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田中克彦君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
議題となっております
日本体育・
学校健康センター法案に対し、
政府の
考え方をただしてまいりたいと存じます。
質問に入るに先立ち、一言申し上げておきたいと存じます。
言うまでもなく、今
国会の
一つの大きな課題は、
総理の提唱する
教育改革であります。青少年の非行化、暴力化をなくすため、知育偏重の
教育から徳育、
体育をも重視をし、
心身ともに健全な人間づくりを目指す
教育の
あり方が問われているとき、これをめぐって
教育改革の正しい方向を求める論議を尽くすことは
国会の重大な
責任であります。
政党政治に与野党があり、与野党は意見が異なり、真っ向から議論して渡り合うことはむしろ当然であります。いたずらなやじで終始発言が聞き取れないような
国会では、徳育が欠けているなどと言って
教育改革を論ずる資格はありません。また、
国民の信頼も得られません。国権の最高機関にふさわしい権威と品位を保ってこそ、論戦に重みが出てくるのであります。どうか意見の異なることにも寛容さを持ってしばらく御清聴のほどをまずはお願いを申し上げておきます。(
拍手)
本
法案は、
昭和五十八年三月十四日財界主導による
臨時行政調査会が行った
行政改革に関する第五次
答申の
趣旨を忠実に履行するために、
国立競技場及び
日本学校健康会を
統合し、従来のそれぞれの
法人任務を引き継ぎ、
日本体育・
学校健康センターを新たに設置しようとするものであります。
そもそも、今回
統合の
対象となっている
日本学校健康会なるものは、
日本学校給食会と
日本学校安全会とを
統合して、
日本学校健康会法に基づき誕生したものであります。本法は、
昭和五十五年二月十八日第九十一通常
国会に提出されましたが、衆議院解散によって廃案となり、同年十月十四日第九十三臨時
国会に再提出されて審議未了、そのまま継続審査扱いとなり、第九十四
国会に持ち越され、
昭和五十六年五月十五日原案修正して可決され、参議院に送付。以後、第九十五
国会を挟み、
昭和五十七年四月十六日第九十六
国会に至って参議院本
会議で修正可決、再び衆議院への送付を受けて、ようやく同年六月十五日衆議院本
会議において可決成立の運びとなったものであります。
この長い審査経過が示すとおり、本来
学校給食と
児童生徒の
災害に対する共済
給付を
任務とする
学校安全会という全く異質な
法人組織を一体化することの無理がこの論議の
対象となって思わぬ審議の長期化を招いたものであります。このような審議の経緯があるにもかかわらず、さらに今回その上に
国立競技場と
日本学校健康会とを一体化するという発想は、
体育の
振興と
児童生徒の健康
保持増進という極めて広義な解釈と
理由づけによって行政の減量化のみを先走りさせた無謀な合理化生言わざるを得ません。
政府は、
日本学校給食会と
日本学校安全会
統合のための
日本学校健康会法の審議経過をどう
考えているのか。さらに、この上
日本学校健康会と
国立競技場とを一体化する
理由を見出すことは極めて至難でありますが、その意義と
理由また行政上のメリットについて明らかに示していただきたいのであります。
しかも、この際特にお尋ねしたいことは、長時間審議を重ねた
日本学校健康会法は、その可決成立に当たって衆参両院ともそろって附帯決議をつけている点であります。すなわち、
一
運営審議会の委員の選任に当たって広く
関係者の意見を反映する。
一
学校の
施設・設備の安全性、環境衛生の維持向上及び
学校給食の
普及充実を図るとともに、養護、栄養職員を適正に配置する。
一
災害給付は、特に重度障害者の不服審査処理を含め
改善充実する。
一 米、小麦粉、牛乳に対する国庫補助の継続、食品、食器等の検査及び
関係者に対する必要な情報の提供、研修の
充実に努める。
一 それぞれの職員
雇用の継続と労使慣行の継続を図る。
などであります。つまり、今必要なことは、行政の整理
統合そのことよりも、これら
学校健康会
事業が一体化されたことによって一層その
内容が
充実強化されてこそ行政は生き生きとし、
国会の意見は反映されたということができるのであります。
にもかかわらず、本年度
政府予算案では、小中
学校給食施設設備の
整備費を前年対比十七億一千八百万円も減額をし、また、給食用の牛乳の補助についても一本五円を四円に切り下げるなど
内容は大きく後退をしているのでありまして、行革による成果を期待するどころか、実質的には
学校給食体制の低下のみが目につくのであります。
政府はこのことをどう
説明しようとするのか。
文部大臣の明確な
答弁を求めるものであります。(
拍手)
さらに、もう
一つの問題点は、
日本学校健康会と各都道府県
組織との
関係であります。
さきに述べましたとおり、この健康会は
日本学校給食会と
日本学校安全会とを
統合して
昭和五十七年六月発足したものでありますが、
日本学校安全会は名実ともに
一つの
組織体として都道府県でそれぞれ支部となっておりますが、
学校給食会については今も依然として都道府県単位に
法人組織として独立しており、
日本学校健康会法によって
統合されたとはいいながら、
実態は少しも変わっておりません。言いかえれば、各都道府県の
学校給食への対応は長年の積み重ねによって十分に定着をし、自立して
運営できる状況にあるということであります。
このような
実態にかんがみ、今回の
国立競技場を
学校健康会と
統合することは、重ねて名目だけの
組織統合によって
法人の数だけを減らせるという
臨調答申に忠実に従う行革であることを如実に物語っているのであります。実体の伴わないこのような合併
統合を繰り返すことは、議会の良識の名において許すわけにはまいりません。
政府の
見解を改めて問うものであります。
一方、
国立競技場でありますが、この
施設が持っている
役割と
任務は、申すまでもなく、良好な管理
運営によって広く市民に開放され親しまれ利用されるとともに、
国民的、国際的スポーツの競技場として
国民体育振興に寄与するものでなければなりません。したがって、その
運営は、
施設の持つ固有の
任務と機能が良好な管理のもとにいつでも発揮できる体制が必要であり、真に有効適切に活用できる条件を整えることこそ望ましいのであります。
昭和三十九年、
日本の高度
経済成長の夜明けとも言うべき東京オリンピックが華々しく開催をされ、全
世界に
経済大国
日本の国力を誇示する
役割を果たした
国立競技場に、今は往時をしのぶ影すらもありません。今ここで、いかに収益性が問われるとはいいながら、若い人を集めての歌謡ショーを催し、それによってやりくりされている
現状をどう
考えているのでありましょうか。本法成立による二
法人組織の
統合によってこの問題が一気に解決できるとでも思っているのでありましょうか。
見解を承りたいのであります。
最後に私は申し上げたい。
中曽根総理は、
教育改革に意欲を燃やし、口を開けば
教育改革を論じ、
施政方針演説においては、いわれるところの
教育臨調を打ち出したのであります。その一方で、
臨調答申をまともに受けて
教育予算に大なたを振るい、本来聖域とさるべき
教育を犠牲にし、軍事予算を突出させているのであります。本法による
法人組織統合も、安上がり
教育行政の一環であり、容認することができません。このように矛盾きわまるポーズの政治こそ
中曽根内閣の正体であると断ぜざるを得ません。
憲法と
教育基本法の精神に基づく民主的
教育発展のためにこそ、政治と行政はその保障を与えるべきであります。
教育臨調構想の再考を促すとともに、
総理の
見解を改めて問い、本
法案の速やかな
撤回を要求して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕