○
大出委員 海軍年鑑は、今後ろからお話があるとおり、公式な
事典でございます。年鑑でございます。しかも、これも根拠のある
資料を私は使っております。この出所は後から申し上げますが、あなた方いろいろ勘ぐりますから、お話を承ってからこの
記述を申し上げますが、それで決着をいたします。そこで、まだ申し上げることがあるから、もう少し話をさせていただきます。
これはどういうことかといいますと、時の情勢、ここに、これは非常に思い出しますとぞっとするようなことなのでありますが、これからトマホークが入ってくる、
日本周辺は全くの核の海になってしまうわけでありますけれ
ども、当時の状況をちょっと申し上げますと、
ソ連の
ミサイル分野の進歩が、一昨年来、
米国に与えた脅威は大きい。一九五八会計年度計画では
米海軍当局は、ポラリスの開発の段階と睨合せて、
つまり、ポラリスの開発が間に合わない。間に合わないので
レギュラスをとにかくこしらえてソビエトに対抗する、そして
作戦任務につかせる、こういうことなんです。
ポラリス
発射潜水艦の設計と建造準備が間に合わず、これを次年度以後に実行する予定であつたが、議会はその追加予算でまず三隻を、次いでさらに二隻、合計五隻のポラリス
発射艦の緊急建造を海軍に強要した。
議会筋が
米海軍につくれと言った。話は逆なんだ。
通例いかなる国においても、その建艦計画たる、軍事当局の立案が、予算上の制約から、縮小に縮小を重ね、
日本でもそうでございましょう。概算要求するが削られていくでしょう、
日本の防衛費も。ところが、これは逆なんだ。
縮小に縮小を重ね、さらに議会においてこれが大幅に削られるのが普通であるが、ひとり最近の
米国においてのみ軍当局が、追加建造を強要され、これの実行に極度の努力を払うという事態をみる。
かくてポラリス
潜水艦の設計は、戦時の緊急そのままの異状な努力で最短期日間に完了し、既に昨春来、逐次キールがおかれるに至った。何れも特急
工事であり明年度内の完成を目標としている。これらのポラリス
発射用原子力
潜水艦は、排水量実に五千六百トンに達し、前記トライトンよりさらに大きい。
従来の最大
潜水艦であった我が伊400型が三千五百三十トンであったので、これと比較をするといかにこの
潜水艦が大きいかわかるだろう、こうなっている。
これらの艦は、つまり、当初計画よりおくれまして、ソビエトに対抗できない。そこで、
レギュラスⅡ型というものに注目をして、これを先につくらせた。とりあえずそれを
実戦配備につけておいてソビエトに対抗する。そういうことで議会はポラリスをつくれということを逆に軍に、これは強要という言葉はいいかどうかわかりませんが、そういう状態になった。これが当時の事情なんです。
さて、そこでもう
一つ、しからば一体当時はどういうソビエトとの
関係になっていたか。今思い出すのでありますが、ここにございます。長いですから、幾つか抜かしていただいてお聞きいただきたいのでありますが、「曳航型」、ソビエトの
潜水艦でありますが、
戦争末期にドイツがV2号
格納筒を
潜水艦で曳航して敵地に近づき、水上でこれを
発射する計画をし、
これは東ドイツとの境のノルトハウゼンというところの地下工場で、第二次大戦末期にソビエトがこの工場を占領いたしましたから、ここでV2型というのを押収をした。これがソビエトの
ミサイルの原型でありますが、
ソ連がその
格納筒の実物を入手したことからこれを開発していることが想像され、W型
潜水艦が射程六百哩程度の
ミサイル発射筒三個を曳航して随所に行動しこれを
発射できるという
情報が伝えられた。
それで、
米国の
レギュラス式のバード型
ミサイルを
潜水艦の甲板上に設けた格納庫に搭載し、浮上してこれを
発射する方式をソ連も採用しているというニュースが数年来散見され、
そこで、
フルシチョフ首相その人と推定されるソ連高官がソ連は射程六百五十哩の
ミサイルを積んだ
潜水艦を保有すると語った
とフランスのコンパなる、これは仏紙ということにしておきますが、フランスの
新聞でありますが伝え、
またソ連海軍機関紙「赤色艦隊」はソ連新型
潜水艦が北氷洋の氷原下を潜ってハドソン湾に侵入し
米国の内陸七、八百哩にある戦略基地を原爆
ミサイルで壊滅できると述べている。これを裏書きするごとく一九五九年五月米軍がアイスランド沖で写真撮影に成功したソ連大型
潜水艦は、Z型の艦橋構造物を後方に延長して大型弾道
ミサイルを垂直に格納する構造になっており、
米国のポラリスのごとく水中から
発射できるものと推定されている。ただし射程は五百哩程度で搭載数も僅か二発らしい。しかしとに角、ソ連が
米国に先んじて改造型とはいえ弾道
ミサイル発射潜水艦を洋上に行動させている事実は注目に値する。
という当時の事情。
もう
一つだけ申し上げます。
ここでマリノフスキー元帥が五七年十一月の十日、これは五七年にさっきの
潜水艦が、
グレイバック、
グラウラーができているわけでありますけれ
ども、
マリノフスキー元帥は五七年十一月十日「……ソ連海軍は海戦に必要なすべての現代兵器によつて武装されている。海軍は自国の海岸国境を防衛するだけでなく、洋上において敵の海上兵力を撃滅する能力を持っており、更に進んで他の大陸に在る目標に対し強力なる打撃を与え得る……」と発表しており、これらの所論により前記の敵海上交通路の破壊と海上兵力の撃破更に敵の工業中心地、軍事基地、港湾等に対する戦略攻撃というソ連海軍戦略思想の重点が明瞭にうかがわれるのである。
ブラジミルスキー海軍大将は「核弾頭
ミサイル装備
潜水艦は敵の工業中心地、基地、港湾に有力な奇襲攻撃を行い得る」と述べ、五七年パーヴロウィチ海軍少将は「……
誘導ミサイル搭載
潜水艦で敵の産業、政治中心地を攻撃するため、水中より
発射する必要がある。……また
潜水艦に曳航された
ミサイル発射器の発展に努めねばならぬ。」
こういうふうに当時ソビエト側が、対立しているさなかでありますが、次々にこれを打ち上げているのですね。
これが
アメリカ議会で大変な騒ぎになりまして、ともかく
レギュラスⅡ型を成功させて
実戦配備につけておく、そうしてポラリスを昼夜兼行でつくらして追いつく、こういう計画が立てられておる、さっき読み上げましたように。だから、
レギュラスⅡ型の実験に成功した。したがって、Ⅱ型の成功については、特にそのⅡ型については
米国海軍は深く満足して、既に
グレイバック以下の数艦によって、
グレイバック、
グラウラーですよ、その後の
ハリバットですよ、配備をしちゃったんだ。
使用が可能と既にもうなっちゃってる。そして二百個の生産を終わったので、二百個の
レギュラスⅡ型ができたので、これを実戦と訓練と両方に
使用しても当分の間は大丈夫だ。だから、議会は予算つけるから、ポラリスを早くつくれ、こういうことになった。はっきりしているでしょう。当たり前じゃないですか。
アメリカがここで言っているように、誇示したくなるのは無理もないです、ソビエト側はどんどん打ち上げているわけだから。「この
任務は一九六〇年三月十二日から五月十七日まで続いたが、核弾頭を備えた
艦対地ミサイル・レギュラスⅡを完全搭載してハワイを出発した。そうした
抑止任務、
作戦パトロール」、これは軍の作戦なんだから、作戦というのは港へ着かなきゃ終わらないんだから、「
パトロールは、一九六〇年五月から六三年十二月にかけて九回行われ、そのうち四回目は一九六二年四月二十四日に
日本の
横須賀港で完了した」、
横須賀へ着いて
作戦任務解除という。当たり前じゃないですか。
だから、海軍年鑑第三巻に百六十七ページから百六十九ページに明確に書いてある。公式
文書ですよ。そんないいかげんなことを言われて、そうでございますかなんてばかな話はありますか、これだけの問題を。はっきりしてくださいよ。わかっていて、あなた、ごまかすのじゃない。答えてください。こんなふざけた答弁、何ですか一体。黙って引き下がれると思っていますか、これ。ここに明確な
資料があるのに。