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1984-07-10 第101回国会 衆議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十日(火曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 池田 行彦君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 松浦 利尚君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       石原健太郎君    内海 英男君       大島 理森君    奥田 幹生君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       塩川正十郎君    月原 茂皓君       二階 俊博君    山本 幸雄君       綿貫 民輔君    上原 康助君       角屋堅次郎君    佐藤 徳雄君       嶋崎  譲君    元信  尭君       渡部 行雄君    池田 克也君       山田 英介君    田中 慶秋君       滝沢 幸助君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         文部政務次官  中村  靖君         文部大臣官房長 西﨑 清久君         文部大臣官房総         務審議官         兼内閣審議官  齊藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君  委員外出席者         衆議院法制局第         一部長     松下 正美君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     佐藤 徳雄君   鈴切 康雄君     池田 克也君   田中 慶秋君     滝沢 幸助君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 徳雄君     嶋崎  譲君   池田 克也君     鈴切 康雄君   滝沢 幸助君     田中 慶秋君     ――――――――――――― 七月十日  国民教育審議会設置法案久保亘君外二名提出  、参法第一五号)(予) 同月六日  傷病恩給等の改善に関する請願(三ッ林弥太郎  君紹介)(第七二二二号)  重度重複戦傷病者に対する恩給の不均衡是正に  関する請願上原康助紹介)(第七二二三号  )  同(松浦利尚君紹介)(第七二二四号)  同(田名部匡省紹介)(第七三二二号)  臨時教育審議会設置法制定反対に関する請願外  五件(上原康助紹介)(第七二二五号)  同外三件(角屋堅次郎紹介)(第七二二六号  )  同(工藤晃紹介)(第七二二七号)  同(小川仁一紹介)(第七三二三号)  同(岡田利春紹介)(第七三二四号)  元従軍看護婦の処遇に関する請願佐藤隆君紹  介)(第七三二一号) 同月十日  臨時教育審議会設置法制定反対に関する請願外  五件(大原亨紹介)(第七三七五号)  同外五件(角屋堅次郎紹介)(第七三七六号  )  同(井上一成紹介)(第七四〇八号)  同(井上普方紹介)(第七四〇九号)  同(伊藤茂紹介)(第七四一〇号)  同(稲葉誠一紹介)(第七四一一号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第七四一二号  )  同(小川国彦紹介)(第七四一三号)  同(小川仁一紹介)(第七四一四号)  同(加藤万吉紹介)(第七四一五号)  同(金子みつ紹介)(第七四一六号)  同(川俣健二郎紹介)(第七四一七号)  同(串原義直紹介)(第七四一八号)  同(小林進紹介)(第七四一九号)  同(佐藤敬治紹介)(第七四二〇号)  同(佐藤徳雄紹介)(第七四二一号)  同(新村勝雄紹介)(第七四二二号)  同(田並胤明君紹介)(第七四二三号)  同(武郎文紹介)(第七四二四号)  同(土井たか子紹介)(第七四二五号)  同(中村茂紹介)(第七四二六号)  同(野口幸一紹介)(第七四二七号)  同(馬場昇紹介)(第七四二八号)  同(藤田高敏紹介)(第七四二九号)  同(前川旦紹介)(第七四三〇号)  同(松前仰君紹介)(第七四三一号)  同(渡部行雄紹介)(第七四三二号)  同(井上泉紹介)(第七四八七号)  同(石橋政嗣君紹介)(第七四八八号)  同(上野建一紹介)(第七四八九号)  同(上西和郎紹介)(第七四九〇号)  同外一件(河上民雄紹介)(第七四九一号)  同(小林恒人紹介)(第七四九二号)  同(佐藤誼紹介)(第七四九三号)  同(嶋崎譲紹介)(第七四九四号)  同(田中恒利紹介)(第七四九五号)  同(馬場昇紹介)(第七四九六号)  同(細谷昭雄紹介)(第七四九七号)  同(細谷治嘉紹介)(第七四九八号)  同(村山喜一紹介)(第七四九九号)  同(村山富市紹介)(第七五〇〇号)  同(元信堯君紹介)(第七五〇一号)  同(山花貞夫紹介)(第七五〇二号)  同(山本政弘紹介)(第七五〇三号)  同外一件(渡部行雄紹介)(第七五〇四号)  同(渡辺三郎紹介)(第七五〇五号)  外国残留日本人並びに帰国者に対する特別措置  法制定に関する請願宮崎茂一紹介)(第七  三八五号)  重度重複戦傷病者に対する恩給の不均衡是正に  関する請願内海英男紹介)(第七四〇七号  ) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  臨時教育審議会設置法案内閣提出第四七号)      ――――◇―――――
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出臨時教育審議会設置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤徳雄君。
  3. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は、限られた時間でありますが、総括的に臨教審に対する質問を行いたいと思います。そして、今後の日本教育を展望いたしましたときに、本日行われておりますこの内閣委員会は、私はまさに歴史的な一日である、こう理解しているところであります。  さて、中曽根総理は、御承知のとおり、本特別国会の冒頭に施政方針演説で、戦後政治の総決算を強調され、三つ改革必要性を提唱されました。その中の一つが、御承知のとおり教育改革であります。いわば戦後教育の総決算という教育改革を主なねらいとする臨時教育審議会設置法案を本国会提出して、現在審議しているわけであります。  この法案は、従来の文部大臣諮問機関でありました中央教育審議会とは異なりまして、内閣総理大臣直属教育諮問機関であるところにその特徴があり、そして最大の焦点あるいは争点であると言わなければなりません。私は、教育改革必要性についてはそのとおりであります。しかし、なぜ今政府が提案しているような総理直属臨時教育審議会が必要なのであろうか、私は大きな疑問を持たざるを得ません。そういうことを前提にいたしまして、我が党の同僚議員が長期にわたって幾つかの質問を行い、文部大臣を初めとする政府側答弁をいただきましたが、重ねて私は基本的な問題にかかわって文部大臣の真意と見解を求めるものであります。  その第一は、総理直属機関臨教審設置法案の本国会提出に至るまでの中曽根総理言動に対して、私はどうしても言及をしておかなければならないと思っているわけであります。そのことにつきましては後ほど事例を挙げて具体的に質問をいたしますが、まず、戦後政治の総決算ともいうべき戦後教育の総決算について基本的な考えをお尋ねするわけでありますが、我が国教育戦前あるいは戦中における特徴と、そして結果的に大きな誤りを犯しているわけでありますが、その反省点は一体何であったのか、文部大臣見解をお伺いしたいと思います。
  4. 森喜朗

    森国務大臣 もう佐藤さん、十二分に御専門のお立場でございましたので、先生のお考え、基本的には私とそう違っていないというふうに私は愚考いたしております。  戦前我が国近代教育制度というものは、まさしく明治政府世界に目を向けて、そして長い鎖国の中で世界先進諸国大変文明が進んでおる、何とかこれらの先進諸国を追い抜いていかなければならぬ、追い起さなければならぬ、そういうことで明治政府日本教育を大きく日本じゅう展開いたしました。以来、政府の努力と国民教育に対する大変な熱意等を背景に着実に整備拡充が図られてまいりまして、我が国近代国家としての興隆と発展はまさにこのような教育普及発展によるところが多かったと私は承知をいたしております。  しかし、昭和の初期から諸情勢がいろいろと変化をしてまいりまして、そして教育戦時体制下に置かれることになりました。そして、この戦時体制下、そういう日本発展過程の中で教育が進められてきた、このことはやはり大きな反省点であろうと私は考えるわけでございます。しかし、戦前戦中教育反省を踏まえながら、戦後新たにいわゆる平和主義あるいは主権在民の理念に基づいた憲法教育基本法が定められ、大きな犠牲日本国民は払いましたけれども、平和と民主主義、そうしたものを大事にしていく、新しい日本近代国家としての体制がまた整って、そして今日まで繁栄をしてきたと私は承知をいたしているわけでございます。  いずれにいたしましても、これからの教育改革に当たりましては、これまでの教育のすぐれた点を継承するとともに、反省すべき点は反省しながらこれに取り組む、こういうことが肝要であろうと考えております。
  5. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 まさに大臣の今のお答えの中にも触れられました平和主義の問題、主権在民の問題、そうした平和と民主主義を守るところに戦前戦中教育反省がある。その点については私と一致をするものであります。  しかし、戦前と戦後の教育行政の決定的な違いは、権力支配の問題であると私は思っています。戦前は、教育国家権力が直接支配してきたところに戦争という悲劇を起こし、そして誤った軍国主義教育の中に児童あるいは生徒、学生等を引きずり込んで悲惨な状態に落とじ込んだことは、だれもが深く反省をしてみなければいけない問題だと私は思います。だからこそ、その反省に立って「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」いわゆる教育基本法第十条、御承知のとおり教育行政でありますが、この教育基本法第十条が位置づけられたと思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  6. 森喜朗

    森国務大臣 戦後私どもが会得したといいましょうか、そういう教育、新しい教育は、まさに先ほども申し上げましたように、平和そして自由、民主主義、そうした基本的な哲学というものを大事にしていこう、そういう中から、先ほど反省点の中で申し上げましたように、そういう戦時体制下でその目的のために教育展開をされるというようなことの反省の中から、私どもはそういう大きな反省犠牲の中から憲法を定め、その憲法を具体的に教育の中で展開していくというそのあらわれとして教育基本法を定めたわけでございますので、いわゆる権力主義における教育展開という点は先生の個人的なお考えでございますが、それ以外につきましては、先生のお考えと私はまさに軌を同じゅういたしているものでございます。
  7. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういたしますと、その根本は日本国憲法である、現在の平和憲法である。大臣、いかがですか。
  8. 森喜朗

    森国務大臣 憲法教育基本法を大事にして、今お願いを申し上げております臨時教育審議会におきまして教育改革を進めていきたいというのが政府の基本的な考え方でございます。
  9. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 基本的な考え方を述べていただきましたが、実は問題はこれからなのであります。  いわば平和と民主主義がそのすべてである、私もそう思います。これは憲法の前文に明確に規定をされているとおりであります。教育が不当な支配に服してきた戦前戦中経過をたどってみても明らかなように、その帰着するところは平和ではなくて戦争であったし、民主主義でなくて軍国主義であったわけであります。戦争は、日本民族にとりましてもあるいは世界の人類にとりましても、最大の許すことのできない暴力的行為であります。だから、軍国主義とはそこに持っていくための思想であった、こう私は受けとめているわけであります。なるがゆえに、単に教育だけの問題ではなくて、今や反核・平和の運動の高まりは全世界にまで広がっているというゆえんはそこにあるのであろう、こう私は理解をしておるところであります。  日本現代史におきまして、教育改革という名のもとに内閣総理大臣直属教育会議及び審議会がどのような役割を演じてきたのかは、その歴史をひもとけば余りにも明らかであります。  一九一七年、大正六年、一九二一年、大正十年、一九二四年、大正十三年、同じく三七年、昭和十二年二回、そして戦後一九四六年、昭和二十一年に、それぞれ内閣直属審議会もしくは教育会議等が持たれたのであります。しかし、昭和二十一年の教育刷新審議会を除きましては、いずれも当時の支配層教育に対する強い危機意識の中で立案された教育改革の構図であったことは間違いないでありましょう。そのことは軍国主義教育国家主義教育への方向づけに極めて重大な影響力を行使しましたし、結局は、御承知のとおり、後になって強い無慈悲な国家権力によって、より激しい形でそれらが実現をされてきたという歴史を思い起こしてみなければならない、私はこう思っておるところであります。だから私は、なぜ今、総理直属機関臨時教育審議会が必要なのかという疑問はそこからも実は生まれてくるわけであります。  さてそこで、先ほど文部大臣答弁されたようなこととは全く逆な方向で、終戦直後、昭和革新を唱えて政治活動を始めて以来、中曽根首相の一貫した政治的主張憲法改正でありました。教育を語るときに絶えず「民族」という言葉を使い、そしてそれは憲法の問題と密接に関連をさせてきているのであります。  例えば例を挙げましょうか。昭和二十二年三月一日に著書「青年の理想」、この中にも明確に記されております。あるいはまた昭和二十二年四月には、みずから塾長を務める青雲塾設立の「宣言」の中にもこれが盛られているわけであります。「昭和革新の人柱となることを誓おう」。私は戦争経験者でありますから、この表現を聞いただけで身の毛がよだつ思いがするわけであります。そして総理は、次第に権力の中枢に近づくにつれまして、教育改革は改憲への布石と位置づけているように見える言動がたくさん公表されています。  いま少し事例を挙げましょう。例えば昭和五十三年十月二十六日には、自民党総裁選の初出馬の出陣の前夜祭における演説発言がそれであります、時間がありませんから内容については申し上げませんが。さらに五十三年十一月五日には、自民党総裁選、高崎市の記者会見においても同様なことを述べられているわけであります。そして五十六年七月二十七日における国策研究会会員懇談会でも、より強い口調で述べられているわけであります。そしてまた、連合審査で我が党の佐藤誼議員も指摘いたしましたとおり、昭和五十七年五月四日に、生長の家相愛会男子全国大会でのお話にも、それがどぎつい表現で述べられているわけであります。  こういう総理の一貫した思想の上に立って、そして教育基本法が指し示すところの、いわゆる第十条、いかなる権力にも服してはならない、まさに私はそういうふうに受け取れないのであります。  このような総理の一連の言動に対して、もちろん総理出席しておれば総理の口から直接聞きたいところでありますが、おいでになっておりませんので、代弁をせよというのは無理でありますけれども、このような総理言動に対しまして大臣はどういう御所見をお持ちでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  10. 森喜朗

    森国務大臣 佐藤さん、幾つかの総理発言等も取り上げながらかなりいろいろな角度のお尋ねでございましたので、すべてお答えを申し上げておりますと時間をとりましてかえって御迷惑になると思いますが、一つの中には、上から権力的に教育改革を進めるようなことがあってはならない、そういうお話もございました。  今度の教育改革は、私ども政府あるいは自由民主党のみならず、社会党さんを初めといたしまして公明党さんも、そして民社党さんも共産党さんも、すべての政党が、教育改革をやらなければならぬ、今の教育について見直しをしなければならぬというのは、どの政党も政策として掲げていらっしゃいますし、またいろいろな世論調査新聞テレビ等の報道によりましても、そうした傾向が強く出ております。国民全体が命の教育に対して大きな関心を持っている、そしてまた、緊急的にぜひ改革をしてもらいたいという国民的な要請も極めて強い、今そういう時期にあるということも佐藤さん御承知だろうと思いますが、そういう大きな国民の声に期待をいたして、そしてこの国会で各党の皆さんに御論議いただいたことを大事にしながら、総理自分自分考えを独断的に進めるということではないということを、まずぜひ御認識と御理解をいただきたいと思います。  財政改革行政改革、そして教育改革三つを同じような形で先生もお取り上げになっておられますが、これも私はこの委員会でたびたび申し上げてまいりました。行政改革財政改革も、これから新しい日本が躍動的に前進、発展をしていかなければならぬ、そのためへの国の体制を一遍立て直すということでございましょう。教育改革は、まさに二十一世紀に向けて日本が躍動的に発展をしていく、その二十一世紀を担う青少年のためへの教育制度をぜひ国民的な課題として考えていきたい、こういうことでございます。そのために幅広く多くの皆さんの御論議をいただいて、しかも、なおかつ憲法教育基本法のこの精神を大事にして進めていきたい、こうたびたび申し上げておるわけでございます。  総理がいろいろと御発言なさっておられますことをお取り上げいただきましたが、時間は少のうございましたけれども総理がこの内閣委員会出席をいたしまして、そして御自分の口からも、政治家として自分政治過程の中ではいろいろ申し上げてまいりましたが、総理大臣という立場では今そうした事柄を政治的なプロセスの中に入れているものではない、こういうふうに明快にここでもお答えになっておられるわけでございます。  教育改革幾つかの視点からとらえていかなければなりませんけれども、やはり一番大きな側面、視点国際化ということだろうと思うのです。そういう中で我が国が今後とも世界の平和と発展に貢献をしていくためには、憲法平和主義のもとに諸外国との協力、協調が必要であろうというふうに思います。そのためには、まず、これから二十一世紀を担う青少年は、自国の文化と伝統について深く理解をする、そして立派な人生観宗教観を持つ、日本人としての自覚を持つとともに、他国文化を尊重し、主体的に行動し、他国人たちとの交流を深めていく、日本人としての尊敬そして理解というものを集めていく、そういう国際人としての将来のことを十分に踏まえていただきたい、総理の御発言はこのような趣旨に基づくものであろうというふうに私は理解をいたしておるわけでございます。  私といたしましても、二十一世紀我が国を担うにふさわしい青少年を育成したい、このような考え方から、先ほど申し上げましたように、憲法教育基本法精神を大事にいたしながら教育改革に取り組んでいきたい、こういう考えでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  11. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 総理言動について言及をいたしましたが、もちろん総理の直接的なお答えでありませんから、大臣としての感想めいた心境お話しになったのだと理解をしています。しかし、今文部大臣お答えの中にもありましたとおり、二十一世紀を展望するための教育改革、この種の非常に大事な問題を内閣委員会で審議する際に、しかも直属機関であるということを位置づける審議会であるだけに、私は総理がみずからじきじきにこの委員会出席をして質問に対しては答える、心境を披瀝していただきたかったと実は思うわけであります。出席されないことを非常に残念に思いますが、どうぞひとつ文部大臣の方からもその点を総理十分お伝えをいただきたい、こう要望しておきたいと思います。  さて、私は冒頭申し上げましたとおり、あるいは今大臣から御指摘がありましたとおり、すべての政党教育改革の問題を取り上げていることは私も承知しております。しかし、教育改革必要性は認めますけれども幾つか指摘しましたように、直属機関であるという臨教審に対する疑問は私はどうしてもぬぐい去ることができないわけであります。果たしてそういう経過の上に立ちまして国民合意のものができ上がるのかどうか、この点についても非常に心配をしているところであります。  過般、文教委員会で私は文部大臣とやりとりをいたしましたから御記憶があると思いますけれども、ある新聞社調査をしたその中身を見ますと、幾つかの項目に分かれておりますが、しかし、少なくとも中教審やどこからも問題が指摘されないような自由な立場教育問題を議論する審議会が欲しい、これが世論調査の中で圧倒的に高い比率を実は示しているわけであります。ですから私は、果たして今日、総理文部大臣が強調しておられますところの国民合意というものがなされているのかどうか、この点についても非常に危惧をしているところであります。  同時に、ことしの年頭に中曽根総理は、教育改革中教審にゆだねると何度も言明をしていらっしゃいます。それが突然、総理直属臨教審設置となりました。特にことし一月四日の伊勢神宮参拝後における新年初の記者会見でこれを言明をされているわけであります。あるいはまた昨年の九月二十日における衆議院予算委員会で、総理は次のように質問に対して答弁をしています。すなわち、今まで文部省自体も検討しておったけれども、へっぴり腰でやっておった、しかし今やそういう段階ではなくなってきたと答弁しているのであります。まさに文部省の頼りなさ、力のなさ等の直接的批判が、その批判内容総理をして前面に出さしてきたのではないかと私は読み取ったわけであります。そして、その批判をしながら、中教審で行うと言いながら、突然総理直属臨教審へと進み出してきたのであります。  まさに私は、文部省からいえば耐えられない総理答弁であったのではないかと推察をしているわけでありますが、大臣、一体どう受けとめられておりますか。
  12. 森喜朗

    森国務大臣 これもたびたび文教委員会やこの内閣委員会でも申し上げてまいりましたように、教育は単に教育制度だけでこれを改革ができるものではない。教育に関連する行政各部にすべて関係を及ぼしてまいります。一部の事項だけを改善いたしましても、教育全体がやはり諸制度としてこれに協力をしていくという体制がなければ着実な成果を上げ得るものではない、こういう考え方から、政府全体が長期的な形でこれをぜひ検討し、政府全体の責任で進めていこう、従来の中教審視点角度を変えて、そして日本教育全体を見直していこうということから臨時教育審議会を、そして総理府にこの審議会を置くというふうに定めたものでございまして、文部省に対する先生の御心配の点、そうしたことは全くございません。私と総理、そしてまた文部省当局とも十分このことについて協議をして、ぜひ国全体の、それこそまさに政府全体でこのことを取り上げることによって、国民全体のすそ野の広い、国民の多くの議論をぜひまとめていきたい、こういうことから臨時教育審議会設置をお願いいたしているものでございます。
  13. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 時間が余りありませんで、この問題について深く言及することができないことを残念に思います。  さて、先ほどの私の質問に対してのお答えの中で、平和主義主権在民、平和と民主主義の問題をお答えになりました。まさに私は戦中戦前教育反省してみたときに、戦後における教育の極めて重要な柱であると思うわけでありますが、戦後教育におけるよさ、あるいは反面、非常に嘆かわしい問題等が出ているわけでありますが、その特徴についてどのように把握されておるのか、お答えをいただきたいと存じます。
  14. 森喜朗

    森国務大臣 戦後教育は六・三制を中心にし、普及発展をしてまいりました。この制度教育の機会均等を実現いたしましたし、また国民教育水準を向上させ、国民の人間形成や人材の育成の面で大きな成果を上げ得た、それが今日の我が国の国際社会におきます信頼、日本発展に対して大きな成果をつくり上げてきたものだ、こういうふうに私は理解をいたしております。  国民教育に対します熱意や人格の完成を目指す教育の理念、教育の機会均等、そして今日の高い教育水準などは、すぐれた面として今後とも維持発展を図っていかなければならぬというふうに思います。しかしながら、これもたびたび申し上げておりますように、近年の社会の急激な変化あるいは教育の量的な拡大等が教育のあり方に対しましても大きな影響を与えているわけでありまして、例えば教育が児童生徒の能力、適性等の多様化の実態に十分対応をしていないのではないか、画一的になっているのではないか。あるいは児童生徒の問題行動、偏差値指導を生み出すような過熱した受験体制に関連した学歴偏重の社会的風潮、こうしたことを問題とする指摘が大変多いわけでございまして、これらは改善あるいは是正をしていかなければならぬ事柄であろうというふうに考えております。残すべきものは残し、改めるべきものは改めていきたい、私はこのように申し上げておったわけでございますが、まさに長期的展望に立った教育改革にぜひ取り組んでいきたい、このように考えておる所存でございますので、今後とも先生のいろいろな御専門の中から、また御体験の中から得たものをぜひ私どもに対してお示しをいただき、御指導も賜りたい、このようにお願いを申し上げておく次第でございます。
  15. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 時間もないことでありますから、この種の問題につきましては、さらに偏差値教育の問題、あるいは高校入試の問題、共通一次の問題等たくさん解決をしなければならない問題があるわけであります。残余の分につきまして、私も文教委員会でこの問題を取り上げて、大臣考えをただしたい、こう思っているところであります。  さて、最後にならざるを得ませんが、教育基本法第十条の第一項の問題につきましては、先ほど私が申し上げたとおりであります。そしてその第二項には、教育条件の整備の問題が実は載っているわけであります。つまり「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」と明記をされています。しかし、その運営や執行の問題についてはたくさんな疑義を持つわけであります。私がとりわけこの問題を中心にして最後にお尋ねしたい点は次のことであります。  きょうの新聞にも掲載されておりますとおり、行革審小委員会の報告の内容であります。四十人学級の凍結の問題、あるいは今日子供の健康を非常に大事にしなければならないと言われている給食の問題等についても、行革審小委員会が深く立ち入って介入をしてきているわけであります。これはまさに教育の問題だけではなくて、あの全体を見ますと、私は地方自治に対する著しい侵害であると厳しく批判をしなければなりません。強いて言えば、この行革審の本来の目的から外れて、あたかも国会政府の上に行革審が存在するような錯覚を起こしているとすれば、私は今後における日本の進路に大きな誤りを来すのではないかとさえ思っておりますし、あるいはまた憲法違反の疑いさえあるのではないかと指摘せざるを得ないわけであります。とりわけ教育の問題に対して、四十人学級の凍結、給食の民間委託の問題、たびたび文部大臣はその重要性と必要性について文教委員会等において強調されてまいりましたが、とりわけ行革審小委員会報告に対するお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  16. 森喜朗

    森国務大臣 臨時行政改革推進審議会の地方行革推進小委員会におきまして、昨日、「地方公共団体における行政改革の推進方策」という報告が審議会に対しまして行われましたことは私も承知をいたしております。  同小委員会の報告におきまして、教職員定数の改善計画等について具体的な指摘はなされておりますけれども、この報告につきましては、小委員会から審議会提出をしたという過程でございます。これから審議会として検討が行われるわけでございますので、審議会として最終的な結論が出されるものであるというふうに承知をいたしておりますので、現段階といたしましては、個別の具体的な内容につきまして文部省といたしましては意見を述べることは差し控えたい、こういうふうに考えております。
  17. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 その程度の答弁で私は納得するわけではありませんが、時間が参りましたのでこれで終わりにいたします。  最後に私が申し上げておきたいのは、教育権力者のものでない、教育国民のものである、これをしっかり踏まえていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  18. 片岡清一

    片岡委員長 市川雄一君。
  19. 市川雄一

    ○市川委員 私は、今まで総理質問、また先日は文部大臣質問をいたしました。その中で、総理との質疑では、主に総理総理になられる前にいろいろ発言をされていた、そういう中でこの教育改革に当たっての総理教育観というものをただしました。まあ、この委員会の中でいろいろな方からも指摘されておりましたが、いわゆる教育改革が、何か戦前回帰的な方向に行われる不安が強く指摘されているわけですが、そういうことは断じであってはならない。総理も、それはそのとおりである、そういうことを考えておりませんということをお答えになっておりました。また、今教育改革のあり方としては、高中小の教育がテスト中心に行われている、偏差値教育、教師が持っている一定の知識を生徒に記憶させる、そして記憶したかどうかをテストで確かめてみる、そのテストの点がよかった生徒が評価される。そういう、言ってみれば大学入試の予備校化した高中小の教育のあり方に抜本的なメスを入れていかなければならないということを申し上げました。高中小の教育のあり方としては、もちろん一定の知識を記憶するということも非常に重要なことではありますが、同時に、生徒みずからが自覚して、みずからの力で学んでいく力をむしろ教師は引き出したい、そしてそれを育ててあげる。同時にまた、思いやりがあるとかスポーツが好きだとか、そういう人間的な資質も十分に評価してあげる、そういう高中小の教育のあり方というものを私は強く申し上げました。その前提として、高中小の教育をそういう方向に改革していくためには、今の大学入試というものがやはり一つの大きなネックになっているわけであります。  大学入試制度、もちろん共通一次試験という当面の問題はありますが、これは改善した方がいいに決まっているわけです。しかし、入試制度の改善はもう限界がある。入試制度にベストはない。新しく改善が仮にされたとしても、そのもとでやはり同じように受験地獄という問題が繰り返し発生してくるに違いない。そう考えていきますと、教育改革制度改革はやはり上からやらなければだめだ。だから大学のあり方を改革すべきである。むしろ、大学には教育がなくて卒業資格を与えるというところに大学がなってしまっているところに問題がある。そうではなくて、大学こそ最終の教育の場である。そういう意味では、大学が大学に戻らない限りこの高中小の改革はできないのではないのかということも指摘を申し上げました。そういう意味で私は、教育改革に当たっては、大学のあり方をどう変えていくかということが非常に重要な改革のポイントであるということも申し上げました。また同時に、制度のあり方の改革と同時に、もちろん、教育というのは学校教育のみではありませんけれども、社会あるいは家庭という問題もありますが、しかし、今まさに問われているのは学校での教育一つは問われているわけでございます。  そういう観点から考えますと、学生、生徒にとって最大教育環境とは何か、それは結局はいい教師にめぐり会うかどうかということに尽きてしまう。そういう意味において、教師のあり方、また同時に教師の育成のあり方、学校の先生は社会経験がないあるいは学校の先生自身もテストによって採用されてくるという、そういう経緯の改革、こういうことも私はこの委員会で申し上げてまいりました。どうか、今後こうした点を文部省あるいは文部大臣の方で十分に踏まえていただいて教育改革の議論をやっていただきたいと思うわけであります。  そこで、きょうは確認の意味で三点お伺いしたいと思います。  第一点は、もう既に議論はされておりますけれども、きょうは締めくくりの質疑でございますので、あえてお伺いをいたします。審議会のあり方として、審議を公開せよという声がございます。理想論として、傍聴人も自由あるいは報道関係も自由というのは理解できるわけです。しかし、これはちょっと日本的な風土にはなじまないのではないのかという点もございます。したがって、私たちは一貫して、臨教審での審議の概要を一定の区切りで、適切な区切りで公表したらどうかということを申し上げてまいりました。公表することによって、国民の間に賛成、反対のいろいろな議論が起きてくると思います。その賛成、反対のいろいろな議論を、また審議会が審議経過の中で吸収していくということが重要だと思うのです。いきなり結論がぼんと出て、さあこの結論に賛成か反対かというやり方は余り民主的ではないのではないか。国民的な幅広いコンセンサスを形成する意味においても、審議会が答申を出される前に、審議の途中において一定の議論の区切りで、どういうテーマについてどんな議論をしているのかという概要を公表されたらどうかということを言ってまいりましたが、この点について御意思があるのかないのか、もう一度ここで明確に御答弁をいただきたいと思います。
  20. 森喜朗

    森国務大臣 時間がございませんので、市川さんからの冒頭の前提になります御議論、御意見として大変傾聴に値する御意見でございまして、私、十二分に参考にさせていただきたいと思います。  今お尋ねをいただきました、一定区間を区切って公表してはどうかということでございますが、審議会の具体的な運営方法等につきましては、再三申し上げておりますように、審議会自身でお決めいただくということが基本でございます。しかし、教育改革を進めるに当たりましては、市川さん御指摘のように、広く国民理解協力を得るということが極めて重要であると考えております。そういうことを一つのポイントといたしまして、審議状況につきましては、その進捗に応じまして審議の経過の概要は逐次公表されることが正しいと私は考えております。一つの区切りというふうにしていいのかどうか、これはまた会の運営でございますが、テーマが、ある程度の御意見が出てきます、そのことにつきまして、やはりできるだけ国民の前に明らかにして、また国民の御論議をちょうだいするということは、審議の過程において極めて重要なことだと考えております。
  21. 市川雄一

    ○市川委員 質問の第二点は、臨教審委員の構成についてでございます。  たびたび出ておりますが、今まで中教審では、ややもすると現場の意見が、無視されたとは思いませんが、委員の構成という形では余り生かされてなかったのではないかと思うわけであります。現場で起きていることはやはり現場の人が一番生々しさを肌で感じてわかっておるわけですから、そういう意味におきまして、しかもこの教育改革の一番の主眼点が、一つは高中小の教育問題から起きてきているということを考えますと、授業経験を持った現場の教師の意見が臨教審の審議の中に十分に反映されていいのではないかというふうに思うわけです。この点について、その点を十分配慮していただきたいということがまず第一点であります。  それからもう一点は、同じ角度ではございますが、学校の教師のみならず父母の意見というか、実際に子育ての経験のある方あるいは今現実に子供を育てている方、そういう子供の教育あるいは子育てと、今現実に日常生活の中で格闘している方、こういう父母、なおかつ一定のそれなりの教育に対する見識を持っている方、こういう方をぜひ入れていただきたい。学識経験者だけではなくて、こういう方々の生々しい意見が教育改革に当たって非常に貴重な意見ではないかというふうに私は考えるわけでございます。この点についての文部大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  22. 森喜朗

    森国務大臣 具体的な委員の人選につきましては、これも国会で論議をいただきましたことを十分に踏まえまして慎重に検討いたしてまいりたいと考えます。  市川さんの御指摘もございましたように、教育改革我が国の将来をまさに左右する、そういう重要な課題でございますので、広く国民各界各層の意見が反映されますように配慮をいたしたい、こう考えております。  御指摘いただきましたように、その場合に、学校教育に携わっている教師あるいはまたその経験者や実際に子供の成長に直接かかわっております父母、そうした意見を十分に反映させることも必要であろうというふうに考えますので、人選に当たりましてもこの点を十分考えてまいりたい、こう思います。
  23. 市川雄一

    ○市川委員 同じくもう一点。  これも臨教審委員の構成についてでございますが、幅広い各分野の代表、こういう視点一つあると思います。それからもう一つは、男性だけではなくて女性の意見もぜひ反映させた方がいいと思う。そういう意味で男女のバランスというか、臨教審委員に占める男女のそれなりのバランスというものも十分に考慮をされてしかるべきだというふうに思います。それからもう一点は、人生経験の豊かな方の御意見も非常に貴重でございますが、また同時に、二十一世紀を目指す教育改革でございますから、若い方の意見も非常に重要だと私は思います。先日、大阪で行われましたこの臨教審の公聴会におきましても、若い方、大学の助教授クラスの方の意見というのは、それなりにまた一味違った熱気、情熱的な御意見でもあったわけですから、そういう各分野の代表、それから男女の代表それから世代の配分というか、そういう点も十分に御考慮いただいた人選が望ましいのではないかというふうに考えておりますが、文部大臣の御見解を承りたいと思います。
  24. 森喜朗

    森国務大臣 委員の人選につきましても、先ほども触れましたように、国会におきます議論を十分踏まえてまいりたい。そして、国民の各界各層の意見が反映されるように配慮をいたしたい、正直このように考えているわけでございます。  この内閣委員会が御審議をいただきました際にも、鈴切先生にも私は分野の幾つかを申し上げました。その分野は私の一つ考え方として申し上げただけでございましたが、その後いろいろなところからまたいろいろな御意見をちょうだいいたしまして、先般の連合審査会の際にも江田さんの御質問に対して私から若干その点も追加をさせていただきました。時間がございませんので、すべて申し上げることはかえって御迷惑でございましょうが、そうしたことなどを一つの基準として考えたい。  なお、一番大事なところは、市川さんの御指摘がありましたように、豊かな人生経験に基づく貴重な御意見をいただくことも大切でございますけれども、若い世代の登用にも十分意を用いて、世代間のバランスを十分に配慮いたしたい、こう考えております。  それからもう一つの点でございましたが、女性の意見を反映させるということも大切でございまして、女性の登用にも十分意を用いたい、このように考えております。
  25. 市川雄一

    ○市川委員 以上で質問を終わります。(拍手)
  26. 片岡清一

  27. 滝沢幸助

    滝沢委員 この臨教審の議案が提案されまして委員会が審議に入られまして、五月十五日以来無慮二カ月にわたりまして精励審議されました内閣委員会委員長以下の各位の御努力に敬意を表し、最後の審議のこのチャンスに質疑の時間を与えていただきまして、まことにありがとうございます。御配慮に御礼を申し上げます。  さて、文部大臣、私はあなたに先般質問申し上げますときに、我が国の初代文部大臣森有禮の例を引きましてあなたに激励を申し上げたことがありますが、今教育が非常に大きな変化を求められておりまするときに、若い有能なあなたを文部大臣に得たことに私は力強いものを感じますが、どうぞひとつ自信と勇気を持って頑張っていただきたい、このようにまず申し上げさせていただきます。  ところで、政治家でありますからいろいろな議会の答弁やその他ありましょうけれども、簡単に先付手形を出さぬようにされた方がよろしいのではないか、こんなことも思うわけであります。  私は、まずお伺いしたいのは、答申を受けなさる心構えといいますか、ないしは答申を受けた後の措置はいかにあるべきかということでございます。これは少し批判になりますけれども、歴代内閣は、このような各種の審議会を御自分の政策決定の隠れみのになさる場合がないでもない。先ほどの第二臨調なんかの例を見ましても、御都合のいいところはこれは臨調がおっしゃったということで持ってくる、けれども御都合が悪いところはなかなか実行なさらぬということがあるわけであります。  そこで、設計者に家の設計を委託はするけれども、発注者は、施工者は違うのでありますから、政府責任において実行されるわけでありますから、ここで答申を受けなさったならば、今回修正案の作業が進んでいる模様でありますが、もしもこれが通るならば、また通るでありましょう、そうなれば国会に報告をいただくことになりますけれども、報告はそのとおりちょうだいしますが、しかし政府が、総理大臣が、文部大臣が、これは答申をいただきましたけれども政府考えとは違う、これはごもっともな答申でございますがなかなか今おいそれとはできません、時間がかかります、これは今直ちに実行しましょうというような、一つの答申を受けた立場における考え方、これを国会国民の前に明らかにされるべきではないのかな、このように思うわけでございます。  またもう一つは、実行されるに当たりましての日程表のようなものもきちんとされるべきではないのか、このように思うわけでございますが、このことについてのお考えはいかがでございますか。
  28. 森喜朗

    森国務大臣 私よりもはるかに、はるかにと言うと御無礼でございますが、人生観も立派にお持ちの滝沢先生から御激励をいただきまして大変恐縮に存じておりますが、一生懸命やらせていただきたい、こう思っているところでございます。  対応あるいは実行のプログラム、そういうことについていかがかということでございますが、やはり臨時教育審議会で今後のプロセス等について、審議会自身で幾つかの方策を御検討いただくということが大事かと考えます。しかし、政府といたしましては、御答申をいただきましたものは着実に推進をしていく、これは義務も責任もあるものでございます。ただ、政策として進めてまいります場合には当然国民のまた御賛同をちょうだいしなければなりませんので、その一つ過程といたしましては国会で御論議をいただくということも、十分このことは大事なポイントであろうというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、三年間という今法律でお願いをいたしておりますこの期間の中で、本当に自由闊達に、そして長期的な展望に立って御論議をいただきますので、これから具体的に進めていくことについては、長期的なものもございましょうし、また短期的に改善を文部省独自で進めていけるというものもあろうかというふうに思いますが、いずれにいたしましても、審議会がお決めをいただくものが出てからでなければ判断ができませんけれども、大事に尊重をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。  まあ、私は別に力もそんな、先生からお褒めをいただくような識見もございませんけれども、幸い年齢的に非常に若うございますので、これからまた自民党政治家の一人として、こうした審議会の結果を政府がどのように進めていくか、願わくは自由民主党がこれからも国民の信頼を得て政策を担当していける政党になっていくということはもちろん大事でございますが、また各党の皆さんの御協力をいただきながら、そのことをずっと見届けていける、そうした私は年齢を持つ可能性を持っておるというふうに考えておりますので、先生から御指摘をいただきましたようなことなども十分注意をしながらじっと見守って、そして着実に成果が上がるように政党としても責任を持っていきたい、このように考えておるわけでございます。
  29. 滝沢幸助

    滝沢委員 何かうまく、あんたおじいちゃんだと言われたみたいな感じもしますけれども、まあ三年後に自民党がなおかつ政権を持っていらっしゃるかどうかもなかなかこれ難しいところでありまして、頑張っていただきたい。  ところで、三年間のお話がありましたが、三年後に答申は一本で一回受けるのですか、それともこちらから注文しまして、こういうことを早く言ってくれやというようなことになるのか、そこら辺はどうですか。  時間の都合で二つ三つをセットにして伺わせていただきます。  そこで、その答申の回数のようなことも含めお伺いしたいことは、教育における政治的中立の確保、このことは議論されて久しいわけであり、今ほどもいろいろとお話がありましたけれども、何が不当な支配なのか、何が正当な支配なのかも、これ権力はどちらが正当でどちらが不当かもなかなかわからぬ。けれども……(「正当な支配なんて概念があるか」と呼ぶ者あり)ところで、政治的な中立性を教育の現場に保持する、このことについてのいわばいかにあるべきかという諮問をなさるかどうか、あるいはまた、諮問するしないにかかわらず、あなたのお考えはどうか、お伺いしたい。
  30. 森喜朗

    森国務大臣 基本的には、諮問をいたします事柄につきましては、まず包括的、基本的なことになるであろう、こういうように考えます。そして、これは私のあくまでも私見でございますが、審議会といたしましては、その基本的な事柄、包括的な事柄をまず少し幅広く御議論をいただく、その中で幾つか項目が出てくるのではないか、そしてその項目ごとにおやりになるということの道行きになるのではないかというように私は個人的に考えるわけでありますが、たびたび恐縮でございますが、審議会自身でお決めをいただく大事なところであろうというように考えます。したがいまして、答申の仕方、そしてそれをどのような形で政府に報告をしていくか、こうしたことなども含めて審議会で十分御議論をいただきたい、このように期待をいたしておるわけでございます。
  31. 滝沢幸助

    滝沢委員 不当な権力支配があるならば正当な権力というのもあるでしょう。(「支配なんてあるわけないじゃないか」と呼ぶ者あり)あってもなくてもそれは勝手な話。  ところで、学制改革について諮問をなさるお考えがあるか。これは基本法との関係において議論されるところでありますが、私は積極的に広義に解釈をして、学制改革についても大胆なる議論を求めて、これを実行されんことを期待するわけであります。  そして、もう一つセットにさせていただきますけれども、教科書の検定制度については、これも非常に難しいことでありますが、しかしこれを絶対神聖不可侵のものと思うことは間違いで、人間がつくった制度でありますから、常にこれが議論されてよき方向を示すべきでありますから、これも審議に加えてちょうだいしたいと思うのでありますが、この二点についていかがでありますか。  あと二、三点ございます。
  32. 森喜朗

    森国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、どのような項目について御論議をいただくかということにつきまして、私からここで申し上げるということは越権でございます。したがいまして、こうした事柄などもある意味では御論議があろうかとも思います。今日までの日本教育の諸制度につきまして十分に御議論をいただきたい、このように願っておるわけでございまして、どのようなことがどのように、そしてどのように改革をされるかというようなことについては、私はここで言及を申し上げることはかえって御無礼であろうというふうに考えております。  ただ、たびたび申し上げてまいりましたように、学制制度全体につきまして本当に多様な、そしてこれからの国際社会に対しまして十分に多様な人間の価値観がそこで生まれ出てくるように、そうしたことなども考えて幅広く御論議をしていただきたいなというふうに私は期待をいたしておるところであります。
  33. 滝沢幸助

    滝沢委員 今、日本教育の中で不足をしているもの、たくさんございます。しかし、一つ言われておりますのは、教育についての目標が具体性を欠いている、こういうことも言われているわけであります。  かつて教育勅語が十五の徳目を羅列をしたと言われております。そのことの批判は今申し上げる考えはございませんけれども、まあソビエトその他よその国々でも、極めて具体的な青少年のないしは生徒の生活の規範のようなものを書いているわけです。ところが教育基本法等を拝見しましても、概念的、抽象的でありまして、何をこうせいということが少ない。私は会津の出身でありますが、会津藩の教育の規範、これは日新館の童子訓、いろいろと並べておりまして、最後に「ならぬことはなりませぬ」と結んでおるわけであります。これがいわば会津魂を築いた、こう言っておるわけでありまするけれども、何か教育憲章のようなもの、言いかえるならば生活の規範、こういうものをひとつ設定されるお考えはないか、このようなことをも議論をしていただいたら臨教審の成果がより上がるのではないか、こう思うのでありますが、いかがですか。
  34. 森喜朗

    森国務大臣 これも先ほどの御答弁の中に入るわけでございますが、審議会自身でいろいろな角度から御論議をいただくことでございましょうから、そうした一つの目標を定めるということはいいのか悪いのか、また定めるにいたしましてもどのようなものが必要なのか、これは審議会がお考えになることであろうというふうに思いますが、私は、この内閣委員会の御審議の中で絶えず申し上げてまいりましたことは、やはり文部大臣としての視点といたしまして、人間形成の基礎を確実に身につけてもらいたい。教育には本来、これまで先人が築き上げてまいりました規範あるいは知識を継承するという使命があるというふうに考えておりますから、人間形成に当たっては、この観点からその基礎を確実に身につけさせるということが極めて大事であろうというふうに考えます。そしてもう一つは、個性を伸長させるということ。さらに、これから複雑な社会に入っていくわけでございますので、生涯にわたる学習の機会の充実を十分に図っていく。この三点が、この教育改革に関する文部大臣としての一つ視点だというふうに私は御答弁をさしていただいたわけでございます。  たびたび申し上げておりますように、情報化の進展あるいは高齢化の進捗あるいは国際社会における責任の増大、こうしたことに対して主体的に対応していき得るようなそうした青少年にぜひ成長してもらいたい、このことは先生の述べられました事柄とまさに同じ考えであろうというふうに私は考えております。
  35. 滝沢幸助

    滝沢委員 最後に、政府はこの法案と同時に、いわゆる教員免許法というものを出していらっしゃる。ところがこの教員免許法は、巷間伝えられるところによれば、臨教審法案との絡みにおいて廃案を了承するとかしてもいいとか、書かれたり言われたりしているわけでありまするけれども、これを大臣は真剣に審議をなさる、成立を期されるのかどうか、もちろん成立を期さないで提案をするものはないわけでありますが。そこで私は先ほど、答申は三年後に一本にするのか、こう申し上げたのでありますけれども、答申をもしも五月雨的に、なし崩し的に、このことを早く審議してちょうだいということになるならば、このようなことは、それこそ、できまする臨教審において審議をいただいて、そうして後に政府考えを決定されて提案なさったらどうなのか、こういうふうな配慮から申し上げさしていただくわけであります。いかがですか。
  36. 森喜朗

    森国務大臣 ただいま国会にお願いをいたしておりますいわゆる教員免許法の改正案は、現下の急務でございます教員の資質向上のための基本的な方策として、十分検討いたしまして提出をさしていただいたものでございます。教育改革は、先生も御承知のように、長期的展望に立って幅広い論議を行うことが必要であるというように考えております。したがいまして、このことと免許法の改正を行おうということとは全く矛盾するものではございませんので、私といたしましてはぜひ一刻も早く成立をさしていただきたい、このように考えておりまして、文教委員会にもぜひそのことをお願いをいたしておるところでございます。  なお、臨時教育審議会におきまして、いわゆる教員養成の基本的な事柄についての御答申がございます、あるいは議論された場合、十分これも予想できるわけでございますが、これはその都度それに応じまして、必要があれば教員免許制度についても必要な改善を、文部省としてはこれを受けて進めていくということも重要であろうというように考えております。
  37. 滝沢幸助

    滝沢委員 ありがとうございました。発言を終わります。(拍手)
  38. 片岡清一

    片岡委員長 柴田睦夫君。
  39. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 教育基本法の改正問題はこれまでも再々論議されてきましたが、この問題は極めて重要であります。  そこで、これまでの論議を振り返りながら改めてお聞きしますが、法案の第一条の「教育基本法精神にのつとり、」云々という条文につきまして、文部大臣は六月二十八日の審議の中で、「第一条のところにこのことを明記いたしておるわけでございますから、当然この法律全体についてこの精神が及んでいくものだというふうに私は理解をいたしております。」と答弁しておられます。ところがほかの答弁では、審議会の審議は教育基本法の枠をはめずに自由濶達にやってもらう、こういうことも言っておられるわけです。  そこで、審議会の審議には教育基本法精神は及ばないのか、このことをお伺いします。
  40. 森喜朗

    森国務大臣 政府といたしましては、臨時教育審議会が十分に御論議をいただきますことを、基本法の精神を大事にし、基本法の精神にのっとって御論議をいただきたいということを期待をいたしておるものでございます。
  41. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 期待だけであって法律的な拘束はない。この点はまだあるわけです。  委員の任命について、教育基本法を変えない、こう言いながら、教育基本法の改正論者であっても委員に任命していくということも明らかにされているわけです。この委員の任命には一条の教育基本法精神は及ばないと言われる理由が何であるか、お伺いします。
  42. 森喜朗

    森国務大臣 たびたび申し上げておりますが、教育改革はぜひ教育基本法精神を大事にして進めていきたい、政府教育基本法精神にのっとって改革をしたい。それから、今答弁をいたしましたように、審議会の皆様方にもこのことを十分大切にしていただきたい、こう期待をいたしておるものでございます。  今柴田さんが御指摘でございますが、仮に個人的にそうした教育基本法を変えたいという考え方を持っている人を選ぶのはおかしいではないかということでございますが、やはりそれぞれ人間の考え方思想、これはまさに日本は自由な国でございまして、そのことが資格要件として、あるいはまた排除条件という形になるものではない、私はこのように理解をしております。
  43. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 問題は、教育基本法を変えないという前提での審議ということであるわけですから、法律的な規制がなくてはならないというように考えているわけです。政府教育基本法は変えないと言っておりまして、法案についても、一条の「教育基本法精神にのつとり、」という条文が、法案全体にその精神が及んでいる、これが最初に言いました文部大臣見解です。ところが、肝心の具体的適用になりますと、いろいろな理屈をつけて、この法律を便宜的な解釈をしているとしか言いようがありませんし、この全体に及ぶという法案を骨抜きにしようとしていると言わなければならないと思うのです。ですから、答申でさえ教育基本法を変えるという内容のものが出ないという保証は何一つないわけです。殊に、中曽根内閣の解釈が教育基本法の解釈であるという総理答弁がありますが、こうなりますと、ますます危険であります。  そこで、法案自体に何か歯どめをかけるものがあるかどうか、お伺いします。
  44. 森喜朗

    森国務大臣 教育改革を進めるに当たりまして、憲法教育基本法を大事にしていきたい。そして、総理も私もたびたび国会で、教育基本法を変える意思はない、こう申し上げておるわけでございまして、そのことが今先生のお尋ねの担保になるのではないか、私はこう考えます。
  45. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 結局は政治的な見解ということになりますし、法律的な規制はないということを証明されていると思うわけです。そういう意味で、都合のよいところは教育基本法精神を強調して、都合の悪いところはその精神を無視したり薄めたりと、全く私どもが主張しておりますように、衣の下からよろいが見えてくる、こういう感を深くするわけであります。法的には、教育基本法の改悪の答申が出ても政府は尊重する義務があるということになっております。設置法の目的にも反する答申が出ても、これは許容されているということですから、法案自体が矛盾した法案であって、教育基本法にとっても大変危険な法案であるということをここに強く指摘しておきたいと思います。  次に移りますが、本日の委員会に、自民、公明、民社、三党の共同修正案が提案される運びになっているわけですが、この修正案に関連して二、三、伺います。これは衆議院の法制局ということになるかと思います。  純法律論として伺いますけれども政府提出案でのこの委員は一般職国家公務員。国会同意委員になりますと特別職国家公務員になるわけです。一般職国家公務員の服務法律は国家公務員法が適用になるわけですが、本修正案による特別職国家公務員の場合の適用法律は何であるか。その法律の名前だけ言ってもらえば結構です。
  46. 松下正美

    ○松下法制局参事 お答えを申し上げます。  この臨時教育審議会委員に関しまする人事面の根拠法規は、臨時教育審議会設置法ということになるわけでございます。
  47. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、修正案には、国会の同意を得るとした上で、そのほかに委員の罷免事項、また委員の守秘義務が課せられております。これらの条文は、今まで私どもが聞いたところによりますと、立法技術の問題である、立法技術上これを付さなければならない、こういうふうに聞いておりますが、そうだとするならば、技術だけの問題であるのか。何か、こういうものを入れなければならない、そういう法律上の根拠、根拠法があるかということをお伺いします。
  48. 松下正美

    ○松下法制局参事 お答え申し上げます。  臨時教育審議会委員の罷免に関する規定あるいは守秘義務に関する規定の必要性についてのお尋ねかと存じますので、そのように理解をさせていただきまして、お答えを申し上げたいと思います。  この原案におきましては、臨時教育審議会委員は一般職の国家公務員でございますので、その免職につきましては、国家公務員法の分限でありますとか懲戒でありますとか、それに関する規定が適用になるわけでございますが、予定されております修正案におきましては、この審議会委員は特別職の国家公務員となりますので、この罷免の規定を置かないことといたしますと、任命については両議院の同意を要しながら、罷免については両議院の同意を要しないこととなるという不都合な問題、それからさらに、罷免の事由が、「心身の故障のため職務の執行ができない」とか、「職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行がある」という場合に限定をされないという問題も生じてまいりますので、この罷免の規定は必要だというふうに考えるわけでございます。  それから、守秘義務に関する規定でございますが、原案におきましても、臨時教育審議会委員は一般職の国家公務員といたしまして、国家公務員法第百条の守秘義務に関する規定が適用されることになっているのでございまして、予定されております修正案におきましては、この審議会委員が特別職の国家公務員となりまして、国家公務員法第百条の規定の適用は受けないこととなりますので、守秘義務についての原案の制度を維持いたしますために、この守秘義務の規定を設けた次第でございます。
  49. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私が聞いたのは、これらの条項を入れなければならない法律上の根拠があるかどうか。今の答弁を聞いておりますと、その政治的な必要、立法技術上の必要性について語られたわけですから、結局根拠法はないということになると思います。罷免の条文とか守秘義務の条文、これがなくても法律としては成立する、こうだと思うのです。ということは、提案者が判断して、罷免条項や守秘義務の条項は外すあるいは削除することができる、こういうことになると思いますが、そのとおりですね。
  50. 松下正美

    ○松下法制局参事 お答え申し上げます。  ただいまのお尋ねの問題につきましては、実体的な問題と申しますか、そういう問題でございますので、当衆議院法制局においてお答え申し上げるのはどうも筋が違うのじゃないかというふうに思うのでございます。
  51. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ということは、結局、こういう条項を入れなければならないという法律の規定はないわけですから、これは提案者、政治家の方の判断で、こういう者は教育審議会委員に入れるのはまずい、これはいかぬということで外すことも法律上十分に可能であるというように思うわけです。それにもかかわらずこれが入っている。この委員の罷免条文や秘密を守る義務の規定、これは極めて重大な問題だと思うのです。  事は教育の問題を論議する機関であります。委員に対して国会の同意があるとはいっても、総理の判断で罷免が提案され、しかも守秘義務を委員に課するということは、この条文は結局は任命者である総理大臣に対しても、委員の素行を監視する任務を規定していることでもあるわけです。そういうことがやれる条項というのは、まさに教育に対する政治的介入であります。  こういう問題があります。ですから、修正案に対する質疑は私はどうしても必要だと思いますし、法律技術ということで重大な条項を入れていますが、こういうものを政治的判断で削除するかどうか、こういうことがやはり修正案の問題に関しても審議されなければならないというように考えます。そして、総理自身についても、この修正内容によっての運用をどうやっていくのか、このこともやはり確かめなければならないというように考えております。このまま審議を打ち切れば、これは法案審議を尽くしたということにはならないと思うのです。  ですから、私も理事会の席で申し上げましたが、委員長、この委員会の席で申し上げますが、理事会を開いて修正案に対する質疑を行うように求めたいと思いますが、委員長の御見解を伺います。
  52. 片岡清一

    片岡委員長 先ほど理事会で決定いたしましたとおりであります。
  53. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 理事会での決定もありますが、そういう返事ですけれども、私はこの委員会において改めて質疑を強く要求して、質問を終わります。(拍手)
  54. 片岡清一

    片岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  55. 片岡清一

    片岡委員長 この際、深谷隆司君外二名から、本案に対し、自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案に係る修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。深谷隆司君。     ―――――――――――――  臨時教育審議会設置法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  56. 深谷隆司

    ○深谷委員 ただいま議題となりました自由民主党・新自由国民連合、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案に係る修正案につきまして、提案者を代表いたしまして御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので朗読は省略させていただき、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。  修正の第一は、内閣総理大臣審議会の答申等を受けたときは、これを国会に報告するものとするということであります。  教育改革は、今日、国民最大関心事であり、また、我が国の将来を左右する最重要課題でありますので、審議会の答申等を適宜国会に報告して、国会及び国民教育の問題点を明らかにし、論議を高めることにより、国民各層から教育改革のための一層幅広い協力を得ることができると考えられるからであります。  修正の第二は、内閣総理大臣審議会委員を任命しようとするときは、両議院の同意を得なければならないこととすることであります。  審議会委員は、真に国民各界各層の意見を代表することができ、また、国民の信頼と支持が得られる人格と識見を備えた方々が公正に選ばれる必要があり、そのためには、国民の代表である国会の同意にかからしめることが適当であると考えられるからであります。  修正の第三は、施行期日に関するものであります。  原案におきましては、本年「六月三十日までの間において政令で定める日から施行する。」ことといたしておりますが、既にその日が経過いたしておりますので、これを「公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」ことに改めようとするものであります。  なお、以上の修正に伴い、所要の規定の整備を行うことといたしております。  以上が本修正案の概要であります。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  57. 片岡清一

    片岡委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  58. 片岡清一

    片岡委員長 これより討論に入ります。  原案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。元信堯君。
  59. 元信堯

    元信委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、上程されております臨時教育審議会設置法案の原案並びにこれに対する修正案に対して、反対の討論を行います。  反対理由の第一は、この臨教審設置自体が教育基本法精神に背くものであることであります。  法案審議の過程においてこの点については繰り返し論議されたにもかかわらず、ついに政府からは明快な答弁は得られませんでした。すなわち、法案第一条には、教育基本法にのっとりと明記されており、かつ首相も文部大臣も、今次教育改革過程での教育基本法の改正はしないと繰り返し答弁されてきましたが、一方では、臨教審委員皆さんには教育基本法にとらわれず自由な論議をお願いするとし、さらに本法案の第三条には、政府はその答申を尊重しなければならないとの義務規定があるわけでありますから、教育基本法をめぐる政府答弁の矛盾は今日なお明らかであると言わねばなりません。  この審議の主体となる委員の選任の基準が「人格識見共に優れ」としている以外に具体的な物差しが何一つないことが反対の第二の理由であります。政府は、委員の人選も諮問案の策定もすべては法案の成立後と逃げ回り、ついに国会論議の中では何一つ具体的な考えを示しませんでした。教育改革そのものは教育基本法にのっとるとするのであれば、その審議に参加する委員も当然教育基本法を尊重する立場の人でなければならないはずでありますが、「人格識見」と何ら具体性のない抽象的な規定に終始したことは、政府が恣意的にこの人選を行い、結果として一定の政治的意図を臨教審答申に盛るうとするのではないかとの疑惑を否定することはできません。修正案によって選任が国会の同意案件となったことについては一定の前進とは評価できますけれども、本質的にはこのような人選方法は教育基本法を実質的に踏みにじるものと言わざるを得ません。  反対の理由の第三は、審議の密室性であります。  明確な基準もなく選ばれた委員たちが教育改革についてどのような議論をするかは、ひとしく国民の注目するところであります。しかし、原法案では審議の経過と結果は専ら政府にのみ報告されることとされており、国民の目からは遮られています。修正案によって総理大臣国会への報告の道が開かれましたが、国会の側からの要請の方途がなくしかもこの報告義務と引きかえに委員に守秘義務が課せられたことは大きな後退と言わざるを得ません。審議の非公開の理由として政府は、行政改革の論議の際に起こされた非買運動などを挙げられましたが、この非買運動が直接臨調の論議に根拠を持つものでないことは明らかであり、かつまた審議への不当な圧力があったとすれば、世論の力でこれを排除することこそ民主主義の根本原理であることは今さら指摘するまでもないことであります。  反対の理由の第四は、今国民の間で一刻も早い解決を求められている教育上の諸問題の大部分は、臨教審などの大がかりな改革を待つまでもなく、政府の努力次第では今すぐ解決可能な問題であるにもかかわらず、臨教審審議に名をかりてこれを先送りし、サボり続けている政府の姿勢であります。繰り返し論議されてきた四十人学級の凍結や過大規模学校の解消などは、政府がその気になりさえすれば、臨教審の答申など待たなくても直ちに解決できるものばかりです。四十人学級の凍結は六十年度までの時限立法で行われた緊急措置であったにもかかわらず、行革審の報告に見られるように、その再延長すらうかがわせるのでは、もはや政府教育改革を語る資格に欠けると申し上げざるを得ないのであります。  私どもは、今日の教育の荒廃は、子供の世界が大人の世界の鏡である以上、まさに社会の荒廃の反映と見ざるを得ません。口さえあければ道徳教育を強調する者が政治世界で一体どのような行動をとっているのか、一審有罪の刑事被告人が大手を振ってまかり通り、その影響力の排除を誓ったはずの総理大臣がそのカリスマに今なお拝跪する、このような社会を放置しておいて道徳の強要と取り締まりの強化では、教育正常化ところか、ますます逆効果を上げるにすぎないことを警告をいたしまして、反対討論を終わります。(拍手)
  60. 片岡清一

    片岡委員長 市川雄一君。
  61. 市川雄一

    ○市川委員 私は、公明党・国民会議を代表して、臨時教育審議会設置法案及び同修正案に対し、賛成の討論を行うものであります。(拍手)  我が党は、かねてから教育改革必要性を強く指摘してまいりました。しかも、文部省の枠を超えて取り組むべき改革課題が山積しております。このような立場から、総理府に総理大臣諮問機関として臨時教育審議会という新しい審議会設置することには、一定の条件のもとにこれを妥当なものと考えてまいりました。  審議会設置に当たって重要なことは、国民合意改革案づくりの体制をつくることと、改革案作成上の原則を明確にすることであります。このような視点に立って、我が党は次のような主張をしてまいりました。  基本的な問題としては、憲法教育基本法を厳正に遵守すること、教育政治的中立をあくまでも守ることなどを明確にすべきことであります。  さらに、具体的には、第一に、委員任命の国会同意であります。第二には、答申等の国会への報告義務であります。第三には、審議の公開制という点であります。第四は、委員に現場の教師、父母等の代表を加えることであります。  幸いにして、委員任命の国会同意と答申等の国会報告義務に関しましては、修正案の提出によりその実現が図られる見通しとなりました。  また、審議の公開については、審議の概要を一定の区切りをもって公表する。委員に現場の教師と父母を入れる点についても、積極的前向きな答弁がありました。これによって我が党の主張はほぼ取り入れられたものと考えるものであります。  その他、教育改革のあり方についても具体的に意見を申し上げました。今後、臨教審の審議の中で十分に吸収されることを要望します。  臨時教育審議会が真に教育改革にとって大きな役割を果たすか否かは、今後の運営いかんにかかっております。政府は、臨時教育審議会の運営に際しては、我が党の指摘してきた点に十分配慮すべきことを強く要望し、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  62. 片岡清一

  63. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま提案となりました臨時教育審議会設置法案に対する修正案に賛成し、修正部分を除く原案の賛成討論を行うものであります。(拍手)  民社党は、結党以来教育を重視し、教育国家の建設の提唱など常に努力してきたところであります。特に、最近の教育の荒廃、青少年を取り巻く社会環境の悪化などを考えるとき、教育改革は急を要する国民的課題となってまいりました。  これらの問題が生じた背景には、教育文部省、日教組及び教育関係者という狭い枠の中で取り扱われ、国民のコンセンサスの上に立脚して政府を挙げて取り組む体制がなかったという基本的な原因があり、中教審の限界もまさにここにあったと言わざるを得ません。  この見地から、民社党は、本年一月十七日の党首会談において、教育改革国民の総意を結集して取り組むため、いわゆる教育臨調の設置を提唱してまいりました。私たちは、政府が我が党の主張を入れ本法案国会に提案してきたことを評価し、これが真の教育改革に直結するよう強く望むものであります。  審議会委員の人選は、審議会の審議、ひいては我が国教育に重要な影響を与えるものであること、教育改革は行政府がその責めに任ずることはもちろんであります。また、あらかじめその問題点を国民及びその代表たる国会に提唱し、十分な協力を仰ぐべきであります。このため、ただいま提案となりました委員国会同意、答申、意見の国会報告を義務づけたいわゆる修正案にも、全面的賛意を表するものであります。  今後、本法案及び修正案が速やかに成立するとともに、臨時教育審議会憲法及び教育基本法精神を踏まえ、教育の理念、教育制度教育内容教育行財政、青少年を取り巻く社会環境、教育国際化への対応等全般にわたって国民の創意を結集し、教育改革のビジョンを提示することにより、我が民社党が推進する教育国家建設の源泉となることを期待いたしております。  また、政府におかれましては、仮にも教育改革論議を政権の延命に利用することのないよう、中長期的展望に立ち、報告された答申、意見については勇断を持って実現をされるよう望むものであります。  以上をもちまして賛成討論を終わります。(拍手)
  64. 片岡清一

    片岡委員長 三浦久君。
  65. 三浦久

    ○三浦(久)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、臨時教育審議会設置法案並びに同修正案に対し、反対の討論を行うものであります。  まず、討論に先立って、次のことを指摘しておきます。  我が党の質疑時間の十分な保障、参考人質疑、修正案に対する質疑、また二日間の連合審査などの徹底審議要求をことごとく踏みにじり、採決が強行されるがごときは、断じて許されないと思います。教育が国家百年の大計であり、平和と民主主義社会の主権者を育てようと考えるならば、望ましい教育改革のあり方をめぐる審議を十分に尽くすべきであります。このことを避けた今回の委員会運営について、まず最初に遺憾の意を強く表明するものであります。  次に、法案についてでありますが、本法案に反対する第一の理由は、中曽根内閣が、憲法教育基本法に基づく戦後民主教育を総否定し、アメリカの世界戦略最優先という西側の一員に立った教育の反動的再編を一挙になし遂げようとしていることであります。  政府は、教育基本法を変えないと言う一方で、委員には教育基本法の枠をはめないで自由に論議してもらう、また、審議会委員憲法教育基本法改悪論者であっても構わない、そういう答弁をいたし、教育基本法改定の答申提出に道を開いているのであります。いみじくも奥野元文部大臣が、マスコミのインタビューに答えまして、中曽根総理教育基本法を変えないと言っているのは他党を取り込むための戦略戦術だと述べたこととあわせ考えたときに、本法案の危険な意図がより鮮明となっているのであります。  第二は、政府教育改革が、文教予算を大幅に削減をし、国民犠牲を強いる臨時行革を前提に行われようとしていることであります。  世論調査でも明らかなように、国民が最も切実に求め、国会でも全会派で実施を合意した四十人学級あるいは大規模校の解消、私学助成の拡大などに対して凍結を宣言したのが第二臨調であります。この臨調行革の枠の中で行われる教育改革が、国民の願う教育改革に到底こたえられないということは火を見るよりも明らかであります。  第三は、臨時教育審議会が、教育改革を論ずる上で不可欠な国民的合意形成に必要な一般行政からの独立性、民主的な構成、公開制を含む民主的な運営が全く欠如していることであります。  機構は総理直属委員並びに専門委員総理の任命、会長は総理の指名、そうして会議は非公開、これでは時の政府の御用機関ともいうべき性格であり、国民的な論議に耐え得るような内容となっておりません。  なお、この際、自民党、公明党、民社党の三党提案の修正案についても一言触れておきます。  三党修正案は、委員の任命、罷免に国会の同意を求めるとともに、答申等の国会報告を加えたものでありますけれども、これは本法案の反動的本質に対し、何らこれを変えるものとなっておりません。しかも、首相による罷免権と委員の守秘義務などは、審議会への強権的な統制、密室性を色濃くするもので、到底賛成できません。  我が党は、かかる内容を持つ原案並びに修正案に対し、断固反対であるとともに、その撤回を強く要求するものであります。  最後に、今日教育改革が必要なことは論をまつまでもありません。その原則的な見地は、第一は、学校教育の中心任務である基本的な知識や技術、情操並びに市民道徳等を青少年の発達に即して理解できるやり方で身につけさせること。第二は、学問の自由と教育の自主性を尊重し、学校に納得と人間的信頼関係を基本とした生き生きとした雰囲気を回復すること。三つ目は、このような教育を可能にする教育条件の整備が教育行政最大の責務であることを自覚すること。四つ目は、これらは法的には憲法教育基本法の理念と原則を堅持することによって行われること。五つ目は、教育改革はこれを政争の具とすることなく、国民的な討論と国民的な合意によって実行することであります。  教育改革を検討、討議する公的な機関が設けられる場合にも、その性格や権限や構成と、その委員の選任、運営などのすべてにおいて、一般行政からの独立性、国民的な討論に寄与し得る民主性と公開性が必ず保障されるべきであります。  以上の見地に立って、私は、教育荒廃に立ち向かうための真の教育改革を改めて提唱するとともに、臨時教育審議会設置法案に強く反対をして、討論を終わるものであります。(拍手)
  66. 片岡清一

    片岡委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  67. 片岡清一

    片岡委員長 これより採決に入ります。  まず、深谷隆司君外二名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  68. 片岡清一

    片岡委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  69. 片岡清一

    片岡委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  71. 片岡清一

    片岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十三分散会      ――――◇―――――