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森実政府委員 二つの問題を御提起いただいたわけでございます。例えば
壊廃の問題とかそれから
利用度が下がっているという問題、いわゆる
土地利用率が下がっている問題、そういったいろいろな問題をとらえながら、やはり最終的に一定の
土地が
確保され、それが有効に
利用できる
条件というものがやはり構造
政策では基本ではないかという御
指摘、それからもう
一つは、いわゆる構造
政策というものを、一定のターゲットを設けてそのターゲットに対して施策の集中を図るべきではないかという御趣旨、この二つであろうと思います。
まず第一の点でございますが、私もある
意味ではただいま田中
委員御
指摘の点に大いに共感する点を持っております。つまり、端的に申しますと、所有権の移転による規模拡大は、仕上げの形として例外的には
地域によってあるとしても、大宗的に見るならば
利用権による規模拡大が基本だろうと思います。
そういう
意味で
農用地利用増進法を制定し、賃貸奨励金を
制度化して今までの
利用権の集積による規模拡大
政策を進めてきたわけでございますが、なかなか実は一挙にそこにいかないわけでございます。
地域の
状況、作目の事情によって、
地域社会、
農業社会が持っている問題が全部違うわけでございます。
その問題点を
土地利用に着目して拾い上げてみますと、幾つかに分かれるんじゃないだろうか。
その
一つは、やはり規模拡大でございますが、これも
利用権の設定だけではなくて作業受委託ということを当面はかなり重視して、そこから
利用権の設定に移行していくことを見ていかなければならないんじゃないだろうか。
それからもう
一つは、稲作転換対策等で代表されますように、集落で、全体として集落の
土地を面的に集積して
計画的な共同
利用をやっていくという体制を
考えていかなければならないんじゃないだろうか。これは実は
土地利用ということで敷衍して
考えると、自分の
土地を
利用する場合もあれば他人の
土地を
利用する場合もあるわけでございます。
それから三番目は、地方問題がやはり非常に大きな問題になっている
地域がある。そういう
意味においては、有畜
農家と耕種
農家の結びつきの問題とか、連作障害回避のためのローテーションの問題から
土地利用に入っていかなければならない地帯が中山間部の畑作地帯などではかなりあるわけでございますし、重量野菜の産地などでもかなりあるわけでございます。
それから四番目は、まさに
先生御
指摘のように、
農地の外延的な拡大ということで構造
政策を進めていかなければならぬ
地域があって、里山の
開発という問題も重要だし、それから通勤兼業
農家で
農業意欲の少ない人が持っていると裏作をやらないが、中核
農家は裏作で飼料作物をつくりたがっているというケースはあるわけで、そういうふうに
利用主体を切りかえることによって
土地の
利用率を上げていくというふうな問題がある。
そこで、こういった問題は、最終的には
土地の
利用の面的集積と
経営規模の拡大につながっている段階でありますが、ただいま
委員御
指摘のように、まだ現状は一挙にそのゴールまで行ける段階でない。むしろその四つの問題を片づけながら段階的に進めていく方が適当ではないか。そういう発想から、実は昨年、
地域農業集団の育成ということを打ち出して、地権者の話し合いによって
土地の集団的
利用調整をやるが、それは
利用権の設定による規模拡大に必ずしも短絡する必要はない。四つの道があるし、またその規模拡大の中でも、当面は作業の大幅な受委託ということを相当重視していいんじゃないかということで指導に乗り出しているわけでございます。この点については、なお不足の点があれば我々も検討を進めまして、十分な手直しなり補完を
考えていきたいと思っております。いずれにせよ、段階的に進めるという発想であり、具体的なテーマを
地域で拾っていただいて、そこから入っていくという
考えでございます。
二番目は、構造
政策というものについて一定のターゲットを設けてやるべきではないか。私、はっきり申し上げましたように、農林省といたしましては、今日の
状況のもとでは
利用権の集積を中心にした中核
農家の規模拡大ということを頭に置いて、六十五年の
長期見通しにおいて七十万戸の中核
農家を頭に置き、従来ベースの所有権の移転以外に、
利用権の設定で中核
農家に約四十万ヘクタールの
土地が動いていくということを一応の
見通しとして出しておるわけでございます。
私は、これは今後
政策努力があれば、特別の事情の変更がない限り、実は今までの成果を見ているとそれが可能な
状況ができつつあるのではないだろうかということを申し上げているわけでございます。当面、私
どもといたしましては、七十万戸の中核
農家の
確保育成、ここへの約四十万ヘクタールの
利用権の設定による規模拡大ということを具体的な目標にして仕事を進めていく必要があるのではないかと思っているわけでございます。