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1984-04-25 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十五日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    太田 誠一君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       高橋 辰夫君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    羽田  孜君       保利 耕輔君    松田 九郎君       三池  信君   三ッ林弥太郎君       山崎平八郎君    串原 義直君       田中 恒利君    細谷 昭雄君       安井 吉典君    駒谷  明君       斎藤  実君    武田 一夫君       水谷  弘君    神田  厚君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  山村新治郎君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸医局長  小島 和義君         農林水産技術会         議事務局長   関谷 俊作君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     松田 九郎君   田澤 吉郎君     二階 俊博君 同日  辞任         補欠選任   二階 俊博君     田澤 吉郎君   松田 九郎君     鍵田忠三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  地力増進法案内閣提出第四四号)  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第六四号)  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第六五号)      ――――◇―――――
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地力増進法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷昭雄君。
  3. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 おはようございます。  四年連続の不作の原因がいろいろ挙げられておりますけれども、その一つ地力低下ということが恐らく常識になっているのじゃないかというふうに思います。このたびの地力増進法提出も、こういう認識があればこそ恐らく御提案になったというふうに私は理解しておるわけでございます。  そこで、大臣にお伺いしたいと思いますけれども地力低下要因は何であったというふうにお考えでしょうか。
  4. 山村新治郎

    山村国務大臣 やはり化学肥料を多用しておったということ、そしてまた浅い耕作というのにもあると思います。
  5. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 そのほかに営農粗放化簡略化といいますか、それから土壌塩基化といいますか、こういったものがいろいろ挙げられるのじゃないかというふうに私は思いますが、今大臣がお話しのとおり、化学肥料の多投の問題、それから作土が非常に浅いというふうなものも当然でございます。  例えば営農簡略化という点を一つ取り上げました場合に、私はこういうふうに考えておるわけでございます。営農簡略化というのは、農業政策推進をされてきた当然の帰結じゃないのか。昭和三十六年に農業基本法が制定されました。この農業基本法は、申すまでもなく農家皆さん方にとっては大変大きな希望であったと思うのです。すなわち、米以外の選択的拡大を目指しながら、基盤整備事業ないしは構造改善事業、こういうものが母体になりまして、基幹農家としての自立経営農家の育成を図るために機械化または規模拡大を目指す省力化コストダウン、こういった政策が進められてきたわけでございます。この基本というものは、その都度その都度の情勢によって多少の対応はあったと思いますが、その基調は変わっておらない、私はそういうふうに思うわけでございます。  大臣もさきにアメリカにお出かけになって、あのとおり牛肉、オレンジの交渉に当たられたわけで、もう痛いほど御経験になったと思うのですが、日本農業における農畜産物コストダウン、これは国際競争に勝たねばならぬという一方の強力な要請を受け入れれば受け入れるほど実は粗放農業手抜き農業になってはね返ってくるという現実があるのでございます。地力の減退、低下、これはこのように農業基本法農政と全く軌を一にしておるというふうに私は考えるわけでございまして、各種農業の統計や資料、さらには学者、専門家、こういう皆さん方がそれを裏づけておられるわけでありまして、生産農民自体が一番骨身にしみて感じておることでございます。  このたびの地力増進法案を出さなければならなかった背景、よってくる要因というものは、まさに日本政府農政責任を負わなければならない、私はそういうふうに考えます。この法律案を出されるゆえんに照らしまして、農政責任のあり方、これをどういうふうに大臣はお考えになっておるのか、大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  6. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国の農業は、農産物の需給の緩和、そしてまた海外からの市場の開放要求、また行財政改革による農政の効率的な推進など厳しい情勢のもとに置かれております。このような情勢のもと、国民に対して食糧を安定的に供給していくための生産性向上、コストの低減等を図っていくことが極めて重要であると考えております。また他方、農業基本法制定以来、農業人口減少等に対応して、生産力維持等を図るための労働生産性向上という新しい視点での政策推進してきたことは事実でありますが、土地生産性向上対策についても決しておざなりにしてきたところではございません。  私は、大臣就任以来、たくましい稲づくり運動に合わせまして健康な土づくりを提唱して、今般地力増進法案をこのように提出した次第でございます。今御審議をいただいておりますが、本法案成立の暁には、認識を新たにして、適切な実施推進に当たってまいる決意でございます。
  7. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 法案提出と同時に、現行の耕土培養法を廃止するというふうになっておるわけでございます。地力増進法を新たに提案した経緯というものから考えまして、耕土培養法というのはつながりがあるというように私は考えておるわけでございます。したがいまして、この二つの法律中身について、運用上、実務上の幾つかの疑問点を対比しながらお伺いしたいと思います。  まず第一に、耕土培養法事業実施法というふうな性格を持っておるわけでございます。それに比べて、地力増進法基本法でしかないというふうに私は考えるわけでございますが、単なるこのような基本法だけでおっしゃるところの法律効果というものが期待できるであろうかどうか、これが第一点でございます。
  8. 小島和義

    小島(和)政府委員 今御指摘ございました耕土培養法は、確かにある種の土壌の化学的な状態を改善するための事業法的な性格を持っておったことは事実でございます。また、そのゆえにこそ、その事業目的を終わりました段階で社会的な役割を終了して、事実上はその内容が空洞化しておる、こういう事態に立ち至っておるわけでございます。  地力の問題というのは、決してある種の化学的な性質だけに問題があるわけではございませんで、その物理性でありますとか生物性でありますとか、総合的な評価のもとにおいて地力の高い低いということを判定すべき問題でございまして、また、現象として起こっております土壌の不良性と申しますか、これも多種多様にわたっておるわけでございます。したがいまして、現在起こっております問題、今後起こり得る問題、土壌にまつわるいろいろな問題点について多種多様な営農的な手法をもってこれを改善していく、そのための行政手続法、こういう性格を持っておるわけでございます。これまでも実際的な行政展開におきましては、土づくりのための対策運動面あるいは予算面等で講じてきたわけでございますが、国、県というふうな行政主体地力の問題について能動的、積極的に関与していくための一般的な法規というものを持ち合わせてなかったということに、今日土づくり問題が単にかけ声だけで法制的な裏づけを持っていないということの一つの弱みもあるわけでございますから、そういうものを整備していくということにこの法律のねらいがあるわけでございます。  いわゆる基本法ということの意味は、宣言立法というふうな御趣旨かと存じますが、単純に宣言立法的な性格だけを持っておるわけではございませんで、この法律によってある種の行政目的を果たしていく、そういう展開が可能な一般事業法的な性格も持っているというふうに私ども理解をいたしております。
  9. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 今の問題については、後から責任の所在という点でお伺いしたいと思います。  二番目は、知事指針策定の場合に意見を聴する団体として農業団体というふうに今の地力増進法ではうたわれておるわけでございます。しかしながら、耕土培養法によりますと、これを農業委員会というふうに明示してあるわけでございます。今回地力増進法で単に農業団体というふうにしておるのは、一体何か理由があるのかどうか。私は、はっきり農業委員会ないしは農業協同組合というふうに明示しておった方がいいのじゃないかと考えられますけれども、この点いかがでしょうか。
  10. 小島和義

    小島(和)政府委員 耕土培養法におきましては、市町村長耕土培養計画をつくるという市町村長役割があったわけでございます。その計画をつくるに当たりまして、農業委員会市町村の中の一つの独立した行政機関でございますから、そこの意見を聞くという形で耕土培養法ができ上がっておったわけでございます。  今回の地力増進法におきましては、そのような計画作成主体として市町村が登場するということはございませんで、地域指定あるいは指針策定というものについて県知事がその役割を果たすということになっております。その地域指定に当たりましては、都道府県知事関係市町村長意見を聞くということにいたしておりますし、対策指針策定に当たりましては市町村長及び関係生産者団体農業団体意見を聞くということになっております。農業団体といたしましては、関係農業協同組合及び土地改良区を想定いたしておりまして、農業委員会はいわばその市町村の中の機関でございますから、市町村長意見を聞くということによって十分代替されておりますし、市町村長が必要があれば内部的に農業委員会意見調整をするという場面も当然あり得る。この意味で、農業委員会については法律の正面からは落ちているというふうに御理解いただきたいと存じます。
  11. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 次に、地力増進法罰則規定の問題でございますが、罰金を科すというふうに規定した理由、それから実際の運用、こういうものについて若干説明を願いたい。  それから、私の考えからしますと、いわばこの罰則規定という問題は新たに表示するところの土壌改良資材について言っているわけでございまして、なぜ肥料取締法というものでくくれなかったのか。何か肥料の一種だ、範疇に入るのじゃないかというふうに私は思うのですが、これをあえて肥料と区別して今の表示規定に持ってきた理由についても御説明を願いたいと思います。
  12. 小島和義

    小島(和)政府委員 まず罰則の問題でございますけれども、この法律は大体、地力増進地域指定あるいはその対策指針策定等、いわば指導行政体系化するという基本的な性格を持っております。  それから表示制度につきましても、一つガイドラインシステムと申しますか、それが基本でございますが、これにつきましては、必要がございますれば、適正表示命令あるいは表示命令というふうな強行規定も備えておるわけでございます。必要があればそういったものが発動される。そのような命令が出されました場合につきましては、それを担保するために罰則規定が置かれているわけでございます。  また、本法におきましては、表示制度運用に必要な限度において報告徴収権あるいは立入調査権を認めておるわけでございまして、それらを実行されなかった場合にそれに対する制裁措置を設けているというのがこの法律体系でございまして、決して罰則を武器にして強圧的に臨むという姿勢ではございませんで、強行規定のいわば担保措置という性格を持っているというふうに御理解をいただければよろしいかと思います。  それから、肥料取締法とこの法律に基づく品質表示関係でございますけれども肥料取締法は、御承知のように一般的な禁止というものを前提として、ある要件を充足した場合に限ってその肥料販売が認められる、こういう体系になっておるわけでございます。その要件と申しますのは、公定規格制度背景とした肥料有効成分の保証ということが一番の内容でございまして、それに特定の場合には有害成分をチェックするという機能がつけ加わっているのがこの肥料取締法体系でございます。  土壌改良資材は、この法律で申しますと十一条以下の規定にございます土壌改良資材のことを意味するとお考えいただきたいのでございますが、これまでこの土壌改良資材について起こっております問題は、有害成分というふうな問題はまずございませんし、また肥料のように統一的な成分量をもって品質を保全する、こういう性格も持ってないわけでございまして、その意味では、肥料取締法的な法体系にちょっとなじみにくいという性格を持っておるわけでございます。  現実に起こっている問題はどういうことかと申しますと、いろいろな資材が出回っておりまして、その中には、その使い道とか効果とか、そういうものについてやや適正を欠く表示が行われておって、それが農業者に対する過度の信頼を生むと申しますか、そういう原因になっておりますし、極めて一部でございますが、その使い道効果等をめぐりまして、農業者販売業者の間のトラブルが起こっておるという事例もあるわけでございます。その意味で、今回の品質表示制度は、使う方の側の品質判定を容易たらしめる、こういうことに主たるねらいがございまして、そのことと、行政面におきます。その施用についての指導と相まちまして、できるだけいい土壌改良資材を出回らせるというねらいは十分達成される、こういうことで取締法的手法を採用してないわけでございます。  また、一般的な世の中の風潮といたしましても、行政の民業に対する介入というのは、行政目的を達成するためのいわば必要最小限度関与に限るべきであろうという考え方が支配的でございますので、今申し上げました行政目的を達成する上においてこのような表示制度をもって足りる、かように考えたわけでございます。
  13. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 次に、補助規定というものが耕土培養法にはあったわけでございますが、今の地力増進法には補助規定というものは、法律補助というのが全く消えておるわけでございます。一体補助規定なしに果たしてこの法律がうまく運用できるのかどうか、この点疑問がありますが、これはなぜ補助規定をなくしたのか。それとも、法律性質上これをつけることはおかしいのかどうか、そこら辺についての御説明をお願いしたいと思います。
  14. 小島和義

    小島(和)政府委員 耕土培養法はある特定土壌化学的性質を改善するための事業法的性格を持っていると先ほど申し上げたわけでございますが、その事業中身というのも、ある特定土壌化学的性質を改善するための事業、それに対する経費助成ということに限定をされておったわけでございまして、法文の書き方といたしましても、予算の範囲内で補助する、こういう書き方になっておるわけでございます。したがって、法律補助という性格はもちろんあったわけでございますけれども、この予算が二十七年から三十年までで打ち切りになりまして、その後は無利子貸付制度に変わっていったという経緯も、実はこの法律補助といっても今申し上げたような性格であるということ、さらにはこの事業一定期間を経過いたしまして、ほぼその目的を達成したことによって法律自体がいわば社会的な役割を終わって空洞化していったという背景もあるわけでございます。その意味におきましては、今後この対策推進するためのいろいろな多種多様な予算措置というものについては私ども考えておるわけでございまして、決して予算上の裏打ち全然なしでこのような事業推進できるとは考えておらないわけでございますが、その内容特定いたしましてこれを法定するということは、予算の編成なり実施面からいきますと、多分に流動性を欠いてくるという問題がございます。  その意味におきましては、耕土培養法的な補助規定は置かなかったわけでございますが、いろいろな事態を想定いたしまして、本法の第十条におきまして「国は、都道府県に対し、対策調査地力増進対策指針策定改善状況調査その他地力増進に関する施策実施に必要な指導助成その他の援助を行う」ということで、いろいろな内容のものにつきまして必要があれば国が助成責任を持っているんだということを法定いたしておるわけでございます。また現実にも、耕土培養法のような直接的な条文を有してないものでありましても、社会的必要のあるものについては今日におきましても助成措置を講じておるわけでございますから、この法律の十条のような規定背景といたしまして、さらに予算の充実には努力をしていくつもりでございます。
  15. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 もう一つ耕土培養法には特例を設けておったわけでございます。今回は特例がない。例えば面積特例をつけなくてもよかったのかどうか。北海道は二百ヘクタール、その他は百ヘクタールというふうにおおむね決めておるのですが、例えば開拓地、戦後の開拓地は地形的にも大変悪条件のところが多いのじゃないかと私は思うのですが、ここで二百ヘクタールないしは百ヘクタールというような状態だけでいきますと、そこから外れてしまうというところがあるのではないかと思うのですが、この特例を設けなかった理由、どうでしょう。
  16. 小島和義

    小島(和)政府委員 耕土培養法におきましては、開拓地につきましての特例規定を設けておったわけでありますが、その特例内容と申しますのは、開拓地につきましては耕土培養法都道府県知事が行うべき仕事開拓地という特殊事情から農林大臣が直接調査あるいは実施に関し必要な事項の指示等を行い、それを直接農協または市町村長が受けとめて耕土培養事業計画をつくる、こういう知事役割農林大臣開拓地という事情に着目をいたしまして直接行うということに特例意味があったわけでございます。現実には国の予算をもちまして計上いたしまして、実施面都道府県知事に委託をして行うというケースが多かったようでございます。今日、開拓地につきましては、開拓以来相当な期間を経過いたしておりますので、昭和四十三年に開拓地行政一般農政に移行をいたしまして、一般農地行政上の区別なくして行われているのが通例でございます。そういうことを背景といたしまして、開拓地なるがゆえの特例というものはあえて設けなかったわけでございます。  ただ、今、御指摘がございました地力増進地域指定面積要件につきましては、北海道二百ヘクタール、都府県百ヘクタールということを私どもは一応想定いたしておるわけでございますけれども地域におきましては、例えば山村離島などを想定いたしますと、これもまた相当厳しいのではないかという御意見も実は都府県にはあるわけでございまして、今後この面積要件を定めます段階で、開拓地に限らず、真に必要があるところについてはある種の弾力条項を置かざるを得ないのではないかと考えておりまして、具体的にはさらに都府県意見を十分徴しました上で決定することにいたしたいと考えております。
  17. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 次に、大きい三番としまして、この法案実施責任というものは一体どこにあるのか。ずっと見たところでは、余りはっきり浮かんでこないわけです。きのう川田信一郎先生が強調されておりましたけれども地力というものは少なくとも十年単位、長い年月を積み上げて初めてつくり上げられる、したがって地味が肥える、土壌がつくられるということは、明確なかなり長い施策責任体制がなければならないとおっしゃられました。私もそう思うのです。この地力増進法が明文化されましても、実際の土づくり責任は自分の土地を持っておる農民なのか、それとも都道府県知事、国、いろいろあるわけです。  私は、川田先生のお話ではございませんが、今回このような地力増進法を新たに提案しなければならないというほど、今や日本の土というものについての公共的な役割は大変に大きくなったと思われるわけでございます。したがって、国の責任でこういうふうな土壌そのものを改良しなければならないと私は思うのですが、この法律案では極めて不明確である。むしろ都道府県知事がすべての責任を負わせられることになっているのではないかと思うのです。もしそうだとすれば、今のような都道府県財政事情地方財政の逼迫、そしてもうすべての国の委任事務がぱあっと押しかけてくる。こういう中で果たしてこのような地力増進法が制定されましても、現場都道府県知事が対応できるのかどうか、この点で私は非常に危ぶむものでございます。その点、国の責任が放棄されておる法案じゃないか、そして過大に都道府県知事責任を負わせる法案じゃないか、この点で疑問がありますので、その点当局のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  18. 小島和義

    小島(和)政府委員 まず、土づくりそのもの責任主体がどこにあるのかということになりますと、これは、農地といえども私的な財産でございますし、土づくり効果は第一次的にはその所有者に帰属するという問題がありますので、当然その土地所有者が持っているものと理解いたしておるわけでございます。  ただ、農地の場合には、これが民族食糧を支えるという意味におきまして民族の共通の財産であるという社会的な性格を持っておるわけで、これは法律論ではございませんで、その意味におきまして、例えば税法上の特例を設けるとか、あるいは国費を投じて土地改良事業実施するというふうなことがある反面、逆に農振法、農地法というふうな制度によりましてさまざまな制約も課せられておる。これは日本農業生産力を維持し、これを後代に伝えるという意味からこのような農地についてのさまぎまな制度があるわけでございます。したがいまして、地力に由来する土地生産力というものにつきましても、それを常に良好な状態で維持するというのは農業者のいわば当然な役割でございますが、今申し上げたような性格にかんがみて、国、都道府県というふうな行政機関におきましてもこれに必要な関与をしていくという行政的な責任を持っている、こういう理解なわけでございます。  そこで、お尋ねの国と県との関係ということになるわけでございまして、確かに条文の字面から申しますと都道府県知事というのが大変たくさん出てまいりまして、農林水産省が何もしないのかというふうな御懸念を持たれるわけでございますが、現実には国と県との役割分担は、例えば実際の土壌調査というような仕事はより現場に近い都道府県が行っておりますが、国がその調査を行うために必要な基礎的な調査研究を行うとか、あるいは手法を開発するとか器具の改良開発を行うというふうな役割を持ち、あるいは調査そのものについての統一的な物差しをつくっていくというふうな仕事をやっておるわけでございます。それからまた、財政的な面におきましても都道府県自体が積極的に財政的な応援をするという場合ももちろんございますし、国の助成のもとにおきましてそれを含めて都道府県財政的な支援をするという場合もごく普通に行われておるわけでございます。具体的な仕事中身によって多少の軽重はございますけれども、国がその役割を一切負わずに県以下の段階の負担だけをお願いするという考え方は毛頭ございませんで、そういう意味を含めて本法第十条の規定を置いた、かように御理解いただきたいと存じます。
  19. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 法文の中身に立ち入って考えてみたいと思うのですが、勧告権というのも取り入れられておるわけです。大臣指針策定をし、県知事地域指定し、調査し、対策指針を定め、そして助言、指導しながら、従わなければ勧告することができる。個人所有の田畑に助言、指導まではできるでありましょうけれども、勧告をしてそれがどの程度具体的に効果を期待できるのかどうか。大変に実施責任が不明確であるというさっきの質問とあわせまして、この点、運用上どういうふうに考えておられるのか。
  20. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、地力の問題は本来的には個人の所有する財産の問題でございますけれども、これが民族食糧を支えるいわば共通の財産であるという社会的性格を持っているという意味において、このような最小限の行政関与をしていくというのが今日のお出しいたします法律中身でございます。その意味におきまして、国、県が行政的な関与をいたします場合の制度的な一つの完結ということになりますと、指針それから助言、指導ということだけで完結させるのか、さらに強い指導という意味においての勧告まで設けるのかということにつきましては、いろいろ議論のあったところでございます。これは立法上しばしば出てくるわけでございますが、ある種の強行規定を置きました場合に、それについて罰則という裏打ちを設けるというのは、別に罰則によっておどかしてということではなくて、一つの法制度としての完結ということからいきまして、強行規定である以上は軽重にかかわらず罰則規定を置かなければ完結しないということがあるわけでございます。  ただいまの対策指針の問題については、そういう意味での強行性を持っているわけでございませんから、命令罰則というふうな手法をとるべきではない。しかし単純な助言、指導ということだけにとどまるということでありますと行政関与する度合いとしては非常に低いものになってしまうという意味におきまして、いわば中間と言ってはちょっと当たりさわりがあるわけでございますが、一般の助言、指導というものよりはやや強い行政措置が背後に控えておるということによりまして法制度としての完結を見た、こういうことでございます。したがって、事柄の内容としては農業生産者の理解を得て行うという性格のものでございますから、通常の場合には助言、指導をもってこの仕事が動いていくという想定でございまして、勧告制度を乱用いたしましてこの勧告を乱発していくという考えは毛頭ございませんで、そういう制度面の完結ということを念頭に置いてこのような規定を置いたというふうに御理解いただきたいと存じます。
  21. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 四十分といういかにも短い時間でございますので、あわせて質問したいと思いますので、簡潔に御答弁を願いたいと思います。  具体的に入りますと、一つは、例えば地力増進するためには耕種農業と畜産農業が結合すれば一番いいわけです。現在分離されている。そこで、再結合させる具体的な手だてがこの法律によって生かされるとすれば、どういうふうに運用しますか。  第二は、先ほどいろいろな責任の分担という問題がございました。県が土壌調査をするというふうになるわけでありますが、県の土壌調査その他指針策定とかは、この法律でも任意であるわけであります。必ずやれというのではありません。したがって、各県によって格差が出てくるのではないかという問題と、それから指定基準というのは一体だれが決めるのか、その調査能力と体制という問題がございますし、ましてやだれが決めるのかという点になりますと、各県の一人の技師が決めるのじゃないと思うので、そういう公正な第三者機関が必要じゃないかと思いますが、この二点について、簡潔で結構です。
  22. 小島和義

    小島(和)政府委員 まず、畜産と耕種の結合につきましては、この法律条文の上から申しますと、地力増進基本指針の中におきますところの二項第三号の規定「耕うん整地その他地力増進に必要な営農に関する基本的な事項」という中に概念としては含まれてくるわけでございまして、お話ございましたように大変有力な地力増進の手段であると考えておりますので、これにつきましてもこの中に盛り込むつもりでございますし、また、具体的な地力増進地域につきましての対策指針の中においても位置づけられるというふうに考えております。  それから、県ごとの物差しに大変違いがあって、そのために県ごとの格差が出てくるのではないかというお話でございますが、この地域自体の指定につきましては実は統一的な物差しをもちまして、一つ面積要件一つはその地域内の農地がおおむね不良農地から成っておるというふうな問題で、客観的な基準は考えておるわけでございます。  実は、土壌性質が不良であるかどうかにつきましては、農林水産省助成をいたしまして、昭和三十四年から五十三年まで二十年間かかってつくりました地力保全基本調査というのがございます。その中におきまして土壌生産力可能性分級というのを行っておりまして、1等級から4等級まで土地生産力を分類をいたしておるわけでございます。その3等級、4等級に相当するものがおおむねこの不良農地であるというふうに考えておりますが、これだけを物差しにするわけではございませんで、当然都道府県知事の判断が加わってくるわけでございます。法律条文で申しますと、第四条第一項二号が一つの判断でございますから、そういう客観的な物差しと都道府県の判断をできるだけそろえていくということにつきましては、当然国から都道府県に対しまして必要な指導は行っていくというつもりでございます。
  23. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 具体的な現場のいろいろな試みがなされたわけでございまして、ぜひ今お答え願いましたとおり、それを進めていくという方向でこの法案運用を図っていただきたいと思うのです。  私自身は、秋田の現場の実情をお話をしながら触れてみたいと思うのです。  私の方に増田町というのがございます。リンゴの産地でございますが、ここでは町が第二次構造改善事業で養豚団地をつくりました。成瀬養豚組合というところです。ここで三百五十頭ほどの養豚をやっているわけですが、そこから出るふん尿が畜産公害その他で大変騒がれるという実情から、これにセットしまして、地力増強施設というものをやはり第二次構造改善事業の中で設置したわけでございます。そこから出るのを第二次発酵までさせて完熟させて、そしてスーパーコンという名前で、町の事業でやったのですが、それ自体は農協が委託されて、そして土壌改良材として町の果樹農家に還元ないしは販売、それぞれの畑作農家、各地域の農協等に販売をしておる。大変有機的な組織があるわけであります。  こういうふうな試みや、私は県会等で農政関係で田園畜舎制度というのをやったことがございます。今も秋田県はやっております。今は畜産公害で、家屋の中に牛を飼うと大変困る。だとすれば、田んぼの中に畜舎を建てまして、それに国、県がひとつ助成をしていく、牛は牛で貸していく、堆肥をそのまま田んぼに還元できる、こういった田園畜舎制度というのを秋田県では現在試みておるわけであります。その他、例えば堆肥銀行、そういういろいろな各地域における試みがあるわけでございまして、こういうものこそひとつこういう地力増進法なんかの運用面で大いに進めていくべきではないか、そういうサンプルなんかをうんと広げていく、こういうことが必要であろうかと思うのです。ぜひひとつ運用の面で、これは運用が生かされるかどうかということにこの法案の成否はかかっていると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。  最後に、時間になりましたが、今までいろいろな問題がございますけれども地力増進というのはやはり国の責任で、こんなふうに考えるわけでありますが、予算条項がないという点からしても、今後のこういった土壌改良、地力増進について大臣の御決意のほどをお聞かせ願いたい、こういうように思います。
  24. 山村新治郎

    山村国務大臣 実は、ちょうどたくましい稲づくりのときに、これは農業者、そしてまた地方公共団体、国、一体となって本当にやらなければならないと思いまして、農業団体の代表者の方、それから都道府県の代表、いわゆる知事会の代表の方、それから市長会、町村長会、これらの代表の方をそれぞれお招きして、たくましい稲づくりということで、御存じのとおりの四年不作でございましたので御協力方をお願いしました。  そのときに、その会議の中でいわゆる健康な土づくりという話が出てまいりまして、これらの皆さん方からも、土づくりというものなくしてたくましい稲づくりはできないという提言がかえって向こうからございまして、これらの皆さんと一体となりまして、農業者、地方公共団体、そしてまた国、そのリーダーシップをとるような形で今後鋭意やってまいるつもりでございます。
  25. 細谷昭雄

    細谷(昭)委員 ありがとうございました。  終わります。
  26. 阿部文男

    阿部委員長 日野市朗君。
  27. 日野市朗

    ○日野委員 私も、やはり地力増進するという仕事主体はだれなのかということについて非常に強い疑問を持っているのです。先ほど局長のお答えの中では、まず第一次的にはそれは農家だという話がありました。私も、それはそうだと思います。農家が一生懸命これに取り組んで、自分のところから収益をより多く上げるような努力をしなければならない、これは当然のことでありましょう。しかし、それを超えて現在の地力が非常に低下をしている。そして、世界的に見ても地力が非常に衰える。豊かな農地というようなものはもはや存在していないというような指摘もきのう参考人からあったわけでありますが、日本地力増進していくことについての国の責任、国のこれからの施策で万遺漏なきを期していくこと、どうしてもその覚悟が必要なのはむしろ農水省側にあるのではないかと思うのですね。  今までそれは農家責任だとは言いながら、農家地力を十分に増進させ、そして自分たちの所有している農地を生かしていく、そういう努力ができないような農業構造に現在なってきているわけでございますね。深耕しろと言ったって、今では馬耕をやるにも馬がいない。それから、深く掘るすきを使うにも、そんなものはどこにもございませんですね。そして、みんな農業収入が乏しいために出稼ぎに出ざるを得ない。二兼農家がふえていく。農業に力を入れる時間はどんどん減っていく、こういうような形になっているわけでございます。これを根本的に立て直していく、その方策としては、単に予算地力増進のためにつけるというばかりじゃなくて、その周辺のところからきちんと固めていかなければならないという問題にも我々は逢着をしているのではないかと思うのです。いかがお考えでしょう。
  28. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かにこの二十数年の間に農村の社会の内部に大きな地穀変動が起こりまして、そのことが我が国在来の農法というものを大きく変革をしてきたという背景があるわけでございまして、そのことが今日の地力問題の一つ原因というふうに私ども理解をいたしております。  農業主体の問題、私どもはよく担い手問題と言うわけでございますけれども農業の担い手問題ということの中に今御指摘がございましたいろいろな問題が集約をされているわけでございまして、農林省がやっておりますいろいろな施策というものも、大部分はこの農業の担い手を育てるための一つの環境整備、こういうふうな役割を持っておるわけでございます。  ただ、反面において、そのような一般的な施策が拡充をされれば地力問題に対する直接的なアプローチは必要ないかということになりますと、必ずしもそうはならないわけでございまして、土壌問題というのはすぐれて専門科学的な領域でございますから、そのことに対する行政上の直接関与ということもまた必要があると思います。その意味におきましては、今般このような法律案をお出しいたしまして国がこの問題について積極的に取り組むという姿勢を天下に対して明らかにした、こういう意味もあるわけでございまして、担い手問題の解決とあわせて地力問題に対する直接的な責務、こういう意味で御理解をいただければよろしいのじゃないかと思います。
  29. 日野市朗

    ○日野委員 今細谷委員からも指摘がありましたが、恐らく予算補助しかこの法律では期待できないであろう。現実法律を読みますと、まあ期待できないわけですね。今局長は、十条によって必要な施策については予算補助をできるだけ考えていくんだというお話がありました。しかし、私、日本土壌というものを根本的に見てみた場合、日本土壌というのは本来は農耕地に適したものではなかったわけですね。これは、多雨でありまして、自然にほっておけば森林になっていく、そういう土壌であります。これを維持してきたというのは、まず水田が非常に多かったということが一点ありますし、それから畑地なんかでもどんどん堆肥を入れるというような努力をやって、日本土壌というのは世界的に見れば比較的良質な地力を維持してきたというのが現状でありましょう。  これを水田について見ても、現在水田の地力低下してまいりました。それから畑地の地力というのは、今非常に憂慮すべき状況にありますね。私はしょっちゅう汽車なんかで川の上を通ると、特に雨上がりなんかはずっと川の水を見るのでありますが、雨上がりに川の水が随分濁っているなという感想を持ちます。あれは大体が畑から出てきた作土が流亡しているというふうに学者によっては指摘しているわけなんですが、そういう日本の本来の土質、土壌、こういうものから見ると、日本農地地力を維持していく、さらにそれをアップさせていくということについては、並み並みならぬ努力をしなければならないのではなかろうかというふうに思うのです。  そうすると、これは予算補助ということでおやりになるという話だが、それでそもそも間に合うのか。特に予算補助ということになりますと、これは大蔵省との熾烈なやり合いをしなければならない場所でございますね。でありますから、私は第一にそういう危惧を持ちます。それから、現在まで進められてきた土壌保全対策関係予算、これを見ますと必ずしも適切ではなかったのではなかろうか、その絶対量においてもかなり少ないのではないかという感想を持つのです。これからしっかりと大蔵省とかけ合って、土壌保全、地力向上、そのための予算措置を講じていくための並み並みならぬ決意が要るだろうというふうに思うのですが、どうでしょう。  これは大臣にも伺いたいところでもありますし、局長にも伺いたいところなんです。
  30. 山村新治郎

    山村国務大臣 確かに予算獲得というと大蔵省が絡んでまいるわけですが、私としても担当部局とよく相談いたしまして、積極的に予算獲得の面ではやってまいるつもりでございます。
  31. 小島和義

    小島(和)政府委員 法定補助の中に二通りあると思うわけでございます。  一つは、かつての耕土培養法がそうでありましたように、予算の範囲内で補助するという法律に根拠がございますが、ある種の任意的な規定になっている。つまり、予算があれば補助するということでございます。いま一つはやや義務的な補助でございまして、ある種の要件を充足している事業が行われた場合に必ずそれについて一定割合の経費を国が出さなければならない、こういう義務補助と申しますか、そういう二通りあると思うわけでございます。  義務補助にいたします場合には、その負担の内容をなすところの経費の内容、つまり事業内容というものについて明確な法定がなされていなければなりませんし、最近では地方財政法の要求するところによりまして、経費の内訳それから補助率といったものについても法律または政令によって規定するということが要求されるわけでございます。  その地力保全のための対策内容と申しますのは大変多岐にわたっておりまして、かつてのように耕土培養資材を施用するのに対して補助するというふうなことについては、性格上もいろいろ問題がございます。そのほかの助成手段としまして、例えば施設、機械等に対する助成というものもございますれば、あるいは心土破砕というふうな事業面に対する助成もあるわけでございます。そのような多種多様な助成の仕方に対する法律面の対応といたしまして、その内容を明らかにして一定割合の負担を国がするという仕組みというのは余りに弾力性に欠けておる、むしろ時代の要請に対してついていけないという問題があるわけでございます。  それらをいろいろ検討いたしました結果、そのいずれの仕組みにもよらず、むしろ今日、その条文の中にございますような、十条のような国の努力義務というものを規定することによって予算獲得の有力な裏打ちにしていこう、こういう意味でこの法律をつくっておるわけでございます。もちろん、法律そのものの存在が国の責務を明らかにするという意味において予算の面でも一つの大きな支援になるというふうに考えております。
  32. 日野市朗

    ○日野委員 大蔵省も、主計官なんていうのは本当にわけがわかりませんからね、これはひとつ頑張ってその必要性というものを徹底的に説いて、そしてやってもらいたいというふうに思います。  それからもう一つ私気に食わないのは、この地力増進法が、これは今度初めて地力増進法という形で姿をあらわしたわけですが、少し範囲を小さく区切り過ぎたのではなかろうかという感じがしてならないのです。本当はこれは、これからの将来の食糧問題というものを考えれば、日本の国土で農地になり得るところは可及的に広く地力増進するという考え方をとるべきだったというふうに思うのであります。これからだって農地にし得るところは随分ございます。例えば、日本土地というのは非常に多種多様な土からなっておりますが、黒ボク土、これは今までは手のつけようのない火山灰土であるというふうに言われていたけれども、これだって農地化するための技術的なマニュアルといいますか、そういったものはほぼできているわけでございます。こういったものも本来は含むべきではなかったかというふうに私は思うのであります。ところが、第二条の定義を見ると「この法律で「農地」とは、」となっていて「耕作の目的に供される土地をいう。」こういうふうに定義がございます。この定義の「耕作の目的に供される土地」というものをそのまま読めば非常に範囲が狭い。地力を培養する対象となる土地、これをもっと広くすることはできなかったのか、そういう発想はそもそもなかったのかどうか、ちょっと教えていただきたいのです。
  33. 小島和義

    小島(和)政府委員 本法地力増進中身といたしましては、例えば各種の資材の施用でありますとか、あるいは耕うん整地等のいわゆる営農の一環として行われる地力増強対策というものを想定をして、それに対しまして国なり県なりが技術的あるいは財政的な援助を行うということを基本にして組み立てられておるわけでございます。  したがいまして、実際に耕作が行われていない土地、御指摘ございましたような自然野草地のようなものにつきましては、その所有者自体が何らの肥培管理活動を行っていないわけでございますから、国なり県なりがこれに対する関与をしたくてもしようがないというふうなことであるわけでございます。ただ、そのような土地につきましても土壌調査というふうな必要性が生じてきました場合においては、ただいま国、県の土壌調査とか土壌検診をやっております技術陣が実際的にはこれに対して対応していくということは現実にもやっておるわけでございまして、一切土壌問題としては扱わないということを意味しておるわけではございません。  本法によって応援をしていく分野というのは、そこに耕作者がおりましてその耕作者の営農活動に対してお手伝いをしていく、こういう構成になっておりますので、耕作業務がないところはその対象外、こういう構成になっているわけでございます。
  34. 日野市朗

    ○日野委員 今日本では、伝統的に黒ボク土なんというのは対象にならぬということで、農家ども余り手を加えないで来た。しかし、今やそれに対する技術指針どもほぼ確立されてあるわけでありますから、これなどもどんどん指導をして農地化していくということが望ましいのではないかというふうに私は思いますので、そういうことはぜひやってもらいたいという要望を申し上げておきたいのです。  気になるのは、第二条の「耕作の目的に供される土地」ということなんです。一般的に農地という場合どういうものを考えておられるのか、ここでちょっと伺っておきたいというふうに思います。農地というものについては、現状主義なのか、それとも公簿面に農地と記載されているものが農地なのかという、いろいろ見方に違いがありますが、ここではどんな考え方をとられるか、それから現実にどういう土地が外れるのかというようなことですが……。
  35. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは農地法初め農業関係の立法は大体こういう規定になっておりまして、考え方としては現況主義でございます。実際には、田、畑、樹園地、それから北海道などで見られますようないわゆる永年牧草地もこれに該当するわけでございます。  対象として落ちてまいりますのは、農地法上、採草放牧地という定義がございますが、これは農地以外の採草放牧地でございますから、自然野草地のようなもの、あるいは森林とか、そういったものがこの対象から外れてまいるというふうに考えております。
  36. 日野市朗

    ○日野委員 採草放牧地と言われるものも、一般には農家の場合はある程度手を加えながら管理をしているのが大体通常ではないかというふうに思うのです。牛を堤防に放し飼いするとか、それから何にも手を加えてない山などに放し飼いするということはちょっとないと思います。何らかの手を加えて農家がある程度の管理の努力をやっているところ、これなどは採草放牧地と言われるものであってもこの中につけ加えてもいいのではないかというふうに思いますが、どうでしょう。
  37. 小島和義

    小島(和)政府委員 今もお話に出ましたような、農家が何らかの肥培管理を行っておるという土地になりますと、これは農地法の定義でもそうでございますし、今回の地力増進法でも農地に該当をすることになるわけでございます。  農地法上の採草放牧地と申しますのは「農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供される」というふうなことになっておりまして、農地以外のものということになっておるわけでございます。今御指摘のケースであれば、当然これは農地に該当するというふうになるわけでございます。
  38. 日野市朗

    ○日野委員 これからの運用については、私ここでまた要望をしておきたいのですが、ここのところはひとつ可及的に広く解釈をして、できるだけ多くの土地に当てはまるような運用をお願いをいたしたいというふうに考えるところでございます。  それから次に、国が地力増進基本指針を定めるということになっております。この基本指針ですが、条文には「土壌性質基本的な改善目標」以下四号まで出ているわけでありますが、この指針の中で具体的にはどのようなことをおやりになるのか、ちょっと説明してください。
  39. 小島和義

    小島(和)政府委員 ます、第一号に出てまいります「土壌性質基本的な改善目標」でございますが、これは地目別に、つまり田、畑あるいは樹園地というふうな種類別にでございますが、その作土の厚さでありますとか徴密度、透水性、養分保持力、pH、塩基含量、有効燐酸というようなことをどの程度にするかという目標数値を明らかにするわけでございます。  それから第二号でございますが、そういう目的を達成するために必要とされる資材の施用に関する基本的な事項といたしまして、その用いられる資材の種類と標準的な施用方法等を明らかにしていくわけでございます。  それから第三号の問題は非常に幅広くなるわけでございまして、土壌の種類ごとの深耕でありますとか心土破砕でありますとかあるいは心土肥培でありますとか、そういう耕うん整地的な手法によって行われる事項、そのほか作付体系の問題でございますとかあるいは土壌性質の変化をもたらさない施肥方法でありますとか、そういったことが含まれてくるわけでございます。それから耕種農家、畜産農家の間における連携強化とか、地域の資源の有効利用方策といったことも含まれるものというふうに考えております。
  40. 日野市朗

    ○日野委員 国が地力増進のための諸事業には一生懸命に取り組まなければならないということは、きのうの委員会、きょうの委員会を通じてずっと一つの主なテーマになっております。この条文を見る限りは、国が関与するのはまず指針をつくるということ、そして、指針をつくって、都道府県などから上がってくる予算の要求についてその対応をしていくというような構想がずっと語られているわけなんでありますが、大体、国としてはこういう基本指針を決めて、あとは地方に事務をずっとおろして、そしてそこでどのように行われるかは地方任せだというような感じに読めてしようがないわけでございますね。  大体、農林水産省地力問題でやるべき仕事はこればかりでは足りないのではないか。指針現実に行われていくかどうかということは、むしろ農林水産省あたりがもっと直接的にそれぞれの農地を調べて、地力増進のための的確な措置がとられているのかどうかということについてもっときめ細かい調査から指導から、こういうことをやらなければならないのではないかというふうに私思うのです。現在までの農水省がやってきた仕事を見ておりますと、農業生産環境情報システム整備事業というようなことをやりまして、データベースを農水省がきちんと把握しているわけでございますね。このデータベース、そっちこっちに問い合わせがあればお答えをするというようなことはできるでしょうけれども、それぞれの地域でこれを十分に使いこなせるかどうかということになると、これもまた疑問があるところでございまして、今までの農水省のやってきた仕事から見て、本法案にいう国の事務というのはこれだけにどうも限られているというのは私は非常に不満なんですが、どういうものでしょう。
  41. 小島和義

    小島(和)政府委員 この法律は、いわゆる許認可等の権限配分を内容とする法律ではございませんで、技術的な意味での行政サービスの仕組みをつくっていく、こういう内容法律でございますので、農林水産大臣という言葉が余り随所に出てこないという意味で、国が何もしないのではないかという御懸念を生ずるわけでございます。  ただ、実際にこれまで進めてまいりました地力関係のいろいろな仕事というのは国のリーダーシップのもとに行われてきたわけでございまして、現時点におきましても、国は、都道府県では実施が困難な土壌に関する専門的な試験研究を行うとか、あるいは土壌調査地力診断のための手法を開発するとか器具の改良、開発をするというふうな仕事をやってきておるわけでございます。  また、今御指摘がありました土壌情報のデータベースの構築という問題でございますけれども、これは率直に申し上げましてまだ緒についたばかりでございまして、過去二十年かかってつくりまして、その後も補正を続けております土壌基本図を磁気テープに蓄積をいたしまして引き出し可能にするという手法がやっと完成をしたばかりでございまして、これ単独ですぐ農家のお役に立つというところまでいっておりませんけれども、さらに内容を豊かなものにしていきまして、最終的には普及所段階あるいは農家段階でも利用できるような情報サービス体制をつくりたい、こういう念願を持っておるわけでございます。  そういった技術面におきます国の行うべきサービス部門というのは、その一々につきましてはなかなか書き込みにくいところでございまして、再々申し上げております十条の規定というのは、決して予算の裏打ちをするというふうなことだけを意味しているわけではございませんで、あらゆる技術的な援助を含めまして条文を置いているつもりでございます。したがいまして、今申し上げましたようなこと、それからそれ以外に今後技術革新によりまして必要なものが出てまいりますれば、それらにつきましても国が当然分担して行うべき点はやっていく、こういう前提で法律ができているというふうに御理解いただきたいと存じます。
  42. 日野市朗

    ○日野委員 気になりますのは、第四条で地力増進地域指定する権限は都道府県知事にあることになるわけですが、「指定することができる。」だからこれは任意なんだといったって、農水省でやれやれという指導はされるのでありましょうし、それぞれの都道府県知事も努力をするのでありましょう。ただ、こういうふうに「指定することができる。」ということになっておりますし、また、第四条の第二号を見ますと、技術的、経済的に可能な場合にだけこれはやるんだというふうになっているわけでございまして、技術的、経済的に可能というこの要件は非常に幅広いものになってまいります。特に、経済的に可能かどうかということになりますと、これはそういう事業をやるについてかなりの意欲がなければ取り組むことができないわけでございますが、こういう規定になっていると、国の方は一応指針だけを決めてあとは都道府県知事に任せる、そして都道府県知事の方は技術的、経済的にそれは可能であるという目安が立たないというようなことを言いながら、地力増進のための積極的な努力をしないということになったりしやしないかということをかなり心配せざるを得ないのじゃないかと私は思うのです
  43. 小島和義

    小島(和)政府委員 ただいまの「できる。」という一見任意というふうに読めるような規定になっておりますのは、例えば第一号の要件を充足するところということで、これは土壌図の上から、地図上で拾いますと大体二千六百ぐらいの箇所数が出てくるわけでございます。これを、ある種の客観要件がありました場合に必ず知事指定しなければならないという義務規定のように書きますと、そこで二千六百たちどころに指定しなければいかぬという責任知事に生じてくるわけでございます。  もともとこの地域指定していくというのは、特に問題があるところについて濃密な行政指導、さらには必要がございますれば政府の助成等も組み合わせまして効率よく土づくり対策を進めていこうという意図から出ておるわけでございますから、いたずらに指定箇所数をふやすというのは必ずしも得策でないと考えております。その意味におきまして、そこには当然都道府県知事の判断というものが加わってくるわけでございまして、判断の中の法定の要素として二号にございますような技術的、経済的に可能であるという要件を置いておるわけでございまして、これ以外にその地域を取り上げることの優先度というふうなものは法律にはございませんけれども知事の判断として当然あるはずでございます。そういう意味で、判断を伴う規定でございますから「できる。」という規定になっていると御理解いただきたいと存じます。  それから、技術的に可能かどうかということでございますが、これは、地力の問題でありましても営農的な手法によっては到底解決できない、ある種の本格的な土木事業を必要とするということになりますと、この法律上の予定されている技術としてはもう解決ができないということになりますので、そういうところについてはこの地域指定は行われない、本格的な基盤整備事業その他を待って初めて行われるということになろうかと思います。  それから経済的な問題でございますけれども、これは、技術的には可能であるけれども、それを実施することによって非常に営農を圧迫する、もちろん国なり県なりからある種の助成が行われるということを想定いたしましてもなおかつ経済的には到底負担に耐えられないというふうなものにつきましては、地域指定をすること自体がかなり無理であるということになりますので、その二つにつきましては法定の判断材料にした、かように御理解いただきたいと存じます。
  44. 日野市朗

    ○日野委員 特に気になりますのは、経済的可能という要件なんでございます。今地力低下している、それから農地がかなり荒れているというのは、これは大体経済的な理由なんですよ。経済的にそれが引き合うなら、農家はちゃんとやっています。それができないから農地が荒れてくる、地力低下をしてくるということなんですね。  さっきもちょっと申し上げましたが、例えば堆肥づくりをやる手間で働かなければ食っていけないとか、そういういろいろな営農の仕方があるわけでございまして、経済的に可能ということはかなり幅の広い要件だと私思いますから、これが入ってきますと、国とか県とか、そういうところでかなり助成を強めないと、ほとんど地域指定ということはできなくなってくるのではないかということを懸念として持たざるを得ないのです。いかがなものでしょうか。
  45. 小島和義

    小島(和)政府委員 今問題にされました、例えば労力事情から個別農家では対応できないというふうな場合に、その地域内におけるある種の組織的な対応をすれば労働力ネックという問題は解決するというケースもあり得るわけでございまして、経済的な理由というのは個別の農家の経済事情だけで判断をするというのではなくて、その地域全体としてのいろいろな経済的な対応、国や県の通常想定されておりますような援助というものも組み合わせましてなおかつ経済的にはとてもできないという場合に指定をしないということを言っているわけでございます。あるがままの姿でできないというふうに判断をするわけではございませんで、そこにいろいろな行政上の工夫が加わってくるというふうにお考えいただきたいと存じます。
  46. 日野市朗

    ○日野委員 時間もないこともありますし、関連することでありますから、今度は第六条に飛びます。  ここで地力増進対策指針をつくることになっているわけでありますが、第二項第三号の「土壌性質を改善するための資材の施用に関する事項」ということですが、「資材の施用」ということは恐らく生物学的性質について言っているんじゃないかと思いますが、私の認識は間違いないでしょうか。
  47. 小島和義

    小島(和)政府委員 土壌性質は大別いたしますと化学的性質、物理的性質、生物的性質、三つを含んでおるわけでございますから、ここで取り上げている資材意味はそれら全部を含んでおるわけでございます。  なお、念のため申し上げますけれども、ここで言っております資材は、本法の十一条以下に登場してまいります品質表示とのかかわりにおいて取り上げております資材に限定されるわけではございませんで、いわゆる堆肥のようなもの、一部の普通肥料のようなものも含みました大変幅広い概念というふうに御理解いただきたいと存じます。
  48. 日野市朗

    ○日野委員 ここで「資材の施用」それから「耕うん整地その他地力増進に必要な営農に関する事項」こういうふうになっておりますね。いずれにしても、これは農家にとってみればかなり投資が必要なことではないかと思うのです。  例えば、日本土壌なんというのは酸性が非常にきついですから、これを中和させなくてはいけない。それから、今まで随分無機物を使っていますから、有機化させなくてはいけない。それから耕うん整地だって、きのうから問題になっておりますが、深く耕すというようなことが現実にはなかなかできない。  そのほか、「地力増進に必要な営農に関する事項」なんということになりますと、例えば牧草なんかを入れる、それから耕種農業と畜産農業との結合というようなこと、こういうものをずっと頭の中にいろいろ思い浮かべてまいりますと、これはかなりの投資が必要になってくる、そういうふうに思うのですが、どうですか、投資がかなり必要だとお考えになりませんか。
  49. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに金はかかるわけでございますけれども、ただここで問題にしております手法は、いずれも営農的な手法でございまして、ある年次において大規模な工事を実施いたしまして、そのために特定の費用がかさむというものではございませんで、毎年の営農活動の中に組み入れられた形で取り上げられていくという方法でございます。また、そのことに伴いますところの効用、その見返りというのは当然期待されているものでございますから、金だけかかって何ら見返りがないというものでは決してございません。  その間のバランスがどうなってくるのかということが先ほど申し上げました経済的な要件でございまして、その経済的な要件を判定するに当たりまして、再々申し上げておりますようないろいろな行政的な面での工夫を凝らしまして、そこで経済的な問題を改善しながら地域対策実施していく、かような仕組みに考えておるわけでございます。
  50. 日野市朗

    ○日野委員 ここで経済的な問題がいやでもクローズアップされてこざるを得ないわけでございます。私は、日本農家はそれだけ豊かではないと思うし、現在投資をできる余裕もそれほどないと、私の認識としては持っているわけです。  そしてさらに、こういう対策指針に則した営農を行わなければ、そういう営農を行うように勧告をする、こういうふうになっておるわけでございます。さっきも勧告の性質については細谷委員から質問しましたから、勧告の中身というものを私は今ここでは聞きますまい。それから、勧告が守られなかった場合はどうなるんだなんという問題についても聞かないでおきましょう。  しかし、私はここで心配なのは、そういうことをやるだけの資金力を持たない農家が勧告を受けたというような場合、これはその地域社会からはじき出すようなことが間々農村の場合あり得るのでして、そういうことはないということを、どうですか、はっきり言えますか。
  51. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、この勧告制度を置きましたことは、やはり公共的な必要がありまして国、県が行政的に関与をするわけでございますから、単なる助言、指導ということだけでは制度としての完結を見ないということで、やや強めの指導という意味での勧告制度を置くことによりましてこの体系を締めくくったということになっておるわけでございます。  ただ、そのことが、指針どおり行われなかった場合に直ちにその勧告が出るというふうなことを意味するわけではございませんし、また農村の実態といたしましても、都道府県知事の判こを押した紙切れが回ってくるというのはかなり心理的な威嚇効果を持つということも事実でございますから、その辺は十分心して運用するつもりでございます。通常の場合でございますれば普及所その他を通じます助言、指導という域をもちまして大体行われるものということでこの体系ができ上がっているというふうに御理解いただきたいと存じます。
  52. 日野市朗

    ○日野委員 この法文を読んでいて、私はこんな疑問を持ったのです。これは、そういう能力のない、この指針さえ守ることができないような農家は、もう農業をやめて人に任せるなり農地を売るなりしてよそに出ていけ、そうやって優良農家土地の集積を図ろうという下心がひょっとしたらあるんじゃないかということを考えるのですが、どんなものでしょう。そんなことはありますまいね。
  53. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに農地の利用集積という問題は、農林省が取り上げております政策課題の中で大変重要なファクターになっておるわけでございます。しかし、この法律、特に勧告制度をそのためのてことして使うという意図は毛頭ございません。
  54. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  55. 阿部文男

    阿部委員長 田中恒利君。
  56. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 同僚議員からいろいろ御質問がありましたが、私も関連をいたしまして、一面、本法に対する期待を込めながら、我々が考え土地づくり、地力増強というものにほど遠い内容のような気がしてなりませんので、私は主として現場土づくりの動きなどの中から出てくる若干の問題を拾い上げて御質問をさせていただきます。  大臣地力増進法と銘打っておるものですから、ともかく日本農業再生の最大の課題にこの新しい法律でもって対応していく、法案を提示せられたときにこういう期待が我々には正直言ってあったわけであります。しかし、内容を見てみると、なかなかそういうところまではほど遠い。もちろん、地力を高めていくということは単に技術的な側面だけで解決できる問題ではなくて、特に今日の日本農業が置かれておる環境、それを受けての農民の生産に対する意欲、これが今日農業全体を後退させておりますし、土地の、特に水田の四年連続作況が平年作を下回るという異常な事態背景には、確かにそういう農民の生産意欲というものが非常に大きく影響しておるように思います。全国的に不作と言われる中でも、冷害の中でも、土づくりというものに非常に意欲的に取り組んだ農家はそれほど単収は落ちていない。粗づくり、つまりもう米もだめ、第一、米をつくっていいのかつくらない方がいいのか、国は米をつくるな、こう指導しておるわけでありますから、そういう大きなバックグラウンドの中で土地生産力が落ち込み、国全体の食糧についての不安が高まっておる、こういう環境が基本であると思います。  そういう意味では、確かにこの地力増進法という法律一本で処理されるような問題ではございませんが、それにしてもやはり土地農業基本でありますから、土地生産力が残念ながら落ち込んでおる、こういう現状に立った場合には、最大限できる手法を通して土地生産力を高めていくために可能な法体系をつくっていただきたい、こういう我々の期待があるわけであります。  そういう意味で、農林大臣は、この法案地力増強というのが飛躍的に伸びていくというか、非常に大きな契機になる、こういうふうにお考えになっておるのかどうか。大臣として一体どういう決意で農業生産の基盤である地力の増強に立ち向かわれようとしておるのか、この点をまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  57. 山村新治郎

    山村国務大臣 今先生おっしゃいましたように、農地土壌というものは農業生産の基礎でございます。農業生産力増進と経営の安定のためには、地力の維持増進を図ることが不可欠でございますし、私は就任以来、たくましい稲づくり、そしてまた豊かな村づくり、それにあわせまして健康な土づくり推進を提唱してまいったところでございます。  行政施策としては、かねてから土壌調査及び診断、農業者に対する啓蒙普及、有機物施用のための機械、施設等に対する助成、これら各般の施策を講じてきたところでございますが、さらに今回、土づくり体制の強化を内容といたします本法案提出いたしまして、法制的な面からも施策の一層の充実を図る、こういうぐあいにした次第でございます。
  58. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 お役人の書いた答弁をそのとおり読まれると実感として受け取れないので、確かにそのとおりであると思いますけれども、どうも余りぴんとこないのであります、たぐましい稲づくりと言われたって。しかし一方では、稲はつくるな、これは今の日本農政の中心になっておる減反政策が強行されておるという現状でありますから、なかなかたくましい稲作農業が育つような状況ではないと思うので、むしろ米をつくって国民にさらに食わせていくというような方向の転換が、今の稲作、あるいは土壌地力増強につながる、その辺が私ども基本的に言うとちょっと違うところでありますが、これに余りひっかかりますと、たくさんありますので……。  きのうの公聴会でも、実は先ほど来私のところの細谷先生なり日野先生の方からも御指摘があったのですが、土づくり主体はだれかということについて、三人の参考人の皆さんからも御意見がございました。特に、国の持つ責任というのは大きい、こういう御意見の開陳であったように私はお聞きをしたわけでありますが、きょうもその議論が今なされておりますし、私も実はこれはどういうように考えたらいいのか、いろいろ考えさせられているところであります。局長は、第一次的には農民である、こういうようなお話であったようでありますが、農林省として、地力増進法を中心として、これから土づくりについての施策基本になっていくその主体は一体どこに置くのだ、この点をもう一度明確にしていただきたいと思います。
  59. 小島和義

    小島(和)政府委員 農地もつまるところは私的な財産でございますから、その利用の問題というのは土地所有者である農家が行うべきものであるというのが基本的な性格でございますから、地力を高めるための不断の努力というものも当然農業者が担うべきものというふうに考えておるわけでございます。ただ、農地につきましては、そうは申しながら、これが民族食糧を支えている基盤であるという問題がございますので、その意味で、単純な私的財産ということではございませんで、行政的にも十分な関心を持つべき性格を持っているわけでございます。  今般お出しいたしております地力増進法というものは、そういう国の行政関与責任というものを明らかにし、また、県がそれに対していかなる役割を果たすかということについての役割を明らかにいたしまして、それによりまして地力増進制度的な面からも大いにプッシュしていこう、こういう意図から出ておるわけでございまして、国の責任というものは、その意味において農家の行います土づくりにつきまして、主として技術的な面での行政サービスを展開していく、こういうことになろうかというふうに考えておるわけであります。
  60. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 国の責任というのは農家への技術的サービスで、第一次的には土地所有者である農民である、しかしなかなか農民だけではやれないこともあるから、国の方で果たさなければいけない問題がある、行政的にそういう責任を明確にしたいということですが、この地力増進法の中では、国は地力増進について一体何と何と何を責任として担当していくのか、こういうことはちょっと法文を読んだだけでははっきりしないわけであります。一体何と何と何は地力増進のために国が責任を持って進めていくということになるのか、この点を少し明らかにしていただきたいと思います。
  61. 小島和義

    小島(和)政府委員 この法律条文の中で、いわゆる農林水産大臣とかあるいは国という形で条文上出てまいりますところは、第三条の地力増進基本指針策定に関する部分と、第十条にございますところの援助に関する規定でございます。この法律自体が許認可等を内容とする権限立法という性格を持っているわけでございませんで、先ほど申し上げましたように、国や県が各種のサービス活動をするということについての一つの枠組みをつくったという性格でございますから、その意味条文の上に国が登場する部分というのは極めて少ないわけであります。  ただ、第三条にいうところの基本指針というのは、今後の地力増進を進めるための一般的なガイドラインでございまして、このことが都道府県の行います地力増進地域指定とかあるいは対策指針策定というものに対して一つのテキストになると同時に、一般農家に対しましても土づくりの具体的な内容につきましてのガイドラインを与える、こういう意味を持っているわけでございます。  第十条の方は、それに比べますといろいろなことを中身に含んでいるわけでございまして、今日ただいまでも都道府県が行っております土壌調査診断等につきまして、そのもとになりますところの基礎的な調査研究を国が行いますとともに、土壌調査等の手法の開発あるいは土壌調査等に使います器具の改良開発といったこと、さらには先ほど話題になっておりますような土壌に関するデータベースの構築というふうな、なかなか都道府県段階ではできないような技術的な内容を固めていくという仕事を持っておるわけでございます。今日都道府県あるいはそれ以下の段階で実際に行われておりますところの土づくりについての各種の努力ということにつきましても、そういった国の段階での技術的な蓄積というものが直接間接に役に立っておるわけでございますから、そういう面での努力はもちろんこれからもやっていかなければならぬと思います。また、十条の中には大変直接的な経費の内訳のようなものは規定いたしておりませんけれども、国が必要なものについて資金的な援助をしていくということも含めておるわけでございますから、その意味では大変幅広い責務を国が負っておるというふうに理解をいたしております。
  62. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 土壌の物理的、生物的、化学的な分析、そしてどうしたら適正なバランスのとれた、作物と効率的に組み合わせられる土壌ができるのか、こういう形の、特に技術的あるいは経営案件が若干入ったそういう意味土づくり法律、こういうふうに範囲が狭められておるようにしか受け取れないわけでありますが、やはり実際に現場土地をどうするかということで取り組んでおる人、団体あるいは行政機関で一番頭の痛いのは、特に兼業農家というものが非常にふえてきておりますね。そこでどうしても片手間農法というか、いろんな肥料土壌改良資材に安易に飛びついて処理をしていくということが出て、その地域土地の全体の科学的な施業がなされないというところが一つあると思うのですね。  こういう問題をどうしたらいいのかということで実は悩んでおるわけなんです。そういう問題についてせめて国の農業政策、あろいは農林行政の担当部署である農林水産省がどういうふうに考えておるのかというようなことも、この際やはり明らかにしておく必要があると思うわけです。そういう点についてはどんなふうにお考えになっておりますか。
  63. 小島和義

    小島(和)政府委員 農家のいわゆる兼業問題というのは、今後の日本農業の展望を考えます場合に大変問題の多い部分でございまして、今後の農政一つの柱として農業の担い手育成という問題があるわけでございます。そのための具体的な方法といたしまして、耕種農業におきましては何といっても土地の利用集積というものを中心にしてある程度の労働雇用力のある、吸収力のあるような経営基盤をつくっていかなければなかなか日本農業につきましての明るい展望が開けない、こういう問題であろうと思うわけでございます。  ただ、そういう施策というのは、もちろん農林省全力を挙げて取り組んでいくわけでありますけれども、具体的に起こっておりますようなこの地力の問題のような大変技術的な内容を持っております分野につきまして、それ自体の問題としてもいろんなアプローチが必要でもあり、可能であるというふうに思っておるわけであります。端的に申し上げまして、土づくりのためになかなか個別農家では対応ができないというふうなケースが間々出てくるわけでございまして、その場合に、その地域の中におけるいろいろな生産組織による対応ということもその一つのあらわれかと思いますし、また、その地域内だけでは完結した対応ができないという場合に、地域を異にする生産組織間の結合、地域複合というふうな問題も当然に出てくるわけでございまして、それらの問題も含めまして、この今の農林水産大臣が定めます基本指針の中におきまして方針を明らかにしていく所存でございます。
  64. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 現場では、例えば先ほども意見がありましたが、やはり有畜農業というか、有畜農家をもう一度見直さなければいけない、あるいはこれほど耕種と畜産とが分離をして専門化していくと、単一農家で牛を飼えといったってなかなか難しい。しかし現実には、私どものミカン地帯でも豚を入れたらどうかという議論は、消えては生まれ、消えては出ておるわけですね。それから野菜地帯でも酪農をやったらどうだ、水田地帯は特に水田酪農を本格的に考えなければならない、こういった形で個別経営の中に畜産、有畜を入れるべきだという意見もあるし、じんあい処理施設なり有機質センターなりをつくって、施設を軸にして地域間に有機質を供給していくものを通して、果樹の地域へ有機質を送り込んでいく、鶏ふんといろいろな交換をやっていく、そういうさまざまな組み合わせをやったらいいのかというような意見などが非常に山積しておるわけなんですよ。こういうものなどが今から示される指針の中に明らかにされていくというふうに理解してよろしいわけですか。
  65. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほども申し上げましたように、国が定めます指針というのはあくまで一般的なテキストでありますから、それぞれの地域についてそれが直ちに応用できるというものでは必ずしもないと思いますので、そういう一般的なテキストを受けまして、具体的な展開についてはさらにまた都道府県段階対策指針等の中におきますところの工夫というのが当然予定をされておるわけでございます。  その中におきましては、今御指摘ございましたような具体的な作物に応じました、その地域での可能な対応というものを明らかにしていくつもりでございます。もちろん、それは行政の世界だけで完結することではございませんで、農家、農協その他のいろいろな組織的な対応というものと関係をしてくるわけでございますから、対策指針策定段階におきまして、十分その関係者等の意見を聞きながら内容を煮詰めていく、また、その煮詰まりました内容につきまして、国なり県なりにおいて助成に値いするものがありますれば、それも取り上げていく、こういう仕組みで考えているわけでございます。
  66. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私がこの点をちょっと念押ししておりますのは、単なる技術的な視点での土壌改良の指針が国なり県で各地域ごとにつくられていくということだけでなくて、そういう意味では農家農業のあり方と土壌の強化とを絡ませた諸問題が投げかけられていく土壌改良の指針が、実施計画のようなものができるのでしょうが、そんなものの中に織り込められる、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  67. 小島和義

    小島(和)政府委員 法律条文に即して申し上げますならば、第三条第二項第四号「その他地力増進に関する重要事項」ということは、そういう技術的な内容以外の、その地域におきます社会的な活動と申しますか、それらを含めまして規定をするというつもりでございます。
  68. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 次に、どういうふうに地力増進を進めていくかということについて少しはっきりさせていただきたいと思うわけでありますが、私はこの法案を通してその点がまだちょっとよくわからない。それから先ほど御指摘のあった、それを裏打ちする予算が非常に不明確である、こういう点を考えておるわけですが、今、土づくり運動というか、土づくりについては市町村、県、それから全国では、土を守る運動会議ですか、伊東正義さんが代表人になっていらっしゃいますね、こういうものがあります。各県には県ごとの土づくり推進協議会のようなものがあって、県庁が中心になって各農業団体が入ってやっておるわけでありますし、地方に行くと市町村ごとにそういうものができておるわけです。こういう組織の問題をもう少し強めなければいけない。こういう組織、体制を強くしなければ少なくとも行政責任の中で進められる土づくりも本当に芽が出ないと思うのですよ。今、こういうものに対する助成といったようなものはあるのですか。
  69. 小島和義

    小島(和)政府委員 地力の問題は、農業者がその気になって積極的に取り組むということがやはり基本的に重要な事項でございますので、それらにつきましては、啓蒙普及ということを内容といたします運動が大変重要な意味を持っているわけでございます。たしか昭和五十年以来だと思いますが、今お話のありました土づくりの運動の推進をいたしておりまして、これを進めるための若干の事務費につきまして助成をいたしております。五十九年度予算で申しますと三千百万円程度で、事務費でございますからささやかでございますが、関係団体の応援を得て推進をしているところでございます。
  70. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 法十条で「助成その他の援助を行うよう努めるものとする。」ということになっておりまして、これはいろいろなものが入っておるのでしょうが、ここのところはもう少し強い規定であってもいいんじゃないかという気がするわけです。「努めるものとする。」などというと、努めなくてもよろしいというように理解されても困るわけなので、これはきちんと努めるというふうに明確にした方がもっとはっきりすると思うのです。  今の土づくりに関連する予算事業項目、項目というか事業名ですか、そういうものはどのぐらいありますか。
  71. 小島和義

    小島(和)政府委員 土壌保全に関係いたします予算は大変多岐にわたっておるわけでございますが、非常に大きくくくりまして、土壌調査診断に関係いたします予算、技術の開発に関連いたします予算土づくりに直接関係いたします予算、こういうふうに分けて申し上げますと、第一の土壌調査診断関連の予算は、土壌環境調査その他二億九千万ばかりございます。それから技術開発関連でございますが、これは試験研究機関において研究活動として行っておりますものを除きまして行政の世界で行っておる部分だけでございますが、それが一億六千六百万ぐらいございます。それから、いわゆる土づくり運動でありますとか施設、機械等の助成、さらには不良畑土壌改良のための耕土改良事業というのがございますが、そういった事業費的なものを合わせますと二十二億三千五百万ほどございます。全部合計いたしますと二十七億ぐらいが土づくり関係いたします予算でございます。  なお、これらのほかに、例えば畜産局におきまして、畜産のサイドから見て家畜のふん尿をどのように始末していくかというふうな予算、あるいは構造改善事業というふうな大変メニュー化されました地域の選択性の強い予算の中におきまして関連するものが含まれておるわけでございまして、ただいま申し上げましたものは、私どもの局で計上しております直接の経費だけでございます。
  72. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 今の局長の言う予算は農蚕園芸局中心のものなのじゃないかと思うのですが、私などの県の土地づくりに関するものは、助成から始まっていろいろな施設整備がたくさんあるのですが、私の調べでは私の県だけで三十一事業名ぐらいあるのです。もっとたくさんあると思うのです。非常に細かく分かれておるし、重なっておるようなものもあります。今お話のあった土地改良関係、客土から始まって暗渠から土壌改良から、こういう予算基本的に土壌問題とつながっておるわけであります。それから畜産、蚕糸、果樹、それぞれ部署ごとにあるのです。  こういうさまざまな地力増強予算が統一的に運用されるためにはどういうことが考えられねばならないのか、このことを実は考えさせられるわけです。縦割りの機構というものがずっと下へおりていくわけでありますが、確かに縦割りがいいという人もおるのです。作物と土壌のつながりを無視しては考えられないわけでありますから、作物別の縦割りでやる方がいいという意見もある。しかし現実に、例えば連作障害といったようなものが今やかましい問題になっておる。これは単なる単作ではない、こういう問題もある。それから土壌基本的な共通の問題もある。さまざまでありますが、こういう国が今行っておるさまざまな多様な施策というものを最も効率的に、例えば地力増進法という法律の制定を契機にして何かお考えになっておる点があるのかどうか、それこそこの法律運用のポイントになってくると私は思うのですよ。そういうものをまとめていくようなものが必要なのかどうかもあわせて、特に試験研究機関の問題などもあるわけでありますが、それらも含ませてお考えがありましたら、この際明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  73. 小島和義

    小島(和)政府委員 予算の立て方といたしまして、作物別に対応していった方がいいのか、あるいは地域単位、その地域の自主性を尊重しながら予算が執行できるような仕組みにしたらいいのかという問題は、これは農林予算全体を通じましてかねがね問題になっておるところでございまして、それぞれ一長一短持っているというふうに考えております。  近年の傾向といたしましては、余り作物別に細分化された予算をそれぞれの部局が地方に流していくという仕組みは、行政事務の煩瑣という点から見ても、また、地域の受け皿がほぼ同じであるという点から見ても問題が多いのではないかということで、作物別の予算も極力統合いたしまして、例えば新地域農業生産総合振興対策というふうな予算の中において、地域計画に即してある程度弾力性を持って執行できるようにしていくというのが昨今の傾向になっております。  とは申しながら、部局の立て方が縦割りでございますから、物別の行政対応というものが非常に強力であるということも否めない事実でございまして、予算の編成過程におきましても、その作物別の動機を持っているところがリーダーシップをとってくる、こういう傾向は否めないわけでございます。したがいまして、地力の問題につきましても、例えば野菜なら野菜の生産ということにつきまして、問題意識を持っているところが野菜予算の中で土に関係した予算も組んでいくというようなことは、一概には否定し得ない要素を持っております。また、家畜のふん尿利用という問題につきましても、耕種側からのきっかけがある場合と、逆に畜産側の方に動機がある場合と両方あるわけでございまして、畜産側の動機によって予算が計上され、最終的にはそれは土づくりにも役に立つ、こういうケースもあるわけでございます。問題は、そういったいろんな予算の立て方の中で、現地がいかにして仕事をやりやすくしていくかという問題であろうと思いますので、この土づくりの法制化によりまして、例えば地力増進地域指定になりましたところが各種の予算の執行面においてある種の優先権を持ってくるということが、この地域指定のまたメリットでもあろうかというふうに考えております。  具体的には、それぞれ予算の種類がいろいろございますものですから、本省段階あるいは地方農政段階で知恵を出し合いまして、その円滑な推進のために工夫をしていくことがどうしても必要なわけで、法律制度だけではなかなか簡単に割り切れない性格を持っているということも御理解いただきたいと思います。
  74. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これはこれだけではありませんけれども、私どもはやっぱり地域農政というか、できるだけ地域に任していく、これを基本考えなければいけない。しかし、今の国の予算なり国の政策というのは中央集権であって、農林水産省で大体決まったことが下へ縦で非常に強くおろされてきておる。受ける末端は一本でありますから、さまざまな組み合わせで困る場合もあるし、あるいは適当に処理をしていくというようなこともしばしばできておる。そういう意味で、地方を、一番受け皿のところで一本にまとめていくという対応が、そうは言いながら市町村なり県なりでは大分進み始めてきているように思うのですよ。だから、私は、やはり中央、本省でその辺の問題はもう少し整理をしていくという要素を強めなければいけないのではないか、こんなふうにも考えておりますので、この地力の問題と絡んで相当な事業がありますから、その辺を含ませてお考えをいただきたいと思うわけです。ただ、これは予算がたくさんあるというわけでありませんよ。  そういうことで、地力増強のために必要なことは、この法案にも出されておりますが、やはり調査をしていくということなんですね。いわゆる土壌調査と通称言っておりますが、土壌調査をやるには施設が必要なんです。その土壌調査の施設、器具、そんなものはどの程度の分布というか、配置状況になっておるか、大ざっぱで結構ですけれども、ちょっとお知らせいただきたいと思うのです。
  75. 小島和義

    小島(和)政府委員 土壌調査とか診断を行うための施設、機材というものの整備につきましては、都道府県以下の段階で申しますと、都道府県農業試験場に最も集中的に配備をされておるわけでございます。ただ、それだけでは現地のさまざまな要請になかなかこたえられないということから、農家の施肥指導でありますとか、主要な養分量を分析するための装置を農業改良普及所に配置をするという仕事を長年続けてまいりまして、今日ではほとんどの農業改良普及所にはその種の施設が配備されているわけでございます。それから農協等の生産者団体につきましても、国の助成によりましてある種の施設をつくりました場合に、それの附帯施設として設置を助成したケースもございますし、農協等が自主的に購入したものもございますが、その数はつまびらかにしておりませんけれども、これも相当程度に入ってきているというふうに理解をいたしております。  具体的な仕事の分担ということにつきましては、簡単なものについてはできるだけ農協、普及所等がこれを分担し、高度のものになりますると試験場にやってもらう、こういう分担になっているように理解をいたしております。
  76. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 国の試験場、県の試験場、それから改良普及所、そういうところにそれぞれの機能に対応する内容資材が配置をされておる、ほぼ全国的にそういう状況になっておるようでありますが、問題は、やはり実際に住んでおる地域市町村というか、農業団体、農協が一番多いようでありますが、農協などに土壌診断機が配置されなければ、これだけの広い国土の土壌調査というものはなかなか進まないわけです。私どもの県では、たしか農協の数は総合農協が八十七、八あるのだと思いますが、大体約半分までいっておりません。聞いてみると、私の県は全国的にそんなに水準の低い方じゃない、むしろ真ん中よりも高い方だろうと聞いておるわけです。  そうすると、大ざっぱに類推していくと、全国でまだ半分ぐらいしか簡単な土壌の測定機も配置されてない、こういう状況では土づくりというのはなかなか前進しないと私は思うのですよ。少なくとも全国の農協、今農協というのは合併して相当大きくなっておりますから、幾つかの町村が一緒になっているところもあるのです。そんなところは大体置いてあると思いますけれども、しかし、旧市町村など単位の農協にはほとんどまだない。特に、この土壌調査を対象として仕向けなければいけない地域とされる畑作、樹園地、こういうところは、熱心なところはあるようですけれども、水田地帯と比べると比較的おくれておりますね。そういうところは非常に少ないようです。そういう配置の状況が整わないと、土づくりだ、土壌調査だという出発はそこでありますから、なかなか前を向いて動かないと思うのです。そういう意味では、これらの配置に対する予算というものが国の呼び水、こういうものも必要でしょうし、団体なり農民も力を合わせなければいけないわけですけれども、今の農業農民経済の実態からすると、その辺まで踏み切ることがなかなか難しいということでありますから、こういう法律をつくったのを契機に、思い切ってそういうところへ目を向けて対策を立てていくことが必要じゃないか、私はこう思います。そういう点についてのお考えをお示しをいただきたいと思うのです。
  77. 小島和義

    小島(和)政府委員 農協段階におきます土壌の診断のための器具の配置につきましては、新生産総合事業の中の助成のメニューとしてはございまして、必要があればこれを交付することはできることになっておるわけでございます。  総じて申し上げますと、果樹地帯とかあるいは野菜の生産地帯というのは、地力に対する、土壌に関する意識というのは非常に高うございまして、生産者団体におきましても、国の助成があるなしにかかわらずこれを設置しているケースが多いようでございますし、逆に水田地帯になりますと、これは比較的その地域としては似通った土壌性質のものが多いということも関係するのかもしれませんが、普及所の施設によって需要を充足しているというケースが多いように見受けられております。いずれにいたしましても、器具だけを配置いたしましても役には立たないわけで、そのためのある程度の専門知識を持っている職員がいるということを前提といたしまして、必要なものについては助成をいたしていくつもりでございます。
  78. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間がなくなりましたが、私は次に担当者の問題も指摘をしておきたかったわけであります。試験場や普及員の中の技術者と同時に、農協などにも技術員がおるわけですが、やはり農家の中でみずからやっていくというリーダーが出てこないと、なかなか広まりませんよ。  これまでの土づくりというのは、いろいろ言いましてもやはり行政の担当、特に改良普及所を中心とした動き、農協の指導部陣営を中心とした動き、こういうものが主として担当者になっておるわけです。しかし、これでは、そういう方々からお話を聞いても農民は動かない。農民が動かないには動かない状況があるわけで、今の状況の中では、なかなか動きにくい実態であります。ですけれども土づくりというものにこれほど関心が高まってまいりますと、本格的に農家農民をこの問題の中に位置づけをしていくという対応を考えなければいけない。それをやらないとなかなか広まらないし、本当のものにならないと思うのです。  そういう意味で、私は県の推進協議会とか市町村の協議会などのメンバーを見てみると、これはほとんど農業団体関係者で占められております。そこへ技術者が入っておるということであります。やはりその地域にはそれぞれ活発な営農集団があるわけでありまして、そういう人々の代表を積極的に入れていく、こういうことも考えなければいけないでしょうし、こういう人々に対する必要な土壌診断なり改良資材の活用なりあるいは施肥設計、そういう問題に関する高い技術なり普及、そんなものも国やこういう組織の中で積極的に、多少やっておりますけれども、もっと進めていって中心の推進組織をきちんとつくらないと、この問題は今の農村の状態の中では非常に心配が多いということを申し上げておきたいと思います。  それから最後に、いろいろ法律のこともお尋ねしたかったわけでありますが、一番心配しておりますのは、土づくりというこのキャッチフレーズは相当しみ込んでおる。そして、どうしたらいいのかということで皆悩んでおります。そこへこういう法律ができるということで、一面期待もされております。しかし、これは場合によると売り込みの道具にされる心配もあるわけです。例えば肥料あるいは改良資材、こういうものがさらに伸びていく、特に農協なども土づくりということは言っておりますけれども、これはやはり事業団体ですから、そういう土づくりと絡んで資材の購買活動というのは意図するでしょう。そういう意味では、注意しておかなければいけない点であります。  本来、土づくりというのは自然生態系の復帰を基本的には求めておる。いわゆる近代化路線というものがつくる食物についても一つの問題を出してきておるし、肝心の土壌の中にいろいろな妙な性質の組み合わせをつくり出して、地力全体の調和は外れてきておるということでありますから、自然生態系の有機的連合をどういうふうに組み立てていくかというところが土づくり基本だと思うのですね。ところが、現実には改良資材がどんどん投入されていくし、肥料が投入せられていくということも心配をされる条件にあります。もしこの地力増進法というものがそういうムードや方向に引っ張られると、これは我々が意図したものと全く逆なことになるわけでありまして、そういう面については非常に強い行政の監視や指導が必要だと思いますが、その点も含めて御答弁をいただきたいと思います。
  79. 小島和義

    小島(和)政府委員 御指摘の点は、このような地力増進対策指針策定とかあるいは土壌改良資材に対する品質表示制度というものが一つのバネになりまして、さまざまな資材が今まで以上に農村で使われていくということに対する一つの戒めというふうに承ったわけでございますが、確かに地力問題というのは本質的に土壌中のいろいろな生物活動というものを活用いたしまして自然の物質循環を有効に農業に作用さしていく、こういうことが基本でなければならないと思っておるわけでございます。  その意味では、今回品質表示制度の対象になります土壌改良資材はあくまでもそれを補完する補助的なものということでありまして、このような法律制度がきっかけになって資材の売り込みが今まで以上に活発となることについては厳に戒めていきたいというふうに考えておるわけでございます。また、実際問題といたしまして、都道府県の定めていきます対策指針の中におきましても、今申し上げましたような理念が十二分に生かせるように、策定に当たりましても指導してまいるつもりでございます。
  80. 阿部文男

    阿部委員長 小川国彦君。
  81. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今回の地力増進法案の政府提出をきっかけに、地力とは土壌とは、こういうことをお互いに勉強し、また全国の農業者農業団体、自治体挙げてこうした問題に取り組んでいこう、そういう一つのきっかけになったということでは私は一歩前進であるというふうに考えるわけですが、その中身をこれからどうしていくかということが一番大きな問題としてあると思うのです。このPRはまず学校から始まると私は思うのですが、小学校、中学校、高校の教科書を通して土壌問題に対するPRというのはどの程度行われているか、そういう教科書の中にどのくらい取り込まれているか、こういう実情については御検討なすったことはございますか。
  82. 小島和義

    小島(和)政府委員 昨日、参考人の御指摘もありまして教科書を調べてみたわけでありますが、どうも農業の面におきます土壌役割というふうなことについての記述はほとんどございませんで、一般的な理科の実験程度の記述程度しかないというのが現状でございます。
  83. 小川国彦

    ○小川(国)委員 実は、私もまず土壌地力に対する教育は学校教育から始めなければだめじゃないかと思いまして、小学校、中学校、高校の教科書をかなり調べてみたわけです。その中で感じましたことは、小学校ではかなり土壌、土についての記述はあるのです。  例えば小学校の「理科」の五年生の上、学校図書のものでは「水」というところに「土は、水をよくたもつ。」「温度」というところに「土は、日光であたたまる。」「空気」というところに「土の中にはすき間があり、そこに空気がある。」こういうので、まず土に対する基本的な考え方を水や温度、空気の中から教えるという考え方がある。  それから東京書籍の「新しい理科」、これも五年生の上なんですが、これでは「植物がよく育つには、水や日光のほかに、土の中にふくまれている養分(肥料)が必要である。」こういうふうにまず肥料の必要性が書かれてあるのです。  それから日本書籍の「小学社会」五年生、これでは「広がるいちごづくり」という中で「いちごづくりには、土づくりがいちばんたいせつであることがわかり、近所の畜産農家と手をむすんでたい肥をつくり、それを水田にいれて、肥えた土をつくることに努力しました。」それから化学肥料の利用について「しかし、化学肥料ばかり使っていると土地がやせることに気づくようになり、最近では化学肥料といっしょにたい肥なども使うようになってきました。」小学校の教科書ではよく書いてあるのですよ。  それから「小学社会」五年の上、大阪書籍では「地力を高める 生産組合の代表者と、農協・町役場の人たちが話し合って、農協にたい肥銀行がつくられました。 畜産農家が家畜のふんを運んでくると、農協の人が、たい肥舎でおがくずなどとまぜて発こうさせ、たい肥をつくります。たい肥がほしいという農家には、「わかなぎ会」というわかい人たちのグループが、ほうし活動でとどけに行きます。」  それから中学へまいりますと、中学校の「理科」では、例えば大日本図書の教科書で「土と生物 土の中は、温度も水分もあまり変わらず、動物のかくれがとして適しているし、植物も根をはって、無機養分を得ている。」それから「土の汚染」というようなことで「イネなどの農作物の病虫害を防ぐために散布する農薬や、鉱山や工場からの廃液が農業用水に混入することなどが原因となって、土壌が汚染される。」というので、土壌汚染、公害の方に中学は関心が向いていくのです。  高校になりますと、例えば「山の斜面には、風化によってできた土壌がたまっており、またその下の岩石の表層ももろくなっている。」というので、高校の教科書になると土壌の構成のようなところに触れているのです。  それから高校の「地学」では、「土壌 地表の岩石は、大気や水のはたらき、温度の変化、あるいは生物の作用などによって、物理的な破砕と化学的な分解とを受ける。この現象が風化作用である。」ということで、やはり土壌の構成、分析になっています。  そして、高校を見てみますと、こういった形で大体理科の先生が教科書をつくっている。理学部出身の人がつくっていますので、小学校は非常にわかりやすく地力の問題などをやっているのですが、高校にいきますと理学部の先生がつくるせいか、どうも土壌というものに対する分析が足りないような気がするのです。これは日本の大学構成を見ると、農学部では土壌研究室とか応用化学とか農芸化学をやっているのですが、理学部には土壌の研究室がないのですね。外国では理学部にあるのだそうですが。こういうことから、高校生も、土地について例えば北アメリカのプレーリー土とか熱帯のラテライトとかソ連のウクライナ地方のチェルノーゼムとか、こういうのは知っているのですが、土壌基本である褐色森林土とかポドゾルとか赤黄色土、それから石灰岩土壌という基礎的な言葉を知らないのです。これはまず、高校の教科書にこういう土壌に対する基本的な知識が盛り込まれるような努力から出発しなければならないかと思うのですが、その点は大臣あるいは局長でもいいのですが、御見解いかがでしょうか。
  84. 小島和義

    小島(和)政府委員 今の問題は、土壌問題に限りませず、私も、農林水産業の政策を担当している側から見ますと教科書についていろいろ御注文申し上げたいことは多々あるわけでございます。先生も、たしか林業の問題についての記述が少ないということで林野庁から文部省に対してそのような申し入れをしたような経過もあるわけでございますが、教科書の作成につきましてはそれなりのルールができ上がっておりまして、各省の要請をあまねく承るという仕組みには必ずしもなっていないわけでございます。したがって、私どものやるべき仕事といたしましては、教科書を作成する方に直接働きかけるというのはもちろん大事でございますけれども、あわせて、一般の認識が高まることによってそのことが教科書に逆に投影していく、例えば今御指摘ございました土壌汚染というふうな問題は、一般の世論が大変高まりましてそのことが教科書の中にも反映していった、こういうプロセスだろうと思います。  その意味におきましては、教科書の中身について直接お願いをするというよりは、周辺からの世論喚起ということの方が非常に効果的ではないかと思いまして、これは日本の問題ではなくて残念なんでございますが、昨今世界の農業土壌問題についての新聞等の記述が大変ふえておりますので、そういったことも教科書編さんを行っておる人に対しては心理的に大変プラスの影響を与えるのではないかというふうに理解をいたしておるわけであります。
  85. 山村新治郎

    山村国務大臣 御存じのとおり、実は農林水産業の林が抜けてしまって教科書に入ってなかったということで、これは予算委員会でも問題になりました。我々としましては、この林の方も、緑資源の確保は本当に重要なものでございます。そういうような問題を含めまして、土という面でも、閣僚同士でございますから文部大臣にも、人間の生きていくうちで植物をつくる上での一番大事なものだということもよく申し述べまして、あと向こうでどういう対応になりますか。これは誠心誠意申し入れていきたいと思います。
  86. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣にも大変御理解をいただいて、そういう面でまず日本農業、国民にとっても大変な土の認識を深めさせていただきたいと思います。  それから、土づくりについて本法の中でこれからのあるべき姿が書いてあるのですが、これまでの日本土づくりについて農水省を中心として進められてきた予算的な、あるいはまた農地全体に対する対応というのはどうであったのかということをひとつ私は振り返ってみたいと思うのです。  いろいろちょうだいした資料の中で、耕土培養法が今度で廃案になっていくわけでございますが、この耕土培養事業の実績というものは、今までの記録で見ますと、大体不良土壌が百十九万三千ヘクタールありまして、そのうち対策調査を六十六万六千ヘクタール行って、耕土培養事業実績としては、秋落ち水田、酸性土壌、不良火山灰土壌を含めて四十四万五千ヘクタールを行った。そして予算的に見ますと、補助金が八億四千五百八十一万八千円、融資が三十一億七千四百八十五万八千円というふうに書かれているのですが、耕土培養の実績はこういうことでございましょうか。  それからもう一つは、百十九万ヘクタールのうち実績として四十四万五千ヘクタールというと、残された六十万ヘクタール前後はどういうふうになっておりますか。この点からまず伺いたい。
  87. 小島和義

    小島(和)政府委員 耕土培養事業実施の経過につきましては、ただいま御指摘がありましたとおりの数字でございます。これは、この対策実施いたします際に対策調査基本になりまして、その中で事業実施に踏み切れるところを中心にして仕組んでまいりましたので、必ずしもカバレージは高くはないわけでございます。  ただ、この事業が始まりました時点におきましては、肥料以外の役割を持つ資材土地に施用するということについて一般農家はほとんど知識を持っていなかった時代でございます。具体的に申し上げて大変恐縮ですが、例えば、御存じの秋落ち水田の原因及び対策というのが科学的に解明されましたのは、昭和十九年に東京大学の塩入教授という方が初めて明らかにしたわけでございまして、当時とすれば大変な新知識であったわけでございます。そういったことが国の事業によりまして相当まとまった地域において行われたということがきっかけになりまして、周辺部分におきましてもそのような対策をすることが秋落ち水田に効果的であるということが普及をいたしましたので、国が直接補助または融資をいたしました面積は御承知のとおりな数字でございますが、その周辺部分にはあまねく普及をいたしまして、今日秋落ち水田の問題というのはほとんど影を潜めてきている、こういう実情にあるわけでございます。不良火山灰土壌の場合には若干異質な問題がございますけれども、酸性土壌なんかについてもやや似たような経過をたどりまして、これが一つの突破口になりまして、対策実施した以外の地域におきましてもおおむね改良成果が上がりつつあるというふうに判断をいたしているわけでございます。
  88. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この法律がなくなりまして、この対策調査実施された面積、それからまたそれ以外のところであっても、この中身事業というものはどうなるのでしょうか。今後継続されるのか、これで打ち切りになるのか。
  89. 小島和義

    小島(和)政府委員 ただいま申し上げましたように、この補助事業というのはそれらの問題を抱えております地域におきます一つのデモンストレーション効果というものを持っていたわけでございまして、それ以外の土地は全く放置されておるということでは決してございませんで、新しい資材の施用によって効果が上がるということがそれらの地域において十分知識として定着をいたしたわけでございますから、それによって実際には対応されつつある、かように判断をいたしております。  なお、この事業終了後におきましても、この農業改良資金という制度地域によって本当に必要な事業がございますれば貸付対象として取り上げることができるような仕組みになっておりますので、たしか私の記憶では、事業終了後におきましても個別には貸し付けた事例があるようでございます。したがって、残りの地域は放置されているということではないというふうに理解をいたしております。
  90. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この事業は二十年間にわたって行われたのですが、国の補助が八億、融資が三十一億。今のお話だと、補助がなくなって融資のみになってしまうような印象を持たれるのですが、その点はいかがでございますか。
  91. 小島和義

    小島(和)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この事業実施過程を通じまして営農的な手法としてそれらの地域に定着をしてきたということでございますから、それらが農家の毎年毎年の営農活動の中において一たん定着したものが繰り返し実施されておるということによって、このときに問題にしましたような土壌化学的性質の問題というのはほぼ解消したというふうに理解をいたしているわけでございます。
  92. 小川国彦

    ○小川(国)委員 局長の御説明だと一応終わったような感じを受けるのですが、私どもが不良土壌の分布面積から対策調査をやった面積、それから実施面積と見ますと、確かに波及効果はあったでありましょうが、波及効果の中にはどれだけ解消したかということも明らかではないわけでありますし、こういった点については、本法が廃案になるにしても、やはりその事業中身についてはそうした問題があればなお引き続いて取り組む、こういうお考えを持っていただきたいというふうに思います。
  93. 小島和義

    小島(和)政府委員 今回の地力増進法案は、ある特定化学的性質が悪くなっておるということだけではございませんで、いろいろな土壌の不良状態というものに対する行政的な対応を可能にしておるわけでございますから、その中には耕土培養法の対象となっておりましたような土壌の不良性に起因する問題がありますところも制度としてはカバーするものというふうに理解をいたしております。
  94. 小川国彦

    ○小川(国)委員 わかりました。そうすると、今後行われるであろうこれからの地力増進事業の中でカバーをしていく、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  95. 小島和義

    小島(和)政府委員 制度としてはそういうことでカバーし得るということに理解をいたしております。ただ、先ほど申し上げましたように実態的には個々の秋落ち水田とか酸性土壌というふうな問題はこの二十年間の努力のたまものといたしましてほぼ解消しているという実情にございますが、今後またそういう問題が出てくれば当然カバーし得るものというふうに考えております。
  96. 小川国彦

    ○小川(国)委員 さらに、この耕土培養法以外でも、農水省は、現在、新地域農業生産振興対策事業というものでセット化された、メニュー化された事業、例えば地力増強事業、耕土改良事業、有機物供給センター事業地力培養モデル地区の設置事業土づくり推進指導事業、こういうのが五十九年度でも二十二億三千五百三十六万行われる。それから畜産局の方の予算では、県営、団体営の高度経済環境整備事業というもので三十二億六千四百万の予算が組まれている。そうすると、当面は、両方を合わせますと約五十五億でございますか、この予算がこれからの地力増進事業予算として考えられていく、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  97. 小島和義

    小島(和)政府委員 御指摘のとおり、今おっしゃいましたような事業が中心的な事業になっていくわけでございますが、そのほかにも、各作物に関係いたしましたもので内容的には地力対策を含んでおるという予算が幾つかございますので、そういったもの、それから農業構造改善事業のように、本来地域の必要性に応じまして幅広に助成ができるというふうなメニュー事業がございますから、そういったものも含めまして対応をするという考えでおるわけでございます。
  98. 小川国彦

    ○小川(国)委員 概算で結構でございますが、そういった総体的なものを含めて、土づくり予算というのはおよそどの程度の金額になるか。
  99. 小島和義

    小島(和)政府委員 今申し上げましたような各作物に関係する予算あるいは構造改善事業のように本来メニュー化された事業というのは、その中の土づくり関係する分が幾らかという取り出しが非常に難しゅうございまして、端的にはお答えしにくいわけでございますが、全体の中に占めております比率ということになりますれば、本体事業があるわけでございますから、比率はそれほど高いものではないというふうに考えております。
  100. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その比率はどのくらいになるのでございましょうか。
  101. 小島和義

    小島(和)政府委員 これはいろいろ試算をしてみたのでございますけれども、何%とはっきり自信を持って申し上げるだけの数字はございませんで、相当なお時間をいただけますればさらに事業の実績を分析いたしまして比率等を取り出してみたいと思いますが、現時点におきましては何%と申し上げるだけのはっきりした根拠を持ち合わせておらないというのが実情でございます。
  102. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その何%というのは、農林予算の中ででございますか、構造改善事業の中ででございますか。
  103. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは構造改善事業でありますとか、それから作物別の予算があるわけでございます。例えば野菜の関係予算でありますとか、あるいは自給飼料の関係予算でありますとか、あるいは大豆の関係予算でありますとか、そういういろいろな予算の中に、それが本体ではございませんが、関連いたしまして若干の土づくり対策の要素を持っているものがあるものですから、その部分が関係予算の中で何%かというのは積算上はなかなかはっきり分離できないわけでございます。また、実行段階で多少の弾力性は持っておりますから、積算の内容とは直接関係なしに実行上どれだけのものが含まれたかという問題も別にあるわけでございますので、その意味でパーセンテージを大変申し上げにくいわけでございますが、先ほど申し上げましたように本体の部分があるわけでございますから、比率としては何割というほど高いものというふうには私ども考えておりません。
  104. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いすれにしましても五十五億がメーンで、プラスアルファを加えても百億にはなりませんね。これを加えてもあと大体十億か二十億上乗せというところで、七十億ぐらいの見当に押さえていかがでしょうか。
  105. 小島和義

    小島(和)政府委員 大変概観して申し上げればそんなことかなという気がいたしますが、積算上の確信は余りございません。
  106. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、これから土地づくり、地力づくりをやるのに、何といっても一番先立つものはやはり予算だと思うのですね。ですから、いろいろ農蚕園芸局の中、畜産局の中、構造改善局の中、それぞれにあります予算をひっくるめて日本土地づくり、地力づくりには大体どれくらいの予算がちりばめられているのか、そしてそれの施策効果がこれから十年なり二十年かけてどういうところまで持っていけるのか、そしてそれは耕土培養法の二十年間の歴史のように、それによって普及効果、波及効果というものが考えられればどれだけの日本地力改善ができるであろうか、こういう将来展望を持つ必要があるのじゃないか。  きのうも大学の先生が、役人の方も二、三年か三、四年するとポストがかわってしまう。国会議員も今大体二、三年ごとに選挙があって、これも非常に変動が激しい。このことと取り組むのはやはり第一線の農業者農業団体あるいは地方自治体の職員の方々が中心になってやってもらわなければならない。しかし、それにしても国なり県なりは、およそ十年なり二十年なりかけてこの辺まで持っていきたいという予算的な目標もやはり考えてみる必要があるのじゃないか。五百万ヘクタールの日本農地の中でどのぐらい地力改善がやれるのかという目標設定が大事じゃないかと思うのですが、その辺のお考えはいかがでございますか。
  107. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは予算面からどれだけの金という長期のプログラムがあるわけではございませんが、この法律の中で予定いたしております地力増進地域の長期的な設定の規模といたしましては、これはまだ地図上で土壌基本図から拾ったものでございますから、そのほかの要素を吟味いたしておりませんが、大体二千六百カ所ぐらい、面積にいたしますと八、九十万ヘクタール程度というふうに押さえておるわけでございます。地域指定といたしましては、その二千六百のうちさしあたりは一県三カ所程度、したがって全国で百四十カ所くらいから手をつけていきたいと思っております。  これを年次計画でどのように仕組むのかという問題につきましては、現時点におきましてはその百四十先発ということだけ決まっておりまして、その後毎年何カ所ずつやるかというふうなことについては、さらによく吟味をいたしました上で一種の長期計画のようなものを構築していきたいというふうに考えております。
  108. 小川国彦

    ○小川(国)委員 長期展望は、年次的には何年ぐらいをお考えになっていらっしゃいますか。
  109. 小島和義

    小島(和)政府委員 これは、今地図上で拾いましたものが二千六百ということでございますから、さらに子細に吟味いたしますとその数がもっと減ってくるという事態もございますし、それから新しく地力上の問題が発生をしてくるという場所も長い間には当然あるわけでございます。したがいまして、何年、何カ年計画でやってそれで終了というふうなことではございませんで、この法律自体が一般的な手続法になっておりますので、問題がある限りはこの法律を動かしていくという考えでございます。  それにいたしましても、何かの行政的なめどを持たなければならないということもよく認識をいたしておりますので、今の二千六百地域地域別の吟味を進めながら、中期的な展望、計画というものもつくっていきたいと考えております。その時点というのは、余り長期にわたりますと真実味が薄くなりますので、十年とか二十年をサイクルとしたものを一応構築してみたいというふうに考えております。
  110. 小川国彦

    ○小川(国)委員 単純に二千六百カ所を百四十カ所で割りますと十八年でありますけれども、そのぐらいかかってもいいと私は思うのです、年数的には。その箇所はもっとふえてほしいとも思いますが、これはこれからのいろいろな時代の変遷の中で見ていかなければなりませんが、農業というのはやはり百年ぐらいのめどで考えるべきものじゃないかというように思うわけだし、そういう意味では今の大臣や局長の時代に、二十年ぐらいを展望した長期計画で結構ですから、日本地力を高めるという基本指針をぜひおつくりくださるように要望いたしたいと思いますが……。
  111. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃいましたように、役人は二、三年、国会議員も二、三年たつとかわる。大臣の方は一年でございますが、先生の御要望のようにできるだけ長期展望を立てるように小島局長と頑張ってやっていきたいと思います。
  112. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣、一年の任期中に十年分ぐらいの仕事をやっていただくことを大いに期待いたしております。  それから土壌の研究機関の問題なんでございますが、昨日も学者の先生方ともいろいろ議論しました。学者の先生方の中には土壌博物館をつくれ、これも発想としては、土壌に関する国民の理解を深めるための一つの提言としては大変おもしろい提言だというふうに私は受け取ったわけでありますが、残念ながら日本には土壌研究所はないわけです。  諸外国の例を調べますと、アメリカは国立のベルンビル農業研究センターというのでやっております。ソ連は国立土壌研究所、西ドイツは国立土壌地質研究所、フランスは国立農学研究センター、イギリスでも国立マッコーレー土壌学研究所、オランダは国立土壌調査研究所、イタリアは土壌調査保全研究所、こういうふうに大方の国々で土壌だけを対象とした調査研究所があるわけです。  日本では建設省が地理調査所を持っていますし、通産省もたしか似たような研究施設を持っていらっしゃる。しかし、事土壌に関しては、今まで林野の関係あるいは農地関係からは農水省が中心になってやってきたと思うわけですが、建設省も全国至るところで道路をつくったり橋をつくったりしていろいろ土を掘り返す。運輸省も港湾をつくるときにはいろいろなところから土を持ってきて埋め立てや何かをしている。土をいじくっている省庁は多いわけなんですが、そういうところが工事をしたときに、そこはどういう土壌であつたかということはちっとも考慮を払わない。東京湾など千葉県、神奈川、東京、全部埋め立てが行われているのですが、どこの土を持ってきて埋めて、どういう土壌になっているのかという記録もないのですね。  これから家を建てるときにそこの土壌は何であるのか、あるいは何十年か何百年か後の我々の子孫がそこの土壌は何であるのかわかるように、事農地に限らず、土壌についてはしっかりした記録なり資料なり分析を持っている必要があるのではないか。そういう意味では、日本も、それこそ今日まで主体的な役割を果たしてきた農林省がやはり中心になって、行革の折とはいいながら必要なものはつくっていくべきじゃないか。そういう意味では、筑波の研究所なども年々研究員の数が減ってきている、専門家の数が滅ってきているというような状況を伺いますと、この際そういうものを志向するということも農水省のお考えとしてはいかがなものかと思うわけなんです。
  113. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 御質問のございました土壌を含めます農業関係の試験研究のあり方の問題でございますが、お尋ねにもございましたように、土壌の問題は農業の技術の中で大変大事なウエートを持っておるわけでございますが、反面、日本農業全体として見ますと、日本独特の気象あるいは日本に固有の農業をめぐります病害虫あるいは水田のような水利用の問題、さらにそういう中でつくられます作物の種類なり品種あるいは栽培技術、こういうことを考えますと、どうもそういう全体を含めました総合的な農業の研究の中に土壌の問題も位置づけることがいいのではないかということで、基本的には土壌関係の研究部門を独立させるというよりは、総合的な農業の研究の中に位置づけていくという体制がいいのではないか、こういうような考え方に私ども立っております。  そういうような意味で、例えば水田作、畑作あるいは果樹、野菜、飼料作物、こういうような作目別の専門の研究機関がございますが、こういう中に相当程度それぞれの作目に絡みます土壌の問題を研究する研究室も置いておりますし、それから御承知のような北海道から九州にわたります地域農業試験場の中にも相当土壌関係の研究室を配置している、こういうような体制をしいております。ただ、いわば全体をまとめます基礎的な研究部門ということにつきましては、先生もよく御承知の昨年十二月に発足いたしました農業環境技術研究所というのがございまして、ここで、土壌は非常に大事な部門でございますが、土壌、水、大気、気象、それから環境生物と我々称しておりますが、昆虫でございますとか土壌内の微生物でございますとか、そういう環境生物、さらに人工的に加えます肥料、農薬等の資材の動態、こういうことも含めた広い意味での農業環境技術を総合的に研究するということで環境全体について農業環境を保全する、自然の生態系等の仕組みをうまく利用しまして農業生産の発展を図ると同時に環境保全も考えていく、こういうようなことをやっているわけでございます。以前は御承知のように農業技術研究所というような非常に総合的な基礎研究部門があったわけでございますが、その中から主として土壌肥料、病害虫等の関係を中心にしまして、今申し上げたような新しい理念に立った研究所をつくっているような次第でございます。  なお、研究体制につきましては、確かに研究員の数におきましては、御指摘のございましたようにいろいろ定員削減等の関係もございまして若干減っておりますが、研究室については土壌も含めまして年次的には少しずつ強化をして数をふやしているというようなことでございまして、そんなことを通じまして質的な面では大いにこの関係の研究を強化してまいりたい、かように考えております。
  114. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、それは行革の中の一つ考え方として、農業環境技術研究所の中にこの土壌の問題がその一部門として設置されるという状況になってきていると思うのですが、狭い日本の国土の中で、そのまた限られた農地の中で一億一千万の国民が生きていくというためには、農地というもの、土地というものが物すごく大切なんじゃないか、そういうふうに考えるわけであります。そこで、私、これはひとつ建設省を呼びまして聞こうと思って建設省にリハーサルをしましたら、建設省は土木研究所、建築研究所とあって、工事を行ったところの土壌検査、土質の検査はやっておるけれども、それをまだ農水省と一緒にやる考えはないということで、そういうところを呼んでも仕方がないと思ってきょうは呼ばなかったのですが、私は、農水省が中心になって埋立地をたくさんやった運輸省とか土木工事を盛んにやっている建設省を引き具してそういう国立の土壌研究機関をつくるというようなことを今後の方向としてお考えいただきたい、要望して終わりたいと思います。  それから、今度の法律の中で不良農地ということで取り組むわけですが、農地段階の中でⅢとⅣの非常に不良、さらに手のつけられないところが二百六十五万ヘクタールあるのですが、先ほどお話があった八十万、九十万ヘクタールというのは、このⅢとⅣの中から八、九十万ヘクタールを目標としてやっていく、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  115. 小島和義

    小島(和)政府委員 私ども日本土壌の構成と申しますか、基本的な性格とそれからそれらの地域生産力阻害要因等に関する最大の蓄積は、この地力保全基本調査及びその後の補正を行うための土壌環境基礎調査等でございまして、その中におきまして土壌生産力の可能性分級というのをいたしております。それがⅠからⅣまでの等級に分かれておりますので、そのⅢとⅣとの中から地力増進地域指定が行われるというふうに考えております。
  116. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大変時間がないのであれですが、表示規定の中で消費者の苦情とか受付とか申し立て規定がないのですが、これはどこで処理されることになりますか。
  117. 小島和義

    小島(和)政府委員 農業資材の場合には、一般消費者の場合と違いまして何らかの形で地域的に組織化されておるわけでございます。したがって、具体的な苦情等につきましては、そういった生産者団体あるいは農業改良普及組織というふうないろんな情報を吸い上げる組織体系を持っておるわけでございますから、当然それは都道府県知事の手元に寄せられてくるという前提を置いておるわけでございます。したがいまして、そういった苦情を受けて都道府県知事が新しく表示の基準を定めるべきことを農林水産大臣に申し出られるということによりまして、末端の苦情というものを受けとめることは可能であろうというふうに考えておるわけでございます。
  118. 小川国彦

    ○小川(国)委員 最後に、私はこの事業推進していく主体農民であり、農業者であり、農業団体であろうというふうに思うのです。私も限られた期間の中で、千葉県の八街町の八街農業研究会の青年たち八人の「仲間と取り組む土づくり」の現場を見せていただいたり、その記録を見せていただいたりしました。大ざっぱに申し上げて、約二千万かかったうち半額が野菜関係補助で来まして、半額を自分たちで借り入れをしてやった。しかし、その返済に当たって大変苦労していまして、自分たちで土地を借りてゴボウをつくったり、それからまたトラクターを使ってゴボウ掘りの請負をしたり、その八人の青年は非常に結束してその負債の返済に当たって順調な形でやっているのです。大臣も同じ選挙区だから、富里、八街はよく御存じですが、そういう畑作地帯の割合に農業後継者の多いところで、しかも農業で生きようという専業の農業者が多いところの青年層の結束がかたくて、二千万のうち一千万自分たちが借りても、堆肥舎をつくって豚のし尿を集め、宮城県の方へ行って稲わらを買ってきて、そして堆肥をつくって、スイカをつくったりメロンをつくったりする畑にその堆肥をまいている。これは非常に成功さしているのです。  それから、私、愛知県の赤羽根町へ行きましたが、これは農協が主体でやりまして、最初は四千万円の堆肥センター、二度目は一億七千万円の堆肥センターをつくっている。これは町の役場と農協と農業改良普及員が一緒になって一生懸命やりまして、非常に町ぐるみで成功している。農業者一戸の収入が一千百万というところまでいっておりまして、その堆肥センターがまさに土づくりの中心になって生かされるという実態を見てきたのですが、これも農協が半分の負担はした。しかも、農協の担当の参事さんとか町の役場の課長さんが十年がかりでその施設をつくって土づくりに取り組んできた成果だと言っているわけです。  そういう意味では、こういう農業に熱意のある人たちあるいは熱意のある農業後継者、こういう人たちをしっかり支えていくような国の財政的な、あるいは指導的な援助と相まってこの土づくりが前進するのじゃないかと思うのですが、そういうグループづくりですかね、先ほど来質問に出ているように田んぼで米をつくっている農家あるいは野菜をつくっている農家、園芸農家それから畜産農家、これを結びつける仕事というものを農林省が積極的にやっていただく、そういう核の指導者もつくっていっていただく、そういう努力がないと、かけ声だけで限られた予算でこの推進は困難だ。その中核づくりに農林省もぜひ取り組んでいただきたいということを最後に要望したいわけですが、この点についての御答弁をいただければ幸いでございます。
  119. 山村新治郎

    山村国務大臣 地力の維持増進というのは、農業自給力の向上それから農業経済の安定ということからも不可欠のものと考えております。今先生おっしゃいましたように、熱意のある方々を指導して、そしてまた予算面でもできるだけのことをしていくように努力してまいりたいと思います。  私、大臣就任以来、たくましい稲づくり、豊かな村づくり、そして健康な土づくりということを提唱してまいったのですが、実はたくましい稲づくりのときに四年連続不作ということもございまして、農業団体の代表の方、それから知事会の代表の方、それから市長会、町村長会、それぞれ代表の方をお招きいたしましてたくましい稲づくりの御協力方をお願いしたわけでございます。そのときにやはり出てまいりましたのはこの土づくりということでございまして、全国的に土づくりムードというものもございますので、これを一生懸命推進して今後もやってまいる、その気持ちでおります。
  120. 小川国彦

    ○小川(国)委員 終わります。
  121. 阿部文男

    阿部委員長 駒谷明君。
  122. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは、私の方から今回提案されております地力増進法案内容等について数点にわたってお尋ねをいたしたいと思います。引き続いて先輩の吉浦委員が質問をされますので、部分的に重複しないようにお尋ねをしていきたいと思っております。  最初に、このたび総合的な地力増進対策推進する観点から、地力増進基本指針策定地力増進地域制度を定めるとともに、土壌改良資材品質に関する表示の適正化を講ずる等を内容として地力増進法案提出をされたわけでございます。この趣旨については大変結構なことであると思っておるわけでございます。しかし、過去におきましてこのような重要な土壌の問題についての法的措置は、現行の耕土培養法のみであったように思います。しかも、この事業の完了からすでに十年以上も経過をしておるわけでございますが、この新法であります地力増進法案提出されるのに大変長い期間がかかっているように思うわけでございます。  なぜそのように長くかかったのか、理由背景についてまずお伺いをいたしたいと思います。また、地力低下の現状をどのように把握されておりますか、さらに低下原因をどの程度究明されているか、あわせてお答えをいただきたいと思います。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕
  123. 山村新治郎

    山村国務大臣 農地土壌というものは農業生産の基礎でありまして、地力増進農業生産力向上、そしてまた農業経営の安定ということからも不可欠のものであるというぐあいに考えております。そして、我が国の土壌というものは元来自然的生産力が低いものが多い上に、最近における農業を取り巻く諸情勢の変化に伴いまして地力低下が懸念されるような事態が生じております。また、近年、土壌改良資材の種類が多様化いたしてまいりまして、生産力も増加しておりますが、その品質表示について統一的基準がないため、農業者が安心して使用できないという問題も生じております。  このため、新たに地力増進法を制定いたしまして、地力増進基本指針策定いたし、地力増進地域制度について定めるとともに、土壌改良資材品質に関する表示の是正のための措置を講ずることとした次第でございます。
  124. 小島和義

    小島(和)政府委員 耕土培養法がその役割を終了して以来約十年なぜ放置してあったのか、こういうお尋ねでございますが、これには理由が二つございます。  一つには、昭和三十四年以来取り組んでまいりました地力保全基本調査、これは我が国の農業土壌の現状と生産力阻害要因というものを広範に調査した大変な技術的な蓄積になるわけでございますが、それが終了いたしましたのが五十三年でございますので、その結果によって今後の問題を検討いたしたいというふうに考えたことがまず第一点でございます。  いま一つは、耕土培養法は単一のある種の化学的な土壌の不良性を改善するための事業法規的な性格を持っておったわけでございますが、今回地力保全基本調査で出てまいりました内容というのは、土壌生産力阻害要因というのは非常に広範多岐にわたっておりまして、単一の手法だけでは解決し切れないという問題がありますので、法制的にいかなる対応が可能かという問題について、かなり検討の時間を費やしたということでございます。  具体的には、四十七年ごろから省内におきまして勉強会をつくりましていろいろ検討を進めてきた経緯があるわけでございますが、先ほど大臣から申し上げましたように、今日地力をめぐります社会的な問題というのがいろいろ懸念されておるというふうな時代背景もございますので、私自身の気持ちとしては、もう制度自体百点満点の制度をつくるというよりは、とにかく制度を発足させて、走りながら考えていく、こういうふうな気持ちが先に立ちまして、必ずしも十二分な法制と断言する自信もないのでございますけれども、とにかくこういう法律をつくることによってまた地力増進の機運が盛り上がってくるという副次的な効果もあるわけでございますので、その意味で今国会に提出をすることに踏み切ったという経緯でございます。
  125. 駒谷明

    ○駒谷委員 地力低下の現状並びに原因についてどの程度究明されているか、答弁願いたいと思います。
  126. 小島和義

    小島(和)政府委員 地力低下の現状認識でございますが、我が国の農業土壌というのはもともと地形的、気象的な要因によりまして必ずしも自然生産力が高いとは言い切れないような状態でございますが、それに加えまして、近年農村社会における社会的な変動が大変激しゅうございまして、そのことが農法の変化をもたらした。  具体的に申し上げますならば、そういう自然的な地力の低いところにおきまして、長年農家が大変苦労いたしまして有機物の施用等を中心にいたしまして地力の維持を図ってきたわけでございますけれども、農耕に使っております役畜が機械に置きかえられたというふうなこと、さらには農家の兼業化が進みまして、堆肥づくり等の労働力に事欠くというふうな事態が出てきたといったような社会的な原因が作用いたしまして、農法が変化をいたしたわけでございます。かわりまして、それを埋め合わせるものとして短期的な効果をねらった化学肥料というものにどうしても過度の依存をするようになってきたというふうなこともございますし、また農作業の面から申しますと、トラクターによるロータリー耕が支配的になりまして、深耕が行われなくなってきたというふうな要因も作用いたしておるというふうに考えております。  そういった問題につきましては、先ほど申し上げました基本調査の終わりの三年間において、基本調査を補完するものとして地力実態調査を三カ年にわたって実施をいたしたわけでありまして、その中で比較的顕著に指摘されておりますことは、土壌中の有機物が減少をしておる。また作土が浅くなって、かつ、かたくなっておる。それから土壌中のカリとか石灰、苦土等のいわゆる塩基バランスが失われてきておるといったところに今日の地力低下のやや顕著な傾向が見られるわけでありまして、それらを背景といたしまして地力増進対策が特に必要である、こういう認識を持つに至ったわけでございます。
  127. 駒谷明

    ○駒谷委員 地力低下の実態の中に、連作障害という問題が各地に起きてきておるわけでございます。私の兵庫県の丹波の方でも里芋の関係で連作障害が起きておるというようなことで、いろいろ対応が迫られているわけですが、これに対して全国的に農水省の方で調査をなさったように伺っておりますけれども、その原因等について十分に解明されているのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  128. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 お尋ねのございました連作障害関係調査等の状況でございますが、これは、私どもの野菜試験場が昨年十月に各都道府県の野菜花卉担当の専門技術員あてに実態調査を依頼してございます。実はまだ一部結果等が回収されておりませんので、その状況等は完全にはまとまっておらないわけでございますが、このとき、主な野菜や花の産地別の連作の年数、障害の発生程度、原因、今までどんな対策がとられているか、これからの問題点はどんなことか、こういうようなことを調査をしたわけでございます。  今まで一部出てまいりましたことから申しますと、連作障害の原因としては、病害によるものがやはり一番多く、線虫の被害によるものがそれに次いでおります。このほかに、土壌のいわゆる理化学的性質の悪化による生育障害、こういうようなものがあるというような結果が今のところはまとまっております。  私どものこういう問題に対する研究でございますが、こういうふうに連作障害の原因としては、特定の病害虫が多発しますとか、土壌の中の微量要素の欠乏、塩類集積とか、いろいろな原因が集まります一種の複合被害のような形になっておりますので、その防除的技術を相当いろいろな面の研究者が協力をしまして研究をしなければならないということで、現在も国の方では野菜試験場を中心としましたプロジェクト研究を実施しましたり、それから特に今年度では関東、東海等の集約的な畑作地帯で安定生産技術を確立する、こういうようなことも進めております。それから、特に野菜作を相当持っております農業研究センターでは、こういう連作障害のいわば圃場カルテというものをつくろう、こういうようなことにチームで取り組んでおります。  今までは、こういう面につきましては、この連作障害により生じます病虫害に強い品種をつくる。あるいは土壌地力向上を図るような作付体系を確立する。それから、クリーニングクロップなどと称しておりますが、例えば連作による塩類集積を除去するための機能を持った作物の導入とか、こういうことによる土壌の改良のやり方、こういうような面でいろいろな成果を上げておりますが、まだまだこの問題は我々研究体制としまして力を入れるべき問題である、かように考えております。
  129. 駒谷明

    ○駒谷委員 今の御答弁でも、連作障害についての最終的な明快な研究の結果はこれからという状況のように伺うわけでございます。また、小島局長の方から、やはり地力低下の問題について諸条件の話があったわけでございます。  そういう問題をとらえてまいりますと、果たして今度の法制化で農業者営農意欲の向上に結びつく、あるいは期待される土づくり推進がスムーズにいくのかどうか。特に二種兼業農家等の農地については、この指定の対象になる農地地力低下農地が多いと思いますし、全体にその所有の農地が大きいわけでございますので、その対象になる可能性が強いかと思いますが、この推進を図っていく上において、農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
  130. 山村新治郎

    山村国務大臣 地力増進法は、地力増進の効率的推進を図るため、法制的枠組みを創設したものでございます。このことのみで地力増進が確保されるとは考えてはおりません。やはり地力増進の実効を上げるためには、農業者に対して土づくりの重要性、これをよく説明しなければならないと思いますし、この土づくり運動の推進、そして有機物投入の機械化及び共同化を図るための奨励事業実施も重要であるので、これらをあわせて推進してまいりたいというぐあいに考えております。
  131. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは、具体的に今度は運用の面について立法措置が生かされるか否か、これは今後のこの法案運用という問題等にかかわる問題だろうと思います。  そういう点で、二、三お尋ねをいたしますが、まず地域指定面積要件、これは地縁的広がりを持った面積として、農水省令で定める面積以上ということになっておりますけれども、どのような考え方を持っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  132. 小島和義

    小島(和)政府委員 地力増進を効率的に進めるためには、問題のあります土壌がある程度まとまった地域でやっていくというところの方が重点的になると思うわけでございます。そのまとまりといたしましては、北海道二百ヘクタール、都府県は百ヘクタール程度というふうに見込んでおるわけでございます。  ただ、大体そういう物差しでおるわけでございますけれども、場所によりましては、特に都府県の百ヘクタールということにつきまして、例えば離島とか山村などにおきまして、なかなかそういう要件を充足し得ないというふうな問題も出てこようかと思いますので、その辺は具体的に各都道府県意見も十分聞きまして、実態に即して決めていきたいというふうに考えております。
  133. 駒谷明

    ○駒谷委員 さらに、指定地域につきましては単一市町で考えておられるのか、あるいは複数市町を対象にするのか。例えば指定をされた場合に、二町にまたがるような指定があり得るのかどうか。そこらの点についてお伺いします。
  134. 小島和義

    小島(和)政府委員 法律上の仕組みといたしましては必ずしも複数市町村にまたがることを否定はしてないと理解いたしておるわけでございますが、市町村段階における行政的な対応とか、特に農協などの農業団体の対応ということを考えますと、大体行政区画内で考えていった方がその後の仕事を進める上において便利ではないかと考えておりますので、大部分は同一市町村内ということになろうかと思います。それ以外のケースを排除するつもりは全くございません。
  135. 駒谷明

    ○駒谷委員 ぜひそういう考え方で進めていただきたいと思います。地元の意見を伺いましても、行政区単位というのは大変重要でございまして、特に面積の問題ですけれども、弾力的に運用したいという考え方でございますが、町単位になってまいりますと、都府県で百ヘクタールといいますとかなり大きな地域になりますし、そういう問題等からいきますと、やはり都府県面積、特に畑地等については種類別によって検討していただく必要があるのではないか。地元でも、そういう点についての考え方に大変心配をしている面があるわけでございます。その点、ひとつ十分に検討を進めていただくようにお願いいたしたいと思います。  それから、地域指定制度運用についての市町村役割、これは法的には明確にされておりませんけれども、大変重要な立場になるのではないか、かように思うわけでございますが、法的に示されておるのには意見の聴取ということだけが明記をされている。したがって市町村役割、これは今後運用の面でどう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  136. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに法律の面におきまして市町村というのが顔を出しますのは、地力増進対策地域指定するに当たりましての意見聴取と対策指針を定めます場合の意見聴取というところだけに顔を出してきておるわけであります。しかし、実際には市町村地域農業状況を非常に的確に把握し、ある場合には地域農業振興のための指導的な役割を果たしているという現実があるわけでございます。その意味におきまして、単に意見を申し述べるということだけではございませんで、対策指針策定後におきますところの実際の土づくり活動につきまして、市町村としても当然ある種の積極的な関与が期待できるだろうと思っているわけでございます。  この法律基本的な仕組みとしては、やはり国、県が中心となりました主として技術的な面からの行政サービスということを中心にして仕組んでおるものですから、その意味では技術的な役割市町村に期待するということについてはやや過酷な面もありますので、市町村の実際に果たす役割は、農家が行います土づくり対策について市町村行政という観点から支えていくというふうな役割だろうと思います。また具体的にも、国が交付しております土づくりその他に関係いたしました予算というものもおおむねは都道府県市町村という経路で生産者団体とか農家に流れていくというのが普通でございますから、その意味におきましても、事業実施面におきまして市町村の果たす指導的な役割というものは相当大きいものがあると考えております。
  137. 駒谷明

    ○駒谷委員 さらに、七条で助言、指導規定があるわけですが、ここで先ほどの論議でも問題になった勧告制度の問題があります。この勧告制度につきましては、この法案によりますと、農業者に対する経済的な援助という問題については具体的に明記が行われていない。そういうことから、勧告制度効果について、財政的な問題等含めてどのような考え方になっていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。  といいますのは、実際にこの勧告をすることができる。勧告をいたしますと、やはり経済的な理由からそういう指針による地力対策を行うことができない農家現実に生まれてくる。また、地域的な指定でございますから、例えばA、B、CでBの人が、真ん中だけが地力増進対策行為を行わない、それで大変周辺とのいろいろな問題が惹起するのじゃないか。そういうふうな問題等から勧告が行われるのだろうと想像するわけですけれども、そういたしますと、この勧告によって、農業者が経済的な問題等からそれに対応できない、そういう恐らく市町村並びに県の方に訴えてくる問題が出てくるのではないか。したがって、この勧告制度そのものが今後の農業者に対する財政的な援助、いわゆる補助するかあるいは助成するかあるいは融資、耕土培養法資材の購入等についての無利子の融資というような問題もあったようでございますが、そういう問題等を具体的に運営面で考えていかなければならないのではないか。勧告との絡みの問題で、局長の方からお考えをお伺いしたいと思います。
  138. 小島和義

    小島(和)政府委員 まず、農家が経済的な理由によってなかなか対策指針に即した営農ができないという事態が生ずるかどうかという問題でございますが、これにつきましては、そもそも地力増進対策地域指定に当たりまして技術的、経済的に可能であるというふうなことをその要件といたしております。もちろん、それは個々の農家が個別に対応することができるかどうかということを意味するわけじゃございませんで、一つ地域の中におきますところの組織的な対応を含めて、また通常予想されておりますような国、県の財政的な援助というものを織り込んで、なおかつ到底経済的に実行ができないという場合には地力増進地域指定自体が行えないわけでございますから、経済的な理由によってその農家が対応できないというケースはまずないというふうにお考えいただきたいと思います。  それからこの勧告制度の位置づけでございますが、地力問題というのは突き詰めていきますと農家の私的財産であるところの農地生産力にかかわる問題でございますから、一面、すぐれて個人的な問題であるという性格を持っておるわけでございます。そういうことについて国、県というふうな行政機関がある種の関与をしていくということは、これは単純な私的な財産ではなくて、長期にわたって民族食糧を支えるための基盤をなす土地である、したがってこれが良好な状態に保たれて子孫に受け継がれていくという性格を持っておる土地であるということに着目をいたしまして、税法上の特例でございますとかあるいは土地改良事業の公費負担による実施というふうなこともやっているわけでございます。また反面におきまして、農振法あるいは農地法というものによりましていろいろな制約も課せられているという土地でございます。  したがって、その地力の問題というのは単に個人の問題ではなくて、国、県としても相当な関心を持たざるを得ないところであるということからこの法律制度体系ができ上がっているわけでございますから、対策指針の決めっ放しであるとかあるいは助言、指導にとどまるということになりますと、この法律体系全体の存立の基礎が非常に薄弱になってくるわけでございます。その意味で、通常の助言、指導ではなくて、やや強目の指導という意味で勧告制度規定いたしたわけでありまして、この勧告制度によって地域指定から始まる一連の手続というのはいわば完結を見ているというふうに理解をいたしているわけでございます。  もちろん、そうは申しながら、この勧告制度を実際に働かすようなケースというのはほとんどないというふうに理解をいたしておるわけでありまして、事柄の内容を十分農家にも理解してもらい、適切な指導をいたしまして、また必要な援助をいたしますれば、事態としては期待している方向に動いていくという前提をもって考えているわけでございますから、その勧告制度が画一的に乱発をされまして農家に心理的な圧迫感を与えるというふうな運用は厳に慎んでいくつもりでございます。
  139. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは、この地域指定等に関連をいたしまして、先ほどもちょっと出ましたけれども、試験研究体制についてお伺いをいたします。  この地力増進地域での土壌調査を行い、あるいはその結果に基づいて化学的な対策を講ずる、これについては大変大切なことであろうと思うわけであります。土壌は大変複雑な状況である。化学的な対策を生み出す土壌の試験研究は今どのように行われているか、国の研究体制について簡単にお伺いしたいと思います。  さらに、土壌については一グラムの中に百万匹以上のバクテリアが存在する、そのようなことを聞いたことがありますけれども土壌について微生物はどのような役割があるのか、その点についても試験研究の結果がわかっておればお伺いしたいと思います。
  140. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 土壌関係の試験研究でございますが、簡単に申し上げますと、私ども土壌関係でどういうことを研究課題としてやっているかということは三点ばかりございます。一つは、土壌構成物の物性の掌握、どういう性質を持っているか。それから土壌生産力向上地力向上というのは土壌生産力向上する。それから土壌作物の持ちます環境保全機能を向上する。そういうような研究問題を持っております。  特に最初に申し上げました土壌の特性の把握等につきましては、さきに農耕地の土壌分類体系というのをつくりまして、現在これは筑波の環境技術研究所でやっておりますが、土壌図を作成するとか、そういうような意味での手法の開発をいたしております。  土壌生産力向上の面では、老朽化水田対策、不良土壌の解消対策、それから先ほどもお尋ねのございました畑作面を中心にしました連作障害回避技術の解明とか、こういうようなことをやっておりまして、全体の体制としましては、農業環境技術研究所というところが土壌、水それからいろいろな資材も含めました農業環境の保全、それからその機能の活用、こういうような基礎的な部門を担当しておりまして、これのもとに蚕糸、果樹あるいは水田作、畑作というような各専門機関それから地域農業試験場、こういうものが全体として一つの分担協力関係のもとに今申し上げましたような研究を進めておるわけでございます。  なお、国ということでお尋ねございましたが、県の研究機関につきましても、国から土壌につきましては十四課題の指定試験をお願いをし、また県が独自に実施をします各種の研究につきまして、土壌関係につきましても十二課題程度、県の数十八県でございますが、助成を行いまして、全体こういうような体系的な状態土壌研究を進めているわけでございます。  それから土壌の微生物関係でございますが、これも土壌研究の中では非常に大事な部門でございます。土壌微生物のいわば機能と申しますと、まず第一には、土壌中の有機物、無機物を分解しまして植物に利用可能ないわゆる養分的な意味で成分として供給する、こういうような細菌等がございますので、こういう細菌を発見したりその機能を開発する、こういうようなことが一つでございます。それから、空中窒素の固定機能を持ちます根粒菌などのように、大気中の窒素を固定しまして植物養分として供給するという機能を持ちます微生物の機能向上、こういうようなことが第二でございます。それからもう一つ、これも大変大事な機能でございますが、農薬や除草剤などの化学合成物質の中で、ほうっておきますと毒性などを持ちますような物質を無毒化するという機能を持ちます微生物もございまして、こういうものを発見し、あるいはそういうものが機能が十分発揮できるようにというような成果等が得られております。
  141. 駒谷明

    ○駒谷委員 地力増進という点から、今後地質の問題等大変重要な研究が必要であろうと思いますので、ひとつその点十分に努力をしていただきますようにお願いをいたします。  最後になりますけれども、この土壌の改良資材に関する規定、今回第十一条以下に表示制度の適用が行われておるわけでございますが、この点について二、三お伺いをいたします。  今回、土壌改良資材品質に関する表示の適正化措置が行われるわけでございますけれども、これを表示制度にとどめた理由についてお考えをお伺いしたいと思います。
  142. 小島和義

    小島(和)政府委員 本法におきます土壌改良資材に対する国の関与の仕方と申しますのは、まず表示の基準を決めまして、それを守らせるようにするというのが第一段階でございます。しかし、それが適正に守られないことによりまして問題が生ずるということになりますと適正表示命令を出せる。さらにまた問題がございますと、表示そのものを命令によって強制するという三段階に分けて考えておるわけでございます。したがって、最終段階まで参りますと、これはなかなか強力な監督規定ということになろうかと思います。  肥料の場合は取り締まり制度がありまして、一般的に禁止制度がある。つまり、登録を受けたものでなければ売ってはならないという規定を前提といたしまして、公定規格の設定、さらには、物によりましては届け出によって売れるという仕組みでございます。その根幹をなしておりますのは、肥料成分の保証、それから有害成分のチェックということがその内容になってまいるわけでございまして、今回取り上げました土壌改良資材の場合には、単一の成分量を把握することによって品質管理をするということになかなかなじまない物質であるということがございます。それからまた有害成分等につきましても、現在市販されておるものを調べてまいりますと、いずれも肥料取締法で規制をいたしております有害成分よりもはるかに下の低い有害成分しか含んでおらないというふうな実態にございますので、肥料取締法的手法をもちまして取り締まる必要性がないものというふうに判断をいたしたわけでございます。また、世の中全体の雰囲気といたしましても、国の行政運用に対するかかわり方というのはできるだけ必要最小限にとどめるべきであるというふうな物の考え方が支配的でございますので、その意味におきましても、表示制度によるソフトな関与の仕方から必要に応じてハードな関与の仕方まで選択ができるという仕組みの方が、この資材に対する国の行政関与の仕方としてはより適切ではないか、かように判断をいたしたわけでございます。
  143. 駒谷明

    ○駒谷委員 この土壌改良資材昭和五十四年現在で五百六十余り、相当の銘柄が出ているわけですね。その中には、先ほど答弁のありました肥料取締法の範疇に入る分もあるわけですけれども、それ以外の関係、いわゆる普通肥料あるいは特殊肥料としての範疇に入るもの以外のものが相当数あるように聞いているわけでございます。これが国内に相当流通をしているわけですけれども、農水省ではその実態をどのように把握されていらっしゃいますか。規制の対象に外れている資材はどれくらいあるか、またその内容が全く不明である資材も市中に出ているようでございますが、どの程度出回っているのか、その実態がわかればお伺いしたいと思います。
  144. 小島和義

    小島(和)政府委員 今回の法律の十一条以下によって表示制度の対象となります土壌改良資材は、肥料取締法規定する肥料の中で「植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことと併せて土壌に化学的変化以外の変化をもたらすことを目的として土地に施される物に限る。」ということにいたしておるわけでございます。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕 通常の肥料は、植物の栄養、土壌に化学的変化、このいずれかまたは両方という役割しか持っておりませんので、その意味では大部分の肥料本法で言う土壌改良資材の対象外になるわけでございます。ただ、肥料の中にも、そのような土壌の化学性の変化だけではなくて、物理性の変化とかあるいは生物的性質の変化をもたらすものもあり得るわけでございますから、そのようなものにつきましては取締法の規制と土壌改良資材表示制度と両方かぶってくる、こういうことになるわけでございます。  そこで、実際にどんなものが本法で言うところの対象として浮かび上がってくるかということになるわけでございますが、私どもの局で各県を通じまして調べましたところでは、約百三十種類くらいのものが出回っておるというふうに把握をいたしております。  その流通の実態でございますが、重量にいたしますと全体で百七万トンほどございまして、その中で圧倒的なウエートを占めておりますのは肥料取締法で言うところの特殊肥料の中に含まれます一部の堆肥、例えばバーク堆肥といったものでございますが、それが八十八万トンほど含まれておりますので、それを除きますと約二十万トン弱程度のものが出回っているというふうに把握をいたしておるわけでございます。必ずしもこういったものは肥料としての効果をうたっておるものではございませんので、肥料取締法逃れという意味合いで売られておるわけではございませんで、それなりの土壌改良効果を持って流通をいたしておるわけでございます。ただ、この種の物質は、肥料と違いまして、ある種の成分を保証して流通するというものではなくて、物質それ自体の性格によりますところの土壌改良効果があるわけでございますので、その使い道でありますとか使い方を誤りますと土壌改良効果が何もないということもあり得るわけでございます。そんな意味におきまして、従来法の対象外になっておりました土壌改良資材の大部分につきましてこの法制が適用になることによって、今回表示の適性化を図っていくということにいたしたわけでございます。
  145. 駒谷明

    ○駒谷委員 実は土壌保全調査事業全国協議会が発行した本でございますけれども、「土壌改良と資材」という資料、これは昭和五十六年六月に出版されておるわけですが、昨日参考人としてお見えになりました熊澤東大農学部教授が編集委員長になって、それぞれ専門家が、これは農水省の担当技官も入って、研究の内容がずっと出ているのですけれども、七十ぺ-ジから七十一ページにわたって、「土壌改良資材問題点品質管理」について総括的に九点に分けて指摘があるわけであります。その中で、資材にうたわれる効能、施用効果の有無、検定方法の設定、それから作物試験の手法、それから特に資材の安全性の確認の重要性をうたっておるわけです。土壌、作物、人畜等に対して有害でない、衛生的である品質基準の作成。例えば、最近の土壌改良資材の主流を占める有機性資材については、重金属等の有害成分量の限度値あるいは腐熟度の判定基準、これを決める必要がある、こういうふうな指摘がなされておるわけです。  この資材を使うのは消費者、いわゆる農業者の人たちが使うわけでありますから、その安全性という問題、利益を守る立場から考えますと、今度の品質表示制度にそれがどのような形であらわれてくるのか、私、これは大変疑問に思っているわけでございます。適正な品質の確保という点から、この表示制度の中でどういうふうに考えられているのか。最後にその点をお伺いして、終わりたいと思います。
  146. 小島和義

    小島(和)政府委員 土壌改良資材につきましては、肥料の場合と異なりましてその効果というのが端的にあらわれてこない、繰り返し施用することによって長期的に効果が発現するという場合が多いわけでございます。したがって、ある種の資材につきまして経験的に効用というのはわかっておるわけでございますが、その資材自体を調べることによってどういう効果が出るかということは、従来学問的にはなかなか解明されてなかったわけでございます。  そこで、こういった資材品質管理を進めるという観点から、農林水産省におきまして昭和五十五年から五十九年まで、ことしまで続いておるわけでありますが、そういう資材の検定方法の開発ということを進めてまいったわけでございます。具体的には、国の試験研究機関関係職員、それから県の農業試験場の職員、それからそういう検定業務をやっておる団体等を中心にいたしまして、土壌改良資材のある種の性格を測定いたしますと、それがどういう効果を持つかということが、経験によらなくても資材自体の検査を通じて判明をするということが学問的にだんだんわかってまいりました。そういったことを背景といたしまして、その表示自体に基礎となるバックデータがあるはずでございますから、そのバックデータの作成に当たりまして国が定めます方法によって測定をしたものを表示させるということによりまして、その材質と施用をした場合の効果というものの因果関係というものが解明できる、こういう考え方から表示制度をとったわけでございます。  その際に問題になりますのは、有害成分の問題が当然浮かんでくるわけでございまして、先ほど申し上げました市販の資材につきまして調べましたところでは、重金属類を含んでおるものもございますが、それの含有率というのは肥料取締法で特殊肥料について認めております含有量以下のものが全部でございますから、したがって、この法律体系の中で有害成分の含有を直接的に規制する必要はないものというふうに見ておるわけでございます。もちろん、今後そのようなものが出てまいりました場合には、当然そのことについてもこの表示制度の対象になってまいるわけでございまして、そういうことが適正に表示をされるということになりますれば、使う方の側でも当然これは身構えて使わざるを得ないわけでございますから、その意味で実際上は商品化されないということになることが担保されるというふうに考えておるわけでございます。  大体、お尋ねはそんなことだと思いますが……。
  147. 駒谷明

    ○駒谷委員 安全性の問題、それから効能の問題、これは土壌改良資材としては、使用される農業者の皆さんには専門的にはわからないわけですから、そこらの点、表示についてはそれを信用して使用するという形の内容がだんだんふえてくると思います。それだけに、十分に慎重にこの問題には取り組んでいただくようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  148. 阿部文男

    阿部委員長 吉浦忠治君。
  149. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 地力増進法案についてお尋ねをいたします。  最初に、地力増進法案目的というものについてお尋ねいたしたいのですが、地力増進を図るという以上は、地力低下が前提条件にあるはずであります。したがいまして、地力低下は結果でありますから、そうなった原因があるはずであります。その原因を明確にして初めてその対策がとられるわけでありますから、これはすべてに通ずる根本原則でありまして、この原因結果の法則が科学的と、こう言えるわけであります。しかるに、この法律は、原因は少しも語られないまま、その対策だけを羅列しているのではないかというところに根本的な誤りがあるのではないかというふうに考えるわけです。したがって、この法律案では、低下した地力増進できるという保証、また理論的にもその保証の裏づけがあるのかどうか、こういう点でまずお尋ねをいたしたい。
  150. 小島和義

    小島(和)政府委員 地力低下原因といたしましては、もともと我が国の農業土壌地力低下しやすいような要因をはらんでおるという問題もございますし、同時に、近年における農村の社会的な変化というものがもたらした地力低下というものもあるわけでございます。過去におきましては、我が国の農法自体がそういう農業土壌を踏まえまして、それにふさわしい対応努力を長年続けることによって農業土壌地力を維持してまいったわけでありますが、今申し上げましたような、例えば兼業化の進展でありますとか、あるいは農家の無畜化でありますとか、あるいは労働力不足といったいろいろな社会的な要因が、地力低下一つ要因として作用しておることは間違いないところでございます。そういう農村に現に起こっております社会的な問題、それはそれとして農業政策の分野で対応していかなければならないわけでございまして、近年、農林水産省が取り上げております農業の担い手育成でありますとか、あるいは農地の利用集積ということによって、できるだけ農業の担い手たるにふさわしいような農家を育てていくという対策も、実はそういう意図を持っておるわけでございます。  本法は、そういう農業の構造政策というふうな視点とはまた離れまして、現実に起こっております地力をめぐります問題に主として技術的な観点から行政的に関与していく、こういう仕組みでございまして、そういう社会的な要因に対するアプローチと技術的なアプローチということと両々相まちまして問題の解決に貢献するのではないか、かように考えているわけでございます。
  151. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 農水省は地力低下なり対策なりというものは知っておられるわけでありますけれども昭和五十一年の三月に土づくり運動中央推進協議会というふうなものをつくられましたその結果の報告がなされているわけでありますが、昭和三十四年以来の地力保全基本調査というので不良土壌面積というものが示されております。水田が三九%、畑が六九%、果樹園が六四%に上っているというふうに判明をいたしておりますが、この根本的な原因というものは、今局長も言われているように、化学肥料の多用による単一作物の連作であるとの指摘がなされているわけであります。  五十年度から地力実態調査に乗り出した農水省のその結果でございますが、一つは、農地がかたくなって固まってきている、いわゆる水はけが悪くなってきている、二番目に作土が浅くなってきている、また三番目には土壌中の有機質が減少している、四番目にマグネシウム等の減少等事態が明らかになっているというふうにこの報告がなされているわけですけれども、この原因はどこにあるというふうに政府はおとりになっていらっしゃるか、この点をお尋ねいたしたい。
  152. 小島和義

    小島(和)政府委員 今お述べになりました地力実態調査は、昭和三十四年以来二十年がかりで実施いたしました地力保全基本調査の最終的なまとめの段階で行った調査でございます。その中に今御指摘のありましたような問題点が取り上げられているわけでありますが、それに至ります背景としては、自然的な要因というのももちろんあるわけでございますが、社会的な要因といたしましては、兼業化の進展による農業労働力の不足、それから有畜農家減少等によって農地に投与されるべき適切な有機質資材というものが乏しくなってきているというふうな問題、さらには機械化推進によりまして耕作がほとんどロータリー耕うんによっている、深耕が行われなくなってきているというふうなこと、そういった農業上の情勢変化というものが今御指摘のありましたような地力低下一つ要因として大きく作用している、かように理解をいたしております。
  153. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 局長、少し抜けているところがありはしないかと思うのですけれども、堆肥や厩肥等の使用が大変少なくなってきたということも指摘されていると思いますが、そういう点で、局長、やはりしっかり述べていただかなければならぬと思うのです。農水省は今まで土づくり運動というものを進めてこられたわけですけれども、有機肥料づくりは今述べられたように労力と経費がかかり過ぎてなかなか実行されにくい。また、二兼農家が多くて地域ぐるみの体制づくりが大変むずかしい。また、農業経営の単作化によりまして地域的アンバランスができている。また、連作で病気多発等の障害が目立っている。けれども、やめると収入が減るので合理的な輪作ができないというふうな、言いかえると政府は農村や農民に堆肥づくりをやれというふうに言ってきたわけでしょうけれども、これは今できないのが実情じゃないか。いろいろ各委員からも質問等が出ておりますけれども、こういう実情を政府はどのようにとらえていらっしゃるか、お答えをいただきたい。
  154. 小島和義

    小島(和)政府委員 堆厩肥の生産が行われなくなってきた社会的な背景といたしましては、今申し上げましたように、一つは労働力不足、一つは適切な有機質が得られにくくなっているということとしまして、役畜が各農家でいなくなってきたという要因を申し上げたわけでございます。そういう意味におきまして、堆肥づくりが大変減ってきておるわけでございまして、これは統計的にも非常にはっきりと出てきておるわけでございます。  それからまた、農作業全体が大変省力化されつつあるわけでございますが、その中でも堆肥づくりというのは重労働であること。それから、とにかくにおいでありますとか汚れでありますとか、そういう意味で非常に快適な労働ではないわけでありますから、なるべくそういうものはしないで済まそうというふうな風潮が一般的にあるということも事実でございまして、それらの要因が絡み合ってきて堆肥づくりが行われなくなってきておるのだろうと思います。  それから生産の面におきましても、かつての複合経営からできるだけその地域で経済性の高い商品作物に特化していくというふうな単一経営化の志向性があるということについては御指摘のとおりでございまして、そのこと自体が日本の農産物の供給力を高める上において一つ役割を果たしておることは事実でございますが、同時にまた、今御指摘がありましたような土地の物質循環といいますか、そういう点から見ていろいろ問題を投げかけてきておるということも事実なわけでございます。ただ、だからといってなかなか単一作物の経営というのをやめるという力にはなってこないわけでございまして、むしろそういったものを一つ地域内で、農家相互間で補い合うというふうな体制づくりを進めることによってカバーされていくべきもの、かように考えているわけでございます。
  155. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 昨今の農村では堆肥がつくれないような条件になっているのじゃないか、この点は今農水省も認めていらっしゃるわけでありますが、労働力がないこととか堆肥の材料がないこととか、特に現在では家畜が農耕機械にかわっておりますし、都市等の下水化が進んでおりますし、あるいは人ぷんや家畜のふん尿類等が入手できないというふうな状態にもありますし、あるいは野菜の単作地帯が増加してわら等が入手できない、こういうような悪い条件が重なっているわけであります。  一方では、農民化学肥料なり農薬を大量に使用させるように指導してきたし、また機械化を奨励し、野菜の単一作物の大産地づくり等を指導して、農民が堆肥づくりをしたくてもできないような条件を重ねてきたのじゃないかというふうに私には受け取れるわけですけれども、こういう点についてどのようなお考えをお持ちなのか。
  156. 小島和義

    小島(和)政府委員 作物の単一化の問題というのは、都市における特に野菜なんかに見られますように相当まとまった供給体制をつくっていく必要があるということから、主産地づくりを農林省が指導してまいったことは事実でございます。その結果といたしまして、供給能力は非常に高まったわけでございますが、反面また、御指摘ありましたような化学肥料とか農薬を余計使うというふうな農法に変わってきておるということも否めないところでございます。  問題は、そういう作物供給体制自体をもとに戻していくということについてはなかなか問題が多いわけでございまして、そういった新しい農業が組み立てられていった過程において出てきた土壌の問題というものを、化学的な手法に基づいてどうやってカバーをしていくかというふうなことが今後の課題になってくるのではないかと思うわけでございます。  そういった意味において、これからこの法律の枠組みのもとにおきまして具体的に知恵を絞って対応していくというふうなことになるわけでありまして、個別の対応の仕方というものについて一々法律上の規定としては置いてないわけでございますが、対策基本指針の作成あるいは都道府県段階における対策指針策定過程におきまして現地の知恵を組み合わせながら対策をつくっていく、こういうことによって解決を図っていく問題ではないかと思っておるわけでございます。
  157. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その対策として、堆肥またはそれにかわるいわゆる汚泥等の土壌改良資材でございますけれども、早急に、大量に、安い値段で農民に供給できることを考えなければいけないというふうに考えるわけであります。  これは時間があれば後で逐条的に質問をしてまいりたいと思いますが、まず、この対策に対して政府はどのようなお考えをお持ちなのか、あるいはその援助等をするお考えもあるのかどうか、その点を先にお尋ねをいたしたい。
  158. 小島和義

    小島(和)政府委員 今御指摘がございました都市汚泥、下水汚泥、それからコンポストといった問題につきましては、確かにこれは資源の有効利用という観点から見ますと基本的には大いに取り上げていったらいい問題だろうというふうに考えておるわけでございます。ただ、現実には、特に汚泥の場合には、肥料効果もある反面において、土壌蓄積性のある重金属を含んでいるものもございまして、その意味でこれは肥料取締法の特殊肥料ではございますけれども、特に重金属の含有量につきましては、規制を設けながら活用をさせておるわけでございます。  また、このような特殊肥料を単に肥料として使うというだけではなくて、土壌改良資材としても使っていくというお話だろうと思いますが、これは土壌改良効果というものがどの程度にあるものかということにつきましていまひとつ突っ込んだ研究解明がまだ行われていないという段階でございます。また、どういう検定によってそういう資材そのものの効果を測定するのか、使用効果を測定するのかという問題もございます。それらが明らかになりました段階におきまして、本法に言う土壌改良資材として取り上げるということもやぶさかでないわけでございます。
  159. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 耕土培養法効果がありました四十六年、一応その使命を達したということで、土づくり対策に対して種々の予算措置実施されて今日に至っているわけでありますが、今回恒久法としてその確立を目指しておられる地力増進基本指針、これを策定するというふうなことで、法の実施はその都道府県の自主的判断、運営にゆだねることになっているわけでありますけれども、各都道府県の対応次第によっては非常にアンバランスが出るのじゃないかというふうな危惧の念が生じているわけであります。国の法に基づいた事業なしに、または不均衡の生じないように政策誘導ができるのかどうか、こういう点でお尋ねをいたしたいと思います。
  160. 小島和義

    小島(和)政府委員 まず、耕土培養法時代におきまして、ある特定の化学的な性質に由来する不良土壌につきまして資材の投与のための補助金が交付されたということは歴史的な事実としてあるわけでございますが、これはあくまで当時の食糧増産というふうな時代的な背景と、それから耕土培養事業のために肥料以外の資材土地に入れていくということにつきまして一般の認識がまだ極めて低かった段階であり、また、そういった資材農業者が容易に入手することができなかったという理由に基づきまして補助金が交付されたわけでございます。現実には二十七年から三十年まで補助金で対応いたしまして、三十一年以降は農業改良資金という無利子貸付制度によって応援をしてきたわけでございます。  今回、そういう事業法のような形で法律をつくらなかった理由は、ある特定土壌の不良な状態に着目をしましてそのことについての対策法律に仕組むということになりますると、耕土培養法がそうでありましたように、ある一時期役割を果たしたことによりまして法律自体が空洞化していくというふうな結果を生むわけでございます。土壌の問題というのは大変多岐多様にわたっておりますので、特定の事象を解決するというよりは、いろいろな問題について幅広く対応できるような行政関与の仕組みをつくるということに主眼を置いたものでありますから、その意味では耕土培養法のような事業法規というふうな形にはなってないわけでございます。  その結果、直接の財政支援措置がないので、県間に仕事の濃淡についてのアンバランスが出るのではないかという御指摘だろうと思いますが、私ども考えといたしましては、実際問題といたしまして各都道府県に起こっております現象から見ますと、もちろん地力問題の深刻さの度合いというのは濃淡はございますが、都道府県によって地力の問題が軽く扱われているというふうな傾向にはなってないというふうに考えておるわけでございます。  また、本法の仕組みといたしましても、国が基本的な指針を決め、またその指針に基づいて都道府県が実際の仕事を進めていく場合に、必要な技術的、行政的あるいは財政的な援助をするということが本法の十条にもうたわれておるわけでありますから、そういう都道府県側の認識とそれから国の側のさまざまな援助というものをてこにいたしましてこの仕事が進められれば、県間のアンバランスというふうな問題は余り生じないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  161. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 地力増進法が予定しているところの土地改良でございますけれども、いわゆる営農上の方法による、こういう土地改良でありますが、狭い意味土地改良とは一線を画しているというふうに考えられますけれども政策的には同一に行い得る余地があるのではないかというふうに思われるわけですが、この分野の調整ということはお考えなのかどうか。
  162. 小島和義

    小島(和)政府委員 土地改良事業の中にも土壌の改良効果をもたらすような仕事があるわけでございまして、一番その端的な例は客土のような事業がそれに当たるわけでございます。耕土培養法時代から一貫してそうでございますが、土地改良事業地力の改善のための仕事というのは、土地改良事業は主として土木的な手法によって問題の解決を図るというのに対しまして、地力保全の対策事業というのは営農的な手法によって問題の解決を図る、ここに一線を画しておるわけでございます。  実際の仕事中身というのは、相互に関連を持ってくるということは当然あり得るわけでございまして、それらにつきましては、省内はもちろん、都道府県段階におきましても十分相互に調整されまして、別々の目的を持って別々の方向に走るということがないように厳に戒めて対応してまいるつもりでございます。
  163. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 一昔前までの農村を考えますと、そこには必ず農耕する牛馬がおり、また稲わらやもみ殻等があり、それとまた牛、馬なり豚なり鶏といった家畜から排出されたふんで有機肥料がつくられて、それが耕作地に還元されるというふうなシステムでありました。そして、豊かな土壌が保たれてきたのでございますけれども、現在は耕作農業と酪農が政策的に分離されて、こうした昔ながらの地力増進が図られなくなったところに化学肥料の多投化現象あるいは土壌管理の粗放簡略、そういうふうな傾向が現在あらわれているわけであります。  したがって、昔ながらの農法を現にやれといってもこれは無理なことは承知しているわけですが、先ほど同僚委員からも質問がありましたが、耕種部門と畜産部門との連携を密にしなければならないと考えるわけです。本案は、こうした点について政策的な保障というものは与えられるのかどうか、どういうふうにお考えなのか、この点をお尋ねいたしたい。
  164. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに、単一の農家の中で農地の物質循環と申しますか、それの必要な要素をすべて具備するということはなかなか難しくなってきておるという実態があるわけでございまして、その意味で、今御指摘がありましたように、他の農家あるいは他の地域との連携によりまして必要な有機堆肥を取得し、そのことが一面におきましては例えば畜産農家のプラスにもなっていく、こういう結合が非常に望ましいわけでございます。  実際に各種行われている事例を見てみますと、両方の側にきっかけがあるわけでございまして、主として耕種側の方に強い動機があります場合に作物の側からの働きかけがある。逆に、畜産の分野におきまして、そのふん尿処理等に非常に困惑しておるという場合に畜産側に主導性がありまして、その相手方を発掘する。こういうさまざまな動きがありますので、それらのケースに応じまして行政としても対応を考えておるわけでございます。私どもの世界で申しますと、例えば有機物の供給センターをつくっていくというのも大体畜産との何らかの結合を前提としておりますし、また逆に、畜産の側において畜産の環境保全というふうな観点からかなり大規模な有機物の供給というものをやっているケースも予算面であるわけでございます。  そういったことがこの法律においてどう扱われるかということでございますが、この地力増進基本指針ないしは対策指針というものの中に、その対策を進めるための技術的方法論だけではなくて、社会的、行政的な手法というものも指針内容として位置づけられるようになっておるわけでございます。もちろん、これは国の場合の基本指針で申しますと一般的なテキストということになるわけでありますから、具体的な地域の実態に応じた肉づけというのは各地域でのいろいろな創意工夫というものを織りまぜてつくっていく必要があるわけでございまして、そういったものの中で国の援助に値するものがございますればそれなりの助成を果たしていく、かように考えてこの制度を仕組んでおるわけでございます。
  165. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今日の地力低下をもたらしているものは、土壌管理の粗放簡略化という人為的な不作為から招来するものもありますれば、また、営農のゆえの連作障害による地力低下という場合もあるわけでありまして、しかも、この原因はまだ十分に解明されていないと言われているわけですが、農業者が安心して営農にいそしめるように、営農に関する情報の提供、地力低下に関して言えばそのメカニズムの早期の解明がぜひ必要であろうと思うわけです。  こうした試験研究の強化拡充が農業者から強い声として出ているわけでありますが、こうした試験研究体制の整備はもとより、具体的に言えばどこが責任を持って解明すべきだとお考えなのか、お尋ねをいたしたい。
  166. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 ただいまお尋ねのございました農業関係、特に土壌も含めました情報的な面を含めたこれからの高度の技術開発という面につきましては、私ども一つの問題としましては土壌関係あるいは気象関係、こういうような営農技術面での情報の処理をしまして、例えば水稲でございますと生育管理をするモデルを開発する、それから病害虫の発生予察等につきましてもそういう情報を処理しました形での一つの技術のシステムをつくりまして、これをモデルとして開発して実用化する、こういう面で研究者が研究体制としても取り組みたいということで、具体的には農業研究センターの中に情報研究のためのプロジェクトチームをつくってこの体制に取り組んでおります。  ただ、この関係は家畜の管理のような非常に数量化しました情報処理のしやすいものもございますけれども、作物になりますと、あるいは病害あるいは気象との関係、こういうことになりますとなかなか情報処理のモデルがつくりにくいということでございますが、これから高度情報化社会に向けまして、私ども農業関係の研究体制としましても、御指摘のありましたような線の研究につきましてはこれからも精力的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  167. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 土壌改良資材の点についてお尋ねいたしたいのですが、どのようなものを予定しておられますか。同僚議員からも質問がございましたが、私はその基準を何に求めていらっしゃるかという点をお尋ねいたしたい。  それから、土壌改良資材は微生物中心に行うべきじゃないかと考えておりますが、この点どういうふうにお考えなのか、二番目にお答えをいただきたい。  もう一つ、昨日参考人の一人の熊澤参考人のお話の中に、土壌性質から化学性、物理性生物性の条件と言われた中で、生物性について農水省はこれまでも十分な研究をなされたのかどうか。  その三つの点でお答えをいただきたい。
  168. 小島和義

    小島(和)政府委員 この法律規定をいたしております土壌改良資材に含まれますもので現に市販されておりますものは、原則としてすべて対象にするつもりでおるわけでございますが、具体的に申しますと、泥炭類、腐植酸類、ゼオライト、ベントナイト、パーライト、特殊鉱物類、合成高分子化合物が該当すると考えております。  特に、お尋ねのございました微生物資材でございますが、これは土壌中の微生物の活動を促進いたしまして、それによって有機質の分解の促進等を図ろうというものでございます。これにつきましても、その品質の識別というのはなかなか難しいという法定の要件を満たしておりますので、いずれは指定いたしたいと考えておるわけでございます。  ただ、問題になっておりますのは、これにつきましては、この資材効果を判定するための検定方法というのがまだ十分には確立されておらない。全くないわけではないのですが、どうも実際の土壌に施しました場合に、実験室内部での効果と同じような効果が必ずしも発現しないという問題があるわけでございます。これは恐らく土壌中には非常に数多くの微生物が存在するわけでございまして、そういった多種多様な環境の中におきましてこの資材の持っておる効果というものが十二分に発現しないような別な環境条件が作用しているのではないか、こういう問題があるわけでございます。したがいまして、微生物資材につきましては、本法施行後におきまして、さらに若干の準備期間を費やしました後におきましてこれを指定するという運びにいたしたいと考えております。  研究問題につきましては、技術会議の方からお答え申し上げます。
  169. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 化物系の問題、特に土壌との関係で申しますと、昨年十二月に発足しました農業環境技術研究所の中に環境生物部というような部を設けておりますが、その主体になりますのは微生物、特に土壌微生物でございます。この関係では従来からいろいろな研究を進めておりまして、若干成果も得られているわけでございます。  主に土壌微生物の機能解明あるいはその利用という面で申し上げますと、第一に、土壌中の有機物、無機物を分解しまして植物の利用可能な成分として供給する、こういう面の機能を持ちます微生物がございまして、例えば亜硝酸化成菌の制御技術とか燐酸溶解菌の利用技術の開発、こういう面での研究が進められております。  それから二番目は、やはり土壌微生物の中で大気中の窒素を固定しまして植物養分として供給する働きをするという有名な根粒菌、窒素固定菌の一種でありますアゾトバクター、こういうような微生物を改良しまして効果的な摂取技術を開発する、こういうような面での研究が第二でございます。  それから三番目は、農薬や除草剤など、そういうものに含まれます化学合成物質を無毒化する、そういうような機能を持ちます微生物として、例えば有機塩素系除草剤の無毒化を促します細菌、そういうものを発見する、こういうような成果を得ながら、ただいま申し上げました環境生物というような観点からその機能の改良あるいは開発、さらに土壌に含まれます生物性の一層の改善、こういうようなことに取り組んでいるわけでございます。
  170. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 科学技術の最近の進歩というものは、目をみはるものがあります。こうした科学技術を集積すれば日本農業も充実できるのではないかという意見まであるわけでありまして、そうした場合、地力増進はその基礎となるものと考えるわけであります。バイオテクノロジーを初めとする先端技術の開発も積極的に進めるべきだというふうに思っておるわけでありますが、農水省のバイオテクノロジーの試験研究への取り組み状況というのはどういうふうになっておりますか、お尋ねをいたしたい。
  171. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 私どもの体制の中で、バイオテクノロジー関係につきましては大体四つの方向で取り組んでおります。  第一は体制整備ということでございまして、昨年十二月に農業生物資源研究所というものを筑波に発足させまして、ここでバイオテクノロジーの主体をなします基礎的な技術の開発を進めるということをいたしております。また、今年度予算の成立に伴いまして技術会議事務局の中にバイオテクノロジー室というものを発足させまして、ここで官・産・学の共同と申しますか、民間の研究活力を使い、また大学等の研究機関とも連絡をとりながらバイオテクノロジーの開発を進めていくということが第一でございます。  それから二番目は、ただいま申し上げました生物資源研究所を中心にしまして、組みかえDNA技術でございますとか、細胞融合あるいは細胞組織の培養、こういうような面での基礎的な研究開発は国が担当し、推進をしていく。  それから第三番目には民間の研究活力の活用ということでございまして、これは、バイオテクノロジーの中でも一部バイオリアクターとか生物系の農薬の製造とか、そういう若干応用面に到達しました技術につきましては、国からも助成をいたしまして、民間の活力を使いましてこういう面での実用的な技術開発を進めていくということが第三点でございます。  それから四番目は、バイオテクノロジーの特に品種改良の基盤となります遺伝資源の収集管理ということでございまして、外国等から新しい今まで日本にないような遺伝資源を導入しましてその特性を調べ、これが日本の育種面で使えますように整理をいたしまして、国も使いますが、大学、民間等の研究機関でも使えるようなシステムをつくる。  以上申し上げました四つの方向を中心にしましてバイオテクノロジーに取り組んでおるわけでございます。
  172. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 アメリカ等では人工衛星でソ連の作況やあるいは地力の情報を得ているというふうに聞いておるわけでありますが、こうしたリモートセンシングのような画期的な技術を土壌調査にも導入すべきではないか。私、筑波の試験場を見ましたときに、森林の状態をリモートセンシングで見させていただきましたが、こういうものを土壌調査に導入をすべきではないかと考えますが、いかがなものでございましょうか、簡潔に……。
  173. 小島和義

    小島(和)政府委員 リモートセンシングは地表面の情報を直接かつ迅速に伝えるという点では大変画期的な技術でございますが、土壌の場合に、表土の状態だけを把握するということをもってしては必ずしも十分ではございません。したがいまして、現時点におきましては現地調査に及ばないというふうに考えておりますが、今後の技術の進歩もあるわけでございますから、その意味で、その成果を見守りながら対応していきたいというふうに考えております。
  174. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に大臣にお尋ねをして終わりにいたしますが、現在各地の農家を見て回りますと、独自の創意工夫で立派な技術を開発し、また成果を上げている例を見聞きするわけでございます。国や県の試験研究機関は、こうした民間技術を積極的に評価して取り上げていくべきではないかというふうに考えるわけですけれども、政府としてはどのようにお考えになりますか。最後にお尋ねをして終わりたいと思います。
  175. 山村新治郎

    山村国務大臣 農林水産省といたしましては、いいものはどんどん取り入れていくという基本方針でまいりたいと思いますので、先生言われましたように、民間の研究技術で農林水産業の上でいろいろなプラスになるものがあればどんどん取り入れてやっていきたいというぐあいに考えております。
  176. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 以上で終わります。
  177. 阿部文男

    阿部委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後四時五十一分開議
  178. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。菅原喜重郎君。
  179. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 地力増進法法案についての質疑をいたしたいと思います。  人類文明の興亡は、その土地生産力に開花し、その土地を収奪、荒廃させては滅び行く繰り返しでありましたし、現在、このままでは地球の砂漠化まで懸念される時代となっているわけでございます。土地の収奪、すなわち地力低下は、最近の日本農業を見ますとき、金肥依存の営農体質と相まって全国的規模で拡大していると思われます。このようなときに、既存の耕土培養法にかわる地力増進法法案提出されましたことは、時宜にかなったものでもあると思っております。  しかし、この法案は、耕土培養法同様いまだ農産物増進の立場からの法案であって、これでは、地力を国土資源とみなし、国の責任でこの国土資源の維持保全を守るべきだと考えられる立場からは、どこか手ぬるいものであることを感じております。それは、法案の文面からいたしまして、対策指針策定であり、助言、指導、勧告の域を出ておりません。もちろんこのことのためには財源の裏づけが必要でありますが、しかし、一度荒廃させた土地はその回復に幾世代もかかるのでありますから、都市経済の繁栄の前に見失われている土地そのものに対する文明論的重要性を認識させるに、今こそ一番大切な時期ではないかと思うのでございます。  このような観点から、地力増進法目的に国土の維持保全に対する国及び国民の責務を入れていない理由はどういうことなのか、このことをまずお伺いいたします。
  180. 小島和義

    小島(和)政府委員 地力自体が自然の生態系の一部を構成するものでありまして、地力増進を通じまして自然生態系の保護を図り、そのことが国土全体のバランスある維持と申しますか、役立つという効用はあるわけでございます。しかしながら、今回の法律の直接の目的とするところは、まさに生産手段であります農地につきまして、その地力増進を図ることによって農業生産力増進させ、農家経営を安定させるということを直接的な目的としたものでございますので、法律目的といたしましては、今申し上げました二点を最終目的というふうに規定をいたしておるわけでございます。  もちろんこういう農地地力というものが国の資源であり、民族共通の財産であるという問題意識があればこそこのような立法に至ったわけでございますから、御指摘ございましたような問題意識というのは私どもも十分持っているつもりでございますが、法律目的として規定することにつきましては、その間の因果関係が相当に距離があるという意味におきまして法律上の直接目的として規定をしなかった、こういうふうに御理解をいただけると幸いだと存じます。
  181. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今のお答えですと、これは単なる農家助成の一法案にすぎないように聞こえるわけでございます。しかし、私は、地力増進そのものは土壌の保水やかんがい排水機能とも密接につながり、また、自然循環の生態系の維持やそのための水資源の涵養等にまで通ずるものであると思うわけでございますので、ぜひこの地力増進法案なるものを、将来このような全体的な国土の維持保全という立場から法体系の完備を図ってもらいたい、こういうふうに考えるものでございます。  ことに水田地力の保全は、森林資源の整備と相まった水資源の確保と有効な利水管理技術にも依存してくるところが大きいのでございます。ぜひ全国土の総体的な保全という面からの総合地力対策を今後検討していただきたい、このように思うわけでございますが、大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  182. 小島和義

    小島(和)政府委員 健全な農地生産力が、大変広い意味で国土の保全とかあるいは水資源の涵養ということと関係がないということを申し上げているわけでは決してないわけでございます。ただ、この法律自体は直接的には地力増進を図るということを目的としておりまして、そういう法律をつくるということ自体が、単に農地所有者の利益の増進を図るということを離れた、もっと広い農地性格目的によりましてこういう立法に至ったわけでございます。  その理由と申しますのは、先ほど申し上げましたように、農地生産力というのが国の資源でもあり、また民族の共通の財産でもある、こういう問題意識から、本来個人の財産である農地生産力につきまして行政がこういう関与をする、その立法意図そのものが単に個別の農家の利益を離れたもっと広い利益をねらっておる、こういう意味におきまして御指摘のございましたような広い目的と無関係ではない、こういうことを申し上げておるわけでございまして、法律自体の明文上の目的といたしまして国土保全あるいは水資源の涵養ということまで書き込むということにつきましては、その間のつながりというのが相当距離があるのではないかという意味におきまして今お話しのような事項を法律目的には書き込んでない、かように御理解をいただきたいわけでございます。
  183. 山村新治郎

    山村国務大臣 農業における土壌というものは一番の基礎となるものでございまして、地力増進ということ、これがそのまま農業生産性向上また農業経営経済の安定化、これにもつながるわけでございます。午前中の小川委員の御質問にもお答えいたしましたが、当省といたしましては、これがただ単なる短い間のものではなくて、長期見通しに立ったものもひとつ担当局長と相談しながら立てていきたいというぐあいに考えております。
  184. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 山村大臣から、この地力増進法が長期的見通しに立った、そういう立場から法案を今後考えていきたいというような答弁をいただきまして、非常に安心しているわけでございます。  といいますのは、きのうの参考人からも陳述がありましたように、全く地力の維持というのは坂道の途中で荷車を支えてとめているような状態なのでございまして、そういう意味で、この土地の維持管理というものについて、常に国民的認識からこれに対処しないと国土の保全ということはなかなか難しい、私はこのように考えているので今のような御質問をしたわけでございます。  次に、第二点の質問に移るわけでございますが、私は、最近の地力低下、荒廃の防止は、土壌そのものに対する認識の変革まで努力しないとなかなかできないのではないかと思っております。それは、体験的にだれでも、農地生産力を論ずるとき、土壌微生物の働きが非常に重要で、その存在量が地力でもあると考えるのですが、近年いろいろな事情から、有機質の投入より金肥や化学改良材に依存することが増大しているわけでございます。このことは、またきのうの参考人の方々にも申し述べたわけでございますが、かつて植物成長に対する有機栄養論の支配したヨーロッパにおきましては、三圃式、四圃式の輪作形態がとられ、地力の保全が図られておりました。日本におきましても複合作物の栽培、殊に水田においてもレンゲその他裏作栽培等の努力、さらに家畜の飼育による厩肥生産と相まって地力増進の努力がなされてきたわけでございます。  しかし、植物成長に無機栄養論が科学的実験分析の結果として確認されてから、このような志向は現在のような金肥依存の体質を増大してきていると思うのでございます。この考え方は、たまたま経済急成長期の昭和三十年代半ばに農業国際分業論が叫ばれ、また農業基本法においても、専業作物栽培の営農指針を打ち出し、産地化形成を促進してから、現地においては化学肥料多用、地力減退、作物の病虫害抵抗力の低下、農薬使用の増大、公害作物の生産、こういう悪循環を出現してきているわけでございます。   、  私は、このような過去の経緯から見て、無機栄養論は地力とは何かに答えたものであり、有機栄養論は地力をつくるとは何かに答えているものであり、この両者ははっきり識別されなければならないのだと思っております。この点、先ほどの質問にもありましたように、今の教科書自体、土壌を無機物的に取り扱った、すなわち科学分析的学問の分野からの認識が強く働いておりまして、土壌を生き物として、すなわち土壌微生物の働きからする地力判定の観念は附属的にしか認識されてこない面を持っています。土壌の団粒化構造をつくるには今のところ有機質の投入以外に解決できない現在、今述べたようなこれまでの無機化学的土壌認識と作付指導を改めない限り、今後地力増進対策は悪循環の後追い的対策になっていくのではないかと考えられます。  このような視点から、今回の法案土壌地力に対する定義に土壌微生物的機能の面から見た釈義が挿入されてしかるべきだと思うのでございますが、このことについてのお考えをお尋ねいたします。
  185. 小島和義

    小島(和)政府委員 本法におきましては、第二条二項で地力の定義をいたしておりまして、そこにおきましては「土壌性質に由来する農地生産力」という規定をいたしております。この「土壌性質」でございますが、私どもといたしましては、土壌の物理的性質化学的性質及び生物学的な性質、これらの三つのいわば総合的な性質であるというふうに理解をいたしておるわけでございます。  その中で特に土壌の生物学的な性質でございますが、さらに具体的に申し上げれば、土壌中の微生物、大部分が細菌でございますが、そういう細菌が土壌の中における物質循環の担い手として農業生産力に大変大きな影響を果たしているというふうに理解をいたしておりまして、御指摘の生物学的な性質というものも土壌性質の一部を構成し、また同時に地力に大変大きな影響を持ってくる要素であるというふうに考えております。
  186. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は、今の御答弁をいただきますと、私が先ほど申し上げましたように、地力とは何かという問題と地力をつくるとは何かということのこの二つの区別がはっきりされていない立場からの答えのように受け取られます。  現実地力とは何かという定義、これはいろいろ本を見ましてもなかなか難しいわけでございまして、今回の法案の中にもただ生産力という表現をとっているわけでございます。しかし、この生産力という表現の中には、今申し上げましたように化学的な機能も相働いて作物を繁茂させるわけなんでございますが、現実地力をつくるとは何かということに対しては、化学的な資材の投入だけで果たしてそれができるのかどうか、このことを実は体験的に問題にしておりましたので今質問したわけでございます。  ひとつこの面をもう少し具体的に、今のところ国の方でどのように考えているのか、お聞かせ願いたいわけでございます。やはり三要素的な化学的な分析、植物学的な分析の立場からのみ地力というものを取り扱っているのであるかどうか、そこのところをもう一度お答えいただきたいと思います。
  187. 小島和義

    小島(和)政府委員 お話しのございました三要素と申しますのは、植物の栄養の中の最も主要なるものが窒素、燐酸、カリということで表現されておるわけでございまして、その中には例えば地力窒素というふうな自然の土地生産力に由来するものも含まれてはおるわけでございますが、大別いたしますと、地力の問題と栄養素の問題は別であるという理解をいたしておるわけでございます。  肥料三要素などの要素が栄養分ということになるといたしますと、地力の方は人間で申しますと基礎体力のようなものでございまして、栄養を与えてそこで作物をつくっていく場合の作物生成のもとになる力、さらに具体的に申しますならば、作物の必要としております栄養とか水とか空気とかいうものを欲しいときに欲しいだけ供給でき、かつまた土壌内のいろいろな作用によりまして植物を健全に生育させる、そういう総合的な力であるというふうに理解をいたしておりますので、肥料の三要素とは別個の問題、かように考えているわけでございます。  地力を具体的にどう判定するかということでございますれば、先ほど申し上げました物理性、化学性、生物学性、それぞれにわたりまして実に広範多岐にわたる要素の測定をいたしまして、それによって土壌生産力を判定をしていく、かようなことでございますから、その視点が今申し上げた三つだけに限られているわけではございませんで、測定項目は実に多岐にわたるわけでございます。
  188. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 ただいまの御答弁を聞いて非常に安心をしているわけでございます。実は肥料の三要素と地力そのものを分けて考えられているということに対しましては、私も同じ考えでございます。ただ、現実問題といたしまして、やはり現在のところ地力の保全には有機質が必要であり、今余りにも金肥横行の観念の農法が一般化しておりますので、これを改めさせていくにはどうしても今言いましたような地力即有機質の投入という単純な知識をもっともっと農民に、また一般の人々に認識させる必要がある、このような考えから今再三の質問をしたわけでございます。  そこで、私は、端的に言いまして土壌微生物が繁殖、活動するためには、いわゆる地力増進をなすためには 水はけがよかったりあるいは堆厩肥等の有機質、植物の細根等の投入が必要であったりするわけでございますが、現実の問題といたしまして、私は土は生き物であるという立場から、具体的にはミミズのいる土壌地力の判定になる。これは農業を営んできた方々の観念でございますが、これは古い前時代的な考え方だということではなく、やはりミミズがたくさん土壌の中に生息できるような地力をつくるという、そういう判断のもとに地力づくりに精進することに今後とも努力していきたいと思うわけでございます。  実は、私、ノルウェーに留学いたしました際、耕運機によるプラウイングの後に従って鳥が蝟集して、群がって土の中のミミズや生物をついばむ、その鳥の数が地力のいかんを判定していたあの国の土づくりをいまだ脳裏に刻んでいるものでございますから、このような質問をするわけでございます。そこで、日本でもあのような田園風景をつくりたいというのが私の夢でございますので、土壌性質の判定にはぜひ微生物の数などを指標として用いる判定基準をつくっていただきたいと思うわけでございますが、この点に関して、今回の土質の判定の中には今申し上げました点をどのように具体的に盛り込んでいるのかいないのか、また、いこうとするのか、お伺いしたいと思うわけでございます。
  189. 小島和義

    小島(和)政府委員 土壌の持っております役割ということにつきましては、実は極めて近年の学問的な業績としていろいろなことがわかってきたわけでございます。それ以前の例えば明治、それ以前の農法におきましては、学問的な原理は十分わからないままに経験則によりまして有機質の施用というのが土地を肥やすということはわかっておったわけでありますが、そのことがどういうメカニズムで作物の健全な生育に役立つかということは余り十分なことはわからなかったわけでございます。今日では土壌中の有機物の役割土壌中の微生物の役割につきましていろいろ新しい知見が加わってきておりまして、例えば先ほどお話のありました窒素の中におきましても、有機態の窒素あるいはアンモニア態の窒素というものが最終的には土壌微生物の力によって硝酸態の窒素になってそれが作物の根に吸収されるということで、無機質の化学肥料でありましても実は土壌微生物の役割によって作物の栄養になっているというふうなことがだんだん解明されてきておるわけでございます。  そこで、お話しの土壌微生物の働きの程度、当然これはその微生物の数によって判定される性質のものでございますが、実際上は、そのときどきの土壌の湿度の状況でありますとかあるいは温度でございますとか、そういうものによりまして土壌中の微生物の数は増減をするわけでございます。通常、一グラム程度の土壌の中に数百万匹の微生物がおると言われておりますけれども、非常に活動が活発のときにはそれが数億匹にも上る、こういうことでございますので、土壌微生物自体の存在、活動状況を調べるのが目的でございますが、それ自体の数を測定するというのは大変難しいということも御理解いただけると思います。  そこで、実際の土壌調査手法によりましては、そういったものにかわりまして例えば土壌中の有機質の状態を調べる、あるいはさらに詳しく調べようと思いますと、微生物も土壌中で炭酸ガスを排出しているわけでありますから、土壌から排出される炭酸ガスの量を測定するというふうな形によりまして、微生物の賦存状況、活動状況を測定するという手法で置きかえて調べておる、かように御理解いただきたいと思います。
  190. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今、多くの土壌の中に、重金属によるところの公害土壌がふえているわけでございます。しかし、重金属による公害土地に対しましても、有機質の投入によりまして、有機栄養細菌のみじゃなくして無機栄養細菌の繁殖も活発になることが確かめられておりまして、結局は、良質な堆厩肥、有機質の投入はそういう重金属の汚染した土地の回復をも促進し、またその被害をも低減させているものだ、こう考えるわけでございます。ですから、今質問しましたように、無機栄養細菌あるいは有機栄養細菌も含めました微生物の数そのものが地力でもある、こう見てきていいのじゃないか。ですから、こういう考え方を今後農林省の方で教育の分野にまで普及させてもらえないものかどうか。土を生きた物として見るとき、どうも体験的にこういう物の考え方が必要だ、こう考えるわけでございます。こういう点で、もしも私の主張しているところがどうも学問的に実証し得ないと思われますならば、ひとつこういう研究機関を動員しましてこのことに対する取り組みもお願いしたいものだ、こう考えるわけでございます。  以上、このことは要望いたしまして、次の質問に移っていきたいと思います。  地力増進する場合、堆肥を施用することが最もよい地力増進法の一つだと思っております。しかし、土壌によっては、殊に畑地においては、投入有機質の肥効、分解を上回る作物の養分吸収によって、それだけでは地力増進が図られない土壌、また場合が多くあります。そのような耕地に対しましては、植物の根の繁茂、生態系の利用による地力増進法もあるわけでございます。殊に牧草の中では、地上に千貫枝葉が繁茂いたしますと、根に同量の千貫の細根を生成させ、地下に豊富な有機質を残す性質を持っているものもございます。こういう植物の生態系の利用による地力増進も、これは有効な地力増進でございまして、殊に、地上に繁茂しました茎葉は家畜のえさともなり、土にさらに厩堆肥の還元を可能にし、一石二鳥にもなる増進法だと思っております。  このような草生栽培とか輪作について、農林大臣のつくる地力増進基本指針では、これをどのように位置づけているのか、このことをも御質問申し上げます。
  191. 小島和義

    小島(和)政府委員 地力増進基本指針におきましても、それから都道府県知事のつくります対策指針においても同様でございますが、地力増進を進めるための手段は、単に資材の施用ということだけではございませんで、深耕、心土破砕等のいわば耕うん整地にわたります方法、さらには、今お話がございましたように作物の組み合わせによりまして地力増進を図るということも有力な手法として当然含まれてくるわけでございます。  その効用と申しますのは、もちろんこの場合においては土づくりということに主眼を置いてあるわけでございますが、輪作のメリットは、単に土壌の問題に限りませず、病害虫の問題、それから土壌の中の栄養素の偏りを是正していくという問題、さらには、作物によりましてはその地下部分の働きによりまして実質的に深耕したと同じような効果を持ってくるとか、大変多岐にわたっておるわけでございますから、その意味において有力な方法であるというふうに理解をいたしております。
  192. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは、今回のこの地力増進法指針の中に、こういう植物生態系による地力増進指針をもつくっていただけるというふうに理解してもよろしゅうございますか。
  193. 小島和義

    小島(和)政府委員 法律条文で申し上げますならば、第三条の第二項第三号におきまして、「前号に掲げるもののほか、耕うん整地その他地力増進に必要な営農に関する基本的な事項」というふうに規定をいたしておりまして、その「営農に関する基本的な事項」の中には、今申し上げましたような輪作などの営農的な手法による問題解決というのは当然含まれてくるわけでございます。  また、都道府県知事の定めます地力増進対策指針で申しますと、第六条第二項の第四号がそれに匹敵するわけでございまして、それらはその段階に応じまして、規定する内容の詳細の程度においては差がありますけれども、いずれも今御指摘の点を含むものと理解をいたしておじます。
  194. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 何度も繰り返すようでございますが、私は、地力とは何かということと地力をつくることは何かとははっきり区別すべきであるという立場から、耕地に対しいろいろな手段方法での有機物投入を第一義に考えているので、土壌の改良資材表示にもこのことを強く指導できるように指針をつくっていただきたいと思うわけでございます。  さらに、都道府県のつくる指針は国がつくるものとほぼ同じ項目になっているようでございますが、都道府県のつくる指針内容には、作物ごとにどのような土づくりをしたらよいのかという、そういう対策も含めて指導するわけでございますか。具体的な御説明ができますなら、このことの具体的な対策をもお知らせいただきたいと思うわけでございます。
  195. 小島和義

    小島(和)政府委員 国のつくります基本指針におきましては、全国の土壌、その母材及び断面の構造によりまして、土壌統というのが三百二十ほどあるわけでございまして、それを似たもの同士まとめましたものが六十の土壌統群ということになるわけでございます。さらに、その上の段階が十六土壌群ということに分類されておりまして、これは御提出申し上げております法案関係資料の中にもそのような表を載せております。国のつくります基本指針は、大体この十六の土壌群別にそこのそれぞれの土壌群において問題となっておる生産力阻害要因に対してどういう手を打っていくのかという一般的なテキストになってくると思うわけでございます。  都道府県段階になりますと、これは都道府県べたにやるわけではございませんで、都府県であれば百町歩以上の地域を具体的に指定をいたしまして、そこでの対策調査をもとにいたしまして、さらに詳細な対策指針をつくるわけでございますから、そこの段階になりますと、実際にどういう作物が植えられ、どういう営農が行われているかということも念頭に置きまして対策をつくるということになるわけでございます。したがいまして、水田でございますと大部分は水稲になりますけれども、昨今では転作も行われておるわけでございますから、そういう作物の土地利用に応じました対策を当然考えていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  196. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は、私、最近の水田耕作においてわらが焼き捨てられている水田耕作がだんだん広がっているのを見まして、大変心を痛めているわけでございます。かようなところに安易に無機的改良材の投入によって、いわゆる土壌改良のみで地力を金肥投入によって間に合わせてしまう、そういう風潮をつくられては大変だ、こう考えているわけでございます。無機的改良材の投入には必ず同時に有機的土壌改良材の投入を並行させて進めるように指針考えていただきたい、こういう主眼のもとでの地力増進を立てていただきたいという願いを込めているわけでございます。  それで、さらに質問を移すわけでございますが、これからの農業は、土地利用型の作物、すなわち主穀農業あるいは主畜農業は、ともに農地所有者による生産組合形態等により規模拡大あるいは機械化あるいは合理化が進められるものと思っております。しかし、土地を貸したりあるいは集団利用化させた農家、ことに第二種兼業農家等に対しては、付加価値の高い、小規模でもできる鉢物、花卉園芸、それらのハウス集約的な農業が奨励されて、村の中で共存共栄を図っていくようになるのではないかと思います。そこで、ハウス栽培あるいは施設園芸農家が専業化してまいりますと、やはり塩類の集積その他の地力低下が今後考えられるわけでございます。  こういう観点から、現在の地力増進法はこういうハウス栽培あるいは施設園芸農家に対しても法の対象にしていくことができるのかどうか、このことをお伺いいたしたいと思います。
  197. 小島和義

    小島(和)政府委員 御質問にお答えいたします前に、先ほど御提起になりました問題、基本指針なりあるいは対策指針の中でうたっております土壌の改良の目的に供される資材というふうに規定いたしておりますのは、本法の十一条以下に出てきます狭い意味土壌改良資材だけを指しているわけではございませんで、お話ありましたように堆肥あるいは一般の肥料それから狭い意味の土改材すべてを含めて規定いたしておるわけでございますから、有機質の肥料を利用するということも当然これらの対策の中では大きな役割を占めておることをまず申し上げておきたいと思います。  それから、施設園芸農家地力増進の問題でございますけれども、これには、端的に申し上げて二通りの種類があるのだろうと思います。ハウスの場合でありましょうとあるいは温室等の場合でありましょうと、結局土地生産力を利用して園芸なり作物の栽培をやっているという場合には、屋根はかかっておりますけれども農地生産力に依存しているという点は間違いないわけでございますから、その意味では対象になるものというふうに考えております。  ただ、施設園芸の中にはそういう農地そのものの生産力を利用しない、例えば礫耕栽培のようなものもございますし、あるいは温室の中に鉢物を並べるという格好での栽培形態もあるわけでございまして、そうなりますと土地生産力とは離れた、鉢の中の生産力になるわけでございますから、その意味では本法の対象とする土地の中には含まれないというふうに理解をして運用いたしたいと考えております。
  198. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 そういたしますと、この地力増進法案は、あくまでも地域指定のある一定の面積が認定されないとこの法案の対象にならないということでございますか。
  199. 小島和義

    小島(和)政府委員 地力増進基本指針のようなものは、これは各県の地力増進地域に対する一つの具体的なガイドラインであるとともに、その地域外の一般農家に対しましてその土壌分別に地力増進をいかに進めるかということについてのまた一般的施策でもあるという意味におきまして、この法律自体がいろいろな意味での土づくりをカバーしておるという性格を持っておるのだと思っておるわけでございます。また、現実にも農業試験場を初め農業改良普及所等におきまして、土壌調査とかあるいは検診、診断というふうな形で農業者の需要におこたえをいたしておるわけでございますから、それらの対策は今後とも幅広に続けていくつもりでございます。  ただ、そういう一般的な施策があるということだけでは地力増進対策がいま一つパンチ力に欠けるという点があるわけでございまして、法律制度の中におきましても、行政側が受け身の姿勢でこたえていくのではなくて、能動的にこの問題に関与していく一つ行政的な仕組みを設けるという意味で今回の地力増進地域指定以下の規定を創設しておるわけでございますから、その地域土づくり一つの戦略目標といいますか、より具体的な目標地域になることは間違いございません。しかしながら、そのほかの地域については何もしないということではございませんで、これまで進めてまいりましたような行政技術的なサービスは続けていく、かように考えておるわけでございます。
  200. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 細目的なことでございますが、果樹園等で除草剤を多量に施用し、裸地にしている例がしばしば見受けられます。これは土壌流失の防止の観点からも、また土壌の有機物の付加の観点からも望ましいものではないと思うわけでございますが、この除草剤の施用は基本方針の内容に入るのか入らないのか、お伺いしたいと思います。
  201. 小島和義

    小島(和)政府委員 除草剤は土壌性質を改善するための資材という定義には該当しないと思いますので、これはその中には含まれないと考えております。現在の法律上の分類で申しますと、農薬取締法で言うところの農薬に該当するものとして各種の規制が行われているわけでございます。
  202. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 地力増進の問題には、今後水田を畑地にも転用できる汎用耕地化への基盤整備、このこともやはり忘れてならない対策一つだと考えております。また、このことは、先ほど申し上げましたように、水資源の確保と相まって重要な施策一つであると思います。殊に秋落ち水田等にはこれらの対策が有効でございますので、将来、地力増進法の中に土地改良事業等を促進できるような、そういう法案の準備を今後ぜひ考えていっていただきたいものだ、このように考えております。  それで、先ほど申し上げましたが、昔の農家には家畜が一、二頭おりまして、その堆厩肥をもって地力増進を無理なく行ってきた。しかし、現在、家畜がもういないし、またまきも使わないし、また落ち葉を集める雑木林というものも活用しなくなっている農村また農家がふえているわけでございます。このような中で、農業者は堆肥を入れれば土壌性質がよくなることはわかっていても、農業者みずからの堆肥づくりが困難になっているというのが現状でございます。このことは、専業化農業形態への指導ということがこういう土地から遊離した農業形態を確立してきたために起こっている結果であると思うわけでございますが、こういう有機質の少ないところから堆肥をつくる、いわゆる堆肥原料がないところでの有機物の増加投入対策というものについてどのようにお考えになっているのか、お聞きいたしたいと思います。
  203. 小島和義

    小島(和)政府委員 御質問にお答えする前に、先ほどお触れになりました土地改良事業とこの地力増進対策との関係でございますけれども、確かに土地改良事業の中にも、客土でありますとか、排水対策でありますとか、土壌性質を改善することに大変役に立つ事業が含まれておるわけでございます。ただ、両者の交通整理といたしましては、土地改良事業は主として土木的な手法によるところの農地の改善であるのに対しまして、この地力増進法で取り上げております手法と申しますのは、専ら営農的な方法によって土壌性質をよくしていく手法であるということで一応交通整理をいたしておるわけでございます。ただ、両者が密接に関連するような事態が出てくるわけでございますから、関係局間におきましても、また都道府県以下の段階におきましても、相互に連絡をとり合いまして、両者の効用が総合的に発揮されるように努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、今お触れになりました堆厩肥源の問題でございますけれども、御指摘ございましたように、だんだん農家が身近なところで堆厩肥源を得られなくなっているという状態があるわけでございまして、そのことと労力不足と相まちまして、その必要性は十分認識しながらも、なかなか思うに任せないという事態が出てきておるわけでございます。  問題の解決といたしましては、農家の中で得られないようなものでその地域全体としては得られるというふうな、例えば家畜ふん尿のようなものの利用ということもあるわけでございまして、農林省といたしましてはかねてから地域複合ということで、異種の作目を担当しております農家の相互間ないしは地域地域という関係で両者の結びつきを図っていくというふうな対策を進めてきておるわけでございます。  そのほかに、現時点においては有効に利用されていないけれども有機質堆肥源として十分活用できるような未利用資源というものが、農村の地域帯にもあるわけでございます。例えばかんきつ地帯におきますジュースの搾りかすのようなものでありますとか、養蚕地帯におきますところの桑の葉っぱを食った残りの蚕沙とか、そういったものを利用していくことも一つの問題解決の手法であると考えております。そういった事項につきましても基本指針ないしは対策指針をつくる際におきまして有効な手段としてこの中に取り上げていき、また必要なものがございますれば国において財政的な応援もしていきたい、かように考えております。
  204. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来たので終わりますが、最後に、この地力増進法案は国土保全法案までもつながるような内容を持ったものに今後整備発展させていっていただきたいことをお願い申し上げまして、終わります。  どうもありがとうございました。
  205. 阿部文男

    阿部委員長 中林佳子君。
  206. 中林佳子

    ○中林委員 この法案提出する理由に近年における地力低下が挙げられておりますが、この地力低下原因を農水省としてはどのようにお考えになっていますでしょうか。
  207. 小島和義

    小島(和)政府委員 我が国の農業土壌はもともと地形的あるいは気象的な要因によりまして土地生産力は必ずしも高いとは言えないという状態にあるわけでございますが、それに加えまして、近年兼業の深化によりまして農業労働力が不足をしてきたというふうなこと、さらには農家ないしは当該地域内において適切な有機質肥料源が得られにくくなってきているというふうな問題、また、機械化の進展によりまして役畜がいなくなりまして堆厩肥の生産ができないとか、あるいは機械化、特にロータリー耕の普及によりまして深耕が行われがたくなってきているというふうなことが要因として挙げられると思います。  その結果といたしまして、一部の地域におきまして土壌の作土が浅くなり、またかたくなってきているというふうな問題、あるいは土壌中の有機物が不足してきているというふうな問題、土壌中のカリ、石灰、苦土等の塩基バランスが失われてきている、そういった点が地力低下傾向として取り上げられようかと思います。
  208. 中林佳子

    ○中林委員 農水省の資料を見ますと、水田は約四割、畑は約七割が不良土壌となっております。また、我が国の場合は米づくりに適した土地だとも言われております。畑の場合は野菜の連作障害の多発ということも指摘され、問題となっております。田畑輪換の重要も言われているところです。こうしたことを考えたときに、地力低下原因背景に政府がこれまで行ってこられた水田をなくしていく減反政策、転作政策、こういうことが挙げられると考えられるわけですけれども、この点はいかがでしょう。
  209. 小島和義

    小島(和)政府委員 我が国の水田は、農業の発展段階におきましてもともと比較的土地の条件に恵まれましたところから水田化していったという経緯がございますから、畑と水田と比較をいたしますと、相対的には水田の方が土壌的な条件においても恵まれておるということがまず言えるわけでございます。それから、土壌は水に覆われておりますために還元状態に置かれておるわけでございまして、畑に見られますような酸化現象というのが比較的行われにくいというふうな事情もございます。そのほかに、水田の持っておりますいろいろな農地としての特徴というものがあるわけでございまして、その意味においては、水田の持っておりますこの高い生産力というのは日本にとりまして大変貴重な財産であると考えておるわけでございます。  したがいまして、ただいま進めておりますところの水田利用再編対策も、実は水田をつぶしてしまうということを考えておるわけでは決してございません。水田の高い生産力を保持しながら当面の米需給均衡を図り、あわせて水田の生産力を利用いたしまして、米以外に我が国で不足をしております、まだまだ自給度を高めなければならない作物の生産に振り向けていくという一種の総合的な生産対策でございまして、水田の効用自体を否定しておるという趣旨では決してございません。
  210. 中林佳子

    ○中林委員 水田の重要性については農水省も認識をされておりますし、水田再編利用の今の制度が当面の施策だ、このようにおっしゃっておりますけれども、実際は畑作にしていっているわけですね。だから、それが地力低下一つ原因になっていると考えられますし、その前は減反政策をとっていらっしゃったわけですから、もともと悪かった中でも有効なところを水田にしていったのだとおっしゃるその水田そのものをなくしてきた原因というのは、やはり今までとってこられた政府の施策にあると指摘をせざるを得ないわけです。  地力低下のさらに大きな原因として、堆厩肥等有機物施用の減少、化学肥料への過度の依存ということが言われております。これも実は政府が化学肥料業界の育成政策あるいは農産物価格の抑制ということで、収穫を上げるためには化学肥料を多量に使用しなければならないということが背景にあるように思えるのですが、その点についてはいかがですか。
  211. 小島和義

    小島(和)政府委員 今日の我が国の農業生産力の水準というのは、もちろん品種改良の効果でありますとか、土地改良効果でありますとか、さまざまな政策努力の結集でございますから、一概に何の効果とは言えないのでございますけれども、その中におきまして肥料効果というものも大変大きな役割を果たしてきておることもまた見逃せない事実でございます。また、作物の育種そのものが多肥による多収量というものも品種改良の一つの眼目としてきたような経緯があるわけでございまして、それらによりまして今日の生産力の水準が支えられておること、これは事実でございます。  ただ、化学肥料を過信いたしまして、これだけあれば農業生産は十分高い生産水準で続けられるというふうに考えるのは誤りでございまして、ただいま御審議いただいております地力増進法という法律を出しましたのも、土地生産力の根源であるところの土壌性質というものをできるだけよい状態にとどめておく、問題のあるところについては手を打っていく、こういう姿勢のあらわれというふうに御理解をいただきたいと存じます。
  212. 中林佳子

    ○中林委員 さらに、地力低下原因に、先ほどお答えになりましたが、機械化がございます。この機械化も、結局は作土が非常に浅くなる原因をつくっております。これも急激な規模拡大やいわゆる近代化ということで政府がとってきた施策、これからこういうものが出てきたと思うわけですけれども、この点についての反省といいますか、御見解はいかがなものでしょうか。
  213. 小島和義

    小島(和)政府委員 農業のやり方、いわゆる農法が近年急激に変わってきたということにつきましては、歴史的、社会的な背景があるわけでございまして、日本の経済発展の過程におきまして農業労働力が急速に流出をしていったということを受けまして、そういう少なくなった労働力の中で高い農業生産を維持し、またその所得を追求していく、こういうことのあらわれとして機械化一つ役割を果たしてきたわけでございます。  ロータリー耕については、確かに私自身申し上げましたようにいろいろ問題があるわけでございますけれども、だからといって機械化そのものの効用を否定するということについては問題があると思うわけでございます。今日これだけ日本農業の中に機械が入っておるわけでございますから、その機械化によってもたらされるところのさまざまな問題というものを正確に認識いたしまして、それに対する適切妥当な手を打っていくということが今日の農業を発展させるための一つの大きな方法ではないかというふうに考えておりますので、この法律の中におきましても耕うん整地に関する事項というものを含んでおるわけでございまして、耕うん方法に問題の原因がある場合におきまして、それを是正するための有効な手段というものも取り上げていくつもりでございます。
  214. 中林佳子

    ○中林委員 機械化推進それから大型化ということで、機械を使わないととても農業ができないような状況をつくってまいったと思います。もちろん農業をやっている人は深く耕していくという必要を感じておりますけれども、それをやろうと思えば一戸の農家ではとても買えるような機械の状況でないというのも現実にあると思うのですね。ですから、これまでの機械化機械化、大型化ということの一つのあらわれが、作土を浅くしてきた一つの大きな原因であったのではないかと言わざるを得ないと思います。  確かに、先ほどからお話しになっていたように、農家に労力の不足というものが現実に起きているわけですね。これは好きこのんでそうなったのじゃなくて、農業だけでは食べていけない現在の農業政策そのものがやはりそういうものをもたらしたと思うわけです。出稼ぎに行かなければならない、そうしないと食べていけないような状況だとか、あるいは米を初めとして農産物の価格抑制、こういうことではとても農業で食べていけないし、意欲も減少していくわけですね。ですから、若い者が農業後継者として続けていかれない、こういうことがあると思うわけです。これを反省しなければ、地力増進といっても本当の解決にならないのではないか、このように考えます。  今回の法案で、農業者農業努力で土づくりを進める、こういうことがねらいになっているわけですけれども農家営農意欲がわくような価格政策を初めとした農政を行うこと、これが前提としてなければ、これも絵にかいたもちになっていくと思うわけです。ですから、農政の転換、本当に意欲を持って土づくりに励めるようなことにしないといけないと思うわけですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  215. 小島和義

    小島(和)政府委員 確かに農業労働力の流出は農村社会にいろいろな問題を引き起こしたわけでございますが、また、歴史的に振り返って考えてみますと、農村内部におきまして過剰な就業人口が停滞をいたしておりまして、つまり、農業以外に生活の場を求めようと思ってもその道が閉ざされておったという時代は、またそれなりに大変不幸な時代であったと思うわけでございます。農業の側で申しますと、そういう農業労働力の減少する過程におきまして、そのことをどのような農業構造改善のきっかけとして活用していくかということが今日の政策課題として最も重要なことでございまして、そのような対策というものについてはこれからも根気強く続けていかなければいかぬというふうに考えておるわけでございます。  また、御指摘がございましたような構造政策以外の、例えば価格政策でございますとかあるいはそのほかの対策というものも、それぞれその必要な程度に応じまして十分なる展開を図っていくという必要があるわけでございます。ただ、そのような対策を行った場合において、それだけで農地の問題がすべて解決をするということでは決してございませんで、土壌の問題というのはすぐれて専門科学的な領域でもあるわけでございます。すぐれた農家でありましても、個々の農家では対応し切れないという問題もあるわけでございますから、その意味土づくり問題についての行政のサービスの提供が組織立って行われなければならないということもまたお認めいただけるところだろうと思います。両々相まちまして、この対策効果が上がりますように努めてまいりたいと思っております。
  216. 中林佳子

    ○中林委員 農政全般の中で本当に意欲を持って土づくりができる、地力回復ができるような方向をぜひ強めていただきたいと思います。そういう意味で、堆厩肥等の有機物施用の減少が地力低下原因になっているわけですが、今回の法案の大きなねらいの一つに有機物施用の重視ということがあると思うのですけれども、これは今後積極的に施策を講じていくことだというふうに受けとっているのですが、それでよろしいでしょうか。
  217. 小島和義

    小島(和)政府委員 法律で、基本指針とか対策指針の中でうたっております土壌状態を改良する目的で施用される資材という中には、堆肥とか一般の肥料とか、いわゆる狭い意味土壌改良資材すべてを含んでおりますので、その中で有機質の肥料というものは当然大きく取り上げられるというふうに理解をいたしております。  ただ、対策といたしましては資材の施用ということに尽きるわけではございませんで、先ほども申し上げましたように広い営農面の手法を網羅しておるわけでございますから、例えば深耕でございますとか心土破砕あるいは心土肥培というふうな大型の機械を利用いたしまして行うような事業も含まれてまいるわけでございますし、また輪作というふうな手法も場合によっては必要になってくる、そういったものも全部含めまして対策としては考えておるわけでございます。
  218. 中林佳子

    ○中林委員 昔と違って畜産農家と耕種農家の分離などということで、農家にとっては堆肥などを自給したり手軽に手に入れることが困難な条件が生まれているわけです。また、堆肥などは価格の面で非常に高くてとてもつり合わないという農家の人たちの声も聞いております。したがって、農家が堆肥などを手に入れることができる供給体制の整備、また、価格について政府としても十分な施策をとっていただくことが非常に重要だと思うわけです。最近各地で堆肥センターなどの建設も行われているわけですが、堆肥や有機物肥料の供給体制や価格について今後どのような施策をとっていくおつもりでしょうか。
  219. 小島和義

    小島(和)政府委員 市販されております肥料の中のいわゆる魚かすでありますとか油かすでありますとかというふうな意味での有機質肥料は、窒素成分当たりに計算をしてみましても化学肥料に比べますと大変割高につくという性格を持っているわけでございます。ただ、その種の肥料の効用というのは、お話ございましたように単に窒素分だけで見るべきものではなくて、その有機分の持っております土壌性質に与えるいろいろなプラスの効果があるわけでありますから、それらを考慮してはじいてみますと、必ずしもそう割高なものではないというふうに見られるわけでございます。  一方また、そういう市販の有機質肥料のほかに堆肥、厩肥といったものがあるわけでございまして、そういったものにつきましては通常は売買されるということはまずございませんで、その地域内において何らかの対価が支払われる場合がありましても、物として広い範囲にわたって流通するということが余りない性格のものでございます。それだけに、農家がみずから堆厩肥の生産を行わなくなりました場合に、それをどこからか金で買うということはなかなかできにくい。したがって、その地域の中におきまして農家個々の努力ではいかんともしがたい場合に、生産組織等の活用によりまして地域全体として対応するということを考えなければならないわけでございます。その地域内だけでなかなか考えにくい場合に、他の地域との提携、例えば畜産地帯との提携等によりまして有機質の給源を得るというふうなことも積極的に進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  220. 中林佳子

    ○中林委員 市販されているものは高くて、堆肥センターなどでつくられているのはそういうもうけを抜きにした売買だというふうにおっしゃっているわけですが、島根県の出雲市農協がやっている出雲有機といって売り出しているものですが、農協の堆肥センターがやっているのですね。ここで、昨年の価格なんですが、十五キロで二百九十円、一トンくらいにすると、若干値引きがあると思いますけれども、単純に計算して一万九千円なんですね。そうするととても割高になってしまうということで、使いたいのだけれども使えないという状況、これは農家の人も試験場の技師の方もおっしゃっているのです。ですから、そういう意味で、せめて農協がやっているような堆肥センター、そこから出されるものについては一定の価格で安く農家へ供給できるような指導をぜひしていただきたいということを一言つけ加えておきまして、次の質問に移りたいと思います。  有機物施用の重視ということで、近年下水汚泥や都市ごみなどの農業利用ということが言われております。下水汚泥や都市ごみなどで農業利用は現在どのようになっているでしょうか。
  221. 小島和義

    小島(和)政府委員 汚泥とかあるいは都市ごみのコンポストというのは近年それほど多いわけではございませんけれども、都市側の要請によりましてかなり使われてきておるわけでございます。もちろん、そのものの効果というのは現時点におきましては普通の堆肥等と同じような有機質窒素を含んでいる肥料という域にとどまっておるわけでございまして、肥料としての効果はそれほど大きいというわけではございません。ただ、供給者側にそのものを処分するという一つの動機があるわけでございますから、比較的低廉な価格もしくは無償で提供されるという利点がございますから、資源の有効利用という観点からすれば、これらも取り込んで考えていったらいいのではないかと思っておるわけでございます。  ただ、これらの都市廃棄物の中には一部有害な重金属類を含んでいるものがあり得るわけでございまして、現在の肥料取締法におきましてはこれら重金属につきまして一定の含有量の上限を定めておりまして、それ以上の重金属含有量のありますものについてはこれを肥料として扱うことを認めないという扱いをいたしております。ただいまその数量につきましては即答いたしかねますが、御必要があればまたお答え申し上げたいと存じます。
  222. 中林佳子

    ○中林委員 どういう実態になっているかというのはぜひ後で知らせてほしいと思いますが、かなり各地で研究や実際にやられている状況があるというふうに私自身聞いているわけです。先ほどおっしゃいましたように、現に法で規制されているものもあるわけですが、ただ、規制されていない亜鉛だとか銅だとかニッケル、こういうものも実は下水汚泥や都市ごみなどから出てくるし、非常にそのおそれがあるし、安全性の面では大変問題だと思うわけです。ただ、普通に考えてみて、そういったものが再利用されるということは農業にとってもあるいは環境保全という面にとっても一挙両得だというふうに思うわけですね。  だから、そういう面におきまして、諸外国では下水汚泥の農地施用に当たってはガイドラインを作成したり、それから亜鉛だとか銅だとかニッケルだとか、こういうものについては濃度の規制をやったりあるいは総量規制ということをやっているわけですね。ですから、ぜひ日本においても政府におきましてこういう安全性の問題について、これから研究がやられるし、実際にやられている現状でございますから、せっかくやっているものが危険であってはならないと思うわけですので、その点いかがでしょうか。
  223. 小島和義

    小島(和)政府委員 現在、我が国で特殊肥料につきまして規制を設けておりますのは、砒素、カドミウム、水銀の三種でございまして、諸外国におきましては銅とか亜鉛、鉛、ニッケル等についても規制を設けている事例がございます。ただ、銅とか亜鉛につきましての規制値を見てまいりますと、例えば我が国のカドミが五ppmという規制、これは世界各国に比べて大変低いのでございますが、それに対しまして例えば亜鉛の規制値がアメリカで二〇〇〇ppm、銅の規制値一〇〇〇ppm、含有量の上限というのはカドミとか砒素とか水銀等に比べれば大変高いものになっているわけでございます。  そういったことから、現時点においてこれらはまだ問題として取り上げるに至ってないわけでございますが、将来こういった物質につきましても環境庁その他のいろいろな科学的な知見の集積と相まちまして、農業施用においてとるべき手だてがありますれば十分な手を打っていきたいというふうに考えております。
  224. 中林佳子

    ○中林委員 ちょうどきのうの官庁速報を見ておりますと、「都市ゴミや工場排水の汚泥などの肥料としての再利用が最近進んでいるが、環境庁は再利用資源に含まれる重金属による農作物の生育障害や健康被害を未然に防止するため、今年度から五カ年計画で再利用資源の土壌に与える影響を調べ、再利用資源の使用に関する指導指針を作成する方針だ。」以下云々、述べられているわけですね。ですから、本来農作物に与える影響だし、それが地力回復のためにもなるということですから、できれば農水省でもこういうふうに取り組んでほしいと思いましたが、実際環境庁がこういう点で今後五カ年計画で進めていく、地点ももう決められているようでございますので、連絡をとっていただきまして安全性の面をぜひ確かめていただきたい、このように思います。  次に、国営の農用地開発事業についての土壌改良の問題についてお伺いしたいと思います。  島根県でも益田、横田、大邑と三カ所の国営開発事業がやられております。もちろん中海干拓事業もやられているわけです。この農地開発事業についての土壌改良で、土壌の深さということも含めてどういう基準でやられているか、お答えいただきたいと思います。
  225. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  農用地造成の場合、一般的に土壌管理をだれがやるかという問題については、これはやはり入植者なり増反者が自分の作目と土壌状態に応じて実施するのが基本でございますが、一般的に母材の悪い土壌を対象にしている地域が少なくございません。そういう意味で、一つは物理的の性状の確保という視点で作土の厚さないしは土壌改良深の基準というものを局長通達で定め、また同時に化学的状態を改善する、営農の開始に支障がないようにするという意味で酸度の矯正と燐酸吸収係数の改善、それからもう一つは有機質資材の一定の条件における施用等について対策を講じているわけでございます。
  226. 中林佳子

    ○中林委員 国の基準でいきますと、改良深というのは十五センチになっております。しかし、実際にそこで仕事をやったり土壌の問題を調べていらっしゃる方の意見を聞きますと、根というのは十五センチくらいのものじゃない、三十センチにも、もしくは五十センチくらい深く入ることがあるということで、作土深は二十五センチになっているようでございますから、そういう意味では、作土深が二十五センチになっているならば改良深もできれば少なくとも二十五センチくらいまでに基準を改正していただけないか、こういう要望が出ております。  それからもう一点、土壌改良資材で燐酸吸収係数の問題があるわけです。これも一%という基準になっているのですが、島根県の場合ではこれではとても不十分で、五%くらいにまで引き上げてもらえないかという試験場の方々の意見でございました。草地の場合は、一%の場合もあれば五%くらいまではいいのだという地域もあるように聞いているわけですね。ですから、そういう意味で、その土地土地で燐酸吸収係数というのは非常に違ってくると思いますので、その土地土地の実情をよく把握して、できれば幅を持たせていただいて、その基準の見直しをしていただくわけにはいかないものでしょうか。
  227. 森実孝郎

    森実政府委員 まず土壌改良深の問題でございますが、基本はやはり作土の厚さだろうと思います。これについては、普通畑であるならば二十五センチ以上まで認めているわけでございます。土壌改良深自体は十五センチという基準をつくっておりますが、実は作目の種類と耕起の方法によって実際の運用では幅を設けております。現に例外を認めている地域もございますので、これはやさりそれぞれの地域土壌の状況と作土、作物の問題として処理していく必要があるだろうと思っております。  もう一つは、いわゆる燐酸吸収係数の問題をどう見るか。これは率直に言うとなかなか難しい問題があると思います。確かに営農開始の時点においてかなり好ましい状態にまで土壌を持っていくということは、そこの入植者、増反者にとっては非常にプラスな側面もあるわけでございますが、やはり土壌改良努力というものを一般の既耕地の農家とのバランスにおいて当初の事業費の中でどこまで補助をつけてやっていくかという問題にもなるわけでございまして、そういった御指摘の点はなお研究をしてみますが、今御指摘のように改善幅を一率に五倍に広げていくということにはいささか問題があるのではないかと私は思っております。  なお、これ以外に、実は有機資材の施用の問題が表裏一体の問題としてあるわけでございます。これは従来いわば改良山成り工で表土をはぐ場合にだけ認めておりましたが、内地等では、こういった問題も、非常に土壌が悪いところでは山成り工の場合でも認めていいのじゃないかという問題があるわけでございます。そういった問題も含めまして、大方の御指摘もございますので、この機械にひとつ可能なものについては広い範囲で検討させていただきたいと思っております。
  228. 中林佳子

    ○中林委員 有機資材の施用などもできるようになって、改善はされていると思うわけですが、せっかく今度地力増進法案が出されているわけですから、国営の農地開発事業については、ひとつ模範になるような土づくりにして農家に引き渡すという努力をぜひやっていただきたいと思います。  あわせて一般の土地改良事業、圃場整備事業についてもこの際伺っておきたいのですが、改良深の十五センチということが圃場整備でも横並びでやられているように思います。土壌改良資材や有機物肥料については、既耕地であるということで投入するようにはされていないのが現状だというふうに聞いております。せっかく圃場整備事業土地改良事業を行うわけですから、これまではどちらかというと土木工事的な見地でやられていたように思えますから、この際改良深を深くするとかあるいは有機資材の投入の問題なども含めて、こうした土地改良事業、圃場整備事業にも一定の指導が施されているのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  229. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  この問題は現に存在しております耕土自体をまたもとに復元していくわけでございますから、新しい状態をつくり上げるものではございません。これについて特別な補助を行うかどうかということについては、いささか問題があるのではないか。ただ、今委員指摘のように、特に圃場整備事業の場合あるいは排水改良をやる場合、やはり土壌の物理的、化学的性状が変わってくることは事実でございますので、そういう意味において、土壌管理に必要な努力とあわせて、それぞれの地域の実態に応じて行政指導をすることについては十分検討させていただきたいと思います。
  230. 中林佳子

    ○中林委員 ぜひよろしくお願いいたします。  それでは次に、今回新しく設けられる土壌改良資材の問題について伺いたいと思います。  土壌改良資材についてまとめた本を見ますと、実にいろいろなものがあるわけですね。フトールとかヨクナールとかワラクサールとか、さまざまな名前がついているわけですね。こうした土壌改良の資材については、今後もその必要性があり、まだまだふえてくると思われるわけです。そこで今回は表示についての基準を定めるわけですが、農家がこうしたものを使って果たして効果があるかどうか。宣伝につられて効果のないものを使わされたのでは大変でございますから、生産販売をされるについて、それが本当に土壌の改良に役立つものであるかどうかの判定はやられるのですか。やられるとしたらどのようにやられるのか、その点について伺います。
  231. 小島和義

    小島(和)政府委員 本法の第十一条一項におきまして農林水産大臣表示の基準となるべき事項を定めるということになっておりまして、その中身は、大きく分けますと、表示すべき中身の問題と表示方法及び表示に当たって遵守すべき事項、この二つになるわけでございます。  前者は、具体的には、土壌改良資材の名称でありますとか製造業者等の住所氏名というような一般的な事項と、それから原料、施用した場合の効果の種類、例えば土壌の団粒構造を促進するとか、あるいは透水性がよくなるとか保水性がよくなるとか、そういった意味の用途を定めるわけでございます。  それから遵守事項の方は表示をするに当たっての約束事のようなものでありまして、表示の様式とか表示に用いる文字、その効果を証明するための計測の単位、それから効果表示するときの方法、そういったことがこの表示事項になっているわけでございます。  それらが内容物と一致しているかどうかということにつきましては、この法律の中にも立入検査権というのも書いてございますし、また、市販されているものにつきましては店頭などにおきましても容易に見ることができるわけでございますから、そういった過程を通じまして、その表示内容が一致しているかどうかというのはまさに行政の監視体制の役割ということになってくるわけでございます。内容についてもし不適切なものがある場合には、それらにつきまして第十二条の規定によりまして必要な指示をすることができるわけでございますし、特にまた問題があります場合には、十三条以下の規定によりまして適正表示命令あるいは表示命令を出してその表示を強制する道を開いているわけでございまして、これらを通じましてその内容が正確に表示され、また農家がそれによって品質の識別を容易にするというふうに持っていきたいと考えております。
  232. 中林佳子

    ○中林委員 今回は届け出するとか登録するとかいう制度でないものですから、ぜひ監視体制の面だとかそういう点を強化してほしいと思うと同時に、これまでそういうものについての害が出てないということで、安全性の問題が一つ問題になると思うのですね。ですから、汚泥だとかいうものについても今後は研究されたり、それが売り出される危険性もありますので、重金属の問題も含めて、安全性の規制の強化についてもぜひ検討を加えていただきたいというふうに思います。  最後に、この法案について関係者に伺ってみますと、地力増進という目的を果たすために国の援助、それも財政的な援助がどうしても必要だ、こういうふうにおっしゃるわけですね。ところが、この法案ができることによって新しい事業が行われるとか、予算がつくとかいうものではない法案になっているわけです。実際にこれまでも土壌保全関係予算は年々減ってきておりますし、昨年は土壌保全調査職員の人件費補助の打ち切りもやられているわけですね。だから、こういうことを考えると、法律はできても予算が減っていくということではなかなかうまく実効ある土づくり地力回復というものができにくいのではないかと思われるわけです。  ですから、そういう意味で今後予算をふやしていくお考えがおありなのかどうか、その点について簡単にお答えいただきます。
  233. 小島和義

    小島(和)政府委員 国家財政も大変厳しい中でございますが、予算獲得につきましては最大限の努力をいたしたいと考えております。
  234. 中林佳子

    ○中林委員 さらに、この法の目的を果たしていくために、都道府県の体制の整備充実も不可欠だというふうに思います。  島根県で県の試験場の関係の方々にお話を聞いたわけですが、現在土壌関係をやっている人は六人です。昭和五十九年度の事業が十五ありまして、このうち国の補助のものが九件で、あと六件は県の単独事業で、県もそれぞれ努力をしながら土壌の問題を扱っているということがありますので、県の調査研究の体制だとか整備充実、こういうことについて国としても十分援助を行ってほしいという御要望があるわけですけれども、その点についての御見解と、そして最後に、大臣に、この法案が本当に効果を上げるためには、財政的な体制の裏づけがなければ先ほどから言っているように絵にかいたもちになりかねない。きのうの参考人の方々の意見を聞いても、土づくりというのは農業基本だ、民族生存の源だとまでおっしゃる方もいたわけです。ですから、この法の趣旨に沿って土づくりが進められるよう、国の方の抜本的な財政面、体制面の施策強化が必要だというふうに思いますので、最後に大臣の決意を伺いたいと思います。
  235. 山村新治郎

    山村国務大臣 今回のこの地力増進法の中に、第十条に「国は、都道府県に対し、対策調査地力増進対策指針策定改善状況調査その他地力増進に関する施策実施に必要な指導助成その他の援助を行うよう努めるものとする。」ということもございます。先ほど来小川委員そして菅原委員にそれぞれお答えしましたように、この地力増進というものも長期的な見通しも持つようにしようというようなことを御答弁申し上げましたが、いわゆる長期的見通し等に立ちまして、国も出すべきものは出すという基本姿勢に立ちまして、私も予算獲得に努力してまいります。
  236. 中林佳子

    ○中林委員 終わります。  ありがとうございました。
  237. 阿部文男

    阿部委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  238. 阿部文男

    阿部委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  地力増進法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  239. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  240. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対し、田名部匡省君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。小川国彦君。
  241. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同を代表して、地力増進法案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     地力増進法案に対する附帯決議(案)   政府は、地力増進を図ることが農業生産力向上農業経営の安定に果たす役割の重要性にかんがみ、本法の施行に当たっては、今日的な地力低下等の問題に的確に対処し、農業生産の一層の振興が図られるよう左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。       記  一 法の目的とする地力増進が達成されるよう、本法運用に当たっては、農業者等に対する啓もう普及、土づくりのために必要な条件整備等各般にわたる施策を総合的に推進すること。  二 土づくり効果的に推進するため、試験研究体制の整備を含め、土壌に関する試験研究の拡充に努めること。  三 地力増進対策の円滑な実施が図られるよう、予算の確保に積極的に努めること。  四 的確な地力対策を講ずるためには、科学的な土壌調査が重要であることにかんがみ、都道府県における調査体制の整備を図るとともに、土壌調査員の資質向上に必要な措置を講ずること。  五 地力増進を図る上で地力増進対策指針が重要な役割を果たすことにかんがみ、その策定に当たっては、地域農業事情等を十分反映させ、農業者にとって真に実行可能なものとなるよう配慮すること。    また、地力増進対策実施に当たっては、農業者に対する助言、指導基本とし、画一的な勧告がなされることのないよう慎重に対処すること。  六 土壌改良資材品質表示制度の運営に当たっては、適正な表示が行われるよう製造業者等に対し十分な指導を行うとともに、土壌改良資材の生産、流通の的確な把握に努めること。    右決議する。  以上でありますが、決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いいたします。(拍手)
  242. 阿部文男

    阿部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  田名部匡省君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  243. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山村農林水産大臣
  244. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  245. 阿部文男

    阿部委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ――――――――――――― 〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  247. 阿部文男

    阿部委員長 次に、内閣提出農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。山村農林水産大臣。     ―――――――――――――  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案  土地改良法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  248. 山村新治郎

    山村国務大臣 農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農業振興地域整備に関する法律は、総合的に農業の振興を図るべき地域を明らかにし、土地農業上の有効利用と農業の近代化のための施策計画的に推進することを目的として、昭和四十四年に制定されました。以来、本法に基づき全国約三千の市町村について農業振興地域指定農業振興地域整備計画策定が行われるとともに、農業の健全な発展を図るための条件を備えた農業地帯の保全・形成及び農業の近代化のための各種の施策計画的な推進が図られてきたところであります。  しかしながら、近年、農業及び農村をめぐる情勢は、いわゆる兼業化、混住化等の進展に伴い、農業生産の基礎である土地・水に対する非農業部門からの影響が強まり、また、住民意識の多様化が進む等大きく変化しつつあります。このような情勢のもとで、農業構造の改善、農業生産基盤の整備開発等の推進を通じて、生産性の高い農業の確立を図るという課題に対処するため、今回、農業構造の改善の促進に特に留意しつつ、農業振興地域整備計画等の内容整備拡充するとともに、その達成に資するための手法整備を図ることとし、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、農業振興地域整備基本方針及び農業振興地域整備計画内容整備拡充であります。  都道府県知事の定める農業振興地域整備基本方針及び市町村の定める農業振興地域整備計画内容として、農用地等の効率的かつ総合的な利用の促進、農業従事者の安定的な就業の促進、農業構造の改善を目的とする生活環境の整備に関する事項を新たに追加するとともに、必要な地域については農業の振興と林業の振興との関連について定めることとしております。  第二に、交換分合制度の拡充であります。  農用地区域における林地等の農用地開発適地の開発及び農業振興地域整備計画で定められた生活環境施設等の用地の生み出しを円滑に進めるための交換分合制度を新たに設けることとしております。  第三に、協定制度の新設であります。  兼業化、混住化等の進展に伴う地域営農環境上の諸問題に適切に対処するための手法として、新たに二種類の協定制度を設けることとしております。  その一は、農業振興地域内の土地土地所有者等が、一定の農業用施設の適切な配置を内容として締結する協定であります。この協定については、協定事項に応じ、協定参加者の土地の承継人に対する協定の適用、一定の範囲の土地土地所有者等の一方的意思表示による協定への参加等の規定を定めております。  その二は、農業用用排水路、集会施設等の維持運営を内容として締結する協定であります。 以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  土地改良法昭和二十四年に制定されましたが、それ以来、本法に基づく農業生産基盤の整備は、農業生産性向上農業構造の改善等に大きく寄与してきたところであります。  しかしながら、近年、農業及び農村をめぐる情勢は、いわゆる兼業化、混在化等の進展に伴い大きく変化しつつあります。特に、農業生産の基礎となる土地・水に関して非農業部門からの影響が強まっており、その農業上の利用と他の利用との円滑な調整を図り、良好な農業生産環境を確保していくことが、農業生産基盤の整備を進めていく上で最も重要な課題となっております。また、生産性の高い農業の確立、農業構造の改善等を図るため、政府は、昭和五十八年度を初年度とする第三次土地改良長期計画策定したところでありますが、この達成のためにも、土地改良事業の一層の効率的な推進を実現することが強く要請されております。  このような農業及び農村をめぐる情勢に適確に対処しつつ、農業構造の改善をさらに強力に推進するため、別途提案しております農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案による諸制度の改善措置と相まって、土地・水の農業上の利用と他の利用との調整手法の拡充等を図るものとし、この法律案提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、混在化の進展等に伴い、農業用用排水の水質汚濁等が進行し、土地改良区の農業用用排水施設の適正な管理に支障が生じている事態に対処するための改善措置であります。  その一は、農業用用排水路等の管理に関する土地改良区と市町村等との協議制度の拡充を図るものであります。すなわち、土地改良区が市町村等に対しその管理方法等について協議を求めた場合において、協議が調わないときは、都道府県知事の裁定を申請することができることとしております。  その二は、土地改良区が附帯事業として行う農業集落排水施設整備事業実施手続を明確化するものであります。土地改良区は、農業用用排水の水質の汚濁を防止し、農業用用排水施設の適正な管理を確保するため、都道府県知事の認可を受けてこの事業実施することができることとしております。  第二に、圃場整備等の事業を通じて、優良農用地を確保しつつ、公用・公共用施設用地等の非農用地需要に適確に対応していくための換地制度の改善であります。すなわち、事業参加者全員が非農用地に充てるための土地を一律に出し合ういわゆる共同減歩の対象として、農業者の生活上または農業経営上必要な施設で、農業構造の改善を図ることを目的とするものの用地を加えることとしております。また、事前の分筆手続を要せずに、筆の一部の不換地と同様の措置をとることができるよう、事業参加者の申し出または同意による特別の減歩方式を導入することとしております。  第三に、土地改良事業の効率的推進を図るための事業実施手続の改善であります。土地改良施設の更新事業であって、その従前の機能の維持を図ることを目的とする等一定の要件に該当するものについては、同意の徴集を要しないこととする等の改善を行うこととしております。  第四に、土地改良区及び土地改良事業団体連合会の組織運営の強化のための規定整備であります。兼業化の進行等に対応して、土地改良区の組織運営の効率化を図るため、総代会の設置要件を緩和するとともに、都道府県土地改良事業団体連合会の会員に対する指導事業の充実の実態を踏まえ、これを法律上明記することとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  249. 阿部文男

    阿部委員長 引き続き、両案について順次補足説明を聴取いたします。森実構造改善局長
  250. 森実孝郎

    森実政府委員 農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下、その内容を若干補足させていただきます。  まず第一に、農業振興地域整備基本方針及び農業振興地域整備計画内容整備拡充であります。  その具体的内容としては、農業振興地域整備基本方針及び農業振興地域整備計画において、農業経営の規模の拡大及び農用地等の農業上の効率的かつ総合的な利用の促進、これと相まって推進する農業従事者の安定的就業の促進並びに農業構造の改善を図ることを目的とする主として農業従事者の良好な生活環境を確保するための施設の整備に関する事項を定めることとしております。なお、都道府県が広域的な見地から定める農業振興地域整備計画においても、同様にその内容整備拡充を行うこととしております。  また、農業の振興が森林の整備その他林業の振興と密接に関連する農業振興地域における農業振興地域整備計画にあっては、あわせて森林の整備その他林業の振興との関連について定めることとしております。  第二に、市町村の行う交換分合制度の拡充であります。  その一は、農用地区域における林地等の農用地開発適地に関する権利の調整を図ることにより農用地開発を円滑に進めるため、農用地開発を希望しない者の所有する農用地区域内の土地と農用地開発を希望する者の所有する土地等との間で交換分合を行うことができるようにすることであります。  その二は、農業用施設の設置を促進するため、今回新たに制度化された協定で定められた農業用施設の設置を予定する土地の区域内の土地とその他の土地との間で交換分合を行うことができるようにすることであります。  その三は、市町村農業協同組合等が農業構造の改善を目的とする集会施設等の生活環境施設の整備等に必要な用地を円滑に取得できるようにするため、交換分合を行う際に、優良農用地を集団的に確保しつつ、農業振興地域整備計画に定められたこれら施設の用地を生み出すことができるようにすることであります。  第三に、協定制度の新設であります。  まず、農業用施設の適切な配置を内容とする協定については、土地所有者等が市町村長の認可を受けて、当該農業用施設の用に供することを予定する土地の区域及び当該農業用施設の用に供しないことを予定する土地の区域のほか、その有効期間等を定めることができることとしております。この場合、市町村長は、関係法令に違反していないこと、土地の利用を不当に制限するものでないこと等の要件に該当するときは、認可しなければならないこととしております。また、この協定において定める一定の農業用施設の用に供しないことを予定する土地の区域内の土地については協定の効力が協定参加者の土地の承継人にも及ぶこと、一定の範囲内の土地土地所有者等が協定の成立後に協定に参加することを希望した場合は、市町村長に対する意思の表示のみによって協定に参加し得ること等を定めております。  次に、農業用用排水施設その他の施設の適正な維持運営を内容とする協定については、これら施設の受益者または利用者が、協定の目的となる施設の維持運営の方法等を定めた協定を締結して市町村長の適当である旨の認定を受けることができることとしております。この場合、市町村長は、関係法令に違反していないこと、当該施設の受益者または利用者の相当部分が参加していること等の要件に該当するときぱ、認定をするものとしております。  以上をもちまして農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。  土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下、その内容を若干補足させていただきます。  第一に、土地改良区の農業用用排水施設の適正な管理を確保するための改善措置であります。  その一は、昭和四十七年の制度改正で設けられた農業用用排水路等の管理に関する市町村等との協議制度を拡充することとし、市街化の進展等に伴い地域の下水道等の用途に兼ねて供されるに至った農業用用排水路等の管理に関する協議が調わないときは、土地改良区は、その管理方法及び管理費用の分担について都道府県知事の裁定を申請することができることとしたことであります。都道府県知事は、その申請があったときは、協議を求められた者の意見を聞いて、農業用用排水路等の管理に支障を生じないようにするために必要な限度において、裁定をすることができることとしております。  その二は、農業集落排水施設整備事業実施手続として、土地改良区は、事業計画を定め、関係市町村長と協議の上、都道府県知事の認可を受けるものとしたことであります。都道府県知事は、認可の申請があったときは、土地改良区による事業実施の相当性、土地改良区の経理的基礎及び技術的能力等を判断の上、認可を行うものとする等所要の規定を設けることとしております。  第二に、優良農用地を確保しつつ、非農用地需要に適確に対応していくための換地制度の改善であります。  すなわち、いわゆる共同減歩の対象となる施設用地として、従来の土地改良施設用地及び一定の農業経営合理化施設用地のほか、土地改良事業の施行地域内の農業者の生活上または農業経営上必要な施設で農業構造の改善を図ることを目的とするもののうち、公的計画に定められたものの用地を加えることとしております。この場合、当該施設が事業施行地域内の農業者が主として利用し、かつ、その大部分が利用するものである場合にあってはその施設用地の全部を創出することができることとするとともに、当該施設が事業施行地域内の農業者の大部分が利用するものである場合にあってはその施設用地のうち当該農業者の利用する割合に応じた部分を創出することができることとしております。  また、事前の分筆手続を要せずに、一筆の一部の不換地と同様の措置をとることができるようにするための特別の減歩方式を創設することとし、事業参加者の申し出または同意があった場合には、その土地の地積を特に減じて換地を定めることができることとするとともに、その減じた地積を合計した面積を超えない範囲内で、一定の非農用地を創出することができることとしております。  第三に、土地改良事業の効率的推進を図るための事業実施手続の改善であります。  土地改良区が行う土地改良施設の更新事業であって、当該土地改良施設の有している機能の維持を図ることを目的とする等一定の要件に該当するものについては、同意の徴集を要せず、または簡易な同意徴集手続によることができることとしております。また、土地改良事業の施行地域の追加のための事業計画の軽微な変更であって、その追加された施行地域事業参加資格者から申し出があること等の要件に該当するものについては、同意の徴集の手続を省略することができることとしております。  さらに、土地改良区は、その管理する土地改良施設の更新事業等につき国または都道府県が行うべきことを申請することができることとするとともに、土地改良区営事業と同様に同意徴集手続の簡素化を図ることとしております。  第四に、土地改良区及び土地改良事業団体連合会の組織運営の強化のための規定整備であります。  土地改良区が総代会を設けるけることができる要件を、現行の組合員の数が三百人を超える場合から組合員の数が二百人を超える場合に引き下げることとすることとしております。また、都道府県土地改良事業団体連合会の事業として、その会員の行う土地改良事業及び附帯事業に関する技術的な指導を明記することとしております。  以上をもちまして土地改良法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  251. 阿部文男

    阿部委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。
  252. 阿部文男

    阿部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま趣旨の説明を聴取いたしました両案について、参考人の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  253. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る五月八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十七分散会      ――――◇―――――