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太田委員 いずれにいたしましても、これまでの数年間、全国の
酪農家は生乳
生産計画を忠実に守り、そして血のにじむような
努力をして今日の市場の自主性を守ってきたわけでありますから、
限度数量の
確保については、何としても二百四十万トンを
確保していただくように重ねてお願いを申し上げたいわけであります。
それと、これは今の時期の
畜産物
価格あるいは
限度数量といったことからは少しはみ出す問題でありますけれ
ども、
先ほど申しましたように
酪農家の
経営ということについて大変重要な問題がただいま生じておりまして、それを少し
説明さしていただきたいと思います。
これは、
乳牛の雌で乳を搾った後のいわゆる淘汰廃用牛というふうに言っておりますけれ
ども、淘汰廃用牛に対する、これを転売をした場合の課税ということでございます。淘汰廃用牛への課税は、従来青色申告の
制度にのっとって自主的に、あるところではこれを譲渡所得と考えていた、あるところではこれは譲渡所得として申告をしていなかったところもあるわけでありますが、ともかく従来はこれは譲渡所得として扱われてきたわけであります。それが五十二年ですか一年ですか、から国税庁の方で突然これは事業所得であるというふうに解釈が変わった。というよりも、新たにそのような見解が出されてきたようであります。これによって、ただいま一部で大きな混乱が起きているわけであります。
何をもって譲渡所得とするか、もちろんこれは淘汰廃用牛というもの、これが固定資産であるかどうかということであるわけであります。所得税法の三十三条にこれは規定をされてあるわけでありまして、こういうものは固定資産ではあるけれ
ども譲渡所得としては扱わないと言っているものも、例外条項ももちろんあるわけでございます。例外条項はどういうふうに明記されているかといいますと、「営利を目的として継続的に行なわれる」譲渡、これが例外になるわけであります。まさに素直に淘汰廃用牛というものを見詰めてみれば、これは営利を目的として淘汰廃用牛を売っているわけではなくて、淘汰廃用牛の場合には、まさに目的は乳を搾るために飼っているわけでありまして、肉を売るために飼っているわけではない。したがって、これは営利を目的として継続的に行われる譲渡ではないわけでありますから、所得税法三十三条の素直な解釈では、これは固定資産であって譲渡所得とみなされなければいけないということになるわけであります。素直に読めばですね。
そしてまた、実際に国税庁が出しました、五十五年だと思いますけれ
ども、
基本通達というものがありまして、所得税二十七の一というのがあるわけであります。これによりますと、譲渡所得とみなされないものはどういうものがあるかというのでざっと書いてあるわけでありますけれ
ども、貸し衣装業における衣装類の譲渡とか、あるいはパチンコ店におけるパチンコ器の譲渡、あるいは養豚業における繁殖用または種つけ用の豚の譲渡、養鶏業における採卵用の鶏の譲渡、こういうふうに書いてあるわけであります。こういうふうにまことに具体的に、徴に入り細に入り例を挙げてあって、しかも
畜産関係のことがこれだけ出てくるのにもかかわらず、ここには牛のことは何
一つ出てこないわけです。豚が出て鶏が出てきたわけでありますから、当然これはだれだって連想としては牛も出てくると思うわけでありますけれ
ども、ここはきっと課税当局も自信がなかったと見えて、牛のことは何も出てこない。にもかかわらず、突然あるときからこれは譲渡所得ではないというふうなことを、解釈の変更をされたわけであります。
実は、これを譲渡所得という
制度を利用して、
一つの控除を利用していたということは全国的には行われていなかったかもしれないわけでありますけれ
ども、福岡国税局の管内では、福岡県酪連と福岡国税局との間に協定を結んだ。そして、そこでこれは譲渡所得とみなすということを文書でもって取り交わしているようであります。そして、今の時点で、ことしになって急に福岡国税局の方も、これはやはり譲渡所得ではないということで変更を申し出てきたようであります。実はその流れだけを見ますと、全国の
酪農家の中で福岡県の
酪農家だけがいまだにごねている、ごね得をねらっているというふうにも解釈をする、誤解をする向きが一部にあるわけでありますけれ
ども、そうではなくて、これは青色申告の普及というものが福岡県の
酪農家で特に高いわけであります。全国では青色申告は二五%
程度でありますけれ
ども、福岡県の場合は七〇%であります。これは長く優秀な税理士を雇って、どうやったら節税ができるかということを工夫を重ねてきたわけであります。むしろ福岡県以外のところではそのような研究が十分に進んでいなかった、あるいはそのような税に関する認識がなかったということでもって、この
制度を利用していなかったということが実態であります。そういう
経営について、まことにシビアな姿勢で
経営に取り組んできたところが最後に残って、そしてそれが今急に解釈を違えて、新たな税負担を強いられているという
状況にただいまあるわけであります。これは、ぜひとも従来どおり譲渡所得として認めるべきであろうというふうに私は思うわけであります。
それともう
一つ、譲渡所得かそれとも事業用の所得かということのほかに、もう
一つこの点については論点が提起をされ得るわけであります。
それはどういうことかといいますと、肉牛の
生産については、肉牛を売ったことによって、従来から和牛についてはそうでありますし、また乳雄あるいは未経産牛についても、おととしあたりから一頭百万円以内については非課税というふうな扱いがなされているわけであります。これは
我が国の
食糧政策の
一つの大きな柱になっていると思うわけであります。
牛肉の量を
我が国の
国内で
確保するという
目標に従ってこのような特例措世がとられているわけであります。
ところが、この中に入らない、特例措置の対象になっていない、非課税扱いになっていないただ
一つのものが今言いました淘汰廃用牛であります。淘汰廃用牛だけがこの肉牛の特例措置から外されているわけであります。そうであれば、ここで
一つ考えられることは、なぜ淘汰廃用牛がこのような免税措置から外されているかといいますと、これは
先ほど、一番最初に私が申し上げました、営利のために売ったのではない、つまり肉として売っているのではないという解釈があるからこそ淘汰廃用牛だけがこの免税措置から外されているわけであります。
したがって、つまりどっちかにしなければいかぬのではないか。つまり、これは肉として売るんだと考えているのならば、ほかの乳雄とか未経産牛と同じように淘汰廃用牛も免税の対象にしなければいけない。もしそうではなくて、これは肉ではないんだ、肉の増産の対象としては考えられないんだということであれば事業所得として考えることはおかしいというふうに、どちらに転んでも何も特例措置をしないで、ただ解釈だけを変えて税の増収を図るというのは首尾一貫していないというふうに思うわけであります。特に、もしこれで淘汰廃用牛というものを
牛肉の
一つの重要な供給源だというふうに考えたならば、これは飼い直しということを行えばいいわけでありまして、一たん
乳牛として養ってきたものと肉牛としてこれを飼う場合には飼い方が違うわけでありますから、肉牛として飼って太らせてそこで売るという習慣をつければ、ともすれば
我が国の
牛肉の
生産について将来不安定であることが危惧される向きもあるわけでありますから、この際前向きにこれを
牛肉の
一つの重要な供給源として考えて、飼い直しの方を奨励するというのも
一つの
考え方ではないかと思うわけであります。
それらのことも含めて、淘汰廃用牛についての税制というものをすっきりしたものに、そして肉の供給あるいは
酪農家の
経営についてプラスの
役割を演ずるような
方向にはっきりした方針を確立すべきだと思うわけであります。
これは大蔵省に聞くべきことでありますが、まず農林省がこの問題についてはっきりした
考え方を持っていただかなければいけないわけでありますから、私、今大変長い話を申し上げましたけれ
ども、趣旨に沿って前向きに検討をお願いしたいわけであります。