○和田貞夫君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
割賦販売法の一部を
改正する
法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
まず最初に指摘をしておかなければならないのは、
消費者信国産業そのもの自体の問題についてであります。
消費者信用というのは、いわゆるクレジットと呼ばれる販売金融と
消費者金融とで構成されており、近年その市場規模は急速に
拡大し、
昭和五十七年には年間の与信額が約二十二兆円に達し、個人消費支出の約一五%をも占める巨大産業になっておるのであります。しかも、その成長速度は目覚ましく、あの石油ショック直後の
昭和四十九年度と比較いたしますと、わずか八年間で三・三倍にも膨張いたしております。とりわけ信販業界は飛躍的な伸びを見せ、大手信販業者だけでも
昭和五十七年度の取扱高は五兆四千九百三十七億円となり、過去十カ年で三十九・四倍に伸ばし、急速にその市場規模を
拡大しておるのであります。また、今後も消費生活のキャッシュレス化が進む中で、販売信国産業、いわゆるクレジット産業の
拡大は、さらにここ数年は続くであろうことが予測されるのであります。
総理、
消費者信国産業の与信額がこのように二十二兆円を超えるような、クレジットはんらん時代とも言うべき金融構造が、
国民経済の上から見て果たして健全な産業構造だと言えるでありましょうか。こうした市場規模
拡大の裏には、節度を欠いた取扱高競争や残高競争のため、
消費者信用市場はかってないほどに荒廃し、急成長に伴う多くのひずみが表面化して、利益なき繁栄とまで言われており、約二千万人に及ぶ
消費者が大なり小なり被害をこうむっているのが現状であります。
消費者信国産業のこのような現状について、あなたは一体どうお考えになるのか、御所見をお伺いいたしたいと思います。
また、今回の
法改正の基本は
消費者保護の徹底にあると私は理解したいのでございますが、それでよろしゅうございますか、あわせて総理の御見解をお聞かせ願いたいと存じます。
こうした与信額の不自然な伸びは、結果として、借りまくり、ローンづけといった多重
債務者の発生を引き起こしており、全国で実に四、五十万人にも及ぶ多額
債務者が借金苦にあえいでいると推計されるのであります。まさに貸し金地獄と言うよりも
割賦販売地獄の時代と言わなくてはなりません。
簡易裁判所に持ち込まれるクレジット関連の金銭請求事件の取扱件数は、五十七年で七万二百十六件に達し、前年比六二・三%の増加を示し、しかも、クレジット事件が民事訴訟の二分の一以上を占めるというのが実態でございます。このことは
消費者信用市場のひずみを象徴しており、過当競争による与信ダンピングという安易な経営姿勢に問題があり、業界に強い倫理観や社会的責任感及び謙虚な反省というものがない限りにおいては、簡単に金銭請求訴訟ができないよう法の
整備が必要と考えるのでございますが、どうでしょうか。
例えば、
消費者契約に関して強制執行認諾文言付公正証書の作成に関する委任状の取得を禁止する等、信販業者の権利の乱用を
防止するための行政
措置を講ずる必要があると考えるのでございますが、通商産業大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。(
拍手)
次に、
割賦販売法改正案の具体的
内容について質問いたしたいと思います。
まず第一に、最近の高度情報化社会とともにさまざまな
割賦販売の契約
形態があらわれ、また信販業界では、大手を含め過当競争の結果、悪質訪問
販売業者などとも安易に加盟店契約を結ぶ傾向にあり、こうした経営姿勢が全国各地で
トラブルを発生させている原因となっておるのであります。
特に最近の
トラブルの傾向は、
商品とともに塾、車検等の役務関連
取引や家庭教師などのサービスつき教材販売というような役務が附帯した
商品をめぐり多くの問題が指摘されておるのであります。このことにつきましては、昨年七月の
消費者信国産業懇談会の
報告や本年二月の産業構造審議会の答申においても、役務を法規制の
対象とすることが妥当であると述べられているところであります。
しかるに、今回の
法改正に当たりましては役務関連
取引については何ら盛り込まれておらず、何のための答申なのか、
消費者保護の立場に立つならば当然のことであるにもかかわらず、なぜ役務を規制
対象にしなかったのか、通商産業大臣の責任ある答弁を求めるものであります。
第二は、抗弁権の問題についてであります。
割賦
購入のあっせん契約等において、
消費者は、販売店から
購入した
商品の
代金を信販会社等に支払うこととなり、
商品の
取引と
代金の決済とで相手が異なる別々の契約を締結することになります。したがって、
商品に瑕疵があった場合あるいは販売店が倒産した場合等で、
消費者が信販会社などに対して抗弁を十分に行えないことに起因する
トラブルが最大の原因であります。
一方、
購入者が販売店に対して主張できる抗弁は同様に信販会社に対しても主張できるとの判例が最近多く見られるようになってまいりました。信販会社に対し、共同責任いわゆる抗弁権の接続を明確にする必要がありますが、今回の
改正案では、ローン提携販売あるいはマンスリークリア方式といった銀行系の
形態については抗弁権が接続されておらず、同じ販売金融でありながらまことに片手落ちであり、法のもとでの平等という原則からも将来に禍根を残す結果になると思いますが、通商産業大臣並びに大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。(
拍手)
第三は、契約の申し込みの撤回または契約の解除権、いわゆるクーリングオフについてでございます。
現在のクーリングオフ期間は、書面の交付の日から四日間となっておるのでございますが、
消費者保護の立場から申しますと短いのではないかと思います。確かに、余り長過ぎると
商品の流通を悪くするという意見もあるようでございますが、
消費者保護に配慮し、諸外国並みにこの際七
日程度とすることが好ましいと考えるのでございますが、どうでしょうか。
また、起算につきましても、書面交付の翌日からとするなどの配慮が必要と考えられますが、どうでしょうか、お尋ねいたしたいと思います。
最後に、
割賦販売法と関連する訪問販売法についてであります。
現在、
消費者苦情処理機関に持ち込まれる件数の約四割程度が、訪問販売でクレジットを
利用した
取引に関するものでございまして、これら二法は密接な関係にあり、
消費者保護と
消費者信国産業の健全化のためにも、訪問販売法の速やかな
改正が必要であると思います。
また、前払い式特定
取引業として通産省が営業許可を与えている冠婚葬祭互助会に関する苦情や
トラブルが後を絶たないわけでございますが、これら悪質なものについては、許可取り消しの行政
措置を含めて対応すべきであると思うのでございますが、通商産業大臣の決意のほどをこの機会にお聞かせ願いたいと存じます。
消費者保護の徹底という目的のためには、近い将来この
法律を
消費者信用販売
取引法として抜本的な
改正を行う必要があることを強く訴えまして、私の質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕