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1984-06-19 第101回国会 衆議院 本会議 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月十九日(火曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第二十六号   昭和五十九年六月十九日    午後一時開議  一 国務大臣演説帰国報告について)に対    する質疑     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説帰国報告について)に対する   質疑     午後一時三分開議
  2. 福永健司

    議長福永健司君) これより会議を開きます。      ―――――・―――――  内閣総理大臣演説帰国報告について)に対   する質疑
  3. 福永健司

    議長福永健司君) 去る十五日の内閣総理大臣帰国報告についての演説に対する質疑に入ります。林義郎君。     〔林義郎登壇
  4. 林義郎

    林義郎君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表し、中曽根総理ロンドンサミットからの帰国報告に関して質問を行います。  私は、中曽根総理並びに安倍外務大臣竹下大蔵大臣を初めとする随員の方々の大変な御努力によって、今回のサミットが輝かしい成果を上げられたことを高く評価するものであります。とりわけ、採択された各種宣言の中に我が国意見が大きく取り入れられており、サミットにおける我が国発言力増大地位の向上は特筆すべきことであります。  それとともに、我が国の国益を代表するのみならず、先般のインドパキスタン訪問を初め、各国首脳との活発な意見交換を踏まえて、アジア・大洋州の代弁者として、いわゆる南の諸国の声をもサミットに反映させた点で、極めて意義深いものがあったのであります。  中曽根総理を初め参加各国首脳は、この会議での討議を通じて、現在の複雑かつ困難な世界政治経済情勢に対処するため、改めて自由と民主主義価値を再確認して西側の結束を固めたこと、その上に立って東西間の対話拡大を呼びかけるなど平和に対する積極姿勢を打ち出したこと、また当面する経済的諸問題に対しても、これを解決するための中長期的な共通戦略を立案したことなど、幾多成果を上げられました。  以上のような観点に立って、以下私は幾つかの問題について質問を行い、総理の率直な御意見をお伺いしたいと存じます。  そのまず第一は、民主主義の諸価値に関する宣言についてであります。  この宣言は、市民の権利と自由の保障、自由な選挙と表現の自由、偉大な多様性と創造的な活力、相互の緊密な協力による政治的安定と経済発展実現など、民主主義の持つ諸価値をうたう一方、自由と正義を伴う平和の必要性と、紛争解決する手段としての武力の行使の拒否、あらゆる紛争の理性に基づく対話交渉による解決、真正な非同盟尊重という平和姿勢を強く打ち出しているのであります。  東西間の緊張が依然解決兆しを見せず、イランイラク紛争を初め、各種紛争が地球上の各地で絶え間なく起こりつつある現在、この宣言の持つ意義は極めて重大であると思います。私は、サミットが現時点でこのような宣言を発表できたこと自体、西側民主主義陣営体制への自信と強い平和への積極姿勢を示したものだと信ずるものでありますが、特に真正な非同盟尊重を入れられたことを含めて、宣言文を取りまとめられましたその経過について、総理の御所見を伺いたいと存じます。  次に、東西関係軍備管理に関する宣言についてお尋ねいたします。  今回のサミットは、この宣言によって、現在厳しい緊張状態にある東西関係の打開に臨むに当たり何よりも必要なことは西側陣営全体の連帯とかたい決意であることを明確にした上で、ソ連及びその同盟諸国との対話拡大と、現在中断している種々の軍備管理交渉の早急な再開を提唱いたしました。同時に、この宣言は、米国がいつどこでも前提条件なしに核軍備管理話し合いを再開する用意があることを明らかにしたのであります。  このような柔軟姿勢の提示は、東西緊張の解消と核軍縮実現を求める全世界の願望にこたえたものであり、私は、かかる勇断を下した各国首脳決意と英知に対し、心から敬意を表するものであります。しかしながら、その後ソ連側が示している硬直した姿勢から見て、この宣言が具体的に実行されるのは容易なことではなく、今後なお多大な忍耐と粘り強い努力が不可欠であると思います。  平和国家としての我が国使命は余りにも重要であります。いかに現実が厳しくとも、ロンドンサミットの諸宣言に盛られた貴重な平和への意思を一片の空文に終わらせてはなりません。我々は、米欧など価値観を共有する西側友邦諸国と緊密な連携のもとに、国連その他あらゆる国際的な場を通じて、平和と核軍縮を求める国際世論を一層喚起するため、不屈の外交努力を続けるべきだと考えます。総理の忌憚のない御所見をお伺いする次第でございます。  次に、今次サミットの柱である経済宣言についてお尋ねいたします。  昨年のウィリアムズバーグ・サミット宣言は、経済回復の明瞭な兆しを今や目の当たりにしておるとうたっておりましたが、その後一年を経過した今日、サミット諸国における景気回復各国努力によりようやく軌道に乗るに至りました。したがって、今次サミットにおける最大課題は、この回復を持続させること、またその恩恵開発途上国や特に飢餓に苦しむ貧しい国々に及ぼしていくための方策を探っていくことであったと思います。そして、今次サミットにおいて三日間にわたる参加各国首脳の真剣な討議の結果、幾多の重要問題について意義深い合意がなされたことは、まことに喜ばしいことであります。ここで私は経済宣言についての具体的質問に入る前に、まず今次宣言意義及び成果について、総理がどのような御所見をお持ちか、お伺いしたいと存じます。  質問の第二は、経済運営の問題であります。  インフレなき持続的成長を可能にするために、経済宣言においては、インフレ及び金利を低下させ、また財政赤字を削減するための諸政策を引き続きとり、必要な場合にはこれを強化するとの合意参加各国首脳間でなされたことは、基本的には妥当なことと考えます。かかる観点から、我が国としては特に米国に対し、財政赤字を削減し高金利是正するために節度ある経済運営を求めていくことが重要と考えます。同時に、我が国としては、これまでの成果を踏まえ、内需中心とする持続的かつ安定的な経済成長を定着させていくことが重要であると考えますが、これらの問題について、総理の御所見を伺いたいと存じます。  質問の第三は、技術開発及び産業構造問題であります。  先進国中心景気回復軌道に乗ったとはいえ、欧州諸国中心に依然として高水準の失業に悩んでおります。今後成長を持続させるとともに新たな雇用を創出するためには、中長期的視点に立って、技術革新産業構造の変革及び労働市場における硬直性の打破に向けて積極的努力を払っていくべきことが真剣に議論され、今次サミットにおいてはその重要性が強調されたと聞いております。私は、中長期的視点に立って、このような技術開発及び構造調整問題の重要性参加各国首脳が認識したことは今次サミットの大きな特色であり、また成果であったと考えます。  この点に関連し、参加各国首脳我が国経済活力政策展開を高く評価したと聞いておりますが、二十一世紀を展望し、我が国産業のよって立つ基盤に思いをいたし、国際社会への我が国の貢献を考えるとき、今後とも総理のリーダーシップのもとに技術開発産業調整を一層強力に推進していくべきだと考えますが、総理の御意見を伺いたいと存じます。  質問の第四は、債務累積問題であります。  債務累積問題は、危機的状況は一応回避されておりますが、依然として深刻な問題であり、国際経済上の大きな不安定要因となっております。債務累積問題については、抜本的解決策はいまだ見出せておりません。が、世界景気持続的回復先進国開発途上国への一層の市場開放高金利是正債務国自助努力など、先進国債務国国際機関が力を合わせて各般の対策推進することが重要だと考えます。このような観点から、経済宣言において債務累積問題対策一つの方向づけがなされたことは、まことに意義深いことだったと考えます。  総理は、今次サミットにおいて、とりわけ開発途上国立場に心を砕いた旨述べておられますが、債務累積問題に悩む開発途上国に対し、今後どのように対処されていくおつもりか、率直な御意見をお聞かせ願いたいと存じます。  質問の第五は、新多角的貿易交渉促進についてであります。  本交渉促進は、今後の世界貿易を方向づける重要問題であり、今次サミットにおける総理最大関心事であったと考えます。保護主義は自由かつ無差別を原則とする貿易体制に対する挑戦であり、これを放置すると、経済持続的成長を妨げるだけではなく、景気回復開発途上国への波及の障害にもなりかねません。このような観点から、我が国は数次にわたり一方的な関税引き下げ、市場開放などの措置をとってまいりました。しかし、景気回復が着実なものとなった今こそ、保護主義を巻き返し、自由貿易拡大のモメンタムを維持強化するために、新多角的貿易交渉促進を図るべきだと考えます。今次サミットにおいては、この新多角的貿易交渉についてその必要性が認められ、早期決定を目指してガット加盟国と協議することになったことは一歩前進であると考えます。  昨年の日米首脳会談において新多角的貿易交渉を提唱され、その後もその推進のため積極的な努力を払われてきた総理として、今後の手順などについて、どのような具体的構想と展望を持っておられるのか、率直な御意見をお聞かせ願いたいと思います。  最後に、経済問題に関連して、石油問題について一言お尋ねいたします。  イランイラク紛争の激化に伴い、ペルシャ湾におけるタンカー攻撃の続発など湾岸情勢は緊迫の度を加えております。最近の国際石油需給は基本的に緩和基調にあり、また、ホルムズ海峡の封鎖など万一の事態に立ち至った場合でも、ホルムズ海峡関係のない諸国の増産などもあり、国際石油市場への影響は相当緩和されるものと思われます。また、我が国としては従来から石油備蓄の増強に努め、現在、民間備蓄政府備蓄を合わせて約百二十三日分の備蓄を保有していること、さらにはIEAを通ずる国際協調も考えられることなどから、我が国経済及び国民生活への影響を最小限に抑えることができるものと言われております。しかしながら、我が国は、ホルムズ海峡を通ずる石油に三分の二を依存するという脆弱な構造を持っており、また石油ショック狂乱物価と言われた苦い経験を持っているのであります。  こうしたことを踏まえ、総理は、今度のサミットでのエネルギー問題についての討議で、どのような世界的視野に立って問題を解決しようとされたのか、また我が国として、石油ショックと言われるような事態が再び起こらぬようにいかなる方策でもって当たられるのか、総理の率直な御見解を伺いたいと存じます。  以上、私は、今回のロンドンサミット成果について、みずからの見解を述べつつ、総理の御所信をただしてまいりました。  今質問を結ぼうとするに当たり強く私の胸を打つのは、国際社会における我が国発言力の伸長と、その裏返しとしての国際国家日本責任増大についての厳しい自覚であります。今回のサミットにおいても、中曽根総理発言幾多重要局面において会議を主導し、また多くの宣言文の中で、その骨格部分に位置づけられたと聞いております。今や世界日本発言を注目しているのであります。  昭和二十一年、我々は戦後のもとに日本国憲法を制定いたしました。その前文において、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と念願いたしました。今や我が国国際社会における地位は高まり、国際国家日本としての責務をいかに果たすかが問われる時代になったのであります。我々は、この厳然たる事実に身を引き締め、厳しい自覚責任感に徹しつつ、国際国家日本としての責務を果たしていかなければならないと思います。  総理の御決意のほどを伺いつつ、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  5. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 林議員にお答えをいたします。  その前に、今回のロンドンサミット出席に際しまして、国民皆様方からは多大の御支援をいただき、また野党の党首の皆様方からはいろいろ御見識あるお考えを拝聴させていただきまして、厚くお礼申し上げる次第でございます。一生懸命やったつもりでございますが、必ずしも御期待に沿い得なかったことを遺憾に存じます。  以下、林議員の御質問に対しまして御答弁申し上げます。  まず、民主主義の諸価値に関する宣言経過並びに意義を述べよということでございます。  この宣言ができまする理由は、恐らく、今回のサミットが十回目のサミットに当たりまして一つの節目である、自由世界先進工業国が集まっておるという面から、自由と民主主義価値を強調し、またこれをあくまで擁護していこうという決意を表明するという意味があったのではないかと思います。また、そのように思います。また、伝えるところによれば、サミットは六月七日から行われましたが、その前の日はDデーノルマンジー上陸作戦の記念の式がございまして、そういう意味において、ドイツやイタリーや日本立場というものも考えた節があります。そういう面から、今我々がこれを享受し擁護している共通課題である自由と民主主義の諸価値というものを相分かち合って、さらにたくましく推進していこうという決意の表明という意味もあったと思っております。  この案文ができますに際しましては、民主主義価値という面がかなり強く出ておりましたけれども、我々は、民主主義価値と同時に平和が大事である、同じくらいに重要な価値を持っておる、そういう意味におきまして平和の問題を強く主張いたしまして、この声明の中に入れてもらった次第でございます。特に我々といたしましては、東西間の交渉、これは米ソ対話促進のみならず、あるいはイランイラク戦争があり、あるいはカンボジア問題があり、至るところに紛争がくすぶっております。そういう意味において、全世界的規模において武力を行使せず話し合いによってこれを解決する、そういう面を強くこの中に取り入れていただいたのでございます。  なおそのほか、発展途上国に対する配慮あるいは非同盟中立国々に対する配慮等も十分行うべきであるという主張もいたしまして、それらの点も入れていただいたというところでございます。  私は、この機会に、自由と民主主義価値を改めて我々が確認し、これを全世界に向かって擁護する決意を新しく行ったことは甚だ意義がある、このように考えておる次第でございます。(拍手)  次に、平和と核軍縮を求める国際世論を一層喚起すべきではないかという御質問でございますが、我が国憲法に基づき、平和国家としての建前からも、世界に向かって軍縮及び対話による紛争解決を一貫して主張してきているところであり、今回のロンドンサミットにおきましても、東西関係軍備管理に関する宣言におきまして同様の精神を重ねて強調してきたところでございます。  特に、世界の平和、それは核軍縮中心に今集中されている観がございます。そのためにも米ソが速やかに対話回復して、INFあるいはSTARTの交渉を行って、全世界的な緊張を緩和して全世界国民に安心を与えるような措置を講ずることが望ましいのであります。そういう意味から、我々はアメリカに対してもソ連に対しても同じように前提なしに速やかに交渉のテーブルに着くように強く要請し、また今後も努力してまいるつもりであります。(拍手)  次に、経済宣言意義及び成果に関する御質問でございますが、昨年のサミットに比べてことしのサミットは希望のある明るいサミットにぜひしたいという念願で出席をいたしました。世界経済は、昨年から比べますとかなり景気アメリカ中心回復しております。このような景気回復に弾みをつけて、その恩恵発展途上国債務累積国にまでできるだけ早く及ぼすということは我々の大きな責任でございます。  そういう意味におきまして、諸般の問題について論議もいたしました。先ほど申し上げましたように発展途上国に対する配慮等も行いましたが、大事な点は債務累積国に対する我々の配慮でございます。これも宣言に盛られたところでございますが、債務累積国自助的努力前提としつつも、各国国別にあるいは国際機関を通じまして、債務累積国の政治的、経済的立場を十分配慮しつつ、あとう限りの支援を行い、立ち直りを期する、そういう協調的態度を我々は決定した次第でございます。  なおそのほか、いわゆるニューラウンドにつきましても強く主張いたしました。ややもすれば、世界経済保護主義の誘惑に駆られます。そこで、保護主義に対する闘いというものは、ちょうど坂道を車を押して上っているようなものであって、ちょっとでも手を緩めれば、保護主義の方へ車は後戻りしてしまいます。そういう意味において、みんなで世界じゅうでこの自由経済、その車を押し上げる努力を常にしているということが必要なのでありまして、東京ラウンドももうあと二、三年で終わりに近づきます。そういう意味において、新しいラウンド準備をできるだけ早くして、車を押し上げる努力を全世界的に行う必要を感じたわけであります。特に日本自由貿易自由経済を主張する国であるからであります。  私は、昨年十一月、アメリカ大統領あるいはドイツコール首相カナダトルドー首相日本においでになりましたときに、このニューラウンド必要性を強調いたしまして賛成を得たのであります。その後、発展途上国に対しましても、外交機関を通じまして我々の真意を理解していただくように全力を尽くしまして、インドパキスタンに行ったときにも、それを強調してまいったのでございます。その上でサミット出席いたしまして、この新しいラウンドを早く確認して推進すべく努力をいたしました。アメリカカナダ等日本と一緒になって非常に努力をしてくれたところです。でき得べくんば来年から準備を行い、再来年から正式の交渉に入る、そういう日限を入れたかったのでございます。しかし、ヨーロッパの側におきましてはかなり強い抵抗がありました。というのは、日本アメリカ経済が非常にたくましく成長しているので、それに押しまくられてはかなわないという気分もあったのであります。特に日本経済的実力については警戒心もあったようであります。  そこで、余り力押しをやり過ぎるとかえって国際的孤立を招くという感もありまして、そういう意味でこのニューラウンド必要性の確認、それからそれに取り組むための方法、それから目的、それからタイミングについて可及的速やかに決定を行うというところで妥協した次第でございます。今後も、この線に沿って我々は全力を注いでまいるつもりでございます。  次に、高金利の問題について御質問がございました。  高金利の問題につきましては、やはり議論が集中いたしました。我々も、貿易バランス是正あるいは債務国に対する債務の増幅、こういう面からも高金利は望ましくない、できるだけ世界的に高金利を回避すべく努力すべきであるということも主張し、そのために大事なことは財政赤字を縮減することである、そういう点において各国意見は一致いたしまして、この高金利是正等財政赤字の縮減に関する部分声明に盛られることになったのでございます。  その次に、経済政策の問題につきまして内需中心にした経済政策を行うべきであるという御質問でございます。  これは全く同感でございます。現在の財政状況からしますると、財政が出動して景気を大いに振るい起こすという余地はございません。したがいまして内需中心のこの振興は、民間の力を中心に、ひとつ金融政策やそのほかの機動的運営により、物価の安定を基調にしつつ我々は振興してまいりたいと考えておる次第でございます。  次に、技術開発及び産業構造調整の問題について御質問をいただきました。  この点も、今回の経済問題につきまして非常に重要な点であったのであります。ヨーロッパ国々におきましては、まだ必要が非常に多い状況にございます。それで、過去十年間を見ますと、新規要員の就職というものはほとんど数量的に伸びておりません。ところが、アメリカは過去十年間に約千八百万、日本は三百八十万人の雇用がふえておるのであります。仕事がふえておるのであります。  これはやはり産業調整がうまくいっておる、言いかえれば、新しい技術革新、新しい仕事をどんどん興しておる、あるいはエレクトロニクスであるとか、あるいはハイテクであるとか、あるいは流通産業であるとか、そういう面で雇用を非常に吸収してきておる、あるいは労使関係も非常にうまく協調が行われ、ロボットの導入等も行われ、それが新しい仕事をまた興しておる、そういう点を我々は大いに強調いたしまして、ヨーロッパ皆様方アメリカや我々の話を聞きたがったのでございます。我々は、このような面におきましてはかの国からはやや進んでいると思いますが、さらに馬力を入れてこの構造調整に取り組んでいかなければならぬと思います。市場メカニズムを活用していくということ、経済的フロンティア拡大していくということ、そして技術開発、それから民間活力増大、そして国際社会との交流の増進、これらの面におきまして我々は構造調整を進めてまいりたいと思っております。  次に、債務累積問題について御質問をいただきました。  これらの債務累積国につきましては、政治的、経済的困難に配慮をしながら、債務国自身が所要の経済及び財政金融政策の変更を行うことを支援し、その状況に応じてケース・バイ・ケースに対処していく、こういう基本原則を決めた次第でございます。  この具体策といたしましては、民間債務の多年度にわたる繰り延べを奨励する、今までは一年一年の繰り延べでございましたが、これを二年とか三年とかそういう多年度にわたる繰り延べを奨励する、IMFや世銀の役割を強化する、このことを検討する、あるいは直接投資を推進する、あるいは発展途上国に対して市場の一層の開放先進国が行う、これらの点を具体的に決めた次第でございます。  次に、ニューラウンドについて御質問をいただきましたが、これはただいま申し上げたとおりでございまして、我々といたしましては、できるだけ速かやニューラウンドを進めるように、この一年間、来年に向かって全力を尽くして速かや準備を開始し、交渉に入る努力を続けてまいりたいと思っております。  次に、石油問題について御質問をいただきました。  ロンドンの今回の会議におきましては、大体世界先進国石油保有量は相当量あってだぶついておる、したがって、いろいろな事態が起きても心配はないという点において認識は一致しております。我が国におきましても、石油備蓄量は百二十三日を超えておりまして、戦後最大備蓄量を持っておる状態でございます。しかし、それで安心してはいけない、この点は日本が特に強調いたしまして、引き続いていかなる事態にも応じ得るように各国協調しつつ努力を進めていくという線を声明文の中に入れた次第でございます。今後、IEAあるいはそのほかの機関等も通じまして、協調行動をとるように努力してまいりたいと思っております。  石油安定供給につきましては、今後我々といたしましては、備蓄をさらにふやすということ、自主開発推進あるいは供給源多角化、あるいはIEAを通ずる国際協力促進、あるいは石油産業構造改善、これらにつきまして今後とも努力してまいりたいと思います。  最後に、国際国家日本使命について御質問がございました。  私は、日本使命といたしまして、平和の国、世界の平和を確保するために、我々は異常の努力を行うこと、さらにまた、経済先進国として発展途上国や貧困なる国々に対する十分なる配慮を行うということ、主としてこの二つの問題を中心にして、日本世界的役割を自覚しつつ世界国家として前進してまいり、ひいては日本文化というものに対して世界の目を開いていただいて、そうして東西文化を融合し創造するという日本に前進していきたい、このように考えておる次第でございます。  以上で答弁を終わりにいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  6. 福永健司

    議長福永健司君) 嶋崎譲君。     〔嶋崎譲君登壇
  7. 嶋崎譲

    ○嶋崎譲君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました第十回主要国首脳会議をめぐる中曽根総理大臣の帰国報告について、総理並びに関係閣僚に質疑を行うものであります。  私は冒頭、このいわゆるロンドンサミット意義についてただす前に、核軍拡を象徴する最近の二つの危険な出来事について総理所見を求めます。  ロンドンサミット閉幕直後の去る六月十日、アメリカ国防総省が、マーシャル群島上空の宇宙空間で、バンデンバーグ空軍基地から飛来したミニットマンミサイルを迎撃するという実験に成功したと発表したことであります。これは、大陸間弾道ミサイルを大気圏外の高空で破壊する実験であります。宇宙兵器構想については、宇宙空間での核爆発が電離層の破壊をもたらし、地球規模での環境破壊につながりかねないと指摘され、人類全体の死活にかかわる大問題とされているのであります。いま一つは、核巡航、ミサイル・トマホーク積載の疑いのあるスタージョン級攻撃型原潜タニーが、国民の強い抗議を無視して横須賀基地に入港した事実であります。  この二つの出来事は、アメリカのレーガン政権が対ソ核優位を追求している危険な現実をまざまざと見せつけたものと言えます。総理がどのようにロンドンサミットを美化しようとも、対ソ核優位を目指して着々と核軍拡を進めているレーガン政権の主導のもとでそれが開催された事実を消し去ることはできません。総理の言うサミットにおける西側諸国の平和への意欲の表明とこの二つの出来事との関連について、総理所見を求めるものであります。(拍手)  ロンドンサミットの開幕に当たり、我が党の石橋委員長は総理に対し、これを対ソ戦略サミット開発途上国への危機管理サミットにしてはならないと強く警告したのであります。しかし、この危惧と警告にもかかわらず、ロンドンサミットは危険な政治サミットに終始したのであります。サミットで採択された民主主義の諸価値に関する宣言やこれを踏まえた東西関係軍備管理に関する宣言は、西側同盟の連帯とかたい決意を強調し、昨年のウィリアムズバーグ・サミットにおける、我々七カ国の安全保障は不可分であるとの対ソ結束と力の立場を再確認したのであります。総理ロンドンの国際戦略研究所の記念講演で、米欧日三極の政治的、経済的連携と連帯並びに共同戦略の追求を日本の国策であると強調したと伝えられております。総理が、全世界的規模での対話必要性をいかに強調しようとも、ロンドンサミット西側同盟の政治的、軍事的結束と対ソ共同戦略の危険な舞台であった事実を否定することはできません。この危険な同盟政策に関連して、総理核軍縮への真意をただしたいと存じます。  総理は、帰国報告の中で、西側諸国の真摯なる対話の呼びかけに対して、ソ連が正当な評価を払うことを求め、さらにその軍備管理交渉への復帰を要求しているのであります。しかし、アメリカ戦域核兵器の西側配備並びに核巡航ミサイル・トマホーク積載可能なアメリカの原潜の日本への寄港という、対ソ核優位の力の立場からする軍縮の提起は、必ずや破綻するものと指摘しておかなければなりません。こうしたアメリカの核軍拡政策に追随し、しかも、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文の中でうたわれている日本の主権的権利を何ら行使することなく核巡航ミサイルの日本持ち込みを認めるような姿勢では、核軍縮を口にする資格はありません。(拍手)  そこで、お尋ねいたします。  総理ロンドンサミットに出発するのに先立ち、一連の党首会談において、田社民連代表に対し、核兵器を使う使わぬは核保有国の勝手であるなどと述べたと言われております。核拡散防止条約や第一回国連軍縮総会最終文書などは、非核保有国に対する核保有国の核不使用の義務を課しているのであります。こうしたことすら総理の眼中にはなかったのですか。総理は、核保有国に核の使用を禁ずることは国際法上内政干渉になるとお考えなのですか。その発言の真意について明確に答弁をいただきたいのであります。(拍手)  いよいよこの六月から、巡航ミサイル・トマホークがアメリカ太平洋艦隊に実戦配備されると伝えられております。我が国にも、さきに指摘したように、トマホーク配備予定艦と言われるタニーが入港いたしました。政府は、アメリカ政府に対し、正式なルートを通じてこの配備計画の内容について尋ねたことがありますか。それは、我が国の国是である非核三原則とはっきり矛盾するからであります。尋ねたことがあるとすれば、いつ、だれが、どのような内容のものであったかを明らかにされたい。その際、政府はどのような意思表示をされたかも、あわせて国民に示していただきたいのであります。もし正規なルートでお尋ねすることをしなかったのならば、その理由を明らかにしていただきたいのであります。総理のこれらの点についての明確な答弁を求めます。(拍手)  私たちが迫りくる米ソ核戦争の危機を防止し、核軍縮への道を切り開くためには、日本みずからがその模範とならなければなりません。核巡航ミサイル積載のアメリカ艦艇の日本寄港の拒否を初めとして、非核三原則の厳守、三海峡封鎖・シーレーン防衛の五九中業の策定の即時中止、防衛費の対GNP比一%制約の遵守などを内外に宣言し、これに基づいて米ソ両核大国に対して、INFとSTARTの即時再開を求めるべきであります。総理核軍縮交渉への決意を改めて求めるものであります。  ところで、総理は、ロンドンサミットの採択した経済宣言を自画自賛されておられるが、果たしてそれは世界経済が今日直面している構造的危機について適切な政策的指針たり得るものでしょうか。ロンドンサミットでは、貧困と飢餓に苦しむ開発途上国に対し、その南北格差の是正のための具体的提言は何ら示されなかったのであります。イランイラク戦争を初めとする開発途上国のすべての紛争は、貧困や飢餓に起因するものであります。これを解決するための対策を打ち出すことなく、危機管理の手段の改善、国際テロリズムに対する闘争の決意をうたうだけでは、問題の根本的解決にならないことは自明であります。  今我が国がなすべきことは、巨額の累積債務に苦しむ開発途上国を救うために、アメリカ政府にその高金利政策是正を強く迫るとともに、政府開発援助の対GNP比〇・七%の完全実施を初めとする南北問題解決のための包括的政策を提言することです。特に急を要する食糧不足国への適切な援助を行うことは、先進国責務であります。今後地球的規模での食糧の不安定期を迎えようとしているときだけに、我が国世界最大の食糧輸入国でなく、速やかに食糧の自給率を高める努力こそ必要なのです。ところが総理、あなたがサミットに出張中、日本国内において米不足という重大な事態が起きているのです。  そこで質問の第一点は、現在食糧庁がその幹部を韓国に派遣し、既に二週間にわたって滞在を続け、約十万トンの米の輸入交渉を続けているという事態が発生しております。歴代の農林水産大臣や、最近においても金子前農水相、山村現農水相らは、外国からの米輸入は絶対にあり得ぬ、国内需給の確保は万全であると国会で頑強に言い続けてきたのであります。このことは、最近の予算委員会や農水等の議事録を一読すれば、その言動の無責任さ、見通しの誤りは明白な事実となっております。国民にうそを言い、ごまかした責任は重大であります。(拍手)  総理、あなたは、このような重大な米危機を引き起こし農政の失敗を犯した農水相の政治責任、食糧庁長官の行政責任、ひいては総理責任をどう受けとめられるか、伺いたいのであります。(拍手)  第二には、昭和五十三年産米の有毒性の問題について、政府はその安全性を保証できるかどうかであります。政府はこれまで昭和五十三年産米は食用に供さないと言ってきたが、単年度需給を基本とした減反政策と四年続きの冷害で、ついに政府米が底をつき、本年度に至って既に十五万トンもの五十三年産米を国民に食べさせ、さらに二十万トンの水もずさんな検査のまま業務用の主食、加工用の原料、さらに外国への援助米として食べさせようとしているのであります。  そこで、総理に伺います。昭和五十三年の産米について、臭素の五〇ppm以上の米は食用として供さないことは当然であると思うが、さらにこの臭素検査において全国から三十校外を検査したというが、その検体がどこから集められたのかを明らかにされたい。しかも、六回以上の薫蒸を行った米の検体検査をなぜ行わなかったのか、国民の前に真相を明らかにしていただきたいのであります。  さらに、五十三年度産米における臭素による人体への被害に加え、メチル基とたくぱくの化合物による被害等についていまだ明らかにされていないのが現状であります。臭素五〇ppm以上の基準検査のみに頼れば、この薬害が見落とされることになるのであります。したがって、その有毒性、有害性について研究調査を行われたことがあるのかどうか、この点の安全性の保証ができるのかどうか、国民の米に対する不安を直ちに解消すべきであります。総理並びに農水大臣、厚生大臣それぞれの所見を伺います。  第三に、総理、まず韓国米の輸入交渉を直ちに中止し、安全性の確認されない五十三年産米の主食供給を即時中止することを国民の前に明らかにすべきであります。そして、日本国民の米は日本の農家によって安全に供給するという見地から減反政策を転換し、我が党が提案している米の備蓄制度を確立すべきであります。  そこで、まず本年度の青刈りを完熟させて飯米として提供すること、さらに他用途米についても、これを主食用として供給できるよう転換を図ることを検討すべきと思うかどうか。国民の米不足に対する不安を解消することが必要であります。総理、農水大臣の明確な答弁を求めます。(拍手)  さて、ロンドンサミット経済宣言は、西側諸国に対して相変わらず公共支出の削減、構造的な調整という名の技術革新必要性労働市場の流動化政策、そして自由貿易主義の強調など、ただ羅列したにすぎないのであります。世界経済の均衡のとれた発展のために我が国がなすべき内政の課題は、勤労者の所得税減税、技術革新を進める投資減税、生活関連の公共投資、個人消費の拡大、労働時間の短縮とワークシェアリング、男女雇用差別の解消などを進め、外需主導型から内需主導型への安定成長、貿易摩擦の解消に向けて日本経済構造的転換を進めるべきであります。  そこで最後に、昭和六十年度予算編成に関連して、総理並びに大蔵大臣に質問をいたします。  総理、概算要求枠の設定に当たって、ゼロシーリングからマイナスシーリングと厳しい予算削減方針をとり、来年度も今年度同様のシーリングを設けると伝えられています。しかし、今や政府のシーリング方式の欠陥と限界が明らかになってきているのであります。  すなわち、一、政府の景気抑制型の予算編成は、経済拡大と安定的成長にとって望ましくないこと、二、一律マイナスシーリングを言いながら、他方における防衛関係費の四年連続の優先増額扱いなどは、公正な痛みの分かち合いとはなっていないこと、三番目に、福祉、教育費の削減が集中的に行われ、社会的に弱い立場の人たちの負担増がふえていること、そして最後に、「増税なき財政再建」路線が「財政再建なき大衆増税」へと切りかえられようとしていることが明らかであります。(拍手)  そこで、第一に、政府がこれまで続けてきた財政政策を転換する意思があるかどうかをお尋ねします。厳しい概算要求に基づいた大蔵原案から政府案の作成というように当初予算を編成して、その過程で福祉や教育費を事前に抑え、しかる後に、秋の経済の指標を見た上で補正予算で景気下支えを行うという今日の財政の運営は、国民生活にも財政赤字の打開にとっても好ましい結果をもたらしていないのが実情であります。そこで、当初予算の編成に当たって、その段階から、生活重視、経済構造転換を積極的に盛り込んだ予算を組む方針に変更すべきだと考えますが、総理所見をお示しいただきたいのであります。(拍手)  第二に、来年度予算の概算要求枠、いわゆるシーリングの設定についてであります。経常部門一〇%減、投資部門五%減の一律マイナスシーリング方式を続けられるのかどうか、その際に防衛関係費は聖域扱いとなり、五年連続の優先増額を認めることになるのかならないのか、仮にマイナスシーリングを設けるような場合でも、防衛関係費をその対象にすると約束できるのかどうかなど、総理の明快な所見を承りたいのであります。(拍手)  第三に、中曽根総理と財界が進めた行政改革による財政再建路線が破綻した今、積極的な財政政策によって経済成長内需拡大を推し進め、それによって財政赤字の解消を図ることが必要であるという財政政策の転換を求める声が、国民の中からは当然にあるとしても、与党の内部からも出ているのが現状であります。これに対し、財界と大蔵省は依然として批判的でありますが、総理はどちらの声に耳を傾けられるおつもりなのか、お考えをお伺いしたいのであります。  以上をもって、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  8. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 嶋崎議員にお答えをいたします。  第一は、ICBMを大気圏外の高空で破壊の実験あるいは巡航ミサイル、これらの問題について私の所見を求めるという御質問でございます。  私は、世界の平和を維持するということぐらい今重要なことはないと考えておるものでございます。その平和を維持するのに、なぜじゃ戦争は起こらないで維持されているかといえば、やはり均衡と抑止によって現実的にはそれは維持されていると考えざるを得ないのであります。そういう意味におきまして、現実的に平和を推進していきたいと思うならば、均衡と抑止が現に行われているということを検証して、みんなが安心できるようなそういう体制をつくることが現実的な軍縮に進む道であると考えておるのでございます。  そういうような面から見まして、今おっしゃったようないろんな問題というものも今のような信念と考えを持ちまして今後我々は努力していく、そして具体的にはINF及びSTARTに対して速やかに米ソ交渉回復して世界に安心を与えてもらうように推進していきたい、そう考えておるわけでございます。  次に、世界的規模での対話必要性を強調しようと言っておるが、これらの日本アメリカ、西欧を通ずる三極の連携というものは同盟政策関係しているのではないか、そういう趣旨の御質問でございます。  私がアメリカ日本あるいはヨーロッパとの三つの協力を唱えましたのは、これはサミットの構成メンバーでございまして、政治的、経済的に連携していこうということを私は申し上げておるのであり、特に平和を維持する問題、あるいは経済を繁栄させ、あるいは発展途上国の面倒を見る、そういう面について協調しようということを申し上げておるのでございます。それと同時に、核兵器につきましてはこれを廃絶するということが我々の究極目標でございますが、段階的にこれを削減していく、そのために現実的な手段を我々は開発、開拓していく、そしてアメリカソ連も建設的な現実的な態度になって交渉を行ってもらいたい、このように強く希望しておるところでございます。  次に、核兵器を使う使わぬは核保有国の勝手である云々という御質問がございましたが、こういうことは私は言っておりません。私が申し上げましたのは、要するに兵備をどういうふうにするかということは、その国その国々が主権的事項として持っておることでございまして、したがいまして、我々が外からいろいろ言っても、それは内政干渉に当たるようなことを我々が言った場合には機能しない、そういうおそれがあるということを申し上げたのでございます。もとより、核兵器を使わないということをその国がみずから宣言するとか、あるいは条約をつくって合意ができれば、それは当然歓迎すべきことなのでございます。  そこで、我々といたしましては、核兵器を廃絶するという究極目標に向かってたゆみない努力をしていきたいと思います。また、人道主義の精神に基づきまして、核実験そのほかにつきましては、これをできるだけ早く禁止する方向に努力していきたい。過般の国連軍縮会議におきまして安倍外務大臣がそのような具体案を提示したのもそれに基づくものでございます。さらに核不拡散条約、この条約を厳守していただく、それを広めていただくということも我々の大きな目標でございます。そういう意味におきまして、今後とも誠実に努力してまいりたいと思うのでございます。  次に、トマホークの問題について御質問がございましたが、我々は非核三原則を堅持し、かつ日米安保条約を効果的に運用しているものなのでございます。日米安保条約につきましては、両国の信頼関係に立ちましてこれを誠実に運用するということになっておるのでございまして、アメリカ側といたしましては、日本立場をよく理解していると我々は考えておるところでございます。  なお、国会等におきまして疑義等をただせという場合には、外務大臣はアメリカ大使にこれを確認していると御報告もしておるとおりなのでございます。  次に、非核三原則の厳守あるいはGNP一%の厳守等々について御質問がございました。  これらにつきましては、我が国は、必要最小限度の自衛力の整備を図るとともに、日米安保条約の堅持によって我が国の安全を確保し、総合安全保障政策のもとに外交を進めておるところでございます。INF及びSTARTについては、いつでもどこでも前提条件なしに交渉再開を最近アメリカが表明しておりますが、我々はこれを歓迎し、ソ連が建設的にこれにこたえるように期待しておるところでございます。  次に、債務累積国の問題について御質問をいただきました。  南北問題の解決という問題は非常に大きな、大事な問題でございます。これにつきましては、まずは高金利の問題がございます。これにつきましては、今回のサミット宣言におきましても、高金利是正するという趣旨のことが我々の合意として形成されております。  なお、開発途上国の直面する諸困難につきましても、我々の一層の市場開放とか、あるいはさらに債務国に対する特別の我々の配慮であるとか、国際機関を通ずる協力であるとか、その他が合意されておるところでございます。  御指摘の政府開発援助につきましては、〇・三三%に昨年はなっております。これは昨年はかなり伸びてきておるのでございます。我々は今後ともこの面で努力してまいりたいと思っております。  次に、米の問題について御質問をいただきました。  これは五十三年産米に限られた問題でございまして、主食の米の需給については、これは万全を期しておりまして心配はないのでございます。いわゆるせんべいとかみそとかという加工米につきまして、五十三年米を充てる予定になっておったところでございますが、これが残留農薬の関係で使わない方がいいということになりまして、そこで韓国に約六十二万トンでございましたか、お貸ししてあるお米の一部をお返し願うということでありまして、輸入ではございません。この点につきましては御理解をいただきたいのであります。これはお貸ししたものの現物返還をお願いする、そういうことなのでございます。  次に、減反政策に関する御質問でございますが、米の生産力は潜在的には依然として需要を大幅に上回っており、今後とも需要に見合った計画的な生産を行うことが必要であると考えております。主食である米の安定供給を図るために適正な在庫水準の確保に努力することも必要であると考えて、そのように推進してまいります。  次に、内需主導型の安定成長に向けて経済政策を正せという御質問でございます。  我々は、物価の安定というものを最大限に念頭に置きまして、インフレのない持続的成長を今後も図ってまいりたいと思っております。なお、今度のロンドンサミットにおきましても、節度のある財政金融政策をとり、国の赤字を解消するという合意をやっておるわけでございまして、このような合意に基づいても、我々は今後努力していかなければならぬところなのでございます。しかし、適切な、機動的な経済政策の運営により、物価の安定を維持しつつ、民間需要を大いに起こすことにより、かつ民間活力を大いに活用することによりまして、経済発展拡大を期してまいりたいと思っております。  予算編成とシーリングについて御質問がございました。  現在の我が国経済は、国内民間需要を中心に自律的拡大の局面に入りつつあります。他方、財政は異常に厳しい状態にあるのであります。なお、ロンドンサミットにおきましても、節度ある財政金融政策の維持強化が合意されているところでございます。  私は、前から申し上げておりますように、「増税なき財政再建」のこの理念を堅持すること、六十五年度までに赤字国債依存から脱却するということ、そして臨調答申を最大限に尊重してこれから運営していくということ、やはりこの路線に沿いまして今後も努力していかなければならないと思っておるのでございます。もとより、来年度の問題につきましては、今行管長官が 臨行審にその意見を求めておりまして、この御意見を承りました上、政府・与党一体になりまして、来年度予算の編成、シーリングの問題について対処してまいりたい、そのように考えております。  次に、積極的な財政へ転換を行えという御質問でございますが、ただいま申し上げましたように、財政改革は今や緊急の仕事でございます。五十九年度に当たりましても、歳出の節減合理化あるいは公債の減額等努力してきたところでございます。  景気は、幸いにも今回復しつつあるところでございまして、この景気回復の弾みをつけていくという面については、また機動的運営等において考慮しなければならぬと思いますが、財政をどういうふうに運営していくかという基本的な線につきましては、やはり臨調答申の線に沿って着実に努力していく必要がある、そのように考えておるところで御理解をいただきたいと思う次第でございます。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣山村新治郎君登壇
  9. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 米と食糧政策の御質問についてお答えいたします。  安全性調査のための検体につきましては、主要産地の三十カ所の倉庫で保管されている在庫中から採取したものでございまして、結果として六回以上薫蒸回数のものは含まれなかったということでございます。  韓国との米の現物返還の協議につきましては、五十三年産米の安全性に関連いたしまして、従来から五十三年産米をもって充てておりました、総理からも御答弁ありましたように、加工原材料用に必要な米穀の一部、これが不足する事態が予測されることになったためでございまして、これは国民の皆様に対して、その用途に応じ米穀を安定供給するという重要な責務を果たす上で、真にやむを得ないものであるということを御理解いただきたいと思います。  五十三年産米につきましては、米の残留臭素につきまして暫定基準が示されたことに伴いまして、六月以降当該基準に適合するものであるということを確認した上で売却をするということを行おうとしておるところでございます。  米の生産調整と米の備蓄制度の問題につきましては、米の生産力は潜在的には依然として需要を大幅に上回っております。今後とも需要に見合った米の生産を確保し得るような所要の対策を着実かつ的確に推進することが必要であると考えております。  このような観点から、水田利用再編第三期対策におきましては、適正な在庫水準を確保するという見地から、在庫の積み増しを行うことを含めましてその万全を期したところでございますが、何分にも米の生産は気象条件等の影響を受けやすい、この面を持っておりますので、今後とも米の需給や作況に応じた適切な需給計画のもとに弾力的に対策推進に努めてまいります。  なお、今般の問題は五十三年産米に起因するものに限られたものでございまして、主食用の需給につきましては万全を期してまいるとともに、青刈り稲につきましては、極力定着性の高い転作または他用途利用米を含む稲作へ移行するよう指導しているところでございます。他用途利用米については、加工原材料用需要に応じ生産の確保に努めることといたしております。  いずれにいたしましても、今年度の作況を見まして、そして減反政策は弾力的に進めていくということを考えておりますので、よろしく御理解のほどをお願いいたします。(拍手)     〔国務大臣竹下登君登壇
  10. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ロンドンサミットにおける経済宣言、それからする我が国財政運営等についてのお尋ねであります。総理から詳しくお答えがございました。  このロンドンサミット経済宣言に一貫して流れますところの脈絡というものは、まさにウィリアムズバーグ・サミットの言ってみれば延長線、すなわち、引き続きインフレなき持続的な成長を確保していくために、各国が中長期的観点から節度ある財政政策を堅持していくことが肝要であるという合意でございます。このことが、従来からの体験からしても、開発途上国を含む全世界に効果を及ぼすという観点からなされたものであります。  そこで一方、我が国財政状態を見てまいりますと、確かに諸外国と比較いたしましても、これはまさに極めて緊迫した状況にあります。しかしながら、幸い我が国はいわゆる高度な貯蓄率に支えられて、経済のファンダメンタルズで見ますならば、他の先進国より優位な諸指標の状態にあることも事実であります。そして一方、景気は自律的な拡大局面にある。しかし、今の場合、財政そのものが出動して、いわばてこの役を果たすという状態にはありません。したがって五十九年度予算においても、民間資金の活用等公共事業の事業費の確保あるいは地域経済の動向等に配慮した事業の弾力的執行など、種々の工夫を凝らしてきておるわけであります。  したがって、総合的にサミット合意、そしてまた今日の経済情勢、財政状況等を勘案してみますならば、私どもといたしましては、まさに節度ある財政政策こそが今日財政運営の最も適当な環境にある立場にあると理解をいたしておるところであります。  さて、シーリングの問題でありますが、このいわゆるシーリングというのは、昭和三十六年から行われておりますところの予算編成作業の一手法であります。したがいまして、毎年度その中で各省庁が専門的な知識を生かして、いわば政策の優先順位を図って今日まで編成が続けられてきたわけであります。したがって六十年度の予算編成の具体的な方法、こういうことになりますと、現在のところ確たるものを念頭に置いているわけではございませんが、いずれにしてもあらゆる分野に聖域を設けることなく、徹底した節減合理化と規模の抑制を図るために厳しい態度でこれに臨まなければならぬということは、総合してお答えできることではなかろうか、このように考えております。  以上でお答えを終わります。(拍手)     〔国務大臣渡部恒三君登壇
  11. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) お尋ねの薫蒸剤の残留検査の検体に関する御質問については、ただいま農林水産大臣からお答えしたところであります。  臭化メチルにより薫蒸処理された米の安全性問題については、本年五月二十八日開催の食品衛生調査会残留農薬部会において、たんぱく成分のメチル化を含めて調査審議が行われ、その結果このような米の摂取により人の健康に影響するものとは考えられないとの結論をいただいておりますので、御安心をください。  なお、厚生省としては、このような調査審議を踏まえ、米についてより一層の安全性を確保する観点から暫定基準を設定することが適当であるとの当部会の結論に基づき、直ちに暫定基準を設定し、その周知徹底を図り、より一層の安全性の確保に努めておるところでございます。(拍手)     ―――――――――――――
  12. 福永健司

    議長福永健司君) 渡部一郎君。     〔渡部一郎君登壇
  13. 渡部一郎

    ○渡部一郎君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ロンドンサミット報告等につき、総理並びに関係大臣に御見解を承るものでございます。  御承知のとおり、総理の御出発前の国会の混乱は、日本の代表を世界的な交渉に送る立場といたしましては、まことに不本意であったと言わざるを得ません。国民世論の強いバックアップを得ずして適切な外交交渉が行われるはずがないからでありまして、総理もこの点はよく御存じのとおりであります。それであるにもかかわらず、紛糾を招きましたのは、かかって無分別な会期延長と、政治倫理の確立をないがしろにした政府及び自民党の国民及び国会審議に対する軽視に基づくものであると言わざるを得ないのであります。この点、総理はまずどう認識しておられるのか。  少なくとも、国会正常化の前提といたしまして、我々は、一審で禁錮刑以上の刑を受けた者については、本院の慣行として議員辞職勧告決議を行うよう求めてまいりましたが、自民党としては、去る十三日、有責議員に対する懲罰対象の拡大について検討を約束されました。この約束は何を意味しておられるのか、この約束を誠実に履行されるおつもりがあるかどうか、国会正常化の前提として、まず、総理見解を伺いたいと存じます。     〔議長退席、副議長着席〕  次に、第十回主要国首脳会議、いわゆるロンドンサミットについて先日御報告をいただきましたが、これに対抗し、経済相互援助会議、コメコン首脳会議、東側のサミットと言われるものでございますが、これが十五年ぶりに開会されたわけでございます。この両者が世界の政治、経済両面にわたりまして山積する難問を解明し、特に、世界経済の活性化と国際緊張の緩和に突っ込んだ討議が行われることを世界は心ひそかに期待をしていたのであります。  しかしながら、コメコンはさておきまして、サミットの具体的成果として、経済宣言民主主義の諸価値に関する宣言東西関係及び軍備管理に関する宣言、国際テロリズムに関する宣言の四つの宣言及びイランイラク紛争に関する議長声明という形でまとめられましたが、いずれも抽象的、一般的な政治常識の再認識の域を出ていないというのが通説でございまして、現存する難問、紛争に対する評論家的発言ではなくして、具体的な有効な治療策を求めていた国民の期待にはほど遠いものであると言わざるを得ないのであります。(拍手)  つまり、総理の御報告は、残念ながら自画自賛に過ぎるのではないかと考えているわけでございまして、この点、どうお考えになっておられるのか。例えて申しますと、経済宣言の中では、高金利是正財政赤字の削減、保護貿易主義の防止、発展途上国債務の救済、石油の緊急融通などが討議されているわけでございますが、具体的実行についての取り決めは各国財政金融政策にゆだねられ、行動計画の協調性、具体目標をいかに維持するかは明らかでありません。  特に、我が国が求めていた米国高金利体系の是正はどうなったのか。米国高金利をもたらす要因の一つ財政赤字であります。財政赤字の主たる要因は軍備の際限なき拡大であります。米ソを並列的に悪者と言っているわけでは決してありませんが、両大国の相互不信に基づく過敏にして異常な軍備拡大競争に終止符を打つよう特別に要請をすべきではなかったのか。また、アメリカ政府の財政赤字縮小への努力に対し、これを擁護し協力する立場をもう少し鮮明にし、財政赤字を縮小せしめ、米国高金利を抑制するための積極的な行動を働きかけることはできなかったのでありましょうか。この点、不十分さが感じられてならないのでありますが、御見解を承りたいのであります。  新国際ラウンドについて御努力は認めるといたしまして、しかしながら、いつから実施されるのか、まだわかっていないのであります。世界貿易の実情は名目だけの自由貿易でありまして、自主規制の強制など実質的な保護貿易が横行しております。これに歯どめをかけ自由貿易体制を守るため、ガット協議の結論を待つことなく新国際ラウンド実現するため、政府は粘り強く継続的に努力をし、かつ、その実現にめどをつけるべきだと存じますけれども、そのための方策、見通しというのはいかがでありましょうか。  また、石油の緊急融通も、今後の我が国の国内的な努力と二国間交渉にゆだねられて、むしろ見出しだけだというべきではなかったのでしょうか。もっと機能的、自動的な融通システムは策定できなかったのでしょうか。これまた心配であります。  特に、発展途上国債務問題につきましては、これは重大問題であります。十六日のマスコミ報道によりますと、アルゼンチン政府がIMFの経済再建計画を拒絶いたしましたために将来の支払い停止さえ予想されるということで、世界の銀行業界が一時的には騒然といたしました。このこと自体を見ましても、八千百億ドルに達する巨額な債務を背景に、国際的な債務国連合による不払い運動の爆発、モラトリアムとか徳政令とか言われるものでございますが、こうしたものが予想されるほどその事態は深刻なのであります。  サミット中に交わされた議論からいいますならば、途上国の自力再建の意欲こそ重大であることは論をまちませんけれども、この問題を先進国が傍観して放置し、対岸の火災視するほどの余裕はないと言わなければなりません。政府はいかなる約束をしてきたのか、今後いかなる対策を実施するのか、伺いたいのであります。  我が国世界経済発展に貢献するためには、内需と外需の均衡のとれた安定成長を達成することが大切であります。特に、内需拡大によって経常収支の不均衡を是正することは急務中の急務であります。内需拡大具体策として、民間活力推進、生活関連公共事業の拡充、所得税減税の追加などを早急に行うべきと考えますが、総理の御見解はいかがでございましょうか。  また、ロンドンサミット経済宣言成果は、今後、総理が効果的な具体策をどう措置するかにかかっているわけでありますが、この宣言の内容を具体化する第一歩として六十年度予算編成にどのように具現されるのか、承りたいのであります。  次に、政治に関する三宣言議長声明についてでございますが、本来サミット経済交渉であるという建前を離れ、政治交渉に堕しているという批判が出席者の中からまで出ているわけでありますが、この点、総理はどう考えておられますか。  また、総理が誇らかにうたいとげられました国際紛争解決のための武力不行使の宣明、世界的規模での対話必要性、非同盟主義との関係の重視などというものは、国連憲章とか不戦条約とかあるいはSSDⅡ等において言及された、何度か確認された国際的ルールでございまして、むしろ、その実現のために何をなすべきかを集約することが最も大切であったのではないかと考えるのでございますが、いかがでしょうか。  また、対ソ関係について、対話や軍縮交渉への復帰を呼びかけているものの、今日までの対決姿勢東西関係の経緯、ソ連政府の従来の対応の様子から見て、その前途は厳しいものにならざるを得ない。しかし、コメコンの決議を見ても、いたずらな対決姿勢は抑制されていることを考慮しまして、粘り強く東西対話の窓口を開くよう政府は努力すべきであると思いますが、いかがでしょうか。  この際、言いにくいのでありますが、心配なのは、従来、総理がとかく挑発的な言辞を弄されたことであります。例えば四海峡封鎖とか、日本列島不沈空母化とか、巡航ミサイルやパーシングⅡの欧州配備を断固断行せよとか、ひいては、核兵器の使用は保有国の勝手であり、文句を言うのは主権の侵害であるというような議論、そうした議論というものは、議論の範囲にとどまらず、相互不信を招き、平和を危うくするものであります。平和憲法及び非核三原則、武器輸出三原則などの輝ける平和原則を保有する我が国の代表として、不穏当のそしりを免れないと思いますが、いかがでありましょうか。(拍手)  また、今回のサミットにおいて国民の熱望であったのは、平和であり、核兵器反対であり、全面軍縮でありましたが、総理は、これについてどう努力され行動されたか、お伺いしたいのであります。  特に、最近の核つきの疑いのある巡航ミサイル・トマホークを積載する米軍艦船の日本への寄港に対し、非核三原則や事前協議条項が守られているのかどうか、十分解明していただきたいと思いますが、どうでしょうか。  イランイラク戦争も、サミットでは状況を打開するだけの方策を示すことができなかったのでありますが、双方と外交関係を持つ我が国の役割は極めて重要でありますが、どういう方針で対応していくのか、明らかにしていただきたい。また、同戦争の停止を言いながら、先進各国が武器の輸出をしている現状などをどう考えておられるのか。それぞれ政府の見解を承りたいのであります。  次に、当面する重要課題について若干の質問をさせていただきたい。  それは、サミットとも関連いたしますが、六十年度の予算編成であります。  ここ数年の政府・自民党の一律削減方式による予算編成は、財政の帳じり合わせのみを優先させ、国民生活景気の停滞、福祉の後退などをもたらす一方、財政再建の崩壊、防衛費の異常突出などの矛盾を示しております。したがって、予算編成の基調となる概算要求枠の設定は、これまでのようにマイナスシーリングなどの一律どんと削減するというやり方はやめて、予算の根っこから見直すことを前提といたしまして、政策の優先順位を明確にした政策別シーリングを設定すべきと考えますが、総理所見を承りたいのであります。  あわせて、予算編成に国民の声を反映させるため、政府・自民党は概算要求枠設定前に野党と協議する機会を持つこと、また、大蔵原案内示の直前に策定されていた予算編成大綱を早期に策定し、国会においてその内容を論議することを求めますが、総理の御所見を聞かせていただきたいのであります。  さらに、予算編成の基本方針として、所得税減税と中小企業に対する投資減税の実施、公共事業予算の上乗せなど景気対策の拡充、福祉、文教予算の確保、不公平税制の是正、行財政改革の徹底を図るとともに、防衛費予算についてはGNP一%枠を厳守することを要求するものでありますが、それぞれについて総理の明確な御答弁を承りたいと存じます。  次に、健康保険法改正法案についてであります。  昭和五十六年度以降の政管健保が黒字基調を示していること、またさらに、医療費適正化対策としての薬価基準引き下げ、予防対策の前進等の施策の強化で、医療費の抑制は相当可能であり、予算執行上の手当ても他に方法があるはずであります。したがって、矛盾と批判の山積する健康保険法改正案については殊さら慎重審議を行うべきであり、結論は急ぐべきではないと思いますが、どうお考えになっておられますか。  また、米の不足の問題についてお伺いいたしますが、生産者団体は既に、農水省の外米緊急輸入方針を撤回するならば、自家保有米を拠出したり、今から稲を植えられるところは最大努力するとまで言っておられます。政府は韓国との輸入交渉より国内の生産者団体との話し合いを優先させてはどうかと考えますが、いかがでしょうか。また、今秋の端境期における主食米の供給不安、五十三年産米並びに韓国産米の安全性、韓国経由でカリフォルニア米が輸入されることへの疑問、残留農薬の安全性等について、政府の明快な方針、御見解を承りたい。同時に、こうした重大な国民不安を招来した政府、農水省の責任にどう決着をつける用意があるのか、お尋ねしたいのであります。  定数是正問題につきまして、現在の衆議院の定数不均衡状況に対して、最高裁では違憲状態であるとの判断が示され、これ以上放置することは許されるべきではなく、今国会最大の懸案の一つとなっております。総理は、この議会制民主主義の根幹の問題にどう取り組まれるのか。今国会中に定数の不均衡是正を必ず行うことを約束されるかどうか。また、その際、二人区の新設は行わないこと、一対二以内とすべきであると思うが、それぞれ総理の御見解を承りたい。  最後に、サミットは今回でわずか十回目であり、この形式は十分成熟した外交形式と申すわけにはまいりません。首脳同士が全責任を持ってフランクに話し合い、大筋の方向を協議、策定することができるというよさはありますけれども、まず首脳自身の政治的力量が強大ならばよいのでありますが、さもないと何も決められないという結果になる。また、事務局同士が議論を積み上げてくる従来の交渉にない粗雑さがつきまとうことは避けがたい。逆に、事務局同士の打ち合わせを重視すれば、結果は複雑化して文章が厚くなるばかり。したがって、この方式が生きるためには、担当事務局が十分内容を審議した上責任を負いかねるような大局的方向を画期的に打ち出すのには役に立つ。例えば、核実験全面停止とか、核兵器先制不使用とか、関税の一括引き下げとか、世界的な緑化推進計画とか、飢餓あるいは人口対策とかであります。  問題の二は、事前にサミット参加国のグループが利権を調整、根回しして会議のリーダーシップを握りやすいということであります。特に、EC委員会は代表を出し、七カ国中五つの代表が欧州であることはアンバランスであります。今回日本推進した新ラウンド策定の時期が葬られたのは、サミットの限界を示すものであります。我が国としては、オーストラリア等の太平洋諸国を数国加えるよう努力すべきではないのか、根回しも十分留意すべきではないのでありましょうか。  第三には、発言国が多いため自国の発言を言い尽くせぬうらみがあるのであります。我が国の特殊な地位は説明するのに多くの障害があります。つまり、事前の交渉をないがしろにしてサミットの成功はあり得ないのであることを再び強く認識しなければならないと思うのでありますが、いかがでしょうか。  今後このサミットの形式を発展させるためには、ただ単純に、会って話すのはいいことだというような手放しの楽観論は慎まなければならないと存じます。そして、第一に、事前の意見や意思の疎通を十分にすること。第二に、首脳会議用の議題と事務局用の議題というものを整理すること、つまりテーマを選別すること。第三に、構成メンバーを再検討し、太平洋国家を重視すること。もちろん途上国の声を反映さすようにすることも言うまでもありません。そして第四に、協定の実施に当たっては具体的な成果が上がるようにするためのシステムを十分考慮するというような措置が必要なのではないかと考えるわけでございまして、今後、将来のために御検討あらんことを要望する次第でございまして、あわせて御見解を承りたいと存じます。  以上をもちまして質問とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  14. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 渡部議員にお答えいたします。  まず、サミット出発前の国会の紛糾についての御質問でございます。  国会延長問題に絡みまして、また政治倫理問題等にも絡みまして、このような空白が続いたことは甚だ遺憾でございます。今回、各党間の話し合いによりまして審議再開に至りまして、感謝しておる次第でございます。今後とも各党の話し合いをまめに行いまして、協調国会を実現してまいりたい、こう考えておる次第でございます。  なお、政倫協の結論につきましては、十分自民党としても尊重してまいりたいと思っておる次第でございます。いわゆる有責議員の徴罰対象の拡大の検討の問題につきましても、政倫協の結論に対しまして私たちは尊重してまいりたいと思っております。  次に、今回のサミット成果意義いかんという御質問でございます。  今次のサミットにおきましては、やはり政治、経済問題等について、これからの世界に対する政策の方向をサミット構成国で明らかにしたという点に意義があるのではないかと思っております。サミット構成国のGNPだけでも大体世界のGNPの五〇%以上になります。したがいまして、経済的にも政治的にも非常に影響力のある国の集合体でございますので、政治、経済についての世界的な政策を明らかにするということは非常に意味のあることではないかと思っております。  なお、細部にわたりましては外務大臣から御答弁願うことにいたします。  特に、五つの文書が取りまとめられましたことは、各国協調成果であると考えております。  米国高金利体系あるいは財政赤字問題等につきましては、サミットにおきましても、我々も発言もし、御努力も願い、合意の形成も行ったのでございます。特に我が国といたしましては、貿易のアンバランスの問題あるいは債務国債務の超過負担の問題等々の考慮もありまして、高金利の問題はぜひとも回避しなければならぬ、また財政赤字削減を行う必要があるということも主張した次第なのでございます。  なお、新国際ラウンドにつきましては、この前申し上げましたような状態で、期日を明示できなかったのは甚だ遺憾でございますけれども、しかし、その必要性が確認されたことと、それからその取り組み及び目的及びタイミングにつきまして、できるだけ早く決めようということが合意されたことは大きな前進であり、今後、ガット構成国と十分協議して推進してまいりたいと思います。  石油の緊急融通につきましては、今世界状態を見ますと、ほとんどだぶついておりまして、心配する状態ではございません。この点は、今回のロンドンサミット宣言にも盛られたところでございます。しかし、我が国といたしましては、万一の際にも十分の備えをしておく必要があるという意味において、さらに各国協調して努力していくという言葉を入れてもらったということなのでございます。  債務累積国の問題につきましては、協力の精神に基づいて、債務累積国の政治的、経済的困難にも配慮しつつ、債務累積国自身が所要の経済及び財政金融政策の変更を行うことを支援し、各債務国状況に応じてケース・バイ・ケースで柔軟性を持って対処するという合意でございます。具体的には、債務国経済再建努力をみずから払っている場合には民間債務の多年度にわたる繰り延べを奨励する、IMF、世銀の役割強化の検討に積極的に参加する、開発途上国への直接投資の流れを促進する、開発途上国への市場の一層の開放等に努力する、こういうことでまいりたいと思っております。  次に、内需中心にした経済成長、生活問題等に対する御質問がございました。  我が国経済は、業種別、組織別等に多少ばらつきが残っておりますが、全体としては拡大、上昇の緒につきつつあると思っております。サミット合意を踏まえ、今後とも適切かつ機動的な経済運営により、物価の安定基調を維持しつつ、民間需要を中心とする内需拡大努力してまいりたいと思っております。  次に、六十年度予算編成に関する御質問でございますが、六十五年度特例公債依存体質からの脱却という大きな目標のもとに、「増税なき財政再建」という理念を掲げて、そして臨調答申を最大限に尊重していくというのが私たちの基本線でございます。そういう基本線を維持しつつ、歳出歳入全般にわたってこの見直しを行いまして、合理的な編成を行いたいと思っております。  次に、サミットが政治に傾斜し過ぎてはいないかという御質問でございますが、経済のもとはやはり平和であります。平和と通商が自由に行えるような状態でなければ経済の繁栄もございません。そういう意味において、政治に関係する部分が出てくることは当然でもございます。決して政治に傾斜しているという意味ではございません。経済の繁栄と、それから政治の安定、平和の維持、こういう面におきまして、その関連において我々は論議をしてきたということなのでございます。  次に、サミット合意、これは何度も確認された国際ルールを言っているだけではないかという御質問でございますが、しかし、平和と軍縮、東西関係あるいはイランイラク紛争等について率直に合意が形成された、そして宣言あるいは議長声明として、これが正式に発出されたという点において意味があると思うのであります。これらを基礎にいたしまして、今後、東西間の対話促進あるいは世界的な紛争の予防、核軍縮の進展等について積極的に努力してまいりたいと思っております。  対ソ関係につきましては、領土問題というものをわきに置いて通ることはできません。しかし、それと同時に、我々はソ連との間にできるだけ対話拡大していく努力もしてまいりたいと思っております。したがいまして、議員交流あるいは経済人の交流あるいは文化交流等を広げていきまして、対話の基礎を広げていく努力をしてまいりたいと思います。  私の各種発言について御引用がございましたけれども、大部分発言は誤解に基づくものが多いのでございまして、私の真意はその都度申し上げているとおりなので、私の態度は一貫して平和主義であるということを申し上げる次第であります。(拍手)  次に、サミットヘの国民の期待であった平和・反核・軍縮の実現我が国はどういう行動をしたかという点でございますけれども、先ほど来申し上げているように、具体的には東西間の対話を進める、世界的規模において武力を行使せずという合意を形成した次第でございます。INF、STARTへの速急な復帰を呼びかけて、世界緊張を緩和するように今後とも努力してまいりたいと思っております。  次に、トマホークの問題及び武器の輸出の問題について御質問がございました。  安保条約を守り、非核三原則を厳守していくという従前の方針を堅持してまいるつもりでございます。武器の輸出につきましては、国会の御決議を尊重してまいるつもりでおります。  次に、シーリングにつきまして、政策別シーリングを設定すべきではないかという御質問でございます。  傾聴に値する御提言であるとは思いますが、実際問題といたしまして、今歳出の徹底した節減合理化をやって、概算要求という形で予算編成をやっているわけでありますが、各省庁の概算要求の総額の限度額をこれは示しているものでありまして、各省庁はこの範囲内で各種施策について優先順位の厳しい選択をみずから行う、こういう形で概算要求を行ってきておるのでございまして、このような努力でまあいいのではないか、そう思っております。  また、概算要求設定前に野党とも協議すべきではないか、予算編成大綱を早期策定すべきではないかというお話でございます。  与野党間の話し合いを進めるということは大事でございます。予算編成につきましても、随時国会の御議論あるいはそのほかの場所におきまして御意見を伺って、参考にしてまいりたいと思っておるところでございますが、現下の流動的な情勢のもとで、予算編成方針あるいは予算編成大綱を早目に決定することは、実は極めて困難なのでございます。これらは今まで大体十二月に決めてきておるところでございます。今のような状態から見まして、これを早めるということはなかなか困難であると思います。しかし、予算に関する御意見につきましては、その過程におきましても十分参考にさせていただきたいと思っておる次第でございます。  また、予算編成の基本方針として、減税あるいは投資減税あるいは行政改革、財政改革の実施を行うべきではないかという御質問、あるいはGNP一%以内の防衛費を厳守すべきではないかという御質問でございます。  所得税減税については、五十九年度に初年度八千七百億円の大幅減税を行ったばかりでございます。さらに減税を行うことは今のところ難しい状態です。中小企業につきましては、五十九年度に新たに投資促進税制を創設するなど可能な限りの配慮をしてまいってきております。行財政改革につきましては、先般来申し上げますように、臨調答申の線に沿って鋭意努力してまいるつもりであり、防衛費につきましては、昭和五十一年の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針については、これを守ってまいるつもりでございます。  なお、健保法改正問題につきましては、原案が最善の案であると考えております。各方面の御理解をいただきたいと思っております。  米の不足につきましては、先ほど来申し上げているように、韓国からの米の返還は加工原料用米についての緊急かつ臨時的な措置でありまして、用途に応じた米の安定供給という重責を果たす上で、必要かつやむを得ないものと考えております。米の安全性の確保につきましては、今後とも万全を期す所存でございます。今般の問題は五十三年産米に起因する限られた問題でありまして、主食用の米の需給については万全を期しております。今後とも、米の安定供給につきましては政府は万全を期してまいります。  定数の不均衡是正の問題については、最高裁の判決もありまして、できるだけ速やかに是正をする必要があると認識して、今その努力をしておるところでございます。今党内におきまして、各方面の意見を聴取いたしまして、調整案をつくるべく懸命の努力をしておるということを御報告申し上げる次第でございます。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣安倍晋太郎君登壇
  15. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) まず第一に、対ソ関係の前途は厳しいが、その見通しをどう見ているかという御質問でございますが、今次サミットソ連との政治対話拡大決意を表明した宣言が採択をされたわけでありますが、日ソ間におきましても、日ソ関係が厳しい状況にあればあるだけにやはり対話を進めていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。こうした考え方に従いまして、日ソ政治対話強化のためいろいろと手を打っていることは御承知のとおりでありまして、グロムイコ外相の来日についても引き続き強く要請していく所存であります。北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定した関係を確立させるとの政府の対ソ基本方針によりまして、今後とも対ソ政治対話の強化拡大を図っていく所存でございます。  次に、サミットへの国民の期待であったところの平和・反核・軍縮の実現のため我が国は何をしたか、こういうことでございますが、今回のサミットにおきまして、我が国は平和と軍縮の問題を重要視いたしまして、平和の達成のために東西間の対話を進めるとの姿勢で臨みまして、ソ連に対しまして、現在中断しているところのINF交渉の再開あるいはSTARTの交渉の再開を強く呼びかけていく、この重要性を指摘する等積極的な努力をしてまいったわけであります。我が国の主張、考え方は、他のサミット参加国の支持を得て、東西関係軍備管理に関する宣言等に反映されておりまして、現在の厳しい国際情勢のもとでの平和と軍縮の問題に対する西側諸国の積極的かつ一致した姿勢が示されたものとして評価をいたしておるわけであります。  次に、トマホークの持ち込みと非核三原則との関係でございます。  水上艦艇または潜水艦配備のトマホークは核、非核両用兵器でありまして、また米国政府は、トマホークの大部分は通常兵器であると述べております。さらに、トマホークの搭載能力を有することと実際にトマホークを装備することは別個の問題であります。いずれにいたしましても、日米安保条約上、艦船によるものを含め、核の持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象であります。政府としては、核持ち込みに係る事前協議が行われない以上、米国によるところの核持ち込みがないことには何ら疑いを有しておりません。  最後に、イランイラク戦争の問題、同時にまた先進国の武器輸出も含めて政府の見解を問うということでございますが、イラン、イラク両国間では、両国が国連事務総長の相互都市不攻撃提案を受諾したことによりまして、部分的ながらも戦闘行為の停止が実現をいたしておるわけで、これは従来から我が国が両国に対して強く働きかけてきておりました点でございますから、こうした動きを歓迎いたしております。当面この都市相互不攻撃の実効性を確保していくということが必要でありまして、我が国としても、今後本件に関して国連より何らかの協力要請がある場合は、進んで協力をいたしたいと考えております。  ただし、これをもって一挙に戦闘が終息に向かうとは思われません。紛争の平和的解決には関係各国によるところの一層の外交努力が必要であることは申すまでもないわけで、この点、我が国は調停、伸介を行う立場にはないわけでありますが、両国と政治対話のパイプを有する数少ない先進主要国でありまして、国際社会に対する我が国責務として、今後とも同紛争拡大防止、早期平和的解決の環境づくりに引き続いて最大努力を払っていく考えであります。  武器輸出につきましては、その実態が明らかになっていないため個別の働きかけは行っておりませんが、我が国は従来より一般的な形でエスカレーション回避のため武器輸出の自粛を関係各国に訴えてきてまいっておるわけでございます。そういう立場にあって、サミットの場におきましても、中曽根総理から関係各国に対する一層の自粛を呼びかけた次第でございます。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣竹下登君登壇
  16. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、途上国の債務累積問題についてでございますが、債務累積問題はさまざまな要因が複合して発生したものでありまして、これを一つの手法で一挙に解決するというのは確かに難しい問題でございます。さきのロンドンサミットにおきましても、債務問題については、関係者の協力に基づいてまさにケース・バイ・ケース、これで対応していくというわけであります。  したがって、我が国としては、節度ある財政金融政策の維持強化によって引き続きインフレなき持続的成長を確保していく、そしてそのことが国際的高金利是正のための努力を求めることになってくる、そして具体的には、債務国自助努力促進のための支援あるいは多年度返済等の適用、またIMF等の国際機関の役割の強化、途上国輸出に対する市場開放、そうしたサミット経済宣言に述べられたような一連の問題に対して現実的な努力をこれからも強力に払っていくということではなかろうかというふうに理解をいたしております。  それから、財政、予算等につきましては、総理から詳しくお答えがございました。いずれにいたしましても、今回のロンドンサミット経済宣言は、その底を流れるものは節度ある財政金融政策の維持強化、こういうことでございます。我が国財政改革、これは将来の安定と発展にとって避けて通ることのできない国民課題であります。今後とも、六十五年度特例公債依存体質から脱却する、この努力目標に向かって、単年度主義でございます予算の毎年度努力の積み重ね、これを行っていかなければならぬというふうに考えております。それから、予算編成の具体的手法の問題でございますが、あらゆる分野に聖域を設けることなく制度の根本にまで踏み込んだ改革を行うなどの、引き続き最大限の歳出歳入両面にわたっての努力を重ねていかなければならないと思います。  したがって、シーリングの問題でございますが、これは昭和三十六年度以来、いわば予算編成作業の一手法としてとられてきたものでございます。総理からもお答えがございましたが、とにかく、各省庁の専門家の皆様方が、要求総枠としての限度額であるこれに対して、その範囲の中で各種施策についての優先順位というものを厳しく選択していただく。すなわち、内なる改革というものが進んできたゆえんも、私はこのシーリングの設定が一つの効果をあらしめたものではなかろうかというふうに理解をいたしておるところであります。  それから、与野党協議の問題、また予算編成大綱の早期策定の問題でありますが、与野党協議の問題は、これは総裁であります総理のお答えが適切であろうかと思っております。  それから、予算編成大綱の問題につきましては、やはり今考えてみましても、仮に八月概算要求ということをするにいたしましても、今年度の予算が動き出して四、五、六、七、四カ月という状態でございますので、非常に流動的な要因の多い場合、まさにこれを、平素十二月に行っておりますいわゆる大綱ということを早期策定するというのは難しい問題ではなかろうかというふうに考えるわけであります。  それから、予算編成方針としての所得税減税、中小企業、行財政改革、防衛費、これらの問題については総理からお答えがございましたので、私からつけ加えることを省かしていただきます。  以上でお答えを終わります。(拍手)     〔国務大臣渡部恒三君登壇
  17. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 健康保険法改正問題について、ただいま総理からお答えしたとおりでございますが、今回の健保法改正案は、昭和四十年代以来の医療保険の抜本改正に関する議論を踏まえ、中長期の観点に立って、医療費の規模を適正水準とし、給付と負担の両面にわたり公平を図ることにより、二十一世紀に向かって医療保険制度の基盤を揺るぎないものにするためにぜひ必要なものでございます。  今回の改正案に対しましては、中長期的に見ていただければ、国民の健康を守り、国民の福祉につながるものであり、国民の皆さんの正しい御理解も深まりつつありますが、今後とも国民の皆さんの御理解と納得が得られるよう、一層努力してまいりたいと考えておりますので、ぜひ御理解、御協力を賜りますようにお願いいたします。(拍手
  18. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 渡辺朗君。     〔渡辺朗君登壇
  19. 渡辺朗

    ○渡辺朗君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題になりましたサミット報告に関連し、中曽根総理に対して、若干の問題につき、お伺いをしたいと存じます。  今回のロンドンサミットは、世界経済の長期的な低迷と国際情勢の深刻な危機感の中で開かれたものであります。殊に米ソ中心とする東西関係が極めて悪化し、さらにイランイラク戦争はペルシャ湾へ拡大するなど、世界の平和が重大な局面を迎えているさなかでもありました。まさに人類が今抱いている最大の願いは、いかにして核戦争の危機を回避し、平和を維持するかということにほかなりません。  そうした観点から、私ども民社党は、サミットに出発される中曽根総理に対し、幾つかの提言を行いました。すなわち、今回のサミット使命は対立している国際情勢を緊張緩和の方向に大きく転換させることであり、そのためには、東西関係の改善を図るとともに、中断されている米ソ核軍縮交渉を再開するためにあらゆる努力を払うべきことを要望したのであります。また、米ソの首脳会談を早期に実現することによって、暗礁に乗り上げている事態を切り開くことを私どもは積極的に促進しなければならないと考えました。そして、そのことを総理に要請をいたしました。  このような立場から、今回のロンドンサミットに対しましては、私どもは、東側に対してサミット対話拡大の柔軟な姿勢を打ち出し、軍備管理交渉ソ連の復帰を呼びかけたことに対し、これを建設的なものとして評価するにやぶさかではありません。その観点から、まず政治問題、特に東西関係の展望について幾つかお尋ねをいたしたいと存じます。  第一は、ロンドンサミットと前後して開かれていたコメコン・サミットの評価についてであります。  この会議の性格及び発表された宣言あるいは諸文書をどのように読み取るべきでありましょうか。西側の呼びかけにもかかわらず、モスクワは依然としてかたく扉を閉じたままと見るべきでありましょうか。あるいは、表面の動きとは別に、緊張緩和に通じる何らかのシグナルを感知することはできないものでありましょうか。今日のぎりぎりした東西関係の中で、世界は今その一点に注目していると言っても過言ではないと思うのであります。総理はどのような分析をしておられるのか、この点についてお尋ねをしたいのであります。  第二は、米ソの首脳会談についてであります。  行き詰まった事態を首脳の会談によって打開した事例は、今まで既に幾たびかありました。今日の国際情勢の危機的な姿を認識するならば、この状況を打開するために米ソの首脳に決断を求めること、これが我が国として最優先の外交課題一つであると存じます。総理は、米ソ首脳の会談の実現のために積極的に双方に働きかけるべきだと存じますが、決意のほどを聞かしていただきたいのであります。(拍手)  既にアメリカ大統領は柔軟な姿勢を示していると報道されております。他方、ソ連の指導者は、依然としてアメリカには厳しい態度を示しながらも、フランス、西ドイツ西側首脳に対しては、それと会談が予定されているのであります。加えて、国連事務総長による米ソ仲介の動きもあるやに伝えられております。そのように情勢が動いているときに、すべては大統領選挙後にまつとか、あるいはまた、周到な準備があり成功が確実なものでなければなどという条件をつけるべきではないと思うのであります。日本国民の願いを代表して、我が国総理はみずから何かをなすべき時期に今あると思うのでありますが、総理、いかがでございましょうか。同時に、我が国は、政府のみならず議会及び民間のレベルにおける多様な交流を今、日ソ間に推し進めることが重要な意義を持っていると考えるものでありますが、この点について総理の所信をお伺いいたします。  第三に、核軍縮交渉の再開についてであります。  交渉のテーブルにソ連が復帰することは、国際緊張緩和のために不可欠のものであることは言をまちません。それはいかなる条件が熟すれば可能になるとお考えでありましょうか。一方が他方に対して軍事的に優越することによって相手を交渉に引き出すことができるという考え方もあります。だが、それでは米ソの限りのない軍拡競争の悪循環をもたらすことになるでありましょう。しかし、双方の間に優越ではなく均衡状態、すなわちパリティが生じているとする相互の認識があれば、抑止機能は生まれ、交渉の道もまた開けてくるのではないかと考えるものであります。現状の凍結を出発点としての交渉再開の展望はいかがなものでありましょうか。  今日、アメリカは、均衡を取り戻すという名のもとに強いアメリカヘの道を歩んでおります。それに対しソ連は、米国が配備済みの戦域核、ミサイルの撤去なくしては交渉に応じないという態度を主張しております。こうした状況を前にして、米ソ両国の軍事バランスを総理はどのように認識しておられるのでありましょうか。総理の言われるような均衡と抑止というものは、既に存在しているのではないでしょうか。米ソ交渉再開のテーブルに着けるために我が国としてどのような役割を果たし得るのか、この問題について総理の御所見を伺いたいのであります。  次に、サミットにおける経済問題の幾つかについて質問をいたしたいと存じます。  サミット経済宣言には、景気回復は定着したという楽観的な認識が述べられております。だが、欧州の多くの国々は高い失業率に悩み、経済の再活性化を求めて苦しんでいるのが実情でもあります。また、ヨーロッパ経済アメリカ高金利によって足を引っ張られていることも事実であります。そうした情勢は、必ずしも日米欧が一枚岩ではなく、深刻な利害の対立を内包しているという情勢と考えるべきではないでしょうか。サミットにおいて採択された経済宣言は、抽象的な合意を盛り込むにとどまっております。それは、各国意見調整が難航し、重要課題に対しては具体的な施策で一致を見ることができなかったからではないでしょうか。  そうした中で、第一にお伺いをしたいと思いますのは、我が国が提案した新ラウンドについてであります。  もとより、保護貿易主義の台頭を抑制し自由貿易体制を維持発展させるために、新たに先端技術の分野、サービス貿易などに関するルールづくりを含めた新ラウンド、これは極めて重要な意義を持つものであり、各国協調の上にその実現が図られるべきものであると考えます。しかし、それにもかかわらず、開始時期についての合意を得ることができなかった理由は一体何でありましょうか。伝えられるように、日本経済力を警戒するヨーロッパ諸国の反対のゆえでありましょうか。あるいは、いわゆる太平洋の時代なるものが余りにも喧伝され、その中において日米の協調ぶりがヨーロッパの反発を招いたからではありませんか。そうした事情について明らかにしていただきたいのであります。  なお、これに関連して、総理ロンドンの国際戦略研究所で行われたスピーチの中で、日米欧三極の政治的、経済的連帯の実現を述べておられることについてであります。ここでいう、総理の言われる連帯とはいかなる内容のものであるのかを明らかにしていただきたいと存じます。また、我が国の提唱した新ラウンドに対してすらあのような風当たりが生じている中で、日米欧の三極連帯をどのように築いていかれようとするのか、総理の描いておられるシナリオを国民にお示し願いたいと存じます。  さて第二に、途上国が直面している累積債務問題についてであります。  これは今も触れておられましたけれども、八千億ドルにも及ぶ累積債務を抱える途上国は、今先進諸国の銀行への年内返済分はもとより、金利の支払いさえも難しい状態になってきているのであります。同時に、これらの国々は、厳しい経済調整策をとることによって、国民の生活水準は極度に切り下げられておるのが実情であります。今後さらに高金利によって債務国の負担が増大すれば、経済不安や社会不安を招き、ひいては国際的な金融混乱が生じることを憂慮するものであります。  このような事態を避けるためには、アメリカ高金利是正措置をも含め、幾多の有効な措置が講じられなければならないと存じます。この問題に対し、我が国政府としていかなる施策を展開していかれようとするのか、総理の御所見を聞かせていただきたいと存じます。  第三は、我が国の政府開発援助、ODA問題についてであります。  総理は、みずからアジアの一員としての立場を強調し、サミットに臨まれました。だが、我が国の国際的に公約した対外接功費は、残念ながらその言葉と相反するものとなりかねません。確かに本年度の予算においては、厳しい財政事情の中にもかかわらず、ODAについての配慮がなされた点は認めるものであります。だが、それをもってしても、我が国のODAはDAC十七カ国の平均を下回っており、目標からはるかに離れたものであることは御存じのとおりであります。  しかも来年度は、五カ年間にODAを倍増するという国際的な我が国の公約の最後年度になるわけであります。この公約は、現状のままでは到底その達成がおぼつかないのではないでしょうか。もし、理念だけが語られて実行が伴わないことになれば、せっかく高まってきている我が国の国際的信用は著しく傷つけられるものになることを私は恐れるのであります。しかも、途上国への協力問題は我が国にとって重要な平和戦略として位置づけられ、いわば国策と言えるものであります。途上国に対して協力関係を強めていくという決意をみずから語られた総理として、どのような方針を持って来年度に臨もうとしておられるのか、お尋ねを申し上げる次第であります。(拍手)  さらに、最近、国連の機関であるユネスコからアメリカが脱退を決定し、英国、西ドイツがこれに続くのではないかと伝えられている問題についてお伺いをいたします。  このような事態をもたらした理由は多々あるでありましょう。だが、サミットの中ではこの問題の打開策が協議されなかったのでありましょうか。解決の協議をすることなしに先進諸国が脱退するというような動きは、ロンドンサミット宣言にうたってあります善意と協力の精神に照らしてもまことに遺憾と言わざるを得ません。ましてユネスコは、その憲章の中に、教育、科学、文化の国際協力を通じて平和と安全保障に寄与する、このような目的をうたっておる組織であります。  総理、この分野こそ我が国が最も独自性を発揮し、世界に貢献し得るいわば働き場所ではないかと思うのであります。我が国は、進んでユネスコ問題の解決努力するとともに、アメリカ初め先進国を説得すべきではないでしょうか。この問題に対して総理の建設的な御見解を望んでやまないものであります。  最後に、我が国経済力を反映して政治的発言力を強めてきたことは、国民として喜ばしいことであることを申し上げたいと思います。しかし同時に、国際的責任の重くなってきていることも総理が述べておられるとおりでありましょう。問題は、これからどのようにその責任の内容を定義し、どのようにそれを実行するかにかかっているのであります。それは、我が国が南北のかけ橋としての役割を誠実に実行する、そのことと東西対話実現全力を尽くす、そこにあると私は信ずるものであります。  我が国がこのような使命を果たしていくことを総理に強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  20. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 渡辺議員にお答えをいたします。  第一問は、コメコン・サミットの結果をどう評価するか、何かのシグナルありやという御質問でございます。  今回のコメコン・サミットでは、経済問題についての文書のほか、前回のコメコン・サミットのときにはなかった国際情勢についての文書を採択するなど、ロンドンサミットに対して東側陣営の団結を世界的に示すという意図があったものではないかとも考えられますが、しかし右文書には内容的に新味はなく、緊張緩和に向けての特段のシグナルは感知することはできません。しかし、今後とも我々はこれらの情勢を踏まえまして、情報を的確に把握するように努力してまいりたいと思っております。  早期に米ソ首脳会談を開催するために努力せよ、ソ連との人的交流を進めるべきではないかという御質問でございますが、この点は同感でございます。  米ソ対話促進、このためには、今回サミットにおきましても、また六月十四日のアメリカ大統領の記者会見の場でも打ち出しておるわけであります。ソ連がこれらの動きを真剣にとらえて、早期に会談が実現されるような情勢をつくり出すことが大事であると思います。対ソ交流につきましては、領土問題という避けて通れない問題がありますが、しかし議員交流あるいは経済人交流あるいは文化人交流等を開きまして、できるだけ対話の糸口を広げていきたいと考えております。  次に、核軍縮について、ソ連がこれに復帰して交渉再開が行われるように努力せよ、そういう御趣旨の御質問でございます。  我が国といたしましては、いつどこでも前提条件なしの交渉再開を表明している米国に、ソ連ができるだけ早期に建設的に積極的にこたえられるよう希望してやまないところです。そのためには、ロンドンサミット東西関係軍備管理に関する宣言等で示された西側諸国の善意を粘り強くソ連に働きかけていきたいと考えております。いずれにせよ、これは相互信頼がなければできないことでございまして、アメリカソ連の間に理解と信頼が起こるような情勢をいかにつくっていくかということが、我々の努力の方向ではないかと思います。  また、新ラウンドに関する御質問でございますが、お示しのように日本アメリカ経済が非常に隆起しておりまして、この新ラウンド推進するにつきましては、西欧側の一部には警戒感、不安感があったことは事実でございます。特に、太平洋地方の力が隆起してきておるという面についても、関心が集中しておったのではないかと思っております。そういう点におきまして、我々は、今後あらゆるガットの加盟国に対しまして積極的に理解を求め、これらのラウンドを着実に推進するように努力してまいりたいと思っております。  次に、いわゆる三極連帯に関して御質問がございました。  日本アメリカヨーロッパの三極の連帯という意味は、これは政治、経済に関する連帯を意味すると思います。政治という意味におきましては、これは平和や軍縮を推進するという意味であり、経済という意味におきましては、世界経済の繁栄や途上国に対する協力等々を意味するものと思います。このような考えに立ちまして、今後とも我々は、世界的関心事について協調してまいるようにいたしたいと思っておるところでございます。  開発途上国の累積債務の問題、アメリカ高金利の問題について御質問をいただきましたが、累積債務の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、債務国経済再建努力をみずから払っている場合には、民間債務の多年度にわたる繰り延べを奨励するとか、IMF、世銀の強化の検討に積極的に参加するとか、開発途上国への直接投資の流れの促進あるいは市場の一層の開放、これらにつきまして日本も積極的に努力してまいりたいと思います。  ODAに関する御質問でございますが、目標期間中のODAの実績は、八一年、八二年、これは若干減少いたしました。しかし八三年は、前年度より二四・四%と大幅な伸びを示しておるのであります。本年は、予算におきまして九・七%増の努力をしたことは御承知のとおりでございます。これらの中期目標は、我が国が、ODAの拡充によりその地位にふさわしい国際責任を分担していく用意のあることを内外に表明したものであります。政府としては、引き続き同目標のもとでODAの拡充に最大限の努力を行ってまいります。  ユネスコの問題について御質問がございましたが、アメリカが脱退を決定いたしました。日本は、アメリカに対しましては、確かにアメリカが指摘するような政治的な偏向という部分もございますから、内部的にこれらの弊害を是正するように努力しつつ、アメリカに対しては、二度にわたりましてユネスコにとどまるように我々は話し合いをしてきたところでございます。今後とも、このユネスコの不合理な点はこれを内部的に是正しつつ、あらゆる加入国がユネスコに対して協力するように積極的に努力してまいりたいと思っております。  最後に、国際的責任に関しまして、南北のかけ橋になれ、東西対話を再開せよ、そういう御趣旨につきましては同感でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  21. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 松本善明君。     〔松本善明君登壇
  22. 松本善明

    ○松本善明君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ロンドンサミット帰国報告について質問いたします。  総理は、昨年、新型中距離核ミサイル配備の強行を決めた軍拡サミットを積極的に推進する役割を果たしました。あなたは、このことについて昨日参議院で、核戦力の削減のためだと答弁をいたしました。しかし今回、イギリスの国際戦略研究所の演説では、昨年のサミット合意に基づいたアメリカのパーシングⅡ、巡航ミサイルの実戦配備を当面の対ソ対応策の一石は打たれたと述べて、アメリカの核戦力の増強を高く評価をしたのであります。イギリスでは新型核戦力配備の増強を褒めながら、日本では核兵器の削減のためにやったと答弁する。総理、これで国民が納得をすると思いますか。一体どういうことか、はっきり答弁をしていただきたいと思います。(拍手)  また総理は、昨日も本日も、核兵器廃絶について究極的な目標だという答弁をいたしました。しかし二年前、国連軍縮特別総会を前にして、本院は核兵器の廃絶について、原案にあった究極的という言葉を削って、今日の緊急の課題とする決議を行いました。これが国会の意思であります。また、このとき、国連に提出された核兵器廃絶を求める署名は二千八百万に上っております。  総理は、世界でただ一つの被爆国の首相として、国権の最高機関である国会が決議し、圧倒的多数の国民が望んでいる核兵器の廃絶をなぜ真正面から緊急の課題として全世界に訴えないのですか。明確な答弁を要求いたします。(拍手)  総理は、昨日、事前協議がないから核兵器は持っていないと、核トマホーク積載可能の原潜タニーの入港を追認する答弁を行いました。本日この趣旨の外相答弁に失笑が沸いたように、もはやこんな理屈を信用する人はいないと言っても過言ではありません。今国会、総理は、我が党の不破委員長の戦艦ニュージャージーに関する質問に対して、核兵器のあるなしを確認すると言明したではありませんか。総理、核巡航ミサイル・トマホークの配備、日本への持ち込みは、日本が公然と核基地となって核戦争の戦場になるかどうかという重大な問題であります。私は、非核の確認を重ねて要求し、答弁を求めます。(拍手)  総理は、昨日も本日も抑止と均衡論を述べられましたが、これは既に破綻の明白な理論であります。現にストックホルム国際平和研究所の最近のまとめでも、現在の米ソの核軍拡競争によって世界の核兵器は五万発に達しており、サミット合意などに基づく新たな配備によって六万発に増大すると指摘しております。だからこそ、一九七八年の第一回国連軍縮特別総会の最終文書が、永続する国際の平和と安全は不安定な抑止力の均衡によって支えられるものではないと述べ、八〇年の第三十五回国連総会に対する国連事務総長報告では、抑止と均衡は恐らく現存する最も危険な集団的誤謬とまで言っているのであります。  総理、この抑止と均衡論こそが、米ソの際限のない核軍拡競争を生んでいる論理であります。あなたは、この悪循環を断ち切ることこそが必要だとは思いませんか。答弁を求めます。  さらに、総理は戦略研究所での演説で重大発言を行っております。あなたは自衛隊について、その目的と性格を自国の防衛のみに限ることといたしましたが、その後、防衛力を漸進的に建設していくことによって極東の平和及び安定の維持に寄与することとしたのでありますと述べております。これは、政府のこれまで言ってきた専守防衛という自衛隊の性格を転換し、自衛隊がアメリカの極東戦略への積極的協力に踏み出したという重大な問題であります。総理の真意を明確にしていただきたいと思います。  次に、民主主義の諸価値に関する宣言について質問をいたします。  総理、これほど欺瞞に満ちたものはありません。この宣言は、各国の独立及び領土保全の尊重紛争解決する手段としての武力行使の拒否をうたっています。ところが、アメリカ政府は、人口十一万人の小国グレナダに一万六千人もの軍隊を動員して軍事占領し、今なお軍隊の駐留を続けております。また、ニカラグアに対して、機雷封鎖を初めとした軍事干渉を直接間接に行っています。国際司法裁判所は、この機雷封鎖の事実を認め、解除するよう求めた裁定を下しておりますが、こういう事実と民主主義宣言原則とは両立する余地があるのでありましょうか。総理の明確な答弁を求めます。  次に、宣言は社会正義をうたっておりますが、現職の総理が外国の企業から五億円という巨額のわいろを受け取り、本人はこれを否認しているけれども、贈った側は皆この授受を認め、有罪実刑の判決まで受けている、しかもなお政界に大きな影響力を振るっている。そして、国会でこの田中角榮議員辞職勧告決議案の採決さえしないという事態総理は社会正義に合致していると考えているのですか。はっきりお答えいただきたいと思います。(拍手)  市民の権利、自由の公平な尊重、保護、自由な選挙を通ずる自由な選択をうたった宣言と、総理推進しようとしている政党法の関係について質問いたします。  まず、総理が研究の対象としてかねがね主張している西ドイツでは、国家基本法と政党法で結社の自由を制限したり剥奪したりすることができ、団体や政党、その代替組織は解散までさせられます。実際、一九五六年のドイツ共産党解散に続いて、平和委員会や国際民主法律家協会など四百の平和・民主団体が解散させられ、これらの運動に関与していた大学教授や牧師まで免職、起訴されました。そして徴兵制、核武装が進められ、社会民主党も徴兵制、核武装反対を大会決議からおろしてしまったのであります。同様のことやもっとひどいことが政党法のある韓国、チリ、トルコでは行われております。  総理、こうした状態は、市民の権利と自由の尊重、自由な選挙と合致いたしますか。総理見解を伺いたいと思います。  政党法についてでありますが、自民党は、政治倫理協議会で、政治倫理の確立どころか政党法の制定を公式に主張し、税金で政党への補助金を出すために政党を法的に公認することを主張しております。政党を法的に公認するということは、政党を公認された政党と非公認の政党に分けることです。そして膨大な補助金を公認政党に出すことによって差別するわけですが、このような差別が行われることになれば、政治活動のやり方や選挙参加にこれが広げられ、さらには、総理が盛んに口にする西ドイツのように、政党禁止に道を開くことになるでありましょう。  現に自由新報は、弘津恭輔氏の法律によって結社の自由を奪うことができるという議論を掲載しております。まさに明治憲法が言論、集会、結社の自由を法律の範囲内に限定し、治安維持法によってこれらを根こそぎ奪ったと同じ論理が堂々と自由民主党の機関紙で論じられているのであります。これは、サミット宣言された自由、民主主義と相入れないのは明瞭ではありませんか。総理所見を伺いたいと思います。  総理、あなたは本日民主主義価値に関する宣言意義についていろいろ述べられましたが、昨日は、これについての質問に対し、プロレタリア独裁に反対するためのものと答弁をいたしました。これは、総理がこの宣言を実は社会主義反対のためのものとみなしているという本音が出たものだと私は思います。  なお、この際一言述べておきますが、プロレタリア独裁というのは、労働者階級の権力ということの不正確な訳語であることを我が党は十二年前の大会で明らかにしております。さらに我が党は、党大会の自由と民主主義宣言で、日本の将来にわたり言論、集会、結社の自由、複数政党制の保障などを明確にしており、これは議会制民主主義を一層発展させるものであることは明白であります。  経済問題について伺います。  総理は、高金利問題で、国際的な高金利の引き下げは各国財政赤字削減努力で行うことを決めたと答弁をしています。各国みんなで努力するなどと聞こえはよいけれども、これでは、八千億ドルを超える累積債務問題の原因ともなり、また超軍拡政策による膨大な赤字財政と結びついたアメリカ高金利政策に免罪符を与えることになるではありませんか。総理の答弁を求めます。  宣言が社会保障費の削減を意図し、公共支出の増大に懸念を表明したことも重大であります。これは、軍拡のための福祉切り捨てを要求するアメリカの主張が貫かれ、各国で軍拡優先、国民生活犠牲の路線をさらに一層進めることの表明にほかなりません。我が国では、既に臨調行革の名のもとにその政策が進められ、国民生活はもはや耐えがたいものになっております。今国会に提出されている健康保険の大改悪はその具体的なあらわれであります。にもかかわらず、大蔵省からは、軍拡、大企業奉仕を聖域とし、福祉、教育の切り捨てを進める来年度予算のマイナスシーリングが発表をされ、自民党内からも批判が起こっております。  総理、あなたは、サミットの国際的権威をかりて、このような軍拡と国民犠牲の政策を引き続き進めていくつもりなのか。明確な答弁を要求をいたします。(拍手)  この際、緊急の問題として、米問題について質問いたします。  何よりもまず、米不足と緊急輸入という今回の事態を招いた政府の責任をどうとるのか。昨日、また本日も、政府は、五十三年産米に起因する限られた問題で食糧米に不安はないと答弁しましたが、東京や大阪の知事などは、米の供給に深刻な不安を感じていることを農林水産大臣に申し入れております。根拠を挙げて、責任ある答弁を求めます。  今必要なことは、古米の安全性確保とともに、現物返還だなどとごまかさずに、緊急輸入を撤回をして、今年産米の緊急増産や早場米の集荷促進を図ることであります。そして、減反政策をやめるなど米政策の抜本的見直しをすることではありませんか。総理並びに農林水産大臣の責任ある答弁を求めます。  最後に、国際平和のためにも、諸国民の生活向上のためにも、軍縮、核兵器全面禁止、すべての軍事同盟の解消、諸民族の自決権の尊重が必要なことを強く指摘をして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  23. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 松本議員にお答えをいたします。  私の英国戦略研究所の演説等について言明になりましたが、私たちが一番念願していることは世界の平和であり、かつ、先般のウィリアムズバーグ・サミットにおきまする私の行動は、核兵器禁止の問題は全世界的スケールでこれは行わなければ意味ない、そしてアジアや日本の犠牲においてSS20の問題が解決されてはならない、それを担保するために異常な努力をして、そして西欧との連帯のもとにソ連アメリカとの対話促進しよう、そういうことを主張した結果なのであります。抑止と均衡に基づいて平和を維持するということは、今や世界的な趨勢であり現実であります。そういう意味におきまして、抑止と均衡に基づいてウィリアムズバーグの声明も行われ、私もこれを支持してきたということを申し上げる次第なのでございます。  次に、核兵器廃絶をなぜ言わないかというのでございますが、政府は繰り返して、核兵器廃絶という究極的な目標に向かって、現実の国際関係の中で実現可能な具体的措置を一歩一歩進めていくための努力必要性を訴え、実行しておるわけであります。国会の決議の趣旨も十分念頭に置いて軍縮、なかんずく核軍縮促進努力しておるところでございます。  巡航ミサイル・トマホークの配備の問題の御指摘がございましたが、トマホークにつきましては、先ほど来申し上げましたように、非核三原則を厳守して、安保条約を相互信頼のもとに有効にこれを運用しよう、そして核兵器持ち込みにつきましての事前協議の場合は常にこれを拒否する、そういう立場であるということを重ねて申し上げる次第なのでございます。  次に、自衛隊につきまして、極東の平和及び安定の維持に寄与するという点につきましての御質問がございましたが、私の演説の中でも、日本の防衛は自国防衛に限って行われる、必要最小限の自衛力を整備して行う、安保条約によりまして極東の平和及び安定の維持に寄与する、そういう趣旨でつくられておるのでございます。今御指摘の部面につきましても、日米間の日米安保条約による協力に言及してこれは言っておるということを御了解願いたいと思うのであります。  アメリカのグレナダ侵攻等々について御質問がございましたが、これらの行動がいわゆる先般のロンドンサミット宣言に矛盾している行動であるとは思いません。  また、民主主義宣言は社会正義をうたっているが、政治倫理との関係はどうであるかと今言われますが、裁判係争中の事件につきましては論評しないことにしております。  次に、西ドイツの国家基本法との問題で政党法の御質問がございましたが、西ドイツあるいはそのほかでやっている、外国がやっている行動につきましても論評は差し控えたいと思います。  我が国におきまして政党法の問題は、これは政治資金の規正の問題あるいは政党活動の問題等との観点で勉強してもらいたいと、自民党に今勉強してもらっておるのでありまして、我々は憲法のもとに民主主義を守って政治を行わんとしているので、憲法を守って、そのもとに行動するという政党ならば何ら心配はないと私は思います。別に、民主主義宣言と矛盾することはないと思っております。(拍手)  次に、高金利の問題でございますが、これも先般のロンドンサミットにおきまして声明にも盛りまして、この高金利を引き下げ、かつまた財政赤字を削減するという努力を行うことにおいて一致した次第なのでございます。  次に、経済宣言が公共支出の増大に懸念を表明しているがいかんということでございますが、これは、各国とも赤字財政に悩んでおりまして、インフレなき持続的成長を行うためには、また高金利是正していくためには、節度ある財政金融政策維持強化が必要である、こういう合意のもとに行われたのでありまして、我々もやはりこの合意を守っていくべきである、そのように考えております。  米の問題につきましては、農林大臣から御答弁いたします。(拍手)     〔国務大臣山村新治郎君登壇
  24. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 当面の米問題、そして食糧政策につきましてお答えいたします。  今回の韓国との米の現物返還の協議につきましては、五十三年産米の安全性に関連し、従来から五十三年産米をもって充てていたせんべい、それからみそ等の加工原材料用に必要な米穀の一部について不足する事態が予測されたためでございます。これは、国民に対し、その用途に応じて米穀を安定供給するという重要な責務を果たす上で必要かつやむを得ないものである、こういうぐあいに御理解いただきたいと思います。  米の生産力につきましては、潜在的には依然として需要を大幅に上回っておりまして、今後とも水田利用再編対策の定着かつ的確な推進が必要であるというぐあいに考えております。このような視点から、水田利用再編第三期対策におきましては、適正な在庫水準を確保するために毎年四十五万トンの在庫の積み増しを含めまして、今後とも米の需給や作況に応じた適切な需給計画のもとに、弾力的に対策を講じてまいります。  なお、端境期におきます米につきましては、円滑な集荷に努めてまいります。(拍手
  25. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) これにて質疑は終了いたしました。      ―――――・―――――
  26. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十五分散会      ―――――・―――――