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1984-08-07 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月七日(火曜日)     午前九時三十二分開議 出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       鍵田忠三郎君    鈴木 宗男君       高橋 辰夫君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    羽田  孜君       保利 耕輔君    山崎平八郎君       渡辺 省一君    上西 和郎君       串原 義直君    田中 恒利君       細谷 昭雄君    安井 吉典君       駒谷  明君    斎藤  実君       武田 一夫君    水谷  弘君       神田  厚君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  山村新治郎君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         食糧庁長官   石川  弘君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         警察庁警備局公         安第二課長   常石 和夫君         外務省アジア局         北東アジア課長 高島 有終君         外務省北米局北         米第一課長   川島  裕君         外務省経済局漁         業室長     秋山  進君         国税庁直税部所         得税課長    岡本 吉司君         文部省体育局学         校給食課長   小西  亘君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 市川 和孝君         運輸省海上技術         安全局船員部労         政課長     森谷 進伍君         参  考  人         (日本学校健康会         理事長)    松浦泰次郎君         参  考  人         (日本中央競馬会         理事長)    内村 良英君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  閉会中審査に関する件  農林水産業振興に関する件  請 願    一 食管制度拡充に関する請願松沢俊      昭君紹介)(第九六号)    二 食糧輸入依存反対に関する請願(森      田景一君紹介)(第八五一号)    三 農用地開発公団拡充等に関する請願      (池田克也紹介)(第九六六号)    四 同(柴田睦夫紹介)(第一五四一号      )    五 食糧輸入依存反対に関する請願外一      件(新村勝雄紹介)(第一八七六号      )    六 同(森田景一君紹介)(第二一四一号      )    七 同(森田景一君紹介)(第二三九五号      )    八 畜産物価格安定及び畜産経営強化      等に関する請願赤城宗徳紹介)(      第二七五七号)    九 農業土地基盤整備拡充に関する請願      (天野光晴紹介)(第二七五八号)   一〇 農産物輸入自由化枠拡大阻止に関す      る請願串原義直紹介)(第二九〇      五号)   一一 農畜産物輸入規制畜産経営安定対      策等に関する請願志賀節紹介)(      第二九〇六号)   一二 農用地開発公団拡充等に関する請願      (池田克也紹介)(第三〇三五号)   一三 同(中村茂紹介)(第三〇三六号)   一四 食糧輸入依存反対に関する請願(森      田景一君紹介)(第三三五八号)   一五 米の輸入反対等に関する請願津川武      一君紹介)(第七二一五号)   一六 米穀政策確立に関する請願藤井勝      志君紹介)(第七九六三号)   一七 昭和五十九年産生産者米価引き上げ      に関する請願(佐藤徳雄紹介)(第      八六九二号)   一八 米の安定供給体制確立に関する請願(      佐藤徳雄紹介)(第八六九三号)   一九 昭和五十九年産米政府買い入れ価格      引き上げ等に関する請願坂口力君紹      介)(第八六九四号)   二〇 食糧自給力維持強化に関する請願(      志賀節紹介)(第八九三六号)   二一 外米輸入反対昭和五十九年産米価等      に関する請願小沢貞孝紹介)(第      九〇〇二号)   二二 同(串原義直紹介)(第九一一九号      )   二三 同(清水勇紹介)(第九一二〇号)   二四 同(中村茂紹介)(第九一二一号)   二五 同(林百郎君紹介)(第九一二二号)   二六 同(小沢貞孝紹介)(第九一六三号      )   二七 長野営林局存置に関する請願(林百      郎君紹介)(第九一四三号)   二八 同(小沢貞孝紹介)(第九一七五号      )   二九 昭和五十九年産生産者米価引き上げに      関する請願(林百郎君紹介)(第九一      四四号)   三〇 同(小沢貞孝紹介)(第九一七六号      )   三一 畜産養蚕経営安定強化に関する請      願(林百郎君紹介)(第九一四五号)   三二 同(小沢貞孝紹介)(第九一七七号      )   三三 外米輸入反対等に関する請願(林百郎      君紹介)(第九一四六号)   三四 同(小沢貞孝紹介)(第九一七八号      )   三五 韓国米輸入反対等に関する請願(井      上泉君紹介)(第九二〇九号)   三六 同(村山富市紹介)(第九二一〇号      )   三七 同(八木昇紹介)(第九二一一号)   三八 同外一件(吉原米治紹介)(第九二      一二号)   三九 米の輸入反対生産者米価引き上げ等      に関する請願外二件(串原義直紹介      )(第九二一三号)   四〇 外米輸入反対昭和五十九年産米価等      に関する請願井出一太郎紹介)(      第九二一四号)   四一 同(小沢貞孝紹介)(第九二一五号      )   四二 同(唐沢俊二郎紹介)(第九二一六      号)   四三 同外一件(田中秀征紹介)(第九二      一七号)   四四 同(若林正俊紹介)(第九二一八号      )   四五 同(垣島大君紹介)(第九二九一号)   四六 同(中島衛紹介)(第九二九二号)   四七 同(宮下創平紹介)(第九二九三号      )   四八 長(営林局存置に関する請願串原      義直紹介)(第九二四〇号)   四九 同(清水勇紹介)(第九二四一号)   五〇 同(中村茂紹介)(第九二四二号)   五一 昭和五十九年産生産者米価引き上げに      関する請願串原義直紹介)(第九      二四三号)   五二 同(清水勇紹介)(第九二四四号)   五三 同(中村茂紹介)(第九二四五号)   五四 同(井出一太郎紹介)(第九三二〇      号)   五五 同(唐沢俊二郎紹介)(第九三二一      号)   五六 同(塩島大君紹介)(第九三二二号)   五七 同(田中秀征紹介)(第九三二三号      )   五八 同(中島衛紹介)(第九三二四号)   五九 同(羽田孜紹介)(第九三二五号)   六〇 同(宮下創平紹介)(第九三二六号      )   六一 同(若林正俊紹介)(第九三二七号      )   六二 畜産養蚕経営安定強化に関する請      願(串原義直紹介)(第九二四六号      )   六三 同(清水勇紹介)(第九二四七号)   六四 同(中村茂紹介)(第九二四八号)   六五 同(井出一太郎紹介)(第九三二八      号)   六六 同(唐沢俊二郎紹介)(第九三二九      号)   六七 同(塩島大君紹介)(第九三三〇号)   六八 同(田中秀征紹介)(第九三三一号      )   六九 同(中島衛紹介)(第九三三二号)   七〇 同(羽田孜紹介)(第九三三三号)   七一 同(宮下創平紹介)(第九三三四号      )   七二 同(若林正俊紹介)(第九三三五号      )   七三 外米輸入反対等に関する請願串原義      直君紹介)(第九二四九号)   七四 同(清水勇紹介)(第九二五〇号)   七五 同(中村茂紹介)(第九二五一号)   七六 同(井出一太郎紹介)(第九三三六      号)   七七 同(唐沢俊二郎紹介)(第九三三七      号)   七八 同(塩島大君紹介)(第九三三八号)   七九 同(田中秀征紹介)(第九三三九号      )   八〇 同(中島衛紹介)(第九三四〇号)   八一 同(羽田孜紹介)(第九三四一号)   八二 同(宮下創平紹介)(第九三四二号      )   八三 同(若林正俊紹介)(第九三四三号      )   八四 昭和五十九年産米政府買い入れ価格      等に関する請願赤城宗徳紹介)(      第九二八九号)   八五 米の安定供給確保等に関する請願外二      件(小川仁一紹介)(第九二九〇号      )   八六 能代地区国営総合農地開発事業計画      変更等に関する請願中川利三郎君紹      介)(第九四三五号)   八七 食管制度拡充等に関する請願外一件(      佐藤誼紹介)(第九五三四号)      ――――◇―――――
  2. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、出席されるまで、委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、ことしの四月初め、山村農林水産大臣が訪米をされまして一応の決着を見たと言われております日米農産物交渉後の、特に果樹問題を中心にいたしまして、若干の御質問をさせていただきたいと思います。  最初に、オレンジの輸入枠が毎年一万一千トンずつ向こう四年間確定をしたわけでありますが、これに伴って、国内果樹対策方向づけをめぐって政府内部も与党初め私どももそれぞれ一定の動きを示したわけであります。政府の方で、あれ以来国内対策としてどのような方策がとられつつあるのか、この点をまずお尋ねをしてみたいと思います。
  4. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 先般の日米交渉でございますが、御承知のようにアメリカ側自由化要求を回避しまして、枠の拡大というぎりぎりの線で合意を見たわけでございます。  その後の状況を見ますと、先生よく御承知のように、需要面では生果、加工品とも非常に低迷をしておりますし、さらにミカン園転換も追加的に実施しております。そのほか主要な中晩かん価格低迷、こういうような大変厳しい事態がございまして、お尋ねのこの後の国内対策については、私どもこういう事情をよく検討し、また関係団体要望等もございますので、今鋭意検討中でございますが、大ざっぱに申しますと、当面の一種緊急対策としましては三つの問題があるのではないかと考えております。  一つは、需給調整とか需要拡大品質向上輸出促進、こういう広範な面の対策実施するための一種の特別の基金のようなものをつくって対策実施できないか、こういう問題がございます。それから二番目は、中核的な果樹農家の育成のためにできれば無利子というような貸付制度整備をするという御要望、問題がまた出ております。それから三番目は、さらに、やや恒久的な問題としまして、需給安定のための制度的な面の検討も必要ではなかろうか。こういう三つの問題が出ているわけでございまして、今これらの点について、特に第一の特別の基金の問題については今年度からの問題として考えたいということで、現在、鋭意検討を進めておるような次第でございます。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 この国産果実需給調整品質向上需要の増大、こういうものを意図した中央果実基金に対する緊急特別対策資金四十五億と伝えられておるわけでありますが、この四十五億の使い方というか、どういうものにどういうふうにやっていくのか。既に本年度から進めていくということでありますが、この内容はどの程度進んでおるのか、この際お尋ねをしておきたいと思うわけです。
  6. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 四十五億円というような御要望もございますが、緊急対策の中身を大体大まかに申し上げますと、四つございます。  第一は一種需給調整ということでして、これは、通常対策では対応し得ない不測の事態に対処するための需給調整ということでございます。内容的には、通常摘果指導では対応し得ないような大豊作予想時に発動しますいわゆる大摘果、それからさらにそういう事態による価格の暴落の場合の市場隔離出荷期の延長というような調整、さらに裏年のためというか、果汁特別調整保管、こういうような一種需給調整、さらに言いますと出荷調整、そういうような面の仕事が第一のグループとしてまず考えるべきことであろう。  それから第二が、これはいろいろございますが、まず第一には需要拡大、これは国内的な消費宣伝事業拡充ということで、従来も若干やっておりますが、こういう消費動向調査を踏まえ、また消費宣伝の面でもいろいろなマスコミの手段をさらに活用しましたり、果物フェア実施する、いろいろな構想があるわけでございますが、そういう需要拡大、これが第二でございます。  それから三番目は、品質向上の問題としまして、品種及び系統更新について、利子補給等手段も考えながら新しいいい樹種を導入していく、そういうような問題。それから、若干これからの問題でございますが、出荷時期調整のためのいろいろなハウス栽培の導入でありますとか果汁の新製品の開発というような、全体としまして品質向上に向けた対策、これが三番目でございます。  それから四番目は輸出促進ということで、これもまだまだこれからの問題でございますが、海外市場動向調査しまして、消費宣伝活動実施する。さらに進みますと、試験的な輸出などを実施しまして、海外市場輸出する場合の、いわば輸送とか包装とか、そういう面での基準をつくり出していく、簡単に言いますと、輸出の道を開いていくというような輸出促進関係。  以上申し上げましたが、大体四つの観点から、非常に総合的な対策をこの基金の中に盛り込もう、こういうことで検討いたしております。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 ああいう大きな出来事が起きて、何かやらなければいけないということで、果樹関係予算をうまく組み合わせをしてこういう形のものが出されておる節もあるし、もう少し大胆に踏み込んでいただきたい、こういう要求も私ども持っておるわけでありますが、いずれにせよ、四十五億の総枠もまだはっきりしていないというようなことでは、何か事業内容そのものもはっきりとした形で進んでいないような気もいたします。その点はひとつできるだけ早く決めて、いろいろ内部的にも問題もあるようであります、今述べられたような方向の問題はいずれも重要でありますが、できるだけ効率的に進めていただきたいと思います。  それから二番目には、先ほどお話のありました無利子融資ということでありますが、これは、関係者というか関係農家の皆さんにとっては今正直言って資金の重圧が多いものですから、無利子融資というものに対する期待感は非常に強いわけであります。これは一体どういうふうになっていくのか。枠などは決まっておるのか、あるいはこれは制度として将来確立させていくという方向で考えられておるのか、当面の一時的な考え方なのか、こういう点についてお尋ねをしてみたいと思います。
  8. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 無利子資金の御要望につきまして、これの対応の仕方については、私どもいずれにしましても昭和六十年度の問題としてこれから要求いたします予算要求の中で考えていきたいわけでございますが、このあり方については、非常に近い先例としましては、今年度畜産振興資金というものが新設されまして、この考え方は御承知のように予算措置実施をするということでございますが、こういう面での案も一つの方法でございます。さらに、私どもの局で所管しております農業改良資金制度がありまして、これも御承知のように無利子でございますから、この制度をいわば多少拡充ないし調整をする形で実施をする。この場合には一種の臨時的、限時的というよりはむしろ恒久的な、制度的なものになっていくわけであります。  大まかに申しますと、予算的な対応それから制度的な対応ございますが、いずれにしましても六十年度予算要求のまとめの時期を直近に控えておりますので、今申し上げましたような諸点いろいろ考えまして、予算制度両面から今要求具体化を図っていこうという段階でございます。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 これもまだはっきりしてないようですが、やはりきちんとした制度化をして、これから後そう長くない時期に再びこの問題は再発をしていく可能性が非常に強いわけでありますし、自由化後の状況も、今お話があったように中晩かんなどについて価格的には非常に低迷をしておりますし、何よりも、畜産果樹関係中心に米作を含めてこの問題が我が国農家生産意欲に対して与えた影響というのははかり知れぬ大きなものがあるように思います。打ち出されました方策内容についてはできるだけ早急に明確な方向づけをしていただきたい、こういうふうに要望しておきたいと思います。  それから第三番目は、中長期視点に立つ果樹制度見直しであります。これについては農林水産省の中に研究会が設置をせられて既に数回会合も持たれておるようでありますが、この制度見直し検討事項内容、時期、こういうものについて改めてお尋ねをしておきたいと思います。
  10. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 お尋ねのございました果樹対策研究会でございますが、これは第一回六月二十九日、第二回七月二十三日ということで二回開催いたしておりまして、果樹関係団体の方もお入りいただいておりますが、学識経験者方々で今検討を進めていただいておるわけでございます。これは検討事項としましては、極めて一般的なこととしまして果樹農業の現状と問題点果樹対策の推移と課題果樹農業の今後の展望、それから今後の果樹対策方向現行制度改善方策、こういうようなことで、第二回まではこういう関係につきまして委員方々の御参考になるような資料をまとめまして御説明もし、いろいろ御質問を受けて、若干議論に入っていただいておるわけでございます。  今後の見通しとしましては、今月下旬ぐらいに第三回目を開催したいと考えておりますけれども、いずれにしましても、この研究会の最後の問題はやはり制度問題ということがございまして、今団体の方ではいろいろ、輸入のいわゆる国境調整関係措置でございますとか国内的な需給調整関係についてかなり強力な制度が設けられないかという御意見もあるようでございますが、なかなかこの制度問題はそう簡単にまいらないという点もございますし、それから現在、果樹農業振興特別措置法という、一応果樹農業については基本的なと考えていいような制度が設けられておりますので、こういうものの改正対応し得る面もあるのじゃないか、こういう見方もございます。そういういろいろな点を含めまして、私どもとしましては、できるだけ、この第三回目に当たります八月下旬あたりの会議には少し今後の制度の持っていき方について突っ込んだ議論をしていただくということでこの研究会を運んでいきたい、かように考えております。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、これは大臣にちょっとお尋ねをしてみたいと思うわけですが、中長期視点に立つ我が国果樹制度政策に関する基本的な方向づけが、自由化という一つの大きな出来事を通して投げかけられてきたと思うわけであります。私は、日本の今の農業政策の各論を見た場合に、いろいろな制度政策が打ち立てられておると思いますが、やはり一番弱いのはこの果樹、あるいは蔬菜もある程度出てきておりますが、特に果樹関係政策的、制度的に非常に立ちおくれておるわけなんです。ですから、こういう問題を契機として、関係団体関係者、特に生産農民の間からは、せめて畜産なりあるいは蔬菜なり、あるいは米は国家管理でありますけれども、しかし食管制度というあんな大きな制度ができておるわけでありますから、そういうものに準ヒた方向づけがこの際出されるべきである。  果振法の改正という話もちょっと出ましたけれども、私は今の果振法そのものが、ある意味ではこれはめちゃくちゃになってきておると思うのですね。後で御質問したいと思いますが、この需給計画などはもう完全に破綻してしまっておる。そういう意味で、この際改めてこの果樹制度については抜本的な方向づけをしてもらいたい。その前提には、やはりせめて畜産なり蚕糸なりあるいは野菜も、これも生鮮食料品の場合は非常に制度化が難しいという問題はありますけれども、しかし、そういうものに準じた方向づけをしてもらいたいという声は当然出てくると思うのです。我々もまたそういう視点に立って今回のこの制度改正対応していきたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、大臣はどういうお考えで臨まれるのか、この問題の、ある面では当該の最高責任者であるだけに、私はこの際、大臣の所信を伺っておきたいと思います。
  12. 山村新治郎

    山村国務大臣 この果樹の問題につきましては、先生の御質問趣旨、本当によくわかるわけでございますが、一応国民生活上は嗜好品として位置づけられるという性格上、困難な問題もいろいろあろうと思います。しかし、例えばアメリカとの間に日米間での合意というようなものもなされまして、これを、言うならば輸入一元化というようなことを考える場合にはなかなか難しい問題が出てくるのじゃないかと思います。それにしましても 先と言われる御趣旨よくわかりますので、ひとつ慎重に検討してみたいというぐあいに考えます。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 嗜好品という意味も昔からよく言われておりますが、やはり国民の食生活が急激に変わっておりまして、果実などはある面ではもう主食アルファというよりも当然食後に出てくるという性格もだんだん強うなっておりまして、そういう視点からも考え直していただきたいと思いますが、自由化の問題の後、一番私どもの頭の中を支配したのは、やはりだんだん外国からの枠もふえていくだろうし、極端に言えば完全自由化のおそれすらある、こういう情勢の中でこれらの輸入果実というものと国内生産果実というものを一元的にどういうふうに需給をし、あるいは生産なり販売なりの体制をつくっていくかという問題がやはり一番大きな課題なんであります。そういう意味で、やはりこの輸入一元化窓口というものは必要ではないか、こういうことは当然この研究会でも相当大きな議論の対象になっていくと思います。そういう面で、従来の手法からいえば事業団といったようなものができてここで窓口一元化という体制がとられているわけでありますが、今日の政府の方針は、事業団一切まかりならぬ、むしろ削減、こういう方向で動いているわけでありまして、この問題とのぶつかり合いというものが政治的にも当然出てくると私は思います。  そこで、この輸入一元化というものについてはこれから相当突っ込んで議論もしていただかなければいけませんし、検討もしてみなければいかぬと思いますが、今農水省としてはどういう形でこの問題に対応せられようとしているのか。研究会検討を待つという問題もありましょうが、これまでだってこの問題はやはり大きな問題であったと思うのですが、今日のこの情勢の中で農林水産省のお考えをお尋ねしておきたいと思うのです。
  14. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 ただいま輸入一元化中心に御質問があったわけでございまして、研究会の中でも団体側の御関心の問題として、輸入一元化の問題あるいはECで設けられておりますようなああいう輸入課徴金も含めた国境調整措置の問題、それから国内需給調整としましては、アメリカにございますマーケットオーダーという制度はどういうものか、この辺が大体話題としてはかなり中心になってきておるわけでございます。  ただ、ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、特に輸入一元化というような強力な国境調整措置になりますと、現在の国際的な貿易制度の流れから見ますとむしろ逆行と申しますか、これからさらに国境調整措置強化するというようなことは大変困難でございますし、特に日米合意のようなああいう貿易レベルでの数量問題として一応合意をしております。そういう線、いろいろ考えますと、国際的な観点から見た場合には非常に難しいのじゃないか。  それから、一元輸入というようなことを考えますと、例えばほかの作物にございますような事業団というような強力な措置措置というか機構が必要になるわけですが、行政改革等の中で特殊法人等が整理の方向に向かっておるわけでございますし、こういう中で輸入だけではなくて国内的な産物の売買等による価格安定、こういうところまで含めた事業団というような構想になってまいりまして、これもそういう流れから見ますと非常に難しい、こういうことで、研究会の中でもこういう議論をいろいろしていただきまして、現実に対応し得る中で何とか皆さんの御協力によって需給調整の効果が上がるような方策は何かということを検討していただきたい、かように考えております。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 関谷さん、あなたは新しく担当になられたので、これは初めて手かける相当大きな問題だと思うのですね,私は、確かに難しい面はわからぬこともありません。それはガット上の規定もあろうし、いろいろありましょう。日米間の交渉、最近のアメリカの出方というのは、日本国内的な施策にまでこういう問題になっていくといろいろ口を出していくという傾向があるのですけれども、しかしやはり国内の産業、国内の農林漁業をどうしていくかというところが中心になりますと、これを何か歯どめをかけないと――そうはいっても、それは十年か十五年先のことなら、私ども努力するわけですからいきますよ。しかし今の段階では、残念ながら政策的に最大限の国内の保護政策というものをとらないと進まないと思う。その考え方は、私は農産物の自由化交渉の中でも一貫して国論として実はあったと思うのですね。ですから、遠慮なく大胆に事業団構想だって、私ども社会党も実はこの事業団構想というのは大分前から持っておったわけです。最近ちょっとおとなしゅうなっておりますけれども、私は十分に検討していただきたいと思います。そして、最大限強力な一元化体制をこの際明確につくっていただくことを御要望しておきたいと思います。  それから需給調整の機能をどういうふうに強めていくかということが、ある意味ではこの制度改正の流れとしては大きなものだと思うのですが、その問題で少し心配しておりますのは、特に果実のジュース化という問題を私どももこの委員会などで大分やかましく言った記憶がございます。政府の方も大変力を入れて、いわゆる生果の消費からジュースで年間消費を拡大して消費量を広げていこうということで、ジュースの施設化というのは相当進んできたと思うのです。ところが、このジュースの加工場というか、加工施設というものが今日ある意味では非常に困っておるというか、経営的に採算的に非常に行き詰まってきておる、そんなふうに、私は、自分の地域の周辺の幾つかの調査をしてみると、考えさせられるわけであります。  それから政府が補助をして、政府のバックアップでやったのもありますが、民間もたくさんな、クリとか落葉果樹も含めた中小の加工場があります。こういうものも非常に弱って、倒産が続出をしております。  そしてまた心配しなければいけないのは、こういう経営状況の中から、いわゆる安い原料の供給への期待が高まってきておる。ある意味では、外国の安いものを入れてしまえ、こういう形の懸念すら実はみなぎっておるわけであります。それをやらなければやっていけぬ、こういう状況になっておるわけです。そういう意味で、加工の問題について改めて見直していかなければいけない時期に今日直面しておるのではないか、私はこういうふうに思っておるわけであります。  少なくとも農林水産省が指導をし、設置をしてきた今日の加工施設の経営的な行き詰まり、あるいは農家から見れば、ともかくミカンに例をとれば、キロ百円から、幾ら少なくても八、九十円いくのですね、これではやれぬということになっておるわけですけれども。ところが加工へ回したら、これは二十四、五円から三十円まで、こういうことでありますから、これも実はそんなにこの問題でというような気になってない。しかし、全体的には加工でミカンの消費をふやしたという面は、私は大きな視点では相当な影響を持ってきたと思うのです。しかし現実に、どうも加工の施設配置なりあるいは加工場の内容整備なりについて改めて再検討をしていかなければいけない時期に直面しておるように思いますが、これらについてはどういうふうなお考えで臨まれようとしておりますか。
  16. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 お尋ねございましたように、加工関係、特に果汁関係でございますが、需給調整上大変重要な役割を持っておりまして、ある意味では果汁による需給調整というのが一番効果的な手段としてあるわけですが、最近ほかの飲料との競合とか低果汁飲料の消費拡大、こういうようなことで大量の過剰在庫を抱えておりますし、企業の損益状況から見ましても非常に経営が悪化しておる、こういう状況にございます。  そういう意味で、非常に基本的なと申しますか、果実の加工産業化あるいは加工施設というものを、果樹対策の重要な位置づけをもってこれから対策を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございまして、現在までには御承知のような原料果実の安定確保あるいは価格安定、そういう対応、それから加工施設の高度化のための助成措置を講じまして、さらに果汁の学校給食への導入等の消費拡大、それから具体的に、過剰存庫に対する調整保管の場合には金利、倉敷料を助成する、こういうことでございます。  これからの仕事としては、いわば需要拡大という面で、例えば果汁の凍結、濃縮技術の導入とか新製品等技術開発、こういうことの助成をする。さらに、果汁の一般的な消費拡大、さらに言いますと、海外市場調査をしまして、今わずかながらございますような輸出もさらに拡大していく、こういうような総合的な面で果実加工、特に果汁の加工施設の工場の経営改善、さらに需要拡大、こういう面についてさらに努力してまいりたい、こう考えております。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 今の加工施設の配置体系そのものについて、今日の情勢の中でも最も効果的な方法に再編強化をしていく、こういう考えはございませんか。
  18. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 現在、特に果汁関係ですと、御承知のように農協連合会が大体一県一工場というような形で体制をしいておりますので、これを特に再編成するというようなところまでは、私どもまだ問題としては考えておりません。やはり現在の工場施設の近代化なり、それから先ほど申し上げましたような内需、さらに言えば輸出までも含めた需要拡大、こういうような対策に重点を置きさらに技術の開発を進める、こういうようなことで考えてまいりたいというふうに思っております。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 加工の問題はちょっとなかなか詰められませんが、まだ私の方もいろいろ意見があるのですけれども、またいずれ後に譲らせていただきたいと思います。  果汁制度を新しくつくっていくという視点に立って、現在のいろいろな制度を一遍洗い直してみなければいけないのですが、今お話のありました果振法による長期の見通しというものが残念ながら大変狂っておるわけでありますが、これはいつごろ見直していくのか。それから、こういう長期の見通しといったようなものでなくて、短期の需給計画というか、そういったようなものが必要ではないか。こういう生鮮食料品であるだけに、一定の国の方向づけに基づいて、関係団体が協力をして、生産の動向や流通の体系について踏み込んでいかなければいけないわけでありますが、そういう意味で、果振法に基づく長期的な見通しのほかに、短期の、できれば一年ごとの需給計画といったようなものが欲しい、こういう声があるわけですが、この点についてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  20. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 まず、果振法に基づく長期見通しの方でございますが、これは現在六十五年度までの見通しがございますが、その後、御承知のようにいろいろ生産の規模なり需要の規模等につきましても大分見直しをしなければならない、こういう事態が来ております。そういう意味で、大体五年ごとにこの基本方針の策定をするということもございますので、今年から果樹農業振興審議会の中に専門部会を設けまして、七十年度目標の新基本方針の策定作業を始めようということで、専門部会のスタートを近々したい、かように考えております。  ただ、この中で、ミカン園の面積あるいは需要の見通し、こういう問題については相当な調査資料を集めまして見通しをしなければならないということで、この基本方針の見直しがまとまるに至りますまでには相当の作業をしなければならない、かように考えております。  また、お尋ねの中の一年ごとの見通しというか、さらにもっとはっきり言いますと、これは一種の単年度の需給計画というような問題になるわけでございまして、確かに果実の場合には、生産の構造からして面積の変動が、ほかのもののように作付面積が単年度で変動しない一方、表年、裏年というか、毎年の需給変動があるということで、実はかっちりした需給計画をつくって、それに基づいていろいろな調整措置をやるというのが非常に理想ではございますが、反面、需給計画と実際とのずれに基づく措置の面で大変苦慮するということもございます。  御承知のように、現在は、生産出荷安定協議会というような場で、団体、県の方等に御参集いただいた場で各年度の生産出荷計画をお決めいただいて、そこで一種の自主的な措置として計画的な生産出荷を指導しておるわけでございますが、これを何らかの形で多少制度的な問題に高めたらどうかというようなことも、果振法に関連します、あるいは今問題として出ております新しい制度方向一つの問題であろう、そういう意識は持つております。ただ、今申し上げたように、単年度の需給計画はかっちりしたものが非常につくりにくい、またその実行面で出ています問題にどう対応するかということがございますので、従来の長期見通しに加えるに、各年についてもできるだけ需給のいわば見通しというものを制度の中でもう少し位置づけを高めていくというようなことは必要であろうとは思っておりますが、厳密な意味での単年度ごとの需給計画をつくってそれを実施するという形まで持っていけるかどうか、これからの検討課題であろうと思っております。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 次に輸出対策でありますが、積極的に打って出るということも前々から言われてきたところでありまして、我が国果実品目の中には国際的な対応力を持つものも幾つかはあるように思います。私どものところはミカン産地でありますけれども、ミカンなども確かにコスト上の問題はありますが、品質的には国際的に十分に対応し得るものだと言われております。  そういう意味で、いわゆる輸出対策というものも本格的に力を入れる必要があると私は思いますが、政府の方も考えられておるようですけれども、大体市場調査とか需要動向調査とか、あるいは消費の宣伝とか、こういう程度にとどまっておるようでありますが、もう少し踏み込んで、これはガットの関係もあると思いますけれども、国際的に打って出るということになれば、やはり国内的にばらばらであってはやれないわけでありますから、輸出組合のような問題、つまり輸出についても一元化方向づけをしていく、あるいは既に一部の産品については輸出の規格はつけられておるわけでありますけれども輸出向けの規格の設定、あるいは場合によれば、これもいろいろ問題があるということは承知しておりますが、やはり政策として、輸出に対する何らかの奨励措置を考えられないのか。ECなどがとっておるような大胆なところまではもちろん難しいでしょうけれども我が国の場合も、国際的に伸ばし得るものについてはこの際輸出の奨励措置を、政策としても、中身として考えてみるべきではないか、こういうように私は思いますが、こういう輸出振興方策についての政府の御決意や具体的な内容がございましたらお尋ねをしておきたいと思います。
  22. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 一般に農産物の輸出は現在の状況から見るとなかなか難しい状況にございますが、この中で果実それから果実加工品につきましては、私ども所管局の立場としましても、現実的な問題として、輸出をさらに伸ばしていく、そういう可能性を持っている数少ない作物ではなかろうかというように考えております。現在は、御承知のように生果実ではミカン、ナシ、リンゴを中心に五十年ごろは二万トン台でありましたが、五十八年四万七千トンというような増加傾向でございまして、大体温州ミカンがその中の過半数を占めるというような状況であります。果実加工品の方では、これも大体ミカン缶詰が中心でありまして、五十八年生果換算五万三千トン、そのうち温州ミカンが五万二千トンということで、現在では大体横ばいというようなことでございます。  こういうことで、輸出は全体としては増大傾向も見られておりまして、その中で温州ミカンが中心である、こういうような状況の中で、我々としましては、先ほど今度の特別基金の仕事の一環としても申し上げたわけでありますが、従来からやっておりますような海外宣伝ですが、これをもっと現実的に市場調査海外宣伝、それから既に一部の生産団体では具体的な問題として私どもにも御提起がありますけれども輸出をする場合の、特に生の場合の輸送中の品質低下の防止、それから輸送、包装方法、こういうことになりますと、試験輸出というか試験輸送をしまして、それに基づいてどういうような包装、どういうような運送手段を用いたらいいかというような一種の基準を設定するということが考えられるわけでありまして、こういう面について先ほどの特別基金の仕事の一環として重点的に取り上げたい、かように思っております。  また、これは植物検疫の問題と絡みますが、例えば今度の日米交渉の際に道の開けました温州ミカンの対米輸出、こういう問題についても、問題になっておりますかんきつ潰瘍病の完全防除技術の開発をやっていくことによって輸出の増大に寄与していくということもございます。なお、最近ではアメリカとの関係でナシの輸入検疫について、若干アメリカの条件を提示してもらってナシの二十世紀の輸出をもう少し具体化するという手前まで来ておりますが、こういうような植物の検疫面と絡みました輸出面の開拓ということを考えていきたいと思っております。  ただ、輸出と申しますのは、貿易面で関係生産団体あるいは加工関係方々の努力により市場開拓していくというのが基本でございますので、単純に何か輸出に対して一種の直接的な助成をするということは、自主的な努力を伸ばし、また向こう側の需要を開拓していくという事柄の性格から見ればむしろ適当ではないのじゃないかと考えておりますので、今申し上げましたような市場調査、宣伝、それから技術的な面での道を開く、こういう面に重点を置いて輸出振興に努めてまいりたいと考えております。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 この機会に、私は、私の関係地域の大きな果樹地帯の問題になっております点について政府のお考えをお尋ねをしておきたいと思います。  実は、愛媛県の南予用水事業というのが現在行われておるわけでありますが、これは主として果樹園の近代化を目指すということで出発をいたしました。同時に、半島部を中心に生活用水を供給するという国営事業であります。この事業が現在進められておるわけでありますけれども、御承知のような財政状況の中で事業の遅延が非常に心配をされております。今日の進捗状態は一体どうなっておるのか、計画どおりこれは進められていくのか。そして、私どもが今非常に頭を悩ましてもおりますし、特に関係果樹地帯の農民の諸君が苦悩しておりますのが負担金の問題であります。  一つは、負担金が明確でないということであります。これは終わってみなければわからないということでありますけれども、私はそんなことでいいのかということについて非常に憤りを持っておるわけであります。当初の計画からもう相当たちましたものですから、二倍あるいは三倍上回るのじゃないか、こんなことになっておりますし、当該地域の果樹の所得というか収入というものは低迷から低下をしておる、こういう状況の中で苦闘しておるわけでありますが、この農民負担金の問題についてどういう考えで対応せられようとしておるのか、この点をこの機会にお尋ねをしておきたいと思います。
  24. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えをいたします。  南予の農業水利事業の進捗状況でございますが、昭和五十八年度までに百九十六億四千万円を使いまして、導水路六・四キロメートルのうちの五・七キロメートル、それから幹線水路につきましては九十・八キロメートルのうち三十五・五キロメートル、それから調整池がございますが、その調整池の一部を施工いたしまして、全体の進度は約五〇%でございます。  なお、昭和五十九年度につきましては、三十三億円の予算をもちまして、導水路、それから布喜川の調整池までの幹線水路を完成させまして、昭和六十一年度から一部通水する予定でございまして、非常に厳しい財政状況の折でございますけれども、今後とも極力予算を確保いたしまして事業の推進に努めてまいりたいと思います。  なお、この国営事業の附帯の事業といたしまして県営事業がございまして、現在、かんがい排水の六地区を採択いたしまして実施しておりまして、昭和五十八年度までの進捗率は約一九%、二〇%弱でございます。  このほかに、県営の畑地帯総合土地改良事業一地区を実施しておりまして、この事業の進度が五十八年度までで約四%という状況でございまして、当初予算上の予定といたしましては、六十三年度をめどにして工事をやっていたわけでございますが、昨今のような状況でございまして、かなりこの計画がおくれておるような現状でございます。  次に、負担金の問題でございますが、この国営事業を着工いたしました時点で事業の同意を得ておりますが、附帯事業を含めました地元の負担額について説明を十分行っております。その後、毎年の事業計画あるいは総事業につきましては、土地改良区の連合会あるいは促進協議会等におきまして説明を行っておりまして、現時点での地元負担額の概数については了知されているものと考えているわけでございます。  なお、附帯の土地改良事業、県営でございますが、その地元負担金につきましても事業の同意を得る段階で説明をされておりまして、また未着工の地区についても、今後着工されます際に地元の負担額については十分説明を行うように県を指導していく、――こういう考えでございます。  ただ、先生の今の御質問農家の負担額というような趣旨の御質問がございましたけれども、国、県の負担が九〇%でございまして、それを除きますいわゆる地元負担が一〇%でございます。したがいまして、一〇%という金額は地元におりているわけでございますが、一部の市、町につきましては、この一〇%の一部をさらに負担をするというところがあるようでございます。そういう意味におきまして、まだ農家の負担額あるいは負担割合が確定してないというところもあろうかと思います。そういう現況でございます。
  25. 田中恒利

    田中(恒)委員 これはできるだけ早く事業を進めていただいて、少しおくれる見込みだということのようでありますが、できるだけ早くやってもらいたいということです。負担金の問題は、これはここだけじゃなくて、私は土地改良区の全国的な共通の問題だと思うのです。やはり一番関係のある農民はわからないですよ。これが実態なんです。ですから、金額は、工事が進んでいくわけだからどれだけ工事費が上がっていくのか、推測もなかなか成り立たないし、相当長期なんだから、これはこういう基準でこういうふうになるでしようという程度のものはわからせるような指導をやっていただきたいと思います。  南予用水については、いろいろ小さなことから大きなことがございます。ございますが、私は改めて当関係部署とも御連絡をしておきたいと思いますが、今おっしゃったことぐらい大概よく承知しておるわけでありまして、現状、特に負担金のこれからの方向づけ、あり方などについて、私も連絡をしたいと思いますけれども、あなたの方ももうちょっと調べていただいて、この負担金問題の重圧に耐え得るかどうか。大体一町歩なら一町歩の果樹園にかん排施設をつくっていく、そうしたらそれがこれから何十年か続きますけれども、持ちこたえられるのかどうかということも農業経営的には考えられるわけです。当初はやれると思っておったわけですけれども、なかなか難しくなってみんな頭を悩ましておるというのが現状であります。そういうものについて、政治的に何か打開の道はないのかということを我々はよく関係の県なり市町村に言われておるわけでありますが、御承知のような状況で非常に難しくて、農民に負担が強いられていくという可能性が強い。この点を農林省としては十分頭に置いていただきたい。これはこの地域だけではないと思います。こういう国営の事業の負担金問題は当面の大きな基本的な問題でありますので、ひとつ配慮をしてもらうようにこの際要請をしておきたいと思います。  それから、あと残されました時間、漁業の問題で二、三お尋ねをしておきます。  山村農林水産大臣、近く訪ソをされるという報道がなされておるわけでありますが、これは確定したのか、そういう方向で動いておるのか、いつごろなのか、この訪ソの目的はどういうことなのか。特に日ソの漁業協力協定の見直しという問題が今提示をされておるのだと思いますが、日ソ問題は単にこの問題だけじゃなくて、日ソ間の国の関係がちょっと厄介になっておるような感じがいたします。私は、山村さんが訪ソをされることによってそういう日ソの平和外交というものに大きく踏み出していくという意味でも大きな意義があると思っておりますが、なお当該担当の大臣として、漁業問題はソビエトとは非常に大きな関係があるわけでありますので、この際まず所信をお伺いしておきたいと思います。
  26. 山村新治郎

    山村国務大臣 ソビエトのカメンツェフ漁業大臣の招待による私の訪ソにつきましては、九月の中旬以降、これを現在調整を行っているところでございます。私といたしましては、今般の訪ソに、際しまして日ソ漁業関係の一層の安定化を図る、こういう観点から日ソ間の漁業問題について大所高所から率直な意見交換を行いたいというぐあいに考えております。  去る六月二十六日ソ連側より終了通告のございました日ソ漁業協力協定につきまして、現在これにかわる新たな協定を締結するべく今事務レベルで交渉中でございます。しかし、ソ連側は公海でのサケ・マス漁業の禁止の原則導入、これらを主張しておりまして、協議が難航しておるというのが現状でございます。私としては、本問題につきましては、できるだけ早期に我が国のサケ・マス漁業の維持継続が図られるという形で決着をつけたいというぐあいに考えております。今度の訪ソにつきましても、これらの問題についてもいろいろ話し合ってみたいと思っております。
  27. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣、これは非常に大きな内容を持っておると思いますので、十分に我が国の国益を考えながら、しかもアジアの緊張緩和のためにぜひ頑張っていただきたいと思います。  それで、沿岸漁業の問題でありますが、最近の我が国の漁業は、二百海里の国際的な定着というものを受けまして遠洋から沖合へ、沖合から沿岸へ、こういう形で、漁獲にいたしましてもだんだんそういう方向に向かって進んでおるように思えてなりません。沿岸漁業をどういうふうに振興していくかということは非常に重要な問題になっておると思いますが、まず、第二次沿整事業はどういう状況に進んでおるのか。それから、沿岸漁業の振興のためには、どうしても漁場の開発というか、整備というか、あるいは汚染をされておる漁場をどういうふうにして息を吹きかえしていくか、こういう問題がやはり一番出発になると思うのです。農業が基盤整備という問題が言われるように、やはり漁場を新しく切り開いていくことや、漁場を整えていく、環境を整備していく、こういう問題が一番重要なように私は思いますが、そういう点について水産庁のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  28. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、二百海里時代ということは、逆な言い方をいたしますれば我が国の主権下にある漁場を大事にすべき時代であるということだと認識をいたしております。そういう考え方で私どもも沿岸漁場整備開発計画については力を入れているところでございますが、ただいま先生お尋ねのございました第二次の沿岸漁場整備開発計画は、五十七年の四月に策定されました。計画期間は五十七年度から六十二年度に至る六年間、総事業費が四千億ということでございます。そのうち、五十九年度末までに千五十一億、進捗率にいたしますと三〇・九%の事業が実施されることになるという見込みでございます。大変厳しい財政事情のもとではございますが、毎年度、沿岸漁場整備開発事業の予算は公共事業の中でも最も高い伸び率のグループに入っておるわけでございまして、今後とも沿岸漁場の生産の増大と経営の安定を図っていくために沿岸漁場の計画的な整備開発を推進していく必要がございますので、第二次沿岸漁場整備開発計画の達成のために努力をしてまいりたいと考えております。  そこで、やや中身に立ち至った問題でございますが、先生御指摘のございました汚染された漁場の復旧整備、さらに新漁場の開発ということで、沿岸漁場整備開発事業の一環として、漁場の効用の低下している沿岸漁場の生産力の回復を図るために、漁場の堆積物の除去あるいはしけんせつ等の沿岸漁場保全事業というものを実施いたしておるところでございます。  それからまた、養殖業の安定を含め、沿岸漁業経営の安定及び生産性の向上等沿岸漁業の振興を図るためには、漁場環境を適切に推持保全することが重要でございまして、その方法として、御指摘のようにさらに新しい漁場を整備開発していくことも必要であると、私どもも全く同様に考えております。そのために、沿岸漁場整備開発事業等によりまして、養殖場の造成など新しい漁場の造成を行っているところでございますが、新たな養殖場の造成の場合には、既存漁場に比べまして沖合であり、水深も深いというような、条件が厳しいところでございますので、消波堤の設置等の手法を活用するとともに、沿岸域でありましても海水交流が不十分なために養殖適地となっていないようなところでは、水路の開削等の手法を導入して進めているところでございます。  財政事情は極めて厳しゅうございますが、今後ともそれぞれ地域の実情に応じまして一層適切な技術の導入を図りながら、効果的かつ効率的な漁場の整備を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  29. 田中恒利

    田中(恒)委員 沿岸の漁獲がコンスタントに二百万トン程度-漁船がだんだんふえてきておるのではないか、こういうことも考えられまして、遠洋漁業等では減船で大分大きな問題になったわけであります。沿岸の漁業問題も、資源という観点からいくといろいろな考えてみなければいけない点も出てきておるような気がしてならないわけでありますが、できるだけ資源を保護する、あるいは漁場を整備をして漁獲を高めることが可能な状況を早くつくらないと、今日の国際的な環境の中で我が国の漁業の位置づけというものが心配になりますだけに、特に沿岸の漁場整備については力を入れていただきたいと思うのです。  私の地域で北灘の漁協が倒産をいたしまして、水産庁にもいろいろ御指導いただきましたが、まだやっと再出発の動きが出始めた段階ですけれども、新しく漁場を移転をいたしまして、そういうところで関係漁民が気合いを入れてやろうか、こういう形になっておりますし、また現実に私どものいろいろな調査を見ても、余りにもつくる漁業というものが、無計画と言うたらちょっとひどいかもしれませんが、次から次と、ハマチから始まってタイからエビからたくさんな魚種を小さな入り江の中に入れて海を汚し、それが総合的にお互いをつぶし合ってきた、そういうことも考えられまして、全体的に私どもの地域では沖合へ漁場を持っていく、こういう動きが活発になっております。  特に、私どもの地域はハマチと真珠養殖が非常に活発なところでありまして、全国の主産地であります。これについても業界を中心に自主的な計画化、いわゆる種から始まって製品に至るまでの間、需給調整というものを自主的にやっていこう、こういう空気が非常に強くみなぎっております。真珠などは今は比較的いいのでありますけれども、どどんと落ちてくるわけでありますので、この辺は種の問題から考えなければいけないということでありまして、これは、業界や県も含めてそういう自主規制というか自主調整、そういう需給の自主的な体制確立する努力を今積み上げておるわけでありますが、水産庁も、特につくる漁業をめぐってそういう方面に向かっての行政指導ということになるのでしょうけれども、力を入れるべきではないかと私は思っておるわけでありますが、最後にこの点をお尋ねをいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  30. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、先生御指摘のございました計画生産の問題でございますが、ハマチにつきましては、従来から毎年養殖関係県の担当者会議を開きまして、養殖用の種苗、これはモジャコでございますが、これの採捕につきまして県別の採捕尾数の上限を設定をいたしまして、またこれに基づきまして関係県は計画的な生産をやるということになっております。水産庁といたしましても、今後ともこれらの指導の適時的確な実施を通じて需要に見合った計画生産を推進をしていきたいというふうに思っております。  真珠養殖につきましては、需要に見合った安定的な生産をするために、毎年農林水産大臣が核の大きさ別の施術数量目標を都道府県別に設定するということにいたしまして、業界団体を通じてその遵守について指導をするということにしているところでございます。また、粗悪真珠の出回り等を事前に防ぐとともに、需要に見合った供給の指導もあわせて行っているところでございます。  こういうことで、ハマチにつきましても真珠につきましてもそれぞれ計画生産の指導を行っておるところでございますが、ただいま先生御指摘のございましたように、過密養殖問題を回避するためにもこのような指導は今後一層強化していかなければいけないというふうに考えております。  それから、先生御指摘のございました、当該水域の中で例えば真珠の養殖とハマチの養殖が競合する、両方が舷々相摩すようなところで養殖をするというようなことにならないようにするというのは、これまた非常に大事なことでございまして、私どもといたしましてもそういうことのないように十分留意するよう指導してきたところでございます。  先生御指摘のございました北灘湾につきましては、こういう考え方で、北側ハマチ、南側真珠ということで漁場を分離するということをなさっていらっしゃるというふうに承知をしておりますが、こういうことをおやりになる場合に、先ほど申し上げました新漁場の造成のための助成事業というものも今後大いに活用していただきたいものと思っております。
  31. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  32. 玉沢徳一郎

  33. 串原義直

    串原委員 初めに、降ひょうの問題について伺いたいわけでございます。  去る八月一日から三日まで長野県下各地に被害をもたらしましたひょうは、被害額約十三億円、私も被害の大きかった喬木村、飯田市などを急速視察をいたしまして、被害の大きいのに驚いたのでございます。御承知のように、ひょうというのは降るときには部分的に地域が限定されて降る。極端なことを言いますと、狭い道の右と左の畑を分けて降る、こういうことにもなり、そのために被害を受ける地域、該当した農家にとってはまことに深刻な問題であります。収穫皆無の畑が相当出るのではないか、こう私は判断をして帰りました。県と連絡をとっていただきまして、その救済策に力を入れてやってもらいたい、こう要請をするものであります。  具体的には、いろいろございますでしょう。果樹、桑等々の回復のための対策、被害農作物の病虫害の緊急防除対策、あるいは特に強い要請のあります制度資金についての措置、農業近代化資金の据置期間及び償還期限の延期の問題、それから自作農維持資金の枠の確保等々が要請されてくるであろうし、対策の大事な点であろう、こんなふうに思っているところです。この点について農林省の対処の仕方を御回答いただきとう存じます。
  34. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  八月一日から三日まで長野県に降ひょうがございまして、御指摘のように野菜、果樹、桑等におおむね被害金額十二億円という被害が発生したわけでございまして、県から報告を受け取っております。  私どもの方の対策といたしましては、自作農資金融資の問題がございますが、被害の状況あるいは被害農業者の資金需要等に即しまして、県当局と十分協議をして適切に対処してまいる考えでございます。
  35. 串原義直

    串原委員 今御答弁をいただきましたが、自作農維持資金の枠の確保、これには特段の配慮を願いたい。  それからいま一つ、先ほどちょっと触れましたけれども、既に借りていた農業近代化資金、この返済期限が来た、ところが被害を受けて収入が減るので返済ができないという農家が出てくる。この場合の据置期間あるいは償還期限の延期、こういう要請が出てくるだろうと思う。このことについて対処してもらいたい。どうですか。
  36. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 お答えいたします。  災害等が起きた場合には、償還猶予でございますとかあるいは中間据置期間でございますとか、こういうことで適宜対応しているわけでございまして、一般的な通達も出しておりますが、今回の場合にもできるだけそういう対応をするように指導したいと思っております。
  37. 串原義直

    串原委員 それでは、次にロングライフ牛乳の問題について伺いたいと思います。  まず伺いたいことは、牛乳にとって最も大切なこと、言うならば生命というのは何であるか、どう理解されていらっしゃるか、このことについて伺います。
  38. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答え申し上げます。  牛乳は、もとよりたんぱく質とかあるいは脂肪、糖質、ビタミン、ミネラルといった必要な栄養素がほとんど備わっているというふうな意味で、最も完全に近い食品と言えるものであろうと思います。特に日本人にとりましては、不足しがちなカルシウムとかあるいはビタミン氏とかビタミンA、そういった供給源として大変大事なものでございまして、国民の基本的食料といった地位を占めているのだろうと思います。  こういったような牛乳につきましては、消費者に対しまして安定的に供給していくということが肝要な点であろうと思いますが、我が国の飲用牛乳の生産、流通の実態というものからいたしますと、都市近郊地帯におきましてもフレッシュな牛乳の供給が可能な状態になっておるということでございまして、普通牛乳、いわゆるフレッシュ牛乳を基本としていくというふうなことはもとよりの点であろうというふうに考えております。
  39. 串原義直

    串原委員 つまり、今お答えになりましたようなそれぞれの栄養が常に確保されることが牛乳にとって大事なことである、これが一つ、いま一つはフレッシュである、新鮮であるということがまず牛乳にとっては大事な命である、こういうふうに考えるのですけれども、そういうふうに今の御答弁を理解してよろしゅうございますか。
  40. 野明宏至

    ○野明政府委員 結構でございます。
  41. 串原義直

    串原委員 昭和五十二年の四月でありますけれども生産者と乳業者間で合意をいたしましたいわゆるロングライフ・ミルク三原則、LL三原則と言っておりますけれども、具体的には、一つとして牛乳供給はフレッシュを基本とする、二つといたしましてロングライフ牛乳の輸入は行わない、三つといたしまして要冷蔵条件は堅持する、これがLL三原則であったわけでございますが、これを今日時点政府としてはどんなふうに評価していらっしゃいますか。このLL三原則を取りまとめるということで両者の間に立って農水省が大変努力してきたものでありますだけに、尊重されなければならぬ三原則である、こういうふうに私は理解をしているのでございますが、いかがでしょう。
  42. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいまお話のありましたいわゆるLL三原則、これは昭和五十二年の四月に生産団体と処理業者の団体の間で合意をされまして、ただいまお話のありました三つの原則を基本としてLL牛乳の流通を行っていくというふうなことであったわけでございます。  まずその第一の原則につきましては、先ほどもお話ございましたように、我が国の場合には大消費地の近郊におきましても相当規模の酪農経営が営まれております。また消費者の嗜好というふうな点から見ましても、今後ともやはりフレッシュなものを好むというふうに見られるわけでございますので、その原則は今日も変わらないというふうに考えております。  それから第二の輸入との関係でございます。LL牛乳につきましては海外からの輸入に反対する、そういった原則でございますが、牛乳につきましては、滅菌した牛乳、これはいわゆるしL牛乳でございますが、IQ制度になっております。この点につきましては、私ども今後ともこの制度を変えるという考えはございませんので、この原則も今日も変わらないというふうに考えております。  それから第三点のいわゆる要冷蔵要件という点についてでございますが、これにつきましては厚生省がかなりの時間をかけまして調査研究をいたしまして、昨年の三月に要冷蔵要件を撤廃しても、すなわちLL牛乳につきましては常温流通を認めても食品衛生上の問題はないというふうな結果を明らかにいたしております。  また、その三原則につきましては五十二年にこういった合意ができまして既に七年を経過いたしております。この間LL牛乳をめぐる生産、流通の実態、これも相当変化してきておりますので、従来の三原則につきましては関係者の間で新たな協議を行い、また調整を進めていくという必要が出てまいっておるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  43. 串原義直

    串原委員 御答弁になりましたLL三原則の三項、三項と言っていいのかちょっとわかりませんけれども、三項目、要冷蔵の問題、この問題でお話のように去年の三月、厚生省の方から乳等省令上の要冷蔵規定を外しても食品衛生上問題はないという研究データが出た、したがって関係者で協議をする等々、検討をする必要があるのではないか、こういう御答弁ですね。厚生省からこの研究データを発表され、厚生省の考え方を示された後、農水省はどんなぐあいに対応されていらっしゃったのか、ひとつ具体的にお答えを願います。     〔玉沢委員長代理退席、上草委員長代理着席〕
  44. 野明宏至

    ○野明政府委員 昨年の三月、厚生省の調査研究結果が明らかになりまして、食品衛生上問題ないというふうな考え方が出されたわけでございますが、その後私どもといたしましては、昨年の春から生産団体と処理業者、すなわち乳業者でございますが、その代表による意見交換をまずやっていただきまして、その間、現在までに生産者と処理メーカーとの間におきましても五回程度、さらにはこれは販売面にも非常にいろいろ関係がございますので、販売業者の代表の方とも五回程度、さらには消費者団体とも二回程度、それぞれ協議なり意見聴取を行いまして、生産、処理あるいは販売、そういったそれぞれの段階における御意見なり、あるいはそれをベースにしてLL牛乳が円滑に、いわば常温流通しても大きな混乱が起こらないためにはどういうふうにしていったらいいのかというふうな意見集約のための打ち合わせを進めておるところでございます。
  45. 串原義直

    串原委員 それぞれ今生産団体あるいは販売業者、消費者団体等々と話し合いを進めているというお話でございましたが、その席上できっと適切な意見なり反対、賛成等々の意見が出たと思いますけれども、要冷蔵規定を外した場合に考えられる流通上の問題点は幾つもあると思うのです。その問題点というのはどういうことが考えられるわけですか。
  46. 野明宏至

    ○野明政府委員 LL牛乳につきましては、そもそも離島、僻地というところで消費者が牛乳を手に入れやすいようにとか、あるいは自動販売機でも常温流通が認められれば牛乳が売れるということで、今牛乳の場合には牛乳以外のほかの清涼飲料との競合関係にあるわけでございまして、これから牛乳の消費拡大を進めまして生乳の需要量全体の大きさを大きくしていく上では非常なメリットがあるのじゃないかということが、一つ、基本にございます。  そこで、生産、処理あるいは販売というそれぞれの面でいろいろな御意見がございます。例えば生産の面では、北海道等の大生産地の牛乳がLLということで東京その他の地域に流れ込んでくるのじゃないか。あるいは販売面では、常温ということになりますと牛乳屋さん以外のところでも売られるのではないだろうか。生産から処理、販売それぞれの段階でそういったようなメリット、デメリットというものがいろいろ言われております。したがいまして、LLにつきましては、メリットを生かしながら、しかもそれぞれの段階で心配されておりますような流通上の混乱というものを来さないようにして、どういうふうにしたら現段階における新しい原則ができるのだろうかというふうなことで、関係者の間でいろいろな協議なり意見交換なりあるいは意見の集約というものが行われておる段階でございます。
  47. 串原義直

    串原委員 余り具体的に今答弁がなされなかったわけでございますが、私は、問題点が非常に多いと考えているわけです。関係者の意見を聞きますと、容器の点で発がん性に対する疑いも持っているという人もいらっしゃる。それから、最初に御答弁になりましたフレッシュという点では、まさにミルクの缶詰である、こういう点でとてもとてもフレッシュとは言えない、こういうような話も出ているわけです。さらにまた、今言われましたように、販売の過程の中で自動販売機で販売をすることも要冷蔵を外した場合には考えられる。自動販売機販売ということも考えられるということになりますと、実はフレッシュさがなくなるということに加えて、流通の上からも新鮮さというものが侵されてくる。こういう問題等々いろいろなことが考えられるわけでありますし、具体的に指摘されているわけですし、我々のところへも要請が来ているわけでございます。  これらの幾つもの出てくるであろう問題点、これを順次国民の皆さんに納得いくように整理をしなければいかぬ、大変な時間がかかるというふうに思うわけでございまするけれども、この言い方が正しいかどうかは別でありますが、言いますならば、もし要冷蔵規定を再検討するとするならば、先ほども答弁にありましたLL三原則、これにかわるべききちっとした原則というものが確立されなければいかぬ、こういうふうに私は考えているわけであります。その辺まで突っ込んだ検討がなされなければいかぬ、こう考えるわけです。この辺はいかがですか。
  48. 野明宏至

    ○野明政府委員 LL牛乳につきまして、要冷蔵要件を撤廃し常温流通ができるようにしていくというためには、先生おっしゃいますように、従来の三原則にかわります新しい原則というものを関係者の間で合意ができるようにしていきまして、しかもそれは話し合いを通じましてお互いが守っていくというふうな環境づくりをしていくということがやはり大事だろうと思います。したがいまして、そういうふうな方向に向けて何回も話し合いが続けられておるわけでございます。  なお、安全性の問題とか栄養面の問題、これらにつきましては厚生省の方でお考えいただいておるわけでございますが、この前の試験研究結果あるいは国際的ないろいろな状況というものからすれば、これについては問題はない。そういうふうな食品衛生上はむしろ問題ないけれども、しかし同時に、これは生産、流通あるいは販売、そういったいろいろな面にわたるものでございますので、そちらの方につきまして新しい原則というものをこれから考えながらこの問題を扱っていくことが非常に大事なことであろうというふうに考えておるわけでございます。
  49. 串原義直

    串原委員 したがって、関係者関係団体の協議を重ねた末の合意、こういうものが成立しなければ要冷蔵を撤廃するということは好ましいと考えていない、こういう意味の御答弁だったというふうに理解してよろしいですか、今のお話
  50. 野明宏至

    ○野明政府委員 その点につきましては、もちろん当事者間の合意が基本であることはもとよりでございますが、やはりそれぞれ話し合いの中で問題を整理していくことがだんだん可能なような方向に向かっているのではなかろうかと思います。もちろん、まだ関係者の意見が一致したというわけではございません。ただ、考え方がだんだんとまとまっていく方向にあるのじゃなかろうか、そういう中でこの問題を扱っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 串原義直

    串原委員 したがいまして、難しい問題だけれども、だんだん合意点を見出しつつあるように思う、こういう御答弁でありましたが、関係者の、関係団体合意が得られないうちは現在のLL三原則というものを最も大事にして守ってまいります、こういうことですね。
  52. 野明宏至

    ○野明政府委員 LL三原則ができましてから七年もたっておるわけでございますし、厚生省の方の考え方も、変わってというか、新しい考え方がはっきりと出てまいっておるわけでございます。したがいまして、そういった新しい事態の中で秩序ある流通ということを考えました場合には、新しい原則というものが関係者の間でできるだけ早くでき上がっていくということが望ましいのではなかろうかというふうに考えております。
  53. 串原義直

    串原委員 それでは伺いますけれども、先ほど申し上げましたが、LL牛乳はミルクの缶詰である、新鮮さとはほど遠いものである、したがって常温流通化は反対です、こういう強い意見があるわけですね。今関係者の皆さんの話し合いを進めておりますということでありますけれども、ただいま申し上げた声には特に耳を傾けなければならぬと思う。どう対応しますか。
  54. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいまの点についてでございますが、LL牛乳についての栄養面なりあるいは安全面の問題、これらにつきましては厚生省の問題でございますが、消費者の理解も十分得るように努力していくということが大事なことではなかろうかというふうに思っております。
  55. 串原義直

    串原委員 話し合いということの答弁でございましたが、したがって、実はこのことが一番重要な点なんですよ。話し合いをしていくということだけれども、皆さんの理解を得る、あるいは理解を得られるそれ前に軽率なことをしてはいかぬ、私はこう思うわけです。このミルクの缶詰だって、新鮮さがないから簡単に常温流通をしてもらっては困る、この声には熱心に、具体的に何回も話し合う機会をもっともっと持たなければならぬというふうに思っているのですね。だから、これは具体的にはどんなぐあいにして進めますかということを今どの程度お考えですか。
  56. 野明宏至

    ○野明政府委員 それらの点につきましては、もちろん消費者も含めまして、そういった方々の率直な意見をもとに、これからもまた意見を聞く機会も設けることになろうかと思います。そういう場を通じまして、関係者の間の意見が集約されるように努力をしていきたいというふうに思っております。
  57. 串原義直

    串原委員 関係団体関係者の意見の集約というのはどのようにして行いますか。つまり、関係者が一堂に会して話し合いをするような機関を設けるのか、あるいはそういう具体的な機関は設けないけれども関係者が相寄って話し合う機会を何回も設けて話し合いを深めていくのか、その点についてはどんなふうにお考えですか。
  58. 野明宏至

    ○野明政府委員 それらの点につきましては、これまで生産者とそれから処理業者につきましては、私どもも間に入りまして一堂に会して意見交換をいたしたりいたしております。それから販売業者あるいは消費者につきましては、それぞれ私ども、その御意見がどういうところにあるか、あるいはそれについて御理解を求めていくというふうな場をつくってやってまいっております。これからもそういった方々の御意見を聞いてまいりたいと思いますが、最終的には一堂に会して意見の集約をしていくという形になろうかと思いますが、プロセスにおきましてはいろいろな形があろうかと思います。  いずれにいたしましても、LL牛乳が正常な形で混乱を来さないようにやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  59. 串原義直

    串原委員 先ほどもちょっと触れましたけれども、LL牛乳の常温流通化というのは将来外国からの輸入に道を開くことになるという危惧と反対論が強いわけですね。牛肉、オレンジなど外国農産物の輸入の増加、まさかと思っておりましたところの米まで緊急輸入をする、こういう経過を見ますと、牛乳も油断していると輸入されてくるのではないか、こういう反対論が強くなるのは無理もないと私は思っているわけです。私も心配している者の一人なんですよ。  先ほども、LL三原則の中で第二点の輸入問題については今後もきちっと対処してまいりますという答弁があったけれども、LL常温流通化の問題と関連して、このことをいま一度きちっとしなければならない時期にいよいよ来ているように思う。この輸入反対論、輸入を危惧している声に対してどう対処いたしますか、この際明確なお答えを願いたいと思っております。
  60. 野明宏至

    ○野明政府委員 牛乳につきましては、これはもう国内生産を基本といたしておるわけでございますし、また、我が国の今の需給関係というものも、牛乳について輸入を必要としているような状態ではございません。そういう状態の中で、LL牛乳につきましてはIQ制度をとっております。したがって、輸入割り当てがなければ輸入ができないという仕組みになっておるわけでございます。私どもは、これからもこの点につきましてはIQ制度を変えるつもりはないわけでございまして、輸入はしないという原則、これは第二の原則になっておるわけでございますが、これは引き続き今後においても、これからの原則の一つを構成していくというふうに考えておるわけでございます。
  61. 串原義直

    串原委員 それは明確にしていただきたいと思っております。  そこで、今まで議論してまいりましたように、LLミルクにつきましては長い経過があるわけです。先ほど申し上げましたLL三原則の経過を見ましても、大変な歩みであったわけでございます。厚生省の研究結果を受けて、余り急いではいけないと私は思う。拙速は将来必ず問題を残すと思われますだけに、慎重の上にも慎重な対応が望まれるというふうに私は思います。関係団体合意を得ることが何よりも重要でありますし、農林省にとりましても大事な課題であるというふうに思っている。そのために精力的に行動をすべきでありますことはもちろんでありますが、関係団体合意のないままに結論が先に出ていく、行政がひとり歩きをする、こういうことであってはならないと考えております。この点はどうですか。
  62. 野明宏至

    ○野明政府委員 関係者合意か得られるようにしていくということが基本でございます。決して短兵急に事を進めようというふうに考えておるわけではございませんが、先ほど来申し上げておりますように、常温流通、LL牛乳の流通が混乱のないようにしていくというふうな観点から、関係者の意見集約に努力をしていきたいというふうに考えております。
  63. 串原義直

    串原委員 大臣に私最後にこのミルクの問題でちょっと伺っておきますが、先日、八月三日、我が党の畜産対策委員会が厚生大臣にロングライフ牛乳常温流通化について要請をいたしました。その際、渡部大臣は、農林大臣の所管にかかわる大事な問題だから、よく農林大臣と相談をして対処いたしますと言われました。まさか厚生省は農林省の意向を受けないで乳等省令改正などはしないと確信をしておりますけれども、牛乳、酪農、これについての責任者は、あなた、山村大臣なんですよね。新鮮なミルクが消費者に届くこと、酪農を発展させるということを基本に、慎重に厚生大臣と合い議して、悔いを将来に残さない方途を講じるべきである、こういうふうに私は思考する。  大臣の所信を伺っておきます。
  64. 山村新治郎

    山村国務大臣 まだ厚生大臣から何も正式に言ってきておりませんが、少なくとも関係者、これらの皆さんの御意見をよくお聞きしまして、集約して、慎重に対処していきたいというぐあいに考えます。
  65. 串原義直

    串原委員 それでは、重ねて申し上げますけれども、拙速な対応は避けてまいるように篤と要請をしておきたいと思います。  次に移りますけれども、蚕糸の問題について伺います。  まず先に大臣に伺っておきますが、生糸の市場価格が先物で一万三千二百円というふうに、繭糸価格安定制度の下位価格ぎりぎりのところまで落ちまして、この状態がしばらく続いているという現状です。私はまことに遺憾なことだと思っておりますが、この現状を大臣はどのように受けとめていらっしゃいますか。
  66. 山村新治郎

    山村国務大臣 最近の価格ということで、現物では一万三千四百円台、そしてまた先物については今おっしゃられましたように一万三千二、三百円台で推移しておるということは承知しております。  このような生糸価格低迷の基本的な原因でありますが、これは全体として絹の需要が減退を続けておる、また、供給は過剰基調にあり、特に事業団に膨大な在庫が存在しているというようなことに原因があるというぐあいに考えております。  このような状況に対処するために、農林水産省といたしまして、需給の改善を図ることが基本と考えておりますので、需要の維持拡大対策、そしてまた輸入先国との協議によります生糸、絹織物等の輸入の縮減また繭の減産の指導、そして製糸業の設備の廃棄、これらの対策を通じ需要供給両面にわたる需給の均衡に努めてまいっておるところでございますが、今後ともこれらの諸対策実施を通じまして厳しい蚕糸情勢に対処してまいるという基本姿勢でおります。
  67. 串原義直

    串原委員 大臣の基本姿勢を伺ったわけでございますけれども、続いて具体的な点について触れてまいります。  ことしの二月下旬、生産団体と話し合いまして、官民一体という表現がいいかどうかちょっとわかりませんけれども、一口に官民一体となりまして、昭和五十九年産の産繭量を二五%減産するということを合意いたしました。それをまた今進めているわけです。  その折に、養蚕団体生産団体といたしまして要請をし、農林省と確認をいたしました事項は何であったか、この際いま一度検討してみる必要があると考えるわけですね。一つは生糸、絹製品等について輸入の削減に努める、二つ目は繭糸価格安定制度の堅持を図る、三つ目は基準糸価を維持していく、四点目は繭の生産向上、減産推進に必要な助成をしてもらいたい、この四つであったというふうに思いますけれども、その確認事項が具体的に進められていないように思われる。今大臣から基本姿勢の御答弁をいただきましたけれども、生糸、絹製品等の輸入の削減についてどのように取り組んでこられたのか。私の見るところ、強力な削減策がとられていないように見えて仕方がございません。いかがでしょう。
  68. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 本年の繭の生産につきましては、御質問ございましたように生産団体に格別の御協力をいただくということで、前年基準収繭量の二五%に当たる減産の実施を決めておるわけでございます。  その際の確認事項と申しますか、一種政府に対します強い要望、単なる要請以上の一種の約束に近いものというふうに考えてもよろしいわけでございますが、その項目は、お尋ねのございました絹織物、生糸、繭等の輸入の削減、繭糸価格中間安定制度維持強化、基準糸価の維持、それから繭計画生産生産向上に対する助成措置、こういうことでございます。  その第一の点の輸入の問題につきましては、御承知のように全体として生糸、絹織物が非常に供給過剰傾向にあるものですから、我が国は世界最大の消費国でございますので、輸入がというか、輸出が集中してまいっておるような実情でございます。これにつきましては、従来から主要輸出国でございます中国、韓国と二国間協定等の協議を通じまして、私どもとしては最大限の努力を払いまして輸入数量の調整を行っておる次第でございまして、実はこの実情としては、従来二国間で取り決めました数量等がなかなかというか、ほとんど今のところ入っておらないような状況に対しまして、相手国から強い不満の意も表明されているわけでございますが、現在のような需給事情でございますので、こういう、二国間協議等を通じまして、輸入数量につきましては最大限のいわば縮減の努力をこれからも重ねていきたい、かように考えております。
  69. 串原義直

    串原委員 縮減の努力をしてまいりますということでございますが、数字を見ますと減っていないのですよ。かつて、私はこの議場におきまして当時の亀岡大臣と質疑をいたしました。あのときに亀岡さんは基準糸価を七百円下げるということを提案したわけですよ。答弁したわけですよ。下げても需要はふえませんよ、価格を下げるだけではふえませんよということを言った。もう一つは下げることによって輸入の削減を強力にいたしたいと思うというふうに答弁をされた。ところが、なかなかそれが具体的に進んでいないように見える。  急いでちょっと数字に触れてみますと、亀岡大臣が糸の基準価格を七百円下げたとき、五十六年は輸入の絹は織物も全部入れまして生糸に換算して十万八千余俵であった。それが五十七年二万俵ふえて十二万八千俵になった。五十八年はそれがまたふえまして十三万二千余俵になりました。年々減るどころか、ふえてきているという傾向でございます。これは生糸、絹糸、織物、二次製品含めましてこういう傾向です。今年度に入って急速に輸入が削減しているというふうに私は見られない。この辺はいかがでしょう。
  70. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 ただいま先生のお挙げになりました輸入の数字でございますが、あるいは保税で入りました生糸も含めた、保税でこちらに入りまして加工輸出でそのまま出ていくというものも入った数字ではなかろうかと思っております。確かに五十六年度の実績でございますと、私どもの会計年度で持っております数字では、保税生糸を除きまして九万四千俵、これはトータル、生糸、絹糸、絹織物全部を糸に換算したものでございますが、五十七年が十二万二千俵、五十八年十万六千俵ということで、五十六年に対比しますと若干上昇ぎみでございますけれども、これはこの短い年度だけではなかなか――傾向としまして若干の変動はあるわけでございます。  少し前になりまして恐縮でございますが、昭和五十三年度あたりと比較しますと、これは二つ数字がございまして、いわゆる協定ベースと我々が申しております中国、韓国との協定のベースでございますと このとき五十三会計年度は実に六万四千三十俵という大きな数字の協定をしたわけでございますが、最近は五十七年度分が一万八千七百俵という協定数字になっておりまして、これで見ますと七〇%以上削減しまして、五十三年に対して二九%というような協定ベースで実施をしております。さらに、この協定ベースも先ほど申し上げましたように私ども実施を今の状況で抑えておりますので、非常に相手国方の不満が表明されております。  現在の状況でございますが、今何分にもこういう時期でございますので、ことしの五月までは輸入糸の買い入れ、具体的には輸入でございますが、それをいたしたわけですが、六月以降は、当面若干市況も見ながら輸入そのものはとめておるというような状況でございます。
  71. 串原義直

    串原委員 私の申し上げた資料は農林水産省、通産省からの調査ということで資料がありますので、若干のずれがあるかという御答弁でございましたので、この数字についてここで議論をしていて時間をとってはどうかと思いますから、これでやめますが、いずれにせよ、昭和五十六年、糸価を下げたときが少なかったことは事実だけれども、それ以来減るという傾向でないことだけは間違いないわけですね。そのことはよく心しなければならぬというふうに考えているわけです。  そこで、この輸入の内訳でございまするが、ただいま私が申し上げました数字とあなたの答弁された数字と若干の食い違いはあるけれども、しかし、その中で分析してみますと、織物と二次製品というものが生糸換算では非常に多いわけですね。これは私の手元にある数字から申し上げますと、昭和五十八年で織物、生糸換算で五万四千四百八十二俵です。二次製品で二万二千四百九十六俵、こういうことになっております。言うならば、織物と二次製品で合計いたしますと七万七千俵近くになるわけです。したがって、生糸そのものでは若干の配慮がなされているやにこの数字から見る限り見られますけれども、この部門における織物、二次製品に目を転じますと大変な数字だ。この数字がこの数年来、私の手元にあるのは五十四年からでございますが、ほとんど増減がない。むしろ増加傾向である、こういうことなんでございます。この傾向というのは、細かい千俵、五百俵という数字は言いませんけれども、この織物、二次製品で今申し上げましたような大まかな数字、傾向というものは間違いないということですか。どうです。
  72. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 ただいま先生のお挙げになりました絹織物、二次製品の糸換算の輸入数量は、私どもの手持ちでありますと、五十八年の数字につきましては、暦年の数字であるということでそういう数字がございます。この絹織物、二次製品の輸入数量、縦に見ますと確かに先生の御指摘のとおり、著増するというか、どんどんふえるという傾向でございませんけれども、どちらかと言えばこの三、四年来大体横ばい程度の輸入の数字になっているということでございます。
  73. 串原義直

    串原委員 そうですね。したがって、私の手元にある数字で申し上げますと、大変なことであるけれども輸入を削減していく。とりわけ織物、二次製品の輸入量が多いわけでございますから、このところに視点を当てて削減をしていく、この方策は早急にとらなければならぬ。言うならば、日本国内の養蚕農家をつぶしていって、それから伝統産業である日本の絹糸業というものを後退させておいて、外国からの輸入をコントロールできない、こんな政治は私はあってはならないというふうに思っているのです。このことを強力に、通産省あるいは関係省庁と連絡をとりつつ進めるべきである、こう思うのですけれども、どうですか。
  74. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 絹織物、二次製品の輸入関係は、御承知のように通商産業省の所管事項となっておるわけでございますが、確かに国内の絹織物業者は、国内の糸を使いあるいは輸入糸を使って絹織物をつくるわけでございます。そういう絹業界の関係から見ますと、やはり絹織物、製品としての輸入がふえるということは確かに非常に苦しいことだということで、これはかねがねから通産省、所管省においても、先ほど申し上げました二国間協定等の一環として常々輸入のいわば調整について努力をしているわけでございます。私ども糸側を所管する農林水産省としましても、こういう状況でございますから、こういう絹織物の輸入の抑制についてはさらに一層の努力をしてもらうように要請したい、かように考えております。
  75. 串原義直

    串原委員 具体的に言いますと、輸入量は、先ほど申し上げましたように、ここ数年間を見ると糸換算にいたしまして十二万俵前後ですね。したがって、今事業団にある過剰在庫は十二、三万俵であると言われておりますけれども、これは極論ですけれども、十二、三万俵事業団にある在庫が過剰であるとするなら、一年間だけぴしっと輸入がストップをしたということになるなら適正在庫に戻る、単純な計算ですけれども、こうなるわけです。したがって、一年ストップすることは無理だ、そんなことを言ったって無理だということであるなら、それでは輸入量の半分、六万俵を削減していくとするなら二年で適正在庫に戻る、計算はそういうふうになります。四万俵削減するならば三年で適正在庫に戻ることになるわけであります。  要は、関係省庁と話し合いをする中で、農林省が、政府が本気になって国内の養蚕農家を守り、伝統産業である絹を守っていく姿勢に立つかどうかということですよ。改めて輸入削減、削減という表現をこの際は強力に使わせてもらいますが、ストップと言っても無理でしょうから、削減ということに最大限の努力をすべきではないか、その時期に来ているのではないか、手をこまねいているときではない、こう思うのです。具体的にどういうふうにこの対策を進めますか、お答え願います。
  76. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 輸入の削減につきましては、御指摘の十二万俵換算の中の半分以上が絹織物、二次製品のような製品関係でございまして、いずれにしても削減するとしますと、生糸側、絹織物側、両方やらなければならない、かようなことになるわけでございます。  現状は、率直に申し上げますと、主要輸出国、中国及び韓国との交渉の状態から見ますと、大変厳しゅうございまして、先ほどちょっと申し上げましたような生糸につきましては、既に一、二年あるいは三年前の協定で決めましたかなり抑えた数字すら実行に取りかかっていない、むしろ現状ではとめておるというような状態でございまして、これは輸入に関します二国間協議の場で考えますと大変難しい状態でございます。  私どもとしましては、生糸にしましても、絹織物にしましても、お話のございましたような現状の事業団の非常に大きな在庫、それから糸価の低迷、こういう問題を繰り返し繰り返し輸出国側に説明いたしまして、こういうような状況であるからということで生糸、絹織物とも輸入については抑制方を相当要望しているわけでございます。ただ、今申し上げましたように、現状においては従来のテンポ自身が相手国から見ますと約束が守られてないというような状況にありますので、御指摘のありましたような在庫減らしに役立つような程度ほどの輸入抑制というのは、現実の問題としては非常に困難である、私ども努力はさらにするつもりでございますが、相手国との関係では難しい状況にあるわけでございます。
  77. 串原義直

    串原委員 私にも難しいということはよくわかりますよ。しかし、繰り返すようでございますけれども、ことしは厳しい中でも、先ほど申し上げましたように、皆さんと生産団体が話し合って二五%減産した。これは大変なことですよ。ところがそれにもかかわらず糸価の低迷だ。そういうことになっていきますと、日本の養蚕はまさに崩壊の直前なんです。伝統産業である絹もいよいよ日本からなくなろうとしている。  このときに、難しいことではあろうけれども我が国の糸が、絹が崩壊するのです、したがって適正在庫、適正な需給が見られるようになるまであなたの国から我が国へ、向こうから言えば輸出ですね、輸出をしばらく我慢していただけませんか、協力していただけませんか、こういう話をして、中国も韓国も、いや、あなたの国のことは関係ありませんよとは言わないと私は思う。そうじやありませんか。いや、あなたの国の養蚕がどうなろうと、私のところは糸を売らなければ困ります、こんなことではないように思う。真剣に国と国とのお話し合いをいただくならば、理解は得られるはずだと思っているのです。難しいことはわかるけれども、従来の惰性だけでこの話し合いをしようと思っても限界に来ていると思う。一足踏み出さなければだめだと思うのです。どうですか。
  78. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 輸入の全体の動きから申し上げますと、先ほど申し上げましたように、例えば生糸につきましては協定ベースで相当思い切った削減を行っておりますし、実績で生糸面で申しますと、過去、昭和五十年とかあるいは五十三年あたりを見ますと、生糸の形で入りますものが四、五万俵あるいは六万俵、その辺の水準まで行った時代があるわけですが、現在は、生糸として事業団一元輸入で入っておりますものが、昭和五十八年で、これだけで見ますと一万二千俵というラインまで落としております。  つい最近も中国との間で非公式な協議等も行われておるわけでございますが、この中で私ども日本側としましては、こういう事業団在庫の状況それから需給状況国内で減産もしている、こういうことを繰り返し繰り返し訴えておるわけでございまして、もちろん相手国側がそういう日本の苦しい事情を理解しないというわけではございませんけれども、反面、我が国として非常につらいところは過去に約束しました一種の協定ベースでの輸入量が実行されておらない、こういう負い目を負っているわけでございます。そういう面で、日本側、政府側のそういう姿勢に対して、一方では需給事情については十分理解を示しながらも、いわば二国間の信義の関係の問題として、過去に約束したものも入れてない、こういう状況は一体どういうかうなことなんだろうか、こういう意見も向こう側から出ておりまして、この問題はまだ決着をしておりません、この冬にまたさらに改めて中国との協議もする予定になっておりますが、御指摘のありましたような趣旨は私ども繰り返し繰り返し相手方に申し上げておりますが、非常に困難な折衝を重ねておる、こういう状況でございます。     〔上草委員長代理退席、委員長着席〕
  79. 串原義直

    串原委員 大臣に伺いますけれども、ただいまも御答弁がありましたように、厳しい情勢、難しい情勢であることはよく理解できる。したがって、農林大臣として通産省、時によれば外務省とも関係が出てくるかもしれません。相協議をいたしまして、日本の伝統産業である糸を守る、絹を守る、輸入をどうすべきか、このことを大臣として、あなたの方から通産大臣等々と合い議をして、この際はこういう方向で、我慢してもらうときは相手国にも我慢してもらうようにしようではないか、こういう話をきちっとする段階に来ているように思う。今までの流れだけではどうにもならないところまで来ていると思う。思い切って話し合いをして、対処してもらいたい、すべきだ、こう思うのです。大臣の決意はどうでしょうか。
  80. 山村新治郎

    山村国務大臣 おっしゃられること、よくわかりますし、私といたしましても、通産大臣、外務大臣にこれらの実情を訴えて、できるだけのことはしてみたいというぐあいに考えます。
  81. 串原義直

    串原委員 ちょっと時間が過ぎましたけれども、もう一点だけ御勘弁願います。  生産団体等から、実勢糸価が基準糸価以上の水準を確保するようになるまで、当分の間、事業団在庫生糸の放出をストップして価格を維持すべきだという意見が強いわけです。このことについてはどんなぐあいに対処いたしますか。
  82. 関谷俊作

    関谷(俊)政府委員 現在の事業団の在庫糸の放出の問題について、生産団体から今お話のございましたような要請がございますことは私ども承知しておりますが、この制度はもともとの趣旨日本国内で唯一の生糸の需要者になっております国内絹業、これを振興し、また維持してその活性化を図りませんと、とにかく国内において糸を使う需要者である絹業者がいわば企業として成り立っていかない、かようなことになるものですから、私ども実需者売り渡し等と言っておりますが、そういう面で最低限度の在庫糸の売り渡しによって絹業の活性化を図るということで行っているわけでございまして、現在のレベル、そういう全体の需給事情をよく考えながらやっているわけでございますが、この売り渡しについては絹業活性化の観点から最低限のものはやっていかなければいけない、かように考えている次第でございます。
  83. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたから、終わります。
  84. 阿部文男

    ○阿部委員長 安井吉典君。
  85. 安井吉典

    ○安井委員 きょうはこの国会最後だそうですから、いろいろな問題があるのをお聞きしたいわけでありますが、初めに、この間の米価決定でいろいろな問題が米価だけじゃなしに決定を見たわけであります。その中で一番問題になりそうなのは、他用途利用米を主食としての買い上げをするということに関連しての動きではなかろうかと私は思います。  その点についてちょっと伺いたいわけでありますが、この間のあの決定段階のいろいろなやりくりで、今米穀年度の終わりには需給の見通しが大分違ってきたのではないかと思います。つまり、他用途利用米を主食に回すということやら、あるいはまたそのかわり加工用の米は農業団体が責任を持って出すとか、そういうようなことで、従来いろいろ言われていたのと、主食についても加工用の米についても、需給と言ってもむしろ供給の方かもしれませんが、供給側の見通しが変わってきているのではないかと思いますが、それぞれについて、主食についてはこうなる見通しになっているとか加工用についてはこうなる見通したとか、そのことをひとつお話しいただきたい。
  86. 石川弘

    ○石川政府委員 最初に主食について申し上げますが、主食につきましては、当年産米の早食いの規模が約三十万トン前後のものが進むと思っておりましたので、平年作でございますと実は積み増し四十五万トンくらいがあるわけでございますが、それに対して三十万トンくらい早食いで使うということから積み増しをする規模が小さくなるということを考えていたわけでございますが、これは御承知のように、今先生が他用途で、約束の上では二十七万トンでございますが、そういうものを買えばその分だけプラスになるであろうという趣旨での御発言かと思いますが、それに見合いますものが主食の世界から農家保有米等で出てくるということになりますと、全体の需給としてはプラス、マイナスがない姿でございまして、主食の世界で考えます限りは、むしろことしの端境期を越えてから来年の端境期までの間のことで申しますと、ことしとれます米のボリュームがどうかということが決定的要因ではなかろうかと思います。  幸いにして最近の情報では一〇〇を割ることはないようでございますので、そうすれば昨年に比べまして四十五万トン程度の増が期待できるわけでございますし、さらに作がよければそれ以上のものが期待できるのではないかと思っております。  それから、加工米の世界で申し上げますと、加工原料につきましては御承知のように十五万トンの韓国からの返済米を充てると考えておりますが、それ以外にも当時は二十七万トンを他用途米で供給をして、来年度の端境期を越えてある程度持ち得るようにしておこうということでございましたが、これにつきましては、主食買い上げをいたします結果、他用途米としての供給は期待がかなり少なくなる。これは全部来ないかどうかということではございませんで、他用途米からの主食買い上げといいますのは、生産者がそういう御希望があればそうするということでございますから、依然として他用途米としてある程度出てくる可能性はあるわけでございますが、それと、それにかわるものとして農協等が自助努力でお集めいただくという前提になっているわけでございますから、この世界につきましても、現段階で申します限りはプラス、マイナスがないという形でございます。
  87. 安井吉典

    ○安井委員 他用途利用米は、今まで契約がきちっとできているのはどれくらいなんですか。あるいは今後の見通しは。
  88. 石川弘

    ○石川政府委員 これは農協等から聞き取っておるわけでございますが、単協段階で他用途米という前提で生産者と結びつきがついておると言われておりますものは二十二万トン前後であろうというのが、農協等から聞きました総量でございます。
  89. 安井吉典

    ○安井委員 他用途利用米は、主食向けで買ってくれるというと一万八千六百六十八円ということになるわけですね。しかし、他用途米で買ってもらうとその半分になるわけです。したがって、さっきの長官のお話ですと、他用途米で買ってほしいという人も残るだろう、こういうお話なんですが、安い米であえて買ってほしいという人は出てくるだろうか。私は、主食に買うという道が開ければほとんどみんなそっちに行ってしまうのではないかと思う。他用途米というもので残るのはあり得ないような気がするのですが、どうですか。
  90. 石川弘

    ○石川政府委員 これはあくまでも生産者の御意思ということでございますけれども、例えば作が大変よくなってまいりますと、そういう他用途米として買ってもらうということのほかに、片側で、主食として農家が保有されるような米を出していただくということになっているわけでございますから、そういう選択の中で、例えば他用途米としてある程度のものは出しておきたいというお考えの方が全く皆無とは私ども思っておりません。私どもは、今そのための諸条件の整備と申しますか、話し合いをいたしておりますけれども、あくまで従来の形式から申しますと、他用途米として生産し、それを実需者につなぐというところで進めてきたわけでございますから、そういう線上のこともやりながら、なおかつ主食としてある程度のものも買ってもらうということもありましょうし、あるいは専ら主食として買ってもらうということも考えますけれども、その背後には、やはりそれにかわるべき自助努力として出す米ということがあるわけでございますので、その辺の選択はこれから農業団体とよく詰めてまいりますが、私どもは、何か私どもの意思で全部を買い取るとか、あるいは自主流通に回すということは申せないような性質のものだと思っております。
  91. 安井吉典

    ○安井委員 農業団体と自助努力で加工用米を出すという約束事ができたということのようでありますが、加工用ということにしても、今の御答弁からすれば、本来他用途利用米で出そうと思っていたものは主食の方に向けてしまって、新たに加工用で自分が出そうというものをこれは他用途米ですという格好で出すことができる、そういうふうに受けとめられるのですが、どうですか。
  92. 石川弘

    ○石川政府委員 他用途米として出すということでございますと、既に原契約で他用途米で出すということを約束をいただいているものを出していただくことになろうかと思います。私が申しましたのは、主食にも買ってもらう、他用途米は他用途米でまたやっていただくということではございませんで、原契約で他用途米として供給するという契約をなさっている範囲内において他用途米として供給していただくことは結構でございますが、それを全部主食に転用してまた別枠で他用途米とおっしゃることは、これは不可能だと思います。
  93. 安井吉典

    ○安井委員 制度論として他用途米というのは残っているとおっしゃるから、しかしお米には印がついていないわけですから、それは農家の段階でやりくりができるんじゃないかと思うのですよ。可能性があるということを言われるものですから、私はそういうふうな意味かなとも思ったわけです。  そして、加工用米の確保は、農業団体との約束の分はどのくらいできるとお考えですか。
  94. 石川弘

    ○石川政府委員 私どもは、二十七万トン自身は既に原契約の段階でもうないと思っておりますけれども、先ほど申しました単協段階で契約なさっているものと言われる二十二万トン前後のもの、こういうものにつきましては、もしその中から主食用に転用される分ができますれば、その主食用に転用される分に見合うものは自助努力によってお出しいただくと考えているわけでございます。そういう意味で、あの中でも不足する部分は自助努力で出そうということを農協からもお話を承っておるわけでございます。
  95. 安井吉典

    ○安井委員 そうなりますと、新たに加工用米として出してもらいたいのは二十二万トンだ、そういうことですか。
  96. 石川弘

    ○石川政府委員 これはあくまで生産者との今からのお話し合いになるわけでございますが、もし、他用途米を全量と申しますか、今契約なさっている他用途米のすべてについて主食買い上げを御希望になるということでございますと、それに見合う数量としまして自助努力によってお出しいただく米の数量が出てくるのではなかろうかと思っております。
  97. 安井吉典

    ○安井委員 そして、それは必ず出るというお見通しをお持ちなんですね。この新しい加工用の米というのは他用途米の奨励金がつかないわけでしょう。そうすると、一俵七千円かそこらですね。そういうことで大丈夫、二十二万トンぐらいは確保できる、そういうお見通しを持っていますか。
  98. 石川弘

    ○石川政府委員 これは何度も生産団体の方とのお話し合いの中で出たわけでございますが、生産団体のお気持ちとしては、そういう自助努力をするという大前提で主食買い上げということを要請なさっているわけでございます。私ども今の段階でできるかできないか、努力をなさっている大前提のもとで、できないのではないかと予測をすることも大変問題があろうかと思います。そういうことも含めて、今から詰めていくことでございます。そういう機関決定をなさったわけでございますから、私どもはそういう努力というものを信頼して今やっていっておるわけでございます。
  99. 安井吉典

    ○安井委員 加工用米といえども、これは食糧管理法の枠の中だし、農林水産大臣の管理下にある米だと思いますよ。ですから、加工用米として欲しいというものをきちっと耳をそろえて出す、これは管理責任者である農林水産大臣の責任だと思いますね。そのとおりですか。
  100. 石川弘

    ○石川政府委員 主食のみならず、いわば原料用米についても、食糧管理制度のもとで私どもは供給責任があるわけでございます。したがいまして、そういうことを私ども何度もお話し合いの上で、現在そういうことを前提にした生産団体との話し合いをやっているわけでございます。私どもは、当然主食のみならず加工原料用についても供給責任があると考えております。
  101. 安井吉典

    ○安井委員 国会の決議があります。本会議でも決議したように、輸入はしないという確認があるわけであります。そういう中で、農業団体から約束した加工用の米が出ない場合は輸入もあり得るよ、こうはっきりおっしゃらないけれども、それに似たような発言があるということは極めて不謹慎だと私は思いますが、どうですか。
  102. 石川弘

    ○石川政府委員 私どもは供給責任があると申し上げた上で、したがいまして、私ども絶対量として主食が足らないというわけではございませんで、どちらかといいますと、加工原材料用について二十七万トンがなければ絶対量が不足するということを重々申し上げた上でのお話でございますので、生産団体もその辺の事情は十分御了知かと思っております。  私どもこういう買い上げの措置をやりましたのは、単なる需給の問題だけではございませんで、先生もよく御承知のようにああいう機関決定をいたしておりまして、もし他用途米という形での流通を強制をいたしますと、そういう米の集荷を含めまして農協の米集荷が円滑にいかないという、団体としても大変苦悩に満ちた話し合いの中でやったことでございますので、私どもは今申し上げました供給責任は確かにございますし、そういう責任を考えました上でああいう判断をし、しかもまだ詰め切れないものを今詰めているような状態でございます。
  103. 安井吉典

    ○安井委員 国会の決議というのがきちっとある、その枠の中での話なんですよね。したがって、もしも加工用の米が約束どおり集まらなかったらこれは農業団体の責任だ、そういうようなことで逃げるわけにはいかぬのですよ。これはあくまで農林水産大臣の責任なんですよ。しかも一方で、これは国会の決議もあるわけですから、もし万一うまくいかなかった場合は、いいかげんな約束を農業団体としたというようなそしりを免れないと思います。たとえうまくいっても―いったらもちろんいいことでありますけれども、いかない場合には農林水産大臣の責任というのは免れないと思いますよ。大臣、その点はどうですか。
  104. 山村新治郎

    山村国務大臣 今まで長官からお話ししましたとおり、今度の他用途利用米を主食として買い上げるという経過につきましては、農業団体の皆さんも、原材料用米、これは農林水産大臣の責任において供給をしなければならぬということは承知して、今度の自助努力によりましてということで話ができたわけでございますので、私といたしましては、特に今の日本の農政というものを考えました場合に、生産者の皆さんの御協力なくしてはこの農政の展開はできないわけでございますので、信頼申し上げて、何とか達成したいというぐあいに考えております。
  105. 安井吉典

    ○安井委員 あくまで食管の責任は大臣にあるわけですから、大臣、責任を持つわけですね。
  106. 山村新治郎

    山村国務大臣 約束は守っていただけるものとして、信頼しております。
  107. 安井吉典

    ○安井委員 信頼の問題じゃないのですよ。あなたの責任なんだよ。裏切られたらあいつが悪いのだというわけにはいかないのですよ。あくまで大臣自身が責任を持って処理する問題ですよ。それは間違いないわけでしょう。
  108. 石川弘

    ○石川政府委員 これは、私何日もかけまして、生産団体とよく話し合います際に、先生から御指摘のように我々とすれば加工原料について供給する責任があるのだ、それを果たすためにいろいろな努力もしなければいかぬということも申し上げました上で、他用途を買い上げる方が農業団体として政府のそういう施策に協力しやすいのだ、これをもし他用途をそのまま買い上げないという姿でやりました場合には、他用途を出すこと自身も大変困難になる。御承知のように、団体はそのような機関決定をして既に下部に流していたわけでございますから、そういう中でのいわばぎりぎりの選択でやったことでございます。私どももその間いろいろと農業団体とも実情も話し合い、そういう事柄の難しさというようなことも話しておりますし、私どものそういう気持ちは重々お伝えし、また向こうもあれだけの組織の中での機関決定をした上でのお話でございましたので、私どもは買い上げるという措置をやったわけでございます。したがいまして、先生御指摘のように私どもの供給責任はもちろんあるわけでございますが、その大前提として私どもは買い上げるについてはそれにかわるものを供給していただくという約束を信頼するほかはございませんので、そういう前提でこの措置がとられたとお考えいただきたいと思います。
  109. 安井吉典

    ○安井委員 ですから、信頼でいいです、結構です。だから、そのとおりいくと思いますよ。けれども、万一いかなかった場合は輸入でもしょうがないさ、そういうようないいかげんな態度では困るということを私は言っているわけですよ。そういう意味でこの問題の処理の責任は農林水産大臣だ、そのことだけははっきり確認してほしいわけですね。――いや、長官じゃなしに大臣
  110. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生も今おっしゃいましたように、いくと思います。私も思っております。
  111. 安井吉典

    ○安井委員 いかなかったらどうするのですか。いかなくても責任をとらなければいかぬでしょう。その辺をはっきりしてください。
  112. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生もいくと思っておられますように、私もうまくいくと思っております。
  113. 安井吉典

    ○安井委員 うまくいくと思っているだけで、問題がなければいいですけれども。じや、もう輸入なんという事態はありませんね。
  114. 山村新治郎

    山村国務大臣 私は、うまくいけば輸入がないわけでございまして、うまくいくと思っております。
  115. 安井吉典

    ○安井委員 じゃ、輸入というようなことには至らないという自信を持ってあなたは言われているわけだから、そうでしょう、いかなる事態があっても食管制度そのものの運用は農林水産大臣の責任なんですから、そのことは明らかなんでしょう。
  116. 山村新治郎

    山村国務大臣 食管制度を守っていくのは私の責任でございますし、うまくいくと思っております。
  117. 安井吉典

    ○安井委員 うまくいくのはいいですけれども、ただ責任逃れのような印象を我々は受けるから、それで心配するわけですようまくいけばいいですよ。そのとおりでいいですよ。けれども、責任をとるという言葉を言わないものだから、何か最後の責任は、この前も例があるわけですから、また逃れてすいすいといってしまうのじゃないか、そういうふうなとられ方をするものですから、誤解がないようにと私は繰り返しているわけです。
  118. 山村新治郎

    山村国務大臣 うまくいくと思っておりますし、最終の責任はもちろん私にございます。
  119. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ。これは自民党の財政部会かな。これは農業新聞に出ていたのですが、清酒の原料の問題で、他用途米を清酒原料にしていく、特に輸出用清酒の原料は外米によるというような意味合いのものがこの中に書かれていて、これが農林部会や各部会の方に配られている、こう書かれていますが、これをそのまま認めるということになれば、食管制度そのものの破壊につながるわけですね。まさかそれをそのままお認めになるというような農林水産省の考えではないと思いますが、ちょっと伺っておきます。
  120. 石川弘

    ○石川政府委員 今おっしゃいましたことは、酒造組合中央会か何かの要望書にそういうことがあったかと思いますが、この前そういう要請がありました際、私どもは、清酒の世界は今まで主食の世界と同じ扱いで来た、しかも実需という関係からも自主流通に最も適するものとして自主流通に主力を置いてやってまいりまして、それに若干の、例えばアルコール添加を減らすために少しでもコストを安くというような部分について主食の世界で、要するに政府米の世界で一定のものを出しているというのが伝統でございます。そういう趣旨で今後もやらせていただきたい、またそれが私どもの清酒に対する態度だということをはっきり申し上げてございます。
  121. 安井吉典

    ○安井委員 清酒はできるだけお米でつくってほしい。我々も議員連盟をつくってやっているわけですよ。だから、その基本的な考え方が貫かれればその米というのはどこの米でもいいなんということを言っているわけじゃないのです。国内の米の消費をふやそうというのが目的で言っているわけです。酒造業界も大変なのはわかりますよ。大変だということを私も聞いておりますけれども食管制度を崩すようなそういうあり方は絶対ないように、これはきちっと御処理願いたいと思います。  そこで、水産の問題を若干伺ってまいりますが、特に我が国の水産業をめぐる国際環境が大変厳しさを増してきているという点についてであります。日ソ漁業の関係も、日米との関係も、それから捕鯨の問題も、国際漁業にかかわる問題はどれもこれも隘路に突き当たっている、これが現状じゃないかと思います。短い時間ですから多くは触れられませんが、そのうちまず捕鯨の問題です。  IWCの運営の問題について、どうも基本的におかしいじゃないかと私ども思わざるを得ないような状況が続いています。その会議のあり方についても、捕鯨国の二倍も反捕鯨国が参加して、その意図で方向づけがなされている。本来は鯨の類の資源管理そして有効利用、そういうものが目的で設けられたはずのIWCでありますけれども、現在では過激な反捕鯨勢力が数で抑え込んでしまって捕鯨そのものを抹殺してしまおう、そういうようないささか常軌を逸した動きではないかとさえ思わざるを得ないわけであります。FAOでもその問題について批判的な発言かあるのも御承知のとおりであります。そういうような中で、昨年はいわゆるモラトリアムという全面禁止が決議され、またブエノスアイレスの会議で大幅な枠の削減というような格好で去年からことしにかけての動きがあるわけであります。  こういうようなあり方について、政府として根本的な対応が今迫られているのではなかろうかと思うわけであります。一部には、こんなIWCに踏みとどまっていることがよいのかどうか、むしろ脱退した方がいいのじゃないかというような強硬な意見さえあるようであります。しかし、問題はいかにして捕鯨を継続していくかということにあるわけですから、そういうようなことで政府の中でも検討会をつくっていろいろ論議がなされたりして、最近それの報告がなされているということも私も聞いているわけであります。こういう基本問題について、きょうは農水及び外務の両方からおいでいただいているわけでありますが、考えをまず伺っておきたいと思います。
  122. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まずIWCの最近の運営についてでございますが、先生御指摘のように現在IWC加盟国三十九カ国のうち三十カ国が非捕鯨国であるという状態になっておりまして、非捕鯨国がまず数の上では圧倒的な多数を占めております。こういうふうに加盟国が大変な数に膨れ上がったわけでございますが、この加盟国の中には例えば期限までに分担金を支払わないとか、加盟国に要求されております科学調査状況報告を行わないとか、加盟国としての義務を履行することを怠っている国が多数ございます。そういう意味でも、現在のIWCのあり方というのは相当異常な状態になっておるというふうに私どもも認識をしております。  それから、五十七年の第三十四回のIWCの年次会議において決定されました商業捕鯨モラトリアムでございますが、これにつきましても鯨種別、系群別に異なる資源状態のよしあしを無視して、科学委員会の報告もなしに行われたものでありまして、科学的な根拠を欠き、鯨の資源の適切な保存と有効利用とを目的とする条約の精神にも反しておるというふうに認識をしております。  したがいまして、私どもとしては、このようなIWCの不正常な状態をどう正常化するかという問題につきまして、米国を初めとする主要関心国と十分協議をしながらIWCの機能の正常化に努めていきたいと思っておるわけであります。  それはそれといたしまして、既にIWCは商業捕鯨モラトリアムを決定いたしておるわけでありますが、私どもといたしましては、先般学識経験者を網羅した捕鯨問題につきましての検討会からも貴重な報告をちょうだいいたしたところでございますので、そういう考え方参考にさせていただいて、関係国の理解を求めるよう粘り強い努力を継続しながら、我が国の捕鯨の存続に努めていきたいと考えておる次第でございます。
  123. 秋山進

    ○秋山説明員 お答え申し上げます。  ただいま水産庁長官の方からお話がございましたとおりでございますが、先生御指摘のIWCの運営の状況に関しまして御説明申し上げたいと思います。  先生御指摘のとおりでございますが、最近の国際捕鯨委員会は、一昨年の商業捕鯨モラトリアムの決定、それから本年の捕獲枠の大幅削減等、反捕鯨国の圧力のもとで、我が国等の捕鯨国の利益を無視した数の力によりまして非科学的かつ不合理な決定を行っております。それは大変遺憾なことであると考えております。  また、鯨の資源の保存と合理的利用を目的とする国際機関であるIWC、国際機関でなければならないIWCの機能につきましても、このような現状においては我が方としては疑問を持たざるを得ないと考えております。  政府といたしましては、国際間の問題は一定のルールに基づき秩序ある解決が図られるべきであるという基本的な立場に立っておりまして、今後ともIWCの正常化についてこれまで以上に粘り強い外交を展開していかなければならないと考えております。
  124. 安井吉典

    ○安井委員 そこで、問題はたくさんありますけれども、二、三点に絞って伺ってまいりたいと思います。  ことしの六月の第三十六同年次大会で大幅な削減を行ってきたわけです。南氷洋のミンクの方は三七%減、沿岸ニタリクジラの方は三三%減、マッコウは完全に抹消、こういうような中身であります。科学委員会でも、資源の科学的調査の資料が正しく評価されていないということもおかしいわけであります。  そこで、この問題について条約上の権利としての異議の申し立てをなさらないのか、その点、伺います。
  125. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  ことしのブエノスアイレスの会議において行われました捕獲枠の決定につきましては、私ども先生が今御指摘なさったのと同じような認識を持っております。我が国の捕鯨業の経営を大きく圧迫するものであると認識をいたしております。  ただ、私どもといたしましては、同時にアメリカ国内法で、ある国がIWCの規制措置の効果を減殺するような捕獲を行い、商務長官がその旨を証明した場合には、米国二百海里内の漁獲割り当てを五〇%、翌年にはゼロにする、そういうことを定めておるアメリカ国内法がございます。そういう国内法がございますので、水産庁といたしましては米国等関係国と協議を行い、その中で異議申し立ての可能性も含めて今後の対応策を慎重に検討してまいりたいと思っておるところでございます。
  126. 安井吉典

    ○安井委員 今の、ことしの大幅削減といい、昨年の商業捕鯨モラトリアムといい、我が国の捕鯨の重要性の位置づけについては全く考慮がないわけですね。そういう意味合いから、昨年の異議の申し立ても当然だし、ことしもその異議の申し立てについて検討中だ、こういうことでありますが、今もお話がありましたように、アメリカの反発の問題ですね、これはどうも理解できないわけであります。北洋漁業に対する割り当ての削減で捕鯨の問題に圧力をかけるというのは、まさに筋違いだと私ども言わざるを得ないわけであります。それが現実には国内法で今お話しのような規制というか、むしろ圧力措置が行われる、そういう仕組みになっているのは大変残念ではないかと思います。  このアメリカのあり方に対して、中曽根首相はレーガン大統領とロン・ヤスの間柄だそうですから、友好関係があるのならあるらしく、漁業の問題でももう少しおつき合いを願っておいていただいたらどうなのか、私はそう思うわけであります。もっとアメリカの良識ある解決を求める、そういう手だてが必要なのではないかと思いますが、その点はどうですか。
  127. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の、アメリカ国内法が存在する、そういう事態我が国の条約上の権利行使としての異議申し立て、この関連をどうするかという問題につきまして、日米間で従来からやりとりがあったわけであります。すなわち、五十七年の十一月に我が国が異議申し立てを行ったのに対し、アメリカ側からそういうのは取り下げろという話がございまして、日米双方が受諾可能な何らかの解決策を探るべく、数次にわたって日米捕鯨協議を重ねてきたところであります。  この間、我が国としては、捕鯨と北洋漁業とは全く別個の事柄であり、これを結びつけるのはおかしいということで先方の理解を求めてきたわけでございますが、現在に至るまで双方の基本的な合意は得られておりません。したがって、今後とも、捕鯨問題と対日漁獲割り当て問題とを切り離すべき旨を主張するとともに、捕獲枠決定に関する対処を含めて米国と十分協議を行って、我が国の捕鯨が存続し得るよう、かつ、それが北洋漁業に悪影響を及ぼさないよう協議を続けていきたいというふうに思っております。
  128. 安井吉典

    ○安井委員 ほかの問題もありますものですから、捕鯨の問題ばかりというわけにはいきませんが、いわゆる検討会から今度出されているレポートでは、南氷洋では調査捕鯨ということでいく、沿岸捕鯨の方は原住民捕鯨、あの仕組みと同じような扱いでやってもらいたい、こういうような方向をお出しになっているようであります。  南氷洋での調査捕鯨というのはどういう意味合いのものかということを、もっと御説明いただきたいわけであります。科学的な調査活動、これは現在でも、一九七八年からIWCの国際資源調査に毎年二隻の調査船を提供して、運営費の全額を日本が負担をするというようなことで、年平均百二十万ドルぐらいの負担になっているのではないかと思いますが、そういうような調査もずっとやってきているはずであります。北太平洋にも調査船が出ている。そこで、南氷洋での調査捕鯨というのはどういうことなのか、今日までの商業捕鯨とはどう違うのか、その位置づけをもう少し明確にしていただきたい。
  129. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  従来も、先生御指摘のように目視調査、標識調査、生物調査等が行われてきたわけでございますが、今回ちょうだいいたしました報告によれば、調査捕鯨では、モラトリアム発効後も資源調査実施して鯨の資源状況等を解明する必要があるということを指摘しておられるわけであります。  従来の捕鯨とどこが違うかというお尋ねでございますが、私ども承知しておりますところでは、調査捕鯨というのは利益追求を主たる目的とせず資源調査を主目的にして行われるもの、そういう位置づけであります。IWCにおきましては遅くとも一九九〇年までに鯨資源の包括的な評価を行うことになっておりまして、そのためには検討会が報告の中で提唱しておられる調査捕鯨のような継続的な調査活動が不可欠であるというふうに考えておりますので、この点について米国を初めとする関係国の理解を求めるべく努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  130. 安井吉典

    ○安井委員 そういたしますと、いわゆる商業捕鯨というのは断念するということですか。
  131. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私どもはこの報告をちょうだいして今後の捕鯨についての対処方針を現在検討させていただいておる段階でございますから、何を断念するとかしないとかという立場にまで熟しておるわけではございませんが、私どもとしてはモラトリアム発効後捕鯨を継続するために、この検討会の報告で言及されております御提案が貴重な御示唆であるというふうに思っております。
  132. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、この検討会のレポートの中には商業捕鯨をどうするのかということについて何も書いてないわけですね。母船式捕鯨でも、もう随分減りましたけれども、今は母船一隻、捕鯨船七隻ですか、直接従事人員が七百三十人もいるわけですね。関連的な人員からいうと大変な数になるわけです。それらを一体どうするのか、調査の間はそれはだれが面倒を見るのか、そういう問題もあるわけです。その点について何ら触れてないのは私はちょっとおかしいと思うのです。どうなんですか。
  133. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 商業捕鯨のモラトリアムにつきましては、先生御高承のとおり日本政府は既に異議申し立てをしておるわけであります。だから、日本政府としては商業捕鯨のモラトリアムという決定に拘束される立場にはないわけでございます。ただ問題は、そのときに商業捕鯨を継続するということが、先ほど言及いたしましたアメリカ国内法との関係においてどうなるかということが問題であるわけでありますから、その問題についてまずアメリカ側と協議をするということが先決であろうといふうに考えておるわけであります。
  134. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃ商業捕鯨の問題については、パックウッド・マグナソン修正法の問題とか、そういうアメリカ国内法の問題があって、それとの折衝の中で結論を出すので、今は結論を出す段階ではない、そういうふうなお考えだと聞いておきます。ですから、今度の調査活動はそれとは全く無関係に別な角度から進めていく、こういうことですね。このようなあり方で関係各国との了解がうまく取りつけられるとお考えになっているのかどうか。  それから続いて沿岸捕鯨の問題でありますが、沿岸捕鯨についてもアラスカのエスキモーやソ連のエスキモーの原住民捕鯨と同じようなものとして認めてほしいということのようでありますし、私はこれぐらいは当然だと思います。しかし、こういうことでほかの国の了解をうまく取りつけられるというふうにお考えなのかどうか。その初めの方と後の方とをお答えください。
  135. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私どもにとりまして一番基本的なポイントは、先ほど申しましたアメリカ国内法との関係我が国の捕鯨活動が一体アメリカ側によっていかなるものとして解釈され、アメリカ国内法の適用上どういう問題を生ずるかということであります。私は、その点につきましては、今回の検討会の報告に盛り込まれておりますアイデアは、その問題について双方に受諾可能な解決を模索していく上で重要な御示唆を含んでおるものであるというふうに思っておるわけであります。
  136. 安井吉典

    ○安井委員 この報告に基づいて、水産庁としてはいつごろ政府考え方についての結論を出すおつもりですか。
  137. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 十三日から日米間で本件についての協議が予定されておりますので、それが済みました段階であれば、決心をしていく段取りについてもう少し心組みが固まったお答えができるようになるだろうと期待しております。
  138. 安井吉典

    ○安井委員 大臣、とにかく日本の捕鯨は極めて伝統的な産業であったわけでありますけれども、これがまさに抹殺されるかどうかというような重大な段階に今来ているわけであります。外務省の方の交渉も大事でありますけれども、やはり何といったって農林水産省としての決意に満ちた努力というものが必要ではないかと思います。その点ひとつ伺います。
  139. 山村新治郎

    山村国務大臣 少なくとも今まで農林水産省としてできるだけのことはしてきたと思っておりますが、今後とも我が国の捕鯨が何らかの形で存続し得るよう、最善の努力を尽くしてまいりたいと思います。
  140. 安井吉典

    ○安井委員 次に、日ソサケ・マス交渉がことし五月五日に妥結しておりますが、今度も漁獲割り当て量が六年ぶりの削減で四万トンということで、厳しさが一段と増したというようなことでありますし、大量の違反操業の問題だとか、いろいろなことがあって、ソ連側がますます強硬な態度に出ているというような問題もあります。  しかし、それよりももっとショッキングな話は、六月二十六日にソ連政府が今の漁業協力協定をことし限りで失効させるという口上書を伝達してきたという問題ではなかろうかと思います。  この北洋における日本の水産は、これはまさに伝統的な、歴史的な努力の中で積み重ねられてきたわけでありますし、また最近はソ連側も協力費を要求し、漁業資材だとか設備費用、そういうようなもので十七億六千万円というような額の支出、こういったようなことで一年ごとの延長、こうなってきたわけですね。協力費の方もどんどん毎年高くなってくる、こういうようなことではないかと思います。そういう状況にもかかわらず、原則的に禁止するということ、しかも今度の協定そのものを破棄してしまうのだというようなことは、これはなかなか理解できない問題であります。この点について政府としての対応はどうですか。
  141. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 先生御指摘のように、六月二十六日、通告がございました。したがいまして、現協定は本年末をもってその効力を失うこととなります。したがいまして、私どもは新協定を締結すべく、現在事務レベルでの協議を行っているところであります。  日ソ漁業協力協定は日本漁船による北洋サケ・マス漁業の根拠となるべきものでありますが、前二回での協議では、ソ連側は、公海でのサケ・マス漁業の禁止の原則の導入等を主張しております。我が国としては、今後の協議を通じ、伝統ある北洋サケ・マス漁業の維持継続に支障を与えることのないよう、できる限り努力を払ってまいりたいと考えております。
  142. 安井吉典

    ○安井委員 新しい協力協定を有利に結ぼうというような一種の駆け引き的な提案ではないかとも思われるわけでありますが、その辺はどうお考えなのか。現在も話し合いは継続中の段階なんですけれども、全く新規まき直しの契約ということで向こうはいこう、そういう意図のあらわれではないかと思うんですね。その辺はどうとらえておりますか。
  143. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  実はこの六月二十六日の通告の前に、既に、新協定と申しますか、協定の改定と申しますか、事務レベルの協議が始まっておったわけであります。したがいまして、日本側としても現協定のままでいこうというふうに思い詰めておるわけではないので、その相談がまとまれば直す用意はもちろんあったわけであります。そういう意味では、六月二十六日のソ連側の通告については、ある種の感想がないわけではございませんが、逆にソ連側の立場から見ますと、漫然と協議を続けておったのでは、協議が調わない限り現協定が生きておるわけでありますから、来年のサケ・マス議定書の協定もこれまた現協定のもとで行われるということになるわけでありまして、そういう事態を回避したいというふうにソ連側が思えば、こういう通告をしてくるという道を選択せざるを得ないということであったのだろうというふうに思っております。
  144. 安井吉典

    ○安井委員 向こうの意図もいろいろあると思いますし、北方領土の問題も絡んでいるのじゃないかという見方もあるようです。いずれにいたしましても、この北洋サケ・マスは従業者が五万人、全部で関連している人たちが二十万人とさえ言われるような大変大事な産業であり、既得権でもあるわけです。そういうものを失わないようにというような決意でこれからの話し合いに臨んでいただきたいわけです。  そういう中で、今度山村農林水産大臣は、来月中旬ごろですか、訪ソをされるという話を聞いているわけでありますが、カメンツェフ・ソ連漁業相などとのお話し合いがあるのではないかと思いますが、これは日ソ間の漁業問題の懸案がたくさんあります。ありますが、一つ今新しく大きく浮かんできたのはこの問題です。どういう準備と決意で訪ソされるおつもりなのか、それを伺います。
  145. 山村新治郎

    山村国務大臣 御存じのとおりに、六月二十六日にソ連側から日ソ漁業協力協定の終了通告ということが申し入れられたわけでございますが、現在事務局において協議を行っているところでございます。九月の中旬以降、一応カメンツェフ漁業大臣から御招待が来ております。私も、もしこの問題が行くまでに決着が見られないというような場合には、やはりこれについて最大限の努力を払ってきたいと思っております。特にソビエト側の、公海でのサケ・マス漁業の禁止の原則導入、これらを主張しておるようでございまして、なかなか難しい問題ではございますが、私としても今度訪ソした折にもこれらの問題について忌憚のない意見も交わすし、何とかまた今後とも我が国のサケ・マス漁業の維持継続が行われるように、最大限の努力をしていきたいというぐあいに思います。
  146. 安井吉典

    ○安井委員 大変重大な問題でありますから、ひとつ率直な話し合いをぜひやっていただきたいと思います。  日米漁業の問題についてももっと触れたかったわけでありますが、余裕がないようでありますけれども、これらに絡んで北転船の経営苦境打開のための減船というような問題が出てきているようであります。それの共補償、これも現在の公庫融資をもっと有利に運んでもらいたいとか、利子の国庫補給を、たしか今は二分の一以内のようでありますけれども、それをもっと手厚くしてほしいとかいうような要求も出ています。  それから同時に、今漁業地帯では全国的に漁船、漁業の再編の問題が起きていて、全国の二〇%を占めている北海道でも資源管理型漁業への体質改善のための沖合底びきの減船、あるいは沿岸漁業の経営体を大幅に減らすというような、いわゆる従来の二百海里時代とは違って今度はまさに自主的な形で減船の問題がいろいろ計画されています。これは北海道だけじゃなしに、全国各地でも行われているわけであります。  いずれにいたしましても、こういうような状況で雇用の問題も重大になってきますし、水産加工とのつながりも出てくるし、あるいは地域経済にも非常に大きな影響が出てくる、そういう運びが今各地で行われようとしています。  きょうは時間が十分ありませんので、共補償だけに限って伺っておきたいと思いますけれども、たとえ自主的な措置であろうとも、そういう漁民自身の中から自主的に起きている合理化の計画に対してもう少し手厚い対策政府としてもあってほしいと思うわけですね。その点についてどうですか。
  147. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、最近の厳しい漁業を取り巻く環境の中で、漁業者の自覚に基づいてそういう機運が出てきているということは大変結構なことで、私どもとしてもできるだけのお手伝いはしたいというふうに思っております。  具体的に申しますと、例えば従来ですと特定漁業生産構造再編推進事業というのは大臣許可漁業を対象としてやってきておったわけでございますが、それぞれローカルな業種について先生御指摘のような動きが出てまいっておりますので、本年度からこの事業の対象として知事許可漁業についても減船共補償負担に対し実質的に漁特法対象業種と同じような低利資金融通の道を開くというようなことをやっておりまして、ローカルな漁業の減船の円滑化に努めていきたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、先生御指摘のございました公庫の資金でございますが、これにつきましては、先生融資率か利子補給か何かもっと工夫したらどうかというお話でございますが、現に上乗せ利子補給を行いまして、末端金利を二・五%という破格の低利にするという措置を講じておるところでございまして、先生御指摘のような方向で私どもとしてもせっかく努力をしておるつもりでございます。
  148. 安井吉典

    ○安井委員 大臣とりわけ沿岸漁業の場合には、共補償と言ってもたしか漁業再建措置法の融資の対象外だというような問題もあって、これはなかなか大変なんですよ。いずれにいたしましても、今全国的に非常に大きな問題になって浮かび上がっているこの漁船、漁業の再編強化という問題、これには今水産庁長官からもお話がありましたけれども大臣としても十分な配慮が必要ではないか、そう思いますが、最後にその点について伺っておきたいと思います。
  149. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国の漁業を取り巻く内外の情勢、まことに厳しいものがございますが、これらの再編等につきましては、農林水産省としてもできるだけ手を尽くしてまいりたいというぐあいに考えます。
  150. 安井吉典

    ○安井委員 終わります。     ―――――――――――――
  151. 阿部文男

    ○阿部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業振興に関する件について、本日、参考人として日本学校健康会理事長松浦泰次郎君及び日本中央競馬会理事長内村良英君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 阿部文男

    ○阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十二分開議
  153. 阿部文男

    ○阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。細谷昭雄君。
  154. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 米の安全性の問題から質問をいたしたいと思います。  最初に五十三年産米の処理についてでございますが、五十三年産米の処理につきましては、六月二十日の委員会で私いろいろ質疑をいたしましたけれども、その際、現在調査中ということでありましたが、そろそろその調査は終わっておるんじゃないかというように思います。したがって、この五十三年産米の処理について、まず次の点をお聞きしたいと思います。  第一に、暫定基準と称される五〇ppm以上の米の総量は幾らであったのか、それから売却をしてもよろしいという五〇ppm以下の総量はどのくらいであったのか、まずそれを明らかにしていただきたい、こう思います。
  155. 石川弘

    ○石川政府委員 七月末までの数字で申し上げますと、五月末に在庫をいたしておりましたのが十九万一千トンでございましたが、その後調査をいたしまして検査をしましたのが十一万七千トンでございます。十一万七千トンの中で、適合するということで食糧事務所に通知をいたしております数量が六万トンでございます。不適合となりましたものが五万七千トンでございます。したがいまして、未検査数量といたしまして現在まだ七万四千トンのものがございます。
  156. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 基準以上の汚染米は、つまりどう処分するつもりなのか。この五万七千トンの処理の問題、私はどんな場合であっても食用それから家畜飼料、こういったものには回すべきではない、こういうように思います。  もう一つは、その場合のチェック体制。この五万七千トンという五〇ppm以上であったと言われる米の流通機構におけるチェック体制は非常に難しいと思うわけであります。したがって、私は、基本的にはこれは廃棄すべきであるというように思うのですが、いかがですか。
  157. 石川弘

    ○石川政府委員 片側には大きな財政問題があるわけでございます。安全性ということは私どもも十分考えなければいけませんけれども、これは国の一つの財産でもあるわけでございまして、安全性に問題がない範囲内で極力、いわば財政負担を圧縮する形で処理すべきものと考えております。  一つは、先生も御承知のようにカドミウム米等にございますような工業用ののりにする、これは口に入るものではございませんから、そういうものがあるわけでございますが、こういうものではおのずと限度が限られるわけでございます。したがいまして、私どもこれ以外の用途等につきまして、そのことの処理の結果これがまたいわば人間の安全性とかという問題になっては困りますので、いろいろな用途につきまして今検討いたしておりますが、その検討結果はまだ出しておりません。そういう検討結果も踏まえまして、安全性の問題には十分留意はいたしますが、やはり財政というふうな観点からして余り負担がふえるという形ではないことも必要だと思いますので、その辺の兼ね合いを見ながら検討し、その結果決めてまいりたいと思っております。
  158. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 残が七万四千トンまだある。この七万四千トンが一応全部判明するのはいつごろの予定なんですか。
  159. 石川弘

    ○石川政府委員 ほぼ一カ月後に完了する予定でございます。
  160. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 そうすると、おおよそ九月の半ば過ぎの段階では十九万一千トンと言われております量についてはほとんどわかるわけでありますね。したがって、のりの原料といっても数量に限度がある。どうも今長官のお話を聞きますと、飼料程度にはいいのではないかという、そういうことが言外の言として感ぜられるわけでありますが、飼料の問題は五〇ppmなのか一〇〇ppmなのか、これはいろいろあると思うのですが、食物の安全性という点で、飼料というのは要するに家畜の腹を通じて人間が摂取することに変わりはないわけでありまして、やはり安全という問題、そして現在の消費者に与えるいろいろな影響、こういう点から、財政問題はもちろんありますけれども、これは十分思い切った措置が必要じゃないかというふうに私は思うわけであります。その点で、今後の問題というふうになっておるのですが、いつごろその方針を決める予定なんですか。
  161. 石川弘

    ○石川政府委員 今申しました工業用ののりというのは口へ入るものではございませんが、その他の用途で間接的といえども何かの影響があるものについては、そういう実験を行いました結果やる必要があろうかと思っておりますので、今いつまでとは申し上げられませんが、私どもやはり処理の方針はなるべく早く立てた方がいいと思っておりますので、できるだけ早い機会にその他の用途につきましても検証を終えまして、それが可能であり、かつ安全であることを確認した上でその処理方法を決定するつもりでございます。
  162. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 なるべく早い機会にこの点については決断をし、明らかにすべきだと思うのです。今までいろいろサンプルによって調査をしたわけでありますが、今までも何回か指摘しておりますが、この調査結果というのをきちっと公表すべきだと思うのです。  私は、次のことを求めたいと思うわけです。  第一は五十三年産米の分析の方法、これはいろいろ方法があるそうですが、厚生省で明示しておる方法について、それからサンプルのとり方、それから分析の結果、こういうものについて一般の国民、消費者がわかるような形で公表すべきである、こういうように思うわけであります。今まではおおよその概数等についてはこういう委員会で我々聞くことができたわけでありますが、国民の側は、皆さん方が正直にいろいろなデータを発表することによって、そのとり方はまちまちだと思うのでありますけれども、それの方がいいと私は思うのです。消費者の不安を除くという観点で、今言いましたサンプルのとり方、それから分析の方法、そして分析の結果についても基本的に公表する、これは長官、前向きに御答弁を願いたいと思います。  これはずっと前から我々が主張し、各委員もこの点を求めておるわけでありますか、いまだもって食糧庁並びに厚生省はこの点についてのきちっとした答えをしておらない。ですから、私は、この三点について農林水産省当局と厚生省の見解をお聞きしたいと思います。
  163. 石川弘

    ○石川政府委員 どういうサンプルをとっておるかということにつきましては、倉庫ごとに、それは生産地、消費地ごとでございますが、そういう倉庫ごとにどういう産地から来ているかということも含めまして産地別にロットを分けまして、どこの産地から来たもので、どこの倉庫にあるもの、そういうものを代表しますようなものを一定量検体としてとっているということは申し上げているわけでございます。  それで、どういう検査をしたかということでございますが、これは国立衛生試験所において採用されましたと同じ方法、灰化比色定量法という方法でございますが、この方法を採用してやっているわけでございます。  その結果、何%ぐらいのものが五〇ppm以下であったか、以上であったかということは、調査が完了します段階でお話をいたしているわけでございますが、これは全体の姿がはっきりいたしますれば、こういう結果であったということはお知らせをいたしたいと思っております。
  164. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 きょう、「臭素の比色定量法分析時間」といったものをいただきました。私は専門家でないので細かい点まではわかりませんけれども国民の中にはいろいろな方々がおりまして、これはもう国民にはわからないだろうというふうに言わないで、こういうものをどんどん公表していただきたい。そのことによって、いろいろな批判もあるだろうけれども、わかる人はわかっていると思うのですよ。ですから、ぜひ長官が今お話しのとおり、一定期間になりましたら、こういうふうな結果であったということをいろいろな形、記者会見という方法もあるでしょうし、いろいろな方法はあると思うのです、そういう結果をぜひひとつ明らかにしていただきたい、こう思います。  それから厚生省にお聞きしたいのてすか厚生省についても同様のことをお聞きしたいと思います。
  165. 市川和孝

    ○市川説明員 五十三年産米の検査につきましては現在なお継続中で、私どもの方でも今後一カ月程度で大体終了するというふうに聞いているわけでございます。検査結果の公表という点につきましては、食糧庁の方と相談してまいりたいと存じます。  なお、臭素の検査方法等につきましては、私どもの方からは去る六月に都道府県等に対しまして通知をいたしてございます。
  166. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 厚生省でこういう分析方法について通知をしたということは、資料を先ほどいただきました。問題は、皆さん方は行政のルートでやっているのですが、多くの国民は消費者であるわけです。しかも、消費者の皆さん方は、そういういろいろな結果が出てくるのに対して、何だ、おかしいじゃないか、国の数値というのは常に低いじゃないかというふうな疑いも持っておるというのも事実であるわけであります。ですから、こういうふうな点で分析をやるんだといったら、なぜそれを公の機関、新聞その他を通じまして国民に知らせないのか、この点が大変残念だと私は思うのですよ。  確かに厚生省は都道府県について一斉にこういう基準で検査をしてくださいというふうにやったということは、私も先刻わかりました。ですから、それをなぜ公表しないのか、このことを言っているわけですので、先ほど長官がお話ししましたように、今後厚生省も、今までいろいろな問題が出ましたね、いろいろな検査をしましたものについて、どんどん国民の前に公表をしていくという態度をとっていただきたいということを強く要望したいと思うわけです。いいですね。
  167. 市川和孝

    ○市川説明員 私どもこういった試験方法というようなものを定めますと、従来は主として都道府県等自治体に対しまして監視の目的というような面から通知という形によってきているわけでございますが、あわせまして、私ども別途、食品衛生に関する雑誌等も持っておりますので、そういったようなものを通じまして、できる限り私どもの通知した内容をお知らせするというような方法を考えてまいりたいと存じます。
  168. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それから、長官にお聞きしたいのですが、先ほど私はいわゆる五〇ppm以上は廃棄をすべきだというふうに言ったのですが、もちろん工業用ののりは結構です。現在は五万七千トン、それで七万四千トンの中の約半分ぐらいが加わるとしますと、約九万トンぐらいというふうになりましょうか、推定九万トンぐらいの、言うなれば五〇ppm以上の米が出ると思うのですけれども、それで試算した場合に、例えば財政上の問題というふうに先ほどおっしゃいましたが、恐らく試算されておると思うのです。現在の五万七千トンだけで考えまして、廃棄処分にするとどのくらいの損害になるのか、おわかりですか。
  169. 石川弘

    ○石川政府委員 率直に申しまして、廃棄処分というのは単にそれを失うことの損失だけではなくて、そういうものが有害であるから廃棄するということになりますと、廃棄するのにまた膨大な経費がかかるわけでございます。したがいまして、私どもの頭の中にはそういう廃棄という手法は実はないわけでございまして、なるべく何らかの意味で安全性に問題がない形で有効に活用するということでございますので、先生の御指摘の廃棄したら幾らかということは試算をいたしておりません。  ただ、端的に申し上げますと、例えば今まで工業用ということでおみそなりおせんべいなりにするということでも、これは売買の損失といたしましてはトン当たり十八万ぐらいかかるわけでございますが、例えばこれを工業用ののりにするということになりますと、値段がそういう値段ではつり合いませんので、その売買損失はトン当たり約二十七万、いわば九万円も売買損失はふえるわけでございます。したがいまして、私ども、申し上げましたように廃棄ということになりますとそれ以上もっと膨大な経費をかけて、しかも廃棄にまた困難を伴うわけでございますので、極力、安全性に問題のない範囲で何らかの意味の他の処分の形態を考えたいと思っております。
  170. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 食糧庁はいわば国家財産を保管しておるという一つの責任を持っているわけです。今までは駆虫剤という意味で薫蒸しておったわけです。ところが、そういう薫蒸をしますと、こういうような残留の問題が出てくる。ということになりますと、保管上新たな工夫が必要だと思うのです。そういう点では、もう既に何か対策検討されておるのですか。
  171. 石川弘

    ○石川政府委員 事柄は、基本的に申しますと、現在、過去二回ありましたような過剰米というような形をつくり出さぬということが一つの大事な要素だと思います。こういう大変余裕のない需給の状態でございますから、私どももゆとりを持って主食の管理ができますような、いわば備蓄と申しますか、この備蓄の場合も、積み上げるという感じよりも回転ができるような備蓄をやりますれば、理想的に考えれば前年産米と今年産米で操作ができる。そういう状態になりますと、たび重なるような薫蒸はほとんどなくなるわけでございます。  それから回転備蓄をいたします場合、どうしてもいわばよい米と申しますか、新しい米の需要が強いわけでございますので、そういう梅雨を越しましてからの米をなるべくうまく食べていきます手法としては、先生も御承知のように、低温で保管をしていくということがぜひ必要かと思います。そのための低温倉庫の装備も相当あるわけでございますので、基本的には最初に申しましたような全体の管理の大きさ、これは回転備蓄の大きさも含めまして大きさを適正にして、いくことと、それからその場合、年を越しまして供給する主食については極力低温の倉庫を活用していく、そういうことをやりますことによって今回のような事態は避けられるのではないか。そういう今までのいろいろな経験もあるわけでございますので、そういうことを組み合わせながら、このような事態が二度と生じないようにやっていくつもりでございます。
  172. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 非常に貴重な国民の、農民の汗の結晶でございますので、そういう保管という点をどうかひとつ今後十分気をつけていただきたいと思いますし、そういう技術の開発もやっていいのではないか。備蓄制度の問題も国会で決議になりましたし、今後もみで貯蔵するとか、いろいろな方法を技術的にも検討されていいのじゃないかと思うわけです。国家財産を損害を与えないで優良な状況で保管するという責務が食糧庁にはございますので、この点でこういう事態のないように特段の努力をお願いしたいと思います。  次に、学校給食の米飯の問題その他の原料の問題について、まず最初に文部省にお聞きしたいと思います。  最近、学校給食用の米から臭素が検出されたというふうな報道がありますし、そして去る三日には衆議院の文教委員会でそういう質疑があったわけでありますが、ひとつ概況を報告をしていただきたいと思います。
  173. 小西亘

    ○小西説明員 お答えいたします。  この学校給食用の米に臭素が検出されましたという件につきましては、文部省におきましては直ちに学校健康会の方に、新米古米の別あるいは残留臭素が残っているかということについて調査するように指示を行ったわけでございます。この日本学校健康会は、私どもの指示を受けまして、残留臭素が検出されたという我孫子第四小学校の米につきまして関係の機関の協力を得ながらサンプリングを行い、これを日本穀物検定協会に調査を依頼いたしました。  その出てまいりました結果は、すべて新米である、そして残留臭素は三ppmであったというような報告を受けている次第でございます。
  174. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 文部省はその程度の報告しかできないとすれば、私の方でいろいろな資料をとっておりますので、いろいろ質問したいと思うわけです。  まず第一に、私は三月十日に予算委員会の分科会で文部省並びに厚生省に対しまして、学校給食に五十三年産米以前、つまり超古米を使うのか使わないのかという質問をしたわけです。食糧庁ははっきりと新米を使っておるので絶対にそんなことはありません、文部省も穀物検定協会の検定を受けておるのでそういう点は絶対心配ありませんと答えているわけです。  それで、この問題については、今我孫子の問題が出ておりますが、皆さんの方では三ppm。しかし、我孫子も、これは個人が道楽でやったのではなくて、住民の皆さん方の要望に基づいて我孫子の教育委員会がちゃんとした分析をしておるところに依頼してやったものなんです。今文部省の話を聞きますと、結果的にはまるで我孫子市がやった分析はいいかげんででたらめだったと言わんばかりじゃありませんか。そうでしょう。そして、同じサンプルをどういうふうにとったのかわかりませんけれども、新米を使っておった、穀物検定協会にやったらそれは新米でありました、それからは三ppmしか出ておりませんでしたと言われる。  私は今までもずっと、三月一日以来の本委員会並びに予算分科会の審議の過程を経まして、臭素というのは自然に存在はする、しかしながら新米等についてはほとんど微量であって普通はない、こういうことを明確に答弁してもらっているわけです。我孫子の場合は一八ppm、その他私の手元には日野市の教育委員会、三鷹市の教育委員会、そして八王子の例が資料としてあるわけであります。文部省は我孫子の都合のいい方の報告しかしておりません。一体それは何ですか。せんだっても文教委員会で、この三つのほかの点についてもいろいろ審議があったはずなんです。私はあえて文部省がどういう見解でおるのかということの報告を求めたにもかかわらず、自分の都合のいいデータだけをもってそれで事足りるという態度は、子供の安全に責任を持っておる文部省として甚だ遺憾だと思うわけでありますが、その点どうですか。
  175. 小西亘

    ○小西説明員 お答えいたします。  先ほど御答弁申し上げました我孫子市の学校給食米の問題でございますが、私どもサンプリングいたしまして調査いたしました結果がこうだったというふうに先生にお答え申し上げたわけでございますけれども、しかし、今のは日本穀物検定協会が行っている検査で、新聞等で報道されましたのは日本食品分析センターが行った検査ということでございまして、検査する場所が違っており、かつまたその検査の仕方も違っているようでございます。  私どもはさらに念を入れまして、同じ米を、つまり日本健康会においてサンプリングいたしました我孫子市の米を、さらに日本食品分析センターの方にも依頼いたしまして、今検査をさらに続けております。そしてまた、我孫子市がサンプリングして日本食品分析センターの方に依頼したそちらの米も入手いたしまして、これも検査の仕方が異なっております日本穀物検定協会の方に再度依頼いたしました。そういうことで、異なった方法でもう一度検査をしてみようということでございます。今その検査をいたしている最中でございます。
  176. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 現在まだそういう検定の過程だということでしょう。片方は一八ppm、片方は三ppm、余りにも差があり過ぎる。この点は、文教委員会で問題になった点です。したがって、その後、今言ったような再検査を交互にやっているということでしょう。  その点の結論がまだ出ないということなので、それはさておいて、今の問題、これは我孫子だけではないのです。ここにあります日野市の教育委員会、それから三鷹の教育委員会、この三つは学校健康会のルートによるところの学校給食用の米の分析結果、これはいずれもそれぞれ臭素が検出されておる。それから八王子については、これは後から問題にするのですが、これは今の三つのケースとは違いまして、八王子市が独自に市の十八の小売商店から、米屋さんから供給されておる米をサンプルにして分析をした結果、中には四〇ppmの臭素が検出された、こういう例だと思うのです。いずれもこの四つとも、先ほど言いましたように、公的な地方教育委員会がそれぞれの住民、父母の要望に従って、それにこたえてそれぞれ検査をした、そういう例なんですよ。  このことからしますと、私は次の二うしか考えられない。一つは、この四つとも検査がでたらめであった。もう一つは、この新米と称する学校給食用の米の中に超古米が混米されておるというふうな、どちらかだと思うわけです。じゃ、四つの教育委員会が調べたのはでたらめであったかというと、それはそうでない。一つや二つ個人的にやったのであればこれは別なんですが、きちっとした公的な機関で検査をして、四つの教育委員会が、それぞれ量は違いますが、臭素が検出されたということは、これははっきり言って後者の、新米の中に超古米が混米されておったというふうに疑わざるを得ないわけであります。  問題は、このところから来るわけでありますが、まず第一に、このルートを考えますと、文部省と食糧庁、食糧庁と文部省といいますか学校健康会、これは供給が別ルートになっているわけであります。したがって、大臣にお聞きしたいと思いますのは、いわば今までの調査結果に基づいて、そういう混米をどこでされたのか。新米であったというふうに言っているのですが、それはさっきの我孫子の場合だけを言っているわけです。したがって、日野の場合、三鷹の場合、八王子の場合は、これはルートが全く別なんですけれども、これらの調査結果について文部省は報告をすべきだと思うのですよ。いずれもみんな新米だったというふうに言うのか。新米だったということになりますと、さっき言ったように、四つの教育委員会の調査が全くでたらめだったということになるわけでありまして、その点の結果を報告をしていただきたい、こう思います。
  177. 石川弘

    ○石川政府委員 まず数字の違いでございますが、先ほどもお話がございましたように、数字の違いが出てきます一番大きなもとは、検査方法の違いでございます。片方が灰化比色定量法によって検定をし、もう一つの方は沃素滴定法という、検査方法が全く違う方法で検定をいたしておりますから、非常に低い数値の誤差は出てくるようでございます。したがいまして、先ほど文部省からお話がありましたように、両方でやり比べてみているというのが現状かと思います。したがいまして、どちらがうそとかという話ではなくて、そういう検定方法の違いからよって来る数字の差というものを、一つ、私どもは考えなければいけないのではないかと思っております。  それから、我孫子の場合は高い数字が出ておりますので、新古の、新米、古米の判定をいたしておりまして、すべて新米であるという判定をいたしておりますから、これにつきまして、混米をしたのではないかということは、ないのではないかと私ども思っております。  それから、八王子の事例は、これは違っておりまして、これはどうやら個人の商店からお買いになった品物のようでございますが、そういう古米の混入があったのではないかということが疑われるような事態かと聞いております。
  178. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 だから、私が言ったのはやはり問題になると思うのですよ。厚生省は分析の方法について、既に六月の段階で各都道府県に、臭素の検定方法はこういう方法でやりなさいと通達を出しておる。しかし、一般には公表しておりませんから、今言ったように、あっちの方のやり方は違うんだ、検査の方法が違うんだから数値も違うのは当たり前だと言わんばかりの話なんですよ。そういうことで今言ったような問題をあいまいにしてはならぬと思うわけであります。一つの分析の方法、決まった分析の方法というのを行政機関だけではなくて一般に公開することの必要性というのは、ここにもあると思うのです。  このことを特にやはり今後はきちっとしていただきたいと思うのですが、今長官からお話がありましたが、数値の違い、それから新米であったという点、それから八王子の場合は業者の供給する米であったという点があったのですが、問題は、学校給食用の米穀というのは、御案内のとおり食糧庁は六〇%の値引きをしまして、そして日本学校健康会に売り渡しておるわけであります。これは玄米を搗精工場で精米にして、そして都道府県の給食会、これを通じてそれぞれの学校にいわゆる米飯として提供されておる。つまり、大変に大幅な値引き措置が講ぜられておりますから、この適正な流通を確保するために一般の流通ルートと区分して取り扱われておるはずであります。食糧庁、そのとおりですね。食糧庁の長官、そうですね。
  179. 石川弘

    ○石川政府委員 値引きをいたしまして学校健康会の方に供給をいたしておるわけでございます。
  180. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 こういう学校給食というものについて、非常にいわゆる行政、政治的な配慮がされた米だと思うのです。ですから、当然、この学校給食の供給経路の上でどこまでが食糧庁の責任範囲で、どこからがいわば学校健康会の責任範囲なのか、これはもう出てくると思うのですよ。お聞きしたいのですが、その食糧庁の責任範囲はどこまででしょう。
  181. 石川弘

    ○石川政府委員 基本的に申し上げますと、私ども食糧の管理をいたしておる立場から申しますと、単に学校給食だけではなくて配給の用に供するという一般の米全体につきまして安全の責任を負っていると考えるわけでございますが、学校健康会につきましては、私ども食糧庁がそういうお米を出しますと、それを受けました学校健康会の方が搗精工場におきまして搗精をいたしまして各都道府県の学校給食会に供給をし、そこから学校へ行くという流れでございます。  私どもは、その供給を具体的にやりますのは健康会のところまででございますけれども、どこまでとおっしゃいまして、そこから先は責任がないかというと決してそうではないわけでございまして、私どもとすれば、普通の米が小売を通じて消費者の方々に安全に供給される責任があると同様に考えますれば、一般論とすれば学校で子供さんの方々のお口に入るまで、そういう安全ということも含めて責任は感じているわけでございます。
  182. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 確かに大変な責任の重い官庁だと思うのです。確かにそうだと思うのですが、具体的に言えば、例えばどこで混米されるのか。私は混米されたと思っているのですよ。混米ということになりますと、単に安全という問題じゃなくて、こうなりますと大変な、公金横領みたいな、詐欺罪みたいな犯罪なんですよ。ですから、今長官が言った、確かに食糧庁は子供の口に入るまでがおれの責任なんだ、こう言えばそのとおりなんですよ。そのとおりなんですが、具体的に混米という問題がもし介在するとすれば、直接的な管理責任はどこからどこまでなのかということは当然問題になってくるのです。そのことを聞いているのですよ。
  183. 石川弘

    ○石川政府委員 学校健康会の方にお渡しをしましてから各搗精工場で搗精をするわけでございます。私ども、今回の事案というのは、率直に申しまして混米という事案だとは考えていないわけでございますけれども、混米をするということになりますと搗精工場あたりのところから始まるわけでございますが、先ほど申しました数字で私ども直ちにこれが混米だと理解をいたしておりませんし、特に新古判定をいたしましたものはすべて新米という判定をいたしておりますので、先生の御趣旨が混米をされたという前提でのお話とすれば私どもなかなか同意できないわけでございますけれども、米が、そういうチャンスがどこにあるかということになりますと、これは搗精工場段階にあるわけでございます。しかし、私どもとすれば、そういう事実があったということは学校健康会を通じての米としては我々としてそういうものを確認しておらないわけでございまして、出てきております数字、それから新古判定したものはみんな新米という判断でございます。
  184. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これは、確かに混米したとは認められないという立場上のお話だと思うのですね。  私は具体的に一ここに資料を持っているのですよ。この資料を見ますと、実際に給食センターで働いている方々がおるわけです。そして、その方々はそれぞれ労働組合をつくっているわけですよ。その方々の話を聞きますと、もう黄色い米で、袋をあけますとぱっとにおう、そして、とぎますとっぷれると言うのですよ。どうもこれは新米じゃない、新米の中に何かまじっているということは、話としてずっと前からあった。そして、これはおかしいのじゃないか、たまたま国会で臭素の問題が取り上げられ、報道され、そうして住民の皆さん方からこれは調べる必要があるという声が出まして、それで、これは日野市です。日野市で調べてもらったということなんですよ。そうしたらこの結果は、例えば七ppmとか九ppmとか一三ppm、検出せずが二つあります。こういう結果が出た。  これは実際給食をやっておる人方が、明らかにこれはおかしい米だ、新米ではないということを言われておるわけですよ。これに対して、食糧庁なりないしは監督官庁であります文部省が全く調べておらないということはずさんである。もう既に三日の日にこれらの問題については文教委員会で取り上げられておる。きょう、七日でしょう。中に日曜日をはさんでおりましても、これは皆さん方は本当に真剣に追及しなければならない問題のはずなんですよ。一体こういう問題に対して、いまだに混米なんかはされておらないと言えますか。
  185. 石川弘

    ○石川政府委員 先ほど先生御指摘の日野市の検体は私どもも知っておりますが、学校でお調べになったのが、先ほど言いました沃素滴定法で調べて七ppmというのが一件、それから一般市販米を調べた二つの検体からは検出せず、それから一つの検体からは九、一つからは一三ppm、いずれも沃素滴定法でお調べになったということは知っております。私ども、今言った七とか、特に学校給食の七というような数字につきましては、これは我孫子市で調べました検体、これは灰化比色定量法でやりました全体で四つの検体が三とか四ないし六とか二とか、そういう一けたの数字でございまして、こういうものにつきまして全部新古判定もいたしておりますが、明らかに新米であるという結果が出ておりますので、もし御不審でございますればまたやりますけれども、この程度の数字で全部古米混入ということは決してないわけでございます。  自然の中にも非常に少ない数字の臭素は検出されるわけでございますので、例えば八王子のように古米を混入したと思われるものははるかに大きい数字が出ておるわけでございますので、私どもこの数字で混米と決定づけるのはむしろ不可能ではないか。御心配の点もあろうかと思いますので、極力この種の数字を収集もいたしますし、検査もいたしますけれども、一けた程度の臭素の数字というのは新米でも十分出てくるわけでございます。
  186. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それではお伺いするのですが、厚生省の方、五〇ppmというのは暫定基準という形でやっているわけですね。もうこれは小川委員がこの前の委員会でその点で追及をいたしましたが、既に数十年前、約五十年前にWHO、FAOの一般的な、しかもこれは毒物実験なんかもしておらない、慢性毒物実験なんかもやっておらないということで決めた基準、それに現在は暫定基準という形で乗っかっている。しかし、事は子供の問題なんです。小学校の一年生もおります。二年生もおります。体の小さい子供がおるわけであります。今長官は一けたぐらいのppmなんか問題にならない、こんなふうにおっしゃるのですが、果たしてそうでしょうか。その点、厚生省、どうでしょう。
  187. 市川和孝

    ○市川説明員 ただいまの食糧庁長官の説明は、自然界での臭素の分布ということについて御説明申し上げたのではないかというふうに私は理解いたしたのでございますが、確かに自然界に分布する臭素というものもございまして、自然に分布しているようなものにつきまして、私ども、穀類、野菜類あるいは海藻等を通じまして摂取している分もあるわけでございまして、こういった微量の臭素につきましては特に衛生上の問題はないのではないかと考えております。
  188. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 事は子供たちの問題、そしてその背後には、自分の子供、我が子を思うたくさんの父母がおるわけです。そういう皆さん方の不安という点に、文部省も食糧庁も、これは食糧庁ばかりではありませんけれども農林水産省全体、行政がもっと神経を使ってほしいと思うのです。その程度のことはもう何でもないような話をされますと、これは大変問題だと思うのです。ですから、厚生省についても私は何回も言いましたね。暫定基準という問題は、早く本格的な日本人の食生活、外国と違うのですよ。パンを食べている人間と違うのです。米飯を中心とする日本的な食生活をしておる日本人に合った安全基準、これを一日も早くやれ、これは委員長預かりになっているわけです。まだ結論を出しておらない。私は理事の皆さん方に、一体なぜこういうふうに逡巡するのか、実は不満なんですよ。この安全基準を早くやれということと、もう一つは、臭素そのものが問題じゃない。私が言っているのは、メチル化合物の検出の問題を早くやれと。この二つを要望し、委員長預かりになっているはずなんです。これについても一日も早くやることをひとつ理事会にお願いしたいし、厚生省当局にも強く要望するわけであります。  それで、学校健康会に参考人としておいで願っておるわけでありますので、学校健康会にお尋ねしたいと思うのです。  我孫子市、日野市、三鷹市の給食用の米穀はどこの搗精工場で精米され、現場確認の方法や日本穀物検定協会の検定をどういうシステムでやっておられるのか。流通ルートで混米またはすりかえられたという疑念が非常にぬぐいがたい形で広まっておるわけであります。したがって、この点についてきちっとした御説明をお願いしたい、こう思います。時間がありませんので、簡潔にお願いします。
  189. 松浦泰次郎

    ○松浦参考人 先生から御質問のございました点、食糧庁長官、学校給食課長からいろいろお答えになりましたが、我孫子市、日野市、八王子市におきまして問題になりました米につきましては、我孫子市につきましては日本学校健康会から供給した米でございます。それから日野市につきましては、先ほど食糧庁長官から申されましたように五検体が問題になったわけでございますが、そのうち一検体が日本学校健康会からの供給のものでございまして、四検体は市販の米でございます。それから八王子市につきましては十八検体が問題になりましたが、いずれも市販米でございます。  私ども、学校給食用の米につきましては、先ほど御説明のありましたように、食糧庁と文部省、広くは農林水産省でございますが、協議されまして措置をいたしておるわけでございますが、健康会が食糧事務所から購入いたします米は、いずれも原則として国内産水稲、ウルチ玄米、一、二等の新米というようなことになっております。これを食糧事務所から受け取りました後、全国約二百三十の搗精工場で搗精しまして、学校その他炊飯場等に供給しておるわけでございますが、搗精工場につきましては、知事が認めておりますもののうちから食糧事務所等の御意見を聞いた上で、健康会が責任を持って定めておるという内容でございます。  先ほど来の東京都内の関係につきましては、搗精工場は、関係いたしておりますのは城北食糧搗精工場、それから三多摩食糧株式会社搗精工場というところでございます。それにつきまして、食糧事務所から引き取りました米につきましては、穀物検定協会の方に依頼しまして、新米で、どういう産地のもので、いつ鳩精したかというような品質規格等を検定いたしまして、それを包装の袋に明確に表示しまして、学校給食以外には使えませんということでやっておるわけでございます。  先ほど来御質問の点につきましては、先ほど来説明ありましたように、サンプル調査におきましては新米以外はないというような結果が出ておるところでございまして、私ども、古米が入っておるとは思っていないわけでございますが、万一にもそのようなことがあっては、先生お話のように発育盛りの子供たちにとって大切な食事でございますので、今後ともその点につきまして、特に新鮮度等につきましてはチェックをするよう工夫あるいは努力をしてまいりたいというように考えておるわけでございます。  学校健康会の使命の一つとしまして、学校給食用の物資を、品質のよいものを安定的に、しかもできるだけ安く供給するということが全体としてかぶさっておるわけでございますけれども、そのような方向で今後とも努力してまいりたいと考えております。
  190. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 学校健康会は、今言ったように、国民的な財産である米を、子供たちの成長を願って、六〇%という値引きをしながら、大変大きな財政負担をしながら出しておるわけですよ。したがって、いやしくもすりかえられたとか混米されたとか、もう疑惑を持たれることがないように十分以上に気をつけていただかなければならぬというように思うわけであります。今回の問題は、たまたま地域の父兄の皆さん方、地域の消費者の皆さん方が熱心なところほど、そういうように教育委員会に要望してやったことだと思うのですよ。この問題を単に数値が低いとかなんとかいうことで片づけることなく、文部省も学校健康会も、そして食糧庁も今後十分連絡をとりながら、この前文教委員会で約束をされましたように、先ほどの四つの教育委員会のそれぞれの調査結果をもう一度追試をしてみる、そしてあくまでも地域の皆さん方の疑念を晴らしていく、こういう努力をしていただきたいと思うのですよ。  そういう意味で、ひとつ文部省の考え方ないしは食糧庁の考え方をお聞きしたいと思います。
  191. 石川弘

    ○石川政府委員 私ども、米につきましては、学校給食に限らず、安全性が大変大事だと思っておりますので、先生御指摘のありました御趣旨に従いまして今後も慎重にやりたいと思っております。  先ほど私が数字が低いからと申し上げましたのは、数字が低いからいいという趣旨ではございませんで、臭素が若干でも検出されますとそれは古米であるということではないという趣旨で申し上げたつもりでございます。
  192. 小西亘

    ○小西説明員 学校給食用の物資につきましては、御指摘のように、成長期にある児童生徒を対象としているものでございまして、文部省といたしましても、昭和四十六年の体育局長通知によりまして、「できるだけ良質なものを選択するよう常に配慮し、とくに、有害なものまたはその疑いのあるものは避けるように留意するとともに、不必要な食品添加物が添加された食品、内容表示、製造業者等が明らかでない食品等については使用しないようにすること。」こういうような指導をしているところでございます。したがいまして、お米の問題につきましても、この趣旨にのっとりまして今後とも指導してまいりたい、そのように考えているところでございます。
  193. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 時間が参りましたのでこれでやめますけれども委員長にも特に要望したいと思います。  先ほどの基準の見直しの問題、さらには臭化メチル化合物の検出の問題、この二つにつきましてはぜひ早く理事会の結論を出して、そして厚生当局にやってもらうように強くお願いをしたい。これは委員長のお計らいをお願いしたい、こういうように思います。  大臣、今言ったようないろいろな経緯がございます。やはり何といったって子供たちの問題でありますし、多くの父兄の皆さん方が心配しておる問題なんです。ぜひひとつ督励いたしまして、今後こういう不安のないようにお願いしたいということ。  それから、本当はきょう私は大潟村の問題について申し上げたかったわけであります。  結論的に言いますと、大潟村は、最初の新農村の建設という理想に燃えて、選ばれた人方が入ったわけですが、残念ながら、私の見るところ、必ずしもそういう理念に燃えて現在村づくりが行われておるというふうに言いがたい面がたくさんあるわけであります。これはもう大臣も御承知だと思うのですよ。  そこで、いろいろな問題がございますが、大事なことは、当初の村づくりの理念に従い、粘り強く、新しい村をつくろう、新しい農業をつくろうという、そういう人方の希望を生かすような形、そして周辺の町村の皆さん方とも十分融和できるような、そういう問題の解決、これを図っていくべきじゃないか、こういうふうに思うのですよ。どうか八郎潟の問題についても十分慎重なお取り計らいをお願いしたい。  今の子供たちの問題と、二つについて最後に大臣の所見をお伺いしたい、こういうふうに思います。
  194. 山村新治郎

    山村国務大臣 米は国民の主食でございますし、食糧管理制度のもとで国が一元的に管理していくということになっておりますので、食糧行政の基本であるというぐあいに考えております。したがいまして、今後とも米の保管、管理等につきましては十分配慮し、安全性が保証されるような努力をしていかなければならないと思います。衛生行政を所管しております厚生省と十分な連絡をとりながら、米の安全供給に責任を持って当たってまいりたいというぐあいに考えます。  また、大潟村の問題につきましては、御存じのとおりに、全国の農家の皆さんに水田利用再編対策に御協力いただいておるところでもございます。そして、大潟村のみを例外というぐあいには、これはやはり難しいことじゃないかと思いますし、国として筋だけは通していかなければならないというぐあいに考えますが、いずれにいたしましても、大潟村の問題解決のため、地元の大潟村及び秋田県と十分話し合った上で対処してまいりたいというぐあいに考えます。
  195. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 終わります。
  196. 阿部文男

    ○阿部委員長 日野市朗君。
  197. 日野市朗

    ○日野委員 きょうは、水産問題について質問を絞って伺いたいと思います。  我が国の漁業を取り巻く環境は非常に厳しくなったという指摘が至るところでなされてきているわけであります。今、我が国のこれからの水産資源を考えていく場合、いかに資源を守り、かつ漁業に携わる経営体をいかに守っていくかという、両面からアプローチがなされなければならないというふうに思うわけでありますが、我が国の漁業の根本になってきた、より効率的な、そしてより大規模なという一つの漁業の方法、これは見直すべき時期に来ているのではないかというような思いを私は強く持っているところであります。  そこで、まず効率漁業というものについて、きょうは特に、いわゆるカツオの海まきでございますね、海まきとそれからトロール漁法、この二つの効率漁業について伺ってみたいと思います。そのほかに大目流しであるとか、いろいろ効率漁業もございますが、当面この二つに絞って考えたいと思うのです。これらの効率漁業に対する基本的な考え方というものは、従来どおりの考え方が踏襲されるわけでありましょうか。
  198. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもの考えでおりますのは、漁業といえども、他産業と同様に経営面から見て効率化が図られていくというのは、内在的な要請としてそういうことであろうというふうに思っております。それからまた、効率漁業は漁業生産のうちに占める割合も大きく、漁業が果たしております食糧の安定供給という面におきましても重大な役割を果たしているということは見逃せないところであろうと思っております。ただし、そうは申しましても、水産業の持つ特性に照らしますと、沖合底びき網漁業あるいは大中型まき網漁業等の効率的な漁業を放置いたしますことは、漁業調整上及び資源保護上の問題を生ずるというおそれがございますので、漁業法五十二条の規定に基づきまして、農林水産大臣の許可を要するいわゆる指定漁業として種々の規制措置を講じて、従来から漁獲努力量の増大を厳しく抑制しているところでございます。  そういうことでございまして、私どもは今後とも漁場の総合的有効利用により漁業生産力を発展させるという基本的な立場に立って、沿岸漁業との調整及び資源の動向に十分配慮しつつ、適切な指導を行っていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  199. 日野市朗

    ○日野委員 まずカツオの問題について伺いたいのですが、海まきをやるについては、これは転換前には十三そうほどおりまして、それから転換によって大幅に隻数をふやしたわけでございますが、どうも私が見ておりますと、海まきをやっている漁業者の経営そのものが必ずしもうまくいってはいないというふうに見えるわけでございますね。認識は共通にしておかないとぐあい悪いと思いますので、その点まず伺いたいのですが、いかがでございましょう。
  200. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  きちんとした統計が必ずしも整備されておるわけではございませんが、関係者からの話を総合いたしますと、昭和五十年代に入りまして南方漁場での周年操業の体制確立して以来、海外まき網漁業の経営状況というのは比較的順調な経営状態が維持されておったというふうに思っております。これは従来船についてそうであると同様に、五十五、五十六両年にカツオ一本釣り漁業からの転換船、あるいは北部まき網からの大型化船についても、去年までは比較的順調な経営状態にあったというふうに思っております。  しかし、昨年来カツオの魚価低迷のため、海外まき網漁船の収益は減少しておりまして、殊に一本釣りとか北部まき網から転換した船につきましては、転換の際のカツオ一本釣りの廃業見合い、あるいは新船建造のための借入金の金利負担、あるいは減価償却費、そういうものが負担になってかかっておりまして、旧来の実績船に比べるとかなり経費がかかり増しになりますために、ことしに入ってからの経営内容は必ずしも順調ではないというふうに認識をいたしております。
  201. 日野市朗

    ○日野委員 最初はこの海まきも随分期待を持って取り組まれたわけでありますが、何しろ一カ統で二十億からの金を投資いたしましてこれに取り組んだ、そして、カツオの魚価が残念ながら非常に低迷をしてきているわけでございます。全くカツオの魚価の低迷などという、これはずっと言われてきたのでありますが、最近の低迷ぶりはまさに惨たんたるものでありまして、これではカツオ業界が、海まきに限らず一本釣りであっても非常に苦しい状況になってきているということであろうというふうに思います。  そして、この魚価がまた急によくなるという要素は全然見当たらない、こういう、我々も非常に心痛むような状態が今続いているわけでございますが、魚価の低迷ということにも海まきが一つかんでいるような感じが私はいたします。海まきでとりますと、大型から小型まで全部とってしまう、しかもまき網漁でありますから、魚体そのものが非常に損傷しがちでございます。そして、損傷したカツオということで、そのものの魚価が下がる、そうすると、一本釣りの方の魚価をも引き下げてくる、こういうような循環に立っているのではないかというふうに思いますが、いかがでしょう。
  202. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、海まき転換と魚価の低迷関係でございますが、海まき転換に伴って漁獲量がふえ過ぎて、その結果魚価の低迷を招いたのではないかという見方が今一部に行われておるわけであります。  ちょっと数字について見ますと、昨年五月に冷凍物でキロニ百円を割り込むということになったわけでありますけれども、実は昨年のカツオの漁獲量というのは三十五万三千トン、相当カツオの魚価のよかった、例えば五十五年当時でございますと、冷凍物でキロ三百五円と言われておりますが、五十五年の漁獲量が三十五万四千トンでございますから、私は、率直に申しましてことしに入ってから少し大豊漁に過ぎる、その結果魚価低迷に拍車がかかっておるというふうに思っておワますが、少なくとも昨年までのところは、魚価の低迷ということが海まき転換による漁獲量の増加に起因するものであるというふうには見られないのではないかという・ふうに思っております。  しからば何が大きな原因であるというふうに思うかということでございますが、私は何と申しましても米国のカツオ市場の回復がなかなか鈍い、あるいは円高に起因する輸出の伸び悩みというふうな事態が、国際商品化しておりますカツオの魚価低迷に非常に大きな影響を及ぼしておったのではないかというふうに思っております。  確かに、本年に入りましてから大変大豊漁でございますので、それは相当程度魚価低迷の原因になっておるというふうに思いますけれども、海まき転換自体は、私どもが当初意図しておりましたように、漁獲努力量の水準をふやさずに、中立的に漁獲努力量の水準を維持するというラインにほぼ見合って行われたものというふうに思っておるわけであります。  それから、先生ただいま御指摘の、まき網の魚体の損傷を受けておるカツオの価格に釣りが引きずられて云々という話でございますが、私どもとしては、元来カツオ釣りというのはフラットにまき網と競争しようとしても、これはなかなか難しいのでありまして、やはり生食用を中心にした、まき網との競争から一応自由であるという領域において安定的な存続の基盤を求めていくべきものではないかというふうに今思っておるわけでございます。
  203. 日野市朗

    ○日野委員 この問題について伺いますと、いつも返ってくる答えは、一本釣りとまき網というのは漁区の範囲でもそうはぶつかりません、それからとれたカツオの利用方法についても、そうはぶっからないのでございます、こういう話が出てくるわけですね。しかし、現実の一本釣りの業者なんかに聞きますと、やはり漁区の範囲内でもかなりトラブルを発生しているようにも聞きますし、それから利用方法なんかでも、結局まき網が大量にとる、そうすると一本釣りの今までのマーケットを非常に侵害してくるということがありますし、確かにそれは、一本釣りは形もいいし、魚体も損傷していないから生食に回せということはおっしゃるわけですが、早い話、一本釣りで釣ってきた魚だって、缶詰に回ったりふしに回ったりもしているわけで、そこいらの衝突というのは常にあるのではないでしょうか。
  204. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私ども一つ考えておりますことは、カツオ漁へのまき網の進出というのは、米国船を中心にして、現に相当のスピードで進んできておるわけでありまして、そういう意味ではまき網がカツオ漁の中で大きな比重を占めていくようになるという傾向自体はある意味ではなかなか阻止しがたい事態ではないか。したがってその中で、そういうまき網の進展がカツオに対する漁獲圧力の過大な増加につながっていくとかあるいはカツオの過剰生産につながっていくとか、そういう事態を回避しつつ、できるだけ摩擦のない形でまき網と釣りとの間の平和的な共存を維持していくということではないかというふうに私どもとしては思っているわけであります。  そういう意味では、まき網という事態に直面をして、私ども実施いたしましたように、トータルとしての漁業努力量が膨張するということを回避しながらまき網転換に対処していくということは、大筋において間違っていた政策ではないというふうにいまだに思っておるわけであります。  ただ、そうは申しましても、現在のカツオの市況というものはこのまま放置しておっていいものであるというふうには私ども思っておりませんので、関係団体の協力を慫慂いたしまして、今月に入りましてから釣り、まき網、それぞれの業界団体においてカツオの魚価対策のための一種生産調整を共同歩調で実施をするということに踏み切ったわけでございまして、また同時に、消費拡大対策どもいろいろ工夫をしておるわけでございまして、先生御心配のような問題についてはこういう形で手を打っていきたいというふうに私どもとしても思っておるわけであります。
  205. 日野市朗

    ○日野委員 それから資源問題について若干伺います。  カツオの場合は、資源的な賦存状況というものはなかなかつかみにくい魚種であることは私もそのとおりだと思いますが、ただ関係者の話をいろいろ聞いてみますと、まき網によってとにかく大きい魚も小さい魚も一緒くたにごそっととってしまうということから、資源的に悪い影響を及ぼしつつあるのではないかという心配をしている人が随分いるわけです。この点についてはいかがでしょう。
  206. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、確かにまき網の進出に伴いまして、殊に米国船を中心とするまき網の漁獲量が近年急速に増大をしておるということで、カツオの資源問題については国際的なフォーラムにおいてこれを検討しようという動きがここのところ急速に高まってきておりまして、我が国としても、こういう国際的に資源問題を検討するという試みに積極的に参加していきたいというふうに思っております。
  207. 日野市朗

    ○日野委員 資源問題については、わかりにくいところはあるとしても、日本の近海にずっと回ってくるカツオといいますと、これをねらうのは海まきもやりますし一本釣りもねらうわけで、ここいらについては資源の面、経営の面、双方から、いろんな観点からこれは見なければならないところでありますので、一本釣りそれから海まき、ここらの調整関係は十分にやっていただかなければならないだろうというふうに思います。  次はトロールでありますが、このトロールも、またとにかく底にいる魚をごそっととってしまうわけでございますね。これについてはいろいろ資源的な面から指摘がなされております。私もトロールを見ておりますと、こんな小さい魚までとってきていいのかという思いが常にするわけですね。私なんかが見ておりますと、トロールで揚げてきた魚のうち売り物になるものなんというのはそんなに多くありません。そういうものを選び出してあとは捨てる。そうするとそこにカモメがわっと群がっていって、それをえさにするというような状態でございますが、大体、このような状態でいいのでしょうか。これは率直な私の感想でございますけれども、どうお考えになりますか。
  208. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  確かにトロール漁業というのは先生御指摘のような資源への悪影響のおそれなしとしない漁法であることはそのとおりだと思います。したがいまして、我が国におきましては、資源保護のために、操業期間あるいは漁船のトン数、馬力制限、操業区域の制限等、がんじがらめと言っていいくらい厳しい規制のもとに底びき漁業を置いておるつもりであります。私どもとしては、これらの規制のもとで操業していただくのであれば資源に対する特段の悪影響はないというふうに思っておるわけであります。
  209. 日野市朗

    ○日野委員 特段の悪影響はない、こうおっしゃったんですが、トロールでとってくる魚について、関係者の指摘を申し上げておきましょう。漁獲がまず非常に少なくなってきたということが一つでございます。それから魚体が非常に小さくなってきたというようなことがございます。これは長官の耳にも既に達しておられるはずですね。魚体が小さくなってきたというのは、その種の維持がかなり難しくなってきたというようなことをもろに意味するわけでございますが、お考えとしてはどうですか。
  210. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私どもの見ておりますところでは、沖合底びき網漁業の漁獲量といいますのは、ここ数年大体八十万トンの近傍ぐらいで推移をしておるわけでございまして、特にそう下がりぎみであるというふうにも思っておらないわけであります。  ただ、率直に申しますと、沖合底びき網漁業の操業区域の中にはソ連水域も相当入っておるわけでございます。あるいは日本側の方の沖底の操業水域の中には韓国漁船も相当入ってきておるわけでございますから、沖底の漁獲対象にしております資源に対する漁獲圧力の影響というのが、我が国の沖底漁船の操業とだけストレートに結びつけて理解できるものであるかどうかというような問題もあろうと思いまして、私どもとしては、むしろ現在の段階では、我が国の底びきに対する規制措置を例えば韓国漁船に対して厳格に守ってもらうとか、そういうことの方に少なくとも私の気持ちの上で関心が向いておる現状でございます。
  211. 日野市朗

    ○日野委員 長官の関心がそちらに向くこともよくわかりますし、私もそれはわからないわけではないのですが、資源という観点から見た場合、沖底だったにしても、県知事許可の小型底びきであったにしても、海底をぐっと引いてしまうわけでありますから、これは海底における生態系というものを大きく変更してしまっているということは争えないことだと思うんですね。特に小型底びきなんかになりますと、海底のいわば魚の揺籃の場所というようなところもどんどん荒らしてしまう。これは沖底だって同じでございましょうね。やはり深いところにいる魚は深いところにいるなりに、それぞれの生活史を持ち、そこで成長してやっているわけですから、同じだと思います。沖合であれ、小型であれ、こういうトロール漁法というものについては私は一考せざるを得ないのではないかというふうな感じを強く持たざるを得ないのです。  それで、資源の面からも、これは識者からの指摘というのは随分なされているわけですが、じゃ経営の内容から見てみて、沖底にしても小型底びきにしても、もう経営自体が非常に苦しいところに来ているということについては認識としては共通するものがあるんじゃないでしょうかね。どうでしょう。
  212. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします  まず前段の方のお話でございますが、実は私、何と申しますか、外国の二百海里水域の中で操業する我が国の漁船の漁業権益を擁護する仕事をかつて長年やっておったものでございますから、そういう我が国の漁船の主力はトロール底びきでございますから、どうもそのトロール底びきを弁護することをなりわいとして月給をちょうだいしておったようなものでございますので、急に頭を切りかえるのは難しいのでございますが、ただ、先生おっしゃいました後段の、経営面から見て我が国の底びき網漁業というのは一つの転機に差しかかりつつあるという御指摘は、一つの御判断だろうというふうに思っております。  それで、私どもの見ておりますところ、漁業者の間にもそういう認識は逐次醸成されつつあるように私どもも伺っております。したがいまして、そういうことで業界の皆様方のお気持ちが合って自主的な減船が円滑に進むということであれば、私どもとしても喜んでお力添えをさせていただきたいというふうに思っておりまして、実は本年度から特定漁業生産構造再編推進事業につきましてローカル版をつくるというようなことにいたしておりますのも、先生今提起されておられますような御懸念に対するお答えでもあるというふうに思っておりますので、そういうことでお役に立てることであれば喜んでお手伝いをしたいというふうに思っております。
  213. 日野市朗

    ○日野委員 このトロールの話になりますと、実は宮城県の沖合でイカナゴと称する魚がおりまして、我々メロウド、こういうふうに呼んでおりますが、これがことしトロールによってかなりとられたという事態がございました。これは沖合も随分とったのでありますが、小型底びきも随分とりましたね。小型底びきというのは本当は網の目の規制がありまして、その網の目が守られていればメロウドという魚は入るはずがないのでありますけれども、これが大量に水揚げをされている。日によっては、一日に千トンものメロウドがとられたという事態があったわけでございますね。  本来は、この魚は春先に海面に浮き上がってくる、それを小型の漁船を操って網ですくい取るという漁法で今までとってきたわけです。ところが、ことしはそれが非常に不漁でございまして、それがどういうわけか海底に魚群を形成しておりまして、そこにトロールがどんと入っていって大量にこれをとったということがございました。この魚については、沿岸の小漁の漁師たちは資源保護という観点から自発的にこの漁期を短縮いたしまして、その資源保護の努力をしていた。ところがトロールに根こそぎこれをとられてしまうということで、非常に問題が発生をしておりました。このような事態については、これは水産庁としても御承知だと思いますが、いかがですか。
  214. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  御指摘の宮城県以南の太平洋岸でイカナゴ漁をめぐる底びきと沿岸漁業との間の関係に生じつつある問題については、私もよく話を伺っております。  それで、まず沖合底びきの方でございますが、私どもといたしましては、沿岸漁業との関係から見ましても、あるいはイカナゴの生態などを考えてみましても、沖合底びき網漁業によるイカナゴの採捕が自由に行われるということは問題があるというふうに考えております。現在これらの海域での沖合底びき網漁業は禁漁期となっておりますが、休漁明けの九月までをめどに、沖合底びき網漁業に対し何らかの対応策というのを検討をしていきたいと思っておるところでございます。  それから小型底びきの方でございますが、小型底びきにつきましては農林水産大臣が県別に総隻数、総トン数を決めて、そこから先の規制については知事にお任せをするということになっておりますけれども、本件につきましては、私ども、沖合底びきにつきまして今申し上げたような認識を持っておりますので、小型底びき網漁業につきましても同様の趣旨対策が行われるよう、関係県に対して何らかの指導をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  215. 日野市朗

    ○日野委員 私は、このイカナゴの資源というものがどのくらいあるかつまびらかではございません。恐らく皆さん余りよく知らないだろうと思うのです。まあローカルな魚とでもいいますか。しかし、それがこんなにも大量にとられたということになりますと、これは小船の漁業者のみならず、県の水産試験場あたりもかなり憂慮をしているわけでございますね。私は、この問題についてはかなり早い時期に水産庁の方にも問題は提起をしているわけでありますし、水産庁も県などとの協議にも入られたようでございますけれども、その協議の中で資源的な面からの検討ということはなさったのでしょうか。
  216. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、確かにこのイカナゴは大変ローカルなストックでございますので、私どもとして、資源の再生産の見地から見て許容される漁獲量の水準が幾らであるとか、そういう判断をお示しして議論をするというところまでは至っておりませんが、ただ私どもとしても、単なる調整問題だけではなくて、イカナゴの生態などから見ても問題であるというふうには認識をいたしておりまして、そういうことは皆さん方にもお話をしております。
  217. 日野市朗

    ○日野委員 この際問題になったことは、特に小型底びきの場合は、網目の規制を守っていればこの魚はとれないはずなのが、どんどんとられたという事態があるわけでございますね。こういう事態は一体どのように対処なさるおつもりでしょう。この間の監視の体制とか、これからも同ヒような事態が起きるとこれはゆゆしい問題になろうかと思いますが。
  218. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えをいたします。  私どもも気にしておる問題の一つでございますが、全体の規制のあり方について現在検討中でございますから、その中に先生の提起なさった問題も含まれておるということだけお答えをして、きょうのところはそこで御容赦をいただきたいと思います。
  219. 日野市朗

    ○日野委員 宮城県なんかも、監視船を一そうから二そうにふやすというようなこともなすったようなのでございますが、どうも沖合の連中がどんどんどんどん目の前で引いているときに、小型の連中に網の目を守ってイカナゴはとるなということはなかなか言えないというような思いが県側にもあるのではないか。これはあくまでも私の憶測でございますよ。県の方なんかに御迷惑がかかっちゃ悪いですから、私の憶測としてお話しするのですが、そういうことがあったのではなかろうかなというふうに思いますが、そのことが一つの問題を提起しているわけでございますね。何で沖底には網目の規制がないのだ、これは一つの大きな問題だと思います。  トロールでやっちゃいけないことは、稚魚なんかはできるだけ逃すということがやはり一つ考え方ではないでしょうか。稚魚だって放しておけばほかの魚に食われる、人間様がとってやった方がいいのだというような考え方もあるかもしれませんが、稚魚は稚魚で食物連鎖によって、ほかの魚が食って、ほかの魚がまた大きくなるというようないろいろな問題があるのでして、小さい魚までごそごそとってしまうということになりますと、これはトロールという漁法に加えて網目規制がないということは、いかにも不合理に見えるわけですね。いかがでしょう。
  220. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、沖底に対する取り締まりの問題でございますが、三陸沿岸におきます沖合底びき網漁業の取り締まりにつきましては、水産庁、海上保安庁、それから関係各県の相互の協力体制のもとに、巡視船艇、漁業取り締まり船によって常時取り締まりを行っております。特にことしの五月、仙台湾におけるイカナゴ漁問題が発生しました際には、沖合底びき網漁船の指導取り締まりのため、水産庁の監視船百二十トン型の船を一隻、当該海域へ派遣をいたしました。今後とも引き続き、関係機関と密接な連携を図り、効果的な漁業取り締まりを実施してまいりたいというふうに思っておるところでございます。  それから、沖合底びきの方に網目規制がなくて、小底の方にあって云々というお話でございますが、その点につきましては、休漁期明けを目途にして、このイカナゴ問題のための措置をどうするかということを目下検討中でございますので、そのパッケージとしての検討の中の一つ課題であるというふうに受けとめさせていただきたいと思っております。
  221. 日野市朗

    ○日野委員 これは私も余り言いたくないことなのですが、トロールについては、さっき長官が言われた言葉をかりれば、がんじがらめにしてやるのだ、こういうお話をなさいました。しかし、現実はがんじがらめにはなっていないのですね。何回も国会では、密漁対策という問題についての論議は今までなされました。しかし、ここらに非常に抜け穴があったというような感じが実はするわけです。  私どもに入ってくる報告によりますと、いろいろなトロール船が禁止線を越えるというようなことが日常茶飯事になっていて、かえってそこで小漁をやっている人たちとトロールとの間で、密漁を前提にした上でのいろいろな話し合いをしたり、そうやって調整したり解決をしたりした事例があるやに聞いておりますが、私は余り取り締まりを厳しくするというようなことは本当は好きではないのですけれども、本当にがんじがらめにしてやっているという言葉の実を示すためには、やはり監視体制というものを強化する必要があるのではないかというふうに思いますが、どうでしょう。
  222. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもの規制措置は守られるためにあるものでございますから、守っていただかなければなりませんし、そのためには適切なエンフォースメントがなければいけないというふうに思っております。  ただ同時に、我々の持っております取り締まりのための人員なり船なり、そういう意味でのキャパシティーというものもおのずと制約があるわけでございます。私どもは、基本的には漁業者の皆様方の自覚によって漁業秩序が維持されていくということでなければ、専ら私どもの取り締まりに依拠して秩序が維持されるという、そういう状態は想定してもなかなか実現しにくいのではないかというふうに思いますが、いろいろな規制措置の信頼性にかかわることでございますから、私どもとしてできるだけのことはやらなければいけないというふうに思っております。
  223. 日野市朗

    ○日野委員 もう一つの問題は、開口板でございますね。開口板というのは底びきの効率を上げるために非常によくできた道具でございます。この開口板によって非常に漁獲は上がるでありましょう。しかし、それと同時に乱獲ということも心配しなければならない。大体この開口板というのは、行われている地域は決して多いわけではございません。北海道だとか福島、茨城、それから宮城なんかは試験操業ということになっていますが、こういったものに対する沿岸の小漁をやっている人たちの、言うなれば怨嗟の的でございますね。これは何か考えられませんか。これは私伺うところによりますと、開口板を使わせるというのは一つ調整の結果であったというふうにも聞くわけですが、これは余りにも有効過ぎる、効率的過ぎる漁法ではないかというふうに思いますが、どうでしょう。
  224. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  先ほど来お答えしておりますように、宮城県沖のイカナゴの問題をめぐる底びきと沿岸との間の問題について、底びき側にどういうことをやるかということにつきましては、私どもも問題の所在は十分認識しておりますが、講ずべき措置につきましては今検討中でございますから、その中で個々の漁具についてどうするかということについて今お答えをし得るほど考えが熟しているわけではございませんので、しばらく猶予をいただきたいというふうに思います。
  225. 日野市朗

    ○日野委員 そうすると、このイカナゴを、九月の底びきの禁止期間が明けたときにまた同じような状態てトロールか入ってとるというようなことについては、水産庁としても何らかの処置はとられるおつもりだと伺ってよろしゅうございますか。
  226. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 先ほどお答えいたしましたのは、底びきに対してイカナゴの採捕を現状のように自由に認めるということについては問題があるという認識を持っておりまして、休漁明けの九月までということを目途に、底びき網漁業に対して何らかの対応策を検討中であるというのが現状でございます。
  227. 日野市朗

    ○日野委員 直に今度は資源問題をやっておきたいと思うのですが、日本の漁業生産力が戦時中は非常に低下をいたしましたね。そして戦後魚族資源が非常にふえたのですな。こういう事実はいろいろ資源を研究している学者の研究の成果に共通に指摘されているところであります。つまり現在の日本の沿岸における魚族資源が非常に危機的な状況になってきた、乏しくなってきたということは、こういう効率的な漁法でどんどん魚をとるということに一つの大きな問題があるのだというふうには考えられませんか。
  228. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  今先生お話が、戦争中満足な漁業活動が行えなかった結果、日本周辺の海域における漁業資源が、比喩的に申せば一種の処女資源の状態に一たん戻ってしまった、そういうことを念頭に置いて問題を提起しておられるというふうに解釈させていただいてよろしければ、そういう処女資源類似の状態になっていたものがMSY水準に見合うところまで下がってくるというのは、伝統的資源管理論の立場からいえばごく当たり前のことで、それ自体は一向に心配すべきことではないというのが伝統的な資源管理論の立場、考え方であったというふうに承知しております。
  229. 日野市朗

    ○日野委員 伝統的な資源管理論、余り小難しい議論にまで踏み込むことは避けたいと思いますが、そういうところを前提にした話がいろいろ展開をされるわけでございますね。つまり日本では効率的に魚をとり過ぎているだという反省がかなりなされているように私は思いますが、どうなんでございましょうか。  私は、こういう資源管理型漁業ということを水産庁が一生懸命言っておられて、それとこの効率漁業というのはかなり二律背反的な感じもしてならないのです。そこで効率漁業と資源管理型漁業との両立し得る線を探っておられるのかなとも思うのですが、とにかく日本の現在の漁業というのは、どんどん効率化してどんどんとっていくという方にのめり込んでいるような気がしてならないのですが、どうですか。
  230. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもの認識といたしましては、漁業といえどもやはり経営体の一種でございますから、そういう意味では、効率性を追求するというのは経営体としての内在的な要請を持っているものというふうに思っておるわけであります。したがいまして、それはそもそもけしからぬというふうに考えても何とも仕方のないことでありまして、資源保護の見地から見て有害な影響が生ずることを避けるためにいかなる規制措置を加えるべきであるか、そういう接近法で対処すべきものであるというふうに思っておるわけであります。  それから第二の点は、漁場の生産力を十分に活用いたしますためには、漁場の総合的利用と申しますか、複数の魚法が併存するということを少なくとも頭から否定するという考え方はとるべきではないというふうに考えておりまして、それは資源保護上あるいは漁業調整上の考慮に基づく各種の規制措置というのは当然なければならないと思っておりますが、同時にその複数の魚法が併存することがそもそもまかりならぬ、その中で効率的な魚法の方を排除すべきである、率直に申し上げてそういうふうには私ども思っていないわけでございますけれども、ただ、漁業調整なり資源保全の見地から見ての規制措置というのは周到に加えらるべきものであるというふうに思っておるわけでございます。
  231. 日野市朗

    ○日野委員 時間がありませんから、私の方も簡潔に聞きますし、ひとつ長官の方も簡潔にお願いしたいのですが、効率漁法を取り入れてやって経営が思わしくないというような状態というのは、私は非常に好ましくない状態だというふうに思います。これについて北海道で、資源評価もちゃんとやって減らすべき船はちゃんと減らすべきだろうし、廃業であるとか経営改善だとか、減船だとか休業だとか、そういった手法を取り入れて見直しをやろうということが今進んでいるようですが、こういう手法については水産庁はどうお考えですか。
  232. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもも基本的には大変結構なお考えではないかというふうに思っておるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、例えば特定漁業生産構造再編推進事業の対象を知事許可漁業にまで広げるというようなことを今回やりましたのも、実は先生御指摘の北海道で動いておるような事態をも念頭に置いたものであります。したがいまして、私どもとしては、もし業界の内部での検討が十分に進んで、道庁とも調整が図られて、本当に道庁も業界もコンセンサスがしっかりできた上で再編整備の具体案が固まるということになっていくのであれば、喜んでお手伝いをさしていただきたい、どういうお手伝いができるのか検討をしたいというふうに思っております。
  233. 日野市朗

    ○日野委員 時間がありませんので別の話題に移らしていただきますが、小名浜にソ連船が入ってくるということでございまして、もう既に何船が入ってきているわけですが、どうも右翼の妨害が非常にきついということのようでございます。これについて水産庁はどう考えておられますか。
  234. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 現在、ソ連船の寄港に際しまして一部の団体が小名浜港付近に集合して、寄港反対の抗議とか妨害行動を行うというような状態が起こっておりまして、それに対しまして警察側では多数の警察官を配備して必要な警備に当たっておりまして、違法な妨害行動に対しては検挙等の措置がとられております。水産庁といたしましては、ソ連との漁業交渉の一環として寄港を認めたものでございますので、その目的であるソ連漁船員の休養等が円滑に行われることになるよう、関係機関と連絡をとりながら対処してまいりたいというふうに思っております。
  235. 日野市朗

    ○日野委員 小名浜にソ連船を入れるということは、日本の船もソ連の港に入るというようなことも前提にしておりますし、それから日本の近海でも魚をおとりください、こっちもソ連の方の海に行ってとらしてもらいますよ、こういうことなわけでございますね。こういうソ連から船が入ってきたのに対して、日本国内からいろいろな妨害行動が出るということになりますと、そもそもの前提となっているいろいろな事項に悪い影響が出てくるのではないかと、私非常に憂慮いたしますが、いかがでしょうか。
  236. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 一般論でございますが、当然、交渉が妥結した以上は、交渉を通じて獲得したというふうに相手が思っておるものが現実にそのとおり享受できるということが、次の交渉のために一番よろしいわけでありまして、そうでないというのは、どういう形で影響があらわれるかわかりませんが、いずれにしてもいいことではないというふうに思っております。
  237. 日野市朗

    ○日野委員 これはひょっとすると国際問題化するおそれがあるのではないかというふうに私も非常に憂慮をいたします。外務省なんかではどういうふうにこの事態を見ておられるのか、外務省の見解を伺いたいのです。
  238. 秋山進

    ○秋山説明員 お答え申し上げます。  ソ連漁船の小名浜寄港に関しましては、種々の条件を付した上で本年に限り認めているものであります。ソ連側よりの個々の申請を一件ごとに審査の上、寄港を許可するか否かを判断してきております。  先生御指摘の右翼の活動によるトラブルに関連いたしましては、現在までに右翼の活動だけを理由にしてソ連漁船の入港を不許可とした事態はありません。また、政府がソ連との関係において国際信義を問われるような事態が生じているとは考えておりません。また、本件が国際問題に発展するとも考えておりません。しかしながら、寄港したソ連漁船の乗組員が右翼の活動により行動が著しく制限されるという事例が間々あるという報告には接しております。我が方といたしましては、かかる事態が正常であると判断しているわけでは必ずしもありませんが、外務省としてとり得る措置は限られており、現在何らかの特段の措置をとるということは考えておりません。
  239. 日野市朗

    ○日野委員 どうも非常に慎重なお答えでございますが、もし日本国民とソ連船員との間にいろんなトラブルが発生したということになれば、これはゆゆしい問題になるだろうというふうに思うわけでございますね。その点について、外務省は御心配はなさっておられないのですか。
  240. 秋山進

    ○秋山説明員 お答えいたします。  今先生御指摘の点に関しましては当然心配しておるわけでございまして、警備当局が十分その点を配慮して、対処をいたしております。
  241. 日野市朗

    ○日野委員 外務省というのは気楽なといいますか、それはそうでございましょうが、日ソ間の関係が悪化しないように、そこはひとつ積極的な努力をお願いしたいというふうに思います。  それから警備当局の方にも伺いたいのですが、これは万が一にもソ連の船員と日本人との間にいろいろトラブルがあるとしたら大変なことになるので、そんなことのないように厳にお願いをしたい。このことについては十分対処をしていただけるというふうに思っておりますが、要は、そういう直接の問題ばかりではなくて、小名浜ですからいわき市でございますか、その市の対応、それからソ連の漁船員たちと商取引に携わる人たち、そういう人たちとの間でトラブルがあるというふうに聞いておりますが、そういうものに対してはどのように対処をなさるおつもりですか。これはソ連の漁船員であっても、日本に入港を許可され、上陸をさせられれば、その人たちの利便を図るためにしかるべき措置はなされなければならないと私は思いますが……。
  242. 常石和夫

    ○常石説明員 お答えいたします。  ソ連漁船の小名浜港入港に対しまして、右翼は、小名浜をソ連のスパイ基地にするななどと称しまして、第一船が入港しました本年の三月五日以降、第十二船が出港しました本月の一日までの間に、延べ二百八十二団体、約千八百人、四百三十七台の街宣車を繰り出しまして、現地で各種の抗議活動を行っております。  これに対して、警察といたしましては、右翼の違法行為は絶対に看過しない、停泊期間中におけるソ連漁船及び漁船員の安全を図るとともに、地域の住民の安全と平穏を確保する、こういう基本方針のもとに、一日最大千三百人、延べ一万五千人の警察官をもって厳重な警備、警戒を行っております。この間、公務執行妨害あるいは器物損壊などで九件、十五人を検挙しているところでございます。  先ほど、関係機関などに対する右翼の行動は目に余るものがあるというようなことを言われておりますが、この彼らの抗議行動につきまして私ども承知しておりますのは、県の出先機関、市役所、代理店、バス会社、ショッピングセンターなど十七カ所に対しまして、延べ六十二回にわたって彼らの抗議行動が行われたというように承知をいたしております。  その間に、五月九日には、右翼の大行社員が三洋海運小名浜支店へ抗議に赴いた際、施錠がされておりまして中に入ることができなかったものですから、これに憤慨をしてドアを足げりしたので、器物損壊容疑で現行犯逮捕をいたしております。  その他の抗議に際しましては、必ず現場に警察部隊を配置をいたし、必要により警告、制止の措置をとるなど、所要の警戒を行うとともに、抗議対象になった方々に被害の有無を伺っておりますが、現在までのところ、被害の申告を受けてはおりません。また、警察としても、それ以外に違法行為は現認していない状況でございます。  以上でございます。
  243. 日野市朗

    ○日野委員 時間がなくなっちゃったのですが、最後に、この問題について大臣、どうお考えですか。
  244. 山村新治郎

    山村国務大臣 本問題につきましては、福島県そしてまた福島県漁業協同組合連合会、これを通じまして関係漁業者にも連絡をしながら理解を求めてきたところでございますが、ただ、外交交渉上の機微に触れる問題もございまして、十分事前にこの相談をしてなかったということで、地元の住民の皆さんに御迷惑をおかけしたということは心苦しく思っております。しかし、今回この寄港ということによりまして、我が国のソビエトにおけるいわゆる漁場の確保、これらも含んでいろいろな大きな問題もございますので、今後とも地元の皆さんと種々協議をいたしましてやってまいりたいと思います。ただ、今警察庁から答弁いただきましたように、正常な秩序の維持、これはお願いしてございますが、また寄港の時期、それから寄港の回数、そのほか種々の制限等を加えながらやってまいっておる、それが現状でございます。
  245. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  246. 阿部文男

    ○阿部委員長 斎藤実君。
  247. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 きょうは日本中央競馬会理事長の内村さんが参考人としておいでになっておりますので最初に御質問いたしたいと思うのですが、中央競馬会が設置されてから九月で約三十年になるんですね。その間、日本中央競馬会の努力によりまして、一応ギャンブルといいながら大変ファンが多いわけです。そのために今日まで努力をされたことに対して敬意を表する次第でございます。日本中央競馬会の仕事の内容については申し上げませんけれども、競馬の健全な発展を図るとか、あるいは調教師とかあるいは騎手の免許を与えるとか、その他競走馬の育成とかいろいろありますけれども、事が事柄の事業でございますので、厳正かつ国民の期待にこたえなければならぬという公正な立場というものも私は大事だろうと思うのですね。そういう意味で、日本中央競馬会を代表する理事長さんが、この日本中央競馬会にかかわる基本的な姿勢と申しますか、哲学と言っていいかどうか知りませんけれども、そういった基本的なことについてどうお考えになるのか、最初にお尋ねしたいと思います。
  248. 内村良英

    ○内村参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたように、国営競馬から中央競馬に変わりましたのが昭和二十九年でございます。そのときのいわゆる勝馬投票券と申しますか、馬券と申しますか、その売上高が大体百億だったわけでございます。それが今日では一兆四千億ということで、百倍近い成長を遂げてきたわけでございます。これは、公営競技として日本の社会の中に健全な娯楽として定着してきたということもございます。と同時に、我々中央競馬関係者が一体となりまして競馬の発展に努めてきた。特に競馬の場合一番大事なのは公正確保でございます。我が国の競馬の歴史を見ましても、明治四十一年に非常に八百長騒ぎが起こりまして、社会問題になって、馬券を売る競馬が中止になったわけでございます。それが大正十二年に非常に制限された形で勝馬投票券が復活いたしまして、その後戦争中を経て今日まで発展してきたわけでございます。  したがいまして、公正確保というのは競馬の発展維持の本当の中核でございまして、私どもは絶えず公正確保、健全なよいレースを提供するということに努力してきたわけでございます。そのことは欧米諸国でもそうでございまして、施行者が堕落した場合はそこで八百長問題等が起こって競馬が衰えているというような歴史がたくさんございます。したがいまして、公正確保を中心にファンに対してよいレースを提供する。同時に競馬馬の生産に当たっている方は農民の方々でございますから、生産対策等も十分留意しながら今日までやってきたわけてございますが、最近いろいろ公営競技陰りが見えております。と申しますのは、若者の公営競技離れとかレジャーの多様化とか、いろいろな問題がございまして陰りが見えておりますけれども、その中にあって中央競馬だけは何とか昨年以上の売り上げを維持しておるわけでございますが、今後、ただいま申し上げましたようなことに留意しながら健全な発展を図り、同時に国家財政にも貢献しているわけでございますから、そういう点も考えながら仕事をしていきたいと思っております。
  249. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 ぜひ理事長日本競馬の公正の確保と健全な発展ということに努められて、ファンの期待にこたえていただきたい、こう思うわけでございます。  次に、日本中央競馬会の調教師の免許制度と厩舎管理についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、この調教師の免許は御承知のように年一回競馬会が行う免許試験、これは更新試験を含むわけでございますが、この免許試験によって決定をするわけでございますね。このことは、調教師という職業が専門的でなければならないし、また技術的な能力を要求されるからでありまして、これはあくまでも個人に与えられる資格、権利、ライセンス、こう私は理解をいたしておるわけですが、この調教師の資格と役割、平たく言いますと業務内容についてお伺いをいたしたい。
  250. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  競馬が国民大衆の健全なレジャーとして発展していくためには、ファンに喜んでもらえるいいレースを行うとともに、公正な競馬を施行していくということが基本でございます。〔委員長退席、衛藤委員長代理着席〕  こういった観点から、調教師の役割というものも、馬主から預かりました馬が公正かつ最良のコンディションでレースに出走できるように馬の飼養管理を行うとともに、その馬の調教を行うことであるというふうに考えております。そういう意味で、競馬法では日本中央競馬会が行う免許を受けた調教師でなければ競走馬の調教はできないということにされておるわけでございます。
  251. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 調教師が免許を受けなければ調教師としての仕事はできない、これはわかりました。  この調教師がどういう仕事をするのか、その業務内容についてお尋ねをしたい。
  252. 内村良英

    ○内村参考人 調教師の仕事は、馬主から馬を預かりましてこれを飼育管理するとともに、最良の状態で競走に出走できるよう馬を調教するわけでございます。と同時に、馬を出走させる場合は、馬主にかわって出馬登録等を行いまして、自己の管理馬を出走させる日には競馬場へ臨席する義務を負っております。また、調教、飼育管理を行うための補助として調教助手や厩務員を雇ったり、騎手と騎乗契約を結ぶ等、厩舎の労務管理も重要な仕事でございます。
  253. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 調教師は馬房といいますか、これは日本中央競馬会から貸し付けられるわけですね。間違いございませんか。  そこで、この馬房、普通一般的に厩舎と言っておりますけれども、厩舎貸付制度の根拠というのは一体何でしょうか。
  254. 内村良英

    ○内村参考人 現在中央競馬会の厩舎は美浦のトレーニングセンターと栗東のトレーニングセンターにあるわけでございます。もちろん出張する場合には競馬場の厩舎を使うこともございますけれども、原則として貸付馬房は二つのトレセンにございます。これには貸付基準がございまして、それに基づいて貸し付けをしておるわけでございます。
  255. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 厩舎を貸し付ける制度について、私はこう理解しているのですね。  調教師に馬房を貸し与えられるという第一の条件は、適正規模の競馬施行をやらせることだ。それから、二番目には厩舎を施行者の、これは日本競馬会ですが、施行者の管理体制のもとに置くことによって公正な競馬を施行することにあると私は理解をしているのですが、いかがでしょうか。
  256. 内村良英

    ○内村参考人 大体そのような御理解のとおりだと思います。
  257. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次にお尋ねをいたします。最近、一部の調教師が競馬会から借り受けた厩舎を法人組織にして運営管理をしていると聞いておるわけでございますが、調教師が法人組織をつくっているというのは何社あるのか、その実態を農林省はどういうふうに掌握をしているのか伺いたいと思います。
  258. 野明宏至

    ○野明政府委員 厩舎を法人のような形に組織化いたしておりますいわゆる厩舎法人は、ことしの八月一日現在で、調教師全体は二百二十四人おるわけでございますが、そのうち美浦のトレーニングセンターに三十二法人でございます。それから、栗東のトレーニングセンターに二法人、合計三十四法人と承知をいたしております。
  259. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今御答弁かございましたように、調教師の数が二百二十四人、それから美浦トレーニングセンター、栗東トレーニングセンターで、合計三十四社ですね。  そこで、調教師の法人組織化という事実を農林水産省はどういうふうに認識しているのか、お伺いしたいと思うのですし、もう一点は、法人化するときには農林省あるいは中央競馬会に相談をされたのかどうか、この二点だけお尋ねをしたいと思います。
  260. 野明宏至

    ○野明政府委員 第一点でございますが、厩舎法人につきましては、その大部分が厩舎の経理事務を合理化していくというふうな観点で法人化しておると聞いております。競馬法におきましては、免許を受けた調教師でなければ馬の調教をすることができないというふうに規定されておるわけでございますが、これは競馬の公正確保といったような観点から、競馬の施行に重要な役割を果たしております調教という行為につきまして、資格を持った者が行わなければならないということを決めておるわけでございます。厩舎法人の業務の現状から見ますと、厩舎法人は競馬法上特に問題はないと考えておるわけでございますが、同時に、今後とも競馬の施行を公正にやっていくというふうな観点から、問題が生じないようよく見守っていくこととしたいと考えておるわけでございます。  それから第二の点でございますが、調教師が厩舎法人を設立するに当たりまして、私ども個々に相談を受けているということはございません。
  261. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 再度お尋ねいたしますが、日本競馬会は調教師に対してライセンスを与えているのか、あるいは法人に対して与えているのか、いかがですか。
  262. 野明宏至

    ○野明政府委員 調教師の免許は個人に与えているものであるというふうに理解をいたしております。
  263. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 それではまた具体的に……。厩舎の経営に当たっている三十四社の法人組織は、個人の調教師が自分の厩舎または自宅を有限会社だとかあるいは株式会社本店にしているわけですね。それで代表取締役とかあるいはその他の役員に本人がなっている場合もあるし、配偶者がなっている場合もある。登記の事業目的を見ますと、一つは厩舎の管理業務それから馬匹の育成と改良、競走馬の調教、管理、こうなっているわけですね。したがいまして、これは本来調教師個人が行う業務と同じなんです。このほかに業務目的を別にしているところはまたあります。それはまた後で触れますが。  私は、調教師の免許は調教師個人に専属的に与えられたものであり、ライセンスだ、この業務目的も同じである、したがいまして、法人が馬の調教、育成及び厩舎の管理を行うことは競馬法上問題があると思うのですが、いかがですか。これは個人でやるものを業務内容に登記しておるわけですが、なぜ法人にしなければならぬのか、いかがですか。
  264. 野明宏至

    ○野明政府委員 厩舎法人の定款上の目的でございますが、これは法人によっていろいろなものがございます。ただいま先生がおっしゃられたようなものを掲げているものもございますが、大体厩舎法人に共通する目的は、競走馬の調教、管理とか、あるいは中央競馬会が貸与いたしております厩舎管理をうたっているものが大部分でございます。  そこで、この点についてでございますが、もちろん競走馬の調教というのは、当然競馬法上その免許を受けた調教師でなければ行うことができないわけでございます。現にまた調教師が調教を行っておりますれば、調教師が厩舎法人の役員となっておりましても、競馬の公正確保といったことを目的といたします競馬法上特に問題はないと考えておるわけでございます。  ただ、調教師が個人として行うべき行為を法人が行っているというふうな疑念を生ずることがないように、この点については法人の目的の設定の仕方があろうかと思います。したがいまして、こういった点については、検討の上、適切な指導をしていくというふうにいたしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  265. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 局長、こういうふうに理解してよろしいんですか。馬房は中央競馬会と調教師個人との契約、したがって先ほどの答弁で、この馬房は法人に貸しているわけじゃありませんでしょう。いかがですか。
  266. 野明宏至

    ○野明政府委員 これは調教師に貸与しておるものでございます。
  267. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 そうなりますと、中央競馬会がその馬房を調教師に貸して、調教師から法人に貸しているという格好になる、こういうことになりはしませんか。
  268. 内村良英

    ○内村参考人 ただいまの点でございますけれども、厩舎法人の定款に掲げられております調教、管理、厩舎管理は、調教師が行う調教行為や厩舎管理の事務手続や経理事務の処理等をその会社に委託しておるわけでございます。したがいまして、調教はあくまで調教師個人が行うべきことでございまして、それに伴ういろいろな事務処理、特に頭数が非常に多いというふうな厩舎ではなかなか事務処理もうまくいきません。しかもはっきり申しますと、調教師の多くの人は、もう小学校を出れば馬に乗ってジョッキーでやってきた人が多いわけでございますから、最近のような複雑な経理事務もなかなかうまくできないというようなこともございますので、法人をつくってそういう事務を委託しておるわけでございます。したがいまして、調教行為自体をそういう法人に委託しておるということではございません。
  269. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 そのことについてはまた後で詳しく事例を申し上げます。しかし、今私が申し上げましたように、中央競馬会が個人に貸している、調教師と中央競馬会との契約になっておる、これは間違いありませんでしょう。しかも法人になっているということについては、中央競馬会が法人に貸しているわけじゃないですね。これははっきりしていますね。よろしいですな。そして調教師がまた法人に貸しているというふうに私は認識をしているのです。その具体的な例はまた後で申し上げます。  次に参りますが、中央競馬会が貸し与えているトレーニングセンター内の厩舎を本店登記しているもの、または業務目的が厩舎の管理になっているものについては、美浦、栗東に限りまして、その借りている国の管轄下にある中央競馬会の厩舎を根拠にしている、例えば府中だとか東京都だとかあるいはどこだとかいうふうに本店を持っているんじゃなくて、中央競馬会が貸し与えている調教師個人の厩舎を本店登記しているというのは何社ありますか。
  270. 野明宏至

    ○野明政府委員 厩舎法人の本店の所在地でございますが、全体で三十四厩舎法人があるわけでございますが、競馬会の施設の外にあるものが多いわけでございますが、一部の法人につきましては競馬会の施設内にあるものもございます。その数は三十四法人のうち十一でございます。
  271. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 局長、調教師本人が中央競馬会から借りている馬房を根拠に法人に、本店にするということについては、最初から個人と中央競馬会との賃貸契約になっているわけでして、こういうことについておかしいと思いませんか。御答弁いただきたいと思います。私は法人が悪いと言っているわけじゃないですよ。
  272. 野明宏至

    ○野明政府委員 厩舎法人の所在地が競馬会の施設の中に置かれているということにつきましては、業務の実態上から直ちにそれが競馬の公正確保の面とかあるいは調教師の厩舎経営面で特に問題が出てくるというふうには思われないわけでございます。ただ、調教師個人に貸与しております場所に厩舎法人の本店の所在地が存在するということは、ややもしますと紛らわしい点がございます。したがいまして、そういう点につきましては、中央競馬会におきましても今後法人の本店所在地は競馬会の施設の外へ移すように指導していきたいというふうなことで現在やっておるわけでございます。
  273. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは中央競馬会と法人との契約であれば私は何も申し上げることはないんです。そうでしょう。調教師個人と中央競馬会との賃貸契約です。じゃ仮に、そういうことになれば、二百二十数名いらっしゃいますが、今まで三十数社のうち十一社認められているんだから、じゃうちもつくろうというふうにずっとなりやしませんか。それはいかがですか。
  274. 野明宏至

    ○野明政府委員 そういうふうな点もございますので、これから、現在施設内に所在地があるものについては施設の外に移すように指導してまいりたいと考えておるわけでございます。
  275. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 お尋ねをいたしますが、馬主と調教師が馬を入居させるときに契約があるわけですね。預かるわけですから預託契約。それから預託料及び進上金は調教師個人に払う契約になっていると私は理解しているんですが、馬主と調教師の契約は、これは間違いですか。そのとおりですか。
  276. 内村良英

    ○内村参考人 御指摘のとおりでございます。  進上金につきましては、要するに競馬で勝った場合の入ってくるお金でございますけれども、八割を馬主が取りまして一割を調教師が取る、それからあとの五%ずつを騎手と厩務員で分けるというのが大体のやり方のようでございます。
  277. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 そうしますと、馬主と調教師の契約になるわけですね。そのとおりだと御答弁ございましたね。そうしますと、この預託契約、それから預託料及び進上金、これは会社と契約することができるのかできないのか、いかがでしょうか。
  278. 内村良英

    ○内村参考人 それはあくまで調教師と馬主との契約で支払われる対価でございます。
  279. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 ここに私は矛盾を感ずるのですね。あくまでも事柄の性質上、今いみじくもおっしゃいましたが、馬主と調教師ということ、また調教師のライセンスとか技量とかそれから人間性とか、いろいろあるだろうと思いますけれども、馬主が信頼をしてその調教師個人と契約している。それでは法人になった場合、調教師が代表者でない場合には一体これはどうなるのかという矛盾が出てくる。したがいまして、これは法人といえども皆役員なんです。代表取締役です。二枚看板なんです。これもちょっとおかしいんじゃないか。片一方じゃ馬主と調教師が個人契約をする、法人ではない。しかも片一方では法人の代表者なり役員になっている。紛らわしいし、だれが見てもこれは不自然だと私は思うのです。いかがですか。
  280. 野明宏至

    ○野明政府委員 調教師の業務につきましては先ほど理事長からもお答えがあったわけでございますが、そういった調教師の役割なり業務を果たしていく上で、やはりかなり仕事の範囲が広くなってまいっております。したがいまして、いわば経理事務の合理化というふうな観点から、その一部についてそういった観点からの法人組織化というふうなことでいわゆる厩舎法人というものができているのではなかろうかと思うわけでございます。そういうことで厩舎法人はできておるわけでございますが、調教師そのものの行為というものはきちっと行われているということであれば、そこのところは先生おっしゃいますように、調教師というものが存在し、他方、厩舎法人というものが存在するわけでございますが、それだけをもって競馬法上の問題ということにはならないというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  281. 内村良英

    ○内村参考人 補足説明をさせていただきます。調教師と会社との間に契約があるわけでございます。その契約に基づきまして「管理会社は調教師の厩舎経営に附随する会計業務の一切および調教師としての資格を以ってする業務以外の業務を代行し、又は、受託管理する事を本契約に基づいて行なうものとする。」ということで、そこに委託の契約があるわけでございます。したがいまして、調教師がそれを受けてそれを処理することを会社が受託している、こういう関係になっているわけでございます。
  282. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は、最初から申し上げましたように、法人がいけないということを言っているわけじゃないのです。公正を確保しなければならないし、厳正な執行をしなければならない中央競馬会が管理責任があるわけです。そうでしょう。そういう意味で、契約はあくまでも中央競馬会と調教師の間だ、こうなっておるわけだ。それから馬主と調教師の契約も、調教師と馬主との契約になっておるわけだ。したがいまして、そういう観点からいきますと非常にすっきりしないというか、複雑だというか、何でそういうものをつくらなければならないのか。後で触れますけれども、中央競馬会と調教師との間の契約の原則、信義とかそういうものに反するのではないかというふうに私は理解をしているのです。  それじゃお尋ねをしますが、厩舎管理は法人組織でもいいというのであれば、法人組織にしなければならぬ目的あるいはメリット、利益といいますか、これはどういうふうに理解をしていますか。管理責任者としての中央競馬会あるいは監督官庁の農林省はどうお考えですか。建前ではなく本音の話を聞かしてください。
  283. 内村良英

    ○内村参考人 先ほども御答弁申し上げましたけれども、いわゆる調教師という人たちは小学校を出てから騎手としてやってきたという人が多いものでございますから、いろいろな社会保険その他こう複雑になってまいりますと、とても事務処理ができないというところから、そういうことをそういう会社に委託してやるということは一つのメリットではないかと私は思います。ただ問題は、ただいま先生から、何か世間の疑惑を招くおそれがあるのではないかという御指摘がございますけれども、調教行為自体を法人がやるということは絶対許されないことでございますから、そういう点は定款上も明確にしなければならない、こういうふうに思っております。
  284. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 またそれは後で触れますけれども、これらの会社の登記簿謄本の業務目的を見ますと、家畜の販売もしくは競走馬の販売あっせん等を掲げている法人があるわけですね。名前は差し控えますけれども、Oさん、Sさんと言っておきましょうか、これは私は問題だろうと思うのですね。いかがですか。
  285. 野明宏至

    ○野明政府委員 家畜商法に基づきまして家畜取引の事業というものは家畜商の免許を持っている者がやるということになっておるわけでございます。それで、軽種馬の取引を明確にしていく、また、その取引を公正なものとしていくというふうな観点からいたしまして、中央競馬会におきましては調教師に対しまして家畜商の行為というものは行うことがないよう指導をいたしているわけでございます。  調教師がつくっておりますいわゆる厩舎法人におきまして、その法人の目的の一つに家畜の売買とかいうふうなことが掲げてあるということは、どうしても外見上、調教師が家畜商の行為に関与しているんじゃないかというふうな、いわば疑惑を生ずるおそれなしとしないというふうなことがございますので、こういったことのないよう、この点については中央競馬会を指導していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  286. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 好ましくないから指導してきた、これから指導するというふうに言われるが、現実にまだ登記の中にこういう業務目的を掲げている法人があるんですよ。これはどうしたんですか。
  287. 野明宏至

    ○野明政府委員 その点につきましては、ただいま申し上げましたような趣旨で指導をいたしておるわけでございますが、私ども承知いたしておりますところでは、そういった行為を事業目的に入れておりますのが二つあったわけでございます。うち一つは既に定款上からも削除いたしております。残る一つにつきましても、近くこれを削除する手続がとられるというふうに聞いておるわけでございます。
  288. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 先ほど公正な競馬を執行する、あるいは健全な育成発展のために努力するという御答弁がございましたが、これは業務管理の責任があると私は思うんですね。日本中央競馬会も監督上の責任は農林省にある。再三にわたって指導している。なおかつ、まだ登記上にそういう業務目的を載せているところが現にあるわけです。この点、厳正にやるという農林省あるいは競馬会の姿勢というものが極めていいかげんだと私は思うんですね。これはもう懲役問題ですよ。  今あなたが指摘されましたように、家畜の販売は家畜商法によって規制されているわけですよ。都道府県の知事の家畜商の免許を受けなければ販売業務はできないことになっている。よく御承知でしょう。調教師が家畜の販売をするということは調教師本来の役割からして明らかに違法なんです。私は先ほどずっと答弁を聞いておりまして、本気になってこういう違法行為に対しては適切な、果敢な処置をして国民に疑惑を与えない、そういうような姿勢をとらなきゃならないと思うのです。事柄がギャンブルですからね。たとえこういう一つの事例でもそのままにしておくということは、監督官庁としては極めて遺憾だと私は思うんですね。  だから、法人に貸したからこういうことが出てくるわけでしょう、そうでしょう。法人にしなきゃこれは出てこないと思う。そうでしょう。個人だったらこういう商売はできないじゃないですか。いかがですか、局長
  289. 野明宏至

    ○野明政府委員 厩舎は中央競馬会から調教師に貸してあるわけでございまして、これは公正な競馬を確保していく上でやはり施行者が管理していく、それを、いわば公正な競馬ができるようにという趣旨で調教師に厩舎を貸してあるわけでございます。  そこで先ほどの、家畜の販売とか売買ということが定款に書かれているものがなお一件残っているわけでございますが、これは定款上からも近く削除されることになるというふうに聞いております。  ただ、それでは現にその厩舎法人が家畜の売買をやっているのかどうかという点につきましては、これはなかなか、どういうふうにこれを見るかということがございますが、やはり調教師がやっております事柄といいますのは、馬を選んでいくという場合に馬主との関係におきましては助言をしていく、あるいは技術的な観点からの行為というふうな範囲にとどまっておるというふうに理解をいたしておるわけでございますが、そういった助言的あるいは技術的行為を超えるようないわゆる売買というふうなことになりますと、これはやはり家畜商法との関係でも問題でございます。したがいまして、先ほど申し上げたような趣旨で競走馬の取引というものとの関連は整理をいたしまして、中央競馬会においても指導をいたしておるわけでございます。
  290. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 このことにつきましては、十年前から日本中央競馬会理事長通達も出ておるわけです。よく御存じでしょう。それから農林水産省の行政指導もされていると聞いておる。今局長から、実際のそういう家畜販売行為はなかったという答弁がありましたけれども、それで済む問題ではないと私は思うのですね。そうでしょう。十年前からそういう指導をされ、なおかつ世間の疑惑を招くような――公正な競馬執行の理念に反するし、疑惑を持つ、私はこういうことを心配するから申し上げるのでありまして、これは理事長、きのうきょうの問題じゃないのです。  今局長の話を聞きますと、近々また注意をするという話でしたけれども、いみじくも先ほど理事長が公正な競馬とかあるいは健全な発展のためとかとおっしゃいましたが、私もそう思っています。しかし、こういうことが今まで十年間も放置されてきた、この責任は私は極めて大きいと思うのです。理事長、いかがですか。
  291. 内村良英

    ○内村参考人 ただいま御指摘のように、昭和四十九年の四月に中央競馬会理事長の名をもって、調教師が家畜商の行為を行うことはいかぬということを指示したわけでございます。私どもといたしましては、調教師の免許を更新するたびにこの点もチェックいたしまして、今日までのところ、そのような行為をした者はございません。  ただ、厩舎法人の定款の中に一社、家畜の販売ということが業務内容として残っておりましたことは、ある意味では私どもの手落ちでございます。ただ、これは届け出義務も何もないものでございまして、もうちょっと厩舎法人の定款まで詳細に常にチェックしていればよかったわけでございますけれども、届け出義務が彼らにあるわけではございませんので、競馬会の手落ちであるというふうに御指摘いただけばまさにそのとおりでございますので、役所の御指導もございますから、至急定款から削除するように指導したいと思います。
  292. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 調教師が法人にした、これは、何人も法人にしちゃいかぬということはないわけです。しかし、事柄が競馬の調教に当たる調教師ですから、仮に法人にして、調教師の身内か何か知りませんが、たくさんなっていますわ、そこへ第三者が介入して意図的に不正行為を行う危険が十分にあると私は思っている。個人ならそんな心配はありませんよ。可能性は十分考えられる。過去にもそういったいろいろな問題も私は知っておりますが、事競馬に関しては、もし世間の信頼を失うようなことになれば私は大変なことだと思うのですね。  したがって、少なくとも厳正を旨としなければ国民の信頼を失うのではないか、また、そうすることが競馬の公正の確保ということにもつながるのではないか。だから、法人にした、いろいろな第三者が介入する、これは私だけじゃなくて国民の皆さんもやはり心配しておるところである。大臣、これは今までなかったからといって安易に考えてもらっては困る。本来、ライセンスは調教師個人に与えられる。法人に与えたのじゃないのです。しかも、そこへ第三者が介入して不当な行為を行うような心配ができてからじゃ遅いから私は申し上げているのです。大臣、率直なお気持ちをお聞かせください。
  293. 山村新治郎

    山村国務大臣 競馬は国民大衆の健全なレジャーで、そしていわゆる公正な競走を確保することが一番の基本であると思いますが、今先生おっしゃいましたように、いささかもそのような疑惑を持たれることがあってはならないと思いますので、今後強力に指導してまいります。
  294. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 調教師が本来自分でやらなければならぬ調教を、法人をつくって、そこへ第三者が介入して、本来の調教師の目的をゆがめられたら困ると思って私は心配しているわけだ。それについて大臣はどうお考えなのか伺いたいと言っているわけです。
  295. 内村良英

    ○内村参考人 ただいま先生の御指摘の点は、まさに非常に重要な点でございます。そこで、私どもといたしまして、厩舎法人について、その点につきましてはこのように考えているわけでございます。  御案内のように、最近非常に厩舎関係者の所得もふえまして、競馬が社会に定着すると同時に彼らの社会的なステータスも上がってきたというところから、調教師及び厩舎関係者が八百長など仮にすれば自分の地位を失う、一切失うというようなことになりますので、そういう点では非常によくなってきておるわけでございます。  そこで、この厩舎法人の問題でございますが、御案内のように三十四のうちほとんどすべて、一社違いますけれども、有限会社でございます。有限会社の場合は社員数も少なく、非公開性、閉鎖性、非公衆性もございますので、大体家族経営の延長みたいなものでございます。したがいまして、一般の公開されている会社のように第三者が参入してくるということはまずほとんど考えられないということでございますので、有限会社という形態をとっておる限りその辺の心配は余りないのじゃないかと思っております。  いずれにいたしましても、最初に申し上げましたように公正確保ということは競馬の基本でございますから、今後なおその辺は十分注意しながら指導していきたい、こう思っております。
  296. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 特にまた後でその問題については触れたいと思いますが、この調教師の仲介手数料の問題については、これは昭和五十四年度日本中央競馬会の調査報告に基づいても事実は明確に指摘をされておるわけでございまして、昭和四十九年の先ほどお話をされた理事長通達でも、調教師は実費相当と認められる金品を超えるものを受領してはならないというふうに厳しく指導されておりますが、この仲介手数料は依然として調教師が取っておる。  なぜ私は申し上げるかというと、日本軽種馬生産中心である北海道の日高地方では、生産者の八割までが調教師からこの仲介手数料を取られている。これは私ども調査において回答があったわけですが、一つや二つの例ではない。ほとんどの生産農家がそのような手数料を払わされておる。中小零細生産者ですよ。一頭とか三頭とか五頭とか、手塩にかけて優秀な競馬馬を養成するために努力をしてきた。ところが、馬主の依頼を受けた調教師が高く買ってやるからとリベートを要求する。生産者は弱い立場にありまして、買ってもらいたいから泣き泣きリベートを支払わされておる。これは中央競馬会でも調査済みだと思うし、こういうことが行われていることは調査結果でも明らかだと私は思うのですが、こういう状況生産者が非常に疑惑というか不信というものを抱いておる。生産意欲を失わせておる。こういうことについて競馬会がよく実態を承知してどういう指導をされているのか、伺いたいと思います。
  297. 内村良英

    ○内村参考人 先生御案内のように、調教師が馬主の代理行為をするということは認められているわけでございます。その場合、適正な手数料と申しますか実費と申しますか、そういうもの以外は取ってはいかぬというふうに指導しているわけでございます。  そこで、私どもはその線に沿って当然そうした代理行為が行われているだろうとは思っているわけでございますけれども、実は御案内のように、子分けという取引形態もございますし、いろいろな取引形態もございまして、個々の取引について一体どうなっているのかということが必ずしもはっきりしないわけでございます。しかしながら、競馬馬を登録させますときに売買契約書をつけさせていますので、その面で大体そういった不正があるかないかということはチェックできるようになっているわけでございます。  ただ、いわゆるリベートと申しますか、その辺になってきますと、個々の取引の場合はなかなか把握しにくい。しかし、売買契約書は中央競馬に出走する馬として登録するときにそれを添付しなければならぬというふうにしておりまして、その面から問題は把握できるようにはなっているわけであります。
  298. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは理事長、私はきれいごとを申し上げるつもりは全くないのです。実際私も北海道の人間ですから、中小生産者の生産意欲が全く失われつつある、ひいては日本競馬会に対する不信行為にもつながる、通達でもこういう行為があるということはちゃんともう認めていらっしゃる。だから、健全な競馬馬育成発展のために理事長も努力をされておる、それから調教師も生産者も一体になって気持ちよくこの日本競馬の発展のためには努力をしておる、その芽を摘むようなことに対しては極めて問題があろうと私は思うのですよ。まだ私はたくさん持っておりますけれども、これは理事長、こういうことがないように理事長の責任において、農林水産省も監督の立場として、厳正に処置してもらいたい、その決意のほどを私は伺っておきたいと思う。
  299. 内村良英

    ○内村参考人 ただいま御指摘がございましたように、生産者の立場というものは非常に大事でございます。私どもといたしましても、最近地方競馬が多少陰りが出てきたというところから産地の馬の値段が下がるのじゃないかという心配がございます。そこで、中央競馬会といたしましては、抽せん馬ということで配付する馬を競りで買っているわけでございます。相当数、百頭以上の馬を買っているわけでございますが、そういうようなことをしてある程度馬の値段を支えることもやっております。  それから、一番理想的なのは、すべての馬が競り市場に出てくることでございます。競り市場で売られればまあそういうようなことは余り起こらないということがございますので、実は、日高地区に北海道全体地区を統一した競り市場の施設をつくりまして、そこでなるべくたくさんの馬が競りに出てくるようにさせたいということで、いろいろ施策を考えているところでございます。  先生御指摘のとおり、やはり生産者の立場というのは特に過剰の場合弱いわけでございます。その辺も十分考えながら、私どもといたしましてはいろんな対策を講じているところでございます。
  300. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 理事長、私も北海道の人間ですから、よくこの問題について調べてきたんです。だから一件や二件じゃないわけです。八〇%の人がやはり困っておるわけだ。これは理事長、深刻にひとつ受けとめていただいて、この日本競馬発展のために、弱い生産者が不信を持ったり、極めて生産意欲を失わせるようなことのないように局長もひとつ厳重に対処していただきたい。局長、答弁してください。
  301. 野明宏至

    ○野明政府委員 軽種馬の取引につきましては、これが明朗であり、かつ公正なものでなければならないというふうに考えるわけでございまして、先ほどの中央競馬会の四十九年の競走馬の取引に関する要綱というものもそういう趣旨でつくられておるわけでございます。それからまた、先ほど理事長おっしゃられました市場取引の比率を上げていくような、そういう方策も実態的にいろいろ考えていくというふうなことも、それのまた一つの大切な要素だろうと思います。  いずれにいたしましても、いろいろな方策をとりつつ、御趣旨のような方向で対処してまいりたいと考えております。
  302. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 理事長局長、私もその答弁を率直に受けとめて、しばらく見守ります。いいですか。これは改善されてないときには私もまた取り上げざるを得ない。きょうは詳細に持ってきたんです。せっかくの答弁ですから、十分私はそのとおり受けとめて、しばらく様子を見守りたい、こう思っております。  それから国税庁見えていますか。――先ほど来論議しておりますが、調教師による会社づくりについてどういう考えを持っているのか。国税庁がこの法人について目的や性格をどういうふうに理解をしているのか、まず伺いたい。
  303. 岡本吉司

    ○岡本説明員 国税庁といたしましては、調教師等、あるいはほかの業種もそうでございますが、法人化した場合には法人税の対象として扱っており、また個人の場合には所得税として扱っているわけでございます。したがいまして、その調教師がどういう目的で法人化しているかというようなことにつきましては、ちょっと我々の方から余り申し上げる立場にはないと思っておりますので、御勘弁いただきたいと思います。
  304. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 国税としてはどういうふうに見ているか。実は調教師が経営する法人が三十四社あると御報告がありましたが、厩舎の管理上、その利益は一体どこからどういうふうにして上げられているのか、その内容調査されたことがありますか。
  305. 岡本吉司

    ○岡本説明員 一般的に申し上げまして、我々は国税の調査の場合には、各種の資料、情報等を多数収集いたしまして、課税上問題がないかどうか検討した上、課税の問題のある事案につきましては、必要な調査を行いまして適正な課税を行っているところでございます。ただ、今御指摘の件につきましては、件数が非常に少のうございまして、個別性が非常に強くなってまいりますので、調査の結果であるとか今後の方針みたいなことにつきましては、答弁を御勘弁いただければありがたいと思っております。
  306. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 一般論として、調教師にどういうような収入があるかといいますと進上金ですね。調教師が管理している馬が獲得した賞金の一〇%が進上金として支払われているわけですね。それから馬主からの預託料というのがある。助手もいるでしょうし、それから厩務員の給料だとか、かいば料だとかかかるわけだ。したがって、一頭当たり月三十五万から四十万円になるわけだ。こういったものがあずかっておるわけですね。これが全部収入になるかというと、これは大部分が支出されるだろうと私は思うのですが、したがって、個人収入としては進上金が所得になるというふうに私は理解をしているのですが、いかがでしょうか。
  307. 岡本吉司

    ○岡本説明員 必ずしも私たちの方で正確な実態を全部把握しているわけではございませんので、満点のお答えを申し上げるわけにはまいりませんが、やはり調教師の収入の大きいところは進上金であろうかと思いますし、さらにまた預託料が当然入ってきますが、これはまた、お話ございましたように、いろいろな経費がかかっているのも御指摘のとおりでございます。ただ、預託料とひもつきで経費で出ているのかということになりますと、これはなかなか難しい問題でございまして、金に糸目はございませんので、やはり支出全体として見ていかざるを得ない、こう考えております。
  308. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 美浦のトレーニングセンター内の調教師を所管している龍ケ崎税務署の高額所得者の一覧を見ますと、昭和五十八年の例を挙げれば、個人名はちょっと挙げませんけれども、まじめに申告をしている人が多いですね。  例えば、総取得賞金が六千百万円に対して三千三百七十八万円の所得を申告している。これは半分近いいろいろな経費を控除して申告をしている。四千四百万の人が二千三百八万所得を申告している。三千九十万の人が二千二百六十一万。二千六百万円の賞金を得た人が千五百五十五万円、正直に所得を申告しているのですね。ところが、調教師成績を見ますと、総取得賞金といいますか三千万円を超える調教師がたくさんおるわけです。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕  それで、Kさんとしておきましょう、法人ですけれども。これは、昭和五十七年には三千三百四十万の賞金。五十六年には同じKさんという人が三千二百三十万、五十五年には三千二百三十万というふうに賞金をもらっておる。それから一さんという、これは法人ですけれども、五十七年には三千八百四十万円、五十六年には三千六百四十万、五十五年には三千四百三十万、こういうふうに賞金稼得がある。これは一年、二年じゃないのです。三年間連続三千万以上。ところが、半分は経費が認められたとしても、当然少なくとも一千万円以上の所得のランクに載ってこなければならぬと私は思うのですが、一千万以上のランクには載ってない。しかも法人なんです。一年とかあるいは一年ごととかというなら話はわかりますけれども、Kさんという人は三年間ずっと三千万以上、Iさんという人も三年間同じく三千万以上の高額な賞金を取っている。しかし、所得の申告は一千万に出てこない。法人組織にしている。これは国税としてどういうふうに見るのですか。
  309. 岡本吉司

    ○岡本説明員 今御指摘の御質問は、要するに調教師ということだけではなくて、一つの事業を行う際に個人としてやった方が税金がかからないのか、法人としてやった方が税金がかからないのか、こういった税法上のいわば大問題にかかわる御質問だと理解いたします。  法人化した場合には当然そこに所得の分散が行われるわけでございまして、法人の所得と個人のいわば端的に言いますと給与というような形で、所得の分化が行われるわけでございます。所得税法の場合には、基本的には本人一本、青色申告なんかでありますと、最近では青色専従というようなことでもって法人と同じような経理をとっている納税者もおいでになりますけれども、基本的には法人の場合には所得が分化して、個人の場合には一人で全部納めなければいかぬ、こういうことになる、そのいわばあらわれだと思っております。
  310. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 高額な賞金を取得をして、しかもそれはもう一千万以上にほとんど税務署に申告がされてないという一いろんなケースが考えられると思うのですよ。本人について特別な理由、例えば災害が起きたとか火事が起きたとか、そしてそういう臨時的な事故があったために所得が少なくなった、これは私は一点は考えられると思う。それから二番目に、青色申告をしたために、必要経費を引いた結果所得が少なくなったということ、これも私は考えられる。申告後に更正決定によって一千万以下の所得になった、これは表に出ないと思うのですね、また翌年になるわけですから。ところが、賞金は全部法人の中へ入れちゃう、それで本人は給料をもらう、こういうケースになる、これ以外に考えられない。そうでしょう。調教師として賞金は三千八百万あるいは三千五百万もらう。ところがその賞金は法人に入れちゃう、それで法人から給料をもらう、こういうこと以外に考えられないのですが、国税としてはどう見ていますか。
  311. 岡本吉司

    ○岡本説明員 全部につきまして見ているわけでもありませんので、はっきりしたお答えを申し上げられないのは大変恐縮でございますが、今御指摘のようなパターンが確かに発生してこようか、こう思っております。
  312. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは本人の賞金ですね。例えばプロゴルファーでもプロ野球選手でも、個人の賞金は、たとえ本人が法人をつくっておっても、個人で稼いだ収入、賞金は個人所得として申告しなければいけないんじゃないですか、どうです。
  313. 岡本吉司

    ○岡本説明員 これまた非常に難しい問題でございまして、税法上所得の帰属、今の収入が法人の所得になるのか、個人の所得になるのかといった所得の帰属の問題、特にこういった調教師のような特殊な人的能力に絡み、なおかつ同族法人になったというようなものの問題につきましては、非常に微妙な問題もあり、また税法上非常に難しい問題を含んでおります。  また、先般来からお話が出ております調教そのもの、それは事実行為としての調教が個人に限定されているといって、直ちにそれでは税務の取り扱い上法人の所得になることが全くだめかというと、世の中いろんな業種がありまして、例えば床屋さんなら床屋さんみたいな、理容師さんでございますが、理容師さんもやはり特殊な能力があり、特殊な免許みたいなものをもらってやることになるわけでございますが、それでも、床屋さんの場合には法人化されていましても世の中だれも批判しない、それがまた当然の常識的に通常なこととして受け取られておる。こういった事実もございますので、単に個人的な能力から発生した所得ということでありましても、それだけをもって直ちに法人化は全部だめというのはなかなか難しいところがあるんじゃないかという気がいたしております。  ただ、お話のとおり、調教師の場合、先ほど来からの御議論がございましたとおり、調教師の個人としての資格から得られた収入でございますので、そういった収入が会社の収入になっている、経理されているということにつきましては、我々もやや不自然な面があるんじゃなかろうかというふうに考えております。したがいまして、基本的には、個人としてしかできない調教によります収入は個人の収入として計上されるべき性格のものではないかと考えておるわけでございますが、ただ私、競馬についてはやや門外漢でございまして、よくわからないところがあるわけでございますけれども、調教の場合におきましても、調教師一人で調教するのではなくて、調教助手であるとかあるいは厩務員の方々とグループになって調教をする、こういった面もあるんじゃないかという気がいたしております。  したがいまして、そこにある意味での組織としての役務の提供の対価としての性格も全然ないわけではないというような気もするわけでございます。したがいまして、こういった場合に一律にこうだというのはなかなか難しいわけでございますので、我々は個々のケース・バイ・ケースに即しまして判断しているわけでございまして、仮に法人の所得として経理している場合には、果たしてその収入金が本当に実質的に法人に帰属すべきものかどうか、こういった点を常に実態を十分に検討をしまして、課税の適正化に努めておる、こういう状況でございます。
  314. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 国税は一般国民や我々に対して非常に厳しいけれども、ここへ出てくると非常に歯切れが悪くなるのです。  なかなか難しい問題があろうと思いますけれども、私は何も法人が悪だと言っているわけじゃない。この法人をつくったのは節税対策だ。先ほどきれいごとを言っておりましたけれども、本音を言えば節税対策だ。私はバックアップしているつもりで言っているんだけれども、それに対して非常に弱気な答弁をされている。  三年間非常に高額な賞金を取って、個人で稼いでいるわけでしょう、しかもそれが申告に出てこない、これは考えられないですよ。一年とか二年とかといろんなら話はわかるけれども、三年連続三千万以上、しかもそれが一千万以上の高額所得として出てこない。これは明らかに法人にその個人が稼いだ金を入れて、給料をもらっているというふうに私は理解せざるを得ないと先ほど来申し上げているのです。それでいろいろ例を引いて申し上げましたけれども、まじめに税金を納めている人はかわいそうですよ。そういう意味で、国税としても本当に厳正かつ公平な、しかも納得のいくような態度をとってもらいたいという意味で私は申し上げているわけですが、再度御答弁いただきたい。
  315. 岡本吉司

    ○岡本説明員 先生の御趣旨を踏まえまして適正かつ厳正に処理してまいりたい、こう思っております。
  316. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、先ほどずっと論議を聞いておりまして、法人はすべて悪じゃないという立場で私は申し上げているのですけれども、事この調教師に限っては、これは法人に与えられたのではなくて、本人個人の力、力量に対してライセンスを与えている、それを法人にしてやっていらっしゃる。これがもしいいとなれば、皆さんこれはやるでしょう、二百二十何人あるいは三十四社ですから。そうなると、これはまたいろいろな面で大変御苦労されるのじゃないかと私は思うのですよ。しかし、公正かつ厳正な管理責任がある日本競馬会あるいは監督をする農林水産省が法人組織化によっていささかも疑惑を招くようなことがあってはならないという、そういう心配から私は申し上げているのでありまして、大臣、私が先ほど論議を展開してきた趣旨をひとつ御理解いただいて、最後に大臣の所信を伺っておきたいと思います。
  317. 山村新治郎

    山村国務大臣 御質問趣旨、本当によくわかりました。今後とも公正な競走、これを確保するように、ひとつ全力を挙げてやってまいります。
  318. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 以上で私の質問を終わります。
  319. 阿部文男

    ○阿部委員長 津川武一君。
  320. 津川武一

    津川委員 最初に地域的な問題を一つ取り上げてみたいと思います。  五月九日のこの委員会で取り上げましたが、青森県の浪岡ダムの問題をめぐって、関係農民が考える会をつくり、次々と集会を開き、事業計画の変更の際の手続を問題にしております。当初の計画が三十二億円の事業費だったのが、ダム工法の変更などで四倍以上の百四十六億円に膨れ上がったにもかかわらず、受益者農民には完成間近の今日までほとんど説明なしできたのは本当に残念で仕方ありません。  前回、事業計画の変更の場合はあらかじめ関係農民の三分の二以上の同意を得なければならないという土地改良法八十七条の三に反するのではないかとただしたのですが、当時の森実局長は、土地改良区の役員などに説明してきておるからいいという答弁を繰り返しております。これでは法律違反という事実は消えるはずはございません。農民は納得していません。少なくともダム工法を変更した五十二年時点で農民によく説明し、同意をとるべきであったのに、ことしの初めから同意をとっておるのでございます。このことについてどう考えているか、率直な意見を聞かしていただきます。
  321. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 国営土地改良事業の実施に当たりまして、受益面積や事業量の変動等、一定量以上の変更が見込まれる場合には、変更計画を策定いたしまして、御指摘のような土地改良法第八十七条の三の規定に基づきまして、変更計画の概要公告、同意取得等の一連の手続を行うものでございます。  計画変更の手続を行うのに当たりましてはなかなか面倒な問題がございます。受益面積の精密な洗い直しでありますとか、受益面積に必要な水量の計算あるいは工事計画の策定、事業費の算定、かつまた投資効果の算定、それから変更計画書の作成という主要なものをとりましても、こういった作業に相当の時間、労力を要するものでございます。また、一般的に申しまして、事業を推進をしております地元の要請も非常に強いものがございまして、事業効果の早期の発現を図る必要から、この手続と並行して地元の了解を得つつ工事の進捗を図らねばならない、そういった側面もあるのも事実でございます。  御指摘のこの浪岡川地区でございますけれども、変更内容検討に長期間を要しまして非常におくれたわけでございます。かつまた一方、事業推進に対する地元の要請も非常に強うございましたので、変更計画書の取りまとめを進めながら、その内容について関係土地改良区等に説明をしながら工事の実施を図ってきた、こういう事実関係にございます。いずれにいたしましても、本地区の事業推進のための措置でありましたことを御理解いただきたい、このように思うわけでございます。
  322. 津川武一

    津川委員 ただいまの答弁でも法の規定どおりにされていないことが極めてはっきりしたのでございますが、岩木川右岸のかんがい排水のためにこのダムの完成は必要なんです。だから、それをやらせないとかいうことではなく、私たちもこの完成を目指しておりますが、問題は四倍以上にもなった経費を必要な賛成をとらないでやったということで、農民の中にかなり大きな抵抗が起きておって、国がそういうことをやるならば受益者負担分を全部国が持つべきだという主張がかなり強くされております。この中で、法に仰いで執行停止の処置を仰ぐとか、農林大臣を相手に民事訴訟を起こすとか、いろいろなことも論議されてきておりますので、それでは私は目的は達せられないと思うのでございます。  そこで、この考える会の人たちは上京してまでも農水省と十分に話し合いたいと言っているのです。農水省も、農政局や県や市町村、土地改良区などともいろいろ考えているようでございますが、そういうことを進めながら、同時に、考える会の人たちとも解決のためにじっくり話し合いをすべきだと思います。話し合いをすれば解決されると私は思いますが、この点はいかがでございます。
  323. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 この事業の推進につきましては、従来から県あるいは土地改良区等関係者と十分話をしながら進めてきたわけでございますし、今後におきましてもそういう考えで参りたいと思います。  ただいま御指摘の考える会との話し合いにつきましても、事業を推進する立場からの話し合いということでありますれば、私はお会いしていろいろな話をすることにつきましてやぶさかではございません。
  324. 津川武一

    津川委員 ぜひそういう形で問題解決に当たることを、今答弁しましたけれども、重ねて要請して、次に進んでいきます。  六十年度の予算のことでございます。政府は、七月三十一日の閣議で六十年度子算の概算要求基準を決め、軍事費、経済協力、エネルギー対策などを特別扱いする一方で、社会保障、教育、農業など経常経費では原則マイナス一〇%、公共事業、投資部門ではマイナス五・〇%としております。農林省予算が六百二億円の大幅削減を強いられるというふうにも伝えられております。農林予算が五十八年度は対前年度比マイナスニ・五%、五十九年度はマイナス四・一%と、削減額、削減率とも各省庁の中でトップを走っております。国の予算総額に占める農林予算の比率は年々低下の一途をたどってきました。このように予算が大幅に削減されることは、今日の農業と農家経営の困難を一層深刻にし、農業の展望を閉ざすものと言わざるを得ません。  そこで大臣お尋ねしますが、防衛費は当初の大蔵原案にあった三%台をはるかに上回る七%の伸びを約束されながら、農林予算はマイナス六百二億円の枠内で予算を組め、今回の基準はこういうことになりました。これでは、中曽根内閣は防衛費や経済協力だけは重視するが、農政は軽視すると言われても仕方ないと思います。農政は国の基本だなどと言っておる中曽根内閣の手によって農政がこんなに後退させられることに対して、農政担当者としての山村大臣はどのように考えておられるか、明らかにしていただきます。
  325. 山村新治郎

    山村国務大臣 先般の閣議で了解されました昭和六十年度の概算要求基準につきましては、現下の厳しい財政事情からやむを得ない面もありますものの、農林水産省といたしましては極めて厳しい内容というぐあいに受け取ります。まことに残念でございます。  しかしながら、政府の方針として決定されました以上、歳出内容の合理化、効率化を図り、削減の努力を払いながら、現下の農林水産行政を取り巻く諸情勢に対応して所要の施策を推進し得るような、経費の重点的かつ効率的な配分に努めてまいる考えでございます。
  326. 津川武一

    津川委員 基準の枠内にとらわれないで、まだ年末の予算編成という時期もありますので、そのときに向かって農政の予算を幾らかでも前進させるために全力を挙げることを要請して、次の質問に入っていきます。他用途米と農家の保有米のことでございます。  政府は、五十九年産米価決定とあわせて他用途米の主食用への買い上げを決めましたが、その具体的な買い上げの方法や価格、転作の関係など不明確な点が多く、生産農家、農協、末端行政機関が戸惑っておりますし、混乱も起きております。そこで、今回はこの問題について具体的に尋ねてみます。  まず、農水省は主食の需給について不足することはないと一貫して強調し、他用途米の主食転用の必要はないと頑強に拒否して、そのことをこの委員会でも強調してきましたが、今回それを撤回し、主食用に買い上げることを決めた理由は何でございますか。
  327. 石川弘

    ○石川政府委員 ここでも申し上げましたように、主食につきましてゆとりがあるとは言えませんけれども、それについては何とか見込みがある、その点他用途利用につきましては、これが完全に供給されない場合はショートするおそれがあるということを申し上げました。そういうことにつきましては今も変わっておりません。  買い上げを決めました理由といたしまして、御承知のように農業団体におきましては、団体内部におきまして他用途利用米としての契約は行わないということを決定なさっております。そういうような事情の中から、あのまま他用途利用米としての流通を強制いたしますと集荷団体としての農業協同組合の円滑な集荷が期待できなくなる、そういう場合には大変事態が混乱いたしまして、私どもとしては、集荷団体の主力でございますから、その主力が米の流通の円滑な操作上大変混乱を起こすことを大変おそれました。したがいまして、私どもが申しておりますように、他用途利用米としてはその他の姿での供給について系統団体として御努力いただけるということでございましたので、他用途利用米を主食へ転用する可能性を認めまして、その細部について今後詰めようということにしたわけでございます。
  328. 津川武一

    津川委員 農業団体の要請を認めて他用途米を主食用に買い上げるということはある程度了解するとして、そこで、他用途米を主食用として買い上げると言うが、その方法は政府米として買い上げるのか自主流通米で流通させるのか、それともまた、それ以外に自由米として流通するのじゃないか、そういう心配もかなり持たれておるのでございます。  もう一つ価格の問題ですが、私のふるさとの浪岡町で、この他用途米を共補償として一部落で固めてしまった。そこで他用途米としてつくっている。それを今度申し込めば政府が買うということになったので、今一万八十円に買うのか一万八千六百六十八円に買うのかということで、出した共補償のお金もどうするのかという、かなりの混乱が起きているわけであります。そこで政府はどういう形で買い上げるのか、その価格政府米なのか自主流通米なのか、この点、この共補償のような具体的な場合はどうするのか、これを明らかにしていただかなければなりませんが、いかがでございますか。
  329. 石川弘

    ○石川政府委員 まず申し上げておきますが、これは政府政府の方から買うという意思表示をするわけではございませんで、生産者の方が他用途米という姿で出していただくことを何も抑えているわけではございませんで、生産者の方々として、他用途米というものを出す形ではなくて、先ほど先生も申されたように、農業団体としては自助努力によりまして農家保有米等を出すからそういう他用途米につきましては主食として流通させたいという御要望があれば、それを受けるということでございます。  流通の形態といたしましては、私ども原則的には、政府米として買うかあるいは自主流通米として主食の世界で動かすということでございますから、この二つを選択することになろうかと思います。まだそのどちらにするとかあるいはその双方を認めていいのかどうかということを、これはいろいろな条件がございますので、農業団体と詰めているところでございますが、いずれにしても自由流通ということは絶対ございません。
  330. 津川武一

    津川委員 そこで価格でございますが、政府米として申し込んでいけば買う、そういう場合には今度決めた平均価格の一万八千六百六十八円、こういうことをはっきりさせていいですか。
  331. 石川弘

    ○石川政府委員 政府米でございますれば、政府米で定める類とか等級によって定められる価格になろうかと思いますし、自主流通米でございますれば、自主流通米として定められた助成の形態で流されるということでございます。
  332. 津川武一

    津川委員 もう一つ、浪岡の場合みたいに一部落で他用途米をまとめてやっている、そのために共補償のお金も出ている。それを政府に申し入れるとこれも一万八千六百六十八円になりますか。
  333. 石川弘

    ○石川政府委員 今先生御指摘のは、買うといいますか、農民にとってプラスになる面を集中しておっしゃっているわけでございますが、私どもといたしましては、こういう話し合いをしますときに、農業団体としては責任を持って自助努力でそれにかわるべきものを出していただくということをお話をしているわけでございます。これは今先生がまさしく御指摘になりましたように、地域では大変公平感という面で問題があることでございます。非常にメリットを受ける人とあるいはデメリットというとおかしゅうございますが、負担を感ずる人とがいるわけでございますから、その辺は私どもが強制することではございませんが、生産団体においてどのようにやるか。これは例えば、先生の御指摘は今一県内の一市町村の問題でございますが、逆に県間ということを考えますと、例えば他用途を買ってもらうという方にばかり働きまして、農家の保有米等を出すという方が一方に偏るということでは、これは農業団体としても何とも処置ができないと思います。そういうことを含めて、現在他用途米の主食への転用が可能な条件を農業団体も全力を挙げて詰めておりますし、私どももそれにこたえるべく今検討中でございます。
  334. 津川武一

    津川委員 そこではしなくも出てきた、不足する加工用米を農協の自助努力によって農家の保有米で集荷する、こういう方針をとったようでございますが、現段階では農協の自助努力による集荷を信頼しており、他用途米として不足する事態は考えられないと、先日うちの中林議員の質問に答えておりますが、農家保有米が本当に集荷できるかどうかは、相当私も心配するわけなんです。これはことしの作況ともあわせて考えてみなければなりませんけれども、集荷方法、価格にかかっていると思います。  そこで、農家保有米は農協が責任を持って集めると言っておりますが、政府はこれにどうかかわり合いになりますか。政府もやはり、外国米を入れないとすれば、責任を持ってこれは集めなければならないと思いますが、この点の配慮、見解はどうでございます。
  335. 石川弘

    ○石川政府委員 私ども、これはかなりの時間をかけまして生産団体と話を詰めます際に、生産団体から特に要請されておりますのは、先生も御指摘のように、大変自助努力で集めることの難しさということを私どもも申し上げております。しかしながら、生産者の組織として自分たちが努力している最中に、そういう努力が実らないのではないかとか、そういう前提でいろいろなことを言われることは生産団体として大変困るんだということを、何度も何度も生産者組織から言われているわけでございます。これは一種生産団体としての悲願と申しますか、そういう意を込めてこういう姿でも対応するというお話でございます。  それからもう一つは、先ほども申しましたように、他用途米というものを全量どうかするかということではございませんで、生産者が選択して出してくださるわけでございますから、そういうことの成り行きを見ながら判断すべきことだと考えておりますので、私どもそういう、片方には他用途米で集荷をするという道を開きながら、片方ではそういう自助努力でどういう形が最も望ましいかということについて、これから生産者組織ともよく詰めてまいるつもりでございます。生産者組織もこの問題の難しさは十分承知をいたしておりますので、近いうちにいろいろと担当者その他の会議も開くようでございますし、私どもは、そういう席に出まして、極力そういうことが円滑に運んでいくように、私どもとしても努力をしたいと思っております。
  336. 津川武一

    津川委員 この間、中林委員質問に、必ず心配ないというふうに答えておりますが、本当にそうなるでしょうか。問題は価格だと思うのです。他用途米に出すと言っていた七万円の奨励金、これは出さないんじゃないかというふうにも伝えられてきております。ここいらがどうなるのかですが、もし、政府価格的に何の関与もしないで、実需者である米加工業者に現在政府が売り渡しているトン十二万円で引き取らせるということになれば、流通コストなどを見ても、六十キロ、一俵当たり農家手取りは六千円にすぎない。絶対あってはいけないという自由米の流通過程があります。そうなってくると、他用途米として農協がどんなに力んでみてもこれは集まってくるはずがない。同じ農家が汗水流してつくったお米、保有米、主食の三分の一の価格で出せというのでは、これは筋が通らない。本当にこれを買うとすれば、流通過程に乗せて間違いなく、その次の第二次の輸入を許さないとすれば、この保有米も主食用と同じ条件で買わなければ問題は解決しないと思います。そうでないと、自由米流通がかなりはやると思います、ここまで来ましたら。この点の政府の決意と見解を聞かしていただきます。
  337. 石川弘

    ○石川政府委員 これは決して急に決めたことではございませんで、一週間を超えます長い間、そういう今先生が御指摘になったような実情も何度も何度も生産団体お話しし、生産団体も夜を日に継いで機関の中でのお話をして、こういう方向に持ち込んだわけでございます。  私どもといたしますれば、今先生がおっしゃったように保有米を政府の主食価格で買えというのなら、そういう方もあるでしょう、しかしそのときは、それで需給上は何ら問題がないのですから、他用途は他用途として出していただきたいということも何度も申し上げた上で、やはり他用途については主食として転用するという形でないと系統内での集荷が困難である、しかしそのことによって、いわば他用途の原料が枯渇するのでは困るということから、自助努力によってということが書いてありますことは、七万円とかそういう助成を当てにしなくても農業者団体として集めますという機関の意思の決定でございます。したがいまして私どもは、そういうことを前提に事柄を考えているわけでございまして、先生が御指摘になりましたようないろいろな要因につきましては、十分お話をしました上での最終結論だと思っております。私どもは、それが実行できますような条件を整える必要があろうかと思っております。
  338. 津川武一

    津川委員 今の答弁ではかなり保有米が混乱しますね。やはり価格が幾らになるかという、お米をつくった農民が、自分の生産したお米の価格がわからないでこれを流通過程に入れるわけはありません。今のような形はまだ決まらないでしょう。まして、一俵六千円になるような価格、こんなことは絶対にすまいと思いますが、この点が一つ。第二番目には、本当に第二次輸入がないような格好で農協が責任を持って集める、政府もそれを受け入れるとすれば、やはり同じお米なので、一万八千六百六十八円で買うべきだと思うのですが、この二点はどうでございます。
  339. 石川弘

    ○石川政府委員 他用途米を主食に転用した上で、なおかつ自家保有米を、今おっしゃるように主食用の価格に買えというお話でございますと、これはそもそも私ども、主食用にいわば今自家用飯米というのを出していただいて、それにかわるべきものを他用途米で出していただければ十分なわけでございます。そういうことも何度もお話をした上で、生産者組織との間で私どもは、先ほどから申しているような方法が、今回の措置としてそれ以外とりょうがないということで決定したわけでございますから、今先生が御指摘のような飯米を主食価格で買うということは、これはあり得ないことでございます。
  340. 津川武一

    津川委員 自家保有米を出させるとすれば、重ねて、価格が問題だという、そういうことをさらに申し上げておいて、次に質問を進めていきます。  政府は、米は輸入しない、そのかわりに加工用米という安い米づくりで我慢してくれという意味で農民に押しつけておきながら、米が足りなくなったといって、農民に何の相談もなく韓国米輸入に踏み切ったのです。今回の問題の発端はそもそもここにあったのですが、政府が約束を破った以上、他用途米について農民が受け入れる基盤というものがなくなってしまったと言っております。六十キロ当たり一万八十円という主食の半分強の安さで米づくりはできないというのは当然でございます。  私は、今回の農民の要求は、他用途米を主食用の価格で買い上げよという、そういうことがにじにじとにじんでいると思います。その点で、私たちは、七月二十三日、五野党共同で米価について農水大臣に申し入れをした中で、他用途米を主食用価格で買い入れよと主張し、主食について心配がないというならば、他用途米としての集荷が困難だと思う現状にこたえ、かつ、米は完全自給する国会決議を守るという立場に立つならば、五野党共同で決めたあの申し入れ、決議などというものを厳重に守らなければならないと思いますが、農林大臣の御所見を伺います。
  341. 山村新治郎

    山村国務大臣 当農林水産委員会、また本会議での決議、これは尊重いたしてまいります。
  342. 津川武一

    津川委員 自家保有米を使ってでもなお他用途米が集まらなければ、第二次輸入ということも考えられておるようでございますが、山村農林大臣は米の輸入は絶対にないと答弁しながら、とうとう韓国米輸入に踏み切ったときに、これは今回限りの措置だと重ねて答弁しましたが、第二次輸入ということは絶対にないということをここで確認していただけますか。
  343. 山村新治郎

    山村国務大臣 韓国米は現物返還をしていただきました。そしてまた、第二次輸入というようなことは、先ほど来食糧庁長官から何遍も御答弁しておるところでございます。自助努力によってと言ってやっていただいておる最中に、そういうようなことをどうこう申し上げることはできません。
  344. 津川武一

    津川委員 ぜひ第二次輸入がないように、これまた強く強くこの場から要請して、次へ質問を進めていきます。  次は、北転船とイカ釣り船の減船についてお尋ねいたします。  政府は、沿岸漁民の要請を無視して、沿岸漁業から力を抜いて沖合と遠洋漁業を助成するという方向に突っ張りました。そうして懸命になってつくった北転船、米ソ二百海里設定以前は百五十四隻もありましたのに、米ソ二百海里設定で五十七隻減船して、現在九十七隻が残っております。それでもこの北転船はやっていけないので、今回六月十二日の北転船船主会で、九十七隻のうちさらに四十三隻減船することを確認しました。沿岸漁業を犠牲にしてまで国費を投じて援助した北転船が、何のためにこのような大規模な減船に追い込まれたのでございましょうか、そこいらあたりの原因、対策を明らかにしてください。
  345. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、我が国の水産政策がかつて沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へという方向を志向した時期があったということは先生御指摘のとおりでございますが、これは私ども、何も沿岸の漁業者を犠牲にしたというつもりは全くございませんで、その当時はべーリング水域等の膨大な未開発の漁業資源が存在しておったわけでございまして、そういう資源の開発を志向するというのはそれなりに必然性のある方向であるというふうに思っております。それからまた、国内の沿岸漁業者の立場から見ても、底びき網漁業のような漁法はできるだけ沿岸水域から離れた場所でやってもらいたいというのは、沿岸漁業者自身の御希望であったわけでございまして、そういう底びき網漁業をできるだけ遠くへ持っていくというのは、むしろ沿岸漁業者の御希望にも沿ったものである。底びき網漁業を遠くへ持っていくというのは沿岸漁業者を犠牲にすることであるというふうには私どもは思っておりません。  それで、そういう形で我が国の遠洋漁業が展開してまいったわけでございますが、しかるところ、昭和五十二年に米国及びソ連の二百海里水域を契機として世界は二百海里時代に入るということになりまして、沿岸国が自国二百海里の漁業資源に対して主権的権利を行使するようになりましたので、我が国の遠洋漁業もそれに対する対応を迫られることになったわけでございますが、殊に私ども問題であるというふうに思っておりますのは、当初二百海里という考え方の中に、当然余剰原則とか遠洋漁業国の漁獲実績の尊重ということがあったわけでございますが、最近沿岸国によって二百海里に対する主権的権利が非常に悪意的に行使されるという傾向が強くなってまいりました。それが我が国の遠洋漁業の後退という不幸な事態を招きっつあるわけでございます。我が国といたしましては、粘り強い漁業外交を展開することによりまして、我が国の漁船の操業機会を頑強に守り抜いていきたいというふうに思っております。  一方、こういう事態でございますから、我が国の沿岸水域における漁業を振興することの重要性は言うまでもないところでございまして、栽培漁業の振興、沿岸漁場の整備等、一層努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  346. 津川武一

    津川委員 外国のことについては後刻もう一度お尋ねするとして、次に進めていきます。米ソ二百海里設定で減船したときは国が補償金を出しました。私は、この間宮城県の塩釜、この間は八戸市などで北転船関係者を訪ねていろいろ意見を交換してみました。塩釜市では現在二十七隻ある北転船のうち十二隻減船する。青森県でも十三隻あるうち六隻減船するということになっております。減船する船は一隻四億五千万円の共補償金をもらって漁をやめます。残る船はその共補償のためにお金を出さなければならぬ。一隻で三億五千八百三十三万円、こういう負担になります。不況で思うようにならないから減船する、その船が三億五千八百三十三万円負担しなければならない。この捻出が大変なんです。ここに問題解決のかぎがかかってきた。そこで、今回も国が補償金を出してくれないかということが北転船関係者の一致した強い強い要求になっております。この気持ち、考えはございませんか。
  347. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  五十二年には確かに先生御指摘のような措置を講じたわけでございますが、五十二年に行われました北転船の減船は、ソ連が最高会議幹部会令を突如公布いたしまして、従来の海洋秩序のあり方を根本的に変更して二百海里漁業水域を設定したわけでございます。これに伴いまして、極めて大幅かつ急激な漁業環境の変化が起こり、かつ隻数の削減につきましても、ソ連との協議の結果新たに何隻に減らすということにされてしまったわけであります。そういう中で交付金が交付されたわけであります。しかるところ、今回の減船は業界の自主的な御判断によりまして経営改善対策として取り組まれているものでございまして、今回の減船に当たりましては、五十二年のときにそういう措置が講ぜられたということは先例にはなり得ないというふうに思っておる次第でございます。
  348. 津川武一

    津川委員 前回は百五十四のうちから五十七隻の減船、今回は九十七から四十三隻の減船で、率とすればもっと高い。かなり急激な変化なんです。その原因も、局長が先ほど話したように、今までとっておった、外国の人がその領海で約束どおり慣行どおりとらせなくなったことと、沿岸関係国の恣意による締め出したということになってくると、同じような理由で国の補償という行為の発動が求められているわけでございますが、これができないか、さらに検討してもらうことを要求して、次に進んでいきます。  今の答えにあるように、国が補償しないとすれば、残る船がその三億五千八百三十三万円を全部支度しなければならないのです。  そこで公庫は、五%の金利、十五年の年賦で、このうちの八割、二億八千六百六十五万円を融資するということが話し合いがつきました。それなりによかったと思います。ところが、残りの二割の七千百六十四万円、この捻出の道がないのです。そこで農林関係だとか、いろいろな金融機関に仰がなければならない。どんなに力んでみても八・五%の利息、減船して苦しい中に追い込まれて共補償の利息を八・五%では、これは再建も何もできるものでもありません。  そこで、青森県では、県庁に、この八・五%のうち、公庫並みの利息になるように三・五%の利子補給を要求している、陳情して頼んでおります。出るかもわかりません、出るようでございます。県が出すときに、市が出すときに、国が黙って見ておる手はないと思いますが、この場合、国が利子補給をしなければ、してくれなければと思いますが、いかがでございます。
  349. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私どもも一共補償融資に伴う残存漁業者の利子負担について無関心でいるわけではございません。私どもは、公庫融資の残りの分を市中で借りた場合の利子負担ということについては、ちょっとその用意がございませんが、公庫資金の先ほど先生おっしゃいました金利の五分、これをさらに二分五厘まで利子負担を軽減することをできる制度は用意をしてございますから、それを活用していただければというふうに思っております。
  350. 津川武一

    津川委員 何としても、その減船共補償の過程を事なく遂行させるようにしてみたいと思っているわけです。  そこで次ですが、青森県には現在十三隻おって、このうち六隻減船することは先ほど申したとおりですが、船一隻より、北転船一隻より持ってない、ほかに関連漁業をやってない人があるのです。この人が自分から申し出たときはそれでいいのですが、これを何らかの形で、割り当てだとかなんかで、一隻だけ持っておる北転船に減船を割り当てられたときは、おかに上がってしまわなければならない。御承知のとおり、漁師関係はおかに上がったら本当にまた頼りないものでございまして、余りにも残酷なことになります。そこで、この減船の対象、一隻船だけは外してあげなければならないと思いますが、こんな気持ち、政府にございますか。
  351. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  私ども、どの方のどの船が減船になるかということは、今度の減船計画全体を私どもは業界内部の自主的な御相談でやっていただけるものというふうに期待をして、それに対して役所がお手伝いするというふうな心組みでおりますので、今先生が提起されておられますどの方のどの船をということも、皆さん方の御相談の中で決めていただきたいというふうに思っております。それで皆さん方も、おれたちに任しておけばちゃんともめないように決められるというふうにおっしゃっておられますので、その点は御信頼申し上げておるところでございます。
  352. 津川武一

    津川委員 そうばかりいってくれるとありがたいのですが、一隻船主というのは弱いんだ、仲間の中で。そこで頼まれればいやと言えない場合、時によると、十分民主的な権利行使をしないままでそこに追い込められる心配もありますので、業界が決めるとおっしゃいますけれども、そういうことのないように気をつけながら、監視しながら指導していただくことを要請して、次に入っていきます。  北転船一隻には二十六人前後の船員が働いております。今回の全国四十三隻減船では、千百人から千二百人が職を失うことになります。この人たちには万全な離職対策を講じてやらなければなりません。先ほども申し上げましたが、漁船員はおかに上がると本当にかわいそうなもので、その対策を水産庁と運輸省に尋ねてみたいと思います。  そこで、漁臨法、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法、もう一つは漁特法、漁業再建整備特別措置法、この二つの法律が農水省と運輸省の共管になっておりますが、これに期待するところも非常に大きいのです。この離職する人に対する離職者対策とこの二つの法律の適用について、まず運輸省にお答え願いましょうか。
  353. 森谷進伍

    ○森谷説明員 お答え申し上げます。  北転船の減船に伴って発生します離職者に対しまして、今御指摘の漁臨法、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法を適用するかどうかにつきましては、現在、運輸省を含めまして関係各省庁で検討を進めているところでございます。
  354. 津川武一

    津川委員 水産庁長官お尋ねします。この相談、運輸省から受けておりますか。
  355. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 御相談中でございます。
  356. 津川武一

    津川委員 これは離職者にはどんなことがあっても万全の対策要求することを、水産庁と運輸省が密に協議して救済していただかなければならないことを申し上げて、進んでいきます。  先ほど北転船がなぜこんなに減船しなければならないかについて話しましたところ、やはりアメリカやソ連のことを、あの我々の漁区と隣接している国の恣意だというふうなこともあったりして、はしなくも外交の問題が出てきたわけであります。北転船関係者は、その他の人でもそうですが、日本の水産外交、魚外交を批判しております。ソ連には元気よくかかっていくことがありますが、アメリカに対しては、さきの牛肉、オレンジの自由化輸入枠拡大などでも見られたが、弱腰で仕方ない、もっと強くかかれと言っております。  そこで、アメリカとの水産外交はどのように進めていくのか。アメリカでは、北転船の一隻一隻に監視員を乗せます。ソ連でもこれほどのことはしておりません。監視船だけ出しております。アメリカ日本人を泥棒とでも思っているのだろうか。アメリカの人に監視されている屈辱は大したものだそうでございます。この点で、アメリカに対する漁業外交、水産庁長官は、オレンジ、牛肉で対米交渉の先頭に立ってきた経歴も持っておるし、あれも持っておりますベテランでもありますが、そこいらあたりを使って、今度、水産外交をどのようにしていくのか、まず、これは水産庁長官に答えていただきます。
  357. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  アメリカの漁業政策の基本は、自国の二百海里内の漁業資源を自国の、アメリカ自体の漁業の振興のために役立てたい、そのためにどういうふうに使うのがいいか、そういう観点から外国と漁業の分野でつき合うというのがアメリカの基本的な考え方でございます。  それで、そういう考え方に立ちますと、元来、二百海里の基本的な理念でございました伝統的な漁獲実績の尊重とか余剰原則とかというのとは背馳しがちな態度になってくるわけでございますが、ただ、これは情理を尽して説得すれば彼らの考え方が変わるというものでもございませんので、私どもとしては、結局、アメリカがつき合っている漁業上のいろいろなパートナーの中で、日本というのは相対的にアメリカ側から見て一番貴重なパートナーであって、日本との関係について余り手荒なことをするのはアメリカ自体の利益にならないということをアメリカ側によく認識させる、そういうことを基本にして対処していかざるを得ないというふうに私どもは考えております。  それで、先ほどオブザーバー云々というお話がございましたが、こういう問題はなかなか難しい問題がございます。これにつきまして、実はきょう、先生の御質問の前、本委員会の質疑のうちのかなりの時間は、国内の漁業者相互間の問題として、日本人の漁業者で日本国内の規制措置を守らない者が多いということに言及をなさった御質問が大部分でございまして、日本人自身が日本の漁業者についてそういう見方をしていらっしゃる向きが多いものでございますから、オブザーバー乗船問題についてなかなか毅然たる態度がとりにくい、日本人自体が日本の漁業者の行動をどうも疑惑の目を持って見るという向きかございますので、その点は私といたしましては、軟弱外交であるという御批判を受けましても、ちょっとそうばかりは言えない事情があるということは釈明をさせていただきたいと思う次第でございます。
  358. 津川武一

    津川委員 そこで、こういうアメリカとの水産外交について、外務省の所見をひとつ聞かしてもらいます。
  359. 川島裕

    ○川島説明員 お答えいたします。外務省といたしましても、ただいま水産庁長官がお答えになられたこととほぼ全く同じでございまして、これはなかなか難しい交渉なわけでございます。何と申しましても、先方が排他的な漁業管理権を持っている先方の海域に赴きまして、こっちから出かけていくということでございまして、しかも、水産庁長官もおっしゃいましたとおり、米国の二百海里法では、まず米国漁民がとってその残りを外国に割り合てるという立て方になっておるものでございますから、米側の漁獲能力がふえますと、おのずから外国に割り当てになる分は漸減傾向になってしまうといったような難しい状況にあるわけでございます。  しかしながら、外務省といたしましても、農水省とは強力なチームワークを組みまして、従来より漁獲の確保のために全力を挙げてきた次第でございますし、今後とも良好な日米関係の存在を基礎といたしまして、また漁業の分野では水産物貿易とかジョイントベンチャー等、いろいろな協力関係を進めるということによって何とか確保したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  360. 津川武一

    津川委員 北転船がここまで追い込まれていく前にもう少し何か打つ手はなかったのかということが北転船の関係者なんです。例えば、ソ連の区域に現在二十七隻入っている、あそこの区域をもっと広げて、もっと北転船を入れるように交渉できなかったのか、これからでも遅くないというのですが、水産庁長官いかがです。
  361. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  日ソ協定におきまして操業水域の拡大要求いたしますと、ソ連側は、ソ日協定において日本側は当然見返りを用意しているに違いないというふうに思いまして、ソ連側の欲しい水域なり操業期間なりについて非常に頑強な要求を投げ返してくるということになるわけでございます。それでうまく話がまとまりますと、北転船の操業区域を拡大するために沿岸漁民を犠牲にしたということで先生方のおしかりを受けるということになるわけでございまして、そういう事情が北転船の操業水域拡大問題を提起することを私どもにためらわせた主たる理由でございます。
  362. 津川武一

    津川委員 北転船のことでもう一つアメリカ領域の海域でございますが、あの百七十度以西で今とっておりますが、あれをもう少し東に移されないか。これは業界で決めておりますが、なかなか思うようにいかないので水産庁が音頭をとってやってくれないかということなんですが、この点はいかがです。
  363. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  あの百七十度以東の水域におきましても、これまた日本のトロール漁船が操業しているわけでございまして、それで乗組員は百七十度以東も以西もともに全日海同士であります。それから船主側から見ましても、トロール船の船主めかなりの部分は北転船の船主でございまして、兄弟かきに相せめぐような事態でございます。それで私どもとしては、両当事者間で円満に話がつかないのに官僚主導型で裁断するということについてはなかなか勇気がわきにくいような事情にございますので、業界同士の御相談で決まった百七十度がそのままずっと続いておるというのが実情でございます。
  364. 津川武一

    津川委員 続いてイカ釣り漁船についても質問するつもりでございましたが、質問時間があと五分になりました。  そこで、イカ釣りも減船を強いられてきましたので、減船の費用は共補償でやる、残る船はその共補償の費用を出さなければならぬ。これが北転船ほどの金額でないが同じような状態がありますので、これにも同じような指導、援助、配慮をしていただくことを要請して、ぐんと進んでいきます。今度の朝鮮民主主義人民共和国の射撃によって我々のイカ釣り船の船長が射殺されたという事件、それから拿捕されたり連行されたりしております。あそこはまたイカのいい漁場なんで、今まで民間漁業協定でやっていたのを、それが切れてしまって、こういうふうな状態になって射殺されたり拿捕されたりするという、大変気の毒な状態が起きているわけであります。  今度の射殺についてはどんな理由があっても私たち共産党は了解できません。謝罪してもらう、補償してもらう、経過の一切を公表してもらう、再びこのようなことが起きない保証を求めなければなりません。そう思っております。  そこで朝鮮民主主義人民共和国との関係日本は朝鮮民主主義人民共和国を敵視したり邪魔者扱いにしたりして国交を結ぶ努力を怠っているのではないでしょうか。この点を外務省にお答えいただいて、そして射殺された人に対する対策を外務省にこれまたぜひやっていただかなければならぬ、国交が回復されてなくてもやっていただかなければならぬ、このことなんでございます。  二つ目には鯨、今度は商業用としてとらせないという協定が起きて、業界では試験用、実験用、漁業資源調査用として出していくというふうな格好に追い込まれておりますが、ここにも漁業の外交がございます。鯨の問題に対する外務省の外交方針というものを明らかにしていただかなければならなくなりました。  三つ目には、朝鮮民主主義人民共和国と国交が回復されてないので、どの道筋を通ってか、必ずこの射殺事件や民間漁業協定を発効させるために必要な措置を講じなければならないと思いますが、外務省に答えていただきます。
  365. 高島有終

    ○高島説明員 御説明申し上げます。  我が国の北朝鮮との関係は、先生御指摘のように外交関係はございませんで、主として民間レベルの経済、文化、スポーツ等の関係が維持されているという現状にございます。私どもといたしましては、朝鮮半島の平和と緊張緩和のためには、まず何よりも南北のバランスを基礎にいたしました国際的な枠組みの存在というのが非常に重要だろうというふうに考えている次第でございます。したがいまして、このような枠組みを崩すような行為については極めて慎重でなければならないというふうに考えているわけでございます。このような観点から、当面北朝鮮との間で外交関係を樹立する考えは持っていないわけでございます。  他方、最近発生いたしました第三十六八千代丸の銃撃、拿捕事件というのは、私どもといたしましても非常に遺憾な事件であるというふうに考えているわけでございます。この問題についての対策といたしましては、亡くなられました船長の遺体と残りの乗組員たちの安全なかつ早期の帰国を実現することがまず第一という観点から、日赤を通じまして北朝鮮側にそのような観点からの要請の電報を打電していただいて、現在その回答を待っているところでございます。  なお、こういう事件がどういう背景、原因で起こったのかという点と、それに対する今後の対応という点につきましては、いずれにいたしましても、この事件が起こりました正確な状況を把握すること、正確な事実関係を確認することがまず第一だと考えておりまして、そのような事実関係を確認した上で、今後どのような対応を行うことが必要かという点は検討していきたい、このように考えている次第でございます。
  366. 津川武一

    津川委員 黙って見ているというふうな外交ではなく、日赤だけでなく、私たち国会の中に日朝友好議員連盟という強力な組織があります、ここいらあたりになぜ相談されないのか。朝鮮民主主義人民共和国とも外交関係を持っていて日本とも外交関係を持っておる第三国になぜ持っていかないのか。韓国に義理立てて、朝鮮民主主義人民共和国のことは座して見ているという感じにしか我々には見えないのです。こういう点でもう少し具体的にやらなければならないと思いますが、日朝友好議員連盟、これに頼んでみる、相談してみる腹はないのか、両方に外交関係を持っておる第三国をも動員してみる腹はないのか、この点答えていただきます。
  367. 高島有終

    ○高島説明員 日朝議員連盟につきましては、先生の御指摘もございますので、私どもも今後こういう問題につきましては十分に連絡をとらしていただきたいと思っております。なお、日朝漁業問題全般につきましては、私ども従来より緊密な連絡をとらしていただいているということは、ここで改めて御説明申し上げておきたいと思います。  第三国を通じて北朝鮮側に働きかける、こういう点も外交のオプションの中では私ども常に考えていかなければいかぬということは御指摘のとおりでございます。ただし、この場合には、仮に第三国に依頼する場合のその第三国の考え方、あるいはその第三国と北朝鮮との関係等も考慮する必要が当然あるわけでございますので、このような観点から、第三国に特定の問題について働きかけを依頼するのかどうか、あるいは依頼をしたのかどうかということについては、それを公表することは慎重たらざるを得ないというふうに考えております。
  368. 津川武一

    津川委員 外務省にはためらわず必要な措置を講ずることを要求して、大臣、このとおり漁業の部面において、外交、対ソ外交、対米外交、今度は朝鮮民主主義人民共和国、韓国との漁船の問題では対韓外交、それから台湾の漁船との関係では――そういう漁業問題はかなり大きな外交問題なんです。これに対して積極的に、しかし友好裏に平和裏に取り組んでいただかなければならぬ。日本海における漁業を本当に守ろうとすれば、あそこで日米の軍隊の合同演習なんかもやめてもらわなければならぬ、日本海を平和な海にしなければならぬという大事なことも出てきますので、こういう外交に対する、漁業外交、魚外交に対する大臣の所見を伺って私は終わります。
  369. 山村新治郎

    山村国務大臣 御存じのとおりに、ソビエトから私に対して訪ソ要請もございますし、これは向こうへ参りまして率直に意見交換をしてやっていきたいというぐあいに考えております。粘り強くやってまいります。
  370. 津川武一

    津川委員 終わります。
  371. 阿部文男

    ○阿部委員長 これより請願審査に入ります。  今国会において、本委員会に付託になりました請願は全部で八十七件であります。  本日の請願日程第一から第八七までを一括して議題といたします。  まず、審査の方法についてお諮りいたします。  各請願内容につきましては、請願文書表等によりまして既に御承知のことでありますし、また、理事会におきましても慎重に御検討願いましたので、この際、各請願についての紹介護員からの説明は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  372. 阿部文男

    ○阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより採決いたします。  本日の請願日程中、第二、第五ないし第七、第九、第一〇、第一四、第一六、第三一、第三二、第六二ないし第七二の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  373. 阿部文男

    ○阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、残余の各請願は、いずれも採否の決定を保留いたしたいと存じますので、御了承願います。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各請願委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  374. 阿部文男

    ○阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。〔報告書は附録に掲載〕
  375. 阿部文男

    ○阿部委員長 また、本委員会に参考送付されました陳情書は、農畜産物輸入自由化枠拡大阻止に関する陳情書外七件の外四十五件であります。念のため御報告申し上げます。      ――――◇―――――
  376. 阿部文男

    ○阿部委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  安井吉典君外八名提出、農産物の自給の促進及び備蓄の確保のための農業生産振興に関する法律案  安井吉典君外八名提出、総合食糧管理法案  安井吉典君外八名提出、農民組合法案  農林水産業振興に関する件  農林水産物に関する件  農林水産業団体に関する件  農林水産金融に関する件  農林漁業災害補償制度に関する件 以上の各案件につきまして、閉会中もなお審査を行いたい旨、議長に申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  377. 阿部文男

    ○阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査におきまして、委員会に参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その人選及び出席日時等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  378. 阿部文男

    ○阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中審査案件が付託になり、その調査のため委員を派遣する必要が生じました場合には、その調査事項、派遣委員、派遣期間、派遣地並びにその承認手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  379. 阿部文男

    ○阿部委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時九分散会