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河本国務大臣 先ほど、今の
日本経済の
問題点として、
投資不足とそれから
国民所得の伸び悩みということを申し上げましたが、
投資のうち
社会資本投資については、ここ数年ぶりでもう少し積極的に判断すべきではないか、こういう議論が強く出てきております。私は、これは当然のことだと思いますのは、昨年までは第二次
石油危機で
世界経済は
停滞期に入ったのではないか、ほとんど
成長力がなくなったのではないか、こういうことが言われまして、
日本の
国内でもそういう議論が
比較的強かったものですから、いわゆる我慢
経済、まあしようがないかということで、
比較的積極的に意見を言う人もなかったんだと思うのです。しかし、昨年の後半から
アメリカ経済が大変な勢いを盛り返しまして、思わざる活況を呈しておる、こういう
状態を見まして、どうも昨年までの議論はおかしいのではないか、
世界経済は
停滞期に入ったなどという議論はどうも間違っておる、やはりやり方いかんでは相当大きな成果を上げることも可能だ、こういう認識から、
日本でも
政策安定度を
見直したらどうだ、しかも客観的な
条件は
日本にとっていい
状態になっておる、こういうことから
政策の転換を求める声が出てきたんだと思います。
ただ、従来の経過もございますので、私は若干の
工夫が必要だと思うのです。例えば
昭和四十年、大変な不況でございましたが、当時佐藤内閣で福田さんが大蔵
大臣になられまして、そのとき何としてもこの不況を打開しなければいかぬということで国債の増発をされると同時に、国債だけに頼らないで、債務負担行為ということでひとつ思い切った
社会資本投資を
拡大してみようという二本立てで
政策を進められまして、大きな成果を上げられました。そしてそれが
昭和四十年代のいわゆる高原景気、第一次
石油危機までの数年間の高原景気の基礎になった。
こういう経過もございますから、
日本で
建設国債の増発をするということについて若干の抵抗ありとするならば、私は債務負担行為等をもう少し活用するということも
一つの方法であると思いますし、それから
公共事業の中には採算性のある
公共事業も相当ございます。
道路とか
空港とか、こういうものがございますので、こういうものに対しては
民間資本を積極的に導入するために
政府保証債の
拡大、こういうことも可能だと思うのです。
政府保証債の
拡大によって
資金を導入いたしましても、採算性のある
事業であれば十分これを返済することができる。こういうことも可能だと思います。
それから、地方の
財政と中央の
財政を比べましたときには、地方の
財政にややゆとりがある、こういうことでもございますから、一時的に補助率等の変更をいたしまして、そして
公共事業全体を
拡大する、こういうことも可能だと思いますが、その場合には地方債の発行の
拡大、こういうことにもなろうかと思うのです。ただ、地方にずっと負担のかけつ放してはこれは問題がございまして、地方もなかなか納得しがたい、こう思いますので、中期的には
政府の方が何らかの面倒を見ながら一時的に地方の力をかりる、こういうやり方もあろうと思うのです。したがって、いろんな
政策を総合的に進めていくならば、
一般会計だけに頼らないで、国全体としての
公共事業の量、
社会資本投資の量を
拡大することが十分可能だと思います。
党の方でいろんな意見が出ておりますが、これは単に
一般会計だけで
公共事業の量を
拡大せよ、こういう議論ではないと思うのです。と申しますのは、ことしの
公共事業の量全体を計算してみますと、
一般会計では六兆強でありますが、地方の補助
事業、単独
事業、それから公社、
公団等の
事業を入れますと、土地代を除きまして二十二、三兆になっております。土地代を含めますとざっと三十兆でありますが、だから二十二、三兆の
公共事業の量そのものを
拡大することが緊急の
課題だ、こう思っておりまして、先ほど来申し上げますように貯蓄過剰、
投資不足という
状態でございまして、大量の
資金が海外に流れていっておる、こういう
状態から
考えますと、これは国全体には
資金もあるわけでありますから、その点は私は
工夫をすれば十分やれる、このように思います。
それから、
一つ誤解がございまして、この点私
どもも大変困っておるのですけれ
ども、それは大規模なプロジェクトに
民間資金を導入するという
計画が
幾つかございますが、これは大変結構だと思うのです。しかし、このためにはやはり地元との調整も必要でございますし、環境影響の評価等もございまして、十分な
調査と準備が必要です。やはり数年の準備
期間が必要だと思うのです。それから工事が始まるということでありますので、
民間資金を導入するにいたしましても、今言われておりますこれらの
事業は、ことしと来年の
経済には関係はない。十年の中期的な
展望から
考えた場合には大変結構で、大いにやらなければならぬ
課題だと思いますが、これがことし、来年の
経済と混同される嫌いがややもすればございますので、その点は区別しなければならぬと
考えております。