近年度におきましてそれぞれどのような予算伸びが見られるかということにつきまして御説明をいただき、そういった傾向につきましてどう評価しているか、我が国との比較におきましてどのように見ているかということについて、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  263. 竹下登

    ○竹下国務大臣 詳細には事務当局からお答えさすことにいたしますが、私がたまたま昨年の二月、本院に在職すること二十五年、こういうことで二十五年前のあらゆるデータをとってみましたところ、それが国家予算で言いますと、一般会計の規模が約四十倍、一兆三千億と五十兆といたしまして。それで社会保障関係予算が七十七倍、それから公共事業が三十八倍、文教がやはり三十七、八倍でございました。それで防衛費が十八倍ということでございますので、当時、二十五年前と随分、いわゆる社会保障関係というものは今の厚生大臣の御説明を基礎に置いて考えてもかなり伸びたな、こういう印象を受けたことは事実でございます。  詳しくは事務当局からお答えをさせます。
  264. 山口光秀

    山口(光)政府委員 諸外国の社会保障費の予算に占める割合、日本と比較して示せということでございますが、国によりまして社会保障制度にも差がございますし、それからその社会保障を担当しているのが国であるか地方であるかという差もございますし、それから会計制度においても、どういう計上の仕方をするか、例えば特別会計をつくっているとかつくっていないとかというような差がございますので、まずこの国家予算の中に占めます社会保障の割合、それから伸び率というのをまず申し上げます。国防費についても申し上げますが、各国の間の比較をします場合には、実はその比率でごらんいただきますよりは、例えば社会保障でございましたら社会保障移転の比較、これをGNP比で見ていくといったような比較がより比較しやすいのではないかということで、これも、国防費についてもGNP比で比較したらどうかということで、これも後ほどつけ加えて申し上げたいと思います。  まず日本でございますが、ただいま御提案しております五十九年度予算で社会保障関係費は、一般会計の中で構成比一八・四%、伸び率二%、防衛関係費は構成比が五・八%、伸び率は六・五五%でございます。  外国でございますが、アメリカ、これは八四会計年度、八三年の十月から八四年の九月に終わる会計年度の実績見込みでございますが、社会保障費の構成比が四二・九%、伸び率が二・四%。それから防衛費は、構成比が二七・八%、伸び率は一二・九%。アメリカの場合には特別会計ではございませんで、日本は年金とか社会保険とかは特別会計で経理しております。したがって、保険料が特別会計の方の収入に入っておりますので、一般会計では歳入歳出ともに上がってこないという面がございますが、アメリカはそれが全部上がってきますので、こういう結果になっているのだと思います。それからイギリスでございますが、社会保障費は、これは八三年度で申し上げますが、二六・八%の構成比で、伸び率が一一・四%。国防費は一六・五%で伸び率が一二・四%。西ドイツは社会保障費の構成比が三三・五%、伸び率は三角一・一%。国防費は一九・五%、それから伸び率が三・七%。西ドイツにつきましては八四年の予算案で申し上げました。フランスでございますが、八三年の予算でございますが、社会保障費の構成比が二二・一%、伸び率が一三・三%。国防費は構成比が一五・七%、伸び率が七・六%でございます。  それから社会保障移転のGNP比で比べるのがよかろうということを申し上げましたが、八一年でずっと申し上げます。日本が一〇・九%、アメリカが一一・五%、イギリスが一三・三%、ドイツが一七・四%、フランスが二四・五%でございます。  それから防衛費のGNP比を八二年度のデータを既に防衛庁の方から本委員会に提出資料でお出ししております。その数字を申し上げますと、GNP比でございますが、日本が〇・九%、アメリカが七・二%、西ドイツが四・三%、イギリスが五・一%、フランスが四・一%、こういうことに相なっております。
  265. 塩田晋

    塩田委員 ただいま御説明がございました。フランスを除きまして社会保障費の伸びが少ない。防衛費の伸びが各国とも大きく伸びておるという傾向が出ておると思います。データの要求をしたのでございますが、北欧諸国、すなわち社会保障が非常に充実しておると言われております北欧の各国の状況を調べてもらうように言ったわけでございますが、なかなかつかまらないということでございます。  私、昨年国会から派遣をされましたときに北欧各国を回りまして、特に民社党と友党関係にございます社民党が政権をとっておる北欧の各国、また野党としても最大の党派であるという各国を訪ねまして、その政党の責任者なり関係の方々と懇談をいたしました。そのときの話は、現在の核兵器による人類に対する脅威、破壊的な事態の起こることを恐れての、いかにして核廃絶を進めるかということ、そして軍縮を進め、平和外交を展開するかということに必死になって取り組んでいることを痛感したわけでございます。それをしかも具体的に各国に呼びかけて、米ソの超大国を入れてのそういった軍縮を進めるという平和外交を熱心に展開しておる、その態度に打たれたわけでございます。  それで、どういう社会保障と防衛費、軍事費の関係になっているかということを聞きましたところ、この際は社会保障費は伸ばすべきところもある程度辛抱してあるいは見直しまでして、やらなければならない防衛、安全の問題については力を入れるのだということを言っておりました。我が国の場合はことしはどういうお考えで防衛費が六・五五%伸び、社会保障費は二%の伸びであったか、これの国民にわかりやすい説明をしていただきたいのでございます。これは、防衛庁長官がおられませんから、まず厚生大臣は、二%の伸びにとどまったということについてどのような事情からか御説明をいただきたいと思います。
  266. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 厚生省の予算、これは塩田委員御承知のとおり九兆二千五百億に近い数字でありますが、厚生大臣としては、厚生省の予算は多いほどよいのでありますが、全体のバランスがありますから、我が国の五十兆の予算でも、公債償還金あるいは地方財政計画等で、政策費として使われる本年度の予算は三十二兆円内外ということになりますと、その中で我々の要求した予算は二七%を超しておるはずでありますから、今日の財政の厳しい条件の中ではまずまずという感想を得ております。防衛費の六%増に比べて低いということでありますが、他の省庁ほとんどマイナスシーリングということで苦労をしております。厚生省の予算はずうたいが非常に大きい中で、経済協力費、防衛費に次いでたしか三番目と記憶いたしますが、その中で内容的にはこれからの国民の健康を守るための老人保健事業あるいは重度障害者対策あるいは中曽根総理が強く提唱し国民の共鳴を得ておりますがん対策、こういった予算については防衛費をはるかに上回る予算等も獲得しておりますので、今回の厳しい条件下の中の予算編成の中ではまずまず国民の皆さんに御理解をちょうだいしたい、こういうふうに考えております。
  267. 塩田晋

    塩田委員 防衛費というのは、言うまでもなく国の安全保障のための経費だと思います。社会保障というのは、社会のいろいろな生活上あるいは疾病の際の不安、あるいは実際困窮されておる方々をみんなで助け合おう、社会的にこれを助ける、相互扶助していくという趣旨の経費だと思うのです。言うならば、防衛費は外に対しての安全保障のためのものであり、社会保障というのは国内の国民の生活に直結した安全保障の問題だと思います。もちろん国の安全が保障されなければこれはもう福祉もなければ、生活もなければ、経済もなければ、また身体の自由からもう基本的な自由もなくなるという最も基本的なものでございますから、これは重大に考えなければならない問題だと思います。しかし社会保障もそれに劣らず、国内に不安が広がり、そこで政治に対する不信が起こり、国内における争いが生じたときにはこれまた大変な事態になることは、今日、レバノンあるいはアフガニスタン、あるいはベトナム、カンボジア、この状況を見れば、この両々ともにやはりしっかりしなければならない、いささかも不安があってはならない、また危険な状況に置いてはならないということにおいて、私は国家財政の中でも最も大きな、重大な経費だと思います。この点について大蔵大臣はいかがお考えでございますか。
  268. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も認識は等しくいたしております。  たまたま立たしていただきましたので、先ほどの分をちょっと訂正させていただきますと、予算規模約四十倍と申しましたが、三十八・四倍でありました。社会保障を七十七と申しましたが、七十二・七でございました。防衛費は十七、八と申しましたが、十八・八でございました。それで、これは二十五年前でございますけれども、そのときは社会保障は千二百五十八億、それから防衛関係費は千四百六十二億、予算の総額がまだ一兆三千百二十一億のときであります。それから二十年前になますと、社会保障は二十年前に比べたならば二十五・三倍、防衛費は十一・四倍。それから十五年前は十一・二倍社会保障、六・五倍が防衛費。それから十年前が四・三倍社会保障、防衛関係費が二・九倍。それから五年前が一・三倍社会保障、防衛費が五年前から比べれば一・四倍と、こうなっておりますので、結局予算というものはそのときの財政経済事情等を勘案しながら、まあ私は財政当局の立場でございますから、専門的な分野は別といたしまして、各般の調整をとっていくぎりぎりというのがこういう結果をもたらしたではなかろうか。基本的にいわゆる防衛費というものは国防に関するものであり、そして社会保障というのはいわば国民一人一人の関係のものである。いずれにしても、それが重要な政策要素であるという認識は一緒であります。
  269. 塩田晋

    塩田委員 これからいろいろと議論をしていきたいと思うのでございますが、そのために私は結論的に申し上げたいと思いますが、厚生省の今回の二%増の予算措置、これは極めて不十分である、このように思っております。といって防衛費から社会保障関係費をふやすために持ってくるようなことは我々は言いません。厚生大臣がもっともっと大蔵大臣に強く要求をして、現在の、今言われました九兆二千四百九十一億円の厚生省予算というものは、これは例えば防衛費予算と同じように六・五五%の伸びをするまで、なぜこの重大な社会保障の関係を中心とした厚生省予算について頑張れなかったかと、非常に残念に思うのでございます。  そこで私は、防衛費と社会保障費、これは大蔵大臣といたしましては五十兆何がしの限られた予算の中でどういう組み合わせをするか、選択をするかということで悩まれただろうと思うのです。その結果としてこうなっておるわけでございますが、厚生大臣はどこまで頑張られたか、そして、結果的にはこれでやむを得ないと思っておられるのか、どのように認識しておられますか。これは、限られた予算ということになりますと防衛費と社会保障費のトレードオフの関係、日本語で言いますと競合的選択関係というものになると思うのですが、そういう関係にある中でこういう結論を得られたということについて、私は、厚生大臣の努力の仕方が足らない、そして六千億円を無理して減額するためにむしろ頑張られたというふうに、後から明らかにしたいと思いますけれども、このような防衛費と社会保障費の関係につきまして大蔵大臣はいかがお考えでありますか。
  270. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただ、予算編成ということになりますと、私どもといたしましては、いわゆる途中経過はいかにあれ、結果は内閣一体の責任において、現状において最善のものなりとして提案申し上げ、御審議をいただく、こういう筋のものであります。したがってまた、予算編成の衝に当たる大蔵大臣といたしましては、言ってみれば防衛費と社会保障、それを対比してのみ予算編成を目指すわけにはいかぬ。それには文教もございましょうし、公共事業もございましょうし、地方財政対策もございましょう。そういう諸般の、今いみじくもおっしゃった、最終的にはその選択の問題でございますが、施策の調和をとって、今日の時点においてはこれが最善のものであるという結論に到達したわけであります。
  271. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今大蔵大臣から若干触れられましたが、厚生省の予算と防衛費だけを比較して論じ得るものではないと思います。むしろ今日の内政面での目玉は社会福祉と教育ということでありますから、文部省の予算伸びは〇・八%、それから農林水産省はマイナスの四・四%、通商産業省マイナスの二・三%、これらのものと総合して考えますと、厚生省の予算二・一%というものは決して遜色のない予算であると考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  272. 塩田晋

    塩田委員 厚生大臣のお答えは、二%の伸びで国家財政状況からいってやむを得ない、まずまずだというお答えと受けとめたいと思います。  例えば防衛費の予算伸びと同じく六・五五%の伸びとすれば、あと幾らプラスすればいいかということは計算すればすぐ出てくるわけであります。で、計算いたしますと、これは五千九百八十六億円あとプラスをすれば同じになるのです。これはもう防衛も社会保障も十分に考えたと言わないとしても、かなり頑張ったということがはっきり出るわけです。で、私以下に申し上げまするのは、この約六千億円のプラスでなくても、この半分以下で、以下いろいろとまじめに政策の提案を申し上げて、そこを修正をしていただくことができる、その範囲内で十分にできるという問題でございますので、そのことを篤と頭に置いていただきたいと思います。  そこで、まず一番問題になると思いますのは健康保険の問題でございます。健康保険につきまして非常にトラスチックな大改革、私の方から見ますと、今のままでは大改悪だと思いますけれども、そのような柱になっておるのが患者の二割なりあるいは一割負担ということですね。本則では二割負担ということをもう決めて出しておられますね。当分の間、六十一年までは一割負担でいくということで、二年間の猶予はありますけれども、本則は八割給付で二割自己負担ということになっておりますね。これは本当に国民へ大変大きな影響を及ぼすものであり、ぜひとも撤回をしてもらいたいというものでございます。  その前に、もう一つお伺いをいたしておきたいと思いますが、厚生大臣、福祉は前進すべきものであるか、維持すべきものであるか。最初に、水準が世界各国と比べてどうかということもお尋ねしたのはこの点に関するわけでございますが、少なくとも後退をしてはならぬということでございますか、いかがでございますか。
  273. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 言うまでもありませんが、社会保障、これは国民の生活に不安なからしめるための条件を、政策として一つ一つ積み重ねていくことでありますから、前進あるのみであります。
  274. 塩田晋

    塩田委員 前進あるのみということは勇ましいのでございますが、ばらまき福祉ということもありましたね。やはり福祉というものは計画的に前進をしなければ、一進一退をしてはならないと思うのです。かなり中長期の見通しを持って、そして各制度間の整合性を保ちながら着実に前進をして、後退させるべきでない、これが社会保障を考える上での一番基本になるべきことだと思います。厚生大臣は、先般、社会労働委員会におきまして所信の表明をされました。その中でこう言っておられます。「社会福祉につきましては、私は、恵まれない立場にある方々に対しては、いささかも福祉の後退とならないようにする決意であります。」非常に立派な御決意であると思います。ところが、医療保険につきましては、後退があってはならないという表現はないのみならず、「給付と負担の両面にわたる公平化を図るため、」云々という表現しかありませんが、この段差はどういうことでございますか。
  275. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 まさに今塩田委員から御指摘のあった、福祉というものは後退があってはならない。そのためには、ことし何とかなるからいいというものではなくて、二十一世紀の将来展望に向かって、今後の経済社会の変化あるいは国の財政の変化、そういう変化の中でも後退しないで済むような、長期的な展望に立っての堅実な福祉政策というものが要求されるものでありまして、今私どもが、年金の思い切った改革あるいは医療制度の思い切った改革を提案しておりますのは、これから短期間の間にやってくる高齢化社会、また、残念ながらかつての七%、一〇%といったような経済成長は望めない。極めて低い経済成長でこれからいかなければならないであろう経済の展望、そういう中で、金がなくなったから年金が払えませんとか、財政が苦しくなったから医療保険制度を後退しなければならないというようなことをしないで済むような、堅実な基盤づくりのために今回の改革案を提案しておるわけであります。
  276. 塩田晋

    塩田委員 それでは、次に御質問申し上げます。  大臣、医療制度におきまして自己負担を多くするということは、福祉の後退ですか、前進ですか。
  277. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは今、国民すべてが全額給付というときに自己負担というようなことであれば、いろいろな議論が出てくると思いますが、御承知のように、国保の方は三〇%が自己負担、七〇%が給付、いわゆる農民とか零細な商工業の皆さん方はそういう条件の中で今病気を治していらっしゃるわけであります。そういう中で、今までの保険制度の中で一番条件のよかった被用者本人の皆さん方にも一部自己負担をしていただいて、今後の医療改革を進めるための医療費を適正水準にしていく、あるいは負担と給付の公平化を図っていく、あるいは今まで乱診乱療とかいろいろな問題、随分御指摘をちょうだいいたしておりますが、国民の皆さん方に、自分のかかった医療費を知っていただくことによって医療の健主化を図っていくとか、そういう、単に財政面だけでない、いわゆる政策面また将来展望の中でこれをお願いしているわけでありますから、これは決して福祉の後退ではありません。国民の皆さんに御負担をおかけするのは大変恐縮だと存じますが、全体を平均しますと一カ月六百二十円程度でございますので、大変厳しい時代でありますので、お許しをちょうだいしたい、こういうふうに考えております。
  278. 塩田晋

    塩田委員 大臣が今これは本音を話されたと思うのです。やはりかなり苦しいと思います。負担と給付の両面にわたる公平化を図るという中身が、やはり国民の、特に患者の負担の増加ということである内容が明らかにされたと思うのです。  そこで、負担をふやすということ、これは福祉の後退ではないかと私はお尋ねしておるわけでございます。歴史的に見ますと、健康保険は、御承知のとおり大正十一年に法律ができて、施行が昭和二年でございます。当時の日本は非常な経済的な困窮の中にあったと思います。まだまだ小国でございました。そして、資本主義がまさに胎動し、発展しようとするときでございました。農村の疲弊もございました。その中で、一家の柱であるところの働き手のけがとかあるいは病気に対しまして、みんなが保険料を持ち寄って助け合おう、そして、もう薬がない、お医者さんに払うものがないということで本当に悲惨な状況であるのを、何とかみんなで力を合わせて相互扶助をしていこう、こういう中で、国家財政の極めて厳しい中で、また国民経済の悲惨な中でこの制度が発足しているという事実。それは各人の負担を軽減していく、なくしていくということから始まっているわけです。そして今言われました家族につきまして、確かに今七割ですね。これは最初は七割給付じゃなかったわけですね。家族は診てもらえなかった。全額、薬代もお医者さん代も持たなければならなかった。その自己負担をたんたんと減らしていっている。自己負担を減らすことが福祉の前進だったわけです。それを今になって自己負担をまた逆にふやしていくというような制度は――しかもあの物のなかった戦争中、そして戦後のあの悲惨な状況の中におきましてもこの制度は守ってきたわけです。国民の今、健康を守るためにやってきたわけです。守り通してきたわけです、この六十年間近く。そのようにして福祉は前進に前進を重ねてきたわけです。この先人の努力、これを今ここで一挙に逆戻りをさせるような自己負担をふやすということは、もってのほかのことではないでしょうか。
  279. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ただ、保険制度の中で一番給付率の低い国保の七〇%、これを六五%にするとか、そういうことであれば、これは御指摘のとおり間違いなく福祉の後退ということにつながるものでありますけれども、今国民の各方面の御意見の中では、年金とか医療とか、こういうものの給付は国民すべて平等であるべきであるというような意見等もかなり強いのであります。  そういう中で、今、塩田委員お話しのように、健康保険の果たしてきた今日までの歴史的な役割、また現制度の今日果たしておる役割、これらのものを勘案しながら、しかし将来展望としてはやはり国民がひとしく同じような条件で給付を受けられるような保険制度が望ましいわけでありますから、今日、厳しい経済情勢、厳しい経済条件、財政情勢、そういう中で、現行制度の中で一番給付率の高い十割、これを九割に御辛抱をいただけないか、こういうことでありますから、全体で考えていただきますと――もう一つ、先ほど申し上げなかったのは、今回の制度改革の中では、現行の保険料率を経済低成長の中でこれ以上上げたくない、上げないようにしなければならない。これは臨調からの御指摘もありますけれども、二十一世紀の将来を展望して、これは西欧の水準よりも以下にとどめたい。その場合、老齢化してまいりますから、どうしても、どのような制度改革を行っても、これは年金の負担はある程度の増加は避けられない状態でありますから、せめて医療保険制度の国民所得の中での負担率は現行程度にとどめたいという願いも込めてありまして、今回も、保険料率も減ってまいりますから、そういうものの負担と、また減った分と、そういうものを計算しますと、必ずしも国民全体に対しては大きな負担を強いるものでありませんので、御了承いただきたいと思います。
  280. 塩田晋

    塩田委員 私は端的に申し上げておるわけでございますが、御答弁がますます苦しくなってくるような感じがいたします。  私が申し上げておりますのは、現在の七割給付になっております家族あるいは国民健康保険、これが七割が八割になりあるいは九割になって、また十割に近づいていく、これは明らかに前進だと思います。現に昨年の改正でも、老人医療制度につきましてはそのような制度に向かって大きく前進をして実現していっているところです。ところが、今回の改正案というのは、今まで十割給付で各人の負担がなかった、ゼロだった、しかも何十年来やってきたもの、これをここで一挙に二割本人に持たせよう、あるいはこの二年間は当面一割各人に負担してもらおう、こういうことですから、負担が各人ふえるということにおいては、先ほど言われましたように福祉の後退じゃないですかということを申し上げているわけです。
  281. 吉村仁

    ○吉村政府委員 確かに十割の給付を九割にするというのは給付率の引き下げでございますから、福祉の後退だ、こういう御意見もあると私は思います。ただ、私どもは、今後医療費全体の規模というものを適正水準に持っていくためにどうすればいいか、また、国民全体として給付、負担の公平を保つためにはどうしていけばいいか、こういう観点から物事を考えたわけでありまして、私ども、給付率の引き下げをいたしましたのは、全国民の給付率をできるだけ平等にしていく観点からそういう方策をとった。そして、なぜそういうような形にしたかといいますと、私ども、現行の保険料負担の水準というものを全体的に考えますと、やはり八割給付程度で全国民の公平を保つと同時に、保険料負担水準というものを変えないでいける、こういうことでもって八割給付、ただし急激な変化を避けるという意味から一割にしたわけであります。  先ほどから塩田先生、健保創設以来十割を崩したことはないではないか、こういう御指摘でございますが、そのとおりでございます。ただ、健康保険が制定された時点におきましては、業務外だけではなしに、業務上の給付もやっておったわけでありまして、現在の労災と同じような機能を持っておったわけでありまして、その場合に十割以外の給付率はなかったのであろう、こういうように私どもは考えております。
  282. 塩田晋

    塩田委員 ただいまの御答弁でもはっきりいたしましたように、十割給付が八割給付になり九割給付になるということは、自己負担が一割負担になり二割負担になるということにおきまして福祉の後退と言われても仕方がない、しかし、今の状況から将来展望をして公平な負担、給付を期するためにやむを得ずやりましたという御答弁でございますので、私は、正直にそう言われたことをここで確認をしておきたいと思います。  病気になった者、これは病気になろうと思ってなっているわけではないです。いろいろな事情からけがをしたり病気になっておる人、この人たちは苦しんでおるし、悩んでおるし、働けない状況もあるでしょう。その人たちから今度は金を取るという、そこに大きな問題があるわけです。これは金のことを考えると一番体にさわりますね。これほど体に悪いことないですね。その患者から金を取るということ、しかもこれが定率で一割とか二割とは言われておりますけれども、金額にいたしますと1例の高額医療扶助という制度がございます。これは今度、現行の五万一千円から五万四千円にしようということでございますね。これは入院した場合あるいは手術をした場合にはそういうケースは起こってくると思います。どれくらいの件数がといいますと、そう一年べったり入っておる人はおらぬ、そんなにいないと言いますが、しかし年間二億五千万件程度あるそうですね。それで〇・二%だ、こうおっしゃるわけです。パーセントにいたしますとわずかですね。しかし、件数にいたしますと〇・二といえども五十万人でしょう。五十万人の人が一年間で五万四千円毎月取られるんですね。これはきのうもある人が、いや私は一年間で五万四千円が最高額だと思っていましたら毎月ですかと言ってびっくりしているのですね。それは大変なことだということを、かなり勉強して知っている人がそうおっしゃる。しかもこれは税金も払い、いろんなものを支払った後の可処分所得、そこから、今まで病気のとき、けがのときにゼロであった、それを最高額五万四千円毎月払わないといかぬという場合も起こるわけですね。それから、これは一人ですから、一家族について五万四千円じゃないんですね。一家六人の中で二人病気になった場合はこの倍額ですね。年間にすると百二十万超えるでしょう。このような今までゼロだったのが、年間百二十万円も税金払った後でまだそれを医療機関に払わなければならぬということを今度の案は示しておるわけです。しかも体にさわる金の問題を言おうとしておるわけですね。ここに大きな問題があります。これはもう本当に大改悪でございますので、速やかに撤回をしていただきたい。先ほども明らかに認められましたように、福祉の後退と見られても仕方がない、しかしこの事情でよろしくお願いしますということですが、なかなか国民の理解は得られません。いよいよ払う段階になりますと国民は怒り心頭に発します。大変な反撃が起こると思います。これは本当に大変な事態を招きますので、撤回をしていただきたいと思います。  この一割負担によりまして、五十九年度予算、国費は幾ら助かりますか。
  283. 吉村仁

    ○吉村政府委員 国庫負担だけですと二百九十三億でございます。
  284. 塩田晋

    塩田委員 それでは、一割を患者が払う場合、今度の制度によって払う場合に、患者の負担は総額どれぐらいになりますか。
  285. 吉村仁

    ○吉村政府委員 患者負担は、十割を九割にすることによりまして千七百一億ふえますが、保険料は二千八百十三億減るわけでございます。なお、国庫負担も先ほど申し上げましたように二百九十三億減る、こういうことでございます。
  286. 塩田晋

    塩田委員 今お聞きになったとおりの金額でございます。一割負担という国民に大変な負担を強い、苦しみを与えることによる国費の節減額というのは、わずかにと言ったら語弊がございますけれども、九兆円を超える厚生省の予算からいいますとわずかに二百九十三億円であるということ、これは明らかになりました。そして国民の、しかも病人、けが人、苦しんでいる人が千七百億円を超える額を年間に持たなければならない、払わなければならない、これが明らかになったと思います。これを大改悪と言わずして何と言おうかとだれしも考えられるところだと思うのでございます。厚生大臣、撤回の御意思はございませんか。
  287. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、給付条件の一番悪い七割というようなものを、財政状態のために六割五分とかそういうことであれば後退でありますけれども、今回は、今の保険制度の中で一番条件のよい十割、これを九割にする、つまりこれは後退でなくて手直してあります。これは全体としての福祉の後退にはならないものでありまして、今度退職者医療制度を創設することによって、今までサラリーマンの方は、月給を取っておられるときは全額、ところが退職しますと国保の方に入りまして、これは七割というのが今回は八割になるというような、条件がよくなる内容等も含まれておりますので、これはぜひ十割が九割になるという部分だけでなくて、全体の問題として、やはり国民から要求されておる、でき得ることならば、年金とか保険とかは国民等しく同じような条件で給付を受けたいとか、またそういう方向に進めるべきであるとか、あるいは今後残念ながら経済の成長というものがそう大きく期待されない中で、年金も守っていかなければならない、保険も守っていかなければならないという長期的な展望に立って御理解をちょうだいしたいということであります。
  288. 塩田晋

    塩田委員 今大臣は、十割を九割にするのは後退でない、手直しだ、自己負担がないのを一割自己負担するのは後退でなくして手直しだ、七割の現在の家族あるいは国民健康保険の七割給付を六割五分なり六割にすれば後退だけれども、それに手をつけないのだから後退でない、こういうことでございますが、これは皆さん聞いておられて非常に苦しい答弁だと思います。金額が大変でもう財政上どうにもなりませんという事態がというと、二百九十三億円で、九兆円の予算の中では何とでもなると言ったらあれですけれども、それほど恐るべき金額ではない。先ほど言いました六・五五%の伸びをすれば、その二十倍の金額が出てくるのです。  もう一つの観点からいいますと、この新たな負担を国民に求めるということ、これは形を変えた一種の税金です。サラリーマンを中心にした働く者いじめする、これはもう悪税ということも言えると思うのです。形を変えた税金ですね。しかも大臣は、公正化を図るために、公平をもたらすためにこれをやりますと言われますけれども、むしろ逆に、今回の制度というのは、病気の重い人ほど、苦しみの大きい人ほどたくさん出さなければならないのです。税金としても悪税中の悪税です。これはどうかひとつ、きょうじっくりとうちへ帰って胸に手を当てて考え直していただきたいということを、切に厚生大臣に要請をしたいと思います。  次に高額療養費、先ほども出ましたが、月額五万一千円、これを五万四千円に引き上げられるということで影響が大きいわけですが、これを据え置くというお考えはございませんか。
  289. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 高額医療費は、今まで自己負担のあった健康保険の家族あるいは国保、そういう人たちのために一定限度額で医療費の負担を打ちどめるというために行われておった制度でありますが、今回全額の被用者保険が一割負担ということになれば、当然この高額医療費にも適用させなければならないという考えてありますが、今の最高限度額の引き上げはこれは五十七年に一度手直ししたものと思いますけれども、その後の物価、賃金等の上昇にスライドして今回の提案になっておると思いますけれども、いずれにしてもこれは政令事項で、七月一日に政令を出すときに決めることでありまして、その前に社会保険審議会等の答申等も聞いて、私が判断するということになっております。
  290. 塩田晋

    塩田委員 これは先ほどの一割自己負担導入の撤回とともに、それをするしないにかかわらず、現在の高額療養費の制度の恩恵を受けている方々に大きな影響を及ぼしますので、これは据え置きをぜひともしていただきたいということを要請いたします。  それから次に移ります。保険外の医療ですね、この差額負担の問題でございます。わかりにくい言葉ですが、療養費支給制度と言っておりますが、いわゆる自由診療に関する問題、差額を個人が持つという問題にもかかわってまいりますが、これを、療養費の支給範囲を広めるということは結構だと思うのですね。この制度自体の趣旨も理解されるわけでございますが、これを一歩誤りますと問題が大きくなります。この制度を保険医療の中に持ち込むというのは、患者の貧富の差による利用機会だとか、あるいは医療機関の差別を拡大する危険があると言われております。  そこで、厚生省の案では、高度先端医療等を中心にして特定承認保険医療機関にこれを認め、範囲を拡大するということでございますけれども、この選定基準ですね、これは余りにも広がっていくことは問題ですし、かなりの基準で規制をする必要があると思いますね。この点についてはいかがお考えでございますか。
  291. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私どもは、今度いわゆる差額徴収の問題を特定承認保険医療機関というような形で解決をしよう、こう考えております。ただ、私ども、それによりまして現在の保険給付の範囲を縮小したり、保険外負担をふやしたりしようというわけではございません。  その基準につきましては、中央社会保険医療協議会の議を経まして厚生大臣が定める、こういうようにしておりますので、中医協の議論、診療側、支払い側の議論を十分聞きましてその基準を決めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  292. 塩田晋

    塩田委員 この問題に関連いたしましてちょっとお尋ねしておきたいと思いますのは、材料の関係につきまして認めていこうという態度ですね。歯科等の場合にもそれが拡大されていきます。これはいいといたしまして、材料だけでなく、やはりお医者さんには医療技術というものを正当に評価すべきだと思うのですが、その点これまた行き過ぎますと先ほど言いましたように弊害がありますから、厚生大臣は歯科の関係は非常にお詳しいのでよく御存じだと思いますが、その辺をどういうお考えか、技術評価をどうするか、といって野放しにできないですから、それは一定の良識の範囲で歯どめをしなければならぬ、そういった問題についていかがお考えでございますか。
  293. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 すぐれたる医療技術、これはやはり高く評価していくことによって医学の進歩があるわけですし、また、これは我々患者にとっても、病気を治してもらうために医者にかかるのでありまして、決して投薬を受けるために、注射を受けるために医者にかかるわけではありません。しかし、現在の出来高払い制度の中では、そのところの調和というものが非常に困難な問題でありますが、その出来高払い制度の現行の中でできるだけすぐれた医療を国民が自由に受けられる、あるいはまたそういう意思を尊重する、しかもなおかつ、その中に保険制度というものを十二分に定着させるということで、今回の改革案があるわけであります。
  294. 塩田晋

    塩田委員 技術評価について。
  295. 吉村仁

    ○吉村政府委員 技術料についての差額徴収を認めるかどうかという問題でございますが、これは認めるべしという意見と、認めてはやはり弊害が起こるのではないかという両論がございまして、なかなか決定をするのがむずかしい問題であろうと思います。  確かに、現在の診療報酬点数表は技術料を画一的に評価しておりますので、いわゆる非常に高名なお医者さんも学校を出たてのお医者さんも同じような初診料になる、あるいは手術料になるというような不合理がございます。これを解決する方法として、いま先生御指摘の差額徴収という手があるのでありますが、それをそのまま実行をするというのはまたいろいろな弊害が生じてくるおそれもございますので、ひとつこれは中医協でもって検討をしていただきたい、かように考える課題であろうと思います。
  296. 塩田晋

    塩田委員 この問題につきましてかなり前向きに取り組むということでございますので、それに期待をしたいと思います。  なおまた、厚生大臣よく御存じの歯について、例えばの例で申し上げますが、自然治癒ということがございますね。軽易な少しの費用で治癒するという軽い経費の診療につきまして、これはたしか前の大臣だったと思うのですが、たばこの火でちょっとやけどしたぐらいで駆け込んで、国民医療だといってただでやってもらうことはないじゃないか、ちょっとつけておけば自分で処理できるし、ほっておいても治るじゃないかという御議論があったそうです。しかし、例えば歯の場合は、ちょっと虫歯ができている、痛いというだけで、これはほっておくとだんだん悪くなって、これは自然治癒ということはないわけですね。これはもう早期に治療する方が、軽くてもやる方がいいのですね。一割負担とかなんとかいろいろやりますと、そういう者がかからなくなる、行かなくなるということになって、かえって未然に防げるべきものが防げない、またたくさんの医療費がかかるという問題ですね。これは医科の場合にもあると思うのです。ある調査ですけれども、がんの早期発見でやれば五十万で治療費が済んだ。ところが、それをほっておいてだんだん悪くなってから、いよいよになってやった場合には五百万かかる。これは早期に駆け込んでやった方がいいのだ。こういうのがありますね。こういう問題について、医科と歯科とを見てどのようにお考えになりますか。
  297. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 初めにお断りしておきますが、私の家内は歯科医院を開業しておりますが、私は家内と結婚して、以来二十五年、国政に専念精進して、家を顧みるいとまがありませんでしたので、余り歯科の技術的な問題は承知しておらないのでありますが、塩田委員おっしゃるとおり、早期治療、これは極めて大事なことだと思います。これは歯に限らずいかなる病気についてもまず早期発見、早期治療、これが大事なことであって、これは厚生省の医療行政の中の重大な柱として進めてまいりたいと思います。ただ、今の一割負担とこれを、かみ合わせる考えもあるかもしれませんが、現在のところ被用者保険でも家族の皆さんは二割負担しておるわけでありますが、あるいは国保の皆さんは三割負担でありますが、その大方が被用者保険の人よりも治療がおくれているというような例も余り聞きません。今回の医療改革案は、必要な受診は妨げないけれども、しかしむだな医療はなくするという考え方で進めておりますので、これは早期発見、早期治療、これの重要性については塩田委員と全く同感でございます。
  298. 塩田晋

    塩田委員 全く同感の部分につきまして、それに支障が来ないようにぜひとも制度的にも配慮しなければならぬことだと思います。これ以上やる時間がございませんので、次に移ります。  退職者医療制度の創設というのが、今度の医療改革の大きなまた一つの柱になっていることは御承知のとおりでございます。これにつきましては我々の年来の創設の主張、要請でございましたから、これにつきましては評価をするにやぶさかでないわけでございます。しかしながら、このつくり方ですね、一割負担のその問題と絡ませて表裏一体のように考えておられるというここですね、これは直してもらいたい。ここは切り離して考え得る問題だと思います。  そこで、この退職者医療制度の創設に伴いまして国保から大分移っていくわけですが、これはどれくらいが対象者になりますか。
  299. 吉村仁

    ○吉村政府委員 退職者本人並びにその家族を含めまして約四百万人でございます。
  300. 塩田晋

    塩田委員 そうして、その四百万人に対する医療事業といいますか総事業費はどれぐらいになるわけでございますか。
  301. 吉村仁

    ○吉村政府委員 四百万人に対する医療給付費は四千三百九十六億円でございます。
  302. 塩田晋

    塩田委員 約四千四百億円が総事業費でございますが、これは国費はどれくらい入っていますか。
  303. 吉村仁

    ○吉村政府委員 国費は全く入っておりません。
  304. 塩田晋

    塩田委員 これだけ大きい事業をやるのに、国は何らの財源措置もしないということで制度を創設するというところに非常に問題があると思います。我々この制度自体は前進であると思っています。先ほど言われましたように、国民健康保険で本人、家族含めての七割給付、すなわち本人の自己負担が三割というところから、退職者医療制度に移りますとこれが八割給付で本人は二割負担、そして家族は、外来は七割でございますが入院については八割になるということで、これも前進だ。これこそまさに前進なわけです。自己負担がふえるのは後退であり、自己負担が減るのは確かに前進です。そういう意味におきまして、十分ではないですけれども、評価するにやぶさかでないわけでございます。しかし、国費を一銭も入れないで四千四百億円のこれをどういうふうにして財源措置をされるのでございますか。
  305. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども、退職者医療制度には国庫負担を入れておりませんが、今度つくります退職者医療制度の性格を考えますと、これは被用者保険、つまり勤労者の保険の体系に属する制度だ、こういうように考えておるわけでありまして、比喩的に申しますならば退職者全体を対象にした健保組合を新しくつくったようなものでございまして、ただ、その管理運営上の観点から国民健康保険の窓口を借りて退職者医療制度を実施する、こういう性格づけを行っておるわけでございます。そういたしますと、その退職者医療を行います退職者医療制度、これは被用者保険の体系に属する問題でありますし、また、被用者保険の集団として考えますときに、国庫負担を入れなければならないような集団ではない。こういう観点から国庫補助はつけなかったわけでございます。
  306. 塩田晋

    塩田委員 今言われましたように、国民健康保険の四千数百万の中から四百万人を引き出して、取り出して、その人たちを対象にした退職者医療制度をつくるわけでございますね。ところが、国民健康保険にそのままいた場合には、今度の新しい制度によりましても三八・五%国が出すわけですね。前の制度、今までですと医療費の四五%を国が見ている。財源を持っているわけですね。なぜそれを、新しいのをつくりその人たちを移行させるのに、その財源を持っていかないのですか。お答え願います。
  307. 吉村仁

    ○吉村政府委員 先ほどお答えいたしましたように、今回の退職者医療もそうでありますが、従来、退職者医療制度というのは、やはり一種の被用者保険だというような性格づけが行われておりまして、退職者医療制度につきましては四十四年から検討をずっと重ねてまいっておりますが、大体被用者保険の体系でやる、こういうことで検討を続けてきたわけでございます。今回の退職者医療制度というのはその検討の成果でございまして、被用者保険体系に属する制度だとすれば、私どもは、国庫補助金を入れる理由はない、こういうことから国庫負担をしないことにしたわけでございます。したがって、国保と関係のない一つの制度だと私どもは思っております。国保の窓口を通じて保険料を徴収し、給付をいたしますけれども、それは国民健康保険という窓口を通ずるだけでございまして、退職者医療制度の本質は被用者保険だ、こういうことで割り切っておるわけでございます。
  308. 塩田晋

    塩田委員 先ほども言いましたように、四百万人の対象者というのは大部分が現在国民健康保険の被保険者であって、そして医療を受けるときは国からの補助をちゃんと受けて医療を受けておるわけですから、それがそのまま移行するわけですから、そのときの国の国費負担分を切ることはない、持っていけるはずです。我々の提案、きょうの予算修正の中で正式に提案いたしました中にも言っておりますが、国民健康保険と同じような負担を国がするとなれば二千二百億円、従来どおりのものを持っていけばよろしい。そして、各組合からもそれぞれの拠出金を苦しい中やってもらう。組合財政も割合よくなってきました。料率も下げるぐらいになりましたからね。それをやっていけば、四千四百億円の総事業費の中において十分にこれはできるものだ。一割の負担を各組合員にさせて、そしてその財源によって賄っていかなくても、各組合の拠出をしなくても、今申し上げたような方法でやればできる、十分可能でございます。ひとつ御検討をいただきたいと思います。     〔松永委員長代理退席、委員長着席〕  時間がございませんので、最後に締めくくって御質問を申し上げたいと思います。  この退職者医療制度の創設と絡みまして、同じような方向で検討されてきたものに任意継続制の退職者医療制度がございますね。これを延長したらどうか、老人医療の七十歳まで延長したらどうか、あるいは二年をもっと十年にしたらどうか、こういうことをいろいろと検討されて、そういう御意見ございますね。これについて厚生省当局と話し合いが若干あるように聞いておりますが、どのようになっておるか、お答えいただきたいこと、これが一つ。  それから、医療費が現在どんどんふえてきておるということをよく言われますね。毎年一兆円ずつ医療費がふえてきておる、だからこれを抑えなければならぬという観点をよく言われます。これにはやはり医療費の適正化対策、これはこの厚生省の提案にもありますけれども、これをやはり徹底していただく。不正請求も、国税庁の調査等でも随分出ておりますね。わずかな調査の中でも二十七億円という不正額があったということで出ておりました。こういったものももっと厳正にやるとか、あるいはレセプトの審査を厳重にやるとか、こういったことを通じまして適正化対策は進めなければならない。ということは、ふまじめなお医者さんのごくわずかな人たちによって、まじめに医療問題に取り組んで日夜心身を労し、医療のために働いている大部分の良心的なお医者さんに対して申しわけないと思うのです。適正な医療にすることは当然のことでございます。これは挙げてやっていただければいけると思います。  これに関連いたしましてお聞きをいたしたいと思いますのは、もっともっと、将来の国民医療の総医療費がどういう動きをしていくか、今年度、昨年度あるいは五十九年度の医療費の推計も厚生省から出ております。これは今度の政策をやれば来年度は二・五%の伸びで、本当に一兆円といったものの三分の一、四分の一の伸びでとどめられるという推計もありますね。最近の傾向も、既にどんどん伸びは鈍化してきている……
  309. 倉成正

    倉成委員長 塩田君、時間が参りました。結論をお急ぎください。
  310. 塩田晋

    塩田委員 ということでございますので、そういったことを含みながら適正化を進めると同時に、各制度が今まちまちですね。厚生年金は今各制度を統合していくという方向に、中長期の展望のもとに長期的に取り組んでやっております。同じく健康保険制度も各制度ばらばらになっている。むしろ老人医療制度ができたり、また今度退職者医療制度ができたり、各制度ばらばらですね。共済もまた別。これをやはり統合して、中長期の見通しの上に立った長期的な、抜本的な健康保険制度の整合性のある改革をやるべきであって、現在出てきているような継ぎはぎの、場当たり的な、財政対策なのか医療対策かわからぬような、このような性格のあいまいな改革案を出すべきでない。これはもっともっと時間をかけて検討して、国民的合意を得べきものだと思います。このことを要望いたします。  もし御回答いただければ……。
  311. 倉成正

    倉成委員長 厚生大臣、一言で答えてください。
  312. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 前段の部分は塩田委員と全く同感でありまして、今後も審査体制の強化その他に努めて、正直者のお医者さんがばかを見ることのないように、不正の徹底的な追及を進めて、医療の適正化を進めてまいりたいと思います。
  313. 倉成正

    倉成委員長 これにて塩田君の質疑は終了いたしました。  次に、稲葉誠一君。
  314. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 通産大臣、訪問販売法が昭和五十一年にできましたね。今度国民生活審議会ですか、ここで約款取引委員会と取引多様化問題委員会というのを設けまして、訪問販売、通信販売等、店舗外の消費者取引の適正化についていろいろ審議を行うことにして、去年の十二月ですか、答申が出たわけですね。  これは、実は私などもいろんな相談を受けるんですよ。訪問販売で粘られて、しようがなくて名前を書いちゃった、さあ、高い物を送ってきて金を払え、あるいは払っちゃったけれども、来た品物は非常に違う、困っちゃったというのが非常に多いんですね。もう弱り切っているんですが、今法律が一応できていますけれども、こういう答申も出た以上、これに対処していく必要があるので、通産大臣としては現状をどのように考えており、そして今後どのように対応していくつもりか、こういう点についてひとつ御説明をお願いいたしたい、かように存じます。
  315. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 稲葉委員おっしゃるとおり五十一年に法が制定されまして、これを厳格に、効果的に運用してきたところでございますが、やはり何と申しましても取引量が増大したということでございましょうか、いろいろなトラブルが頻発していることは事実でございます。  したがいまして、通産省といたしましては、この法をさらに厳格にあるいは効果的に運用を図るということももちろんでございますけれども、時代の進展とともに、テンポの速いこの時代で、いろいろな意味で消費者の中にトラブルが起きるとすれば、何としても消費者の保護を徹底するという観点から産業構造審議会、産構審の検討に着手するということを今考えているところでございます。
  316. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 じゃ、もう一問だけ。  それだけでは問題が解決つかないわけです。いろいろな問題があるわけですよ。例えばフランスの法律では熟慮期間というのがあるわけですね。七日間でしょう。その間に現金を払ってはいけないわけです。罰則まであるわけですね。私は、それが直ちにいいという意味ではありませんけれども、そういうようなこともあるし、それから先物取引の法律がおととしできたのですか。そのときにはいわゆるクーリングオフを二週間にしたそうですね。クーリングオフばかりの問題ではありませんけれども、その他の問題を含めて、慎重にかつ早急にこの問題の解決のためにお骨折りをお願いいたしたい、こういうことを要望しておきます。あとは、割賦販売も含めまして別の委員会でやらせていただきたいというふうに思います。そういうことだけを要望いたしておきます。  きょう私は、経済の運営を中心といたしまして、税制もありますけれども、河本先生にというか、河本教授にというか、いろいろ教えを請いたいというふうに思っているわけですけれども、その前段として、ひとつ政治倫理の問題についてちょっとお尋ねをさせていただきたい、こういうふうに思うわけです。  河本さんとしては、中曽根さんが去年、「田中氏の政治的影響を一切排除する。」あるいは「政治倫理を高揚し、」云々、こう言われたわけですけれども、これについて、過去においてはどういうふうなことがあったのだろうか、現在はどういうふうに考えておる、将来どういうふうにするんだ、田中氏の政治的影響を一切排除だけではございません、政治倫理の高揚から党体質の抜本的刷新、いろいろありますけれども、そういう点についてどういうふうにお考えなのかを最初にお聞かせをお願いしたい、このように思います。
  317. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年十二月二十四日に中曽根総裁が、党運営についての基本的な姿勢を発表されましたが、その中に、「いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する。」そういうくだりがございます。これは、その前日、自由民主党の最高顧問会議がございまして、その最高顧問会議で党の当時の幹事長、総裁等がお入りになりましていろいろ議論されました結果そういう結論をお出しになった、それを受けましての声明だ、このように理解をしておりますが、その最高顧問会議におきまして具体的な問題がどのように議論されたか、そのことについて私は承知しておりませんので、過去に一体どのようなことがあったかということを具体的に申し上げる立場にはございません。
  318. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 過去のことはいいです。現在どういうふうに考えて将来どうするかということは、国民があなたに非常に聞きたいところじゃないでしょうか。もう少し勇気を持ってそこら辺のところはぴしっと言った方がいいんじゃないかと私は思うのですけれどもね、まあ余計なことですけれども。これはどうなんでしょうか。
  319. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その最高顧問会議での結論を受けて翌日の党総裁の声明になった、こういうことでございまして、その具体体的な進め方については、総理がこの委員会等でしばしばお答えになっておるとおりだ、このように思います。
  320. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 国民はあなたから、その点についてのもう少し明確なお答えをお聞きしたいというふうに考えているのじゃないかというふうに思いますけれども、それはまだちょっと時期が早いのかもわかりませんね。いずれその時期が来ればあなたもお話しにならなければならないようになるでしょうし、そうなるんじゃないでしょうかね、まあ余計なことかもわかりませんけれども。その方が日本の政治のためにもいいのではないか、こう私は思うのですけれどもね。  そこで、実は二月二十四日に、法人税法のことが、本会議で趣旨説明があって、質問がありましたよね。最後の方の質問のとき、ずっと私聞いておったのですが、河本さんが答弁一番最後でしたよね。そのときの速記がここにありますけれども、そのことに関連して私はお伺いをいたしたいわけです。  それは、まず読んでみますというと、質問は省略してあるのですが、答弁ですね、  ○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は、予算委員会で昭和六十五年度赤字国債の発行をゼロにするという財政再建は可能かということに対して可能であると言ったのは、その具体的な内容はどうか、こういうお尋ねでございますが、経済政策と財政が非常に密接な関係がある、いわば表裏一体の関係にあるという立場から若干申し上げますと、私はオーソドックスな方法しかないのではないか、こう思っております。その第一は、歳出の徹底した合理化だと思います。それから第二は、税体系の根本的な見直し、これが大きな課題だ、こう思います。それから第三は、景気を拡大いたしまして、経済の活力を拡大をいたしまして、税の自然増収を積極的に図っていくということ、これが私は第三の大きな課題でなかろうか、こう思っておりますが、その三つの中では、やはり特に第三の問題を大きく重視していく必要があるのではないか、このように思います。(拍手) こう書いてあるのです。あのとき確かに拍手が起きたのですが、私はそのお話を聞いておりました中で、河本さんが第三のところを一番大事だ、こう言っておられましたね。ですから、第三のことをまず最初にお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  「景気を拡大いたしまして、経済の活力を拡大をいたしまして、税の自然増収を積極的に図っていくということ、これが」云々、今私、読んだとおりですね。これは一つのお考えだというふうに私も思いますし、そのとおりなんですけれども、国民の皆さんはこれだけではわからぬわけですね。私どもが聞きたいのは、じゃ具体的にどういうふうにしてこの第三の目的というもの、課題といいますか、これを図ろうとしていらっしゃるのかということを、国民はあなたにお聞きしたいというふうに思っているんじゃないかと私は思うのですね。ですから、ここの第三の点をまずかみ砕いて、ひとつわかりやすくお話しをお願いいたしたい、こういうふうに思います。
  321. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは本会議でも答弁をいたしましたように、経済政策と財政というものが非常に大きな関係があるい深い関係がある、表裏一体の関係ということを申し上げましたが、そういう立場に立って若干私見を申し上げますと、経済の状態がよくなりますと税収は常に非常にふえる、こういう実績がございます。例えば昭和五十年から五十九年までのざっと十年間の税の弾性値などを調べてみますと、この十年間の平均は一・一になっておりますけれども、その中で、経済の状態がいいときには弾性値は二に近くなっておる、経済の状態が悪いときにはマイナスになっておる、こういう実績がございまして、その平均が一・一になっておる、こういうことでございます。だから、経済の活力が拡大をしたときには税収は飛躍的に伸びる、こういう実績もございますので、そういう過去の実績を踏まえまして、先ほどお読み上げになりましたような答弁をしたわけでございます。  この委員会でも、委員の一人から、先般、経済成長とそれから税収との関係についての数字を基礎にした試案が出ておりました。それなどを見ますと、例えば経済成長については、具体的に書いてないのですが、私はあの資料をいただきましていろいろ調べてみたのですが、大体五%強の実質成長、それから八%前後の名目成長、こういうことを前提にして試案をつくっておられるのではないかと思ったのですけれども、その場合に、昭和六十五年における税収は、経常の部門で六十三兆、それから投資部門で二兆の税収、合わせて六十五兆の税収が昭和六十五年に入る、こういう数字が試案として出ておりました。大蔵省がこの間お出しになりました試案を見ますと五十二兆強でありますから、既にそれだけで十三光近い数字の相違がございますし、それからその一試案によりますと、税の弾性値を一・二と計算しておられるのですが、あるいは税の弾性値がもう少し高くなる可能性もあるのではないか、このように思います。これは一例として申し上げたわけでございますが、経済の力が拡大をした場合には税収は飛躍的にふえる、こういうことが過去の実績からも将来の展望からも言えるのではないか、このように私は理解をいたしております。  そこで、我が国経済の実情を見ますと、第二次石油危機が起こりましてから、過去四年間は非常に厳しい状態が続いておりました。しかし、幸いにことしになりましてからようやく世界経済も回復過程にございますし、そういう影響も受けまして、日本経済もようやく五年ぶりに上向いてきたのではないか、このように私は思います。将来の展望についてはいろいろ説がございますが、私自身は、第三次石油危機のような突発事情でも起これば別ですけれども、そうでなければ、五年ぶりに回復過程に向かっておるこの世界経済はしばらく続くのではないか、上向きが続くのではないか、このように判断をいたしております。  しかりといたしますならば、この際に、日本の経済の持っております潜在成長力ができるだけ高い水準に具体化いたしますようないろいろ工夫をいたしまして、そして失業問題も解決をし、あわせて対外経済摩擦も解決し、同時にまた財政再建も軌道に乗せる、日本の抱えておりますいろいろな懸案を一挙に解決ができるいいチャンスが訪れつつあるのではないか、そのように理解をしておりますので、先般来いろいろな意見を申し上げておるわけでございます。
  322. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、明年度の予算の編成の場合に、あなたとしてはどういうような形で経済を持っていくというか、成長率なり何なり、全体をどういうふうに持っていったらいい、こういうふうにお考えになるのでしょうか。
  323. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昭和五十九年度の予算編成の過程で、最終段階でありますが、私と大蔵大臣とそれから自由民主党の政策責任者の三人が最終段階で、これからの経済運営をどうするかということについて意見交換をいたしました結果、二、三のことについて合意をいたしました。その第一が、何といたしましても物価の安定が経済運営の絶対条件でありますから、物価の安定のためには政府、党を挙げて全力を尽くしていこう、こういう申し合わせをいたしました。それから第二は、経済が激しく動いておるときであるから、財政と金融政策を機動的に運営していく、そういうことで工夫と努力を続けていこう、こういう申し合わせをしたのでございます。  その後総理の方から、対外経済摩擦、これを急いで解決をしないと保護貿易が台頭する、自由貿易が危機に瀕するので、特に対米関係の対外貿易摩擦を急いで全面的に解決するようにひとつやってもらいたい、こういうお話がございました。これは私は、日本の経済運営にとりまして今、当面の最大の課題ではなかろうかと思います。あくまでも自由貿易体制を守っていくということのために対外貿易問題、対外経済問題というものを急いで解決をしていく、こういうことをしなければならぬと思うのですが、先ほど申し上げました物価対策、財政と金融の機動的運営、それから自由貿易体制を維持するための対外貿易摩擦の解消、こういうことがこれからの経済運営の大きな課題でなかろうか、このように思っております。
  324. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはわかっているんですよ。そういう抽象的なことをお聞きをしているわけではないんです。私は、経済は素人なものですから質問の仕方が悪いのですけれども、経済企画庁という、企画という言葉がついているんですから、企画というのは具体的な六十五年までのプログラムがなければいかぬと思うのですよ。プログラムというのは、数字がつかなければプログラムにならないわけだと私は思うのですよ。そうなれば、あなたがそうやって本会議で第一、第二、第三のことを言われて、六十五年度の赤字国債発行をゼロにする、これは可能なんだ、こう言っておられるのですから、そこまでに至るプロセスのプログラムというものは当然あなたから示されなければならない。しかもその段階ごとの、一年ごとの数字が入ったものでなければ、この本会議における答えというものは生きてこない、私はそういうように思うのですけれども、今のは抽象論です。これはもう聞き飽きたんです、率直な話。そういうことはわかっているんです。そういうことを聞いているのではないんですよ。だから私の言うように、企画庁なら企画なんだから、今のあなたのは経済勉強庁ですよ。そうじゃないんですよ。具体的なプログラムと具体的な数字を伴ったものを、あなた自身がこういうように答弁されている以上はお出しください、私はそういうように要求するのです。それが当たり前ではないか、当然ではないかと思うのですよ。
  325. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 経済成長の具体的な数字につきましては、昨年、「一九八〇年代経済社会展望指針」というものを企画庁から発表しておりますが、この指針展望は、御承知のように比較的数字は少ないのです。数字は少ないのですけれども、ただ経済成長につきましては、五十八年度から六十五年度まで八年間、およそ四%成長ということを明記しております。この四%成長という意味は、先般もこの委員会で申し上げましたが、経済の調子の悪いときには二、三%成長のときもありましょう。経済の調子のいいときには五、六%成長というときも当然あると思うのです。その平均が四%である、こういう意味でございますので、先ほど申し上げましたように、経済の情勢が五年ぶりでよくなっておりますから、そこで、一応先般発表いたしました政府の正式の見通しは四・一%でありますけれども、しかし、もう少し経済の動き等を見まして、やり方ではもう少し高目の経済成長も可能になるのではないか、そういう状態も起こる可能性も相当あろうか、こう思うのです。  そこで、もう少し経済の動きを見まして、先ほど申し上げましたような三つ四つの対策を機動的にやっていく、それによって具体的な政策を決めていこうということでありますが、今はまだ予算が通ってもおりませんし、御審議の最中でございますから、予算が通りまして、その後で経済全体の動きを見ながら、できるだけ日本の経済の力を最大限に発揮していく、そういう方向に党と内閣の方で相談をしながら進めていかなければならぬ、このように思っております。
  326. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今は五十九年度の予算案が出ている最中ですね、通るか通らないかというところですから、いろいろなところがあるかもわかりませんけれども。あなたのおっしゃることは、六十五年度赤字国債の発行をゼロにするという財政再建は可能だ、そのプログラムは今の第一、第二、第三であると言うのですから、だから予算案が通るか通らないかは別として、ある一定の時期には、あなた独自のと言うと語弊があるかもわかりませんが、あなた自身の持っておる考えをもっと出した一つの案というものを当然国民の前に示していただきたい。それは政府考え方と違うかもわかりませんけれども、それはあなたの私案でもいいんじゃないですか。そういうものを示していただければ、我々も参考にして十分勉強させていただきたい、国民もそれに従って勉強するだろう、こう私は思うので、ある一定の時期が来たらば、あなたのお考えに従った、そういう六十五年に赤字国債発行をゼロにできるプログラムというものをお示しをお願いをいたしたい、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  327. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、第二次石油危機が起こってから四年間悪かったわけですね。それで三%成長が続いておったのです。しかし、幸いにいい条件になりつつございますから、だからそうなりますと、さっきも申し上げましたように、五、六%成長も可能ではなかろうか。そうして第三次石油危機のような突発事情が起こらなければそういうように比較的高い水準の成長を継続することも可能である。しかし、中東情勢も非常に微妙な段階でございますから、もう少し様子を見ませんと何とも申し上げられません。  それからまた、過去に、昭和五十一年につくりました昭和五十年代前期の経済成長では六・三%成長を目標にいたしまして、これは三年間五%台の成長の実績を上げております。それから、昭和五十四年につくりました昭和五十年代後期の七カ年計画、これは先ほど申し上げました第二次石油危機が起こりましてうまくいきませんでしたが、今回が、昨年の指針展望昭和五十年代につくりました三回目の中期計画でございますので、先ほど申し上げましたように、機が熟す、条件が熟せば、相当高い水準の成長も可能ではなかろうか。アメリカ等の実績を見まして、これまでは世界全体が低成長時代になったんだ、あるいはゼロ成長時代になったんだ、こういう議論もございましたけれども、大分世の中が変わってまいりましたので、ある程度の力が発揮できる、今そういう条件が熟しつつある、このように考える人も多くなっておりますし、もう少し様子を見ながら、先ほど申し上げましたような経済運営の判断を党と内閣と相談をしながら進めていきたい、私はこのように考えておるところでございます。
  328. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それでは第二の「税体系の根本的な見直し、これが大きな課題だ、こう思います。」これは大蔵省も、もというか、大蔵省の専管事項かもわかりませんが……。  そこで、これはまず河本さんが本会議でこう言われておられるのですから、これは一体何を意味されておられるのでしょうか。これをまず最初に、河本さんが答弁されているわけですから、「税体系の根本的な見直し、これが大きな課題だ、こう思います。」と。じゃ、具体的な内容は一体何を河本さんとしてはお考えになって言っていらっしゃるのでしょうか、お聞かせ願えませんか。
  329. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私はこの前、御質問のときにも申し上げましたが、一月中旬の政府・与党連絡会議で、税のあり方につきまして、経済政策の立場から希望を申し述べまして、そして大蔵大臣と自民党の政策責任者に今検討していただいておるということを申し上げましたが、そのときは、一つは、税体系の根本的な見直しに当たっては、直間比率の是正ということは、これは臨調答申にもあるから、そういう観点に立ってひとつ研究してもらいたい、直間比率の是正をするについては、さしあたりこの所得税の大規模な減税をもう一回やったらどうですか、そしてそれで景気がよくなった段階で、年度の最終段階においてでも間接税の増徴をする、そういうことをやればあるいは賛成をされる向きも多くなるのではないかと思うし、それから税収も二、三年のうちには相当ふえる、このようにも思うので、だからそういうことを中心にひとつ御研究をいただければ大変ありがたい、こういう趣旨の提案をいたしまして、今検討していただいておるということでございます。
  330. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その最初に言われました所得税の大幅な減税という意味が、これがちょっとよくわからないのですね。議事録が、まだ本会議の代表質問のときの議事録ですかな、あれがちょっとできていないので、この前は昭和四十九年ですか、あのとき一兆八千億ですか、あれしましたよね。それを今に直すと四兆円だという話を何か私はあなたがされたように思ったのですけれども、質問者が言ったのかどうかわかりませんが、そういうことを聞いたことを覚えているのですが、その大幅な減税という意味は具体的にはどういう意味なんでしょうかね。
  331. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 大幅な所得税の減税という意味は、昭和五十九年度における税制の改革に追加してやれ、そういうことではないのです。そういうことを言っているわけではございませんで、五十九年度の問題は一応一段落したわけでありますから、できるだけ早く次の段階においてそういうことを研究してもらいたい、これは経済政策とも非常に密接な関係があるし、そういうことをやってもらえば経済は一遍によくなるだろうと思うからひとつ前向きに御研究願いたい、こういうことを言っておるわけでございまして、その際は数字のことは言っておりません。  ただ、別の場所におきまして、これは政府・与党連絡会議ではございませんが、それじゃ、どの程度の減税を考えておるのかというお話がございましたので、昭和四十九年の例を挙げまして、昭和四十九年には一兆八千億の所得税の減税をしておりますが、そのときのGNPとことしのGNPを比較いたしますと、現在の経済の大きさに出しますと、それは約四兆円ぐらいになります、だからそれは一つの参考になるのではないでしょうか、こういうことを言った実績はございます。
  332. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大蔵大臣、私は前からわからないのですが、間接税間接税、こう言うのですけれども、その間接税というのをどういうふうに分類をしたら一番いいのかということですね。従量税とか従価税とか、これは別にして、そうでないときに間接税をどういうふうに分けたら一番いいのでしょうかね。  ここに私、「私たちの税金」というので国税庁長官が推薦して編者は国税庁企画課長田中誠二になっておるのですけれども、この本が大蔵省の決定版でもないと思いますけれども、これを見るとこういうふうになっているわけですね。間接税の中の分類として消費税と流通税がある、こういう分け方がある、それから個別的消費税と一般的消費税がある、それから従量税と従価税がある、この分け方が一応出ていますね。  私が問題にしますことは、あなたも問題にされていることは、私が聞きたいというふうに思っておることを恐らく第二のことだろうというふうに判断されておられるのだと思いますけれども、この個別的消費税と一般的消費税との分類をここでしてあるわけで、「わが国の消費税は、すべて個別的消費税です。」物品税、そうですね。「また、一般的消費税は、課税の仕方の違いから、累積課税方式、単段階課税方式、付加価値税方式の三つに分けられます。 累積課税方式は、取引の段階ごとの売上金額に課税するもの、単段階課税方式は、特定の取引段階に一回だけ課税するもの、付加価値税方式は、取引の各段階で課税し、前段階までの税額をその段階の税額から差し引くものです。  この三つの中では、取引段階の回数に関係なく、税負担のバランスのとれる付加価値税方式が最も優れたものとされ、EC諸国など多くの国で採用されています。」これは国税庁が編集したというのかちょっとはっきりしませんけれども、そう見ていいのだと思います。  そこで、私が今言いましたのは、間接税の分け方を一体どういうふうに分けたらいいかということですね。大蔵省としての統一見解というようなものをしっかり示してほしいと私思うのですよ。これはわかりましたでしょう。今私が言っているのは二番目のことですよ、二番目のことを中心にいたしまして。今私が読んだのはどうでしょうか。これは間違いというか、あるいは不正確というか、あるいは多少大ざっぱというか、いろいろあるのじゃないか、こう思いますが、どうなんでしょうか。
  333. 倉成正

    倉成委員長 大蔵省梅澤主税局長――いや、専門的に答えさせます。
  334. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 間接税の分類、いろいろありますけれども、先ほど委員が引用になりました国税庁の文書に出ております、消費税と流通税と分けるというのは一つの分け方でございますし、それはそれなりにいいと思うわけでございますが、委員のおっしゃったのは、消費税をさらに分けるのに、今の国税庁の分け方がいいのか悪いのかということでございますが、それも一つの分け方であろうと思います。いろいろな分け方があると思います。
  335. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、いろいろな分け方があるならいろいろな分け方を表にして出してください。それは大事なんですよ。なぜ大事かということは1私が何を質問しようとしているかということは竹下さんもわかっているわけだから、だからうれしそうに笑っておるわけじゃないけれども、とにかく笑っておられるわけだ。それはわかっているわけですよ、あなたの方は。私は、これは今国税庁の書いた文書の分け方も一つの分け方だけれども、それ以外にあると言うのならひとつ出していただきたいと思う。  例えばこういう分け方もあるわけですね。一橋大学の石先生の本がありますね。あの人はEC型付加価値税の論者だけれども、それはあの人の場合でも前提があるわけですよ。前提抜きにして言ってしまっては、それは正確じゃないのですけれども、例えば消費税体系というものをこういうふうに分けるわけですね。一が直接税タイプ。支出税、N・カルドアの支出税というか、ミード報告にあるというものですね。それから二が間接税タイプのもの。Aが一般税型、これは一般売上税。その中で単段階課税方式のものがある。例えば小売売上税、これはアメリカでやっているものですね。それから多段階課税方式。この中を二つに分けてある。累積型、これが取引高税。それから付加価値型が付加価値税。こういうわけですね。Bは個別税型ですから、これは別といたしまして  こういうふうに分けていきますと、私が問題にするのは、もうあなたはおわかりだと思いますけれども、一体この付加価値税というもの、特に国税庁のものは、ここに書いてあるように、付加価値税を特別扱いにして詳しく説明しているのですよ、特別扱いにして。そうでしょう、詳しく書いてありますけれども。これはインボイスの問題なんかありますけれども、ともかくこういう形で出ております。  私の開きたいところのものは、これはもう率直に申し上げますが、こういうことです。日本でやろうとした、昭和五十三年の十二月の一般消費税特別部会の審議経過報告などを私手元に持ってきておりますけれども、この当時言われた一般消費税というものが国会決議で否定された。それはインボイスというものを伴わないものだ、こういうふうにあなたは答弁をされておられる。それはインボイスをなぜ伴わないかという理由については、インボイスというものについては一付加価値税には二つあるという言い方を石さんはしているわけですね。前段階税額控除方式、これはECのやり方。それから仕入れ控除方式。こういうふうないろいろな方式があるというのですが、これは国会決議のものは仕入れ控除方式だというようなことを言っているのですね。インボイスを発行して税額を控除するという煩雑な仕事を回避できる、中小企業が圧倒的に多いためにこの方式を日本ではとったんだ、こういうようなことを言われているわけで、ことし二月十八日の私の質問に対するあなたの答えの中でも、こういう答弁をされておるのですね。「EC型付加価値税との違いは、いわゆるインボイスを必要としない仕入れ控除方式を採用するというふうな形のものは、あの時点においては国会決議において否定」をされた。インボイスを必要としない仕入れ控除方式を採用するというようなのはいけない、なぜかというと、インボイスというのはEC型では使われておるけれども、日本の場合は、中小企業など非常に多くて煩雑であるからこれはやらない、こういうことになっておるのだというふうに、あなたの方ではあの国会決議を非常に狭く解釈をされておられるように私にはとれるのです。  そこで問題は、この付加価値税の問題の中で、一般消費税の中で今のインボイスというものが占める位置の問題だと私は思うのですよ。それはどういう位置を占めているかということが私は問題だと思うのです。私の見解では、このインボイスがあるというのは事務上の問題だけですよ。非常に煩雑になるかならないかの問題だけであって、付加価値税というものについての本質的な問題ではないと私は思っておるのですよ。それは、前の福田主税局長がそういう意味のことを雑誌の中で、これは「税務弘報」ですか、石さんとの対談の中で言っているのですね。それは「税務弘報」のことしの二月号ですね。福田さんが「ECと同じ付加価値税をそのまま導入する。それにはインボイスが不可欠ですね。前のいわゆる一般消費税では、勘定で仕入と売上を計算して、インボイスを用いないようにしたのは、事務負担を軽くすることを考えたわけです。」これだけの話なのですね。こういうふうに言っておられるので、だから国会決議は、インボイスの有無に、かかわりなく、インボイスがあろうがなかろうが、全体を含めて国会決議は否定をしておるのだ、こういうふうに私は理解をしておるのです。それが正しい理解ではないかというのが私の理解の仕方です。これは倉成委員長はその方面の専門家ですからね。倉成さんの御意見をここで聞くわけにはいかぬけれども、ここでまた答弁や何か、質問をよくお聞きになっていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  336. 竹下登

    ○竹下国務大臣 稲葉さんとは五十四年にもこの議論をしております。それからあのとき、五十四年の十一月でございましたか、私は大蔵大臣に就任をいたしましたが、その当時、選挙が終わって、いわゆる一般消費税(仮称)に対する選挙による否定という受けとめ方というものが一般的で、国会内の議論であったと思うのであります。そこで決議案ができた。私もそのときに専門家の方にいろいろあの決議案をつくっていただいて、消費一般にかかる税制全部が否定されてはかなわぬ――かなわぬという表現はちょっとおかしいのですが、学問的に否定されてはいけない。そこで、いわゆる一般消費税(仮称)という言葉にきちんと自分なりに整理しまして、だから学問的に存在する消費一般にかかる税制全体が否定されないという形で、私もあの決議案をおつくりいただく中へ入りまして、相談をしてあの決議案になったわけであります。したがって、その手法をとることなくして財政百姓を進めるということで今日に至ってきたわけであります。  ただ、一方、国会の論議でもそうでありますが、税調の論議、中期答申においても、また、五十九年度税制のあり方についての御答申をいただいた際にも、その検討は避けて通れない問題であるというふうなことが書かれてあるわけですね。したがって、当然のこととして我々は絶えず検討をしていなきゃならぬ課題だという理解の仕方はいたしております。しかし、総理は、一方いわゆる大型間接税はやりません、こうおっしゃっておりますね。  そこで、今稲葉さんのおっしゃったような議論を私どもももう一遍してみなきゃいかぬわけですよ、その間接税とはというところから。石先生の議論というのも、あの当時は私個人からすれば最も参考になる税制理論だと思っておりましたが、今でも石先生の物の考え方というものはそれなりに私は学問としてはわからぬわけではございません。いわゆる担税力をどこに求めるか、所得の段階か消費の段階かということで、消費の段階の方が、例えばヨーロッパ付加価値税の場合は最も合理的にできておる、こういう論理でございますね。したがって、そういう問題はこれからも検討しなきゃならぬ課題だという認識は私も持っております。  ただ、それが、いわゆる一般消費税(仮称)というものがあの時点で否定された事実もまた踏まえていなきゃならぬ。だから、やはりこれからそれこそ絶え間なく勉強していかなければならぬし、それから一般的に直間比率の議論が出ますと、今度の歳入の税収をごらんいただきましても、直の比率がふえておりますよね、去年よりわずかでございますけれども。したがって、直間比率というものが大規模に変えられる場合は、相当間接税のウエートが違ってこなきゃならぬ、おのずから弾性値が違いますから。そういうことから考えますと、大変な勉強をしなきゃならぬな。しかもそれは、先ほど来河本大臣からのお話にもありましたように、党においても政府においてもひとつ検討してみなさいということでありますから、我々もその検討を進めなければいかぬ。少なくともその年度の税制に関する答申が出ますと、間々開店休業になるような形の税調ではなく、引き続いてやっていただかなければならぬ勉強課題だというふうに理解しております。
  337. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 二月二十四日ですか、公聴会がありまして、政府税調委員の名古屋大学の水野先生、ここへ立って同僚議員の質問に対していろいろ答えておるのですが、「「課税ベースの広い間接税」と申し上げているのは、かなりいろいろなタイプのものが考えられているわけで、前に導入しようとしてできなかった一般消費税というのもそういうものに入ります。それから、そう余り違いがないのですが、EC諸関でやっている付加価値税もそういうタイプであります。」といろいろ言っておられるわけですね。学者によって非常に違うのは私もよくわかります。みんな違うのですよね。政府税調の中で学者としては、税法学者はあとどなたがお入りになっていますか、名前は挙げませんけれども、三、四人いらっしゃいますけれども、みんな違うのですよ。よくわかるのです、私も。わかるのですけれども、この一般消費税特別部会審議経過報告、五十三年十二月、税制調査会、これを見ますと、結局、「税率」のところを見ても、こういうふうに書いてあるのですね。「税率の水準については、試案においては「EC諸国における導入時の税率の水準は一〇%台であるが、我が国とは事情が異なることを念頭に置き、物価への影響や財政事情を勘案してさらに検討を行うこととする。」とされている。」こういうふうなことで「導入時の税率は五%程度であるとしてもこということで持っていっているわけですね。  そこで、私はこの前のときにも、これは大分前ですけれども、五十五年の二月十二日の予算委員会で、一体、一般消費税というものをやったときに五%でどのくらいになるか、三兆円になると言うから、それなら三兆円くらい取れるというならその根拠を示してくれということで、主税局長、当時高橋さんでしたが、質問した。高橋さん、答えた。詳しく数字を説明した。私は、これを今引き直したときに一体どうなんだということを聞いたら、大蔵省は答えないわけだ。  そこで、私の結論は、とにかくいずれにしても結論を出してほしいのはこういうことですよ。今、出せないわけはないと思うのですが、それは、国会で決議された一般消費税は、この税制調査会の議論をされた一般消費税特別部会の審議経過報告を受けたものだということを答弁されておられるわけですからね。この内容だと言われているのですから。だから、国会で決議されたものは、インボイスを伴ったところのEC型付加価値税は入らない、これは排除しない、あなたの答弁はそういうように聞こえるのですよ、この前の私に対する答弁は。それならそれでいいんです。私は入ると思っているのですけれども、あなたのは入らないように聞こえるから、それは違うのだ、だから、入らないなら入らないということをはっきり答弁してくださいよ。それでないと、これは一番大事なところですよ。ことしの夏、これは予算がどうなるか、とにかく終われば、この問題が概算要求の前に一番大きな問題になってくるのですから、これがぴしっとしてないと審議できないのが本当なんだけれども、そういうことは僕はしないけれども、これははっきりしておかないといけません。これははっきりできないわけはないですよ。
  338. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も国会に長らくおりましたから、国会決議はだれが解釈するか、これは国会です。これを政府が、しかも一大蔵大臣程度の者が勝手に解釈すべきものではないと思っております。  ただ、私が当時あの議論をしながら話しておったときには、いわゆる一般消費税(仮称)というものは否定された。じゃ、インボイスの関係で付加価値税とは違うからこれはいいのかと言われれば、概念的には、それはあの精神には入っておるではなかろうかと私は思いつつも、だから、あの類型から少しでも違ったものならいいのか、あるいはインボイスを少なくとも抜いたものでございますだけに、あれが入ればいいのかと言われると、厳密に言えば、それはいわゆる一般消費税(仮称)とはその意味においては違うものです。しかし、国会決議全体の中では、私も印象として、やはりそれはインクルードされておるではなかろうかと思いますが、国会決議のいわゆる中身については国会自身でお決めになるべき問題で、政府が国会決議を勝手に決めたりしたらこれはいけません。
  339. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今あなたのお話だと、それがインクルードされておればEC型付加価値税はできない、こういうふうになりますね。
  340. 竹下登

    ○竹下国務大臣 インクルードされておるという印象を少なくとも私は持っております。ただ、国会で中身が違ってくれば、それは別問題でございます。
  341. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは非常に重要な問題なんですよ。これは近いうちにすぐ問題になってくるのですから、わかり切っているんですから。  そこで、私が思いますのは、間接税なら間接税というものを一体所得税の補完として考えるのか、あるいはそうじゃなくて所得税と並ぶものとして考えるのか、これによって非常に違うわけですね。そこら辺は一体大蔵大臣としてはどういうふうに考えておられるのですか。
  342. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これも学説としてはいろいろあると思いますが、しかし私は、日本の今日までの、かなり古い時代は別といたしまして、直接税と間接税は税体系の中で併存するが、しかし少なくとも直接税というものが重点的に置かれて今日に至っておる、フランスの場合は逆でございましょうけれども。
  343. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、私、気になる言葉があるのですが、この政府の中期税制の改正答申があるでしょう。これを見ますというと、所得税は低いから「今後これが中長期的にみて上昇していくことは必ずしも否定されるべきではないであろう。」こう書いてあるのですよ。そうすると、「数年に一度は適宜見直しを行う必要がある。」見直しを行う必要があるのだけれども、それは所得税が低い水準にあるから中長期的に見て上昇していく、こういうような意味を含めて、そして見直すのだというふうに政府税調の答申はとれるのですよ。こういうふうに理解していいのですか。
  344. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も同じような理解をしておりますが、要するに、今の物価とか生活水準からする率が設けられて、そして経済成長しますから、そうなればその率自身は下がってまいりますね。だからしょっちゅう――しょっちゅうではございませんが、一般的に三年に一度とかいろいろ言いますが、絶えず見直していくべきものであるという認識は持っております。
  345. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、見直していくべきことではなくて、政府税調が言っているのは、所得税が低いからもっと上げろということでしょう。そういうふうに書いてあるんじゃないですか、この政府税調は。低い水準だと書いてある。だから適宜上げていくように見直すのだと書いてあるんじゃないですか。だから私は聞いているのですよ。(竹下国務大臣「よくわかりますが、ちょっとその意味の正確さが……」と呼ぶ)いや、正確さはいいです。正確さは、いろいろな理解の仕方がありますよ。こういう文章は適当に――適当にと言うとおかしいけれども、ごまかしてありますから理解の仕方はありますけれども、ただ、低い水準にあるから上げる方向に行くのだという意味にとれることは事実です。(竹下国務大臣「正確さが……」と呼ぶ)いや、それはわかりました。私の言うことだけじゃなくて、主税局長から説明をしたいというのでしょうから主税局長の説明を聞きますけれども、その前に河本さん、あなたにお聞きしたいのは、あなたは税体系の根本的見直しを言われましたよね。あなたのお考えもあれですか、所得税というものがあって、間接税というのはそれを補完する立場だ、こういうような理解の仕方なのでしょうか。どうもそうでもないように聞こえるのですけれども、そういうことでしょうか、大変失礼な言い方かもわかりませんけれども。どうなんでしょうか。
  346. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私が所得税の減税をまず提案をしまして、その後で景気がよくなった段階でできるだけ早く間接税の増徴ということを言いましたのは、一つは、臨調答申にも直間比率の見直しということも書いてありますし、同時に、昭和五十二年の所得税の税収総額と本年度の所得税の税収総額を見ますと、ざっと二倍になっておる。こういうことで、負担も大分重くなっておるから、景気対策の上からも、五十九年度はやっておりますけれども、もう少し本格的にできるだけ早い機会に、以上申し上げましたような趣旨に沿って再検討してもらいたい、こういうことを言ったわけです。
  347. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 政府税調のただいま御指摘になりました箇所の考え方でございますが、これは書いてあるとおりでございまして、先ほど大臣が申し上げましたように、税調の考え方は、やはり我が国の税体系の中で所得税は基幹的な地位を占めなければならないという認識がまず第一点でございます。それから、諸外国と比べましてトータルとして我が国の所得税の負担率が高くないというのも客観的事実である……(稲葉(誠)委員「高くないじゃない、低いと書いてあるじゃないか」と呼ぶ)だから……(稲葉(誠)委員「それなら低いと言いなさいよ」と呼ぶ)低い。そこで、中長期的には所得税のウエートや負担率が高まっていくことは必ずしも否定されるべきではないということが書いてございます。  そこで、その次が問題なのでございますけれども、所得税というのは、御承知のとおり、名目所得税に累進構造を持った税率で税負担がかけられるものでございますから、ここに書いてございますように、基幹税であるだけに、トータルとしての水準が低いという水準にあったとしても、急激な負担の増加とか、あるいはゆがみをもたらすということが起こるから、数年に一度は見直さなければならないということが一点あるわけでございまして、見直しながら引き上げていこうというふうには書いてないわけでございます。
  348. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは確かにそうですよ。急激な変化やなんかあっては困ると書いてありますよ。書いてあるけれども、前のあれは、まだ低い水準にあって上昇していくことは否定さるべきじゃないというのだから、肯定さるべきだとは言ってないかもわからぬけれども、そういうことである。ただ、急激な変化はいけない、それで見直せ、こういうことだけの話ですから、だから上げろということじゃないですか。素直に読みなさいよ、日本語を。文部大臣いないかな。文部大臣がいると日本語のあれになるかもわからぬけれども……。政府税調はこういうふうに言っているんですよ。この考え方はいけないですよ。私は反対だ。  まだいっぱい税の問題で議論しなければならぬことがあるんですよ。弾性値の問題でも、さっき河本さんはことしのあれを言われた。今度のこの試算は一・三で見ているでしょう。仮定計算で一・三で見ているでしょう、大蔵大臣。弾性値、ことしは特別です、上がってきましたからね。  そこで、ちょうど労働大臣来ておられるというか、私が呼んだから来たのでしょう、申しわけないけれども。  そこでお聞きしたいのは、私、疑問なのは退職給与引当金なんですよ。前々から申しているとおり、全国の会社の七%しかやってないでしょう。しかも資本金のうんと大きいところでやっていて、七兆何千億あるでしょう。退職金に対しては、今、年金制度で生命保険や信託、そちらの方にやっておるのが多いわけですね。だから労働省としては、労働者保護の見地から退職金制度に対してどういう考え方を持っているのか、まずお聞きしたいわけです。  それからもう一つは、退職給与引当金というものは法律的な保障がないわけですね。一時あったのだけれども、やめちゃったでしょう。保障をすると企業年金か何かそっちの年金の方がいかなくなっちゃうから芳しくないということで、退職給与引当金を法律的に保障することについては労働省としてはどうも反対だとかいう話を大蔵省の人が言うんですよ。だから、そこら辺のところは一体どういうふうになっているかということをお聞きしたい。それが終わりましたら結構です。  それから、それに関連して、大蔵省としては、退職給与引当金の繰り入れ率を四〇から三五にしようというのを今度しなかったのですけれども、それを今後どういうふうにしていくのか、これをはっきりさせていただきたいと思います。
  349. 望月三郎

    ○望月政府委員 退職一時金制度では、社内準備のみの企業が現状としては約六割で、中小企業退職金共済制度などによりまして社外に積み立てる方法を採用している企業が約四割となっております。それから企業年金制度では、九割以上の企業が適格年金、調整年金による社外積み立ての方法を採用しております。  先生御指摘のように、近年退職金の企業年金化が進んでおりまして、社外積立型の企業年金につきましてはその支払いが確実に保障されるものでございますので、労働省としてもそういった確実性のあるものが非常に望ましいわけでございまして、その導入促進について積極的に指導をしておる段階でございます。
  350. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ちょっと今の話を聞くと、あなたの労働省のやっている方が確実性があって、何か退職給与引当金という制度が確実性がないように聞こえるんだ。そういうことかな、今の答弁は。そうだろうな。
  351. 望月三郎

    ○望月政府委員 退職給与引当金制度は税制上の措置でございまして……(稲葉(誠)委員「優遇措置だろう」と呼ぶ)はい。ということでございますので、そのこと自体について私どもが、それは反対だとか賛成だとか言うべきことではないというように考えております。
  352. 倉成正

    倉成委員長 労働大臣、何かありますか。
  353. 坂本龍彦

    坂本国務大臣 退職手当も、やはり支払いが確実に行われるということは、これは当然労働省としても最大関心事でございまして、おっしゃる退職手当の引当金、これにつきましては、今まで企業の側もしっかり積み立てておるだろうけれども、その間やっぱり活用しておったようなこともございましょう。しかし、私どもとすれば、しっかりいざというときには支払いをしていただかなければなりません問題もありますので、この間の事情をよくしっかり勉強していただきまして、石川吉右衛門先生が座長をしている労働基準法研究会というのがありまして、そこで今鋭意検討をしていただいておりまして、夏ごろには結論が出るだろうと思っております。
  354. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 退職給与引当金につきましては、前回も先生の御質問にお答えしたわけでありますけれども、退職給与引当金の対象になりますのは、労働協約もしくは就業規則で企業が確定債務を負った退職給与債務につきまして、企業会計の所得計算上、当期の損金に繰り入れる額は幾らにするか、それを税法上引当金という手法でもって一定の繰り入れ率を損金算入として認めておるということでございます。この引き当ての繰り入れ率につきましては、常に企業の雇用の実態を見ながら見直していかなければならないということは、税制調査会の答申でもしばしば指摘されておりますとおりでありますし、私どもも、五十五年でございますか、それまでの五割を四割に引き下げたわけでございます。  五十九年度の税制改正に当たりましても、税制調査会でこの点について議論をしていただきましたけれども、五十九年度につきましては、まだそこまでの結論に至りませず、これは六十年度以降の検討課題ということになっておりまして、これは引き続き実態に即して見直していくという姿勢には変わりがないわけでございます。
  355. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この前も質問しまして、私がいつも疑問に思っていますことは、二百二十六兆あります非課税貯蓄の問題ですね。これはことしの夏ごろまでに結論を出さなければなりませんね。グリーンカードの問題がありますし、それから利子と配当の分離課税の問題がありますね。これは郵便局が入ってくるからなかなか難しい問題になってくるわけですね、郵便局の場合は初めから非課税にずっとなっていたわけですから。銀行の場合や何かは途中から利子が非課税になったわけですね。一時、課税のときもあったわけですから、そこら辺非常に難しい議論があるのはわかりますけれども、これは避けて通れない問題でしょう。だから、ことしの夏ごろまでに結論を出すといったって、とても出せっこないという話で、ことしの暮れまでもつれ込むのではないか、こういうふうなことが既に言われているわけですね、利子配当の問題、非課税貯蓄の問題。この辺については、大臣としてはどういうふうな考え方を持っておられるわけですか。全部総合所得にしなければいけない、それを中心にしていかなければいけない、こういうふうに考えているわけですか。あるいは源泉のパーセンテージを上げるとか、一たん全部源泉にして後から返すとか、いろいろな方法がありますな。どういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
  356. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まさに稲葉さんが指摘されたとおり、いろいろな方法もあるし、経過もおっしゃったとおりになっておりますね。そこで、これは鋭意やってもらわなければいかぬ、八月ごろと。したがいまして、今一番気をつけなければいかぬのは、国会の議論等を税調に正確に伝える。大蔵大臣が、私が今予見を差し挟むようなことは言うべきでないというふうに身に絶えず言い聞かせております。
  357. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私は、それから引当金という制度についても非常な疑問を持っているのですよ。引当金全部が優遇だとは申しませんけれども、それは現実には優遇になって、大企業がどうしてもそれだけ利益留保的な性格を非常に多く持つわけですから。  それと、今ここで聞くわけじゃありませんけれども、よくわからないのは、商法で特定引当金という制度があるのですよ。これと企業会計原則との関係だとかね。この特定引当金というのは一体何で、一体今どういうところにこれが関係してくるのか、これがわからないのですよ。これは今ここで聞くわけじゃありませんけれども、研究しておいてもらいたい。いずれこの問題は出てくると思うのです。一番出てくるのは筑波の博覧会の引当金ですよ。これは真っ先に出てきますよ。これを認めるか認めないかの問題。  いろいろな問題がありますけれども、時間の関係もありまして別の委員会、大蔵委員会なり――私は大蔵委員会に行きたいと思っているのですよ。大蔵委員会に行きまして、十時間ぐらいゆっくり一人で質問をやってみて、じっくりやりたいと思ってはいるんですがね。そういう形にしないと、日本の税制全体――だから私は、税制には理論的に考えるべき問題がある、それから政策的に考えるべき問題もあるのだと。それから、言葉は悪いけれども、政略的に考えるべき問題もあるのだ、これは政党政治である以上しょうがない。この三つの考え方があるのです。それをきちんと一たん分けておいて、それからどういうふうにするかということを考えないと、ごちゃごちゃしちゃってわからなくなっちゃう。そういうこともありますから、いずれにいたしましても、これは将来の研究課題として、税制の問題とか引当金の問題とかいろいろな問題、優遇、不公平税制の問題とか、いろいろな問題については十分これからも研究を続けさせていただきたい、こういうふうに思います。特に、もうさっき話した国会決議との関係、これは非常なポイントですから、私自身も研究させていただきます。これは倉成さん専門家ですから、倉成委員長にここで見解を聞いてもいいのかな。――まずい。まずいかな。聞きたいのだけれども、いずれゆっくり研究、勉強させていただきたい、こういうふうに思います。  じゃあ厚生大臣、済みませんね、遅くなりまして。あなたに質問したりお答えを願うのは非常に楽しみにしているのですよ、まじめな話。あなたとお話をしていると、何というのか、非常にほのかな感じというか、非常に温かい感じになるんだよね。  そこで、第一の問題は、草川さんも質問されたのですけれども、例の、チバガイギーというのですか、あの問題で、今までなぜ厚生省はこの問題についてタッチしなかったのか、あるいはわからなかったのか、こういう問題が一つありますね。  それからもう一つは、イギリスで使用禁止になったとか制限になったとか、あるいはノルウェーで四月一日から、この両剤ですね、二つありますね、販売禁止を正式決定した。あるいはスウェーデンも販売禁止を勧告した。いろいろあるのですね。こういうことは事実なのかどうかというふうなこと。  それから、この二つ以外のものでも、副作用がある問題について、全般について具体的に一体どうするのか。話はもうさっきありましたよ。僕も聞いていたから。だけれども、具体的にどうするという話はないんだな。ただ、きのう審議会があって結論が出たというだけで、どうするのかというようなこと。この三つについてひとつ御説明願いたいと思うのです。
  358. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 御指摘のチバガイギーの両剤の問題、この委員会でも御指摘をちょうだいいたしました。  そこで、まず、国民の皆さん方の不安を解消するために要指示薬として指定をしたわけでありますが、その後、皆さん方になおより安全を期していくための方法を考えまして、これは専門家の意見をやはり聞いておくべきであるということで、中央薬事審議会の御意見をちょうだいしたわけでありますが、これは全く専門家の間の議論で出た結論でありますけれども、いろいろな、痛風とか、それからリューマチとか脊椎とか、特殊の病状の場合、この両剤以外ではおさまらないというような専門的な問題があるそうであります。そこで限定使用、つまりいろいろな薬をこういうような病状に対してお医者さんが使用して、どの薬を使っても効き目がないという場合、最後の選択として、この両剤をぎりぎりの選択において使うという結論に達したわけでありますが、販売禁止の前の使用制限としては、これは極限的な制限状態ということで、そういう措置を専門家の議論の中でとるべきだ、こういうことになったのであります。
  359. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今私聞いたのは、イギリスの場合、ノルウェーの場合、スウェーデンの場合聞きましたよね。こういうことについてはわかっておられるのですか。
  360. 正木馨

    ○正木政府委員 お答え申し上げます。  チバガイギーのブタゾリジン及びタンデリールの取り扱いにつきましては、世界各国いろいろ検討されておるようでございます。現在、アメリカのFDAではなお検討中で、結論を出しておりません。それからイギリスにつきましては、フェニルブタゾンについては適応症を制限する、それからオキシフェンブタゾンについては禁止をするということで決まったようでございます。それからノルウェーは、先生おっしゃいますように、ことしの四月一日以降承認を取り消すということを決めたようでございます。それからスウェーデンは、当該企業に対しまして自主回収を勧告しておるという状況のようでございます。それから最後に西ドイツでございますが、西ドイツは適応症の制限を行うということで現在のところ取り扱っておるようでございます。
  361. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今のお話を聞きますと、外国政府がそういうふうに素早い適応をしているわけでしょう。日本の場合はなぜ――私、大臣に最初の質問をしたでしょう。なぜそういう素早い対応ができなかったのか。そういうようなこと、外国の例なんかどんどん調査してやられたらいいのじゃないかと思いますが、できないのですか。なぜ日本の場合は、そういう薬の会社に遠慮するということもないでしょうけれども、いろいろあったのじゃないか、こう思いますが、それはいいですわ。だから、今後しっかり今大臣言われたようにやっていただきたい。その副作用によって亡くなった方や病気の方がどんどん出るようじゃ困りますから、大変なことになりますからね。そういうことについては十分心がけて、注意をしてやっていただきたい。このことについて大臣の決意を。
  362. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今申し上げましたように、今回の中央薬事審議会で出た結論は、ほぼ販売中止に近い、ぎりぎり極限の制限が今回設けられたものと私は解釈しております。もっと早くそういう処置をとらなければならなかったのではないか、こういうことでありますが、私も厚生大臣に就任してまだ日も浅く、私は就任して、この委員会で指摘されて、そして謙虚に政府委員を呼んで、これにできるだけ素早く国民の皆さんに不安をなからしめるような処置を講ずるように命じて、それが今回の結論になったわけであります。
  363. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、今後もそういうふうに国民の生活、生命や健康に不安の起きないようにしっかりやっていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、この前、中曽根さんもがん対策のことを重点にしておられましたよね。私、去年、その前から厚生省の人に来てもらったのです、がん対策で。そして、がん対策の予算は一体どれくらいあるのかと聞いたら、わからないのよ、これ。ちょっと悪いけれども、わからぬわけだな。文部省にあり、科学技術庁にあるのですから、全部合わせないとわからぬというわけだ。全部合わせてどのくらいだと言ったら、まだ計算したことないと言うわけだよ。計算したらどうだと言ったら、やっと計算して出てきた数字。アメリカと比べてどのくらいあるか。僕は、アメリカの十二、三分の一というか、十二、三分の一というふうに聞いておったですかな。だというのは、もちろん予算規模が違いますから、そのままあれできませんけれども、そういうふうに聞いておったのですが。そうしたら数字は出てきましたけれども、ことしは随分ふえましたね。三百六十億でしたか、ふえました。それから難病対策、四億ふえておる。よくわかりました。  そこで、今後日本のがん対策でアメリカ側の機構をそのまままねなければならぬということはないのですよ。ですけれども、今後一体どういうふうにがん対策を推進させていくのか。これはアメリカの医療がいいという意味じゃなく、アメリカの医療の特徴というのは、プライマリーの段階と、それから第二段階が大学病院とかいろいろな県立病院、そういうところでチームワークで研究していくわけでしょう。第三段階というか、それは難病関係、こう三つに分かれているのですね。そういうような点で一つの大きな参考になる点があるんじゃないか、こう私は思うのです。いずれにいたしましても、がん対策のためにああいうふうに中曽根さんが言っているわけですから、具体的にどうやって進めていくのか、ここら辺のところをはっきりさせていただきたい、こういうふうに思います。
  364. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今先生御指摘のとおり、がん対策については三百六十億、今回の五十九年度予算案については昨年度より二七%増と、昨年から比べれば大幅な増額を見たのでありますけれども、確かにアメリカの三千億というのに比べればまだ少ない数字であります。がんについては、確かにアメリカがまだ先進研究国でございますので、今回の中曽根総理のがん対策十カ年計画については、これから十カ年で政府ベースで五百億、また民間から資金を募って八十億、これらの費用を投じてアメリカの学者との交流をしたり、いろいろな研究者の育成をしたりして、まずがんの本態を突きとめようという戦略で進めてまいりたいと思います。
  365. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 こういう問題は、党派を超えてやるべきことだと私は思います。  それから、難病の問題についていろいろ大変な御配慮を願っておりますことに私も感謝するのですが、ことしの予算でどういうところが違うのかということと、それからその中で、特定疾患がことしは一つふえるわけですね。そこで、研究班がいろいろ組織されているのですが、四十三班ありますね。ところが、これは失礼な言い方ですけれども、やっている方が、あれはたしか四十七年からでしたかね、ずっとやっていて、長くずっとおられて、そこで新陳代謝がないために新しい空気が流れないのですよ。そういう点がありますから、これはメンバーをある程度入れかえるとか、新進気鋭の研究者がいっぱいいるわけですから、それを入れかえるとかなんとかという形の中で難病対策というものをさらに一層推進させていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございますので、それらをあわせまして、ことしの予算の問題、特定疾患追加の問題、それから四十三班を今後どういうふうにしていくかとか、難病対策全体をどうやって推進していくか、これは特段の配慮ということを本会議で言っているわけですから、それらの全体を含めまして厚生大臣から御答弁願いたいというふうに思います。
  366. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 難病対策については、稲葉先生から大変御好意をちょうだいいたしまして、今回の五十九年度予算でも六百二十億円、五・二%増の予算を確保し、調査研究の推進、医療費負担の軽減、医療機関の整備等を柱としてこれから進めていくわけでありますが、今の研究班の動脈硬化がないようにということでございまして、これは全く御指摘のとおりでございます。常に若い、新しい研究者を新陳代謝して育成し、この難病対策に万遺憾なきを期してまいりたいと思います。
  367. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今のお話、総理も本会議で約束していることでもありますし、ことしそれだけふやしていただいて大変感謝をしているわけですが、大蔵大臣からもその点について一言お述べを願って、まだ時間を残しますけれども、質問を終わらせていただきたいと思います。
  368. 竹下登

    ○竹下国務大臣 がん対策十カ年戦略ですか、それから難病対策、私も会議に総理の指示によって出席をいたしております。したがって、私なりの理解はあるつもりでございますが、当局が積み上げたものに対して、私はそれを調整する立場にありますが、十分そういうありがたい意見を参考にして、対応させていただきます。
  369. 倉成正

    倉成委員長 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十分散会