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1984-05-10 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    太田 誠一君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    高橋 辰夫君       月原 茂皓君    中村正三郎君       野呂田芳成君    羽田  孜君       保利 耕輔君    三池  信君       山崎平八郎君    上西 和郎君       串原 義直君    新村 源雄君       田中 恒利君    細谷 昭雄君       安井 吉典君    斎藤  実君       武田 一夫君    神田  厚君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席政府委員         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君  委員外出席者         参  考  人        (財団法人農村         開発企画委員会         専務理事)   石川 英夫君         参  考  人         (財団法人農村         金融研究会主任         研究員)    坪井 伸廣君         参  考  人         (全国町村会副         会長)     湯本 安正君         参  考  人         (新潟土地改         良事業団体連合         会会長)    鷲尾 貞一君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第六四号)  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第六五号)      ————◇—————
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  本日は、両案審査のため、参考人として財団法人農村開発企画委員会専務理事石川英夫君、財団法人農村金融研究会主任研究員坪井伸廣君、全国町村会会長湯本安正君及び新潟土地改良事業団体連合会会長鷲尾貞一君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りまして、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。石川参考人坪井参考人湯本参考人鷲尾参考人順序で、お一人十五分程度の御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、石川参考人にお願いいたします。
  3. 石川英夫

    石川参考人 農村開発企画委員会石川と申します。かねて農村問題についての調査研究を進めてまいりましたが、このような光栄ある場で私の意見を開陳させていただく機会を与えられましたことを深く感謝申し上げる次第でございます。  きょうの先生方の御審査の対象になっております農振法並びに土地改良法の一部改正案についてでございますが、まさに日本農業がいろいろな困難に立ち至っている時期にこういう農村整備に関する本格的な法制化審議が行われております点に、私たちは非常に力づけられている次第でございます。  農業政策については、私などが申し上げるまでもございませんけれども、最近のような貿易摩擦、輸入の自由化等さまざまな外圧の中で、国民の一部の世論といたしましては、我が国農業に対する消費者的な立場また全国民経済的な立場から、非常に急進的な改革を求める声もございます。しかし、他方、農業の側といたしましては、農業というものは産業の性格上そんなふうに急激なる変革はなかなか望めませんから、やはりある程度保護を加えながら、漸進的に合理化あるいは効率化というものを進めていかざるを得ないのではないかという論議もございます。二つの立場に立つそれぞれの論客といたしましては、ごくフリーな立場からはかなり自由な論議というものは可能でございますが、現実に行政展開するという場合になりますと、このいずれかに立ってひたすらに政策推進するということもなかなか難しい点でございまして、やはりそのときどきに応じまして改革保護をうまく使い分けながら、しばらく進行していかなければならないのではないかと存ずる次第でございます。  最近、それでも農業経営合理化につきましては、既に農用地利用増進法等によりまして、中核農家を中心といたしますところの農業経営規模の拡大とか農地流動化ということがある程度実現性を持って漸進的に進められていることは先生方特に御案内のことでございますが、こういうような政策動向並びに農政論議をずっと私自身が見ておりまして、どうしてもここに一つ重大な問題が今まで欠如していたのではないかということをかねて痛感しておった次第でございます。  それは、いずれにいたしましても、これからの日本農業担い手を実際どういう場においてどういうふうに育てていったらいいかというような問題でございまして、直截には、そういう農業担い手が生身の人間として住み、そして勤労しておりますところの農村地域、合理的な、農業担い手が定住し、かつ落ちついて農業に取り組める場としての、生産の場であり、また生活の場であるところの農村地域をどういう形で整備していくかという点について、政府の方においても今までやや配慮が足りなかったのではないかということをかねて痛感しておりました一人でございますが、やはりここで、後ほど申し上げますけれども、必ずしも私の立場から見れば十分なものではございませんが、とにかく農振法並びに土地改良法改正ということで農村地域整備第一歩が印せられようとしているという点に、私、着目したいと思うわけでございます。  農村をそういうような農業担い手たちの住む場として考えますと、やれ道路の問題であるとか、やれ学校の問題であるとか、さまざまな地域生活環境施設がいまだしの感があるわけでございます。しかし、なお、そういうような施設面、我々はハード面という言葉でよく表現しておるわけでございますが、それだけではなくて、やはり農村の中に住民としての連帯感というものが一つ失われつつあり、現代の複雑化いたしました農村住民構成の中で、古い農村集落秩序の維持だけではなく、新しい農村地域社会をどういうふうに形成していくかということが、農業担い手たち、殊に若い農業担い手たちがこれからも農村に腰を落ちつけて農業に専心していただくことの直接効率的な一つの条件だろうと思います。  つづめて申しますれば、農村社会関係と申しますか、ソフト面で申しますと新しい社会秩序と申しますか、こういうものができませんと、例えば今政府がせっかく進めております農用地流動化あるいは利用増進という政策も、すでに広範な数に達しております第二種兼業農家と本当に農業担い手になろうとしていく専業農家との間に、土地の貸し借りの場合においても新しい連帯関係というものが形成されませんと、なかなか円滑に進まないのではないか。連帯関係というのは、言葉をかえて申しますれば、同じ地域に住む住民一つ信頼関係と申しますか、そういうことだろうと思うわけでございます。  先生方もう既に御案内のとおり、さらに現代日本農村には、直接農業や林業に関係のない非農業者が非常にたくさん居住されるようになってまいりました。すると、在来の農業者と新しい住民であるところの非農業者との間には、土地利用をめぐって、あるいはまたいろいろな生活雑排水の処理をめぐって、あるいはまた村としてのコミュニティー活動を一緒にやろうというような運動を展開するに際しても、ほうっておきますとさまざまな摩擦というものが深化するおそれがございます。そういう点で、第二種兼業農家、非農業者ともども今後農村に定住し、そして明るい農村をつくっていくということが非常に必要になってきていることは申すまでもございません。  一言で申し上げますれば、今後の効率的かつ健全なる農業というものは、本当に新しい時代に即応した明るい農村社会というものが形成されて、初めてさまざまな形でのたくましい農業というものがここに展開することに相なるのではないかと存ずる次第でございます。したがいまして、農業改善というものの外枠といたしましての農村地域社会、その農村地域社会の中でも特に施設整備にとどまらず、いわゆる私がソフト面と申し上げましたような農村地域社会の新しい社会的な結合関係というものをどういうふうにつくっていくかということについて、今回の二法案農政の枠内でできるだけの限度におきましてこういうような施策を初めて講じられるような気配がございます。  かねて農村計画制度という問題については、不肖私も八〇年代農政審議いたしました農政審議会専門委員として参加させていただきまして、農業基盤とする豊かな緑の地域社会の形成に向けての農村計画制度の検討ということを政府に対して御進言申し上げた立場でございますが、その観点からいきますと、農村社会対策としては今回の二法案はいまだしの感はございます。しかし、私たちがまた農村住民の方々ともどもかねて念願しておりましたところの新しい農村社会対策展開に向かって、とにかく今一歩前進されようとする内容がございます。その点を第一に評価したいと思います。  第二点といたしましては、若干の改正でございますが、将来この改正法案を踏み台にいたしまして、農政関係者、ことに全国の都道府県、地方自治体またさらに農業者団体等がこの改正法案をうまく地方で運用されまして、中央の画一的な指導ではなく、それぞれの地方創意工夫を生かしながら将来的な農村地域社会を形成するためのいろいろな実践活動を積み上げられ、それがまた中央農政に集約されまして、一歩一歩都市に引けをとらない、ゆとりのある豊かな居住環境としての農村地域というものが我が国に形成されていくことを念願してやまない次第でございます。  法案の個々の細かい内容についてはもう先生方案内だと思いますので、一般的な所見を開陳させていただくにとどめたいと思います。(拍手
  4. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、坪井参考人にお願いいたします。
  5. 坪井伸廣

    坪井参考人 農村金融研究会坪井です。私がここで参考意見を求められることについてはどうも心当たりが何もないのですが、今回の改正について私なりの関心をここで述べてみたいと思います。  今回の改正目標は、地元における安定的な就業確保、それから農村社会生活環境整備、それに水、土地利用スプロール防止ということが設定されておりました。このうち安定就業確保ということについては、農林省がそれを法律の中に盛り込むことは画期的なことだというふうに言われているところもあるようですが、地元市町村にとってみれば、それはもう既にこの二十年来の最重要な課題として取り組まれてきたことだろうと思います。また、生活環境整備あるいは水、土地利用スプロール防止ということについても、この十数年来の重要な課題のうちの一つであったというふうに私は考えております。  そういう意味では、今回の法改正特徴は、今申し上げました三つの目標を実現するための手法整備にあるのだろうというふうに私は理解しておりました。九つほどの手法整備が指摘されておりますけれども、その大半について、その手法が今後どのように展開していくのかということについて、私自身も非常に大きな関心を持っております。単なる関心ではなくて、多くのものについては私自身期待してみたいというふうにも思っている次第です。  ただし、二、三の点については若干懸念が感じられないでもないのです。例えば市町村農業振興地域整備計画計画内容の充実ということがうたわれておりますけれども、それが具体的にどのような実効を持つものかということについては、私どもが今まで市町村幾つか見てきた限りにおいては、どうも計画倒れに終わってしまいかねないなという疑問もあるわけです。それについても、今後、県あるいは国の適切な助言なり指導があれば、計画倒れにならないようなことも考えられるだろうと思います。  また、農業用排水路の適切な管理による地域排水対策改善については、市町村土地改良区との連携の強化ということがうたわれております。これについては、土地改良区の市町村に対する安易な依存体制を助長しないだろうかということが私自身としては気になるところであります。  それから土地改良区の総代会設置要件の緩和についても、既に今この程度規模土地改良区であっても何とか総会を実施しているところがかなりあるわけですけれども、そういった今現に総会制をとっている土地改良区が、今後この法案改正によって安易に総代会制に移行してしまうのではないかなという懸念も若干いたします。ただし、今指摘しました懸念については、適切な助言なり指導があれば、私自身もさしてここで取り上げて問題にするほどのことではないというふうに思っております。  それから、先ほど私自身が今後に期待したいということを指摘しましたが、今回の改正はあくまでも将来に向けての第一歩だろうというふうに私は理解しております。そういう意味では、今後に残された課題が非常に多いのではないかなというふうに思います。そのような意味で、引き続く将来の課題ということから、今回の改正について私なりに関心があることについて二、三ここで意見を申してみたいと思います。  第一点は協定制度の創設についてですが、協定制度というのは、農村集落が従来持っていた慣習法的な秩序体系にこれから幾分なりの期待を寄せるという姿勢行政側が明確にしたということで、かなり画期的なことではないかというふうに私思っております。というのは、明治以来の地方行政制度整備は、近代法的な秩序体系の導入のもとで、地域社会が持っていた強い慣習法的な秩序体系をいかに否定していくかということで進められてきたのではないかというふうに私は思っております。にもかかわらず、今回、どうしても否定し切れなかった農村集落が持っている慣習法的な秩序体系幾分なりとも期待をしたいというような姿勢を示されたことに対して敬意を表したいというふうに私思っております。そういった農村集落が持っていました慣習法的な秩序体系に今後どれほど期待できるかということについては、私自身も皆目見当がつかないわけですが、いわば今までなかった発想だろうというふうに私は評価しておりますし、今後このことがどのように展開していくのだろうかということについて、非常に大きな関心を寄せている者の一人であります。  ただし、慣習法的な秩序体系期待をするといっても、決して古い慣習そのものに依拠するということではないことがはっきりうたわれております。そこでは新しいコミュニティーをつくるのだという理念のもとで、新しい協定ということが想定されているようです。その意味においても、この協定が今後どのように展開するのだろうかということについて大きな関心を持っておりますし、今後の展開期待したいというふうに思っている次第です。その上で、今後この協定内容をさらに拡充していってはどうだろうかなというようなことが考えられていいのではないかというふうに思っております。  それから、協定をいかに維持していくか、協定を守る主体がどこなのだろうかということについて、私、はっきり具体的に何を想定していいのかわからないわけですが、今後の課題としては、協定を守っていく、協定を維持していく管理主体のようなものの組織化が求められていいのではないかな。それが事によったらば新しいコミュニティーづくりにつながっていくことなのかもわからないというふうに思っている次第です。  第二点は、生活環境施設用地の生み出し手法拡充についてです。  現在の農振法のもとでここまでの手法拡充が可能であれば、私が今これから指摘するようなことについてもあるいは可能なのではないかなというふうに思っているのです。それは、さしあたり今予定がない、需要がない土地、例えば十年先あるいは二十年先に必要と思われるような農業施設用地あるいは住宅用地、こういった土地についてもあらかじめ共同減歩なりその他の手法を用いて、ある特定地域に将来必要と思われるような土地確保しておくということができれば、今後のスムーズな農業構造変化あるいは地域社会活性化幾分なりとも寄与するのではないだろうかというふうに思っております。  農業生産というのは、ほかの産業と比べれば確かに変化が遅いものだというふうに思っております。ただし、それでも五年なり十年の間には農業生産構造も変わってきます。農業生産変化に応じて、必要とされる施設も変わってきます。その施設に応じた土地確保されることが農業生産をスムーズに進めていくことの一つだろうと思います。今さしあたり予定されている土地だけを確保したのでは、仮に十年なり二十年の間に起こり得るだろうと思われるような農業生産変化に的確に対応していくことが果たしてできるのだろうかというような懸念を、私、持っております。あらかじめある特定土地がそのような用地として確保されているのだということならば、意欲的な農家が、農業者が、新しい農業生産に積極的に取り組んでいくチャンスになるだろうというふうに思っております。  それから、地域特定されるかもわかりませんが、今でも農家分家あるいは集落外からの人口の誘導ということを考えている、あるいはそれに期待を寄せる集落がないわけではありません。そういったこれから生まれるであろう宅地、農家あるいは農家分家住宅用地が今の農用地なりに点在してばらばらに転用されていったのでは、せっかく確保された農用地利用が、効率的な運用が果たしてどこまでできるのだろうかということを考えてみると、これから考えられ得るだろうと思われるそういった農家分家用地なり、あるいは集落外からの新しい呼び寄せていいような人たち住宅用地も一あらかじめある特定地域確保しておくこともあるいは可能なんではないかというふうに思っている次第です。そういった、仮にこれから将来予定されるような土地が確定できれば、それに今回制度化されるような協定をかけてみるというようなこともあるいは可能なのではないかなというふうに思っております。  あと、幾つかの点で、私、個人的に関心を持つているところがあります。例えば、今回里山の利用のことで林地交換分合制度が設けられておりますけれども林地だけではなくて、場合によったら農地林地との交換というようなことまで将来は課題として考えられていいことなのかというふうにも思いますし、それから現在集落居住区内にある農業用施設、特に畜産関係施設、これは非農家だけではなくて、農業者自身にとっても移転が望ましいと思われているところも少なくないわけです。そういった、現在集落内にある農業用施設移転というようなことについても、今回の協定区域等への移転がスムーズに進められるような事業化みたいなものが考えられれば、なお一層今回の協定意味拡充されるのではないかというふうに思っております。  それから、先ほど生活環境施設用地生み出しのことで私なりの意見を言いましたが、それはもう少し拡大してみれば、今の農振法ではどうしても取り上げにくい内容のことなのかもわかりません。そういう意味では、今後は農振法からさらに一歩前進した農村計画法というようなことまで具体的に審議の日程に上げていただければ、これからの農村社会変化が望ましい方向で期待できるのではないかというように思っております。  簡単ですが、私の意見として終わりたいと思います。(拍手
  6. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、湯本参考人にお願いいたします。
  7. 湯本安正

    湯本参考人 私は、全国町村会の副会長をしております長野県の木島平村長湯本でございます。  衆議院農林水産委員会先生方には、日ごろ全国町村会農政活動に対しまして深い御理解とお力添えを賜っておりますことを、この席をおかりいたしまして厚くお礼を申し上げる次第でございます。  また、本日は、ただいま本委員会に付託されております農振法及び土地改良法の一部改正案につきまして、私の意見を申し上げる機会を与えていただきましたことは大変ありがたいことでありまして、深く感謝しているところであります。  まず、私の意見を申し述べます前に、私の村の概況を御理解いただくことが必要だろうと考え、その概況を申し上げたいと存じます。  私の村は総面積九千八百五十ヘクタールでありますが、森林面積が八千九十ヘクタールで、八二%を占めております。耕地面積は一千百十ヘクタール、うち水田六百六十ヘクタールで、総面積の一二%にすぎない状況であります。しかし、私の村では、この耕地面積の全部と混牧林五十ヘクタール、混牧林以外の山林三百十ヘクタール等を含め、一千八百九十ヘクタールを農振地域として指定をいたしております。また、農業基盤整備については、私の村政の基本方針といたしまして格段の努力を傾注しているところでありまして、団体営圃場整備農業構造改善事業等により、水田では四百八十ヘクタールの圃場整備を完了しておりまして、整備率は八四%となっております。  さて、このたび本委員会にその改正案が付託されております農振法及び土地改良法につきましては、農村における優良農地確保農業基盤整備農業生産近代化等を積極的に推進する最も基本的な法制として大きな役割を果たしてまいりましたことは御承知のとおりであります。殊に農振法は、昭和四十年代の高度経済成長下において起こった土地ブームに伴う農地等の買い占め、転用等に対して、いわゆる線引き法として、農地スプロール的な壊廃の動きを防止する上で重要な役割を果たしてきたことは、私どもの記憶に新たなところであります。  幸い、昭和五十年代に入りましてからは農地転用壊廃はやや鎮静化した感がありますが、最近の目立った特徴としては、大都市への過度な人口集中が終えんし、地方中核都市の急激な発展と人口膨張が目立っている状況でありますが、これにより、地方中核都市周辺農村における都市化混住化の傾向が顕著で、農用地転用壊廃が根強く進む趨勢にありますことは否めない事実であります。  このように、私ども農林業基幹産業としてまいりました農村地域にある大部分の町村におきましては、好むと好まざるとにかかわらず都市化混住化兼業化の波が押し寄せ、また都市からの離職者帰農等に加え、農業就業者高齢化が進んでおりますが、このような情勢を背景といたしまして、この二法案改正をめぐる問題点を指摘いたしまして、先生方の御理解をお願いをいたしたい次第であります。  第一に申し上げたいことは、都市化兼業化高齢化の進む状況下にありまして、村や集落農業を守り抜く生産性の高い農業経営体の育成を図っていくことに徹底した努力を傾注する必要があるということであります。  せっかく土地改良事業によって基盤整備し、農振法によって転用壊廃防止している優良農地生産性の高い農業経営体によって農業生産を担当していくこととならなければ、農業の今後の展望は開かれないと考えております。既に農政審議会においても、その答申で、今後十年間に九十万ヘクタールの農地流動化し、七十万戸の中核農家の育成を図るよう提案をされておりますが、国はぜひこの実現について総力を挙げて取り組んでほしいと願う次第であります。ここ二、三年来、我が国農政の方向については、価格政策から構造政策への転換の必要性が叫ばれておりますが、生産性の向上は経営規模の拡大を絶対条件としていると思いますので、私ども、村の農業を支える担い手としての中核農家の育成とこれへの土地集積こそが緊急の課題であると考えているのであります。  長野県は県全体が農業地域でありますので、このような農用地流動化中核農家への土地集積には県、市町村とも格段の努力を払っておりまして、長野県全体で見ますと、農地の有償移転、賃借権、利用権の設定面積は、最近、年間四千三百ヘクタール程度規模でありまして、十四万ヘクタールの耕地面積に対しまして三%を超える流動率となり、全国平均のほぼ二倍の水準にあります。また、私が村長をしております木島平村では、専業農家数を現状維持しているのが精いっぱいでありまして、第一種兼業農家の専業化は非常に難しい状況でありまして、第二種兼業農家の急増を招いているのが現状でございます。  この点から見まして、今回の農振法の改正で、農業振興地域整備計画の中に農地流動化中核農家への土地集積、農業者安定就業の促進等を計画事項として取り入れ、関連施策の充実強化を図ることとされた国の方針に対しましては、深く敬意を表し、全面的に賛成をいたす次第であります。  第二に申し上げたいことは、耕地、草地、林地を一体的に整備し、その活用を通じ、経営規模の拡大と土地利用度の向上を図ることが必要であるということであります。  現在、農振法に基づく農業振興地域内には、農用地面積が五百四十万ヘクタール、このほか混牧林地、山林原野等を含め一千二百万ヘクタール余があります。この農振地域内における林地等は、農用地の保全、水源の保全等のために必要なものが多く、必ずしもすべて開発を予定できるものではございませんが、この中で特に所有関係、地権者間の意向、思惑等がふくそうしております集落周辺のいわゆる里山が、いまだ未整備のまま放置されているのが最近目立っておりまして、農業振興上の問題として指摘をされております。こうした集落周辺の里山等について、農業利用なり林業的利用なり、または観光レクリエーション的利用なり、その利用の方向を定め、積極的に開発整備を図っていくことが農振制度の運用面で大切なことであると考えております。  私どもの木島平村では、国有林が五千八百ヘクタールもあり、全森林面積の七〇%を占めている関係上、営林局の特別な御好意がない限り、林地の活用については積極的な対策を講じ得ないのでありますが、幸い、現在、自然休養林、国営スキー場、村営牧場等として大きな面積を活用させていただいておりますし、耕地面積の少ない我が村といたしましても、混牧林として五十ヘクタール程度について畜産面からの活用をお願いしているところであります。しかし、里山等の民有地の活用については、既に一部をブドウ園等に開発をいたしましたが、今後もこれを進めてまいる考えであります。  もちろん、これを全国的な視点から見ましても、既耕地は極めて限定されており、農地流動化も年々全耕地面積の二、三%程度にすぎない現状では、結局、里山等の開発整備により、耕・草・林地を一体的に活用して、経営規模の拡大と土地利用度の向上を図ることが、当面する農政の緊急課題であると考えておる次第であります。今回の農振法の改正に当たりましても、農用地の開発適地を集団的に確保するための交換分合制度拡充等の措置を講じておられますことは、大変ありがたいことと考えております。  第三に申し上げたいことは、農村において生活環境施設整備により活力ある農村地域社会の形成を図ることであります。  豊かな村づくりという言葉がありますが、豊かな村づくりは、非農家兼業農家及び中核農家との間の連帯感を前提として成り立つものであり、また、生産性の高い農業の確立と豊かな村づくりは表裏一体の関係にあると思うのであります。近年、農村における混住化の傾向は一段と高まってまいりましたが、しかし、農村は依然として生産生活が一体的に営まれる場であります。無秩序な住宅化や農業用施設の建設を避け、長期的な視点に立って、農村にふさわしい手法により、農業及び生活環境改善のための諸施設整備を図っていくことが必要であると考える次第であります。  現在、農村地域に所在する町村行政の大きな柱は、管内における集会施設農村公園、保健休養施設集落道、集落排水処理施設等の整備であります。集会施設の例をとってみましても、現在、集落単位に見まして、全国で三〇%の集落施設を保有していない状況であり、また、施設を保有する集落においても過半の施設が老朽化、設備不良を訴えているところであります。私どもの木島平村におきましても、新農業構造改善事業、県単事業等により計画的に集会施設整備を進めてきたところであります。  このたびの法律改正に当たりまして、こうした生活環境整備について特に力を入れられたようであり、生活環境整備に関する事項の農村整備計画への取り入れ、土地改良事業による生活環境施設用地生み出し農業集落排水事業の法定化、集落協定制度の創設等画期的な制度面での改善を図られたことにつきまして、地域住民に密着し、活力ある農村社会形成に直接取り組んでおりまする町村長といたしまして、心から賛意を表する次第であります。  第四に申し上げたいことは、農業用排水路の維持管理、集会施設の維持運営等に関し、農村コミュニティー機能の充実と適切な費用負担について制度的な仕組みを確立していくことであります。  農業用排水路の維持管理につきましては、基幹部分は土地改良区、末端部分は集落段階で行われてまいりましたが、最近のように農村都市化混住化の進展に伴い生活雑排水が大量に農業用排水路に流入し、水質汚濁や溢水等の被害が各地で発生しておりますことは御承知のとおりであります。こうした状況に対して、このたびの改正に当たりまして農業用排水路の適正管理に関する市町村協議請求制度拡充集落協定制度による農業用排水施設の維持運営の促進等適切な措置を講じられたことに対しまして敬意を表するものであります。  以上、このたびの農振法、土地改良法改正に関し現場の町村長として当面している問題点について概要を申し上げてまいりましたが、こうした農村における問題に対処していく上で地域農業者及び住民の活動が前提となることが当然でありますが、何といっても私ども住民に密着している町村長の取り組みがその成否を決定づける重要な役割を持っていると考え、その責任の重大さを痛感しているところであります。  そこで、私ども現場における町村長としての要望を一つ申し上げますと、農村は、既に述べましたとおり、生産生活が一体として営まれる共通の場であり、最近の農村をめぐる厳しい情勢の変化にあって、活力ある農村社会の形成に当たっては、都市計画とは異なった農村にふさわしい手法によって進めていく必要があると考えております。政府におかれましては、昭和五十九年度予算においてこうした農村にふさわしい計画づくりの具体化として、現在の農振計画を発展させた形で農業農村整備計画策定費について大幅な予算の増額を行っておられることにつきまして、心から敬意を表する次第であります。  私どもは、現地においてこの予算を生かし、地元関係者と創意工夫を凝らして、十分話し合いを行いながら豊かな村づくりに取り組む決意でありますが、政府、国会におかれては、こうした農業農村整備計画作成のための具体的な施策を充実するほか、こうした計画を実現するための生産生活両面の総合整備を図るために必要な関連予算の拡充整備を行っていただくことを切望してやまない次第であります。  最後に、農家数が総戸数の八〇%を占め、農業、林業を基幹産業として取り組んでおります農村地帯を代表する一村長といたしまして、この二法案が一日も早く国会で議了され、私ども町村長が現場において直面する農業構造改善農業農村の健全な発展を実現するための基本的な法制として大きな役割を果たすことを心から期待を申し上げまして、私の意見発表を終わらしていただきます。  ありがとうございました。(拍手
  8. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  次に、鷲尾参考人にお願いいたします。
  9. 鷲尾貞一

    鷲尾参考人 ただいま御紹介をいただきました鷲尾でございます。  私は、現在新潟県西蒲原土地改良区の理事長をいたしておりますほか、新潟県の土地改良事業団体連合会の会長も務めさせていただいておるものでございます。  今回の土地改良法の一部改正案につきまして、現場において土地改良の実務に携わっておる者の立場から御意見を申し述べさせていただきたいと思います。  具体的な法案内容に対する御意見を申し上げる前に、現在私どもが一番困っておりますものは、土地改良区が管理しております施設管理費を含めました管理問題でございます。  もっと深く御理解をいただきたいために、西蒲原土地改良区の実態等について少しくお話をさせていただき、御理解を賜りたいと思うわけでございます。  西蒲原土地改良区は信濃川の最下流に位置しまして、東西十五キロ、南北三十五キロの長楕円状の地域で、標高は最高で十メートル、最低が〇・五メートルと極めて低平な地域であります。二万ヘクタールの農地と一万五千人の組合員を持つて、新潟市の一部を含む二市十カ町村を区域といたします私ども土地改良区は、最高二メートル五十以上の沈下記録を持っております有名な地盤沈下地帯であることも皆様に御紹介を申し上げておる次第でございます。私ども、この低平地の排水に対しまして八十五の大小の排水機を動かしながら地域内の排水を行っております。もしこれらの施設がなかったならば、全地域の約三分の一の七千ヘクタールが水面下に置かれて、下流部では一メートル五十以上の水深を持つ、まさに干拓地と言っていい地域状況でございます。  しかも、単に農地の排水のみならず、地域全体の排水も行い、治水事業の役割も果たしているという現状でありますので、そのために、農民からは、これらの維持管理費が農民、厳格に言いますと田畑の面積による賦課金によって賄われておる矛盾を強く指摘しておる次第でございます。適正な費用負担の要望が強く出され、加えて市街地から出るところの汚濁水や家庭雑排水の流入する、総延長一千七十五キロに及ぶところの用排水路の維持管理等多くの問題を控えておるわけでございます。維持管理費を含めて、維持管理問題は私ども今後土地改良区の運営の上に非常に大きな問題点を投げかけており、早期に解決しなければならない問題と深く感じ取っておるものでございます。  昭和四十七年の土地改良法改正市町村協議制度が取り入れられたのでありますが、早速これを活用いたしまして、関係市町村土地改良施設管理管理費の分担についての話し合いを持たしていただいたわけでありますが、市町村の数が多く、一市町村でも話し合いがつかない場合には全部むだになってしまうというようなことで、大変苦労をいたしましたことを記憶いたしております。長い討議の結果、毎年五分の一ずつの積み上げによりまして五年間でようやく目標額に達するようなことでの話し合いをいたし、現在では私どもが排水処理費として約七億円をかけておりますうち一億一千万円余の金を関係市町村から非農地排水負担金として納入していただき、御協力をいただいておるわけであります。  なお、これは本来受益に基づくものでありますので、住民一人一人から徴収するのが建前であるというような言い方もされて、自治体がその肩がわりをしてやっているのだというふうな観念がいまだに残っております。そのため、毎年、協議会と称しますが、私ども土地改良区が市町村にお願いする立場をとりながら関係市町村長にお願いをして金額を提示し、御協力をいただいておるというふうな状況であります。もしあのときにこのたびの法律改正案に盛られておりますような知事裁定という形のあっせん的な制度を持っておったならなと、しみじみと身にしみて深く感じられるものでございます。  第二の問題は、換地の問題でございます。  急激な混住化社会の中にありまして、私どもが中心となりまして非農家の方々と仲よくしながら、私どもが中心となって生活の場を整備する必要があると考えておるわけでございます。優良農地を十分確保することを大前提としながら、生活環境施設用地農業者みんなが共同して提供できるようなことが必要なことではないかと思っております。現在の土地改良法の換地制度の中ではこれに十分こたえて処理する道がありませんので、これらの点についても考えていかなければならないというふうに考えております。  第三点としましては、土地改良事業の実施と土地改良区の運営の問題であります。  御承知のように、兼業農家がふえてまいりますと農家の考え方も多様化して、せっかく有意義な事業を始めようとしてもなかなか話がまとまらず、事業実施の時期を失ってしまうという例が少なくありません。また、総代会制をとれないような小さな土地改良区では組合員の土地改良区に対する関心が薄れ、総会を開くにもなかなか思うに任せない事例も聞き及んでおります。  私どもが抱えておる問題を三つほど申し上げましたが、いずれにしましても、この問題は現在の土地改良法では情勢の変化に十分対応し得ることができないというふうに考えておるわけでございます。その意味におきまして、今回提案されました改正案内容はまさに時宜に適したものと考えられ、ぜひとも委員の皆様方のお力によりましてできるだけ早く成立させていただきたいと思う次第でございます。  引き続きまして、具体的な法案内容、特に私の関心のあるものを中心として御意見を申し述べさせていただきます。  まず、市町村等協議に関するものでは、知事裁定の導入であります。  私の土地改良区では、先ほどお話し申し上げましたとおり、農地からの排水だけでなく、新潟市を初めとする十二カ市町村の市街地からの宅地排水、家庭雑排水を一手に引き受け、処理しております。まさにこの地域の治水対策や下水対策もあわせまして西蒲原土地改良区が担っていると言って過言ではないわけであります。その意味におきまして管理の問題を提起し、解決の道をひたすら願っておる次第でございます。その意味からしましても、今回の知事裁定の導入は極めて意義深いものであると思います。また、この制度が十分運用されまして、公平に行われますような措置をおとりいただくことを切望してやまないものでございます。  次に、非農地生み出し手法拡充でございます。  これは長年の私どもの要望でもございましたので、まさに遅きに失した感がないわけでもありませんが、ぜひお願いいたしたいと思う次第でございます。  その次には、土地改良施設更新事業の同意手続の改善であります。  私ども土地改良区は、一万五千人の組合員から、事業を起こす段階で一々個々面接をして同意書の取りまとめをやっております。その労力、経費は大きく、なかなかばかにならないものでございます。もちろん私ども事業実施側の立場からは、組合員の権利の保護ということを第一義的に考えるのでありますが、今回改正案に盛られました施設の単純な更新事業は、受益地が従前どおり存続する限りのものについては、一々個別の意見を問うものではなくて、当然に行われなければならないところの総会の議決等によりましてそれらの審議を行い、着工できるようにさせていただくことがより便宜的な問題であろうかと思う次第でございます。  次に、連合会の事業の拡大について申し述べさせていただきます。  これは、私ども土地改良事業団体連合会の側から申しますと、長年にわたって要望してまいりましたものであります。私ども連合会は、三十三年の発足当時は会員の調査設計の受託を主とした業務としておりましたが、最近は換地促進指導施設管理指導等で、指導業務のウエートが極めて高くなってきておる実績を持っております。しかしながら、現在法律的にはその指導業務は連合会の基本となる業務に当たらない、いわゆる目的達成のための必要な事業としてしか認められていなかったため、私どもといたしましては会員に対して確固たる信念を持って指導をすることに若干のちゅうちょをせざるを得ないような状態でありましたので、これらのものの処理を、私どもが責任を持って指導業務に当たれるような形での改正をお願い申し上げたい次第でございます。  このほか、今回の改正案では農業集落排水施設整備事業を土地改良区が行う場合の手続が明確化されております。地域団体としての土地改良区の新しい役割としまして、このような事業に積極的に取り組むという観点から、時宜に適した改正と思います。  ただ、問題は現在の土地改良区ではこれらの技術的な指導体制がほとんど整備されておりませんので、十分これらの整備を急がなければならないというふうに考えるわけでございます。また、この事業に要しますところの経費は契約に基づいて徴収することになっておりますが、負担金徴収にそごがないよう十分指導することが必要だろうというふうに考えるわけでございます。  最後に、総代会の設置要件の緩和でございます。  最初に述べましたような事情から、妥当な改正とも考えております。これとあわせまして、選挙制度についても、選挙期間が非常に長くなっております。現在二十日間の選挙期間を有しておりますが、これらも公職選挙法と同じような仕組みでの制定でございますので、公職選挙法の期間短縮にあわせましての改正が必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  以上、簡単に今回の改正案についての所感を申し述べさせていただきましたが、同時に農振法の改正案が提出されておりますので、土地改良法改正との関連もございますので、少しくお願いをさせていただきたいと思う次第でございます。  農村地域混住化の中で、豊かな村づくりを基本としたところの今回の農振法の改正につきましては、私ども土地改良団体としましては大いに賛成するものであります。その推進については、市町村とともに土地改良団体も中心となって当たるべきだと考えております。特に小用排水路等の適正な管理をねらいとした農業用用排水施設の維持運営についての協定制度の創設でございます。先述のように、私ども、改良区の末端水路につきまして管理粗放化の実態を見ますと、まことに時宜に適したものと思う次第でございます。  また、里山の関係の問題、あわせまして生活環境施設用地等の生み出しのための創設換地制度の仕組み等々でございます。すべて今の時宜に適したものと考えるわけでございますので、これまたぜひ皆様方のお力によってできるだけ早くお通しいただいて、法定化していただきたいというふうに考えるものでございます。  以上述べまして私の意見とさせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  10. 阿部文男

    阿部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 阿部文男

    阿部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。月原茂皓君。
  12. 月原茂皓

    ○月原委員 参考人、どうもありがとうございました。  それでは、私は、今お話しになったことと関連して、それからもう少し違う観点からもお話を伺いたい、このように思いまして質問する次第でございます。  石川参考人にお尋ねします。  いろいろ言われておるのですが、現在やはり大都市人口が集中して、それはいましばらくは鈍ってきておりますが、私自身も、日本の国が本当の意味の精神的な強さ、構造的な強さを持つためには、やはりそれぞれの地域が強くなければならない、そしてまたその中核であるふるさとで、精神のふるさとである農村地帯、このものが本当に活気を帯びるということが真の意味日本の強さになるのではないか、このように思うわけでございますが、これは私の考え方でございます。現在取り組んでおる農村というものを日本の国の社会構造、将来の日本のためにどう位置づけて考えていくか、生産面も含めまして参考人のお考えを伺いたい、このように思います。
  13. 石川英夫

    石川参考人 私もかねて、農村地域全国人口の何割ぐらいが将来居住し続けるか、また続けられるような農村環境をつくるかということについて、政府のいろいろな関係の専門家ともお話し合いを続けているわけでございます。  大まかな見通しでは、三全総のフォローアップ作業、さらに四全総に今政府が取り組んでおりますが、四割弱、三十何%というあたりがせいぜいであろうということが専門家の大方の意見でございます。なお意欲的に、私としては少なくとも四〇%台の人口が、これは農業に従事すると従事せざるとにかかわらず農村に定住できるような積極的な農村環境整備対策というのはあり得ないであろうかというふうに念願いたしまして、いろいろと私たちの研究機関自身も検討を続けているわけでございますが、一口に農村と申しましても、僻遠の山村からさらに都市に近いところまでさまざまな類型を持って農村というものが存在しておりまして、なかなか一口に農村あるいはまた農山漁村と決めつけられない点がございます。そういたしますと、やはりある程度僻遠の山村、殊に積雪山村あたりにおいてはすぐに都市人口が流れ出すということのないよう、中間で歯どめの居住環境というものをつくっていく必要があるのではあるまいか、例えばそういうことが問題になると思います。  それからもう一つ農村居住という問題があります。そこに一生あるいはまた何代も居住するという居住形態と、都市住民がかなり長期間、ある年間一定の期間、一番短いのはレジャーの期間でございますが、こういう形でもって都市住民農村の良好な居住環境を享受しながら農村地域に住むという住み分け方というものもあると思います。ですから、単純に農村人口比率で四〇%だとかなかなか申し上げられないわけでございますけれども、さまざまな弾力的な住み分けの場としての農村というものをどういうふうに国として整備していくかというのは、単に農村に住む人だけの願望ではなくて、やはり都市に住む人たちにとっても今非常に大切な問題になりつつあるのではないかと思っております。  いずれにいたしましても、農村漁村のさまざまな類型別に、どういうような居住環境がそこに整備され、どういうような農業ないし林業がそこに展開されていくかということについて、政府としてはもう少し具体的なイメージというものを国民に対して示してもらいたいというふうに私はかねて存じている次第でございます。
  14. 月原茂皓

    ○月原委員 そこでさらにお尋ねしたいのですが、今、政府としてイメージをという、これはまさに政府であり、また我々の責任でもあると思います。参考人自身、先ほどのお話の中に、若い人たちが定住して、そしてもっとゆとりがあって農業に取り組める、農業だけではなくてその周辺に生活できるというものをつくっていかなければならない、このようなことを言われたわけでございます。  今のお話で、またいろいろな特性があるということは十分承知しているわけでございますが、具体的にどういうところにもつと力を入れたらよいかということを、個人的な見解で、まだまとまってはいないかと思いますが、考えがあればお示し願いたい、このように思います。
  15. 石川英夫

    石川参考人 まず、農村都市との仕分けということがどういうことであろうか、抽象論から出発いたしましてまことに恐縮でございます。  最近、農村では非農業者の居住が大変ふえておる、半分を超してしまったような非農業者がそこに住んでおるというような現象を一部の方が見られまして、農村都市化の一途を進んでおる、でありますから、これは都市的な対策で農村環境を整備すればいいのではないかという説を唱えられる方がございます。  しかしながら、都市農村との相違というものは、たとえ住民構成にかなり非農業者が多くなりましても、それぞれの地域面積に占めます農林地の比重を考えてみますと、かなり都市化したところでも六割、七割が農林地によって占められているということが言えると思います。つまり、混住化イコール農村都市化論というものに対して、かなり都市化した農村でも農地林地面積比率ではかなり多くのものを占めている。将来的に見ますと、問題は、本当の農業専業人口というのが二割、三割になってしまうというところでも六割、七割が農林地として残っていくということに相なりますと、農業生産を初めとしてこういうような広大に残される農林地をだれがどういうふうに有効利用していくのであろうか。そこで健全な農業というものが行われ、これが生産基盤として使われることはもとよりでございます。さらに、そういうような緑の農林地の持つさまざまな人々に対する効果というものは、例えば教育農園の実情に見られますような青少年、小中学生の非行化防止のための学校教育的な基盤としての農林地もございますし、さらに市民農園という形で市民が親しんでいくような一つの農林地というものもあると思います。  でありますので、ちょっと前提論ばかり申し上げて恐縮ですが、農村農業が専ら行われているところであることはもとよりでございますが、その農林地利用についてさまざまな職種の人間が多面的な利用をしていくための一つのプログラムと申しますか、こういうものがまだ十分できておらぬような感じがいたします。  そういうことを踏まえながら、山村は山村、都市近郊は都市近郊、純農村は純農村というようなさまざまな将来農村整備のイメージというものが書かれるのではあるまいか。今までの農村整備というのは、農村都市並みということで、住宅を改善し、道路を舗装し、河川にコンクリート護岸をつくり、専ら都市に追いついていこうという形での施設整備というものが進められてまいりました。今後は、そういうような農林地の多面的な活用ということを中心にいたしましての、何か都市と違ったイメージを持った類型別の農村のイメージというものができていいであろうし、その根底にはやはり広大な農林地利用管理というものの戦略が必要であろうということでございます。  時間もございませんので……。
  16. 月原茂皓

    ○月原委員 どうもありがとうございました。  湯本参考人にお尋ねしたいのですが、今、町長という地方行政の最高責任者としてどういうふうに取り組まれ、どういう役割を果たしておられるかというお話を伺ったのでございます。こういう問題の場合に、私も余り詳しくはわからないので教えていただきたいのでございますが、どこへ行っても農業協同組合、農協というような団体もありますし、いろいろ土地改良の責任者もおられる。これから、知事あるいは町長さん、要するに地方の責任者、こういう方々が今度の法案によっていろいろ関与されて、よりよき農村づくりのために力を尽くされる手だてができたわけでございますが、それについて、今申し上げた農協とか土地改良区の責任者、そういう方々とどういうふうに今後力を合わせていくのがいいのか、どういう分野で協力していくのがいいのか、それぞれの役割というようなものについてお考えがあれば教えていただきたい、このように思います。
  17. 湯本安正

    湯本参考人 月原先生の御質問にお答えを申し上げたいと存じます。  農村地域をつくるということが基本でありますので、我々、今までの伝統的な進め方といいますか、今までお互いに話し合いをしながら来たという形を今度こういう法律の中で生かしていくということでありまして、殊さらに知事の裁定制度が入ったから、協定制度が入ったからというふうに変えるものではないという形に立っていきたい。  ただ、問題は、今用排水路等の問題で、いろいろ下に汚濁の原因を与えておきながら、そういう人たちがなかなか言うことを聞いてくれない。我々が改良区から言われまして協議に応ずるわけでありますけれども、なかなかうまくいかない。そこで、知事の裁定ということがあることによってより合理的な水路の維持管理というものが期待できると我々は考えているわけです。ですから、今度の改正の上からいろいろ考えてみましても、我々にとりましては今までいろいろ考えておりましたことを政府でお取り上げいただいているのだという感覚でいるわけなのでして、先ほどもそういうようなことから申し上げたわけで、よろしくお願いいたします。
  18. 月原茂皓

    ○月原委員 時間も限られておりますので全参考人にお伺いできなくて残念でございますが、以上をもちまして私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  19. 阿部文男

    阿部委員長 細谷昭雄君。
  20. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 石川先生初め四人の先生方には、大変お忙しい中、きょうはありがとうございました。  ただいまの参考人のいろいろな御意見に関連いたしまして、二、三の問題についてお伺いしたいと思います。  最初、石川先生と坪井先生にお願いしたいのですが、農基法農政が始まりまして二十二年、そして農振法が制定されまして十五年を経過いたしまして、現在日本構造政策というのは農基法農政を中心にして進展してまいったと思います。きょうのこの農振法の中身でありますが、地域農業集団の育成ということも新たに今までの線引きだけでは足りないということで加味いたしましたけれども、実際問題としまして、皆さん御案内のとおり、その地域における地域農業集団が生産までは確かにやるわけでございます。  しかしながら、実際の例を見ますと、私は秋田県でございますけれども、秋田県では集落農場化対策事業という事業でかなり力を入れてまいったわけでありますが、成功例というのはほとんど数えるほどしかないという状況でございます。せっかく米プラスアルファのアルファ部門というのが、販売の上で、価格の上でなかなか合わないということから、残っているのは借金と建物だという状況が多いわけでございまして、政府で発表いたしました農業白書を見ましても、成功例を若干載せておりますけれども、これは非常に数少ないという現状でございます。  そこで、お伺いしますが、日本のこの構造政策というものには何か足りないものがあるのではないか。私の考えでは、農用地の狭小な日本の現状で基本農政を進めるとすれば、行き着くところ、零細農家、弱小農家を切り捨てざるを得ない。混住という問題もいろいろあるわけですが、それは一つの過程としてしか考えない、二種兼業も一つの過程、こんなふうに思われて仕方がないのでございます。  果たして日本のこの構造政策というのは今のままでいいのか、何か欠けておるのではないか、私はそういうふうに思いますので、ひとつ石川先生と坪井先生の忌憚のない御意見というものをお聞かせ願いたいと思います。
  21. 石川英夫

    石川参考人 農業基本法に書かれました構造政策というものは、私の理解では、かなり長期にわたっての一つのガイドラインということであったと思いますし、一種の宣言法的なものであったと思います。それに従いましてさまざまな形での農業の経営構造改革というのが漸進的に進められてまいりましたけれども、今先生の御発言にございます第二種兼業農家の評価という問題は、我々としてもこれは非常に重大な問題として、学的な見地からも検討を続けてまいったわけでございます。それで、結論を申しますと、第二種兼業農家と言われるものは今後とも農村において非常に重要な住民の構成要素として、農村で暮らしていっていただくことに相なるでありましようということでございます。  それでは第二種兼業農家というものが自分の所有する農地中核農家とかいわゆる自立農家に売り渡してしまうのかどうかと申しますと、これは必ずしもそういうことに相ならないと思いますので、結局農用地利用増進法という一つの方針に従っての利用権の設定、これが一つの方法だろうと思いますが、これが唯一の方策ではない。一つの路線はしかれましたが、その中に、専業農家兼業農家の間の労力交換生産組織、あるいはまた農地の信託とか、さまざまな形で農用地利用について専業農家兼業農家との間に関係というものが結ばれていくのが望ましいであろう。しかも、自分の土地を持っている兼業農家というものは、自分の土地経営というものから完全に切り離された宙に浮いた存在ではなくて、村の土地としてこれを管理していくような責務、そしてまた一つ連帯感というものを持ち続けつつ、健全なる農村住民として活力ある村づくりの担い手になつていただくのが至当であろうというふうに存じている次第でございます。
  22. 坪井伸廣

    坪井参考人 構造政策に何か足りない点があるのではないだろうかという御質問ですが、私、最近よく農村を歩いておりまして非常に気になる点が一つあります。それは、あと十年なり十五年の間に農家の世代交代がかなり進むのではないだろうかということが、一つ、非常に気になる点であります。世代交代が進んだときに、今の農家の若い跡継ぎの世代が果たして農業をやるのだろうか。私が今まで歩いた限りの感触では、どうも若い人たち農業を継ぎそうもない、あるいは農家にも戻らないかもわからないというような懸念がするところもかなりあるように思います。  そういう意味では、今後さらに農地流動化対策というようなことが積極的に考えられていっていいことなのではないだろうか。今まで農地流動化構造政策として必ずしも十分に検討されてきたというふうには私は考えておりませんが、今後なお一層の農地流動化の対策が強化されていっていいのではないかなというようなことが、一つ、気になる点であります。
  23. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この構造政策の問題について私が申し上げたい点は、いろいろな基盤整備その他環境の整備ができましても、そこに住む人間が具体的に豊かにならなければならないという問題であります。確かに下水道も終末排水路もいろいろ整備される、圃場も整備される。しかし、環境がよくてもそこに住む人間はおりません。具体的に懐が豊かにならなければならない、その問題に欠けておるのではないかというふうに私は思うわけでございます。価格政策、流通政策、農協一つとりましても、果たしてそれを支えるだけの政策がいわば整合的になされておるのかどうか、その点をお伺いしたがったわけでございます。  それについても、先生方から御意見がありましたらお願いします。
  24. 石川英夫

    石川参考人 さっきの私の意見開陳でちょっと足りなかったところを先生に突かれましたので……。  農産物の流通あるいはまた価格の問題については確かに農政上の最も重要な問題でございますが、お話のございました、例えば秋田の集落農場制のように、ある地域単位に特産物をつくっていくという方向が恐らくこれから開拓されていくのだろうと存ずる次第でございます。つまり、米プラスアルファという形で、より多くの所得がその集落農業者にもたらされるような条件づくりということが、一つ、新しい流通対策の問題として今登場しているように思うわけでございます。  都市におきますところの農産物もしくはその加工品に対する需要というのは、今極めて複雑かつ高度化しております。そういうような都市の市場に向けてのさまざまな工夫を凝らしての地域特産物を、集落単位でつくったものをどういうふうに売り込んでいくかという新しい戦略を、農協を中心にいたします大量出荷、大量販売といういわば基本的な路線のわきに、ますます大きなバイパスとして、直接生産者が都会の消費者に飛び込んでいくような一つの流通活動というバイパスを我々がどういうふうに構築するかということを農村活性化の観点から検討しておりまして、先生も今お述べになりましたようにその道は決して容易なものではございませんが、しかし、ただいまかなり普及しておりますトラック輸送による宅配というものによって、農村のそういうような生産者と都会の消費者との間の特約関係において流通バイパスをつくっている農業者並びに農業集団というものも既に出てきております。  要するに、多面的な農産物並びに加工品需要に対しての、農業者としての、既存の流通ルートによらない新しい流通ルートの開拓というもの、これはもちろん全面的なものではございませんが、今開拓されつつあるこれを将来の農村活性化という観点からひとつ見たいというふうに思います。もちろん、これは流通とか価格の大宗を占めますところの基本的な制度というものに直ちに代替できるものではございませんけれども、少なくともそういうような一つ努力の積み重ねの中に旧来の流通並びに価格体制にかわる新しいアイデアが生まれてこないであろうか。しかし、これをただ農業者もしくは消費者の自主的な努力のみに頼ることなく、政府としてはそういうような新しい動きに対してどういうような政策的な支援の道を講じていただけるか、これも大きな国政の課題であるように存ずる次第でございます。
  25. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 ありがとうございました。  次の問題でございますが、鷲尾先生と湯本先生にお伺いしたいと思うのです。  水管理の問題にしろ、それからこれから新しい農業集落排水施設整備事業、こういったものが新たに土地改良区の仕事として法定化されるという内容を含んでおるわけでございますが、一つは、現在の土地改良区の実力といいますか、現状。例えば専門職員の非常に少ないという土地改良区、それから賦課金を取るのがやっとという土地改良区、さまざまな土地改良区がございます。そういう土地改良区の中でこのような法定した事業を行えるところというのは非常に極限されるのじゃないか、こんなふうにも思います。したがいまして、その現状をどう考えておられるか。私自身は、土地改良区というものを水系ごとの再編成をする時期に来ておるというふうにも考えますし、現在の土地改良区の職員の皆さん方の待遇、身分、こういう面からしましてもこれは抜本的な改善を加えなければならぬ、こういうように考えておるわけでございますが、その点はどう考えておられるか。  もう一つは、市町村、自治体でもこの農業集落排水施設整備事業というのを当然やっておりますし、当然これは市町村、自治体の仕事として位置づけられる問題だと思うのです。したがいまして、こういう自治体の権限といいますか、機能といいますか、仕事、こういったものと競合するという点でどのようにこれから問題が出てくるか、運用の面で非常に大きな問題があろうかと思うのです。この点の御意見をお聞かせ願いたい。  それから、これは石川先生、坪井先生、皆さんどなたにもお聞きしたいのですが、協定制度の法定化というのが手続法の上で今回の一つの眼目でございます。これは運用いかんによりまして、きのう、おとといの私ども委員会の中でも非常に心配されておる点でございます。と申しますのは、農村社会基盤であります村、つまり共同体、この共同体の持つ慣習を否定するという側面、これは先ほど坪井先生が評価をされておりますけれども、この慣習の否定というものが個人の持っております潜在的な、慣習的な権利、既得権、こういったものも一挙に否定しかねない、こういう問題も含んでいるわけでありまして、今までの横の関係とこれからの縦の関係、この農村秩序という点で、運用の問題ではこれから大変にこれは大事にしなくてはいけない、重要視しなくてはいけないという問題をはらんでいると思うわけであります。この点についても御意見をお聞かせ願えれば大変幸いだと思います。  以上です。
  26. 湯本安正

    湯本参考人 ただいまの御質問にお答えを申し上げたいと思います。  最初の、今度の新しくできました協定制度の問題につきましてお答えをいたしたいと思いますが、今までの共同体組織をこの協定制度でかえって壊しはせぬかというような御指摘かと思います。  これは、今までは改良区あるいはその改良区の下の方で、仲間同士といいますか、共同体でその水を管理をしておった。ところが、混住化社会になりまして、お勤めになっておるとそういうことには関心がない。せきのさらいのときにも来てくれないし、金を納めろと言ってもおれは水は使わないんだから関係ないわというような格好になりまして、しかし、自分の雑排水だけは流している。何とかこういうのをもっと統制できないものかというようなことが、今度のいわゆる協定制度という形で生かされたのじゃないかというふうに私は受けとめております。現実の問題といたしまして、そういう問題がたくさんございます。  それからもう一つ、今度は違った問題で最近は相談を受けているわけでありますけれども、今まで水路の維持管理をみんなでやっておりました。ところが、水田再編で大分いろいろなのに、アスパラガスであるとか夏秋キュウリであるとか、そういうのを進めたために、どっとそちらの方に移行いたしました。ところが、小勢の者で水利の管理をしなければならぬ、一体どうしたらいいか、もう今までの借金を払うのと今度の管理の問題で、その金をどこから出す、あなたはどうしたらいいかと、私のところに相談に来ました。それはもっと広げろ、今までその水を使って消毒用水やスプリンクラーを回そうと考えなかったが、それを考えて、もっとみんなで話し合ってその水を上手に使い、その金を納めていく道はないかというようなことを話し合ってやろうじゃないかということで、一つ片づきました。  今度の知事の裁定の問題でありますが、これは一つの例といたしまして、うちの村にこういうのがございます。中国のクリを輸入いたしまして、クリの加工をいたしております。水を非常に汚濁しているわけでありますけれども、公害の要素は全然ありません。私のところへ口説いてきまして、どうしようかということで話をいたしましたが、保健所に頼みまして調査をいたしてみましたが、公害的な要素は何もない。ただ水が汚れているだけ。ごみが流れているだけ。どうも今の、ほかの法律では取り締まりようがない。しかし、これは何とかやらなければならぬということで、保健所に一応指導をしてもらいまして、幾分直りましたけれども、その水路に対して負担をしろ、それからいろいろなことをしろということを土地改良区で要望しているので、我々と話をするのですが、うまくいきません。そういうような問題を、これは県の裁定ということで方向づけをしてもらうことでその水路の維持管理というのが将来うまくいくというようなことになりますれば、非常に助かるのじゃないか。  ですから、これは活用といいますか、運用の仕方でありましてね。むやみに、これは何でもかんでも知事の裁定に持ち込むようなことをしては農村コミュニティーは崩れると思います。そういうことは望むものではございません。そういう意味から私は進めるべきだというふうに考えております。
  27. 鷲尾貞一

    鷲尾参考人 ただいまお話がありましたように、知事裁定の問題であります。  私が御意見を申し上げましたように、この裁定問題については私ども非常に関心を持ち、また、それが私どもの維持管理問題の結論を出す上に非常に重要な役割を果たすというふうな考え方を持っております。知事裁定といいますと、土地改良側が非常に有利になるとかあるいはまた市町村側に非常に不利になるという考えでなしに、むしろ両方の意味合いを持って非常に公平な裁定を下せるという前提で、私どもは非常に高く評価をいたします。例えば、今お話がありましたように、場合によればその力関係土地改良市町村をいじめるという言い方はおかしいですが、非常に圧力をかけるとか、あるいはまた市町村の村長の方が力が強いために土地改良が泣き寝入りをするというような問題の公正な裁断を下して、しかも、その裁定に基づくところの実施が極めて強く主張もでき、また強く確保されるという面で、私は非常に高く評価いたしております。  それから集落排水の問題、先生のおっしゃるとおりです。私も同感であります。  ただ、問題は、その地域に団体事業とかいろいろな事業をやる場合に、その中に、もしあわせて集落排水事業も取り上げた方がよりベターの場合もあり得るという前提に立って、土地改良区がやれるような形で残させていただくことがよろしいのではないか。ただ、おっしゃるとおり、それだけの能力のある土地改良区の問題、それから技術者の問題がありますが、先ほど申し上げましたように、それらの点については十分に配慮しなければならぬと思いますが、そういう意味でございます。  それから水系別の問題は、これはもう御承知かもしれませんが、随分早い段階で私ども制度の問題として取り上げて、随分突っ込んだ検討もやった時期があるわけでありますが、なかなかうまくそのラインに乗らないという中で、しかも、昭和四十年代後半で土地改良事業の範囲が市町村中心的な形に移行してきている時代があるわけであります。その辺で、今むしろ逆に、市町村との対応の中での土地改良、そして水系的な問題は連絡といいますか、水系別協議会といいますか、そういう協議会というような形の連合体の組織で考えたらどうかというふうな考え方も私ども持っておるわけでございますので、よろしくお願い申し上げます。
  28. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 終わります。
  29. 阿部文男

    阿部委員長 参考人各位にお願いいたします。  時間に制約がありますので、御答弁は簡潔にお願い申し上げます。  日野市朗君。
  30. 日野市朗

    ○日野委員 参考人先生方、きょうは非常に有益なお話を賜りましてどうもありがとうございました。非常に参考になりました。  それで、私はまず石川先生に伺いたいと思います。  石川先生のお話の中で、担い手の育成という観点がございました。そして、健全な担い手を育成していくために地域ハード面ということも挙げられましたけれども住民連帯感ということにお触れになりました。新しい連帯感の形成がなければ農業のこれからの拡大はないのではないかという御指摘がありました。  その中で私が常日ごろ若干疑問に思っている点は、二兼農家の取り扱いでございます。ややもすれば、従来、二兼農家というのは疎外される存在のように思われてなりません。そして、今度の農振法も農業経営規模の拡大ということを前面に押し立てているわけでございまして、そういう中から、二兼農家に対する地域ぐるみの新しい対応といいますか、疎外化が進むのではないかという危惧を持っているわけでございます。  二兼農家が今までいろいろ言われながらもふえ続けてきているという現実を、しっかり踏まえなければならないのではないかというふうに私は思っておるわけでございます。これは信頼関係とか、いろいろな要因はございましょうけれども、二兼農家がふえ続けてきたという経済的なバックはあると思うのでございます。でありますから、二兼農家というものをきちんと地域農業の中に位置づけた考え方をこれからとらなければならないのであるというふうに私は思っております。そして、先生は生産組織への組み込みについてもお触れになりましたけれども、今までも二兼農家は二兼農家なりに生産組織への組み込みについてはいろいろな働きかけがなされて、ある程度の協力もその中でやっているのではないかと思いますが、先生のお考えはいかがでしょうか。
  31. 石川英夫

    石川参考人 正直申しまして、二兼農家問題はさまざまな地域的な偏差がございますので、何か統一的な一つの処方せんができている自信はございません。しかし、特に最近の農用地流動化法律では、全部土地を賃貸借に出した、これは主に二兼農家の方になるわけでございますが、農協組合員の資格、農業委員の選挙資格、その他農村住民としての、つまり今まで農家として持っていた資格をそのまま保有しながら土地を預けるということが期せずして政策の中で今実現されつつございます。そうなりますと、直接自分の土地の耕作にかかわらないにいたしましても、そういうような農村市民と申しますか、そういう一つの資格でそれぞれの村の農地のあり方、農業のあり方に関心を持ち、そして農村に住み続けていくという形での新しい農村市民としての二兼農家というものはあり得ると思います。  そういう場合も、自分の土地の耕作から全然手を引いてしまうのではなくて、家族の一部が実際に預けた人の手が足りないときは手助けに出たり、どういう作物をつくるかということについてもさまざま村内で相談していくという、農村土地資源管理への参与という形において、二兼農家、元農家という方が多いわけです。さらに、農地を保有し続けておられ、息子さんは当面は農業から完全に手を引いておられるにしても、あるいは将来定年期が参りましたらまた農業に復帰されるような方、そういうような人生計画の中で、自分の村の土地管理にずっと関心を持ち、発言をし、そして働けるところは働いていくという形での新しい農村市民としての二種兼業農家の位置づけというものがおぼろげながら各地で今できつつあるのではないか。できつつあるといたしましたら、そういう形というものをどういうふうに力づけていったらよろしいかということをかねがね考えているものでございます。
  32. 日野市朗

    ○日野委員 私の考えでいるところは、そういう二兼農家がそういうふうに動いてくれれば結構なことだと思うのでございますが、そのためには、利用権を設定するなり生産組織の中に入っていくなりしても、そこから、自分が農地を保有いたしましてそれを耕作して収益を上げる、それを上回るものが得られるという確信が二兼農家にないと、そういうこともなかなか不可能ではないか、難しいのではないかという感じがしてなりません。何かこれについての手だてとかありましたらお聞かせいただきたいのですが、いかがでしょうか。
  33. 石川英夫

    石川参考人 ただいまの先生のお話、恐らく農業のみならず農業外の所得機会の問題というふうに受け取りましてよろしゅうございましょうか。——そういう観点から申しますと、今度の農振法改正就業の問題というものが入りました。これは、将来の農村対策として画期的なことであろうと存じます。ですから、こういう規定が計画事項として入りましたものを、農林水産省なり関係官庁が実質的に農村人たち、殊に二兼農家なんかに安定した就業機会をつくり出すために実際どういうような具体的な政策を推進していただけるかというところに私自身関心があるわけでございます。
  34. 日野市朗

    ○日野委員 これは金のことも若干絡んでまいりましたので、坪井先生に伺いたいと思います。  農振法の中で安定就業機会をつくる、これは非常に結構なことだと思いますが、今までのように、どこそこに出稼ぎに行く、または都市に通勤する、そういうところでこういう二兼の人たちなんかが農業を離れて生活を立てていくということになりますといろいろな障害なんかが出てきて、現在この問題は解決できずにいるわけでございます。この場合、二兼のみならず一兼についても同じでありますが。それで、安定就業という形になりますと、今までの壁を一つ破らなければならなかろうと思うのです。そのために、よく各府県で行われております一町一品運動などに結びついた、その地域の特産物の加工業というようなことなどに私は非常に興味を持つのでありますが、そういうことを農村でやっていくだけの農村、農民における資本力といいますか、そういったものについてはいかがお考えになっておいでになりましょうか。
  35. 坪井伸廣

    坪井参考人 今事例として挙げられました一町一品運動でしょうか、これは基本的には地域産物をつくっていこうということだろうと思います。必ずしも大規模な資本を必要とするようなものばかりだとは限らないようです。私が見た限りでも、基本的には大きな資本を必要としないものが各地で取り上げられているようです。また、仮に資本を必要とする場合であっても、県なりあるいは市町村自体が独自の財政補助ということも行われておりますし、あるいは農協系統で系統の信用事業一丸となって融資の体制を組もうということも既に行われているようです。
  36. 日野市朗

    ○日野委員 これは、最初はよく張り切って始める人が多いのですね。ただ、経営能力の問題もございます。それから、それを運営していく資金の問題もございまして、必ずしもうまくいかない例を私かなり見ているわけなんで、これからもいろいろなそういった企業の経営等についてやはりみんなで注意をしていかなければならぬのだというふうに私は思います。これが安易に市町村、県あたりからの援助が入りますとかえってそれに甘えてしまってうまくいかないという例なんか多いと思うのですが、いかがでしょうか。
  37. 坪井伸廣

    坪井参考人 確かに県なり市町村の補助ということが問題になるところもあるかと思います。そういう意味では、私、個人的には農協系統の信用事業、共済事業含めて融資体制をもう少しうまく整備できないだろうかというようなことは考えております。
  38. 日野市朗

    ○日野委員 それでは、農地流動化対策について。  これは、流動化がかなりうまく機能し始めた、例えば農用地利用増進法ですか、そういった事業によって流動がうまく機能し始めたというふうに見る評価もありましょうし、いやさっぱり進まぬ、さっぱりと言うと語弊がありますが、思ったようには進まぬという見方もあると思います。それについて私一番の根本的な問題は、受け手の側における資本不足ということもあるのだと思うのですね。これについては、石川先生、坪井先生、お二人からお考えを伺いたいと思いますが、どうでしょうか。
  39. 石川英夫

    石川参考人 確かに受け手の方の農業担い手を具体的にどういう姿でもって育成していくか、そのために国や公共政策として何ができるかという点についての政策的な詰めは、私の印象としては今まで必ずしも十分でなかったというふうに存じます。  一つは、技術供与の問題がございます。現在のそういうようなかなり高度な技術水準を持った農業者に対しては、従来のような農業改良普及制度で足りるかどうかという問題もございます。それからもう一つ、資金供与の問題につきましても、総合資金制度というようなものが農林漁業金融公庫においてできておりますけれども、必ずしもこういう制度ができましても、そのこなし方が十分でないということを伺っております。  そういうような制度、資金制度というものはある程度拡充されてまいりましたにもかかわらずそれが十分に活用されてないというところに、なおなお現在の農政というものは、担い手の技術能力、機械装備、あるべき姿というものについてさらに積極的なイメージというものを描いていただきたいというふうに私考えております。それが中核の個人農民になるか、あるいはまた地域農業集団という形になるか、これは地域によってさまざまであり、さまざまなカタログというものが政策当局によってより具体的に描かれてしかるべきだということを私かねがね考えておりますので、それをお答えにしたいと思います。
  40. 坪井伸廣

    坪井参考人 農地流動化が資本不足でということもありましたが、既に地代の一括払いのような制度もできております。私自身としては、資本不足ということもあるかと思います。確かにあるかと思いますが、もう一つ見逃してはならないのは、受け手側が借りたい農地が出てこない。出る農地は非常に分散しているということも、一つ、大きな障害ではないのだろうかというようなことを考えております。今の農地流動化の事業の中では、分散錯圃の問題をいかに解消していくか、あるいは克服していくかというものが問題意識として今までは欠けていたのではないだろうかというようなことを感じておりますが、最近、政府の方でも分散錯圃の解消ということを検討課題として取り上げてきているように伺っております。今後の事業の成果に期待してみたいというふうに私自身は思っております。
  41. 日野市朗

    ○日野委員 今度は、湯本参考人に伺いたいと思います。  農振法の改正案、これはまあ成立をするわけでございますが、現場におられる村長さんとして、これができ上がったことによって何をまずおやりになりたいという御希望をお持ちですか。——おわかりになりにくかったようですから、もう一度表現を変えて申し上げましょう。  村長さんとして、農業地域の振興のために本法がすぐ直ちに何か有効に使える施策を打ち出すことがおできになりますか。
  42. 湯本安正

    湯本参考人 お答えを申し上げたいと思います。  今度の法律改正の中で、我々がすぐ取り組む問題では、里山の開発の問題があります。これは、里山の開発を計画をいたしましてやりましたところ、おれはもう農地は要らないのだということでうまく話がまとまらない地区がございます。おれは山があればいいのだ、もうどうせ息子は百姓をしないのだからと。その人に、もし交換分合林地を提供することによってできるとしたならば、その話が進みそうなような気がいたします。こういう問題があります。  それから、水路の先ほど申し上げました協定の問題にいたしましても、それから知事の裁定に持ち込む問題にいたしましても、これはおのおのございます。しかし、これはすぐ持ち込むというわけではございませんけれども、そういうことがあることによって、我々もっと前向きに取り組めるというような気がいたします。  それから、まだまだたくさんございますが、例えば改良区の総代の問題等でも、最近は総代が集まりが非常に悪いのです。そこで重要な事項を決定するのに総代さんに全部集まってもらう、定足数をそろえるために委任状を集めて入ってもらってやっと集まってもらうというようなので、今度は数を少なくしていただけるというようなことがあるようでございます。  それからもう一つには、施設の更新をやります場合に、今まで同意を全部とらなければならぬとありましたのが、今度は同意が簡単になる、総代会の議決その他でよくなるということも聞いておりまして、これらも取り扱いの上では非常に楽になるじゃないかというふうに思っております。
  43. 日野市朗

    ○日野委員 もう一点、湯本参考人に伺いたいのですが、いろいろな生産組織をつくる。恐らく木島平村にもございましょう。そういう中で、いろいろな協定は現実につくるわけですね。そのときには、リーダーになる人が非常に苦労をなさっておつくりになるのが現状ではないか。私も宮城県の農村なものですから、そういう現状を見て、これはリーダーの方の苦労、それから市町村長さん方の苦労、部落長さんの苦労はよくわかるのですが、この法律でその協定が今度はかなりやりやすくなるという側面はおありでしょうか。
  44. 湯本安正

    湯本参考人 お答えをいたします。  先ほども申し上げましたように、全部が全部協定にすぐ持ち込むというようなふうには考えておりません。できるだけ集落状況によりまして、非常に都市化した、あるいは耕作の形態が変わったといういろいろな現実的な問題が出ておりますので、それらに対応いたしまして協定制度を生かすようにいたしたいというふうに思っております。しかし、先ほど申し上げましたように、それによって今までのコミュニティーを崩すようなことは自治体の首長としてはできない問題でありますので、できるだけそういう方向で指導してまいりたい、こう思っております。
  45. 日野市朗

    ○日野委員 最後に、鷲尾参考人に伺います。  管理費の増大にお悩みのようでございます。水田利用再編対策、減反ですね、これが大分管理費の増大に影響を及ぼしているのではないでしょうか。いかがでしょう。
  46. 鷲尾貞一

    鷲尾参考人 私ども水田再編で転作をした土地農地と同じ賦課をやっております。だから全く影響はないわけで、それはみんなが均等に割り当てを消化するという前提で考えております。そういうやり方をしておりますので、今のところそんな心配はありません。
  47. 日野市朗

    ○日野委員 時間が来ましたので終わります。
  48. 阿部文男

    阿部委員長 武田一夫君。
  49. 武田一夫

    ○武田委員 きょうばいろいろと大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。  四人の参考人の皆さん方に二、三御質問をいたします。  最初に、石川坪井参考人にお尋ねをいたします。  私は、構造政策を円滑に進めるためには、やはりその基本となるもの、価格政策をしかと打ち出しておかぬと構造政策も円滑に進まないのではないかというふうに思うのですが、これについて御意見がございましたらひとつお聞かせをいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  50. 坪井伸廣

    坪井参考人 私は経験不足で、正直申し上げまして価格政策のことはよくわかりません。ただ、必ずしも価格政策の不備ということで農家がやめていくということだけではないというような気がいたします。農家自身農業を嫌だということも、一つ、見逃し得ない大きな事実ではないかなというような気がいたします。ただし、価格政策があれば、場合によれば踏みとどまる農民もいるかなという気がいたします。  大変恐縮ですが、この点ぐらいで……。
  51. 石川英夫

    石川参考人 価格政策については、まだまだ足りないと指摘される面と、もう品目別にもかなりカバーされてむしろ価格政策の運用が硬直化しているのではないかと、二つの御意見が確かに存在するように思います。価格政策というものはさまざまございまして、最右翼には食糧管理制度による政府の買い上げ政策から、生産対策と大変絡んでの、例えば子豚の価格の安定政策というものもございます。いずれにいたしましても、それぞれの農産物需給事情に応じた価格政策というものがもう少し機敏に弾力的に整えられていってもいいのではないか、それも全面的な財政依存ではない意味での、もう少し価格政策というものにさまざまな工夫があってしかるべきではあるまいかということでございまして、既に、地方を歩きますといろいろな自治体で自治体なりに考案されて、補償の積立金制度をつくっておるとかいうような自主的な努力もございます。  大まかに言いましてそういうようなことでございますが、今国の方でお考えいただきたいのは、それぞれの農産物の相対価格差のアンバランスということでございます。麦は麦、米は米、あるいはまた野菜の指導的な価格というものもございましょうが、どうも統一的にある政策当局が品目別にバランスを持った価格水準というものを設定しておられない。これは大概難しいことだと思いますが、こういうような観点から、ひとつ農政当局あるいはまた国における価格政策の基本となる品目別の指標価格の洗い直しということが、価格政策をさらに積極的にこれから展開する上での重要な前提課題ではないかというふうに私はかねて考えております。
  52. 武田一夫

    ○武田委員 次に、坪井湯本参考人にお尋ねしますが、土地流動化規模拡大を進めておるわけです。これまで十三万ヘクタールですかの流動化があったということでありますが、どうも土地流動化というのが生産性の向上等に余り結びついていない面があるのではないかということでございますが、現場の方で今いろいろと御苦労なさっている皆さん方の地域のことも考えまして、この点についてどういうふうに考えているか。  それから、今後土地の集約化、規模拡大というのは計画どおりというか、予想のようにいくものかどうか。それを推進するために、今までの農地三法等のそういうもの以外に、何かもう一つてこ入れをしなければならないものがないかどうかという点を、もしございましたらお聞かせしていただきたい、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  53. 湯本安正

    湯本参考人 お答えを申し上げたいと存じます。  我々現地では、今もお話にありましたように、何とかして流動化を促進するということをやっておりますけれども、その流動化が所得につながらぬではないかという御指摘でありますが、うちの村では、今まで法律に基づきましてやったわけでありますが、百人前後の借り手が出まして、今まで平均して中核農家一町五反の経営でありましたのが、これは三十ヘクタールちょっとできましたので、これによりまして平均にいたしまして約三反歩ふえまして、一町八反の耕地になりました。そこにプラスいたしまして、それである程度安定をいたしますので、そこヘキノコの生産というのも加えまして、その農家は非常に喜んでおりますし、生産も上がっているということであります。うちの県では宮田村にいい例がございまして、宮田村の例というのは、工場誘致をいたしまして二種兼農家人たちに工場へ通っていただく、そのかわりに用地を出してもらいまして、その用地中核農家規模拡大につながっているというような組み合わせをやりまして、非常に成功している例もあります。我々もすぐそこまでいかぬわけでありますけれども、できるだけ中核農家農地の集積をいたしまして、規模の拡大を図りたいということで進めているわけであります。
  54. 坪井伸廣

    坪井参考人 農地流動化生産性の向上に結びついていないのではないだろうかという御指摘だったと思いますが、私もその点については大変危惧を感じております。  私どもの団体で、かつて大規模の稲作農家の実態調査をしたことがございます。百名近くの方のアンケート、回答をいただいたわけでありますが、規模拡大で何が問題なのだろうかということの設問の中に、せっかく拡大して借りた農地が、集落の中に、あるいは町の中に非常に散在している、これが今一番大きな問題なんだ、仮に借りられた農地が一カ所にまとまればもう少し生産費も安く上がるかもわからないというようなことの指摘がありました。  私は、石川県の小松地区の近郊になるかと思いますが、寺井町で十五ヘクタールぐらいの稲作農家をよく訪ねることがあります。その農家は自作地と借地で十五ヘクタールやっているわけですけれども、そこが何と水田が二百筆にもなるわけです。そこは戦前に圃場整備されたという条件もありますが、一筆が七畝といいますか、七アールの田んぼが二百筆にもなるわけです。それがその方がいる集落の中だけではなくて、集落外にも散在しているということで、その水田管理労働に非常に手間がかかるというようなことが問題として指摘されております。それは、私が先ほど御紹介しました大規模の稲作農家の調査とほぼ同じような結果なのではないだろうかと思っております。  それからもう一点御質問があったように思いますが、農地三法のほかに、流動化を促進するあるいは生産性向上のために何か手だてがないだろうかということについては、私ども農地信託をもう少し何とか活用できないだろうかということをこの三、四年来考えております。先ほど話を伺っておりましたら、石川参考人の方からも農地信託というような御指摘がありました。私どもも、確かに農地信託をもう少しうまく活用できるようなことも考えてみたいと思っております。
  55. 武田一夫

    ○武田委員 確かに零細、分散、それから先祖伝来という土地に対する固執、それから最近は資産保有という傾向も強い。こういうことで、特に高齢化になって農村地帯で六十五歳以上が大体二〇%もいるという状態になりますと、健康も兼ね、仕事もなければ土地にすがりついて多少でも耕作をするということになる。こういういろいろな要因を一つ一つ排除をしなければならないわけですが、これはなかなか難しいと思うのですね。  そこで、どうでしょうか、今後こういういろいろな阻害要因を急激にやることはとてもできないということになると、土地流動化規模拡大、生産性の向上がかなりきついということになって、安い農作物を提供するということもある面ではかなり制約されるわけですね。この点、我々も非常な悩みなんです。この問題に何か妙案はないものかと私もいつも思っておるのですが、四人の皆さん方、こういう点はこうすればいいのではないかという日ごろ考えていることがありましたら、予算とかそういうものも全然関係なく、いろいろな条件を考えないで、お一人ずつ簡単にお聞かせ願いたいと思うのです。
  56. 石川英夫

    石川参考人 まだ熟し切っておらぬ農地信託の問題でございますが、集落の人々が話し合いでもって一括してその集落土地なり山林なりを、これは個人財産でございますが、共同部な意識と連帯をもちましていわば共益信託という形で信頼し得るような農業者もしくは農業団体の管理にゆだねる、そして約束された一定の収益を確実に物にしていくというような一つの方策はあり得ないものかどうかということを年来検討しているのです。アメリカにおいては、既にこういうような信託による農業管理農地管理がかなり広範に広がっております。アメリカのような農場制をとった国では、そういうような一つのコマーシャルの信託事業というのは確かに成立しているようでございます。  ただ、日本の場合のこういうような零細、分散の錯圃制の場合は、預ける人が個別で預けてはしようがない。何らか地域人たちのまとまりによって、また、農地三法とは別な形での共同の信託といいますか、我々はまだうまい言葉は出てこないのですが、こういう実験的な措置がどこかで行われてみると非常におもしろいのじゃないか。これは農地だけではなくて、例えば山林だけでも有効なものになり得るのではないかというふうに我々は考えております。
  57. 坪井伸廣

    坪井参考人 私が信託の問題を考えている一つの理由は、先ほど先生から御指摘がありましたように、伝来の土地は売りたくないという気持ちを農家は持っております。それから資産保有という話がありましたが、確かに自分はつくらないけれども、一銭でもその土地から上げたいという意欲もあります。そういった農家土地に対する関心の持ち方が一方であるわけですけれども、それにもかかわらず高齢化の中では、先ほど私が御指摘しましたように、今後確かに農地が余ってくるだろう。農家の息子でも、もう農地はつくりたくないという人が多くなってくるわけです。そういう意味では、今後十年か十五年の間にはかなりの農地が遊休化してしまいかねないようなことを私は心配しているわけですが、先ほど言いました農家農地に対する関心をうまく取り込むものとして、農地信託事業がかなり有効なのではないだろうかというふうに思っておるわけです。
  58. 湯本安正

    湯本参考人 私の場合には、特別こういう方向で行ったらということは考えておりませんけれども、先ほどもちょっと触れましたように、うちの県の宮田村では農地一反歩当たり幾らという金を出し合いまして共助制度をつくりまして、その共助制度で、農地流動化した場合にその貸した人に小作料以外に金がよけい行くようにやっておりまして、それによって全体の仕組みがうまく進むという格好ができておる。こういう非常にユニークなやり方でありまして、これは全体の皆さんの理解と協力を得なければできませんけれども、非常にいい結果を生んでいると私は見ております。  それから、私の場合には、先ほど言いましたように流動化を一方で進めながら、一方では里山開発とかそういうものを加味いたしまして規模拡大を図りたいということを考えております。
  59. 鷲尾貞一

    鷲尾参考人 ちょっと立場が違いますので、私は妙案は持っておりません。ただ、さっきもお話しいたしましたように、私ども土地改良関係で機場、揚水機場、排水機場等もたくさん持っておりまして、その経費が相当かかっておる。そんな意味からして、生産費の低減の方法として、できるだけ集団化して、一つの団地で大きな揚水機を一つ使わないで、その金をもし返してやったら随分収入につながるのじゃないかなという感じも実はしておる。そんな程度でございます。
  60. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、基盤整備について鷲尾参考人にちょっとお尋ねします。兼業農家が非常にふえまして、話し合いによる事業の推進は困難だ。私のところも結構あるわけです。そのために、一割ぐらいの人間の反対のために思うようにいかぬという悩みもあります。そこで、なぜ反対するかというと、やはり負担が大きくなってきているということがあるわけですね。というのは、基盤整備の予算がなかなかつかないし、遅い。そのうちに物価が上がる。そのほかに、終わった後の管理経費の負担が相当あるということで、この面を国が相当バックアップしておかぬと、特に二兼農家で安定的な収入があるような農家の方は、正直言って、土地をぶん投げておいても生活に困らぬということになると、乗ってこないというケースがある。  こういう点で、恐らく鷲尾参考人もかなり苦労なさっていると思うのですが、こういう問題を解決するために、国に対してぜひこの点はお願いしたいとか要望したいということがございましたら、この際、ひとつ忌憚のない御意見を聞かせていただきたいな、こういうふうに思うのです。
  61. 鷲尾貞一

    鷲尾参考人 ただいま先生のおっしゃるとおり、私のところも同じ形で非常に困っておる。特に二兼農家の問題が絡んできております。それから圃場整備自体が、全員同意という立場をとっております関係上、土地改良法に言うところの三分の二の同意を得て着工することはなかなか難しい。また、着工すること自体が非常に問題があるというようなことで、困っているわけです。  何かいい方法がないかということは、結局、もし決まった計画でありましたら、それに見合うだけの予算をつけてもらうということが一番その成果を上げる基本になるわけだと思うわけです。現在の予算の状況からしては、それはなかなか難しいだろう。ただ、非常に長期な低利資金か何かの返しやすいような形の制度資金を考えてもらいたいという気持ちを、本当に心から思っております。今おっしゃるような非常に大きな負担を短期間に返すということは、それを聞いただけでもなかなかその事業に参加できないという気持ちに多分になると思います。そんな点だけでございます。
  62. 武田一夫

    ○武田委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  63. 阿部文男

  64. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 まず湯本参考人にお伺いしますが、その前に、湯本会長さん、きょうはどうも御苦労さまでございます。本当にありがとうございました。殊に、価格政策から構造政策への意見を陳述いただきまして、大変意を強くしております。  今、私、基盤整備と水資源の確保、それからかんがい排水の施設の充実、これは国家の責任でやるようにという要請をしているわけなんです。何といいましても、この基盤整備がしっかりしないことには農業の近代化はできませんので、そういう点で、今国は第三次の土地基盤整備事業を進めようとして、六十七年には六八%ぐらいまでを目標にしてこの事業を計画しているのですが、どうも今までの進捗率からすると、六十七年の時点で総体的に五〇%にならないんじゃないか、私はそう感覚的に受け取っているわけなんです。また、現実にそうじゃないかと私は見通しを立てております。こうなりますと、いかにいろいろな事業を持ってきても、とても日本農業の近代化あるいは国際競争力を付加することはできませんので、この点について私は今後とも国に要請していくつもりでございますが、そういう点、湯本会長さんのところで水田土地改良を八四%も完了されているということは、これは大きな実績である、こう思っております。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕  そこで、全国の二倍以上の率でこういう改良事業が進捗できた、その背景どなった自治体の力の入れ方といいますか、今までどういう点でこういう完了を見ることができたのか。それから、今後こういう土地改良を促進するのに国にどういうことを要望したいのか。ひとつ端的に、大胆に思うところを開陳していただきたい、こう思うわけでございます。
  65. 湯本安正

    湯本参考人 菅原先生の御質問にお答えを申し上げたいと存じます。  私の村で初めて基盤整備を始めましたのは昭和三十七年でございまして、当時、積寒土地改良事業というので始めたわけであります。自来、第一次構造改善、第二次構造改善、それから残りましたのを自然休養村事業であるとか、あるいは山村振興事業であるとか、うちの村は山村地域でありますので急傾斜地等が相当ありますし、それを整備するのに非常に金がかかるわけでありまして、反当百万以上かかったところがたくさんございます。こういうことで、整備を進めるのに随分問題もございましたけれども、一部村がかさ上げを行う。これは直ちにかさ上げができませんので、償還金に対して村で利子を補給していくというような道を講じまして進める一方、初めは土地改良区だけで進めてまいりましたが、細かな土地改良区をたくさん村内へつくってしまうことは後の経営上非常に困りますので、全部村営にいたしまして、職員を張りつけまして進めたわけでありますが、水田に対しましては今大体八四%になります。  さらにこれを進めたいということで、ことしもまたモデル事業その他で進める予定でございまして、さらにこれを高めていこう。なお、足らずめは村単でこれを行いまして進めるというようにいたしまして、近代化をするにはどうしても基盤整備、それから機械化一貫体制、それから土地の集積というようなものをあわせて考えないとだめだというふうに考えまして進めてきたわけであります。
  66. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今、地元参考人からの基盤整備についての努力の経過を聞いたわけなんですが、地方自治体で随分力を入れないと基盤整備は進まないというのが現実でございますね。こういう点、各地方自治体は、各地方自治体の首長の政策いかんで重点政策とそうじゃない政策でニュアンスが違ったいろいろな政治が展開されるわけでございます。しかし、事農業に対しましては、やはり地方自治体のバックアップがないと進まないのが現実でございますので、意欲のある町村からもっと何か制度的なバックアップの要望はないか。  それから、殊に山村地域でございますと、小規模基盤整備が必要でございます。ですから、小規模土地改良について、いわゆる法制化その他きめの細かいものが何かございましたら、具体的な点でひとつお聞かせいただきたい、こう思います。
  67. 湯本安正

    湯本参考人 農民は、手っ取り早いのは補助金をふやせということをすぐ言うわけでありますけれども、補助金をすぐふやすという道を選択することは楽でありますが、我々の財政ではなかなかそうはいきません。そこで、できるだけ利子補給というような制度を使っておるわけでありますが、さらに今後土地改良を伸ばす上においては、今の制度資金を拡大しまして、うんと低利な資金を、アメリカ等を聞いてみますと、非常に大規模基盤整備をやっておりますけれども、非常に低利な金を長い間にわたって出すというようなことを聞いておるわけでありますが、そういうような道を講じていただくことが、時の予算というようなものに余り制約を受けなくて、大いにそれを伸ばす基礎になるじゃないかというようなことを平素考えております。  それと、私、土地改良事業を始めますときに、土地改良理事長——発起人が理事長になります前に三人かわりました。説得をしましてもなかなか同意をしてくれませんで、とうとう業を煮やして三人目がやっと理事長に就任することになったわけでありますが、三年かかりまして、今度の人はよくやってくれましたので土地改良の道を開いてくれたわけでありますが、熱心な人がおるということが非常に大事だというふうに、私、今でも思っております。
  68. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは、次に石川参考人にお伺いしたいと思います。  石川参考人は、将来の農村のイメージというものをもうちょっと政府が提示したらよいのじゃないかということを申されておりましたし、また、農村定住人口を四〇%ぐらいまで持っていきたいような御意見を承ったわけでございます。四〇%の定住人口となりますと、農業専業人口との比率は一体どのくらいにお考えになっておるのか。  それから、四〇%となりますと混住化社会でございます。そこで、今農業そのものは、世代交代が急激に進みつつある中で、農業から、第二種兼業の方々は他の職業に変わる率がふえていることは事実でございます。こうなりますと、農村工業の誘致ということは最重点政策として我々は取り上げていかなければならぬわけでございますが、この点で、今農振地域に企業誘致なんかを考える際、線引きの問題といろいろな点で障害になっている点もございます。一方では優良農地をつくらなければならぬということもございますが、一方では障害になっている。そこで、現実には農業自体では食えない事態、それから何としてでも農村混住化社会を早く、四〇%なら四〇%をつくらなければならぬとなりますと、農振地域の線引きの見直しということについてどのように考えているのか。  それから、こういう混住化社会をつくっていくのに果たして現在の農振法だけでよいのかどうか。  こういう点について御意見をお伺いしたいと思います。
  69. 石川英夫

    石川参考人 将来の農業就業人口の予測については、これはなかなか難しい問題でございます。さっき四〇%と申し上げましたから、少し腰だめに申させていただきますと、もう既に一〇%ラインを今割ろうとしている段階で、恐らく五%ラインぐらい、将来、ほぼ十年間経過いたしますとき、そういうところにまで行くであろう。もちろん、これは地域によって違いますから、大変大ざっぱな話をさせていただいているわけでございますが、それに伴ってかなりの非農業者農村居住というものがこれからふえていきますでしょう。その居住地の手当てというものを大きなマスタープランの中でどういうふうに位置づけていくかということについても、まだ十分技術的な検討が行われておりません。例えばかなりの人口集積を期待するところを、市町村役場などの所在します市町村の中心地に求めるのか、あるいはまた最も先端の農業集落というところに求めていくのか、それによっていろいろ土地利用計画の手当てというものも変わってまいります。これは、なかなか全国画一にまいるわけではございません。したがいまして、そういうような居住地のための農地の他用途への転用という観点から農振法の線引きはいかがかという先生の御意見でございます。  これは、都心からのスプロール化を防ぐ意味で農振法の果たしてきた役割というものは無視できませんし、これを一挙に撤廃するということもあり得ないと思いますが、殊に農振の白地地域については、計画的な農用地利用計画と他用途への利用も含めまして、もう少しいろいろな工夫があってしかるべきと思います。今度の農振法の改正を契機に、あるいはこの改正法案の枠をはみ出るようなこともあるかもしれません。それは、地方自治体の実績の積み上げの中から、またさらに新しい農村づくりのための方策が生まれてくることを期待したいと思います。  それから、先生の御質問でございますが、農住組合法というものは、御案内のとおり国土庁が主として所管でございますが、既に一部大都市地域でもって実施に移されております。あれは農業者が宅地用地を自主的に提供いたしまして、そしてその農業者もしくは農地所有者の主導のもとに、計画的あるいは集団的に非農業者の居住地をつくっていこうというねらいでございます。現在までのところ、必ずしもこれが十分に機能しているとは言えませんけれども、こういう形での農業者もしくは農村土地所有者の積極的な、組織的な対応というものを考えていく必要があるのではないかというふうに存じている次第でございます。
  70. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、坪井参考人にお伺いします。  里山開発の件でございます。  参考人農村計画法的なものを示唆されたのでございますが、里山開発、殊に交換分合なんかに対しまして、今森林が植わっている分で十分に耕地化できる傾斜度の問題で、交換分合をどんなに進めようといたしましても、個人の所有者の反対があると大変でございます。こういう点で、交換分合、里山開発のための一つの傾斜度に基づいた地域利用計画か何かが従前に必要じゃないか。むしろ里山開発がスプロール化にならないような、そういう面で何か御意見がございますなら、お聞きしたいと思います。
  71. 坪井伸廣

    坪井参考人 里山開発のことについては、私、今まで考えたことがなかったわけですが、先ほど来くどいように信託のことを話しておりますけれども、森林にも信託が適用されるようになっております。森林法で規定が設けられております。  今先生が御指摘なされたことは、所有の問題と利用の問題をどういうふうに調整していくかということだろうと思います。信託を考えるというのは、土地の所有権を一度債権化できるような仕組みで利用を再編できるのではないだろうかというふうに思っているわけです。信託というのは、一般の農地の貸借とは性格がかなり違うのだろうというように思っておりますが、農民が、あるいは山林の所有者が安心して預けられるという仕組みでは、私自身としては信託は評価してみたいというふうに思っているわけです。一たん預けられたものならば、信託を受けた期間で信託されたものについては運用が自由にできるわけです。傾斜度の緩い方から順に開発していこうということもあるいは可能かと思っております。
  72. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは、時間がなくなってまいりましたので、鷲尾参考人にお伺いします。  連合会事業の中で、指導業務に重点的に当たれるような対応を望むというわけでございます。このことについての具体的な要望がございますなら、お聞かせいただきたい。  それから、排水事業関係では建設省との協議あるいは提携その他について何か現場の声というものはないか、このこともお聞かせいただきたいと思います。
  73. 鷲尾貞一

    鷲尾参考人 土地改良区の指導業務の問題であります。  御承知のとおり、三十三年の連合会の設立の法の中では指導的な役割を果たす規定が追加されておりませんで、あくまでも技術援助とかそういう形の法でありましたが、その後のいろいろの管理問題あるいはまた技術指導というようなことで、事実はやはり指導業務もやってきておる実績を持っております。それでまた、これからの問題としましても、そういう重要な問題の推進を図る意味からしましても、やはり指導的な役割を果たすような形での改正をしていただくことによって、それらの事業なりの円滑な活用ができるというふうな考えで賛成の意見を申し上げたわけでございます。  それからもう一つは、ちょっと私もはっきり御趣旨がのみ込めないのですが、何か排水問題で建設省と摩擦ですか、どういうことでございましょうか。
  74. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が参りましたので、それでは以上で打ち切りたいと思います。  どうもありがとうございました。
  75. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 中林佳子君。
  76. 中林佳子

    ○中林委員 参考人先生方、きょうはどうもありがとうございます。  まず最初に、四人の参考人それぞれのお立場からお伺いしたい点がございますので、よろしくお願いします。  今回の農振法の一部改正の趣旨に、構造政策の推進ということが挙げられているわけです。しかし、今日まで国の農業構造改善に基づいてさまざまな施策が果たして本当に成功しているのかどうかという点を、この時点で考えてみなければいけないのじゃないかと私は思うわけです。現在九万二千ヘクタールもの耕作放棄地がございますし、私は島根県が地元でございますけれども、そこなどで取り組んでいる農業構造改善事業が今農家に非常に大変な危機をもたらしているという実態を知っているわけなんです。  島根県に大田という市がございますけれども、ここで昭和三十五年にアマナツカン団地に取り組んだわけです。これは構造改善事業として取り組みました。六つの団地ができたわけなんですが、二十年たった現在どうなっているかというと、もう組合は全部なくなってしまっているし、四つの団地はもう全く皆無になっているという状況になっております。ここでは借金を一千万から二千万各農家が抱えている。そういう実態の中で、せっかくつくった農地も荒れほうだいになっていたり、ほかの作物に転換したり、この借金を返すために農業じゃなくてほかの働き場所を求めている、こういう実態があるわけなんです。当初はバラ色の夢を描いてこの構造改善事業を進めてまいりました。それぞれのところが自分のところは中核農家だ、こういう位置づけで実は取り組んだわけですね。ですけれども、実際はこういう大変な借金を抱えて破綻している事例は、この大田市のみならず全国各地にあると思うのです。ですから、今こういう中核農家も含めて、零細農家も、改良普及員などの話を聞くと、非常に農業の意欲の減退がある、このようにおっしゃるわけなんです。  そこで、私がお聞きしたいのは、なぜ農家人たちの意欲が低下しているのか。それに対して、ではこうすれば意欲がわくようになるんだというような策がありましたら、それぞれのお立場から、なるべく手短に御所見を伺いたい、このように思います。
  77. 石川英夫

    石川参考人 農業者の意欲の低下ということには、さまざまな理由がございましょう。地域によってもさまざまな原因が異なってはおりますけれども。  日本農業者日本農業というものを守り育てていく必要があるんだという大きな国民的な支援、殊に消費者からの支援というものを改めてどういうふうに組織し、これを、農業に命をかけていこうという人たちにどういうように伝達するかということが、今非常に必要になってきていると思います。そのバックには確かにいろいろな政策的な枠組みも必要だと思いますが、現在の都市消費地、それから遠隔の農業生産地との間をつなぐ市場機構、非常に無人格的な市場機構というものによって値段が乱高下されております。  しかしながら、一部の生産者と消費者というものが地域で向かい合って、本当に優良な有機農業産品というようなものを婦人の間で取引しているようなところでは、有機農業を行うのは営農上なかなか困難でございますが、そういう市民的な鼓舞激励によって農業に生きがいを見出しているという方も多々生じているわけでございます。たった一例でございますけれども、そういうような消費者と生産者との直接交流と対話、そして消費者からの生産者に対する激励というものをどういうふうに伝達していくかということについて、地域的でございますが、いろいろな具体的な政策がまた考案されていってしかるべきであろうと私は考えております。
  78. 坪井伸廣

    坪井参考人 農家の意欲の減退がなぜかという御質問でしたが、私は、この百数十年来の日本の近代化過程の中で、人口農村から都市への移動、あるいは価値観の農村から都市への傾斜ということはあるいはやむを得なかったことなのかなというように感じております。大きな時代の流れとして、個人では対抗できなかったものだろうと私は思っております。ただし、今各地を歩いておりますと、今まで都会だけに顔を向けていたということに対して、特に若い人たちがもう一回自分の村を見直してみようというような意欲が、ぼちぼちではありますが、生まれてきているように私は感じております。  私、今、昨年来山形のある山村で農家の若い人たちと何回か座談会を開く機会を持っているわけですが、その中でも、もう一度山村の文化を見直してみようというような声が何人かから上がってきております。そういう意味では、今までの我々が感じていた都市一辺倒といいますか、そういった単一な文化ではない、文化の多様化というようなことをこれからの若い人たちがいかにつくり上げていくかということにかかっているのではないかと思っております。
  79. 湯本安正

    湯本参考人 お答えを申し上げたいと思います。  農業構造改善事業が非常に失敗が多いという御指摘でございますが、これは、問題は、その計画にもあり、とらえ方にもあり、それから取り組みの意欲にもあり、いろいろな面があり、さらにその上に経済界の変動というようなものがあろうかと思います。選択の問題では、養豚を取り入れる、あるいは酪農を取り入れる、養鶏を取り入れるというような計画をされたところがございますけれども、うちの近くでも養鶏を取り入れまして失敗したところもございます。それは経済界の変動、それから飼料の価格の問題といろいろありまして、その上に経営の失敗がございました。  ですから、私は構造改善は全部が全部失敗じゃないというふうに思っております。我々にとりましては非常にありがたい制度だったというふうに思っておりまして、今後もこれを続けていくという考え方であります。
  80. 鷲尾貞一

    鷲尾参考人 農業に対する意欲がなくなった、これからその意欲を奮い立たせるような何か施策はということであります。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕  現実におっしゃるとおりだと思います。私も、現在農村の真ん中におってその感じをひしひしと受けとめております。  ただ、私の土地改良という立場から申し上げますと、実際問題、耕作が非常に楽で、しかも近代的な大型機械に乗れるような先進的な圃場整備というものを早くつくるということが、やはり魅力ある農村づくりの一番もとになるのじゃなかろうか。ごらんのとおり、私ども地域でもわずか一反ほどの中をとこと、」と歩いて田植えをしている、片一方では八条植えのものでどんとやっているというような姿を見ますと、もし同じ若者であったならば必ず大型の機械に乗った夢のような農業をやってみたいという気持ちを持っておると思うのです。そのことができるような基盤をぜひ早くつくっていただきたいという気持ちでいっぱいであります。
  81. 中林佳子

    ○中林委員 先般、数日前、五月に入ってからだったと思うのですが、NHKで子供は訴えるという一時間番組をやっていたのです。これは実は秋田の農村地域を探っていたものですが、農村に工場を導入するという施策のもとで工場が入ってきて、そして農村生活がどのように変わったかということを放映していたときに、お父さんもお母さんも働きに出て、御飯を食べるときにお父さんが三交代で一緒に食べられないというような状況の中で登校拒否児がたくさん出ているというようなことで、私も随分心を痛めたわけですが、これは秋田県の例だけじゃなくて、今農村地帯全体に広がっている問題だと思うわけですね。  確かに農村に安定した就労の場をというのは、現実問題としては非常に大きな要求でございます。しかし、反面、農村地域工業導入促進法に基づいて入ってきたがためにさまざまな問題点が生まれていることもあると思うのです。今回、安定した就業の場をということが改正案の中に出ているわけですけれども、これまでのそういう工場の導入の問題点と、今後は工場だけじゃなくて何かほかにも必要なのではないかというようなことも含めて、石川参考人湯本参考人にそれぞれのお立場から御意見を聞かせていただければと、このように思います。
  82. 石川英夫

    石川参考人 今NHKテレビのお話を先生が出されまして、私もあれを拝見しまして非常なショックを受けた一人でございます。  あの例を私なりに解釈いたしますと、農業農業構造改善、工業の方は工場導入、それぞれの政策目的で事業を推進した結果がああいう姿になっている。といたしますと、もう少し総合的な農村地域社会対策というものがあれば、工場導入に伴うプラスはプラスとし、マイナスを排除するということができたのではないか。ほかの諸外国の例なりほかの地域を拝見いたしますと、今生活環境施設整備というのが農振法の中に入りました。あそこで集会所なり子供を預かる施設というものができました。そして、それは別に公設とか私営の幼稚園というのではなくて、農村に住んでおられる多くの老人方、老人会の方々にそこに組織的に参加していただきまして、そういう半ばコミュニティー指導をいたします公的な社会対策というものがあそこに並行していったならば、ああいうような弊害の一部は除去できたのではないだろうかというふうに思います。  確かに、先生御指摘のとおり、個別の経済政策の目的追求、それは私は大切なことだと思いますが、それを総合的な社会対策として受けとめるという見地から、今度の二法の改正というものが何分なりとも有効に機能することを私としては期待したいと存じておる次第でございます。
  83. 湯本安正

    湯本参考人 私はそのテレビを拝見いたしておりませんので詳しくはわかりませんけれども、うちの村では冬は雪が大体平均二メートル降る場所であります。そのために、農業の裏作というようなことからスキー場を取り入れまして、ペンション群ができたり、それからスキー場で働く人がふえてまいりました。ところが、工場も誘致をいたしましたけれども、御婦人がうちにいないということはいろいろな問題を提起しがちであります。そこで、私は社会教育の大事な問題として取り上げて、御婦人がうちを留守にしていた場合、子供を一人で家庭にぽつんといさせる場合の問題等を取り上げていろいろやらせているわけでありますが、これはどうしても克服をしないといけない問題であるという意識を実は持っております。  今、うちの村の耕作反別は平均いたしまして七反八畝。さっき言いましたように、集約をいたしましたので多くなりましたのが一町八反。一方では、今キノコで大体十二億程度の所得が上がりますけれども、エノキダケの栽培とあわせてやる。なおかつ、足りませんので、観光を取り入れるというような総合的なやり方をやって村の経営がもっているわけでございますけれども、どうしてもそういう問題が起こりがちでありまして、これはそれぞれの問題をケースごとに村がとらえていくという姿勢を絶えず持って、総合的な施策の上に村の将来ということを考えていくということをしなければならぬというふうに思っております。
  84. 中林佳子

    ○中林委員 最後に、後継者の問題についてお伺いしたいと思うわけです。  大変農村が老齢化している問題も先ほど参考人の方々からお話がありましたし、そういう点では、各自治体はかなりの努力をなさっているわけです。島根県にも日本一の過疎の町と言われている匹見町というところがございますけれども、ここなどでは結婚すれば新婚旅行は沖縄旅行をプレゼントする、赤ちゃんが産まれればベビーだんすをプレゼントするというようなことなどでかなりの努力をしているわけです。そういう点では、全国のそうした過疎を抱えている市町村では努力がなされていると思うのです。本当に後継者が農業に従事し、お嫁さんも来て子供たちも育っていく、こういう社会のあり方が本当の活力のある村づくりになっていくと思うのです。そういう意味で、市町村としては随分苦労してやっているのだけれども、国としては一体何をすればいいのか。その点で何か御意見でもございましたら、坪井参考人湯本参考人の方からお伺いしたいと思います。
  85. 坪井伸廣

    坪井参考人 今の農地法の範囲では、農家以外が農業をやるということがかなり難しい制度になっているかと思います。農家の跡継ぎがみずからの選択として農業離れをするということも否定できない事実のようです。そういった事実がある一方で、例えば都会の中で農業をやってみたいという若い人たちも、数は今は少ないですが、いることもこれまた事実なわけです。そういった都会の若い人たちにどれだけ期待できるかわかりませんが、彼らが持っている可能性に挑戦しない話はないだろうというふうに私は思っております。仮に百人都会から農村農業をやりに入ったとして、一人でも残ればこれは大きな成功ではないかなというふうに思っているわけです。そういう意味では、農業農業外からの参入をもう少し緩やかにしていいのではないかなというふうに思っております。
  86. 湯本安正

    湯本参考人 非常に難しいことでございますけれども、若者が希望を持つような形というものをつくり上げることがまず第一である。さっき申し上げたのでありますが、うちは国有林が非常に多いわけでありまして、ことしは国有林の一部をお借りいたしまして高原野菜の試作を二町歩行うことにいたしました。今までの農業だけで若者に希望を持たせるということはなかなか難しいわけでありまして、私のところは前には米の主産地でありましたが、米の主産地プラスキノコ、キノコの里ということでエノキダケの栽培を大いに進めてやらせまして、大体十二、三億の成果が上がるようになりました。そこにスキーの観光を加えまして、さらに新しい形として希望を持たせるような、いわゆる高原野菜の栽培をやらせてみたい。  我々は、絶えず新しい経済界の状況を一方で見つつ、新しいものを追い求めて、若者が絶えず農業関心を持たれるような形を忘れてはならぬというつもりで今やっているわけでありますが、御指摘のありましたように、どうもこれが何よりの処方せんだというものはございません。大いに頑張っていくということであります。
  87. 中林佳子

    ○中林委員 どうもありがとうございました。
  88. 阿部文男

    阿部委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位一言お礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。(拍手)  次回は、来る十五日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時三分散会