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1984-07-10 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十日(火曜日)    午前十時十分開議 出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    大島 理森君       太田 誠一君    鍵田忠三郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    高橋 辰夫君       月原 茂皓君    中村正三郎君       野呂田芳成君    羽田  孜君       保利 耕輔君    松田 九郎君      三ッ林弥太郎君    山崎平八郎君       渡辺 省一君    上西 和郎君       串原 義直君    新村 源雄君       田中 恒利君    細谷 昭雄君       松沢 俊昭君    安井 吉典君       駒谷  明君    斎藤  実君       武田 一夫君    水谷  弘君       神田  厚君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  山村新治郎君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         通商産業省基礎         産業局長    野々内 隆君  委員外出席者         大蔵省主計局共         済課長     坂本 導聰君         厚生省年金年         金課長     山口 剛彦君         社会保険庁年金         保険部業務第一         課長      高木 俊明君         農林水産省農蚕         園芸局次長   畑中 孝晴君         労働省労働基準         局賃金福祉部賃         金課長     征矢 紀臣君         労働省婦人局婦         人労働課長   藤井紀代子君         参  考  人         (全国農業協同         組合連合会常務         理事)     田中  昇君         参  考  人         (日本硫安工業         協会会長)   長野 和吉君         参  考  人         (日本化成肥料         協会会長)   草野  操君         参  考  人         (北海道農民連         盟委員長)   岡本栄太郎君         参  考  人         (東京都農業試         場農芸化学部長)伊達  昇君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 委員の異動 七月十日  辞任         補欠選任   三池  信君     松田 九郎君  三ッ林弥太郎君     大島 理森君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君    三ッ林弥太郎君   松田 九郎君     三池  信君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員  共済組合からの年金の額の改定に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提出第四五号)  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第四三号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  3. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、この農林漁業者年金の問題に関連いたしまして、今後の年金制度各種公的年金制度全体についての展望について論議をしてみたい、こういうふうに思います。  最初に、各種公的年金制度がそれぞれに稼働しているわけでありますが、今後十年前後で、掛金、負担金利息等を含めた収入に対して給付すべき支出が上回って、積立金に手をつけねばならない、こういう状態が起こってくるというふうな見通しが立てられているわけでございます。  そこで、きょうは、国家公務員共済地方公務員共済郵政電電国鉄とあるのでありますが、これのそれぞれの年金マイナス状況になって、そうして積立金に手をつけねばならないという状況はそれぞれ何年ごろに出現することになるか、この点をまず大蔵当局からひとつ伺いたいと思います。
  4. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  ただいまの先生の御指摘でございますが、収支見通しというのはいろいろな見通しの仕方があろうかと思います。それから、基礎数字をいっとるかという問題もございますが、私どもで最新の数字として持っておりますのは、昭和五十七年七月に私どものいわゆる共済研というところで出した数字がございます。その前提は、昭和五十四年にやった再計算をもとにしておりますけれども、その後の給与改定年金改定が年五%、運用利回りが年六・五%というような前提を置きましてはじいたものでございます。  その結果によりますと、いわゆる国家公務員共済組合連合会一般でございますが、逐次財源率保険料率を引き上げていっても昭和六十八年には収支残マイナスになる。この場合の財源率は、現在一二三と置いておりますのを一六八まで引き上げても、収支残は六十八年度にマイナスでございます。さらに、御指摘のございました積立金の問題でございますが、同じように財源率を上げてまいりまして三四〇というような高い財源率にしても、昭和八十二年度には国家公務員共済組合連合会積立金マイナスになってしまうという状況でございます。  同様に郵政共済でございますが、同じような計算をいたしますと、郵政の場合には昭和六十七年度に収支残マイナスになりまして、昭和八十一年度には同様に積立金がなくなってしまうという状況でございます。  それから御指摘電電共済でございますが、これも、当時私どもは直接所管はしておりませんでしたが、この共済研の資料によりますと、収支残昭和七十八年度にマイナスになり、積立金昭和八十七年にはなくなってしまうという状況でございます。  なお、地方共済については直接所管をしておりませんので、手元に数字を持ち合わせておりませんのをお許しいただきたいと存じます。
  5. 小川国彦

    小川(国)委員 今お答えいただいたように、私ども調査でも、国家公務員共済が六十八年でマイナス三十六億、地方公務員共済が七十二年でマイナス、二十一億、郵政が六十七年でマイナス四億、電電が七十八年でマイナス三百七十八億、国鉄が六十年でマイナス一千四十七億、こういう数字に伺っているのですが、このように理解してよろしゅうございますか。
  6. 坂本導聰

    坂本説明員 先ほど申し上げました前提を置けば、御指摘のような数字になると存じます。
  7. 小川国彦

    小川(国)委員 こうした公的年金抜本的見直しが必要だということになって、特に年金一元化が着手されてきているわけでありますが、制度間の不公平それから官民格差是正というものが行われなければならないというふうに考えるわけであります。この点については、大蔵省の方としては、この制度間の不公平、官民格差是正ということについてはどういうようなお考えをお持ちになっていらっしゃいますか。
  8. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のございました官民格差というのは、一体何をもって官民格差というか、種々議論のあるところでございます。また、現在の各公的年金制度が分立していて、その歴史的経緯があって、種々要件が違うというのも事実でございます。しかしながら、御指摘のように今後全体の公的年金については一元化を進めていくべきであるという観点に立ちまして、種々公的年金担当所管省庁が相談し合って、そういった種々矛盾点は解消していくよう努力すべきである、こういうように考えております。
  9. 小川国彦

    小川(国)委員 今後、関係省庁の話し合いが進められていかなければならないというふうに思うわけでございます。  そこで、もう一つ、今度は厚生年金制度がございます。  この厚生年金は、一般民間企業方々が入っていらっしゃるわけであります。この厚生年金でまいりますと、十六万円以上収入のある方は、大体三十一万人という人数方々全額もしくは一部停止措置を受けているということでございますが、この金額がどの程度の額に上っているか、この点をまず厚生省の方からお伺いしたいと思います。
  10. 山口剛彦

    山口説明員 厚生年金の場合、老齢年金は、高齢になりまして所得が得られなくなった場合の所得の補てんということを目的にしておりますので、六十五歳になりますまでは退職というものを要件にいたしております。しかし、在職中でありましても報酬の低い方がおられる現状にございますので、報酬の低い方については年金を特別に一部支給をするという仕組みになっておるわけでございます。  それで、そのいわゆる在職年金対象になっておる方の数でございますけれども、これはなかなか統計的にとるのが難しい問題もございますが、ただいま申し上げました六十五歳以上で十六万円以上の場合には二割をカットするということになっておりますけれども、その在職で二割カットされている方が二十五万人弱おられます。それから、低所得で二割ないし八割カット在職年金を受けておられる方が二十二万人ほどおられます。それらを総合いたしましたいわゆる支給停止総額、これは千六百億円ほどに達しております。  先生指摘のございました数につきましては、いわゆる老齢年金だけを挙げてその数を御指摘になったかと思いますが、そのほか通算老齢年金等もございますので、合わせますと大体今のような数字になります。
  11. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、ともかく厚生年金で十六万円以上収入のある人が全額停止を含めて三十一万人、これが通算の方も含めると少し人数がふえてくる、こういうことのようでございます。もう一遍大まかに申しますと、通算年金の人を除くと、いわゆる厚生年金の総支給額が六千九百億、それから、そのうち年金カットを受けている人が千四百億、約二〇%、こういうふうに見ているのですが、この点はそういうふうに見て差し支えございませんか。もし何でしたら、通算のやつを含めた数字でも結構でございますから。
  12. 山口剛彦

    山口説明員 お答えいたします。  年金支給総額六千九百億円のうち、支給停止になっておりますものは、通算老齢年金も全部含めますと千四百億円でございます。
  13. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、六千九百億というのは、ともかく通算も一切含めて老齢年金の総支給額が六千九百億、そのうちカットしているものが千四百億、約二〇%、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  14. 山口剛彦

    山口説明員 大変失礼をいたしました。先生の御指摘でよろしいのですが、数字を正確に申し上げますと、先ほど申し上げましたのは、いわゆる老齢年金年金支給総額が六千九百億円、そのうち支給停止になっておりますのが千四百億円。通算老齢年金につきましては、年金総額が千二百億円、そのうち支給停止総額が二百五十億円ということでございます。総体として先生の御指摘のような傾向でございます。
  15. 小川国彦

    小川(国)委員 こういうように厚生年金は大変なカット状況なんですが、受給者対象人数は大体何名ぐらいになりますか。厚生年金加入者総数ですね。
  16. 高木俊明

    高木説明員 お答えいたします。  昭和五十八年の三月末現在でございますが、老齢年金受給者の数でございますけれども在職老齢年金も含めまして約二百四十五万六千人でございます。その中で在職老齢年金受給している者が約四十八万三千人ということでございまして、老齢年金全体に占める在職老齢年金割合は約二〇%ということでございます。
  17. 小川国彦

    小川(国)委員 それから、厚生年金を掛けている方の人数はどのぐらいになりますか。  それをお調べ願っている間に、次の国家公務員の方で大蔵省にお聞きしておきたいと思います。  厚生年金に比べて国家公務員共済というのは支給制限措置が大変に緩やかでありまして、そのために、高級官僚天下りを含めて民間企業特殊法人の役員として再就職した者であっても多額の年金支給されるために、年金全額または一部停止措置を受けている者は総受給権者三十二万五千人のうち千八十八人、〇・三%にすぎない状況になっている。それから支給停止金額も六億六千七百万円で、総支給額四千七百三十一億八千百万円の〇・一四%、こういうふうに私ども調査で把握をしているのですが、このように理解をしてよろしゅうございますか。
  18. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  御案内のように、現在の共済年金は、国共済でございますが、前年の年金以外の給与に係る給与所得控除後の金額が六百万円以上という場合について、年金額が百二十万円を超えますとその二分の一をカットするという措置になってございます。これは厚生年金仕組みを異にしておりまして、国家公務員の場合には国家公務員共済制度を外れますと年金が出る。しかし、それに所得制限がかかっている。厚生年金の場合には厚生年金についても一定所得の場合は出るという、制度の分立したところから出ているわけでございます。そういった高額所得者に対する支給停止件数カット件数と申しますと、私ども連合会一般でとらえておりますが、昭和五十八年度で六百十六件という数字を持ち合わせております。  以上でございます。
  19. 小川国彦

    小川(国)委員 今の六百十六件というのは昭和何年度で、そして金額にしてお幾らぐらい、それから受給権者の中に占める割合はどのぐらいかということはおわかりになりませんか。——その間、厚生省の方に御答弁願います。
  20. 高木俊明

    高木説明員 厚生年金加入者でございますけれども、五十八年三月末でとらえまして約二千六百万人でございます。
  21. 小川国彦

    小川(国)委員 今お調べを願っている間に、今度は山村農水大臣、それから農水省の新後藤経済局長さんにお伺いをしていきたいと思うのです。  これは農水省大臣局長さんが直接このことに携わっているというわけではございませんので、直接的な見解の表明はなかなか難しいかと思いますが、こういう実態があるということをひとつ御認識願って、それに対する見識を持っていただきたいというように思うわけなんです。  まず、今民間厚生年金に入っている人は、定年になりまして、これがたしか六十五歳で年金支給の時期になりましても、十六万円以上収入がありますと年金停止になってしまう人が二〇%、千四百億もの額に上っているわけですね。だから、年金をもらえる人のうちの二割ぐらいが、再就職して十六万円以上収入があったというと、六十五歳になってやっと年金をもらえるかというときになってそれがもらえない。ところが、今度は国家公務員の場合には、二十年以上官庁在職すれば、定年の五十五歳前にやめても八〇%くらいの減額年金という形で支給を受けられるわけですね。その間に十年近い官民格差みたいなものが存在するわけです。  それで、山村大臣は該当しないと思うのですが、国会議員の中で二十年以上の官庁在職経験がある、大蔵省とか通産省とかいろいろな省庁にお勤めになった、あるいはその他の地方自治体でもしかりですが、二十年以上官庁経験のある国会議員が衆議院で七十二名、参議院で六十六名、これは私の調査で両院で約百三十八名の議員年金受給しているというふうに思われるわけです。これは国会議員歳費を受け取り、そのほかに年金をもらっているわけです。これから年金財政が非常に厳しくなっていく、先ほどのお話でも、国家公務員共済といえども支払い困難な時期が到達する、六十八年にはマイナス状態になるというわけですね。十年足らずでそういう時期が来るということを考えると、公務員をやめて今までと同等か以上の収入をもらっている人がさらにまた年金をもらっている、率直に言って国会議員歳費をもらいながら二十年以上官公庁に勤めたということで年金をもらっている方が、私の推定で百三十八名おるわけです。そうすると、年金平均支給額三百万円を掛けますと、ざっと四億一千四百万という計算になるわけです。  これは大臣の御見識としても、国会議員の生活が苦しいということはいろいろな面で大臣も私どもも身にしみて感じているところですが、そうは言ってもやはり国会議員としての歳費をもらっている人が、老後ではないのです、現職で働いているのですから、その人が年金をもらうというのは、年金財政の将来を考えたら辞退していくという方向を考えなければいけないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、この辺ひとつ御見解を承れたらと思います。
  22. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先生指摘の問題につきましては、前回の農林年金法の一部改正のときにも小川先生から御指摘のあった点ではないかというふうに私存じておりますが、国家公務員退職しまして民間会社なり特殊法人などに就職をしました場合に、報酬を受けながら共済年金給付を受けることができるという仕組みになっておりますことは私ども存じております。これにつきましては、ある程度共済年金職域ごとに設けられております関係で、ある年金集団を離脱しまして他の年金集団に加入した場合の問題として、これは共済年金に限りませず、形式的に申せば厚生年金につきましても同じようなことがあるわけでございます。  ただ、先生指摘のような御批判もございますし、それからまた臨時行政調査会最終答申の中でも、公務員退職しまして特殊法人等役職員となった者は報酬を受けながら共済年金給付を受けることができることになっているけれども共済年金集団を離脱して他の年金集団に加入した場合の年金支給のあり方については、被用者年金制度全体を通じて調整を行う中で是正措置を講じたらどうかというふうな御指摘もあっておるところでございまして、今後の公的な年金制度改革の中で被用者年金制度全体を通じた問題としてこれは検討されてまいるべき問題であろうと考えております。
  23. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、確かに現職国会議員で、そしてまた民間であった場合にはもらえないものがもらえるというようなことでございますが、これにつきましては、今局長から答弁がありましたとおり、臨調の最終答申という中で、今後の公的年金制度改革の中で被用者年金制度全体を通じた問題として検討すべきものであるということでございます。これは、今後の問題点として取り上げていかなければならないというぐあいに考えます。
  24. 小川国彦

    小川(国)委員 この問題については、大臣からもう少しまた突っ込んで御検討いただいていきたいと思いますが、もう一つ、今度は特殊法人への天下り実態ですね。今現実に、一九八三年一月現在の全特殊法人天下り、これを見ますと、四百七十七名が公社公団事業団公庫、金庫、特殊銀行、営団、特殊会社その他に天下りをしている。それからもう一つ、主要な省庁上級職の方の再就職状況を私調べたのですが、例えば大蔵省で七百六十六名退官者がおりますと、そのうち再就職している者は六百九十一名、九〇・二%。これは大蔵省の要覧の五十九年で見たのですが、それから運輸省が六百三名の退官者のうち五百六名、八三・九%。建設省が二百七名で再就職が二百名の九六・六%。農水省が二百六十三名の退職者のうち二百三十二名、八八・二%。こうした大蔵、運輸、建設、農林の主要な四省庁だけで見ましても、三千三百九名の調査対象にした退官者のうち二千七百九十九名、約八四・六%の人が再就職をしているわけなんです。  その中で、まず私は、公団公社公庫天下りました方々対象に考えてみますと、約四百三十人の高級公務員天下りが、その後十五年在職した、そうして考えてみますと約六千四百五十人、そして年金平均受給額が、大学卒で三十年勤務の場合は最高年金額は五百五十万円、その五五%支給となっておりまして、平均を三百万円と見ますと、六千四百五十人の人が三百万の年金を受けていると考えますと百九十三億五千万円、こういうことで、少なくとも本省の課長以上の天下り就職者についてのみ支給制限併給停止というものを加えると、年間約二百億くらいの節減が可能ではないかと考えられるわけです。  これらの人々は退職時以上の給与支給を受けて、しかも退職時にさらに高額の退職金受給公務員をやめたときにあり、さらにまた公団公社公庫へ行ってまた退職金受給が想定される人たちなんですね。こういう方々支給制限併給禁止というものは当然国家公務員地方公務員共済の中でも考えていかないと、もう十年足らず年金財源が枯渇するというときに、退職時の給与を上回る給与を得ながら、しかもまたその後に退職金までいただけるという状況にある人に、私の推定で二百億に上るわけですから、この併給禁となり併給制限措置大蔵省でももう当然考えていかないと、年金財政の行き詰まりということが必至の状況の中でありますから、こういう点への御検討をなさっているかどうか承りたいと思います。
  25. 坂本導聰

    坂本説明員 まず、先ほどのお問い合わせについてお答えさせていただきます。  先ほど、六百十六件というのは金額でどのくらいになるかということでございますが、金額的には大体一億四千五百万円程度となろうと思います。それから、六百十六件が退職年金等受給者に対してどのぐらいの比率を占めるか、〇・三%程度でございます。  それからまた、支給停止年金額が全体の年金額の中でどれだけ占めるか、〇・〇四%程度でございます。  それからただいまの質問でございますが、これは先ほど申し上げましたように制度が分立しているというところから、例えば民間会社の方が会社をおやめになって国立高専先生におなりになるという場合には、厚生年金を受けながら国家公務員としての給与を受けるということになるわけで、制度的には同様の問題を厚生年金も持っているわけでございます。  しかしながら、御指摘のように今後の年金を全体を通じて考えますと、やはり負担の限界というものから給付というものを考えていかなければならない。その場合に、一定収入がある場合、年金をどう調整していくかというのは、これは当然考えなければならない課題であろうと思っております。この点につきまして、先ほど農林省の方から御答弁がございましたように、ひとり国家公務員共済年金ということではなくて、我が国全体の公的年金制度を通じていかなる給付制限を設けていくか、制度間の調整を図っていくかという課題であろうと思っておりますが、私どもは、現在共済年金を担当しております大蔵省、自治省、農林省あるいは文部省と集まりまして、そういった問題も含めて今後の年金制度としてどう考えるかというのを検討中でございます。
  26. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一つ問題を広げて考えてみますと、公務員退職後十年の再就職状況というものを人事院の追跡調査から見ると、約三〇%の人が再就職をしているわけです。二十五万人の年金受給者平均年金額は二百十万円、そうして三〇%の再就職者受給している年金額を、二十五万人の三〇%と考えてみますと七万五千人、この七万五千人の人が二百十万円の年金を受けていると考えますと千五百七十五億円、こういうことになっているわけであります。この高額の給与を受けている再就職公務員に対して併給禁止措置を行えば、大まかに見ましても一千五百七十五億円を、内輪に見ましても一千億円以上の年金支給節減を図れるのではないか、こういうふうに考えられるのですが、この点についてはいかがでございましょうか。
  27. 坂本導聰

    坂本説明員 ただいま御指摘のございました数字の方はちょっと今お答えしかねるわけでございますが、御指摘のように、今後公的年金全体を考えるに当たって、やはり老後の生活保障ということから考えていくべきであり、また同時に、年金負担する負担者の負担の限界というものを考えていくということから、そういった公的年金をどういった所得階層の方々に出すかということを考えるのは当然の検討課題であろうというふうに考えております。
  28. 小川国彦

    小川(国)委員 大蔵省として検討課題ということで御検討願っているということでございますが、大蔵省はこうした退職者実態調査というものを行っているのかどうか。少なくとも高級公務員に対する併給禁止措置は、確実な根拠に基づいて実行を求めることが可能な措置じゃないか、こういう方向で是正、改善を行うお考えがあるかどうか、この点はいかがでございますか。
  29. 坂本導聰

    坂本説明員 先ほど御答弁申し上げましたが、共済年金の場合、六百万円以上の給与所得がある方について、年金が百二十万円以上の場合にはその二分の一を停止するという措置は、実はそういった高級公務員民間等に行った場合の所得等を考えて当時とられた措置でございます。  しかしながら、問題は、公務員給与等を、全体を通じまして、高給等という問題ではなくて、年金種々の他の年金あるいは種々所得等とどういうふうに調整していくかという問題であろうかと思います。そういった点につきましては、先ほど申し上げましたように関係各省今相談をし、検討しているところでございます。
  30. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、大蔵省がいつごろまでにこの検討をおやりになろうというふうに考えているかどうかわかりません。自分の老後に対して、より安定した豊かな老後を持ちたいというのは、これはだれしも同じ願いだと思うんですね。けれども、それが高級公務員の場合あるいは恵まれた公務員の場合には、退職時と同等の給与あるいは退職したときの給与の八〇%以上の収入を第二の就職の中で得られるとするならば、これは一応安定した生活圏の中にあると考えていいのじゃないかというふうに思うわけなんです。  私は、これは総評などの学働団体の皆さんにも伺ってみました。やはりその考え方は、大体退職後第二の就職をして、今までと同等ないしは今までの八〇%ぐらいの給料をもらっていたら年金は辞退するというのが当然ではないだろうか、それがより多くなってくる老人層のパーセンテージが上がってきている中で、年金というものを本当に活用せしむる道ではないのかという考え方があるわけですね。  そういうふうにして考えてみますと、私は、先般も運輸省の外郭団体のような形でつくられた日本空港ビルという会社調査をしたときに、やはり運輸省の高級官僚から天下った社長が、二千五百万円の年間所得を得ながら三百万円の年金をもらっているという実態ですね。これは運輸省だけではなくて農水省自体においても、大臣や経済局長にも御認識願いたいと思うのですが、私の調査したところでも、中央競馬会とか地方競馬全国協会とか中央畜産会、農林中金、農林漁業金融公庫、畜産振興事業団、野菜供給安定基金、森林開発公団、農用地開発公団、農業機械化研究所、糖価安定事業団、林業信用基金、農政調査委員会、こういうような各団体の理事長とか副理事長、理事あるいは常務理事とか総裁とか副総裁とか、こういう方々は、私の調査した年金受給調査によりますと、やはり少ない方では二百万円から、多い方は三百万円を超えた年金受給を受けているわけです。しかも、この人たちは、農林水産省におったときと同等あるいはそれ以上の給与を受けていらっしゃる。私は、農水省自体においても、こういう退職時と同等か八〇%以上の給与を受けている間は、その収入がなくなったときは、これは年金に頼るというのは当然のことですが、やはり年金を辞退するという方向を考えていくべきじゃないか、こういうふうに思うのです。この点、それぞれ大蔵省農水省から御見解を承りたいと思います。
  31. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、現在の各年金制度は分立しているということから種々の問題を生じていることは御指摘のとおりでございます。しかしながら、今後公的年金全体を通じて考えてみますと、年金負担する負担者という世帯は一般的に四人世帯、子供二人を抱えた四人世帯、住宅投資、教育投資をしていかなければならない世帯であろう。一方、退職者一般的に老夫婦お二人という世帯であろう。したがって、こういう世帯間の負担のバランスということを考えれば、当然御指摘のような方向で今後検討していかなければならないというふうに私どもは考えております。
  32. 山村新治郎

    山村国務大臣 おっしゃられることはまことにごもっともでございます。ただ、これは農水省だけそれをやれといってもおかしなものになってしまいますので、ひとつ公的年金制度全体の問題として関係省庁と十分検討してまいる、そういうような姿勢で参りたいと思います。
  33. 小川国彦

    小川(国)委員 これは働いている人たちが相当おるわけですが、ちょっと参考に伺いたいのですが、国家公務員共済、それから地方公務員共済郵政電電国鉄、これの年金加入者数と年金受給対象者数ですね、これはどのぐらいになっておりますか。
  34. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  国家公務員共済組合の連合会でございますが、これは昭和五十七年度の加入者数が八十六万五千人、一方、退職年金を受け取っている者が三十二万五千人でございます。それから郵政でございますが、組合員数が三十一万人、これに対しまして退職年金受給している者が九万九千人。なお、地方公務員等共済は直接私ども所管ではございませんが、聞きますところによりますと、昭和五十七年度で地方共済全体で組合員数は三百二十七万八千人、退職年金受給者数は六十七万人。  以上でございます。
  35. 小川国彦

    小川(国)委員 電電国鉄は、この国家公務員の中にもう入っているのでございましょうか。
  36. 坂本導聰

    坂本説明員 失礼いたしました。  先ほどの連合会の組合員数でございますが、五十七年度で八十六万五千人に対しまして年金受給者数三十二万五千人と申し上げましたが、これは二十二万六千人に訂正させていただきたいと存じます。  それから国鉄でございますが、組合員数は同じく五十七年度で三十九万一千人、退職年金受給者数が二十五万七千人。それから電電は組合員数が三十二万五千人、退職年金受給者数が五万六千人。専売は組合員数が三万六千人、退職年金受給者数が一万七千人でございます。
  37. 小川国彦

    小川(国)委員 こうして見ますと、大体厚生年金に入っている民間の労働者は約二千六百万人いるわけですね。それから国家公務員、地方公務員、それから郵政電電国鉄、専売と、こういうふうに公務員、公共企業体等、地方自治体等を見てまいりますと約五百万人、このほか国民年金方々がおいでになるわけでありますが、まず第一段階、この国家公務員の五百万人と厚生年金の二千六百万人、この人たちが加入しているわけでありますが、話の原点にもう一度戻るわけでありますが、厚生年金では、十六万円以上収入があると、定年後に再就職したがためにカットを受ける人が二〇%いるわけでございますね。それに対して国家公務員の方は、退職年金で〇・三%、それから全体の年金額でも〇・〇四%ですね。これは大変な開きだというふうに私は思うのです。  ですから、これはもう臨調答申を待つまでもなく、この是正というものについてはやはり大蔵省が、これだけ国の財政が枯渇して厳しい状況の中、しかも国鉄のように年金がパンクしてしまつたというような状況のものまで国家公務員共済の中に加えていったわけですね。そういうような状況に立ち至っている。それはひとり国鉄だけの問題ではなくて、今後年金全体の中にそういう状況がもう十年後には出現をする。二十年後になったら、今度は例えば三人で一人の老人の老後を保障しなければならない。十五万円の年金を支出しようとしたら、今働いている二十代や三十代の若年の世代に、月に一世帯五万円ずつの年金を三軒で十五万出して老人一人のお金を出しなさい。これはとてもできることではないと私は思うのです。今働いている自分たちの、例えば二十万か三十万の所得の中から五万円の、老人に十五万の年金支給するために一世帯五万ずつの拠出なんてとてもできない。そう考えてみたら、我々はこの年金財政のいわば金庫を、財政というものをしっかり保っていく必要があるのじゃないか。  今大丈夫だから十年先、二十年先のことを考えないで、三千万近くも所得のある人に三百万円の年金を払う。私は国会議員もそうだと思うのですよ。一千万を超える所得をもらっていながら、苦しいからといっても、年金をもらうということは年金の趣旨に反していると思うのです。これは我々も国会の中でみずから正していかなければならない問題でありますけれども大蔵省としては、やはり国の財政なり年金財政なり全体を見て、締めるときは締める、切るべきものは切る、そういう形の中で、年金の財政が国の全体を通して国民全体をにらんで保障されていくというものをつくっていかなければならない。十年後に財源がなくなるなら、私が今提案したことをやるなら、国会議員高級公務員をやるだけでまず二百億の節減になる。それを公務員の全体の中の再就職をして生活の安定しているところに及ぼせば、一千億から一千五百億の節減ができる。  こういうことが今実行可能だとしたら、やはりこれは大蔵省と言わず、農水省と言わず、厚生省と言わず、挙げて論議を深めてこういうことを実行すべきではないのか。私はだれしも自分の生活が豊かであり、保障されているということを求めない人というのはないと思うのです。しかし、やはりそこには、おのずから全体をにらんでみずからのものを節制していくというものがなければならないのじゃないか。こういうことを大蔵省の、これは当該の一番の課長さんになるわけでありますから、共済の全体をにらんでいらっしゃると思う。国家公務員の共済だって支払いができない状態になったら困るわけでありまして、今働いている国家公務員人たちの将来も考えるとしたら、やはり今そういう手を打つべきではないのか、こういうように思うのですが。
  38. 坂本導聰

    坂本説明員 御指摘のとおりでございまして、年金というのは年金額が高ければいいというのではなくて、長期に安定した年金制度というのが重要であろうと思います。そのためには、年金財政がパンクしたときに考えるというのでは遅きに失するわけでございますので、できるだけ早い機会に対応していくということはもとより重要でございます。したがいまして、今御指摘の方向で国共済としては考えてまいりたいと思いますが、ただ、御案内のように年金制度というのは分立し、所管省庁もたくさんございますので、そういった所管省庁と同一歩調をとって相談しながら公的年金一元化、長期的安定化というものに向かって考えてまいりたいというふうに思っております。
  39. 小川国彦

    小川(国)委員 給与所得者の扶養控除等申告書というのを、これは国家公務員共済組合の連合会で毎年こういう調査票をとっていらっしゃるわけです。これによれば、退職年金を受け取っている方々が再就職をしてどういう収入があるかということの申告をなさるようになっているわけですね。これは国家公務員であれば、大蔵省であると通産省であると農林水産省であると何省であるとを問わず、国家公務員の方が退職して再就職してどういう給与を得ているかということがこれでわかるわけです。そうしますと、まずは国会議員を初めですよ。それから高級官僚もしかりで、ある官庁に二十年以上勤めた、それでやめた、そして今までより以上の給与をもらっているという場合には、当然、この調査に基づいてこの人は年金カットしてもいいのじゃないか。何も国会議員として一千万円以上の所得があったり、天下りした外郭団体や民間会社で今まで取っていた給料よりも上回る給料を得ている人に年金支給する必要はないんではないか。この年金停止しておいて、その人が本当に職がなくなって退職したときにこの年金を支払う、そういうようにこの実態調査に基づいた大蔵省見解というものは出すつもりなら出せるのじゃないか。この調査票をもう少ししっかりおとりになれば、今高い給料と年金と二重に受け取っている人々の実態というものは即座に私はわかると思うのですがね。
  40. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  国家公務員共済組合連合会は、先ほど申し上げましたような高額所得者に対する年金支給停止という措置をとっている以上、所得の把握、給与所得の把握が当然必要でございますので、追跡しているわけでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますが、今後仮に公的年金全体を通じて一体給付調整をどうやっていくかということを考える場合には、国家公務員の場合には比較的追跡調査が楽でございますけれども、全国民、全年金受給者に対してどういうふうに所得なり給与所得なりを把握していくかという執行上の問題がありますので、方向としては先ほど御指摘のとおりでございますが、そういった執行上の問題もあわせて考えていかなければならないというふうに考えております。
  41. 小川国彦

    小川(国)委員 厚生省お見えになっているので、二千五百万人加入している厚生年金の皆さんの再就職後の給与状況は、厚生年金の場合は当然把握なすっておりますね。
  42. 高木俊明

    高木説明員 お答えいたします。  二千六百万人厚生年金に加入しておるわけでございますが、厚生年金の場合には標準報酬制というのをとっておりまして、原則的には年一回十月から報酬を変更していくということになるわけでございます。ただいま先生がおっしゃいました二千六百万人全員につきまして、これは厚生年金に加入しておるわけでございますから、そういう意味では標準報酬というものを把握しておるわけでございますが、在職老齢年金関係で申し上げますと、現在在職老齢年金をもらっていらっしゃる方につきましては年一回、今申し上げました十月時点で変更される標準報酬に基づきまして、在職老齢年金を今後とも受給できるかどうかという報酬のチェックをしておるわけでございます。  そのやり方につきましては、私ども社会保険庁の方で在職老齢年金受給者を把握しておりますから、その在職老齢年金受給者が勤務しております事業所ごとに、またその事業所を管轄しております社会保険事務所に対しましてリストをお送りし、そしてそこでチェックさせて社会保険庁の方に報告をさせる、こういうようなやり方をとっておるわけでございます。
  43. 小川国彦

    小川(国)委員 これは山村農水大臣でなくて本当は大蔵大臣に聞く質問でして、大変お門違いのことを聞いて恐縮なんですが、実態は今まで一時間近い論議の中でやってまいりましたが、今厚生省の方から答弁ありましたように、結局一般民間会社民間企業に働いている労働者が約二千五百万人、それから国家公務員などの公共企業体で働いている人が五百万人いるわけです。五対一くらい。このほかに中小企業や商業や農業の人たちがいるのですが、働いている人の中のかなり大きな部分を厚生年金国家公務員共済年金で占めているわけなんです。  ところが、現実には今お話しのように厚生年金の方は非常に厳しく、五十五歳になろうが七十歳になろうが、勤めている人が幾ら所得を取っているかという実態をずっと追跡調査していまして、どういうところへ行って働いても、中小企業へ行って働いても十六万以上の収入があったら年金はもらえないわけです。二千五百万の労働者はそういうふうになっているわけです。ところが、公務員五百万人の方は五十五歳以上、再就職して、金額にかかわらず一定収入を得ても年金がもらえるという形になっているのですね。これはどう見ても不平等だ。もちろん公務員人たちだってマイホームを持った、ローンを払わなければならない、あるいは子供がまだ大学へ行っている、授業料も大変だ、こういう人になってみれば、いや私のところは公務員をやめたけれどもどうも第二の就職の給料だけじゃ食えない、年金と足してようやっと食べているんだ、こういう人もいると思うのですよ。だから、例えば公務員をやめるときに四十万もらっていた、五十五歳か六十歳近くなってやめた、給料が半分になっちゃった、四十万が二十万になっちゃった、そこで二十万の年金を足してやっとどうやら生活が維持できる、私はこういう人の年金を削れとは言っているんじゃないですよ。やめた以後の給料が今までと少なくも同等以上、四十万でやめた人が四十万以上の収入をその後得ているのに、そういう人にまで年金を払っていたんじゃお互いの老後の保障をする年金財政は苦しくなるんじゃないか。  やはりここは厚生省がやっている一般民間企業の人に対すると同じように、まず十六万円以上の収入というふうに合わせるかどうかは別にしても、一定以上の収入があったら年金は辞退する、こういう方向を国会の中でもそれから各省庁の中でも——今健康保険法の審議を社労委員会でやっていますが、この次は年金なんですね。閣議の中でもこういった問題について、ひとつ国全体として年金のあり方を官民の格差をなくして、そして将来に向けての年金財政をゆとりあるものにしていく、そういうことを我々は一体になってやらなければならない、こういうふうに考えますので、その点について大臣の御見解を承りたい。
  44. 山村新治郎

    山村国務大臣 おっしゃる御趣旨はよくわかります。しかし、農林水産大臣として農林水産省だけというわけにもまいりませんもので、これはやはり公的年金制度全体の問題ということで問題を提起して真剣に取り組んでいかなければならない、そういうぐあいに私は考えます。
  45. 小川国彦

    小川(国)委員 これは本当は予算委員会とか決算委員会とか、そういう場で各省庁の幹部の方が出ているところだといいのですが、きょうは大蔵省の共済課長さんに代表で来てもらっているので、最後に大蔵省として、国家公務員からあるいはまた公共企業体から地方公務員の共済をにらんで、先ほど来各省庁との協議の中でこれを進めていくということですが、時期的にはいつごろをめどにこうしたことの結論を得よう、こういう作業が進んでいるのか、時期的なめどについてお聞かせいただきたい。
  46. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  去る三月の閣議決定におきまして、共済年金制度につきましては昭和六十年に基礎年金導入等の抜本的見直しを行い、昭和六十一年度から実施するという決定を得ているところでございますので、その線に沿って目下鋭意各省集まって相談中でございます。したがいまして、できれば明年の抜本改正法の中で種々検討課題について解決を図ってまいりたいというふうに考えております。——失礼いたしました。閣議決定は二月でございました。失礼いたしました。
  47. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、来年度までには私の今種々申し上げた点を含めて当然御検討くださることと思いますが、これは当然大蔵省全体にわたる問題でありましょうし、大蔵大臣にもきょうの論議の経過は、農林水産大臣大蔵大臣と大変親しいようですから、農水委員会でこういう議論があったということを十分伝えていただきたいと思いますが、大蔵省の共済課長さんの方からも、この点、きょうの質疑の中で大分前向きな御答弁をいただきましたので、そういった考え方をひとつ大蔵大臣にも伝えていただき、来年の結論の中には、働いている労働者が公務員であれ一般民間産業の労働者であれ、あるいは農民や商工業者も含めて納得のいく年金、お互いの老後が基礎年金においては平等であるということ、今言った支給のいろいろな時期の格差なり支給の方法なりという矛盾は来年度で解消される、こういうことを見通しとしてもう一度明言していただきたいと思うのです。
  48. 坂本導聰

    坂本説明員 お答えいたします。  抜本改正は明年ぜひ提出させていただきたいと考えておりますが、その個々の中身につきましては種々の技術上の問題等があって、一定の経過期間等を考えなければならないと思いますので、これから各省庁と相談してまいらなければならないと思いますが、基本的改正の方向は明年にお示ししたいと考えております。
  49. 小川国彦

    小川(国)委員 時間も参りましたので、以上私の申し上げたように、これから年金の財政が行き詰まって十年後には年金財政がパンクする、二十年後に我々が年金を受けるころには財源がなくなったというようなことではお互いに不安もあるわけでありまして、働いている国民の皆さんが老後の年金を安心して受給できるように、大蔵省も今論議したことは少なくも来年の方針の中に盛り込んでほしいと私は思いますが、今後の皆さんの作業を見守りたいと思います。  以上で質問を終わります。
  50. 阿部文男

    阿部委員長 水谷弘君。
  51. 水谷弘

    ○水谷委員 私は、公明党・国民会議を代表しまして、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対して、反対の立場から若干の質疑を行うものであります。  反対の主な理由は、今回の改正が、五十八年度公務員給与が人事院勧告の六・四七%アップに対して二・〇三%アップに抑えられた、この公務員給与にスライドした改正であり、年金生活者の生活を極めて圧迫するものであるからであります。  さて、農林漁業団体職員共済組合、いわゆる農林年金農林漁業団体の職域の発展と役職員の福祉の向上を図るため昭和三十四年に発足いたしましたが、以後十数回に及ぶ制度の改善と関係者の努力の積み重ねによって基礎的確立の前提となる財政の健全化を進めてこられた結果、今日では制度自体としては、制度設立の母体となった厚生年金よりも安定したものとなっており、農林漁業団体役職員の老後保障制度として定着するに至っているわけであります。  また、当面の財政状況は他の年金制度と比べても相対的に健全化が図られているようであります。しかしながら、被保険者、組合員の伸び率が横ばいの状態であり、昭和七十九年度には年度末資産積立金がゼロになってしまうという財政収支の将来見通しも出ている状況から、決して予断を許さない状況にあります。  来るべき高齢化社会に備え、我が国の公的年金制度はどうあるべきかについては、昭和五十年代に入り各界各層から数多くの提言がなされてきたわけでありますが、先ほどもお話がございましたように、本年二月二十四日、政府が「公的年金制度の改革について」を閣議決定し、五十九年に国民年金厚生年金保険及び船員保険制度について基礎年金の導入を図る等の改革の趣旨に沿った制度改正を行い、六十年には共済年金についても同様の措置を講じ、六十一年度から実施するとしております。  このような中で、今国会には年金制度改正案がいよいよ健保の後に審議されるわけでありますが、この改正案は、我が党がかねてから主張してまいりました国民基本年金構想が盛り込まれている点では、制度改革の前進として一応評価はいたします。しかし、この改正案の中には公的年金統合へのプロセスの具体策が提示されておりませんし、基礎年金を一人五万円としており、その水準は五十七年度の生活保護基準をも下回るものであります。さらに老齢福祉年金は従前どおりとしておるなど、長期的展望に立った給付負担の均衡に対する配慮に欠け、給付水準の引き下げと高負担を国民に強いるものと言わざるを得ないわけであります。  今申し上げましたように、このような公的年金全体の改革の方向の中で農林年金としては今後どのように対応していかれるのか、最初に大臣に具体的にお伺い申し上げます。
  52. 山村新治郎

    山村国務大臣 本年二月二十四日に閣議決定いたしました「公的年金制度の改革について」におきまして、公的年金制度一元化を展望しながら、昭和六十年におきましては、共済年金について、国民年金厚生年金等の基礎年金の導入を図る等の改革の趣旨に沿った制度改正を行うこととしており、調整の基本的方向は明らかとなっております。  しかし、例えば農林年金制度は、農林漁業団体が農林水産業の発展と農林漁業者の地位の向上という政策的にも重要な役割を担っていることから昭和三十四年に厚生年金から分離発足したという経緯を有しておりますし、現に農林漁業分野での政策目的に沿った制度として運用されているように、各種年金制度はおのおのその目的、経緯、財政状況等につきまして異なる面がございまして、これを機械的に整理するのは難しいことじゃないかと思っております。  このために、現在共済年金制度全体につきまして他の年金制度所管する省庁とも協議を重ねておるところでございます。また、特に農林年金制度につきましては、事業主と組合員との利害調整、加入団体相互のコンセンサスの形成等を図るため、組合員代表、事業主代表、学識経験者等から構成されます農林年金制度に関する懇談会を開催して関係者の御意見も伺っておるところでございます。このような慎重な検討を十分に行いながら、今後の農林年金制度の対応について誤りのないように対処してまいりたいというぐあいに考えます。
  53. 水谷弘

    ○水谷委員 ただいまの御答弁のようにひとつ誤りのない対応を、それから給付水準の引き下げにつながらないように努力をお願いしておきます。  具体的な問題といたしまして、昭和四十四年度以降、国家公務員給与の上昇率を基準として、五十八年度を除いて毎年度、既裁定年金の改正が行われてきたわけであります。  そこで、現在公的年金制度一元化の方向の中で、今後の農林年金の改正はこの国家公務員給与の上昇率を基準とする給与スライド方式を堅持するのか、それとも厚生年金の物価スライド方式を全面的に取り入れることになるのかとの疑問が出ているわけでありますが、今後の問題とはいえ、その基本的なお考えをお伺いしたいのであります。
  54. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  農林年金年金額計算は、現在、給与比例方式のみで算定いたします共済方式と、定額部分と給与比例部分とをあわせました方式によって算定いたします通年方式とがございます。このうち、共済方式で算定される場合と通年方式の給与比例部分及びこの給付の最低保障額の改定につきましては、年金額改定法によりまして、年金額算定の基礎となっております標準給与を前年度の国家公務員給与改定の引き上げ率を基準として引き上げることによりまして年金額改定をやっております。一方、通年方式の定額部分及び新法最低保障額の算定の基礎となっております定額の部分につきましては、厚生年金に準じまして、消費者物価指数が五%を超えて変動した場合にはその変動率に応じて政令で改定を行うという、いわゆる自動スライド制によっております。したがいまして、農林年金年金額改定指標としましては、現在、給与と物価の両方を組み合わせて用いているというのが現状でございます。  このうち給与スライドによります改定方式につきましては、団体年金法第一条の二の規定に「この法律による年金たる給付の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定措置が講ぜられなければならない。」という規定がございますことに基づきまして、年金受給者年金給付水準をいわば現職の組合員の給与改定に伴って改善を図るという目的でやっておりますし、物価スライドによる改定方式につきましては厚生年金に準拠しております。御案内のとおり、厚生年金におきましては原則として五年目ごとに財政再計算をやるということになっておりますが、その財政再計算の五年間の間におきましても、年金額の減価をきめ細かく防止するという方式を取り入れておりまして、そのために政令で消費者物価指数の上昇率によりまして年金スライドするという仕組みをとっているわけでございます。  スライドの指標をいずれにとるかということにつきましては、年金仕組みそのものと密接にかかわっている問題でございまして、今後、公的年金制度改革の一環として行われます農林年金の改革の検討に当たりましては、こういった年金額改定の指標のとり方についても当然検討をいたさなければならないと考えておりますし、共済年金共通の問題として関係各省とも十分協議してまいりたいと考えております。
  55. 水谷弘

    ○水谷委員 退職年金等の最低保障額について次にお伺いをいたします。  恩給法の改正に準じて法改正される絶対最低保障額の改定と、新法年金者に適用される、厚生年金を物価スライドで改定した場合、これに準じて政令で改定されることになっている最低保障額と比較いたしますと、絶対最低保障額は低額となっております。さらに年齢区分、組合員期間区分等が異なった体系となっております。そこで、この最低保障額の新旧格差の是正については、今までその是正に努める取り組みをされてきたわけであります。しかし、まだそこに新旧の格差が見られるわけでありますが、その解決が早急に必要であるわけであります。今回の改正においてこれが行われていない、そのように考えるわけでありますが、今後この格差の是正に対してどのように取り組まれるか、具体的にお伺いをいたします。
  56. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金の最低保障額につきましては、新法適用者と旧法適用者との間でその取り扱いに差異がございます。昭和三十九年十月以降の退職者でございます新法適用者とそれ以前の退職者との間の取り扱いの違いでございますが、この旧法適用者のうち六十五歳未満の者それから組合員期間が二十年未満の者は、御指摘のとおり、新法適用者よりも平均して二〇%程度の格差が生じておりますことは事実でございます。  これにつきましては、共済年金制度共通の原則としまして、年金額の算定はその給付事由が生じた時点における制度によるべきであるということにされておりまして、その意味で恩給制度に準じて給付が定められます旧法年金に対して、制度的に新法年金、これは新国家公務員等共済に準ずることになっておりますが、この新法年金の水準を保障することは、ストレートにはなかなか困難というふうに考えております。また、農林年金共済年金グループに入っておりまして、その給付水準は各共済制度共通になっておりますので、農林年金だけの有利な取り扱いを図るということはなかなか難しいことでございます。  ただ、旧法年金者に新法最低保障を直ちに適用することは困難であるといたしましても、従来から新旧の格差是正には努めてきておるところでございまして、五十九年度におきましても、旧法年金に係る絶対最低保障額につきましては、その改善を図りますとともに、結果として新旧格差の是正に寄与する形にいたしております。また、六十五歳以上の者につきましては、絶対最低保障額、これは三月に改定されますが、これが四月に改定されます新法最低保障額を約五万二千円程度上回る見込みになっております。
  57. 水谷弘

    ○水谷委員 若干の前進は評価するわけですが、せめて絶対保障額については厚生年金並みの最低保障額を適用すべきではないか、このような指摘があり、政府も改善の検討課題とされてきたところでありますが、先ほどのお話でございますが、農林年金の場合は新旧の切りかえがおくれていたわけであります。その点では極めて不利となっているわけであります。さらに、この旧法の最低保障額適用者、これは極めてわずかである。こういうことをひとつ考慮に入れまして、共済年金との調整も含めて共済年金全体で取り組んでいくべきである、このように考えているわけですが、御見解をお伺いしたいと思います。
  58. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり、農林年金におきましては、確かに数はそれほど多くないわけでございますが、先ほど申し上げましたように、制度仕組みといたしまして、給付水準につきまして各共済制度共通の仕組みをとっておりますので、農林年金制度の改正というものは他の共済グループにも当然共通に行わざるを得ないという問題がございます。さらに、恩給にも影響せざるを得ないという問題がございます。他の共済年金あるいは恩給におきましては、旧法年金者及び恩給受給者の絶対最低保障額該当者をかなり多く抱えているという実態がございまして、この辺のことにつきましてはひとつ御理解をお願いをいたしたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、この絶対最低保障額につきましては、妻の扶養手当とか子の扶養手当の加算の制度のあるなしというふうなこともいろいろあるわけでございますが、厚生年金方式それから共済年金方式、制度の中で仕組みの細部の点でいろいろ異なっているところがございます。そういうものの全体のバランスの中でやはり検討していかなければならない問題だというふうに考えております。
  59. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、農林年金の組合員の給与体系、これは加入団体がそれぞれ独立の経営団体であり、国家公務員給与のように一様ではないわけです。また、加入農林漁業団体の経営、これは農林水産業を取り巻く最近の諸情勢から非常に厳しさがあるわけでございまして、給与水準の上昇というのは非常に困難であります。  このような中で、標準給与の下限について、その引き上げは例年のとおり私学共済と調子を合わせたものとなっているわけですが、現実に組合員の中で給与が七万七千円以下の方、これはどのくらいおいでになるのか、具体的な数字をお教え願いたいと思います。
  60. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  昭和五十八年度末現在におきます農林年金の組合員数を見ますと、総組合員数四十八万五千百九十二人でございますが、そのうち標準給与月額が七万七千円以下の者は三千三百十五人、〇・七%というふうになっております。なお、従来の標準給与月額七万五千円に該当しておりまして今回の引き上げの対象となります者は、このうち二千四百十四人、〇・五%ということでございます。
  61. 水谷弘

    ○水谷委員 確かにパーセントからいきますと今のお話のように〇・七%ということでありますが、七万七千円とされたことに対する妥当性、これについて具体的に伺いたいと思います。
  62. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 標準給与の設定につきましては、組合員の現実の給与水準をできるだけ適正に反映することを基本としなければならないと思っておりますが、特に下限の引き上げにつきましては、従来から下限の該当者が全組合員の多くても一%台であることを一つの目安にいたしまして、農林年金と同様に標準給与制を採用しております私学共済とのバランス等も勘案して決めることにしております。  具体的な基準としましては、国家公務員給与の下限であります、俗称行(二)と言っておりますが、行政職口の五等級一号俸を採用しておりまして、これが五十八年の国家公務員給与改定によりまして七万五千百円から七万六千六百円に引き上げられましたことによりまして、農林年金平均標準給与につきましても七万五千円から七万七千円に引き上げたということでございまして、私学共済におきましても同様の措置をとっておるところでございます。
  63. 水谷弘

    ○水谷委員 七万七千円という今の根拠について御答弁がございましたけれども、下限の引き上げについては、どうかひとつ慎重な対応をお願いしておきたいと思います。  それと一番重要な関連があるわけでありますが、今後、対象団体の経営基盤の強化、農林年金の安定的な発展を考える場合に、この経営基盤の強化と、さらに定年制の延長、また給与体系の整備等、雇用条件の改善を図っていくことが重要になっていくわけでありますが、これに対する政府の指導方針、どのように指導されていくか、それをただしておきたいと思います。
  64. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 対象団体の大宗を占めております農協について見ますと、農協経営を取り巻く諸情勢はまことに厳しいものがございます。低成長経済の定着化、また金融情勢の変化、金融の自由化というものも相当急速に進みそうだというような状況にございます。農産物の需要もなかなか停滞をしているというようなことでございまして、この環境条件が近々大幅に改善される見込みがなかなか立ちにくいというのが、正直なところ、私どもの持っている考えでございます。  そこで、農協の経営対策につきましては、経費節減等によります経営合理化の推進、あるいは組合員のニーズに応じました事業量の拡大、そしてまた農協の経営構造を改善いたしまして、信用事業あるいは共済事業といったようなところに依存するだけではなくて、農協の本来事業でございます販売事業、購買事業も自分の足で立っていけるような方向に少しでも持っていく、そしてまた、指導事業にも十分力を入れた、本当に地域社会に密着した農協経営に持っていくということが必要だと考えておりまして、農林水産省といたしましては、こういった農協の体質強化を積極的に推進をいたしたいと思っております。  農協系統組織におきましても、前回の五十七年十月の全国農協大会におきまして系統農協経営刷新強化方策というものを決議いたしまして、経営の減量化なりあるいは事業運営の適正化に取り組んでいるところでございまして、農林水産省といたしましても、必要に応じまして適切な指導を行うことにいたしておるところでございます。
  65. 水谷弘

    ○水谷委員 農協それから加入諸団体の経営基盤の強化、これに一番影響を与えるのは農林水産業全体の発展ということになるわけでありますが、現状の厳しい環境を抜本的に改革のできるような対応が今一番求められていると思うわけであります。農林年金を確固たる制度に整えていくためには年金財政の健全化が一層重要になってくるわけでありますが、そのためには被保険者の安定的確保が最も必要になるわけです。  しかし、農協の労働問題研究所の調べで、つい最近「各県連とも人員抑制を図り、従業員数は昭和五十年代初めての減少をみた。このため、職員の年齢構成は若年層の割合が減り、中高年齢が増大、今後高齢化が早まる見通しにある。」このように発表になっているわけであります。  農林水産業全体が縮小均衡へ移行する中で、対象団体組合員数の横ばい、さらに減少傾向、これが今深刻な問題になっていこうとしております。この点についてどのように対応をされていくのか、具体的にお伺いをいたします。
  66. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林漁業団体の中心になっております農協について見ますと、先ほど申し上げましたような農協経営をめぐる状況が非常に厳しくなっておりますので、この中で経営の合理化なり事業の充実を図ってまいります場合に、新規採用ということにつきましてはなかなかかつてのようなわけにはまいらないという状況になってきておるわけでございます。しかし、一方におきまして職員の人事配置の適正化とかあるいは定年年齢の延長というようなこともございますので、現在の職員数程度でこれからは横ばいで当面いくのではなかろうか、そのように私ども見ておるわけでございます。  農林年金の財政状況を他の年金制度に比べてみますと、成熟率なりあるいは年金収支比率などでは私学共済、厚生年金に次ぐ順位にございまして、現時点におきます財政指標の水準から見れば各種年金制度の中ではさほど悪化は進んでいないというのが現状であろうと思いますけれども、こういった職員数の動向等を反映いたしまして、近年の動向を見ますと成熟率がかなり急速に高まってきているということでございまして、このため五十六年四月から従前の掛金率千分の九十八を千分の百九に改定をいたしたところでございます。今後、公的年金制度の改革に伴います共済年金制度改正の検討ともあわせまして、負担の限界なり給付との均衡等を考慮しながら、年金財政の健全化につきまして真剣に検討をしていく必要があるというふうに考えております。
  67. 水谷弘

    ○水谷委員 最後になりますが、国庫負担の水準は断じて今後減少させるべきではない、このように考えるわけであります。  さらに、行革関連特例法による国庫補助の減額の六十年よりの取りやめ、また過去三年間の減額分とそれに対する利息、これらの早期返還に対する実施について、確かな見通しをお答えいただきたい。
  68. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 行革特例法は、昭和五十七年度から昭和五十九年度までの間におきます補助金等の縮減を内容とするものでございます。昭和六十年度以降におきましては、現在の法制からいたしますと、農林年金に対する国庫補助の縮減が行われることはないというふうに理解をいたしております。  五十七年度から五十九年度にかけましての補助金縮減分につきましては、同法の規定によりまして、農林年金の財政の安定が損なわれることのないように、特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ措置することになっております。  農林水産省といたしましては、特例適用期間経過後の補助金縮減分及びその得べかりし金利収入相当分の補てんにつきまして、財政当局と折衝をいたしてまいる所存でございます。
  69. 水谷弘

    ○水谷委員 時間でございますので以上で終わりますが、先ほども他の委員からの質問がございましたように、いよいよ高齢化社会に入る我が国において、年金制度というものは今後重大な位置を占めていくわけでありますが、今後も改革に当たって希望の持てる老後の保障制度、このようなものを確立するために、農林年金を担当しており、そして多くの農林漁業者の生活の安定の向上を目指す農水省として、どうかひとつ大臣全力を傾注してお取り組みをいただきたいと最後にお願いを申し上げて、質問を終わります。
  70. 阿部文男

    阿部委員長 神田厚君。
  71. 神田厚

    ○神田委員 農林年金の改正問題で御質問を申し上げます。  まず最初に、年金統合の方向が出されまして、基礎年金の導入という考え方のもとでこれから検討に入るわけでありますが、これに対しまして、農林年金はその成立経過におきましてそれぞれ特徴を持って運営されてきたわけであります。その点にかんがみまして、今後そういう方向で基礎年金導入あるいは年金統合という立場に立ったときに、農林年金の対応をどのようになさるのか、大臣の方からお聞かせをいただきたいと思います。
  72. 山村新治郎

    山村国務大臣 御存じのとおり、本年の二月二十四日閣議決定を行いました「公的年金制度の改革について」におきまして、公的年金制度一元化を展望しながら、昭和六十年度におきましては共済年金について、国民年金厚生年金などの基礎年金の導入を図る等の改革の趣旨に沿った制度改正を行うこととしております。調整の基本方針は明らかになっておると思います。しかし、例えば農林年金制度は、農林漁業団体が農林水産業の発展と農林漁業者の地位向上という政策的に重要な役割を担っていることから、昭和三十四年に厚生年金から分離、発足したという経緯がございます。また、農林漁業分野での政策目的に沿った制度として運用されているように、各種年金制度はそれぞれその目的、経緯、経済状況につきまして異なる面がございますので、これを機械的に整理するということは問題があるというぐあいに考えます。このために、現在共済年金制度全体につきまして、他の共済年金制度所管する各省と協議を重ねておるところでございます。  また、特に農林年金制度につきましては、事業主と組合員との利害調整、そしてまた加入団体相互のコンセンサスの形成等を図るため、組合員代表、事業主代表また学識経験者等から構成される農林年金制度に関する懇談会を開催いたしまして、関係者の御意見も伺っておるところでございます。  このような慎重な検討を十分に行いながら、今後の農林年金制度の対応につきまして誤りのないように対処してまいりたいというぐあいに考えます。
  73. 神田厚

    ○神田委員 それでは次に、全国農林年金受給者連盟など団体等から出されている要望を中心に御質問を申し上げたいと思っております。  まず最初に、農林年金に対します国庫補助につきましては、昭和五十七年度から五十九年度までの行革削減分は財政再建期間終了後におきまして速やかに適正な利子を付して返還されるべきだ、こういうふうなことで要望が出ておりますが、この点についてはどのようなお考えを持っておりますか、お聞かせをいただきたいのであります。
  74. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 五十七年度から五十九年度にかけましての行革関連特例法による補助金縮減分につきましては、同法の規定によりまして、農林年金の財政の安定が損なわれることのないよう、特例適用期間経過後において国の財政状況を勘案しつつ措置するということになっております。  農林水産省といたしましては、特例適用期間経過後の補助金縮減分及びその得べかりし金利収入相当分の補てんについては、当初からの考え方を変更することなく、財政当局と折衝してまいる所存でございます。
  75. 神田厚

    ○神田委員 この返済の時期及びその返済利息等の考え方については、どういうお見通しを持っておりますか。
  76. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 特例法の規定は先ほど申し上げましたような規定になっておりまして、この適切な措置をいつから、またどの程度の期間にわたって講ずるかということにつきましては、農林年金給付事業の財政の安定が損なわれることのないように、国の財政状況を勘案しつつ考慮をするということになっておるわけでございます。現時点ではまだ来年度の予算の作業もようやく緒についたところでございますので、明確には申し上げられませんけれども、具体的な内容につきましては、年金財政の安定化が損なわれることのないよう関係者と十分析衝してまいる考えでございます。
  77. 神田厚

    ○神田委員 次に、五十八年度の年金額改定は国家財政の逼迫を理由に見送られたわけでありますが、特に低額年金者につきましては年金額据え置きは死活問題であるわけであります。人事院勧告に合わせた改定を行う方式を確立すべきである、こういうふうに思っておりますが、その辺の考え方はいかがでありますか。
  78. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金を初め各種共済年金は、掛金によりまして給付を賄う社会保険方式を採用しております。このため、年金額改定に当たっても当然に年金受給者と現役の組合員の方との間の給付負担の均衡及び世代間の公平に配慮しなければならないということが性格上あるわけでございます。したがいまして、農林年金改定につきましては、国家公務員給与が実際に改定された場合に、その給与改定率に応じて年金額改定を行ってきているものでございまして、人事院勧告と実際の公務員給与改定が異なる場合には、年金額改定も人事院勧告とは異なるものとなってしまうことにつきましては、やむを得ないものというふうに考えております。
  79. 神田厚

    ○神田委員 私どもといたしましては、低額年金者の生活問題を考えて、人事院勧告に合わせた形での改定を行う方式を確立すべきだということを主張をしておきたいと思っております。  さて、本年度の物価スライドは四月分から行われるのでありますか。
  80. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金の物価上昇率によります年金額改定は、新法組合員の通算年金方式による計算の場合の定額部分、同じく最低保障額の定額部分につきまして、厚生年金において物価の上昇率を指標とした年金額改定が行われました場合に、その措置を参酌して政令で行うということになっております。  厚生年金におきましては、御案内のとおり消費者物価指数が五%を超えて変動いたしました場合に、その変動率に応じて政令で改定を行うという自動スライド制がとられております。ところが、五十七年度は消費者物価指数の上昇が二・四%ということで、五十八年度には自動スライド措置が講ぜられませんでした。また五十八年度の上昇率も一・九%で、二年分合わせましても四・三%の上昇ということでございますけれども、五十九年度におきましては公務員給与改定及びこれに連動した共済年金の額の改定を考慮いたしまして、五十九年度の特例措置としまして五十九年四月分から二%のスライド措置を講ずることとして、今回厚生省が提出しております国民年金法等の一部を改正する法律案の中でその旨を規定いたしておるところでございます。  なお、四・三%から今回実施の二%分を控除した部分につきましては、次回の自動スライドの際にあわせて考慮されることになるというふうに私ども理解をいたしております。
  81. 神田厚

    ○神田委員 次に、新法、旧法の関係でありますが、新法、旧法適用の受給者の数及び年金のアップ率、さらには最低保障額の現状はどのようになっておりますか。
  82. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 旧法の最低年金、絶対最低保障額について申し上げますと、五十九年三月からの改正によりまして、六十五歳以上の者が八十万六千八百円、六十五歳未満の者が六十万五千百円ということでございまして、現行に比べまして二・一%の引き上げとなる予定でございます。  それから新法の最低保障額の改正につきましては、四月の改正によりまして、一・五%引き上げまして七十五万四千八百円となる予定でございます。
  83. 神田厚

    ○神田委員 新法年金と旧法年金の最低保障額の格差是正を図るべきであるという立場から質問をいたしますが、また一方、厚生年金は五十四年度に加給部分を大幅に引き上げているため、新法年金厚生年金の最低保障額の格差の是正も同時に図っていく方向をとるべきだ、このように思っております。  この二点についてどういうふうにお考えでありますか。
  84. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金の最低保障額は、新法適用者と旧法適用者で差異がございます。旧法適用者のうち六十五歳未満の者と組合員期間が二十年未満の者につきましては、新法適用者よりも平均して二〇%程度格差が生じていることは事実でございますが、これは共済年金制度の共通の原則としまして、年金額の算定はその給付事由が生じた時点における制度によるべきであるということになっておりまして、その意味で、恩給制度に準じて給付が定められます旧法年金に対して、制度的に新法年金の水準を保障するということはなかなか難しいと考えております。特に農林年金共済年金グループに入っておりますので、仮に対象者が農林年金の中ではそれほど数が多くないということがあるといたしましても、新法の最低保障を旧法年金者に適用するということになりますと、共済グループ共通にこれを行わざるを得ないということがございますし、そうなりますと、共済年金グループ全体の財政面から見てなかなか難しい問題が多々あるというふうに考えられるわけでございます。  しかし、旧法年金者に新法最低保障を直ちに適用することは困難だといたしましても、従来から新旧の格差是正には努力をいたしてきたところでございます。五十九年度におきましても、旧法年金に係る最低保障額につきましてはその改善を図りまして、結果として、先ほど数字もちょっと申し上げましたが、新旧格差の是正に寄与するものになっているわけでございます。
  85. 神田厚

    ○神田委員 同一制度内での不均衡というふうなことでもありますから、我々といたしましてはその是正を強く要請をしたい、こういうふうに考えております。  次に、遺族年金問題でありますが、この遺族年金退職年金の五〇%というふうになっておりますけれども、五〇%という額は生活実態から見ると相当かけ離れている、こういう状況から、給付率を七〇%以上にすべきであると考えますが、いかがでありますか。
  86. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 遺族年金は各年金制度共通をいたしまして退職年金の額の五〇%ということになっておりますが、その給付水準の低位な遺族を救済いたしますために、例えば二十年以上の遺族年金の最低保障額につきましては六十五歳以上の者の退職年金の最低保障額の六六%というふうにいたしまして、最低保障のかんぬきをはめているということがあるわけでございます。また、遺族の生活実態等を勘案いたしまして、六十歳以上である者または子を持つ寡婦である場合には寡婦加算制度を設けまして、実質的な支給率の引き上げを図ってきているところでございます。  遺族年金支給率の引き上げにつきましては、共済制度の根幹に触れる問題でもございます。今後における公的年金制度の改革の一環として、各共済制度所管する各省と十分協議をいたしまして、慎重に検討をいたしてまいりたいと思います。
  87. 神田厚

    ○神田委員 昭和五十七年度の改定におきましても、遺族年金につきまして「遺族年金給付の改善を検討すること。」という附帯決議も出ております。そういうことにかんがみまして、この遺族年金の問題につきましては、その改善に向けましてなおひとつ行政当局としてお取り組みをいただきたいというふうに思いますが、いかがでありますか。
  88. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほどのお答えのときにもちょっと申し上げましたけれども、遺族年金支給率の改善につきましては、年金制度の基本的な問題の一つでもございますので、共済制度全体の共通の問題として検討をしてまいることにいたしております。なお引き続きそういうことで検討させていただきたいと思います。
  89. 神田厚

    ○神田委員 次に、年金改定の増額分の問題につきまして、増額されても結局課税によりまして減殺されるというような状況であります。この控除額が引き上げられるように努力をしていただきたい、こういうふうに思っておりますが、その点いかがでありますか。
  90. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答えを申し上げます。  公的年金におきましては、障害年金及び遺族年金は法律に基づき非課税となっておりますが、退職年金につきましては、給与所得とみなされて所得税が課税されることになっております。この給与所得には、給与所得控除、配偶者控除、老齢者控除、これは六十五歳以上の場合でございますが、それから老齢者年金特別控除等の控除がございまして、これらの控除額を合計いたしますと二百八十四万円程度というふうになっております。これは、五十九年度の税制改正によりまして、給与所得控除が四十一万円、それから基礎控除が四万円、配偶者控除が四万円、老齢者控除が二万円といった控除の引き上げが行われました結果でございます。また、このほかにも各種の控除措置が講ぜられておりますが、六十五歳以上の方が受ける年金につきまして二百八十四万円までは課税されないことになっておりまして、現行制度のもとでは、年金以外にかなりの所得がある方を除けば、課税をされないものというふうに考えております。
  91. 神田厚

    ○神田委員 五十年度以降の消費者物価の上昇率を勘案した場合、もう少し引き上げを図っていただくとともに、六十歳以上あるいは六十五歳未満の年金者に対しましても特別の措置を講ずるよう求めておりますが、この点はいかがでありますか。
  92. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この問題につきましても、他の共済制度と共通と申しますかの問題でございますので、そのような問題として検討してまいりたいというふうに思っております。
  93. 神田厚

    ○神田委員 最後に、自動スライドの問題でありますが、「既裁定年金の改善については、公務員給与の引上げに対応した自動スライド制の導入を検討すること。」これは昭和五十七年度改定法の中での附帯決議にも付されておりますけれども、この自動スライドの問題は、この委員会でも何回か論議になっているわけであります。その意味におきまして、自動スライド制を導入すべきだというふうに考えますが、いかがでありますか。
  94. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 前回の年金法の改正の際の附帯決議の中で御指摘があった問題でございます。国家公務員給与改定に合わせて年金額改定することが慣行としてほぼ定着をしておるということから、これを自動スライド措置としたらどうかということで、国会の御審議を経なくてもよろしい方式というものを国会の方から言っていただくということは比較的まれなことでございますけれども、私ども、この問題につきましてもいろいろ検討いたしておるわけでございますが、幾つかの問題がございます。  若干申しますと、一つは、本来、各般の均衡を勘案の上で年金額改定率を定めること自体は一種の政策判断でございますので、その性格上、掛金の納付義務と並んで、やはり法律をもって定める必要があるのではないかということがございます。もう一つは、法律上、政令への委任規定を設けるという手法をとるにいたしましても、国家公務員給与改定率は政策判断の結果という性格のものでございますので、物価上昇率のような客観性のある手法ではないということから、政令に委任することが妥当かどうかというような問題、あるいは国家公務員共済その他の共済制度との均衡を図る必要があるというような点にいろいろ議論がございまして、まだなお結論を得るに至っていないという状況でございます。引き続いて検討をさせていただきたいというふうに考えております。
  95. 神田厚

    ○神田委員 さらに検討を進めていただきますことを要望して、質問を終わります。
  96. 阿部文男

    阿部委員長 中林佳子君。
  97. 中林佳子

    ○中林委員 まず最初に、年金というものを基本的にどう位置づけているかという点について大臣にお伺いしたいと思います。  私は、年金というものは国民、農林年金で言えば農協などで働く職員の方が退職されても、その老後を生活の不安なく暮らせるためのものでなければならないと思うわけです。つまり年金は、老後を不安なく暮らせる水準のものであるべきだと思うわけですが、この点についての大臣の御見解をお伺いします。
  98. 山村新治郎

    山村国務大臣 年金制度というものは、各制度とも基本的には国民が安心して老後生活を営んでいく上の重要な柱の一つというぐあいに考えております。  他方、各年金制度は、一定の拠出を前提として給付を行うという社会保険制度でもあり、本格的な高齢化社会を迎えた時代における給付負担の均衡、世代間の公平という見地からの配慮も必要であると考えております。  農林年金につきましては、以上のような機能が発揮されることにより農林漁業団体に人材が得られ、これら団体の発展、ひいては農林水産業の振興が図られることを強く期待しておるものでございます。したがって、負担給付の均衡、そしてまた世代間の公平等に配慮しながら農林年金制度の健全な運営が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
  99. 中林佳子

    ○中林委員 大臣もおっしゃいましたように、年金というのは老後の生活を保障するものでなければならない。しかも農林年金の場合は、ほかの共済年金と比べて、その給付実態は非常に低い水準にあるわけです。ですから、給付水準の引き上げは特に切実になっていることは御存じだと思います。  今回の給付額の二%引き上げについて、政府は、国家公務員給与改定に準じて引き上げるのが慣行と言われています。しかし実際は、農林年金の場合、ほかの共済年金も同様なんですが、今までずっと人事院勧告に準じて、一年おくれであっても引き上げられてまいりました、昨年とことしを除いてのことですけれども。なぜ人事院勧告に準じて引き上げられてきたのかと言えば、人事院勧告で示されたアップ率が、民間給与改定ども考慮して、これくらいは引き上げないと生活水準の低下をもたらすという水準を示しているからです。だからこそ今まで人勧に準じて国家公務員給与改定もあり、年金額の引き上げも行われてきたわけです。国家公務員給与改定に準じて共済年金改定されるのが慣行ではなくして、人事院勧告に準じて共済年金改定が行われるというのが今までずっと慣行として定着してきましたし、またそれは労働者の長い間の運動の成果でもあると思います。本来、人事院勧告のアップ率、今度の場合六・四七%ですが、それに準じて年金の方も引き上げるのが当然だと思うわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  100. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金年金額改定につきましては、従来人事院勧告と国家公務員給与改定が一致をいたしておりました場合には、人事院勧告と年金額改定とが一致をいたしておりましたけれども、人事院勧告と国家公務員給与改定が異なっていた場合には、年金額改定給与改定の方に合わせておりまして、人事院勧告とは異なったものとなっているわけでございます。もちろんこれは一年のみということでございますが、逆に申せば、過去においては人事院勧告と国家公務員給与改定とがかなり長期にわたって一致をしていたということの結果としてそうなったわけでございまして、やはり現役の給与に見合って給付改定を行うということでございまして、人事院勧告に過去直接に連動してまいったということでは必ずしもないわけでございます。
  101. 中林佳子

    ○中林委員 ここに人事院勧告と給与改定率がずっと四十四年のものからあるわけですけれども、全部横並びで改定率が決められてきているわけですね。ですから、そうではないとおっしゃいますけれども、これは事実が示しているわけで、今回の改定については、こうした長年の慣行として定着した、事実上制度化されてきたものを崩すものであると思います。また、この二年間の物価上昇率にも及ばない改定では、農林年金受給者の生活水準の低下を押しつけることになり、昨年の人勧凍結と同じく臨調路線による権利侵害、制度破壊の一環だと言わざるを得ません。したがって、私どもはこの点について賛成できませんので、これを指摘して、次の質問に移らせていただきます。  次に、農協で働く職員の労働条件の改善の問題についてお伺いします。  最初に、労働省にお伺いしますが、週休二日制の普及など労働時間の短縮について労働省としてどのような方針で取り組んでいらっしゃいますか。
  102. 征矢紀臣

    ○征矢説明員 お答えいたします。  労働時間短縮の問題につきましては、私ども週休二日制等労働時間対策推進計画というものを策定いたしまして従来努力してきておるわけでございますが、残念ながら現時点におきまして年間の総実労働時間が二千九十八時間でございまして、昭和五十四年の二千百十四時間に比べますと改善されてきておりますが、まだ目標の二千時間には達していないという状況でございます。  それで、中身を見ますと、週休二日制等につきましては、完全週休二日制の推進状況はまだそれほどではございませんけれども、全体として見まして五十八年でようやく半分になってきているという状況で、これはテンポとしましては、徐々にでございますが着実に普及しているわけでございます。あわせまして、年次有給休暇の消化促進あるいは恒常的な長時間労働の改善というようなことを重点にしまして取り組んでいるわけでございますが、御承知のように労働時間問題はすぐれて労使間の問題でもございまして、なかなか難しい問題もあるわけでございますが、今後とも週休二日制の推進等、あるいは夏季休暇の促進という点を重点にいたしまして努力を進めてまいりたいと考えております。
  103. 中林佳子

    ○中林委員 このように労働省としては労働時間の短縮にいろいろと努力をなさってきているわけです。ところが、労働時間の短縮だとか週休二日制の実施ということを農協に当てはめて考えてみると、むしろそれに逆行するような事態がたくさんあるという事例を私聞いているわけです。  職員の方に話を聞いてみますと、例えば第二土曜日は金融機関並みの休みにならないで、むしろ土曜日はコンピューター導入で労働時間が延長されるとか、あるいはオンラインの導入で婦人労働者が以前より長時間労働を強いられるとかという話を聞いております。  それから、これは島根県のある農協の話なんですが、もう既に七月に入っているわけですが、七月の暑い時期になりますと共済推進期間ということで一週間から十日間、あるいは貯蓄推進や自動車保険など勧誘の特別の期間が設定されますと、そのノルマをこなすために婦人の方が夜の十一時ぐらいまで時間外勤務をやらされる。しかも、目標が達せられないときには第二次、第三次と、こういう推進期間が続けてやられるという事例もあります。これは島根の例だけではありません。山口県でも同じような話を聞いてまいりました。  今挙げたような事例は、労働時間の短縮という労働省の方針にも反しておりますし、特に婦人の場合には、深夜にも及ぶということになりますと、法令に照らしても大変問題があると思います。農水省としても、特に婦人の問題は、政府全体として国連婦人の十年ということで取り組んでいる問題でもあるわけで、農協に対してこうした労働条件の改善について指導を徹底していくことが必要だと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  104. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農協の貯金の勧誘あるいは共済事業の推進というようなことで職員が夜間等に組合員を訪問する、あるいは集落ごとに集会を持ったりしている例もあると聞いておりますけれども、これは、組合員の農作業の都合等からやむを得ない面もあると考えております。何分にも農業者の共同組織ということでございますので、そういった組合員に対するサービスなり、あるいはまたどうしても農協の事業が季節性の強い農業生産とのかかわりが深い、あるいはまた組合員の営農に伴う意向にもある程度配慮しなければいけないというふうなことがある点が、農業協同組合の一面における特徴にもなっておるわけでございます。  しかしながら、時代の趨勢といたしまして、労働条件の改善を図っていく、あるいはまた婦人の地位の向上を図っていくというような点につきましては、やはりそういった趨勢に対応した指導をやっていかなければいかぬと思っておりますし、農協が労働基準法等の違反を行うことがないように、農林水産省といたしましても農協の職員の労務管理の適正化につきまして通達を出しまして、労働関係法令の研修の一層の充実でございますとか、女子の一定範囲以上の時間外労働なり休日労働等につきましての適正化でありますとか、あるいは労働基準法三十六条の手続を経ないような時間外、休日労働を是正するとか、あるいはまた農協の検査の際におきましても労働関係法令等の遵守状況の点検にも配慮していくというような点についての通達を出しまして指導をいたしておるところでございます。
  105. 中林佳子

    ○中林委員 通達が出されているのですけれども、なかなか実効ある措置になっていないのです。婦人の方だけで行くのじゃなくて、管理職の男の方と一緒に推進の期間は行く。確かにおっしゃるように、農家の実情に合わせてやるわけですから、そんなに早く切り上げるわけにはいかない、しかももう少しで共済にも入っていただけるというときに来るとなかなか大変だということなんですね。上役の人と一緒に行っているから、自分だけ先に帰るなどということも言えない。中には妊婦の方もいらっしゃるということでして、十一時ぐらいになるというのは大変なことなんですよ。ですから、その実態はなかなか改善されない向きがありますので、その点、特に婦人の人たちは子供たちを育てながら頑張っている人たちが多いわけですから、農水省としても一層の指導を徹底していただきたいと思います。  次に、農協などにおける定年における男女差別や結婚退職問題についてお伺いしたいと思います。  まず農協や漁協、森林組合などで定年における男女差別がどの程度残っているか、つかんでおられますか。また、その解消のためにどういう指導を行っておられるか、お伺いします。
  106. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農協等の定年年齢の男女格差につきましては、地域の実情なり労働条件、経営基盤等によって違いがございますけれども、農協、漁協、森林組合通しまして、定年年齢に男女で格差がある組合というのが一割強程度あるというふうに把握をいたしております。労働省が民間企業につきまして五十八年度に行った調査によりますと、全体の一九%程度が男女別定年制を設けているというふうな結果も出ておりますので、農協等におきます格差は民間企業よりは少ないのではないかというふうに思っております。  また、この定年の男女格差是正について農林水産省としてどういう対応をしているかということでございますが、従来から通達等による指導を重ねてきておるところでございます。この結果、農林漁業団体の大宗をなす農協について見ますと、最近における男女別の定年制の状況を見ますと、昭和五十六年度には五百五十七組合、定年制を設けている農協の十二・九%が男女別定年制をとっておったわけでございますが、五十八年度の調査、これは暫定値でございますが、これによりますと五百六組合、一二・〇%ということで、減少をしたというふうに見込まれておりまして、これらの指導等の成果と申しますか、若干でございますけれども前進は一応見られておるというふうに考えております。  また、定年制の延長内容で見ましても、五十四年度におきまして定年年齢を延長しました六十一農協中、婦人の定年年齢のみを延長したものが八農協でございましたが、五十七年度におきましては、百二十四農協中三十五農協に婦人の定年年齢のみを延長した農協が増加をいたしております。
  107. 中林佳子

    ○中林委員 努力は多少されているし、若干の前進が見えている、本当に若干だというふうに思うわけですね。まだまだ非常にひどいところが残っているわけです。  例えば秋田県の例では、百二十四の組合のうち百十八の組合、つまり九五%の組合で男女差別が定年の中で残っております。話を聞いてみますと、男性は五十六歳、女性は四十四歳から四十八歳のところが多いわけです。秋田県の男鹿市の農協では、九年前にも裁判をやって勝っているわけですが、その後労働組合も十年以上運動しているにもかかわらず、いまだにこれは是正されておりません。中には、米俵とか資材運びを農協はするので女性の場合は四十五歳くらいが限界だからということで、四十五歳ということにしているという話も聞いているわけですね。  秋田県のお隣の山形県では、六十七組合のうち四十三組合で差別が残っており、この中にはひどい話で四十歳という場合もあるわけです。  こういう特におくれているところですね、押しなべての指導じゃなくて、こういう特におくれているところは特に指導を強化する必要があると思うわけですけれども、いかがですか。
  108. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり、定年年齢の男女格差の状況を見ますと、都道府県別にかなり格差があるように私どもも承知をいたしております。  その原因は個別にいろいろ必ずしも明らかでない点もございますけれども定年制の改善は人件費の増高につながるという面もございますし、業務の運営方法にも影響するというふうな面もございますので、そういった問題の多い県と申しますか、そういうところを直ちに全国並みの水準に引き上げるということは、正直申しまして実際問題としてなかなか難しい面があると思われます。  ただ、農林水産省といたしましては、これらの件につきまして引き続いて指導を加えまして、事業運営の効率化なり自己資本の充実、財務の改善等々によります経営基盤の強化充実などによって諸般の条件整備を行うことが必要だと考えておりまして、そういった条件整備を図る中でこの定年年齢の男女間格差是正等の問題も個々の農協が経営改善努力とあわせてその実現に努めていただくよう、農林水産省といたしましても必要に応じて労働省とも連携をとりながら指導を行っていきたいというふうに考えております。
  109. 中林佳子

    ○中林委員 歴然とした婦人差別の問題なわけですね。ですから、そこの農協の経営状態だとかいろいろな理由を一方でおっしゃりながらそれが是正できないということでは、いつまでたっても婦人差別という問題は解消できません。ですから、そういう意味で、その県の農協として九五%の農協が明らかな男女差別を定年制で持っているというようなところは特段の努力をしていただきたいと思いますけれども、もう一度お願いします。
  110. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほど申し上げましたように、各般の条件整備を図りながら、できるだけ指導に努めてまいりたいと思います。
  111. 中林佳子

    ○中林委員 次に、結婚退職の問題なんですが、これは制度として結婚退職制をとっているところはほとんどないと思います。しかし、実際はどうかといえば、例えば山形の話なんですが、採用時に結婚退職の口頭約束をさせるという形で、実質上結婚退職ということになっているところがまだかなりあります。また、誓約書を書かせているところもあると聞いております。  さらに、これは島根の例なんですが、夫と妻両方とも農協に勤めている場合で、夫を管理職に登用する際に妻はやめさせる、やめない場合は夫を管理職にさせないという例もあるわけですね。制度としてはないと言われておりますけれども、実質はさまざまな形で結婚退職などが残っているのが今の実情です。  定年制における男女差別はもちろん、こうした実態的に残っている結婚退職など、女性であるがゆえの不当な差別を全面的になくしていくというのが国連婦人の十年の目標であると思うわけです。特に、大臣、先ほど言いましたように、大変な差別がまだまだ残っている実態があるわけです。制度としても残っております。それなのに来年はあらゆる男女差別撤廃の条約に調印をなさる、総理はこういうお約束もされているわけですね。ですから、そういう意味ではもう早急にこの男女差別をなくすという指導を農水省として徹底していく、あらゆる機会をとらえて徹底していくということが必要だと思うわけですが、その点をもう一度お伺いします。
  112. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農協系統組織におきましても、農協をめぐります経済環境は非常に厳しくなってきておりますので、前回の全国農協大会の決議に従いまして、適正な要員計画の樹立実行と労働生産性の向上といったようなことで、適正な人事労務管理指導を中央会、連合会連携してやるというふうなことで農協経営刷新強化運動に取り組んでおるわけでございますが、私どもといたしましても農協経営の体質強化のためにこういったことはぜひ必要なことだと考えておりますけれども、その過程で行き過ぎた勧奨退職の推進等が行われるようなことがあればこれは問題でございますので、労働省とも連携をとりながら適切な指導をしていくことにいたしたいと思っております。そういった事実があるとすれば個別にひとつ対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  113. 中林佳子

    ○中林委員 最後に、山口山口市の農協では、これは職員約三百三十人で、そのうち半数が女性の農協なんですが、婦人労働者の労働条件をめぐって大変な問題が起こっているわけです。  この問題についてお伺いしますが、山口市の農協では昨年十二月、労働協約を踏みにじって、労働組合の同意もなく、一、土曜日の終業時間を一時間延長する。二、年始の休日について一月一日から五日までだったのを三日までとする。盆休(二日間)をなくする。三、出産休暇(四十九日間)は有給を無給とするという就業規則の変更を一方的に行い、この変更した就業規則を適用して、ことしの二月以降に産休をとった婦人労働者三人の方の産休中の給与を支払わないという事態が起こりました。このため、無給にされた一人の婦人労働者の方と山口県農協労働組合が山口市農協を相手取り、カットされた賃金の支払いなどを求めてこの五月には山口地裁に提訴し、現在裁判が始まっています。私も現地へ行って実情を調べてまいりましたが、農協側の今回の就業規則変更は明らかに不当なものです。  もともと山口市農協と労働組合との間には、出産休暇は産前産後通算四十九日間の有給休暇とする、また、労働条件の変更は事前に労働組合と協議し、その同意を得て行うという労働協約が締結されています。したがって、労働組合側は今回の就業規則の変更は労働協約に違反するとして反対するとともに、労働協約に基づく事前協議を求めたにもかかわらず、農協はこれを無視して一方的に就業規則変更を山口労働基準監督署に届け出しています。農協は後になってこの労働協約は破棄されたのだと言っていますが、労働協約を解約する場合に必要な法令に基づく手続は何らとられておりません。今回の事態のように経営者側の一方的な都合で、しかも労働協約も踏みにじる形で労働条件の引き下げが行われるとしたら、これは大変なことです。  そこで、労働省にお伺いしますが、労働協約がきちんと締結され存在している場合、その労働協約に違反する就業規則は無効であると思うわけですが、いかがですか。
  114. 藤井紀代子

    ○藤井説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘なさいました具体的な事案につきましては、目下裁判で訴訟が行われておりますので、行政当局といたしましては判断を差し控えたいと存じますが、一般論として申し上げますれば、労働基準法第九十二条によりまして、当該事業場に適用される労働協約に反する就業規則は、その部分については無効と解されております。
  115. 中林佳子

    ○中林委員 これが労働省で判断できないというのは、私は非常に不満です。といいますのは、今回の質問通告は随分以前に出してあるわけですから、その後経緯などを調べていただければ、これは大変な事態だということは労働省もおわかりいただけるものだと思っていたわけですが、時間がありませんので次にまいります。  先ほどおっしゃった労基法九十二条で「行政官庁は、法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができる。」こういうふうにあるわけですね。労働省としても裁判所任せではなくして、現地の労基署にも労働者の方々はこの問題を訴え続けておられるわけです。事実関係を調べて、法令に基づいてきちんとした対応をしていくのが労働省の役割だというふうに私は思います。この問題は、婦人労働者の保護という点からも重要な問題を持っているわけです。  この山口市の農協では、出産休暇について通算四十九日間の有給休暇を与えるとされているわけです。これは皆さん十二週間じゃないですよ、四十九日間、七週間、非常に短いのです。そして、この職場ではお産の直前まで仕事をするのが普通になっています。産前六週間休めることになっておりますけれども、それをとりますと無給だから休めないわけなんです。しかも、休んでいると農協側からいつから出てくるのだという電話がかかってくる、とても休めるような状態ではない。この裁判を起こした婦人の方も、出産の前日まで勤務をなさっている。ほかの婦人の話を聞きましたけれども、自分も生まれる寸前まで農協で働いた、こういうひどい実態になっております。今日、産前六週間、産後六週間は労基法にも保障されている常識になっておりますし、均等法によりますと八週間にする、こういうふうに今話が進められているわけです。ですから、こういう実態は極めて大変な状況であると私は思いますし、その上今まで有給だったのが無給にされる、これでは婦人労働者の保護という点で時代に逆行するものと言わざるを得ませんが、この点についての労働省側の見解をお伺いします。
  116. 藤井紀代子

    ○藤井説明員 労働基準法では、産前につきましては本人の請求に基づき六週間、産後につきましては原則として六週間それぞれ就業が禁止されておりますが、産前産後の休業中の賃金につきましては、労働基準法では特に定めることがないわけでございます。ですから、労使の自主的な決定にゆだねられているわけでございます。したがいまして、一般的に産前産後休業が無給でございましても、労働基準法上はそれについては特に問題となることはないわけでございます。  なお、健康保険法に基づきまして分娩の日前四十二日、分娩の日以降四十二日以内において、労務に服さなかった期間につきまして出産手当金として一日につき標準報酬日額の百分の六十に相当する金額支給されておりまして、産前産後休業中の生活保障は社会保障の枠組みの中で措置されているというふうに考えております。
  117. 中林佳子

    ○中林委員 そんな全部わかったお話を回答していただいても、本当にふんまんやる方ないという気がいたします。有給であったのが無給になるという労働条件の引き下げ、これについて私どもはけしからぬと思うわけです。多分労働省もそうは思っていらっしゃると思うわけです。こういう事態があるわけですから、本当に労働者の保護という立場を十分考えていただきたい、最後に大臣に申し添えて私の質問を終わります。
  118. 阿部文男

    阿部委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  119. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対し、衛藤征士郎君から修正案が提出されております。  まず、修正案の提出者から趣旨の説明を求めます。衛藤征士郎君。     —————————————  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  120. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。  修正案は、お手元に配付したとおりであります。技術的な条文でございますので朗読を省略し、以下、修正内容を簡単に申し上げます。  修正点は、原案において昭和五十九年四月一日と定めている施行期日について、その期日が既に経過しておりますので、これを公布の日に改めるとともに、原案において昭和五十九年四月一日施行となっている掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額の改定に関する規定について、これを同日から適用することとするほか、施行期日の修正に伴い、必要な経過措置の整備を行おうとするものであります。  以上が修正案の趣旨及び内容であります。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  121. 阿部文男

    阿部委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  122. 阿部文男

    阿部委員長 これより、原案並びに修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。上西和郎君。
  123. 上西和郎

    ○上西委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する反対意見を申し述べたいと思います。  まず、冒頭強調したいのは、本法案の成立を鶴首して待っている受給権者の気持ち、特に本年度の改正については既に国家公務員、地方公務員、私立学校教職員の三共済組合が国会決議を終え、スライドすなわちアップ部分も支給されている現実を思うとき、私は本法律案の一刻も早い成立を心から希望しているということであります。  では、なぜ反対するのか。理由は簡単です。  その一つは、私たちが従前から主張してきた旧恩給法部分と新法部分のスライド実施時期のずれの調整が行われていないからです。  その二つは、スライド率すなわちアップ率の低さです。せっかく人事院勧告に合わせるという原則がありながら、無理無体といってよい行革、臨調の嵐に吹きまくられて、主体性を失い、わずか二%にとどめたことです。これでは、ただでさえ他の公的年金に比べて低位にある本年金の水準をさらに低く抑える結果になることは火を見るより明らかと言わなければなりません。  第三には、去る五日我が党が本委員会で指摘をした幾つかの矛盾点が具体的に解決されていないからです。  よって、私は、本法律案の成立を切望しながらも、以上の理由を明示し、これらの諸点について早急な是正を強く要求して、反対の意見を表明するものです。
  124. 阿部文男

    阿部委員長 津川武一君。
  125. 津川武一

    ○津川委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、議題になっている法律案に対する反対討論を行います。  年金は老後を不安なく安心して暮らすために不可欠なものであり、その充実は、年金受給者のみならず、農協、漁協等で働く職員全体の切実な要求となっています。今回の改定案では、年金額の引き上げはわずか二%で、昨年の人事院勧告六・四七%、この二年間の物価上昇率に比べても著しく低く、年金の充実を求める声に背いています。  共済年金額の改定は、一昨年までは人事院勧告にスライドして毎年行われており、事実上の制度として人勧スライドが定着していたものです。今回の改定案は、昨年の人勧凍結による共済年金改定の見送りに引き続き、人勧スライドという国民が運動で築いてきた成果を崩し、給付水準の見直しなど年金制度の改悪をうたった臨調答申に沿うものであり、容認できません。  昨年の年金額の据え置きに引き続き、人事院勧告やこの間の物価上昇率を大幅に下回る二%という低率の引き上げでは、現状でも他の共済年金に比べ低い水準にある農林年金受給者の生活水準を一層悪化させることになります。  現在、政府は年金財政の危機を口実に年金制度全体の改悪を行おうとしていますが、高齢化社会の到来を控えて、今必要なことは、給付水準の引き下げではなく、国民すべてを対象とした最低保障年金を確立するとともに、退職年金、障害年金、遺族年金などの給付の大幅なアップを図るべきであることを指摘し、反対の討論を終わります。
  126. 阿部文男

    阿部委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  127. 阿部文男

    阿部委員長 これより昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決に入ります。  まず、衛藤征士郎君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  128. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  129. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  130. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対して、田名部匡省君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。田中恒利君。
  131. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同を代表して、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、公的年金制度改革をめぐる諸情勢に対処し、本年金制度の改革に当たっては、公的年金制度との整合性を図るとともに制度の長期的安定が図られるよう、左記事項に十分な検討を加え、その実現を期すべきである。       記  一 農林年金制度の基礎年金制度導入等の改革については、他共済制度の動向に即しつつ、本制度の特徴と現状をふまえて検討を行い、組合員の老後保障に万全を期すること。  二 年金財政の健全化を図るため、現行の国庫補助水準を今後とも確保するとともに、年金財政の的確な将来見通しを立て、所要財源率の確保に努めること。    なお、昭和五十七年度から同五十九年度までの間減額された国庫補助額については、財政再建特例期間終了後、適正な利子を付して、その減額分の補填を行うこと。  三 退職年金等の最低保障額の新旧格差の問題については、引き続きその是正を図るよう努めること。  四 既裁定年金の額の改定については、自動改定ができるよう検討を加えること。  五 農林漁業団体の経営基盤の強化に努めるとともに、これらの団体職員の定年制の延長等雇用条件の改善が図られるよう適切な指導を行うこと。    右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程などを通じ既に委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  132. 阿部文男

    阿部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  田名部匡省君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本案に対して附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山村農林水産大臣
  134. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     —————————————
  135. 阿部文男

    阿部委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————    〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  137. 阿部文男

    阿部委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  138. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出参議院送付肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため、参考人として全国農業協同組合連合会常務理事田中昇君、日本硫安工業協会会長長野和吉君、日本化成肥料協会会長草野操君、北海道農民連盟委員長岡本栄太郎君及び東京都農業試場農芸化学部長伊達昇君、以上五名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りまして、審査の参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。田中参考人、長野参考人、草野参考人、岡本参考人、伊達参考人の順序で、お一人十二分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきのほどをお願い申し上げます。  それでは、田中参考人にお願いいたします。
  139. 田中昇

    田中参考人 全国農業協同組合連合会の常務理事をいたしております田中昇でございます。よろしくお願い申し上げます。  先生方には、連日、米並びに農政全般で非常に御苦労な御指導をいただいておりまして、ありがたくお礼申し上げます。  本日、肥料安定法につきまして、この延長についての意見を開陳させていただきます。  私ども全農といたしましては、肥料安定法をさらに五年間延長していただきたい、こういう結論を持ちまして、私ども内部の肥料農薬委員会あるいは生産資材委員会、さらにまた理事会の決定を見まして、全中の理事会決定とあわせまして農政の一環ということでお願いをしているものでございます。既に、さきに四月に参議院におきまして審議を受けまして参議院会議で可決をしていただいておりますが、これから衆議院の皆様の御審議を煩わす、こういうことになっておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  私どもが安定法の延長につきまして、これをぜひその方向で御審議をいただきたいと申し上げました理由について、重立ったものについて申し上げておきたいと思います。  第一に、現在の農業を取り巻く極めて厳しい情勢のもとにおきまして、安定法の延長につきましては、少なくとも肥料の取り扱いに供給の安定、価格の低位性ということをうたい込んで仕事をいたしております農業団体といたしましては、この安定法によってぜひともそういったねらいを達成いたしたい、こういうことを考えているわけでございます。  御承知のように、日本農業は米を初めといたしまして畜産、園芸に至るまで過剰基調のもとにございまして、稲作の減反、転作への努力にもかかわらず、農畜産物価格の低迷を来しております。さらに、さきに妥結をいたしましたアメリカとの貿易摩擦に絡みました農畜産物の自由化阻止、食糧の安全保障確保のためのこういった農業政策をぜひ強化していきたいということで、必死の運動を展開しておるわけでございます。妥結はいたしましたが、四年後の大統領選挙にはさらにこの問題は持ち越される、こういう感じがいたしますので、一層この点を強化していく必要があるかと思います。  同時に、私どもとしましては、国際農産物に比べてコストが高いということを言われております農畜産物のコストの低下につきまして、今後EC並みの価格を実現するためのあらゆる努力を傾けて苦闘していく、こういう状況のもとでございますので、農業生産のために不可決な基礎資材でございます肥料につきましては、ぜひとも今後安定供給が望ましいし、またそれを実現するためには現在の法律がどうしても必要である、こういう結論に達した次第でございます。  第二点は、肥料の業界の現状でございますが、昨年の五月に特定産業構造改善臨時措置法が決定をされまして既に発足をいたしております。この構造改善の中核が、私どもの一番気にいたしております内需を中心といたしました肥料供給の安定、そして同時に、現在熾烈な競争が繰り返されております国際価格に向けて、その対応上、対抗できるような合理化がなされる必要があるということから、六十三年の六月に向けて鋭意業界が合理化努力をいたしておる、こういうものでございます。しかしながら、業界における今日の肥料の事情は極めて厳しい情勢のもとに置かれております。既に輸出競争力を失いまして、現在、第二次構造改善のこの目標は、五十四年ごろの能力に比べましてアンモニアでは四一%設備処理をする、尿素においては六三%の設備処理をする、燐酸関係におきましても三二%ほど施設の撤去等を行いまして、さらに原燃料の転換、生産の集中、委託生産等の合理化をいたしまして操業度を上げ、国際競争力に立ち向かおう、こういう考え方が示されているわけでございます。しかもこれは、現在の厳しい行政管理あるいは財源不足といった事態の中では大きな国の公的な助成は恐らく望まれない、そういうところにメーカー独自で極めて厳しい合理化をしていこうという状況のもとにございます。私ども、四百五十万の農家の庭先まで肥料を使う適期にこれを供給していくという責任のある立場におきましては、どうしてもそれに必要なものは、いつでも農家が欲しい時期に必要量を届けるというためには、何といっても手元に肥料の供給力を残しておきたい。これはだれしもそういうふうに考えるわけでございますので、業界が一致結束をしてこの事態に向かって努力をされ、構造改善の実が上がるようにお願いをしたい。そのためにも肥料の供給価格の安定が望ましい、こういうふうに考えておるわけでございます。  第三点といたしまして物流問題がございます。国鉄の輸送政策の変更がございまして、拠点駅の集約ということで従来のほぼ半分ほどの駅にしか貨物は届けられない、こういうことになってまいりました。肥料におきましては、ほかの物資と違いまして北は北海道から南は沖縄の島々まで一本の価格で決められて供給をされているというのが実態でございます。拠点駅集約によって、貨車にのみ依存いたしておりますと今回はかなり大きなアンバランスができる公算もあるということで、この体制をどういうふうに組み直すかということを非常に心配をいたしまして、私どもとしてはどうしても、できるだけ農家の庭先に近い段階まで一本価格でおきたい、こういう考え方で、将来はトラックあるいは船さらにまた農協直送という方式で今行われつつある物流合理化に対応していきたい、こういうふうに考えておりますが、主な肥料だけで全国に六百万トン、それだけの大量の貨物を、これは多少需要が落ちましたとはいっても四百五十万の農家は多かれ少なかれ肥料を使っております。これは畜産等の関係とはちょっと違うわけでございますので、ぜひとも安定法において現在とられている仕組みを継続をして、この五年間に新しい物流体系を組み立てていきたい、こういうふうに考えております。その意味からも、ぜひ安定法を存続をさせていただきたい、こういうふうに考えます。  第四点といたしまして、安定法は御案内のように既に四回目の延長を迎えるわけでございます。その間に、安定法は果たして農民のためになっているのかということがございます。これは参議院のときにもかなり問題を出されましたけれども、私どもとしましては、やはり食糧の安全保障、その裏打ちとしての肥料の安定供給、こういうものがどうしても必要ではないのか。また、現実に石油ショックのとき、ああいう緊急事態、非常事態になりますと、安定法が見事に機能を発揮した、私はこういうふうに考えているわけです。  一部にはいろいろ、石油ショックのときに機能しなかったじゃないか、肥料が足りなくなって大騒ぎしたじゃないか、こういうふうに言われます。言われますけれども、あの当時のトイレットペーパーや洗剤等の買い付け騒ぎと肥料とは全く違うわけでございます。ただ、残念ながら仮需要が沸きまして、四十八年、四十九年の石油ショックのときには、毎年大体一〇二%くらいしか伸びてこなかったものが一挙に一一二%に伸びた。そしてさらに翌年は九一%に減る。そして、足りないぞ、早く買わなければいかぬという農家心理のもとに買い取った肥料が農家の庭先に越年をする、こういう事態が起きて、輸出につきましても、中国あたりに契約をし、既にデリバリーに入ろうという事態のものを押さえてもらって、中国には三カ月デリバリーをずらしてくれというほどのこともいたしました。これはこの法律があったおかげでそれができた、私どもとしてはこういうふうに考えておりまして、万が一のときの安全弁としての機能は十分に果たして農家の肥料の対応ができた、こういうふうに考えております。  以上、主な理由として申し上げました。  さらにもう一つ、この肥料安定法の延長が可決をされましたときの運用面でございますが、これにつきまして私どもの希望を申し上げさせていただきます。  第一は、この構造改善に基づく合理化目標を、業界結束して、サボらないでぜひとも目標に向かって実現をしていただきたいということ。同時に、これはその都度、国際情勢が変わりますので、その目標の見直しということも途中でぜひともやっていきたい、またやっていただきたい、こういうことが第一点でございます。  第二点は、生産、流通を含めたトータルの合理化、特にこの交錯輸送あるいは銘柄の整理といったようなことも含めまして合理化を達成をしていただきたい。  第三点は、合理化メリットはそれぞれ企業に発生をいたしますけれども、そのメリットはこれを使う農業者へも均てんをしていただきたい。またそういうことを今後は感度に置いて、許された価格の折衝をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。  第四点といたしまして、これは多少お願いがございますが、今回延長をされます安定法には輸出関係の条項がすべて削除をされております。これは一昨年の六月でそういうふうになりました。この輸出関係の条項の中に、輸出を承認する場合、農林、通産両大臣がつくった需給計画のもとにこれを認める、こういう一項があるわけでございますが、今回は全くこれがないわけでございます。したがいまして、内需優先という観点からいたしますと、緊急事態があって、例えば肥料の値段が国際的に三倍も四倍も上がるということになりますと、千載一遇の好機なりということで輸出に走るということが全くないとは言えませんので、この点について国会として何らかの歯どめをかけていただくような御配慮をお願い申し上げたい、こういうふうに考えます。  それから、次に申し上げておきたいと思いますが、輸入につきましては、この法律といたしましても輸入はまかりならぬということは一言も触れておりませんし、私どもといたしましても、日本の国内に供給するだけの、内需に見合うものは我々の足元に置きたい、手元に置きたいという気持ちはございますが、もし万が一そういう実態にならないで国際競争がいつまでも劣位にあるということになりますと、やはり適正な秩序のある輸入もいたしまして合理化に対するショックも与えたいし、そして価格の引き下げについての有利な材料にも使いたい、こういうふうにも判断をいたしておりますので、この点をひとつぜひつけ加えさせていただきたいと思います。  ただ残念ながら、輸入輸入と申しますけれども、既に尿素等ではこの一月に比べてわずか半年の間に六割も値上がりをして、そして物が払底しつつある、こういう国際情勢もございます。かなり大きな波乱を呼んでいると私は思いますので、ここらについて、従来のようにいつでも買えるというような感覚は改めなくてはいけない、こう考えております。  以上、時間をちょっと超過しまして申しわけございませんが、私どもの延長に対する意見を開陳いたしました。ありがとうございました。(拍手)
  140. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、長野参考人にお願いいたします。
  141. 長野和吉

    ○長野参考人 日本硫安工業協会の長野でございます。  諸先生方には常日ごろ化学肥料工業に対しまして多大の御指導と御鞭撻を賜っております。この席をかりまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。  本日はせっかくの機会を与えられましたので、化学肥料の生産に携わる産業の立場から、現行の法律に規定されております価格取り決め措置の存続について、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。  御高承のとおり、現在の法律は、いわゆる肥料二法廃止後の措置として昭和三十九年に制定され、その後三回にわたり期間延長等の改正が行われて現在に至っておるわけでございますが、この法律の目的は、農業生産の基幹的資材である化学肥料の価格と需給の安定化を図ることによりまして、農業と化学肥料工業の健全な発展に資することでございます。  具体的には、まず、肥料の価格に関しましては、政府の調査した実績原価に基づいて、販売業者と生産業者とが自主的な話し合いにより価格の取り決めを行うことが認められているのでございますが、この価格は国際価格が常に変動するのに比べましても極めて安定をしておるわけでございます。また、輸出部門で赤字が出たような場合でも、これとは完全に切り離して国内価格が取り決められてまいりました。  同時に需給の安定化に関しましては、各年度ごとに政府の策定する需給見通しに基づきまして計画的な生産が行われてまいりました。さらに、従来はこれに基づき適正規模の輸出が実施されておりまして、内需を優先的に確保しつつ需給の安定化が達成されてまいったのでございます。  このように、合理的な価格取り決め制度を中心とする本法律は、肥料価格と需給の安定に極めて多大の効果を上げてきたと評価しておるのでございます。特に、この十年間に二度にわたって経験いたしました石油危機等の場合におきましては、本法に基づく適切な対処によりまして大きな混乱を避けることができたのであります。一例を申しますと、第一次石油危機が起こりました直後の昭和四十八年から四十九年にかけまして、硫安の国際価格は三倍近くにも高騰しましたが、国内価格は四割程度の値上がりにとどめられたという実績がございます。  次に、化学肥料の価格と需給の安定化のために法的な措置が引き続き必要であると考えられる理由につきまして若干申し述べさせていただきます。  第一に、化学肥料は農業生産に欠かせない基幹資材として安定供給が何よりも重要であり、また、農産物価格との関係から、全国一律の価格で供給することを求められているという性格の製品でございます。  申すまでもなく、肥料の需要は全国の農家に広く分散し、かつ季節的変動が非常に大きいのでありますが、一方、化学肥料を生産する工場は特定の地域にあって、年間を通じてほぼ一定の操業が行われています。したがいまして、全国の農家の方々が必要とする時期に必要な場所へ届けるためには、前送りや保管等を含めた計画的な生産と物流が不可欠な条件なのでございます。また最近では、国鉄貨物輸送の合理化に伴いまして、輸送コストの上昇や物流上の制約がますます顕著になるという状況も予想されるに至っております。  こうした状況のもとで、これまでどおり肥料を供給していくためには、従来から実施されておりましたような法的措置に基づく合理的な価格取り決め制度が今後とも存続されることがぜひとも必要であると考えるのでございます。  第二に、原料価格等の外的要因に関する点であります。  ナフサ等の原燃料の価格や需給の動向は、現在はどうやら安定しておりますが、今後の見通しとなりますと多分に不透明な面がございます。また化学肥料の国際需給や価格の動向につきましても、先行きを正確に見通すことは難しいのでございます。今後、これらの外的要因に大きな変動が起こる等の事態が発生した場合におきましても、農業生産の確保のためには、こうした事態に適切に対処して、化学肥料の国内価格と需給の安定を図ることができるような体制を整えておくことが重要と考えられるのでございます。  第三に、当化学肥料業界が現在取り組んでおります構造改善事業との関連でございます。  御高承のとおり、当業界は二度の石油危機後の国際的な肥料情勢の急激な変化の中で大幅な過剰設備を抱えるに至り、昭和五十四年よりいわゆる特安法の指定を受けまして、アンモニア百十九万トン、尿素百七十九万トンの設備処理を中心とする第一次構造改善対策を実施いたしました。しかし、その途上で第二次石油危機の影響を強く受けて再び設備過剰の事態となり、昭和五十八年より、さらにいわゆる産構法の適用を受けまして、第二次構造改善対策に取り組んでいるところでございます。  第二次構造改善対策としては、生産設備を国内需要を中心とする規模にまで縮小させて、適正稼働率を確保できるようにするとともに、コスト低減のための各種対策を積極的に導入することとなっております。  具体的には、過剰設備対策といたしまして、私どもの業界の関連で申し上げますと、まず第一に、アンモニア六十六万トン、尿素八十三万トンの設備が追加処理されることになっており、第二に、コスト低減化対策といたしましては、原燃料の転換や省エネルギー対策の推進、高能率設備への生産の集中等の合理化策が進められております。  このように、現在私ども業界では、安定供給とコスト合理化を目的とする構造改善事業に取り組んでいる途上にありますので、その円滑な推進を図るためには、この期間中、肥料価格が安定的に推移することが従来にも増して強く望まれるのでございます。  なお、構造改善事業実施の過程におきましては、関連産業、特に中小企業に対する影響や雇用、地域経済に対する影響等につきまして、十分に配慮しつつ進めてまいる所存でございます。  以上申し上げましたとおり、私ども化学肥料工業といたしましては、現在取り組んでおります構造改善事業の円滑な推進によって、今後とも、化学肥料の安定的かつ合理的な価格での供給責任を果たしてまいる所存でございますので、本法律の延長による化学肥料価格の安定化の措置の継続を切に望むものであります。  以上をもちまして私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。よろしくお願いいたします。(拍手)
  142. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、草野参考人にお願いいたします。
  143. 草野操

    ○草野参考人 私は、日本化成肥料協会の会長をしております草野でございます。  高度化成肥料を生産しております業界の立場から、肥料価格安定等臨時措置法の改正、延長について意見を申し上げたいと思います。  御高承のとおり、肥料は農業経営費の二二%強を占める基礎的な農業生産資材でございまして、その価格と供給の安定が図られることは非常に重大なことでございます。私どもといたしましても、この点を常に念頭に置きまして経営を進めておる次第でございます。  肥料の需要には大きな季節性がございまして、これに対して工業生産は、年間を通して平均的に、また計画的に行うことが経済的に最も好ましいわけでございまして、また供給を安定的に行う面からも、このことは極めて必要なことでございます。現行の価格取り決め制度は、こうした安定的な生産を確保する、かつまた円滑な流通を実現して、農業の季節的な需要にこれがうまくかみ合うという役割を果たしておるものと私どもは考えております。  高度化成肥料は、本法の特定肥料といたしまして政令の指定を見たものでございますけれども、これは第一次石油危機直後の五十年のことでございます。当時、燐鉱石あるいはカリの価格が異常に高騰を見まして、高度化成肥料の価格も相当大幅な上昇を余儀なくされたわけでございますけれども、その後の国際的な肥料情勢が落ちつきを見まして、高度化成肥料の取り決め価格も年々引き下げを行うことができたわけでございます。さらに、五十三年になりまして円相場が急上昇いたしました。そのために、年度の途中でございましたけれども、円高の差益を還元するということのために、取り決め価格の引き下げを実施したという経過もございます。  ところが、五十四年になりまして第二次の石油危機が起こりまして、これによりまして燐鉱石、カリを初めといたしましてアンモニア原料のナフサ等も再び急上昇を見たわけでございます。このために高度化成肥料の取り決め価格も再びやむを得ず上昇を余儀なくされたわけでございますけれども、本法の価格取り決め制度の効果もございまして、価格の著しい高騰というものは回避ができたわけでございます。五十六年以降になりまして、再び原料事情の落ちつきが取り戻され、また肥料工業の合理化の成果もございまして、年々この取り決め価格の引き下げを見ております。  以上申し上げましたように、高度化成肥料は、その粗原料の大部分を輸入に依存しておりますために、これらの国際価格の変動が直ちに高度化成肥料のコストに影響いたしておるという性格を持っておるわけでございますけれども、この肥料価格取り決め制度によりまして価格が適正に取り決められてきましたことにより、価格はもちろんでございますが、需給の混乱も防止できまして、流通も極めて円滑に行われてまいったわけでございます。  しかしながら、こうした累次の石油危機を経過いたしまして、化成肥料製造業は次第に国際競争力の低下を示し始めております。また需要の面におきましても、減反等の事情もございまして低迷が続いておるようになっておりまして、我々企業経営は極めて不安定な状況になってまいっております。  こうした中で、我々企業といたしましては、それぞれ省資源、省エネルギー対策を初めといたしまして、生産の合理化に努力を傾注してまいりましたけれども、過剰設備の顕在化ということによりまして、構造的に極めて困難な状況に直面するに至っております。  このために、化成肥料製造業は、昨年の六月に特定産業構造改善臨時措置法の御指定を受けまして、年間総生産能力六百十八万トンございますものの十三%に当たります八十一万トンについて、この設備処理等の構造改善対策を行うことになった次第でございます。これは、過剰設備を処理することによりまして適正な稼働率を確保するということと同時に、企業の合併や提携などのグループ化等によりまして適正競争基盤を確立する、さらには流通面の合理化もあわせてこれを推進していくことによりまして、化成肥料製造業の構造改善を目指すものでございます。  また、高度化成肥料の原料となります湿式燐酸、これにつきましても、五十四年の特定不況産業安定臨時措置法によります御指定に引き続きまして、この特定産業構造改善臨時措置法の御指定も受けたわけでございまして、これは年間総生産能力七十六万トンございますものの一七%に当たります十三万トンの設備処理、これを中心といたします合理化を進めてまいることになっておるわけでございます。  このような状況に加えまして、本年の二月から、先ほども硫安協会の会長さんからもお話のございましたような国鉄の貨物輸送の合理化、これによります新輸送体系への変更が実施に移されたわけでございますが、肥料は、御案内のとおり重量物資でございます。と同時に、これは大量集中生産、地方分散消費という典型的なものでございまして、従来から国鉄輸送に大きく依存をしてまいったものでございますけれども、今回の国鉄輸送合理化によりまして、肥料の輸送体系は大きく変化するのやむなきに至ったわけでございます。  このような事態に対処いたしまして、我々業界といたしましても、肥料の流通に支障を来さない、そのための最善の努力を払いまして、新しい物流体系、これへのスムーズな移行とその定着を図ってまいらねばならないというふうに考えまして、現在鋭意努力をしておる次第でございます。  以上申し上げましたように、現行法に基づきます価格取り決め制度は、肥料の価格と供給の安定に多大な力を発揮したものと、私ども業界といたしましては大きくこれを評価いたしておるところでございます。  高度化成肥料は農業に不可欠の基礎資材でございまして、我々業界といたしましては、農業に対する安定供給の責務を負っておる、また、その責務を果たさなければいけないという認識に立っておるものでございます。  こうした観点から、今後化成肥料製造業を合理化いたしまして、構造改善を積極的に推進すると同時に、物流の変革に対応いたしまして、肥料の安定供給基盤をさらに確立することが重要な課題であると認識しております。そのためには適正かつ円滑な肥料の取引が確立することが不可欠でございます。私どもといたしましては、今後とも現行価格取り決め制度が維持されることが必要であるものと考えておるわけでございます。  以上申し述べましたような趣旨から、化成肥料業界といたしましても、この法律の価格取り決め制度の存続を強く希望するものでございます。我々の考え方をお酌み取りいただきまして、よろしくお願い申し上げたいと思います。  以上、簡単でございますけれども意見を申し述べさせていただきました。まことにありがとうございました。(拍手)
  144. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、岡本参考人にお願いいたします。
  145. 岡本栄太郎

    ○岡本参考人 私は北海道富良野市で水田七へクタールを耕作する農民でありまして、あわせて北海道内七万五千名程度の農民諸君と北海道農民連盟を組織し、委員長として農民運動に携わっている者であります。  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、私はまず、効用よりも危惧の方が大きいということを申し上げなければなりません。以下、三点にわたり率直に意見を述べさせていただきます。  第一の点は、この法律の中心をなす肥料の価格取り決めにおいて、いわゆるカルテル行為の弊害が顕著ではないかという点であります。  昭和二十九年の肥料二法以降今日に至るまで、硫安の国内向け価格は、昭和三十年と三十一年及び四十九年を除き、一貫して輸出価格より割高でありまして、特に五十一年の場合は二倍を超えています。また硫安の国際価格に比べても、五十七年の例では二・三倍という高さであったと聞いております。この比較は、国内価格が消費地の着レール価格であるのに対して、輸出価格はFOBだから修正が必要だと言われますが、国内価格が割高であることを否定することはできないと思います。  同一商品の価格が法律のもとで三十年にわたって二重価格を形成してきたこと、しかも国内価格が常に割高であり、それが独禁法の適用を除外されるカルテル行為のもとで形成されていることに、私は強い疑惑を抱かざるを得ないのであります。  加えて、我が国の肥料業界は国際競争力を失い、不要となった過剰設備を処理して国内需要に見合った構造改善と取り組んでいますが、そのリスクをまたまたカルテル行為によって農民に転嫁されるのではないかという不安を強くしているのであります。  統計によりますと、第二次オイルショック前の五十二年、生産者米価は六十キロ一万七千二百三十二円であり、低成分粒状の複合肥料は一袋千百三十二円でありまして、米一俵で肥料を十五袋ほど買うことができましたが、五十八年では十三袋しか買えなくなりました。肥料価格が上がるだけ生産者米価は上げられていないのであります。もし現在の米と肥料の相対価格関係を五十二年水準にしようとすれば、肥料価格を一六%引き下げるか米価を一九%引き上げるか、そのどちらかが必要という計算になります。  聞くところによれば、尿素においても工業用は肥料用に比べてかなり格安と言われます。それは、外国産の尿素が日本に到着して一トン百九十ドルぐらいというふうに聞いております。こうした外国産の尿素と競合するために安くしているという話も実は聞いております。また、工業用は自由競争のもとで安くなるが、肥料用が高いのはカルテルで守られているからとも言われています。同じ石油系の化学工業製品であるポリエチレン、ポリプロピレン等の価格上昇と硫安、尿素を比較しても、やはり硫安、尿素の価格上昇率が大きいようであります。石油化学工業において、多岐にわたる製品へのコスト配分は、製品の価格の動きに応じて恣意的に行われておるとも聞いております。考えたくないことでありますが、肥料の価格がこの法律に基づくカルテルによって高値安定が可能であり、そこにしわ寄せされるようなことがあってはならないと思います。  いずれにしろ、肥料価格の安定は必要であります。しかしもっともっと大切なことは、国内価格も輸出価格並みに、国際価格並みに安くなることであります。今後なお二重価格、高位の肥料価格が形成され、この法律のもとで続けられるならば、私はその延長に賛成することはできません。  第二の点は、我が国の肥料工業の構造改善とこの法律のかかわりについてであります。肥料工業は、現在五十七年六月の産業構造審議会化学工業部会による「今後の化学肥料工業及びその施策のあり方について」の答申に沿って第二次構造改善を進めておりますが、その基本的な要因は、原燃料の全面的な石油依存が二次にわたるオイルショックにより破綻したことと、量産効果を求めて設備の拡大に次ぐ拡大が、国際競争力を弱めるとともに、輸出市場の喪失により過剰設備となったのであります。したがって肥料業界は、みずからの失敗とはいえ、原燃料が高い上に過剰設備のリスクを背負いながら、この法律のもとで肥料価格の高位安定と販路の保証に依存しながら、構造の改善と合理化並びに経営の維持を図ろうとしているのではないでしょうか。そうだとすれば、肥料業界は、みずからの失敗を農民の犠牲において解決すべく、法の延長を図ろうとしているということになります。  それにしても、かつて肥料工業は、国内需要のほかに輸出を加え、操業度を高めれば量産効果が発揮され、国内価格も輸出価格並みに引き下げられると主張し、三回にわたる法律の延長を求めながら、とうとうそれは実現しませんでした。今度は輸出をあきらめ、過剰となった設備を廃棄し、高能率設備への生産集約で国内需要を頼りに合理化を図ろうというのですが、その可能性と見通しはどのようになるのでしょうか、はっきりした目標を示すことがこの法律の前提であると思います。  私たちは、農畜産物の自由化と行財政改革のもとでEC並みの農業生産を負荷されているのです。ですから、北海道農民連盟の機関でこの法律について討議したときのまとめは、農畜産物価格はEC水準を求めながら、肥料や農業機械の割高を放置するのは片手落ちである、肥料の価格を国際価格並みにできないような法律の延長には反対であるということでした。  聞くところによりますと、化学工業部会の答申では、六十肥料年度では五十六年の主要企業の平均総原価に対し、実質コストベースでアンモニア一〇%以上、尿素一一%以上、燐安一六%以上に相当するコストの低減達成が必要と指摘していると言われます。しかし北海道では、第二次オイルショックのもとで米の十アール当たりの生産費における購入肥料費が、五十四年の六千八百十四円から五十七年の九千三百二十円と、三六%も上昇しているのであります。この間の米価は三・九%上昇にとどめられています。とても一〇%程度のコスト低減ではどうにもならないのであります。今や米の生産者価格の形成はゼロサム状況にあります。肥料のコストを認めれば農民の所得はなくなってしまう、そういう厳しい実態になっております。  第三点は、肥料のトータルコスト引き下げのために、アンモニア・尿素工業、燐酸・燐安工業など、基幹部門の合理化とあわせて、複合肥料工業の分野での合理化が極めて重要だと思います。  さきの化学工業部会の答申によれば、複合肥料工業は農業に対し、化学肥料の八〇%を供給する部門となっておりますが、これに当たる企業は三百社に上り、全般的な施設過剰と多様な生産方式が混在、競合し、複雑な過当競争によってコスト引き下げを困難にしていると指摘しているのであります。  こうした状況打開のために、北海道においても先進的な農協あるいは農協系の肥料企業では、地域の作物や土壌条件に即した自家配合をコンピューターを使って行うなどにより、肥料のコスト引き下げに努力をしております。政府においても、今後これら農協や企業に効率的かつ低廉な原料供給の方策を確立、普及して、肥料のトータルコストの引き下げを促進する必要があると思います。このことに対して、肥料業界や全農は積極的な協力をすべきだと強く申し上げておきたいと思います。  北海道の畑作物の生産費に占める購入肥料のウエートは稲作の比ではありません。てん菜の場合、十アール当たり生産費十万二千八百二十七円のうち、購入肥料費は二万六千五百九十二円と二六%に達し、労働費、農機具費を上回り、費目別の第一位となっております。北海道の農業にとって、また我が国八〇年代の農政にとって緊急に必要なことは、農業生産のコスト低減であります。肥料の価格は、安定より大幅に引き下げることが強く求められます。  私は最後に、肥料価格は肥料業界と販売業者である全農とが密室の交渉で取り決めて済むものではないと考えております。毎年その都度、農産物価格の前提条件として、さらに農政の基本的課題として、広く論議されるべきであることを申し添えまして、発言を終わらしていただきます。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  146. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、伊達参考人にお願いいたします。
  147. 伊達昇

    ○伊達参考人 東京都農業試験場の伊達でございます。  私は、農業生産の行われております現場にタッチをいたします施肥技術者というようなことで一言申し上げさせていただきたいと思います。  生産の現場から見ますと、作物を育てる力、つまり地力というものは、そこの土壌がもともと持っております、あるいはその生成の自然のプロセスの中で培われてまいりましたいわば自然的な地力と、それからその後、いわゆる栽培管理の中で土壌改良あるいは施肥といったようなことで後から培われてまいりました管理的な地力、分ければこの二つになろうかと思います。我が国の場合には、その自然的な地力が諸外国に比べて必ずしも高いとは申しかねる現状にございまして、どちらかというと管理的な地力に頼らざるを得ない面がたくさんございます。その管理的な地力を培う手段といたしまして肥料を施す施肥ということは、土壌改良と並ぶいわば両輪でございます。地力増進の両輪は、土壌改良と施肥にあるというふうに言って過言ではなかろうかと思う次第でございます。  そういう見地で施肥というものを見てまいりますと、かつて我が国では、肥料の中心は有機質の肥料でございましたけれども、その後化学肥料の出現という事態になりまして、まず施肥技術そのものが大幅に変わってまいりました。その結果といたしまして、土地の生産性あるいは労働生産性というものが農業においては著しく向上をいたしました。現在では、化学肥料の供給量の多いか少ないかということがそのまま作物生産の多少を大きく規制をするといったような現況に立ち至っておりまして、化学肥料への依存度というものが非常に高まっているわけでございます。  しかしながら近年、我が国の農業が労働生産性を重点的に目指してまいりましたその一つの結果といたしまして、有機質資材の施用というものがどうしても少なくなってくるという実態がございまして、それに振りかわる形で化学肥料への依存度というものがさらに強まっているように思われます。その結果、土壌中の幾つかの種類の養分、例えば塩基でありますとか燐酸でありますとかそういったようなものが、あるいは特定の養分の過剰あるいは養分相互間のバランスが平衡を欠くといったような事態も局部的に生じ始めておりまして、今後化学肥料への依存度が余り高まるようであると、地力の偏りというものが心配をされるのではなかろうかという懸念を私どもも持つに至っております。  身近な例でございますけれども、大都市近郊の例えば野菜畑の土というものをちょっと取り上げてみますと、ここでは農業改良普及所などが中心になりまして土壌診断ということが常々行われております。その結果によりまして土壌改良あるいは施肥の指導がなされるわけでありますけれども、最近の土壌診断の結果などを見てみますと、全般に、どちらかというと養分が足りないということよりも、少し量がふえてまいりまして、どの辺までだったらふえても大丈夫なんだろうかという、いわば過剰になるかならないかの限界、上限値と私ども言っておりますけれども、それをそろそろはっきりさせておかないと、適正な施肥ということが将来不安が出てくるのではなかろうかという心配がございます。そういう意味で現在、私どもいわゆる地方の農業試験場の一つの重要な課題といたしまして、土壌の診断基準の上限値の設定というものが取り上げられておりまして、私ども東京都農業試験場でも、過去数年来、この試験の課題に取り組んでいるところでございます。  そのようなわけで、今後いわゆる適正な施肥というものを実現していくためには、土壌診断の基準をより明確にいたしまして、もちろん不足する養分は補充しなければいけませんので下限値は明確にしなければなりませんけれども、あわせて上限値というものも明確にして、適正範囲というものの中で施肥の適正化を指導していく必要があるというふうに痛感をしている次第でございます。  生産農家を取り巻きます諸情勢は内外ともにますます厳しさを加えているという状態でございますけれども、この厳しさを克服するための農家側がやるべきことといたしましては、できるだけ効率のいい方法で、かつできるだけ品質の高い作物を安定的に生産をするというのは、まさに農家側がみずからなす一番の根幹のことでございます。  そういう意味で、これは私どもの試験研究機関に課せられた任務でございますけれども、そのような品質のよい農作物を能率よく生産をするためには、いかに適切な施肥が行われなければならないかということでございまして、そのために、例えば肥料の成分の形態でありますとかあるいはその肥料の効果の出方の早い、遅い、さらには土壌の諸性質への影響の及ぼし方、そのような肥料の特性というものを、肥料ごとに個々それぞれに十分に明らかにいたしまして、作物に合う肥料を的確に選び、量も適正な量を施用をする、施用の方法も土壌を荒らさないように理にかなった方法で施用をしなければならない、そういった一連の合理的な施肥技術をどう開発をし、確立をし、普及をしていくかということが今後ますます肝要になろうかと思う次第でございます。  なお、農家にとりまして、肥料代というのはその経営費の中で少なからぬ比重を占めるものでございます。飼料代に次ぐ大きな割合というふうに認識をいたしておりますけれども、農業所得の伸び率がそれほどのものが望めないという現況の中では、やはりこの肥料代をどう抑制していくかということが、農家の生産性を確保するために大変に重要な要因であろうかというふうに思います。  特に最近は、先ほども申し上げましたように、労働生産性を追求するという中で堆厩肥を農家がみずから用意をするということが大変に困難なケースが出始めておりまして、一部の農家では、かつて有機物を買うというような考え方はほとんどなかったと思うのですけれども、最近はお金を出して有機物の資材を買わなければいけないという状態もあらわれておりまして、そういう意味では、放置をしておけばどうしても必要な肥料代が増加をするという状態が予想されるわけでありまして、そういう意味でもやはり化学肥料の価格をできるだけ低い水準で安定化をさせるということは大変に重要なことであろうと考える次第でございます。  以上、農家の立場に立ちまして、肥料の需給の安定化、あるいは価格の低位の安定化ということが農業経営の安定という面から見ますとまさに基幹的な問題であることを、私はここでぜひ申し上げたいと思いますし、そのような意味で、どうぞ農家の立場に立って、施肥にかかわるあるいは肥料の需給にかかわる適正な施策が講じられますように、それからまた、最後はお願いになるかと思いますが、試験研究あるいは普及指導の現場の技術者が適正な施肥指導ができますように、技術開発あるいは普及指導の面で、国の研究機関あるいは国の施策、そういうものが私どもの仕事の上にどうぞできるだけ仕事の推進をしやすい形、推進を援助する形で展開されますように、あわせてお願いを申し上げたいと思う次第でございます。  以上申し上げましたように、私どもの方はあくまで農家の立場に立ちまして、需給の安定化、価格の低位安定化を要望したいということでございます。  以上で意見の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  148. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  149. 阿部文男

    阿部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤征士郎君。
  150. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 本日は、参考人の皆様方におかれましては、極めて御多忙な中にもかかわりませず本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。一人の持ち時間が二十分でございまして、時間に極めて限りがございますので、全員の参考人の諸先生方の御意見を拝聴する時間がないかもしれませんが、あらかじめお許しをいただきたいと思います。  まず、全国農業協同組合連合会常務理事田中参考人にお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。  先ほどもある参考人の意見陳述もございましたが、肥料価格がいわゆるカルテル法のもとで高値安定ではないか、全農はなれ合い交渉ではないかという指摘があったわけでございますが、本年の肥料価格交渉の結果をどのように評価されているのか、御意見をいただきたいと思います。  また、いわゆる「系統農協を考える会」等に、本法の延長に反対の意見が出ておりますが、農協組織としてどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか、全農の御意見をいただきたいと思います。     〔委員長退席、上草委員長代理着席〕  それから第二番目に、日本硫安工業協会会長の長野参考人にお尋ねいたしますが、本法をめぐる論議には、必ず国内と輸出の二重価格問題が出てくるわけでございますが、どうして二重価格になるのか、また、この二重価格差を埋めることはできないのか、また、もし赤字が出た場合はどのように処理しているのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。  まず、お二方にお伺いいたします。
  151. 田中昇

    田中参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  カルテルと、こう言われておりますけれども、私どもとしましては、極めて狭義なカルテルといいますか、極めて弱いカルテルと申しますか、そういうふうな意味合いでしかないというふうに考えているわけでございます。例えば硫安の業界が一つの値段を固執をして、そしてこれを消費者にこの値段で買いなさい、こういう押しつけになるようなカルテルではないのでございまして、安定法による、法律に定められました政府の権限によりまして農林、通産で各企業のコストの調査をしていただいております。場合によっては立ち入りをして、そして検査をするということになっておりまして、これは企業秘密ということで、コストはその面からしますと企業としてはどうしても隠したい代物でございますので、私どもも、買い手の面でこの調査をしコストを把握するというよりは、少なくとも法律に定められた権限でもって政府がコストを調査していただくということは、よりベターなコスト調査ができるものだ、こういうふうに判断をいたしております。  しかも、この価格を中心にいたしまして、業界の代表が一つの交渉の相手ということになりますし、全農は国内における販売数量の相当量を扱うという立場で、消費者代表、流通業者の代表ということで交渉いたしております。その交渉の過程では、ここに出てきます実績コストは、暦年の一月から十二月までのものが実績として調査をされ、確定をされます。その資料を全農はいただきます。それからメーカーもこれをいただく。お互いにコストを持ち合って価格の交渉をする。しかし、交渉をする時点は、大体実績コストが調べられて十二月までのものが三月か四月ごろになって明らかになりまして、我々が交渉するのは三、四、五、そして六月の十五日までに決定をして届けをする、こういうスケジュールになるわけです。しかもこの値段は七月以降に適用される、こういうことになりますから、コストを調べられた時点からしますと、大体一年ないし一年半のタイムラグがある、こういうことになります。それにつきまして、私どもとしましては、諸般の情勢——国際情勢ももちろん入ります。労働賃金のベースアップ等も入ります。各資材のそのコスト調査の期間以外に、現在に至り、さらにまた後の一年間に及んでの見通し等も入ります。そういったものをすべて積み上げまして、あるいはさらに安定法でなくて構造改善法で計画として予定をいたしております合理化の進度、できているできていないにかかわらず、その進度も織り込んだ操業度を加味しまして、そして値段を決めております。  したがいまして、高値とか低値とかいうことで、一概に肥料が高値安定だということは私どもとしては認められないと思いますし、現実に今年度の値段として出てきましたものも、政府から示される値段は平均価格と最高値と最安値というものが示されますけれども、今回の価格の交渉におきましてもある業界の代表は「無残やなかぶとの下のきりぎりす」という一句を置いて立ち去っておりましたが、かなり厳しい交渉の結果として出てきたものというふうに、私は自信を持ってお答え申し上げたいと思います。  それから第二の「考える会」でございますが、これはいろいろと雑誌、新聞等で出まして、それをまた書いた人がリーフレットにしてあちこちにばらまくというようなことになっている、特定の人の作業ではございます。しかし「考える会」は、全農を含む総合農協の中で一つの研究グループというふうに見ていいのではないかと思いますけれども、四千三百の農協の中で、今は恐らくもっと低くなっていると思いますけれども、「考える会」が結成をされた時点では三百くらいの農協が入りまして、その後、加入、脱退が自由でございますがそれ以上ふえておりませんし、むしろ欠席をする人が非常に多くなっていることも聞いておりますけれども、極めてまじめな考え方といいますか、非常に農協の経営が苦しくなっております、その苦しい農協の経営をいかにして合理化をし、そして経営を好転させるかという、お互いの横の研究会ということで極めてまじめなグループの方もおります。それからまた体制に対して極めて不満な方々もおりまして、発言力を強化してということで連合会の役員になるとかそういう方々もおります。そうなるとまた逆に沈黙されてしまう、こういう方もあるわけです。それからまたさらに、かなり左翼的な考え方をされる方々もあります。  そういう研究集団の中の三十何名の方々が年に四回ほど集まられていろんな研究テーマを特定して継続される、その中で特に安定法が取り上げられた、こういうことでございます。こういう組織ですから、組織の中に右から左までかなり広範なファクターや考え方の当事者を含んでおります。私は組織の健全性という点からしますと、一つのものをAと見るということに固定化しないで、むしろ反対にBという見方をするというグループなり考え方があっても当然ではないか、これはむしろ組織の健全性を示すものだ、こういうふうに考えておりまして、あくまで組織内でお互いにディスカッションして帰趨を決することが大切なことだ、こういうふうに考えております。したがいまして「考える会」で出されましたいろいろの組織外PR等については私としてはいささか遺憾でございまして、あくまで組織内部でこれは処理すべきものではなかったのか、こういう考え方をいたしております。  なお、この考え方に対して、私どもが資料の出し惜しみをしたとかいろいろ言われております。かなりこれは私は残念だと思いますが、例えば輸出が国内建て値より安いじゃないか、こういうものを隠しておったんじゃないか、こういうふうに言われたりします。多少私どもの方としてそういうものに対する気配りが足らなかった面は認めております。この点は今後ぜひそういうことのないように努めていきたいと思いますが、そういった資料は毎年出ております「肥料要覧」というものの中に出ておりまして、全農もそれを買い求めて各県に四十部ないし五十部ずつ配付をしておる。その資料の中に毎年これは入っているわけでございますが、あえて今回それを出さなかったということについては配慮が欠けた、こう考えておりますけれども、出し惜しみしたとか隠したというわけのものではありません。いつでもこれは公開されている資料でございます。  そういうこともございまして、私どもの総代研究会というのは各県別に年に二回ございます。それから臨時総代会、通常総代会、四千三百の中で約五百十名の総代がおりますが、これが集まって総代会を開き、またそれが地区別、県別に集まって研究会を開いておりますけれども、今回この五月、六月にかけまして総代研究会を開いてまいりまして、私も関東、甲信越、東北の担当でございまして、それぞれ回りましたけれども、一カ所だけ、一人だけ反対という意見が出ましたけれども、全く私の出席した範囲では出ておりません。それから、西の方に参りましても大体四人ほどこういう意味の発言があったというふうに聞いております。それから、六月末の総代会では米の問題に非常に関心が燃えまして、そちらの方にいろいろと意見がハッスルしまして、ちょっと肥料はかすんでしまったという面はございますが、全く出なかった、こういうことになっておりまして、組織としまして私どもとしては了解を受けた、こういうふうに見ておるわけでございます。  以上でございます。
  152. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 どうもありがとうございました。  もう時間も余りありませんが、長野参考人にひとつ手短にお願いします。
  153. 長野和吉

    ○長野参考人 ただいま御質問がありましたように、輸出価格と国内価格との間に乖離がある、これは事実でございます。その理由は、輸出価格は国際市況に左右されて動きますので非常に投機的に動く、それに対して国内価格は長期安定的に価格を取り決めていくという仕組みになっておりますので、この二つの間にはどうしても差が出てくるというのは一つの動かしがたい現実であろう、そのように思います。  それで、輸出価格は常に国内価格よりも安いというのはどういうことかということでありまして、先ほど参考人の方から説明がありましたように過去三度前後以外は輸出価格の方が安かったじゃないかということでございますが、国際市場はそのときの需給関係で非常に急速に動いていくということがありますし、三回足りなかったということは非常に需給が逼迫をしたというときであります。値段が高くてもなかなか手に入らないという状態であったかと思いますが、その辺、国内価格は価格と供給の安定性ということを常に中心に考えて動いておりますので、乖離の問題はありますが、我々は常に国内の需要の安定、そして合理的な価格の決定ということに終始しているわけであります。  それから、取り決め価格と輸出価格との間に格差があるのは申しましたように事実でありますが、国内価格は消費地最寄り駅までの運送費を含んだもので、FOB建ての輸出価格と直接対比はできませんで、包装条件、決済条件等をいろいろ考慮しますと、旧肥料二法が施行された昭和二十九年から約三十年間を平均しますと、輸出価格は国内価格の九割という程度であろうかと思います。  それから、一方、輸出を行うということで当然肥料業界としては稼働率が向上しておりまして、この稼働率の向上というのは原価に反映をされまして国内価格の引き下げに貢献をしてきている、これは事実としてあるわけであります。  それから、輸出によって生じた赤字ということにつきましては、国内価格を決めます生産費の中には全く入らないわけでありまして、企業の全体的な努力、企業努力、経営努力の中で吸収されておりまして、これは一切国内価格には反映をされてないわけであります。  それから、一時は大型化設備をやりまして輸出をかなりやることが、コストを下げて国内価格を合理的に安く供給できるということで大型化をやったわけでありますが、二度のオイルショックで、昨今は内需を中心とした生産設備になるべく縮小していきまして、高能率の工場に生産を集中して稼働率を高めて、生産コストをベースとする肥料価格というのが国際的に見ても合理的な価格が形成されていくんじゃないかという、第二次構造改善案の趣旨にのっとりまして現在鋭意努力しておる、そういうような状況でございます。
  154. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 最後に、北海道農民連盟の岡本参考人にお尋ねいたします。肥料の輸入の問題につきまして極めて簡単にお答えをお願いしたいと思いますが、肥料価格を国際市況並みに引き下げる、こういうことになりますと、肥料の輸入等も考えられるわけでありますが、岡本参考人は肥料の輸入につきましていかようにお考えでございましょうか、一分以内でひとつお答えをお願いいたしたいと思います。
  155. 岡本栄太郎

    ○岡本参考人 この法律の中では輸入については触れておらないと思っています。しかし、我々としては割高な肥料を使わされている、機械にしてもそうであります。そういう中でコストをどうやって引き下げるか、こういう努力を積み重ねてきておるわけでありますけれども、国内で生産、供給される肥料がアメリカ、ヨーロッパより非常に高いという現実があります。そうなればやはり国内価格を引き下げるためには、引き下げる要因をつくるためにも、あえて輸入をせざるを得ない状況下に置かれているような気がしてなりません。これはこれからの問題の推移によって変わりますけれども、私どもはそのようにも理解をしております。
  156. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 時間が参りました。ありがとうございました。
  157. 上草義輝

    上草委員長代理 参考人各位にお願い申し上げます。時間に制限がありますので、御答弁は簡潔に願います。  小川国彦君。
  158. 小川国彦

    小川(国)委員 五人の参考人の方、お忙しいところを御出席いただきまして貴重な御意見を大変ありがとうございました。今委員長からもございましたが、一人当たり二十分という中での質疑でございますので、簡潔に質問しますので、ひとつ簡潔な御答弁でお願いしたいと思います。  最初に田中参考人に伺いたいと思うのですが、田中参考人は参議院の公聴会で、輸出会社等による輸出に対するチェック機能がいささか薄れている、ぜひ内需をどうやって守っていくかということについての行政指導を強化していただきたいということを述べておられるのですが、この意図するところは那辺にありますか、もう少し詳しくお述べいただけたらと思います。
  159. 田中昇

    田中参考人 お答え申し上げます。  先ほどもちょっと申し上げましたが、輸出会社の法律があった時点では、政府が責任を持って需給計画を策定して、それに基づいて輸出の承認を与えると、農林、通産大臣の承認権がうたわれております。今回はそれが全く削除をされておりますので、万が一にも、千載一遇の好機と言われるような輸出の、三倍あるいは四倍といったような高値が現出した場合に、そちらに流れる可能性のないように何らかの歯どめ措置をお願いをしておきたい。これは貿管令もございますけれども、そういうことで、ぜひ政府としても需給計画を策定して、それに基づいて拘束をするという形のものを考えていただきたい、こういう意味でございます。
  160. 小川国彦

    小川(国)委員 簡潔に言うならば、輸出が伸びた、そのときに国内需給を無視して輸出に走るということがないように、その歯どめの措置を考えてほしい、こういうことでございますか。
  161. 田中昇

    田中参考人 今おっしゃったとおりでございます。ぜひお願いをします。
  162. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、長野参考人と草野参考人に伺いたいのでありますが、構造改善法が六十三年六月までに第二次構造改善を終える、こういう目標になっておりますが、この目標達成は可能なのかどうか、その成果をコスト引き下げに向けることができるかどうか、この点を両参考人に伺いたい。
  163. 長野和吉

    ○長野参考人 我々業界といたしましては、第二次構造改善の認められた期間に所期の目的を達成すべく鋭意努力をいたします。目標とされた合理化、コストの合理化というものの実現に万全の努力を払っていきたい、そのように考えております。
  164. 草野操

    ○草野参考人 お答え申し上げます。  長野参考人が申し上げましたように、私どもの化成肥料業界といたしましても、極めて難しい問題でございますが、これは何としてもやり遂げなければいかぬというふうな覚悟でこの構造改善に当たってまいるつもりでおります。また御指摘のように、これによりますところのいわゆる合理化効果というものも、我々は構造改善で与えられた目標を十分達成できるように、これもまた努力してまいりたい、かように考えております。
  165. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、伊達参考人とそれから岡本参考人に伺いたいのでありますが、今化学肥料万能のような時代でございます。しかし最近におきましては、化学肥料万能の農業のあり方というものに対して、生産者だけではなくて、消費者の中からもこの点を考え直そうというものが出てきております。そういう意味で、この有機農法というものの展開に非常な期待が込められている。我々が現実に生産者の農家の方々に接してまいりましても、土がやせている、衰えてきている。そういう意味では、この有機農法の展開の中で、先ほど伊達参考人が申されましたように、もっと厩堆肥を使って地力に本当の力をつける。カンフル注射でもって畑、田んぼを動かすのではなくて、我々が食事をそしゃくして体力をつけるように、そういった本当の地力をつける意味の有機農法への展開というようなものがやはり必要となってきているのではないか。こういうことについて、その可能性はどうか、そのための条件づくりはどうか、国に望まれることはどういうことか、御意見を承りたいと思います。
  166. 伊達昇

    ○伊達参考人 お尋ねの件でございますが、申し上げましたように有機物と肥料とはまさに地力の両輪でございます。両者がバランスよく相互に機能し合うということが何よりも肝要でございますけれども、私の認識では残念ながら最近はいささか化学肥料への依存度が勝っているのではないか、そういう意味で地力のバランスを失する面があるのではないかと考えております。  いわゆる有機農法への可能性でございますけれども、有機物は本来自然の循環の中で分解をし、養分を放出し、作物を育てるものでございますので、実は有機物の種類によりましてその分解の仕方はかなり違うと考えます。そういう意味で、有機物でしたら何でもいいということにはなりませんで、やはり適正に分解をし適正に作物を生育させる、あるいは適正に土壌を改良する、そういう有機物を選ばなければいけないと考える次第でございます。  そういう視点で見てまいりますと、残念ながら、我が国の中で自給できる有機物資源の量というのは十分に豊富であるというわけにはいかないというふうに考えておりまして、すべてを有機農法でというわけにはまいらぬと思いますが、少なくとも現状よりも一歩前進をするという形で可能な限り良質の有機物の活用を図りたいし、そのためには有機物の特性把握が大切でございますので、そういう意味での試験研究面あるいは有機物の流通促進面でぜひとも国の有効な施策を要望申し上げたいというふうに考える次第でございます。
  167. 岡本栄太郎

    ○岡本参考人 有機農業が可能かというお尋ねでございますが、北海道におきましてはやはり畑作地帯が非常に地力が減耗しております。これはやはり機械化、省力化、こういうような経営をしなければ経営が成り立たないというような実態になってきています。それで、やはり土づくりのためには適正な輪作体系、これをきちっと確立することが一番必要だと思います。堆厩肥の施用等についても、これはやはり有畜化がかなり進んできておりますので、それぞれ今までよりは改善されるだろうと思いますけれども、やはり畑作においては的確な輪作体系、これをきちっと組み立てる以外に地力の維持増進というのはあり得ないというふうに私は考えております。
  168. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一度肥料に戻って伺いたいのですが、肥料の中で、農家が七〇%程度のシェアで使っているのが高度化成と言われているのですが、構造改善の中でどれだけこれから引き下げをすることができるのか、これを長野参考人、草野参考人に伺いたいのであります。  EC、ヨーロッパ諸国から見て日本は安く輸出をしている、そしてまたECはやはり輸出よりも国内価格が高いという状況がある。しかし、ドイツなどでは農家にそれだけの補助金を出しているということを伺っているわけであります。そして国内価格においては日本より二割も安いということが言われているわけです。そうすると日本のメーカーの企業努力というものが欠けているのではないだろうか、あるいはまた輸出競争に打ちかつために日本の内需を犠牲にする、どうしても国内の肥料価格が高くなるということになってきてしまうのではないか、この点の高度化成の価格引き下げに対する考え方、これをそれぞれの工業会でどういうふうにお持ちになっていらっしゃるか、両参考人に伺いたいと思います。
  169. 長野和吉

    ○長野参考人 我々の方の担当いたしておりますアンモニア、尿素はそれぞれ高度化成の原料になっていくわけでありますが、五十六年の平均総コストに対して、六十肥料年度までにインフレ要因を除外した実質コストベースでアンモニア約一〇%以上、尿素約一一%以上に相当するコスト低減を達成することが必要というように考えております。
  170. 草野操

    ○草野参考人 私どものやっております高度化成肥料、これは御案内のとおり、その原料はほとんどが輸入品でございます。燐鉱石しかり、カリしかり、それからまた、ただいま長野参考人から話が出ましたような原料であります窒素源、これは購入あるいは自家生産をしているわけでございますけれども、そういう意味からかなり外部要因と申しますか、輸入品によります価格の変動をもろに受けるようなものでございます。しかしながら、そういう条件はございますけれども、我々といたしましては国際競争力を確保できるような形にまで何とか努力をしてコストの引き下げを図りたい、かように考えておる次第でございます。
  171. 小川国彦

    小川(国)委員 この点は実は私五年前にも当委員会で、当時の渡辺美智雄農林水産大臣に、高度化成の価格引き下げ、EC、ヨーロッパ諸国と対比しての、国際価格、国内価格の対比はどう見ても日本の農民、農家に対するしわ寄せが大きい、これの是正のための努力をすべきであるということを主張したわけであります。そのときに渡辺農林大臣は、「肥料会社に対しましては、高度化成の問題でもっと生産性を高めて価格を上げないような工夫をしなさいということは言っていくつもりです。」、農相からもお話があって、現状もまだ、今両代表によりますと、これからもかなり努力をされるということでございますので、この点はひとつ日本の農家や農民の期待にこたえられるような御努力をお願いをしたい、こういうふうに思います。  それから、これは全農の田中代表にお伺いしたいと思うのでありますが、何といっても肥料価格安定法の問題については過去三回延長をやってまいりまして、今度これで延長が認められると四回目になるわけでございます。これについて当農林水産委員会が、曲がりなりにもこの延長を引き続いて認めてきたということは、全国の中心をなす農業団体がこれに対して要請をしているという立場、そういうものに対する配慮というもの、これがやはり大きいのではないかというふうに思うわけです。それだけに全農が全国の単協なり県連なりあるいはまた農民なりの期待を担って、ひとつメーカー側との交渉には全力で当たっていっていただきたい。そういう意味では、先ほど北海道の農民連盟の方からもこれに対していろいろと苦言を呈されている面もございますので、こういった農業者、農民の声をできるだけ吸い上げるというような立場でこれからのメーカー側との折衝に当たっていただきたい、こういう期待を持っているわけでございますが、その点についての御見解をひとつ承りたいと思います。
  172. 田中昇

    田中参考人 おっしゃるまでもないことでございまして、極力組織の機関や団体の会合、ディスカスを通じて、そういう農民、農家の期待にこたえるような価格の実現あるいは営農指導をあわせた対応をしていきたい、こう考えます。
  173. 小川国彦

    小川(国)委員 それから、先ほど自民党の側からも輸入問題に対する見解が求められました。これも先ほど田中参考人の方から、輸入はいけないとか触れてはいけないという問題ではなくて、日本の内需に見合うもの、適正な秩序ある輸入をしなければならないというような御説明があったわけであります。私どもはもちろん構造改善によるメーカー側の努力というものに最大限の期待をかけて、仮にもし延長になったら、これから五年間の中で国際価格、国内価格の矛盾解消に最大限の努力をしていってもらわなければならない。しかし、それがどうしてもなし得ない場合は、今のような適正な秩序ある輸入ということも——米とか牛肉とかオレンジ、そういう農産物の輸入とこの肥料の輸入という問題はまたおのずから性質が違うと私は思うのですね。やはり日本の農業生産というものが本当に向上していくためには、農業資材が安定し、そして安く供給されない限りは、今のような流通機構の中での農家の苦しみ、どんなに米をつくっても、農産物をつくっても価格が、今度の米価も恐らく抑え込まれるでしょう。そういう状況の中で、農業生産資材だけが上がってくるということは到底認められないわけで、そこには万やむを得なき緊急避難措置としての輸入もやむを得ないんじゃないかというふうにも私は思うわけであります。この点もう一度、全農の田中さんに御所見を承りたいと思います。
  174. 田中昇

    田中参考人 私どもは、やはり第一は、国内のものについては国内の生産で賄っていきたい。これは、非常に長い日本列島でございまして、土壌の質あるいは使う時期、作物も極めて複雑でございまして、極めてきめの細かい施肥の設計をしながら今の農家は生産性の向上に努力をしておる、こういう実態でございますので、輸入につきましては、万やむを得ない、幾ら努力をしても、あるいはサボタージュして合理化がおくれる、これではというときに、しかも、いつでもこれだけの必要な数量が必要なときにこの値段で買えますよという背景を踏まえて、バーゲニングパワーということで活用をしていくような輸入のあり方をすべきではないのか、こう考えております。  したがって、今そこに安いものがあるからすぐ買え、これだけでは、例えば、一万トンあるからそれを買えということだけでは、バーゲニングパワーということで、企業、業界のしりをたたくという材料には非常に薄いと私は思っております。したがって、それだけを買った後、日本の肥料工業がどうなるかということもあわせて考えていくような輸入の仕方が望ましいのではないか、こう考えます。全くなくなった暁には、国際資本は日本に対して、私どもが今ここにこういう安いものがある、これだけひとつ三十万トン売れと言っても、なかなか簡単にそれに応ずるようなことにはなりません。やはりこちらに適当な自賄いのできる量がなければ、バーゲニングパワーとしての活用も不可能ではないか、こういうように考えておりますので、めちゃくちゃに輸入をするということは避けたい、こういうふうに考えておるわけでございます。ですから、安定法ができて、国内に高値で温存をさせて輸入をやっても振り向かぬということではございませんけれども、考え方の基本には、いっどこでも必要なものが買えるという条件をつくりながら輸入をしていかなくてはいけないのじゃないか、こういうふうな考え方をいたしております。
  175. 小川国彦

    小川(国)委員 最後に、伊達先生にもう一度お伺いしたいのでございますが、私ども、堆厩肥センターというのを全国のモデル的な農村地域で市町村がつくったり農協がつくったりして、畜産関係の農家がそこに堆厩肥をつくり、園芸農家、黄菜農家がそれを分けていく、非常に合理的に行われているところも散見するわけですが、全国的に見ますと、堆厩肥の生産とそれを利用する農家とのコンビネーションがなかなかうまくいかないという実態があるのですね。この点を全国的にどういうことをベースに考えていったらいいのか。限られた時間で大変恐縮ですが、もう一言伺いたいと存じます。
  176. 伊達昇

    ○伊達参考人 実は、大変に難しいお尋ねかと思いますけれども、確かにおっしゃるように必ずしも意図とそれから現実とが結びつかないケースが方々にございます。詳細に聞いてみますと、それぞれにやむを得ない事情もあるかと思いますけれども実態といたしまして一度に全国が一斉にうまくいくというような円滑な方法はどうも難しいようでありまして、非常に円満に機能している事例を一つ一つ育てまして、それをモデルにして周辺に同じような考え方の堆肥センターを着実にふやしていく、こういう拠点主義で円滑な増進を図るのが一番適切ではないかというふうに考えております。
  177. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  178. 上草義輝

    上草委員長代理 松沢俊昭君。
  179. 松沢俊昭

    ○松沢委員 参考人の皆さん、大変御苦労さんでございます。  時間がありませんので、まず全農の田中さんにお伺いしたいのですけれども、私ちょっと席を外しておりましたので同じ質問があったかもしれませんが、全農に対しまするところの批判があちこちから出ている。それは一つは、法律からしますと生産業者と販売業者、これが価格の取り決めをやるということになっておりますね。どうもそこのところが、取り決めするときに不透明な面があるじゃないか、こういう批判が一つあると思います。それからもう一つの批判といたしましては、手数料なんというのはもう少し考えたらいいじゃないか、三段階制じゃなしに二段階にした方がいいじゃないか、こういう批判もあるわけでございまして、それらにつきまして全農内の考え方をお聞かせいただきたい、これが一点であります。  それから、この法律は肥料二法が廃止になった後に連続してできたところの法律でありまして、当時の国会の記録を見ますと、業界側の方では、二法が切れればもうそれでいいじゃないか、野放していいじゃないか、こういう主張でございましたし、農業団体側といたしましては、そうでなしにやはり二法を存続せよ、あるいはまた、二法が存続できないにしても臨時措置法は絶対必要なんだ、こういうことで、意見の食い違いがあったわけでございます。それが、四十四年ですかに期限切れでこれをまた五年間継続するということになり、今度でちょうど四回目になるわけでございます。時代の流れというのはいろいろな移り変わりがございまして、当初は輸出産業として考えていたわけでありますけれども、今はその競争力がなくなって、国内産業として考えていかなければならない、こういう変化もあるわけであります。  しかし、政府の方は同じ法律をまたもう一回、もう五年間延長させてくれということで国会に出しておりますけれども、私はこれは能のない話だと思うのですよ。じゃ一体五年後になったらこの法律は要らないのかどうかということになると、やはり何らかの方法を考えていかなければならぬじゃないか。何といたしましても、日本の食糧を確保するためには、その前提になるところの肥料が必要であるわけであります。これは全部外国依存なんというわけにはいきませんから、何とかしていかなければならない、国内の生産、輸出体制をきちんと確立していかなければならぬということを私は考えております。したがって、これは五人の先生方に、簡単で結構でございますが、一体五年後はどうあるべきであるのかという御見解を聞かせていただければ非常に幸いだ、こう思うわけであります。     〔上草委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 田中昇

    田中参考人 松沢先生の御質問にお答え申し上げます。  全農に対する批判は、批判と申しますから極めて悪い意味の批判だと思います。余り褒められたことはございません。時として県連と間違われ、時として全中のやるべきことを、全農はやっておらぬといって怒られたりしますけれども、全農に対する農協、農家からの批判がかなり厳しくなっております。これは農業情勢あるいは農協の経営等が極めて厳しく困難な事態になりつつありますので、私どもの力不足がそういうふうな批判として出てきているということでございまして、極めて厳粛に受けとめて、不信感を解消していくような努力をいたしたい、こう考えております。  時々、全農はうそをついている、けしからぬといったチラシをまがれたりいたしますので、私は、全農の常務はうそをついていると言うのはいいけれども、全農はうそをついていると言うのだけはやめてくれと言っておりますが、まことに残念でございますけれどもそういうことがございます。ぜひ早急に組織を通じて解消をしていくような、そして期待される全農の仕事のあり方にしてみたい、こう思っておりますので、よろしくひとつ御理解を願いたいと思います。  それから二段階の手数料制。農協、県連、全農の三段階ということでございまして、商系の方を見ますと卸、小売兼業とか大卸、小売ストレートとかいうような極めて変則的な形で段階が解消されつつあります。したがってそこにいろんな市況等の発生も出ている面もございます。したがって系統といたしましても、現在、経営刷新強化対策ということを取り上げまして、現在持っている事業方式をもう一度見直しをかけて、段階別の機能を明確にしながら対応をしていかないと、いつまでもこういう期待に、あるいはまた商系との競争に引けをとるのじゃないか、こういうこともございまして、今一生懸命それをやっている段階でございます。  ただ、二段階ということは、私からここで結論的なことを申し上げるような立場にはございませんので、あえて申し上げませんけれども、従来から組織三段、事業二段とか、あるいは大型農協の直接利用とか、いろんな形で全国連、全中に突き上がってきておりますので、すぐにこの問題に入る前に、これは私個人でございますけれども、品目の性格によっては、全国連に注文を集約をしてまとめてやってもそう大きな有利な購買条件はとれない、こういうものもございます。したがって、そういったものについては段階を下げていくような、そういう応用動作をとりながら対応していく必要があるのではないか、こういうふうな感じを今持っております。  それから最後の、延長法の必要性につきましては、いろいろ問題もございますが、私どもはぜひお願いをしたい。確かに状況の変化というものがございます。また、二法が廃止をされたときに、輸出偏重的な業界の姿勢に対して極めて危惧感を抱いて、これこそ全国の組合長会議等を何回か積み上げまして、そして、もう要らぬじゃないかという政府及び業界の不要論に対して、これを輸出偏重ということでの内需軽視ということのないような、多少ゆったりしたものですけれども、その中に自主交渉を織り込んだ安定法に引き継いでいただいた、こういう経過がございます。  したがって、ここで三回なり四回なりという延長が果たして適正かどうか——確かにカリ、燐鉱は既に日本には一つもございません。すべて外国から買ってきているものでございます。ただ燐酸だけが、石こうが副生品として売れるということ、それから硫酸が国際市況よりまだはるかに有利なコストを持っているということもございまして、この面での内需産業ということの温存が今のところ可能だと思います。ただ、今後国際競争に太刀打ちできるような形になってもらわなければ困るわけですから、この努力を五年間にぜひしていただいて、万全の達成をしていただきたいと思いますし、また私どもとしましても、この五年間に農業情勢、肥料業界の情勢、新しい物流の仕組み、そういうもので体制を組み直して、次の五年、六年目以降をどうするかということについて、単に廃止あるいは延長ということだけでなくて、いかにこれが今後の農家に寄与できるような肥料の供給体系になるか、これを全力を挙げて再検討したい、こう考えております。
  181. 長野和吉

    ○長野参考人 ただいまお話がありましたように、硫安協会の仕事も、過去三十年いろいろ情勢の変化を経験してきております。ただいまは、先ほど申し上げました第二次合理化改善というものを実施いたしまして、言われておりますように国際競争力が非常に脆弱になっておりますが、この構造改善によりまして早期に国際競争力のある肥料工業という立場を確立しまして、この期間、肥料の安定供給の達成に最大限の努力をすることが化学工業界としては最も重要な任務だ、そのように考えております。  その後どうなるかということでございますが、いろいろお話のありましたように、肥料は我が国にとって最も重要であります農業生産に対して基幹的な資材でありますので、我々としてはこの安定的な供給が合理的な値段で行われるために、そのときの情勢を勘案しながらしかるべき体制がとられていくということを、その時期において十分検討していかなければならないのじゃないか、そのように考えております。
  182. 草野操

    ○草野参考人 非常に難しい御質問でございますが、先ほどもお答え申し上げましたように、私どもは高度化成肥料をいかに安定的に供給するか、それをまたいかに適正な、合理的な値段で供給するか、こういう二つの責務を負っておるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、五年後にこういう二つの目的、責務というものが変わるというふうに私は考えておりません。したがいまして、五年後の時点で他のしかるべき手段等がありますならば別でございますけれども、この二つの我々に与えられた責務というものが変わらない限り、こういう考え方についての変化はなかろうというふうに思うわけでございます。  お答えになっておるかどうかわかりませんが、お許しいただきたいと思います。
  183. 岡本栄太郎

    ○岡本参考人 お答えいたします。  まず、昭和二十九年に肥料二法が制定されて三十年を経過しております。その間、肥料メーカーあるいは全農もいろいろ努力をされてこられたということは、我々もその努力に対しては敬意を表さなければならない点もたくさんあると思います。しかし、この三十年間、国際価格に比して割高の肥料を使わされてきたということは間違いがないわけであります。特に臨時措置法ができて以降、日本の経済も高度経済成長の中へ入ってきておって、そういうものを踏まえながら、国際競争力のある肥料業界に育てようということもあったと思います。それからもう一点は、安定供給という点もあったと思います。そういう二つの面は目的を達しておると思いますけれども、価格の面については我々としては非常に不満が残っておるということだけは事実であります。したがって、これは業界優遇、農民高負担、こういうような形で今まで推移してきたことは間違いのない事実だと思っておるわけであります。  しかし、これからの五年間どういうふうに推移するか、ちょっと私も予測できませんけれども、先ほど来全農の代表の方も業界の方も、努力をするというふうに申されております。それを私は信じたいと思いますけれども、やはり今後五年間の中で、政府にしっかりした監督をしてもらって、そして肥料の生産コストにしても、いろいろな面、隠されておる面を十分明らかにしてもらう。そういう中で、これからの日本の食糧の自給率を上げるために、自給度の向上のために、肥料そのものも安定供給、そして国際価格で供給される一つの大きな下地をつくってもらうということが一番必要じゃないか。五年後どうなるかという問題については、全農の田中さんは、これは必要だろうというふうに言われていますので、また全農はそういう動きをされるかもしれません。しかし、我々生産者としては、これからの推移を十分確かめながら生産者としての判断をしていきたい、今までの轍を繰り返してもらいたくない、このことが我々の本当の、切なる希望でございますので、申し上げておきます。  以上です。
  184. 伊達昇

    ○伊達参考人 私どもからいたしましても、農家の肥料を少しでも安くという気持ちは常々十分に身にしみて感じておるところでございまして、需給の安定化とあわせまして、さらにより安く、より良質の肥料を供給できるように、五年後にはさらに実効のある形での対応をお願いしたいということでございます。
  185. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
  186. 阿部文男

    阿部委員長 吉浦忠治君。
  187. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 五人の参考人の方々、大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。また、当委員会におきまして十分御意見等を反映させて検討させていただきたいと思うわけでございます。  全部にお尋ねできるかどうかわかりませんが、時間の許す限りお願いしたいと思いますけれども、まず岡本参考人にお尋ねをいたします。  現実に農作業に従事されておられる立場から意見の開陳がありましたが、今回の肥料価格安定等臨時措置法案について具体的にどういうふうにしたらよいと考えておられるのか、この点をお伺いしたいわけでございます。  昨今、臭素残留ということで韓国米の輸入に踏み切らざるを得なくなったという現実等から見るときに、食糧の自給率の向上、これが緊急課題だろうと思うわけでございます。それを支える農家経済における農業所得が相対的に低下している、これもまた事実でありまして、農産物の生産コスト低下に必死になって取り組まなければならないのが現状だと思うわけでございます。そうした努力の中で、農家の経営コストに占める肥料代の割合は約一四%、そのうち硫安なり尿素あるいは高度化成の割合は約六割というふうに聞いておるわけであります。そこで、現在の国内価格と輸出価格の格差及び価格決定の仕方等についてどのように考えておられるのか、これが第一点。  もう一点は、国内価格に弾力性を持たせる意味からも、輸入をも含めた何らかの競争原理の導入の必要があるというふうに考えますけれども、こういうふうな点はどのようにお考えなのか。  また、参考人の方々には大変申しわけないのでございますけれども、この委員会で質問を聞いておられて、同じことばかり聞いているじゃないかというふうにお考えだろうと思う。私もここに座っておりましてそう思いますけれども、各政党それぞれ違いますものですから、ニュアンスの違いもございますものですから、そういう立場を御了解いただいて御答弁をいただきたいと思うわけでございます。よろしくお願いいたします。
  188. 岡本栄太郎

    ○岡本参考人 最初の御質問でございますが、この法律をどのように具体的にすれば農民は納得するのかというお尋ねだと思います。  私どもといたしましては、今特に問題になっておりますのは、農業生産のコストの低減が問題になっています。そのコストの低減の中で一番課題になってくるのは肥料の問題あるいは農業機械の問題であります。肥料は、アメリカなんかと比べますと、物によっては倍だと言われている。それからトラクターなんかもやはり二倍しております。そういう中で非常に苦しんでおるわけでありまして、そういう点で私どもは、今回の肥料の臨時措置法の中で、これは先ほどもちょっと申し上げたのですけれども、やはり供給の安定ということは目的は達せられていると思います。しかし価格については不満だ、これははっきり申し上げたいと思います。それで、今後の運用等につきましては、業界、そして全農も中心になっていただいて、できるだけ早く価格を引き下げてもらいたい。少なくとも五十三年当時の価格まで引き戻していただきたいという気持ちでいっぱいであります。  それから、輸出との価格差の問題であります。これは言われておりますけれども、私どもはその中身については具体的に知らされておりません。なぜ輸出価格が安くて国内が高いか。先ほどの参考人の方の御説明によりますと、損失については企業努力で埋めているというふうに言われますけれども、それは、肥料を生産する同じ企業の中での企業努力で埋めているということであれば、国内で売られた肥料の利益というものも企業の中に入っておるわけでありますから、結果としては、やはり同じ中で計算がされているというふうにも受けとらざるを得ないわけであります。しかし、国際価格等の関係もあるというふうに言われておるわけでありまして、そこら辺は私どもとしては十分わからない点も非常に多いわけですが、やはり輸出価格も国内価格も余り差のないように、これは多少のことは目はつぶれるかもしれませんけれども、場合によっては二倍も開いたときもあるわけでありますから、そういうことのないようにしてもらわなければならないというふうに実は思っております。  それから、三点目の輸入についてでありますけれども、やはり安定供給という面では国内で生産されるということが一番望ましいと私は思います。しかし、今のような状況で高値安定、国際価格よりもかなり高いものを今後も我々農民が使用しなければならないということが続くとすれば、やはり何らかの形で国内の企業努力を促進させるためにも、ある程度の輸入は場合によっては仕方がないのではないかと実は考えております。  以上であります。
  189. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 政府委員答弁を求めているわけでもございませんものですから、参考人の方々、自由な立場で、かたくなな考え方でなくて、ぜひそのような率直な御意見を聞かせていただきたいと思うわけでございます。  田中参考人、長野参考人、草野参考人に順次お尋ねをいたします。  先ほどとまたちょっと重複をいたしますが、肥料価格安定等臨時措置法は、いわゆる統制の厳しい旧肥料二法にかわるべき法的措置として昭和三十九年四月に成立したものでありますが、それはあくまでも五年間の時限法として制定された、いわゆる暫定的な法律であったのであります。以来今日まで三回にわたる延長がなされ、今回で四回目の延長がこうして議論されているところでありますが、既に恒久法的性格を有するようになってきていると指摘されている面もあるわけであります。本法は元来、競争制限を目的とした臨時的措置の性格のものであり、おのおの延長時に、例えば石油ショックとかそれに伴う構造改善とか、他の要因があったため、それなりの機能を果たすべく延長したと見るべきで、今延長後は再度の延長はないように万全を期すべきではないかと私は考えるわけでありますけれども、先ほどから質問がございましたが、どのようにお考えなのか、お三人の考え方を、私は率直に、再延長しないで済むように万全を期すべきではないかというふうな点で、再度お尋ねをいたしたいと思うわけでございます。
  190. 田中昇

    田中参考人 ただいまの御質問でございますが、確かに安定法はこれで四回目の延長でございます。私は参議院でも申し上げましたけれども、いささか空気に似たような位置づけになっている。空気がなくなって初めて空気のありがたさを知るような、あるいは太陽がなくなって太陽の光のありがたさを知るような、誇張と言えば誇張かもしれませんが、それほどに現在の肥料の仕組みになじんでしまっているという点からいたしますと、これは恒久法的な性格を持っていると見てもよいのではないかと思っております。  しかし、現在の国際価格との対応につきましては、国内価格と国際価格の価格の形成の仕組みは私は基本的に違うと思っております。やはり企業としてはコストプラス適正利潤ということで企業内の経営を保っているわけで、そうでなければ銀行からは金も貸しませんし、再生産の施設投資もできない、こういうことになりますから、私はやはり国内については、仮に市況等に、あるいは需給バランスの上で、あるいはまた商策としてダンピング等があったりして、いろいろ安値、高値が出ますけれども、本質的にはやはりコストに向かって次第に収れんをされるものではないか、こういう感じがいたしているわけです。したがって、全農の国内の肥料の買い方につきましても、コスト主義か市況主義かという二つの議論が常時ございます。ございますが、安定法がなくなったからすぐに安くなる、こういう短絡した考え方は私どもとしては極めて危険であろう、こう考えております。  それから、輸出につきましては、国際マーケットというものがございますし、内需を満たした後はダンピングするというのは、肥料だけでなくて大部分の代物がそうなっておりまして、現在ダンピング法の適用を求めているものが五百八十品目あるというふうに「日本経済」等が出しておりましたけれども、やはり基本的に、そういう国際市場にぷかぷか浮いているものと国内ではっきりひもをつけられて出ていくものとのコストには、私は仕組み上違うものがあると思います。ただ、それだからといって、国際競争に負けて、高いものを国内で売って安いものを輸出をする、これは消費者の感情あるいは意識からも許されることではございませんから、極力それに近づけるような合理化努力を要請をしたい、こういう考え方をいたしております。  したがって、今回の四度目の延長につきましては、ぜひともそういうことを、業界全体として足並みをそろえた形で合理化を達成できるような努力をお願いをしたい。また五年後につきましては、先ほど申しましたように、そういった事態を見詰めながら、単に廃止、単に延長ということのほかに、やはり仕組みとして、現在以上に対応できるような仕組みがとれるかどうか、これを十分検討しながら進めさせていただきたい、こう考えております。
  191. 長野和吉

    ○長野参考人 ただいま田中参考人からもお話がありましたように、国内価格を安定的かつ合理的な価格で確実に所要量を供給するということの中には、生産コストをかなり重要な要素として価格を決めていくことが当然必要になってくるわけであります。これに対して、国際価格は市況条件、肥料の関係はそのときの気候条件それから原料の関係その他で急激に振れることが非常に多いわけでありますが、そういう騰落の厳しい国際市況に比べまして、そういった安定的な価格ということで、生産コストというのが重要な要件になってくる。これが第一次オイルショック後、我が国の化学工業をめぐる情勢が急激に変化してきたことは事実でありまして、そのために第一次、第二次の構造改善計画が現在実施されているわけであります。我々も、そういう安定的な供給を国際的に見ても合理的な価格で実施するその責任を果たしていくためには、やはり生産コストの裏づけがなければできないわけでありますので、その点をどうしても構造改善の線に沿って実現していかなければならないということは、今我々の業界に与えられた最大の責任である、そのように考えております。  五年後になりましても、本来からいいますとそういう安定的な供給を合理的な価格でやるという条件を満たすためには、我々の生産コストが合理的な姿になっておるということが一つの重要な要件でありますが、制度としては、自由な市況に任された形での価格形成ということは、我が国農業にとりましてもまた我々の立場にとっても問題があるのじゃないか。そのときにどういう体制がいいのかということにつきましては、今後の情勢の変化も踏まえて検討していきたい、そのように考えております。
  192. 草野操

    ○草野参考人 ただいま田中参考人から、メーカーは合理化をサボるなというお言葉があったわけでございますが、私どもといたしましては、現在与えられておりますところの構造改善を何としてもやり遂げねばいけない、かように考えておるわけでございます。しかしながらこの構造改善をやり遂げましても、先ほども申し上げましたように、五年後の状況下において、我々に課せられておるところの肥料を安定的に供給する、かつまたそれを合理的な価格で供給するというこの二つの命題というものは変わらないというふうに私は考えるわけでございます。したがいまして、この法律にかわるべき適切な手段、方法等が他にありますならば別でございますけれども、そうでない限りにおきましては、五年後においてもこの法律あるいはそれに準ずるような形のものの必要性というものは依然として残る、私見でございますが、かように考える次第でございます。
  193. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長野参考人にもう一点お尋ねをいたしたいのです。  化学肥料工業は、昭和五十八年に改正された特定産業構造改善臨時措置法に基づいて五業種が現在第二次構造改善を実施しているわけでありますけれども、ここで働く労働者の皆さんの賃金あるいは労働条件等は、他の産業と比べまして格差が相当あるというふうに聞いているわけでございます。本委員会で審議される肥料価格安定臨時措置法がこうした労働者の皆さんの雇用の機会の確保のためにどのような影響を与えるというふうにお考えなのか、簡潔で結構でございますのでお答えをいただきたい。
  194. 長野和吉

    ○長野参考人 ただいま、化学肥料業界の賃金水準が他の業界、特に現在非常に景気のいいいわゆる川下の産業の賃金水準に比べると低い、これは一つの事実であろうかと思いますが、それは、昨今の化学業界の成績が非常によくないということの結果でありまして、肥料価格安定の問題とは別でございます。  それで、構造改善をやりますと高能率設備への生産の集中ということが行われるわけでありまして、企業によってはプラントをとめなければならぬとか、あるいは設備の規模を縮小しなければならぬという事態が起きてきているわけであります。この場合は、雇用の問題につきましては、ただいままでは企業の中の努力で、配置転換その他の措置を講じましてその人たちの職場を考えていくということになっておりまして、今の構造改善の問題がすぐに解雇その他従業員の立場にとって非常に不幸な事態になる、そういうことは我々企業の責任者として絶対にないようにして構造改善の実を上げていっておる、そのようなことでございます。
  195. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、伊達参考人にお尋ねをいたします。  最近、農業に対する省力化が進むにつれまして、いわゆる化学肥料の多投化が地力の低下を来しているということが指摘をなされているわけであります。本国会においてもその反省の上に立って、耕土培養法を改めまして地力増進法を成立させまして、土づくりを推進しようとしているわけでございますが、ここで農業における化学肥料の今後の位置づけという点について、大変大きな問題を提案して、ほんの一、二分でお答え願いたいというのは無理でございますけれども、簡潔で結構でございますので、どういうふうにお考えなのか、お尋ねします。
  196. 伊達昇

    ○伊達参考人 大変に大きな御質問で、いささか当惑をいたしておりますけれども、申し上げますと、一つは、今の農業生産を量の面で担保をしようと思ったら化学肥料はまず不可欠でございます。それから、地力という面で見てまいりますと、土壌改良、特に有機物を中心にいたしました土壌改良と化学肥料の施用が二つそろって、初めて地力増進が円滑に進むであろう、そういう意味で有機質資材を中心にした土壌改良材と化学肥料とは地力増進の両輪であるというふうに認識をいたしております。
  197. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりました。ありがとうございました。
  198. 阿部文男

  199. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 各参考人には御苦労さんでございました。民社党を代表いたしまして私も質問を申し上げたいと思います。  まず、全農の田中常務にお願いしたいと思います。  今回の肥料価格安定臨時措置法はカルテル法ではないか、また高値安定を守らせる法案ではないか、こういうことに関連しまして、価格決定の際の団体交渉の当事者となっております全農で、この価格取り決めに当たって農業者の声をどのように把握し、それをこの価格交渉にどのように反映しているのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  200. 田中昇

    田中参考人 安定法のもとでの価格取り決めの方式は、コストを示されまして、それを基準にしてその後のいろいろの変動要素、操業度、合理化促進のための努力のあるべき姿という多少不確定な要素もありますけれども、そういうことを加味いたしまして、かなり厳しい、そして息の長い交渉をいたしております。  その過程で、今年度の価格につきましてはこういう高くなる要素、安くなる要素がある、これに対して消費者である我々としては、こういう立場でこういう材料を使いながら交渉するという価格交渉の基本方針というものを、全農で内部諮問機関として持っております肥料農薬委員会に諮問をいたしまして、そして、それを県連、農協のそれぞれの段階の会議に示して了解を得ておる、こういうことが一つ。  それから先ほど申しましたようなかなり長期にわたる品目ごとの厳しい交渉の結果、コストという点からすると、メーカーの側からするとちょっとねじ伏せだと思われるようなものがあっても、現在置かれている農業環境というものをかなり強く主張しながら妥結をしているのが昨今の情勢でございますが、それにつきましても、さらに肥料農薬委員会を開き、ここでこういう形で決着をするに至ったという報告書を出して、これも組織に御理解を得る、そういうようなことの繰り返しを今日までやってきておりまして、その過程の中で、まあ安ければ安いほどいいのですけれども、この辺でやむを得ぬじゃないか、しかし輸出は安いじゃないか、こういう意見等も十分私どもの方にははね返ってきております。そういうことで、農業者の声については各段階ごとにそれぞれ機能に応じて集約をしてきている、こういう実態でございます。  それから、高値かどうかということにつきましては、少なくとも企業のサイドからすると、まだできていもしない合理化メリットを先取りするのかという強い指弾が前々あることも事実でございますし、また事実そういうふうな決め方もいたしております。したがって、高値安定ということは当たらない、こういうふうに私としては考えております。
  201. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 さらにもう一点田中参考人にお伺いしますが、岡本参考人からは、この法の名前のもとに高い肥料を買わされているんだ、こういうふうな強い陳述がなされているわけでございますが、ひとつ全農として、やはりこの価格決定に当たっている当事者でございますから、末端系列に流すところの手数料その他で努力をされている点、どのようになっているのか、お聞きしたいと思います。
  202. 田中昇

    田中参考人 私ども全農の手数料は、〇・六%ということで総会で決定をされております。したがって、〇・六ということになりますと千円のものが六円、こういうことになるわけでございます。それから、県連の段階におきましても、手数料率というものはそれぞれ県連の事業計画の決定のときの総会で決定をされます。大体平均しまして約二%程度ではなかろうかと考えております。それから、農協の段階におきまして大体一〇%くらいが農協の手数料ではなかろうか、こう考えております。これについて、特に手数料を規制するということはいたしておりません。
  203. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、長野参考人、草野参考人に聞くわけでございますが、価格、コスト決定の参考資料は法で調査対象にされているわけですが、調査されるときの立ち入り権限というものについて、またその会社で提出する資料というものについてはどの程度の内容のところまで、これは本当にオープンなものを提出しているのかどうか、その点をお聞きいたします。
  204. 長野和吉

    ○長野参考人 お答えいたします。  各会社ではそれぞれ企業会計原則にのっとって原価計算基準が決められておりまして、それぞれの生産工程ごとにコストを算定しているわけであります。それを政府に提出しておりますので、政府の方としては的確に我々の方のコストを把握されている、そのように思います。必要があれば会社の方に来られまして必要のところをチェックされておりますので、いわゆるコストについては正しい資料を政府の方では把握されている、そのように思います。
  205. 草野操

    ○草野参考人 ただいまの長野参考人の意見と同じでございます。
  206. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは、皆さん方の提出されている資料が正確だとすると、結局実質競争力がどうも日本はついていない、各国に負けているというのは、生産費そのものが高い者が日本で肥料をつくっている、このように理解していいわけですか。
  207. 長野和吉

    ○長野参考人 言われますとおりに、生産コストが高いということが国際的に見て日本の肥料工業が弱い面があるということでありまして、それをいかにして強化して合理的なコストに引き下げていくかというのが第二次構造改善の対策になっておるわけであります。それで、設備の縮小といいますか、不能率工場から能率工場へ生産を集中していくというようなことを一つ行いますし、原燃料その他の多様化、さらに各工程における省エネルギーその他に努力をいたしまして、今のコスト面の弱い点を是正して、生産コストをベースにした価格取り決めでも合理的な価格で安定的な供給ができるという体制に持っていきたい、そのようにして努力をいたしております。
  208. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 第一次構造改善で、昭和五十四年にアンモニアで四百五十六万トン、尿素製造で三百九十九万トン、燐酸製造で九十三万トンが、おのおの三百三十七万トン、二百三十二万トン、七十六万トンに下げられたわけでございます。この段階で構造改善の名前のもとに努力されてもなお国際競争力が出ていない。そこで、今度の第二次構造改善で、これがさらにアンモニア製造において二〇%、尿素製造において三六%、燐酸製造において一七%が結局処理目標になっているわけです。  問題は、各メーカー、企業間にこの処理目標をどのように割り当てているのか。また、この割り当てが単なる縮小再生産的な対応にしているのか、スクラップ・アンド・ビルドというようないわゆる国際競争力が出る最新の技術等を取り入れた体制で構造改善をやっているのか。その企業間、内の処理の仕方によっては、結局第二次構造改善も、また五年後は再延長してこのような法律をつくっていかなければならぬじゃないか、そういう不安を持つわけでございます。ですから、この点に対して企業間がどのような対応をしているのか、競争原理を取り入れられるような対応もしていわゆる構造改善に取り組んでいるのかどうか、このことをひとつお知らせいただきたいと思います。
  209. 長野和吉

    ○長野参考人 ただいまお話のありましたように、非常に大規模な設備能力の縮小でありますので、企業の自主的な努力も当然行われておりますけれども、他方、企業間の提携その他によります合理化というのも推進をされております。  それで、各社が自主的に行っております努力としましては、原燃料の多様化ないし転換、それから省エネルギー対策、それから高能率設備への生産の集中化があります。また、例えば宇部興産の例は、石炭ガス化装置でもって原料の転換を考えていくということも行われております。それから、企業間の提携の関係では、昭和電工と三菱油化、住友化学と三井東圧の間には尿素生産の受委託というのが行われておりまして、自主的努力によるものもやっておりますし、企業間提携によって合理化を進めていく、両方それぞれ精いっぱいに業界としては努めてやっております。
  210. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 草野参考人にお伺いしますが、日本化成肥料協会の方では原料を全部輸入に依存しているというわけでございますから、このような体質でありますと、国際競争力に対しましてはいつまでも対抗できそうにない劣性構造を持っているのじゃないかという不安を持つわけでございます。この点に対して、本当に五年後にいわゆる国際競争力が十分に持てるかどうか。  それから、時間もなくなっておりますので伊達参考人にお伺いしますが、私たちは過般地力増進法案というものを通過させたわけでございます。そこで、有機系肥料の問題、それから、現在有機質の投入が減少している全般的な傾向の中で、どうしても金肥依存をしているのですが、現在日本で使っている金肥の全体量というのは非常に高い率でございます。こういう現在の使用量は妥当かどうなのかということ。  それから岡本参考人には、高い肥料を買わされているんだというわけでございますが、肥料の需給を安定させかつ価格も安定させるためにはどのような措置をとればよいと考えているのか。端的に手短にお願いしたいと思います。  以上でございます。
  211. 草野操

    ○草野参考人 化成肥料について申し上げますと、確かに御指摘のように輸入原材料が極めて比率が高いわけでございます。ただ日本の特色といたしまして、我々が使っております原料の中で硫酸というものがございまして、これは世界的に見ましても恐らく日本が一番安い、そういうふうなものがございます。それからもう一つは、湿式燐酸液をつくります場合に副生いたします石こう、これが日本は特殊事情でございまして、これが石こうボードという形で使われておるわけでございます。アメリカ等におきましては副生いたします石こうは捨てておるというふうな状況でございます。  そういった意味でのかなりきめ細かい合理化というものが日本の場合には行われておるわけでございます。したがいまして、使用いたします原料の中で特にアンモニアが高いということはございますけれども、カリ及び燐鉱石、これは国際価格がございますという一面、今申し上げましたような日本特有の有利性というふうなものもございますので、我々の今後の努力の中で、でき得る限り国際競争力を持ち得るようにしていける余地はあるというふうに私は考えておるわけでございます。
  212. 伊達昇

    ○伊達参考人 私は、現状では化学肥料への依存率というのが少し高過ぎているような気がいたします。そういう意味で、今後できるだけ有機質の肥料あるいは有機質資材の活用を図りまして、化学肥料も含めた適正な施肥計画が必要ではなかろうかと考えております。
  213. 岡本栄太郎

    ○岡本参考人 現状では非常に難しい問題だと私は思っています。しかし、日本の石油化学工業は世界の水準の上を行っている業界だと思います。アンモニア系統あるいは尿素系統なんかは今の製鉄や石油化学工業の副産物がほとんどだと思います。そういう中で化成肥料を我々主体に使っておるわけでありますけれども、先ほど来業界の代表の方々からいろいろ説明を受けておるわけですけれども、どうしても本当に納得のできない点も我々たくさんあるわけであります。したがいまして、これからの臨時措置法の中で我々生産者の問題にしているいわゆるわからない点、これがコストの問題であるとかあるいはそれを含めてもう少し明確になってくれば、我々としても理解のできる点は多くなってくるのじゃないかというふうに考えております。したがいまして、私は今後の法律の運用に大きな期待を持っているということを申し上げておきたいと思います。
  214. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来たので、終わります。
  215. 阿部文男

    阿部委員長 津川武一君。
  216. 津川武一

    ○津川委員 参考人の皆さんには本当に御苦労さまでございました。貴重な御意見を伺わせていただいて、私たち国政に反映させたいと思っております。  第一にお願いしたいのは、先ほど松沢議員からも話されました、今後どうするか、三十年かかって、という議論でございます。そこで私は、失礼になるかもしれませんが、私が考えたり聞いていることを端的に話してみます。そこで何か弁解があったらお答えいただいても結構でございます。  そこで、昭和二十九年から今日まで三十年、さらにこれから五年延長される、草野さんのお答えではなお長く続けていいのじゃないかという意見でございます。この三十年間この法律は一体何をしてきたのでしようという疑問でございます。肥料を使う農民には、岡本さんが言われたように密室で決められていて、そしてどちらかというと決まった価格はカルテルに守られて、メーカー側にサイドして高くなっておる、ここに一つの私たちの疑問、農家から直接聞かれる声がございます。  もう一つは、科学者から、新日本製鉄は硫安をつくり、硫安を販売しておる、この硫安には価格があるようなもの、ないようなもの、この価格をどのようにだれが決めているのでございましょう、したがって硫安の価格のコスト面は、肥料に重点を置いてもいいし、他の製品に重点を置いてもいい、それが肥料が高くなるように重点が置かれるのはこのカルテルがあるからだ、これは科学者の、専門家の意見が私にはそういうふうに聞かされてくることでございます。もう一つは、日本は高度に発達した資本主義国である、ここでは資本もある程度民主化の方向を向いている、それなのに大企業の製品の価格、これをなぜカルテルで守っているのでしようと言う。しかも硫安に至ってはその大メーカーが硫安をつくる比率が極めて少ない。この経営の実態はそちらではない。極めて少ない比率の硫安をなぜ守らなければならないのでしょう、こういうのが端的に私の疑問でございます。失礼なことがあったなら弁解していただいて結構でございますが、そこで、一回これをやめてみて、必要であるかどうかやってみて、必要ならもう一回やってみたらどうかという意見。それで、長野参考人には端的に聞きますけれども、この法律からは硫安を除外していいんじゃないか、こういうことなのでございます。  そこで、皆さんにはそれぞれ言い分もあるでしょうから、言い分があったら聞かせていただいて、質問は、三十年長いと思う、どうなのか、これに対する端的なお気持ちを聞かせていただければと思う次第でございます。伊達参考人には、答えが面倒だったら後で別なことをお伺いしますから。これはあるいは判断が面倒かもわかりません。ひとつよろしくお願いいたします。
  217. 長野和吉

    ○長野参考人 ただいまお話のありました硫安の件でありますが、硫安は御存じのとおり二つありまして、回収硫安、それから副生硫安。回収硫安はカプロラクタム、MMA、酸化チタン等の生産工程から生じます硫酸の方を活用していく、それから副生の方はさっき話がありましたようにコークス炉ガスの中のアンモニアを活用していく、こういうことを我々は普通、連産品というふうに言っておりますが、連産品につきましてコストはないんじゃないかということは企業会計原則上許されてないわけでありまして、やはりある合理的な立場で連産品についてもコストを算定をしていくということになります。硫酸を活用する場合の硫酸の評価が低い、それからアンモニアを活用する場合にそのアンモニアの評価が低い、これは一つの、その企業において実施をしていることだと思いますが、硫酸を回収する場合にはアンモニアが逆に必要になってきまして、それはみずからつくるかあるいは買っていく。それからアンモニアを活用する場合には硫酸が必要になりまして、それをみずからつくるかあるいは購入していく。それにまたそういう処置をする場合の製造設備あるいは人件費その他が要りますので、当然これは原価があるわけでありまして、原価があってもなくてもいいというのは企業の立場から考えますと許されない一つの意見じゃないか、そのように考えるわけであります。  それから、三十年後でございますか。
  218. 津川武一

    ○津川委員 三十年続いておりますので、どういうお気持ちか。これは伊達参考人以外は皆さん全部にお答え願います。
  219. 長野和吉

    ○長野参考人 やはりこの法律がありましたので、我々の肥料生産メーカーの立場におきましては安定した供給というのが合理的な価格でやってこれた、そのように思っておりますし、輸出価格と国内価格との乖離とかあるいは昨今輸入を少し入れたらどうかとかいろいろな話もございますけれども、我々としましてはこの法律があるために安定的な供給、それから合理的な価格といった肥料の供給ができたことは事実であろうかと思います。また、ただいまは構造改善の問題で、我々日本における肥料のメーカーとして合理化に努力しておるわけでありますが、この合理化努力もこういう法律によって実践をされていくという大きな支えになることも事実であります。  安定的な供給というといつも安定的な供給のように、これは田中参考人からの発言もありまして、空気のようになっているという表現もございましたが、実際世界的に肥料を見ますとなかなか需給のきついときが起こってくることも事実であります。そういう時期にも安定をした供給ができてきたということについては、この制度の非常に大きな貢献があったのではないか、そのように思いますし、我々の今進めております構造改善が行われた後におきましても、先ほどから申し上げておりますように、肥料の安定的な価格で安定的な供給ということにつきましては、また何らかの措置があるいは必要になってくるのではないか、そのようにも考えております。
  220. 田中昇

    田中参考人 確かに津川先生のおっしゃるように三十年間何をしていたんだという気持ちは私どもの中にもございます。ございますが、二法を三十九年に廃止をする時点で、それ以来状況は変わっておりますけれども、農業団体としましては、基本はやはり自由取引だ、行政介入を極力やめようという考え方もあったわけですけれども、あのときにはかなり積極的に輸出に出ていけるような情勢もございまして、この際はちょっと新しい法律をつくってもらってということで安定法ができたわけです。その後の情勢におきましても、何となく安定法による供給並びに価格の安定ということを目指してきて、ふだんの場合はどうもなかったのですけれども、やはり石油ショックというような異常事態を迎えたりあるいは現在ペルシャ湾等でいつ何が起こるかわからぬというような状況、八〇年代は激動の時代とか括弧つきの時代とかいろいろ言われているわけですけれども、そういった一たん緩急の場合の安全弁としての機能は安定法がしたと私ども思っております。  しかし、国際価格との対応については、そういう極めて突発的な国際情勢の高まりの中では、確かに国際市況が三倍にもはねたわけでございますから、それに対して国内の価格も普通の場合だったら当然そのまま三倍にはねたろうと思っております。そういう場合にもコストというものを中心にして国内肥料だけは三割におさめて、そしてなだれるような輸出をここで食いとめて、仮需要にすら何とか対応できたというようなことを考えますと、最後の安全弁ということでやはり機能はした。しかし、価格面についての不満足な面は多分に残っておりますので、この点についてはこの第二次構造改善でぜひ実現をしていただきたい。それができない場合には、これは秩序ある輸入ということで合理化促進ということを兼ねまして、我々としては対応すべきであろう、こう思っております。  五年後につきましても、いろいろな先生方から御意見がございましたけれども、その間に農業情勢、肥料情勢あるいは物流合理化等を含め、今後の対応をどうするか、このままでいった方がベタ一なのか、あるいはまたほかの仕組みを考えた方が供給の安定ということで農家に寄与できるのかということを含めて検討をさせていただきたい、こう考えます。
  221. 草野操

    ○草野参考人 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、私は、現在の機能というものが変わらない限りこの法律そのものが五年後に必要であるとか、あるいは三十年間どうであったかということについて申し上げたわけでございますけれども、そのかわるべき機能がない場合必要だというふうな意味で申し上げたわけでございますので、そういう意味では、今までこの法律は、私が申し上げました機能を十分発揮させるように作用してきた、それだけに必要な法律であったというふうに私は考えておりますし、今後もそうであろうというふうに考えております。
  222. 岡本栄太郎

    ○岡本参考人 一口に三十年というのは、私がちょうど農業を始めたころからのことでありまして、非常に長かったと思います。この間、やはり肥料の供給の中身というものを、価格についても本当に生産者に具体的に知らされていなかったという点は非常に問題だというふうに思っています。  そういうこともあるわけでありますけれども、やはり法律の中では、これはカルテルが認められている、いわば高値安定。そして安定供給という美名の中で生産農民は高い肥料を使わざるを得なかった。このことについては、我々今となって、本当に三十年間だまされ続けてきたのではないかというような率直な気持ちもないわけではありません。しかし、今回のこの法律の再延長を機会にいろいろな点で御論議をいただいて、今まで私が問題にしたような点も含めて十分検討をしていただいて、本当の臨時措置法の目的に達するような運用を大きく私どもは期待をしております。  以上であります。
  223. 津川武一

    ○津川委員 参考人の皆さんの御説明、懇切丁寧で私の時間というものがなくなってしまいましたので、そこで伊達参考人に、先に時間がなくならないうちにお尋ねしておきたいと思います。  先ほど吉浦さんも話されましたけれども、化学肥料が日本の農業に果たしてきた役割、また今後の使命というもの、ここのところをひとつ、その面で積極面があったと同時に、何かマイナス面があったとすれば何であったか、この点をお知らせ願いたいのです。
  224. 伊達昇

    ○伊達参考人 食糧の増産が必要であったときには、まさに化学肥料はその主役であったと認識をいたしております。そういう意味で、我が国の今日の食糧の確保という点外夫変に大きな役割を果たしてきたことは疑問のないところでございます。一応曲がりなりにも需要が満たされた時点で、今消費者の要求なりあるいは農業の情勢の対応なりということで問われているのは、多くの農作物でやはり品質の問題がかなり問われているというふうに認識をいたしておりまして、そういう段階になりますと、今までの量だけを追ってきた化学肥料主体の施肥で、では、これから品質への対応ができるかということになりますと、やはりその点ではかなり不十分な面があるであろうというふうに考えておりまして、新しい目でやはり有機質の肥料と化学肥料とを適正に組み合わせた新しい施肥体系を開発し、高品質の生産を実現をしなければならない、そういうふうに考えております。
  225. 津川武一

    ○津川委員 最後に岡本参考人と田中参考人にお伺いしますが、私、前々から、生産者米価の要求のとき、全中がそうでしたし、政府もそうですが、お米の経費を数えるときには非常に詳しく、肥料、農薬から機械代の償還から利息から電気代を数える。肥料、農薬、農機具の場合は、全中が米価のときに一つも問題にしない。何だろうという、こういうことなのです。したがって、今度の生産者米価のときに、全中としても全農としても、当然にこの農業資材の値下げというものを経営を維持する一つの重要な要素として要求すべきだと思っているのですが、これに対して岡本さんと田中さんの御意見を伺わせていただいて、終わります。
  226. 岡本栄太郎

    ○岡本参考人 生産者米価の中での肥料の問題でありますけれども、当然、今使われている肥料代をやはりきちっと米価の中に反映がされるべきだ。これは米価だけでなくて、すべての作物の価格、政府管掌作物にはそうすべきだと思います。したがって、肥料の値段というのは、やはり生産者が十分に納得できるような論議がされ、それをきちっとそれぞれの政府管掌の米を初めその他の作物の生産者価格に反映されるようにしなければならないというふうに実は考えております。
  227. 田中昇

    田中参考人 全中は主として農政、私どもは事業としてやっておりますが、今回の安定法につきましても、全中と共同動作ということで全中理事会が決定しているわけです。これについて全中が無関心であるということはないと思っておりますが、大会あたりで議論になったことは、具体的には私も余り記憶いたしておりません。ただ、農業機械は昨年度三・八ぐらいどうしても上げざるを得ないということで上げました。そのときに全中としては、全農の立場はわかるけれども、全中としてはということで、生産資材の価格抑制の指導を行政にも要求するということで文書要請はいたしておりますけれども、米の値段の中にこれがあってどうということはいたしておりません。しかし、全中が全く無関心かといいますと、例えば刷新強化運動という中にも、特にことしなんかそうですけれども、生産資材価格の抑制じゃなくて引き下げ、これは私どもは非常にきついのです。それは事業連としては非常にきついのです。引き下げ対策の実施という言葉まで含めてきまして、いささか私の方としては、正直申し上げてたじたじとなっている、こういうのが実態でございます。全く無関心ということはありません。
  228. 津川武一

    ○津川委員 ありがとうございました。終わります。
  229. 阿部文男

    阿部委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。(拍手)      ————◇—————
  230. 阿部文男

    阿部委員長 この際、連合審査会開会の申し入れに関する件についてお諮りいたします。  大蔵委員会においてただいま審査中の内閣提出、たばこ事業法案、日本たばこ産業株式会社法案、塩専売法案、たばこ事業法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及びたばこ消費税法案について、同委員会に連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時等は、委員長間で協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。  次回は、明十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十分散会      ————◇—————