○簑輪幸代君 私は、
日本共産党・
革新共同を代表し、
酒税法等一部改正案、
物品税法一部改正案及び
石油税法の一部改正案など、いわゆる間接税
増税三法案について、
総理並びに関係大臣に質問いたします。
まず最初に、五十九年度の税
財政全体に係る問題についてお尋ねいたします。
総理は、すべての家庭が夕げの明かりに家族の団らんのひとときを過ごし、あすへの希望を語り合える世の中をつくることが
政治の
責任だと言われました。ところが、五十九年度
予算案は、
国民に軍拡、
福祉の切り捨て、
増税を押しつけるもので、その
内容を知れば知るほど、その
国民犠牲の大きさに驚きと憤りが広がっています。あすへの希望どころか、逆に核戦争の不安や今後の暮らし、老後の不安を訴える人がふえるばかりではありませんか。
家計簿調査によれば、税金、
社会保険料、各種公共料金の値上げは、特に収入の低い層に重い負担となっており、妻がパートや内職で家計を支えている世帯がふえてきています。税金調査の結果、ある人は、容赦なく取られた税金が私たちの
生活の潤いとなって戻り、年ごとに住みやすい国になるならともかく、軍備増強に回って
社会保障も先細り、このまま黙々と税金を負担し続けるほど愚かしいことはないと痛感しましたと訴えています。
今回、七年ぶりの
本格減税と言われても、同時に間接税などの見返り
増税と公共料金値上げによって、年収三百万円以下の
標準世帯では
減税を上回る負担になっているのです。
他方、大量
国債発行のもとで国債を保有する大資産家や大企業には、利払いの形で
国民から集めた税金が流れ込んでいます。
また、初年度八千七百億円の
所得税減税は、
政府が試算したこの六年間の実質大
増税約四兆八千四百億円から見ればその二割にもならない上、十五年ぶりに最低税率を
引き上げ、
最高税率を一挙に五%も引き下げるという、不公平この上ない金持ち
減税ではありませんか。これでは貧富の差は拡大する一方です。
総理は、一体、
財政の所得配分機能をどのように考えておられるのでしょうか。また、今回の税制改正が
国民の
減税要求にまともにこたえたものになっているとお考えでしょうか。私は、特に低所得者に
減税効果が大きい方法で、五十九年度
所得税、
住民税合わせて二兆円の
減税の
実施を
要求いたします。(
拍手)また、パート、内職の非課税限度額、自営業者の専従者控除は、せめて百二十万円まで
引き上げるべきです。あわせて
総理の誠意ある
答弁を求めます。
次に、
減税財源の
一つとして、法人税の税率
引き上げと欠損金繰り戻し還付
制度が二年限りとされ、延納
制度が廃止されたことは納得できません。大企業優遇の退職
給与引当金の
是正など
不公平税制の
是正に手をつけず、長期不況のもとで経営難にあえいでいる
中小企業へ負担を押しつけるのはもってのほかです。
今回の
措置によって
中小企業の負担は一体どれだけふえるのでしょうか。また、今回二年間の時限
措置にしたのは大型間接税導入を見込んだものと言われ、さらに法人税
増税の見返りに投資
減税が上積みされ、大銀行の特定海外債権への一部損金算入化を認めるなど、現行の大企業への恩典拡大さえ行うに至っては全く言語道断です。二年限りの時限
措置にした
理由と、二年後の
財源手当ては一体どうするのかについて、関係大臣の
答弁を求めます。
第二に、酒税、
物品税、石油税など間接税三法案について伺います。
総理は、総選挙中、でこぼこ調整はするが
増税はしないと
公約しました。今の
税体系の中で、
総理の言うでこぼこの具体的
内容は一体何でしょうか。それと、今回の改正でどう
措置したのか、今後残されている問題は何か、
国民によくわかるようにお示しいただきたいと思います。(
拍手)
いずれにしても、今回の
増税約一兆円の半分以上が逆進性の強い間接税なのです。これは所得の低い者ほど
増税になり、
減税に何ら浴しない
生活保護世帯や母子家庭など最も困難な世帯からももぎ取ろうとするやり方であって、断じて許せません。(
拍手)これでは、真に
福祉の必要な
人々には手厚い施策をとると
総理自身が
国民に約束したことさえ投げ捨てているではありませんか。
税負担感がないからと安易に間接税
増税を行うことは、税の不公平を拡大することになり、著しく不当です。
次に、酒税は今回一斉値上げで約二〇%上げようとしていますが、一体酒税は低過ぎるというのでしょうか。小売価格に占める酒税の負担は、
昭和五十年の三〇・一%以来上昇し続け、最近では三八%に達しています。今改正後には、ビールは四九%、ウイスキー特級五〇%、清酒特級で四〇%程度と、半分は税金を飲むことになるのです。庶民のささやかな歓談の友である酒は、たばこに次いで逆進性が強いもので、安易に取りやすいところから取る典型です。酒
税負担は一体どこまでいくのか、その限界について、この際明確に
答弁いただきたいと思います。
酒類の中で、洋酒等のはんらんで需要が年々減ってきている清酒醸造業は、地方の零細な造り酒屋を
中心に転廃業がふえています。
日本の味、伝統産業である清酒業界をめぐる現状認識と、その振興策をどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
物品税については、これまで奢侈品、比較的高価な便益品、趣味・娯楽品という基準で課税してきたといわれています。ところが、さきの
政府税調中期答申では、
消費の持つ担税力に着目するという
物品税の
基本的性格に立ち返る必要を説いています。これは
物品税の
基本的性格を根本的に変えるもので、極めて重大問題です。
課税対象として従来考えられなかったOA事務関係機器への課税拡大が検討されたり、従来は外されてきた全自動でない電気洗濯機にまで課税するなど、今回、新たに個別
消費税としての
性格を変質させ、
生活必需品にまで課税する
方向は、際限なく課税対象を広げるもので、何の歯どめもないではありませんか。対象をどんどん拡大して、いわゆる課税ベースの広い間接税につなげていくのではありませんか。一体、
物品税の課税対象基準について今後具体的にどう考えていくのか、大蔵大臣の明確な
答弁を求めます。
次に、平年度一千三百四十億円の石油税
増税は、いずれ製品価格に転嫁され、最終的には
国民が負担することになります。その
増税分も入った石特会計
予算の半分以上が国家備蓄増強関係費で占められています。
今日、石油事情は大きく変わり、当初予定されていた
我が国の石油
消費量は、日量百万キロリットルから五十四万キロリットルに激減しているのです。備蓄基準は現状でもIEA基準の九十日分を上回っており、加えて、
民間に今ある約一千万キロリットル分の空きタンクの活用などを考えるならば、今
増税してまで国家備蓄基地の建設を急がなければならない
理由はないと思いますが、その必要があるのでしょうか。
第三に、
中曽根内閣の
財政改革路線と、急浮上してきた大型間接税導入問題について伺います。
渡辺
自民党幹事長代理の六十年度大型間接税導入表明とその後の議論は、
政府・
自民党の
財政改革路線の本音が
国民への大
増税であることを改めて示しています。五十九年度税制改正による
物品税の課税範囲の拡大、そして中小零細業者、農民への記帳義務、総収入金額
報告制の導入などは、その布石と言えるものです。既に
政府税調も、課税ベースの広い間接税の導入の検討を提言し、竹下蔵相も、機が逐次整備されてきている、避けて通れない検討課題だと言明しています。また、今
国会に
提出された「
財政の中期展望」は、
財政破綻の実態を示すと同時に、大型間接税導入の意図を露骨にあらわしたものではありませんか。
一方、
政府与党内で、この五十九年度
予算成立後、中長期の
財政再建プログラムとともに直間比率の見直しなど今後の税制のあり方が検討されることになっていること等を見れば、
中曽根内閣のもとで「
増税なき
財政再建」から大型間接税導入への路線転換が大きく進められようとしていることは明白です。(
拍手)
総理は、六十年度大型間接税導入について、幹事長代理の個人的
見解だ、考えていないと言っていますが、
国民は不安をぬぐえません。今回の
減税を上回る
増税の
実施や
赤字国債の借換債の発行
措置など、
総理を初め
政府が
国会のこの場で何回も何回も約束し
国民に
公約してきたことが平然と破られているではありませんか。(
拍手)
総理、この場で改めて、五十九年度はもちろん、六十年度以降についても大型間接税導入はしないと明言すべきです。今考えていないとだけ言って先で平気で覆すという不誠実な態度は
国民の
政治不信を深めるもので、絶対に許されません。率直かつ誠実な
答弁を求めます。
日本共産党・
革新共同は、
福祉目的税などの名称や形のいかんを問わず、大型間接税導入に断固として
反対です。
総理が進めている財界主導の臨調行革だと私どもが批判している当のその財界首脳の稲山経団連会長は、現行の税制について、税はすそ野から、もっと大衆から広く取る方法に改めていくべきだと述べていますが、
総理も同じお考えなのでしょうか、お伺いいたします。
今、
中曽根内閣は、軍拡、大企業奉仕のために、
福祉の全面的
制度改悪と大
増税を同時に強行しようとしています。この道は
国民を戦争に巻き込む危険を増大させ、
経済財政危機を一層激化させて、
国民の暮らしを破綻させるものです。
私ども
日本共産党・
革新共同は、軍拡から平和・軍縮への根本的転換、二兆円
減税を初めとする
国民生活を守る
予算への転換、そして大企業奉仕の仕組みに
メスを入れ民主的
行政改革を進めるという三つの転換を掲げています。
真にあすへの希望が語り合える平和で豊かな
社会を切実に願っている
国民に対し、誠意ある
答弁を求めて、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕