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鷲尾参考人 ただいま御紹介をいただきました
鷲尾でございます。
私は、現在
新潟県西蒲原
土地改良区の
理事長をいたしておりますほか、
新潟県の
土地改良事業団体連合会の
会長も務めさせていただいておるものでございます。
今回の
土地改良法の一部
改正案につきまして、現場において
土地改良の実務に携わっておる者の
立場から御
意見を申し述べさせていただきたいと思います。
具体的な
法案の
内容に対する御
意見を申し上げる前に、現在私
どもが一番困っておりますものは、
土地改良区が
管理しております
施設の
管理費を含めました
管理問題でございます。
もっと深く御
理解をいただきたいために、西蒲原
土地改良区の実態等について少しくお話をさせていただき、御
理解を賜りたいと思うわけでございます。
西蒲原
土地改良区は信濃川の最下流に位置しまして、東西十五キロ、南北三十五キロの長楕円状の
地域で、標高は最高で十メートル、最低が〇・五メートルと極めて低平な
地域であります。二万ヘクタールの
農地と一万五千人の組合員を持つて、
新潟市の一部を含む二市十カ
町村を区域といたします私
どもの
土地改良区は、最高二メートル五十以上の沈下記録を持っております有名な地盤沈下地帯であることも皆様に御紹介を申し上げておる次第でございます。私
ども、この低平地の排水に対しまして八十五の大小の排水機を動かしながら
地域内の排水を行っております。もしこれらの
施設がなかったならば、全
地域の約三分の一の七千ヘクタールが水面下に置かれて、下流部では一メートル五十以上の水深を持つ、まさに干拓地と言っていい
地域状況でございます。
しかも、単に
農地の排水のみならず、
地域全体の排水も行い、治水事業の
役割も果たしているという現状でありますので、そのために、農民からは、これらの維持
管理費が農民、厳格に言いますと田畑の
面積による賦課金によって賄われておる矛盾を強く指摘しておる次第でございます。適正な費用負担の要望が強く出され、加えて市街地から出るところの汚濁水や家庭雑排水の流入する、総延長一千七十五キロに及ぶところの用排水路の維持
管理等多くの問題を控えておるわけでございます。維持
管理費を含めて、維持
管理問題は私
ども今後
土地改良区の運営の上に非常に大きな
問題点を投げかけており、早期に解決しなければならない問題と深く感じ取っておるものでございます。
昭和四十七年の
土地改良法の
改正で
市町村協議
制度が取り入れられたのでありますが、早速これを活用いたしまして、
関係の
市町村と
土地改良の
施設の
管理と
管理費の分担についての話し合いを持たしていただいたわけでありますが、
市町村の数が多く、一
市町村でも話し合いがつかない場合には全部むだになってしまうというようなことで、大変苦労をいたしましたことを記憶いたしております。長い討議の結果、毎年五分の一ずつの積み上げによりまして五年間でようやく
目標額に達するようなことでの話し合いをいたし、現在では私
どもが排水処理費として約七億円をかけておりますうち一億一千万円余の金を
関係市町村から非
農地排水負担金として納入していただき、御協力をいただいておるわけであります。
なお、これは本来受益に基づくものでありますので、
住民一人一人から徴収するのが建前であるというような言い方もされて、自治体がその肩がわりをしてやっているのだというふうな観念がいまだに残っております。そのため、毎年、協議会と称しますが、私
ども土地改良区が
市町村にお願いする
立場をとりながら
関係市町村長にお願いをして金額を提示し、御協力をいただいておるというふうな
状況であります。もしあのときにこのたびの
法律改正案に盛られておりますような知事裁定という形のあっせん的な
制度を持っておったならなと、しみじみと身にしみて深く感じられるものでございます。
第二の問題は、換地の問題でございます。
急激な
混住化社会の中にありまして、私
どもが中心となりまして非
農家の方々と仲よくしながら、私
どもが中心となって
生活の場を
整備する必要があると考えておるわけでございます。
優良農地を十分
確保することを大前提としながら、
生活環境施設用地も
農業者みんなが共同して提供できるようなことが必要なことではないかと思っております。現在の
土地改良法の換地
制度の中ではこれに十分こたえて処理する道がありませんので、これらの点についても考えていかなければならないというふうに考えております。
第三点としましては、
土地改良事業の実施と
土地改良区の運営の問題であります。
御承知のように、
兼業農家がふえてまいりますと
農家の考え方も多様化して、せっかく有意義な事業を始めようとしてもなかなか話がまとまらず、事業実施の時期を失ってしまうという例が少なくありません。また、
総代会制をとれないような小さな
土地改良区では組合員の
土地改良区に対する
関心が薄れ、
総会を開くにもなかなか思うに任せない事例も聞き及んでおります。
私
どもが抱えておる問題を三つほど申し上げましたが、いずれにしましても、この問題は現在の
土地改良法では情勢の
変化に十分対応し得ることができないというふうに考えておるわけでございます。その
意味におきまして、今回提案されました
改正案の
内容はまさに時宜に適したものと考えられ、ぜひとも
委員の皆様方のお力によりましてできるだけ早く成立させていただきたいと思う次第でございます。
引き続きまして、具体的な
法案の
内容、特に私の
関心のあるものを中心として御
意見を申し述べさせていただきます。
まず、
市町村等協議に関するものでは、知事裁定の導入であります。
私の
土地改良区では、先ほどお話し申し上げましたとおり、
農地からの排水だけでなく、
新潟市を初めとする十二カ
市町村の市街地からの宅地排水、家庭雑排水を一手に引き受け、処理しております。まさにこの
地域の治水対策や下水対策もあわせまして西蒲原
土地改良区が担っていると言って過言ではないわけであります。その
意味におきまして
管理の問題を提起し、解決の道をひたすら願っておる次第でございます。その
意味からしましても、今回の知事裁定の導入は極めて意義深いものであると思います。また、この
制度が十分運用されまして、公平に行われますような措置をおとりいただくことを切望してやまないものでございます。
次に、非
農地生み出しの
手法の
拡充でございます。
これは長年の私
どもの要望でもございましたので、まさに遅きに失した感がないわけでもありませんが、ぜひお願いいたしたいと思う次第でございます。
その次には、
土地改良施設更新事業の同意手続の
改善であります。
私
どもの
土地改良区は、一万五千人の組合員から、事業を起こす段階で一々個々面接をして同意書の取りまとめをやっております。その労力、経費は大きく、なかなかばかにならないものでございます。もちろん私
ども事業実施側の
立場からは、組合員の権利の
保護ということを第一義的に考えるのでありますが、今回
改正案に盛られました
施設の単純な更新事業は、受益地が従前どおり存続する限りのものについては、一々個別の
意見を問うものではなくて、当然に行われなければならないところの
総会の議決等によりましてそれらの
審議を行い、着工できるようにさせていただくことがより便宜的な問題であろうかと思う次第でございます。
次に、連合会の事業の拡大について申し述べさせていただきます。
これは、私
ども土地改良事業団体連合会の側から申しますと、長年にわたって要望してまいりましたものであります。私
ども連合会は、三十三年の発足当時は会員の調査設計の受託を主とした業務としておりましたが、最近は換地促進
指導や
施設管理指導等で、
指導業務のウエートが極めて高くなってきておる実績を持っております。しかしながら、現在
法律的にはその
指導業務は連合会の基本となる業務に当たらない、いわゆる目的達成のための必要な事業としてしか認められていなかったため、私
どもといたしましては会員に対して確固たる信念を持って
指導をすることに若干のちゅうちょをせざるを得ないような状態でありましたので、これらのものの処理を、私
どもが責任を持って
指導業務に当たれるような形での
改正をお願い申し上げたい次第でございます。
このほか、今回の
改正案では
農業集落排水
施設整備事業を
土地改良区が行う場合の手続が明確化されております。
地域団体としての
土地改良区の新しい
役割としまして、このような事業に積極的に取り組むという観点から、時宜に適した
改正と思います。
ただ、問題は現在の
土地改良区ではこれらの技術的な
指導体制がほとんど
整備されておりませんので、十分これらの
整備を急がなければならないというふうに考えるわけでございます。また、この事業に要しますところの経費は契約に基づいて徴収することになっておりますが、負担金徴収にそごがないよう十分
指導することが必要だろうというふうに考えるわけでございます。
最後に、総代会の設置要件の緩和でございます。
最初に述べましたような事情から、妥当な
改正とも考えております。これとあわせまして、選挙
制度についても、選挙期間が非常に長くなっております。現在二十日間の選挙期間を有しておりますが、これらも公職選挙法と同じような仕組みでの制定でございますので、公職選挙法の期間短縮にあわせましての
改正が必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
以上、簡単に今回の
改正案についての所感を申し述べさせていただきましたが、同時に農振法の
改正案が提出されておりますので、
土地改良法の
改正との関連もございますので、少しくお願いをさせていただきたいと思う次第でございます。
農村地域の
混住化の中で、豊かな村づくりを基本としたところの今回の農振法の
改正につきましては、私
ども土地改良団体としましては大いに賛成するものであります。その推進については、
市町村とともに
土地改良団体も中心となって当たるべきだと考えております。特に小用排水路等の適正な
管理をねらいとした
農業用用排水
施設の維持運営についての
協定制度の創設でございます。先述のように、私
ども、改良区の末端水路につきまして
管理粗放化の実態を見ますと、まことに時宜に適したものと思う次第でございます。
また、里山の
関係の問題、あわせまして
生活環境施設用地等の
生み出しのための創設換地
制度の仕組み等々でございます。すべて今の時宜に適したものと考えるわけでございますので、これまたぜひ皆様方のお力によってできるだけ早くお通しいただいて、法定化していただきたいというふうに考えるものでございます。
以上述べまして私の
意見とさせていただきます。
どうもありがとうございました。(
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