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1984-05-15 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十五日(火曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    佐藤  隆君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       高橋 辰夫君    月原 茂皓君       中川 昭一君    野呂田芳成君       羽田  孜君    保利 耕輔君       三池  信君   三ッ林弥太郎君       山崎平八郎君    金子 みつ君       上西 和郎君    串原 義直君       田中 恒利君    竹内  猛君       細谷 昭雄君    安井 吉典君       駒谷  明君    斎藤  実君       武田 一夫君    水谷  弘君       神田  厚君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣        農林水産大臣   山村新治郎君  出席政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産省食品        流通局長     小野 重和君        農林水産技術会        議事務局長    関谷 俊作君        林野庁長官    秋山 智英君  委員外出席者        防衛庁経理局施        設課長      大原 重信君        厚生省社会生        活課長      大木 知明君        農林水産委員会        調査室長     矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十一日  辞任            補欠選任   小里 貞利君        町村 信孝君 同日  辞任            補欠選任   町村 信孝君        小里 貞利君 同月十五日  辞任            補欠選任   高橋 辰夫君        中川 昭一君   新村 源雄君        金子 みつ君   松沢 俊昭君        竹内  猛君 同日  辞任            補欠選任   中川 昭一君        高橋 辰夫君   金子 みつ君        新村 源雄君   竹内  猛君        松沢 俊昭君     ――――――――――――― 五月十四日  農産物の自給の促進及び備蓄の確保のための農  業生産振興に関する法律案安井吉典君外八  名提出衆法第二八号)  総合食糧管理法案安井吉典君外八名提出、衆  法第二九号)  農民組合法案安井吉典君外八名提出衆法第  三〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十四日  農産物輸入自由化枠拡大反対に関する陳情  書外十五件  (第二六三号)  畜産酪農経営改善強化に関する陳情書外一  件(第二六  四号)  加工原料乳限度数量拡大等に関する陳情書外  五件  (第二六五号)  林業振興に関する陳情書外三件  (第二六六号)  蚕糸業振興に関する陳情書外一件  (第二六七号)  日本中央競馬会場外勝馬投票券発売所等の設  置反対に関する陳情書外一件  (第二六八号)  福島営林署事業所種苗事業所、貯木場の存続  等に関する陳情書  (第二六九号)  外国漁船操業規制に関する陳情書  (第二  七〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第六四号)  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第六五号)  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員  共済組合からの年金の額の改定に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提出第四五号)      ――――◇―――――
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷昭雄君。
  3. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 最初に、農振法についてお尋ねしたいと思います。  今まで多くの議員の皆さん方がそれぞれ質問をされました農振法の一部改正に当たっては、今回はおおよそ三つの理由をお挙げになりまして提出されておりますが、その中で、特に手法につきましては、これまで例えば協定制度の問題、それから交換分合制度の問題、こういった問題につきましてはほとんどの皆さん方が触れられておりますので、私はその点は省略いたしたいと思います。したがいまして、私は村づくりの根幹ともいうべき地域農業集団と、村づくり具体策ともいうべき活力ある農村地域社会形成、この問題についてどんな思想で、どのような手順で実現していくのかという点を率直にお伺いしたいと思います。  まず最初に、昨年度から位置づけられております、そして予算化されております地域農業集団育成、これは何を目指そうとされておるのか、御説明を願いたいと思います。
  4. 森実孝郎

    森実政府委員 地域農業集団育成目的は、農地流動化規模拡大を促進いたしまして、生産性の高い農業構造の確立を図っていくということが目的でございます。このために、一ないし数集落の地縁的な基礎のもとに立って、中核農家専業農家の幅広い参加により、地域ぐるみの徹底した話し合いによって、集団的な土地利用調整の活動を推し進めることを目的としたものでございます。
  5. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 予算に今年度も一町村で二百万円、一町村に大体十集落というふうに考えておられるようですので、一集落二十万という金額の助成をされておるわけでございます。  昨年一年間というまことに実績の経験は少ないわけでございますが、昨年一年間をやった結果、その育成実績、これがどう上がっておられ、どういうふうに問題点があるというふうにお考えなのか、その点もお聞かせ願いたいと思います。
  6. 森実孝郎

    森実政府委員 地域農業集団につきましては、一地区三カ年の助成を通じてその基礎育成していくということでございまして、五十八年度は一万六千四百集団育成に着手したわけでございます。  内容といたしましては、規模拡大の問題、農作業効率化の問題、転作の団地化の問題あるいは不作付地、荒らしづくり解消等問題等、いろいろな地域作目実態に応じた取り組み指導しているところでございます。  そこで、まだ緒についた段階でございまして、その実態は十分固まっておりませんが、比較的スムーズに受け入れられている点とそれから問題になっている点について要点を申し上げますと、好感されております点は、権利設定作業受委託を通ずる規模拡大だけではなくて、農作業効率化、地力の維持あるいは農地利用度の向上という、それぞれ地域実態に応じた取り組みを認めているという点、それからリーダーにつきましては、特定の団体に固定しないで、市町村長関係機関団体職員からその地域において能力を持った人を指名するというふうな現実的対応をした点、それからもう一つは、県の従来各般にわたる単独事業との関係一体的に推進することとした、この点については比較的支持されている反応が出ております。問題点はまだ十分にフィードバックしたわけではございませんが、一つは、リーダー適任者がなかなか確保できない地域があるという問題がございます。もう一つは、特に都市近郊平場等におきまして農用地受け手の不足する地域がある。これについては、指導方針でかなり広域的な受け手参加を認めておりますけれども、それをどういう人にしたらいいかということについてまだなかなか決着がついていないところがある。それからもう一つは、これもやはり大都市近郊に比較的多いわけでございますが、話し合いにおいて兼業農家出席率がどうもよくないというふうな点があるわけでございます。  そういった点で、私どもといたしましては、まずリーダーの研修の問題をこれから重視していきたいと思います。もう一つの広域的な受け手確保という問題については、県とも十分話し合って有効なアドバイスを与えることを詰めてまいりたいと思っております。それから、特に通勤兼業農家がどうも熱心ではなくて兼業深化地帯ではなかなか参加しない問題については、生活環境の問題も一緒に話し合うということを今回の法改正にも関連させて進めてまいりたいと思っているわけでございます。
  7. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 この地域農業集団というものは、地域村づくりコミュニティーに該当するものなのか、その範囲から抜けないものなのか。さらに、この地域集団生産組織というのを別個に持っていくのかどうか、その生産集団との関連というものをどういうふうにお考えなのか、その位置づけについても触れていただきたいと思います。
  8. 森実孝郎

    森実政府委員 まず地域との関係でございますが、先ほども委員の御質問にお答え申し上げましたように、原則は集落単位でございますが、水がかり等が同一な数集落単位にするということを頭に置き、セパレートされたところでは一集落でいいのではないか。そういう意味におきまして、平均しますと大体一・七集落というようなまとまりになっているわけでございます。  そこで、問題は生産組織との関係でございます。この地域農業集団地権者受け手中心にした話し合いによる土地利用調整をする場所でございまして、あくまでもそれに徹するということでございます。そこで、いわゆる地域営農集団とか営農組織との問題は、むしろ受け手話し合いの結果個人の規模拡大なり何なりで話し合いが決まってくる場合と、いわゆる高能率生産組織受け手として現出してくる場合がある。その高能率生産組織等については、その地域社会にある場合と、例えば麦作、裏作の麦作等では特に普遍的だと思いますが、かなり広域に他の地域から参加を求めてくる場合とあるだろうと思います。
  9. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 この地域農業集団育成一つをとりましても、兼業農家が大変ふえておるという実情からいろいろな問題をはらんでおるようでございます。  そこで、私はいわゆる農基法農政という問題を考えてみたいと思うわけでございます。  農基法農政の目指した日本農業というものは、大きく修正を余儀なくされておるのではないか。その第一は、農地集積というものが思うように進まず、自立経営農家が予想どおり育たなかった、むしろ総兼業という方向に進んでしまったということだと思うわけでございます。これは何も日本だけの現象ではないようでございます。イギリスを除いたEC諸国、特に西ドイツ、フランス、こういった国々も日本と全く同じような構造的な悩みを持っておるようでございまして、特に西ドイツ構造政策日本農政に多くの示唆を与えてきたというふうに思うわけでございます。資料を見ますと、こんなふうに言っているのですっ西ドイツ農業構造政策の場合、いろいろレポートがあるのですが、農業問題の解決農業政策だけで図るのではなくて、いろいろな政策、それこそ雇用機会創出政策とか教育政策とか、もろもろの政策手段を導入して解決を図るという考え方がドイツの農政では非常に強く出てきておる。西ドイツ農林省も、農林省ではなくて農村省に変わってきたという人もあるくらいで、そうした方向への変化が出てきておるというふうに言われておるわけでございます。ずっと六〇年代から八〇年代までの西ドイツ政策を見できますと、まるで日本農林水産省じゃないかと思うくらいに酷似しておるということは、私たちもいろいろな点で指摘しておるわけでございますが、このように我々の現実を見た場合に、この現実農村地域農業考えるならば、いわゆる専業農家兼業農家との経営連結性とでも申しましょうか、西ドイツの場合は経営連結性という点を特に強調しているようでございます。  この経営連結性とでも言える大規模経営者零細兼業経営者との生産機構の連携が極めて重要になってきておるというふうに言わなければならないと思うわけでございます。したがって、政策方向というものをこれまでの中核農家の創設ということから一兼、二兼農家との経営連結性という方向日本農政を転換すべきじゃないか、そうした観点から今回の改正というものが考えられてきたのではないかというふうに思うわけでございます。政策転換というか、一部政策修正、今回の法律改正というのはそういった重要な面を含んでおるのではないかというふうに私は思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  10. 森実孝郎

    森実政府委員 先進国相互の間において、お互いに政策についての一種の模倣効果が生じていることは私も事実だろうと思います。そこで、自立経営という観念なりあるいは所有権移転による構造政策不振化という点については、ある意味においては経済情勢変化に応じて現実的な修正をしなければならなくなった。はっきり申し上げますと挙家離村による離農ではなくて、やはり在村通勤兼業という形が四十年代からはっきり定着してきた、それがほとんど兼業の八割から九割を占めている現実がある。それからもう一つは地価の上昇ということが反映いたしまして、所有権に着目した移転は出し手の立場からも受け手立場からもさまざまな問題がある。そういう意味におきましては、やはり所有権を留保しながら段階的に利用権夢集積中心になる農家を育てていこうということだろうと思います。  その場合に経営はどういうものであるかということについては、主として男子の基幹労働力が専ら農業に従事している経営をとらえていくわけでございまして、そこで実現しようとしております所得というものも他産業に均衡するものを念頭に置いているわけで、概念の定義としては自立経営という観念とは若干違ってまいりますけれども、連続性のあるものというふうに御理解いただいていいのではないだろうかと思います。そういう意味で、実は昭和五十年代に入りましてある程度政策現実的な修正と申しますが、展開を図ってきているわけでございます。例えば、当初の農振法の改正農用地利用増進事業制度を農振地域に設けた。それから次の段階において賃貸奨励措置制度化すると同時に、これは西ドイツ等もやっておりますが、また農用地利用増進法をつくって農用地利用増進事業というものを全国的な広がりを持った制度として拡充していった、農地法のバイパスをつくっていった。さらに、それを受けまして、昨年から地域農業集団育成という形で、広がりを持った運動として農用地流動化に取り組むという施策を講じ、また、今回、御案内のような内容を持った土地改良法と農振法の改正を提案させていただいているわけでございます。  そういう意味においては、五十年代以降、現実の上に立った構造政策展開段階的に積み重ねてきているという点は御指摘のとおりでございます。
  11. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 我が国構造政策と、特にECあたり構造政策を比べた場合、非常に特徴的な点は、我が国構造政策の中で欠けておる面が、一つ共同化が進まないという点、これはECの全部が進んでいるわけではもちろんございません。これも悩みはあるようです。この共同化が進まないために、機械等過剰投資が多いということと、もう一つは、何といいましても生産された農畜産物流通対策価格政策が非常に弱いという点でございます。つまり、社会政策を伴わない構造政策じゃないか、このことが指摘されると思うわけであります。  それは、例えば先ほど局長地域農業集団育成という中で、各県が単独にやった県単事業とそれがどう結びついているかという点では、大変よくいっている地域があるというお話でございましたが、秋田県の場合、昭和四十七年から今年まで、十二年間続けておる一つの県単事業がございます。これは集落農場化対策事業というものでございます。  秋田県では、二千六百三十五の集落のうちに、この十二年間かかりまして千六百五十二の集落がこの事業に組み込まれておるわけであります。六二・七%の事業率、大変に進んでおるわけでございます。これに投下された資本というのは七十一億円でございます。特に、県としましては、これは大きなモデルとして、恐らく構造改善局も今回の地域農政という点ではモデルにしておるのではないかというように思いますのは、雄物川町の里見農協中心とした里見地区集落農場化対策協議会地域農業だと思います。ここでは、米プラス養豚プラススイカ、そしてさらに、つくられた肉が農村工場田園ハムという、いわば手づくりハムを販売しておる。このような地域に結合した、その地域の特色を生かした、農協中心とした村づくり運動、これはやはり大きな成果じゃないかと私も思います。  そのほかにも、例えば雄勝町のイチゴ生産集団、これは東京のデパートと直結をしておる、そして、地域の、言うなれば出稼ぎをかなり解消したという実績もございます。  しかし、秋田県におけるこの集落農場化対策事業というのも、思想なり行政のいろいろな指導というのは、非常に細やかではありましたけれども、多くの失敗例もございます。例えば米プラス山林といいますか、キノコ、それから畜産、こういったところにつきましては、かなり失敗例が多いわけでございます。  なぜか、その原因を探ってみますと、生産するところまではだれでもやるのです。地域普及所皆さん方を初め、極めて熱心に指導されるわけであります。それで資本を投下しておりますから、後に引けないという形で生産農家皆さん方も一生懸命なんです。ですから、一定のところまでの生産物は出るわけでありますが、その生産物を売るところも、生産者自体が販路を探さなければいけない。まして値段ということになりますと、キノコなんかは徹底的にたたかれるわけです。畜産も同様でございます。  そういう点で、私は常々この秋田県における努力というものがありましても、農林水産省ばかりではないと思うのです、その側面の全国的な国政レベルにおける流通対策ないしは価格政策、これが伴わないところに、今言いました、どんなに生産農民なり地域のいわば自治体が頑張りましても、その効果が上がらないという面がございます。私は、この点を特に残念だと思うわけでございますが、農林水産省としてはこれをどうお考えなのか。この決め手はここだと私は思うのです。流通対策価格政策、これが伴わないところにどんなに立派な構造政策を持ってきましても、結局は宝の持ちぐされということになりかねない、このことを踏んまえまして、今後どう政策展開されるのか、この御見解を賜りたいと思います。
  12. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま委員指摘のように、私ども、実は約十一の県でいろいろな形で村づくりなり、あるいは村づくりとリンケージいたしました集団的土地利用調整が進められている、そういった事業を参考にしながら、かなり包摂的なものとして地域農業集団育成対策を進めると同時に、今回の村づくりに関連する法案をお願いしているわけでございます。  そこで、価格政策という問題あるいは流通問題をどう考えるかという問題でございますが、私、はっきり申し上げますと、今非常に難しい問題は、我が国消費水準というのは栄養量なり何なりから着目していくと、つまり量の世界としてはある程度飽和状態に来ている、したがって、所得の伸びに伴う消費拡大というものは、それがサービス部門を購入する形にかなり多くなってふているし、また物に向かう場合も、品質に向かう場合が非常に多い、そういう点に一つの問題が太るだろうと思います。それからもう一つは、多様化志向の時代にはっきり消費生活が入りまして、新しい商品、良質の商品をどんどん求めるようけなっている、あるいは周年を通じて季節を超越した商品供給を求める動きになっている。しかし、こういった消費者動きは非常に複雑でございます。  そういう意味において、新しい農産物マーケティング考える場合、一つのいわゆる試験期間というものの創業的な苦労がつきまとうことは宙実でございますし、またもう一つは、いろいろなトライアル、例えば一村一品運動を行うにいたしましても、一村一品運動を百の町村でやった場合、十の町村なり十五の町村成功事例になるが、実は八十なり七十の町村は一、二年でやめざるを得ないというふうな点がある。ここら辺に、新しい商品マーケティングなり開発に伴う企業者的なリスクというものが相当大きくつきまとってくることは事実だろうと思います。これは、やはり今日の市場経済の中でどうやって対応していくかという農家皆さんなりあるいは売り手の努力の問題にかかってくるわけでございますが、岸ういった面での情報提供の問題、あるいは技術の面ではなくて農業経営自体についての報酬の問題なりノーハウの習得の問題ということについては、私ども非常に重視していかなければならないと思います。  政府が実施しておりますいわば価格政策の対角品目については、それはいろいろ御不満その他はあるとは思いますけれども、一応軌道に乗ってきている。むしろ問題は、これからは、先生も今御指摘のように、価格流通一緒にして情報提供なりトライアルというものに対するアドバイスをできる体制を強化することが非常に重要ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  13. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 私も、今局長がおっしゃられましたように、価格政策流通政策というのは一体のものとしてとらえなければ効果が発揮できないんじゃないか。例えば積極的な価格政策という点でいいますと、今お話のございましたとおり、支持価格とか保証価格とか、いろんな制度政府資金を投入してやっているわけでございます。しかし、これは財政の面から見ましても一定の限界があります。それから市場価格形成という点からいたしましても、抜本的には生産者原価計算その他という点では問題にならない点が多いわけでございます。したがって、私は現行資本主義制度のもと、市場価格制度のもとでありましても、生産者にはより高く消費者にはより安くよいものというふうに提供できる仕組みというのを真剣に模索しなければならないんじゃないか、こう思うわけでございます。そういう点からしますと、価格政策流通政策というのは一体のものとしてとらえていく、こんな考え方というのが当然行政の面でも図られなければならないというように思います。  私はいろんな具体的な例を最近知りまして、これをひとつ行政の面で一般化できないものか、こういうように思っているわけでございます。  それは、私の方で雄勝町というところがございます。小野小町の出たところというように言われておりますけれども、大変美人出身地として地方では知られておりますが、そこでリンゴをつくっておる農家がございます。その方が千葉の柏、それから我孫子、この地域皆さん方にたまたまリンゴを供給しておったそうです。非常に評判がよくて、我孫子生協柏生協、その地域三つ生協だそうですけれども、その生協皆さんリンゴ狩りにあるとき行った。交流に行った。そのときにごちそうになった御飯が非常においしかった。私の方の地域ではキヨニシキと言っておるわけでございますが、このキヨニシキが非常においしいということで、その次の段階で、具体的に小野農協自主流通米を正常なルートに乗せましてこの三つ生協がそれを供給されておる。つまり、リンゴから米の直販といいますか、ちゃんと正式なルートに乗ったところの供給です。これは、大臣もお米屋さんだそうですけれども、とにかくまぜ米なんかやらない。純粋な秋田米を消費者皆さん方が大変喜んでおる。そうして今さらに発展しまして、雄勝の酪農家の専門農協でございます雄勝農協同組合、この雄勝酪農で生産されております低温殺菌の牛乳、これをひとつ直販制方式でやろうじゃないか、こんな話にまで発展しておるわけでございます。  これは一つの例でございますが、民間サイドにおけるこういう産直方式といいますか、これがいろいろな形で現在非常に発展してきておるということは御案内のとおりでございます。しかし、残念ながらそこには行政の手が余り加わっておらない。それは、私はこういうふうな原因があるんじゃないかというふうに思うのです。例えばそこの生産地域の集荷をし、流通に責任を持つ団体というのはやはり農協でなければいけないと思うのです。その農協と、消費地における受け皿というのは消費者団体でなければならないと思うのです。ところが、その消費者団体というのは御案内のとおり厚生省の管轄、農協農林水産省の管轄、出すところと受け入れるところが行政管轄が全然違うお役所なわけでございます。私は、そうじゃなくて一体のものとして、厚生省も農林水産省も今言ったような生産者消費者という観点から、今までの既存の流通ルートとはまた別にそういうものを切り開いていくという努力をすべきじゃないか、こんなふうに思っておるわけでございます。  そういう意味で、消費生活協同組合のいわば指導管轄の立場にあります厚生省の考え方を、今まで具体的にそういう消費生活、そういう受け皿を、産直運動なんかをどう指導し、どんなところに問題があり、これからどう指導されようとするのか、この点についてお考えをお聞きしたいと思うわけであります。
  14. 大木知明

    ○大木説明員 厚生省の生活課長でございますけれども、今先生のお話がございましたように、消費生活協同組合のそれぞれのところでは、先生が例に挙げられましたように、それぞれの産地との間にいわゆる産直方式での農畜産物の交流ということを進めておるわけでございます。生協側といたしましても、そういう運動というのは流通機構の合理化とか、そういう面でも意味がございますし、さらに生協側の組合員のニーズというものが非常に今多様化しておりますので、それにこたえる一つの施策としても非常に意味があるんじゃないか、そういうふうに我々としてはかねがね思っておるわけでございます。  それで、厚生省としてはこういうものをどういうふうにするのだというお尋ねでございましたけれども、いわゆる産地直送方式というのは商品の鮮度というもの、あるいは生産者消費者との交流を図られるということで非常にいい面をたくさん持っておる、こういうふうに考えております。消費者生協運動というのは人と人との交流ということになっておりますので、そういう交流という面に非常にいい意味を持っておるということで、非常に評価しております。  ただ、生協の方に聞きますと、需給調節について必ずしもぴったりいかない面もある。あるいは価格設定が非常に難しい場合もある。そういう声も聞きますが、こういう点も十分認識して、こういう産地直送方式というものを今後推進することについてはさらに積極的に取り組みたい、こういうふうに思っております。
  15. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 大事な点ということは認識されておると思うのです。問題なのは、農林水産省と厚生省がいわばドッキングしながらその面倒を見る気持ちがあるのかどうかという問題だと思うのです。したがって、農林水産省の側としましては、今厚生省は、評価をするのだ、それで頑張るのだとは言うのですが、具体的に協議をしながら何か新しい方策を生み出す、そんな考えはございませんか。
  16. 小野重和

    小野(重)政府委員 いわゆる産直取引でございますけれども、これはいわば中間段階を省略するとかあるいは産地と消費地の交流を深めるという意味で、私どもも評価いたしておるわけでございます。  ただ、産直の場合は生鮮食料品が大宗を占めておると思いますが、生鮮食料品の流通考えます場合に、どうしても卸売市場経由というものが現在でも大宗でございますが、将来もやはり大宗であることには変わりないのじゃなかろうかというふうに思っております。これは釈迦に説法かもしれませんけれども、やはり生鮮食料品の場合には豊凶の差が相当ございまして、例えば豊作の場合でも、値段の問題はありますが、卸売市場に出せばすぐ売れる、必ず売れる、こういうことがございますし、それから、これは競りでやっておりますけれども、値決めが非常にやりやすい。産直の場合はその辺がなかなか難しいという問題がございます。でございますけれども、私どもは、この卸売市場経由が大宗であるといいましても、やはりそれを補完するものとして産直というものを評価いたしておるわけでございます。現に、特に高鮮度の生鮮食料品とか、あるいは野菜などでは有機野菜というようなものにつきましては、産直取引が相当に行われております。特に、農協生協がお互いに協定を結んで取引をするというケースが相当にございます。  それからまた、これは御質問の例とはちょっと違うかもしれませんが、私どもとしましては、行政的に見まして域内流通、県あるいは郡、市町村、その中の流通というものは必ずしも卸売市場を経由するになじまない面も相当ございますので、そういうものはむしろ産直といいますか、生産者消費者あるいは生産者団体消費者団体とを直接結びつけるような、そういうことをもっと進めるべきじゃないかということで、これは一定の補助金を出しまして進めております。  また、若干御質問のケースに合わないかもしれませんが、最近は外食産業が相当ふえておりまして、外食産業というのはいつも同じメニュー、同じ価格ということでございますから、そういう意味でいわゆる産直になじむのではないかということで、これは今後の検討課題、私どもは推進すべきじゃないかというふうに思っております。  御質問について端的なお答えはできないかもしれませんが、生協農協との結びつきということでございますが、これは所管は違いますけれども、生協が取り扱う商品は大部分が食料品でございますし、生鮮食料品がその大宗を占めておりますから、私どもも、農協生協との結びつき、これについては、先ほども若干例を申し上げましたけれども、進めてまいりたいと思います。それにも増して、やはりいわゆる協同組合運動としては農協生協一体のものでございますから、一番いいのは、そういう運動として進めていくのが一番いいのじゃないかというふうに思いますけれども、行政としましても、厚生省ともよく連絡をしながら進めていきたい、こういうふうに思います。
  17. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 ただ、今のお話にもありましたが、農協生協というのは本来は協同組合運動の一環のものなんです。そういう意味では、それぞれ両方にまたがる問題ではありますが、行政の方で一体のものとしてとらえるような、そういう一つの協議会なり、そういったものをやっていく必要があるのではないかというふうに思うのです。今のところは運動ということで、これは民間の運動だから行政は介入すべきでないというふうな、そんな気持ちがあるのではないかというふうに私は見ているわけですが、そうじゃなくて、積極的にそういう一つの方策を探っていただきたいということを私自身は希望したいわけでございます。これは希望として申し上げたいと思います。  次に、構造政策の中で補助金の果たす役割というのは非常に大きかったと思います。しかし、補助金というものは、具体的な問題になりますとかなり対象を洗い直すべきではないかな、そういう時期に来ているのではないかなというふうに思うのです。  具体的に言いますと、箱物とか実際の生産投資財、こういったものは補助対象になるのですが、消費的な一つまり、ハードの方には出すのですが、ソフトの方には出さないというのが今までの補助金の例だったと思います。これは大変極端な例かもしれませんが、例えば畜産関係の補助金という場合、いわばどうコストを下げながら生産するかという点が畜産でも大変大事な点でありますが、補助金ということになりますと、サイロとか畜舎とか草地造成とかいうことが対象になるわけであります。そこで、自分のうちの古材で結構やれるはずの畜舎を、わざわざ補助金をもらうという観点から極めて立派な畜舎を建てなければならない、こんなむだが今までは多かったわけであります。大分修正されたというふうに聞いてはおりますけれども。  したがって、私は、その補助金の対象というものを、ハードのものからソフトのものへ、このように洗い直す時期に来ているのではないか、こんなふうに思うわけであります。この点で、いわば補助金の見直し、これは私の言う意味は、決して行管庁で言う補助金の見直しを言っているのじゃありません。農業にはもっともっと国家の助成が必要だと思います。そういう観点で、なおかつ生産農家に直接役立つような補助の仕方、これが必要だというふうに思うわけであります。  特に私が強調したいと思いますのは、農村定住化対策事業がございます。この農村定住化対策事業はそれぞれの地域に非常に喜ばれておるわけでありますが、中身を見ますと、私は決して感心しておりません。それは、メニューが非常に多いという点は結構でございますが、ともすればそれぞれの市町村長が、自分の選挙のためのいわば飾り物、こういう点で、農村の体育館を建てたり運動場をつくったり、いわば生活環境整備の方に非常に力点を置いているわけであります。本来の、出稼ぎを解消したり、ないしは不安定就業を解消するという生産面に向けないで、そういうふうな選挙目当ての箱物に多く使われておるという実態もございます。その点で、これは特に厳しく問い直すべきではないかというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  18. 森実孝郎

    森実政府委員 畜産関係の補助事業あるいはまた構造改善事業等におきましては、ただいま畜舎等の問題については、小径木や古材の利用の問題とか、新設だけではなくて増改築あるいは併設等を補助対象にするという措置は講じておりますし、これらの措置はますます強化していかなければならないと思っております。  それからもう一つは、ハードからソフトという問題。ソフトな事業について、特に個人経営になじむ部分について直接補助を出すということについてはなかなか難しい点もありますが、長期のいわゆる運転資金等につきましては、既に数年前に近代化資金においてその道を開いたわけでございますし、そのほかにも家畜導入制度等もございますわけで、こういった視点からの検討はこれからも続けていかなければならないと思っております。  さて、生活環境施設の問題でございますが、これはなかなか難しい問題だと私は思います。町村実態からいうと、町村の財政力が低いために、どうしても大都市等に比べると生活環境施設の整備が基本論として立ちおくれている。また、町村であるがゆえに整備しなければならないものもたくさんあるわけでございます。したがって、それは農道からあるいは部落道あるいは集落排水、それから運動場あるいは集会施設と、多様にわたっているわけでございます。  委員指摘の点は、特にそのうちの、俗に箱物と言われております上部構造物の問題だと思います。これは、実は臨調の御指摘もありますし、私どもも行き過ぎは厳重に抑えていかなければならぬということで、いわゆる構造改善や山村振興地域振興のための総合助成事業の中では現在そういった事業費割合をはっきり抑制しております。それから、単価や規模等も目的に応じてはっきり抑制措置をとっておりますし、また内部設備等は補助対象から除外する等の改善措置を講じております。しかし、これを一律に抑えるという議論はやはり地域社会実態から見てちょっと問題もあるのではないか、そこら辺は改善して適切な運用を図ってまいりたいと私は思います。  問題は、これらの地域振興を図るための総合助成事業がいずれも構造政策の視点あるいはいわゆる定住対策の視点あるいは僻地の振興の視点から組まれたものでございまして、農林漁業の振興なりあるいはいわゆる定住社会をつくるための条件整備に役立つかどうかという視点を十分頭に置きまして適正な運用を考えていくということが現実的な方法ではないだろうか、かように思っております。
  19. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 補助金の問題につきましては今言ったような観点から、私は決して農村整備をやめろと言うのじゃございません。それが本当に農村生産者皆さん方中心に生産に直結するという点で、これは役所としましてはひとつ厳正に当たっていくべきじゃないか、こういうように特に強調したいと思うわけです。  大臣、どうです。日本構造政策の今日の課題というのはたくさんございますが、先ほど西ドイツ農林省農村省に変貌しつつあるというふろに言われておると申し上げましたが、我が国農林水産省も今や農村省に衣がえをする時期じゃないか、現在日本の食糧の問題というのが極めて重要なものになってきているのじゃないかと思います。農業過保護論とか国際分業論というのは今やもう時代おくれ、いかに国民の皆さん方が農民の皆さん方の苦労をわかりながら、しかも安全で害定的な食糧を農民の皆さんにつくってもらうかというのが、今や国民的な合意として極めて緊急の課題だと思うわけでございます。その意味では、今お話ししました価格政策流通政策消費国民の合意なくしては到底不可能な問題でございます。積極的に構造政策の欠けておる点の社会政策流通価格政策、この点を何とかひとつ大臣の力で推進していただきたい、こういうふうに思いますが、その御決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  20. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、西ドイツにおいて農林省農村省と言われるようなぐあいに、少なくとも日本農林水産省も、今豊かな村づくりというのは農村省というような一つの近づきではないかと思います。また、流通機構の改革ということも先生もおっしゃいましたが、事実これは流通機構の改革によりまして農民がはっきり申しまして生産物を高い値で売れる、そしてまた消費者が安く買えるということにもつながるわけでございます。  それにしましても、今日の日本農業をめぐる情勢を考えました場合に、農業生産の再編成を進めながら土地利用型農業生産性向上を図ることが今後の構造政策の最重点であると私は考えております。特に、最近におきましては農家経営規模別の生産性の格差が拡大しておりますし、また跡取りのない高齢者農家というのが数多く出てきております。これらを考えましたときに、構造政策を進める条件が熟してきておるというぐあいにもまた考えておりますので、今後適切な施策を進めることによりまして、生産性の高い経営によって農業生産の相当割合が担われる農業というものが行われるのじゃないかと私は思います。  これらの詳細の施策につきましては、政府委員の方から答弁させます。
  21. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 ただいまの大臣の御決意のほどをお伺いしましたが、ぜひひとつ強力な施策を推進していただきたい、こういうふうに思います。  次に、時間がございませんけれども、土地改良法の一部改正について若干の質問をいたしたいと思います。  一つは、混住化が進んできておるということは当然の帰結であるというふうに私は思うわけでございまして、したがって用排水というものが以前と違いまして決して農民だけが受益者ではない、このような状況になっておると思うわけでございます。ところが、用排水の工事というのは、高い補助率はございますが、現在かなり農民の負担になっておるわけでございます。それにしましても、農業が非常に現在衰退しておるという中で経済力が弱くなっておる農民にとって、その負担というのは非常に大きなものがございます。私はこの際、この混住化が進んできた現在、少なくとも排水路については全額国庫負担にすべきであるというふうに年来主張しておるものでございますが、そのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  22. 森実孝郎

    森実政府委員 大規模農業用排水路の建設は、国営かんがい排水事業と県営湛水防除事業等で実施しております。この場合、実は湛水防除事業は原則としては農家負担がないという制度として発足して、それがようやく定着してきているわけでございます。また、国営かんがい排水や県営の排水事業でも、地域住民の排水路として機能していることが顕著なものにつきましては県レベルで県なり市町村が補助残を負担する等、過大にならないように配慮して指導しております。また、これ以外に都市下水路からの排水等により工事規模が変わってくるという場合については、工事負担をアロケートして実施しているという実態があるわけでございます。  何と申しましても、土地改良事業自体はやはり原則として受益農家が自主的に行う仕組みでございますから、受益が明らかである場合においては受益農家と市町村に負担を求めていかなければなりませんが、ただいま委員指摘のように、いわゆる混在化、都市化の進展に伴い、農業用排水路が多目的に利用されている。その場合、それによって水質の汚濁とか溢水とかいろいろ問題を生じている。したがって、補修費もかかる、管理費もかかる、あるいは安全施設に投資が要る。そういう問題をどう片づけるかが私ども特に管理に焦点を置いての重点課題であろうと思っております。そういう意味におきまして、実は十年前の法改正土地改良区と市町村の協議という制度をつくったわけでございますが、なかなか現実には作動しない。そういう意味において、今回市町村協議制を補完、拡充するという視点から知事裁定の制度を導入いたしまして調整の円滑化を図りたい。この調整の円滑化という問題は、言うまでもなく、管理移管の問題もございますし、あるいは補修費とか管理費の市町村負担等の問題もあるわけでございまして、統一的な指導方針の樹立をまって、その効率的な運用を図ることにより問題の具体的解決に管理面では努力してまいりたいと思っているわけでございます。
  23. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 今回の法改正でも混在化というのを踏んまえながらかなりの手法を手直ししているわけでございまして、これは現状に合わしたものとして私たちも恐らく現場の皆さん方の要求として当然ではないかというように思っているわけでございます。ただ、何といいましても混住化の進んでおるところは土地改良区だけではもう手に負えなくなってきている、こういうことも事実でございます。したがって、何らかの点で農民でない地域皆さん方、この皆さん方土地改良区といいますか、そういう末端の排水その他利用、こういったものに参加する道を考えなければいけなくなったのではないか、こんなふうにも思うわけでございます。この点についてどういうお考えなのか、これをひとつお聞かせ願いたい。  それから、土地改良区の果たすべき役割というのは今回の法改正で非常に強くなっているわけであります。それを考える場合、土地改良区が現在のような体制でいいのか。例えば職員の資質の問題、待遇の問題、役員の見識の問題。それから、現在のように九千も有名無実とも言えるような土地改良区もあるわけでございます。全国で九千、大変な数でございます。これは私はもうある程度の十年、二十年という長期の期間を置きまして、水系ごとに土地改良区の再編成なり統合というものを進めるべきじゃないか、そういう時期に来ているのではないか。このままでは水は枯渇してしまいます。そういう意味で、この土地改良区の果たすべき役割というのが大きくなればなるほど、規模、人材、技術、財政、どういう見地から水系ごとの統廃合、これをやるべきじゃないかということと、もう一つは、職員の身分と給与の問題でございます。これはあしたから審議されると言われておりますが、農林年金の問題を見ましても、土地改良区の職員の皆さん方は、単協の皆さん方に比べてみましてもまことにあやふやな身分と給与の状況でございます。  私は、役割が大きくなる、しかも水管理の責任はやはり大きく土地改良区に任せられておる、国家事業だと思うわけであります。そういう観点から、今後この職員の給与、身分、こういったものについて、あれは民間だから賦課金でやれということではなくて、前向きで行政当局は考えていくべきじゃないか、私はこんなふうに思うのです。農業共済組合の組織みたいなものにこれは育成していくべきじゃないか、私自身としてはこんなふうに思っているのです。そういうことも含めまして、ひとつお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  24. 森実孝郎

    森実政府委員 まず第一の、員外の受益者をどうインクルードしていくかという問題でございます。  この問題については、実は員外受益者の賦課制度という制度がございますが、受益者が特定の個人、企業で明確な場合等については可能でございますが、一般市民のように不特定多数の場合は非常に作動しにくい。そういった点で、実はやはりそういった多目的化して農業のウエートが下がったものについては、市町村管理に移管するという問題が基本にあるだろうと思います。現に大都市周辺ではかなりそれが進んできておるわけでございます。  それからもう一つは、やはり多目的排水等の機能に着目して、一般の地域住民を代表する形で市町村一定の費用の肩がわりをしていただくという問題でございます。今回の土地改良区と市町村協議の制度に知事裁定制度を導入し、またこれに対応いたしまして統一的な指導方針考えているということも、まさにこういった流れの中でとらえている問題として御理解をいただきたいと思います。どうやってその実績をうまくつくっていくかという問題でございます。  次に、土地改良区の合併による基盤強化の問題でございます。  土地改良事業も実は戦前の水利組合法の時代と違いまして、非常に多様なものを持っております。したがって、例えば農用地造成もございますし、圃場整備もございますし、農道もございます。そういった点から申しますと、行政区域単位のものとやはり水系別単位のものに分かれてこざるを得ない実態があるわけでございます。私ども、今実は合併の促進を進めておりますが、実態をまず先に申し上げますと、大体過半、五割前後が水系別の合併でございまして、あとは行政区域単位の合併に相なっております。私ども、やはり本来の水利事業につきましては、ただいま委員指摘のように、水系別合併ということは一番正しい方法だと思います。  ただ、これはなかなか難しい問題がありまして、はっきり申し上げますと、上流と下流の慣行水利権の対立というものが水利秩序の基本にあるわけでございまして、俗な言葉で言うとけんかの当事者に合併しろという話になりまして、なかなかうまくいかないので腐心している点があるわけでございます。しかし、気持ちとしてはまさにそういうことは私どももそう思っておるわけでございまして、合併の促進については十分御指摘の点を頭に置いて配慮してまいりたいと思います。  次に、土地改良区の職員の身分の安定に関する問題でございます。  お言葉を返すわけではございませんが、やはり受益事業として受益者の負担金で賄うということは基本論としてあるだろうと思います。しかし、今委員指摘のように、土地改良事業、特に用排水施設というものは、農業水利事業、慣行水利権との結びつきで生まれたものであっても、単なる用排水事業ではなくて、生活用水という側面や地域社会の保全というものに役立っている側面があるわけでございます。  実は土地改良区に対する助成というのは、かなり今日市町村から広範に行われているのは事実でございます。やはりそれぞれの地域社会に果たす役割の程度に応じて、地域社会の全体の問題として市町村が合理的な助成なり援助を行うということは、私は適切なことだろうと思います。一挙にそれが国の助成に結びつくかどうかという問題はございますが、私どもやはりそういった市町村助成、あるいはかなり広域のものについては県の助成も一部で行われているわけでございまして、そういった実態も十分精査いたしまして、国としてもどう考えるかということは、やはり次の段階における検討課題ではなかろうかと思っているわけでございます。
  25. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 どうもありがとうございました。  これで質問を終わります。
  26. 阿部文男

    阿部委員長 日野市朗君。
  27. 日野市朗

    ○日野委員 まず、土地改良法関係について伺いたいと思います。  今、細谷委員の方からもいろいろ質疑がございました。土地改良区及び土地改良事業団体連合会の果たしている役割というのは非常に大きいと思います。これは農業者にとってのみならず、地域自治体、ひいては国民的な環境問題やら食糧問題やら、いろいろ公共的なかかわり方をしてまいりますので、みんな土地改良区や連合会について心配をして議論をしているというのがこの審議を通じてよくわかったというふうに思います。私もこの土地改良区や連合会、これはきちんとした仕事をこれからしていただかなければならないというふうに思います。  土地改良区といいますと、それぞれの地域において、所轄の地域に住む農民などというのは、これはもうほとんどがこれに加入をして組合員になるわけでありまして、そして組合員として土地改良事業に協力をしていく、そしてみずからそれを積極的に推進をしていく、こういうことをやっておりますので、これは非常に公共的な団体であるというふうに私は思います。この土地改良区という団体の法人の持っている公共性に対する理解というものを、きちんとしておかなければならないというふうに思います。いかがでしょう。
  28. 森実孝郎

    森実政府委員 土地改良区及び土地改良区連合というものは、一方においては受益者である農民の組織する団体でございますが、公法上、行政法上特殊な権限を付与された、公法上の公的性格の強い特殊な法人という理解を持っておりますし、したがってまた、御指摘のような方向でその運営は図られなければならないと思っております。
  29. 日野市朗

    ○日野委員 これは、非常に強化をしていかなければならないと思います。まず、運営体制を強化していくということも一つ必要でありましょう。それから、財政基盤を充実をさせていくということも必要でございましょう。それから事業運営の民主化、それから今細谷委員からも指摘された役職員に対する待遇とか労働条件とか、こういうものを高めることによって資質を向上していくことも必要でございましょう。これらについてどのように対処していこうとお考えになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  30. 森実孝郎

    森実政府委員 土地改良区については、財政基盤の強化という問題は基本論としてございますし、また公正、民主的な運営ということは重要なことだろうと思います。  私ども、そういった点では、基本論としては弱小土地改良区を整理し、水系別あるいは行政区域単位に強力な基盤を持った土地改良区に育てていくという合併促進の問題が一つ。もう一つは、施設の老朽化の維持補修ということが今日の土地改良区ではかなり大きな負担になっている。通常の管理を超えるようなものについては一定の範囲で助成措置を講じなければならないだろうということで、一定助成措置を講じているわけでございます。またそれ以外に、施設の多目的利用と申しますか、高度利用に応じた体制の整備ということで、そのための財政基盤強化が重要であろうと思っております。  今回の法改正によります市町村協議制に対する知事裁定制の導入は、まさに管理費用の公平化という視点、あるいは土地改良区の水管理機能の強化という視点もあるわけでございますが、回時に、そういった財政基盤の強化措置を間接的に裏づけるものとして私どもは適切に活用されるベきものだろうと思っております。
  31. 日野市朗

    ○日野委員 連合会でございますが、これの事業内容土地改良法の百十一条の九に列挙してございます。この連合会の職務、事業、これは有効適切に行われているというふうに御判断になりますか。
  32. 森実孝郎

    森実政府委員 県の連合会、いわゆる県土速でございますが、これは昭和三十二年に会員の行う土地改良事業に関する技術的援助、土地改良事幸に関する教育及び情報提供土地改良事業に関する調査及び研究を行う共同組織として設立されたものでございます。  近年の事業活動の状況を見ますと、設立当初から実施している土地改良事業の計画とか換地計画の策定等についての受託業務、これは団体営、県営両方通じてあるわけでございますが、このほかに昭和四十八年からは換地センターという制度をつくりまして、換地技術者を養成するための研修会の実施とか講習会の実施、換地業務についての専門的な実地指導技術者の配置や応援等の役割を果たしております。さらに昭和五十年からは、今日の状況を頭に置きまして土地改良施設管理指導センターの設置の援助を講じております。これによりまして土地改良施設の巡回診断、もう一つは維持管理適正化事業による整備とか補修の推進、管理技術に関する相談等の事業を実施しております。さらに、昭和五十六年からは農村総合整備に関する担当部署を設けまして、農村総合整備に関する開発普及とか技術的なアドバイスとか指導等を行うような体制を整備しているわけでございます。
  33. 日野市朗

    ○日野委員 いや、それらが適切に行われているかどうか、どういう御判断かということを聞きたいわけですね。
  34. 森実孝郎

    森実政府委員 実は、これは全国一律に論ぜられない悩みがございます。県によって非常に体制が整備されて、技術者も確保され水準も高い、それによって換地等については非常に指導力を発揮しているし、管理問題も能力を発揮しているとてろもありますし、県によってはまだ体制が弱体なところもあるわけでございます。ただ、先ほど申し上げました換地センターとか管理指導センターの設置等がてこになりまして、維持補修面と換地問題については全国的にかなりの実績をおさめることができるようになったというふうに思っております。
  35. 日野市朗

    ○日野委員 この連合会の機能というのは、これから非常に大事になるであろうと私は思います。まず、これから土地改良についても技術的にも非常に高度のものを要求されますし、いろいろな土地改良事業に関する研修であるとか情報をいかにキャッチしていくかというようなこと、それから人に対する説得であるとか、そういうものも非常に重要になってまいると思いますので、この点は非常に重視していただきたいものだと思っているところでございます。  ところで、こういう土地改良事業というのは、まさに特殊な土地改良区という団体において営まれる公益性の非常に高い事業であると思うのですね。私は、こういう事業を推進するからには、いやしくも政治的な圧力であるとか一党一派に偏するとか、そういうことは本来土地改良区にあってはならないものであろう、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  36. 森実孝郎

    森実政府委員 まさに御指摘のように、土地改良事業は、地域社会農業振興あるいはまた土地改良事業の果たしている公的役割にかんがみ、特殊な機能を付与されているものでございます。その意味におきまして、やはり地域社会において指導力を持った方々が中心となって公平な立場で運営が行われるべきものと思っております。
  37. 日野市朗

    ○日野委員 残念なことなんですが、土地改良区なんというと、選挙のときには一党一派に走って、役員さんなんかが一生懸命走り回る、そして組合員にいろいろなプレッシャーをかけて回るというのがどうも目につくのです。これは我々にとって極めて不快なことである。もう一度言いますよ、極めて不愉快なことです。というのは、我々の方を向いて走っているわけではないからでもありますけれども、非常に不愉快なんです。こんな現象をどうお思いですか。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕
  38. 森実孝郎

    森実政府委員 なかなか微妙な問題で、私もこういう実態を必ずしも的確にとらえているわけではございません。ただ、実は土地改良政治連盟というものがあるようでございまして、これは県単位に、いわゆる農政活動を推進するという視点から政治資金規正法の届け出団体として設立されたもので、この土地改良政治連盟がかなり全国的にいろいろ政治活動を行っていることは知っております。ただ、私どもこれはあくまでも土改連の問題、土地改良区の問題とは別と思っておりますので、こういう御指摘もございますので、県土連の活動あるいは土地改良区の活動が土地改良政治連盟の活動と一緒になって誤解されないような、そういう十分な配慮を持った指導は私どもとしてもこれから行ってまいりたいと思います。
  39. 日野市朗

    ○日野委員 政治連盟と土地改良区は別だ、これは聞こえませんね。これは聞こえませんよ。これは土地改良関係者が集まってやっているので、土地改良区とは関係ないなんということを言いますけれども、土地改良区がどういうふうにして捻出するのか知らないが、金を政治連盟に集めてその金はどこに行っていますか、そんなことは周知の事実です。しかし、そこは今は深入りは避けておきましょう。  あなたは、今、土地改良と政治をできるだけ切り放そうとしておられるようですけれども、ところがどっこい、そうはいっていないのです。全国の県土連レベルで見ると、これは自民党の国会議員が随分県土連の会長をしておりますね。どこでどんな人が会長になっていますか、ずっと挙げてみてください。
  40. 森実孝郎

    森実政府委員 県土連の会長に知事さんあるいは国会議員の方、県会議員の方、市町村長が就任しておられる事例は非常に多いわけでございまして、四十七名中、国会議員が十五名、それから知事さんが二名、県会議員が十三名、市町村長さんが七名ということになっております。
  41. 日野市朗

    ○日野委員 個人的に名前を挙げてみましょうか。宮城県、伊藤宗一郎さん、栃木県、渡辺美智雄、埼玉、三ッ林弥太郎、東京、石川要三、山梨、金丸信、長野、この方だけはちょっと挙げるのはどうかと思いますが、小坂善太郎さんですな。それから静岡、足立篤郎、石川、嶋崎均、愛知、丹羽兵助、兵庫、梶木又三、奈良、奥野誠亮、鳥取、小林国司、岡山、長野士郎、広島、藤田正明、山口、吹田さんという方ですね。こういうようにずっと県土連の会長さんを国会議員がやっている。これは、土地改良区と政治連盟が違うと言ったって、こんなことは聞こえませんよ。大体、国会議員なんというのは票にならないところに何でのこのこ出ていって、忙しいのに会長をやりますか。どうです。こういう傾向をどう思われます。
  42. 森実孝郎

    森実政府委員 一般に土地改良区とか土地改良事業団体連合会につきましては一土地改良事業自体が従来から市町村長や地方公共団体の議員等の地方の指導者クラスが中心となって農業者の意向を結集した形で実施されてきたという経過もあるし、歴史もあるために、まず理事自体として地方議員の方や市町村長さんがたくさん就任されていることは事実でございます。これはもう広くございます。  そこで、問題は、会長や理事長の選出はこういった理事の中から行われるわけでございまして、互選に際しては特に全体の取りまとめに最も適した一人として指導力のある方が選ばれるという形で、県主連であれば国会議員とか知事さん等が就任されることもまた否定できない事実があるだろうと思います。
  43. 日野市朗

    ○日野委員 なかなかおっしゃりにくいこともありましょうね。宮城県、実は私も自分の出身県でこんなことが起こってなあと思って非常にまゆをひそめながら、実は宮城県の土地改良連合会の会長選ぴを見ておりました。三人の国会議員が会長のポストを争いまして、かなり長い期間会長が決まらないという醜態をさらけ出した。三人の方はみんな私よく知っている方です。名前を挙げると胸が痛みますから言いません。しかし、この三人の方どなたを見ても、これは土地改良事業についてのベテランであるとか、土地改良事業について高い見識を持っておられるとか、国会で農業関係について目覚ましい仕事をしたとか、ちょこっと関連されたぐらいのことはそれぞれあるのでしょうが、そういうことのあった方ではございません。  そういうのを見ておりまして、今どうも局長が言われたことと若干違うような感じがする。本当にその土地改良連合会でこの人が欲しい、宮城県の土地改良事業の前進のためにこの方が欲しいという方々であったとは私には思えない。これは非常に主観的な問題であり、そこに評価をされることは局長も非常にお苦しいでありましょうから、私、あえてそれについて結論は申しません。全体的な一般論として申し上げましょう。私、先ほど読み上げたリスト、それを見て、うんなるほどと納得のいく方も一、二ぐらいいるかもしれませんけれども、それ以外の方が、何でこの方が土地改良の連合会の会長に就任したのかわからないという感じすらいたしますね。こういう方向は好ましいのか好ましくないのか、いかがですか。これは農水省そのものがこういった土地改良事業団体についてはいろいろ指導し、監督しなければならないのですから、伺いましょう。こういう傾向、これはいいのですか、悪いのですか。
  44. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、政治家の皆さんが県の土改連の会長になっておられます場合、これは会員の場合と学識経験者でなっておられる場合等があるわけでございます。政治家の方でも地元の土地改良区の理事長として、さらに県土連の会長に選出されておるという方もあるわけでございます。それからもう一つは、これは御案内のように、県の土地改良の連合会の会長さんは、やはり構成員である土地改良区の代表者から成っている理事さんの互選という形で選ばれているわけでございます。  ただ、私、ただいまの御質問に直接お答えすることになるかならないかは別でございますが、こういう公的団体の会長さんの選任ということが、理事者の間が二つ、三つに割れまして非常に争いになるということ自体は余りいいことではないんじゃないか、なるべく皆さんの共通の合意の中で選出される形が好ましいのではないかと思います。しかし、何といってもなかなか複雑な経済社会でございますから、県によっては対立があって、決選投票で互選されているというケースが、単に国会議員さんの会長さんにとどまらず、ほかの会長さんにもあることは事実でございます。
  45. 日野市朗

    ○日野委員 どうも、仄聞するところによりますと、この土地改良事業は土木工事がつきものでございます。土木業者との癒着というようなものが仄聞されていること、ささやかれていること、いや、ささやかれているなんというものじゃない、もっと大きな声で言われていること、これはもう局長も御存じないわけではありますまい。どうですか、そんなことを聞いたことはありませんか。
  46. 森実孝郎

    森実政府委員 公共事業の発注と政治のかかわり合いという一般論であれば、いろいろな形で議論が出ておりますことは私も聞いておりますし、また、そういうことは一般論としてあってはいけないと思います。  そこで、問題は、実は県土連の立場でございますが、県土連は実は事業の発注者ではございません。これは事業自体は国営、県営または団体営で、団体営は市町村ないしは土地改良区でございます。そういう意味においては、県土連は発注者の立場にないということは御理解いただけるだろうと思います。
  47. 日野市朗

    ○日野委員 実質論に形式論で答えられては、これは身もふたもありませんから、このことはそのくらいにしておきましょう。  じゃ、もうちょっと突っ込んでみましょう。国会議員なんというと、県土連の会長としてさてどのくらい総会や理事会などに出席ができるのか。私はしがない国会議員でございますけれども、大分忙しゅうございます。いろんな団体から役員を頼まれることがあっても、引き受けてもせいぜい監査とか監事とか、そんなところまでですね。あと、会長とか理事なんというのは自分の職責が全うできない。だから、私はお断りしているのです。こういう人たちは一体どうなんでしょうね、総会ぐらいはこれは出席できるでしょうけれども、理事会にどの程度出席しておられますか。
  48. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘の点は、私もどうだろうかということであれしたのでございますが、まず総会の出席状況を見ますと、五十七年、五十八年を通してほとんど九割以上出席されております。それから理事会への出席状況は、大体六割強ぐらいでございます。
  49. 日野市朗

    ○日野委員 これは当然、六割強というのはでき過ぎな数字という印象も受けますけれども、これは県土連の理事長であれば、六割というのは私はかなり低い数字ではなかろうかというふうに思いますよ。その程度の出席率、その程度しか出席できないという現実の事態を踏まえて、この人たちに対する報酬はどうなっておりますか。
  50. 森実孝郎

    森実政府委員 報酬につきましては、無報酬の方と有額報酬、報酬を取っている方と両方ございます。報酬を取っている方についても、年間で百万円以下が大部分でございます。
  51. 日野市朗

    ○日野委員 もっと詳しくお話しできるでしょう。
  52. 森実孝郎

    森実政府委員 年報酬額で申し上げますと、五十八年の例で、年報酬額の平均は全体では八十六万円でございます。ただし、会長が国会議員である方の年報酬額の平均は七十万円でございます。このうち百万円以上の年報酬額を受け取っておる方は全体では十人ございますが、国会議員の方では一名でございます。
  53. 日野市朗

    ○日野委員 五十万円以上はどのくらいですか。
  54. 森実孝郎

    森実政府委員 年報酬額五十万円以上の方が全体では十三人、国会議員の方は六名でございます。したがって、国会議員の方の全体について申し上げますと、年報酬百万円以上の方が一人、五十万ないし百万円の方が六人、それから五十万円未満の方が五人ということになっております。
  55. 日野市朗

    ○日野委員 実は、このことに非常に義憤を感じて私のところに言ってこられた方がいるのですよ。農水省にも伺いましたけれどもね。ある義憤を感じた方からこの話が私のところに来ておりまして、その方は、ろくに理事会等にも出席しない、本当に名誉職で、あとは選挙のときにだけみんなに手助けをしてもらい、しかも苦しい連合会の金の中から報酬まで持っていくというのはおかしいではないか、こう言ってきました。私は、その義憤はもっともだと思います。それは、そんなに高い金ではないと言えば言えますよ。しかし、同時に私は、土地改良区の方々、土地改良事業をやっておる方々がいかに乏しい金をいろいろやりくりしながらやっているかということをよく存じております。  この間、鷲尾さんが参考人に来て財政的な苦しさの一端をここで述べていかれました。私は、国会議員で何人かは乙ういう連合会に出ているのは聞きましたけれども、これは無料で、無報酬でやっておられるものだとばかり思っていた。ところが、現実にはちゃんと報酬までもらってやっている。こういうことについてどうお思いになりますか。  ついでに大臣にも、政治家の一人としてこういうことをやったら心が痛まないかどうか、ちょっと聞きたいものだと思います。
  56. 森実孝郎

    森実政府委員 県土連の仕事もかなりいろいろございますので、何もかも無報酬というわけにはいかないだろうと思っております。ただ、政治家の方が県土連の会長を務めております場合の報酬につきましては、まず他の市町村長さんがなつている場合、県会議員さんがなっている場合あるいは知事さんがなっている場合、それから一般の代表の方がなっている場合、いろいろございますけれども、このうち知事さんは当然無報酬ということになると思いますが、それ以外に比べるとかかり低い報酬額になっております。それでも無報酬であるべきかどうかという御質問であれば、それは無報酬であることがベターであるとは私はごご常識論としては思いますが、この程度の報酬額であれば、私は特に範囲を逸脱したものではないのではなかろうかと思っているわけでございます。
  57. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 国会議員の場合は歳費もいたかいておることでございますし、先と言われる義憤を感じた方の気持ちもわからないではございませんし、ひとつ余り月給は取らないようにというような方向で今後指導してまいります。
  58. 日野市朗

    ○日野委員 私も、額そのものを見れば大した額ではない、そう言ってもいいと思いますよ。しかし、問題は財源なんだ。土地改良区の財源というのは何ですか。連合会の財源というのは何ですか。賦課金プラス補助金でございましょう。この中から出ているということに問題がある。いかがですか。その点、局長、先ほどのお答えですと、この程度の額であればとやかく言うほどのことはないのではないかみたいな話です、こちらから聞いていると。しかし、それは額から言ったら大した額ではないかもしれないが、私にとってみれば大金ですよ。野党の議員たちにとってみれば、ずっと見回したところ、まことに失礼だが、このぐらいでも、うん、うまいことやりやがってと思っている人もいるのじゃないですか。しかも、その財源に問題があるとは思いませんか。
  59. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生のおっしゃいました賦課金等、いわゆる農民の方々からいただく貴重な財源でもございますので、できるだけ国会議員の場合は無報酬でやった方がいいじゃないかというような方向指導してまいります。
  60. 日野市朗

    ○日野委員 いやいや、困ります困ります。無報酬どころか、やはり国会議員はこういう事業団体の会長になるべきではないと思う。あなた、考えてごらんなさい。土地改良区の仕事、土地改良事業、これは国家的な事業である。しかも、それを各地でやってもらっている。これは我々一生懸命やってやらなければいけないなと思っているときだし、みんなそう思ってやっている。ここ数日来展開されてきた議論だって、みんな土地改良区のことを思い、土地改良連合会のことを思いながら、心配しながら議論している。そこで選挙のときに会長のことを担いでその連中に走り回られたら、こっちはたまったものではありません。  私は、今選挙レベルで物を言っている、選挙面で物を言った。わかりやすいからそれを引いただけでして、これは本来非常に高い公共性を持った事業なんです、一党一派に偏すべきではないじゃないですか、しかも特定の選挙をやるような人間に偏すべきではないではないですか、私はこう言っているのですよ。しかも、もし見識のある国会議員ならみずからこういうポストに座るべきではない、みずから辞すべきだ、私はそのくらいまで思っていますよ。いかがでしょう。
  61. 森実孝郎

    森実政府委員 土地改良連合会と申しますのは、いわば営利を目的としない公法人でございます。そういう意味においては、実は営利法人と違いまして、私ども、政治に参画している方が参加することそれ自体は建前論としてはおかしいことではないだろうと思います。  先ほども申し上げましたように、国会議員の方以外に知事さんもおられるわけでございますし、県会議員も非常に多くの方がおられるし、市町村長もいるわけでございます。選挙にかかわる方がこういった団体の長になるべきではないというのは一つの御意見ではあろうと思いますけれども、先ほど申し上げましたように農業者の意向を結集して土地改良事業が実施されてきているという歴史的経過から見ても、市町村長や地方公共団体の議員の方やあるいは国会議員という方々が理事に選ばれてくる、そしてまた理事の中の互選で最も指導力のある、県内をまとめていける人がついてくるということは、ある意味では自然の理という点もあるわけでございまして、選挙を行う方が一般にそういうポストにつくべきでないということになりますと、これは現実に即して考えるときいささか無理があるのではなかろうか、こう思うわけでございます。
  62. 日野市朗

    ○日野委員 そこの議論になりますと平行線で、きょうこれから私とあなたの間でやったって恐らく平行線でしょう。  それで、報酬の点にまた立ち戻りますが、補助金をもらっている団体から政治献金を受けちゃいかぬことになっているわけですね。これは報酬という名目はついているものの、かなり政治献金的な色彩の強い全員ではなかろうかという感じがしてなりませんが、そういう観点から見られてどうですか、局長、やはり同じようなお答えをなさいますか。
  63. 森実孝郎

    森実政府委員 私も今それを政治献金ではないかと言われまして、およそ今までそういうふうに考えてもみなかったわけでございまして、はっと驚いたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、実は総会への出席状況、理事会への出席状況もかなり高い水準で出席されておりますし、また、こういった土地改良区の理事長とかあるいは県土連の会長をしておられます政治家の諸先生あるいは県会議員の方あるいは知事さん等の土地改良事業に対する具体的熱意なり要請というものは大変高度のものがございます。そういう意味からいきますと、やはり相当の御尽力を事業推進のために払っておられるということは客観的事実でございますし、また、多忙な時間を割いて業務に当たっておられることも事実でございまして、これをもって政治献金と言うのはちょっと私どもの感じから言うと無理ではないか、こういろ感じがしております。
  64. 日野市朗

    ○日野委員 理事会に対する六割の出席が高いアベレージなのかどうか。農水省、六割くらいで高いと思っているのですか。会社で六割しか出席しない取締役はどうなりますか。いかがですか。六割しか自分の関係する会議に出席できないお役人は農林省で出世できますか。どうです。私は、そんなに世の中甘いもんじゃないですよということだけ申し上げておきたい。そして、現実にいろいろの土地改良事業を推進するためには、こういう体質は一掃すべきである、こう私は思います。そのことだけ申し上げて、このことでだけ時間をつぶすつもりは私毛頭ございませんので、今度は農振法の質問に移らせていただきます。  御承知のように、農地法一条には自作農主義がうたってあるわけですね。自作農主義というのは、戦後日本農政がとってきたずっと一貫した方針であったと思います。法制上もずっとそうでありますし、いろいろな修正はつけ加えながら、やはり自作農がやっていくのが一番望ましいという方針で来ていたというふうに思うのです。農地法のときもこの議論は若干はしたというふうに覚えておりますけれども、こういった自作農制度というものを支持してきた生産力構造にどういう変化が起こったんだろうか。そして、この自作農主義というものを今どのようにしようというお考えなのか、この点伺いたいと思います。
  65. 森実孝郎

    森実政府委員 農地法自体は幾つかの法目的を持っております。その最も重要な柱の一つが、ただいま委員指摘のように、耕作者みずからが所有することが最も適当であるという自作農主義の理念、それからもう一つ農地の効率的利用という視点の理念であろうと思います。  今日の構造政策展開過程で、いわば利用権の集積とか作業受委託による規模拡大を重視している点は、法目的からいうとむしろ農地の効率的利用という視点に着目したものだろうと思います。  その背景は、私が言うまでもなく、大型機械化の進展の中で労働生産性の向上が確実に見込生れ、また、その効率的利用のためには規模拡大が必要である。つまり、一人の農民が多くの土地経営して高い能率を上げるという状況が出てきたこと、それからもう一つは、地価の高騰の中で耕作目的農地を取得しても、取得による場合はなかなか採算が合わないという場合が大部分であるという事情、それからもう一つは、過去に言われましたいわゆる農村の潜在失業というものが大幅に解消し、しかもそれが挙家離村の形ではなくて、在宅通勤兼業の形態で生まれてきたという事情、こういった事情が背景にあると理解をしております。
  66. 日野市朗

    ○日野委員 農地の効率的利用ということがどろいうことなのかということについて、農地法の解釈上からいいますと、今局長が言われたような解釈というのは比較的後から出てきた解釈であり生じて、まず第一番目に、同じ理念であっても、白作農主義とこの効率的利用という理念というものは並立するものじゃありません。農地法の一条における自作農主義というのはやはり優越した理念であろうというふうに思うのです。  局長が言われた効率的利用という考え方、これはいろんな制度をつくっていく、いろんな運用面でバリエーションがあり得るということはやむを得ないだろうというふうに私も思いますので、そこのところを強く言うつもりはありませんけれども、これから一体自作農主義というものはどういうふうになっていくのか。これは維持し続けるのでしょうね。
  67. 森実孝郎

    森実政府委員 農地法自体に独自の意味を求める考え方と、構造政策の中で農地法体系というものをどういうふうに考えていくかという見方と、どう組み合わせていくかという問題だろうと思います。  私、これは非常に難しい問題だと思います。しかし、自由主義経済体制をとる他の先進諸国の例を見ましても、土地所有については、やはり家族経営が農業生産中心であり、その方々が自分の持っている土地を自分で耕すという、そういう自作農主義の理念というのはやはり基本的な観念としてまだあっていいのではないか、それを否定する状況ではない。先ほども委員指摘のように、若干の補充なり修正という世界で考えていくべきものではないだろうかと思います。
  68. 日野市朗

    ○日野委員 濃淡はあるにしても、強弱の程度の違いはあるにしても、私も局長と意見は同じなんですが、農業というものは自作をするのが最も好ましいということは論を待たないんだろうと思います。例えば、一つは地力問題を取り上げてみても、自分の土地と自分の土地でない土地では、農民のそれに対する取り組み方の姿勢というものは全然違います。また、よくアメリカなんかでエロージョンですな、表土流亡というのですか、これなんかが問題になる。  そういった土地問題についても常に自作農という形で見直していかなくちゃいけないんだろうというふうに思いますので、この自作という原則はあくまでも維持しなければならない。それは政策的な手心をいろいろな面で加えるにしても、この点だけは断固として中心に置かなければならない問題であるというふうに考えます。そういうことで、私と局長との間では合意はできそうに思うのですが、いかがでしょうか。
  69. 森実孝郎

    森実政府委員 私も、今の状況で断定的に物を言う自信はまだ率直に言ってないのです。ただ、例えば農地法上の上限面積をどう考えるかというふうな自作農主義を表現する個々の条文の問題としては、私は、いろいろ状況に応じて見直さなければならない状況はあり得ると思っておりますが、それについても、私は今、現段階では考えないで、むしろ地域農業集団等の話し合い等を通ずる農用地利用増進事業というきちっとしたバイパスの上に乗ったものだけ例外を認めるという考え方に立っているわけでございまして、実はまだそこまでもいっていない。  ということは、逆に申し上げますと、ただいま先生御指摘のように、自作農主義ということが基本的には農業生産性を高め、農地の効率的な利用なり保全に役立つという基本理念があるからだろうと思っております。若干話がそれて恐縮でございますが、実は最近の中核農家に対する利用権の設定が割合に進んでおります背景の一つに、むしろ中核農家に貸した方が土地の管理をうまくやってくれる、土壌の改良をやってくれるということを評価している面もありまして、そこら辺はどう理解するかという面はありますが、私はむしろそれなんかも一種の自作農主義の延長線上の問題と理解していいのではないかと目下のところ思っているわけでございます。
  70. 日野市朗

    ○日野委員 何で私がこんな重苦しい問題を質問するかといいますと、実は規模拡大をいろいろな方面から進められる、しかし、それにもかかわらずどのような方向に農民を導いていくのかというビジョンがいま一つ明らかに浮かび上がってこないわけでございます。そういうところにかなり若い農民層などを中心に焦りがあり、いら立ちがある。そういうことを私感じておりますので、示せるものならここで示していただきたいものだ、こういうふうに思うから伺うわけです。
  71. 森実孝郎

    森実政府委員 今後努力して一つのビジョンをまとめていかなければならないと思います。当面の問題といたしましては、六十五年の長期見通しによる中核農家育成というものが一つのビジョンになるとは思います。ただ、これは、はっきり申し上げましていわば中核農家のビジョンだけでございまして、いわゆる土地流動化がサプライの面でまたどう動いていくかという問題もありまして、流動化政策がようやく緒についたところでございますので、その状況を見ながらひとつ検討させていただきたい。詳しい問題は、今後の宿題にさせていただきたいと思うわけでございます。
  72. 日野市朗

    ○日野委員 私、今までの農業という産業、これが日本の産業構造の中でどのように位置づけられてきたのかということをずっと振り返ってみて、常に農業が主体性を持たないで来たのではないか。これは失礼な言い方になり得るかもしれませんよ。例えば、この間の質問のときにもちょっと私は申し上げたのでありますが、高度成長に踏み込む、これは工業を中心とする高度成長でありました。そのとき農業が果たした役割は何であったのかということを考えてみますと、農民の農村からの流出、安い労働力として流出をしていった。そして、それに拍車をかけるような物の考え方というのが大手を振って横行した時代であります。  そういう中で将来の日本農業というものを見据えながら、日本農業日本の産業構造の中でどのように位置づけていくかという、そういう長期を見通した主体的な決断というものが農水省にはなかったのではないかという気がしてならないのです。今は、逆に今度はこういう時代になって、低成長時代に入ってきて、また農業の重要さが言われるようになったときに、もうそれに対応するような農村の状況ではないというような形になっていることを、私、非常に憂うるのです。ですから、私は、ここできちんとした中長期的な農業のあり方というものを、これは主体的に決めておく必要があるのではないかというふうに思います。いかがでしょう。
  73. 森実孝郎

    森実政府委員 国民経済全体のパイの大きさなりその分配をどう考えるかという問題と農業の問題も、もちろん二面では考えられないわけでございます。したがって、そういう国民経済の状況変化をどういうふうに予測するか、それが農業に対してどういう影響なり意味合いを持つかという条件の確定は、まずどうしても要るだろうと思います。しかし、ただいま委員指摘のように、農業自体、独自の立場でどう考えるかということも当然なければならないと思います。  その視点にあります問題は、やはり食糧の自給力をどう考えるかという問題だろうと思います。今日の我が国消費水準考えますと、実は輸入している農産物畜産物でどれだけ外国の土地を使って農業を営んでいるかということを考えると、つまり、どれだけの外国の土地が使われているかというと、日本の輸入品のために千四百万ヘクタールなり何なりの土地が使われている現実があるわけです。裏返して申し上げますと、そういう非常に水準の高い消費を実現しているということは事実で、そのこと自体は私は決して悪いことではないと思いますが、問題は、次の段階において、やはりそうはいってもここまでは日本農業で救っていかなければならないという問題があるわけでございます。  そういう意味で、私ども、一つは、どれだけの生産規模としての農地を保有するか、それが高い生産力が発揮できるような良好な状態をどこまでつくり出していくかという問題と、やはり今日の状況では農業の中核になる担い手をどう確保していくかという意味でのアプローチが要るだろうと思います。  それから第二の問題は、農業とか農村の経済社会、国家社会において果たしている役割というものを、ここまで来るともう一回見詰め直してみる必要があるだろうと思います。ある意味では、大都市地域中心にした過密経済というものが、我が国の経済発展についてはむしろエフィシェレシーよりデメリットが問題になる時代になってきている。そういう意味においては、これだけ交通輸送条件、情報処理の条件も整備されているわけでございますから、新しい定住社会として農村あどう考えるか、その軸にある農業をどう考えるかという二つの面が要るだろうと思います。  六十五年の長期見通しを議論した際も、まさにそういう視点で論議が進められているわけでございます。御指摘のそういったビジョンづくりという問題については、ただいま申し上げました、いろいろな視点がございますが、二つの点を踏まそまして、今後の課題としてさらに議論を詰めていかなければいけない。しかし、当面、私どもとしてはそういう一つの新しい動きを確実に定着させるための行政努力なり立法措置が必要であろうということで、諸般の措置を考え、また今回の法的正もお願いしているという点は、御高察賜りたいと思うわけでございます。
  74. 日野市朗

    ○日野委員 御高察しているつもりなんですよ。非常によくしているつもりでありますし、農水省の痛みも私自身の痛みとしてよく感じているつもりです。ただ、今度の農振法案の中で、私はこの法案を見たときからずっと頭から去らない一つ問題点がございます。この農振法案というのは、この間もちょっと歯どめがないという表現を使わしていただきましたが、法律自体の体裁、使ってある文言、こういったものを総合的に見て、どのようにでも使える法律になってきやしないかという印象は私の中からどうしてもぬぐえないのですね。これは農村におけるいろいろな経済問題、それからすれば心配ないのだというようなことをこの間からおっしゃっておられるのですが、私は非常に強い管理志向性とでもいうようなもの、これがあるような気がしてしようがない。この法律を使って農村をどっちかの方向に引っ張っていこうということになれば、この法律というのはいかようにでも使えるような気がしてならないのです。  それで、どうもまた時間がなくなってきたのですが、若干質問をしたいというふうに思います。  一つは、日本における村落的構造、これを忘れてはならぬということです。このごろいろいろな協定を結ばせておる。今、協定という場合、施設などについての協定ではなく、協定一般論として聞いてください、その協定を結ぶというやり方がしきりに取り入れられています。例えば長野県の宮田村であるとか、さっき細谷さんの方からも出た雄物川あたりなどでも、そういう生産組織をつくるときなど、協定をつくって非常に有効に機能しているところもございます。しかし、その協定そのものが一般的にこの日本農村で妥当し得るものかどうかということが非常に大きな問題であるというふうに私は思うのです。  今、私の手元に「農地流動化に関する理論と農民の論理」なる、農政調査委員会の方で出した「農業の基本問題に関する調査研究報告書六巻」というのがあるのです。この中で、福島啓史郎という方がいろいろな管理手法についての考察をしておるわけです。この方は非常に徴密な方、優秀な方ですね。農水省もすばらしい人材を持っておられるなと思って、私、これを読ませていただきました。福島さんの考察をずっと見ておりますと、いろいろな場面における協定のあり方などから共通項を探り出しているわけです。例えば建築緑化協定などでは、中心になっているのは新住宅市街地であるというところにぴちっと目を向けるわけです。それから漁業についていうならば、漁協の漁業権管理機能というようなものに目をつけられたり、そういった多角的な面から目をつけられているのですが、やはり一つ指導原理を打ち立てることのできるような状況というものをつかんでそれぞれやっておるわけです。それが果たして農業に一般的に妥当し得るのかどうかというごとについて、私、若干の疑問というか、かなり強い疑問を呈さざるを得ないのですが、これをどんどん進めていくということになると、農村におけるみんなの平均主義的な、いわゆる部落でできている部落契約というようなものとかなり大きく抵触をしはしないかというふうに感じるわけであります。  部落においては、例えば専業だとか二兼だとかいわれても、決して専業が二兼を押しのけて出ていくというようなことはいたしません。そして、できるだけ平均のとれたような形で部落を運営していくという形が日本の村落的な構造の中で非常に強いように思います。こういったことと抵触するような行政的な指導、これは市町村段階までおりて指導をすることにもなるし、部落段階でもいろいろな指導が行われます。逆に村落構造というのは平均的な方向に働く、平均化の方向に働くという一つの指向性もありますけれども、場合によっては、村八分などというのはその極端な例でしょうけれども、強制的な働きかけをしていくというような方向も間々見受けられる。これからの振興計画などというものは、そういったものに十分に配慮しながらつくられていかなければならないのだろうというふうに思います。  私は、本当はいつもの質問でそう長い演説はしないのですが、若干演説めきましたけれども、局長考え方も聞いて終わりたいと思います。
  75. 森実孝郎

    森実政府委員 非常に基本的な御質問だろうと思います。  農村生活、農業生産考える場合、地域社会の連帯性、共同性がなければ成り立たないということは事実でございます。この場合、先般の委員の御質問にもございましたように、日本のは一種のマルクゲマインシャフトなのかマルクゲノッセンシャフトなのか、そこら辺は法社会学者によっていろいろ定義の仕方は違うと思いますが、そういう総有的規律が崩れてきている。しかし、それにかわる新しいものが生まれてこない。そういう中で農村生活なり農業生産にある種の支障を来し、機能の低下を招いているという現実をどう処理するかということが発想の基本にあるわけでございます。  その場合、一つの計画統制的手法で考えるか、現実の要望を受けとめられる条件整備をするという、パッシブと申しますか、ある程度現実に応じて弾力的に対応できる手法を考えるかという、二つの考え方があることば事実でございます。  いわゆる農村計画の理論の中にも、実は二つの考え方があるわけでございます。私、先日の答弁でも申し上げましたが、今回の考え方農村計画としては一部の方の言われる面からいうと不徹底かもしれないということは事実ですと申し上げたことは、まさにそういう統制的、強制的な考え方は避けなければいけないという考え方で今回の法制を考えているからでございまして、地域社会の問題を具体的に提起していただいて、その提起された問題を解決する一助としていろいろな政策手段をここで用意したというふうに考えているからでございます。  そこで、この協定の問題でございますが、私ども、そういう意味では幾つかの特徴を持たしております。一つは、あくまでも私的契約であり、注的効果はやはり民法上の効果というふうに考えております。それからもう一つは、すべての事項について統一的な協定は考えないで、具体的なテーマごとに締結するし、テーマによって構成員が当然違っていいという考え方考えているわけでございます。したがって、それがいいか悪いかは別といたしまして、あるいは迫力のないものになろかもしれないという面もありますが、私は、結果としては今委員指摘の過去の日本の村落にあろ平等主義的な村の機能にかわるというのではなくて、補完していく、あるいはそこで果たせない問題を考えていくというので、それを頭から排除するというふうにまた考えるべきではないというふうに思っておるわけでございます。  しかし、確かに見方によっては、今日の社会ですからそういうことはあり得ないと思っておりますけれども、それが余りに管理的に働き過ぎるという非難や欠点を生む場合もあり得ると私は思います。そういう意味におきましては、やはりあくまでも全員合意ということを基本とした協定にすると同時に、特に法に定めました協定については市町村長の認定や認可の際に個人の自由や土地利用等を不当に制限しないよう、十分な配慮をするような法制条項を定めているわけでございますが、行政運用に当たってもそういう点は十分配慮していきたいと思っております。
  76. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  77. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十三分開議
  78. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹内猛君。
  79. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農業振興地域整備に関する法律土地改良法の一部を改正する法律に関連をして、当面の農村農業、農民の現状との関連で質問をいたします。  まず最初に、山村農林水産大臣にお伺いをしますが、本年の気象状況というものは大変心配される状況であります。既に四年続いての冷害ということが言われておりますが、ことしはさらに引き続いてより厳しい状況ではないか、このことについてどのような対策及び考え方を持っておられるか、このことをまずお伺いいたします。
  80. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 おっしゃられましたように、四年連続不作ということもございました。しかし、水田をそのまま稲作の方にしますと大幅に需要を上回るというような状況にもございます。したがいまして、需要に見合ったところの安定的な生産ということで今回の水田利用再編対策をお願いしておるところでございます。  しかしながら、気象の推移、これもございまして、新稲作運動、これを官民一体となってということで御協力方をお願いしておりますが、せんだっても都道府県知事会の代表の方、市長会代表、そしてまた町村会代表、各地方自治団体の代表の方、そして農業者の代表の方、それぞれお招きいたしまして御協力方をお願いしたところでございます。そしてまた、これらに見合ったところの水田利用再編対策によりまして、年四十五万トンの積み増しというものを行っておりますので、米の方は需要に見合ったところの供給、これを安定的にできるものというような見通しにございます。  また、農産物全般につきましては、ただいま申しましたとおり農業団体また地方自治体、官民一体ということで基本技術の励行、これを呼びかけまして、たくましい稲づくりをやっておるところでございます。そしてまた、近年の化学肥料の多用等、これらもございまして、お願いしておりましたいわゆる地力増進法、健康な土づくり、これも行っております。  これらの問題につきまして、今後も気象状況等を見きわめた上で、心配をおかけしないような種々の対策というものをやっていきたいというぐあいに考えております。
  81. 竹内猛

    竹内(猛)委員 今お話がありましたが、私の茨城県だけで見ても、もう既に田植えがおくれているし、水が足りないところがあって、大体この五月の連休には田植えが終わるはずのものがいまだに、二週間もおくれている、こういう状況です。既に冷害というものがもう起きていると言わざるを得ないほどの状況の中で、米の減反というものを見直していく、こういう考え方はないかどうか。農協の倉庫の中には既に米がなくなって、古い米を食べざるを得ないという状況であります。このことについては、今緊急の課題だと思いますが、どうですか。
  82. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 本年から開始いたしました水田利用再編第三期対策におきましては、ごく最近の米需給というものを反映させまして需給計画を立てておるわけでございます。御高承のように、今後三年間におきまして毎年四十五万トンの在庫積み増しというものを織り込んで、需給計画上もかなりなゆとりを持って計画をつくっておるわけでございます。  また、今大臣からお話がございましたように、米づくりの方におきましても、気象変動に負けないようなたくましい稲づくりを進めるということにいたしておりまして、本年の計画生産量の確保につきましては全力を挙げていきたいというふうに考えておりますので、ただいまの段階で水田利用再編第三期対策を見直しをするというのは適切ではない、かように考えております。
  83. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大分強がりの形で見直しをしないということであるけれども、そういうことをしなくても大丈夫なような状況が来るか来ないかはやがてわかることだから、そのときになってから慌てないようにひとつしてもらいたいというふうに思います。  そこでもう一つ、この法案に直接関連をしているわけじゃないが、伺っておかなければならない問題があります。  最近の新聞紙上で、愛媛県の山の中に、ベトナムで使った事業といいますか、そういうものを捨てているということから始まって、いろいろ調査の結果が出てきています。これに対して、十三年前のことだからもう書類もない。一体そのような毒の入ったものを山の中にどのような形で廃棄をし、どうして捨てたかという問題について、その原因、それから状況、これからの方向、こういうものについてひとつ明らかにしてもらいたい。
  84. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えいたします。  2・4・5T、この除草剤につきましては、昭和四十六年の四月に使用中止を通知するとともに、厳重にこれを保管するように通知しまして、さらに同年の十一月に、セメントなどと練り合わせましてコンクリートの塊としまして、水源地域あるいは民家から離れましたところの土中に埋設処理するように通知したところでございます。  なお、高知営林局におきましては、当時、関係機関とも相談の上で、この十一月の通知以前に土中に埋設処理をしているわけでございます。  そこで、現在、私ども、当時の処理状況につきまして、その実態を調査を行っている最中でございます。したがいまして、調査の結果を待ちまして適切に対処をしてまいりたいと考えておりますが、特に高知営林局につきましては、早急に埋設箇所を把握しまして、関係機関指導を受けながら必要な調査を行いまして、関係皆さんの不安解消に努めてまいりたい、かように考えているところであります。
  85. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは単に高知地区だけじゃなしに、全国でそういうことをやっているじゃないかというような心配もあるし、特に全林野の労働組合も一緒になって調査をしたいというような申し出も聞いていますが、こういうことはどうですか。
  86. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在、私ども全国的に各営林局を調査中でございます。今回の調査は、私ども関係機関の協力を求めながら、農林水産省の責任におきましてこれを実施したい、かように考えておるところでございます。全林野労働組合の意見を聞くことはやぶさかではございませんが、調査への参加を求めることは現在考えておりません。
  87. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大変心配なことでありますし、また、いずれ同僚が後でそのことだけでかなり詳しい質問をすることになっていますから、私はこのくらいにしますが、ともかく早急にそういう心配なことは除去してもらいたい。  さて、法案に移りますけれども、この法案は、三十六年に農業基本法ができた。その農業基本法をつくるときには、私どもも農業基本法を対案として出したが、欠席のままこの農業基本法というのは押し切られた経過があります。そういう経過の上に、安倍大臣のときに六十五年の長期見通しができ、それから五十七年には八〇年の農政の基調ができた。こういう経過の上でこの二法というものは関連があるだろう、こう考えますけれども、これからの農政の基調というものを一体どこに置くのか、つまり、この二法の農政上の位置づけをどこに置くのかということについて説明をしていただきたい。
  88. 森実孝郎

    森実政府委員 農業基本法につきましては、御指摘のように昭和三十五年当時の状況のもとで、いわゆる自立経営育成し、他産業と均衡できる所得確保できる農家群をつくっていく、需要の動向に応じた選択的拡大を図っていく等を基本として法の制定が行われたわけでございます。やはりこれは、基本的には宣言立法という性格を持っているわけでございます。  そこで、客観的な社会情勢、経済情勢変化の中で、農業基本法自体が考えている農業の生産の選択的拡大とかあるいは生産性の向上、それを可能にするような構造政策の推進というものをどう図っていくかという問題だろうと思います。  そこで、基本的には、まず構造政策の問題について申し上げるならば、一つはやはり挙家離村にかわって通勤兼業農家が増大している現実、それから地価の動向等を考える場合、所有権移転による自立経営育成ではなくて、利用権の集積に着目した規模拡大政策ということを基調として、その現実展開を図っているわけでございます。  価格政策等につきましては、私が申すまでもなく、基本法にもございますように、やはり需給の動向を反映した価格政策ということがその一つの基本の考え方としてあるわけでございまして、当初におきましては、畜産物、果樹、蔬菜に代表されますように、当時の消費水準から見て、消費がどんどん所得の向上に伴って伸びてくる、それに応じてやはり畜産物なり果樹、蔬菜等の選択的拡大を図っていく。そのために、いわば財政の負担あるいは消費者の負担でいわゆる生産刺激的な価格政策展開ということが進められてきているわけでございますが今日の国民の栄養摂取量の水準なり所得の高度成長から安定成長への移行を考えるとき、そういったことを反映した需給の動向を考えるとき、需給の調整機能を果たし得る価格政策ということがやはり五十年以降においては一つの重要なテーマになっているわけでございます。  しかし、それらのことはいずれも基本法の標榜しております考え方の中での変化でありまして、今の時点で基本法自体の基本的な性格を変えるという性格のものではないだろうと思っております。
  89. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農業基本法は、基本的にもねらっていることが破産をしたというふうに考えていいと思うのですね。十年間で二町五反の農家を百万戸つくるなんて、そんなことできてやしない。それだけ見たって、どうしようもない。だから、それは宣言法であって、どうにもならない。それを今さらあれやこれや言う必要はない。けれども、現在私たちが農村を歩いて一番農業を心配しているのは、専業農家一体現在の農政に対して本当に自信を持って営農をやれているかいないかということが大変心配なんですね。  それで、今までは米をつくれ、品種改良、土地改良をして、現在まだ土地改良の負担金を納めているときに、減反政策が先ほど言ったように行われる。それからまた、ミカンにかえた、あるいは落花生やトマトをつくれという形でそれをすると、今度はミカンは自由化によって木を切らなければならない。養蚕についても、転作の対象になったけれども、現在生糸の在庫が余っちゃって、既に二割以上減反をしなければやっていけない、こういう状況になっている。茨城県の場合には、トマトの契約栽培が今まで一千町歩あったけれども、今や三百町歩に減ってしまった。こういうようなことになると、一体農家というものは本当に農業の中で生きられるのか生きられないのか、こういう心配が現在あります。そして結局、農政というものが本当に農民の懐の中に飛び込んでこない。そうなると、結局兼業農家というものが、一方でよそから賃金を取ってくる、それから自分の食べるものだけはつくっていく、あとは土地を持っているからやむを得ずやっていくという形になってしまっている。こういうような農政に対して本当にこたえ得ているかいないかという問題について、本当のことについてどうですか。局長、大臣、どちらでもいいからひとつ答えてもらいたい。
  90. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほども申し上げましたように、例えば基調としての米の供給の過剰の問題あるいは畜産物、果樹、蔬菜等につきましても、やはり量的にはある程度限界になってきて、むしろ所得の向上というものは、質の問題とか多様化の問題とかあるいはサービスの転化の問題になってきているという、非常に難しい状況にあることは事実だろうと思います。  私ども、いわゆる非常にマクロ的にとらえました選択的拡大というふうな発想ではなくて、消費なり市場の動向を反映した農業生産の対応ということがやはりこれから重要な課題になってくるだろうと思います。そういう意味におきまして、私ども、地域の営農を考える場合において、いわば国なり自治体が示した指針で画一的な対応を図っていくという状況ではなくて、やはり農家自身がその経営的判断、技術水準に応じて複雑多様な対応を考える時代に入ってきているという感じがいたします。そういう意味におきましては、規模の問題だけではなくて、やはり生産性の問題、つまり規模に代表される物的生産性とかあるいは総収入の問題だげではなくて、つくられる商品の質の問題とか、あるいは多様な商品についての商品生産なりマーケティングについての判断という意味で、能率の高い中核農家というものの育成ということが、やはりそういう意味からも非常に重要になってくるのではないだろうかというふうに思っております。
  91. 竹内猛

    竹内(猛)委員 中核農家についてはまた後で私も考え方を述べますが、私は、農政の問題について常日ごろから主張しているし、この委員会でもしばしば述べているわけですが、やはり長期の展望というものがなくてはならない。そしてその展望に沿って、土地と水と労働力が組み合わされて、何をどこでだれがどれくらい生産をする、そして、先ほどから話をされているように流通問題、それから需給関係から来る価格の問題を明らかにしながら農業者の所得というものが明らかにされなければ、たくさん物をつくったからいいというわけじゃない。そして農民が人間として大事にされ、尊重される、こういうような体系があって、そのためには競合するものはできるだけ国内で生産をするようにする。この点については、過般国会でも、自由化の問題についても何回か決議をしてきたし、本委員会でもそういう決議を行っている。それから、安全保障としての農業という立場についても八〇年代の展望の中でも明らかにしている。  そこで、一番抜けている点は何かというと、やはり農林予算というものがどうしてもはっきりしない。年々農林予算が削り取られてしまっている。ことしもまた、農林予算は去年よりも少ない。同じ安全保障でありながら、防衛庁の予算はGNPの一%と言ったり何ぼということを言うけれども、農林予算を確保しようという声などはどこからも上がってこない。同じ安全保障であるならば、国内だけではなしに、海外でも食糧に飢えている仲間がたくさんいるのに、一体食糧の安全保障の立場から農林予算はこれでいいのかという声がおよそ上がってこないのはどういうわけだ。もっと自信を持って、農林水産省は農林予算をどういうふうにするのだということぐらいについてははっきり言って、そしてその展望を持った計画については予算で裏打ちをする、こういうことがなかったらこれはだめじゃないか、こういうふうに思うのだけれども、大臣、この点はどうです。
  92. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 おっしゃられたとおり、前年に比べマイナスシーリングという予算でございました。しかし、乏しい予算ではございますが、その中で何とか農林行政に支障を来さないようにということで、今各種の、例えば土地改良などの場合でも、いわゆる新規採択というものはできるだけ自粛するようにいたしまして、そして的確に効用の上がるところへ力を入れていくというようなこともやってまいりますし、また、御存じのとおりに、一部農業過保護論というのもございましたが、しかし、近年になりまして農林業が日本の国、国民に対してどれほど重要なものであるかということを積極的にPRもし、また、国民の理解も得ておるところでございます。  今後の農林予算の獲得につきましても、中長期的に見ますと食糧というものはかなり不足をしてくるという予測も出ておるわけですから、それらを含めまして、一生懸命努力いたしまして、防衛予算というまではいかないかもしれませんが、農林水産、これらに対する国民的な御理解をいたかいて、今後も努力してまいりたい、そういうぐあいに考えております。
  93. 竹内猛

    竹内(猛)委員 自信を持ってひとつこの安全保障としての食糧の自給体制の確立、それから予算の獲得のためにがんばらなければ、常に押し切られてしまう。農林省の予算が削られても、これがほかの方へ行って鉄砲玉になってしまったのじゃどうにもならないから、そういうことにならないように、農林省もがんばって生産を上げる、効率を上げることは必要でしょう。土地改良をやるのは結構です。そういう中から構造政策としての今度の法案の位置づけがあると思うのですね。私は構造政策に決して反対するものじゃないが、構造政策さえやっていれば農家所得が高まるということにはならないだろうと思う。構造政策をやって豊かな村づくりをするという言葉だけがあって、中身がどうもそれに伴わない。だから、構造政策を進める中で、農家所得はどうなるんだ、最終的にはやはり金によって計算をしていかなくちゃならない。  そこで、現在の農村地帯を見ると、私は、都市近郊型の農業と、それから農業と都市と混合したような混在型の農業地帯がある。それから純農村地帯というように、三つに大きく分類、類型されるだろうと思う。現在の中央競馬会の理事長の内村さんが経済局長のころから、こういう問題について農林水産省指導も求めたり、あるいは農業団体の農民との対応についても、農協指導のあり方についてもいろいろなことについてひとつ調査をしてもらいたい、こういうように要求したけれども、いまだに明確なものがないような感じがします。したがって、農家はそういう指導とは別に、自分のことは自分でやるんだとお互いに考えるようになってきているのじゃないか。これではいけないと思う。農村変化をしているのだから、もう少しその変化に対応する指導というものはできないのか、この点はどうです。
  94. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、地域の実情、それは立地の問題もございますが、やはり周辺の経済状況の変化を踏まえた、地域の実情を反映した農業なり農村のあり方でなければならないと思います。そういう意味におきまして、ただいまも委員指摘がございましたように、大都市近郊型の農村、平場の中都市近郊型の農村、それからもう一つは純農村地帯、さらに中山間地帯、少なくとも四つぐらいの地帯区分に応じた生産のあり方というものを考えていく必要があるだろうと思っております。  実は、我田引水で多少恐縮でございますが、今回の改正農振法によります市町村の農振計画の見直しに当たりましても、ある程度ガイドポストとしてはそういう立地区分を出して問題の解決に当たっていかなければならないだろう。例えば就業改善の問題でも、大都市近郊型の農村ではそれ自体はそう大きな問題ではないけれども、平場の純農村や中山間地帯では大きな問題になってくる。生活環境整備の問題を論ずる場合においても事業内容は変わってくるわけでございます。そういう意味で、やはり立地の状況に応じた農村のあり方、農業のあり方という問題は、やはわこういった各種の計画手法なり何なりの整備を通じまして今後充実していかなければならないものと思っております。
  95. 竹内猛

    竹内(猛)委員 方針なり文章に関する限りは、かなりよくできていると思いますね。余り非の打ちようがないようにできているけれども、末端で実際耕作をしている農家がそれを受けて余り理解をしていないところに、どこかが切れている、こういうふうな感じがしてならない。中核農家をつくっていこう、それも結構だと私は思う。中核農家を戦略目標にして土地利用型の農業に重点を置き、規模拡大を進め、水田の多面的利用と畜産との結合をねらい、現在一三%の専業農家というものを将来七十万戸ぐらいにして、二町五反の畑作、それから五町歩の水田、こういうふうに考えているようですけれども、大体将来の農家所得というものをどのくらいに見込んでこういうことを立てられたか、その見込みはどうなっているのです。
  96. 森実孝郎

    森実政府委員 六十五年の長期見通しで、一つ中核農家の姿というものを想定しているわけでございます。特に三十万戸の中核農家、つまり土地利用型農業中核農家というものについては、例えば稲作であるならば平均五ヘクタールとか、あるいは酪農とか肉用牛経営であるならば農用地としても五ないし八ヘクタール、複合経営であるなら四ないし五ヘクタールというふうな規模を想定いたしまして、ここへの規模拡大のための利用の集積ということを頭に置いた政策展開考えているわけでございます。  そこで、その所得水準をどう考えるかという問題でございますが、私どものいろいろな試算でございまして、もちろん公定的なものではございませんが、今想定されている規模拡大が実現されるならば、おおむね勤労者世帯の勤め先収入に見合う程度の農業収入を実現できるのではないか。例えば五十七年のペースで考えますならば、自立てきるそういった経営農家の下限農業所得というのは大体四百四十二万円程度で、当時の勤労世帯の勤め先収入が四百五十万円でございますから、そういった程度の均衡は実現できるのではないだろうかと見ているわけでございます。
  97. 竹内猛

    竹内(猛)委員 二町五反あるいは五町という形でやれると言うけれども、例えば秋田県の八郎潟ですね、あれは十五町歩の水田の経営をやるという形で、その八郎潟の中でも出稼ぎをしなければやっていけないという農家がかなりいる。もちろんそれは減反もしているから米だけをつくっているわけではないけれども、あれは十五町歩だ。それから東京近郊や奈良、近畿の周辺では、土地利用率、回転率が三回ぐらいやっているから、面積は狭くても非常に収益は高い。こういうところもある。  だから、そこで、今の森実局長の言うようなそういう所得というのは水田地帯では大変無理じゃないのか、こういうふうに感ずるわけです。やはり、農業だけではどうしてもひとり立ちをするのは今の面積では無理じゃないのかと思うのですが、どうですか、これは。
  98. 森実孝郎

    森実政府委員 平場の水田地帯の問題として考えるならば、確かに内地だけでも五ないし七ヘクタールの経営規模が必要だろうと思います。  問題は、ことしの農業白書でも御報告申し上げておりますように、一つは、複合経営というものをそれぞれの立地に応じてどう考えるかという問題があるだろうと思います。  先ほど八郎潟の御指摘がございましたが、これなんかも、もう一つの面から見ると非常に経営格差を生じているという実態もあるわけでございまして、そういう平均的な概念とはまた別に、やはりこれからの農業者の資質の問題ということも重要な意味を持つだろうと思います。そういう意味においては、政策の総合性が必要であることを痛感しております。
  99. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いろいろ細かい話の議論は後にして、先の方へ進んでいきますが、今やはり私は農村を歩いてみて感ずることは、専業農家が一審農業について心配しているというのは、専業農家のうちに嫁の来手がないということなんです。純農村で、二十五歳以上の青年で嫁の来手のないところがたくさんあって、非常に困っている。それから今度は男性の方でも、農村地帯の若い者は、うちにいたのではどうにもならないからという形で、町に出るということをねらっている人たちが非常に多い。こういう悩み、自分の娘は農家に嫁にやりたくないが、うちの息子には嫁をもらいったい、こういうような親、このような悩みがみなぎっております。よそは知りませんけれども、うちの地域にはそういうのが非常に多い。  そこで、兼業農家は比較的その辺については悩みが少ないようであります。兼業農業というのは、どちらかというと食べ物は自分のうちの土地でとる。生活費は、あるいはお金は外部から稼いでくる。それで、四月、五月の連休、九月のまた運休で田植えと稲刈りを終わらせてしまう。買った機械の償還も、これは賃金の中で支払っていく。そういうことになりますから、当然地域共同体、農村においてかつて麗しいと言われた共同体というものが崩れて、家族単位あるいは個人単位に移ってくる。この方針によると、できるだけ地域におけるところの集合体をつくっていきたいという形になっているけれども、実態はどうもそれが崩れていくような傾向にある。その辺についてはどいういうように見ておられるのか、どうですか。
  100. 森実孝郎

    森実政府委員 一般論と地域差があるだろうと思います。  一般論として申し上げるならば、やはり今日の経済社会の発展の中で混在化、都市化ということが全国的に進んできておりますし、また、兼業化も進んできております。そういった中で、例えば農民と新しいニューカマーである新興住宅地の住民、あるいは農家の中でも極めて安定的な通勤兼業所得を持っている第二種兼業農家中核農家との間において、意識なり生活活動というような点でかなり大きなギャップを生じていることは事実でございます。そういう意味において、普遍的な課題として取り上げるならば、やはり今日の社会的状況に応じ、かつ個人の権利意識が非常に強くなっているという社会的実態を踏まえて、農業なり農村生活の全体に必要な新しい連帯づくりのための、村づくりのための努力が要るだろうと思っています。そういう意味において、各種の手法を整備し、また予算措置等とも対応させながら、今回の法案提出に踏み切ったわけでございます。  特に個別地域差の問題について論ずるならば、私、竹内委員指摘のような大都市近郊、特に近畿地方とか中部地方とか、関東でも南関東等では非常に難しい問題があるだろうと思います。確かに混在化が決定的に進んでいると同時に、地価が極めて割高な形に高騰しているために、専ら資産として交換価値に着目して土地考えている農家が多いという問題があるわけでございまして、殊さらに難しいという感じがしております。  しかし、こういった地域を踏まえた場合においても、はっきり申し上げるならば、専業農家の中でも跡取りがなくて離脱していく方もある。全般的には農業労働力の高年齢化が他の地域より先行して進んでいるという実態がある。それからもう一つは、世代の交代の際に農地とか農業に対する意識も大きく変わってくる。それから、何といっても兼業所得は極めて安定しているということがございますので、そこは中心になる農家地域社会の合意の中でそういう農地の利用提供を求めながら、中心になる農家規模拡大を通じ、たくましい農業を育てると同時に、地域農業資源の適切な管理が行われる姿を考える必要があるだろうと思います。特にその場合、私どもといたしましては、こういった地域におきましては、当面の問題としては、利用権の設定ではなくて、作業受委託による規模拡大、特に大規模な機能集団の活用ということはかなり重視していく必要があるのではないだろうかというふうに見ているわけでございます。
  101. 竹内猛

    竹内(猛)委員 確かに兼業農家については、農地というものは生産手段であるよりは財産的価値を都市近郊においては持つようになってきていることは事実だ。だから、せっかく農地流動化の方針、あるいは農地銀行であるとか、あるいは農用地利用増進といういろいろな形で農地集団化、共同化あるいは利用権の集約化ということをやっても、非常にそれが実行されないという面が多い点があると思います。そういうような中で、今一つ問題になっているのは、せっかく十数年前から、農村に工業を導入して就業の機会を与えよう、一方で農業をやりながら他方では今度は労賃を獲得をして、両方で、農工両全といいますか、そういう方向をとろうという形で農村工業の導入、工業団地というものをつくってまいりました。その考え方は別に悪いわけじゃないが、現実に今の状況になってみると、これが各地でいろいろと問題を起こしております。  私のところにもたくさん工業団地がありますが、最近一つの例をとっただけでも、石岡市というところに柏原工業団地があります。これは十数年前に農民の土地を強制収用をして、反対する者の土地については強制執行、土地収用法によってこれを取り上げて工業団地をつくった。その工業団地に三十八の企業が入ってきたけれども、そのうちの十二を、今、十年間たって調べております。その十二の中で二つの企業は、どうしてもこれは許しがたい状況にある。特に、これはまだ調査を十分にしておりませんが、熊本県から出ている国会議員が会長をやっている会社、その会社は五万八千平米の土地を持っており、その中に七千七十平米の倉庫をつくって、あと六人の臨時雇いのようなものを置いて、この十年間ほとんど生産をしておらない、こういう状況があります。  これは一つの例でありまして、ほかの団地にもやや同じような、草を生やしてそのままにしておるところがある。こういう状況を見ると、農家は本当に土地というものは離してはだめなんだ、こういう気持ちになって、農地というものはますます財産的価値を強めていく、こういうことになると思うけれども、これは石岡市に起きている一つの例です。そして住宅公団は、これは十年間は公団が強く管理をしておりますが、十年過ぎると今度は使用収益というものはやや自由になるということになりますけれども、その場合でも公団の承認を必要とするという形で、強く担保に入れたり分譲したりすることは抑えているようでありますが、この問題はどのようにとらえられておるのか、ちょっと報告をしてもらいたいし、それに対する所感も加えてもらいたい。
  102. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございました茨城県石岡市柏原地区の問題でございますが、これは農村工業導入法による対象工場ではございません。これは首都圏整備法の都市開発地域に石岡市が指定をされておりまして、その中で実施した事業でございまして、住宅公団が造成主体で四十八年に分譲を開始いたしまして、造成用地百六十四ヘクタールのうち百四十二ヘクタールが工業用地でございまして、これは三十八社に完売が行われております。ただ、私どもが事情を聞いたところでも、その中の一部の団地においてまだ工場の整備が行われていないところがあることを聞いております。  これは、基本的には既に目的が転換されまして、工場用地として、いわゆる首都圏整備法の構想の一環として実施されましたものでございまして、今ここで直ちに私どもが農業政策立場からストレートに物を言うとか、あるいは行政運営を考えていくという事柄とはちょっと異質な点があるわけでございますが、しかし、私どもとしては、せっかく転用されました農地がそういう形で本来の目的に供用されていないことは非常に残念なことであろうと思います。工場が建設される乙とが確実であるという条件があるわけでございますから、建設の促進の問題については公団あるいは市町村を通じて我々も農地行政を所管する立場から督励してまいりますと同時に、最近幾つかの事例がありますように、やはり企業間、業種間の消長はかなり急速な社会状況の変化でございますから、転換の可能性等についてもよく判断を求めてまいりたいと思っております。
  103. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農村工業導入法と言いましたけれども、農村工業導入法でなしに首都圏整備法です。ただ、農村工業導入という一つの形であります。したがって、これは相当な農地をつぶしているわけだから、本委員会においても関係をするし、同時に、これは建設委員会においても問題になることですから、いずれまた別の機会にこの問題で議論をしますから、これ以上のことはしません。ただ、農家の目から見れば、せっかく工業団地をつくって、雇用が進むであろう、地元が非常によくなるであろうと思っているのに、これでは非常に困る、こういうことだけは事実ですから、これはぜひ承知をしてもらいたい。  次に、土地改良の問題ですが、土地改良は、基盤整備をすることは必要でありますけれども、その基盤整備方向は田畑輪換という方向に進めなければならない。そこで今日までもかなり進めてきたけれども、そのためには地下水位が七十センチ以下でなければなかなかやれない。その七十センチ以下の土地改良の水田の状況というものは今どうなっているのか、まずそこから質問をします。
  104. 森実孝郎

    森実政府委員 現況を申し上げますと、五十七年度末の数字でございますが、汎用可能な面積は、七十センチよりも地下水位が低いところは約二百二万ヘクタールでございます。ただし、そのうち三十アール区画のものは九十一万ヘクタールでございます。
  105. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこで、土地改良の十カ年計画を見ると、確かに田畑輪換の問題を含めてかなり前進的な方向考えられているけれども、昭和五十年以降この土地改良の費用が農林水産省においても余り大幅に伸びていない。本年度においても基盤整備費というものが予算全体から八十億も減じているというような状況から見て、第三次十カ年計画の中で果たしてここで期待をしているような土地改良が完全に進められるかどうか、この点についてはどういうことになりますか。
  106. 森実孝郎

    森実政府委員 五十八年から発足いたしました第三次土地改良長期計画の全体の投資規模は、三十二兆八千億を見込んでおります。その中で、ただいま委員指摘のように、九十五万ヘクタールの汎用水田化を図っていくということが見込まれているわけでございます。御存じのように、五十八年の予算は横ばいでございますし、五十九年は他の長期計画を伴う公共事業同様、土地改良事業につきましても若干の縮減を受けております。今のような予算の状況のもとでは、確かに御指摘のように、物価が安定していてもバックデータで予定しております事業量の消化はなかなかできないと思います。  私どもといたしましては、財政状況が非常に厳しいだけにそういうことになったわけでございますが、今後とも状況の変化に応じながら予算の確保ということに努力したいと思います。また同時に、やはり事業のやり方につきましても、先ほど大臣からもお話がございましたように、新規の抑制による継続事業のできるだけ事業実施期間の短縮の努力あるいは事業効果の早期発現地区に対する予算の配賦、さらに施行基準等についての弾力化等を通じまして、その効4率的実施に努めてまいりたいと思います。
  107. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この十カ年計画というものが土地改良にはつくられているわけですから、田畑輪換という形でぜひ土地改良は進めてもらいたいと思うし、そのためには、予算の確保ということについては努力をしてほしい、こういうふうに思います。  そこで、時間も来ておりますし、また、別なことも若干加えなければなりませんから先に進みますが、私のところで霞ケ浦用水、県西用水と言っておりますけれども、その事業が進んでおります。これが、水資源公団と国営事業と県営事業とまた団体事業とがそれぞれ進めておる中で、国営の事業が非常におくれておりましたが、本年から財投資金によってこれがかなり前進をしておりますけれども、その進捗について伺いたい。  同時に、今現地で起きている問題は、県営畑地の圃場整備事業について調印をしている中で、農家に対する説明が非常に不十分だ。ともかく、おまえさんはこの仕事に対してあるいは事業に対して賛成か反対か、こういう調印のとり方をする。農家の方からは、幾ら農家は負担をしたらいいのか、こういうことについて全然わからない。ともかく賛成か反対かということで、それではだめだ、こう言うと、夜中の九時ごろ、深夜ですよ、九時ごろに、区長を初めとして五、六人のその集落の顔役が来て、役場の書記も来て圧力をかける。この農家兼業農家じゃない、今農林水産省がつくるりとしているところの、まさに畑作地帯の二町歩以上の専業農家ですから、この負担というものが非常に大きい。県の方へ行って聞いてみると、県では公団事業や国営事業の負担金が一万四千円、それから県営で九千円、計二万三千円という数字を出しました。二町歩経営しているその農家であるとすれば大変な額になるわけで、そういうものに対して、何を生産をして、一体どれぐらいで売れて、どれだけの収益があるかということになると説明がないということでは、これは疑問を持つのは当たり前だ。こういう指導では非常に困るわけであって、ぜひこの指導については、現地についてまともに説明をするように指導してもらいたいし、なお、県の方からは、この畑作地帯の補助金というか、国の予算が非常に少ないからこれについても自信を持って説明ができないのだというような話もあるので、これについては、畑作地帯におけるところの予算については格別な配慮をしてもらわないと現地はやりにくい、こういうことになっておりますので、この点についてお伺いします。
  108. 森実孝郎

    森実政府委員 霞ケ浦用水の国営事業につきさしては、公団事業と下流の地域の水路及び揚水機場の整備をやっているわけでございますが、事業の立ちおくれの御指摘もありまして、ことしから特別会計に振りかえますと同時に、対前年比で二七〇%という予算を、乏しい、マイナスシーリングの中でございますが、計上して、その促進を図っているところでございます。  この霞ケ浦用水の受益地域の負担額がどうなるかは実は地域別に非常に複雑微妙な差がございますので、一律に議論できませんけれども、国営、公団営合わせて年償還額が大体一万一千円程度、それから末端の県営、団体営を含めると、年償還額は反当大体二万円程度と考えられます。  そこで、御指摘がございましたいわゆる同意の徴集手続についての一つのトラブルの問題でございますが、どうも御指摘がございましたのは、県営の畑総を実施しておりました安静地区のことではないだろうかと思います。きのう御指摘がございましたので、早速に県当局に事情を聞いてみました。確かに、各集落ごとに、今申請人、中心になる申請者と関係区長等が、受益者に、集落ごとに同意徴集を行っているその手続き中だと聞いておりますけれども、何か非常に権利侵害に及ぶようなことがあったのではないかという御指摘については、今まで聞いた報告では、特にそういう事由はないとは聞いておりますが、これはよくわかりませんので、私もよく聞いてみたいと思っております。現在、集落の代表者と土地改良区が協力いたしまして、同意の徴集手続を進めているところでございます。十分納得のいく営農指導のめどなり事業の実施のスケジュールを示して、慎重に合意の形成に努めるよう留意をさせてまいりたい、思っております。私どもといたしましても、今日の御時世でございますし、なかなか予算も乏しい折でございますので、事業の採択に当たりましては、九〇%以上の同意がなければ採択しないという方針も実質的にとっておりますので、十分地元に営農のめどその他を示しながら説得するよう、指導するよう留意してまいりたいと思います。  なお、畑作云々の問題でございますが、ちょっと御質問の趣旨が私にも不明な点があると思いますが、私、実は昨年ですか、本委員会での竹内委員の御質問にお答えしたこともございますが、この受益地域というのは東京という大市場に近接した地域でございまして、その作目の種類、出荷時期等によって農家経営内容が非常に変わってくる、ある意味では非常に恵まれた地域でございます。それだけに、今までのような一般の畑作地域の営農計画のような大ざっぱなものではなくて、やはり農家御自身が考えていただく、あるいは何人かが共同して考えていただくという側面もあると思います。しかし、これはやはり何といっても土地改良の計画を考える場合、営農のあり方を考えるのは重要な前提でございますし、また、それに必要な技術的なアドバイス等もあると思いますので、そういう点はさらによく詰めて、十分な指導なり相談に乗れるよう、ひとつ県当局にも十分相談してみたいと思います。
  109. 竹内猛

    竹内(猛)委員 防衛施設庁が来ておると思いますから、ちょっとお伺いしますけれども、今島根県の出雲市の近くに新しい問題が起きております。  それは、陸上自衛隊の出雲駐屯地射撃場が、この二月の山口におけるところの乱射事件から始まって、いろいろと危険な状況にある。その射撃場の近くには県の農業試験場がありまして、この試験場には常に五十人ぐらいの研究員がおります。そういう中で、月に一週間ぐらいの射撃をしている状況の中で非常に危険がありますから、島根県の県労働組合評議会あるいは出雲地区の労働組合等々は、この陸上自衛隊の出雲駐屯地射撃場について撤去をしてもらいたい、こういう申し入れを知事にしております。  若干、この問題を読んでみます。   すでにご承知のとおり、出雲市下古志町にある陸上自衛隊出雲駐屯地射撃場は、県の農業試験場に隣接しているため、かねてより県の農試果樹園などで働いている職員や作業員をはじめ、周辺住民から不安が訴えられていました。とくに、本年二月二十七日、山口駐屯地で発生した自衛官乱射事件は、農試に働く職員や周辺住民に大きな衝撃をあたえたことも事実であります。   こうした新たな状況をふまえ、島根県評と出雲地評は改めて実状を調査した結果、昭和三十年頃につくられた射撃場の隣接地に、昭和四十一年十一月頃、県の農業試験場が設立されたという経緯があるにせよ、現状は農試の職員、作業員、周辺住民にこれ以上の不安をあたえることはできないものと判断されます。   したがって、射撃場の撤去については、射撃場設置当時より大きく環境がかわってきており、陸上自衛隊出雲駐屯地は、主として業務隊の役割をもつものでたえず演習を行う隊でないこと、とくに、駐屯地所在施設外の射撃練習場は、山口、岩手などごく限られたところで適切な場所がなく、止むなく駐屯地外に設けられている状況にあり、出雲駐屯地の場合とは大きく条件が異なっています。   毎月一回、一週間に亘って射撃訓練が行われることによって、その間、農試の作業は危険にさらされ、付近の民有地の山林にさえも住民は立入りを禁じられるという危険な状況にさらされています。   さらに、射撃訓練の状況も自由に見ることのできる環境下にあり、子供たちに対する教育上からも好ましい場所でないことも明らかであります。   こうした状況から、現在地にある射撃場を撤去すべきとの要請は、防衛庁にとっても当然理解されるものと判断されます。   よって、県当局として出雲駐屯地射撃場の撤去方について、中部方面総監部(大阪)及び防衛庁に対し要請するとともに、その実現に努力されるよう要請します。  これは島根県知事に五月二日に要請をしたものでありますけれども、防衛施設庁は島根県知事からこういう問題の要請があった場合にこれを移すことができるかどうか、この点についてお伺いします。
  110. 大原重信

    ○大原説明員 お答え申し上げます。  出雲の射撃場は出雲駐屯地の近傍に所在しておりまして、地理的条件にも恵まれておりまして、私どもといたしましては適地と考えております。私どもは昭和二十八年にこの地を購入いたしまして、以来、隊員の練度の維持向上のため重要な施設として有効に利用してまいっているところでございます。現在のところも移転する考えはございません。  今先生御指摘のように、県が代替地を提示した場合というようなお話もございましたが、ただいま県から具体的な御提案を受けているということでもございませんので、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。
  111. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題について、県が正式に移転の問題や何かを出した場合にはどうされますか。やはり移転をするということが言えますか。
  112. 大原重信

    ○大原説明員 お答え申し上げます。言い方が失礼かもしれませんが、仮定の話でございますので何とも答弁申し上げにくい話でございますが、仮にそのようなお話をちょうだいいたしましたといたしましても、御要望の理由にもいろいろございましょうし、また、代替地の提示があったといたしましても、私どもの利用の便もあることでございまして、話が具体的でない以上やはり答弁は差し控えさせていただくのが適当かと存じます。
  113. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう時間も来たからこれ以上そのことについては申し上げませんが、いずれこの問題は別な場所でやらなくちゃいけませんから、こういう問題が起きているということだけは防衛施設庁の方でもちゃんと記憶にとどめておいてもらしやがてこれは一つ運動として起こってくることは当然なことでありますから、考慮しておいてもらいたいということを要望をして、終わります。
  114. 阿部文男

    阿部委員長 武田一夫君。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、若干御質問いたします。いわゆる農振法、土地改良法改正につきましては、聞くところによりますと法案提出までにいろいろと当局の御苦労もあったようでございまして、各市町村を回りますと大方大変な歓迎をされまして、一日も早くひとつ頼むという声も聞くわけでございまして、その苦労に敬意を表すろわけでございます。私はあちこちの市町村を回りまして、この法案の成立が大臣も強調されるいわゆる豊かな村づくり、活力ある村づくりに大きく貢献する、その促進に力あるものというふうになってほしいと願うわけでございます。その意味で、各地でいろいろと関係者から御意見等やあるいは要望等お聞きしました。そういうことも踏まえまして、まず最初に大臣にお尋ねをいたします。  いろいろと読んだり話を聞いたりしておりますと、確かに豊かな村づくり、活力ある農村農業の再建とかという言葉は非常に耳当たりのいいさわやかな言葉でございまして、言葉だけ聞いていると非常に希望の持てる言葉でございますけれども、中身、いろいろとやる仕事等、これからなさることは非常に抽象的なことが多過ぎるんじゃないか、そういうこともあるわけでして、もっと具体的なものをしかと示してほしいという要望がある。それからもう一つ、予算的な配慮というのはどうなっているんだ、こういう御心配もありまして、そういう心配などを払拭しなければならぬし、その要望を聞き届けてもらいたいという意味で、大臣に、この点についてどのようなお考えでございますか、最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  116. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 我が国農業をめぐる厳しい内外の状況を克服しながら農業振興を図るとともに、村のすべての住民に生きがいの場を与える、また、一般の国民に対しては自然との触れ合いの場を提供したいという視点から、豊かな村づくり運動を進めておるところでございます。  農業の体質強化と活力ある農村を目指しました豊かな村づくりを同時並行的に進めるために、今回農振法及び土地改良法改正を提案しているところでございますが、予算面では従来の公共、非公共を通ずる地域振興のための各種の総合助成、そのほか新たに新農村地域定住促進対策事業、都市と農村の交流促進事業、林業地域活性化総合対策事業、これらの措置を講ずるための施策を総合的に推進してまいりたいというぐあいに考えております。  詳細につきましては政府委員の方から御説明申し上げます。
  117. 森実孝郎

    森実政府委員 今回提案さしていただいております改正法案が通りました場合、市町村の農振計画がそれぞれ地域の実情に応じて手直しされるわけでございます。そういった過程でどういうふうな具体的措置を講じていくかという問題は、時間の経過とともに固めていかなければなりませんけれども、基本的な姿勢といたしましては、まず法の改正措置の円滑な運営の徹底を期していくということがございます。  それから第二は、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、特に生活基盤に関する事業、生産基盤に関する事業、こういった公共事業、それから構造改善や定住促進対策や山村振興に代表されますような地域の総合助成事業、こういったものについては、こういう計画樹立市町村については優先採択とか進度是正等、事業量の調整等を考えていかなければならぬと思います。  第三は、こういった計画をつくっていく過程で末端から具体的な要望というものが出てくると思います。こういったものをもう一回フィードバックいたしまして、今の予算制度の見直しなり新しい施策の樹立ということにも努めていかなければならないと思います。  それ以外に、例えば文化教育施設の問題であるとか一般の市町村道の問題であるとか、あるいはさらに治水工事等の問題もあると思います。こういった問題については、関係各省とも密接な連絡をとりながら、計画に沿った施策の推進、協力について特にお願いしてまいりたいと思っているわけでございます。
  118. 武田一夫

    ○武田委員 これは集落にいろいろと負担をかけるというか、中心が移っていく、こういうふうに思いますね。そうすると、やはり細かいものがどんどん出てくると思います。今、局長がそういう末端の要望はいろいろと聞いて適切な対応をするということですから結構ですが、市町村にとりまして、そういうものの取捨選択等、大変苦労すると思うのです。また、担当の課とか係も御苦労なさると思うのです。ですから、そういう意味でやはりそういう御苦労が、これは実ればそれにこしたことはないのですが、私は、ぜひそういう苦労が実って、農村やそういう山村地域振興や活力ある農村の建設に大いに貢献してもらいたいと思うのです。  そこで、今までたくさんいろんなことをやってきましたね。例えば昭和五十二年から始められたのが地域農政特別対策事業、それから五十三年は新農業構造改善事業、五十四年が地域農業生産総合振興事業、そして五十五年は地域農業組織化総合指導事業、その間に地域農業振興の計画としては農業振興地域整備計画がございます。それから五十六年度がこの農用地利用増進特別対策事業、さらに今度は、五十九年からいわゆる市町村農業振興地域整備計画にかえて、要するに新計画事項を含めた農業農村整備計画の策定を進める。その間にまた、五十七年の三月までで全国で三千六十二地域農業振興地域というのが指定された。そのうちの三千五十九地域では農業振興地域整備計画が作成され、それでその計画の中の約五百六十八万ヘクタールが農用地区域として指定されている。いろいろと御苦労なさって、毎年のようにいろんなことをなさっていただいております。  しかし、これが果たして全部思うとおりの成果を上げているのかという、追跡調査というとおかしいのですが、経過がどうなって、その結果、この地域はこれを利用したらこういうふうな立派な農村となって、活性化のあるそういう地域農村社会になっているということは余り多く聞かぬわけです。この間も、そういうモデル地区というのはどのくらいあるのか、例をちょっと教えてもらえないかと言ったら、十か十五持ってきてもらったのですが、もっともっとこの辺がうまく運用されて効果的に働いているならば、いろいろとそういう要望も確かに多いわけですが、要望の結果行った事業の成果というのが、五十二年、三年とこうなってきているわけですから、あらわれていると思うのですが、その実態といいますか、その辺はどうなんでしょうか。
  119. 森実孝郎

    森実政府委員 従来、各種の地域振興を図るための総合助成事業を実施してきております。  これは、大きく分けますと三つになるだろうと思います。  一つは基盤整備の問題でございまして、これは土地改良事業の予算をどう進めていくかということでございます。具体的には、やはり今日の社会的需要を受けとめまして、特に生活基盤の整備に関する集落排水とか農道等の事業等が最近その比重を増しておりますし、これは受けとめていかなければならぬと思っております。これについては、率直に言いますと、新規の御要望が非常に強いのをできるだけ抑えながら、どうやって継続事業の完工を図るかということが今の課題だろうと思います。  それから第二のテーマに属する問題は、やはり構造改善事業及びこれに関連する一連の事業でございます。これにつきましては、逐次予算の統合整理を進めてきて、かなり予算の本数は減らしてきているつもりでございます。やはり三次構の後期対策から土地利用型農業の構造改善に重点を置いて投資をするということで、はっきり申し上げると、施設利用型の農業については、土地の利用改善につながる場合以外は原則として認めないと同時に、従来は、いろいろの反省もありまして、どちらかというと、構造政策というか、土地の利用集積なり何なりを進めることを前提に土地改良やそういうことをやるという形をとっておりましたが、むしろ土地改良事業である程度物的条件が整備されたところにそういった助成事業の仕上げをするという運用に逐次改善しつつあるわけでございます。  三番目は、例えば山村振興法その他の特殊立法に基づく地域振興施策でございます。その中で代表的なものは山村振興対策事業であり、それから先ほど大臣からも御説明申し上げました定住事業でございます。これらは、どちらかというと山村並びに中山間地帯で過疎化、高齢化が進み、雇用機会の少ない地域でございます。こういった地域につきましては、村づくり考える場合におきましても、いわゆる農業自体の構造改善もさることながら、やはり農業生産の複合化を重視しなければならぬし、他の就業機会の確保という問題のための事業、例えば地場産業の育成等を図ることや、地域の特殊性に応じた生活環境整備という問題に取り組んでいるわけでございます。  私ども、予算全体は厳しい制約があるわけで、予算の柱がふえたからそれで施策が充実するというふうに安易に考えるべきではないし、何といっても予算の確保を図ると同時に、一方においてはやはり予算の重点的、効率的実施を考えなければならぬ。そういう意味におきまして、今回の法制の改正を契機といたしまして、市町村がつくる農振計画をより包括的な内容のあるものにすると同時に、各種事業の実施をできるだけその計画に即して行えるよう、採択の問題とかあるいは事業進度の調整等を進めることによって効果を図っていくという考え方に立っているわけでございます。
  120. 武田一夫

    ○武田委員 次に、こうした事業、いろいろな仕事を進めるためには、やはりその地域の方々の中に熱心な方々、優秀な指導者等があればおるほどよくなっているのは事実でございます。ですから、町当局を含めて担当の職員等々、当然のことながら農協やあるいは農業会議皆さんやあるいは共済組合等々、いわゆる農業関係のあらゆる機関等の一つの大きな結束というものが必要でふる。私の宮城県などにおきましても、そういうところは何カ所かございまして、行ってみればそれなりにはっきりした成果が出ている。コミュニケーションのうまくいっているところはいいわけであります。そういう努力をしている方々を見かける反面、なかなかいろいろなことでそれがうまくいかない地域もあるということであります。ただ、その際、いろいろな話し合いをするときに、ちょっと地域皆さん方の話の中で、例えげ土地改良区の中に農業会議のメンバーの代表を入れて、それでよく話し合いをしながら仕事を一層円滑に進めるとか、またいろいろな調整の相談がそこでスムーズにいくとか、あるいは反対に今度は農業会議の方に土地改良の方々の代表が行くという、そういう交流といいますか、人事の交流等も必要でないかということもございます。こういうことがもし許されて、それによって一層こうした事業が円滑に進むならば、そういう方面、もし法的に改めるべきものが改められるならば、この点もやはり配慮してあげたらいいのじゃなかろうか。  それからもう一つは、いわゆる経営移譲をやりますと若いお年寄りが出てくるわけでございますが、六十歳で経営移譲ですから、六十過ぎてなおかくしゃくたる方々がそういう経営移譲をすることによって、いわゆる各種団体土地改良とか共済組合等々の役職から外されてしまう。これは毎々いろいろと問題になっておるわけですが、そういう方々を遊ばせておくという法はないじゃないか。経験と知識等々を生かしたそういう英知を大いに農村振興、活力ある村づくりに生かすという面で、そういう方々の組合員としての資格の面の配慮もしていってほしいものだ、こういう声を聞くわけでございますが、この点についての当局の御見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  121. 森実孝郎

    森実政府委員 御質問がありましたうちの、まず各種農業団体関係団体参加の問題でございます。私も委員指摘のとおりだろうと思います。  そこで、現実には県の農業会議には土地改良区の代表は、実は東京都以外は全部参加しております。私どもといたしましては、やはり基本的には、例えば市町村段階における農業振興計画を樹立する際におきましても、こういった関係団体参加を求め意見を聞くようにするように、十分行政指導をしてまいりたいと思っております。特にこの今回の村づくりに関連する法案の前提となっております地域農業集団育成については、この点は非常に重要だと考えておりますので、市町村長リーダーシップのもとに関係団体すべてが参加して協議会をつくって推進を図ることを、市町村段階においても県段階においても進めるよう、明確な指導を行っているところでございます。  ただ、多少特筆する点を申しますれば、そういった指導の末端における指導者にだれがいいかという問題になりますと、必ずしも団体の機能分化どおりにはいかない。地域によって農協の営農指導員に適任者がいる場合もあるし、土地改良区にも適任者がいる場合があるし、それから農業委員農業委員会の書記の人にはもちろん適任者が多い。そういう意味で、地域の実情でその指導員の選定は市町村長の判断に任せる措置をとっているわけでございます。  次に、資格の問題でございます。  土地改良区の、共済組合の資格の問題でございますが、まず土地改良区につきましては、農業年金との関係において、経営移譲を行った場合においても農業委員会の承認を受けて資格の交代を行うことを認めております。この点につきましては、こんなことを申し上げて恐縮でございますが、特に宮城県から強い御要望がございまして、昨年通達を出しまして農業委員会の承認を受けて資格交代を行う道を開いております。  それから共済組合につきましては、これは農業経営を営まない者を組合員とするということはなじまない本質がございますが、理事の定数の四分の一以内及び監事については組合員以外の者も役員となることを認めておりますので、この運用で対応できるものと思っております。
  122. 武田一夫

    ○武田委員 それから、いろいろな法によって余り縛り過ぎるのも困るというわけですが、これも確かに一つの議論ですが、農家にとっても困る。特にお役所、役場なんかは、余り厳しい規制がありますと手続の問題で非常に大変だ。例えば線引きの許可とかあるいは転用のための許可など、時間がかかり過ぎる。これは結局、役場の担当の方に農家皆さんがやんややんや来られると、そればかりが仕事でないということもございまして、これは相当頭が痛い問題です。ですから、今回のこの法案改正によっていろいろと合理化あるいはまた簡素化等々もあるようでございますが、こうした煩わしさを除去してやるというものであってほしい、こういうことでございますので、この点の御配慮をひとつしていただきたい。この点についていかがですか。
  123. 森実孝郎

    森実政府委員 武田委員指摘のことは私もよく耳にしておりますし、わかる点もございます。これはなかなか難しい問題がありまして、また逆の立場の御議論もありまして、私どもも時々絶句するような状況がある場合も少なくないわけでございます。  私ども、やはり基本的には農振法の線引きの問題も農地転用の許可の問題も、その転用なり線引き除外というものが、目的に即して位置としてやむを得ないかどうか、それから国の農業投資、長期にわたる土地改良等の長期投資にかかわる土地でないかどうか、それから何よりもまず水利用、土地利用のスプロールをもたらさないかどうかということが基本だろうと思います。そういう意味において、やはりそういう基本線を堅持しながらも、その除外の手続の問題、それから転用許可事務の処理の迅速化という問題につきましては、この際また改めて私どもも検討いたしまして、必要な指導を行いたいと思います。
  124. 武田一夫

    ○武田委員 よく地元の各市町村の相談に乗って、ひとつ親切な対応をしてほしいなとお願い申し上げます。  次に土地改良の問題に移りますが、豊かな農村の建設といっても、肝心の優良農地がないということになればこれは大変なことでございます。その意味で、やはり優良農地を減らさない、ふやしていく、これは大事なこと、それから不良であったらいろいろと手をかけて優良なものにしていく、二つの面が考えられると思います。  ところで、農用地区域内の農用地は、当然積極的に農業振興を図る上で守りながら大事にしていかなくちゃいけないと思うのでございますが、どうもその中における遊休農地というもの、すなわち、いわゆる耕作放棄やあるいはまた不作付、全然作付をしないというような、そういう農地がふえているということでございますが、その実態はどうなっているものか、それでその原因としてどういうものが考えられるか、この二点についてまずお答えをいただきたいと思います。
  125. 森実孝郎

    森実政府委員 五十五年のセンサスによりますと、不作付地、つまり過去一年間作付しなかった田畑から今後数年間も耕作する意思のないものを除いたものでございますね、つまり、一時的に不作付地のものが十八万四千ヘクタールございます。それから別に耕作放棄地、つまり過去一年以工作付せず、今後数年間も耕作をする意思のないものが九万二千ヘクタールございます。前者は田が十万五千ヘクタール、畑が七万九千ヘクタール、後者は田が二万五千ヘクタール、畑が六万七千ヘクタールでございます。  そこで、不作付地の問題につきましては実は五年ごとにセンサスを実施しておりましてトレースをしておりますが、これはむしろ減ってきております。これは、減りました理由というのは、実は水田につきましては休耕がなくなった、水田利用再編対策では保全管理もごく限定的であるという事情が反映していることと、畑につきましては限界地における飼料作物の作付が増加したことによるものだろうと思っております。  私は、不作付地自体についてはトータルとして見ますと、ずっと時系列的に追ってみてもそうふえているという状況ではないと思います。問題は耕作放棄地だろうと思います。耕作放棄地の問題というのは、実はセンサスが五十五年から始まりまして比較するものがございません。そこで、どういう動向になるかを断定的に申し上げることはできませんけれども、まずその特徴を申し上げますと、全国的には約一・九%、北海道は二・二%、都府県が一・九多でございますが、その中では東北が一番率が低く、中国地方が一番率が高いという数字になっております。また内容については、実は四分の三近くが畑でございます。こういったことから推察いたしますと、まず、私が申すまでもなく、明治以降限界地の耕地と林地との間には絶えざる移動があることは事実でございまして、農地が林地になり、林地がまた開墾されて農地になるという状況がありますが、こういった点で非常に流動している問題だろうと思いますけれども、これを今後どう考えていくかという、その対策を考えることが非常に重要ではないだろうか。  私どもといたしましては、やはり二つの面からアプローチしていく必要がある。限界地の利用度の低い畑地あるいは耕作放棄が行われている畑地については、端的に申しますと畜産中心とした中核農家による飼料作の導入ということを指導されることが重要だろうと思います。そういう意味において、そういったいわゆる中核農家群への利用を地域農業集団育成を通じて誘導するための努力を特に重視したいと思いまして、昨年の通達においても耕作放棄地の解消ということを一つの柱として掲げているわけでございます。  それからもう一つは、やはりこういった限界地における圃場条件の整備という、土地改良の推進だろうと思います。そういう意味におきまして、従来からも中山間地帯に対する採択基準とか補助率等の配分を考えてまいりましたが、これからも畑総の事業とか構造改善事業その他の非公共の基盤整備事業の活用等を通じて、そういう条件改善には努力を続けてまいりたいと思います。
  126. 武田一夫

    ○武田委員 その理由には、今局長が言った基盤整備の問題が大きくかかわってくる。そのほかに経営の縮小等々もあるとか言いますが、基盤整備というのが一番大きなポイントではないか。また、十年間農業所得が非常に伸びた地域を見てみますと、やはりその一つに基盤整備の問題が入っている。そのほかに中核農家が多いとか、あるいは複合経営をやっているとかと言いますが、やはり基盤整備ということになってくる。  そこで、今一つ問題になっておるのは平たん地ですね。整備はどんどん進んでいるのだけれども、結局山間地域とか点在した地域の基盤整備が非常に難渋している。これをどうするかということで苦労している地域がふえているのも事実。我が地域などでもそういう地域が点在しているということでございます。特に、五ヘクタール以上のまとまりがないと基盤整備の対象にならないということの悩みがありますが、こういう点の適切な対応をしながらそういう地域取り組みをしていかぬと、特に山間地域の方々は経済的に非常に弱い基盤である。しかしながら、その中には農業をしっかり守っていきたいという方々もいることを考えますと、ここに対するてこ入れも相当重要な今後の課題になっていくのではないかと思いますので、この点につきましての当局の見解、お考えをひとつ聞かしていただきたい、こう思います。
  127. 森実孝郎

    森実政府委員 確かに、北陸の平場、南東北の平場のように水田の整備率が進んだ地域については、むしろこれからの事業というのは生活基盤の整備等に重点がかかってくるんじゃないだろうか。逆に、西日本その他の中山間地帯で整備水準のおくれているところにいわゆる圃場整備等の予算の重点配分が行われる姿になることは、これから当然のことだろうと私は思います。山間地域等自然条件の制約のある地域につきましては、従来からも補助率の特例とか採択要件の緩和も行っておりますが、やはりこれらの地域にふさわしい事業を準備することが重要だろうと思います。私、先ほどの答弁で間違った答弁を申しました。畑総ではございませんで、土地総でございます。そういう意味においては、土地改良総合整備事業はこれから非常に重視していかなければならないと思っております。  それから規模の小さい地域においては、構造改善事業、山村振興事業による小規模の基盤整備の非公共の事業の活用が非常に重要だろうと思います。今後のそういった地域総合振興施策におきましては、基盤整備分というものを相当重視した運用を図ってまいりたいと思っております。
  128. 武田一夫

    ○武田委員 また基盤整備について少しお尋ねをします。  負担が年々ふえてくるということの不満といいますか、心配。それから、そういう話を聞くものですから、若い連中がなかなか渋って応じてこないという傾向もある。基盤整備の場合の負担とそれ以降の維持管理等の問題もございまして、今後はこの点についての対応ということをちょっと考えなくてはいけないのではないかな。特に二兼農家の中には、そういうことに非常に抵抗を感じまして、話し合いになかなか乗ってこないという傾向が見られる。九〇%がオーケーしても一〇労ががっちり固まって、それがこんがらかって一つの問題になっているというケースもある。この問題が担当者にとっては非常に頭の痛い問題。これをどういうふうに今後処理していこうとするものかという問題についてお尋ねしたいのですが、いかがでしょうか。
  129. 森実孝郎

    森実政府委員 これは、実はなかなか難しい問題だろうと思います。土地改良事業自体が地域の共同事業としての側面を持ち、公的側面もありますが、やはり私益につながる、財産権の形成等に直接つながるという本質を持っておりますので、受益者負担という今の仕組みを維持していかなければならないと思います。また、補助率等につきましては、いろいろ御批判はあるとは思いますが、現在の国の補助体系というものは他の事業に比べて最も優遇された体系として準備されておりまして、今日の財政状況のもとでそれを手直しすることにはなかなか難しい問題があるだろうと思います。  御指摘のように、跡取りのない老齢農家とか、それから全く農業に関心がなくなった兼業農家か、そういった方々の間に参加に消極的な面もある。逆に、実はもう一つ困っておりますのは、中核農家は工法等は非常に簡易化して割安の工事を期待するのに対して、圃場整備になりますと、むしろ兼業農家が資産的側面に着目して非常に立派な整備を要求する。そういった非常に難しい周囲があります。  率直に申し上げて、これを一刀両断的に解決する名案はないと私は思いますけれども、一つは、中核農家への利用集積を進めながら、中核農家の負担なりイニシアチブのもとに問題の解決が得られる体制をとることと、それから営農問題についての時間をかけた説得努力を続ける以外にないと思います。  当面の問題といたしましては、こういう時期でもございますから、私はむしろ三分の二の同意というふうな強制を考えませんで、九割以上の同意をとるという指導方針を堅持しながら、不満があれば一応地区除外してかかって後からまた考えていただくというふうなやり方もせざるを得ないだろう。まことに歯切れの悪い答弁で申しわけございませんが、現実はそういったいろいろな対応左積み重ねる以外にないのではないかと思っております。
  130. 武田一夫

    ○武田委員 これは本当に難しい問題ですから、関係者にはいたく同情をするわけですが、中には強引にやっちゃって、変な圃場整備をやっているところも出ているわけです。この点、よっぽどの話し合いとバックアップ的な指導を粘り強くやっていくことが必要だと思いますので、今後その点の努力も当局としてお願いしたい。  それから、最近また、補助制度を一挙になくすのは抵抗があるけれども、超長期の超々低利という形の融資の方も一考すべきでないか、農業というのは昔は三十年一期とかいう言葉があった、今は五十年、親子二代くらいの返済による、二%くらいの思い切った融資をやることが、圃場整備等基盤整備にまた大きな弾みをつけるのじゃないかという御意見がある。これは土地改良等、農業の問題にかなり見識の高い方々の中にこういうことが言われている。私もあちこち聞きますと、最近、ここ二、三年そういう話が出てくるだけに、この点のお考えも検討していただければどうか。その中で二兼農家に対する特別の配慮として、偶人的な資産として農地を持っているという傾向もありますけれども、国家的な、大事な農産物をつくる基盤だということでしっかりと守っている、こういう農家も多いわけでありますから、そういうところの配慮も踏まえて、こうした方向への踏み出しもひとつ検討なされてはどうかなと思うのですが、御意見を伺いたいと思います。
  131. 森実孝郎

    森実政府委員 土地改良事業につきましては、公共的性格と共同事業として展開されているという社会的本質から見まして、基幹的な工事については私は補助事業として維持せざるを得ないのじゃないだろうかと思います。確かに一部にごく超長期低利、例えば二%の金利で五十年とかなんとかというふうな御提案があることは私も知っております。ただ、問題は、財政の立場からの議論といたしまして、こういった超長期の低利融資は補助事業以上にかえって負担をふやす、特に後年度負担をふやすという問題がありますし、それから日本制度金融自体が、実は我が局と申しますか、構造改善関係でやっております土地改良とへあるいは農地取得資金とか災害資金等が最も優遇された制度金融の一つ、これは人間がつくった三のではございますが、日本制度の中では一番頂遇された形になっている。そういう点から考えると、現在以上に優遇した制度金融をつくるということは、後年度を含めた財政負担のあり方なり議論としても、また制度金融の均衡論からしても非常に実現不可能な面があるということは御理解を賜りたいと思います。  私は、やはり今の三分五厘融資を小規模なものに積極的に活用していただくことは非常に重要だと思いますが、実は三分五厘融資もむしろ補助事業に押されて余り売れ行きがよくないというふうな状況もありまして、今のところ現実的に可能な制度金融として考えられるもので補助事業に切りかえる有効な手だてがないというのが現状ではないだろうかと思います。
  132. 武田一夫

    ○武田委員 それからもう一つ問題なのは、計画期間中に完成しないということです。これがまた一つの大きな問題です。計画というのはきちっとやって計画が成り立つわけですが、どうも何カ年計画というのは大体計画倒れが多いのです。基盤整備だけはあらゆるものの中でやはり優先して、どんなことがあろうともきちっとやっていくんだという一つ方向があり、実績があれば、そうまたいろいろとトラブルが出てくることはないんじゃないかと思う。  そういう点では、大臣、この点の予算はことしもちょっと削られましたよね。これはとんでもないことだと思うのです。一生懸命そういう農村づくりをやろうというときに、いわゆる土台がそういうふうになっていけば、何じゃまたそうかと言って、後々の不安というのはすぐぱっと頭に出てくる。これは私は一番のネックだと思うのですが、今回はこれとしましても、来年、再来年という中でしかと間違いなく計画の中でその地域事業は達成できるんだという取りつけを私はしていかなくてはいかぬ。この点、私は大臣にしかと答弁いただきたいと思うのです。
  133. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 御指摘のとおり、確かに計画がおくれております。五十八年度を初年度にしまして、第三次土地改良長期計画、三十二兆八千億ですか、これが五十八、五十九両年で一一%ということで、計画よりかなりおくれております。  しかし、御存じのとおりの厳しい財政事情でございまして、その中で何とかこれを有効的に使おうということで、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたが、新規採択というのはできるだけしないようにして、実効が上がるような地域へ集中的に予算を回して、効果の上がるようなことをやっていくということでございますが、何にしても一番のもととなりますのは予算の獲得でございますので、今後とも予算獲得には力を入れてまいりたいというぐあいに考えております。
  134. 武田一夫

    ○武田委員 ひとつ頑張ってほしいと思うのです。特に私は宮城県、東北ですが、食糧供給基地として三全総、四全総、四全総もまた恐らくそういうふうに東北、北海道はその中の一つの大きな明確な位置づけをすると思うのですが、そういう一つの大きな使命を抱えた重要な地域が特におくれている。それが私は非常に心配でございます。その点も十分よく心にとどめていただいて頑張ってほしいと思うのです。  それからもう一つ農村地域でこれからいよいよ大事になってくるのは環境整備。どんどん都会化の波が及んできまして、農村地帯にいろいろな文化的な施設、設備等が出てくる。その中でやはり一番問題になってくるのは、私は下水道だと思うのです。トイレが水洗化されてないということは、やはり若い女性、特に嫁さんが来ないとかという一つのネックにもなっているという原因にもなっているということでありますが、快適な生活、しかも安全な生活を農山村漁村というところに大きく展開していかなくてはいけない。そういう要望が強い。そこで、下水道の普及率というのは御承知のとおり日本は世界的にも非常に低いわけで、五十年度末で二三%。建設省はこれを六十年までには四四%まで普及する、そして七十五年でしたか、二十一世紀の初頭には市街地では一〇〇%。これはいいんですが、農山村漁村を含む総人口の九〇%まで普及率を上昇させるという計画で予算を考えているようでありますが、そのとき、例えば四四%の普及率のときに農山村漁村でどの程度農林水産省としてはそういう下水の普及を考えているのか。これは、建設省に任せておけというだけでは私はいかぬと思う。このくらいまで持っていかぬといかぬなという一つのお考えや計画があってしかるべきだと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  135. 森実孝郎

    森実政府委員 下水道の普及率自体は、現在大都市が六八%、町村は一・五%でございます。建設省が考えられております第五次五カ年計画を達成した場合においても、町村部の普及率は二%程度という状況でございます。下水道の整備という問題は、今日の社会生活、家庭生活から考えると私は不可避な事業であり、委員指摘のように嫁の来手がないという議論にも、農村の構造の問題として直結している問題の一つだろうと思います。  そういう意味で、私ども実は十年前に集落排水事業農林省自体もやりたいということで制度化いたしまして、大体千人以下の集落を対象として農林省が実施しようということでやっております。今回、土地改良法改正の中でまたその改正をお願いしているわけでございます。ただ、私ども率直に言いますと、予算自体は急速にふやしてきておりますが、急速にふやしてきたといっても、まだ事業費のベースで申し上げますと百億程度の事業でございます。率直に申し上げまして、まだ計画をつくってここまで持っていくというところまでは来ておりません。しかし、重要性を認識して、まさに今回の法制改正もお願いし、予算の乏しい中での重点配分を考えているわけでございまして、今後一層の努力を続けてまいりたいと思っております。
  136. 武田一夫

    ○武田委員 五十年度から始まった特定環境保全公共下水道事業ですか、これは農村部に関係ありますね。五十七年度八十四カ所、こういうようなところを建設省や環境庁とよく連携をとりながらもっとふやしていくとか、そういう地域、特に農用地のしっかりとした基盤のあるようなところで雑排水等による公害等が発生しそうな地域などを丹念に調査しまして、そういうところを重点的にふやしていく。その中で下水道との結びつきを考えていく。五十年度から始まったこの事業は、農林水産省がもっと建設省の方との連携でバックアップしながらやっていくべきではないか、私はこういうふうに思います。  今、どんどん宅地化が進んでまいりましたね。地域で、それはもう農地が侵食されている。一たん侵食されたら、その地域はまた新たに農地が侵食される。そこは大体平場の優良な農地です。こんなことをされていったのではたまらぬということが農家皆さん方の率直な考え。しかも、出てくるものはみんな上の方からであって、多くは都市の、あるいは工場等のそういうものが多いということもあるわけでございますから、やはりこの点の重点的な予算の取りつけに努力をしてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  137. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、建設省所管の予算、特に特定環境保全公共下水道の整備につきましては、私ども、やはりそれぞれの農村地域社会実態に応じてできるだけ事業で取り組んでいただけるように努力したいと思います。また私どもの集落排水事業、これは純農村中心になりますが、こういったものについても予算の拡充には努力してまいりたいと思っております。
  138. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、安定的な雇用機会の確保を図る、これも頭の痛い問題です。三全総におきましても、定住圏構想の中で、やはり農山村地域に若者を確保するためということで、この問題は強く力を入れてやってきているけれども、今、工業の導入はもうさらさら無理だと市町村も思っている。来そうもない地域が多い。今までは確かに有利な税金の面とか、土地提供するとか、いろいろなことで努力して、ある程度これは少しいい空気に向いてきたかなと思うときがあったけれども、ここ二、三年はそれはもうなくなってきてしまった。そのために、若い連中は今までよりも都市の方に逆流しているという地域も出ている。いわゆる過疎対策というのが、何かこの二、三年どんどん逆流しているような感じがする。  それにもう一つ、不景気なものですから、特に公共事業が非常に少ない。日雇いとかあるいは出稼ぎ、こういう方々にもろにかぶってきている。我々は、早く前倒しをやって地域の中小零細企業の皆さん方が仕事が持てるような、そういう取り組みをしなければならぬぞ、こう言っているのだけれども、なかなかそれが思うようになっていない。特に寒い地域など、これから出されて夏ごろ来られても、すぐ冬に入ってしまう。こういうことを考えると、これは建設省に相当言わなくちゃならぬ部分もあるのです。  働く場所を確保するために、いろいろと市町村努力している。地場産業を振興せよとか、そのために一・五次産業をどうせよとか言っているのです。あるいはまた観光産業との結びつきで考えろとか言っているのですが、なかなか思うようにいかぬですが、何か名案、局長どうですか。     〔委員長退席、衛藤委員長代理着席〕
  139. 森実孝郎

    森実政府委員 名案と言われましても、名案の出るような話ではないと思いますが、一つは、私どもいろいろ実態を調査してみますと、市町村長さんが中心になって村ぐるみ取り組んでいくというところがやはり出稼ぎ、日雇いの解消に非常に役立っている。ですから、同じような立地条件でも、やはりそういう村当局の取り組みの姿勢によって非常に差が出てくるという事実がございます。私どもといたしましては、そういう意味で、今度の農振法の改正でも、就業の改善という問題をいわゆる市町村の計画に盛り込むことによって村ぐるみで体制づくり考えたいと思います。  内容といたしましてはどういうことを考えるかということについては、大きく分けますと、一つはやはり工業を中心とした企業誘致だろうと思います。委員指摘のように、工業導入もおくれてきておりますが、実は五十年代の前半よりは、最近二、三年は幾らか回復の兆しはあります。これからはやはり、はっきり申し上げると遠隔地であること、それから広域的な配慮での導入であるということが必要だろうと思います。そういう点に重点を置いて農山村地域への工業導入に努めたいと思います。また、産業構造の変化に応じて、工場という限定ではなくて、やはり広い意味での企業活動の誘致ということが言えるのではないかと思っております。  それから二番目は地場産業の育成でございます。  この場合、やはり農林水産物の特産物を生かした加工等の地場産業の育成という問題と、それからもう一つは、天然資源を生かした観光事業育成ということがやはり非常に重要だろうと思います。これから消費者の行動半径も広くなるし、意識も多様化する時代でございますから、やはり付加価値の高い、むしろ高級品イメージを持った特産物をつくって、そのマーケティングをいろいろ新しい手法で考えていく。あるいはむしろその地域に、単なる従来の観光旅行の旅行地ということから一歩進んで、ある程度都市の方に一時的にあるシーズンならシーズン住んでいただくような、ライフサイクルのある期間は住んでいただくような、そういう広い意味での天然資源を生かした地場産業の育成に努めたいと思っております。  そういう意味で、実はことしから制度化いたしました新しい定住事業においては、そういったための施設整備以外に、やはり技術的な知識の修得とか情報提供が重要だと思っておりまして、そういうソフトの関係の予算も助成対象に加えているわけでございます。  それから三番目の問題は、やはり農林省から通産省や労働省、特に労働省の地域別雇用調整政策にいろいろお願いしていくことがこれから大事だと思います。労働省の地域別雇用調整政策もこの数年間かなり充実されてきていると私は思っております。そういう意味においては、その制度の充実なり重要地域への適用ということについて、具体的な末端の要望を聞きながら取り組んでまいりたいと思います。  最後に、公共事業の前倒しの問題でございます。  公共事業の施行につきましては、閣議決定の線に従いまして、地域経済情勢に十分配慮して機動的、弾力的施行を行うことになっておりまして、現在、農林水産省関係の公共事業全部につきまして自治体と連絡をとりながら前倒しを考えているわけでございますが、少なくとも五十八年程度、五十八年度の上期の契約率の目標は七五・五%となっていたわけでございますが、この五十八年程度の契約率になるように、今運用を詰めているところでございます。
  140. 武田一夫

    ○武田委員 その時期の問題、早くやってくださいよ、急いで。  それから地場産業の問題ですが、この地場産業はその地域の人の顔になっていく必要がある。一村一品運動などという一つの例もありますが、確かに各市町村で一生懸命努力して、そこに各農業団体の方々も加わってやっているところでは、いろいろなものが出ています。これはもう事実。しかしながら、同じものが出てきた場合にその調整をどうするかという問題等、これはこれから出てきます。一つのものだけ独占的にやればいいのですが、その地域でこれがいいというと、日本人の悪い癖でまねをする、おくれたものが困ってそれが御破算になってしまうというケースもある。こういう点の指導というか、アドバイスというのをきちっとやってほしい。  それから、いろいろと情報提供とかあるいは技術の未熟なのを補うための技術の点のてこ入れ、あるいはまたもう一つ、原材料の確保の問題とか、地場産業を大きく伸ばすためにはそういう条件も整わなくてはいけないということでいろいろ苦労しているけれども、いまだそのための力不足の市町村も多い。そこにどういうふうな手を加えるか。地場産業振興センターなんというのもあるようです。これは通産の関係でしょうね。ところが、これも地域によっては非常に西の方に偏っているのです。こういう点がおくれているのは皆さん方もわかるわけだから、どうなんだとひとつ声をかけてやる。例えば西日本、九州やあの辺なんかではこれを利用してかなり観光と結びつけながら、農林水産業のいろいろな業種をミックスしながらうまくやっている、付加価値の高いものをつくっているというケースもある。東北はそういう情報はなかなか行かないのか、あるいは不勉強なのかわかりません。そういうことで、そういうところの情報の幼稚さといいますか、そういうものも中心にいてよく見ている方々がそれなりにボールを投げてやるというバックアップが必要だ、こういうふうに思います。  いずれにしましてもそういう一つの対応をよく指導していただきたい、こういうふうに思いますので、その点、今後しっかりとお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  141. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のとおりだろうと思います。  経験的に言いますと、やはり地場産業の育成というのは、どうやってニーズに合致した商品をつくり出していくか、また逆に新しいニーズをつくり出していくかという問題だろうと思います。経験的に申しますと、例えば地方空港の整備が観光開発なり地場産業、特に農林水産物を原料とした地場産業の育成に非常に貢献しているという経験的な事実も顕著にあるわけでございます。私どもといたしましては、地場産業の育成あるいは地場の観光開発に当たっては、やはりまず自発性の引き出しということと、それからもう一つ技術経営能力を有するリーダー育成ということ、それから個性のある付加価値の高い新製品の開発、地域ブランドの確立という問題、それからもう一つは物産展の開催とか宅配とか通信販売とか、そういう新しい流通形態への取り組み、さらに情報のシステム化等が非常に大事だろうと思っております。先ほども申し上げましたように、新定住事業におきましてもそういった技術の習得とか研修というソフト事業の実施等については特に重視しているのもそういう点でございます。  なお、特に地域農林水産物の利用の高度化という問題については、先ほど食品流通局長からもお話ございましたように、ソフト事業、ハード事業一体にした助成事業を実施しているのもそういった点でございます。何といってもこれは末端の動きを受けとめて、それをポテンシャルなものからリアルなものにしていくということが大事だろうと思いますので、そういう行政努力を各局共同いたしまして進めてまいりたいと思っております。
  142. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、時間になりましたので、先ほど日野委員が取り上げた土地改良にかかわる話ですね。  私も、我が宮城県でちょっといろいろともめたものですから、えらく気にしていた。そうしたら、最近、政治連盟をつくっちゃった。町長や村長や市長が入っている。一口一万円とかなんとかという金を出すんだ。土建屋さんが多い。仕事がないものだからこれはやっちゃったな、こう思っている。これに問題があるのは、聞いてみたら、やはり選挙を応援したから補助金の割り当てのときに余計やるとか、応援しなかったから少なくやるというような話をしているわけね。こういうこと、御存じですか。
  143. 森実孝郎

    森実政府委員 いろいろ末端においてそういう話が行われていることを私も仄聞いたしまして、また、何人かの先生方からも伺って、厳重に反省しております。  私どもといたしましては、乏しい予算の時代でございますので、やはり公正な配分を考えなければならぬ。そういう意味においては、前年の予算との伸び率、それからもう一つは地元の、ある程度県で調整していただいておりますから、県の要望額との関係、それからもう一つは、先ほど来申し上げておりますような、できるだけ部分効果の早期達成、特に面的整備事業については、率直に申しますと、今圃場整備事業などにつきましてはある程度単価を抑えて事業量をふやすという施策をとっておりますので、面的整備重点の配分というふうなことで心がけております。  補助事業の配分等は、地方農政局にもう任せてありますが、こういう御指弾を受けることのないように厳重にこれからも指導してまいりたいと思っております。
  144. 武田一夫

    ○武田委員 これも、一つは先ほど言ったように、やはり思うように予算が来ないということから、いかほどでも我が田にというところの一つのあらわれでもあると私は思うのです。それがうまい人は選挙に結びつけてそういうことをやっている。それで当選してくる、金も入ってくるというのでしょう。  しかしながら、そのことによって、それをしなかったからボイコットするとか、そういうことがないように厳重に監視するのも必要である。しかも、その長に元副知事がいるとなると影響力はまことに大きい。政治連盟の長が今度はうちの方は元副知事、それで会長が自民党の先生。我々一生懸命やる。これは農家のためにやっている。みんなでやるのはそのためです。それを武器、道具にして利益誘導的なことを国の金でやるなどというのはとんでもないこと、こう私は思う。だから、大臣、大臣から先ほども日野委員に話があったけれども、大臣を初め、各関係部局の皆さん方がしっかり監視して、そういうことがみじんもあったらそういう改良区の人間には金をやらぬとか、そういう厳しい決意と取り組みをしないと、同じような者が類が類をもって集まってくる、これはいかぬと思うのです。  大臣から決意を聞いて、質問を終わります。
  145. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 御存じのとおりの厳しい財政事情の中から獲得いたしました貴重なものでございます。これを踏まえまして、先ほど県土連の話でいろいろ会長の報酬とかという話もございましたが、国会議員の場合はできるだけそういうような報酬はとらないように指導していきましようということも申しました。しかし、我々農林水産省といたしますと、やはり実効の上がるようなぐあいに公正にやってまいるつもりでございます。
  146. 武田一夫

    ○武田委員 終わります。
  147. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 菅原喜重郎君。
  148. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農業生産基盤整備の推進及び土地改良法改正についてお尋ねいたします。  今、我が国農業は、外国からの輸入圧力の増大や米価、畜産価格の連年の据え置き、さらに六十万ヘクタールに及ぶ水田の転作等で大変厳しい状況に置かれていることは私たち皆承知のところでございますが、こういう情勢の中で我が国農業の存立と発展を図っていかねばならない、これも私たちの責務でございます。  先般の農産物交渉を見ましても、こういう点で、どうも日本農業の体質強化を図ることに比例しての農産物交渉ではなかったなというふうに私は考えております。このことは全く遺憾でございます。しかし、農林水産大臣は一応中曽根総理から一任されて、日本農業の将来を考えて、また日米関係の調整の上でああいう交渉の決断をしたのだということ、このことについては責任をとると言っているわけでございます。そこで、決まった以上、大臣が責任をとるということは、やはりこれは日本農業の国際競争力化のために今後これを促進するという方向で私は大臣に責任をとってもらいたい、こう考えるわけでございます。  そこで、日本農業の国際競争力化は、何といいましても農業生産基盤の整備と水資源の確保と水利施設の完備、これはもうぜひ近々十年、二十年以内に早くしないと競争力化はできないわけでございまして、これは日本農業の百年の大計であり、また緊急を要する施策でございます。  こういう点で、中曽根総理から一任されて決めた大臣がこういう予算化も抱き合わせに大幅な譲歩をしたのだったら、農業の国際化のために閣議決定でも特別予算の配分をとる、そういう気迫を持って臨んで、国際競争力化のために今後の農政を進めていっていただきたい、こう考えるわけでございます。  こういう点を含めまして、積極的な今後の農業政策ということについて大臣の所見を伺いたいわけでございます。
  149. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 先生おっしゃいますとおり、我が国農業は極めて厳しい情勢に置かれております。農産物の需給の緩和、そしてまた諸外国からの市場開放要求、また行財政改革からまいります効率的な農業の推進、これらのもとでの農業でございます。  今後の農政につきましては、何としても生産性を高めまして、そして国内生産でできるものはできるだけ国内生産で賄うという方針のもとでやってまいりますが、しかし同時にまた、農業の近代化、これを図っていかなければなりません。先生おっしゃいました土地、水等の農業用資源、その量そして質、この両面におきましてこれを確保していかなければならないわけでございます。  このために、政府といたしましては、昨年、五十八年度四月ですか、第三次土地改良長期計画、三十二兆八千億、これを十カ年間で達成するということでやったわけでございます。この計画は、食糧自給力の維持強化、それに必要な五百五十万ヘクタールの農業用地そして農業用水、この確保を図っていくということが一つでございます。そしてまた、農業生産の向上を図るために、農地整備率をおおむね七〇%に引き上げるために必要な圃場の整備等をねらいとしたものでございます。  今後とも計画達成に向けて全力を尽くしてまいりますが、先ほども申し上げましたように、五十八、五十九、両年度で一一%というような進捗率でございます。しかし、これを有効に使ってやっていこう、来年度からはまた予算編成に当たりまして、特に近年言われておりますいわゆる農地そしてまた山林、今までと違った、国民全体が緑というものに対する重要性というものを認識してきておることでもございますし、農水省としてだけではなくて、政府全体としてこの重要性というものを皆さんに認識していただきながら、今後の農業の近代化というものを図っていきたいというふうに考えております。
  150. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 ただいま質問いたしました基盤整備、水資源の確保は、これは私の農業政策に対する最も基本的な考えでございますので、繰り返して申し上げているわけでございますが、また、このことについても大臣は十分に認識されて農政に取り組んでいくという所信につきましても、十分了解をしているわけでございます。  しかし、大臣、何といいましてもこれは予算がつかないと進捗しないわけでございます。今説明の中にありましたように、第三次土地改良長期計画の達成率が一一%にとどまっている。六十七年度までに六七、八%ぐらいの達成率をうたっているけれども、今までの進捗率では五〇%しか達成率はいかないのじゃないかというのが私の見通しでございます。そこで、農産物交渉で本当に大臣は農民の側から見るとアメリカに大盤振る舞いをしたというふうに受け取られているし、また、中曽根自身は大臣の決断を高く評価しているのですから、この第三次土地改良長期計画の達成だけは、閣議決定でも、これ以外は一般の予算配分で甘んじるけれども、これだけはぜひ日本農業救済のために事業の一〇〇%達成を推進してくれ、そういう強い要求はできそうですがね。また、これは大臣にしていただかないといつまでたっても大変だと思っているので、この点、ひとつ大臣の所信を伺いたいと思うわけでございます。
  151. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 確かに日米農産物交渉に関しまして、総理から全権を委任されました。その際申しましたことは、私としては日本農業を守るという立場に立って、日米友好ということもあるし、できるだけのことはやってまいりますと言いましたが、同時にそのときに、もし不慮の事態等が生じた場合にはこれに対する手当ては十分行っていただきたいと言いまして、それは約束するということでございます。  土地改良のことまでは実は約束しませんでしたので、それはまさか、どれだけ効果が上がるかどうかはわかりませんけれども、私といたしましては、先ほど申しましたように、今いわゆる世界の先進国と言われている国がそれぞれかなりの農業に対する助成を行っておる、補助を行っておるということでございますし、これもやっとこのごろ国民の全般の方にもわかっていただけるような風潮もございますし、ただ日本の国だけが過保護でやっておるということではないというのも事実でございます。したがいまして、これらを含めまして、やはりこの農業を守るということ、これがそのまま日本の国民を守るということにもつながるということを十分にPRをいたしながら、私どもできる限りの予算獲得をやるつもりでございます。
  152. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣、基盤整備と水資源の確保、水利施設の完備、これだけはやはり農業政策の第一施策として堅持して推進していかなければならぬけれども、市場原理にかかわるいろいろな作付指導だとかなんとかからは農林省はもう手を引くべきだというのが私の持論でございます。農民は、基盤整備と水利施設の完備、水資源の確保さえ十分に事業化させていただいた耕地においては農民自身で農業が守っていける、こういう見通しをつけているものでございますから、今しつこく第三次土地改良長期計画の達成、これは基盤整備の推進でございますが、このことを追及したわけでございます。大臣も、いろいろな要望はあるといたしましても、このことだけはひとつ大臣の政策の第一義的なものとして今後とも心の中に刻んで農政を推進していただきたい、こう思うわけでございます。  次に、今農村土地改良事業を進めるに当たりまして、私農村を回ってみて、いわゆる現在百姓をしている農業当事者の意識が非常に変わっております。どういうように意識が変わっているかというと、後継者を持っている農家は今老齢化している農業人口の当事者の中でも全く意欲を持っておるのですが、後継者がどうなるのか決まらぬ農家農業そのものに対しても投げやりになってきている、こう顕著に分かれております。農業後継者に不安を感ずる農家ほど、そして老齢化している農家ほど、今の土地改良事業、最近事業費が一反歩大体八十万ぐらいにもなってきておりますが、とてもこういう金の一〇%、二十%の自己負担でも借金を残して死んだのでは、息子も果たして百姓をやるかやらないかわからないのに、おやじが借金だけ残したという不明を残った連中から買いたくない、こういう意識で消極的なんですよ。ですから、こういう農家農村実態は、大変そういうような混住化社会の複雑さに分かれてそういう社会を形成しつつあるわけでございます。ですから、こういうところにいわゆる土地改良事業を行うとなると、今までのような方式でいいのかという疑問を感じさせられるわけでございます。  そこで、この前もお話しいたしましたが、優良農地をつくるためには、やはり国が強制執行をかけてもいわゆる国自体の負担で一切これをやるというような、何かそういうような立場から土地改良の基盤整備の促進を図ってもらいたいものだなというふうに、これは要望いたします。  それから、農業後継者に取り組みの意欲を失っている、そういう農村に対して今後どういう対策を政府でお持ちなのか、今言いましたことも含めてひとつお伺いしたいと思います。これは局長でよろしゅうございます。
  153. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、いろいろな御指摘があったわけでございますが、反当八十万という御指摘は、恐らく圃場整備事業の数字を指しておられると思います。その場合は、農民負担は大体二十二万程度で、年間の償還額は二万円ぐらいになると思います。確かに、一部の地域、特に東北で多いのではないかと私は思いますが、専業の農家で跡取りのいない老齢農家が比較的消極的であることは私も知っております。やはり跡取りのいない農家土地利用というものを次の段階でどう持っていくかということから問題を解決していく努力が要るだろうと思います。私ども、地域農業集団育成等を通じまして、段階的に、農業に意欲を持った中核農家に利用を集積する過程でこの問題を吸収解決することが、やはり迂遠であっても基本ではないだろうかと思っております。  全額国費負担で強制執行でもかけてやったらどうかということでございますが、私は、これは何といっても一面においては私有財産の形成に資する事業で、また、土地改良事業の補助率の高さから考えても、これはなかなか言うべくして難しい問題ではないだろうかと思います。  次に、後継者の問題でございます。  後継者の問題につきましては、最近の動向を見ますと、三十四歳未満でいわゆるUターンで帰ってくる人と、それからもう一つは新規学卒者で就農する人の数が、大体トータルで見ますと、今後育成確保すると考えております七、八十万戸の中核農家の補充として行われていることは事実でございますが、これ以外の第二種兼業農家等においてその補充が急速に下がってきていることは事実でございます。  私ども、やはり基本はこの中核農家の後継者の育成という問題でございますが、多少従来とは違った考え方でいいのじゃないだろうか。従来は、新規学卒者が直ちに就農することをむしろ理想としていたけれども、今日の社会の成熟状況なり、あるいは農業自体が活力を持っていろいろな判断を持って営まれるためには、ある程度他の産業に一定期間従事してUターンしてくるという要素も有していかなければならないと思います。後継者問題の基本は、やはりこういった後継者の皆さんに対する技術の習得、経営のノーハウという普及事業なり教育事業の問題でございまして、最近の普及事業、教育事業の実施なり、それにリンケージいたしました各種の制度金融等の活用等はここに重点を置いて実施しているわけでございまして、御指摘も頭に置きましてそのための努力を続けてまいりたいと思っております。  それからもう一つは、やはり新しいそういった後継者の方々が意欲を持って農業が営めるためのいわゆる金融面での御相談にどう乗っていくかという問題だろうと思います。過去において自立経営育成資金等がございますし、また農地取得資金等もございます。こういった制度金融を全体として有機的に使いながら、やはり後継者の育成、後継者の意欲にこたえられるような制度の運用なり改善に努めてまいりたいと思っております。
  154. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今、基盤整備事業によって造成された農用地農業的に有効に利用すべきでありますが、一方では、過疎、兼業化等の進行によって耕作放棄地も増大しているわけでございます。さらに、これは技術的な問題でございますが、過般質問いたしました際、現在改良事業の施行には、七十センチを目標にした地下水位を下げる工事を施行しているというわけでございます。  こういう耕作放棄地も優良農地として活用するには、やはり地下水位が七十センチぐらいでは低いのじゃないか。これ以上、百センチ以上にまで施工をしておかないと、こういう耕地は、残された耕地をだれが利用しようとしてもなかなか利用されないのじゃないか、こういうふうに事業基準の中で私は思っているわけなんですが、この点について、技術的な面なんですが、どのようにお考えなのか、お聞きいたしたいと思います。
  155. 森実孝郎

    森実政府委員 五十五年からセンサスで耕作放棄地の調査を始めておりまして、九万二千ヘクタールという報告が出ております。実は、その四分の三が畑地でございます。また、地域的に見ますと、割合に東北が少なくて中国地方が多いという数字が出ております。この調査は初めての調査でございまして、これから時系列的な変化や判断を求めることはできませんけれども、トータルとして見ると、比較的山寄りの限界地の畑がいわゆる耕作放棄地が多い。これはやはり過去の歴史を見てもわかりますように、林業的利用と農業的利用がお互いに交錯し、行ったり来たりしている地域という実態があるわけでございます。  この問題の解決ということは、一つは人的に農業への意欲を持った方々に利用を集積する努力と、もう一つは物的条件の整備だろうと思います。特に前者につきましては、やはり畜産経営で飼料作を導入するための利用権の設定等が有効であり、現に地域農業集団の活動等による利用権の設定においては、これがかなり西日本では出てきております。こういった努力と、もう一つはやはり土地改良、特に畑地等であれば、いわゆる道路の整備等による物的条件の改善ということに努力をしていく必要があると思います。  次に、圃場整備における地下水位の問題でございます。  確かに御指摘のように、理想的に申しますと、一メートル五十まで地下水位を下げればあらゆる作物が実はつくれるわけでございます。ただ、問題は、地下水位を下げるということは、低平地におきましては大変事業費の増高を招くわけでございます。例えば、ここに一つの数字がございますが、暗渠排水の部分だけとらえてみましても、三十センチの場合は五万六千円で済むものが、七十センチになると八万円かかる、これが一メートル五十センチになるとそれだけで二十万円かかるということで、ほかの工事を含めますと大変な事業費の負担になるわけでございます。  一方、現在実施しております基準の七十センチ以上に地下水位を下げなければ育成できない作物は何であるかということを拾ってみますと、ゴボウと長芋と一部の永年作物ではないかと思います。逆に申しますと、普通の畑作物等は大体地下水位七十センチでほとんど良好に生育できるという条件があるわけでございます。  そういったことを考えまして、一つの御議論とは思いますが、トータルの判断としては、私はむしろ七十センチをめどにしてやるし、逆に、先ほどの御指摘にもありますように、事業費が七十センチでも非常に割高につくような地域については、作物の選択によっては、従来の基準である三十センチを活用することも必要なのではないだろうかと思っております。
  156. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 低地の水田にはやむを得ないところがございますから、一応今の答弁で了解をしておきますが、この市町村協議制度内容を拡充していく、これは結構なことでございますが、やはりこれには水系ごとに一つ土地改良区の合併を進めることが良策じゃないか、こう思っております。この合併は随分促進されているわけでございますが、しかしまた、私はどのくらい土地改良区の合併が進められているのか、このことをお聞きしたい。当事者能力がない改良区に協議制を導入いたしましても、これはなかなか実行されないわけでございますので、この点をひとつお聞きしたい。  それから、今まで農業用排水路等の管理に関する土地改良区の協議請求制度の拡充がなされまして、いろいろ話し合いがされてもいるわけでございますが、今までの例を見ますと、やはりこの市町村の協議制度を導入されましても、市町村が入りますとどうしても市町村が排水路等の管理を分担させられているというのが現状でございます。やはり排水路は住民にとりましては公水面的な意識で、公道と同じ意識なものですから、今まで金の取られないところで取るということは現状ではなかなか難しい。そういうわけでございますので、各市町村においては何とか協議制度の中に引き受けた水路管理その他は地方交付税の算定基準の中に組み込んでいただきたいというのが本音でございます。ですから、市町村協議制を今後進めるに当たって、これは自治省との交渉なんでございますが、市町村がその管理を引き受けざるを得なくなっているような、そういうところに対しては地方交付税ができるような、そういう農林省サイドでの対応ができるかどうか。これはぜひやってもらいたいと私思うのですが、このことについて局長の意見、また、大臣もぜひこのことについては心にかけていていただきたいと思いますので、答弁をお願いいたします。
  157. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、合併の問題でございます。  この五年間に約百九の合併が実現しておりますし、五十の合同事業所ができております。まさに菅原委員指摘のように、これから合併を加速させることが重要だろうと思います。ただ、内容につきましては、私も用排水事業を主軸とする土地改良については水系別の合併が必要だと思っておりますし、実際過半数が水系別でございますが、土地改良事業にも各種いろいろな態様がございますし、行政区域単位にまとめた方がベターな場合もございまして、どちらかの手法によらざるを得ないと思います。特に水系別の合併の場合は、上流と下流の水利権の内容の優劣に関する争いが歴史的にあるもので、なかなか難しい問題があることは御賢察いただきたいと思います。  次に、市町村協議に伴う負担の問題でございます。  市町村に対する土地改良区の協議の内容は、負担の問題もございますが、実は管理方法の問題もございます。多目的用水のウエートが多い、特に一般の都市排水としてのウエートが多い場合は、土地改良区から市町村に管理を移管する方がむしろ本筋ではないかと思っております。この問題につきましては、実は交付税の問題ではなくて、御案内のように地方税法上いわゆる水利地益税がございます。したがって、受益者農家からの土地改良法による負担金の徴収と並んで、水利地益税の活用ということがあるのではないかと思います。そこまでいかない場合に、市町村が負担を負った場合、それを基準財政需要額に算定するとか、あるいはそういう普通交付税の対象が無理であるならば特交で考えられないかという御議論でございますが、さらに私どもも勉強してみますが、今日の地方財政の事情なり、それから基準財政需要額に織り込むべき性格の問題あるいは特交の性格の問題から見て、なかなか難しい点もあると思います。  なお、仰せの点は検討させていただきたいと思います。
  158. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 森実局長から御答弁ありましたように、かなり難しい問題であるようでございますが、ひとつ勉強させていただきたいと思います。
  159. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、農地開発事業は現在全員同意でなくては実施できないような法律になっているわけでありますが、何といいましても、私先ほど申し上げましたように土地基盤の整備を急ぐべきだ、そういう立場から三分の二の同意でも土地改良と同じように実施できるようにならないのかどうか、こういうことを考えているわけでございます。  それから、山間地区に行きますほど小規模土地改良事業の必要が増大するわけでございます。大きな土地改良事業の基準や何かありませんので、その場合農地開発事業もその中に含まって実施できるわけなんですが、いろいろな畑地も水田も一緒事業されます場合、畑地に対するところのいろいろな作付指導や何か、メニューに沿っての農業振興策も立てないといかぬわけでございます。そこで、こういう改良事業はそういう作付のメニューや何かを全然除いてこれからは改良事業一本にする。それから、山間地域に対しては特例的に工事の基準の引き下げができないか、このことをお聞きするわけでございます。ただし、その基準の中で、一枚のフィールドの機械が入れる面積は、これは機械が入らないような基盤整備ではいけませんので、今少なくとも大体一反歩ではいかぬですから二、三反歩、少々畦畔が高くなってもその一区画のフィールドは機械が使用できる、そういう基準だけはがっちり守っていただきたいのですが、そのほかは山間地に合った特例的な基準のつくり方を今後つくっていただきたいという立場から、このことについての所見をひとつ伺います。
  160. 森実孝郎

    森実政府委員 農用地開発事業につきましては、過去の開拓事業の入植を基幹とし、国有未墾地の上に開発を行う場合につきましては今のような同意方式をとっていないわけでございまして、地元増反を中心にした規模拡大土地の自己調達を前提にする制度として今の制度ができ上がっているわけでございます。  三分の二にしたらどうかという御意見でございますが、これははっきり申し上げると、現に農地でない山林を農地に改変するという意味では、農地条件の改良ではなくて土地利用のあり方を基本から変えるという点があること。それからもう一つは、事業参加者以外に地権者の同意がなければできないわけでございますから、これは地権者の同意を当然全員同意でとらなければならない。それから創設的な事業でございますから、これはほかの公共事業土地改良に比べますと担当事業費が非常に大きいわけでございまして、これは皆さんが完全に納得ずくでないとやれないという法律である、そういう意味から事業者全員の同意を要するものとしております。  私は、このたてまえはちょっと今の社会情勢、社会意識からいうと変えられないのではないだろうかと思います。むしろ微温的というおしかりを受けるかもしれませんけれども、他の土地改良事業についても三分の二の同意強制という実態であっても実は前々から申し上げておりますように、九割以上の同意ということで事業を実施している実態でございます。そういう意味で事情は御理解賜りたいと思います。  次に、山間地域土地改良事業の優遇措置の問題でございます。  これは端的に申し上げますと、現にかなり広範な優遇措置を講じております。例えば、今御指摘になりました問題でございますが、採択基準について申し上げますと、例えば一般平たん部においては団体営の圃場整備は二十ヘクタール以上という原則になっておりますが、こういった山村とか急傾斜地とか過疎地域については十ヘクタール以上という低い採択基準をとっております。それから補助率につきましても、実はこれは補助率と圃場区画の問題をリンケージしてとっているわけでございますが、一般地域については、原則が三十アールの圃場区画ということでございますが、こういう傾斜地域については、実は二十アールの圃場区画を基準にするということをやっているわけでございます。  これからどうしても中山間部の圃場整備がかなり大きなウエートを持つてくると思います。事業費が割高なだけに、どういう優遇措置を講ずるかはなかなか難しい問題もありますが、現にかなりの優遇措置も講じているわけでございまして、当面やはり予算の配分で重点的な判断をしていくということになるのではないか、今日の財政事情のもとではそう考えております。  なお、これ以外にやはり総合的な土地改良事業という視点から、いわゆる比較的小規模農用地整備一体的に行う土地改良総合整備事業、いわゆる土地総を実施しておりますが、これらは中山間部を念頭に置いた事業として仕組んでおりまして、かなり現に実需も強いわけでございますし、今後もかなり重視していかなければいけないと思っております。
  161. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにいたしましても、柔軟性を持った基盤整備事業の促進をひとつ今後とも図っていただきたいと要望するわけでございます。  次に、農振法の改正でございますが、順次お尋ねしたいと思います。  私は、先ほどの質問も聞いていたわけでございますが、えてして計画が策定されますと、どうしても計画倒れになりがちなのが今までの例でございます。そして、こういうことは市町村の事務量を増大させるだけであったというような、そういう不満も出てきているところでございますので、今回の計画事項の拡充は、屋上屋の計画をつくらせてはならない、こう思っているわけでございます。このことについて、そのためには何といいましても予算の裏づけが必要なわけでございますので、この予算の裏づけに対する今後の見通しというものをお伺いしたいと思います。
  162. 森実孝郎

    森実政府委員 今回の計画事項の追加は、地域農業集団等による土地集団利用調整、就業改善、生活環境整備並びに林業振興農業振興の関連という問題を取り上げております。これらは実はいずれも末端の市町村長さんたちから強い要望のある問題を、各省折衝を通じまして現実的な形で調整して提案さしていただいているわけでございます。  問題は、結局この農振計画の計画事項の追加に伴って、計画の見直しをどうやっていくかという考え方でございます。  これにつきましては、法律が施行されたからといって、私どもは一斉にやるつもりはございません。むしろ地域の実情に応じて、そういう要望を私どもが非常に多いという事実を受けとめているわけでございますので、要望のある市町村から、恐らく今の見方では、私はある程度要望を予定しております予算上の事務費補助を上回ることになるのではないかと思いますが、ある程度先ほども御議論がございました平場とか中山間地帯とかあるいは都市近郊とかという幾つかのタイプに分けまして、要望のあるところから計画の見直しをするように指導していきたいと思いますし、また、その計画内容については画一的に様式を示すことは避けてまいりたいと思っております。  例えば就業改善の問題を考える場合、先ほども御議論がありました東京の周辺の都市近郊農村で私は就業問題について触れる必要は特にないと思います。逆に東北等の純農村では、この問題がまさに非常に重要だろうと思います。そういう意味においては、かなり計画事項についても地域の特性を生かして、精粗があっていいという形で臨みたいと思います。画一的に強制して事務量をふやすことにならないよう、十分配慮いたします。
  163. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 非常によい確約をいただきまして、安心しております。  次に、構造政策推進の柱として地域農業集団育成考えているわけでございます。この集団の活動内容と今後の育成目標についてお伺いしたいわけでございますが、この中に稲作転換等に関連した作付地集団化の指導ということがございます。そこで、これは集団化は作付作目のメニューや何かをこちらがつくって指導していくものなんですか、それともどういうことなんですか、ちょっとお聞きいたします。
  164. 森実孝郎

    森実政府委員 この地域農業集団は、いわば一集落ないしは数集落単位地権者が話し合って土地集団利用調整考えているものでございます。その場合、いろいろなテーマが地域に応じ、作目に応じて違うと思います。一つの問題は中核農家規模拡大を進めるという問題、それからもう一つは、今委員指摘のように、例えば水田のブロックローテーションに代表されますような農作業共同化、集約化、効率化という問題、それから地力の維持増進の問題、それから先ほどからも御指摘がありました休耕地の解消とか裏作の導入とか里山の開発等の問題、こういったいろいろな問題を作目地域実態に応じて取り組んでいただきたいと思っております。  そういった問題は、やはり地域の実情で、市町村もあるいは市町村にございます関係団体も、農家皆さんも、自分自身で熟知しておられるわけでございますし、また発展段階も違うわけでございますから、画一的に指導する考えは全くございません。むしろ地域農業集団育成を打ち出したというのは、地域作目実態に応じ段階的に土地利用調整に取り組んでいただくという問題でございます。  なお、先ほどのブロックローテーションの問題は、作付自体についてはそうでございますが、土地利用という面からいいますと、ブロックローテーションと言ったって、結局は自分の土地を使うか他人の土地を使うかということで、やはり他人の土地を使う限り土地利用調整が出てくるわけでございますから、そういう意味で取り上げているわけでございます。  なお、育成目標につきましては、当面農振地域に存在します約十二万の農業集落のうち六万集落を対象に三万五千集団、大体一集団当たり平均一・七集落と見ておりますが、これを三カ年で指定してまいりたいと思っております。
  165. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今答弁を聞いて、実は私も農業に対しましては、日本の場合、複合経営農業形態を壊しては、地力維持のためにもこれは大変なことになる。本来、自分のところで家畜を持たない農家農業を営まれないのだという観念がございまして、自分たちで自給肥料、いわゆる有機質の投入を心がけたわけでございます。これがどうも農業の合理化やあるいは集団化という名前で、単一生産形態に指導されてきております。こういう気がございましたので、ただいまの質問をしたわけでございますが、そういうことについても非常に弾力性のある対応をしていくということを聞きまして、安心しているわけでございます。  次に、これに関連いたしまして、農地の均分相続等についてお尋ねするわけでございますが、農業経営を営みます上に、農地の細分化はこれは時代に遡行していくことは顕著なことでございます。このような関係で、日本でも、北欧等で実施しているような、農地を担保とするところの相続の場合、長期低利の融資制度等を実施して、農地そのものが常に農業後継者等に一つの団地として継承されていくような体制をとることも優良農地造成の上に必要じゃないか、こう考えております。このことについての所見をひとつお伺いするわけでございます。
  166. 森実孝郎

    森実政府委員 新憲法制定以来、農地の均分相続の問題は農業政策にとってなかなか明快な解決のできない、非常に難しい課題になっていることは、もう委員御案内のとおりでございます。  ただ、現実動きを見ますと、そういった法の建前とは別に、いわゆる従来から均分相続慣行のあった南九州では分割相続はかなりの率に上っておりますが、全体としては、分割相続、特に均分相続は非常に少ない率になっております。特に規模別に見ますと、経営規模の大きい中核的な農家ほど後継ぎに一括相続していることは事実でございます。逆にマイナス要因になっておりますのは、土地の交換価値が著しく高騰しております都市近郊においては、どうしても分割相続になるという事例があるわけでございます。  これを防止するにはどうしたらいいか、どういう政策誘導をするか。これはそれぞれの国の民法の法制の歴史的沿革がございまして、例えば同じことをやるにしても、西ドイツとフランスでは非常に違う。我が国にもまた違う制度の仕組みがある。もう一つは、憲法の建前をどう考えるかがまた国によって非常に差があるわけで、一律に議論できません。ただ、私、率直に申し上げますと、いわゆる跡取りである長男が、いかに低利な金であるにせよ、現在の交換価値に着目して金融を受けまして他の相続人に支払うとすれば、それは到底農業経営のそろばんから出てこない問題である。確かに資産の増加にはなるわけでございますが、お父さんと同じ農業経営の継続はその元利の償還の中では出てこないというところに難しい問題があるだろうと思います。  結局、現実の問題としては、話し合いの中である程度傾斜のついた相続が行われ、補完的に、ただいま委員が御指摘がありましたような農地取得資金をどう活用していくかという問題ではないかと思います。そういう意味におきましては、現在最高千五百万までの農地取得資金の特例も設けておりますし、最近はまたかなり需要がぶり返しているようでございます。こういったことは、十分実需を踏まえながら改善の努力を今後も続けたいと思います。
  167. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は今の質問は、昭和五十五年に施行されております農用地利用増進法に基づくところの農地等の取得資金の限度額にも関連して質問したのでございます。  現在、農業委員会等のあっせんにかかわる取得資金の限度額は今おっしゃられましたように一千五百万円でございますが、現実に各町村農業委員会等で、この限度額ではいろいろな物価その他の上昇等で足らないので、この限度額の上限のアップができないかという声が出ております。それで、この限度額の拡大についてどのようにお考えなのか、お聞きいたします。
  168. 森実孝郎

    森実政府委員 御案内のように、農用地利用増進計画に基づく取得については、昭和五十五年度に特に一千五百万の限度枠を設けております。またこれ以外に、農業委員会のあっせん取得にかかわる限度枠については一千万円ということにしておるわけでございます。  この問題は、実はなかなか経過がございまして難しい点があると思います。しかし、最近また実需が、先ほど申し上げましたように東北、特に北東北等を中心にして回復してきている実態もありますし、それから経済状況の変化もありますので、十分実態を把握の上、改善努力はこれからも続けていきたいと思っております。
  169. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、農業振興政策を国は進めているわけでございますが、しかし、現実には兼業農家農業だけでは生活ができませんで、いろいろな職業につくことを望んでいるわけでございます。こういう点で、今問題になっておりますところは、殊に都市計画地域と農振法の線引きされているボーダーラインのところほどこれは大変なんでございますが、新しく企業、農村工業を導入する際にこの変更、いわゆる農地転用、これらが非常なネックになっております。また、そういう接点にある地帯の農家は、担保として設定される際も、近くが都市計画地域のために高い担保になっていて、自分の農地は、価値は実際にありながら担保物件としては低く見られるというような、こういう農家の声もあるわけでございます。  そこで、現実といたしまして、私は、線引きの変更あるいは農用地の転用は、市町村あるいは農業委員会等の意見を充てんして、そのときそのときいつも対応していくという姿勢をとってもらいたいわけでございます。しかし、今五年ごとの農振法上の線引きの見直しあるいは線引きされますと、どうしても、それは人情でもございますので、二、三年はなかなか変更はさせてもらえない、そういう実情でございます。この点について、ひとつ弾力的に今後この問題を解決していくように対応できるかできないか、このことをお聞きしたいと思います。
  170. 森実孝郎

    森実政府委員 線引き行政に伴ういわゆるボーダーラインと申しますか、境界部分の扱いというものは御指摘のようにまことに難しい問題があるわけでございます。いわばこれは線引き行政というものの一つの宿命ではないかと思います。  そこで、まず具体的に線引きの見直しの問題でございますが、基本は五年でございますが、必要に応じて弾力的な見直しをやっております。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕 私どもとしては、やはり農振制度の基本からいって集団的な優良農用地確保していく、それから水利用、土地利用のスプロールを防止する、それから長期にわたる効用を持った土地改良等の農業投資が行われた地域農業のために確保するという基本原則がありますので、基本原則に応じて処理していかなければならないと思いますが、やはり弾力的な配慮が接点においては必要だろうと思います。  そういう意味におきまして、いわゆる都市計画法の市街化区域の見直しについての弾力的な運営について定めます際に、同時に実は逆線引きという制度も導入してそれを受けとめていることも事実でございます。市町村長さんと知事さんの関係をどう見るか、これはまたなかなか難しい問題がありまして、特に大都市周辺では市町村長さんたちの意向と知事さんの意向が食い違う場合がある。ここら辺になりまして、私は農業団体の意向なり市町村長さんの意向というものは、特に市町村長さんは発意者でございますから、発案者の立場に立つわけでございますから、当然尊重されなければなりませんけれども、そういった具体的な問題の処理についてはやはり一つの原則の中で調整を進めなければならないと思います。  なお、線引き行政の見直し、転用許可事務の事務処理の迅速化ということはまことに重要な問題だと思います。もちろん法の適用は厳正に行われなければなりませんが、できるだけそういった事務処理体制が簡略化される、あるいはスピードアップされるという問題については、これからも努力を払ってまいりたいと思います。
  171. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は全くこのことは難しい問題でございまして、市街化区域においての計画地にもそのとおりに家が建っていくかというとそうじゃございませんで、やはり接点になっている地域というのは、全く家の建てぐあいや伸びぐあいを見ましても、やはり道路さえありますと安いところ安いところと線になって家も建っていくというのが現実でございます。そこで私の要望いたしますのは、こういう都市計画地域と接点になっているところの農振地域は、準農振地域というような、そういう概念の線引きを今後考えていくことができないのかどうか、このことをひとつ問題として提起しておきます。  それでは、また次の問題に移りたいと思います。  今、里山開発の問題等でこれからこの交換分合等も進められるわけでございますが、山地や傾斜地でも、農業経営を安定させるためにも傾斜地に対する農地開発がこれもまた必要になってきているのは事実でございます。この点、山地や傾斜地における農業経営を発展させるための施策として、ひとつ今のうちに傾斜度に基づく農地区分、あるいはこの林地区分とか、そういう一つ地域策定をしていくことも必要でないかと思うわけでございます。このことについて、ひとつ所見をお伺いしたいと思うわけでございます。
  172. 森実孝郎

    森実政府委員 従来から、傾斜度十五度未満のところで未利用の土地農用地開発適地として調査対象にしております。ただ、どうも最近の実態を見ますと、やはり雨量の問題とか道路の問題とか、それから工法の関係で必ずしも傾斜度だけで判断できない問題もあると思います。しかし、私どもとしてはやはり傾斜十五度ということを一応の目安として考えていく必要があると思います。
  173. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来たので終わりますが、全く厳しいこの農業事情に対応するのに、ひとつ今後とも大臣は基盤整備と水資源の確保、水利施設の完備ということを重点として政策を進めていっていただきたいことを再三要望いたしまして、質問を終わります。
  174. 阿部文男

    阿部委員長 中林佳子君。
  175. 中林佳子

    ○中林委員 それでは、まず農振法の問題から質問させていただきます。  施設の適切な配置に関する協定についてまずお伺いしますけれども、協定区域の中で施設用に供することを予定する区域は、農振地域整備計画の中の用途区分が農業用施設用地として指定を受けた地域の中に設定されることになっているわけです。そもそも農業用施設用地の指定は、農業生産の効率性や営農環境の確保を念頭において指定されているのだと思うわけです。農用地区域、これは五百六十六万七千ヘクタールの中で、農業用施設用地はわずか二万二千ヘクタール、〇・四%を占めているにすぎないわけです。この中をさらに畜舎などの予定区域とそうでないところを分ける。一つの区域をとってみれば非常に狭いところだというふうに思うわけですけれども、こういうやり方は結局は屋上屋を重ねることになるのではないか、こういう懸念があるのですけれども、そういうことをやる意義は一体どこにあるのか、お答え願います。
  176. 森実孝郎

    森実政府委員 農振法の基本でございます線引きに当たっては、いわば農用地自体と農地とそれから今後農用地として開発すべき地以外に農業用施設用地を指定したわけでございまして、その面積自体は何と申しましても施設用地でございますからそう大きな面積ではございませんので、ただいま委員指摘のとおりでございます。  今回の協定のねらいは、むしろロケーションの問題をどう考えるかという具体的な農業施設、特に農業施設の中でも畜舎、堆厩舎、それから農産廃棄物の処理施設についての配置を決める問題でございまして、いわば全体の線引きの問題ではなくて、その中で特定の施設の配置について地域農業の生産にふさわしいように関係者の間で合意をつくっていこうという問題でございまして、若干異質の意味を持っていることは御理解賜りたいと思います。
  177. 中林佳子

    ○中林委員 この協定では、協定の参加者が協定予定区域を設定できることになっているわけです。協定予定区域の人たちは協定に参加することに同意しない人たちだと思うわけですけれども、その協定に参加しない理由としてどんなことを想定していらっしゃるのか、また協定成立後その人たちが協定に参加するようになるのは、じゃどういう状況が生まれたときだとお考えになっているのか、その点についてお答えください。
  178. 森実孝郎

    森実政府委員 私、この種の協定につきましてはやはり関係者のすべて、地権者のすべてが協定に参加することが基本だろうと思います。しかし、実際問題としては参加しない場合がある。そこで、明らかに反対であり、しかも今後ともその話し合いがつかないような状況の問題については、私はむしろこの法の条文の適用については除外することが適当だろうと思います。むしろ、そういう協定は排除することが適当だろうと思います。しかし、いわば白紙状態である、例えば畜舎を設置することになるかもしれないが、まだ決めていないというふうな事情から協定に参加するには至っていないという中間的な立場の方もたくさんあるわけでございます。そういう意味において、いわゆる予定地域を定められるようにしたわけでございます。したがって、逆に言うと、後日協定に参加する希望を有したときは、簡易な手続で参加し得る道を開いたわけでございます。
  179. 中林佳子

    ○中林委員 第十八条の九によれば、協定参加者は協定区域予定地の人に協定への参加を求め、同意しない場合市町村長のあっせんを求めることができ、市町村長は必要な場合あっせんできる、こういうことになっているわけです。これは、協定非参加者への不当な権利制限になるのではないかという懸念が起こるわけです。  協定そのものは、先ほどもおっしゃったように一人でも反対者がいれば成立しない、こう言いながら、協定外の人には事実上本人の意思と反することがあっせんなどで押しつけられることになりはしないか。協定の精神があくまでも自主的な話し合いに基づくものである、こういうことであるならば、この第十八条の九「協定への参加のあっせん」の項は要らないのではないかと思うわけですけれども、どうなんでしょう。
  180. 森実孝郎

    森実政府委員 私的土地所有を尊重する、その自由という問題は、我が国の法制なり社会の仕組みとしてはやはり基本論であり、これは十分尊重していかなければならないことだろうと私は思います。  そこで、問題は、要するに施設の設置を予定しない土地の区域の問題について協定のあっせんということを定めておるわけでございますが、これは法律上も不作為の予定地を協定区域に含めることが適切妥当であるということを明確にしておりますし、また、不作為の予定地の地権者参加を求めることが特に必要である場合に限るというふうに限定をつけておるわけでございます。大事なことは市町村長さんがそれをどういうふうに運用していくかという問題でございまして、これにつきましては、私は反対者に対する無理強いにならないような運用ということを強く指導してまいりたいと思っております。
  181. 中林佳子

    ○中林委員 往々にして市町村長はそれなりの権限を持っていらっしゃるし、そういう人たちがなっている場合が多いわけですから、あっせんということが強制的な中身を持ち得る可能性が非常に強いと思わざるを得ないわけで、今局長がおっしゃったように、そうならないような指導、これをぜひ徹底していただくよう要請したいと思います。  次に、施設の維持運営に関する協定について伺うわけですが、これらは従来集落の自主的な取り決め、申し合わせで行われてきたものだと思います。これを今回法律に取り込む意義は一体どういうところにあるのか、その点について聞きます。
  182. 森実孝郎

    森実政府委員 二つの側面があると思います。  こういった集落の共益施設について、従来村の慣行の中で、毎度申し上げて恐縮でございますが、いわば総有的規律の中で処理されてきたという実態がございます。しかし、今日の地域社会におけるいわゆる総有的な村機能が逐次崩壊しつつある、また、それはある意味では日本の近代化の歩みの中で進んでいるわけでございまして、その事実を受けとめますと、なかなかうまく作動しない場合ができてきておるわけでございます。  例えば、私ども補助事業等で集会施設等を実施しております。これは市町村営という建前になっておりますが、やはり一部の建設負担は当該受益者の集落に持っていただいておりますし、また管理も責任を持ってやっていただく。そのために、市町村といわゆる実質的な管理者である集落との間に協定を結んで委託契約を結んでやるという形になっておりますが、そこがなかなかうまく作動しないという実態があるわけでございます。そういう意味においては、新しく個人の立場で、利用者の立場で、対等の立場で契約によって処理するという仕組みを導入していく必要があるということが一つの理由でございます。  それからもう一つは、この種の集落における共益施設が中心になるわけでございますが、この運営についてはやはり公正妥当なルールによって運営されなければならないと思います。そういう意味におきましていわば今回の協定制度の仕組みをつくったわけでございまして、私どもはむしろ屋上屋を重ねるのではなくて、やはり穴のあいたところをカバーしながら、そのカバーする制度が公正妥当なものであるということを配慮してこの制度をつくったわけでございます。
  183. 中林佳子

    ○中林委員 非農家のこの協定への参加が主な目的だと思うわけです。話し合いがなかなかうまく行われなかったり、申し合わせに参加しなかったり、そういう実態があるということは私もわかりますが、果たしてこの協定を結ぶことができて、非農家の人たちが今でもその話し合いは大変な状況なのに、ただ法律ができたからといって話し合いの促進が成るのかどうかというのは、非常に疑問だと思うわけです。むしろ懸念されるのは、その協定というものが上から決められて住民に押しつけられるのではないかということですけれども、その辺で、非農家の人たちへの参加を求めるということを具体的に何かお考えになっているのでしょうか。
  184. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  私は、必ずしも非農家の問題だけではないのじゃないかと思っております。しかし、御指摘のようにそれはかなりのウエートを占めると思います。これはあくまでも関係者の自由な意思のもとに行われるわけでございますし、市町村長が認定する際には、維持運営の方法の中身、それから加入脱退の手続等が妥当なものであるという基準をつくっております。私どもも行政指導に当たりましては、法令上の要件に適合した適切妥当であるということ以外に、自主性を基礎として創意工夫が生かされたものであること、地域の実情に即したものであること、それからもう一つはある程度条件が成熟したところからやっていくということを特に標榜していきたいと思っております。したがって、私はこの問題で何もかも片づくとはまさに委員指摘のように思っておりませんが、問題解決への十分な一助になり得るし、少し長い目で見ていただく必要があるのじゃないかと思っております。
  185. 中林佳子

    ○中林委員 次に、土地改良法についてお伺いするわけですが、換地制度における非農用地の創出手法の拡大について伺います。  今回の改正で、共同減歩によって農業者の生活上または農業経営上必要な施設で、その農業者の大部分が利用し、地方公共団体の計画に定められていたものの用地を生み出せることになっているわけです。この施設用地については「政令で定める要件に適合するものに限る。」こういうふうにあるわけですが、その要件とは一体何であるのか、また具体的にはどんな施設を考えておられるのか、それについて伺います。
  186. 森実孝郎

    森実政府委員 私ども、具体的な地方公共団体の計画としては、農振計画とか山村振興計画等市町村法律に基づいて定める法的な意味を持った計画というものを頭に置いております。  具体的な政令におきましては、地方公共団体の計画において今回新たに共同減歩の対象となる施設の種類、そのおおむねの位置及び規模が明らかにされていること、またその施設を地方公共団体の計画に含める際に、これはあらかじめ計画に入っているというその前提になるわけですが、事業施行地域内の農家その他の利害関係者の意見が反映されているということを定めていきたいと思っております。施設の種類については、通常必要な生活環境施設でございますので、集落道とか集落下水あるいは集会施設とか運動場、そういったものが中心になるものと思います。
  187. 中林佳子

    ○中林委員 下水道だとか集会施設、広場だとか、そういうもの以外には拡大されないのかどうか、非常にその点疑問に思うわけです。その点についてもお答えいただきたいわけですが、それと同時に、これらの施設用地というのは現在でも実は生み出されているわけですよ。だから、それはどういう方法で生み出されているのか、今回の改正で換地制度を拡充して非農用地を生み出さなければならない理由が本当に果たしてあるのだろうかということを思うわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  188. 森実孝郎

    森実政府委員 施設の種類につきましては、先ほど申し上げましたように、私は集会施設等も重要な用地であろうと思います。これはかなり広範なものになってくると思います。いずれにせよ、地域住民の共益施設の生活環境施設であり、公的計画でオーソライズされたものという性格の中で考えていく必要があるだろうと思っております。そこで、なぜこういう新しい制度改正をやるかという問題でございます。  一つは、こういった共益施設をつくる場合、今日の地価の状況等では非常に事業費がかさんでくる。特定の人の費用負担でそれに対してやるということはできないし、また、いわゆる負担を集めて新しく事業を行おうとすれば、非常に割高なものについてくる。だから、自分たちの共益施設について納得ずくで全員で公平に負担をしていくということが一つ要るんじゃないか。  それからもう一つは、今までの手法では制限的に可能でございますが、それはロケーションの問題を考えないわけにいかない。個人の同意したところでしかできないという問題があるわけでございます。そういう集落全体の共益施設については、やはり集落生活上必要な、望ましい場所に配置するというロケーションの問題があると思います。  そういう二点から、今回の共同減歩の制度についての改善拡充措置を講じたわけでございます。
  189. 中林佳子

    ○中林委員 土地改良法目的には「農業生産性の向上、農業総生産の増大、」こういうことになっているわけです。もちろん私は農村での生活環境施設などの整備を否定するものではないわけですけれども、土地改良事業の中で農民だけの負担で非農用地がどんどんつくられていくということは、本来の目的からいえば少し外れていくんじゃないかということを指摘して、次に移りたいと思います。  土地改良区の合併の問題なんですけれども、島根県下の土地改良区は順次整備統合されて、五十九市町村のうち三十七市町村が既に統合されております。農水省は土地改良区の整備統合をどのように指導されているのか、また、合併によるメリットそしてデメリットはどのようにお考えになっているのか、その点についてお答えください。
  190. 森実孝郎

    森実政府委員 土地改良区の合併という問題は、土地改良事業の計画的推進、特に水系ごとの整備計画の樹立と事業の推進、それからもう一つ土地改良施設の維持管理、特に施設の点検、用水の配分等の合理化、それから運営経費の節減から見て顕著な効果を持っていると思います。  デメリットはちょっと私出てまいらないのでございますが、合併する際には巨大化するわけでございますから、下部組合員との意思の疎通を従来から低下することのないように、そういう運営努力をするということが必要であって、デメリット自体は私はないと思っております。
  191. 中林佳子

    ○中林委員 局長も懸念をされておることが少し出ているんじゃないかと思うのですよ。合併によって確かに経費の節減などのメリットはあると思うわけですが、組合員の意見が反映しにくくなるということは、私、確かにあろうと思うのですね。  例えば、出雲市土地改良区は合併する前三つの改良区で、現在組合員が六千三百五十三人で総代数が百十三人、合併後は総代数が六十六人なんです。大体半分くらいに減っているのですね。それから、松江市土地改良区は合併する前二十一の改良区で総代会を持っていて、現在組合員が四千五百五十七人で総代数が三百二十二人です。合併後は八改良区で総代数が九十一人です。つまり、これは総代数からいえば三分の一以下になっている。この数字だけ見ても、反映は非常にしにくくなっているのではないかと思われます。  現在、斐川町で四つの改良区を合併する方向で話が進んでおります。この四つの改良区で現在二百五十七人の総代がありますが、合併されると六十四人の総代数になるわけなんですね。斐川町の多くの組合員の方は、こうなれば下からの意見が非常に反映しにくくなる、こういう懸念をあらわしておられます。  大幅に総代数が減るということは、農民の自発性に基づく土地改良事業の原則を後退させることにつながりはしないか、こう思うわけですけれども、農水省としての具体的な、そうじゃないんだという指導などがありましたらお答えいただきたいと思うのです。
  192. 森実孝郎

    森実政府委員 私、先ほど誤解を招くことを申し上げたかもしれませんが、私は実は一般論としては懸念はしておりません。総代数を減らすということも実は運営経費の節減、運営の合理化に役立つ点もあるわけでございまして、その点は御理解を賜る必要があると思います。この問題につきましては、やはり組合員の意向が的確に反映するよう、総代数の決め方については、総合整備計画の樹立についてどう指導するかという問題、あるいは合併時の定款変更に際して知事認可に当たってどう指導するかという問題があります。御指摘のように、末端の意見の反映ということについては十分留意することは、私どももこれから念頭に置いて行政指導をしたいと思います。  いずれにせよ、総代会を設置するかどうか、またどういうふうな形で運営するかという問題は、ある意味では土地改良区自体の自治に任せられた本質があるわけで、それを行政が最終的にどう評価していくかという問題でございますので、それはやはり地元全体の合意の中でお決め願う以外にないと思いますが、こういう地元の、特に末端の農家の意見の反映がしにくくなるのではないかという御議論があるとすれば、それはやはり行政の運営として十分留意しなければならないと思いますので、参考にさしていただきたいと思います。
  193. 中林佳子

    ○中林委員 それでは、具体的に今起こっている問題でちょっと考えていただきたいと思うのです。  斐川町の新川以南土地改良区になりますが、四号幹線道路を、民家の関係もあり、当初の計画よりも二百メートルほど新建川の方向に入った田んぼの中につくる計画があります。下の地域は納得しているのですが、猿木川排水路から上の地域は、幹線道路もつけ、本格的な圃場整備をすると負担が大変だ、今の農業の状況ではとてもそういうことはできない。しかし、水が不足しているからパイプラインだけはやってほしい、こういう要望になっていて、組合員の七割方の人がこういう意見になっております。しかし、まだなかなか折り合いがつかない。  当初の計画は道路もつけ、パイプラインもつけという計画であったわけですけれども、こういうときに、今改良区の方も一本化の努力はされているわけですが、民主的に運営されて、その農家の人たちの声が反映できるような方向指導されるべきだと思うわけです。その点いかがでしょうか。
  194. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま御指摘がありました地区の問題は、実は昨夜、御質問内容で、一般論として土地改良区の概要を調べましたが、まだ聞いておりませんので、ひとつ県に十分照会してみたいと思います。  しかし、この問題は、私、十分な話し合いが亙ると思います。それは、総代会で片づくというほど単純な話ではないと思います。と同時に、場合によっては事業計画が、それぞれ受益者、地域によって事業処理が変わってくる、部分的な除外ということもあるというふうな解決もあるだろうと思います。決して無理押しをしないように、十分納得ずくでやるように、せっかくの御注意でございますので、この際、県にもアドバイスをしてまいりたいと思います。
  195. 中林佳子

    ○中林委員 次に、農村婦人の問題についてお伺いいたします。大臣に最初にお伺いするのですが、農村婦人の果たしている役割、またその現状についてどのような認識をお持ちなのか。基本的な見解をお伺いいたします。
  196. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 農村婦人は、農業生産農業生活の運営に大きな役割を果たしているばかりではございませんで、農村社会生活の面でも重要な責務を担っておるというぐあいに認識しております。このような婦人の役割が十分に評価され、偏人の社会活動への参加が今後一層促進されることは、農業農村の発展のために欠くことのできないものと考えております。  また、国連婦人の十年の推進を図るための国内行動計画におきましても、農山漁村の婦人の福祉と地位の向上に関する条件整備に努めることを掲げておるところでございます。このために、農林水産省といたしましても、生活改善普及事業を刻めとして各般の施策を進め、婦人の地位の向上に努めておりますが、今後とも一層この面で努力を続けていきたいというぐあいに考えます。
  197. 中林佳子

    ○中林委員 大臣の認識はわかりましたけれども、現実にその農業の担い手、六割から七割方は婦人が担っているという数字が出ているわけです。その農村の婦人の問題について具体的にお伺いするわけですが、まず、婦人の農業労働の実態また農業労働環境について、農水省はどのように把握されているのか、この点についてお答えください。
  198. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 農村婦人の労働の実態は、どういう作物を担当しておるかということによってかなり変わっておりまして、これは生産費調査に基づいて調べましたところでは、例えば稲作のような場合ですと、以前におきましては婦人の労働比率が非常に高かったわけでございます。近年、機械化の進展によりまして女性の労働のウエートが低下をしてきておりまして、ごく最近では四割ぐらいということに相なっております。また、養蚕なんかで言いましても、これは婦人の比率がもともと高かったわけでございますが、近年では非常に減少の度が顕著でございます。また、酪農なんかになりますと、これは男子労働の比率が非常に高いわけでございますが、傾向としては、女性の方の減少率、女性の構成比の減少率がやや鈍い。施設園芸などになりますと、これは男女ともほとんど、総体としては下がっておりますが、構成比は余り変化がないということで、どういう作物をその経営が担当しているかによりまして、婦人の果たす労働のウエートというのが随分違うように見受けられるわけです。  ただ、いろいろな調査によりますと、婦人の労働というのはどちらかといえば補助的ないしは単純労働というのが多うございまして、経営の中においていわば判断を要するような問題ということについては、農家の主人と申しますか、亭主の方の判断に全く依存している、こういう方が非常に多いというふうに把握をいたしております。  それから、労働を支えますための物的な条件、環境というふうな点になりますと、これはいろいろな調査がございますけれども、一口で申し上げれば、労働を適正たらしめるための物的な環境というのは、他の地域に比べますれば当然これは劣っておる、かように判断をいたしております。
  199. 中林佳子

    ○中林委員 戦後、構造改善事業が進んで、機械化も進んで、農家の婦人は重労働から解放されたというふうに一部見られている状況もあろうと思うのですね。しかし、いろいろ農村婦人の話を聞いたり実態を見る限りにおいては、残念ながら非常に大変な状況に置かれているわけです。  大臣、ちょっとこの話を聞いてほしいのですけれども、「朝は誰よりもはやく起きて飯ごしらえをし、昼は一日じゅう、男子とともに田圃や畑ではたらき、夕方は文字どおり星をいただいて家にかえる。このとき男子は、一度家にもどればまず一服、まず一杯とくつろぐこともできるが、婦人はしたくとるまもおそしと大急ぎで家にかけあがって、子供に乳をふくませながら、暗いさむい台所で鍋釜のしたに炊きつけなければならない。」これはいつごろのお話だと思われるのか、それは聞きませんけれども、実はこれは戦前の農家の婦人の状況を丸岡秀子さんが「日本農村婦人問題」で紹介している文なんですね。しかし、今聞いても、今の実態と全く同じだ、戦前の話が今の農村の婦人の実態にも当てはまるというのが実情だと言えるのではないかと思うわけです。  一般の婦人の労働者でも大変負担が大きいのですけれども、それに比べても労働時間の点、週休の問題、産前産後の休暇の問題など、どれをとっても実態的にも制度的にも大変な状況に置かれているわけです。そして、こうした状況が農村婦人の健康という点でも大変大きな問題になっております。  一例を挙げてみますけれども、これは全国的に調査された統計がないものですから、光岡浩二という大学の教授が書いた「日本農家の女性問題」、これは昭和五十三年から大体五十七年ぐらいにかけて愛知県の周辺、名古屋市周辺を克明に調査した統計でまとめたものなんですが、これを使わせていただいても、まず労働時間ですけれども、昭和四十年から昭和五十五年にかけて、製造業では労働時間が七・六%減っているのですね。それが農業では逆に労働時間が六%ふえている。これは女性に限らずそういう傾向で、その中でも婦人が大変な状況で、この本で紹介されているのでは、八時間から十時間農業に従事するというのが三一・九%、十時間から十二時間働くというのが一八・六%、十二時間以上農業に従事するというのが一七・三%、実に大変な状況で、それだけじゃないわけですね。家事、育児その他の家庭生活の運営の担い手ともなっているわけです。  こういう状況がありながら、産前産後の休暇の問題で言えば、産前はとられてないというのが現状で、ゼロ日から一日というのが四三・九%、これだけ占めているわけですね。さすがに産後は、十五日から二十九日というのが一番多くて、三四・八%です。しかし、労基法で決められていることから言えば、非常に保障されていないというのが実態だというふうに思います。  こうした問題について農水省としてはどのような対策をとられてきたのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  200. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 農業の場合には自営業でございますから、そこの中で働く人たちの労働の質、量という問題につきましては、その農家の中でいわば話し合いをベースに主体的に決定される、こういう特色があるわけでございます。したがいまして、雇われております労働者の場合のように、労働基準法その他のいわば制度的なアプローチによって問題を解決するということは大変難しい、なじみにくい問題でございます。したがいまして、農家の中の労働の質、量という問題につきましては、その家族の中におきまして今後の経営方向づけるに当たりまして、単なる収益性とかあるいは生産性という概念からばかりではなくて、労働の適正化とかあるいは健康管理というふうな視点を取り入れまして、その農家みずからが決定づけていく、こういう性格だろうと思うのです。  したがいまして、行政としてやるべき努力というのは、これはその農業経営自体を改善をするということにつきましてのさまざまな指導助言、そういったものの中から農家の労働の質、量を改善をしていく、こういうことでなければならぬと思うわけでございます。現実に私どもの方で行っております協同農業普及事業の中におきましても、農業改良普及事業、生活改善普及事業一体となりまして、農業経営の中におけるそういう今申し上げました健康管理とか労働適正化というような視点を極力盛り込みながら、日常生活の場において家族の健康が損なわれないように、そういう配慮からの指導を進めておるところでございます。また、先ほど申し上げましたような農村地域におきます物的な生活環境施設が未整備であるということが労働をきつくするという面もあるわけでございますから、そういったことにつきましては、例えばただいま進めております農村環境整備でございますとかあるいは各生産施設にかかわります各種の助成の中におきまして、できるだけ労働負担が適正になるように、また健康が保たれますようにということで進めておるわけでございます。
  201. 中林佳子

    ○中林委員 そういうことをおやりになってもなおかつ非常に大変な状況にあるというのは、先ほども触れたことです。本当に農村の婦人の人たちの労働条件をよくしようと思えば、農業で食べていけるような農政への転換、やはりこれが根本的には必要だというふうに思うわけですが、その論議をやっているととても長くなりますのでそこまではやりませんが、農村の婦人の方の労働条件の改善だとか作業環境の改善について、やっているとおっしゃっているのですけれども、まだまだ改善されなければならない点がありますので、私は具体的に二つの点についてお伺いしたいと思います。  一つ農業機械の問題です。  農業において婦人が重要な役割を果たしているわけですが、農業機械を婦人が使用する機会、これは当然ふえてくるわけです。婦人の作業環境の改善、健康という点から、女性が使いやすいように農業機械の改善あるいは開発ということを行う必要があるというふうに私は思いますし、特に実際に指導に当たっていらっしゃる普及員の方から、この点は非常に必要だという要請を受けております。  この点について、農水省として研究なり開発をやっていらっしゃるのか、あるいはメーカーへの指導をやっていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  202. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは特に婦人向けということではないのでございますが、最近の農業機械の改良開発の方向といたしましては、単に労働単位当たりの時間数を節減するという能率視点ばかりではございませんで、例えば振動が少ない、騒音が少ない、あるいは動かすのに筋力を特に必要、としないというふうなさまざまな視点、さらには作業中の安全確保というふうなことを考えて開発改良が行われますように、メーカ1側にも要請をいたしております。  また、国で行っております検査とか鑑定に当たりましても、単に機械の性能だけではなくて、今申し上げましたような使う方の側が肉体的に楽である、健康を損ねないというふうな視点を加味して検査、鑑定を行っているわけでございます。
  203. 中林佳子

    ○中林委員 実際には、今農業の主な担い手である婦人だとか高齢者を念頭に置いた設計などになっていないのがまだまだ実態だと思うのです。  婦人のみの農家戸数が、昭和五十七年の調べで四十二万七千九百七十戸もあるわけです。そういう意味では、婦人の肩に機械の操作だとかあるいは整備だとかいうことも相当かかってまいります。ですから、そういうためには技術指導が必要だと思うのですが、農家の婦人の人たちに聞いてもそういう機会が非常に少ない。だから、お父ちゃんが休みになるまで待って、機械はお父ちゃんに使ってもらうんだというようなことをおっしゃるわけです。しかし、婦人の方にとってみればもっと技術指導もしてほしい、自分としても直したい、こういう要望も持っていらっしゃるので、そういうことについても指導を強めていただきたいと思います。  それから労基法では、継続作業の場合二十キロ、断続作業でも三十キロまでの重量制限をしているわけです。ですから、そういう意味ではコンバインなどを婦人が使うというのは非常に重労働の分野に入るであろう。しかし、婦人がやらざるを得ないという状況にあるわけですから、その点の農水省としての研究開発の成果をメーカー側にも強く要望していただきたいと思うわけですけれども、もう一度お答えいただきたいと思います。
  204. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 婦人にも容易に使える農業機械というのが望ましいわけでございまして、婦人専用の農業機械を開発させて結果的に婦人の機械化労働を推進するということになるのは、私どもとしては本意ではないわけでございます。やはり肉体的に重労働である分というのはできるだけ男性が担うべきものでございますし、また、兼業農家などにおきましてなかなか婦人が重い機械を扱いにくいというものにつきましては、近年進めておりますような、例えば作業の受委託というふうなことによって特定の部分だけは他の経営に依存をするという形の方が、より望ましい姿ではないかというように考えておるわけでございます。
  205. 中林佳子

    ○中林委員 それは望ましいことはそうなんだけれども、実際はそうではないのです。実態からいえばもう婦人がやらざるを得ない状況に追い込まれているわけですから、婦人たちはその点での改善を強く求めております。ですから、こういった婦人たちが使いやすいような農機具の研究だとか開発、あるいはメーカーへの指導を再度強く要望しておきます。  次に、農業規模拡大ということで、以前とは違って家の近くで農作業をするというのではなくして、家からかなり離れたところで農作業を行うということが非常に多くなってきているわけです。こうした場合に、特に婦人の場合は適切な休憩施設だとかあるいはトイレを設けるということは最低限必要だと思うわけです。私が知っているところでも、こういうようなところが設けられているという状況を余り見たことがないのですけれども、この点、農水省としてはどのような御指導をされているのでしょうか。
  206. 森実孝郎

    森実政府委員 休憩施設の設置につきましては、集落農業構造改善事業のうちの集落環境施設整備事業、それから地区再編農業構造改善事業のうちの同じく集落環境施設整備事業農村地域農業構造改善事業のうち生産等環境施設整備事業の一環として整備すろことは補助対象として認められております。それからまた融資としましては、農林公庫の主務大臣指定施設、あるいは構造改善推進資金、さらに農業近代化資金の農村環境整備資金等で道は開かれておりますが、率直に言ってそう実績はないようでございます。特に新しい農用地造成なんかをやる場合、そういう御指摘の点も確かに地域の実情では必要かと思いますので、そういった点は具体的に判断して、こういう道も開かれているということをアドバイスしながら有効に対応していきたいと思っております。
  207. 中林佳子

    ○中林委員 益田地区の国営総合農地開発事業のところに行っていろいろ聞いたのです。ここではブドウや野菜のハウス栽培を始めておって、二十代、三十代の若い人たちが夫婦で農業経営しています。多くの人は車で三十分ぐらい通勤して農業に従事しているわけです。収穫時期になりますと、一農家が十人から二十人、主に婦人を雇うわけです。しかしトイレもない、休憩所も設けられていない。  益田の事務所の方で伺ったところ、まだ途中の事業なものですから、掘っ立て小屋ならいいけれども、ちゃんとしたものは建ててもらったら因る、こういうふうに言っておられるわけです。普及所指導では、ハウスの中の仕事で中間気こう室を設けて急激な気温の変化を避けた方がいい、あるいは薬剤散布の後にシャワーを浴びた方がいい、こういう指導はされているのですけれども、この益田の国営開発のところでは、農業用水はあるけれどもシャワーを浴びるような水はないというような実態があるわけです。だから、せめて国営の農地開発事業では、モデルとなるべき作業環境でなければならないというふうに思うし、嫁さんの来手がないというところで嫁さんも来て、若い婦人たちが一生懸命今やっているところですから、こういうところではそれなりの指導をしていただけないものでしょうか。
  208. 森実孝郎

    森実政府委員 関係者の意見をよく聞いてみまして、対応してみます。
  209. 中林佳子

    ○中林委員 次に、農村婦人の地位の問題についてお伺いをします。  農村婦人が重要な役割を果たしているにもかかわらず、地域農業に関する政策、方針の決定に参加している婦人は極めて少ないということが言われています。国連婦人の十年の国内行動計画や婦人問題企画推進会議の意見書でもそのことが指摘され、その参加を高めることが政府の重点目標になっています。  そこで伺うわけですが、地域農業整備計画の企画、立案、実施に深くかかわっている農業委員会農業協同組合、土地改良区の委員、組合員及びその役員に女性がどのくらい参加しているのか、それぞれについてどういう状況にあるのか、お伺いします。
  210. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 土地改良区につきましてはちょっと調べたものがございませんが、総合農協の場合で申しますと、役員が約八万人おるわけでございますが、そのうち女性が三十人、パーセンテージにいたしますと〇・〇四%。それから農業委員会でございますが、六万五千人ほど委員の鱗数がございますが、うち婦人は六十人でございまして、○・一%弱、こんな数字でございます。  このことにつきましては、農家の主婦側の意識を調べたものがございまして、男女別の役割分担を非常に固定的に考えておられる方が多いようでございまして、現状のままでいいというふうに考えておられる方が七割ぐらいいらっしゃる。こういう農家の中の、あるいは農村内部における社会的な意識の問題とかかわり合ってくるので、急激な改善がなかなかできないというのが現状でございます。
  211. 中林佳子

    ○中林委員 その実情はわかりますけれども、聞いても恥ずかしくなるような数字ですね。〇・〇何%というような状況ですから、大臣も認識を深めていただいたと思います。  しかし、この点は、総理が本部長をされ、農水省の事務次官も本部員として参加し、農蚕園芸局長も幹事として参加されている婦人問題企画推進本部が重点目標として決めたことなんですね。ですから、もっと実効あること、目に見えて改善される施策を講ずべきだということを強く思うわけです。  この政府みずからがお決めになった目標の中には、ちゃんと婦人の政策決定参加の促進について、農林漁業団体など民間団体に協力要請も行うとうたつています。また、この目標のもとになった、総理の諮問機関である婦人問題企画推進会議の提言では「農業経営の根幹となる農業生産体制や農業生産基盤等の整備計画の立案の過程に、女性の実質的な参加を促進するための実際的・具体的な方法の検討を急ぐべきである。」また「地域農業整備計画の企画・立案・実施に深くかかわる機関である農業委員会農業協同組合・土地改良区に、委員・組合員およびその役員として女性が積極的に参加すべきである。」こういうふうに述べられているわけです。  国連婦人の十年も来年で終わるわけですね。この点について、農水省として責任を持って、女性の参加が促進されるような実効ある措置をとっていただきたいと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  212. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 まず、経営内部における判断を要する決定事項ということについての婦人の役割を高めていく、こういうことが前提であろうと思うわけでございます。経営内部の問題につきましてある程度判断に参画できるということがありまして、初めて地域社会の問題につきましても責任ある判断ができていく、こういうことでございますので、私どもとしましては、その農家の中における婦人の経営問題あるいは技術問題についての判断力を高めていくという教育的な手法を重点的に考えているわけでございます。  そのことと同時に、やはりその地域の全体的な意識の問題というもの、これは非常に社会的な習慣にかかわる問題でございますから、短期間に変わってくるということはないのでございますが、おいおい婦人自体の主体性の高まりと合わせまして、こういう問題も逐次解決していかなければならないというふうに理解をいたしております。画一的に一定の数量目標を掲げまして形式的に婦人の参加率を高めるということだけでは、決して問題は解決しないことでございますので、そういう多少息の長い努力が必要である、その端緒をなすのがこの十年間であるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  213. 中林佳子

    ○中林委員 非常に難しい問題で、意識の問題だとおっしゃるわけですけれども、本当に実効ある措置を指導しなければこれは進まない問題だと思うんですね。  民間のところでは一体どうなっているかというと、会社や団体の役員で婦人を登用しているのは一一・七%にまで現在上がっているんですよ。ですから、そういう意味では、〇・〇四%ぐらいなところもある、非常に難しい条件もあることはわかりますけれども、今のお答えでは、ではこうしていくのだという具体的な計画をお持ちのようにも余り思えなかったので、非常に残念に思います。  そうであるならば、私は具体的に聞いていきますけれども、婦人の政策決定への参加の問題について、国の審議会への婦人の参加についても、婦人の割合を一〇%とするよう目標が決められております。農水省の審議会委員のうち、婦人の占める割合は現在何%になっていますか。
  214. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 農林省所管の審議会の委員総数は、これは五十二年当時でございますが、四百五十九人でございまして、うち婦人が九人、二%でございます。その後、新規に婦人委員を任命したこともございまして、現在は委員総数が四百九名、うち婦人委員は二十二名となっておりまして、比率としては五・四%ということに相なっております。
  215. 中林佳子

    ○中林委員 この点でも、目標達成まであと一年余りしかないので、この一〇%までということは到底でき得ないというふうに判断をせざるを得ないわけです。農水省の審議会の中には、十七のうち七つも婦人委員のいない審議会があるわけですけれども、この点について来年までに解消されるおつもりがあるのかどうか、その点についての決意を伺います。
  216. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは審議会の性格と、婦人の中で適任者がおられるかどうかということと絡むわけでございまして、例えば米価審議会でございますとかあるいは蚕糸業振興審議会、農業資材審議会、農林物資規格調査会といったところは大体目標数値に達しておるわけでございますけれども、大変技術的に専門の領域になってまいりますと、婦人の委員を加えたいという気持ちがございましても、なかなか適任者が得られないというふうな問題でおくれておるところがあるわけでございます。これらにつきましても、大変息の長い努力が要る問題でございますが、委員の任命がえのあります都度に私どもとしてはやかましくお願いをいたしておるわけでございます。
  217. 中林佳子

    ○中林委員 局長も入っていらっしゃるそういう会議で決めていらっしゃる目標の達成です。ですから、ゼロ、ゼロ、ゼロというのが七つもあるというのは非常に遺憾だ。技術の経験も学識も要するとおっしゃるけれども、一人もいないのかと言えば、決してそうではないであろうと思うわけですね。そういう意味では、みずから決めた目標達成のためにまず農水省が範とならなければ、婦人のいろいろな政策立案への参加だとスローガンを掲げてみただけでは、これは実効にならないというふうに思うわけです。  では、実際そういうものをどういうふうにやっているのかというと、生活改良普及員の活動の中でやるんだとおっしゃるわけですね。しかし、この生活改良普及員の数がこの十年間に全国で二百三十六人も減らされているわけですよ。こういう実態で、本当に今の婦人参加という問題が、婦人の地位の向上というものが農業のサイドでできていくのかどうか、非常に疑問だと思わざるを得ないわけです。  大臣は婦人は非常に大きな役割を果たしているとおっしゃっているわけですから、農水省としても、婦人の労働条件の改善も含めて、地位の向上、その点についての努力を大臣としてもやっていただきたいと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  218. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 農林水産省といたしましては、今後とも農村婦人の福祉、地位向上、これに一層力を入れてまいります。
  219. 中林佳子

    ○中林委員 本当にかけ声にならないように、実効あるものにしていただくよう強く要望いたします。  今度の農振法の改正の背景の中に、農村の都市化の問題だとか混住化の問題が挙げられているわけですが、日本農村生活の実態はそういうところにだけ目が向けられて解決するものではないと思うわけです。高度成長政策の中で過疎化が進んできたことは御存じだと思うわけですが、この過疎化の問題はいまだに実は歯どめがかかっておりません。私の地元の島根県なども、いまだに、減少率は緩やかにはなっているというものの、やはり過疎は進行しております。なぜこういう過疎が進んできたのか。これは農業の問題だけではありませんけれども、農政のサイドから考えてきたときに、進んできた原因、それからそれを食いとめるためにはどうしていくのかということを農水省としてお考えになっているのか、お伺いいたします。
  220. 森実孝郎

    森実政府委員 例えばここに全国の振興山村と過疎地域の推移がございますが、四十年代の五年間で一割以上超えるような人口の減少が、最近では三%台まで落ちてきていることは事実でございます。しかし、過疎の現実は受けとめなければならないと思います。どうやって地域に現に居住している方々に安定した就業機会を確保していくか、またさらに、どうやってできるだけ多くの都市住民その他の方々にも来ていただけるようにするか、こういう問題がやはり何といっても基本にあるだろうと思っております。  私どもといたしましては、やはり一つは農林漁業の振興という問題がございます。農業について言うなら、複合化という問題を特に重視した振興が要ると思います。それからもう一つは、やはり安定した農林業以外の就業機会の確保という問題があると思います。さらに、過疎地域の開発を進める意味における公共事業の実施なり、あるいは生活環境整備という問題があると思います。こういう意味で、実は公共事業につきましては採択基準の引き下げ、緩和あるいは補助率の特例等の措置を講じておりますし、また構造改善事業、林業構造改善事業も実はかなりの部分がこういった地域で実施されておりますが、特にこういった地域に着目した固有の制度としては山村振興対策事業農村地域定住促進事業を講じております。五十九年度からは新しく新農村の定住促進対策事業もこういう視点から発足させまして、農林漁業の振興の問題、それから地場産業の育成の問題、それから観光開発による就業機会の確保問題等を総合的に進めることとしております。  私どもといたしましては、こういった農林省固有の施策を進めると同時に、一つはやはり広域的な観点と就業機会の少ない遠隔地を重視した工業導入の問題等についてこれから努力を続けていきたいと思っておりまして、農村工業の導入についてもこういう基本方針を打ち出しているのは、まさに過疎地域の問題を一つ念頭に置いての決定でございます。  また、これ以外に労働省におきます地域雇用促進給付金の問題、それから通年雇用促進対策の問題、さらに冬期雇用安定対策等、かなり労働省の施策の強化もございますので、こういう施策につきましては、関係省庁にますます施策の強化と適切な運用についてお願いしてまいりたいと思うわけであります。
  221. 中林佳子

    ○中林委員 基本的には農林漁業の振興、これが基本でなければならないと思うわけです。各自治体では、それなりに何とか就業の場を、また安定した生活をということで努力されております。  日本一の過疎地と言われている島根県の匹見町ですが、ここの自治体の要望は、実は特産品としてワサビをつくっているのですが、ワサビ漬け、かす漬けというのは静岡で名が通っておるわけですね。ですから、新たにしようゆ漬けなどを奨励したいのだけれども、日もちがしない。そういう意味で、技術指導というものを望んでいるわけです。本当に採算がとれるようにするためには、そこで加工していき、付加価値を高めていくことが望まれるわけですけれども、実際は技術が確立していないので、せっかくの特産品が静岡に送られて静岡のワサビとなって出ているわけです。  こういう悲しい実態もありますので、私、もっと質問したいと思っていたのですが、時間がございませんので、特にこの過疎を食いとめていくために、農政サイドから、本当に農林漁業の振興とそこで苦労している地場産業への技術指導、これをぜひ強めていただきたいということを要望しておきます。  きょうは、実は防衛庁にも来ていただいております。  先ほどほかの委員が出雲の射撃場の話をなさったのですが、私、直接出雲の農業試験場から要請を受けております。本当に農業試験場のすぐ近くで、年間五十回ないし六十回の射撃訓練がされている。山口の例もございまして、そこで働く人たちが不安を覚えておるわけです。ですから、県や市などが防衛庁の方に要請した場合には話に応じていただきたいということを強く要望するわけですけれども、一言だけ防衛庁のお考えを聞かしてください。
  222. 大原重信

    ○大原説明員 お答え申し上げます。  ただいま、出雲の試射場は私ども重要な施設として有効に利用させていただいておりまして、現在のところも移転する考えはございません。
  223. 中林佳子

    ○中林委員 農業やそれから命にかかわる非常に重要な問題でございますので、防衛庁に対して県や県民などが強く要望したことについて、仮定の話はできないと先ほど御答弁にもありましたけれども、ぜひその要望にこたえていただくよう要請して、私の質問を終わります。
  224. 阿部文男

    阿部委員長 以上で両案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  225. 阿部文男

    阿部委員長 これより両案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。津川武一君。
  226. 津川武一

    ○津川委員 日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題になった法律案に反対討論を行います。  まず、農振法の改正案。  政府は、構造政策の推進による生産性の高い農業の確立こそが豊かな村づくりを支える基盤だとして、農振地域整備計画で、農地流動化による中核農家規模拡大など構造政策を総合的に追求できるよう、その内容拡大しています。  しかし、歴代自民党政府農産物の市場開放や低価格政策を進め、農業構造改善の推進を押しつけ、零細な兼業農民はもとより、中核農家経営をも大きく圧迫してきました。結局、構造政策の推進は、日本農業を縮小、衰退に追い込んでいます。  農地の効率的利用や総合利用はあくまでも農民の話し合いによって進めるべきであり、市町村の農振地域整備計画の中で上から押しつけるべきではありません。  次に、交換制度の拡充の問題。  従来、我々は農振法に基づく線引きが都市政策や各種開発政策に従属するいわば残地農業論に基づくものと批判してきましたが、今回の優良農地の他用途転用を円滑に進めるという改正は、そうした性格を一層強めます。  さらに、施設配置に関する協定に同意しない者の土地について、協定区域予定地として取り込み、しかも、協定参加者の要求があれば市町村長は不同意者へ協定参加のあっせんができることとしてありますが、これは、運用次第では協定非参加者の権利侵害につながりかねません。  次に、土地改良法改正案について。まず第一に、換地制度における非農用地の創出手法の拡大は、土地改良法目的である農業総生産の増大に逆行するものになります。  第二に、土地改良法の民主的側面である農民の自発性に基づく土地改良事業を具体的に保障しているものは、関係農民の申請に基づく事業実施であり、関係農民の同意手続です。この同意手続がたとえ一定の条件に限定されるにせよ簡素化されることは、民主的側面の後退です。  第三に、総代会の設置要件を組合員三百人以上から二百人以上にする件では、総会が現実兼業化が進む中で開催困難という場合もありますが、土地改良区の民主的運営からの後退と言わざるを得ません。  最後に、今回の二つの改正案が、農村の混住化やスプロール化が進む中で、生活環境整備や都市と農村の水利用の調整など、現実が提起している問題に対応している側面もありますが、豊かな村づくりや活力ある農村社会の形成には、何よりもまず、農業を国の基幹産業として位置づけ、外国農産物の輸入を抑え、国内農業を積極的に拡大すること、土地基盤整備事業の予算を思い切ってふやし、土地改良における農民負担の軽減を図ること、他産業の労働者並みの労働報酬を保障する価格保障を充実し、中小農民も含めて経営が成り立つようにすることなど、積極的な農業政策展開基礎にならなければならないことを強調し、反対討論を終わります。
  227. 阿部文男

    阿部委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  228. 阿部文男

    阿部委員長 これより採決に入ります。  まず、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  229. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  230. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対し、田名部匡省君外三名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。細谷昭雄君。
  231. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合を代表して、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   最近の農業農村をとりまく厳しい状況に対処し、食料自給力の維持強化を図り、併せて生産性の高い農業の確立と豊かな村づくりを強力に推進することが緊急の課題となっている。   よって政府は、農業振興農村整備に係る各種施策を総合的かつ計画的に実施するとともに、特に本法の運用に当たっては、左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。       記  一 農業振興地域整備計画の見直し等に当たっては、優良農地農用地開発適地の積極的な確保とあわせ、不耕作地等の有効活用を図るための指導を行うこと。    また、農用地開発を円滑に推進するため、里山等を対象とした交換分合制度が積極的に活用されるよう関係者に対する啓もう等に努めること。  二 農用地の効率的かつ総合的な利用の促進に当たっては、市町村農業委員会農業協同組合等の協力体制のもとに、中核農家兼業農家等との連携を醸成し、地域農業集団育成強化して、農地集積農作業効率化作付地集団化、耕種農業畜産との連携強化を図る等農業構造の改善施策を総合的に推進すること。    また、これら農業構造の改善施策とあわせ、農産物の生産流通対策及び価格対策が適切に実施されるよう十分配慮すること。  三 農業従事者の安定的就業の確保のため、農村地域への工業導入、地域農林水産物の加工利用対策をはじめ地場産業の育成等に対する各種施策の強化拡充に努めること。また、これら施策の実施に当たっては、日雇い、出稼ぎ等の不安定就業改善のために特段の配慮をすること。  四 農村地域における担い手の定着及びコミュニティー機能の育成等を図るため、各種生活環境施設等の整備を促進すること。また、これら施設の設置が優良農地確保を阻害することのないよう十分配慮すること。  五 農業振興地域整備計画の各種計画事項が円滑かつ整合的に実施されるよう、国は、事業の適切な採択とその実施について十分な配慮を行うこと。  六 集会施設、農業用用排水路等の維持運営に係る協定制度については、非農家等を含め、関係者の幅広い参加と負担の公平化が図られるよう、集落の自治機能を助長する方法で進めること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程などを通じ既に委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。  以上です。(拍手)
  232. 阿部文男

    阿部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  田名部匡省君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  233. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。     ―――――――――――――
  234. 阿部文男

    阿部委員長 次に、土地改良法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  235. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  236. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対して、上草義輝君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。小川国彦君。
  237. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同を代表して、土地改良法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     土地改良法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   最近の我が国農業をめぐる厳しい状況の下で、土地改良事業農業生産性の向上、農業生産の増大及び農業構造の改善等に果たす役割は一層重要なものとなっている。   よって政府は、第三次土地改良長期計画の完全実施に必要な予算の確保事業に対する農家負担の軽減、事業工期の短縮化等に努めるとともに、本法の運用に当たっては、左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。       記  一 近年、農業用排水路等が地域排水路としての性格を一層強めている状況に対処し、これら施設の建設事業費の負担の公平を図るとともに、市町村等協議制度、非農用地受益者に対する賦課制度等が地域の実情に応じ有効に活用される適切な措置を講じ、土地改良区の経費負担の軽減を図ること。  二 土地改良区及び土地改良事業団体連合会の組織運営体制の強化を図るため、財政基盤の充実、事業運営への構成員の意思反映及び役職員の資質の向上と処遇の改善に努めること。    また、土地改良区による土地改良施設の痛切な維持管理を確保するため、助成措置の充実に努めるとともに、水系等を基準とした土地改良区の合併を促進すること。  三 土地改良区が行う農業集落排水施設整備事業が適切に実施されるよう、市町村等の行う事業と十分な調整を図るとともに、技術援助体制の整備を行うこと。  四 農村生活環境施設用地等の換地手法による生み出しに当たっては、優良農用地のスプロール防止を図ることを旨として、その設置場所の選定及び規模等について十分な配慮が行われるよう指導すること。    また、換地の実施に当たっては、関係者の意見が十分に反映され、公正な運用が図られるよう指導すること。  五 一定土地改良事業に係る同意徴集手続の簡素化及び土地改良区総代会の設置要件の緩和に当たっては、組合員の権利を保護し、その意見が十分反映されるような措置を講ずること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程などを通じ既に委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  238. 阿部文男

    阿部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  上草義輝君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  239. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本案に対して附帯決議を付することに決しました。     ―――――――――――――
  240. 阿部文男

    阿部委員長 この際、ただいま議決いたしました両案に対する附帯決議に関し山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山村農林水産大臣
  241. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 ただいま御可決いただきました二法案の附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  242. 阿部文男

    阿部委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  244. 阿部文男

    阿部委員長 次に、内閣提出昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。山村農林水産大臣。     ―――――――――――――  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員   共済組合からの年金の額の改定に関する法律   等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  245. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  この法律案は、農林漁業団体職員共済組合による給付に関し、恩給制度、国家公務員等共済組合制度その他の共済組合制度改正に準じて、既裁定年金の額の引き上げ等による給付水準の引き上げ等を行おうとするものであります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、既裁定年金の額の引き上げであります。これは、退職年金等の年金額の算定の基礎となった平均標準給与を、昭和五十八年度の国家公務員の給与の上昇率を基準として引き上げることにより、年金額の増額を行おうとするものであります。  第二は、退職年金等についての最低保障額の引き上げであります。これは、恩給制度の改善に準じ、退職年金、遺族年金等に係る最低保障額を引き上げようとするものであります。  第三は、掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額の下限及び上限の引き上げであります。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  246. 阿部文男

    阿部委員長 補足説明を聴取いたします。佐野経済局長
  247. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案提出いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下、その内容につき若干補足させていただきます。  第一は、既裁定年金の額の引き上げであります。これは、昭和五十八年三月三十一日以前に給付事由が生じた退職年金、減額退職年金、障害年金、遺族年金、通算退職年金及び通算遺族年金につきまして、その年金額の算定の基礎となった平均標準給与を、昭和五十八年度の国家公務員の給与の上昇率、平均二・〇%を基準として、旧法組合員期間に係るものについては昭和五十九年三月分から、新法組合員期間に係るものについては同年四月分から引き上げようとするものであります。  第二は、最低保障額の引き上げであります。己れは、退職年金、障害年金及び遺族年金につきまして、年齢及び組合員期間の区分に応じ、その畠低保障額を昭和五十九年三月分から引き上げるとともに、遺族年金については同年八月分からさ円に引き上げようとするものであります。  例えば、六十五歳以上の者の退職年金の最低保障額については、昭和五十九年三月分以後七十九万二百円から八十万六千八百円に引き上げることとしております。  第三は、標準給与の下限及び上限の引き上げであります。これは、掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額につきまして、その下限を農林漁業団体職員の給与の実態等を考慮して七万五千円から七万七千円に引き上げるとともに、その上限を国家公務員等共済組合制度に準じて四十四万円から四十五万円に引き上げようとするものであります。  このほか、所要の規定の整備を図ることとしております。以上をもちましてこの法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  248. 阿部文男

    阿部委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、明十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十八分散会      ――――◇―――――