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1984-08-21 第101回国会 衆議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月二十一日(火曜日)     午前十時三十二分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 池田 行彦君 理事 戸塚 進也君    理事 宮下 創平君 理事 小川 仁一君    理事 松浦 利尚君 理事 市川 雄一君    理事 和田 一仁君       石原健太郎君    内海 英男君       大島 理森君    奥田 幹生君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       月原 茂皓君    角屋堅次郎君       元信  尭君    渡部 行雄君       鈴切 康雄君    山田 英介君       田中 慶秋君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君  委員外出席者         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         管理局長    網谷 重男君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総務庁人事局長 藤井 良二君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         経済企画庁調整         局財政金融課長 服藤  収君         大蔵省主計局給         与課長     竹島 一彦君         大蔵省税局総         務課長     伊藤 博行君         労働大臣官房国         際労働課長   佐藤ギン子君         労働省労政局長 谷口 隆志君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ————————————— 八月八日  一、地域社会における公共サービスの向上のだ   めの新社会システムの開発に関する法律案   (鈴切康雄君外三名提出衆法第一八号)  二、行政機構並びにその運営に関する件  三、恩給及び法制一般に関する件  四、公務員制度及び給与に関する件  五、栄典に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公務員制度及び給与に関する件(人事院勧告  )      ————◇—————
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  公務員制度及び給与に関する件について調査を進めます。  まず、去る十日の一般職職員給与改定に関する勧告につきまして、人事院から説明を聴取いたします。内海人事院総裁
  3. 内海倫

    内海説明員 人事院におきましては、去る十日に、公務員給与に関しまする報告及び勧告国会及び内閣提出をいたしました。本日、早速に勧告内容につきまして御聴取いただく機会を与えていただきましたことについて、衷心から感謝を申し上げます。以下、勧告内容の概要について御説明を申し上げます。  お手元に提出してございます「給与勧告骨子」を御参考までにごらんいただければ幸いに存じます。  本年も、在来考え方在来方針に基づきまして、在来調査方式で四月時点における官民給与を比較いたしました。その結果、官民較差は金額で一万五千五百四十一円、率で六・四四%であることが明らかになりましたので、公務員給与についてこの較差を解消するということにいたしまして、勧告骨子といたしました。この較差は、昨年の一万五千二百三十円、六・四七%の改定勧告に対し四千七百七十一円、二・〇三%の改定にとどまりましたことと、今年の春闘による民間給与上昇を反映したものとなっております。  次に、改善内容について御説明申し上げますが、民間給与配分状況公務員の在職の実態、年齢階層別生活面への配慮、さらに昨年いたしました勧告に対する職員期待等を詳細に検討いたしまして、一万五千五百四十一円の較差配分として、俸給に一万三千百六十円、八四・七%でございます。手当に千六百八円、一〇・三%、さらにこの改善定率手当へのはね返り七百七十三円、五・〇%というふうに配分を考えました。  俸給表につきましては、世帯形成層中堅層というものを重点といたしまして、行政職俸給表の五ないし七等級が高い改善率に相なっております。  なおまた、指定職俸給表につきましては、諸般事情を検討いたしましたが、行政職と同程度改善にとどめました。  手当につきましては、その性格が生活給の一環にも相なっておりますので、そういう点を考慮いたしまして、扶養手当に最も重点を置き、通勤手当住居手当にも所要の改善を行っております。  なお、このほかに、医師初任給調整手当につきまして、民間における医師給与状況を考慮した改善を行っております。  特別給につきましては、公務員の期末・勤勉手当年間平均支給月分民間のボーナスの年間支給月分とほぼ均衡いたしておりますので、据え置いております。  実施時期につきましては、当然のことでございますが、本年四月からといたしております。  次に、勧告をいたすに当たりまして報告の中で申し述べておりますことの骨子について御説明を申し上げます。  まず、人事院勧告制度意義について、労働基本権の制約に伴う代償措置であり、この制度が適正に機能することが重要であり、そのためには勧告が尊重され、そのとおりに実施されるべきものであることを述べております。  次に、公務員給与現状を見ますと、連年給与抑制のもとで人事管理面の困難を訴え、また生活面への影響の生じていることを訴える声もあることを指摘し、本院として、このようなことが士気保持、厳正な規律維持人材確保影響を生じ、さらに公務における労使関係にひずみを生じさせ、これらの結果、公正かつ能率的な行政に支障を生じるおそれはないかということについて憂慮している旨を述べております。  さらに、国会及び内閣におかれまして、人事院勧告が長年の経緯を経て完全実施されるに至ったことが公務における労使関係の安定に大きく寄与していること、また現在公務員が以上申し述べたような現状にあること等について深い御理解をいただくとともに、同じ国家公務員である四現業の職員についての公共企業体等労働委員会仲裁裁定が本年もう既にその実施が決定されているということに御留意をいただきたいことを申し述べ、この勧告を速やかに実施されるよう強く要請をいたしております。  以上、勧告内容並びに報告骨子について御説明を申し上げましたが、国会及び内閣におかれましては、人事院勧告意義を御理解賜るとともに、連年にわたる勧告見送り抑制のもとにあって職務に精励している公務員現状について深い御理解を賜り、何とぞこの勧告をぜひとも早急に実施していただくようお願いを申し上げて、御説明を終わります。     —————————————
  4. 片岡清一

    片岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  5. 松浦利尚

    松浦委員 今、人事院総裁から、今回の勧告に当たっての総裁の御説明をお聞きいたしましたが、一昨年は見送られ、昨年は不完全実施、今年度もまたこういう事態になれば、既に新聞等でも議論されておりますように、代償機関としての人事院そのもの存在を問われるような状況に今日あると思っておるわけですが、今度こういう事態にならないように人事院総裁としてはどのような、ただ勧告をしただけで終わりにされるのか、それとも人事院という存在をかけて完全実施努力されるのか、その決意のほどをお聞かせいただきたい。これが第一点。  それから第二点。もしも一昨年、昨年と同じような状況になったときに、総裁としてはどのような態度をとられるのか。この二つについてお答えをいただきたいと思います。
  6. 内海倫

    内海説明員 御存じのように、昨年、さらに一昨年、勧告があるいは見送られあるいは厳しい抑制を受けたという事実につきましては、人事院としましても厳しくこれを受けとめておる次第であります。  本年勧告をいたすに当たりましては、人事院としましては、先ほど説明申し上げましたように、るるこの勧告意義あるいは勧告が見送られ、または抑制されたことに伴う公務内における諸般影響等報告の中で申し述べ、少なくともこれから後はぜひこの勧告を尊重し、また勧告のとおりこれを実施していただきたい旨を強く要請をいたしております。特に私どもがこの報告の中において申し上げておる点は、在来完全実施ということの実績の上に公務内における労使関係が安定してまいっておるわけでありまして、こういう点も国会及び内閣におかれまして十分御酌量くださって、この勧告というものをぜひ実施していただきたいということを今回の勧告においては特に強く申し述べておるわけでございまして、この席におきましても、国会並びに内閣におかれまして勧告の早期の実施をお願いするわけでございます。  なおまた、御質問にございました、もし今回政府において結果としてあるいは抑制があったような場合、どういう決意を持っているかということでございますが、先ほど申し述べましたような勧告において私どもの衷情、心情を申し述べておりますので、できることなら国会においても内閣におかれましても、そういうことのないように、まずそういうことを期待し、また強く要請をしておるわけでございます。この点は国会におかれましてもぜひお力添えをいただくべきもの、そういうふうに考えます。
  7. 松浦利尚

    松浦委員 総裁人事院勧告をしてしまっておしまいということでは問題があると私は思うのですね。もう本当に代償機関としての人事院存在を問われておるわけですから、今ここで説明をされた勧告内容については完全実施させる、人事院挙げて政府国会等に対する働きかけ、努力、そういったことをぜひお願いしたい。勧告おしまいだと考えてもらうと困ると思うのですね。  それでお尋ねしますが、一昨々年昭和五十六年度以降いろいろ人勧の問題が問題になってきたわけです。指定職の場合には昭和五十四年度から抑制されておるわけでありますが、指定職の方は別にいたしまして、完全実施した場合と今日まで不完全実施あるいは見送った場合との年収差額、その差額は一体どれぐらいになっておるのか、この際明らかにしていただきたい。課長クラス以下で結構です。
  8. 斧誠之助

    斧説明員 お答えをいたします。  五十六年には課長クラス以上は一年見送りということになりましたので、課長クラスにつきましては五十六年、五十七年、五十八年、こういう三年間にわたって抑制または見送りが行われております。その結果、課長クラスでは、妻と子供二人の標準家庭で合計で百二十三万七千円の勧告と実際に給与改定実施が行われた差額がございます。課長補佐クラスでは約五十七万二千円、係長クラスで約四十七万七千円、係員で、これは妻がある係員でございますが、約三十万八千円程度になっております。
  9. 松浦利尚

    松浦委員 行政職全国平均ではどれくらいになりますか。
  10. 斧誠之助

    斧説明員 行政職の行(一)と行(二)全体の平均で、この三年間で約四十二万七千円でございます。
  11. 松浦利尚

    松浦委員 総務庁長官、今お聞きになったように、国家公務員であるがゆえに、代償機関である人事院勧告したその勧告実施のために今それだけの大きな年収差額、当然もらえる権利を放棄した形になっておるわけですね。大臣、今の行政職(一)、(二)の全国平均で四十二万七千円、どう思われますか、感想を聞かしてください。
  12. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 申し上げるまでもなく労働三権の代償措置でございますから、人事院勧告というものは政府としては最大限に尊重をして完全実施に向けて努力をするということが基本考え方でございます。  ただ、ここ二、三年、御案内のように厳しい財政状況があり、また行財政改革という困難な仕事に取り組んでおるわけでございますから、各方面にいろいろと既得権を持っていらっしゃる方に御辛抱を願っておるといったようなこともあり、国民世論の動向も考えなきゃならぬ。こういったような経済社会全般状況から、政府としては最大限努力を払うことは当たり前でございますけれども、やむを得ず人事院勧告完全実施しなかった、こういうことでございます。その結果、御質問のように、それぞれの職階に応じて、本来完全実施せられればこれだけもらえるはずであったという計算が出ることは当然でございますけれども、これはもちろん毎年毎年政府として決定をし、それを給与法の改正ということで国会の御審議を賜っておるわけでございます。そして同時に、人事院勧告は毎年あるわけでございますから、未実施の部分については当然、当該年度において官民較差としてあらわれてくるものでございます。したがって、問題は当該年度勧告の中でそれぞれの配分がどのようになっているのか、こういうことで勧告をなされておりますから、私どもとしては、毎年毎年人事院勧告については最大限努力を払っていかなければならぬ、かように考えているわけでございます。
  13. 松浦利尚

    松浦委員 長官、あなたは行政改革を一方で担当する、一方で給与関係も担当する。片一方では抑えろ、片一方では完全実施、あなたはどちらを選ばれますか。
  14. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御承知のように、私は行財政改革の主管の行政長官でございます。同時にまた、公務員給与についても私は所管の大臣として責任があるわけでございます。したがって、私は国務大臣として国政全般立場において適切に対応しなければならぬ。もちろんその基本は、人事院勧告完全実施に向けて最大限努力を払うことであるということは当然のことであろう、かように考えているわけでございます。
  15. 松浦利尚

    松浦委員 先ほど総裁からもお話がありましたように、このことが職員生活面影響し、士気保持規律維持人材確保労使関係の安定を阻害するような状況になりつつある、これは大変なことですね。今年度はもう完全実施するというふうに、あなたは給与担当大臣として確約をしていいんじゃありませんか。ただ単に抑えることばかりを考えずに、努力をするじゃなくて実施をする、そういう判断を下すべき時期に来ておるのじゃないですか。また去年、おととしのようなことになれば、先ほど人事院総裁報告したような状況にあるのですよ。総務庁職員自体もこういう状況になっておるのですよ、あなたのところの部下も。それで満足に行政が遂行できますか。危機的状況に来ておるのですよ。大臣努力をするのは当然ですというようなことじゃなくて、完全実施のために頑張るんだということを言うべきときに来ておるのじゃないですか、あなたは給与担当大臣ですから。大蔵大臣が言うなら別、あなたは給与担当大臣だから。どうです。
  16. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 先ほど言いましたように、行財政改革担当大臣でもありますし、同時にまた給与担当大臣でもございます。そういった行政長官としての職責は十分考えておりますが、先ほど来申し上げておるような状況でございますから、人事院勧告完全実施に向けて最大限努力を払わなければならぬということは私も重々承知をいたしておりますが、国務大臣としての立場において現実的に何とか解決を図っていきたい、かように考えておるのが現在の私の心境でございます。
  17. 松浦利尚

    松浦委員 ここで言葉のやりとりをしておっても問題は解決しないと思うのですね。  金がないから実施をしない、金がないから抑制をする、今年度はこういうことですか。人勧実施しない条件というのはどういうことを挙げるのですか。本当は完全実施することが一番正しい方針。しかし、これを不完全実施したりあるいは見送ったりする条件というのは、何と何と何ですか。具体的に教えてください。金がない、あるいはこういうことがある、そのことは担当大臣として当然わかっておられると思いますから、具体的に説明してください。簡単で結構です。
  18. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 それも先ほどお答えをいたしましたように、厳しい財政状況が一方にあることは否定し得ない事実でございます。しかし、さればといって、金がないから給与は上げなくてもいいといったように短絡的に考えることは誤りである。国政全般、つまりは一方において行財政改革という厳しい御辛抱国民の方々にお願いしておるさなかである。しかも、そういった処置をとりながらも、なおかつ財政面では厳しい状況にあるんだ。こういったようなことを考え、同時にまた、先ほど人事院総裁がおっしゃったように、公務員士気維持あるいは労使関係の安定、これが国政運営上極めて重要であるということも十分配慮しながら、私としては国政全般立場において最大限努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  19. 松浦利尚

    松浦委員 非常に財政的に厳しいというお話です。確かに百二十兆近くの赤字を抱えておる状況は、私たちも理解をいたします。だからといって、官民較差がこれほど出ておるのに見送るということは、公務員皆さん方に対して大変気の毒だ。  それで、きょうは経済企画庁長官にもおいでをいただきたかったのですが、諸般事情おいでいただけません。調整局長もほかに用があるそうですから、丸茂審議官おいでをいただきました。  具体的にお尋ねをいたします。  七月十九日に物特で、河本長官それから赤羽経済企画庁調整局長経済問題について議論をいたしました。四月−六月のGNP内容等について九月末に発表されるとお聞きをいたしておりますが、これは発表されますか。
  20. 丸茂明則

    丸茂説明員 今お尋ねの四−六月の国民所得統計につきましては、例年のとおりでございますが、九月に発表される、計算ができ上がる予定でございます。
  21. 松浦利尚

    松浦委員 この前河本長官は、今年度経済見通し実質四・一%、名目五・九%については、経済回復等これあり、したがって、今年度経済見通し改定実質四・一%は、正確に申し上げますと「五%を相当超えるのではないかこういう感じを持っておるということを発表しておられるわけであります。きょうの日経等を見ますと、どうも大蔵省あるいは外務省等の圧力で経済見通し改定上方修正については見送るかのごとき報道がなされておりますが、臨時国会のあるなしにかかわらず、上方修正経済見通しについて発表される準備はしておるのでしょう。その点についてはっきりさせてください。
  22. 丸茂明則

    丸茂説明員 本年度政府経済見通しにつきましては、例年のことでございますが、大体九月ごろに四−六月の実績がわかりました段階で、果たして当初見通しどおりいくのかどうかということを点検することにしておりますので、今年どういう形で見通しについての修正をするかという点は、今後各省とも御相談した上で決めていきたいと考えております。
  23. 松浦利尚

    松浦委員 河本長官が、五%を相当超える見通しになるという感じを持っておる、こういうふうにお答えになっておるわけでありますが、五%を相当超えるといってもどれほど超えるのか、ここでは正確に御答弁はいただけないと思います。  仮に実質四・一%が一%実質成長いたしまして五・一%になった場合、赤羽政府委員は、仮に一%GNPが高まったときには、いわゆる税収基本である所得弾性値は過去十年の平均をとると一・一%弱になる、こういう答弁をしておりますが、五・一%のときに名目成長がほぼどれくらいになるのか。そして、所得弾性値は一%伸びることによって過去十年の平均が一・一%弱の数字を示す、そのことについては、これは局長が答えられたことですから審議官が否定するはずはないと思うのでありますが、否定しないという前提で答弁をしてください。
  24. 丸茂明則

    丸茂説明員 今御指摘ございましたように、実質GNPが本年度当初予想の四・一%を十分達成できるということは考えておりますが、それがどの程度まで上がるかということは、先ほども申しましたように今年度の第一・四半期でございます四−六月のGNP統計も現在まだ集計中でございますので、現在の段階でどの程度ということは見きわめがつかない段階でございます。  今先生御質問の中で、仮に一%上がればということでございますが、ここでは実質GNPが一%上がった場合にということでございます。先日、赤羽調整局長お答え申しましたのは、名目GNPが仮に一%上がった場合、過去十年間平均でございますと税収はその約一・一倍、弾性値一・一というのが従来の実績であるということを申し上げたわけでございます。したがいまして、現在の段階で今年度実質成長率がどの程度になるのか、また名目で見ますとどうなるかという点は、繰り返して恐縮でございますが、もう少し経済の推移を見詰めませんとまだはっきりした数字は推定できないという考え方でございます。
  25. 松浦利尚

    松浦委員 五・一%になった場合——河本長官は五%を相当超えると言っているのですよ。だから、私は五%に一番近い数字を挙げて言っているんですよ。だから長官に出席してくれと私は頼んだでしょう。過去十年の実績で一・一%所得弾性値が上がるということは間違いないんでしょう。それはどうですか。そのことは認めるでしょう。
  26. 丸茂明則

    丸茂説明員 所得弾性値と申しますのは景気の状況によって年々かなり大きく変動いたしますので、必ず一・一ということではございませんが、過去十年間平均から見ますと一・一倍ぐらいの税収があるのが普通であろうというふうに考えます。
  27. 松浦利尚

    松浦委員 そうすると、仮に五・一%となった場合には名目成長は七・九ぐらいになると予測されるんじゃないですか。
  28. 丸茂明則

    丸茂説明員 最近、物価情勢が非常に落ちついているということもございますので、実質成長率が高まった分だけそのまま名目成長率も高まるかどうかという点は、必ずしも今の段階では断言できないと思います。
  29. 松浦利尚

    松浦委員 実質的に今年度物価上昇は二%と見込んでおられるでしょう。ですから、仮に実質成長が五・一になった場合には、少なくとも七・五から七・九くらいの名目成長は達成することができるのじゃないですか、これは仮定の問題だけれども。それは間違いないでしょう。
  30. 丸茂明則

    丸茂説明員 今年度の当初見通しにおきましては、名目成長率が五・九、実質成長率四・一と見ておりましたので、デフレーターといたしましては二を若干切る程度予想していたわけでございます。(松浦委員「それで七・五から七・九に入るでしょう、大体そのあたりでしょう」と呼ぶ)ただ昨年度実績は、実質で申しますと、三・四%という政府実績見込みに対しまして御承知のように三・七%と若干上回ったわけでございますが、物価落ちつき等を反映いたしまして名目成長率の方は当初見通しをむしろ若干下回っております。したがいまして、発射台といいますか、昨年度実績名目では当初考えていたところをやや下回っておりますので、名目GNPが今年度どのくらい伸びるかという点は、もう少し検討しないとはっきりしたことは申し上げられないと思います。
  31. 松浦利尚

    松浦委員 デフレーターで、五・一%という実質成長仮定した場合に、七・五から七・九に入るでしょう。何であなた、答えられないの。あなた専門家でしょう。結果が出るのは九月ですよ。しかし仮定の問題として、五・一になった場合には、そのデフレーターから見て七・五から七・九の間に入るでしょう。
  32. 丸茂明則

    丸茂説明員 先ほど申し上げましたように、本年度の当初の政府見通しては名目成長率が五・九%、実質成長率が四・一%と見ておりましたので、デフレーターは約一・八%の上昇を見込んでおります。仮にこのデフレーター予想がそのとおりであるといたしますと、五・一%の実質成長をいたしますと名目成長率は約七%になると考えられます。
  33. 松浦利尚

    松浦委員 そうすると、国税、地方税を合わせて税収は約五十兆ですね。数字としては約五十兆ということですが、その五十兆に名目成長が伸びた分だけ自然増収があるわけですね。そうでしょう。それは間違いないでしょう。そうすると、その自然増収分というのは予算上計上されておらなかった分です。今度は補正予算も組まない。十二月一日に通常国会。ですから、今日の経済情勢から見ると、河本長官が言ったように、自然増収というのは相当大幅に見込めるということなんだ。だから人勧完全実施する金はあるんだ。率直に言って、数字から見て。これは河本長官がこの前、昭和五十八年度は大体五千億弱自然増収が見込まれるという答弁をしておられる。昭和五十八年度で約五千億、昭和五十九年度で私が名目成長七・五で計算をして約九千億、金はここにある。ですから、人事院勧告政府が言うように完全実施しようとすれば、金はあるんだ。ないんじゃない、ここにあるんだ。問題は、今度はこれをどこに使うかだ。この自然増収分を優先的にどこに配分するかだ。まさにこれは政策の問題だ。金はあるんだ、ここに。しかも手つかずの金、昭和五十八年度の五千億が全く手つかず。約九千億の自然増収分というのは補正予算も組まない、通常国会にこのまま流れ込む、この金をどこに使うか、まさに政策の問題。ですから、先ほどから形式的な議論がどうかわからないけれども長官が言っておられる、本当に人事院勧告を完全に実施するなら金はここにあるんだ。  長官給与担当大臣として、お金はあります、あなたは完全実施を選択して一生懸命閣内で努力されますか。
  34. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 五十八年度に二千五百億くらい剰余が出ておると思います。五十九年度も現在の段階で、それは具体的に予算は名目ではかるわけですから、名目成長がどのようになるか、これはいま少しく時間の経過を見なければなりませんが、しかし景気は拡大をいたしておりますから、当初の予想より上回った税収が上がってくるであろうということは十分想定するにかたくありません。したがって、人事院勧告をことしどうするかという場合に、それらが重要な要素になるということだけは私は間違いがないと思います。  しかし、御質問のように、だから人事院勧告完全実施する金があるのかということになると、これはその段階で検討しなければならないので、今確定的なことは申し上げられませんが、一%給与を引き上げるということによっての所要財源は、一般会計で大体七百二、三十億だと私は考えておりますが、はね返り分が六百億で大体千三百億。そして同時に地方の一般会計の分が千百億でございます。はね返り分がどの程度になるか、これは確定的な数字は自治省等に聞きましても必ずしも私自身はっきりした根拠はっかめませんが、一応の私なりの推定で大体千三百億でございます。そういたしますと、国の場合に千三百億、地方の場合に二千四百億、合計三千七百億という一%の給与改善で経費を要するんだというようなことも頭に置かなければなりません。もちろん御質問の中にありましたように、政策判断であることは当然でございます。  したがって、私は最初に申し上げましたように、景気が回復をしておる、したがって自然増収もふえるであろうということを念頭に置きながらも、国政全体の観点において、いずれにせよ政府としては、人事院勧告というものは最大限努力をしたのかしなかったのかということが、これが評価の分かれ目になるわけでございますから、私としては最大限努力をいたしたい、かように申し上げておるわけでございます。
  35. 松浦利尚

    松浦委員 丸茂審議官お尋ねをしておきますが、確かに今景気が回復してきて自然増収が大幅に見込まれるわけですけれども、先日長官が委員余で御答弁なさっておるように、個人消費が伸び悩んでおる、住宅建設が停滞をしておる、内需拡大政策をとらなければならないにかかわらず、そういった個人消費、住宅投資というものが停滞をしておるがゆえに外需依存型の成長に今日もなってきておる、そういう意味では個人消費を拡大する政策というものをとらなければならない、こういう答弁をしておられますね。しかも個人消費を拡大していくためにも、最終的には人勧というのは我が国の経済運営のためにもやはり完全に実施すべきだ、同時に、憲法に保障された代償機関としての勧告というものは完全実施されるべきである、こういう長官の御答弁が出されておるわけでありますが、あなた自身はきょうは経済企画庁を代表して来ておるわけですが、その点については確認されますね。
  36. 丸茂明則

    丸茂説明員 先生御指摘がございましたように、景気は比較的順調に回復しておりますけれども、従来、今までに出ました実績で見ますと、設備投資はかなり盛り上がりを見せておりますけれども、個人消費、住宅投資、ふえてはおりますが、ややその伸びが低いということは事実でございますし、また対外的に経常収支の問題あるいは外需依存というような形の成長になることにも問題があるという点は、御指摘のとおりでございます。
  37. 松浦利尚

    松浦委員 もう最後ですが、私は国務大臣先ほど長官が言われましたから、後藤田国務大臣に申し上げておきますが、対米輸出三百億ドルを超える黒字という問題が日米経済摩擦を起こす可能性というのは十分介在をしておる。ですから、外需依存型から内需依存型の経済に転換をしていくということは、私は政策的には極めて重要な問題だと思う。その一つとして私は、個人消費を拡大する意味で人勧完全実施等というものは当然なされるべき経済政策だ。そういうことをぜひ念頭に置いて、今年度はひとつ公務員全体が期待をしておる人勧完全実施の道が開かれるように長官の最後の決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わらしてもらいます。
  38. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私としましては、人事院勧告完全実施に向けて最大限努力をし、そして国政全般との関連のもとに適切な対応をいたしたい、かように考えております。
  39. 松浦利尚

    松浦委員 非常に不満足ですが、質問を終わります。
  40. 片岡清一

    片岡委員長 関連して元信堯君。
  41. 元信堯

    ○元信委員 勧告について質問をする前にまず人事院総裁に、勧告をするに当たっての基本姿勢について改めて伺わざるを得ないと思っているところでございます。  そもそも我が党は、あなたが前藤井総裁の辞任をされました残存任期に就任をされるときに、異例ではございますが、反対をいたしました。大変問題のある人事だということで反対をしたわけであります。しかしながら、その後短い間ではありましたけれども人事院総裁に就任をされて各所でいろいろな言動をされたわけでございますが、そういう言動を見ながら、現任期についてはそういうことなら一応賛成してもよかろうか、こういう判断に立って、今の任期については賛成をした、こういうことについては御存じだろうというふうに思います。  その人事院総裁としてのあなたの基本姿勢、そういうものは幾つかの機会に示されたわけでありますが、例えば公務員共闘の公開質問状に対して、あなたは三月十二日付に回答をされました。そこに示されている内海さんの人事院総裁としての基本姿勢というのは今日もそのとおりであるかどうか、まずこの点から伺います。
  42. 内海倫

    内海説明員 お話しのように、私の着任後間もなく職員団体の方から、私の考え方等についての公開質問がございました。それにつきましては、私の所信を端的に申し上げて、現在もそこで申し上げておる所信というものは少しも変わっておりませんし、つけ加えて申し上げますならば、今回の勧告並びに報告もまた、そういうふうな所信に基づいて行っておるものであるということを申し上げておきたいと思います。
  43. 元信堯

    ○元信委員 それでは、幾つかの例について申し上げておきますが、例えば臨調は人勧抑制を求めているのではない、こういうふうにあなたはお考えを示されたわけでございます。またさらに、人事院勧告制度が政治的にも中立てあらねばならぬ、こういうお立場であろうというふうに思いますけれども、労使交渉の尊重、重視、それからまた代償機関としての、単に勧告するというだけではなくその勧告が実現される、そのために最大の努力をするということ、そういうことを含めてもう一遍総裁の御決意を承っておきます。
  44. 内海倫

    内海説明員 ただいま御質問のございました諸項目についてでございますけれども、この臨調の答申にかかわる公務員についての問題は、私は公務員給与に関してこれを抑制するとか制限するとかということは、少なくとも最終答申におきまして触れておるものではございません。のみならず、臨調の答申は、人勧制度を尊重し、また給与の決定に関しては民間準拠ということを申しております。また、人件費総額の抑制ということは言っておりますけれども、そのことにおきましても、それぞれ事例を挙げて、こういうふうな形で総額の抑制を図るべきであるということで、給与抑制というものには触れておらないところでございまして、私は、臨調の公務員にかかわる問題は、給与抑制というふうなことは言っておらないと理解をいたしております。  また、労使交渉ということにつきまして、それがいろいろな形で職員団体の意見を承る、また私どもの意見も率直に申し上げる、そういう意味においてこういうものは大いに活発に行われていいものであるというふうに思っておりますし、その他、人勧基本的な理念というものを、人事院はもとよりでございますが、国会内閣においても十分に理解をしていただいて、人事院の機能が適正に働くようにということを願っておることも所信の中で申し上げておりますし、今日も変わっておりません。
  45. 元信堯

    ○元信委員 今人事院総裁から、臨調の答申は人件費の抑制とはいうものの、人事院勧告についてはこれを堅持するように、民間準拠で行く、こういうふうに理解をしているという御答弁があったわけですが、総務庁長官、同じような御理解でしょうか。
  46. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私の承知をしておる範囲では、この問題については臨調の中でいろいろと御勉強になり議論があったと承知をいたしておりますが、最終の答申は、ただいま人事院総裁お答えになったように、やはり労働三権の代償措置としての人事院勧告制度というものは尊重すべきものである、したがって、具体的に公務員給与についてこれを抑制すべきであるとかないとかといったようなことは申しておりません。ただ、この行政経費の節減合理化あるいは民間への委託あるいは定員の管理その他を通じて、人件費が増高することをできる限り、これは総人件費の抑制ということに努力すべきである、かような御意見であったように承知をいたしております。
  47. 元信堯

    ○元信委員 政府の皆さんにお願いをしておきたいと思いますが、時間も限られておりますので、お聞きをしたことに御答弁をいただきたい。これからいろいろ細かい機微に触れる問題が出てまいります。そんなことをぜひまずお願いをしておきたいと思います。  それで、総裁、まずこの勧告の時期について伺っていきたいと思うのですが、その前に、人事院勧告というものはどことどこに対して行われたものか、もう一遍それをお願いしたいと思います。
  48. 内海倫

    内海説明員 もう先刻御存じと思いますが、国会及び内閣勧告を申し上げる、こういうことでございます。
  49. 元信堯

    ○元信委員 百一国会はいつまで開会されておりましたか。
  50. 内海倫

    内海説明員 八月八日で終了したと思っております。
  51. 元信堯

    ○元信委員 人事院勧告はいつなさいましたか。
  52. 内海倫

    内海説明員 八月十日の午前でございます。
  53. 元信堯

    ○元信委員 昨年はいつなさいましたか。
  54. 内海倫

    内海説明員 八月五日でございます。
  55. 元信堯

    ○元信委員 昨年は八月五日にして、ことしは八月十日にする。しかも、国会に対して勧告をするというのに国会が会期切れになってから勧告した、一体どういうわけですか。
  56. 内海倫

    内海説明員 まず私ども勧告並びに報告を検討いたしますにつきまして非常に多くの時間をかけ、結果的に会期中に勧告を申し上げることが間に合わなかったということは私も極めて残念に思います。私どももできることなら会期中にという努力もいたしましたが、しかし、同時に私どもとしては、この勧告あるいは報告というものに全精力を注いで、真になすべき勧告、真に表現すべき報告内容であるということがさらに大事な問題でございました。とりわけ今回は、昨年あるいは一昨年の見送りまたは厳しい抑制の後の勧告でございますので、その辺につきましても在来に増して検討を続けたわけでございます。  さらに、大変私事にわたりますけれども、私も今回初めての勧告作業でございまして、調査内容あるいは報告、または勧告方針の検討というふうなことにいろいろ時間がかかった、そのことが事務的にはね返って、あるいは事務当局が在来の予定した計画どおりにいかなかったというふうなこともあったかと思います。その結果、ついに十日ということに相なりました。  しかし、申し上げておきますことは、私どもが意識して会期中を避けたとかそういうものでは決してございません。この点は、もし御理解いただくならば、以上申し述べましたような事情にあったということを申し上げておきたいと思います。
  57. 元信堯

    ○元信委員 人事院勧告をめぐる環境が極めて厳しいということは、私どももよく承知しております。なればこそ国会会期中に勧告を作業して、去年はできたわけですから、幾ら人事院総裁がかわったからといって、そんなことでころころ変わったのではかなわない、きちんと国会審議を受けるべきだ、そのことがあなたが再々おっしゃっておる人事院勧告完全実施させるための努力だと私どもは思うわけであります。そういう肝心の努力をしないで、国会が切れたところをねらってと思われても仕方がないと思うのですが、勧告をして、そうしてその後で努力努力と言っても、そのことは私どもからは極めてむなしく響くほかはないというふうに思っています。  勧告の前に関係団体等から、国会会期中に勧告を出してほしい、こういう要請、ございませんでしたか。
  58. 内海倫

    内海説明員 職員団体からもございましたし、また社会党の諸先生方からも要望がございました。私どもは、それは決していいかげんに聞いておるわけではございません。十分その御意思のほども承りまして、先ほど申しましたように努力はいたしたつもりでおりますけれども、なおかつ結果的にそういうことになりました。もし私のそういう初めての勧告というふうなことが、そういうものを遅延させる結果を招来したとするならば、これは深くおわびをしなければならないかと思います。
  59. 元信堯

    ○元信委員 時期のことでそう時間をとってでも仕方がありませんから、勧告並びに報告の中身に入ってまいりますが、ことし内海総裁が初めて出された勧告の中で、従来と少し違うところが目立つように思われるわけであります。  その一つを申し上げますと、この報告の中で「公務員給与をめぐる最近の動き」として報告を、勧告をするに当たって「本院としては、この際、広く公務内外の意見を聴取したが、」云々と、こういうくだりがございますが、「公務内外の意見」というのは具体的にどういうものであるか、まずこの点から伺いたいと思います。
  60. 内海倫

    内海説明員 まず前に、今回だけそういう意見を聞いたというわけではございませんで、在来勧告に際しましては内外の意見を聞いておるわけでございますが、今回は特に、そういう点も報告の中に明らかにいたしました。  公務内外といいますのは、公務の内は、職員団体の皆さん、それから人事を担当しております各省の人事担当の責任者、こういう方たちからは屡次の会合、あるいは職員団体の方たちとは各局長あるいは私自身お目にかかっていろいろと御意見を承りました。  公務の外でございますけれども、あるいはマスコミにおける論説委員の皆さんにお集まりを願って端的な意見を承り、さらにまた今回特に有識の方八名ぐらいでしたか、関係各方面を代表される方々の御意見も二回にわたって聞きました。その他、いろいろな機会にいろいろな方々の意見を聞くというふうな努力をいたしてまいりました。  これがそこに言います「公務内外の意見を聴取した」ということでございます。
  61. 元信堯

    ○元信委員 どうも余りはっきりしたお答えじゃないのですね。有識の方ですとか関係各方面の代表八名ですか、もう少し具体的におっしゃっていただきたいと思います。私は、総裁がかつて臨調の専門委員として関係されておったことから、あるいは臨調のOBと申しますか、そういう方からいろいろサゼスチョンがあったのではないか、そんなふうにも思っております。どうですか。
  62. 内海倫

    内海説明員 まず、今おっしゃいました分につきまして大変勝手でございますが、御本人の名前を挙げて申し上げておきたいと思います。  東京商工会議所専務理事の井川さん、日本労働協会理事の辻さん、全農林労働組合顧問の鶴園さん、中央大学教授の橋本さん、地域振興整備公団の吉國さん、国際基督教大学の渡辺さん、全国勤労青少年会館の和田勝美さん、七名の方でございますが、そのうちで鶴園さんは御存じのとおり確かに臨調の委員でございます。それから渡辺保男さん、この方も臨調の委員でございました。しかしながらお二人とも、臨調ということもさることながら、公務問題に関しては卓越した御見識をお持ちの方でございますので、人事院としては臨調というふうなことにかかわったのではなく、その見識に基づいて御意見をいただきたいということでお願い申し上げました。  それから、これはむしろ部内と言っていいかもしれませんが、人事院には参与を委嘱いたしておりまして、共済組合連盟の今井さん、公共企業体等労働委員会の石川さん、上智大学の佐藤功さん、北方領土問題対策協会の佐藤朝生さん、東京証券取引所参与の谷村さん、東京銀行の原さん、中央労働委員会の平田さん、原子力委員会の向坊さん、東京金取引所理事長の渡辺佳英さん、こういう方に参与を委嘱いたしておりまして、こういう方からも御意見を承っております。  それから、論説委員といいますのはたしか十数社になると思いますが、各社の論説を担当されておる委員の方々でございます。
  63. 元信堯

    ○元信委員 もう一つ、ことしの勧告で、報告の部分で目立つ点は、「一方において現下の財政事情に対する配慮、」をした、こういうことを触れておいでになるわけですが、その前に総裁のお立場は、公務員労働基本権制約の代償措置である人事院勧告は、基本的には財政事情であるとか、もちろん行政改革などとは独立に尊重されるべきものであるというふうにお考えであろうかと思います。もう一遍確認をしておきたいと思います。
  64. 内海倫

    内海説明員 労働基本権を制約されております公務員について、その勤務条件あるいは給与について、いかにしてこの制約のもとにおける公務員に対して公平でかつ適切な条件を設定するかということの知恵が人事院という組織をつくり、また、その人事院がそういうふうなことによるいわば代償措置としての勧告を行う、こういうことでございまして、この制度というものは極めて重要な意味を持っておるものであります。したがって、私どもは、その重要な意味というものを絶えず御説明も申し上げておるし、また、それの認識のお願いを各方面に対して行ってきておるわけであります。  そこで、そういうふうな機能に基づく勧告というものは、それは政府あるいは国会のお立場でいろいろ論議されるところはあるかとも思いますが、先ほどもいろいろ御質問がございましたように、給与というものはいわば生活権にかかわる問題でございますから、それが公務員として雇用されておる限り、人事院の行っておる勧告というものを尊重していただくということのためにはあらゆる努力をしていただかなければならない。私どもは、財政を考慮し、あるいは諸般条件を考慮するということにつきまして、人事院としてはそういうふうな諸条件に対する認識は持っておりましても、むしろそれゆえに、その認識を持っておるがゆえになおのこと、公務員給与の私ども勧告というものは尊重し、その勧告実施していただかなければならない、これを強く思っておるところでございます。
  65. 元信堯

    ○元信委員 財政事情を認識しているがゆえにというのは、その後段はいいとしても、どうも私どもはひっかかるわけであります。特に報告の中で、「財政事情が極めて厳しい状況にあること、また、行政改革が引き続き国民的課題として推進されていることについては、本院としても深く認識している」、私は、こんなことは言わずもがなのことだと思います。  それでは、例えば財政事情は極めて厳しい状況にあるということを本院として認識をしている、一体どのような方法で認識をされたのか、その点明らかにしてください。
  66. 内海倫

    内海説明員 いろいろな政府の発表される資料、あるいは国会におけるいろいろな論議、あるいは予算編成におけるゼロシーリング、マイナスシーリング、かって見ないような厳しいそういうふうな措置がとられておる、あるいは毎日の新聞その他の報道を見ましても、これは我々としては十分勉強しておくべきものでございます。  しかし、私はもう一遍ここで申し上げておきたいことは、そういうふうなことを認識しておるということは、だから人勧というものが値切られていいとかというふうなことのために言っておるのではなく、そういうふうなことを乗り越えてでもなおかつ人勧というものは尊重していただかなければいけないという伏線で申し上げておるということも御認識をいただかなければならないと思います。
  67. 元信堯

    ○元信委員 そこのところは、なかなかそうは受け取れぬわけですね。銭がないことはわかっている、しかし上げねばならぬということを、わざわざ銭がないということをいろいろに強調しておいてしかも上げねばならぬと言うのは、普通の常識的な議論では通りにくい。あなたが幾ら力説しても、すればするほど、私ども人勧完全実施に向けての状況は厳しくなるばかりではないか、こう思うわけであります。  かつて臨調の議論の中で、人事院財政状況について認識をするべきだ、こういう議論がありました。しかし、その当時の総裁は、認識をするためにはそれなりの調査をしなければならぬ、その調査をするために人事院大蔵省並みの調査機能を持たなければそんなことはできぬ、こういうことを言われてそれを退けられたことがあります。私は、これは大変見識だと思うのですね。  今総裁お話を聞いていますと、どういうふうに認識したかというのは、新聞を見たり国会の様子を聞いたり、要するにすべて伝間であります。人の話を聞いただけ。人事院勧告の中で財政状況が厳しいと言うのであれば、それは人事院として独自に調査したことでなければこんなことは言えないと思うのです。にもかかわらず、調査もせずに、言うならば伝聞をかき集めた形でこういうものをつくっておいて、わざわざ文言として挙げておいて、そうして、にもかかわらず、であればこそと言うのは、幾ら言ってもどうも私にはそうは響かない。むしろその逆に響くのではないかという危惧を申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、そういう状況のもと、昨今政府においては、今も松浦委員質問に対して総務庁長官、誠意を持ってとは言うけれども完全実施をしますということはついに言わずじまいでしたな。昨今新聞などによると、それどころじゃない、あなた、いろいろなことをおっしゃっておるわけです。段階実施であるとか数年をかけてであるとか、こんなことを言っているわけですが、一体として出されている人事院勧告ですね。去年の分とことしの分だなんという形では出されていません。一体のものとして出されている人事院勧告を勝手に区分をして、この部分は完全実施だ、この部分は段階実施だなどというようなことを言う。しかも、それは明年度以降にまで影響するような形で言っているというのはまことにけしからぬことだと思いますが、こういう見解が勧告を出される前からじゃんじゃんマスコミ等を通じて流されるという今日の状況について、人事院総裁はどうお考えですか。
  68. 内海倫

    内海説明員 私どもはたびたび御説明を申し上げ、また今回の報告並びに勧告におきましても明らかにいたしておりますように、今度の勧告というものは、本年四月現在における官と民の給与調査いたしまして、そしてそれを比較して、その間に生じておる較差を解消していただく、これを埋め合わせていただくということを勧告として申し上げておるわけでございますから、人事院という立場人事院のなしておる勧告というものの意味合いからいいまして、まず何よりもそれを実施していただく、勧告のとおり実施していただくということが、言ってみれば願いであり、また私どもの主張なんでございます。  それから、先ほどの御意見の中でちょっとつけ加えさせていただくことをお許しいただきますと、私どもも、財政というふうなものについて我我が判断するのであれば、それは大蔵省と全く同等ぐらいの機能を持たない限りはできませんと、これは前の総裁もおっしゃったかもしれませんが、明らかに申し上げたのは私でございます。それからまた、臨調の中においても、財政云々という場合に、そういうふうなものは人事院としてなすべきでないし、また、なす機能もないはずであるということを申したのも私でございますことをあわせてつけ加え、今日においてもその考え方においては変わっておりません。
  69. 元信堯

    ○元信委員 内海総裁がそう言われたというのでしたら、それは訂正をしておきたいと思います。それはそれで私は見識であると思うのです。であれば、なぜこういう形で出てくるかということについては、しかしあなたが幾ら語気を強めて言われても、そのことについては私は到底了解はできません。調査をしていないものを、わざわざこんなことを一般的に述べるというのは、やはりこの人事院勧告の真髄といいますか、それをわきまえていないものであるというふうに思わざるを得ないわけです。  そこで、総裁、今私が伺いましたことは、そういうアングラ的に、段階実施だなんということをじゃんじゃん流しているということについてどう思うかということです。結構なことだというのか、まことに遺憾なことだというのか、簡潔にもう一遍答弁してもらいたいと思います。
  70. 内海倫

    内海説明員 まだそういうものが政策として、あるいは政府の御意向として決まっておる問題ではございませんので、そういうことに対する私の意見は差し控えさせていただきます。私ども考え方先ほど基本的に申し上げたことでございますから、この基本的な考え方が実現されないというふうなことに対しては、私どもは極めて残念であるということは感ずるわけでございます。まだそういうことが表ざたになっているわけでは全然ないのでございますから、これに対しての私の所見を申し上げることは無理でございます。
  71. 元信堯

    ○元信委員 新聞に出ていれば僕は表ざただと思うのです。先ほどあなたは、財政事情については伝聞に基づいてどんどん報告の中に書かれた。しかも、一方で、政府があたかも既成事実的雰囲気をつくろうとしてそういうけしからぬことをじゃんじゃん言っておっても、それがまた表ざたになっておらないという認識を示されるのは極めてアンバランス、ちぐはぐである。ここは論争になりますから、時間の関係もありますので、ここまでにしておきたいと思いますが、指摘をしておきたいと思います。  政府の官房長官おいでをいただきました。次に、政府に聞きたいと思いますが、今人事院総裁からるる、完全実施でなければいかぬ、こういう答弁があったわけでありますが、まず政府の責任者、官房長官に伺っておきたいと思います。先ほど総務庁長官からは何度も承ったところです。  官房長官は、完全実施についてどういう決意を持っているか、この際伺いたいと思います。
  72. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 春の関係労働団体との会見におきましても、また再三国会における御質疑お答えをいたしてまいりました考え方からいたしましても、人事院勧告制度尊重の基本姿勢を堅持いたしまして、完全実施に向けて最善の努力をしていくようにいたしたい、このように考えております。  八月十日に勧告をお受けいたしまして、直ちに同日、給与関係閣僚会議第一回を開きましていろいろな意見が闘わされたところでございます。政府部内にもそれぞれの立場でいろいろな意見があるわけでございますから、国政全般との関連においていろいろ検討を進めなければならぬ、このように考えておりますが、今申し上げましたように誠意を持って努力をしていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  73. 元信堯

    ○元信委員 四月四日に公労協と公務員共闘の統一交渉がございました。官房長官政府を代表して回答をされているようでありますが、その中で「労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度および仲裁裁定制度維持尊重するとの基本姿勢を堅持する。」こうおっしゃったやに私ども伺っておりますが、間違いございませんか。
  74. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 そのとおりでございます。
  75. 元信堯

    ○元信委員 政府の関係で申しますと、四現業の仲裁裁定についてはどんなふうに実施されましたか。
  76. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 まだ年度が出発をいたしまして時間が短うございましたので、いろいろ財政当局などからは確固とした財政上の見通しを持つに至っていないという意見もございまして国会の御判断を待つというふうに考えまして、仲裁裁定につきましては国会に法案を提出させていただきまして御判断を仰いだ、こういうことになっておる次第でございます。
  77. 元信堯

    ○元信委員 完全実施、こういうことになりましたね。そうしますと、政府は「人事院勧告制度および仲裁裁定制度維持尊重する」と一つのものとしてとらえて回答されたわけでありますから、仲裁裁定完全実施であった場合には、当然人事院勧告制度についても維持尊重というので完全実施にしないと、一つの回答の中で二つの回答をしたことになると思いますが、いかがでしょう。
  78. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 仲裁裁定につきましては仲裁裁定実施するように努力をする、人事院勧告につきましては人事院勧告完全実施に向けて最善の努力をする、こういうことが建前であろうかと思うのでございます。  仲裁裁定につきましては、今申し上げましたような経緯で実施をする段階に来ておるわけでございます。先生御指摘のとおりでございます。  人事院勧告につきまして、一昨年勧告を見送った、昨年大幅に抑制をしたというような過去の経緯がございます。人事院は、公務員の生活の実態あるいは勤労意欲等につきましてもいろいろ心配をしておられまして、年次報告の中にもそのように触れられておりますし、今度の勧告を総理大臣に手渡される段階におきましても、総裁から非常に心のこもった御意見が付せられて手渡されたところでございます。そういったことを十分念頭に置きまして、国政全般との関連を考慮しつつ最善の努力をしていくようにいたしたい、このように存じておる次第でございます。
  79. 元信堯

    ○元信委員 その四月四日の交渉の際に、あなたは、「昨年は異例の勧告を下回る形で決着した。公務員の皆さんには苦労をかけている。財政事情好転のきざしはないが、総理も思いは同じであり、総務長官を中心に誠心誠意取り組む」、こうおっしゃったやに聞いておりますが、間違いありませんね。
  80. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 そのとおりでございます。
  81. 元信堯

    ○元信委員 昨年は異例であった、こういうことですね。異例というようなものは、二年も三年も続いていれば異例じゃなくてそっちが常例、こういうことになるわけですが、昨年を異例とあなたはおっしゃったわけですから異例というのは一年で打ち切りになる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  82. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 人事院勧告制度と申しますのは、今総裁が御答弁になりましたように、その年次についての勧告をなされて、それに向かって最大の努力をして完全実施に向けて誠心誠意取り組まなければいかぬ、こういう筋のものでございます。一昨年も誠心誠意お取り組みになったと思いますけれども、見送る形で終わっている、昨年も大幅に抑制するということで終わって今日に至っておるわけで、年次年次最大の努力はしてきておると思いますけれども、それぞれ一昨年も昨年も、その勧告制度から見ますと極めて異例のことで終わってきている、こういう事実認識を持っておる次第でございます。
  83. 元信堯

    ○元信委員 今、年次年次最大の努力、こういうふうに言われましたが、そうすると、ことしも本年度の最大の努力をする、その年次での最大の努力をする、こういう理解でよろしいですか。
  84. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 誠心誠意、最大の努力をいたしたいと存じます。
  85. 元信堯

    ○元信委員 年次単位で努力するということだね。
  86. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 五十九年度勧告が出されましたので、五十九年度勧告に対し完全実施に向けて最大の努力をする、こういう意味でございます。
  87. 元信堯

    ○元信委員 私がこの年次のことを申しましたのは、先ほども申しましたが、政府の中から、雑音だかアングラ放送だか知りませんが、いろいろな言い方が流されてきているわけです。段階実施だなどということを言うのはまことにけしからぬと思うわけです。年次ごとにことしの財政状況にかんがみながら、私は財政状況にウエートを置いて考えるのは誤りだと思いますけれども実施者の立場としてそうおっしゃるからそうだとしても、ことしは最大限努力をして完全実施をいたします、あるいはそれに近づける努力をいたしますと言うならわかるけれども、来年のことやら再来年のことまで取り上げて見通しを示すというようなことは、今官房長官がおっしゃった年次ごとの最大の努力ということに反すると思うのです。いかがでしょう。
  88. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 政府といたしましては、勧告完全実施に向けて最大の努力をする、この姿勢は一昨年も昨年もことしも変わらない、このことをまず申し上げておきたいと存じます。  それから、国政全般との関連で考えてみますると、先ほど来もいろいろお話が出ておりますが、財政状況が非常に厳しいという状況の中にございます。このことについても先生御高承のとおりであろうと思うのでございます。そういう中でのことでございますので、どのようにして公務員士気が低下をしないように考えていったらいいだろうか、完全実施に、向けて努力をしていくが、どういうふうな手だてがあるだろうかというようないろいろと検討もし、また考えてもみて論議を深めてきておるところでございまして、その中でいろいろな意見が出ることはこれまた当然のことではないだろうかと思うのでございます。恐らく細切れでいいというふうに考えておられたのではなくて、どうやって勧告の精神に沿えるだろうか、こういうふうに一生懸命考えて、一生懸命努力しておる中でいろいろな意見が出てくることはあろうか、こう思うのでございますが、制度の建前から申しますと、ことし勧告があったものに対しましてことし最大限努力をしていく、こういうことであろうかと考える次第でございまして、政府といたしましてはその立場に立ちまして政府部内、いろいろな検討を進めて、意見も交換をいたしまして最終に政府の態度を決定していくようにいたしたい、このように存じておる次第でございます。
  89. 元信堯

    ○元信委員 今の官房長官の御答弁は、要するにいろいろな意見はあるけれども政府としては勧告を受けて今年度、年次年次で最大の努力をする、こういうことで受け取っていいわけですね。  総務庁長官、今官房長官からそういう御意見がございました。あなたもそういう御意見、間違いございませんな。
  90. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 恐らく私が新聞記者会見等で発言をしたことを念頭に置いての御質疑だろうと思います。私は、申し上げるまでもなく人事院勧告制度を尊重して、その勧告完全実施に向けて最大限努力をするということは当然のことである、同時に、五十九年度改定をどうするかということは給与関係閣僚会議等においてこれから決定すべきことである、まずこの二つの前提を申し上げておきたいと思いますが、私が申し上げておるのは、五十七年度に……(元信委員「聞かれたことに答弁をしてくれとさっき言ったわけです」と呼ぶ)これから答えます。五十七年度に凍結をしたということは、これは当たり前の処置であるという考え方てはいけない。これは異例の処置なんですよ。それから、五十八年度に二・〇三というのを決定した。五十八年度勧告は、ベースアップ分は一・八九でございます。したがって、五十七年度のいわゆる積み残しについて、いつまでも放置をするわけにはいかぬではないか、ここらは、一方において厳しい財政事情、そして行財政改革推進のさなかということを考えましても、五十七年、五十八年の処置は異例の処置であるということを念頭に置いて、そして人事院勧告制度というものをどのように守っていくのか、私どもとしてはこれに最大限努力をすべきなんだという——私は建前論を述べているのではありません。私は、本音を吐露して、やはり各方面の了解を求めてできる限りの努力政府がすべきではないのかということを申し上げておるのであって、この点はぜひ御理解をしておいていただきたい、かように思います。
  91. 元信堯

    ○元信委員 こうなると思うから、先ほど質問に答えてもらいたい、こう申し上げたわけです。  私が承りましたのは、年次単位の努力をする、こう官房長官はおっしゃっているわけですね。そのことについて、総務庁長官が同じ考えかどうかということを聞いたので、今までのことなんかを聞いておるわけじゃない。余りそれを言ってもらいたくなかったわけです。だから、そこのところだけ簡潔におっしゃってください。
  92. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 人事院勧告は、毎年毎年官民給与較差を求めて勧告なさるわけですから、過去にいわゆる積み残しがあれば当然それは官民較差として出てくるわけでございますから、五十九年度の分については五十九年度の分として最大限努力をする、こういうことでございます。
  93. 元信堯

    ○元信委員 それで結構だと思うのですね。つまり、来年度以降にああするから、こうするから、公務員は安心して働けだなどということを言うから議論が混乱をしてくる、こういうことを申し上げておきたいと思います。  労働省にも来ていただきまして、ILOの関係のことをちょっと承ろうと思っておったのですが、時間が尽きてしまいました。午後の小川委員の質問の方に譲りたいと思いますので、御勘弁をいただきたいと思います。  以上で終わります。
  94. 片岡清一

    片岡委員長 午後零時三十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後零時三十五分開議
  95. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  96. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公明党の鈴切康雄でございます。     〔委員長退席、池田(行)委員長代理者席〕  まず初めに、政府は、国家公務員給与改定に当たってこのところ三年間というもの、連続して人事院勧告を無視をいたしました。凍結とか抑制とかということで不完全実施をしてきたことは、私は極めて遺憾であると思います。八月十日に出されました今年度人事院勧告六・四四%につきましては、昨年の大幅抑制によって生じた官民給与較差としてはおおむね妥当だと私は評価をいたしております。なかんずく今回の配分傾向について上薄下厚、そしてまた中堅層を重く見たという配慮がされているということについては、私は重要なポイントではないかというふうに思っております。  そこで、人事院総裁にまずお聞きをしたいわけでございますけれども、今回の勧告を出すに当たって一番苦労された点はどこなのか、そしてまた、国民の皆様方に理解をしていただかなければならない問題があろうかと思いますが、その点について人事院総裁の御見解をまずお伺いいたします。
  97. 内海倫

    内海説明員 今回の勧告に際しましては、今も仰せのように、昨年、さらに一昨年、勧告につきまして見送りあるいは厳しい抑制というふうな措置のとられました後でございます。また、そういうふうなことも多分は影響していると思いますが、公務員諸君も非常に一生懸命その仕事に精を出しておりますけれども、しかし、私どもがいろいろと関係者、人事担当者等あるいは職員団体の皆さんから聞きましても、やはり生活面における影響も出始めておりますし、また士気の面でも影響があろうと思います。いろいろな面で影響があり、とりわけまた労使関係の安定というふうな点にも影響が出てきつつあるというふうな状態でございますので、私どもとしては、今回の勧告を行うに当たりましては、そういうふうな客観的な諸条件というものもできるならば報告の中に盛り込んでこれを国会並びに内閣に御報告申し上げる、そしてその論議を通じて国民皆さん方にも、今の公務員給与がどういう実情にあるのかということの真実を承知していただくべきではなかろうか、そういう辺をどういうふうに私どもは取り上げていったらいいか。要は、先ほど申しましたが、ことしという年が非常にそういう点では神経を使う年でございまして、とりわけ私は初めての仕事でございますので、一つ一つに神経を配りながら勉強をいたしまして、そういう点では、私どもの今回御提出申し上げている勧告も、思い上がりとはもちろん思いますけれども、そういうふうな私どもの気持ちを注ぎ込んだものであり、そういう点で私どもの苦心が存したもの、こういうふうに御理解いただけようかと思います。
  98. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 本年七月に新たに総務庁が発足いたしました。初代の長官に後藤田前行管庁長官が就任をされました。機構が改革されたことによりまして総務庁長官は、行革担当の大臣としての側面と、そして給与担当大臣としての二面性を持つようになったわけであります。政府として、また給与担当大臣として、本年度人勧をどう取り扱うおつもりなんでしょうか。
  99. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御質問のように、行政長官としては二つの役目を担っているわけでございます。しかしながら、私はやはり国務大臣という立場で、国政全般立場、しかもその基本は、人事院勧告制度というものは労働三権の代償措置でございますから、その基本認識の上に立って完全実施に向けて最大限努力はすべきであるという基本認識は持っておるつもりでございます。
  100. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 後藤田長官は、人勧の持つ性質というもの、今までのいろいろの人勧労働権を制約して人勧という形をとったということから言うならば、政府として最大限これについては尊重していくということでありますから、それはぜひそうしていただかなければならないというふうに思っております。  そこで、人事院勧告昭和五十三年までは実は完全実施が定着してきました。近年、政府も、財政事情により、給与改定は五十四年度、五十五年度指定職実施時期のおくれに始まり、五十六年度には管理職員等の一年おくれの実施や期末・勤勉手当の旧ベース算定が異例の処置としてなされ、五十七年度は異例の処置として四・五八%の人勧は凍結され、五十八年度政府みずから俸給表の作成、諸手当等の改定を行うという異例の処置が講じられてきました。言うならば異例ずくめの政府の対処の仕方です。なかんずく、そのときに給与担当大臣は必ず人勧最大限尊重すると言いながらこのような状態で今日まで推移してきたことは、私は全く許せないと実は思います。給与担当大臣として、やはり公務員諸君の側に立って見たときに、ここ三年間というものは凍結や不完全実施が繰り返されているというこの現状をどのようにお考えになりましょうか。
  101. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御質問のように、過去数年間人事院勧告が何らかの形で抑制をせられておるということはこれは異例の処置であるという認識を持たなければならない、私はかように考えておるわけでございます。やはり人事院勧告制度を尊重していくという立場からするならば、いつまでもこういった人事院勧告政府の決定が異なるということは、できる限り速やかにこういうことのないように努力しなければならぬ、私はかように考えておるわけでございます。
  102. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨年の十一月二十七日の参議院の内閣委員会におきまして、前任者の丹羽総務長官は、「五十九年度人事院勧告の取り扱いについては、人事院勧告制度尊重の基本方針を堅持しつつ、俸給表等の勧告内容を尊重した完全実施に向けて最大限努める所存であります。」と実は答弁をされております。仕事を受け継いだ総務庁長官は、給与担当大臣として、八月十日の人勧が出されたのを受け、同日開かれました第一回給与関係閣僚会議の席でどのような御発言をされましたか。
  103. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 丹羽総務長官の御発言は、私も同席をしておりましたので承知をいたしております。私も丹羽総務長官と同じ物の考え方に立ってやらなければならないという認識は持っておるつもりでございます。  そこで、御質問の、第一回の給与関係閣僚会議、八月十日でございますが、その席であなたは何を言うたか、こういう御質問でございますが、これはまだ公表いたしておりませんが、しかし別段、言って一向差し支えありませんので、お答えいたしたいと思いますが、各大臣からそれぞれのお立場で相異なった意見が、やはり昨年同様厳しい議論の対決があるわけでございます。私は、五十七年度の完全凍結、それから五十八年度いわゆる積み残し分の解消ということを、若干ではありますが図ったつもりでございますね。しかしそれにしろ、ベースアップ分は二・〇三、それに二・幾らの定昇分、こういうことになるわけですが、これも異例の処置であるという認識を持っていただかなければならない、そして同時に、最近は景気の回復等もございますから、そういった経済情勢の好転に伴う財政状況もあるじゃありませんか、したがって、国政全般立場で議論をしてどういう結論になるかは、これはこれから先の話でわからないことではありますけれども、いつまでも何の目鼻もない、政府の決定というものと人事院勧告の決定が異なるということは、私は適切なる処置であるとは思わない、やはり国政全般立場での総合判断ではあるけれども、そこは現実的な解決ということに努力しなければならぬのではありませんかということを私は申し上げたわけでございます。  第二回の給与関係閣僚会議がこれから先どのように開催せられるのか、これは内閣官房に聞かなければわかりませんが、私のその基本認識に立っての最大限努力はしてみよう、今こういうつもりでおるわけでございます。
  104. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 図らずも総務庁長官から、ことしの景気はかなり上向いてきているだろうというお話がありました。確かに、アメリカの景気もこのところ異常な好景気で大変に沸き立っているということでございますが、先般、中曽根内閣の河本経済企画庁長官が、たしか勧告があった後でございましょうか、本年度経済見通しである四・一%を上回る景気の上昇が見込まれる、完全実施したとしても防衛費のGNP一%枠は十分守られるという予測をされました。これは恐らく河本経済企画庁長官の個人的な発言だと私は思いますけれども、しかしポジションがいずれにしても経企庁長官という立場の側面も持っているわけでございます。そういうことから考えまして、自然増収の大幅な伸びが期待されるわけでございますから——確かにもう異例の処置がずっと続いてきている。先ほど人事院総裁から、非常に士気の低下とかなかなか人材が集まらないとかというようないろいろのお話がございましたけれども、こういうことを続けますと、人勧制度そのものを維持していくことも非常に危ぶまれるのではないかというように私は思います。従来の政府の発言というのは人事院勧告尊重ということで、実際には尊重どころでなしに公務員に大変なショックを与えているわけでありますが、あなたの言うところの人事院勧告尊重というものは、まさか公務員にさらにショックを与えるというそういうものではない、むしろ完全実施ということをここで御確言できませんか。
  105. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 先般来お答えしておりますように完全実施に向けて最大限努力はしだい、私はさように考えているわけでございます。現実どうなるかは、一方では、鈴切さん御案内のように、一般行政経費は一〇%削減、公共事業費は五%の削減、しかも同時に公債償還の財源等も昨年は棚上げしてしまったと記憶しておりますが、いずれにせよ、ありとあらゆる努力をしながらも実際問題として予算がなかなか厳しいということも事実あるわけでございますから、そこらをやはり総合的に判断せざるを得ないのではないか。しかし基本の物の考え方としては、いつまでも人事院勧告政府の決定が異なるということは私は望ましい姿とは考えておりません。そういう認識に立って対応していきたい、かように考えているわけでございます。
  106. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 長官、本当に総務庁をつくって今私が悔いるのは、要するに行政改革の側面と給与担当大臣の側面とを二つ持たしてしまったということ。きょうあなたに出てきていただいたのは、むしろ給与担当大臣としてのそういう立場に私はかなりウエートを大きく持ちながら実は発言をしているようなわけです。完全実施に向けてこれから少なくとも努力するということは給与担当大臣の御発言として立派であるし、それは私は納得いくのですが、その後、どうも財政が苦しくて、マイナスシーリングの中にあってこれからどういうふうになりますかそれはわからない、こういうところに——それかといって今までのような状態ではよくはないというわけですから、完全実施はしないという言葉の意味にとれるのじゃないか、もう今ここで私はそんな感じが実はしてならぬわけですが、少なくともあなたはこの場所においては、私は給与担当大臣として完全実施に向かって努力をし続けます、こうおっしゃらないといけないのじゃないですかね。その点はどうですか。  それと同時に、人事院総裁、ここ三年間こういう不完全実施、凍結とか抑制とか、こういうようなことがずっと続いてきていますね。これに対して、本当に人事院は何をやっているんだ。——人事院としては一生懸命御努力されて、そして国と政府に実際に報告している、ぜひ御努力を、こういうふうにおっしゃっておられると思うけれども、しかしあなたの御心境、三年間もこういう状態になっているということについてどうですか。人事院総裁としては、何らかあなたが切実な思いを持っていなければ私はうそだど思うよ。もしそういう気持ちがなければ人事院総裁なんて必要ないよ、人事院勧告というもの自体がもう形骸化されてしまうわけですから。  その点についてまず総務長官人事院総裁。     〔池田(行)委員長代理退席、委員長着     席〕
  107. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私は、完全実施しないと言っているわけではございません。やはり完全実施に向けて最大限努力を傾けてみたい、こう私は申し上げておるわけでございますが、さてそれじゃどうなるかということになると、これはやはり国政全般との関連もございますから、そこらをにらみ合わせながら、いずれにせよ私がここで申し上げておきたいと思うことは、公務員諸君にいつまでも不安感を与えるということはよろしくない、このことだけは私は申し上げておきたい、かように考えます。
  108. 内海倫

    内海説明員 繰り返し申し上げるわけですけれども人事院の組織として存在する意味、それから人事院勧告をいたします意味というものは、労働基本権の制約を受けておる公務員に対して給与というものについて発言し、またその勧告を実現していただく唯一の機会になっておるわけでございまして、そういう点から言いまして、過去数年にわたる見送りとか抑制というものがどのように公務員影響を及ぼしておるかということを考えますと、とりわけそういう勧告をしなければならない、報告をしなければならない立場人事院あるいは人事院総裁としては、本当にいわば苦しみと、何とかこれを打開してほしいという気持ちでいっぱいでございます。  もちろん、先ほども申しましたように決して十分とは思いませんけれども、しかし私どもの限りにおきましては、今風の勧告及び報告の中にそういう気持ちをにじませて御報告を申し上げておるわけでございまして、政府内閣におかれましても、ただいま長官お話にも、最大限尊重する、さらに国政全般との関連でというお話もございましたが、その国政全般の中においてこの問題はやはり最優先してお取り上げを願って、何とか完全実施ということに努めていただきたい。また国会におかれましても、どうか私ども勧告をお取り上げくださって、何とかこれが実現いたしますことに御尽力をいただければ幸いである、こういうふうに思います。
  109. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和四十三年当時、人勧完全実施をめぐっての論議の中に、四十三年四月十六日及び十一月十二日の内閣委員会で、当時田中総務長官が、俸給表改定は絶対に考えておりません、そのような立場は断じてとりませんと明言をしているところがございますけれども、昨年政府が実は俸給表改定してしまいました。だからこそ、昨年十一月二十七日の参議院の内閣委員会で丹羽総務長官が、本年俸給表の引き上げ率の切り下げを行ったことは異例のことであると認識しておりますと釈明をいたしております。  俸給表をいじったということは、これは人勧制度を否定し、政府の公約そのものを無視した結果になるというふうに思いますが、政府は今後も俸給表を勝手に手直しをすることがあり得るのかどうか、その点について総務庁長官
  110. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 四十三年当時の田中総務長官国会での御論議の中での答弁は、むしろ人事院勧告を待たずに、政府は統計局等もあるんだからそこでよく調べてやったらどうだというような御意見のあった中でのさようなことはいたしませんというお答えで、私は、人事院制度というものがある以上はそんなことはやるべきでないので、やはり人事院勧告というものを尊重してやらなきゃならないと思います。  それで、人事院勧告といった中に、これは私なりの解釈なんですが、二つあるんじゃないか。その一つは、何%給与改善をしなさいということ。もう一つは、その何%の中に、俸給表なりあるいは諸手当なりあるいは調整の分ですか、いろいろな配分がございますね。その配分等も人事院勧告の中にあるわけですから、人事院勧告制度を尊重するというのは、その両者について政府としては尊重するということではなかろうか。そうしますと、丹羽総務長官の御発言は、その後者について、五十八年度政府において給与表を直したということはまさに異例である、これは五十八年度の二・〇三も異例であるということを先ほどから申し上げておる中の一環で、その点も私は丹羽総務長官と同じ認識でございます。ただ、理屈っぽくなりまして恐縮でございますけれども人事院制度はあくまでも勧告でございますから、それをどのようにして国会の御審議を仰ぐか、給与法の改正ですね、こういうことになると、これはあくまでもすべてを政府の責任においてやらざるを得ないんだということだけは御理解をしていただきたいと思います。
  111. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 問題は、俸給表を手直しをするのに一律二・〇三%を掛けてしまうというやり方になりますと、総体的には二・〇三%であるかもしれないけれども、上薄下厚とかあるいは中堅層を若干上げてあげたいとか、そういう基本的な、やはり人事院でなければわからないそういうものを無視することにこれはなるのです。だから私は、そういうようなやり方を今後お続けになりますかと聞いているのですよ。
  112. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 そこは、五十八年度の二・〇三もやはり配分については人事院勧告基本の物の考え方勧告内容方針に沿ってあの給与表はっくったつもりでございます。
  113. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 まず、そのことについては私は納得がいかない。二・〇三%ぐらいでやりたいから人事院として何とか俸給表をつくってくれと言ったけれども人事院は、完全実施をしてもらえないのに二・〇三%でオーケーなんと言うわけにはいかないわけで、政府はやむを得ず二・〇三%を一律に掛けてしまった。そのために問題を大変大きく残してしまった。そこで、人勧制度というのは労働基本権の代償としてできたものでありまして、官民給与を比較して、その差額勧告する方式が昭和三十五年から定着しております。その間、政府は、給与引き上げの実施時期をおくらせることで実質的な勧告の値切りを何回も行ってきたわけでありますが、俸給表とか勧告率そのものに手を加えたことは実は一度もなかったわけであります。これは国会論議を通じて政府俸給表をいじらないと答弁してきたことにも原因があるでしょうが、昨年の給与改定において政府はついに人勧制度勧告率にまで手を加え、政府の手で俸給表を作成したことは極めて異例であると私は思うのです。  そこで、政府自身が財政事情を理由に自由に給与改定率を決めることができるようになると、人勧制度を根本的に否定する結果につながりかねないと思いますけれども人事院総裁、あなたはこの点についてはどうお考えでしょうか。
  114. 内海倫

    内海説明員 俸給表というものは、人事院給与改定に関して勧告をいたしております、いわばすべてのものがそこに集中して表現されておるものでございます。したがって、今も仰せのように、この俸給表は単なる数字を羅列したというふうなものではございません。したがって、この俸給表は最も尊重していただかなければならないものであり、そのことはいわば勧告制度基本にかかわる問題であろう、そういう意味で私どもは、何とか内閣国会におかれましてこの俸給表を尊重していただくということをお願いしたいわけでございます。
  115. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今人事院総裁が図らずも、俸給表というものはどちらかというと人事院の聖域であるという趣旨の御発言をされた。  そこで、昨年の給与改定における政府の趣旨説明では、「政府としては、」「本年四月一日から平均二%の改定を行い、その配分については、人事院勧告の趣旨に沿って措置すること」としたと実は述べております。これに対して前藤井人事院総裁は、人事院勧告が尊重されているとは考えておらないという答弁をしているのです。すなわち、人事院勧告の趣旨を全く無視して一律的に行った政府給与改定は無謀であるというふうに私は思います。だから、こういうことは二度あってはならないと思いますけれども、どうも総務庁長官はこの点、歯切れが悪いですね。また直すのですか、こんなことで。
  116. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 しばしばお答えしておりまするように、いずれにせよ異例の処置であったということだけは間違いがございません。政府としてはやはり最大限努力を払ったかどうかということが評価の分かれ目になる。で、政府としては、今日といえども厳しい各般の状況等は見ながらも国政全般の中で最大限努力を傾けていきたい、こういうことを考えておるわけでございますが、給与表をどうするかといったようなことはこれからの話でございますから、まだ政府としてはその点について今ここでどのようにするということは申し上げかねるということを御理解をしておいていただきたいと思います。
  117. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実際に今回人事院が出された給与表をそのまま適用すれば、これは完全実施ですから問題ありません。だけれども、どうも先ほどからの答弁は、完全実施に向けて最大限努力する、こうおっしゃっていながら、諸般の情勢、財政を考慮すると、というようなことが入ってきますね。そうすると、それじゃまた完全実施でなくして俸給表を変えてしまうのじゃないかという不安がふっと出てくるもので、この問題を実は聞いたわけでございます。  そこで、労使関係の安定と公務の円滑な遂行が人事院勧告完全実施の定着によって支えられてきたことは確かなことであります。まして適切な行政改革の推進には、職員の協力と真摯な努力が不可欠であります。五十六年以降の長期間にわたる人勧の凍結や不完全実施のために、実は職場に不満がうっせきしたり、あるいは全農林労働組合の人事院勧告凍結不当処分取り消し訴訟に見られるように、安定的な労使関係に陰りが見え始めてきております。これは先ほど人事院総裁が言われたとおりであります。労使関係の安定と公務の円滑な遂行で今後の適切な行政改革の推進をしていくという面から考えても、人事院勧告完全実施をすべきじゃないか、私はこういうふうに思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  118. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 完全実施に向けて最大限努力をするということは、これはもう当然のことでございます。また、御質問の中にありました全農林等からの訴訟が提起されておる。公務員士気の面、こういうような点についても悪影響を生じさせないようにするということは私ども基本的な責任でございますから、何といったって政府は雇用者の立場において公務員の生活を守るという基本がございますから、そこらは十分認識をしながら、やはり各般の情勢を見つつ現実的に適切な対応をしていきたい、私はそう考えておるわけでございますから、その点はひとつぜひ御理解を賜りたい、かように思うわけでございます。
  119. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 まあ行政改革とそれから給与担当大臣という二面性を持っておる総務庁長官ですから、この点どういうふうにお考えになっているか、ちょっとお聞きしたいわけでありますが、臨調も臨時行政改革推進審議会も、総人件費の抑制というふうには実は言っているわけですね。ところが、給与を削れとかあるいは人勧抑制せよというようなことは実はあの中で言っていないわけです。だから私は、総人件費の抑制人勧完全実施の関係については総務庁長官はどのような考え方を持っておられるか、その点についてちょっとお聞きしたいと思います。
  120. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 仰せのとおり、第二臨調の御答申も、公務員給与を削減しろとか抑制しろとかということを具体的に言っておるわけではございません。行政の簡素効率化、あるいは本来役所でやるべき仕事でないものを取り込んでおる分については民間に委託しなさいとか、いろいろなことをおっしゃって、その上で総人件費というものの増高を抑制すべきである、こう申しておるわけでございます。  ところで、鈴切さんの御質問がどういう点か、まだ私にのみ込めない点があるのですが、仮に給与改定の財源というものを総人件費の抑制、つまり定員の管理であるとかあるいは行政の簡素合理化という財源でひとつ賄ったらどうだという御意見であるとするならば、それはちょっと現実論としては成り立ちにくいのではないのか、私はこう思わざるを得ません。というのは、ことしの六・四四%ということになれば、一体一般財源でどの程度になるかということは直ちに出てきます。はね返り分を考えて幾らになるかということを考えれば、恐らく七千億前後になるのではないでしょうか。そうしますと、一人頭が今たしか四百七十万から八十万前後であろうと思いますから、それで割ってみれば、十八万人の定員削減をやらなければ間に合わないということにもなるわけでございます。そこらはひとつ御理解を賜りたいと思いますが、いずれにせよ、いろいろな努力をして総人件費の抑制はしなければならない、そして同時に他方、人事院勧告制度については厳しい財政事情を考えながらも最大限努力を払って、政府としては完全実施に向けた努力をやらなければならない、かように考えておるわけでございます。
  121. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 行政改革というものに対しては、やはり徹底的にメスを入れなくてはいけないだろう。そのためには仕事減らし、機構減らしあるいはまた器減らし、それから人減らし、こういう三つの問題があるだろう。これが、仕事が今までのままでほとんど各官庁等でそういうことに対する簡素合理化ということが徹底的に行われていない、そのために人減らしも結局はなかなか思うように進まない。まあ、そう言うとすぐに総務庁長官は、今日まで幾ら幾らの人員が減ったということをおっしゃるでしょう。また、来年は定年でかなり大幅に減りますとおっしゃるでしょう。おっしゃるでしょうけれども、私は、もっともっと血のにじむような行政改革をして、そしてその中にあってそこに勤めておられる公務員の方々がもっと張り合いを持って、人事院勧告完全実施してもらって、そして一生懸命国民に奉仕できるようなそういう体制にして、言うならば総人件費の抑制ということの目的を達しなければいけないと思うのです。今ここへ来て、実際にこれを完全実施すれば何千億かかるから、それを当てはめてみると約十何万人も削らなくてはいけないからそれはできませんと、そうおっしゃる前に、行政改革というものにもっと鋭くメスを入れなければならないだろう。そして完全実施というものは、これは公務員皆さん方労働基本権を剥奪された代償である以上はこれは完全に実施をしてあげるという、そういう基本的な政府考え方に立ちませんと、つい給与関係閣僚会議等でいろいろ話が出てきますと、せっかくの給与担当大臣のその決意がぐらぐら動くような格好になりますので、そういう点について行政改革を徹底的にやるべきだと私は思うのですが、その点はどう思われますか。
  122. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 行政改革は、申し上げるまでもなく、まず何よりも基本行政の守備範囲の見直し、これから始まって組織論、それから定員管理、そして運営、こういったようなことで総経費を抑制をしなければならぬ、かように考えておりますが、これは内閣としては万難を排して最大限努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 例えば部門別配置転換の実施状況というものですね。当然仕事は、行政改革がどんどん進んでいきますと、これはもう部門別にどんどん振り向けてそれなりにやらなくてはいけないと思うのですけれども、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年の実績は全く上がっていませんね。やはり固定してしまっている。行政改革が思うように進んでいない。仕事が改革されていない。だから、そういう意味からいいますと全く問題なんですけれども、この実施状況はどうなんでしょうか。
  124. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 省庁間配置転換の実施状況についてお答えいたします。  五十五年が八十九名、五十六年度分が八十三名、五十七年度分が百三名、五十八年度分が百三十八名でございまして、現在まで四百十三名でございます。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ことしの六月に開かれたILOの総会では、人勧問題について、政府代表の中村労働省国際労働課長がこう言っています。四月四日の政労会談で政府人勧制度維持尊重する姿勢を堅持、一九八四年の人勧が出された場合にはその完全実施に向け誠意を持って取り組むと表明した旨、新聞に報道されております。人勧問題でことしも組合側が満足できる結論とならなければILO調査団の日本派遣も必要との論議もあったと聞いているが、その点についての事実関係をお伺いいたします。
  126. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 おっしゃいますとおり、ことしの六月のILO総会の条約勧告適用委員会におきまして、人事院勧告実施問題を含む日本案件の審議が行われたわけでございますが、その際、労働側の委員から、来年までに進展がもたらされなければ直接接触を含むほかの方法を用いるべきであるという趣旨の御発言がございました。  ただ、このことにつきましては、最終的にはこの条約勧告適用委員会の結論には盛り込まれておりません。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ILOでそういうふうなことが論議をされたというわけでありますから、もしILOの調査団が、完全実施をしないということで派遣が検討されるということになりますと、日本政府の言行不一致ということを国際的に印象づけるおそれがあるのではないかと私は思います。そういうことから考えまして、労使関係の悪化や士気の低下、ひいては行政サービスの悪化等の諸問題を引き起こすことにもなりかねないわけでありますから、人事院勧告完全実施、これをぜひやっていただきたい。そのことがすべての解決策であると同時に、きょう私も約一時間の中でほとんどの時間を、完全実施をしなさいということだけしか言っていないのです。ほかは何も言っていないのです。これだけのことを言っても政府はなかなか思うように重い腰を上げないという今までの例から、私もかなり信用できない点があるので、今日こうやって時間的にはほとんどを費やしたというわけでございます。  今度は別な問題にちょっと入ります。定年制度に伴って関連する問題について若干お伺いをいたします。  昭和五十六年の退職手当改正の際、附則第十八項で「職員が退職した場合に支給する退職手当の基準については、今後の民間事業における退職金の支給の実情、公務員に関する制度及びその運用の状況その他の事情を勘案して総合的に再検討を行い、その結果必要があると認められる場合には、昭和六十年度までに所要の措置を講ずるものとする。」との見直し規定が入りましたけれども、その後の検討状況はどうなっておりましょうか。特に、定年制実施に伴う退職手当法の全般的な検討状況及び民間調査に基づく検討状況はどういうふうになっておりましょうか、その点について。
  128. 藤井良二

    ○藤井説明員 退職手当制度の見直しにつきましては、現在、総務庁長官のいわゆる私的諮問機関でございます退職手当制度基本問題研究会において基本的な考え方等についてさまざまの角度から検討していただいております。定年制の施行に伴う退職手当制度の措置すべき問題につきましても、現在同研究会におきましていろいろと検討していただいている段階でございまして、まだ結論は得ておりません。  それから、官民比較の問題でございますけれども、これも制度調査については人事院の方からいただいておりますけれども、水準調査の方についてはまだ人事院の方で集計ができていないので、いただいておりません。こういった問題を総合しまして最終的な結論をいただこうというふうに考えております。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたの言っていることはさっぱりわからない。何も具体的なものがない。  それじゃお聞きしましょう。そうやって諮問機関等でいろいろ話し合われている中の主なるものは、どういうことを話し合われているのでしょうか。
  130. 藤井良二

    ○藤井説明員 退職手当基本問題研究会というのは昭和五十八年の四月に始まりまして、ことしの八月までに、今まで十二回開催されております。  退職手当制度基本的なあり方について、退職金の年金化の問題、生涯給与の問題、それから官民比較の問題、それから人事院の方からいただきました退職手当制度調査結果につきまして、これから見た退職手当制度官民対比、それから具体的には、その退職手当法三条から五条までの退職事由別区分等につきまして現在のやり方が妥当かどうか、そういったことについて検討していただいております。それからまた、定年制度施行に伴います勤務延長者だとかあるいは再任用者の退職手当の取り扱い、こういった問題につきましても検討していただいております。それから退職手当法の適用範囲、現業関係をどうするか、こういった問題についてもいろいろと御論議をいただいているところでございます。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院が検討を進めておりますいわゆる総合施策について何点かお尋ねをいたします。  人事院は昨年の勧告の際、「人事行政改善の諸施策」と題して相当具体的に諸施策を示され、また具体案を得たものについては勧告あるいは意見の申し出を行う予定であると述べられておりましたが、それ以来ちょうど一年がたちまして、本年の勧告では、さらに引き続き検討を進めるとされているわけであります。昨年の勧告から一年もたっているので施策についてはそれなりに煮詰まっていると思いますが、この際、まず全般的な検討の状況についてお伺いいたします。
  132. 網谷重男

    ○網谷説明員 お尋ねの検討状況でございますが、御案内のとおり人事院は、高年齢化、高学歴化等の社会情勢の変化に適応するために人事行政の諸施策の改善につきまして検討をしてまいっているところでございます。昨年の給与勧告報告におきましてその具体的施策を述べたところでございますが、ただいま先生の御質問でございますが、その後、その実施、実現に向かって具体的に努力をしておるところでございます。既に一部のものにつきましてはもはやその実施のための手続に入っておるところでございます。  これをもう少し具体的に申し上げます。  まず、住用制度でございますけれども、現行の上級乙種試験それから中級試験を廃止して、新たに大学卒業程度を対象とした試験を実施することとしております。また任用関係では、このほか昇進管理制度の整備を図るべく検討しております。  次に、給与制度関係でございますが、技術的な専門職種を中心とする一定の職種を対象とする俸給表の新設と、それから等級構成の再編等を含みます俸給制度の整備のほかに、俸給の調整額及び調整手当の適正化についても検討をいたしております。  それから研修制度でございますけれども職員の一般養成研修やOJTと言われております職場研修の計画や実施について人事院として指針を作成いたしまして各省庁の研修担当者にお示ししたい、こう考えておりますほか、行政研修につきまして本省の課長補佐職員等を対象といたしました幹部養成研修、それから職員の登用に資するための研修の実施を検討しております。  このほか、官職の分類それから休暇制度の法制的な整備につきましても所要の検討を進めておるところでございます。  以上でございます。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 随分細かいところまでお話しになったわけでありますけれども、総合施策の検討の中で給与面なんですが、等級構成の細分化ということになりますと、今現在八等級であるのが十一等級ぐらいになるのか、あるいはまた専門技術俸給表を作成するのか、そういう点についてどうお考えなのでしょうか。
  134. 斧誠之助

    斧説明員 給与制度につきましては、一つは俸給表関係でございます。これは、今先生お示しになりました等級分割を現在の八等級から二ないし三等級ふやしまして、十ないし十一等級にしたいということが一つ。これは行政が次第に複雑多様化しておりますし、それから社会経済も変わってきております。そういう関係で、いろいろ組織上の分割あるいは専門職の増設というようなことが各省において行われておりますので、そういう場合にそれぞれの職務に対して適切な給与を支給するということになりますというと、現在の八等級では一つの等級にいろいろな職務段階が入ってくる。多いのは三つ四つ入ってきておるわけですが、そこをもっと職務を分類して明確な職責にしたいということが第一点でございます。  もう一つは、専門職の技術俸給表、これは仮称でございますが、新しい俸給表を一本つくりたいということでございます。現在、行政(一)の中にいろいろな職種が入っております。例えば航空管制官のように、採用になりますと直ちに専門的な教育を一年ないし二年受けまして、そして通信の免許も取りまして、生涯を航空管制官で送るという専門職種がございます。これは課制とか係制とかいうものの組織になじみがたい官職でございまして、これにそれ相応の処遇をするためには、一つ新しい俸給表をつくって職務体系をつくった方がいいのではないかということで考えておるわけでございまする。  そのほか、先ほど説明のありました試験の再編に伴います初任給をどうするかという問題がございます。  それから、昇給制度をどうするかということで、特別昇給につきまして、勤務成績、実績に基づく特別昇給という部分の配分率を若干変更したいということでございます。  これらにつきましては、実は人事管理に非常に関係の深い事項でございますので、人事担当者の意見は大いに聞かなくてはいかぬ。それから、直接それによって利害の影響を受けます職員の意見も大いに聞かなければいかぬということで、本年のたしか五月に具体案を関係者に提示しまして意見を求めております。そういう意見を集約しまして、来年の勧告時には、状況にもよりますが、できれば制度改正の勧告を申し上げたい、こう考えておるところでございます。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 俸給表の細分化は時代の趨勢だというふうにおっしゃいますけれども、問題としては、細分化することによって昇給自体をおくらせるという隠れみのになるのではないかということが心配されますね、公務員立場から言いますと。なかなか昇給していかないということになりかねませんので、その点の配慮は何かされますか。
  136. 斧誠之助

    斧説明員 制度的に昇格あるいは昇進の必要年数、これを現在と変えるということは考えておりません。したがいまして、ある等級とある等級の間に一つ等級が入りますと、例えば従来五等級から四等級に行くまでに四年かかっておったところを、間に一つ入りますと、二年、二年というふうに刻むということでございまして、制度上のおくれが出るということは考えていないわけでございます。  ただ、実際問題としてどうなるかというお話になりますと、今後定年制ができました場合に新陳代謝の関係がどうなるか、そこのところの影響はあろうかと思います。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私、大体質問は終わりましたが、最後に総務庁長官、きょうの委員会は言うならば、人勧を受けて、少なくともその人勧完全実施せよ、あるいは政府にそれを迫ろうという意味を含めた委員会でございますので、きょうの委員会に出席された給与担当大臣としてその点十分銘記されまして、これからいろいろと給与関係閣僚会議等がございましょうけれども、そのときにはきょうの思いをさらに決意に変えてやっていただきたいということをお願いいたしまして、きょうの質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  138. 片岡清一

    片岡委員長 小川仁一君。
  139. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 ただいままで大勢の方が、公務員立場に立って完全実施を求めて政府の御意見をただしたところでございますが、私も同じように、異例の措置が続いたこの状態は、現在の給与のあり方を含めて公務員士気にも影響するし、労使関係にも非常にマイナスになると思いまして、そういう立場からの御質問を申し上げます。  最初に、官房長官に時間を割いていただきましたので、官房長官の方に質問をさせていただきたいと思います。  第一回の給与関係閣僚会議というのが行われました。これにはいろいろの御意見があったようでありますが、意見の主たるものはどういうふうな点でございましたか。まとまらないという立場がありますので、対立した意見があったのかどうかを含めてお伺いしたいと思います。
  140. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 全体といたしましては、人事院勧告制度を尊重していかなければならぬ、そして公務員士気等にも、一昨年、昨年と見送り抑制で来ておりますゆえに相当陰りが出てきておるのではないか、そういう心配を皆一様に持っておるわけでございます。したがいまして、何とかできるだけの努力をしたいという気持ちは一様にあふれていた、こういうふうに私は理解をいたしておるところでございます。  ただ今日、御存じのとおり大変厳しい財政状況の中におりますので、主として財政状態などからいろいろ時間をかけて検討する必要があるというふうに言われた意見、それから、財政状況も厳しいけれども何とか完全実施に向けて最大限努力をするようにしなければいかぬという強い意見と、そういう意味では少し対立しておる感じが出たのではないか、そんなふうに思っておる次第でございます。
  141. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 この公務員給与、特に人事院が発足しましてからの歴史的経過を眺めてみますと、一つは、当初のころは、勧告がありましても実施時期等もなくて、あるいはその年見送った、今の言い方で言えば凍結した、こういう状態がありました。そのころ、実は人事院不要論というのが国会内に起こったことを私、知っております。  それは原因は何かというと、凍結もされなければ実施もされないということに対して、当然のことながら人事院というものは一体どういう役割を持つのか、どういう権限を持つのか、あるいは憲法に保障する労働基本権代償措置としての人事院というものがもう意味がなくなって、公務員労働者にストライキ権、労働基本権を与えて、政労交渉を中心に物を決めた方がいいのではないかといったようなことがその意見の中心でございましたが、その後、政府人事院勧告を不完全でありますが実施をいたしました。  不完全という実施の仕方は、人事院が出した給与表やその賃金体系はいじらなかったのです。ただ、実施時期を十月とか九月とかというふうにずらした、そういう格好で人事院の権限というもの、人事院が持つ性格というものだけはきちんと押さえた、財政的措置がないというので実施時期だけをずらした、こういう形になりましてから御承知のように人事院不要論が消えたわけでございます。そして、私などを含めまして、実施時期の前進前進という形で政府との交渉を行ったわけであります。これがその後完全実施に変わった。  今回の措置というのは、ちょうど人事院発足後において、今の言葉で言えば凍結をした、実施時期も明らかにしなかったという、人事院の持つ基本的性格を無視した時代の状況と同じ状況になっていると思うのです。それは俸給表改定あるいは凍結、こういう形で人事院の権限や性格を完全に侵しているわけであります。ですから、ここ五年間続いたこの異例の措置の連続、こういう中から私は人事院がもうその役割を持たなくなったのではないか、あるいは政府人事院に役割を持たせないように措置をしているのではないか、もう政府自身、形骸化し空洞化して人事院を不要の存在、形式的存在として存在させるような政策をとっているのではないかと感ずるのです。  政府としては人事院に今後どのように性格を持たせ、どのような形で存続させるのか、あるいはこれを否定していくのか、こういう点についてお考えがありましたらぜひお伺いしたいと思います。
  142. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 人事院勧告をめぐって政府が対応いたしてまいりました態度によりまして、そのときそのときの状況人事院の不要論になりましたり、あるいは人事院の性格についていろいろ論議を呼んだということもあったかと思うのでございます。  一昨年、昨年と、先ほど来もお答えを申し上げてきておりますように、その年次の人事院勧告完全実施に向けて政府最大限努力をしてきた、こんなふうに考えるのでございますが、その結果、政府が決定をいたしました態度が人事院の姿につきましていろいろまた論議を呼ぶというようなことになっておるといたしますと、これは大変残念なことでございまして、また申しわけないと思っているわけでございます。一昨年も最大限努力をされた結果、前内閣でございますけれども、これを見送るという態度を決定された。昨年第一次の中曽根内閣のもとでも、最大限努力をいたしましたけれども抑制をするという形で終わらざるを得なかった、こういうことで今日を迎えておるわけでございます。  政府といたしましては、その年次年次に最大限努力をしてきておるところでございまして、それは決して人事院存在あるいは人事院勧告の性格について、従来と異なった考え方を持ってそういう態度を決定したということではなくて、勧告に対応する中で政府が態度を決定する、そのことがむしろ人事院をめぐっていろいろ論議を呼んでおるとしたら大変申しわけないことである、逆にそういうふうに考えておるわけでございます。  政府といたしましては、人事院公務員の勤労条件等を確保いたしてまいります中で非常に重要な役割を果たしていただいており、そして公務員の生活を守り、公務員が力いっぱいに公務に精励をしていただける条件をつくり上げてまいりますために勧告制度があり、それを政府は尊重をしていかなければならぬ、こういう姿勢は従来もできる限りの努力をして堅持しようとしてきたところでございますし、これからも人事院を大切にし、人事院勧告制度を大切にいたしまして進んでいきたい、このように考えております政府の態度は不変であるということを申し上げておきたいと存じます。
  143. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 お話としてそういうことを素直に聞きながら、もう一度申し上げますけれども人事院不要論が出たというのは、その俸給表に手をつけたりあるいは凍結をしたりした時期だけなんです。俸給表やその他に手をつけないで、仮に財政的に厳しいからといっても実施時期をずらしたときに、その時点から不要論が出てこなかったのです。私は人事院勧告に対する政府の取り扱いの仕方を歴史的に見てみますと、ここ一、二年、やはりかつて不要論が出た時代と同じ状況が出てきていると思うのです。  ですから、人事院自身がその報告の前文の中で「近年の勧告の取扱いをめぐって、行政訴訟が提起されるなど、労働基本権のあり方についても論議が及ぼうとする現状にある。」こうお書きになっていますし、日経連等では、公務員労働者にストライキ権を与えて人事院を廃止したらどうか、こういう意見も現実に出ているわけでございます。こういう具体的な事実が存在するときに、人事院存在させようとするならば、人事院勧告というものをどう扱うか、こういうことに対して非常な政府の勇気のある態度が必要だと思うのです。特にその基本的性格であり、先ほども鈴切委員の方から御指摘がありました俸給表、これはある意味では人事院勧告の生命と言ってもいいものだと思います。政府自身がこれを変更する、こういう動きになってまいりますと、不要論が出てくるのは当然だと思います。  こういう立場ですから、もう一度、今あなたが、人事院公務員士気を高め、公務員の生活を安定させるために必要だとおっしゃるならば、それならば不要論が出ないためにこうする、その中の一つの具体的論としては俸給表には手をつけない、こういったようなことをはっきりと態度としてお示しを願いたいと思います。
  144. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 一昨年の見送りという措置が極めて異例な措置であった、昨年の抑制ということもまた非常に異例な決定であったということにつきましては、午前中からの御質疑の中でも総務庁長官お答えになっておるところでございます。政府全体がそういう認識をいたしておるところでございます。昨年も、もし完全実施ができないのであるならばせめて月をずらすというやり方によって、人事院が準備をした俸給表政府自身が変更する、あるいは政府自身がそれを無視するというような態度をとることは人事院不要論につながるのではないかというような、非常に厳しい御質疑もたくさんに受けたところでございます。事柄の重要性は十分認識しておるつもりでございますが、一昨年の極めて異例な見送りという措置によりまして、昨年もまた六%を超える勧告が出てきておるという結果で昨年態度を決定せざるを得なかったわけでございます。非常に厳しい選択を迫られました中で、あえていろいろ御質疑をいただきました、その御注意にもかかわりませず政府自身が俸給表を作成するというような措置に出ざるを得なかったという、この財政事情を中心といたします非常に厳しい状況をぜひ御理解をいただきたい、このように考える次第でございます。  ことしどうするかということにつきましては、第一回の給与関係閣僚会議におきましてもいろいろな論議を闘わせておるところでございますが、政府・与党部内よく意見の調整をいたしまして、努力をいたしまして完全実施に向けて誠意を持って最大限努力をしていくということをここでお答えを申し上げておきたいと存じます。
  145. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 最大限努力給与関係閣僚会議の座長であられる官房長官がおやりになるということ、私はそれなりに素直に受けとめたいと思います。  しかし、異例の措置と言われましたけれども、一昨年の全面凍結という措置と去年の俸給表をいじったという措置は性質が違うのです。例えば総務庁の核心部分である仕事を他の官庁によって手を入れられたりいじられたり、こういう状況になったら一体総務庁長官は黙っておられますか。ことしの人事院総裁交代劇なども含めて、私は俸給表に手を入れられた人事院総裁の心境というのは、同じお仕事をしてきた官庁の責任者として総務庁長官もおわかりになると思うのです。ここのところをやはりぜひお考え願いたいと思うのです。まあ後藤田長官ですから、他の役所の者が総務庁のやり方に手を入れるなんということはやれないでしょうけれども、事実そんなふうに値切られたらこれは責任者としては辞職ものですよ。人事院俸給表を値切られたということで、何かことしの人事院総裁の交代劇の裏に当時の責任者であった者の非常な決意みたいなものを、私は長い間公務員賃金をやってきた者の一人としてひしひしと感じるのです。こういう心境を官房長官総務庁長官もぜひ御理解願いたいのです。それについて、もし総務庁長官、御見解があるならお聞かせを願いたい。
  146. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 まさに五十八年度勧告のアップ率そのものを抑制して政府として給与法をつくらざるを得なかった、これはまことに異例の処置であった、私はこう考えます。人事院総裁も非常に苦悩をせられたことであろうと思います。当時私は官房長官をやっておりましたが、これは完全実施すれば問題はありませんね。ただ、財政事情がどうにもならぬということであれば、その次の選択はやはり月割りによっての抑制、これがその次のとるべき選択の道であろう。さて第三にどう考えるか。五十七年はいきなり凍結してしまった。これはまさに異例中の異例の処置であろう、そこに何らかのしかるべき処置をとるのが政府としての責任ではなかろうか。問題は、人事院の御勧告というものは公務員給与に限定をなさっておるわけでございます。それを受けとめた政府が、厳しい財政状況の中でこれにどう対応するかという場合に、現在の公務員給与改善措置というものは他の措置に波及せざるを得ないわけでございます。政府は、国政全般立場財政状況その他各般の条件を考えた場合に、やはり異例の処置ではあっても第三の道を選択せざるを得なかったというのが私は昨年の選択であったと思います。  ことしどう考えるかということは、これから先、当委員会での御意見あるいは世論の動向、財政の実態、行財政改革状況、これらを見ながら、全般の状況を考えて、先ほどお答えしておるように完全実施に向けての最大限努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  147. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 もう一つ関連して伺いますが、先ほどの元信委員の質問で、人勧というのは毎年出されたもの、それを最大限努力するのであって、積み残しというふうなものは、一つ一つその中にどういう数字でどうあるなんということはないという意味のお話がございましたから、そのことには触れませんが、松浦委員質問によって、凍結または抑制によって一般行政職平均四十二万円の損害が一人一人の公務員に与えられた、というよりも被害をこうむった、こういうものの損害補償みたいなものは、よく公務員のことをお考えになって積み残し云々というお話をしておられる総務庁長官としては、この損害についてはどんなふうに、いつ補償してくださるのでしょうか、あるいはそういうことについてお考えになったことございましょうか。これも当然今まで政府のやった措置の損害でございますからお答えをいただきたいと思います。  これに対して官房長官お答えもいただいて、官房長官に貴重な時間をいただきますことを終わりにしたいと思います。
  148. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 午前中の御質疑の際に人事院当局からお答えがございましたように、仮に完全実施をしておればこうなるんだ、したがって抑制措置によってこの程度給与が減額になったという御答弁がございましたけれども、これは一体過去にさかのぼって損害として認めて補償するのかということになると、遺憾ながらそういうわけにはまいらない。これは毎年毎年の給与法の改善措置によって、国会の御同意を得て実施しておるわけでございます。しかしながらその抑制によって、人事院は毎年官民較差ということを調査して御勧告になるわけでございますから、それが完全実施をせられたということになれば、その段階からはそういったような完全な給与を支給する、こういうことになるわけでございますから、過去にさかのぼっての損害という意味合いにおいてはそういう賃金債権というものは発生しておらぬ、私はかようにお答えせざるを得ないわけでございます。
  149. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 一昨年、昨年と見送りあるいは抑制ということでまいっておりますことは、法の趣旨から考えましてまことに申しわけのないことだ、このように考えております。非常事態とを言うべき厳しい財政状況の中で政府としてとらざるを得なかった判断でございますが、それにいたしましても、まず隗より始めよということで、公務員のそういう俸給について非常に御辛抱願わなければならぬという態度を決めてきたことにつきまして、公務員皆さん方には大変な御辛抱を強いてきた、この思いでいっぱいでございます。しかし、それが直ちに損害賠償という形のものにつながるかどうかということの見解は、ただいま総務庁長官からお答えになりました御意見と全く同じでございます。完全実施に向けまして最大限努力をしていくようにいたしたい、このように考える次第でございます。
  150. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 完全実施をなさるという状況が出てくれば、それはこれから先の部分についての補償でございます。値切った部分については、当然公務員の期待権みたいなものがあると思います。みたいなものでなくて、期待権それ自体だと思います。したがって、この部分を過去にさかのぼって云々という格好で切り捨てるということは、これはかなり酷なことでございます。いろいろな配慮の仕方があると思います。一つは、その年その年に行われました人勧完全実施という問題と、過去にやっぱり公務員に損害、期待権を侵害したという立場からの配慮の仕方と、両者をぜひお考えおき願いたいと思います。  官房長官、ありがとうございました。  では、今度は戻って人事院の方にお伺いしますが、やはり人事院勧告が十日ということは、私はどうしても納得できないのです。国会勧告するものです。しかも今国会に早く勧告していただけば、この時期、公務員の賃金を決定して、公務員を安心してしかも士気を高め、公務の能率を上げることができたかもしれない。十日に勧告されたために、臨時国会がないという想定の中では、十二月でないと公務員の賃金というものが、どういう形になるにせよ決定しない。これは公務員に対して非常に大きな失望を与えたんです。八、九、十、十一、十二です。五カ月も待てと言う。人事院はかつて七月段階勧告したこともあるんです。確かに総裁がおかわりになった時期でございますからいろいろお仕事もあったかと思いますけれども、七十七日も延びているような国会の場合には、これはこの国会の中で公務員の賃金を討議させるという状況を出すことが、国会に対する勧告という一つの制度がある以上、人事院総裁としては当然のことだったと思うんです。この点については、人事院が存続すれば今後ともあり得ることでございますから、十分御反省をいただき、お考えをいただきたいと思いますが、今後の問題としてどういうふうにお考えになりますか。
  151. 内海倫

    内海説明員 先ほども御答弁申し上げましたように、今回国会会期中に勧告が間に合わなかったということにつきましては、私もさらに努力は続けましたけれども、ついにやむを得なかったと私どもは思っております。  しかし、国会になすべき勧告でございますから、今後におきましては、もし国会開会中というふうなことであれば、あらゆる努力をしてそういうことのないような努力をもとよりいたさなければならないと思います。  それにいたしましても、私どもも全力を挙げてこの勧告というものの作成に当たったということは御理解をいただきたいと思いますし、将来につきましては十分反省、努力をいたしたいと思っております。
  152. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 先ほど官房長官等に、人事院のいわゆる不要論が出ているということを言いましたし、人事院自体の報告の中でも、労働基本権の問題が論議になっている、こういうふうにお書きになっているが、五年間勧告がいろいろな形で抑制をされあるいは凍結をされる、しかもその生命的、勧告の本当に基本部分である俸給表まで改定される、こうなってきますというと、人事院存在って一体何になるんですかね。人事院自身、もうおれたちの存在は意味がないじゃないかというふうにお考えになりませんか。人事院が不要だというふうな御認識に、現在の経過の中でそういうお気持ちをお持ちになりませんかどうか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  153. 内海倫

    内海説明員 確かに数年にわたる不完全な措置がとられたことは、人事院としては遺憾なことでございます。  しかし、現在よく見ますと、公務員制度の中におきまして、たびたび申し上げておりますように労働基本権の制約というものは、やはり公務員の任務、あるいは国民全体への奉仕をしなければならない公務員の任務というものとの調和を求めてどられておるものであろうと私ども理解しております。その限りにおいて、これに見合う制度として人事院を設けて、この第三者的な機関である人事院で、その制約に伴う問題の処理として人事院が当たらなければならない、それがゆえに、御存じのように第三者的な機関として人事院が設置されておる。その最も大事な機能というのはやはり勧告でございまして、これがいわば代償機能でございます。これが阻害されるというふうなことになれば、確かに人事院というものについては非常に大きな問題が出るとは思いますけれども、私はやはり今日まで人事院が真摯な努力をし、政府国会に対しましても真摯な勧告を申し上げてきておる、このことによって、思い上がりかもしれませんけれども、今日まで公務員諸君も安んじてその職務に当たり、また労使関係も安定を維持してきておるわけでございます。その意味における人事院の機能あるいは人事院の組織の存立というものは極めて大きな意義を果たしておる。このことは今後も私は継続していかなければならない。しかし、そのためには政府がこの人事院の機能を十分に発揮できるような条件を設定し、また、そういうふうなことにこたえていただく。しかし、これはひとり政府だけではなくて、国会におかれましてもこの点は十分御検討いただきまして、人事院がその機能を十分に発揮し、代償機能というものが尊重されるようにぜひしていただかなければならない。私どもはそういうことを信じて今後ともに人事院の仕事を続けていきたい、こういうことであり、先ほどから総務庁長官、官房長官からもいろいろと最大限尊重する、人事院の機能というものに対しても尊重していくというお言葉でございますから、それが名実ともにそうであることをお願いをする次第でございます。
  154. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 どう頑張っておられても、五年間も異例措置が続きますというとお話が非常にむなしく聞こえてくるのです。公務員労働者の皆さんも多分そうだと思うのです。この前もある組合の三十代の人の計算をしたら、一生の間に三百万以上の損害が出ると、自分の計算をしておられました。  こんなふうに、人事院自体がそれなりの努力をしておられたとしても、その勧告がいつでも抑制されるということになりますと、どうですか、総務庁長官、今度は給与担当大臣じゃなくて行政管理庁長官立場からいうと、行政改革の対象になる存在じゃないのですか、人事院というのは。今の扱い方は、その立場からいったら人事院なんかなくしてもいいというお考えになりませんか。今のことについての御見解を承りたいと思います。
  155. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 人事院は今日まで、公務員給与改善ということについて大きな役割を果たしてこられたわけでございます。したがって、今後ともこの制度というものをお互いに守り抜いていくということが一番肝心なことではなかろうか、かように考えております。したがってまた、政府としても、大変厳しい財政の実態、国民の世論、こういったものも国政全体の立場において考えざるを得ないんだ、しかしながら、基本はあくまでも公務員人事院勧告というものは尊重をしてまいりたい、こういうことを申し上げているわけでございますから、人事院存在そのものについてどうこうするなどというようなことは一切考えておりません。
  156. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 本当に人事院存在を大事に考えるなら、総務庁長官、どうか行政改革の対象にしないで、ひとつ本当に勧告を尊重してくださいよ。先ほど来申し上げておりますとおりでございます。お願いをしておきます。  人事院にもう一つ聞きます。  人事院が賃金を出すとき、生計費というのを計算なさる。その計算をしてみたら、世帯人員別生計費の中で、五人家族ですとエンゲル係数が三六・一%、四人家族で三四・八%。この生計費自体をさらに総理府の家計調査と比較をしてみますと、二人世帯を見ますというと、人事院の生計費の方はエンゲル係数で一三・九%で、金額にして十五万七百二十円。総理府の家計調査による消費支出を見ますと、二人世帯でエンゲル係数二二・六、消費合計が二十三万九千三百七円。こんな大きな違いが出るということ自体、人事院の生計費調査というのはかなり怪しいものだと思うのですが、これについて御反論ございましたら……。
  157. 斧誠之助

    斧説明員 人事院の生計費の計算の基礎となる層は生計費の平均値ではありませんで、並み数階層の生計費をとっておるわけでございます。これは、国民の中で一番たくさんの人がその生計費で生活をしているという層を生計費としてとっておりますために、総理府の平均値とは若干違ってくるということでございます。
  158. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私は、毎年人事院の十八歳独身青年男子の食費を計算してみるんです。そして、一食当たりにこれを割ってみますと、ラーメン一杯分の値段なんですね。ことしは三百円。ラーメンが上がると人事院の生計費の一食当たりの単価が上がるみたいな感じがしている。ラーメンは食えるけど……(「ラーメンはもっと高いよ」と呼ぶ者あり)麻婆ラーメンだとか何かは食えないというような生計費なんです。もう少し公務員の食事を大事に考えた生計費を、これからマーケットバスケット方式なり何なりをやるときに、たんぱく質から何から選んでおつくり願わないというと公務員はやせ衰えてしまいます。この点を申し上げておきます。  さて、労働省ですが、この前のILO国際会議のとき、あるいはこの前の我が党の角屋委員の質問のときに、ILOの理事会に対して意見を出すという答弁がございましたが、大体十一月の五、六日ごろがILOの会議のはずでありますから、その前にというと、届ける関係やその他で十月の二十日ごろまででないと意見書を出しても意味がなくなってくるわけです。その意見書の準備をしておられるか、そしてまた、そのことは逆に言うと、その時期に閣議決定を予想しておられるか、この辺について御答弁を願いたいと思います。
  159. 谷口隆志

    ○谷口説明員 お尋ねがございましたILOの結社の自由委員会に対します総評等からの申し立てに関しまして若干過去の経緯も申し上げますと、三月に申し立てが出されまして政府の意見を求めてこられましたが、四月四日に政府と関係労働団体との会見の場におきまして、政府としては人事院勧告完全実施に向けて努力するということと、関係組合と引き続き話し合いを行っていくということを申し上げ、五月二十一日にILOに通知をいたしました。ILOといたしましてはこの事情理解されまして、総評等からの申し立ての件につきましては次回の会合において審議するということを六月初めに決められたわけでございます。結社の自由委員会は、理事会が行われるたびに開かれることになっておりまして、次回の理事会は十一月一日から十六日までの予定でございます。  そこで、政府の意見の提出の問題につきましては、現在、人事院勧告を受けまして、政府としてその取り扱いについて鋭意検討を進めているところでございますので、検討の進展状況に応じて所要の報告を行ってまいりたいというふうに考えております。  いつの時期に人事院勧告の取り扱いについて決めるかということにつきましては、給与関係閣僚会議でこれから決めていかれる問題でございますので、私からそのことについてお答えするのは差し控えたいと思いますけれども諸般事情を検討するということでございまして、そういう中にはこの問題等も含めて検討をしていただくことになるというふうに考えているところでございます。
  160. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 時間が参りましたので質問を終わりますが、やはり総務庁長官給与担当大臣として、ぜひ完全実施を実現下さることをお願いして、終わります。
  161. 片岡清一

    片岡委員長 田中慶秋君。
  162. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 人事院勧告に関する問題について、冒頭に後藤田総務長官の所見を伺いたいと思います。  去る八月十日、人事院は、五十九年度国家公務員給与改定として平均六・四四%、一万五千五百四十一円を四月にさかのぼって引き上げるよう国会内閣勧告されました。昨年は、人事院勧告六・四七%に対し、政府財政事情あるいはまた行財政改革等を勘案して二・〇三%の実施にとどまったわけであります。まことに遺憾なことであります。一昨年の見送り、昨年の二・〇三%は、内需の拡大や行政改革公務員士気労使関係の安定等を考えたときには大変この弊害は大きいけれども、今年度勧告そのものの内容については私は妥当なものだと思います。  冒頭に、人事院総裁勧告骨子、あるいはまたそれぞれ先ほど来論議をされました過程の中において、担当大臣であります総務長官としての所見をお伺いしたいと思います。
  163. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 先ほどお答えをいたしておりますように、人事院勧告制度完全実施に向けて私としては最大限努力をしたい、かように考えているわけでございます。他方、客観情勢はなかなか厳しいものがございます。  ただ、私といたしましては、この委員会での皆さん方の御意見なりあるいは八月十日の人事院勧告が出た際におけるそれぞれのマスコミ等における論説等、これらも十分頭に置きながら国政全般との関連の中で何とかひとつ最大限努力をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  164. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 御案内のように、賃金は、民間等においては世間一般のそれぞれ賃金の水準という形で決定をされているわけであります。それと、人事院勧告というのはその差額をもって当然勧告をされたわけであります。再度、完全実施は昨年以上により強く求められているところであります。特に総務長官は、先ほど最大限努力というようなお話等々されておりますけれども、昨年も同じように最大限努力をされてということを先ほど官房長官からされておるわけです。そうしますと、同じようなことで、本年も最大限努力をするということでありますけれども、その辺については不安が生じるわけであります。当然これらについては担当大臣であります総務長官も、そのニュアンス等についてはより理解はされていると思いますけれども、この強く要望されている実態の認識というものをどのように受けとめられて現時点におられるのか、その辺について答弁願いたいと思います。
  165. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 過去数年にわたって人事院勧告を何らかの形において凍結あるいは抑制という処置をとらざるを得なかったということについては、これは私は異例な処置である、こういう認識でなければならない、かように考えておるわけでございます。しかし一方、先ほど来申し上げておるように厳しい客観情勢もございます。といって、私が今一番頭の中にあることは、いつまでも公務員の諸君に、どうなるのだろうかといったような不安感を与えるということだけは、何とかことしはそういう点について先行きのめど等についても何らかの形で安心感を持ってもらえるような処置がとれないかどうかということを真剣に考えておるのが現在の私の立場でございます。
  166. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 総務長官がこの人事院勧告が出される前から、しばらくの間我慢してもらわなければならないとか、あるいはまた完全実施等についてはという形で、総務長官になられる前に行管庁長官としてそういう発言をされたことも事実だと思います。このような発言というものは、何を意図して発言をされてきたかということが一つ。現時点では総務長官ということで給与担当大臣という立場になってきておるわけでございますので、その辺についての考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  167. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私は行管庁長官のとき、また総務庁長官のときで別段変わった考え方は持っておりません。同じく私は国務大臣立場において、今の処置は異例である、これを何とか早く解消しなければならぬのではないのかといったような観点に立って、何よりも職員に不安感を与えないことが最大の私の責任である、かようなことで努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  私の今朝来の答弁、これは給与関係閣僚会議でどのような意見が出ますか、各閣僚それぞれの御意見がございますから、見通しかどうなるかといったようなことはこの際明言はできませんけれども、私は私なりに最大限努力はしたい、こう考えておりますので、その点はぜひ御理解をしておいていただきたい、かように思います。
  168. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 総務長官公務員皆さん方に不安感を与えないという態度は当然だと思うし、またそうしていただきたいと思います。  ところが、今まで、一昨年はゼロ、昨年は二・〇三、こんな形の中でそれぞれ、この人事院勧告というものを尊重するとか最大限努力をするとか、こういう言葉で答弁をいただいているわけでありますけれども、それでは今までどのような努力をされてきたのか。今まで人事院勧告を尊重した結果、凍結という問題が出たりあるいはまた二・〇三%という抑制政策が出た。そして、今度はこの同じような形の中で、尊重なり最大限努力ということが長官のお言葉の中に出てくるわけでありますけれども、その努力というものは何を意味されての発言なのか、明確にしていただきたいと思います。
  169. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 過去数年間政府としてはその都度最大限努力をいたしますと言って、そして決定の段階になると、こういう事情でやむを得ませんでした、こういうようなことで来ているわけでありますが、私はここ二、三年来の経過を見まして、そのままではことしはよくないのじゃないかな、先ほどの不安感を与えちゃいかぬということを言っておる私の真意はそこにあるということをまず御理解しておいていただきたいと思います。  そこで、過去どういう努力をしたかといいますと、五十七年度は、御案内のように税収が六兆円を超える巨額の不足を生じたわけでございます。そこで、地方交付税の大幅な減額、行政経費の一〇%の節減、税外収入の増収を図る、さらに国債費の定率繰り入れも停止をする、さらにまた、そういった処置をしながらも多額の国債の追加発行を行わざるを得ないといったような、いわば財政の緊急状態といったようなことになったわけでございますから、ここらを考えながらも、人事院勧告実施するためには何とかひとつ他に財源はないのかという努力はしたつもりでございますけれども、いかんせん、当時の内閣としてはそこまでは他の勧告実施のための財源を見つけることはできないということで、異例の処置でありましたけれども凍結せざるを得なかった、こういうことでございます。  五十八年度については、災害復旧費の追加、それから例年予想せられる保険、年金などの義務的経費の追加があるわけでございます。これらの経費は一年おくれでございますから、五十六年度人勧実施をしておりますから、それが明くる年がぶってくるわけでございますね。こういったやむを得ない追加財政需要を賄う財源の目途もつけがたいといったような厳しい状況でございましたが、行政経費の既定経費の節減、予備費の減額、税外収入の増加等によって財源の捻出に最大限努力を払ったわけでございますが、その財源の中で二・〇三%という給与改定を行った。これもまた厳しい処置ではございましたけれども、御案内のように、五十八年度のベースアップ分というのは一・八九であったわけでございますから、五十七年度のいわゆる積み残しといいますか、それは官民給与較差として出てきているわけでございますから、少しでもそれの解消をしなければ申しわけないのではないかということでやったわけでございます。  五十九年度は一体どうなるかということでございますが、先ほどお答えいたしましたように、五十八年度二千五百億、結果としては景気がよくなりましたから余剰財源が出ておりますね。それから、五十九年度の景気の見通しも今日の状況では当初の見通しよりは相当よくなるということがございますから、そこらを頭に置きながら、それらの見積もり以上の財源が生まれるであろうという予測が今あるわけですから、それを全部他に取られて、そして人件費の方はやむを得ませんといったわけにはまいらぬのではないのか。これはやはり人事院勧告を尊重するという基本政府方針がございますから、その立場に立ってそれらの中でできる限りの努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  170. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 大臣がそれぞれの努力というか、それぞれの過去の経過についてお話しされたことは、それなりに理解はできますけれども、しかし考え方を変えて言うならば、財政重要視型だけであって、公務員給与は後回したという、こういうことにもなるわけです。しかし、今、行革を初めとするあらゆる政治課題が行われているわけであります。公務員の皆さんが喜んで仕事ができるような環境づくりというのは、当然人事院勧告の給料が一〇〇%完全実施されて初めて生じることだと私は思うんです。だからそういう点を考えてまいりますと、不安感を取り除くとか、そういう最大限努力をするという、そういう姿勢は評価をしたいわけでありますけれども、しかし過去の実績というものが当然物語ってくるわけでありますから、そういうことを考えてまいりますと、ことしも大変不安感が増大していることは事実だと思うんです。  そういう点では、まず公務員の皆さんを、働く立場に立って優遇をする。そして行革は行革として進める。あらゆる政治課題を解決するために私はやらなければいけない問題だろう、こう思うんです。その精神が、今どちらかというと、片方においては財政だけを偏重するような形の中で、しかしその結果昨年が二千五百億という黒字になったわけですから、それは公務員努力でなったことだと思うし、あと皆さん方のそれぞれの政策の課題でなったものだと私は思うし、景気の問題もあったと思います。しかし、いずれにしても財政事情が好転しているわけでありますから、今年度は六・四四、最大限努力をするということも必要かと思いますけれども実施をするということが明確に答えられても私はいいんではないか、こんなふうに思います。その辺、もう一度聞かせてください。
  171. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 もちろん、財政事情だけで公務員給与を凍結したりあるいは抑制したり、それでいいとは私は考えておりません。もう少し広い立場で、そしてまた同時に、過去何年間か厳しい処置をしておりますから、やはり公務員士気の問題とかあるいは労使関係の安定とか、いろいろ政府としては配慮しなければならぬ要素がたくさんございますから、それらを含めまして、しかも一方においては経済状況が御案内のように上向いてきておる時期でもございまするので、そこらを踏まえながら、ともかく精いっぱいの努力をするつもりでおりますから、その点はひとつしばらく模様を見ていただきたい、かように思うわけでございます。
  172. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 総務長官担当大臣としてそこまで言うならば、あなたを信頼するしかないわけであります。立場を変えて受け取るならば、六・四四%を完全実施するというふうに私は理解をさしていただきたいわけですけれども、それでいいですね。——そのような理解をさせていただきながら、次、またそれぞれ質問をさせていただきたいと思います。やはり質問させていただくためにも、お互いに理解なり信頼がなければ質問もできませんし、またそれぞれむだな発言もさしていただくことになりますので、そういう点を踏まえてぜひ御理解をいただきたいと存じます。  それでは次、官房長官質問させていただきたいわけでありますけれども、今年の四月四日、政労交渉、すなわち政府労働組合における交渉の確認事項の中において、三点ほどあったわけであります。一つには、労働基本権の制約の代償措置である人事院勧告制度及び仲裁裁定制度維持尊重する基本姿勢を堅持する。という問題。二つには、五十九年度人事院勧告及び仲裁裁定が出された場合においては、この基本姿勢に立って完全実施に向けて誠意を持って取り組む。三つ目は、なおこれからも関係労働団体とは従来どおり誠意を持って、民主的な労働運動を行う立場を尊重しながら、誠意を持って話し合うという、この三点が確認されたわけでありますけれども、まず、これについて今でも変わりがないかどうか、お伺いしたいと思います。
  173. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 四月四日に関係労働団体とお目にかかりましたときに申し上げたことは、御指摘のとおりでございます。その後も国会の場におきまして、いろいろ御質問に対して同様のことをお答え申し上げてきておるところでございまして、今もその気持ちに変わりはありません。勧告完全実施に向けて誠意を持って最大限努力をさせていただきたい、このように考えておる次第でございます。
  174. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 今官房長官から誠意を持ってというお話もありましたけれども勧告前に、先ほど申し上げましたように、財政事情等々の問題からしばらく我慢してもらわなければいけないとか、あるいはまた完全実施は大変厳しいとか、それぞれ抑制を意図するような発言がしばしば耳にされたわけであります。それら全体的な問題を含めて、給与関係閣僚会議の責任者として再度そのお考え方を確認したいと思いますけれども、それらの問題を含めて現時点においても誠意を持って、すなわち完全実施に向けて行っていただける、こういうふうに理解をしていいわけですね。
  175. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 人事院総裁から勧告を受け取りました八月十日に第一回の給与関係閣僚会議を開きまして、それぞれ出席の閣僚あるいは党の役員からいろんな意見が述べられたところでございます。その後も鋭意総務庁などを中心にいたしまして政府部内の意見をまとめるように努力をいたしておるところでございまして、いずれ第二回目の給与関係閣僚会議を開く日程を調整しなければならぬ、そんなふうに考えておる次第でございます。  お話しのように、完全実施に向けて最大限努力をしていくようにいたしたい。財政状況など非常に厳しいものがございます。それは、おととしと去年どことしと比較して財政はどうなっているのだということになりますと、景気は上向いてきてはおりますものの、そして部分的にはいろいろ好転材料はありますものの、しかし国債の発行高などを見てみましたときに、これでよくなりましたというような材料はむしろ非常に乏しいわけでございますけれども、一昨年の異常な措置、昨年も非常に厳しい措置をとってきたというこの経緯を踏まえまして、ぜひ最大限努力をしてまいらなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございまして、誠意を持って対応させていただきたい、このように考えておる次第でございます。
  176. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 今長官から、誠意を持って行っていただけるということでありますから、しかし少なくても誠意を持って行うからには、その結果というものを十二分に期待をしたいと思います。  順次質問をさせていただきますが、次に内海総裁質問させていただきたいと存じます。  人事院総裁は、すなわち臨調の第二部会の第一分科会の主査として、公務員制度の確立の答申にも今日までタッチされてまいりました。そのときも、公務員給与はどうあるべきかということを論議されたと思いますが、その印象と、今日最高責任者となられて勧告をされ、そして現在までのそれぞれの論議のお話を傍聴されて、そしてあなたの今の感想をお伺いしたいと思うんです。
  177. 内海倫

    内海説明員 もう一昨年のことになりますか、臨調におきまして確かに公務員分科会の主査をいたしました。公務員問題についていろいろ討論をいたしました。やはり委員会でございますし、立場もまた極めてフリーな第三者の立場でございますから、一つの責任を持った重要な組織の長というものに比べますとおのずから非常に自由で、かつ評論家的な意見も言うことのできる場でございます。しかしながら、その中におきまして非常に真剣にかつ深刻に論議をいたしましたのは、公務員給与の問題でございました。それの結論がいわば人勧制度を尊重する、さらに給与の決定につきましては、民間準拠によって行うというふうなことを決めたことにもおわかりいただけますように、論議を進めれば進めるほど、あるいは関係の、例えば当時人事院の方にも来ていただき、また職員団体の方からも聞き、いろいろな有識者の意見もヒアリングとして聞きました。そういうものを聞く、そしてそれらを論議することによって私どもは、と申しますのは、当時の参与でありました私どもは、この人勧制度あるいは公務員給与というものについては、例えば今現在私どもが持っておると同じような意味合いの考え方に到達をしておったわけでございます。  さて、人事院総裁という立場に図らずもなりまして、今度はそういうふうな単なる論議あるいは第三者的な立場ではございませんで、これは責任を持った組織の長でございますから、この問題に対しましては、今までるる申し述べておりますように、その勧告意義あるいは人事院という組織の存立の意味、あるいはそういうことのもとにある労働基本権制約の公務員立場というふうなものにつきまして、極めて深刻に問題を論じてきたわけでございます。そういうものを今回の勧告にあらわしてきたと思っております。そういう意味からいいますと、人事院総裁という立場は非常に深刻に物を考えていかなければならない、またそのことが人事院総裁というものであろうと思っております。  さて、現存のこういう論議を通しての所見ということでございますが、私どもは第三者として聞いておるわけではございませんで、私どもの願い、私どもの希望というものを基礎にしながらいろいろ承っておるわけでございまして、こいねがわくは内閣におかれましても国会におかれましても、ぜひ完全実施への努力をしていただいてこの勧告が実現するように改めてお願いを申し上げたいと思います。
  178. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 人事院総裁としての立場が今述べられたわけでありますけれども、いずれにしても労働基本権にかかわる問題やら、あるいはまた人事院の今後の存続にかかわる問題等々、置かれている現在の環境というものが大変大切なわけでありますから、あなたはこれからやはり体を張ってでもこの完全実施に向けてあらゆる努力をしていただきたい。そのことが総裁としての職務を達成できるのではなかろうか、こんなふうに私は思いますので、この辺については要望しておきたいと思います。  そこで、先ほど来しばしば財政問題が議論をされておりますので、大蔵に質問させていただきたいと思いますけれども、今年度当初予算では、給与改善費として一%、約七百六十億円等を計上してまいりました。そして、今日では六・四四%完全実施するために、改めてどのぐらいの財源が必要とされているのか。推定では四千二百億とか四千五百億とか、こんなことを言われております。こういう問題が一点。  さらに、日本の経済は少しずつでもありますけれども上向いているわけであります。五十八年度一般会計決算でも、あるいはまた法人税、好調な形の中で、先ほどお話がありましたように二千五百六億の余剰金が出ているわけであります。今年度経済成長率でも、先ほど総務長官から景気は上向いているというお話もありましたように、当初経済成長率四・一%を見込まれているわけでありますけれども、もう既に七月時点ではこれを大幅に上回っているという財政環境であります。こういう問題等々を含めながら現在の見通しなりあるいはまた総額的な必要な財源、こういうことを御答弁をいただきたいと思います。
  179. 竹島一彦

    ○竹島説明員 それでは、私から財源の方をまず御説明さしていただきます。  五十九年度人事院勧告実施のために必要な財源でございますが、国の一般会計の負担分で申し上げますと四千七百三十億円でございます。  お話にございましたように、当初予算におきまして一%分、約七百三十億円を計上しておりますので、それを差し引きますと約四千億円が追加に必要になってまいります。  税収の問題につきましては主税局の方から御答弁申し上げます。
  180. 伊藤博行

    ○伊藤説明員 税収の関係について御説明申し上げます。  先生御案内のように、税収予算といいますのは個々の税目の積み上げで計算しております。五十九年度につきましては、御案内のように今時点での進捗率というのは予算全体の一割弱でございまして、今の段階で今後年間を通しての全体を申し上げるにはちょっと時期尚早というのが率直なところでございます。  ちなみに、現時点での税収動向でございますけれども、一番新しいところで六月末現在の計数が出ております。その段階での進捗率は予算に対しまして九・五%になっております。この率は昨年度の同じ時点での九・三に比べましては若干上回っておりますけれども、御案内のように昨年の税収の動きというのは前半非常に出足が悪かったということがございまして非常に低く出ております。前年度が低く出ております。それとの対比で若干高うございますけれども、ちなみに過去五年間の同じ時期の進捗率を調べてみますと、五年平均で九・七%でございます。そういたしますと、今年度の九・五というのはいわば平年作といいましょうか、そういう表現が適当かどうかわかりませんが、平年作に比べますと若干下回っておるというのが実態でございます。  個々の税目を調べてみましても、この時期までで比較的税収の伸びがよかったのが法人税、それから酒税、それから有価証券取引税でございます。ところが、そのいずれにつきましても特殊要因を抱えております。例えば法人税につきましては、御案内のようにことしの税制改正でもって延納制度を廃止してございます。そういたしますと、従来ですと延納に回っておりました分が即納という格好で、本来なら後の時期に入ってくるものがこの時期にもう既に前倒しで入ってきておる。それから酒税につきましては五月一日から増税を行っておりますので、その直前の駆け込みによる仮需というのがこの時期の税収にはね返っておる。そういたしますと、今後の要素としては、今申し上げたような点はすべてむしろマイナスに効いてくるというような点を考えますと、今の時点の伸びだけがそのまま続くというのはとても期待できない。したがいまして、冒頭申し上げましたように、進捗率全体がまだ一割に達しておりませんので全体を云々することはできませんけれども、必ずしも楽観材料ばかりではないというのが現状の実態ではないだろうかというふうに考えております。
  181. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 財政問題の当事者ですから手放しで喜ぶわけにはいかぬと思いますけれども、それぞれ前年対比の数字を述べられて平年並みであるということを言われておりますが、後半、御案内のように、経済成長率、輸出の状況を見てまいりますと、大変好材料になっていることは事実だと思うのです。そんなことを含めながら、いずれにしても現年度という立場でこれからの景気回復その他を考えてまいりますと、昨年以上のものが期待できるだろう。こんなことからすれば、財政的な裏づけというものも、そういう点では多少従来よりはよくなってきている、こういうことだと思います。  そこで、藤波官房長官にお聞きしたいと思うのですけれども、実は国会の関係で防衛費の問題、すなわちGNP一%問題が予算委員会でも論議をされたことは事実であります。そのときに、ベア三%以上になったときには一%の枠は超えるだろう、こんな答弁もあったと思うのです。こういう関連の中で、防衛費と人勧との問題というものは今大変注目の的だと思いますけれども、改めてお伺いしたいわけでありますが、一連のこれらの関係の中で、少なくても六・四四%を防衛費一%の枠の中におさめるために抑制するようなことはないでしょうね。その辺についての長官考え方をお伺いしたいと思います。
  182. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 勧告につきましては、先ほどお答えを申し上げておりますように、法の精神にのっとりまして完全実施に向けて最善の努力をしていかなければいかぬ、このような姿勢を堅持してまいりたいと存じます。  それから、今お話のございましたいわゆるGNP一%枠の問題につきましては、政府は、昭和五十一年の三木内閣の閣議決定をいたしました防衛費についての考え方を、その後ずっと踏襲をしてきておりまして、現内閣におきましても、この方針を守っていくようにあらゆる努力をしていきたい、このように考えておるところでございます。話の中身を検討いたしますと、当然防衛費の中には人件費も含まれておるわけでございますから、人件費が上がる場合にどうなるかという話の筋からまいりますと、確かにこの二つの問題には接点はございますけれども、一方のために一方がどうこうされなければならぬという筋のものではない。勧告完全実施に向けて努力すべきものである。一方、防衛費につきましてはGNP一%枠を守っていきたい。こういう方針をやはり進めてまいりたい、こう考えておる次第でございまして、今先生がお話しのように、だから勧告の方が軽んぜられていいというような、そういう筋書きのものではない、こういうふうに考えている次第でございます。  特に、GNPの問題につきましては、なお今後の問題でございますので、非常に不確定な要因が多うございまして、今の段階でこれが超えるとか超えないとかというようなことを考えてみる見通しをまだ持つに至っておりません。そのことも申し上げておきたいと存じます。
  183. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 それでは、先ほど来このGNPの問題、すなわち、当初三%問題というのは一%を超えるか超えないかの論議の中に明らかになったわけですけれども、分母が六・四四%と決まれば、逆算をするとこの一%というものはどういう形になっているのか、これは経済企画庁の方に御答弁をいただきたいと思うのです。
  184. 服藤収

    服藤説明員 御質問の御趣旨は、仮に人事院勧告完全実施した場合に防衛関係費がGNPの一%以内におさまるためには、必要なGNPはどのくらいのレベルか、あるいは経済成長率は幾らかというようなことかと承りましたが、それを正確に計算するためには、完全実施した場合の防衛関係費が最終的に幾らになるのかという数字を押さえておる必要があるわけでございますが、私ども全く門外漢でございまして、その点承知をしておらないわけでございますけれども、ただ、先ほどお話にもございましたように、五十九年度の当初予算におきまして給与改善費として一%計上しておる、それが大体百二十億円ぐらいであるというようなことも情報としてございますので、これらを前提といたしまして、そして人事院勧告完全実施するというようなことで計算をいたしますと、もっともこの場合、最終的な防衛関係費につきましては、例えば節約がどの程度行われるかというような不確定要素もあるわけでございますので、非常に大胆な仮定を置いた単純な計算ということになるわけですけれども、防衛関係費が名目GNPの一%以内におさまるためには、名目GNPがおよそ二百九十九兆九千九百億円程度となる必要があるというような答えが出てまいります。これが実現されるためには、五十八年度名目GNPが速報で結果が出ておりますけれども、これをベースにいたしますと、大体七・八%程度名目の成長率が必要であるというような結果が出てまいります。
  185. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 まあ、いずれにしても今の人勧の問題やあるいはまた防衛費を含めた問題等々を含めて、こういう問題も現実にはそれぞれ人勧完全実施を含めて論議をされてまいろうと思うし、またGNPも不確定要素があるということですから、後段お話にもありましたように、これからの経済成長率等々に期待をしながらも、いずれにしても、長官先ほど来一連の関係、財政事情等々を含めて従来と違う措置をとって進めなければいけない、こんなことを発言されているわけでありますので、官房長官が従来と違う完全実施と言う意味は、少なくてもこの六・四四完全実施に向けてというふうに私は善意に理解をさせていただきたいと思うのですけれども、それでよろしいですね。
  186. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 受け取りました人事院からの勧告に対しまして、完全実施に向けて誠意を持って最大限努力をしてまいりたい、このように考える次第でございます。
  187. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 さらに、これからの人事院制度の問題等々を考えたときに、今人事院給与勧告等々の問題、第三者機関として人事院が行ったわけでありますけれども、適正な形の中で公務員の賃金がこれで決まっていくわけでありますから、そのためには、労働基本権を代償する措置を初めとするあらゆる問題があるわけであります。そういう点で、この人事院勧告六・四四が完全実施をされないという場合には、逆を言えば、憲法違反の可能性も出てくるだろう、これは全農林の警職法事件についてもこれらの問題が明らかになっているわけでありますけれども、これらについての人事院総裁としての見解を述べていただきたいと思います。
  188. 内海倫

    内海説明員 憲法問題に関しましては、私自身もお答えする立場ではないと思いますし、また人事院としましても、憲法問題の是非を論ずるということは適当でないと思いますので、見解の表明は留保させていただきたいと思います。  ただ、こういうふうな抑制などが非常にたび重なってまいりますと、やはり労働基本権にかかわる問題等がだんだんに論議の対象になってくるということは、私は十分考えられるものと存じます。
  189. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 確かに人事院立場で違憲か合憲かという問題は酷かもわかりませんけれども、ただこの判例の中で考えるならば、逆を返せば少なくとも憲法違反にも通ずるということが明らかになってまいりますので、それらの問題を含めて、誠意を持ってこれからの取り扱いをしていただきたいと存じます。  そこで、後藤田総務長官にお伺いしたいわけですけれども、今、過去三年の問題等々考えて、完全実施、誠意を持ってということでありますから、一方においては完全実施を期待したいわけであります。しかし、もし完全実施ができないとする場合、今後公務員労働基本権をどのようにお考えになるのか、あるいはまた人事院制度の問題について見直しを行う考えがあるのかどうか、この一連の問題についてお伺いをしたいと思います。  もう一つは、やはり何といっても総務長官、賃金のあり方を考えていただくことは、この総人件費という枠組みの中で考えていくのか、個別の賃金という形の中でこの人勧のとらえ方をするのか、こういう問題も相当因果関係があるんではないかと思います。先ほど質問の中でも、こういう問題が出てまいりました。行政改革とか財政事情とか、いろいろなことを述べられてまいりましたけれども、例えば行革というものは、総人件費の抑制を主張されておりましたけれども、個別の例えば人事院勧告完全実施はしちゃいけないということは全然触れてないわけであります。こういうことを考えてまいりますと、一連の問題を含めながら、今総務長官としての考え方をお述べいただきたい、こんなふうに思う次第であります。
  190. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 先ほど人事院総裁から、人事院総裁としての苦悩をお述べになっていらっしゃいましたが、それはよく私にはわかるわけでございます。しかし、私は人事院勧告最大限に尊重して、公務員の諸君に安心して職務に精励をしていただくことができるような処置をしなければならないという総務庁長官としての立場もございますが、同時にやはり国務大臣として、今日の公務員給与についての国民の世論であるとか、あるいは相変わらず続いておる厳しい財政事情であるとか、各般の国政全般について目配りをしなければならない立場に私もあるわけでございます。人事院制度というものを尊重しているからこそ私も苦悩を重ねておるんだということは、ひとつぜひ御理解をしていただきたい、かように考えるわけでございます。  二番目は何でございましたか。
  191. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 総人件費と行革との関連の中で……
  192. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 わかりました。  その点は確かに臨調の方は、別段公務員給与を具体的に抑制しなさいとか、そういうことを言っているわけじゃありませんで、総人件費、つまり行政の改革をやることによって人件費の増高というものをやはり抑制する必要があるのではないか、こういうことを述べているわけでございますが、しかし、具体的な人事院勧告というものが出れば、それを政府全体としてどう受けとめてやっていくのかということになりますと、行政の改革ということが国民既得権を持っていらっしゃる各方面の方に相当厳しい処置をしておるんだということとの関連においては、やはり私は接点があり得るという認識は持たなければならぬのではなかろうか、かように考えているわけでございます。
  193. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 少なくとも現在の人勧の問題を含めて、公務員の皆さんにもいろいろな形の中でひずみや影響が出ていることは事実だと思うのです。一方においては人事管理や人材確保労使関係改善や、あるいはまた行革を含めて多くの政治課題もあることは事実だと思います。  政治というのは、私は、今さら言うまでもなく、それぞれの時代への対応というものが敏感に要求されるものだ、こういうふうに思う次第です。例えば民間の賃金も、昔はそれぞれ長時間をかけてその中で相互努力によって決められてきた、そういう経過がありますけれども、今は世間一般的な賃金の流れの中で決まっている、こういう事実だと思う。そういう点ではその較差といいますか、民間公務員との較差が求められているわけでありますから、早期実施ということも当然ここには求められてくるわけであります。そういう点で総務長官及び藤波官房長官に、政府としては今ここで結論は出しにくいだろうと思いますけれども、あえてお伺いをしたいと思う。いつごろを目標にその時期というものの見通しを立てているのか。十二月の国会もあろうと思います。いろんなことを含めてそれぞれ、関係閣僚会議が一回では恐らく決まらないと思いますので、そういう点では誠意を持ってというお話も出たり、最大限努力をするというしばしばお言葉が出ているわけでありますから、それぞれの時期、見通し等について現時点でお伺いできればお答えをいただきたいと思います。
  194. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほどお答えをいたしておりますように、勧告を受け取りました八月十日に第一回を開き、第二回目、関係者の日程等調整をいたしまして給与関係閣僚会議をまた持つようにしていかなければなるまい、こう考えておるところでございます。  今のところ、いつごろ政府方針を決定できるかという確たるスケジュールをまだ持っておりません。これは、だんだん意見調整をしながら煮詰めていかなければいかぬというふうに考えておりますので、今後その努力を重ねていきたいということだけ申し上げておきたいと存じますが、ただ、勧告を受け取りましたので、じんせん日を過ごしていいというものではない、こういうふうに今考えておりまして、なるべく早くやはり政府の態度を決定するようにしなければならぬという目標だけは持って進んでまいりたいと思っておる次第でございます。  非常に抽象的な御答弁で恐縮でございますが、お許しをいただきたいと存じます。
  195. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいま官房長官お答えを申し上げたとおりでございます。
  196. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 時間も参りましたけれども先ほど来政治というものが、私が今さら言うまでもなく、それぞれの時の流れに敏感に対応しなければいけないということを申し上げてまいりました。労働運動の中で最近の賃金決定要素というのは一発回答、そんな形のお互いの信頼の中で決められているわけであります。そんなことを考えたときに、やはりこの時期あるいはまたそれぞれの努力というものを早急に行って六・四四%が完全実施される、こういうことが今期待をされていると思うし、またそういう時期ではなかろうか、こんなふうに思います。それがやがては、これからの政治に対する信頼やあるいはまた今後のそれぞれの労使の信頼関係にもつながってこようかと思います。  そういう点を含めて、政府に対するより一層の努力と、関係大臣及び当面この関係閣僚会議の責任者であります官房長官及び総務長官により一層の努力と期待を申し上げて、私の質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  197. 片岡清一

    片岡委員長 三浦久君。
  198. 三浦久

    ○三浦(久)委員 私は、質問に先立ちまして、本年度人事院勧告完全実施を強く要求をいたしたいというふうに思います。  この人事院勧告の問題というのは、ないそでは振れないというような問題ではないと思うのですね。やはり厳しい財政事情のもとでどういう政策を選択していくのか、いわゆる政策の優先度の問題だというふうに思うのです。ですから、政府自身に本当にこの人事院勧告を完全に実施する、最大限尊重して最大限実現のために努力するという意思があれば、私は実行が可能なものだというふうに考えているわけであります。  それにもかかわらず後藤田長官は、七月八日にNHKのテレビ番組の「政治座談会」で、人勧基本的には尊重していくが厳しい財政事情などを考慮するとしばらく辛抱願う面も出てくる、こういうように述べられているわけですね。これは、人事院勧告を完全に実施するということをその時点で否定されている発言なんですね。私は聞きまして、ちょっと驚きました。一般の職員で、五十六年、五十七年、五十八年と三年間にわたって人事院勧告が削減をされたり、抑制をされたり、凍結をされたりしているわけですね。その結果どのくらい公務員労働者の生活というものは苦しくなっているのか、そのことを長官自身は御理解なさってこういう発言をされたのかどうか、私は本当に疑わざるを得なかったわけであります。  私の手元に労働者からの訴えが来ております。これは平均的な公務員労働者だと思いますが、三十四歳の方で四人家族であります。この方の収入は月に、ことしの七月の給与ですが、総額で二十四万四千七十八円であります。このうち所得税と社会保険費をどのぐらい払っているか、三万一千七十四円払っているのですね。そのほかに住宅ローンがこの方は四万百四円あります。ですから、七万何がしかの金がこれから消えていくわけですね。可処分所得は十七万二千九百円であります。これで一家四人が生活をしているという。十七万二千円で一家四人が生活するということは、そんなに楽な生活じゃない。楽どころか、ちょっと気を許したらすぐ赤字になる。恒常的な赤字かもしれませんね。そういう状態であります。ところが、五十七年度人勧の全面的な凍結でどのくらいこの方は損をしたかといいますと、十九万二千七百七十八円損している。昨年は二・〇三%の実施でしたね。その結果、十八万七千八百七十七円の損をしている。ことしも民間のベア分しか上げないよということになれば、やはり同じく二十万円近くの金をこの公務員労働者は損をするということになるわけであります。  こういう労働者の生活の実態、非常に厳しいです、厳しい実態ですよ。総務長官はこういうものを御理解なさってあのNHKのテレビ討論での発言をなさったのかどうか、最初にお聞きしたいというふうに思います。
  199. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私は、這般の事情をすべてのみ込んだ上で発言をさしていただいたわけでございます。  私の真意は、これはいつも政府として言っていることなのですが、最大限努力をいたします、結果としてはやむを得ませんでしたといったようなことを、いつまでも一体言っていいものであろうか。過去三年間、凍結したり抑制したりしておる。ならば、やはり公務員の諸君に、仮にことしも厳しい処置にならざるを得なくなると仮定しても、何らかの明るい展望、そして公務員に不安感を与えないような具体的な現実的な解決策を私は私なりに提言をするのが本当の立場ではないのかということで、私はああいった発言をしたわけでございます。  もちろん、人事院勧告が当時の状況で、ともかく昨年のいわゆる積み残しを考えなければ四・何%ございますね。そうすると、それにことしの分を加えていけば大体六・五%前後ということは常識的に私にはわかるわけでございます。そうなれば、一%の給与改善をした場合に一般会計の負担がどれくらいになる、あるいは地方の一般会計の負担がどれくらいになる、さらにまた他の制度へのはね返り等を含めれば、これは一体どの程度財政負担になるかということは、私なりに一応の判断ができるわけでございます。  そういったときに、ことしの予算編成ということを考えた場合に、今厳しい処置でやっているわけですね、一〇%の削減、五%の削減を一般行政経費あるいは公共事業についてもやっているわけですね。こういったようなことを考え、しかもいろいろな社会保障制度についてまで行財政改革の厳しい処置をお願いしておる、こういった中でどのような処置をするのが公務員の諸君にとって本当の意味で親切なのか、そしてまた国民皆さん方の御理解も得られるのではないかといったようなことでああいった発言をしているわけでございますので、私の善意というものはぜひひとつあなたも御理解をしていただきたい、かように思うわけでございます。
  200. 三浦久

    ○三浦(久)委員 あなたは今政治家として、七月七日の録画でしょう、七月八日に放映されましたね、その時点でどういうものが出るか予測ができた、どのくらいの財源が必要なのか予測ができたと、こう言っておられる。それはうそじゃないですか。あなたは七月二十四日の参議院の内閣委員会質疑で峯山さんという方の質問に対して、「八月にどのような勧告が出るか、今の時点ではこれは何とも予測しかねるのでございまして、」云々と、こう述べておられますよ。その前の七月八日の時点では予測ができたと言い、その後は予測ができないと言う。これは一体どういうことですか。どっちが本当なんですか。
  201. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 それは、参議院の委員会に出ての私の答弁というものは公式発言になるわけでございます。したがって、予算の見通しが立ってないからどうなるかわからぬ、こう言ったわけでございますが、NHKのテレビ放送のときは、先ほどお答えしたように、私なりにおおよその推計というものは立ち得るのです。それを考えれば、完全実施ということはなかなか難しいのではないかなという認識は私なりにある。しかし、何とかここは具体的な、現実的に公務員に不安感を与えないような処置はとる必要があるのじゃないかという意味合いで私は申し上げておるわけでございます。
  202. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それは段階的解消の話ですか。公務員に不安感を与えないような発言をしたというのは段階的解消をやっていくという発言のことを言われているのですか、どうなんですか。
  203. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私が申し上げておるのは、ともかく人事院勧告というものと政府の決定が毎年食い違う、それで政府抑制する、いつになったらどうなるといったような見通しがないということは、公務員皆さん方にも大変な不安感を与えるのではなかろうかということを私の念頭に置きながら、しかしもちろん、あの際にも申し上げましたけれども人事院勧告というのは最大限尊重してやらなければならぬということは私は前段階として申し上げてあるつもりでございます。
  204. 三浦久

    ○三浦(久)委員 この人事院勧告がまだ出ていないのに、そしてあなた自身は先ほどから何回も、人事院勧告最大限尊重する、その完全実施に向けて最大限努力をする、こう言われていますね。中曽根総理も、国家公務員法上の尊重義務なんだと言われる。あなたも財政事情が云々だけではだめだ、やはり最大限実現に向かって努力をして、その結果の話なんだということを言われていますね。努力というものが憲法違反になるかならないかの分かれ道でしょう。ところがあなた自身は、何にも努力しないうちに、ことしはだめだということを言っているのですよ。それが何で公務員労働者の不安を解消することになるのですか。あなた自身は、何にも努力できない時期だったんでしょう。最大限実現の努力というのは人事院勧告が出てからのことじゃありませんか。出ない先にどうやって実現のために努力ができるのですか。努力しないその段階において、その完全実施は無理だ、我慢願わなければいかぬ点もあるということを言われているのです。そうすれば、今あなたがこの国会でもって、いや最大限尊重して最大限実現のために努力すると言ったって、我々はああそうですかとなかなか聞けないじゃないですか。あなたの本心は、ことしは無理ですよということだなということしか私ども受けとめることができないのですよ。  長官、そういうやり方というのは、給与担当大臣として人事院勧告というものを最大限尊重しなければならない、そういう義務を放棄した発言だと私は思うのですよ。この時期に中曽根総理はどういう発言をしていますか。七月九日の参議院の決算委員会で、完全実施に向けて誠意を持って取り組みたい、こう言っていますよ。官房長官も同じころにそういう発言をされているのです。それは当然のことじゃありませんか。それを出る前から、ことしは無理だよというような発言は、努力義務を全く放棄していることじゃありませんか。それは人事院勧告制度それ自身を否定する発言じゃありませんか。そういう意味で、この発言は特に総理大臣の発言とも違うし軽率だ、私はこの発言は撤回さるべきものであって、そして法の趣旨に従って完全実施に向けて最大限努力をするということを言明すべきだと思うのです。この発言は撤回すべきだと私は思うのですが、いかがですか。
  205. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 残念ながら発言を撤回する考え方はございません。  私は、現実的にどのようにすればいいのかということを頭の中に置いて、もちろん人事院制度を尊重して、その完全実施に向けて努力をする、これは当たり前の話で、そのことも私は前段階で申し上げておるのに、どっちが親切ですかね。本当に建前諭だけで終始するのなら非常に楽なんですよ。それだけでは済まない。あの段階といえども、およそ六・五%前後になるというのは常識的にわかるでしょう。過去の積み残しが幾らある、そして公労協の仲裁裁定でベースアップ分が幾らある、定期昇給が幾らあるということを頭に置けば、もちろん公労協と人事院勧告とは、ひとしく公務に従事しておるのですから、その関連性はございます。関連性はある。しかし、建前は違います。違うけれども、関連性はあるのですよ。そこらを頭に置けば、やはりおおよそ私なりの常識的な判断としてはできるわけです。そうなれば、それを頭に置きながら所要財源がどれくらいかかるかということも直ちに私なりに判断ができる。そうすれば、今日のこの厳しい財政状況を考えれば——完全実施がいいことは当たり前の話なんです。それに向かって努力をすることも当たり前なんです。しかしながら、私のその努力目標というものが現実化するかどうかということについては、遺憾ながら自信が持てないこともこれまた事実なんですよ。そういった中でどのように公務員皆さん方に安心感を与えるようなことができるのか、そこを見つけるのが私の本当の意味での責任である、かように考えて申し上げたわけであります。
  206. 三浦久

    ○三浦(久)委員 長官の話を聞いていますと、国会では建前なんだ、本音は別なんだ、それでは国会審議は形骸化じゃありませんか。先ほどの話でもそうでしょう。八月に出るんだからわからないと言った、それはそう言ったけれどもそれは建前なんだ、本音はわかっているんだ、それじゃ一体国会というものをどう思っているのですか。そして、建前を言うのなら楽だと言いましたが、しかし本音は別だと言うのですか。あなたの給与担当大臣としての本音は完全実施じゃないのですか、完全実施は建前で本音は別ですよと言うのですか、それでは国会審議を何のためにやっているのですか。そういう答弁は私は非常に憤慨にたえませんね。  それに七月十一日付の日経新聞、ここで報道されておりますが、あなたは十日に記者のインタビューに答えて、五十九年度勧告完全実施は不可能だ、二番目に、五十九年度民間春闘ベア相当分は完全実施する、三番目には、五十七年度の積み残し分四・四四%は今年度から凍結を解除し段階的に実施するとの方針を明らかにした、こういうふうに言われておるのですけれども、これはそのとおり事実なんですか。
  207. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 詳細な発言のあやは何とも言えません。しかしながら、趣旨としては私の頭の中にあるのは、いわゆるこの積み残しを毎年毎年、いつどうなるのかわからぬままに置くのはいかにもおかしいではないか、これは完全実施になれば当該年度に一挙に全部解決するのです。しかし、我々は最大限努力をします、するが、それが仮にできない場合には一体どのような処置をしたらいいのだろうかということをお互いに私は議論を交換して、これは給与関係閣僚会議がございますから、そこでいろいろな御意見が出ると思うので今日ここでどうなるということは言えませんけれども、私の気持ちの中では、本当に公務員諸君に親切に、しかもやらなければならない政府の仕事というものをどのようにすればいいのだということを真剣に模索をしていきたい、こういうのが私の気持ちでございます。
  208. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、その段階的解消の中身をちょっと説明していただけませんか。もう人事院勧告が出る前から勧告内容がわかっている長官ですから、あなた自身頭の中で、では何年ぐらいで積み残しを解消しようと思っていらっしゃるのか、どういう方法でやろうとされておられるのか、おおよそのめどで結構ですからお教えいただきたい。
  209. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 この人事院勧告というのは、完全実施すれば一番いいですね。それでもう解決する。それで解決しなければ、先ほど質問の中にあったように月別ということも考え得られます。しかしながら、それも他への波及を考えてどうしても難しいのだということになれば、これは五十八年度のようなことだって考えざるを得ない。これはどれになるかということは、今の段階では何とも申せません。しかし、私の気持ちは、最大限努力を積み重ねて何とか公務員の諸君に安心感を与えたいというのが私の今日の考え方でございます。
  210. 三浦久

    ○三浦(久)委員 長官の発言というのは、公務員労働者のことを思っているというような、そういうポーズをとっておられる。しかし、本当に人事院勧告の性格というものを理解されているのですか。五十六、五十七、五十八年ですよ、ことしまた一般の職員が値切られれば四年ですよ。そして、今後段階的解消ということになれば積み残しは四・四四%ありますよ。これを積み残し分を年年一%ずつやっていくと五年かかりますよ。それはどの程度、二%するのか、私は知りません、あなたの腹の中にあることですから。しかし一%ずつ仮にやれば五年かかるのです。四年に五年足せば十年ですよ。十年間人事院勧告が完全に実施されない、そういう事実が出てくるわけですね。仮に五年ではなくとも、二年でも三年でも、今の時点でもってこれから二年間は、三年間は、四年間完全実施しませんよということを天下に宣言をする、それは人事院勧告制度の否定じゃないですか。本当に人事院勧告というものの重みを理解されている発言なのかどうか。完全実施をする以外にないじゃありませんか。そして、それは政策の優先度の問題だから、やろうと思えばできることなんです。  人事院にお聞きしますけれども段階的解消というのは、私が今言ったように、これから数年間人事院勧告完全実施はしませんよという宣言なんですね、こういう問題について人事院、どういうふうに思われますか。
  211. 内海倫

    内海説明員 人事院としましては、今までもたびたびお答え申し上げておりますように、人事院勧告というものは、厳しい官民給与の実態を調査してその較差を出して、そしてこれをぜひ埋め合わせてほしい、そういう勧告をいたしておるわけでございます。その埋め合わせるということは、要するに公務員給与というものを世間並みにしてもらう、その必要がございましょうということの勧告でございますから、私どもとしては、先ほどからいろいろ御答弁はございますが、政府としましても最大限努力をしていただいてこの勧告実施していただくということが唯一の私どもの願いであり、また私どもに意見をお聞きくださるなら、そのことをお答えする以外に他にお答えのしょうがないわけでございます。
  212. 三浦久

    ○三浦(久)委員 後藤田長官お尋ねしますけれども、私は、段階的解消などというようなことをやればまさに憲法問題に発展をしていくと思うのですよ。  鈴木総理が五十六年十一月二十六日の参議院の行特委で、これは連合審査の席上ですが、五十六年の人勧不完全実施ですね、「毎年毎年ごとしのような異例の措置が繰り返されるようであれば、これはまさに人事院制度の根幹に触れるような結果に相なると思います。」こういうふうに言われておるのです。五十六年というのは、課長以上の昇給の一年延期とあとは旧ベースでのボーナスの支払いなんですね。それなんです。率はいじってないのです。それであっても、率の引き下げがないのにもかかわらず、こういうような事態が毎年続けばそれはいわゆる人事院制度の根幹に触れる問題になっていくのだ、それは憲法問題に発展することだと思いますけれども、そうおっしゃっているわけです。そうすると、五十六、五十七、五十八と、五十九、六十、六十一と、これからまた数年人事院勧告が不完全に実施されていく、率が切り下げられていくというようなことになれば、これは当然憲法問題というものに発展せざるを得ないというふうに私は思うのですが、長官はどういうふうにお考えですか。
  213. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御質問をお伺いしていると、そもそも人事院勧告を何と心得ておるのだ、尊重しておらぬじゃないか、こういう御質問がございましたが、私は尊重しているから苦悩を重ねておるのです。別段何も、いつまでもいつまでも削減削減でいったらいいなんということは毛頭考えていない。一日も早く完全実施の線に持っていく。できればことしやってしまえば一番いい。しかし、それはなかなか諸般状況から見て常識的に考えて難しい。ならば一体それをどうできるだけ早く完全実施の線に持っていくのかということを考えるのが、現実的に政治の責任を持っておる私の責任であるというふうに私は考えておる。もちろん憲法問題は、あの最高裁の判決の中にありますように、人事院の空洞化をもたらすようなことがあったのじゃいけませんよ、そう書いてある。そして同時に、空洞化を避けるためにはどうかということになれば、最大限努力をしたかしないかということが分かれ目になるのだという意味合いのこともあるのです。だから私は、人事院制度というものを尊重していくという以上はそういったことにならないようにできる限りの努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。鈴木さんがああいう御答弁をなさったのは、私、具体的にどういう状況のもとか知りませんから何とも言えませんけれども、完全に凍結してしまったのが鈴木内閣のときなんですよ。それをどう私どもが打開するか、本当に苦労しているのだということをひとつ御理解をしていただきたい、かように思います。
  214. 三浦久

    ○三浦(久)委員 後藤田長官は五十八年、去年の三月十五日の参議院の予算委員会ですけれども、そこでこういう答弁をされているのです。人事院勧告制度というのは「ことしに限って作動をしなかったと、こう御理解を願いたい。」人事院制度はもう必要ないじゃないかとか、そういういろいろな質問を受けられていますね。それで、いやそんなことはないのだ、人事院制度は機能しているのだ、ただことしに限ってだけ作動しなかったのだ、そう御理解を願いたい、こう言っているのですね。  そうしますと、五十七年度というのは完全な凍結でしょう。五十八年度不完全実施ですよ。ことしも、今の長官お話によるとまた不完全実施ですね。そうすると、三年間不完全実施が続いて、また来年度以降もどうなるかわからない。そういう状態が続いていくということは、これは完全に作動しなかったとは言わないけれども、不完全にしか作動しなかった、長官の言葉をかりればこういうことになりますね。そうすると、人事院勧告制度というものが不完全にしか作動されないというのが数年も続いていくということになれば、私は、これは当然憲法問題に発展せざるを得ないというふうに言わざるを得ないのです。これは長官と意見が異なります。時間がありませんから次へ進みますけれども、私はそのことを強く指摘しておきたいと思います。  ただ単純な勧告だ、勧告だから聞いても聞かなくてもいいのだ、努力さえすれば、それで実施しなくてもいいのだというような簡単な問題ではない。やはり労働基本権抑制している代償措置なんだ、そこがストライキ権を奪っても憲法違反にならないというキーポイントなんですから、そこをよく御理解をいただきたいというふうに私は思うわけであります。  そして、先ほどから財政事情云々ということがよく言われますね。財政事情が厳しいのはよくわかっておりますが、これは公務員の責任じゃありません。これは自民党政府の責任であります。そのことをここでとやかく言うつもりはありませんけれども、しかし、この財政事情云々ということだけを余りにも強調されますと、それじゃこれから財政事情はよくなるのか、どうなのだ、財政再建計画でもあるのかと私どもの方で聞きたくなりますわね。  それで、この前予算委員会大蔵省の方からいわゆる「財政の中期展望」というものが出されておりますね。これをごらんになりましても、要調整額というのは年々ふえているのですよ。来年は幾ら、これはもう申しません、わかり切ったことですから。来年は幾ら、再来年は幾ら、年々要調整額がふえているのです。財政事情は厳しくなっております。特に六十年度からは国債の償還という問題が出てきますから、大変な事態になっているわけですね。ですから、財政事情云々ということになれば、これは長官が言われている段階的解消という問題も不可能にならざるを得ないということなんですね。ですから、私も冒頭に申し上げましたように、要はそういう財政事情という問題ではなくて、厳しい財政事情の中から何を選択するのか、何に優先度を与えるのか、そういう問題だというふうに思うわけであります。  それで、人事院総裁にお聞きいたしますけれども、藤井前総裁は、給与は一種の義務的経費なんだ、だから財政事情云々よりも制度の趣旨それ自身を守ってほしいということを国会で言われているのですね。これは当然だと思いますけれども、前総裁のこういう立場内海総裁も踏襲されるのかどうか。
  215. 内海倫

    内海説明員 私、総裁を拝命しましたときも、人事院における行政につきましては前総裁考え方を引き継ぎますということを申し上げております。今おっしゃられました点は、単に引き継ぐということだけでなく、私自身もまたそういうものであるべきだ、こういうふうに考えております。
  216. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、やはり実現のための最大限努力というものはしなければならないのですが、それは一片の、口先で努力しましたよと言うだけでは足りないと思うのです。先ほど五十八年度についてどういう努力をしたかという御答弁もありましたけれども、それは一般的に財源を確保する、そういう努力だけなのであって、決して、人事院勧告が出た後にそれを完全実施するためにじゃ具体的にどういうことをしたのかということは何ら触れられていないと思うのですよね。私は、人事院勧告が出た段階でどうするのかという場合には、一たん予算を組んだ場合であっても、その予算の中に不要不急の経費がないかどうか、やはり洗いざらい点検してみる必要があると思うのです。私どもは、そういう不要不急の経費の最大のものは軍事予算だと思っております。防衛費だと思っております。  ちょっと防衛庁にお尋ねしますけれども、五十九年度の予算の執行状況報告していただけませんか。
  217. 宍倉宗夫

    ○宍倉説明員 五十九年度予算の七月末現在における執行状況でございますが、支出済み額は予算現額に対しまして三四%ということになっております。
  218. 三浦久

    ○三浦(久)委員 五十九年度には戦車六十両、それからF15、これは主力戦闘機ですが、十七機、対潜哨戒機、これはP3C八機、これを大量に購入の予定でございます。これらはもう契約したのですか。発注したのですか。
  219. 山田勝久

    山田説明員 ただいま先生御指摘のP3CでございますとかF15でございますとか、あるいは陸上自衛隊の主要な装備品の戦車ですとかにつきましては、まだ五十九年度、契約をいたしておりません。
  220. 三浦久

    ○三浦(久)委員 五十九年度防衛費に含まれている後年度負担金の歳出化の問題ですけれども、これは今年度の予算では九千八百三十一億円計上されておりますね、歳出化されていますね。これはどういうふうに執行されておりますか。
  221. 宍倉宗夫

    ○宍倉説明員 先ほど申し上げましたように、同じく七月末現在で四二%の進捗でございます。
  222. 三浦久

    ○三浦(久)委員 国庫債務負担行為の場合ですけれども、これは大体年割りを決めているようですね。その年割りを決めたとおり仮に年度末までに払わなかったという場合には、ペナルティーか何かを政府は取られるようになっていますか。
  223. 山田勝久

    山田説明員 今先生御指摘の国庫債務負担行為でございますが、これに基づく契約で前払い金の支払いを必要とするものがございます。これにつきましては特約条項という契約の中での条項がございまして、契約金額を定めるために一応の各年度の支払い額を予定をいたしているわけでございます。この支払い額は実は予算の範囲内で行うということになってございまして、したがいまして、契約で予定した支払いができない場合でも、予算の範囲内ということでございますので、特段、ペナルティーに関する規定は設けてございません。
  224. 三浦久

    ○三浦(久)委員 後藤田長官、今お聞きのとおり、この不要不急の経費がまだ執行されてないうんと残っているのです。本当に人事院勧告というものを最大限尊重するとか実現のために最大限努力をするというのであれば、こういう不要不急の経費こそ不用額として落として、そして補正でもって組み替えるべきだと私は思うのです。それはなぜならば、何も今こういう戦車を買うとかP3Cを買うとか、そういう緊迫した、緊急の必要性はないわけです。特に財政上は、あなたたちが言っているように非常に厳しいわけですから、まさにことし買わなくたっていいものを延期するなり何なりすべきだと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  225. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 あなたがおっしゃるように政策選択の問題であるということは、私にもわかるわけでございます。その中で人事院勧告に伴う人件費の計上ということは、これは私は重要な政策課題の一つであるという認識は持っております。しかしながら、防衛費の発注がおくれておる、それで金が余っておるからそれを回せという点になりますと、これは残念ながら共産党と私はまるっきり見解は正反対でございますので、さようなことはいたしかねる、こうお答えせざるを得ません。
  226. 三浦久

    ○三浦(久)委員 GNPの一%を防衛費が超えるかどうかということが一応の議論になっていますね。完全実施をするとそれを超える可能性が出るということです。そうしますと、それを避けるためにも正面装備費、こういうものの予算を削減するということが必要でありますし、また、自衛隊というものを米軍がどういうように見ているかということですね。  自衛隊というものが日本の国を守るための軍隊なのかどうか。この前の六月十九日に公表されたアメリカの国防総省の議会に対する報告書は、自衛隊を西太平洋、インド洋に展開する米軍の補完部隊だというふうに明確に位置づけているわけですね。ですから、アメリカのいわゆる極東戦略を補完する部隊だ、アメリカ軍が何か軍事行動を起こした場合にそれを補完する部隊なんだという位置づけを与えられているのですね。ですから、私は、こういうものをどんどん増強するということは、アメリカのいわゆる戦争の引き金に日本がまさに巻き込まれてしまう、そういう危険性をこそ強くする問題だということを指摘し、防衛費を削減して人事院勧告の財源に充てるべきだということを強く要求をしておきたいと思います。  防衛施設庁お見えになっていらっしゃると思いますが、厚木基地の問題であります。私も七月三十日に現地に行ってきました。それで飛行場の南と北にそれぞれ一時間ずつ、それから大和市であるとか、その他周辺の都市の、飛行機が飛来する直下にもずっと行ってまいりました。その爆音というのは、とてももう我慢の限界を超えているものですよ、あれは。ギーンというか、ガーンというか、音じゃないですね。もう物理的な衝撃ですね、あれは。そして耳を押さえなければ、とてもとてもその直下には立っておれぬというような状況であります。それが大体六時から十時までの間に一分半に一回来るのですよ。今、二機でもってずっとやっております。タッチ・アンド・ゴーですね。八月十日には、時間を短くしよう、六時から十時までじゃなくて、六時から何時までですか、何時間か時間を短くしよう、そのために四機編隊でやった。四機編隊でやりますと、少し輪が大きくなったにしても、一分に一回来るのですよ。そういうことをやった。七月十七日から八月二十五日まで、最も夏の暑い盛りにこういうような、日本の国民をばかにしたような演習をやらしておる。ですから、関係市町村、六市あると思いますが、この六市の市長さんから、そしてたまりかねて神奈川の県知事も、防衛庁や総理大臣に対して、この訓練の中止を要請していると思います。  あなたたちは、これだけ強い国民の要求というものに耳を傾けようとしないけれども、こういう国民からの要請を受けて、アメリカ軍に対してどういう交渉をしたのか、明らかにしてほしいと思います。
  227. 千秋健

    ○千秋説明員 ただいま御指摘の厚木飛行場におきます艦載機の訓練につきましては、これは米軍のパイロットの練度維持という面、また、ひいては日米安保条約の効果的運用のために必要欠くべからざるものと我々は考えております。  しかしながら、厚木飛行場におきますこの訓練によります住民への影響というものは深刻なものがあることは、私どもも十分受けとめておりますので、これにつきまして、米軍に対しまして、この訓練に際しましては日米政府間で合意されております騒音規制に関する合意、これは内容としましては、飛行時間、飛行高度、場周経路上の機数等を制限しております。こういうような騒音規制に関する合意を遵守するように徹底を図るとともに、この訓練が厚木に集中しないように、その他三沢、岩国、そういう飛行場も分散して使うということで訓練の集中を努めて避ける、また、深夜の遅い時間帯に至りましては、騒音の低い機種といいますか、そういう機種を使用する、そういうようなことでいろいろ騒音に対する対策をとるように米軍に申し出ているところでございます。  それとともに、根本的には、厚木飛行場にかえまして、関東地方及びその周辺におきまして円滑に訓練ができる飛行場を早急に見出したいということで、現在検討を続けておるところでございます。
  228. 三浦久

    ○三浦(久)委員 あなたにも、私は三十日に視察に行ってすぐ申し入れをしましたね。こんなこと中止をさせるべきですよ。見てごらんなさい、大和市というのは人口の密集地帯ですよ。ずうっとあの辺一帯は人口の密集地帯。そこを七十メートルから百メートルくらいの高さでビューと飛んでくるのですよ。落ちたら一体どうするのですか。日本国民の安全というものをあなたたちはどう考えている。あんな屈辱的な訓練はやめさせるべきじゃありませんか。ただ条件をつければいいというような問題じゃない。  それに、防衛施設庁は私の資料要求に対して、この厚木飛行場でどういう飛行コースでもって訓練しているのかというのを出してきました。これが全くのでたらめじゃありませんか。あなたたち、これ、米軍からもらったのをそのままうのみにして持ってきたのですか。それとも、現地にも行かないで、ただ丸を引いてきたのですか。私は現地に行って見ています。あなたたちのかいた図というのは、南風のときにタッチ・アンド・ゴーが北から入ってくる、そしてタッチしてまた上に上昇していきますね、そうして、飛行場の途中から西に旋回をしてまたもとに戻ってくる、北側に戻ってくる、こういう絵をかいている。これは被害を少なく見せようとしてこういう絵をかいてきておる。しかし、実際にはこうじゃないのです。飛行場の北側から入ってきて、飛行場の南側の上空、真上を抜けていきます、県道の上を抜けていきます。それから大きく西に旋回をしていくのです。ですから、あなたたちがこの絵をかいた飛行コースよりも、もっともっと被害の範囲は大きいのですよ。こんなでたらめな資料を私の手元に持ってくるというのは不謹慎だと思う。もう一回調査をし直して、そして、どういうコースで飛んでいるのか、もう一度報告いただきたいと思うが、いかがですか。
  229. 千秋健

    ○千秋説明員 先ほど提出しました資料は、飛行コースの標準コースを線で描いたものでございまして、通常、飛行機は空中を飛ぶ場合に線の上を飛ぶわけではございませんので、それに一定の幅がございます。そういうことで、先生ごらんになった場合にもその幅の中で飛んでいると思いますので、それとその図面のコースとは違うということを御了解願いたいと思います。
  230. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それは、若干違うという問題じゃないのですよね。このあなたたちの描いた絵ですと、飛行場の南側には何の被害も及ばないようなコースになっている。事実と全く違うということです。  委員長調査をしてもう一回報告をさせていただけませんか。それで質問を終わります、時間が来ておりますから。
  231. 千秋健

    ○千秋説明員 繰り返して恐縮でございますが、私どもは飛行コースについて先ほどのような図面を提出申し上げたのでございまして、実際の騒音の被害につきましては別途、我々は騒音コンターと呼んでおりますが、それぞれ第一種区域という被害地域を施設庁長官の名前で指定をして、告示しております。
  232. 三浦久

    ○三浦(久)委員 飛行コースが間違っているんですよ、これ。大和市も綾瀬市も相模原市もみんな中間報告書みたいなものを出していますけれども、もうほとんど相模川の付近まで来ているということを言っているのです。こんな飛行コースじゃないのです。ちょっと、調査をしてもう一回提出させていただけませんか。うその報告じゃだめだよ。
  233. 千秋健

    ○千秋説明員 飛行コースにつきましてはあくまで幅がございますので、幅でもって私どもは御理解願いたいと思います。
  234. 三浦久

    ○三浦(久)委員 時間がありませんので終わります。もうしょうがないです。
  235. 片岡清一

    片岡委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十四分散会