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1984-04-18 第101回国会 衆議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十八日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 上草 義輝君 理事 衛藤征士郎君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 吉浦 忠治君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    太田 誠一君       近藤 元次君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    高橋 辰夫君       月原 茂皓君    仲村 正治君       二階 俊博君    野呂田芳成君       羽田  孜君    保利 耕輔君       三池  信君   三ッ林弥太郎君       山崎平八郎君    上西 和郎君       串原 義直君    島田 琢郎君       新村 源雄君    田中 恒利君       細谷 昭雄君    安井 吉典君       駒谷  明君    斎藤  実君       武田 一夫君    水谷  弘君       神田  厚君    藤原哲太郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  山村新治郎君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         林野庁長官   秋山 智英君         林野庁次長   後藤 康夫君         水産庁長官   渡邉 文雄君  委員外出席者        人事院事務総務局        任用局企画課長  森園 幸男君        国土庁地方振興        振興課長     三上 惣平君        大蔵省主計局主        計官       涌井 洋治君        文部省社会教育局        青少年教育課長  伊藤 俊夫君        厚生省社会局更        生課長      池堂 政満君        林野庁林政部長  甕   滋君        林野庁職員部長  土屋 國夫君        林野庁指導部長  高野 國夫君        林野庁業務部長  田中 恒寿君        労働省労働基準        局労災管理課長  新村浩一郎君        労働省労働基準        局補償課長    佐藤 正人君        労働省労働基準        局安全衛生部安        全課長      加来 利一君        労働省労働基準        局安全衛生部労        働衛生課長    福渡  靖君        労働省労働基準        局賃金福祉部福        祉課長      山口 泰夫君        労働省労働基準        局賃金福祉部賃        金課長      征矢 紀臣君        自治省財政局地        方債課長     柿本 善也君        会計検査院事務        総局第四局審議        官        大本 昭夫君        農林水産委員会        調査室長     矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   鍵田忠三郎君     二階 俊博君   佐藤  隆君     近藤 元次君   田澤 吉郎君     仲村 正治君   松沢 俊昭君     島田 琢郎君   菅原喜重郎君     藤原哲太郎君 同日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     佐藤  隆君   仲村 正治君     田澤 吉郎君   二階 俊博君     鍵田忠三郎君   島田 琢郎君     松沢 俊昭君   藤原哲太郎君     菅原喜重郎君     ――――――――――――― 四月十八日  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第六四号) 同月十六日  農産物輸入自由化枠拡大阻止に関する請願  (串原義直紹介)(第二九〇五号)  農畜産物輸入規制畜産経営安定対策等に関  する請願志賀節紹介)(第二九〇六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二六号)  国有林野法の一部を改正する法律案内閣提出  第二八号)  国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する  法律案内閣提出第二七号)  地力増進法案内閣提出第四四号)  農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定  措置に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出第三三号)      ――――◇―――――
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案国有林野法の一部を改正する法律案及び国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上西和郎君。
  3. 上西和郎

    上西委員 最近、森林の持つ社会的機能効能が再認識をされまして、つい先般、日本国有鉄道が新幹線のグリーンの乗客に無料で配布をします「グッデイ」という雑誌が森林の特集をいたしました。その中の大きな見出しに、森林は人類の保護者であるというのがあります。  事ほどさように、農林水産省林野庁、そうした方々努力とは全然別なところで森林の持つ機能効能が再認識をされ、マスコミが社説で相次いで取り上げる。こういう状況の中で、極めて残念なことに我が国の国有林収支赤字だけが強調され、そのことに関するキャンペーンあるいは法改正が行われているということについては若干異議があるのでありますが、それはさておきまして、こうした新しい社会の動きに並行いたしまして、今次の林野三法に関し、私は幾つかの問題点、現実の事実を指摘をしながら、大臣長官あるいは関係皆さんから所信なり見解をいただきたいと思うのであります。  まず、基本的に最初にお尋ねしておきたいのは、分収育林制度の今次提案に関してであります。  これは、確かに山に緑をということに関して国民の総参加を求めるという意味では極めて画期的な提案であり、私、そのことをつゆいささかも疑うものではありません。ただ、先般来我が党の同僚議員初め幾多の質問がありましたように、一歩誤れば、あえて福島交通とは言いませんけれども保安林国民の疑惑の眼の中で処理をされていく、国有林がいつの間にか特定の何ということになっていきかねない危険性がありますので、本当に地域振興のために、地元皆さん方との協議体制、そうしたことに十二分の体制はとられるのかどうか、その辺に関して所信をお伺いしたいと思います。
  4. 秋山智英

    秋山政府委員 国民皆さん森林造成への、森林資源確保への要請というのは非常に高うございます。私ども国有林におきましても、森林造成への国民参加を通じまして国民方々の御理解をいただくという考え方から、今回国有林の分収育林制度を導入したわけでございます。今先生のお話がありましたとおり、国有林野事業地元との関係というのは極めて深い関係がございまして、地域振興ということは、国有林野事業はこれまでも十分留意してやってきたつもりでございますし、今後もさらにその点については充実強化していかなければならぬというふうに考えております。  そういう意味におきまして、地域振興の観点に立ちまして、私ども地元市町村に対しましてこれまでも国有林野等所在市町村有志協議会というのをつくっておりまして、この中で国有林野事業地域振興との関連につきましていろいろと御意見を伺いながらやってきておりますので、今後におきましてもこの協議会等を通じまして御理解をいただくと同時に、都道府県あるいは関係団体とも十分連絡をとりながら、この円滑な実施、地域振興に寄与するように配慮しながら進めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  5. 上西和郎

    上西委員 私は、私の出身地鹿児島県で十有余年、山に緑をという形で、その協議会の議長として今度の選挙が済むまでやってまいりました。  その間、今長官がお話しのようなことがしばしばあるのであります。後ほど御質問申し上げますが、振動病対策連絡協議会を持たれる、そうした林業振興でのいろいろなことが出てきます。そういうときに、私ちょっと不思議に思いますのは、いろいろな団体が入るのでありますが、そこで働く労働者の代表がなかなか入れてもらえないのです、その連絡協議会とかそういった調整機関の中に。鹿児島県では何回か林務部あたりお願いをしまして、オブザーバーでなら参加を認めるとか、ある委員会は書面で意見を申し出るなら認めるとか、いろいろありましたが、一歩、二歩前進をしてまいりました。  ただいまの長官お答えそれなりに結構なんでありますが、せっかくそうしたものをお持ちになりお開きになるならば、そこで働く林業労働者、あえて民間とは申し上げません、林業労働者全体の意見を代表できるような方もやはりそうした場に参加できるような御配慮をぜひお願い申し上げたい、こう考えるのでありますが、いかがでしょうか。
  6. 秋山智英

    秋山政府委員 私ども、これまでのいろいろの協議会におきましては、やはり地域皆さんの御意見を伺うということで進めてまいっておるわけでございます。昨年の森林法改正におきましての、先生御承知の間伐等対策を立てるための整備計画におきましても、地域皆さんの御意見を伺うということでいろいろの手だてをとっておりますが、今後の検討課題でもございますので、そこは研究させていただきたいと思います。
  7. 上西和郎

    上西委員 御検討いただくそうでありますが、ぜひ実現をされますように重ねて御要望申し上げておきたいと思います。  さて次に、私は随分と現場を回っております。その中で、私の感じでは、意外と国有林の中における、あるいは国有林関係方々の中に、相次いで重大災害発生しているのではないか。死亡事故を含む大変大きな災害発生しているようでありますが、林野庁の直接の職員の方のことも含めまして、関連する企業の、いわゆる民間林業労働者災害発生状況等についてまず御説明いただきたいと思うのであります。
  8. 土屋國夫

    土屋説明員 私は、直接国有林野事業に従事している者たち労働災害の問題についてお答えいたしたいと存じます。  労働安全の確保というのは、申し上げるまでもありませんけれども人命尊重立場からはもとよりでありますが、円滑な事業の運営にとって不可欠な条件でありまして、これまでも労働災害防止対策徹底に努めてきたところでございます。  昭和五十八年度の直用事業、直接行っております事業における労働災害発生件数は千五百十九件ということになっておりまして、改善計画を策定いたしました五十三年度に比べまして約六五%ということで、三五%ほど減少してまいっておるわけでございます。しかしながら、大変残念なことでありますけれども死亡災害等重大災害が依然として発生している現状でございます。今後さらに私どもとしては労働災害対策の一層の徹底を図ることとしている次第であります。  それで対策でございますけれども国有林野事業における労働災害防止対策については、次の点に重点を置いて努力をしております。  まず第一は、安全管理者を中心とした安全管理体制を活性化いたしまして、さらに安全意識の高揚を図るということに重点を置いておる次第でございます。  それから第二は、近年の災害の大半は行動災害でございまして、そういう意味では、技能訓練充実により正しい作業行動定着化を図るということを重点に考えておる次第でございます。  それから第三は、災害件数の過半を占めるいわゆる製品生産事業でございますけれども、そういう意味製品生産事業労働災害防止対策が最も重要だというふうに考えておりまして、機械等整備あるいは安全作業方法の確立といったようなことに重点を置いていることでございます。  そのほか、振動障害等職業性疾病の予防とか治療、さらには交通災害防止対策安全運転教育徹底といったようなことも含めまして、労働安全対策徹底努力しているのが現状でございます。御理解いただきたいと存じます。  以上でございます。
  9. 上西和郎

    上西委員 わかりました。  それでは、関連する民間林業労働者関係大変重大災害が多いようでありますが、特に死亡事故などについて現状を御説明いただきたいと思います。
  10. 田中恒寿

    田中説明員 私からは、国有林にかかわりのある民間事業体災害の状態につきまして御説明申し上げたいと思います。  林業労働一般重大災害が非常に多いことは、大変残念なことでございます。したがいまして、国有林野事業といたしましても、これまで立木販売時期あるいは各種事業発注の時期等をとらえまして、関係行政機関とも連絡をとりながら労働安全衛生確保には十分慎重にいろいろと御指導をいたしているところでございます。  最近の実態について申し上げますと、五十三年から五十七年までの五年間の死亡災害を申し上げますと、立木の買い受け事業体につきましては年平均二十四件でございます。次に、生産、造林、治山、林道等林業関係万般請負事業体においては死亡災害十四件、合わせて三十八件の発生を見ているところでございます。  この数字は、残念なことでございますけれども、大体横ばいと申しますか、余り減少の傾向とはなってございません。昨年度について見ますと、これまでの報告によりますと、立木の買い受け事業体で二十二件、請負事業体につきましては十六件、合わせて三十八件となっているところでございます。
  11. 上西和郎

    上西委員 大変残念だと部長はおっしゃって、かつ、一つも減っていない、こういうことを見ますと、私、本当に不思議でたまらないのであります。私、まだ新人でありますから、資料収集能力が大変低いので、わずかしか持っておりませんが、昭和五十六年度のデータを見ますと、亡くなった方が全部で三十六名。大変不思議に思いますのは、青森の局管内などでは十日間で四件死亡事故、四十日余りで結局六人死んでいる。こういう異常な事態は、私はどうしても納得できないのであります。一体林野庁は何をしているんだ。本当に災害が起きたときに責任を痛感しているのか、人の命をどう思っているのだとまで、私は言いたいのであります。名古屋営林局神岡営林署管内では、三カ月間で二人死んでいます。こういうことが放置されていて、極めて残念でありますという答弁で終わるようであれば、長官、私は林野庁責任を厳しく追及したいのであります。  そうした意味合いで、事故発生状況はわかりましたが、長官労働災害防止のために一体今どういうことを具体的になさっているのですか、そのことを少し詳しく御説明いただきたいと思うのであります。
  12. 秋山智英

    秋山政府委員 私ども国有林野関連する事業につきましては、安全に作業をするということが極めて重要でございまして、特にこれからの地域林業事業体と申しますのは、国有林民有林を通じましてやはり地域林業の担い手でございます。したがいまして、その健全な発展が望まれるわけでございまして、これまでも林野庁といたしましては、林業事業体労働災害防止につきましては、指導監督の権限を持っています関係行政機関十分連絡をとりまして指導を進めておるところでございます。  若干具体的に申し上げますと、まず営林署労働基準監督署の間におきましては、災害防止につきまして定期的に連絡協議による情報交換をするとか具体的な方策について検討することにしていますし、また請負事業体との間の労働災害連絡体制整備につきましても十分やるような指導もしております。さらに、立木処分あるいは各種事業請負をするときにおきましては、パンフレットなどもちろん直接手渡しまして労働安全対策指導を実施しておるわけでございますが、これらにつきましては今後さらに一層徹底しまして、労働災害防止により一層努めていかなければならぬと思っています。  そこで、重大災害等が多発する事業体に対する措置としましては、もちろんその原因を追及し、あるいはその態様につきまして十分調査いたしまして、場合によりましては請負契約一定期間の停止ということも含めまして適切に対処してまいりますが、これは先生指摘のとおり大変重大な問題でございますので、その面ではさらに力を入れて対処してまいりたいと考えております。
  13. 上西和郎

    上西委員 直接の国営事業ではありませんが、例えば電電公社あたりは月に一回、日を決めて、午前中半日を全部とって関連企業全員を、俗に言う下請、孫請まで全従業員を集めて、そこに公社側職員も派遣をし、安全ミーティングを毎月一回やっているのです。それでも事故はなくなりませんよ、人間のやることですから。  ところが、私見ておりますと、林野庁はそういうことを具体的にやっていないと見られてしょうがないのです。ですから、お答えは結構です。少なくとも他の国営事業が、そうした公社関係が具体的にどのような安全対策をやっているか、もっと情報を収集し、それに負けないだけの体制を、とりわけこれだけ大きな、重大災害を続発させている責任をもっと痛感をして、きめ細かな災害防止体制をぜひ強く重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。  ところで、大臣、私ちょっとお尋ねしたいのでありますが、私、職場電力会社でありますけれども民間企業であっても収支の問題は国よりもさらに厳しゅうございます。ですから、パートパートであそこは黒字だ、ここは赤字だとなる。私は九州電力でありますが、ある特定の部が大変大きな赤字を連続して出した。そうしたところが、上、社長からとは言いませんけれどもトップ層から末端の一線現場管理者あたりまで○○部は金食い虫だという議論がずっと出るようになってきた。この風潮が全社に広がった。その部に死亡事故を含む重大災害歴年続発をしたのであります。  私は大臣にあえてお尋ねしたいのでありますが、例えば年度末手当が出る。そうすると、どこどこはいいが赤字国鉄林野は、何かあると赤字国鉄林野は、今度もそうでしょう。閣僚会議が今週中にあるのか来週あるのか、すべて出てくるのは赤字国鉄林野はというマスコミの表現であり、それを肯定しているあなた方じゃありませんか。やめてほしいのです、赤字と言うのを。森林が持つ機能は、私が先月二十七日、大臣長官にお尋ねしたとおり、金銭にかえ得ないすばらしい機能を果たしている。そのことを一顧だにせずに林野庁赤字だと言う。そうしますと、家族を含めて、父ちゃん、手当どうなるの、ベースアップどうなるのとなったらどうなりますか。子供の進学を控えている、子供の就職がある、娘が嫁入りしようとしている、そういうときに家族ぐるみ、おれたち賃金どうなるんだ、手当どうなるんだという不安を与え、動揺を与えていて、災害防止ができますか。国有林内災害関連企業災害防止する最大の近道は、まずくだらない赤字論を抹消し、国有林を含む日本の山が持っている機能を全国民理解をさせる、その中で働く者に誇りを与える、誇りを持たせる、このことではないかと思います。  そのことに関して、大臣所信を承りたいと思います。
  14. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生今御指摘のように、国有林野というものが国土の保全、水資源の涵養、これらを含めて公益的部分を多く有しており、これらのPR不足も確かにあったと思います。今後はそれらについても十分PRをしていきたいと思いますし、また、職員が高い意欲を持って職務に当たることが何といっても最重要であろうと思います。これによって労働安全の確保ということができるものと思っております――このため、職員が意欲的に職務に取り組める職場づくり、いわゆる適切な人事管理や、また職員研修充実などを図ってまいるとともに、各般の労働災害防止対策徹底に努めてまいりたいと思っております。  厳しい情勢下にある国有林野ではございますが、士気の高い安全な職場づくりのために今後とも一層努めてまいるつもりでございます。
  15. 上西和郎

    上西委員 大臣お答えそれなりにわかるのです。現在の政府・自民党の姿勢の中では、それ以上出ないでしょう。しかし、厳しい林野事業とおっしゃるから問題なんですよ。林野は厳しいのが当たり前でしょう。  大臣にあえてお尋ねしますが、警察赤字ですか、黒字ですか。消防署は赤字ですか、黒字ですか。だれが議論しますか。いざというときに働いてもらえる、国民の生命と財産を守ってくれるから警察や消防の赤字黒字が議論されぬのでしょう。赤字ですか、黒字ですか、どんな大臣だってお答えできますか。国有林だって同じじゃありませんか。そういうことで、私、この前胸を張って申し上げました。男山村新治郎、今最も厳しいときに農林水産大臣、名前からして山村を守る方ですから、そうした意味合いで、大臣が、あなたがみずから先頭に立って、くだらない赤字論を消せ、やめろ、そして伸び伸びと働ける環境づくりをやりたい、こういうことを総理大臣初め閣議の中でもっともっと主張してほしいのです。そうして、何かおれたちがサボっているから、悪いことをしているから赤字になったのではないかと思わせがちなマスコミの論調なども厳しく注文をつけてほしいのです。そして、やはり山を大事にしよう、緑を大事にしていこうじゃないかということで、それこそ後世に残る名大臣として歴史に名をとどめられると思いますので、このことを強く御要望申し上げておきたいと思います。  この問題について、長官民間林業労働者災害問題についてひとつ具体的なお願いがあるのです。  それは、私も何人も体験したのですが、一番ひどかったのは、熊本営林局下屋久営林署管内民林労働者集材中にワイヤーにはねられて死にました。即死でした。そうしましたら、その御親族の方から連続六夜、私のところに電話があったのであります、遠く屋久島から。何の電話か。主人が亡くなったときに後どうなるのかということから始まって、私も少し社会保障をかじっておりますので、いろいろ御説明する。例えば役場に行って労災保険のことを聞いたら、それはいかぬかったと思ったのですけれども、さっぱりわからぬ、どうしたらいいか、厚生年金のことはどこへ行っていいかわからぬということで、きめ細かな答えを六日間やってあげて、ようやく御遺族の方は落ちつかれました。  そのとき私は思ったのです。営林署は今極力人を減らせ、赤字だとぎゅうぎゅうやって、営林署もつぶされようとしている。そういう中でありますが、やはり営林署職員方々の中に、せめて茂林労働者重大災害が起きたときには、労働者災害補償保険はこうなりますよ、厚年はこういうことがあります、国年はこういうことがあります、そうしたことについて、例えば労働基準監督署営林署の方で少しバトンタッチしてあげましょう、社会保険事務所手続をとってあげましょう、こういう窓口がない、機能を持たせてないことを私は非常に残念に思ったのです。地域林業あるいは分収育林などをお進めされようとなさるならば、やはり営林署の中に一人か二人、全部詳しくなくても、少なくとも監督署社会保険事務所に対するいわゆる口添え、手続の窓口的な機能を持つような方を設置されることが地域林業振興につながると思いますが、その辺についてはいかがお考えでしょうか。
  16. 秋山智英

    秋山政府委員 国有林関連します立木販売あるいは請負事業をなされる民間事業体に対します安全対策につきましては、私ども国有林野事業としましては、発注者としての立場から、関係機関と連携をとりながら今までも指導してまいっておるわけでございますが、御指摘労働災害発生時における事務手続につきましても、これらの立場に立ちまして、その事業発注する際にこれはまず十分に指導していかなければならないと思っております。これは進めてまいりたいと思っております。  それから、万が一不幸にして死亡災害発生しました場合の補償手続等の事務手続でございますが、これにつきましても、前もって発注の際には十分指導していくつもりでございますけれども、相談を受けるような場合には、関係機関連絡をとりながら、この事業体に対して適切な指導を進めてまいりたいと考えております。
  17. 上西和郎

    上西委員 林業労働者がたくさん働いている、いわゆる俗に言う過疎地帯の実態をおわかりいただきたいと思うのです。一家の大黒柱が年平均三十六、七人も現実に殺されているのです。それ以外でもたくさんの重大災害が起きている。大けがをして担ぎ込まれている。こういうときに、後に残された家族は一体何ができますか。そういうときに、やはり業者とかなんとか言う前に、請負させた指導監督をしている営林署が遅滞なく業者を督励し、そして手続をとり、家族を、時によっては遺族になった方々を一刻も早く安心をさせる、こういうことを営林署機能を発揮してこそ地域林業の発展につながる、こう思いますので、よりきめ細かな体制づくりを、長官、重ねて私はお願い申し上げ、一刻も早い実現を要望したいと思います。  次に、振動障害問題について少しくお尋ねをしたいのであります。  御承知のように、レイノー現象が起きる、白ろう病だ。そうして現在では、何も林業労働者だけではない、こういうことで大変幅広く発生をしておりますので、振動病、こう総称されておりますが、私、このことについて、民間林業労働者のことを主としてきょうはお尋ねをしたいと思うのでありますが、健診の実施状況は具体的にどうなっているかをまず最初にお尋ねをしたいと思うのであります。
  18. 福渡靖

    ○福渡説明員 お答えをいたします。  チェーンソーを使用する労働者の健康診断につきましては、これは基本的に行政指導の範囲の中ではございますけれども昭和四十五年度から実施を進めてきております。  内容といたしましては、雇い入れのとき、当該業務への配置がえのとき、それから定期に医師による特殊健康診断、こういうようなことを実施をしてきております。この健診を一層促進させる目的で、昭和四十五年度から林業労働災害防止協会に委託をすることによりまして、巡回方式による特殊健康診断制度を創設をいたしまして、その受診の向上に努めてきておるところでございます。  最近のこの委託巡回健診の実施状況を見てみますと、昭和五十八年度では全国で一万七千五十六人の方が受診をしておられるという状況でございます。
  19. 上西和郎

    上西委員 実施状況はわかりました。  ただ、私、先ほど申し上げましたように、十数年、鹿児島県で林政関係責任者をしておりましたので、ざっくばらんに具体的なことを申し上げますと、鹿屋の労働基準監督署長、四代ほど前の方でしたが、私、どうしてこんなに受診が進まないのかと言って署長と直談判したことがあります。定年でおやめになっておられますが、そのときにその方が一言おっしゃいました。幾ら働きかけても、最も理解がないのは林業の経営者、会社社長だ。口を酸っぱくして言っても受診に応じてくれない。悔しい、残念だとおっしゃる。そのとき、では営林署はどうしていますかと言ったら、口を閉ざして語りませんでした。黙っているところを見ると、営林署当局は非協力的ではなかったかと私は推察をするのであります。いやいや、営林署もやってくれましたというなら、返事が出たでありましょう。沈黙を守ったのは同じ横目の署長同士、他をそしってはいけない、こういうことで沈黙を守っておったと思うのでありますが、民間林業労働者の振動病健診について、林野庁、局、署に至るまで果たしてそうしたことについて積極的な働きかけを、応援協力をやっておられるのか。全国的なことはよくわかりません。私、ローカル的なことを少し申し上げて恐縮ですが、長官、いかがなんでしょうか。
  20. 秋山智英

    秋山政府委員 私ども国有林野事業の直用についての振動障害対策はもちろんでありますが、さらに国有林野事業にかかわります民間林業事業体の振動災害につきましても、これは一般林政の施策と相まちまして、国有林としましても関係行政機関と連携をとりながら努力をしておるわけでございます。  特に、具体的に若干申し上げますと、契約時におきまして、この振動障害の防止のためのチェーンソーの使用の時間規制であるとか、いろいろとその規制にかかわる問題については十分法令に基づいて遵守すべきことを徹底を図っておるわけであります。  それから、製品生産事業であるとか造林事業請負契約に当たりまして、請負契約書の中に労働安全衛生に関する諸法令及び諸通達の遵守という項目を入れまして徹底を図っておるわけであります。  それから、請負事業体に、チェーンソーを使用する場合、二時間規制のための具体的な手段方法を盛り込んだ作業計画書というものを出させまして、それの内容をよくチェックいたしまして、その内容に基づきまして指導をすると同時に、また、チェーンソーの使用状況を把握すろための報告書も出させておるわけでございます。  先ほどもちょっと触れましたが、営林署労働基準監督署の間におきましては定期的に連絡協議の場を設けまして、振動障害に関する情報の交換であるとかあるいは対策等の検討を行っておるわけでございまして、私どもはこれにつきましては徹底してやっておるつもりでございますけれども、今先生の御指摘のようなことがあるとすればこれは遺憾でございますので、指導につきましては今後とも十分徹底を図りますと同時に、関係事業体につきましても、その内容を十分理解徹底させまして、その防止を図っていくようにこれからも努めてまいりたいと思います。
  21. 上西和郎

    上西委員 長官、私はあなたがそのころ長官だったと思いませんけれども、少なくとも振動病障害の患者百名以上の方々と私は直接接触をしています。国有林の中で現に振動病にかかり、治療を受けている方のところに、私毎晩お訪ねをして話をしているのです。  それで非常に印象に残ったのは、私の営林署管内でチェーンソーの第一号の使用者は私であります。私は戦時中兵隊にとられて、復員してきて山に戻った。そして一生懸命働いて、ある日、署に呼ばれて署長みずから、君、これは我が営林署に配置されたチェーンソー第一号である。君が技能優秀であるから君にこれの使用を認める。彼は感激をし、おれは一番優秀な伐倒手だ、こういうことで喜び勇んでチェーンソーを使った結果が、無残にも今振動病患者になっているのであります。  林野庁が奨励したから、民間の業者もチェーンソーをどんどん取り入れた。言うならば間接的に、林業労働者の振動病患者は林野庁がつくったと言っても過言ではないと私は思っております。そういうことはもちろん予測できなかったのだが、結果としてはそうなっている。ところが、その振動病患者の健診その他について、必ずしも末端では十二分に対応していない、ここに問題があると思うのです。ですから、長官、現在の長官として秋山長官はその胸の痛みをやはり持ってほしいと私ぱ思うのであります。民間国有林を合わせて一万人を超える林業労働者の振動病患者の発生の大もとは、林野庁が安易にチェーンソーを大量に使用させた結果だ。このことは、長官以下林野庁あるいは農水省の皆さん方も厳しく受けとめていただきたい。  その上に立って言いますならば、労働省からお答えがありましたが、民間林業労働者の健診を林災防に一任しているなんということで果たしていいのですかと私はお尋ねしたいのであります。林災防に一任している、そして全部通知をしましたら結構ですというやり方では、振動病で泣いてい                     しる民間林業労働者の救済は永遠に不可能だと思うのであります。  あわせまして、少しきめ細かにお尋ねしますが、健診当日の賃金や交通費の補償はどうなっているのか。健診の受診料は本人負担なのか公費負担なのか。こうしたことなどについてもあわせまして、林災防一任の現状を含めて少しくお答えいただきたいと思うのです。
  22. 福渡靖

    ○福渡説明員 この振動障害関係の特殊健康診断の実施の責任は基本的には事業者にあるというふうに私どもは考えており、そのように指導してきております。  まず、健診の費用の負担がどのようになっているのかということでございますが、このようなことでございますので、本来は事業者が負担をするということになろうかと思いますが、林業の実態から見まして、作業現場が固定されていないこと、また山間僻地にあること、こういうような特殊な事情がありその履行が十分に担保できない、こういうことを考慮いたしまして、先ほど申し上げましたような委託巡回方式による健康診断を実施をしてきておるわけでございます。  この委託巡回方式による健康診断は、国が健康診断費用のうちの一部を負担をして実施をするという形で、事業者と国が負担をするという形になっております。  それから、健診当日の賃金あるいは交通費の取り扱いでございますけれども、これは振動障害の予防に資するという健康診断でございますので、行政指導に基づいて行われておるものであるという関連もございますが、その業務に労働者を従事させる上で必要なものである。これは事業者側にとってそういう立場になろうかと思います。そういうことで、事業者において当日の賃金、交通費を負担することが望ましいというふうに考えております。  それから、こういうような性格の健康診断でございますので、先ほど申し上げました昭和四十五年にチェーンソーによる振動障害の防止に対する基本的な考え方を行政指導をした際には、事業者がみずからこういう健康診断を実施をするようにという指導をしてきております。したがいまして、私どもは当初は事業者の自主的な判断に基づく健康診断の促進ということで指導をしてまいりましたけれども、この健診が十分に進まないということで、昭和四十八年度から林業労働災害防止協会に委託をする方式を取り入れたわけでございます。したがいまして、この林災防に健診を一任しているということではなくて、この林災防へ委託をしておる健診は事業者が自主的に行う健康診断を一層促進をさせるという考え方で現在も行っているところでございます。
  23. 上西和郎

    上西委員 現状については理解できます。  ただ、ここで、この委員会に御参会の皆さん方に御理解いただきたいのでありますが、振動病患者は重症になると夫婦間の性行為が不可能になるという、悲惨な病気なのであります。私は何人かの患者の方に、おたくどうかと聞くと、顔色を変えて、だれから聞きましたか、私だめですと言う。自殺が多いのも、妻が泣く泣く夫を捨てて家族を捨てて実家に帰っていくのも、すべてはそこに尽きるのであります。ところが、その振動病の本当の恐ろしさ、悲惨さが出ないために、ある週刊誌などは、休業補償をもらいながら遊んでいる振動病患者、こう書いてしまう。  ですから、私は、大臣以下並みいる皆さん方、与野党の先生方にも、ぜひ振動病患者の陥っている悲惨な現実をぴしっととらえていただいて、だから一刻も早い健診を、一日も早い認定を、そして長期にわたる治療をということを進めていただきたいと思うのです。でなければ、今お答えがありましたけれども、こうこうやっているから万全ですと言っても、仏つくって魂入れずになるのであります。振動病の恐ろしさを本当に理解をし、本当に誠意を持って事の処理に当たっていただきたい。労働省にはこのことを重ねてお願いしておきたいと思うのであります。  さて、認定の問題であります。  民間林業における最近の認定患者の発生状況をまず簡単にお尋ねをしておきます。  それを含めて、私は鹿児島の実態を少し申し上げておきたいのであります。例えば、名前を具体的に挙げますが、熊本大学医学部、久留米大学医学部、こういうところで認定を受けてきますと、鹿児島の労働基準局は霧島の労災病院で認定を受けないとだめだ、こうなるのです。  ざっくばらんに申し上げます。三、四年前に、ある患者の方が受けに行ったら、霧島労災病院のある院長、これは今おやめになって独立されておりますけれども、その患者の振動病は梅毒による原因だ、こういう診断書を出したのであります。全然本人は身に覚えがない。一家は悲嘆のどん底です。家庭は壊滅寸前までいきました。慌てて我々が、これは屋久島の人でしたから屋久島の保健所に行ってやったら、屋久島の保健所長さん、もちろんお医者さんですが、この方が検査の結果、梅毒については全く真っ白だ、だれがそんな診断をしたか。労働省の指定をした霧島労災病院の医者がやったのであります。一歩誤れば自殺寸前まで追い込む、こういう病院にしゃにむに受けに行かないと振動病の認定を認めない。これが労働省の基本的な方針なのかどうか。私はこのことについては直接タッチをしましたから、怒りを持ってお尋ねをしたいのであります。この認定の病院の指定についてはどうお考えなのか、どういう基準、通達をお出しなのか、お尋ねをしたいと思います。
  24. 佐藤正人

    佐藤説明員 お答えいたします。  まず、前段の民間林業労働者の振動障害の認定状況でございますが、過去三年度にわたる時系列に追った数字がございますので、御説明申し上げたいと思います。  一番新しいのが五十七年度末の数字でございまして、振動障害により現在療養を継続しておる数を申し上げますと、五十五年度末で全国計で五千三百七十六人、これは対前年度で申し上げますと一一・八%の増ということになっております。それから、五十六年度末でございますが、五千七百六十七人、これを対前年度で申し上げますと七・三%の増。それから五十七年度末でございますが、六千百三十二人、これは対前年度で申し上げますと六・三%の増ということで、漸増傾向にあるということが申し上げられると思います。  それから、当該年度で支給決定を行いました人数を申し上げますと、五十五年度では八百二十一人でございます。これは対前年度で申し上げますと二四%ばかり減しております。それから五十六年度でございますが、七百三十六人、これを対前年度で申し上げますと一〇・四%減しております。それから五十七年度末でございますが、六百十人でございます。対前年度一七・一%の減ということでございまして、各年度中に新規に支給決定をした件数というのは漸減傾向にあるというふうなことが申し上げられると思います。  それから、先生指摘の二点目でございますが、私ども労災保険の認定に当たりましては、通常は、行政サイドの調査と医師によります医証ということを総合的に判断いたしまして業務上外を決定するというのが建前でございます。特に、疾病の原因とか症状その他医学的な側面での調査とか検討というのは私どもの上外の決定に当たっては不可欠であるということでございまして、従来から主治医とかあるいは産業医とか局におります労災医員の医証というふうなものを求めて、総合的に判断しておるというのが実態でございます。しかしながら、先生から御指摘ございましたように、振動障害ということになりますと、私どもの方の通達の中で、特殊健康診断により療養を要する必要があるというふうに決められた方については、それにさらに医学的な調査を求める必要はない、あくまでも特殊健康診断の結果から確認をして判断して差し支えないというような通達が出ております。先生の御指摘もございましたので、まだ十分浸透しておらないという向きも確かにあるようでございますので、今後この通達による認定をするように十分な指導を行ってまいりたい、このように考えております。
  25. 上西和郎

    上西委員 ありがとうございます。その通達が厳守されることを心から御期待申し上げたいと思います。  御承知のように、振動病は現在の医学では不治の病と言ってよいでしょう。ですから、大変でありますが、温浴その他いろいろと、せめて今よりか悪くならない、こういう措置をとっているのが現状でありまして、これらについて現段階における十二分の治療を期せられるようにそれぞれ関係方面で御配慮いただくことを、この場でお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、補償の問題で少しくお尋ねしたいと思うのでありますが、休業補償の仕組み、それから今度私たち四名の我が党の国会議員団で鹿児島県に調査に行きましたが、私は前から知っておりましたけれども、ほかの選挙区から行かれた三名の議員の方々は、なぜ鹿児島県はこんなに補償額が低いのかと本当に唖然としておりました。ほかに理由があるのか、鹿児島はもともと所得が低いのか、そういったことがあるかもしれませんが、何とか、例えば生活保護の基準を上回るとか地域包括最賃を下回らないように最低保障をやるとか、こういった御工夫ができないのかということについて少しくお尋ねしたいと思います。
  26. 新村浩一郎

    新村説明員 お尋ねの休業補償給付でございますが、休業補償給付は、御存じのように、業務上の傷病のため労働することができず賃金を受けない場合に、休業四日目以後支給されるものであるわけでございます。その額は休業一日につきまして給付基礎日額の六〇%に相当する額と定められているわけでございます。  なお、休業補償給付の支給要件を満たしております方々につきましては、これに付加しまして休業特別支給金という形で給付基礎日額の二〇%の金額が支給されるわけでございますので、都合御本人の手取りといたしましては給付基礎日額の八割の金額が支給されることになっておるわけでございます。  なお、給付基礎日額につきましては、御本人の発病が確定しました段階で、その前三月間におきます支払われました賃金の総額、これは実は御本人の雇用の形態でありますとかあるいは賃金の形態によりましていろいろバリエーションがあるわけでございますけれども、原則的には三月間に支払われましたボーナス等を除きました賃金、これを総日数で割ったものを給付基礎日額といたしておるわけでございますが、最低保障額といたして二千六百八十円の金額を設定いたしているわけでございます。
  27. 上西和郎

    上西委員 二千六百八十円、この金額が妥当か否か、そのことをあえてここで議論しようとは思いません。ただ、少なくとも、働くことができない振動障害者は他の職業につくこともできない重症者が多い。ところが、その人たちが病院に行った日だけ補償されて、その他の日にちは対象になっていないという現実があります。したがって、金額の問題もありますが、その全給、いわゆる健保でいう傷病手当金のような形で通院しない日も休業補償の対象にするとか、そうしたきめ細かな配慮をやっていただかないと、生活苦にあえぐ――今度私は二十四名の実態調査をいたしましたが、休業補償を含め、奥さんのパートの収入を含め、年間総収入がその家庭で二百万を超えたのはたった一度です。百万以下が七つもある。あと、辛うじて百十万、百二十万というところ。それで果たして高校生、中学生を抱えて、たとえどんな田舎であっても生活がどうなるかは、火を見るよりも明らかであります。したがいまして、認定をし補償をするならば、そこは血の通った生活保障、休業補償になるように今後の改善を私は重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。  余り時間がありませんので少し進ませていただきます。これはお願いでございますから、要望ですから、現状の仕組みはそれで結構です。
  28. 新村浩一郎

    新村説明員 先ほど、給付基礎日額の最低保障額二千六百八十円と御説明しましたが、二千六百七十円の誤りでございましたので、訂正させていただきます。  なお、保険給付の給付の水準につきましては、現在労災保険審議会の中に労災保険基本問題懇談会というものを設置いたしまして、そこで現行制度におきますいろいろな問題点を検討いたしておるわけでございます。その一環といたしまして、お話しの休業補償給付の額につきましても検討いたしておるわけでございます。その結果、結論が得られましたならば我々としましても所要の措置を講じたいと考えております。
  29. 上西和郎

    上西委員 では、ここで話題を一転しまして、この振動病の患者の皆さん方を身体障害者として、身障者の手帳を交付することにより、厚生省が持っている身障者に対するいろいろな福祉の恩典等を適用させる、このことについてはどうも反応が鈍く、あれだけ弱っているのに身障者の基準の中に入っていない、こういう現実をお見受けするのであります。  この辺に関して、見解と現状お答えいただきたいと思います。
  30. 池堂政満

    池堂説明員 お答えいたします。  今先生がお尋ねの件でございますが、あるいは既に御存じかと思いますけれども、身体障害者福祉法におきましては、法別表に掲げます身体上の障害がある方々に対しまして手帳を交付しているという実態でございます。そこで法別表でございますが、これにつきましては、永続する身体上の障害があって、かつまた日常生活活動能力に著しい制限がある者、こういう方々を対象にしております。したがいまして、具体的には肢体不自由それから視覚障害あるいは聴覚障害等につきましてそれぞれ定めているところであります。  今先生が御指摘になりました振動障害の方々を一律に身体障害者福祉法の対象にできないかという面につきましては、私ども伺うところによりますと、振動障害であっても個々にその身体上の障害ということについて、これは異なるという面があるわけでございます。したがいまして、振動障害をもって一律に身体障害者福祉法の対象にするということは難しいのではないか、かように考えております。  ただ、現在私どもは、身体障害者福祉法に定める法別表の障害の程度に該当する方であってまだ身体障害者福祉法に基づく手帳を受けておられない方々、こういう方々につきましては、申請があれば積極的に身体障害者手帳を交付し、それぞれの対応を図っていくという考えでございます。
  31. 上西和郎

    上西委員 現状はわかりました。  私は、厚生省並びに林野庁長官お願いをしたいのであります。ちょっと専門外のことでありますが、厚生省、おわかりいただけると思う。  IQ、知能指数の測定をした結果、その区分によって療育手帳はA1、A2、B1、B2と四ランク出ますね。それと同じように、振動病患者も症度がⅠ、Ⅱ、Ⅲと分かれていきますね。これについて、知能指数によって療育手帳の区分を設けたと同じように、振動病の患者もその症度の区分によって身体障害の等級を決めて身障者手帳を交付する、こういうことを具体的に林野庁から、おたくも中に三千数百名抱えているわけだから、そうした方々を救済する方法を林野庁あるいは山村大臣が厚生省に働きかける、厚生省もそれにきめ細かに対応する、こういうことをこの場でお願いを申し上げておきたいと思うのであります。  この民間林業労働者災害あるいは振動病問題を含めて、大臣にここでお尋ねをしておきたいと思うのであります。  それは、民間林業労働者にこれ以上重大な災害発生させてはならぬ。今お答えがあったように、振動病患者はどんどん出てきているわけですね。これは新規発生なのか、わからぬでおったのを改めて掘り起こしたのかは別として、現にいることは事実であります。これ以上この悲惨な振動病患者をふやしてはならない。そのことがまたひいては災害を減らし、振動病患者を予防していく。このことが大きな意味日本林業振興し、山に緑をということが守られていくことじゃないでしょうか。  そうしたことに関し、大臣としてはどのような見解、所信をお持ちなのか、ここで総括的にお答えいただきたいと思うのであります。
  32. 山村新治郎

    山村国務大臣 振動障害の防止ということは、我が国林業振興の上からも重要なことであると認識いたしております。このような観点に立ちまして、今後とも関係省庁と連絡を密にしながら、各種の振動障害防止対策の一層の推進に力を入れてまいりたいというぐあいに考えております。
  33. 上西和郎

    上西委員 大変力強いお答えでありますが、私は現実をきちっと押さえて、大臣はもちろん長官にぜひお願いをしておきたいのは、例えば国有林の山の中にちょっと入っていきます。そうすると、請負方々が働いている。見ると、真夏だと全部ヘルメットを脱いでしまっている。ヘルメットを外しているんですよ。もちろん営林署の方はだれもいない。ヘルメットを外すことがどんな災害につながるかということがわかっていてもついやってしまう。こういうことがやはり現実の姿としてあるわけですね。  だから、チェーンソーの一日二時間規制だって、果たしてどれだけ守られているのか、やはり疑問に思います。そうしたことについて、よりきめ細かな、そして本当にだれでも納得でき、守られるような予防対策ということについてぜひ御苦心をいただきたい、このことを最後にお願い申し上げておきたいと思います。  ここでちょっと話が変わりますけれども職員採用の問題についてお尋ねをしたいのであります。  人事院が林業関係で初級採用をした。ところが、採用予定者と著しく差がある。全国のトータルでいきますと、今年四月一日、ぎりぎり半分しか採用していない。この現実について、なぜこういう結果が生まれたのか、お答えいただきたいと思います。
  34. 秋山智英

    秋山政府委員 林野庁におきます林業初級職の採用についてでございますが、これは先生も御承知のとおり、人事院の採用候補者名簿に記載された中から選考することとしておるわけでございまして、従来からも必ずしも記載者全員が採用になっているわけじゃございませんが、今年度は名簿に記載されながら採用にならなかった者の数が例年より多い結果になっております。  本年度の新規採用につきましては、年度の途中におきまして、林政審議会からも新規採用の現採抑制を求められておりますし、またその後の検討過程におきまして、国有林野事業の経営改善におきましての要員規模の縮減が特に重要な課題ということで位置づけられた関係もございまして、抑制幅が大きくなったわけであります。採用希望者の期待に十分沿えなかった面はございます。これは、国有林野事業の厳しい経営事情を反映するものとして御理解を賜りたいわけでございます。  今後の問題としましては、当分の間、新規採用につきましてはやはり厳しい状況が続くものと考えられますが、私どもは、今後将来に向けまして国有林野事業を維持発展させるために必要な採用者数につきましては確保してまいりたい、かように考克ておるところでございます。
  35. 上西和郎

    上西委員 私、今長官お答えになった事実を否定しようとは思いません。ただ、少なくとも人事院の採用予定者数に入った二百九十六名中、本年は百四十七名しか採用していない。昨年は三百八名中二百十八名採用している。こういうことが、現実にその採用予定者名簿に載せられた家庭にどういう悲劇を起こしているかをお考えいただきたいと思うのです。  尾頭つきでお祝いをした。ああこれで営林署に入れる、ほかから採用が来ても、いやうちは営林署にやるから、こういうことでみんなキャンセルをしておったら奈落の底にたたき落とされる。だれを恨むか。日本政府であります。人事院を恨む。林野庁を恨む。このことが、ローカルであっても全国津々浦々に現象として出てくる。このことに関しては、大臣、あなたも道義的責任をお考えいただきたいと思う。そして、せっかく林業労働者として頑張ろうとした青年の希望を無残に打ち砕いた、このことについて厳しく反省をしながら、二度と再びこういうことが起きないように、また、ことし不幸にして積み残した方々を何らかの形で救済することについて具体的な対策をお立てになることを、この場をかりて私は強くお願いをいたしたいと思うのであります。  私、自分自身片田舎におりますから、公務員試験に通ってどんなにうれしいかということは、痛いほどわかるのであります。とりわけ熊本営林局管内がひどうございます。四十九名中二十一名。二十八名も採用を取りやめた。これは何か九州を目のかたきにしたのか。林野庁長官、自分が局長をやったところだけ採ったのかとまで言いたい。局によって物すごいアンバランスがある。何か林野庁の中でえこひいきをしたのじゃないかとまで思いたくなるのですよ、この数字を見ますと。ですから、恨みは深し林野庁。人事院一緒であります。こういうことが今後起きないように、将来の林業振興のために、この若人たちの希望の芽をそれこそ消すようなことのないように、私は心から重ねて強くお願いを申し上げ、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  36. 阿部文男

    阿部委員長 神田厚君。
  37. 神田厚

    ○神田委員 林野三法に関連をいたしまして、林業白書、五十八年度も出されましたので、その関係で御質問をさせていただきます。  まず、我が国の人工林面積は九百九十万ヘクタール、全森林面積の三九%を占めるに至っております。そのうち、三十五年生以下の保育、間伐を必要とする生育途上のものが全体の八八%を占めている状況であります。  そこで、林業経営費の増高によりまして森林所有者の経営意欲が著しく減退をしている、こういう状況の中で健全な森林の育成が一体できるのかどうか、その点につきましてどういうふうにお考えになりますか。
  38. 秋山智英

    秋山政府委員 我が国の森林林業の現況を見ますと、木材需要の低迷あるいは林業経営諸経費の増高ということで、林業生産活動が大変停滞しておるわけでございます。また、木材関連産業も深刻な状況にあるわけでございまして、これが対策が大変重要になっておるわけであります。  また一方におきましては、この森林の持っております各種の機能の高度発揮に対します国民的要請も高いわけでございまして、そのためには、私ども、何と申しましてもやはり造林、林道というふうな林業生産基盤の整備、それから林業地域の活性化という問題が非常に大事でございます。したがいまして、そういう問題に積極的に取り組むと同時に、保安林機能強化、治山事業の積極的な推進というような国土保全対策にも意を用いながら、さらには森林造成の結果として生産されます木材の有効な利活用が必要でございますので、木材産業の体制整備あるいは木材需要の増進という問題については、これまでもやってまいりましたが、さらに一層これらの問題を中心としまして林業振興林業地域の活性化、さらには森林資源の維持造成に努めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  39. 神田厚

    ○神田委員 特に、私あるいは公有林、私有公有そのどちらにおきましても、緊急に初回間伐を必要とする森林面積は約百九十万ヘクタールと見込まれているわけでありますが、間伐の実施は年間二十数万ヘクタールであります。  間伐がおくれる原因は一体どういうことなのか、そしてそれについてこれから先どういうふうな対応をとろうとしているのか、その辺のお答えをいただきたいと思います。
  40. 秋山智英

    秋山政府委員 ただいま先生お話ございましたように、初回間伐を必要とする、緊急にしなければならない森林面積は約百九十万ヘクタールあるわけでございますが、これらの間伐がおくれています原因としましては、まず第一は林道、作業道等の基盤整備がまだ十分でないというのが一点でございます。  それから第二点として、先ほどもちょっと触れましたが、木材価格の低迷あるいは間伐材の需要不振、間伐経費の増高というようなことから、やはり間伐材の採算性が低いために間伐意欲が低下をしているということがございます。  それからもう一点、戦後、拡大造林が積極的になされたわけでございますが、農家、林家の方々は初めて造林をした方々でございまして、間伐に関しましては未経験で知識が乏しい。したがいまして、これらのことがやはりおくれている原因と思います。  それからもう一つは、小径材の新しい利用開発に鋭意努力しておりますが、これはまだ十分でなく、また流通加工体制につきましても鋭意努力していますが、まだこれが十分でないというようなことがその原因かと思います。  そこで、今後私どもこれを進めるための対策としていろいろ手を打っておるわけでございます。間伐促進総合対策であるとかあるいは森林総合整備事業、さらには間伐林道の作設というようないろいろな方法を講じてきているわけでございますが、さらに五十九年におきましては林業地域活性化総合対策事業も進めることによりまして、各種の対策関連を持ちながら総合的に間伐促進に寄与し得るようにひとつ進めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  41. 神田厚

    ○神田委員 また、間伐材のうち全体の四七%に当たります百五十万立方メーターが未利用のまま林内に放置をされている、こういう状況でありますが、資源の有効利用の観点から非常に問題があると思っております。これらについての利用促進の対策はどういうふうにおとりになりますか。
  42. 秋山智英

    秋山政府委員 間伐材の利用促進につきまして、これまでも鋭意努力しているわけでございますが、それらを若干具体的に申し上げますと、まず第一に、間伐材の利用技術、新製品の開発という問題が一つございます。それからもう一つは、間伐材を生産して供給するということになりますと、やはり間伐材の需要情報を的確に押さえなければならぬわけでございますが、需要情報銀行の設置ということを進めておりますし、また流通加工施設の設置、それから国産材産業振興資金制度におきますところの間伐等の促進資金の創設というようなことを今までも具体的に進めておるわけでございまして、やはり地域の実態に合った形で需要開発あるいは流通加工体制整備をしてきたところでございますけれども、最近いろいろと、セブンバイセブンと申しますか、間伐材を中心とした住宅部材の開発の問題であるとか、あるいは単板の積層材、普通LVLと呼んでおりますが、そういうものの開発、集成材の開発、さらには丸太のままで畜舎、牧さく、ログハウスとかいうようなもの、また原材料としましては畳床とか、あるいはペレットのようなああいう固型燃料への利用とか、いろいろそういうふうな需要開発を進めております。  これらにつきまして、さらに今後積極的にこれを拡大強化しまして一層の利用促進に努めてまいりたい、かように考えているところであります。
  43. 神田厚

    ○神田委員 次に、天然林の育成整備につきまして、具体的にどういう対策をおとりになりますか。
  44. 秋山智英

    秋山政府委員 私ども森林の育成整備に当たりましては、地域の立地条件に十分合った形で天然力の活用を図ることが非常に重要だというふうな考え方を持っておるわけでございまして、私どもが現在森林資源につきましての整備育成の基本計画でございます「森林資源に関する基本計画」におきましても、そういう考え方をベースにいたしまして、将来の志向すべき森林資源の状態としましては、人工林と天然林がほぼ半々程度になるような長期目標を立てまして、鋭意その内容の充実努力しているわけでございます。  具体的にこれにつきまして施策として考えておりますのは、造林の補助事業におきましては、まず自然条件から見まして稚樹あるいは幼樹というものが発生が非常に活発、良好なところにつきましては天然下種更新という形で天然林施業を入れておりますし、またシイタケの原木あるいは広葉樹の用材生産をするものにつきましては、広葉樹林改良事業ということで補助事業の対象にしておるわけでございます。  また五十四年からは、先生御承知の森林総合整備事業を創設しておるわけでございますが、その中で天然林施業の実質補助率の引き上げも図っておるわけでございまして、私どもやはりこの天然林施業というものを相当重視してやっておるわけでございます。  五十九年度から、さらに新たに複層林造成パイロット事業というものを導入しておりますが、これらもやはり天然林施業と十分関係をとりながらその育成に努力しようという考え方でございますので、これら申し上げました諸施策を効果的に活用いたしまして、天然林の育成整備に努めてまいりたい、かように考えておるところであります。
  45. 神田厚

    ○神田委員 林業就業者の問題でありますが、五十七年で五十五歳以上の全就業者数に対する構成比は三一%、四十歳以上では八四%を占める。つまり、高齢化が著しく進んでいるわけであります。こうした状況の中にありまして、林業への新規の就業者は、ここのところ数年、毎年四百人程度、こういうことで極めて少ないわけであります。  そこで、林業事業体の育成をどういうふうに今後つくり上げていくのか、その点はいかがですか。
  46. 秋山智英

    秋山政府委員 林業振興を図る上で、林業事業体の育成とあわせまして林業の担い手を確保育成することは極めて重要でございまして、私どもこれまでもこの林業振興施策を通じまして、林業に従事する方々の就業機会の増大を図るということが何と申しましても基本になるわけでございます。それを基本といたしまして、定住要件を整備するための定住化促進対策であるとかあるいは就労条件の改善対策とかあるいは若年労働者確保ということでグリーンマイスターの制度を導入するとか、いろいろ進めておるわけでございます。  特に本年からは、新たにこれらの施策の上に林業地域活性化の総合対策事業ということで、林業地域の就業機会を確保しましてその活性化を図っていこうという新しい施策、さらには林業事業体の経営基盤の強化、あるいは雇用体制整備を図るための林業事業体雇用体制整備振興対策事業というふうな新しい事業も導入しまして、その対策をさらに一層充実してまいりたい、かように考えておるところであります。
  47. 神田厚

    ○神田委員 高齢化が進んでいるわけでありますから、労働の強度、労働が大変激しいというようなものの軽減を図っていかなければならないわけでありますが、同時に、これは生産性の問題と関連がありますから、省力化、機械化の問題についてはどういうふうにお考えになりますか。
  48. 高野國夫

    ○高野説明員 お答えいたします。  林業就業者の高齢化傾向などに対処いたしまして、林業生産性の維持向上と労働安全の確保を図りますためには、適切な林業機械の開発改良とその普及が大変重要であるという考えを持っておりまして、林野庁といたしましては、そのために、先導的な機械でございますとか、あるいは緊急を要する機械の開発改良等につきまして積極的に取り組んできたところでございます。これまで低振動のチェーンソーを初め間伐木等の搬出に適した小型の林内作業車でございますとか集材ウインチ、こういったものを開発してきているところでございます。また、林業機械技術者に対します研修等の実施を通じまして林業技術の向上に努めておりますほか、林業構造改善事業等各種施策の活用によりまして、地域における林業機械の積極的な導入と機械化の推進をあわせて図っているところでございます。  今後とも、林業機械の開発改良とその普及につきましては、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  49. 神田厚

    ○神田委員 労働条件の改善については、どういうふうに考えておられますか。
  50. 秋山智英

    秋山政府委員 労働力の確保を図る上におきまして労働条件の改善を図ることはもちろん重要でございまして、私ども、先ほどもちょっと申し上げました各種の林業振興施策を通じまして、林業に従事する方々の雇用機会を増大し、就労の安定を図るということを進めてきておるわけでございます。特に、雇用関係を明確化するということなど、就労条件の改善の問題、労働安全衛生確保の問題について取り組んできているわけでございますが、五十九年におきましては、林業の持っています特殊事情と申しますか、林業作業の間断性であるとか零細性であるとか、いろいろな問題がございます。そこで、これらの問題も踏まえた形でいろいろな対策を練らなければならぬ、こういうことで、さっきちょっと申し上げました林業事業体の雇用体制整備振興対策事業を実施しまして、これらの問題についてはより一層改善を図れるように進めてまいりたいと考えておるところであります。
  51. 神田厚

    ○神田委員 労働災害の撲滅など、労働安全衛生確保はどういうふうに処置をしていくおつもりでありますか。
  52. 秋山智英

    秋山政府委員 労働安全衛生確保の問題は林業政策に極めて重要な問題でございまして、私ども労働安全衛生管理改善事業あるいは振動障害の対策促進事業というものを中心といたしまして、これまでも林業労働災害防止に努めてまいったところでございます。それらの努力の成果もだんだんと出てまいっておりまして、振動障害新規認定者の減少であるとかあるいは労働災害の減少、さらには林業事業体安全意識がだんだん高まってきているというようなそれなりの成果は上げっっあるわけでございますが、今後、さらに林業労働災害防止の一層の徹底を図るということが非常に大事なことでございますので、事業主に対しまして十分理解をさせる。また、林業事業体の経営基盤を強化する、確立するということがやはり労働災害防止の基本でございますので、そういうことに十分対処しながら、五十九年度では、先ほど触れました雇用体制整備振興対策等、この問題につきましてはさらに一層万全を期してまいりたいと思っております。  それから、これに関連しまして考えますのは、やはり雇用をよくするということと同時に、地域皆さんの御理解をいただくことも大事でございますので、あわせてこの振興事業対策の一環として十分対処してまいりたいと思っております。
  53. 神田厚

    ○神田委員 次に、林道問題であります。  森林施業及び林業経営にとりまして重要な基盤であります林道の開設量は、五十七年度は三千百七十八キロメートルで、全国森林計画の年平均開設計画量の五五%しか達成できてない、こういう状況であります。このままでいきますと、適正な森林の管理に支障を来すのではないか、こういう心配をされておりますが、林道開設を促進するためにどう対処なされますか。
  54. 秋山智英

    秋山政府委員 林道の整備状況は、「森林資源に関する基本計画」で目標としている開設量に対しましては四割程度でございます。また、五十七年度の実績結果は、全国森林計画で計画している年平均計画量の五五%となっておるわけでございますが、何と申しましても、林道は適正な森林資源確保する上におきまして基幹となる施設でございますし、地域林業の上からも大変大きな役割を担うものでございますので、私ども、非常に国家財政厳しい中でございますけれども、この林道の計画的また効率的な整備に努めているところであります。  特に、五十八年度から創設いたしました国産材の安定供給基地形成を目指しております林道網重点総合整備事業であるとか、あるいは間伐が現在非常に大きな問題になっているわけでございますが、間伐を積極的に進めるための間伐林道であるとか、こういうふうないろいろの施策をさらに進めてまいりまして、林道整備の効果が早期に発現し得るようにひとつ進めてまいりたい、かように考えているところであります。
  55. 神田厚

    ○神田委員 林道を骨格として作業道などと一体となりました林内路網、これを体系的に整備することが大変重要だという指摘がありますが、この点はどういうふうにお考えでありますか。
  56. 秋山智英

    秋山政府委員 森林資源の適正化を図り、また林産物の合理的、効率的な搬出を図るということになりますと、これは林道とともにやはり作業道も十分連携をとって進めていかなければならぬわけでございまして、特に作業道につきましては、造林、保育、さらには間伐というふうな事業をする上におきまして極めて大きな役割を果たしているわけでございまして、私ども森林総合整備事業の中におきましても、あるいは間伐促進総合対策事業におきましても、林道と関連を持った作業道につきまして整備充実を図っているわけでございます。  やはり今後も林道と作業道というのは十分連携をとりながら、一体的にその整備ができるような方法にさらに積極的に取り組んで森林施業の確保に努めてまいりたい、かように考えているところであります。
  57. 神田厚

    ○神田委員 林道網の整備は、森林林業の管理、経営にとっても大変重要でありますが、同時に、山村振興あるいは国土を守るという意味でも極めて重要な問題だと思っておりますが、その点どうでありますか。
  58. 秋山智英

    秋山政府委員 林道と申しますのは、先生今御指摘のとおり、林業の合理的な経営と同時に、森林の管理にとりまして大変基幹的な施設でございます。したがいまして、これにつきましては、これからの森林施業をする上にも大事でございますので、山村振興あるいは生活環境改善と、いろいろそういう面の機能も持っておりますので、そういうことにも十分配慮しながら総合的な整備を進めていくことが大事であるというように考えております。
  59. 神田厚

    ○神田委員 市町村の役割と森林組合の役割の問題でありますが、地域林業の形成、推進にとりまして、地域全体の生産活動を相互に関連づけて活発化を図る、こういう意味におきまして、オルガナイザーとして行政上の企画調整機能を有する市町村に対する期待、あるいは活動の中核的な担い手としての森林組合の果たす役割、これが非常に重要になってきております。  ところで、この市町村の役割は一体どういうところに求めるのか、また政府としてこれからどういう指導をしていくのか、その点をお伺いいたします。
  60. 秋山智英

    秋山政府委員 林業をこれから積極的に進めていくに当たりましては、林業をめぐる情勢が非常に厳しい中でございまして、特に山村地域におきましての市町村の果たす役割というのは極めて大きいと私は理解しておるわけでございます。私ども林業振興への取り組みの中心に市町村を位置づけておるわけでございまして、地域林業あるいは山村振興という場合におきましても、やはり市町村を中心といたしましていろいろの施策を総合的に進めてまいらなければならぬと考えておるわけでございます。  地域林業振興ということになりますと、川上の森林造成生産地帯、それから川下の木材の流通加工地帯も含めまして、川上から川下までを包含する地域林業振興という面からそれらのマスタープランを作成しまして、これに基づきましていろいろの林業施策を推進する、そういう考え方から、現在地域林業整備育成対策事業ということを実施しておりますが、これもやはり市町村が中心でございます。したがいまして、今後これらの事業を通じまして地域林業整備育成が図られますように市町村を十分指導してまいりたい、かように考えているところであります。
  61. 神田厚

    ○神田委員 それでは、森林組合の今後果たすべき役割、これはどういうことなのか、また、その推進のために政府はどういうふうな指導をしていくのか、この点いかがでありますか。
  62. 秋山智英

    秋山政府委員 森林組合は、御承知のとおり、森林所有者の経営指導、造林事業あるいは間伐実施、そういうもののいわゆる施業の受託、さらには林産物の販売森林共済事業というふうなものを実施しているわけでございますが、そういう事業を通じまして、地域林業振興林業経営の安定を図るという面でいわばその地域林業の中核的な役割を果たしているわけでございまして、今後林業政策推進上非常に大きな役割を果たすわけでございます。それだけに、その育成強化というのは大きな課題であると私は思います。  そこで、これまでも森林総合整備事業とか間伐促進総合対策事業あるいは林業構造改善事業、これらの事業を実施することによりまして、森林組合の生産活動の活発化ということを図っているわけでございます。森林組合は作業班を設置いたしまして、これを拡充強化してこの林業振興、活性化にいろいろと努力をされているわけでございますので、我々はそれに対するいろいろな助成を考えているわけでございます。特に最近の林業生産地帯の停滞に対処いたしまして、五十九年から林業地域活性化総合対策事業というのをやるわけでございますが、その一環といたしまして、森林組合の生産販売事業の一層の拡充強化とか、組織体制整備を行うために森林組合活動強化対策というものを実施しようとしております。これらの事業を通じまして、さらにこの森林組合の育成強化を図りたい、かように考えているところでございます。
  63. 神田厚

    ○神田委員 次に、住宅問題でありますが、木材需要の大宗を占める住宅の着工戸数は、五十八年度で百十三万七千戸でありまして、その中における木造率は全体の五二%というようになっております。  ところで、木造住宅の建設促進に政府としてはどういうふうに対応するのか、この点についてはいかがでありますか。
  64. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国の林業、林産業の健全な発展を図る上からも、木材需要の大宗を占めます木造住宅の建設促進を図っていくのが極めて重要なことであると考えております。このため、農林水産省といたしましても関係各省と密接な連絡のもとに木造公営住宅の建設促進のための働きかけ、そして木材利用技術の開発や普及啓蒙の推進、また木造建築物に対する制限等の緩和、これらに努めているところであり、今後ともこれらを通じて木造住宅の建設の促進を図ってまいりたいというぐあいに考えております。
  65. 神田厚

    ○神田委員 住宅問題は我が国経済の景気回復にとりましても極めて密接な関係を持っておりまして、その意味では、これを具体的に進めていただかねばならないわけであります。  住宅政策は建設省あるいは国土庁、農林水産省、通産省、各省にまたがっている問題でありますが、その取り組みをやはりどこかで一つに取りまとめていかなければならない、こういうふうに考えておりますが、どんなふうな形を考えておりますか。
  66. 秋山智英

    秋山政府委員 これからの木材需要を増大をさせるということになると、何と申しましても木造住宅の建設促進を図るということが大事でございますし、現在不況に低迷している木材関連産業の景気回復、振興にも非常に大事だと私どもも考えておるところでございます。  それで、従来から私どもと建設省と密接な連携のもとにおきまして、木造の公営住宅の建設促進の働きかけであるとか、あるいは三階建ての木造住宅の建設促進のための簡易構造設計基準の制定、それから日本住宅・木材技術センターというのがございますが、ここにおきまして木材の利用開発等をいろいろとやってもらっているわけでございまして、この利用開発に関する調査あるいは技術開発研究等をいろいろと進めているわけでございますが、これらの成果に基づいて、大工、工務店へこういう技術開発の成果を指導、普及するということも大事でございますので、これらの問題についても積極的助成をやっているわけでございます。  さらに、今先生から御指摘ございまして、住宅政策推進に当たりましては関係省庁が十分連携を深めて取り組んでいくことが大事でございまして、先ほど触れましたようにいろいろとやっています。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕  木材につきましてのよさというものが必ずしも一般の方々理解されてない面もございます。そこで、木材の持っております特徴につきまして十分御理解をいただき、先ほど触れましたように建設省と連携を持ちながらいろいろと需要開発に、例えばさっき触れました三階建ての木造住宅の建設促進のための簡易な構造設計基準の制定などに一努めているわけでございます。  また、学校の体育館等に木造をさらに積極的に使ってもらうということを言いますと、最近は大断面の構造用の集成材というのができまして、これを用いますと木造の大規模な体育館等もできるようになっておりますので、これらの施策等を通じて文部省にも働きかけをするとか、これからはいろいろと進めていかなければならぬと思っておりますが、木材需要開発と申しますと、やはり木造住宅あるいは建物等がより一層積極的に各分野で開発されなければならぬわけでございますので、関係省庁とは十分に連絡をとりながら進めてまいりたい、かように私ども考えておるところでございます。
  67. 神田厚

    ○神田委員 森林被害の問題でありますが、近年、森林の雪害、風害あるいは火災等の事故が大変多く発生をしております。これらを未然に防がなければならないわけでありますが、その防止策と、さらに、火災、気象災害発生した場合にその損害をてん補する森林国営保険、全国森林組合連合会の森林共済等がありますが、人工林のこれらへの加入率が三二%しかない、こういう問題があります。これらについてどういうふうな対策をお持ちでありますか。
  68. 高野國夫

    ○高野説明員 まず、最初の御質問からお答え申し上げます。  雪害、風害など自然災害から森林を守りますためには、抵抗力のある健全な森林をつくることが基本でありますので、林野庁といたしましては、森林施業の適切な実施、造林補助事業や間伐促進総合対策事業の推進を図ってきたところでございます。  今後とも、地域の実態に即した造林方法の選択でございますとか、森林整備計画制度の活用によります保育、間伐の適切な実施、さらに気象害抵抗性育種事業の推進等を図りますとともに、五十九年度から新たに導入されました複層林造成パイロット事業の効果的な実施などによりまして、活力のある健全な森林の造成を図って、森林被害の未然防止にさらに努めてまいりたいと考えております。  なお、林野火災対策につきましては、従来から消防庁などの関係機関とも密接な連携をとりながら、保全巡視、林野火災予防資機材の配備等の対策を進めてきたところでございますけれども、五十九年度予算におきましては、特に火災危険度の高い地域を対象としますところの空中からの広報、指導、監視、こういった施策でございますとか、さらには防火帯道の設置などの対策を新たに実施するなどによりまして、一層の火災の予防、それから起こった場合の対策の強化を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。  それから、お尋ねの二番目の保険の問題でございますが、お話しのように、年齢が高くなるに従いまして加入率が低くなっているという実態がございますので、今後は、継続契約の確保などによりまして中高齢林の加入拡大を図っていきたいと考えております。  具体的には、森林国営保険につきましては、従来からのパンフレット、ポスターの掲示等の普及活動に加えまして、いろいろ地域の実情がございますので、そういった実情に即した工夫、努力をいたしまして森林所有者の理解を一層深め、積極的に加入の拡大を図ってまいりたいと考えております。  また、森林共済につきましては、林野庁指導によりまして従来の森林災害共済に加えて、昨年の十月から新たに今後人工林の主体となります中高齢林を対象とした満期共済金つきの長期育林共済、こういう制度を発足させておりまして、本年二月に森林共済推進本部を設置をいたしまして、加入促進活動に努めておるところでございます。今後ともこういった諸制度の推進を総合的に図りまして、加入促進を図ってまいりたいと考えております。
  69. 神田厚

    ○神田委員 山崩れ、土石流等の山地災害の問題でありますが、国土開発の進展からこういう災害が多発をしているという現状であります。  まず、この災害防止するため保安林の配備が必要である、こういうふうに考えますが、その機能の維持強化、これをどういうふうにやっていくのか。  さらに、林野庁が五十三年、五十四年に実施をしました山地災害危険地調査によりますと、全国に約十三万カ所の山地災害危険地が存在している、こういうことでありますが、こうした危険地に対する対策はどういうふうになさるのか。
  70. 秋山智英

    秋山政府委員 先生御承知のとおり、我が国は地形が大変急峻でございますし、また地質的にも大変脆弱な地域が多うございまして、毎年のように台風、集中豪雨等に見舞われまして、洪水あるいは山崩れなどの災害発生しておるわけでございます。特に最近は都市化の進展に伴いまして山地山ろく地帯での開発が進められまして、この山地災害に直接的に被害を受けるおそれのある保全対象というのが増加してきているわけでございます。一昨年の長崎災害あるいは昨年の島根災害に見られますように、最近山地災害の被害が増加している傾向にあるわけでございます。  そこで、私どもこの対策といたしまして、現在の保安林の指定施業要件に基づく伐採制限あるいは治山事業の実施あるいは造林事業の推進というような措置を講じまして、この保安林機能の維持強化措置を一層的確に実施することにしておりますが、さらに、御審議いただいておりますように、保安林の配備を地域の実態に即しまして、きめ細かく緊急な箇所を指定してまいる。同時に、保安林の一部につきまして、疎林等になりまして機能の低位な森林等がございますので、これらの機能を開発する措置を講ずることによりまして、保安林整備を推進しまして災害防止に努めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  そこで、今先生のお話にございました山地災害の危険地域の問題でございますが、私ども五十三、五十四年に実施した調査で判明しました危険地区と申しますのは、先生お話しございましたように、十三万一千カ所に及んでいるわけでございます。この危険地区につきましては、五十七年度末までにその約三〇%に当たります三万九千カ所につきまして整備に着手しているところでございます。  先ほど申し上げましたとおり、最近激甚な山地災害があちらこちらで出ておりますので、私ども第六次の治山事業五カ年計画、現在これに基づいて治山事業を実施しているわけでございますが、緊急にかつまた計画的にこの計画に基づきまして治山事業を実施してまいりまして、災害防止にさらに一層努力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  71. 神田厚

    ○神田委員 最後に、大臣森林振興についての決意を一言お聞かせをいただきまして、終わりたいと思います。
  72. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国の森林というものはただ単に木材生産ということだけではございませんで、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保護など重要な役割を果たしているものでございまして、今後いろいろな意味で、ただ単に例えば国有林の場合赤字だというようなことだけではなくて、大きな社会的機能も果たしているということも含め、PRをしながら、そしてまた我々でできるものは、これは農林水産省林野庁だけではなくて、政府にも広く呼びかけまして、政府一体となって今後の森林というものに対する取り組み方に力を入れてまいるつもりでございます。
  73. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  74. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 武田一夫君。
  75. 武田一夫

    ○武田委員 林野三法につきまして御質問いたします。  私たちは、この法案を審議するに当たりまして、愛知県、岐阜県、群馬県等々の山あるいは製材その他の関係者にいろいろとお会いいたしまして、勉強もしてまいりました。非常に問題もたくさんあるし、またいろいろと勉強し、お話を聞くに従いまして、山の重要性というものにひとしお心に打たれるものがあったわけでございます。そういう意味で、その視察を通しいろいろと気がついたこと、感じた点を中心にまず御質問をしたいと思います。  最初に、大臣にお尋ねをします。  幸いにも秋山長官山村農林水産大臣と、このお二人が林野三法を取り扱うというふうになったことも、私は非常にこれは意義があるんだと思っております。山村秋山なんていい名前だったななんて、しみじみと思っております。この際しかと林野行政の、健全な山を守る担い手になってもらいたいという意味で、いろいろと細かい点まで御質問いたしますので、御了解いただきたいと思います。  大臣、山や木あるいは森林の持つ効用というものについての大臣の御認識はどうであろうか、お尋ねをし、今後そういう森林、山を担う林野行政のあり方についてどう取り組んでいかれるか、この点につきましてまず御所見をお聞きしたい、こう思います。
  76. 山村新治郎

    山村国務大臣 森林はただ単に木材の供給のみならず、国土の保全、水資源の涵養、そして良好な自然環境の保全形成というような公益的な機能も多く有しておるわけでございます。これらを通じまして国民生活に重要な役割を果たしておる、これが森林であろうというぐあいに私は考えております。  しかしながら、我が国森林林業現状を見ますと、木材需要の低迷、林業経営諸経費の増高等から、林業生産活動が停滞するとともに木材産業が深刻な不況にあるなど、極めて厳しい状況にあります。このまま推移しますと、森林の有する諸機能の発揮に支障を及ぼすということも懸念されるような状態でございます。  このために、造林、林道等林業生産基盤の整備林業地域の活性化、保安林機能強化、治山事業の推進等国土保全対策充実、また木材産業の体制整備と木材需要の確保増大、これらの施策を積極的に推進して我が国林産業の振興を図っていく考えでございます。
  77. 武田一夫

    ○武田委員 いろいろと本を読みますと、やはり山というのは、木というのは生活に物すごく密接に関係のあるものだなとしみじみと思いました。  漢字を分析してみますと、親という字は立ち木を見て親を思う、これから親という字ができたというのです。木が一木の大木に成長するまでの苦労というのはどんなにあったのか。それを育ててくれた山林労働者皆さん、山持ちの皆さんは、親が子供を育てるような思いではなかろうか。そういう意味で、この親という字が、立ち木を見て親という字になったと思うのです。  昔から宝の山などと言いますね。それからまた、山高きがゆえにとうとからず、木あるをもってたっとしとなすということを考えますと、木というもの、山というものが備えている非常に幅広い効用と木の持つすばらしい機能というものを林野行政の中で生かしていったら、こういう赤字で責められ、いじめられるといったようなことはこれからは間違いなく解消できるんではなかろうか。  そういうことで、いろいろと森林の効用というのを調べてみますと、今大臣もおっしゃったようにいろいろございますけれども、約四十種類ほどあるんだ。気象の緩和にもなっている。それからよく言われるのは、水資源の涵養、自然災害防止あるいは軽減のための働き、防災、騒音阻止、大気浄化、環境の指標、鳥獣保護、それから教育的なあるいは教養の場としての活用、それから最近は森林浴とかいうように、あらゆるところで国民の生活に密着している。  ところが、残念なことには、これは静岡県のある市長さんが言っている言葉なんですが、自然がいっぱいあるところは寂しいところ、緑豊かなところは不便なところ、水がきれいなところは住みにくいところ、確かですね、これは。改善されているところもあるけれども、これは一つの悲しい矛盾ですと。ですから、山や森やそういうものの魅力が語られて、環境の保全の意味からも非常に重要な役割を占めるそういうところに住む方々、それを大事に育て、守られる方々が安心して住んでいけ、寂しさや貧しさや不便さというものを解消するような努力が、これからの林野行政の中でも、これは林野庁だけではないと思います、自治省もあるいは国土庁も、あらゆる省庁が総力を挙げてなさなければならない大事な問題だ、こういうふうに私は思うわけでございまして、この点で、各省庁等に山に対する、そして自然に対する働きかけというものをもっともっとしていかなければいけない。私、予算委員会でも質問したわけでありますが、山や木の持つ効用、働きは案外余り知られていない、誤解されている面がある。こういうことで、私は、そういうもの、障害となるもの、誤解されているものをこの際取り払い、そしてしかと新しい体制の中で林野を、山を、木を守っていける日本にしていきたい、こういうふうに思うのですが、大臣、このような働きをひとつ各省庁の関係機関に働きかけていただきたいと思うのです。どうでしょうか。
  78. 山村新治郎

    山村国務大臣 人間生活に欠くことのできない貴重な緑資源でございます。これを守っていくことで環境庁、国土庁、そしてまた建設省、これらへ働きかけて、これらの森林に対するPRというものを広く行っていきたいというぐあいに考えます。
  79. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、次に質問いたします。  国有林野事業の使命というものは、大きく言うと三つ挙げられているようであります。一つは、林産物の計画的、持続的な供給という点、二つ目は、国土の保全等の公益的機能の発揮を目指す、三番目は、農山村地域振興への寄与という三点が挙げられているようでございます。  この面につきまして、現在の国有林野事業が十分にその使命を果たしているかという点につきまして長官からお尋ねをし、今後この中で特に林野行政を健全に進めていくための努力をしていかなければならぬと考え、てこ入れをしていこうという分野につきましての林野庁のお考えをひとつ聞かせていただきたいと思います。
  80. 秋山智英

    秋山政府委員 国有林野の使命につきましては、ただいま先生からお話のありましたように三つの使命があるわけでございます。これは、私ども、その森林資源充実整備を図りまして、内容を充実整備することによって国民経済的あるいは国民生活上の役割を果たしていかなければならない、そういうふうに認識をしているわけでございます。  したがいまして、現在国有林野事業をめぐる情勢というものは非常に厳しいわけでございますけれども、財務事情が悪いというゆえをもって国有林野の管理経営をゆるがせにすることはできないわけでございまして、今後、業務運営の簡素化、合理化あるいは要員規模の縮減、組織機構の簡素化、合理化、さらには自己収入の確保増大というふうな面で自主的努力の一層の徹底を図るとともに、また所要の財政措置を講ずることによりまして国有林の経営の健全性を確保して、先ほど申し上げましたような国有林野事業の使命の発揮に遺憾のないようにしていくことが一番大事であろう、かように考えているところでございます。
  81. 武田一夫

    ○武田委員 今の三つの使命といいますか、これは民有林業でも同じなわけでありますが、こうしたものをしかと行っていくためにはやはり国が先頭に立って行うことが非常に重要だと思うだけに、林野庁の懸命なる頑張りを私は期待していきたいと思います。  そこで、林野庁は累積赤字約一兆円、五十八年度でそのくらいあるようでございますが、このままいくとこれもどうなるかという心配がある。ここで、赤字の起こってきた原因とその内訳、どの点にどういう赤字が出ているのか、その解消策にどういうふうに取り組んでいくか、この三つをお答えいただきたいと思います。
  82. 秋山智英

    秋山政府委員 国有林野事業特別会計の国有林野事業勘定の五十七年度末における累積欠損額は四千四百六十九億円でございます。  この累積欠損額が出た原因をいろいろ分析いたしますと、まず収入面におきましては、自己収入の大宗を占めます林産物の販売収入に関連しまして、特に最近は資源上の制約によりまして伐採量を縮減せざるを得ないという状況がございます。第二に、先生御承知のとおり、現在、木材価格は自由市場のもとで形成されるものでございまして、最近の住宅需要の不振などから木材需要が減退し、価格が下落、低迷しているという状況がございます。  それから支出面におきましては、戦後伐採量が大変増加したのに伴いまして当時要員規模を相当拡大したわけでございますが、その後、伐採量の減少に対応しまして要員の縮減に努力しているわけでございますけれども、まだ調整過程にあるということ、それから事業運営の能率化につきまして一層努力しているわけでございますが、まだ不十分であるということなどによりまして、人件費を初めとしますところの諸経費が過大になっているというようなこと。それから造林、林道等の投資資金につきましては、最近、自己資金が減少傾向にあるために借入金に依存を高めている、これに伴う支払い利子が増高している、こういうことが大きな原因だろうと思いますので、私どもは、現在御審議いただいております国有林野事業改善特別措置法改正案あるいは国有林野法改正案の成立を待ちまして、経営改善に積極的に努力をしていかなければならない、かように考えているところでございます。
  83. 武田一夫

    ○武田委員 各局を通して毎年何十億、何百億という損失を出している。高知は五十七年度を見るとプラスのようですが、いずれにしましても、北海道にしても五十七年度五百十六億、東北の青森が百七億、秋田にしても百二十二億、かなりの損失を出している。長官が今その赤字の理由というのを四つほど言ったと私は思うのですが、これは各局、下にいけば各営林署責任を担っていくわけです。  これは後で質問しますけれども赤字解消に財産を処分するとか、そういう話も出てきているわけですが、各局各署ともにおのおのの努力目標を掲げて、そういう赤字から脱却する計画というものはきちんとつくって、全体としてこうしていくんだというものは出てくるものですか、出しているものでしょうか。どうですか。
  84. 秋山智英

    秋山政府委員 赤字解消のためには、林野庁のみならず、今先生からお話が出てまいりました営林局署一丸となって収支改善に努力をしていかなければならぬわけでございます。私ども、各営林局署の森林資源の内容あるいは立地条件等の特徴をいろいろ十分分析しながら、それに応じた対策をとっておるわけでございます。  例えて申しますと、事業量の多い局署におきましては総合的な能率性の向上を特に進めるとか、あるいは消費地に近い局署におきましては林産物を初めとする販売宣伝活動を積極的に進めるとか、あるいは森林レクリエーションの場として利用できる景勝地の多い局署におきましては土地の利活用の高度化というふうに、それぞれその特徴、特性に合った経営目標を定めまして、経営の収支改善に努力していかなければならぬと思っておるわけでございます。事業の進行状況につきましても、各局署において的確に把握して分析しまして指導体制をとるように、経営改善のこれまでの過程でもやってまいりましたが、さらに今後はもっときめ細かい具体策につきまして検討していかなければならぬ、かように考えておるところであります。
  85. 武田一夫

    ○武田委員 林政審が答申の中で国有林野事業の経営改善について指摘していることが何点かありますね。  その一つに、自己収入の確保増大を図るため新たな視点に立った販売戦略の展開と資産の売り払い等を行う、こういう指摘をしている。ですから、林政審のこうした指摘というのは林野庁としては忠実に守って、そのとおりやっていこう、こういうことなんでしょう。その点どうですか。
  86. 秋山智英

    秋山政府委員 私どもはやはり林政審の答申を踏まえてこれから積極的に取り組んでいかなければならぬ、かように考えております。
  87. 武田一夫

    ○武田委員 そうしますと、まずここで考えられることは、収入を確実に上げていく、ふやしていくということと、赤字の要因を削っていくということ、両面から考えられる、こういうことだと思うわけです。  そこで、私はあちこち歩きますと、林野庁も大変な庁だなと同情するやら、少しはみんなでバックアップしてやらなければいけないなということがどんどん出てくるわけです。  例えば、今各地方自治体、市町村においても緑地保全ということで、もう林野庁の山までも、市の中にありますとそれは緑地保全地域とかいって指定しているわけなんですね。それから農村地帯の山なんかに行ってみますと、余り林野庁の計画にのっとられて切られますと、治水治山の上あるいは後災害等のおそれがあるから、それはちょっと考え直してくれとかという注文があるわけですね。やはり地域住民にとって非常に重大な関心事ですから、そういうことで、林野庁としてあるいは営林署で立てた計画が、途中でそういうものをのまざるを得なくなって変更しなくてはいけなくなる。  例えばある地域の例を申し上げますと、標高約八百メートル以下、これをいわゆる皆伐対象区域にしていたんだけれども、それを今度は七百メートル以下に引き下げる、要するに百メートル下から切る。それから、皆伐を減らして択伐をふやす方針に決めるとか、あるいは一部地域では天然更新の方法を初めて取り入れてそういう地域住民の期待にこたえるとか、それが結局は県の何次計画という地域計画の中に盛り込まれていってしまう、それを営林署が受けざるを得なくなる、こういう一つのケースがあるわけです。  それから、今土地あるいは山を売っていますね。処分しています。ところが、地方自治体の皆さん方は、お金がないものですから、買いたいんだけれどもなかなか買えない。そうなりますと、入札で一般の方々に売り払っておりますね。その売り払った林野の土地の中にたまたま緑地帯がある。要するに、これがその市あるいは町にとっての緑地保全地域として指定されている区域である。ところが、私の知っているところでは、それは五年か何年かの協定でありまして、協定なものですから、五年なら五年たっとそれはまた協定をし直してもらうために、所有者にこれをまた何とか緑地として保存してくれとお願いに行くわけです。だけれども、それが企業であって、土地が高くなりまして、いい場所になると、そんなことおれは知らぬよ、そういうことは約束できませんということになる。あるいは転売なんかされますと、その土地は緑地が取り払われて建物が建つ。結局、県や市町村が立てている緑地保全という、いわゆる一つの環境保全というものがそれで壊されていくというような問題が出てきます。  それで、私はここで聞きたいのですが、まず、自己収入の確保増大を図るためにそういう資産を処分する場合、一つの基本的な行き方としては地方自治体優先ということなんだそうですが、地方自治体が金がないということで買えないという場合に、林野庁として、買えないのか、それじゃ般の企業、業者に競争入札しようというところにいくまでに、何かもっと努力をしなくてはいけないのではないか。これは自治省なんかにも、きょう来ていただいているので、お願いをしたいと思うのですが、そうでないと、特に市内あるいは周辺の緑というのが非常に危険な状況になるのではないかという心配をするのですが、長官として何かこの点についてお考えはございますか。
  88. 秋山智英

    秋山政府委員 国有林の管理経営、事業の実行の基本になっておりますものは、先生御承知のとおり地域の施業計画というものでございまして、これはただいまお話に出てまいりましたように、国土の保全あるいは風致あるいは水資源の涵養とかいう各種の機能の高いところにつきましてはいわゆる第一種林地ということでそれぞれの制限を設け、また木材生産を中心にやるところにつきましては第二種林地ということで林業生産を中心にやるというふうに、実態として区分するというふうなことで、それぞれ国有林の立地条件あるいは地域の要請に見合った形で森林の施業をするということで、これは計画的に実施をしておるところでございます。今先生指摘の都市の周辺の国有林におきましては、これは禁伐という方法をとったりあるいは択伐という方法をとったりして、風致あるいは環境保全のための森林施業をとっておるわけでございまして、これらの問題につきましては、やはりそういう考え方で今後も地域の要請に見合った形で計画を立て、施業を進めていくということに相なるわけでございます。  そこで、地域の緑地保全に必要な土地について地方公共団体が買うというような場合がありますと、私どもは、やはりそういう地域の都市部の方々の強い要請でそういうものが出てまいりまして、緑地保全が今後とも維持されるというふうに考えられた場合には、地方公共団体の要請にこたえて利用計画に合った形で売り払うことはいたしますが、それ以外の問題につきましては、私どもは売り払わないで、あくまでも地域の要請にこたえた形でやりますけれども、それ以外の地域は私どもがやはり国有林野事業として進めていかなければならぬというふうに考えております。
  89. 武田一夫

    ○武田委員 私は、この財産処理はもっと話し合いをしておかなければならぬと思う。それから、計画性をもう少し持たなければいかぬと私は思う。  例えばある営林署、おたくはこれからいわゆる林野赤字解消の一翼を担って、皆さん方がお持ちの土地や山等々で処分するもので、いつどの土地を、どの地域を処分するのだということについての計画がありますかと聞いたら、これは正直言って、ないんだよね。やるということはあるけれども、いつやるということは決めていないんですよ。思いつき的なところがあるわけです。市町村でも、例えば五カ年計画で一つの事業をやるときに、この地域には集会所をつくりたい、そのためには土地取得をしたいという計画を立てる。林野庁さんの場合には、正直言って、それは売りますよと言っていても、いついかなるときにというようなことが前もって出てこないという一つのうらみがあります。急に出てくるという場合もある。しかも、面積かあるいは金額かわかりませんが、営林局でやるものと営林署でやるものと違いますね、規模によって。署長さんと局長さんで処分するときの扱い物件は違うわけですね。これさえも、正直に言いまして、責任者の署長さんが知らないというのは、これは問題でしょう。どことは私は言わない。あちこち歩いているところで聞いてきた。わからぬと言うのです。何ヘクタール以上は我々の責任で処分するのだというようなこともわからないということは、もってのほかだと私は思うのです。  現実にいた。それはお金ですか、面積ですかと言ったら、いや両方でしょう、そのうちに、面積だかもわかりません、どのくらいかと聞くと、一ヘクタールかななんというように、はっきりと物が言えないようなところがあるとすれば、林野庁が中心で一生懸命やろうとしても、そういう地域の実情であれば、赤字解消の努力なんというものは非常に困難ではないか。  こういう意味で、長官、これはやはりしっかりと指示を与えて計画をつくらせる。例えば東京だってたくさんあるでしょう。六本木なんかには随分あるのでしょう。     〔玉沢委員長代理退席、衛藤委員長代理着席〕 ホテルオークラのあたりに一万五千平米ぐらいあるのじゃないですか。あれはどうなんだということを聞きたいぐらいなんですがね。そのうち何とかというだけじゃだめなんですよ。この間、国は、国有地の財産を公正適正に処分する、再開発に利用するための方向を探るということで、民間の活力などを導入しまして、これはそういうむだをなくして、きちっと適正に活用するとか、あるいはまた処分するという方向での話し合いができているわけでしょう。それで、国鉄の用地なんかがその一つの対象として具体的には出ていますね。  林野庁さんも、一山何ぼという感じでなくて、各局署ごとにやはりそういう計画をつくっておくべきではないか。その計画を市町村に提示しておけば、市町村でも、ある市町村では、五年後にあれを取得するために、大変だけれども少し金をためながら頑張っていこう、こういう一つの計画的な行動もできるのではないか。この点、もう少しきちんと各署、局に徹底をしてほしい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  90. 秋山智英

    秋山政府委員 今後やはり計画的に売り払いを進めるに当たりましては、一つのそういうものがなければならぬという御指摘がございました。私ども、毎年度地元市町村長さん方とは地域協議会というのを設けておりまして、その年におきます事業実行についての要請をいただくというような制度もございまして、そういうところでは今先生指摘のような問題について十分踏まえながら、地域の要請を踏まえながらやっておりますが、全体的にこことここをどうするかという、そういうものは私どもはやはり企業内としては持っていましても、部外にそういうものを示すのはいかがかという問題が実はございまして、現在はいたしておりません。  しかしながら、今後その売り払い等の問題についてはいろいろと相手方の要請等もございますので、研究課題として少し検討させていただきたいと思います。
  91. 武田一夫

    ○武田委員 いや、私は何も企業に出せなんて言っていない。市町村、自治体等々の場合は、やはりそのくらいの一つのものを見せておくということは必要ではないか、打診をしておくということは必要ではないか、こういうことです。  そこで、自治省さん来ていると思うので、ちょっとお願いしたいのですが、先ほどお話しした中で、やはり国の援助がなければ地方自治体はかなりきつうございまして、そういうような、欲しいんだけれども企業に取られてしまう、買われてしまうというケースを何とか未然に防ぐ、特にそういう緑地保全とかの環境保全のような場合は、やはり自治省としても何か特別の配慮をしながら、そういうものをその市や県や市町村の一つの都市計画の中で大事に自分たちの持ち物として活用できるような御配慮はしていただけないものか、検討はできないものか、この点お尋ねしたいのですが。
  92. 柿本善也

    ○柿本説明員 御存じのように、地方団体が地方債を起こしますには、その起こせる場合は、通常、適債事業と言っておりますが、そういうある限定された事業に該当する場合に限られております。用地の話でございますので、公用あるいは公共用の用地に充てるために取得する用地、そういう場合には起債の許可が、あるいは起債をすることができるわけでございます。今のお話の中にございました、何か都市計画事業とか公園用地にするとか、そういう用地として特定の行政目的のために充てられる予定の用地でございますれば、事情によりまして起債の対象にするということはできますが、一般的に緑地保全という機能があるからということで用地を確保するというのは起債措置にはちょっとなじまないということでございます。やはり特定の行政目的がある場合に限られることでございますので、御理解いただきたいと思います。
  93. 武田一夫

    ○武田委員 それはわかりました。そういう市の対応あるいは町村の対応のまずさがあるのは私もわかります。もう少し研究しなければならない。  この間、私の地域で折衝があった場合は、話し合いがよくできなかったということで、林野庁さんは少し先走ったけれども、市の方も余り無関心だったということでやられてしまったということで、頭を抱えているのですよ。これは、私は市の方にはそれなりに言っておきましたが、今後こういうケースが出てこないということは保証がない。市街の中にたくさんの緑地のあるところがある。そこに林野庁の持ち物があるというのは、東北各地には、特に大きな市の周辺には多うございますので、これはやはりそれなりの一つの乱開発の歯どめをしていかなければいかぬと私は思っておりますし、林野庁としてもそうした方向への対応を考えていただきたい、こう思います。  そこで、これは七十二年までに経営の健全化ということですが、どうでしょうか、自信のほどは。
  94. 秋山智英

    秋山政府委員 最近の木材価格の動向あるいは債務残高の累増という状況を見ますと、七十二年度に収支均衡を達成することは容易な目標ではないと私ども理解をしているわけでございます。しかしながら、長期的に見てまいりますと、海外資源の減少ということが見通されておりますし、木材も不足物資になるというふうに見通されている面もございます。その中で、国有林の伐採量は、戦後植えられました人工林が伐採の対象となる六十年代の末からは上昇に転ずることが十分見通されるわけでございます。  この間におきまして、業務運営の簡素化、合理化あるいは要員規模の縮減、組織機構の簡素化、合理化、それから自己収入の確保あるいは増大というふうな自主的努力を鋭意しながら、一方におきまして所要の財政措置を講ずることによりまして、私どもは七十二年度までに収支均衡を達成するように不退転の決意で努力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  95. 武田一夫

    ○武田委員 一生懸命努力してほしいのですが、そういう努力をしながら、森林機能の持つ効用は、先ほど大臣からもいろいろお話があったように大変多い。そういうことを考えますと、森林の場合、治山治水の役割とか環境保全とか洪水調節機能というのは金額的に計算するとべらぼうな金になる。そういうことはたくさんあるわけですね。  きょう文部省に来てもらっているものですから、ちなみに文部省として具体的に山に関係していろいろと教育的な立場から御利用なさっているような事業等々、どういうものがあるか。文部省さんを一つの例に挙げて申しわけないのですが、お話をしていただきたい。
  96. 伊藤俊夫

    ○伊藤説明員 武田先生指摘のように、山だとかあるいは森林が持っております教育的な効果というのは大変高いと私は認識しております。特に青少年が自然との触れ合いを通じて自然の美しさだとか厳しさ、こういうことを知ったり、動物や植物に対する愛情を培ったり、あるいは生命だとか自然に対する畏敬の念を育てる、さらには自然と調和して生きていくことの大切さを知る、こういう意味から教育的に大変価値が高いものだ、こういうふうに考えております。  具体的には、例えば社会教育活動の面で申し上げますと、ボーイスカウト等の青少年団体がキャンプだとか登山だとかオリエンテーリングだとか、いろいろな形で山や森林に親しんでおりますし、あるいはある団体では植物の名前を知ったり植物に親しむという意味でグリーンアドベンチャーというようなプログラムを組んでおりますし、青少年団体がそういういろいろな形で自然と親しみ、森林理解していく、こういうふうな活動があるわけでございます。  それから第二番目としましては、青年教室だとかいろいろな形で社会教育の学習活動をやっておりますけれども、その中で特に身近な課題として林業だとか森林だとか山だとか、そういう生活課題を取り上げて学習している例もございます。  さらには、青少年を大自然の中に連れ出していって、そこで仲間たちと切瑳琢磨したり情操を培ったり、あるいはたくましい体をつくっていくという意味で、少年自然の家とか青年の家というような施設もつくっております。  さらに申し上げますと、特に大自然の中での生活は大変効果がありますので、林野庁あるいは宮城県あるいは白石市の協力を得まして、宮城県の白石市、南蔵王山ろくでございますけれども、ここに初めての大型のキャンプ場をつくろう、こういう形で五十九年度は基本設計費を計上した、こういう状況でございまして、それぞれの方々がいろいろな形で知恵を絞って活動していらっしゃる。文部省としてもそういう点をいろいろな形で奨励してまいりたい、こういうふうに考えております。
  97. 武田一夫

    ○武田委員 今、文部省の具体例を申し上げました。それで、環境庁や文化庁、建設省もその他いろいろな目的に従って国有林野における山あるいはそういう森林等を非常に活用しているわけです。環境庁なんか随分御厄介になっていますね。原生自然環境保全地域とか国立公園全域等々の面積を見ますと、べらぼうにお世話になっているわけであります。それに先ほど申し上げました治山治水、環境保全、いろいろな役割を考えたときに、やはり国は国有林野事業赤字について、その何%かは一般会計導入という形で処理をしてあげなければ、一生感命努力していっても、こういう点のいろいろな御苦労というものを林野庁がもろにかぶってくるということを考えるときに、理解を示してほしいと大蔵省にお願いしたいのですが、大蔵省来ておりませんか。
  98. 涌井洋治

    ○涌井説明員 国有林野事業につきましては、これは財政当局の立場からしますと、本来独立採算に基づきまして、一般会計から独立して企業的に経営されるべきものと考えておるわけでございます。そういうことで従来からも公益的機能をも含めて管理運営されてきているわけでございます。しかしながら、国有林野事業状況にかんがみまして、先生御案内のとおり、一般会計からは五十三年以来、五十三年には造林、林道開設に関する事業施設費の財源の繰り入れを行うことといたしておりますし、五十八年度からは林道の災害復旧に要する経費を一般会計からの繰り入れ対象としていますほかに、国有林野内の治山事業につきましても国土保全上必要なものについてはすべて一般会計の負担により治山勘定で実施することとしているわけでございます。  こういうことで、今までも一般会計の負担ということで努力してきているわけでございますけれども、五十九年度におきましては、この厳しい財政事情、マイナスシーリングの中ではございますが、改善期間の延長を図ることのほか、例の退職手当の利子財源の一般会計からの繰り入れを行うことといたしておるわけでございます。
  99. 武田一夫

    ○武田委員 そういう努力は私も存じておりますが、これから七十二年という長期の中で、やはりそうした公的機能というものの重要性と森林資源を守る、その中での活動だということを理解して、一層の御協力をお願いしたい、大臣長官に成りかわってお願いする、こういうわけでございます。  それじゃ次に問題は、木の使い方、木材の使い方、ことに価値ある使い方というものがどういう状況か。そこで、時間が余りないので、きょうは木造住宅の問題一つお聞きしますが、大体二十代からずっと統計をとってみますと、やはり木造住宅に住みたいという希望は予想以上に高い。二十代でさえも六二労ある、こういうことでありまして、上に行けば行くほど八〇%近くなるということでございますから、やはり市町村なんかでも一生懸命苦労しながら新設住宅を木造でつくっているケースも出ているわけであります。しかしながら、最近の財政的な事情を反映しまして、あるいは地価の問題等々もございまして、年々歳々その木造住宅の建設が落ち込んでいる、全体の住宅建設も落ち込んでいるだけにそういうことでありますが、先ほども神田先生が、林野庁だけでなくて各省庁協力し合ってこの問題に取り組めと言われましたが、私も同感です。  研究開発にしたってどこか窓口を一つにしながら、例えば建設省は八五何とかモデル住宅云々とかいうのがあるでしょう。今度林野庁さんはJ・ウッド・ライフ、ジャパン・ウッド・ライフ、これから出てくるわけですね。ですから、一本の窓口の中で一つの住宅政策として国有林野を有効に活用するという、これは経企庁が窓口になるといいと思うのですが、それで仕事もきちっとやる。大工さんが今五十万人いると言われておりますが、本当に仕事ができる大工さんというのは四十代後半の方々であろう。後継者が育ってこない、こういう心配もありますから、そういう雇用の問題、それからまた山から切ったものは、都会に大きな土地を持った材木屋さんで処理するよりは、地元山村で部材として乾燥して運んでくるとかというようなやり方でそこで仕事も与え、またそこでお金も落とす、こういうように総合的に住宅建設を考えるときでないか。  これについてはいかがお考えでしょうか。
  100. 秋山智英

    秋山政府委員 林業振興の最も基本になりますのは木材需要の拡大という問題でございまして、木材の拡大は、今先生お話がございましたとおり、何と申しましても木造住宅の建設促進を図ることが重要でございます。私ども、木材そのものによる住宅のよさ、木材のよさということを十分国民皆さんに御理解をいただくとともに、これまでも公営住宅の建設促進は建設省とも十分連携をとりながら、また関係省庁とも連携をとりながら進めておるわけでございますが、さらに木材の利用拡大や加工技術の向上という問題も極めて重要でございまして、これらの問題を関係する省庁と連携をとりながら実は進めておるわけでございます。  特に五十九年におきましては、木材利用の促進を図るために、先生もお話ございましたが、木材の普及啓発、展示というようなことを中心としました、一般の消費者の方にも木造住宅のよさ、木材のよさを理解していただくために、木材利用促進体制整備事業というふうなものに積極的に取り組んでいくつもりでございますし、また流通加工段階での近代化、体制整備をするということが極めて重要でございます。関係する工場を一カ所に集中させまして生産方式を合理化する、木材産業の合理的な発展を進めるために拠点整備緊急対策事業ということを進めておるわけでございますが、それと同時に、先生もお話ございましたが、住宅材のプレカット方式によりまして木材生産地帯と消費地帯を直結することによって合理的な木材を生産する、そういう木造住宅を生産する体制をつくるということも極めて重要でございます。そういうことをしながらも、一方におきましてやはり体育館その他、木造でつくった方が望ましいという要素も相当出ております。これは例えば、大断面の構造用の集成材を用いた場合には今の高さ制限十三メートルを緩和して大規模な体育館もできるというようなこともございますし、それから三階建ての木造住宅を建設促進するための簡易構造設計基準の制定とか、いろいろそういう手だてを講じながら考えていくことが必要でございますので、これはやはり生産と需要を直結しながら、しかも今度は関係省庁と十分連携をとりながら私どもこれから進めていかなければならない、かように考えておるところでございます。
  101. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、林野庁さんはこの国有林材供給ネットワークモデル事業ですか、これをお始めになるわけですね。これで私はいろいろ注文をつけておきたいと思うのです。  これが一つのモデルハウスですね、ウッドライフ、建設中のところを見てきました。なかなか結構でございました。非常にいい設計であるし、一緒に行った方も非常にいいと言われるし、私個人の見解からいいますと、欲しいなと思いました。ただちょっと高いな、そういうことです。これを始めるわけですが、聞いたら、これは東京中心になっているんですね。ところが、東京中心でも、木造住宅というのは防災上から東京都の二十三区では余り御活用できない。そうすると郊外型。ということは、どうしてもう少し地方に、仙台、札幌等々の拠点地域で同時に、いろいろお金もかかるし大変だと思うけれども、そこに展示室を開くなりPRをしながら大工さんや材木屋さん、関係者等を集めることを考えなかったのか。これをつくるために優秀な設計屋さんが参加していい作品を出したというわけですから、設計をなさる方々にとっても一つは非常に勉強になるわけでございまして、この点でそういう配慮が今回なかったのが残念なんですが、今回はさておきまして、第二弾として、そういう対応をなさった方が木材の消費の面で非常にいい方向に向くんではなかろうかな。  それから二つ目は、もしこれが当たってしまって、国産材を提供するわけですが、十分提供できるものか、年に何戸くらい建てればそれ以上はだめなんだという、そういうきちっとした見通しというか、そういうものが出ているのかどうかということ。  三番目は、これは見ましたらくぎなんか使っていませんでしたね。全部昔式の従来工法の腕のいい大工さんがつくっている。そういう大工さんの人手が間に合うのかなと心配した。ある建設会社の社長さんに聞いたら、ちょっと心配だと言う人もいました。だから、林野庁がそういう方々を、何か養成所みたいなものをつくって、理論と実際を同時にさせながら、つくる大工さんの養成をしなければならぬじゃないかという話もありました。この点の対応は大丈夫か。  四点目は、中央と地方との連携がありますね。林野庁はコンピューターを持っているのでしょうね。営林署はコンピューターをお持ちでしょうね。やはり今の時代ですから、仕事が早く効率的に上がるためにはコンピューターを備えるとかしまして、どこでどういう材料が必要である、このくらいの規模のものが必要であるということが逐一わかるような体制が必要ではなかろうかと心配をしているわけですが、この点大丈夫か。  最後にもう一つ。山から木を切ります。先ほども申し上げましたが、それをもう建てるだけに加工する。都会に持ってきて加工する必要なく、山元で、山村で、一つの仕事としてそういう仕事のできる人を育てておいて、その素材に加工を加え、乾燥をさせながらきちっと要求に従って送ってやるというようなことをしながら、過疎対策地域の産業の振興ということの対応をするならば、私はその地域の活性化にも役立つと思うのです。それで、そのための対応をしっかりしてほしいというふうに思うわけであります。  国土庁さん、来ておると思うのですが、要するに山村振興という角度から林野庁がこういうことをこれからしていく上において、国土庁さんとしてもこれから各地方における国土開発、特に三全総から四全総に移っていくその中にはそういう地域がたくさん入っているわけでありまして、そういうところに、安心して仕事ができ、安心してその地域の活性化に役立つような何らかの力強い対応というものをお願いできないものか、こういう問題、あわせて簡潔にお答えいただきたい。  そして最後にもう一つ、時間がないのでお願いしておきますが、プロ野球が始まりまして、最近バットが折れ過ぎるというわけです。そうしたら、下田というコミッショナーが、北海道にバットにいい材料があるので林野庁さんから買って、それを使うんだ、こういう話を聞いて、山全体を見たときに、四十年、五十年たたなければ木を切らぬというのでなくて、十五年か二十年くらいでそういうふうに使える、いわゆる用途別木材といいますか、それの開発研究、販売促進というものをこの際あわせてやっていったら、赤字解消だけでなくて、かなり楽しく希望のある、商売と言うとおかしいのですが、林野事業というのが展開されるような気がしてならぬということで、その点の取り組みもあわせて簡潔に答弁をお願いしにい、こういうふうに思います。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕
  102. 田中恒寿

    田中説明員 先生、木造住宅を見ていただきましたそうで、ありがとうございます。  私ども、首都圏であの事業を始めましたのは、やはり一番の宣伝効果を考えまして、随分と中央各紙にも取り上げられたわけでございますけれども、まずは首都圏の反響をよく見きわめまして、これの経験を踏まえましてだんだんと全国的に各主要都市にもこれを広げていきたいというふうに考えているところでございます。  二番目に、注文がたくさん出てというふうな御心配でございますけれども、それにつきましては、うれしい悲鳴と申しますか、国有林材が牽引役になって、ひいては国産材全般にこれが広がりますことを期待しておりますので、それはありがたいこととして受けとめて進めたいと思っております。  それから、山村振興に寄与するということでございますが、お話しのとおり、これが山村地域の定住の促進、人の働く場所に役立つことを大いに期待しているところでございまして、私ども積極的に協力をいたしてまいりたいと思っております。  それから、バットの原材料についても申し上げますが、バットの原材料、これは今の長官が北海道におりますときに創設をしたのでございますけれども、こういうふうに直接の需要に結びつきますことは、営林局署の職員にとりましても大変に士気が奮い立つということでございまして、こういうものについては、今丸太、製品の処分に際しましても、あるいは立木の適材を処分する際におきましても、大変積極的に協力をいたしておりますし、そういう森をつくるということで、ハツトの森という名前をつけたりなどいたしまして協力をいたしたい。なお、こけしとかその他特産につきましても、地元の伝統産業に対しましては極力協力をしたいということで行っているところでございます。
  103. 三上惣平

    ○三上説明員 お答え申し上げます。  先生が先ほど来御指摘のありますように、山村地域は非常に重要な機能、役割を担っておるわけでございまして、私ども国土庁といたしましても、このような役割を高度に発揮するため、また国土の均衡ある発展を図るためにも山村地域の住民の定住を促進いたしまして、活力ある山村づくりを進めることが極めて重要である、こう考えております。  こうした観点から、国土庁といたしましては昭和四十年に制定されました山村振興法に基づきまして、関係各省庁との緊密な連携のもとに、山村地域における生産基盤と生活環境の整備のために各般の施策の推進に努めてまいっておるところであります、最近特に若者層の流出、高齢化の進行ということがありまして、山村地域の住民の定住というものは極めて重要でありまして、このためには、何といたしましても先ほど来先生がおっしゃられましたように就業機会の確保とか所得の向上ということが極めて重要な課題であります。そのためにも、特に山村におきましては農業、林業が中心的産業でございますが、特に先生から先ほど御指摘ありました木材加工などによります新しい産業の創出ということで、就業機会の確保、創出を図っていくということが非常に重要であると考えております。  こうした観点からいたしまして、国土庁としましては、山村振興の観点から、地域の特性や立地条件に応じまして地場産業の育成に資するよう、関係各省庁と連携をとりまして今後適切に対処していきたいと考えております。
  104. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので、文部省の方、大蔵省も一つほど質問があったのですが、できなくなったこと、勘弁してください。  全体的に、私はあらゆる省庁の力を結集して、お願いをしながら林野行政は進める必要があるという一例を申し上げたわけですが、特に最後にバットの問題を出したのは、何もバット云々ではなくて、用途別の木材生産ということで、どの地域ではどういうものをつくって、それを加工、販売に持っていったらいいかという計画、研究はなさっているようですけれども、もっとオープンにしてその論議を高めていって、その中で林業の見直しをするような方向が必要になってきたのじゃないか。調べてみたら十何種類ありますよ。家庭に行ったって、例えばこういうものだっていろいろなのがありますね。前にどなたかの長官のときにちょっとそういう話が出たようでありますが、余り話題にならなかったのは残念ですけれども、この際総合的に林野行政の健全化を目指して取り組んでいってほしい、こういうことを申し添えまして、質問を終わります。
  105. 阿部文男

    阿部委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  106. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。細谷昭雄君。
  107. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 林野三法も大詰めに参りまして、今まで多くの委員皆さん方から問題点指摘をされておるわけでございます。私は、主としてこの中の国有林野事業改善特別措置法の一部改正案につきまして、最初に大臣に若干お伺いしたい、こういうように思います。  第一に、国有林野事業の使命は、今までも何回か恐らく大臣は表明されたと思うのですが、これについてお聞かせ願いたいと思います。
  108. 山村新治郎

    山村国務大臣 国有林野事業は、国土の面積の約二割、全森林面積の約三割を占める国有林野を一体的に管理、経営し、林産物の計画的、持続的な供給、国土保全、水資源の涵養等の森林の有する公益的機能の発揮、そしてまた農山村地域振興への寄与等、国民経済及び国民生活の上で重要な使命を担っております。  このような国有林野事業の重要な使命につきましては、私としても十分認識しておるところでぐざいまして、今後の経営の改善の実施過程におきましても、この使命の達成に遺憾のないよう努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  109. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 戦前、戦中、戦後を通じまして、国有林野の経営形態は大きく変化をしながら現在に至ったと思われます。財務形式等も、現行法までの間に当然いろいろな形式を経ておるわけであります。その中で、昭和二十二年、いわゆる林政統一ということによりまして新しい林野行政と林野特別会計が発足をしたわけでございますが、戦後の復興期から高度経済成長期に当たりまして、この林野事業が国政というか、国の経済、国民生活に与えた影響には非常に大きなものがあろうかと思うのです。  大臣はごれをどう評価されておるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  110. 山村新治郎

    山村国務大臣 国有林野事業は、特に戦後の復興期におきまして、復興用材の供給要請にもこたえてまいりました。また、三十年代初めにかけましては、戦中、戦後の造林未済地の解消、保安林整備統合を進めてまいりました。また、我が国高度成長期におきましては、奥地林の開発等により、増大する木材需要に対し価格の安定と供給の増加を図る上で中心的な役割を果たすとともに、一般林政面にも貢献してきたところであります。さらに、昭和四十年代半ば以降は、生活環境の悪化や産業公害の深刻化等に対応いたしまして、森林の持つ公益的機能の発揮にも配慮した事業実施を行ってきたところでございます。  このような国有林野事業は、それぞれの時代の要請にこたえて事業運営を行ってきたところでございまして、国民経済及び国民生活の上で重要な役割を果たしてきたというぐあいに思っております。
  111. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 大臣は触れられなかったのですが、例えば戦後、林野特別会計は一般会計にまで繰り入れをしておった、この点の財政的な評価を大臣はどうお考えでしょうか。
  112. 山村新治郎

    山村国務大臣 戦後の国の苦しい財政のもとに、国有林野事業で得た利益というものを国の方に回してきた、本当にありがたかったと思っております。
  113. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 戦後から経済成長期に至るまでの国有林野事業というのは、国の経済にも国民生活の上にも大変寄与をしてきたというふうに我々も評価するわけでございます。しかし、例えばことしの一月十一日付の林政審の答申にありますように、林野財務の赤字、これはもう抜き差しならないところに来ておるという乙とを指摘されながら、主として林野事業の自助努力を求めておるわけでございます。  私が考えるに、時代の変遷というものがさまざまに国民ないしは国家のニーズを変えておるわけでございまして、先ほど大臣がお話ししました使命の中の、例えば公共的な面の使命というものがこの時代には非常に大きくなってきておる。第一の木材資源の供給という点では確かに低下しておるけれども、林政審の言ういわゆる改善計画というものは、単なる業務運営の合理化、縮小、そして人員の削減、資産の売却、このような自助努力によって林野特別会計の財務建て直しを図るという方向を示しておるわけでありますが、これがもしもこのまま行われるとすれば、大臣が先ほど申されましたような林野事業の三大使命もついには確立てきないのではないか、このように危惧するわけでございます。したがって、自助努力だけではこの財務の好転というのは困難ではないか、私はこのような見通しを持っておりますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  114. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃるように、自助努力のみではと、まさにそのとおりであろうと思います。これまでも保安林の造成、幹線林道の開設等に要する経費の一部を一般会計から入れておるほか、治山事業につきましてはすべて一般会計負担として実施しておるところでございます。また、現在御審議をいただいております国有林野事業改善特別措置法改正案におきましては、保安林造成等についての一般会計繰り入れを六十八年度まで延長して実施するほか、急増する退職手当について新たに借入金及びその利子の一般会計負担の道を開くこととしており、厳しい財政下ではありますが、この拡充に努めてまいりたいと思っております。  このような財政措置と自主的改善努力の一層の徹底によりまして、国有林野事業の経営の健全性が確立されるよう努力してまいるつもりでございます。
  115. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この改正案では、五十九年より六十八年まで今後十年間は、国有林野にとりまして木材資源の減少、退職者の激増という最も苦しい十年を送るんだというふうに想定をしておるわけであります。それならば、今度の特措法改正案に財政投融資の借り入れとか、今大臣がお話をされました利子補給といった財務対策だけではなくて、抜本的な事業の改善といったものを織り込む必要があるというふうに思うわけでございますが、林野庁長官、この改正案にそういう抜本的な点を加えなかったというふうな理由は何かございますでしょうか。私は財務計画だけではできないだろうというふうに思っておるわけでございますので。
  116. 秋山智英

    秋山政府委員 国有林野事業は、先ほど大臣が御説明申し上げましたような重要な使命を担っておるわけでございます。この使命を達成するためにも、財務の改善は不可欠の前提であると私ども考えておるわけでございます。このために、今後十年間におきまして自主的改善努力の一層の徹底を図るわけであります。もちろん森林資源整備拡充ということを通じて使命を達成するわけでございますので、そういう中で森林造成にも努力してまいるわけでございますが、所要の財政措置を講ずることによりまして国有林野事業の経営の健全性を確立しまして、今申し上げましたような使命の達成に遺憾のないように期してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  117. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 林政審の答申を拝見しますと、事業運営の改善合理化の必要性というのを主張しながら、直用事業作業能率の向上というものを要求しておるわけであります。林野庁のこれに対する対策というのは何かおありでしょうか。単なる直用部門の人減らしという形だけでは、本当の意味の直用部門の充実強化策にはならないのではないかというように思いますが。
  118. 秋山智英

    秋山政府委員 直用事業の改善につきましては、これまでも作業仕組みの改善であるとか要員配置の適正化というようなことによりまして能率性の向上に努めてまいりまして、相当の成果をおさめてきたところでございますが、請負と比較した場合に、労働生産性、生産コスト等におきましてなお低位にあることから社会的な批判を受けているところでございます。林政審の答申におきましても「民間並みの生産性を確保するよう努める必要がある。」というふうに提言をされておるわけでございまして、私ども林野庁といたしましては、今後具体的な改善措置といたしまして、林業技術の開発、改良によります作業仕組みあるいは作業方法の改善合理化を図るとか、現場作業従事者の適正配置、さらには職場内の研修などによりまして職務意欲を向上していく、それから事業間の組み合わせの促進によりまして総合的に生産性が向上するように努めるなどいたしまして、直用事業の能率性の改善には一層努めてまいらなければならない、かように考えておるところでございます。
  119. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 今長官お答えになったわけですが、林政審で言うところの直用部門を削っていくという考え方は、要するに民間の方が安上がりだという考え方だけにあるのではないか、この点はむしろ危険だというふうに私は思うわけでございます。技術を集積しておる者、長い経験を持ち具体的な山村、山地といったものを見ておるのは、やはり何といっても長い経験を持った直用部門の皆さんだと思うわけでございます。したがって、この林政審の答申そのものの物の見方ということについてむしろ問題があるというふうに私は指摘したいわけであります。単に林政審に安上がりのものをやりなさいと言われたからといって、どんどんそちらの方にいくということについて私は批判をしておるという意味でございます。どうか長官の方でも、その点を十分に理解をしていただきたいというふうに思うわけでございます。  また次に、請負化の促進というのをうたっておるわけでございます。請負化の促進というものを求めておりますが、現在の山村過疎地帯の劣悪な雇用労働条件のもとでここに言う請負化を進めるならば、山地、山村林業労働者の労働条件というのはますます低下をしながら、山村振興にはむしろ逆行していく可能性というのが強いのじゃないかというふうに私は思うわけでございます。この点、請負化の促進という点について私は極めて大きな疑問を持っておるわけでありますが、長官はどういうふうに受けとめておられるでしょうか。
  120. 秋山智英

    秋山政府委員 現在の国有林野事業の財務は、残念ながら業務収入をもちまして人件費を賄い得ないような状況にあるわけでございます。このような状況下におきましては、やはり組織機構の簡素化、合理化あるいは事業規模に見合った要員規模の縮小は避けて通れない課題であると私は考えておるわけでございます。作業能率の向上を図るためには、今後もちろん機動的あるいは弾力的な事業実行に努めてまいるということが基本であると私は思いますが、その中におきまして、伐採事業あるいは造林事業といろいろ事業がございますが、そういう事業間の組み合わせをしていくということも当然積極的に進めてまいらなければなりません。また、現場におきましてそれぞれ従事する職員の発想を生かしました能率的な、効率的な作業仕組みの改善の問題もありましょうし、それから効率的な機械等の使用を推進してまいるとか、それから長年にわたりまして培ってまいりました技術的な蓄積というものを生かして積極的に技術開発を進めてまいらなければならぬと思っておるわけでございます。  そこで、先生請負化との関係につきましてお触れになったわけでございますが、請負化の促進と申しますのは山村におきますところの雇用の創出にも貢献しておるわけでございますし、林業事業体整備充実をまちまして山村定住条件の改善にもこれは資するものであるというふうには考えておるところでございます。  そのような観点から、国有林野事業といたしましても、林業労働者の労働条件の向上を図るために請負事業体につきましては一般の林政施策で内容を整備充実し、経営基盤を整備しているわけでございます。また、国有林野事業としましても登録制の整備、計画的な事業発注などによりまして経営の安定強化対策をさらに一層講じていかなければならないと思っておるわけでございます。請負事業発注に当たりましても、地域の実態を踏まえまして適切な賃金に配慮すると同時に、安全衛生確保のための遵守事項につきましても指導するなどいたしまして、林業に従事する方々の労働条件の向上に資するように努めておるわけでございますが、さらに今後そういう面につきましては一層推進してまいらなければならない、かように考えておるところでございます。
  121. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私も、この雇用の促進という点ではメリットはあると思うのですけれども、問題は、今のようないわば山村の全くの過疎地、したがって余剰労働力がうんとあるところに持っていくわけでありますので、そのままの形でいったらますます賃金は低くなり、条件はさっぱり改善されないままに進んでいくのではないかというふうな懸念を持っているわけでございます。  したがって、次の問題に進みたいと思うのですが、昭和五十三年十二月二十七日の長官通達がここにあるわけです。これは「国有林野事業の素材生産及び造林の請負実行に係る林業事業体の育成整備について」という通達でございます。この通達に従いましていわゆる登録事業体ができ上がったと思いますが、現在、皆さん方の資料によりますとこの登録事業体は千三百七十九事業体ある。そうしてその内訳を見ると、会社の形態が七百十社、それから森林組合が三百六十六組合、個人が百五十四、その他の組合が百四十九事業体というふうになっておるわけであります。  さらに、これを雇用規模から見てまいりますと、五十人以下というところが全体の七六%を占めております。二十人以下をとりますと四六%。いかにも請負の登録事業体というのは零細事業体が多いわけでありまして、この通達の趣旨や事業推進上の点についてお尋ねをしたいと思います。  まずその第一点は、この通達によりまして契約をするわけでありますが、これを見ますと「一定の要件を具備した優良な林業事業体による事業実行体制」をとるというふうにしておりますが、一定の条件の中身は一体何なのか、優良事業体というのはどういう条件の事業体を言うのか、これを具体的に示していただきたいと思います。
  122. 田中恒寿

    田中説明員 お話のございました登録制度は、国有林野事業といたしまして優良な林業事業体確保するために実施しているものでございます。  登録制をとっておるわけでございますが、この登録に当たりまして、まず当該事業体の既往の契約実績それから事業の実行結果でございます。二つ目に、資本金とか保有機械の内訳等資本装備の内容でございます。それから三番目に、専門的知識経験の程度でございます。四番目に、雇用労務の内容状況、臨時とか常用とかの雇用労務の内容等につきまして提出を求めまして、これらを総合的に判断いたしておるわけでございます。
  123. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これによりますと、登録を願い出た業者の審査があるわけですね。この審査は営林局長にゆだねられておるようでございます。  審査基準というのが具体的には示されておるのかどうか、それから賃金安全対策、福利厚生、こういった労働条件は登録の際の選定基準といいますか、指導要綱といいますか、こういうものに入っておるのかどうか、このことをお尋ねしたいと思います。
  124. 田中恒寿

    田中説明員 審査基準の概要につきまして御説明申し上げます。  その概要は、一つといたしまして、資本金が五十万円以上で原則として法人格を有する者であること。二つ、原則として国有林野事業請負実績を有し、かつ、生産、造林事業ごとに一定規模の事業実績があること。三つとしまして、申請の日以前二年間において労働基準監督機関から安全衛生の勧告を受けたにもかかわらず改善をしていない者でないこと。四点目としまして、事業の実行に関して専門的知識を有する者及び労働者を指揮監督する者を確保しているものであること。五番目としまして、当該契約の施行期間中、常時五人以上の労働者確保することが見込まれる者であることなどとなっておるわけでございます。登録に当たりまして申請書を提出させ、これに基づきまして審査を行っているところでございます。  なお、御質問にありました賃金、福利厚生等につきましては、審査基準そのものには直接的な形では入れてございませんけれども請負事業体の労務改善は非常に大事なことでございます。それに資するという観点から、労働者名簿それから賃金台帳等の法定帳簿の整備をチェックすることはもちろんでございます。さらに、労災保険等の社会保険への加入状況あるいは就業規則の作成、事業体として定款または規約の整備状況あるいは安全衛生対策をどのようにして従業員に周知徹底させておるか等につきましても、これは所管の関係行政機関との連絡も行うわけでございますけれども、そういう連携を図りまして適切な指導を行っておるところでございます。
  125. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 今部長のお話の中に、そういう労働条件については特にこの審査基準には明記はしておらない、しかしいろいろ指導しているんだというふうなお話でございますので、大変結構なんですが、皆さん方からいただきました資料だけを見てみましても、登録事業体社会保険への加入状況は極めて不十分だというふうに思われます。例えば健康保険の加入は三二%の加入で未加入が六九%、雇用保険は六五%の加入で未加入が三五%、労災保険はさすがに九九%の加入、一%の未加入、厚生年金保険に至りましては二三%しか加入しておらない、七七%は未加入。これは何を意味するかと申しますと、いかに臨時的雇用が多いかということを物語っておると思います。  皆さん方の審査基準なりないしは長官通達の中でこういうふうになっておるのです。今部長がお話ししました資本装備等についての三条件、この三条件については、当分の間、これは個人経営の事業体及び任意組合についても条件を満たしておるならばよろしいということになっておるわけでありまして、これは日が浅いということもありまして指導監督その他はかなり不十分な点が多いということをあらわしておるのじゃないかと思うわけでございます。  私は、こういう意味部長にさらにこの徹底方をぜひお願いしたい、必要であれば審査基準の中にこれを加えるとか、そういう強化策をぜひとっていただきたいと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  126. 田中恒寿

    田中説明員 先生御案内のように、林業事業体は、発生の形が愛林組合でございますとか製炭組合等の非常に零細な集落の事業体から発足いたしておりますので、なかなか内容の整備は、私どもの力及ぱざるところもございますが、十分でないということは承知しております。ただし、山村に人が住むために大事な事業体でございますので、お話の趣を体しましてさらに徹底を図ってまいりたいと思います。
  127. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 ここに昭和五十八年度の年間林業労働者賃金実態調査がございます。この賃金実態調査を見ますと、大分いろんな特徴がございます。  その特徴の第一は、実際の我々の地域、私は秋田でございますが、しかも私は森林組合の組合員の一人になっておりまして、私の森林もほとんど森林組合に委託をして管理をしていただいておるということでよく経験するわけでございますが、年間の林業労働者賃金をこれだけなかなかもらっておらないというのが実情なわけです。したがって、実際に地域によってかなり差があるんじゃないか。例えば昭和五十七年に林野庁で調査されました職種、地域別一日当たりの賃金及び賃金格差表が私の手元にありますけれども、これを見ますと、北海道が一番高いといいますか、北海道を一〇〇としますと、東北が、例えばチェーンソーの伐採作業者を比べますと六四、中国、四国が六三、六七、九州が五五というふうに、大体右へ倣えなんです。九州は北海道の半分近い、むしろ半分以下というところが多いわけでございます。  このように賃金でも非常に格差が多いということと、それから実際に他の産業と比べましてもこれは低いんじゃないか、私はそう思います。例えば建設省関係賃金問題については今までも建設省関係、労働省の皆さん方といろいろ話し合うことが多いわけですが、建設省関係賃金実態調査があります。これは労働省からいただいたのでありますけれども、この賃金実態調査によりましても、五十八年の林野庁の年間労働者賃金を比べてみますとかなり安いという実態にございます。これだけでも賃金格差が非常に大きい。  北海道と九州はほぼ一対二という状態と、もう一つは、他の職種と比べてみますと年間林業労働者賃金状況というものはかなり水準が低い、この二つのことがこの表によっても分析されるわけでございます。  お聞きしたい点は、このような他の産業と比べても、それから、こういうふうな地域格差という点からしましても、皆さん方がどのようにしてこの賃金の格差をなくしていくおつもりなのか、指導監督立場にあります林野庁措置をお聞きしたいというふうに思います。
  128. 土屋國夫

    土屋説明員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘のございましたように、林業労働者賃金につきまして大変地域性があるということは、私どももそのように承知しております。何分にも企業規模の違いあるいは地場賃金の違い、そういったこともございまして、かなり地域性がございます。  果たしてこの賃金が高いか低いかという御議論でございますけれども、これはいろいろな見方があるわけでありまして、私ども先生のお手元に御提出した資料でお話がございましたが、この調査自体が若干方法等について問題がありまして、果たしてこれがどの程度全体を正確に表明しているかどうかということについては、問題なしといたしません。といいますのは、抽出率自体が大変低いという問題と、それから調査の方法自体いわゆる聞き取りという方法をとっておりますので、どの程度それが信憑性があるかどうかという問題、それからいわゆる基準外の問題、いわゆるボーナスでございますけれども、こういうものを基準内賃金の上に平均的に乗せてございますので、実際の感じと実態とは若干違いがあるという問題もございまして、そういうことをいろいろ考えますと、果たしてこのような状況であるかどうかということについては、もう少し詳細な分析が必要ではないかというふうに思っております。  我々としては、賃金寸労働条件を向上させるにはその産業自体が発展をしていくということが何よりも大事だというように考えておりますので、まず林業振興重点を置いて対処していくべきではないかなというふうに考えておるところでございます。
  129. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私も、おっしゃることの点ではかなり同感の部分がございます。私も実際はこんなに高くない、こういうふうに思うのですよ。ここに労働省調査の職種別調査額一覧表というのがございます。これは去年の六月一日から六月三十日までの調査です。毎月調査するわけであります。しかし、ここにあらわれておる賃金の実態も、実際に建設業関係で受け取っておる金額とは大分感覚的にも違うわけです。これは否めない事実だと思うのです。したがって、今おっしゃるとおり、年間の林業労働者賃金もこういうふうにあるのだけれども、実際は私も低いと思うのですよ。したがって、低い同士でいろいろ比べておるわけであります。  この点で皆さん方のお考えをお聞きしたいと思いますのは、一般公共事業の場合、三省協定賃金というのがございまして、その三省協定の賃金という言い方でそれぞれの一般の公共事業の労務単価、予算単価が決められておるわけであります。林野庁事業を予算化する場合、今言ったような実際の労働賃金をお調べになった上で労務単価を決められておるのではないかと思いますが、その点どういうふうに行われておるのか。いわゆる予算単価の出し方、これは三省賃金との関係においてどのようにされておるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  130. 土屋國夫

    土屋説明員 お答えいたします。  三省協定の定められております賃金単価というのは、先生御承知と思いますけれども、公共事業の設計などに必要な工事関係の労務単価の基準額を定めているものでございまして、林業労働者とは対象職種の対応関係もございませんので、直接的な関係にはないという実態でございます。そこで、私どもの方の予算、あるいは現実の事業運営において採用しております算定の基礎にしております賃金につきましては、各営林局におきまして地場賃金を調査いたし、それをもとに地域における林業賃金水準などを総合的に判断をして決めているわけでございます。そういうことで、三省協定とは直接関係がないということでございます。
  131. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 先ほど申し上げましたとおり、私どもが身近において見聞しておる点では、民間賃金はかなり低い水準にあるというふうに思っているわけでありますが、例えば伐採部門という点を考えましてもかなり老齢化しておる。育苗、育林というふうな、下払いだとかないしは苗を植えるとかいうような部門では、婦人労働者がもう大部分を占めておるわけであります。  そういう点からしましても、単価が大変低い水準にあるということは否めない事実だと私は思うのですが、林野事業分野でも、建設業関係と同様に、皆さん方がせっかく配慮した賃金そのものが、途中で一括下請をやられたり、ないしはトンネル事業体にやられまして、いわゆるピンはねが行われておるのではないか、私はこんなふうに憶測をされるわけでございます。元請・下請関係という関係を建設省ではかなり規制をしておるわけであります。林野庁では、このように不当な重層構造ないしは一括下請を禁止するための元請・下請の合理化要綱なり、そういったものをつくっておいでになるのかどうか。もしありましたら、私の方までひとつお届け願いたいというふうに思うのです。
  132. 秋山智英

    秋山政府委員 国有林野事業におきます請負事業につきましては、その事業規模、専門技術の必要性等から見まして、今先生指摘のような実態が発生しにくいものとは考えておるわけでございます。また、この請負契約の約款におきまして、請負者は「事業の全部又は大部分を一括して第三者に委任し又は請負わせてはならない。」ということを定めておるわけでございまして、私ども、その徹底に努めて事業の適正な実施に鋭意努力しているというのが実態でございます。
  133. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 次に、これは建設省で出しております「元請・下請関係合理化指導要綱」でございます。昭和五十三年十一月に我々の要望に従いまして新たにつくった要綱でございます。林野庁でもこの要綱が参考になると思うのですよ。これには、先ほど私、登録の際に基準を入れていただきたいというふうに言いましたが、いろいろな点が書かれておるわけであります。  細かい点ではございますが、例えば就業規則を必ずつくらせるとか、それから賃金は、労働基準法に書いてあることなんですが、「賃金は毎月一回以上一定日に通貨でその全額を直接労働者に支払うこと。」だとか、労働基準法の条項なんかも御丁寧に入れておられるわけです。さらに、災害発生した場合には元請に必ず報告することだとか、「雇用保険、健康保険及び厚生年金保険の保険料を適正に納付すること。」だとか、後から私お聞きしますが、「建設業退職金共済組合に加入する等退職金制度を確立するよう努めること。」だとか、建設省の場合、こんなふうなところまでかなり細かく指導しておるわけであります。これを出したからといって、それじゃ建設業関係事業体が全部うまくいっているかというと、決してそうではありません。ありませんが、やはり監督行政、監督官庁としてはこれだけのことはやらなければならないということなんです。  長官、建設省にこういうふうなサンプルがありますので、こういったものをさらに強化するという点でどうお考えでしょう。
  134. 秋山智英

    秋山政府委員 私ども、今後の研究課題として取り組んでまいりたいと思います。
  135. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 労働省にお尋ねしたいと思います。  今までお話をしてきました林業労働者のこうした賃金の実態、これを労働省は一体どう見るのか。例えば就業規則や労働者名簿ないし賃金台帳、こういったものがないという事業体がかなりあるというふうに言われております。私はその資料を持っておりますけれども、こういうふうな実態はもう零細企業が多いということからして十分うなずかれるわけでありまして、しかも、先ほどの林野庁のいわゆる登録要綱によりましても、法人だけに限らず登録されておりますから、これはむしろ当然だと思われるわけです。こういうふうな問題に対しまして、労働省はどういう対処をされるのか。  また、労働災害の実態を見ますと、かなりの労働災害がいまだに発生しているわけであります。これは林野庁から見せていただいた資料でございますが、五十三年から五十八年までのいわゆる林野事業における職員の労災事故でございますが、災害件数は五十七年千五百五十七件。もちろん毎年少なくなっておるのです。この努力は認めます。しかし、死亡事故は五十三年八人から五十八年八人まで、いまだに後を絶たない。民間労働者に至りましては、災害死亡事故が五十六年、五十七年とも五件五人ずつあるわけであります。そしてそこには、立木処分事業体死亡災害、先ほど上西委員が質問しておったのによりますと、このほかに二十四人ないし二十五人の死亡者が一年間にいるということなんです。  こういう労働災害が大変につきまとっておるという現状でございますが、労働省は林野庁並びにこのような民間企業体に一体どういうふうな指導監督をしておられるのか。また、林野庁は直用部門におけるこういう労働災害に対してどれだけの対策を立てておるのか。この点を労働省並びに林野庁にお伺いしたいと思います。
  136. 征矢紀臣

    ○征矢説明員 お答えいたします。  ただいま労働条件をめぐるお話があったわけでございますが、御指摘の点につきましては、大なり小なりそういうような実態があることは事実でございます。  まず、第一点の賃金の問題でございますが、高いか低いかという点についてはいろんな問題がございますけれども林業の場合は日額とそれから稼働日数の問題での月額の問題がございまして、日額で見ますと必ずしも低いとは言えない実態でございますが、中には例えば最低賃金に反するような例も散見されるというような問題がございます。  それから、ただいまの就業規則あるいは賃金台帳等を備えつけておらないというようなもろもろの御指摘につきましても、おっしゃるような実態があることは事実でございまして、私どもとしては年間に計画を立てまして労働基準監督官が定期監督というようなことを実施しまして、その中でそういう是正の監督指導等を行っているわけでございますが、なかなか十分な状況にないわけでございます。  いずれにいたしましても、今後ともそういう点を含めましてさらに積極的に監督指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  137. 加来利一

    ○加来説明員 労働災害の点に関して申し上げます。  災害発生状況につきましては大体先生指摘のとおりでございまして、休業災害は減少しているけれども死亡災害は遺憾ながら余り減少をしていない、こういう状況にあるわけでございます。これらの現状にかんがみまして、私どもも監督指導を中心として各種の施策をやっておるわけでございますが、そのほかに林業・木材製造業労働災害防止協会によりまして現場。パトロールや安全衛生教育その他の活動を展開することについて援助をするとともに、林野庁さんがいろいろやっておられます安全関係事業がございます、これらについて林野庁さんと連携をとりつつ推進しているというのが現状でございます。  今後ともやはり同じように林野庁十分連絡をとりながらこれらの施策を進めてまいりたい、このように考えております。
  138. 土屋國夫

    土屋説明員 国有林野事業労働安全対策についてお答えいたしたいと存じます。  申し上げるまでもありませんけれども林業労働というのは一般的に申し上げましてその作業現場が急傾斜地などであるということ、それから非常に気象条件にも大きく影響を受けるなど、作業環境というものが大変厳しいということからいたしまして、全産業の中では労働災害が多いという実態にあることは申し上げるまでもありません。  そこで、国有林野事業におきましては、労働安全の確保ということは人命尊重立場からはもとよりでありますけれども、円滑な事業の運営にとって不可欠な条件であるという認識に立ちまして、これまでも労働災害防止対策徹底に努めてきたところであります。そういうことの成果もございまして、最近における労働災害発生件数は、先生指摘のように減少傾向にあることは事実でございますけれども、大変残念なことでありますが、死亡災害等重大災害というものは依然として絶滅を期すというわけにはまいりません、発生している状況にございます。したがって、今後とも次のような事項を重点として取り組んでまいりたいというふうに考えておりまして、大きくは三つの事項について重点として取り組んでまいる覚悟でございます。  一つは、何といいましても安全管理体制の活性化というものが大事でありまして、安全管理者を中心とした安全管理体制の活性化と安全意識の高揚ということを図ってまいるというのが一つでございます。  もう一つは、行動災害が非常に多いわけでありますが、ここは技能訓練充実というものを徹底して行いまして、この行動災害をなくすということに努力してまいりたいというふうに考えております。  それから最後は、林業労働の場合の災害発生の中で大きなウエートを占めますのが製品生産事業でありますので、この事業につきまして、特に機械等整備、安全作業の確立ということに努力をしてまいるというのが私ども国有林野事業における労働安全対策の考え方でございます。
  139. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 労働省からはいろいろやりたいということなんですが、実際問題としましては監督官の数が少ない、しかも山地で、地形上もなかなか大変だというふうに考えますので、労働省は労働省でもちろん努力をしてもらいますが、その分を監督官庁であります林野庁がやはりカバーするということがぜひとも必要だと思うのです。  例えば飲料水の水質検査だとか、休憩所がない、保護具の備えつけがない、こういったところが多いというふうに言われておりますので、これを労働省が全部やるということはなかなか不可能だ。ぜひ林野庁がこういう面まで、民間請負業者の面まで安全管理といったものを広げていただきたい、この点は要望いたしたいと思います。林野庁は監督官庁と発注者という二重性格を持っておるわけでありますが、登録事業体に対しては、直用職員はもちろんのこと、今言ったような労働者の健康、安全対策、こういったことに十二分に取り組んでいただくことを要望したいと思います。  時間が大変なくなってしまいましたが、労働省に最後にお聞きしたいと思います。  林業労働者の長い懸案でありました、しかも待望しておりました林業退職金共済制度、これが発足を見たわけでありまして、大変喜ばしいことだと思っておるわけであります。その普及の実施ないしは恩典を受けておるという実態を見ますと、五万人しか入っておらないという話であります。労働省は今後このような林退共の加入促進をどうやっておやりになるつもりなのか。  それから林野庁にお聞きしたいことは、予算上の配慮をしておられるのかどうかということでございます。  この共済制度は任意加入でありますが、当分の間、一般公共事業については特別な予算上の配慮をしておりまして、強制加入と同様でございます。同じ国の事業であります関係で、林野事業の予算にこの点の配慮がなされておるのかどうか、これは林野庁にお聞きしたいと思います。
  140. 山口泰夫

    ○山口説明員 林退共についてのお尋ねでございますが、ただいま先生指摘のように、昭和五十七年一月からこの制度を発足いたしまして、ただいまで制度発足後二年を経過しておるわけでございますが、本年の三月末の状況でございますと、共済契約者数約三千百、それから雇用者でございます被共済者の数が、御指摘のように五万四千というところに至っているわけでございます。これが全体のどのくらいの割合になるかというのは、非常に難しいところがあるわけでございますけれども、私どもとしては、共済契約者数につきましてはおおむね五割程度、被共済者につきましてはおおむね六割程度というふうに見ております。  林退共制度は、通常の退職金制度になじみがたい林業の期間雇用の人たちを対象とした業界退職金制度でございまして、任意加入という前提にはなっておりますけれども、期間雇用者の福祉の向上を図るためには、ぜひともより多くの事業主の方に入っていただくことが必要だと思っております。そのために、私どもといたしましては、この制度の運営主体となってやっております建設業、清酒製造業、林業退職金共済組合あるいは林野庁、そういうところとの密接な連携を図りながら、関係市町村団体、都道府県、そういったところに制度の周知を今後とも一生懸命にやっていきたいというふうに考えている次第でございます。
  141. 田中恒寿

    田中説明員 林退共の制度は、林業労働者の就業実態に大変適した制度といたしまして、非常に望まれたことでございます。国有林関係いたします企業事業体につきましては、この制度の趣旨を踏まえまして、私ども強力に加入を推進してまいりました。準備期間から通算いたしまして日はまだ浅いわけでございますけれども、大変加入率が高まっておるというふうに私ども承知しております。今後につきましても、この制度の適切な運用を図りながら、加入を指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  142. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 予算はどうですか。
  143. 田中恒寿

    田中説明員 予算につきましては、加入の妨げとならないように適正に見込んでおるところでございます。
  144. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 最後に、大臣お願いしたいと思うのです。  今ずらっと、私、主として林業労働者状況、そして実際の請負問題、こういったことを中心にお話ししましたが、やはり何といいましても林野事業を推進するのは人の問題だと思います。ですから、林野庁の直用の部門はもちろんのこと、民間労働者皆さん方、こういった皆さん方の福祉向上のためにこれは格段の御配慮をお願いしなければならないというように思うのです。単に人減らしをするのではなくて、山村振興という観点からも何としても人間づくり。山村にお嫁さんが来るような、そんな施策。やはり私は中心は人間だと思うのです。  人づくり山づくり、これについて大臣の決意を最後にお聞かせ願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  145. 山村新治郎

    山村国務大臣 山村に働く方々が希望を持って林業に取り組んでいくためには、地域林業に活性化、これを与えなければならないと思います。林業を魅力あるものにする、そしてともにまた林業従事者の労働条件、この改善を行っていかなければならないと思います。そしてまた、山村における生活環境、この整備等を図っていくことが肝要であると考えております。このために、林業生産基盤の整備を初めといたしまして、各般の施策を強力に推進してまいります。
  146. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 終わります。  ありがとうございました。
  147. 阿部文男

  148. 島田琢郎

    島田委員 私は、前回、保安林整備法の質疑に当たりまして、極めて不本意ながら質問を保留いたしました。私が同日質疑をいたしました中で、大事な保安林整備法の改正に当たって重視しなければならないこととして次の点を指摘したのであります。それは、法律の単純延長を幾ら繰り返してみてもそれだけでは意味がない。既に三十年、今回も含めて三度目の延長でありますが、保安林機能は向上するどころか、ますます低下していると指摘されている。したがって、この機能の回復と向上は、今最も急がれる重要な保安林に対する課題でありましょうし、今度こそ本当に大きな決意のもとで、実効が上がるような改正であってほしい、こういう願いを込めて実は問題点指摘をしたのであります。  ところが、残念ながら、私はその際、新潟県の関川村の国有林の実態を実は例示して挙げながら、こういう実態の中で保安林整備法がどのように改正されていくのかの政府側のいわゆる正確なるお話を承りたい、こう思ったのでありますが、私の願いはかなえられなかった。しかも、事前にこうした問題の私なりの本法改正に当たっての意見をぜひまとめたいと思って幾つかの資料要求をいたしましたにもかかわらず、時にはないと言い、次には探さなければなかなか御期待にこたえられないと言い、それじゃ本当にないのかと言えば、あるけれども実は出せないのだと言う。これでは私はまじめな審議ができないではないか、こういうことであったわけであります。  特にその際指摘をいたしましたのは、新潟県関川村の交換された国有林は、交換理由の中で述べられておりますのは、一般林であり経済林であるというふうに言われておりますけれども、実態はそうではなくて保安林である。それをなぜひた隠しにするのか、その辺が私にとってはどうしても納得できない。保安林というのは、そもそも隠すべきものではないはずでありますし、そうした保安林を今審議するに当たって、あのような実態が単に関川村だけにとどまらず全国にあるとしたら、これは重大問題である、こういうことの指摘をしたのであります。  しかも、その後いろいろ議論をしてまいりますと、当該保安林の施業が必ずしも正確に行われているとは言えない。厳しく言えば、かなりでたらめな施業である、こういうふうに私は感じました。特に森林法によって保安林施業が義務づけられているにもかかわらず、指定施業要件が正確に指定されていないばかりか、とりわけ大事な山づくりの基本であります伐採の限度あるいは植栽というのがこの指定施業要件から欠落をしているというのは、まさに手抜きの放置状態にあると言ってもいいのではないか、こう思っているのであります。  そもそも法を改正して特定保安林施業を取り込んでみても、前段申し上げましたように、幾ら法律整備してみたって、その裏からしり抜けになったり、単なるつじつま合わせでその場しのぎを繰り返しているようでは、法律の持つ効力も発揮できないばかりか、改正意味も全くないではないか、こんな疑問点を私は当日持って質疑を繰り返しましたが、誠意ある姿勢と回答を得ることができなかった。したがって、今日まで長官初め林野当局とは数度にわたりまして資料問題あるいは考え方の交換を行い、今日を迎えたわけであります。  その間の経緯については大臣もよく御承知のことと思いますが、改めてここで、私は資料の提供について十分満足しておりませんし、それからまた意見の交換を通じましても、林野庁が考えております本当のいわゆる決意のほどが私の肌に伝わってこないというのは極めて遺憾であり、残念であります。しかしながら、党の方針もこれあり、本日をもって三法の審議が終了するということでございますから、ここに一定の区切りをつけざるを得ません。しかし、私は、決してこれですべてを免罪に付したのではございません。事あるごとに私の厳しい目が常に注がれているということを御自覚願いたい。  そういう意味で、前回御答弁をいただきました中で、改めてまず見解を冒頭伺いたい、こう思います。
  149. 秋山智英

    秋山政府委員 先生ただいまお話の交換問題に係る資料の取り扱いにつきましては、二十年前の案件とありましても、資料の提出がおくれたり種々御迷惑をおかけしたことにつきましておわびを申し上げる次第でございます。また、その受け入れ財産でございます新潟県関川村の水源涵養保安林の指定施業要件につきましては、前回お答えした内容が一部正確でない点がございましたので、訂正させていただきたいと思います。  指定施業要件の内容につきましては、その後新潟県並びに前橋営林局に係官を派遣いたしまして再度詳細に調査をいたしましたところ、本件の保安林は三筆から成っておりまして、昭和五十八年二月四日に指定施業要件の変更を行っておりますが、この変更につきましては、そのうち一筆であります字田ミナロ二百四十三の一についてのみ行われたものでありまして、残りの二筆につきましては従前の指定施業要件のままであることが判明いたしました。  この結果、現在の指定施業要件の内容を具体的に申し上げますと、以下のとおりになるわけであります。  まず第一に、字田ミナロ二百四十三の一、これは約三十七ヘクタールございますが、これにつきましては、立木の伐採の方法は、まず主伐に係る伐採種を定めない、それから二つ目として、主伐に係る伐採をすることができる立木は岩船地域森林計画で定める標準伐期齢以上のものとすると定められている。次に、伐採の限度としまして、伐採年度ごとに皆伐による伐採をすることができる一カ所当たりの面積の限度は十ヘクタールとすると定められております。  その他の区域につきましては、まず第一に立木の伐採方法でありますが、主伐に係る伐採種を定めない、それから二つ目として、主伐に係る伐採をすることができる立木は岩船地域森林計画に定める標準伐期齢以上のものとすると定められております。それから植栽の要件としましては、伐採が終了した翌年度の初日から二年以内に杉またはアカマツの満一年生以上の苗をヘクタール当たりおおむね三千本以上植栽すると定められております。  御指摘の受け財産の保安林に係る指定施業要件は以上のとおりでありますが、指定施業要件の重要性は御指摘のとおりでございます。保安林機能を維持確保するため、今後とも指定施業要件の適切な設定及び運用をしてまいりたいと思っております。
  150. 島田琢郎

    島田委員 訂正ございました点については、今後厳重に、権威ある委員会におきます発言、慎んでいただきたい。  ところで、今お話ございました当該保安林の指定施業要件の設定に当たりまして、植栽を一部にせよ落とした、それは天然林の活用や天然下種更新によって施業を行おうとするやり方なのでありますけれども、それはともすると手抜きされていく危険性を伴う。しかも、その地形とか土壌というものを十分条件の中に入れて、属地主義だそうでありますが、出先において判断をされる場合に、林野庁としては的確なる指導を行っていくべきではないか、私はこう思うのです。  したがいまして、単に上木だけを切りさえずれば、またその切り方を工夫さえすれば跡地の植栽は二の次だとする考え方が先行するようであってはならぬ、森林法第三十四条の二に規定されております「保安林における植栽の義務」を空洞化するようなことがあっては私は断じて容認できない、こう思うのです。しかし、一面では規制を強化すれば林業生産活動に支障を来す、影響を及ぼすという点については、私も理解をしないわけではありません。ですから、その点については重厚な補助政策を並行して進めていくという施策が行政上必要になることは言うまでもないわけであります。その点については、当時会計検査院においてもこの山については植栽をすべきだと示唆しておりまして、そのためには相当のお金もかかるよとも実は指導しているのであります。さっぱり言うことを聞いてないのです。  そこで、私は最後の質問になりますが、関川村国有保安林に見られるような実例は、先ほど申し上げましたように全国的に広まっているとしたら大変なことだ。指摘した当該林分は、かつて栃木県那須の元国有林との交換分合によって莫大に不当な利益が小針暦二氏個人の懐に入った、国はそのために大損をしたという、いわくつきの一大事件であります。国有林であり、問題の山である、そういう関川村における大切な水資源確保のための保安林施業は、私はこれからでも非常に急がれると思います。繰り返しますが、指定施業要件を正確に発動して、立派なサンプルとなり得るような保安林施業が直ちに実行されるように私は期待したいのでありますが、その考え方を述べていただきたいと思います。
  151. 秋山智英

    秋山政府委員 この当該地の森林施業につきましては、これまで必ずしも計画どおりに実行されていない面もございますが、今後の施業の実施に当たりましては、まず第一といたしましては、人工林につきましては間伐等所要の施業の実施、二つ目としまして林地生産力の高い箇所における林相改良による人工林への転換、三つ目としまして優良広葉樹林分の維持造成、以上の三点、現地の実情に応じた適切な施業を推進してまいり、健全な森林の造成に努めてまいる考えでございます。
  152. 島田琢郎

    島田委員 最後と申し上げましたが、もう一つ林野庁長官お答えをいただきますが、指定施業要件で、別表第二の三つの条件のほかに、括弧外に注書きがございます。注というのは、先ほどから指摘しましたように、ともすれば手抜きになつたりあるいは天然下種更新あるいは天然林活用等の安上がりの保安林づくりに逃げていく心配がございます。私は、むしろこういう紛らわしいものはこの際取っ払うべきだと思います。お考えがあれば聞かしてほしいと思います。
  153. 秋山智英

    秋山政府委員 保安林が指定の目的に即して十分に機能を発揮するためには、伐採が行われました場合に、その跡地が適切に更新がなされる必要があるわけであります。植栽によらなければ的確な更新が困難であると認められます箇所につきましては、指定施業要件として具体的に植栽の方法、期間さらには樹種を定めることとされておるところでございます。  保安林機能の発揮を確保する上で、植栽に係る指定施業要件が重要な役割を果たしていることにかんがみまして、今御指摘の点につきましてはなお今後研究課題として検討してまいりたい、か  ように考えているところであります。
  154. 島田琢郎

    島田委員 さて、大臣、私を含めて各委員から林業三法にかかわります審議が行われる中で幾つかの問題点も浮き彫りになり、今後の林政のあり方についての示唆に富んだ御発言が繰り返されました。この際、私自身は特に保安林に絞って問題の提起をいたしました。大臣も終始私の質疑をお聞きになっていたと思います。  最後になりましたが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  155. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国の森林林業をめぐる状況にはまことに厳しいものがございます。また、このような状況国有林野事業の経営悪化を招く一つの要因となっておるものと考えております。これら森林林業の諸問題に対する島田委員の御関心と御熱意は、予算委員会以来よく承知しておるところでございます。  私といたしましても、今回の林野三法とあわせ、林業振興のための諸施策の展開に一層努めてまいらなければならないと考えております。したがって、国有林野事業につきましても、御指摘のあった保安林整備充実はもとより、財政問題等にも引き続き真剣に取り組んでまいりますとともに、我が国林業全体を取り巻く構造的問題の改善、打開を図るために、林政審答申でも提起された諸問題に対しまして真剣に検討し、施策の充実強化に努めてまいりたいと考えております。
  156. 島田琢郎

    島田委員 終わります。
  157. 阿部文男

  158. 田中恒利

    田中(恒)委員 林業三法の問題につきまして大変長い時間をかけて審議をしてまいりましたが、私が最後の質問者になったわけであります。  二十名の委員先生方がそれぞれの立場で御質問をせられたわけでありますが、私はここでできるだけお聞きをさせていただいたのですけれども森林あるいは国有林、こういうものをめぐって、一つは資源としての山の持つ今日的重要性、治山治水を初め国民のレクリエーション、大気、さまざまな目に見えざる山の持つ価値、そういうものを大切にしたいという各委員のお気持ちが、いろいろな角度からいろいろな形で展開をされてきた、こういうふうに理解をいたしております。私どもは一口にこれを森林の持つ公益的機能と称しておるわけでありますが、そういう側面が今大きく問題になっているように私は感じました。同時に、国有林自体が持つ今日の財政的な危機、赤字問題に象徴されるこの事態、そして国全体が持つ財政上の厳しさ、こういう中でどうすればいいのかというあがきも、皆さんの中からは言わず語らず語られてもおるし、特に農林水産省林野庁当局はこの問題について四苦八苦をしている。この二つの要素が組み合わせられて当委員会の議論が展開をされてきた、こういうふうに私は終始御意見をお聞きしながら感じさせられてきたところであります。  大臣はそれこそ終始お座りになってお聞きをせられたわけでありますが、まず勇頭に、大臣はこれらの皆さん方の御意見をどういうふうに受けとめられたのか。私は先ほど申し上げましたような立場で受けとめましたが、まず大臣の率直な、これはたしか予告なんかしていないと思いますが、大臣はまことにありのままの方であります、率直な御意見をこの際ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  159. 山村新治郎

    山村国務大臣 森林林業、これはただ単に木材の生産ということではなくて、今先生おっしゃいましたように国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保護、これらを含め公益的な機能を有する重要なものでございますし、そしてまた同時に、これは国民の生活にかけがえのない緑資源というものでもあると思います。いろいろ御議論をいただいておりますうちに、これはただ単に一林野庁、一農林水産省ということではなくて、政府が、そしてまた国を挙げて、国民と一体となってやるべき事業であるということを痛感いたしました。今後ともこれらのPRを重ね、そして政府部内におきましても森林林業というものに対する理解をもっと深めていかなければならないというぐあいに感じております。
  160. 田中恒利

    田中(恒)委員 今の大臣の御答弁で私の考えでおりました大臣質問の一つは多少明らかになったつもりでありますが、なおこの際、念のために確認をさせていただきたいと思います。  三月十三日の本院の予算委員会総括で我が党の川俣委員が最終総括質問に立ちまして、林業問題を取り上げております。その際、中曽根総理大臣は、非常に関心を持っておる、非常に重視をしていきたい、こういうことを明言せられております。それから竹下大蔵大臣も、この問題は内閣全体として受けとめる、こういう姿勢を明らかにせられて、農林水産省の検討を受けて大蔵省としても積極的に取り組みましょう、こういう御発言もせられておる。大臣も今述べられたようなお気持ちをあの委員会で明らかにせられておるわけでありますが、このことは、この林業三法の論議に当たって当委員会としても中曽根内閣の林業問題に対する基本として私は再確認をしておきたいと思いますが、大臣、御異議ございませんか。
  161. 山村新治郎

    山村国務大臣 さきの予算委員会でも申し上げましたとおり、林政審議会答申で提起されている財政措置事項等のうち改善期間の延長、退職手当に係る財政措置については、国有林野事業改善特別措置法改正を現在御審議いただいておるところであり、その他の問題についてもその方策について引き続き真剣に検討してまいる所存でございます。  また、国有林野事業の経営悪化は我が国林業全体を取り巻く構造的問題とも深くかかわり合っており、こうした構造的問題の改善、打開を図るため、答申で提起されている問題等についてあわせ検討し、その施策の充実強化に努めてまいる考えでございます。
  162. 田中恒利

    田中(恒)委員 文字に書いて御意見を述べてくださいと言えば大体そういうことになるんだと思いますが、具体的に絞っていけば、明年度の政府予算の中に林業振興政策というものがどういう形で投げかけられてくるか、私はこの問題はここに尽きていくと思うのです。いろいろたくさんな問題はあるわけですけれども、少なくとも政府が施策として進めていく上には裏打ちが要るわけであります。そういう意味で、財政的な処置がどうなっていくかということが、とどのつまり落ちるところであります。当面、私たちはこの委員会で三法の議論をいたしましたし、予算委員会でも相当この問題は議論されておる。同時に、今日我が国の国民の各階層の中に、緑の問題というのはまさに国民的コンセンサスとして形成されておる。これは日本国だけではなくて世界の資源という立場で、この問題は人類の問題とまでされておる。こういう状況の中で絞っていけば、明年度の国家予算の編成に当たって農林水産大臣が山の緑を保全し強化していくためにどれだけの対応策を立てていくかということを、中曽根内閣として明らかにしてもらわなければいけないと思うのです。  そういう場合に、例えば竹下大蔵大臣は、この間、来年の予算もまたゼロシーリングというか、マイナスシーリングだということですね。一律五%なのか七%なのか、そこまではよく承知いたしておりませんが、恐らくことしょりももっと厳しい予算の編成段階に入っていくと思うのです。そういう場合に、昨年の手法を見ましても、各省一律とか、防衛予算など膨らんでおりますから全部一律じゃありませんが、しかし、一応軒並みに下げていく、こういう形がとられておる。農林水産省内部も同じようなものが全体としてはとられておる。しかし、林業予算についてはことしも御努力をせられた節を私どもよく承知いたしておりますが、問題は来年のそういうマイナスシーリングという予算編成段階で、内閣としてあるいは主管大臣としての農林大臣として、農林水産省内部はもとよりその他の省に向かってこの緑の問題、山の問題にどういう姿勢で取り組んで、少なくともこの委員会なりあるいは予算委員会で総理、大蔵大臣農林水産大臣が言明された線を具体的に予算の数字でお示しをいただくことはできるかどうか、このことをお尋ねをしておきたいと思うのです。
  163. 秋山智英

    秋山政府委員 ただいま大臣が御説明申し上げましたが、先般の三月十三日の予算委員会におきましても大臣が答弁を申し上げましたが、その答弁を踏まえまして、私ども新たな改善計画の実施の過程におきまして関係方面の理解と協力を得ながら真剣に、かつ早急に検討を進めてまいる考え方でございます。
  164. 田中恒利

    田中(恒)委員 長官、私はそれは納得いかぬ。新たな改善計画に基づいてというのは、今出されておるものでしょう。これは退職金の分を一般会計から借りることができるという、今我々が審議しておる法案の内容でしょう。そういうものでは済まされないということが前提になっているわけでしょう。
  165. 秋山智英

    秋山政府委員 重ねて申し上げますが、先ほど大臣が申し上げましたように、林政審議会の答申の提言のうちで引き続き検討を要する諸問題でございますから、当然のことながら林政上の諸施策も昭和五十九年度この改善計画を策定実施する過程におきまして真剣に各方面の理解、協力を得ながら取り組んでまいりたいということであります。
  166. 田中恒利

    田中(恒)委員 それは、例えば財政措置としては四項目を林政審は答申しておりますね。そのうちの二項目、つまり退職金の問題と期限を延長するという問題はこの法案の中に織り込まれておるけれども、その他の二つの借入金の問題それから非経済林の区分の問題、こういう問題などを含めた今の国有林財政の改善方策についてはまだ触れられていないわけですが、そういう問題も来年度予算の中に入れるということですか。  同時に、林政審答申は五項目程度の一般林政についての問題も明らかにしておりますね。そういうものも含ませて来年度予算の中で反映していく、こういうふうに理解してよろしいですか。
  167. 秋山智英

    秋山政府委員 重ねて申し上げますが、林政審答申には幾つかの提言がございます。それらの問題につきましては新たな改善計画、ごれから五十九年度におきまして策定するわけでございますが、その実施の過程におきまして関係方面の理解、協力を得ながら取り組んでいくということでありまして、できるだけ早く検討を進めてまいるわけでございますが、先生今御指摘の例えば非採算林分の問題につきましては五十九年に調査費が計上してございますので、これについてはまず五十九年度に公益的機能の高い林分を主体とした調査検討を進めるということでありまして、それがすぐ予算に響くかどうか、この検討の結果でございます。
  168. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは大臣に答弁してもらわぬとだめですよ。これは改善計画の中でやるということになりますと、改善計画第三条に基づく林道を中心とした例の政令がありますね。あの中に織り込まれておるようなものの中で一般会計から多少考えていただくということは改善計画の中でやれるということですけれども、山の問題では改善計画の中でやれないその他の問題があるでしょう。二十名の各委員皆さん方から指摘をされた問題の中に、そういうものがたくさんあったわけです。そういうものも含ませて、中曽根内閣なり山村農林大臣がこの林業問題について来年の予算編成を目指してこういう決意と、できればこういう課題を中心に取り組むというところまで明らかにしていただきたいと思うのですが、いかがですか。これは大臣ですよ。
  169. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいま長官から申し上げましたように、種々検討すべき問題があろうと思います。これらにつきましてできるものはやっていくということで、全力を挙げて六十年度予算にはひとつ頑張っていきたいと思っております。
  170. 田中恒利

    田中(恒)委員 頑張っていくということはいつもみんなが言うことでありますが、大臣の性格からして一そうでないと、ことしの予算の総括の最後の段階で総理の言ったことも、全く何かきれいごとを言っただけで済むのだ、その場逃れというふうに理解をされては困るわけでありますの一で、しなければいけない問題は、保安林の問題だっていろいろ指摘があったとおりでありますし、それから一般林政の問題だって、あるいは山村振興の問題だって、たくさんあると思います。そういう問題について、ゼロシーリングで厳しい財政事情であることは私どももわかりますよ。わかりますが、やはり緑問題、山問題というのは相当力を入れなければいけない農林水産省としては課題になっておるのじゃないか、このことを私は申し上げたいので、大臣の御答弁は今の程度でよろしゆうございますけれども、よっぽど腹を締めてかかってもらいたい、このことを要望して、以下、具体的に若干そういう問題について私どもの主張を申し上げてみたいと思います。  一つは、国有林の今日の財政の重圧は、やはり借入金が相当大きくなって、借入金の金利負担が何といっても国有林財政を一番大きく圧迫しておるわけであります。この問題については、たしかこの特措法が成立いたしました時点でも、当委員会の附帯決議の中に、国有林財政の長期借入金については民有林などの動向を十分見ながらできるだけ改善をしなければいけないという附帯決議もあったはずですし、林政審答申の中にも明確に財政上の援助を求めておると思います。そういう状況でありますが、いまたしか財投の金利は七・一%になっておると思いますが、民有林森林の借入金は、いろいろございますが、一番高いのでも五%でしょうか。だから、二・一%くらい差があるわけですね。内容についてはいろいろ御意見はあるようですけれども、ことしの借入金はたしか二千二百七十億くらいですから、二・一%の差というと大体四十七億くらいのものじゃないですか。こんな程度のものは、例えば来年の予算の段階で大臣としてあるいは林野庁長官としては、これは前々から言っておるわけですが、恐らくきょうのこの委員会皆さんの御意見や附帯決議などでも明らかにされていると思うのですが、この程度のものは前向きに解決をしていく、こういう姿勢はございませんか。あるいはそのためにこういうことを考えておるというような対応策はございませんか。
  171. 秋山智英

    秋山政府委員 六十年度の予算につきましてはこれから検討をしていくわけでございまして、今先生指摘民有林に対する助成措置国有林に適用せよという話でございますが、そのまま国有林に適用することはできませんけれども、今後とも所要の財政措置を図るとともに自主的な改善努力を一層徹底しまして、経営の健全性確保努力してまいりたい。したがいまして、そういう中におきましていろいろと財政措置等についても本格的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  172. 田中恒利

    田中(恒)委員 償還期限の延長の問題もやはり問題になっておる。これは何も来年の予算は今から考えるのだというようなことじゃなくして、もう何年も前から問題になっておるところでありまして、委員会の意思としても金利の問題と期限の延長の問題は明らかにしてきたところなんですよ。それもどうですか。
  173. 秋山智英

    秋山政府委員 ここ数年間、償還期間の延長につきましては検討を重ねてまいっておりますが、他の財投対象事業との均衡などいろいろ問題がありまして、実は現在まで実現しないで来ているわけでございます。  しかしながら、借入条件の改善につきましては先般の林政審答申におきましても検討する必要があるという御指摘をいただいておりますので、私ども引き続きこれにつきましては検討しなければならない課題だと考えております。
  174. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣大臣ばかりあれしてもいけぬのかもしれませんけれども、この問題は何も今に始まったことじゃありませんし、農林省自体が毎年予算編成のときにほぼそういう方向に向けた予算要求をやっておるのですよ。やっておるのですけれども、なかなか大蔵の壁がかたいのでしょうか、崩せない。この金利ないし償還期限の問題は、そういうことが繰り返されてきておるわけでしょう。ですから、さっきの話の続きじゃありませんが、竹下さんは農林省の検討を待って一緒に内閣全体として大蔵省も前向きに考えます、こう言っているわけですから、こういう問題をひとつ持ち出してもらいたいと思うのですよ。  予算の編成はもう入るわけでしょう。そんなに長くないでしょう。もう内部的には作業が始まっているくらいじゃないですか。ですから、私は何年も前から言い続けてきたことであるし、農林省自体が予算請求の中にその線に沿った要求をしておるわけですから、それを物にし得るかどうかというところは山村大臣の腕にかかっておると思うのですが、いかがですか。
  175. 山村新治郎

    山村国務大臣 先生おっしゃったのはよくわかりますので、御要望として承りまして、これから交渉でございますので、頭に入れて交渉にかかってまいります。
  176. 田中恒利

    田中(恒)委員 それから、国有林の中で採算林分というか、経済林というか、そんなものは大体どの程度あるのですか、国有林の林分区分の中で。
  177. 秋山智英

    秋山政府委員 いわゆる採算林分という区分で国有林の内容を調査したあれはございません。したがいまして、私ども今年度から予算をいただきましたので、それらの問題について取り組んでまいりたいと思っております。
  178. 田中恒利

    田中(恒)委員 しかし、林政審の審議の際に、何かA、B、C、Dとかというふうなことでこの程度この程度というようなものを出してはいませんか。
  179. 秋山智英

    秋山政府委員 あれにつきましては本当の概定でございまして、やはり今後具体的にもっときめの細かい調査をしていきませんと、これにつきましては何%程度ということは申し上げにくい関係もございますので、私どもはこれからこの問題についてはひとつ本格的に取り組んでまいりたいと思っています。
  180. 田中恒利

    田中(恒)委員 長官、経済林とは何だ、非経済林とは何だ、こういう要素の区分をし始めるとなかなかこれは難しいと思うのですね。それは、山は全部水を蓄積しておるわけだから、そういう意味ではそういう要素もありますし、純然たる経済林というのは全く収支採算が成り立つという林分だけというようなことでやれば、地域的にも限られてくると思うのです。それは難しいと思いますが、私も実はどの程度あるかと思って一、二調べたのですけれども、いろいろ数字が違うものだからはっきりしたものをちょっと聞きたいと思ってお尋ねしたわけです。我々が聞いておる範囲では、二〇%台と言う人もおるし、三五、六%か七、八%台と言う人もおるし、多少違うわけですが、大体三分の一ぐらいが国有林として通常木材の状況がこういう中でもやり方によっては十分やれる、こういう状況を持っておるけれども、あとの七割はなかなか現実問題として、これほど山の奥にあるところが特にこういう材価の低迷の中ではやれといったってやれるものではない。本来、国有林自体はそういう意味では経済林というか企業経営というか、そういうものにはなれない性格のものだ、こういう理解を私などはしておるわけであります。  そういう意味では、今も多少いろいろ御苦労せられて一般会計からの繰り入れがなされておりますけれども、この際やはりその辺の調査もやられるということでありますから、調査をきちんとしてみて、公益機能というか、国として、国民全体としてやはり支えなければいけない分野というものを明らかにして、財政的な対応もそれに即応するような方策を考えていく、こういうことはやはりどうしてもやらなければいかぬのじゃないか、こういうふうに私などは思っております。また、我が党は、そういう意味で、この法律改正の中にそういう分野については一般会計からの繰り入れというものを明らかにすべきだ、こういう提案をしてまいっておるところでありますが、この点について、長官、どういうふうにお考えになりますか。
  181. 秋山智英

    秋山政府委員 経済林、非経済林というような区分でありますが、これは林道を入れることによって大分変わってくるという、そういう変動因子的なものがあるわけでございまして、私どもこれまではむしろそのポテンシャリティーと申しますか、潜在生産力というふうな面から、木材生産機能あるいは水源涵養機能、土砂崩壊防止機能、それから森林レクリェーション機能というふうな、そういう潜在的な力がどうあるかというので林分を調査し、それによって今後の森林の取り扱い方、森林の地帯の区分の仕方あるいはこの手法についてどう持ったらいいかということを検討していかなければならぬと思うわけであります。  ですから、やはり今申しましたようなそういう区分の方法、それに対しましてどういう管理をしていくか、森林の施業をどうするかという問題がございますし、さらには今度は受益者負担とのかかわり合いのものをどうするかという問題もございますので、これらにつきましてはやはり五十九年から調査をしていきまして、まず五十九年におきましては、先ほどもちょっと触れましたが、公益的機能の高い地域を対象として森林の公益的機能の発揮の程度を明らかにして、それに応じた森林施業方法はどうすべきか、あるいは森林の管理をどうすべきかというようなことをやってまいろう、これはそういうふうな基礎的な調査の上に立ちましてから進めてまいりたいと思っておりますので、五十九年から本格的に取り組んでまいりたいと考えておるところであります。
  182. 田中恒利

    田中(恒)委員 それから、今の国有林の会計決算方式、つまり単年度収支均衡方式ですね、この方式については森林が長期的な性格を持つという意味からもそぐわない、こういう意見もあるし、この委員会の参考人の陳述の中にも、そういう指摘が何人かの先生方からなされておるわけであります。  確かに森林経営を仕組んでいく場合に、やはり単年度だけでいくのはいろいろな意味で無理が出てくるので、長期的な収支計算というか、見通しというものを加味して林道なり造林などについてのものをどういうふうに資産に評価をしていくか、こういう問題もございましょうし、あるいは勘定区分の問題にいたしましても、やはりそういう意味の勘定というものが設定されるべきではないか。ただ収入と支出との一年間の決算だけで赤字黒字だというわけにはいかぬ、こういうふうに思うわけですが、そういう点については多少改善をされておる部分も聞いておりますけれども、今後どういうふうなお考えで取り組まれていくおつもりか、お示しをいただきたいと思うのです。
  183. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 会計制度の問題でございますが、国有林野事業特別会計におきまして、事業勘定では、現在通常のいわゆる現金収支会計のほかに、企業としてその経営成績及び財政状態を明らかにいたします財務会計方式を導入いたしておるところでございまして、よく特別会計で二千億借り入れをするというと、その二千億があたかもいわゆる赤字と申しますか、損益計算上の損失であるように誤解を受けるわけでございますが、御案内のとおり、この借り入れば造林とか林道の事業施設費に充てているわけでございまして、貸借対照表の上では資産にその投資の額が計上されてくるわけでございます。当然のことながら、現金収支会計におきましてはこの歳入と歳出、これは年度の収支が強く出てくるものでございますけれども、この場合にも企業会計でございます国有林野事業の勘定の性格あるいは林業生産の長期性ということにかんがみまして、単年度の自己収支の枠によって制限されないようにということで、長期的な視点で資金を確保するという観点から、特別会計法の中に長期借入金の外部資金の導入の規定がございますし、それから、一般会計と違いまして持ち越し現金の任意使用といったような制度が認められております。したがって、実質的にはかなり長期的収支を考慮した会計方式をとっておるというふうに考えておるわけでございます。  また、財務会計方式につきましては、他の現業や民間企業と同じように、経営成績なりあるいは財政状態を明らかにするということで、財産の増減なり異動をその発生の事実に基づいて経理をいたしておりますので、これらの経理は企業会計原則に準拠して行っているところでございます。こちらの方では、超長期を要します造林等に投資された経費につきましては資産として資産経理をいたしておりますので、これらに係る支出はその年度の損益計算には直ちにはあらわれませんで、当該林木が伐採されましたときに費用と収益の対応ということで費用化されるという形になっておりまして、損益の計算及び資産の表示が林業の長期性を反映できるような仕組みに基本的にはなっておるというふうに考えております。  この辺の仕組みについて、往々国有林野赤字というふうなことで十分御理解を得られないまま借入金と損失が混同されたりしているような面もございますので、そういうふうなことにつきまして、私どももいろいろ御理解を得るような努力もやり、また今の会計制度が御指摘のような林業の長期性にのっとった形で、より適切に機能するように努力をしていきたいと思っております。
  184. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、前からこの会計制度ですね、企業方式での決算の結果というものに疑問を持ってきているわけです。特に山の場合は、いずれにせよ四十年なり五十年なり成木になって切るまでにかかるわけですから、その間の成長量を標準伐採量と相殺して、そこで余り関係ない、こういう解釈をしておる。これもよく考えてみると、いろいろ問題があり過ぎるほどある。一体森林の質、価格だけで表示されるのではなくて、質の問題も面積だけでやられたのではどうにもならぬような気もしますし、そういう意味の問題もあると思います。これは一番大きな問題だと思います。かつて余りにたくさん切り過ぎてしまって、そこから一つの大きな問題が出てきておる、我々はこういう理解をしておるわけでありますけれども、そういう問題も含めて、この際林野庁の会計制度の中で不合理なものを相当大胆に突き詰めていただいて、直すものは直していく、こういうふうにしてはどうかと思いますが、この点についてはどういうお考えですか。
  185. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 先ほどお答えを申し上げましたように、一応現在の企業特別会計の制度は、林業のような超長期の事業を経営いたします場合に、会計処理として、その特性を反映したような扱いができる仕組みになっておるというふうに私どもは考えております。もちろんその運用は、今ちょっとお話が出ましたような木材の評価というものが簿価で出ておるのが保守主義に過ぎるような評価になっていないかとか、いろいろ運用上の問題はあろうかと思いますけれども、基本的に林業になじまない会計制度だというふうには私ども考えておらないわけでございます。
  186. 田中恒利

    田中(恒)委員 これはちょっと私もまだ納得いきませんけれども、後でまた時間がありましたら別途に議論させていただきたいと思います。  特措法の改正で、目標は七十二年に収支が均衡する、こういうことでありますが、実際は六十八年ということだと思いますが、これは一口に言って可能かどうか、その根拠になるものを幾つかお示しいただきたいと思います。
  187. 秋山智英

    秋山政府委員 国営事業の長期にわたります収支見通しにつきましては、まずその収入の大宗を占めます林産物販売に依存しているために、自由な市場で形成される木材価格の動向に大きく影響されるわけであります。それから物価、賃金等の支出を構成する要素につきましても、社会経済の変動によって大きく影響を受けるものが多いわけでございます。これらの要素につきまして一定の見通しを立てるというのは大変難しいわけでございまして、私どもいろいろ試算はいたしましたが、これを公式の場で申し上げるのは非常に困難であろうと思っているわけであります。
  188. 田中恒利

    田中(恒)委員 経営改善計画というものがこれから十年間立てられるわけですね。十年先の見通しを立てて収支が均衡していくのだ、こういうことで本法は提案されておると思うのです。ところが、今林野庁長官のお話を聞くと、この中身になるもの、つまり木材の材価が一体どれだけになるのか、物価がどうなるのか、賃金がどういう水準になるのか、こういう基本的な前提がなかなか予測しがたい。それでは、これは全く紙に書いたもので、六十八年に均衡いたします、こういうことは言えぬじゃないですか。  前回の特措法のときも同じようなことがあって、結局これは五年経過しただけで修正をしなければいけない、こういうことになったわけですが、この形でいけば、この法案は今度はもう五年どころか二、三年で状況の変化、特に材価の今日の低下、低迷が継続するとすれば、またこれはやり直さなければいけない、こういうことになるのですか。
  189. 秋山智英

    秋山政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、木材価格の問題、物価の問題、賃金の問題あるいは要員規模の問題、いろいろ要素の変動がございますので、これを見通すのは非常に難しい面があるわけでございまして、私どもも幾つかの前提条件を置いて、確かに林政審議会では論議はしました。しかしながら、各種の前提条件の中で例えば木材価格等を見てまいりますと、過去三十年ぐらい、二十八年から五十七年までの三十年間の木材価格を見てまいりますと六・四%でございますが、しかしながら長期的に見てまいりますと、地球規模では木材価格のもとになります資源が減少するというふうな見通しもございます。そういう中で、我が国がまだ当分の間は外材も輸入していかなければならぬ、こういうこともございますので、これらの論議もいろいろと見方によって幾つかの見通しがなされるわけでございまして、私ども、大勢といたしましてはある程度の上昇率は見込まれるであろうというふうな審議会の先生方の御意見等もございまして、木材価格につきましても幾つかの見通しを立てながら、また賃金につきましてもいろいろの見通しを立てながら、いろいろと経営努力をしながら、七十二年に収支の均衡を図るための措置を検討しておるわけでございます。  目標としては、大変厳しい中でございますが、私どもはそういう木材価格の見通しなり、あるいは私どもの組織機構の改善合理化、要員規模の縮減問題等いろいろ自主的努力をやりながら、また自己収入の確保をより一層努力しながら、七十二年に収支均衡を図るという目標に向かいまして鋭意努力してまいりたい、こういう考え方でございます。
  190. 田中恒利

    田中(恒)委員 この法案の審議に当たって、七十二年収支均衡というのは一つの目標で、従来の法律改正するわけですが、その場合には当然七十二年に至るまでの長期の収支の見通しというものがあるはずだと思うのです。それは林政審などでも議論されたということも聞いておりますが、それはなかなか発表できないということなのですが、これもちょっと国会としては納得いかないことですよ。一体材価は幾らに見ておるのか。例えば四・五%、五・五%、あるいはさっき六・四%とも言われましたが、それぞれそういう種類のものを幅はあってもやはり示して、この段階ではこういうふうになる、こういうものが出ないと、これは果たしてやれるのかどうかということもわからないのに、こちらはまじめに一般的な議論だけ繰り返している。こんなことではどうも理屈に合わぬ、私はこういうふうに思います。ですから、長期の収支の計画といったようなものがあるはずでありますから、それに基づけば大体こういう程度になると思うというようなところはどうですか、大ざっぱに御報告をしていただいて。
  191. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 収支の見通しということに相なりますと、例えば収入一つをとりましても、自己収入とそれから財投の借り入れ、あるいは一般会計からの繰り入れ、こういうようなものがいろいろあるわけでございまして、きちっと一本の収支の見通しをあれするということになりますと、現時点で、例えば一般会計の繰り入れとか財投の金額とかというものを今後十年間にわたって一応公式の計画として表に出すということになりますと、先ほど来いろいろ御議論のあります財政措置についての検討とか、そういうことが今後進みました場合にかえって足かせになるような場合も出てくるわけでございまして、その辺の事情につきましては、田中先生、何とぞ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  192. 田中恒利

    田中(恒)委員 後で結構ですが、できましたらその資料を見せていただけませんか。
  193. 後藤康夫

    ○後藤政府委員 林政審でいろいろ委員からの資料要求によりまして前提条件を置いた試算をいたしたものがございますが、これは後ほどお見せをいたすようにいたします。
  194. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、長官も言われたけれども、確かに木材の価格がどうなるかという問題が最大の山ですよね。ですから、材価の形成に対してどういう林政というものが裏打ちされるかということは、これは同時になされないとこの改善計画そのものも成り立たぬと私は思うのです。  そういう意味では、これは各委員先生方も御指摘になったように、国産材の需要というものがどれだけ拡大をしていくのか、あるいは拡大をさせていくのか。需要というものは、これから単に座して待つということじゃないので、みずからがつくり上げていく、これが中心でありますから、林野庁も多少、さっき武田さんのお話しのような立派な家づくりのモデルなんかもつくられておるようですが、そういう姿勢は必要だと思います。しかし、一番最初、自民党の先生ですか、国産材の需要の見通しはどうだったと言われて、これもわからぬという話じゃなかったですかな。私は、それではちょっとずさん過ぎるというような気がしてならぬわけであります。ですから、国産材をどういう状態に持っていくかという問題。  それから外材。いろいろ言っても外材です。外材がこれほど入ってくる。農産物の自由化の問題で、この間オレンジ、牛肉で大分大臣も骨を折られたけれども、この自由化の問題の最大の山は木材だったわけですよね。木材を自由化したおかげが今日の日本の山になってきておるのですよ。自由化の問題というのは、長期的に日本の農業や林業をずたずたにしておるのです。私は、あのとき完全自由化が阻止できなければ一定の規制を加えるべきだったと思うのです。それをともかくだんだん自由化してしまって、これはパルプ資本の要請が強かったのか船舶の要請が強かったのか知りませんが、ともかくあの時点以来、日本林業というのは決して上向いていない。だから、今になっていくと、こういう情勢になったから外材について規制するのはなかなか難しいとおっしゃるけれども、やはり外材に対する何らかの規制対策を講ずる以外に道はないと私は思うのです。養蚕なども二国間協定をやって、曲がりなりにも農林省自体が骨を折っていらっしゃるでしょう、中国や韓国に対して。私は、やはり山についても、国際的にもそういうようなものにかわるものを、あるいはそれに類するものを何らかの形で処理をしていただく必要がある、こういうふうに考えます。それがないと、私は材価、日本の国産材というものはなかなか、これは国有林なんか特に国がやっておるといったって、市場の一〇%でしょう。木材流通量の一割しか持ってないのですから、一割ではどうしても価格形成力は持ちませんよ。ですから、外材なりあるいは国産材全体の需要政策というものをどうつくり出していくか、これはこの法案を裏打ちする大きな政策だと思うのです。そういう点についてはどういうお考えですか。
  195. 秋山智英

    秋山政府委員 我が国の今後の木材需要に国産材で対応する場合の問題でありますが、現在の我が国の森林資源の現況から見てまいりますと、当分の間相当量を外材に依存しなければならぬという実態にあるわけでございます。したがいまして、私ども現在木材の需要に見合った外材輸入という形をとるためには、まず短期の見通しを的確にしながら、それに見合った形でもちろん国産材の供給、外材を円滑に入れていく、こういうことをせざるを得ぬわけでございます。  そこで、こういう国際経済情勢下におきまして強権的な制約を加えるということは非常に難しいわけでございますので、私どもは外国とのGGベースの話し合いあるいは情報交換等を通じながら、的確な需給見通しを立てながら行政指導を進めてまいることが大事だと思いますし、また、木造率が若干下がってきておりますことはやはり代替材との関係の競争もございますので、国内の森林につきましては林道、作業道等生産基盤を整備しまして、コストの安い、足腰の強い林業地帯をつくるということにさらに努力をしていかなければならない、かように考えておるところであります。
  196. 田中恒利

    田中(恒)委員 林野庁長官のお仕事の立場では、今お答えをいただいたようなことになる面も多いと思います。思いますが、今日の森林問題、山問題というのは、余りにも外部的条件の方が強過ぎる。そこに構造問題ということを我々が口にし、政府もしばしば口にせられておる問題があるわけでありますから、そういう外部条件に向かっても林野庁なり農林水産省が大胆に胸を張って進むという姿勢がないと、ただ内部だけをいじって内部だけで事が済むというようなものではこの問題は済まないというふうに私は思っておるし、皆さんだって腹の中に思っておると思うのですよ。だから、思い切って外の条件をどういうふうに整備をしていくかというところにまで目を向けなければいけないと思います。そこに私が申し上げたように、政治的には中曽根内閣全体が取り組んでもらわなければこの山問題というのは解決できないですよ。そういうふうに思います。そういう点を申し上げておきたいと思います。  それから、後少しまだ時間がありますから、同僚議員の質問の中で重ねて大臣林野庁長官に確認をしておきたいことがございますので、二、三御質問をしておきたいと思います。  一つは、国有林野法改正案をめぐりまして、小川議員の質問に対して、政府特定の法人や団体に買い占められないように配慮しなければならない、こういうふうに答弁をしていらっしゃるわけでありますが、これは具体的にどういうことをお考えになっておるのか。我々といたしましては、国有林野法改正で、つまり分収育林制度というものが、国有林がいつの間にかだれかの手に握られるということになっても困るし、それから民有林もこれをやっておるわけでありますが、民有林国有林とがこの問題で競争し合うということも困るし、本来国有林は国がやるべきことであるから、むしろ民有林に力を入れなければいけないという要素の方が強いと私は思っておるのです。しかし、国民参加の山づくりというような意味からすればうなずけないことはありませんが、ただ懸念されますことは、将来日本の山というものが特定の人々なり企業なりに握られる、相当な影響を持たす、こういうことでは大変だと思いますので、そういうものについての具体的な規制の処置などをお考えかどうか、この際改めて御質問しておきたいと思うのです。
  197. 秋山智英

    秋山政府委員 国有林に分収育林制度を導入するという考え方の基本につきましては、緑資源の造成につきまして国民理解を一層高めるということが大きな目的になっておるわけであります。  そこで、私どもこれを実施するに当たりましては、公募抽せん方式によりまして広く参加者を募ってまいる、こういう考え方でございます。今御懸念ございました特定の者に集中することによる弊害があってはなりませんので、これについては十分配意した進め方をしてまいりたいと思っております。
  198. 田中恒利

    田中(恒)委員 私どもは、これは何らかの規制の措置を講ぜなければいけない、こういうふうに考えておりますが、そういう意味も含まれておる、こう理解してよろしいですか。
  199. 秋山智英

    秋山政府委員 公募に当たりまして十分そういうことも考えていくと同時に、もう一つ、これまでの国有林野事業と申しますと、地域振興という面から非常に密接な関係がございますので、十分地域の町村の意向も聞きながら、地域振興に役立つような方法も配慮した形で進めてまいりたいと思っております。
  200. 田中恒利

    田中(恒)委員 それから、これは日野委員の質問の中に出されておるわけでありますが、つまり、今不良造林地というのが、私どもの調査によると五万ヘクタール程度ある、こういうふうに我々は計算をして出しておるわけですが、この不良造林地の実態を明確に把握していただきたい。そして、これに対する緊急な対応を施業として打ち立てていただきたい。つまり、除伐なり間伐なりあるいはつる切りなり改植なりいろいろあると思うのですが、そういうものを早急にやらなければいけない山が放置されておる、これについての議論がなされておるわけでありますが、これをいつごろまでに調査をしていただくのか、あるいはその結果を私どもの方にお知らせいただきたい、こう思っております。  その対応をどういうふうにしていくか、あわせてお答えいただきたいと思うわけであります。
  201. 秋山智英

    秋山政府委員 造林地の実態につきましては、基本的にはこれは地域の施業計画樹立の調査でやっておりますが、また毎年事業計画の一環として現地を調査して、経営管理の一環として的確に把握してそれぞれの実態に即した形で造林地の保育管理をし、不成績の造林地の解消に努めてまいるわけでございますが、御指摘の点につきましては十分留意してこれから対処してまいりたいと思っております。
  202. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは大臣にお尋ねをしておきますが、島田質問で明らかになったわけでありますが、保安林改正あるいは法律の延長は繰り返されておるわけでありますけれども、問題は保安林整備法に基づく正しい運用が行われておったかどうかということをめぐって島田質問が繰り返されて、御承知のようなやりとりが行われたわけであります。つまり、保安林整備法の一つの大きな柱になっております指定施業要件というものが正確に運用されておったかどうかということについて、ある意味ではもう昔の話だからと言えばそれまでですけれども、内容的にはまことにでたらめな方法がとられてきたわけでありますが、そういう点を二度と繰り返してはなりませんし、そのことは極めて重大な問題であります。  そういう意味で、保安林の指定施業要件というものを的確にこれから守らしていく、こういうことをこの席ではっきりと大臣から御言明をいただきたい、こういうふうに思っております。同時に、保安林に対するいろいろな助成強化などにつきましても、今後とも真剣に取り組んでいただきたい、このことを特に私の方からも大臣にお尋ねをしておきたいと思うわけであります。
  203. 山村新治郎

    山村国務大臣 島田委員保安林につきましてのいろいろな御指摘をいただきました。この御指摘の趣旨を踏まえて、今後とも一層の努力をしてまいります。
  204. 田中恒利

    田中(恒)委員 あと少し時間がありますから、残されました時間だけ質問させていただきますが、国有林野の資産の売却の問題が林政審答申で示されております。六十三年度三千億、七十二年度までに六千八百億の土地なり林野なり、建物もあるのでしょうが、そういうものを売却をしていくという形で収入をふやしていくということでありますが、これについて年次別な計画や見通しはあるのかどうか、あればひとつお示しをいただきたい。  それから、この問題は地元へ行きますと関係市町村を初め関係住民の皆さんにとっていろいろ関係の深いことでありますから、この問題については地元の意思を十分踏まえて取り扱っていくということをここで明らかにしていただきたいと私は思います。  それから、この問題は度を過ぎると売らなくてもいいものを売ってしまう、特に国有林の使命、つまり国有林が立派な国土を保全し立派な森林をつくっていくということと相反するようなことになりかねない面もかつて一、二あったわけでありますが、そういう面も含めて国有林業務の活動に支障を来さないような立場で資産の処分問題が取り扱われていくと理解してよろしいか、この点をお尋ねしておきたいと思います。
  205. 秋山智英

    秋山政府委員 国有林野事業を推進するに当たりまして、当然のことながら、私ども国有林野事業として管理運営する必要のあるものについては十分守ってまいる所存でございます。とは申しましても、自己収入の確保は極めて重要な問題でございまして、私どもの持っております不用財産はもちろんのことでございますが、あるいは土地につきましても高地価地域を売却し、低地価地域に移るというような問題も考えなければなりませんし、また、これを進めるに当たりましては地元皆さんと十分話し合っていくことは当然でございまして、これは十分考えてまいります。  なお、今後の長期の計画につきましては今後検討するということでございまして、現在持ち合わせておりません。今後いろいろの情勢を踏まえながら検討してまいろうと思っております。  なお、最後の問題にもかかわるわけでございますが、私ども国有林野事業を推進するにおきましては、先ほど申し上げましたように、木材の計画的、持続的供給の問題あるいは国土保全の充実強化の問題、農山村振興に寄与するという課題、これらの問題に十分配慮しながらこの問題にも取り組んでまいりたい、かように考えておるところでございます。
  206. 田中恒利

    田中(恒)委員 質問としては最後、今の問題と連動しておるわけでありますが、部分林の設定の問題が触れ合いの森などを通してだんだん大きく出始めてきておるわけでありますが、これもこれまで森林組合その他林業団体などとの契約事項が、部分林ということになると個人になるわけでありますから、そういう意味ではこれまでのようにきちんとした森林の管理、山の管理、機能の発揮に必要な諸施業が十分に行われなくなるという心配もあるわけであります。また、林野庁から見ればこれまた収入源の素材という視点も強く出てくると思いますが、こういう点についてはひとつ厳格に、部分林といえども山づくりを見逃さないように指導を強く進めていただきたい、こういうように考えるわけであります。  この点についてお尋ねをしておきます。
  207. 秋山智英

    秋山政府委員 部分林につきましても、緑資源の確保という面から従来の地元施設制度をさらに拡充してまいるわけでございますけれども、今先生指摘の点につきましては非常に重要なことでございまして、部分林といえども中身についてはより充実した森林として持っていかなければならぬわけでございますので、そこには十分配慮してまいりたいと思っております。
  208. 田中恒利

    田中(恒)委員 以上で私は質問を終わらせていただきます。  大臣との質疑のやりとりの中で、非常にはっきりはいたしておりませんが、大臣の山に対する施策を強めて国有林の再建に向かって全力投球をしていく、こういうお気持ちだけは感じたつもりであります。具体的には、明年度予算編成をめぐってその大臣のお気持ちが実るかどうか、私どもも、静かにではございません、バックアップに努めたいと思っておりますので、ぜひこの危機に瀕した日本林業、特に国有林の立て直しのために、そういうところに具体的な目を向けて御努力をいただきたい、このことを強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  209. 阿部文男

    阿部委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。
  210. 阿部文男

    阿部委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  211. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  212. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対し、上草義輝君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。上草義輝君。
  213. 上草義輝

    上草委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同一公明党.国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同を代表して、保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、最近における林業生産活動の停滞により森林の施業が十分に行われないため、保安林機能が低下している状況及び保安林の果たす役割の重要性にかんがみ、その機能を一層充実させるため本法の施行に当たっては、左記事項の実現に努めるべきである。      記  一 保安林の国土保全、水源かん養等公益的機能の発揮に対する国民的要請の増大に応えるため、必要な箇所への保安林の指定、造林等保安林機能回復のため行う措置を早期に完了するよう努めること。  二 保安林の適切な整備を図るため、治山.林道事業及び造林、保育等についての積極的な助成措置を講ずるとともに、人工林の間伐、保育等の促進のための森林整備計画制度を積極的に活用すること。  三 保安林機能を維持、確保するため、適切な指定施業要件の設定及び適正な施業を図り、保安林内の立木の伐採、林道の開設に当たっては作業方法等について適正を期すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程などを通じ既に委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  214. 阿部文男

    阿部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  上草義輝君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  215. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
  216. 阿部文男

    阿部委員長 次に、国有林野法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  国有林野法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  217. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  218. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対し、衛藤征士郎君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。吉浦忠治君。
  219. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同を代表して、国有林野法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     国有林野法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、分収育林制度の円滑な発展に資するよう左記事項の実現に努めるべきである。      記  一 国有林野における分収育林制度の実施に当たっては、地元関係市町村と協調し、地元関係者の定住条件の整備、推進のための環境づくりに寄与するよう努めること。  二 森林林業について都市住民等国民理解と協力を深めるとともに、分収育林契約の募集に当たっては、特定の法人や団体に偏ることなく多くの国民が契約できるよう努めること。また、将来の国有林野事業の財政に支障をきたさないよう配慮すること。  三 分収育林の実施に当たっては、その保育及び管理について国の責任確保するよう努めること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程などを通じ既に委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は承略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  220. 阿部文男

    阿部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  衛藤征士郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  221. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
  222. 阿部文男

    阿部委員長 次に、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  この際、本案に対し、日野市朗君から修正案が提出されております。  修正案について、提出者から趣旨の説明を求めます。日野市朗君。  国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕
  223. 日野市朗

    ○日野委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本社会党・護憲共同提案国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明いたします。  御承知のとおり、今日地球的規模で緑資源の枯渇が問題化しており、森林を育てることが国際的にも緊急、切実な課題となっています。言うまでもなく、森林は木材の生産水資源の涵養、大気の浄化、自然災害の緩和、自然環境の保全、保健休養の場の提供など国民生活にとって不可欠な資源であります。しかしながら、我が国の森林林業は、高度成長期を通じた乱開発と過伐による資源の減少と荒廃、山村の人口流出、過疎化による森林管理機能の低下と低成長下の長期不況による危機的な状況は深刻であります。  我が国の森林林業の中核的役割を担うべき国有林野事業の財政、経営の危機的な状況も、この日本林業の危機と不可分一体のものとして進行しているのであります。そして、我が国最大の林野所有者であり林業事業体である国有林野事業の改一革、再建なくしては我が国森林林業の再生、振興はあり得ないのであります。  しかるに、本委員会提案されました政府国有林野事業改善特別措置法の一部改正案は、林政審答申を受けて現行法の七十二年度収支均衡の目標を変えず、改善期間の延長と退職金に関連する資金対策のみの改正案であり、国有林野事業の外部、構造的要因に基づく経営悪化に対する抜本的な打開策を持たず、これでは早期再建はおろか、七十二年度収支均衡は到底おぼつかないことは明らかなのであります。  私は、かかる欠点の多い政府案を抜本的に修正し、国有林野事業の持つ公益的機能の重視など三大使命を総合的に発揮させ、林政審答申の指摘する財政措置等をも盛り込み、七十二年度収支均衡の目標達成を図れるよう提起しているのであります。  以下、修正案の要旨を御説明いたします。  まず第一に、本法の趣旨に国土の保全、水資源の涵養、良好な自然環境の保全など公益的機能の維持増進、林産物の計画的、持続的な供給、農山村地域振興への寄与等国有林野の三大使命を明らかにしたことであります。  第二に、改善計画の期間を昭和五十九年から昭和七十二年までとし、改善計画で定めるものについては、第二項第二号を「国有林野森林資源整備に関する事項」とし、第六号として「国有林野事業の改善に必要な資金の確保に関する事項」を加え、なお国有林野事業の使命が総合的に発揮できるよう充実したのであります。  第三に、一般会計から特別会計への繰り入れとして、まず治山事業森林保全管理事業森林レクリエーション事業、林木育種事業保安林に係る造林事業などの経費は当然経費として繰り入れるものとし、この他の造林、林道の開設、改良、災害復旧事業経費についても予算の定めるところにより繰り入れ、財政的措置を明らかにしたのであります。  なお、退職手当に係る借入金等につきましては、政府案どおりであります。  第四に、資金の貸し付けにつきましては、資金事情の許す限り特別の配慮をするものとし、借入金に係る資金の償還期間等について、資源の育成途上にあるところから緩和措置をとり、借入金の利子についても一般会計から予算の定めるところにより繰り入れることにしたのであります。  以上が修正案の要旨であります。何とぞ速やかに御決定くださるようお願い申し上げます。
  224. 阿部文男

    阿部委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見があればお述べいただきたいと存じます。山村農林水産大臣
  225. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府としては反対であります。
  226. 阿部文男

    阿部委員長 これより討論に入ります。  国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤征士郎君。
  227. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております政府提出、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に賛成し、日野市朗君から提出された同法律案に対する修正案に反対する討論を行います。  御承知のとおり、国有林野事業は、過去、我が国の経済社会の発展に大きな貢献をしてまいりましたが、長期的に海外森林資源の減少が見通され、また緑資源の整備についての国民的な要請が強まる中で、将来国有林野事業が果たす役割はますます大きくなってまいります。  一方では、その財務事情の悪化により、国有林野事業は、その本来期待される林産物の計画的、持続的供給、国土保全、水資源の涵養等の森林の有する公益的機能の発揮、農山村地域振興への寄与等の使命を十分発揮できなくなるおそれがあります。  したがいまして、国有林野事業は、国民の負託にこたえるため、事業運営の全般にわたり改善を進めることにより経営の健全性を確立していくことが、ぜひともやり遂げなければならない緊急な課題となっております。  このような観点から、以下、私は、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に賛成する理由を申し述べます。  第一は、この法律案が現行改善計画の抜本的な見直しと自助努力の一層の徹底を基本として提案されていることであります。  国有林野事業の財務事情が悪化している要因はさまざまなものがあり、その中にはひとり国有林野事業の責めに帰すことができないものがあるのでありましょうが、組織、要員体制が過大であること、能率向上がなお不十分であることなど、みずから改善を図るべき要因もまた多くあります。国有林野事業の経営の健全性の確立とは、収支均衡の回復等の財務の健全化はもとより、事業規模に見合った組織、要員体制で能率的な事業運営を行うことが必要なことは論をまたないところであります。  今回の法律案が、臨時行政調査会及び林政審議会の答申を踏まえ、自助努力の一層の徹底を基本として提出されていることは高く評価されるべきものと考えられます。  第二に、自助努力の一層の徹底とあわせて、国有林野事業の経営改善を促進するための所要の財政措置を講じていることであります。  森林資源は、二十一世紀のために私たちが守り育てていかなければならない貴重な資源であり、一時の財務事情の悪化のゆえをもってこれをおろそかにできないものであります。今回の法律案においては、財務事情にかんがみ、造林、林道開設等に要する経費の一般会計からの繰り入れを六十八年度まで延長するとともに、今後急増する退職手当の財源措置を講じてこれに対処しようとしております。  もちろん、こうした財政措置の前提として自助努力が必要であり、非効率的な事業運営を温存して財政資金を投入することは、国民理解と同意を得られないのみならず、健全で適正な経営基盤の確立を不可能にするものと言わざるを得ません。  なお、この法律案は、これまで申し述べましたように、この点について十分考慮されているものと考えられます。  このことをもって私ども自由民主党・新自由国民連合はこの政府提案法律案に賛成するものであり、日野市朗君提出のこの法律案に対する修正案は、公益性の名のもとに財政措置を求めることに偏り過ぎ、自助努力をおざなりにすることになるのではないかという点で反対であります。  以上をもって政府原案に賛成、修正案に反対する討論を終わります。
  228. 阿部文男

  229. 新村源雄

    新村(源)委員 ただいま議題になりました国有林野事業改善特別措置法の一部改正案につきまして、私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、政府提出の改正案に反対をし、日本社会党・護憲共同の修正案に賛成の立場から意見を申し述べたいと思います。  二十一世紀に向けて人類の課題は、平和な国際環境づくりと自然環境問題だと言われております。言うまでもなく、木材は輸入できても森林は輸入できないのであります。  森林は、木材の生産水資源の涵養、大気の浄化、自然災害の緩和、自然環境の保全と保健休養の場の提供など国民生活にとって不可欠の資源であり、資源小国と言われる我が国にとって森林資源こそ唯一の再生産可能の資源であり、国産材時代の到来近しと言われるように、木材の自給率の飛躍的向上を求める時代が間近に来ているのであります。今こそ切実な国民的要請にこたえ、国家百年の大計のもとに日本森林林業とその中核である国有林野事業の民主的再生と再建策を確立しなければならないときであります。  しかるに、本委員会提案されました政府国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案は、林政審議会が、新たな政策展開なしには七十二年の収支均衡の達成は困難であるとし、財政措置及び一般林政等の施策の充実強化を提起しているにもかかわらず、現行法の七十二年度収支均衡の目標を変えずに、改善期間の延長、退職金に関する資金対策のみの改正案であり、国有林野事業の経営悪化に対する構造的要因に対し何らの抜本的打開策を持たないまま対応しているのであります。これでは、早期再建はおろか、七十二年の収支均衡は到底おぼつかないのであります。  そして政府案では、当面的に自助努力のみの改善策に追われ、本質論には触れておらす、これでは国有林野事業の再建どころか、ますます手抜き施業による国有林野の荒廃をもたらし、そのツケを後世に回す愚かな施策と言わざるを得ないのであります。  今国有林野事業の再建、充実のために緊急に必要なことは、我が国森林林業の中核的存在である国有林野事業の使命、役割が総合的に発揮できるように明確に位置づけるとともに、国有林資源の充実、保育重視の計画的な施業の遂行、国有林野事業の使命達成にふさわしい事業実行形態及び運営のあり方、使命達成に必要な機構、要員の確保充実、財政措置についても抜本的見直しを図らなければならないのであります。  日本社会党・護憲共同提案の修正案は、まさに国有林野事業改善計画を抜本的に見直したものであります。  まず、趣旨の中に公益的機能の維持増進、山村地域振興などの修正をすることは、まことに時宜に適したものと言わざるを得ません。林政審答申にも、国有林野事業の公益的機能の強化を強調しているのであります。  また、改善計画を七十二年までとし、森林資源整備、そして必要な資金の確保をうたったことは、国有林野事業の使命達成の上から当然のことであり、資金計画もない改善計画は絵にかいたもちに等しいのであります。  また、一般会計から特別会計への繰り入れとして、治山事業を初め、森林保全管理、レクリエーション事業などを当然経費として繰り入れることは、非経済林としては当然であり、公益的機能を果たす上からも絶対必要な経費であります。  また、借入金に対する償還期間の延長、借入金の利子補給など民有林並みの措置がなぜとれないのか。私は、国有林野事業が赤上宇になるのは、これら財政措置がとられていないことに大きな要因があると思うのであります。  私は、今こそ国有林野事業の再建とその使命達成のため、日本社会党・護憲共同の提案しております修正案の実現を図るべきだと主張し、各位の御賛同をお願いして意見を終わります。
  230. 阿部文男

    阿部委員長 中林佳子君。
  231. 中林佳子

    ○中林委員 私は、日本共産党一革新共同を代表して、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。  国有林野事業は、国土面積の約二割、全森林面積の約三割を占める国有林野国民共通の財産として管理経営しており、林産物の計画的、持続的な供給、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全形成、保健休養の場の提供等の森林の有する公益的機能の発揮、国有林野の活用、国有林野事業の諸活動等を通ずる農山村地域振興への寄与など国民経済及び国民生活の上で重要な使命を担っています。  国有林野事業の使命を達成していくためには、経営の健全性が確保され、林業の特性を考慮した適切な施業と投資を通じて、森林資源整備充実が計画的に行われることが必要であります。  政府は、昭和五十三年以降、改善計画により要員一万人余の削減、四営林局の支局化、十六営林署、二百五十九事業所の廃止など管理経営組織の大幅な縮小と、労働者への労働強化、請負事業の拡大による直用事業の縮小、また赤字補てんのため一万一千ヘクタール、八百八十八億円の林野、土地の売り払い、低収益、不採算事業地域からの撤退など減量経営の強化が行われてきました。  しかし、今年度予算を見ても、国有林野事業特別会計は、歳入の四一・四%が財投からの借り入れであり、歳出の二〇・一%が借入金の償還と支払い利子に充てられています。今年度末の借入金残高は一兆一千四百六十一億円に達する見込みであります。経営改善の主目的であった財政再建は、逆に一層困難な状況に陥っています。  国有林野事業をこのような破綻状態に導いた原因は、第一に、かつての高度成長時代の過伐、乱伐による森林資源の減少、第二には、その木材資源が紙、パルプ大企業などへ大量かつ安価に供給されたこと、第三に、当時の黒字分の半額が一般林政費などへ使用されたこと、第四に、採算性ではかれない保安林など公益的林野が六〇%近くあること、第五に、大企業の意を受けた政府の外材依存政策、低賃金政策による住宅建設の減少など木材需要の大幅な減退、木材価格の低落にあります。  このように国有林野事業を今日の状況に追い込んだのは、経営合理化など内部努力の不足にあるのではなく、基本的には政府の大企業本位の林業政策による国有林野経営にあることは明白であります。  今回の改正案は、改善期間の延長や退職手当財源の財投からの借り入れ及びその支払い利子の一般会計からの繰り入れを行うこととしていますが、その一方で、国有林野事業の経営悪化を理由に要員と営林署など機構の大幅縮小、そして天然施業、立木販売事業請負化を進め、労働者に一層の犠牲を押しつけ、山を荒廃に導く方向を強めています。また、大規模な林地、土地の売り払いなどによって大企業の進出を進めるものであります。  国有林野法改正し、分収育林制度を導入することにより、外部資金の導入を図ることとしていますが、小口投資者の保全など将来の見通しも明確でないばかりか、口数に制限を設けないなど一部の投資家に集中する危険性があるものです。  林政審答申に沿った今回の改正案は、国有林野事業の真の改善に逆行するばかりか、重要な使命、経営の放棄に突き進むことを指摘せざるを得ません。  我が党は、国有林野事業が持つ使命を発揮し、真に国民経済、国民生活に寄与するために要員、機構の充実確保を図り、公益的機能の分野まで一般会計から必要な資金を導入することはもちろん、外材の秩序ある輸入、木材需要の一層の拡大を図ることが重要であると考えます。  この際、社会提案の修正案について一言申し述べておきます。  臨調、林政審答申に沿った予想される改善計画を抜本的に是正する上では不十分でありますが、公益的機能の分野まで政府責任を明らかにする点は一定の評価ができるものであります。  以上の点を指摘し、反対討論を終わります。
  232. 阿部文男

    阿部委員長 これにて討論は終局いたしました。
  233. 阿部文男

    阿部委員長 これより国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決に入ります。  まず、日野市朗君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  234. 阿部文男

    阿部委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  235. 阿部文男

    阿部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  236. 阿部文男

    阿部委員長 この際、本案に対し、田名部匡省君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。小川国彦君。
  237. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党・革新共同を代表して、国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     国有林野事業改善特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は本法の施行に当たり、わが国の森林林業の重要性とその中核的役割をになうべき国有林野事業の推進に当たっては、長期的総合的な展望に立って自助改善努力はもとより構造的問題の打開策について政府全体の問題として左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。      記  一 森林資源国民の生活向上及び国民経済の発展にとって極めて重要な役割を果たしており、国有林野事業の使命である林産物の計画的な供給、国土の保全、水資源のかん養、良好な自然環境の保全等公益的な機能の維持増進を図るため、森林整備拡大に必要な措置を積極的に講ずること。          二 国有林野において公益的機能を一層発揮させるため一般会計からの繰入れ等財政上の援助措置を積極的に講ずるよう努めること。    また、借入条件の改善の問題については早急に調査検討を進めること。  三 新たな改善計画の策定に当たっては、国有林野事業をめぐる構造的要因を認識し、財政措置及び一般林政等の充実強化について、策定及び実施の段階において国民各層の意見を徴し、円滑に推進するよう努めること。  四 組織機構の整備に当たっては、地方自治体及び関係団体等の意見をも踏まえつつ、地元サービスの低下をきたさないよう慎重に対処すること。  五 国有林野森林資源を維持培養するため、不成績造林地、緊急に保育施業を要する林地、荒廃林地等の実態を把握し、不成績造林地等の解消に努めること。  六 国有林野事業の推進に当たっては、生産技術の開発、高品質材の有効、公正な販売、材価の市況調査、木材需要の開発を推進し、収益性確保に努めること。  七 国有林野事業の収益確保のため木材販売については、新たな販売戦略を積極的に導入し、価格評定及び契約方法等木材販売のあり方を検討しつつ適切な木材販売に努めること。  八 木材需要の拡大を推進し、国内需要動向に応じた需給安定を期するとともに、木材の輸入についての産地国との政府間協議に際しては、国産材の自給率及び利活用の向上等に配慮し、木材関連産業の積極的な振興を図ること。  九 林業労働者を将来にわたって安定的に確保していくため林業振興策とあわせ林業所得の増大をはじめ、雇用関係の明確化、労働条件の抜本的改善、労働安全衛生及び福祉の拡充等の施策の整備充実を図るとともに、林業労働の特質を踏まえ林業従事者の経済的、社会的地位向上に努めること。  十 山村地域森林資源を有効に活用し、林業生産活動の活発化、就労機会、所得の増大及び生活環境基盤の整備などについて市町村等を主体とし、地域の実態に即した山村地域林業振興等に努めること。  十一 林業事業体等の健全な育成を図ると同時に、雇用関係の明確化、労働条件等の改善を図るため、林業事業体等に対し、法令・通達にもとづく指導監督を強化し、あわせて国有林内での安全対策について積極的な指導.監督を行い優秀な林業労働力の確保に必要な労働環境改善に努めること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程などを通じ既に委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  238. 阿部文男

    阿部委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  田名部匡省君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  239. 阿部文男

    阿部委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
  240. 阿部文男

    阿部委員長 この際、ただいま議決いたしました各案に対する附帯決議に関し農水水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山村農林水産大臣
  241. 山村新治郎

    山村国務大臣 ただいま御可決いただきました三法案の附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  242. 阿部文男

    阿部委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 阿部文男

    阿部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――      〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  244. 阿部文男

    阿部委員長 内閣提出地力増進法案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。山村農林水産大臣。     ―――――――――――――  地力増進法案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  245. 山村新治郎

    山村国務大臣 地力増進法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農地の土壌は農業生産の基礎であり、地力の増進を図ることは農業生産力の増進と農業経営の安定を図る上で不可欠であります。  しかしながら、最近における農業を取り巻く情勢の変化に伴い、有機物の施用の減少、作土の浅層化等地力の低下が懸念されろ事態が生じております。  また、近年、土壌改良資材の種類が多様化し、生産量も増加しておりますが、その品質表示については、統一的な基準がないため、農業者が安心して使用できないという問題が生じております。  このような状況に対応して、的確な地力増進対策を推進する体制整備するとともに、土壌改良資材の品質表示制度を創設することとし、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一に、農林水産大臣は、地力の増進を図るため、土壌の基本的な改善目標その他地力の増進に関する基本指針を策定することとしております。  第二に、都道府県知事は、土壌の性質が不良な農地が広く分布する地域を地力増進地域として指定し、この地域内の農地について地力の増進を図るための具体的な対策指針を定め、これに即して必要な助言、指導等を行うこととしております。  第三に、土壌改良資材の品質表示の適正化のための措置についてであります。  農林水産大臣は、土壌改良資材について品質に関する表示の基準を定めるとともに、必要と認める場合には製造業者等に対し、指示、公表等の措置をとり得ることとしております。  なお、本法の制定に伴い、耕土培養法は廃止することとしております。  以上がこの法律案提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  246. 阿部文男

    阿部委員長 補足説明を聴取いたします。小島農蚕園芸局長
  247. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 地力増進法案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下、その内容につき若干補足させていただきます。  まず第一に、地力増進基本指針の策定についてであります。  この指針は、農業者及びその組織する団体が地力の増進を図るための技術的な指針であり、その内容といたしましては、土壌の性質の基本的な改善目標、土壌の性質を改善するための資材の施用、耕うん整地など地力の増進に必要な営農に関する基本的な事項等を定めることといたしております。  第二に、地力増進地域についてであります。  地力増進地域の指定の要件といたしましては、地域内の農地がおおむね不良農地から成り、その不良農地について営農上の方法により地力の増進を図ることが技術的及び経済的に可能であることといたしております。  都道府県は、地力増進地域を指定したときは、その地域について地力の増進を図る上で必要な事項を明らかにするため対策調査を行い、この結果に基づき、地力増進対策指針を定めることとしております。  その内容は、当該地域に係る土壌の性質及びその改善目標、地力の増進に必要な営農に関する事項等としております。  また、都道府県は、この地力増進対策指針に即し、地域内の農業者等に対し、地力の増進を図るために必要な助言、指導等を行うとともに、必要に応じ、土壌の性質の改善状況について調査を行うこととしております。  第三は、土壌改良資材の品質表示の適正化のための措置についてであります。  農林水産大臣は、一定の土壌改良資材につき、品質に関する表示の基準、すなわち、原料、用途、施用方法など品質に関し表示すべき事項及び表示に際して製造業者等が遵守すべき事項を定めることができることとしております。  農林水産大臣は、表示の基準を遵守しない製造業者等に対し、表示事項を表示すべきこと等を指示し、その指示に従わない者については、その旨を公表することができることとしております。  また、これらの措置を講じても表示の基準が遵守されない場合には、さらに強制力のある命令を発動することができることとしております。  なお、このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上をもちまして地力増進法案提案理由の補足説明を終わります。
  248. 阿部文男

    阿部委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。      ――――◇―――――
  249. 阿部文男

    阿部委員長 内閣提出農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上西和郎君。
  250. 上西和郎

    上西委員 私は、この法律案につきまして、その提案の理由その他について厳しく反論しようと思いません。ただ、少なくとも私のような新人の目から見ますと、今はやりの言葉で言うと整合性に欠ける点があるのではないか。また、こういうことをやったら具体的に一体どういう現象が起きてくるのか、幾つか理解しかねる点がありますので、順次お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一点は、本法が昭和二十七年に十万円という限度額を決めてから今日まで幾たびかの法改正が行われ、最後の第九次の改正以降、それだけでも二十年を超えるのに、この限度額については何らの変更も改定も行われずに、ある日突然と言ってよい今次のやり方、この必然性といいましょうか、三十万円に引き上げたその具体的な理由を少しく御説明をいただきたいと思います。
  251. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘がございましたように、この暫定法につきましては法制定以来何回か改正が行われておりましたが、なお基本的な枠組みは維持されてきたわけでございます。  今回の改正も、実は基本的な枠組みを変えるというふうな性格のものではございませんで、制定以来におきます物価、賃金の動向等から、また、事務の合理化等の視点から採択限度額の引き上げを図る、また同時に、最近における農林漁業の進展等に対応いたしまして、新しい補助対象の追加を行うという性格のものでございまして、基本的な枠組みについてはこれを堅持しているつもりでございます。
  252. 上西和郎

    上西委員 ただいまのお答えについて、私、基本的な疑問があるのであります。政府、お役人の皆さん方は官僚として政府機構に責任をお持ちになる。私たち議員は選挙民を含む国民責任がある。臨調をおやりになった土光さんはだれに責任を持つのか。私、極めて基本的な疑問があるのであります。臨調で言われたから、具体的にはおっしゃいませんけれども、そうでありましょう。臨調が言ったから、何か神の声みたいにおっしゃいますが、それを信じているのは風見鶏だけじゃないかと私は言いたいのであります。土光さんは後世にわたってだれに責任を持つ立場にあるのか、私は素朴な疑問があります。それに踊らされて一気に十万円を三十万円にお引き上げになったのではないか、そういう素朴な疑問があるのでありますが、重ねてお尋ねしたいと思います。
  253. 森実孝郎

    森実政府委員 確かに、私先ほど申し上げませんでしたが、臨時行政調査会の第三次の答申におきまして、災害復旧費の補助金については一件当たり被害額が極めて低いものについても支出されているのだけれども、その最低額の見直しを行い、引き上げを図ること、それからもう一つは、書類審査の活用等事務の簡素合理化を図ることという指摘があったことは事実でございます。  私どもの今回の改正は、この臨調の答申があったからしたというふうに直結しているわけではございませんが、当然この臨調答申の趣旨は政府としても尊重する姿勢をとっております。しかし、先ほど申し上げましたように、一つは、採択限度額の引き上げというのは法制定以来の極めて大幅な物価、賃金等の上昇があって、それを手直しすることが制度の本旨からいってもまた事務の合理化からいってもふさわしいと判断されたこと、それからもう一つは、農林漁業の進展に対応いたしまして、補助対象として新しい施設を追加する必要があると判断したところによるものでございます。
  254. 上西和郎

    上西委員 お答えそれなりにわかります。ただ、私は日本の官僚機構は世界に冠たるものだと信じております。優秀な方が本当に国民のことを、否、日本国のことを考えられて次々新しい法律をお出しになる。それは心から信頼申し上げたいと思います。内容によっては議論いたします。ただ少なくとも、臨調というある日突然あらわれた怪物が、土光さんという朝晩イワシを食うから、メザシを食うから立派だというような方が何を考えてかやり出したら、何かそれに尾ひれにつくように阿諛仰合する形での法律改定ならまっぴら御免こうむりたい。このことをあえて申し上げておきたいと思います。古きよき伝統を誇る農林水産省政府高官の皆さんにあえて苦言を呈し、以下、質問を続行いたします。  具体的にお尋ねいたします。  十万円を三十万円に引き上げたときに農業経営にはどのような影響を及ぼすのか、お答えいただきたいと思います。
  255. 森実孝郎

    森実政府委員 今回の採択限度額の引き上げによりまして、暫定法の対象となる災害復旧事業のうちどのくらい落ちこぼれがあるかということが一つの判断の基準だろうと思います。  過去五カ年の数字から判断いたしますと、箇所数では二〇・六%ございますが、事業費では二・九%ということになるわけでございます。しかし同時に、今回の法律改正では、事務の合理化並びに地域の実情等を考慮に入れまして一カ所工事の範囲を五十メートルから百メートルに大幅に拡大しております。したがって、この側面から救済されるものもかなりございます。こういったことは、災害の型なり地域の実情に応じてその影響の出方は一概に申せませんけれども、私ども実態的には大きな影響は少ないのではないかというふうに見ております。
  256. 上西和郎

    上西委員 確かに十万円を三十万円に、今の物価高の中でこれっぼっちの引き上げでは大した影響はないとおっしゃるかもしれません。しかし、この法律自体、災害復旧ということに本当に力点を置いて極力それを拾い上げようというのが立法の趣旨であった、このように私信じておりますので、今のお答えで、十万円から三十万円に引き上げた、その中の大部分は五十メートルを百メートルに拡大することによって救済できる、それも事実でしょう。しかし、絶対に落ちこぼれはないとは断言できないと思うのであります。  局長、もし仮に落ちこぼれが出たときはそれは具体的にどのように救済されるのか、お答えいただきたいと思います。
  257. 森実孝郎

    森実政府委員 現在補助対象から外れているものについては、小災害の起債の特例、またそれに見合いますいわゆる地方財政計画上の基準財政需要額への元利補給金の算入等の手続がとられているわけでございます。今後十万円から三十万円に引き上げることによって落ちこぼれるものがどの程度あるかは、先ほど申し上げましたように一カ所工事が百メートルに拡幅されたために大幅に吸収されると思いますが、事実出てくることは場所によっては否定できません。逆に言うと、今まで拾えなかったものが拾えるようになることもまた事実でございます。  そこで、これについてはやはり従来の基本的な路線に即しまして、まず一つは、市町村で実施するものについては単独事業あるいは激甚災、その激甚災の場合もいわゆる激甚災の地域指定を受けた地域とそれ以外の地域に分かれるわけでございますが、これに応じた市町村等に対する起債の確保に努めると同時に、地方財政計画上の手当てについても十分を期してまいりたいと思います。  それ以外に、少額のものにつきましては、特に農地等につきましてはやはり農家自体が若干の手直し工事を行うという形で復旧を行う場合が多いわけでございまして、そういう意味で農林漁業金融公庫の災害資金等の活用を積極的に図ってまいりたい、十分に実情を把握いたしまして必要な措置は講じてまいりたいと思っております。
  258. 上西和郎

    上西委員 ぜひそのような御配慮を十二分に、かつ温かくやっていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  次は、補助対象施設についてであります。  今回、沿岸漁場整備開発施設ということで、この点が新設されたことについては一応私は評価したいと思うのであります。ただ、つい先般建設委員会を通過いたしました公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法とのかかわり合いがどうも、新人でございますからさっと理解ができませんので、この辺との関連、並びになぜ本法にこれを新設をしたのか、及び英語でいいますとメリット・デメリットという、その効率等について少しく御説明いただきたいと思うのであります。
  259. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 このたびの法改正に伴いまして、沿岸漁場整備開発関係事業でできました施設を対象にすることをお願いしておるわけであります。沿岸漁場整備開発事業はこれからの漁業政策上大変重要な地位を占めてくるということで、災害が起きたときに対する手当てが他の公共事業に比べまして非常に乏しいということで関係者から大変強い要望がここ数年来あったわけでありますが、厳しい財政事情ということもあり、あるいは法律改正のチャンスがなかなかなかったというようなことで今日までに至ったわけでございます。今回暫定法の改正の機会を得ましたので、各方面にお願いをし、対象とすることにしていただいたわけであります。  さて、その際、先生ただいま御指摘のように、同じ公共事業の中で、いわゆる負担法ではなくて暫定法の方にどうして入れたのかというお尋ねではないかと思います。あるいはその際の差がどういうことに出てくるかということかと思いますが、先生御承知のように、いわゆる負担法は河川とか海岸あるいは道路等、公共土木事業といいますか、公共性の非常に高いものを対象として整理されております。暫定法の方は、農業用施設とか林業用施設というふうに、公共的性格はもちろんありますが、どちらかといいますと産業用施設、そういう意味では河川とか海岸などとはかなり性格を異にするものだと思いますし、受益者もある程度限定し得るというようなものが暫定法の対象になっておるというふうに私ども理解しております。そういう意味では、今回対象にお願いしております沿岸漁場整備事業につきましても、魚礁その他、消波堤、漁場造成事業、いずれをとりましても、受益者の範囲等もかなり限られておりますし、いわゆる産業施設的色彩が強いわけでございますので、負担法ではなくて暫定法の方でお願いをしようとしたわけであります。  その際にどういうメリット・デメリットがあるかということでありますが、一般論的に言いますと、補助率が暫定法では六割五分、十分の六・五でございますし、負担法の方では三分の二、十分の六・六六六というような感じでございまして、そういう意味ではほとんど差がないという形になっておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  260. 上西和郎

    上西委員 それはそれなりに今のお答え理解できるのでありますが、あとちょっと引っかかるのはよく言われる連年災でございますね。三年連続災害があったときは補助率が高められる。せつかく新設されたこの沿岸漁場整備開発のところにこの適用がないように見受けます。くどいようですが、私、新人でございますから、私の不勉強であれば御指摘をいただきたいし、何か明確な、科学的理由があってこの適用を外しておられるならば、それなりに御説明をいただきたい、このように考えます。
  261. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 災害の程度に応じまして補助率がかさ上げされるということが法律の中にあるわけであります。その中で、今御指摘のように、連年災とかあるいは私ども甚大災と言っておりますが、被害の程度の大きいものにつきましての補助率のかさ上げの措置等、いろいろあるわけでございます。  私どもの方の理解によりますと、いわゆる連年災も補助率のかさ上げの一つのやり方であるわけでありますが、漁業関係の施設、例えば漁港も同様に連年災の対象にしておりませんが、漁港とか沿整施設といいますのは、一つの市町村の中で考えてみますと、あちらこちらにぽつんぽつんというふうに数が非常に少のうございます。一方の例えば農業用水路というようなものは一つの市町村の中に張りめぐらされておるわけであります。そういう意味で、一つの市町村の中に幾つもの施設が重畳的にまんべんなく存在している場合に、これが次々と三年なら三年、連続して被災するという場合が非常に多いわけでございますが、漁港がそうでないように、沿整施設の場合にもそのような実態がない。いわば連年災が起こる可能性が非常に少ないというようなことでこの対象にしなかったということでございます。  御案内のように、災害立法というのは、実態を踏まえ、実績が相当あって、やはりこれは連年災にすべきであるというようなときにそのものを連年災の対象とするというような扱いになっておりますので、御指摘の点も、今後の災害発生の程度あるいは沿整施設がさらに将来非常にたくさんできてきて、連年災で救う必要が生ずるというような場合にはもちろん検討しなければならない点があると思っておりますが、現時点におきましてはそのような必要はない、むしろ甚大災で十分救えるというふうに考えておるわけでございます。
  262. 上西和郎

    上西委員 私は当選したばかりで、本当によくわからないのですけれども、少なくとも私の居住しております鹿児島県あるいは沖縄県などを見ますと、文字どおり台風銀座の三丁目。ここ近年、幸いなるかな余り台風が来ない、こういうことでありますが、いつ何どき固まって、それこそアベックで、トリオで来るかわからない。こうなってまいりますと、当然連年災は予測できるわけです。したがいまして、今長官お答えのように、起きた時点でということじゃなくて、やはり日本災害多発国でありますから、せっかく他の法律であるならば、やはりこの法律の中にも連年災のことは法制定の時点で御配慮いただくのが至当ではないか。それこそ優秀なお役人の皆さん方がなすべきことではないか、私は重ねてこの点を要望しておきたいと思うのであります。  同時に、第二次沿岸漁場整備開発計画の進捗率がまだ非常に低い。このままでいきますと、片一方でこういう法律ができても、肝心かなめの整備開発がおくれていけばまさに仏つくって魂入れずということになるのではないか。この点、開発計画の進捗度合い並びに完全実施の見通し等について、長官、明確な御見解をいただきたいと思うのであります。
  263. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のように、第二次沿岸漁場整備開発計画の進捗度につきましては、私どもも心を痛めているわけであります。大変厳しい財政事情のもとでできるだけの努力はしたつもりではございますが、例えば数字について申し上げますと三千四百億、調整費を含めまして約四千億円の六カ年計画の中で、現時点におきます進捗度が約三一%ということでございますので、今後相当程度の予算の伸びがなければ円満な解決、一〇〇%達成ということは率直に言いましてなかなか難しいのではないかと思っております。  ただ、御理解いただきたいのでありますが、大変厳しい財政事情の中ではございますが、本事業の重要性にかんがみまして、過去三年間をとってみましても、五十七年度は全体の公共事業の中で第二番目の伸び率を占めました。昨年、五十八年度の予算におきましては、第一位の伸び率を確保できたわけでございます。五十九年度予算につきましても各種公共事業の中では第二位の伸び率を確保することができたということで、それなり事業の重要性は公共事業の中ではきちんと位置づけたつもりではございますが、厳しい財政事情の中での予算編成であるということで、御理解をいただきたいと思うわけであります。しかし、大変厳しい事情ではございますが、将来とも残事業期間にできるだけの努力をいたしまして、一〇〇%に少しでも近づける努力をいたしたいと思いますので、御理解いただきたいと思います。
  264. 上西和郎

    上西委員 長官お答えによりまして、大変な御努力をいただいていることはよくわかります。ただ、六カ年計画のうちあと幾ばくかしか残さないのに三一%の進捗率、これではたとえどんなに立派な水産庁長官であろうとも、胸を張って国民皆さんにこれをやっておりますとは言いにくいと思うのです。ですから、努力は認めます。大変な中で一番、二番、三番と占めている、オリンピックなら金メダル、水産庁長官の労を多としますが、さらに一層の御努力を重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。  次は、共同利用施設の所有主体の拡大ということがこの中で行われます。それはそれで結構なんですが、補助率十分の二というのは大変低いのではないか、極めて素朴な疑問をぶつけたいと思います。お答えいただきたいと思います。
  265. 森実孝郎

    森実政府委員 確かに御指摘のように、共同利用施設の災害復旧の補助率が一般原則では十分の二であるというのは低過ぎるではないかという御指摘はあるかと思います。ただ、御案内のように暫定法は公共土木負担法に比べて私的性格とか産業的性格の強い側面を持った事業を対象にしておりますが、中でも共同利用施設というのは産業的側面の非常に強い事業である。それから、それ以上に実績に徴して見ますと、例えば五十六年、五十七年の災害の例でございますが、受益者一戸当たりの事業費が、一戸当たりに換算しますと約六千円でございます。非常に少額でございます。そういう点で、非常に低い補助率が妥当しているということに一面ではなると思います。  ただ、実はこの問題は、共同利用施設の補助率が現実的に作動して非常に農民に支持されております点は、激甚災で高率補助が適用されたケースが圧倒的な部分なわけです。激甚災によりましては最高十分の九まで補助率が適用されることになっておりまして、今申し上げたような点からも、激甚災の場合にウエートが高いだけに、過去五カ年間の平均の補助率は、実は五七%という数字になっております。そういった実態、施設の性格から見まして、現時点におきまして共同利用施設の補助率の一般原則自体を手直しするこtはちょっと困難ではないだろうかと思っております。なお、よく勉強させていただきたいと思います。
  266. 上西和郎

    上西委員 激甚法その他のことを合わせて平均五七%だということはお答えをお聞きしてわかるのでありますが、この種の共同利用施設の新設の場合の補助率は十分の五でございましょう。それなのに災害復旧のときは十分の二かという、いわゆる農民層からの素朴な関係者の声があることはやはり局長のお耳に入れておきたいと思って御質問したわけでありまして、今後一層事実上補助率が高まり、この法律の趣旨が生かされるように格段の御高配と御努力お願いしたいと思います。  さて、次は先ほど来盛んに御指摘の事務の簡素化というのは、官僚天国にとって至難のわざだと民間出身の私は思っております。判この数が多いほど重要書類、マル秘と書けば書くほど重くなる、それで内容は何もないということが、私、お役所をあちらこちら回ってよくわかるのです。何か局長の印鑑をもらうと偉くなる、大臣まで行ったらうんと大きな仕事をしたような印象を与え続けているのが国、県、市町村を問わずすべてのお役所に共通した現実の姿であります。だから、簡素化をすればするほど、おれは努力をしたけれども、やった仕事はつまらないんじゃないかなんということを思い込みたくなるのが、悲しきかな、お役人の習性ではないか。そういうものを打破して一気に事務の簡素化ができるならばこれは大変なことでありますが、先ほど来強調されておりますので、具体的に事務手続の簡素化はどうなるのか、ざっくばらんに言って査定業務なんかに何か具体的なそうしたことがびしゃっと行われるのか、これは本当に国民の声としてお聞きをいただき、明快なお答えをいただきたいと思うのであります。
  267. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま御指摘の点は、私ども絶えず自粛自戒しなければならない点だろうと思っております。今回の法律改正自体におきましては、二つの点を考えております。  一つは、いわゆる一カ所とみなす工事の範囲を五十メートルから百メートルに拡大いたしました。これによって申請件数は大幅に減少すると思います。それからもう一つは、採択限度額を引き上げることによりまして非常に少額な事業は採択されない場合もあるわけで、採択件数が減少するということになるわけでございます。しかし、私どもこういった法律制度の改正だけではいけませんので、やはり御指摘の点も頭に置きまして、現在、四つの点を検討中でございます。  その一つは、比較的小規模な災害等につきまして机上査定の拡大をするということでございます。もう一つは、これと非常に関連がございますが、災害復旧の総合単価の適用範囲の拡大でございます。三番目は、災害査定官が末端で災害復旧を行います場合の一存で決められます範囲が決まっておりますが、この保留額を引き上げることによって、ある程度授権の範囲を広げていきたいと思っております。それからもう一つは、地方農政局長等の権限に属しております災害関連事業費の決定権限を拡大したい。  この四点につきまして、今具体的に検討を進めておりまして、法の改正をお認め願いましたときは、あわせて運用に当たってその点を明確に打ち出してまいりたいと思っております。
  268. 上西和郎

    上西委員 局長、私あえて申し上げますが、今全く行政改革の大合唱のような中で、私なりにいろいろな意見があります。本当によくお仕事をなさっている。私、行政改革に非常に反発があるのです。ただ、そういうときに、今申し上げたように何か事大主義といいましょうか、ここまで印鑑をもらわぬといかぬのだというようなことを、やっぱり皆さん方みずから襟を正し、そして事実上簡素化を図る、書類審査などでどんどん信頼して事を処理していく。そうしますと、ああ、やっぱりお役人の皆さんは我々の味方だ、国民の公僕だということで、信頼がぐっと回復していくと思うのであります。そうした意味合いで、今お示しになった四つのことを含めて、より一層簡素化を図り、そして事務手続の迅速的確な処理、このことについて、局長、先頭に立ってやっていただきたい、こういうことをお願いしておきたいと思うのであります。次は、災害復旧事業との関連でどの程度改良復旧が行われているのか、この改良復旧の実施方針等について少しく御説明をいただきたいと思うのであります。
  269. 森実孝郎

    森実政府委員 災害復旧は原形復旧が原則であるということが暫定法制定時における基本的な原則であったわけでございます。この政府の原則に対して一番大きな反省材料となったのは、やはり伊勢湾台風であったろうと思います。この二十数年前の伊勢湾台風を契機にいたしまして、実は実態においてかなり大幅な改良復旧を認めております。端的に申しますと、原形復旧が著しく困難または不適当な場合において、これにかわるべき必要な施設を設置することを認めているわけでございます。  この趣旨は、いわば従来の機能の回復を図ると同時に、もう一つは、つくった施設に耐久性を与えていくという点に主眼があるわけでございまして、その後におきます災害復旧事業の査定におきましては、例えば堤防のかさ上げの復旧を認めるとか、あるいは頭首工につきましての改良復旧をかなり認めるとか、接続箇所についてのあわせた復旧を認めるとか、いろいろなことを具体的に処理していろわけでございます。しかし、もちろんそれだけではカバーできないわけでございまして、やはり災害関連事業をどう活用するかが大きな課題だろうと思います。この意味で、私ども災害関連事業の適用を通じまして改良復旧を十分に果たせない場所についてはその運用の改善に努めておるところでございまして、今後ともその点に努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  270. 上西和郎

    上西委員 わかりました。ただ、ここで今から私が申し上げることは、建設省の河川局あたりに申し上げた方が適当かもしれませんけれども、私、こういう体験を持っているのであります。  もう二十数年前でありますが、熊本市内の白川がはんらんして大変な災害が起きました。あのとき、私、見舞いがてら駆けつけたのであります。そして、その夜、正直言って、災害に遭ってないところで一杯飲みました。そこのおかみさん、相当の御年配でありましたが、私たちの用件その他を聞いてお話しなさったのです。一言でした。清正公様は偉かった。加藤清正はトラ退治でありますが、清正公様は偉かったと言うので、何だおかみさんと聞いたら、彼女はこう言いました。清正公様のつくった堤防は今度も切れなかった、なぜか、清正公様は水とけんかをしなかった、水の流れをやわらかく受けとめる堤防、そうした災害防止をやっておったと。今は、皆さん方もそうでありますが、一流大学を出てすばらしい知識を身につけ、勉学研さんこれ努め、水と闘うことに全力を挙げている。だから、予想を上回り計算を上回る水が来るとどんな頑丈なものもぶち壊れる。それが今度の災害の原因だ。私はまさにお年寄りに教えられました。どうかそうしたことも念頭に置かれ、頂門の一針として申し上げますので、優秀なお役人の皆さん方、このことをどこかにとどめていただくことをお願い申し上げたいと思うのであります。  次に、第三次土地改良計画との関連で若干お尋ねをしたいと思うのであります。  私の調査では、五十七年に本法の対象となった被災箇所は、農地で約四万、農業用施設で約六万八千と極めて膨大な数に上っておりますが、その辺どうもわからぬのです。○○軍団だとかなんとかいって全国的に随分いろいろな工事が行われております。何でこんなにたくさんのところが残っていたのか、対象になったのか、そういったところについて、その原因等を御説明いただきたいと思います。
  271. 森実孝郎

    森実政府委員 率直に申し上げまして、やはり特に水に関連します基盤整備事業が立ちおくれているところにおいて災害が出やすいということと、もう一つは、急傾斜地等自然条件が厳しいところで災害が出やすい、これは否定できない点だろうと思います。やはり基本は、基盤整備事業の計画的推進、特に防災事業の計画的推進を図っていくことが災害を少なくする基礎であるということは私ども痛感しております。一部の地域では、施設が老朽化した、災害でも来れば新しくなるというふうな逆説的な見方をされる方もあります。これは、私は制度としては結果論だろうと思いますけれども、こういう御批判があることは私ども絶えず戒心しなければならない点だろうと思っております。  そういう意味におきまして、やはり基盤整備事業の計画的推進を図ることも重要でございますし、特に農地防災を初めとする防災的事業というものについては重点を置いていかなければならない。特に山地率が高くて傾斜地の多い、また国土の狭隘な西日本においてこの問題がかなりあるわけでございます。そういう意味におきまして、老朽ため池の整備あるいは農用地保全事業等の地域につきましては、やはり災害の可能性を十分審査いたしまして、災害の可能性の高いところからとにかく優先的に採択する、事業に入ったら他の新規は多少御遠慮願ってもできるだけ短期間に完了するということを基本方針として予算を運用しているわけでございます。今後ともこういった配慮に努めますと同時に、また災害関連事業で緊急地滑り防止とか、あるいは本年度から老朽ため池の整備の一部についても災害関連で採択する道を開きましたので、そういう制度の拡充等にも努めてまいりたいと思っているわけでございます。
  272. 上西和郎

    上西委員 本来の各種基盤整備事業が計画どおり実施されていたら相当減少したということはおっしゃったとおりでありますが、今おっしゃった西日本地域に住んでおりますので、お尋ねしたいのであります。  それは何かといいますと、第二次土地改良長期計画、四十八年から十カ年、総事業費十三兆円、これの実績を私ちょっと調べてみましたら、金額面では九二%の進捗率。ところが、面積ベースでいきますと、圃場整備が一番よくて四九%、畑地総合整備にいきますと一六・七%、農地造成で辛うじて三分の一を上回る三六・四%、こういう数字が出ているのであります。無責任マスコミが○○軍団がお金を食ってそれがどこどこへ行ったなんということを言っているのは別といたしまして、私は皆さん方を正しくお仕事をなさっていると信頼しております。しかし、お金がこれだけ消えていってなぜこんな面積しか処理できなかったのか、極めて素朴な疑問があります。  この辺の実情についてお答えをいただきたいと思います。
  273. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま委員指摘のように、第二次土地改良長期計画では、名目ベースでは約九五%の達成率、それに対しまして整備面積から申しますと、おおむね五〇%を若干下回るという数字になっておることは事実でございます。  実はこの一番大きな理由は、四十八年から五十七年の間は一番賃金、物価が大幅に上昇した時期でございまして、事業費によっては三倍ないし四倍の事業単価の上昇があったわけでございまして、そういった実態から、賃金、物価の上昇による単価の上昇に対して財政支出の増加はなかった、計画の改定はなかったとも言えるのかもしれませんが、それが基本にあることは事実でございます。  なお、個別の事由といたしましては、実は圃場整備事業等につきまして排水対策の強化とか、つまり地下水を下げる問題ですね、それから末端水路舗装率を向上させたこと等が実質単価の上昇を伴っている。それからまた農用地開発につきましては、御案内のように開発適地が逐次奥地化しておりまして傾斜地が多くなってきている。それからもう一つは、防災的な支出をふやしていかなければいかぬ。こういった面から単価が上がってきていることは事実でございます。しかし、中心になりますのは、圧倒的部分が先ほど申し上げました賃金、物価の上昇によるものというふうに御理解いただきたいと思います。
  274. 上西和郎

    上西委員 そういった現実があってやむを得なかったと言われればもうそれまでで、押し問答しようと思いません。しかし、それでは第三次の土地改良計画は完全実施できるのかということについて、ぴしりとお答えいただきたいと思うのです。
  275. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘の点は、我々が今後八年間にわたって予算の確保、予算の執行に当たって最も留意しなければならない基本課題だろうと思っております。  確かに初年度の五十八年度は、若干ふえましたが、全面据え置きだったわけでございます。二年目の五十九年は〇・九%でございますが、他の公共事業の抑制の中で、土地改良事業も、いわゆる長期計画を持った公共投資の一つとして抑制されたことは事実でございます。率直に申し上げまして、今のような予算の水準であるならば、この第三次の土地改良長期計画の達成ということが困難であることは否定できません。  この長期計画の策定に当たっては、道路やその他の公共投資の計画もそうでございますが、いわゆる経済事情の変動によって見直すことあるべしというリザーべーションが閣議決定に当たってついております。この保留というのは実は全部同じ問題がありまして、財政の制約、経済の低成長への移行の中で果たしてこれだけの事業量が消化できるかどうか、それができない場合においては下方修正をするというリザーべーションであることは事実でございます。しかし、まだ八年あるわけでございますから、私はそうそう弱気に考えるべきものではないと思います。現在の枠組みを堅持しながら、どうやって予算の確保に努めていくかということが第一の課題と思っております。そのための努力を組織としても全力を挙げて傾注してまいりたいと思います。  と同時に、運用に当たりましては、新規をできるだけ抑制しながら継続事業の早期完工を図っていく。それから事業の部分効果を図っていく、部分効果の発現を図っていく。それからもう一つは、施行基準等については従来の画一的な基準を弾力的な運用を図っていかなければならぬ。そういう意味で実は一昨年局長通達を出しておりますが、例えば地下水の問題とかあるいは圃場区画の話とか、そういった問題につきまして地域の自然的・経済的条件に応じて地元の技術者の創意も生かした技術基準の弾力化ということを標傍しておりまして、このための努力を今後続けてまいりたいと思っているわけでございます。
  276. 上西和郎

    上西委員 ここで、私、大臣にお尋ねをしたいのです。  ただいま局長がおっしゃったように、今のような予算の伸びでいくと非常に難しい、率直にお答えになりました。確かに五十四年度以降、農業基盤整備の予算は伸び悩んでおります。特に本年の予算に至っては前年度より減少している。三十二兆八千億の事業量をこなす可能性がどうかとなると、今のお答えになるわけです。それで、このままでいくと第三次土地改良計画は達成が極めて難しい、せっかく農家の皆さん方にこういうことをやりますよとやって幻のように終わる危険性がある。そうしますと、ただでさえ戦後の農政の推進に当たって、農家の皆さん方がお国を信頼し、お上の言うとおりにやった結果がこうだったということは、ざっくばらんに申し上げて何回かあったわけです。今度の農産物輸入枠拡大・自由化の問題にしても、山村大臣以下の御努力を多としながらも、農家の皆さん方には大変な不満が残っているわけです。それと同じことを第三次土地改良計画についても起こすのではないか。  日本の将来を担う日本の農家の皆さん方を本当に信頼をさせ、皆さん方が推進される農政にぴたっとついてこさせるような形での施策、方針というのは大変大事だと思うのです。そういう意味では、予算の獲得は大事だとおっしゃった。山村大臣、予算の獲得を含め、農民の信頼性を高める、そういった観点から、この第三次土地改良長期計画について所信をここでお示しをいただきたいと思うのであります。
  277. 山村新治郎

    山村国務大臣 第三次長期計画、三十二兆八千億ということで、今局長から答弁しましたように、今のままの予算の獲得でいってはとても達成できないということでございますが、御存じのとおりの苦しい財政事情でございました。しかし、農政の課題ということで第三次長期計画を立てたわけでございますので、今後とも計画達成に向けて少なくとも全力を挙げてまいります。先と言われましたように今のままでいくとということでございますが、まだ残りが八年ございますので、頑張ってやっていきます。
  278. 上西和郎

    上西委員 大変力強い、さすがは山村大臣というお答えをいただきましたので、そのことに深く信頼を寄せながら今後の御活躍を期待しております。  最後に、私、鹿児島の出身でございますので、朝晩シラスの問題で悩むのであります。  私の父は六男三女という、少ない方ではないのでありますが、おば三人のうち、真ん中のおばはもう三十年前にシラスの崩壊に遭いまして生き埋めになって死にました。三つになる末っ子がそのシラスの中からはい出てきて生き延びたという、身近なところに悲惨な体験を持っているのであります。以来今日まで、シラスの事故が絶滅されないのであります。農水省が大変な予算を投入してやられていることはわかります。しかし、どうも近年第三次土地改良計画の中で特殊土壌の予算関係について伸び悩みといいますか、減少傾向が見られますので、鹿児島県のように全くシラス地帯に住んでいる方々の気持ちを思いますときに、これらについて予算面を含めて具体的な対策はどうなっているのか、お尋ねをしたいと思うのであります。
  279. 森実孝郎

    森実政府委員 特殊土壌の中で、特にシラス土壌対策の問題は長い間農政としても非常に重要な課題として取り組んできたわけでございます。御案内のように、二十七年のいわゆる特土法さらに四十三年のマル南法の制定等を背景にいたしまして、県営でいえば一五%とか団体営でいえば五%とか、特に高い補助率を適用いたしまして予算を確保し、事業の実施に当たっております。  今私ども農林省として把握しておりますシラス地帯で保全対策を必要とする農地は、八万一千ヘクタールという数字でございます。五十八年末にこのうち約五万二千ヘクタールが既に整備済みになっております。それからまた、一万五千ヘクタールが現在事業継続実施中でございます。しかし、なお一万五千ヘクタール弱の未着手の地区もあることも事実でございます。私どもといたしましては、地域の実態は十分承知しているつもりでございまして、今後ともシラス対策、農地保全対策、予算の確保とその重点的実施、特にこれはなかなか難しい問題があるわけですが、新規の採択と継続事業の早期完了の兼ね合いをどう図っていくかという問題がありますが、できるだけ早期完了をめどにその実施に努めてまいりたいと思っております。
  280. 上西和郎

    上西委員 ただいまのお答えでわかるのです。ただ、私は昭和一けたで、現実にシラス地帯に防空ごうを掘らされた体験を持っている世代です。ですから、シラスの怖さはわかるのです。時によってはコンクリートよりか堅牢であり、時によっては海岸の砂よりかもろいわけです。そして、雨その他があったときに本当に人命はもちろんのこと、農業面にも多大の被害を及ぼす特殊なものでありまして、なかなか一朝一夕にいかないと思いますが、今お答えになったようにまだまだ未着手部分がたくさんあるわけです。これらに一刻も早く温かい政治の光、農水省のそうした手が及ぼされることを私は御期待申し上げたいと思います。  本法案が少なくとも皆さん方の企画立案をされた精神どおりに生かされ、かつ関係する農民あるいは団体等に広く理解と恩恵が及ぶように心から御期待申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  281. 阿部文男

    阿部委員長 武田一夫君。
  282. 武田一夫

    ○武田委員 私は、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について二間お尋ねをいたします。まず一つは、今回の改正で沿岸漁場整備開発施設が新たに追加されたわけでございます。日本の漁業、水産業の発展を思うときに、沿岸漁業が非常に重要なことは先々御承知と思うのでありますが、なぜこれまで対象にされなかったかという素朴な疑問も一つあるわけでありますが、その点の説明をしていただき、今回から追加なされた理由を聞かしていただきたいと思うのですが、御答弁をいただきたいと思います。
  283. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 今回の改正でいわゆる沿整事業を対象にお願いしておるわけでございます。最近の漁業をめぐります情勢を申すまでもなく、これからの漁業振興施策としましては沿岸漁業の振興が極めて大事であるということは御理解いただいているところでございますが、その沿岸漁業を振興する際のかなめとなる事業がこの沿整事業であるわけであります。ところが、沿整事業は、正直に申しまして、始まりましてからまだ十年にも満たない事業であるというようなこと、あるいはその間に財政事情がだんだんと悪化してきたというようなこと、それからもう一つは、災害が他の事業に比べますとそれほど多くはなかったというようなこともあったのではなかろうかと思いますが、関係漁業者の希望は非常に強かったのでありますが、結果的には今日まで法律改正の機会を得なかったわけでございます。  今回暫定法の改正があるということで、関係各方面と協議をいたしまして、幸いその対象にすることができたわけでございます。遅きに失したというおしかりは当然だと思いますが、今回の改正によりまして長年にわたります関係漁業者の希望がかなえられたという点につきましての御理解をいただければ幸いだと思うわけでございます。
  284. 武田一夫

    ○武田委員 もう一つ、この件で、補助率の問題ですが、甚大災に該当する場合の第一次、第二次の適用で、どういう場合が第一で、第二はどういう場合に適用するというふうに考えられているか。その点お願いします。
  285. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 暫定法の対象になりますと、通常の場合十分の六・五というのが基礎的な補助率になるわけでありますが、災害の程度が非常に深い場合に補助率のかさ上げをするという仕組みになっておるわけであります。  どういう場合にその補助率のかさ上げを適用するかということにつきましては、具体的には政令で定めたいというように考えておるわけでありますが、内容的に申し上げますと、現在私どもが考えておりますのは、一つは、同じ漁業関係でございます、漁業用施設であります漁港施設と同程度の水準となるようにいたしたいというふうに考えておるわけであります。  それでどのようになるかといいますと、具体的に申し上げますと、市町村ごとに、その年に発生しました沿整施設の災害に係ります復旧事業費の総額、いわゆる被害額の総額とでも申しましょうか、これが、当該市町村の世帯数の中に占めます漁業者の世帯数の割合、何割ぐらいが漁業者の比率であるかということを当該市町村の標準税収額に乗じてみる、そういった場合に得た額の何倍かということで、三倍を超えた場合には第一次高率でございます十分の九を適用する、それから、さらに上回りました、例えば六倍を超えるときには十分の十の補助率を適用するというふうに現在のところ考えておるわけでございます。     〔委員長退席、上草委員長代理着席〕
  286. 武田一夫

    ○武田委員 それから、また別の問題で一つお尋ねします。  現行の第三次土地改良計画、これは前にも私は質問しているわけですが、五十八年から六十七年の十カ年で総額三十二兆八千億円の事業量を予定している。このうち防災事業で二兆三千八百億円の事業量を計上しているというわけでありますがこの二兆三千八百億円を出した根拠というのは何なのかという問題。それから、防災事業ですから一これでどのくらいの箇所を対象としてお考えになっているものか。その点についてひとつお答えいただきたいと思います。
  287. 森実孝郎

    森実政府委員 第三次の土地改良長期計画での防災事業でございますが、これは、事業種目ごとに地区数を出しまして、その調査結果で出た地反数に平均的な事業単価を算出して出したものございます。その意味では、最も積み上げて作業したものでございます。  御案内のように、最近非常に国土利用の経済密度が上がってきて、例えば老功ため池等に代表されますように、従来は民家が近接していなかったものが近接するようになって非常に危険度が増してくる場合がある。それから、あるいは先ほどの特殊土壌地域等においては、雨量の型が変わってまいりましていわゆる災害発生の形や頻度が変わってきている、そういう点を考慮いたしまして五十三年に全国的に集計したものでございます。  内容的に申しますと、緊急を要するものは、農地防災事業では約五万九千地区、その中心は老朽ため池の五万三千地区でございます。それから農地保全では約二千五百地区、中心は地すべり対策の千五百地区と農地保全の約千地区でございます。それから公害対策では約四百九土地区、中心は水質障害対策、これは都市化の進展に伴うものが大きいわけでございますが、これが四百四土地区、あとは公害防除土地改良とか鉱毒対策でございます。  こういったものが緊急を要するものとして全体で六万二千六百八十二地区アカウントされております。このうち、五十四年から五十七年までに事業として採択されたものが全体で四千六百二地区ございます。残りました約五万八千地区を今後の十カ年計画の対象の採択すべき地区数としてとらえ、これに平均的な従来の実績に基づく事業単価を乗じまして出したものが御指摘の数字でございます。
  288. 武田一夫

    ○武田委員 被災の箇所の中で、これはいつも指摘するのですが、未然に防止をすれば災害を防げたという場合が非常に多いわけですよね。小さいものを放置しておいたために大きくなっているというケースなんかもある。例えば農地あるいは農業用施設、五十七年をちょっと見てみますと、農地の場合五十七年では約四万カ所ですか、それから農業用施設などが六万七千カ所、それから林道なんかの場合でも五十七年で約九千カ所くらいはあるわけでございます。ですから、私はいつも思うのですが、防災へのしっかとした取り組みというものをしなければ、財政的にも二重投資をするという非常にむだなことも考えられるということを思うときに、今五万八千地区ですか、ということが出ましたけれども、こうした地域の点検とそれから危ないと思うような地域、重軽いろいろと重度がありますね、そういうものは市町村等とあるいは地域の農政局等との連携の中でしっかりと中央で把握をしておかなくてはいけない。また、地域の県や市町村と農政局との間でよく連携をとって、そして手当てを早目にするというようなことで未然防止に力を入れていくということは非常に重要になってくると思うのですよ。だから、そういう体制、これは非常に御苦労なさると思うのですよ。我々歩くと結構いっぱいあるわけです。ですから、そういうものをよく把握をした上で万全の手を打っていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  この点については、そうした防災というものにどれほど力を入れても、それでもやはり不幸なときが起こるということもございますから、これは災害対策委員会なんかでも、私そのメンバーになっていますのでいつも指摘するのですが、そういう国土保全、しかも農業、漁業、林業という三つの、ほとんど日本の国土のあらゆるところにかかわるのは農林水産省の宿命的な立場でございますから、大臣としてもしっかとした防災体制事業、これは国土庁なんかとも連携をとった上での取り組みに力を入れていくようにしてほしいと思うのですが、その点についての御所見を聞いて、時間ですので質問を終わります。
  289. 山村新治郎

    山村国務大臣 防災というものは土地改良の中でも重要な一部門でございます。ただし、これは緊急性もございますので、それらの点を勘案しながらこれに対処してまいりたいというぐあいに考えております。
  290. 武田一夫

    ○武田委員 終わります。
  291. 上草義輝

    上草委員長代理 水谷弘君。
  292. 水谷弘

    ○水谷委員 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について若干の質疑をいたします。  今回採択限度額を三十万に引き上げることにより補助対象から外れるのはどの程度見込まれるか、お伺いをいたします。  暫定法の対象施設、規模別被災状況を、事業費、箇所数ともに昭和五十三年から五十七年の一年当たり平均値で見ますと、補助対象から外れるのは、農地では災害事業費で十七億九千八百万、全体の二・四%となっております。これは金額三十万ということのみで見た単純な結論でございますが、一カ所の工事とみなす範囲を五十メートルから百メートルとしたわけですから、それらの両方から考えてどの程度になるのか、お示しをいただきたいと思います。
  293. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま委員指摘のように、過去五年の数字から推計いたしますと、箇所数では約二割減る、しかし事業費では二・九%が減るという見方でございます。ただ、実は一カ所の工事の範囲ル五十メートルから百メートルに拡大したわけで、これでかなり救済するものも出てくるわけでございます。こういったことは地形の状況とか被災状況とかによって、それからまた先ほども指摘がございました基盤整備事業の実施実態からいってかなり違いますので、一律にはどうも計量化して把握できません。  そこで、御指摘もございましたので、実は幾つかのケースで最近の大災害の例について調べたわけでございます。これはもうあくまでも参考でございますが、例えば農地の例で申しますと、最近の災害で問題になりました山梨県の河口湖とか静岡県の小山町とか、その他七市について具体的に適用してみました。そうすると、十万円以上で一カ所工事を五十メートルの範囲ということになりますと、工区数が百三十七、箇所数が八十四、復旧事業費の総額は約四千七百万になるわけでございます。これに対して百メートルに広げて三十万以上という今度の改定案で考えてみますと、工区数では百四十一とほとんど差がない。箇所数は八十四から三十七に大きく減る。これに対して、災害復旧の事業費は四千七百五十万が四千六百九十万ということで、九九・何%というふうに、実はほとんど同じ金額になっております。  それから水路の例で申しますと、これも例の地震で災害を受けました青森県の木造町以下、昨年災害を集中的に受けた七市町村について調べたわけでございますが、この例で申しますと、五十メートルで十万円以上の場合は、工区数で九十五、箇所数で六十一、災害復旧事業費が八千九百五十万円。これに対して百メートルで三十万円以上ということで把握してみますと、工区数は九十四でほとんど変わらず。箇所数は三十三に減る。事業費としましては八千八百八十六万ということでほとんど同じという数字になっておりまして、私ども、落ち込むものと新しく拾われるものの間にプラス・マイナスがあることは事実だろうと思いますが、トータルとしてはほとんど違いがない数字であるという判断を持っております。
  294. 水谷弘

    ○水谷委員 局長がおっしゃるとおり、当初の事務の簡素化並びに合理化という観点に立ちますと、申請においてもこれだけの箇所が減るわけですからかなり効果が出てくると思いますが、また金額的に救済できる額も九九%ほどという、こういう事例が挙げられました。しかし、今お話の中にありましたように、これは新しく取り組む部分と落ちる部分とあるはずであります。そういうことから、その補助の対象から外れた被災箇所の復旧についてはどのように取り組んでいかれるのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  295. 森実孝郎

    森実政府委員 実は補助対象から外れます被災箇所としては、どちらかというと農地が主力になるということは事実だろうと思います。その場合どう扱うかという問題でございますが、まず、いわゆる暫定法の対象とならない小災害復旧事業について、農地を除く農業用施設については現在市町村の復旧事業について単独災害の復旧事業債が認められております。それから激甚災害で政令で指定された災害につきましては、農地等の小災害復旧事業債の起債が認められております。これらにつきましては、起債の元利償還期につきましては普通交付税の算定基礎となります基準財政需要額に一定のルールのもとに算入されておりまして、従来もつつがなく稼働してきたと思いますし、これからもこの制度を十分有効に活用できるよう関係各省庁との協力も確保するし、また市町村指導してまいりたいと思います。  そこで、農地等が中心になるものについては、三十万円以下という災害は、実は今日の暫定法制定以来単価が六倍にも上がっている時期でございますので、そう大きなものではございませんので、やはりそれぞれ小規模に自己資金でやるということが多くなるわけでございまして、農業者等の経費を直接どう見るかが非常に大事だろうと思います。そういう意味で、農林漁業金融公庫の土地改良資金の融資制度を積極的に活用いたしまして実施できるように指導し、また必要な資金枠の確保に努めてまいりたいと思っております。
  296. 水谷弘

    ○水谷委員 今お話の中にございました、農地の小災害については起債の充当率がゼロということになっているわけでありますが、これは農地の持つ国土保全また社会的な意義から、たとえそれが小災害であってもできる限り救済をする、そういう災害救助という意味から考えて、農水省としてもこれはさらに努力をすべき対象ではないかと考えますが、いかがでございましょう。
  297. 森実孝郎

    森実政府委員 同じ暫定法の対象事業の中でも、農業用施設と農地につきましてはやはりその公益性に差があるということで、暫定法体系においても実は補助率に格差を設けていることは委員御案内のとおりでございます。特に小規模な農地の災害と申しますのは、私も実はこの問題を検討するために何十万円のはどのくらいのものかということを、現地被害を写真で全部チェックしてみたのですが、非常に小規模な手直し的なものは緊急に金融を受けて実施するということがやはり一番実情には合っていると思います。それから、分散的な非常に小規模な農地の復旧を市町村が現実に担当するということはなかなか難しい。土地改良区といっても、土地改良区よりも数人施行とかあるいは個人施行の場合が多くなってくる、こういう実態があるわけでございます。そういう意味におきまして、私、実態上必要がある場合においては御指摘の起債の問題については今後の課題として検討させていただきますが、当面は先ほども申しましたように土地改良資金の確保とその積極的な活用ということに重点を置いてまいりたいと思っております。  なお、御指摘の点は実情把握にさらに努めまして、所要の改善点があれば改善の努力を講じたいと思っております。
  298. 水谷弘

    ○水谷委員 今の小災害についてさらに御質問いたしますが、今回の改正関連してやはり補完しなければならない措置、それは県や市町村が積極的に小災害に対しても取り組む、そういう姿勢が大事だと思います。  そこで、熱心にやっていらっしゃる県、市町村もあるのですが、中にはそういうものについてはできるだけ御勘弁をいただきたいという、農家本人が行うべきであるという考え方から、非常に消極的な市町村、県もあるようであります。そういうことで、災害復旧の本旨、被災農家の救済という観点から、これらについても農林水産大臣どうかひとつ特段の御指導をなさっていただきたい、このように考えますが、御所見をお伺いいたしたいと思います。
  299. 山村新治郎

    山村国務大臣 小災害の場合、国庫資金等の活用によって迅速そして適切ということを目指すということで、我々農林水産省としても県、市町村指導してまいりたいというぐあいに考えております。
  300. 水谷弘

    ○水谷委員 それでは次に移りますが、本法施行令の第九条六項に「その災害復旧事業について法第三条第二項に規定する補助率により計算した国庫補助額が、百八十四万円を基準とし、災害復旧事業事業費単価の動向等を参酌して農林水産大臣が毎年定める一戸当たり国庫補助基準額に、復旧すべき農地面積の当該箇所一戸当たり平均耕作面積に対する比率を乗じて得た金額をこえる農地」とございますが、この百八十四万円というのは五十九年度では幾らになりますか、お伺いをいたします。
  301. 森実孝郎

    森実政府委員 百八十四万円というのは、四十二年度の入植農家の一戸当たりの国庫補助金額を言っているわけでございます。その後五十八年のペースに物価修正いたしますと四・三八六倍になります。そういう意味では、百八十四万円は八百七万円ということになっております。
  302. 水谷弘

    ○水谷委員 そこでお伺いいたしますが、昨年の日本海中部沖地震において被災した八郎潟地域の問題でございますが、ここは大規模な耕地面積を有しておりまして、平均耕作面積約十五ヘクタールと言われております。このような大規模な農地が被災をした場合の対応というのはどのようになさるのですか。
  303. 森実孝郎

    森実政府委員 極めて御専門的な御質問で、実は私ども昨年八郎潟の災害復旧を扱う場合、いろいろ行政的に腐心した点でございます。  問題は、今言った二戸当たりの国庫補助基準額を事業費に換算いたしまして、つまりこれは大体補助率二分の一ということなんで、倍にいたしまして、それから一戸当たりの平均面積で割りまして十アール当たりの復旧限度額を出しているわけでございます。ところが、御指摘のように八郎潟の場合は入植農家だけに限定いたしますと十五ヘクタールというふうに非常に大きいものですから、そのままの数字を使いますと非常に限度額が小さくなってくるという問題がございました。これは、やはり地域の実情と実態をどう反映させるかという行政運営の問題だろうと思います。  そこで、八郎潟のケースにつきましては、入植農家だけでなくてやはり増反も広範に行っておりまして、その増反分については経営面積は小さいわけでございますから、やはり定めております法の基本に従って市町村の増反農家も含めました一戸当たりの経営面積ということで算定いたしまして処理いたしました。逆に、八郎潟はあれだけ大規模な工事をやったところでございますので、他の条件が同じであれば復旧事業費は割合に経済的に実施できるものでございますから、支障がなかったものと思っております。
  304. 水谷弘

    ○水谷委員 そこで、農政の基本に積極的に農用地の流動化を促進をして規模の拡大を図ろう、こういう方向で取り組んでおられるわけでございます。そういう観点から、この政策の整合性を考えても、この限度額をこのまま据え置いておいて妥当なのかどうか、この辺について検討をなさろうというおつもりはあるかどうか、お伺いをいたします。
  305. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほど申し上げましたように、この反当限度額につきましては物価修正を基本的にしておりまして、四十二年当時に比べると現在は約四倍、四・三八六倍という数字になっております。そういう意味においては、賃金、物価の動向等は反映しているところでございます。  それから、農家の経営規模をどう見るかという問題は、どの広がりで問題を見るかということだろうと思います。今までのところ、私ども、この限度額で特に支障を来している点はございませんので、目下のところは特に改正する必要はないと考えております。しかし、これはやはり実情に応じて実態をとらえて対応すべき本質を持っていることは委員指摘のとおりでございます。そういう意味におきましては、絶えず災害の型や実際の復旧額の動向等を見きわめながら、必要があれば今後実情に応じて検討させていただきたいと思うわけでございます。ただ、何と申しましても国庫負担で災害復旧を行う制度でございますから、やはり真っさらな新しい農用地をつくる場合の単価よりはるかに大きい復旧費を使うのがいいかどうかという判断が昭和三十年代における中部地方の大水害を契機として出まして、大方の議論の集約としてできた一つの制度でもあるわけでございまして、そういった枠はあると思いますが、実情を踏まえて今後とも必要な検討は続けてまいりたいと思います。
  306. 水谷弘

    ○水谷委員 角度を変えて、五十八年度において本法の対象になっていながら現在継続事業となっている箇所数、金額とそれから全体に占める割合はどのくらいか、お伺いをいたします。法第三条の三に、原則として災害発生年度を含めて三カ年度で完了させることとしておるわけですが、その進捗度等を見る上から御報告をいただきたいと思います。
  307. 森実孝郎

    森実政府委員 既に被災いたしまして査定が完了しておりますところについては、法の改正関係なく従来どおり事業を実施しているわけでございます。  御指摘の後段の点、つまりどうやって復旧を図っていくかという問題でございます。  これは、委員も御案内のように三、五、二という比率で三カ年復旧ということが現在の災害復旧の公共土木負担等暫定法を通して基本ルールになっております。この復旧進度は、やはり市町村の復旧体制も考えなければならぬ、国の財政事情もある程度平準化して考えなければならぬということで決めておりますし、既に十分定着していると思います。しかし、実際は、五十六年以降は御案内のように梅雨前線豪雨を初めとする大災害が続発いたしました。他方、地方経済の景気浮揚という論議もあったわけでございます。そこで、連年補正予算で初年度復旧進度を大幅に引き上げておりまして、例えば五十六年災は五三労、五十七年災は七六%、五十八年災は六〇%というふうに高い復旧進度で事業を実施しておりまして、この間における災害につきましては実はニカ年で完了するような実態になっております。北海道の大水害、長崎の大水害、日本海中部地震災害、梅雨前線豪雨災害、台風十号災害等はいずれもこういった形で運用されております。
  308. 水谷弘

    ○水谷委員 ぜひ災害を受けられた皆様方のことを考えても、現在のそのような積極的な取り組みを今後ともお願いしておきたいと思います。  それから、災害復旧事業、先ほど私の方の武田議員からも御質問がありましたけれども、積極的にというわけにもまいりませんが、被災箇所だけの復旧ではなくて、いわゆる改良復旧、さらにまた災害関連事業を積極的に導入して、再発防止というような観点から、また、せっかく救済したところも、そこはしっかり強くなっておりますが、その周辺が弱いわけで、さらに連年災害を起こすということが随分起きているわけでございます。その基本的な取り組みについてお伺いをいたします。
  309. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  改良復旧の問題は、先ほども申し上げましたように、従来からもいわゆる機能の回復、耐久性の付与という原則が確立されて、私ども具体的な事例に即して考えますと、いわゆる狭義の原形復旧を超えたかなり大幅な復旧が水路、頭首工、堤防等を通じて行われていることは事実でございます。これからも現地の被災状況を十分勘案いたしまして、再度災害防止という視点で査定に当たらせたいと考えております。  なお、隣接箇所等の問題につきましては、一部はいわゆる復旧事業で実施できますが、大半は関連事業になると思います。そういう意味で、災害関連制度の運用についてはこれからも積極的に取り組んでまいりたいと思っております。  なお、先ほどの農地防災との連関も頭に置きまして、五十八年からは災害関連事業の一つとして緊急地すべり対策事業災害関連の枠の中で、一定の範囲でできるようにいたしましたし、また、本年度の予算からは老朽ため池の関連整備事業につきましては、一定の条件のもとにおいて、災害復旧と関連を持たせながらかなり大幅な改良復旧を認める制度をつくったわけでございまして、なかなか財政の厳しい折でございまして、大上段の制度をつくることは難しい点もございますが、やはり一歩、二歩でもこういう面で予算の全体のシーリングの枠外の制度をつくり、またそれを重点的に実施して、再度災害防止に当たるという具体的な知恵も要ると思っております。今後とも努力いたしたいと思っております。
  310. 水谷弘

    ○水谷委員 今回の暫定法の改正によって事務の簡素化、合理化が図られる、大きく期待をしたいところでございます。  そこで、さらにもう一歩進めまして、現場市町村におきましてはいろいろな行政事務があるわけでございまして、その中で突然災害が起こってまいります。その災害復旧、救助、いろいろな仕事がたくさんある中で、災害査定設計書をつくらなければならないという事務が発生してまいります。でき得ることならば、この査定設計書作成の段階で委託費を助成すべきではないかと考えますが、お考えを伺いたいと思います。
  311. 森実孝郎

    森実政府委員 前々から、災害が激甚な場合、事業実施主体である特に市町村が自分たちではなかなか実施設計書はつくりにくい、そこで外注しなければならぬ、この委託費の補助を出すかどうかという問題がございました。  そこで、五十二年災害から、激甚災につきましては、暫定法で申しますなら局地激甚も含めまして一定の範囲で委託費に対して国庫補助の道を開いております。五十三年は一億一千八百万の補助金を支出しておりますが、五十七年では実は大災害もありまして七億七千五百万の支出を行っております。年間平均して大体三億数千万の委託費の補助を行っております。一律にということにはなかなか難しい点もありますし、またこの問題は、どうやって災害査定事務を合理化するかということと密接不可分の関係がございます。そういう意味においては、いわゆる机上査定の拡大とか総合単価の適用というふうな制度の改善、さらに県職員や農政局職員の激甚災における応援体制を整える問題等と相まちながら考えていかなければならないと思います。現行制度に今特段の措置を加えるという余地は乏しいものと思っておりますが、やはり災害というのはその形や実態をどう受けとめるかが大事でございます。この現実を受けとめながら、これからも十分な研究はしてまいりたいと思います。     〔上草委員長代理退席、委員長着席〕
  312. 水谷弘

    ○水谷委員 構造改善局長に伺います。今のは査定の設計委託費に対する補助ですか、実施設計の方ですか、どちらですか、お伺いします。
  313. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま申し上げました数字はいわゆる委託設計費に対する、正確に申しますと災害復旧事業査定設計委託費の助成額でございます。
  314. 水谷弘

    ○水谷委員 局地激甚災だけではなくて、その枠も一般の方にもできるだけ積極的に対応できますようにお願いしておきたいと思います。  最後に、ことしの豪雪につきましてはもう再三この委員会でも議論をされてきたところでありますが、つい最近新潟県へちょっと用がございまして行ってまいりました。まだ田んぼには一メーター以上の雪が実は積もっております。例年ですと雪解け時期というのは下に洞のようなものができまして、地熱が上がっておりまして、下の農地はそれほど傷んでないなという感じがするのですが、ことしは積雪の形が例年と違いまして、非常にしっかりと積もっておりまして、下はほとんど凍結しているのではないか、こういう状況でございます。そういうことを考えますと、雪解け時期の農地の問題それからまた融雪時における出水等でまた災害発生するおそれがあるわけであります。そのようなことのないてとを心から願うわけでありますけれども、そのような場合にどうか緊急に万全の対策を講じられますように積極的な取り組みを強く望むものでありますが、その対応についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  315. 森実孝郎

    森実政府委員 私から総括的にお答えさせていただきますが、除雪の問題、融雪の促進の問題、これをどう進めていくかということが一方にございます。それから、現に降っている雪がどういう形で作物の生育に阻害を与えるかという問題がございます。それからさらに、もう一つの問題といたしましては、まさに御指摘のように、ことしは例年に比べますと平場と中山間地帯の中間部の雪が割合に多いのでございますが、この雪の融雪が五月、六月においてどういう水害をもたらすかという問題がございます。  営農の問題につきましては、こういった状況を踏まえましてそれぞれの関係局において所要の技術指導をやっておりますが、私どもも、施設災害発生をできるだけ十分に予知して防止する、または、できた場合においては直ちに対応できる体制整備には留意したいと思います。  それからまた、農家の経営の問題といたしましては、公庫資金の活用の問題、それから各種の助成事業の活用の問題等についても、態様に応じまして取り組めるよう十分勉強させていただきたいと思っております。
  316. 水谷弘

    ○水谷委員 以上で質問を終わります。
  317. 阿部文男

    阿部委員長 次回は、明十九日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十九分散会      ――――◇―――――