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1984-02-13 第101回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月十三日(月曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内啓伍君       相沢 英之君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       鹿野 道彦君    海部 俊樹君       金子 一平君    澁谷 直藏君       砂田 重民君    田中 龍夫君       高鳥  修君    玉置 和郎君       中馬 弘毅君    橋本龍太郎君       原田  憲君    三原 朝雄君       村田敬次郎君    村山 達雄君       稲葉 誠一君    上田  哲君       大出  俊君    島田 琢郎君       清水  勇君    田邊  誠君       武藤 山治君    矢山 有作君       湯山  勇君    草川 昭三君       斉藤  節君    正木 良明君       矢野 絢也君    木下敬之助君       小平  忠君    渡辺  朗君       梅田  勝君    工藤  晃君       佐藤 祐弘君    瀬崎 博義君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外務大臣臨時代         理         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         (国土庁長官稲村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣参事官   中村  徹君         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      禿河 徹映君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         行政管理庁長官         官房審議官   佐々木晴夫君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         行政管理庁行政         監察局長    竹村  晟君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省条約局長 小和田 恒君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齋藤 尚夫君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省薬務局長 正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         厚生省援護局長 入江  慧君         社会保険庁長官         官房審議官   小島 弘仲君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電気通信         政策局次長   富田 徹郎君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         自治大臣官房審         議官      田井 順之君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         会計検査院長  鎌田 英夫君         会計検査院事務         総局次長    佐藤 雅信君         会計検査院事務         総局第一局長  西川 和行君         会計検査院事務         総局第四局長  磯田  晋君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   武藤 嘉文君     鹿野 道彦君   井上 一成君     田邊  誠君   山原健二郎君     梅田  勝君 同日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     武藤 嘉文君   梅田  勝君     佐藤 祐弘君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、総括質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田邊誠君。
  3. 田邊誠

    田邊(誠)委員 最初に、ソビエトアンドロポフ書記長死去されました。心から弔意を表したいと思います。  ソビエトに対して政府は、今までとり来った外交のあり方についてはいろいろと意見があるところでございまするけれども、このアンドロポフ死去に対して総理は一体どのような所感をお持ちであるか。そしてまた、安倍外務大臣が葬儀に参列をいたしておりまするけれども、これを機にいたしまして、ソビエトに対するところの外交についてお考えがあれば、この際承っておきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ソ連の故アンドロポフ書記長の御逝去に対しましては、心から哀悼の意を表する次第でございます。アンドロポフ書記長の御逝去に対しましては、政府及び国民を代表いたしまして安倍外務大臣に弔問に行っていただくことにいたして、出発をいたしました。  今後ソ連の内部でどのような編成が行われるか、私たちは重大な関心を持って注目しておりますが、いずれにせよ、東西の緊張は緩和されて、軍縮、特に核軍縮交渉が進展されることを一日も早からんように願っておりますけれども、そういう考えに立ちまして、御逝去に対して総理大臣談話も発表した次第でございます。
  5. 田邊誠

    田邊(誠)委員 今総理が言われましたけれども、ソビエト指導者が亡くなられたことに対して我々は心から哀悼の意を表すると同時に、今までややもすれば対ソ外交というものが冷却しているのではないか、あるいはまたソビエトを敵対視してきたのではないか、こういう批判があるだけに、我々は今後相互理解の上に立って真の友好親善というものが運ばれることを心から期待をしているわけでございまして、そのためには、何といっても米ソ間のいろいろな意味におけるところの交渉の促進が望まれるところでありまするけれども、ただ、私はこれを米ソ間の交渉というだけにゆだねてはならないと思うのでありまして、それに当たって我が国自身が果たすべき役割、これを自覚をしながら我々は最善の努力をしなければならない、このように思っておるわけでございます。その意味でもって総理の今後におけるところの努力を心から願ってやまない次第でございます。  この問題につきましては、恐らくいろいろな事態の進展によりまして当予算委員会においてもまた質問があろうと思いますので、とりあえず私どもの見解と希望を申し述べておきたいというように思っておるわけでございます。  大国指導者死去について昨今の新聞が、マスコミが大きく報道をいたしておるわけでございますが、私は、総選挙後にさまざま起こりました社会現象の中で、実は二つ事件について思い出して、総理のこれに対する率直な感想をお聞きをしたいと思うのでございます。  その一つは、一月十八日に起こりました三井三池有明鉱の災害でございます。八十三人の方々が犠牲になられました。心から哀悼の意を表したいと思うのでございます。  この有明鉱事故原因対策については、当然今原因を探求しつつあり、対策を講じつつある、こう思っておるわけでございますから、これについては私は多くを言及をいたさないのでございまするが、しかし、この三井三池有明鉱は、数少なくなりました日本炭鉱の中では最優良鉱である、そして新しい技術を投入をして近代化合理化も進んできた炭鉱である、こういうふうに承っておるわけでありますが、その炭鉱にしてこういう事故が起きるというところに私は実は大変大きな関心を持ち、こういったことが起こらないようにするためには一体どうしたらいいのかということに実は考えをいたしておるのであります。  何か、原因についてはつまびらかではありませんけれども、一説によりますると、ベルトコンベヤーの横ぶれ防止装置についての未設置であったことが原因ではないかとか、あるいはベルトコンベヤー発火地点について保安監視員がいなかったのではないかとか、あるいはかって問題になったベルトコンベヤーが焼け焦げをしておったけれどもそれを放置したではないか、また、初期の消火と地上センター避難指示を怠っておったのではないかということを国会委員会場所において通産当局等答弁をいたしておるわけでございますが、私は、こういった地下労働者というものが働いておる職場あるいはまた危険な場所でもって働いておるところの人たち、こういった人たちに対して、その生命をやはり大事にする、生命というものはやはり第一に考える、こういうことがいかに企業活動といえども必要ではないか、こう思っておるわけでございまして、この事故教訓として生命尊重の立場に立って今後の社会活動を行われることを私は強く望んでおるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三井有明鉱の御遭難に対しましては、心から哀悼の意を表する次第でございます。  さきに夕張の事故がありまして、またこのような悲惨な事故がありまして、本当に残念至極でございます。特に、三井有明鉱の場合は非常に機械設備の整っているという定評のある炭鉱でありましただけに、我々は詳細に事故原因を究明して、再発防止に努めなければならぬと思います。  私の印象では、いかに機械化が進んでおるといえども、常時安全状態の点検が必要である、機械自体が作動しているかどうか、あるいはこの機械の対象である状態炭鉱状態、ガスとか、あるいはそのほかの機関状態が安全な状態にあるかどうか、機械が点検すると同時にその機械自体人間が常時点検して、鉱山の皆様方が安心して仕事ができるような体制をますます充実していかなければならない、機械に頼り切ることは非常に危険である、そういうことを非常に痛感した次第で、対策の万全を期したいと思います。
  7. 田邊誠

    田邊(誠)委員 安全対策のことは常に言われておるわけでありまするけれども、しかし、これは事故が起きた直後にそれが喧伝されるだけでありまして、ややもすると、本当に働いておるところの人間の命というものを大切にするような、そういう企業活動というものが怠りがちであるということについて、我々非常に残念に思っておるわけでございまして、ぜひこういうことを再び起こさないような、ひとつそういう政府としての対応も私は望んでやまないのであります。  実は、もう一つ痛ましいことについて申し上げたいと思うのですが、それは、旧臘、十二月二十三日に都内の高層ビルの広場でもって女性の死体が見つかった、死後三カ月を経ておった、こういうのであります。この女性は、秋田から上京して会社に勤めておった二十歳の人である。この人が飛びおり自殺をした、こういうことがわかったのであります。この二十の女性は収入が八万円、八万三千五百円と言われておりまするけれども、その半分、四万円くらいを実家に送っておって、あとの四万円くらいで生活をしておった、ほとんどめん類で生活しておった、こういうわけであります。  私、このことを申し上げるのは、何かセンチメンタリズムのように思われましょうけれども、豊かさが言われておる今日であります。そして、いわば経済大国になった日本、それが国内的にも国際的にも果たすべき役割はどうかということを、本委員会で論じなければならぬところであります。しかし、その中でもって、この豊かさが言われている中で、都会の谷間でもって若い人間の命というものが守り得なかった、死の道しか選べなかったということに対して、私は現代に生きる政治家として、こういった生活の苦しみの中で死の道を選ばなければならなかったような、そういう国民がおるということ、このことを忘れてはならない、そのことがやはり我々が政治に立ち向かうところの出発点である、起点にしなければならない、こう私は思っておるわけでございまして、実はこの二つ事件というものを教訓にして今後我々は政治場所でもって諸般の問題を論じていかなければならない、私はこういう感想を持っておるのでございます。何かございましたら一言。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非常に豊かさという言葉が言われておりまする反面にそういう暗い面が社会にあることは、まことに残念であり、政府としても申しわけないと思う次第でございます。お一人の命といえども、政府にとりましては大きな責任を感じなければならないと思います。そういう面につきましては、関係各省等を督励いたしまして、一人といえどもそのような不幸なことが起こらないように今後とも戒心してまいりたいと思っております。
  9. 田邊誠

    田邊(誠)委員 私は、政治家としての心構えを実は総理にぜひおわかりいただきたいと思って申し上げたのであります。  これから質疑を続けたいと思いまするけれども、どうも国会質疑はわかりづらいぞ、余り専門的であり過ぎるじゃないか、こういう批判がございます。私はなるべく平易に、わかりやすい質問をいたしたいと思います。そして、国会質問というのは、ただ言いっ放し、聞きっ放しという形ではなくて、その中でもってお互いにコンセンサスを得られることについてはこれをひとつ得ていく、こういう努力が必要だろうと思うのでありまして、国会というものがそういった協議の第一歩であることは私が言うまでもないのであります。したがいまして、私のこれから申し上げることについて、もし誤りがあれば率直に正していただいて結構でございます。そしてまた、私の意見についてもし総理が受け入れられる点がありましたらば、従来の行きがかりを捨てて率直に受け入れていただく、ここに私は国会の論戦というものが実り多いものになるのではないだろうか、こう考えておりますので、そういった点でひとつ論議を進めさせていただきます。したがいまして、余り冗長にわたらないで端的にお伺いいたしますので、問題の核心についてひとつ率直な答弁をお願いしたい、こう思っておるわけであります。  昨年の十二月の総選挙国民審判が下ったわけであります。中曽根さんが率いるところの自民党は、御承知のとおり、解散時の二百八十六を大きく減らしまして二百五十、実はこういう半数割れの結果になったのであります。その後、無所属を含めて二百五十九になりましたけれども、やはり過半数すれすれでございました。  この国民が下した審判というものは、絶妙のバランス感覚があると私は思うのでございまして、今までの政権政党であるところの自民党中曽根内閣がとってまいったところの姿勢、こういったことに対して誤りであるとすればやはり選挙でもってその審判を下す、また、野党が非常に物足らないということになればまた自民党に対して利を与えるという形になるだろうと思うのでありまして、私は、この国民意識国民のこのいわば表にはあらわれないところの感覚、こういったものを大事にしていかなければならぬと思うのであります。  総理選挙中に随分言いたいことを言いましたね。野党はリンリンとスズムシのように鳴いている、選挙ですからお互いにかなり相手を攻撃することはありまするけれども、しかし、それにしても何か政策を全部持たないのではないかというようなことを言ったけれども、これは誤りですね。政治倫理の問題を言われたんでしょう。しかし我々は、政治資金規正法にしても、あるいは国会議員大臣資産公開法にしても、国会法の改正にいたしましてもすでに国会に提案をしておるのです。ですから、そういったことについて、あなたは御存じないのかどうか知りませんが、野党大分攻撃をされた。これはどうも余り品がないということで、その後あなたは大分おしかりを受けたのではないかと思うのです。  しかし、それだけじゃないのですね。やはりこの中曽根内閣一年の政治、これに対して国民は厳しい批判を加えたんじゃないでしょうか。やはりあなたの外交姿勢というものがタカ派的な姿勢である。去年の一月からずっと一年間たどってみると、いろいろと浮き沈みがあります。時にハト派的なことを言ってみたりしますけれども、あなたの本質というものがタカ派的だという印象はぬぐえないということではないでしょうか。  そしてまた、五十四年の九月の解散のときもそうでしたけれども、あのときに大平さんは一般消費税ということを言われた、国民はそれに対しておきゅうを据えたということでしょうけれども、やはり中曽根さん、あなたも減税やるやると言った。去年うち我々との約束を破ってちょっぴりしかやらなかったけれども、しかし、減税のその見返りとして増税をやるという予告が選挙にあった、これに対してやはり国民は、みずからの暮らしを守るという、そういった意識から自民党には投票しないぞ、どうもこういう形になったんじゃないかと私は思うのでございまして、この選挙の結果について総理のしばしばの御発言がありましたけれども、もう一度この席でもってひとつあなたの反省の弁をお聞かせ願いたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 選挙の結果につきましては厳粛に受けとめまして、国民皆様方の御意思が那辺にあるかという点を十分反省もし、また政策として生かしていきたいと考えております。  私は、選挙全般を総観、総覧いたしまして、やはり政治倫理に対する政治姿勢というものについて国民に御不満がかなりあった、それを解消することができなかった、そういう点については大いに反省をして、そのために諸般政策を今とりつつあるところでございます。しかし、外交であるとかあるいは行政改革であるとかあるいは教育を訴えたことであるとかあるいはがんの対策であるとか、そういうような内政の諸問題につきましては、私は国民皆様方からは力強い御支持をいただいておる、しかし、いまの政治倫理の問題というものは非常に大きな選挙題目になりまして、そういう大きな題目の点において我々はおきゅうを据えられた、そのように反省をした次第であります。
  11. 田邊誠

    田邊(誠)委員 まあその程度の認識であるとするならば、やはり今後の政治に対して大きな誤りを犯すのじゃないだろうか、私はこういうように警告をせざるを得ないと思うのですね。  そこで、二百五十、まあ無所属を入れて二百五十九、私は、この中から中曽根内閣というものは再出発をすべきである、こう考えておりました。この選挙の結果の厳しさの中から中曽根さん、あなたが政権を担当してやるとすれば、それはやはり二百五十九、この過半数すれすれという認識の上に立って、そして本当に謙虚に、本当に襟を正してこれから政治に立ち向かうということが必要じゃなかったかと思うのですね。ところが、選挙が終わりました直後に、何とか数を合わせたい、何とか国会において多数を占めたいというこの思いから、慌てふためいて新自由クラブと実は合併劇を行ったのであります。  これは国民意思とはかけ離れていることではないかと思うのです。これは、簡単に政党間が一夜のうちに何か妥協ができて同一会派をつくるなんということは、常識じゃ考えられないと私は思うのですよ。院内会派を一緒にするということは、一つ政治目標が同じであり、そして政策がその根底においてきちんと合意しなければならぬと私は思うのです。一夜漬けのような形でもって政策が合意したというようなことは、まさに政党というものの成り立ちからいって、これはいかがか、こう私は思っているわけでございまして、この安易な妥協について、きのうの敵はきょうの味方に引き込むというような、こういういろんな思惑を秘めてこれはやられたことでございましょうけれども、これは実は余りにも拙速であり、国民審判に対する正しい考えから出発したものではない、こういうように私は言わざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民皆様方の御意思は、各党がどういう政策を出すか、どういう姿勢でいくかというところを見て御投票し、御審判をなさると思います。  自由民主党と新自由クラブの場合は、基本的には非常に似た政策だろうと思います。そういう点におきまして、選挙の情勢にかんがみ、まず第一に政局を安定するということが非常に重要な我々の責任でございました。また、国際関係の信用を維持するという点も、貿易国家、平和国家である日本にとって非常に重要な我々の責任であったと思います。このような仕事を貫いていくために話の合う者同士が話をして、相協力し、提携するということは議会政治の常道でありまして、そういう意味におきまして、小異を捨てて大同についた、そういうことが今度の結果であります。
  13. 田邊誠

    田邊(誠)委員 国民自民党に対して厳しい批判をした、そしてやはり伯仲状態の中でもって、政治の緊張状態、そういう中でもって十分な話し合いをし、よりよい方向を見出すべきである、これが国民の選んだ選択の道ですよ。それを一夜のうちに野合するような形はやはり厳粛に審判を受けとめていない、こう言わざるを得ないと私は思うのです。  そこで田川さん、あなたは中曽根政治に対する厳しい批判をしてきた。国会の本会議におけるところのあなたの演説を初めとして、ほとんど我々が言っている以上に中曽根政治というものに対して批判をしてきた。特に、今総理選挙でもって一番国民審判を受けたというのは政治倫理の問題である。これは田川さん、あなたの政治生命をかけて政治倫理の問題をあなたはやってきたのであります。簡単にこういった同一会派をつくるということについては、我々の政治常識ではこれはとうてい考えることはできない、こう私は思うのです。  新自由クラブの言い分には、自民党の一党支配を打破する、あるいは保守・中道の連合の先行部隊になるのだ、そしてまたあなたの衆参における本会議答弁を聞いておると、野党生活七年を振り返ってみると、野党は対立、抵抗、反対だけを繰り返してきた、自分の政策政治に生かそうとする努力が足らない、万年与党と万年野党との対立の繰り返しだ、それよりも自分たち政策が六、七〇%生かせるならば国民のためになる、こういう妥協すべきは妥協していこうじゃないかということを言われたのであります。  しかし、新自由クラブにいろんな内部事情もおありでしたでしょうね。それから党勢も伸びてない。そしてまた野党の暮らしというものは、一たび政権党のいわば政治家として暮らした者にとってはなかなか厳しい、こういうこともおありでしたでしょう。まさか大臣のいすが欲しくてこういうふうになったとは私は思いませんけれども、しかし、今国民が選んだのは、伯仲の状態の中で野党もひとつ全部結束をしていけば、自民党に対しても誤りは正し、譲るべきものは譲らせるということはできるのじゃないだろうか、このことを国民は選んだのじゃないでしょうか。そういった点から見て、自民党に取り込まれて一体どれだけの効果が上がるとあなたは思ってこういう措置をとられたのでしょうか。  私どもは、これは私が言い過ぎかもしれないけれども、今度の政府の予算案というのはまさに国民犠牲の予算である、防衛費だけは突出をしているところの予算である、増税の予算である。私は、新自由クラブがこういう吸収合併劇をしなかったとすれば、今度の予算の組み方は若干でも変わったのじゃないだろうか、こう思うのですよ、これは。そうなってくれば、一国民の側から見れば、新自由クラブのこの合併というものは果たしていわば国民のためになったかどうかという点に対しては、私は大きな疑問があると思うのですよ。そういった点で、国民に対するところの背信行為と言われてもやむを得ない。  この措置をとったことに対して今まであなたが語られたことに対しては、私も今言いましたので、改めて繰り返してもらう必要はありませんけれども、私のこの言い分に対して、あなた、何かありますか。
  14. 田川誠一

    ○田川国務大臣 田邊さんのおっしゃったことについては言い分がたくさんございますけれども、それを申し上げると長くなりますから端的に申し上げますが、私どもは自由民主党と一夜漬けで政策協定を結んでこうした共同会派をつくったりあるいは連立をしたことは毛頭ございませんでした。選挙の前にも、臨時国会の終幕の際に、国会の審議に参加をする一つの条件として十二月二十六日の政策協定と同じようなものを話し合いをいたしまして、そして審議に参加をしたのでございまして、選挙が終わるまでの間に党の幹部同士で幾つかの話をした事実もございます。決して一夜漬けではございません。  それから、私どもは……(発言する者あり)少し静かにしてお聞きいただきたいのですが、私どもはやはり、参議院の本会議で私が述べましたように、長い間の野党生活、七年が長いか短いか、これは見方によって違いますけれども、私が参議院の本会議で述べましたのは、野党というのはやはり政権に参画する意欲を持たなければならぬ、ただ反対や抵抗だけやっていたのでは自分の政策を生かせない、そういう意味で、私どもは自民党の申し入れを拒否しないで、我々の言い分も自民党が酌んでくれるなら、やはりそこは自由主義政党であり保守政党である、そういう立場から協力をして政局の安定に少しでも役に立たなければいかぬ、こういう意味で私どもは話し合いに応じました。  幸いなことに、私どもが最も主張しております、たとえば政策で言えば教育立国。我々は教育政策を非常に重視してまいりました。あるいは私どもがずっと主張しておりました政治倫理の確立あるいは行政改革を本当に実行していく、平和外交の推進、こういうような柱を中心として自民党の幹部の皆さんと私どもの幹部の者とが話し合いをしたわけでございます。  先ほど総理がお話しになりましたように、選挙が終わりましてから自民党の中にも選挙に対する反省が起こり、そして私どもとの話し合いが非常に煮詰まってきたということでございまして、決して一夜漬けで私どもが自民党と一緒になったのではありません。  また、私どもが閣内に入るなどということが目的であれば、何も七年前に自民党を離党する必要がない。自民党の中にいれば、山口幹事長でも河野洋平君でも、みんな間もなく閣内に入れる資格がある、そういう者があえて自民党を出たというのは、全くそういうような意思がなかったからでございます。  少し長くなりましたけれども、そういうようなことで、尊敬する田邊議員から先ほど言われたことは私どもも多少異議がございまして、私どもの意を十分お酌み取りをいただきたいのでございます。
  15. 田邊誠

    田邊(誠)委員 田中六助幹事長は、まあ行く行くはこの新自由クラブは自民党と合併をする、こういうふうに言っておるわけでございまして、恐らくこの次の選挙のときには新自由クラブという政党はなくなるのじゃないかと私は思っておるのでございまして、事実、最近の新聞の世論調査によると、新自由クラブの支持率が急激に減っていることは国民意思というものを端的にあらわしておる、こう思っておるのでございます。  田川さん、あなたは大臣のいすが欲しくてなったのじゃないとおっしゃいました。私は、あなたは政治家として清廉で気骨のある政治家、こういうことについて、今まで実はお互いに信頼をしてやってきたことがある。松村謙三さんのいわば弟子として、日中に取り組んだことも承知をしておる。そして四十八年に、あなたは衆議院の社会労働委員長で、健保法の改正について強行採決を実は拒んだということも私は知っておる。あの当時強行採決を盛んにしたがった人たち大分そこら辺に清聴しておられますけれども、私は、あなたが強行採決をしたくないと私に打ち明けたことに対して、その方が法律を成立さすのには近道だと言った。あのとき、自民党多数だったけれども、健康保険法はかなりの修正をして私どもは通したのですよ。そしてあのときに、社会労働委員長の本会議におけるところの委員長報告を自民党に拒まれようとした。私は救出作戦に赴いた。そのときに私は、ああ田川さん、そして私に頼んだ河野洋平さん、この人は自民党の中ではどうも浮かばれないな、とても大臣にはなれないな、いずれは脱党するのじゃないかと割合に早く予言したのですよ。そして、あなたは五十一年にロッキード事件を契機として離党されたということですね。  そういったことを考えたときに、私は、やはりこの合併というものが与えたこの政局への動向というものは、国民にとって決して実は好ましい姿でなかったということについて強く指摘しておきたいと思うのでありまして、実はいろいろな利点があったり、いろいろなことを中曽根さんも反省をして言ったというけれども、一つも実行してないじゃないですか。これは実は総理に聞きたいと思うのでございます。  選挙の最大の争点が政治倫理の問題であった、これに対して深く反省をしておる、こうおっしゃっておるのでございまするけれども、この本会議でたびたび質問がありましたけれども、敗北の最も原因は何かということは総裁声明ではっきりとうたっておるわけでございまして、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったこと、政治倫理への取り組みについて国民に不満を与えたこと等である、こういうふうにあなたは述懐をされておる。今も言われた。「ついてはいわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する。」と総裁声明で述べていらっしゃるのであります。  これは政権政党の総裁声明でありまするから、ただ単に自民党に対して自分の心境を語ったなどというものではないでしょう。これは明らかに国民に対して、今後の政治に立ち向かうところの基本的な構え、これをあなたは表明した、こういうふうに私は考えておるわけですけれども、このいわば田中問題のけじめがつかなかった、したがって今後は一切田中氏の政治的影響を排除する、これはどういうことをやるのですか。どういうことをおやりになろうとしているのですか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党は公党でございますから、いろいろの決定というものは機関の議を経て、機関が決定しているわけでございます。したがいまして、役員会もあれば総務会もあれば議員総会もある、そういうことですべて党議がまとめられて、政府が進行しております。それを受けて内閣は実行しておるわけでございます。  そういうことで、私は前、国会答弁をいたしましたが、田中さんから私に直接あれしろこれしろなんということは一回もないし、また私自体が田中さんにいろいろ頼んだり、あれこれしたということもありません。それは全くそのとおりであります。しかし、ややもすれば、国民皆様方の中にはそういう影響やら介入があるのではないかという誤解がなきにしもあらずであります。そういう誤解はきっぱり一掃しておく必要がある、そういう考えもありまして、私は私の心境を明らかに申し上げました。  そしてそういう結果、今回の組閣あるいは党の再編成からスタートいたしまして、私は私の考えをある程度実行しつつあるところであります。あるいはさらに資産の公開その他にいたしましても、やはり政治倫理に関係する問題であり、かつまた、この政治倫理全般をさらに推進していくために幾つかの項目を私は党の幹部にお示しいたしまして研究を願うようにしておきましたが、今般国会政治倫理協議会もでき、我が党も率先して党内に総裁直属の政治倫理調査会を設けまして、諸般の問題についていろいろ検討もし、特に新自由クラブとの間にはそういう問題に関する協定もやっておりますから、それを具体化していくためにも党内で専門的に御研究を願いスタートしておるところであり、また各党との協商の場である政治倫理協議会を通じまして各党と話し合ってそれを進めていこう、そういう諸般全般の我々のやり方をお考えいただければおわかりいただけるのではないかと思っておる次第であります。
  17. 田邊誠

    田邊(誠)委員 私の聞いておることに端的に答えてもらいたい。  これは国民が誤解をしているのじゃありませんよ。あなたの総裁声明でもって、いわゆる田中問題に対してけじめがつかなかった。影響はないというのであれば、ここになぜ「田中氏の政治的影響を一切排除する。」とこれは書いてあるのですか。あなたが、政治的影響があったからこれから先は一切排除する、こういうことじゃないですか。この田中氏の影響についてあなたは一体どういうふうに排除する方法をとるのか、これを聞いておるのですよ。このことに対して率直にお答えいただきたい。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、今回の組閣及び党の再編等におきまして、私は人事の責任者でもありますが、そういう面において自分の考えをある程度出したつもりであります。それは、新聞におきましてもそのように受け取られておったと思います。そういうような考えに立ちまして、今後とも実行してまいるつもりでございます。
  19. 田邊誠

    田邊(誠)委員 それで田中氏の影響力を一切排除したということになるのですね。そうなるのですか。そうなるのですね。  世の中の人は、そんなことであなた一切の影響力を排除したなんて、これは思っていませんよ。あなたはそう思っておるのですか、それで。(発言する者あり)いや、認識を聞いておるのだ。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 スタートにつきましてそういうことも行い、これからのいろいろな党務の運営等につきまして私独自の考えをますます出していきたい、そう考えております。これからもよくごらんになっていただけるだろうと思います。
  21. 田邊誠

    田邊(誠)委員 国民にわかるようにこれはひとつ説明してくださいよ。このことがあなたの延命につながったのですから、これでもって一応自民党の中を抑え、そして第二次中曽根内閣が発足したのですから、だからやはり国民は、あなたのとった行動について、これからとろうとする行動について、これは冷厳な目でもって見ていらっしゃる。ですから、田中氏の影響力を一切排除するということは、一体何を意味しているのか。ただそこはこうやって——随分いるじゃないですか、大臣。田中氏の影響力を受けている大臣は、数の上でたくさんおるじゃないですか。これは田中氏の政治的な影響力を一切排除するというのですよ。これ、今までで足りたのじゃないですね、足らないのですね。何をしようとするのですか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党の中には人材は非常におりまして、やはり総裁といたしましては、超派閥的に人材を簡抜するということが大事であろうと思います。別に、何派だからどうするというような考えは持ちません。やはり超派閥的に、党内の人材は老壮青を問わずこれを簡抜するということでやっておりまして、今後もそういう方針でいくつもりであり、また、政策の推進につきましても、党内の現役の皆様方のお考えを第一義によくとらえまして、そして皆さんのお考えの上に立って、与党、内閣としては政策を推進していく、そういうことであります。
  23. 田邊誠

    田邊(誠)委員 簡単でいいですから、ひとつ国民にわかり——私だけがわからないのでしょうか。田中氏の影響を一切排除するというこの中身を聞いているのですから、これはどうです。簡単でいいのですよ、それを言ってください。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに、自由民主党は自由民主党員が構成して、そして政策を行い、そして国民の期待におこたえしておる。(田邊(誠)委員「そんなことを聞いているのじゃない」と呼ぶ)そういう意味におきまして、党員全体のお考えを集約して政治をしている。自由民主党員でない方のそういう影響やら何やらを受けない、そういうことでこれからもますます推進していく、そういう意味であります。
  25. 田邊誠

    田邊(誠)委員 そんなのは答弁にならない。ちゃんと答えてもらいましょう。(「委員長もわからないでしょう、これでは」と呼ぶ者あり)あなた、わかりましたか。
  26. 倉成正

    倉成委員長 田邊誠君、質問を続けてください。
  27. 田邊誠

    田邊(誠)委員 こういうことであっては、私は、中曽根総理が本当に国民に対して選挙反省の上に立った政治をやるという姿勢ではない、こういうふうに言わざるを得ないと思うのですね。実際また、これだけでは私は満足いたしません。この田中氏の影響排除の問題については、これは私は明確にしておかなければならない、こう思いますので、委員長に実は、改めてこれに対するところの答弁を求めるように、お願いしたいと思うのです。いかがですか。
  28. 倉成正

    倉成委員長 ただいまの田邊君の御質問に対しましては、その質問の趣旨を踏まえまして、理事会でも協議したいと思います。(「どういう意味なんだ。総理、もう一遍やれ」と呼び、その他発言する者あり)  田邊君に申し上げます。ただいま田邊君の御質問に対する中曽根総理大臣答弁は、田邊君によりますと、なかなか納得いかないということでございますけれども、これ以上質疑を続けましても、なかなか平行線をたどると思いますから、なお中曽根総理大臣にも十分研究していただいて、また改めて答弁をしていただきたいと思います。
  29. 田邊誠

    田邊(誠)委員 これは、私が意見を申し述べた、それに対して総理が答えられないというのじゃないのですね。中曽根総裁の声明を、私はひとつ説明してもらいたい、国民にわかるように言ってもらいたい、こう言っておるわけですから、無理な注文をしているわけじゃないのですよ。あなたの方が出したのです、これは。そういったことから見て、総理答弁は、私は、この総裁声明の内容を説明したことにならない、こういうふうに思っておるわけでございます。そういった点で、ひとつ委員長の取り計らいを願っておきたいと思います。  これだけで時間を全部費やすわけにいきませんので、そこで、今のお話にありました田中氏の影響を一切排除することについて、総理は言わない。それなら、この政治倫理に関連をして、一審で有罪の判決を受けた議員について何らかの措置をとるということはできるのじゃないでしょうか。新自由クラブとの何か政策合意の中に、国会法の改正という文言がある。この国会法の改正という中には、一審有罪判決、特に収賄罪等の破廉恥罪によって有罪判決を受けた議員に対して何らかの措置をとる、こういう趣旨のことをこの中でうたっている。このように言っておるわけでございまするが、こういった措置はとり得ると思うのですけれども、これも言うなれば、中曽根総理が言っているところの総裁声明の、これの一つのあらわれではないか、こういうふうに私は思いまするけれども、この点についてはどのような内容の政策合意であったのでしょうか。また、あなたはどういうふうにこれに対してお考えがおありでございましょうか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点は、自由民主党と新自由クラブとの政策協定の中に含まれておるところでございまして、検討する、そういうことになっております。  この問題は、いずれわが党におきまする政治倫理に関する調査審議会におきましていろいろ検討を願い、今もう始めつつあるところであります。衆議院あるいは参議院に設けられました政治倫理の協議会におきましていずれ御相談願うことになるだろうと思い、社会党の御意見も承りたいと思っておるところでございます。  ただ、ここで理論的なことを申し上げますと、いままでの国会法やあるいは議会関係の法律というものは、大体、議会内における行動について懲罰というものを中心に考えていたわけであります。また、責任という問題も議会内の行動についてのみ探求をして、議会外の行動は、一般の刑法とかあるいは刑事訴訟法とか、そういうような手続によって来たところでございます。  それで果たしていいのか悪いのかという問題は、今までの議会主義、いわゆる議会内主義と申しますか、そういうものに対する大きな例外をつくっていくわけであります。これは、明治憲法以来今日の憲法に至るまで続いておる大原則でありまして、その大原則を破っていいのかどうかという問題は、やはり議会政治の根幹に関する問題でございますから、よほど学者の意見等もよく聞いて行う必要がある。ただ、懲罰事犯ということになりますと、いろいろな犯罪やらあるいは失態の問題が出てまいります。例えば破廉恥罪に当たるようなことをした場合に、ではそのままほっておいていいのかという問題もございます。これは、一般刑法その他におきまして今までは処理されておりましたけれども、しかし、議員としての品位の問題から見て、それを放置してよろしいかどうかという点も新しくこれはまた考えらるべき要素でもございます。  そういうようないろいろな法律的、専門的な御検討もしていただきまして、そして、この壁は破った方がよろしい、時代はもうそういう時代に来ているという断を下せば、そこまでいく。しかし、今までのような議会内主義という原則を守る方が議会の言論の自由その他を守っていくために大事である、一つそれを崩すというと、政府権力を握っている方からいろいろ悪用されたりして議員の身分保障が十分なくなる、そういう危険性も出てくるという議論もございます。そういうような面におきまして、この問題は非常に重要な内容をはらむ問題でございますから、十分専門家の意見も聞き、各党各派の御議論も踏まえて我々は考えていきたい、そのように申し上げる次第でございます。
  31. 田邊誠

    田邊(誠)委員 私がたびたび言っているように、総理考え方を聞いておるのでありまして、国会の中に設けられた政治倫理協議会、この中でもって我々がいろいろな検討をすることについては当然であります。総理は一体どう考えるかということを聞いているので、そこへ全部逃げ込んで、何でも国会任せ。私は、田中問題に関連をしてこのことを聞いているのですよ。そうすると、そのことについても、あなたは実際には自分の意思というものを持ってない。あとはひとつどうぞ国会でやってください、自民党の中でやってください。あなたは、そういったことが協議をされた場合にはこれを拒みませんね。それに対して妨害しませんね。それに対して消極的な態度をとりませんね。それに対して田中氏にちゃんと物を言いますね。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、今、内閣総理大臣として答えているのでありまして、行政府の長が国会のいろいろな問題について発言することは、これは干渉がましいことになります。自民党総裁としてならば、これはまた別の立場がございます。この点につきましては党内でいろいろ検討してください、そう言って今検討してもらっておるところでございます。  しかし、この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、法律学的にもあるいは民主政治の運営上からも非常に大きな問題点が内包されておる、そういう意味において我々は慎重にこれを検討しよう。しかし、今までのようにほっておいていいという問題ではない。問題として取り上げよう。そして専門的な研究をし、各党各派のお考えも聞いて、そして話し合いでこの問題を解決していこう、そういう立場をとっておるのでありまして、全然これを不問に付して相手にしないという考えとは違うのであります。
  33. 田邊誠

    田邊(誠)委員 これに対する田川さんの意見も聞きたいところですけれども、省かしていただきまするけれども、私もいろいろとこれに対するところの検討をいたしましたが、憲法上の問題もございます。従来の法律体系もございます。そういった点で、いろいろ難点もありまするけれども、要は、こういったことに対して、もう再発をしないぞ、再発を防止するぞ、国会はこれに対する自浄能力を発揮したぞということが大事なわけでございまするから、そういった点で、もし私が今市し上げたような収賄罪等によって一審有罪判決を受け、あるいはまた今後判決を新たに受けた場合に、その次の選挙に立候補することをひとつ禁止したらどうだろうか、こういうことを言われていますね。あなたの方で言われているわけです、これは。これに対してどうでしょうか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく今申し上げたような非常に深い問題を内包しておる問題でございますから、これは政党間においてよく論議を願いたい。自民党内部におきましての専門家の意見等もよく聞いて我々の考え方をまとめていきたい、そのように思っておる次第です。
  35. 田邊誠

    田邊(誠)委員 結局、あなた任せ、国会任せということで、自分の意思はないということですね。  今、中曽根さんと質疑をやっていまして、政治倫理の問題については非常に声が小さくて、元気がないですね。わかります、それは。  あなたは何でもできる人ですよ。我々から見たら非常に何でも知っているところの政治家、こう思いまするけれども、一番重要な政治決断をするときに、あなたは実は非常に弱い。昨年も、田中さんと会ったけれども、一体辞職を勧告したのかといえばそうでもなさげだし、解散権をちゃんと行使しようとしたかと思えばそうでもないし、重要な政治決断というところについて残念ながらいささか欠けているんじゃないか、こういうふうに言われておるわけでございまして、今一番国民が願っておるところの清潔な政治、ガラス張りの政治、こういった点から見て、こういった今までの忌まわしいところの事件というものは我々は起こしてはならない。それに対しては国会自身がきちんと襟を正してやりますよということについて、やはり自民党の総裁として一党を率いているのですから、あなた自身のやはり明確な意思表示というのが望ましいんじゃないだろうか、こう私は思っておりまするけれども、残念ながら口を割らないということであります。  それならばひとつ、国会議員の行動については、もちろん我々は懲罰委員会においていろいろとやってきた、院外の行動について責任を問われることはない、こういう今までの実は形でもってやってきた、しかし、ここまで来ると、やはり国民はそれだけじゃ足らぬぞ、こう思っているんじゃないでしょうか。一般の公務員がいろいろな犯罪を犯したといえば、すぐ休職になる。国会議員は確かに選挙の洗礼を受けている。しかし、それだからといって何でもやっていい、何でもできるということじゃないだろうと思うのですよ。田中角榮さんは二十二万票を得たけれども、一将功成って万骨枯れて、自民党は敗れたじゃないですか。そういったことから見ても、我々として襟を正していかなければならない、こう思っておるわけでございまするが、こういったいわば収賄罪等によって、しかも総理大臣のいすにあった者がこういった罪を犯して判決を受けたということに対して、国会としてこういった議員についてはひとつ行動をやめてもらおうじゃないか、あるいは自粛してもらおうじゃないか、こういうような国会におけるところの申し合わせなり決議なりというものを我々がするとすれば、これに対してあなたは反対しませんね。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題も、各党の、例えば議員協議会において御相談を願いたいという問題であると思います。しかし、私は先般本会議において申し上げましたが、政治倫理という問題があれだけ大きな課題として提起されて、そしてほとんど選挙の主題のようになって、そして選挙の結果が出た。そういう情勢から見ますと、やはりこれは主権者である国民政治に関する最高、最終の判断が選挙である、そう思います。その選挙の結果によって国会が構成され、政治が運行されていくスタートになるわけであります。そういう意味におきまして、この選挙国民審判というものは議会政治あるいは政治における最終、最高の審判である、私はそのように考えております。
  37. 田邊誠

    田邊(誠)委員 こういう論議ではなかなかもって本当の意味におけるところの予算委員会の論議にならない。非常に残念ですね。総理自身の考え方というものがあれば聞かしてもらいたいと私は言っているので、ないのならない、こう私は言ってもらいたいわけですよ。そういったことについてもあなたはお答えにならない。非常に残念であります。でも私自身は、やはりできることは何でもやる、こういう気持ちでなければいけないだろうと思って提起をしているわけでございまして、国会におけるところのそういったいわば方向づけというもの、そしてまた今後の取り扱いというものについて我々は最善の努力をして、この種の再発防止、そして国会がみずから能力を発揮して立ち向かったという姿をこの国会でもって出さなければならない、こういうように決意をしているところであります。今までの論議については全く意を尽くしておりません。残念であります。  しかし、時間の関係もございまするから次の課題に移りますが、定数是正はやりますね。そして、これはもう最高裁でもって違憲の状況にあるという、こういう判決が下った以上、国会としてこれをやらなければならないというふうに思っておりますから、これはもう国会任せというのではなくて、あなた自身の考え方というものがおありでしょうね。そして、少なくとも現在の五百十一の衆議院の定数、参議院の二百五十二の定数、これを動かさない、あるいはこれを上回らないという形で定数是正を考える、さらには、戦後とり来ったところの中選挙区制、これも動かさないという観点でもってこの是正に臨むということが私はまず前提じゃないかと思いますが、いかがですか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般の衆議院の選挙に関する最高裁の判決は、いわば、前にちょっと比喩的に申し上げましたが、執行猶予つき判決みたいなもので、早く直しなさい、さもないと違憲になりますよ、そういう警告つきの判決であったように私、解釈しております。  そういう考えに立ちまして、できるだけ早い機会に与野党協議いたしまして、私の希望は、衆議院、参議院ともに現行の定数の範囲内において合理的に調整をする、そういう新しい区割りなりあるいは定数の関係をぜひとも法律案としてできるだけ早く提出して、そして成立させたい、このように念願して、今、党内に督促をしておるところであり、党内は今議会にでも提案したい、そういうことで今努力いたしておるところでございます。
  39. 田邊誠

    田邊(誠)委員 私の質問に答えていただきたいのです。この定数是正について基礎的な、基本的な考え方は何であるか。この国会でできるだけ成立をさせたい、そして、今日の社会情勢下ですから、定数はこれ以上ふやさない、中選挙区制は堅持する、これはいいですね。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 原則的にそういう考え努力しておるところであります。
  41. 田邊誠

    田邊(誠)委員 政治倫理の問題については、私は、今まで我が党が用意してまいりました案について詳しく申し上げたいと思っておりましたけれども、省かしていただきまするが、我々は、政治資金規正法あるいは国会議員等の資産公開法等を用意をして諮っていきたいと思っておるわけでございますが、資産公開について、私がまたここでもって中身をくどくどしく申し上げることはいたしませんけれども、この間、総理大臣大臣の資産公開をされたのですが、田川さんは何か高く評価しているというんですけれども、これは評判悪いのですよ、実際は。これは本人に限定をしている、事業用の資金は抜きにしている、評価が低過ぎる、時期を区切っている、言うならば、資産の流れが非常に不明確である。資産形成の過程というものが大事なんですね。  そういった点から見て、非常に泥縄式にやったということでございまして、私は、一月の二十四日に、現在におけるところの中曽根総理大臣の資産がどのくらいあったかというふうなことよりも、これはずうっと、大臣になる前、総理大臣になる前、そして総理大臣になってからというものの流れというものがはっきりしなければいけない。そしてまた、日本的に言えば、奥さんなりあるいは家族なりというものの資産についてもやはり明確にするということが何より必要だというふうに思っておるわけでございますから、そういった点で見ますると、国会議員の資産公開も含めて、やはり法律をつくって、そして毎年一月一日なら一月一日という中でもって資産を公表する、そして官報に載せる、こういうようなことがあくまでも必要じゃないか、こう思いますが、今後の措置としては、そういう法律によってきちんとこれについては明朗な形を生むということに努力をしたいということは間違いございませんね。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 資産の公開につきましては、選挙中も私は言明いたしまして、選挙が終わり、組閣をやる際には、閣僚の候補者の皆様方に資産公開に協力してくれるかと一々確認をして、その上で閣僚になっていただいた、そういう経緯もあり、閣議におきましても資産公開をする申し合わせをいたしまして、そしてどのような資産公開が適当であるかという点について、法制局と内閣官房を中心にいろいろ検討しました結果、先般、一月二十日現在で閣僚の資産公開を行ったところでございます。  もとより、これが万全のものとは思っておりません。しかし、欧米の資産公開の実情等を調べてみ、また社会党初め各党が御提出の法案要綱あるいはその他も検討いたしてみて、まずこの程度が妥当であろうというので、閣僚まずみずからやってみる。それに対していろいろ御批判やら御意見も出るでありましょうから、それらをよく検討しまして、直すべきものがあれば直すことにやぶさかではない。  社会党の御意見は、国会議員全員についてそういうお考えのようでございます。国会議員全員という形になりますと、それは自由民主党のみならず、ほかの各党のお考えはいかがであるか。ほかの各党の案を見ますと、国会議員全員にはなっていないのもございます。  それからまた、いろいろな内容も私は見ましたけれども、価額につきまして、固定資産税の評価額を基準にするのがいいとか悪いとか、そういう議論もございました。これらにつきましても、時価というものは非常に変動いたします。そういう点で、一番安定しているのは固定資産税の評価額で、これは五年ごとに見直しているという形にもなっております。社会党の案を見てみますと、土地なんかに対する価額を表示するということは書いてなかったようであります。各党ともいろんなお考えがあるようでございますから、したがいまして、これからみんなで相談をして、よりよきものがあれば、それにみんなで話をまとめていったらどうか、そういうように考えておるところであります。
  43. 田邊誠

    田邊(誠)委員 政治倫理問題については、今後の政治に立ち向かう我々の基本的な姿勢の面からいって非常に重要でありまするし、総選挙の結果を踏まえて、我々はこの国会においてみずからの問題として取り組まなければならない、こう思っておるわけでございまして、総理の今までの答弁は全くあなた任せ、国会任せという形で、私どもの意を尽くしていない、こう思っておりますので、非常に残念でございます。  それでは、次の問題に移らしていただきます。  五十九年度の予算、私は率直にこの予算を拝見をして、強い者だけが生き残れる予算、弱肉強食の予算、そしてアメリカだけにいい顔をしているところの予算。アメリカのワインバーガー国防相が、NATO以上の努力をしたというので評価したというのですね。あなたはアメリカには大変褒められるけれども、しかし国民に対しては非常に冷たい仕打ちである。昨今の気候のように、まさに氷点下以下の冷たい扱い、防衛費だけが暖かい太陽を浴びてひとり歩きをしている、こういう予算、こういうことでありまして、この超緊縮予算では政府が言っている財政再建の道筋というものも遠ざかっている、こういうように我々は言わなければならないというように思っておるわけであります。  そして、今一番国民が望んでいるのは何かという世論調査を、選挙中もありましたけれども、しまするというと、一番望んでいるのは景気だというのです。景気を回復してもらいたい、これはいろんな思いが含まれていると思うのです。そして、先行き、将来にひとつぜひ明るさをともしてもらいたい、こういうのが国民の率直な声だろうと思うのですね。ですから、この国民の声というものに私どもは耳を傾けながら政治をやらなければならないというふうに思っておるわけでございます。  さらに、一つ一つ質問をしてまいりたいと思っておりましたが、時間が過ぎておりますから、私の方で基本的なことを申し上げたいと思いまするけれども、経済政策なり財政運営というものの目的は一体何かと言えば、これは何でしょうか。これをちょっと聞きましょう。これは何ですか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民の繁栄、福祉の向上、あるいは国家の安全の確保あるいはひいては世界の平和と繁栄に貢献する、そういうことだろうと思います。
  45. 田邊誠

    田邊(誠)委員 国民生活をどうするかということをやはり根底に置いたものでなければならぬというのは、私は総理と言葉の上では一致をしておるわけでございまするが、しかし、残念なことに、この予算というのはそういったところにいわば基点を置いた予算ではないというふうに言わざるを得ないと思うのです。確かに財政再建が叫ばれておりまするけれども、結局はこの財政再建も、ひっきょうするところ、国民生活を豊かにして将来において自由な選択をとり得るような条件をつくろうというところにあるだろうと思うのですね。したがって、将来はそういう道のりをたどりますよ、しかし、今は大いに犠牲をひとつ強いましょう、私はこれはならないと思うのです。やはり今日、あるいは明日、こういった点についても国民に対してすべて生活の基盤を失わしていい、あるいは将来に対するところのいわば先行きについて大きな不安感を与えてもいいということではないだろうというふうに私は思うわけでございまして、そういった点に立って財政運営をやらなければならないというふうに思っておるわけでございます。  そこで、今日の国民生活の現状はどうかということについて、いろいろな角度から推しはかることができると思いまするけれども、簡単にひとつお伺いします。私の方にも資料がありますけれども、最近の可処分所得は一体どういう傾向にございますか。上り坂ですか、下り坂、減少の傾向でしょうか。それからこれを含めた家計の収入、中期的に見た場合にはこのところどういうふうになっていましょうか。ずっと伸びているのでしょうか、伸び悩んでいるのでしょうか、どうでしょうか。実質可処分所得の状況について、このところどういう状況でございましょうか。簡単にお伺いします。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 専門的な数字のことでございますから、政府委員より答弁させます。
  47. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 細かい数字を申し上げると時間がかかりますので大体の傾向を申し上げますと、可処分所得につきましては、最近は、極めて緩やかではございますが上昇の傾向にございます。過去何年かとりましても、実質可処分所得につきましては、伸び率は非常に小さいわけでございますが緩やかな上昇、こういう状況にあろうかと思います。数字、細かい点は省略させていただきます。
  48. 田邊誠

    田邊(誠)委員 可処分所得は毎年減少の傾向である、これはあなたの方から出されているところの調査を見るというとわかる。家計の収入というのが、中期的に見た場合には伸び悩んでおるということが言えるというふうに思います。特に世帯主のいわば収入というものが余り伸びてない、そのために妻の収入が大幅な増加をしているということは、すなわち世帯主だけの収入では賄い切れない、こういう状況になっているということであろうと思います。実質可処分所得は四十八年から五十七年平均〇・九%である。しかもその中から、いろいろな契約というものによる借金の返済等、これを除いたところの実質任意可処分所得、こういった点から見まするならばマイナス傾向である。五十四年に比べて五十七年、これはマイナス一・二%という状態であります。そういった面から見て、今の国民の暮らしの余裕というものは非常に狭められている、こういう状態であろうと思うのでございまして、余裕感がなくなってきている、自由裁量度合いというものが非常に低下をしてきているということが言えるんじゃないだろうかと思うのです。  さらに我々が注目しなければならぬことは、賃金の格差というものが大企業と中小零細企業との間で非常に広がってきている、賃金の格差が非常に広がっているということではないかと思うのでございまして、この点に対しても注意を喚起しておきたい、こう思っているわけであります。  そこで、五十九年度の政府予算の特徴というものを見た場合には、国民生活への影響という度合いから見た場合には、全体的に負担が多くなってきている、特に不公平が拡大しているということが特徴的に言えるんじゃないだろうか、こう思っておるわけでございます。  いろいろな問題点がありまするけれども、そのうちの一つ二つだけ私は指摘をしておきたいと思います。  まず減税、これは昨年あれほど自民党幹事長と野党の書記長がやりまして、五十八年中に景気浮揚に役立つところの大幅減税、これをやりますと言って、約束を破ったという形でありまして、そして、これを一年おくれ、しかも額は小さいということでございますが、減税はなぜやるのですか、その政策意図は何でしょう。
  49. 竹下登

    ○竹下国務大臣 減税という問題につきましての政策意図ということになりますと、その都度都度によって私は政策意図が異なってくる場合もあり得ると思うのであります。が、率直な、端的に原則を申し述べるならば、これはある意味において消費者物価の上昇等々からくる国民生活の負担、それを物価調整の形において行う、これもその都度あり得る一つ政策目的だと思います。  今度の減税というものにつきましては、今も御議論ございましたように、減税の規模、これは五十七年の三月、減税小委員会ができましたときからの経過を振り返ってみますと、まず小委員会において、言ってみれば院の意思として決まったものは何かというと、結局赤字公債に財源を頼ってはならぬ、こういうことではなかったかと思うのであります。政府としても、そのことはまさに財政再建に逆行することであるという認識の上に立っておりました。  それから、今度は各党間の話し合いに移ってからは、まず本格減税であらねばならぬ、すなわち課税最低限の引き上げ等を含むものであらねばならぬ、これが一つの中心であったと思います。さらには、戻し税的なものであってはならぬということがいま一つの中心であったと思います。そうして、それらを総合勘案して景気に役立つという言葉が使われております。しかし、その景気浮揚に役立つ規模の減税を行うための財源を確保しと。いうことも、各党の共通認識の上に、文章の上にもあらわれておるわけであります。  そこで、景気論争について振り返ってみますと、結局、私どもある一面的な見方として、三・四%の実質成長見通しをより確実なものにならしめることが景気浮揚ではないか、こういう考え方と、そもそも潜在成長力がもっとあるからもっと高目の景気浮揚ということを考えるべきだという議論は、私は過去参議院においても衆議院においても、予算委員会、大蔵委員会等でやりましたが、結局双方、適切な言葉では必ずしもございませんが、生煮えの形で終わったという感じがなきにしもございません。したがって、今回はそれらのことを総合勘案いたしまして、五十八年税制におきましては、言ってみれば赤字公債にその財源を求めることなく千五百億円というものを行い、そしてそれも、五十九年度税制改正を見通して一応本格税制の姿にこれをしつつ、それを踏まえてこのたび課税最低限の引き上げと税率構造のそれぞれの見直しを伴う本格減税を行った。そうしてその財源につきましては、もとより赤字公債に頼らないという形から種々工夫をいたしまして、最終的に法人税、酒税、物品税等、やむを得ざることとして御理解をいただこうと努力し、法律も出し、予算も審議していただいておる今の時点だというふうに理解をしております。
  50. 田邊誠

    田邊(誠)委員 今日的に言うところの減税は、一つは景気刺激でありますが、今大蔵大臣も言われたように、景気刺激については、やはり減税と増税抱き合わせ、これでは消費拡大にならない。残念ながら政策意図にこれは合わない。それから物価調整、これは五十二年以降のずっと実質的な増税、こういった点から、物価調整をなくすということになれば、この程度の減税ではこれは物価調整にならない。一年おくれのせいもございますからね、ならない。少なくとも課税最低限を昨年までの二百一万五千円から、政府はまあ二百三十六万円と言いますが、大体二百六十万円ぐらいにしなければ物価調整の機能を果たしたことにならない。こういうことになりますので、そういった点では、実は政府の今言っていることについては、我々としては、残念ながら減税の政策意図というものを明確にあらわしたことにならない、こう思っておるわけでございます。  そこで、減税の中身について指摘をいたします。  最低税率を一〇%から一〇・五%に引き上げましたね。この理由は何ですか。そして、この最低税率を引き上げたことによっての増収効果は一体どうなんですか。
  51. 竹下登

    ○竹下国務大臣 最低税率引き上げ、それから最高税率引き下げ、これは税調答申におきましてもそれぞれ指摘されておるところでありますが、特に中堅所得者層に対するところの減税の効果がより多く及ぶようにということで、税率構造をなだらかな形に修正をしたわけであります。  そこで、最低税率の一〇・五という問題でございますが、非常に技術的な問題になりますが、最初私どもは、一一とか一二とかいう刻みも考えました。しかしながら、その場合、本当にごく限られた方々でございますものの、自営業者の中の人で、実質ごくわずかな人であろうが増税ということになる方が出てくる、それがない形の最低税率を考えてみると、いろいろな刻みを考えながらやはり一〇・五ということが、その作業の結果、最低税率として出た数字でございます。
  52. 田邊誠

    田邊(誠)委員 増収の効果……。
  53. 竹下登

    ○竹下国務大臣 主税局長からお答えをさせます。
  54. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 お答え申し上げます。  増収効果と申しますか、最低税率を引き上げることによりまして、理論計算といたしましては、約一千億弱の財源余裕が出るという計算に相なるかと思います。
  55. 田邊誠

    田邊(誠)委員 我々の試算で言うと大体八百億ということでございますが、この最低税率の引き上げ、後でまた増収との絡みで実は申し上げるのですけれども、最初は一一%ないし一二%を考えたが、増税との絡みでいくというといわばマイナスになるということなので一〇・五にしたと言うけれども、それでも実は今度我々が試算をしたところによりまするというとマイナスなんですよ。マイナスのところが出てくるのですよ。ですからこれは、いずれにしても引き上げたことによって低所得の方々に対するところの負担が重くなるということは間違いない事実ですね。  中曽根さん、レーガン大統領も減税やりましたね。これは二五%の所得減税をやった。このレーガンは、最高税率も下げたけれども、最低税率も下げているのですよ、あなたの好きなレーガンも。ですから、わずかなところでもって、独身者あるいは低所得の方々に対して負担増を強いるような最低税率の引き上げというのはとるべきではない、私はこういうふうに言わざるを得ないと思うのです。  それとあわせて、最高税率七五%を七〇%に引き下げた、この理由は一体何ですか。さらに、最高税率の引き下げによるところの減収は幾らになりますか。これで恩恵を受けるところの所得者は一体何人ぐらいに見込まれているのですか。どうでしょう。
  56. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 お答えを申し上げます。  今回の所得税の全般的な見直しに当たりましては、その背景といたしまして、昨年十一月に政府の税制調査会で答申をいただいております。その背景にあります考え方と申しますのは、現在のわが国の所得税制は昭和四十九年以来基本的な見直しが行われていない。なかんずく、限界税率で申しますと、六〇%以上のところは昭和四十五年以来放置されておるという状態でございます。今回の抜本的な見直しの機会に、税制調査会の考え方といたしましては、所得が非常に上昇しておる、同時に、わが国の場合、所得格差といいますか、所得分布も平準化しておる、そういう背景で今後のわが国の税体系のあり方を考えました場合に、所得税について諸外国との比較から見ましても、もう少し累進構造がなだらかであっていいのではないかという御指摘がございました。その結果、先ほど委員がお触れになりました最低税率については若干引き上げる、最高税率につきましては、現在七五%でございますけれども、先進諸国で所得税の最高税率が七〇%台にある国はもうないわけでございます。今回それを七〇%までに下げるという措置を講じることにしたわけでございますが、それによります財源計算といたしましては約百億円強。それから、それの恩恵を受ける人ということでございますけれども、現在高額所得公示されております八千万円以上の所得の人が大体五千人を超える人数になっておりますので、恐らくその辺の人数が対象になろうかと思います。
  57. 田邊誠

    田邊(誠)委員 いまお聞きをしたように、総理、これは大体八千万以上の所得の人ですね。その人、五千人対象というのですから、こういった人を対象にして何も税率を下げる必要はないんじゃないでしょうか。  それで、いま主税局長は諸外国等の例を申されました、歴史的なことも言いました。確かにシャウプ勧告のときは五五%の税率だった。しかし、それは利子配当は総合課税なんですよね。ですから、これらの税率を動かすときにはやはりこの利子配当所得に対するところの課税方法を改める、この改革が行われるということとの絡みの中で処理しなければ、これだけ引き下げて、この金持ちだけ優遇するようなこういう状況というのは、今日とるべきじゃない。これだけ国民を犠牲にし、これだけ冷たい予算を組んでおきながら、この八千万以上の所得のある人たちに対してだけは、これは税をまけてやりましょうということは、私は国民が了解しない、こう思うのです。この超高額所得者に対する優遇という措置は、私は断じてとるべきでない、こういうふうに考えておりまするけれども、総理、どうでしょうか。——総理総理
  58. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、いま御指摘にもありましたとおり、確かに世界的な他の先進国との比較においては、まさに日本の税率構造というのは、課税最低限は一番高いところにあって、累進構造はまた一番急激なカーブ、これが確かに日本の税の一つの特徴だと思うのであります。  基本的な物の考え方からいえば、やはり自由主義経済社会の基本は、努力とそして勤勉とさらにそれに創意、それが報われるというものを基本にした考え方を持って、なかんずく今時点の改正において中堅所得者の優遇ということを考えてまいりますと、そこにおのずから、カーブの均衡ということから考えれば、最高税率というものが引き下げられることによって初めてそのなだらかなカーブが描かれるわけでありますので、これは五千人の方を対象にした措置ではなくして、むしろ税率構造のなだらかな中に中堅層に対する行き届きがいくような措置として出てきた姿である。それ以前に基本的に努力と勤勉と創意が報われるという基本的な認識があることも、これは事実であります。
  59. 田邊誠

    田邊(誠)委員 弱肉強食の端的なあらわれでありまして、今日までこの最高税率を受けている人たちがまことに高い税率で困ったという話は聞いてない。我々としては、この最低税率の引き上げ、最高税率の引き下げ、これはぜひひとつ政府自身も考え直してもらいたいということを強く申し述べておきたいと思います。  この減税に見合ってちょうど増税が行われている。これはうまい仕組みになっているんですね、総理国民のこちらの懐に三万円入れてくれまして、こっちの方から三万円以上またふんだくるという形ですね、これは。私の方でつくりました表を見ていただけばおわかりのとおり、この増税、増収じゃありませんからね、増税です間違いなく。これによって第一分位の方々は、年間収入二百六十一万円の方々、減税の効果というのは年間二万六千百円、増税負担というものは二万六千八百三円、これは差し引き七百円の負担増という形でございます。それに比べてこの年間収入七百三十万の第五分位の方々は、減税、増税の差っ引きでもって二万五百七十一円の恩恵を受けるという形でございますから、どうしてもやはり所得の多い人たちは余計恩恵を受けるという形でございまして、いまの最高税率を引き下げるという、こういった措置というものが、いかにいわば格差を拡大する、金持ち優遇かということの指摘に当たるだろう、こう思っておるわけでございます。  この増税の中身について、一々実は指摘をすることができませんけれども、この中で二つばかり指摘をしておきたいのは、一つは酒の税金ですね。これを上げました。  そこで、竹下大蔵大臣は有名な醸造家の出身でございますから、あなたが今度上げましたところの酒によって、一番苦く感ずるのは一体どこでございますか。
  60. 竹下登

    ○竹下国務大臣 正確なお答えになるかどうかわかりませんが、酒税を今度お願いするということに際しまして、大ざっぱに言って酒税の五〇%以上はビールでございます。それから二五%がウィスキー、日本酒がおおむね一六・七%というような構造になっておるわけであります。したがって、今度確かに国民のニーズとでも申しましょうか、そういうものが、いわゆる等級間格差によって自分の嗜好を求めるというニーズから、例えばしょうちゅうブームになりますとかあるいは二級酒の地酒ブームになりますとか、いろいろな変化が生じておるわけであります。それらを総合勘案しつつも、いささか農業政策に関係のありますブドウ酒でございますとか、あるいはやっぱりお米という問題については農業政策に関係のあります日本酒の問題でありますとか、そういうようなものも勘案しながら、結局税率とそして最終的に消費者がお召し上がりになるところの価格と、それが国民生活に及ぼす影響、それらを総合勘案して決定をしたということになるわけであります。
  61. 田邊誠

    田邊(誠)委員 大分苦くなってきているのは同じでございますが、その中でも日本酒は、あなたのうちでつくっていらっしゃる日本酒はまだまだ苦さが少ない、甘さが残っているんですね。ウイスキーも今度は五〇%以上の税負担率になりますけれども、これはちょっと薄めて飲むことがありますが、そのままでもって飲んで一番苦いのは何と言ってもビールですね、これは。四八・九%に負担率がなる。これは酒類の消費量の三分の二をビールが受け持っておるという形になっておるわけでございまして、これはちょっとやっぱり苦過ぎますね。外国のビールの税率というのは、アメリカで一〇%、西ドイツ一七%、フランス一七%、イギリス三二%、そういった外国の比較からいっても、これはどうもやはり苦過ぎる。しかも、肉体労働者が疲れをいやすということになって飲むのは、やっぱりこういった大衆酒じゃないでしょうか。総理は、夕げの一家団らんでもってひとつあすのことを思ったらどうかというようなことを施政方針演説で言っているけれども、こんなに酒も高くなっちゃ、特にビールなどはこれだけ上がってきたんじゃ、これはとてもあなた、一家団らんというわけにいきませんよ。そういう大衆が一番直接影響のあるようなこのことについて、無残にも切って捨てるようなこの酒税の値上げ、こういったことについて、一体国民のことを考えてやっているのかどうかという点から見て私どもは疑問に思います。  しかも、実は私どもが試算をいたしましたこの酒税、第一分位の三千百四十八円というのは奥さんが小売店で買ってくるわけですから、それ以外に御主人が外で飲むようなものは入っていないということから見れば、私は、このビールを頂点とした酒税の値上げということについてやはり一考を煩わさなければならない、こういうように思っておるわけでございます。  もう一つの問題は、これは問題提起だけにしておきましてお答えをいただかなくても結構でありますが、国鉄運賃の値上げを四月の二十日からされようとしています。平均七・八%、この値上げというものに対して、私はいろんな点から大変問題があると思うのですね。  第一には、いままで国鉄が百年余とってまいったところの全国一律制、この運賃制を今度は見直す、三段階をつけるという点ですね。  第二は、やっぱりローカル線の割高化、これによってますます利用減を推し進める、公共交通の衰退化を促進する。過疎の方々は踏んだりけったりという形ですね。しかも、今回の値上げによって得る増収は千七百九十二億と言っていますけれども、ローカル線の増収額というのはわずかに五十億にすぎないのですね。  なぜこれだけのものをわざわざ上げるのですか。そして、国鉄の運賃というものがその他の私鉄等の運賃と相乗的にやって国民生活を犠牲にするということを我々としては指摘をして、こういう運賃の値上げについては我々は納得できないということだけ申し上げておきたいと思います。  それから、今、予算のことについて申し上げましたけれども、やはりこの際経済政策の転換を図ってもらいたいと思いますよ。これは私はできると思う、この際。世界景気も回復基調にあるという状況の中で、このような輸出主導の形でもって経済運営をすることについては、どうしても将来を危うくする。貿易摩擦の激化ということもございまするししまするので、やはり本当の意味において内需主導に行かなければならない、こう考えておるわけであります。  大蔵大臣にもさっきそういうことを申し上げましたけれども、実際には五十八年度の実績も、見通しは外需は〇・六%という予定だったのが一・二%、それから内需は逆に見通しが二・八%というのが二・二%、トータルは三・四%で変わりありませんけれども、どうしてもやっぱり外需というものがさらにふえるという傾向にあります。こういった形の中で、経常収支の黒字というのはこれはますますふえてくるということでございまして、政府は前年度と比較をして、同じ二百三十億ドル、こう言っておりまするけれども、実際にはそうならないのではないだろうかというふうに思っていまするけれども、河本さん、どうでしょうか。
  62. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ことしの経済の概況を申し上げますと、ただいま御指摘のございましたように、第二次石油危機が起こりまして五年ぶりでようやく過去の不景気から抜け出す、上昇の方向に行こうとしておるのが一つの特徴だと思います。  それから第二点は、こういう世界の経済の流れを受けまして、日本の輸出が非常に激増しつつありまして、貿易摩擦が各方面で拡大をしておる。この二つが特徴だと思います。  こういう中におきまして、どういう経済政策をとるかということでございますが、これはやはり内需の拡大ということがあくまで中心でなければならぬと思いますが、ことしは財政が非常に弱まっておりますので、力が弱くなっておりますので、民間経済中心の成長にならざるを得ないのではないか、こう思っております。  ただしかし、その場合にやはり財政政策と金融政策は機動的に運営をすることが必要であろう、このように思います。同時に、貿易摩擦の拡大を防ぐために当面の一番の課題を解決しなければならぬ、このように考えておりますが、今の御指摘は、経常収支の黒字あるいは貿易の黒字というものはもっとふえるのではないか、そして政府考えておる内需中心の成長というものが外需に大きく依存する、こういうことになる可能性が過去の流れから見てあるのではないか、こういう御指摘でございますが、そういう傾向は確かにあろうと思います。それだけやはり先ほど申し上げましたように、当面の対外関係、経済問題を急いで解決する必要がある、このように考えております。
  63. 田邊誠

    田邊(誠)委員 河本さんが「エコノミスト」で、談話としてしゃべっておられる。これはなかなかいい顔していますよ。非常ににこにこしていまして、珍しい。その中で、一兆円減税しても一兆円増税するということでは余り効果がない、こう言っていますね。こんなややこしいことはやめてしまった方がいいとおっしゃっている。これは本当でしょうね。そして、今必要なことは決断だ。中曽根さん、決断だと言っている。これも本当でしょうね。レーガンは決断をしたけれども、日本は決断をしない、こう河本経企庁長官は言っておるわけでございまして、アメリカよりも条件はいいのだから、この際ひとつもっと積極的な経済政策を行うべきだ、こういう主張のようでございまして、私どももなかなか賛成をする中身でございます。  そこで、今言われましたように、内需中心にいかなきゃならぬとおっしゃっていまするけれども、実際は、財政は中立だというのですね。すなわち、国の財政が経済に寄与するのはゼロだというのですよ。こんなことは我々としては改めなければならないと思いますね。経済は回復基調なんですから、そして、内需を拡大する、需要をもっと喚起するためにはやはり財政がある程度寄与しなければならない、これは理の当然なんですよ。確かに今赤字財政だということでございましょうけれども、しかし、やはり財政がそういった面に積極的な役割を果たすということによってパイが全体的に大きくなるという形になってくるわけでありまして、そういった点から見て、政府は危険を冒したくない、これは二度とそういった失敗はできないのだというようなことを言いわけとして言っていますけれども、過去において随分失敗してきましたね。  経済の高度成長のときに、田中内閣が象徴的でしょうけれども、財政は抑えぎみでなくちゃならぬのにどんどん金を使ってインフレを起こすというような、こういう状態というものがあって、そして実は今日の財政赤字を生んだという過去の状態から見れば、ここへ来て、何かおっかなびっくりでもって何もやらぬということは、私はとるべき態度でないというふうに思っておるわけでございます。この個人消費を伸ばさなければ内需は拡大できないというのは当然でありまして、個人消費は実質四・一%というぐらいのことが必要だというのですが、これは幾つかの要件がありまするけれども、一つは、賃金がどの程度伸びたらいいのか。基準外賃金はある程度伸びると言っていまするけれども、やはり主体であるところの賃金は一体どのくらい伸びたらいいのか。そして、実質的な可処分所得というのは一体どのくらいになったらいいのか。この期待感があると思うのですけれども、これは政府はやらないのでございまして、民間に頼るわけでございまするが、GNPの六〇%を占めるところの個人消費、これは一体どうやって伸びると期待をいたしておりますか。
  64. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 個人消費はGNPのおよそ六割である、こういう御指摘がございましたが、大体そのとおりだと思います。それで、内需を拡大するためには、個人消費がある程度伸びませんと、これはできないわけでございます。ことし、それでは雇用者所得はどうなるかということが一つの大きな課題でありますが、ベースアップは労使双方でそれぞれの立場で解決、交渉が進んでいくと思いますが、政府の方で見通しをしておりますのは、就労者が相当ふえるであろう、このように考えております。それから、残業とかボーナス、基準外収入、これも最近の流れから見てある程度ふえるのではないか、このように思っておりますが、そこで、雇用者所得といたしましては、去年よりも、五十八年度よりもざっと一割強ふえまして六・八%見当ふえるであろう、このように考えております。
  65. 田邊誠

    田邊(誠)委員 六・八%ぐらい雇用者所得は伸びなければならぬという指摘は当然だろうと思うのであります。  そこで、いろいろなことが内容的にございまするが、住宅建設につきましても、実は相当伸びるだろうと言われておりまするけれども、五十八年度が落ち込みがひどいわけですから、一体どの程度期待したらいいのか。設備投資、これも投資減税の効果があらわれて前年を上回るだろう、こう言っておりまするけれども、一体どのような要素でもって上昇すると見たらいいのかということもございまするし、結果としての企業の収益の伸びというものが中小企業を中心に一体どのくらいあるのかということもございまするが、私は、忘れてならないのは雇用の状態ですね、失業率二・五%、最近は二・六%と発表しておりまするけれども、雇用というものに対して我々は十分考えていかなければならないというように思っておるわけでございまして、特に最近の高齢者の雇用の問題、婦人の雇用の問題等の問題がございまするが、これらについて意を用いなければならぬと思うのであります。  婦人については、特にパート労働の問題もございまするし、総理答弁をしておりまするところの男女雇用平等法、これを我々としてはつくらなければならないというふうに思っておりまするけれども、特に男女雇用平等法については、差別ができたときには完全に救済する、使用者に対するところの罰則を設ける、母性への保障をする、育児休業等をきちんと設けるという、条約の完全批准に向けての措置がとられなければならない、こういうように私どもは考えておりまするが、この雇用の問題について一言どうぞ。将来の見通し等、対策について御所見がありましたら承ります。
  66. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かに今お話しのように、失業率そのものは非常に高い水準になっております。過去の統計を見ましても、一番悪い状態じゃないかと思うのですが、ただ、雇用者の数そのものは、景気が緩やかに回復の兆候を示しておりますので、約八十万人、五十八年度も大体ふえる見通しでございます。五十九年度もさっと八十万見当ふえる予定をいたしておりますが、失業率そのものは大体二・五%、余り改善されないで横並びである、このように思っております。
  67. 田邊誠

    田邊(誠)委員 そこで、私はこの際、経済的な面からいっても積極的な経済運営に転換すべきであるということの提言を党首会談等でも我々はいたしました。この際できるというふうに我々は考えておるわけでございまして、具体的な提言については、後ほど時間があれば申し述べていきたいと思いまするが、財政再建をやるというふうに総理は言っておりまして、三本柱の一つだと言うけれども、もう六十五年に赤字公債依存から脱却するということは事実上できなくなりましたね。あなたの方の「一九八〇年代経済社会の展望と指針」によるところのこの目標は達成できないというふうに言っていいんじゃないでしょうか。大蔵省からの試算も承りましたけれども、事実上これは収支が均衡をとれないという状況になっておりますので、この際六十五年のこの目標は撤回をするということにならざるを得ないと思いますが、どうでしょう、総理
  68. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは「八〇年代の展望と指針」から来まして、これをやはり私どもとしては努力目標として、旗をおろす考えは今日ございません。
  69. 田邊誠

    田邊(誠)委員 それならば一体、収支均衡はとれないと試算は言っておるわけでございまして、これに対してどういう手だてをとろうとするのですか。実際にこれ以上もう歳出の削減というのは無理じゃないでしょうか。あなたの方の見込みよりも、実は歳出はかなりカットしていたんですね。ということから見て、今後これ以上の歳出削減を大幅にやることはもうできないという状況に来ているのじゃないでしょうか。そうすれば、この目標を達成するためには、毎年今後一兆八百億のいわば償還をするというのでしょう、しかも借換債を出すというのでしょう、そういう中でもなおかつ均衡はとれないという形であれば、どういう措置をとろうとするのですか。増税ですか。どういう措置をとってこの六十五年の目標達成を図ろうとするのですか。
  70. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは「展望」にもお出しいたしましたし、またそれに伴うところの仮定計算もお出ししておるわけでありますが、その仮定計算というものは一つは等比であり、一つは等差という前提とはいえ、私は予算審議に際しても、また我々がこれから財政再建の方途を見出すに際しても、手がかりとなり参考になる資料ではないかという考え方でお出ししたわけであります。したがって、今、田邊書記長がおっしゃいましたいわば私どもが提出いたしました資料は、現状の施策、制度をそのままにした形の試算であります。  確かに、私はこの予算編成に当たってもしみじみと思いました。五十五年度予算編成の際の最初の概算要求はプラス一〇%シーリング、それまで約一八%弱年々伸びておるわけでありますから、それが次にプラス七・五になり、ゼロになり、マイナス五になり、マイナス一〇になった。だから、今御指摘になりましたように、制度、施策をそのまま続けておったという前提に立てば、あるいは去年お出しした仮定計算からすれば二兆円ぐらいも切ったということになるかもしらぬ。その意味においては、これ以上切るといったって、もうそうないじゃないか、こういうお考え、私にもわからぬわけじゃございません。しかし、それでもなおかつ私どもは制度、施策の根源にさかのぼって、これからも歳出削減にまずは考えをいたさなければならぬ、そしていよいよ、さればいわゆる公共サービスと負担との関係において一体どうするか、そのギャップをどうして埋めるか、それは最終的には国民の合意と選択の問題になろうと思いますけれども、あえてそういう議論がなかんずく国会の場で行われ、あるいは場合によっては各党間の場においてそれらの議論が行われるためにも、このたびお出しした中期展望、仮定計算というものを素材にして問答を重ねてみたい。  今おまえはどう考えるかと言われても、私はさようしからば増税で幾ら、削減で幾ら、年度別で幾らと言うだけのリジッドな計画をお出しする自信も、また、なかなかお出しできるものでもない。だから、こうした与野党間のあるいは各党間の議論というものに基づいて今後その具体策は考えていくべき課題ではないかというふうに理解をしております。
  71. 田邊誠

    田邊(誠)委員 これは、政府自身が出した試算がもう均衡はとれない、こう言っておるのですね。いろいろな施策を積み重ねてみても、私は無理だろうと思う。第一、もうことしは六千六百五十億の償還でしょう。来年からは一兆八百億ずつどうして赤字公債の償還ができますか。それ一つ見ても、実は年度達成というのはもうできない。五十九年度までというのもできなかった。今後もできない。  というように考えてみまするならば、そこで総理、あなたは、過去において悪名高かった一般消費税、形を変えても同じでございますが、この種の大型間接税については、今の大蔵大臣の話を聞いても、なおかつ今後この導入はしない、これは約束できますか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般消費税という大型間接税は導入いたしません。
  73. 田邊誠

    田邊(誠)委員 したがいまして、我々は今後の財政運営は、やはり景気を立て直し、自然増収を高め、さらに税制改正をやる。特に大企業優遇の税制を改正する。まあ自民党の方は大企業に対して足を向けられないでしょうから、なかなかこれに足を踏み込むことはできないけれども、今大蔵大臣も言ったように、国民的な合意という立場からいえばやはりこの不公平な税制を是正するという形でもって歳入欠陥を補っていく、このやり方をする以外にない。この積極財政とそして税制の改正という中でもって最終的に国民の負担は一体どうあるべきかということを探らなければならない。このときに来ている。したがって、そういった意味合いでは、この五十九年度の超緊縮型の予算、こういった性格というものに対しては、この際やはり我々は転換をしていくべきだ、こういう主張を持っておるわけでございまして、一言、総理の御答弁を賜りたいと思います。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般大蔵省から御提出いたしました中期構想というものを見ますと、これは並み並みならない難しい道であるということは明らかであると思います。しかし、不可能と断言できるものでもございません。これからの世界景気の情勢、あるいは日本国民経済のこれからの展開のぐあい、あるいは我々がこれから行わんとする行政改革、そういう諸般の問題をよく取りまぜて、そしてやはり一たん我々が決心をして六十五年に赤字公債に依存することを脱却しようという目標は、あくまで追求して努力していきたいと考えております。
  75. 田邊誠

    田邊(誠)委員 午前中の時間がなくなりましたので、ここで人事院総裁に、公務員の給与のことについて二言だけ触れさせていただきたいと思います。  労働基本権の代償機関としての人事院制度というものの根幹が非常に揺るがされている、こういう状況でございますし、凍結、抑制という措置をとられてきたわけでございますが、五十九年に出されるであろうところの人事院勧告は、当然去年までの積み残し、具体的には四・四四%、この積み残し分は今年の勧告に含まれる、こういうふうに参議院の審議を通じて昨年おっしゃっておりますけれども、それは間違いございませんね。簡単で結構です。
  76. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 人事院の給与勧告制度が現行のままで推移いたしまする限りにおきましては、今まで繰り返し繰り返し申し上げておりますように、抑制あるいは凍結の結果というものは、その次の年度の調査でこれは明らかになってまいります。したがいまして、本年度についても、私は、一月十五日現在の国家公務員の実態調査というものを既にやっておりますし、四月になりますれば、従来どおりの方針を変えるつもりはなく、官民較差というものを精細に調査をして積算をいたしたいというふうに考えております。  したがいまして、一昨年の凍結あるいは昨年の抑制ということが、そのままの数字というわけではございませんけれども、当然これは反映されていくというふうに考えております。
  77. 倉成正

    倉成委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開講
  78. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前中の田邊誠君の政治倫理や総裁声明に関する質問に対しての総理答弁は不十分であるとの質疑者の強い指摘がありましたので、総理の再答弁を求めます。内閣総理大臣中曽根康弘君。
  79. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど田邊委員から御質問いただきました政治倫理に関する問題につきまして、改めて御答弁申し上げます。  まず第一に、選挙の結果につきまして、厳粛にこれを受けとめて、それに応ずるような政策あるいは政治姿勢をとらなければならないと思いまして、そういう意味からも、党内各派、各要人の御意見も承りまして声明を発した次第でございます。  それによりまして、まず第一に、党及び内閣の人事につきまして、全党体制をさらに強くとるという考えを持ちまして、内閣及び党の幹部等々につきましてそのような編成がえを行ったということでございます。もとより自民党は人材が豊富でございますが、派閥にとらわれないで、そして人材本位で適所適材を抜てきする、そういう考えによって行った次第でございます。  それから、党大会を開きまして、全党員に対しましてそのような私の心がけを重ねて鮮明にいたしたところでございまして、全党を挙げてそういう形で取り組むという形にお願いしたわけでございます。  さらに第三番目に、党の運動方針をことしは砂田君が起草いたしましたが、その際にも政治倫理及び全党体制の確立という点を特に強調いたしまして、我が党は、ことしいっぱいの行動といたしましても、倫理の問題及び清潔な党を目指して進むという点を確認しておる次第でございます。  さらに第四番目では、資産公開を閣僚につきましてまず断行いだした次第でございます。資産公開につきましては、いろいろ御議論もあると思いますが、とりあえず閣僚につきましてやりまして、そしていろいろな御議論を拝聴して改良すべき点があれば改良していきたい、また各党の皆さんともお話し合いを進めてまいりたいと考えておるところでございます。  さらに、今後の諸般の問題等につきましても、総裁直属の政治倫理に関する調査会を設置いたしまして、これも全党から要人を抜てきいたしましてこの政治倫理の確立に関する諸般の問題を具体的に進める作業に入っておるわけでございます。  なお、今後の政策の運営あるいは政策の策定あるいは予算の編成等につきましても、党首会談等を今回は内示の前にもいたしまして、今後とも与野党協調のもとに政策を前進させていきたい、このように考えておる次第でございまして、御了承をお願いいたす次第でございます。
  80. 倉成正

    倉成委員長 質疑を続行いたします。田邊誠君。
  81. 田邊誠

    田邊(誠)委員 せっかくの答弁でありまするけれども、私の質問いたしました点に全く触れておりません。私は、いわゆる田中問題が総選挙の結果に及ぼした影響、そういった点から見て今後田中氏の政治的な影響力は一切排除するという、こういう総裁声明を出したわけでございまして、その点に対して一体中身は何か、一体これにこたえる道は何かということを問いただしたわけでありまして、今の総理答弁は全くの的外れであり、先ほどの答弁の繰り返しである、こういうように考えておりまして、私としては納得することができません。  委員長にお願いいたしまするけれども、先ほどの私のこの質疑応答に対して、委員長は、この問題はひとつ委員長が預かって後刻協議をする、こういう御趣旨の御発言がございました。したがいまして、ぜひひとつ委員長の手元におきまして理事間の協議を行って、この私の主張に対して納得のいくところの結論を出していただくように強く要望しておく次第でございます。  それでは、引き続いて質問をいたします。  防衛費対GNP一%厳守の問題は、これは五十一年以来閣議決定をし政府が遵守したところでありまするけれども、この枠を守るということについては、今も変わりございませんね。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昭和五十一年につくりました三木内閣当時の閣議決定は、これを遵守してまいりたいと思っております。
  83. 田邊誠

    田邊(誠)委員 しかし、この五十九年度の予算を見ましても既に〇・九九%、まさに一%を突破するということの情勢にあるわけでありまして、私は、この一%はただ数字のことだけではなくて、憲法に基づいて専守防衛に徹する、こう言っておる政府の防衛に対する考え方からきておる、この基本的な姿勢というものをひとつあらわしているのがGNP一%、こういうことではないかと思います。その他非核三原則の問題もあり、あるいは武器輸出禁止の問題もありますけれども、そういった面からいって、これは非常に重要な枠組みである。この枠を取っ払えば今後果てしなく軍備拡張へと向かうのではないか、こういう国民の心配があるわけであります。  しかし、今年度一%の枠を守る、こうおっしゃいましたけれども、実際には今年中に一%を突破することは必至である、こう考えておるわけでございます。その一つの証左として、給与の改定、これがあるわけでございますが、これは先ほど河本経済企画庁長官の、景気浮揚の問題と絡めてかなり賃金を上げなければならない、雇用者所得を上げなきゃならぬ、こういうお話もあり、そしてまた人事院総裁から明確な御答弁がありましたとおり、公務員の給与は、一昨年の凍結から昨年の二%という実施でもって、事実上人事院制度をいわば根底から覆すような、こういう措置をとってまいったのでありますけれども、そのために昨年からの積み残しの四・四四%、これは当然この上に今年の民間賃金が上がった分、この官民較差というものを見て人事院勧告は出すのが当然だという人事院総裁答弁がありましたから、これは仮定の話じゃなくて、当然予測できる、予見できるところのものとして、今年の人事院勧告は昨年の積み残し分四・四四%を上回るものであることはもう当然であります。  そういった点から見まするというと、GNP比一%の枠を今年半ばに突破するということは、これは間違いのない事実であろうと思いますが、そういった点を考えて、GNP一%の枠を突破する危険性に対して政府はどのように対応するつもりでございますか。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は、一%の枠内におさめるように今後とも全力を尽くしてまいりたいと思っております。  人事院勧告につきましては、前から申し上げているように、この制度が労働権の代償という意味もある、またしかし、一面におきましては国家財政等々を考慮すべき範疇にも入っており、最終的には政府及び国会が決める、そういうような法律的手続にもなっております。しかしながら、政府の立場といたしましては、人事院勧告をできるだけ尊重して努力してまいりたい、そういう考えに立っておるのであります。
  85. 田邊誠

    田邊(誠)委員 これは二つ矛盾したことをあなたは言っておるわけでありまして、人事院勧告制度を守る、これはもう昨年十二月の参議院におけるところの質疑を通じて当時の官房長官なり総務長官が明確に言っているように、昨年のように人事院が出したところの俸給表を勝手に改ざんをして政府が出すことは、これはまことに異例なことである、したがって、五十九年度については人事院勧告制度を尊重する建前でもって政府は対応するということを答弁しているわけです。したがって、この積み残し分四・四四%は当然今年の人事院勧告の中に盛られるファクターである、こういう人事院総裁の明確な答弁がある以上、これはもう四・四四%以上になることは必至である。そして人事院勧告は守る、こうなってくればGNP一%は突破する、こういうことになるのは当然でしょう。三%で突破するのですから、当然ですね。どうするのですか。
  86. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府といたしましては、一般的に、とにかく人事院勧告を尊重してこれを実行するように努力してまいりたいと思っております。  一%、GNPとの関係というものは、ことしの景気の動向、GNPの増大の予想、要するに分子と分母の関係というものがまだ流動的でございまして、今にわかに断定することはできないと思っております。
  87. 田邊誠

    田邊(誠)委員 それがいかないのです。政府が経済見通しを立て、今年のGNP二百九十六兆円という一応の目標を立てた以上、この目標というものを一応据えた上で、そして政策はどうつくるのかということは当然なんでして、その辺からいいまして、GNP自身が動くなんて、そんなことは当たり前の話ですよ。そんなことを言っていれば、GNP一%枠というのは一体どこの時点で決めるのですか。これはだめなんです。しかも、これは五十九年度が突破すると同時に、私どもの試算によれば、六十年以降は後年度負担もありまするし、そしてかなり自衛官の退職もある、こういう年限に来ておりまするから、防衛費もかなり全体的に伸びるということで、これは突破必至だということはデータ上明らかなとおりでございます。したがいまして、そういった意味合いからいって、この際に来たところの防衛費の対GNP比一%という、この政治的な問題について、あなた方の政治決断、あなた方の政治判断というものが求められているのですよ、総理。  ですから、この人事院勧告は既に四・四四%以上だ。これは当然です。それで尊重する。これは一般的に言っても尊重するということでございましょう。政府が出すのですよ。国会で決めるようなことを、あなたはすぐ逃げるように言うけれども、政府が出すのです。その給与法の中で四・四四%以上、すなわち三%のこの限度よりもふえるという状況になったときに、政府のとるところの態度というものは三つしかない。一つは、一%の枠を突破するもやむを得ないということですね。これは我々としては断じて認めることはできない。一%の枠を突破したらまた新しい枠を設けたらどうかなんという論は、これは私どもとしては俗説としてとらない。したがって、そうすれば第二番目には、給与改善を一%の枠内に抑える。そんなことはできますか、できませんね。ここまで来た場合に、経済成長を見越し、民間賃金を見越したときに、いまあなたもGNPは景気の状況によって動くなんて言っている。もっとGNPをふやしたいわけでしょう。そういった点からいえば、公務員の給与、公共企業体の労働者の給与も、ことしは人勧制度を守り、仲裁裁定を守らなければならぬというのは当然ですね。したがって、給与改善を一%の枠内に抑えるというようなことは我々としては断じてすべきでない。そうすれば、もう一つの道は、この防衛予算の中の他の経費を節減しても、切り詰めても一%の枠を守る、こういうことになるだろうと私は思うのですね。この三つのうち、いずれをとるのですか。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 GNP一%の枠内におさめるように極力努力いたしたいと思っております。(「それじゃ答弁になっていない」と呼び、その他発言する者あり)
  89. 倉成正

  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三つのうちどれをとるかという選択肢を今お示しになりましたけれども、政府といたしましては、とにかくGNP一%以内におさめる、そういうことを前からずっと申し上げておりまして、その努力を全力を尽くしてやってみたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  91. 田邊誠

    田邊(誠)委員 ですから、GNP一%の枠を守りたいという政府の、総理のその考え方を具体的に実施する場合には、私が示した三つの選択のうち一体どれをおとりになろうとするのか、どの項目についてあなたは努力しようとするのか。すなわち、第一番目の、突破することはやむを得ないという、この考え方はとらないと言うのですね。そうすれば、給与改善を一%以内に抑える、こういうことをとるのか。そうでなくて、公務員の給与は当然人勧によって相当な値上げがあるということで、突破するという場面については、他の部門を節約しても一%の枠を守る、こういうことか。二つのうち一つ、どちらをとるのですか。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 人事院勧告が出るのは大体八月初旬であると思いますが、つまり、人事院勧告が出たときによくそれに対する対処方針を考えるというのが今まで政府がとってきた態度でございます。そういう意味におきまして、ことしもどういう人事院勧告が出るかという、その勧告を見まして慎重に対処していきたい、このように考えております。(「だめだ」「人事院総裁は四・四%をやると言っているんだよ」「質疑続行」と呼び、その他発言する者あり)
  93. 倉成正

    倉成委員長 田邊君、御質問を続けてください。
  94. 田邊誠

    田邊(誠)委員 簡単な話でして、架空の話をしているのじゃないのです、今年度の予算を審議しているのですから。今年一年をどういうふうに計画を立て、その計画に基づいて政策を実施するかということを我々は論じているわけですね。そういった点から見て、一応このGNPというのは、今の時点でもって二百九十六兆が見込める数字であると経済企画庁は閣議でもって了承を得ている。そういう中でもってこの人事院勧告制度を尊重すると総理が言う以上、人事院総裁は今年の人事院勧告の中には昨年の積み残しの四・四四%は当然含まれますよ、こう言っているのですから、したがって、人事院勧告は少なくとも四・四四%以上になることはもう必然的であります。そうなってくれば一%の枠は事実上突破せざるを得ない。そのときの措置は何かというのを聞いて無理でしょうか。これは架空の話でしょうか。こういうことを審議し、こういうことについて総理考え方を示すのが予算委員会の審議じゃないのでしょうか。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ことしの予算の編成等を見ますというと、一%の枠内におさめるということは、将来の構想等見て難しい、きつい面があるということはよく知っております。しかし、今まで毎年人事院勧告につきましてこの議会でも御質問がございますが、八月の人事院勧告が正式に出たときに政府としては責任のある態度をお示ししてきたのでございまして、今回におきましても、一般方針として、今申し上げましたように、一%以内にとどめるようにできるだけ努力してまいりますということを申し上げまして、あとは、人事院勧告が正式に出ました後、その勧告に対しましてよく検討してみたいと思っておる次第でございます。(「だめだよ」と呼ぶ者あり)
  96. 倉成正

    倉成委員長 田邊誠君。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)——総理大臣
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、一%を守るべく、ともかく誠意を尽くして努力をいたします。(「守りますでなければだめだ」と呼び、その他発言する者あり)
  98. 倉成正

    倉成委員長 田邊誠君。(発言する者あり)——総理大臣
  99. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は、今までの御答弁の中におきましても、昭和五十一年の三木内閣の閣議決定については変更する理由を認めません、そういうことを申し上げております。その線に向かって努力をいたします。(「努力はだめ、守ります」と呼び、その他発言する者あり)
  100. 倉成正

    倉成委員長 田邊君。(「質問催促、委員長」と呼び、その他発言する者あり)——田邊君、質問を続行してください。(「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者あり)——総理大臣
  101. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は、昭和五十一年の三木内閣の閣議決定を変更する必要を、今のところ認めておりません。(発言する者あり)
  102. 倉成正

    倉成委員長 田邊誠君。田邊君。(「だめだよ、だめだよ」「休憩」と呼び、その他発言する者あり)——田邊誠君、どうぞ質問を続けて。(「休憩」「委員長権限で続行」と呼び、その他発言する者あり)——田邊君、どうぞ。先ほど総理から答弁がありましたから、もし御不満があれば、どの点が不満か、ひとつ明らかにしてください。(「理事会、理事会」と呼び、その他発言する者あり)——田邊君、質問を続けてください。(「休憩、休憩」「続行」と呼び、その他発言する者あり)——田邊誠君、質問を続行してください。(発言する者あり)——田邊君、田邊君、田邊誠君。(発言する者あり)  田邊君の質疑に対して、政府側の答弁、不満足だということでございます。しかしながら、田邊君の質問をもう一度繰り返していただいて、政府の御答弁をちょうだいしたいと思います。
  103. 田邊誠

    田邊(誠)委員 私は非常に簡単、簡明に実はお答えを願っているわけです。  このままいくとGNP一%を突破する、こういうおそれがある。これは政府の防衛に関する基本姿勢にかかわる問題だから、この際明確にしてもらいたい。そして、このままいけば六十年度にはさらに突破ということはもう必然的だ、私どもこういう試算を持っているわけです。したがって、この際政府は、再三にわたって言明したところの一%の枠は必ず守りますよ、このことをきちんと言ってもらわなければ国民は安心しないのですよ。ですから、そのことについて先ほどからお答えを願っているわけですけれども、総理の言葉の中には、実はかなりニュアンスの面で疑いを持たせるようなことが言われているわけですね。ですから、このままでは私としてはどうしても納得することはできない、こう思いますので、これ以上総理が同じようなことを答弁されても、これは我々としては絶対納得することはできないということを御承知いただいて、議事運営について改めて委員長にひとつ御判断を願いたい、こう思います。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛費をGNPの一%以内にとどめていくという昭和五十一年の三木内閣の閣議決定の方針は、遵守していく考え方であります。(「早く理事会をやれ」「ちゃんと休憩して、それで相談したらいいじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)
  105. 倉成正

    倉成委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時三十分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕