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河本国務大臣 公共
投資、社会資本
投資のことでございますが、これを
考える場合に、
日本が社会資本の面で先進国の中でどういう
立場であるかということをまず
考える必要があろうと思います。発展途上国に比べますと
日本の社会資本
投資は進んでおりますけれ
ども、先進国と比べてみますと
日本の社会資本
投資は非常におくれておる、これは言えると思うのです。下水道
一つをとってみましてもよくおわかりいただけると思います。
そこで、これまでの
政府の経済政策、特に十年前に起こりました第一次
石油危機からの経済政策をずっと見てみますと、景気が悪くなったときにまできるだけ社会資本
投資を拡大していく、景気がよくなれば若干減らしていくという景気の調整役としての
役割を非常に大きく果たしてきたと思うのです。特に第一次
石油危機の後比較的早く景気が回復いたしましたのは、社会資本
投資を思い切って拡大した、そういうところにあった、このように思います。ここ三、四年はずっと横並びでありますけれ
ども、今景気が回復期にございますので、この公共
投資を一体どうしたらいいかということがこれからも非常に大きな課題になると思います。
一方、過去十年、第一次
石油危機、第二次
石油危機の間に
日本は巨額の国債を発行しております。この十年間にざっと百十兆という国債を発行いたしまして、今年度の終わりには百二十兆を超える、こういう状態になろうかと思うのです。このことで非常に意見が分かれるわけであります。大変だという説と、必ずしもそうでもないという説と二つに分かれるわけでありますが、百十兆という国債がふえたということはいかにも私は大変なことだと思います。
ただしかし、これによってその十年間に
日本経済がどのように変化したかということを
考えてみますと、
昭和五十年には、税収は国税と地方税合わせまして二十二兆しかありませんでした。ことし大蔵省が出しております予算を見ますと、国税と地方税を合わせましてざっと五十七兆になっております。約三十五兆という税収がこの間にふえておる。もっともその間百兆以上の国債が増発されておりますから、金利
負担も八兆くらいふえております。これまでややもすると議論になりましたのは、金利
負担が八兆ふえたので大変だという議論が目立ったのでございますが、一方で三十五兆という税収がふえておる。しかも、先ほ
ども申し上げましたが、現在の
日本の経済は
基礎的条件では世界で一番強い状態である、良好な状態である。
物価も世界一安定しておる。経済の
国際競争力も維持されておる。しかも、ここで
考えなければならないのは、確かに百二十兆という国債はございますが、これはもう全部国内での借金、
国民の皆さんが貯金された貯蓄を背景にしてそれが達成されたということを
考えなければなりません。他の国が全部外債で国の経済を賄っておる、巨額に達しておるのとは全然事情が違うと思うのでございます。
しかも、現在は金融の流れ全体を見ますと、国内で貯蓄過剰の状態でありまして、
アメリカの金利が高くなればどんどん外国へ流れていく、年間三百億ドル以上の金が流れていっておる、こういう状態であります。そういうことを
考えますと、国債の残高が巨額に達したということに対して一体どういう評価をするのか、ここは意見の分かれるところだ、こう私は思っております。
それからもう
一つ申し上げたいのは、昨年の八月に
政府の方は「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものを
発表しておりまして、名目経済成長は六、七%ということを
発表しております。実質経済成長は四%。もし七%の名目成長がずっと今世紀、十六年間続くといたしますと、
日本のGNPはこれから十六年後には約九百兆、三倍以上になりまして、貯蓄率も現在の
水準が維持されますと、百兆以上の貯蓄が毎年拡大する、こういうことになろうと思うのです。でありますから、国債の残高が多いということは、単なる数字だけではなく、国の経済の勢いはどうか、規模はどうか、そういう観点からも総合的に判断しなければならぬ、私はこのように思っております。
この問題は先ほどお聞きのようにいろいろな説がございまして、経済企画庁としてなかなか結論は出しにくいのでありますが、当面一番大事なことは、
日本の国際収支の黒字幅が大変大きな数字になって国際的な摩擦が拡大しておる、こういうときに何をすべきかということから判断をしなければならぬ、このように
考えております。