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1984-06-22 第101回国会 衆議院 文教委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十二日(金曜日)     午前十時三十二分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    理事 白川 勝彦君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 有島 重武君 理事 中野 寛成君       青木 正久君    稻葉  修君       臼井日出男君    榎本 和平君       北川 正恭君    坂田 道太君       二階 俊博君    葉梨 信行君       町村 信孝君    渡辺 栄一君       木島喜兵衛君    佐藤 徳雄君       田中 克彦君    中西 績介君       池田 克也君    伏屋 修治君       藤木 洋子君    山原健二郎君       江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         文部政務次官  中村  靖君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房会         計課長     國分 正明君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君  委員外出席者         臨時行政改革推         進審議会事務局         参事官     新村 淳一君         法務省刑事局刑         事課長     北島 敬介君         会計検査院事務         総局第二局審議         官       黒田 良一君         参  考  人         (日本育英会理         事長)     三角 哲生君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  参考人出頭要求に関する件  日本育英会法案内閣提出第二五号)      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れの件についてお諮りいたします。  内閣委員会において審査中の臨時教育審議会設置法案について、連合審査会開会申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時につきましては、追って公報をもってお知らせいたします。      ――――◇―――――
  4. 愛野興一郎

    愛野委員長 内閣提出日本育英会法案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本育英会理事長三角哲生君の御出席を願い、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  6. 愛野興一郎

    愛野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西績介君。
  7. 中西績介

    中西(績)委員 質問を始めます前に、一昨日この文教委員会で問題になりました在学生に対する募集開始を込める問題については、どのような検討がなされ、その結果についてはどうなっていますか。
  8. 宮地貫一

    宮地政府委員 先般の事柄につきましては、私ども政府部内としても、関係省庁とも鋭意検討を進めさしているところでございますが、なお今日まだその結論を得るに至っていないところでございます。事柄の早急を要するということについては十分念頭に置きながら、なお検討さしていただきたい、かように考えております。
  9. 中西績介

    中西(績)委員 進めているということと早急にということはわかりましたが、なぜこれがそのように困難であるかということ、この点はどうなんですか。
  10. 宮地貫一

    宮地政府委員 先般来御説明をいたしておりますように、予約採用については事柄緊急性というようなことを受けまして両院の文教委員長からの御要請を受けて、政府として何らかの救済措置を講ずるということについて検討して、先般御報告をしたような内容について実施をするということで踏み切ったわけでございます。  問題は、在学採用に広げようとする場合には、改正法に吸収できる範囲内で執行できるか否かというような点が問題点として一つあるわけでございます。  なお、例えば予約採用の場合に、緊急避難として実施をいたしましたような形で、例えば特別貸与者相当分を採用しようとする場合にも、その基準をどう考えるかというような点が問題として出てまいります。もちろん実施上、救済措置を講ずる場合の問題点として諸手続に相当の日数を要する点もあるわけでございます。したがって、この点は早急に検討を要する課題というぐあいにども理解をしているわけでございます。  そのような点についてなお検討を要するというようなことで、関係省庁とも私ども検討に入ったところでございますが、なお今日まだその結論を得ていないという状況でございます。
  11. 中西績介

    中西(績)委員 現行法実施をするという、こうした確認でありますから、この分について、今言われたような事柄がおくれていくという理由にはなかなかなりにくいと思います。したがって、きょうはこの法律論議をここでするつもりはありません。  問題は、大学奨学生の場合を考えてまいりますと、日程的に私は、もしこれを遅延させるということになってきたときには、大変多くの問題を残していくのではないかと思った。と申しますのは、奨学事務日程表を見てみますと、問題が相当出てくる可能性が生じます。と申しますのは、七月の十日に、ほとんどの大学におきましては夏休みに入るわけですね。そうなると、募集事務等ができなくなるということになれば、募集事務が始まるのは九月ということになるわけです。後に追い送れば追い送るほどこの実施は困難になってくるし、日時は遅延をするということになるわけです。こういうことになってまいりますと、結果的にはこの十二月なり一月という実態がそこには出てくる可能性すらある。ということになれば、そのタイムリミットがあると私は思うのですね。七月の十日、それまでに大体募集事務なりが終了するという体制をどうつくり上げていくかという、逆算していった上で、この時期にこういうことをやりますということを大体確認しておかないと、そうした事務的なものの中からそれが不可能になってくるということだってあるわけですから、今言われるような、いろいろな法律的なものを云々しておりますけれども、この点については、私たちは、現行法をもってやれば何ら差し支えないわけでありますから、その点で、逆算をしながらでもやるという意思があるのかどうか、この点どうなんですか。
  12. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のありました点は、十分念頭に置いて私ども検討しているところであります。
  13. 中西績介

    中西(績)委員 大臣、そこでお聞かせいただきたいと思いますのは、そういうことを十分踏まえてやるということになれば、この前から論議されております、一定方向性を持ってこれを実施するということを前提にしてやるということの確認をここでしてよろしいかどうかです。
  14. 森喜朗

    森国務大臣 先般の各党の理事皆さんからの御協議、そして委員長が衆議院、参議院それぞれ私どもに対しまして、ただいまお願いをいたしております法律国会都合等で成立をしていないということから、大変御心配をいただいて、奨学金を待望しております。その対象となる学生さんたち大変困窮なお立場になっておられる、そういうことを国会で文教問題に大変御専門の皆様方がそれぞれのお立場で、何とかならないのかということから、委員長の御提案があった。そして、私どもとしてもできる限りの、いわゆる今局長から申し上げましたような考え方で、とりあえず予約生につきましてその皆様の御意思を反映でき得るような処置をとったわけでございます。  一昨日、また委員会におきまして、なお在校生等についてというそうしたお話もございまして、私から事務的にできないのかどうかということを早急に作業をさせてみたい、検討さしてみたい、こういうふうに申し上げたわけであります。ただいま局長から申し上げましたように、今中西さんから御指摘をいただきました点を十分踏まえながら鋭意その作業を進めております。文部省というのは教育行政の任にある役所でございますので、そうした学生立場を十分に理解しながら進めているわけでございます。今そういう点を踏まえてと局長が申し上げましたのも、そうした基本的な考え方については同じ立場をとっていきたい、そういう願望が込められているということであります。しかしながら、これは国家財政との関係もございます。財政当局とのこともございますし、法律上のこともございます。したがいまして、そういう関係部局との調整というのも十分必要でございます。したがいまして、先ほど冒頭局長から申し上げましたように、できるだけ速やかに結論を得られるようになおそうした作業を含めながら今検討を急いでおる、こういうことでございますので、どうぞ御理解をいただきたい。なお一層精力的にその検討を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  15. 中西績介

    中西(績)委員 大臣局長と大体同じような考え方でおられるということでありますけれども、問題は、先ほどから私が指摘をするように、七月十日以前にそうした事務が完了するという体制をとり得なければ、今ここで私たちがいかに論議をしても全く意味をなさないものになる。ということになってまいりますと、一昨日ここで皆さんが最終的に確認をいたしました約八万二千に上る在学生対象にしたこの措置について、我々は実現できるということを期待したわけでありますけれども、それができないことになるわけですね。したがって、夏休み休暇に入る以前にこのことが措置できるようにぜひ体制を整えると同時に、皆さん方の努力、そして私たちにまた再びこの場でいろんな論議を起こしたりあるいは追及をしなくてはならぬということのないように措置をしていただくことを要請するわけでありますけれども、その点でよろしいですか。
  16. 森喜朗

    森国務大臣 時間的にある程度急がれておるということ、学生夏休み尊いろんな事情もあることもよく承知をいたしております。したがいまして、一昨日の委員会でも申し上げましたように、早急にというのもそうしたことを十分踏まえてのことでございます。なお一層そうしたことを踏まえながら早く結論が出し得るように事務当局を指導していきたい、こう思っております。
  17. 中西績介

    中西(績)委員 大臣のその決意を一応了としますが、きょうはこうして明確な答えをいただけなかったことは非常に残念です。したがって、やるとすれば少なくとも来週早い時期、次の委員会にはそうした問題等について固定的な回答が得られるものとして、私はきょうこれ以上の追及は留保いたしますので、その点をぜひ努力願いたいと思います。  そこで、奨学金問題について多くの問題がございますけれども、時間に制約がございますので、育英会理事長三角さんがおいでになっているようですから、後の時間もあるようですからまず冒頭質問をいたします。  そこで、今度の改正案で一番の問題は、何といっても有利子であるということであろうと私は思うのです。有利子奨学金採用については、前理事長の村山さんあるいは文部省指名をして諮問機関としての調査研究会委員でありました日経の黒羽亮一さん、こういう人たちの発言の中身を聞いておりますと、前理事長はこれに対して反対の意思表明を明確にいたしまして、そのことが奨学金制度に与える影響を大変危惧をいたしておる。さらに黒羽亮一さんあたりは、文部大臣から指名をされた委員でありますけれども、この人の言葉を借りれば、真意を疑うなどという言葉すらも使っておるわけであります。こういうことになってまいりますと、少なくともその衝に当たる最高責任者として、理事長有利子に対してどういう考え方をお持ちになっておるか、お答えいただきたいと思います。
  18. 三角哲生

    三角参考人 今回有利子奨学金を導入するということになりまして、ただいま法案の御審議が行われておるわけでございますけれども、これに至りますまでには、中西委員既に御存じのとおり、かなり長い月日を重ねまして懇談会あるいは調査研究会等を行って内容を煮詰めてまいったというふうに理解しております。  一つ制度について議論をいたします場合には、議論の当初はそれぞれ個人個人意見をいろいろ出し合い、そして調整を重ねていく、こういう経過があると思います。でございますから、その時期時期において、いろいろな方がいろいろな御意見をお持ちであったと思うのでございますが、現在の時点で、そういう経過を経た時点考えますと、そこで大方の意見の一致に基づいて今の御提案がなされておるわけでございます。  もちろん私ども日本育英会というのは、国会あるいは政府で決められました基本的な方針に従いまして事業実施する立場ではございますけれども、御質問でございますからあえて私の考えを申し上げますと、御承知のように、大学への進学の率並びに進学者の数そのものが非常にふえてまいっておりますから、育英奨学制度もこれに対応して拡充していく必要がございます。でございますから、拡充のための一つの方策として、長期かつ低利の有利子貸与を行うということを導入してきた、こういうふうに思うわけでございまして、世の中の経済状態が非常によくなりますと同時に個人生活の水準も上がってはおりますけれども、これだけ多くの学生大学、短大に入っておりますことから見ますれば、なお育英奨学資金に対する需要というものは、以前の時代と比べてその度合いが低くなっているというふうにも思いません。したがいまして、従来の無利子の制度基本としながらも、もう一つこういう選択も加えていくということが今日の時点の対応として必要ではないか、こういうふうに思っている次第でございます。
  19. 中西績介

    中西(績)委員 今の意見を聞いておりますと、意見でなくて文部省の受け売りみたいな感じじか私は受けとめることができません。特に、有利子体制教育問題を論議する際にどのように受けとめられるかということを具体的に述べてもらわないと、私が期待をするあるいは質問をする意味はなかったわけであります。したがって、時間がありませんから、私はもう今ここで理事長論議をする意思はありませんけれども、いずれにしましても、そういうお考えであるからこそこうしたものがまかり通る。少なくとも育英会奨学金のあり方というものを断固として守り続けるという、ここに理事長の姿勢が明確に出てこないと、これから後大変危惧される状況があるだけに残念でならないわけであります。ほかの感想も聞こうと思いましたけれども、第一点で大体わかりましたので、もうこれ以上聞きません。  そこで、諸外国奨学金制度がどういう状況になっておるかについてお聞きしたいと思います。  外国の場合を大ざっぱに分けますと、西欧型と米国型と社会主義国型、そして日本型、少なくともこういう類型に分りられるのではないかと私は思います。  そうなってまいりますと、西欧型の場合、今進学率英国フランスあるいは西独の場合、大体二二%から二四%程度になっておるということを聞いております。ただ、その場合に私たちが注意しなくてはなりませんのは、公私の関係であります。公的な部分が、例えば英国の場合が八四、フランスの場合が一〇〇、そして西ドイツの場合が一〇〇でありまして、英国だけが私的一六になっています。こういう状況でありますだけに、今日本の場合と比較をしますと、大変大きな違いが出てくるわけです。特に西欧型の場合を考えてまいりますと、その基準になるものが公的な面が多いわけでありますから、結局授業料が無償になるとか、こうしたことを中心にした中で考えられていくわけですから、その主体給与制になる。  ところが、次の米国型の場合でありますけれども、ここの場合には門戸が広く開放されております。公的なものは四九、私的なものが五一になるわけですから、日本と大体似通っておりますけれども、ここの場合も同じように、私費に耐え得ない層をどう救済するかということで、給与奨学金基本としております。そして、それに今度は貸与制をあわせ補完をしていくという体制になっています。  社会主義国は私が申し上げるまでもありません。  そうしますと、日本型の場合には、今言うようにある程度進学率は高いわけでありますけれども公的負担率がずっと低くて五五%になっておるわけですから、アメリカと大体似通った状況です。ところが、今公的な給与奨学金が全くないという条件を考えてみた場合に、西欧米国、そして日本型、この三つを対比したときに、その比較を今度していく場合に、それでは何を基準にして私たちが求めたらいいかということを考えてまいりましたところ、結局、国の財政支出がどれだけあるかということを考え一定の批判なりあるいは評価をしていかなくちゃならぬと思うのです。  それで、井上課長が諸外国調査いたしまして報告をしておる中身等をずっと見てまいりました。あるいはその他の資料を見ていきますと、わかりましたのは、例えば八二年で米国の場合と比べますと、米国の場合には一兆六千億財政支出があるわけです。日本の場合には千百三億円ということになりますと、十四・五倍になってます。あるいは英国の場合は、古い資料ですけれども、七八年に千五百二十九億円に対して当時の日本が六百十三億。それからフランスの場合が同じ年で九百四十九億、そのときに日本の場合は同じように六百十三億。それから西独の場合は、八一年の資料で見ますと四千五百億、日本の場合には千三十五億ということになってます。  こうなりますと、今指摘できるのは、こうした国の財政支出がどうであるかということをとらえていかなくちゃならぬと思うのですけれども、非常に少ないということ、この点は確認できますか。
  20. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のように諸外国、特に先進諸外国における公的な育英奨学事業については、先生指摘がありましたように、給費制度主体といたしまして一部貸費制度実施されているわけでございますが、全体的に申せばやはり事業規模相当大きいものになっているということは、御指摘のとおりであろうかと思います。  ただ、国によりまして、やはり国情なり教育制度あるいは大学進学率等が違いまして、その点は一概には申せないわけでございまして、その点は先生幾つかのパターンに分けて御指摘があったわけでございます。そして、全体の財政支出との比較で御指摘もあったわけでございますが、文教政策全体としては、もちろん育英奨学事業もその重要な事業一つと私ども考えておりますが、やはり国全体の総トータルで教育に対する事業として行われているものを把握しなければならないわけでございますので、御指摘のようなことで一概には申せないかと思いますが、私ども率直に申しまして、日本育英奨学事業が全体的には諸外国に比べればなおおくれていると申しますか、充実を要する点ではないかということでは、先生指摘のとおりではないかと思っています。
  21. 中西績介

    中西(績)委員 したがって、少なくともこうした幾つかの国、その中身、形態、いろいろ違いはあるけれども、結局対比できるものとして、日本の場合のような貸与制一本であるというところに一つのおくれがあるということだけでなしに、全体的な国のこういう奨学体制がどうなっておるかということを見る場合には、こうした国の財政支出がどういう状況になっておるかということで対比をしてみたわけでありますけれども、この点で奨学金については立ちおくれておるということをお認めになっておるようでありますから、そういう中でもう一つ大事なことは、今度は教育財政的に教育費がどうなっていっているかということを見なくてはならぬと思うのです。  今、各家庭における過重な教育費支出が非常に問題になり始めております。そこで、文部省要請をいたしましたけれども、出てまいりましたのは大学でなしに、「保護者が支出した教育費調査報告書」だとかいろいろありますけれども、これは高等学校までの分でありますので、具体的に今あるものとしては、文部省調査統計課が出した八一年の分を見ますと、結局国公立の大学の場合には三十三万三千円になっています。それから、私大の場合が四十三万三千円になっています。そしてこの負担は、これは八〇年の調査しかありませんけれども学生生活費年間にいたしまして平均百八万二千円になっています。ところが、一世帯の一カ月の家計消費支出平均額を見ますと、これは二年後の八二年で二十五万三千円であります。この消費支出平均額二十五万三千円の中における大学昼間部の学生生活費年間平均百八万二千円になっておるということになれば、これは大変な負担率であるということが言えると思うのですが、こうした調査なり確認はできていますか。
  22. 宮地貫一

    宮地政府委員 学生生活費の推移で申し上げますと、例えば五十五年度の場合に学費、生活費合計で百八万二千円ということになっているわけでございます。なお、五十七年度の数字で申しますと、その合計額は百二十三万ということになっております。  御指摘のように、全体的に消費支出の指数でございますとかいうものから見れば教育費の上昇ということがあるわけでございますけれども、私どもとしましても、従来文教施策全体において父兄負担の軽減というような観点から各般の施策は進めてまいってきておるわけでございます。例えば育英奨学事業につきましても、従来から単価改定その他で対応してまいったわけでございますが、財政的に非常に厳しい状況を受けまして、単価改定等についてもここ二、三年のところは据え置かれてきておるというようなことも現実問題として起こってきておるわけでございます。そういう非常に厳しい財政状況を受けて、実際問題として具体的な改善がなかなか前進できなかったというようなこともございまして、今回改正でお願いしております点は、そういうような現状を踏まえましてどういう方法でやれば、この単価改定なり量的な拡充なり、両方の要素を踏まえて育英奨学事業の全体の拡充考えていくべきかということについて御議論もいただいて、いろいろ御指摘もあろうかと思いますけれども、ただいま御提案申し上げているような形で、その両者をあわせ実現を図りながら、私どもとしては現在の置かれている状況でとり得る措置としてはこういう方法しかないという判断に立ちまして、現在御提案申し上げているような措置を講じてきておるわけでございます。  もちろん、奨学事業にとどまらず、文教政策全体に教育費父兄負担という問題は、先生指摘のように確かに非常に大きな一つ課題だというぐあいにどもは受けとめておるわけでございまして、非常に大きな点で申せば、一体教育費負担をだれがどう負担するのかという非常に大きな課題が別途あろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、教育機会均等実現という観点からの父兄負担の増大ということについては、確かに問題点があろうかというぐあいに認識をいたしております。これらの点は、非常に大きな点で申せば、ただいま申しましたような教育費をだれがどう負担するかという大きい問題がもちろん背後にあるわけでございまして、それらの点を含めまして文教政策全体の中で総合的に解決を図っていかなければならない課題であろうかというぐあいに認識をいたしております。
  23. 中西績介

    中西(績)委員 今、後半に言われた分については、結局教育費をだれが負担するかという観点から論議をしなくちゃならぬことになるわけでございますけれども受益者負担という政策が徹底し始めた時期がいつごろであるかということを考えながら見ていただくとわかると思うのです。  このようにして、今局長から答弁がありましたように、八二年の学生生活費が百二十三万円ということになってまいりますと、先ほど私が指摘した平均支出額二十五万三千円の半額をこれに充てるという状況にまで既になってきていると考えてもいいわけなんです。そうしますと、そういう教育費をだれが負担するかというと、父母に負担させるというのが今の教育政策の中に具体的に出てき始めておるということが言えるのではないですか。  その一番いい例が、授業料の値上げなどを見てみますと、私学の授業料が高いということを言い、だからといって国公立を引き上げるといういわゆる受益者負担がどうなっておるかということを考えてみた場合に、中教審の中でこういう考え方が出てきたわけでしょう。「個人経済的には有利な投資とみなし得る限度内で適当な金額とすべきであろう。」ということを言い始めてきたのが一九七一年の中教審の提案であります。こうなってまいりますと、結局この時期を考えてまいりますと、例えば私立大学の場合が、個人支出費と学費、授業料等を考えてのことでありますけれども、これの割合を見ますと三四%であったわけであります。ところが、これが八〇年には四四・二%に増大しています。国立の場合が、三・七%であったものが二一・一%。ですから、倍率で言いますと、私学の場合が四・七倍であり、国立の場合が十八倍に増大しているわけです。  このようにして、受益者負担ということを中心に据えて教育費負担させるという考え方が出てきてから急速にこれが倍加されていったということをこの数字は如実に示しておると私は思います。それが、先ほど指摘をいたしましたように、結局消費支出に占める大学学生生活費の割合がどんどん高まってきたと言わざるを得ないわけであります。この点は、今受益者負担というものを私たちがどう考えるか、なぜ私が外国の場合の例をわざわざ一番最初に挙げたかということです。アメリカの場合だって十四・四倍、西ドイツだって四倍という率になり、フランスあるいは英国の場合だって二倍ないし三倍という国の財政支出がある中で、こういう実態が出てきておるということを私たちは十分踏まえた上でこの教育費問題について論議をしていかないと、二十一世紀を目指すとかなんとか言っているけれども、こうしたものがどんどん増大してくれば、二十一世紀を目指せば目指すほどその負担率というものは増大をし続けると言わざるを得ないわけですね。  ですから、今局長が言われました教育費問題というものを考える場合に、それではこうした個人負担受益者負担という政策を改める意思があるかどうかということをまず聞いておかなくてはならぬと思うのですが、この点どうなんですか。
  24. 宮地貫一

    宮地政府委員 教育費をだれがどう負担するかという非常に大きな基本的な問題についての御指摘でございます。もちろん、言われておりますように議論はそれぞれいろいろあるわけでございまして、例えば行政改革としての臨調の答申等で言われております点は、今日の国の財政状況を踏まえまして民間の活力をどのように活用するかというようなことなどが基本的に考え方の視点に据えられているということは、御指摘のとおりではないかと思っております。  それらの点について、私ども文教行政を担当する者としては、やはり従来から進めてまいっております文教政策全般については、その根幹は基本的に堅持をしながら対応していくということでございまして、その際、ただし教育費について公費をどこまで持っていくかという基本的な議論はやはりあろうかと思っております。例えば、私立大学等に対する私学助成の問題も、この奨学事業との関連も出てくるわけでございます。そのほか教育全体についてそういう問題があるわけでございますけれども、全体的な状況の変化と申しますか、国全体の置かれている状況を踏まえ、そして国民の所得水準の向上と、国民がそれぞれどこまで負担し得るかということも念頭に置きながら、その点はやはり全体のバランスをどこに置いていくかということは事柄として考えられる一つ基本的な考え方ではないかと思っております。  私どもとしては、教育政策全体の中で、例えば高等教育の分野について申し上げれば、私学に依存しているところが非常に大きい、そしてまた私学の場合について言えば、受益者としての負担が大きいというような観点からいたしますと、私ども担当している者から申し上げれば、高等教育全体について公的な経費をもっとつぎ込むべきではないかという基本的な観念は持っておるわけでございます。  しかしながら、現実の政策としてどこをどう進めていくかということになりますと、もちろん現実の対応ということも念頭に置かなければならないわけでございます。そういう点を十分私どもとしては念頭に置きながら、教育全体のこれからの量質、どの点を改善していくかということはもちろん全体のバランスの中で見ていかなければなりませんけれども、私ども高等教育を担当する者から申し上げれば、高等教育についてさらに諸外国等の対比その他全体から眺めましても、なお公的な経費をさらに積極的につき込むべきではないかという基本的な認識は持っているものでございます。ただ、現実の政策としてどこをどう取り上げていくかということになれば、それは現実の対応をしていかなければならない、かように考えております。
  25. 中西績介

    中西(績)委員 何を言っているかちょっとわからぬですけれどもね。現実に対応すると言っておりますけれども、私が一番最初に諸外国の例などを持ち出したのも、外国でもこの問題については大変な負担になっておるということはもう事実なんですね。日本の場合には、経済大国になり、他の国々を凌駕したということを自画自賛しているじゃないですか。そうした中において、先ほどから申し上げておるように、国の財政支出がこの分について非常に少佐いということ、このこともまた認めておるわけでしょう。このことは否定できないわけなんです。したがって、この奨学金が立ちおくれておるということも認めておるわけです。  ということになった場合に、その結果が今度は各家庭におけるそれぞれの教育費支出が過重になってきておるということも認めざるを得ないわけでしょう。先ほどのあれからしまして、年平均百二十三万も必要なのに一家の消費支出が月に二十五万三千円、一年に直してみればすぐわかることですよ。そうした中におけるこの奨学金問題であるということ。したがって、今指摘をしましたように、何としても受益者負担というこうした体制が、教育費論議する際に果たして正しい論議であるかどうかということになってくるわけです。  こうしてどんどん上がってきた大きな理由というのは、先ほど指摘をしましたように、国立大学で言うならばこの十年間で十八倍も授業料を値上げをしていった、こういう事態があるわけでありますから、こうしたものを踏まえた上で私たちは高等教育に対する国の財政支出というものをどう受けとめていくのか、そして個人負担というものをどう私たちが少しでも抑えていくかということを考えなければならない。教育基本法三条からいいましても、どんなことがあってもこれを論議せざるを得なくなってくるわけです。  この点、大臣どうなんですか。大臣としては、これからいよいよ二十一世紀へ云々ということも言われておるし、そして教育は百年の大計だ、重要視しなくてはならぬと言われておるわけですね。その際の基本になる憲法、教育基本法を踏まえた上で、我々は今後どうしていくのかということを具体的に考えた場合に、こうした財政支出でよろしいかどうか。特にこの奨学金問題を考えた場合に、どうとらえたらよろしいかということをひとつお答えください。
  26. 森喜朗

    森国務大臣 中西さんに諸外国にわたります奨学制度等もお調べいただき、大変参考にさせていただきまして、まず感謝をいたします。  日本の文教予算は、国全体の予算の比率からいきますと大体一〇%程度、もちろん教育予算がこれでいいかどうかということについてはそれなりのまた立論が出てくるだろうと思いますが、その金がどこにどういうふうに使われていくのか。きのうも内閣委員会でいわゆる定数是正の御質問がございました際にも申し上げたのですが、要はプライオリティーの問題だろうというふうに、現実の問題の対処の仕方は私はそう言わざるを得ないだろうと思うのです。  奨学制度については給与制というのを、先生が今御主張をいただいておるわけです。それはもう貸与制より給与制がいいに決まっているわけです。多くの学生たちのいわゆる教育にかかわる経費をできるだけ公費で援助をしてあげるということもこれは正しい、私はやはり真理だろう、こう思います。しかし、国の財政状況というのがこういう状態になって、いろいろな意味ですべての点を一度見直してみよう、洗い直してみようというのが、今の行政改革あるいはまた財政再建問題でございます。  そうした行革の立場からいえば、奨学金はまあ有利子でもいいのではないかという声が出てくるのも一つ意見でしょう。これは全くだめだ、いけませんとは言えないわけであります。そういう中で、今度国会でお願いをいたしました併用、そして一部制度を改善をしていく、整備をしていく、こういうことでこの国会にお願いをいたしておるわけでありますが、これも臨調の指摘をそのまま受けてやったものではないわけでありまして、局長がたびたび申し上げておりますように、それなりの専門の方々あるいは関係の方々の御意見を踏まえ十分に検討して、今の制度といわゆる併用の形でお願いをいたしておるわけでございます。  先ほどから先生が述べられておられましたことは、極めて正しい真理だろうと私は思います。しかし、冒頭に私が申し上げましたように、一方においては教育費は自分で、自分というよりももちろんこれは扶養者がやるわけでありますけれども、親が出してやっている学生との対比の問題も当然出てくるわけでございます。そういう観点からも見ていかなければならぬことにもなるわけでございましょう。そういう意味で、教育全体が、だれがどう負担をするのか、そしてどれを優先させていくのか、大変難しい問題でありますし、そういう中で今いろいろと御答弁申し上げておりました宮地局長自体も、恐らく基本的にはあなたの考えと同じ、教育を預っている任にありますゆえに、なおそうしたあなたのようなお立場をとりたいというのは、これは個人的にはむしろあなたと同じような気持ち、それ以上の気持ちを持っているだろうと私は思います。しかしながら、国全体の財政の枠の中でどうやっていくか。そして、その枠の中でどれを優先順位で決めていくか。そしてこの法案をお願いをいたしております際に申し上げておりますように、できるだけ量的拡大もしていかなければならぬ、事業量もふやしていきたい、対象の人間もふやしていきたいということになれば、この併用制度をお願いせざるを得ない。給与制をやれということは、これがいいことは決まっておりますが、そのこと自体を今ここでその制度の方向にやり得るかどうかということについては、これはまた別途の政治判断であろうというふうに考えます。貸与制よりも給与制がいいということはだれもが否定し得ない現実問題であろうと私自身も思いますが、国全体の立場から見て、また多くの学生立場から見て、いろいろな角度の中で、また日本の国が歴史的に今の制度一つの選択をして今日まで来たわけでございますから、そういうことをいろいろ考えてまいりますと、大変大事な問題だと考えております。  今先生からも御指摘ございましたけれども、新たに教育改革論議というものを国民の中にこうしてお願いをいたしておることも、やはり臨時教育審議会でこの奨学生問題をどうするかということは言及はできませんけれども、当然二十一世紀に備えての日本教育制度全般にわたって議論をしていくということになれば、教育の経費は国のどれだけの支出であるべきなのか。あるいは、今よく来年度の予算編成の概算要求時に当たって聖域論というのも出ております。教育というのはすべての予算とは別なのだという考え方をとるべきなのかどうか、そうしたことなども当然、教育予算という面で恐らく御論議をいただくようなことにもなるのではないかという期待も持てるわけでございまして、そういう中で奨学資金のあり方というもの、育英のあり方というものもまた十分御議論いただくような、そういうことも期待をできるのではないか。そういう中で改めて、日本のこれからの教育予算の支出、あるいはそれに伴って諸制度をどう整備改善をしていくか。例えば、今議論になっておりますような貸与から給与へという問題についてはどう考えていくべきなのか。あるいはまた、有利子ということを定着させていくべきなのか。今考えているように、いわゆる無利子というものを根幹として幾つかのケースをつくりながら併用していくことがいいのか。そんなこともまた議論の俎上に上るのかもしれませんし、そうしたこともすべて含めて、今中西さんが二十一世紀を展望して、あるいは日本の国は経済大国と言って誇っているではないか、こういう御指摘がありましたから、あえてそうしたこと全般を含めて、日本の国の教育のあり方、あるいはいわゆる公費の負担の仕方、そうしたことなども検討いただける大きな材料ではないだろうか、私はこんなふうにお答えを申し上げておきたいと思います。
  27. 中西績介

    中西(績)委員 そこまで踏み込んで討論をするということになれば、例えば教育財政そのものを考えてみた場合に、国の歳出に占める教育費の割合から、あるいは国民総生産に対する公教育の割合、こういうところまで踏み込まなくちゃならないようになってくるんですよ。そうした場合に、経済大国と言われる日本の場合には、それでは有利になっておるかどうか。この点は非常に低いわけですからね。だから、あらゆるものを当たってみて、教育費が今どういう状況に立たされておるかということを考えてみた場合に、この教育費一連のものとして奨学金の問題も取り上げることができるということなんです。  特に行革問題が論議され始めてからどうなったかというと、例えば八二年、五十七年でありますけれども、文教は二・六%の伸びであり、八三年がマイナス一・一、そして八四年が〇・八というように、この伸び率は二・三でしょう。ところが、防衛費を見ていきますと、防衛費の場合には七・八ふやした上に、それに加えて今度は六・五があり、六・五五があるということになるわけですからね。二一%ぐらい伸びているのですよ。ということになってまいりますと、この教育費論議を根本的にやるとすれば、もう時間がありませんから私はこれでやめますけれども、そうした点で大変落ち込み始めておるし、これから後、この奨学金の問題について枠を拡大したり、さらに我々が期待をするような方向に向けてこれが増額されていくかということになってくると、決してそうでないとここで私が指摘しなければならぬような状況に今なっていきつつあるから、私たちはこのことをあえて時間をかけて言っておるわけですね。  ですから、そうした点を十分踏まえた上でこの論議をしておかぬと、ただ単に奨学金の枠をこれだけふやしましたということだけで論議をしていきますと、何か四年後には四万名近く増員されるからいいじゃないかというような、一昨日の論議を聞いておりますと、そういうことで枠を拡大し充実しましたというようなことを言っておるわけですけれども、私はこれは大変な誤りだと指摘しなくちゃならぬわけです。したがって、時間があれば、先ほどから言う財政の見通しなり国の歳出に占める教育費の割合、あるいは国民総生産が世界的にどうなっておるかというところあたりまで含めて本当は論議をしておかないと、極めて矮小的な論議で、これだけふやしましたからいいじゃないかというようなことになってしまうのじゃないかということを私は大変危惧しておるわけです。  そこで、もう時間がありませんから、私は二、三の点だけ聞いておきます。  今度の新法による日本育英会改正は、何を目標にして改正をしたのか、その点をお答えください。
  28. 宮地貫一

    宮地政府委員 日本育英会でございますけれども、これは先生御案内のとおり、経緯から申せば、昭和十八年に財団法人大日本育英会として国家的規模の学資貸与事業をやるということ、国家的事業として育英事業を行うという帝国議会における全会一致の決議を受けて開始をされ、昭和十九年に大日本育英会法に基づいて特殊法人大日本育英会として設立をされまして、戦時下における制度創設ということもございまして、現行の日本育英会法では、国家有用の人材育成ということを目的としてつくられできたものでございます。  その点は戦後、憲法なりあるいは教育基本法を受けまして、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」ということが規定をされ、そういう点を受けて、戦後、学校教育の普及拡充ということで高等教育進学率も大変増大をしてきたということでございます。  事実上、そういうぐあいに戦後の教育の規模が順次拡大されたことを受けまして、育英会奨学事業も、少数の学生生徒を対象とするものではなくて、教育機会均等の精神を踏まえて、より多くの学生生徒を対象とするように拡充をして今日に至ってきておるという状況があるわけでございます。  それらを受けまして、今回の改正では目的規定でも、人材の育成とともに教育機会均等に寄与するということを目的と掲げた、教育機会均等に寄与することを今回の育英会法の目的の点で明確に打ち出した点でございます。事柄としては、私ども、従来の育英会法でもそういう精神で運用されてきたものと理解しておるわけでございます。
  29. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、今回の場合、これを見ましても、今言うように教育機会均等、これは的を外さず目的の中に明快に示されておるということを今答弁されたわけですね。そうしますと、結局、私は今先ほどから論議をいたしておりますように、じゃそのように教育機会均等を私たちが果たし得るように具体的にそれをどう具現化していくかということが十分そこになければ、わざわざこの育英会法を改正するということにはならぬだろう、こう考えるわけです。  ですから、この変えるという中には、以前はそうしたことが余りにも軽視をされておった、しかし今回の場合にはこのことが明確になってますよというように私は理解をしたいのですが、それでよろしいですか。
  30. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は、先ほども申し上げましたように、本来この目的規定としては、教育機会均等という規定は現行法には規定されていないわけでございますけれども、それは立法当初の経緯を先ほども申し上げたわけでございます。しかしながら、育英奨学事業事業そのものの実施といたしましては、もちろん憲法なり教育基本法を踏まえた運用として実施をしてきておるわけでございまして、その点は戦後今日までの育英奨学事業についての充実という実態をごらんいただければ、教育機会均等という精神を踏まえて運用されてきたことは十分御理解をいただけることというぐあいにども考えております。  ただ、従来、育英会法の改正の機会は何度かあったわけでございますけれども、その点は一言で申せば大変部分的な改正ということが行われたわけでございまして、したがって、それらの機会に目的規定の改正ということについては着手をされていなかったわけでございます。しかしながら、今回は全体的に制度改正を全般的に行う、かつ従来の片仮名書きの法律から平仮名の法律に全面改正をするという機会になりましたので、目的規定でもその点を明確に書くことにしたということが今回の目的規定に加えた経緯であり、御説明でございます。
  31. 中西績介

    中西(績)委員 長々と言っておるわけですけれども、私が聞きたいのは、以前の法律日本育英会法の中にはそのことが明記されてなかった、しかし今回の場合にはそのことが改めて明記をされた、こういうふうに理解をしてよろしいかと言っておるわけですから、この点はそうであるのかないのか、ちょっとはっきりしてください。
  32. 宮地貫一

    宮地政府委員 条文の形で申せばそのとおりでございます。
  33. 中西績介

    中西(績)委員 条文の形でというよりも、少なくとも条文というものはそうした中身まで兼ね備えてそのことが条文化されるというふうに私は理解するのですが、そうではないのですか。
  34. 宮地貫一

    宮地政府委員 もちろん、実態を踏まえまして条文というものは規定されるべきものというぐあいに理解します。
  35. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、そうであればあるほど、私は今度の改正の中に、後になって出てくる有利子問題が一つ大きな問題になる、こう指摘せざるを得ないわけです。  そこで行管庁に、きょうおいでになっていると思いますが、お聞きをしたいと思います。  八二年の七月三十日に基本答申が出されておりますけれども、その中に「高等教育機会均等を確保するため、授業料負担については、育英奨学金の充実等によって対処することとし、」云々ということになっています。そこで、今言う「授業料負担については、育英奨学金の充実等によって対処する」というこの「充実」という意味は何を意味しているのですか。
  36. 新村淳一

    ○新村説明員 お答えいたします。  第三次答申で、「育英奨学金の充実等」と提言では言っております。臨調当時の議論、いろいろ議論の末こういう形の書き方になっております。ただ、全体の文脈といたしましては、「充実等」ということは、高等教育機会均等を確保するために「育英奨学金の量的拡充を図る。」というところにポイントがあると私ども考えております。
  37. 中西績介

    中西(績)委員 そうなりますと、授業料負担について育英奨学金の充実ということになりますと、授業料負担というのは、これは個人負担する中身でしょう。その授業料負担について「育英奨学金の充実等によって」云々ということになっておるわけですから、結局その前、高等教育機会均等確保のため、ですから、機会均等というのは、そういう教育を受けられない人、経済的にいろいろあるでしょうから、そういう皆さんに均等にそうした機会を与えるということになるわけですね。そのために今度は授業料負担について育英奨学金の充実ということになってくると、私が聞きたいのは、その「量的」というのは何を指すのですか。今言う授業料についての負担が余りにも重いからそれを拡大する、そのための量というのは、どっちの量ですか。
  38. 新村淳一

    ○新村説明員 先生のお尋ねは、「量」と書いてある意味がどういうことかというお尋ねだと思います。  私どもは、臨調が終わった後、行革審議会としてそれを受け継いでおりますので、その細目についてどこまで私がここでお答えすべきかわかりません。ただし、やはり高等教育機会均等を確保する、他方で教育費の上昇なり授業料負担の上昇、答申はやはり民間活力なり適切な受益者負担という基本的な考え方で書かれております。その中で、授業料についてそれぞれ適正化を図っていくということも別途書いております。そういった中で「授業料負担について」という言葉のところの――先生の御質問の趣旨、ちょっとわかりにくいのでございますけれども授業料負担が重いか軽いか別としまして、とにかく授業料負担というものの問題が起こる。それについては、高等教育機会均等というのはやはり幅広い中でやっていかなければいかないわけだから、そのためには量的拡大を図る。ですから、端的に言えば、貸付枠の拡大を図るということを臨調答申は言っているものと私ども考えております。
  39. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、私も、今行管庁の方から言われたように、少なくとも機会均等を確保するためには、授業料負担などについて量的の拡大を図ることによって均等を図っていくということを意味しておると思うから聞いたわけです。ですから、この「充実」という意味は、今言うように、授業料などについて十分な支払い能力が出てくるような体制をどうとるかということになってくるわけですね、量的拡大というのは。今あなたが答弁なさったそのことからすると、少なくとも奨学金の額の拡大、そうすることによって授業料負担についての奨学金中身を高めていくという、負担の量を拡大していくという、そういう意味を持っているのでしょう。
  40. 新村淳一

    ○新村説明員 お答え申し上げます。  私の言葉が舌足らずだったかもしれませんので、まずおわび申し上げます。  この「量的拡大」というのは、答申は言葉といたしましてはここまでしか書いておりません。とにかく言っていることは、全体としての貸付枠の拡大を答申は考えていたと思います。その中で、私はこの文章から読みますれば、高等教育機会均等というものをできるだけ、例えば技術的な言葉で言えば、貸与率なりそういうものを維持しながらということをまず念頭に置きながら考えてはいると思います。ですから、どちらかといえば貸付枠の増大、そしてその人員をできるだけ幅広くやるというのがこの考え方だと私どもは思います。ただ、それを貸付枠の拡大の中でどういうふうにこなしていくかというのは、政府においてよく考えるべき問題だと私ども考えております。
  41. 中西績介

    中西(績)委員 枠の拡大、そのことはわかりました。ですから、この貸付枠の拡大を量的拡大と言っておるということですね、今あなたが言っていることは。  そうなってくると、その方策について、今度は外部資金導入、有利子制度へ転換、そうしたものをこれに加えたわけでしょう。拡大するための方策として、今「外部資金の導入による有利子制度への転換こういうように言っておるわけですね、この基本答申の中身というのは。わかりました。  そうなりますと、今度は文部省にお聞きしますけれども文部省考えておる教育機会均等、そのことの中身として、量さえ拡大できれば、今度は負担を増大していくようなことをしてもよろしいというように理解をしてこういう有利子制度をつけ加えたということになるのですか、これを受けてやっていることは事実ですから。そこはどうなんですか。
  42. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの点は、量的拡大をする際に有利子貸与事業ということで考えておるけれども、それと教育機会均等ということとどうかというお尋ねかと思うわけでございますが、私ども、もちろん臨調の答申がありましたことも踏まえまして、しかしながら、当初言われておりました点は、むしろ育英奨学事業有利子で行うことに転換するということが言われたわけでございますけれども、その点は、文教施策としてどうこれを考えるかということについては、既に御説明もしておりますように、調査研究会で種々御議論をいただいた上、無利子貸与事業制度の根幹として残す、その上で、かつ量的拡大を図るためには、今日の財政状況その他全般を受けて、片や貸与月額の引き上げも行いながら量的な拡充を図るとすれば、有利子貸与事業として、もちろん負担考えてそれを低利にするという基本線は私ども踏まえておるわけでございますけれども、そういうことを取り入れることによって、今日の置かれている状況下で貸与月額の引き上げと量的拡充との両方の要請を受けとめていって、全体の事業費としては伸ばしていくという対応をしたわけでございます。
  43. 中西績介

    中西(績)委員 一昨日から論議されておりますように、こうした量的拡大を図る――私は、枠の拡大を図っていくというこのことは間違いでないと思う、我々が機会均等を目標としてやるならば、量的な拡大、貸付枠の拡大をしていくということは。だが、問題はその中身ですよ。やり方を、今言うように有利子化によってやるかどうか、あるいは無利子を根幹とするという言い方をしておりますけれども、根幹とするかどうかは別にしまして、とにかく今までの話の過程をずっと考えていただきたいと思うのですよ。  日本の場合には、世界に余り例のないような貸与制一本で来ていますね。それで今までずっと来た過程があるわけです。外国の場合も、財政的な厳しさというのはみんなあるわけですね。これは井上さんの報告の中にもみんな出ています。しかし、それを全部乗り切りながらどう対応するかということをみんな考えています。  ところが、今、この法改正からいきますと、量的な拡大を図るということ、そのことはいい。また、しなければならぬと思うのですけれども、そのやり方が、今度は諸外国に全く類例のない有利子、こういう体制をとろうとしていますね。外国の場合には、例えばアメリカの場合には有利子制度などありますよ。あるけれども、その中身というのは、根幹になるのは給与制でしょう。補完的な意味貸与制があり、ローンがある、こういう格好でしょう。日本の場合にはそうしたことではなくて、むしろ今度は大きく後退をする中身でしかない有利子制を導入して、ただ単に枠を、数をわずかだけれども拡大をしていく。一昨日から論議されておりますように、これはもう論議する時間がありませんから私はここでは申し上げませんけれども、利子補給の面やいろいろなことを全部計算していけば、おとといですか、全部資料を提出してくれと言ったのだけれども、まだ出てないようであります。そういうことからいたしますと、ちっとも財政的にもこれが大きくプラスをするとかなんとかいう中身じゃないのですよ。それなのに、何でこういうことを導入しなければならなかったかということが私はどうしてもうなずけないのですね。この点、どうなんですか。
  44. 宮地貫一

    宮地政府委員 諸外国制度に比べて我が国の制度そのものが立ちおくれているのに、なぜさらに有利子制度というような、ほかの国にない制度を導入するのかというわけでございますけれども、従来から御説明をしている点でございますが、その点は、無利子貸与制度はもちろん制度の根幹として存続をさせるという点で、私どもとしては、臨調で言われておりました点を文教施策としてこれは必要であるという判断のもとに、むしろ無利子貸与制度そのものを根幹として存続させるという観点で、私どもはその点は文教の立場を十分貫いたつもりでございます。  しかしながら、片や貸与月額の増ということも図っていかなければならない。そして、かつ量的な拡充も図るというような要請をどう解決するかということで、今回お願いをしておりますような有利子制度を導入するということにしたわけでございます。もちろん、これについても、一昨日の御議論でもいただきましたように、私どもとしても将来の返還に当たっての負担ということも十分配慮いたしまして、その点は年利三%で低利を貫くということで、これは従来の私大奨学事業の場合よりも利率の点で申せばさらに低利で抑えておるということでございまして、私どもとしてもその点は十分配慮をして、奨学生の将来の返還の負担ということも念頭に置いた対応をしたつもりでございます。  したがいまして、奨学制度をどう運用していくかというのは、それぞれ置かれている状況に応じて対応は異なることでございますが、御指摘のように無利子貸与事業を、貸与月額も人員もともに伸ばせるという財政状況下であれば、もちろんその選択をするに私どももやぶさかでないわけでございますけれども、現実の問題はそうではないわけでございますので、こういう対応をして、月額の増と量的な拡充という、いわばその両面を達成するという観点から今回の有利子貸与制度を導入したということでございます。
  45. 中西績介

    中西(績)委員 いろいろ言っておりますけれども、まず第一に確認をしなければならぬのは、さっきから何回も言っているように、例えば外国の場合を考えてみますと、英国の場合が進学率は二二・一%だけれどもその奨学生の率は九〇%でしょう。そして、しかも今度はフランスの場合だって二四%で、その一〇%だけれども、ちょうど日本と同じ体制に入ろうとしておる西ドイツの場合だって二三・二%、確かに日本よりも十何%進学率は少ないにしても、その率は四〇%になっていますね。だから、数が第一に少数だということ。同じような形態に近いアメリカの場合だって、これはもう既に四五%に達しているわけですからね。ですから、結局少数であるし、低額であるし、そうした中で、今言うように貸与額を伸ばさなければならないから、あるいは低利であるからこれをつけ加えるんだという言い方は、私はどうしても出てこぬと言うのですよ、日本の財源からしましても。財源がないないと言うけれども、やる意思があるかないかによって決まってくるのじゃないかと私は思うのです。ここら辺をひとつ踏まえないと、それを前提にしてすべてをローラーかけていくということになれば、どこかでつじつまを合わせなければならぬから、こうした措置だってとらなくちゃならぬということになってくるわけでしょう。  ですから、私は、今までの論議の過程からいたしましても、少なくとも今日本における奨学資金というものがどういう位置づけに置かれておるかということをもう一度根本的に論議をし直さぬと、これをここでよろしいとかあるいはそうあるべきだと幾らあなたたちが言われても、そうにはなかなかなり得ないと思うのですね。特に、根幹とするこの無利子の貸与生だって九千人減らしているわけです。実際に一般会計からの持ち出しの金額を考えてみましても、ことしの場合には四十六億ぐらい減額しておるわけでしょう。全体的な貸付金額は上がっていますけれども、それは返ってくる金だとかそういうものが相当数入ってきますから、全体的には押し上げていますけれども、実際にはそれに無利子で処置をする分については四十五億程度はマイナス予算になっているのです。ですから、皆さんが本当にこの点について前進的に物を考えておるかどうかということを考えた場合に、私は、そうはなっていない、こう受けとめざるを得ないわけなんですね。  そこで、私は一つの例を申し上げてみたいと思うのですけれども育英奨学制度の抜本的改悪に反対する連絡会議奨学金問題に関するアンケートを、文部省、大蔵省、行管庁という関係の省庁に特定しまして調査をしていますよ。これを見ますと、残念ながら出てきた数は確かに少ない。ところが、ここに出てきておる数値をずっと見てみますと、例えば「日本における教育費についてあなたはどう思いますか」というと、「高過ぎる」「やや高い」というのが七〇%近くもやはりある。これはおたくのですよ。あるいは金を握っている大蔵省、あるいはこういうことをやれやれと言っている行管庁、そういうところの人たち意見としてそうなんです。そして今度は二番目に、「家計における教育費の割合はどのくらいですか」というと、これまた非常に高い率を占めている。あるいは「あなたの現在の年収で日本育英会から奨学金が借りられますか」ということを聞きますと、「借りられない」という人が非常に多いわけですね。係長、課長以上の人たちの中では、半数以上がみんなそれに該当するでしょう。現行収入基準が私立大学で特奨の場合で五百二万円以下になっていますからね。こういうようなことをずっと調べていきますと、本当に私たちが主張するようなことが、そういうところにいらっしゃる皆さんの場合だってみんなそうなんです。だから、大臣は先ほど、局長も私より以上にこうした問題については公費でもって拡大をしていきたいだろうということを言われておりましたね、そのことが如実に計数の上から出てきます。もう全部を言う時間がありませんけれども……。  特に、この中でいろいろな意見などを後で書いていただいている中身等を見ますと、やはり根本的にこの育英制度そのものをどういうところに位置づけをしていくかということが非常に大事だということを書いている人たちがいますね。ですから、こうしたことを考え合わせてまいりますと、一昨日からの論議から、そして振り返って見まして、この前池田さんが言われましたように、とにかくこうした家庭の経済を圧迫する、そのことが国内需要を大きく後退させておる。  同時に、特に私がもう一つ指摘をしたいと思うのは、例えば文部省が今やっておる設備施設充実のための費用などについても、五十九年度四百七十億マイナス、三年間で千二百億を超える額になっていますよね。そうなってくると、これこそ最も典型的公共事業。全国津々浦々のこうしたものを、他の公共事業を高めろ高めろと言っている人たちが、この分についてはどんどん削り込んでいくというようなことを平気でやっておるわけでしょう。こうしたことを考え合わせていきますと、今本当に我々が、経済的な面からいたしましても、あるいは私たち生活の面からいたしましても、それから教育の面からいたしましても、このことが今どうあるべきかということを問い直されておる時期であるがゆえに、だからこそ二十一世紀を目指す教育改革というのを打ち出してきたのだろうと私は思うのですよ。だのに、こういう問題についてはむしろマイナスの面を追求する、こうしたことしか出ておらないというところに、私は行政施策政策の貧困さというものがあるのじゃないかということを感じるわけです。この点、大臣どうですか。
  46. 森喜朗

    森国務大臣 おしかりをいただくかもしれませんが、諸外国の例、比べてみなければならぬ点もありますし、制度として関心を持たなければならぬところもございますが、数字の絶対数から言えば少ないという面もございますでしょう。そういうことを申し上げたらまた先ほどの議論のようになってしまいますが、いずれにいたしましても、厳しい状況の中で少しでも量を拡大したいのだ、少しでも単価も上げてあげたいのだ、そういう気持ちの中で、政府といたしまして最大限の努力をして新しい方策を見出してきているわけでございます。  基本的には給与制がいいというのは、私も先ほど申し上げたように、いいことはいいに決まっているわけでございますが、制度の採用というか選択として、政治判断として、私どもはこの方法をずっと選択してまいり、その中で少しでも改善するように努力をしてきた、こう申し上げる以外にはないわけでございます。  新たな給与制検討してみる、またもう少し育英制度というものについて根本的に改めてみろということは、これはまた別の政治次元の問題でございますので、私自身としても、十二分にこうしたことは将来検討してみる一つの大きな課題であることは間違いございませんが、そこまでまいりますと、議論といたしましては、教育経費の全体の負担をだれがどう持つのか、また、同じような年齢層の中での学生に対する国のあり方と、そうでない、現実に社会に働いている人たちとの不公平、公平という問題点、いろいろな角度から見ていかなければならぬというふうに思います。  私は何度も申し上げておりますように、中西さんに先ほどから御指摘いただいている点は、ある意味ではと言ったらまたおしかりをいただくかもしれませんが、ある意味では正しい理論だろうと思います。ただ、今の日本の国として、従来の歴史から今の制度を選択してきて、その中で改善をしていきたい。そして、さまざまな意見が育英奨学というものに対して今起きているわけでございまして、その中で苦労をいたしながらこういう方策を生み出したということでございますので、この方策は御議論というもの、そしてまた賛成、反対というものは当然あるわけでございましょうが、私どもといたしましては、この制度で少しでも学生諸君に対する量的な拡充をしたい、こういう考えから編み出して、国会でぜひ御賛同いただきたい、こういう意味でお願いをいたしておるわけでございますので、御指摘をいただきました点は、文部省といたしましても、また私個人としても政治家としても、十二分に参考にさせていただき、今後とも検討させていただきたい、こう申し上げて、ぜひとも成立をさせていただきたいとお願いするだけでございます。
  47. 中西績介

    中西(績)委員 少なくとも私は、森大臣は長い間教育行政を中心に据えて政策追求をされたということをお聞きしておりますけれども、そうなってまいりますと、財源ということを絶えず言われるわけなのだけれども、その財源をどのように配分するかということが政策追求する場合に問題点だろうと私は思うのですね。  そうした場合に、先ほどから皆さんが主張なさっておられるように、無利子貸与を根幹とするということを言い張るなら、少なくともそれを基本に据えて、どう拡大をしていくかということを考えるべきではないか。その際に、むしろ、片や予算面における財源が厳しいから、それによってすべてを圧迫しますよ、その圧迫する部分が、では教育という部分をどういう位置づけをしていくかということで論議をしていかなければならぬわけでありますから、その際に、私は例として、これは当たるかどうかわかりませんけれども、私たちに言わせると、財政事情という点だけを取り上げていくなら、これが設けられた昭和十八年ですか、ですから一九四三年にこれが取り上げられたと思うのですけれども、こういうことになってまいりますと、当時は軍事経済下における財政事情というものはどうであったかというのを私たちはここで論議する必要も何もないのですね。そういうときにだって、そしてその明くる年の一九四四年から四五年にかけての当初からの増員していったその数の率からすると、物すごい伸びを示していきましたよね。伸びを示すということは、財源的には物すごい財源が必要であったということを意味するわけです。ですから、ああいう時期においてもやはり教育というものを大事にした。目的的にはいろいろ問題があるでしょう。しかし、大事にしたということについては私は変わりないと思うのです。  ですから、そうしたことから考えてまいりますと、今皆さんが言われるように、財政的に大変厳しいということだけでこれを律していくということにはならぬのではないか。ですから、教育をいかに大事にするかという、こっち側をどれだけ重要視し得るかどうかという論議になると私は思うのです。ここを論議せずして、今大臣が言われるように、この点を私たちに十分理解してくれなどと言っても、これはなかなか理解できない。その点だけを申し上げて、私は終わりたいと思います。
  48. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後一時から委員会を開会することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ――――◇―――――     午後一時七分開議
  49. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中野寛成君。
  50. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 育英会法案についてお尋ねをするわけでありますが、この育英奨学制度を今回改正する趣旨、もっとざっくばらんに言いますと、みそはどこにあるのかということを、まず大臣にお尋ねをしたいと思います。
  51. 森喜朗

    森国務大臣 たびたびお答えを申し上げておりまして、中野先生にまた同じようなことを申し上げるようで恐縮でございますが、日本育英会法が施行されました昭和十九年以来、各種の貸与を受けた学生生徒は大変大きな数字でございます。三百万を超えて約四百万近く、それが今日の日本の国の繁栄のために大変寄与していただいたわけでございます。そういう意味で、日本育英会法というのはまさに日本の繁栄のために大きな役割を果たしているというのも御承知のとおりでございます。  最近よく言われますように、高等教育進学される方々が量的に大変多くなってまいりました。そういう意味で、そうした普及状況を踏まえながら、そしてまた一方におきましては、日本の国の経済情勢あるいは社会のいろいろな要因、そうしたことを考えまして、育英奨学というものをもう少し抜本的に見直し、ある意味では改善充実をしていかなければなりませんが、また一面、臨調に、おきますような答申あるいは指摘等もございます。そういう中で、何といいましても、やはり機会均等と量の拡大をするということが私どもの一番大事な悲願でございますから、そういうことをねらいに拡大をしてまいりましても、やはり財政的な理由というものはどうしても頭に引っかかってくるわけでございます。そういう中でいろいろ苦慮をしながらも量的な拡大をぜひやっていきたい。こういうことで、無利子から一部有利子貸与制というものを組み合わせてやっていこうというところでございます。もちろん、利子をちょうだいするということについてはいろいろの御意見もあることは十分承知をいたしておりますけれども、無利子制というものを事業の根幹ということにいたしまして、確かに無利子の対象人員は少し減っていくわけでございますが、全体的な枠として事業量を拡大する、あるいは単価アップなどをして改善もしていく、そして奨学生の期待にできるだけ多くおこたえをしていきたいということが今回の法律改正のねらいでございまして、あえてみそは何かと言われますと、果たしてみそのような、そういう役割を果たすのかどうかということについてはそれぞれの立場で御意見もあろうかと思いますが、私どもとしては現状のこうした状況の中で最善の努力をいたした改善策である、こういうふうにぜひ御理解をいただきたいと思う次第であります。
  52. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 この提案は、法律改正と言ったり、また批判的に見る方は改悪と言ったり、いろいろですね。私はプラス、マイナスあると思っております。無利子の方は人数的には縮小されました。しかし単価は、上がったと言えるほど評価する人がいるかどうか別にいたしまして、少なくとも名目の金額は上がろうとしております。また、有利子とはいえ、対象がかなり大幅に拡大をされるという一面があります。無利子貸与の枠が狭まったことはマイナスであります。コストが上がったこと及び有利子とはいえ枠が拡大されることはプラス面であります。そういう意味ではプラス、マイナスどっちが残るかなという感じで、言うならば育英制度が幾らか変わるというふうな印象を一見受けるわけであります。  ただ、そこでなぜこれだけの議論を呼ぶのか。この問題を少し突き詰めて考えてみたいと思いますが、この法改正によって、改正といいますか、法律が改められることによって変わるところと、もう一つは予算上圧縮をされたところとあるのではないか。法律と予算、法律とお金、これを混同いたしますと、無利子貸与が削られてその部分が有利子の費用に回されたかな、制度的にはえらい後退だなというふうになりますね。  これを区分けして考えますと、予算がマイナスシーリングで削られて、無利子貸与はそのまま残っているのだけれども対象範囲が狭められた。しかし、窮余の一策として、財投資金であろうと何であろうとそれを導入して、有利子とはいえ枠を拡大すると言って文部省の井上さんあたりが一生懸命苦労して、これはまさに大変すばらしいアイデアであると自慢されるかどうかわかりませんけれども、思っておられるかもわからない。そういうふうな見方ができないこともない。ゆえに、この育英制度考えますときに文部省としてこれらのことについてどうお考えなのか、御説明いただきたいと思います。
  53. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のように。全体的にどう把握をしているかということでございますが、例えば今回もし制度改正がなくて現行法のもとで五十九年度予算がどうかというような観点から考えてみますと、貸付金につきましては五%のマイナスシーリングということが予算編成全体の一つの流れとして打ち出されたわけでございまして、貸付金については五十八年度に比べて五%程度の減額ということが出てくるわけでございます。そこで、この場合返還金の増が見込まれるわけでございますけれども事業費総額としてはほぼそれに見合う程度の前年度同額程度ということになるわけでございまして、その中で仮に改善事業を行うとしましたら、人員を前年並みとすれば月額の引き上げは行えないということになるわけでございます。また貸与月額の引き上げを行えば人員の減少につながる、人員の削減のみが結果として残ってくるという形になるわけでございます。  そこで、そういう事情を考えまして、改善を行うとすればということで先ほどもお話が出ましたけれども、無利子貸与制度はもちろん根幹として存続をし、一般貸与、特別貸与を一本化いたしまして、貸与月額は授業料改定等もございますのでそれらの見合いということで増額をする。もちろん一般貸与、特別貸与の一本化ということで、一般貸与貸与月額も引き上げる、その上にさらに上乗せの増額、これについては必ずしも十分でないという御批判もあるいはあるかもしれませんが、そういう増額を図ったわけでございます。  そこで、御指摘のように、無利子貸与事業については人員が城となったわけでございますけれども事業費としては約二億の増を図っております。それ以外に、さらに貸与人員の減ということだけにとどまっていないで、もちろん低利子の有利子貸与を導入することによって人員を相当大幅にふやすことになったということでございまして、もし今回の制度改正なかりせばということで比較をしていただけるならば、これらの点については、貸与する一つの今日の案としては、私どもとしては現在選択し得る道としてはこういう方法ではなかったかというぐあいに理解をしているわけでございます。
  54. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 そうすると、現行法でいきますと、先般国会で成立を見ました今年度予算の中で現行法を適用いたしますと、コストの引き上げはできない、枠は狭められる。言うならばそのための予算が削られているわけだから、結局現行法のままでいくと大変な後退を余儀なくされる、こういうことにならざるを得ないと思います。金額としては、この返還金がありますからそれほど大幅に削られなくてもいいかもしれませんけれども、今局長がおっしゃったように、単価を上げれば全体の枠を削らざるを得ない、枠をそのまま保とうと思えば単価アップはできない、こういう結論ですね。現行法だと何の進歩も変化も発展もないということになってしまう。新たに改正法によってこの枠を拡大してできるだけ多くの学生皆さん――国家社会にとって有為な人材なんてだれがどう評価するのか、どう判断するのかさっぱりわかりません。私なんかは学生時代には成績が悪かったので、とてもこの対象にならなかったと思うのですけれども、国家有為の人材におれは自力でなろうと思った、今は悪い方になったかもしれませんが。しかしながら、そんな評価というのは果たしてだれができるのか、学力だけでできるのか、こういう問題がありますね。  できるならば、本当は学んでいこうという意欲のある人すべてに適用されるということが理想的です。先ほど来議論されているように、給与制度が一番いいことも当然決まっていることであります。しかし、そういう中で現在の財政その他を考えると、無利子貸与は予算面で制約を受けてしまう。これは政府がそうしているのですけれども、その中でせめてもの努力として財投資金を活用して有利子貸与の枠を拡大していく、こういうことはある意味では私はこの奨学金制度の進歩であろうと思います。  ただ、よく心配をされますのは、無利子貸与制度が根幹であると先ほど来もおっしゃっている。しかしながら、有利子制度が導入されることによって無利子の方はもうこれからいよいよ難しい、無利子をだんだん削減していって将来は全部有利子制度にしてしまうのじゃないか。今は低利三%と言っているけれども、将来ともに三%でいけるのか。できれば二%、一%の方がいい、もちろん無利子がいいけれども、今三%と言っている。これを悪い方に考えて、将来ともに三%を守っていけるのか。例えばその他の金利がどんどん上がってくる、三%が維持できない、またはトータルとしての財投の利子が高くなっていくときに、こっちを三%に据え置いておけばその差額は埋めなければいけない。その埋めるお金はどこから持ってくるか、それは無利子貸与の方を削ってそっちへ持ってくるのではないか、こういう心配が当然出てくる。その突破口が今開かれようとしているのではないかというのが皆さんの心配の種であります。  そういうことは断じてしない、無利子貸与制度を根幹とし、マイナスシーリングの中で財政状態は厳しいから枠は今回減っているけれども、この枠の拡大は今後とも努力していくんだ、そして有利子制度にそれがとってかわるようなことは絶対しないのだというお約束ができますか。
  55. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘の点は、私どもとしては、今回この制度を創設するに当たりまして、十分調査研究会でも御検討いただいた結論を得て対応しているわけでございます。無利子貸与制度を根幹として、ただいま先生指摘のように、今後それの拡充ということについてももちろん努力をしなければならぬことだと思っております。ましてや今御指摘のように、順次無利子貸与制度を有利子貸与制度に切りかえるというようなことなどは断じて考えておりません。
  56. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 有利子貸与制度の中で、例えば利息等の率が変わってまいりました場合、文部省の予算の中からそれに充当するためにほかのものが削られるという心配はありませんか。
  57. 宮地貫一

    宮地政府委員 私ども文教政策全体をどれも重要なものと考えているわけでございます。したがって、有利子制度の利子補給のために、例えば御指摘のように無利子貸与の経費の方が削られるというような事態は断じてないように私どもとしても最善の努力を傾けてまいりたい、かように考えております。
  58. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 この法案審議の最中にはそういうふうに局長が約束したけれども、年度が変わってますます苦しくなってきて、やれどうしようかというときに、その約束が破られることを恐れるわけです。恐らく皆さん、そういうおそれをお持ちだろうと思います。だから無利子貸与の枠も、これから財政事情にもよるけれども、それを乗り越えて拡大の努力をしていくんだ、そして有利子貸与もまたそれを補完するものとして充実発展をさせていくんだということであれば、単価アップも含めましてマイナス面は何もないわけであります。将来にわたって心配するようなものが払拭されることがまず何よりも大事であると思うのであります。  そのことがはっきりと約束されるならば、今問題なのは何かといえば、今だに結論が出ないで学生皆さんを待たせたままにしているということが悪いことになってしまう。現行法で融通がきかせられないとかなんとかということで、現在の緊急避難的行動をこの委員会意思、要望等によって文部省は工夫をなさっていますけれども、本来はその必要がないような時期に早くこの結論を出すべきなのであります。今からでも遅くはない、それを急ぐべきである。そのためには文部省も、この法改定によって与えるマイナスはないのだということを明らかに証明されることが何よりも肝要であります。そのために私は重ねてお聞きをしたわけであります。  再度聞きますが、法律改定されることによって無利子貸与の枠が狭まったのではない、これはことしの予算が厳しかったから狭められたのだ。法律が改められようと、これから先、来年、再来年あらゆる努力をして無利子貸与の枠を拡大をしていく。また有利子貸与に変わることによってそれをなし崩しにしていくようなことは断じてない、くどいようですが、そのことを改めて大臣からも御確約をいただきたいと私は思います。
  59. 森喜朗

    森国務大臣 例えば単価アップにいたしましても、しばらく凍結をされていたわけでありまして、経済情勢から見ましても、物価あるいはまた学生生活経費というものを考えてみましても、授業料等を考えてみましても、そこは当然できるだけ充実してあげなければならぬ、そのことは文部省としても育英奨学を大事にする考えからいえば、何としても実現したいところであります。  今、中野さんが御指摘になりましたように、財政状況はこういうことです。全体的にシーリングがかかっております。一方においては、臨調では奨学資金制度そのものについての考え方指摘しております。中西さんのときの御質問にもお答えを申し上げましたが、社会全体が奨学資金というものについてどう考えているかということも、やはり国民の合意も得ていかなければならぬものだろうと思います。  そういう中でいろいろ考えて、今中野さんがおっしゃったように、何とかして単価アップを図ってあげたい。しかし財政が限られている。したがって量の拡大はできるだけしていきたいというのは、これは自由民主党の今日まで文教政策をやっておりました私どもにとりましても、育英奨学の充実というのは大きな柱でございました。したがってここのところの拡大をということになりますと、今中野さんから明快なる御解説をいただいたように、まさにそこのところなんです。確かにおっしゃるとおり、もうここでこれ以上は利息の問題でありますとか、あるいはまた、いわゆる無利子貸与の枠をさらに削減していくとか、そういうことは大きな政策決定の問題になってまいります。私どもといたしましては、先ほどからたびたび申し上げておりますように、無利子貸与制度というのはぜひこれを根幹としていきたい、このことがやはり第一義でございます。  しかしながら、学生の中にもさまざまな生活を持っておられる人たちもおられるわけですし、かつて相当前の国会、まだ延長前でございましたが、たしか江田さんの御質問のときでしたか、ちょっと私も触れましたように、社会全体の仕組みも少し変わっておりますし、アルバイトというようなことも、私ども学生時代から見ると随分さま変わりをいたしております。そういうようなこともいろいろ考えますと、三%程度の利子を払っていただくことはそう難しくないんだというような学生さんもおられるのではないか、そういう方にはそういう形で少し御協力をいただいて、その分だけ対象をできるだけふやしてあげるということが、むしろ政治判断としてはプラスなのではないだろうか。しかも、学生時代ならばともかくもちろん無利子でありますが、卒業後御返還をいただく、その返還のところからやっていただくわけでございますから、そして育英奨学制度というものは、政府の出資金と、もう一つは返還していただいたそのお金をもとに運営をいたしていくわけでございますから、いろいろと見方によれば、そんなばかなことはないという意見もあるでございましょうが、現実の学生の実態もいろいろ考えてみて、そこのところはむしろ少しふやすということに私どもの政治の主眼を置いた方が得策である、そのことがむしろ学生立場に立つことになるのではないか、こういう判断をいたしたわけでございます。  したがって、繰り返して恐縮でありますが、無利子貸与制というのは育英奨学の大きな柱でありますから、これはなお一層しっかり守っていきたいし、でき得れば、これからの予算情勢というものはどういうふうになっていくか、推移はわかりませんけれども日本の経済情勢あるいは財政状況というものにかんがみて、なお一層無利子の枠が広がることも当然これはあり得ることでございますし、私どもも政治家としてそのことは心していかなければならぬと考えております。  なお、利子につきましては、これはあくまでも私ども立場だけで考えられるものではない。これはやはり一般の通例によります、あるいはまた、そうした財政投融資資金等の利息等々というものはある程度頭に置いておかなければならぬことでございますが、しかし、こういう形で学生に対する貸与という特殊な状況というものにかんがみて、利子についても最大の配慮をしていかなければならぬということでございますので、断々断固として利息は絶対に今後とも変えませんということは、私は今の立場で言いたいのですが、私がずっと文部大臣をやっておるわけではありませんので、私はそういう気持ちではおりますが、しかし、そこのところは十分配慮して行き届いた奨学生制度というものをなお一層充実をさせる、こういうことをここで申し上げることによって、そういう私どもの気持ちをぜひお酌み取りをいただきたい、こう申し上げておきたいと思います。
  60. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 文部大臣を初め大学局長から今、私の開かんとするところについての御答弁をいただきました。これは文部省意思または政府意思ということだけではなくて、私は、国会意思もまたそうありたいと思います。そういう意味で、委員長に、この審議終了後、附帯決議等の相談も改めて御提案申し上げたいと思います。その中で、無利子貸与をあくまでも根幹とすること、また予算を十分確保して無利子貸与の拡大を図るように努力をしていくこと、有利子貸与が主流になるようなことは断じてしないこと、またその有利子の場合も利率がアップされるようなことが将来ともにないこと、それらのことを含んだ附帯決議を御提案申し上げたいと思いますが、委員長の方で御検討いただきたいと思います。
  61. 愛野興一郎

    愛野委員長 ただいまの御提案は、提案をされた後に理事会において取り扱いをいたします。
  62. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 さて、次に進みますが、我が国の教育制度教育に対する公費の支出の状況というのは、トータル的に見ますと、先進諸国に比べてそれほど見劣りをしているわけではありません。しかしながら、高等教育費に関しましては公費負担の割合はやはりどうしても低い。この育英制度でも同じことが言えると思います。また、私費の中で学生納付金の負担割合が先進諸国に比べて最も高いということも、残念ながら事実であります。  こう考えますと、私どもは、この育英制度とともに、高等教育についての全体的な事業規模の拡大、また予算規模の拡大等々はもっと努力していかなければなりませんし、また学生納付金の負担割合も引き下げる努力が当然なされなければならないと思います。これらのことについての基本的なお考えはいかがでしょうか。
  63. 宮地貫一

    宮地政府委員 特に我が国の場合、高等教育費における公費負担の割合が低くて私費負担の割合が高いという点は、御指摘のとおりでございます。  私費負担に占めます学生納付金の割合が高いことにつきましても、御案内のとおり、我が国が高等教育については有償であり、かつ諸外国に比べて高等教育に占める私立学校の割合が高い、学生数全体の七八%を占めているという状況を踏まえまして、かつ私立学校においては基本的には学生負担ということがあるわけでございまして、これらを通じて見れば、全体でやはり学生納付金の割合等も高くなっているわけでございます。諸外国に比べてもちろんそういう状況にあるわけでございますが、先ほど来お話が出ておりますように、国によりまして、国情なりあるいは教育制度、アメリカの場合とヨーロッパ諸国の場合とにおきましても、既に高等教育のあり方そのものについても差もあるわけでございますし、また、そもそも高等教育の経費を基本的にはすべて公の経費で持つべきではないかという考え方も片方ある国も多いわけでございます。それらの点がございますので、一概比較はできないわけでございますけれども、今回の制度改正に当たりましてもそういう状況も踏まえまして、基本的には育英奨学事業の充実という観点から対応をしておるわけでございます。  教育費の問題については、もちろん全体的な中でどうあるべきかという基本的な議論が片方ではあることは事実でございます。しかし、先ほどもお話が出ておりましたように、例えば日本の場合、特に初等中等教育における公費負担ということは、今日までの施策の充実で相当充実してきておるものと私ども理解をしておるわけでございますが、御指摘のように高等教育の分野においては、その点が諸外国に比べてもまだ低いということは言えるわけでございまして、特に私ども高等教育を担当している者として申せば、やはり高等教育費全体の中で公的な負担をより一層重視すべきだという点は御指摘のとおりであり、今後の一つの努力すべき事柄ではないか、かように考えております。
  64. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それから、私どもは、育英奨学事業の場合も、実は民間資金の導入を我が党は今日まで提案をしてまいりました。今回、財政投融資資金の導入ということでこの育英奨学事業費の拡大を図るということなんですが、これらのことについて御工夫はありませんか。これらのことについて文部省としてもっと御努力をなさるべきではないだろうかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  65. 宮地貫一

    宮地政府委員 今回、財投資金の導入ということで有村子貸与制度を創設することにしたわけでございますが、問題は、さらに民間資本の導入ということも考えるべきではないかという御指摘でございます。  もちろん、それらの点も十分議論をすべき課題ということで対応はいたしたわけでございますが、従来から一般会計からの政府貸付金ということで基本的に対応してきたことに対して、今回の有利子貸与制度の創設に当たっては、安定的な資金の供給その他全般的に考えれば、やはり財投の資金を導入することが基本的には育英奨学事業の性格、あるいは事業の継続性、安定性というようなものから見て、当面は財投の資金で対応するということで処理をいたしたわけでございます。さらに、民間資金の導入ということも、将来の課題としては私どもも研究をさせていただきたい、かように考えます。
  66. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ちょっと育英事業と違うのですが、民間金融機関の行う教育ローン、育英会がやる育英事業もこの教育ローンと同じだ、こうおっしゃる方もいらっしゃいますが、そういう比喩は別にいたしまして、民間金融機関の行う教育ローンについて、学生の学力それから家計や融資金額や返済期間等の融資条件等について一定の要件や基準を設ける、また、それに合致した者については育英会が利子補給をするというふうな別な幅広い工夫というものも、育英事業の拡大の一環として工夫されてもいいのではないだろうか。しかし、これとドッキングさせることは技術的に大変難しいことはよく承知いたしておりますが、工夫の余地があると思います。いかがお考えでしょう。
  67. 宮地貫一

    宮地政府委員 過去に文部省におきましても、学生負担軽減方策の一つということで、昭和四十五年から四十七年にかけまして、学資ローン制度の創設について検討を行ったことがあるわけでございます。ただ、その際は、金融機関から要求をされますいろいろな条件につきましていろいろ問題点があるということで、当時その創設が見送られたというような従来の経緯がございます。  したがって、こういう過去の経緯もあるわけでございますので、今回は育英会そのものが低利の有利子貸与制度をみずから実施をするという形でこの制度をつくったわけでございまして、さらに、お話しのような民間金融機関の行いますローンについて公的な機関がどう関与すべきか、より積極的にそれを伸ばすために対応すべきではないかというのは確かに貴重な御意見かと思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、今回制度創設をお願いしております育英会そのものの行いますこの低利の有利子貸与事業が、実際に学生の要望に対してどこまでどういうぐあいにこたえられることになるのか、そういう事業実施状況その他も十分見ました上で、さらに御提案のような事柄を積極的に考えるべきかどうかについてはそういう時点検討をさせていただきたい、かように考えております。
  68. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは、若干技術論といいますか各論についてここでお尋ねをいたしますが、無利子貸与制度と有利子貸与制度の対象となる学生は、どこがどのくらい違うのですか。
  69. 宮地貫一

    宮地政府委員 無利子貸与制度と有利子貸与制度の対象となる学生でございますけれども対象となる者の基準については新しい育英会法が成立した後、この法律の趣旨に沿って決められることになるわけでございます。  現在考えております点でご説明を申し上げますと、家計収入の限度額について申し上げますと、給与所得世帯を例にとりますと、大学の無利子貸与にありましては、国公立大学で現行の四百七十二万円から五百六十五万円に引き上げることにし、私立大学では現行の五百二万円から五百九十七万円に改定をするというような考え方考えております。なお、有利子貸与の場合にありましては、これをさらに百万円程度上回るということで、先ほども議論ございましたように、給与所得世帯の所得制限で現行の制度でございますと、従来所得制限が相当きついという点があったわけでございますが、今回それらの点の改善とともに、さらに有利子貸与の場合には百万円程度上回るということで、対象範囲をそれて相当広げていくという考え方をとっております。  それからもう一つ、学業成績の基準の点でございますが、大学の現行の一般貸与が高校成績平均が三・二ということで、これも数字でとらえることについての是非についてはいろいろ御議論があるところであろうかと思いますが、現行はそういう形になっております。特別貸与が高校成績平均が三・五になっておりますので、こういうものを考慮しながら決めることになるわけでございますが、無利子貸与についてはおおむね高校成績が平均三・五以上、有利子貸与については三・二以上というようなところで学力の成績の基準というものを考えるという方向でただいまのところ対応いたしたい、かように考えております。
  70. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それともう一つ、無利子貸与の中で今回一本化されるという提案がなされているわけでありますが、その理由は何ですか。
  71. 宮地貫一

    宮地政府委員 現行の一般貸与と特別貸与、特別貸与は途中つくられたわけでございますけれども制度の創設当初においてはその単価も二倍以上の大きな差があったわけでございますけれども、その後単価増がほぼ同じ額で引き上げられてきたというようなことなどもございまして、特別貸与の自宅通学の単価と一般貸与単価とを比較いたしますと、現時点では一割程度しか差が出ていないということになっております。したがって、特に区別を設けるということについてその意義が薄れてきておる、さらに今回現行の無利子貸与制度のほかに新たに有利子貸与制度が加わることになるわけでございまして、この機会に無利子貸与としては一本化し、かつ貸与月額としては特別貸与に吸収するという形で貸与月額の改善を図るということにいたしたわけでございます。  なお、そのことに伴いまして、特別貸与を受けた者が一般貸与相当額の返還を完了しましたときにはその残額を免除してきた従来の特別貸与返還免除制度というものはこの機会に廃止するということで、これは、返還免除制度についていろいろ議論がございまして、現在教育、研究職等について返還免除制度を、もちろん要件がございますがとっておるわけでございますけれども、それらについても全体的に返還免除制度そのものを廃止すべきではないかという議論も片っ方あったわけでございます。しかしながら教育職、研究職の返還免除制度は、制度として存続し、一面、それらの議論を受けまして、ただいま申し上げたようなことで一本化をするわけでございますが、そのことに伴って、従来ございましたこの特別貸与の返還免除制度は今後は廃止するということに踏み切ったわけでございます。
  72. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 この返還免除制度というのにも私はそれなりに大きな意味があったと思いますね。今回、教育または研究に携わる皆さん教育職、研究職の返還免除制度は継続される、一方教員養成学部の特別枠の廃止というので、これは二千七百八十八人減る。教員養成学部ですから、そこで卒業した方が全部先生になるわけじゃないわけで、それはそれなりにまた別の考え方があるかもしれませんけれども、しかし、教育というものの持つ意味から考えれば、でき得る限りこういうものについては枠減にならないような努力が必要だと思います。そういう意味では、そのことは要望しておきたいと思います。  教育分野に優秀な人材を確保するという意味教育職、研究職の返還免除制度というものは設けられてきた。何で学校の先生ばかりを優遇するんだという意見もあると今局長おっしゃいましたが、確かにその意見もある。私は、教育の問題を論ずる人間の一人として、これはやはりできるだけ大事にしていきたいと思います。そのために、国民の皆さんに、いわゆる無理解人たちに説明するためにあえてお尋ねをいたしたいと思いますが、この返還免除制度が今日まで上げてきた効果についてどうお考えですか。
  73. 宮地貫一

    宮地政府委員 先生指摘のとおり、いろいろ議論があったことは事実でございますけれども、私ども結論としては、教育職、研究職に対する返還免除制度は、やはり我が国の将来の発展の基礎になる学校教育の分野でございますとか、あるいは学術研究分野に優秀な人材を確保するための基本的な施策としては大きな役割を果たしておるということで、制度として存続することにしたわけでございます。  その効果としてどんな点があるかというお尋ねでございますが、例えば具体的な点で御説明申し上げますと、大学先生方で申しますと、教授、助教授等についておられる方で、育英奨学事業を受けておられた方が全体でほぼ四〇%くらいを占めておるというような調査もございます。したがって、大学の教官になっておられる方々で育英奨学金をもらって大学を卒業し、かつ教官になった方々がそれくらい占めているということは、この制度が生かされているという一つの具体例ではなかろうか、かように考えます。
  74. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 優秀な人が育ったことを願いたいと思いますが、もう一つ聞きたいのは、生涯教育、いわゆる一生涯という意味での生涯教育、今はやりの言葉でありますが、それから通信教育、こういう形で苦労しながら努力されている方々への奨学制度はどうなっていますか。
  75. 宮地貫一

    宮地政府委員 広い意味で、これから高等教育そのものも非常に広がっていく時代に向かうわけでございます。  例えば、一つは専修学校の場合でございますけれども、専修学校も高等課程及び専門課程、それぞれ役割を果たしておるわけでございますが、昭和五十五年度からは専修学校の場合も、高等学校、短期大学学生と同様に奨学金貸与する制度を創設して広げてまいってきておるわけでございます。もちろん要件がございまして、高等課程及び専門課程に在学する生徒のうち修業年限二年以上で職業に必要な技術を教授する学課に在学する生徒ということで対象は絞られておりますけれども、そういう専修学校にまで対象を広げてきたということは、広い意味での生涯教育といいますか、教育のいろいろな広い分野で、単に学校教育法一条の学校ということに限定をしないというところまで広げてきておるわけでございます。  それから夜間部の学生の場合でございますけれども、これも昼間部の学生と同様に奨学金貸与対象にはいたしております。  それと御指摘の通信教育の場合でございますが、大学の通信教育を受ける学生に対しましては、スクーリングの実態を勘案いたしまして奨学金貸与いたしております。五十九年度においては、夏季等特別時期のスクーリングの場合は、一期間について六万五千円、通年スクーリングの場合は私立大学と同額の、自宅通学は月額三万一千円、自宅外通学は月額四万一千円という貸与でございまして、通信教育の場合も対象として取り上げているわけでございます。  全体的に高等教育が非常な広がりを持っていくことに対して、基本的には育英奨学事業も広がりを持ってそれらに対応するという方向で考えていかなければならない、私どもかように考えております。
  76. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 最後に、大臣基本的な考え方についてお聞きしたいと思います。  私も、実は中学のときからPTAの会費も納められない、高校も、公立高校に入りましたが授業料が払えませんでした。担任の先生からは夜間高校へ行きなさいと勧められました。しかし、別の先生に相談をいたしますと、一回教育委員会と相談をしてみろといって相談をしていただいて、結果として高校は授業料を免除していただきました。大変ありがたかったです。大学へ行くときにも大変悩みましたけれども、自分で稼いで行くならばよろしいという親の言葉でございましたから、結局学生時代は自宅通学ではありましたが、学費及び生活費はすべて自分で稼ぎながらの通学でした。そのときに、私はこの育英制度を残念ながら利用しませんでした。残念ながらといいますか、意地っ張りで利用しませんでした、受けていても恐らく成績の方で落ちていたかもしれませんけれども。いずれにせよ、自力で一回頑張ってみようという気持ちでした。  しかし、私がそうだからといって、育英制度がどうでもいいという気持ちはさらさらないのです。あの当時のことを振り返れば、今でもこの育英制度はもっともっと充実させなければいけないことは事実なんです。大切なことだと思います。自分で苦しんできただけに、その悩みを痛感いたします。そして、これは給付制度であることにこしたことはありません。むしろ国立大学ぐらい授業料なし、そういうふうにできぬものかとつくづく思います。しかし、一挙にそこまで持っていくことは難しいでしょう。先ほど来申し上げたように、少なくとも無利子貸与制度を圧縮するようなことがないように、コストをできるだけ引き上げていく努力、そして有利子制度もまたより多くの皆さんに利用していただくという意味での拡大、そういう基本的な精神を持ちながらこの育英制度考えられることを強く望みます。  と同時に、例えば民間資金のことやそのほかあらゆる工夫を重ねて、学生たちが安心して学ぶことのできる体制をつくることは私どもに課せられた義務でもあると思います。今この育英法の改正案が出されております。これはこれとして、現行法比較しながら私どもは最終的な判断をしたいと思います。しかし、先ほど来も同僚議員から触れられておりますように、教育ローン的育英ではなくて、本物の奨学金制度等々これからより一層積極的に研究を重ね、育英制度を充実させていかなければならないことは事実だと思います。そういう意味で、積極的な取り組みを文部省としてとるお気持ち、用意があるかどうか、これを大臣にお聞きしたいと思います。
  77. 森喜朗

    森国務大臣 いろいろ御指摘をいただきました点、十分拝聴さしていただきまして、私どもとしても基本的には奨学制度というものを、もし皆さんにこの法案が御承認をいただくことになれば新しい方途を見出すことになるわけでございまして、そういう多様な、またある意味ではもっといろいろな工夫を凝らし得るような一つの突破口になり得れば、そういうふうに考えていただければ、この法改正もまた将来にとって大きな一つの弾みになっていくのではないか。中野先生から御心配の、逆の方向に、どんどん悪いように拡大していくということであったならばこれはまた問題ではございますが、私どもとしては奨学制度というものをできるだけ充実をしていきたい、こういう気持ちが基本的にあるということをぜひ御理解いただきたいし、また大変御理解あるお立場でいろいろと私どもに対して御教示をいただきましたことに感謝を申し上げる次第でございます。  今中野さんが、昔の御自分の学生時代のお話をされました。奨学生制度というのは私の時代もあったのですが、私も実は私とは全然縁のないものだと思っておりまして、何かといえば、これは勉強のできる人しかもらえないものだと思っておりました。私の時期は、昭和三十一年から三十五年まで大学でありましたが、地方から東京に送金をしてもらうのが大体一万五千円から一万八千円というのが裕福な方で、かなりのいい方だなと見ておりました。授業料年間たしか二万四千円だったと記憶いたしております。私は、父が貧乏でありますので、郷里から総額一万二千円しか送ってくれませんで、最初に七千円送られまして、月末に五千円送ってくるということで、これの区切りが非常に苦労の種でありまして、どうせくれるのなら一発でくれればいいのにな、こう思っておりましたが、大変そのころのことを思い出して、その分だけいつも授業料を使い込んでしまう、その授業料を払うために一生懸命にアルバイトをしたこと、後楽園のテレビを見ると、後楽園で牛乳売りをしたようなことなんかをいつも思い出すわけであります。それでも、奨学資金というのはあったけれども我々に全然縁のないものだと考えておったわけでありますが、そういう面から実態を見てまいりますと、奨学生対象というのはかなり広がっておりますし、かなりの努力といいましょうかまずまずの、学問を進めていく皆さんにはかなりいろいろな意味で引っかかるような方策にもなっておるようでございます。そういう面ではその当時と比べて、また逆に言えば物価の上昇もあるでしょうし、学生生活のいろいろな意味での諸要素も含めなければならぬだろうということも十分考えております。  そういう意味で、奨学生制度というのは限られた人たちのものからもっと幅広く、いわゆる日本の中堅的な人材を養成していくという意味において、やはり拡大的な考え方をしていかなければならぬだろうと私も理解をいたしておりますが、三五%の高等学校からの進学率といえば、六五%の同じ年齢層が逆にまた社会の中で一生懸命働いておられるわけで、そういう年齢層の人たちとの公平、不公平感というものも政治は十分に考えていかなければならぬことだと思っております。  いずれにしても、新しい時代の奨学生制度というものは、この際いろいろな意味検討していかなければならぬ。またいろいろと御指導いただきたいと思いますし、政府も進めますし、私どもの党も、こういう時代になって奨学生のあり方あるいは奨学資金制度、そういうことも今後とも十分検討していきたい。  先生からいろいろ御指導いただきました、例えば民間資金のいわゆる有効な利用方法、そういう方策も考えられるでありましょうし、最近では大学をつくるにも第三セクター方式なんという時代でございますから、そういういろいろな方策がこれから見出していけるのではないか、こんなふうにも考えておりますが、なお一層育英奨学制度というものが充実できますように最大の努力をしていく、こう申し上げておきたいと思っております。
  78. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 大臣から、授業料二万四千円という話を聞きました。何か私もたしかそうだったと思って、やはり似たような年かと改めて考えたわけであります。  ただ、私はこの機会にもう一つお尋ねをしておきたい問題があります。  これだけ、全国の保護者皆さんもそうですし、学生皆さんもそうですが、この育英制度をめぐって大変心配されている。この育英制度があってもなおかつ苦労をして大学に通っていらっしゃる方々もいらっしゃいます。大学に通うことによってより一層みずからの錬磨をし、また学び、そしてまた国家、社会にも貢献したい、その純粋な熱意を込めて学生は一生懸命勉強しております。それを受け入れる方の大学で合いかなることが起こっているのか、この機会に一つだけそのことに触れてお尋ねをしておきたいと思います。  まず、法務省刑事局にお尋ねしたいと思いますが、大阪大学の経理部長の今回の汚職事件の概要について御報告いただきたいと思います。
  79. 北島敬介

    ○北島説明員 お答え申し上げます。  お尋ねの事件につきましては、大阪地方検察庁におきまして去る六月十九日、大阪大学事務局経理部長中曽根武(五十五歳)を収賄罪で逮捕いたしました。同日、会社役員辻宏志を贈賄罪で逮捕いたしました。  その被疑事実の骨子でございますが、大阪大学事務局経理部長である被疑者中曽根は、事務機等の販売を目的とする株式会社オリエンタルマシンの代表者である被疑者辻から、同社の事務機を大阪大学に購入してもううに当たり、有利、便宜な取り計らいを得たことに対する謝礼並びに将来も同様の取り計らいを得たい趣旨のもとに供与されるものであることの情を知りながら、昭和五十八年十月二十一日から同五十九年五月十六日までの間に合計百七十一万円のわいろを収受した。また一方、被疑者辻は、右のとおり被疑者中曽根にわいろを供与した。こういう被疑事実でございます。  この被疑事実につきまして、現在大阪地方検察庁におきまして、右の被疑者両名の身柄を勾留の上捜査中でございます。
  80. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 これはゆうべの夕刊なのですが、阪大ワープロ汚職に関連して「医学部関係者も高級クラブに出入り」。主計を担当する中曽根というのは昔聞いたような、今の総理も主計大尉中曽根康弘なのですが、いよいよ総理のイメージも悪くなるのではないかと心配をいたしておりますが、この教授、助教授クラスも一緒に誘われて高級クラブ等へ行っておったというふうなことが新聞報道でだんだんと書かれております。  そしてまた、もう一つどもの手元にあります資料では、この相手となりました業者オリエンタルマシン、この会社の取引先、いわゆる機材の納入先はほとんど役所が中心ですね。販売先、手元にあるのですが、大蔵省、国税庁、郵政省、文部省及び各国立大学、運輸省、厚生省、労働省、農林水産省、法務省。検察庁というのもありますね。それから最高裁判所というのもある。高等裁判所、地方裁判所、通産省、総理府、建設省。会計検査院も出てきますね。別にこれはちゃんとしたものをちゃんとした値段で買い入れるのは一向に構わないのです。ただし、これだけ多くの各役所に納入しているような業者がこういう問題を起こしたとなると、これはゆゆしい問題です。ゆえに法務省刑事局として、また大阪地検としては、そういう広範囲にわたっての捜査というものが当然なされなければいけないと思うのでありますが、今後どういうお考えをお持ちでございましょうか。
  81. 北島敬介

    ○北島説明員 ただいま御指摘のような報道がなされておることは承知しておりますが、何分捜査の内容にわたることでございますので、その一々についてはお答えは差し控えさせていただきます。  ただ、大阪地検といたしましては、先ほどの被疑事実について強制捜査に着手したわけでございますので、その捜査の過程において関連して何らかの看過しがたい犯罪事実というふうなものが出てまいるようなことがございますれば、その時点において適切な対処をすると思っております。
  82. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは、これを一つの導入部として、その捜査段階において、例えばこの事務局だけではなくて、教授やその他大阪大学の中の他の分野に至るまで関係者がいる、またほかの省庁の絡みもあるということになれば、当然のことながらそこまでの調査はしていく、積極的にこの捜査に取り組んでいく、この機会にすべてにわたってメスを入れていくということでよろしいわけですね。
  83. 北島敬介

    ○北島説明員 現段階においてそういうことまで考えてやっておるかどうかということについては、お答えは差し控えさせていただきます。将来の問題だろうと思います。
  84. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 刑事局としてはそれ以上答えられないであろうことは私もわかります。  そこで、それでは文部省にお尋ねいたしますが、この数年来、大学医学部また附属病院、医局、こういうふうなところの教授または医局長、こういう人たちのリベートの問題、それから若い人たちのアルバイトの問題、それから医療機器、薬品等の購入に当たっての帳簿操作、業者との癒着、いろいろな問題について毎年のように指摘をしてまいりました。そして、今この問題が改めて起こってきたわけであります。私はこの報道を見て、あれだけ毎年のように、しかも厳しくしつこく追及をし、文部省要請もしてきたにもかかわらず、今回の該当者はその文部省から派遣された職員です。こういうふうな状態があることについてどうお考えでございましょうか。
  85. 森喜朗

    森国務大臣 事実関係の詳細につきましては、捜査の進展を待たなければなりません。大学の経理部長、しかも今御指摘がございましたように、本省から参りました者がかかる容疑で逮捕されたということは極めて遺憾なことでありまして、また先生からそうした御指摘をいただいておりますこともよく承知をいたしております。政治家の一人としてもまことに残念だ、こういうふうに思っております。事態の解明を待ちまして、文部省といたしましては厳正な措置をとるように考えておるところであります。  大学の種々の問題につきましては、もちろん先生の御指摘を待つまでもなく、従来ともいろいろな機会を持ちながら、文部省としては、そうした服務規律の保持その他適正な大学の管理運営のあり方については十分に指導、徹底をしてきたつもりでございますが、こうしたことが起こったということにつきましては、先ほど申し上げましたようにまことに遺憾としか申し上げようがないわけであります。今後ともなお一層の注意を喚起していきたい、こう思う次第でございます。
  86. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私は、今回この中曽根という容疑者個人の問題だけではないと思います。既に報道もされておりますように、他の大学関係者、それは教授、助教授クラス、しかも医学部関係者が主流だ。そして、この中曽根部長に大阪の高級クラブ等々を紹介をした、それが医学部関係者であり、かつ阪大の夜のサロン、こういうふうに言われるようなところが存在をする、こういうことが報道されているわけであります。  端的に申し上げますが、私は大阪の人間ですし、大阪大学は私の選挙区にありますので大変残念なんですが、大阪でこういうことに比較的詳しい人たちの間では、とっくの昔から言われていたことです。それを私はこれまでの質問や主張の中で直接具体的に言わなかっただけです。大阪大学の幹部クラスのA教授はクラブ何々のオーナーママのパトロンだ、B教授はクラブ何々のオーナーママのパトロンだ、そのママとママはきょうだいだ、ここまで言えば何教授で店の名前が何かはその辺の人は知っていますよ。大阪大学の夜のサロンと言われるのも無理からぬことです。そこへ行けば大学関係者、医師、そしてこれを取り巻く関連業者、そういう人たちで占領されているわけです。我々のお金でとても行けるような店ではない。そういうことはあの大阪北新地のかいわいでは有名な話です。阪大の夜のサロンはどの唐とどの店とどの店、今報道されております名義を貸したホステスのいる店、そこがどこかは新聞には書かれていないけれども、私には想像がつきます。こういうものが野放しにされているわけです。いまだかつてそういうものが反省されたという形跡はありません。そして小さなスナックの片隅で大阪大学の若い人たちが、やれアルバイト禁止だ、やれ脱税だ、いろいろなことで我々いじめられるけれども、本当に悪いことをしているのは上の方なのになと、しょっちゅうぼやいていますよ。私もあるお店で聞きました。中野先生、随分きつく大学の問題をやっているらしいけれども、あれは先生、やればやるほど若い人が困っているみたいよ、肝心かなめの偉い人が一つも手をつけられないみたいですねと実際に言われたことがあります。それほどまでに流布されております。そういう体質に何らメスが入っていないということが、今回のこの問題の起こる原因ではなかったのだろうか、こう思うのですが、いかがですか。
  87. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいまの中野先生の御質問に関連いたしまして、本件自体の問題といたしましては、大学の管理運営のスタッフとしまして経理部長の要職にある者がこのような事件を起こしたということ、大変遺憾でございますし、私どもも恐縮しておるわけでございます。  本件自体の問題といたしましては、日時はまだたっておりませんで、逮捕されて一昨日、昨日と私ども事務局の方に照会をいたしまして、本件事態にかかわるワードプロセッサーの購入問題等については現在調査を進めておるところでございます。学部にわたりまして合計で四十三台のワープロが業者から納入されている事実その他は確かめておるわけでございます。  これからの事態の解明につきましては二つの問題、すなわち中曽根経理部長自体にかかわる問題として、このような事件が起きた原因なり実情について調査を進めるという点が一つ。それから、このような事件が起きた全体的なシステムなりあるいは構造的な問題として今後改めるべき点がないかどうか、こういう点について、第二点といたしまして事務局長の方に調査を十分進めるようにということをやっておるわけでございます。  それから、ただいま先生指摘の教官にかかわる問題につきましては、私どももその点につきましては事務局の方にあわせて調査その他については話をしておるわけでございますが、現時点ではまだ具体の関係の事実が上がってきておりませんので、本日のところは詳細についてお答えすることができないわけでございまして、この点は御容赦いただきたいと思います。なお調査を進めたいと思っております。
  88. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 これは現地任せになさいますか。もちろん大学関係者を文部省へ、東京へ呼んで事情聴取することも当然あるでしょう。何か学長もここ二、三日は東京にいらっしゃるようですけれども、そういうことだけではなくて、これは大阪地検はやっているわけですけれども、全部を調べ直すくらいの気持ちで文部省から特別に派遣されたらどうですか。私が先ほど申し上げた町のうわさも、決して無責任な何とかスズメの話じゃないのですよ。一回全部調査されたらどうですか。これはこの汚職問題一件の問題ではないのですよ。今大阪大学というものが、また、ひいては全国の国立大学までその信頼性を失わせることになるでしょう。  大学というところは重要な研究をしているのでしょう。その重要な研究は、場合によっては国家を動かすのでしょう。日本の将来を決めるのでしょう。もし変な動きで、例えば今我々が一番悩んでいるがんの特効薬ができたとして、学閥でどこかの大学の教授が力を持っていて本当に効くかもわからぬ、それをもし抑えたとしたら人類にとって大変なマイナスでしょう。重要な問題を幾つも抱えているわけですから、それだけの気持ちを文部省として持って、阪大に限らず、当面阪大ですけれども、あらゆる大学の体質改善の努力をしないといけないのではないですか。いかがです。
  89. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、私どもは決して法務、検察の仕事だけに任せるつもりはございません。文部省当局といたしまして、基幹部局として大学関係を所管いたしておりますので、私ども一つの責任として、先生おっしゃいます方法等も含めまして今後その手段方法、やり方等について十分早急に検討いたしまして、先生の御指摘のような点が解明できる方向を手段としてもとりつつ調査を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  90. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 さて、これもまた新聞報道で恐縮ですが、この中曽根経理部長が大阪大学に赴任をされてから大阪大学年間総予算は、五十七年度で五百六十億円、そのうち人件費が二百五十億円、物件費が三百十億円、この物件費等については、他の財政が緊縮予算でむしろ削られるところが多いのにもかかわらず、ここだけは毎年一割ずつアップしていったというふうなことが書かれているわけですね。  科学研究費補助金というのがありますが、私きのうも文部省に申し上げて、大変御苦労いただいてつくっていただいた資料を先ほどちょうだいしました。昭和五十六年は八億二千万円まで落ち込んでいますが、それから後はまた八億五千万等々に上がっていくのですね。もっとも北海道大学などはもっとたくさん上がっておりますので一般に比較はできないかもしれませんけれども、総枠としての物件費等についてのバランスというものは当然あるだろうと思います。そして新聞報道によると、この中曽根経理部長は大変な手腕を発揮して、年々大幅に予算をふやしていく。ワープロなぞはもともと予定になかったにもかかわらず、文部省の方から特別にお金を取ってくる、だから買わぬかと言っていろいろな学部にも購入の手回しをし、他の大学にも根回しをしていった。こういうふうなことが書かれているわけです。文部省の未配分金というのがあるのですな。そこに手をつけてワープロ等を買わせた。こうなりますと、文部省本省としてもこれはただではほっておけませんよ。文部省本省に彼が手を突っ込んでお金を持っていったということなんですから、こういう問題を放置することはできないはずであります。まして文教族と言われる代議士にも顔が広かったと書いてある。私の選挙区にある大学だけれども一回もお会いしたことはない、私も文教族の端くれだと思っておりますけれども。しかし、そうなりますと国会の権威にもかかわる問題です。これは新聞報道だから憶測で書いたのだと言ってしまえばそれまでですよ。しかしながら、それでは済まされない。これらのことについて実態はどうだったのですか。
  91. 西崎清久

    ○西崎政府委員 最初に私の方から物件費のことだけ申し上げたいと思いますが、大阪大学にかかわります物件費は五十七年度が二百十六億円でございます。しかるところ五十八年度につきましては、決算額でございますが二百九億円、そういうふうな意味で、二百十六億から二百九億ということで物件費全体としては減額になっておるわけでございます。  それから科研費の関係につきましては、学術国際局長の方からお答え申し上げます。
  92. 大崎仁

    ○大崎政府委員 科学研究費補助金につきましては、特定の大学の研究者のみの研究課題に支出されますものと、複数の大学の研究者がいわば研究グループをつくりまして研究をするものに支出されるものとございまして、大学ごとの額を正確に出すことは困難なわけでございます。ただ、一応の推定をいたしますと、確かに大阪大学に対する科学研究費の交付状況というものは比較的良好な方であろうと思っております。これは、科学研究費の配分につきましては、広く各研究者に公募をいたしまして、その公募いたしましたものを学術審議会に特別の分科会を設けまして、その分科会で千名以上の審査委員が専門分野ごとに慎重に審査の上、研究課題の学問的なすぐれた度合いに応じて配分をいたしておりますので、この間大学事務局が介入する余地というのは全くございません。
  93. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 これはどうですか。新聞にこの科学研究費補助金が大阪大学では五十五年、五十六年度は約二十億円だった。しかし、この中曽根経理部長着任後の五十七年度に約一億円ふえて二十二億円になった。さらに五十八年度に二十四億五千万円に急増した。文部省の文教予算や科学技術振興費は、緊縮財政の折から両年度とも減額か横ばい状態であるのに、この大阪大学だけはこれだけふえている、こういうふうな報道がありますが、これは勘違いの記事ですか、間違いの記事ですか、合っていますか。
  94. 大崎仁

    ○大崎政府委員 先ほど申し上げましたように、大学ごとの数字の推計というものが非常に困難でございますので、この数字をどういう形で出されたか、現時点でちょっと推測ができないのですが、ただ、恐らく増加しておる要因としまして思い当たりますのは、五十八年度から特別推進研究ということで、いわば世界一流の研究と競り合っている研究で特に多額の経費を要するものについて研究費を交付する新しい制度を設けたわけでございます。これは特に研究者の推薦とか、特別の学術審議会の中に設けました分科会の審査とかという手順で配分がされるわけでございますけれども、その特別推進研究の採択の対象になられた方が大阪大学にいらっしゃいます。これは学士院賞をお受けになられた方あるいは朝日賞をお受けになられた方ということで、最近の新しい生命科学の非常にすぐれた研究者が大阪大学に多いものでございますから、その方々がいわば新しく発足した特別推進研究の交付を受けられたという事情がございまして、これがかなり金額が張るものでございますから、その額が恐らく大阪大学の額の全体の増ということに反映したのじゃなかろうかと思っております。一般研究で見ますと、むしろ私どもの推計では、科学研究費補助金の伸び率よりは若干低いのではないかという感じを持っています。
  95. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 特別な理由が明確であればいいのでありますが、これらのことについて、なおこの経理部長との関係があるのかどうか等については当然継続して調査をしていただきたいと思います。  今まで例えば普通、何か物を買うときには機種選定委員会というものが大学の中で設けられるのですね。ところがワープロだとかなんとかをどうもそこで必要なものだとして相談されなかった。しかし時代も変化しているし、そろそろ法学部でもワープロぐらい使ったらどうですかみたいなことでこの経理部長が勧めて、買うときにはここのものを、そしてそのためにまだ未配分金が文部省にある。それをうまく活用する。彼は本省にその担当でいたのですから、それはよくわかりますわ。しかし、彼が向こうへ行ってたら別の人がこっちの担当になるわけだ。そういうところとツーカーでやるとしたらこれは大変なことです。そういうふうなことが現実にあったのかどうかというのはここで公に言えなくたって、文部省の中ではある程度のことはわかっているわけですね。彼の交渉能力がどうであったのか、文部省にどういう工作をしてきたのか。もしこっちで思い当たる節がなかったら、彼は業者をだましてリベートをもらっていたわけだ。文部省独自でわかることは幾らでもあるのではないのか、こう思いますが、どうですか。
  96. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいまの先生の御指摘の点でございますが、このワードプロセッサーの購入につきましては、先ほど御指摘のありました物件費の中の校費という積算項目の中から大学自体が判断をいたしまして支出負担行為を起こし契約をする、こういうふうなことでございまして、このワードプロセッサー自体の購入について一々本省の方に予算要求をするという仕組みにはなっていないわけでございます。しかし、先生指摘のように、そのワードプロセッサーを当該社から――ちょっと私、失礼をいたしましたが、追加概算要求でこちらから出したものもあるようでございます。  そこで問題は、先生おっしゃいますように、その機種の選定において当該社からの購入につきどのような経過でそれが選ばれたか。例えば東芝とか日立とかいうワードプロセッサーを当該学部が、これがぜひ必要な機種であるというようなことでありますれば、随意契約の条項に該当するとかいろいろあるわけでございますが、なぜ当該社が選ばれたかとか、その辺の問題点につきまして私どもは今後十分調査をしてその適否をこれから確かめてまいりたい、こういうふうに思っております。
  97. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 指名業者にする場合にいろいろ調査をされると思うのですが、いろいろ民間調査機関の資料がありますが、この会社、随分怪しげですな。よくこういうところが入ったものだと感心をいたします。そして、先ほども読み上げましたように、そこが霞が関一帯に全部売り歩いているのですね。これは文部省だけの問題ではありませんから、そのことは各省庁とも調査もし、今後十分注意をしていただきたいと思います。  刑事局の方から来ていただきましたが、どうもありがとうございました。結構でございます。なお一層御努力をいただきたいと思います。  会計検査院にお尋ねをいたしますが、会計検査院の皆さんにも、大阪大学に帳簿に載っているだけの顕微鏡の数、ちゃんとそろっていますかと例え話として申し上げながら、以前十分な調査をしてくださいということを会計検査院の方にもお願いをいたしました。そして検査を逐次されているはずであります。最近の検査はいつで、どういう結果であったのでしょうか。
  98. 黒田良一

    ○黒田会計検査院説明員 会計検査院におきましては、従来から購入物品の調達につきましては、今先生おっしゃいましたとおりに、調達の目的、調達の方法、特に契約がどういうものであるか、契約の方法、それから契約の価格等につきまして厳重な検査を実施しておりますが、ことしの大阪大学の検査は本年六月五日から九日まで五人の調査官をもって実施いたしました。  その検査の結果についてはただいま取りまとめ中でございまして、今ここで公にすることは差し控えたいと存じますが、先ほど来問題になっております大阪大学のワープロ関係の購入につきましては、これは非常に金額が小さいものでございまして、あそこでは五百万円以上の大きなものを中心にいたしまして検査を実施いたしました。一件十一億円というようなレーザー関係の購入機器もございまして、そういう大きな金額を中心にして見たということと、五日間程度の検査をやったにすぎないわけでございますので、ワープロ関係、一台百八十万円程度のものでございますので、この件につきましての検査はやっておらないということでございます。  なお、今回大阪地検の方から、会計検査院に提出しております五十八年度の証拠書類を刑事訴訟法の規定によりまして貸してくれという御要請がございましたので、実は昨日その分を貸したところでございます。したがいまして、大阪大学のワープロ関係の検査につきましては暫時検査が延びるのではないか、かように考えております。  以上でございます。
  99. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私は前から指摘いたしましたように、会計検査院の皆さん調査能力、人数、いろいろな問題がありますから、細かいことすべてにわたって調査するということはできないかもしれません。しかし、ここは問題があるという一つのねらいどころというものもあると思いますし、また私自身も指摘をいたしました。そして、いろいろな機材が伝票どおりにそろっていますかどいうふうなこともお聞きしました。顕微鏡一つ一つ調べることは不可能かもしれません。ワープロが何台あるか、何億円とする機械を調べているときに何十万か幾らかのワープロを一々調べるということは不可能なのかもしれない。しかし不可能で終わったのでは、大学初め各役所は幾らでもやりほうだいですよ、金額が小さいものでありさえすれば。抽出調査等いろいろな方法もあるでしょう。これはもちろん文部省自身が努力することです。しかし、会計検査院としても今後十分な検査を私どもは期待をしたいし、御努力をいただきたい、こう思います。  今後のことについてお聞きをしたいと思いますが、この大阪大学については今後どういう調査をなさいますか。また、他の大学についてのこともあわせて簡単にお答えいただきたいと思います。
  100. 黒田良一

    ○黒田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生おっしゃいましたように、会計検査院といたしましては、こういった機器の購入につきましては、先ほど申し上げましたが、調達の目的、調達の方法、契約価格、こういったものを中心といたしまして検査を厳重に従来からやっておったわけでございますが、大阪大学のような事態が発生したことにかんがみまして、今後も厳重な検査をやる所存でございます。各大学におきましてもまだこれから行くところがございますので、先生の御趣旨を体しましてこの点につきましては厳重な検査をしたい、かように思っております。
  101. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 時間が参りましたので、最後に文部省に改めて要求をいたしたいと思います。  二度と再びこのようなことが起こることは断じて許されませんし、もう既にこのことさえ許されないことです。学生は大変な夢を描いて大学へ行きます。また夢を描いて今勉強をしています。そしてまた大学を目指しています。我々は今これだけ苦労しながら、育英制度の問題も各党知恵を絞って努力をしています。文部省も御努力をいただいておる。これからも努力をしなければいけません。しかし、そういう育英制度その他、これは一つの手段であります。目的は大学で学ぶこと、その本家本元の大学でこういうことが相変わらず繰り返されている。しかも、その中では汚い体質がいよいよ根深く広く広がっていって、入った学生をもむしばんでしまう、学生もまたその体質に溶け込まされてしまう。ひいてはそれが日本の医療機関その他、医学界の体質までも汚染してしまうわけであります。医学部が病気をしていたのでは、これはどうしようもないのであります。医学部に限りません。しかし、私が今日まで指摘してきたその医学部が、やはりこの事件のきっかけをつくっているとさえ言えないこともない。そういう意味で重大な決意を持って文部省調査される。現地に行かれる。呼んで幹部や偉い人から聞いたってだめ。周囲の人たちからも全部調査をして、検察庁に負けないくらいなことを一回やってみたらどうですか。そこまでやらなければこの体質改善はできません。一つ大学でそれができれば、ほかの大学にも広がっていくでしょう。悪いことを広げるのか、いいことを広げるのか、やはりこの際文部省の努力があくまでも中心になって求められております。  御決意のほどをお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  102. 宮地貫一

    宮地政府委員 かねがね中野先生から御指摘をいただいている点に、さらに今回こういう事態が起こったということについては、まことに遺憾でございます。ただいま御指摘の点は、重大な事柄として私ども受けとめまして十分対応いたしたい、かように考えております。
  103. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 終わります。
  104. 愛野興一郎

    愛野委員長 山原健二郎君。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  105. 山原健二郎

    ○山原委員 一昨日、六月二十日でございますが、いわゆる育英奨学金制度の問題につきまして、新規在学生の採用の問題について理事会、さらには委員会も一時中断をするという事態が起こりまして、各党一致して、八万二千名の学生の救済について措置を講ずるべきであるということでこの委員会意思は一致をいたしまして、またそれにこたえて森文部大臣から意見の表明がなされました。その後、文部省におかれましても努力をされておるわけでございますが、きょうの理事会、また先ほどの委員会の答弁によりますと、いまだこれについての結論が出ていないということでございまして、この点、私はこの問題に限らず、国権の最高機関としての国会審議権の問題について何点かお伺いをいたしておきたいのでございます。  まず、文部省の今までの見解としましては、予算が成立をしている、したがって現行法作業実施することはできないということをおっしゃいました。それに対して、一昨日佐藤徳雄議員の方から、そういう凍結、停止の法的根拠は何かという質問に対して明確な答弁がなくて、審議はストップをしたわけであります。要するに、これは法的根拠がないということなんですね。したがって、文部省としてもこれについては答弁ができないという事態だと思います。そういう意味では、法律上の根拠がなくて、しかも新法が成立することを予期し、また期待をして、それを前提とした対応の仕方、これをお話しになったわけですが、私はこれこそ法案審議そのものに対する介入であるというふうに考えまして、大変奇異な感じを受けたわけでございます。  例えば、この法案が現在審議中でございます。そして、この法案の行方については、多数をもって成立をすることもあるでしょう、あるいは満場一致で成立することもあるでしょう。しかし同時に、審議未了で継続審議になることも今日の時点ではある可能性がないわけではありません。あるいは、場合によっては衆参両院を通じて考えました場合に、廃案にならないという保証もないわけですね。また同時に、賛否両論を持つ政党が話し合って修正をされる場合だってないとは言えません。  そのことを考えてみますと、これの作業を凍結するということはまさに無法なやり方ではないかというふうに私は感じるわけでございますが、あえてこの審議を後へ引き戻すようでありますけれども、これは単に育英奨学金制度のこの法案の問題に限らず、すべての法案についての行政府と立法府との関係でございますから、文部省はどういう見解を持っておるか、端的に最初に伺いたいのであります。
  106. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点については、従来から御説明をいたしております点の繰り返しになるわけでございますけれども基本的には、育英奨学制度制度改革につきまして私ども十分慎重な検討をして五十九年度予算にその内容を盛り込み、そしてその内容実施するための法律案の提案を予算関係法案ということで、従来政府部内で統一的に取り扱われているところに従いまして国会に提出して御審議をお願いをしてきておるわけでございます。  したがって、事柄を端的に申し上げますれば、本来ならば、予算が年度内に成立をし、法案も年度内に成立をして、新年度からそれが実施をされるという形が一番通常の形であろうかと思いますけれども、今国会のいろいろな面で、例えば予算も年度内の成立てなかったというようないろいろな事態が重なって今日に至っておるわけでございます。  そこで、年度を過ぎましてからの対応としてどうかという点でございますけれども、私どもとしては、予算に新たな事柄を盛り込みまして法律改正をお願いしているわけでございますので、事柄としてはその予算を執行できるための法律の成立をお願いするというのが、提案側の政府としてのとるべき態度でございまして、その点については、予算が成立をし、かつ、まだ法律が成立をしていないという現在の時点の対応といたしましては、私どもとしては、現行法が生きている点は御指摘のとおりでございますけれども、しかし考え方としては最初に申し上げたような事柄事柄としてはそういうことであると考えております。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕  そこで問題は、現行法実施をしました場合に改正法とそぐわない点については、行政を執行しております私どもとしては事態が収拾できないことになるということでは困るわけでございまして、むしろそういうことを実行することが改正法を御審議いただいておる国会に対して審議権を損なうことになるのではないかというような判断に立って対応をしてきておるわけでございます。  ただ、予約採用の点につきましては「何らかの救済措置」ということで、このこと自体についても、本来の措置からすれば確かに御指摘をされるような点があるわけでございますが、緊急避難というような考え方で、「改正法成立後、改正法に吸収できる範囲内」ということで、予約採用について従来衆参両院の文教委員会での「何らかの救済措置」という御提案を受けまして対応をしてきたものでございます。  したがって、行政府といたしましては、新しい法律をお願いして五十九年度から新制度事業を行いたいということで法案成立までの事業の執行を停止しておるわけでございまして、一つには、有利子制度の導入をするための新規予算も計上されておりまして、いわばそれと一体となりました新しい育英制度実施するということでございまして、それを旧制度で執行いたしますと新制度の執行と重複、混乱するという点が一つあるわけでございます。そこで成立を期して当面執行停止をしておるわけでございまして、事柄としては、私どもとしてはその点についてはそれ相応の理由があるというぐあいに考えておるわけでございますが、その点については先般来の御審議を受けて私どもとしてもなお鋭意検討をさしていただいておるということは、けさほどの御質疑の際にも申し上げた点でございまして、その点についての考え方は先ほどの御質疑で御説明したことに尽きるわけでございます。
  107. 山原健二郎

    ○山原委員 これは長い答弁を聞いているわけですけれども、そういう考え方であればこれは絶えず混乱しますね。だから、きょうは大学局長は一昨日の答弁を繰り返しておるわけですから、これ以上尋ねません。  これは本案とは性格は違いますけれども、今審議されています健康保険法の場合はどうなっているかといいますと、七月一日の施行となっているわけですね。七月一日施行に間に合うように成立を図ることは努力をされておると思いますけれども、今日の段階ではまず不可能という状態です。その意味では、この日本育英会法案審議の状態と似ています。そして、この七月一日施行を前提とした予算は健保の場合も国会を通っています。しかし、法案の成立を見ていないという状況なんですね。これも似ています。日本育英会の場合は、今おっしゃったように未成立を理由にとって政府の方は、対応をそのまま当てはめますと、健保の場合も七月一日以降の法案の成立を見るまでは現行法での施行はできない、凍結をすることになりかねない、今の主張であれば。  そこで、そんなことが可能なのかということで私は厚生省へ聞いてみたのです。そうすると厚生省の方は、やはり現行法の凍結はできない、現行法でやらざるを得ないという答えが出てまいりました、これは当然当たり前のことですけれども。さらに、七月一日を過ぎて仮に法案が成立をした場合、七月一日にさかのぼってこれを適用するのかと聞きましたところ、そういうこともできないという回答でございました。結局、法案の施行期日を七月一日から九月一日とか十月一日とかに修正せざるを得ない、その結果生じる五十九年度予算の穴は補正予算とか予備費等で補てんをする以外にないということでございました。健保の場合、一カ月施行がおくれますと約五百億円の穴があくわけでございますので、仮に法案審議が八月八日の会期末ぎりぎりまでもつれ込んだならば、少なくとも施行は二カ月以上おくれます。約一千億円の予算上のずれが生じるということでございますが、こうなると、同じようなケースのこの育英会法ですね、これは一体どうなるのかということになってくるわけでございまして、育英会法の場合は現行法での施行はできない、法案成立を待つという態度をとっておられるわけですが一こうした点から見ましても、政府文部省がとっている態度というのは道理に合わないものだと私は思わざるを得ません。  こういう点を一応指摘をいたしまして、文部大臣としては政治的判断も持たれまして現行法検討するということを発言されたわけですが、今の時点でこれが空手形にならないという保証があるのかどうか、この点を伺っておきたいのです。事は、八万二千名の学生諸君の憂慮すべき事態に対してどうするかという各党の一致した見解、それに答えての文部大臣の発言、この点では少なくともこの文教委員会は一致しているわけです。立法府も行政府の長も一致して、そして検討をお約束されたわけでありますが、この点、タイムリミットも目の前に来ておると思いますが、検討はしたけれどもだめであったということにならない保証があるのかどうか、はっきり伺っておきたいのです。いかがでしょうか。
  108. 宮地貫一

    宮地政府委員 初めに、事柄は別でございますけれども健保の問題について御指摘があったわけでございますが、健保の場合は費用負担をどうするかという事柄でございまして、育英会の奨学生として採用するかどうかということは、これは採用するということについては最終的には育英会と奨学生との間の契約が成立をするということであるわけでございます。したがって、現在の費用負担を定めております健保の改正が、負担増をするということがいつから実施できるかということとこの育英会法の改正でお願いしている事柄中身とは、事柄としては基本的に違うことであるというぐあいにども理解をしておるわけでございます。そして、かつ、奨学生として採用されれば、それは契約が成立をいたしまして、学生としての身分を持っている四年間あるいは六年間という間奨学金貸与するという形で実施をされるものでございますから、私どもとしては、もちろん新制度が成立をしてそれが予算に盛り込まれております中身実現できるということを、国会の御審議を通じてそれが成立することを期しておるわけでございます。ただ、先ほども申しましたように、現行法は確かに存在をしているわけでございますけれども、新制度実施された場合に、四年間の契約として奨学金を給する事柄でございますので、その間で重複と混乱が起こるということを避けるために、現在現行法としての執行を停止をしているという考え方でございます。  なお、御指摘の点の検討については、私どもとしても十分頭に置きまして検討をさしていただいていることは先ほど来御答弁申し上げたとおりです。
  109. 山原健二郎

    ○山原委員 そういうことをいつまでも言っておりましたら――私の言うことに対して反論はいいですけれども文部大臣がああいうふうにここで文書まで読み上げられて意思を表明されたわけですね。その理論だったらいつまでたったってこれは解決しないでしょう。むしろ私どもは一昨日のあの文部大臣発言によって、この問題は早く作業が進むと思っておったのです。きょうはそういう答弁をいただけると思っておったのです。ところが、二日たっています。それでもなおかつ結論が出ないということなら、これはいつまで続くかわからぬでしょう。そうすると、文部大臣のおっしゃったことが本当に行政府のあなた方によってしっかり受けとめられておるかどうか、これすら怪しくなってきました。  私はここではっきり期日まで聞かないと、せっかく文教委員会満場一致で決定したことがいつまでもずるずるされたらたまりません。問題点はわかっているわけです。困難なこともわかっている。四月以来この問題で悩み続けておるのですからね。困難なことはわかっておるけれども、少なくともみんな頭を悩まして、理事会を二時間も三時間もやって、審議までとまって、そして全会一致で決めたことがいつまでも進まぬということになったら、これは大臣の責任というよりも文部省事務当局の責任になってきますよ。どうするのですか。いつまでにやりますか、はっきり言ってもらいたい。そうでなければ私は次の審議に入りませんよ。この間そんな決定ではなかった。
  110. 森喜朗

    森国務大臣 局長が御答弁申し上げましたことは、予約採用生がいわゆる法律に基づいて行われたということではなくて、国会の御意思もございまして、委員会の御意思もございましたので、一つの行政上の判断をいたしたわけでございまして、その他につきましての皆様方のお考えもございましたので、できる限りそういうことで、事は大変重大なことでございますから、事務当局も悩み抜いている。これは山原先生、一番よくおわかりだと思います。ですから、大臣といたしまして早急に検討を命じたというのが一昨日でございました。なお一層今努力をいたしておるわけでございまして、先ほど中西さんのときにも申し上げましたように、文部省だけで判断でき得ることじゃないのも、これは諸先生方よくおわかりのことでございます。そういう意味局長以下、でき得る限りそういう方向でやりたいという気持ちを持って今いろいろな関係方面とも相談をいたしておるところであります。  結論から申し上げて、決していつまでもこの答えを冗漫に長く持っていこうとは考えておりません。いつまでに報告しろと言われて、ここでいつまでにしますということも明言はできませんが、少なくとも、ごく限られた時間でその結論をここで申し上げなければならぬというふうに私ども承知をいたしておりますので、なお一層督励をいたしておりますので、どうぞそういうふうにひとつ御理解をいただいて御承認を賜りたい、こう思う次第であります。
  111. 山原健二郎

    ○山原委員 育英会理事長三角さんにおいでいただいておりますので一言お伺いしたいのですが、育英会の方では事務を行う機関でございます。したがって、既に学生諸君の七月十日前後の夏休みというものを控えまして、時期的にはもう遅い段階ではなかろうかというふうに私は思うのです。したがって、文部省側の決断がいつ出るかによって変わってくると思いますが、実際今からやっても十月中旬ぐらいの貸与になるのではないかというふうにお聞きしておるわけでございます。それを過ぎると、けさほど中西さんからも質問がありましたように、十二月あるいは一月へ越すというようなことになれば、これはまたまさに憂慮すべき事態になるわけですが、そのタイムリミットとしてはどの辺をお考えになっておりますか。
  112. 三角哲生

    三角参考人 これは、ただいま文部省の方で検討を鋭意進めておる事柄でございますので、結論が出ますれば、私どもとしては最大の努力を払って文部省の方針に従って事務を処理することは当然のことでございます。今のところ、タイムリミットというものを厳密に考えてはおりませんけれども、お話ありましたように、七月の十日過ぎから大体夏休みに入るところが多うございますし、それから、個々の学生をとらえますれば、場合によってはそれより後までいる者もおるかもしれませんし、あるいはそれより早く学校の方へ出てこなくなる学生もおるかと思いますので、いずれにいたしましてもこの時期にだんだんなってまいりますと、やはり一段構えでは足りないので、二段構えぐらいのやり方をとる必要があるかなと思っておりまして、二段構えの方は、一段目で間に合わなかった学生たちに対して九月の新学期直後直ちに手続に入れるようなことも考えていかなければいけない、そんなふうに思っております。
  113. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一回お伺いしますが、大学局長、どうでしょうか。問題点はもう十分わかり切っていると思いますね。後は、今大臣がおっしゃったように文部省だけでは決められない、他省との合意というものが必要なのかもしれませんが、それはできるという自信はお持ちでしょうか。また、いつごろまでには大体できそうだということをおっしゃることはできませんか。
  114. 宮地貫一

    宮地政府委員 けさほどのお尋ねの際に、その時期の点についても、具体的に夏休み前に対応できるのが一つのリミットではないかという御指摘があった点も、私ども十分頭の中に入れまして検討をさせていただいているところでございます。したがって、私どもとしては、御指摘のありました点は十分頭に置きまして検討させていただいているところでございますので、なお若干の時日をいただきたいというぐあいにお願い申し上げます。
  115. 山原健二郎

    ○山原委員 しつこく申していますが、本当に皆さんの気持ちが一緒ですからね。自民党の皆さんも、理事会の席上で一致した気持ちとして出ておるわけですから、それを大臣が受け取ったわけですからね。これはもう挙げて事務当局の方の仕事になってきたと思います。だから、若干とかいって次々延びたんでは、何のためにあれだけの大騒動をしたのかわからぬということになりますから、この点はぜひここで、じゃ期日を何日まで切れと私が言う権限もありませんが、今三角さんがおっしゃったように時期はもう今の段階ということだと思いますから、そういう意味で二段構えにならないような体制でやってもらいたいと思いますが、よろしいですか。
  116. 宮地貫一

    宮地政府委員 国会で御論議されておりますことをすべて私どもとしては踏まえて対応を考えたい、かように考えます。
  117. 山原健二郎

    ○山原委員 もうこれ以上申し上げる時間はありませんので、次に移りたいと思います。  今度の育英奨学金制度改正問題ですが、ずっとお話が出ましたように、やはり有利子化の導入の問題は育英奨学制度の性格が変わる中身を持っていると思いますが、この有利子化を導入した理由を簡単に言ってください。
  118. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの点でございますけれども、従来の育英奨学事業につきましては、一般会計からの政府貸付金と卒業生の奨学金の返還金をもって事業実施してきたわけでございます。  ところが、高等教育機会均等を確保するために、学生生活費の上昇や授業料負担というようなことに対応して育英奨学事業の量的拡充が必要なわけでございますけれども、従来はこの無利子貸与事業の改善充実ということで順次今日まで改善を図ってまいったわけでございますけれども、現下の国の財政事情を勘案いたしますと、一般会計の政府貸付金を資金とするだけでは限度があるということで、こういう中で貸与月額の増と量的拡充という二つの事柄実現するとすれば、考え方としては一般会計以外の外部資金として財投を導入して低利の有利子貸与制度を創設するということで対応せざるを得ないという結論を、調査研究会でも御議論をいただいた上で出していただき、それに基づきまして今回御提案を申し上げている次第でございます。
  119. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省はもともと、この経過を見ますと、まず中教審が奨学制度について答申を出しております。私どもは、中教審の答申については全般的にわたって賛成をしておるものではありませんけれども、少なくも中教審は奨学制度については、例えば特に優秀な者については給付制をとれとか、一貫して充実拡大の方向を、少なくともこの問題については示してきたと思います。それがどこから変化するかというと、いわゆる財政問題が出てまいりまして、五十五年の七月の歳出百科、ここで有利子化の問題が出てくるわけですね。  そこで私どもは、ちょうどその年の十一月に衆議院の文教委員会におきまして奨学金制度問題を討論いたしました。当時、田中龍夫文部大臣のときであったと思いますが、そのときの田中文部大臣の答弁は、有利子化の問題については極めて消極的でございまして、現在の制度拡充することが私ども文部省の任務であるというふうに答弁をしております。数名の方がこの質問に立っておりますから、これは議事録をごらんになれば明瞭であります。ところがその次に、いわゆる第二臨調で決定的な問題が出てくるわけでございまして、ここで有利子化への転換あるいは免除規定の廃止という問題が出てまいりました。これを契機にして文部省文部大臣の私的諮問機関に諮りまして、これが五十八年六月二十八日に有利子化創設の方向が出てくるわけです。  したがって、この経過から見ますと、文部省自体はもともと有利子化という問題については考えていなかったんじゃないかというふうに思います。むしろ財政当局等の圧力あるいは臨調の路線に押し切られて有利子化の問題が出てきたのが実情ではないかと思いますが、この経過は間違いありませんか。
  120. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘事柄については、私ども、ただいま先生がお話しになったような経緯があったということはそのとおりかと思いますけれども基本的には臨調で育英奨学事業の見直しが提言をされまして、有利子事業への転換というようなことが言われたわけでございますけれども文教施策としては直ちにそれは受けとめることはできないという判断に立ちまして、育英奨学事業に関する調査研究会を設け、事業のあり方について、もちろん先ほど来御説明しておりますように、諸外国の実情調査教育関係団体からの意見聴取というような慎重な調査研究を行いまして報告が取りまとめられ、それを受けて今回御提案申し上げているような事柄実現しようというぐあいに考えておるわけでございます。  したがって、御指摘のように臨調路線を押しつけられたものではないかというぐあいに言われます点につきまして言えば、臨調では有利子に転換をし返還免除についても廃止というようなことが提言されたことに対して、私どもとしては十分文教行政の立場に立ちました検討を加えて結論を出したものでございますので、臨調路線を押しつけられたものではないかという御判断については、私どもとしてはさようには考えておりません。
  121. 山原健二郎

    ○山原委員 当時、田中文部大臣はこう答えております。「現状の財政の苦しいことは、われわれみんなよく存じておるのでありますが、文教政策なるものは、未来の日本の形成でありまして、この点は当面の些々たる問題とは異なり、非常に重大な将来の日本の問題でございます。」かなり格調の高い答弁をしておるわけでございます。  私どももこういう点で、一応文部省考え方というのはそこにあるだろうというふうに考えてきたわけでございます。ところが、今回この有利子制度、しかも一般会計ではだめなんで、結局財政投融資を借りるということになってくるわけでございますが、この財政投融資の問題についても臨時行政調査会は答申を出しておりますが、御承知でしょうか。
  122. 宮地貫一

    宮地政府委員 臨時行政調査会で答申を出しているのは承知しておるかという御質問の点は具体的にどの点を指すのか、ちょっと明確でございませんものですから、お答えいたしかねるわけでございます。
  123. 山原健二郎

    ○山原委員 一般会計では無理な状態だから財投から借りるというわけですね。その財投について、財投というのはそれほど甘いものかということから質問をし一でいるわけでございます。  時間の関係で申し上げてみますと、臨調の第五次答申、最終答申ですが、その中の第七章「予算・会計・財政投融資」という項目がございまして、ここで財投に関する指摘を行っております。  それを読み上げてみますと、まず前段で「運用対象機関については、社会・経済情勢の変化に即応して、より効率的・重点的に限られた資金を配分し、財政投融資としての機能を適切に発揮していくという観点から、厳しくその在り方を見直す必要がある。」こういうふうに述べておりますが、財投も甘い情勢ではないわけですね。その点は文部省も把握をされておると思いますが、いかがですか。
  124. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は、財投についても大変厳しい情勢下にあるということを私どもも十分踏まえておるつもりでございます。  今回、育英会に新たに財投資金を導入するというのは、そういう非常に厳しい情勢下に置かれている状態ということも十分承知をした上で、かつ育英奨学事業拡充のためには一般会計からの貸付金以外の資金として財投を導入することが必要であるという判断に立ちまして、財政当局の財投担当部局ともその点を折衝いたしまして、今回新たに財投資金を育英資金に導入するということにいたしたわけでございます。  そういう点では、大変厳しい状況下に置かれている中にあっても、一応財投担当部局の御理解をいただいてこういう資金として活用することになったという点では、私どもとしては、置かれている行政の厳しさは十分承知した上で、この資金を日本育英会に導入をし、そしてこれを育英奨学事業全体として事業拡充していく一つの手だてとして使うということについて理解をいただいて実施に踏み切ったものでございます。
  125. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、その点では相当慎重な態度をとらないと、財投がいつまでも安定的な状態にあるとは思うえません。  さらに臨調はどういうふうに指摘しておるかと申しますと、「資金運用部を通じた資金の運用においては公共性の観点も重要であるが、原資の性格からくる要請にかんがみ、これまで以上に有利な運用にも配意する。」と指摘しております。「原資の性格」というのは、御承知のように郵便貯金であるとか年金であるとか、国民から預かった大事なお金で利子をつけて返さなければならない資金だということであります。  そしてさらに、「財投事業の見直し」の項の中で「新規の事業は、真に必要なものに厳しく限定する」とする一方で、その次、ここが大事なところですが、「政策金融機関のうちで貸付金利が極めて低利で多額の利子補給、出資等を受けているものについては、他の政策手段との均衡に配慮しつつ、財政負担を軽減する方向を基調として見直しを行う。」こう言っております。  日本育英会の場合はまさにここに当てはまるわけでございまして、初年度の有利子貸与事業を維持するだけでも、十年後には百五億ということを局長はおっしゃいましたが、さらに利子補給が必要になるわけでございますから、そういう点から考えますと、結局大蔵省が手当てをしてくれる、こういう考え方でいくと、財投は毎年毎年の計画発表がなされるわけでございますから、毎年毎年揺さぶりがかかってくる。財政状況あるいは経済、政治状況の中で毎年、この財投の支出について計画がなされるごとに、日本育英会のこの計画が揺さぶりをかけられるということになりがねないのではないかというふうに思うわけです。  これが臨調の答申の中身です。臨調と大蔵省は運命共同体ですね。そうなりますと、大蔵省財政当局がこの臨調の指摘を無視するはずはありません。したがって、育英奨学金制度というのが、有利子制度の導入、財投からの借り入れをすることによって非常に不安定な状態になるのではないかということが予想されるわけでございますが、そのようなことは全くありませんと答えることができるでしょうか。
  126. 宮地貫一

    宮地政府委員 お尋ねの点は、臨調で言われておりますような点を受けて、特に「貸付金利が極めて低利で多額の利子補給、出資等を受けているものについては、他の政策手段との均衡に配慮しつつ、財政負担を軽減する方向を基調として見直しを行う。」ということにいわばひっかかって、資金的に育英会の財投資金について、毎年その点が議論対象になるのではないかという点での御心配かと思うわけでございますけれども、御案内のとおり、財投の運用そのものについて五十九年度新たに育英会に対して融資をするということに踏み切りましたことは、育英奨学事業そのものが非常に公共性の高いものであるということが理解をされまして、こういう厳しい状況下でございますけれども育英会の資金として財投を使うということについて合意が成り立ったわけでございます。  私どもとしては、今後この育英会有利子貸与事業が遂行されるに当たりまして、山原先生指摘のような形で育英会事業が安定して継続的に行われることが不安定になるというような心配は全くいたしていないわけでございますけれども、なおその点は今後の育英奨学事業の資金の確保のために非常に貴重な御示唆でもございますので、十分その点を踏まえまして対応いたしたい、かように考えます。
  127. 山原健二郎

    ○山原委員 私どもも、ここのところはかなり厳密にやっておかれた方がいいのではないかという気持ちで申し上げているわけで、毎年不安定な状態に置かれたら大変なことですね。しかも今度は新参者ですからね。確かに向こうが認めてこれを新規の事業として採用したには、それだけの覚悟があってやったことだと思います。けれども、一方ではこういう臨調の答申がある限り、また大蔵省は臨調と綿密なつながりを持ち、運命共同体であるという点から言うならば、揺さぶりをかけてこないという保証は、これは一年、二年はないかもしれませんけれども、やはり出てくるわけで、そうなってまいりますと結局どういうことになるかというと、学生諸君の負担する三%、これを七・一%へ限りなく近づけていくことが要請される可能性が出てくるのではないか、あるいは現在の無利子貸与有利子貸与に切りかえていかなければ解決できないのではないかということが心配をされます。  これが私の杞憂であればいいわけでございますけれども、私は単なる杞憂で申し上げておるのではありません。なぜならば、今まで臨調が大変厳しく申している中身を点検してみますと、こういうことになってまいります。  例えば、臨調の専門委員育英奨学制度を含めた文教政策を担当している公文俊平東大教授、この人は大きな力を持っておる人でございますし、私も知り合いであるのですけれども、彼はこういうふうに言っておるのです。「それは当然利子付き、しかも通常の利子率のものでなければならない。そうでなしに、特別低利で貸すとすれば、どんなことが起るか。誰もが奨学金を貰い、定額貯金や定期貯金にしておくことになりはしないか。それで確実に利息が稼げるからである。」ということを発表しております。これは「IDE」という民主教育協会誌でありますけれども、これに発表しているのです。こういう考え方があるのですね。低利じゃなくて通常の利子でやるべきだという考え方。そうでなければ利ざやを稼ぐ。これはちょっと乱暴な意見ではあります。それほど巨額の金でもありませんし、利ざやを稼ぐような状態ではないことはもちろんですが、そういう意見が強力に動いておるということは間違いありません。しかも、この人は今や中曽根首相の強力なブレーンですからね。  それからもう一つは、今度間もなく発表されるであろう行革審の報告書がどのように出るかという問題があるわけでございます。今まで発表されました行革審の中身は、奨学金制度については全面的な有利子化、返還免除制度の廃止というのが出ております。これはもう既に発表されておりますが、今度の報告ではそれが消えるかどうか、私はわかりません。わかりませんけれども、今まで発表されましたものによりますと、全面有利子化という言葉がはっきりと出ておりまして、私の聞きましたところでは、恐らくこの奨学金問題についての項目は今度の報告の中に消されないで出てくるのではないかと想像されるわけでございますが、この行革審との関係をどのように把握しておられるか、伺っておきたい。
  128. 森喜朗

    森国務大臣 行革審は、御承知のように二つの小委員会で今検討審議を進めておるというふうに承知をいたしております。新聞等ではいろいろな報道が流されておりますが、内容等についてどのような方向、どのような考え方を出しておりますか、まだ詳細は私ども承知をいたしませんので、現段階におきまして私の方から見解を申し上げることは避けたいと思います。  ただ、今の公文先生のお考え方、どこでどう述べられたか知りませんが、例をとって山原先生御心配の点を御指摘されました。さまざまな意見、いろいろな意見を出される方がありますが、先ほど局長から申し上げましたように、極めて公として大事な事業であるという認定、判断のもとで財投の資金をお願いいたしたわけでございます。そういう意味で利子補給についても十分配慮を加えているわけでございまして、あくまでも育英奨学制度というものを大事に考えて、そしてできるだけ量も拡大をしていく。確かに利子をいただくという点については、見方によれば大変厳しい残酷なやり方かもしれませんが、また見方を一つ変えれば、そういう経済情勢、それぞれの学生のいろいろな立場が非常に多様になってきておりますから、そういう中でそういう形で道を開いたものである、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。  そういう意味では、先生の御心配のないように、御指摘をいただきました点については文部省としても育英奨学の意義、そして将来ともにこれを拡充させていきたい、こういう考え方で進めてまいりたいと思っておりますし、今日までも臨調の答申等々いろいろな意見がございましたが、文部省としてはこの制度を大事に守っていきたい、こういう考え方で今日までこの制度を貫いているわけでございますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  129. 山原健二郎

    ○山原委員 行革審の報告は、六月の二十五日ということを当初から言われておりましたから、多少変更があるかもしれませんが、間もなく出ると思いますね。  例えば日本教育新聞あるいは幾つかの新聞を持ってきておりますが、その新聞には、奨学金問題については全面有利子化というのが出ております。ここで仮にそのままストレートで出てくるとするならば、中曽根内閣はこの行革臨調の考え方については最大限に尊重するという立場でございましょう。     〔委員長退席、白川委員長代理着席〕  そうしますとこれは大きな影響を与えてくるわけで、文部省有利子化適用の拡大ということを目的にして、厳しい財政事情の中で有利子化という問題に踏み切ったこのアリの一穴が、どれほどここで拡大をしていくかわからない。そういう意味では、文部省皆さんよりはもっと私は心配をしております。この有利子化のアリの一穴はがん細胞だ。むしろこれが広がっていく可能性がある。そこへ行革審の報告書が出てくる。全面有利子化、文部省は抵抗する。しかし、この路線は必ず突破してきますよ。  第一、調べてみますと、財投だって、地方の起債あるいは国債を除きますと伸び率はゼロなんです。そういう状態に置かれている。しかも、この財投に群がっておる機関は五十一機関ございまして、地方公共団体もあれば、沖縄から北海道までの開発、住宅公団、全部あるわけですからね。それがまさに争奪戦をやっておるわけでしょう。その中へ新参者の育英奨学金制度が入っていく。この新参者がどういうふうに取り扱われるか。これは、今までの財政の厳しさから四十人学級まで凍結をするというところまできた今日の大蔵省や臨調の考え方から申しますと、本当に容易な事態ではないんです。三%を守れますか。私は三%の有利子化については反対ではありますけれども、心配するのは、このような事態の中で、あるいは行革審の答申の報告書の中にもまさに出てこようとしておる情勢の中で、三%だって守られるのか。七・一%の財投の利子へなるべく近づいてもらいたいなどということが出てきはしないのかということになりますと、せっかく文部省が今日まで守ってきた育英奨学金制度の根幹が、ここでもう既に緩むわけですね。そのことが本当に心配ないのかどうか。これはこの委員会で徹底的に論議をしておかないと、後でしまったと思ったって間に合わないんですよ。ここのところの礎をきちんとするかしないかが、この問題の一つの勝負どころです。  私は、その意味でしつこくお聞きしておるわけですが、三%だって守り切れぬだろうと思う。財投はそんな生易しいものではないということを考えますと、ここのところはまさに育英奨学金制度のこの改正法案の基礎になる部分だと思いますが、その辺の覚悟はできていますか。
  130. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほども御説明をいたしましたように、大変厳しい中で育英奨学事業にも財政資金を投入するということを見ましたのは、育英奨学事業そのものの公共性から説明がされるわけでございます。そうしてまた、この有利子貸与事業につきましても、もちろんこれは学生に対する奨学金でございますので、私どもとしては、この利息をどうするかという点も議論がいろいろとあったわけでございます。  先生は、その点、将来とも守れる確信があるのかというお尋ねでございますが、私ども、この三%の利息を決めるについても、もちろん財政当局とも十分その点は折衝を尽くしまして、従来の私立大学奨学事業援助の貸与利率というようなことも考えまして、それよりもさらに有利な金利ということで、在学中無利子、卒業後三%の利息ということで折衝を経て決定を見たものでございます。この新しい有利子貸与制度が奨学事業の今後の改善のために役立つように、御指摘のような三%という利息についても、学生の将来の負担その他全体を勘案すれば、私ども文教行政を預る者としては、今後とも三%という金利を維持していくということについては私どもとしても十分対応していくという決意でございますし、その点については、今後ともその利息の引き上げ等について議論がありました際には、学生生活全体という観点から、低利ということを維持することについてはもちろん私どもとしても努力をいたす覚悟でございます。
  131. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、臨調を取り巻く人たちの発言、それからまた臨調の答申を読み上げて実証的に申し上げておるわけで、向こうは低利はだめだと言っているのですからね。全面有利子化ということも言おうとしているわけでしょう。そうすると三%ということについて、私は有利子化に反対ですから、しかし文部省が今出されている法案の命はここですよ。あなた方の出されている法案の命は三%。この三%は政令事項でしょう。この国会にかからないのです。政令事項というものは、どれほど毎年毎年の予算編成のときに揺さぶりをかけられるか、もうみんな知り切っているわけでしょう。しかも、まさに法律事項であった四十人学級にしても、ことしまで凍結で、来年の六十年度からは凍結解除されていくというのが法律です。その法律でも、まだ四十人学級については、予算編成期の七月、八月の段階にならなければ結果を申し上げることはできませんと文部大臣もおっしゃっておられる。法律事項であっても、そこまで今の財政事情の揺さぶりというのは大蔵省を中心にしてかかってくるのです。そのときに、三%というこの法案の生命線が政令事項、必ず揺さぶりがかかってきますよ。それを甘い判断で、もう大丈夫だというようなことでございましたら、私はこれは大変なことになると思うのです。  だから繰り返して申し上げているわけですけれども、財投に群がっている五十一の機関というのはみんな大事なものばっかりです。本四架橋公団、今度株式会社でございますけれども、関西空港だって、北海道開発だって、鉄建公団だって、全部大事なものです。全部ここへ必死ですがりついている。そこの勝負をやっているわけです。毎年毎年、この七・一の利率へいくか、それとももう少し、例えば七・四の利率へいくか、そこの勝負で大騒ぎをしている。そういう中で、育英奨学金の新たな制度が今取り入れられたからと言って、その利率が果たして守られ得るかどうかということは、よほど論議をして、場合によっては、法案が通った後で決議をするぐらいのことをやっておかないと、私は本当に崩れると思う。必ず崩されると思う。それくらいのものだという認識に立ってお考えいただきたいと思うのですが、よろしいですか。
  132. 森喜朗

    森国務大臣 それくらいの認識、大事なものだと考えて、この三%という問題を一生懸命、この案を構築するために文部当局も努力をしてきたわけでございます。  先ほど中野さんからもその点については強い御指摘がございました。今後ともこのことを大事に守っていくことが――いわゆる育英奨学制度の緩み、あるいは先ほど、これががんだというような御指摘がございましたが、逆に言えば、新しい道を開くことによって、緩みではなくて、むしろ奨学の事業の量を新たな面で――もちろん、利子をいただくという面では今までと違った面で学生に不利な面はあるかもしれませんが、それだけ新しい事業の量を拡大するという意味では逆に大きな広がりを持っていく、そういう制度だというふうに、少なくとも学生諸君には喜んでもらえる、私どもはそういう考え方でやっておるわけでございます。したがって、この三%についても、もちろんこの三%という数字がいいか悪いかという問題は別といたしましても、私どもとしてはこれを今後とも大事に守りながら鋭意努力をしていきたい、私どももそういう立場で指導をしていきたい、こう考えておるところであります。  田中元文部大臣のように格調高く申し上げると先生に御納得いただけるのかもしれませんが、私は極めて現実的な問題として、しっかりやらせますと、こう申し上げるしかないわけでございますので、何とぞ御了承を賜りたいと思います。
  133. 山原健二郎

    ○山原委員 田中文部大臣が十年前に言ったのが今日の情勢で変わっているのなら別ですけれども、格調高くやられたのはこの間ですからね。それがこういうふうに変わるわけですから、だから言っておるわけです。  それともう一つ。何でこういうことを言っているかというと、三%、今言いましたように政令ですから、ここではもう論議できないのです。だから、もしそれだけの決意が文部省にありましたならば、何で法律にしなかったか。文部省立場に立ては、そういうものを、利率まで法律にするということは法律上なじまないということがあるかしれませんけれども、そういう点では本当に法律にするぐらいの決意でやればよかったと思うのです。この点は、なおこの委員会審議が続くと思いますので、これでおきますけれども、この三%利率の問題は、今民社党の中野議員の方からも大変危惧の念を持っておられましたので、重複をしましたけれどもあえて質問をいたした次第でございます。今の情勢であれば大変厳しいということを考えざるを得ません。強くそのことを申し上げておきます。  次に、この法律の目的でございますが、これは大日本育英会から日本育英会に変わる法案審議のとき、そして今回、その目的条項が変わるわけでございますが、変わったといってもほとんど変わってないのです、言葉は変わっていますが。すぐれた者とかあるいは国家有為の者ということは、かつての大日本育英会のできた当時の目的と変わっておりません。これは例えばすぐれた者という意味では、例の学力評価ですが、そういう意味では三・二、三・五という数字が今回出てくるわけでございますが、これは本当に驚くべきことだと私は思うのです。今中曽根首相は、偏差値をなくするということを言っていますし、昨年末の十二月の総選挙で自民党が掲げたスローガンは「偏差値より人柄を」ということでございましたが、今度三・二と三・五というのは五段階評価で来ているわけですね。この五段階評価の偏差値教育を一方で否定をしながら、偏差値の高い人は無利子、偏差値の低い人は有利子という結果になるわけでございまして、全くこの条項は削除した方がいいと思います。大学へ入れる人ならだれでも受けることができるというのが奨学金制度だと私は思いますので、しかも憲法、教育基本法はそのことを明記しておるわけでございますから、その点で、例えば能力があるといいましても、三・一とか三・五というようなものが一体何なのかということですね。なぜあえてここへこのような点数を持ってこなければならないのか、この点を明確にしてください。
  134. 宮地貫一

    宮地政府委員 「優れた学生及び生徒」ということでございますが、これは目的規定としては、既にお尋ねがございましたように、今回改正をいたしました趣旨については既に御説明をしたとおりでございます。  問題は、学業成績を見るに当たって点数で見るのはどうかという御指摘でございますけれども、すぐれた学生生徒ということで、育英資金の原資が限られております現時点奨学事業として実施するに当たりまして、もちろん経済的な条件も見るわけでございますけれども、限られた人たち奨学金考えるという際に何を基準にするかという一つ基本的な問題があるわけでございます。経済的な条件と限定をするとすれば、成績の面で「優れた学生及び生徒」という点について見るということは、基本的には一つ基準としては、物差しとしてそういうもので見るということは妥当性のある事柄というぐあいに考えておるわけでございます。  もちろん、具体的に奨学生を決定するに当たりまして、学業成績だけが判断の基礎になるわけではないわけでございまして、そういう基準に該当する者の中からもちろん人物その他についても調査表を出していただきまして、真に奨学生とするにふさわしい者を具体的に決定をするということでございますので、いわばその選考される対象基準としてお示しをしているわけでございます。その物差しだけで物事を決定しているということでは決してございませんので、人物について総合的に判断するということについては、全体的な判断を下して決定するということでございますので、言われているように偏差値云々で、学力だけで物事を決定しているという事柄と成績の基準として設けているということではおのずから意味が違うんではないか、かように考えます。
  135. 山原健二郎

    ○山原委員 この三・一とか三・五とか、どこへ書くのですか。何がへ書くのでしょうか。もう一回。おとといの質問に対する答弁で、三・二以上の方は大学では八割とか、それから三・五以上になりますと六割とか六・四割とかいうパーセント、そういうふうにおっしゃって、そこの差が二割もあるというようなお話が出たわけですから、この三・五とか三・二というのはどこへ表示するのですか。
  136. 宮地貫一

    宮地政府委員 具体的には、育英会の選考採用の基準において決めているものでございます。
  137. 山原健二郎

    ○山原委員 そんなものが育英会に必要ですか。
  138. 宮地貫一

    宮地政府委員 それぞれ出願者を学校長が育英会に推薦する場合に、その者が育英会の選考を受け得る資格要件を備えているかどうかを学校長が判定をいたします場合に、その基準が用いられるわけでございます。また、育英会が学校長の推薦を受けました者について選考する場合に用いられるわけでございまして、いずれにいたしましても、全体的に各学校から推薦される者の奨学生としての適格性の程度ということを判断するに際して、この基準がございませんと不均衡を生じ、かえって不公平になるというような問題が出てくるわけでございます。  そういうことで、従来は、一般貸与については定められていなかったわけでございますけれども、特別貸与に倣いまして、三十七年度からこういう基準を定めることにして貸与いたしておるわけでございます。
  139. 山原健二郎

    ○山原委員 それは、仮に予算上の制約があって全部希望者を採用できないという場合の措置あるいは対応の問題なんですよ。この法律の目的というのは、やはり憲法と教育基本法に基づいた法律目的というものにしなければ、措置の問題をここへ持ってきて、そして「優れた学生」ということになると、それを三・一とか三・五とかいう数字を内々に示して、それで選別をするというのとは違うと思うのです。この法律の目的というのは、やはり教育基本法に基づいたものでなければならぬ。そういう意味では、諸外国にも例を見ない目的になっておるわけですね。  そして、文部省の見解も変わっております。これは文部省十分御承知のことだと思いますけれども、あえてここで読み上げてみたいと私は思うのです。文部省自体がもともと「教育基本法の解説」の部分でどういうふうに言ってきたかといいますと、「奨学というのは、従来いわれてきた育英という言葉では、英才、特に優秀な者を助け育てるというように、その対象が、能力ある者というよりも狭くとられやすいので、それをさけるために採用されたのである。」とおっしゃっておられます。  しかも、これは教育基本法ができるときに参考案文の中で「教育機会均等」の項で、「育英の方法を講じなければならないこと。」であったものを、教育基本法ではこの「育英」が「奨学」という言葉に改められているわけですね。ここに教育基本法の精神があるわけです。今度の臨教審の中で「教育基本法の精神にのっとり」ということを政府は書かれているわけです。その「教育基本法の精神にのっとり」と今度の育英会法の改正に当たっての文言というのは全く違います。  さらに、「大日本育英会によって奨学金貸与を受ける者は、「経済的理由ニ依ッテ修学困難ナ優秀学徒」とされ、その範囲は比較的狭い。本条によって奨学を受けるべき者は、単に「能力ある者」とされたのであるからその対象は現行の大日本育英会法の場合よりずっと広いのである。」。  さらに、「文部時報」に寄せられました西村巖氏、当時文部省調査審議課長の「教育基本法概説」では、次のように解説をしております。「能力があるにもかかわらず、」「ここで能力がある者とは、一応ある学校に入学した者という意味に解すべきであろう。」それは大学へ入学した者が能力ある者です。「国家的に能力試験をして、それに合格した者を能力ある者とするのではない。奨学とは、従来言われてきた育英ということばでは英才を育てるという意味にとられやすいので、能力ある者を助けるという意味を出させるためにとられたことばである。」こういうふうになっているわけですね。この考え方、これが新しい憲法、そしてできました教育基本法のまさに精神なんです。その教育基本法の精神に、旧法もそうですけれども、今度改正をされました目的の条項というのはのっとっていません。これは明らかにのっとっていない。その点はどういうふうに解釈をしておりますか。
  140. 宮地貫一

    宮地政府委員 先ほども申し上げたわけでございますけれども教育機会均等の精神ということで、今回の条文では「教育機会均等に寄与することを目的とする。」ということで、そこは明確に出したわけでございます。  ただ問題は、いわゆる国の予算の制約の中で育英奨学事業実施いたします場合に、人材育成という観点から、学業成績がよりすぐれた者の中から選ぶという点をとっている点は、御指摘の点は、育英奨学資金についてさらに飛躍的に充実が図られまして、御指摘のように、大学に入った者については、経済的に困難な者があればその全体を対象とするというところまで行くことは、あるいは事柄としては私どもも求めなければならない一つの理想かと思いますけれども、現実の育英奨学事業の原資、資金について制約のある今日の状況で申せばやむを得ない点ではないかと考えているわけでございまして、そのことを加味すること自身が教育機会均等の趣旨に反するというぐあいには私ども考えないわけでございます。
  141. 山原健二郎

    ○山原委員 我が国の育英奨学金制度の貧困低劣なことは有名でありますから、そういう意味で、もう諸外国の例は申し上げませんけれども、それを拡充していくというねらいを持った目的を書けばいいのであって、今私が、局長がおっしゃっているような、措置の面あるいは対応の問題というものがこの目的へ出てくるのはおかしいと思うのです。目的は、教育機会均等教育基本法の条項に基づいたものが出てくるべきで、その対応の問題がここに出てきて、予算上の制約等があって全部採用することはできないんだから、ここへすぐれた者というふうに入れるのはやはり趣旨が違うと思います。育英奨学金制度の将来を展望して、そして日本の奨学制度はいかにあるべきか。諸外国に比べて、経済大国と一方では言いながら、大変低劣だ。この日本の奨学制度をどういうふうに発展させていくか、そういう目的に向かって書かれたこの法律の目的ならば、違ってくると思うのです。今日の財政がこうなっているから全部採用することはできないんだから、それは対応の問題。法律の目的というのはもっと大きなところへ置くべきであって、その背後にはきちんとした教育基本法の精神が貫かれる。憲法、教育基本法にこの奨学制度の精神がなければともかくですけれども、明瞭に書かれているわけですからね。その精神に基づいたものが出ないで、目の先の財政の問題が出てくるとは何事か。これはまず第一にこの改正法案の目的条項の欠陥ですね。これは強く指摘しておきたいと思います。  もう一つは、いわゆる有為な人材の問題でございます。あえて読み上げますけれども、「教育基本法の解説」では「「国家有用の人物を錬成」することを目的とした在来のかたよった国家主義的教育一から解放され、」云々と文部省みずからが言っております。  さて、従来の各学校令は、おのおのその第一条においてその学校教育の目的を規定していた。その多くは、「皇国の道にのっとり」という言葉が初めにつけられ、教育はすべて国家目的に奉仕するべきものとされ、国家有用の人物を錬成することが目的とされ、人格の問題はいわば副次的に取り扱われるにすぎなかったのであるという戦前の反省に立った教育基本法の成立、そしてその解釈がなされてきたわけであります。  さらに、「教育基本法の解説」では、従来我が国の教育は国家のために奉仕すべきものとされ、皇国民の錬成ということが主眼とされて、国家を超越する普遍的道徳の存在を無視し、個人の独自の侵すべからざる権威、価値が軽視された。また、国家に有用な者のみが真理とされ云々。これは文部省の、政府機関の教育基本法に対する解説なんですね。  この育英会法案改正するとするならばその精神に基づいてなさるべきであって、文部省がかつて戦前教育の反省のもとに打ち立てたこの国家有為の問題、これについても見解が随分変わってきているということを考えますと、文部省考え方が年月を経るにつれてそういうふうに大きく教育基本法を逸脱する方向に向かっておるのかどうか、その点どうでしょうか。
  142. 宮地貫一

    宮地政府委員 目的規定は先ほど来御説明しているとおりでございまして、特に「国家有用ノ人材」を「国家及び社会に有為な人材」ということに改めたわけでございますけれども、これは最近の立法例に従いまして「有為」という言葉をとり、かつ「国家」については「国家及び社会」という、より広い表現に改めたということでございます。  なお、直接の表現ではございませんけれども、例えば学校教育法第四十二条でございますけれども、「高等学校における教育については、前条の目的を実現するために、次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。」というような規定がございまして、第一号でございますが、「中学校における教育の成果をさらに発展拡充させて、国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養う」というような表現もあるわけでございます。したがって、「国家有用ノ人材」ということを「国家及び社会に有為な人材」ということに表現は直したわけでございまして、私どもとしては、より広く、より客観的な表現ということで取り上げているわけでございまして、国家に役立つという非常に狭い意味で規定を書いたものではございません。
  143. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろ理由はあると思いますけれども、やはり法律の目的ですから、しかも教育に関する法律の目的というのはやはりそれなりの重みを持っておると思います。だからこの委員会でも常に、教育基本法に立ち返り立ち返り論議がなされる。政府の方や皆さんの方は、その点の見解がいつも違うのですね。教育基本法の精神をどういうふうに受けとめるかということは、これから臨教審でも問題になると思いますけれども、違うのです。やはり私どもは戦前教育の反省に立って、そして教育基本法というものを受けとめてきましたから、そういう点では見解の違いがあるかもしれませんが、少なくとも教育理論を論戦する場合には、やはり教育基本法の精神というものをしっかりと踏まえて論議をしていく必要があるのじゃないか。そこの基礎の広場がなかったら、もう話はかみ合わないと私は思います。  けれども、そういう点では、この奨学金制度法律改正をやるとするならば、やはり基本法の精神に立ち戻って――戦前にできたわけですから、一九四四年、昭和十九年にできた法律ですよ。昭和十九年といえば、私は森文部大臣と年は違いますから、私自身は鉄砲持って外国を走り回っておるというような時代ですから、どんどん青年たちは死んでいく。しかも戦況は大変な事態を迎える中で出てきた法律でしょう。だから、その中には「国家有用ノ人材」というのが出てくる。そういうものをつくらなければ戦勝国家になれない、戦争に勝てないという中でつくられた法律、それが今日まで続いてきた。それを変えようとする。しかも今度は大きくそれを変えようとする場合にどこへ立ち戻るかといえば、やはり教育基本法ではないでしょうか、憲法ではないでしょうか。  そうしますと、憲法や教育基本法の精神から言うならば、私はこの法律目的とは違うものが出てくると思います。それは戦後の憲法、教育基本法下の平和、民主、平等主義の教育原理というものがあるわけですから、それと照らしてみたならば、今度の法律改正は異質なものです。教育基本法に照らしてみたならば、まさに異質なものを文部省は出してきたと言わざるを得ません。憲法第二十六条、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」これを受けて基本法第三条は「教育機会均等」で、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、」経済的地位によって「教育上差別されない。」二項「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」と明記をしているわけです。この能力に応じたというのは一体どういうことかというと、能力の発達にいろいろな遅滞があったりハンディキャップがあったりする場合に、それに対して一層行き届いた教育の財政的な保証をしていく、これが教育基本法の能力に応じたの原理です。また、そういうふうに文部省自体も解釈してきておった。その点では私どもと一致しておるのです。変わったのはあなたの方なのです。  だから、そういう意味で、この「国家有用ノ人材」というのを今度は、その当時はそういう育英的な教育観とは相入れないのだと文部省自身も言っておったわけでしょう。そういう点から考えましてこの法律改正というのは、ここで改正をされるならば、この目的の条項についてはもっときちんとした論議をして、後世に恥ずかしくない目的を確立する必要が私はあると思います。見解の違いはあるかもしれませんが、私はかつて文部省自身がとっておった解釈に基づいて、この法律の目的改正は少なくとも教育基本法の精神に相反する中身を持っておると言わざるを得ないのであります。  この問題について大臣の見解をお伺いしたいということと、改めて申し上げますけれども有利子制度の導入というのは、まかり間違えば日本の育英奨学金制度の根幹を覆すものになりかねないという意味では、相当の決意を持ってこの法律を出されたと思います。法律に対する賛否は別としましても、私どもはそのことを憂慮しておることを申し上げたいと思いますが、この点についての見解を最後にお伺いいたしたいのであります。
  144. 森喜朗

    森国務大臣 いろいろと御指摘をいただきましたこと、もちろん見解や立場が違うものもございますが、学生に対します奨学制度をなお一層充実をしろという、大変長い間の教育に対しての御見識を持っておられます山原先生のお考え、いろいろと御指摘をいただきまして感謝を申し上げる次第であります。  私どもといたしましても、もちろんたびたび申し上げておりますように、無利子で幅広く学生の学業が進められていく上に役立つものでありたいという基本的な考え方は私ども大事に守っていかなければなりませんが、こうした財政状況ももちろんございますけれども、むしろ新たなる日本の社会あるいはまた学生の多様な生き方、いろいろございます。そういう中で新しい事業の枠を拡大していきたい、新たなる道を開いていきたい、こういう考え方でこの法律をお願いいたしたわけでございます。もちろん、御指摘をいただきましたいわゆる利子の問題でありますとか、ただいまもいろいろと御指摘をいただきました点は十二分に今後とも配慮をして、先生から御指導賜りましたような事ごとを十分に配慮した奨学制度の充実を図るように、政府としても努力をしていきたいと考えております。  なお、教育基本法、憲法にのっとるいろいろなお考え方をお示しいただきました。これもまさに傾聴に値する幾つかの御示唆であったというふうに承っております。私どもといたしましても、憲法そして教育基本法は、敗戦の反省の中に立った新しい平和国家をつくり上げていきたい、その中で有為なる青年たちが大きく育って、日本の繁栄のみならず、国際社会の中に十二分に活躍してくれることを願ってこの制度の新しい道を開いていきたい、こういう考え方を示したものでございます。  いろいろとお立場は違うし、御見解の違いもございますが、学生のためになるのだという考え方については、私ども先生もまた軌を同じゅうするものだろうというふうに考えております。今後ともなお一層努力いたします、こう申し上げて、先生の御質問に対してお答えさせていただきます。
  145. 山原健二郎

    ○山原委員 時間が来ましたので、終わります。
  146. 白川勝彦

    ○白川委員長代理 江田五月君。
  147. 江田五月

    ○江田委員 日本育英会法案についてお尋ねいたします。  きょうは一日長丁場ですのでお疲れかもしれませんが、最後までよろしくお願いしたいと思います。私、大変小さな会派でございまして、きょうはいろいろなものをかけ持ちしておりまして中座をしたことをおわびいたします。今までも多くの皆さんからいろいろな質疑が行われましたので、あるいは重複をすることもあるかもしれませんが、なるべく重複しないように努力をしますのでお許し願いたいと思います。  まず、今回の法案、一体なぜこの法案をお出しになったのか、これを伺いたいと思います。  昭和十八年から始まった四十年の歴史ある日本育英会奨学事業について抜本的な改正ということであって、かなり大きな理由がなければこういうものが出てこないわけですから、どういう理由で新しい法案、抜本的な改正というのが必要になったのかということをお答えください。
  148. 宮地貫一

    宮地政府委員 今回の改正をする趣旨についてのお尋ねでございまして、昭和十九年に日本育英会法が施行されて以来、育英会事業は逐年発展を遂げて今日まできておるわけでございます。  ただ、現状で申し上げますと、学資の貸与を受けた学生及び生徒は約三百四十万人に達しまして、社会の各分野で活躍をしておるわけでございます。そういう点では、今日の我が国の発展に多大の寄与をしてきたものというぐあいにども、受けとめておるわけでございます。  しかしながら、最近におきます高等教育の普及状況、量的にも大変広がりを見てきておるわけでございますし、また社会経済情勢の変化というような事柄に対応しまして学資貸与事業の一層の充実を図るという点について言えば、従来の施策といたしましては一般会計からの貸付金の増額ということで、それぞれ貸与月額の増でございますとか貸与人員の増ということで対応してきておったわけでございますけれども、片や今日の財政が大変厳しい状況になってきておる。具体的に申し上げますと、貸与月額のアップもこのところ数年においては、実際問題としては実施をできないで対応せざるを得ないということできておるわけでございます。  例えば、従来国立大学授業料が引き上げられました際には、それに見合ってと申しますか、それに対応するような形で奨学金貸与月額の引き上げも行われてきたわけでございますけれども、今日大変厳しい財政状況を受けまして、授業料が引き上げられても奨学金貸与月額の引き上げは行われないというような事態に直面をしてきておりまして、それに対しましては、私どもとしては、例えば国立大学授業料の免除の枠を拡大するということで具体的に対応はしてきておったわけでございますが、貸与月額の増も行えないというような事態に直面をしてきておったわけでございます。片や、先ほど来御指摘のありますように、臨時行政調査会の答申等では、育英奨学事業について有利子制度に転換をすること、あるいは教育職、研究職の返還免除制度についても廃止ないし縮減を図るというようなことが提言をされまして、もちろん臨時行政調査会の答申では各般の事柄が言われておるわけでございますが、基本的には民間活力の活用というような考え方が基調にあろうかと思います。  そこで、それらの点を踏まえまして、私ども文教行政を担当しておるものといたしましては、育英奨学事業についても、そういう事態を踏まえてどういう対応をするかという事柄につきまして、文部省自体に育英奨学事業に関する調査研究会を設けまして検討を加え、そこで結論をいただいたのが先ほど来御説明をしている点でございます。一つは、育英奨学事業としては無利子貸与事業制度の根幹として残すという考え方をとり、その上で有利子貸与事業を新たにつくる、有利子ではございますけれども、もちろん奨学生が将来返還をするに当たっての負担ということも十分踏まえまして低利のものであることを確保するような形で、低利の有利子貸与制度を新たにつくるという形をとりまして、貸与月額の引き上げと、全体的で申せば貸与人員の増も図るというような形で今回改正をお願いしているわけでございます。
  149. 江田五月

    ○江田委員 長い御説明でしたが、端的に言えば、一つは財政的に非常に厳しくなった、もう一つは臨調答申でやり玉に上がったといいますか、制度を変えなければならぬと指摘をされたということがあると思うのです。  財政的に厳しいというのはわかります。わかりますが、問題はいろいろ含んでいる。臨調答申という方は、これもちょっと議論をしてみなければわからぬ。まず基本的に、これは今までは無利子だったわけですが、今回は無利子ということを根幹としながらも有利子ということを導入した。無利子というのはいいのですか、それともいけないのですか。最近における高等教育の普及状況を踏まえて、あるいは社会、経済情勢の変化に対応して一層充実するには抜本的見直しを行うことが必要だと提案理由にも書いてありますけれども、無利子の制度というのはだめになったんだという認識なんですか、そうじゃない、やはり無利子というものがいいんだという認識なんですか、その認識の根本をちょっと伺っておきたいと思うのです。
  150. 宮地貫一

    宮地政府委員 私ども提案を申し上げている立場で申し上げれば、無利子の貸与事業というものは育英奨学事業としては根幹として存続をさせていくという判断に立っているわけでございまして、育英奨学事業というようなものにつきましては、いろいろお考えはあろうかと思います。抜本的な議論で申せば、やはり給費制度というようなことも事柄としてはあるわけでございます。そしてまた、現行の育英奨学事業というのは一般会計からの貸付金ということで無利子貸与、奨学生から将来返還していただく金額も将来の育英奨学事業として循環させていくというような考え方に立ては、無利子貸与事業ということも非常に意味のある事柄ではないかと私ども考えております。  有利子奨学事業実施すべしという議論をされる方ももちろんおるわけでございまして、それは、その奨学事業を将来の原資として役立たせるについては、やはり全体的な物価上昇でございますとかいろいろな点を考えれば、利息ということを基本的には考えるべしという議論をなさる方ももちろんおるわけでございます。  しかしながら、私ども文教行政を担当している者といたしましては、現実に行われております育英奨学事業、今日まで四十年にわたって行われてきております現実、そしてその実績等を踏まえれば、やはり無利子の貸与事業というものを育英奨学事業制度基本としては据えるべきものというぐあいに考えておるものでございます。
  151. 江田五月

    ○江田委員 無利子制度というものがやはり日本においては、少なくともこの育英奨学制度を国が行う場合の制度の根幹なんだ、これが国の行う育英奨学制度の基礎をなすんだということは揺らいでいないというふうに考えていいのですか。大臣、この点はいかがなんですか。
  152. 森喜朗

    森国務大臣 奨学生制度というのは、いろいろとその国によって制度としてしかれているわけです。中西さんもけさほど、諸外国の例を幾つかお話しをいただきました。給付制というのもございますし、ある意味ではおくれておるという意味での貸与制というのもありますから、そういう中の選択の道としては貸与制をしいておりますが、学生が学業を修めていく、そしてそれが日本の国にとって大きな繁栄の原動力になっていくであろう、また豊かな、平和な社会を構築していく構成員として社会に巣立っていく、そういう大変大きな意味を持つものでありますから、この事業は無利子でいくというのがやはり大義として正しいと私は考えております。  そういう方向でこれまでも努力をしてきたわけでありますが、先ほど先生からも御指摘がありましたけれども、直接臨調等からこういう考え方があるから私どもはそれに従ったということではなくて、やはり財政が非常に厳しい、あるいは臨調からそういう奨学制度についての意見がある、そういう中で全体的な予算の枠というものは年々、これもまた聖域として扱われないわけでございますから、そうなればどうしても、先ほど局長も申し上げたように、額のアップということもできません、量をふやしてあげることもできません。私どもとしては、奨学の量の拡大はぜひともしていきたい、これはやはり基本的に大事なスタンスでなければならぬ、こう考えております。  そういう意味で、無利子というものを大事に守りつつ、なお一層、たびたび申し上げて恐縮でありますが、やはり学生にもさまざまな、いろいろな立場の方もおられるようになっておりますし、経済、社会、あるいはこうした経済の環境、あるいはまたさっき中野さんがちょっとおっしゃっておりましたけれども――江田さん、あなたは優秀な頭を持って、東京大学ですから、十分奨学制度対象になったと思うのですけれども、私どもの時代は、奨学金なんというものは全然我々に縁のないものだというふうに学生時代は思い込んでいまして、あいつ結構いいな、奨学金をもらっているんだって、偉いやつだななんて、こういったぐらいに思っておりました。  私ども学生時代と今では、相当大きな範囲に広がっておるわけであります。そういう意味で、さまざまな対象者が出てきているということから考えれば、有利子制という新たな道を開くことによって量の拡大をしよう、こういうことでございますから、見方はいろいろあると思いますが、ある意味ではまたこれも意義のあることである、私ども、こういうぐあいに考えております。  ですから、無利子は全く意味ないという意味ではないわけで、やはりこうした事業の根幹から考えれば無利子はとても大事なことであるし、これは大事にしていかなければならぬ、こう考えているわけであります。
  153. 江田五月

    ○江田委員 なぜこれをしつこく聞くかといいますと、最近の状況、社会的状況、経済的状況、あるいは高等教育の普及状況、あるいは今の学生生活状況なんかを踏まえると、もう無利子という制度自体が時代おくれになったんだというような見解があるいはあるのかもしれない。そうではなくて、やはり無利子制度というのは根幹なんだ、これは一番大切なんだということを踏まえておらられる、そういうふうに理解をします。  そうすると、五十七年七月三十日の臨調の第三次答申というのは、「高等教育機会均等を確保するため、授業料負担については、育英奨学金の充実等によって対処することとしこれはいいですよね。「外部資金の導入による有利子制度への転換、返還免除制度の廃止を進めて、育英奨学金の量的拡充を図る。」、「有利子制度への転換」と書いてあるのです。この「転換」という臨調の答申はどうなったのか。  私は、行政改革というものは今の時代に非常に大切な改革であって、取り組まなければならぬと思います。その行政改革を臨調という手法で行わざるを得ない事情についても理解をしているつもりです。しかし、それならば臨調が出した答申は全部もう天の声で、これに何でも従わなければならぬかというと、それは必ずしもそうじゃない。事柄によっていろいろあるだろう。そうはいかないという場合もあるだろうし、あるいはピント外れもそれはあるかもしれぬ。大きなところで押さえておきながら、やはり個々的には具体的に考えていかなければならぬものだと思いますが、臨調の「有利子制度への転換」というこの方向、あり方についての一つ提案はどういうことになったわけですか。
  154. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は先ほども御説明をしたかと思うわけでございますけれども、臨調の提言としては、有利子制度への転換、返還免除制度の縮減というようなことが言われたわけでございます。  しかしながら、文教行政を担当しております文部省といたしましては、そのことにそのまま対応するということではないという考え方に立ちまして、先ほども御説明しましたように、今後における育英奨学事業のあり方につきまして調査研究会議論をいただいた上で、もちろんその調査研究会のメンバーの中には、いわば財政当局意見を主張される方々にも入っていただき、財界の方々にもお入りいただき、公平な立場議論をしていただいたつもりでございます。その中で十分御議論をいただきまして、その議論を踏まえて全体の制度を、今回御提案申し上げておりますような内容として取りまとめて五十九年度の予算に要求をいたし、そして今日に至っておるというのが今日までの経過でございます。  したがって、「有利子制度への転換」ということは、文部省自体といたしましては、その報告書で言われております、ただいま先生質問の点に直接関連するところで申し上げますと、「育英奨学事業教育機会均等を確保するための基本的な教育施策であり、国の施策として育英奨学事業実施しなければならないものである以上、先進諸外国の公的育英奨学事業給与制基本としていることにも留意し、現行の日本育英会の無利子貸与事業を国による育英奨学事業の根幹として存続させる必要がある。」というぐあいに調査会では御議論をいただいて結論をまとめていただいたわけでございます。  したがって、文教施策として進めていくに当たりましては、育英奨学事業というのは無利子貸与制度を制度の根幹として残していくという結論を得まして、有利子制度については、低利の有利子制度を新たに創設するという考え方をあわせとったわけでございまして、文教施策としてはそれで進めるという形で五十九年度予算にもその内容を要求し、そして今日に至っているということでございます。
  155. 江田五月

    ○江田委員 文部省皆さんからなかなかはっきりとおっしゃりにくいことかもしれませんが、臨調の答申には文部省は抵抗しておるんだ、必ずしも臨調答申をそのままというのではなくて、あえて抵抗して今の無利子制度は根幹として存続をさせる、これはしっかり守っていく、しかし財政の大変困難な状況に対応するために有利子制度緊急避難的に設けたんだ、そういうことだと理解をしたいのですが、しかし、そこはやはりよほどしっかりしておかないと、これまでの質問にもありましたとおり、有利子制度というものが次第次第に拡大していく、拡張していく、またその利子も次第に上昇していくというおそれがあると思うのですね。  臨調の最終答申、先ほども山原先生質問の中にちょっと出てきておりましたけれども、「財投事業の見直し」のところにこういうのがあるのですね。「新規の事業は、真に必要なものに厳しく限定することとし、スクラップ・アンド・ビルドやサンセットの考え方を積極的に導入する。」有利子奨学金制度というのは新規の事業ということになるのかどうか、新しく導入するわけですから。そうすると、そういう財投を利用して新しいものをやるというときには「真に必要なものに厳しく限定」、これは真に必要だというお考えでしょうが、財政状態の大変困難な状況が改善されて、そして無利子貸与、無利子の奨学金でもかなりのものが再びできるようになるというような段階に至ったときにはサンセットで有利子のものはやめる、そういうようなお考えはありませんか。臨調の答申にそういうことがちょっと出てきておるのです。第五次の最終答申です。
  156. 宮地貫一

    宮地政府委員 先生指摘の臨調の答申、いわゆる「新規の事業は、真に必要なものに厳しく限定することとし、スクラップ・アンド・ビルドやサンセットの考え方を積極的に導入する。」ということが言われているわけでございます。  この低利の有利子の奨学育英資金の貸与制度というのは新たな制度でございますが、その点は先ほども御説明をしましたように、この事業は極めて公共性の高いものということに着目されて、財投に新たな事業として起こすことについて財政当局も同意をしたというぐあいにどもとしては理解をしているわけでございます。  なお、今お尋ねの点は、将来一般会計の財源の方で、各行政施策を充実させるに足るだけのものが出てきた際にはどう扱うのかというお尋ねで、その際に、ここで言われているサンセットというのは、むしろそういうこととは違うのではないかとは思っておりますけれども、将来私どもとしても、無利子の貸与制度の充実ということももちろん考えておるわけでございまして、そういうことが可能な時期になれば無利子の貸与制度について積極的に施策を充実していくということは当然考えなければならない事柄というぐあいに考えております。  ただ、その際、あわせて、それではそっちの方が十分であるから低利の有利子制度を直ちに廃止すべしという結論になるかどうかは、もちろんその時点検討しなければならない課題だと思いますけれども制度の仕組みとして動かします以上は、やはりいろいろ多様な対応ができるような仕組みにしておくことの方がより望ましいのではないかという判断もあろうかと思っております。  制度改正そのものから申せば、先ほども申しましたように、例えば給費制度をどういうような部分にどう導入するかということなども、長い目から見れば将来の検討課題としてはあり得るわけでございまして、奨学事業全体の改善充実ということはもちろん私どもとしても心がけていく問題でございますけれども、ゆとりができたときにそれでは直ちにこの低利の有利子制度を廃止するかというお尋ねであれば、それはその時点で十分慎重に判断をしなければならぬ事柄、かように理解をしております。
  157. 江田五月

    ○江田委員 今財政が逼迫して大変だ、来年度の予算、マイナスシーリングが一体どういうことになるのか、政治上も大変な問題で、その問題をめぐってこれからいろいろな議論が行われてくるだろうと思いますけれども、仮にマイナスシーリングなんということになりますと、来年度もまた育英資金貸付金の予算というのは削られるということになるわけですか。それを前提に考えていかなければならぬということになってしまうわけですか。
  158. 宮地貫一

    宮地政府委員 来年度の概算要求の事柄自身大変大きい事柄で、先生指摘のとおり、ただいま各方面でいろいろな議論がなされているということは伺っておるわけでございます。  私どもも、全体としては大変厳しい状況下にあるというぐあいに理解をしておるわけでございますけれども、これは文教予算全体の事柄でございまして、その中でどのように育英奨学事業について必要な枠を確保し対応していくかということは、六十年度の概算要求を全体としてどう取りまとめていくかという今後の作業、各省庁いずれも八月末には概算要求をまとめて提出をすることになるわけでございまして、その中で取り組む課題であるわけでございますけれども、ただいま御提案を申し上げておりますような無利子貸与事業有利子貸与事業というような形で育英奨学事業を進めていくということについては、私ども、その基本的な考え方については十分確保を図っていかなければならない課題というぐあいに考えております。
  159. 江田五月

    ○江田委員 本当はもっと突っ込まなければいけないのですがね。今年度の予算が成立をしておって、したがってその予算に縛られて旧法といいますか、現行法による募集がどうもできにくいんだというこの問題。先日の大臣の言明もあって今検討されているところと思うので、余り伺わない方がいいかとも思っておったのですが、もう既に皆さんいろいろ伺っておられるので、私も一つ二つ質問することをお許し願いたいのです。  予算がこの改正法に基づいてついているから、決まっているから、それともう一つは、新しい法案提案をしているから現行法に基づく募集なり採用はできない、その二つの理由をお挙げになっているわけですが、一体予算ができておるということがどうして現行法に基づく措置を進めることの障害になるのですか。
  160. 宮地貫一

    宮地政府委員 その問題については先ほど来御議論もいただきまして、私どもとしては、国会で御議論いただいている点を踏まえて鋭意検討させていただいている時点でございますので、ただいまの時点ではそれ以上深く立ち入ってその点について議論をいただくと、さらにそのことについての御議論を呼ぶというようなことがあろうかと思いますが、なお今まで御説明させていただいております範囲内で説明をさせていただきますと、予算が成立をいたしておりますが、予算はただいま御提案申し上げておりますような新しい制度内容とした予算でお願いしているわけでございます。  そこで、私ども政府側といいますか行政を担当しております者としては、新しい法律をお願いして五十九年度からこの新しい制度事業を行うということを基本的には根っこに置いておるわけでございますので、国会で御審議をいただいて法案が成立をいたしますればそれから事業実施するということで、新規の採用については停止しているということでございます。  その理由といたしましては、この新しい制度の中にはもちろん有利子制度を導入するための新規の予算ということも計上されておりまして、無利子貸与制度、有利子貸与制度、それぞれの組み合わせという形でこの新しい育英制度を御提案申し上げているわけでございます。  そこで、もちろん法律的には現行法は生きているわけでございますが、現行法で執行いたしますと新制度の執行と重複し、混乱を生ずることがあり得るわけでございますので、政府として法改正提案しておりますので、その成立を期して当面執行を停止しているということで、そのことについては国会で御審議をいただいている新しい制度との混乱を避けるという形でございますので、当面停止するということについてはそれなりの理由がそこにあるというぐあいに理解しているわけでございます。  なお、ちょっと技術的な点で追加して申し上げれば、新規に在学採用を採用する場合には、従来の慣例から申し上げますと、予算積算といたしましては九カ月予算ということで七月分からの積算になっているわけでございます。これは通常でございますれば、四月に新しく入りました学生から募集し、決定をするまでの期間があるわけでございまして、通例の執行の場合でございます。それで、予算積算としては七月分から支給するという形になっているわけでございます。  なお、いわゆる予約採用の者、これはもちろん四月からの積算ということになっておりまして、通例でございますればもちろん五月ぐらいに決定を見て四月分から支給するという形になっておりまして、予約採用の場合には十二カ月の計上でございますけれども在学採用については今申し上げましたような九カ月予算ということで計上をされているわけでございます。したがって、七月一日から奨学生としての採用ということになるわけでございまして、これらの点について現在停止をされておるわけでございますが、例えば夏休み前に募集をしなければ非常に事務が、執行がおくれるというようないろいろな実務的な問題はもちろんあるわけでございますので、従来から御議論がありますように、その点について奨学生に何らかの対応をしなければ困るではないかという御指摘を踏まえて、私どももその点の検討をいたしておるということでございまして、形の点で申せば、奨学生の採用というのは七月一日からになるという事柄であって、ただそのための作業がいろいろ事前にある、それをどうするかというところがただいま議論になっているということでございます。
  161. 江田五月

    ○江田委員 新しい制度内容とした予算が成立しておる、こういうことで私どもも皆、それはそうだ、こう思っておったわけですが、どうも何かぴんとこないので調べてみたのです。  まことに憲法の基本書なのですが、有斐閣の「法律学全集」の「憲法Ⅰ」という清宮四郎さんの水なのですけれども、「予算の効力」というのがありまして「実質的効力」というものですが、「予算は、一般国民の権利・義務を規律せず、」、一般国民を、予算があるからというので権利を付与することもないけれども、義務を課することもないのだ。「いわば、国家内部的に、国家機関のみを拘束する。内閣から配賦された予算は、各国家機関がこれを執行する責任がある。国家機関の行為に対する予算の拘束力は、歳入予算と歳出予算とによって異なる。」  今度は歳出予算の方を見ますと、「予算の効力は、歳出予算に強くあらわれる。政府の支出は、法令にもとづくを要し、法令に根拠のないものは、たとえ予算に計上されていても、支出することはできない。」したがって、今有利子制度に基づく――有利子の方は財投ですけれども、一般会計では出せないということになりますね。「しかし、政府の支出は、法令に基礎をもつとともに、予算の認める範囲内でなされなければならない。予算は次の三点で歳出を拘束する。」とあって、一が「支出の目的」、二が「支出の最高金額」、三が「支出の時期」。「支出の目的」のところなのですが、「支出の目的は、予算の各項に定められ、各省各庁の長は、各項に定める目的の外に、歳出予算を使用することができない(財政法三二条)。」これですね。  新しい制度内容とした予算というのですが、私、もう済んだことなのでしまっておったのですが、取り出して持ってきてみたのです。新しい制度内容としているというようなことまでは、どこにも予算の中に書いてないのですね。文部省予算の項のところに、「〇一〇 育英事業費」「事項」は「育英事業に必要な経費」「説明」があって、「優秀な学生又は生徒であって、経済的な理由によって修学困難な者に学資を貸与する事業を行う日本育英会に対する 奨学資金の原資の貸付 有利子貸与資金に係る利子補給 事務費の一部補助」、それだけしか書いてないわけで、もっと細かな数字まで全部出ているところへ行ってみても、「育英事業費」「日本育英会補助金」、それから「育英資金利子補給金」「育英資金貸付金」それだけしか書いてないわけで、新しい制度内容とする予算、それは確かにそうだということがわかるわけですが、法律的、形式的に、皆さんが言った今の、法律上どういう権利があり義務を負っているかということを考えてみると、国民に対しては現行法しかない。新しい法案はまだ成立していない、予算はこの新しい法律のもとでなければ執行できないなどというような法則はどこにもない。  そういう状況のもとで、しかし行政内部あるいは国家機関内部のさまざまなメンツもありましょう、あるいは仁義もありましょう、いろいろあるでしょう。そういう国家機関内部のいろいろなしがらみに皆さんは悩んでいるにすぎない。国民と文部省との間、国民と育英会との間ではとても言いわけにならぬ理屈をおっしゃっている。そういう気がしないですか。
  162. 宮地貫一

    宮地政府委員 その点は先ほど来御説明をしている点でございますけれども、非常に形の点について申し上げれば、いわば新しい五十九年度予算を提案し、その予算を執行するために必要な制度としては、ただいま御提案申し上げておりますような日本育英会法に基づいて予算を執行するという形で、予算と法律と両面あるわけでございます。  そして、形で申せば、もちろん五十九年度が発足するまでに法案が成立し、かつ予算が成立をして、新年度は予算と法律ともにそれに見合って執行できる体制にあるということが、ごく通例に申せばそういう状況ではないかというぐあいにども理解をしているわけでございます。予算が成立をしまして法律が成立をしていない今日の事態をどう把握し、どう理解し、どうすべきかということに直面をしているということでございまして、なおここでそのことの議論を申し上げる点は、ただいま私どもに課せられている事柄は、当面やるべきこととして国会議論を踏まえての事柄がございますので、当面はそのことに私どもとしても精力を傾けて対応したいというぐあいに考えておりますので、答弁はこの程度にさせていただきたい、かように思います。
  163. 江田五月

    ○江田委員 もう一つだけ。  そうおっしゃるのなら、例えばこの育英事業費で日本育英会補助金というのがありますね。日本育英会補助金三十七億八千六百九十三万四千円、これは育英会事務に対する補助金なんですね。制度が変わって新しい育英会になる。定款などもどうなるかとか役員がどうなるか、いろいろあります、全部変わるわけですから。この日本育英会事務に対する補助金も、新しい法律ができないからというので出せないのですか。
  164. 宮地貫一

    宮地政府委員 附則の第二条に「育英会の存続」という規定がございまして、「改正前の日本育英会法第三十三条から第三十五条までの規定により設立された日本育英会(以下「旧育英会」という。)は、この法律の施行の日において、改正後の日本育英会法の規定による育英会となり、同一性をもって存続する」ということでございますので、特殊法人の育英会そのものの存続については法律の施行の日に新たな育英会として発足をするということでございますので、旧育英会が存続をしているわけでございます。したがって、必要な事務費その他の支出についてはそれぞれ認可を得て行っているというところでございます。
  165. 江田五月

    ○江田委員 そうおっしゃるなら同じ附則でいきましょうか。  第十条、御存じですね。新法の方で今言っているわけですが、第十条「この附則に別段の定めがあるもののほか、旧法の規定によりした処分、手続その他の行為は、新法中の相当する規定によりした処分、手続その他の行為とみなす。」旧法の規定によって募集しておいてこの法律が施行されれば、その旧法の規定による募集は新法の該当する規定による募集とみなされるということになるから、何ら差し支えないじゃありませんか。
  166. 宮地貫一

    宮地政府委員 先生はただいまごく概括的におっしゃったわけでございますけれども制度の仕組みそのものが変わってくるわけでございます。  例えば、旧法でやりました一般貸与と特別貸与と二通りがあるわけでございますが、新法は無利子貸与制度と制度的に一本化されているわけでございます。しかしながら、旧法で成立しました契約が存在をすれば、それは契約そのものとしてはさらに続いていくわけで、新法にそれが吸収されて、例えば特別貸与の場合の返還免除制度というようなものが消えて無利子貸与制度に吸収されるというぐあいには、私ども理解をしていないわけでございます。
  167. 江田五月

    ○江田委員 もちろん精通されている皆さんですから、それはああ言えばこう言うというのはいろいろあると思います。しかし、やはりどこか無理がある。今のストップさせている状態は無理がある。今検討されている最中ですからそれ以上突っ込みませんけれども、無理があるということはおわかりになっていると思いますので、早急に正しい解決をしてほしい、こうお願い申し上げます。  さて、育英事業についてもうちょっと大きな観点から多少質問をしてみたいと思いますけれども、この日本育英会による育英奨学事業のほかにも、もちろんいろいろな育英事業というのはある、奨学金制度はあると思うのですが、我が国の育英奨学事業というものは全体として一体どういうことになっているか。文部省は全体像を当然つかんでいると思いますが、どういうことになっておるのですか、明らかにしてください。
  168. 宮地貫一

    宮地政府委員 我が国の育英奨学事業全体の現状についてのお尋ねでございます。  我が国の育英奨学事業は、御案内のとおり、国の資金によって事業を行っております日本育英会を中心に、地方公共団体、民間法人等によっても行われているわけでございます。  昭和五十四年度でございますけれども、五十四年度に実施した育英奨学事業に関する実態調査によりますと、日本育英会以外に育英奨学事業は地方公共団体、民間法人等合わせまして二千七百二十六の事業主体によって行われているわけでございます。この中で日本育英会の占める割合は、奨学生数で申しますと総数約五十六万五千でございますが、そのうちおおよそ六四%の約三十六万二千人ということになっております。  なお、事業費規模で申し上げますと、総額で九百七十二億のうちほぼ七八%に相当する七百五十四億を占めているというのが、日本育英会以外の育英奨学事業を含めました全体の中での位置づけでございます。
  169. 江田五月

    ○江田委員 日本育英会以外の地方公共団体あるいは民間の育英事業はどういう形ですかね。給費制なのか貸与制なのか。貸与制でも有利子貸与なのか無利子なのかということで言えばどういうことになっておりますか。
  170. 宮地貫一

    宮地政府委員 規模全体はただいま申し上げた点でございますけれども、その中で給費制の事業がどの程度あるかというお尋ねでございますが、奨学生数で見ました場合に、日本育英会を除く民間等二十万人の奨学生のうち給与の奨学生がほぼ四二%、貸与の奨学生が四七%、残りは給与、貸与併用という形で一一%という数字になっております。したがって、給与と貸与制がほぼ同じ程度の割合ということが言えるかと思います。     〔白川委員長代理退席、委員長着席〕  なお、事業主体別に見ますと、地方公共団体と学校で実施しております奨学制度でございますが、給与制貸与制がほぼ同数でございますが、公益法人の場合には給与制が約三割、貸与制の約半分程度という状況になっております。  なお、その中で有利子貸与事業でございますけれども、これは御案内のとおり、私立大学奨学事業援助という事業を行っておりますが、これを除きますと有利子貸与事業というのはほとんどないという状況でございます。  なお、私立大学奨学援助事業で私立大学の学校法人が実施をいたしますものについて、私学振興財団が資金を融資をしておるわけでございますが、それについては有利子のものが実施をされているわけでございまして、予算的な規模だけ申し上げますと、昭和五十九年度予算では総額三十二億、奨学金貸与事業は十七億、入学一時金分割納入事業で十五億という事業費を計上しておるわけでございます。五十八年度での実施状況でございますが、奨学金貸与事業実施をしておりますものが五十一大学、四千八百人でございます。  なお、いわばそれらの団体と日本育英会との役割分担というようなお尋ねであったかと思うわけでございますけれども、全体の数字は先ほど申し上げたとおりでございますが、例えば学校種別ごとに申し上げますと、高校では日本育英会が四五%、地方公共団体、民間法人等が五五%ということに対しまして、大学では日本育英会が八〇%、地方公共団体、民間法人等で二〇%というような割合になっておりまして、高校段階では比較的地方公共団体、民間法人等の占める割合が大きいということが言えるかと思います。  各事業主体ごとの事業内容で見ました場合にも、育英会大学生が約七割、高校生が約三割でございますが、地方公共団体は高校生が約八割ということで、これはある意味では当然のことかと思いますが、高校生を対象とする事業が中心になっておるわけでございます。民間法人でも大学生が約四割、高校生が過半教を占めておるという状況でございます。  なお、公益法人の場合には、例えば特定分野の人材養成や交通遺児や犯罪被害者の遺児への援助というような、特定の目的を持って設立をされました法人もあるわけでございまして、それぞれの創設の目的に従って実施をしている。むしろ日本育英会ではそういう点では手の及ばない面において特色のある事業実施しているというような点が、いわばお尋ねの役割分担というような感じで申せばそういうことがあるわけでございまして、国の施策と民間の活動が相互に補完しながら発展していくということが、育英奨学事業の全体で申せば必要なことではないか、かように考えております。
  171. 江田五月

    ○江田委員 随分先までお答えくださいまして、質問が要らないのじゃないかと思いますが……。  給費制と貸与制の長短ですね。給費制と貸与制というもの、これは日本育英会は当初から貸与制でスタートしてきている。恐らくその当初にスタートをするときにも議論をされたんだと思いますけれども、給費制と貸与制というものの議論というのは、いろいろ長短あるでしょう。例えば事務、どうしても貸与制ということになると返してもらわなければならない。しかし返してもらうについては、それなりに返してもらうためのいろいろな、返してくださいよと勝手に言っているだけじゃやはりいけないので、いろいろな事務がたくさんかかる。しかも、とことんやろうと思えばそれこそ強制執行まで考えなければならぬ、そんな費用をかけるよりは、もう上げちゃったという方がよほど安くつくというようなことがあるいはあるかもしれない。給費制と貸与制の長短についてはどういうことですか、お教えください。
  172. 宮地貫一

    宮地政府委員 給費制と貸与制の長短についてのお尋ねでございますが、もちろん、ただいまの制度の創設の際にも、調査会でもいろいろ議論が行われたわけでございます。  おっしゃるように給費制にしますれば渡しっきりでございまして、返還の事務といいますか、それが一切ないというような点では、事務処理の面では、制度的には支給する事柄だけでございますので、その点で極めて簡明な仕組みになるわけでございます。ただ、やはり予算的な制約から見ますと、支給人員を限定しなければならないというようなことが出てきまして、事業規模が小さくなるという点があるわけでございます。  貸与制で申せば、基本的には後進育成のための資金としてそれが循環運用できるというような観点で、現に育英会制度発足以来四十年たっておるわけでございまして、返還金の規模も相当大きな規模に今日なってきておる。無利子貸与制度の大変重要な財源の一つとして返還金を充当しているということが、現実問題として運用として行われておるわけでございます。  いろいろな点でそれぞれ制度の長短はあろうかと思いますけれども、例えば一つ考え方として、給費制を限られた分野で、例えば将来の研究者養成というような観点から必要なものについて、相当積極的に給費制ということも考えることが必要ではないかというような議論ども行われたことは事実でございます。したがって、将来の課題といたしましては、例えば研究者養成のために大学学生の中で真に必要なものについて給費制というようなものを検討するということは、事柄課題としては検討課題として十分考えなければならぬ課題かと思いますけれども、奨学生全体を基本的に給費にするということになりますと、これは原資も膨大になり、それらの点については、恐らくなかなか困難な問題点があろうか、かように考えております。いずれも制度的には、御指摘のように長短がそれぞれあるものというぐあいに考えております。
  173. 江田五月

    ○江田委員 日本育英会制度は、一般会計からの貸付金で運営をしている。したがって、これは一般会計に返すことになっている。そのことと貸与制をとっているということとは関係があるのですか、ないのですか。
  174. 宮地貫一

    宮地政府委員 一般会計からの貸付金ということでございまして、日本育英会に貸し付けをされるわけでございますが、したがってもう少し正確な御答弁ならば資料に基づいて御答弁申し上げますが、貸付金でございますので、一般会計に対して育英会が返還をすることが必要なわけでございますが、しかし仕組みを概括的に申し上げますと、育英会が返還免除をいたしておりますけれども……
  175. 江田五月

    ○江田委員 ちょっと質問と違うのです。いいですか、質問は、一般会計からの貸し付けという制度であるということが、給費制でなくて貸与制になっている根拠になっているのか、そのつながりはあるのですか、ないのですかということなのです。
  176. 宮地貫一

    宮地政府委員 どうもちょっと誤解をいたしました。  むしろ、これは端的に申せば、貸与制度をとっているから貸付金になっている。例えば給費制度をとれば、それは国から育英会に対して出しきりの金になるというような仕組みかと思います。
  177. 江田五月

    ○江田委員 ただ、実際には、国の一般会計からの貸付金といっても、貸付金が戻ってくるという仕組みにはなっており、計算上はそういう計算もあるのでしょうが、実際に戻ってはきていないんですね。しかも、相当遠い先まで、日本育英会から国の一般会計に貸し付けたものが返ってくるということはない、そう伺っているのですが、これはそれでいいのですか。
  178. 宮地貫一

    宮地政府委員 それはそのとおりでございます。  簡単に御説明しますと、奨学生から返還をしてもらうわけでございますけれども、返還免除制度が片やございまして、教育職、研究職、それから特別貸与については、一般貸与相当額を返還すれば残りは返還免除というような仕組みになっておりまして、奨学生に対して返還免除をしますれば、育英会が国に対して返還をする分をそれに見合って免除をするというような仕組みが働いておるわけでございますから、相当先のところまで育英会から国の一般会計に対して返還をするという仕組みは、現実問題としては出てこないということでございます。
  179. 江田五月

    ○江田委員 ですから、返還免除の方がどんどん年々膨大になっていく。しかし、国に対する償還の方は三十五年ですか、前のものを償還する。しかも、その償還は返還免除の部分にまず充当される。したがってその残りの部分がどんどんふえていって、償還をするお金というものは実際には出てこない。事業規模がこれからもずっとふえていくということになれば、ますますそうなっていく。一方で物価の値上がりあるいは貨幣価値の下落というものもある。というと、貸付金というのはそういう制度になっておるということであって、実際には有名無実である。貸付金ということになっていることと貸与という形になっていることとはつながらないような気がするのです。先ほど、貸与であるから片方は貸付金だとおっしゃいましたけれども貸与であるということは、奨学生から返してもらってその部分を次の原資としてまた運用していくということでしょう。ですから、貸付金と貸与という制度にはつながりはないと考えた方がいいのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  180. 宮地貫一

    宮地政府委員 実態から把握をいたしますれば、先生指摘のような実態にあるということは言えるかと思います。
  181. 江田五月

    ○江田委員 そうしますと、奨学金の原資の方がどういう形で来ているかということと、それから給費だ貸与だ、あるいは貸与有利子、無利子ということは余り直接関係がないのではなかろうか。  今度の有利子制度は財投資金を持ってくる、あるいは利子がつく、だから貸す方も利子つきでなければならぬ、こういう説明ですけれども、その原資の方が財投で七・一%の利子のつく金であったとしても、そのことは必ず今度奨学生に渡すときにも利子をつけなければならぬということに必然的になるということではないと思うのですが、いかがですか。
  182. 宮地貫一

    宮地政府委員 必ず論理的に利子を取らなければならないということではないかと思いますけれども、やはり七・一%の利息のついておる金であれば、奨学生に応分の負担をお願いをするということは考え方として出てくることはやむを得ない点ではないかと思います。
  183. 江田五月

    ○江田委員 私は、むしろ逆に給費か貸与か、あるいは貸与有利子か無利子がということも、一種の教育的配慮という点もあるんじゃないかなという気がするのです。給費よりも、やはり借りたお金は返す、借りたお金は必ず利子をつけて返すというのが本当に学生にとって教育的であるかどうかというのは随分問題だと思うのですけれども……。  まあそれはそれとして、日本はどうも奨学金制度が非常にお粗末であるということがよく言われる。ですから、国の方ももっと拡充していかなければならぬと思いますが、地方公共団体とかあるいは民間の奨学金というものをもっと盛んにしていくという方策がこれから考えられていかなければならぬのではないかと思いますが、この地方公共団体が奨学事業を行う場合に、どういう助成をしていく、エンカレッジしていくシステムがあるのか、教えてください。
  184. 宮地貫一

    宮地政府委員 ただいまの仕組みで申し上げますれば、地方公共団体が育英奨学事業実施いたします際に、国からそれに対して何らかの援助をするという仕組みはただいまはとられておりません。
  185. 江田五月

    ○江田委員 そういうことを将来的には検討する必要があるのではありませんか。
  186. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘の点は将来の課題としては考えられる点でございますけれども、ただ今日の状況下におきましては、新たに地方に対して補助をするというような仕組みを考える際に、既存のものを何らか、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドといいますか、そういう考え方なしにそういうことを実施することはなかなか困難ではないかというぐあいに考えております。
  187. 江田五月

    ○江田委員 どうも財政の重い重い圧力というものが常にありますから今は大変ですが、将来は考えるべきことだろうと思います。  それから、今度は民間ですが、民間の奨学事業、これはそれぞれにさっきもちょっとおっしゃっていましたけれども、独自の役割と任務を持っていろいろな特色がある事業を行っておると思いますが、この振興を図るためには一体どういう措置を講じていらっしゃるのでしょうか。
  188. 宮地貫一

    宮地政府委員 育英奨学事業を行います公益法人についての対応でございますけれども、これは、寄附金の受け入れ等につきまして税制上の優遇措置という点で税制施策が講ぜられているわけでございます。  一つは、育英奨学法人は試験研究法人の資格というような形でございまして、試験研究法人の証明を受けた法人に寄附をした場合には、寄附者が個人の場合には総所得の二五%の寄附金が課税対象外となることになっております。また、寄附者が法人の場合には一般寄附金とは別枠で損金算入限度額までの寄附金が課税対象外となるというようなことで、いわゆる試験研究法人の場合には損金算入限度額の枠が単純に申しますと二倍の枠になるというような形で、企業等からも寄附をしやすい形がとられているということでございます。  第二点は、特に指定寄附金の指定を受けました場合には、寄附者が法人の場合には寄附金全額が課税対象外になるということでございまして、これは一般の指定寄附金の場合と同様でございますが、育英奨学の法人の場合にももちろんその扱いがあるわけでございます。  それから第三点としましては、教育に寄与することが著しい法人への相続または遺贈による財産を寄附をした場合には寄附者の相続税、贈与税が免除をされるというような形がございます。  こういう税制上の優遇措置が講ぜられておるわけでございまして、これらを活用して個人ないし企業からの寄附が促進をされ、事業の充実を図ることが行われることを私どもとしては期待をいたしておるわけでございます。
  189. 江田五月

    ○江田委員 そういう税法上のさまざまな優遇措置があるわけですけれども外国の場合に、特に先進国の場合に随分、例えば遺産がファンドになってスカラシップが実施されているとか、あるいは企業やその他余裕のあるものが大きなファンドをつくってこれを奨学金に運用しているとか、そういうのがあるわけですが、なぜ一体日本はそうならないのですか。日本人というのはけちなんですかね、どうなんでしょうか。
  190. 宮地貫一

    宮地政府委員 確かに御指摘のように、外国の場合には相当富裕な方々が、例えば死亡した際に基金を寄附するとかという形で、スカラシップが随分そういう形で活用されていることは、私も事柄としては十分承知をしているわけでございます。  日本の場合にどうもそういう点が必ずしも十分でないのはなぜかというお尋ねなんでございますが、明確に御説明するだけの知識がないわけでございますけれども事柄についての考え方といいますか社会的な受けとめ方、いろいろそれぞれの国の伝統的な物の考え方、国民性、そういうようなものがやはり背景にはあるんではないかという感じはいたしております。私どもとしましても、この育英奨学事業というようなものなどは最も公共性の高いものでございまして、かつ後進の育成に資するという見地でも極めて有意義なものでございますので、そういうことが企業ないし個人からも積極的に行われるような社会的な気風が生まれていくということを私どもとしてもぜひ願いたいということで、またそういうことが一般に理解されるように積極的に私どもも働きかけることは必要ではないか、かように考えております。
  191. 江田五月

    ○江田委員 文部大臣、やはり国民みんなが教育を大切に考えるという気風をつくっていく、そういう環境をつくっていく。これは大臣としても、文部省としても非常に重要な責務だろうと思うのです。今大きな遺産を残すようなときに、大体遺産なんか残すと相続人同士で相争って、血で血を洗うまことに醜いけんかをするようなこともたくさんあるのですが、そういうことじゃなくて、ひとつ奨学金の基金にというようなことがもっと盛んに行われて、それが社会的に非常に大きな称賛を浴びるという、そういう日本の精神風土にしたいと思いますけれども、いかがですか。
  192. 森喜朗

    森国務大臣 日本の場合、東洋の大陸の文化あるいはまた儒教、仏教、そういうものを一つの文化のもととして東洋の民族、日本の文化というのは発達をしてきたのだろうと思いますし、また、西洋はどちらかというと西洋文明といいますか、また逆の面があるのだろうと思います。  日本人というのはどうしてかなというと、確かに最近は、東西融合の文明なんて、我々の母校の大隈重信先生がおっしゃって、東西融合の文明というのは今みたいなことを言うのかななんてつくづく感じますが、ややもすると西洋文明の方が強くて、どちらかというと東洋の文化が少し朽ち果てなんとしている、そういうところに何となく社会の混乱もあるのじゃないか、精神的な面での弱さもあるのではないか。いろいろありますが、人間がいろいろな試行錯誤を繰り返して一つの文化をつくり上げていくのだろう、こう思います。  おおらかな意味から言えば、私は私立学校の経営者などにも、寄附なと思い切って大きく取ったらどうですかとよく言うのです。あるいはまた、さっき江田さんから言われましたように、財産を残すことも一つのあれでしょうが、外国と違って、余りどこかの学校なんかに寄附するということは好まないのか。思い切って、江田体育館とか馬場記念館とか佐藤図書館というふうに――外国の場合は名前が皆ついているのですね。道の上にまでついている。そういう考え方が西洋の考え方なんだろう、こう思いますが、日本人の場合、何か昔から、武士は食わねど何とかと言いますし、腹は減っても我慢をしなければならぬのだ、これが日本人かたぎみたいなところがあるのだろうと思います。我慢をして、とにかく武士は食わねど高ようじ、自分で我慢して、臥薪嘗胆というような気持ちがやはりあった。そういうことが何となく、ただでお金を借りてこうするということについての、やはりそういうものがまだ大きく発達はしていないのかなという感じがいたします。  いずれにいたしましても、先ほどもお話がたしか中野さんからもありましたけれども、新しい民間の資金とかあるいはまた別の意味での財団方式みたいなものだとかいう形はやはりこれから考慮して、幅広く多くの学生たちが恩恵を受ける、そういうことについてはむしろ積極的に、そしてこういうお互いにみんなが助け合っていかなければならぬ時代でありますから、ある意味で、お金をたくさんもうけてもほとんど税金に取られるのですから――税金が入ってくることも政府立場から見れば大事ですが、逆に言えば、若き学徒を育てるという雰囲気、空気というものを醸成していくのも大事なことじゃないか、こう思っておりますが、いろいろな工夫を文部省としても十分検討をしていきたい、こう申し上げておきたいと思います。
  193. 江田五月

    ○江田委員 どっちかというと、農耕社会の方がお互いに助け合うという気風が強くて、狩猟民族の方がけんかする気風が強いのだろうと思うのです。したがって、日本なんというのは、そうやって自分が一人で財産を抱え込むのじゃなくて、みんなに吐き出してみんなで使おうじゃないかということがむしろなじむのじゃないかと思うのだけれども、それがどうも日本に余りちゃんとできてこない。残念なことだと思うのです。  先進国でそういうファンドなどがたくさんある。私もそれほど詳しいわけじゃありませんが、今の相続税などが非常に高い、持っておったらこれはとても自分でやりきれぬというので、吐き出してしまう、そういうようなことも一つ大きな役割、機能を果たしているというようにも聞いたりしておりますので、これはこれから大いに知恵を絞っていきたいと思います。  さて、外国の話をちょっとしておったのですが、日本が留学生というものに対して随分冷たいじゃないかという声もあるのですがね。今、外国から日本に入ってくる場合の留学生に対する奨学金制度、それから今度逆に、日本から外国に出ていく場合の学生に対する奨学金制度、これは一体どんなことになっているか、教えてください。
  194. 大崎仁

    ○大崎政府委員 留学生の交流の現状でございますけれども、まず、外国から日本に来る留学生につきましては、国費留学生ということで文部省から奨学金を支給して、かつ往復の旅費を支給してお呼びをする制度がございます。これは五十九年の五月現在で二千三百四十五人ということでございまして、支給の月額が、大学院レベルで十七万五百円、それから学部レベルでたしか十二万七千五百円ということになっております。  なお、最近日本に対する留学への機運が高まってまいりまして、全体では現在一万人を超える学生日本で勉学をしておるという状況にございます。  それから、海外に留学する日本学生につきましては、国費によりまして約三百人程度の大学生を派遣するというようなことをいたしております。  なおそのほか、受け入れあるいは送り出しとも、民間団体その他の制度による奨励措置というのがあわせて講ぜられているのが現状でございます。
  195. 江田五月

    ○江田委員 欧米諸国、先進諸国はどんな現状でしょうか。大体日本と似たり寄ったりなんでしょうか。大分違いますか。
  196. 大崎仁

    ○大崎政府委員 先進諸国と比較をいたしますと、国費で呼ぶ留学生の数につきましては、欧米、例えばアメリカあるいはイギリス、西ドイツ、フランス等と比べますと、なお多少、国費留学生の数あるいは国費に相当する留学生の数が少のうございます日それほどの大きい開きということではございませんが、留学生全体から見ますと、例えばイギリスあるいは西ドイツでございますと五万を超える留学生がおりますし、フランスでございますと十万を超える留学生がおるのに対しまして、日本では、最近伸びてはおりますが一万を超える段階ということで、かなりの開きがあるのが現状でございます。
  197. 江田五月

    ○江田委員 これは伺いましたら、外国の人をその国にお呼びをする留学生に対する奨学金という数ですが、日本は国費だと二千何百人か、しかし民間全部合わせて一万程度。ところがアメリカは、国費の場合が七千二百人、民間を合わせたら、ざっと三十万人を超える。イギリスが国費が二千四百人程度、ブリティッシュカウンシルのスカラシップですね。民間を入れると五万人。西ドイツは、国費が三千人程度だが、民間を入れて五万人。フランスが、国費が九千人程度で、民間を入れると十一万人。日本はわずか一万人。アメリカ三十万人、イギリス五万人、西ドイツ五万人、フランス十一万人。日本は、それこそサミットヘ行ってこれでよく大きな顔ができるという気がしますね。今のこういう世界です。日本が国際的な役割を果たさなければならぬ、それはそれなりに私は正しいことだと思います。しかし、その国際的役割というのこそ、まさにこういうところで果たしていかなければならないのじゃないだろうか。外国人が日本に来て勉強したい、その人に日本がどの程度援助するか。諸外国と比べて、これではとても世界の経済の第二位の国だということにはならぬのじゃないですか。大臣、どう思われますか。
  198. 森喜朗

    森国務大臣 概念的に申し上げれば、まだまだそういう意味では、そうしたものに対する国民全体の考え方というのはそういうところに行き着かないのかもしれません。これから本当の意味日本が国際社会に対して大きく貢献をしていく。何といいましても急速にといいましょうか、急成長といいましょうか、そういう形で日本の場合は繁栄をしてきているわけです。したがって、そうした文化、学術そうした面がどうしてもおろそかになっているという言い方は、現実の問題として認めざるを得ないだろうと思います。これから新しい幾つかの制度をいろいろ考え直して、そうした面でも十分に配慮した奨学生制度というものを十分考慮していかなければならぬ、こう思っております。
  199. 江田五月

    ○江田委員 もう時間もほとんどありませんが、奨学金というのは本当に必要な者に与えられなければならぬ。特に学生諸君の最近の生活状況、どういうことになっているのか。何か学生生活が昔と比べて随分よくなってしまっているんじゃないか。アルバイトがあったりして、卒業をして就職をするより学生を続けている方がよっぽどいいなんというようなことも聞いたり、学生がフェアレディーその他のすばらしい車にぶるんぶるんと乗って頑張っているとかいうことも聞いたりするので、一体実態は本当のところどうなのかということも聞きたいのですが、余り時間がありません。  そういうこともさることながら、本当に困っている、例えば通信教育とか定時制の学生とか社会人入学、これも前からときどきこの委員会で取り上げさしていただいておりますけれども、こういうところに別枠で、この枠は通信教育だとか定時制だとか社会人入学だとか、そういうふうにして別枠でとるようなことも必要あるんじゃないか、通信教育についてはとっていますけれども。そういう気がするのですが、いかがですか。
  200. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のように、本来必要とする者に奨学金が与えられるということは基本的に大切なことでございます。通信教育、定時制の学生に対する貸与の点は、先ほどもお尋ねがありましてお答えをしたわけでございますけれども、通信教育を受ける学生については、スクーリングの実態に応じまして、例えば夏季等特別の期間のスクーリングの場合には一期間について六万五千円、通年スクーリングの場合は私立大学と同額の金額を出すという形にいたしております。  また、夜間部の学生については、学生相当数が職業を持っているというようなこともあり、収入がありまして比較的経済的必要度が低いというようなことで希望する者が少ないという実態もございますけれども、もちろん学業成績と基準に該当する者については昼間部と同様に奨学金貸与対象といたしておるところでございます。  そのほか、いわゆる社会人入学というようなことがこれからの高等教育の広がりといいますか、今後の高等教育のあり方ということでいろいろ言われているわけでございまして、別枠を設けるというような考え方も将来考えるべきではないかという御指摘でございますけれども、これらの点については、一つ課題といたしまして今後どういう点が考えられるか、私どもも運用の面で考えられる点があるかどうか、十分慎重に検討させていただきたい、かように考えます。
  201. 江田五月

    ○江田委員 教育というのはやはり金がかかる。これは国全体の教育制度をどうしていくかということを考える場合にも財政問題を無視して考えられないし、一人一人が教育を受ける場合だって、幾ら向学の精神に燃えておったって、人間、パンのみにて生くるにあらずですけれども、やはり生きていかなければならぬので、そのためには金がかかる。教育を受けることで金がどんどん入ってくるなんということはそれ自体ないわけですから、したがって教育機会均等ということを実質的に確保するためには手厚い奨学金制度、育英制度というものがなければならぬと思うのです。  まだまだ日本の育英制度奨学金制度というものは不十分だ。もっといろいろな点で拡充していかなければならぬ。日本育英会だけがこれを担うわけではない。しかし国全体で、教育を受けたい、勉強をしたいというときには生活の心配というようなことを考えずに勉学にいそしむことができる、そういう国をつくっていかなければならぬという気がするのです。今回のこの育英会法案というのが、そうした大きな方向に向けてどの程度の前進があるのか、むしろ逆に有利子制度という厄介な荷物を抱え込んでしまったのじゃないかという気がしてならないのですけれども、ひとつ有利子制度がどんどん増殖をしていくというようなことのないように、そしてマイナスシーリングとかいろいろありますけれども、頑張ってさらに一層の拡充をしていくことを最後にお願いをしまして、質問を終わります。     ―――――――――――――
  202. 愛野興一郎

    愛野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、日時、人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十七日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会