○三浦(隆)
委員 今お答えいただきましたように、例えば大和川病院の
事件、
一つは
昭和四十四年に起こり、
一つは五十四年に起こっているわけであります。
最初の
昭和四十四年のとき、病院から逃げようとした患者を看護人が集団で暴行して死亡させたということで、看護人三名が
懲役三年を受けているのです。そういう体質を持った病院であるならば、その後も的確に立入検査その他をしてよく指導していればよかったにもかかわらず、何事もなさないで来てしまった。その結果、再度起こってしまった。すなわち五十四年に、看護人が指示に従わないというだけのことで患者を殴る、ける、そして暴行してこれまた死亡させてしまっているわけであります。この場合、単に
理事長や院長をやめさせたから問題が解決するのではありませんで、そこの病院の持っている体質そのものを改めなければならない。また、もっと根の深いものがあると思います。同じようにして、
昭和四十二年には阪奈サナトリウムでも
事件が起こっております。ここでも患者が十数名にもわたって集団脱走を企画したということで、野球バット等で院長から看護人から一緒になって患者に対し暴行を加えて、その結果、患者は死亡してしまったわけであります。院長、看護人が
懲役刑を受けてきているわけであります。
このようにして、今回の宇都宮病院
事件というのは何も初めて起こったわけじゃないのだということであります。そしてそのたびごとに、国会の
質問その他を通じながら、なぜ事前の告知なしの立入検査をしないのかという
質問が繰り返されているのに、あえてしないわけです。法の規定としては、事前に告知しなければ立入検査してはいけないなどとは何にも書いてないのです。勝手に自己規制して、しないわけです。
ですから、例えば今度の宇都宮病院
事件に関しても、患者の収容状況は何名ぐらいだろうかといったところが、許可病床数が九百二十に対して入院患者数は八百八十九名で、少ないのです。新聞、週刊誌等で報じられている事実は多いのですよ。何でこんな食い違いが起こるか。
事件が起こったから数を減らしてしまっているわけです。これが
事件が起きない、事前告知しなければそのままの実数がわかるはずであるにもかかわらず、そうした対応が大変に不十分だということであります。これは患者の収容人員だけじゃないのです。御報告いただいているところの医療に従事する人数、構造、設備の状況、病棟管理の状況、無資格者による医療行為の状況あるいは面会人の状況、通信の状況、入院患者の預かり金の問題、確かに新聞、週刊誌でもこうしたことは既に報じられておるわけです。ここでは報告にはいただけませんでしたけれ
ども、法によって必ず整備しておかなければならない、病院にとって必須のものがあります。
例えば診療録のようなものです。患者をいつだれが診察した結果、どういうふうな症状であったか、あるいは患者が死亡するような場合、その検案に立ち会えば検案書というものを書かなければならない。あるいは死亡証明書を書かなければならない。だれが、いつどう書いたかということがわかりさえすれば、現実にそこでのお医者さんが、だれとだれが診察に携わって、あるいは年間何回の診察を患者さんにしてあげたということな
ども事前にわかるわけです。言うならば、これまででもやりさえすればわかっていたにもかかわらず、やらなかったわけであります。
国としては、この財政難の折にもかかわらず貴重な医療費を、精神衛生対策費としてもかなりの金額を出しているわけであります。例えば精神衛生費だけでも年間七百八十億円というお金が出ている。そのうち措置入院費だけでも七百十億円という金が出ている。このようにして宇都宮病院にも患者の人数なりそれぞれに応じて多額の金が流れておるのです。にもかかわらず、その金が患者のために使われようとしないで、医者の人数や何かを減らして、まさに私腹を肥やすというか、病院の方で収益の事業に充てて、あげくの果ては二億円余りも脱税でそのお金が持っていかれているのです。患者不在のような状況が行われてきたのです。こうしたことを何ら立入検査もしないで放置してきたのです。言うなら、これまでも
事件が起こって、そのときだけのおざなりの答弁で終わってきたからこうした
事件が起こったのであり、今回また遺憾です、というだけであれば、また次に
事件が起こるかもしれないのです。
私がお願いしたいのは、こうしたことを契機として、事前告知なしの立ち入りということを、この病院危なそうだなと思うのであるならば、危なそうなところだけでも何とか定期的に回っていけば、そして回ってそこに働いている
人たちと個人的にお会いして意見を聞くなり、あるいは施設を見て回るなり、そしてまた診療録などを見ることによって、精神病院の実態というものがもっともっとわかるだろうと思います。むしろ監獄の中の方が、先ほど面会の是非の問題が質疑されておりましたけれ
ども、
犯罪を犯した人、言うならば裁判の結果、有罪だとなった人が入れられているところの監獄の方が開放的であって、
犯罪者ではない精神偉害者の治療のためのところの方が風通しが悪いというか、極めて閉鎖的であって、そういう
人たちの人権を
考えなければならないところの監督官庁が、それぞれ人ごとのような答弁をされていたのでは、本当に財政難の折から貴重な金を使っていて、国としてもむただし、患者の立場に立ってもその家族にとっても穏やかなことではないと思うのです。
次に、宇都宮病院に。おきましては、これまでも何度か脱走
事件があった。
一つは、
昭和五十三年十一月の脱走
事件では、患者六、七人が脱走して失敗して、看護人によってリンチされたということが起こった。あるいはまた、元公務員の患者で、一度は脱走を企て、失敗して看護人からリンチを受けながら、再度脱走を企て、ことしの二月に脱出したということな
ども報じられているわけです。また、新聞、週刊誌もある程度ちゃんとそうした
人たちの意見を聞きながら書いておるものだと思いますが、なおかつ事実を確認したいというのであれば、具体的にわかっているケースなんですから、これからでも遅くないのであって、別に
警察当局でなくても確認しようとすればできることだということであります。すなわち、これまでの共通している
事件というのは、どれも精神病院にいたたまれなくて脱走をする、そしてその脱走がばれたために、捕まって暴行され死亡していくというケースが大変多いのです。じゃ、なぜ脱走しなければならないのだろうかというふうなことなど、厚生省としても十分にお
考えいただきたいところであるというふうに思うのです。そこで、時間ですので先へ進むことにいたしまして、次に
警察庁の方に
お尋ねしたいと思います。医療法人の報徳会宇都宮病院のリンチ
事件について、今
捜査なされているというふうに伺いますか、なぜ
捜査されたのか、その
捜査の動機、目的あるいは規模、範囲、
捜査の効果及び今後の見通しにつきまして
お尋ねしたいと思います。