運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-02-25 第101回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月二十五日(土曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原慎太郎君    宇野 宗佑君       大島 理森君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    金子 一平君       小杉  隆君    近藤 元次君       砂田 重民君    田中 龍夫君       高鳥  修君    谷  洋一君       中川 昭一君    中村正三郎君       西山敬次郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    三原 朝雄君       村田敬次郎君    村山 達雄君       渡辺 秀央君    井上 一成君       稲葉 誠一君    上田  哲君       小川 国彦君    大出  俊君       島田 琢郎君    清水  勇君       武藤 山治君    矢山 有作君       湯山  勇君    有島 重武君       草川 昭三君    斉藤  節君       木下敬之助君    小平  忠君       渡辺  朗君    瀬崎 博義君       東中 光雄君    山原健二郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         人 事 官   加藤 六美君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         警察庁刑事局保         安部長     鈴木 良一君         行政管理庁長官         官房総務審議官 古橋源六郎君         行政管理庁長官         官房審議官   佐々木晴夫君         行政管理庁行政         監察局長    竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁次長 小谷  久君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         国土庁地方振興         局長      川俣 芳郎君         法務大臣官房司         法法制調査部長 菊池 信男君         法務省刑事局長 筧  榮一君         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房審         議官      山下新太郎君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         国税庁直税部長 渡辺 幸則君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齋藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生省社会局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      吉原 健二君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         食糧庁長官   松浦  昭君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省立地         公害局長    石井 賢吾君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         中小企業庁長官 中澤 忠義君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省航空局長 山本  長君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省人事局長 三浦 一郎君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房総         務審議官    吉田 公二君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 台   健君         建設省都市局長 松原 青美君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         国立国会図書館         長       荒尾 正浩君         通商産業大臣官         房参事官    島田 隆志君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     西山敬次郎君   石原慎太郎君     中川 昭一君   上村千一郎君     谷  洋一君   奥野 誠亮君     渡辺 秀央君   海部 俊樹君     大島 理森君   武藤 嘉文君     近藤 元次君   村田敬次郎君     中村正三郎君   山口 敏夫君     小杉  隆君   武藤 山治君     小川 国彦君   大久保直彦君     有島 重武君   工藤  晃君     東中 光雄君   山原健二郎君     岡崎万寿秀君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     海部 俊樹君   小杉  隆君     山口 敏夫君   近藤 元次君     武藤 嘉文君   谷  洋一君     上村千一郎君   中川 昭一君     石原慎太郎君   中村正三郎君     村田敬次郎君   西山敬次郎君     相沢 英之君   渡辺 秀央君     奥野 誠亮君   小川 国彦君     武藤 山治君   有島 重武君     大久保直彦君   東中 光雄君     工藤  晃君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。有島重武君。
  3. 有島重武

    有島委員 百一国会予算委員会総括質問の時間をいただきまして、喜んでおります。閣僚の皆様方には、きょうは特別にまた早朝からお集まりをいただきまして、本当に御苦労さまでございます。  きょうは教育のことについて大体お尋ねをいたしたいと思っております。その前に二、三ちょっとこの席でお尋ねしたいこともございますので、先に質問をいたします。  一つは、石油やみカルテルの問題でございまして、昨日、最高裁の第二小法廷におきまして石油やみカルテル事件の上告審判決が言い渡されました。これは思い起こしますと、ちょうど昭和四十八年、九年のときに、中曽根総理通産大臣をしていらっしゃったころで、私は物価特別委員会でもって総理にいろいろ御質問して教えていただいたことがある、そういったことから早くも十年たっておるわけでございます。きょうは公正取引委員会委員長お見えでございますね。公取の方ではこの判決をどういうふうに受けとめていらっしゃるか。これをどういうふうに反映して生かしていかれるか。
  4. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昭和四十九年以来十年間、裁判所でいろいろお調べがありまして、昨日最高裁判決で司法府の最終判断として、本件カルテル刑罰に相当するものであることが確定したことは、非常に意義が深いことというふうに考えております。  判決の中にもありますように、独禁法の八十九条から九十一条の罪という条項がございますが、「その対象とする行為がわが国の経済基本に関するきわめて重要なものであってこというふうに判示しておられますけれども、こういうカルテル刑罰に相当するものであるという判断が確定いたしましたことは、繰り返すようでございますが、今後の独禁政策に大きな意義を持っておるというふうに思います。  公正取引委員会といたしましては、この判決によりまして、経済基本的なルールであります独禁法への理解がますます深まるということを期待いたしますとともに、違法なカルテルに対しましては、今後とも厳正な法の運用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  5. 有島重武

    有島委員 この件につきまして小此木通産大臣、御所見を。
  6. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 もちろん判決の具体的な論評は差し控えたいと存じますけれども、通産省といたしましては、今後とも行政指導というものは有用であり、かつ必要であると考えております。したがいまして、今後当事者の間に独禁法違反ということのないように十分注意してまいりますし、必要に応じまして公取委員会と連絡調整していく考えでございます。
  7. 有島重武

    有島委員 総理、御所見がありましたらば承りたいと思いますけれども、独禁法運用について、これが時代とともにいろいろ変化していくと思いますけれども、これを厳しい方向にますます持っていく、あるいはややこれを弾力的に持っていく、そういったかげんといいますか、しかし、そのときそのときということもございますけれども、やはり一つの大きな流れもあるのじゃないかとかというようなことも考えられますが、御所見ありましたらば。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は判決の内容を新聞で読んだだけでございまして、まだ原文をそのまま読んでおりませんが、やはり世間が注目していたところは、行政指導業者違法的合意との関連関係であったのではないかと思います。私の理解しているところによれば、行政指導は認める、しかし、行政指導等関連があってある程度の基準とかあるいは限度というものが認められておっても、業者自体がそれを同時に一緒の合意で、ある行為をしたという場合には、これは独禁法にかかわる、そういうような趣旨の判決が下されたというふうに自分は理解しました。  これは、業者合意あるいは共同行為というものと行政指導との関係がどういうふうに結びつけられるか、どの限界まで許されるかという点について私も非常に注目しておった点でございますが、その点が今度の最高裁判決で明確に定義づけられた、そういうふうに思いまして、そういう点は今後とも通産省におきましても、あるいは業界におきましてもよく守るようにしていかなければならない。そういう点におきまして、我々は注目していた判決についてこれを厳粛に受けとめる必要がある、私はそう感じた次第です。
  9. 有島重武

    有島委員 では次の問題で、ガスマスクの欠陥の問題でございますけれども、一月十八日の三井の三池鉱業所事故でもって八十三人もの死者を出した、この重大な一つの原因としてガスマスクが役に立たなかった、これはマスク安全審査基準であるJIS、日本工業規格の検定法自体に問題があるのではないかという疑問が出されておるわけでございます。  これは通産大臣の管轄であろうかと思いますけれども、JIS規格ということについて、これも今時代の変わり目であるという御認識の中から、何かこれを改正に着手するというようなこともお考えでしょうか。このガスマスクの件と同時に、もう少し大きくまた何かお考えがあったらばお聞かせいただきたい。     〔委員長退席山下(徳)委員長代理着席
  10. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 政府のお願いしております事故調査委員会の中には、ガスマスクを含めまして防護用具専門家も入っておりますので、事故調査委員会報告あるいは意見を聞いた上で検討し、善処したいと存じます。
  11. 有島重武

    有島委員 技術的にも何か研究の余地がもっともっとあるというふうに言われております。今もお答えいただきましたので、ひとつ先行きを見守ってまいりたいと思いますけれども……
  12. 島田晋

    島田説明員 ちょっと補足させていただきます。  先生御案内のように、COマスクといいますのは、坑内自然発火だとか坑内火災あるいはガス炭じん爆発等が起こりますと、有毒なCOガス一酸化炭素が発生して、それを無毒の炭酸ガスに変える装置でございまして、緊急避難の間それを活用するということでございますが、まず坑内作業をするとき常に持っていかなければならないという問題もございますので、非常に軽量かつ取り扱い安全だとか、あるいは確実でなければならないとかいうことでございます。  今の方法としましては、一酸化炭素酸化剤を使って酸化させるという方法でございますので、いろいろ技術的な面からある程度温度は上がらざるを得ないというのが実態でございます。その辺をできるだけ温度も上げないで、かつ、長く確実に対応できるということで、世界各国でも技術研究は進めておられますが、現段階では今使っておりますのが最善の方法ということでございますが、さらに酸化剤研究等々につきまして研究を重ねてまいりたいと思っております。
  13. 有島重武

    有島委員 それでは、教育の問題に入ります。  教育改革ということについて、これは私たち考えてまいったわけでございますけれども、変えていく方法考える問題と、これは変えないでいた方がよろしいのではないかと思われるものとあるわけでございまして、最初に教科書無償の存続ということについて、これは変えてもらっては困ると我々は思う。それから私学助成の問題、これも変えるというか充実してほしい、こういうふうに思っているものですから、それだけ先にやらせてもらいます。  御承知のように、義務教育諸学校の教科書無償給与、これは憲法第二十六条に基づいて実行しておる。昭和三十八年からもう二十年になるわけでございます。これは広く国民に定着しておるわけでございますけれども、文部大臣は、ことしの年頭所感の中で、教科書無償制度については、今後とも引き続き維持できるよう努める、こう言っておられます。総理も、ことしはきのえねで物事いろいろの始まりだ、こう言われておりますし、二十一世紀を目指しての森文部大臣、第二次中曽根内閣のホープであります森文部大臣にとっては、恐らく教育改革元年、こういうようなお正月であったのだろうと思うのですね。その年頭の所感でございますから、これははるか二十一世紀を見晴るかして維持する、このように私たちは受け取りたい、いかがですか。
  14. 森喜朗

    森国務大臣 お答え申し上げます。  教科書無償有償論がいろいろと国会でも、また各党間においてでも、それからまた社会の中においても非常に議論されておることは、先生も御承知のとおりだと思うのです。憲法第二十六条の義務教育無償の精神をより広く実現する施策として、今有島さんおっしゃったように、三十八年から我々の先輩たちがこの法律をおつくりになったわけであります。しかし、確かに日本の国の発展、社会の変化からいろいろな議論があるということも、これはまた先生も御承知のとおりだろう、こう思います。  文部省といたしましては、中教審の報告に至る経過の前に、御承知のように臨調における答申もございました。そういう中でちょうど私も、党におきましてこの問題を議論する、そういう機関の中におりましたので、いろいろな角度から意見を求めてまいりました。その結果、昨年の我が党における教科書プロジェクトチームというところで一つ意見が出まして、そして、ことしの六十年度の予算概算要求を決定いたしますこの八月ごろまでには、党としての考え方をもう一遍改めて出すというふうな経緯を見ているわけであります。  私といたしましては、その経緯を受けまして、五十九年度におきましては、御承知のとおり無償化方向予算化いたしました。今後とも党の意見をしんしゃくしながら、この無償化方向文部省としては堅持していきたい、こういうふうに私自身は努力をしていきたい、こう思っております。  今後ともいろいろな多くの皆さんの意見に耳を傾けながら、先生のおっしゃるとおり、憲法の中においても最も大事なところでございますので、先生の御指摘のとおりの意向を文部省としても十分に踏まえながら、今後とも堅持するという方向で努力していきたい、こう考えております。
  15. 有島重武

    有島委員 御結論は、堅持していく、こういうことです。何かその間のお話の中に、党は何とか、こういう言葉がしばしばお入りになって、森さんが党のお立場になってしまうと、強硬にそれを反対なさる立場であるわけでありまして、今大臣のお立場でいるわけで、これは大臣がかわっても、なるべくおかわりにならぬ方がいいと思いますけれども、政府の方針としてこれは堅持してもらう、最後の言葉を受けとめたいと私は思います。  それで、大蔵大臣にお願いをいたしておきますけれども、このように今文部大臣は言っておられるわけでございまして、毎年毎年予算編成というようなときになると必ず、金額にしては全体から見ればそれほど大きい金額ではございませんけれども、この無償化をやめるとかやめないとか、これについて議論が持ち上がる。これも大蔵省筋から持ち上がってくるそうでございますけれども、できることならば、二十一世紀に向かって、向こう十六年間はこういった声はもうお立てにならぬ、こう言っていただきたいわけでございます。いかがでしょうか。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 これは有島先生のせっかくの御提言でございますが、二十一世紀までそういう声を立てないというわけにまいらない経過になっております。これは委員は百も御承知のことでございますが、この場をかりて申し上げますならば、教科書無償制度は、経済的に見た場合には、負担能力にかかわらず多数の受益者少額給付を一律に行うものであるということから、財政資金効率的使用という観点から問題があって、したがって、その点から財政制度審議会臨時行政調査会から御指摘を受けておる、こういうことでございます。  私も教科書問題を議論するときにいつも思いますが、ちょうど数字で申しますと、一がございませんで、二、三、四、五、六、こう覚えればいいな。すなわち、小学校が二千二百円、中学校が三千三百円、全体の予算が四、五、六。四百五十六億でございますから、まさに二、三、四、五、六、こういうことになるわけでございます。したがって、その二、三の面がいわゆる負担能力にかかわらず少額給付を一律に行う、こういう一つの理屈の下敷きになるわけでございます。  しかし、この問題は教科書制度のあり方、また他の文教施策との関連等から幅広く検討すべき事柄でございますので、これらの基本町題の検討とあわせまして、今日、五十九年の八月までに、すなわち六十年度予算概算要求時までに、常識的にはそういうことになりますが、検討しようということになっておりまして、五十九年度予算においてはさしあたり無償を継続する、こういうことにいたしたわけでございます。  いささか文教行政の立場ではございませんが、財政当局からの今日までの筋道だけを正確にお答えいたします。
  17. 有島重武

    有島委員 こうした中曽根内閣全体が教育の問題という視点からといいますか、教育改革に取り組もうということは、教育の視点から物を見よう、こういったことになるのじゃなかろうかと思いますので、今は財政当局からのお立場としてはこうであるという御説明を承りました。その中に総合的判断を待ちながらという言葉がございました。そういたしますと、これは五十九年中に、あるいは来年中に総合判断が出るか出ないか、これはまだちょっとわからぬ話でございますけれども、少なくとも総合判断がずっと出る、それまではこれは存続なさるのが当然であろうと私は思います。それで、今のはお答え要りません。総理にまた折り入ってお願いをしておきたいわけであります。  それから次に、私学助成について申し上げます。  結論的には、ことしの私学助成の大幅カット、これはおやめいただきたい、こういうことです。  五十九年度予算をざっと拝見する、特に文教の予算を拝見する、その中でもって非常にやはり目立ちますのが、気になりますのがこの私学助成の減額、これは異常な感じがするわけであります。五十八年度二千七百七十億円が五十九年には二千四百三十八億円、一二%のマイナスということになっております。確かに、財政難の中でゼロシーリングの時代であるというのならば、昨年と同額であってもこれは仕方がない、こう思う。しかし、ここだけが一二%も下がっておる。これは、国の文教政策あるいは私学政策が何か変更されたんじゃないのかとでも思うより仕方がないようなことである。ところが、私学の政策が特別変わったというようなおさたも聞かぬわけであります。聞いておりません。  総理も御承知のとおり、我が国の高等教育人口というのは同年齢の三七%と言われておるわけでございまして、戦前の三%の割合ということから見ますと本当に高学歴社会だということですけれども、現在二百四十万人ほど大学生、短大生がおみことになっておりますけれども、その人たちが日本の国を担っておる。いや、そうでない人たちも皆担っておるわけですけれども、海外に雄飛したり、社会のそれぞれの枢要なところでもって頑張っておる。これは国力の一つの源泉であるというような見方ができるかと思うのですね。  それで、総理は、二十一世紀に向かってこの三七%というような線、これを維持していこうというお考えであるか、あるいはもう少しこれは下げてもいいんじゃないかというようなお考えもあるのか、あるいはアメリカ並みにもっと上げるべきであるというようにお考えであるのか、その辺のお考えはいかがでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず第一に、私学は非常に重要な機能を果たしておりまして、政府としても大事にしなければならぬと思っております。最近に知きましては、特に私学の実力は非常に向上してまいっておりますし、また、社会的機能も非常に大きな機能を果たしてきております。官立とか公立とかばかりに目を奪われないで、政府としては、私学についても十分目を注いで大事にしていかなければならない。これがまず第一であります。  それと同時に、私学が私学独特の性格、特色を発揮して、いわゆる私学創立の精神、伝統を堅持して、私学らしい私学になっていただきたいということも希望する次第でございます。  大学卒業数というものをどの程度にするかということは、これは日本の社会構造全般を考え、あるいは高校や中学校教育との関係考え、総合的に判断すべきことでございまして、私が今、もっとふやした方がいいとか減らした方がいいとか、そういうめどをつくることは適当でないと思っております。これらはすべて、今回教育改革をやろうといたしますときに専門家の御判断にゆだねるべき問題ではないだろうか、そのように思っております。  特に私学の場合は、自由、自主、自律で物事をすべて御判断願うことでありまして、もちろんそれについては一定の基準というものが国家から示されるでございましょうけれども、一定の基準に合格したもの等につきましては、やはりあくまで私学の創立者の精神を尊重する、そういう建前が一応必要ではないかと思っております。しかし、それらにつきましても、余りにもそれが乱立した場合に、果たして教育的効果がどうであるかという面も出てくるとは思います。そういう意味におきまして、これは時代のニーズとかそのほかの面も考えて、いずれ教育改革に関する一つの大きな課題としてとらえらるべき問題であると考えております。
  19. 有島重武

    有島委員 総理の本会議の所信表明を伺っておりましたときには、教育改革構想の中の対象とすべき分野の中に私学の問題は入ってなかったように思います。今のお話ですと、これも重要な一つの対象分野としてお加えになる、そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 結構でございます。
  21. 有島重武

    有島委員 これは大きい判断はそこでやっていただく。ところが、差し迫ったことがございまして、現在は大ざっぱに言って、大学進学率というか、大学に進学しよう、高校から進学していこうというのは約六十万人。それがこれから毎年毎年ふえてまいりまして、六十七年には、これは文部大臣が御専門だけれども、大分ふえるわけですね。六十七年にはそのピークになる。これに対してどうするのか。これはよほど間口を広げなければ、先ほど言いました三七%もどんどん減っていくわけですね。この辺については政府はどのような対処をしておられるのか、簡単にお願いします。
  22. 森喜朗

    森国務大臣 六十七年にたしか十八歳人口が二百五万ぐらいのピークに達します。しかし、その後からまたずっと激減をしていきます。百九十万、百八十万、百七十何万というような形で減っていくかと思います。したがって、この受け入れのキャパシティーを国が全部を受けるということになれば、これまたこういう大変な財政状況の中で、建物を建てるだけじゃないわけで、当然教授、助教授、講師、この人的な補充が必要になってまいります。その後に激減したらどうなるのかという問題も出てまいります。だからといって、私学にこれを全部受け入れるということも、これまた私学に大変な財政的な負担をかけるということになります。  詳細が必要でございましたら事務当局に調べさせますが、事務当局の方では既にこの高等教育の見直しを今作業いたしております。そして、その中間の取りまとめも今国民の前に公表いたしております。したがって、それについてはどうも大都市集中でないかとか、もっと地方に分散しろとかいろんな御意見も出ておりますが、必ずしもそういう指摘でもないわけで、地方に十八歳人口のいわゆる大学に入る人たちができるだけ適正な配置ができるように心がけた、そういうプログラムを今検討いたしておるところであります。  ただその点で、私学あるいはまた国大協を含めてどのように受けとめてくださるか、この辺のことを十分に協議をしながら、十八歳人口の皆さんがそのころになって、ちょうど昭和四十年ごろに大変な量的な拡大をして、入学試験地獄などという大変な大きな社会問題になった時代のことを想定をしながら、そうした問題にならないように適切に対処するように今努力をしておるところでございます。
  23. 有島重武

    有島委員 お聞きのように、まあこれは国立だけで対処することができない。ですから、私学の方に相当これを頼み込まなければならない、頼むというか、まあ委託するというような形にならざるを得ないということでございますね。現在でも御承知のように、学校の数でもって、大学といえば七〇%が私学、人数でいえば八〇%が私学、こういうことになっておるわけでございますけれども、依頼するといっても、大部分が私学に依頼するわけです。  今大臣がおっしゃいましたように、国立の方をただ人数をふやせば、建物をふやせばいいというだけじゃないのだ、まず人が大切だ、こういうことになりますですね。それから、さっき総理も言われましたように、建学の精神、これに沿って今度は独特の研究分野というものも、これも設置していかなければならない。これはそんなに、金をつけたからすぐできるというものじゃないのですね。ですから、私学としてはかなり長期的に計画を立てて、今からスタートをしなければならない。ことしはやっぱり相当な希望を持って、大体八三年、八四年ぐらいからスタートをするその準備をどの私学もやっておった、私はそのように聞いています。全部とは言いませんけれども、幾つかの大学はそういった心構えでもってスタートをしておった。そのやさきにこの一二%カットということが起こった。  それで、これは当座の問題なのか、これがだんだんだんだんまたスローダウンを一方していって、純減していくという方向性を示すものなのか、この先が読めませんと私学としても非常に不安を感じております。私学が不安を感じるということは、私学に入ろうと志している今の高校生の方々、これが不安を感じるわけであります。高校生についておられる父兄の方々がやっぱり大きな不安を持つわけです。それは、私学がその助成が少なくなれば、それだけ授業料にかかってくる。それはわかっているわけですから、しかもいろいろな今までと違った手当てもしていかなければならない。そして、確かに人数の上ではピークが過ぎれば人数は減っていく。だから、減っていったから縮めてしまうというのでは、そこにはあとは質的にさらに向上して次の時代に備えていきたい、これが当然のことですね。この準備はそれほど簡単ではございません。  これは聞くところによると、どうも一部の私学の中で不祥事が続出した、この一つの制裁の措置であるというような話も伝わっているわけですね。  それで、これはある雑誌ですけれども、雑誌といっても定期的に教育のことを報じている雑誌ですけれども、森さんがこういうことを言っておられるというのですね。「私は、私学振興助成法を出した一人だし、だれよりも私学を大事に考えているんです。だが、国のカネが入っている以上はこそれでここがちょっと飛んでいるのですけれども、「私学独特の行き方をして欲しい。」これもいいと思う。「例えば入試なんかも、国公立と違ったやり方をしてくれたっていい。だが、積極的にこたえてくれない。そんなに甘えるなら、お灸をすえてやれ、少しは反省しなさいというのがあの時(昨年夏)」と書いてありますね、「の気持ちだった。私は一番強硬論者だったんです。私学の建学の精神も全くなくなっている」、こう書いてある。  それから、こちらの雑誌の方から、予算編成ではどうですか、こういう問い合わせですね。それに対しては、「もちろん、頑張ってやりたいと思う。それでも、私学が何も考えを示さないというなら、だんだん減っていくことになりますよ」、こう書いてあるのですね。これはいささか不正確かもしれませんよ。  私としては、まさか国の予算編成をなさるときに、政府としてこんな理由で予算を削減するようなことはゆめゆめないと思います。思いたい。だけれども、これはちょっと聞きたいのは、ここで森文部大臣が私学私学と、私学は建学の精神が全くなくなっているみたいな、この私学はどの私学を指しておるのか。これは都の西北の方か。芝新銭座、三田の山というのがあるわけですよ。だから、もし制裁というのでしたら、制裁をされるような覚えはございませんと言い切るような私学はたくさんあると思うのですね。これはかなり有名な雑誌としてどこの学校にも配布されておるようなものにこう載っかっておりますから、これはひとつ御釈明いただいておいた方がよろしいんじゃないかと思うのですけれども。
  24. 森喜朗

    森国務大臣 やっぱり、釈明をすることではなくて、真意を申し上げておかなければならぬと思います。  私立学校振興助成法をつくりました際は、自由民主党が提案をいたしました。先ほど有島委員総理との質疑の中にもありましたように、私学を大事にしようというこの気持ちがまず第一であります。それから、日本の国における今日の教育の発展の中に私学は大きな位置づけをしていることも御承知のとおり。その私学に対して国が何らかの位置を認めないということがあってはならねというのが、当時の私たちの気持ちでございました。もちろん、社会的には、大学紛争を初めとして、受験料、入学科、授業料の値上げ等における社会のいろいろな混乱状態も、当時学園紛争として騒がしい時期でもありました。そういう中から自由民主党として、苦労に苦労を重ねてこの私学助成というものをやったわけであります。  これは我が党といたしましては、私学助成をする最大のテーゼは、やはり建学の精神を生かすということであってほしい。これは先ほど総理も申し上げた。教育、大学、特に私学においては自主独立の気風というのが大事である。国からお金を出すことによって、国からサポートされたりコントロールされるということは断じてあってはならぬというのも、当時の私学助成法を議論した国会の中にも、当然議事録としてとどめてあったのも先生承知のとおりであります。  そういう中でずっとこう見てまいりますと、お金は当然出るべきものなんだというふうにやっぱりお考えになる。そういうことは、私は当時自民党の予算をずっと、文教予算をお手伝いをしておる立場の中で、もらって当然なんだという気持ちが出てくる、このことが余り強く出てきてもいけませんし、また、もらえるものなんだからもらって当たり前なんだということと同時に、それはあったとしても、やっぱり建学の精神というものにどのように努力をしてくれているのか、こういうようなことを絶えず、我が党と私学との間には、この十年間近くの間にいろいろなやりとりをしてきている経緯があるわけであります。そういうものをやはり着実に実行していただきたいな、こういうふうに私学と自民党との間の意見の交換の場で出てきても、私はこれは決して間違っているとは思っておりません。  ただ、念のために、昨年いろいろな議論の中で出てきた発言を今取り上げられたわけでありますが、たまたま去年、私はまさか文部大臣になるとは思ってなかったものでありますから、そんなことは頭に置かずに私の本音を申し上げたわけであります。  確かに不祥事は毎年起きております。この不祥事というのは、確かに全私学から見れば本当にごくわずかなものだということも、これも私は承知をいたしております。だからといって、安易に、私学はそのまま国の税金、国民の税金をただもらえばいいというものではないのであって、やはり多くの青少年の夢にこたえて、そして社会人として優秀に育ててくれることを学校という教育の中でやってもらいたいというのがその気持ちでありますから、やっぱりいろいろな不祥事が出てくるということは、国民の税金を私学に差し上げることができるんだということに国民が納得をしてくれなければいかぬ、これは私は大事なところだ、こう思います、たとえ一人であろうと二人であろうと。だから、そういうことがないような努力をしていただきたいということをかねがね党としてお願いをしてきておったことがございます。どういうことをやったかというのは、また時間がかかりますから申し上げません。  そういう意味で、そういう経緯の中からお話しをしたわけで、ただ、先ほどから有島さんおっしゃっているように大変大きな、一二%も何だ、こう非常に作為的にやったというふうに受けとめておられるようでありますが、これは全体的に経常部門についてはマイナス一〇%、その前は五%、その前はゼロシーリング、こういうふうに財政当局としてはその方向を決めておるわけであります。その中でも私学についてはかなりいろいろな意味で政治的な意味を持たせて優遇をしてきているのです。そのために。文部省は、御承知のように、大ざっぱに言えば七割近くが人件費でとらわれているわけでありますから、残された政策経費をマイナスシーリングにかけられたら、どこかの政策部門が窮屈になることは、これは先生もおわかりのとおり。それでも過去五十八年度、五十七年、五十六年については、財政当局のシーリングの枠を超えて、ほかの部門からいろいろと御苦労をいただきながら、私学についてはかなり優遇をやってきたのです。そういう中で五十九年度はシーリングの一〇%の中にとどめおいたということでございまして、これをさらに特別に圧縮部分を力とか八とか七にするという、そういう努力は昨年は党としてでき得ない状態であった、こういうふうに受けとめていただきたいのです。  もちろん、細かな数字の計算をしますと、一二というこというのがさらに出てきておりますところを先生指摘をされておられるのだろうと思いますが、それは長い党と私学の皆さんとの間の経緯の中から出てきておるものであって、なおこれからも私たちは私学を大事にしていきたい、私学助成というものを大事に扱っていきたいと思うからこそ、あえて泣いて私どもは党としてそういう概算要求方向をとったものでございます。  ただ、長くなって恐縮でありますが、私自身の個人的な考え方から見れば、これは大蔵大臣におしかりをいただくかもしれませんが、人件費はシーリングの枠から外しているわけです。したがって、私学の予算のほとんどは実質的には人件費と見てもほとんど間違いないと私は思う。そういう意味で、私学の人件費にかかわるものがシーリングにかけられるということは、私はとても私学はかわいそうだと思っております。しかし、政策経費として、経常費として財政当局の中で仕分けをしておる以上は、この考え方に私は乗っていかなければならぬと思いますので、私学のあり方、あるいはこれからの私学助成のあり方や私学を国がどのように位置づけ、どのように認めていくかということについては、先ほど総理が申し上げたように、新しい教育改革の中の一つの柱として考えていく、私はそういう時期に来ておるというふうに判断をいたしております。
  25. 有島重武

    有島委員 総理、お聞きのように、今いささかこの答え、制裁の措置のためという言葉で言ってよろしいのか、あるいは私学に対しての叱咤激励を込めて、こういうような意味を込めてとか、こういう要素は確かにあったようでありますね。  それからもう一つ、私、文部大臣のお話を伺っておりまして気になりますことは、この私学助成については自由民主党が非常に骨を折った、そして今までの経過の中で自由民主党と私学の間でもっていろいろな経緯があった、そうしてその上でやっている措置です、こういうことでございますけれども、だれがどういうふうに苦労したか知らないけれども、これは法律事項としてやっているわけでございまして、自由民主党の私の――私とは申しませんけれども、国民全体から見れば、自由民主党がこういうふうにやっていたからというようなことは、ちょっとこれは納得しかねる人も大勢いるのじゃないかと思います。  それからもう一つ、一部の私学に不祥事があった、これは悲しむべきことでございます。しかし、それだからといって、本当に一生懸命やっている多くの私学が連帯責任を負わなければならないというようなことは、これまた筋違いではないかと私は思います。もし連帯責任というならば、国立の方でも東京医科歯科大学というのがあったですよね。これは国立ですから、制裁措置というならばあるいは連帯責任というならば筋が通ります。私学はそれぞれ違うのですから、連帯責任というようなことは全く筋違いではないか、こう思います。  こうしたいろいろ矛盾を含んでおります上に、また私学の全体的なことについてはこれから本格的な検討の対象にしていこう、こういうことでございますから、その全体的な一つの結論が出るまではこの措置は凍結なさったらばどうか。したがって、ゼロシーリングにとどめてお話しになるなり、そのことはまたいろいろと御相談をしなければなりませんけれども、少なくともこれは予算の修正をしていただきたい。凍結をしていただきたい。いかがでございましょうか、総理。――いや、総理大臣に御見識を承りたい。今財政の事情を聞いているのじゃないのです。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私学をできるだけ振興したいという意欲を政府は持っておりますが、一面におきましては臨時行政調査会の答申等々もございまして、その意見もまた聞かざるを得ない。また、政府自体の見識におきましても、六十五年までに赤字公債から脱却するという厳しい目標を設定してやっておる最中でございますので、ある程度経費につきましていろいろ我慢願わなければならぬ部分も出てきておるわけであります。ここ三年間ゼロシーリング、マイナス五%シーリング、本年はマイナス一〇%シーリングという削減の方法も講じて、健全財政に向かって今努力している最中でございますので、まことに不本意ではございますけれども、私学の皆様方にも一部我慢していただかざるを得ないという面も出てまいりまして、甚だこれは残念でございますが、事情やむを得ず御了承いただきたいと思いますので、予算の修正は考えておりません。
  27. 有島重武

    有島委員 総理、せっかくの御答弁だけれども、私が申し上げた幾つかの点については今御回答を避けていらっしゃるようですけれども、ここではもう時間がございませんから、この種の議論はまた後のことにいたします。大蔵大臣も何かお答えいただけるかと思いますけれども、これはもう時間ございませんので――三田の山と言っちゃったからついでに言っておきますけれども、福沢諭吉の印刷されているお札を最初に扱う大蔵大臣でいらっしゃるから、ひとつこの辺はよくお考えいただきたい。  先に行きます。教育改革の問題に入ります。  現在が大きな時代の転換期にある、そして二十一世紀に向かって各分野にわたって総合的な深い見直しが必要である、こうした認識は私ども全く賛成であります。そうした心構え、そうした視点で教育の見直しということに取り組みたい、こう思っておる私もその一人でございます。  教育改革についての総理の御熱意あるお取り組みにつきましては、さまざま論評が今のところあるようでございますけれども、これは私は大きく評価をしたい。しかし、半分は期待をし、半分は危惧の念を持つ、これが正直なところでございます。  先日の本会議における総理の所信表明を伺っておりまして、たくましい文化、福祉の国日本、また国際国家日本、こういったものを大きな目標となさって行革もやろう、それから、財政再建ではなくて財政改革をやろう、そして教育改革を大きく位置づけられました。こうした大きく位置づけられたこと、これにもいろいろ論評ありますけれども、私としては、場合によって、私たちが一生懸命ここでもって教育のことを言うことが、あるいは野党の立場としては与党ないしは政府の延命に手をかすんじゃないかというようなことを、我我の方にまた言われるような向きもございますけれども、そういうようなことはまず度外視して、これからの子供たちのために、日本の将来のために力を惜しまずこれは取り組んでいかなければならない、そう覚悟をいたしておるわけでございます。  それで、この教育改革に当たっては人間主義、今まで機械文明の中でもってずっと来たというような御批判があるのでしょうか、私たちは、二十一世紀は生命の世紀、こう言いたいところでございますけれども、人間を中心に据えていきましょう。そして国際化、今までの島国根性ではだめだというような御反省からでしょうか、こういう二つの理念の上に四つばかり改革の視点をお挙げになっていたかと思います。それから、どのような分野にわたってというので八つの分野をお挙げになっておりました。きょう私学というのが一つ加わりましたから、九つになるかと思います。  私たち公明党におきましても、たくましい福祉とは申しませんけれども、「生きがいとバイタリティーのある福祉総合計画」、これは五十一年に出しております。生きがいとバイタリティーというのはまさに人間の問題であります。それから最近は、この間差し上げたかと思いますけれども、「二十一世紀日本の教育」「生命が躍動する教育を」、それから「経済成長を超え人間成長へ」、こういうふうなタイトルでもって、この中にもやはり四つの視点を据えました。第一番は、やはり人間を原点としましょう、それから、国際社会に生きる日本人、新しい型の国際人をつくりましょう、それから創造性、自主性、または、たくましい生涯教育にたえる自己教育力を備えだというような四つの視点ですね。それから、十の分野というようなことで、変わっております点は、六・三・三制の見直しについての具体的な手順というようなことを具体的に示しておる。そういうふうな報告を出した。これは、政策よりか一つ以前の基本政策というようなものでございますけれども、そういうような努力をいたしております。  私たちは、一致するものについては協力を惜しまない、それから、意見が違うものについては、これは粘り強く一致点を見出すまで努力をしましょう、それでその上でなおかつ、やはりこれは立場がいろいろ違うわけですから、違う点が残るのは当然である、その違いは違いとしてこれを明らかにしておきましょう、こういうような三つの方針でもってまいりたいと思っております。  総理は、教育改革を進めるに当たりまして、内閣総理大臣の直接の諮問機関としての新しい機関を設置しようとして、それで調査をし、審議をする、こういうことでございますが、この機関につきましてもいろいろな論議が集中されておったようでございますけれども、一体何を目指して、いかなる構成で何を検討するのか、特にどういった構成でやっていこうとしておるのか、それから、従来あった同種の、同種のといいますとあれですけれども、やはり審議機関、代表的には中教審というものとの関係はどうであるか、こういったこと、相当な御論議がありましたけれども、なおやはり私なりに不明、まだわからぬ点がございますので、この席をかりて時間の許す限り少し質疑をさせていただきたいと思います。きょうの御答弁のいかんによりまして、私どももそれをいろいろな判断のよすがとさせていただきたいと思っておるわけでございます。  いろいろとございますけれども、大ざっぱに申しまして、総理考えておられます教育改革方向ですけれども、大きな方向としては憲法教育基本法の精神に基づく、これが第一番、第二番は、教育基本法は変えない、それから第三番目には、教育の中立は守ります、すなわち不当な支配はしない、不当な介入はしない、この三つのところまでが明らかになったと思うのですけれども、よろしゅうございますね。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのとおりであります。この間、二見さんの御質問にも明確にお答えした点でございます。
  29. 有島重武

    有島委員 と申しますと、中央集権の方向ではない、そういうことですね。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点は、今学校教育法で、高校教育は県の教育委員会が、それから中学校、小学校は市町村の教育委員会が主管してやっておりますが、こういうような地方分権的やり方を変える考えはありません。  それから大学そのほかのシステム等々につきましては、文部省設置法によりまして文部省が企画、調査するという権限が決められておりますが、これもそのままでいいんではないかと思います。ただ、できるだけ大学は分散して地方へ持っていってもらう方が、時代の文明的風潮等から見ていいのではないか。しかし、それも別に強制してやることではございませんけれども、大学の東京や大阪や大都会に集中する傾向というものは余り感心したものではない、そう思います。それらもすべて新しくできる教育機関等が御研究願って結論を出していただくべき問題であると思います。
  31. 有島重武

    有島委員 法制上は、今の小中高については地方の責任、そして大学については国の責任、このことを崩すことはない。この原則を崩すことはない。これはいろいろ例外はありましょう。  それから、行政の指導助言といいますか、あるいは中央の文部大臣の権限といいますか、もっと俗に言えば、大臣の威令が届くといいますか、だから中央の文部省の行政主導力といいますか、これを強化する方向ではない、同じことの言い直しかもしれませんけれども、そう受け取ってよろしゅうございますね。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これらもすべて新しい教育機関、新しくつくられる機関が、皆さんの衆知を集めてお考えなさることであると思いますが、私の個人的意見をもしお許しいただいて申してよろしければ、これは私の本に書いてあることで、この前、二見さんも御引用になった本でございますけれども、やはり二十一世紀を見まして、これからの教育というものは、まず第一に弾力化、あるいは自由化という言葉でもいいし、それから、あなたの方の「生命が躍動する教育」というそれにもお書きでありますが、多様化、それから国際化、それからある意味においては生涯教育ということも含めまして、社会化と申しますか、そういうような要素が必要ではないかと思うのです。そうして、これらを総括する一つ基本理念というものは、人間主義とか人格主義、そういう理念に基いて行うべきではないか、これは私の個人的考えですが、これらもいずれ新しい機関皆様方が御研究願うことであると思っております。
  33. 有島重武

    有島委員 わかりました。文部大臣の権限強化については、これは検討課題にする、このように受け取ってよろしゅうございますか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん、その新しい教育機関でお決めいただくことであると思いますが、大体、今文部省設置法で決められているそれらの内容は、そのままでいいのではないかと思います。思いますが、多様化とか弾力化というような面におきましては、文部省が規制している部分等について、余り規制が深入りしているようなところはもう離してしまったらどうか、そういう面もなきにしもあらずではないか。多様化、自由化という面あるいは弾力化という面においては、民間の創意をかなりやっていただいて、余り瑣末なところまで文部省が入り込むのはどうか。私も昔、私学の学長、総長をやったことがありまして、いろいろそういう経験もいたしました。それらもいずれ専門家皆様方が御検討願うことであると思っております。
  35. 有島重武

    有島委員 多様化、弾力化、これは私どもも昭和四十三年のときの基本政策の中でもって言って、あのころからもいろいろな問題があったと思います。その中でもって、今度教育の制度ないしは内容について多様化、弾力化、これは明治以来の追いつき型の風潮の中で画一化の方向に進んできたのじゃないのだろうかという反省の上にこういうことを言われた、これは本当に敬意を表しております。なお、それのみか、私が本当に感心いたしましたのは、教育を授ける側からの多様化というのが、受ける側からとってみると盲腸になってしまう場合があったわけですね。そういうことも考慮の上でもって、これは教育を受ける側からの選択の自由ということも総理は言っていらっしゃる、大変結構なことだと思っております。  今、伺っておりますのは、これは森文部大臣がおっしゃったのか、記憶違いだったらちょっとお許しください。戦後一番権限が少なくされてしまった、剥奪されてしまったのは文部省なんだ、文部大臣なんだ、こういうようなことをどこかで聞いたような気がするわけですね。間違ったらごめんなさい。そういうようなことを聞きますけれども、弾力化、多様化、そうした中でもって、気がついてみたらば文部省の権限は強化されておった。具体的に言いますと、許認可の項目が増加する方向に行くんじゃないでしょうな。それから、やたら報告書類だとか事務が煩雑な方向に行くんじゃないでしょうな。二十一世紀に向かっては事務の煩雑さは極力割いて、人と人との触れ合いを多くしていく、こういう方向に進むんでしょうね。この目標、方向から御確認させていただきたい、どうですか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 文部省設置法に決められておる文部省あるいは文部大臣の権限というものは、そう変わらないでこのままでいいと思いますと、そう申し上げました。その基本には立ちますけれども、許認可や何かで瑣末なもの、あるいは今からもうこういう時代になってみると不必要なものというものもなきにしもあらずであると思います。今言った報告もありましょうし、図書館なんかの場合にもあるんじゃないかと思いますね。そういういろいろな面において許認可、規制を解除するという面も多様化の面で出てくるのではないかと思います。  もう一つは、弾力化あるいは多様化というような面を考えてみますと、よほど民間の創意というものを信用して、そうして思い切ってやらしてみる。今までの明治以来の日本の教育というものは大成功した一つの例でありますけれども、東海道本線を中心にして、本線以外は余り目もくれない感じがしておった。戦後になって私学というものを非常に大事にし始めて、そういう副線というものの電化をやはり始めた。今までは本線の電化しか考えなかった。しかし、まだ地方線というものもうんとあるわけです。これらもいずれ東京に行ける、そういう形にして、盲腸的存在をなくすという面も大事であります。そういう面について余り厳しい規制とか何かをやりますと、盲腸になってしまう面もありますですね。  しかし、また一面において、学校へ行けない子供でも独学で勉強する、あるいは放送大学でやるとか、新しいシステムがうんと出てくると思います。専修学校だとか専門学校だとか出てきますね。こういうものも本線につないでやる、力が出てくれば。そういう面においても考える面があると思うのです。特に、いわゆる学歴のない人たちでも、認定を受けて、力のついた者は本線にいつでも入れるようにしてあげる、そういうような点が大事であると私は思っております。  そういういろいろな面でさらに新しい工事をやるわけでありますから、故障を起こさないように、多少許認可とか規制する面が出てくるかもしれません、その辺は。しかし、原則として、多様化、弾力化という面から見れば、これは規制を解除する。余り瑣末な規制は思い切って解除して、民間を信用して、あるいは事後報告でいいとかあるいは届け出でいいとか、そういうような方向に持っていく感じが私は好ましいのではないか、そういうふうに感じております。
  37. 有島重武

    有島委員 そういう方向でもって二十一世紀に向かって、それは多少の進退はあると思いますけれども、大きな方向はそっちに行くんだということは、今ここでもって大体確認できたのではないかと思います。  それで、今の話にちょっと関連するので、横道にそれるようでございますけれども、この対象項目の中に入試の問題があります。入試といいますと、今共通一次の問題、偏差値の問題だけがクローズアップされております。このことについては、また一般質問なり文教委員会でもってさらにやりたいと思いますけれども、一つ考えておかなければなりませんのは、これほどいろいろな入試問題が盛んなのは、これは入試に人が殺到するからですよね。それで、何のために入試をするかというと、大学に入りたいからですよね。そうすると、大学に入るのは何のためなんだろうかというんですね。これは、学問をしたいからだ、こう言う人も大勢いると私は信じたいけれども、必ずしもそうじゃない。それだけではないようですね。それだけではない人のパーセンテージというものはかなりふえておる。そうなりますと、やはり資格を求めておる、こういうことになりますね。  私たち教育改革一つの、イロハのイの字として、学校教育改革については、出口の方から、ということは大学、それから高校、それから六・三制に及ぶ。そういたしませんと、せっかく六・三制を一生懸命いろいろ改革しても、結局試験のところに規制されて、いろいろいい工夫が全部死んでしまう。そういったところから大学改革から始めた。それで、大学の単位の互換制をやってください、放送大学をつくってください、また少人数教育をその中で確保してください、そういうことをいたしましたけれども、その前提で、さっき昭和四十三年と申しましたかもしれませんけれども、そのときの私たち基本政策ですけれども、その資格付与のあり方、この多様化ということで相当多くのページを割いたわけでございます。今総理がいろいろな比喩をもっておっしゃいましたけれども、傾聴すべき御見識だと思います。  そこで、入試問題並びに資格付与の問題、これは並列して御検討なさるようにしたらいかがでしょうか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは大賛成です。やはり資格付与という――今大学になぜ入るかといえば、学問をしたいという人もおりましょうが、社会で働きたい、社会で働くためには、今の社会情勢を見ると大学卒業の資格を得なければいい会社に入れない、いいところへ行けない、そういうことから、生きていくために大学へ入っていく、そういう者が非常に多いと思うわけです。そういういろいろな面について今度はよく検討もしていただきますし、その場合に、学歴というものがなくても、会社あるいは官庁は、力があれば平等に受け付けるという社会にしていかなければ、根本的解決にはならぬという面もあります。  また、生涯教育という面を見ますと、社会へ出た人でも勉強したいという人は大学に入れる。家庭の主婦でも、もう子供が大きくなったから社会学部へ行って心理学をやりたいとか、今いろいろなそういうニーズが出てきております。そういうわけで、朝日カルチャーセンターとかサンケイ何どかどか読売何とかどか、いろいろ出ておりますね。そういう教養講座が花盛りです。これは、それだけ今現代人に教養や勉強の欲求が出てきているのであって、これをそういう私的機関だけじゃなくて、公、私立の大学も受け入れられるようなシステムにしてあげることが非常に大事です。その場合に、あるときには限定的な資格を与えるとか、その単位をほかでも使えるとか、そういう面でもっとビビッドに学問とか大学というものを使えるようにする、そういう希望を私は持っております。
  39. 有島重武

    有島委員 ありがとうございました。  もう一つの視点として、国際化が促進している。これは教育の上にも及んでおりまして、単位の互換というと、国内の大学同士ではなしに外国との単位の互換の方がずっと進んでいるという、これはなかなか喜ばしいことではないかと思っておりますけれども、そうなってまいりますと、向こうは九月入学ですから、向こうから来る人たちも九月に入学する。一時に九月入学にせよということは申しませんけれども、これも弾力的に、一部の私学では九月入学をやっておるようでございますが、この方向も御検討いただくべきではないだろうか。  そうなりますと、今度は四年間いるというのが三年半卒業ということもあり得るわけですね。百二十四単位を取る。そうなりますと、今度は三年半までいなくても三年でも百二十四単位を取って、後は何か別のことをしているとか、こういう場合もございますね。そこら辺の年限の弾力化ということも、これはもう現にどんどん始まっていることですから、今の総理の大体のお考え方向、これはもう変わらぬことであろうと思いますけれども、森文部大臣、今の部分的な九月入学の問題、それから卒業年限の弾力化、こういったことについてはいかがでしょうか、もうそろそろ始められてもいいんじゃないかと思いますけれども。
  40. 森喜朗

    森国務大臣 有島さん御承知のとおりでございますが、先ほどお話の中にもありましたように、単位の互換性の導入でございますとか、この間、東大大学院論というのが三塚さんと総理の間に出ましたけれども、既に学部がなくて大学院というのはできるように、法的な道は先生にも御協力いただいて、そういう道を広げてあることも御承知のとおりです。かなり弾力的には文部省は取り組んできておりますし、大学院につきます博士課程、修士課程のところのいわゆる標準五年というのも取り入れたところでもあります。したがって、かなりその辺はもう突き進めております。  私は、入学選抜の問題でやはり一番頭に置かなければならぬことは、高等教育機関のあり方だろうと思います。今学歴社会の話も出ましたけれども、入試の問題の根底は、実は入るところではなくて、つまり教育の一番大事なところは幼児のところかもしれませんが、今の社会の病理、荒廃した教育環境ということの視点から物をとらえていきますと、大学入試の問題を考えざるを得ない。そして、大学入試の問題、高等教育機関のあり方というものを考えてみますと、これもずっとこの予算委員会総括の中で、総理の御発言の中にも、また私の答弁の中にもありましたように、高等教育機関というのは、能力を開発し、高等教育を進めていくことが大事なのか、あるいは人間性豊かな人間づくりをしていくことが大事なのか、これは両論ございまして、どちらともなかなか結論を持っていくこと自体が非常に難しい。したがって、入学選抜の方向にはできるだけ窓口を広げて、多様化ということもこの間私はこの場所でも申し上げたと思います。  そういう中でもう一つの観点は、中学校が三学期まで本当に楽しく行われているんだろうか。先生と仲間、先輩、友人との別れになる三学期がどうも完全になっていないというのが、私の体験上からも、中学、高等学校の三学期というのはどうも魔の三学期であって、一番大事な三学期というものがどうもないがしろにされているのではないだろうか。(有島委員「九月入学のことを」と呼ぶ)ええ、そのことから申し上げているのです。したがって、そういう角度から考えてみると、結局入試のために三学期がなくなってくるわけですから、私は、党におりました立場から、一遍入学の期というものは考えてみる必要があるんではないかという個人的な持論をずっと持ってきた者の一人でございます。したがって、この間、国大協のいわゆる入試改善懇談会の先生方とのお話の中でも、実は九月期入学というものもひとつ考えてみていただけないだろうか。今おっしゃったように、国際社会との連携の問題もありますが、同時に、中学や高等学校の皆さんの三学期というものを全うさせていただくためにもそのことをひとつ考えていただきたいということは、私から正式に大学協会に申し入れてございますので、今真剣にそのことを検討していただいていると思います。  ただ、問題は、社会全体の構造の仕組みが、会計年度の問題もございますし、逆に言えば、九月まで延ばせば、その間苦しみを長く与えるということにもなるし、その間、結果的に空白の時間をまた塾や予備校へ通うというようなことにもなってくるし、いろいろな弊害もございます。その点のことも十分考えて検討していかなければならぬ課題でありますから、先生指摘のとおりの大変大事な問題点だと私は思いまして、国大協の皆さんにもお考えをいただくように申し入れてございます。
  41. 有島重武

    有島委員 先ほどから弾力化とか権力の介入はしない、こういうことでございましたけれども、総理、去る二月二十二日に都内のホテルにおきまして、産業労働懇話会に総理が出席をなすった。この席上、総理はこういうことをおっしゃったというんですね。「(教育には)広範囲な問題があり、総合的に検討するが、教科書内容の改善についても頭に入れてやっていきたい」、こういう報道でございます。これはいささか重大ではないか。いささかどころではなくて本当に重大じゃないか。これは政治介入ということに普通は受け取ることでございます。どういうことでございましょうか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、私が申したことをもう一回テープで聞いてみないとよく確認できませんが、たしか質問がありまして、今の教科書の内容の中では必ずしも適切でないし、十分でないものがある、一部には偏向と見られるものもあるし、あるいは国際性という面でもっと改良すべきものがある、あるいは非常に難し過ぎる、あんなに細かいいろいろな難しいところまで教える必要があるのかというようなていのいろいろな質問がありました。そういう質問を受けまして、そういう点ではやはり検討すべき点があるでしょう、そういう意味で一般的に申し上げたのであります。
  43. 有島重武

    有島委員 いまのお答えをいただいて、やや安心をいたしました。非常に心配ですね。割合といい気分でずっとこううまくいくかなという感じがしたのに、突如として油断をしているとぱっとけさがけに切られてしまうのではないか、こんな印象を私たちは受ける場合もあるわけですね。ここは注意をして――これは余り深追いはいたしませんけれども、教科書の内容に手を突っ込むようなことは金輪際ない。ただ、割に総理の個人的な御感想として、こういったような気はしております、こういったことも検討課題の中には出てくるでしょう、こういうような程度で。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は、教育について政治は中立性を守らなければなりません。ですから、今度新しい機関をつくるという場合で、皆さんがおやりになる舞台をつくる、それが我々の仕事でありまして、つくったら、出てくる役者にいろいろ好きなことをやっていただく、国民の見ている前でやっていただく、これが我々の本旨でありまして、内容までいろいろ手を突っ込んでやろうなどとは、毛頭思っておりません。
  45. 有島重武

    有島委員 次に、教育基本法の問題については一条と十条についていろいろと議論がございました。これは蒸し返しているともう時間がなくなりますので、私はきょうは四条のことだけ。  御承知のように、四条には、「国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」こういうことでございます。六・三・三の制度を見直すということでございますけれども、この九年という年限、これについてはどうなるのか。これも、九年をめどとして八年もあるし十年もあるんだというふうな、やや弾力的といいますか、拡大解釈をする余地を残して諮問をなさるのか。教育基本法は守る、変えない、こういうことでございますけれども、厳密にこの九年というものは金輪際動かさないで検討すべし、こうなるのでしょうか。いずれですか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育基本法は守る、今の憲法のもとに行う、そういうことを言っているのでありまして、義務教育九年というのは教育基本法に明記されていると思います。たしか記憶しております。したがって、義務教育九年というのは変える考えはございません。
  47. 有島重武

    有島委員 先に行きます。  総理の政治目標の第一番は、たくましい文化、福祉、そういうことをずっと言い続けておられる。これはもう総理に御就任になった一番最初のときからそうであったと思うのですね。  それで、今私は、家庭教育社会教育というところにちょっと触れていきたいと思うのですけれども、今まで学校中心主義的になっておった、これは明治以来、追いつき追い越せ、効率的に物をやっていかなければならない、物を教わっていかなければならない、これには学校が一番いい、そこを中心にしていく、教育といっても、社会にもそれ相当の教育力というものがあった、規制があった、家庭にも教育の力があった、そういったことを前提としているのだけれども、今は学校だけ注目しておっても、そこでは教育効果が上がらなくなってしまった、したがって、家庭、社会、そういったところの教育力ももう一遍復帰しなければならぬというような意味でおっしゃったのだろうと理解しておるわけです。  それで、総理は、これはおととしのときの所信演説だと思うのですけれども、今や国民は物の豊かさの上に心の豊かさ、真の文化を求めておる、こうおっしゃったのですね。それで、「いわゆる西欧型の福祉国家とは異なった、日本的な充実した、家庭を中心とする福祉を求める切実な声が上がっております。」こういうように言われました。私は、日本的というのはどういうのかなと、これは随分いろいろな日本論がございますから、総理が思っていらっしゃる日本的とはどういうことかな、これは折があったらばお話を承っておきたいと思いますが、きょうはとてもとても時間がないから。  それから、「家庭を中心とする福祉」、こう言われました。これも私は望ましいことだなという感じはするのでございますけれども、ここで、家庭教育ですね、家庭のしつけ、家における教育、これは大変いろいろな論議が、有益ないろいろな本も出ております、お話も聞きます。問題は、今家庭教育という前に、家庭というものがどうなっていくんだろうか、二十一世紀に向かってどうなっていくんだろうか。これを政治の上からは一体どういうふうに何かアプローチしていくことが、支えていくことができるか。家庭の形成、いわゆる日本的な家庭的というような意味ですね。それが僕は大きな問題ではないかと思います。極端なことを申しますれば、これは戦後――戦後というのですか、民法の改正ということがあった、あるいは相続税ということもある。法制的にいうと、そういったことが今の核家族化の下支えになっているという説もございます。そこまで触れられるとは思いませんけれども、ではどうするのかというようなことが大問題だと思います。  きょうはここでの議論――議論というふうにいきませんけれども、議論は全部飛ばしてしまって、国民のみんな聞きたがっている、僕も聞きたいと思うのは、総理御自身は、小さいときに家庭のしつけ、いろいろあったろうと思うのだけれども、今一番心に残っている家庭のしつけというのはどんなものであったのか、これはいささか個人的になりますけれども、またお子さんやお孫さんに対してどんなしつけをしていらっしゃるのか、長い時間はかけられないけれども、一言教えていただきたい。後で文部大臣にも聞こう。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、日本的福祉という言葉で一番頭に置いたあの文章をつくったときは、やはり在宅福祉というものが福祉の中で我々が一番追求すべきものである、そういう考えを持っておったわけです。老人ホームもいいけれども、老人ホームは老人ホームで立派にしてあげたいけれども、やはり家庭で孫と一緒におれるという喜びが一番大きいし、家庭が憩いの場所で家族と一緒におれるという老人が、一番老人としての夢ではないか、そういう意味で在宅福祉ということを頭に置いて家庭というものも考えたわけです。  それから、子供のころの教育で何が一番頭に残っているかといえば、両親から、お客様が来た場合にちゃんと出てあいさつしなさいうちへ入った場合にはそこで会った場合に、玄関とか何かでもあいさつするし、また、お医者様が母親、父親と話しているときには、ふすまをあけて、いらっしゃいませ、そう言ってちゃんと正座しておじぎしなさい、そう言われましたね。それが今でも一番頭に残っておりますし、うちの孫どもにもそれをやれやれと言って教えているところであります。
  49. 有島重武

    有島委員 どうもありがとうございました。時間が許せば、文部大臣以下の各大臣方にもできればお話を承りたい。これは、資産公開もいいけれども、こういうことを公開して国民の皆さん方に知ってもらう、これもできるところから第一歩と、こういうことじゃないかと思うのですけれども、これは文教委員会なり各委員会に譲りましょう。  それで、今度は社会的な影響。これは学校教育から受ける影響というものもさることながら、社会の影響を大分受けていると思うのですね。テレビの問題もございます。それから雑誌の影響、これもいろいろな指摘がございました。  はしょりまして、では、今言ったようにまず一歩からというからには、政治家の行動についてはどうだろうか。これはたびたび問題にされていささかちょっと、余り言いたくもない問題ですけれども、問題にされております元総理大臣の御振る舞い、これは子供たちにとって、子供たち教育にとってやはり影響を与えているんじゃないだろうか。これは幾ら法律的にはこうだ、合法だ、こう言っても、そういうこととは別に、教育的見地からやはりある種の影響を相当深刻に与えているのではないかと私は思いますけれども、総理はいかがですか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 与えていないとは言えないと思います。  背、河野一郎先生にお聞きした話ですが、文部大臣というのは非常に難しい役目だ、それで、文部大臣になると、戦前のことですけれども、小学校、中学校から額を書いてくれと頼まれる。今でも我々はそういうことを頼まれます。それで、額を書いて、小学校で掲げておったところが、その文部大臣がたまたま事件にひっかかった、それで校長先生は、この額をそのまま置いていいものだろうか、あるいはどこかへ、倉庫へしまうべきものであろうかと非常に悩んだ、そういうこともあったので、おれは文部大臣には金輪際ならぬよ、そういう話を河野一郎先生から聞いたことがあります。私はそういうことが頭の中に非常に残っております。
  51. 有島重武

    有島委員 今のお話を延長いたしますと、私は総理大臣には金輪際なるまい、こういうことになりかねない。しかし、そういった消極的な意味ではなしに、では、みんなそれじゃなるまいというのだったら、よほどみんなおかしいからということになってしまいますから、今のお話はお話として私は記憶いたしますけれども、前段、深刻な影響があるとお思いになる、これだけは、これは皆お互いに考えなければいけないことだと思います。  ですから、今、国会の中でいろいろな政治倫理の方の相談はしておこう、そういうこととは別に、子供たちには影響を与えておる。あるいは僕はこう思うのですけれども、総理の靖国参拝というような場合も、公の立場と私の立場ということはあると思うのですね。それで私なら私の立場らしい行き方というのはあると思うのですね。公だか私だかよくわからぬようなことでやっておる。これは法制的に見てどうだという議論とは別に、やはり教育的な影響ということからも考えるべきじゃないかなと私は感じております。  先に行きます。  新しい機関の設置につきまして、これもいろいろあるわけでございますけれども、これはもう本当に必要なものかどうなんだろうかということなんですね。それで、これは矢野書記長からも質問がございましたし、ほかにもいろいろありました。これも教育改革に限らずいろいろな改革の原理であろうと思うのですけれども、東洋哲学での守、破、離というのですか、現在の枠を守る、一つの規範を守る、それから規範にのっとっていろいろと運用してみる、それから第三番目にそれを外れて新しいものをつくっていくというようなことがあると思うのですね。ですから、現在の枠内でもって充実したり、かげんをしたりする、そして枠の運用、そして新しい枠組みをつくる、こういった順序を踏んでいくのが一番堅実に思われる、この新しい機関をつくっていかれる上に、総理の方から見ればちゃんと順序を踏んでいらっしゃるおつもりでいらっしゃるに違いないと僕も推察はするのだけれども、我々の目から、あるいはいろいろ私たちのところに質問される――いろいろな方から質問されますが、非常に何か唐突な感じも受けておられる方が多いわけです。  それで、今までございました中教審ですけれども、中教審は私は相当高く評価をしております。おりますけれども、批判を持っております。批判は、内容的な批判もございますけれども、一つには中教審のあり方について二つほどある。  それは秘密性ですね。いろいろな、社会各界の方、その代表的な方がおいでになっている。そこでいろいろな議論が出ているのだから、その立場でなければ出てこないような、いろいろな集積された知恵がそこに火花を散らしているのだろうと思うわけです。ですから、記録を全部公開しろとは申しません。申しませんけれども、いろいろな議論の過程あるいは少数意見の明記というようなことをしていただいた方がやはりよろしいのじゃないかと思うのです。これは中教審に限っても、いつも思っていたことでございます。それによって国民の関心はやはり高まってくる。そしてある場合には、いろいろな意見もこれは投書の形か参るいはいろいろな形でもって参加ということも起こってくる。  今のような形でございますと、何か秘密のうちに一つの中間答申が出る。公聴会をやる、それでいろいろ意見を言う、これは聞きおく程度。それによって変更されるということはほとんどない。それで今度はこれが本答申。そうすると、これはもう権威ある人たちが集まった、公聴会も済ました、だからこれは文句を言わせぬ、こういうような感じになりやすい。ですから今までの、中教審を初め、文部省関係でも十八の審議会がありますけれども、やはり秘密性という、これは今後直していくべきだ。新しい機関の設置を待つまでもなく、こういったことは少し工夫をしていただきたい。  もう一つは、事務局のあり方です。事務局のあり方によっては、これは台所で料理をしてしまうようなことでございますので、これはいろいろな審議会に関係をなすった委員の方々から私は直接聞くわけですね。私も何かの委員をやったこともありますけれども、せっかくいい議論をやった、ところが次の委員会に行ってみると、もうそれは議題として削られておる、こういうことがあるわけですね。そうすると、結局はその事務局のペースでもって、初めから決まっていたことをわあわあいろいろ言うけれども、結局あれは何だったのだろうか、こういうことになりかねないわけであります。ですから、事務局のあり方についても、これはぜひともひとつ工夫をしていただきたい。  もちろん、政府関係、行政関係の方々がそれに参画しなければ、それはとてもとてもやっていかれないことはわかります。行政関係はこれは専門委員としての資格でやはり参画をなさるべきじゃないのか、こういうように思うわけであります。  これは今ここでもって議論をする時間がないですから、もう一つは、今度はこの答申を受けた政府側の問題ですね。いわゆる四六答申といいます、四十六年の答申は立派なものができたのだけれども、一つ機運が盛り上がらなかった、森さんが言っておられるように。それはそれなりにある。あれも、つくっていく段階でももう少し国民的関心を寄せる工夫はあったと僕は思います。しかし、今度はそれを受けて相当熱心にいろいろ取り組まれた。今も細々とやっていらっしゃる面もある。かなり太いパイプが引かれた面もある。しかし、これも内閣としての受け方があろうかと思うのですね。  ですから、私から申し上げるのはおかしいかもしれないけれども、これは今後内閣が総力を挙げて取り組むということは、文部省にとっては、教育という立場から各省のやっている仕事をずっとやはりいつも関心を持って、そしてそれと柔軟な連携をとれるようにするということが一つでしょう。それからもう一つは、各省が今度は教育という一つの視点を入れてその御管轄の仕事をしていただかなければならない、こういうことになるかと思うのですね。それを具体的に言いますと、定例の閣僚会議というのがあるけれども、教育のための――例は悪いかもしれないけれども、国防会議というのがございますね。あるいは経済閣僚会議というのがございますね。あるいは消費者保護基本法、これは私もタッチいたしましたけれども、この消費者保護基本法の十八条、十九条、これは消費者保護会議というのがあって、内閣総理大臣を長としての会議がございます。やはり教育閣僚会議、こういうのは当然設置なさる御用意がもうおありになるのじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今、御質問の数点、続いて御答弁申し上げます。  私は、この新機関設置に際しましては、今言ったようないろいろなことを議論なさる必要があると思うので、むしろ自民党が成案をつくる前に各党と自民党と話し合って、そして自由濶達な議論を先におやりいただいて、そして目鼻だちをつくっていく、そういう新しい方式をやったらどうでしょうかということを、ここで御質問いただいた皆様に御答弁申し上げておるわけです。民社党の方にもそう申し上げました。そういう意味で、でき得べくんばそういう、新しい例になると思いますが、この教育問題だけは中立性とそれから継続性を要します。そういう意味において、各野党の皆さんと自民党と話を願って、そしてまず自由に話し合っていただいて、目鼻だちをつくって、法律案の骨子をつくっていく、そういうことが望ましいと思っておるわけです。それを私、御提議申し上げたいと思っております。  それから、どの程度公開するかという問題ですが、これはできた新機関の皆さん方が自分たちでお決めいただくことで、我々が、つくる前から議事運営や内容について強制すべきものではないと思うのです。ただ、今までの経験から考えてみますと、一区切りが終わったときにあるいはその会議が終わった後に、事務局なりあるいは委員のスポークスマンになる方が、きょうはこういうことを話をした、こういういろいろな議論があった、そういうことをみんなを代表してジャーナリズムに報告する、そういうやり方が適当ではないか。その日その日ごとにだれがどう言った、あれがこう言ったということになると、その人にプレッシャーがかかってきます。そういう意味において、次回から自由な発言ができなくなる。そういう意味において、名前は出さないで、こういう議論があった、そういうようなやり方が適切ではないか。そして、ある一定の区切りが全部ついたらその議論の内容を皆さんにお示しする、そういうこともあり得るのではないか。これは私が外から強制すべきことでなくして、委員皆様方が自律的に運営規則としてお決めいただくことではないか、そう思います。  それから、事務局は、中教審との関係が非常に大事でございますし、四十六年、四十九年の立派な答申もありますから、当然、総理府に諮問されてできるものではありますが、この事務局は主要部分はやはり文部省の人になっていただく。そうして従来の中教審との継続性あるいは将来の仕事の展開、そういうものを考える必要があるのではないか。各省の中でも文部省が中心になって事務局を構成していただく、それが私は適当ではないかと思います。  それから、答申をどういうふうに扱うかという問題ですが、これは法律をどういうふうにつくるか。例えば原子力委員会のように答申を尊重する、内閣総理大臣は尊重すべしと書くか、あるいはこの新しい審議会はどの程度まで決定できるか、それも法律のニュアンスで――原子力委員会の場合あるいはこの間の臨時行政調査会の場合あるいは社会保障制度審議会の場合、いろいろニュアンスがあります。これは、そのニュアンスを法律の中で皆さんでお決めいただく、それが正しいのではないかと思います。  それから、急ぐ問題については中間答申を求めるという場合もありましょう。そういう場合には閣僚協をつくって、それに対応する姿勢をやっぱりつくる必要がある。そういう意味におきまして、適当なときに対応する閣僚協議会をつくる必要があるであろうと考えております。
  53. 有島重武

    有島委員 どうもありがとうございました。
  54. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 これにて有島君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  55. 木下敬之助

    木下委員 早速、御質問申し上げます。  総理は、昨年総選挙で多数の議席を失った後の十二月二十四日の総裁声明で、「政治倫理への取り組みについて国民に不満を与えた」と反省の弁を述べられておりますが、そのことは言うまでもなく田中問題の処理のあいまいさが国民の批判を招いたことへの自戒の弁であった、このように受けとめております。したがってその後の新自由クラブとの連立に当たって、政策協定をもって一審有罪議員について何らかの措置をとることの検討を約束したのもそのあらわれと思っております。  総理は、何らかの措置を制度的に確立する必要がある、このように考えて新自由クラブとの協定を結んだのか、お伺いをいたしたいと思います。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新自由クラブとの協定の中にはそれに関する内容の協定もあるわけであります。そこで、今我が党の中に政治倫理の対策の特別の調査会をつくりまして、その措置について検討していただいておる、こういうわけであります。
  57. 木下敬之助

    木下委員 総理自身も何らかの措置を制度的に確立する必要がある、何か必要だと考えたからこの協定を結んだわけでございますね。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 さようでございます。
  59. 木下敬之助

    木下委員 自治大臣、協定の当事者でもございます新自由クラブの代表者として、自治大臣の意図はどういったものであったのか、お伺いいたしたいと思います。
  60. 田川誠一

    ○田川国務大臣 今、中曽根総理大臣が申し上げたとおりでございます。
  61. 木下敬之助

    木下委員 一言でお片づけになりましたが、十八日の予算委員会でも、政治倫理を確立しなければならない、それができなければ腹を切らなければならない、こういう御発言もあったようでございますが、この一審有罪者に対する問題につきましてもその意欲で取り組まれるのか、お伺いいたしたいと思います。
  62. 田川誠一

    ○田川国務大臣 一言でとおっしゃいましたけれども、なるべく簡略に、何回も申し上げていることですから申し上げたんですが、たくさん話していいということであればゆっくりとお話を申し上げます。(木下委員「まあ時間がございますから」と呼ぶ)  政治倫理に関する自民党との協定というのは、御承知だと思いますけれども、一つではないのです。ちょっと申し上げますと、政治倫理の確立という項目がございます。それから教育改革という項目もございます。行政改革という項目もあります。(発言する者あり)平和外交の推進という項目もございます。  まじめに答弁を申し上げているつもりでございますが、その政治倫理の中に何項目かあるのです。政治倫理の中に、政治倫理協議会については、各党の賛同を得て速やかに創設するということが第一項目にあるのです。それからその次に、今おっしゃいました憲法五十八条で言うところの「院内の秩序をみたした議員を懲罰することができる。」の解釈の範囲内で国会法改正の処置を検討するということがございます。それからさらに三番目で、総理大臣及び国務大臣の資産公開を義務づけるということも書いてございます。第四番目には、政党法の制定については可及的に速やかに検討に入るということも、四番目に書かれてございます。それから五番目には、議員定数の不均衡是正に関してはさきの最高裁判決にこたえるため通常国会で検討する……(木下委員「特に一審に関係のあるところを」と呼ぶ)そういう幾つかの項目がございまして、そして一つ一つ今実行をされようとしている。議題に上っているわけでございます。そういう議題に上っているときに、これがまだ、全然話にならないということなら別ですけれども、話になって一つ一つ現実問題として出ているときに、できなかったときにどうするかということをお聞きになるのは大変酷だと思うのですよ。個人の間だって、婚約をしたときにもう破談の話を、こういう条件になったら破談するんだというような話をされたら大変酷だと思うのです。しかし、私はたびたび、そういうことができなかったならどうするかと聞かれるから、腹を切るのかということだったから、腹を切ると申し上げたので、今はそういうことを軽々に言うべき時期ではないというのが私の考え方でございます。
  63. 木下敬之助

    木下委員 御自分で腹を切らなければならないという御発言があったので、そういう意欲でこの問題も取り組んでいただきたいという気持ちから確認をいたしましたので、どうぞひとつ御決意を変えないようにやっていただきたいと思います。  総理、二月十一日の本委員会での答弁でこの問題に関して、議会内主義、これに例外をつくることであり、学者の意見も聞く必要がある、こういった議会内主義ということを言っておられるようですが、議員に対する懲罰というのは、現行憲法上も必ずしも議会内の行為だけにとどまらなくて、憲法第五十五条の資格争訟等は何でも持ち込んでやれるのじゃないか、このように思います。また、憲法第四十七条の選挙に関する失格要件、これに該当した場合も議員の資格を喪失したり、被選挙権を失ったりすることになっていますので、この議会内主義というのはこだわる必要はないのじゃないか、私はこう思います。そして、現在の国民の圧倒的世論は一審有罪者が何らかの形でその責任をとることを求めていますが、この点の法制が欠落しているために適切な措置をとることができず、そのことが国民の政治不信を招いている、このように思います。総理は、何らかの制度を確立する必要がある、この世論にこたえるためにも必要があるとお考えになりませんか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 選挙法で、選挙違反が確定した場合に資格を喪失するという条件を規定したものはございます。それは、やはり選挙民との関係で議員というものが生まれるわけでございますから、そういう意味で、選挙法の中でそれは規定されておる。それから議員の資格争訟の問題は、これは院内自律主義で、資格に疑義ある場合には院内措置でそれはみんなで決めるわけですね。それから懲罰という、これを議会から排除するとかあるいはそのほかの戒告等々を加えるという場合は、これは院内自律主義で院内の行動についてのみやっておる。そういうことで、これは主として言論の自由、議員としての行動の自由を保障するために非常に議会主義、議会ができてからの長い伝統の上に立った、議員の身分を守りあるいは人権あるいは発言の自由、行動の自由、政党活動の活発さというものを保障するためにつくられてある条文であるわけです。これは一番大事な言論の自由に関する部分です。そういう意味から、歴史的性格も踏まえて慎重にやろう。  ですから、新自由クラブとの協定の中には、憲法五十八条でしたか、懲罰規定の枠内で検討しよう。たしか懲罰規定の中にはいろいろなことが書いてあって、それから衆議院に懲罰規則があったような気がしますが、その中に品位に関する問題というのがあるいはあったのではないかと記憶しています。その品位に関係するかどうかという問題もあるわけですね。だから、そういう意味において、この新自由クラブとの協定というものも我我のサイドとしては頭の中にあった、そういうふうに申し上げるわけであります。
  65. 木下敬之助

    木下委員 懲罰の方の院内のことに限るというこちらの方じゃなくて、五十五条のどの問題でも持ち込んでやることができるのじゃないか。憲法上には問題ないんじゃないか。議会内主義と総理はおっしゃるけれども、議員がやめるのに議会外のことが理由であったというのはたくさんあるんじゃないか。当然だと私は思います。  ちょっと私の考えを申し上げてみますと、これは戦後の知事選に出るとか市長選に出るとかいう理由でやめられた方じゃなくて、特別な事情で辞職なさった国会議員の方々というのは戦後だけで十六人ぐらいございます。これは全部の理由を全部言うわけにもいきませんけれども、その幾人かの人を見ましても、例えて申しますと浜田幸一議員、現在そうですが、これはラスベガス事件が原因でおやめになっている。そしてもう少し前で田中彰治元議員も、これは詐欺、恐喝容疑で逮捕ということでおやめになっている。そのもう少し前に山本正一元議員ですか、これは選挙の事前運動で国会が追及をしたことによってみずからやめている。  こういう問題を考えてみますと、今までに国会外の理由で争訟に持ち込んだりしたような例がなかったりするのは、結局はみずからが道義的責任を感じてやめたり、国会対策上にみんなで詰め腹を切らせたり、こういうことをしているからそういう例ができなかったのであって、実際そういった人たちの気持ちというのは、やはり議会を大切にしていこう、権威を守っていこう、日本の議会制民主主義を守ろうという共通の気持ちで、みんなで総理の言われるような議会内主義のようなものがあったのだと思います。御本人にその共通の気持ちがないとして、どなたも詰め寄ったりしないとしたら、これはやはり法が要るんじゃないでしょうか。そのように思いますので、法制化してやることが仮に総理の今まで言われたような議会内主義の例外をつくったとしても、正道を踏み外してはいないと私は思いますが、田川自治大臣、どうですか。
  66. 田川誠一

    ○田川国務大臣 立法府の一員として、議員の一人として考えてみますと、本来なら一審有罪の判決を受ければ当然身を引くのが、これは常識だと思うのです。ですから、本当ならこういうような制度をつくるというのは大変恥ずかしいことだと私は思います。しかし、やはりこういう人が出てくるんですからね。出てくる以上はやはり制度をつくった方がいいのではないかというようなことで、こういうような話が出てきたわけです。しかし、先ほどからもお話しのように、やはりちょっと私どもも自信を持ってこれでいいというわけにもなかなかまいらない、法制局の意見も聞かなければならぬ、憲法上のいろいろな解釈のあれがありますからね。ですから、そういう面でちょっと今苦慮しているというのが実情でございます。
  67. 木下敬之助

    木下委員 総理、どうですか。私は議会内主義というのにこだわる必要は全くないと思うのですが、総理のお考えをお聞かせください。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その問題は、私個人の考えでは、立法はできると思います。ただ、問題は、三審制度ですから、憲法上との関係において、もし本人が、自分は無実であり無罪であると確信して二審、三審と訴訟が進められている間は、それを確定することは難しい。したがって、法律で強制することは憲法違反になりやしないかというふうに私個人は考えます。その点は法制局長官から法制的見解を述べさせます。
  69. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまいろいろお述べになりました点、拝聴いたしておりましたが、まず第一に、憲法五十五条のいわゆる議員の資格に関する争訟の裁判の規定でございますが、これはあくまでも、議員の資格は四十四条を挙げるまでもなく法律で定められておりまして、その法律に定められた要件を欠く者であるかどうかという点について争訟が起こった場合に、この規定によって裁判をするものでございます。そういう意味で、先生がおっしゃったように、議員の行動がけしからぬとかいうところでこの規定を援用して争訟に持ち込むということは、これはなかなか難しいのじゃないかなということでございます。  それから辞職のことも言われましたけれども、これはまあ御本人の、御自身の判断でおやめになったということでございますから、また別の問題ではないかと思います。  それから三審制の問題、ただいま総理がお述べになりましたが、これにつきましては、まさに総理がお述べになりましたような難しい問題があるような気がいたしておりますが、非常に事柄が重大な問題でありますだけに、この席で私から軽々に断定的な御意見を申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思います。
  70. 木下敬之助

    木下委員 長官、一つ確認しておきますけれども、五十五条の争訟の問題ですね。行動とうこうということはなくても、行動の結果、資格に欠けるような問題があれば、外でやった問題であっても持ち込めるわけでしょう。行動がどうこうじゃなくて、その中じゃない問題であっても、資格に関係があれば。どうでございますか、御答弁ください。
  71. 茂串俊

    ○茂串政府委員 一番典型的な例が、例えば公職選挙法の十一条で、刑に処せられて裁判が確定した場合、こういった場合には当然に議員としての資格を失うわけでございますから、今の資格の五十五条を援用するまでもなく、当然退職になるわけでございます。こういった場合には、まさに院外の行動を原因としてそういったような刑に処せられるというような事情が起こるわけでございますが、これについてはもう当然退職でございまして、五十五条とは関係がないということになっておると思います。
  72. 木下敬之助

    木下委員 いずれにしても議会内主義、これは完全なものでも何でもない、みんなで守ってきたものだというふうに思います。  続けて、いま総理からもいろいろな御答弁をいただきましたから、私の考えを申し上げます。  昭和二十五年の最高裁の判例でございますが、一審有罪者は以後、つまり次の二審まで有罪者と推定される、こういうふうになっておる。これまで、先ほども申されたように、総理政府、与党の皆さんが言ったように、刑が確定するまでは白紙である、このように言うのはしたがって正確ではない、こう思います。公選法第十一条では、禁錮以上の刑に処せられた者は被選挙権を失うことになっています。先ほども申されました。一審有罪者は、この刑に処せられた者に該当はしませんけれども、先ほど最高裁の例を申しましたように、一審有罪者をこの条項に付加しさえすれば、憲法の枠内で法制的な措置がとれるのではないか、こう思いますが、総理、そして自治大臣、また法制局長官、今の私の考えに対して御意見をいただきたいと思います。
  73. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その問題は私の記憶では、別の裁判において、ほかの裁判で一審有罪というものを引用して、そういうことがあるくらいであるから、だからこれこれである、そういうふうに引用したところにたしか載っていたのではないかと思うのです。これぐらいのことであるからこれこれではないかと思うという意味の推定であって、その裁判全体のいわば本線の流れの中で、その一審が有罪であった場合に終局的にまで推定されるというような趣旨のものではなかったのではないかと思いますが、記憶が定かでありませんから、法制局長官から答弁させます。
  74. 田川誠一

    ○田川国務大臣 公職選挙法十一条の問題でしたね。(木下委員「はい、そうです」と呼ぶ)私も自治大臣に任命されまして、自治省でこういうような問題で一体できるのかどうかということを検討させたのです。  やはり一番問題になりますのは、一審で有罪だ、そしてその次の上級審で無罪になった場合、一審有罪になったときに仮に立候補ができなかった、そのできなかった事態を今度は上級審で無罪になった場合どうやって救済できるか、こういう問題が起こってくるわけですよ。それが非常に問題になるわけで、ですからどうしてもこの十一条の問題で一審有罪者を立候補制限させるというのは非常に疑義が出てくる。今、ちょっと事柄は違いますけれども、よく問題になります高級公務員を一定期間立候補を禁止したらどうかという議論がありますね。その問題も同様の理由があって、やはり憲法上疑義がある、なかなか難しいということで疑問が出てきているわけでございます。ですから、これはもう法制局なりあるいは各党でじっくり御相談をしていただきたい。私どもでは、ちょっと自治省としてはこれができるということを断言できない、こういうことでございます。
  75. 茂串俊

    ○茂串政府委員 さきに昭和二十五年の五月四日の最高裁の判例におきまして、御指摘のとおりに「苟くも第一審において有罪判決の宣告があったときは、無罪の推定は覆えり、却って有罪の推定を受くべきである」というような判示がなされておることはおっしゃるとおりでございます。ただ、この判決の趣旨は、未確定の有罪判決を量刑に参酌することができるかどうかということを説明するために述べられておるわけでございまして、この判示と、第一審の有罪判決が確定するまでは被告人は有罪とは断定できない、なお罪のない状態にあるということとは矛盾するものではないというふうに考えております。  それから二番目に、公職選挙法の十一条の選挙権及び被選挙権の規定を改正して、一審有罪を受けた者をこれに加えるというような措置ができるかどうかという点でございますけれども、先ほど総理並びに自治大臣の方から御答弁がありましたように、三審制をとっている現行制度のもとで、憲法十五条一項で保障されているところの被選挙権、これは非常に重大な基本的人権でございます、これを奪うということが果たして合理的なものであるかどうかという基本的な問題がございますし、また総理もお述べになりましたように、仮に上級審で最終的に無罪の判決が出た場合に一体どういうような救済の道があるだろうかというような点とか、いろいろと難しい問題がございまして、もとよりこの席で私、断定的なことを申し上げるわけにはまいりませんし、また今後各党間でいろいろと慎重な審議が重ねられる問題であるというふうに伺っておりますので、その審議の結果をお待ちしたいと思いますけれども、いずれにしても憲法の枠内におさまる問題であるかどうかという点ではなかなか難しい問題だなというのが、私の偽らざる実感でございます。
  76. 木下敬之助

    木下委員 長官、これからいろいろ詰めていったり、また後ほど無罪になったときにどうするか、そういった問題はいろいろあるでしょうけれども、憲法でやれるかやれないか、この問題に関しては、はっきり答弁してください、長官のお考えを。憲法の枠内でやれるかどうか。
  77. 茂串俊

    ○茂串政府委員 いま申し上げましたように、仮にそのような立案と申しますか、実体を備えた規定を設けるとした場合に、どのような構成要件を設定するかとか、あるいはいま申し上げたような救済措置と申しますか、そういった点の手当てをどうするかという点につきましては、これは非常に難しい問題でございまして、一義的にこの席で私がどうこうという結論的なことを申し上げることはとてもできないという感じでございます。
  78. 木下敬之助

    木下委員 そちらの、どういうふうな制限をつけてその後どういうふうにするかという問題じゃなくて、それはこれから相談し、いろいろ考えることであって、長官にお聞きしたいのは、どんなことをしても憲法ではだめだというのか、ちゃんとしたことをやれば憲法の中でできるのか、そのことを聞いておるのです。一番大事なことを聞いておるのです。
  79. 茂串俊

    ○茂串政府委員 私ども法律を立案しまたは審査する段階におきましては、まさに今申し上げた構成要件の妥当性とか、あるいはそれについてのいろいろ関連する諸事項、こういったものを十分に念査した上でいたしませんと結論が出ないわけでございます。私どもも審査をいつもやっておるわけでございますが、一体これは憲法で許されるかどうかということにつきましても、その立案を担当される各省庁の意見を十分に伺った上で、中身を十分に吟味した上で結論を出すわけでございまして、頭からいきなりこれは憲法上およそできるかできないかということまで申し上げるわけにはまいらない、こういうことでございますので、よろしく御了承をお願いいたします。
  80. 木下敬之助

    木下委員 要件を見ないとできるということが言えないというのはわかりますけれども、できないというのは何も要件を見なくたって言えることは多いのですよね。ということは、できないといまおっしゃらないというのは、要件さえ満たされればできる、こういうことでございますね。
  81. 茂串俊

    ○茂串政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、できるできないという点がまさにいま申し上げたその構成要件その他の問題にかかわる問題でございまして、できるできないということ自体が、そういった点を十分に念査した上で初めて確信を持って結論が出てくる、こういうことでございます。
  82. 木下敬之助

    木下委員 いつまでやっても仕方ありませんから、この問題はこれまでにしますけれども、もともと先ほども申しましたように、本来ならばみんなで、そんなことにならぬでいいように、こんな恥ずかしいことしなくていいようにする、その気持ちが欠けておる方がおるからこういう問題になるのですね。どうかそういったことを、総理は議会内主義をおっしゃる限り、いままでみんなで詰め寄ってやめさせたりしながらそんなものを守ってきたのだ、この詰め寄ってやめさせるということをしないからこうなったのだということを私は声を大きくして最後に申し上げまして、またの機会にこの問題についてはやらしていただきたいと思います。  次に、外交問題についてお伺いいたします。  特に日ソ関係についてお伺いいたしますが、総理並びに安倍外務大臣は本委員会の一連の答弁で、日ソ関係の改善に努力したい、このようにしばしば申されておりますが、これにどう具体的にアプローチしていくかについては何ら示されておりません。もとよりこの問題は極めて厳しい関係で、そう簡単でないことは十分理解しておりますが、しかし総理関係改善に努力したいと言明する以上、それな力の努力の方向を示すことが必要であると思います。日ソ関係改善に対する総理の方針を改めてお伺いいたしたいと思います。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、今のような状況にかんがみまして、特にソ連においては新政権ができまして政策形成期に当たっておる、そういうときでもございますから、こちら側の真意と誠意をまず披瀝することが大事である、そう思いましてこのように申し上げておる次第なのです。
  84. 木下敬之助

    木下委員 日ソ関係を話し合う当面の機会として、来る三月十二、十三日に開催される第四回日ソ事務レベル協議があります。日ソ関係の改善という見地から、この会議に臨む政府の方針、並びにそこではどのような項目について協議が行われようとするのかを明らかにしていただきたいと思います。
  85. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日ソ高級事務レベル会議を三月十二、十三日にやるわけでありますが、これは実は日ソの関係をできれば改善する方向に持っていきたい、対話の道を進めたいということで、この時間を早めて、先般、私が訪ソいたしましたときグロムイコ外相との会談で設定いたしたわけであります。この会談での議題は、国際情勢、それから二国間関係、こういうことになっておりまして、したがって、現在の国際情勢全般につきまして、特に東西の問題であるとかあるいは米ソ間の核軍縮についての両国の意見の交換等、あるいはまた中東の情勢等、さらにアジアの情勢等、全般的な国際情勢、さらにまたもう一つは二国間の問題、当然これは領土問題があります。あるいはまたグロムイコ外相の訪日の問題もありますし、さらにまた大韓航空機撃墜事件も、我々はソ連に損害賠償を求めております。ソ連はこれを拒否しておりますが、この問題についても詰めなければならないと思いますし、あるいはまた極東におけるソ連軍の最近の大変な軍事力の増強、そういう問題等につきましても突っ込んだ話し合いをしなければならない、こういうふうに考えております。
  86. 木下敬之助

    木下委員 ソ連政府としての最大の課題は、日本との間の貿易、経済の拡大にある、このように思いますが、この点について何らかの前進を図ることを考えておられますか。
  87. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 経済の問題につきましては、昨年実は永野日商会頭が団長で、ソ連を百数十人の大ミッションで訪問をされました。非常に話し合いは進んだわけで、ことしの四月に今度はソ連のミッションを迎えて、こちらで東京でやるという約束事になっておるわけでございますが、これは今、永野会頭が病気ということでそこのところがはっきりしておらぬ状況であります。これはいわば民間の問題でございますけれども、我々としては、こうした経済関係につきましても日ソ間でいろいろと対話や話し合いが行われて、何らかの成果を将来に向けて上げる素地ができることを期待もいたしておるわけでございますが、この会合がいつ行われるかということについてはまだはっきりしたことを聞いておりません。
  88. 木下敬之助

    木下委員 そういったいろいろな問題の中で、各論として日本側が特に前進を図りたいと考えている具体的な問題がありますか。経済問題だけでなくても、日ソとの関係で。
  89. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、やはりこの前行ったときもグロムイコ外相に、あなたが日本においでになる番だということを強く要請したわけです。まだその機が熟してないということでございますが、やはりこうした日ソの定期外相会談というものをやる必要があるのじゃないかということを強く感じております。特にその際、私は言ったわけですが、日ソ間では二国間でもいろいろと問題があることは事実でありますけれども、しかし国際情勢についても、ソ連はもちろん超大国でありますし、日本も今日、国際的には非常に大きな発言力を持つに至っておるので、この二国間がお互いに国際情勢についての意見を交換するということも、二国間だけじゃなくて世界の平和と安定にとっても非常にプラスになるのじゃないかということを私は主張いたしました。これに対してはグロムイコ外相も、むしろ積極的とも言える雰囲気でこれに応じたわけでございますが、私はそういうところから見ますと、やはりこうした日ソの外相会談を定期的にきちっとやって、そしてそれでもって二国間だけでなくて国際情勢全般を話し合うということが、日ソ両国の基本的な対話を進める上において非常に大事である。ですから、この事務レベルの会談でもそのことは篤とソ連に対して日本の立場を主張したいと思います。  さらにまた、文化の交流、経済の問題は先ほどお話しいたしましたように民間を中心として今おぜん立てが進んでおるわけですが、文化につきましても、実は映画祭等をお互いにやろうじゃないかということで、これは話が進んでおりますが、まだ決着はついておりません。こうしたことを進めることによって文化交流といった面からもやはり前進があるのではないだろうか、こういうふうに思って、そうした文化の面の具体的な映画祭等を行うという点についての詰めを行いたい、こういうふうに考えております。
  90. 木下敬之助

    木下委員 今の話の中に出てきましたが、グロムイコ外務大臣とさきのアンドロポフ葬儀に出席された際にお話ししたそのときのことでございましょうが、グロムイコ外相が政治面で、二国間関係だけでなく国際政治についても互いの関係を進めていきたい、こう述べたように伝えられております。この発言は、ソ連が国際問題についての日本の役割を重視し始めてきていることを示すものとして非常に重要だ、こう考えますが、この点について外務大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  91. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 その発言は、実は私の方から言ったわけでありますが、これに対してグロムイコ外相が非常に、積極的な姿勢で応じたということは、やはりソ連も最近の日本の国際社会における発言力の強化、発言力が非常に強くなったということを十分認識して、そしてソ連としてもこれは日本との間で二国間問題じゃなくて国際情勢についても意見の交換を行うことが必要であるという気持ちに非常に傾きつつあるということを私は強く感じました。そういう点からも、やはり先ほど申し上げましたような高い政治のレベルでの話し合いは必要であるということを痛感いたします。
  92. 木下敬之助

    木下委員 その国際問題で話し合う中身についてちょっとお伺いいたしたいのですが、朝鮮半島問題はアジアの平和問題として極めて重要な問題であり、中曽根総理は訪中に際して中国とじっくり話し合いたい、このように言われました。この日ソ事務レベル協議でもこの朝鮮半島問題を話し合うことになると思いますが、日本としてはどのような立場に立って話し合うのかをお伺いいたします。
  93. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろんこの日ソ高級事務レベルの会談では、時間をかけてやりますから、その中で朝鮮半島の情勢等についての意見の交換が行われるというふうに考えております。その中で、日本の朝鮮半島の緊張緩和に対する考え方も述べなければなりません。また同時に、ソ連が朝鮮半島に対してどういう姿勢と考え方を持っておるかもじっくりと聞かなければならぬわけでございますが、我が国は御承知のように朝鮮半島の緊張緩和に当たってはやはり南北両当事者がまず緊張緩和に向けて話し合うことがいろいろの問題の大前提であるということを基本的に主張いたしておるわけでございます。そういう中で三者会談とか四者会談とかいう声も出ているわけでございますが、それはそれなりに朝鮮半島の情勢緩和には一つの刺激を与えておるというふうに判断はしておりますけれども、先ほど申し上げましたような日本の基本方針というのはそういうことでソ連側にも十分説明をしていきたい、そして日本は日本なりに緊張緩和のための環境づくりに努力をする、今後とも努力を続けていくということを述べる考えでございます。
  94. 木下敬之助

    木下委員 具体的には、日本は北朝鮮が提案しております韓国、北朝鮮、米国の三者の話し合いに賛成ということですか。また、レーガン大統領が逆提案した中国を交えた四者会談の方についてどう考えているか。それとも、ソ連、日本も終局的には参加した方がよいと考えているのか、この点もお聞かせ願いたいと思います。
  95. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本の考えは、やはり南北両当事者がまず話し合うというのがすべての基本であるということでございます。そして、そういう中で緊張緩和のために先ほど申し上げましたいろいろの動きが出ておることは歓迎をいたすわけです。しかし、その三者会談というものが北朝鮮から提案をされておるわけですが、この提案自体が実はラングーン事件の前後に出されたこともあって、果たして北朝鮮の真意が那辺にありやということについては我々としてもう少し見守ってまいらないとこの判断がつかない。あるいはそれに対してまたアメリカも四者会談を主張もいたしておるわけでございますが、これも果たして可能かどうかということも今後の情勢を見守らないと判断がつかないわけでございます。  いずれにいたしましても、我々は基本的に両当事者間の話し合いということの中で緊張緩和が進むことを期待しておるわけですから、そのためのいろいろの動きが出てくることは、少なくとも緊張が激化するのじゃなくて緊張緩和の方向へ動く可能性としては十分あるわけですから、それは我我としては歓迎しながら、その状況をこれから見きわめて、日本は日本なりの役割を果たしていくときが来れば果たしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  96. 木下敬之助

    木下委員 そのことは、日ソ事務レベル協議に、今のような考えで、はっきりしたものは持たずに臨む、こういうことでございますか。
  97. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 はっきりしたものといえば、日本は、両当事国がとにかく話し合いをするということがまず朝鮮半島の緊張緩和には最大の大前提だということで我々は臨んでいくわけで、そういう中でソ連がどういう考えを持っておるのか、それはそれなりに日本としても聞いておかなければならぬ問題であろうと思います。
  98. 木下敬之助

    木下委員 日本としては当然中ソ関係についても聞くことになろうかと思いますが、さきに来日したコワレンコ氏は、テレビインタビューで中ソの不可侵協定復活の可能性をほのめかしておりましたが、そのような事態が起こり得る可能性があると考えますか、お伺い申し上げます。
  99. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今の中ソの関係はだんだんと改善はされておりますし、次官級の会談から今度は副総理級の会談まで行われるというようなことで、また改善が進む状況にあることは事実でありますけれども、しかし、今日の中ソの置かれておる立場、そしてまた国家としての基本的な姿勢から見まして、この両国間にはなかなか越えることのできない大きな溝がある。それは御承知のようにカンボジアの問題もその一つでありますし、あるいはまた、中国はソ連のアフガニスタンに対する侵入を強く非難をしております。一日も早く撤兵を主張しております。あるいはまた、中ソの国境にソ連が非常に大軍を集中しておることに対して中国が強く反発をいたしております。そうした基本的な国家と国家との間の大きな溝が今の両国の話し合いでは越えることができない状況にあるわけで、私は、これは容易じゃないと思っております。したがって、私は、中ソの関係がかつての五〇年代の中ソ同盟条約、そういうところまで復元をしていくということは、今の国際情勢、中ソ間の状況から見て、これはもうあり得ない、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  100. 木下敬之助

    木下委員 ここ数年のSS20の配置を初めとする極東ソ連軍の増強はまことに著しいものがあります。この問題についてはどのように要求するつもりでしょうか。  最近、極めて異例のこととして在日ソ連大使館のミリタリーアタッシェ、ダニーロフ陸空軍武官、ウーソフ海軍武官の両氏が、米太平洋艦隊へのトマホークの配置や三沢基地へのF16の配置に対して、ソ連はこれに対抗する措置をとることを言明しております。このような発言に対して日本側はどのような反論をする用意があるのか、お伺いをいたします。
  101. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、今回訪ソした際にグロムイコ外相に対しましても、あるいはこれまで何回かパブロフ駐日ソ連大使に対しましても、なぜソ連が極東に軍事力を増強するのか。例えばSS20も百八といっているのが百三十五、こういうふうに言われておる。同時にまた、これが百四十四にも拡大をされるという状況にあるし、またノボロシスクという航空母艦が今ウラジオストクに向かっておると言われておりますが、これがミンスクとさらに一緒に合わさったいわゆる極東艦隊を構成するかどうか、この辺ははっきりいたさないわけでございますが、そのようなソ連のSS20だけではなくて陸海空における増強、北方四島に対する軍事基地の強化等も挙げられますが、なぜそういうことをやらなければならないか。日本は決してソ連にとって怖い存在、あるいはまた日本がソ連に対して何ら侵略を懸念されるような国家ではあり得ないじゃないかということを私は何回か主張をいたしました。そして、ソ連の自制を強く求めたわけでございますが、しかしソ連としてはこれが国としての基本方針である、現在の世界情勢、極東情勢を見ると、ソ連としてもこれに対抗して措置をとらざるを得ないということでございます。  確かにソ連の日本における駐在武官がいろいろなことを言っておるようであります。私はその真相のほどはまだわかりませんけれども、しかし恐らく、私がパブロフ大使と会った話から見ましても、武官がそういう話をすることはあり得るというふうに思っておるわけでございますが、私どもはこのソ連の軍事力の強化ということについては、あくまでもアジアの安定、平和、世界の平和のためにもこれを自制をすることを今後とも強く求め、特にSS20については極東における全面撤廃ということをこれからも主張してまいる考えでございます。
  102. 木下敬之助

    木下委員 ソ連の新空母ノボロシスクが北上していると伝えられていますが、同空母はソ連太平洋艦隊に配備されたと見ておりますか、お伺いいたします。
  103. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  既にウラジオにはミンスクが入っておるわけでございまして、けさ方日本海に入ったと確認しておりますけれども、このノボロシスクが、二つ合わさった形と今外務大臣の御答弁にもございましたとおり、二艦体制をとるかどうかということは私どもまだはっきりいたしておりません。これは可能性といたしましては二つになる可能性もございますし、前のが帰る可能性もございますし、あるいは今度のがまた戻っていくという可能性もございますわけで、極東のソ連軍の情勢についてはこれからも慎重に見守っていきたいというふうに考えております。
  104. 木下敬之助

    木下委員 北上して日本海に入ってきたことは、F16三沢配置に対抗する措置として行われたことだ、こう思われますか。
  105. 古川清

    ○古川政府委員 問題の一番最初には実は三沢があるわけではございませんで、ただいまの外務大臣の御答弁にもございましたとおり、一貫した極東におきますところのソ連軍の軍事力の強化というのがあるわけでございます。SS20の配備増強というのも一つでございますし、あるいはバックファイアの配備増強、これも一つでございます。あるいはまた、北方四島におけるミグ21を撤回いたしましてミグ23を配備しておる、こういった状況がすべてその先にあるわけでございまして、アメリカといたしましては、こういった状況にかんがみましてアメリカの抑止力の向上、アメリカのコミットメントの強化、そういうことを通じますところの日米の抑止力の信頼関係の強化ということをねらっておるわけでございまして、三沢におきますところのF16の配備というものもこの一環として行われておる。しかもまだ配備が行われていないわけでございまして、三沢におきますところのF16は今後の問題でございます。そういった点からいたしましても、これの対抗措置というふうには私どもは考えておりません。
  106. 木下敬之助

    木下委員 しかし、ちょうど先ほど申しましたように、ミリタリーアタッシェが、米太平洋艦隊へのトマホーク配置や、三沢基地へのF16の配置に対してソ連は対抗する措置をとる、こう言って一連のことが行われておるのではないか、このように思われる時期ですから、ただ一連の双方の軍備計画だとは言えない、こういうふうに思います。極東ソ連軍の増強、これに対する米国のトマホーク配備など、極東情勢はこういった情勢で軍事的にますますエスカレーションを引き起こしていく情勢にある、こう思います。さらに、そのことが日本の防衛力強化に拍車をかけることになる。こうした軍事的エスカレーションを食いとめるために日本はどのような努力をしようとしているか、お伺いいたしたいと思います。
  107. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まず、やはり世界の今日の非常に厳しい情勢が緩和をしていく、それにはやはり東西の対立というものがデタントの方向へ移っていく、あるいは米ソの今日の核軍縮の中断といったような事態が改善をされて、米ソの核軍縮に対する交渉が再開されるということが、世界的に全体的に見ると最も世界を落ちつかせる、あるいは極東を落ちつかせる上においても大事なことであろうと思うわけでありまして、したがって、日本としましても、そういう中で米ソ両国の対話、そしてまた核軍縮の交渉の再開、そういうものに対して米ソ両国に対しましても働きかけをいたしておるわけでございます。そういう中にあって、また極東におけるところのSS20の配備につきましては、INF交渉が再開されるとするならば、あくまでも世界全体のグローバルな形の中でこういう問題は解決されるべきであるということについて日本が強く主張をし、それがやはり西側の一つのコンセンサスとなっておるわけでございますが、日本としましてはそういう世界の全体の緊張の緩和、軍縮が前進するという方向へこれからまず進めていかなきゃならぬと思います。  同時にまた、日ソ間におきましては、先ほど申し上げました高級事務レベル会談等も通じまして、あるいはまたその他の政治レベルを通じまして、ソ連に対しまして極東における軍事力の増強というものについてあくまでも反省を求めていく。これは、こういう状況が続くということは非常に憂慮すべきことでありますから、私たちはソ連に対して強く反省、自制というものを求めていく、この努力はこれからも本当に腰を据えてやっていかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。同時にまた、日米安保体制をやはり毅然として守っていく、そしてアジアにおいて抑止力というものをきちっとしていくということが、これがまた世界の平和、アジアの平和、さらにまた将来に向かっての、新しい平和の構築へ向かって大きな意義があるのではないか、こういうふうに考えるわけです。
  108. 木下敬之助

    木下委員 防衛庁長官、日本の防衛力強化に拍車をかけることになるかという点でお答えください。
  109. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今外務大臣からいろいろお話のあったように、こういうように緊張がエスカレートするようなことはよくない。そのために、外交ルートを通じまして緊張を緩和する方向に努力をしてもらう。しかし、それと同時に、我々の立場からいたしますと、これも外務大臣からお話がございましたが、日米安保ということですね。自衛力の整備につきまして、憲法の枠の中でできるだけ早く「防衛計画の大綱」を実現する、そういう努力をしていかなきゃならぬ、こう考えております。
  110. 木下敬之助

    木下委員 防衛庁長官、今言われた中から、これから五九中業の策定を行うと思うのですけれども、この策定の長官指示はいつ出される御予定ですか。
  111. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 五六中業の場合は五十六年の四月でございましたが、五九中業につきましては今のところいつ出すというふうに決めておりません。
  112. 木下敬之助

    木下委員 それは、五六中業のときで申し上げますと、四月に出されて五十七年の七月二十一日に上がったわけですね、年度内に上がらずに。いまだにまだいつ出すか決めてないということは、また五九中業も年度内に上がらないということがあるということですか。
  113. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 そういうことまでまだいってないのです。しかし、もちろん五九中業をいつまでも延ばしておくというつもりはございません。それはできるだけ早く作業いたしたいということでございますが、いつと言われましたから、いつというのは今考えてない、こういうことです。
  114. 木下敬之助

    木下委員 では、いつが決まってないのなら、大体いつごろまでにするというめどをお聞かせください。
  115. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今までの例がございますから、余り並み外れたようなことはないと思います。
  116. 木下敬之助

    木下委員 その五九中業を指示して策定する、その策定に当たっての五九中業の基本的目標、五九中業では現在の五六中業に何を新たに加えるのか、新たに加えられるもの、こういったものについてお伺いいたしたいと思います。
  117. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今お話ししたとおり、まだいつ出すか、どういうふうにするかということを決めておりませんので、これは正直言って細かいことを言えないわけでございますが、ただ御案内のとおり、今、国際情勢非常に厳しゅうございます。そういう中で我が国の防衛力の整備をしなければならぬという観点からいたしますと、やはり各国の技術水準、そういうものが一体どういうようになっているか、その技術水準というようなことを頭の中に置きましてひとつやっていかなければならぬな、それから、正面と後方とのバランスをとらねばならぬな、あるいは計上すべき事業の中でそれを選択する場合に、必要性あるいは優先度、そういったものを考慮しながら実質的に防衛力が整備できる、そういう方向を打ち出さねばならぬな、今そんなふうに私自身は考えております。
  118. 木下敬之助

    木下委員 五九中業も五六中業と同じように、防衛大綱の水準を達成することを基本目標とする、こういうふうに考えればよろしいですか。
  119. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 「防衛計画の大綱」をできるだけ早く達成する、それが基本でございます。
  120. 木下敬之助

    木下委員 五六中業に続く五九中業も、今言われたように防衛大綱の水準をできるだけ早く達成することを基本とする、こう言われることは、五六中業での大綱水準の達成、五六中業の完全達成をあきらめた、こういうことでございますか。
  121. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 そういうわけではございません。要するにいつも私どもがまくら言葉といたしまして「防衛計画の大綱」をできるだけ早く、これが我々の基本的な姿勢でございますから、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  122. 木下敬之助

    木下委員 この五六中業の達成はできる、こう考えておられるわけですか。
  123. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 達成しなければならぬ、最大の努力をする、そういうことでございます。
  124. 木下敬之助

    木下委員 確認させていただきますけれども、五九中業では現在の防衛大綱は見直さない、こういうことでございますか。
  125. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 さようでございます。
  126. 木下敬之助

    木下委員 恐れ入ります、重ねて確認いたしますが、五九中業の完成時である昭和六十五年、一九九〇年まで現在の防衛大綱は見直さない、こういうことでございますか。
  127. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 一九八五年までという期限を「防衛計画の大綱」に付してある、そういう御趣旨でございますか。
  128. 木下敬之助

    木下委員 いや、八五年じゃないです。五九中業の完成時の昭和六十五年までは見直さない、五九中業は大綱を見直さないということは、五九の完成時まで見直さないということか、こういうふうにお伺いしている。
  129. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今のところ「防衛計画の大綱」を見直す、そういうつもりはございません。もうこれで尽きていると思います。
  130. 木下敬之助

    木下委員 尽きておりますけれども、今のところというのに尽きておるわけですか、見直さないという方に尽きておるのですか。
  131. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私の方は、見直す方に重点があるのじゃなくて、五六中業なりそういうものを達成する方にウエートを置いておりますので、どうぞ御了解をいただきたいと思います。
  132. 木下敬之助

    木下委員 五九中業は、見直さないと確認させていただきます。  総理にお伺いいたします。政府考えはそういうことですが、一方アメリカは、二月一日に発表した国防報告において、日本が八〇年代にシーレーン防衛能力をつけるよう要請していく、こういうふうに言っております。また、昨年六月二十八日に発表した「共同防衛に関する同盟国の貢献」では、防衛大綱を時代おくれのもの、こうしております。こうしたアメリカの要求に今の政府の方針は全くこたえられないのじゃないですか。
  133. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛庁長官が答えましたように、今のところ大綱の水準に到達するだけでもなかなか苦労している最中でありまして、ともかく大綱の水準に到達するということを一生懸命心がけてまいりたいと思っております。
  134. 木下敬之助

    木下委員 アメリカが防衛大綱を時代おくれのもの、こうしている。その時代おくれのものを五六で達成させる、できなければ五九まで含めて達成させる、そういう状況であって、これはアメリカの要求にこたえていないのではないか、こうお聞きいたしておるのです。
  135. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま総理からもお答えがございましたように、アメリカとしては日本の防衛につきまして、有事の際に日本を守る義務があるわけでございますから、いろいろな期待なり希望なりというものを持っているだろうと思います。そういったような気持ちがいろいろな表現で出てくることがあるわけでございますが、日本の防衛政策はあくまでも日本が自主的に決めていくということでございまして、我が国におきましては、「防衛計画の大綱」の水準をできるだけ早く達成すべくできる限りの努力を今後とも払っていくということが基本でございます。
  136. 木下敬之助

    木下委員 現在の政府の方針で、アメリカの期待しているようなシーレーン防衛能力をつけることが可能であると考えておるわけでございますか。
  137. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの問題も基本的には先ほど申し上げたことでございますけれども、私どもは、現状を見ますと、まだ「防衛計画の大綱」で考えております水準に達していないというのが現状でございます。したがいまして、この現状から「防衛計画の大綱」で考えております防衛力の水準をできるだけ早く達成するということを今努力しているわけでございまして、そうすることによりまして「防衛計画の大綱」で定めました水準が実現いたしますれば相当の能力の向上が図られるということになるわけでございまして、そのことによって日本の海上交通の安全の保護というものがより一層力が増すというふうに考えて努力をしておるところでございます。
  138. 木下敬之助

    木下委員 力が増すというのではなくて、シーレーン防衛ができる能力が大綱の達成でできると思っておるのか、このようにお伺いしておるわけでございます。
  139. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 その点はしばしば御説明も申し上げておるわけでございますが、海上交通安全の保護を図っていくというためにはいろいろな作戦を組み合わせて実施していくわけでございまして、例えば哨戒でございますとかあるいは船団の護衛、あるいは港湾の防備、海峡の防備といったような諸作戦を総合的に組み合わせてやって、その累積効果によって海上交通の安全の確保を図っていくということでございます。  したがいまして、これは非常に複雑な作戦でございますから、態様は一概には言えないわけでございまして、したがって、これは一〇〇%できるとかできないとかいうふうなものではございませんで、私どもが相当の防衛力を持つことによりまして海上交通の安全に対する脅威を事前に抑止することができるし、また万一有事の場合にはそれに相当の対抗をすることができる、これがシーレーン防衛の基本的な考え方でございまして、一概に一〇〇%できるとかできないとかいうことではございません。やはり現在の持てる力をできる限り増強いたしまして、「防衛計画の大綱」の水準にできる限り早く到達をしていくということが基本であろうと思います。そのことによって、ただいま申し上げましたような海上交通の安全を確保する力が相当に増加するというふうに認識をしているわけでございます。
  140. 木下敬之助

    木下委員 そのシーレーン防衛計画というのは、防衛大綱や五六中業のどこに盛り込まれているのか、答えてください。
  141. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 「防衛計画の大綱」の中には、ただいま先生のおっしゃいました言葉としてのシーレーン防衛という言葉ではございませんが、海上交通の安全を確保していくというための考え方が随所に書かれておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、「防衛計画の大綱」の中で海上自衛隊の体制という項目がございますが、その中に「海上における侵略等の事態に対応し得るよう」にしていくということとか、あるいは「沿岸海域の警戒及び防備」、あるいは「周辺海域の監視哨戒及び海上護衛等」といったような表現をここに織り込んでおるわけでございまして、こういった各種の機能が総合的に組み合わさりまして、先ほど申し上げましたようなシーレーン防衛ということが可能になってくるということでございます。  それから、五六中業におきましても同様のことを書いておりまして、「周辺海域の防衛能力及び海上交通保護能力を充実近代化」していくというふうに書いておるわけでございまして、私どものシーレーン防衛能力の整備というものは、こういった大綱あるいは五六中業の考え方に基づいて現在実施されているものでございます。
  142. 木下敬之助

    木下委員 どういう手段で、どういう方法でやるのかという具体性というものがそろそろ必要であろう、このように思いますが、具体的にどういうことをやるのがシーレーン防衛なのか、お聞かせいただけませんか。
  143. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 具体的にどういった体制でやっていくかということにつきましては、「防衛計画の大綱」の中にそういった考え方が示されておるわけでございまして、まず基幹部隊と申しますと、機動運用をいたします対潜水上艦艇部隊が四個護衛隊群、それから五カ所の地方隊に配備いたします対潜水上艦艇部隊が十個隊、あるいは潜水艦部隊が六個隊、それから陸上対潜機部隊が十六個隊というような主要な部隊を基幹とするわけでございまして、それを編成すべき主要な装備といたしましては、対潜水上艦艇は約六十隻、潜水艦は十六隻、作戦用航空機としては約二百二十機、そういったような規模でやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
  144. 木下敬之助

    木下委員 今言われたようなものでシーレーン防衛ができる、こう思われておるわけですか。
  145. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども申し上げましたように、このシーレーン防衛のやり方といいますのはいろいろな作戦を組み合わせてやっていくという非常に複雑なやり方になってまいるわけでございまして、これは一〇〇%できるとかできないとかいうふうな話ではございませんで、どの程度の効果を上げていくかといういろいろな作戦の態様に応じての問題でございますので、私どもは、こういった「防衛計画の大綱」に定めます水準が達成できれば、我が国といたしまして海上交通の安全を確保するための能力が相当に向上していくというふうに考えておるわけでございます。
  146. 木下敬之助

    木下委員 一〇〇%できるできないという論議もあるでしょうが、現在の政府の方針では、日本がアメリカが期待しているようなシーレーン防衛能力をつけるということは不可能だ、このように思いますが、どうですか。
  147. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私ども、アメリカとの間でも安保の五条ですかで有事の場合の共同対処行動というものがございまして、その一環といたしまして、「日米防衛協力のための指針」ということを中心といたしましてアメリカとの間で共同研究をやっております。そういう問題もございますので、我が国の自衛隊みずからやるシーレーン防衛と、アメリカと一緒にやる共同対処というものもございます。そういう意味合いで、アメリカにおきましても、この共同研究をやるに際しまして、我が国のシーレーンに対する考え方、そういうものにつきましてはよく理解をいたしまして、我が国のやり得る限界というものについて理解をいただいておるものと承知をしております。  したがいまして、アメリカの要求に対して日本がこたえられないのじゃないかという御指摘でございますが、アメリカは日本に対しまして非常に熱い、強い要望を持っていることは事実でございますが、同時に、我が国の防衛は我が国の責任においてやらねばならぬということでございますので、アメリカのそういう期待といいますか熱い思いというものを頭の中に置きながら、できるだけ早く「防衛計画の大綱」の水準を達成しよう、そういうことでやっておるわけでございまして、御理解を賜りたいと思います。
  148. 木下敬之助

    木下委員 日本の防衛は、アメリカの要求もあるけれども日本独自でやる、こういうお考えを今お聞きしたのですが、総理が昨年二月八日の予算委員会において我が党の大内政審会長の質問に対して、日米の防衛戦略は同心円上にある、こういった旨の答弁をされたことは、これはどういう関係にあるのか。総理はこれを否定するのか。同心円とはどういう意味で使われたのか。これは中心が重なっておるという意味じゃないかと思うのですが、お伺いいたしたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の防衛は、もとより防衛庁長官が申されましたように、日本の自主的判断によって最終的に決定さるべきものであります。同心円という意味は、日本が盾でアメリカがやりの関係である、前から申し上げましたそういうことを意識して申し上げたのであります。
  150. 木下敬之助

    木下委員 盾とやりの関係がどういうふうに同心円であるか。同心円であるといえば中心が一緒で、一緒に輪をかいておるわけですから、盾とやりというのはもう全然ばらばらの感じがいたしますが、総理、そういうふうに例えで言われるのが、前に不沈空母の発言とかたくさんのことで物議を醸しましたが、例えで言われることによってかえって大きな誤解をアメリカにも与えておるのではないか、このように思います。
  151. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはもう前から私が使っておる慣用語でありまして、つまり日本の防衛を中心に考えている。アメリカとかグアム島を中心に考えておるんじゃない。中心は日本列島である。これが円のしんである。そして日本は日本の列島防衛を中心に物を考えて、小規模の限定的侵略に対してこれを排除し得る必要最小限の力を整備する。しかし、攻撃的な部分は日本が侵略された場合にアメリカに依存せざるを得ない。したがって、そういう場合にはアメリカの空母が来援に来ることもありましょう。そういうような意味で、攻撃的なやりという長い距離のものはアメリカがやり、短い距離の日本列島防衛という部分は日本がやる、そういう意味でやりと盾と申し上げております。
  152. 木下敬之助

    木下委員 アメリカの不信を招くことのないようにやっていただきたいと思います。  この話はやっていても時間がかかるばかりで、私の質問ももう随分できなくなってしまいました。どうしてもやらなければならない問題が残りましたので、次に進めさせていただきます。  農業問題についてお伺いいたします。  これもちょっとはしょって申し上げますけれども、要するに現在日米農産物交渉が進められておりまして、相当に煮詰まってきている段階だと思いますが、本来この貿易摩擦というのは、対米貿易収支、これは昨年は二百十六億ドルと史上最高を記録しておる、こういう状況であるのに、農産物の日米の関係というのは、我が国の方が六十四億ドル、我が国の全農産物の百六十二億の輸入額の四〇%をアメリカから買っておる、アメリカの側から見ても一五%を日本に輸出しておる、そういう状態ですね。それに対して、牛肉、オレンジを仮に全部自由化しても五億ドル程度、こういう状態で、いわば焼け石に水のような状態なのに象徴のように言われておるのはまことに私たちは納得いかないのですが、アメリカというのは日本の農業の現状を十分承知の上で対日圧力をかけてきているのか、なぜ牛肉、オレンジが摩擦の象徴とされるのか、真意をはかりかねております。まず総理、この問題について一言お答えをいただきたい。
  153. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり民主主義国家におきましては政争の道具にややもすればなりやすい、目につくものが一番早い。そういう意味で、アメリカが国内において民主党、共和党、大統領選挙等も控えまして白熱してくると、一番目につきやすい牛肉とかオレンジというものがアイテムにとらえられて、それがプレイアップされていく、そういう傾向があるのではないかと思います。
  154. 木下敬之助

    木下委員 もう三月三十一日をもって現在の輸入枠を定めた現行協定が期限切れとなるわけですから、この農産物交渉は相当具体的に進んでおると思います。どこまで進んでおって、一体どういう話がなされ、今後どういうタイムスケジュールで交渉が行われ、交渉決着の時期はいつごろか、どんな形で決着すると考えるのか、お答えをいただきたい。
  155. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  一番最近行われましたのは一月の二十日、二十一日の協議でございますが、この段階におきましては、枠の問題との関係いかんによってはIQ撤廃問題に対してアメリカ側の弾力性を引き出すことができないわけではないというところまできておるというふうに申し上げるのが適当かと存じます。  それから今月に入りまして、輸入数量以外のアメリカ側からの苦情、すなわち輸入果汁を国産果汁にまぜさせておるとか、その種の問題について協議が行われましたが、これはアメリカ側も大変有益な協議であったというふうに認めておりまして、日米間の対立点はマネジャブルであるというふうに言ってよろしいかと存じます。  今後の日程でございますが、私どもとしては、先生指摘のとおり三月末までの数量しか決めておりませんので、期限切れにならないように、間に合うように決着をつけたいというつもりで臨んでおります。
  156. 木下敬之助

    木下委員 三月二十一日で現行協定が期限切れとなったときに、その三十一日までに日米の合意ができないときは、次の合意ができるまでの間、これら牛肉やオレンジ、この輸入枠はどうなっていると、その間どういう解釈であると、政府考えておるか、また、アメリカはどう考えておるか、これは食い違いはないのか、お伺いいたしたい。
  157. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 仮にでございますが、三月末までに協定をまとめることができずに新年度を迎えますれば、新年度におきましては、日本側といたしましては、現行の輸入制度を変更する理由はございませんから、現行の輸入制度のまま需給事情等を勘案して適切に輸入数量を決めていくということになります。  それから、アメリカ側から見ますと、アメリカ側は現在の輸入数量制限はガット上非合法であるというふうに考えておりますから、協定期限切れと同時に、アメリカ側はガット上の権利を行使して、アメリカ側の権利の侵害について救済を求め得る立場に立つというふうに認識をしておるはずでございます。
  158. 木下敬之助

    木下委員 この問題は、やはりその辺の日米の食い違いというのが非常に重要な点だと思います。ここの食い違いがいつまでもある限り、将来にわたってこれは大問題でありますし、農家が安心して、将来展望を持ってかんきつ類やら牛肉やらその他の作物をつくることができないという状態だと思いますので、どうぞ御検討をお願いいたしたいと思います。  ちょっと時間がありませんから。この農産物交渉に当たって総理大臣は何度も、できることとできないことを明らかにする、こういう明快な態度で臨むことを言われておると思いますが、このできる、できないの判断というのはいろいろな判断の仕方があると思います。  総理考えもお聞きしたいのですけれども、私はまず、アメリカの圧力は強い、要求が強いからという基準で見たとしても、これはアメリカの農民の声をすべて代表しているわけじゃなくて、農民団体の中で全米農民連盟のカーペンター議長ですか、この方等も、これはアメリカの希望じゃないというふうなことを言っておりますし、また、日本の消費者に少しでも安いものを食べさせたい、こういう視点から眺めたとしても、これは総理府の調査ですね、この中で、高くても食糧は国内でつくる方がよい、こうする方が四五%もある。やはり日本の自給率が下がっていることを心配している、こういう状況でありますので、残る一つ判断、食糧の安全保障ラインを確保するため日本の農業の最低ラインを確保するという、この観点だけで交渉に当たればいいのじゃないか。そういう時期ではないか。まして牛肉にしてもオレンジにしても、オレンジというのはミカン類ですが、日本の状況は枠を拡大できるような状況じゃない、そういう状況ですから、これは一歩も譲れないと思うのですが、総理のお考えと農林大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 食糧の問題は、日本の安全保障にもかかわる重要な問題でもあり、また、日本の大事な社会的基盤である農村を守る、農家を守るという大事なことにもかかわっており、そういうような面から、我々は今まで皆さんと一緒に苦労しておるところであります。そういう基本的な立場に立ちつつ、同時に、やはり国際関係を調整していくということもまた日本が将来生きていくために大事な観点でありまして、国際摩擦を起こさないようにしていくというのは、また外交的な我々の責務でもございます。その両方をいかに調和させるかという点で今まで非常に苦労してきておるのでございまして、そういう観点に立ちまして合理的な調和点を求めていく。ただし、やはり基本的には日本の農家の生活を守る、それが我々の基本立場にあることはもとよりであります。
  160. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 ただいま総理から基本的な考えをお述べいただきましたが、私といたしましては、特に一昨年、五十七年の四月でございますが、衆議院の農林水産委員会の決議、これをいただきました。米国等からの牛肉、かんきつ類の完全自由化等の要請を「軽々に受け入れることは、我が国農業・漁業に壊滅的な打撃を与えること必至である。」との認識が出され、そしてまた、「自由化及び輸入枠の拡大等については、農業者・漁業者が犠牲となることのないよう対処すべきである。」とされました。私も、この趣旨に沿って農産物交渉に対処してまいりたいと思っております。
  161. 木下敬之助

    木下委員 山村農水大臣、どうぞひとつよろしくお願いいたします。  次に、「むつ」の問題についてお伺いいたします。  これもちょっと一緒にしてお話し申し上げますが、この間関根浜新港が着工されたのに、いまだに実態としては政治漂流を続けている、これは大変な問題でございます。総理は、この「むつ」の廃船問題に関して、将来とも舶用炉開発は進める、その手段として「むつ」による実験を継続するかどうかについては政府、与党間で引き続き検討する、このようにおっしゃっておりますが、私は、この舶用炉開発を進めるということ、どのくらい舶用炉を開発することが絶対に仕上げなければならない重大な課題であるかということを申し上げたいと思います。  総理はよく二十一世紀を展望してと言われます。二十一世紀を展望したときに、多分原子力船というのが実用船としてごく普通に走っているのではないか、こういうように思います。それが可能なだけの技術というのは、諸外国で持っているところがある。しかも、石油の事情を見ても、二十一世紀の余り遠くならないうちになるだろうと予測されると思われます。  そこで、今もう日本の技術はおくれているわけですが、もしこれができないままそういう時代を迎えますと、日本では原子力船がつくれないということになります。技術を買えばいいという声もありますけれども、原子力の技術なんというのは、自分のところできちっと安全性を確かめたものでなければやれないと思うのですね。そういうふうに見まして、必ずこれは二十一世紀に向けてやっていかなければならぬことだ。  しかも、もしやると決めたときに、実船でやらなくてもし陸上でやるとしますと、これは振動とか傾斜とか揺れることに対してどうするかなんていうのは、あれは三千トン以上もあるのでしょう、あんなものを載っけてそんな実験ができるようなものをつくるなんてことは、もうできないことだと思います。そういう中で、実船によって実験しなければ絶対できない、しかも、絶対に舶用炉開発は必要であると考えたときに、「むつ」を廃船するというのは考えられないし、先ほど総理は私の前の有島議員のときの答弁にも、原子力委員会はこれはすべしと、これは最重点のような言い方をしまして、原子力委員会もたしか一月に言われたんじゃなかったですか、二十四日に、原子力船研究開発の推進に当たっては「むつ」の海上実験が最も有力な手段である、こう結論をはっきり出しています。これを考えて、総理自身が、二十一世紀の人たちから「むつ」を廃船にしたときの総理として名前を記憶されたりせずに、あのとき勇断した総理として名前の残るように決断していただきたいと思います。お答えをいただきたい。
  162. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 原子力船の問題につきましては、我が党では、関根浜の新港の開発はこれを進める、舶用炉の研究も進める、「むつ」の処理の問題についてはこの八月ごろまでに党内で専門家等を動員して検討してその最終的措置を講ずる、そういうような態度を決めておりまして、その党の審議の情勢を見守ってまいりたいと思っております。  しかし、いずれにせよ、日本は海運国でございますから、いずれ原子力船、原子力商船の時代が来るかもしれません。しかし、今までの経験から見ると、オット・ハーンとかサバンナはもう役務を果たして大体廃船の状態にあると聞いておる。一方においては、原子力潜水艦あるいは原子力推進による海軍用艦艇の進歩というのは極めて目覚ましいものがあります。そうすると、そういう意味の技術は軍事用には既にある程度、相当確立されている。日本はそういうものはございません。しかし、その軍事用のものが将来商船用に転換されるという可能性もなきにしもあらずです。その辺の情勢をよく見きわめつつ、よく検討も続けてもらいたいと思っております。
  163. 木下敬之助

    木下委員 これは本当に二十一世紀を展望なさる総理なら、御自分のリーダーシップでやられるべき問題であると申し上げたいと思います。  時間がありませんけれども、あと二問だけよろしくお願いします。  一つは、石油関連していることですが、サウジアラビアが大量のタンカー備蓄等をやっておりまして、そこから我が国にも協力を求めてきていると聞いております。こういう中でサウジの要請を受け入れる方向があるのか、また、こういう中で国の備蓄政策全体を見直すことがあるのか。こういう点をお聞きして、その見直したり考えていく上で、私は前にも申し上げましたが、今そのコストが高いからということでタンカー備蓄から陸上備蓄に変えているという傾向がある。これはちょっとおかしいので、私、前のときに宇野通産大臣からも確認したのですが、陸上備蓄と違ってタンカー備蓄にはまたそれなりの利点がある、この点はちゃんとわかっておるというお答えをいただきましたし、また、今、一度タンカー備蓄に合意した漁業の方々からこういう声を聞いています。あれほど重大な決断をさせておいて、わずか四、五年でもうやめるのか、今度言ってきてももう知らぬぞ、こういう声でございますので、これからの石油備蓄ということを考えたときに、やはり今まで一度も事故なく続けてきたということを積み上げていって、備蓄方法の選択の幅を広げておくということが大事ではないかと思うのですが、特に、時間がありませんから、この備蓄に関する問題でお答えいただきたいと思います。
  164. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 タンカー備蓄は、そもそも民間タンクの余剰能力がない、あるいはまた、備蓄基地の建設に時間がかかるということで、これは暫定的に五十三年度からやってきたものでございます。しかし、タンカー備蓄というものはどうしても総体的にコスト高ということがございますので、いろいろな条件が整い次第これは当然陸揚げされるということを図ってまいる次第でございます。このことは、去年の十月の宇野前大臣の申し上げたことと全く同じであると思います。  なお、サウジアラビアの件につきましては、事務当局から答弁させます。
  165. 木下敬之助

    木下委員 もう時間がありませんから。  最後に、有明鉱災害を機に、一部に国内炭二千万トン体制の見直し論議が出ておりますが、我が党は、エネルギー安全保障の観点から、二千万トン体制確立の目標は堅持すべきであると考えます。この点と、有明鉱の万全の安全対策を図るとともに一日も早く再開できるように進められることを強く要望して、私の質問を終わります。
  166. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 これにて木下君の質疑は終了いたしました。  午後一時十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時十七分開議
  167. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山原健二郎君。
  168. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に、教科書検定問題について質問をいたしたいと思います。  中曽根総理は、所信表明演説で、「国際国家日本の国民にふさわしい教育の国際化の追及」に教育改革の視点があるというふうにおっしゃいました。ちょうど一昨年、教科書検定をめぐりまして国際問題化しましたときに、八月二十六日に当時の宮澤官房長官が談話を発表しまして、さらに小川文部大臣がこれまた談話を発表しまして、検定基準の改正告示をいたしました。その中身は、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること。」というふうに変えられたわけであります。そして、当時問題を提起しました韓国や中国に対して、さきに韓国、中国等から我が国の歴史教科書の記述について批判が出、これらの諸国の国民感情等にも今後一層配慮する必要がある、こういうふうに述べられまして、一応の問題の決着はついたのでありますが、来年から使用されます教科書、日本史、これにつきまして現在検定が行われておりますが、その検定がむしろ非常に厳しくなっております。  当時問題になりました侵略、進出の字句につきましては確かにチェックを差し控えておりますが、その他戦争あるいは植民地支配の問題については非常に検定が厳しくなっておりまして、過去において合格したものも不合格になる修正意見が出されております。  特に問題になります点は、例えば、朝鮮では人民の反日抵抗がたびたび起こっているという、これは削除。さらには、南京大虐殺に絡まるところの日本軍将兵の行動について削除。あるいは「ハルビン郊外に七三一部隊と称する細菌戦部隊を設け、」云々という文言については全部削除というふうな事態が起こっております。さらに、南京虐殺の人数あるいは朝鮮人強制連行という言葉が、この点で修正をされるという事態が起こりまして、今日再び国際問題化しかねない情勢にあります。  また、一昨年起こりました教科書に対する海外からの批判について、教科書の中に、教科書問題についての国際批判が起こったという記述について、検定官は、絶対削れ、認めるわけにはいかない、理由は、一過性のものであるというふうに理由をつけまして、この削除を要求をいたしておるわけであります。  このように見てまいりますと、今度の検定というのが前よりもさらにこういう事象については厳しくなっておりますし、検定基準にもないものでありますし、また、日本政府が発表した談話の精神にも反する状態になっておるのではないか。これでは国際協調の立場と言えるかどうかという問題が起こっておるように思いますが、この点についてお考えがございましたならば、総理大臣から御見解を伺いたいのであります。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 細かい具体的な問題でございますから、関係当局より御答弁申し上げます。
  170. 高石邦男

    ○高石政府委員 お答えいたします。  現在五十八年度の教科書の検定の作業が進められている段階でございまして、まだ最終的な結論を得ていないということでございますので、いま御指摘のありました事項については、現在の段階でコメントすることは適当でないと思っております。
  171. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、過去の侵略戦争について日本政府が深刻に反省をするという立場から、問題は考えるべきであると思います。  昨年の一月に出されました毎日新聞の世論調査によりますと、教科書については、戦前、戦中の暗い部分についても記述をして正確に教えるべきであるという世論が九二%に達しておることが、調査の結果として出ております。私は、日本国民はそういう意味では非常に誠実な立場をとろうとしておると思うのです。  これは二月四日に出されました韓国の東亜日報です。この東亜日報に、社説とそして長文の記事が出ております。これは、私は翻訳をしてもらったわけでございますが、この中には、二月四日、「日本の歴史教科書検定」という見出しで出ております。「日本の中・高校の歴史教科書歪曲事件が一年半ぶりに再び俎上に上ってきた。」というふうに書いておりまして、日本の文部省の検定結果によれば、日本の植民地支配を合理化するかのような検定方針にはほとんど変化がないということが明らかになったということで事例が挙げられておるわけでございまして、こうした態度は八二年八月の政府の約束を正直に履行しないでいるという憂慮を醸し出すばかりでなく、友好的な韓日関係を阻害するかもしれない極めて遺憾なことである。強制連行について、植民地の住民たる朝鮮人と占領下の朝鮮人とは取り扱いを別にせよという修正を指示し、強制ではないという従来の主張を反復している。三・一独立運動についてもあるいは関東大震災における虐殺についても、これを削っている。「植民地支配と歴史的侵略行為を覆い隠そうとする彼らの意図が依然として消え去らないでいることがわかる。」というふうに書きまして、今後の事態を憂慮して見守っているということが出ておるわけでございます。  明らかに政府が発表しました談話あるいは検定基準の改正とは違った方向に向かいつつあることについて、私も心配をいたしておるわけでございますが、この点についてお答えをいただきたいのです。
  172. 高石邦男

    ○高石政府委員 お答えいたします。  新しい検定基準で、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること。」というのが、あの問題が起きて以降新たに検定基準に設けられた内容でございます。この内容に従いまして五十七年度の検定を行い、五十八年度はただいま作業を重ねているということでございまして、今御指摘のありました趣旨とやや意見を異にいたしますけれども、文部省立場としては、先ほど申し上げました新たな基準で客観的な検定を実施しているというのが現在の作業の状況でございます。
  173. 山原健二郎

    ○山原委員 一言文部大臣にこの問題でお伺いしておきますが、今検定のさなかですけれども、既に修正意見がつけられて、執筆者は、修正といえばこれは合格しませんから、書き直さなければならぬわけですね。そういう事態で内悦本が間もなく――内悦が二回にわたって行われるわけですから、そういうさなかに私は質問をしております。こういう憂慮すべき事態が起こらないように注意すべきであると思うのですが、その点について文部大臣はどういうふうにお考えになっているか、一言伺っておきます。
  174. 森喜朗

    森国務大臣 高石初中局長からの、ただいまちょうどその作業中でございますから、その過程の中で議論することはお許しをいただきたい、むしろそのように山原先生の方がよくおわかりのことだと思うのです。  そこで、先ほどからお話がございましたように、官房長官談話、それから検定基準の改正、文部大臣談話、すべてそれに基づきまして、五十七年度の検定は御承知のとおりの形で終わっているわけであります。それと同様な考え方で、ただいま五十八年度も検定の作業中でございます。その途中において出版労連からその過程のことが新聞等に流れたということは極めて遺憾なことでございますが、五十八年度中の作業は五十七年度と同様な形で進めております。このように御理解を願いたいと思います。
  175. 山原健二郎

    ○山原委員 私どもは検定の公開を要求しておるのですね。だから、この中身が執筆者によって漏れる――私は出版労連の資料は使っておりません。現実に基づいてやっているのです。それによって事態が憂慮すべき方向に向かわないということが大事なのであって、そのことを心配して申し上げておるわけでございますし、特に、こういう教科書の記述については、やはり事象の事実を書くということが大事なのであって、検定の基準を超えて恣意的な修正をすべきではないという考え方に立っておりますから。時間の関係でこの問題はこれでおきます。  次に、総理の所信表明演説で、三つの大きな基本改革をやる、そしてこれを着実に推進をすると述べておられます。その中の一つは行政改革です。それから財政改革、そして教育改革でございますが、まず行政改革、特に臨調の答申、これを不退転の決意で推進実施していくということ。また政府声明も出されておりますし、中曽根総理大臣の決意の表明も出ておるわけでございますが、この点には変わりありませんか。
  176. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 変わりはございません。
  177. 山原健二郎

    ○山原委員 この第一次答申の中で教育に関する問題が出ております。それは、例えば教職員の定数の削減、あるいは教科書無償廃止の検討、あるいは公立文教施設の整備費の大幅削減とか私学助成の抑制。第三次答申を見ますと、これは今後の教育改革方向性が示されておりまして、中学校段階における適切な学習の方策、多様化の推進、高等教育の抑制、あるいは生涯教育の整理などとなっておるわけでありますが、この臨調の答申というものを一つの枠として、あるいは前提として教育改革ということをおっしゃっておられるわけですけれども、それを前提としてお考えになっておるのかどうか、伺いたいのです。
  178. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算や機構に関する部面については行革の範囲内であろうと思いますが、教育の内容につきましては、これからできる新しい機関の御意見を我々は尊重してやっていくべきであると思います。
  179. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、総理がお考えになっていること、教育臨調という言葉をお使いになることは不適切だとおっしゃっていますが、これ自体、中曽根総理の過去の発言の中に、教育臨調という言葉が事実出てまいります。しかしそれは不適切だと今日言っておられるわけですが、新しくつくられようとする内閣直属の機関というのは、今のお話によりますと、今までの臨調答申、また教育に関する答申の中身とは別に、白紙の立場国民合意あるいは国民立場で自由に話し合ってほしい、あるいは各党各会派で話し合ってほしい、こうおっしゃっているわけですが、その中身というのはすべてを白紙にして話し合ってほしいということでございましょうか。
  180. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行革で機構とか予算に関する部分については今進行している部面も、ございます。行革特例法案で既に決めた部分もございますし、あるいは予算につきましては、私学の振興について財政上やむを得ざる措置をとった面もございます。そういう予算等に関する部面は行革に従ってやりつつありますが、しかし、これから新しい機関ができた場合には、教育内容等につきましてはその新機関の御答申というものを尊重してやっていくべきものであろう、それも設置法にどういうふうに書かれるかということによって我々は考えていきたいと思っております。
  181. 山原健二郎

    ○山原委員 臨調答申の中には、教育内容につきましても一定の方向性が出ているわけです。例えば、教科書無償の継続ということについても、今年度は予算は前年度の据え置き、あるいは、教科書を持ってきておりますが、教科書に対しても随分制約が加えられておりまして、今度の教科書の紙質が予算の削減のために低下しております。それからまた、教材費については一五%減ですから、結局教材整備計画の達成も不可能になってくる。あるいはまた、総理が言っておられる教員の資質向上の面でも定数の抑制、あるいは入試改善の問題でも国公私立間の格差をなくするという国民の大変大きな要求の問題では私学助成の削減、それから家庭、社会教育問題でも一五%の削減、こういうふうにすべて削減という状態が臨調答申の今日行われている中身なんです。  だから、中曽根内閣になりましてから、中曽根総理がこういうことを充実したいと所信表明の中でおっしゃったそのこと自体が、予算は非常な大きな影響を受けまして、教育の危機が一層拍車をかけられた事態になっておるのではないかと私は思いますが、その点については総理はどうお考えになっておりますか。
  182. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほどから申し上げておりますように、機構とかあるいは予算とか、そういうものに関するものは行革の分野でございますし、行革については聖域を設けないでやる、そう言っておるわけでありますから、そういう面も、実行しつつある面もあるわけであります。しかし、教育の内容につきましては、憲法及び教育基本法を守って厳然と行わるべきである、そのように考えて、将来もそういう問題はあると思っております。
  183. 山原健二郎

    ○山原委員 教育基本法第十条には、政府あるいは文教行政の任務はやはり教育条件の整備、これは義務づけられております。ところが現実には、臨調答申あるいは行革を契機にしまして、この基本法の第十条の精神というのはまさに形骸化しつつあるというふうに考えざるを得ません。一方では予算はどんどん削っておりますけれども、もう一方では教育改革を断行するというふうにおっしゃっておられるわけですね。中曽根総理は、過去においても、また総理になられましてからも、教育改革ということをおっしゃっているわけですが、教育改革というと、何か国民に対しては、大変すばらしい教育体制が建設をされる、そういうイメージ――中身はまだわかりませんけれども、イメージを抱かせながら、現実には教育予算は削られていく。教科書の質が変えられる。何と学校給食の牛乳代、子供たちの体力を養うカルシウムをとる一番大事な給食の牛乳代にしましても、過去十年にわたって一本当たり五円の補助金を、牛乳の値上げたから上げてほしいという父母の要求は完全に踏みにじられて、今回三億円の削減。子供の体力の問題に影響するまで教育予算が削られている。その中で一方では大改革だと、何か大きな幻想を抱くような夢のようなものができるんじゃないかという、私はここに非常に大きな欺瞞があると思うのです。  私は、その点で、中曽根総理が大改革について一言も予算の問題をお話しにならない、一体これは何だろうか。もし内閣を挙げてやるというならば、これだけの経費を使ってでも日本の教育を子供たち国民立場で改善をしてみせるという決意があっていいわけだと思いますが、それを一言も聞くことはできない。現実には予算はどんどん削っている。これはどう解釈すべきか、一言総理にお伺いしたいのです。
  184. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育改革をやらんとしておるので、まずその内容等をつくっていただく新しい機関をつくることが先決で、まだその準備段階にあるわけであります。したがって、もしそういう新しい機関ができて適当なる勧告案等が出てきた場合に、予算とか人員とかその他の問題は我々が考えるべき問題であるのであります。今のところはその前々段階なので、そういう機関をつくる、その準備を今やっておる、そういう段階でありますから、機構とか人員とか予算とかという問題に触れることは越権の話であると考えております。
  185. 山原健二郎

    ○山原委員 ずっとしばしば教育改革ということをおっしゃっているわけですから、少なくとも一定の構想を持っておられると思うのでございますけれども、例えば本当にやる気がおありになるならば、今国民教育に対して大きな関心を持っています。きょうのNHKの世論調査の結果がテレビで放映されていましたけれども、国民の関心度というのは非常に高いのですね。そして現在の学校教育に対して満足しておるかどうかという点については、満足していないという数字が半数を超す数字になっています。そういうことを考えますと、なぜ高いのか。今非行やあるいは学校暴力の問題、学力の低下の問題、これをどうするかということで、国民は今日の問題として、今育ちつつある、今勉学をしつつある子供たちのことをどうしてくれるかということなんですね。そのことに対しては、予算は次々削っていく、そして一方では何か大改革をやると言われても、国民感情として、これを納得する、腹に落ちることはできないのです。やるならば、中曽根総理中曽根内閣として、今日まで国民合意に達したものについては、それはやはりあかしを立てる必要があるんじゃないか。  例えば四十人学級です。御承知のように、四十人学級は国会において二回決議をいたしております。全会一致の決議でございます。ところが、これもちょうど行革特例法の期間といたしまして五十七年から五十九年、本年まで凍結をされておるわけですが、法律としてはことしで終わるわけですから、来年度から本格的な四十人学級の実現に入るのかどうかということを皆心配しているわけです。法律的にこの五十九年度で終わります。そして来年度から当然法律の上から見るならば四十人学級に本格的に出発をしなければならぬという時期でございますが、それを明確におやりになるということをお答えいただけるでしょうか。
  186. 森喜朗

    森国務大臣 四十人学級の実現を含む定数改善は、今山原さんから御指摘のとおり、五十九年度まで三年間、いわゆる抑制をいたしておるところであります。しかし、基本的には、この六十六年までの達成年度はまだ変更もいたしておりませんし、その方向に向かって我々は努力をしていかなければならぬと考えております。ただ、この夏には六十年度の予算概算要求のまとめをしていかなければなりませんが、こうした財政状況の中で、また臨調のいろんな角度からのお話もございますし、私どもとしてはできるだけ四十人を一つのめどにしたクラスをつくることがやはり一番最上だ、これは山原さんもお考えのとおり、私どもも、自由民主党で教育予算をお手伝いをしておりますときには、その希望をかなえるように今日まで努力してきた一人でございます。  ただ、こういう状況の中で、そのほかの配置、いわゆる配置率の改善がたくさん出てきております。この配置率の改善をすることの方がより教育の現場から喜ばれることなのか、それとも四十人を早く到達することが喜ばれることなのか、これはやはり一つ方法論だろうと考えますし、私どもはそのことも含めてこの夏までにはその考え方をめどを立てていかなければならぬ、このように承知をいたしておりますが、何度も申し上げますように、六十六年までのこの実現計画というものは、私どもは目下そのまま維持していきたい、こういう考え方でおります。それまでの間に、先生も御専門でありますから御承知のように、児童生徒のいわゆる自然減というのもございますし、そういう中で先生方の配置についていろいろと工夫を凝らしてみたい、このように思っているところであります。
  187. 山原健二郎

    ○山原委員 五十九年というこの数字、これが本当に今怪しくなってまいっておるわけでございまして、赤字国債の依存脱却は五十九年という鈴木内閣の言明、ところが、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」によりますと昭和六十五年までに脱却、これは総理の所信表明演説の中にもこの言葉が出てまいります。五十九年ではなくて六十五年、こういうふうになり、しかもこの国会、この予算委員会で、先日はこれも難しいということになってまいりますが、大蔵大臣は特例期間を延長するおつもりですか、どうでしょうか。
  188. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、今御指摘のとおり、五十五年、当時私は大蔵大臣でございましたが、十二年間という、まさにいろいろ議論を詰めた上で――森文部大臣が当時自由民主党の文教関係の責任者でもありました。それで、十二年間という、ある意味においては芸術作品ができ上がったというふうに私はそのとき思いました。その後、今御指摘がありましたように、行革特例法というもので今の御指摘どおりの措置がとられておる。したがって、今の段階で、その時点が来たらどうするか、こういう端的なお尋ねでございますが、これはやはり今後の国の財政状況等を総合的に勘案して検討すべき問題でございますので、現時点でそれはこういたしますということを申し上げることはできないということを御理解をいただきたいと思います。
  189. 山原健二郎

    ○山原委員 これは法律ですから、本来ならば来年度から四十人学級の本格実施に入らなければなりません。それから、森文部大臣も今おっしゃいましたように、自民党内部の会合におきまして、財政が逼迫してくるからといって野党攻勢に甘んじながら唯々諾々と目を過ごすわけにはいかない、一学級の人数は、アメリカが三十人から三十五人、イギリスは基礎学科は四千人だがそれ以外は三十五、六人、西ドイツは二十八人、こういう標準にしている、そう考えると、日本も四十人ぐらいが適正規模だろうという方向を国として認めていくことが一人一人の能力を開発していくことに結びついていくのではなかろうか、そういう判断で四十人学級に踏み切ったわけであります。  すったもんだの末、四十人学級の決議をしまして、そして再び二回にわたって各会派が満場一致で決定したこの四十人学級。私は先月ある学校へ行きましたら、校長先生が出てきまして、四年生の組が二つになったんですよ、去年一人転校生が来て四十六名になりましたために二つに分けることができました、二十三名と二十三名、本当に手が行き届いて教育ができるんです。この喜びを素直に私に語っておったのでございますが、四十人学級というのは、四十五人を四十人にするんじゃなくて、四十人を超した場合には二つに分ける、そこで初めて行き届いた教育ができるという意味で全国民が待望しているんでしょう。しかも満場一致の議決でしょう。しかも教育改革をやるというならば、少なくともこれぐらいのことは私は実行すべきであると思うのです。  ところが、これは今お話しになったように、大蔵大臣は明確な御答弁をなさいません。そうしますと、来年から四十人学級に本格的に入るのかどうかも極めてあいまいになってくるわけです。これはどう解釈したらいいですか。これは断じて実行するというお答えをいただぎたいのでありますが、総理大臣、いかがでしょうか。
  190. 森喜朗

    森国務大臣 山原先生のお気持ちは私もよくわかります。しかし、財政というものをやはり常に考えることも、これまた私は、もちろん子供たちの心身の発達の程度にもよることだろうと思いますけれども、やはり国の財政状況が厳しいということも子供たちにも理解をしていただかなければならぬところだと私は思います。そういう中で、それでも四十人学級に踏み切ったところについては、今日の厳しい財政状況の中でこれはずっと進捗をさせてきているわけであります。したがって、先ほども申し上げたことをもう一遍繰り返すようで恐縮ですが、六十六年までの十二年計画、今竹下大蔵大臣から芸術祭参加作品とまでお褒めをいただいたのか皮肉をいただいたのかわかりませんが、みんなでとにかくいろいろ知恵を集めてつくったものでございまして、その一つの目標に向かってみんなで努力をしてきたことは言うまでもないわけです。  そこで、この六十六年度のいわゆる到達年限というものをまだこれで解消しているわけではございません。したがって、来年度からは逐次また改善をしていかなければならぬところでありますが、四十人を先にさせることが子供たちにとって最もいいことなのか、それとも、各党の皆さんからも、あるいは日教組を含めいろいろ職員団体の皆さんからも要求の出ておりますような事務職やあるいは栄養士やあるいは教頭代替や研修代替や、そうした事柄を優先させることがいいのか、これはこれからいろいろと関係方面の皆さんと御相談を申し上げて、この夏ごろまでには、そのプライオリティーの問題をどうするかという、私はそういう形でぜひ目標は最後まで崩さないような形で努力をしていきたい、いろいろ工夫をしてみたい、このように申し上げているわけでありますので、ぜひひとつそういうふうに山原先生にも御理解をいただきたいとお願いを申し上げる次第です。
  191. 山原健二郎

    ○山原委員 事務職、養護教員の配置の問題は今まで論議をしてきておるところでありますけれども、四十人学級の問題というのは、ここでそういうあいまいなことを言われると本当に困るんです。私は、中曽根総理が行管庁長官のときに行革特別委員会におきまして、四十人学級、その年次は五十六億円予算として概算要求が出されておりました。これは全部削った。ところが、学校の先生方が必ずしも賛同はしていない、また要らないと言っている主任手当については、あのとき七十八億円を満額予算に組まれました。これはけしからぬではないかということを言ったら、中曽根当時の行管庁長官は、それが山原さんの党と私どもの考え方の違いです。お金のことではなくて考え方の違いによって、先生方が要らないと言っている主任手当にはことしも八十一億円出しているじゃありませんか。お金のことじゃないですよ。本当に国民合意に達した四十人学級をやるかやらないか。しかも、教育改革は内閣を挙げてやるとおっしゃるならば、これくらいのことはできないはずはないと思うのです。そのことをお尋ねしているんですが、もう一度中曽根総理の見解を伺っておきたい。
  192. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行革に関することは、臨調方針を尊重して実行しております。教育の内容に関する問題については、私たち教育基本法を守って実行してまいるつもりであります。  今の御措定の問題につきましては、国会を通過した法律に基づいて実行していることでありまして、学校の先生方もぜひこれを守って実行していただくように希望する次第であります。
  193. 山原健二郎

    ○山原委員 四十人学級も来年度から実行することは法律的な行為なんですが、それはいかがでしょうか。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは今文部大臣が御答弁申し上げましたように、夏にかけて検討していく課題であると申し上げたとおりであります。
  195. 山原健二郎

    ○山原委員 一方は法律にあるからやります、一方は法律にあるけれども検討中であるということは、やっぱり四十人学級については余り中曽根政権は積極的な意思をお持ちでないというふうに考えざるを得ません。  在日米軍の子弟に対するいわゆる思いやり予算ですね、あれは二十九人学級です。それで要求して今度の予算では二十五人になっています。しかもこの在日米軍の子弟の教室の面積は八十平米です。これで二十五人ですね。日本の子供たちは四十五人で七十四平米です。人数の多い四十五人学級の日本の子供たちは狭い教室で、二十五人の在日米軍の子弟は八十平米。それは私は本当に不合理だと思いますよ。  中曽根総理、米百俵という故事をお聞きになったことあるでしょうか。
  196. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 越後長岡藩の物語で、読んだことがあります。
  197. 山原健二郎

    ○山原委員 さすがに博学の総理ですからおわかりだと思いますが、あの越後長岡藩ですね、くしくも新潟三区でありますが、これは戊辰のとき二度にわたって焦土と化して、そこへ三根山藩から百石のお米を贈ってきた、藩士たちがそれを飯米として分けろと言うのに対して、小林虎三郎という家老職の人が、皆に配ったら二升しかないんだ、そうでなくて、これは販売をして学校をつくるという、これは山本有三の「米・百俵」という戯曲にもなりまして大変な反響を呼んだわけでありますが、どんな困難なときでも二十一世紀を展望して教育の大改革をやるというならば、私は、教育の問題に対して、現実の父母や国民が困難に直面している問題に対して、どう実績として中曽根内閣がこたえるかということが必要だろうと思います。  予算はどんどん削る。私は国会に出て、佐藤内閣のときに出てきたのですが、ずっと十数年文教委員をやっておりますけれども、今日まで七つの内閣に接してまいりましたが、これほど教育予算を削った内閣はありません。率直に言って、最悪の文教政策を持っておる内閣と言わざるを得ません。それならそれでいいんですけれども、それだけじゃない。それをやっておいて、一方では教育改革、これは通りません。  マンモスあるいは大規模校の解消の問題にしましても、現在、学校数にして四割以上の子供が大規模校に通っています。生徒数にして五割以上です。大規模校における非行あるいは校内暴力の問題が頻度が高いということは、これはどの調査を見ても明らかなところでして、これに対しても概算要求を削っておりますし、私学助成にしましても、偏差値をなくするとおっしゃっておりますが、なくするならばまず学校格差をなくさなければなりません。偏差値が起こるもとは何かといえば、御承知のように、これは選抜試験と学校格差なんですね。  それをなくするための私学助成、先日も一千七百万の請願署名が寄せられたわけでありますけれども、これも削られただけでなくて、これは森文部大臣がよく御承知のように、我々は一緒になってあの私学助成の法律を七年前につくったわけです。そのときの決議は、経常費二分の一に速やかにするために努力をするというのがお互いの決議であったわけでございますが、この経常費に対する比率は減って減って、今や二一・五%、何と法律ができる前の文部省予算措置でやっておった時代に返ってしまった、これが今日の教育が置かれておる現状であります。  私は、その意味で、国民の期待にこたえて中曽根内閣がもし大改革をやられるというならば、現実の問題として国民に誠意を示すべきであるというふうに考えます。やるべきことをやらないで大改革と幾ら大きな声を出しましても、それは現実性を持ちません。その点についてどうお考えになっておるでしょうか。
  198. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四十年代から五十年代は日本が高度経済成長期でございまして、自然増収やらお金が随分入ってきて仕事がやれたわけであります。五十年代に入って石油危機がありましたときも、急激な不況を呼んで失業を起こさないために、不況を起こさないために公債政策で景気を維持してきて、今その公債が我々の非常に大きな負担になってきているのは御存じのとおりです。したがって、近来、行政改革が始まってからは、そういう膨大な借金のツケをどう返すかという段階で、財政を締めるという歴史的な循環過程に今入ってきているわけであります。したがいまして、まことに残念ではございますが、諸般の経費について我慢をお願いしておるのでございまして、教育関係者につきましても、甚だ遺憾ではございますが、できる限りの我慢をお願いをいたしておる、そういうことであります。
  199. 山原健二郎

    ○山原委員 そういうお考えでございますと、四十人学級は私は六十六年に到達はできないと思っています。完了しない。幾らおっしゃっても、六十五年までいわゆる赤字国債の脱却期間だ、それも難しいとこの予算委員会でおっしゃっているわけですから、六十五年までそういう事態が続くわけですね。それでは、六十六年に四十人学級が完了すると言ったって、一年間でできるはずがないのです。七万数千名の教員が必要になるわけです、一年間に。そんな教員養成はできやしませんしね。  そういうふうに考えますと、今のお話を伺っておりますと、いろいろ検討されます、あるいは前進の意味での御発言がありましたが、実態としては四十人学級はこのままでは六十六年になっても完了しないのじゃないか。将来の約束ですから、大臣もいつまでやられるかわかりませんけれども、本当に。これをやるとするならば、それだけの実効ある計画、あるいは来年度予算にはこれだけのものを組んでやるんだ、不退転の決意でやるんだということがなければ、まさに内閣を挙げて教育改革をやると言っても、私はそのあかしはないというふうに考えて、大変残念です。まことに残念です。先ほど言いましたように、森文相もかつては予算、お金の問題ではないんだということをおっしゃっていますね。小林虎三郎のことだってそうです。本当に将来の教育百年の計を言うならば、ここで学校を建てるというこの決意というものが中曽根内閣にあって、初めて将来にわたっての教育改革ということが現実性を帯びてくると私は思いますが、今のところ、今の答弁ではそれは納得できないというふうに思います。そういう解釈でよろしいでしょうか。
  200. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府教育については非常な熱意を持っております。したがいまして、今後とも教育につきましては最大限の努力を傾けてまいる所存でございますが、臨時行政調査会の答申等により行革を実行しなければならない、そういうような客観情勢の変化もございまして、その中で最善を尽くしてまいりたいと思っておる次第であります。
  201. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つの問題は、これは中曽根総理のお考えの中に、教育改革というのは、予算の面ではそのように切り詰めておりますし、また、将来の展望としても、教育というものについて国家百年の計という言葉を使っておられますが、これに対して投資をするというお考えは非常に希薄なように私は思います。  そして一方では、「新しい保守の論理」の中で、外来種の考え方だという言葉が出てくるわけですね。ちょうどこれは憲法に対する考え方と御一緒ではないかと思いますが、戦後教育というものを外来種である、そして文部省も中教審もそのコースを小刻みに歩んでいくにすぎないという言葉がありまして、文部省あるいは中教審というものに対する不信感がこの言葉の中にあると思うのですが、そういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  202. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 占領下、マッカーサー司令部によって教育の指導を受けていたころ、我々は、しばしばGHQに呼び出されたりあるいは陳情に行ったりして、あそこの政治課長ウィリアムス博士にいろいろ指示を仰いだり何かいたしました。そういう自分の経験から基づいて、そういう外来種の要素も入っていた、そういうふうに感じておった次第であります。
  203. 山原健二郎

    ○山原委員 したがって、今度も、中教審の答申は立派であり尊重するという言葉をお使いになっておるけれども、文部省あるいは中教審に対するその外来種の路線を歩んでいるにすぎないという考え方の中に、これではだめだということで、総理直属の機関をつくるというふうに発展をしていったのではないかと思います。  一月四日の記者会見では、中教審に対して教育改革の諮問をいたしたい、こういうふうに発表されておるのですね。ところが、その直後に、いや、中教審ではなくて総理直属の機関をつくるというふうになりまして、十三期中央教育審議会の任務は終わって第十四期中央教育審議会が成立しようとする、それをストップしてまで、なぜ内閣直属の審議会をつくらなければならぬかということを考えますと、これは余りにも乱暴なやり方ではないか。言うならば、まさに不当な教育に対する支配ではないかという心配が出てくるのは当然でありまして、私のこの心配に対してどうお答えになられるでしょうか。
  204. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が記者会見等で申し上げました内容は、多分、中教審を尊重して、中教審を中心にして物を考えていく、そういう趣旨のことを申し上げたと思ったのであります。  その後、国民の世論の情勢を見ますと、全国津々浦々にわたりまして教育改革を要望する声が沸き上がって、強くなってまいりました。この国民的基盤に立ってもう一回この問題を考えてみる必要がある、そういうふうに考えたことと、その後、党首会談をいたしました際に、公明党並びに民社党の党首の皆様方から、国民的基盤に立った、より幅の広い、大局的見地に立った新しい審議機関を設置するというていの御助言がありまして、そういうところを参考にさしていただいたわけであります。
  205. 山原健二郎

    ○山原委員 中曽根語録を見ますと、行革の次は教育大臨調だ、そして教育の処理が憲法の処理につながるという言葉がございます。また、行革が失敗すれば教育も防衛もだめになる、そして憲法を変える力もだめになる、そして大掃除、座敷を掃除して立派な憲法を安置するんだという言葉がございますね。そして、そういう一連の路線というのを考えてみますと、強烈に持っておられる改憲意識へ向かっての教育改革ということをお考えになっているのではないかというふうに思わざるを得ないわけですね。  私は、教育の問題というのは、本当に肩を怒らせて、そして大言壮語してやるべきものではないと思います。教育の大改革の断行ということをおっしゃるものですから、中曽根首相の性格や過去の発言を見ましても、本当にこれは日本の教育総理大臣の権限によって大変な方向に向かっていく、あるいは教育基本法の改正までやるのではないかという心配が出てきております。きょうの世論調査でも、制度改革については国民は必ずしも賛成をしていないという世論調査が出ておりますけれども、そういう意味でも、不安感というのは私はあると思うのですね。  私は、そういう意味で、中曽根さんが国会の至るところの売店で売っておりますお皿に書いておられます、私は見事な字だと思いますが、読んでみますと、「一槌打砕大道担然」と書いておられるのですね。ばあんと山を崩して大きな道が開かれるということだろうと思うのです。考えてみればかなり荒々しい言葉だと思いますね。そういうお考え総理大臣になるまではいいのですが、国家の最高権力者になったらそういう構えではだめじゃないか。で、ほかの方のを見ました。鈴木前首相は「和」と書いてある。和をもってとうとしとなすでしょうね。大平さんは「水深川静」、福田さんは「福寿無量」と書いてある。吉田茂さんは「出窓無月一燈明」、何となくロマンがあるのですが、「一槌打砕大道担然」、これで教育改革をやられては困ります。  本当に国民合意を得るための、気長く――今度の世論調査でも拙速を戒める世論が圧倒的に多いように思うのでございますが、この点は、審議会をつくる段階で、審議会をつくるかどうかについても今世論は賛否両論であります。そういう意味で、これから先の中身の国民合意というよりも、審議会をつくるか否かという点で国民的な合意が得られるかどうか。そういう意味では、この審議会をつくること自体にも慎重な態度をとるべきであると私は思いますが、その点はいかがでしょうか。
  206. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その前に、「一槌打砕大道担然」という言葉が出ましたので申し上げたいと思いますが、あれは北条時頼の言でありまして、北条時頼が三十七か八で死ぬときに残していった心境なのであります。「業鏡高く掲ぐ三十七年」、業の鏡を三十七年間高く掲げてきた、「一槌打砕すれば大道担然」、一つのつちでその鏡をぶち破ってみたら大道がだんだんと横たわっていた、そういう心境を吐露したのでございまして、私が非常に愛用しているところであります。それは、時頼という人の生涯等も勉強して非常に感心もし、彼が非常に禅道に深く悟入いたしまして、最後に、ともかく業の鏡を人間というものは掲げてお墓へ行くんだ、しかし、死ぬ間際になってはっと気がついてみたらわかって、その業の鏡をたたいて破ってあの世へ行くと大道があるんだ、そういう彼の夢か願いを出したのが「一槌打砕大道担然」という言葉なので、願わくはそういう心境になりたいと思って実は書いておるわけであります。  新しい機関の設置につきましては、私のところへ参りまする投書やあるいはNHKその他の世論を見ますと、やはりつくれという声が非常に強いようであります。私は、その考え方に沿って今進んでいきたいと思っているわけであります。
  207. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、私は教育改革は必要であると思っています。その点では同じ考え方です。それからまた、我が党としましては、恐らく一番早かったのではないかと思いますが、教育改革の提言をしております。その中身というのは、恐らく多くの人によって支持されるものだと確信もしています。  例えば、今の幼稚園から小学校の関係あるいは中学校から高等学校の関係、このつなぎ目をどうするかという問題がございます。また、中学校、高等学校の場合に、今二つに分けられておりますが、成長しつつある青年期において二つにこういうふうな分け方が正しいかどうかという問題を含めまして、しかもこの両者が入学試験地獄のためにゆがめられているという事態は、これはもう否めない事実でありますから、例えば中学校から高等学校への場合は九四%の進学率の今日、高等学校を準義務化して、希望する者を全員入学をさす。あるいは私学に対する補助、私学に対しましては公費民営の方式も考えておりまして、公費によって運営をし、そして民間がこれを経営をしていくという構えの私学に対する助成、そして国公私立間の格差をなくしていくということも考えております。また、共通一次試験の改善、さらにはすべての県に少なくとも一つは総合大学をつくり、そこには夜間学部を併設をして、そして勤労しながら学ぶことができるというようなことを一つ一つ着実にやっていくことが大事ではないか。そういう意味での国民合意に達するならば、今日の教育の混乱を解消することもできるという確信を持ってこの教育改革を提言をいたしておるわけでございますが、これらの問題については今後も提起をしていきたいと考えております。  教育改革の必要性、そしてそれはあくまでも国民合意、中教審のような少数によって密室で行われてはならぬ、すべて公開をされ、そして多くの人々の賛同によってこれが決定をしていくという道を歩むならば、日本教育は大きな前進をするであろう、そして政府は政治介入をしないで、これに対する条件整備に全力を挙げていくということをやるならば、新しい道が切り開かれるであろうということを確信をいたしております。  このことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  208. 倉成正

    倉成委員長 この際、東中光雄君より関連質疑の申し出があります。山原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。東中光雄君。
  209. 東中光雄

    東中委員 先日我が党の不破委員長質問をいたしました横田の米軍基地に核攻撃を受けたときに基地の生き残りをやるための施設、いわゆるEWO、緊急戦争作戦シェルターがあるということを指摘したわけでありますが、中曽根総理は、マニュアルは一般的なもので、恐らく司令部にも一般論としてそういうものを設置するということがあるのじゃなかろうか、そういう推測をするということを言われておるわけで、「防衛庁によく勉強させてみたい」「防衛庁によく研究させます。」こういうことに速記によるとなっておるわけであります。  それで、施設庁にまずお伺いしたいのですが、EWO、緊急戦争作戦シェルターですね、米空軍の教範AFM355―1、これでEWOシェルターが規定をされておる。その内容はどういうことかということとあわせて、先日本破質問でありました、EWOのシェルターが、横田の第五空軍の司令部にそういう表示があるということについて事実を確認されたかどうか、内容を明らかにしてほしいと思います。
  210. 塩田章

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  在日米軍及び第五空軍の司令部の建物は、昭和四十九年に関東空軍施設整理統合計画の一環として、日本側の負担により府中から移設したものであります。     〔委員長退席、松永委員長代理着席〕  構造規模は、鉄筋コンクリートづくり、地下一階、地上二階で、延べ面積約八千平米、うち地階面積約二千六百平米でございます。  防衛施設庁としましては、この建物の設計に当たっては特別な基準を採用しておりませんで、在日米軍から示されております米軍基準により実施したものでありますが、給水、電気、空調等についても、単独で運用できるようなシステムにはなっていない内容でございます。  防衛施設庁としましては、在日米軍に提供するために建設した施設でありましても、提供後における運用の実態については把握する立場にはありませんが、先般御質問がありましたので、実情を承知するために過日職員を派遣して調べましたところ、御指摘のありましたEW〇シェルターの表示、これは縦五十三センチ、横四十三センチメートルですが、表示は司令部の入り口の右側に掲げられておりました。  米空軍教範AFM355―1、災害対応に関する計画と対策につきましては、在日米軍に照会いたしましたところ、約五年前、一九七九年に廃止されております。したがって、米軍の説明によれば、御指摘のEWOシェルターの表示は、当然五年前に取り外されるべきものであるということでございました。
  211. 東中光雄

    東中委員 米空軍教範AFM355―1にEWOということの定義というものをやっておる。しかも、その定義の内容というのは、「緊急戦争遂行諸任務のうち、緊急事態の期間中、要員が配置されなければならないもっとも重要な職務を収める防護構造物。たとえば、指揮所、統制センターおよび類似の機能。」こういうものをおさめるシェルターであるということを教範で決めておるということ自体は、どうですか。
  212. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどお答えいたしましたように、当時の、五年前の廃止された教範では、そういうふうな機能を持ったものとしてEWOの指定をされるということが書いてあったようでございます。現在はその規定は廃止されております。
  213. 東中光雄

    東中委員 規定が廃止されて、しかし、いまなおEWOの表示は横田でやられておるということで、それに見合う――少なくとも五年前まではそういう核シェルターがつくられておった。その後は表示はそのままであって、実態が変わったか変わらないか、あるいは別のかわるべき教範ができたかどうか、そういう点についてはどうなんでしょうか。
  214. 塩田章

    ○塩田政府委員 五年前にそういう教範があったということは御指摘のとおりでありますが、先ほども最初にお答えいたしましたように、当時からその教範にありますような特殊な構造でありますとか、あるいは電気にしましても水道にしましても空調にしましても、特別にその建物だけで機能するようなシステムでありますとか、そういうものはとっておりませんから、そういう教範は確かにあったわけでございますけれども、それに合った内容の司令部ではないというのが実態でございます。
  215. 東中光雄

    東中委員 実態がこの教範に合った司令部になっておったかどうかということは、あなたは、提供した後はどういう工作をしたか、そこまではわからないということを先ほど言っておられるから、実際わからぬということになると思うのですが、きょう資料としてお出ししました六一〇〇航空基地団作戦計画というのがあるわけです。  これがその原文ですが、これは一九七一年五月十五日の状態で六一〇〇航空基地団の作戦計画、ここに引用しておきましたように、米空軍教範AFM355―1に基づいてこの作戦計画をつくっている。この計画は機密ではない。この規格に合うようにつくるんだということで、この作戦計画書自体で、資料の二枚目に書いておりますように、EWO、緊急戦争作戦シェルターの定義も書いてあるわけですが、要員防護計画としてEWOに指定されたところはこういうふうにするんだということが書いてあります。「全面戦争の作戦にとどまらなければならない不可欠の作戦任務にたずさわる要員を、NBC」核、生物、細菌兵器「から防護するために指定されたシェルター。空軍の重要任務につく軍人・市民は、EWOシェルターに収容される。」という定義がしてあります。  中曽根さんは、この間の不破質問に際しましては、それは一般的な教範で、一般的にヨーロッパなんかでは核があるからそういうことをやることもあるだろうというふうに推定をするとおっしゃったのですが、この作戦計画書によりますと、三枚目に書いてありますが、「ビル番号」「管理責任」「使用部隊」「収容人員」「防護係数」というのがありまして、八〇三のビルでは四〇七分遣隊が管理責任を持っておって、この使用部隊は四〇七分遣隊で、そこの部分はEWOというふうに、要するにこの基地は核シェルター、EWOにするんだということを作戦計画で指示をしている。このビル番号八〇三というのは、それから四〇七分遣隊というのは横田であるということが、横田基地の電話番号を調べてみましてはっきりと確定することができるわけであります。ですから、一般的でなくて、現実に横田の基地でEWO、要するに核シェルターをつくっておる、関東計画の前です、ということがこの計画ではっきりわかるわけであります。  その当時は、四枚目のところにありますが、第五空軍司令部は一ランク下のEOAというふうになっておった。ところが、先日不破議員が指摘をしたところは五年前にそれがなくなったということを今言われましたけれども、これは何と、第五空軍の司令部がEWOということになっている。  こういう状態で、私たちがこのことを申し上げるのは、日本の首都のその中に、アメリカの第五空軍の司令部なりあるいは横田の基地なりが核から防護をするためのシェルターを特別につくっている。ここが核戦場になった場合にも生き残る、そういう基地をこういう作戦計画でつくっている。核兵器が入っているとか入っていないとかということじゃなくて、今そのことを問題にしているのじゃなくて、日本が核戦争の戦場になり得る、その場合にも生き残るためにそういう核シェルターをつくっているという状態は、これはもう非常に危険なといいますか、許されておくべきではない、そういう状態ではないか、こういうように思うのですが、その点についていかがでしょうか。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の推測では、アメリカは全世界に兵力を展開して基地なり司令部を持っておると思います。要員がぐるぐるぐるぐるそういうところを回って転勤している人もあると思います。そういうような中で、司令部をつくるとかあるいは特定の施設をつくるというような場合のマニュアル一般としてそういうものが適用されておる。日本の場合は非核三原則というものが厳然としてございますけれども、アメリカはそういう世界的な、一般的そういうマニュアルに従ってそういう司令部を構築する、そういうようなやり方でこういうやり方をやったのではないかなと私は推定いたしております。今でもそういうものではないかなと思っております。ただし、これも数年前に廃止したそうでありますから、そんなものではないかと思うのです。
  217. 東中光雄

    東中委員 いや、違うのですよ。マニュアルは、それは教範ですから、一般的なものなんですね。そのマニュアルをそれぞれの基地に対して適用していくという場合に、核シェルター、EWOというふうに、ある部隊についてはそういう核シェルターをつくる、それからその余の部隊については、それぞれ一つ一つについてEOAという防護措置をとらせる、またあるところはEPAという、この文書に書いてありますが、そういうランクをつける。だから四つのランクに分かれてそれぞれの部隊の収容といいますか、防護措置をとるということになっておる。それは一般的にそういうマニュアルでそうなっている。それを実際にこの六一〇〇部隊に首都周辺で適用するのに、どれはEWO、どれはEOAと、それで横田ではEWOというのが現実に指定されて、それでやられておる。だから核シェルターがつくられておるということが問題だと言っているわけで、そのマニュアルが一般的であるというのは、これはもうそのとおりでありますけれども、それを適用して現実にそれぞれ一つ一つに対して指定されている。  だから日本は、首都のこの中で、アメリカの第五空軍司令部は核シェルターの中で保護されている、核戦争になって放射能が降ってきても、死の灰が降ってきても、この第五空軍の司令部はちゃんと生き残るような態勢がとられている、これは大変ではないか。それはそれでいいんだというふうに総理大臣は思っていられると私は思いませんけれども、そこらは、首都圏に死の灰が降ってくるような事態は絶対に起こさないというんだったら、米軍は起こっても自分だけ生き残るというような態勢をとるべきではない、こう思いますが、そういう点はどうですか。
  218. 塩田章

    ○塩田政府委員 私からお答えいたしたいのです。  今お話にありましたように、マニュアルはもちろん一般的なもので、それを受けまして米軍は各級司令官がそれぞれそのマニュアルに従った措置をとっている。その場合に、それぞれの自分の隷下部隊の重要性に応じましてそれぞれの指定をしておる、これは当然であります。したがいまして、在日米軍司令部のようないわゆる高級司令部がEWOの指定を受けている、これは私は当然ではないかと思います。  その場合に、それが今先生の御指摘ですと、核の攻撃に対して耐えられるような構造になっているじゃないかということですが、これは私、最初にお答えしたつもりですが、EWOの指定をしておりますけれども、建物自体が特殊な構造になっていない、それからまた空調、給電、水についても、それだけで生き残れるような構造になっていないということを申し上げました。それに対して先生は先ほど、つくったときはそうであっても後の実態はわからないではないか、施設庁長官みずからそう言ったではないかということでございますが、私どもがつくりましたときの仕様書は特別な構造ではございませんし、それを米軍に一後で聞いてみましたけれども、特別な改装をしたとかそういうことはしておりませんということでございまして、今お話しになっておりますように、その司令部がEWOの指定を受けたから、それは核の攻撃に対してそこだけが生き残れるという構造の特殊なもので必ずしもあるわけではないということでございます。
  219. 東中光雄

    東中委員 ここだけが直撃弾を受けてもはね返すだけの堅固なものであるというようなことは、私は何も言っておりませんし、それから、不破議員もそれはできぬじゃろうということをこの間の質問でも言っているとおりであります。  問題は、今施設庁長官の話だと、第五空軍司令部のような重要なところならば、核シェルターといいますか、あるいはEWOというような核防護の特別の措置をするような、そういうことをやるのは当然だと思うということを言いました。実際そうなっておる。ところが、それが日本の首都の中でそういうアメリカの司令部は核シェルターで完全な防護ができるとは我々は思っていないし、この資料を見てもそうは書いてないですね。防護係数を見れば四一・七という程度でありますから、完全なものだとは、あるいは直撃に対して耐え得るとか、そういうことを言っているわけではないけれども、核シェルターというようなものをこの首都の中で米軍が重要だと言ったらつくっておく、そういうことがあって、それでいいものかどうか。日本は被爆国として、核戦争の戦場になるようなことを前提にしたような、死の灰が降ってくることを前提にしたような、しかし米軍の重要部分だけは残しておくんだというふうな態勢というのは、総理としてはどう思われるかということを伺いたい。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 仮にもし万一そういう標識をつけたとしても、実体のないそういうようなものであるならば何ら意味のないことであって、アメリカの軍にもやはり随分形式主義があるのだなと、今あなたのお話を聞いて感じております。施設庁長官のお話のように、日本がこれをつくったときに、空調設備も特別でなし、電気もそういう装置もしてないということになれば、一般市民がもし万一通常兵器等で仮に被害を受けた場合でも同じように被害を受けるという形になっておるのであって、仮にそういう標識をつけたとしても実体がそういうものであるというなら、これは形式主義でおざなりにそういう判こだけ押したのかな、そういうように今私は感じた次第であります。
  221. 東中光雄

    東中委員 総理、ちょっと詭弁に属するのではないかと私は思うのですよ。このお渡ししました資料の三枚目を見てもらうとわかりますけれども、ビル番号八〇三、管理責任四〇七分遣隊、これはEWOの施設の部隊だということで、防護係数というのが書いてありますね。これはそれぞれのところを見ればわかりますけれども、完全とは書いてないけれども、四一・七という数字というのは、「放射性降下物防護シェルターの中にいる人間が受ける放射性降下物の量に比較した、まったく防護されない人間が受ける放射性降下物量の比率。」ということで、「たとえば、PF四〇のシェルターにいる人間が受ける放射性降下物量は、まったく防護しない場合の四十分の一。」になるんだ。ところが、この四〇七分遣隊については四一・七のPFにしろと。だから普通の人間、一般の日本人の放射能汚染する量の四十一・七分の一になるように、その程度までちゃんとやれということまで書いてあるのです。  これは形式主義とかいうような問題じゃないんです。そこだけはこういうふうに守りますよ、日本人はほっておいたらいいんだというふうなことに通ずる、そういう基地が、しかも核シェルタ、という形で、しかも遠いところでなしに首都圏の中で行われている。それで、そういうことはさてあっていいものかどうかということを総理に聞いているわけですから、はっきり答えてください。
  222. 塩田章

    ○塩田政府委員 米軍のみならず軍隊はすべてそうじゃないかと思いますけれども、各級司令部等がその重要性に応じて一般の部隊よりも保護される、あるいはその重要性に応じた任務を遂行するための要員があらかじめ指定されておって、その要員がいざという場合に勤務する場所等も指定されておるというようなことは、これはもう軍隊としては当然なことであろうと思います。そういう意味で、このEWOという制度は、米軍としましては、一たん緩急ある場合に、あらかじめ指定された要員がそこで勤務する場所であるということを指定されておるものでございます。  その場合に、それはそういう司令部であればあるほど堅固な建物である、あるいは堅固な構造物であるということが望ましいんだろうとは思いますけれども、現実に在日米軍司令部の場合は、先ほど来私が申し上げたような構造の建物の中で勤務するように命ぜられておるということでございまして、特別な仕様のものではないということを繰り返し申し上げておるわけでございまして、あくまでも、いざという場合にあらかじめ指定された要員が指定された場所で勤務する態勢をとるということは当然のことであろうというふうに思います。
  223. 東中光雄

    東中委員 ということは、結局総理も、横田にEWO核シェルターというようなものをアメリカがその司令部の重要性にかんがみてつくるとするのは、これはもう当然のことだ、軍隊なら当然だと今施設庁長官は言ったわけです。首都のこの横田にそういうものがつくられておっても、それは当然のことであるというふうに総理大臣はお考えになっておる、そういうことでよろしいですね。
  224. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今長官が言われたのは、いざというときに配置につく、その配置の順序、場所等をあらかじめ決めておった、それは当然のことだというので、それは当然のことだと思っております。
  225. 東中光雄

    東中委員 今総理の言われているのは、それは趣旨が違いますね。こういう作戦計画をつくって、そして現にその部隊をそういうように指定をして、四年前には、八〇年にはブロークンアローなんということで訓練までやっていましたね。だから核シェルターまでちゃんと置いてある。そういうことをやるのが当たり前である、それについては問題はないというふうなお考えのように私はお聞きをしたわけで、まことにもって被爆国日本としては遺憾千万ということを申し上げておきたいと思います。  次の問題に入りたいのですが、国防報告との関係で防衛政策についてお聞きしたいのです。  今度の八五会計年度の国防報告は、中曽根首相あるいは鈴木前首相の名前が直接出てくるというような形で、非常に異例の名指しの国防報告が日本については書かれておるわけでありますが、中曽根首相は日本が一千海里までのシーレーンを防衛する意思があることを再度表明したというのが国防報告の初めの方に出ております。続いて、鈴木首相は八一年五月に、日本の領土、領空及び千海里のシーレーン防衛は憲法で許されているものであり、事実上日本の国家政策になっていると言明したというふうに。書いてあります。  鈴木首相が一千海里のシーレーン防衛は我が国の国家政策であるというふうな言明をされたというようなことは、今まで私はそういう形では聞いていないわけですが、これは日本の総理大臣が一千海里シーレーン防衛は国家政策であるという表明をしたというふうなことをアメリカが言っておってそれでいいのかどうか、一体どういう経過でこういうことになるのかという点について、総理にお聞きしたいのであります。
  226. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点については、前にこの席上で政府委員から御答弁申し上げたはずであります。  私は総理になりましてから、鈴木・レーガン会談の共同コミュニケを守る、そういうことを言ってきて、また守りたいと思っておる。一千海里シーレーン云々というところは、我々はそういう意図を持って努力する、努力目標としては設定してある、そういうところまで言明しておる。しかし、それはいわゆる公約というようなアメリカに対するアグリーメントではない、これもはっきりさしておるわけです。  鈴木首相の言明は、これはシーレーンの問題に関する部分、初めてそれはナショナル・プレス・クラブの演説の後で外国人記者が質問したのに対して答えた、それが引用されておるわけですが、そのように国際的な新聞記者会見の場所で日本の総理が言明したことはそれなりの重みを持つ、日本はその発言に対しては責任を感ずべきものである。しかし、だからといってそれが公約であるとか政府間のアグリーメントではない、そのことははっきり申し上げておるのであります。  詳細につきましては政府委員から御答弁申し上げます。
  227. 東中光雄

    東中委員 一千海里シーレーンの防衛は事実上日本の国家政策である――鈴木前総理は、あの八一年五月に共同声明八項があります、その後プレスクラブで演説をされた、そういう中で国家政策であるなんということは言っておられないわけですね。わざわざ国防報告に国家政策と書いたのは――外務省にお伺いしますが、国家政策というのはどういうことなんでしょうか。
  228. 北村汎

    ○北村政府委員 国防報告の中に、今委員が御指摘になりました部分は、日本の領土、領空及び一千マイルまでのシーレーンの防衛は日本の憲法上合法であり、また現にそれは日本政府の政策であるというふうに言明されたというところでございます。
  229. 東中光雄

    東中委員 政府の政策であるなんて書いてないですよ。ナショナルポリシーと書いてあるじゃないですか。  この国家政策、ナショナルポリシーという言葉がどういうことなのかと思って調べてみますと、これはアメリカの統合参謀本部編の「国防総省軍事関連用語辞典」、一九七九年の六月一日につくられておるものでありますが、ここにははっきりとそういう定義をやっているわけですね。訳されておるのを見ますと、この国防総省の辞典自体に初めに注が書いてありますが、それによりますと、   国防総省(DOD)軍事関連用語辞典は統合参謀本部の命令により、計画および作戦の用に供するため、国防長官事務局、三軍および国防総省諸機関との調整の工作製された。国防長官は、一九七八年二月二十八日付DOD命令五〇〇〇・九号「軍事用語の標準化」によって、用語および定義の適用並びに使用の統一性を確保するため、国防総省全体における当辞典の使用を命令した。というくらいに厳格にしておるわけで、ナショナルポリシーというのは「国家目標を追求する際、国家レベルで政府が採用する広範な活動方針あるいは指導方法。」である。これは部分的なことじゃないのですね。これは、一千海里までの防衛は事実上日本の国家政策であるということを言っているわけです。  日本の防衛庁自身がこの国家政策ということについていろいろ定義をしていますね。これは、航空自衛隊の「用語の解」というのが空幕から出されております。そして今はこれが廃止になって新しく「術語の解」というのがつくられておるようでありますけれども、防衛庁としては、国家政策ということになればそれはどういうものとして理解するようにこの教範で決めておるか、防衛庁の方にまずお聞きしたいと思います。
  230. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の「術語の解」というのは航空自衛隊の恐らく訓練資料だろうと思いますが、教範というものじゃございませんけれども、我々教育する上で、あるいはそれぞれの隊員が本を読んだりする上でいろいろな術語が出てまいりますから、そういったものについては大体こういうものだということを理解させるために航空自衛隊がつくっておるものであります。  なお内容的には、航空自衛隊に決して国語の専門家がおるわけでもございませんから、大部分が他の辞書等に載っておるものを翻訳をしたり利用をするということでつくっておりまして、ただいまの国家政策につきましては、米空軍の用語辞典から翻訳をしたものだというふうに理解をいたしております。
  231. 東中光雄

    東中委員 それによりますと、これは「航空自衛隊教範〇三―二―二」ということで「用語の解」が出されて、四十三年でしたか、今度は「術語の解」に変わったけれども、内容的には変わっていない。一部、有効にということが入っているけれども、国家政策ということについて言えばこう書いています。   平戦時を問わず国家目的を確保しまたはこれを達成するため、有利な条件を確立するように一国の政治的・経済的・軍事的・社会心理的諸力を発展させまたは運用する方策をいう。  ですから、平時、戦時を問わずに、国家目的遂行のために一国のすべての力を発展させ、または運用する方策というものとして一千海里までのシーレーン防衛をやるのだということを表明した、こういうふうに言って、しかも、そういう鈴木首相の言ったことを中曽根さんが二度にわたって認めた、あるいは表明した、こういうふうに言っているわけですから、シーレーン防衛一千海里までというのは、この委員会でも、総理自身は、日本有事の際に航路帯を設定するとすれば一千海里まで、それ以上はやらない、こういう意味だということを言われてきました。しかし実際は、国家政策としてということになれば、平時、戦時を問わず一千海里までシーレーンを防衛する。航路帯を設定してというような、そんなことじゃないのです。そういうことになるわけです。そういうふうに国防報告では言っているわけです。これは総理が言ってこられたこととは違うことをアメリカの国防報告では言っているということになると思うのですが、その点、どうなんでしょう。
  232. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前から申し上げておりますように、もし侵略があった場合には、そしてもし航路帯を設ける、そういう場合にはアメリカと協議してやるが、それも一千海里までだ、その目標のもとに、これからアメリカともいろいろ相談をして努力していく、そういう意味の意図の表明であり、努力目標を将来の仕事として設定した。それについては、具体化していくについてアメリカ側とも相談をする、そういうことを言っているのですから、ナショナルポリシーという言葉をどういうふうに訳すか、ポリシーという場合にはガイドラインという意味もあるいは入るかもしれませんね。努力目標というものも、あるいは我が政策であるというふうに言う場合もあり得る。ポリシーという言葉の定義を広義に解するか狭義に解するか、そういうことによって、別に国防報告に日本のナショナルポリシーであると書かれたからといって苦情を言うべき筋のものではない、解釈のいかんである、そういうように私は思います。
  233. 東中光雄

    東中委員 ところが、そう簡単にいかないと私は思っています。というのは、国防総省が出している。こういうふうな言葉を使うのだということを米軍全体に命令として出しているのですよ。国家政策というのは、単に、広い範囲があります、狭い範囲がありますというふうなことではないとわざわざこういうものを出している。日本の自衛隊だってそういう訳をしているという状態で、それで、ここで言っているのは、明白に、一千海里までのシーレーン防衛は日本の国家政策だ。  これに見合うような発言を鈴木前総理大臣がやられたことがあります。それはあのプレスクラブの演説で、米軍がインド洋の方へ行く、その後留守になるから、だから一千海里まで防衛するのは当然だという発言を鈴木総理がやられた。そして、昭和五十六年の十月三日のこの予算委員会での答弁で、我が党の榊委員が聞いたのに対して鈴木内閣総理大臣は、「わが国としては、周辺海域数百海里、航路帯として一千海里、そういうものを防衛していく、防衛の範囲内と考えておる、こういうことを申し上げたわけでございます。」これは随分、後で問題になった発言でありますけれども、この発言がそのまま今度の国防報告の中で、そこまで、一千海里までシーレーン防衛をするんだ、防衛の乾田内だ、それは合憲だ、こう言っているわけですよ。  これは今中曽根さんがここで言われていることと違うことを国防報告で言っている。国防報告がそういうふうに言う根拠になったのは、恐らく鈴木内閣の、この後で訂正されているようですけれども、その問題を今八五年度になって蒸し返してきた、だからわざわざ鈴木総理の名前を出し、中曽根さんも二度にわたってそのときのことを認めたような書き方をしている、こう言わざるを得ぬわけですが、これをやめろということを何か言われるおつもりはありませんか。
  234. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 鈴木さんは私らが考えているようなことを実はおっしゃって、いろいろニュアンスのあることもおっしゃっていますが、今東中さんもみずからおっしゃったように、それを訂正している。訂正したものが正しい鈴木さんのお考えでしょう。ですから、訂正に従った考えに従ってもらわなければいけない。  我々がもし相手側と正式の権限ある人間同士によって政府の意思として合意が成立した文書なり約束であるという場合には、我々はこれに拘束されますけれども、しかし、しばしば申し上げますように、あれは我が政府の意図の表明である、両者の合意によって締結されたアグリーメントではない、そういうことをはっきり申し上げておるのでありまして、そういう考えに立った一つの努力目標であり、意図である、そういうふうに解釈願いたい。アメリカ側がナショナルポリシーという言葉をどういうふうに使っているか、これはアメリカの自由であって、日本の総理大臣の発言は、そういう正式のアグリーメントによって用語の定義がない映りは、日本の解釈によって行われるべきものであると考えます。     〔松永委員長代理退席、委員長着席〕
  235. 東中光雄

    東中委員 それと、単にその国家政策という問題だけではなしに、その次の条項で中曽根総理は、「国家的分業に基づいて」という表現が出てきますね、これはあるいは国家的役割分担ということかもしれませんけれども。ところが、今までの日米共同声明でもあるいは鈴木・レーガンのあの日米共同声明でもこういう表現をしたことは全然ないわけですね。それから、それについての説明をしたアメリカのウェスト国防次官補の議会での発言を見ましても、「適切な分業」とか「合理的な役割分担」とかいうことは言っておりますけれども、ナショナル・ディビジョン・オブ・レーバーですか、そういう形で言っているのはないわけです。だから、国家政策である、鈴木さんは事実上国家政策と言った、中曽根さんは国家分業を認めた、そうすることで、今度は一千海里シーレーン防衛をやるんだというふうに言っているぞというのが今度の国防報告だと思うのですが、その点については中曽根さん、どうですか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうでっち上げ的な幻想を持たれることは甚だ迷惑であります。
  237. 東中光雄

    東中委員 何がでっち上げですか、どこをでっち上げるのですか。だって、今度の国防報告にはナショナル・ディビジョン・オブ・レーバーというふうに書いてあるでしょう。しかし、今までのものには全然そうはないじゃないですか。だから、中曽根総理はということであれば書いてあるから私は言っているのであって、何もでっち上げても何でもないですよ。事実のとおりに言っているわけです。それは向こうが勝手にやっているのだと言うのだったら、それはそれでよろしいです。しかし、それを認められるのだったら、今までとは違いますよ。あの鈴木・レーガン共同声明の線を守っていくんだということは中曽根さんが二回にわたって言われておる。私たちもそれは確認をしています。ところが、そこで出てきておるのは、ナショナル・ディビジョン・オブ・レーバーというのは全然出てきていない、レーショナルというのが出てくることはありますけれども。だからそれは違うじゃないかということを言っているわけです。  たまたま国家政策ということがあって、しかも国家的分業というものが出てくるから、これはアメリカの国防総省がわざわざ名前を出してやったというのは、そこに力点を置いているのでなければこういう異例なことはせぬだろう。そういう観点から見て、日本に今度は戦力水準をこの八〇年代促し続けていくだろう、こういうふうになってくるわけですね。その点についてどういうふうに思いますか。
  238. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ人がどういう英語を使っているか、それは私は知りません。私は日本語によって解釈して、私が日本語で言ったことについて責任を持つということであります。  それで、役割分担という言葉で私は使ったことはあります。それはここでも何回も申し上げますように、日本は瓶であり、アメリカはやりである、そういう機能的分担があるということを前から申し上げているので、そういう意味で御解釈願いたいと思います。
  239. 東中光雄

    東中委員 盾とやりの関係というのは、中曽根さんが言われる前から、いわゆるガイドラインにもそういう攻勢的、防勢的というのは出ています。そういうことは何も私、言っているわけではなくて、役割分担ということについて国家的役割分担という概念が出てきたというところに国防報告の新しい重要な問題があるのじゃないか、今まではそういうことは出てきてなかったですよ。憲法の制約の範囲内において適切な分担とか合理的な分担というのは出てきておりました。今度は違うんだ、それについて明らかに変わっているわけですから、その変わっていることについて、国防報告が名指しで言っていることですからね。それだけに、アメリカ人が英語で勝手に言っておるのだでは済まない問題だということを私は指摘しているわけです。  それと同時に、それを受けて結局は、「八〇年代にこの防衛要請にこたえる戦力水準を達成するよう日本に対して引き続き促し続ける」、こういうふうに国防報告では書いていますね。単なる期待とか希望じゃないのです。これはこの国防報告に書いておる。日本に対してシーレーン防衛の要請にこたえる戦力水準を達成するように促し続けると言っておる。  それでは、促し続けられる相手方である日本としてみたら、この水準というのは一体何を言っているのでしょうか。どうも非常にわかりにくくなっておる。それは国家的分業ということからきた期待じゃないかというふうに思うのですが、その点はどうでしょう。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前後の文脈から見てわかりません。わかりませんが、一般的に言えることは、「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く近づこうということを私は考えております。
  241. 倉成正

    倉成委員長 時間です。
  242. 東中光雄

    東中委員 はい、終わりますが、あなたは大綱の水準を達成するように努力する、しかし、向こうは、あなたがそう思っているのだったら、それを促すも何もないはずなんですね。あえて向こう側が促すと言っているのは、それはそういう水準ではないということではないか。だから、五九中業で、五九中業策定の基本になる目標といいますか、それはちょうど五九中業は八〇年代いっぱいになりますので、その水準と大綱との関係及びここでアメリカ側が言っておる戦力水準との関係についてどういう関係になるとお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  243. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 粟原長官が先ほど申しましたように、五九中業はこれから策定しようというものでありまして、まだ策定もしてないものについて関係を申し上げる段階ではないと思います。
  244. 東中光雄

    東中委員 終わります。
  245. 倉成正

    倉成委員長 これにて山原君、東中君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君の質疑に入るのでありますが、この際、先般大出委員が提起されました防衛年鑑の記述に関する問題について、防衛庁当局から調査の結果の報告を求めます。佐々木官房長。――佐々木官房長。さっさとお願いします。
  246. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 防衛年鑑についての調査結果を申し上げます。  防衛年鑑は、任意団体である防衛年鑑刊行会が昭和三十年以降刊行しておる本でございまして、その内容は、おおむね自衛隊の編成、我が国の防衛体制及び論外国の軍事情勢等が記述されております。  この防衛年鑑刊行会は、元報知新聞社社会次長、出版協同専務であられた伊藤斌氏が編集責任者でございまして、行政監督上防衛庁とは関係のない民間団体でございます。なお、昭和五十二年版からは株式会社防衛年鑑刊行会が発刊をいたしております。  防衛庁との関係でございますが、防衛庁は、防衛年鑑刊行会の依頼を受けまして、昭和三十年初版の刊行に当たりまして監修を行いましたが、それ以後は監修を行っておりません。また執筆につきましては、内容、項目等ごとに適当と思われる内部部局の部員等の一部が組織・編成等に関する資料の提供あるいは個人としての寄稿を行うなど協力をしてまいったものでございます。  御指摘の論文は、昭和三十四年発行の防衛年鑑第五巻掲載の「主要国海軍の現状」と題する福井静夫氏の署名原稿でございますが、福井氏は、元海軍技術少佐ではありますけれども、防衛庁・自衛隊のOBではございませんで、防衛庁とは関係がございません。当庁では、当該論文の執筆者福井氏に直接当該論文の出典、根拠等について確認をいたしましたが、その結果、当該論文執筆に当たって参照した資料は、一般新聞、ネービータイムズ、ジェーン年鑑等の民間の各種公開資料であること、レギュラス及びグレイバック、グラウラーについての記述は、これらの資料を総合的に勘案して自分個人の判断として記述したものであり、その時点では正しいと信じていたものであるとの回答を得ております。なお、福井氏はその後の資料に基づきまして、昭和三十六年及び昭和三十七年版の防衛年鑑掲載の御自分の論文の中で、レギュラスⅡ型の開発が中止された旨記述しておられます。  以上で御報告を終わります。
  247. 倉成正

    倉成委員長 大出俊君。
  248. 大出俊

    ○大出委員 念のためにちょっと前に申し上げますが、私はこの防衛年鑑、防衛庁監修のようなことになっておる時代にと、こう申しましたが、今のこの回答で創刊号だけだ、こういうお話なんですが、問題は中身が大事ですからこれは余り長くかかっていられませんが、三十三年版でしたか、ここに「この年鑑は、防衛庁監修のもとに、昭和三十年創刊された。」こう書いてありますと、そして「執筆メンバーは、防衛庁」と、こう出てきますと、この年鑑は防衛庁監修のもとに出ている、これは三十三年の年鑑ですけれども。しまいの方に確かに三十年創刊されたとありますが、これは皆さん見ておられぬと思うのです。これは三十三年にしかないのです。だから我々は創刊号は知らないのだから、我々出てきたころは。これを見ればああ防衛年鑑だというのだから、防衛庁がさあできましたと言って持ってくるのだから、ここにちゃんと書いてあるのだから。三十三年版。いま創刊号と言うけれども、「この年鑑は、防衛庁監修のもとに、」と書いてあるのだから、そう受け取るのは当たり前でしょう。ただ国会で私も質問しているのだが、二、三回質問があって一生懸命お逃げになるから、私はここに議事録、速記録ありますけれども、監修だと言われた時代にと私は申し上げているのです。間違ってないと言って皆さんこれはしきりに宣伝したのだから、またそうでなければ売って売れないからでしょう。だからそれはやはり一番最初からあなた方制服の方の論文だらけですよ。そして最後の方の国際情勢というのが福井さんたちが書いておる。これは名前が全部上がっている。端から防衛庁の制服の方々ばかりですよ。一番しょっぱなからの論文はほとんど全部防衛庁の方ですよ。だから、そう言ったってしょうがないでしょう。レギュラスに触れておられますよ、筑土龍男さんというのですか、この方は。防衛庁の制服の方ですよ。この次の論文だって制服の方ですよ。これはその次もそうですよ。後ろの方に海外事情ということで執筆されているでしょう。レギュラスの大筋を上に筑土さんが書いているのですよ。これは古いことだから中身が問題だから余計なことは言いませんが、どうせ出すのなら、妙なことをあなた方なさるものだと思って感心しているのだけれども、福井論文というのを挙げているのです。私は陸軍少尉殿だから、ルバングから帰ってきた小野田君と同期です。だから部隊へ行きますと先輩というのですよ。野呂恭一さんは私が教官の時の生徒だから、あの人は。だからこの海軍の技術少佐福井さんなんというのは部隊へ行ったら大変な大先輩です。当時は皆さんが助けてやっておられるのです。ところがこの中に妙なことを書いているのです。私はこれを質問してないですよ。福井論文、ページ五百三と書いてある、ここに「新造船としては、試作ともみられる原子力推進誘導弾艦ロング・ビーチの建造が進行中である。本艦は実用艦たるとともに空母エンタープライズの原子力推進装置の」――皆さんのこれ、リコピーだから写ってないんだ。装置の何とかの任務を持ち、「その竣工予定はエンタープライズより少くとも一カ年前なることを要し、一九六〇年十月の完成予定が確守されるであろう。本艦のリアクターはエンタープライズ同様のもので、その二基を有し、排水量」云々と書いてありまして、さてここが問題なんですがね。「兵装としては対空誘導弾テリヤー、タロス及びレギュラスⅡを装備するといわれる。」この「いわれる。」まで書いて切っちゃって、この次書かないのはどういうわけですか。私が質問した分じゃないでしょう、あなた方回答の中で出してきた。いいですか。「兵装としては対空誘導弾テリヤー、タロス及びレギュラスⅡを装備するといわれる。」次、読んでください。――しょうがないな、時間ばかり。はい、委員長、これ読もう。時間がないから。私は、賃金をILOに提訴しなきゃいかぬので、総理の言質をとろうと思っているので、なくなっちゃいますから、先にこっちひとつ読みますがね。  ここは、私が重要だと言っているのは、ここまで書いたすぐ次のところをなぜ書かぬか。「兵装としては対空誘導弾テリヤー、タロス及びレギュラスⅡを装備するといわれる。」ここで切れているんだが、この後、「誘導弾自体はそれぞれ別種の艦で、実用中のものである」、あなた方実用に至らなかったと言うのでしょう。あなたここに出してこられたでしょう、ここで切っちゃって。この後に、すぐ後に引き続いて、「誘導弾自体はそれぞれ別種の艦で、実用中のものであるから、特に本艦にとって問題とするところはあるまいと考えられるがこと。実用中だから別に問題はない、だが、兵装その他のエレクトロニクス、ちゃんと三つをどういうふうに艦上に配置して、対空、対艦、そしてサーフィス・ツー・サーフィスですから、射程が長いから、そこのところは大変だろう。ほかのものは実用になっているんだから、ほかの艦で。問題ないとここに書いてある。そこのところを出さない。そういういいかげんな回答を、回答になってないじゃないですか、これ。読んでくれと言ったら、だれもお持ちになってない。そういういいかげんな調査は、せっかく総理が周辺を調査する義務があるとまでおっしゃったんだから、そういういいかげんな調査はいけませんですよ。そこで、ここにちゃんと書いてある。実用中のもので、別の艦でと。それなら、別の艦というのはどこの艦だ。そうでしょう。実用に至らず――至っているじゃないですか、別な艦で。  それで、ここで承りますが、もう一つ、この海軍年鑑が間違いだと言うんですな。どこ間違っているんですか、この海軍年鑑、こんなりっぱなもの。しかも一番最初こうあけてみると、ネービー・デパートメント・オフィス・オブ・ザ・チーフ・オブ・ネーバル・オペレーションズ、このオペレーションズというのはどういうふうに訳すんですか、皆さんは。ネーバル・オペレーションズというのはどういうふうに訳すんですか。
  249. 北村汎

    ○北村政府委員 ネーバル・オペレーションというのは、通常、海軍の作戦とか行動というふうに訳せると思います。
  250. 大出俊

    ○大出委員 これもまた監修なんだが、ジャパンタイムズ編で、主要国の行政機構ハンドブック、行政管理庁行政管理局監修と、こうある。この監修の中には、機構が出ている。この機構を見ると、海軍軍令部長と書いてある。オフィスがついているから、海軍軍令部長室だ、こういうことになるのです。正しいんですか、これ。後藤田さん笑っているけれども、おたくの監修なんだ。  ここで申し上げておきますが、私は正直にこのネーバル・ファイティング・シップスのこの趣旨、バークというこの海軍作戦部長さんが前書きをお書きになっている、この軍艦事典を発刊する趣旨を。それで私は、軍令部長室とあるから、そういうふうに響き流しまして、専門の方に、ひとつこれ間違っておるといかぬから見てくれと言って頼んだ。そうしたら、先生まず最初から間違っている――何が間違っているんだと言ったら、アメリカではこのオペレーションズというのは、いま作戦とおっしゃいましたが、海軍作戦部長というふうに明確になっていますと、こう言う。軍令部というのはございませんと、こう言う。行政管理庁監修だ、これも。ろくな監修をしない。  かくて、これは海軍軍令部長室。軍令部長室、行政管理庁によると。ところが、これは違うんだと言うんだから、海軍作戦部長室、こうなる。作戦部長室がどういうところにあるか。作戦部長というのはどういう立場にあるか。お答え願えますか。――ああ、時間がなくなるな。
  251. 倉成正

    倉成委員長 後藤田長官どうですか。――それじゃ防衛庁古川参事官。
  252. 大出俊

    ○大出委員 いい、いい、もういい、時間がない。  この海軍作戦部長の直属が、いいですか、海軍作戦部長直属というのがどうなっているかといいますと、こっちに海兵隊司令官がいる、こっちに海軍の作戦部長がいる。てっぺんは海軍長官。だから、制服のトップだ。トップの横に作戦部長室というのがある。この海軍軍艦事典は作戦部長室編なんだ。だから作戦部長が前書きを書いているんです、趣旨を。この直属に太平洋艦隊、大西洋艦隊、ヨーロッパ艦隊、軍事輸送司令部、その他各部隊、こうなっている。今回のこのグラウラー、グレイバックの記述というのは作戦部長の直属なんだ、これ。直属。  念のために申し上げておきますが、私は人を介して、もちろん私行っている暇がありませんから、人を介して、この軍艦事典の編さんに携わった方に心証をいただきたいということで、いろいろな方が携わっていますが、皆さんは守秘義務がございます、そういう中ですから、全くの非公式に聞いていただいた。返ってきた答えがここに書いてありますけれども、時間がありませんから簡単に申し上げますが、海軍作戦部長というところで直属の艦隊だから、作戦命令を出すというわけですよ。そうすると、その実行行為が返ってくるというわけですよ。わかっているのは、すべてここでわかっているというわけですよ。そして、航海日誌がつけられているというんですよ。これもここで全部わかっているというわけです。しかもデターレント、つまり核抑止戦略、デターレントミッションという言葉を使う場合は核の抑止戦闘計画で抑止作戦任務で、これ以外にないと言うんです。これは、この司令部の限られた方々しか知らないと言うんです。知らない。ということで書かれているものを、あなた方は一体これは何で、どうして間違いだと言うんですか。本来間違いはないと言っている。私が人を介して聞いたってはっきりしているんだから、事はアメリカだ、さすがに。皆さんが聞いたって、そんなことはっきりわかりますよ。間違いは本来ないと言っている。  そこで、一番最初の前書きに趣旨が述べてあります。さっき申し上げたバーク、大将の方でございますが、アドミラル・バーク、彼のお書きになっている中身を見ますと、大変なことなんですね。歴代、グラウラーというのはスズキ科の魚、イサキということなんですけれども、そのイサキという名前がついている艦が四代目なんですよね。こういう艦の戦績、どういう戦いをしてきたかという戦績を何かで海軍は明らかにしてもらいたい、こういうたくさんの国民の皆さんあるいは学生、学者、いろいろな方からある。したがって、その方々のためにも、また携わって苦しい作戦に従事した方々のためにも明らかにしなければならない、そういうことで編さんをした、こういうことなんですね。間違っていない。資料はだからそこにしかない。アドミラル・アレイ・A・バークという作戦部長さんがお書きになっているわけであります。  時間がありませんからここに、これは海軍軍艦事典のグラウラーのところを――委員長、いいですか。
  253. 倉成正

    倉成委員長 はい、どうぞ。
  254. 大出俊

    ○大出委員 これを、きのうから英語ばかりで皆さんやり合っているので、いささか日本語でしゃべれという声がございますから、完訳をして持ってまいりましたが、これをひとつ記者の方にもお配りください、百枚ございますから。  それで、どこが間違いかを明らかにしていただきたい。何がどこでどう間違ったというのかはっきりしていただきたい、間違っていると言うのだから。背さんに差し上げてください。  これはグラウラーの四艦目、これが実は横須賀で任務を終了したという、核ミサイルを積んでいるという艦でございます。海軍軍艦事典の第三巻でございます。
  255. 倉成正

    倉成委員長 何年版ですか。
  256. 大出俊

    ○大出委員 第三巻は……。ちょっとお待ちください。  ついでに申し上げますが、一九五九年が第一巻、六三年が第二巻、第三巻は一九六八年でございます。第四巻六九年、五巻が七〇年、七、八巻は一緒に八一年にできておりますけれども、今のは第三巻でございまして、一九六八年であります。ちょっと読みますが、   第四番目のグラウラー号(SS577)、ちなみにこれはレギュラスⅡ誘導ミサイル潜水艦としては二番目のものであるが、この艦はニューハンプシャー州ポーツマスのポーツマス海軍ドックで建造された。 これを上げておいてくださいよ、大変重要なことでございましてね。  この艦は一九五八年四月五日の進水式に当たり、トーマス・B・オークレー提督の未亡人のロバート・K・バイヤート夫人が名づけ親になったが、このオークレー提督は第三番目のグラウラー号の第九、第十及び第十一回(これが最後となった)のパトロールを指揮した人物である。グラウラー号は、チャールス・プリテット准将指揮のもとに一九五八年八月三十日ポーツマスで就役した。実はこの就役のときに、レギュラスⅡ型を積んできちっとした写真までとってあります。ここに説明もついていますが、後から申し上げます。   同艦は、米東海岸沖で訓練に従事した後訓練調整航海のため南下し一九五九年二月十九日プエルト・リコのルーズベルト・ロードの海軍航空基地に到着した。その後一時ポーツマスに帰港した上でレギュラスⅠとレギュラスⅡ誘導、ミサイル発射訓練のため三月カリブ海に向った。  グラウラー号は、四月十九日フォートルーデルドールと フロリダ州だそうでございますが、  ニューロンドン これはコネチカット州だそうですが、  経由ポーツマスに帰港した。  同艦はそれよりノーフォーク、 これはメリーランド州。  キーウェスト(フロリダ州)及びパナマ海峡を経由して太平洋に出て ここが、これからが問題。  第十二潜水艦隊の旗艦となるべく グラウラー号というのは、横須賀で核を積んできたというのは旗艦なんだ、旗艦、フラッグシップなんですね。  旗艦となるべく九月七日にパール・ハーバに投錨した。パール・ハーバでこの誘導ミサイル潜水艦は各種の水雷訓練や、ミサイル運用訓練に参加しその後最初のレギュラス・デターレントミッション これはレギュラスの核抑止戦闘任務、こう訳すのだそうです。 レギュラスの核抑止戦闘任務。 を開始した。  このミッションは、一九六〇年の三月十二日から五月十七日まで続いたが、グラウラー号はレギュラスⅡの海対地ミサイルを十分蓄えてハワイを出港した。核弾頭を装備しかつ厳重な機密のもとに。パトロールした。 「厳重な機密のもとに」。私が得た心証によりますと、厳秘に付している。このデターレント、ミッションというのはすべて厳重に秘匿しているということだそうであります。だから限られた人物しかわからない。本来そういう性格のものだという。  この有力な積荷を積んで知られざる海を黙して巡航する怪しげな潜水艦グラウラーとその姉妹艦の威力は 当時、姉妹艦を含めて五隻、SSG、つまりレギュラス搭載艦が五隻ございます。  威力はいかなる強敵をも抑止することができよう。 そうでしょうね。レギュラスをいっぱい載っけて走っているのですから。  二カ月かそれ以上もの間ずっと海上で沈黙の作業を続け、何時間も時には何日も潜水せねばならなかった乗組員の態度を最もよく示すのは、例年の航海日誌に記される詩の中に ポエム、これは原文、ポエムですから間違いなく詩ですね。  記される詩の中に表現されている。すなわち一九六一年の元旦の日グラウラー号が第二回目のパトロールで潜水した際にブルース・フェルト中尉 個人名が挙がっています。  ブルース・フェルト中尉は、こう記している。〝こんなことは自分の考えでも楽しみでやっているのでもない。全く数年分の元旦を祝うために仕事に励んでいるだけだ。〟 何年分か働いちゃったということだと思うのでありますが、大変苦しい任務であったというわけです。個人名が挙がっています。  一九六〇年五月から一九六三年十二月までグラウラー号は九回もこうしたデターレントミッション・パトロールを行ったが、そのうちの第四回目のパトロールは、一九六二年四月二十四日日本の横須賀で終了した。海軍はこれにより最新の最有効な兵器の一つを誇らしげに見せつけたわけである。  グラウラー号は、一九六四年五月カリフォルニア州のメア・アイランドに帰り五月二十五日役務を解かれ予備役に入った。現在同艦は、太平洋予備艦隊と一緒にメア・アイランドに係留されている。 これが第四番目のグラウラーと名のついている艦の戦績でございます。これが海軍軍艦事典のこの項の記載の全文であります。  さてそこで、間違っていたという。文書にした、調査結果を。ワシントンで発表しない、日本大使館を通じて。こうなっている。これはいま私が全文を読み上げましたから落ちているところは何もない。  そこでまず第一に、「第十二潜水艦の旗艦となるべく」、旗艦となった。潜水艦隊の旗艦になった。否定しますか。これだけの戦績をアメリカ国民に明らかにしようとして記述したもの。資料は海軍作戦部長直属の部長室にしかないと言われるもの。  さて、レギュラス・デターレントミッション、レギュラスの核抑止作戦任務。なかったとでもおっしゃいますか。今になればわかっておるわけでございますから、確かめるべきものは確かめてあります。なかったと言って否定おできになるならばしていただきたいと存じます。  「このミッションは、」以下ずっと続いて「海対地ミサイルを十分蓄えてハワイを出港した。」当たり前でしょう、レギュラス・デターレントミッションなんだから。レギュラスを積んでなければ、レギュラス核抑止作戦任務にはならない。当たり前だ。「十分蓄えてハワイを出港した。核弾頭を装備し、かつ厳重な機密のもとにパトロールした。」否定なさいますか。  さて、ここに先ほど申し上げた詩が出てくる。乗組員の苦しみをここで表現しておりますが、ブルース・フェルト中尉。明確になっておりますが、これまた御否定なさいますか。ここには「航海日誌」こうなっている。ほかのところではわからぬでしょう、航海日誌なんというものは。  そして、「九回もこうしたデターレントミッション・パトロールを行ったが、そのうちの第四回目のパトロールは一九六二年四月二十四日日本の横須賀で終了した。」核抑止作戦任務のパトロールを横須賀で終了した。任務でございますから、横須賀で終了した。日本の領海に入ると、通航も持ち込みも非核三原則、その前の岸・ハーター交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解に触れるというので、皆さんは、日本の領海の向こうの方にこの艦隊はいて、入ってこなかったとでも言いたいのですか。そうでなくて、旗艦だけ残ってあとみんな入ってきたとでも言いたいのですか。そんなことはないでしょう、旗艦なんだからこれは。「横須賀で終了した。」横須賀で任務を終わったんです。明確に、「誇らしげに見せつけた」というとおりに、レギュラス・デターレントミッションは続けられていた。間違っていたというのだが、間違いとおっしゃるなら、どこをどういうふうに間違ったかについて、あわせて、アメリカの一体だれがどこでまとめて、だれにどういうふうによこしたのかもわかりませんので、おっしゃっていただきたい。それでなければ議論ができない。こんな明確なものを……。
  257. 北村汎

    ○北村政府委員 前回の委員の御質問に対しまして私がここでお答えいたしましたように、私どもは念を入れるために米軍に、この記述のところでレギュラスⅡ型ミサイルを積載した潜水艦が横須賀に寄港したというような点もございましたので、その点を照会したわけでございますが、そのときアメリカ側からこういう回答を得ております。  「本件海軍事典の記載は誤っており、米海軍としては本件海軍事典の改訂を検討中である。グレイバック及びグラウラーは通常の展開の一環として横須賀に寄港したことはあるが、海軍事典に言及されているレギュラスⅡ型ミサイルは、潜水艦において実用段階には至らなかった」、こういう説明を受けておりますので、私どもは、最も基本的な部分、レギュラスⅡ型ミサイルが潜水艦において実用段階に至らなかったという説明を受けておるわけで、その意味で、本件海軍事典は基本的に誤っているというアメリカ側の説明を承知するわけでございますが、アメリカがいずれこの改訂を検討中と言っておりますので、一々そのほかの今のいろいろな事実のどの部分が間違っておるとか事実であるということは、私どもは承知しておりません。
  258. 大出俊

    ○大出委員 それでは全く答弁にも何もならぬじゃないですか、極めて抽象的、漠然として。これだけ明確な記述があるものを。通常任務にはついたがというのと、レギュラスⅡは実戦配備に至らなかった、の二つだけでしょう、中身というのは。レギュラスⅡじゃなくてレギュラスⅠだって、私のところへこれを持ってきた方は、さっきの回答をお持ちになった方は私にジェーン年鑑が頭にあったような意味で言いましたがね。レギュラスⅡは実戦配備に至らなかった、オペレーショナルに至らなかった、だからレギュラスⅠですと、こう言ったのですよね。  ところが、レギュラスⅠだって同じことになるんですよ。レギェラスⅠならどうなるかというと、いいですか、ここで「レギュラスⅠとレギュラスⅡ誘導ミサイル発射訓練のため」というのが、これはどうなるかわかりませんが、レギュラスⅡをとったとする。後の方で「レギュラスⅠとⅡ」と、こうなっているのを「レギュラスⅠ」だけにする、「レギュラスⅡの海対地、ミサイルを十分蓄えてハワイを出港した。」というところを「レギュラスⅠの、ミサイルを十分蓄えてハワイを出港した。」と。ハワイを出港すれば、レギュラス・デターレントミッションなんだから、レギュラスを積んでいかないわけにいかないんだから、「レギュラスⅠ」にしたとする。「レギュラスⅠの海対地ミサイルを十分蓄えてハワイを出港した。」その次に出てくるのは「核弾頭を装備しかつ厳重な機密のもとにパトロールした。」レギュラスⅠだって核弾頭積んでいるじゃないですか。  この記述の中でⅠとⅡを取りかえたって、レギュラス・デターレントミッションというのは、レギュラスⅠを「十分蓄えてハワイを出港した。核弾頭を装備しかつ厳重な機密のもとにパトロールした。」これが残る限りは一緒じゃないですか、そんなことは。あなたはこれについて答えてくださいよ。
  259. 北村汎

    ○北村政府委員 この海軍事典の記載、いま委員がお読みになりましたところ、私どもが了解しておりますところは、グラウラーは核弾頭を装着したレギュラスⅡ型艦対地ミサイルを搭載してハワイを出港し厳に秘密裏に哨戒を行ったという文章がございます。それではレギュラスⅠはどうかという御質問ではないかと思いますが、私どもが了解いたします限り、レギュラスⅠは核、非核両用の兵器であると承知いたしております。
  260. 大出俊

    ○大出委員 だから、それは答弁にならぬというんです。ここに書いてあるのはどこでどう間違ったかということは何もなくて、レギュラスⅡでなくてⅠだったと、私に回答してきた方はそう言った。それならこれをⅡとⅠと入れかえたって同じことじゃないですか。答弁になってないじゃないですか、そんなこと。だめだ、そんなのは。わざわざこれは権威ある方に訳してもらって全部お配りして、皆さん見てくれている。答弁になりますか、一体これは。ならぬじゃないですか。ⅠとⅡと違ったって同じじゃないですか。
  261. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、その部分の記載は、グラウラーは核弾頭を装着したレギュラスⅡ型艦対地ミサイルを搭載して云々ということでございます。  ここの部分が、アメリカ側政府の私どもに対する回答によりますと、レギュラスⅡ型ミサイルはこれは実用段階に至らなかったということでございまして、この部分は誤りであるというふうに承知いたしております。
  262. 大出俊

    ○大出委員 それではひとつ回答書を出してください。わからぬじゃないですか、今のじゃ全然回答になってないじゃないですか。こんなばかなことはないじゃないですか。文書だというんなら全部出してください、ここへ。
  263. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども申し上げましたように、政府といたしましては、レギュラスⅠミサイルは核、非核両用のミサイルであると承知いたしております。  そこで、御指摘の海軍事典におきましてグレイバックまたはグラウラーが核弾頭を装備したレギュラスⅠミサイルを搭載して横須賀に寄港したというような記述は、これは一切ございません。いずれにいたしましても政府としては、安保条約上いかなる核兵器の持ち込み、これも事前協議の対象でございますので、私どもは、米国が我が国に核兵器を持ち込むということはあり得ないと考えております。
  264. 大出俊

    ○大出委員 そんないいかげんな回答じゃ回答にならぬじゃないですか。全文出してください、回答をまず。そうでなければ議論ができない。
  265. 北村汎

    ○北村政府委員 米側の回答は私先ほどお答えいたしましたところでございます。
  266. 大出俊

    ○大出委員 回答になってないじゃないですか。もう一遍言いましょう。レギュラスⅡは実戦配備に至らなかったという回答でしょう。それならば、この記述のどこがということは何も言ってない。レギュラスⅡを積んでなかったというだけじゃないですか。それじゃ、レギュラスⅡじゃなくたって、ⅠとⅡを入れかえたって同じことじゃないですか、核弾頭をたくさん蓄えてやってきたというんだから。
  267. 北村汎

    ○北村政府委員 今委員からレギュラスⅡをレギュラスⅠに入れかえたらどうかという御質問でございますけれども、私さっき申し上げましたように、この海軍事典の記載には、グラウラーがレギュラスⅠを搭載して横須賀に寄港したという、そういう記述はございません。それから、先ほど申し上げましたように、レギュラスⅠは核、非核両用のミサイルでございます。
  268. 大出俊

    ○大出委員 いいですか、何も私がレギュラスⅠと言ったんじゃないんだ。あなたの方がⅡでなくてⅠだと言うから、そんならⅠだって一緒じゃないかと言っているんだ、この記載から見れば。文章にちゃんと書いてあるじゃないですか。抑止戦略だというんだから、核がなければ抑止にならぬじゃないですか。デターレントミッションというのは決まった言葉だ、アメリカの。核抑止作戦任務というんだ。明確だ。調べてみた。デターレントミッションまで全部指摘しなければ回答になりやせぬじゃないか。そんなことは向こうは指摘してないと言っているじゃないですか。
  269. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま委員から、抑止ミサイル打撃任務というような言葉について、これは核の任務であるというような御指摘がございましたけれども、この点も私ども米側に照会をいたしましたけれども、軍事的には必ずしも余り意味が明らかでない言葉がここで使われておるけれども、少なくとも米軍においては確立された言葉でもない、また、抑止任務というのは一般的に使用される表現であるが、これはまさに一般的表現であって、必ずしも核兵器と結びついた表現ではない、すべて抑止につながる任務というものを抑止任務というふうに呼んでおる、こういうことでございます。
  270. 大出俊

    ○大出委員 これから先、進めようと思ったって進めようがない。いろいろなものを調べでありますが、進めようがない、これ。レギュラス・デターレントミッションと書いてあるじゃないですか。レギュラスのデターレントミッションじゃないですか、明確に。だから……(発言する者あり)知恵つけても同じだって。一生懸命あれはこう言いなさいと今言っておるけれども――耳に入ったよ。そう言ったってだめだ、それは。そんな小細工じゃ。だから、どこがどう違うのか、全部出してくださいよ。どういうふうにこれが直るのか、この長い文章を。全部書き直して出してくださいよ、こうなんだと言って。わからぬじゃないか、全然。とんちんかんで。
  271. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほどから繰り返して申し上げておりますように、まず基本的にレギュラスⅡ型ミサイルというものは、これは実戦段階に至らなかったというアメリカ側の説明があるということ。それからアメリカ側は、したがって、いまそういう誤ったところもあるので改訂を計画中であるということでございますし、また米国政府としては、安保条約及びその関連取り決めに基づく米国の義務を誠実に遵守してきている、それを確認してまいりました。そして、先ほども申し上げましたけれども、抑止ミサイル打撃任務という言葉は、これは必ずしも核のことを意味するものではない、すべての抑止に関する任務である、こういうことでございますし、それからレギュラスⅠという兵器は、これは核、非核両用の兵器でございます。  そういうことから申しますと、この海軍事典の記載にも、レギュラスⅠが核を積んで横須賀に入ったという記載は一切ございませんし、いろいろなアメリカ側の照会あるいは回答を総合いたしまして、アメリカは事前協議の条約上の義務を誠実に遵守しておる、こういうことを私どもは信じておるわけでございます。
  272. 大出俊

    ○大出委員 いいですか。核を積んで入ったことはないと言ったって、こんな立派な海軍軍艦事典にちゃんと書いてある。このとおり書いてあるじゃないですか。入っているじゃないですか。いいですか。軍艦事典のはしがきを申し上げましょう。これでもう私はやめますが、そんなくだらぬことを聞くのはしょうがないから。はしがきはアメリカ海軍軍艦事典、さっき申し上げたアレイ・A・バーク、これは海軍大将であります。作戦部長でございます。  「我々の最も初期の独立への戦いから現在の世界的優越した地位に至るまで、我が国の歴史は戦闘艦の感動的、英雄的なエピソードに満ちている。アメリカの偉大さを形成したこの長い伝統は、人々によってつくり出されたのであるが、それは軍艦でつくり出されたのである。我が国が海軍国を一貫して固守していることは、艦船の歴史を見ればわかる。その話の中に、海洋の自由世界連合のリーダーシップに対する我々の着実な上昇が如実に描かれている。木と帆から成る最初の小さな船と強力なミサイル発射装置を持つ原子力推進の誘導ミサイルの軍艦との間には、何と大きな隔たりがあることか。やはり策定されることになっている将来の他の軍艦と同様に、これら原子力の航行するミサイルの武装の現在建造中の軍艦は、我が国の現在の海洋の防壁をなしており、海軍の先人たちが過去に持っている以上に我々の運命の中で一層大きな役割を演ずるであろう。艦船の歴史を簡潔に一つにまとめたこのコレクションは、長らく必要とされてきた。完成したとき、これはアメリカの歴史及び国民精神を形成する上でその一部の役割を担ったあらゆる海軍軍艦艦船に関する基礎的な情報を容易に見つけやすい形で利用することができよう。これらの艦船や乗組員の忠実に遂行した困難をきわめた軍務は、多くの輝かしい勝利とともに国の自尊心、愛国心及び統一を高めている。」自尊心や愛国心や統一を高めているというところまで書いて、だから、この海軍軍艦事典というのを発刊したんだというわけでしょう。  資料は、しかも作戦部長室しかない。そんなものを簡単に間違えますか、皆さんがそんないいかげんなことを言って。だから、これだけのものが書かれているんだから、責任を持って作戦部長がここまで言って書いているんだから、間違っているというなら、これがどういうふうに間違ったか具体的に出してくれというんですよ。それしかない。そんな断片的に言われたって、君の考え方がたくさん入っているじゃないですか。回答にならぬじゃないですか、それじゃ。いかに非核両用だって、この作戦に核を載っけていれば一緒だよ。こんな大きな問題を二十三年間日本国民をだまし続けているじゃないですか。
  273. 北村汎

    ○北村政府委員 ただいま委員から海軍事典を刊行するに当たっての作戦部長のはしがきを御紹介になりましたけれども、もちろん、それはその当時においてそういう意図で書かれたものであると思います。ただ、それがそれから二十年たって今のアメリカ政府が、その当時の書かれた記述には誤りがあった、ですから今それを改訂する検討をしておる、こういうことでございますし、それから、私どもにとって核の持ち込みが行われたかどうかという最も基本的な問題、すなわちレギュラスⅡという核専用のミサイルが積載された潜水艦が日本に寄港したということについての私どもの疑いを晴らすために、米側に念を入れて照会をいたした次第でございます。  その回答として、その部分は間違っておるんだ、要するにレギュラスⅡというミサイルは実用段階には至らなかった、最も基本的なところを回答してまいりましたわけです。ですから、そういうことで、私どもはまた核持ち込みに対する懸念というものはそれで解消しておりますし、また、アメリカはその回答と同時に、日本に対する安保条約上の義務というものは、これはあくまでも誠実に遵守するということを再三申してきております。そういうことで回答は十分であると私どもは存じております。
  274. 大出俊

    ○大出委員 冗談じゃないですよ。(発言する者あり。)
  275. 倉成正

    倉成委員長 大出君、大出君、ちょっと私から伺っていいでしょうか。――大出君、三ページの五行目のデターレントミッション、それから五ページの一行目のデターレントミッション、tが二つ重なって、何か特別な意味があるんでしょうか。
  276. 大出俊

    ○大出委員 てにをはだ、そんなことは。
  277. 倉成正

    倉成委員長 北米局長。北米局長、答弁しっかりしてください。
  278. 北村汎

    ○北村政府委員 先ほども申し上げましたように、この海軍事典の記載の中で、これがもともと問題にされ、また国民の関心を呼んだ点は、この時代に潜水艦グレイバック及びグラウラーによって核兵器が日本に持ち込まれたかどうかというところであったと思います。で、その点を私どももやはり重視をいたしまして、そして、これは念を入れてアメリカ側に照会をいたしたわけでございます。そうして、その照会の結果、先ほどからも申し上げましたような基本的なその事実を否定する回答を得たわけでございます。その回答は、これはアメリカ政府から、アメリカ政府の権限ある官憲から我が方の権限ある官憲に対して伝えられたものでございまして、これは外交チャネルを通じる正式の回答でございますので、この点は、私どもは政府の正式な回答であると考えております。  そういうことで、そういう回答を出せばいいとおっしゃいますから、私はそこで読んでおるわけでございます。それで、全部それが得た回答でございます。ですから、その回答によって、日本の国民として最も関心の高い核の持ち込み云々の疑念はここで晴れておるわけでございます。したがいまして、それ以上の事実関係については、一々これを照会する必要はないと考えております。(発言する者あり)
  279. 倉成正

    倉成委員長 大出君に申し上げます。――大出君の質問は、結局、グラウラーがレギュラスⅡを積んでハワイを出航して、そしてパトロールした、これが横須賀に入ったということが中心の記事、この記事のどこが間違っているかということを政府側に聞いておるわけですね。ですから、北米局長、ひとつこの件について大出君の質問にこたえ得るような答弁をしてください。(発言する者あり)――大出君、専門家の大出委員がいろいろ御質問されているわけですが、ひとつぜひ答弁しやすいように何か角度を変えて質問していただけませんか。――大出君、質疑を続行してください。――(「委員長、寝ているのか」と呼ぶ者あり)委員長、起きております。  どうぞ大出君、せっかくこの資料を出されましたから、この資料について政府側の答弁、どういう点を問うておられるか、もう一度ひとつお願いします。――それでは、外務大臣の答弁を求めます。
  280. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私から答弁いたしますが、北米局長以上詳細な御答弁ができるかどうかと思いますけれども、しかし、私自身、外務大臣としての責任において答弁をさせていただきます。  海軍年鑑につきましての……(大出委員「軍艦事典だ、年鑑じゃない」と呼ぶ)海軍事典につきましては、先ほど局長が答弁をいたしましたように、外務省として米国大使館に正式に照会をいたしました。米国大使館からは、この事典の先ほどありました内容が間違っておる、こういうことで、この点については事典の訂正をいたすという、これは、米国大使館というよりは、米国政府を代表した回答があったわけでございます。  これは、もちろん、日本政府を代表してその点について照会をし、そしてまた、米国大使館を通じてでありますが、米国政府という形で正式な、権威のある回答があったわけでございます。  したがって、私どもは、この海軍事典は、その内容についての訂正が行われることは間違いない、これは二国間の正式な話し合いでございますから、間違いないというふうに、もちろん日米間の関係から確信をいたしておるわけでございますが、その中にあって、先ほどから局長が申し上げましたように、いわゆるレギュラスⅡは事実上は配備されていなかったということを、はっきりアメリカ政府が大使館を通じて明言をいたしておるわけであります。また、レギュラスⅠにつきましては、これは核、非核両用のミサイルである、こういうことでございまして、また先ほど局長が言いましたようなデターレントミッション、これにつきましてもやはり抑止打撃力といいますか、これについては一般的なことであって、ただ核の抑止ということだけではないんだということも言っておるわけでございます。  したがって、我々としては、そういう見地から、問題は要するに、昔の話でありますけれども、このグラウラⅠ号が核を積んで横須賀に入ったかどうかということは、これは極めて重大でありまして、もしそれが事実ならば、日本の掲げておる非核三原則というのは根本から崩れるわけであります。また、安保条約のいわゆる事前協議という信頼関係というものも根底から崩れ去るわけでございます。ですから、我々も非常にこれを重視してアメリカに照会をした、米国大使館に照会した結果そういう返答が返ってきたわけでございます。したがって、私どもは、とれまでの日米間の合意、日米安保条約に基づくところの、あるいはその関連規定に基づくところの事前協議の条項が日米間においては厳として厳守されて今日に至っておる、こういうことを確信いたすわけでございます。
  281. 倉成正

    倉成委員長 大出君、ただいま外務大臣の答弁がありましたが……。  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  282. 倉成正

    倉成委員長 それじゃ速記を始めてください。  それでは、大出俊君。――それでは、外務省、大出委員が提出されましたこの海軍事典は権威のあるものかどうかという点が一点、それからもう一点は、アメリカ側からの回答を文書で出せるかどうかということを大出委員は聞いておりますが、この二点についてひとつ答えてください。
  283. 北村汎

    ○北村政府委員 私の今までの答弁をいたしましたことを整理いたしまして、もう一度はっきり申し上げます。  これは、政府といたしましては、安保条約上、いかなる核兵器の持ち込みというのも事前協議の対象であり、事前協議なくして米国が我が国に核兵器を持ち込むということはあり得ないと考えておりますけれども、報道された米海軍事典におきまして、米国が横須賀に核を持ち込んだという記述は存在いたしませんけれども、政府としては、核の問題が我が国において国民の重大な関心事であること、また政府としては米側資料を有権的に解釈する立場にはないということにかんがみまして、念には念を入れるという観点から、アメリカの政府に対しまして、本件海軍事典の記述について照会をいたしました。これは口頭で照会をいたしました。  そして、その結果、米国政府として、次のとおりの口頭での回答を得ております。これは文書ではございません。  その第一は、グレイバック及びグラウラーは核搭載能力を有していた。しかしながら、本件記述は、これらの艦船が横須賀寄港中には核兵器を実際に搭載していたということを意味しない。  二番目には、本件海軍事典の記載は誤っており、米海軍としては本件海軍事典の改訂を検討中である。それから、グレイバック及びグラウラーは通常の展開の一環として横須賀に寄港したことはあるが、海軍事典に言及されているレギュラスⅡ型ミサイルは、潜水艦において実用段階には至らなかった。  三点目といたしまして、米国政府は安保条約及びその関連取り決めに基づく米国の義務を誠実に遵守してきている。  こういう回答を口頭で得たわけでございます。  そして、その回答を得た日にちを申し上げます。  まず、私どもは昨年十二月二十六日、外部からの照会もありまして、先ほども申し上げましたように、念には念を入れるという観点から在米大使館、我が方の大使館でございますが、それを通じて対米照会を行いました。これは相手は国防省でございます。  これに対して、当地時間十二月二十九日に米側から、先ほど申し上げましたように、グレイバック及びグラウラーは核搭載能力を有していた、しかしながら、本件記述はこれらの艦船が横須賀寄港中に核兵器を実際に搭載していたということを意味しない、さらに、米国政府は安保条約及びその関連取り決めに基づく米国の義務を誠実に遵守してきているという回答を得ました。  さらに、本年一月二十六日になりまして、ここのアメリカ大使館を通じまして米国政府は次のように言ってまいりました。本件海軍事典の記載は誤っており、米海軍としては本件海軍事典の改訂を検討中である、グレイバック及びグラウラーは通常の展開の一環として横須賀に寄港したことはあるが、海軍事典に言及されているレギュラスⅡ型ミサイルは潜水艦において実用段階に至らなかった、こういう説明を追加してまいったということでございます。
  284. 大出俊

    ○大出委員 ここに速記録を起こしたのがありますが、私、質問者ですから、もう一遍速記録全部、今の回答を見てみなければいけませんけれども、私があなたとやりとりをしているのは、文書回答とおっしゃるから、しからば照会をして文書をとったんだろうから、いつだれとだれが話してどういう文書をとったのか出してくれと、こう申し上げているのですよ。  というのは、新聞の発表したところによると、文書ということになっている。私は、文書ということになっているから、私のルートで調べてみた。ここに、調査報告書をアメリカ側がつくって日本大使館を通じて文書でと。そこで調べてもらったところが、アメリカ、ワシントンでは公表できない、日本大使館、ここに任せたという話が出てくる。私はさらに当たってもらった。そうしたら、これは守秘義務がございますから名前を挙げるわけにはまいりませんけれども、レギュラス・デターレントミッションというものについてまず聞いてもらった。認めておいでになるのですよね。そして、これはレギュラス・デターレントミッションという作戦命令と、この実行行為報告と、各艦の航海日誌などに基づいて編さんされたものだというのです。厳重な機密のもとに行われた作戦任務であって、極めて限られた人々しか知り得ないものであったという。当たり前でしょう、これは軍の作戦任務なんだから。三番目、したがって、この資料は作戦部長室にしかないという。これも本当でしょう。四番目は、間違いの記述などというのは本来あり得ないという。任務に従事した人がいるのだから、この記述が間違ったなんてことは口が腐ったって言えないというのですよ。そんなことはあり得ないというのです。そんなものは文書にして出せないという。だから、初めから文書がないのだ、これは。ないのにあるがごとくおっしゃるから出しなさいと言っているのだ、私は。初めからないのだ。  これだけの問題を本当に外交チャンネルのてっぺんでとおっしゃるなら、アメリカ大使館と日本の外務省との間にはいろいろな文書もございましょう、だけれどもやはり責任ある立場ではっきり回答を文書でおとりになるのが当たり前じゃないですか。それをあるがごとく装うということはどういうことですか。許しがたい。戦後二十何年、年じゅう問題になっているじゃないですか、この問題は。私は、だから文書とおっしゃるのなら文書で出してくれと言っているのだ。今になって整理してみて、いいですか、さっきから申し述べたことを整理してみてお出しをしたらいかがでしょうかと言ってくるというふざけた話があるか。そんなことで審議ができるか。無責任な話はない。
  285. 北村汎

    ○北村政府委員 私は、今までの答弁において、本件についてアメリカ政府から文書による回答を得たというようなことを言ったり、あるいはそういうようなことを装ったりするような答弁をいたしたことはございません。ですから、私は整理をしてということは、今までいろいろな議論が多岐にわたりましたから、この際一々事実に基づいてアメリカから何日にどういう回答が来たということをはっきり申し上げるために申し上げて、整理いたしたということでございます。
  286. 大出俊

    ○大出委員 大変恐縮ですが、ひとつこうしていただけませんか。  今までも、ライシャワー発言のイントロダクションの問題でもみんなそうですが、藤山・マッカーサー口頭了解なんかもそうですが、私も外務、防衛は長いですからよくわかっているのですが、いつも最後はそれですね。それではこの問題のけりはつかぬ。だから、明確にひとつ皆さんの方で、今回のこの問題は、これだけ立派なものがあるんですから、私は守秘義務もございますから人の名前など挙げませんけれども、一生懸命調べられるだけ調べたんですから。本来間違いないと言っている。それが口頭で間違ったと言ったって、何がどこに残るのですか、そんなことを言って。国会の議事録は、なんというのは年じゅう変えるじゃないですか。それじゃどうしようも……(「そんなことないよ」と呼ぶ者あり)待ってください、待ってください、待ちなさい。これだけの問題なんだから、あなた方はちゃんと文書でとりなさいよ。私が取り上げて、和文にして皆さんに差し上げているんだから、どういうふうに違うのか、向こうから文書でとってくださいよ、外務大臣。(「民間の訳文でしょう」と呼ぶ者あり)当たり前だ。英語でやりとりしたって、皆さん、聞いている人にわからぬじゃないですか。
  287. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日米間のこの海軍事典に関するやりとりの経緯については、これはもう北米局長が詳細に申し上げたとおりであります。これは日本外務省と米国大使館の間に正式に話し合ったことを、国会で外務省の局長が、また私も責任を持ってここで発言をしておるわけでございますから、我々はそういうことでもって御理解をいただく以外にはないと存じます。(大出委員「いつもこれじゃないですか、きちっとしてください、きちっと」と呼ぶ)
  288. 倉成正

    倉成委員長 大出君、北米局長は文書で回答を求めたということを発言してないと今まで申しております。ですから、その点は大出君お認めになると思います。ですから、今新しく御提案をされるわけでしょうか。もう一度、大出君、御発言ください。(発言する者あり)大出君、質問を続けてください。(「改めて文書できちっとやりとりしたら」と呼ぶ者あり)大出君、続けてください。(「休憩したらどうなんだ」と呼び、その他発言する者あり)  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  289. 倉成正

    倉成委員長 速記を始めて。  この際、二十分間休憩いたします。     午後四時五十分休憩      ――――◇―――――     午後八時三十分開議
  290. 倉成正

    倉成委員長 これより再開いたします。  この際、大出君、井上君、岡田君の質疑は、追って理事会において協議することとし、原田君の質疑に、入ります。原田昇左右君。
  291. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、昭和五十九年度予算につきまして関係大臣質問を行います。  まず、総括質問におきます同僚議員の質問を聞いていまして、幾つか問題が出ております。先般、会議録記載の事実を取り違えられたと思われる節があり、そのとき思ったことは、もし会議録の索引が電算化されて簡単にチェックできるシステムが確立していれば非常によかったのではなかったかなと思いました。このシステムは各方面から強い要請があります。  そこで、会議録索引について質問をいたしたいと思います。  まず、会議録索引についての、国会図書館が編さん発行している会議録総索引は、現在、第何国会まで刊行しておられるか、お伺いします。
  292. 荒尾正浩

    ○荒尾国立国会図書館長 お答えいたします。  第九十四回国会分、つまり、昭和五十六年六月までの分は刊行されております。  なお、本年八月までには第九十七回国会分まで、つまり、昭和五十七年十二月分までを刊行する予定でございます。
  293. 原田昇左右

    原田(昇)委員 第九十四国会まで刊行したということでございますが、今国会は既に百一回でございますから、既に二年以上経過していることになっております。どうしておくれているのか、その理由はどこにあるのですか。
  294. 荒尾正浩

    ○荒尾国立国会図書館長 会議録の総索引の刊行が非常におくれておりますことはまことに遺憾でございまして、大変御迷惑をおかけいたしまして申しわけなく思っております。  現在は、冊子形態で年一回刊行する方法をとっております。この方式は、一年間分の会議録約二万数千ページを閲覧いたしまして、事項名等を抽出してコンピューターに入力するための原稿を作成しておりますが、その際に、用語の統一や新しい事項の登録等について厳密な技術的調整を行う必要がありまして、さらに冊子形態で刊行する作業等が加わりますので、おくれが生じておるわけでございます。
  295. 原田昇左右

    原田(昇)委員 この編さん刊行を短縮することはできないのか、また、私たちが議員会館等においてコンピューターの端末によって会議録の索引を利用できる体制ができないのか、その考え方について伺いたいと思います。
  296. 荒尾正浩

    ○荒尾国立国会図書館長 お答えいたします。  現在編さん刊行のシステムを改善することによって、刊行時期を早めるように努力中でございます。本年八月までには第九十七回国会分までを冊子形態で刊行しますが、引き続いて短縮に努めまして、昭和五十九年度中には約一年のおくれまでに追いつく予定でございます。今後このおくれを大幅に短縮いたしまして、より早くかつ有効な情報サービスを提供するためには、現行の一年単位の冊子形態を一国会単位の冊子形態に改めるなど、いずれは少なくとも前国会までの分は次国会において利用できるように持っていきたいと存じております。また、今後はさらにデータベースによるオンライン情報検索システムに移行することが必要でありますので、これらについて検討中でございます。  なお、この間、御要請があれば、該当事項につきましては職員がすぐお答えできる態勢をとっております。
  297. 原田昇左右

    原田(昇)委員 委員長にお願いします。委員長は我が党の情報議連の会長でもございますから、この道のいわば権威者でございます。ぜひこの実現方についてシステムを早く確立していただくように、議長に御推進いただきたいと思います。
  298. 倉成正

    倉成委員長 承知しました。議運の委員長に申し入れます。
  299. 原田昇左右

    原田(昇)委員 次に申し上げます。出版のモラルについてであります。  我が党の三塚議員の二月十四日の質問によって、少女向けのいかがわしい雑誌に対し、放任しておくわけにはいかぬということがかなり皆さんに周知されてきたと思います。そこで、我が党としては、規制のための立法措置を早急にとるべしとの方針を認めたわけでございますが、これについて私は、さらにここに大変ひどい出版物を持ってまいりました。これは人殺しとか強姦の手引まで書いた、もう話にならぬものであります。表現の自由というのは自由社会において基本をなすものでございますけれども、このようないわば営利のために逆に自由をむしばむような極めていかがわしい出版物に対しては、我々は断固たる措置をとるべきではないかと思います。  そこで、総理府長官に質問したいのですが、まず、青少年の健全育成の見地からこれについてどう思われるか、またそのための対策はないかということでございます。
  300. 中西一郎

    ○中西国務大臣 先生お話しの出版物、実は私も読ましていただきました。大変びっくりをいたしました。それで、きょうの夕刊ですが、「セックス講座化 少女雑誌」という、きょう、あす続けて記事が載るのじゃないかと思いますが、自民党の動きなども実は紹介してございます。我々としてはかねてからこの問題と取り組んでおりまして、関係各省、またいろいろな団体がございます。それから出版業界もございますが、自主規制を要望してまいりました。それではとても足りない、十分ではないということで、各都道府県では青少年保護育成条例、御承知だと思いますが、これを制定しております。それでもまだいかぬということでもって、最近では各都道府県の担当の方において緊急指定制度、有害出版物を審議会などの議を経る前にもう指定して販売をとめさせる、それで罰則の適用もするといったような都道府県がふえてまいりました。私どもとしましては、近く、先般来のお話も踏まえて、三月の九日を予定しておりますが、都道府県の青少年主管課長会議を早急に開こう、そして今ある緊急指定の制度などを活用して、青少年保護育成条例の実施の万全を期していきたい、かように考えておるところでございます。
  301. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大変結構だと思いますが、何しろこれは時間がかかっては非常に問題であります。今の条例で緊急指定という制度があるはずなんですが、それはできないですか。
  302. 中西一郎

    ○中西国務大臣 お答えいたします。  緊急指定制度があるわけでございます。自治体によっては、その指定制度を条例で織り込んでない自治体も実はございます。そういったところは織り込むように話をいたしますし、既にそういう緊急指定制度を持っている自治体については、早急に発動してもらうということを要請いたしておるところでございます。
  303. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ぜひとも緊急指定によって、直ちにこういういかがわしい出版物について規制措置をとっていただぎたいと思います。  そこで、警察庁の保安部長来ておりますか。もし緊急指定が行われたら、直ちに取り締まりができるかどうかお伺いしたいと思います。
  304. 鈴木良一

    ○鈴木(良)政府委員 緊急指定が行われた場合には、その違反につきましては厳正に取り締まってまいりたいと考えております。
  305. 原田昇左右

    原田(昇)委員 次に、私は最近の国際情勢について極めて憂慮をいたしておるものであります。けさの情報によりますと、ソ連の空母ノボロシスクが対馬海峡を通って日本海に入ったということでございます。ソ連のSS20を初め極めて極東の軍備の増強が続いておりまして、我が国にとりまして直接の脅威であり、まことにゆゆしい事態であると考えます。政府はこのような事態をどのように認識し、今後どう対処していくか、例えばノボロシスクの極東配備について、政府はソ連に対して何らかの申し入れを行うのかどうか、外務大臣からお答えいただきたいと思います。
  306. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 極東地域におけるソ連軍事力の増強につきましては、我が国として強い懸念を有しておりまして、従来からかかる懸念をソ連に対して表明するとともに、特にSS20の極東配備について、それが極東の平和と安全に大きな不安を与えているとして、その削減、撤廃方を申し入れてきておるところであります。政府としては今後ともあらゆる機会を利用してかかる努力を継続してまいります。  ノボロシスクのその後の動向につきましては、本日午前七時半に対馬海峡を通過し、日本海を北上中と承知をいたしております。現段階において最終的な結論を出すのは依然として時期尚早と考えられますが、同空母の極東配備が明確になった場合は、改めてソ連に対しまして我が方の懸念を伝達することになると存じます。
  307. 原田昇左右

    原田(昇)委員 そこで、ソ連におきましてはチェルネンコ政権が発足したばかりでございます。この新政権がどのような外交政策を展開してくるか、まだもちろん明らかではありませんけれども、およそ新しい政権ができれば、当分の間は前政権の方針を踏襲しつつも、内部を固め、機を見て前政権に対するアンチテーゼ、すなわち前政権とは違った新しい方針を打ち出してくるのが通例であります。その意味でチェルネンコ政権が緊張緩和の方向に出てくることも我々としては期待していいのではないかと思いますが、我が国のこれに対する対応としてどのように対ソ外交を展開していかれるか、機を逸することなく措置をしていかなければならないと思いますが、いかがでございますか。
  308. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 御指摘のように、先般成立をいたしましたチェルネンコ新政権でも、従来のソ連の内外政策の中心部分が変わる可能性は少ないのではないかと思われるわけでございます。この点につきましては見守っていかなければならぬと思いますが、ソ連側が、今次のソ連新政権の成立によりまして、日ソ関係においても新たな対応をとることを我々としては強く期待をいたしております。日ソ関係だけでなくて東西関係、さらにまた、米ソの関係についても緊張緩和のために新政権が新たな対応を示すことを期待をいたしておるわけです。  今後の対ソ外交の具体的なスケジュールについては、まず三月十二、十三の両日、モスクワにおきまして第四回日ソ事務レベル協議を行うほか、時期は未定でありますが、国連に関する日ソ協議、さらに今秋の国連総会に際しては日ソ外相会談も行いたいと考えております。来月の日ソ事務レベル協議におきまして、ソ連との政治対話強化についてさらに具体的に話を進めていきたいと考えております。  その他、政府以外の他分野での交流も種々行われる予定と承知いたしておりますが、日ソ関係の対話を拡大し、相互理解を増進する上で有意義考えておるわけであります。
  309. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ぜひ外務大臣に頑張っていただきたいと思います。  そこで、いまの中東の情勢でございますが、イラン・イラク戦争後中東の情勢推移によっては、イラクが苦しまぎれにカーグ島を攻撃して、それに対するイランのホルムズ海峡封鎖ということも万が一起こるのではないかと憂慮されております。我が国としてこれを阻止するために具体的な何らかの手を打っておるのかどうか。また、もし万が一そういうようなことになっても絶対にあわてないだけの石油備蓄の態勢等はできておると思いますが、安心するように国民にはっきり御答弁をいただきたい。
  310. 豊島格

    ○豊島政府委員 我が国においては従来から石油供給源の多角化を進めております。それから石油備蓄も民間九十日、それから国家備蓄三千万キロリットルを目標に進めております。それから、IEAにおける国際協力、緊急融通システムというのがございます。それから、石油二法の緊急時の対策の整備ということでいろいろ努力をしてきておるところでございます。このたび万一ホルムズ海峡が封鎖されるという事態に至ったとしても、以上のような諸措置によって的確に対応するということによりまして、我が国の経済国民生活への影響を最小限度に抑えることができるのではないか、こう考えておりますが、いずれにしましても、今後の動向につきましては引き続き十分注視していきたい、このように考えております。
  311. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我が国としまして、今お話しのような憂慮すべき事態が起こらないように外交努力を続けていかなければならぬと思いますし、昨年私もイラン、イラク両国を訪問いたしまして、両国に対しまして早期に平和解決を強く呼びかけたわけでございます。  また、去る二月十二日のイラクによるところのIJPC攻撃の際にも、在京の大使を通じまして両国に対し、戦争のエスカレーション回避を訴えた次第でございます。ちなみに、イランは従来より自国の原油輸出が妨げられない限りペルシャ湾における安全航行を保証する旨繰り返し述べておりまして、イラン側のイニシアチブによって同海峡が封鎖されるという可能性は少ないのではないか、こういうふうに見ておるわけでございますが、しかし、ペルシャ湾の有事ということも全く考えられない、あるいはホルムズ海峡の封鎖ということも全く考えられないわけではないわけでございますが、そういうことのないように、また、そういう事態に対しては、今長官も答弁いたしましたように、我が国としてもできるだけのことをしなければならぬと思っておるわけでございますが、いずれにしても外交手段で、イラン、イラク両国幸いにして日本との関係はまだ依然として良好で、パイプがあるわけでございますから、これを通じてさらに辛抱強く積極的に紛争の拡大防止、拡大に自制を求めてまいりたいと思います。ホルムズ海峡が封鎖されるというようなことになればアメリカも介入するというようなことを言っておりますし、そういうことにならないように今後とも最大の努力を重ねていく考えでございます。
  312. 原田昇左右

    原田(昇)委員 次に、私は減税問題について御質問いたします。  減税の断行は国民生活に確かにプラスであります。しかし、世間には、間接税の増税で減税の効果はなくなってしまい、さらには公共料金の引き上げでかえってマイナスになるという意見もあります。しかし、公共料金は、本来コストに見合って受益者が払うべきもので、その調整がたまたま減税と同じ時期になっているということでありまして、そうだからといって家計の収支がマイナスになると考えるのはおかしいと思います。公共料金は税とは別のもので、そうすると、今回の減税に見合う増税は、一部は法人税で賄われているし、酒税等の増税もそう大きくないわけでありますから、増税によって減税が消えてしまうなどということはあり得ないと思いますけれども、いかがですか。大蔵大臣にお伺いをいたします。
  313. 竹下登

    竹下国務大臣 今回の所得減税、これは昭和五十二年以来の、言ってみれば社会経済情勢の変化に対応いたしまして所得税制を本格的に見直すというものであります。その規模も、言ってみれば現下の厳しい経済財政情勢の中におきましては相当の規模であるというふうに言えると思います。したがって、その財源をどうするかということになりますと、赤字公債にこれを求めればこれはまさに後世代にツケを回す、こういうことになります。したがって、これは絶対避けなければならぬ。したがって、財政事情をこれ以上悪化させないという基本方針のもとで、今度いわばこの法人税のほか、負担率としましては、三年間のうちに小売価格は上がっておりますから税の率が低下しております酒税、そういうものにある程度の負担をお願いする、こういうことにしたわけであります。  それから公共料金については、今も御意見を交えての御質問の中にございましたように、これは受益者負担を原則としながら、物価や国民生活に及ぼす影響にも十分配慮して厳正に取り扱って、真にやむを得ないものについてその適正化を図ったわけであります。したがいまして、いろいろこれらの持つ側面を、例えてみますならば、消費の態様は個人個人非常に違っております。したがって、公共料金一つずつ、それをいわゆる家計の中でどういう影響をもたらすかというようなこと、もとより、また物品税といいましてもこれは非常に範囲の狭いものでございますだけに、各般からこれを分析してみますと、結局、間接税増税あるいは予算関連公共料金の引き上げ等の影響は減税額の約半分程度にとどまるというふうに見られます。したがって、家計にとって負担超過になるという指摘は当たらないというふうに考えておるところであります。
  314. 原田昇左右

    原田(昇)委員 現在、民間の貯蓄というものはむしろ余剰が大変大幅に出ております。それに見合って財政赤字や国際収支の黒字が生じているというのが現状であろうと思います。  財政はこれ以上景気刺激策を行う余力がありませんので、そうすると、民間の消費や投資を伸ばしていかないと経済はバランスしないということになります。民間活力を発揮させるには、ことしは投資減税が、十分ではございませんでしたが、小規模であるとはいえ実施されたことを私は高く評価するものであります。  しかし、消費の奨励が必要なときに、これから大型間接税を導入するとか、そういう話がいろいろ世間に出ておりますけれども、消費を抑制するような形でこういうことをやるのはどうかと思うわけであります。  総理は大型間接税を考えないということでございますので、大変これに私は敬意を表しているわけでありますが、仮にこれからの経済の振興を図るには、この貯蓄過剰ということについても十分な検討を行って、マル優制度の運用の問題につきましてもグリーンカード制が期限が来ております。我が党も八月までには自民党の税制調査会で議論を詰めて結論を出そうということになっておりますので、これらについて慎重に検討すべきであると思いますが、これについて大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  315. 竹下登

    竹下国務大臣 今お話しになりました御意見は、いわゆる貯蓄と投資のバランス論、俗に言いますところのISバランス論に立脚した議論であろうと思っております。  確かに一般論として言えるISバランス論というのは、いわゆる貯蓄というものはどこかへ投資される。それは民間の設備投資であるかあるいは個人であるか、または国であるか地方であるか、そして外国であるか、これ以上の投資先というのはないわけであります。したがって、本来、財政に対応力ができておれば、そのときどきの経済情勢に応じてそのISバランス論というものを基礎に置いて運営していくということは、これは学説としても成り立ち得ることであります。  しかしながら、今日、言ってみれば、そういう意味におきまして、貯蓄というものはそれなりに、確かにアメリカに比べましても、可処分所得から貯蓄に回る率は日本がおよそ三倍程度でございます。したがって、そうなれば、この辺でいわゆる貯蓄奨励制度というものに対して考え直してもいいじゃないか、こういうような意見も確かにございます。  一方、また、このマル優の利用の実態からするいわゆる悪用、乱用、こういうような指摘もなされておるところであります。これらはそれぞれ公式ないろいろな審議会等の議論からも出ておる問題でございますだけに、今御指摘がありましたとおり、広く議論をしなければならないものの、少なくとも夏ごろまでにはきちんとしたグリーンカードに対応する措置として税調で御検討いただいて、今その推移を見守っておるということであります。  それから、大型間接税の問題は総理からも先日答弁がございました。ただ、よく言われますのは、直接税と間接税の相違は、言ってみれば、間接税はいわば納税者に選択の自由がある。そういういろいろな意味から、税調におきましてもそのこと自身の検討は引き続きしなければならぬ、このように言われておるということを申し上げておきます。
  316. 原田昇左右

    原田(昇)委員 最後に、今回の予算は歳出を切り詰めて、非常に厳しい予算ではございましたけれども、その中に、各省それぞれ極めてその乏しい中に知恵を出していただいて、将来に向けての非常に明るい、日本のこれから大いに育てていかなければならぬ部門をやっていただいたと思います。そういう目玉商品について、時間もございませんので簡単にお伺いしたいと思います。
  317. 倉成正

    倉成委員長 原田君、結論をお急ぎください。
  318. 原田昇左右

    原田(昇)委員 国土庁のリフレッシュふるさととか労働省の高齢者雇用の促進とか郵政省のニューメディアを中心としたテレトピア構想等がございます。こういった目玉商品について、それぞれの省から簡単に御紹介をいただいたらいいのじゃないかと思います。
  319. 倉成正

    倉成委員長 国土庁長官。簡潔に答弁願います。
  320. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 過疎対策といたしましては、過去におきましては生活基盤の整備あるいはまた産業基盤の整備等々、減少を多少鈍化をせしめておったわけであります。減少しておる状態であります。しかしながら、リフレッシュ推進は今度五十九年度で初めての予算であります。これはソフトの面でございまして、過疎というのは自然に恵まれておるわけです、そういう意味から、野鳥の森であるとか、あるいはまた遊歩道であるとか老人道路、あるいはまたスポーツ、その他あらゆる問題を自然を生かしてここにつくり上げていく。特に過疎地域というのは人情味豊かでありますから、ここで心と心の触れ合いをしていく。都会から多くの人に来てもらって、そして都会と過疎地域の心の触れ合いによって過疎地域の方々らにも自信をつけてもらう。そしてまた……。
  321. 倉成正

    倉成委員長 国土庁長官、簡単に答えてください。
  322. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 それでは、大変これは国土庁の知恵でございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  323. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 御承知のとおり、我が国はもう最近は世界一のスピードで先進国の中では高齢化社会に入ってまいりました。私も原田先生もその部類であります。人生五十年から八十年になったのですから、高齢者対策は大変な目玉でございます。  そういうことで、今までは六十歳定年の一般化を進めておりまして、これは既に五割を超しております。そして、近いうちには六割の会社が既に六十歳定年をやろうという気構えでございます。そういうことでありまするが、この六十歳前半層が、これは戦後の日本を支えてきた苦労した世代でありますが、ここらにしわ寄せが来ておるわけでありまして、しかし、この方々は短時間労働というのを希望しておられるわけでありまして、それでそのニーズに合ったように新規に雇い入れる方々、雇用を延長をする方々、あるいはまた定年退職者の早期就職を促進するための助成制度、そういうものを整えてまいります。また、任意就業の方々にはシルバーセンターを充実してまいります。終わり。
  324. 倉成正

    倉成委員長 郵政大臣。駆け足で願います。
  325. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 高度情報化社会に対応して、地方にそういった高度情報化を促進するためのモデル版をつくろうということで、いま全国十都市くらいを今年度中にやろうと思っておるわけでございます。それぞれ地域のニーズを吸い上げて、例えば研究学園型とか福祉重点型とか行政効率型とか、さまざまな地域ニーズを生かしたINS時代の先駆的な試みとしてテレトピア構想を打ち出しておるわけでございます。テレトピアはテレコミュニケーションユートピアの略称でございます。
  326. 原田昇左右

    原田(昇)委員 どうもありがとうございました。
  327. 倉成正

    倉成委員長 原田君の質疑の冒頭、不適当な発言があるとして取り消しの要求がありますが、速記録を調査の上、委員長においてしかるべき処理をいたします。  これにて原田君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時五分散会