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1984-04-19 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十九日(木曜日)     午前十時十二分開議  出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    小澤  潔君       太田 誠一君    鍵田忠三郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    高橋 辰夫君       月原 茂皓君    野呂田芳成君       羽田  孜君    保利 耕輔君       三池  信君   三ッ林弥太郎君       山崎平八郎君    若林 正俊君       渡辺 省一君    上西 和郎君       串原 義直君    新村 源雄君       田中 恒利君    細谷 昭雄君       安井 吉典君    駒谷  明君       斎藤  実君    武田 一夫君       水谷  弘君    神田  厚君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  山村新治郎君  出席政府委員         農林水産政務次         官       島村 宜伸君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産技術会         議事務長    関谷 俊作君         食糧庁長官   松浦  昭君         水産庁長官   渡邉 文雄君         気象庁長官   末廣 重二君  委員外出席者         農林水産大臣官         房技術総括審議         官       山極 栄司君         自治省財政局地         方債課長    柿本 善也君         参  考  人         (日本中央競馬         会理事長)   内村 良英君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     小澤  潔君   田澤 吉郎君     若林 正俊君   水谷  弘君     森本 晃司君 同日  辞任         補欠選任   小澤  潔君     小里 貞利君   若林 正俊君     田澤 吉郎君   森本 晃司君     水谷  弘君     ――――――――――――― 四月十九日  農用地開発公団拡充等に関する請願(池田克  也君紹介)(第三〇三五号)  同(中村茂君紹介)(第三〇三六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定  措置に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出第三三号)  農林水産業の振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林水産業施設災害復旧事業費国庫負担に関する法律について、若干御質問をいたします。  昨日もいろいろ議論がなされたわけでありますが、最近の政府提案法律の中には非常に前進的な面もございますし、また、私どもから見ますと足らないところや問題のある点もございます。沿整、沿岸漁業施設をこの法律の中に入れるといったようなことは、関係団体関係者も大変喜んでおるわけでありますが、また一方、昨日も議論がありましたが、なぜ三十万に限度額引き上げたのかという問題は、事が災害でありますだけに、やはり私どもとしてこれは問題だという認識をせざるを得ないわけであります。日本災害の諸立法、諸対策は非常にきめ細かく行き届いた形になりつつあると私どもは思っておりますが、やはり災害というのはできるだけ一番困っておる地域、困っておる層、こういうところに目を向けなければいけないので、金額が少ないとか箇所が少ないとかといったような問題よりも、そのことによって受ける関係者関係機関影響というものがどれだけ大きいか少ないかというところが大切だと思うのですね。  そういう意味では、小さいところほど、あるいは不便なところほど災害については目を向けなければいけないと思いますので、やはり三十万に引き上げたというところはなかなか理解に苦しむところであります。この際、重ねてその点についての、三十万の根拠というか理由づけ、それから落ちこぼれをなくすために行政的にどういう対策考えられておるのか、この点をあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  4. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  ただいま田中委員指摘のように、災害復旧対策はきめ細かく農家なり漁家の負担というものも考え実施していくということは基本の思想にあるわけでございまして、今回の改正はそういった基本的な枠組みを改めたという性格のものではないと思っているわけでございます。御案内のように二十七年に現行の採択限度額は決められておりますが、既に三十年を経過しております。実はこの間に物価上昇はどのくらいあるかといいますと、どう低く見積もっても五倍ないし六倍という計数が出てくるわけでございます。今日の時点で見ますと、一件当たり事業費が非常に少額のものまで補助対象になっているということは、補助効果とコストの比較の見地から効率的でないし、かえって事務手続が煩瑣になるという側面があるわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、物価上昇をそのまま織り込むということは私どもも不適当であろうと考えたわけでございます。そういったことで、諸般のことを考慮いたしまして三倍の引き上げということにしたわけでございます。  ただ、実際は同時に一カ所工事範囲拡大を五十メートルから百メートルまで行うことにしているわけでございます。これによりまして、実は対象外となる、つまり今回の限度額引き上げ対象外になる復旧事業やあるいは従来対象にならなかった復旧事業が、今度は逆に補助対象となってくる。そういう意味で、農家負担に対する影響というものは、私どもはそう大きいものではないと思っております。これは過去の災害の形とか地域実情で一律に議論できませんが、そういった点で私ども五十八年で災害を受けました町村について農地、水路等について具体的に検証したところ、今回の限度額引き上げというものと、五十メートルを百メートルに広げたということで大幅に箇所数は減りますが、工区の数とか災害復旧事業費の額は、昨年大きな水害を受けたようなところではほとんど差がないということになっていることも、判断の材料として考慮しているわけでございます。  そこで今後どうするか。いわゆる三十万円の限度額の下にある小規模な事業というものにつきましては、基本的にはやはり市町村中心になると思いますが、市町村中心になって行ういわゆる小災害復旧制度というものをどう活用するかだろうと思います。そういう意味において、それぞれ態様に応じて起債の確保あるいは地方財政計画における織り込み等については、十分監視し、また要望してまいりたいと思っております。  また同時に、やはり小災害でございますから、どうしても農民が直接自分の負担事業実施する場合も多いわけでございまして、そういう意味におきまして、農林漁業金融公庫中心といたしました政策金融活用ということは大事だろうと思っております。そういった点で、十分粗漏のないよう努力をしてまいりたいと思っております。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろお考えになっておる節もわかります。しかし、問題はやはり三十万以下の小災害というものに対して市町村がやるわけでありますが、市町村がやるといいましても市町村独自ではなかなかやれぬわけでありますので、こういう法改正を契機にして、この際より大胆に徹底をさせていただいて、市町村でも熱心なところもあるし、余り熱心でないところもありまして、市町村バランスがとれていないというところがこの小災害対策一つ問題点なのですね。そういう意味では、これはこの際各省間に共通認識をはっきり打ち立てていただいて、起債なり融資なり、何らかの形で相当強く行政的に徹底というか、指導方を強く要望しておきたいと思います。  それから、いつものことでありますが、事務迅速化という問題があるわけであります。これは災害でありますから、この問題だけということではなくて、いろいろなたくさんな施設関係があるわけでありますが、十万円の補助金をもらうために三十万円使ったじゃ、五十万使ったじゃというような話も新聞に取りざたされるわけでありますので、やはり思い切って簡単な方法でやれるような、そういう手法をこの際お考えになっていただきたいと思います。この点についてもどうお考えになっておるか。  それからいま一つは、いつものことでありますが、改良復旧はやれないのか。原形復旧ということだけでは済まない条件の変化が急激に農林漁業関係には起きておるわけでありますから、この法律の建前になっておる原形復旧にとどまらずに、やはり改良復旧方向へ一歩踏み出すような、そういうことはできないのかどうか、これもあわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  6. 山村新治郎

    山村国務大臣 御指摘の点はまことにごもっともでございまして、この補助対象外となったものにつきましては融資、起債制度、この活用を図るように都道府県、市町村に十分指導してまいるつもりでございます。  事務の面につきましては、政府委員の方から補足申し上げます。
  7. 森実孝郎

    森実政府委員 事務簡素合理化の問題でございますが、確かに従来の既採択の数も非常に多く、これに伴う事務処理が相当な負担になっていることは事実でございます。基本的には、今回の暫定法改正におきまして一カ所とみなす工事範囲拡大いたしました。これによって書類上申請件数が大幅に減少することになることは間違いないと思います。それからもう一つは、採択限度引き上げることにより採択件数が減少することはございます。ただ、これは率直に申しますと、一カ所とみなす工事範囲拡大ということによって逆に相当カバーされる点もあるだろうと思います。  しかし、問題は、ただいま御指摘がございましたように事務処理自体簡素合理化をどう進めるかということだろうと思います。現在、四点検討を進めております。  一つは、小災害等について、比較的小規模な災害等について机上査定をどうやって拡大していくかという問題。それからもう一つは、総合単価適用範囲をどう拡大していくかということ。それからもう一つは、災害査定官権限の行使との関係における保留額引き上げという問題、現場で直ちに決定できる範囲を広げていくという問題でございます。それから四番目は、災害関連事業決定権限拡大、こういった問題があると思います。現在これは事務的に検討を進めておりまして、法案の成立を待って同時に、私ども指摘の点も十分頭に置きましてこの指導をやりたいと思っております。  第二は改良復旧の問題でございます。既に何回かの災害を経験いたしまして、機能の回復と同時に耐久性を与えていく、その限りにおいては改良復旧考えていくということは今日の災害復旧事業実施に当たっての基本的な原則になっているわけでございます。これからも、原形復旧が著しく困難、不適当な場合には改良復旧ができるわけでございますが、この原則を十分活用いたしまして、地域実情に合わせた処理をしたいと思っております。  同時に、やはり災害関連事業をどういうふうに活用するかが大事だろうと思っております。災害関連事業についてはなかなか厳しい制約もございましたが、一つは例えば緊急地すべり対策等災害関連の枠で計上いたしまして災害復旧に関連してかなり幅を広げてやれるようにするとか、あるいは西日本等で重要な課題になっております老朽ため池等整備事業につきましてもことしの予算から災害関連事業の中に計上いたしまして、災害復旧に関連づけて幅広く実施する道を開いたわけでございます。今後ともそういった方面での努力も並行して進めてまいりたいと思っております。
  8. 田中恒利

    田中(恒)委員 一般論を申し上げたわけでありますが、私は、これから主として本法の中に新しく取り入れました沿岸漁場整備開発施設の問題について、若干御要請を含めて申し上げてみたいと思うわけです。  従来からこの法律では漁港施設というものが一つ対象になっておるわけでありますが、現在までのところ、この暫定法に基づいてこれが実施をされていないわけであります。従来も、漁協が持つ施設というものがまだ幾つかあるはずでありますし、災害も受けておるはずでありますが、それが今まで事業実施という形でなされていなかった理由は一体何なのか、従来から実は大変疑問に思っておった点でありますが、この機会にその理由を明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  9. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 先生御存じのように、漁港施設につきましては、負担法対象になります漁港施設暫定法対象になります漁港施設とあるわけでございます。御案内のように、協同組合所有に係るものにつきましては暫定法対象にするということをやっておるわけであります。御指摘のように、暫定法の世界では漁港施設災害適用というものがここしばらくないわけでございますが、私もどういうことかということでいろいろ調べさせたわけでございます。  まず一つは、協同組合が設置する場合には、協同組合財政力とか技術力などの関係でその所有する施設というのが湾の奥などにありまして、立地条件からしまして比較的災害が起こりにくいという実態があるのではないかという感じがするわけでございます。件数などを調べてみますと、過去十年間で年平均四件くらいの事故の発生でございまして、総額が三十二万三千円でございます。ですから、一件当たり災害額が約九万円前後というようなこともあるわけでございまして、そういったことから判断をいたしますと、やはり被害を受ける度合いが比較的少ないようなところに協同組合が持っておる施設はあるのではなかろうかというふうに考えるわけであります。  ちなみに、漁港の数自体は約三千弱あるわけでありますが、災害を受ける場合には、漁港の中の幾つかの施設に着目してやってまいりますと、全体の漁港施設の延べ数の中で約一%弱くらいのものが協同組合管理所有に係るものであるというふうに推定されるわけであります。そういったことからいきましても、一般漁港負担法で言う公共団体管理をいたしております漁港の場合に比べますと、災害発生の頻度ははるかに少ないのではないかというふうに思っておるわけであります。
  10. 田中恒利

    田中(恒)委員 災害発生が少ないし、被害額が少ないからということだけでは皆無という状態はあり得ぬと思います。これはやはり市町村の持つ公共施設に対するものと漁協の持つものと二通り仕組まれておって、片一方の方が激甚災害などについての特別な有利な条件があるものだから、そういうものが関係しておるのじゃないかと実は私は思っておるわけでありまして、これはやはりこの農林漁業関係施設法律仕組み内容とも関係しておるのじゃないか、こういう気がいたしておりますので、以下、若干関連して御質問させていただきます。  例えば漁港施設共同利用施設には例の連年災適用されていない。それからいま一つ激甚災対象にならない。これらはいずれも高率の補助対象になるし、激甚災補助残に対してまたいろいろな補助が加わっていく、こういう仕組みになっておるわけですね。こういうものが本法の中に適用されていないというところに一つの問題がある、こういうふうに私は理解しておるわけであります。きのうもちょっと御質問があったようですが、なぜ連年災激甚災適用本法の中から外されておるのか、この点を明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  11. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 ただいま御指摘のように、漁港施設につきまして、かつて、三十年の当初だと思いますが、管理適正化を図る意味で、組合所有のものをなるべく市町村地方公共団体に移せというふうに指導した経緯がございます。そういった過程で組合のものがかなり地方公共団体に移ったというようなことも、暫定法対象漁港被害が起こる回数が減っているということにもつながっているのではないかと思います。  お尋ねの、その結果としましての暫定法対象になります漁港につきまして連年災あるいは激甚災対象になぜしていないのかという点でございますが、これも強いて申し上げますれば、激甚災害の指定に当たりましては、法律にも、国民経済に著しい影響を及ぼし、あるいは地方財政負担を緩和するとかというようなことの必要が非常に大きいものをその対象にするというのが趣旨ではないかと思います。しかし、先ほど申しましたように、激甚法ができました昭和三十七年当時の協同組合所有する漁港施設被害発生態様が非常に少なかった、あるいは一件当たり金額も小さかった、維持工事的なもの、いわゆる小災害程度のものしか工事実態としてなかったというようなことが背景にありまして、激甚法対象にする必要がないというふうに判断されたのだと私は思っているわけであります。  もちろん、今後そういったものにつきましての被害態様が変わってまいりまして、激甚災対象にするような必要性実態的に将来出てくるというようなことになれば、当然その時点において十分な検討がなされるべきものだというふうに考えております。
  12. 田中恒利

    田中(恒)委員 連年災の問題は。
  13. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 大変失礼いたしました。  連年災につきましては、また一つは、当時、暫定法対象となります漁港被害発生態様連年災という形で補助率かさ上げを図るほどの必要性がない、そういう災害実態にないという判断があったのだろうと思います。  それはそれといたしまして、物の考え方でございますが、漁港あるいは今回対象に入れることをお願いをしております沿整施設につきましても、御案内のように、各市町村一つとかニカ所とかと非常に箇所数が少ないわけでございます。一方、例えば農業用水路というようなことになりますと、市町村の中に網の目のように各所にあるわけでございますので、毎年のように災害が起こる可能性というものは、農業用施設なんかに比べますと、漁港のように施設箇所数の少ないものにつきましてはその発生可能性が非常に少ないというようなこともございまして、連年災対象にしていないということではないかというふうに思います。
  14. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣、私は余り細かくいろいろ申し上げませんけれども、私は災害特別委員会に参りまして、こういう問題も従来から少し勉強させていただいておるわけですが、農林関係災害対策というのは、確かに災害が起きると相当大きい分野を占めてきております。ですから、一口で言えば、やっぱり大蔵省はなかなか難しいのではなかろうか、正直なところこう思うのですよ、政治家判断としては。  ですが、連年災の問題にしても激甚災の問題にしても、漁港漁協施設あるいは農林施設というものはやっぱり大きな打撃を受けるのです。災害が少ない、数字が出てこないと言うが、実態は必ずしもそうではないと思います。その他いろんなのがありますから、そういうものとの関係で大体少なくなっておる面はあるでしょうが、実態は、やはり漁港なり漁協施設というものは非常に大きな打撃を受けるということは事実であります。そして、これは公共施設国庫負担法の問題との関係もあるわけでありまして、これとバランスがとれてないということは、これからの本法の運営の上にいろいろな問題を起こしてくるような気がするのです。  ですから、事情はいろいろありましょうが、ここのところは大臣判断として、一遍には解決できぬかもしれませんが、今後ひとつ力を入れてもらいたい。実は災害対策特別委員会でも、この問題ではありませんが、これらの問題を含めて、少しみっちり議論をしていこう、こういう話になっておりますので、ぜひ大臣の方は、農林関係災害施設について、内容公共施設だと思いますが、そういう意味で多少遠慮をされている節がこういう面に出てきていると思いますので、もう少し腰を定めて、一遍長官構造改善局長なんかともう少し詰めてもらってお考えをいただきたいと思いますが、いかがですか。
  15. 山村新治郎

    山村国務大臣 今後、今先生が言われましたように、長官、それと局長とよく打ち合わせしまして、実態に即したようなものに変えていくというような方向でやっていきたいと思います。
  16. 田中恒利

    田中(恒)委員 この問題は、今度の沿整施設がやはり同じような形で取り扱われるわけでありますから、そういう意味でこれは対象にすべきである、こういうふうに私ども理解をいたしておりますし、大臣から今簡単な御所見を承りましたけれども、今後相当しっかり取り組んでいただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、沿整施設対象ですね、これはどういうものを考えていらっしゃるわけですか。
  17. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 今回対象にしていただこうとお願いしておるわけでありますが、いわゆる沿岸漁場整備促進事業の中で暫定法対象にするものは政令で指定するということにいたしておるわけでございます。  一般論でございますが、災害復旧対象とするものとしましては、やはり幾つかの要件が必要ではないかと思うわけであります。例えば、災害を受ける蓋然性が非常に高いとか、あるいは災害の実績もそれなりにあるとか、災害復旧緊急性が高いとか、あるいはただいま御議論がございましたが、災害復旧というものは一応原状回復ということが原則であるわけでありますから、逆に言いますと、原状が常にどうなっているかということが把握されているという必要があるとか、あるいは災害査定が技術的に可能なこと、これはあくまでも一般的な考え方としまして、そういう選択の基準というものがあろうかと思います。     〔委員長退席衛藤委員長代理着席〕  そういった観点から、いわゆる沿整事業の中で造成されます幾つかの施設があるわけでございますが、今回は、法律で定めてございます消波施設のほかに、導流堤とか護岸、堤防あるいは突堤、水質保全のための水路、あるいは水産動植物着底基質と私ども言っておりますが、貝とか海藻等がつくように措置をいたしました土木工事でございますが、そういった着底基質対象といたしておりまして、魚礁とかいわゆるみおなどは対象から除きたいというふうに考えておるわけでございます。
  18. 田中恒利

    田中(恒)委員 今言われましたが、沿岸漁場整備開発事業は、魚礁の設置というのが一番最初に出ておるわけですね。それから養殖などの施設、それから海の保全、これが三つの柱になっておるわけですが、魚礁それから増殖場、あるいはさっき言われたみお、つまり海底水路ですね、こういうものが外されておるのはなぜなのか。これを入れなければ極めて対象が限られてくる、こう思うわけでありますが、その理由をこの際お尋ねをしておきたいと思います。
  19. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 先生案内のように、魚礁は海の中のかなり深いところに埋めてあるわけでございます。先ほど申しましたように、災害前の状態を絶えず把握ができ、かつ原形に復旧するというのは災害復旧原則だということでございますので、いわゆる人工魚礁というのは、岩などの天然礁の補完、あるいはそのかわりに代用物としましてコンクリートブロックなどの函体構造物をまとめまして、私ども乱積みと言っておりますが、海の中に乱積みをするわけでございまして、波等によりまして魚礁の積み方が多少変化したとしましても、魚礁の効用が落ちるというふうに私ども考えておりません。また、魚礁が設置される水深といいますのは、御案内のように大体四、五十メーターという深さのところが多いわけでございますので、波等による災害によりまして四、五十メーター下の魚礁の形が崩れるということもなかなか起こらないわけでございます。そういった意味で、魚礁はその対象にするにふさわしくないということで外したわけでございます。もう一回申し上げますが、多少形が崩れても魚礁というのは落ちないというのが私ども理解であるわけでございます。  それからみおにつきましても、似たようなことで私ども対象から外しておるわけでありますが、御案内のように、みおというのは海水の移動を交流させるための一つの溝みたいなものでございますので、みお全体として近間の海底との水深差があれば、多少でこぼこが生じたとしましても水流の交流のための支障というのは起こらないというふうに私ども理解をいたしております。また、現在まで該当する施設が、みおにつきましては全国でまだ四カ所しか工事もやっていないというようなこともございます。そういった意味で、物理的にも支障がないというふうに考え対象から外そうと思っておるわけでございます。
  20. 田中恒利

    田中(恒)委員 しかし、増殖、養殖の施設どもだめなんでしょう。これは構いませんか。
  21. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 増殖場の造成というのは、例えば消波堤をつくって波が入らないようにする、それから海流の出入りがしやすいように水路をつくるとか、あるいは堤防をつくるとかというような形によりまして、ある湾の中の一定の水面を非常に静かな状態にすることによって結果的に増殖場たり得るということでございまして、設置します施設自体は護岸であり、堤防であり、着底基質であり、消波堤、それの総合の効果としまして増殖場あるいは養殖場としての機能が高まるということでございますので、今申しましたように個々の施設対象にいたしますれば増殖場あるいは養殖場全体としましては暫定法対象たり得るということに御理解いただきたいと思います。
  22. 田中恒利

    田中(恒)委員 魚礁やみおが余り災害対象にならぬだろうということですが、私どもが聞く範囲では、必ずしもそうでもないという意見もあるのですよ。特に魚礁などの最近の新旧交代というか、魚礁の型もいろいろと変化している状況ですし、それも災害などの関係と絡んで起きてくる分野も非常に多い、こういうふうに関係者から聞く点もありますが、これはもう少し検討していただいて、せっかくのあれでありますから、この際、政府は決めたこの事業対象になっておる施設はやはり全部入れるという形で取り組んでいただきたい、こう考えております。  それから、今度新しく営利を目的としない法人を対象とすることになっているわけです。それはどういうものを想定せられておりますか。  それからいま一つ、この問題で関係いたしますので、沿整施設管理の問題です。つくりはしたが、ほったらかしておるわけじゃありませんが、そのままになっておるというケースも非常に多いわけでありまして、この管理をどうしていくか。農業の場合は管理組合のようなものがあって、受益者などがいろいろやっておるわけでありますが、これについてのやはり一定の指導がないと、やるところはやっておるわけですけれども、できたままにしておる。だから弱くなっていく、保全をしておればある程度耐えられるものが崩れる、こういう状態もしばしば起きると思うのですが、これに対する指導、この点の御意見もあわせてお聞きをしておきたいと思います。
  23. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、最初に御質問がございました共同利用施設所有主体の拡大の問題につきまして、私からお答えさせていただきます。  最近におきます農林水産業の動向等から考えまして、共同利用施設所有主体としましていわゆる農林水産業の振興を目的とする公益法人、これは、特に畜産等での第三セクター等による育成牧場等はこれに入ってくるのではないかと思いますが、それからもう一つは農事組合法人。ただ、全く農家と表裏一体の関係にあります一戸一法人は除かなければいけないと思っております。それから三番目は、地方公共団体を追加をしていきたいと思っております。  共同利用施設の助成という問題は、暫定法体系の中で公益性と私益性の絡み合いをどこら辺で考えていくかという、なかなか難しい問題がございます。そこで、私どもとしては、共同利用施設については対象の種類だけではなくて、やはり事業主体に着目して、公益性の高いものという意味でこのようなものを対象考えているわけでございます。
  24. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 沿整事業によりまして造成されました施設の維持管理につきましては、直接これを利用いたします漁業協同組合などが常時これを管理しまして、異常がないかどうか監視するとか、あるいは異常があった場合には事業主体である市町村あるいは県に迅速に通報して、あるいは簡易な補修であればみずからもこれを行うという意味で、施設の機能を十分に発揮するように地元の協同組合管理するというのが一番いいことではないかと思っておるわけであります。  先生指摘のように、例えば農業の場合には農業協同組合のほかに土地改良区というものがございまして、それが造成されました施設管理をするというような、一般的にそういう仕組みができ上がっておるわけでございます。沿整事業につきましては、まだそこまで組織が進んでおらないわけでございます。私ども、先般も、沿整施設管理事業主体からむしろその施設によって直接受益をいたしております漁業協同組合などが行うことができるように、水産庁から通達を出してあるわけでございますが、先生指摘のようなことも踏まえまして、施設管理を地元の漁協が十分に行って施設の効用がいやが上にも発揮できますように、指導をさらに徹底してまいりたいと考えております。
  25. 田中恒利

    田中(恒)委員 法案の若干の問題につきまして御質問申し上げましたが、これに関連いたしまして、私は当委員会でも一、二度議論をさせていただきましたけれども、最近の沿岸漁業は大変厳しい状態になっております。特に私などの所属をしております宇和海沿岸のハマチ養殖というものは、生産過剰というか、そういう関係で非常に困難な経営の状態に追い込まれております。これは、一つは海の汚染という問題が大きな背景になっておるわけでありまして、そういう意味では、管理沿岸漁業というものをどういうふうに強化をしていくかということが改めて問われておる情勢だ、こう認識をいたしております。この沿整施設と関連いたしまして、海の保全という問題が重要な柱になっておるわけでありますが、これらの問題につきまして水産庁としてどういう方針で臨まれておるのか、この点をひとつ。  それから、そういう意味で、私のところの北灘という漁協が倒産をいたしました。組合長さん以下関係者の数人が自殺をする、こういう異常な出来事が起きまして、この委員会でも問題になったことがございます。これは明らかに今日の沿岸漁業、つまりつくる漁業というものが、ある意味ではともかくつくる漁業というキャッチフレーズに振り回されてさまざまな漁種の形態を一つの海に行わせてまいりまして、結局海を汚染させていった。あるいは今日の漁業政策と絡んで、漁協のあり方の問題も大きな課題になっております。私自体は、沿岸漁業振興の一つの大きな反省点として、一度水産庁もこの地域を正確に状況を把握して必要な対策を立てる必要がある、こういうことを指摘しておったわけでございますが、この問題について今日どういう情勢になっておるのか、水産庁は現地に対してもう少し実態を把握していくような方策をお考えになっていらっしゃるのか、この機会に重ねて御質問を申し上げておきたいと思うわけであります。
  26. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 水質保全の問題でございます。御指摘にもございますように、これから沿岸漁業の重要性というのはますます増してくるわけでございます。その中に大きな地歩を占めております養殖漁業を振興する意味でも、水質の保全あるいは維持というものは極めて大事であることは御指摘のとおりでございます。私ども、工場排水等あるいは生活排水等につきましては、環境庁とよく連絡をとりながら一般的な指導にあるいは監視に努めておるわけでございますが、水産庁独自といたしましても、水質保全の重要性につきましての一般国民に対するPR、あるいは結果的に大変特別の汚染状況にあるような漁場につきましては、その水質を保全するための若干の予算等も計上してございますので、そういった予算等も活用しながら、御指摘の点を踏まえましてさらに水質の保全のためには努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。  それから二番目の御指摘の北灘漁協の問題でございますが、先生指摘のように数年前に大変な事件を起こしまして、関係各方面に大変御迷惑をかけたわけでございます。現在、県あるいは関係の漁連、信漁連あるいは農林中金等とも十分連絡をとりながら再建計画の樹立がほぼできつつあるというふうに私ども理解しておりますが、まだまだ計画ができましてもそのままで、できたからということで再建が即成るというものでもございません。これからも組合の再建計画が円満にいくように指導いたしますとともに、その計画が順調に達成するための助言あるいは指導等にも万全を期していきたいと思っておるわけでございます。そういった意味におきましても、先生からかねて御指摘のございます担当官の地元に対する派遣につきましても、早急に実現が図れますよう、県ともよく連絡をとりながら対処してまいりたいというふうに考えております。
  27. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 阿部文男

    阿部委員長 神田厚君。
  29. 神田厚

    ○神田委員 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。  まず最初に、採択限度額引き上げの問題であります。  国庫補助対象となる採択限度額は現在十万円となっておりますが、これを三十万円に引き上げ理由は一体どういうことでありますか。
  30. 山村新治郎

    山村国務大臣 現行の十万円という採択限度額昭和二十七年に決められたものでございまして、それ以来既に三十年経過しております。この結果、災害復旧事業補助金は一件当たり事業費が極めて低いものにまで支出されており、補助効果とコストとの比較の見地から効率的でない面が見受けられ、採択限度を見直す時期に来ておるのではないかと考えられます。  採択限度額の見直しに当たりましては、諸物価の上昇を勘案することが妥当と考えられますが、昭和二十七年から現在まで三十年間、物価上昇率は約五倍から六倍と見込まれております。しかしながら、これに合わせた率での引き上げは多大な影響を与えるものと考えられることから、農業者の負担能力を勘案いたしまして三倍の引き上げを行うこととした次第でございます。  なお、今回の改正案におきまして、同時に、一カ所工事範囲を五十メートルから百メートルというぐあいに拡大を行うこととしておりまして、これによりまして採択限度額引き上げに伴い対象外となる災害復旧事業のある程度の部分は暫定法補助対象となると見込まれることから、大きな影響はないと考えております。
  31. 神田厚

    ○神田委員 臨時行政調査会がこの補助の問題で指摘を行っておりますが、今回の引き上げの問題は臨調の指摘との関係がありますか、どうですか。
  32. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、臨時行政調査会は第三次答申におきまして、災害復旧補助金につきましては「一件当たり被害額が極めて低いものについても支出されているが、その最低額の見直しを行い、引上げを図る」べきこと、「書類審査の活用事務簡素合理化を図る。」べきことを指摘をされているわけでございます。  私どもの今回の暫定法改正は、そういった臨調の答申も一つの重要な誘因と申しますか、判断の材料であったことは事実でございますが、制定以来三十年たっておりまして、農林漁業等をめぐる動向の変化を踏まえ、あるいは物価等を含めた経済情勢の変化を踏まえ、そういう意味で基本の枠組みを維持しながら実情に合ったものにしていきたいということでやったわけでございます。そういう意味においては、臨調答申の趣旨をできるだけ生かしながら、同時に今申し上げたような経済全体の動きや農林漁業の実態の変化を取り込んだものとしてこの改正をお願いしているわけでございます。
  33. 神田厚

    ○神田委員 農業所得が昭和五十年以降伸び悩んでいる状況であります。こうしたときに農家負担増をもたらすような法改正をすることが一体妥当なのかどうなのか、さらに今回の措置でどの程度の件数補助対象から切り捨てられるのか、この点はいかがでございますか。
  34. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  採択限度額引き上げるという問題の判断の資料としては、確かに農業所得の問題があることは事実でございます。私が申すまでもなく、最近数年間停滞的に推移していることは事実でございますが、立法制定時に比べれば六倍というふうな数字になっておることは事実でございます。消費者物価も六倍を超えている、土木の総合工事費の指数で見ても六倍を超えている、そういったいろいろな判断材料をベースにいたしますと、先ほど大臣も申し上げましたように五、六倍という議論もあったわけでございます。しかし、同時に、先生指摘のように農民の負担、衝撃の緩和を考慮に入れまして三倍ということにしているわけでございます。  次に、採択限度引き上げによって暫定法のどの程度が対象外になるかということでございますが、単純に過去五カ年の状況から推計いたしますと、箇所数では二〇・六%減りますが、事業費では二・九%の減少でございます。しかし、同時に、今回の改正では事務の合理化という意味被害実態に合わした復旧の実施という点から、一カ所工事範囲を五十メートルから百メートルに拡大することを改正案でお願いしているわけでございます。実は、これによりましてかなり救済されるものが生まれてくることは事実でございます。これは、災害態様とか地理的条件とかによって一律に議論できませんけれども、ちなみに五十八年に大災害が起きた地域につきまして数市町村でのサンプル調査で調べてみますと、工事件数としてはほとんど差がない、それから総事業費としてもほとんど差がない。ただ、当然のことながら、いわゆる工事数としては減ってくるという形になっておりまして、そういった点から見ましても、そう大きな影響実態的には農民サイドから見ればないのではないだろうかと見ているわけでございます。
  35. 神田厚

    ○神田委員 切り捨てられた災害に対しましては何らかの救済措置をとられるのかどうか、市町村起債の発行あるいは農林漁業金融公庫資金の活用等についてどういうふうにお考えになりますか。
  36. 山村新治郎

    山村国務大臣 この災害復旧事業暫定法対象外となるいわゆる小災害復旧事業のうち、農地を除く農業用施設について市町村が行う復旧事業につきましては、単独災害復旧事業債の起債が認められております。また、激甚災害として政令で指定された災害につきましては、農地等小災害復旧事業債の起債により災害復旧事業実施できることとなっております。  なお、これら起債の元利償還金に要する経費につきましては、普通交付税の算定基礎となる基準財政需要額に算入されることとなっております。さらに、災害復旧に要する資金につきましては、土地改良資金等の融資制度があり、これらの制度の活用により災害復旧事業実施するよう指導してまいりたいと思います。
  37. 神田厚

    ○神田委員 次に、沿岸漁業整備開発施設を新たに補助対象とすることにつきまして、現在これら施設災害復旧はどういう方法で行っているのか。また、今回本法対象とすることの具体的なメリットはどういうことでありますか。
  38. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 沿岸漁業整備事業、御案内のように昭和五十一年から始まっておるわけでございますが、この事業によってつくられました施設の被災状況というものを都道府県から上がってきた報告で見ますと、発生件数はこの八年間で四十八件、被害総額で約二十四億というようなことになっております。御案内のように、沿整施設自体災害復旧につきましては、沿整事業が始まってからまだ期間が十分たっていないというようなこともありまして、緊急に復旧する必要があるような施設につきましては、従来一般予算を使うことによりまして、私ども手戻り工事と言っておりますが、そういったような事業の仕方をやりまして、現実的には既定予算の運用によりましてその復旧を図ってきたわけでございます。現在までのところ、そういった予算措置で行いましたものが、金額としまして発生被害額の約八二%を国の助成によりまして救済してきたということになっています。  また、今回補助対象とする具体的な施設はどういうことを考えておるかというお尋ねでございますが、それにつきましては、やはり災害復旧でございますので、災害復旧につきましての一般的な、原則的なものがございます。そういったものに当てはめてみますと、できました施設の中で消波施設、これは沖合に出ております堤防みたいなものでございますが、あるいは導流堤、水が入りやすくするための湾口部に設ける堤であります導流堤、あるいは堤防、突堤。それから着底基質と言っておりますが、水産動植物の生育のための底質環境を整備するための工事がございます。そういったものを補助対象にいたしたいと考えております。
  39. 神田厚

    ○神田委員 具体的な補助対象施設、これは政令で定めることとただいま答弁がありましたが、この場合、魚礁あるいはみおが補助対象とされていないのですが、その理由はどういうことですか。
  40. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 沿整事業の中で、各種の魚礁もその補助対象になっておるわけでありますが、御案内のように、災害復旧といいますのは原則として原形復旧ということでございますと、原形がどうなっているかということを常時見えるような状態にございませんと原形復旧ということがなかなかできにくいわけでございます。  御案内のように、魚礁はコンクリートのブロックを海の中に沈めまして、海の中で幾つか重ねて陰をつくりまして、陰をつくることによって魚が集まる、あるいはプランクトンが集まって魚がとれるというような機能を期待しておるわけでございますが、波浪等によりまして積み重ねられたものが若干崩れましてもいわゆる魚礁としての機能には何ら影響がないというのが私どもの今までの調査の結果でございます。特に四十メートルあるいは五十メートルというような水深のところに積み重ねた場合には、台風等が来まして海の上の水は激しく動きましても下の方は余りその影響がないというようなこともございまして、余り崩れることもないようでございます。そういったことで、現在魚礁につきましては対象にする必要がないと私ども理解をしておるわけであります。  それからみおでございますが、御案内のようにみおと申しますのは、例えば湾外と湾の中の海水の交流をよくすることによって湾内の水質の悪化を防ぐ、そういう機能を期待しておるわけでありますが、通常の底の高さよりも低い筋道をつくっておけばそこで海水の交流が行われるということでございますので、波浪等によりまして水流に多少でこぼこができたといたしましても、水の流れを円満にさせるという意味での機能にはほとんど影響がない、これも魚礁と同じような意味でそういったことがあるわけでございます。そういうこともございまして、魚礁と同様、みおにつきましても助成の対象にする必要がないと判断をいたしておるわけでございます。
  41. 神田厚

    ○神田委員 甚大災に該当する場合の第一次高率、第二次高率の基準は政令でどのように定めるのですか。
  42. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 御案内のように、暫定法の場合には基本的な補助率は百分の六十五ということに相なっておるわけでございますが、災害が非常に大きいような場合には、私ども甚大災と言っておりますが、それを適用することによりまして六五%の補助率を結果的にかさ上げするというような措置があるわけでございます。それにつきましては、財政当局とも目下具体的に検討中でございますが、私どもといたしましては、そのかさ上げ補助率適用基準につきましては、同じ漁業用施設でございます漁港施設と同程度の水準とするように定めたいと考えておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、市町村ごとに、その年に発生をいたしました沿整施設災害に係る災害復旧事業費の総額が、当該市町村の標準税収入に当該市町村の世帯数の中に占めます漁業者の世帯数の割合を乗じて得た額、標準税収入の中のいわば漁業者割とでもいいましょうか そういった率を乗じまして得た額の一定の倍率、例えば三倍とか六倍とかいうようなことを考えておりまして、仮に三倍に達したような場合には十分の九の一次高率を適用する、不幸にしてそれが六倍を超える甚大な災害の場合には十分の十という補助率適用するというようなことによりまして、実態に応じました災害復旧事業がやりやすいように措置してまいりたいと思っております。
  43. 神田厚

    ○神田委員 第二次沿岸漁業整備開発計画の進捗が非常におくれております。五十七年から六十二年の全体計画で三千四百億円の予算でありますが、五十九年の進捗率は三一%。今後この計画の完全達成ができるのかどうか、その点の見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  44. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 御指摘のように、第二次沿整計画、昭和五十七年に六カ年計画ということで私ども策定をいたしたわけでございますが、その後の大変厳しい財政事情等の影響もございまして、現在のところ進捗率は三〇%前後ということで、当初の予定に比べますとある程度落ちておるわけでございます。そういう中でも、国全体の財政事情のもとでございますので、ある意味ではやむを得ない面もございますが、沿整事業はまだ若い公共事業でもございますし、漁業者の希望も大変強いということで、毎年度の予算の獲得には私ども最大の努力を払ってきたわけであります。例えば最近三カ年間を見ましても、各種公共事業の中で一位ないし二位の伸び率を確保してきたわけでございますが、絶対額といたしましては財政事情のもとで十分な額が確保できなかったということでございます。  今後、財政事情必ずしも好転する見通しがあるというわけではないと思いますが、できるだけ予算の獲得に努力をいたしまして、計画が一〇〇%達成に少しでも近づくように努力をしてまいりたいと考えております。
  45. 神田厚

    ○神田委員 次に、共同利用施設所有主体の拡大の問題につきまして御質問を申し上げます。  現在は協同組合のみが対象になっておりますが、今回の改正でどのような拡大をするのか。また、農事組合法人を対象とした理由は一体どういうことか。さらに、一般補助事業では農事組合法人という形をとらなくても数人で共同して施設を設置する場合には補助が出ているわけでありますが、今後補助対象をこうしたものに拡大する意向はあるのかどうか。この三点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  46. 森実孝郎

    森実政府委員 三点御質問ございました。逐次お答えさせていただきます。  まず、共同利用施設所有主体の拡大でございますが、最近の動向を踏まえまして、農林水産業の振興を目的とする公益法人、それから一戸一法人のような公益性が低いと認められるものを除いた農事組合法人、それから地方公共団体、ただこの場合は農林水産業の用に供される部分を特定していかなければならないと思いますが、こういったものを追加してまいりたいと思っているわけでございます。  農事組合法人を追加した理由でございますが、私が申すまでもなく、農協法の七十二条の八の規定で、農事組合法人というのは、共同利用施設の設置を農業経営の実施と同じように担当することができるようになっております特殊な法的性格を持った法人でございます。そこで、やはり共同利用施設が被災した場合においては構成員たる農業者の生産活動に直ちに支障を来すという実態があるわけでございまして、かたがた生産組合法人につきましては、林業や水産業におきましては本法対象になっているわけでございます。そういった意味で今回の追加を考えたわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、共同利用施設の助成という問題は、公益性と私益性をどう絡み合わせていくかという問題が暫定法体系としてはあるわけでございまして、そういう意味でもっぱら個人の一戸一法人というふうなものは除外していかなければならないと判断しているわけでございます。  そこで、第三のいわゆる数人施行その他に代表されるような事業主体の共同利用施設をどう考えるかという問題ですが、確かにこういった事業は、いわば農業の振興と申しますか、そういった視点から奨励的補助がかなり広範に行われていることはまさに神田委員指摘のとおりでございます。しかし、先ほども申し上げましたように、この暫定法体系でどういう災害復旧に助成を行うかという問題は、いわば公共土木負担法のようには単純でございません。公共土木負担法の場合はいわばすべてが公共施設で単一に割り切られているわけでございますが、農業用施設を広く対象にする場合は、非常に公益性の高い農業用施設、農地、さらに経済活動に直結した共同利用施設というふうに、幾つかの態様があるわけでございます。  その中でどう考えていくかということになりますと、制度的には、やはり一定の法人格を持った団体で公共的な機能を果たしておる団体、かつ、その施設の種類についても一定の客観的な内容からの限定があるということにならざるを得ないだろうと思うわけでございます。現にこういった数人施行等で実施しております共同利用施設は、補助事業以外に、融資単独事業であるいは自力で建設されたものもたくさんあるわけでございまして、またどういう範囲管理が行われているか、どういう基準に従って管理が行われているか、管理主体がどうであるかということはなかなか明確でない点もあるわけでございます。これはいろいろこれからも実態の変化に応じて検討していかなければならない要素はあるといたしますが、当面の課題としては、そういう意味で特定の法人に限定し、施設を限定して補助対象拡大していくという方途によらざるを得なかった点は御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  47. 神田厚

    ○神田委員 最後に、改良復旧事業についてでありますが、現在、改良復旧についてはどのような対応がとられているのか。さらに、今後積極的に改良復旧に取り組むべきであるというように考えますが、原形復旧という原則からさらに改良復旧へ積極的な取り組みを期待したいと思うのでありますが、御意見を伺いたいと思います。
  48. 森実孝郎

    森実政府委員 私ども、現在の災害復旧事業原形復旧原則としておりますが、同時に、原形に復旧することが困難または不適当な場合におきましては、かなり広範な改良復旧を認めております。これは、一つは機能の回復以外に、例えば老朽化した施設災害を受けた場合においては、復旧するのは決して老朽化施設の水準のものではなくて新しい立派な施設をつくるということで、かなり広範に改良復旧昭和三十年代の半ばから認めているわけでございます。今後ともこのことについては十分留意して、十分耐久力を持ったものをつくるという原則を堅持してまいりたいし、また、地域実情はできるだけ受けとめて解決したいと思います。  さらに、接続箇所の問題が当然出てくるわけでございます。現在、災害関連事業制度の運用によりかなり広範な災害関連事業の採択が行われておりますが、この問題は実は基盤整備事業等とも密接不可分の関係がございます。私ども災害関連の特別の枠で、災害が起こった場合は災害関連で救済できるものを一定の範囲で認めていきたい、このような意味で五十八年に緊急地すべり対策を、また、ことしからはいわゆる緊急の老朽ため池整備等も災害関連事業の中で行えるようにしたわけでございます。こういった制度の段階的改善を通じて、御指摘の点が実現できるように今後とも努力してまいりたいと思っています。
  49. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  50. 阿部文男

    阿部委員長 中林佳子君。
  51. 中林佳子

    ○中林委員 今回の法改正で、災害復旧事業対象として新たに沿岸漁場整備開発施設共同利用施設所有主体として公益法人など営利を目的としない法人を追加すること、また一カ所の工事範囲を五十メートルから百メートルに拡大することについては、地方自治体などの財政負担の軽減、事務の簡素効率化につながるという点で一定の改善であり、評価ができるわけです。しかし、災害復旧事業対象とする工事の費用の最低額を十万円から三十万円に引き上げることについては問題があります。  そこで、最初に、この暫定法が農地など個人災害に係るものの復旧についても国庫補助対象としていることについて伺うわけです。  農地等は、農業の重要な生産基盤であり、農業の維持発展、ひいては国民の食糧の安定的供給という点で非常に大きな役割を持っている。したがって、農地などの個人災害にかかわる問題についても国の補助対象ということになっているというふうに思うわけです。ですから、今度の暫定法の趣旨がこういうところにあると思うわけですけれども大臣、いかがお考えでしょうか。
  52. 山村新治郎

    山村国務大臣 暫定法は、災害復旧事業に要する費用につき国が補助を行い、農林水産業の維持を図り、あわせてその経営の安定に寄与することを目的といたしております。  農地につきましては、個人の資産という私益の側面と食糧生産基盤、国土保全という公益、公共性も有しておることから補助対象としているところでございます。  また、農業用施設等につきましては、それらの施設の有する公共性の見地から災害復旧事業補助対象としておるところでございます。
  53. 中林佳子

    ○中林委員 次に、今回一カ所の工事採択限度額が十万から三十万円に引き上げられることによって、その一カ所の工事範囲が五十メートルから百メートルに拡大されて救済される部分があるということは認められるわけですが、しかし、十万から三十万円に引き上げられることによって補助対象事業が減るということになると思うのですけれども、これはいかがでしょうか。
  54. 森実孝郎

    森実政府委員 今回お願いしております制度改正におきましては、確かに採択限度額を十万から三十万に引き上げております。しかし、同時に、一カ所工事範囲を五十メートルから百メートルに拡大しておりまして、その意味においては、端的に申し上げますと、箇所数としては減少するが工区数としてどの程度減ってくるかということはなかなか一律に把握できない点がございます。  確かに、単純に過去五カ年の統計資料から推計いたしますと、箇所数では二〇・六%減りますが、事業費では二・九%の減少ということになりますが、ただいま申し上げましたような一カ所工事範囲でかなり救済される面があることは事実でございます。これをどう計量的に把握するかは、災害態様、地理的条件、基盤整備事業の状況等によって差がございます。  そこで、私ども五十八年に大災害が起きました地域でサンプル調査をやりました。モデル設定をやりまして町村について調べたところでございますが、先ほど申し上げましたように、箇所数では大幅に減りますが、工区数ではほとんど差がない、また災害復旧事業費としてもほとんど差がない、正確に言うと九九%台というふうな結果が出ております。もちろんこれだけで判断するわけにはいきませんけれども、また、新しく拾い上げられるものと落ち込むものとがその間にあることも事実でございますが、今日の法制定以来の物価の状況や経済の実態から見ますと、そう大きな影響があるとは見ておりません。
  55. 中林佳子

    ○中林委員 昨年は島根県に大災害がありまして、その実情などを見ましても、十万から三十万円に引き上げられることによって落ちる部分はかなりあるというふうに伺ってきているわけですが、次の質問に移らしていただきます。  この法律による災害復旧では、農地など個人災害にかかわるものが非常に多いわけです。一カ所の工事採択限度額が十万から三十万円に引き上げられることによって切り捨てられる部分、これは農家の個人負担の増大になると思うわけです。もともと災害は個人の責任で引き起こされたものではありませんし、暫定法の趣旨からいっても、今大臣がおっしゃいましたように、農家の個人負担をふやすような法の改正は明らかに後退であるというふうに私には思えるわけです。農地などは農業の発展、ひいては国民の食糧の安定的確保という点からいっても重要な役割を果たしているわけですから、その意味からいっても、金額ではとんとんだというようなお話もあるわけですけれども、そういうことだけで農家負担をふやすような方向はとるべきでないと思うわけですが、いかがでしょうか。
  56. 森実孝郎

    森実政府委員 いろいろな見方はあると思います。しかし、暫定法が制定されまして約三十年たちまして、その間に農林漁業の実情も大きく変わりましたし、農家の所得も変わりましたし、それから何よりも工事の費用単価が大きく変わったという実態があるわけでございます。実際は、そういった計数を使いますと当時の十万円は今の六十万なり七十万に匹敵するという議論もあるわけでございますが、そういったことだけでは物を判断できない。そういう意味で、私ども三倍の三十万の引き上げにとどめるということにすると同時に、事務簡素合理化ということもあわせて考慮いたしまして、一カ所の工事を五十メートルから百メートルに範囲拡大したわけでございます。そういう意味におきまして、私ども暫定法の基本的な災害復旧に取り組む枠組みについては何ら変更を加えておりませんし、そういった引き上げを図りながら、一方においては所要の実態に応じた一カ所工事範囲拡大とか施設拡充等を講じまして、できるだけ実態に合った、今日の状況に即したものにするような改善措置を講じたわけでございます。  採択限度引き上げに伴う影響という問題をどう計量化するかは、今日の状況ではそう大きいものかどうかはなかなか議論もあると思いますが、私ども十分注視いたしまして、また、これに対応した必要な起債とか融資等の問題については十分努力してまいりたいと思っております。
  57. 中林佳子

    ○中林委員 次に、暫定法対象とならない小災害について、現在、一カ所の工事費が三万円以上十万円未満のもので市町村が行う事業については起債が認められているわけですが、今回の法改正に伴ってそれも十万円以上三十万円未満のものとなるわけです。この小災害の場合の起債の充当率は、農地などの場合は公共土木に比べて低くなっております。  県や市町村からこの起債の充当率をぜひ引き上げてほしい、そして農家の個人負担をなるべく軽減するようにしてほしいという要望が出されているわけですが、自治省の方のお考えはいかがでしょうか。
  58. 柿本善也

    ○柿本説明員 お答えいたします。  農地、農林業施設災害復旧事業につきましては、御承知のように、地方団体が事業主体になる場合におきましても当該施設が直接間接に個人所有のいわば私有財産の復旧につながるものでございますから、受益者にそれなりの負担をしていただくということで、従来からその一部負担一つの要素に考えているということと、受益者負担の面につきましてはそれなりに別途融資の道もあると聞いておりますので、そういうところを勘案いたしまして、いわゆる公共施設であります公共土木施設等の起債の充当率より若干低く定められているというのが現状でございます。
  59. 中林佳子

    ○中林委員 それはそうなんでしょうけれども、そうじゃなくて、今お尋ねしましたのは、今度の法改正によって十万から三十万の範囲も含まれてくるわけですね。その場合に、今激甚災の場合で市町村事業主体となる場合、農地は七四%で農業用施設が八〇%、あとの小災害については農地はないけれども農業用施設は六五%となっているわけですが、これが引き上げによって落ちる部分が出てくるわけですから、ぜひ起債限度額引き上げてほしいという強い要望があるわけですけれども、何らかの検討を今後加えていただくわけにはいかないものでしょうか。
  60. 柿本善也

    ○柿本説明員 先ほど農水省からお答えがありましたように、今回の限度額引き上げは、三十年間ほど据え置かれた事情にあって、その当時のいろいろな工事単価から考えますと工事費の単価も現実に相当上がっている、こういうことを考慮してなされたものと聞いておりまして、その点は規模の小さい小災害の場合も同様であるという判断に立って、同様に限度額引き上げを図ることとしているわけでございます。現実に補助災害限度額から落ちましたものは、物によりまして単独債になり、小災害で引き受けることになりますが、さらに小災害で限度落ちするものは現実に考えた場合極めて少ない額の話ではなかろうかと考えておりまして、現状では今回の引き上げによって充当率を引き上げなければならないほど地方団体なり農業者の負担が大きく変わることはないのではないかと考えて、現状で妥当ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  61. 中林佳子

    ○中林委員 昨年、島根県は大変な災害を受けまして、この点については県の方からも強い要望が出されておりますので、御要望して次の質問に移らしていただきます。  具体的な問題について伺いたいと思いますが、昨年の山陰豪雨災害によって日本海に流れ出した土石流で漁場及び漁業に大きな被害が出ております。浮遊物とか海岸のごみなどについては、漁民も非常に努力して取っているわけですが、海の底にたまった土は非常に取りにくくて、それがなかなか漁民の手には負えないので、水産庁の手厚い手だてをぜひとも望みたい、こういう要望が昨年来から非常に強く出ているわけです。  水産庁の方も島根県に対して石見東部の海岸については一定の補助をなさっているという話は聞いているわけです。ただ、漁民の方々に聞きますと、この冬の日本海の波によって洗われるのを一定程度待ってそれから検討してほしいという話も聞いている。今四月になってみたときに、ちょうどワカメをとる最盛期なんですね。そこで、三月十五日に大変濁ったことになって、それによってワカメに対する大変な被害が出ているという話が出ております。今、島根県の水産試験場の方でもどうやればきれいになるかということなどを検討中でございますけれども、ぜひ水産庁に、漁場確保のためにも、また漁業発展のためにも今年度手厚い手だてをしていただきたいという要望が非常に強いわけですが、どのようにおやりになるのか、聞かせていただきたいと思います。
  62. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 昨年の七月の豪雨によりまして、河川から流出をしました丸太とか木材あるいは粗大ごみなどが沿岸に大変堆積をいたしました。県からも強い御要望がございましたので、五十八年度におきまして予算措置を講じまして、その土石等あるいはごみなどの除去は行ったわけでございます。本年につきましても若干残余があって、できればその補助を継続してほしいという御要望もあるようでございますので、よく県庁と協議をしてまいりたいと思っております。  それからもう一つ、そういう丸太とか木材とかごみなどではなくて、粘土的なものが流れ出たのではなかろうかとも思われるわけでありますが、ことしに入りましてから三月中旬に若干海の中に濁りが生じているというような話も聞いております。この原因、なぜであるかは私どもよくわかりませんが、目下県の水産試験場が調査中であると聞いておりますので、その調査結果等を待ちまして県庁と協議をしてまいりたいと思っております。  それから、私、別途心配なのは、もしそういった土が流れてそれが原因で海が汚れたということになりますと、海の中に入りました土の除去というのは物理的にもまず不可能なことではないかと思いますし、かえって、いじりまして海をより汚すという結果にもなりかねませんものですから、慎重な対応が必要ではないかと思います。
  63. 中林佳子

    ○中林委員 県の試験場でもその辺を非常によく研究もし、検討もしているようですので、ぜひ実情をよく聞いていただいて、水産庁のできるだけの手当てをお願いしたいと思います。  次に、この冬の豪雪と春先の異常気象に伴う対策についてお伺いしたいと思います。  今回の豪雪、異常気象によって青森、岩手、秋田、山形、新潟などの各地でいまだに多くの雪が残っており、各地で農作物への被害が出ています。特に種まきのおくれによって水稲の苗の確保が必要になっており、県によっては独自に共同苗代や委託苗代設置事業、共同育苗事業などを実施して水稲の苗の緊急確保に努力しているところです。今回の豪雪は近年例を見ないものであり、特に新潟では史上最高と言われています。したがって、水稲の苗の確保などについて国としても何らかの対応が必要だというふうに思うわけです。昭和四十九年の豪雪のときに水稲の苗の緊急確保事業ということで自治体に対する助成を行っておられるわけですが、今回は大変異例な豪雪ということで昭和四十九年を上回る対策検討される必要があると思うのですが、どのような検討をされているのか、お伺いします。
  64. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 本年の北日本中心といたします豪雪につきまして、北陸以北の中山間部を中心に融雪の遅延が見られておるわけであります。十日から、ひどいところで三十日ぐらいの遅延があるようでございます。その結果、水稲、特に苗代作業につきまして五日ないし十日程度の遅延が予想されておるわけでございます。  お話ございましたように、四十九年に融雪遅延に対しまして共同苗代設置等の助成をした経緯がございまして、その後この種の助成は原則的には行わないという方針で対処してまいりましたが、本年の融雪遅延が特に著しいということ、さらに本年におきましてはたくましい稲つくりということを官民一体となった運動として進めているという背景もございますので、四十九年に準じまして水稲苗の確保のための対策を講ずるという方針を決定いたしております。現時点におきまして関係県からの事業の需要量を調査するという段階に立ち至っておりまして、その結果を見まして適切に対処いたしたいと考えております。
  65. 中林佳子

    ○中林委員 最後にもう一点だけお伺いしたいと思うのですが、今回の豪雪によって果樹も大きな被害を受けているわけです。例えば鳥取県では農村関係被害が六十八億で、そのうち四十八億がナシの被害になっております。樹体が雪に埋まってだめになってしまっているわけですが、実は鳥取県では、樹体共済に加入していない農家であるために、これらについては何ら補償措置がとれないで秋まで待たなければならないことになっております。こうした中で苗木の購入とかナシ棚の復旧等が急がれており、そのための資金として農家からは自作農維持資金の希望が強いわけですが、この資金は貸し付けの条件が非常に厳しくて、また収入減の補てんということで、これも秋の収穫期まで待たなければならないという事情があるわけです。こういう状況で農家の方は大変困っているわけで、被害農家に対する低利の緊急の融資あるいは果樹共済の早期支払いなどの制度の改善が今強い要望になっているわけです。  農水省の何らかの対策を期待しておりますけれども、どのような対策を講じられるでしょうか。
  66. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず共済の方につきましては、御指摘のように樹体共済に加入しておられない場合には、樹体の損傷の結果果実が減収をするということになって、その段階で共済金が支払われるということになるわけでございますけれども、損害額が確定次第、共済金の早期支払いを指導してまいりたいと思っております。  それから融資の面につきましては、災害復旧関係の融資は主務大臣指定施設災害復旧資金あるいは果樹植栽資金等を農林漁業金融公庫において御用意してございますので、御要望に応じて円滑に融資が行われるよう指導してまいりたいと思っておりますし、また、農家の資金繰りが災害によってお困りになっておる向きにつきましては、既貸付金の償還猶予等の措置について既に指導を行っているところでございます。
  67. 中林佳子

    ○中林委員 もう一問だけお願いさせてください。  共済の方ですけれども、樹体共済に入っていないということで収穫を待たなければというお話があるわけで、収穫期になればわかるわけですけれども、それまでやはり待てないという農家の事情があると思いますので、何らかの仮払い措置などはとっていただけないでしょうか。
  68. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 特別に被害の大きいケースにつきましては、仮払いということも考えてまいりたいと思っております。
  69. 中林佳子

    ○中林委員 終わります。
  70. 阿部文男

    阿部委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  71. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対し、中林佳子君外一名提出の修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。中林佳子君。     ―――――――――――――  農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  72. 中林佳子

    ○中林委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由と、その内容について説明いたします。  案文はお手元に配付してございますので、朗読は省略させていただきます。  政府案は、一カ所工事範囲拡大、国庫補助対象施設の追加という改善部分もありますが、国庫補助対象となる採択限度額を十万円から三十万円に引き上げ、今まで補助対象とされていた災害復旧事業の切り捨てを行おうとしています。これは、たとえ一カ所の工事範囲拡大されることによって若干救済されるとはいっても、農地、農業用施設等の災害復旧事業に係る農家負担をこれまで以上に増大させるものであり、改悪であると言わざるを得ません。  また、政府案は、国庫補助対象となる採択限度額引き上げや一カ所の工事範囲拡大によって災害復旧事業件数が減少することで事務量等の簡素合理化を図ろうとするもので、複雑多岐にわたる災害復旧事業簡素合理化という点では不十分な内容となっています。今回の修正案は、農地、農業用施設などの災害復旧事業農家負担を軽減する方向で行われるようにするとともに、災害復旧事業簡素合理化を図る立場からのものであり、その内容は以下のとおりです。  第一は、国が事業費の一部を補助する災害復旧事業に係る一カ所の工事の費用の最低額を現行の十万円に据え置くことにしております。  第二は、現行では水田や畑地、農業用道路などそれぞれの施設ごとに区分して災害復旧工事を行うこととされていますが、これを、著しく工法が異なる場合を除き、施設ごとに区分せずに一括して災害復旧工事ができるように改めることとしております。これによって災害復旧事業簡素合理化を図ることができます。  以上が修正案提出の理由内容ですが、委員各位の御賛同をお願いして、説明を終わります。
  73. 阿部文男

    阿部委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見があればお述べをいただきたいと存じます。山村農林水産大臣
  74. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府としては反対であります。     ―――――――――――――
  75. 阿部文男

    阿部委員長 討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、中林佳子君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  76. 阿部文男

    阿部委員長 起立少数。よって、中林佳子君外一名提出の修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  77. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  78. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対し、玉沢徳一郎君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。上西和郎君。
  79. 上西和郎

    ○上西委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同を代表して、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本改正案の運用に当たり、左記事項の実現に努め、農林水産業施設災害復旧等に遺憾なきを期すべきである。      記  一 国庫補助採択限度額の引上げが農林漁家の急激な負担増につながることのないよう、起債や融資の活用等に十分配慮すること。  二 災害復旧事業にかかる事務手続の簡素化を図るため、書類審査の活用等各般の措置を講ずること。  三 災害復旧工事の早期完了を図るとともに、災害関連事業及び防災事業実施に必要な予算の確保に努めること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程などを通じ既に委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  80. 阿部文男

    阿部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  玉沢徳一郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  81. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山村農林水産大臣
  82. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  83. 阿部文男

    阿部委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  85. 阿部文男

    阿部委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十七分開議
  86. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  87. 安井吉典

    ○安井委員 きょうはちょっと始まりがおくれておりますので、御答弁のぐあいでは、できるだけおしまいの方を縮めたいと思います。そういう意味でも、きちんとしたお答えをぜひいただきたいと思うのです。  まず初めに、政務次官、官房長もおいでですから伺っておきたいわけでありますが、この間、私どもはいわゆる農振法と呼んでいるあの法律案について、各県庁から早く通してくれ、町村長会からも言ってくる、土地改良区からも言ってくる、もう大変なんですよね。上京団まで来て、そういうのもありました。局長には、これは重要法案であることは間違いないが、しかし、ほかの法案と並べて先にやってくれというそれには応ずるわけにはいかぬけれども、全体的な流れの中でこれは必ずやるんだから心配しなさんなということをたびたび言っているわけであります。それにもかかわらず、わざわざ北海道の果てから町村長がそろって出たりしてくるわけですね。  よく調べてみましたら、農水省側から、これを促進するようにおまえさん方ひとつやってください、こう言っているわけですね。そのことが我々に明らかになりました。この問題だけじゃないのですよ、ほかのどの役所もよくやるんです、この手を。私どもは長く議員をやっていますと、裏はもうみんなわかるのですよ。しかし、大体先がわかっているものに、全国にそういう電報を打たせる、何をやらせる、そういうことによって生ずるむだは一体どれぐらいかということですよ。行政改革とかなんとか言いながら、そういうようなことをさせてやるという仕組みを私どもはどうしても許すわけにはいかぬわけであります。これは今後ともある問題ですから、ひとつこの際明確にこんなばかげたやり方をやめることを要求しておきたいと思いますが、どうですか。
  88. 島村宜伸

    ○島村政府委員 ただいま安井先生指摘の問題につきましては、私、詳しくは承知しておりませんが、早速そういう事実を調べまして、もしそういうようなむだがあれば戒めて、今後は慎みたい、そう思います。幸い御理解、御協力を得ていることでもございますから、その点は責任を持ってこの問題を調べて、そして今後はそういうことが一切誤解を受けないように考えたいと思います。
  89. 角道謙一

    角道政府委員 ただいま安井先生指摘の点は、毎年度予算の場合にもよくお話のあることでございまして、私どももかねてからそういうことはないように、特に行政改革の時期でございますし、よく注意はしているわけでございます。ただ、今回の土地改良法なり農業振興地域法の改正につきましては、市町村長が現に抱えておる問題につきまして、それに対応する方策であること、また、長年の要望等もございまして、かねてから早期実現ということを要望していたものでございます。たまたま各省折衝がおくれまして、通常、国会提出は三月二十七日が締め切りになっていたわけでございますが、その期限に間に合いませんで、四月三日になってやっと閣議決定ということもございまして、団体の方々は非常に心配をし気遣っておられたことも事実だと思います。  ただ、そのために、早期成立を願う余りそういう行動があってはなりませんし、また、私ども行政当局としてもそれを主導するということがあってはいけないことだと思いますので、この点につきましては、省内各局ともこの問題に限らず十分徹底させていきたいと思います。御了承いただきたいと思います。
  90. 安井吉典

    ○安井委員 これからこういうような問題があったとき、私どもはこう処理したいと思うのです。  あの法律は.私どもはそう問題がなしに通せると思ったのです。我々は委員長にも申し上げておきたいと思いますが、全国的にそんな大きな関心のある重大問題なら、電報なんかで督促するのは重要法案なんですから、そういうのは我が委員会で時間をかけて十分に慎重審議をする、普通三日で通るなら四日が五日かけてでも審議を十分にやる、そういう仕組みにしたいと思いますので、そのように御理解を願いたいと思います。  そこで、きょう伺いたいのは、まず世界的な異常気象が進んでいるということで、気象庁長官も異常気象白書をこの間発表されました。そういう長期的な問題と、それからことしは東京でもやっと桜が咲いた。しかし、豪雪のつめ跡はまだ残っているというような状況の中にあるわけです。したがって、そういう長期的な予報、さらにまた短期的なことしの見通し、こういうものをお聞きしてこれからの対策を立てていかなければいかぬと思いますので、まず長官から伺います。
  91. 末廣重二

    ○末廣政府委員 お答え申し上げます。  先生の御質問は二つあると存じます。  まず最初に、ことしの農業気象に関するこれからの見通しがどうであるかという点につき、農業と関連の深い気象要素のことしの長期的予想を中心にお答えさせていただきたいと思います。  本年は各地で積雪が多く、融雪がおくれておりますが、最近気温は上昇傾向にございまして、引き続き五月は暖かな晴天が多いと予想しております。六月から七月にかけましての梅雨時期でございますが、これは例年に比べますとやや低温、また日照不足に結びつきやすい悪天など、不順な天候の目立つ期間があると存じます。しかし、八月の前半は夏らしい日が多くなります。したがいまして、この間日照は回復すると思いますが、秋の訪れは例年に比べて早い、このように予測しております。  また、先生の御質問の中の長期的見通してございますが、これはなかなか現在の技術ではまだ難しいのでございますが、現在の技術を踏まえてお答えいたしますと、今後十年程度の期間について見ますと、引き続き年々の天候は変動が大きく、異常気象は発生しやすい条件を含んでいると思っております。  また、北半球全体の気候変動につきましては、寒暖を繰り返しながらもゆっくりと平均的には上昇すると予想しております。ただし、日本は暖まりにくく、また冷めにくい海洋に取り囲まれておりますので、北半球全体の気温の上昇傾向は数年の後追いで日本は変化していくもの、かように予想しております。
  92. 安井吉典

    ○安井委員 まず長期的な見方について伺っておきたいと思いますが、北半球の温暖化で炭酸ガスがふえて森林破壊や砂漠化に拍車がかけられるというような見方もあるわけです。そういう全体的な長期的な見方に対して、これは気象庁の立場で対策を、というのもおかしいのですけれども、具体的な対応としてどういうことを期待しているわけですか。
  93. 末廣重二

    ○末廣政府委員 お答え申し上げます。  まず第一には、気象的あるいは気候的に今後どういうふうに変化していくであろうということにつきまして、先生指摘の炭酸ガスの問題であるとか森林の破壊の問題であるとか砂漠化の問題であるとか、あるいは地球を取り巻き大きく流れております空気の渦がございますが、この渦の状態変化の問題、これは世界各国が力を合わせて今後どうなっていくかということを研究してまいらねばならぬと思います。  この点につきましては、国連の下部の専門機関であります世界気象機関というのがございまして、ここが音頭をとりまして世界気候計画というのが既に発足しておりまして、今後どうなっていくかということを一刻も早く把握することにただいま国際的に全力を挙げているところでございます。  また、国内的にはもう少し短期間の視野で、例えばことしどうなる、来年どうなるといったようなことにつきましては、私どもで音頭をとらせていただきまして、気候変動対策関係省庁連絡会、これは十六省庁が御参加でございますが、これを定期的に開きまして、気象現象あるいは気候の推移等を御説明申し上げまして、それぞれ適切な対策をおとりいただけるよう努力中でございます。
  94. 安井吉典

    ○安井委員 当面、私ども関心が深いのはことしの見通しなんです。先ほどの御説明で比較できるのは五十八年、去年ですね。去年と比べて悪くなるのかよくなるのか、これは時期的にいろんな差が去年と今年で出てくるということではないかと思いますが、相対的には去年に比べてことしはよりよい年なのか、より悪い年なのか、去年並みなのか、ちょっと素人にわかるようにお答えください。
  95. 末廣重二

    ○末廣政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、昨年までは何年間かの低温と日照不足によるいわゆる冷害の年が続いたわけでございます。私どもの予想しております限り、ことしの夏から秋にかけましては気象条件は昨年ほど厳しくはない、かように予測しておりますが、完全に平年並みに戻るかどうかという点につきましては、若干の疑問なしとはしないところでございます。
  96. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃ、ひとつ農水省の方での対策といいますか、お考えを伺っていきたいと思います。  農業、林業、水産業それぞれに対応が違うものですから、総括的な言い方というのはなかなか難しい問題かもしれませんけれども、ことしの作付がいよいよ始まる段階において対策の基本となるような考え方はどうなのか、それから伺います。
  97. 山極栄司

    山極説明員 お答えをいたします。  農、林、水ということもございましたけれども、便宜上農作物ということでお答えをいたしたいと思うわけでございますが、先生案内のとおり、気象の農作物に対する影響のあらわれ方といいますのは地域によっても大変違いますし、それから作物の生育のステージといいますか、生育の段階によっても異なるわけでございます。そこで、一概に申し上げることは大変難しいわけでございますが、総じて言えば、ただいま気象庁長官からお話がございましたように、本年につきましては六月、七月の天候は不順で秋の訪れが早いということ。それからまた、中長期的に見ますと変動が大きいというふうに見通されているわけでございますから、農業生産にとって必ずしも楽観を許さないというふうに私たちはとらえているわけでございます。  こういうこともございまして、本年の農業生産に当たって、一月の末でございますが、昭和五十九年の春夏作の技術指導についてという通達を出しまして、その中で農作物生産にかかわる基本的な事項を明らかにし、必要な指導を行ってきたわけでございます。さらに、これも先生案内のように、三月十日に発表されました気象庁の暖候期予報というのがございまして、いわゆる六カ月予報でございますけれども、それを踏まえまして、今後の天候見通しと技術対策についてという通達を出しまして指導をしているわけでございます。  その中で、例えば水稲でございますが、これにつきましては、近年兼業化等の生産構造の変化が進む中で、適地適品種の原則に立った品種選定とか、健苗の育成なり適期における適正な移植による初期生育の確保、あるいは気象の推移なり生育状況に応じた適時適切な施肥とか水管理、病害虫の防除の徹底、こういうようないわば基本技術の励行ということが大変重要でございますので、こういう基本技術の励行が行われますように官民一体となった新しい稲作運動、たくましい稲づくりというような運動を通じまして指導の強化を図っているところでございます。今後とも気象庁と連絡を密にいたしまして、気象情報の収集なり分析に努めながら、生産現場で適切な対応ができるよう、指導徹底を図ってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  さらに一言つけ加えさせていただきますと、これも先生案内のように、現在の技術水準で気象の影響を完全に克服するということは大変困難な面もございますので、中長期的な対応といたしましては、生産性の向上のための技術の開発普及とあわせまして、不良な気象のもとでも安定した生産を確保し得るような技術の開発なり普及に一層力を入れていくことが大変重要ではないかというふうに思っておりまして、そういう面での努力を重ねてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  98. 安井吉典

    ○安井委員 具体的な問題がたくさんあると思うのですけれども、一、二点だけ伺いますが、雪の深い地帯における融雪のおくれという問題があると思います。それへの対応はどう進めておられるか。  それから、麦の冬枯れなども雪の多いということがどういうふうに影響してくるのか、そういう対策はどうなのか、それらをちょっと伺います。
  99. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 ことしの場合、北陸以北におきましてかなり積雪量が多かったということから融雪の遅延が大変目立っておりまして、十日からひどいところでは三十日ぐらいの融雪のおくれがございます。そのために、農作業の開始、すなわち水稲苗の播種がおくれるという問題が出ておりまして、私どもの最近の調査では五日から十日ぐらいのおくれが予測されておるわけでございます。かつてこういう融雪遅延の場合に国が共同苗代の設置とか委託苗代とかいうことにつきまして助成をした経緯がございまして、最近におきましては昭和四十九年に対策を講じておるわけでございます。その後、この種の助成というのはいわば営農活動の一環であるからという理由によりまして多少のおくれが出ました場合にも助成することなく推移いたしたわけでありますが、本年の場合には従来に比べて際立った融雪のおくれでございますし、ただいま山極審議官から申し上げましたように、たくましい稲づくり運動をことしからやる、こう言っておるやさきでもございますので、本年につきましてはおおむね四十九年の前例にならいまして、共同苗代、委託苗代あるいは機械移植用の共同育苗施設の設置等につきまして助成をするという方針を決めております。ただいま関係県に対しましてどれぐらい事業の需要があるかということについての照会を発しておるところでございまして、取りまとめが終わり次第実行できますように対処いたしたいというふうに考えております。  それから麦の問題でございますが、大部分の麦についての問題と申しますのはいわゆる雪腐れ病の問題であろうかと思います。ことしは特に融雪がおくれているということから、積雪地帯におきましての雪腐れの心配が多いわけでございます。まだその全貌を把握するという段階には至っておりませんが、融雪時におきまして特にこの病気が目立ってくるということがございますものですから、それに対する技術指導ということについてかねがね注意を喚起してきたところでございます。もともとこの雪腐れにつきましては、根雪になります前に、トップジンMというふうな薬がございまして、これを散布することによってかなり回避できるわけでございますが、特に本年北海道の場合には昨年の播種がおくれたということ、それから根雪が予想外に早く来たことから、この農薬散布を行っていないところが非常に多いわけでございます。また、積雪期間も長いところで百五十日を超えるということになりますと、非常にこういった病気が出てくる可能性が高いというふうに思っております。  今後の対応といたしましては、何といっても融雪を促進するということと、融雪時の表面排水を速やかに排除するということが一番のポイントであろうと考えておりますし、それによって何とかやっていけるという程度の被害のものにつきましては速やかに追肥を行いまして生育の回復を図るということが要請であろうと考えておりまして、そのような指導をいたしているところでございます。  また、不幸にいたしまして被害が甚大でございまして生育の望みがないというところにおきましては、可能な限り他作物への転換を誘導していくということ以外に手当てはないわけでございますが、それらをかみ合わせまして状況に応じた適切な指導をいたしたいと考えております。
  100. 安井吉典

    ○安井委員 もう一点伺いますが、共同苗代や委託苗代への助成はどのような内容考えていますか。
  101. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 これは大ざっぱに分けますと三通りあるわけでございまして、一つは、融雪のおくれている場所におきまして共同の苗代をつくるための除雪の費用を助成するということでございます。  それから、その地域において除雪をして苗代設置をすることではどうも対応できない、したがってもっと雪の少ないところに頼みまして、そこで苗をつくってもらうというのが第二の型になろうかと思います。  第三の型は、最近ではほとんどが機械植用の苗生産ということで、おおむねハウス等の施設内において播種、育苗するというパターンが多くなっております。そういうところにおきまして、現に施設がある場合もありますし、ない場合もございますが、仮に施設があるような場合でございますと、そこで設置をいたしますところの苗代、育苗用の施設のかかり増しといいますか、膨らむ分があるわけでございます。そういったものを助成するということで、補助率は前例に倣いまして三分の一ということを予定いたしております。
  102. 安井吉典

    ○安井委員 いろいろ対策があると思いますが、細かな問題に入る時間はありませんが、食糧庁長官もおいでですから、ことしの米の需給見通しへの影響という点もこの際伺っておきたいわけであります。  今まで米不足だとかなんとかでこの委員会でもしばしば取り上げられて、食糧庁としてのお考えも伺ってきたわけであります。また、第三期の水田利用再編計画では五十九年産米は十アール当たり四百八十キロ、生産量千九十万トンというふうに伺っております。まだ海のものとも山のものともつきませんが、ことしの気象が決して良好ではないという予想もあるわけです。そういうような中で心配はないのかどうか、そのことをちょっと伺います。
  103. 松浦昭

    ○松浦政府委員 お答えを申し上げます。  五十九米穀年度につきましての需給につきましては、当委員会におきまして先般から食糧庁といたしましても、その需給には、決してゆとりのある状態ではないけれども万全の操作を期しながら不安のない状態にする、不安はございませんということを申し上げてまいったわけでございますけれども、ただいま先生質問の五十九年産米の作況というものは、特に政府の在庫水準も低くなっておりますことから、六十米穀年度ということを考えますとやはり安定した作柄になるということが期待されるわけでございます。  さような観点から申しまして、ぜひことしの作柄がよくなってほしいというふうに考えておるわけでございますが、一方におきまして、私ども水田利用の再編第三期対策におきまして、本来でございますと単純に潜在生産量と需要量とを比較いたしますれば、各年七十万ヘクタールの生産調整を行う必要があるわけでございます。しかしながら、最近の米の需給事情等も考えまして適正な在庫水準を確保するということから、これも何回か申し上げておりますが、平年の作柄であれば四十五万トンの在庫の積み増しができるように、六十万ヘクタールということで転作目標面積を抑えてきておるわけでございます。これは当然平年作における在庫積み増しということになるわけでございますが、ある程度まで作況の変動に対応したバッファーになっておるということが考えられるというふうに思います。  また同時に、五十九年産米につきましてはこのようなゆとりを持たせた需給計画、ただいま先生もおっしゃられましたように一千九十万トンの生産ということを考えておるわけでございまして、これに対して需要が一千四十五万トンということで考えておるわけでございます。このようなゆとりを持たせた計画にいたしておりますと同時に、先ほどから山極審議官及び小島農蚕園芸局長からも御答弁ございましたように、四年連続不作の事態を踏まえまして、稲作の改善に対する機運の醸成、特に基本技術の励行といったことで、大臣御提唱のたくましい稲づくり運動ということを官民一体になって展開していただいておりますので、さような運動の効果というものを期待し、それが実現できることによって基本的に問題がないようにいたしてまいりたいというように考えている次第でございます。
  104. 安井吉典

    ○安井委員 これは不確定要素を持っての、そういう状況の中での質問ですから、見通しはどうかと聞かれても困るんじゃないかと思いますけれども、やはり国民は、あるいはまた農民は、お天気が悪ければことしの米はどうかな、こういう心配をするわけでありますから、遺漏のない対応をぜひ進めていただきたいと思います。  それから、水産庁長官もおいでですから、ことしの異常気象の影響の中で流氷被害ですね、これがオホーツク海からはみ出て日本海にまで及んでいるというような状況があって、利尻島、礼文島にまで九年ぶりに接岸をするというような事態もありました。アワビは低温に非常に弱いわけで、ほとんど全滅ではないかとか、ウニも七〇%以上だめじゃないかとか、とりわけ昆布も、養殖昆布を初めとして壊滅状態だとか、そういう報を受けているわけでありますが、水産庁として実態をどうとらえているのか、そしてどういうふうな対応でいかれるのか、それを伺います。
  105. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 流氷につきましては、例年、オホーツク海を中心に大体根室海峡あるいは宗谷海峡に面した地域にとどまっておったわけでありますが、本年は、二月から三月にかけまして大変発達しました低気圧が発生をいたしまして、数度にわたりまして非常に強い東風ないし北東の風が吹いたわけでございます。御指摘のように利尻、礼文島、あるいは太平洋岸では日高、十勝などに全く例年に見られないような形での広い地域に流氷が接岸をいたしたわけでございます。  その被害状況でございますが、接岸したことによりまして海底の昆布あるいはアワビ等がつく岩礁が削られるというようなことによりまして、かなりの昆布関係被害あるいは貝類の死滅等が予想されておるわけでございますが、現在北海道庁で鋭意調査の準備を進めておるわけであります。準備と申しますのは、いかんせん海中におきます被害調査でございまして、大変海水が濁っているというようなこともあるようでございます。また、被害が広範に及んでおるというようなこともありまして、まだ十分把握をする段階にまで至っていないようでございまして、私ども聞いているところによりますと、四月十七日ごろからようやく調査ができ始めたというふうに聞いております。  予想されるところによりますればかなりの被害額になるのではないかということで、幾つかの数字もあるわけでありますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、被害調査の結果がわかりましたところで、その対応につきまして道庁と相談をしてまいりたいと思っております。過去のこういった流氷被害につきましての災害対策の例等もあるわけでございますので、調査結果がわかり次第なるべく早くその対策につきまして方向を出したいというふうに考えております。
  106. 安井吉典

    ○安井委員 過去の例というと、共済の関係やらその他いろいろあったと思うのですが、どうでした。
  107. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 四十九年と五十三年にやはり大きな流氷被害がございました。そのときには、もちろん共済に加入していた方たちにはそれなりの共済金が支払われただろうと思われますが、むしろ個々の漁家に対しましては、農林漁業金融公庫によります沿岸漁業経営安定資金という大変低利長期の融資制度がございますので、四十九年、五十三年いずれもそういった融資が行われております。共済金の支払いもかなり多額のものが当時支払われております。そういった対策中心になって今回も処理される方向ではないかと思っております。
  108. 安井吉典

    ○安井委員 まだ被害実態が完全につかまれていないようですから、対策もまだきちっとしないのだろうと思いますけれども、この地域の漁民にとっては大変重大な問題だと思いますので、実態の把握を急ぐこと、そして対策を十分に施すこと、そのことをお願いしておきます。  政務次官、大臣のかわりでおいででございますから、この気象にかかわる問題について締めくくり的に伺っておきたいわけでありますが、何しろ連続凶作、その後のことしの異常気象の予想、こういうわけであります。それだけに、実態のいろいろな動きに即応した適切な対応というのが必要になってくると思います。十分な措置をおとりになるよう期待して、それについての御決意を伺います。
  109. 島村宜伸

    ○島村政府委員 安井先生指摘のとおり、私たちも実は大変にそのことだけは心配をいたしておるところでございまして、まさに四年続きの不作ということでございますから、この点につきましてはいかなる場合にも米の需給に問題が起きないように万全の配慮をしていきたい、そう考えております。
  110. 安井吉典

    ○安井委員 次に、今漁業の問題が出ましたので、サケ・マス日ソ漁業協定の動きについてこの際伺っておきたいと思います。朝鮮民主主義人民共和国との民間漁業協定の問題がありますが、これは政府レベルではどうしようもなくて、日朝議員連盟が窓口になってこれまで進んできているわけであり、今途絶状態ですが、社会党としても近く議員団を向こうに送りまして当面つなぎのいろいろな話し合いをしてまいりたいと考えているところであります。  しかし、このサケ・マスの日ソ漁業協定は専ら政府の方が働いてもらわなければならないわけで、従来から長期安定的な協定が欲しいと政府も願い、関係者も願っているわけでありますが、それはそれといたしましても、もう例年よりも非常におくれているわけであります。新聞ではようやく向こうからの連絡が来たというような報道もございますが、今の段階においてどういうふうな交渉の予定を組んでおられるのか、それをまず伺います。
  111. 島村宜伸

    ○島村政府委員 お話がありましたとおり、日ソサケ・マス漁業交渉はその開始が例年になく大変おくれたわけでございますが、ようやくこの四月二十日からモスクワで開催される運びとなりました。  少し先生に伺いまが、それに対する私どもの基本的な姿勢についての御質問と受け取ってよろしゅうございましょうか(安井委員「ええ、そうです」と呼ぶ)  本交渉におきましては、たまたま本年がカラフトマスの不漁年に当たるということ、また、ソ連側はサケ・マスの資源水準につきまして大変厳しい見解を表明していること、第二には昨年我が国のサケ・マス漁船の大量違反があったことなどから見て、今回ソ連側は大変厳しい態度で臨んでくるのではないか、そういうことが予想されるわけであります。  しかし、いずれにいたしましても、我が国としてはあくまで伝統ある北洋サケ・マス漁業の安定的操業を確保するという基本方針に立って鋭意努力したい、そう考えております。
  112. 安井吉典

    ○安井委員 ソ連側が漁獲量の削減それからいわゆる漁業協力費というのですか、それを大幅に引き上げるというような主張をするのではないかということで、交渉の成り行きをみんな心配しているわけであります。とりわけ十二月のスケソウダラ等の交渉でも割当量が削減されたりしているわけで、その延長線上で今度の交渉が行われるということになればさらに心配がふえる、こういうことではないかと思います。  漁獲量の問題だとかあるいは協力費の問題だとか、それらについての見通しはどうですか。
  113. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 ただいま政務次官から御答弁申し上げましたように、本日昼過ぎの飛行機で中島海洋漁業部長以下政府の交渉団とサケ・マスに関係いたします各種団体の顧問団が成田から立ったわけでございます。  例年に比べますと交渉の開始が約十日おくれております。一方、操業開始は例年でございますと北海道の太平洋岸の小型ないしは中型のサケ・マス漁船につきましては五月一日出漁というのが例でございます。そういったことで、果たしてそれに間に合うかどうかということを私大変心配いたしておるわけでございますが、本日出かけました交渉団には、全力を振るって早期妥結に向けて努力するようにということを申して立ってもらったわけでございます。  ただいま御指摘のように、漁獲量の削減ないし協力費の引き上げ等、毎年のことでございますが、ことしも例年になく私どもも気にいたしておりますのは、偶数年のサケ・マスの不漁年、特にカラフトマスの不漁年でありますが、偶数年でございました八二年のカラフトマスが予想以上に非常に悪かったということがあるわけであります。それで一年たちましてのことしてございますので、そのことをソ側がかなり強く意識いたしますと、漁獲割当数量につきましては例年になく難航するのではないかということが予想されるわけでありますが、反面、八二年自体は特に異常だったという別途のデータもあるわけでございますので、そこら辺につきましてはソ側の理解を得て通常ベースの漁獲枠を確保するように努力いたしたいと思っておるわけであります。  それから協力費の問題でございますが、四十二億五千万円の協力費を支払っておるわけでありますが、これも例年のことでございますと、ソ側は自国の河川におきますサケ・マスのふ化放流事業に要する各種経費が増高しているということを理由に、昨年も大幅な引き上げを要求してまいったわけでございます。ことしも恐らく同じようなことの要求があるのではないかと思いますが、特に昨年からことしにかけましての国内におきますサケ・マスの価格の下落というような問題がございまして、漁業経営も大変苦しくなっているわけでございますので、そこら辺を強く主張することによりまして、適正な協力費になるように努力をしたいというふうに考えております。
  114. 安井吉典

    ○安井委員 まだこれから交渉が始まるわけですから、余り立ち入ったお話も出てこないわけでありますけれども、サケ・マスの漁業そのものが、中型にしても小型にしても非常に経営が苦しくなっているという状況があり、そういう中で例年違反操業もしばしば摘発をされているわけです。ですから、違反操業を根絶していくということが一つの大きな前提でもありますし、しかし違反操業でもしなければ経営が成り立たないんだ、そんな状況なんだということを関係の人々からも聞くわけです。そういう上で、漁場形成ももう少し実態に沿ったようなふうにならないだろうかという提起もあるわけです。  いずれにしても、時期的にぎりぎりに迫ってからの話し合いですから、そう細かな問題にまで立ち入ることはあるいはできないのかもしれませんけれども、漁場全体の形成上の問題という点についてはどうお考えですか。
  115. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 御指摘の点は、特に太平洋中型の関係業界が強く望んでおります北緯四十四度以南の操業水域をできれば四十四度以北二度ないし三度引き上げてほしい、その方が魚体も大きくなっておりますし、単位当たりの価格も高いというようなことで経営にプラスになる、漁期もあるいは短縮できるかもしれないというような期待のもとに、そういう要望を強く持っておるわけでございます。  これも交渉上のことでございますので、詳細にわたりましては御容赦願いたいのでございますが、かつても同じような要求を部分的にいたしたことがあるわけでありますけれども、ソ側の態度といたしましては、基本的には沖取りは不経済である、河口まで戻ってきて大きくサケ・マスが育つたところでとった方が経済的であって、沖取りは将来の方向としましてはやめるべきであるというのがソ側の一貫した基本的な態度であるわけでありまして、これを基本から覆すような形での漁区の改定というのはなかなか実際問題としては難しいのではないか、特に今回のように交渉期間が極めて制限されている場合にはなかなか難しいのではないかというのが率直な私の感じでございます。
  116. 安井吉典

    ○安井委員 これから始まり、きょう出発をしたという段階でのきょうのお尋ねですから、深く入ったやりとりにはならぬと思いますが、政務次官、基本的な考え方を最初にお話しになっているわけでありますけれども、五月一日から出漁するということで、港ではもうすっかり準備が整って待っているわけですね。そこでやっと今出発で、こういうようなことであるわけで、交渉は難航が予想されるわけですけれども、しかし、そうかといって安易に条件をのんでくるわけにもいかぬと思いますね。ですから、問題は、長引かせることがいい条件がとれるのか、あるいは厳しい条件をいかにして拒否するか、そういうような兼ね合いにも入ってくるおそれもあるわけであります。しかし、船団が準備を進めている漁に間に合わなければいけないし、しかも国会は月末から連休に入るわけです。したがって、協定を国会で承認するとしても、外務委員会が開かれて本会議が開かれてという国会の日程をにらみ合わせれば、これはもう本当に短い期間に極めて困難な問題での結論、こうならざるを得ないわけです。  そういうような状況にありますだけに、いつも重大な問題であることは間違いありませんけれども、ことしの場合、とりわけ政府においてまさに適切な対応を期待されるときはことし以上のときはない、そういうふうに思うわけであります。どうでしょうか。
  117. 島村宜伸

    ○島村政府委員 全く同感でございます。したがって、我々は、鋭意、誠心誠意努力をしてできるだけ早い機会にいい結果を得て漁民の皆さんの期待にこたえたい、そう考えます。
  118. 安井吉典

    ○安井委員 水産の問題でもう一点伺っておきたいわけでありますが、最近、水産物の輸入増加が非常に著しいわけであります。私どもは子供のときから日本は世界一の水産国と聞いていたわけでありますが、今はもう世界一の魚の輸入国になってしまうというような現状があります。無秩序に輸入がどんどん増加するということでは漁業基盤が怪しくなるというおそれもあるわけで、したがって沿岸漁業等振興法の第三条第一項第六号では、輸入調整のため必要な制限措置の規定もあります。したがって、輸入の問題については、非自由化品目のⅠQ品目の問題もあるわけでありますけれども、自由化や枠の拡大をやってほしくない。さらにまた、現に行われている輸入についても、もう少し節度のあるものにならないかという要求がございます。それについて政府としてどうお考えでしょうか。
  119. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 近年におきます我が国の水産物の輸入の動向、数字を若干申し上げてみますと、昭和五十年に数量で七十一万トン、金額で約四千億円であったわけでありますが、昨年は数量で百三十二万トン、金額で約一兆円ということになっております。数字の上では大変大幅な増加を示しておるわけであります。  その中身を見てみますと、一つはサケ・マスあるいはタコ、ニシンというようなものに見られますように、昭和五十二年以降に二百海里水域が設定されまして既存の海外漁場が失われたためにやむを得ず数量をふやさざるを得なかったという意味での、例えばニシンとかサケ・マスがその典型だろうと思いますが、そういったものもございますし、またエビとかイカ、特にエビは、一兆円の輸入金額の三分の一がエビでございます。食生活の変化といいますか、消費者の嗜好の変化によりまして需要が増加しているにもかかわらず国内生産が追いつかない、そういうものが急増しているということがあるわけでございます。しかも、これらのものは、あるいはカズノコ等に見られますように、非常に単価が高いものが多いというようなこともありまして、金額的に一兆円というような大変な大きな金額になってきたわけでございます。  私ども、基本的な考え方としましては、水産物の輸入は、世界に冠たる水産国でもあるわけでございますので、極力国内生産で賄うということが基本的な考えであることはもちろんでありますが、ただいま申しましたようにエビとかイカ、タコのような需要に生産が追いつかない分野、あるいは失われた漁場で過去において調達しておったものが輸入にかわったというような事情にあるものにつきましては、これは今後とも一定量の輸入というものが続かざるを得ないというように思っ  ておるわけでございます。  別途、ただいま先生指摘のようにⅠQ品目等につきましては、もちろん適切な需給を見通しながら国内の価格に悪い影響がないようなⅠQ品目の数量あるいは品目の設定をしていくことは当然でございますが、一方、ⅠQ品目でないもの、例えばサケ・マスの輸入が大変急増しておりまして、最近生産者も大変困っておるというような、これは一つの典型でございますが、そういったサケ・マス等につきましては、国内の生産が毎年ふえるということはふ化放流事業の数量から見ましても明らかなわけでございます。したがいまして、そういう生産事情等につきまして、生産者団体あるいは輸入業者の団体等の接触を保たせながら、また別途私どもも輸入業者の団体に対しましてそういった生産事情等を十分説明しながら、需要に見合った適切な輸入が行われますように、今後もまた一段と注意を払ってまいりたいというように考えております。
  120. 安井吉典

    ○安井委員 この問題はまた別の機会に譲りたいと思いますが、いずれにしても、何か今後の問題としてはかなり重要な展開を見せてくる問題じゃないかとも思われますので、その点だけ指摘しておきたいと思います。  きょうはもう一つ伺いたいのは、豪州との牛肉交渉であります。  その前に、この間行われました日米交渉の後始末について若干伺っておきたいと思います。  牛肉、オレンジがああいう格好で決着をしたことにおいて、国内で現実にはどういう事態が起きて、喜ぶべき事態は別にお聞きしなくてもいいわけですけれども、余りないんじゃないかと思いますが、心配しなければならないような事態が起きていやしないのか、そういうふうに思います。畜産局長、どうですか。
  121. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 実は、牛肉に関します交渉は、日米におけるハイクォリティービーフの問題は全体の一部でございまして、全体とすれば、先生も御指摘のように日豪の交渉を待って全体のことになるわけでございます。  ああいう結果のもとでいろいろ出ておりますことを申し上げますと、一つは、牛肉の価格につきましては、我々が申し上げております、和牛についてはほぼ上位価格の水準、それから乳雄については中心価格水準という傾向は変わっておりません。ただ、三月から四月にかけてはいろいろと値動きのするときでございますけれども、日によって高かったり安かったりということはございますが、全体としては今まで申し上げましたような水準で経過いたしております。したがいまして、特に心配すべき状況でもございませんし、特段事業団の操作を何か変えるというような必要も今はないと思っております。  それからもう一つ、子牛の価格の問題でございますが、実は毎度申し上げておりますように、比較的影響が強いはずでございますけれども、乳雄の価格はここしばらくほぼ十四万から十五万という水準で動いておりまして、目立った動きはございません。これはやはり乳雄が出てきます酪農の規模が大きいとか、あるいは買います乳雄の肥育の方々も相当規模が大きいというようなこともございまして、何と申しますか、余り心情的な意味で動くということはないように思っております。  ただ、大変残念でございますが、和牛の子牛につきましては、かねがね申しておりましたような比較的低位の水準で来たわけでございまして、私どもとすればいろいろな制度的な支えもしておりますので、こういうときにおいても余り敏感に動かないようにということを願っておったわけでございますが、四月に入りましてからの市場の経過を見ますと、比較的値を下げてきておりますのが中国あるいは近畿のあたり。それから、かつて低い水準をもう通り越しておると申しますか、逆に若干上がったというふうなことも含めまして、九州の方は比較的安定的な水準。その他の地域でも二、三の例はございますが、特に目立っておりますのが中国地方における子牛価格がかなり大きく低落したということでございます。  私ども出荷の頭数を見ましたり、あるいは系統が買っているのか、商人系が買っているのか、いろいろ個別の事情も調べておりまして、地区地区にはそれなりの理由があるようでございますが、その背後にあります経営の条件その他を見ますと、そんなに大きく変動させなければならないような要因はないように思っております。これは毎度申し上げておりますように、子牛につきましては安定基金制度を昨年以来法律の制度にしておりますから、下がりました場合に九割について補てんができますことはもちろんでございますし、そのほか、ことしの価格を決定いたしました段階でも三十万円を割りました場合には一万円の生産奨励をつけるということ、それから増頭をなさった方から産まれてくる牛につきましては二万円の奨励措置をつけるというようなことをやっておりますので、農家の手取り自身は決して下がることはないと思っております。  しかし、どうも心理的なものが響き過ぎますといわば子牛生産が減退をする。減退をするということは結果的に国内生産を縮めることでございまして、結果として輸入量がふえざるを得ないという悪循環をするわけでございますので、私ども三月の価格決定の際に、特に雌牛が下がって繁殖経営の拡充に対していろいろ悪影響が出ないようにということで、雌牛の資源確保のための特別の対策として約十億円のお金も積んでいるわけでございます。このような金を使いまして、生産者に不安がないようにということを今団体も含めて鋭意進めているところでございます。私どもの見るところによりますれば、そんなに大きく変動しなければいかぬ要因はないわけでございますので、これらの施策を地域地域徹底させることによって価格を早期に安定させたいと思っております。
  122. 安井吉典

    ○安井委員 特に和牛子牛の値下がりが大きいという報道を私ども聞くわけであります。きのうの新聞にも島根県で子牛の価格が暴落、一頭四万円も平均で下がったというような記事もありますね。それから特に雌の下げ幅が大きい。これは、二、三年後に子牛を産ませてもそのときの肉用牛の市場相場のめどが立たない、輸入がどんどんふえてくる中で一体どうなるのかわからない、そういう心理的な影響があらわれてきているということではないかと分析しています。現実にきちっとそろばんの上であらわれてくる問題ももちろんありますけれども、それよりもこういう心理的な影響がいわゆる枠拡大によって出てきやしないかという私どもの心配がここで現実にあらわれているわけであります。価格対策がきちっとできているというふうに局長も御答弁でございますが、ただ一方では、四十五年以来、去年からことしにかけて補てん分の支払いが最大の状況になってきて、地方の協会も金が足りなくなってきている、そういうような報道も聞いています。  その点、価格安定事業の資金が足りなくなるぐらいな状況が現実にあらわれつつあるということは問題ではないかと私は思うのですが、どうですか。
  123. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 農家の方々は、今まで法律に基づかない制度の場合は、金がなくなればこういう制度はなくなるんではないかという御心配があったわけでございます。したがいまして、昨年先生方にやっていただきましたあの法律の中であの制度は国の法律に基づく制度といたしましたし、財源も、御承知のように昨年、五十八年度は十八億の予算を五十九年度は三十二億にふやしまして、基金の積み立てができるようにいたしました。それから、これも昨年の法改正を機会に、どうしても県によりまして資金の大きいところと小さいところがございます。比較的潤沢なところはいいのですが、資金がショートしやすいところもございましたので、これも法律上認められた団体である全国協会に五十八年度は四十四億円の金を積みましたし、ことしも価格決定の際に三十九億円を積んでおりまして、合計八十三億の金を今用意してございます。これは改正前は二%程度の金利を取っておりましたけれども、昨年来無利息にしてございまして、もし資金がショートすればこの金を全国協会から県の協会に融通をするということをいたしております。  私ども法律の制度にいたしました以上、金が足りないから事業ができないということは絶対ないようにするつもりでございます。したがいまして、まだまだ末端ではそういうことが浸透しておらない嫌いがございますので、各団体等を通じて、この基金協会というのは絶対安心してやってもらえるということを浸透させますと同時に、どうも現実の経済実態以上に心理的に動くという部分を、何とか我々も団体を指導いたしまして、少なくとも、子牛価格が下がりましても、それは繁殖農家にとっては大変なんですが、逆に言いますと肥育農家にとっては大変好条件ということにもなるわけでございます。好条件ということは、やはりこういう機会にもっと買いを進めるということをやるべき事態だと思っておりますので、これは先ほど申しましたように地域によって大変違うというのは、地域地域指導にまだまだばらつきがあるように思いますので、今回下げましたところは逆に今まで余り下げなかったところでございますが、そういう地域については特に重点的に指導をしますし、それから、金目の点についても心配がないということをよく伝達をしたいと思っております。
  124. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ、これだけ枠をふやしても、消費者の側に来れば何にも安くならないし、一体何だったのだろう、こういう率直な疑問がどんどん出ているのは御承知のとおりです。ただ、畜産物の価格を安定するという立場で振興事業団を通して、その仕組みを通すことによって畜産振興のための資金も生み出す、こういう仕組みをここで全く変えてしまうというようなことには直ちにはならぬと思います。しかし、現在のように牛肉の問題がこんなに大きく出ているのに消費者には全く無関係だということでは、やはり問題があるのではないかとも思うわけであります。  そういうようなことで、これは国内産の肉であろうと輸入であろうと同じことだと思うのですけれども、もっと流通過程についての改善だとか、そういうようなことで消費者に渡る肉の価格を安くする、そういう点についての御検討はないのですか。
  125. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 今回の交渉の中でも、日本の牛肉の価格ということがかなりいろいろお話がありまして、私どもが説明いたしておりますのは、御承知のように、特に輸入牛肉と競合をしますような乳雄の価格を一つとらえましても、昭和五十年度にこの価格安定制度ができまして以来五十八年までの間に、たった一年だけ五十年の水準を超えた。それ以外はすべて一〇〇以下で経過をしたということは、その間の卸売物価指数が一三五上がったことを考えれば、実質的に値下がりをしたんだというようなことも向こうによく話をしたわけでございます。  たくさん入れながら安くならないというお話につきましては、そもそも輸入肉自身は国産の肉よりも安い水準で現に売られているわけでございます。そういうもののボリュームがふえるということは、そういう比較的安価な肉の市場への出回り量がふえることは事実でございます。ただ問題は、そのことによって今支えております国産の牛肉があの安定価格帯を下回るようなことがあっては困る。あの安定帯の価格の中へ入って、生産者にとっては再生産が確保できるようでなければ困るということを申し上げておるわけでございまして、何か安くならない、消費者に一向関係がないというのは大変な誤解だと私は思っておるわけです。この生産者の努力のおかげで乳雄の卸売価格が五十年以来上がらないで推移したということは、そのこと自身は生産者の努力がそのまま消費者の利益につながったということでございますので、私どもは今後の運用におきましても、今の価格安定帯の中で生産者の価格を安定させることによって、そのことがまずそのまま消費者の利益になりますと同時に、放出いたします外国産の肉、特に指定店等によって売られます牛肉というのはいわば市場の普通の価格よりは割安のものでございますから、そういうものの量がふえることによって消費者も十分利益を受ける。私は、そういう意味で、今回のいろいろな交渉ごとの結果が生産者保護だけで消費者の利益に当たらないというのは、全くそういうことではなくて、消費者の利益にも十分つながるようなことが畜産振興事業団を通じます価格安定制度によって実現できると思っております。  それからもう一つ指摘の流通機構問題につきましては、何と申しましても日本の場合の生鮮食料品流通が非常に少量の品目を多頻度でいろいろとバラエティー多く買うという、日本の生鮮食料品流通の基本問題のところまでさかのぼるわけでございますが、私どもは、御承知のように例えば産地における処理だとかあるいは部分肉流通だとか、いろいろな形、それから物によりましては現在やっております生産者と生協を結ぶような直結的な流通というようなことをいろいろやっております。こういうものは決定的なところまでいっておりませんけれども一つ一つをとらえながら、そういうものもより改善合理化する必要があると思いますし、それからある程度量を伸ばしていくためにはぜひ必要なことだと思いますので、今後もそういうつもりで努力をしていきたいと思っております。
  126. 安井吉典

    ○安井委員 日豪牛肉交渉の問題に入る前の問題が大分長くなってしまいましたけれども、八二年度で切れて独自判断で枠十四万一千トンを決めて今日まで来ているわけですね。この間のアメリカとの交渉の結果、アメリカだけを優遇して豪州はそっちのけではないかというような思いがあるし、今までの豪州が持っているシェアを確保したいという希望もあるし、そういうものがこれからの交渉の中に非常に強くあらわれてくるのではないかと思われるわけであります。  今後の交渉に対しての日本側の基本姿勢というのはどういうことですか。
  127. 島村宜伸

    ○島村政府委員 豪州とは現在協議中でございますが、牛肉の輸入は国内生産の不足する部分についてグローバルベースで行うことを基本といたしまして、我が国農業の健全な発展と調和のとれた形で対処したい、そう考えております。
  128. 安井吉典

    ○安井委員 具体的に豪州の期待は一般肉をふやせということではないかと思いますが、この間アメリカと約束した高級肉の方は、アメリカだけじゃなしに日本が外から買う全体的な枠でしょう。そのことと、一般肉を特にふやしてほしいという、つまりシェアの要求ですね。それについてどう対応しますか。
  129. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘のように、アメリカと今までMTNで合意しておりますことも、実はハイクォリティーについてもグローバルなベースでということを言っております。それから、現実に入ってきておりますのはアメリカだけではございませんで、豪州その他の国もハイクォリティーに参入いたしております。比較的アメリカがその分野において得意であるということでございます。  それから、豪州のおっしゃるシェア論といいますのは、豪州が最大の供給国であることは事実でございますが、グローバルベースで競争で参入してくるというのが大原則でございますから、特定の国に国別枠を設けるのはむしろ問題があるわけでございます。したがいまして、私どもは今まで何度も交渉いたしておりますが、その間シェアを認めるというようなことを我々の方で応じたことは一度もございませんで、グローバルで定められました大きさのものに対して各国が自分の国の競争力を生かして参入をしてきていただくのが大原則かと思っておりますし、今回の場合もその点においては変わりはない。逆に言いますと、いわばハイクォリティーというのは穀物をある程度食わせた肉でございますが、一般肉と称せられます草で育てた肉につきましてもその他の国も参入の機会があるということでございます。
  130. 安井吉典

    ○安井委員 今、ハイクォリティーの牛肉の年平均六千九百トンでしたかのプラス、そういう中でアメリカにはどれぐらいというふうなお見込みなんですか。
  131. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 私どもは全体の大きさを約束するだけでございまして、具体的には競争条件の中でそのシェアといいますか、それが結果的に決まってくるということでございます。かつて、そういう約束をしましたときにもそういうことで運用いたしております。これはあくまで発注しました形でどういう条件で応じてきて、その結果としてどれだけのものが獲得されるかということでございます。
  132. 安井吉典

    ○安井委員 今まで高級牛肉の枠組みの中で、アメリカとそれから豪州とかその他いろいろな国が、今の説明の中にもあるわけですけれども、どんなようなシェアの状態になっていますか。
  133. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 今まで結果的には約九割程度のものがアメリカでございます。
  134. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにいたしましても、これから交渉が始まるわけでありますが、交渉のスケジュールはどうなりますか。
  135. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 来月の十日前後に次回の事務的な打ち合わせをすることで合意をいたしております。
  136. 安井吉典

    ○安井委員 時間もだんだん過ぎていますので、この間の日米協議の中で、残存輸入制限農産物十三品目をめぐる事務レベル協議を、四月十六日からですか、ホノルルで進めるということになっていたはずでありますが、これの進み方、それから決着がどういくかというお見通し、経済局長お見えですから、ひとつお答えください。
  137. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 ハワイで国際部長の眞木君と通商代表部の代表補ネルソンとの間で十三品目の問題について協議を行いましたが、まだ協議が完結をするに至っておりません。私どもの心組みといたしましては、来週できるだけ早い時期にまた次の協議を行いたいというふうに思っておりますが、山村・ブロック会談で合意を見ておりますように、今月中には決着をつけるようにしたいという心組みでおります。
  138. 安井吉典

    ○安井委員 その決着というのはいわゆる自由化を完全にするのだということでもないと思うのでありますが、一つ一つの品目についてどうするこうするというようなことを決めていかれるわけですか。
  139. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 十三品目の協議に臨む対処方針につきましても、あれをこうする、これをこうするということはちょっと今の段階で申し上げにくいのでありますが、議論は品目別の各論に及ぶことは当然でございます。
  140. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにいたしましても、牛肉、オレンジという大きなターゲットの陰になって、一つ一つの品目の重要さというのがどうも隠れてしまっているような気がするわけでありますが、しかし、その一つ一つの品目は、牛肉やオレンジのようなあれとは違うかもしれませんが、国内の一つ一つ地域農業の場では非常に重大なものもたくさんあるわけですね。例えば雑豆なら北海道を初め畑作の重要な地域特産物ということにもなっているわけです。そういったようなものが並んでいるわけでありますから、それぞれの処理については非常に慎重でなければならない、そう思うわけであります。  政務次官、これは政府の立場でも、余り牛肉、オレンジが大きなものですから、あとはかすんでしまっているような気がするのです。そういうそれぞれの問題についての慎重な配慮が必要だと思いますが、どうですか。
  141. 島村宜伸

    ○島村政府委員 全くお説のとおりでございまして、大変劣悪な条件下であくまで頑張っておられる農民の方々のお立場を我々はよく配慮いたしまして我々なりにもまた努力を続けていきたい、そう考えております。
  142. 安井吉典

    ○安井委員 最後に、今の農産物交渉の中で思うことは、一つのガットのルールの中での争いでありますけれども、例えばアメリカはウェーバー品目をきちっとガットのあのルールの中に埋め込んだ格好で自分たちの有利さをリザーブしているわけです。あるいはまた食肉輸入法を彼らは持っているわけです。あるいはECにおいても制限品目を持ち、課徴金制度も持っているわけです。  ですから、牛肉、オレンジで多いとか少ないとか、だれかが首相の特使で行ったとかなんとかで大騒ぎをすることも必要なんですけれども、同時に、ガットをどうするこうするというわけにはあるいはいかぬのかもしれませんが、何かそこでひとつ知恵がないのかということなんですね。例えばアメリカも食肉法を持っているのなら、日本だって食肉輸入法をつくってもいいじゃないかという論理もあるのではないかと私は思います。そうすればまた向こうは怒るでしょうけれども、しかし彼らもやっているのですから、何か今後の農産物自由化に絡む問題について新しい構想というか、知恵というか、そういうようなものを出すことも必要ではないかと思うのですが、どうですか。
  143. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  アメリカが農事調整法二十二条による輸入制限につきましてウエーバーを取得しておりますことは先生指摘のとおりでございますが、アメリカがウェーバーを取得いたしましたのは、その当時ほかの国は全部、全部と言うと正確ではございませんが、ほとんど大部分の国が貿易収支上の理由で輸入制限を認められておったような時代でございまして、そういう特殊な歴史的な環境のもとでなし得たことでございます。したがいまして、その後ほかの国がアメリカのまねをしてウェーバーを取得するということは現実問題としてなかなか容易ではないのじゃないかというふうに思っております。  それから食肉輸入法につきましては、アメリカのまねをして食肉輸入法類似の法律をつくるというのも興味あるアイデアであるというふうに思いますが、これは、現実にアメリカ自体が食肉輸入法を正式に発動して輸入制限を行った場合にガット十一条違反ということで指弾されるであろうということを恐れて、できるだけ輸出国側の自主規制によって事態を回避して、食肉輸入法の発動ということはごく短期間、一回しか前例がないわけでございまして、こういうことから見ましても、アメリカ自体が食肉輸入法の存在をガット上のアメリカの立場を強化する有効な手段であるとは必ずしも思ってないというふうに私どもは思っておるわけでございます。そうかと申しまして、確かに今回の交渉の経験をまつまでもなく、もう少し防御しやすい保護の手法ということを研究する必要があるのではないかという先生の御指摘につきましては、私どもも自覚症状は十分持っているつもりでございまして、どういうことなら適当であるかということは別といたしまして、私どもとしても研究をしてみるべき問題であるというふうに思っております。
  144. 安井吉典

    ○安井委員 アメリカも、食肉輸入法というのは問題法だというのは彼らも意識しながら議員立法でつくって、しかも豪州にちらつかせることで豪州を抑えている、そういう法律的な効果よりも政治的な効果なんですね。だから、それと同じことをやれと私は直ちに言うわけじゃありませんけれども、ひとつ今度の経験の中から、今経済局長も自覚症状をお持ちのようでありますし、私どもも、ひとつない知恵をさらに絞って対応していくべき問題ではなかろうか、そう思います。  それでは、二分残して終わります。     ―――――――――――――
  145. 阿部文男

    阿部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業の振興に関する件について、本日、日本中央競馬会理事長内村良英君を参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  147. 阿部文男

    阿部委員長 水谷弘君。
  148. 水谷弘

    水谷委員 農政一般に関する質疑の中から、本日は競馬行政について御質疑をいたします。  最初に農林省にお答えをいただきますが、昭和三十六年七月二十五日、いわゆる長沼答申が出されております。この答申の中にはいろんなことが盛られておりますが、「公営競技はその運営の実情において、社会的に好ましくない現象を惹起することが少なくないため、」と触れて、「これらの競技が公開の場で行なわれていることはより多くの弊害を防止する上において、なにがしかの効果をあげていることは否みがたい。」そこでいろいろなことが触れられております。さらに、昭和五十四年に吉国懇答申、これもまた出されております。  そこで、この趣旨と競馬行政上の変化をどうとらえておられるか、お伺いをいたします。
  149. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 この答申、二つの流れがあるわけでございますが、長沼答申の時代は、どちらかといいますとギャンブルの過熱化と申しますか、そういう中で、一種の必要悪ではございますけれども、極力そういうことが他にいろいろな悪影響を与えないようにというような御趣旨があったのではなかろうかと思います。そういうことを踏まえましていろいろと私どもやったわけでございますが、その後、吉国答申の中では、そういう過熱というような事態から、どちらかといいますと、健全な大衆娯楽というようなものもある程度必要であるし、それから国あるいは地方公共団体がそれなりに収益を上げながら、この収益を国家あるいは地方公共団体のために還元をしていく、その場合にどういうような合理的手法があろうかという意味で、いろいろな御判断があったのかと思います。  私ども、そういう両答申の流れを踏まえまして、健全な国民大衆の娯楽というものがなるべく定着をするようにということが一つのねらいでございます。もう一つは、そういうことをいたします場合に、極力公正な運営を確保して、ギャンブルの持ちます。ある意味では問題のある部分をなるべく少なくすると同時に、それによって、今度は上がりました収入といいますか、そういうものを適切に利用をしていく、そういう両方を踏まえまして現在までやってきたところでございます。
  150. 水谷弘

    水谷委員 それでは、農林省は今後中央競馬に対してどのような方向で対応されるか、お伺いいたします。
  151. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 私どもは、中央競馬、地方競馬、いずれも両方が健全に発展をしていくことが望ましいと考えております。  現在の状況を申しますと、どちらかといいますと、中央競馬の方はまだ売り上げが若干でも伸びている。しかし、これも御承知のように、例えげ入場人員が減るというような形でいろいろと問題があるわけでございますが、それはまだ顕在化してきてない、例えば売り上げが下がるというところまで来てないわけでございます。それに比しまして、地方競馬につきましては、既に売り上げ自身が頭を打ちまして、地域によっては運営自身に問題があるというところも出てきておりますので、これは中央競馬よりいわば一つ早い段階といいますか、問題が出てきているわけでございます。  中央競馬は何と申しましても大変伝統的な形で大きなレースを、しかも内容の充実しておりますレースをやっておるわけでございますので、まだそこまで問題が出てきてないのだとは思っております。しかし、これも、健全な経営をいたしますためにはいろいろと問題を解決すべき点が多うございますし、それからやはり中央競馬がある程度健全に動いていくことが日本の競馬全体をリードすることにもなろうかと思います。特に、そういう意味で、最近におきます中央競馬の運営につきましては、いろいろとレース内容をいいものにしていくということ、それからそれが地域社会にも受け入れられ、ファンにも喜ばれるようなものとなるよう指導しているところでございます。  それから、特に中央競馬につきましては、国の財政に対する寄与という形で、通常の納付のほかに、過去において二回特別納付をいたしまして国庫に寄与するということもいたしているわけでございます。
  152. 水谷弘

    水谷委員 中央競馬の場外設備、これが現在十八カ所全国にあるわけでございます。ことしの六月にオープンになる釧路場外、それから五月オープン予定の広島場外を入れるとこれが二十カ所になるわけでございますが、今後の場外施設の増設等に対する方針についてお伺いをいたします。
  153. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 私は、できることであればやはり競馬場に入場していただいて、競馬のレースそのものをごらんになって馬券も購入していただくというのが一番健全な姿だと思っておりますけれども、残念ながら最近におきましては、どちらかといいますと入場人員が下がりまして、場外の売り上げの比重が増しております。これは何と申しましても、レジャーの多様化という中で、終日競馬場にいてということだけではなかなか一般のファンの方々の希望にも沿えぬということでございますので、場外という問題は、そういう意味では、収入の確保という観点からは必要な施設だと考えております。  ただ、この場合に、何と申しましてもこの場外の設置につきましてはいろいろと問題がございます。場外につきましては、ちょっと申し落としましたが、あの答申の中にもちょっと出ておりますけれども、いわばのみ行為等不正に流れるものを正規のルートに乗せるというプラス面もあるわけでございますが、場外を設置いたします際に、やはり地域との円満な調整ということが必要でございまして、そのために我々も努力をいたしておりますけれども、あの答申の中でも、場外の設置の際には地域との密接な関係を保つように、そのための調整をしてということが書いてございます。私どもは必要な施設と思っておりますが、それの設置につきましては地域との結びつきということを十分考えてやっていくつもりでございます。
  154. 水谷弘

    水谷委員 先ほどの御答弁で、中央競馬、地方競馬を通じて、農水省としてはその振興に努める、このような答弁がございましたが、地方競馬の振興策と中央競馬の場外施設の増設、この辺のかみ合いをどのように対応されていくのか、お伺いをいたします。
  155. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 地方競馬のいろいろな今後の振興策につきましては、かつてはどちらかといいますといわば制限的と申しますか、こういうことをしては悪いといいますか、こういうことをやってはいかぬのだという意味の制限的なことが多かったわけでございますが、そういうことでは地域地域の御要望になかなかこたえられないということで、昨年来いろいろと検討いたしまして、運営改善につきましていろいろなことをやったわけでございます。開催回数の問題だとか、それから馬券と申しますか、そういうものの方式を変えるとか、いろいろ考えまして、かって制限的と目されておりましたいろいろな通達類を直しまして、各地域地域に応じたいろいろな改善策をとっていただくことをやっております。それから、やはりそういう場外の施設等につきましても、中央競馬の場合でも制限的にやっておりましたものを少し外したりしております。  今先生が御指摘なのは、中央と地方のそういうこととの絡みということだと思いますが、私ども、やはり先ほど申しました地域によってそういう調整をつけてやるというのが場外についての基本的考え方でございますので、そういうことを調整いたします段階で、これは地方競馬だけではございませんで他の公営企業との関係も出てまいりますので、そういうものを調整しながらやるという方針でございます。
  156. 水谷弘

    水谷委員 それでは、中央競馬会理事長においでいただいておりますので、小山市における場外施設の開設の問題についてお尋ねを申し上げます。  私は、現在小山市に住んでおりまして市民の一人でございまして、この問題については以前から重大な関心を持っておりました。  そこで、まず最初に、中央競馬会として現在まで対応してきた経過、それから現状はどうなっているか、この開設についての方向が現在どこまで進んでいるのか、それについてお答えをいただきたいと思います。
  157. 内村良英

    ○内村参考人 お答え申し上げます。  小山市の中央競馬の場外問題につきましては、昭和五十六年の秋に栃木県の優力企業から場外発売所誘致の話がございまして、その後昭和五十八年五月、誘致の申請が文書で正式に提出されました。これを受けまして中央競馬会といたしましては、当該誘致物件につきまして、周辺環境あるいは市場性、他種公営競技との関係等につきまして検討しておりましたところ、昭和五十八年八月に場外の設置計画地が所属する小山市の喜沢町の同意が得られましたため、競馬会としては地元との調整をさらに図りながらこの場外建設を推進したいと考えているところでございます。
  158. 水谷弘

    水谷委員 今後どのように進められようとなさっているか、お伺いをいたします。
  159. 内村良英

    ○内村参考人 まだ当該企業が建築確認書もとっておりませんので、そういった手続が済んだところで今後どう進めるかということを検討しなければならないと思っております。
  160. 水谷弘

    水谷委員 まず、小山市というこの地域に設置することが妥当であると判断されておりますか、その点をお伺いいたします。
  161. 内村良英

    ○内村参考人 私どもといたしまして、場外の建設につきましては、やはりファンがおるところでなければ場外施設をつくりましても成り立たないわけでございます。そこで、全般的な傾向として言えますことは、埼玉県には潜在的なファンが非常に多いという調べがございます。ところが私どもの調査によりますと、埼玉の大宮市あたりに場外ができると非常に売り上げが上がるという見通しもございますけれども、そうした動きは現実にございません。そこで、小山市は栃木県の中では埼玉県に近いという条件一つございます。それから、さらに栃木県自体について私どもの得ているところでは、大体、いわゆる予想紙がかなりいっているということは、そこに潜在的なファンがいるのじゃないかということと、先ほども申し上げましたけれども、他の公営競技との調整も考えなければなりません。栃木県には、宇都宮と足利に地方競馬がございます。そうした地方競馬との関係考えなければなりません。  そうしたことについても調査したわけでございますが、確かに当初は地方競馬にある程度の影響が出るかもしれないけれども、いわゆる公営競技に入ってくるファンは、まず中央競馬でそういった競馬への興味を覚えましてそれから地方に行くという傾向もないわけではないわけでございまして、そうした面から地方と中央との調整という面にも役立つのじゃないかと考えて、小山はいいのではないかというふうに判断したわけでございます。
  162. 水谷弘

    水谷委員 中央競馬会のお考えはほぼわかりました。  そこで、まず、周辺の状況という問題に入る前に、この小山の場外施設設置については、大変いろいろな意見が盛り上がっております。特に栃木県の県議会においても、これは適当ではないと意思を明確にされまして、設置は反対である。また、宇都宮市を初め各市市議会、いわば全県的な反対の声が今起きております。  そこで、先ほど、五十八年の八月に喜沢町の同意があった、どのように中央競馬会はお受けとめになっていらっしゃるようでありますが、喜沢地区の子供育成会や町内の皆さん方有志によって反対期成同盟ができておりまして、九百九十九名に上る反対署名を添えて栃木県議会、小山市議会に請願を出されております。このような事実があるわけでありますけれども、こういう事実を見ますと、五十八年八月の喜沢町の同意というのは、これは同意とは考えられないと私は判断するわけでございますが、いかがでございますか。
  163. 内村良英

    ○内村参考人 喜沢町の同意の問題でございますが、私どもの方に小山市の喜沢町会の町会長伊沢忠三郎という方から「小山ゆうえんち場外発売所(仮称)の設置について このことについて、諸般にわたり検討して参りましたが、本職としては、町内に設置されることについては同意いたしたいと存じますので、よろしくご高配下さるようお願い申し上げます。」という正式文書を受け取っているわけでございまして、私どもは町内会の同意があったというふうに考えておるわけでございます。  なお、その他、ただいま御指摘がございましたいろいろな反対の動きがあることは、私どもも承知しております。
  164. 水谷弘

    水谷委員 やはり一番重要な地域社会との調整という問題でございますので、公式な文書による御回答ですから、その回答も尊重しなければならないとは思いますが、それだけをもって地域社会の同意があり地域社会との調整がとられているという判断をするのは軽々だと思います。この点については、今後も厳しく地域社会との調整が図られているかどうかを中央競馬会としてもしっかりと調べ対応していかないと大変な問題が起きてくる、私はそのようにまず申し上げておきます。  それから、栃木県地方競馬調騎会、栃木県地方競馬きゅう務員会、栃木県馬主会からも設置反対の要望書が提出されております。中央競馬も順調に伸びているという状況ではなく、ほぼ横ばいのような状況でございます。しかし、それに比べて宇都宮また足利競馬の売り上げというのは非常に減少が激しく、昭和五十七年の全国公営競馬主催者協議会の資料によりますと、昭和五十年足利競馬の売り上げでございますけれども昭和五十年度の一日平均売上高約一億八千八十八万五千円に対して、昭和五十七年度は一億五千五百十一万一千円と、かなり落ち込んでいるわけであります。五十年に比べますと八五・六%、こういう状況になっておる。このように地方競馬の経営が悪化の一途をたどっております。そのゆえに、先ほどの反対の要望が出てくるほど関係者は将来に大きな不安を抱いているわけであります。今回の場外の設置によってそれをさらに窮地に追い込むことになるわけでありますが、これらもひとつ重大な判断対象として取り組んでいかなければならないと思いますが、この点どうお考えになっていらっしゃいますか。
  165. 内村良英

    ○内村参考人 お答え申し上げます。  私どもといたしましても地方競馬の現状はよく承知しておりますし、心配しております。と申しますのは、地方競馬、中央競馬を通じまして馬が中心になっているわけでございます。そこでいわゆる厩舎関係者と申しますか、調教師あるいは厩務員というような方々は地方競馬と中央競馬で分かれておりますけれども、馬の生産者は大部分は農民でございます。馬の生産者につきましては中央競馬も地方競馬も一体でございまして、馬をつくった生産者はいずれかに馬を売っているわけでございます。したがいまして、地方競馬が不振になりまして生産面にいろいろな影響が出てくるということになりますと、当然中央競馬にも影響が出てくるわけでございまして、私どもといたしましては地方競馬の現状についてもいろいろ心配しているわけでございます。したがいまして、場外をつくることによって地方競馬に大きな打撃を与えるというようなことはゆめゆめ考えておりませんし、またそういうことはすべきでないと思っております。  ただ、小山の問題につきまして申し上げますと、地理的に栃木県としては埼玉県に一番近い地域にあるということと、実はことしの六月に釧路で開設いたします私どもの場外施設について、中央競馬と地方競馬と共同利用するということを初めて始めるわけでございます。したがいまして、調整がつけば小山ができた場合に共同利用も考えてもいいのじゃないかと思っておりますし、それからファンが大体ダブっているのが五〇%ぐらいでございます。したがいまして、中央競馬のファンは中央競馬のファンとしているわけでございますから、それらの人たちの便宜等も考えました場合に、やはりできたらやりたいと思っております。ただ、地方競馬につきまして、私どもは中央競馬だけのことを考えればいい、地方のことは考えないのだという態度は全くとっておりませんし、一体のものとしていろいろ考えなければならぬと思っております。
  166. 水谷弘

    水谷委員 第三番目の問題として、計画が行われておりますこの地域地域性を私も地元におりますのでよく存じておりますが、大体想定される交通の流れを考えますと、国道四号、五十号というルートが一番大きな流れになると思うのですが、現状でも土曜、日曜といいますとこの四号線を中心に五十号というのは非常に交通ラッシュで、またそれに接続している狭い市道、県道等も交通が渋滞していろいろな問題を今抱えているわけで、この周辺の交通上の問題をまず一つ考えなければならないと思います。  それから次には、本当に隣接しているところに用途地域としての工業地域がございますが、周辺半径ニキロで円をかいてみますと、ほとんど住居地域であります。いわゆる住居地域でも、第一種、第二種住専にまで匹敵するようなかなり優良な分譲住宅地がその周辺に張りついております。さらにまた、小学校だけでも二校、中学校一校、高等学校一校、保育所が三カ所、私立の保育所を入れますと五カ所、病院も市立病院、市民病院等をひっくるめて四カ所等々、場外施設を開設するには周辺の環境問題に余りにも大きな問題を投げかけるような地域であるということを私は申し上げておきたいわけであります。  そういうような地域であり、また先ほども申し上げましたが、ごくわずかな自治会の代表が了解をしたということだけで地域社会の調整が行われていると見るこの考え方については、ぜひ再考をしていかなければならないと理事長に申し上げておきたいと思っております。例えば、どんな必要な公共事業であっても地域住民の納得の上に行われていかなければならない、ましてこのようないわゆる公営企業という性格のものであり、これが地域住民から大変な反対の声が上がっているとすれば、これについては慎重に対応していかなければならないと考えます。  計画の進捗状況を聞いてみましたら、建築基準法、都市計画法上の許可申請は既に出されている段階であります。その地域に用途地域上ふさわしい施設かどうかを許可を願うという申請、これだけ手続が進んでいるということになってまいりますと、この辺である程度しっかりした態度を示していきませんと、当の施設を開設なさろうとしていらっしゃる本人にも大変な迷惑がかかっていくのじゃないか、私はこのように考えるわけです。そういう意味で、理事長の明確な御答弁をいただきたいと思います。
  167. 内村良英

    ○内村参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、小山の場外計画については建築確認申請を提出したとの報告はまだ受けておりません。したがって、まだ申請はしていないようでございますので、申請が出、さらにそれが承認された時点においていろいろ考えなければならないと思っております。
  168. 水谷弘

    水谷委員 農水省政務次官がおいでですので、最後に。  今理事長に申し上げましたが、開設をなさろうとしている御本人はどんどん準備を始めていかれます。そういう段階で地域との調整はもう無理だと私は思っておりますね。その段階で農水省としてこれを承認するしないということになりますと、これまた大変な問題が僕は考えられるわけであります。  そこで、政務次官のお考えを最後にお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。
  169. 島村宜伸

    ○島村政府委員 農林水産省といたしましては、あくまで地域社会との調整を大前提にして、その過程をよく踏まえて我々の態度を決めるということを基本といたしておりますので、その点は十二分に配慮してこれからも対処したい、そう考えます。
  170. 水谷弘

    水谷委員 ありがとうございました。
  171. 阿部文男

    阿部委員長 武田一夫君。
  172. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、水産庁にお尋ねします。十五分ですから、余りくどくなく簡単にしていただけばありがたいと思います。  ことしに入りましてから北転船の操業違反が新聞をにぎわしておりますが、たまたま四月に入りまして私の宮城県の石巻の話が出まして、これは漁業交渉が始まるというときにいろいろと大きな問題を投げかけるのじゃないかと思うのでお尋ねをしておきたいのですが、ソ連水域での我が国漁船の操業違反の実態をまずちょっと簡潔に説明していただきたい。特に際立ってふえているものをひとつ示してほしいと思うのです。
  173. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 ソ連水域におきます我が国漁船の違反操業状況でございますが、ちょっと数字を申し上げますと、五十四年に百五十一隻であったものが、五十五年が百八十隻、五十六年が二百二十三隻、五十七年が三百十三隻と、ここのところ大分ふえてきております。五十八年が三百五十一隻というようなことになっております。  違反の態様でございますが、軽微なものとしましては、操業日誌の記載ミス、あるいはいろいろ通報義務があるわけでありますが、それを怠ったというようなことから、かなり質の悪いものといたしましては、区域外操業あるいは船体の表示を隠ぺいするとか、停船命令無視というようなものまであるわけであります。  その中で、どういった漁業種類、漁船の種類が違反操業の中で多いかということを見てみますと、五十八年の例をとってみますと、三百五十一件の中で北転船が百二十件でございます。次に底刺し網、はえ縄漁業が八十八件、イカ釣りが七十一件、沖合底びき網漁業が五十件、ここら辺が大どころでございます。
  174. 武田一夫

    ○武田委員 今説明いただきましたけれども、北転船の違反が五十七年から五十八年べらぼうにふえましたね。それでその実態は、例えば密漁によって違反行為を起こしているということも出てきている。今までいろいろと指導監督をしてきた立場で、どうしてこんなにふえてこれが防止できなかったかということに対して、やはりこれは国際的な信用の問題にもかかわるのじゃないか。また、そういう違反行為をしている方々は自分だけもうかっても、そのとばっちりは国民の税金で、漁業協力金でしたか、などという形で取られるということを考えると、善良な漁業者にとってはこれは耐えられない問題でありまして、これは実際、恐らくアメリカでもほかの沿岸国でもあるのじゃなかろうか。  こういうことをほっておくと、世界的な問題になってきますと、二百海里以来非常に苦労して今日まで来た日本の水産漁業が非常に攻撃的に各地からやられるのじゃないかという心配をするのです。ですから、こういうものに対する取り締まりや違反者に対する対応というのをどうしてきたのかという点、ひとつ聞きたいのですが、その点いかがですか。
  175. 渡邉文雄

    渡邉(文)政府委員 ただいまお触れになりました北転船を例にとってみますと、五十七年の違反件数三十件に対しまして五十八年が実に百二十件ということで、大変大幅な違反の増になっておるわけであります。こういった漁船の違反が、従来もあるいはこれからも各種予定されております漁業交渉にとりまして大変マイナス面を持つというのは御指摘のとおりでございます。私自身が昨年の冬、日ソ、ソ日の漁業交渉でモスクワで交渉をやりました際にも、それは北転船のことではございませんでしたが、日本の各種漁船の北洋におきます違反操業について、日本は一体協定を守る気があるのかという激しい言葉まで聞かざるを得なかったわけでございます。御指摘のように、一部の心ない者の行為が国全体の大きな国益を失うというようなことにもなりかねないわけでございますので、私どもとしましてはこれの取り締まりあるいは処分等につきましても厳しく運用いたしておるわけであります。  なぜこのような違反がふえるのかというようなお尋ねもあったかと思いますが、一般論としまして申し上げますれば、漁場の形成状況が予想に反して、行った漁場に魚がいなかったというようなことで、魚群を追って無意識のうちに区域外に入るというような場合、あるいは操業日誌の記載ミスというようなものももちろん中にはあるわけでありますが、反面、故意に、漁獲を上げるために意識して操業区域等の違反を起こすという不心得者もあるわけであります。今回の北転船の違反問題につきましても、従来になく私どもとしましては厳しい処分をいたしたわけでございます。なお、処分のみでなく、関係者を集めまして、かかる違反操業が今後絶対起こらないようにということで、再三厳しく注意を促しているところでございます。
  176. 武田一夫

    ○武田委員 その中で、禁止魚の水揚げの問題も石巻では取り上げられて、国税調査でその実態が浮き彫りにされたなどということですから、言うなればほかのところからそういうことがわかってきたということも不名誉なことですね。ところが、見てみますと、大きな漁港は厳しいものだから、小さな漁港や工業用埠頭などでそういうことを行う、非常に巧妙だ。ということは、反面悪質だということです。ですから、そういう点での監視、取り締まりというのはきちっとしておかなければいかぬじゃないかな、こういうふうに思いますので、全力を尽くしてこういうことのないようにしてほしいと思う。  またもう一つは、やはり経営者の方も大変なのは、二百海里の影響というのは随分ある。入漁料の引き上げ等による経営の圧迫もありましょう。それから禁止漁区である三角水域ですね、あの漁区の拡大ということを何とかお願いしたいということは、そういう方々が水産庁等にもお願いに来ているわけですけれども、そういう点もやはり相談といいますか、よく事情も聞いてそういうものをバックアップする体制もしておかぬといかぬのではないか、こういう面もございますので、ひとつその点の水産庁の対応を私は心から念ずるわけでございます。そういうことをひとつお願いを申し上げます。  それから、こういうことがあちこちで起こりますと、特に今回は日ソサケ・マスの交渉を心配しているのですが、何か新聞によると五月一日云々というのは無理じゃないかとかいう話がありまして、非常に心配をしているわけであります。今現地には代表の方が行っていると思うのでありますが、今後のこうした交渉等に影響のないように、誠意を持って、やはり国が責任を持って、こういうことのないようにしかと対応することを約束をしながら私は手を打っていただきたいと思うので、きょうは大臣もいませんから、この点はひとつ次官からきちっとした御答弁をちょうだいをして、国際信義を傷つけることがないような決意のほどをお示しをいただきたい、こういうふうに思います。
  177. 島村宜伸

    ○島村政府委員 御指摘のとおり、そのようなことのないように十分配慮してまいりたいと思います。
  178. 武田一夫

    ○武田委員 その答弁がソ連に聞こえて交渉がうまくいくことを期待して、時間は三分ほど前でございますが、終わります。
  179. 阿部文男

    阿部委員長 神田厚君。
  180. 神田厚

    ○神田委員 競馬行政の問題につきまして御質問を申し上げます。  中央競馬会の内村理事長さんにおいでをいただいておりますので、競馬会と農林水産省、両方に質問をいたします。  最初に、中央競馬、地方競馬の最近の開催成績はどういうふうになっておりますか。
  181. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 中央競馬につきましては、五十七年度では一兆四千百八十四億、入場人員も千十八万人でございました。五十八年になりましてから売り上げはほんの一%前後伸びておりまして、一兆四千四百一億でございます。ただ、入場人員は九百三万人ということで、対前年比で八九%ぐらいまでに落ち込んでおります。  それから地方競馬につきましては、五十七年度売り上げが七千三百二十三億でございます。入場人員が千六百七十三万人でございました。五十八年でございますが、売り上げが一割ほど落ちまして六千六百十三億、入場人員も一割以上落ちまして千四百五十二万人と、いずれも下がってきております。  何度も申しておりますけれども、中央につきましては売り上げはもうほとんど横ばいで人員が落ち込む。それから地方競馬は売り上げ、入場人員ともかなり落ち込んできておるというのが現状でございます。
  182. 神田厚

    ○神田委員 そういう中で栃木県の小山市に場外施設の設置が計画をされているということで、ただいまもほかの委員の方から質問がありましたが、この小山市に場外馬券を設置をするということについて、中央競馬会はどういう理由でもってこの話を受けとめてきたのか、その辺はいかがでございますか。
  183. 内村良英

    ○内村参考人 小山市の中央競馬会の場外売り場の設置につきましては、昭和五十六年の秋に栃木県の有力企業から場外発売所誘致の話がございまして、その後、五十八年五月に誘致の申請が文書で正式になされたわけでございます。この申請を受けました中央競馬会といたしましては、その物件につきまして、これは遊園地につくるものでございますが、周辺の環境あるいは場外売り場としての市場性、他種公営競技との関係等につきまして検討しておりましたところ、五十八年八月に場外の設置計画地が所属する小山市の喜沢町の町会から同意が得られたわけでございます。  中央競馬会といたしましては、いろいろ調べてみましたところ、小山周辺にはかなり中央競馬のファンがいる。と申しますのは、いわゆる予想師がかなり行っております。それから、それに関連いたしましてのみ行為もあるのじゃないか。そうすると、のみ行為の防止にも役立つというような点から、できれば小山につくりたいということで、目下いろいろ関係者と話をしているところでございます。
  184. 神田厚

    ○神田委員 中央競馬会が小山遊園地に場外投票発売所を設置をするという計画が明らかになった段階で、栃木県あるいは宇都宮市、そして地域住民、さらには市町村長会あるいはその他競馬関係者から猛烈な反対の陳情が行われております。  既に中央競馬会あるいは農林省の方でも御案内かと思いますが、五十九年三月二十七日に栃木県は出納長ほか数名の担当者が農林水産省並びに日本中央競馬会等を訪ねて、その反対の理由の説明をし、同時に内閣総理大臣及び衆参両院議長、自治大臣、県選出の国会議員に対しまして、郵送等の方法をもってその反対の要望をしております。また、宇都宮市は、五十九年三月二十二日に助役を初め議会の正副議長ほかの担当者をもちまして、農林水産省並びに自治省、そして日本中央競馬会、県選出国会議員に対しましてその反対の請願をしております。さらに五十九年三月二十六日に内閣総理大臣、衆参両院議長、これらにその要望書を郵送すると同時に、通産省、東京通産局、全国公営競馬主催者協議会等に陳情書、意見書の写しを郵送している、こういうことであります。  そして議会関係におきましては、三月二十六日、栃木県議会の最終日に、栃木県議会は、この小山市の場外馬券場設置反対の意見書を全会一致で採択をしております。そして三月二十一日には宇都宮市議会が同じくこの場外馬券場の設置の反対の意見書を全会一致で採択をしております。  さらに、その他の関係におきましては、栃木県市町村長会が同じく反対の決議をしております。そして、先ほど同僚議員の方からの質問にもありましたけれども、栃木県馬主会、さらには栃木県地方競馬調騎会、栃木県地方競馬きゅう務員会、これが反対の陳情書を農林水産省、日本中央競馬会、県知事、県議会、宇都宮市、足利市、小山の市長、議会議長へ陳情しております。県の市長会は、五十九年一月十八日の開催の市長会で反対の議決をしております。こういうように、全県挙げて小山市の場外馬券の発売所につきまして反対の陳情が行われているわけであります。  特に競馬関係者の反対陳情につきまして二、三申し上げますと、栃木県の地方競馬調騎会さらに栃木県の地方競馬きゅう務員会は「小山ゆう園地中央競馬場外発売所に関する陳情書」の中で、中央競馬会に対しましてこういうように言っております。   これは、中央競馬が、その収益増加のみを追  求して地方に浸触するもので、秩序と調整を失  なった弱肉強食の姿であり、遺憾にたえないと  ころであります。   いやしくも、日本中央競馬会を頂点とする日  本の競馬は世界に列する域に達しつつありま  す。真に世界に列するには品位をはじめとし、  総ての面において、格調の高さが求められるも  のと考えております。   しかるに今般の小山市への場外発売所進出計  画が強行されるとするならば、それは収益偏重  を目指した地方浸触の何ものでもなく、日本中  央競馬会が、日本競馬のリーダーたる自負をか  なぐり捨て、品位と格調に逆行するものである  といわざるを得ません。   もしこのようなことが許されるならば、中  央、地方の不信が増大し、共倒れさえ予測され  るところであります。云々ということで、非常に強い調子で中央競馬の小山の場外馬券の発売所の設置に対しまして反対をしているわけでありますが、このような反対陳情に対しまして理事長はどのようにお考えでありますか。
  185. 内村良英

    ○内村参考人 ただいま御指摘のございました陳情につきましては、私も承知しております。最後に地方競馬の関係者のお話がございました。私も、地方競馬の宇都宮の馬主会の方々と約一時間にわたって話をしたわけでございます。先ほども御答弁申し上げましたけれども、私どもは決して地方競馬をつぶそうなどとはゆめゆめ思っておりません。競馬の発展のためには中央、地方並んで努力し、発展していくことが必要だと思っております。したがいまして、宇都宮の関係者の方々とお話しいたしましたときも、基本的にその精神だ、そこで、ことしつくる釧路で、中央競馬の場外発売所について地方競馬との共同利用等もやるんだということでともどもに発展していかなければならぬというようなこともいろいろお話しいたしましたし、私どもといたしましては、決して中央の利益だけを考えて地方競馬のことを考えていないわけではございません。
  186. 神田厚

    ○神田委員 それでは、こういう場外馬券発売所の設置に関しまして県の段階で反対がある、県が正式にその反対の運動の先頭に立っている、県議会が反対決議をしている、こういうような事実は今までありますか。
  187. 内村良英

    ○内村参考人 場外発売所の設置につきまして、いろいろな意味で一番影響を受けるのは当該地域の住民の方々でございます。すなわち、車公害あるいはごみが散るとか、いろんな問題がございます。したがいまして、地域の方々が一番関心があるわけでございまして、これまで場外発売所の設置につきましてはまず地域の方々の同意が非常に大事であるということでやってきたわけでございます。したがいまして、県の段階で御指摘のございましたような反対が起こったということはこのケースが初めてでございます。
  188. 神田厚

    ○神田委員 栃木県議会の意見書は、地方財政に対する影響、さらには子供に対する悪い影響があるという二点を指摘をしております。そういう意味におきまして、私は県及び議会がこれに対しまして正式な反対を表明をしているという事実は重視をしてもらわなければならないと思っております。また、小山市議会は六月議会におきましてこの問題を取り扱うようでありますが、この小山市議会が仮に反対の意見書を採択をした場合にはどういうふうな態度をおとりになりますか。
  189. 内村良英

    ○内村参考人 御指摘のとおり、ただいままで小山市は行政単位としての、自治体としての市としては意見を表明しておりません。私どもは、地元の調整ということは非常に大事でございますから、その時点で問題を考えたいと思っております。
  190. 神田厚

    ○神田委員 小山は御案内のように人口もそんなに多くありません。場外馬券が設置されるところは、二、三の例外を除きまして大体五十万前後の大きい都市であるわけですね。そういうことを考えますと、小山の市議会がこの場外馬券所の設置反対の意見書を採択し、反対の意思をきちんと打ち出した段階におきましては、住民の意思を尊重する、地域との調整をしっかりととるという意味から、ただ単に自治会の役員の賛成があるからということでこれを押し切るということは非常に問題があるというふうに考えておりますが、この点はいかがでありますか。
  191. 内村良英

    ○内村参考人 お答え申し上げます。  そうした決議があった場合には、その時点において慎重に検討したいと思っております。
  192. 神田厚

    ○神田委員 この問題を監督する立場にあります農林水産省といたしましては、地域住民との調整を考慮する、地域社会との調整を考慮する、こういう意味から、これらの問題について、ただいま私が読み上げましたような陳情書も当然お目を通していただいていると思うのでありますが、そういう要望に対する考え方、それから地域社会との調整という問題についてどういうふうに考えておりますか。
  193. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 陳情は、私どもにいただいておりますのは私も目を通しておりますし、そのうちの何人かの方には直接お会いしてお話を聞いております。先ほどから申し上げておりますように、地域との調整をした上でこういうものをつくるというのが私どもの基本的な考え方でございますので、そういうものが整えられるかどうかが私ども判断の基準になるわけでございます。
  194. 神田厚

    ○神田委員 そういうことになりますと、小山市議会が反対の意見書を採択をし、市が反対の意思表示を明確にした場合にはどういうふうに指導なさいますか。
  195. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 私どもは、市議会とか、いろいろな形がございまして、市の形もございますし、先生指摘のように県というのは非常に異例のことでございますけれども、そういう市議会かどうかということだけで判断するわけではございませんが、やはりそういう要素も含めた上で、これならば地域との関係が調整されているかどうかということを判断の基準とするわけでございます。
  196. 神田厚

    ○神田委員 ことしの二月に菅直人議員が中央競馬会の場外勝馬投票券発売所設置に関する質問主意書を出しておりまして、その中で、許可の条件といたしまして、地元市町村の長及び議会の明確な同意を必須の条件とすべきだというような意見を述べておりますが、この点につきましてはどういうふうにお考えでありますか。
  197. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 答弁書の中でもお答えをしたわけでございますけれども市町村の長あるいは議会の同意というものを一律的に、これがあればいいし、逆に言うとこれがなければだめというような形で判断することには若干問題があるのではないか。現実に今まで私どもといたしましてはそういういろいろな形をとりました上で地元との調整がついたという判断のもとでやらせるものはやらしておりますし、それから形はどうであれやはり地元の調整がまずいという判断をいたしましたものについては進めておりませんので、私ども考えといたしますと、市町村とかあるいは議会の議決ということだけで地域の調整ということをするにはいささか問題があるのではないか。もう少し多様に考えて、しかしやりますときは明らかにその調整がついたということが判断できるような条件でやっていきたいと思っております。
  198. 神田厚

    ○神田委員 内村理事長さんにお伺いしますが、こういう形で全県的な反対運動が起こっているわけであります。こういう状況でありますから、中央競馬会といたしまして、その関係する企業との話し合い等も内々進められているようでありますが、そういうものについてはこの時点におきまして凍結をする、こういうお考えをお持ちになりませんか。いかがでありますか。
  199. 内村良英

    ○内村参考人 いろいろな問題が起こっていることは私どもも承知しておりますので、先ほども御答弁申し上げましたように、事態の推移を見ながら慎重に対処したいと思っております。
  200. 神田厚

    ○神田委員 私は、すべてこういう競馬というものがだめだという話をしているわけじゃありませんで、例えば先ほど御指摘がありましたように、環境問題にしましても、計画によりますと大体一万名程度の入場者を予定をしている。駅から大分離れておりますから、ほとんどの人が車で来るわけであります。そうでなくても国道四号線あたりは大変渋滞をしている。こういう中で一万名に及ぶ、しかも埼玉の方から大分来るだろうという予測を中央競馬会ではしているわけでありますから、四号線を下ってくるわけでありますけれども、そういうことになりますれば、今でさえ混雑する町の中の四号線、商店街等は非常に迷惑を受けるわけです。  そういうことを考えますれば、私は適地といいますか、もう少し適当なところにそういう馬券所を設置をするという方向で、これはもう少し発想の転換をして、だれにも迷惑がかからないようなところに広々としたそういう施設をつくるというようなことも含めて考えて、既存の都市の真ん中にそういう場外発売所をつくるというようなことについては考え方を変えた方がいいのではないかというように考えますが、いかがでありますか。
  201. 内村良英

    ○内村参考人 現在私どもが行っております場外売り場につきましては、都市の中にあるものが多うございまして、ファンがふえていくとともに非常に狭いという問題が起こっております。その結果いろいろな問題があって、私どもといたしましては環境の整備には大いに努力しておりますけれども、都市の中にあるものは狭くて非常に混雑するという現実がございます。  小山の場合には、遊園地の中につくるわけでございまして、非常に大きなパーキングスペースがある。ですから、ファンが車で来られましても駐車で近隣に余り御迷惑をかけるようなことはない。それから、できた場合におきましては、地域社会の環境整備については競馬会としても大いに努力したいというふうに思っておりますし、ガードマンだとか清掃員なども置きまして、町が汚れるというようなことはないようにしなければならないと思っております。
  202. 神田厚

    ○神田委員 政務次官、副大臣にお伺いをいたしますが、今私どもはこの場外馬券所設置の問題で多くの反対陳情を受けているわけであります。その反対の主な理由は、一つ地方財政に対して大変大きな影響を与える、さらには教育その他環境問題について非常に悪い影響がある、こういうようなことであります。  そこで、これを監督、許可をする場合には農林水産大臣の決裁が必要であるわけでありますが、政務次官といたしまして、この小山の場外馬券所の設置問題について、率直にどういうふうにお考えでありますか。
  203. 島村宜伸

    ○島村政府委員 農林水産省が場外馬券所の設置を承認する場合には、先ほど石川局長等からも御説明がありましたように、あくまで地元住民、地域社会との調整が十分図られているかどうか、この点を十分見きわめた上で承認か否かを決定するところでございますし、また中央競馬会に対しましてもその趣旨で指導いたしておるところでもございますので、その点は十分そういうものの調査が行き届いた上での承認ということでございますから問題はないのではないか、私はそう考えます。  また、小山場外施設の設置問題につきましても全く同様の考え方で行われるわけでございまして、農林水産省といたしましてもこれから実情等を十分調査をしたい、そう考えます。しかし、それはあくまで申請が出た段階のことでございます。
  204. 神田厚

    ○神田委員 したがいまして、地域社会との調整ということをまず第一義に考えるということになりますれば、先ほどもほかの方に御質問を申し上げましたが、小山市議会の反対の決議あるいは小山市の反対の意思の表明ということは、この問題について極めて重要な判断の材料になる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  205. 島村宜伸

    ○島村政府委員 そういうことになろうかと思います。
  206. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  207. 阿部文男

    阿部委員長 津川武一君。
  208. 津川武一

    ○津川委員 きょうは、リンゴについてとりあえず必要なことをお尋ねしたいと思います。リンゴの恒久対策については機会を改めてまた質問させていただきます。  第一の質問は、今度の豪雪でリンゴの樹休にかなりの被害を受けております。わけても矮化リンゴの樹体の損害と、矮化リンゴの根元がネズミに食われて木が全滅するという被害を受けております。救済対策についていろいろやっているようでございますが、樹体保険、共済に加入していないのが非常に多いのでございます。なぜ樹体保険に加入しないかと聞いたら、掛金が高くて仕方がない、掛けても被害を受ける機会が少ない、こういうのが皆さんの気持ちなのでございます。もう一つには、運営が民主的でなく、ある特定の人はたくさんもらって、特定の人はもらわない人がある、これがおもしろくない、こういう状態でございます。  そこで、リンゴの樹体保険をもっと進めるためにこれからどうなさるのか、このことを一つ伺います。  第二の点は、矮化と豪雪の関係でございますが、矮化がこのとおり豪雪に弱いし、ノネズミに非常に弱い。かつて秋田県の横手で減反と構造改善でやったリンゴ畑が全滅したことも覚えております。そのとき、私がこの状態での矮化がいいかと言ったことに対して、農水省は準矮化という概念を導入してみたいというふうに言っておりますが、矮化と豪雪をこれからどうするのか、技術的な面をお答え願いたいと思います。
  209. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  果樹共済、殊に樹体共済につきましてとかく農業者の間に加入意欲が乏しいということにつきましては、私ども先生指摘のようにかねて気にかかっておるところでございまして、その原因として、先ほど先生指摘のような実感が農業者の間にかなり現実の問題として存在することは御指摘のとおりだろうと思います。したがいまして、私どももそこは何とか工夫しなければなるまいというふうに思いまして、昭和五十五年に果樹共済について制度改正を行いました際、従来、農家単位で一割を超える被害でなければ共済金の支払いは受けられないという仕掛けになっておりましたものを、一割以下の損害の場合でも損害金額が一定額、この場合で言いますと十万円でございますが、それを超える場合には共済金の支払いを受けられるように改善を行ったところでございます。  今後とも、私どもとしては、果樹農家の経営安定のためにそういう制度改正の効果が農業者の皆さんに認識していただけるよう、普及定着に努めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  210. 関谷俊作

    ○関谷(俊)政府委員 矮化栽培の場合の雪害の防除対策と申しますか、回避対策の問題でございます。  これにつきましては、現在二つの試験研究を進めております。一つは、青森県の試験場に国の総合助成によりまして矮化リンゴ園の気象災害防止のための研究を、これは五十六年度から六十年度まで、まさに今進行中でございます。それからもう一つは、北陸農業試験場を中心にしまして関係の県の試験場の共同の体制によりまして、多雪地帯の耐雪性農業生産技術の確立ということを五十八年度から始めております。  こういう面で、矮化栽培には先生よく御承知のように栽培的に大変すぐれた面がありますが、一番の泣きどころがまさに雪害を受けるというところでありまして、今お話ししましたような研究の中で幾つか重点的に取り組んでいる問題を申し上げますと、例えば側枝、枝を曲げまして、この曲げることによってそういう樹形をつくりまして、これが雪害による圧力に割合強い、そういう方法でございますとか、それから、木のそばにございます雪の層をいわば切断するというか、切れ目を入れまして、それによって樹体にかかる雪の圧力を軽減するという方法、こういう点は青森県等では行政指導の中で既に若干取り入れられてはおりますけれども、まだ試験研究の面でこういうような雪害回避技術についてはもっと研究しなければならないということで、今鋭意研究を進めておるところでございます。
  211. 津川武一

    ○津川委員 樹体共済については、掛金をもっと安くすることと無事戻し的措置を強くするよう法まで改正しなければならないということを指摘して、次に進んでいきます。  リンゴの消費拡大と関連して、今回のオレンジ輸入枠拡大でリンゴの消費も影響されると心配になってまいりました。きょう、神田の市場に行ってみたら、幹部の一斉に言うことは、オレンジの輸入枠拡大は困った、ふえてくる分だけミカンやリンゴなど果物の消費が減る、こう言うのでございます。新宿の東口から出ますと、あそこに百果園という果物屋がございます。私は、時々そこへ十分ほど立ってお客さんの動きを眺めておりますが、主婦が買い物かごを下げて、リンゴ一つ百五十円、五つで七百五十円のところをじっと見てくれている。買ってくれればいいなと手に汗を握って見ていると、さにあらず、お客さんが移っていった。どこに行ったか。オレンジの皿へ。一つ百円、五個で五百円。  こんな形で、今度のオレンジの輸入枠拡大でリンゴの消費も果物全体の消費も減ると考えますが、この影響を政府はどう考えておるのか。影響ないようにすると言って約束してくれたので、影響をなくするためにどのようにするのか。この二点を答えていただけますか。
  212. 島村宜伸

    ○島村政府委員 お答えいたします。  現在、我が国の果樹農業は、ミカンがいわば生産調整の継続を余儀なくされておりますほか、五十八年産のリンゴにつきましても、百万トンを上回る生産となりましたことから価格がかなり低迷するなど、厳しい状況にあることは十分承知をいたしております。このため、今次交渉におきましてもその実情を米国側につぶさに伝えたわけでございますが、米国側の基本的な要求は、あくまで貿易は自由でなければならないという強いものであったわけであります。その意味で、今回の合意はこれを回避して新しいパッケージをつくるためやむを得ざるものであったと私たちは考えるのであります。  そこで、今回の枠拡大につきましては、前回の合意が四年間、すなわち五十五年から五十八年までで三万七千トンの増加であったわけでありますが、今回の合意は四年間、五十九年から六十二年までで四万四千トンの増加、前回の合意幅の延長線上にあって最小限にとどめたと私たちは思考するわけであります。したがって、今後とも季節枠の適切な運用とかあるいは国内生産体制の整備等を通じまして、リンゴを含めた国産果実に対する影響が最小限となるように努めてまいりたい、そう考えておるわけでございます。
  213. 津川武一

    ○津川委員 アメリカ側の言い分を少し聞かされましたけれども、そうではなくて、具体的にリンゴの消費拡大にどう乗り出すかというわけであります。皆さんのこの間通過した予算の中にミカン等需要拡大特別対策事業、こういう事業で十億円ばかり盛っております。この中にミカン等という「等」が入っております。この「等」については大蔵省とも詰めなければならないし、関係の果物のところとも相談しなければならないことは百も承知しておりますが、この「等」の中で考えておる果物はどんなものか、まだ大蔵省との折衝も済んでいないそうですし、個々には面倒でしょうけれども、ひとつ考えている状況を知らせていただきます。
  214. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 ミカン等の「等」は、ミカンのジュース、缶詰等の加工品を原則的には指しているというふうに理解をいたしておるわけでありますが、予算獲得の経緯から見まして、落葉果樹については全く排除するという趣旨にはなっていないというふうに私ども理解をいたしておるわけでございます。具体的には予算の執行段階において大蔵省ともよく相談をしよう、こういうことになっております。
  215. 津川武一

    ○津川委員 落葉果物も排除しないということなので、リンゴもこれに乗るものと確信して、後でまた役所にいろいろな陳情やお話に行ってみたいと思います。  その次は、今問題のスターキングでございますが、売れ行きが極度に悪い、売れても元が取れない、経費が取れない。弘前市農協で一箱千五百円の前渡金を農家に渡したが、精算してみますと千円になりません。そこで農家から五百円返させなければならないという状態が出てきました。農民の方たちはもらった千五百円をとっくに使い果たしてしまっています。生産者も農協も移出商も懸命にかかっているが、なかなか売れない。このままだと十五年前のように山や川に捨てることにもなりかねなくなりました。山や川に二十万箱、三十万箱あるいは五十万箱近く捨てなければならないんじゃないかという声も聞かれております。せっかくつくった農家の汗と努力の結晶を山に捨てさせるということがあってはならないと思います。  そこで、生産者も農協も県も一生懸命かかっておりますが、国からも何らかの指導なり援助なり行動が求められている現状でございます。政府はどんなぐあいに考えておりますか。
  216. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 リンゴにつきましては、この五十八年産は久方ぶりに百万トンを超えたというふうな事態になっておりまして、御指摘のように価格も大変低落をいたしております。ただ、五十八年産の場合、特に例年何らかの台風等の災害がいずれかの地域発生をいたしまして、自然の生産調整が行われておりましたものが、見るべき災害がなかったというふうな事情から特に生産量が多かったように思っているわけでございます。確かに、全国的に眺めてみますと、近年リンゴの新植が特に関東以南におきましてやや進み過ぎではないかという懸念を持っておりますので、本質的にはその植栽の方のコントロールということが一番重要なことであろうというふうに考えておるわけでございます。  この五十八年産につきましても、特に売れ行き不振で在庫を持っておるという現象が全国の各地のリンゴ産地に起こっているというわけではございませんで、青森が非常に顕著であるという事情がございますので、第一次的には県段階においてまず対策を仕組むべきものであろう、私どもはさように考えて、県にもそういう指導をいたしておるわけでございます。ごく最近に至りまして、県としても特にこのスターキングを中心といたしまして過剰分をジュースに搾って、それを調整保管いたしたい、こういう計画が上がってまいっておりますので、それを中心検討いたしておるわけでございます。御承知のようにミカンにつきましては、やや慢性的な過剰ということもございまして、加工品の調整保管事業というのを予算上も計上して実施をいたしておるわけでございますが、リンゴにつきましては先ほど申し上げましたような事態と私ども認識しておりますので、予算上これに対応するという仕組みを持ってないわけでございます。しかしながら、せっかく県の段階でいろいろ知恵を絞り、苦労いたしまして計画をまとめられた経緯もございますので、これに対して何らかのお手伝いができないかどうかということで、現在知恵を絞っておるという段階でございます。
  217. 津川武一

    ○津川委員 局長は、言葉は悪いのですが、いいことを言ってくれたというふうに思っているのです。毎年、台風とかいろいろな災害でリンゴの一定の量が市場からカットされている。このままだと山や川に捨てるという行為で市場からカットされる、これは忍びない。そこで出てきたものを加工によってカットする、つまり災害でなく加工に回す、このことに対して特別な政策を、指導を、援助を持ってもらいたいのです。生産者も農協も、リンゴを売る商人は移出商と言いますが、移出商も経済連も協議してとりあえず二万トン市場からカットする、加工に回す、こういうふうな方向で進んだのです。非常によくいってくれればいいと願ったわけです。その段階で局長には私いろいろな話をしたら、局長が、それはよかったなというふうなことも言って、それには国も一定の何らかの形での対応もなければならないと言っているのですが、どちらかといえば移出商の方の態度がはっきりしないので、この二万トンを加工に回して市場からカットするということが消えたわけです。しかし、農協も経済連もこのままにしておくわけにはいかない。そこで、最初に計画した二万トンの分で農協、経済連が受け持つ分は、それ以上のものを加工に回しているのです。  こういう形になりますので、今の指導を県と移出商に、余計持っておるのが移出商だから、大体六対四もしくは七対三で今移出商の方がリンゴを持っておるので、県を通じてこの移出商と具体的に協議していただいて、加工へ回すということをしていただきたいのです。加工に回した場合、農工連、加工関係の会社がどうするか。余分の荷物を抱えるわけです。ここのところもやはり何らかの形で手当てしていただかないと、今度は加工する方が動かない。幸いなるかなと言えばおかしいのですが、ふじの今の芽が少ないのです。したがって、来年は局長がさっき話をした災害的なものがそういう点で出てきますので、今この加工をすることはそういう意味でストック、価格調整の具体的なあれになっていきますので、県と移出商、県と加工連の方に特別な指導を、指導の一番いいのは、幾らかでもいいから呼び水なんです。この呼び水を施していく必要があると思っているわけですが、重ねて答弁を求めます。
  218. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 県段階におきましても、りんご対策協議会ということで、農協のみならず移出商も含めました協議の場があるように承知をいたしておるわけでございます。具体的な対応としてなかなか商人系の方がやりにくいという事情があるのも承知をいたしております。需給という問題からいたしますと、関係者があまねく一定割合をカットするということでなくて、例えば加工連が中心となって市場からのカットをするという場合でも、その受益する範囲は県内あまねく及ぶわけでありますから、その辺のやり方については県の御工夫というものに対して私どももこれを認めていくというつもりを持っておるわけでございます。  おっしゃいました具体的な呼び水としてどうするかという問題は、先ほど申し上げましたように今いろいろ工夫をいたしておる段階でございまして、できるだけ県の苦労が実りますようにいたしたいということでせっかく努力中でございます。
  219. 津川武一

    ○津川委員 せっかく答えてくださったのでもう一つ具体的に指摘してみますと、例のりん対協、りんご対策協議会は移出商と農協と入っているわけなんだから、実態は、その二万トンのカットが、加工が不調に終わったように、何にも決まらないところなんです。そこに何か期待しているから今度の行政がおくれてしまった。今度もりん対協を通じて政府がやればこれまた何も問題が生まれてきませんので、このことは県も一生懸命やっているから、県と移出商が直接、時によると政府が入ってこの市場からのカットをするように指導をしていただかなければ事が片づかない。このことを明確に指摘しておきます。りん対協を通じては何もできません。このことは恐らく覚えていると思います。  そこで、ことしのスターですが、完熟して、去年おととしは完熟しないものを出荷して非常にまずい思いをしたので、ことし完熟させたのです。おいしくできている。そのことの宣伝が必ずしもよくやられていない。スターばかりでなく、リンゴ全体に対する宣伝というものが非常におくれております。  例えば弘前大学の佐々木信介教授は、食塩、ナトリウムをとるから血圧が高くなる、カリをとればいいというふうなことから絡んで、リンゴを食べる食べないのかなり大規模な実験をしております。秋田でリンゴをつくって食べない人、津軽でリンゴをつくって食べる人、リンゴをずっと食べた人たちは血圧が下降的に安定している。循環器障害がぐっと少なくなっているのです。今国民挙げてがんにかからないか、心筋梗塞にならないか、脳溢血にかからないかと一億ノイローゼの時代なんです。このときに佐々木教授の論文を指摘して、挙げて宣伝する。そしてことしのスターがうまくできたということを宣伝していくならば、問題の解決がかなり早くなると思います。まだスターの宣伝に遅くありません。この点、ぜひともひとつ宣伝に乗り出していただきたいのです。  今届いたばかりの新聞を持ってきました。ここに宣伝が載っております。これも宣伝であります、全部これは。また開いてみます。ここも宣伝です。また開いてみます。これは一ページ宣伝です。また開いてみる。これも一ページ宣伝です。ここも一ページ宣伝です。また開いても、これも一ページ全部宣伝です。こういう状態が続いて、これも一ページ全部宣伝です。今度はババロア、アイスクリームの宣伝。今度はパルスイート、コーヒーの砂糖の宣伝。  私、きのうの新聞みんな見てみましたら、大きな新聞は六十社、小さな新聞を合わせると百六十。今、資本主義の世の中に私たちが住んでいる。宣伝の世の中に住んでいる。こんな中に果物の宣伝が一つもないです。一体どういうことなのか。政府も行政の県庁も、リンゴの生産者もリンゴの協同組合もリンゴの消費者も、一体不思議なのは、どうこれを考えているのか。したがって、佐々木教授のあのすばらしい論文をひっくるめて、果物、リンゴの宣伝に政府が今のところ指導に乗り出して、消費拡大に当たるべきだと思うわけであります。この中でスターキングがうまくできた宣伝をしていただければもっとよろしいのでございます。  この点の政府の見解を聞かしてもらいます。
  220. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 農産物の消費拡大のための宣伝というのは、他産業におきまして各企業がめいめいの製品についての宣伝を行っておりますのと同様に、その生産者あるいは生産者団体が直接には担当すべきものというふうに考えております。もっとも、非常に特別な事態におきまして国がその消費拡大にお手伝いをするというケースはあるわけでございまして、実際にも私どもの方で主としてミカンの果汁を中心といたしました消費宣伝の予算をいただいておるわけでございます。ただ、その場合にも大変難しいのは、国の宣伝は常にジュースがコップに入っているという悪口をよく言われるわけでございますが、ブランドを一切用いない宣伝をやらざるを得ないという悩みがあるわけでございます。消費者の方でいいますと、やはり特定のブランドと一緒に消費購買意欲というのは出てくるという傾向がございますものですから、ジュース一般の宣伝というのは大変やりにくいという悩みを持っております。  同様な意味におきまして、生果実の場合にも、リンゴ一般とかあるいは特定の品種全般というふうな宣伝というのはなかなか消費者にもなじみにくい問題でございますし、また同じ金を使ってやる場合に、国が各産地の御協力を得てやるという場合にも協力が得にくいという悩みがございます。やはり青森の場合であれば、青森のリンゴという宣伝をやった方が産地としてははるかに有効であるという意識があるわけでございます。消費者側もそういう方がより強烈なイメージを持つ、この辺が国がお手伝いできる消費宣伝の一つの限界みたいなものではないかというふうに考えておるわけでございます。  特に、ただいま話題になっておりますスターキングの場合で申しますと、ことしが値が安い、あるいは過剰になったから宣伝をするということではなくて、非常に息の長い産地の御努力というものがあって実を結ぶものというふうに考えておるわけでございます。
  221. 津川武一

    ○津川委員 資本主義の世の中だから、売らんかなの世の中だから、ぜひこれは果物の関係の団体だとか農協中央会などとも相談して、農水省が指導に乗り出していただくよう強く要求します。  最後の質問でございますが、スターがこのとおりなので、スターの木を切られております。リンゴの剪定を見てみますと、高接ぎするように剪定をしております。高接ぎの場合は高接ぎ病が出る。そこで、無菌の穂というものを急いで補給してあげなければならない。木を切って品種更新をするときに、何にやったらいいかわからなくなっている。十五年前のときにはふじとスターに品種更新すればそれでよかった。今は何に品種更新したらいいのかわからないで、リンゴの素人の私に、先生何に品種更新をやったらいいですかと聞かれる。ここいらの指針をやはり出していかなければならない段階になってきております。  この中で北斗、これがかなりの人気があるのだが、ある県で買い占めてしまっている。そんな格好で、今一本一万円なんです。これでは品種更新できっこない。この点で、高接ぎの場合の無菌の穂を急いで政府も手伝って補給すること。北斗などの穂を早急に配給するような体制をつくっていただくこと。それから、農家から何に品種更新したらいいかという点の相談を受ける体制をつくっていただかなければならない、こういったことが一つ。この見解を。  時間が来ましたので、続けてもう一つ。  品種更新すると三年、四年お金が取れない。去年、ことしとスターでいじめられている。ことしはふじが値段がよくない。一方、水田の方は四年間の冷害だ。そこで、農家の品種更新聞における減収、これが重く農家にのしかかってくるわけです。この間の何らかのお手伝いをしないと、これもなかなか進まない。  柏木町農協の組合長としばらく話をしてみたら、そんな格好で農家が借りている制度資金の元利払いが始まっている。このお金がない。農協というのは、系統資金は怖いものでしょうか。自分のお金を高い利息で出してこれを払っている。そのために、今度は農家に出す生活資金と営農資金がない。貸したくもその人たちが貸せない状態にある。貸せば取れない。こんな格好で農協も余してしまっている。こういう現状なんです。そこでこの借金対策、生活を補給するという形で、品種更新して減収になる人たちには、地元でどうしても仕事か、そうでないと出稼ぎに行く、この二つをきちんと位置つけていただかなければならぬ。  第二番目は借金のこと。農協が系統資金を返すために系統資金に元利払いして、そのかわりに自分のお金を農家に貸してやるのをしばらくとめてもらわなければならない。これが今農家を苦しめている根本です。それを出したために、今度は農家に新たな借金が出てくる。貸されなくなっていくということになりますので、この元利払いを一時延期するということが一つと、どうしても借りることができない状態になっておる人たちに特別な融資の対策を立てていただかなければならぬ。ここで青森県が一生懸命に自創資金を農民に使わせております。日本でも随分珍しいほど自創資金を出しておりますが、今そうなってくると当てになるのは自創資金。ここで自創資金の限度を五百万を八百五十万まで適用させるようにしていただかなければならない。その八百五十万の特例がなかなかできないというので、青森県は自創資金の五百万に対して三百五十万おぶせて出してやって、その利息を補給して五分になっている。地方自治体もここまでやっているので、借金対策に対して特別な措置を講じなければならないと私は思いますが、この点を聞かしていただきます。
  222. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 品種の更新の問題でございますが、リンゴにつきましては従来から全体的な需要の先取りと申しますか、嗜好の先取りと申しますか、常に新しい品種に切りかえるということによって需要を維持してきたという傾向があるわけでございまして、どういう品種を選ぶかということについては、大変激しい産地間の競争もあるわけでございます。国の段階において品種選定について画一的な指導をするというのがなかなか難しいわけでございます。御承知のように、青森で開発されましたつがるがほかの県の主要銘柄になっているというふうな傾向もあるわけでございますので、先ほど御指摘の北斗を含めまして、県においてそれぞれ地域の土壌、気象あるいは市場条件に見合ったものを選んでいくというのが適当であろうと思っております。  国の段階におきましては、無菌苗の提供のための一定の施設助成をやっておりますほか、本格的に園地整備を行う場合につきましては助成の道も開いておるわけでございます。  今御指摘のありました穂木が非常に高いという問題については、それだけ少量品種でありまして需要が殺到しているという傾向を意味しているわけでございまして、需要に見合った供給が追いかけていきますれば、価格面においては次第に落ちつきを取り戻すと考えております。  それから、金融問題につきましては担当の局長から御説明申し上げます。
  223. 森実孝郎

    森実政府委員 自創資金のうちの再建整備資金の問題について御質問がございましたので、お答えを申し上げます。  全体に公庫資金は非常に抑えてきておりますけれれども、再建整備資金はやはり実需を受けとめるという考え方から、本年度の当初枠につきましても前年対比で二十億の増枠を図っております。作物別の今までの貸付実績を見ますと、比較的果樹は低くて、むしろ比率は下がってきているというのが全国の数字でございます。県別に見ますと、青森は、シェアはそう大きく変わってないということでございます。ただ先生指摘のように、これはやはり経営の再建整備という視点で貸し付けを行うものでございますから、そういった再建整備の必要性に応じて当然地域別にも作物別にも消長があっていいものと思っておりますので、できるだけ実需を受けとめる努力をしたいと思います。  なお、八百五十万にする特認の問題でございますが、今のところ、実はこれも青森県にはまだ発動されたケースが御指摘のようにないようでございますが、最近かなり経営の実態に応じて条件を満たすものについては特認を認めておりますので、その点については現実的な要請があれば、条件に即して配慮するようにしたいと思っております。
  224. 津川武一

    ○津川委員 これで終わりますが、リンゴの消費がとにかく拡大していったのま、ふじだとかスターキング・そしてジョナゴールドとか、次々と国民の嗜好に新しいものを合わせていったからなんだ。それが今行き詰まってきてしまっておりますので、国の試験研究所でも、国民の消費の実態に合う新しい品種をつくっていってリンゴの消費を維持拡大していく、この努力を要請して、私の質問を終わります。      ――――◇―――――
  225. 阿部文男

    阿部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出、地力増進法案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十四日火曜日、午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会      ――――◇―――――