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田中参考人
全国農業協同組合連合会の常務
理事をいたしております
田中昇でございます。よろしくお願い申し上げます。
先生方には、連日、米並びに農政全般で非常に御苦労な御指導をいただいておりまして、ありがたくお礼申し上げます。
本日、肥料安定法につきまして、この延長についての意見を開陳させていただきます。
私
ども全農といたしましては、肥料安定法をさらに五年間延長していただきたい、こういう結論を持ちまして、私
ども内部の肥料農薬
委員会あるいは生産資材
委員会、さらにまた
理事会の決定を見まして、全中の
理事会決定とあわせまして農政の一環ということでお願いをしているものでございます。既に、さきに四月に
参議院におきまして審議を受けまして
参議院本
会議で可決をしていただいておりますが、これから衆議院の皆様の御審議を煩わす、こういうことになっておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
私
どもが安定法の延長につきまして、これをぜひその方向で御審議をいただきたいと申し上げました理由について、重立ったものについて申し上げておきたいと思います。
第一に、現在の農業を取り巻く極めて厳しい情勢のもとにおきまして、安定法の延長につきましては、少なくとも肥料の取り扱いに供給の安定、価格の低位性ということをうたい込んで仕事をいたしております農業団体といたしましては、この安定法によってぜひともそういったねらいを達成いたしたい、こういうことを考えているわけでございます。
御承知のように、日本農業は米を初めといたしまして畜産、園芸に至るまで過剰基調のもとにございまして、稲作の減反、転作への努力にもかかわらず、農畜産物価格の低迷を来しております。さらに、さきに妥結をいたしましたアメリカとの貿易摩擦に絡みました農畜産物の自由化阻止、食糧の安全保障確保のためのこういった農業政策をぜひ強化していきたいということで、必死の運動を展開しておるわけでございます。妥結はいたしましたが、四年後の大統領選挙にはさらにこの問題は持ち越される、こういう感じがいたしますので、一層この点を強化していく必要があるかと思います。
同時に、私
どもとしましては、国際農産物に比べてコストが高いということを言われております農畜産物のコストの低下につきまして、今後EC並みの価格を実現するためのあらゆる努力を傾けて苦闘していく、こういう
状況のもとでございますので、農業生産のために不可決な基礎資材でございます肥料につきましては、ぜひとも今後安定供給が望ましいし、またそれを実現するためには現在の法律がどうしても必要である、こういう結論に達した次第でございます。
第二点は、肥料の業界の現状でございますが、昨年の五月に特定産業構造改善臨時
措置法が決定をされまして既に発足をいたしております。この構造改善の中核が、私
どもの一番気にいたしております内需を中心といたしました肥料供給の安定、そして同時に、現在熾烈な競争が繰り返されております国際価格に向けて、その対応上、対抗できるような合理化がなされる必要があるということから、六十三年の六月に向けて鋭意業界が合理化努力をいたしておる、こういうものでございます。しかしながら、業界における今日の肥料の事情は極めて厳しい情勢のもとに置かれております。既に輸出競争力を失いまして、現在、第二次構造改善のこの目標は、五十四年ごろの能力に比べましてアンモニアでは四一%設備処理をする、尿素においては六三%の設備処理をする、燐酸
関係におきましても三二%ほど施設の撤去等を行いまして、さらに原燃料の転換、生産の集中、委託生産等の合理化をいたしまして操業度を上げ、国際競争力に立ち向かおう、こういう考え方が示されているわけでございます。しかもこれは、現在の厳しい行政管理あるいは財源不足といった事態の中では大きな国の公的な助成は恐らく望まれない、そういうところにメーカー独自で極めて厳しい合理化をしていこうという
状況のもとにございます。私
ども、四百五十万の農家の庭先まで肥料を使う適期にこれを供給していくという責任のある立場におきましては、どうしてもそれに必要なものは、いつでも農家が欲しい時期に必要量を届けるというためには、何といっても手元に肥料の供給力を残しておきたい。これはだれしもそういうふうに考えるわけでございますので、業界が一致結束をしてこの事態に向かって努力をされ、構造改善の実が上がるようにお願いをしたい。そのためにも肥料の供給価格の安定が望ましい、こういうふうに考えておるわけでございます。
第三点といたしまして物流問題がございます。
国鉄の輸送政策の変更がございまして、拠点駅の集約ということで従来のほぼ半分ほどの駅にしか貨物は届けられない、こういうことになってまいりました。肥料におきましては、ほかの物資と違いまして北は北海道から南は沖縄の島々まで一本の価格で決められて供給をされているというのが
実態でございます。拠点駅集約によって、貨車にのみ依存いたしておりますと今回はかなり大きなアンバランスができる公算もあるということで、この体制をどういうふうに組み直すかということを非常に心配をいたしまして、私
どもとしてはどうしても、できるだけ農家の庭先に近い段階まで一本価格でおきたい、こういう考え方で、将来はトラックあるいは船さらにまた農協直送という方式で今行われつつある物流合理化に対応していきたい、こういうふうに考えておりますが、主な肥料だけで全国に六百万トン、それだけの大量の貨物を、これは多少需要が落ちましたとはいっても四百五十万の農家は多かれ少なかれ肥料を使っております。これは畜産等の
関係とはちょっと違うわけでございますので、ぜひとも安定法において現在とられている
仕組みを継続をして、この五年間に新しい物流体系を組み立てていきたい、こういうふうに考えております。その意味からも、ぜひ安定法を存続をさせていただきたい、こういうふうに考えます。
第四点といたしまして、安定法は御案内のように既に四回目の延長を迎えるわけでございます。その間に、安定法は果たして農民のためになっているのかということがございます。これは
参議院のときにもかなり問題を出されましたけれ
ども、私
どもとしましては、やはり食糧の安全保障、その裏打ちとしての肥料の安定供給、こういうものがどうしても必要ではないのか。また、現実に石油ショックのとき、ああいう緊急事態、非常事態になりますと、安定法が見事に機能を発揮した、私はこういうふうに考えているわけです。
一部にはいろいろ、石油ショックのときに機能しなかったじゃないか、肥料が足りなくなって大騒ぎしたじゃないか、こういうふうに言われます。言われますけれ
ども、あの当時のトイレットペーパーや洗剤等の買い付け騒ぎと肥料とは全く違うわけでございます。ただ、残念ながら仮需要が沸きまして、四十八年、四十九年の石油ショックのときには、毎年大体一〇二%くらいしか伸びてこなかったものが一挙に一一二%に伸びた。そしてさらに翌年は九一%に減る。そして、足りないぞ、早く買わなければいかぬという農家心理のもとに買い取った肥料が農家の庭先に越年をする、こういう事態が起きて、輸出につきましても、中国あたりに契約をし、既にデリバリーに入ろうという事態のものを押さえてもらって、中国には三カ月デリバリーをずらしてくれというほどのこともいたしました。これはこの法律があったおかげでそれができた、私
どもとしてはこういうふうに考えておりまして、万が一のときの安全弁としての機能は十分に果たして農家の肥料の対応ができた、こういうふうに考えております。
以上、主な理由として申し上げました。
さらにもう
一つ、この肥料安定法の延長が可決をされましたときの運用面でございますが、これにつきまして私
どもの希望を申し上げさせていただきます。
第一は、この構造改善に基づく合理化目標を、業界結束して、サボらないでぜひとも目標に向かって実現をしていただきたいということ。同時に、これはその都度、国際情勢が変わりますので、その目標の見直しということも途中でぜひともやっていきたい、またやっていただきたい、こういうことが第一点でございます。
第二点は、生産、流通を含めたトータルの合理化、特にこの交錯輸送あるいは銘柄の整理といったようなことも含めまして合理化を達成をしていただきたい。
第三点は、合理化メリットはそれぞれ企業に発生をいたしますけれ
ども、そのメリットはこれを使う農業者へも均てんをしていただきたい。またそういうことを今後は感度に置いて、許された価格の折衝をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
第四点といたしまして、これは多少お願いがございますが、今回延長をされます安定法には輸出
関係の条項がすべて削除をされております。これは一昨年の六月でそういうふうになりました。この輸出
関係の条項の中に、輸出を承認する場合、
農林、通産両
大臣がつくった需給計画のもとにこれを認める、こういう一項があるわけでございますが、今回は全くこれがないわけでございます。したがいまして、内需優先という観点からいたしますと、緊急事態があって、例えば肥料の値段が国際的に三倍も四倍も上がるということになりますと、千載一遇の好機なりということで輸出に走るということが全くないとは言えませんので、この点について国会として何らかの歯どめをかけていただくような御配慮をお願い申し上げたい、こういうふうに考えます。
それから、次に申し上げておきたいと思いますが、輸入につきましては、この法律といたしましても輸入はまかりならぬということは一言も触れておりませんし、私
どもといたしましても、日本の国内に供給するだけの、内需に見合うものは我々の足元に置きたい、手元に置きたいという気持ちはございますが、もし万が一そういう
実態にならないで国際競争がいつまでも劣位にあるということになりますと、やはり適正な秩序のある輸入もいたしまして合理化に対するショックも与えたいし、そして価格の引き下げについての有利な材料にも使いたい、こういうふうにも判断をいたしておりますので、この点をひとつぜひつけ加えさせていただきたいと思います。
ただ残念ながら、輸入輸入と申しますけれ
ども、既に尿素等ではこの一月に比べてわずか半年の間に六割も値上がりをして、そして物が払底しつつある、こういう国際情勢もございます。かなり大きな波乱を呼んでいると私は思いますので、ここらについて、従来のようにいつでも買えるというような感覚は改めなくてはいけない、こう考えております。
以上、時間をちょっと超過しまして申しわけございませんが、私
どもの延長に対する意見を開陳いたしました。ありがとうございました。(拍手)