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1984-04-03 第101回国会 衆議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月三日(火曜日)     —————————————   昭和五十九年四月三日     正午 本会議     ————————————— ○本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後零時十四分開議
  2. 福永健司

    議長福永健司君) これより会議を開きます。      ——————————  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣   提出)の趣旨説明
  3. 福永健司

    議長福永健司君) この際、内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。厚生大臣渡部恒三君。     〔国務大臣渡部恒三登壇
  4. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  我が国医療費は、人口の急速な高齢化疾病構造変化医学医術高度化等により根強い増加傾向を示す一方、経済成長は鈍化し、今後医療費国民負担能力との間の乖離が拡大していくおそれがあります。  また、厳しい国家財政状況下で、国庫による各医療保険制度間の不均衡調整機能を維持することが困難となってきております。このような状況に的確に対応し、本格的な高齢化社会に備え、中長期観点に立った医療保険制度改革を行うことは緊要の課題となっております。  今回の改正は、このような情勢を踏まえ、医療保険の揺るぎない基盤づくりを進め、すべての国民が適正な負担で公平によい医療を受けることができるよう、医療費適正化保険給付見直し負担公平化を三本の柱とした制度全般にわたる改革を目指したものであります。  改正案主要事項について、概略を御説明いたします。  第一は、医療費適正化のための改正であります。  保険医療機関等の不正不当を排除するため、診療内容が適切を欠くおそれがあるとして重ねて厚生大臣等指導を受けている保険医療機関等については、その再指定を行わないことができることとし、また、不正請求による処分を逃れるために保険医登録を取り下げる等の場合については、再登録等を行わないことができることとしております。  さらに、社会保険診療報酬支払基金の主たる事務所に特別審査委員会を新設し、極めて高額の診療報酬請求書等について重点的な審査を行うこととしております。  第二は、医療保険における給付見直しであります。  まず、被用者保険本人給付率改定することとしております。  現在、被用者保険本人給付率は十割、その家族入院八割、外来七割であり、また、国民健康保険給付率は、世帯主家族とも入院外来七割となっております。このような給付率格差を漸次縮小し、全国民を通じて公平化を図っていくとともに、かかった医療費の額がわかりやすくなること等により医療費効率化が促進されるという見地から、被用者保険本人給付率昭和六十年度までは定率九割、昭和六十一年度からは定率八割に改めることとしております。なお、これに伴い、現行の初診時一部負担金及び入院時一部負担金は廃止することとしております。  また、受診時の自己負担額が過大とならないよう、被用者保険本人についても、その家族国民健康保険の被保険者と同様の高額療養費支給制度を設けることといたしております。  次に、療養費支給に関する改正であります。  新しい医療技術の出現や患者の欲求の多様化等に対応し、高度医療や特別のサービス等について保険給付との調整を図るため、療養費制度改正するものであります。これは、高度の医療を提供すると認められる特定承認保険医療機関において療養を受けた場合や、保険医療機関において特別の病室の提供等厚生大臣の定める療養を受けた場合に特定療養費支給するものであります。なお、この療養費については、被保険者への支給にかえて、直接医療機関支払いを行うことができることとしているほか、被保険者が支払った費用については、領収証の交付を義務づけることとしております。  第三は、医療保険制度合理化等による負担公平化であります。  まず、退職者医療制度を創設することとしております。  事業所退職者は、退職後、国民健康保険加入者となるため、給付水準が低下し、また、その医療費負担は、主として国庫自営業者農業者等他国民健康保険加入者に依存することとなるという不合理と不公平が生じておりますので、これを是正するため、退職者医療制度を創設することとしたものであります。  すなわち、これらの退職者及びその家族対象に、市町村国民健康保険事業の一部として事業を行い、給付率は、退職者本人入院外来八割、家族入院八割、外来七割とし、また、高額療養費支給制度適用することとしております。この医療給付に要する費用負担は、退職者及びその家族の支払う国民健康保険保険料現役被用者及び事業主負担する拠出金により賄うこととしております。  次に、国民健康保険国庫補助に関する改正であります。  退職者医療制度創設等による市町村国民健康保険への財政影響等を考慮し、市町村に対する国庫補助現行医療費の百分の四十五から医療給付費の百分の五十へと変更するとともに、国庫補助財政調整機能を強化することとしております。さらに、国民健康保険組合に対する国庫補助についても、補助対象医療費から医療給付費に改める等所要改正を行うこととしております。  第四に、日雇労働者健康保険の体系への取り入れに関する改正であります。  日雇労働者健康保険制度を廃止し、日雇労働者健康保険日雇特例保険者とするとともに、その給付内容及び保険料については、就労の特性を考慮し、一般の被保険者と実質的に均衡のとれたものとなるよう定めております。  また、国庫は、政府管掌健康保険事業所日雇特例保険者に係る給付費等について、一般の被保険者についてと同一補助率により補助を行うこととしております。  なお、廃止前の日雇労働者健康保険事業に係る累積収支不足については、借り入れをすることができることとし、その償還を一般会計からの繰り入れにより行うことができることとしております。  以上のほか、保険料負担の適正を図るため、標準報酬等級について所要調整を行うこと、船員保険法国家公務員等共済組合法等共済組合法についても、健康保険法に準じた改正を行うこと等の改正を行うこととしております。  なお、この法律施行期日は本年七月一日からとしておりますが、退職者医療拠出金等に関する重要事項について社会保険審議会意見を聞くこと等については公布の日から、また、標準報酬等級改定については本年十月一日からとしております。  以上が、健康保険法等の一部を改正する法律案趣旨でございます。よろしくお願いします。(拍手)      ——————————  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  5. 福永健司

    議長福永健司君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。村山富市君。     〔村山富市登壇
  6. 村山富市

    村山富市君 昨年暮れの総選挙のさなか、健康保険制度改正については見直しをして、選挙の中で国民の皆さんの声を聞いて納得のいく案をつくりたいと公約をされたのはどなたですか。  私は、日本社会党護憲共同を代表して、ただいま趣旨説明のありました健康保険法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係閣僚質問をいたします。  選挙中に表明された国民の意思を反映して、この国会でも政治倫理確立が大きな政治課題となっています。政治倫理は、単に汚職体質を正すというだけではなく、国民にうそをつかないこと、公約責任を持つということではありませんか。また、総理の目指す教育改革の土壌を耕すためにも、公約実行のけじめをつけることが必要ではありませんか。しかし、今回提出された改正案は、基本的な骨格についてほとんど変わっていないのであります。国民は、だまされたと思っています。総理の正直なお答えをお聞かせください。(拍手)  質問の第二は、今回の改正の背景に医療保険制度崩壊の危機が言われていることであります。  すなわち、医療費増高国民所得伸びを上回ることが続けば、医療費国民負担能力との間のギャップが拡大して、制度が崩壊するというのであります。しかし国民医療費は、五十六年六月以降三回にわたる医療費改定によって五十八年から伸びが鈍り、国民所得伸び以下となっているのであります。本年三月の薬価基準引き下げなどによって、この傾向は続くと見られています。政府の主張は、医療保険に対する国の負担削減をして、給付水準引き下げ、一方的に弱い患者に押しつける、そのためのおどかしにすぎないのであります。(拍手)  質問の第三は、政府中長期見通しに立って改正をするのだと説明をしながら、実際には中長期見通しもなければ将来計画もないことであります。  例えば、医師医療機関が偏在しておることについてどうするのか。激増する心の病にどう対応するのか、国民健康保険を含めて給付水準統一をどう考えているのか、すべて不明ではありませんか。肝心なことは何一つわからないまま、やみくもに患者負担を押しつけようとする政府の態度こそ、医療保険制度を崩壊させようとしている真犯人ではありませんか。見解を承りたいと存じます。  さらに、今回の改正マイナスシーリングのつじつまを合わせる財政対策にあったことは、改正案が立案されたこれまでの経過で明らかであります。この重要な問題を単に財政対策として扱うとは、まことに言語道断と言わなければなりません。(拍手)  総理並びに大蔵大臣お尋ねをします。  六十年以降も財政は好転せず、引き続きマイナスシーリングによる予算が行われるとした場合、そのツケをまた社会福祉社会保障に当てはめることになりますか。この際、見通しを明らかにしておいていただきたいと存じます。  次に、改正案内容についてお尋ねをいたします。  まず、本人給付率引き下げについてであります。  本人の十割給付という制度我が国の今日の経済成長をなし遂げる上で生産と家庭の生活を支える大きな役割を果たしてきたことはお認めになると存じます。だからこそ、保険財政が赤字のときも本人の十割給付には手をつけられずに維持されてきたのであります。今回の改正は、その根幹を崩そうというのであります。しかも、定率負担になりますと、長期療養を要する重い病気ほど負担が重くなるのであります。その上、給付率のカットによる受診抑制効果所得の低い層に一番あらわれてくるのであります。つまり、この改正案社会保障を最も必要とする人々を突き放す結果になるのであります。病気にかかった医療費本人にわかるようにしたいというのであれば、領収書診療明細書発行する等別途方法考えるべきであります。それを口実に患者負担を押しつけるやり方は弱い者いじめも甚だしいやり方であり、断じて認めることはできません。厚生大臣見解を承りたいと存じます。  その上、高額療養費制度は、一つ診療科一つのレセプトでなければならないこと、その月限りの療養費でなければならないことになっております。三千円の引き上げをやめ、運用改善を図るべきではありませんか。  同時に、懸案となっている五人未満事業場健康保険法強制適用こそ積極的に進めるべきであると思いますが、見解をお聞かせください。  次に、退職者医療制度についてであります。  この制度は、国は一円も負担をせず、現役労働者使用者、そして退職者みずからの負担によってつくられる制度であります。端的にお尋ねをします。退職をすることによって所得が低下し使用者負担もないこれらの人たちにこそ、所得再配分としての公的負担を必要とするのではありませんか。いかがですか。この制度は、被用者保険から拠出する保険料負担に歯どめがないことや、それだけにこの制度運営に関与できない被用者保険サイドから強い批判がありますが、これらの問題についてどうお考えになっていますか、明らかにしていただきたいと存じます。  次に、国民健康保険についてお尋ねをいたします。  退職者医療制度を設けることによって国保負担がその分だけ軽くなるという理由で、国庫負担二千三百五十五億円を削減、その上に国庫補助制度をこれまでの医療費の四五%から給付費の五〇%に改めることになっています。これを医療費ペースに直しますと、約三八・五%で、実質的には千五百四十四億円の補助金減となるのであります。補助率引き下げの根拠は何ですか。国保給付率は早晩引き上げなければならないと思いますが、今回の措置がこれからの市町村財政国保財政にどのような影響があるとお考えになっていますか。これが保険税にはね返ってくる心配はありませんか。  なお、現在の保険税には全国の市町村で最高と最低では約十倍の地域格差があります。同一県内の市町村でも格差があるのであります。このような事態こそ是正されなければならないと存じますが、国保の今後の見通し、将来計画も含めて明確にしていただきたいと存じます。(拍手)  次に、特定承認医療機関における高度な医療や特別のサービス、特別の治療材料などについて一定額保険給付に準じた扱いをするという問題についてであります。  これは、逆に言えば保険外負担をふやし差額ベッドを公然と認めることになるのであります。この制度運用によっては保険外負担増加となり、高度な医療保険では受けることができないようになるのではないかという心配があります。どこで、何を基準に歯どめをかけるつもりですか。また、保険で受けられる医療サービス医療機関によって異なるという事態も、国民保険下においては問題をはらんでいるのではないかと思います。保険給付対象範囲はできる限り迅速に拡大すべきでありますが、今後の見通し見解を明らかにしていただきたいと存じます。  次に、医療費適正化と今後の対策についてお尋ねをいたします。  近年、人口高齢化生活環境社会環境等変化によって疾病構造が大きく変わってまいりました。すなわち、感染性疾患から高血圧、心臓病など循環器系中心とする成人病、さらに精神障害、心の病などが増加しているのであります。疾病構造変化は、これまでの治療中心とする医療から、予防からリハビリまで含めた広い範囲の総合的な医療が必要となっておるのであります。しかし残念ながら、我が国医療はこうした変化に対応できる体制にはなっていないのであります。  第一にお尋ねしますが、公衆衛生健康指導など予防事業を担当する保健所市町村健康保険センターなどの機能を充実強化する考えはありませんか。かつて結核の撲滅に果たした保健所の活動を再現する必要があると思いますが、いかがですか。  第二に、日常地域の住民と密着した中で患者との信頼関係に結ばれ、健康の指導や助言によって健康管理疾病予防に生かすことのできるホームドクター制度確立や、地域病院高次機能病院との有機的な連携によって医療機器共同利用を図るなど、医療供給体制に抜本的な改革が必要だと思いますが、どうですか。過剰な投資が検査づけ、薬づけなどの過剰診療の悪循環になっている現状になぜ目をつぶるのですか、対策をお聞きしたいと存じます。  第三に、医師養成医学教育についても、単に病気を診るのではなく、病人、患者立場に立って治療の実践的な医療のための教育がもっと重視されるべきではありませんか。安易に検査機械薬剤に依存するのではなく、患者との対話問診によって的確な診断を行う相談指導に当たる医師こそが求められていると思いますが、これからの医学教育のあり方について、総理並びに厚生大臣見解を承りたいと存じます。  第四に、今日の診療報酬支払い制度過剰診療のむだをつくり出す要因になっています。この際、思い切って請負制などの採用を検討する必要があるのではないかと思いますが、お考えを承りたいと存じます。  以上申し上げました事項は、これまで各方面からたびたび指摘されてきた問題点でございます。しかし政府は、医療費膨張の裏側にある医療供給体制の抜本的な改革は故意にサボってきたのではありませんか。製薬メーカー医療機器メーカー等私的資本の手に薬剤検査機器などの供給を全面的にゆだねてきたことが需給面の矛盾を噴き出し、医療荒廃要因になっているのではありませんか。医療費がなぜふえ続けてきたのか、その根源も明らかにしないまま医療改革をサボってきた政府責任は棚に上げて、緊縮財政による国庫負担削減の犠牲を一方的に患者国民に押しつけようとする今回の改正案は、絶対に国民納得は得られるものではありません。(拍手)  最後に、総理に申し上げます。  総理、私たち中曽根内閣国会運営に大きな疑念と不満を持っています。今回の改正は、国民の命と健康、暮らしに重大な影響をもたらす健康保険制度根幹にかかわる問題であります。それだけに、本来ならば二、三年もかけて国民的な討議を積み上げ、ある程度の国民的コンセンサスが得られた上で法案にしなければならない性格のものであります。このことは、社会保障制度審議会の答申でも、短期日審議結論を見出すことが著しく困難であったと指摘され、社会保険審議会でも、予算編成後の極めて限られた審議期間でしか審議ができなかったと、極めて強い不満が表明されているのであります。これと全く同一の手法でばたばたと国会提出をし、しかもこの後には、年金制度改正案児童扶養手当改正案などが控えているのであります。本案の審議に十分な時間を割くわけにはいかない状況を意図的につくっているのではありませんか。このような国民無視国会軽視の姿勢こそ、総理の非民主主義的な体質を象徴するものであると言わなければなりません。  本改正案の撤回を強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  7. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 村山議員お答えをいたします。  まず第一は、今回の健康保険制度改正選挙中の公約と違うではないかという御質問でございます。  この医療保険改革案は、厚生省原案に対する国民意見をよく聞き、幅広い観点から再検討し、再調整して提出したものなのでございます。例えば、初めの原案におきましては、本人二割負担ということでございましたが、今回は初めの二年一割負担というふうに改革を加えた。あるいはビタミン剤給付とか本人に対する食事費等につきましても、除外するという考え原案にございましたが、それらも取りやめました。これらは、いずれも国民皆様方の声をよくお聞きして、そのような手直しを行ったものでございます。  次に、国民医療保険制度が崩壊するということでこれを改正するというのはいかぬという御質問でございますが、今回の改革案は、高齢化社会に備え、中長期観点に立ちまして、医療費規模を適正な水準にとどめること、それから給付負担の公平を図るということ、これを中心考えたものなのでございます。そして五十八年度の医療費の低い伸びは、老人保健制度を実施した、薬価基準改正を行った、これらの施策によって行われたものでございます。五十九年度の医療費伸びが低く見込まれておりますのも、今回の改革を織り込んだことによるのでございます。中長期観点に立って医療費規模適正水準とするためには、やはり今回の改革はどうしても必要であると考えておる次第であります。  次に、将来計画を示すべきではないかという御質問でございますが、中長期のビジョンにつきましては、現在厚生省におきまして、医療保険制度改革あるいは医療供給体制の整備、健康づくり対策推進等を含めて幅広い観点から検討を進めておるところであり、まとまり次第お示しいたしたいと考えております。  次に、六十年度以降もマイナスシーリングを行うのか、これが社会福祉を圧迫しないかという御質問でございますが、今後の予算編成に当たりましても、「増税なき財政再建」を堅持していくという方針のもとに厳しい概算要求枠を設定して、あらゆる分野に聖域を設けることなく、歳出の徹底した節減合理化規模抑制を図ってまいらなければならないと思います。  次に、このような改革を行うについては、国民コンセンサスを十分に得た上で行うべきであるという御質問でございます。  それはまさに御指摘のとおりであると思いますが、しかし今回の改革は、政府といたしましても、社会保障関係の各審議会の御意見も踏まえ、また国民の各方面の御意見も伺って慎重に検討したものであり、最善の案であると考えておりますので、これを撤回することは考えておりません。  次に、医師養成等につきまして、対話問診等相談指導を行うような医師をつくるべきではないかという御質問でございますが、患者立場をよく理解する心の優しい医師を育てることは大事であると思っております。特に、がんやあるいは内臓疾患等につきましては、非常に精神的な要素が大事であると思っております。単に数字とか写真、これも大事なデータではございますが、数字写真等に頼るのみでなく、患者精神性というものもよくわきまえた、またプライマリーケアを担うにふさわしいような医師養成に今後とも努力してまいりたいと思っております。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣渡部恒三登壇
  8. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) お答えいたします。  本人一部負担導入については、かかった医療費がすぐわかるというだけではなくて、給付率統一の第一段階となるものであること、健康者とそうでない者との負担公平化を図ること、健康保持疾病予防自己責任の自覚を促すことなどの点から、その導入は必要であります。また、他の改革効果とあわせて、保険料水準現行水準を維持したまま退職者医療制度を創設することができるのであります。定率負担導入により負担が高額となる重症などの場合には、高額療養費支給制度により患者負担一定限度内にとどめることとしており、御心配の低所得者負担に格段の配慮をいたしております。また、低所得者などの受診抑制されるのではないかとの御心配でございますが、国保受診率を見ても、低所得者層ほど受診率が低いというような実態にないことから、御指摘の点は当たらないと考えております。なお、領収書明細書発行については今後ともその発行を促進していく方針であります。  高額療養費の問題につきましては、委員会における御審議を見守り、その結論に従って処置する考えであり、また、社会保険審議会の御意見も聞いて十分検討することとしております。なお、御指摘高額療養費の仕組みの改善につきましては、事務処理上困難な問題もあり、慎重に検討したいと存じます。  次に、五人未満事業所等についての社会保険適用を行うことはいろいろと難しい問題がありますが、今回の制度改正についての社会保険審議会社会保障制度審議会の御意見を踏まえ、この際、法人事業所について六十一年四月から段階的にその適用を行うこととしたものであります。なお、個人の事業所については、法人適用が円滑に行われた後の将来の検討課題として引き続き研究することとしております。  退職者医療制度につきましては、この制度社会的連帯と世代間の負担の公平を基礎とした被用者保険に属する制度でありますので、その医療費は、退職者保険料並びに現役被用者及び事業主からの拠出金によって賄われることが適当でございます。また、被用者保険総体として見れば、退職者医療費を賄うに足る負担能力を有しておるので、国庫負担の必要はないものと判断いたしました。また、制度の実施に当たる国保運営については、被用者保険が関与できる道を開くとともに、医療費適正化対策の強力な推進を促すなどにより拠出額が必要以上に膨張することのないように配慮しておりますので、御理解を願いたいと存じます。  国保国庫補助制度につきましては、退職者医療制度の創設により市町村国保財政負担改善されること等を考慮し、改正を行うものであります。今回の改正によっても市町村財政に直接の影響が生ずるものではなく、また国保税の負担水準も、全体として従来見込まれる水準以上に上昇するものとは考えておりません。なお、今後とも医療費適正化推進するとともに、制度間の負担の公平に十分配慮し、適正な負担水準となるよう努力してまいりたいと存じます。  国保税の地域格差の問題につきましては、国保制度市町村を単位として運営されているため、市町村間に医療費の高低が生じ、保険料負担にも違いが生ずることは避けがたいものであります。この格差を縮小するためにも、医療の需給両面にわたる総合的な医療費適正化対策を強力に推進するとともに、財政調整機能を拡大してまいります。  療養費制度改正については、保険給付対象範囲保険診療と新しい医療技術等との調整を図ろうとするものであり、保険給付として必要かつ適切な医療については従来どおり保険導入する方針でございますから、御安心ください。  保健所市町村保健センターの機能の充実についてでありますが、疾病予防のための保健事業は一層強化充実を図ることが必要と考えており、このため、老人保健事業の基盤整備の中で保健所機能強化及び市町村保健センターの整備を図っているところであります。  医療供給体制改革の問題につきましては、御指摘ホームドクター制度確立医療機関相互の機能連携の強化、医療機器共同利用推進等を含め、医療供給体制改革に真剣に取り組むことが必要と考えており、その第一歩として、地域医療計画の策定を中心とする医療法の改正案を今国会提出することとしております。  医師養成医学教育の問題につきましては、御指摘のとおり、患者の悩みを聞き、患者との対話を重視し、的確な診断を下せる医師養成は極めて重要であります。このため、医師の臨床研修においてプライマリーケアを担う医師養成に重点を置くとともに、地域医療を担う医師の生涯教育を行うための地域医療研修センターを整備しております。今後ともプライマリーケアを担う医師養成について努力してまいる所存であります。  診療報酬支払い制度についてでありますが、現行の出来高払い方式は、医学の進歩に対応した医療が取り入れやすいなど医師患者の双方にとっての大きな長所があり、これを基本的に変更することは適当でございません。他方、請負制については、粗診粗療を招きやすいなどの欠点もあり、直ちにこれを採用することは問題があると考えております。したがって、今後とも現行方式の長所は生かしつつ、その短所を補完することとし、診療報酬合理化等を強力に推進していく方針であります。  政府としては、医療保険の健全な運営を図るため、従来から診療報酬の合理化、薬価基準適正化など各般にわたる改革を進めてきたところでありますが、今回の改革案は、二十一世紀に備え、中長期観点に立って医療保険制度の基盤を揺るぎないものとするためのものであります。国民国庫負担削減の犠牲を押しつけるものではなく、長い目で見ていただければ、国民負担を軽くし国民の福祉に必ずつながるものと御理解をちょうだいいたしたいと存じます。(拍手)     〔国務大臣竹下登君登壇
  9. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) お答えをいたします。  確かに昭和三十六年から三十年代におきましては五〇%増の範囲内、こういう概算要求枠であります。その後、五十五年が一〇%増の枠内、五十六年度が七・五%増、五十七年がいわゆるゼロ、五十八年度がマイナス五%、五十九年度が経常部門マイナス一〇%、投資部門マイナス五%、こういうシーリングを設定して今日に至っておるわけであります。  何としても我が国財政状況には異例に厳しいものがございます。財政改革推進してその対応力の回復を図ることが我が国の将来の安定と発展のため喫緊の政策課題であることは言うをまたないところであります。したがいまして、今後の予算編成の具体的方法については、現在のところ確たるものを念頭に置いておるわけではございませんが、今後の予算編成に当たっても厳しい概算要求枠を設定して、あらゆる分野に聖域を設けることなく、歳出の節減合理化規模抑制を図ってまいる、このような考え方であります。(拍手)     〔国務大臣田川誠一君登壇
  10. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 国庫補助負担の問題につきましてお答えをいたします。  今度の改正によりまして市町村国保財政負担が軽減されることを勘案して国庫補助負担制度見直しがなされたものでありまして、全体として国保加入者保険料負担水準は、従来見込まれております水準以上に上がってくることはないと理解をしております。なお、今回の制度改正国保財政に与える影響は個々の市町村によりまして違うものと見込まれますので、各市町村におきます健全な国保財政運営を確保できますように、財政調整交付金の配分におきまして所要の措置を講ずる方針と承知しております。  それから、国民健康保険税の負担の問題についてお答えをいたしますが、国民健康保険税の負担につきましては、近来、若干格差が縮小をしておりますが、市町村によってかなり差があることは村山さん御指摘のとおりでございます。このような格差は、地域間に相当な医療費格差があることに原因することが大きいと考えられます。こうした負担のあり方につきましては、老人保健法の創設や退職者医療制度創設等を初めとする社会保障制度全体の体系的整備の中で解決を図っていくものと考えております。  以上でございます。(拍手
  11. 福永健司

    議長福永健司君) 沼川洋一君。     〔沼川洋一君登壇
  12. 沼川洋一

    ○沼川洋一君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に若干の質問を行います。  今日、高齢化社会が急速に進展する反面、経済の低成長と厳しい財政難という情勢の中で、今多くの国民我が国社会保障政策の将来に大きな不安を抱き始めております。その原因は、国民の間に老後の生活設計に大きな不安が出てきているのにもかかわらず、政府が確固たるビジョンを示さないまま、自助努力の名のもとに財政再建のしわ寄せを弱い者に押しつけていることにあります。高齢化社会への移行は、必然的に負担給付のバランスが重要となってくることは確かでありましょう。しかし、ならばこそ、その制度改革国民の合意を得る一方、財源の捻出に政府みずからが血のにじむような努力を行わなければならないのであります。  しかるに、今回の政府改正案は、高齢化社会対応のための改革というより、マイナスシーリングという予算編成の中で割り当てられた六千二百億円をどこにしわ寄せ消化するかという、歳出削減に追い詰められた印象が強く、取りやすいところから取るという患者負担の増大と国庫削減がその目的であることは、だれが見ても明らかであります。(拍手)我が党は国の財政再建に反対するものではありませんが、健康保険制度という国民の健康と命にかかわる問題であるだけに、財政的見地からだけの改革を急ぐことは、真に必要な医療改革を妨げるものと言わねばなりません。     〔議長退席、副議長着席〕  国民医療費が十四兆円を大きく超えてしまった今日、医療改革は今や国民課題であります。したがって、この改革に当たって、政府は、我が国人口構造の質的変化疾病構造変化、さらには、これからの本格的な高齢化社会に備えるため、中長期の展望に立っての健康づくり活動の展開や病気を起こさない予防治療の総合的な保健医療のあり方を含め、幅広く今この時期に確立する必要があります。また同時に、医療保険制度格差を改め、給付面で、本人家族を含め国民ひとしく平準化への具体的方向を明らかにすることであります。したがって、医療保険制度の基盤を揺るぎないものにするとの政府改正趣旨は口先だけで説得力に欠け、国民の理解を得るのには極めて困難であると言わねばなりません。そこで、改革に当たっては将来計画を明確に示すことが必要であると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。  次に指摘したいことは、提案の仕方がいかにも強引で、しかも短時間で処理しようという傾向が目立つことであります。  厚生大臣の諮問機関である社会保険審議会では、意見が対立して一本化されず両論併記で答申が出され、また総理の諮問機関である社会保障制度審議会では、一本化答申という慣例に従ってはいるものの諮問案を全面的に支持したものでは決してありません。しかも注目すべきことは、この二つの審議会が、今回の改正案財政収支のみにこだわった感があり、医療保険本来の趣旨に照らして検討が不十分と批判、また、改革は慎重でなければならないと注文をしていることであります。それでも大筋で理解されたとして提案をされたことはまことに遺憾であります。総理、あなたは検討不十分というこの審議会指摘をどのように受けとめておられるのか、お聞かせください。  また当面の課題として、医療制度の内部には薬づけ、検査づけなどの緊急に解決を要する問題が山積しております。物事には順序があります。このような前提的諸条件を未整備のまま、予算編成を急ぐ余り国民意見を聞くことなく拙速することは慎むべきであり、将来に禍根を残さないためにも今回の改正案は再検討すべきであると思いますが、総理の御見解を承りたいのであります。(拍手)  次に、渡部厚生大臣お尋ねをいたします。  先日、本院の予算分科会で、あなたは、制度間の格差是正や負担給付公平化を図るために中長期計画国民の前に提示すると答弁されておりますが、その時期はいつごろになる見通しか、また計画には制度統合も含まれるのかどうか、本法案の審議に先立ち将来計画を明確にしていただきたいのであります。  第二には、被用者保険本人負担分の導入についてでありますが、本人負担分の導入のねらいは医療費抑制にあり、厚生省は今後とも医療費国民所得伸びよりも高いペースで増加することを前提としているようでありますが、先般発表された五十九年度の国民医療費は、推定では十四兆八千八百億円、対前年度の伸び率は二・五%にとどまる見通してあります。政府が主張する本人負担分の導入に伴う医療費抑制分は一%程度で、仮にその導入が見送られても全体の伸び率は三・五%にとどまることが明らかとなっております。五十九年度の国民所得伸び率は推計で六・四%であり、このことは国民所得伸び率以内に抑えたいとする政府の目標を十分満たすものであり、あえて国民に不安と混乱をもたらすこのような本人負担導入を急ぐ必要はないと考えますが、御見解をお聞かせください。(拍手)  また、本人負担分の導入のもう一つの理由として、医療費の明確化すなわちコスト意識を持たせるとの説明がなされておりますが、現在各保険団体が行っている医療費通知運動が十分その成果を上げていることを認識すべきであります。医療費通知制度は、その目的は、医療費の不正不当請求からの自衛だけではなく、患者である被保険者一人一人に健康保険制度の中で自分の健康が一体幾らで維持されているか、医療はただでないというコスト意識の向上に大きな役割を果たしているのであります。したがって、医療費の明確化のため本人負担導入をする必要は全くなく、現在の通知運動をさらに充実させるとともに、医療機関に対しては医療領収書発行の義務づけを行うなどの対策にカを入れるべきであると考えますが、厚生大臣の御所見をお伺いいたします。  第三に、医療適正化対策についてであります。  医療に対する国民の信頼の確保と医療費負担の軽減をするためには、保険制度の適正な運用医療費のむだや不正を排除することが何よりも先決でなければならないと思うものであります。そのためには、まず、国民の大きな不信を招いている医療の一部に見られる乱診乱療、不正不当請求の根絶を図ることであります。今日の危機的な医療費の膨張に少なからず影響があると考えられる医療費不正請求事件、時には司直の手を煩わし新聞紙上をにぎわわすこの種の事件が後を絶たないことは、いかに根が深いか。このことは国民にとって大変不幸なことであります。  そこで、厚生大臣お尋ねをいたします。  まず、不正事件が起こるたびに、常に国税庁、警察庁による摘発が先行し、厚生省は監督、監視する立場にありながら常に後追いの状況であります。しかも、いつも厚生省の監査結果を上回る不正額が出るということは、どこに問題があるのか伺いたいのであります。  さらに、監査権限についてでありますが、監査は保険法に基づく行政権限でありますが、常に当該都道府県の医療団体の立ち会いが必要であり、思いどおりにできないのが現状であります。少なくとも不正に対する監査は行政当局が医療団体への簡単な通告程度で着手できるような体制に改める必要があると考えますが、厚生大臣の所見を伺いたいと存じます。  次に、この問題に関連し、医学教育のあり方について文部大臣にお尋ねをいたします。  医師として品性が疑われるこのような不正請求が続発するのは、もとをただせば倫理観に欠けるところに問題があります。近く医師過剰時代が予想されています。毎年八千四百人の医学生が入学し、約八千人が卒業している状況は、ここ十年間で医学生が二・二倍の増加となり、急激なこのような変化は世界にその比を見ないと言われております。医療技術の修得はもちろん、人間としての人格、品性の向上、さらに医の倫理に関する問題等、このような根本的な面での医学部教育のあり方を一考すべき時期に来ているのではないかと考えますが、文部大臣の御見解をお示しいただきたいと存じます。  第四に、診療報酬支払い方式についてお尋ねをいたします。  現在の出来高払い方式が、必要な医療を確保するとともに医学、薬学の進歩に大きな利点となってきたことは率直に認めるものでありますが、反面、薬づけ、検査づけ医療のはんらんを招いてきたこともまた事実であります。現行保険制度では、医師立場からすれば、形のない技術料に相当するものは比較的低く抑えられているため、勢い薬中心医療にならざるを得ない傾向があります。そこで、従来から指摘されてきた抜本的対策として、物と技術の分離を図り、医療機関が薬価差益に依存することなく技術本位で経営が成り立つ技術料中心診療報酬制度確立とあわせて、医薬分業を大原則とした医療制度改革に本気で取り組むべき時期が来ていると考えておりますが、厚生大臣の御見解を求めるものであります。  第五に、退職者医療制度についてでありますが、この制度の創設については、我が党もかねてから早期実現を要求してきた経緯もあり、異論のないところであります。厚生省のねらいが国民健康保険に対する国庫補助削減にあり、退職者医療に名をかりた苦肉の制度財政調整であるところに問題があります。  もともと退職者医療国保国庫負担削減とは次元を異にする問題であり、国保財政問題は、国保自身の運営の合理化、効率化国庫補助の配分の見直し等によって解決すべき問題であります。また退職者医療制度として新しく公的制度を発足させるに当たっては、誘導措置として国庫補助を行い、国も責任の一端を担うのが当然であると考えますが、国庫補助をしない理由について厚生大臣の答弁を求めるものであります。  第六に、療養費支給改正についてお尋ねをいたします。  現在、保険対象外の先端医療技術治療を受けた場合に、対象医療だとして保険適用されないことになっております。改正案では、これを分け、保険医療の範囲の分は保険適用するとしておることは一歩前進でありますが、高度医療を受ける際患者負担が少しでも軽くなる特徴はあるものの、しかし、法律がこのように一つ治療に関して保険内と保険外部分に線引きし始めることは、これまで認めてこなかった差額ベッドのようなものにも根拠を与えることになるという心配が出てくるわけであります。差額ベッドを認めず、全部保険内で行えとしてきた厚生省指導が果たして揺るぎないものかどうか、十分な歯どめが必要であると考えますが、御見解をお聞かせください。また、貧富の差で受ける内容に差が出てくるおそれがあります。さらに、特別サービスの差額負担制度も、患者の自由意思が通りにくい現状では医療機関の利益追求の手段にされかねない心配もあるわけでございますが、厚生大臣の御見解をお伺いいたします。  以上、数点にわたりまして若干の質問をいたしましたが、総理並びに関係大臣の真摯な御答弁を期待いたしまして、私の代表質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  13. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 沼川議員にお答えを申し上げます。  まず、医療保険改革に当たって、将来計画の明示が必要であると思うがいかんという御質問でございます。  中長期ビジョンにつきましては、先ほど申し上げましたように、現在厚生省におきまして、医療保険制度改革医療供給体制の整備、健康づくり対策推進などを含めて幅広い観点から検討を進めておりまして、まとまり次第お示しいたしたいと思っております。  次に、社会保険審議会等の答申では検討不十分というような指摘がなされておるがいかんという御質問でございます。  今回の改正案は、昭和四十年代以来の医療保険の抜本改正に関する論議を踏まえ、今後の高齢化社会に対処するため所要改正を行おうとしておるものでございます。政府としましては、各方面の御意見を踏まえつつ慎重に検討したものでございます。中には意見が対立している答申もございましたが、政府といたしましては、原則として公益側の意見を尊重し検討して行わざるを得なかった点もございまして、この点は御了承いただきたいと思うのでございます。  次に、薬価基準等の解決すべき前提条件が未整備のまま改革を急ぐことは慎むべきであるという御質問でございますが、御指摘薬価基準適正化診療報酬合理化等の問題につきましては、従来から積極的に取り組んできているところでございまして、今後とも、医療供給体制の効率的整備などを含め、その推進を図ってまいります。今回の改革案は、各方面意見を参酌して慎重に検討してまとめたものでございまして、政府としては最善の案と考えておる次第でございます。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣渡部恒三登壇
  14. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 医療の将来ビジョンについては、今総理から御答弁がございましたので、できるだけ早くお示ししたいと思います。  なお、制度の統合については、各制度の沿革、現実に果たしている役割等を勘案しますと、直ちに統合一本化を行うことには困難な問題も多く、制度間の財政調整等により給付負担公平化を図ることが先決であると考えております。  被用者保険本人の一部負担導入は今回の制度改革の重要な柱であり、将来できるだけ早い時期に全国民給付率を八割程度に統一するという方針のもとで、その第一段階として実施するものであるとともに、かかった医療費がすぐにわかることから、コスト意識を喚起し医療費効率化につながること、健康者とそうでない者との負担公平化を図ること、健康保持疾病予防に対する自己責任の自覚を促すことなど重要な意味を持ち、単に単年度の医療費伸び抑制するためだけのものではないということを御理解いただきたいと思います。  医療費の通知につきましては、コスト意識の涵養に一定の役割を果たしていることは御指摘のとおりでありますが、すべての診療について医療費を通知することは極めて困難であります。診療を受けた時期と通知を受ける時期との間に時期的なずれがあることなどから、定率一部負担のような強いコスト意識の喚起はできません。また、定額負担のままでは、領収書発行してもかかった医療費全体がわからないので、定率負担のような効果は期待できません。したがって、これらの面からも定率負担導入が必要なのでございます。  診療報酬不正請求につきましては、従来より指導監査体制の充実強化を図り、年次計画のもとに指導監査を実施しておるところであり、また必要に応じ関係省庁との連絡に努めてまいっております。今後とも、より一層関係省庁と連携を密にし、不正については厳正に対処する方針であります。  指導監査の際の立ち会いの問題については、現行制度のもとで適正な指導監査を実施しており、特段の支障が生じているとは考えておりませんが、今後とも厳正な指導監査の確保に十分配意をしてまいります。  技術料を重視した診療報酬体系の確立につきましては、これまで材料と技術料の分離、無形の技術料の評価などを行ってきたところであり、今後ともその基本的方向に沿って努力してまいる所存であります。医療分業については、その推進を図るため関係者の理解と合意を得るよう努力を続けるほか、調剤センターの整備を進めるなどその基礎づくりをさらに進めてまいる所存であります。  退職者医療制度につきましては、この制度社会的連帯と世代間の負担の公平を基礎とした被用者保険に属する制度でありますので、その医療費退職者保険料並びに現役被用者及び事業主からの拠出金によって賄われることが適当と判断しております。また被用者保険総体として見れば、退職者医療費を賄うに足る負担能力を有しておるので、国庫負担の必要はないものと考えております。  差額ベッド等の保険外負担につきましては、今後ともその適正化推進してまいる所存であります。今回の特定療養費調度の改正につきましては、患者医療ニーズの多様化に対応しようとするものであり、この改正により、差額ベッド等については新たに法律に基づく規制を加えるとともに、公示を義務づけるなどにより適切な運用を確保することとしております。なお、本制度運用に当たっては、その範囲内容等を中医協に諮問することにより適正を期してまいる所存であります。  療養費制度改正につきましては、保険給付として必要かつ適切な医療に関しては今後ともこれを確保してまいる方針でありますので、必要な医療が貧しいために受けられないというようなことはないと考えております。なお、差額等の徴収について著しく妥当性を欠く事例があれば、個別に厳しく対処してまいる所存でございます。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣森喜朗君登壇
  15. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 沼川さんにお答えを申し上げます。  医師の倫理観につきましては、先生の御指摘どおりでございます。大学の医学教育につきましては、医師として最小限の知識や技術の体得とともに、医学に関する豊かな思考力、創造力を涵養することはもとよりでございますが、同時に、すぐれた指導者のもとで厳しい訓練を通じまして、生命の尊厳、医の倫理に対する自覚、医師としての人格の陶冶に努めることが必要であると考えております。  各大学におきましても、このような考えに立ちまして、入学者の選抜、卒業前、卒業後の教育全般にわたりまして、例えば入試に面接、小論文を導入する、あるいは医学概論等医の倫理関連科目を導入する、少人数教育の重視、六年間一貫カリキュラム編成等の工夫、改善を行いまして、医師としての倫理観の確立に努めているところでございます。文部省といたしましても、このような各大学の努力を支援をいたしまして、引き続き医学教育改善に努力をしてまいりたいと存じます。(拍手)     —————————————
  16. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 小渕正義君。     〔小渕正義君登壇
  17. 小渕正義

    ○小渕正義君 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理大臣及び関係大臣に対し質問を行うものであります。  我が国憲法は、その第二十五条において、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を国民に保障し、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上、増進に対する国の責務を明確に定めております。我が民社党は、この憲法の規定に基づき、国民のニーズに対応した公正かつ高度な社会保障制度確立を強く要求してきました。  しかるに、自民党政権下における我が国社会保障は、制度的にはほぼ先進諸国並みに整ってきましたが、それぞれの制度が分立し、その間に著しい格差があるなど極めて不公正な制度となっています。それゆえ制度格差に対する国民のふんまんは一段と強まっており、給付負担の公正な制度確立することこそ、憲法で明記した国の重要な責務と考えます。  とりわけ、国民の生命に直結する医療保障の改革は急務であります。医療保障や医療保険制度の矛盾、保険関連施策の立ちおくれ、医療供給体制の未整備など問題が山積しており、国民の不安は極めて強いのが実情であります。今日問題となっている医療保険給付率においては、組合健保や国民健保等に著しい格差があります。こうした格差を放置することは極めて遺憾なことであります。  このような見地から、我が党は、予算委員会において、今日国民納得できる二十一世紀の医療保険制度のビジョンを示すことが医療保険改革に先行すべき国の当然の責務であるとの問題提起を行いましたが、これに対し、厚生省は八割給付程度で統合を目指す長期構想をまとめる方針を明らかにしました。こうした展望を示そうとする姿勢はそれなりに評価されますが、八割給付というのは現行の実質給付水準八〇・三%という現状を追認するだけであり、福祉の向上、増進を定めた憲法の責務と目標を完全に放棄するものであり、厚生行政の怠慢を固定化するだけのものであります。しかも、まず国民のニーズにこたえた医療保険改革の中期展望とその具体的プログラムを示すことが先決であるにもかかわらず、単なる財政上のつじつま合わせのために、国民合意のないまま一方的に本人給付率削減しようとする政府の姿勢はまさに本末転倒の発想であり、かかる提案は断じて容認できません。(拍手)  私は、この見地から、まず今回の本人給付率削減を撤回し、改めて医療保険の抜本改正に関する中期ビジョンとその具体的プログラムを国民に提示し、いま一度再検討すべきであると考えますが、総理の御所見を求めるものであります。(拍手)  また、国庫負担導入を見送った退職者医療制度の創設は、単に財政を各種保険制度拠出金のみに依存し、国の責任を棚上げしたものであり、我が党が提起した制度とは似て非なるものであります。かつてみずからが所属していた健康保険の後輩の人たち給付カットによって支えられる退職者医療では、これらの被保険者となるべき退職者自身の心情に思いをいたすとき、これは到底受け入れられるものではありません。退職者医療制度に対する国の責任を明確にするためにも、他の医療保険とのバランスを考慮し、国庫負担導入を図るべきでありますが、総理並びに厚生大臣見解を伺うものであります。  私は、今回の健保改正の動向を見ますとき、まことに不可解なことがあります。昨年の厚生省の概算要求では、本人給付率二割削減高額療養費自己負担額の引き上げ、入院時給食費負担導入ビタミン剤等の保険適用の除外、高額所得者保険負担の除外等々を行うことになっていたのは天下周知のとおりであります。  しかるに、本国会提出された政府案は、本人給付率一割、高額療養費の引き上げにとどまっておるにもかかわらず、概算要求と同じ国庫負担の減額ができるとしておりますが、どうしてこのような算数が成り立つのか。このような財政試算をもとに長期的な保険財政を云々されても、国民は信ずる気にはなれないのであります。厚生大臣はこのようなあり方についてどのように御説明なさるおつもりか、御答弁を求めるものであります。  私は、今回の健保財政の問題の始まりはマイナス一〇%シーリングであったと考えます。そこで、六十年度予算編成のシーリング設定についてはどのようにするのか、総理並びに大蔵大臣見解を求めるものであります。  また、さきに示されたビタミン剤等の保険適用除外、入院時の給食費、材料費の一部負担導入等の国民負担増大につながる問題は一時的に棚上げしたものかどうか、それとも完全に放棄してしまったのか、シーリングの目標の設定いかんによっては再登場する可能性があるのかどうか、厚生大臣の明確な答弁を望むものであります。  また、従来の一律シーリングは人口高齢化等による当然増経費の大きい社会保障予算の厳しい圧縮に通じ、なし崩し的福祉の後退を余儀なくさせるものであります。こうした事態を避けるため、新たに会計制度社会保障勘定を設け、シーリングの対象外にするとの提言がなされていますが、この提言に対し、総理大臣及び大蔵大臣の的確なる所見を求めるものであります。  国民の健康を守る医療保険制度の基本は、まず早期発見、早期治療、そうして速やかなる社会復帰が図られるよう、予防からリハビリテーションに至る総合的な保健医療対策を講ずることが不可欠と考えます。総理も施政方針演説においてその重要性を力説されておりますが、今後具体的にどのように実行に移される方針か、お伺いをいたします。  さらに、医療はまず何よりも医師患者との強固な信頼関係の上に成り立つものでありますが、今日の医療を取り巻く環境は両者の距離がますます離れつつあることは憂慮にたえません。したがって、医の倫理の高揚こそは緊急の課題であります。  私は、こうした立場から、医学教育のあり方にも大きな問題があることを指摘しなければなりません。医の倫理と哲学、医療保険制度の各法、保険教育などを重視するカリキュラムに改め、すぐれた医療技術とともに秀でた人格を有する医者を養成すべきでありますが、この点について、文部大臣はその必要性についてはどのような見解をお持ちか、お尋ねいたします。  次に、保険外負担についてであります。  我が国医療保険の最大の欠陥は、差額ベッド料や付添看護料といった保険外負担が家計を大きく圧迫していることであります。厚生省はこの保険外負担の解消を何回となく約束したにもかかわらず、いまだ差額ベッドの占める割合は全国の病床総数の一一・六%を占めています。特に私大附属病院では差額ベッドは四七・二%を示し、遅々として改善されておりません。こうした現状は一刻も早く解消さるべきでありますが、文部大臣はこうした現状をどう受けとめておられるのか、いつになったら改善されようとなさるのか。また、厚生省も文部省に強い働きかけが必要だと思いますが、両大臣の決意のほどをお尋ねいたします。  一方、付添看護料については、その実態が極めて不透明であると言われています。厚生省は実態調査を行ったことがあるのかどうか、今後調査をする方針があるのかどうか、厚生大臣見解を伺うものであります。  次に、高額療養費負担についてであります。  高額療養費自己負担額は現在五万一千円であり、低所得者は政管一万五千円、国保三万九千円となっています。政府案は、五万一千円を五万四千円に引き上げるにとどまらず、低所得者については入院三万円、外来三万九千円に引き上げようとしています。私は、まず、これらの引き上げを撤回する野党修正の要求に謙虚に耳を傾けるべきだと思いますが、厚生大臣は撤回する意思はないのかどうか、具体的な答弁を求めるものであります。  同時に、現行制度は、同一医療機関ごとになっていること、受診者ごとになっていること、同一月ごとになっていること等多くの問題点があります。このため、A病院で四万円、B歯科で二万円、計六万円の自己負担をしても高額の対象にはならないし、同一月に家族二人がおのおの四万円、計八万円の負担対象とならないなどの矛盾が指摘されています。家族が同時に病気になるケースも多くある現状にかんがみ、私は世帯単価を対象とした高額療養費制度改善すべきであると考えますが、制度改革に対する厚生大臣方針をただしたいと思います。  最後に、我が国は先進諸国に例を見ないスピードで高齢化社会に突入しており、人口高齢化は、経済、社会はもとより、医療、年金など社会保障制度のあり方に大きな影響をもたらしています。しかし、政府がさきに決めた「一九八〇年代経済社会の展望と指針」では、政府の目指すべき福祉像や福祉全体の展望を持たないがゆえに、それを裏づける国民負担も明確ではありません。一体、社会保障負担の対国民所得比は、現在の一〇・一%から昭和六十五年度には何%になるのか、またその内訳はどうなのか、明らかにしていただきたいと思うのであります。  最後に、本改正案は、我が国の健保制度昭和二年、未成熟ながらも社会保険制度の第一歩としてスタートした歴史的背景を考えるとき、本人自己負担制度導入制度根幹を揺るがすものであり、断じて容認できるものではありません。政府が速やかに撤回されることを強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  18. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 小渕議員にお答えをいたします。  まず、本人給付率削減を撤回して、さらに中期ビジョンとその具体的プログラムを国民に提示すべきであるという御質問でございます。  本人給付率削減撤回は、前に申し上げるように、できません。今回の改正は、本格的な高齢化社会に備えて、医療保険制度の基盤を揺るぎないものにするための制度改革でございます。言いかえれば、世代間の公平をこれで実現していこう、さらに医療保険制度の基盤を揺るぎないものに長期的に安定しよう、こういう二つの大きな目的を持って実行しておるものであります。中長期ビジョンにつきましては、現在、厚生省におきまして、先ほど来申し上げておりますように、幅広い観点から検討を進め、できるだけ早くまとめてお示しいたしたいと考えております。  退職者医療制度については国庫負担導入を図るべきではないかという御質問でございますが、退職者医療制度は、社会的連帯と世代間の負担の公平を基礎とした被用者保険に属する制度として位置づけらるべきものであると考えております。したがって、退職者医療費は、退職者保険料、それから現役被用者及び事業主からの拠出金によって賄われることが適当と判断をいたしております。  次に、昭和六十年度予算編成のシーリング設定をどうするかという御質問でございますが、いずれにせよ財政は苦しい状況にございまして、あらゆる分野に聖域を設けることなく、歳出の徹底した節減合理化規模抑制を図るため、今後とも予算編成に当たっては厳しい概算要求枠を組まざるを得ないと思っております。  次に、新たなる会計制度によって社会保障勘定等を設けシーリングの対象外にするという提案に対して、いかに考えるかという御質問でございます。  この御提案は、今後の財政再建の具体的な進め方あるいは社会保障に対する負担のあり方についての検討を進めていく上で極めて示唆に富んだ御提言であると考えます。しかし、他方、社会保障関係費が聖域となり歳出の節減合理化努力が不十分なものとなるという危険性もなきにしもあらずであります。財政改革等を踏まえつつ、慎重に検討してまいりたいと思っております。  次に、早期発見等総合的な保健医療対策について具体的な実行方針を示せというお考えでございます。  我が国における本格的な高齢化社会の到来を控えまして、今、包括的な保健医療体制の整備を進めつつ、一つ一つ実行しております。昭和五十八年二月から老人保健制度を実行いたしました。これを中心に、成人病等を中心にする予防から治療機能訓練に至るまでの保健事業推進しつつあります。さらに、地域医療計画の策定を中心とした医療改正法案を今国会提出する予定でございまして、これら等もあわせて、今後とも総合的な保健医療対策推進に努める所存でございます。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣渡部恒三登壇
  19. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 最初の退職者医療制度については、ただいま総理から答弁がありましたので、次に移らせていただきます。  概算要求と予算案における国庫負担の減額の問題について。予算編成前の与党の四役裁定によって、入院時給食材料及び一部薬剤給付除外、高額所得者適用除外については見送ることとされるとともに、被用者給付率についても、昭和六十年度までは九割とされたところでございます。他方、予算案においては、概算要求後にまとまった薬価調査に基づく薬価改定効果や、本人給付率引き下げに伴う波及効果等を新たに見込んだため、結果的に概算要求とほぼ同じ国庫負担の減額となったものであります。概算要求の段階で提案した給食材料費及びビタミン剤等の給付除外につきましては、今後とも国民の理解と納得が得られない限り実施する考えはありません。  私立医科大学における差額ベッドにつきましては、文部省とも協力して改善を進めてきたところでありますが、今後とも十分連絡協議し、適切な運用を確保してまいる所存であります。  付添看護の問題につきましては、基準看護承認病院においては従来よりこれを厳正に禁止してきており、また基準看護以外の病院については、付添看護料金の実態について実情を聴取し、支給額の改正を行ってきたところであります。今後とも実態を十分把握し、適切な対応を図ってまいります。  高額療養費の問題につきましては、委員会における御審議を見守り、その結論に従って措置する考えであり、また、社会保険審議会の御意見も聞いて十分検討することとしております。なお、御指摘高額療養費の仕組みの改善については、事務処理上の困難な問題もあり、慎重に検討いたしたいと考えております。  社会保障負担についての御質問でありますが、昭和六十五年度の社会保障負担率について計数的に厳密にお示しすることは不確定な要素が多く困難であります。ただし、昭和六十五年度に社会保障負担がどのようになるかを大ざっぱに申し上げますと、医療部門等はほぼ現状程度に推移すると見込まれるものの、年金部門は、受給者数の増加等に対応するため、ある程度の保険料率の引き上げが必要となります。  今回の改正案は、来るべき二十一世紀に備え、中長期的な観点から医療保険制度の揺るぎない基盤づくりを行うためのものであり、被用者本人の一部負担導入は今回の改革の重要な柱であり、できるだけ早い時期に全国民給付率統一するという方針で、その第一段階として実施するものであり、かかった医療費がすぐにわかることから医療費効率化につながること、健康者とそうでない者との負担公平化を図ること、健康保持疾病予防に関する自己責任の自覚を促すことなど極めて重要な意味を持つものでありますので、御理解を願います。(拍手)     〔国務大臣竹下登君登壇
  20. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) お答えいたします。  まず、シーリングの問題でありますが、昭和三十年代後半、これが五〇%増の範囲内、こういうことで概算要求枠が設定されまして、それが三〇、二五、一五と逐次下がってまいりました。五十五年度予算は一〇%増、五十六年度予算は七・五%増、五十七年度がゼロ、五十八年度マイナス五%、五十九年度が投資部門マイナス五%、経常部門マイナス一〇%、そういう経過を経て今日に至っておるわけであります。  したがって、今後の予算編成の具体的方法につきましては、現在のところ確たるものを念頭に置いているわけではございませんが、いずれにいたしましても各分野に聖域を設けることなく、歳出の徹底した節減合理化抑制を図るために、今後とも予算編成に当たっては厳しい概算要求枠を設定してまいる考え方であります。  次の、一律シーリングによる福祉後退を避けるための新たな会計制度に対する御提言についての所見を述べよ、こういうことでございます。  最近、社会保障勘定の分離に関しまして、財政関係の学者のお方から提言がなされております。すなわち、社会保障関係費を一般会計の他の経費から分離して社会保障勘定を設けること、それから社会保障勘定の財源として課税ベースの広い間接税、一般消費税あるいは付加価値税等を導入する、こういう提言でございますが、これは、社会保障関係費の増大とそれを賄うための公債増発が国債費の増加をもたらすという悪循環が現在の財政状況を招来した大きな要因であるとの分析に基づいての御提言でございます。したがって、今後とも老齢化の進展等によって社会保障関係費の増大は避けられないという認識の上に立たれたものでございます。今後の財政再建の具体的な進め方、社会保障に対する負担のあり方につきまして検討を進めていく上で示唆に富んだ提言であるというふうには受けとめております。  しかし一方、社会保障関係費が聖域となって歳出の節減合理化努力が不十分となるという傾向にならないか、そしてまた社会保障だけが別枠という説明納得が得られるかどうか、そういう幾つかの問題点がございます。したがいまして、財政当局といたしましては、こうした提言も含めながら各界の意見を承り、各種制度のあり方、受益と負担の関係等について検討を重ねながら財政改革推進に全力を尽くしてまいる、このような所存であります。  それから、いわゆる国民所得に対する社会保障負担等についての御質疑でございました。  先ほど厚生大臣からお答えがございましたが、医療費については、医療費伸び率を国民所得伸び率程度にとどめることが適当であると考えておりますので、その場合には保険料率もおおむね現在程度の水準にとどまる、こういうことが想定されます。  年金については、先ほどのお答えのごとく、制度の成熟に伴って保険料負担は増大していくもの、このように見込まれるというふうなお答えがございましたが、同じような認識をいたしておるところであります。  以上で、お答えを終わります。(拍手)     〔国務大臣森喜朗君登壇
  21. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答えを申し上げます。  大学の医学教育におきましては、医師といたしまして、先ほども沼川さんの御質問に対しましてお答えを申し上げましたように、必要最小限の知識や技術を体得をいたしますとともに、すぐれた指導者のもとで厳しい訓練を通じまして、人間の生命の尊厳、医の倫理に対する自覚を培うことを何よりも必要といたしております。医学部の教育課程におきましては、既にその基準の弾力化を図っておりまして、各大学におきましては、医学概論等の科目におきまして医師の倫理の育成、医療保険制度などの関連授業を行うなどいたしまして、工夫改善を行っているところでございます。  文部省といたしましても、各大学の努力を支援をいたしますとともに、その実現を容易にするために、医学教育をめぐる諸般の条件整備に努めてまいりたいと思っております。なお、入学選抜につきましても、人物面を重視するような制度ができないだろうか。文部省といたしましても、国大協あるいは私立医科大協など関係者に御検討いただくように期待をいたしておるところであります。  私立医科大病院の三人室以上におきます差額病床の問題についてでございますが、各大学の努力によりまして、かなりの解消が図られております。今回の健康保険法等改正案に関する取り扱いにつきましては文部省も承知をいたしておるところでございますが、今後どのように進めていくかにつきましては、私立医科大学協会とともに厚生省と協議してまいりたいと存じます。(拍手)     —————————————
  22. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 中林佳子君。     〔中林佳子君登壇
  23. 中林佳子

    ○中林佳子君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣質問いたします。  昨年二月に老人保健法が施行され、お年寄りが医者にかかれない、病院から退院を迫られるなど深刻な社会問題が引き起こされたのは、まだ記憶に生々しいところです。今回の健保改正案は、こうした医療内容引き下げ国民全体にまで広げようとするものであり、到底認めることができません。  総理、あなたが戦後政治の総決算の名のもとに、医療保険制度を初め年金、雇用保険児童扶養手当など、戦後国民が築き上げてきた社会保障制度を今全面改悪しようとしていることに、国民は大きな不安を抱いています。健康で文化的な最低限度の生活を営む権利と社会保障などの国の責務をうたっている憲法二十五条について、総理はどのような認識をお持ちなのですか。あなたが行おうとしている一連の制度改悪が、国の責任を放棄するものとお考えにならないのですか。まず総理見解を伺います。(拍手)  昨年八月、健康保険法改正厚生省案が発表されたとき、余りにひどい内容国民各層から強い反対の声が上がりました。そのため、総理、あなたも昨年の総選挙の際、みんなの納得のいくものに変えると遊説先で公約されました。ところが、今回提出された政府案は、健保本人十割給付の大原則を崩すなど厚生省案とほとんど変わらないものです。あなたの公約は、国民の憤激を恐れた選挙目当ての、その場限りのものであったのですか。今回の政府案はこの公約に違反するものではありませんか。あわせて総理見解を伺っておきます。(拍手)  今回、改正案の第一の問題点は健保本人の自己負担導入についてであります。  かつて戦時中に、東条内閣が戦費調達のために健保本人に大きな負担を課したことがありましたが、このときでさえ、今回のように給付率引き下げ本人負担を課すことはしなかったのです。かかった医療費に比例して負担をふやすやり方は、健康保険制度が発足して以来初めてのことであり、東条内閣以上の暴挙であると言わざるを得ません。厚生省の試算でも、健保本人が盲腸で七日間入院すると、現行の四千三百円の負担が一挙に三倍以上の一万五千八百円の負担にはね上がることになります。当然、病気が重くなればなるほど負担がかさみ、所得の低い層ほど耐えがたいものになります。  現在、政管健保の標準報酬月額の平均は二十万円弱ですが、このような家庭で本人病気になり、一カ月間入院を余儀なくされると、収入は健保の傷病手当金十一万円余りしかありません。これから高額療養費の五万四千円を差し引くと、手元には六万円弱しか残りません。総理は、これだけで家族生活していけるとお考えでしょうか。健保本人家族中心的扶養者で、一家の大黒柱であります。その本人病気で倒れると収入源が断たれ、その上医療費がかさみ、まさに家族崩壊の事態すら招きかねないものであります。だからこそ、制度発足以来、本人十割給付の原則は守られてきたのです。総理本人十割給付の切り崩しは家族の運命を左右すると言っても過言ではないでしょう。絶対に本人自己負担導入はやめるべきです。また、高額療養費の自己負担限度額は当面現行の五万一千円で据え置くべきであります。総理のはっきりとした答弁を求めます。  第二は、差額ベッドやがんの温熱療法など高度医療の自己負担の公認についてであります。  今回の高度医療技術の差額負担の固定化や差額ベッドの公認は、保険による医療給付範囲の縮小、自由診療の拡大への道を開くものです。したがって、よい治療を受けようとすれば、現在の歯科治療のように多額の負担を強いられることになります。しかも将来、これを入院時の給食費や看護料など全分野にまで広げようということすら検討されているのです。同じ病気にかかっても、差額料を支払う能力によって、治療内容、看護内容が違ってくることになれば、公的医療保険に公然と貧富による差別を持ち込むことになります。これは社会保障理念を真っ向から否定するものであり、断じて認めるわけにはまいりません。  だれもが、病気になったとき、お金の心配なく十分な医療をひとしく受けられることこそ、近代医療制度の目標であったはずです。金の切れ目が命の切れ目となる時代が再びやってくるのではないかという国民の不安に、政府はどう答えられるのでしょうか。このような差額徴収制などの法的認知ではなく、保険外負担の解消の方向こそ国民の願いですが、厚生大臣の答弁を求めます。  第三は、政府を言う医療費適正化対策なるものについてであります。  水増し、架空請求、脱税などが絶対にあってはならないことは言うまでもありません。しかし、今回医療費を削るために政府がとろうとしているレセプト審査の強化、すなわち、内容審査でなく、金が高いか低いかで見る経済審査の強化は、医療の萎縮診療、無気力診療を招き、ひいては医学の退歩につながることを指摘せざるを得ません。これによって、医者が診療を控えれば、国民病気になっても必要な治療さえ十分受けられなくなるのであります。いわゆる乱診乱療を口実としたこのような不当な医療費の切り捨ては、医療内容の低下をもたらし、結局国民へのしわ寄せとしてはね返ってくるものであり、やめるべきであります。厚生大臣見解を伺います。(拍手)  政府は、国民医療費抑制とか医療保険制度の安定的運営などを今回改正の理由としていますが、医療費のむだをなくす根本は、最近の有病率を高めている労働強化や長時間労働、公害、災害、交通事故などの抜本的改善とともに、我が国ではおくれている保健予防体制の整備にこそ手がつけられるべきです。また、社会保険からぼろもうけをしている製薬大メーカーや医療機器メーカーによる薬価決定の仕組みや、高額医療機器の値段にメスを入れるべきであります。その意思が政府にあるのかないのか、厚生大臣の答弁を求めます。  第四は、今回の政府案が医療保険制度への国庫負担を総額で六千二百七十六億円も削減していることです。  まず、退職者医療制度について伺います。  政府案では、国民健康保険に加入している退職者をこの新しい制度に移し、国の負担をなくして退職者被用者保険からの拠出金で財源を賄うことになっています。この措置により、国庫負担を二千三百五十五億円も削っていますが、この分は結局現役労働者にしわ寄せさせることになるのです。我が党は退職者医療制度の必要性をかねてから主張していますが、今回のような国の責任を放棄した政府案には到底賛成できません。国庫負担削減のための制度創設と言っても過言ではないでしょう。退職者医療制度国庫負担導入すべきであります。また、労働者意見が反映できるよう運営制度を改めるべきだと思いますが、厚生大臣の答弁を求めます。  また、国民健康保険への国庫補助率を医療費の四五%から三八・五%に引き下げ、千五百四十四億円も削減しようとしていることはまことに重大です。これが今でさえ赤字に悩む市町村国保財政をますます悪化させることは、火を見るよりも明らかです。しかも見過ごすことができないのは、国庫補助定率部分が少なくなり、政府の意向で自由にできる調整交付金の割合が大きくなっていることです。これは、老人医療費無料化制度のように、住民には大変喜ばれているが政府の意に沿わない施策を実施している市町村政府財政的圧力をかけやすくすることをねらっているのではありませんか。国民健康保険に対する国庫補助率の引き下げはもちろん、定率部分の引き下げもやめるべきです。また、自治体の単独事業について不当な介入、干渉はすべきでないと考えますが、厚生大臣、自治大臣の答弁を求めます。(拍手)  最後に、政府医療費に対する国庫補助削減する一方で、軍事費を聖域化し、四年連続異常突出させ、際限なく軍拡に突き進もうとしていることについて伺います。  過疎地医療一つとってみても、私の地元島根県では、無医地区が六十四カ所もあり、その充実が県民の切実な願いとなっています。このような国民の命と健康を守る医療サービスの財源を確保するために、今何よりも必要なことは、日本共産党・革新共同が予算組み替え提案で示したように、異常に突出した軍事費の大幅な削減を行うべきです。軍事費を削って暮らしと福祉の充実をという要求は、圧倒的国民の声です。総理、この声に謙虚に耳を傾けるべきではありませんか。明確な答弁を求めます。  以上、本法案は、我が国医療保険制度を根本から掘り崩すほどの重大な改悪であり、これが成立すれば国民の被害はまことに甚大であります。だからこそ、このような大改悪法案に対して、労働組合や民主団体にとどまらず、日本医師会、歯科医師会、薬剤師会など広範な国民が反対の態度を表明しているのであります。また、既に八百三十九に上る地方議会でも反対の請願や意見書が採択されているのであります。事は国民の命と健康にかかわる問題であり、政府は潔く本法案を撤回すべきであります。このことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  24. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 中林議員にお答えをいたします。  まず、憲法第二十五条についての御質問でございますが、憲法第二十五条の趣旨を具体化するためには、国民が生涯のどの段階においても不安を持たずに生活できるよう社会保障制度を整備することが大事であり、そのために国は努力を要すると考えております。今回の改革は、社会保障制度を揺るぎないものにしていく、そのために、憲法の精神を踏まえて世代間の社会保障関係の公平、長期的安定を図って行ったものでありまして、御了承を得たいと思います。本法案を撤回する考えはありません。  次に、選挙中の公約との関係いかんということでございますが、厚生省原案に対しましては、国民意見をよく聞きまして、いわゆる激変緩和措置を講じて提出したことは御存じのとおりでございます。  次に、一部負担あるいは高額療養費の問題等について御質問がございましたが、これは医療費適正化給付公平化を図る上で重要であり、かつ、高額療養費の自己負担限度額は近年の所得伸び等も勘案して引き上げたものでございます。いずれにせよ、今回の改革案が最善のものとして考えております。  次に、防衛費との関係でございますが、国の独立と平和と文化を守るために、防衛費は不可欠でございます。問題は、他の社会保障教育費とのバランスを考える必要はあると思って、その点については十分注意をしておりますが、必要最小限の防衛費を計上することは、国民は強くこれを支持していると確信しております。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣渡部恒三登壇
  25. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 高度医療等に関する療養費制度改正につきましては、保険診療と新しい診療技術等との調整を図ろうとするものであります。差額ベッド保険外負担の問題については、その適正化を進めてきたところでありますが、今回の改正により、これを法律上のコントロールのもとに置き、適切な規制を行うこととしております。  医療費適正化対策についてでありますが、レセプト審査の適正を確保することは極めて重要であり、審査委員の増員、特別審査制の導入などにより一層の充実強化を図る所存であります。  保健予防体制の整備等につきましては、医療の需給両面にわたる対策を進めるほか、健康づくり、疾病予防対策等の総合的な推進を図ってきております。今後とも、これら対策を一層推進し、保健予防体制の整備とその健康水準の向上に努めてまいる所存であります。  また、薬価基準につきましては、昭和五十七年九月の中医協答申に基づき実施しておるところであり、先般も一六・六%の引き下げを断行しました。今後ともその適正な運用を確保してまいる所存であります。  退職者医療制度につきましては、この制度社会的連帯と世代間の負担の公平を基礎とした被用者保険に属する制度でありますので、その医療費退職者保険料並びに現役被用者及び事業主からの拠出金によって賄われることが適当と判断したものであります。また、この制度運営につきましては、拠出金等に関する重要事項について社会保険審議会意見を聞くこととしており、拠出者側の意向は十分に反映されるものと考えております。  国保国庫補助につきましては、退職者医療制度の創設により市町村国保財政負担改善されること等を考慮して、改正を行うこととしたものであります。また、国保国庫補助のうち定率部分を縮小し財政調整部分を拡大したのは、退職者医療制度の創設による国保財政への影響市町村間で均一でないこと等を考慮したものであります。また、老人医療に関する地方単独事業につきましては、国の施策との整合性を考慮して適切に対応していきたいと考えております。なお、国保国庫補助につきましては、地方単独事業の実施による影響を考慮し、公平な配分を図ることといたしております。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣田川誠一君登壇
  26. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 国庫補助負担の問題についてお答えをいたします。  今後におきます国保財政の健全な運営の確保を図るためには、今度の改正に伴いまして、個々の市町村国保について生ずる国保財政の変動を緩和することが必要でありまして、このような立場から、財政調整交付金の配分におきまして所要の措置が講ぜられる方針と承知をしております。  それから、地方公共団体の行う老人医療などに関する国の介入の問題でございますが、老人医療などの福祉に関する地方の単独事業につきましては、各地方公共団体が自主的な判断のもとに行うべき問題と考えております。したがって、自治省といたしましては、個々の分野について行政指導をする考えは持っておりませんで、事務事業の選択に当たりましては、これまでどおり、地域の実情に即して十分その緊急度を検討し、そしてさらに将来の財政負担についても考慮して、財源の重点的配分に徹するよう指導していく方針でございます。  以上でございます。(拍手
  27. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  28. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。     午後二時十九分散会      ——————————