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森国務大臣 三塚先生から御指摘がありましたように、中教審は御
承知のように、文部省固有の事務であります教育、学術、文化の基本的な事柄を審査して研究をする、調査する、この機関でございます。したがいまして、今度新しく
総理の構想によってできます機関は、わが国社会におきます二十一世紀において一体どのような教育の制度が、どのような教育のあり方が最も
日本の国にとってよろしいのか、こういう大きな大局的見地に立って検討を進めていくものでございますから、本来競合するものではないと私どもは考えております。
したがいまして、常々も申し上げておりますが、決してこの新しい機関はゼロから出発するものではなくて、いろいろな角度で検討をしたすばらしい中教審の答申がございます、これらを一つの集大成として、この基盤の上に成り立って議論を進めていく。あるいは
総理のもとにございます、井深さんが中心になっていらっしゃいます文化懇、この
日本の教育、学術、文化、大きな
範囲の中でいろいろなお考えが間もなく取りまとめられると伺っておりますので、これを一つのペースとして、二十一世紀の
日本民族としてふさわしい教育のあり方を、それぞれの権威の幅広い方々に御検討いただきたい、このように考えておりますので、中教審につきましては、その機関の構想あるいは性格あるいは人選にある程度の一つのめどがつきますまでは、しばらくの間はこれはお休みをいただくといいましょうか、もちろんこれからできますその新しい機関との関連はどのようになるものか、その点も十分考えながら進めてまいりたいと思っております。
もう一つ御心配をいただきました。これまで一生懸命にやってまいりました中教審、文部省、これをないがしろにするものではないか、このような御心配をいただいて、文部事務当局の責任を預かる私として、むしろ大変感激をいたしておるところであります。しかし、中教審で数々の答申をちょうだいをしてまいりましたけれども、幾つか申し上げましても、どうしても文部省一省だけでやりこなせない面というのが出てきております。三塚さん御
承知のとおりでありまして、四十六年の答申に基づいていろんな角度で
法律もつくってまいりましたし、制度の改善も進めてまいりました。しかし、例えば先導的試行というくだりがございます。あるいは、先ほど
総理からちょっとお話がございましたが、いわゆる就学年齢、幼児教育の面がございます。四十六年の中教審の答申では、幼稚園の設置義務というものをはっきりと明示をいたしておりますけれども、どうしてもそこのところは、保育園の問題だけは文部省としては考えられない問題でありますし、幼稚園のことを厚生省として考えると言っても、これは無理なことでございます。
日本のこれからの将来を考えてまいりますと、いままでは大体人生五十年、六十年といいますが、もう七十年になってしまいました。進学率も幼稚園から大学まで大変ふえてまいりました。そういう中で、一体
日本の教育体系や教育の年限はどの程度が一番いいのだろうか。こんなことも一つの
考え方を示さなければならない時期が来ておる。教育は、あくまでも学問を追求していくということも大事でありますが、すばらしい人格を形成をしていくということもこれまた大事な柱になるじゃないか。しかし、学問と真理の追求をしていけばいくほど、どうも社会的にいろんな副作用が出てきているのじゃないだろうか、そのことが教育荒廃だ、こう言われる。その教育荒廃、非行、壁あるいは受験地獄、そういうものを、やはり学問を進める大学の
先生方や教育者にこれを直せと言っても、どだい無理な話なのではないだろうか、これはやはり
政治家の我々が考えていかなければならぬことではないだろうか。こういうふうに考えますと、本当に教育というものをもっともっと大きな力で、そして何といっても二十一世紀、
日本の国がこれから生きていくにはやはり人的資源が最大の資源でありますから、これまでは世界の国に追いつけ追い越せと頑張ってきた
日本の教育だけれども、これからは世界の先頭に立っていく
日本人かもしれない、世界の多くの皆さんから理解と尊敬を受けられるような民族になっていかなければならぬ。そういうふうに考えますと、これまでの教育で果たしていいのだろうか。
こういうふうに考えますと、いま
総理からのお話がございましたように、多くの皆さんの御意見を求めながら新しい
日本の教育体系をつくり上げていく、そういう一つのいい機会になってきた。このことにむしろ
文部大臣初め文部省は大変心強く
感じて、文部事務当局も大変な大きな意気込みで、
日本の本当にすばらしい教育制度をぜひ新しい角度からつくり上げていきたい、こういう熱意に燃えておりますので、どうぞひとつ三塚先生も党の立場からぜひ文部省の御支援をいただきたい、このようにお願いもあわせて申し上げておく次第でございます。