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1984-05-09 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月九日(水曜日)    午前十時六分開議  出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    佐藤  隆君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       高橋 辰夫君    月原 茂皓君       中村正三郎君    野呂田芳成君       羽田  孜君    保利 耕輔君       三池  信君   三ッ林弥太郎君       山崎平八郎君    上西 和郎君       串原 義直君    新村 源雄君       田中 恒利君    細谷 昭雄君       安井 吉典君    斎藤  実君       武田 一夫君    水谷  弘君       神田  厚君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君 出席国務大臣        農林水産大臣   山村新治郎君 出席政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省農蚕        園芸局長     森実 孝郎君        農林水産省畜産        局長       小島 和義君        農林畜産省畜産        局長       石川  弘君        農林水産省食品        流通局長     小野 重和君        農林水産技術会        議事務局長    関谷 俊作君  委員外出席者         建設省都市局下         水道部公共下水         道課長     中本  至君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第六四号)  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第六五号)      ————◇—————
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  3. 串原義直

    串原委員 農振法、土地改良法関係をいたしまして、順次お尋ねをいたします。  まず、昭和四十四年に制定されました農振法のねらいは何であったのか、この際私は確認をしておきたいと思うわけであります。昭和四十三年に制定されました都市計画法に対比をいたしまして、農業領土宣言をという意図でつくられたと言われているのでありますけれども、そういう目的であったのか、この際伺っておきたいのであります。
  4. 森実孝郎

    森実政府委員 昭和四十四年に農振法が制定されたわけでございますが、都市地域への人口集中工業開発交通網整備進展等に伴って、農地の無秩序な壊廃農業経営粗放化などの事態都市周辺だけでなくて順次農村地域に波及しているという当時の状況にかんがみ、また一方において、委員指摘のように、都市計画法の制定という状況も踏まえまして制定されたものでございます。  その内容は、農業振興を図るべき地域を明らかにし、土地有効利用農業近代化計画的に推進しようとする目的を持って制定されたものでございます。農業自体土地に基礎を置く産業であり、地方の問題のほかに、土地が集団的に確保されているかどうか、そういうことによって左右される面が極めて大きいので、農業農業以外の分野との調整を図って、農業のために条件のよい地域を一体的に保全し、また、これを農業のために開発をしていく必要があるという基本的な考えに立っております。
  5. 串原義直

    串原委員 先ごろ手元に届けていただきました農林省の統計によりますと、昭和四十五年にはおよそ五百八十万ヘクタールあった農地が現在は五百四十万ヘクタールと、四十万ヘクタールの減になっているのであります。この間に造成をいたしました農地はおよそ四十六万ヘクタール、これを計算に入れますと農地壊廃はこの間に八十七万ヘクタールから九十万ヘクタールと考えられるのであります。これは大変な農地が消えた、こう表現してもいいと思っているのです。  今局長から話がありましたように、つまり農業地域を守る、農業領土保全法目的ということでつくられた法律、この運用によりまして、その目的が現在までに十分に果たされてきたというふうにお考えですか、いかがでしょうか。
  6. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほど申し上げましたように、農振制度におきましては、農業振興を図ることが相当と認められる地域については農業振興地域の指定を行い、長期にわたり農業上の利用確保する土地というものについては特に農用地区域として設定しているわけでございます。この農用地区域につきましては転用制限開発行為規制等を行い、農業上の土地利用確保保全を図るとともに、いわゆる農用地区域からの除外につきましては慎重な扱いをしているわけでございます。  そこで、この間に今委員指摘のように広範な転用が行われ、また一方においては造成が行われたことも事実でございますが、農用地区域に問題を限定して考えますと、例えば昭和四十九年の農用地面積は五百四十万ヘクタール、その中の農地面積は四百二十万ヘクタールでございますが、五十七年の時点においては農用地区域面積は五百六十六万七千ヘクタール、農地面積は四百四十八万五千ヘクタールと、いわゆる農用地区域における農地面積というものは、その間に出入りはあったわけでございますが、おおむね確保されている、むしろ若干プラスになった形で確保されているというふうに私は考えております。
  7. 串原義直

    串原委員 つまり、農業用地域領土保全、こういう立場でこの法律は十分にその役割を果たした、目的を果たしてきた、こういう理解でいいのですね。
  8. 森実孝郎

    森実政府委員 限られた土地資源のもとでこれだけの経済活動、膨大な人口が存在している我が国での土地利用の問題でございますから、大観的に見ますと、平場の農地が多目的需要によって壊廃され、一方、山寄り開発が進んでいくという形にならざるを得ない本質はあるわけでございます。  問題は、やはり集団的な農地確保していく、あるいは土地改良事業の投資が行われた農地確保していく、そういう形として、トータルとして必要な農地保全していくために合理的な、適正な運用が行われるかどうかということが農振法の基本的な建前だろうと私どもは思っております。そのような意味合いにおきまして、いろいろな問題はあったとしても、大局的にはやはり土地水利用のスプロールを抑え、集団的な農地優良農地確保されるために重要な機能を果たしてきているというふうに私は思っております。
  9. 串原義直

    串原委員 昭和五十八年三月末現在で農振地域面積は千七百五十二万ヘクタール、うち農用地区域は、耕作地採草地放牧地等々ありますけれども、五百六十七万ヘクタール、この差の千百八十五万ヘクタールが白地地域となっております。この白地地域は、農用地区域に比べまして農業振興上どのような位置づけと性格を持っているのか、伺いたいわけであります。
  10. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、現在のいわゆる農振白地地域面積は千百八十五万ヘクタールでございます。内容は、農地が六十四万ヘクタール、採草放牧地が三万ヘクタール、山林原野が七百六十三万ヘクタール、その他が三百五十二万ヘクタールということになっております。  この農振白地地域はいろいろな面を持っていると思います。いわば将来の農用地地区予備地と申しますか、つまり農用地開発の可能な土地一つございます。もう一つは、農用地区域保全上必要な山林原野、例えば水資源涵養林あるいは農用地保全効果のある山林原野。もう一つは、農業従事者の居住する農業集落とか農産物流通確保等のための施設用地等が含まれているわけでございます。  これは、いわば都市計画法線引きとの対抗の関係でこういう制度が生まれてきているわけでございますが、やはり私ども、この農振白地地域というものも今申し上げたような広角的な機能を持ち、また将来の農政の展開にも連なっているわけでございまして、その保全なり整備ということには留意していかなければならないと思っております。  特に今回の法律改正につきましては、生活環境施設整備とか農業振興と密接な関係を持つ森林の整備とか林業振興等関係計画に定めることにしておりまして、ある意味では農振白地の問題についても従来に増してその今日的な機能を評価して法律改正をお願いしているわけでございます。
  11. 串原義直

    串原委員 つまり、農用地ではないけれども、今の白地地域というものは日本農業を守り、日本の緑を守り、農村地域と言われる地域を守ってまいりますためには将来ともどうしても必要な地域である、こういう理解でいいわけですね。
  12. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、線引きによって土地利用を固定するという行政には、今日の社会状況なり経済状況から見て一つの限界があることは事実だと私は思います。その意味において、農用地区域白地区域を比較した場合、いわゆる農振白地については農用地区域とは若干異質の意味を持っているということは事実だと思いますが、ただいま委員指摘のように、将来へ向けての展望を含めて考えるなら農業上も重要な機能を持っているわけでございますから、やはり我々としてはその制度というものはこれからも重視していかなければならないと思います。運用については必要に応じて具体的な、弾力的な姿勢も要ると思いますけれども、基本的にはやはりその枠組みは維持していく必要があると思っております。
  13. 串原義直

    串原委員 次に伺いますけれども農業振興地域は、食糧自給の上からも、今言われたように日本農村地域を守ってまいりますために日本の将来にとってどの程度面積確保すべきものと考えていらっしゃるか、殊に農用地はどのくらいの面積が必要と考えているのか、これ以上減っては困るという限度があるはずだと私は思うが、この際お聞かせください。
  14. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、実は農用地区域自体が広がっておりますし、農用地区域内の農地面積も広がっております。結局、問題は、長期的な見通しに従って我が国が保有すべき農地というものを集団的に確保していく、そういう視点から農用地区域制度があるわけでございまして、私どもとしては、長期見通しにおける農地需給見通しから考えましても、現在程度農用地区域、また農用地区域内における農地面積というものの確保は必要だろうと思っております。
  15. 串原義直

    串原委員 局長、時間の関係上、面積はここで繰り返しませんが、現在の農地面積白地面積、先ほどここで御答弁もございましたが、あの面積最低限度のものである、あれ以上は減らすわけにはいかない、こういう理解でいいわけですね。
  16. 森実孝郎

    森実政府委員 私が申し上げましたのは、農用地区域における農地面積の問題を申し上げたわけでございます。トータルとしての農地自体面積につきましては、私どもはやはり長期見通しの線に沿ってその確保を図っていく必要があると思っております。
  17. 串原義直

    串原委員 つまり、五百四、五十万ヘクタールの農地日本の将来にとって必要なんだ、こういうことですね。
  18. 森実孝郎

    森実政府委員 私どもとしてはそのように考えております。
  19. 串原義直

    串原委員 さて、それではここで大臣に伺いたいのであります。  昨今の農業情勢は、将来を展望いたしますときにまことに不透明と言わざるを得ません。昨年に続きまして、ことしも肉、牛乳、蚕糸等農産物生産価格はすべて据え置きであった。したがって農業所得は低落の傾向にある。加えまして、外国からは市場開放要求が強まってくるなど非常に厳しい情勢にあります。農業団体等からは、事態打開のため具体策を確立してくれなければ、農業振興どころか農業崩壊の道を歩まざるを得ないではないかというふうに強調をされ、要求をされているところです。  大臣は、この要求農民の声にどうこたえますか。殊に今回の日米農産物交渉の結果、日本側は得るところはほとんどない、アメリカにむしろむしり取られたという結果だけではないか。私はまことに遺憾であり、とても容認できるものではないわけです。牛肉、オレンジにつきましては四年間の枠増大による国内農業への影響に加えまして、四年後は一体どうなるのだろうかということで、農家は深刻な不安を抱いているというのが実情でございます。さらに十三品目につきましても、二年後には再び交渉が再開されるということのようでございますし、農家が安心して生産できる、農業生産に携わるという条件はほとんどないと言ってもいいのではないかというふうに思うわけです。  こういう中で農業振興ということを声を大にして言いましても、農家の皆さんは本気に受け取らないのではないか。今回の日米交渉の結果は、政府の言われている農業振興とどんなふうにかかわってくると理解したらよろしいか、お答えを願います。
  20. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生御存じのとおり、今回の農産物交渉、これに当たりましては、アメリカ側が一九八四年四月一日から完全自由化というものを基点にして厳しい要求があったわけでございます。これを漸次現実的に移させていきまして、そして今回の交渉妥結ということに至ったわけでございます。個々の点につきましてはいろいろ御不満な点もあろうと思いますが、しかし、私は、少なくとも日本農業者が安心して農業に取り組めるというような形をつくるためには、何といっても日米間の緊張というものを緩和しなければなりませんし、また、今お話が出ました十三品目の問題もございましたが、これにつきましても我々としては四年ということで頑張ってまいったのですが、二年間ということでございました。しかし、私としましては、少なくともこれが日米間の友好関係、そしてまた日本農業を守っていけるというぎりぎりの線ではあるけれども、これを達成したと思っております。  今後につきましては、今回の農産物交渉に当たりまして中曽根総理大臣から全権を委任されたわけでございますが、この委任を受けますときにも、私としてはぎりぎりの線で農業を守るということでやってくるけれども、もし不慮の事態が出た場合にはというようなことで、これはそれなりにいつでも対応するという約束のもとに出かけたわけでございます。今回、これらの問題についていろいろ予算上そのほか心配な点がございますれば、これは私が責任を持ってこれに対処してまいらなければならないと思っております。
  21. 串原義直

    串原委員 日本人の一日の摂取カロリーというのは二千五百カロリー、こうも言われているわけですね。それ以上食糧を食べるわけにはいかない。ということになりますれば、国内農業振興、つまり農業生産力を伸ばしまして国内農産物需要を拡大するには、農産物輸入を抑えていくということしかないはずですね。この場合、輸入農産物を物理的に政策手段で抑制をするか、あるいは国際競争によって抑制するか、どちらかをとらなければならない。しかし、弱い経営規模で、競争力の弱い土地利用型農業におきましては、物理的手段輸入を抑制するということしかないのではないか。  私が納得できませんのは、広大な経営規模を持つアメリカ農業ですら十六品目輸入制限をしているというのに、弱い日本農業自由化をどうしてこれほど迫るかということなのです。アメリカ政府自国農産物輸入制限をどう考えておられるのか。日米交渉の過程で大臣はこの点をどのように主張をし、議論をされてきたのか、教えてもらいたい。
  22. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、アメリカ側自体もいわゆる農産物に関しての輸入制限を行っておるということでございます。特にガット自由化義務免除ウェーバーでございますが、これをアメリカは得ておる。牛肉その他につきましてもいろいろな輸入制限措置をやっておるということでございまして、これは私たちからも、アメリカ側としてもこのような事態を十分認識すべきである、ただ日本にだけこういうようなことを押しつける、アメリカ側だってこのようなことをやっておるじゃないかということは繰り返し強く主張してまいりました。
  23. 串原義直

    串原委員 大臣大臣がそう主張したらアメリカは何とおっしゃったのですか。
  24. 山村新治郎

    山村国務大臣 会談内容を公表しないことになっておりますので、これは主張したという程度にひとつとどめていただきたいと思います。
  25. 串原義直

    串原委員 大臣機微に触れる点は、今の大臣答弁で私は理解できないことはない。理解できないことはないけれども、率直に言って、あなた方の国でも十六品目輸入制限していらっしゃるじゃありませんか、したがって日本の言う、私の言う立場、私ども主張する立場を、それと対比して理解できませんか、御理解いただけませんか、日本だけにそれを要求するのは無理じゃありませんか、こうあなたが言ったときにアメリカさんはどういうふうに言ったか、この点は、大臣お答えになれませんか。
  26. 山村新治郎

    山村国務大臣 交渉が終わりました時点交渉内容を公表しないというようなこともございまして、言うなれば今度の農産物交渉を妥結したわけでございますので、ひとつその点は御容赦いただきたいと思います。
  27. 串原義直

    串原委員 そうすると、まさに秘密外交、こう言われてもやむを得ませんね。機微に触れる本当に大事な点は、なるほどそれもあるでしょうけれどもアメリカアメリカ立場できっと何かおっしゃったに違いない。大臣の納得することをおっしゃったに違いない。だからあなたは納得されたということになるはずですね。それは、何とも表現は難しいわけでございますけれども、私どもとしては不満やる方ない、やりきれない感じで今の大臣答弁を聞くわけです。秘密外交じゃありませんか。それだけあなたの国で制限しているのならば、私の主張する日本立場理解していただけないはずはない、こう言ったときにアメリカの側では何とおっしゃったかということを、ちょっと会談内容は言えません、秘密ですということでは、私は何とも納得できないのですよ。いかがです、大臣
  28. 山村新治郎

    山村国務大臣 先ほど先生、大体推察はできるけれどもとおっしゃいましたが、その推察でひとつお願いしたいと思います。
  29. 串原義直

    串原委員 それでは申し上げますけれども、私の国に私の立場があります、こう言ったのじゃないでしょうか。アメリカにはアメリカ農業を守る方針があります、こう言ったのじゃないでしょうか。
  30. 佐野宏哉

    佐野政府委員 山村ブロック会談内容そのものを御披露すると反則になりますが、私だともう少し一般的にお話しできると思いますので……。  一つは、大臣から御主張がございました、米側輸入制限についての指摘というのは、アメリカ側自由化要求を棚上げせざるを得ないというふうに判断をさせる上で有効に作用したということはまず間違いないところであります。  それから第二点は、もう少し一般的にアメリカ自体自国輸入制限についてどういうふうに考えているかということでございますが、まずウエーバー取得している品目につきましては、アメリカ側ガット上の合法性主張し得る輸入制限であって、日本輸入制限のようにガット上の合法性主張し得ない輸入制限とはおのずと性格が違うのである、だから、そういうことが公正であるかどうかということについてはいろいろ言い分があろうけれども日本がけんかを売りたいのならどうぞガット紛争処理手続日本の方からウエーバー品目について提訴していただいてもいいんですよ、そうやってもウェーバーをとってあるのですから日本側は歯が立たないはずでありますというのがアメリカ側公式見解であります。  それから食肉輸入法につきましては、アメリカ側見解は、アメリカ側自体ガット上弱点を持っておるということは承知しておって、したがって、みだりに食肉輸入法を発動することなしに輸出国側に要請して輸出国側自主規制ということで問題を回避して、ガット上非合法のそしりを受けないように気をつけてやっているのであるというのがアメリカ側見解であります。
  31. 串原義直

    串原委員 大臣にもう一度伺いますけれども、今回の日米農産物交渉は、我が国農業振興はさておいて、そして我が国食糧自給向上のための政策などはさておいて、まず日米関係を優先したものである、こう私は断言したいというふうに思うのです。そうではありませんか。きのうはアメリカのブッシュ副大統領が来日いたしました。そして、今回の一連の貿易摩擦交渉については日本の態度を高く評価する、こういう声明をされたと報道がございました。この副大統領のあいさつを聞いて、私は大変やりきれない気持ちで受けとめた。  農民各位も、アメリカ側は乾杯したんだな、こういうふうに受け取ったであろうと私はあのニュースを聞きました。きっと我が国農民各位怒りを持ってこのニュースを聞いたろうと思う。つまり、こんなところで言われるところの日米運命共同体、そんなことを当てはめられたのじゃかなわないというので、農民はいささか怒りを爆発させていらっしゃるだろうと思う。いかがですか。この農民感じに対して、大臣、どう答えますか。
  32. 山村新治郎

    山村国務大臣 日本アメリカ関係というのは、我が国外交の基軸であるということは間違いございません。しかし、今回私が参りましたのは、少なくとも農林水産大臣として参りました。我が国農業を守るという基本姿勢を貫いたつもりでございます。  先生御存じのとおり、実は三日間交渉したのですが、三日目にとうとう決裂ということになってしまいました。その時点アメリカ側要求というのはけた外れに大きなものでございまして、これでは日本農業を守れないと思い、そして決裂やむなしということに至ったわけでございます。新聞がどう書いておるか知りませんが、どっちにいたしましてもアメリカ側の大きな譲歩があったということも間違いないわけでございまして、交渉事でございますから百点満点というわけにはまいりませんが、その点も御賢察いただきたいと思います。
  33. 串原義直

    串原委員 では次の質問に移りますが、日米交渉高級牛肉年間ベースで六千九百トンずつふやしていくということになったようでありますが、これは和牛に換算いたしますとおよそ何万頭分になるのですか。そして、四年後に牛肉輸入は六万トン余になるようですね。これは我が国牛肉生産量のおよそ何%くらいに当たるのですか。
  34. 石川弘

    石川(弘)政府委員 六千九百トンを和牛で換算いたしますと、アメリカの牛より和牛の方が大きゅうございますので、大体二万七千頭から八千頭くらいの数になろうかと思います。  それから、先生六万トンとおっしゃいましたのは、多分、高級牛肉の量といたしまして現在の三万八百トンに二万七千六百トンを足しますと五万八千トンくらいになりますから、その量であろうかと思いますが、これは輸入牛肉の全部ではございませんで、その一部にすぎないわけです。どれくらいかということになりますと、そのときの国内生産は現在よりふえているわけでございますけれども、大体感じで申しますと一五%か、ちょっとそれを上回るくらいのものだろうと思いますが、私ども頭に置いておりますのは輸入されます牛肉の総枠と国内生産関係でございまして、ハイクォリティービーフだけが何%かというのは私どもとすれば余り強い関心のことではございません。むしろ総枠と国内生産がどういう割合になるかということを考えて、これを御承知のような需給との関係でいろいろ推算しているところでございます。
  35. 串原義直

    串原委員 六千九百トンほおよそ和牛にして二万八千頭くらい。今、私、その他承知の上で質問したのですけれども、四年後に高級牛肉はおよそ六万トン前後になるということだ。これは何%になりますかと伺ったところが、おおよそ一五%くらいであるとお答えになりましたね。だから、今から四年後を想定いたしまして、牛肉輸入量は国内の生産と対比して何%くらいになると考えていらっしゃいますか。
  36. 石川弘

    石川(弘)政府委員 国内生産輸入関係でございますが、御承知のように国内生産もかなり変動いたしておりまして、昭和五十年代に入ってからで申し上げますと、一番比率が高いような時期は、例えば五十六年のように駄牛淘汰をいたしました結果七五%にも国内生産が上る年もありますし、それからかつて国内生産が大変減少しまして輸入が急増しました、たしか五十一年でございますか、六七%くらいのものがあるわけです。大変大ざっぱに申しまして、大体国内生産を七それから輸入が三、これは七〇対三〇というかちっとした意味じゃございませんで、先ほど言いましたように六十幾つから七十幾つに振れるわけでございますが、そういうような感じは余り変わらないという前提で総枠の交渉等をするつもりでございます。
  37. 串原義直

    串原委員 では、こういうことですか。先ほど伺いました高級牛肉アメリカとの場合六万トン前後になる、それは輸入量総額の一五%くらいになる、こうおつしゃった。牛肉輸入量全体で四年後を想定するとおよそ三〇%である、こうおっしゃった。そういたしますと、今六万トン前後の高級牛肉と同じ程度の肉しか四年後には買ってこない、こう想定をしている、こういう理解で間違いないですか。
  38. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ちょっと御質問の意味が私わからないのでございますが、総枠を考えますときに、私どもは、国内生産も伸びてまいりますから、そういうものと輸入されますものとを加えました総需要の中で輸入が大体三の関係になるような比重で需給というものを考えているわけでございます。今言いました六万、六千九百云々というのは、そういう総枠を考えました場合の内枠の数字として考えられるものではなかろうかと思っております。
  39. 串原義直

    串原委員 この数字でやりとりして時間を食って残念ですけれども、つまり農林省としては、四年後も想定しておよそ七対三、輸入三の七対三の枠組みで考えていきます、これが大事なところです、こういう理解ですね。これだけは念を押しておきますよ。
  40. 石川弘

    石川(弘)政府委員 昨年策定をいたしました「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」の中で目標年次を六十五年に定めて文章で書いてございますが、「この場合、目標年度における自給率は、おおむね現状程度となることが見通される。」ということが書いてございます。そういう方向へ向けて国内生産も誘導し、あるいは不足分は輸入するということでございますので、これはたまたまその四年後よりもう少し先を見通しておりますけれども、基本的にはこういう考え方で総体の需給考えているわけでございます。
  41. 串原義直

    串原委員 そういたしますと、次に伺いまするけれども、オーストラリアとの交渉が始まるわけですね。いつから始まりますか。牛肉が一番大きな話題になってくるわけでございまするけれども、この枠はふやすということはない、こういう理解でいいですかね。
  42. 石川弘

    石川(弘)政府委員 明日からオーストラリアと牛肉のことの交渉をいたします。これは牛肉だけでございます。総枠につきましては、私ども一定の総枠を頭に置いて交渉するつもりでございますが、交渉の基本的な姿勢といたしましては、先ほどから申しております需要の伸びと国内生産との間の差、不足する分を輸入するということを基本的態度にいたしておりまして、そういうことを頭に置いた交渉をするつもりでございます。
  43. 串原義直

    串原委員 一定の枠を頭に置いて交渉する、こういう話でありましたが、アメリカとの交渉輸入枠は随分ふえた。またオーストラリアとの交渉の中で枠が随分ふえる、これは仮定の話ですよ、ふえては困りますけれども、ふえるとするならば、国内生産の割合が減るわけですね。したがって、私が改めて確認をしたいのは、豪州との交渉には増枠はほとんどない、こういうことで進まないと、国内の七の割合の確保、七という国内生産の割合を守っていけないのではないか、この点を伺いたいわけなんです。
  44. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私どもはあくまでも需要とそれから国内供給の差ということを申すわけでございますが、これは先ほど申しましたように、七対三と申しますのは過去の実績におきましても六七から七五ぐらいまで振れて歩くわけでございます。国内生産自身がそういういろいろな動きをするわけでございますから、現実に今何頭牛がいるかということは私どもわかっているわけでございますから、そういう国内生産をもとにして、必要であると思われる需要量との差を輸入するということでやることでございますので、数量的に多いとか少ないとかということを申し上げるわけではございませんが、六千九百という数字はあくまで我々が想定している数字の内側でございまして、そういう内側で交渉をし、決着をつけたわけでございます。  それからもう一つ申し上げますと、六千九百というのは、アメリカとの交渉はいたしておりますけれども、これはあくまでグローバルな数字でございます。アメリカだけが輸出をする牛肉ではございませんで、現実的にハイクォリティービーフの一〇%程度は既に他の国からも輸入されているということでございます。
  45. 串原義直

    串原委員 豪州との交渉があしたから始まるようでありますから、これはきちっと腹を据えて交渉に臨んでもらいたい。これは強く要請をしておきます。  そこで、牛と関連して急いでもう一点伺いますけれども農産物日米交渉の結果を見まして、子牛までが我々に重大な警告を与えているわけです。こうなりますよというようなことで、子牛価格が暴落しました。何だか子牛が教えてくれたような感じがいたします。この対策をどうする計画ですか、具体的に示してもらいたい。  そして、今、国内生産を七確保したいという局長答弁がありました。しかし、牛肉生産者は今回の輸入枠拡大で意欲を失うのではないか。私はまことに心配です。さっきの大臣の、不測の事態が生じた場合には対処するよというようなことも含めて、私は総理から委任を受けて交渉に当たった、不測の事態が生まれたならば予算措置も含めて考えなければならないと思っている、こういうふうに言われましたけれども、不測の事態が生まれるとまではいかないまでも、好ましくない影響が生まれてからではとてもとても、牛というのは長年生産にかかる農産物でありますから、間に合うものではない。好ましくない状態が出てからでは遅い。こういうことも含めて伺うわけでありますけれども、好ましくない影響が出てからということではなくて、ぜひ今から対処すべきである、対応していかなければいかぬ、具体的な施策を講じていかなければいかぬ、こう思う。この点についてお答えを願いたいのであります。
  46. 石川弘

    石川(弘)政府委員 日米交渉の結果の影響ということでございますが、まず牛肉の価格でございますが、和牛は御承知のように中心価格と上位価格の水準の間を走っておりますし、乳雄は中心価格水準ということでございますので、交渉の結果ということとは関係なく、最近ありますような状態が続いているわけでございます。  子牛につきましては、御承知のように、本来でございますと輸入牛肉に一番影響があると思われますのは乳用種でございますが、乳雄の子牛価格は全く変わっておりません。十四万から十五万ということで安定しているわけでございますが、御承知のように、和牛につきましては、これは日米交渉以前からでございましたけれども、かなり低落をしたものがあるわけでございます。その後の値動きを慎重に見ているわけでございますが、四月に開催しました市場におきまして、七つの市場では前回よりも上昇しているわけでございますが、残念ながら十一の市場で低落をいたしております。特にその十一の市場の中の六つの市場では、過去から比べまして一番値段が安いというような状態ができておりまして、私ども、こういう比較的敏感に動きますところにはかなり心理的な問題がやはり大きいのではないかと思いまして、実は四月以降、各農政局に県庁の担当の課長さんにお集まりいただきまして、こういう需給の実態その他、少なくとも肉の値段が全く動いていないのに子牛価格だけがいたずらに動くということの問題点をよく理解していただくということをやっております。農業団体におきましても、五月にかけましてそういうことを徹底するということをやっておりますので、こういう心理的な問題を極力除去するということに努めております。  しかし、その背後にありますいろいろな政策としましては、既に御承知のように、かなりのものを準備をいたしております。御承知のように、価格が下がりましてもその九割は価格安定基金で補てんをするわけでございますので、子牛が下がったことによる農家の実質的な損失というものはそこでまず九割補てんされるわけでございます。それに加えまして、御承知のように、ことしの価格決定の際に、子牛生産を拡大をいたしております農家につきましては子牛一頭につき二万円の奨励金を交付することにいたしておりますし、それからもう一つ、生産は拡大してない、例えば現在と同じ頭数でやっていらっしゃるというような方につきましては、子牛価格が三十万円を下回りました場合は一万円を交付する、こういうことをいたしておりますので、実質的な子牛生産農家農家手取りは減っていないと思います。肥育農家にとりましては、これは皮肉なことでございますが、資材費が安くなったということでむしろ生産面ではプラスの影響が出てくるわけでございます。子牛生産農家は、そういう意味農家の手取りが下がらないようにということをやっております。  しかし、何と申しましてもこういう異常な事態が続くことは好ましいと思っておりませんので、待に雌の牛の値段が弱くなっておりますので、約十億円の資金を使いまして、農協等が雌牛を購入しまして一時預かりまして、それを農家に委託して、子牛生産農家に譲渡していくというようなことにつきまして、一頭約一万一千円、それから輸送費等が必要なものは必要な輸送費も助成をするというようなこともやっております。そのほか、御承知のように、子牛の基金の財源を御心配の向きがございますが、これにつきましては五十九年度予算で三十二億円のお金を——昨年が十八億でございますから、かなり増額いたしております。それから中央の基金から県の基金に貸し出します原資につきましてもことし三十九億円を積み増しまして、全部で八十三億円の原資を中央に準備をいたしております。  その他いろいろな対策を現実にやっておりますが、何と申しましても生産者の動揺というようなことがあるとまずいわけでございますので、先ほど申しました行政あるいは団体を使いまして、この事態が決してそういう心配をなさるべき事態じゃないんだということをさらに徹底していきたいと思っております。
  47. 串原義直

    串原委員 次の問題に移ります。  輸入枠拡大に関連して申し上げますならば、牛乳につきましては畜産物価格安定法に基づいて価格安定帯の制度、事業団の一元的輸入制度、事業団の売り渡し操作などの政策手段があります。果物、果汁につきましてはこれらの政策手段を持ち合わせていないのであります。果物、果汁につきましては、どのような形で国内産の果実、果汁の需給、価格の安定を図っていくのか、お答え願います。
  48. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 果実の場合には、同じ種類の果実でございましても出荷時期なり産地なりによりまして品質、価格も大変多種多様に分かれておりまして、なかなか他物資のような価格安定制度が仕組みにくい性格を持っておる商品でございます。その意味におきまして、果実の需給調整の基本は栽培面積自体を長期的な需要見通しに即して調整をしていくことであるというふうに考えておるわけでございます。その意味で、果樹農業振興基本方針によりまして長期的な果樹の植栽方針を定めまして、それに基づきまして生産が行われますように指導いたしておるところでございます。  最近におきましては、過去の見通しがやや強気に過ぎたということで、温州ミカンのようなものはむしろ下方修正をするということにいたしておりまして、過去五年間かかりまして十五万町歩から十二万町歩に減らし、さらに本年度以降一万町歩減らすというようなことで対応をいたしておるわけでございます。しかしながらまた反面に、豊凶変動というのは天気のぐあいによって避けられませんので、そういう豊凶変動に対しましては、生産出荷の調整活動を通じまして市場に出回りますものの量を需要にマッチした数量にするという対策もあわせてやっておるわけでございます。  それから、加工品になりますと多少性格が変わってまいりまして、生果の場合に比べますと保管適性もあるわけでございますから、生果の需給調整の一環といたしまして加工品に振り向けまして、それを調整保管をするというふうな手段を講じておりますし、また、原料果実につきましては価格補てん制度もあるわけでございます。また、何といっても需要の増加ということが必要不可欠なことでありますから、ミカン果汁につきましては、学校給食におきましてもこれを導入いたしておりまして、それに対しまして助成の道も講じておるわけでございます。  それから、本年度からは特に需要拡大のための緊急対策を講ずるということで、五十九年度予算において新たな予算措置も講じておるわけでございまして、これらの施策をその情勢に応じまして適切に組み合わせて実施してまいりまして、需給並びに価格の安定を図ってまいりたいというふうに考えております。
  49. 串原義直

    串原委員 今お話しのように、果物につきましては果樹農業振興特別措置法がございますね。しかし、現在の法律では、御答弁にございました国による振興基本方針の策定、都道府県による振興計画、果樹園経営計画を立てたものに対する公庫の融資、加工用果物の取引契約の独禁法適用除外などが内容となっているにすぎませんね。  今御答弁をいただいた内容をも含めまして、最近の厳しい状況にかんがみて、我が国の果樹農業振興を図るためにはこれだけでは足らないのではないか、こういうふうに私は思っているわけです。現状を踏まえて、法改正をも含めたところの検討が必要なときになってきているのじゃないか、こう私は考えるのです。いかがですか。
  50. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 先ほど需給、価格安定対策というお尋ねでございましたので、主としてそちらの面のお答えをいたしたわけでありますが、今後の果樹農業に対する政策といたしましては、品質なりコストなりにおきまして、消費者の嗜好に即応し、また外国産品との競争に負けないような産地の体制をつくっていくということが基本であるというふうに考えておるわけでございます。その意味で、これまでも生産性向上あるいは関係農家の経営安定というふうな観点から、樹園地の整備でありますとかあるいは優良品種への更新、集出荷施設、さらには加工施設まで含めました対策を講じてきておるわけでございまして、五十九年度以降におきましてもこれらの対策を強化してまいりたいと考えておるわけでございます。  現在、今後の果樹農業対策をどのように持っていくかということについて内部的にもいろいろ検討を進めておるところでございまして、果樹農業振興法の改正ということに主眼を置いて検討をいたしておるわけでございませんが、検討の過程におきまして制度問題に触れてくるということは十分あり得るわけでございまして、そういう問題が出てまいりましたならば、制度問題も含めて検討をいたしたい、かように考えております。
  51. 串原義直

    串原委員 重要な時期に来ていると思います。時間がないからいろいろ繰り返しませんけれども、今答弁の中で、制度の問題をも含めて今検討をしているところですという話がありましたが、この検討はいささか急いでいただく必要があろう、私はこう思うのであります。農産物貿易自由化のオレンジの問題等との関連も考えていきますと、そういうふうに思う。この今の検討はおおよそいつごろ答えを出していこうとお考えになっていらっしゃるのですか。
  52. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 対策の中にはすぐにでもやれるようなこともございますし、また、ある程度長期的に考えていかなければならないという問題もあるわけでございます。特に制度に触れる問題ということになりますと、なかなか拙速というわけにまいりませんので、多少の時間を必要とするわけでございますが、さればといいまして、余りのんべんだらりとしているつもりもないわけでございまして、六十年度を一つのターゲットといたしまして極力検討いたしたいというふうに考えております。
  53. 串原義直

    串原委員 果樹に関連してもう一点。  リンゴ果汁を初めて調整保管するというふうに聞きました。具体的な対策とその効果について伺いたいのであります。  なお、この際、リンゴ果汁を調整保管しなければならぬということになったということであるなら、輸入はしばらくの間とめるぐらいな対策を立てなければいかぬのじゃないか、こう考えるのですが、いかがですか。
  54. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 リンゴにつきましては、五十八年産が好天候に恵まれまして百五万トンというかなりな高水準に達しましたので、価格もここ数年来になく下落をいたしておりますし、また果汁の在庫も、過去の水準等と比較いたしまして大幅にふえるという見込みでございます。ただ、温州ミカンの場合と比較いたしまして、これは絶対的な過剰水準に来ておるのだというふうには見ておりませんで、やはり五十八年度の特別な事態というふうに考えておりますので、今後植栽について引き締めるという必要は認めておりますものの、直ちに過剰対策に入らなければならないという段階ではないと考えております。  ただ、ことしの特別な問題といたしまして、御承知のように主力商品でありますところのふじが既に四三%に達したというふうなことから、比較的早出しの品種でありますところのデリシャス系が非常に圧迫を受けて、特に出荷時期の遅い青森のデリシャス系が、端的に申し上げれば売りはぐれたというふうな事態が出ておりまして、これが果汁の生産に振り向けちれることになったわけでございます。リンゴジュースの消費は比較的順調に伸びてきておりますが、そういう消費の増を見込みましてもなおかつ、過剰分を全部ジュースに振り向けますとややジュースの生産量が多くなり過ぎるということがございますので、約二千トン程度のものは余分になるのではないかというふうに思っております。その二千トンのうち、約半分に当たります九百トンにつきまして国から調整保管の助成をするということで産地とも話し合いができているような状況でございます。  そこで、輸入の問題でございますが、今次十三品目の決定の一環といたしまして、リンゴジュースにつきましても毎年最低千トンの輸入をするということを決定をいたしておりますが、実はこの件につきましては、昨年の一月時点におきまして経済閣僚協議会の決定といたしまして決めておりましたものをそのままアメリカ側にのませたという経過があるわけでございます。確かに、リンゴジュースが余りぎみのときに千トン輸入するということ、そのこと自体は問題でございますが、長期的に眺めてまいりますと、リンゴジュースはなお消費が伸びておりますし、一時的には在庫の増減がありますものの、決して消化できない状況ではないというふうに考えております。また、そういったことも少し念頭に置きながら今回の調整保管措置を決定したということでございますので、生果として過剰に産地にたまっておりますものの一掃ということにあるいは多少なりとも役に立つものというふうに考えております。
  55. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたから、土地改良法の中で一つ。  農業集落排水事業の事業主体というのは、実施要綱に基づきまして市町村、土地改良区、農業協同組合等々となっておりますけれども、今日まで土地改良区は、事業の実施手続が明らかにされていなかったということもありまして、事業主体となった例はないのでありますが、今回の改正土地改良区が本事業を実施する手続が明確化されてまいりました。しかし、これは実施する場合は、農業用排水の水質汚濁の防止等を目的とする場合という、かうに限定されておるようでございます。  伺いたいことは、土地改良区が実施する場合は市町村長と協議しなければならぬ、こういうことになっておりますが、これはやり方によりますと混乱を生ずるという懸念を私は持ちます。したがいまして、具体的には市町村営事業等々とどのような形で調整を行っていくのか。私は、この種の仕事が順次拡大されてまいります場合には、地方自治体の事業との競合という点で好ましくない事態を生んでは困る、こう懸念する者の一人です。お答え願います。
  56. 森実孝郎

    森実政府委員 いわゆる集落排水事業は、農村における水洗化を目的として、同時に排水の水質の保持という側面を持っておるわけでございます。今委員指摘のように、土地改良区が行います事業は、この排水路のうち特に農業用排水路の水質保持の上で必要であるという視点からこの法制化を図ったものでございます。そこで、私ども率直な感じを申し上げますと、今後とも市町村が予算補助で行います集落排水事業が事業の主体になると思います。しかし、土地改良区が一定の範囲で実施する場合は、例外的には十分出てくる。そこで、双方の事業の調和がとれたものにするということが必要だろうと思っております。  基本論としては、みずから管理する農業用排水路に関係する部分に限定するという仕組みの中で出発するわけでございますが、具体的には、法文にも予定しておりますように、土地改良区があらかじめ市町村と協議してから事業を実施する建前にしておりまして、内容といたしましては、事業の実施範囲、実施時期、それから両者が並行して実施する場合はその分担関係、こういったものを協議の上で明確にするように必要な指導を行ってまいりたいと思っております。
  57. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたから、終わります。
  58. 阿部文男

    阿部委員長 田中恒利君。
  59. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 串原委員の質問に若干関連もするわけでありますが、一、二、農業振興にちなんで自由化の後始末であります。  今大臣の御答弁をお聞きいたしましても、アメリカへ行く前に中曽根さんから全権を委任されてしまって、後で問題が起きたときにはやるような話もできておるとか、特に不慮の事態が出た場合には山村農相の責任でやるんだ、こういうことをお帰りになっても言われたし、今も同じ趣旨の御答弁があったわけですが、私、そこのところがやはり問題だと思うのです。これだけ大きな問題になって、最も心配をせられた事態が起きたときに手を打つのじゃ遅いので、起きる前に手を打ってもらわなければいけないわけなんですよ。この問題で我が国農民に一番与えている影響は、ともかくもうだめだという意欲の低下であります。これに対して、いやこうやれば道はあるんだ、政府は責任を持ってこういう交渉をした以上はこういう対策を立てるよ、これを明確に打ち出してもらいたいというのが率直な我々の気持ちであります。こういう点について、日米交渉後の政府の、山村農林大臣の取り組みについての御決意を改めてこの際お尋ねしておきたいと思います。
  60. 山村新治郎

    山村国務大臣 私としては、日米関係というものを友好なものにしていく、そしてまた、農産物の市場開放というのが大きく外国から要求されておる中で何とか日本農業を守るという立場を堅持していきたいということで交渉をやってまいりました。先ほど来畜産局長、それからまた小島農蚕園芸局長の方からも話がありましたとおり、それぞれの対策はいろいろ立てておりますが、これということで、このような不慮の事態というものがありますれば直ちに対応は立てるつもりでございますし、またいろいろ勉強もいたしておりますが、このような問題というのがあったならばひとつまた御指導いただきたいと思います。
  61. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 余りこの問題だけで質疑はできぬわけですが、ただ、私は当面きちんとさせてもらいたいのは、畜産局長からも今いろいろお話がありましたが、まだオーストラリアとの関係があるから畜産の問題は交渉中の段階でありますけれども、いずれにせよ畜産の場合は畜産振興事業団、畜安法、こういう規定に基づいて価格の暴落、下落に当たってとるべき処置というのは法的にもきちんとしておるわけですね。この問題について、ここしばらくは非常に厳格に事業団を中心に法の執行並びに行政当局として可能な最大限の方策をとっていただく、これが当面畜産物に対する一つのすぐやれる処置としてはあると思います。  それから果樹の問題は、今もお話がありまして若干においのようなものを感じた。何か制度にまで多少突っ込む。自由民主党の中にもこの問題についての研究会が既に発足をしておる。ですから、私は何らかの動きが起きておることは承知をいたしておりますが、これも割り当てがぽつぽつ始まってくるはずでありますし、特に初めから心配をされております中晩かん、つまり温州ミカンから転換を指導した、これはおたくの方で奨励金まで出して指導したのです。これが率直に言ってオレンジとぶつかる。これに対する政策的な処置というのは今余りない。つまり、価格の安定基金制度などの対象にもなっておりませんし、余りありません。こういう緊急なものについては早急に対策を立ててもらいたい、こういうように思うわけでありますが、この二つについての当面の、あといろいろありますよ。私はまだじっくり時間をもらってこれは食いついていきますよ。この間の農林水産委員会での自由化の後の質疑は、法案の処理に追っ払われてしまって極めて短かったということで私どもの不評を買っております。これはこのままで済ますわけにはまいらぬのでありますが、しかし、この二つについての当面の政府の御答弁をいただきたいと思います。
  62. 石川弘

    石川(弘)政府委員 牛肉につきましては、御指摘のように法制度として畜安法がございます。これの運用につきましては、先ほど申しましたように、交渉後といえども全く同様な水準で今動いておるわけでございますし、今後のいろいろの状況に応じましても法の定めるところに従いましてやるつもりでございます。  それから子牛価格につきましても、幸い法制度整備した後でございまして、資金が不足することのないように、それからその他のいわば畜産の助成事業につきましても臨機応変にやるつもりでございます。
  63. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは釈迦に説法みたいなことでございますが、温州ミカンにつきましては五十四年度から三万ヘクタールの転換を進めておりまして、これは生産量にいたしますと当時の見通しの四百五十四万トンというかなりな大きな見通しを六十五年度において三百六十四万トンに、九十万トンの下方修正をするということをやったわけでございます。それでもまだ足りないということで、さらに一万ヘクタールの下方修正をする。したがって、合計いたしますと百万トン以上の下方修正をしておるわけでございまして、オレンジの四万四千トンということがその原因をなしておるものではないということは御理解いただけると思います。また、かんきつ全体で申しましても、中晩かん類で申しましても、中晩かん全体で七十万トンほどございますから、四万四千トンというのは、その出回り時期の差などを考慮に入れますと、その影響する部分というのは極めて微々たるものであるというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、そういう輸入の増加の問題とは別に、このところ中晩かん類も急激にふえてまいりましたし、中には品種の適性ないしは消費者の嗜好という問題と無関係にややその増植を急いだという嫌いもございますので、そろそろ産地におきましても中晩かんをめぐっていろいろ問題が出てきているということは私ども理解をいたしておりますので、とかく温州ミカンに傾斜がかかった政策をやってまいりましたけれども、中晩かん類についてもこれからはいろいろと政策面で考えていかなければならぬ、こういう問題意識は持つておるわけでございます。具体的にどんなことが必要か、またできるかという問題につきましては、いろいろ詰めなければならない問題があるわけでございますが、委員指摘の問題意識は私どもとしては十分持っておるということを申し上げまして、御答弁といたします。
  64. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 農振法と土地改良法に関した質問に移りたいと思います。  きのういろいろ議論がされたわけでありますが、私も構造政策というもの、これはともかく農業基本法農政が発足して以来農業関係する者にとっては一番大きな論争でもありましたし、問題認識を持ってきたわけでありますが、この構造政策の中身というか、正体というか、目標というものが実はまだすっきりしていないわけであります。きのうの特に日野さんとの質疑の中でも、やはり中核農家を主にしながら協業化あるいは集団化、そういうものが付き添って夫婦のようにやつていく、こういうことでしょうか、そういう意味の御答弁がなされておったわけでありますが、これはどういうふうに考えたらいいのか。  かつては、基本法制定当時は自立農家百万戸をつくる、こう言ったわけですよね。これは個別経営でありますし、集団化、協業化は共同化の前提であります。カテゴリーとしては若干要素は違うわけです。そういうものが我が国農業情勢の変化、特に兼業化という事態が堆積をされ、拡大をされていくという状況の中で、今日その段階として考えられておるのだろうと思いますけれども、これではどうもすっきりしないわけですね。どういうものを基本に据えていくのかと言うことについて、いま一度改めて政策目標のようなものをお示しをいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  65. 森実孝郎

    森実政府委員 構造政策を論ずる場合に、その担い手である中心となる農家をどういうふうに把握していくかという問題がまず基本にあると思います。  この点につきましては、ただいま委員指摘のように、いわゆる自立経営の育成という視点で農業基本法制定当時は把握していたことは事実でございます。しかし、自立経営の育成という観念では非常に経済状況の変化その他から見てなじみがたい点があるし、また、具体的にはその仕組み等についても実態から乖離してくる面があるという一つの反省もありまして、むしろ農業に主として従事している男子の基幹労働力を中心にしたいわゆる家族経営というものが高い生産性を上げ、安定した所得を上げられるというふうな目標に向かって問題を整理すべきであろう、そういう観念からいわゆる中核農家という観念が生まれてきたわけでございます。この点に関しましては、いわゆる六十五年の長期見通しでも既に示しておりますように、いわゆる中核農家七十万戸ということを標榜しているわけでございまして、私どもといたしましてはいわば個別経営の中核農家七十万戸を軸として、それを目標に置いた構造政策を進めるということが基本だろうと思っております。  それから次に、もう一つ土地利用の問題をどう考えるかという問題でございます。  高度成長の初期におきましては、いわゆる挙家離農が行われて地価が下がり、所有権の移転による規模拡大が進むということを予測した論議が行われたことは事実でございます。この点につきましては、我が国の限られた国土資源のもとにおけるいわゆる地価の上昇、それから交通条件整備や工場の地方分散等に対応して、挙家離農ではなくて、いわゆる通勤兼業の形による在村通勤兼業農家が増加してきているというこの二つの事実の上に立ちまして、所有権に着目しないでむしろ利用権に着目して、農業の中心になる担い手、現時点で言うならばその中核的担い手に利用権を集積する、こういう路線で考えているわけでございます。そのことは、私ども、今日の状況においては正しい物の見方ではないか、現実的な物の見方ではないかと思っておりまして、今日の構造政策の進め方の基本というのはやはり安定した中核農家の育成、この中核農家に焦点を合わせた土地利用調整による、利用権の集積等による規模拡大ということを骨子に置いて考えているわけでございます。
  66. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そこで、これは局長さんでしょうが、きのうの答弁をいろいろ聞いておりますと、農振法は第三ラウンドに入った、それぞれの一定の過程ごとに役割を果たしてきた、こういう意味の御答弁があって、今規模拡大へのチャンスが本格的に訪れてきた、老齢化、高齢化農家、そういうものがあって中核農家土地がだんだん集中し始めてきておるということで、二十万ヘクタールほどの土地が動いておるし、その大半が中核農家へ動いておる、こういう意味の御答弁があったのですが、事実そういう状態になっておるのですか。私どもが持っておる資料を見ると、そんなに明確に中核農家へ集中しておるような——中核農家の定義が今のようにあいまいですから。ですけれども、規模別の農家状況なんか見てみると、決してそんな方向に向いているように思えないわけです。あなたのきのうの答弁を聞くと、私、きのう熱心にメモをとったんだが、議事録までは見ておりませんが、中核農家に七八%ぐらい向いていると言っていらっしゃるのだが、そんな状況は出ているのですか。
  67. 森実孝郎

    森実政府委員 昨日の答弁でも申し上げましたが、規模階層別に見ますと、実は出し手の約三分の二が一ヘクタール未満であり、逆に受け手の約三分の二が一ヘクタール以上であるという数字になっております。ただ、これを個別に経営の内容に即してアンケート等によって調査いたしますと、中核農家と目されるものに七八%の集積があることは調査上出ております。  そこで、これも先日申し上げました点でございますが、どういう形で多いのかということを分析してみますと、実は平場における稲作につきましては作業受委託の形態をとっているものが非常にウエートが高いわけでございまして、むしろ今の段階において中核農家として利用権の設定を受けておりますタイプとしては、一つはいわゆる重量野菜等の生産農家で連作障害の回避という意味で借りてきている農家がかなりある。もう一つは、西日本等の畜産経営でかなりの多頭飼育をやりながら、耕作規模が非常に狭いために飼料作物の自給ができない、そういう方々がある程度利用農地利用してこれに利用権を設定して、少しずつでも、あるいはゼロから一割何ぼでもいいからということで、飼料作物を導入するための利用権を設定する事例がかなりあるのではないかというふうに見ているわけでございます。  この点につきましては、私、昨日もはっきり申し上げましたように、そういう意味においてはいわゆる利用権の集積の動きというものもまだ過渡的な段階にあって、いわば土地利用型農業一つの具体的な姿として考えている三ヘクタール以上の階層にその利用権の集積が集中するところまでは来ていない。これをどうやって加速させ、広がりを持たすかということが私どもとしては課題と思っているということを申し上げたわけでございます。
  68. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それがどうもよくわからぬのですよ。何か三分の二近くの土地が一ヘクタールか一・五ヘクタール以上が集中しているようですけれども、アンケートなんかの調査だというのですが、それじゃアンケートはどういうアンケートなのか。少なくとも農林省が統計で出しておるでしょう。例えば自作地の所有権移転が経営農地規模別にどうだというようなことから権利移動がどうだとか、あるいは農用地利用促進事業によって利用権の経営面積がどうだ、こういうのがありますね。これを見ると、そんなにたくさん出ていない。一ヘクタール以上の階層に半分ほど出ておる程度のもので、そんなに、三分の二も中核農家にいってないのですよ。今言われた三ヘクタールくらいですね。一ヘクタールから一・五、二ヘクタール、そういうところに土地がいっておるのですよ。私どもは全国的にあれしてないけれども、私ども地域を見たって、正直言って三ヘクタール程度の大きなところは家族経営を外れて雇用労働が必要だ。雇用労働が必要だなんというのは合成り立たぬですよ。だから、家族労働で完全に消化する範囲というのはやはり熱心なんですよ。そこの連中が熱心に、特に最近は畜産なんかをやっておる諸君は飼料畑つくりにあちこち回っておる。そういう傾向は出ておりますけれども、私のところも熱心な利用権設定の地区が二つ三つありますが、担当者などに聞いてみても、まだ全体的にそういう方向に向くような傾向にはなっていない。やはりまだばらばらである。  特に私が問題にしたいのは、逆に耕作放棄の面積がこの二、三年急激にふえておるのですね。そういう状態が今日の土地の特徴なので、余り景気よくこっちの方向へ、中核農家の方向に動いておるなどということが言えるような状況じゃないと私は思うのですよ。細かい数字を一々言いませんけれども、そんなふうに思うのですよ。どうもあなたの言うことはちょっと、この法案を出していらっしゃるし、それは構造改善の責任局長さんだからにらみ返すのかもしれぬけれども、私にはそういうふうには思えないのですけれどもね。やはりそうですか。
  69. 森実孝郎

    森実政府委員 それでは、細かい数字にわたって恐縮でございますが、御理解をいただくために五十五年のセンサスの数字で若干御説明させていただきます。  これは実は五十四年時点における借地のうちで四十六年以降借りたものを対象にしたもので、正確に申しますといわゆる農用地利用増進法の施行以降の数字の分析とは別ではございます。ただ、四十六年以降借り入れた土地でございますから、傾向は出ているわけでございます。  これを見ますと、全国で見ますと二十三万三千五百ヘクタールのうち中核農家の借り入れが十八万二千二百ヘクタールで、七八%になっております。北海道が九六・四%、府県は七一・七%という数字になっております。そこで、これを借り入れ階層別に見てみますと、一番借り入れの多い階層が、実は都府県では三ヘクタールから五ヘクタールの間の階層、その次が一・五ヘクタールから二ヘクタールの間の階層、その次が五ヘクタール以上の階層、その次が一から一・五の階層ということで、総じて申しますならば、実は一ヘクタール以上に約三分の二が集中し、その中では先ほど申し上げましたように三ヘクタール以上、それから一・五から二ヘクタールの間がかなり多いという数字になっているわけでございます。  そこで、この数字をどういうふうに理解するかという意味で、アンケートその他を通じて私どももいろいろ補足的に個別の事例に即して調べている。そうすると、確かに三ヘクタール以上の階層では従来作業受委託だった稲作が逐次利用権の設定に切りかわっているという姿は出てきておりますが、割合に重視しなければならないのは、経営規模が小さいけれども中核農家である野菜作とか畜産農家で、特に西日本などで借り入れが多い数字が出てきているということを要約して申し上げたわけでございます。
  70. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 その調査とそのアンケートの結果はわかりましたが、しかし、これはもう少し細かく見ていただきたい。特に、統計調査事務所の調査は正確なんでありますから。  それから、今借り入れと言われたけれども、今度はまた譲り渡しをしている者もあるわけなんですよ。だから、そっちの方ばかりとったっていけないと思うのです。  その議論はもうよしましょう。それをやっても、細かい数字のやりとりをしてもしようがありません。ただ、私どもは、この三、四年の間に農用地利用増進事業が活発な町村で一定の成果を上げているということは認めますし、私どももよく勉強させていただいておりますけれども、全国的に日本農地が中核農家農政の方向に向かって動いておるような、そんな農村の状態ではないというふうに思います。農地利用促進事業だけの問題で土地が動くという状況じゃない。やはり価格なり所得なり作物なり、そういうものの全体の状況がこれほど悪化しておるわけでありますから、私どもはそういう方向になかなか見にくいわけであります。  特に構造政策、構造改善ということが言われ出して、法律ができて、基本法農政が出ていわゆる日本農政の大黒柱になってもう二十三年、言われ始めてもう既に二十五、六年たってきたわけであります。一定の政策というのはそれはいろいろありますけれども、こういう問題は大きな問題ですから一朝一夕にはいきませんが、しかしもう二十年も過ぎたら、構造改善というものについての一定の何かひな形のようなものができて、そこへやはり農政の焦点が向けられていくような段階でなければいけないと思うのです。今農地の流動化がそういう方向に向かい始めたかなという状況にとどまっておるところにどうも問題があるように私は思うのです。特に、先ほども御質問がありましたが、やはり規模拡大の前提は農地の拡大であります。農地の拡大は、国全体から見た場合は農用地がふえなければいけないが、これは逆に減っておる、こういう問題も農政の大きな視点で押さえなければいけない大問題だと私は思う。  あるいは、特に問題は、土地改良等をやって圃場整備が非常に活発に行われてきた。きたけれども、そのできた農地が本当に使われておるのかどうか。つまり、土地利用率というものは、土地の回転率は年とともに減ってきておる。明らかにこれは土地政策なり、土地をつくる、圃場を立派にしていくという面では立派になったかもしれないけれども土地をつくることが目的じゃないので、土地をつくって作物をつくって所得をふやして農家農家として生きれる、こういう状況をつくることが目的なんでありますから、そういう面では、土地が動いてないのですから、休んでおるのですから、これは明らかに失敗であります。そういうことが実態ではないか。  私はむしろそういう視点から、我が国の構造改善、構造政策を否定いたしません、やらなければいけぬと思う、やらなければいけないけれども、もう二十年、三十年近くなってまだめどが立たぬというような状況で果たしていいのかどうか、こういう疑問を持つわけなんですよ。むしろ逆に、この二十数年間の経過の中でここが一つ大きな問題だと思う。これは、局長さんとやりとりすれば、あなたは大変勉強していらっしゃるから農業だけの問題じゃ済まぬこともよく知っておりますけれども、しかし、やはりそういう視点で一遍構造政策というのを総洗いしてみてお示しをいただかなければいけぬ時期にむしろ今日なっているのではないか、こういうふうに、非常に一般論ですけれども私は考えるわけでありますが、いかがですか。
  71. 森実孝郎

    森実政府委員 二つの問題を御提起いただいたわけでございます。例えば壊廃の問題とかそれから利用度が下がっているという問題、いわゆる土地利用率が下がっている問題、そういったいろいろな問題をとらえながら、やはり最終的に一定の土地確保され、それが有効に利用できる条件というものがやはり構造政策では基本ではないかという御指摘、それからもう一つは、いわゆる構造政策というものを、一定のターゲットを設けてそのターゲットに対して施策の集中を図るべきではないかという御趣旨、この二つであろうと思います。  まず第一の点でございますが、私もある意味ではただいま田中委員指摘の点に大いに共感する点を持っております。つまり、端的に申しますと、所有権の移転による規模拡大は、仕上げの形として例外的には地域によってあるとしても、大宗的に見るならば利用権による規模拡大が基本だろうと思います。  そういう意味農用地利用増進法を制定し、賃貸奨励金を制度化して今までの利用権の集積による規模拡大政策を進めてきたわけでございますが、なかなか実は一挙にそこにいかないわけでございます。地域状況、作目の事情によって、地域社会、農業社会が持っている問題が全部違うわけでございます。  その問題点を土地利用に着目して拾い上げてみますと、幾つかに分かれるんじゃないだろうか。  その一つは、やはり規模拡大でございますが、これも利用権の設定だけではなくて作業受委託ということを当面はかなり重視して、そこから利用権の設定に移行していくことを見ていかなければならないんじゃないだろうか。  それからもう一つは、稲作転換対策等で代表されますように、集落で、全体として集落の土地を面的に集積して計画的な共同利用をやっていくという体制を考えていかなければならないんじゃないだろうか。これは実は土地利用ということで敷衍して考えると、自分の土地利用する場合もあれば他人の土地利用する場合もあるわけでございます。  それから三番目は、地方問題がやはり非常に大きな問題になっている地域がある。そういう意味においては、有畜農家と耕種農家の結びつきの問題とか、連作障害回避のためのローテーションの問題から土地利用に入っていかなければならない地帯が中山間部の畑作地帯などではかなりあるわけでございますし、重量野菜の産地などでもかなりあるわけでございます。  それから四番目は、まさに先生指摘のように、農地の外延的な拡大ということで構造政策を進めていかなければならぬ地域があって、里山の開発という問題も重要だし、それから通勤兼業農家農業意欲の少ない人が持っていると裏作をやらないが、中核農家は裏作で飼料作物をつくりたがっているというケースはあるわけで、そういうふうに利用主体を切りかえることによって土地利用率を上げていくというふうな問題がある。  そこで、こういった問題は、最終的には土地利用の面的集積と経営規模の拡大につながっている段階でありますが、ただいま委員指摘のように、まだ現状は一挙にそのゴールまで行ける段階でない。むしろその四つの問題を片づけながら段階的に進めていく方が適当ではないか。そういう発想から、実は昨年、地域農業集団の育成ということを打ち出して、地権者の話し合いによって土地の集団的利用調整をやるが、それは利用権の設定による規模拡大に必ずしも短絡する必要はない。四つの道があるし、またその規模拡大の中でも、当面は作業の大幅な受委託ということを相当重視していいんじゃないかということで指導に乗り出しているわけでございます。この点については、なお不足の点があれば我々も検討を進めまして、十分な手直しなり補完を考えていきたいと思っております。いずれにせよ、段階的に進めるという発想であり、具体的なテーマを地域で拾っていただいて、そこから入っていくという考えでございます。  二番目は、構造政策というものについて一定のターゲットを設けてやるべきではないか。私、はっきり申し上げましたように、農林省といたしましては、今日の状況のもとでは利用権の集積を中心にした中核農家の規模拡大ということを頭に置いて、六十五年の長期見通しにおいて七十万戸の中核農家を頭に置き、従来ベースの所有権の移転以外に、利用権の設定で中核農家に約四十万ヘクタールの土地が動いていくということを一応の見通しとして出しておるわけでございます。  私は、これは今後政策努力があれば、特別の事情の変更がない限り、実は今までの成果を見ているとそれが可能な状況ができつつあるのではないだろうかということを申し上げているわけでございます。当面、私どもといたしましては、七十万戸の中核農家確保育成、ここへの約四十万ヘクタールの利用権の設定による規模拡大ということを具体的な目標にして仕事を進めていく必要があるのではないかと思っているわけでございます。
  72. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 森実さん、あなたのおっしゃることはよくわかります。よくわかるし、大体私もそんなに違いませんが、ただ、そういうものをやっていく場合に、私は、やはり今の役所の機構にも大きな問題があると思うのですよ。構造改善局という名前になってもう久しいわけでありますけれども、これは単に構造改善局の内部だけで取り扱われるような問題ではないわけですよね。私、この土地改良法や農振法を見ましてやはりちょっとどうかなと思うのは、生産の視点が、土地をつくっていく何か協定とかいろいろありますが、やはりつくっていく生産の面が余り出ていない。これは構造改善局ではなかなか出にくい内容なんだろうと思います。園芸は園芸、畜産は畜産、食糧・米麦は食糧庁、いろいろあるわけですから。それから、もっと広げたら、後で御質問したいと思うが、農村工業の問題だってこれは通産省との関係が非常に深いわけでしょう。そういう各省との関係なんかありまして、これは村で、農業集団で、部落でしょうが、後でこれも質問しますが、そこのところで何となくみんな寄ってやれというのもいいですけれども、やはり中央農政がやるものはそんなにがちゃがちゃしたことをやらぬだっていいので、地方でやらすこともたくさんあるし、地方の町村や県に任せたらいいこともたくさん私はあると思う。もっと本格的な構造政策とか貿易政策とか、そういう大きな問題についてはもう少しやはり中央の枠組みを取っ払っちゃってやれるような体制を、心配せられてやっていらっしゃるのだろうが、私は、やはりその辺の難しさの方が、この法律施行にしたっていろいろなことをやるにしたってもっとあり得ると思うのですよ。そういう点を乗り越えないとなかなかお考えになっておるような状態のものができぬのじゃないか、こういうふうに今御答弁を伺いながら感じました。これは大臣の方がいいのかもしれませんが、大臣、どうですか、お考え
  73. 森実孝郎

    森実政府委員 ちょっと私から前提をお答え申し上げます。  確かに農振法の整備計画の枠組みでは、作目別の生産目標というものは実は義務的にはつくらないことになっております。しかし、行政の運用といたしましては、前提となる資料としてやはり今後の当該市町村の区域の作目の種類と作付面積、生産目標等を定めることにしております。農振法の法的性格からいってこういう処理をしているわけでございますが、ただいま田中委員指摘の点は、私どももやはりまずそこから始めていかなければならないという面があることは事実だろうと思います。  そういう意味で、今後の農振計画の見直しに当たっては、やはり作目別の作付面積なり生産目標なりあるいは生産改善の留意事項というものについて盛り込むような指導はこれからも一段と強化してまいりたいと思いますし、その場合、私どもといたしましては、いろいろな局も農林省に十ございますから、各局にまたがるわけでございますから、各局との連携を保ちまして全省的な指導が行われるように十分配慮してまいりたいと思います。
  74. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 少しやぼったい質問を今からいたしますが、一つは、先ほどお話がありました地域農業集団というのですけれども、これは一体どういう機能を持ってどういう体系になっていくのか、これについて予算はどのぐらい出ておるのか、ちょっと概算お知らせいただきたい。
  75. 森実孝郎

    森実政府委員 地域農業集団は、農用地の集団的な利用調整を、先ほど申し上げましたように、各般にわたって、それぞれの地域の事情や作目の事情によってやっていこうという考え方で制度を指導しているわけでございます。参加者はやはり集落単位、水がかりが同一のようなところでは数集落でもいい、水がかりが別なようなところはやはり一集落、集落単位に地権者が集まる。ただ、受け手につきましては、はっきり申し上げますと、大都市の近郊とか平場では、例えば裏作のみによる場合を例にとった場合、あるいは一部の稲作を例にとった場合は数集落ないしは一集落の範囲では求められない場合もあるので、かなり広域にそういった高能率の生産組織なり個人経営の参加を認めていいという二重構造にしてやっているわけでございます。  そこで、これはいわば地縁的な集団という形で考えておりまして、最終的には農用地利用増進法における農用地利用改善団体に到着すべき中間過程のものというふうな見方をしているわけでございます。これはなかなか実は法律の建前と行政の現実とのギャップというものがありまして、農用地利用改善団体というものが農用地利用増進法であって、これは今申し上げましたようないろいろなことは全部できる建前になっておる。しかし、やはり社会的な受け取り方というのは、農用地利用増進計画でそこにのせられたものが農地法のバイパスになるという受け取られ方が一般であって、また、法律に決めた団体だけに、その構成とか運営についてかなり厳しい運用なり条件があるわけでございます。先ほど申し上げましたように、土地利用調整自体についても、そういう団体のとらえ方についても、一挙にそこまで持っていくことには問題がある。むしろ地域の特殊性を生かし、作物の特殊性を生かして、多様な形を踏まえた団体を育成し、それを最終的にそこまで育てていく必要があるだろうという発想に出ているわけでございます。  具体的には、全国の農業振興地域内の集落が約十二万集落ございますが、この二分の一に当たる六万集落を三年間で指定したいと思っております。五十八年度も一万六千強の集団を指定しております。  なお、予算措置でございますが、実はこれはこの集団の活動の助成費だけでございまして、総額として三十億四千二百万を、一集団当たり平均して二十万円の予算を計上しております。  私どもは、むしろこの地域農業集団の活動を通じて行われた土地の集団的土地利用調整と結果を重視して、その結果に即して各般の助成事業をそこに結びつけていく、また賃貸奨励措置もそれに結びつけていく、こういうふうな考え運用に当たっているところでございます。
  76. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そこで、私ちょっと心配いたしておりますのは、正直言って、農村には、特に部落というか地域には、ともかくたくさんな集団や組織があるのですよ。もう昔からの、古くは農事実行組合から始まっちゃって、サークル、自主活動まで含めて、特にこれは相当なものですよ。今いわゆる中核農家と言われる諸君の農業労働の日数といったようなものを、私、正確な数字は持っておりませんけれども、お調べになったらわかるわけですけれども、余り働いてないですよ。自分のところの田んぼや畑へ行って農業労働に働く日は余りない。ともかくいろいろな部落や地区の世話役に駆けずり回されているのですよ。私なんかの知っておるのは、もう三日に一遍どころか、最近は二日に一度くらい引っ張り出されるというのも中にはおります。そういうのが実は数少ない中核農家であります。そういう雑多な組織形態が現実にあるということはひとつ認識してもらわなければいけない。  この大半は行政と農協などを中心とした農業団体の下部組織というか、つながった組織であります。そういうものがさまざまあるわけですが、この農業集団だって、この間まで営農集団と言っておった。これは営農集団というようなことを、あるいはこれは農協でしょうか、盛んに言っておる。どこが違うのかよくわからぬのですけれども、そんなものはタケノコのように今あるのです。そして、逆に言わしたら、中核農家の諸君の営農に支障を来すような状態で使い走りをさせられておるのですが、そんなものにまた一つ大きな輪をかけるようなことになってはたまったものじゃないわけですがね。  そんな実態をどういうふうに整理をして、もしこれが我が国農業のいわゆる共同化というか、一つの新しい方向を切り開くための中心になるものであれば、現状のこういうさまざまなものを統合して集約をしていくというようなこともやらなければいけないと思うのですけれども、そういう面についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのだろうか。また、何かできて、そして、今聞くと予算は二十万、国が出すのは半分ですから十万、あと町村か県かが出すのでしょうが、毎年二十万で何ができるか。会合を月に一回やれば、会合費で二十万ぐらいいってしまうのではないでしょうか。  悪く言う人は、ともかく予算が厳しくなってきて農林省がえらくなったので、何か新しいところに目を向けなければいけないが、金がない。そこで地域の自主的な創意工夫という、我々も地域農政ということを盛んに言っておるわけでありますからこれはいいことでありますが、そういうものにのせていくという一つのアイデアにとどまっておるのではないかと言う人もおるのですけれども、そんなことでも困るわけであります。ともかく現在の農村の地区の実態をよく見きわめて、そういうものの中で、しかも大きな役割を持つような集団でなければだめだと思うのですが、その点はどういうように考えておられますか。
  77. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま田中委員指摘のように、非常に各種の集団や組織があって、それが混乱を招いておるという御批判があることは、私どももこれから十分頭に置かなければならない点であろうと思っております。  この地域農業集団の問題は、実ははっきり申し上げますと営農組織ではございません。これは、地権者が集まってやる土地利用調整を話し合う場所でございます。そのリーダーにつきましてはやはり市町村長さんが中心になっていただかなければなりませんけれども、市町村に中心になる指導員を設けて実施していただくようにしております。これは農家ではございませんで、それぞれ地域の実情に応じて市町村の吏員でもいい、農業委員会の委員や書記でもいい、あるいは農協の営農指導員でもいいという手はずでやっておるわけでございます。この方々が中心になって集めて集落単位の土地利用調整をやる。  具体的な例を申し上げますと、かなり市町村が広域になりますと集落によってリーダーが違った方がいいということがありまして、私が存じております愛知県のある市町村では、A集落は農業委員会の委員さんが世話役になり、B集落では市町村の委員が世話役になっているというふうなケースもあるわけでございます。  そこで、往々に誤解があるようなので、この際、私、明らかにしておきたいと思うわけでございますが、農協がおっしゃっているいわゆる地域営農集団というのは、農林省の施策としてはむしろ一種の生産組織という理解でございまして、この形で言うならば、例えば土地の受け手の一つである高能率生産組織の重要な部分として、農協がそういう営農活動における実績を持っておられる地域においてはいわゆる地域営農集団が出てくる、こういうふうな理解を持っているわけでございます。しかし、ただいま田中委員の御指摘の点は、農林省の役人、私以外にもすべてが常時考えなければならない点だということは私も痛感しております。そういった混乱を招き、無用の負担を招くようなことのないよう、十分配慮してまいりたいと思っております。
  78. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そういう性格のものならば、今町村には大概あるのじゃないですか。普及所だって普及員とか、農協の技術員とか、役場の産業課のプランができるような人とか、部落の各生産組織の中核体とか、そういう皆さんが寄ってその地域農業振興の何か協議会、そういうものは大体ありますよ。ないところは余りないと思うのですがね。  だから、今度また一つ新しくこういう性格機能を持ったものが法律で位置づけられることになるのだけれども、そういうものが新しくできるということになっていくと、また町村の事務が一つふえることになるのか。あるいはこの問題は土地だから、土地利用といったものや営農組織の労働力という問題ですけれども、やはり行政と団体というものの区分けなんかも少し要るのですよ。これはそういう問題もあると思うのです。  だから、それぞれの分野調整なんかも含ませていろいろな組織がたくさんあるということではなくて、少し整理簡素化して効率的にやれるようなもので、恐らくこれは出されても、町村では、そういうものか、それならここにあるものを衣がえしようかということになってしまうのじゃないかという気もするのです。それはそれでいいのか、そうではなくてやはりきちんとしたものをやっていくのか、そういうことなども考えおいていただかなければいけないのじゃないかと思うのです。意見ありますか。
  79. 森実孝郎

    森実政府委員 私は、二つ実は問題があるだろうと思います。  一つは、この事業を進める場合、中核になるリーダーがだれであるかという問題でございます。  田中委員指摘のように、従来わが国の農村では、いわゆる昔の言葉で言うなら在村地主のかなり大きな自営農業者がナチュラルリーダーとしてこういった問題でも寄与していることは事実でございますが、最近では、むしろ大観的に言うと、中核農家になる方はそういう機能には消極的な方もかなり出てきているという面があるわけです。これはやはり経済の発展なり社会意識の変革だろうと思います一  それからもう一つは、建前としてはそれぞれの団体が機能分担を持っているわけでございますが、こういう地権者が集まって話し合う利用調整については、例えばAという町村では農業委員会がタッチして非常に実績を持っている。ところが、Bという町村に行くと農業委員会が非常に弱体で、むしろ農協の営農指導員が実績を持っているというので、千差万別でございます。これは、私どもいろいろ調べてみればみるほどそういう感じがいたします。そこで、実は内輪話で恐縮でございますが、団体の皆さんにもお集まり願い、市町村にもお集まり願って随分調整をしまして、なるべく建前論や観念論より現実的に処理した方がいいのではなかろうか、このような建前から、その地域農業集団の指導に当たる人は、先ほど申し上げましたような幅広い中から市町村長がだれを選んでもいい、要するにその地域を指導できるノーハウなり知識を持った人を選んだらいいという現実的な処理をしているわけでございます。そういう意味においては、地域農業集団という制度は、一つ法律制度に明確に書くほどの社団性や統一原理は動いておりませんが、逆に機能的にできるだけ動きやすい形を標榜してつくったという点は御高察賜りたいと思います。
  80. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 たくさんお尋ねしたいことがありますが、時間もあと十分ちょっとになりましたから、少し要約をしてポイントだけ特に私の意見を申し上げて、御見解を賜りたいと思います。  一つは、農村工業の導入の問題であります。  これは農村工業導入法が制定をされて、法に基づいての取り組みがなされてまいったわけです。私もこの法律の制定当時、この委員会で議論をしたいろいろな思い出があるわけでありますが、どうもこの法律は当初の計画と大分狂いが来ておる。たしか当初は百万人雇用、うち農業従事者六十万人、こういう想定で出発をしたのでありますが、今日は十六万人ですか、農業関係者は六万六千人、そういう程度でありまして、遅々として進んでいないということが言われておりますが、実際は農村に何らかの企業がいろいろな形で入っておって、まさに百万人くらいのものは入っておるのじゃないかと思うのです。  さまざまなものが入っておるわけで、そういうものが規模拡大なり農業近代化にインパクトを与えておるのですけれども、例えば農政の主管役所である農林省は、それを的確に把握し、あるいはそれに対しての一定の諸対策を講ずるような立場にない。ただ農村工業導入促進法に基づくものだけに絞られているというところにもう一つ問題があるように思うのです。私などの地帯、これは地帯地帯によって違うと思いますけれども、私などの地帯では大体不況産業、そして安い賃金ということで、例えば繊維産業の下請の下請のその下請が物すごく入っておるわけです。一つの事業所で三十とか五十とか、大きいので百五十くらいですね。一町村で二百、三百くらい入っておるのですが、そんなものもある。  それから、これは局長も言われたが、私は農村工業というか産業の問題は、やはり地域農産物の加工だと思うのですよ。付加価値農業関連産業を農村の周辺にどう配置していくかという問題については、これこそ公の立場でもう少し大胆に刺激していいのではないかと思うのです。例えば今第三セクターなんというものを地方自治体もつくっておる。観光とかいろいろな資本が入ってつくっておるようですけれども、私は地場産業というか、農産物に付加価値をつけていくという面に対して大胆に持っていくというものが欠けておると思うのですね。これもさまざまな形でありますよね。地域の特産物の加工場といったようなものがたくさんできております。できておるけれども、これは極めて零細な形で、中小企業で弱い産業で、この経営者なんかは泣いておる。銀行から金を借りるのに一生懸命である。そういうものに対して何か手が入れられないのか。  これは役所の管轄が違うと思いますけれども、この辺を通産省ともよく連絡をし合って、それこそ地域の構造改善は現実の情勢に対応して、段階的に対応しつつ進めていくとあなたは言われたわけだが、この企業の問題は農業の変革には非常に大きな影響を与える。農業内部では機械化の問題でしょうし、外では企業の動きというものが就業機会の問題と絡んでくると思う。だから、これに対してもっと大胆な手を打つべきである、こういうふうに思いますが、この点についてどういうふうにお考えか、お示しをいただきたいと思うのです。
  81. 森実孝郎

    森実政府委員 いわゆる地域農産物の地元における加工業の育成自体につきましては、食品流通局におきましても固有の施策を講じておりますので、この点については食品流通局長から答弁させていただきますが、私どもも基本的な考えとしては、企業の導入、その企業の導入もいわゆる農村工業の導入であるとかテクノポリスであるとかという特定の法令による導入だけではなくて、現実的に市町村長さんたちが企業と折衝しながら持ってくる企業の導入ということも相当重視していく必要があると思います。  それからもう一つは地場産業の育成でございまして、これは過去の事例から見ましても、田中委員指摘のように、一つは地場の農産物や林産物の加工を主体とした特産品をつくる産業の育成、それからもう一つは観光資源を生かした新しい時代にふさわしい四次産業の育成、こういう二つがあるだろうと思います。これにつきましては、一般的に構造改善事業とか山村振興対策事業とか、あるいは新しく制度化しております定住圏の予算等で必要な条件整備とか、あるいは一定の範囲では共同処理加工場の施設の導入についての助成を行っておりますし、私ども農振法の中でこの問題をはっきりうたった以上は、今後市町村長さんたちから上がってくる具体的な計画というものについて有効な助言や指導や受けとめをするための行政の充実を図っていきたいと思います。  農産加工の問題自体については、特に個別の政策を講じておられますので食品流通局長から。
  82. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 最近の食生活の動向を見ますと、加工食品の割合が相当にふえてきておりますし、これからもふえるだろうと思います。そういう点、大きな流れの中で、今おっしゃいましたように、地域農産物の高付加価値化による地域農業振興、また雇用機会の確保増大というような意味から、地域産業、特に地域食品産業の振興は非常に大事なことだというふうに私ども考えております。従来から特に技術と人が問題でございますので、また地域食品産業ということになりますと中小企業でございますから、そういう中小企業に対する技術開発、あるいは新技術の実用化の促進、またいろいろな人材の養成といいますか、研修、そういう事業を進めております。特に五十八年度からは、県単位に技術開発とか市場開拓、あるいは研修指導、そういうことを進めるいわばソフト事業といいますか、それと集出荷施設とか処理加工施設、そういうハード事業を組み合わせました地域農水産物利用高度化推進事業を実施しておるところでございます。  今後も地域食品産業振興の重要性はますます増大すると思いますので、今までの施策を進めることはもとよりでございますが、さらにおっしゃったような点を含めまして積極的に、総合的に対策を進めてまいりたいと存じております。
  83. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間が参りましたので、私、あと二、三、一括して御質問をいたしますので、お答えをいただきたいと思います。  一つは協定制度でありますが、これについては細かい点でいろいろお聞きをしたがったわけですけれども、時間がありません。原則的な問題だけ局長から御答弁いただきたいと思いますが、この問題は、既存の村の持っておった自治というか、一つの秩序が崩れかけてきておりますが、そこへ契約という形で法律的な背景のものがぐっと入るということであります。  私は端的に申し上げまして、これまで農村の地域社会、部落というものが持っておったものを維持しようとしておるのか、それともこれは崩れて新しい何かをつくろうとしておるのか、そういう意図をはっきりさしておいてもらいたいと思うのです。あるいは最近の農林省の仕事の進め方の中に、例えば米の減反政策の問題でも、今度の他用途米の問題でも、農村の古い部落の秩序、慣行といったようなものに乗せて、そして何か農民に採択権があるんだと言いながら、実際は部落の共同連帯性に乗せてぐっと抑え込んでいく、こういう手法があるわけなんですよ。非常に心配するわけですけれども、私は、そういうものでは少なくともこれからの構造改善というのは新しいものが出てこないと思うのです。今度の協定制度の中にそういうものがあるとすれば問題だと思いますが、この点についての局長の御見解一つ。  それから、土地改良事業について幾つかお尋ねをいたしたいわけでありますけれども、時間がございませんので一つ二つだけお尋ねをしておきたいのは、最近の土地改良事業の中には相当大規模化したものがたくさん出てまいりました。特にかん排施設などについては大変大規模なものであります。そういうものの管理でありますが、現在の土地改良法でいけば、これは土地改良区が、あるいは連合会が管理はやっていくということでありますが、この管理費というものがだんだんふえてきておりますし、管理技術そのものが非常に高度になってきております。私は、国営でやった土地改良事業、かん排事業、こういったようなものは公共性が非常に強いわけでありますから、国が管理をしていく、こういう方向にいくべきだと思うのです。県営のものは県が持つ、こういう形にして、土地改良区が持つという部面はできるだけ農民に密着した部分に絞られていくことの方が機能的に正しいんじゃないか、こういうふうに思いますが、こういう問題については検討されておるのかどうか。  それから土地改良区の事業費でありますが、これが今のように工事の期間がどんどん延長していきますと、最初四、五年でやると言ったのが七年も八年もかかる、終わるまで関係農民の負担は幾らかわからない、こういう状況になっているわけですよ。最近は事業費の負担をめぐって、各地に改良区と農民との間に不信やトラブルが起きております。一々事例などは申し上げませんけれども、そういう事業費を農民にぴしっと理解さしていくようなこと。工事が終わるまで待たなければわからぬというようなことでは、こういう農業情勢の中では非常に皆不安定なんですね。だから、負担金がこれだけできるということになっていくとどうだろうかといって、皆心配しているわけです。そういうものについては一定の基準とか仕組みとか、そういうものをもっと親切に指導していくとか、何らかの形で事業費を明確に関係者に、公開もしておるわけでしょうけれども、ぴしっとわからしていくような、そういう改良区の指導をもっと強めていただきたい。  それから、小規模の土地改良事業というものを、これから特に純農村地帯に行けば、私どもの地帯もそうでありますが、平場でないところが多いわけでありますから、今採択をされておる相当大きな規模ではやれない。だから、小さな団体でやらなければいけない。団体でやれば金がたくさんかかる。利子は安いと言われておるけれども、それでもこの米価でどうだという心配を実はあちこちで聞くわけであります。だから、小規模の土地改良事業というものも余り見捨てないように、むしろ地域地域の実態に応じて思い切ってやれるようないろいろな条件などについても検討していただきたいがという考えを持っておりますので、これは大変時間がいっぱいになりまして恐縮でありますが、お答えをいただきたいと思います。
  84. 森実孝郎

    森実政府委員 まず集落協定制度の問題でございますが、従来の村の持つ総有的な機能というものが今日の経済情勢のもとで、個人の意識の変革の中ではっきり崩れてきている。一部の方には、旧来の秩序なり秩序の上に立った慣行を復元すべきであるという御議論があることは私も知っております。しかし、それはやるべきではないし、また、やることはできないだろうというのが私どもの認識でございます。  そういう意味においては、今日の農村社会にかさわしいように、機能的に、具体的な問題に即して地権者なりあるいは施設の利用者が話し合って、契約関係で問題を処理していくという方式を取り込んでいかなければならないという考え方に立つわけでございます。したがって、この考え方はいわば総有的な団体が持っている社団的な規律を前提にしたものではございませんから、個々の事項ごとに必要に応じて協定を結んでいこうという考え方でございます。しかし、そうはいっても村自体の構造は大きく残っているわけでございますから、私どもといたしましては、個人の自由なり権利行使を不当に妨げることのないよう、その運用に当たっては法令上も指導上も十分留意をしてまいりたいと思っているわけでございます。  次に、土地改良事業の管理費の問題でございます。  確かに事業自体としては、最近は大規模な事業がむしろ減り、小規模な県営、団体営等をふやしていく傾向にあることは事実でございますが、とにかく大規模な事業の施設管理をどう考えるかでございます。これは、率直に申し上げますと、いわゆる公共土木施設における国営とか県営という区分と土地改良事業におきます国営、県営の区分とは大分差がございまして、補助率の関係や広く農民の連帯を確保するという意味や事業の効率という意味から、事業の内容としましては、公共土木施設等に比較しますと土地改良事業の方はかなり小さいものまで国営、県営で拾うという形になっている。この結果が農民の皆さんにはむしろ負担の軽減に役立っているということがあるわけで、そこもひとつ頭に置かなければなりませんけれども、何と申しましても土地改良施設でございますから、土地改良区が自分で管理することがやはり原則だと私どもは思っております。  しかし、そうはいってもそれだけでは処理できないことがあるわけでございまして、ダムなどの公共性の高い施設、それから他種水利、治水等との調整を要する施設等につきましては、一定のものについては国がみずから管理を行っておりますし、また都道府県に管理を委託して、それに一定の助成を行っているものがあるわけでございます。厳しい財政事情のもとでございますが、この管理体系は私ども少しずつふやしてきているつもりでございます。そういう形で都道府県なり地元レベルの協力を得て、負担の問題とか管理の技術の問題等について合理的な管理が行われ、地元の実質的な負担がふえないような配慮ということについては本格的な努力をこれからも続けていきたいと思っております。  それから、小規模事業の重視という問題でございます。  実はこの数年間、水田の排水対策特別事業とか老朽ため池の整備とか、特に稲転に関係のある地域における圃場整備等については、かなり小規模の事業を重視して事業を実施してきていることは事実でございます。私どもは、土地改良事業においても、これからそういう末端の面的整備なり条件整備に必要な小規模事業のウエートはふえてくると思っておりますし、特に整備水準の低い西日本等を念頭に置いた場合は、今後の土地改良事業の進展に当たってはこの種の小規模事業が中山間部等にふえてくることは事実であり、また、それはそれで受けとめていく必要があると思っております。  この問題につきましては、採択条件の問題とか運用の問題がいろいろございますが、できるだけ現実に即して要望にこたえられるよう、さらに努力を重ねてまいりたいと思っております。
  85. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 終わります。
  86. 阿部文男

    阿部委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  87. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。斎藤実君。
  88. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 土地改良法の一部を改正する法律案について若干質問いたします。  私が今さら申し上げるまでもなく、我が国農業をめぐる内外の諸情勢は、日米農産物交渉の結果に見られるように、年々厳しさを増しているわけでございます。我が国の農政の方向は、昭和五十五年十月に農政審議会から答申されました「八〇年代の農政の基本方向」に基づきまして、健康的で豊かな食生活の保障と生産性の高い農業実現のために価格政策から構造政策への方向転換が行われたところでございますが、この施策の具体的な展開といたしまして、昭和五十八年から第三次土地改良長期計画が策定されまして、今後十年間で三十二兆八千億円の投資を計画的に行うことになっておるわけでございます。生産基盤整備の積極的な推進、営農規模の拡大、中核農家を中心として生産コストの低減を図りながら、またこれとあわせて農村の居住環境を整備し、非農業者を含めた健全な農村基盤を築いていく必要があるわけでありまして、これによりまして農政の課題実現と国民食糧の安定供給を図ることが急務になっているわけでございますが、現在の厳しい農業情勢に対応するために、土地改良事業の推進と土地改良区の育成強化に今後どのように取り組まれるのか、山村農林水産大臣から基本的なお考えを伺いたい。
  89. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいますように、我が国農業をめぐる内外の情勢、まことに厳しいものがございます。農産物需給の緩和、そしてまたいわゆる行財政改革、これからまいります効率的な農業の推進、そしてまた海外からは市場開放の要求と、まことに厳しいものがございますが、この厳しい農業に対する情勢に対処いたしまして、農業構造の改善、農業の再編成及び食糧自給力の維持強化、これを図るために、土地改良事業、これを円滑かつ計画的に推進していくことが必要であると考えます。  今先生おっしゃいましたように、昭和五十八年度を初年度といたしまして、今度の第三次土地改良長期計画、これに従いまして、限られた予算の中でございますが、各種事業を効率的に実施してまいりたいと思っております。また、土地改良区は土地改良事業の核となる推進主体でございますので、今後とも組織運営の基盤の強化に努めてまいる考えでございます。
  90. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 さて、農村地域におきましては都市化、混住化が急激に進んでまいりまして、土地や水については農業利用と都市的利用が競合する傾向が増大をしてまいりました。このことが、土地改良法によりまして組織されております土地改良区の運営に要する維持管理費の増高の原因となっているわけでございます。これらの農業施策の展開と今回提案されております農振法及び土地改良法改正が、地域農業集団の育成を基軸とする構造政策の推進と豊かな村づくり、こういうことを目指しておるわけでございますが、一方では非常に維持管理費が増高している。施設が高度化されておりますから、専門的な技術者の配置等も必要になってくるし、管理に要する資材費のアップと、土地改良区の運営が複雑多岐にわたるわけでございますね。  今度の改正によりまして、この政策の推進と豊かな村づくりとこの土地改良区の維持管理費の増高との関連について伺いたいと思います。
  91. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、最近の都市化とか混住化現象の進展から、現在、土地改良区が管理しております農業用の用排水路がかなり広範な機能を持ち、また、非農業的要素との間に各種の摩擦を起こしていることは事実でございます。例えば、水田がつぶれてダム機能が失われたために温水、湛水被害が起きやすいとか、生活雑排水等による水質の汚濁という問題を生じやすいとか、あるいは都市化が進んで転落事故が起こって困っている。さらに、こういったことを背景にいたしまして、やはり土地改良区が負担しなければならない施設管理費用が増高してくるわけでございます。  私ども今回の土地改良法改正でお願いしておりますのは、土地改良区が、こういった排水路等の多目的化に伴って管理形態や管理負担について問題を生じた場合、市町村と協議する制度を四十七年の法改正制度化したわけでございますが、なかなかこれが現実に作動しない。一方においては統一的な手続や内容についての指導方針が要ると同時に、こちらではそれが担保される仕組みが要るだろうということで、知事裁定制度の導入ということをお願いしているわけでございます。今回の土地改良法及び農振法の改正と申しますのは、方々の地域でこういった農業を取り巻く、あるいは農村を取り巻く事情の変化に応じて、地域社会の問題として起きてきた問題を幅広く拾っていくという視点で行っておりまして、その一つとしてこの問題があるというふうに理解しております。  いずれにせよ、こういった土地改良区の外在的理由による費用の負担という問題については、これらの制度の活用あるいは運用方針の徹底を図ると同時に、そういったことを通じて合理的な負担の分担が実現できるように、広角的な努力を続ける必要があると思っております。
  92. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今回の改正内容は、農村地域における混住化への対応ということに重点が置かれていると思うわけですが、構造政策計画的かつ効果的に推進することも必要でございますし、重要な農業投資を最大限に生かしていくためには、都市化、混住化の進展との秩序のある調整を図ることは緊急の課題だと思うわけでございまして、今回の法改正は、都市化の進展に伴いまして生じた農業用用排水施設等の利用関係調整の強化をしたものとして一応評価はいたします。  ところで、都市化との調整機能についてはほかの法令にも見受けられるわけでございまして、例えば農地法では、農地あるいは採草放牧地転用等を行う場合は土地改良区の意見を聞くことになっているわけでございますね。また一方、都市計画法では開発行為をしようとする者は公共施設、これには土地改良区の管理する用排水施設も当然含まれるわけですが、この管理者の同意が必要でありますし、都市計画事業を行う場合も、農業用施設の管理等に影響を及ぼすおそれがある場合は施設を管理する者の意見を聞くことになっている。このほかにも土地区画整理法、都市再開発法にも同趣旨の定めがあるわけでございますが、今私が申し上げましたこれらの法令における事前の調整をフルに活用していけば、かなりの効果が期待できるのではないかと思うわけです。しかし、都市化の内容によりましては調整機能が各種の法令にまたがっておりまして、統一的に規制されておりませんので、これに対応する土地改良区では十分に活用できないのではないか。  そこで、今後農村地域におきます混住化に対応していくためには、他の法令との関連も含めて統一的な指導を行っていくべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  93. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、土地改良区の担当しております業務と他の都市計画手法による開発業務その他との調整規定は、例えば都市計画法の、御指摘のありました三十二条を初めといたしまして調整規定があるわけでございます。私ども、御指摘のように、やはりこの種の都市化への里程にある開発行為が行われます場合、従来の農業用水、用排水を管理しております土地改良区との間には、事前の協議とかあるいは調整の手法を重ねることは有効であるとして、この手法の活用については、やはり本省あるいは県を通じまして、都市計画等の担当部局と農林部局との間の調整を重ねると同時に、こういった法令手続が有効に作動するように統一的な指導を行いたいと思います。  しかし、こういった協議や調整というのは、いわば事前の計画に基づく事前の調整でございまして、結果として現に起こっている問題をどうするかということになると、それ自体解決のしようがないわけでございます。やはり現実に起こっている問題は、先ほども申し上げましたように、潅水の問題とか水質の汚濁の問題とか、事故による管理責任の増大とか、こういった問題があるわけでございます。そういった問題を片づけるためには、やはり土地改良区が管理責任者としていわば地域全体の立場を代表する市町村長の皆さんと十分協議して、合理的な管理方法や負担区分を決めていくということは大事だろうと思いますが、なかなかこれだけでは開発立場とかあるいは新しい団地住民の立場への配慮等もありまして、作動しない点がある。そういう意味で私ども今回知事裁定の制度を設けたわけでございます。しかし、これは御指摘のように、法律制度を設けただけで動くものではございません。手続、実質にわたって極力適正な指導方針を速やかにまとめまして、強力な指導をあわせて実施させていただきたいと思っております。
  94. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは全国的な例だと思うのですが、昭和四十年代に至ってから、農村地域は急速に都市化、混住化が進展をいたしまして、これは私の選挙区ですが、三、四カ所農村地域に住宅がずっと建ってきまして、大変困っているというので調査をしてきたのですが、農業用の用水路や排水路等の施設にごみが投棄されている、あるいは家庭雑排水等が無制限に入ってきている。これがまたヘドロ状態で堆積しておりまして、施設の機能の低下、水質汚濁等による営農被害が発生しておるわけです。これは当然だと思うのです。地域住民がその地域に接近したということ等から、用排水路、ため池等への幼児の転落事故等が、北海道でも起きているし、また本州でも起きているというふうに私は聞いておるわけですが、こういうことで幼児が用水路に転落し、死亡するということはあってはならないことなんですね。これは全国的にどういう事態になっているか、お聞かせをいただきたい。
  95. 森実孝郎

    森実政府委員 先般、実は都道府県を通じまして五十四年度から五十八年度までの五年間の土地改良区が管理しております農業用排水路への墜落事故、転落事故について調査いたしましたところ、ため池、水路を通じまして転落事故は、全国で五年間で約四百八十件ございます。この事故による死亡者も四百二十人に達しております。
  96. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 全国的に大変大きな死亡事故が起きている、こういうことから、何とかこういうものを防止をというので、土地改良区におきましては従来に比べてフェンスだとかさくだとか、安全施設の設置をしたり、あるいはヘドロ、ごみ等の除去と、維持管理費が過大になっているわけですね。これが土地改良区の運営の中に非常に大きなネックになっておる。こういうことが土地改良区の運営に大きな影響を与えているわけでございますが、これに対してどう対応しようとされているのか、伺いたい。
  97. 森実孝郎

    森実政府委員 原因者が特定しているトラブルと、それから原因者が特定しないトラブルとがあるわけでございます。例えば水質の障害を起こす場合に、特定工場の排水で水質汚濁を生じているという場合については、土地改良法上差しとめ請求制度もございますし、また、それを足がかりにいたしまして解決の方途もあるわけでございます。しかし、例えば今御指摘のありましたように、家庭雑排水とかじんかいとか、あるいは幼児の転落事故の責任を回避するために安全施設に投資しなければならないという問題になってくると、いわば原因者なり何なりを特定して問題を解決することができない。やはり地域住民全体の立場を代表して、土地改良区が市町村長さんたちと話し合って問題の解決を図り、管理方法を変えていく。例えば市町村に管理を移管するとか、あるいは合理的な一定の費用負担をしていただくという形が現実的だろうと思います。  そういう意味で、私ども、先ほども申し上げましたように、四十七年の法改正で協議制を設けましたが、実は市町村長さんたちには市町村長さんたちの立場もあって、なかなかうまく解決ができない。そこで、私どもといたしましては、包括的な行政上の人格を持っておられる知事に裁定をゆだね、いわばこの知事裁定制度の導入を担保として、手続面、実質面において統一的な指導基準を定めて問題の処理に当たる以外になかろうということで、今回の法律改正をお願いしているわけでございます。もちろん、こういった問題を解決するためには、例えば用排水事業の分離を推進するとか、あるいは水質障害対策事業を強化するというふうな改良面の努力も要ると思いますが、基本的には、そういう社会的な仕組みの中でとらえていくことに重点を置いて問題の解決を図っていかなければならないだろうと思っております。
  98. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 特に水質の汚濁が著しい地域におきましては、国の補助によりまして都道府県が水質障害対策事業を実施しているわけでありますが、今回の法改正に伴いまして、この問題についてどう指導を行うのか、伺いたいと思うのです。
  99. 森実孝郎

    森実政府委員 特に水質汚濁の問題につきましては、水質障害対策事業あるいは集落排水事業等を通じて物理的に条件の改善を図っていくということも必要でございますが、基本的には、農業用排水路の今御指摘のありました水質汚濁の問題は、先ほども申し上げましたように、やはり各種の法的制度、社会的仕組みを通じて調整をもって片づけていかなければならないと思います。  まず一つは、今回の法改正にもかかわる問題でございますが、原因者が不明な水質汚濁等の問題の処理に当たっては、管理の責任とか管理費用の分担等を市町村協議を通じて片づけていく。それについては、知事裁定制度の導入をいわば担保措置としてこれを行政運営で強化していく。  それからもう一つは、原因者が明確な場合につきましては、管理規程の制定、差しとめ請求制度の活用を図っていくというような措置を講じていかなければならないと思っております。  また、これ以外に、先ほども指摘がありましたように、予防的措置として、都市的な開発行為との事前の調整ということについては、この際御指摘も頭に置きまして、十分その周知徹底を図るよう指導していく必要があると思っております。
  100. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 土地改良区の事故の問題ですが、管理責任を問われて損害賠償事件が発生しているのが随分あると思うわけですが、組合員の賦課金で運営されている土地改良区が賠償金を払うということは大変なことで、組合員の負担が過重になるわけでございますが、この損害賠償に問われる場合の対策といたしまして、農業用用排水路施設賠償責任保険に加入している。これは随分徹底をされているようでございますが、事故防止対策のための事業というのもまた強化をしていかなければならないと思うわけでございますが、この事故防止対策のための事業の拡大について今後どう対応されていくのか、伺いたいと思います。
  101. 森実孝郎

    森実政府委員 地域の実情等によって画一的に論ぜられない点もあると思いますが、基本的には、安全施設の整備、それから損害保険への加入、それから巡視点検啓蒙等の強化、それから関係機関との連絡調整の強化、特に定期的な協議という問題を行政的には指導しているわけでございます。  また、費用の増高の問題をどう考えるかという問題につきましては、私先ほども申し上げましたように、そういった追加的な負担なり何なりというものが一般の、いわばニューカマーである都市住民の安全のために必要な要素がかなりあるわけでございまして、そういったもののいわば投資負担というものをどうするかという問題については、一定の条件のもとでは、やはり土地改良区と市町村の協議の対象になるし、また知事さんの裁定制度の対象にもなるというふうに理解すべきものと思っております。
  102. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 国営事業等で造成された土地改良施設を、土地改良法の定めによりまして、国、都道府県が土地改良区に管理を委託している場合の管理責任に対する賠償金については、国家賠償法によりまして、土地改良区は委託者である国、都道府県に対して請求権を有するわけでございますからそれでいいとして、土地改良区が支払う賠償金を国、都道府県が負担することはできないのか。これは非常に大きな問題になっておりまして、国から委託をされておるわけでございますから、その管理責任が土地改良区にあっても、これは土地改良区が負担するということは非常に厳しいのではないか、当然賠償金を国、都道府県が負担すべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  103. 森実孝郎

    森実政府委員 国家賠償法の求償権の問題あるいは賠償責任の問題というのは、やはり事案に即し、民事的な判断のもとに決せられるべきもので、ちょっと一律に言いかねる点はあるだろうと思います。  ただ、極めて一般論として申し上げるならば、被害者は、管理主体である土地改良区にも賠償請求を行うことができますし、また、所有者である国とか県に賠償請求を行うことができるものと解すのが通説ではないかと思います。  そこで、土地改良区が支払った場合、求償権を有するかどうかということについてでございますが、これは、施設の所有者である国、県と、それから管理を委託されております土地改良区との間の委託契約の内容あるいは施設の種類等によって一概に決せられないとは思いますけれども、多くの場合、やはり土地改良区が国や県に求償権を有する場合があるのではなかろうかと思います。冒頭申し上げましたように、これは高度の民事法的判断に属する問題でございますので、契約の内容とか状況によって具体的に判断はしていかなければならないと思います。
  104. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次に、市町村協議制度の拡充に関連してお尋ねをいたしますが、この制度は、都市化の進展に伴いまして農業利用と都市的利用との競合が増大をしてきた、そのために、農外利用との円滑な調整を図る目的昭和四十七年の法改正において設けられたわけでございますね。今回この制度を拡充して、協議が不調の際には都道府県知事の裁定を求めることができることとしております。また、協議制度の一層の実効性を確保しようとするものであろうと思われますが、しかし、土地改良区がみずから協議または知事に対する裁定申請を行うためには、農業用用排水路の水質汚濁による被害の程度、農外利用等の実態を把握し、計数化をしなければならぬわけでございますね。このデータの収集だとか分析等の専門的調査については、現在の財政力の乏しい土地改良区ではなかなか対応しがたいのではないか、こう考えるわけでございます。  そこで、今後土地改良区に現在の厳しい農業情勢に対応できるような強化育成対策を講ずべきだと思うわけですが、いかがでしょうか。
  105. 森実孝郎

    森実政府委員 市町村協議を行う際に、必ずしも必要なデータの計量化は要しないものと私は思います。事柄によるだろうと思います。ただ、当然これは現状が都市化に伴って改悪されたと申しますか、非常に悪化したということを原因として協議が行われるわけでございますから、既存の状態と現状との比較のデータは必要だと思いますが、すべて計量的なものとして継続的観測によらなければならないという性格のものではないだろうと思います。  これはなかなか難しい問題でございますが、実は現実に都市化が進んでおります土地改良区では、皆さんそれなりにいろいろ都市的な部門との接触を持っておられまして、今までもいろいろな調査なりあるいは折衝を続けてきておられるわけでございます。これからもこういう事態があるわけでございますから、ただいまの御指摘の点も頭に置きまして、そういった問題を必要とする土地改良区においてどういうふうな準備行動が事前に要るかという点については、必要な指導を行うということについてはひとつ検討させていただきたいと思います。
  106. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 局長、これは地方自治体もいろいろございまして、財政上潤沢なところもあるし、厳しいところもある、またなかなか御理解いただけない地方自治体もありまして、千差万別である。人口がずっと混住化になってきた、財政的な面もありましてそれに対応できない。一方では、土地改良区としてはそれは維持していかなければならぬということで、協議をして円満にいくように望みますが、なかなかそうでないところも私はあると思うのですね。その点、問題点としてひとつ御検討いただきたいと思うのです。  そこで、市町村協議に関する知事の裁定の問題ですが、今回の法改正では、市町村と土地改良区が協議を行いまして、協議が調わない場合、知事に農業用用排水路の管理方法、費用分担等について裁定を求めることができることとされているわけでございますね。裁定の前段といたしまして、これは調停によりまして問題解決を図ることが一番妥当、一番適切だと私は思いますが、なかなか軌道に乗らないという場合もあると思いますので、学識経験者等によりまして第三者の機関を設けてはどうか、第三者機関が必要ではないかと思うのですね。そうすれば、すんなり公平な裁定と申しますか、それで知事も大変助かるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  107. 森実孝郎

    森実政府委員 一つのお考えだろうと思います。斎藤委員指摘のように、知事裁定制度が発動されて問題が片づくのではなくて、知事裁定制度がいわば担保措置になって、その前に一つの行政運営についての指導が行われていく、問題が解決していくということがまず基本にあると私は思います。そういう知事裁定自体に当たっても、あるいは知事裁定の前の段階で片づけていくという過程においても、こういった問題は第三者の学識経験者による判断なり分析というものを必要とする、またそのことが有効に関係者を納得させる、そういう場合は少なくないだろうと思います。  そこで、当然裁定の前には都道府県の仲介、あっせん、調停等があるわけでございますし、あるいはそういった事前指導があるわけでございますから、この過程において第三者による機関を設けて解決することが適当なものについては評価していっていいと私どもは思います。今御指摘の点は、実はこの知事裁定を前提にしました問題解決のための手続なり実質的な判断基準をある程度国としても統一的に示していかなければならない、そういう手続の世界の分野の問題としてひとつ必要があればということで、画一的に私は必要はないと思います。それも一つの知恵であることを有効に自治体にアドバイスすることも研究させていただきたいと思います。
  108. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは、調停が調わない場合、正直言って知事が全部知っているわけじゃないですね。だから、なお円満に知事の裁定がいくように、そういう機関があった方がいいのではないかということで御提案申し上げているわけですから、御検討いただきたい。  そこで、協議会の問題でございますが、この都道府県知事の行う裁定について、農業用用排水施設の新設等を行うものと水を農業上合理的に利用するための協議が不調の際には知事の裁定を求めることができるという制度は、昭和二十四年の土地改良法制定当時からあるわけでございますが、今回の法改正では農外利用との調整についても知事の裁定制度を導入することとなっているわけでございます。しかしながら、今後この制度を有効に活用していくためには、この裁定の拘束力といいますか、あるいは法律的な効果といったものはどのようなものか、これを明らかにしておく必要があると思うのですが、この点伺いたいと思うのです。
  109. 森実孝郎

    森実政府委員 知事とか大臣等の裁定制度というのは、各種の立法例で幾つかございます。この場合、直接裁定に形成力を付与している場合と、あるいは今回の法制のように、当事者間の協議を裁定して当事者間に裁定した内容に従って契約を締結する義務を負わせるものとあると思います。この法制はいわば市町村と土地改良区の協議不調のときの裁定制度でございまして、知事の裁定された内容に従って両当事者が協定を締結する義務を負うものと解すべきであろうと思います。しかし、その義務がある以上は当然最終的には裁判を通じて担保されるわけでございまして、その意味では有効な担保措置として作動すると思います。
  110. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 知事が行う裁定が当事者、つまり土地改良区とその協議の相手である市町村とでありますが、これらに対して拘束力を持つものであれば、知事の裁定に不満のある人は、これは当事者ですね、行政不服審査法によって不服申し立てができることが考えられるわけでございますが、これらの取り扱いについてはどうお考えですか。
  111. 森実孝郎

    森実政府委員 この知事裁定に対しては、行政不服審査法による異議手続が認められるものと解しております。
  112. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次に、土地改良区が農業集落排水施設整備事業を実施できる旨の改正についてお尋ねいたします。  この集落排水と申しますのは、家庭から排出される汚水等を排除処理するためのものでございまして、住民の生活に欠くことのできない公共的な性格の強いものでございます。また、地方自治法に定めております市町村の処理すべき事務の中にもこの施設の設置管理が挙げられているわけでございます。このことから、第一義的には市町村の負担で行うべきではないか、こう私は思うわけでございます。一方、土地改良区は土地改良事業を行う目的で、事業によって利益を受ける農業者で組織する団体でございまして、土地改良事業の施行並びに団体の運営に要する経費は受益者たる組合員の負担によって賄われているわけでございます。  ところで、今回の法改正におきましては、昭和五十八年にできた事業として農業集落排水施設整備事業、これは農村地域におきます家庭雑排水、水洗便所からのし尿、畜産排水その他農畜産物の洗浄排水等の、農村地域一般の汚水等を処理する施設を設置するものでありますが、この事業を土地改良区が実施できることとする意図はどういうことか、ちょっと私はわからないのです。この事業に要する経費を土地改良区の組合員が負担することに若干疑問があるのでございまして、県、市町村等が相当部分を負担すべきものでないかと私は考えるわけでございますが、この点御見解いかがですか。
  113. 森実孝郎

    森実政府委員 まず最初に集落排水、つまり水洗化を進めながらこれに対応した必要なパイプラインの設置なりあるいは汚水処理施設をつくっていくという問題、この事業自体は、基本的にはただいま斎藤委員指摘のように自治体営の事業として実施するのが本筋だろうと私は思います。今回の改正は、いわば本来土地改良区が行うというふうな事業として構成しておりません。むしろ農業用用排水路の水質を保全する視点から一定の範囲で行うことができるという権限を付与したものでありまして、今後とも集落排水事業は主力は市町村営の事業で行われる、特に農村地域におきましては農林省が実施しております集落排水の予算補助の仕事として行われることになると私は思いますが、例外的に土地改良区が行われる手続や権限を明確にしたことはそれなりに意味があるものと思っております。  この議論につきましては、何か法制化したことによって一部に誤解もあるようでございますが、私どもの運営は、基本的には予算補助の制度が、市町村営の事業が基本にあって、しかし例外的に行われる場合の手続を決めているということでございます。土地改良区が行います場合につきましても、市町村営ではないが一定の公的負担を市町村が持ってくださる場合もあるわけで、そういった処理が適切な地域も実は市町村によってあるわけでございますから、こういう手続で道を開くこと自体は御了解を賜りたいと思うわけでございます。
  114. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次に、土地改良区の管理する施設の更新事業については、従来、土地改良法の規定によりますと受益者の三分の二以上の同意を得て実施をいたしておりますが、今回の改正では、機能の維持を図ることを目的として、組合員の権利または利益を侵害するおそれがない場合の更新事業については個別同意が簡素化されて不要となる、総会、総代会の重要議決によって事業を申請することになるわけでございますが、このことが組合員の個々の意見を阻害することにならないのかどうか、特に組合員個々の事業費の負担等に後々問題が生じないのかどうか、トラブルが起きないのかどうか心配するわけですが、この点いかがですか。
  115. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま御指摘のように、「組合員の権利又は利益を侵害するおそれがないことが明らかなものとして政令で定める」場合と法律は規定しております。政令における内容としましては、事業区域や管理方法に大きな変更がない、つまり実質的に管理事業と同質のものである、それから事業費負担も合理的なものである、例えば施設の更新による毎年の管理費の節減分と施設の償却額と比較してどちらが大きいかというような基準、そういったことを頭に置きまして運営を指導していきたいと思っておりますし、また、個別同意の徴集手続を省略いたしましても総会の重要議決としておりますし、また知事の認可や異議申し立て手続にかかわらしめておりますので、関係権利者の利益の保護に欠けることはないと思っておりますが、私もそういう実質的な判断は大事だろうと思っておりますので、十分慎重な行政運営を図れるよう指導してまいりたいと思っております。
  116. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 土地改良事業の更新事業及びその関連事業につきましては、土地改良区がみずから国または都道府県に対して事業の施行申請をすることになっているわけでございますが、土地改良区は土地改良事業推進の中核をなす団体でございますし、土地改良区の運営並びに範囲が限られておりましてなかなか私は難しいと思うのですが、ぜひひとつ御検討いただきたい問題があるわけでございます。今後の土地改良事業を進める上に当たりまして、施設の更新事業以外の新規事業、従来制度化されている施設改修補助事業でございますが、これらについても土地改良区の申請の道を開く考えがあってもよいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  117. 森実孝郎

    森実政府委員 新しく国・県営事業を取り上げる場合に土地改良区の申請方式をとったらどうかということは、私は一つの御意見だろうと思います。いろいろこれからも検討してみたいと思いますが、実は今回改正をお願いしておりますのは、耐用年数が到来した場合は、施設の更新は機能の保持を図る上で不可欠なものでございますし、この意味では土地改良区の本来設立目的である施設の管理事業とは一体的な関係がある、そういう意味から、これについては土地改良区の申請方式の道を開いたということでございます。したがって、施設の更新事業以外の事業につきましても一体となって効果を生ずるとかあるいはその効果を増幅させるとか、土地改良施設の管理自体と密接な有機的関連を有する事業に限定しているわけでございます。  これをこういう限定的なものではなくて、幅の広い、かなり巨額の投資を要する事業にまで広げるかどうかいろいろ議論があると思いますが、確かに手続の合理化という視点に着目すれば一つの御意見だろうと思います。今後の課題としてひとつ検討させていただきたいと思います。
  118. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今回の法改正によりまして、都市化の進展等に伴いまして脆弱化した土地改良区の機能強化を図るために、農業用用排水路の管理等に関しての市町村協議制度の拡充、農業用集落排水事業を土地改良区が実施できることの法制化、土地改良施設更新事業等の同意手続の簡素化、土地改良区総代会設置要件の緩和等の施策が盛り込まれているわけでございまして、新たな役割を付与していく方向に見受けられますが、今後土地改良区の運営強化についてどのような対策を考えているのか、伺いたいと思うわけでございます。  先ほど来私が御指摘を申し上げましたように、土地改良区の運営については非常に厳しい状況下にあるわけでございますので、例えば施設管理に併う土地改良区の負担の軽減だとか、あるいは施設の耐用年数保全のための従来から制度化されております適正化事業への特別指導事業の拡充強化だとか、何らかの土地改良区の運営強化について希望の持てるような施策を講じてもよいのではないかと思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  119. 山村新治郎

    山村国務大臣 農地、また農業用用排水路、これらはただ単に農業生産のための基盤だけではございませんで、国土の保全水資源の涵養、また自然の保護、これらの公的な面も有しておりますし、またある面では農業地域の自然、そして生活と密接な関係を有する地域資源ということでもあるわけでございます。そしてまた、この土地改良区は旧来からその管理主体として重要な役目を担っております。近年の混住化等の農村社会情勢の変化の中で、こうした土地水資源を適正に維持、確保していくために、農業基盤整備事業の積極的推進と土地改良区の管理機能の強化が強く求められております。  このために、何よりもまず土地改良区の運営基盤の強化、非農業部門との利用調整法の充実を図ることが緊急でありまして、今回の法改正により農業用用排水路の管理に当たりましても知事の裁定制度の導入、これらを図るほか、各般の施策の充実を図っていく必要があると感じております。したがいまして、今後とも土地改良区の合併の助長等による体質の強化また施設管理面での技術力の充実等を図るとともに、今回の法改正とあわせて利用調整手法の拡充のための運用指針を作成いたしまして、指導の強化に努めてまいる考えでございます。
  120. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、この土地改良区の与えられた使命は大きな問題を抱えているわけでございますので、ぜひひとつ土地改良区の運営強化について今後とも御尽力いただきたい、御要望申し上げておきます。  さて、今回の法改正におきまして、いろいろな面で制度の改革が図られておりますので、新しい時代の要請にこたえたものとして、私、一応は評価をいたします。  今回の改正に盛り込まれなかった中にも、制度の改善、ぜひ改革をしていただきたいという事項が幾つかあるわけでございますが、その中で特に農業者の負担軽減の措置についてでございますが、御承知のように北海道におきましては農産物の価格が低迷しておりますし、水田利用再編対策にかかわる転作が長期化しております。農業経営は年々厳しさを増しておりまして、三年連続の冷害等北海道は大変厳しい状況にあるわけでございます。昨年は北海道で千五百三十一億円に上る冷害をこうむったところでありまして、農業者はその対応に苦慮しておる現状でございます。  最近、農家経営が好転する兆しがないこの時点におきまして、農業者の負担軽減を図るための措置として、現行制度のもとではまず国営事業負担金、農林漁業金融公庫資金の償還条件の緩和、これらの施策を積極的に進めていく必要があると考えるわけでございますので、この問題について農林省のお考えをぜひ伺いたいと思うのです。
  121. 森実孝郎

    森実政府委員 災害の続発とか農産物価格の低迷から、幾つかの地区において国営事業、公団営事業の償還期間の延長であるとか補助事業の融資の償還条件の延長の問題等が要望されておることは事実でございます。非常に財政事情が厳しい時期でございますが、五十九年度の予算編成に当たりましても、実は私どもこの問題の予算要求は行い、種々折衝を重ねたわけでございますが、何と申しましても土地改良事業自体の国に対する償還条件あるいは公庫資金の償還条件等は最も有利な体系として仕組まれておりますし、私が申すまでもない財政事情あるいは財政資金のやりくりの事情等がございまして、なかなか問題は解決できなかったということは事実でございます。  ただ、公団営事業の一部につきまして早期償還がかなり行われているところもございますので、そういうところについては後年度に実質的な措置効果を持たせるような運用の改善は一部図っていきたいと思います。  なお、公庫資金につきましては、これは従来からも災害等による場合については個別に償還の猶予措置を講じておりまして、これはかなりの実績も上げておりますので、この条件緩和の問題についてはできるだけ地元の要望を取り入れて現実的な処理に当たっていきたいと思います。  いずれにせよ、今の財政事情のもとで非常に難しい問題でありますが、今後とも重要な検討課題として引き続き検討させていただきたいと思うわけでございます。
  122. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思うのです。  次に、農業者負担軽減に関連いたしまして、国営事業の長期化の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  最近、国営事業につきましては、国の財政事情の悪化等から公共事業の行く末が厳しくなり、しかも経済が低迷しているにもかかわらず資材、人件費等が年々上昇する中で、工事が非常に長期化している傾向にあるわけでございます。国営事業の工期の長期化、これは事業費の増高にもつながっておりますし、受益農業者は事業の早期完成や負担の軽減を求めているわけでございます。この問題に対処するための国の方針は、新規事業を極力抑制して継続地区に予算を重点配分するということを聞いているわけでございますが、国営事業の短縮はぜひ積極的に進めていっていただきたいと思うのですが、この国営事業の長期化についてどう取り組んでいくのか、伺いたい。
  123. 森実孝郎

    森実政府委員 土地改良事業一般を通じまして、公共事業の伸び悩みないしは圧縮のもとで工期の長期化という問題は、私どもも最も頭の痛い問題でございます。いろいろ御不満もありましたが、そういったことを頭に置きまして、五十七年度以降新規の着工地区数、正確に言うと着工事業量というものを大幅に抑制して、できるだけ継続事業の推進を図るということにしましたのも、また、部分効果の発生を通じて受益者の皆さんにできるだけ事業の効果を享受していただくように配慮しているのも、そういう点でございます。  私ども、公共事業の中でどうやって土地改良事業の予算を確保していくかということが基本にあることは事実でございますが、また、事業の実施も大変重要になるわけでございまして、地域の自然的、経済的条件に応じた基準の弾力化、あるいは構造物の設計についての創意工夫を生かす努力、あるいは工事施行に当たっても地元の特殊性を生かす等のことを考えまして、事業の効率化を通ずる工期の短縮ということについても並行して努力してまいりたいと思っております。
  124. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 特に最近の農業事情は米作地帯におきましては非常に厳しい状況にあるわけでございまして、都府県におきます二〇%前後の転作率と異なりまして、北海道では四四%にも及ぶ大幅な転作を余儀なくされているわけでございます。特に水田利用再編第三期対策の推進によります転作の定着化に加えて、都市化の影響等によりまして水田面積が減少してしまいましたし、近い将来においても水管理組織としての土地改良区運営はさらに厳しくなると懸念をされておるわけでございます。今後土地改良区の健全な運営を図るためには、土地改良区及び組合員の自助努力は当然でございますが、現在の農業情勢下におきましてもこれに耐えるために、水あるいは土地管理組織としての土地改良区の体質の改善を図る必要があると考えるわけでございます、現在、適正化事業、特別指導事業が行われておりまして、農家負担の軽減は図られておりますが、今後さらに水及び土地改良施設の多目的利用など弾力的な対応方策を検討すべきではないか。特に多目的利用などの弾力的な対策を十分検討していただきたいと思うわけでございますが、何しろ土地改良区の運営あるいは組織が十二分に機能が発揮されなければならないわけでございますので、土地改良区の運営基盤の抜本的強化を具体的にどう図っていくのか、お伺いしたいと思うのです。
  125. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほど大臣からも申し上げましたように、土地改良区の合併助長等による体質の強化、施設管理面での技術力の充実、さらに、新しい都市的な需要との対抗におけるいわゆる水利用等についての調整手法の改善とそのための指導の強化等を特に当面重点に置いて当たりたいと思いますが、同時に、ただいま委員指摘のように、今後の農政の展開方法なり土地改良区並びに土地改良事業あるいは土地改良施設をめぐる地域社会の変化に対応いたしまして、新しい役割を土地改良区が生き生きと担当することができるように、我々もよく検討し、また関連する自治体についても必要な指導を行ってまいりたいと思います。
  126. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 多目的利用の具体例といたしまして、農業用水施設はかんがい期が終了すればその目的は一応達成されるわけですね。用水を流入する施設があるわけでございますから、例えば防火用水あるいは小発電というように有効利用することによって土地改良区の財務強化につながるのではないかというふうに考えるわけでございますが、ひとつ御検討いただきたいと思うのでございますが、いかがでしょうか。
  127. 森実孝郎

    森実政府委員 小水力発電への活用という問題については、時宜に適したこととして一昨年来所要の融資措置を講ずる等援助を講じているところでございます。  防火用水その他への転用という問題も確かにあると思います。やはり地域の実情なり施設の実態に応じて具体的な対応なりを考えていく、アイデアを出していただいてそれを処理していくということが大事だろうと思います。できるだけ御指摘の点も頭に置きまして、現実的な対応を指導してまいりたいと思います。
  128. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今回の法改正では、確かに身近な問題を解決しようとする意図が十分理解できるわけでございますが、長期的な展望に立って今後の我が国農業考えた場合に、将来の世界的な食糧需給について楽観が許されないこと等から、資源の有効利用を基調に効果的な農業生産を展開しなければならないと思うわけでございまして、食糧自給力の維持強化を図っていくことが肝要でございます。  そのためにも農業基盤の整備が不可欠でございますので、この円満な推進を図るためには、農業事情の変化に対応するように随時機動的に法改正をしていくべきだと私は考えるわけでございます。つきましては、政府におきましても今後とも積極的に取り組んでいかれることを要望いたしまして、時間が参りましたので私の質問を終わらせていただきます。
  129. 阿部文男

    阿部委員長 神田厚君。
  130. 神田厚

    ○神田委員 まず最初に、農政全般につきまして御質問を申し上げます。  高度成長経済から低成長経済へ移行しました今日、産業としての農業の位置づけや地域社会における農村の役割も当然変化し、これに伴いまして農政のあり方につきましても抜本的な改革が必要と思われますが、政府はどのように対処しておられるのか。
  131. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国農業を取り巻く内外の情勢、まことに厳しいものがございます。農産物需給の緩和、そしてまた行財政改革からまいります効率的な農業の展開、そしてまた外国からは市場開放の要求、このような中にありまして、今後の農政の展開に当たりましては、このような厳しい情勢に対処するために、生産性を高めながら国内で生産可能な農産物は極力国内生産で賄うという基本姿勢でやってまいりたいと思います。  また、中核農家経営規模の拡大、優良農地確保等、農業基盤の整備、そして農業技術の開発と普及、また村のすべての住民に就業と生きがいの場を与える豊かな村づくりの推進、これら各般の施策を推進することによりまして我が国農業の体質を強化して国際競争力の向上を図るとともに、農業者が夢と意欲を持って取り組んでいけるような農業の展開というものを図っていきたいというぐあいに考えます。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕
  132. 神田厚

    ○神田委員 ただいま答弁にもありましたように、最近の農業を取り巻く状況は非常に厳しいものがあります。農畜産物価格の低迷、食糧自給率の低下、土地利用型農業における規模拡大の停滞、海外からの強い市場開放の要請、厳しい財政事情、以上のような状況の中で、今後の農政の基本につきまして政府は従来から構造政策を中心にこれを実施する、こういうことを述べているわけでありますが、構造政策の推進によりまして将来展望が開けるような条件が一体整っているのかどうか、具体的に示されたいと思うのであります。
  133. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいま申しましたように、今日の農業を取り巻く情勢の厳しいことにかんがみまして、今後の農政の推進に当たりましては、今先生がおっしゃいましたような構造政策、これを積極的に推進することによりまして土地利用型農業のいわゆる生産性の向上を図りながら、農業生産の再編成を進めながら、我が国農業の体質強化を図ってまいるということが必要であると考えております。  特に最近におきましては、経営規模別の生産性の格差の拡大、そしてまた跡取りのない高齢農家の増加、これらのいわゆる構造政策を進めるための条件が成熟してきておるというぐあいにも見ております。このために地域農業集団の育成を図り、農用地の流動化と中核農家への利用集積等を進めることによりまして土地利用型農業において規模拡大が進み、そして農政審議会の報告にもありましたように、生産性の高い経営により農業生産の相当割合が担われる農業構造を実現してまいりたいと考えております。
  134. 神田厚

    ○神田委員 心配しますのは、将来展望がないままに構造政策を強調する、こういうことになりますれば、安上がり農政、こういう批判につながっていくことになりますし、関係者の農政に対する不信にもつながっていくわけでありまして、構造政策を推進するというその前提におきましては、当然生産政策、さらには価格政策等々の問題についてもこれと関連して考えていかなければならない、こういうように思いますが、いかがでありますか。
  135. 森実孝郎

    森実政府委員 構造政策のねらいとするところは、足腰の強い、規模の大きい、生産性の高い農業の経営単位をできるだけ日本の全国の地域において育成していく、それが農業生産の相当部分を担えるような条件をつくっていくということだろうと思います。  この問題はやはり短期的なものではできませんで、一つの目標、例えば今日の状況で申し上げますと長期見通し考えたような土地利用型農業の中核農家の戸数なり規模というものを目標に置いて進めていくことが重要であろうと思っております。当然、構造政策といっても、生産政策並びに価格政策と相互にその三者を連携して考えていかなければならないと思います。価格政策一つ考える場合においても、商品の需給事情と、それからもう一つは生産費の動向が問題になりますし、その生産費の動向を規定するのは構造政策の成果がどこまで上がってくるかということに関連してくると思います。また、生産政策考える場合においても、今日のようなある意味では食糧需給が飽和状態にある社会においては、コストをどれだけ安くして作物をつくることができるかという形で一般国民の理解と納得が得られていくわけでございますので、構造政策の成果を踏まえた効率の高い生産を頭に置いた生産目標であり、あるいは作付でなければならないと思うわけでございます。  私ども、今日の状況では構造政策に重点を置かなければならないと判断しております事情は、いわば従来と違って日本人の胃袋が飽和状態になってきている、むしろ商品によっては需給が非常に軟化している、それからもう一つは、所得の伸びも大きくない、国際的な関係もたくさん出てきている、そういう意味においては、コストの安い農作物をつくれる農業を特に土地利用型農業においてつくっていかなければならない、そうしなければ問題は解決しない、今までのように消費者とか財政に負担を持っていくような生産刺激的な価格政策では問題の処理は図れないという認識に達しているわけでございます。しかし、もちろんただいま神田委員御指導のように三つの政策は相互に連関を持たせながら展開を図っていくことは言うまでもないわけでございます。
  136. 神田厚

    ○神田委員 今回の改正は構造政策の推進を図る一環として提出をされたというふうに聞いているわけでありますが、それでは構造政策全体の中ではどのような位置づけになるのでありましょうか。
  137. 森実孝郎

    森実政府委員 今回の村づくりを標擁した二つの法律改正は、一つは構造政策の深化、徹底を図るために必要であるという構造政策上の認識と、二十一世紀を展望しまして今日の時代にふさわしい新しい定住社会として村づくりを考えていく必要と、二つのことを考えているわけでございます。  ただ、私ども政策認識としては、その二つのことが同時並行的に進められなければならないという考えに立っております。言うまでもなく、構造政策考える場合、重要な要素の一つ土地の問題であり、その規模拡大と面的集積だろうと思います。今日の状況のもとでは、地域農業集団の育成等を通じ、作目と地域状況に応じた集団的土地利用調整を進めることが基本にあると私ども思いますが、このためにはやはり中核農家、兼業農家を含めた連帯を確保し、良好なコミュニティーをつくっていくという努力がどうしてもなければうまくいかない。そういった点から、いわば就業問題、生活環境の整備の問題、新しい、農家と非農家、あるいは農家の中でも中核農家といわゆる通勤的な兼業農家を含めたコミュニティーづくりの仕組み等を用意いたしまして、構造政策の深化、徹底を図るという視点も重視いたしまして今回の法制を提出さしていただいたわけでございます。
  138. 神田厚

    ○神田委員 最近、政府は構造政策の目玉として地域農業集団の育成を強く打ち出しているわけでありますが、地域農業集団の機能として具体的に何を期待しているのか。あるいは、従来の構造政策の基本は自立経営農家の育成または中核農家の育成に置かれていたわけでありますが、これら個別農家の育成が地域農業集団の中でどのように行われるのか。さらには、兼業農家の位置づけは一体どういうふうにするのか。以上、お伺いしておきます。
  139. 森実孝郎

    森実政府委員 地域農業集団の育成というのは、土地利用調整に関するこの十年間の行政の沿革を踏まえて打ち出した制度でございます。そのねらいとするところは、最終的には面的集積と利用権の集積による規模拡大を中核農家に図っていくことが最終のゴールであるとしても、やはりそれぞれの作目や地域の実情において実態が違う。できるだけ地権者とそれから耕作の中心になる中核的担い手や高能率生産組織が集まって土地利用調整をやっていく必要がある。その土地利用調整の内容も、いわば規模拡大に直結する利用権の設定とか作業の受委託というふうなことだけではなくて、例えば大型機械の共同作業の問題とか地方の維持増進のための土地利用交換の問題とか裏作導入とか里山の開発等による利用効率の向上という、それぞれの地域と作目の実態に即した取り組みを進め、その取り組みが最終的に包括的なものとなり、利用の面的集積と規模拡大につながるというふうな認識のもとに進めているわけでございます。  これの中で私どもは中核農家をどう考えるかということでございますが、当然そういった受け手としての中核農家というものがなければならないし、また、そこへの利用なり利用権の集積が最終ゴールになるわけでございまして、これは重視していかなければならぬ。ただ、その場合、出し手の方は、例えば八反歩の土地がある場合、三反歩なり二反歩出していくという通勤兼業農家の皆さんの立場を仮に出し手と考えれば、その出し手の立場はやはり地縁的な結合で考えていく必要があるであろうけれども、受け手の方は、地域の実情で当該集落に適切な人が存在しない場合もあるわけでございまして、そういう意味において個人または高能率生産組織の受け手をかなり広範に参集を求めることを考えているわけでございます。  そこで、兼業農家をどう考えるかという問題でございますが、私ども、兼業農家の方々にもやはり農村地域社会の定住者として、また農業生産への参加者としてどうやって参加感覚を持っていただくかが非常に大事な問題だろうと思います。狭い意味での構造政策という視点からだけ申しますならば、いわば自分が保持している耕地を、安定した兼業機会を持っている方は、労働力の事情もあってその半分なり三分の二を中核農家利用提供していくという出し手という側面と、それから高能率生産組織への参加者として一定の職務を分担する場合とがあるわけでございますが、私どもは、そういったいわば農業生産自体への関与の仕方以外に、やはり中核農家と兼業農家が併存した形で農村集落があるという前提で村づくりに励むことが非常に重要だろうと思っておりまして、そういった二つの面から評価し、生きがいのある生活を当該地域において実現できるよう考えていかなければならないと思っております。
  140. 神田厚

    ○神田委員 次に、農振法の一部改正案につきまして二、三御質問を申し上げます。  最初に、農振法は昭和四十四年に制定されて以降線引きを中心にした運用が行われてきたわけでありますが、線引きにより農用地区域として指定された農用地域は積極的に農業振興を図る地域として位置づけられているわけでございますが、昭和五十五年の農林業センサスによりますれば、全国で約九万二千ヘクタールの耕作放棄地が存在するとしております。こうした大量な耕作放棄地の存在を政府はどういうふうに考えておられますか。
  141. 森実孝郎

    森実政府委員 構造政策を進めるというふうに認識した場合においても、限られた我が国の国土資源のもとでできるだけ土地を有効に利用するということが基本でなければならないことは言うまでもないと思います。そういう意味で、広範に耕作放棄地が存在するという事実は大変憂うるべき現象だと思っております。事実、過去の事例を見ますと、植林と開墾の間のいわゆる耕境と申しますか、耕す境というものは、その時代によって絶えず移動する歴史を明治以降持っていることは事実でございますが、こういった問題を考える場合に、今日の状況のもとではどうやって有効利用を図るかとすれば、やはり農業に積極的な意欲を持った方々にそういった耕作放棄に陥りやすい条件を持った限界地を利用していただく。それからもう一つは、土地改良事業等の整備を通じて利用しやすい物的条件整備していくことが大事だろうと思っております。  私どもとしては、地域農業集団の活動の中で、第四番目の柱として農用地の効率的な利用ということを考え、その中には里山の開発、裏作の導入と並んで不耕作地の積極的活用ということを標榜しているのもそういう点でございまして、やはり中核農家への話し合いを通じて利用集積を進めるということ、それからもう一つは、作目の転換と土地改良事業の推進による物的条件整備という形を通じてその解消に段階的に努めていかなければならないものと思っております。
  142. 神田厚

    ○神田委員 農振法においては、こうした農地の有効活用を図るべく、第十四条で勧告制度、第十五条で調停制度、第十五条の七で特定利用権の設定制度を規定しておりますけれども、これら制度の活用状況について御説明をいただきたいと思います。
  143. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘がございました勧告制度、調停制度、特定利用権の設定制度、これは昭和五十年の農振法の一部改正で入ったものでございますが、残念ながら非常に低い実績でございます。勧告制度は数県において運用ざれた実績がありますが、調停制度及び特定利用制度利用実績は上がっておりません。  これはどういうところにあるだろうかという問題でございますが、やはり私ども一つの行政の反省としては、こういう法制をつくった場合においてそういう制度を活用して積極的に農用地造成していく、利用していくという主体を育成し、その主体の行動が土地利用の問題として地域社会でやはり支持される条件をつくっていくことが必要であろうと思っております。
  144. 神田厚

    ○神田委員 そういう意味におきまして、放置された土地有効利用につきましてはなお強力な行政指導を要望しておきたいというふうに思っております。  続きまして、昭和五十五年公表の「農産物需要と生産の長期見通し」におきましては、昭和六十五年における耕地面積を五百五十万ヘクタールとし、このため昭和五十八年に閣議決定された第三次土地改良長期計画においては、昭和六十七年までに約四十七万ヘクタールの農地造成計画している、こういうことであります。この点、農振法に基づく農用地区域面積の中におきまして混牧林地が約十五万ヘクタール、山林原野が約七十七万ヘクタール存在するわけでありますが、第三次土地改良長期計画による農地造成の中でこれらの混牧林地や山林原野はどのような位置づけが行われておりますか。
  145. 森実孝郎

    森実政府委員 農振農用地区域内に取り込まれております山林原野は約七十五万ヘクタールでございます。実はこのうち三十三万ヘクタールが混牧林地や採草放牧地として利用提供されているわけでございまして、残余は四十二万ヘクタールでございます。第三次土地改良長期計画で織り込んでおります農用地造成は全体で約四十七万ヘクタールございますが、その大半はこの四十二万ヘクタールの林地を予定したものとマクロ的には考えてよろしいと思っております。
  146. 神田厚

    ○神田委員 また、今回の農振法改正におきまして、里山等の農用開発適地を集団的に確保するため、新たに交換分合制度、これを設けるということにしておりますが、この交換分合にどの程度の実施効果を期待しておいでになりますか。
  147. 森実孝郎

    森実政府委員 従来、農振法でも農用地開発のための例えば農地と林地との交換分合と申す制度はあったわけでございます。異種目の交換分合の制度はあったわけでございます。ただ、現実に農用地開発を進める場合は、里山を念頭に置きましプ\そういった林地の開発適地が開発を希望する方に所有されている姿を実現しておかないと、現実にはなかなか同意を得て利用提供が行われないという現実があるわけでございます。そういった点を機能的にと申しますか、実証的に押さえまして、いわば里山の具体的開発を進めるという視点から林地と林地との交換分合の道を開き、農用開発適地である林地が開発を希望する方々に保有される条件をつくっていこうとするものでございます。その意味で、この問題は特に農用地開発の中でも里山の比較的小規模な開発利用される場合が主力ではないかと思っております。ただ、計量的にどの程度かということについては、特に調査なり把握はしておりません。
  148. 神田厚

    ○神田委員 次に、農振地域整備計画内容整備の拡充についてでありますが、今回の法改正のきっかけは昭和五十五年及び五十七年の農政審の答申にあると思うわけでありますが、今回の改正内容の中で農政審の答申をどのように反映をしているのか、具体的に説明をしていただきたいと思います。
  149. 森実孝郎

    森実政府委員 農政審の答申は、実はこの問題について二回行われております。五十五年の十月の農政審答申では、具体的な方策としまして、村づくりの推進、農村地域土地利用秩序の維持形成、農村整備施策の総合的な推進という形でうだわれております。五十七年八月ではそれがさらに進化した形をとりまして、村の共同活動の振興計画的な地域資源利用と緑資源の保全、安定した所得と就業機会の確保、居住環境の総合的整備、農村整備計画的推進ということがうたわれているわけでございます。  私ども、この五十七年の農政審報告を前提に置いて考えますとき、第二番目の「計画的な地域資源利用と緑資源の保全」というところまでは今回の法制改正は及んでおりませんが、その他の事項については現実的な形でアプローチをしている。例えば農振計画計画事項に生活環境の問題やあるいは就業改善の問題をうたっている。さらに、集落協定の制度等を通じてやはり村の共同活動機能振興なりあるいは資源管理への道を開いている。それからさらに、交換分合や換地処分等を通じていわゆる農村整備計画的推進なり居住環境の総合的整備を図っているという意味においては、実質的にはここに織り込まれておる事項のかなり多くの問題を法案の形に織り込んだものと思っております。
  150. 神田厚

    ○神田委員 農政審の農村整備に対する答申は非常に幅広いものであるわけでありまして、農林水産省の施策だけでは十分対応できない問題も多くなってきているわけであります。今回も、特にこの法案作成に当たりまして、局長もあるいは関係の皆さん方も他省庁との調整に大変精力を費やしたというふうに聞いております。このため、今後の農村整備につきまして他省庁との協議機関を設けるなどして整合性を持った行政の推進が必要と思われますが、どういうふうにお考えになりますか。
  151. 森実孝郎

    森実政府委員 各省が、例えば農林省なら農林省が一つの議論の帰結としてこういう事業が必要だという側面と、それから、やはり具体的に市町村長さんたちが生活環境の整備なり何なりで何を欲しているかということを積み上げて、その中から新しい問題の解決を考えていく、あるいは事業化を考えていくという二つの見方があるだろうと思います。  私どもは、今回、農振計画の中で生活環境の整備をうたいましたことについては、特に積み上げて要望を受けとめるという姿勢を重視しているわけでございます。こういった提起された問題につきましては、現在の土地改良事業、これは農道等の整備や集落排水等もございますし、あるいは生活基盤整備のモデル事業等や、それから構造改善や山村振興等の地域振興のための総合施策等を通じて、こういった農林省の施策を通じて整備を重点的に実施していく、優先採択とかあるいは進路是正をやっていくということがまず一つありますが、まさに神田委員指摘のように、農林省の施策だけでは処理できない問題があることは正確に受けとめなければならないと思います。これにつきましては、私ども関係各省の協力を得るために、ひとつそういった市町村の農振計画がまとまってある程度骨格なり概要をつかめた段階において、関係各省に協力を求める体制づくりについて検討さしていただきたいと思います。
  152. 神田厚

    ○神田委員 新しい農振計画の中では、農用地の効率的かつ総合的な利用促進についての計画を定める、こういうことにしておりますが、具体的にどのような計画を予定しているのでありますか。
  153. 森実孝郎

    森実政府委員 やはり地域社会における集団的な土地利用調整のテーマをここに織り組むべきものだろうと思っております。  そこで、具体的な問題といたしましては、いわゆる利用権の設定なり作業受委託の促進に関する事項、それから大型機械による共同作業に関する事項、それからもう一つは、いわゆる地方の維持増進等を重点に置きましたローテーションの問題、さらに里山の開発とか裏作の導入とか、あるいは休閑地の解消等の土地利用の改善問題、そしてそういった手法等との結びつきにおきまして具体的にどういうふうに中核農家の規模拡大を誘導していくか、こういったことを織り込んでいく必要があると思っています。  なお、これ以外に林業的利用との調整という問題を当然考えなければなりませんので、混牧林の利用など林地における農業利用を効率的に行うための必要な林業的利用との調整に関する事項も織り込んでまいりたいと思っております。
  154. 神田厚

    ○神田委員 また、この計画の実施に当たりましては地域農業集団を育成する、こういうことになっておりますが、将来どの程度地域農業集団を育成する予定を持っているのか。昭和五十九年度予算では二万九千団体ということでありますが、将来的にはどういうふうにするのか。また、現在地域農業集団に対する国の助成は、一集団当たり二十万円の二分の一、また助成期間は地区指定から三年間となっているわけでありますが、助成期間三年間が経過した場合、多くの集団が雲散霧消するような心配はないのかどうか、この辺はいかがでありますか。
  155. 森実孝郎

    森実政府委員 まず地域農業集団の育成の目標としましては、当面、農振地域に存在いたします集落の約半分である六万集落に、平均しますと一・七集落に一つというぐらいの計算になりますが、三年かけて指定を行って二分の一のものにつくっていきたいと思っております。  助成の問題でございますが、これはいわば地域農業集団の活動費の助成でございまして、市町村長さんとかが号令をかけて、いわゆる外部的リーダーを決めて指導していく場合の、そういった会合費とか指導に必要な経費としてソフトな予算を若干計上しているわけでございまして、むしろ私どもは、この地域農業集団による土地利用調整が進んだところにある程度有効な施策を集中していくというふうな取り組みがこれからは大事ではないだろうかと思います。  雲散霧消するかどうか、これはいろいろ難しい点もありまして、時期の推移を見なければならない点もあると思いますが、しかし、私はまた楽観的とおしかりを受けるかもしれませんが、今日までの地域農業集団の結成状況、その内部で行われております事業活動の内容等は、単に役所が指導したから行われているというだけではなくて、いわば農業政策の基本にございます地域社会における土地利用調整という問題に具体的に取り組む形で、しかも抽象的な利用権の設定とかというふうに限定しないで、作目や地域の実情に応ずる形で取り組んでおりますので、私はむしろ段階的に定着していくものではないかというふうに希望しておりますし、また可能であろうと思っているわけでございます。  法的に申し上げますと、実はこれは最終的には利用の面的集積、利用権の設定等の形で取りまとめが行われて、むしろ農用地利用増進法における利用改善団体というものに移行すべき性格のものであろうと思っております。
  156. 神田厚

    ○神田委員 先ほどちょっと答弁がありましたが、新しい農振計画の中では、農業と林業の振興との関係についても定めるとしているわけでありますが、具体的にどういうことを定めようとしているのか。また、この場合、森林の施業計画等にも影響を及ぼすものと思われますが、その関係につきましてはどういう調整を行おうとしているのか、具体的に示していただきたいと思います。
  157. 森実孝郎

    森実政府委員 土地利用という面からも就業所得という面からも、林業の振興農業振興は密接不可分の関係にあるものとしてとらえなければならない地域が多いことは御案内のとおりでございます。なかなか議論があった問題でございますが、農業振興と林業の振興を、少なくとも土地利用なり就業の面ではその調整というものを考えなければやはり十分なものにならないし、また次の段階における山村段階の、林業問題の取り組みの基点にもならない、こういう配慮から入れたわけでございます。  具体的な内容といたしましては、当面は林間放牧と森林施業との関係、それからもう一つは間伐材のいわゆる農業利用、畜舎だとか果樹棚、そういったものへの利用等については、特に具体的に内容を書いていってもらうようにしたいと思っております。ただ、この問題は、私率直に言いまして、農振計画を見直して作業しておると、地域によってかなりいろいろな問題が起きてくるだろうと思います。そうやって起きてきた問題は、むしろ逆に末端の需要を酌み取って織り込み、総合的な取り組みが可能になるようにしていく必要があるのではなかろうかと思っております。
  158. 神田厚

    ○神田委員 次に、交換分合制度の拡充につきまして御質問を申し上げます。  今回の改正では、市町村、農協等が生活環境の整備に必要な施設等の用地を円滑に取得できるための交換分合制度を創設しているわけでありますが、この交換分合制度を設けた理由と農地のスプロール防止措置の関係について御説明をいただきます。
  159. 森実孝郎

    森実政府委員 交換分合の制度として今回創設いたしましたのは三制度でございます。  一つは、農用地区域内の里山の農用地開発適地を集団的に確保していくための、林地と林地との交換分合でございます。  第二は、農業用施設の配置について集落協定を取り決めた場合の、その施設用地を確保するための交換分合でございます。  第三は、集会施設や農村広場等の生活環境施設用地を生み出すための交換分合でございます。  まず、このうちの林地等の交換分合は、いわば農用地区域内の農用地開発適地を集団的に確保しようとするものでございまして、これはまさに農用地の集団的な開発利用に直結するものと理解をしております。  それからもう一つは、協定関連のいわゆる農業用施設の交換分合でございますが、これは農業用施設の効率的かつ適正な配置を実現するためのものでございまして、土地利用水利用のいわばスプロールを防止するのに間接的に役立つものと思っております。  それから三番目は生活環境施設用地のための創設交換でございますが、やはり今日の状況においては用地を確保するのがなかなか難しいという以外に、費用負担が多い、また限定があってなかなか思う場所に、適地に設置できないという問題があるわけでございます。この制度利用することによって、関係農業者が真に必要な生活環境施設用地については、計画的な配置が可能になると思っております。具体的には、対象施設については、生活環境施設用地につきましては農振計画に定めるものであること、公的主体が取得主体であること等の限定を定めているのも、こういった点から特に例外的に認めたものであるわけだからでございます。
  160. 神田厚

    ○神田委員 この交換分合制度と直接関係ないわけでありますが、従来市町村等が無秩序に文教施設等の公共用地を取得し、これが農地のスプロール化や地価の高騰を招いている、こういう批判もあるわけでありますが、こういうことにつきまして政府はどのように受けとめてどういうふうに是正をしていく方針をお持ちでありますか。
  161. 森実孝郎

    森実政府委員 これは開発許可の側面と、それからもう一つ農地転用の側面と、二つから行政は考えていかなければならないと思います。  市町村と都道府県は、開発許可の立場では、自分はこの趣旨を十分踏まえて実施しなければならない責任ある立場に立つわけでございまして、いわゆる公共用施設用地として利用するためやむを得ず農用地区域内の土地を充てることを決める、この場合認められるわけでございますが、やはり農業を守る立場からいきますと、位置としてやむを得ないものかどうか、国の土地改良等の長期投資にかかわる土地でないかどうか、その結果として農用地区域内に虫食い現象が起きないかどうか等は必要であろうと思っております。そういう点で、従来も関係各県の関係部局を指導してきたところでございますが、十分留意いたしまして、特に土地水利用のスプロールを防ぐという視点を重視して、さらに指導に努力をしたいと思っております。  転用の問題につきましては若干異質でございまして、市町村が行う場合は、特に公益性の高いもの以外は、市町村は自分は許可権者でございませんので、都道府県の許可を受けなければならないという立場になっております。  問題は、やはり農地転用行政の中でこれをどうやって県なり国が処理していくかという問題でございます。この場合においても、農業公共投資、土地改良等の投資が行われた農地であるかどうか。それから、集団的な農地を虫食い状態にしないかどうか。それからもう一つは、転用の結果として水利用秩序に阻害を来さないかどうかという点が非常に大事だろうと思っております。こういった視点から、転用基準の励行については今後も十分留意してまいりたいと思っております。
  162. 神田厚

    ○神田委員 次に、協定制度についてであります。  協定制度というのは一体どういう性格を持つものなのか。政府はこの協定制度につき、あくまでも地域農業者などの自主的な取り決めであると説明をしているわけでありますが、自主的な取り決めであるのになぜ市町村長の許可ないし認定を必要とするのか、その点はいかがでありますか。
  163. 森実孝郎

    森実政府委員 農村社会の混住化とか都市化の進展の中で、在来のいわゆる共有的な秩序を基礎とした共同体的村の機能が弱まっていることは事実でございます。また、それは単なる社会経済上の事情だけではなくて、住民意識の変革にも媒介されたものであることを受けとめなければならないと思います。  私ども考え方は、毎度申し上げますように、旧来の秩序の上に立った慣行を再現するという考えは全くございません。むしろ利用者なり地権者が対等、平等の立場で具体的なテーマを解決するために協定制度を推進してまいりたいと思っているわけでございます。ただ、実はこの協定制度自体は、ただいま委員指摘のように民法上の一種の非典型契約でございまして、それ自体は現行法律規定がなくても定められるわけでございます。  今回枠組みとして法制化したものは若干特殊なものでございまして、つまり農業用施設の配置に関する協定については一定の範囲で承継効を認めている。それからまた、当初反対な人も後から単独行為で参加できるようにする、そういう特別の法律効果を付与したということ。それから、施設の維持運営に関する小水路とか集会施設等の共益施設の運営に関する事項については、やはり市町村長の認定にかかわらしめて適切、公平な運営を確保するという点から、この二つについて特に法制化したものでございまして、むしろ私どもは、広い意味で集落の話し合いの協定があり、その中で特定の効果を持ったものを法律上に規定した、こういうふうに考えているわけでございます。
  164. 神田厚

    ○神田委員 施設の維持運営に関する協定の認定要件としまして、関係者の相当部分が協定に参加していることとしているわけでありますが、具体的な認定基準を示していただきたいと思います。
  165. 森実孝郎

    森実政府委員 施設の維持運営の協定の問題でございますが、この協定につきましては個別利用者の利用程度、態様が施設の種類や地域の実情で必ずしも画一的ではございません。だから、施設の適正な維持運営が確保できるかどうかということが判断の基準として重要なわけでございまして、必ずしも利用者全員の参加は必要でないという考えでございます。むしろ、相当部分が参加しているかどうかを一つの判断の基準にしながら、あとは施設の種類や利用者の利用の態様、地域の実情でケース・バイ・ケースで判断していきたいと思います。  ただ、判断基準が市町村によって大きくかけ離れるということにはいささかいかがなものかという議論も当然あると思います。ある程度食い違っても私は差し支えないと思うわけでございますが、運用一つの目安になる基準については指導をしてまいりたいと思っております。
  166. 神田厚

    ○神田委員 この協定制度の中におきまして、協定を結んだ場合、協定参加者と非参加者との間で非常に問題が起こることはないのか。さらには、協定非参加者が施設を利用する上で不自由な事態を生ずることはないのかどうか、この点についてはどうでしょう。
  167. 森実孝郎

    森実政府委員 施設の配置の協定と施設の維持運営の協定とは若干異質だろうと思いますけれども、私ども、施設の配置の協定につきましては、やはり市町村長のあっせん等が必要であるという認識のもとに法制を予定しているわけでございます。  さて、一般的に参加者と非参加者の間の問題をどう考えるかという問題については、何といっても相互理解を深めるための話し合いが十分に行われる必要があると思いますが、私ども一つは加入、脱退についての規定はできるだけオープンなものとするよう、公正なものとするよう指導してみたいと思いますし、また、非参加者であっても正当な理由がない限り施設利用は妨げられないという点については、十分配慮して指導してまいりたいと思っております。
  168. 神田厚

    ○神田委員 本法に基づく施設の維持管理に関する協定は、当面、農業用の排水施設、農業集落排水施設、集会施設に限定すると説明をしているわけでありますが、今後法律によらない自主的な取り決めなどについても積極的に指導していく考えはありますか、どうですか。
  169. 森実孝郎

    森実政府委員 この問題は、率直に申し上げますと、立法過程において政府関係各省間でいろいろ論議があった問題でございます。私どもといたしましては、結論から申し上げますならば、法律に基づく協定は、じんかい処理施設とか堆肥舎とか畜舎等の配置の協定、それから農業用の排水施設や集落施設や集会施設等の維持管理協定ということを念頭に置いておりますが、これら以外にも地域の必要に応じて個別に具体的に協定の策定はあってしかるべきものと思っております。  一号の協定に類似のものといたしましては、例えばハウスとか農機具舎の配置等その他の農業施設の配置の協定、あるいはそれと表裏一体の関係にある土地利用関係の問題。それから二号の協定と類似のものといたしましては、集落道とか樹木、広い意味での緑の維持管理の問題等についても協定は行われてしかるべきであり、むしろ法律で予定したもの以外にそのアナローグにおいて各種の協定が結ばれて、新しい問題点解決に地域社会で役立つよう指導してまいりたいと思っております。
  170. 神田厚

    ○神田委員 次に、土地改良法の一部改正の問題につきまして御質問を申し上げます。  同僚の議員からもいろいろと土地改良の問題につきまして出ておりますが、まず第一点としまして、昭和五十四年度以降、農業基盤整備事業の予算が全く停滞をしている、こういう事実があるわけであります。このため、昭和五十八年に閣議決定されました第三次土地改良長期計画については、発足二年目にしてその達成が懸念をされているわけでありますが、今後予算の確保に対しましてどのような方針で臨むおつもりでありますか。
  171. 山村新治郎

    山村国務大臣 第三次土地改良長期計画、これは五十八年度を初年度といたしまして三十二兆八千億円、これを十年間に事業量として実施するということでございます。現下の厳しい財政事情は御存じのとおりでございます。昭和五十八年度から五十九年度にかけまして二年間での進捗率は実は一一%程度、御指摘のようにかなりおくれております。十年間におきましても、財政の大きな好転を期待することは容易でないというぐあいに考えております。しかし、この基盤整備事業というものは構造政策の基礎的な部分でありまして、今後とも所要の金額の確保に努力をしてまいるつもりでございますが、この長期計画達成に向かって限られた予算の中で何とかやってまいりたいと考えております。  五十七年度以降、新規着工地域の採択、これは抑制しております。そしてまた、部分効果があらわれる地区への予算、これは優先配分をいたしております。また、長期計画の樹立及び事業の実施に当たりましては、地域の自然、そしてまた経済条件に応じた基準の弾力的運用を図ってまいります。また、構造物の設計に際しましては、技術者の創意工夫のもとに設計基準の適切な運用に当たります。また、事業費の軽減に努めるため、工事施行に当たりましても地域の施行実態を勘案して施行を合理化し、今後もより一層工期の短縮に努めてまいりたいと思います。
  172. 神田厚

    ○神田委員 次に、市町村等協議制度の拡充についてでありますが、昭和四十七年の法改正におきまして、農業用排水路等の管理の適正化を図る措置として市町村等協議制度、非農地受益者賦課制度及び予定外排水の差しとめ請求制度が創設をされましたが、制度制定以来十年を経過しました今日におきまして、制度の活用実態はどのようになっておりますか。
  173. 森実孝郎

    森実政府委員 制度自体の活用と制度が設けられたことによっての動きと、両面あると思います。  市町村協議制についてまず申し上げますと、四十七年の法定化以来、市町村が土地改良区に対していわゆる都市的な負担に見合うものを援助なり助成する事例はかなりふえております。具体的な協議の事例といたしましては、当初はなかなか動かなかったわけでございますが、四十七年から農業用の用排水路等利用調整対策という予算措置を講じました結果、五十八年末では百二十二地区について協議が行われておりまして、今後協議を予定しておるものが全土地改良区のかなりの部分にあると見込まれております。しかし、協議を通じて不調であり、問題の解決が進まないところが多々あるわけでございまして、これが今回の知事裁定制度につながっているわけでございます。  次に、非農地の受益者賦課制度でございますが、これは、負担金徴収ということは地域社会の問題としてトラブルがあるものでございますから、実質的には契約方式で処理をしている事例が報告されております。  それから、予定外排水の差しとめ請求制度については、一つは水質行政がかなり進展したこと、原因になる特定企業の水質改善努力が進んだことから、今までのところ活用の事例はございません。
  174. 神田厚

    ○神田委員 今回の改正で市町村等協議制度を補完する措置といたしまして知事の裁定制度が設けられたわけでございますが、どの程度の効果を期待しておりますか。
  175. 森実孝郎

    森実政府委員 現在排水路の問題で非常に困って市町村に土地改良区が協議をしている地域というのは、関東近県、東海近県、近畿近県、それから九州の一部等、全国にまたがっております。  先ほども申し上げましたように、問題がなかなか解決しないで困っているところがあるわけでございます。私、実は昨年の国会での御質問でもお答えしておりますが、一つは、手続と内容についての統一的な協議の基準が必要であろうと思っております。しかし、協議の基準があっても、やはり市町村長さんたちにそれぞれ独自の立場や配慮があってなかなかはかどらないという面もあるわけでございまして、そういう意味で今回知事裁定制度を設けたわけでございます。私、今回の知事裁定制度の法制化が実現した場合は、これに伴って手続、実質面での統一的な指導方針を打ち出したいと思っております。むしろ、この方法を講ずれば知事裁定に持ち込まれる前に多くのものが解決されることになるのではないか、そういう効果を期待しているわけでございます。
  176. 神田厚

    ○神田委員 いずれにしましても、各種制度が有効に活用されるためには土地改良区の体質を強化しなければならない、こういうことでありまして、協議などに当たりましても土地改良区が当事者能力を高めなければならない、こういうふうに考えておりますが、どのような対策といいますか、指導を講じようとしておりますか。
  177. 森実孝郎

    森実政府委員 いろいろな側面があるだろうと思います。  まず第一は、土地改良区自体の体質強化という意味で、土地改良区の合併等は特に積極的に進めていかなければならないだろうと思っております。  第二は、やはり技術的能力を高め、原因を解析したり、調査の実施等が担当できる能力にならなければなかなかうまくいかない。そういう意味で技術的能力の向上ということには特に留意してまいりたいと思っております。  もう一つは、これはなかなか難しい問題がありまして、市町村協議を行うような際において、あるいは先ほども御議論にございました事前の都市計画法に基づく開発許可の協議を行う際において、土地改良区が往々にしてあいさつ料みたいな形で金銭を授受している。これが正当な費用の根拠を持ったものとして授受されている限りにおいては私は問題ないと思いますけれども、必ずしもそう言えない問題等もあって、方々で御指弾もあるわけでございます。そういう意味においては、土地改良区自体がこういう制度で保護される側面と、やはり襟を正す側面への指導ということも十分考えていく必要があるだろうと思っております。
  178. 神田厚

    ○神田委員 次に、土地改良区が実施する農業集落排水施設整備事業の問題でありますが、この法律改正がなくても、土地改良区は現在農業集落排水事業の実施主体としての位置づけを持っているわけでありますが、今日まで土地改良区は一件も事業を実施してないわけであります。その理由は一体どういうところにあるのか。さらに、今回実施手続が法定化されたというだけで土地改良区が果たしてこれらの事業を実施する見通しがあるのかどうかを伺います。
  179. 森実孝郎

    森実政府委員 今までも補助要綱上は集落排水事業に対して土地改良区の事業を予定しておりました。ただ、法的に申しますと、土地改良区の能力としてそれが認められているかどうかは、手続その他が不備であって、私どもはちょっと問題があるという見方をしております。今の段階においては「今申し上げた水洗化に伴う集落排水が主力でございますから、これについてはやはり市町村が自分の事業として実施されるのが本筋であるという事実と、それから法的手続が定められていなかったので、そこをどうしたらいいかという問題がはっきりしない、こういう点があって土地改良区の事案が一件もなかったものと思っております。昨今の事例を見ますと、ことしあたりは、一件程度でございますが、土地改良区が事業を実施するものが出てくると思っております。  ただ、私は、やはり今後とも集落排水の事業は主力は市町村が実施すべきものであり、また、実施することになるだろうと思います。しかし、地域の実情によっては市町村と土地改良区が話し合って、分担して並行して実施していくという場合もあるだろうと思いますし、また、委託を受けて実施する場合等もあると思います。そういう意味において、集落排水事業の法制化という問題は、補完的に土地改良区が行う場合の手続を形式的に明らかにしたものであると同時に、農村の生活基盤整備事業の一環として、広い意味での農業基盤整備事業の一環として集落排水事業を取り上げるという姿勢を明らかにしたものであるというふうに御理解を賜れば幸いだろうと思っております。
  180. 神田厚

    ○神田委員 事業費等の徴収を強制徴収方式としないで契約方式とした理由は、一体どういうところにございますか。
  181. 森実孝郎

    森実政府委員 農業集落排水施設の利用者に対しては、施設利用の対価として排水量等を基準として費用負担を求める、これは土地改良区と施設の利用者との契約に基づくものとしております。  こういった契約方式をとりましたのは、事業の性格からいって非組合員や非農家の参加ということも予定せざるを得ないということ、それから農用地農業用排水施設のような直接整備目的としたものではなくて、土地改良区が行われている立場農業用排水路なり用水路の水質保全という立場から実施するという点から、こういう制度にしているわけでございます。一般の土地改良事業のような事業参加者の同質性なり共益性という点では、ちょっと異質なものであるという認識に立ってのことであります。
  182. 神田厚

    ○神田委員 最後でありますが、一定の土地改良事業にかかわる同意徴集手続等の簡素化問題につきまして、今回の改正では、一定の土地改良施設の更新事業には個別の同意手続を要しないものというふうにしておりますが、この場合、一定の土地改良施設の更新事業とは一体何なのか。また、こうした要件に該当するかどうかをだれが判断するのか、お示し願います。
  183. 森実孝郎

    森実政府委員 まず事柄の本質から申しますと、施設の管理事業と同様の性格を有し、地域の営農継続上当然必要なものというふうな性格のものであろうと思います。  法律上の要件といたしましては、事業施行区域が従来の施行区域を超えないということ、土地改良施設の機能の維持を図ることを専ら目的とするものであること、組合員の権利、利益を侵害しないものであること等が重要だろうと思っております。特にこの場合の組合員の権利、利益との関係の調整につきましては、今後政令で具体的に要件を定めるつもりでおりますが、この場合、内容としては、土地改良施設の主要な管理方法も実質的に変更しないということ、組合員の事業費負担が合理的なものであること、例えば施設の更新による年間の管理費負担の節減分に当該施設の耐用年数を乗じた額が建設負担よりも大きくならない、こういうふうな基準でやっていきたいと思っております。  なお、この問題につきましては、土地改良区の総会の場等において団体としての意思決定の際に行われるわけでございますが、事業実施の際には知事の認可を受けなければなりませんから、その限りにおいて都道府県知事のチェックを受けることになろうと思います。
  184. 神田厚

    ○神田委員 この同意手続の規定は、組合員の権利を守る、権利を保護する、こういうことで設けられたわけでありますが、同意手続を省略した場合、組合員の意見反映はどういう方法で担保されるのでありますか。
  185. 森実孝郎

    森実政府委員 問題は、施設更新事業のうち従前の機能の維持を図ることと一定の要件を満たすものに限定しておることは、御案内のとおりでございます。この場合、個別同意の徴集という形で個々の組合員の意思の確認がないではないかという御意見だろうと思いますけれども一つ土地改良区の総会というものでその論議が明らかになる、それから知事の認可手続を受けて事前のチェックを受けなければならぬ、また異議申し立ても可能である、そういう意味においては十分の権利保護が図られるものと考えております。
  186. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  187. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 津川武一君。
  188. 津川武一

    ○津川委員 農振法、土地改良法改正案で、改正目的として豊かな村づくりをするとか活力ある農村社会を形成するといったことを繰り返し聞かされてまいりましたが、これは具体的にどんな農村を描いているのか。よもや小さい農家から土地を取り上げて特定の中核農家を若干つくり、大部分の農家を二種兼業農家に追いやるというようなことではないでしょうが、活力ある農村社会の形成、これを政府はどんなふうに考えて、どんな社会をつくるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  189. 山村新治郎

    山村国務大臣 農村社会はただ単に農業、林業の生産基盤の場だけではございませんで、地域住民の生活の場でもありますし、国土保全、また緑豊かな景観、これらの自然環境の維持を通じて都市住民に安らぎを提供するというような役割も果たしておるわけでございます。今日の社会経済情勢のもとで、農村社会は兼業化、混住化、高齢化、これらの様相を強めております。このような現実に立ちまして、農業振興と住民の生きがいとの調和や農家と非農家との協力の上に立って、活力ある農村社会の建設に努めてまいる必要があるというぐあいに考えております。  このような観点に立ちまして、若い農業者に夢を与える農業振興、また地域住民の収入の安定、そして地域社会の連帯感の醸成と資源の有効利用、生活環境条件整備、都市と農村の交流の推進、これらを総合的に進める豊かな村づくりに取り組んでまいりたいというぐあいに考えております。
  190. 津川武一

    ○津川委員 その豊かな村づくりでありますが、ここではっきり指摘しなければならないのは、さきの日米農産物交渉牛肉、オレンジなどの輸入枠の拡大に続いて、四月下旬にはガット提訴されていた十三品目の大幅な市場開放を行ったことです。自由化はしないと再三言っておきながら六品目自由化に足を踏み出し、その他の品目についても枠の大幅な拡大をやっております。トマトジュースは、国内の加工用トマトの大幅な作付削減が強いられているさなかで、六十年度まで五十八年度の輸入枠を一・七倍にふやす。リンゴは過剰生産がはっきりしている。この間も政府が九百トン加工して市場から隔離する、そう言っているときに、リンゴジュースを五十九年、六十年と最低一千トン輸入するという約束をしてしまいました。  これでは明るくなれと言っても明るくなれない。津軽の農業青年などは、豊かな村、明るい生活環境どころか、まかり間違えば自殺もしなければならない、こんなふうになってきているのでございます。この点はっきりしていただかなければ、日本の農村をこういう外国農産物の攻撃からどのようにして守るか、答えていただかなければならないのでございますが、答えるのが構造改善局長では適当でないとすれば、一言言っていただければ次の質問に移ります。
  191. 山村新治郎

    山村国務大臣 日本の置かれておる立場、世界の中にあっての日本ということで、私はその中の農林水産大臣としての立場で、日本農業を守るという線であの農産物交渉の妥結をしてまいりました。少なくとも、もし今自由化などということがあった場合には大変なことになるということを念頭に置きましてあの交渉に当たってまいったわけでございます。  今津川先生からいろいろ数量のことも言われましたが、これは少なくともこの線ならば我が国農業を守っていけるということでやったわけでございますし、今後、いろいろな施策につきましては、その場に応じた施策というものも積極的に進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  192. 津川武一

    ○津川委員 もう一つ心配なのは、これは弘前に一つの例があるのでございますが、名前を申し上げてもいいと思いますが、葛西さんという人。五十四歳で、長男も農業を継いでいる。何年か前に農地取得資金千八百万円借りて一・ニヘクタールのリンゴ園を購入し、今まで耕作していた一二八ヘクタールと合わせて三ヘクタールのリンゴ専業農家になったわけです。これは私も非常に喜ばしかった。この人、よく覚えている。この息子も、今大臣が言ったような青年の夢をつないだ。ところが、五十七年にはひょう害でほぼ皆無作。五十八年がリンゴの暴落。五十九年のリンゴもなかなか容易でない。たくさんの制度資金を借りてきた。農協からは取り立てられる。そこで、買ったリンゴ園を、百五十万で買ったものを売って借金を払わなければならなくなった。売りに出したら、百万で買う人がない。これがこの農家だけではないのです。皆さんが明るい農村のことをしゃべるとき、農家の借金をどうするかということを一言もおっしゃらない。これを解決しないで明るい農村も豊かな農村もあったものではないのです。  どうしてこのようになったかと申しますと、米も畑作物も価格が安定しない。減反の奨励金もこれから削ってくると言う。そして、出稼ぎに出ていかなければならない。農機具、肥料、農薬会社は原価も明らかにしないでもうけまくるということに対する対策なくして豊かな村づくり、活力ある農村と言ってもこれは夢でありますし、客観的に考えると日本農民をだますことにもなると思うのでございます。  重ねて施策をお尋ねいたします。
  193. 森実孝郎

    森実政府委員 最近におきます市場の低迷なり農産物価格の据え置きといった政府施策との関係もあって、農業所得が停滞的に推移していることは事実でございます。しかし、トータルとして見ますと、農業所得の停滞はありますけれども、むしろ時間当たりの労働報酬は中核農家では増加してきております。確かに委員指摘のように借入金の総額は倍増しております。しかし、貯蓄総額もそれ以上にふえているという実態が平均的にはあるわけでございます。  問題は、地域によって、作目によってそういう農家群あるいは個々の農家がある。それをどうするかという問題としてやはり現実的に処理をすることが適当であろうと私は思っております。そういう意味で、自作農資金の中でも、ほかは減らしておるのですが、再建整備資金だけはふやしてきておりまして、貸付限度額も特認を発動しておるという実態がありますし、また既存の融資、制度金融については償還延期等の措置も随時講じているわけでございます。  ただ、これ以外にこれから一つ考えなければならないと思いますのは、規模拡大に伴う投資。土地の投資というのはなかなか難しい問題でございまして、土地を取得することは即資産の増加でございますから、バランスシートから物を見ると合っているわけなんですが、ちょっと異質かもしれませんが、土地もあるでしょうし機械設備等もある。むしろ規模拡大というものを段階的に複合化しながら進めていくための指導ということは、農林省としてもこれから大いに研究していく必要があると思います。一挙に進めることの危険というものは、やはり農業経営においても民間の一般の企業活動同様あるということは、十分注意して指導しなければならないなという感じを最近非常に強く持っております。
  194. 津川武一

    ○津川委員 そこで、局長が言ったように、バランスシートとしては先ほどの農家も黒ですよ。資金繰りが真っ赤な赤で、奥さんが今出稼ぎに行っている。稼がなければならぬ。ここのところを、バランスではなくて損益計算のところで行政をやってもらわないと困るわけです。  そこで農振法でございますが、成立のときは、小さな農家を追い出す、そして農地を新産都市計画やその他のいろいろな企業用の計画に調和させる、こういう形で残地農業になるという格好で私たちは反対したわけです。その後の事態は残念ながらそのように進んでいるわけであります。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕 農振法成立直後の昭和四十五年、耕地面積は五百七十九万ヘクタール、五十七年には五百四十二万ヘクタールと、三十七、八万ヘクタール減っている。現在、農用地区域内の農用地面積はここ十年来少しふえて、五十七年度で四百七十三万ヘクタールになっておりますが、残りの百万ヘクタールは農振白地地域になっております。そこで、市街化区域内農地や農振白地地域における農地をどう位置づけて、これをどう農耕地として守っていくか。何かこのままだとこれもまた減っていくのではないかと思うのですが、政府の施策があったら聞かせてください。
  195. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、農振白地の問題でございます。  これは、農業集落あるいは小規模な団地の農地、さらに大宗を占めますのは山林原野、この三つが大きな構成要素だろうと思います。山林原野は水源涵養機能やいわゆる農用地区域予備地域としての役割を果たして、一体として農業振興を図るべき地域の予備軍と見ておるわけでございます。この問題はなかなか難しい問題がありまして、都市計画法線引きと農振法の線引きとが両方ありまして、農用地区域としては我々もトータル農用地面積も保持してきたし、それが日本農地の大宗を占めているわけであることは委員御案内のようでございます。農振白地の問題は、性格的には今のような側面を持っておりますけれども、同時にそれは線引き行政の一つの結果として出てきている数字でございまして、その数字にトータルとして独自の意味を持たせるというのではなくて、問題は農振白地地域農地転用なり農業振興なりがどういうふうに行われるかということを個別問題として注視することが重要ではないかと思っております。  私、市街化区域は全く性格が違うと思います。私が申すまでもなく、都市計画法上今後十年間に市街化を図るべき農地として性格づけられているわけでございます。ただ現実には、これも事実でございますが、線引きの結果農地があしたから宅地になるわけのものでもございませんで、農地として長期に継続する意思のある方があって維持されている事実はあるわけでございます。そこで、効用が長期に及ぶ施策は、これは事柄の性格上避けておりますが、例えば蔬菜とか花卉等の主要な産地であるところも少なくないわけでございまして、そういった生産対策等の措置は当然講じておりますし、それから土地改良事業でも、保全的な事業とか点と線を結ぶ線の事業等については一定の範囲で実施しております。また、さらに市街化区域の農地につきましては、ある程度経営条件、団地条件のどちらかを満たすものについて農業長期にわたり継続する意思がある者につきましては、いわゆる宅地並み課税を徴収猶予の措置を講じて農業を継続し、緑を保全することを、若干異質かもしれませんけれども制度の枠組みの中で保護する施策を現実的に講じておるところでございます。
  196. 津川武一

    ○津川委員 次に、神田委員も取り上げましたけれども、耕作放棄地ですが、五十五年センサスで全国の耕作放棄地が約九万二千ヘクタール、過去一年間全く作付されなかった農地が十八万四千ヘクタール、これらの耕作放棄地は、政府が積極的に農業振興を図るとしている農用地域内に存在しているのか、また、これらがどうしてこういうふうに発生してきたのか、どう考えているのかでございます。  さらに、耕作放棄地を解消するためにどんな手を打とうとしているかという問題ですが、この間も、局長わかるとおり、鯵ケ沢東部開畑三千ヘクタールの中で既に耕地として耕やしたものを、作付する作物、ペイする作物がないために耕地として不耕地になったものを回復しようと思っても、農民がついていかない。浪岡町の東部開畑というところ、千五百町歩をリンゴ畑に開いた。リンゴのこの状況で、くわを入れて苗を植えようとする人がない。したがって、この耕作放棄地対策、新しく耕作放棄地をつくらないということには特別な監視、特別な指導、特別な力を入れて個々にやらないと問題が解決しないと思いますが、いかがでございます。
  197. 森実孝郎

    森実政府委員 耕作放棄地約九万二千ヘクタールの内容につきましては、農用地区域と農振白地と市街化区域とに分けた統計がございませんので、ちょっと判断できませんが、大半はやはり農用地区域だろうと思います。ただ、四分の三は畑地でございます。これは私が申すまでもなく、委員御高承のように、山林と開墾地との間の耕境の変動というものは明治以降何回か繰り返されているという歴史があるわけでございます。経済状況の変化の中でこういった耕境の変動があり、農業生産に消極的な状況のもとでは割合にこれが出てくるという点があると思います。  問題は、これをどうやって有効利用を図っていくかということが大事だろうと思います。  私どもは、二つの側面があると思います。耕作放棄が行われる場合は、一つ土地の物的条件がよくない、だから基盤整備をどう進めていくかという問題が非常に重要な問題になると思います。もう一つの問題は、今日の農村の現状から見ますと、いわゆる農業に主たる所得を依存していない、比較的熱意の薄い兼業農家の方とかあるいは老齢農家の方で、こういう私が申し上げたような限界地の耕作放棄が起こりがちであるという実態があるわけでございます。このためには、農業に積極的意欲を持ち、規模拡大を志向している農家の方にその利用を任せることも非常に重要だろうと思っております。そういう意味で、実は先ほどから申し上げております地域農業集団の育成による土地の集団的利用調整の中でも、いわば耕作放棄地等の不作付地の利用、提供という問題を重要な柱としてうたっているのも、そういう点でございます。  この問題は歴史的に見て絶えず変動して難しい側面がございますが、そういう物的条件と主体的条件の面から行政努力を傾注して、その縮小に努めることが必要であろうと思っております。
  198. 津川武一

    ○津川委員 そこで、今度の農振法は大分構造改善的な性格が強くなってきたようでございますが、小さな農家から農耕地を移転させて中核農家をつくるのではなくして、新しい農耕地を開いてそこで増反していくという対策が決定的に必要になっている、その方向でやるべきだということを指摘して、問題を進めていきます。  もう一つの問題は雇用の促進。二種兼業農家化されて農業所得の方が農外所得よりも少なくなっておりますので、雇用の安定、促進ということが今度の法律の問題でも大分出てきたわけであります。  青森県の調査で、昭和五十七年で出稼ぎ者は六万五千四百四十四人、うち農林漁業者は四万四千八百九十二人になっております。婦人も大分出ておりますが、やはり男が主力であります。五所川原市を中心とした西北地域では、二戸のうち一戸から出稼ぎ者が出ております。この間の豪雪で新潟県で除雪もできなかったという状態がありましたが、今青森県のその地域では火事が出ても消防に従事する男がいないので、婦人が消防団をつくって消防に当たっているわけであります。火事が出たらどうしようという心配がある。これでは活力どころではない。  もう一つ、出稼ぎの場合、人間と生まれたからには夫婦が同じ屋根の下に暮らす、親子が同じ家に住む、これが人間として生まれた価値でありますが、出稼ぎ者はある人は六カ月、ある人は九カ月、時によると一年親子別れ別れ、子供と父親が別々に暮らしております。これでは人間として生まれた生きがいがありません。こうした中では、たくさんの寂しい問題が出てきております。  ここに青森県の藤崎町というところでつくった、出稼ぎ者のお父さんに子供が書いた作文集がございます。ひとつ読んでみます。  一年生のふじたなおや。これはお母さんが出稼ぎに行っている。お母さんあてです。   おかあさん、なんにちにかえってきますか。  おてがみを、かいてください。でんわばんごうを、おしえてください。   でんわを、かけてください。   すんでいるところは、どこですか。   ぼくは、まだおとしだまが八せんえんもあります。   だから、いつでもれんらくがあればたずねていきます。 これが小学校一年生のお手紙です。  三年生の清水みどり君。   お父さんがいなくてさびしい。   ところでお父さんは、いつ手紙をくれるんですか。   もう一つ、電話も、一週間には二、三回は電話を下さい。   何月になったら家に帰ってくるのですか。   家に電話をくれた時に言って下さいね。 こういうのが藤崎町の子供の文集でございます。  弘前市の子供のは、   父さんは今年も出稼ぎに行った。   出稼ぎに出発の朝、父さんは、「むねがいっぱいでごはんたべられない。」  といって、ごはんを残した。見たら半分も食べていなかった。父さんは、家に残していく母さんや子ども達が心配で、また、家族と別れてくらすさみしさで、むねがいっぱいで、ごはんが食べられなかったのだ。   父さんが出稼ぎに行ったばかりのころは、なかなかねむれなくて何回も何回もトイレにおきた。父さんは病気になっていないだろうか、けがをしていないだろうか、元気ではたらいていればいいなあとか、心配でたまらない。とくに父さんを心配してねむれない夜はこわい。まわりがまっくらで、父さんがいないうちに、どろぼうが入ったらどうしようと思う。  これが子供たちの偽らざる作文でございます。  そこで、大臣、何らかの温かい配慮が、国としてもこの人たちへの援助の考えが必要だと思うのでございますが、いかがでございますか。  この点と関連して、電話をかけると一家全部電話に出るので長電話になる、電話料も大変なので、月に一回くらいは電話料の援助があったらと思います。お金がないために盆に帰ってこれない人もあるので、三カ月に一遍くらい奥さんのところ、子供さんのところに帰る旅費の支給くらいは検討していただいていいんじゃないか、こういうことでございます。大臣の偽らざる所見を聞かせてください。
  199. 山村新治郎

    山村国務大臣 出稼ぎ農業者につきましては、できるだけ地元で就業して家族とともに暮らせる、これが大切であるというぐあいに私は考えます。また、このために、農政の方向といたしましても出稼ぎのない安定的な農家経済を確立することが望ましいというぐあいに考えております。  ただ、先と言われましたそれを農林省のどこから出せというのかわかりませんけれども、それは今ちょっと、相談しますけれども、無理じゃないかと思います。
  200. 津川武一

    ○津川委員 国務大臣として、閣議あたりででも山村大臣から出してくれればこれは非常に美談にもなると思いますが、その点ひとつよろしくお願いいたします。
  201. 山村新治郎

    山村国務大臣 資産公開でも公表してありますとおり、私はそんな金持ちではございません。
  202. 津川武一

    ○津川委員 私は、大臣の個人財産を使えとは言ってないのです。履き違えないでください。  そこで、地元に仕事というわけでございますが、皆さんの東北農政局青森統計情報事務所でこんなすばらしい調査をやってくれました。これは大臣もよく見て研究してくださればと思いますが、これによりますと、なぜ出稼ぎに行くか、農業だけで苦しいが二六%、地元に就職したいが職場がないが一一・二%、地元の職場は賃金が安くて生活できないが一三・六%。はしなくも大臣が地元で仕事場をつくると言ったが、これをそのとおり実現していただければよろしいんですが……。  そこで、地元の賃金がなぜ安いか。三省協定を政府が発表しないので、隠しておるので私たちがいろいろ調べてみたら、例えば一番簡単な仕事で、安いやつでも五千円超しています。地元では三千円。少し複雑な労働だと一万二千円からある。ところが、地元では一万を超す労働というのはほとんどない。そこで、この三省協定を公表すれば地元の賃金が上がる。これはぜひ公表すべきだと思います。この点が一つ。どうしても建設や資本の味方をしてこれを公表できないというならば、農水省は労働省と一緒になって、実際の公共事業で払われている賃金は幾らであるかということを監督して、そこへ戻すべきだ、これが地元賃金に関して大きな課題でございます。三省協定をめぐってお答え願います。
  203. 森実孝郎

    森実政府委員 三省協定の労務単価の問題でございますが、公共事業に従事いたします建設労働者の賃金実態を全工事件数一万件以上、全労働者標本数十五万以上について都道府県別、職種別に調査して、これを平均値を基礎に決定しております。  この設計労務単価の公表は、実は公共事業の入札、指名競争入札で行われているわけでございますけれども、その前提になる予定価格の類推に直結する問題でございますので、これは非公開ということにしております。  ただ、別に三省が共同して各県別、職種別に取りまとめました調査自体は、普通作業員、軽作業員に分けて公表しております。参考までに申し上げますと、例えば青森であれば、五十八年十月の調査の公表数字では、普通作業員は八千六円、軽作業員は五千七百九十九円ということになっております。
  204. 津川武一

    ○津川委員 大企業の入札予定価格よりも働く出稼ぎ者のために断固として三省協定を発表することを重ねて要求して、質問を続けていきます。  もう一つは、地元への仕事でございます。  これは、皆さんも農村での職業安定のために農村地域工業導入促進法をつくっております。局長が何回か繰り返しこの委員会で答えているように、あの高度経済成長のときにはこれはうんと使った。今使わなくなった。あの高度経済成長のときには要らなかったのです、雇用促進のために。どこでも仕事が奪い合いであった。今は仕事がない。今こそ農村地域工業導入促進法を使わなければならない。したがって、これをどうしたならば全面発動させて地元に仕事をつくるか。大臣は地元に仕事をつくると言った。それを具体的に法的に保証しているのはこの法律なんです。この運営、地元でこれでふやす施策をお答え願います。
  205. 森実孝郎

    森実政府委員 農村工業導入実績は、確かに委員指摘のように、高度成長時期には非常に高かったものが五十年当初においては非常に落ち込みまして、若干回復しているというのが今の情勢でございます。これは、何と申しましても、設備投資の状況、景気の状況によって影響される本質を持っておりますので、これを強制していくというふうな仕組みで考え、運営することはできないと思います。  ただ、私どもといたしましては、今日の雇用情勢を見ますとき、例えば先ほどから委員指摘の出稼ぎ、日雇いの状況を見ても、全国的にこの十数年間に約三分の一に減っておりますが、はっきり申し上げると、例えば青森とか秋田は減り方が少ない、減ってはいるが減り方は少ないという実態があるわけでございます。やはり広域的な観点から工業導入を図るということが重要であると同時に、就業機会の少ない東北とか南九州などの遠隔地域に重点を置くことが必要であろうという方針を打ち出して「指導に努めているところでございます。しかし、雇用機会の安定という問題はこういった在来型の工業導入による手法だけではなくて、やはり地元における農産加工とか観光資源を利用した地元企業の育成という問題等も重要な課題だろうと思います。  こういう意味で、農林省も各局を通じましてそういった地場産業の育成の奨励施策を講じているところでありますが、今後ともその強化を図ると同時に、また、最近労働省も地域別の雇用調整政策にかなり積極的に取り組んでおられますので、こういった問題についての調整なりお願いを続けてまいりたいと思っておるわけでございます。
  206. 津川武一

    ○津川委員 そこで、農村地域工業導入促進法、これを北の方の辺地のところ、南の九州の方にと局長は言っている。重点はやはり雇用がない、出稼ぎ者の多い地域に集中して指導すべきだと思うのですが、出稼ぎ者との考え方でこの法律を運営するつもりはありませんか。
  207. 森実孝郎

    森実政府委員 私が先ほど申し上げました遠隔地域を重視するというのは、即出稼ぎ、日雇いの多い地域というふうに御理解いただいていいと思います。
  208. 津川武一

    ○津川委員 そこで、工業再配置促進法という通産省所管の法律があります。この農村地域工業導入促進法と並んで農村に持っていくやつなんですが、近畿と関東に移った工場は規模が大きいのです。雇用人員が大きい。私のところの青森や鹿児島あたりに行くのは規模が小さい。そこで、雇用人員が少ないのですね。こういう点で、やはり具体的に検討していただいて指導していただかなければならないというのが実態になっているわけです。白河の関を越えるとどうやら余り芳しくないというのが実態でございますので、この点もひとつ検討して指導していただければと思う次第でございます。  次は、土地改良法の問題に移っていきますが、事業の同意手続の簡素化に関連して、土地改良法の四十八条に、組合員の権利または利益を侵害することがない場合、施設の更新事業について同意手続が要らなくなるとしておりますが、利益を侵害しないとはどういうことか、組合員の負担の増加はないと理解していいのか。例えば同じ能力の揚水機械などの更新であっても、設定当時と更新時では費用が大きく異なってきております。農家の負担が当然高くなる。これがやはり施設の変更、更新だと思うのでございますが、この場合、どういう手続、これで農家の負担が当然高くなってもこのままの手続でいいのか、同意をとらなくてもいいのか、まずこの点をお答え願います。
  209. 森実孝郎

    森実政府委員 施設更新事業の開始に当たりまして同意手続を簡素化する場合には、法令上組合員の権利または利益を侵害するおそれがないことが明らかなものとして政令で定める要件に該当するものと規定されております。政令といたしましては、組合員の事業費負担について合理的なものでなければならないとする旨を明らかにしたいと思っております。これは費用が絶対額でふえるかふえないかという問題ではなくて、例えば一つの例で申しますと、施設の更新による管理負担の節減分が一方にある。それから、この節減分に当該施設の耐用年数を乗じた額というものは建設費負担より大きいかどうかというあたりが一つの基準になるだろうと思います。そういった意味で、そういう抽象的な基準と同時に、行政運営上、指導上必要な合理的な例示を示してまいりたいと思っております。
  210. 津川武一

    ○津川委員 ぜひその点は、負担がふえる場合は同意をとるように指導する必要があると思うのです。  浪岡の土地改良区に行ってみました。今一番何を私たちに要求するかと聞いたら、私は、そこでダムの問題が大きくなっているからそのことだと思ったら、そうじゃなくて、土地改良区が工事を施して補助をもらった、補助残の融資のお金を払えなくなっている、農業が行き詰まってきているから。そこで、これを土地改良区が農家から取り立てて返してやるに、これが一番の苦労になって、とうとう三千万円の赤字になっているわけであります。これが土地改良区の現在の実態なわけです。これに経費がふえる事業更新を同意をとらないというのはおかしいので、私は、原則として経費がふえるものはすべて同意をとるべきだと思いますが、いかがでございます。
  211. 森実孝郎

    森実政府委員 問題は、どういう種類の事業について同意徴集手続の簡素化を図るかということでございます。今回の問題につきましては、いわゆる施設の更新事業の簡素化という視点から進めたわけでございまして、事業区域や管理方法に大きな変更がない、つまり実質的な通常の管理と同質のものと見られる場合を対象にしているわけでございます。しかし、個別の同意をとらない場合でも総会の重要議決を経ることや知事の認可を受けなければなりませんし、また、異議申し立て手続もあるわけでございますので、そういう意味では、私は権利者の利益の保護に欠けることはないと存じております。
  212. 津川武一

    ○津川委員 土地改良区が今借金で苦しんでおる、農家が補助残の元利払いがたまってきたので非常に苦しんでおるという事態の打開は、今後明るい農村をつくる上に、生きがいのある農村社会をつくっていく上に決定的に必要なので、この点は十分大臣も論議を起こしていただいて指導してほしいということを指摘して、続けて問題を進めます。  この問題と関連して、青森県の浪岡ダムの問題ですが、国営浪岡川農業水利事業は当初三十二億円の事業費で昭和四十六年に始まったが、その後ダムの工法の変更や物価上昇などがあって、事業費が百四十六億円と四倍以上に伸びて、ほぼ完成に近づきつつあります。ところが、事業がほぼ終わった最近になって同意を求めております。この事実を御存じでございますか。
  213. 森実孝郎

    森実政府委員 同意手続が若干おくれているということは聞いております。  この種の問題は、正式の同意手続をとる前に、土地改良区の組合員の皆さんといろいろな形で、国なり県なり市町村なり行政当局が接触を持って、十分理解と合意を得る努力の積み重ねが必要だろうと思います。先刻田中委員の御質問の中にも御指摘がありましたが、そういった点はこれから十分それぞれの段階ごとに了解を得るための努力を続けてまいりたいと思っております。
  214. 津川武一

    ○津川委員 三十二億円が百四十六億円になる、こういう大きな事業変更を始めるときに、同意をとらないで始めてよろしいのでございましょうか。
  215. 森実孝郎

    森実政府委員 同意という形ではございませんけれども、事業実施については総代会への説明を何回か実施しております。定例会は八月と三月でございまして、これは毎年やっております。
  216. 津川武一

    ○津川委員 土地改良法の八十七条の三に、国営土地改良事業計画変更の場合、あらかじめ変更後の計画の概要を公示し、関係者の三分の二の同意を得なければならない、こう明確に定めておりますが、よもや政府はこの土地改良法を踏みにじってやったのではないでしょうね。
  217. 森実孝郎

    森実政府委員 それは全く誤解でございまして、ただいまも申し上げましたように、毎年総代会、総会、理事会等には御説明をしておりまして、御説明の積み重ねは行ってきたつもりでございます。
  218. 津川武一

    ○津川委員 総代会は開いておるかもわからぬけれども、三分の二の同意はとりましたか。
  219. 森実孝郎

    森実政府委員 今、同意徴集手続を進めている途中でございます。
  220. 津川武一

    ○津川委員 それなら、なぜ事業に着手したのか。
  221. 森実孝郎

    森実政府委員 国営土地改良事業を実施いたしますときに、工法の変更とかあるいは賃金、物価の上昇による事業費の改定は通常あるわけでございます。これにつきましては、事情を関係者に御説明しながら、毎年事業費の改定をどの地区もやっておりまして、一定のめどがついたところで、トータルの姿が固まったところで正式の同意徴集手続に切りかえておりますのが通常でございます。
  222. 津川武一

    ○津川委員 そうすると、今までのは同意手続でないというわけですか。
  223. 森実孝郎

    森実政府委員 問題は、この種の同意をとる場合において、いわゆる正規の法令上の同意手続という問題と事前の説明の積み重ねによる納得を得る努力という問題と、両面あるわけでございます。  それで、まず法令上の問題については、当然一定の時点において必要な手続をとっているわけでございまして、今回の計画変更につきましても所要の手続を進めて同意を徴集しておりまして、現在までのところ大体八割程度の同意は得ております。最終的に終結しておりません。  それからなお、先ほど申し上げましたように、毎年の定例会に、国営事業者側から事業費の改定や事業の実施状況については総代会等で御説明を繰り返しているという事実は、説明としてございます。
  224. 津川武一

    ○津川委員 私たちの国は法治国家です。法治国家で、土地改良法の八十七条の三にはっきりと三分の二の同意を経なければならないというふうに言っている。そこで、あなたたちもそういうことを踏まえて、「国営土地改良事業計画変更取扱要領」というものを出している。その第一は、「次の事項のいずれかに該当する地区はあらかじめ変更計画書を作成し、その内容について別に定める構造改善局計画変更審査委員会の審査を経るものとする。」となっています。この構造改善局計画変更審査委員会の審査を経ておりますか。
  225. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま御指摘がございました「国営土地改良事業計画変更取扱要領」による審査は経ております。  それからなお、計画変更をいつから着手したかという問題が事柄の性格上重要だろうと思いますが、浪岡ダムは五十二年に実施しましたが、この時点では計画変更の要因というものは特になかったわけでございます。しかし、その後工法の変更等により事業費の変動が累積いたしまして、計画変更要因に該当すると考えましたので、五十四年より計画変更手続に着手したものでございます。
  226. 津川武一

    ○津川委員 ついでに指摘しておきますが、その取扱要領の中では、労賃または物価の変動によるものを除く事業費の変動が一〇%以上に及ぶもの、これは同意をとらなければならぬ。これは指摘にしておきます。  そこで、三十二億円が百四十六億円になる。農家の新しい負担増はどのくらいになりますか。
  227. 森実孝郎

    森実政府委員 浪岡川の地区の総事業費の変動要因でございますが、三十二億円の当初事業費が百四十六億四千万円に増加しましたその内訳は、自然増、つまり賃金、物価の上昇によるものが四十億九千三百万、工法の変更によるものが七十一億九千三百万、それから事業量の変更によるものが二億八百万でございます。
  228. 津川武一

    ○津川委員 工法変更による増加が七十一億円。どうして工法を変更したのですか。
  229. 森実孝郎

    森実政府委員 内容としましては、浪岡ダムの関係と頭首工の関係がございます。  浪岡ダムの関係では、ダムの施工段階におきまして盛り土材料を採取するための掘削を開始しまして、精密試験を行った結果、従来の工法では強度的に十分でないということが判明したわけでございます。そこで、ダム形式を均一型からゾーン型に変更したという理由によるものでございます。それからもう一つは、ダムの基礎掘削を行った段階で基礎岩盤の試験を行いました結果、グラウト量の増加等、基礎処理の変更を必要とするということが技術的に判断されたからでございます。それからもう一つは、四十九年、五十年、五十二年に発生しました洪水のデータを追加しまして、計画洪水量を増大させて安全を図った、これに伴って雨水吐きの規模を拡大したということでございます。さらに、昭和五十一年に河川法に基づく河川工作物の構造令が制定されまして、ダムの安全性の基準が高まったことによる設計変更の要因がございます。  頭首工につきましては、先ほどと同じ四十九年、五十年、五十二年の洪水に対処するため、河川の計画断面が拡大され、これに伴い頭首工の延長が増大したものでございます。
  230. 津川武一

    ○津川委員 従来の工法が合わなくなったという、設計したときのミスでしょう。それから、工事を施している岩盤が調べてなかったのでしょう。  そこで、負担でございますが、私はこの三十二億円が百四十六億円になったについては、大きなかなめをなす工法の採択に間違いがあったのじゃないのか、工事着工するときに基盤の調査に問題があったと思いますので、どうしても変更しないと安全なダムはできないから、変更したことはよろしいです。そこで、受益者からはこの負担は取るべきでない。三十二億円でできるからといって同意した。そこらの説明が十分になされないで今は同意がとられている。この点、経費の負担について、私は政府が取るべきでないと思います。今は答えがいろいろなことでそれはまかりならぬと答えるかもわかりませんので、あえて私は、次の交渉の過程もありますので、答弁は求めないで、国が負担すべきものであるという意向だけを明らかにして、質問を進めていきます。後日これはゆっくり農水省の首脳部と話をして詰めてみます。と申しますのは、一部の負担農家は民事訴訟を起こさなければならないと言って、私はそれを抑えているのです。そこらの兼ね合いもありますので、これは詰めないで進んでいきます。そこで、もう一つの問題は都市汚水、村落汚水を自治体と協議して、知事が中に入るという問題ですが、これも黒石市と弘前市と浪岡町と五所川原市に行ってみました。  一つ例をとります。黒石市東北の方に、上堰という堰整理組合があります。西の方に下堰という整理組合があって、これが一緒に合併したのが黒石土地改良区。そこで、端っこの方にこれは用排水路なんです。中に市街地がどんどんできていってしまう。この市街地のところに幾つかのせきがある。これは土地改良区に入っていない。しかし、じゃんじゃん缶詰が来る、ビニールの袋が来る、ビニールの布が来る、汚泥が来るで、大変困ってしまったわけです。そこで土地改良区は、協議規定に基づいて市長と相談したのです。市長もまた一肌脱いでくれた。建設省にも手伝ってもらって、この沈殿槽を幾つかつくってみたのです。沈殿槽のところへどっと来て、一日でふさがってしまう。何日かたつと沈殿槽はヘドロでいっぱいになってしまって、沈殿槽の次の水田は、稲を植えると黄色に変わってしまう。それでお手上げなんです。お金が足りないのだ、市長におねだりに行かなければならない、お金が足りない、田はだめだという点で本当に苦労したときに、今度また知事も入ってくるということになったので、前進だと喜んでいるわけでございますが、しかし、いずれにしても費用が要る。この費用の出どころを考えないでやるわけにはいかないのだ。  そこで、市内の用水排水路になっている、そこで水田を耕しておる人たちは、町の人を訪ねてお酒やらせき掘りのお金をもらってきてやっている。それでは間に合わない状態がこういう状態になっているので、この費用がどこから出るのか。かなりな事業がやられるので、この点、今度の法律でどう運営するのか、間に合うのかということでございます。実際、町の中には堰組合はあっても土地改良区がないので、この人たちはだれを相手にすればいいのか。  もう一つ、五所川原。南の方にずっと用排水路が入ってくる。ここで南部土地改良区ができている。これが五所川原の市内を流れて、北の方に出ていく。そこから以遠は北部土地改良区。この町の真ん中に小ぜきが九十四個もある。これをどうするかなんです。土地改良区に聞くと、やはりおれたちも黙っておれないので、農家を督励して町民からお金をもらいながら、この町民は非農家なんです、こたえてくれる人もこたえてくれない人も。  この二つの事例が、土地改良法で今度の改正に乗るかどうか。乗らないとすれば、今度は農振法で言う協定事項に乗るか、乗せるにいいか。乗せた場合にどうするか、その費用をどうするか、ここがかなり大きな悩みなんでございます。ひとつ明確に、皆さんが納得するような方針を出してください。
  231. 森実孝郎

    森実政府委員 結論を先に申し上げますと、やはり土地改良法の体系で処理すべき本質のものであろうと思っております。  これはまず事業実態から申しますと、水質障害対策とかいわゆる集落排水等の排水処理対策、あるいは都市の下水道の整備、それからさらに、基本的には用排水の分離等をどう進めるかという、改良工事をどう進めるかということが重要だろうと思いますが、今日の現実の状況はそういう形ではなかなか処理を待つには長期を要するということも事実だろうと思います。  そこで、現在の法制の中にございます市町村協議の制度利用して、土地改良区と市町村は、だれが管理をするか、あるいは土地改良区が引き続き管理する場合においても、その増高の補修費用や管理費用はどうするかという問題を論議することになるわけでございます。この場合、実は原因者が単純明快である場合は原因者に追求することは民事的に見ても当然でございますし、可能であるわけでございますが、都市住民一般の生活が原因であるという場合においては、実際は原因者に追求することはできないと思います。したがって、費用の負担というものは、やはり市町村は、都市住民全体の生活を保持するという立場で、改善努力がない以上は負担をしていただくというのが筋道だろうと思います。  ただ問題は、その手続なり事実の確認が的確に行われるかどうか、また、それが公正妥当な結論であるかどうかということが議論になるだろうと思います。そこで、内容によってはなかなか市町村と土地改良区の間に協議が調わない、むしろ調わない場合が通例である。そういうことから今回協議の制度をつくって、協議に対する知事裁定の制度を導入したわけでございまして、国といたしましては手続、内容について一つの基準を決めまして、知事裁定までいかなくても、実際に県が中、心になってうまく調整が行われるような指導を図ってまいりたいと思っております。
  232. 津川武一

    ○津川委員 最後に、問題を根本的に解決しようとすれば、都市下水事業を管理していかなければならない。弘前市は都市下水事業が三〇%から四〇%進んで、それでこの問題は割合に深刻でない。五所川原あたりはほとんど進んでいない。  そこで、政府としては、こういうなかなか面倒な仕事を根本的に解決しようとすれば、下水事業を徹底的に進めることが一番大事だと思うのです。この点は、大臣にも、建設省のことだけれども、閣議で話してもらうことをお願いしていて、建設省が来ておりますので、ひとつこの下水事業の計画、実施状況、対策を報告して教えていただきたいと思います。
  233. 中本至

    ○中本説明員 お答えいたします。  現在、下水道の整備は、昭和五十六年度を初年度とする第五次下水道整備五カ年計画に基づいて進めておりますけれども、非常に厳しい財政状況のもとで、五十九年度の進捗率が五八%にとどまっております。しかしながら、この計画遂行のために努力しているところでございます。  今御指摘になりました青森等につきましては、青森県が普及率一三%と、全国平均三二%に比べてかなり低いわけでございます。その中で、青森市とか八戸市等、例えば青森市は普及率三〇%、それから八戸市は一〇%、弘前市は三二%、このように差がございますけれども、今後例えば五所川原市が五月下旬に通水とか、あるいは黒石市も岩木川の流域下水道の進捗に伴っていずれ通水する。さらに藤崎町とか田舎館あるいは尾上町等も、この流域下水道の整備と同時にこれがつながりますとどんどん普及が高まる。そういうことにおいて青森県の普及率を高めたい、そういう考えを持っております。
  234. 津川武一

    ○津川委員 そこで、青森県が一三%の進行率、この地域のところでは五所川原がほとんどゼロで、今ようやく共同の作業を始めようといって、今言われているとおり、これから何年かかるかわからないのだ。  そこで、せっかく大臣法律を提案したのだから、やはり下水道の関係を徹底的に進めていただく。黒石と五所川原では、用水はかん排事業として浅瀬石川右岸で今片づくのです。問題は都市のそれなので、ここに重点を注いで施策を施していくことを要求して、質問を終わります。
  235. 山村新治郎

    山村国務大臣 下水道は大切な事業でございますので、我々としても一生懸命協力してやってまいります。農林水産省といたしましては、ともかく農村の集落排水に全力を挙げてやっていきます。
  236. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  237. 阿部文男

    阿部委員長 上西和郎君。
  238. 上西和郎

    ○上西委員 私は、今回提案をされております農振法並びに土地改良法の一部改正の審議に入ります前に、まず基本的に大臣にお尋ねをしたいことがあるのであります。  私は鹿児島県大隅半島の出身で、典型的な混住地域に住んでおります。目の当たりにしてきた幾多の事例は、お上の言うことに従った農家は莫大な負債を抱えた、国が指導することに抵抗してみずからの方針を守った者が生き延びているという説が今根強く残っているのであります。そうした観点から、せっかくこのような法案をお出しになりましても、現に農業従事者が持っている国の農政に対する不信、このことが払拭されない限り、どんな立派な法律ができても仏つくって魂入れずということになるのではなかろうか、私、そのことを大変懸念しますがゆえに、まず山村大臣にお尋ねをしたいのであります。  三十六年に制定をされました農業基本法、すなわち高度経済成長に対応する農業基本法ということでやられたのでありますが、この法律の結果出てきた現象は、都市への無秩序な労働力や土地、水などの供給であり、その結果、食糧の自給率は大幅に低下をし、農業用地の減少と耕地利用率の低下、さらには優秀な若年労働力の流出、その上、土地の高騰が生じました。農村の衰微に拍車をかけたということが現実に生じてきている。こうした現象に対して、農業基本法を制定した日本政府は適切な施策を本当に講じたのか。こう見できますと、私は、歴代の農林水産大臣の方々を含め、やはり政府の責任は非常に大きい、このように考えざるを得ないのでありますが、こうした点について、まず本格的に見直しをされるお考えありゃ否やということで見解を承りたいと思います。
  239. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国農業、農村、これは国民生活にとって一番基礎となる食糧の安定供給という一番大きな問題もございますが、またそれと同時に、水資源の涵養、国土の保全、自然環境の保全、いろいろ公的な重要な役割も果たしておるのが農業、農村であろうと思っております。  しかしながら、現下の農業を取り巻く情勢は内外ともにまことに厳しいものがございます。この中にありまして、今先生おっしゃいましたように、兼業化、混住化、老齢化、これらの様相がかなり強まってきております。この農政の推進に当たりましては、さきに農政審議会から八〇年代の農政の基本方針及びその推進についての答申、報告を受けたところでもございますし、今後もこれらの方向に沿った生産性の向上と需要の動向に応じた農業生産の再編成を推進し、我が国農業の発展を図っていきたい、そのような基本的な考えを持っております。
  240. 上西和郎

    ○上西委員 ただいま大臣からお答えがありましたが、私は実はそこにひっかかっているのです。まだ当選日が浅く、十二分な調査はしておりませんけれども、少なくとも私が今回質問に当たって若干の資料に目を通したところでは、農政審議会の答申、農村計画制度研究会の中間報告、こういうのに目を通しますと、今後の農業、農村整備の課題として、農村計画制度の樹立を含め非常に幅広い総合施策の展開ということを求めているようであります。  今回のこの農振法の改正、趣旨は大いに結構であります。ところが、どうも答申に比べますと、出されたもののスケールが非常に小さく抑えられているのではないか、このことについて非常にこの感じが強うございますので、なぜこのように今大臣がおっしゃった答申に比べて小さくならざるを得なかったのか、それは世に言う日本の官僚制度の持っている根強い縄張り根性の悪影響なのか、あるいはまた、ここまでは大臣以下の必死の奮闘の結果まとまったことであり、これは第一陣としてあるので、この後、第二弾、第三弾の計画、構想等がありゃ否や、このことについて、できればここで御説明をいただきたい。そのことなしては、この法案の審議にちょっと入れないと思いますので、お願いいたします。
  241. 森実孝郎

    森実政府委員 村づくりに関連いたしまして、農政審の五十七年八月の最終報告で指摘されている点は五点ございます。  まず第一点は、村の共同活動の振興という問題でございます。二番目は、計画的な地域資源利用と緑資源の保全という問題でございます。三番目は、安定した所得と就業機会の確保という問題でございます。四番目は、居住環境の総合的整備という問題でございます。五番目に、農村整備計画的推進ということがうたわれているわけでございます。今回の法制は、こういった基本的な考え方を基礎にいたしまして、現実的に各地域で提起されている課題を帰納いたしまして、具体的な手法を整備し、目的の整理を行ったものでございます。  私一いろいろな見方はあると思いますが、例えば村の共同活動の振興という問題については、生産問題だけではなくて生活問題、就業問題も含めて市町村長さんに取り組む姿勢を示すと同時に、やはり集落協定という今日の崩落しつつある村機能にかわる新しい制度をつくったという意味においては、かなりの要請を消化したつもりでおります。  二番目は、計画的な地域資源利用と緑資源の保全でございます。  線引き立法としての農振法というのは、計画的な地域資源の農業利用ということを基本的な枠組みとしているわけでございますが、特に現実的には、集団的な土地利用調整を通じて山村の里山の開発を進める、休耕地の解消を図る、裏作の導入を図るということが農業的には非常に重要な問題だろうと思います。そういう意味で、それにこたえるための地域農業集団の育成による土地利用調整の問題を農振計画上の課題としてはっきり取り上げているわけでございます。  緑資源の保全という問題は、一言で申しますと、農業振興よりむしろ林業振興という性格もございまして、すぐれて山村の問題というふうな面もございますので、直接には触れておりません。ただ、住民協定等の活用を通じて、居住地域にある緑の保全という問題は住民同士で協定できることを頭に置いております。  三番目の安定所得と就業機会の確保という問題につきましては、これは再三御議論を賜っておりますように、とにもかくにもいわゆる市町村の農業振興計画の重要な柱としてうたったわけでございます。  居住環境の総合整備も全く同様でございます。五番目の農村整備計画的推進というのは、いわば手法と計画とをどう組み合わせるかという技術的な側面を持った御提言と思いますので、それなりに今回の農振法と土地改良法改正としてはうたってあります。不十分であるかないか、これはいろいろ法律の見る目とこれからの運用によって決まってくると思います。  私は、率直に申し上げまして、議論する過程で私どもが持っております共通の感じは、日本人の意識というものは非常に多様化している。生活活動や生産活動も非常に多様化してきている。そういう中で、何か固定的な統制的な手法を持っていくということには問題があるのではないか。むしろ現実に提起される問題をフィードバックしながら解決していく、その手法を整備する、あるいは総合的なリーダーとして地域社会での市町村長が動ける、包括的に物を考えて行動する原理原則を示していくことが重要ではないかということで今回の法制となったわけでございます。今後重要な、具体的な課題が提起されれば、農振法も土地改良法もその時期においてまた改正することは当然必要であり、また、それを怠ってはならないものと私は思っております。
  242. 上西和郎

    ○上西委員 お答えはわかりました。  ただ、私も野にあった時間の方が圧倒的に長うございますのでよく聞くのですが、末端地方公共団体の第一線で農政に携わっている方々から大なり小なり寄せられている声は、中央の各行政官庁の縄張り争いによって総合的な農村整備計画がなかなか樹立てきない、非常にやりにくい、困る、このことが地方公共団体で非常に悩みの種になっている。また、総合的に何かをやろうとするときの大きな障害要因になっている。このことはこれ以上お答えいただこうと思いませんが、率直に申し上げまして現実にそのようになっている。  伴食大臣という言葉を覚えていますが、伴食大臣という中には、戦前は農林大臣は入っておりませんでした。極めて枢要な閣僚であるというふうに我々は小学校のころ教えられたものでありました。伴食大臣が当時だれであったかは申し上げませんが、最も権威ある大臣の一人であった農林大臣農林水産大臣と変わりましたが、何といっても極めて重要な大臣のポストでありますので、山村大臣を先頭に、少なくとも縄張り根性によって農政が阻害されるということが絶対起きないように、今次法の改正に当たっても御決意を固めていただきたい。このお願いを申し上げ、次に進みます。  実は、再三お話があるように、農業を取り巻く環境は今内外ともに悪化の一途をたどっていると言ってもよいでしょう。今回の改正案とどういう関係が出てくるのか、その辺でちょっとお尋ねしたいのであります。  例えば農畜産物の価格は低迷を続けておりまして、私の地元鹿児島県の主要作物でありますカライモからのでん粉は、極端に言えば、これまでの間三十年で一円も値が上がっておりません。三十年値が上がっていない主要作物なんというのは、日本でできるものの中でほかにないと思うのです。コーンスターチの輸入の悪影響もあるのでありますが。そうした実態や四年連続の冷害、ことしの異常豪雪、こうしたことから農業所得が伸び悩んでおる。片一方で、我々は異論があるのでありますが、皆さん方は自信を持って大規模な水田利用再編成をことしもまた押しつけ、推進を図っている。さらには、山村農林大臣には大変御健聞いただきましたが、結果的には幅の差こそあれアメリカから押しつけられて、海外からの圧力に基づく農畜産物輸入枠拡大を余儀なくされた。これは御苦労はわかりますけれども、結果としては私たちは正直に御批判を申し上げなくてはなりません。  そうしたことをずっと見ていきますと、例えば牛肉、オレンジの枠の拡大等を含めて、こうした悪条件の中で今回の法改正を見ていきますと、政府の農政に対する考え方はあくまでも構造改善に置こうとしておる。果たしてそれだけで事足りるとされていいのか。今回の法の中だけでなくて、もっと、例えば生産政策、価格政策はどうなのか、こうした総合的、抜本的な農政の見直しが並行して行われないと、先ほど私が申し上げましたように、とりわけ森実局長に本当に大健聞いただいて今度の法案を策定されたと仄聞をいたしておりますが、その御苦労が結果として農民にとっては益しないということがまた出てくるのではなかろうか、こういう懸念を抱かざるを得ません。したがいまして、このような点についてどういう将来展望をお持ちなのか。もしそれがないとするならば、ないままでこのようなことをおやりになっても、結果的にあなたの努力が水泡に帰するのではなかろうか、こう考えざるを得ませんので、お答えをいただきたいと思います。
  243. 山村新治郎

    山村国務大臣 今先生が言われましたように、我が国農業を取り巻く内外の情勢はまことに厳しいものがございます。農産物需給の緩和、行財政改革から参ります効率的な農業の推進、そしてまた、今お話がありました農産物市場開放要求が外国から強く参っております。  このような情勢に対処しながら、農業者が将来夢と意欲を持って取り組めるような農業というものを推進していかなければならないと思います。中核農家経営規模の拡大、優良農用地確保農家基盤の整備、それから農業技術の開発普及、また村の住民に就業と生きがいの場を与える豊かな村づくり、そして先生が言われました各般の施策といたしまして生産対策、価格対策、これらを含めました総合的な推進によりまして、生産性の向上、我が国農業の体質強化を図ってまいり、農村に活性化を与え、そして先ほど申しました夢と意欲を持って取り組めるようにやってまいりたいと思っております。
  244. 上西和郎

    ○上西委員 大臣お答えを聞いておりますと、まさに目の前に夢と希望がわいてくる感じがするのであります。しかし、現実はそうじゃないでしょう。大臣はすばらしいことをお答えだと思いますよ。大臣の今のお答えを現に農業に携わっている方々がお聞きすれば、本当に喜ぶと思います。しかし、現実はそうならないことを、厳しい一面として私はずばり指摘をしたいのです。  私、ごく最近ある有名な週刊誌を読んでおりましたら、アメリカ農業の衰退ということで特集記事がありました。地球の砂漠化が進んでいる。アメリカ農業土地を大規模に殺し殺しして次々に移っているだけで、衰退の一途をたどっているではないか、こういう具体的かつ科学的な指摘などが記事の中にありました。私は本当に驚いたのでありますが、こういう状況がありますと、いかにして我が国食糧自給力を高めていくのか、この重要性が日に日にまた高まってくる。あるいは高度経済成長がだんだん行き詰まってきまして、産業構造の見直し等が必要になっておりますが、農業を産業としてどう見直すのかという視点も、今農水省だけではなく、我々だけではなく、全国民的な視野から改めてとらえ直す必要がある問題になってきているのではないか。  あるいは、今局長お答えの中にもありましたが、農業の国土保全、いわゆる水田利用再編成のために日本で何十何百というダムがなくなったと一緒の結果が生じているわけでしょう。集中豪雨の結果国土が荒れる、それは田んぼをつぶしたからだ、こう言われても返す言葉がない現実があります。  さらに、森林浴という言葉がはやるように、森林の持つ機能が再認識をされつつある。さらに、今大臣が若者に夢と希望とおっしゃったけれども、若い方々が農村地帯に定住をするような生活環境の改善ということについては、この農振法の中でうたってはありますが、どうも構造改善の方が優先をして、このことが取り残されているのではなかろうか、こういう気持ちを持つものでありますから、せっかくお答えいただきましたけれども、今お答えいただいた言葉を私は逆に大臣に投げ返しまして、できましたらあと一言、これらの問題を含めての御見解を承りたいと思うのであります。
  245. 山村新治郎

    山村国務大臣 今御審議いただいております法案は万全のものではございませんし、先ほど局長から御答弁申しましたとおり、これは第一歩でございます。そしてまた、足らざるところはどんどん法改正をお願いをしてまいるというような気持ちで取り組んでまいります。
  246. 上西和郎

    ○上西委員 山村大臣の積極果敢な意欲を高く評価をいたしまして、では、農振法の具体的な質疑に若干入らしていただきたいと思うのであります。  私は出てきてまだ日が浅いのでなんでございますが、計画という言葉にどうも理解が届かないという率直な気持ちを今持っておるのです。例えば現行法では農用地区域の設定、いわゆる線引きを中心とする計画にとどまっているというので今度の改正案が出たわけでありますが、この計画という言葉の持つ意味というのは何なのか。あるいは、今回の改正では計画内容をさらに拡充をするとあるが、現状のままでこういったことをされると屋上屋を重ねる結果になるのではないか。この計画実現のための具体的な方策、特に予算の裏づけ、これらについてお答えいただきたいと思います。
  247. 森実孝郎

    森実政府委員 計画制度というものも多義的なものでございます。農振法の計画というのは、農業振興を図るべき地域を外延的に線引きで定めると同時に、その内部における農業振興を図る施策を織り込んでいくという本質的な性格だろうと思います。  従来、この農振法の計画では、どちらかと申しますと、線引き自体、農業の基盤整備土地改良の問題、あるいは農地保有の合理化の問題等に限定されてきた。しかし、農振地域の法制に則して村ぐるみで農業の体質強化、振興を図ろうとすれば、就業問題も取り組まなければならない、あるいは生活環境の問題にも取り組まなければならぬ、そういうことが書いてないじゃないかという御批判があったわけでございます。百も二百も御承知で、先ほど詳細問題に触れる御指摘がございましたが、まさにそういうこともあったわけでございます。  今回は、そういった末端の方々の要望を受けとめて、生活環境の整備なり就業改善という問題を計画として正式に織り込んだし、また、土地利用調整の問題についても、幅広く集団的土地利用調整による成果というものを期待して、そのための目標を掲げることとしたわけでございます。  そこで、施策をどうするか。これはそれぞれそこで織り込まれた問題で、就業改善のための努力、生活環境整備のための努力、あるいは土地改良のための努力というものをどう続けていくかという問題だろうと思います。特に就業改善の問題と生活環境整備の問題は農林省だけで自己完結的に終わる問題ではございませんで、他省庁の強力な御支援、御協力がなければ、末端から積み上げられてきた計画なり計画を実現するための手段というものを整備することはできないわけでございます。  そこで、生活環境の整備につきましては、そういった末端の計画を受けとめて、我々が現に予算措置を講じております各種の地域の総合助成事業や生活基盤の整備事業等の運用に当たって、予算の確保と同時に、その計画に則した集中的実施とか優先採択等を考えていくと同時に、道路の問題、文化施設の問題、いろいろございますので、そういった強い要望というものは、関係各省に地域の具体的な要望として計画として受けとめてほしいということで、密接に連絡をとり、要望する努力を続けていかなければならないと思います。さらに、我々の各種の予算制度についてもその要望をフィードバックして、必要な手直しを考えることもあっていいだろうと思っております。  就業問題につきましては、当面は出稼ぎ、日雇いというものをどう解消していくかということが中心テーマになるわけでございまして、そのために工業の導入の問題、それからもう一つ地域の地場産業の育成の問題をどう進めるかだろうと思います。私どもが通産省と共管で持っております行政手段でありますいわゆる農村工業導入制度とか、遠隔地、広域的配慮を重視してこれからどう進めるかという問題に努力を傾注すると同時に、また労働省等にもお願いいたしまして、またほかの省にもお願いしまして、もっと幅広く農用地の問題、地域ごとの雇用調整の問題について上がってきた問題を受けとめてつないでいきたいし、要望していきたいと思っております。  さらに、地場産業の育成の問題につきましては、地場の特産物を活用した農産加工の問題とか観光資源を活用した地場産業の育成ということは、過去において各種の総合助成事業を通じてかなり定着して効果を上げている地域もございます。しかし、反面うまくいってないところも実はあるわけでございます。そういったうまくいっている例、うまくいっていない例を反省材料としながら有効な指導を行って、そういう総合助成事業等を生かして努力を続けたいと思っておるわけでございます。
  248. 上西和郎

    ○上西委員 次に、地域農業集団の育成ということが強調されておりますので、これらについてはどんな性格なのか、また、その活動について具体的に何を期待しておられるのか。これは、やはり私の地元のことと比べてひっかかるのであります。というのは、私たちの鹿児島県は特殊な不良土壌です。ですから、基盤整備がおくれております。その上、地理的な条件から農産物の流通条件が不利です。こういう状況の中で、基盤整備の促進と相まって、今後の奨励作物の適切な選定及び流通条件整備等があってこそ地域農業集団が機能的に活動できると思うのでありますが、このあたりはどうなのか。特に農家の不安が大きい肉用牛及びミカンの振興についての基本的な考え方もあわせてお示しをいただきたい、このように考えます。
  249. 森実孝郎

    森実政府委員 肉用牛の振興とミカンの振興については、それぞれ担当局長の方から。——それでは、専門ではございませんが、私から補足して説明させていただきます。  まず地域農業集団の問題と、それからもう一つ土地改良事業なり基盤整備事業と地域農業集団の関係の問題についてお答えさせていただきます。  地域農業集団の性格というのは、集落を基礎とした地縁集団として考えております。この場合、いわゆる土地利用提供者については一ないし数集落の集落に居住する地権者を頭に置いておりますが、地域によっては、受け手については、特に大都市周辺等においては有効な中核になる受け手がいないという地域もありますし、特に裏作等ではそういう傾向が顕著にございますので、これはかなり広域な高能率生産組織や中核農家の参加を求めていきたいと思っております。  問題は、何に取り組んでいくかということだろうと思います。私ども、実は農用地利用増進法の基本的なイメージ、もちろん農用地利用増進法は幅広い法制としてありますが、基本的なイメージにあるのは、利用権の設定による中核農家の規模拡大であろうと思います。そのことと、利用の面的集積が最終的には構造政策の基本にある、土地利用面での基本にあると私は思いますが、しかし、一挙に何もかもそこで問題が解決するという性格のものではない。作目によって、地域によって程度が非常に違うわけでございます。  そこで、作業受委託も含めて利用権の設定と合わせた規模拡大を考える方法、それから機械の共同利用等によって、これは自分の土地と他人の土地の交換利用等も含むわけでございますが、そういう機械利用のための面的集積、それからもう一つは地方の維持の問題、これは実は甚だ恐縮でございますが、鹿児島の地方維持運動、村づくりの運動も、私非常に参考にさせていただいたわけでございますが、そういった地方維持のための有畜農家と耕種農家の連携の強化やいわゆる連作障害回避のためのローテーションの問題、それから四番目はいわゆる不作付地の解消とか裏作の導入とかあるいは里山の開発を頭に置いた土地の効率的利用の問題、このどれでもいいし、一つでもいいし、全部でもいい、そういう形で具体的な作目と地域の実情に応じたテーマについての処理というものを地権者及び中核農家の話し合いの中で解決していくということをねらっているものでございます。  そういう意味においては、いわば従来の部落を中心とした団体ではございますけれども、かなり機能的な、土地利用の調整に着目をした、しかも現実的な団体として考えておりまして、それが次の段階においていわば農用地利用改善団体という農用地利用増進法に予定します一つの組織にまで段階的に昇華していくことを期待しているわけでございます。  土地改良の問題、これは私、土地利用調整を図る場合の前提だろうと思います。率直に申し上げますと、従来どちらかというと、農林省の施策は土地利用調整をやることを前提にして土地改良を進めるという発想が比較的強かったのでございますが、なかなかどうもうまくいかない。採択のときは計画でつじつまが合うけれども、あとはなかなかうまくいかない。そういう点をみんなで議論し、反省いたしまして、むしろ基盤整備事業の進展に応じて土地利用調整を進める、上に乗せていくという発想が要るのではないだろうかと思うわけでございます。  土地改良事業の予算はなかなか厳しい制約がありますが、これからも予算の確保に努めると同時に、地域社会からそういって起きてきております、農振計画その他等から提起されてきております問題をベースにして事業の採択実施をやっていきたいと思います。第三次土地改良長期計画の際には、バックデータとして、実は各市町村の農振計画によります土地改良や生活基盤や防災等の事業の要望を全ナショナルベースに引き直して数字をまとめたという経緯もございますし、今日の時点で見直していただければ、その見直したものも受けとめて事業をやることを考えたいと思います。  なお、肉用牛とミカンの問題については担当局長おりませんが、官房長がおりますので、官房長からまとめて答弁させていただきます。
  250. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  今回の日米農産物交渉におきまして、特に肉用牛、ミカン等につきましては、生産者の方々、いろいろ御不安を持たれたように思っております。しかしながら、牛肉につきましては、今後豪州との交渉もございますが、私どもといたしましては、国内の需要を念頭に置きまして、それを超えるようなことがないように国内生産と調和させながら輸入を規制していくという考え方を原則にいたしております。  今後の問題といたしましては、肉用牛生産は土地利用型農業一つの大きな柱でございますし、国土資源の有効利用を図る上におきましても非常に重要なものでございますし、特に農山村等を考えた場合、この振興の上でも重要だということでございますので、私ども土地利用型農業の中では稲作と並ぶ重要な産業である、作目であるというふうに認識をしてこの振興を図りたいと考えております。昨年、御承知のとおり酪農振興法の改正をいたしまして、酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律ということにいたしまして、肉用牛生産の振興につきましても制度の完備を図ったところでございますし、昨年の十月には、この法律に基づきまして酪農及び肉用牛生産の近代化基本方針というものを策定いたしております。こういう方針に沿いまして国内生産近代化を図りながら、価格といたしましてはEC水準というものを頭に置きまして今後対策を進めていきたいと考えております。  また、かんきつにつきましては、私ども、四十年代当時から果樹は相当伸びるというふうに思っていたわけでありますけれども、嗜好の変化等もございまして、果樹については見通しが大きく変わってきております。特にミカンにつきましては、四十年代以降大幅に伸びると思っておりましたけれども、これがそうはいかなくなってきた。特に五十年代に入りましてからほかの清涼飲料等も入ってきておりますし、国民の嗜好の変化が一番大きいかと思いますけれども、ミカンの見通しにつきましては長期見通しと大分変わった様相をとってきております。そういうことで、私ども、三年前から果樹につきましては樹園地転換という方策を、非常に積極的な強硬手段をとり出したわけでございますが、今後これによりまして、ミカンにつきましても品質、コスト面におきまして消費者の嗜好に即応して、また外国の品種にも負けない、そういう産地づくりをやっていく必要があろうと思っておりますし、また、生産調整という観点からは五十九年度からさらに六十一年度まで、従来の三万ヘクタールに加えまして一万ヘクタールの園地転換を追加するようになった次第でございます。  今後ともミカンの生産性向上なり関係農家の経営改善ということを目標にいたしまして、樹園地の整備なり優良品種の更新、集出荷施設の近代化等、こういう政策を講じてまいりますし、また、先ほど申し上げました果樹の将来需要につきましては、基本的にもう一度見直す必要があるというようなこともございますので、部内あるいは関係者を集めまして今後抜本的対策を、しかも早急に講ずる必要があると考えております。
  251. 上西和郎

    ○上西委員 お答えはわかりますが、何といっても農家の皆さん方は不安におののいているのが実情であります。ぜひそうした農家の皆さん方の気持ちにこたえ得る施策を明確に、かつ親切丁寧にお出しをいただきたい、このことをお願いをしておきたいと思います。  次は、法案の中にあります協定制度について少しくお尋ねしたいのであります。  確かに集落が変化をしてきている、そうしたことからいろいろなことが起きているのが現実であります。そうした中でのこの協定制度の創設ということを、一応私たちも評価しないではありません。ただ、こういうことが出てきますと、ややもすると地区住民の方々の意向より市町村主導型になる危険性がないか、率直に私は懸念を表明したいと思うのであります。  先ほど局長が、鹿児島のやり方云々とありました。実は私のところにも鹿児島県からはぜひという要望等も若干寄せられておりますが、その中でありましたのは、私の地元鹿児島県でやっておりますのをちょっと申し上げますと、五十二年以降農村振興運動が展開されまして、その一環として村づくり、いわゆる集落づくりをやっており、そして協定が結ばれております。その結果もちろんある程度の成果を上げてきておるのでありますが、そうした観点からしますと、今回の法改正はこの運動と軌を一つにするものであり、特に集落協定制度は村づくり協定に制度的枠組みを与えるものとして、鹿児島県の関係者も高く評価をしているのです。しかし、この場合農村振興運動の推進と同じように、あくまでも地域の自主性を尊重すべきと考えるのでありますが、その辺の御見解はどうなのか。  あわせまして、四年前に農業センサスで、全国に約十四万集落がある、こういう統計が出ているやに仄聞しておりますが、政府当局は、こうした十四万の集落の中でどの程度こうした村づくりあるいは協定づくりが可能なのか、推定でも結構ですがお考えなり数字等がもしおありになればあわせてお示しをいただきたい。
  252. 森実孝郎

    森実政府委員 協定についての考え方は、委員の御指摘と私どもも全く同じ考えに立っております。確かに、現在の農村社会において従来の総有的性格を持った部落の機能というものは後退してきている。既存の秩序の上に立った枠組みを復活する努力はすべきではないし、またできない。そこで、個々のケースごとに地域住民が共通に直結して当面している問題を解決するために話し合いを進める、それを契約の形で処理していこうというのがこの考え方でございます。  ただ、この中で、例えば畜舎とか堆厩肥舎とかじんかい処理施設等の配置を決める協定等については、一定の範囲で承継効を認めたり、あるいはまた一定の範囲で、単独行為によって、反対していた者が後日参加する道を開く等の特定の法律効果を付与する。それからまた集会施設等の共益施設の管理については、やはり公正妥当に行われることを市町村が監視するという意味で認定制度を設けるということで、その部分について法制化したものでございます。  私どもは、協定につきましてはもっと幅の広い協定を期待していい。例えば一号の協定のアナローダというか、類推にあるものとしては、もつと範囲を広くハウスとか農機具舎、そういう農業用施設の配置なりあるいはその裏腹にある土地利用区分みたいな協定があってもいいのではないか。また、小水路や集会施設の管理協定以外に、市町村道になりていない集落道とか緑、樹木の維持管理とか、そういう協定もあっていいと思います。こういったものは、幅広く、要はそれがいわゆる少数者を圧迫しないように、公正妥当にオープンな形で運営されることが大事であり、そのための行政を考えたいと思います。  ただ、私どもは、この種の協定をどんどん各地域に慫慂していくという姿勢はむしろ避けた方がいい。各地域が当面している問題を解決するためにこういう手法がありますよということを参考として十分お教えして、それを活用していただくという姿勢の方が当面要るのではないだろうか。そういう意味においては、画一的にテーマを決めることはまず避けて、それぞれの地域で当面している課題についてやっていただいていいし、また、必要ないところはやる必要もないというのが現実の姿であっていいのではないか。その意味で、例えば農業集落十四万、その中で農振地域に入っている集落が十二万数千集落ございますが、この集落の幾つに協定が結ばれるかというふうには私ども考えておりません。法律に予定する協定が結ばれる場合はそう多くはない。むしろ法律に予定しない幅広い協定制度というものを活用することを皆さんに熟知していただくことの方が大事なのではないだろうか、このように思っております。
  253. 上西和郎

    ○上西委員 それじゃ、質問を進めます。  農振法は、そもそも優良農地確保というのが主目的だったと我々は記憶しておるのでありますが、現在優良農地確保のためにどのような方策をお考えなのか。また、現にどの程度この農振地域区域内に農地が残されているのか。さらには、これから先現在の農業の実態を思うときに、農地有効利用を図らなければならないと思いますが、今回の改正に当たっては具体的にどのようなお考えをお持ちなのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  254. 森実孝郎

    森実政府委員 実は今回の改正には直結した部分ではございませんが、農用地区域面積は現時点では五百六十七万ヘクタールあり、農用地が四百四十九万ヘクタールございます。これは十年間に、農用地区域面積農用地区域内の農用地面積に関して言うならば、若干ふえている形でございます。私どもとしては、六十五年の長期見通しに即した五百四十万ないし五百五十万の農用地確保ということがまず基本にございまして、その中でやはりその大宗を農用地区域に期待しておる、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、今後の農用地開発を行う予定地というのは、農用地区域内の山林原野あるいは一部白地農振地域山林原野等に期待することになると思っております。
  255. 上西和郎

    ○上西委員 では、最近極めて流行的になっておりますバイオテクノロジーの問題について、この際あわせてお尋ねしておきたいと思うのであります。  農業振興、さらには先ほどから出ております地域開発集団などをいろいろ想定いたしますと、どうしても産・学・官と農家の皆さん方の間で直接情報を、特に先端情報をいかに円滑に、かつ迅速に流すかということは大変大事になってくるのじゃなかろうか。その体制づくりが不可欠と考えられます。例えば、私の地元の鹿児島の例を再三引用して恐縮でございますが、本年度から鹿児島県では農業先端技術情報銀行というのを設置することを決めております。そうした点等を含めて、農水省はバイオテクノロジーの問題についてどのようなお考えをお持ちか、御説明をいただきたいと思います。
  256. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 お尋ねのございましたバイオテクノロジーを初めとする先端技術関係の技術開発、また、その研究成果等の情報の活用の問題でございます。  ただいま御質問の中にもございましたような、鹿児島県ではそういう一種の情報センター的なものをつくりまして、ここを中心にしていろいろ試験研究機関で開発されました研究成果を情報交流をする、こういうことに既に着手しておられますが、現在の状況は、技術の開発そのものにつきましては、御指摘の中にもございましたような官・産・学の連携ということを基本に置きまして国が基礎的研究を担当する、それから民間等の研究活力を大いに活用するような助成、指導等の措置を講ずる、それに加えまして、品種改良等の基盤になりますような遺伝資源の収集管理システムをつくりますとか、そういうことも含めた総合的な研究体制をつくるということで、私どもの技術会議事務局の中にバイオテクノロジー室を設けましたり、昨年十二月に農業生物資源研究所というような新しいこういう関係の研究を専門的に担当します中央研究機関をつくったりしております。  情報の問題につきましては、従来から、これはバイオテクノロジー等だけではございませんが、それぞれの研究機関で研究成果を公表するとか、中には具体的に農家等の方々に門戸を開放して、一種のいろいろな意味で技術の新しい動きに触れていただくような機会を設ける、そういうこともやっております。国の方としましては、私ども技術会議の事務局が中心になりまして、各研究機関の研究成果を定期的に刊行物として、新しい技術でございますとか技術生活シリーズとか、そんなような形で配布しております。そのほかに、これはある意味では鹿児島県で今度設けられましたセンターのいわば中央版のような形でございますが、農林水産技術情報協会というものをつくっておりまして、ここで各県にも御参加をいただき、それから民間、各方面の業界また団体に御参加をいただいて、そこに国や県の研究の成果をいわば情報として集めまして、会員等を通じてそこからまた情報を御利用いただく、そういうような一種の情報の流れを頭に置きまして既にスタートしておりますが、まだまだこの点、御指摘もございましたようにこれからさらに情報の利用のシステム化を図っていく、こういうことも必要であると思っておりますので、さらに一層の充実整備を図っていきたい、かように考えております。
  257. 上西和郎

    ○上西委員 今度の法改正の中で、林地の交換分合の創設、こういうのがあるのでありますが、この制度の実施見込み並びにこれを効果的に運用するための具体的な方針というのを御説明いただきたいと思います。
  258. 森実孝郎

    森実政府委員 従来から里山を農用地開発に充当していくということは通常の姿だったわけでございますが、問題は、開発適地と開発を希望する者の所有とが一致していないところになかなか思うように進まない点があったわけでございます。そこで、私どもとしましては、林地と林地の交換分合を認めることによって、開発適地である林地が、いわゆる集落に近接する等、そういった開発適地のところが、開発を希望する部落なり集落なりの共有になる、あるいは個人の所有になるという形をつくり上げていくということが非常に重要ではないだろうか。そういう意味で、それを新しく金銭対価をもって取得するという方策以外に、林地と林地との交換分合によってそれを可能にしたいということをねらったわけでございます。  この農用地開発のための林地の交換分合は、どちらかと申しますと比較的里に近い場所で行われる小規模の農用地開発には相当の大きな効果を上げることができるものと期待しております。むしろ、そういうものを集落単位で進めることが地域の構造政策の進展に大いに役立つという観点から踏み込んだものでございます。定量的にはなかなか把握できないものでございますけれども、いわゆる農用地区域内に存在しております山林原野等がこれに当たるものと思っております。  なお、この際ちょっとおわびしておきますが、先ほど私が申し上げました数字は、農用地面積ではなくて農地面積でございますので、修正させていただきます。
  259. 上西和郎

    ○上西委員 では、農振法の方は一たん打ち切りまして、土地改良法について後少しく御質問したいのであります。  私、土地改良事業の重要性というのは、これは極端に言えば全国民的なニーズのもとに行われている、こう考えているのでありますけれども、今度の法改正について若干調査してみて驚いたのです。この五年間、予算が全然伸びてないわけですね。したがいまして、事業が大変停滞している。昨年スタートした土地改良計画も、早くも二年目にして破綻を生じようとしている。こういうことがあったままで法改正をやってどうなるのだろうかという素朴な疑問でございます。新人ですからお許しをいただきたいと思いますが、本当に素朴に思いました、一体どうなるのだろうかと。ですから、その辺、今後どうなるのだろう。工期の短縮などはどう進められるのだろうか。いたずらに事業費の増高、受益者負担の過重ということが予測されるが、まずこのことを基本的に解決しないと、法改正を幾らやっても、仏つくって魂入れずになるんじゃないかとさえ思いますので、この点、まずずばりお答えいただきたいと思います。
  260. 山村新治郎

    山村国務大臣 第三次土地改良長期計画は、昨年、五十八年度を初年度といたしまして、三十二兆八千億円を十年間で事業量として取り扱うということを決めたわけでございます。  今先生御心配なさいましたように、確かに五十八年、五十九年で一一%の進捗率ということで、かなりおくれております。しかし、御存じのとおりの苦しい財政事情のもとで一一%を与えられたわけでございますので、これを何とか円滑に推進するために、新規事業の抑制、そしてまた継続事業の推進や部分効果の発生する地域、ここへ予算の優先配分、また事業計画の樹立に当たりましては、地域の実情に応じた設計基準の弾力的運用を図るなど効率的に事業を実施してまいる考えでございます。  また、土地改良長期計画は、水田の汎用化や中山間地帯での圃場の整備等それぞれの地域の自然的、社会的な条件に応じた整備水準の達成を図ることとしておりまして、平たん地を中心といたしました第二次土地改良長期計画整備水準とはおのずから異なるものでございます。先ほど先生が西日本方面において整備がかなりおくれておるというようなことも申されましたが、新たな整備水準等を十分配慮いたしまして、事業の着実な実施、また大臣といたしますと、今度の予算の獲得を一生懸命やってまいるつもりでございます。
  261. 上西和郎

    ○上西委員 それでは、この場をおかりして少しローカル的な要望を込めたお尋ねをしたいのでありますが、率直に言って予算の傾斜配分はできないかということであります。  私の地元鹿児島県では、大変熱心に土地改良をやっておりまして、当面、南薩とか十三塚原とかいろいろやっているのですが、整備率は圃場で三五%、かんがい排水で二八%と、大変低い数字にあります。これは地形条件が悪く工事単価も高いということで、ますます進展がおくれる傾向にあるのでありますが、総体的な予算を傾斜配分をし、日本国全体の土地改良事業がバランスをとって進むというようなことについては御配慮いただけないものでしょうか。
  262. 森実孝郎

    森実政府委員 率直に申し上げますと、西日本が東日本、特に東北、北陸に比べてトータルとしてはいわゆる水田の整備水準がおくれていることは事実でございます。ただ、お言葉を返して恐縮でございますが、鹿児島は西日本の中ではどちらかといえば整備水準は高い部類であると御理解をいただきたいと思います。  しかし、現実に第二次土地改良長期計画のもとにおける予算の配分と第三次土地改良長期計画のもとにおける予算の配分は、おのずから地域差と工種差がついてくることは当然だろうと私は思っております。そういう意味におきましては、既に圃場整備等がかなり進行した地域においては圃場整備事業等が減って、むしろ新しい今日の需要に応じた事業が出てくる。逆に、圃場整備事業がおくれている西日本等の諸県においては、これに相当思い切って事業を投入していくことは必要だろうと思っております。この問題はなかなか要望が強い問題でございますので、そう極端な傾斜ということではいかないと思いますが、昨今におきます県営圃場整備事業の採択の地区数や事業量等を見ていただきますと、かなり数年前とそういった地域の差がついてきていることは御理解を賜ることができると思います。今後とも十分配慮してまいります。
  263. 上西和郎

    ○上西委員 ありがとうございました。今後一層の御努力をお願いしておきたいと思います。  さて、今次の法改正の中で知事の裁定制度の導入ということが出てきますね。これについて少しくお尋ねしたいのであります。というのは、本法の四十七年の改正で、混住化等に対応して三つのことが新しく決められている。その中で、市町村等に対する協議制度、非農地受益者に対する賦課制度、管理規程・予定外排水の差しとめの請求制度というのがあるのでありますが、もう約十二年たつわけであります。この三つのうち最初の一つは別として、あとの二つは全く活用されていないという現実があるのではないか。このことについて、なぜ活用されないのか、活用させないでいるとするならば、あなた方の責任はどうなのかということまでお尋ねしたいのであります。現状がどうなのかといったことが明確でないと、ただ単に形の上で知事裁定を導入してもという疑問が出てまいりますので、お答えをいただきたいと思います。
  264. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、御指摘ございましたように市町村協議の制度は予算の助成制度とも結びつきまして、かなりの進展を見ております。そこで、問題は、一つは非農地の受益者賦課制度、もう一つは予定外の差しとめ請求制度でございます。  実は、この非農地の受益者賦課制度につきましては、強制賦課の方式を法制化した結果といたしまして、契約の形で徴収が行われる事例がかなり普及しております。私どもはその形でも問題の解決に役立つと思っておりまして、むしろこういう強制賦課制度の道を開いたことが、話し合いで、契約で負担をしていくという制度として定着してきたこととそれなりに見ております。  予定外の排水の差しとめ請求制度は、前提となる管理規程とセットで考えていかなければなりません。御指摘のように全然動いてないのです。率直に申し上げますと、水質規制に関する各種の行政がかなり進んでまいりました。この制度は、特定の工場からの排水の水質が著しく粗悪な場合、基準に該当していない場合、管理規程をつくってこれに従わすし、聞かなかった場合は差しとめ請求ができるという、いわば一種のインジャンクションの制度を認めたものでございます。この間の紛糾が比較的少ないのは、むしろ水質行政がかなり進んできたし、事業者の責任問題が明確になったものとして私は評価をしております。その点は割合に農業用排水路ではトラブルが少ない。むしろ今日トラブルが多いのは、やはり原因者が不特定多数の生活雑排水の問題、特に中性洗剤等の問題があるというふうに御理解を賜りたいと思います。
  265. 上西和郎

    ○上西委員 お答えでわかりましたが、やはり何もやってないとなりますとひっかかったものですからお尋ねしたわけです。  土地改良区が実施する農業集落排水施設整備事業について若干問題があると思うのであります。実施要綱では現在でもできるのでしょう。それが今日まで一件も実施されてないとなっているようでありますが、それが事実であるならばなぜか、その辺を明らかにしていただきたい。どうも市町村がやって土地改良区はやってない、こういうふうな現実があるようであります。  それから重ねてお尋ねしますが、事業費の負担割合、特に受益者負担等について現行の排水事業ではどうなっているのだろうか。あるいは今後土地改良区が実施する場合、従来のように地方公共団体の助成措置が行われるのかどうか。私が率直にお尋ねしたいのは、要するに受益者負担がこの法改正によって増高することはないのか。そして、これはもうずばりお尋ねしますが、土地改良区に本事業を実施する技術的能力がありゃ否や、このことについてお答えいただきたいと思うのであります。
  266. 森実孝郎

    森実政府委員 まず率直に申し上げますが、従来補助要綱基準では土地改良区が事業主体になれるというふうになっておりましたが、どうもいろいろ議論をさせてみますと、土地改良区という特殊な公法人が実施するためには権利能力の付与なり手続規定が要るわけでございまして、これが土地改良法に欠けておりまして、予算上は補助対象たり得るけれども制度的には土地改良区がみずからの事業として実施することには法律上疑義があるという点があったことを率直に申し上げさせていただきます。  そこで今後どうなるかという問題でございますが、私どもは、今後もやはり市町村が行う集落排水事業が主力を占めるだろうと思います。補完的に土地改良区が実施する場合があるというふうに御理解いただいていいと思います。五十九年度におきましても、実は予定されておりますのは法律改正通過後において一地区程度でございます。この問題は、むしろやはり農林省が行います農村生活基盤の整備事業の一環として需要の強い集落排水事業を実施するということを明らかにしておくことが、法律の根拠がないだけに非常に関係者の関心を集めているということではなかろうかと思っているわけでございます。  それから第三に、果たして土地改良区にそういう能力があるかどうかという問題でございます。これにつきましては、やはり十分な能力を持ったところばかりではないわけでございまして、土地改良区が実施します際においては都道府県知事の認定を受けなければなりません。その際、そういった技術者の配置その他技術能力の問題については十分審査させますし、それからもう一つは、何よりも事業の実施の分担とか区域とか施行方法については地元の市町村長と協議をさせてみたいと思っております。  それから助成額でございますが、現在の負担区分は市町村営についても維持するつもりでございますし、また、土地改良区が実施する場合においても同じ負担区分で実施させたいと思っております。補助率を変える考えはございません。
  267. 上西和郎

    ○上西委員 以上で終わらせていただきます。
  268. 阿部文男

    阿部委員長 次回は、明十日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時散会