○渡部一郎君 私は、公明党・
国民会議を代表いたしまして、
ロンドン・
サミット報告等につき、
総理並びに
関係大臣に御
見解を承るものでございます。
御承知のとおり、
総理の御出発前の国会の混乱は、
日本の代表を
世界的な
交渉に送る
立場といたしましては、まことに不本意であったと言わざるを得ません。
国民世論の強いバックアップを得ずして適切な外交
交渉が行われるはずがないからでありまして、
総理もこの点はよく御存じのとおりであります。それであるにもかかわらず、紛糾を招きましたのは、かかって無分別な会期延長と、政治倫理の確立をないがしろにした政府及び自民党の
国民及び国会審議に対する軽視に基づくものであると言わざるを得ないのであります。この点、
総理はまずどう認識しておられるのか。
少なくとも、国会正常化の
前提といたしまして、我々は、一審で禁錮刑以上の刑を受けた者については、本院の慣行として議員辞職勧告決議を行うよう求めてまいりましたが、自民党としては、去る十三日、有責議員に対する懲罰対象の
拡大について検討を約束されました。この約束は何を
意味しておられるのか、この約束を誠実に履行されるおつもりがあるかどうか、国会正常化の
前提として、まず、
総理の
見解を伺いたいと存じます。
〔
議長退席、副
議長着席〕
次に、第十回主要国首脳
会議、いわゆる
ロンドン・
サミットについて先日御報告をいただきましたが、これに対抗し、
経済相互援助
会議、コメコン首脳
会議、東側の
サミットと言われるものでございますが、これが十五年ぶりに開会されたわけでございます。この両者が
世界の政治、
経済両面にわたりまして山積する難問を解明し、特に、
世界経済の活性化と国際
緊張の緩和に突っ込んだ
討議が行われることを
世界は心ひそかに期待をしていたのであります。
しかしながら、コメコンはさておきまして、
サミットの具体的
成果として、
経済宣言、
民主主義の諸
価値に関する
宣言、
東西関係及び
軍備管理に関する
宣言、国際テロリズムに関する
宣言の四つの
宣言及び
イラン・
イラク紛争に関する
議長声明という形でまとめられましたが、いずれも抽象的、一般的な政治常識の再認識の域を出ていないというのが通説でございまして、現存する難問、
紛争に対する評論家的
発言ではなくして、具体的な有効な治療策を求めていた
国民の期待にはほど遠いものであると言わざるを得ないのであります。(
拍手)
つまり、
総理の御報告は、残念ながら自画自賛に過ぎるのではないかと考えているわけでございまして、この点、どうお考えになっておられるのか。例えて申しますと、
経済宣言の中では、
高金利の
是正、
財政赤字の削減、保護貿易主義の防止、
発展途上国債務の救済、
石油の緊急融通などが
討議されているわけでございますが、具体的実行についての取り決めは
各国の
財政金融政策にゆだねられ、行動計画の
協調性、具体目標をいかに維持するかは明らかでありません。
特に、
我が国が求めていた
米国の
高金利体系の
是正はどうなったのか。
米国の
高金利をもたらす要因の
一つは
財政赤字であります。
財政赤字の主たる要因は軍備の際限なき
拡大であります。
米ソを並列的に悪者と言っているわけでは決してありませんが、両大国の相互不信に基づく過敏にして異常な軍備
拡大競争に終止符を打つよう特別に要請をすべきではなかったのか。また、
アメリカ政府の
財政赤字縮小への
努力に対し、これを擁護し
協力する
立場をもう少し鮮明にし、
財政赤字を縮小せしめ、
米国高金利を抑制するための積極的な行動を働きかけることはできなかったのでありましょうか。この点、不十分さが感じられてならないのでありますが、御
見解を承りたいのであります。
新国際
ラウンドについて御
努力は認めるといたしまして、しかしながら、いつから実施されるのか、まだわかっていないのであります。
世界貿易の実情は名目だけの
自由貿易でありまして、自主規制の強制など実質的な保護貿易が横行しております。これに歯どめをかけ
自由貿易体制を守るため、ガット協議の結論を待つことなく新国際
ラウンドを
実現するため、政府は粘り強く継続的に
努力をし、かつ、その
実現にめどをつけるべきだと存じますけれども、そのための
方策、見通しというのはいかがでありましょうか。
また、
石油の緊急融通も、今後の
我が国の国内的な
努力と二国間
交渉にゆだねられて、むしろ見出しだけだというべきではなかったのでしょうか。もっと機能的、自動的な融通システムは策定できなかったのでしょうか。これまた心配であります。
特に、
発展途上国の
債務問題につきましては、これは重大問題であります。十六日のマスコミ報道によりますと、アルゼンチン政府がIMFの
経済再建計画を拒絶いたしましたために将来の支払い停止さえ予想されるということで、
世界の銀行業界が一時的には騒然といたしました。このこと自体を見ましても、八千百億ドルに達する巨額な
債務を背景に、国際的な
債務国連合による不払い運動の爆発、モラトリアムとか徳政令とか言われるものでございますが、こうしたものが予想されるほどその
事態は深刻なのであります。
サミット中に交わされた議論からいいますならば、途上国の自力再建の意欲こそ重大であることは論をまちませんけれども、この問題を
先進国が傍観して放置し、対岸の火災視するほどの余裕はないと言わなければなりません。政府はいかなる約束をしてきたのか、今後いかなる
対策を実施するのか、伺いたいのであります。
我が国が
世界経済の
発展に貢献するためには、
内需と外需の均衡のとれた安定
成長を達成することが大切であります。特に、
内需拡大によって経常収支の不均衡を
是正することは急務中の急務であります。
内需拡大の
具体策として、
民間活力の
推進、生活関連公共事業の拡充、所得税減税の追加などを早急に行うべきと考えますが、
総理の御
見解はいかがでございましょうか。
また、
ロンドン・
サミットの
経済宣言の
成果は、今後、
総理が効果的な
具体策をどう
措置するかにかかっているわけでありますが、この
宣言の内容を具体化する第一歩として六十
年度予算編成にどのように具現されるのか、承りたいのであります。
次に、政治に関する三
宣言と
議長声明についてでございますが、本来
サミットは
経済交渉であるという建前を離れ、政治
交渉に堕しているという批判が
出席者の中からまで出ているわけでありますが、この点、
総理はどう考えておられますか。
また、
総理が誇らかにうたいとげられました国際
紛争解決のための
武力不行使の宣明、
世界的規模での
対話の
必要性、非
同盟主義との
関係の重視などというものは、国連憲章とか不戦条約とかあるいはSSDⅡ等において言及された、何度か確認された国際的ルールでございまして、むしろ、その
実現のために何をなすべきかを集約することが最も大切であったのではないかと考えるのでございますが、いかがでしょうか。
また、対ソ
関係について、
対話や軍縮
交渉への復帰を呼びかけているものの、今日までの対決
姿勢、
東西関係の経緯、
ソ連政府の従来の対応の様子から見て、その前途は厳しいものにならざるを得ない。しかし、コメコンの決議を見ても、いたずらな対決
姿勢は抑制されていることを考慮しまして、粘り強く
東西対話の窓口を開くよう政府は
努力すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
この際、言いにくいのでありますが、心配なのは、従来、
総理がとかく挑発的な言辞を弄されたことであります。例えば四海峡封鎖とか、
日本列島不沈空母化とか、巡航ミサイルやパーシングⅡの欧州配備を断固断行せよとか、ひいては、核兵器の使用は保有国の勝手であり、文句を言うのは主権の侵害であるというような議論、そうした議論というものは、議論の範囲にとどまらず、相互不信を招き、平和を危うくするものであります。平和
憲法及び非核三
原則、武器輸出三
原則などの輝ける平和
原則を保有する
我が国の代表として、不穏当のそしりを免れないと思いますが、いかがでありましょうか。(
拍手)
また、今回の
サミットにおいて
国民の熱望であったのは、平和であり、核兵器反対であり、全面軍縮でありましたが、
総理は、これについてどう
努力され行動されたか、お伺いしたいのであります。
特に、最近の核つきの疑いのある巡航ミサイル・トマホークを積載する米軍艦船の
日本への寄港に対し、非核三
原則や事前協議条項が守られているのかどうか、十分解明していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
イラン・
イラク戦争も、
サミットでは
状況を打開するだけの
方策を示すことができなかったのでありますが、双方と外交
関係を持つ
我が国の役割は極めて重要でありますが、どういう方針で対応していくのか、明らかにしていただきたい。また、同戦争の停止を言いながら、先進
各国が武器の輸出をしている現状などをどう考えておられるのか。それぞれ政府の
見解を承りたいのであります。
次に、当面する重要
課題について若干の
質問をさせていただきたい。
それは、
サミットとも関連いたしますが、六十
年度の予算編成であります。
ここ数年の政府・自民党の一律削減方式による予算編成は、
財政の帳じり合わせのみを優先させ、
国民生活に
景気の停滞、福祉の後退などをもたらす一方、
財政再建の崩壊、防衛費の異常突出などの矛盾を示しております。したがって、予算編成の
基調となる概算要求枠の設定は、これまでのようにマイナスシーリングなどの一律どんと削減するというやり方はやめて、予算の根っこから見直すことを
前提といたしまして、
政策の優先順位を明確にした
政策別シーリングを設定すべきと考えますが、
総理の
所見を承りたいのであります。
あわせて、予算編成に
国民の声を反映させるため、政府・自民党は概算要求枠設定前に野党と協議する機会を持つこと、また、大蔵原案内示の直前に策定されていた予算編成大綱を早期に策定し、国会においてその内容を論議することを求めますが、
総理の御
所見を聞かせていただきたいのであります。
さらに、予算編成の基本方針として、所得税減税と中小企業に対する投資減税の実施、公共事業予算の上乗せなど
景気対策の拡充、福祉、文教予算の確保、不公平税制の
是正、行
財政改革の徹底を図るとともに、防衛費予算についてはGNP一%枠を厳守することを要求するものでありますが、それぞれについて
総理の明確な御答弁を承りたいと存じます。
次に、健康保険法改正法案についてであります。
昭和五十六
年度以降の政管健保が黒字
基調を示していること、またさらに、医療費適正化
対策としての薬価基準引き下げ、予防
対策の前進等の施策の強化で、医療費の抑制は相当可能であり、予算執行上の手当ても他に方法があるはずであります。したがって、矛盾と批判の山積する健康保険法改正案については殊さら慎重審議を行うべきであり、結論は急ぐべきではないと思いますが、どうお考えになっておられますか。
また、米の不足の問題についてお伺いいたしますが、生産者団体は既に、農水省の外米緊急輸入方針を撤回するならば、自家保有米を拠出したり、今から稲を植えられるところは
最大限
努力するとまで言っておられます。政府は韓国との輸入
交渉より国内の生産者団体との
話し合いを優先させてはどうかと考えますが、いかがでしょうか。また、今秋の端境期における主食米の供給不安、五十三年産米並びに韓国産米の安全性、韓国経由でカリフォルニア米が輸入されることへの疑問、残留農薬の安全性等について、政府の明快な方針、御
見解を承りたい。同時に、こうした重大な
国民不安を招来した政府、農水省の
責任にどう決着をつける用意があるのか、お尋ねしたいのであります。
定数
是正問題につきまして、現在の衆議院の定数不均衡
状況に対して、最高裁では違憲
状態であるとの判断が示され、これ以上放置することは許されるべきではなく、今国会
最大の懸案の
一つとなっております。
総理は、この議会制
民主主義の根幹の問題にどう取り組まれるのか。今国会中に定数の不均衡
是正を必ず行うことを約束されるかどうか。また、その際、二人区の新設は行わないこと、一対二以内とすべきであると思うが、それぞれ
総理の御
見解を承りたい。
最後に、
サミットは今回でわずか十回目であり、この形式は十分成熟した外交形式と申すわけにはまいりません。首脳同士が全
責任を持ってフランクに
話し合い、大筋の方向を協議、策定することができるというよさはありますけれども、まず首脳自身の政治的力量が強大ならばよいのでありますが、さもないと何も決められないという結果になる。また、事務局同士が議論を積み上げてくる従来の
交渉にない粗雑さがつきまとうことは避けがたい。逆に、事務局同士の打ち合わせを重視すれば、結果は複雑化して文章が厚くなるばかり。したがって、この方式が生きるためには、担当事務局が十分内容を審議した上
責任を負いかねるような大局的方向を画期的に打ち出すのには役に立つ。例えば、核実験全面停止とか、核兵器先制不使用とか、関税の一括引き下げとか、
世界的な緑化
推進計画とか、飢餓あるいは人口
対策とかであります。
問題の二は、事前に
サミット参加国のグループが利権を調整、根回しして
会議のリーダーシップを握りやすいということであります。特に、EC委員会は代表を出し、七カ国中五つの代表が欧州であることはアンバランスであります。今回
日本の
推進した新
ラウンド策定の時期が葬られたのは、
サミットの限界を示すものであります。
我が国としては、オーストラリア等の太平洋
諸国を数国加えるよう
努力すべきではないのか、根回しも十分留意すべきではないのでありましょうか。
第三には、
発言国が多いため自国の
発言を言い尽くせぬうらみがあるのであります。
我が国の特殊な
地位は説明するのに多くの障害があります。つまり、事前の
交渉をないがしろにして
サミットの成功はあり得ないのであることを再び強く認識しなければならないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
今後この
サミットの形式を
発展させるためには、ただ単純に、会って話すのはいいことだというような手放しの楽観論は慎まなければならないと存じます。そして、第一に、事前の
意見や意思の疎通を十分にすること。第二に、首脳
会議用の議題と事務局用の議題というものを整理すること、つまりテーマを選別すること。第三に、構成メンバーを再検討し、太平洋国家を重視すること。もちろん途上国の声を反映さすようにすることも言うまでもありません。そして第四に、協定の実施に当たっては具体的な
成果が上がるようにするためのシステムを十分考慮するというような
措置が必要なのではないかと考えるわけでございまして、今後、将来のために御検討あらんことを要望する次第でございまして、あわせて御
見解を承りたいと存じます。
以上をもちまして
質問とさせていただきます。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕