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大内委員 私は、今具体的に物を問うておりまして、「増税なき財政再建」というのは、増税を主力とした財政再建になっている。もっと本当に正確に言えば、「増税なき財政再建」ではなくて「財政再建なき増税」になっているのじゃないか、私は実態はそうだと思うのです。それは決して揚げ足をとるために申し上げているのではありません。この深刻な事態に対してどういう
政策選択が必要かということについてお互いに苦しみたいと思って申し上げているのです。つまり、そのような大増税をやりましても、財政再建されているなら、つまり財政の体質改善が進んでいるなら、私はそれは
一つの選択だと思うのです。しかし、事態は違うのです。それを私は具体的に申し上げたいと思うのです。
その
一つは、
政府はこれまでたびたび赤字国債ゼロ方針というものを発表してまいりました。
昭和五十五年の赤字国債発行ゼロを目指しましたのが、
昭和五十一年二月の財政収支試算でありました。続いて、五十七年のゼロを目指したのが、
昭和五十三年二月の財政収支試算でありました。そして、鈴木内閣から中曽根内閣に引き継がれた五十九年度ゼロ方針、これは御案内のように、
昭和五十四年二月に出されたものです。全部失敗しました。
政府が出した赤字国債ゼロ方針はことごとく失敗いたしました。それは事実であります。そして、今御指摘のような六十五年度赤字国債体質からの脱却方針が出されているのであります。
問題は、赤字は減ったかということであります。赤字はほとんど減っていません。赤字という
意味は赤字国債という
意味であります。この三年間を見ておりましても、大蔵大臣よく御存じのとおり七兆円
水準であります。しかし、もっと実態的に言えば、定率繰り入れ等の停止をやっておりますので、いずれも八兆円を突破する状態にあります。つまり、増税をやって赤字国債からの脱却をやるんだと言いながら、赤字国債は減ってない、むしろふえている。そして、これまで出してきた方針三つは全部失敗に終わりました。
経済の成長率はと見れば、あの五十六年から縮小均衡財政に入った、その三年間、言うまでもなく五%台から転落して三%台の最悪の事態に陥りました。それを
政府は世界不況の責任になすりつけているわけで、私は必ずしもそれだけではないと見ております。
自然増収は、毎年二兆円前後に落ち込んでしまいました。ここのところの三年間は一兆六千億、一兆八千億、二兆二千億、これは非常に重大な
状況が財政の面で出てきている。したがって、これは財政欠陥に結びつく。五十六年度は御存じのとおり三兆三千億、そして五十七年度は六兆一千億、そして五十八年度、昨年は、一生懸命精査したのでございますが、もちろん今度の補正で明らかなように、二兆数千億の税収欠陥が生まれる。一般歳出も頭打ちが続いてきている。しかもこれは、山口主計
局長といえば
日本の最もエリートの中のエリートと言われておりますが、五十七年度からは、赤字国債の発行と同じであると山口主計
局長が国会で
答弁された定率繰り入れの停止が始まりました。この三年間で総額四兆二千億。そして
昭和六十年度からは、この十年間
政府みずからが財政の節度を失うからやってはいかぬと言い続けてきた赤字国債の借りかえが始まろうとしているのであります。
そして、
予算編成を毎年度見ておりますと、最近は粉飾
予算編成が非常に員立ってきている。これはいろいろな
数字を持っています。これは臨調が最近答申の中で厳禁していることです。緊急避難的措置というもの、五十八年度も五十九年度も二兆円を上回っております。
そして、五十八年度三つの最悪事態が生まれています。それは、
一つは中小企業の倒産件数であります。一万九千百五十五件、二兆五千八百四十一。億円の負債総額、これは戦後最大であります。最悪であります。失業率二・六%、これも
昭和三十年最高の二・五%を上回る最悪の事態でございます。国際収支、経常収支、貿易収支ともに膨大な黒字が発生し、これが貿易摩擦の大きな原因をつくり出しております。
つまり、こうやって見ておりますと、
日本の財政の状態というのはまさに重病状態にあります。
政府のとってきたこの
政策によってだけとは申しませんが、それも大きな原因があってこういう重病状態になった。それは財政
政策の失敗の証明だと思うのですが、大蔵大臣、いかがでしょう。