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1984-05-15 第101回国会 衆議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十五日(火曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 池田 行彦君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 松浦 利尚君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       石原健太郎君    内海 英男君       奥田 幹生君    鍵田忠三郎君       金子原二郎君    菊池福治郎君       塩川正十郎君    月原 茂皓君       二階 俊博君    林  大幹君       山本 幸雄君    角屋堅次郎君       佐藤 敬治君    佐藤 徳雄君       元信  堯君    渡部 行雄君       鈴切 康雄君    山田 英介君       田中 慶秋君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君  出席政府委員         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官内閣審議         官       齊藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省体育局長 古村 澄一君         郵政大臣官房長 奥山 雄材君         郵政省郵務局長 永岡 茂治君         郵政省貯金局長 澤田 茂生君         郵政省簡易保険         局長      奥田 量三君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電波監理         局長      鴨 光一郎君         郵政省人事局長 三浦 一郎君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    太田  博君         大蔵省主税局税         制第一課長   伊藤 博行君         大蔵省理財局資         金第一課長   水谷 文彦君         大蔵省銀行局総         務課長     日吉  章君         大蔵省銀行局特         別金融課長   松田 篤之君         大蔵省銀行局保         険部保険第一課         長       藤原 和人君         建設省道路局路         政課長     真嶋 一男君         日本国有鉄道電         気局信通課長  村上 春雄君         日本電信電話公         社総務     真藤  恒君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ――――――――――――― 委員異動 五月十五日  辞任         補欠選任   大島 理森君     金子原二郎君   上原 康助君     佐藤 徳雄君   嶋崎  譲君     佐藤 敬治君 同日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     大島 理森君   佐藤 敬治君     嶋崎  譲君   佐藤 徳雄君     上原 康助君     ――――――――――――― 五月十一日  旧軍人恩給改定等に関する請願鍵田忠三郎君  紹介)(第四四九六号)  同(三塚博紹介)(第四五四九号)  同(和田一仁紹介)(第四六九三号)  旧満州国軍に服務した軍人等処遇に関する請  願(市川雄一紹介)(第四四九七号)  同(鍵田忠三郎紹介)(第四四九八号)  同(菊池福治郎紹介)(第四四九九号)  同(戸塚進也紹介)(第四五〇〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第四五五〇号)  同(中村正三郎紹介)(第四五五一号)  同(深谷隆司紹介)(第四五五二号)  同(池田行彦紹介)(第四六九四号)  同(大島理森紹介)(第四六九五号)  同(和田一仁紹介)(第四六九六号)  元従軍看護婦処遇に関する請願武部文君紹  介)(第四五〇一号)  同外一件(深谷隆司紹介)(第四五五三号)  同(大島理森紹介)(第四六九七号)  同(平石磨作太郎紹介)(第四六九八号)  傷病恩給等改善に関する請願小澤潔紹介  )(第四五〇二号)  同(山崎拓紹介)(第四五〇三号)  同(上草義輝紹介)(第四五五四号)  同(葉梨信行紹介)(第四五五五号)  同(平沼赳夫紹介)(第四五五六号)  同外一件(三ッ林弥太郎紹介)(第四五五七  号)  同(山崎拓紹介)(第四五五八号)  同(今井勇紹介)(第四七〇一号)  同(森田一紹介)(第四七〇二号)  北海道外に居住するアイヌの対策等に関する請  願(池端清一紹介)(第四五四七号)  同(松本善明紹介)(第四五四八号)  同(五十嵐広三紹介)(第四七〇九号)  旧治安維持法等による犠牲者賠償に関する請  願(経塚幸夫紹介)(第四五五九号)  同(柴田睦夫紹介)(第四五六〇号)  同(野間友一紹介)(第四五六一号)  同(三浦久紹介)(第四五六二号)  同(簑輪幸代紹介)(第四五六三号)  同(柴田睦夫紹介)(第四七〇五号)  同(津川武一紹介)(第四七〇六号)  同(中川利三郎紹介)(第四七〇七号)  同(中島武敏紹介)(第四七〇八号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願(吉田之久君紹介)(  第四六九九号)  同(和田一仁紹介)(第四七〇〇号)  戦後処理問題として在外預送金に関する請願  (和田一仁紹介)(第四七〇三号)  元逓信官吏勧奨退職者恩給適用に関する請願  (柴田睦夫紹介)(第四七〇四号) 同月十二日  旧日本海軍債務未払いに関する請願長田武  士君紹介)(第四九二一号)  元従軍看護婦処遇に関する請願金子みつ君  紹介)(第四九二二号)  同(亀岡高夫君紹介)(第四九二三号)  同(木内良明紹介)(第四九二四号)  傷病恩給等改善に関する請願古賀誠紹介  )(第四九二五号)  同(葉梨信行紹介)(第四九二六号)  旧治安維持法等による犠牲者賠償に関する請  願(浦井洋紹介)(第四九二七号) 同月十四日  元従軍看護婦処遇に関する請願塚本三郎君  紹介)(第五〇一七号)  同外一件(大出俊紹介)(第五一七九号)  同(田名部匡省紹介)(第五一八〇号)  同(國場幸昌紹介)(第五三五七号)  旧満州国官吏恩給改善に関する請願浜田幸  一君紹介)(第五〇一八号)  傷病恩給等改善に関する請願砂田重民君紹  介)(第五〇一九号)  同(戸塚進也紹介)(第五〇二〇号)  同(三原朝雄紹介)(第五〇二一号)  同(砂田重民紹介)(第五一八三号)  同(田中龍夫紹介)(第五一八四号)  同(浜野剛紹介)(第五一八五号)  同(吹田愰君紹介)(第五一八六号)  同(船田元紹介)(第五一八七号)  同(三原朝雄紹介)(第五一八八号)  同(砂田重民紹介)(第五二五四号)  旧軍人恩給改定等に関する請願田名部匡省君  紹介)(第五一七六号)  旧満州国軍に服務した軍人等処遇に関する請  願(田名部匡省紹介)(第五一七七号)  同(吹田愰君紹介)(第五一七八号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願佐藤信二紹介)(  第五一八一号)  同(吹田愰君紹介)(第五一八二号)  元逓信官吏勧奨退職者恩給適用に関する請願  (池田行彦紹介)(第五一八九号)  同(田名部匡省紹介)(第五一九〇号)  同(吹田愰君紹介)(第五三五八号) 同月十五日  元従軍看護婦処遇に関する請願山花貞夫君  紹介)(第五四八六号)  同(綿貫民輔紹介)(第五五九一号)  元逓信官吏勧奨退職者恩給適用に関する請願  (友納武人紹介)(第五四八七号)  旧治安維持法等による犠牲者賠償に関する請  願(梅田勝紹介)(第五四八八号)  同(中川利三郎紹介)(第五四八九号)  同(天野等紹介)(第五五九六号)  同(五十嵐広三紹介)(第五五九七号)  同(小川省吾紹介)(第五五九八号)  同(河上民雄紹介)(第五五九九号)  同(串原義直紹介)(第五六〇〇号)  同(清水勇紹介)(第五六〇一号)  同(中村茂紹介)(第五六〇二号)  同(広瀬秀吉紹介)(第五六〇三号)  同(松浦利尚君紹介)(第五六〇四号)  同(元信堯君紹介)(第五六〇五号)  同(山花貞夫紹介)(第五六〇六号)  同(渡部行雄紹介)(第五六〇七号)  同(江田五月紹介)(第五六七八号)  旧満州国軍に服務した軍人等処遇に関する請  願(内海英男紹介)(第五五八七号)  同(小川仁一紹介)(第五五八八号)  同(月原茂皓紹介)(第五五八九号)  同(松浦利尚君紹介)(第五五九〇号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願内海英男紹介)(  第五五九二号)  傷病恩給等改善に関する請願伊藤宗一郎君  紹介)(第五五九三号)  同(中村正三郎紹介)(第五五九四号)  同外二件(堀之内久男紹介)(第五五九五号  )  同(梶山静六紹介)(第五六七四号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第五六七五号)  同(田澤吉郎紹介)(第五六七六号)  同外二件(細田吉藏紹介)(第五六七七号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する  請願田名部匡省紹介)(第五六七〇号)  同外一件(戸塚進也紹介)(第五六七一号)  同(森田一紹介)(第五六七二号)  同(山本幸雄紹介)(第五六七三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十四日  靖国神社公式参拝に関する陳情書  (第二〇二号)  旧軍人軍属恩給欠格者処遇改善に関する陳  情書外一件  (第二〇三号)  人事院勧告完全実施に関する陳情書外十一件  (第  二〇四号)  国名呼称内外統一に関する陳情書  (第二〇五号)  プライバシー保護法制定等に関する陳情書  (第二〇六  号)  大蔵省福岡財務支局の存続に関する陳情書外十  五件  (第二〇七号)  北海道開発局非常勤職員雇用確保に関する  陳情書  (第二〇八号)  青少年健全育成対策に関する陳情書外七件  (第二〇九号  )  青少年健全育成対策充実に関する陳情書  (第二一〇号)  戦後ソ連強制抑留者の救済に関する陳情書  (第二一一号)  行政改革推進に関する陳情書  (第二一二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  郵政省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二四号)  臨時教育審議会設置法案内閣提出第四七号)      ――――◇―――――
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出郵政省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中慶秋君。
  3. 田中慶秋

    田中(慶)委員 郵政省設置法改正の問題について、関連を含めながら若干質問をさせていただきたいと存じます。  まず、前段まで本委員会で論議をされてまいりましたけれども、重複の面はできるだけ避けてまいりたいと思いますが、それぞれ重要案件のことでもございますので、御答弁についてもよろしくお願い申し上げたいと思います。  大臣答弁の中で、時代は変わっていても郵便行政サービス低下を来さないように継続していくという決意を新たにされました。そのためには今後具体的にどのような形でこれを行っていくのか、あるいはまた、内部改革やそれらのことを含めて一連の考え方があったらお示しいただきたいと思うのです。
  4. 奥田敬和

    奥田国務大臣 御指摘のように、郵政事業は本当に長い歴史的な沿革のもとに国民生活の中に深く定着してきた事業ばかりでございます。郵便といい、郵貯といい、簡保といい、この三事業はそういった長い歴史を持って今日に及んでおるわけでございます。しかし、官業であるがゆえのいろいろな批判、また今日のような厳しい競争社会の中で、この三事業が本当に国民への奉仕、サービスという形においてまだまだ反省しなければいかぬ面がたくさん出てきたことも事実でございます。  そういう点におきまして、先般来、郵便配送システム改善もいたしました。これらも、今日の時代情勢から言うと民間の宅送分野の本当に企業努力によってのサービスにも対応してまいらなければならぬということでの、相当大規模配置がえも含む合理化も着々と今進めておるところでございます。また郵貯におきましても、最近のように民間との競争の中でいかにしてこの少額の預貯金者の立場、利益を守っていくかということにつきましても、自主運用等々の問題も含めて常に大蔵当局とも接触を重ねてサービス改善に努めております。特にオンライン化、この三月末で全国オンラインネットも完成いたしました。こういうことで、民間金融サービスに負けない形の中でのサービスにも努めてまいりたいと思っております。簡保においても同様でございます。  他方ニューメディア元年とも言われる形の中で、通信事業分野の中でも非常に大きな技術革新と同時に、今度御提案し国会で御審議願っておる事業法案あるいは一元体制を持ってきた電電公社民営化の問題等々、通信事業はもとよりのこと、有線であれ無線であれ、従来の部局体制ではとても対応し切れないという状態の中で、今日、電気通信の方も有線無線の区別を超えた総合的な通信政策部局も新しく一局つくるという中での通信行政全般あり方の見直しも行っておるところでございます。  このようにして、基本的には国民へのサービスの還元、競争原理の働く社会の中で何としても伝統ある事業を守り抜いていこうという形の中で、いろいろな御審議の過程の中でもいいお知恵を拝借しながら改善努力したいということでございます。
  5. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大臣としての決意は述べられたわけでありますけれども、しかし反面において、今大臣お話にもありましたように、輸送合理化等について約六千人程度異動その他が行われたという経過もお聞きしておりますが、新しい職場での人たちに対応する教育、指導という問題についてはどのように行っているのか、さらにまた、このような問題を含めながら労使関係がどうなっているか、こういうこともこれからの運営においては大切なことだろうと思うわけでありまして、こういう点について考え方を述べていただきたいと思います。
  6. 永岡茂治

    永岡政府委員 ことしの二月一日から実施いたしました輸送合理化に関しましては、ただいまもお話がありましたように、約六千人に及ぶ職員配置転換を行ったわけでございますが、主として鉄道郵便局に勤務する職員が、静止局と申しておりますが、一般郵便局にかわったものが約三千五百名で、それが主でございます。したがいまして、そういった人たちに対する訓練につきましては、二月一日以前におきましても鉄道郵便局職員一般郵便局の見学をやらせるというようなこと、そういった事前の訓練も行いましたし、また、配置転換後約二週間研修所に入所してもらって必要な知識、訓練実施し、必要にして十分な訓練を行い得たというふうに思っております。  なお、労使関係でございますが、この大規模事業改革につきましては、労働組合の大変積極的な協力をも得て極めて円滑に行うことができ、現在労使関係は非常にいい状態にあるというふうに思っております。
  7. 田中慶秋

    田中(慶)委員 当然、これからの企業あり方とか組織のあり方とかというのは、それぞれ労使関係を含めてより重要視しなければいけないわけでありますけれども、比較的こういう問題を含めて考えるとワンサイドのとらえ方が多いように承っておりますけれども、そういうことのないようにこれからもぜひ努力をしていただきたい、こんなふうに思うわけであります。  ところで、大臣にお聞きしたいのですけれども、臨調初め行政改革を——あなたは自信を持って先ほどの決意の中でも明らかにされましたけれども、こういう中で郵便行政というものの人員というか主たる人数、それから機械化その他が進んでいると思うのですが、この機械化推進というものがどのようにされるかということが一つと、それから、郵便行政を行うに当たって適正な人員というのはどの程度なのか。こういうことを含めて、片方においてはサービスという問題でより充実をしなければいけない、片方においては、それぞれの合理化を含めてあなたがおっしゃっている、より積極的な合理化を進めなければいけない、こういうことが言われているわけですけれども、これらについての考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
  8. 三浦一郎

    三浦政府委員 昭和五十九年度の郵政事業職員数ですけれども、約三十一万人となっております。そのうち郵便事業は十四万でございます。現在の郵政事業あるいは郵便事業、こういう規模業務量ということでございまして、職員数は適正であると考えておりますけれども、しかし今御指摘のように、事業をこれから機械化あるいは合理化に努めなければいけない、そして効率的な事業運営を図るということが重要であるということでございますので、今後とも積極的にその事業効率化を図りながら、あわせて先生のおっしゃる利用サービスの向上にも努める。二律背反でございますけれども、それを調和的にやってまいりたい、このように考えております。
  9. 奥田敬和

    奥田国務大臣 今、人事局長から話がございましたけれども、先生の御指摘のように、確かに人力依存度の多い事業体であるということは率直に認めなければいかぬ。しかし、他方競争原理に打ちかっていくためには、何としてもコストの低減、スピードの面も含めて機械化合理化を図っていくという点は、大変これも重要なことでございます。  したがって、先ほども述べましたけれども、こういった一つ改善策として、オンラインネットワークを完成したということあるいは配送システム改善、大変御迷惑をかけましたけれども、人員配置がえ等々によっての輸送体制のスピードアップ、またオンライン化だけではだめなんで、それに伴うCDあるいはATMというような機器の各郵便局に対する設備をつくるために今年度も一千局ほどこういった自動支払い機等設置をやりますけれども、六十一年度までには七千台という目標で頑張っておるのもその一つでございます。  また、配達局等々においても相当大型の配送荷物区分け機とかあるいは郵便機器によって種別するようなシステム、そういった新しい機器導入も図りながらやっていきたいと、目下その実施に向けても現実改善に取り組んでおるところでございます。  しかし、先生の御指摘の場合、この三事業推進するに当たって適正な人員規模はどう考えておるかというようなことでもございます。要は人力依存度の多い仕事でありますけれども、これ以上膨張をさせない、しかもサービス低下を招かないという形の中で懸命に努力をしなければいかぬという命題がございます。そういった基本的な原則に立って合理化効率化というものを図っていきたい。適正規模がどれだけかということになりますと、いろいろ意見もありますでしょうけれども、これからの多様な時代に対応していくために、それぞれの三事業が今日の減員体制の中で何としてもそういった最高のサービスを提供していくということに目標を置いていこうと思っておるわけでございます。
  10. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今、それぞれの人員あるいはまた現況の中でということで、例えば人事局長が、現在の人員は適正である、こんなことを述べられたわけですけれども、そのこと自体がやはり大きな問題があるのではないかと思うのです。だれしも自分の仕事をしているものに対して適正だと思ってない人がどこにいますか。少なくとも皆さんがそれぞれの職場を任され、それぞれの衝についているところは、責任自信を持って仕事をしているのは当たり前のことなんです。しかし、当たり前であれば、このような法律改正は出る必要はないわけです。しかし現実に、それぞれの時代の流れやそれぞれの要請に応じて法の改正なりいろいろなことを含めて出てきているわけです。そういう中でこの人事の問題を含めて考えるならば、やはりそこには三十一万人の人間が適正かどうか、あるいは十四万人の人間が適正かどうかということをもう一度検討する余地があるだろう、こんなふうに思うわけです。でなければ、これから随時私は質問させていただきますけれども、やはりこれらの多くの問題点を抱えている中でその問題をどう処理するのか、その責任をどう皆さんが消化し、こたえていくのかということになってこようかと思いますので、その辺を明らかにしていただきたいと思います。  例えば、先ほど機械化の問題なりいろいろなことを触れられておりましたけれども、郵便番号の自動読取機の問題を一つとっても、全国で百八十五台ですか、こういう形ですが、この数字がどう稼働されているのか、皆さん実態がどうなっているかということをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  11. 永岡茂治

    永岡政府委員 郵便番号自動読取区分機は現在百五十局に百八十五台程度配備されております。その稼動状況でございますが、一日当たり約八百万通程度を処理しております。一日の引き受け郵便物数が約三千万通でございますので、それに対して言えば、単純に計算すれば二七%という数字でございますが、一通の郵便物を区分けするのは平均二回以上でございますので、二七%を約半分で割りますと一三・五%程度のものが機械で処理されていると言えようかと思います。
  12. 田中慶秋

    田中(慶)委員 例えば、今の自動読取機をこのように設置されても稼動率が二七%程度、こういうことを考えてまいりますと、機械設置されても、それを使うのも人であろうと思いますけれども、しかし二七%の稼動率で、現実にはこれらの問題を含めてペイできるかどうかを考えたときにいろいろなことがあろうと思うのです。少なくとも機械設置する段階でこの稼動率を何%ぐらいに押さえていたか、この辺についてお聞かせをいただきたいと思います。
  13. 永岡茂治

    永岡政府委員 二七%という数字は、全国で引き受ける郵便物数から単純に割りましたので若干誤解を招く数字かと思いますが、機械が配備されております局は比較的規模の大きい百五十局程度の局でありまして、そういったところはかなり郵便物が集中するわけでございます。そういった局で引き受けられる郵便物に対する機械処理の率を見ますと、約四〇%程度機械で処理されております。
  14. 田中慶秋

    田中(慶)委員 当初計画では何%だったのですか。
  15. 永岡茂治

    永岡政府委員 当初計画、例えば横浜集中処理局というのがございまして、これは現在では日本で最も機械化の進んだ郵便局でございますが、その場合は約五〇%強のものが機械で処理できるということで計画しておりましたが、実際はただいま申しましたように四〇%程度のものが処理されているという状況でございます。
  16. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、機械稼働率一つをとっても、少なくとも大臣、これからいろいろな問題が出てこようかと思います。民間が投資をする場合において、機械稼働率を三〇%、四〇%にという、こんな実態であっては採算がとれないのですよ、はっきり申し上げて。そして、当初から五〇%台に設定をされること自体も大きな問題があろうかと思います。  こんなことを考えてまいりますと、もっともっと積極的に——先ほどの話を繰り返すわけじゃないですけれども、三十一万人体制だとか十四万人体制で甘んじていたのでは私は何にもならぬと思います。人事局長、この辺についてもう一度あなたの考え方を述べていただきたい。
  17. 三浦一郎

    三浦政府委員 本年度におきまして、先ほど申し上げましたように、三十一万、十四万ということでございます。しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、郵政事業、非常に合理化効率化を進める、こういったことでございまして、ここ近年、毎年毎年のように合理化に努めて、定員の減員というものがある次第でございます。ちなみに、五十九年度予算におきましては約一千人の減員、そういうことになっております。
  18. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、こういう問題を含めて長期的なビジョンが必要なわけですから、そういうことを含めて長期計画が策定できているのではなかろうかと思います。五十九年度、六十年度だけではなくて、郵政が先ほど永遠にということで、将来ともサービス低下を来さないという前提なりそういう密度が要求されるならばされるほど、そういうことを含めて総合的な検討というものが必要だと思います。単年度で例えば一%、今のお話ですと、十四万の一%だけを考えても一千四百人の人間になろうと思うのです。そういうことを含めて考えるならば、長期的にはどのように考えられているのか、お答えいただきたいと思います。
  19. 永岡茂治

    永岡政府委員 郵便事業に関して申しますと、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、将来、郵便物数のある程度の増加は見込まれるわけでございますが、そういった物数の増加があったとしても、現在の人員をできるだけふやさない、十四万人の体制でやっていくという方向でできるだけ努力してまいりたいと思いますし、また、サービスの面におきましても、現在の人員の中でできるだけ低下させないと申しますか、できるだけサービスの向上に努力してやってまいりたいというふうに思っております。
  20. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今の答えでは全然答えになってないと思うのです。それでは物数が何部ふえるという確約があるわけじゃないわけです、はっきり申し上げて。例えばこれからくる電電の問題を含めて民営化されてそれぞれサービスが向上された場合、あるいはまたファクシミリがこれだけ進んできている中で、郵便がふえるという環境にあるかどうかを考えたときに、あなたのおっしゃっている将来ふえてもという仮想で、こういう形で物を計画されたのでは迷惑だと思うのです。例えば昭和五十九年度の単年度を考えただけでも既に百五十五億の赤字を見込んでいらっしゃるのでしょう。そんなことを考えただけでも、将来的な一つの物の発想というものを全然考えていない答弁ではなかろうかと思うのです。私は、そういう点を含めて今の単年度で百五十五億の赤字そのものが、これはもう体質的な赤字だ、こう指摘しても過言ではないと思うのです。今までをずっと振り返って見てまいりますと、値上げをして二、三年はとんとんか黒字になっている。そして必ず二、三年で次の赤字のサイクルが出てまいります。その黒字はどうして出ているかというと、企業努力で出たのではないのです。値上げをされて、そこで黒字が出ているのです。そういうサイクルの元凶を、過去をずっとひもといても、一向に直されていない。  しかし、今あなたの答弁なり大臣答弁の中においては、積極的に合理化をしいろいろなことをされているように承っておりますけれども、その結果をどういうふうにとらえて、皆さんはどう考えて、これからどうされるか、その辺について答弁をいただきたいと思うのです。
  21. 永岡茂治

    永岡政府委員 郵便事業は電話事業のような、いわゆる機械の装備、装置産業ではございませんで、人力に依存する労働集約性の高い企業でございますので、どうしても人件費等のアップが高くなってまいりますと値上げをお願いせざるを得ないというのがこれまでの実態でございまして、過去の状況を見てみますと、五年に一回程度郵便の料金の引き上げをお願いして、財政の収支を保ってきたというのが実態でございます。  先生お話しのように、ことしの予算におきまして百五十五億円の赤字を見込んでおりますが、そういった郵便事業の持つ労働集約性の高い、機械化が非常に難しい企業であるという本質は変わらないわけでございまして、いずれ将来また料金の改正をお願いしなくてはならぬということが起こってくることは避けられないかとも思いますが、大臣からも、ことしの百五十五億円の赤字を少しでも消し込んで増収を考え、また経費を節約して百五十五億円の赤字を消し込むようにということを強く指示されておりますので、私どももそういった方向で努力してまいりたいと思いますし、ファクシミリとかそういった新しいメディアが発達して郵便事業の領域が侵食されることは避けがたいことかもしれませんが、また郵便事業としてこれまでなかった新しい分野を開拓するなどして、今後の情報化社会の中で十分対応していきたい、そういった努力を一生懸命やっていきたいというふうに思っているところでございます。
  22. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、あなたが先ほどいろいろな想定で人員の問題とかいろいろなことを言われておりますけれども、少なくとも郵便事業について、皆さんは利用者の増加を図るためにどのような努力をされておりますか。
  23. 永岡茂治

    永岡政府委員 郵便物数をふやすということは、妙手というものはなかなか難しいわけでございますが、地味かもしれませんがいろいろな手を打っておるところでございます。  例えば「ふみの日」を設けて、そういった日に手紙を書いていただくとか、手紙作文コンクールをやって、小学生や中学生に文章を書く喜びと申しますか、そういった機会をつくるとか、そういったこともやっておりますし、また、小包をふやすためにふるさと小包といったようなもののキャンペーンもやっております、また、ことしの計画でございますが、暑中見舞いはがきを従来よりも三〇%程度増発行して——年賀はがきは年間三十億通程度でございますが、一億二、三千万というのが今までの数字でございます。できれば年賀はがきの一割程度ぐらいには暑中見舞いはがきもふやしていきたいということで、ささやかではありますが、ことしの暑中見舞いはがきにおきましては、たくさんはがきを買っていただいた方には暑中見舞いはがきのデザインを印刷したうちわを差し上げる、そういったことも考えて、少しでも増収を図っていく努力を続けていきたいというふうに考えておるところでございます。
  24. 田中慶秋

    田中(慶)委員 これだけの企業体制といいますか、これを運営するのは大変だと思いますけれども、しかし、はっきり申し上げて、例えば三十一万人の人が、ものの提案を一つしたとしても三十一万件あるのです。今あなたは、企業努力で利用者の増加を図るためにということで例えば暑中見舞いのはがきを出されておりますけれども、一億一千万の国民に対して一人一通でしょう、年賀はがきは三十億でしょう。いま少しその辺を追求して、三十億にならなくても二分の一になるような努力というものはされても、当然同じような感覚でできると私は思うのです。できない問題が何かあるからできないのだ、私はそんなふうに思うのです。     〔委員長退席、深谷委員長代理着席〕  例えばこういう一例もあるわけですよ。郵便の第一種に認められている市内特別というものがあるわけです。こういう問題、現在五十円で配達されるわけですけれども、私は横浜に住んでおりますが、横浜というところは全部同じかと思っていたのですよ。そうしたら違うのです、はっきり申し上げて。例えば一つの行政区に、人口が多いからといって、郵便番号で言うならば二四四、二四五、二四七という、面積的には変わっていない、しかし人口密度が高いからということで、そういう形で郵便局ができた。ところが特別配送というのはこの対象にならぬ。しかし、面積が変わっていない、そんなことだったらできるのではないか。あなたの言っているそれぞれサービスなり企業努力の方針であるならば、できると思うのです。その辺を明確にしてください。
  25. 永岡茂治

    永岡政府委員 市内特別郵便物につきましては、先生がおっしゃいますように配達局単位で安い料金を適用しているというのが現行法でございます。しかし先生指摘のように、私どももこれは非常に時代に合わないと申しますか、改正すべき問題だというふうに思っております。ただ、一応郵便法で定められておりますので、その改正には郵便法の改正が必要になってまいりますので、次の郵便改正の機会にその点は改善したいというふうに思っております。
  26. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は単なる一例を申し上げただけなのです。そうでしょう。一つの行政区画があって、人口密度が高くなったから郵便局が二つなり三つができた、そうするとそういうものは適用されない。今の郵便法というものは郵便局のためにあるのです。利用者のためにないのですよ、極端なことを言えば。今の例からわかるでしょう。今までそれぞれのエリアの中で全部そういう恩恵をこうむったとします。人口密度が高いからということでそういう三つになった、そうしたらその恩恵がこうむれないということを考えてまいりますと、利用者のためではないのです。郵便法そのものが郵便局のためにあるような形であってはいけないわけですから、そういうことは一つの例として申し上げたわけですけれども、改めるべきだと思います。  ですから私は、その一つ一つのやりとりではなくして、物の発想を変えなさいと言っているわけです。ところが皆さんの頭は、大変立派に長年の自分たちの経験だけで物を処理しようとする、こんな形があろうと思うので、そういう点では管理者の人たちだけではなく、三十一万人、十四万人のそれぞれの人間から一つずつのアイデアを出させていただいたらどうですか。そういうことの考えがあるのかどうか。
  27. 永岡茂治

    永岡政府委員 確かに郵便事業は百十余年の歴史の中で独占的な経営をやっておりまして、そういった意味では営業感覚が乏しいという御指摘は、私どもも率直に反省しておるところでございます。しかし、幸か不幸か最近は宅配便等の強力な競争相手も出てまいりまして、そういった意味では私どももそれらの点について反省をいたし、営業感覚、営業精神を民間と同じように取り入れて事業運営していくということを真剣に考えております。そういった意味で郵便法、郵便規則等も基本の部分においてよく見直して、新しい時代に合ったようにできるだけ改善してまいりたいというふうに思っております。     〔深谷委員長代理退席、委員長着席〕  また、御指摘の提案制度等につきましても、現在もそういった制度はございますが、さらに充実したものになるように努力してまいりたいというふうに思っております。
  28. 田中慶秋

    田中(慶)委員 例えば、第三種郵便二十五円となっているわけでありますけれども、小包郵便等についても今それぞれの数量によって割引をされているわけです。ところが、そうかといって大型需要者、極端なことを言えば、先ほどの年賀はがき三十億ですか、こういう形ですね。ところが暑中見舞いはがきは一億だ。こんな形の中で、では本当に一生懸命売る気があって、先ほど何か新たなお土産みたいなことを考えておるようですが、極端なことを言えば、大口の人たち、これは十万枚、二十万枚買ってもはがきは四十円は四十円なんですね。そんなことを含めて考えると、もう一味違った角度の物の見方というものがされるのではないかと思うのです。そういう点はどういうふうに思いますか。
  29. 永岡茂治

    永岡政府委員 現在、一時にたくさん郵便物を差し出していただく方々には割引制度というのがございます。ただ、その場合は郵便番号によってある程度方面別に仕分けしていただくということが条件でございますが、最高一割まで割り引くという制度がございますので、そういった制度を御活用いただきたいというふうに思うのです。
  30. 田中慶秋

    田中(慶)委員 たまたま私が政治家だから言うわけじゃないですけれども、今それぞれいろいろな規制があって、しかし反面においては暑中見舞いのはがきを大量に、ふだんごぶさたしているからということを含めてやったときに恩恵があるのかというと、全然ないのですね。私は別に政治家にしろと言っているわけではなく、本当にサービスをよくということであるならば、できるだけそういうことを考慮に入れた中でやることによって、あなたがおっしゃっている年賀はがきと暑中見舞いのギャップというものを詰めることができるのではないか、こんなふうに思うのです。例えば小包郵便宅配の問題も、民間との競争でゆうパックというような形で一生懸命頑張っているのですよ、こんな話が出ました。しかし、それぞれのイメージを受ける宣伝もさることながら、片方はドア・ツー・ドアとかあるいはまたその日にとか宣伝をして、ペリカンとか言われてアイデアも非常にいろいろな形で、本当に身近で早いという感じを受けるのですけれども、郵政が扱っているのは、おかたいかどうか知らぬが、ゆうパックといっても何だか知らない方が多い。これでは、あなたが一生懸命努力をされていても現実には逆な方向にあるんじゃないかと思うのです。そういう点ではむしろ民間の方が非常に精力的に、小荷物どころか最近は書類まで同じような形をとられているように聞いておるわけですけれども、その辺はどうお考えになっておりますか。
  31. 永岡茂治

    永岡政府委員 郵便小包とかそのほか郵政省の動きが鈍いという御指摘でございます。またPRが不十分ではないかといった御指摘かと思いますが、企業規模が大きいせいもございまして、確かにそういった動きが民間に比べて鈍いという御指摘は私どもも率直に反省しております。しかし、おくればせながら順次いろいろなサービス改善をやってきております。ゆうパックといった小包を送る箱にしましても、また小包に貼付するラベルにしましても趣向を凝らしましたし、翌日配達ということにつきましては、二月一日から郵便小包も同一県内または隣接県内には確実に翌日に届けられる仕組みになっております。  また、書類等を送ることについてどういうふうに思うかというお尋ねかと思います。それが信書であれば当然郵便法五条に違反しますので、警告するなりしておやめを願うということでございますが、いずれにしましても民間のそういった運送会社に負けない、むしろそれよりもまさったサービスをするように仕組みも変えてきておりますので、そういった方向をさらに深め、またPRの不足という御指摘につきましても、ことしの五十九年度の予算ではそういった経費も昨年よりはかなり大幅に見込ませていただいておりますので、そういったことにつきましても順次充実させていきたいというふうに思っております。
  32. 田中慶秋

    田中(慶)委員 それぞれ後追い的なというみずからの自己反省を込めて述べられておるわけですけれども、少なくともいろいろな問題点があろうと思うのです。例えば小荷物一つとっても、民間の場合は至るところで本当に身近に物の取り扱いをされているのに、郵便局まで行かなければできない、こんな形の問題やら、いろいろな問題があろうと思う。先ほど局長の方から、料金値上げについては当分云々と大臣は言われておりますということを言われ、また前の委員会でもそう述べられておりますが、今言ったようなそれぞれの企業努力をされないままに料金の改定とか値上げという発想は、当然今の時代に合わないと思う。今まで見てみますと、少なくとも五年サイクルで料金値上げをやってきておりますが、今局長がずっと述べられてきて私の質問に答えているように、いろいろな問題点がまだまだある。しかし、大きいから無理だということでは通用しないので、大きければ大きいほど、まして郵便法に基づく精神であればあるほど、そういう努力をみずからしなければいけないのだと思うのです。そういう点で、私は一連の考え方を申し上げてこの郵便料金の問題についてのけじめをつけたいと思うのですけれども、大臣にこの辺の決意のほどを述べていただきたいと思うのです。
  33. 奥田敬和

    奥田国務大臣 御指摘の点は私も全く先生と同意見でございます。前垂れ精神という言葉が合うかは別として、本当にそういった官業にあぐらをかいておるような姿勢からまず直していかなければいかぬということを強く申しておるわけでございます。確かに民間皆さん方の企業努力のいい面は大いに取り入れて見習っていかなければいかぬし、ただ長い百年以上にわたる沿革の歴史の中にあぐらをかいておるという批判は、もう本当に残念な限りでございます。ですから、御指摘のようなアイデアも、職員のみならず、先生方はもちろんのこと、利用の皆さん方からもどんどん出していただいた上で、できるだけ実行に移させているのもその一つでございます。先生から見るとおかしなことだ、まだ大したことじゃないと言われますけれども、あの暑中見舞い一つとりましても、今まで局職員が総力を上げてそういったコミュニケーション、心の通い合いということで、お正月だけではなくて暑中見舞いにもお願いしようという形の運動をささやかながらも展開しておるのも、自助努力によって何とかこの赤字を黒字に持っていこうという一つ努力のあらわれであるということも御認識賜りたいわけでございます。  ただ、今御指摘になったように、切手の売りさばき所や赤電話が設置してあるところがほかの宅送便の配達所になっておるという形なんかは、本当に大変大事な御指摘だと思います。赤電話、切手売りさばき所を委託しておるところは、むしろ郵便小包の、今のゆうパック小包の引受所あたりにまで選別してサービスを図っていくということも、大変いいアイデアをいただいたと私は内心喜んでおったような次第でございます。  したがいまして、安易な料金値上げをしないという決意は、先般来この委員会でも発言をいたしましたけれども、全くそういった値上げをしないという決意で臨んでおりますし、それもことしやらないとか来年やらないということじゃなくて、ここは歯を食いしばっても三年くらいは値上げをしないで、自助努力で何とかがんばってやっていこうじゃないかという形でおるわけでございます。  今後ともいいアイデアをお寄せいただきまして、沿革と伝統を持つ郵政事業に何とかお知恵をかしていただきたいということをお願いを申し上げます。
  34. 田中慶秋

    田中(慶)委員 続きまして、郵便貯金のあり方について大臣考え方を、あるいはまたそれぞれ当局の皆さん方のお考えをお聞きしたいと思うのです。  ところで、昭和五十九年度、六兆九千億の一つ目標が立てられているようです。前年よりも一兆円低いというこの目標額は間違いありませんか。
  35. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 五十九年度の目標は六兆九千億でございまして、前年度が七兆九千億でございますので、一兆円減額をいたしております。
  36. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、その減額の主な理由に、可処分所得の伸び悩み、民間での利回りのよいものに対する選好云々ということを述べられているわけです。しかし私は、先ほど来郵便の問題で申し上げているように、まさしく責任の転嫁ではないか、こんなふうに思うのです。例えば、ことし給料が十万円だったものが来年九万円でいいわけないのです。それぞれの目標に向かってむしろ少しでも前進をする、こういう形でなければいけないと思うのです。大臣を初め、これらについて、まさしく企業トップであるならば、その責任を問われても、そしてまた交代劇があってもやむを得ないことだと思うのです。そういう点を含めて、現実の問題として一兆円少ないのです、それは可処分所得、あるいはまた民間の利回りのよい方にいっているのです、こんな答弁は全然センスがないと思うのです。これらについてもう一度答弁していただきたいと思うのです。
  37. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 一兆円を減ぜざるを得ない諸状況について、先生指摘のような状況というようなものを総合的に判断をいたしたわけであります。私どもも、個人の零細な貯蓄、そして今日における貯蓄の重要性、高齢化社会等を迎えての貯蓄の重要性というものを踏まえたときに、より健全な資産形成のために最大限の努力をしなければならないということは言うまでもないわけでございますけれども、遺憾ながら、経済の諸情勢と貯蓄の動向というものはかなり緊密な関係を持っているわけであります。そういうようなものも反映しながら、実は昨年の七兆九千億という目標自体も、大変厳しい状況の中で、私どもはこれを達成することができたわけでございます。例えば昨年の預貯金の増加率の状況というものは、平均いたしますと七・八%という状況でございますけれども、郵便貯金について見ますと、対前年の伸びというのは一一・一%ということで、非常に厳しい条件の中でも我々はそれなりの努力をしてきたなという感じで受けとめているわけであります。  本年度の状況を眺めてみますと、自由金利商品というものへのシフトが一層強まるであろう、また同時に、高利回りの商品の開発ということに一層拍車がかけられるであろう、国債の大量発行というようなこと、そして期近債というようなものがまただんだんふえてまいりまして、こういったものと預貯金との競合というものは当然生じてまいります。また、銀行の窓口での国債販売、あるいは今後予定をされております公社債等のディーリングというようなこと、こういったものが従来の規制金利商品としての預貯金と競合するということは当然考えられるわけであります。まさに今日、金融革新あるいは金融革命と言われているような金融環境の変化というものは大変厳しい状況の中にあるということで、私どもといたしましても、最大限の努力をして本年度の六兆九千億という目標を達成しなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  38. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そういう一つ答弁もあろうかと思いますけれども、大臣にお聞きしたいのです。  去年とことしの経済成長率は、ことしの方がよく見ているわけです。それで、去年からことしは景気がよくなったと言われている。物価は二・八%で抑えますと政府は言っているわけです。そんなことを考えていたら、現実問題として、蓄えを含めて、もっともっと回転率がよくなる、こんなふうに一面言われているわけです。ところが郵便貯金は、去年とことしを比較すると、一三%も目標をダウンされているところは納得がいかないわけです。その辺、答弁していただきたいと思うのです。
  39. 奥田敬和

    奥田国務大臣 今年度の預貯金増額目標は、確かに昨年度目標より一兆円減の目標設定をいたしておるようでございます。今も貯金局長からお話しございましたように、去年も、民間各金融機関の伸びと比較いたしますと、やはり相当な目標を達成したことは事実でございます。ことしの経済情勢を踏まえ、貯金局自体がいろいろな調査に基づいて目標を設定したと思いますけれども、これはあくまでも最低の目標でありまして、私としても当然各職員に、今年度も昨年度に負けないような目標の額を達成してもらうように激励もし、お願いもしておるところでございます。  ただ、貯金動向自体が、経済成長とは別に全体的に伸び悩み傾向にあることは、これは民間金融機関とて同じ動向でございます。その中にあって、郵貯の場合、比較的順調に伸びを見せておることも事実でございます。  今日、昨年よりも一兆円下回った目標いかんについてはいろいろな論議もあるところでございましょうけれども、まあ七兆円近い最低の目標達成という形、それをさらに上回る形の預貯金達成ということになれば、伸び悩みの現状の大勢の中でも私はそれなりに一つ努力の成果として認めてやってもいいのじゃなかろうかと思っておるわけです。  ただ、先生の御指摘のように、経済の成長も含めて物価も安定している現状において、可処分所得だって決してまあそんなに悲観した情勢ではないという状況の中で去年よりも落ちた目標にしたのは、まず企業意欲というものに関してもう全くその辺からファイトがないじゃないかという形の御指摘もあろうかと思いますけれども、私は、この目標は最低目標として、昨年度の目標値に迫るように必ず努力して実現したいと思っておるところでございます。
  40. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、それぞれの社会環境の中で、あるいはまた金融のいろいろな問題、諸情勢の中で大変なことだと思うのですけれども、しかし現実問題として昨年の目標を大幅に下回るということ自体は、幾ら弁解しようが、皆さんで懸命に企業努力をされているといっても、そういう点については私どもはこの評価を幾らしようとしてもできないわけであります。一兆円も低いという問題は、これからもぜひ皆さん努力で、この六兆九千億の目標をはるかオーバーして、今大臣が言われているように昨年並みにぜひ努力をしていただくことを、皆さんがせっかく機械化もしていろいろなことを含めてサービス向上に努めているのですから、そういう点を含めてやっていただきたいと思うのです。  ところで、郵貯の資金の運用先でありますけれども、特に国鉄、林野事業についてそれぞれ財投機関として投資している、こういう形で資金運用をしていただいているわけですけれども、返還の見通しがつかないのではないか、こんなことをある専門紙は伝えておりました。この辺について大臣はどう考えておりますか。
  41. 奥田敬和

    奥田国務大臣 詳しくは今政府委員から答弁させます。ただ、簡保はまた違いますけれども、郵貯の場合は、財投の原資としてすべてが資金運用部に預託されていることは御存じのとおりでございます。したがって、今御指摘になったような、はっきり言って、これは形容は悪いのですけれども、民間金融機関の場合でしたら焦げつきになるような形の運用というのはどういう方向になるのだということであろうと思うのです。  しかし、この預託資金の運用に関しましては、これは国の責任でございますけれども、大蔵省が一元的に責任を持ってやっておるということでございます。そういった形の中での運用でございますので、私に言わせますと、そういったこと等もあり、今日の金利の自由化体制の方向もあり、我が方も責任を持ってお預りしておる本当に汗とあぶらの結晶である少額預貯金の運用というものを自主的に運用させていただきたいということで、かねて折衝しておるところでございます。そういう点におきまして、また先生の御理解と御支援をお願いいたしたいと思っております。
  42. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 ただいま大臣から詳細御答弁を申し上げたとおりでございまして、私どもの資金はまさに大蔵省資金運用部に一元的にすべて預託をしているということでございまして、この運用につきましては、大蔵省の資金運用部の方がその責任と権限において処理する事柄でございますが、しかし、資金運用部の最大の提供者としての私どもの立場から考えましても、運用状況については重大な関心を寄せざるを得ないわけでありまして、資金運用部資金法におきましても、確実、有利に運用するということがされているわけでございます。そういう趣旨に沿った運用がなされるように重大な関心を持っているということでございます。  なお、預金者に対する郵便貯金の払い戻しにつきましては、国が法律で保証いたしておりますので、その点については預金者に不測の事態を起こすようなことはないと考えております。
  43. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、それぞれ国民の貴重な血とあぶらの結晶であります預金を預かって、そしてまた、今のように財投の問題も含めて運用の先が返還の見通しがつかないということであっては不安の材料が一つふえることになろうと思うので、幾ら法律で保証されているからといっても、こういうことについてはやはり見通しのつくような方向というものを明らかにすべきだろう。そうでしょう。皆さんが提供者なんですから、そのくらい明確にしていただいて——銀行だったらお金を貸さないですよ。返還の見通しのないところにお金を貸していただけますか。それは幾ら法律で国が保証するといってもそこまで、貸さない云々ではなくして、やはり今の国鉄、林野という問題を含めて、ある程度そういう見通しなりを明らかにすべきだろう、こんなふうに思うのです。大臣も先ほどこれら問題について前向きに述べられておりましたけれども、こういう問題を含めて私は積極的に考えるべきだろうと思っております。  特に、貯金の払い戻しの安全性という問題が、結局貯金をいろいろな形で目減りをさせる方向になると思うのです。皆さんがそれを一生懸命弁解して安全だ安全だと言えば言うほど、逆にその裏を心配する可能性も出てくるわけです。まして、国鉄、林野がこういう形の状態で膨大な赤字をしょった中でいろいろなことをされているわけですから、それで安全だ安全だと言ったところで、片方については、それが本当に安全なのかどうかという疑問を持つことも明らかだと思うのです。そういうことのないようにぜひお願いしたいと思うのです。  ところで、大臣がいみじくもこの資金の自主運用という問題について、今の金利の自由化を含めていろいろな問題が検討されている中で、大臣みずから今述べられたわけですが、こういう問題を含めて具体的に何かお考えになっているのですか。
  44. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 大臣もただいま御答弁申し上げましたように、私ども、金利の自由化ということに対応いたしまして郵便貯金が自由化に対応できる仕組みというものを考えた場合に、運用の面についてもその仕組みを取り入れなければならないと考えているわけでございます。金利が自由化になりますれば、各金融機関が市場実勢に応じた預金金利というものを自主的につけていくということでございます。したがいまして、私どもも郵便貯金の利用者に市場実勢を踏まえた合理的な金利というものをおつけしなければならないわけでございますが、しかし、私どもがお客様にお払いする利子というものも、言うならば私どもの資金が運用されて、その運用から上がってくる収益の中でこれをおつけする以外にないわけでございますが、その運用収益というのが資金運用部の方で政策的に決められておるということになりますれば、市場実勢とリンクをした形で預金金利をつけていくという仕組みができないわけでございます。  したがいまして、資金運用の方につきましても市場実勢が反映できるような仕組みということで、実は昭和五十九年度予算におきまして、郵便貯金資金による国債の引き受け一兆円というものを要求をいたしたわけでございますが、十分な御理解をいただくという時点までまいりませずに本年度を迎えたわけであります。今後とも、金利の自由化というものが大変急速な状況で進展をするということを踏まえまして、積極的に対応してまいりたいと考えているところでございます。
  45. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしてもこの郵貯の問題について、資金の運用を含めてやはり抜本的な考え方が迫られていると思います。それはまさしく金融界全体の問題であろうと思うし、特に民間との競争の中で、先ほど来御指摘申し上げたようにことしもう目標の中で一兆円も伸び悩みをしているわけですから、そういう点を考えたときに、では対抗商品をどうするのだ、自主開発をするにしても、資金がなければできないわけでしょう。そういうことになってまいりますと、そのまま指をくわえていくならば、どうしてもこれからもだんだん下火になってしまう。  そこで、今言われたように、自主開発をするために対抗商品をどうするか。例えば高利回りの貯蓄公債を発行するとかいろいろなことを考えてやるにしても、資金で攻められていた場合には現実にはできないだろう、そうすると郵貯そのもののあり方もこれから問われてくるだろう、こんなふうに考えますので、こういうことは積極的に、前向きにやっていかなければいけないだろう。財投だけの限られた中でやっていたのでは当然いろいろな問題が出てこようかと思いますので、こういう点を含めて、開発計画というものが新たにあるかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  46. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 先生指摘のとおり、自由化対応ということ、今日の大変変化の激しい金融情勢の中で郵便貯金が多くの国民の皆様方から御利用いただけるためには、それなりの商品開発というものがぜひとも必要であるということについては私どもも十分認識をいたしておるところでございます。  幸い、この三月の末にオンラインの全国ネットワークが完成をいたしまして、かねてから準備もいたしてきたわけでございますけれども、オンラインを使ってのサービス、例えば総合通帳サービスとか公共料金の自動払い込みとかあるいは年金、株式配当等の自動受け取り、こういう新しいサービス全国的に取り扱うことができるようになったわけでございますので、この辺の点につきまして十分な浸透と利用の勧奨というものを深めてまいりたい。  さらに、先ほどから申し上げているような金融の自由化に対応いたしましては、運用面も含めて、私どもが現実に新しい商品を開発する場合には制度的な制約もいろいろございまして、そういった点についての見直しというようなことも含めて対応していかなければならない、こういうように考えております。
  47. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、大蔵省の方では既に利子配当課税等の見直しについて検討が進められておるようですけれども、郵政省はその辺はどう考えておりますか。
  48. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 少額非課税制度それ自体あり方について、政府税調においてもこの夏をめどに検討を進めているということは承知をいたしているわけでございますが、私ども、少額貯蓄制度そのものについての考え方といたしましては、これからの高齢化社会に対応していくために、世論調査を見ましてもかなりの層が老後の生活についていろいろ不安を持っている、また自分で貯蓄をして老後に備えようということがかなり重点的に取り上げられているというような状況を見た場合に、やはり貯蓄の重要性というものはますます必要になっていくであろうということで、郵便貯金が非課税ということで長年にわたって定着、浸透していることも踏まえまして、今後ともこの非課税貯蓄制度というものは維持されていくべきであろう、むしろ今日の経済情勢を見た場合に、限度額の引き上げというようなことによってさらに自助努力に対する促進の手だてを講ずべきではなかろうか、こういいうふうに考えているところでございます。
  49. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで大蔵省にお伺いしたいわけですけれども、現在グリーンカードが凍結中であり、今の財政とかいろいろな問題を含めて、これに相当するような新しい考え方を大蔵省はお持ちだというふうに聞いておりますし、あるいは新グリーンカード構想であるとかいろいろなことが言われておるのですけれども、この辺についてどのようにお考えになっておりますか。
  50. 伊藤博行

    伊藤説明員 グリーンカードの問題につきましては、先生御案内のように、五十八年度の税制改正におきまして適用が三年間延期されております。当初は五十八年一月一日からカード交付ということを予定しておりましたが、三年の延期ということでございますので、六十一年一月一日という格好に現在の実定法はなっておるわけでございます。  ところが、御案内のような経緯もございまして、税制調査会では、利子課税のあり方というものをもう一度原点に立ち戻って検討すべきじゃないかということで、昨年の夏から御審議いただいております。昨年の秋の段階、十一月でございますけれども、中期答申という格好でそれまでの検討の結果が取りまとめられております。そこでは利子課税の基本的な考え方といいましょうか、そういう点までは御議論いただき御答申になっておりますけれども、具体策については残念ながらまだちょうだいしておりません。  その後、年が明けまして五十九年度の税制改正を行うに当たりましても、利子課税の問題も御議論がありました。そこでは、先ほど先生もおっしゃいましたような各論的な議論も若干ございましたけれども、なお議論を一本に集約するには至らないということで、引き続き検討という状態になっております。ただ、冒頭申し上げましたようにグリーンカードの施行時期との関係で、余り長く検討期間を置くわけにはいかない、できればこの夏を目途に答えを出すべきではないかということで、税制調査会の年度答申にもその旨が記されております。私どもも、税調の答申の審議状況を踏まえまして、私どもなりにまた考え方を固めていかなければならないと思います。  新聞等にいろいろなことが書かれておりますけれども、大蔵省としては、現時点では具体案としてこういうことでお願いしたいというところまではまだ固まっておりません。
  51. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今このグリーンカードの問題について、それぞれ過去のいきさつはともかくも、税調を含めて大蔵省の一つ考え方を述べられたわけですけれども、新グリーンカードという構想がいいかどうかは別問題として、夏ごろをめどにしてこの結論が出るということですね。
  52. 伊藤博行

    伊藤説明員 税制調査会の年度答申で、夏ごろを目途にしてその具体策を出すのが望ましいというふうに記されております。その審議自体は税調の審議ということに相なりますので、私どもとしてはそういう方向で御議論いただけるんじゃないかというふうに期待しておりますけれども、現時点での一応の目途というのは夏ということで言われております。
  53. 田中慶秋

    田中(慶)委員 夏を目途にということは、夏を一つのめどとしてもう作業を進めている、こういうふうに受け取っていいわけですね。
  54. 伊藤博行

    伊藤説明員 先ほど申しましたのは、税制調査会の審議の結論を出すのが夏を目途と。  もっと端的に申し上げますと、六十一年一月一日というのがグリーンカードの実際に動き出す時期でございますので、そのときにグリーンカードそのままを実施するのであればそのままでいいのですが、もしそれとは違う何らかの答えということに相なりますと、六十一年一月一日までにはそれにかわる何かが実定法として制定されている必要がある。そういたしますと、年度区分で申し上げますと、六十年度の税制改正の段階では今後の方向が具体的になっている必要があるということでございます。例年のスケジュールで申しますと、大体年内には税制改正案ということが取りまとめられるのが通常でございますので、そういう意味でのタイミングとしては年内でございますけれども、税調はそれよりも少し前広に夏を目途にというふうに言っておられるわけでございます。
  55. 田中慶秋

    田中(慶)委員 わかりました。いずれにしても税調がそのように進めているということは、大蔵も含めて作業を進めているというような解釈にも相なろうかと思いますので、そういう点を含めて理解をさせていただきたいと思います。  そこで、簡易保険年金等の問題で若干触れたいと思うのです。  例の簡易保険の成績というのは、最近非常に新規契約の伸び悩みということを承っております。そういう点で五十七年度は三十六年以来の一〇%を割るという現状の数字を承っているわけです。将来的に見た場合、経営上も必ずしも楽観が許されない、こんなことを含めて考えられておりますし、現状の簡易保険なり年金事業の今後の問題を考えてまいりますと、その原因や、あるいは見通し、そしてまた積極的な新たな制度改革等々を含めて何らかの考え方があったら述べていただきたいと思います。
  56. 奥田量三

    奥田政府委員 簡易保険の業績につきましては、おかげさまでこれまでのところ年々着実な伸びを続けております。ただし、年々伸びてはおりますが、ただいま御指摘のように、最近におけるその伸び方、増加の割合について見ますと、保険料の収入におきましてもあるいは保有契約高におきましても、例えば保有契約高について見ますと、これまで大体二けたの伸びを示していたものが、五十八年度においては九・何%、ただいま決算集計中でございますが、九%台、一けた台に低下をするというような状況でございまして、若干伸び悩みの傾向ないしは兆候を示し始めたと言えようかと思われるところでございます。これはやはり最近におけるいわゆる経済の低成長、それに伴う可処分所得の伸び悩みといったようなことが原因になっているものと考えられるところでございまして、民間の生保においてもほぼ同様の傾向になっていると承知いたしております。  しかしながら、我が国ではこれから急速な高齢化社会の進展が見込まれます。一方、それに対応すべき社会保障制度につきましては、財政事情その他から公的年金についていろいろの問題が発生をしてきている。そういう状況の中で、今後国民の自助努力に基づく保険あるいは年金の果たすべき役割はますます重要になってこようと思われるわけでございまして、こういう状況の中で簡易保険、郵便年金事業といたしましても、今後、例えば加入限度額の引き上げ等を初めとする制度、サービス面の改善、また資金運用の効率の改善事業経営の効率化合理化というふうなことを積極的に推し進めまして、経営基盤を強化しつつ国民の期待にこたえ得る簡保事業サービスを提供してまいらなければならないと考えているところでございます。
  57. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今それぞれの決意が述べられておりますけれども、いずれにしても特に民間との競争が厳しい簡易保険の問題があろうかと思います。そういう点ではあらゆる努力をされて、新しい商品等も含めながらぜひひとつ御検討いただきたいと思う次第であります。  そこで、次に電電の問題に移ってまいりたいと思います。  電電公社民営化の問題でありますけれども、電気通信事業への民間の参入を図る電電改革の二法について郵政省はどのような方針で臨むのか、その辺の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  58. 小山森也

    ○小山政府委員 電電三法でございますけれども、これにつきましては、時代の技術的な背景といたしまして、いろいろな新規の技術が発達いたしましてニューメディアなどが非常に出現してまいりました。そのために、これを供給する側であるところの電信電話公社だけではいろいろなメディアに対応するサービスが完全を期せられないというような状況が出現しましたと同時に、また民間の各社の技術も向上してきた、また資金の調達能力も向上したということで、これはむしろ電気通信事業を一元的に行うということよりも、競争原理を導入していろいろな事業者によって事業を行うということが、最終的なユーザーでありますところの一般国民の皆様方にとって安くて良質な、かつ、いつどこにいても使える電気通信というものに近づくことができるのではないかということで、今回改革という方向で競争原理の導入、また多元的な事業者の導入ということに踏み切ったわけでございます。
  59. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そういう中で、株式会社になると思うのですけれども、特殊会社法と事業法の二重の規制を受ける民営会社として、今おっしゃられた一つの発想なり独自性が本当に発揮できるかどうか、その辺についてどう考えておるのですか。
  60. 小山森也

    ○小山政府委員 御指摘のように、新しい電電株式会社というようなものが御審議されて可決されましたならば、目標といたしましては、電電会社が自主的で弾力的な事業運営を行うということに焦点を絞って行うべきであろうと思います。そういう点におきまして、会社法というものがどういうふうに政府の関与等があるべきかということにつきまして、他の類似の特殊会社に対する関与のあり方にも配慮いたした次第でございます。  例えばその例といたしまして、事業計画について言いますれば、現在我が国には七つの特殊会社があるわけでございますけれども、いずれも法律事業計画を主務大臣の認可事項とすることを明定しております。さらに、中には事業計画、さらに資金計画、予算計画も認可事項とするというようなことになっておりますけれども、こういったものはとっておりません。それから、役員の任免にいたしましても、他の特殊会社に比べまして必ずしもきついものとはなっておりません。結局、新電電会社につきましては、資産規模とか三十二万人の従業員というようなことがありますと、政府の関与が現在の法案では極めて緩やかな方ではないか、このように考えております。
  61. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間も余りありませんから、答弁は簡略にお願いしたいと思います。  今私が申し上げた趣旨に対する答弁じゃないと思うのです。私が申し上げたのは、特殊会社法と事業法との関連で独自性が本当に発揮できるのかどうかということを聞いているわけですから、その辺を明確に、本当に短く答えていただきたいと思います。
  62. 小山森也

    ○小山政府委員 政府関与は最小限に抑えてありますので、自主性は発揮できると私は信じております。
  63. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても一つ企業で二つの人格を持つような形になろうかと思うので、そういう点においては、できるという保証もなければできないという保証もないかもわかりません。しかし、現実にスタートされるわけですから、もう既にこの時点からその心配が出ていることは事実ですから、そういう点を含めてこの独自性を十二分に発揮できるようにしていただきたい、こんなふうに思います。  ところで、実は今許認可業務の中で、今度の改正事項で例えば許可が六十三件、認可が十四件、こんな形でそれぞれの問題が出ていると思うのです。しかし、民間会社が許可とか認可、大変不自然な形なんですけれども、法的な根拠を含めて今日までの経過を考えると、行革絡みの中でこの許認可が多過ぎやしないか、こんなふうに思うのですけれども、臨調の精神がどこに行っているかわからないわけで、こういう点を含めて考え方を明確にしていただきたいと思います。
  64. 小山森也

    ○小山政府委員 基本的に予算統制をするということもありませんし、主要な料金についても今までに比べまして柔軟になっているというようなことでございまして、今までよりも質的に異なった形での自由な事業運営が行えるようになっていると考えております。ただしかし、運営に当たりましては、先生指摘のように、私どもせっかく会社をつくるのでございますから、そういった意味で政府関与が運用の面を実際問題として拘束することのないように、政府当局としては十分な配慮をした運用が大事であろうと思っております。
  65. 田中慶秋

    田中(慶)委員 運用の面の問題だけではなく、今申し上げたように、例えば許可認可の問題一つとっても、先ほどの大臣の行革なり合理化推進に基づいてという感覚からすると、許可が六十三件あるいはまた認可が十四件というのは行革の精神を含めて多くないかと申し上げているわけですから、その辺どうですか。
  66. 小山森也

    ○小山政府委員 許可の六十何件というのはちょっと私ども経理しておりませんけれども、全体といたしまして許可認可というのは従来に比べて非常に緩やかになっておりまして、質的に変わっていると私ども信じております。
  67. 田中慶秋

    田中(慶)委員 これでやりとりしていてもしょうがないのですが、いずれにしても今申し上げた件数というのはそれぞれカウントしている数字でありますから、よく調査をしながら、現実答弁をする側としていま少しその辺の数字をちゃんとつかんで答弁をしていただきたいと思うのです。  ところで、大臣が本会議場その他においても、民営化になり、将来分割分離の問題が大変心配をされておるわけですけれども、三十二万、日本で最大の企業になるわけです。資本金が幾らになるかわからぬということですけれども、大体この辺もおかしいわけで、会社をつくるのに資本金が幾らになるかわからないというのもわからないのですけれども、しかし現実問題として一番大きい企業、こういう問題を含めて民営、その中においての分離分割ということは将来とも考えてないわけですね。この辺は大臣に。
  68. 奥田敬和

    奥田国務大臣 今度の法案は大いに競争原理を発揮していただこうという、しかも新しい高度情報社会に対応した通信体系ということで、国会に御審議願っておるところでございます。したがって、将来のことということになりますと、今度の法案にも五年見直し、あるいは事業法に対しては三年見直しというような見直し規定まで設けてあるということは、依然として一元体制の独占状態が続くということになれば、今先生が御指摘になられたような体制も生まれてくるということも当然予測されると思います。
  69. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間も参りましたので、今これ以上詰めることはできないと思うのですけれども、ただ最後に、今大臣が民営になったときの態度を明確にされましたけれども、将来とも今の不安というものがないような形の中で所期の目的を達成されるようにこれは取り組んでいかなければいけない問題だと思います。特に軽々に分離分割ということを考えるのも、これは大変関心の多い問題ですし、こういうことを含めてもやはり重要な問題だろうと思います。そんなことを含めてこの辺は、今大臣答弁され、従来からの主張というものを申されておりますけれども、これからもひとつ明らかにしていっていただきたいと思います。  そして、今ニューメディアの時代とかいろいろなことを言われておりまして、そういう点では、最近光ファイバーの問題とかいろいろなことを含めて新しい技術革新、先端技術の問題で、この電電の問題については特に民営化の中で苦慮されてくると思います。特に国鉄新幹線沿いあるいはまた道路公団高速道路等々を含めて、きょうの新聞その他でも新しくこの光ファイバーの敷設、進出の問題やらあるいは新しい構想等について述べられているわけでございまして、これらについて国鉄、建設あるいはまた電電の皆さん方、いずれにしても最終的には端末の電話網を使うわけですから、その態度なりあるいは経過なり、そして今後の問題について、利用者負担にならないようにということが最終的なことになると思いますが、そんなことを含めながら、皆さん方のそれぞれの考え方を述べていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  70. 奥田敬和

    奥田国務大臣 公社総裁からも答弁があると思いますけれども、今先生の御指摘のように、この新しい通信事業法案、そしてこの新会社法案が成立した時点において、まさに本当に立派な競争原理が働いて第二電電に相当するような形の会社が出てくると思います。現にきょうもいろいろな動きがあるようでございますけれども、そういった形で公正な競争原理が働いて、しかもそのサービスが利用者である国民に最終的に還元されてくるということが一番大事なことでございます。従来、全国的にあまねくネットワークを敷いていただきまして、本当に安い料金のサービスということをモットーにしていただいてきたわけでございますけれども、今日新電電に対しても、さらに新しい競争会社の出現による全く公正な競争によってそういったサービスが一層国民に還元されることを期待するわけでございます。
  71. 真藤恒

    ○真藤説明員 私ども新しい法体系の中に入ることになりましたら、現在私どもが今の法体系でやっておりますよりもかなり自由度、自由度の裏返しの責任というものは重たくなるということははっきり認識いたしております。そういう意味で、この法の趣旨に従って今よりもさらにいいサービス、さらに料金の見直しということを財務の許す限り続けていかなければ、新規参入の新しい競争状態になってきましたときに世の中に非常に御迷惑をかけるような混乱状態を起こす可能性もございますので、この新規参入が具体的に入ってきます前にかなりの体制を整えたいというふうに考えております。  今の御質問の分離分割というふうなことは、新規参入の入ってくる具体的な姿に応じて、それに対抗するという意味で考えていかなければならぬのじゃないかというふうに考えておりますので、今新規参入が具体的にどう入ってくるかわかりませんときには、まだこの問題はしばらく棚上げにさせていただきたいと思っております。
  72. 村上春雄

    ○村上説明員 国鉄の電気局信通課長の村上でございます。  国鉄といたしましては、例えば大都市間を最短距離で結びます新幹線に代表されますように、全国に張りめぐらした線路敷がございます。それから、長い間日本国内におきましては最大の自営通信網を建設また運営してまいりました経験と、それから技術者がたくさんおります。そういったものがまた社会のお役に立てれば非常に幸いでございますし、そういった面で、昨年以来プロジェクトチームをつくりまして、事業の採算性の問題あるいは法令関連の問題あるいは技術的な諸問題、これがたくさんございますけれども、そういったことにつきまして積極的に勉強を進めてきた次第でございまして、なるべく早く事業の採算性等も詰めましてその意思を決めまして、しかもそういった以上はなるべく早く新規の分野に参入できるように、お役に立てるようにということで努力を進めております。  以上でございます。
  73. 真嶋一男

    ○真嶋説明員 現在、電気通信法体系の改革が検討されているところでございますが、これにより電気通信事業分野競争原理が導入されることになりますと、大容量の通信回線サービスについて新規参入が予想されるところでございますが、この大容量の通信回線サービスの幹線ルートについては、高速道路もその一つの対象として考えられるものであると思っております。  高速道路には既に道路情報用の通信回線がその全線にわたりまして敷設されているところでございまして、建設省といたしましては、今後道路情報を含みます多様な情報を伝達する大容量の光ファイバーを敷設して高速道路利用者の利便の増進に資するとともに、さらに幅広く通信回線として活用するということを検討しているところでございます。  検討に当たりましては、各界の有識者から成ります懇談会におきまして御意見をいただいているところでございますが、その具体化につきましては、新しく設立する予定の財団法人道路新産業開発機構、仮称でございますけれども、そこにおいて調査研究を進めていくということを考えております。  以上でございます。
  74. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  75. 片岡清一

  76. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 まず電気通信事業法案、本会議でこの前趣旨説明がありました法案の八条について関連してお伺いしたいと思います。  電気通信事業法案の八条には「天災、事変その他の非常事態が発生し」と、非常事態というのがあるわけですが、これはどういう事態を指すのか。問題は、この中に有事、すなわち一般的には、自衛隊法などでは外部からの武力攻撃、そのおそれのある場合を含めて有事と言っているようですが、こうした有事はこの中に含まれるのかどうか、お伺いします。
  77. 小山森也

    ○小山政府委員 非常事態と申しますのは、私たちの理解といたしましては、通常の状態ではなく、住民の生命財産の安全または公共の安全が脅かされるような事態、こう理解しております。  それでは有事法制との関係はいかがかという御質問でございますが、この問題との関連につきましては目下検討中でございます。
  78. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは同じ八条で、「発生するおそれがあるとき」とありますが、これはどういう状況、事態を指すのか。このような場合、必要な通信の優先的な取り扱いをするとかあるいは業務の一部を停止するとかいうことになるわけですが、「おそれがあるとき」であるという判断は直接的にはだれがするのかという問題です。判断権がこの条文の主語としての電気通信業者にあるということになりますと、業務の停止だとかあるいは優先的取り扱いというものが私的になされて、一般通信サービスを軽視するというおそれを感じてお尋ねするわけです。
  79. 小山森也

    ○小山政府委員 非常事態が発生するおそれがあるときというおそれでございますけれども、非常事態が発生するという蓋然性が客観的に明白であり、かつ、その非常事態の発生が時間的にも差し迫ったものとなっているとき、このように理解しております。例えば、地震や洪水などの災害の発生の可能性が気象データ等から客観的に明らかであり、しかもその発生が時間的にも切迫したものとなっている場合、これをおそれがある、このように理解しているわけでございます。  それでは、この非常事態に該当するかどうか、だれが判断するのかということでございますが、第八条は、天災、事変により通信がふくそういたしまして、すべての通信を同一に取り扱っては緊急を要する通信が遅延するような場合における優先取り扱いでございます。したがって、そのような状態にあるかどうかということは、その扱いをいたしております当事者でございませんと異常ふくそうであるかどうかという判断の客観的な物差しがないわけでございます。したがいまして、具体的には事業者がこの判断をすることとなります。しかし、先生指摘のように、事業者の勝手な裁量によることは問題ではないかということでございます。確かにそのとおりでございまして、非常事態がどのようなものを指すかについての原則的な解釈は郵政大臣が行い、その趣旨についてはあらかじめ電気通信事業者に十分理解しておいてもらうということが必要だろうと思います。
  80. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では次に、「秩序の維持」というのが入っておりますが、これは治安という問題も対象になるわけですか。
  81. 小山森也

    ○小山政府委員 「秩序の維持のため」と申しますのは、天災、事変その他の非常事態が発生し、または発生するおそれがある場合には、平常の場合とは異なりまして、社会的な混乱を生じ、住民の生命財産が危険にさらされるおそれがあるということから、このような社会的混乱が生じないよう社会の規律を維持すること、これを意味しているわけでございます。
  82. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今の、治安の問題はどうですか。
  83. 小山森也

    ○小山政府委員 治安の場合が含まれるかということでございますけれども、それが平常の状態でなく、秩序維持のために必要な条項として電気通信の面から来る場合には含まれるわけでございます。
  84. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今の天災、事変その他の非常事態に関する通信の扱いにつきましては、現行の公衆電気通信法などにも見られるわけですが、現行法と新法案では異なるところがあるのかどうか、まずその点を伺います。
  85. 小山森也

    ○小山政府委員 現行法は、公衆法第六条に基づきさらに各利用のいわゆる通信の役務というのが法定化されております。したがいまして、法定化された電報の中におけるこういった非常事態に対する取り扱い、電話の非常事態に対する取り扱いということは、それぞれ分けてかけてありますけれども、今回の法案におきましては、これを総則として全事業者にかけているわけでございまして、本質的に電信電話というものにかかわるそれらの役務が法定化されていないところから来るところの総括的な事項となっているわけでございます。
  86. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 確かに、現行法は法定化されている、新法案では法定化されていないという問題で考えてみますと、結局「発生するおそれがあるとき」ということが総則に入っているということも考えて、現在よりも幅広く適用する、そのようにできるというようになっているのかどうか、お伺いします。
  87. 小山森也

    ○小山政府委員 現行法におきましても第六条において包括的な総則的事項がございます。ただ、サービス、それぞれの役務が法定化されていないわけでございますので、その総則的事項を今回第八条の方に移したわけでございます。
  88. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そこで、今度の法案では、今まで法定化されているものが総則に移されて、具体的内容が法文の上では明らかにされていないわけですが、そういう場合に優先的な取り扱いというのはどういうことを行うのか、特に現行法と比べてどこが違うのか、通信手段に従って明らかにしていただきたいと思います。
  89. 小山森也

    ○小山政府委員 本質的には変わるものではございませんけれども、具体的には、各事業事業体の方におきまして約款の中において具体的な事項を述べるということになろうかと存じます。
  90. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それで、自衛隊法の百四条では、防衛出動の際の公衆電気通信設備などの優先的な利用が定められております。それから七十八条や八十一条の治安出動、八十三条の災害派遣、八十三条の二の地震防災派遣、こういう場合においては各自衛隊の権限が定められているわけですけれども、自衛隊法には、防衛出動の場合と異なって、電気通信設備などの優先的な利用あるいはその使用ということが治安出動や災害出動などの場合には規定がないわけです。そこで新法案では、自衛隊に対する通信設備の優先利用を図る措置、こうしたものを予想してつくられているのかどうか、お伺いします。
  91. 小山森也

    ○小山政府委員 自衛隊のみに優先的というようなものは予想しておりませんが、全体として具体的にどのようなことになるかということにつきましては、目下検討中でございます。
  92. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 自衛隊の災害派遣あるいは地震防災派遣の場合は、新法案八条の「天災、事変その他の非常事態」ということに該当するのじゃないかと考えられます。自衛隊法では「人命又は財産の保護のため必要があると認める場合」というふうに規定されているわけです。この自衛隊の災害派遣の場合の通信、これは優先的に取り扱うということになるわけですか。
  93. 小山森也

    ○小山政府委員 先ほどから申し上げておりますように、そういった非常事態が生じまして、しかも通信が非常にふくそうして、それで一般通信がそれによって全体が法の建前のように扱えないような状態になったときに、そういった「公共の利益のため緊急に行うことを要する」という場合においては、それが自衛隊でありましょうと、そのほかのものでありましょうと、「重要通信の確保」という条項に入ってくるわけでございます。
  94. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、今度は治安出動の場合、「事変その他の非常事態」ということに見られると思うわけですが、「秩序の維持のために必要な事項を内容とする通信」、これは優先的に取り扱うということになるというように考えられます。このことは現行法との関係、特に自衛隊法では規定されていないことでありまして、公衆電気通信法などでもなかったことですけれども、この治安出動の場合そうしたものが法律上の規定がないと思うのですけれども、新法案を見ますと、こういう場合もやはり適用できるということになるのではないかと思いますが、いかがですか。
  95. 小山森也

    ○小山政府委員 治安出動の場合どうであるかということにつきましては、目下検討中でございます。
  96. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 報道によりますと、この新電電三法案を政府・自民党が取りまとめるに当たりまして、藤尾自民党政調会長が、通信情報処理業務が安全保障、治安上有効に活用できるような体制のもとにある必要があるとして、有事の際には警察、自衛隊の通信回線の切りかえを優先的に行える条項を設けるように要請した、政府はそれに沿って法制化したという報道がされております。このような条項というのは、法案のどういうところに生かされているのか、お伺いしたいと思います。
  97. 小山森也

    ○小山政府委員 これにつきましては、第八条がもともとございまして、そういうことを取り立ててこれに応じた形のものではございませんが、これの具体的な理解の仕方というのはそれぞれあろうかと思います。私ども、政府の立場といたしましては、「重要通信の確保」ということが第八条に書かれており、これをもって足りるものと考えておりますが、それが今御指摘の、自民党サイドのそれに当たるかどうかということについては、これはまた別の問題であろうと考えております。
  98. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 報道では、閣僚と協議したというようになっております。政調会長が裁定案を示すに先立って、郵政、通産、内閣官房、行管の関係閣僚と協議した、この席で政調会長が、大規模災害や有事の際、電気通信回線を公共用に優先的に利用させる、こういうことを言われたように書いてありますが、これは大臣にお伺いしますが、このことについてどういうお話であったか、これに対してどういう対応をされたか、お伺いします。
  99. 奥田敬和

    奥田国務大臣 先生にお答えしますけれども、そういった形で政調会長から私に意見を求められたということはございません。特にこの八条の問題に関しましての解釈でございますけれども、先ほど来の先生の御質疑の経過を踏まえましても、私として余り歯切れのいい答弁はできません、残念でございますけれども。ということは、非常事態とはということの定義自体が、非常事態に優先的に取り扱う、災害あるいは天災、事変等という形、つまり一般的には住民の生命、国民の生命財産の安全または公共の安全が脅かされる事態を指しておるわけでございますけれども、先生指摘される有事が八条に言う非常事態に当たるかどうかということについては、実は今、本当のところ政府部内で検討中という段階でございます。
  100. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは次に、市川市の郵便集配受け持ち区域に関する問題に移ります。  市川の市長が、住民を代表されまして一九七八年と一九八二年の二回にわたりまして関東郵政局あてに、江戸川以北の大洲、大和田、東大和田、稲荷木、田尻、高谷、原木、二俣などの行徳郵便局管轄の郵便局につきまして、これを市川郵便局の管轄にしていただきたいという要望を出されております。これに対する回答は、予算事情から当面要望に沿うことは困難であるということになっておるようですが、現在においてはこの要望に対して、住民サービスということから見て何らかの対処をされようとしているのかどうか、お伺いします。
  101. 永岡茂治

    永岡政府委員 ただいまお尋ねの市川市の江戸川以北の地域、大和田町等を現在行徳局で集配を行っておりますが、それを市川郵便局に移管してほしいという陳情が過去何回か関東郵政局の方に出されていることはよく承知しております。ただ、市川郵便局の局舎が狭いという事情のために、これまでは御要望になかなか沿いかねるという消極的な御返事をいたして有りましたが、実はこの二月一日からの運送施設の改定によりまして、市川局の人員が、約二十名程度でございますが、千葉の方に配置がえになりまして、そういった意味では若干の局舎スペースの余裕が出てまいっておりますので、そういったことも含めまして、改めて前向きに検討させていただきたいというふうに考えております。
  102. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 前向きに検討されるということをありがたくお受けしておきます。  関連いたしましてちょっと申し上げますと、江戸川以北の先ほど言われましたような地域から市川郵便局までであるならば、これは歩いて近いところは二十分、遠いところでも三十分というところで行けるわけです。ところが管轄郵便局の行徳郵便局まで行こうとしますと、これはもう歩いて行ける距離ではないわけです。ですからバスに乗るわけですけれども、バスも乗り継ぎをしなければならないということで、一時間近くもかかるという状況にあるわけです。最近ではこの地域の居住者がふえまして、しかも共働きの家庭が多いわけで、書留郵便物などを郵便局に受け取りに行かなければならない、局預かりになっているというような状況にあるわけで、これは大変なことであるわけです。行徳と市川局の管轄区域の線引きを江戸川を境にすれば大変便利になるという考え方、これは住民の長い間の強い要望になっております。今までの経過を聞いておりますと、郵政省の内部の業務分担などの問題もあるようです。郵便法では「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進する」とあるわけでありますから、ひとつ早急に解決するようにしていただきたいというように思います。  そこで、きょうは線引きの問題なども検討されるという答弁がありましたが、いずれにしろ線引きの変更は今すぐやってもらいたいことでありますけれども、今すぐできない、まだちょっと時間がかかるというようなことであれば、今日のこの矛盾を早く解決しなくちゃなりませんけれども、この線引き問題の解決が長期を要する、今すぐできない、そういうときに、暫定的な解決策としましてこの地域では、受取人が不在の場合は行徳局でなくて市川局で交付するという措置がとれないか、こういう要求が出されて、そういう希望があるわけです。この暫定的な手段としての要望については、どうお考えでしょうか。
  103. 永岡茂治

    永岡政府委員 ただいまお尋ねの件は、私どももその間の事情はよくわかりますが、行徳局で本来配達する書留郵便物等を市川局で受け取っていただくためには、行徳局から市川局に転送しなければなりません。そういったことで、仮に再配達を希望される場合等については行き違い等も生じますので、かえって新しいトラブルを発生するおそれもございますので、私どもはそういったやり方は適当でないというふうに考えております。やはり、根本的には集配区画の変更をすることが最もベストだというふうに思っております。  ただ暫定的な措置としまして、実は昨年から、不在持ち戻りの郵便物について隣家配達制度というものを始めました。隣近所の知人の方にかわりに受け取ってほしいという場合に、郵便局にその旨の指示をしていただきますと隣近所の指示された方に配達することに制度を改めておりますので、暫定的にはそういった制度を御活用いただきたいというふうに思います。
  104. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 隣家配達制度が発足しているわけですけれども、やはり通信の秘密というようなことからも問題があるわけであります。そういう意味で、ともかく根本的な解決は線引きの問題ですから、ひとつ積極的に新しい状況の中で御検討をお願いしたいと思います。  それから、市川市に属しております行徳郵便局は、お隣の浦安市も管轄区域になっております。ところが浦安市民にとっても今度はこれが大変不便なところになっております。ですから浦安市に普通郵便局設置してもらいたいという強い要望がまた出ているわけです。浦安市というのは、御存じのように非常に人口が急増する、いろいろな面で最近有名になってきているところでもあるわけです。それで、この浦安の郵便局の問題について何らか対処策はあるかどうか、お伺いします。
  105. 永岡茂治

    永岡政府委員 浦安市は現在行徳郵便局で受け持っておりますが、近年浦安の発展は大変著しいものがございまして、将来にわたって安定的に郵政サービスを提供するためには普通郵便局設置が必要であると私どもも考えております。そして、五十九年度の予算で土地の買収費をお願いいたしましたところそれが認められておりますので、できるだけ早い機会に用地を買収して、また来年度予算等で建物の予算を要求してまいりたい、そういった計画でございます。     〔委員長退席、池田(行)委員長代理着席〕
  106. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この問題については従来と異なって積極的な御見解をお聞きしましたので、ぜひとも早急な実現方を重ねてお願いしておきます。  次に、地方自治体が設置しております防災行政用無線局が異常開局をしている問題についてお伺いしたいと思います。  この前提といたしまして、市町村の防災行政用無線局は全国でどの程度整備されているのか、これが一つ。それから搬送周波数はどの周波数帯のものを何波割り当てているか、これが二番目。三番目に、同じ周波数のものをどの程度共用しているのかということ、要するに一波について平均何局ほどに割り当てられているのか、このことについてお答えをいただきたいと思います。
  107. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 現在、防災行政用の同報無線通信施設を設置しております市町村数は八百九十一でございます。それで搬送波と申しましょうか割り当てられております。波数は、現在二十四波ございます。したがいまして、これを共用しております無線局数は、平均で申しますと約四十局ということに相なっております。それから使用いたしております。波数は、VHF帯、六十メガヘルツ帯のものでございます。
  108. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 異常開局の一例を申し上げますと、去年の六月に千葉県の松戸市の防災用無線局が同時に十カ所異常開局いたしまして、屋外スピーカーが鳴り出すわけですが、そこから流れ出したのは災害の警報などとは関係がない催し物の案内であったり、あるいは農協の食生活改善の呼びかけであったわけです。そのほかにも、松戸市で天気予報やその他の雑音が屋外スピーカーから流れ出しております。こういう場合に松戸市ではスピーカーをとめる、そのために終話信号を発信して雑音をとめる措置をとりましたし、さらに現地の子局のスイッチを切るという二重の措置をとっているようであります。異常開局に対する対策をそのようにとるようになった後でも、なお異常開局が発生する状態であります。松戸だけでも昨年中に延べ十二回ありました。こうした異常開局というのは松戸だけではなくて市川や船橋、鎌ヶ谷などでもあったというように聞いております。  こういう異常開局につきまして電波監理局の方は把握しておられるのかどうか、お伺いします。
  109. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 私どもで把握をいたしておりますのは、最近におきますものといたしまして全国で十四件把握いたしております。
  110. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 実際に比べてみますと非常に少ない把握であるわけです。千葉県の一つの自治体だけでも十四回を超える。千葉県だけでもたくさんあるという状況です。  この異常開局につきまして千葉県内の自治体では、これはスポラディックE層による遠方の自治体に割り当てられた同じ周波数の電波が異常伝搬するのではないか、こう言っているわけでありますが、電波監理局ではこの問題についてどのように考えておられますか。
  111. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 先生指摘状況は、私どもといたしましてもスポラディックE層によるものではないかというふうに考えております。私どもといたしまして、防災行政用無線は大変重要でございますので、選択呼出装置というものを義務づけまして当該市町村が必要の都度動作させるような対策を講じておりまして、これが混信防止の対策でもあるわけでございます。ただ、こういう対策を講じましても、先ほど申しました六十メガヘルツ帯、VHF帯の周波数であるために夏、先ほどの御指摘も六月ということでございますが、夏の期間に発生いたします電波の異常伝搬現象、先ほどのスポラディックE層によるものと思われます異常伝搬現象というものが通話中に生じまして、混信が生ずるということがあるわけでございます。現在の段階では先ほど申しました選択呼出装置といった工夫あるいはなるべく距離を離しての周波数割り当てをするといったようなことはいたしておりますけれども、現段階ではただいま生じておりますようなものを除去するということは困難な状況にございます。
  112. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 混信を防ぐためには、今二十四波が割り当てられているということですけれども、この割り当て周波数がふえなければならないと思うわけです。防災行政用無線局はこれからも現在以上にふえていくと考えられます。こういう場合に新しい周波数を割り当てるということは可能であるかどうか、お伺いします。
  113. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 防災行政用無線ということの重要性にかんがみまして、私ども新規の需要ということも含めまして増波の検討をしてまいりたいと考えております。
  114. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 スポラディックE層による異常伝搬によって混信が生じていると言われております。混信の原因がこれだとしますと、周波数の割り当てに当たりまして遠距離の局に同一周波数電波を割り当てるというやり方、松戸に入ってくるのもどうも九州の方の放送だというように聞いているわけですけれども、この遠距離の局に割り当てるという考え方は検討し直す必要があるのじゃないかと思いますが、どうですか。
  115. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 この問題については、あらわれる現象が限られた時期で、それと、出てまいりますのがいつかということも必ずしも定かでございません。そういった状況がございますので、私どもといたしまして、先ほど申しました選択呼出装置をつけるというふうなこととあわせまして、一定の距離を離れた地域にするということを考えておりますが、この離し方につきましては極力そういうことがないようにということで考えておりますけれども、先ほど申しましたようにまれにそういった現象が生ずることは避けられないというのが現状でございます。
  116. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防災無線は非常に重要ですから、避けられないという状態はなくさなければ、いざというときに大きな間違いが起きることになると思うわけです。  現在全国的に見ますとどのように周波数を配分しているかということですが、地方電波監理局の権限で周波数を割り当てるというやり方をとっておりますと、スポラディックE層による異常伝搬による混信を防ぐことができないのじゃないかと思うのです。だから、これは地方電波監理局ではなくて、全国的に分析して検討して割り当てるということが必要ではないかと思うのですが、この点についてお伺いします。
  117. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 私ども、先ほど申しました防災の同報用の無線周波数といたしましては現在二十四波の割り当てをいたしているところでございます。これの平均の共用局数が四十ということでございますので、先ほどお答え申しましたように、新しい需要への対応ということも含めてこれの増波につきまして検討したいと考えておるところでございます。
  118. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 開局信号の混信を防げば異常開局を防ぐことができるわけですが、開局信号はどのようにして各市町村の防災行政用無線局に割り当てられておりますか。
  119. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 御指摘の開局信号と申しますもの、私ども選択呼び出し信号というふうに言っておりますけれども、これは群選択信号という形で十波の中から一つの波を選び出します。それから、個別選択信号ということで二十一波の波のうちから二波を取り出します。そうした群選択信号と個別選択信号の組み合わせによる選択呼び出し信号によって周波数の割り当てをいたしておりまして、なるべく重複しないようにという配慮をしているわけでございます。
  120. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 各市町村の防災行政用無線局の割り当ては、免許申請のときに工事設計の中で申請者の方にどの波を使うということを言ってくるのではないでしょうか。開局信号がどこでどう使われているかということは、電波監理局は全部把握しておられるわけですか。
  121. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 ただいまお尋ねの点は、各地方電波監理局で割り当ての設定をいたしております。
  122. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 地方電波監理局で割り当ての設定をしているわけですが、これを中央の方できちんとつかんでいないと今言ったような混信が生じる、こういうことを防ぐことができないということになるのじゃないかと思うのです。  というのは、例えば千葉県に九州の電波が入ってくる、それが同じ周波数を使っている、そしてそういうものが千葉県の近くであれば入らない。だから、九州のものが入らないようにするためには九州のものを別な電波にする、こういうことで防げるのじゃないかと思うのですが、割り当て電波が限られているわけですから、搬送周波数を共用している場合は全体的にきちんとつかんでいなければ混信を極力避けることができないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  123. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 ただいまの周波数の割り当ての件でございますが、私ども各地方電波監理局で割り当てをいたしておりますけれども、それを本省段階で、つまり中央で全体的に把握いたしております。そして、各地方電波監理局管内ごとの状況といったものもあわせて情報として各地方局に流すという形の中で、御指摘のような事態をなるべく避けるような努力をしているところでございます。
  124. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 開局信号について、混信を防ぐために従来二波を組み合わせる方式を実施しているようですが、これをやっていても混信が今日幾つも生じているということですから、このやり方では不十分であると思うわけです。それに対して対策を講じても、異常開局が現に発生しているわけです。  選択方式を採用するということを言われました。それから、電波監理局の方も開局信号について地方から上がってきてそれを把握しているというふうにも言われましたが、この開局の仕組みについて、混信が生じないようにすることについてなお改善の余地、検討している問題があるかどうか、お伺いします。
  125. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 新しい技術といたしましては、誤動作がなくてかつ多数の個別選択ができるディジタル方式の個別選択呼出装置というものが考えられるわけでありますが、そうした効果的な方式の導入につきまして今後検討することとしたいと考えているところでございます。
  126. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その方式というのはもう現実の日程に上がっているというように考えていいのでしょうか。それとも、まだ研究段階といいますか、まだ将来の問題であるというように考えなければならないのか。いかがでしょうか。
  127. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 ただいまのディジタル方式の呼び出しにつきましては、他のシステムでは現用になっておるものもございますけれども、防災行政用につきましては、これからの検討を必要とするという状況でございます。
  128. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 じゃ、結局今までやってこられた対策ではこうした混信を現実になくするということができないようです。まれに生じるということを避けられないような印象を受けるわけですけれども、やはり防災問題、そのことを住民に知らせるというような重要な任務を背負うわけですから、このことについて、混信などというような、住民が安心して防災無線を頼れない、そういう状況をなくするためにさらに検討しなければならない、そして早急に解決しなければならないということを申し上げて、終わりたいと思います。
  129. 池田行彦

    池田(行)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  130. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部行雄君。
  131. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まず郵政大臣にお伺いいたしますが、今度提案されました郵政省設置法の一部を改正する法律案について、そのメリットをどこに求めておられるのか、御説明願いたいと思います。
  132. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 ただいま御審議をいただいております郵政省設置法の一部を改正する法律案について、そのメリットはどこにあるのかという御質問でございますが、臨調の最終答申、五十八年三月十四日に出されましたけれども、その中で行政組織のあり方について言及されております。先生御承知のとおり二つのポイントがありまして、変化への対応力と総合性ということが言われております。今回の設置法の一部の改正は、臨調が示しました改革の方向に沿って郵政省の地方支分部局という行政組織の総合化を行おうとするものでございます。総合化を行いました結果、簡素にして効率的な組織体制にしたいということでございます。  具体的に申し上げますと、今回の統合によりまして地方貯金局並びに地方簡易保険局が郵政局に統合されますので、管理共通部門につきましては郵政局にその事務が移管統合されます。その結果、定員面あるいは経費面等におきまして、五十九年度七月以降、逐次その効果が生じるものでございます。
  133. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は大臣に聞いているのです。
  134. 奥田敬和

    奥田国務大臣 確かに共通管理部門が一元化されることによって、もちろん経費面の節減もさることながら、六十年以降においては人員面においても相当な合理化目標が達成できると思います。
  135. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、この地方貯金局及び地方簡易保険局を地方郵政局に統合して新体制ができるわけですが、そうなると、今までの本省権限というものは地方郵政局に委譲されるわけでしょうか。また、この新体制移行によって労使関係のルール等に変更が加えられるのかどうか。その内容について明らかにしていただきたいと思います。
  136. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 先生が御指摘になりましたように、これまで本省に直結して、本省の直轄機関でございました地方貯金局と地方簡易保険局が郵政局に統合されますので、在来本省において所掌しておりました事務の一部が地方郵政局に移管されます。その意味におきまして地方に権限が委譲されることになります。  労働関係につきましては人事局長答弁申し上げます。
  137. 三浦一郎

    三浦政府委員 今回、地方貯金局、それから地方簡易保険局が地方郵政局の方に統合されることになりましても、当該局における扱いというものは従来と変わりない、このように心得ております。
  138. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、この労使関係のルールにはほとんど変わりはない、こういうふうに理解していいでしょうか。
  139. 三浦一郎

    三浦政府委員 郵政事業における労使関係でございますけれども、各段階におけるものがございます。中央段階、地方段階、それから支部段階ということでございます。中央段階ということが地方郵政局に移りますので、その点は変わるかもわかりませんけれども、当該地方保険局、地方貯金局、これが事務センターに変わりました後におきましても、そこにおけるものは変わらない、このように心得ております。
  140. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大体百年の歴史の蓄積を持っておる業務から新体制業務に移行していくわけですから、それには一定の期間がかからないとスムーズな移行はなかなかできないと思います。そういう点で、この業務や労使関係等にいわゆる経過措置なるものを考えておられるかどうか。もし考えておられるとすると、その経過措置の期間はどのくらいを想定されておられるのか。また、名実ともに新体制が定着するのは大体いつごろの期限を見通しておられるのか。その辺について御答弁をお願いいたします。
  141. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 まず私の方から業務関係の移行措置について申し上げます。  今回の改正は、法律案をお認めいただきますと七月一日から実施することにいたしておりますが、先ほど来申し上げておりますように、地方貯金局と地方簡易保険局におけるこれまでの管理共通事務を郵政局に統合するものでございます。  したがいまして、七月一日以降、管理共通部門の事務を逐次移管することになるわけでございますが、一口に管理共通事務と申しましても、財務会計あるいは人事、資材等々いろいろございます。その中で直ちに移管した方が最も適当であるような事務につきましては、七月一日から即実施する体制を早急に整えたいと思いますし、これまでの事務処理上直ちには移管しにくいものにつきましては、諸般の事情を考慮しながら、業務の円滑な運行に阻害のない状況を見きわめながら逐次移管してまいりたいというふうに考えております。
  142. 三浦一郎

    三浦政府委員 労使関係のことでございますけれども、先ほど申しましたように、本省から地方郵政局に移す事務につきましては、これは郵政局・地本間でやることになると思います。これは機構改革後そのようにいたすということでございますが、地方貯金局、地方簡易保険局で従来からやっていたものは引き続きそのまま移行後の事務センターでやりますので、これについては経過措置というものを特に考えなくても、従来からのやり方をもちまして従来からの労使慣行は特に変わりなく行われる、このように考えております。
  143. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、権限は本省から地方郵政局に委譲される。そこで、今まで地方貯金局や簡易保険局が本省との団体交渉をやっておったものが、今度は団体交渉の対象は地方郵政局になって、そして、その他の労使慣行には一切変更を加えない、こういうことになるわけでしょうか。その辺、もっと具体的に御説明願います。
  144. 三浦一郎

    三浦政府委員 労使関係の内容でございますけれども、地方に移るものと本省に残るもの、そういうものがあると存じております。これは現在整理中でございますけれども、いずれにいたしましても、現在、郵政事業労使関係、全体的に安定いたしておりますので、これが移りましても特段の変化はない、このようにして今後とも正常にして安定した労使関係を保っていきたい、このように考えでいる次第でございます。
  145. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、特別に経過措置というようなものをある一定の期間内に設定するということはやらないで、逐次できるものからやっていく、こういうふうに考えてよいのでしょうか。その辺、もっとはっきりとお願いしたいと思います。
  146. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 業務の正常な運行を確保することが第一義でございますので、そのような観点から、すべてについて逐次経過的に事務を移管していくつもりでございます。  中身といたしまして、先ほども申し上げましたが、さまざまな事務がございますので、それぞれの事務を規定しております内部の通達なり訓令というものがございます。それらを一つ一つ分析、検討しながら、移管するものは直ちに移管いたしますし、移管できないものは一部の経過措置を講じた上で円滑な運行を期したいというふうに考えております。
  147. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、先ほど大臣も言われたように、今度の組織再編というか新編によって合理化ができる、こういうことが言われましたが、新体制になれば必要人員は一体どのように推移していくのか。その辺を数字的に明らかにしていただきたいと思います。
  148. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 新体制移行後の要員の措置でございますけれども、七月一日に切りかえを行いますので、五十九年度の予算につきましては現状どおりにしております。先ほど来申し上げておりますように逐次事務の移管を行いますので、その結果生ずる定員の縮減措置を見きわめながら、六十年度以降において予算に定員の簡素合理化についての数字を計上したいと思っております。なお、その具体的な数字につきましては、現在計算中、検討中でございますので、八月の概算要求までに確定したいというふうに存じている次第でございます。
  149. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まだ決まっていないような言いぶりでございますが、実際は決まっているんですね。そういうことが計算されないで簡単にこれだけの重大な組織変更はできないはずですよ。いわゆる行革の答申を踏まえて人員整理はどのくらいのめどをつけてやりますということは、もう結論が出ているはずです。八月の末にならないと出ないなんというのは、それはあなたのここだけの話であって、もう数字は出ているのじゃないでしょうか。
  150. 三浦一郎

    三浦政府委員 この統合の問題につきまして、ただいま官房長から申しましたように、人事関係、それから会計関係、そういった関係につきまして統合のメリットがあろう、このように考えて計算中でございますけれども、ただいま申し上げましたように検討中という段階でございまして、目下数字は持ち合わせておりません。
  151. 渡部行雄

    渡部(行)委員 人員整理を皆さんがメリットだと考えていること自体に非常な問題があると私は思うのですよ。どういうメリットなんでしょうか。私たちは国民の立場でメリットを考えるのです。皆さんは管理者として、なるべく職員を首切って、そうして経費がかからないようにするのがメリットだとするならば、これは国民に対するとんでもない背信行為じゃなかろうか。国民の方は国に対してサービスを要求しているんです。だから、そのサービスをよりよくするためにどういうメリットがそこに生まれてくるか、これが我々の最も関心のあるところでございまして、ただ人員整理をするからそれはメリットだ、しかも実際は計算されていても今は発表できない、それはいろいろな事情があるから私もこれ以上突っ込むことは差し控えます、数字もいろいろ仄聞するところもございますけれども。しかし、今私が言っているように、合理化、首を切るということ、これがメリットだなどと考えることだけはやめてほしい。  しかもこれは、生首を切るお考えですか。その辺は明確にしないと、働いている方々は非常に不安でございますので、この際、雇用の関係を明確にして従業員の安心を図っていただきたい。
  152. 三浦一郎

    三浦政府委員 ただいま申し上げましたように現在検討中でございますので、その数字あるいはどうなるかということについてしかとは申し上げかねるわけでございますけれども、しかしながら、この統全部門につきましては貯金局の規模に比しまして比較的影響が少ない、このように思われますので、首を切るとかそういったことはまずなかろう、このように考えております。
  153. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、最近は非常に通信手段や輸送手段、またその形態も変わってきておるわけで、いろいろと民間業者との間にも問題が出ているようであります。例えば郵便物を下請に出す問題などを通して、あるようでございます。しかも今、早く、安全で、より安く、こういう一つの原則に従って競合が行われておりますから、今まで夜勤勤務がなかったものを今度夜勤勤務が行われておる、そうなると、これが労働強化に大きくはね返っていると聞いておりますが、そういう問題も、時代の進歩とともに労働者の待遇が向上するように心がけなければならないと思います。  この間、西ドイツの方のお話を聞いておりますと、西ドイツでは日本の労働者に比べて実質賃金が約一・八倍ぐらいになっておるようでございます。そして、今や週四十時間労働どころか、三十五時間から三十八時間くらいにしろ、そういう一つの世論が大きくなってきておると聞いておりますが、そういう国際的な労使関係というものも考えますときに、今郵政事業の中で働いておられる労働者の方々に対して、もっとよりよい条件と申しますか待遇を考えておられるのかどうか、そういう労働強化に関する問題等については今後どう対処なさるおつもりか、お聞かせ願いたいと思います。
  154. 三浦一郎

    三浦政府委員 私ども労働関係を預かる者といたしましては、労使関係の正常、安定化ということのために、労働条件には常に配慮をしているところでございます。しかしながら、先生御存じのように最近郵政事業を取り巻く環境は非常に厳しい、しかもその中で国民に対してよりよいサービスを提供していく、こういったことのためにはいろいろな合理化あるいは効率化その他のことを行わなければならない、そうしなければ郵政事業が生き延びていけない、そういった実情にもあるわけでございます。そういった点を考えまして、あるところではとにかく労働条件につきまして我慢すべきは我慢してもらう、その中でまた、できるだけ我々の事業、それから労働条件、そういったものの改善にも意を用いていく、そういった面で懸命に努力している、そういう次第でございます。
  155. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その労使関係の問題については十分慎重に配慮されることをひとつよろしくお願いして、この問題に対する質問は終わります。  次に、今度仲裁裁定が出されたようでございますが、これは本来官房長官あたりに聞けばいいのでしょうけれども、しかし担当省としてこの仲裁裁定については完全実施するという決意があるかどうか、これについてひとつ大臣いかがでしょうか。
  156. 奥田敬和

    奥田国務大臣 御指摘のように仲裁裁定の案が示されたわけでございますが、担当大臣といたしましては公労法三十五条の精神を十分尊重いたしまして、早期完全実施に持っていくように誠心誠意努力いたす所存でございます。
  157. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ぜひひとつよろしくお願い申し上げます。  それでは次に、郵便事業財政についてお伺いいたします。  昭和五十九年度予算に単年度欠損金が百五十五億円と計上されております。この赤字の内容についての御説明をお願いいたします。
  158. 永岡茂治

    永岡政府委員 五十九年度予算におきまして、郵便事業では先生ただいま御指摘のように百五十五億円の赤字予算ということでございます。その原因といたしまして、収入の増加は二・二%であるにもかかわらず、費用の増加が三・四%ということでございまして、五十八年度まで単年度黒字であったものが五十九年度では遺憾ながら赤字に変わるということでございます。
  159. 渡部行雄

    渡部(行)委員 郵便事業財政について最近の傾向を見てみますと、今もお話がありました収益と費用の関係、これが前年度比で見ますと収益の伸び率が費用の伸び率を下回っている、ここに私は問題があると思うのであります。しかも、これは単なる一時的な現象とは見ることができません。深く構造的な欠陥としてその性格があると思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  160. 永岡茂治

    永岡政府委員 郵便事業は、御案内のように主として人力に依存する労働集約性の高い事業でございまして、全体の支出の七〇%以上が人件費でございます。したがいまして、ベースアップ等が収入の率を上回ります場合に、どうしても構造的に赤字になっていく体質がございます。また、費用のそのほかの主なものとして、運送費というものが全体の約一〇%を占めております。したがいまして、国鉄の運賃の改正、値上げ、それから航空運送料の値上げ、自動車運送料の値上げ等が直接コストに反映してまいりますので、そういったものが二年ないし三年に一度値上げされるという現状からしますと、構造的には体質的に赤字になっていくという要素は避けられないと思っております。
  161. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで収益が費用を上回るようにするためにはどのような方策を考えられておるのか、その辺について御説明をお願いいたします。
  162. 永岡茂治

    永岡政府委員 収益を高めるためには、基本的には郵便サービス改善して、できるだけ多くの人に利用していただくということが基本だと思います。そのことは、郵便をなるべく早く、正確に、確実に、また安くお届けするということが最も基本的なことだというふうに思っております。また一方、効率化合理化を進めて費用を節減して、その収支の差が拡大することを極力抑えるということだというふうに思って、その方向で努力しております。  なお、具体的に需要の拡大策として決定打というようなものはございませんが、例えば電子郵便サービスを新規に拡大していくとか、また、ことしの施策として暑中はがきの販売を大幅に促進していくとか、そういった個別的な対策も織りまぜながら、全体として本年度の百五十五億の赤字をできるだけ消し込むように努力してまいりたいというふうに考えております。
  163. 渡部行雄

    渡部(行)委員 赤字が出ると、ややもすると国鉄みたいにすぐに運賃値上げと簡単に考えがちです。郵便局郵便料金の値上げということを考えてくるのではないかと思っていたのでございますが、過去の実績等を見てみますと、大体五年に一回値上げがなされておるわけです。そこから推して考えると、昭和六十一年前後あたりにあるいは郵便料金の値上げということでやってくるのではないか、こんなふうに憶測をしておったわけですが、その点は一体どうなのでしょうか。
  164. 永岡茂治

    永岡政府委員 昭和五十六年に値上げをさせていただきまして、その後の収支の傾向からいたしますと来年、再来年あたりは大変厳しい収支状況が予測されるところでございますが、郵便事業の置かれている環境は大変厳しいものでございまして、強力な競争相手もおりますし、安易な値上げをするとかえって自滅すると思いますので、そういったことにならないようにできるだけ努力してまいりたいと考えております。
  165. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そういう立場で郵便料金の値上げと郵便物の総引受数の関係を調べてみましたところ、料金値上げのあった昭和五十一年度は郵便物数が前年度比で七・八%城となっておるわけです。また昭和五十六年度は五・三%の減となっております。そこで、せっかくの料金値上げで期待したものが、その実効は完全に薄められてそれほどの効果を上げ得なかったというふうに見るのが至当ではなかろうかと思います。  そこで私が言いたいことは、今日のような輸送体系あるいは輸送手段、通信手段の近代化、さらには利用者ニーズの多様化というものを考えた場合に、サービス競争が非常に激化することはだれしも考えるところでございます。そこで、今までのようなパターンで料金値上げをやるということは大変危険なことになりかねない。今も御答弁にありましたように非常に慎重なようでございますからある程度胸をなでおろしたわけですが、本来もっともっと料金を低くする作用として社会活動が行われているわけですから、そういうことを考えますときに、料金値上げは相当将来にわたってやらない、こうはっきりできましょうか。
  166. 永岡茂治

    永岡政府委員 できるだけ努力してまいりたいというふうに思います。
  167. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、最近の郵便貯金の動向についてどういう御所見を持っておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  168. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 最近の郵便貯金の増加状況を眺めてみますと、昭和五十五年度の金利の天井感によりまして増加をいたしました一時期を除きましては、昭和五十三年度以降の傾向といたしましては下降線をたどっているということが言えるわけであります。  この原因といたしましては、経済の安定成長への移行という一般的要因、所得の伸びの低下とかあるいは借金の増加ということのほかに、個人の金利選好が高まる中でビッグとかワイドとか中期国債ファンド、また国債の窓口販売などによりまして高利回りの商品が金融自由化の動きの中で開発をされ、金利差選好の多様化が進む、こういうことで大変厳しい状況にあるというふうに考えているわけでございますが、民間金融機関においては今後さらに多様な商品の開発が進むであろうということも予想されるわけでございますので、郵便貯金といたしましても適切な対応をしていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  169. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この増加状況というのは今御答弁の中でもある程度明らかにされましたが、昭和五十八年度の場合を見ますと、四月から一月までの現金純増は三兆三十七億円で、対前年比が八六%と前年同期実績を約四千九百億円下回っておるわけです。こういうふうに急激に落ち込んだ原因は一体どこにあるのでしょうか。その辺について明らかにしていただきたいと思います。
  170. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 先生ただいま御指摘のように、四月から一月までの純増実績ということを見てまいりますと、対前年比で八六%というようなことでございます。昨年の十月には、増加というよりもむしろ実際といたしましてもマイナスという事態もあったようなことでございまして、大変厳しい環境に置かれているということが言えるわけであります。  一般的な要因といたしましては、先ほど申し上げましたような金融環境の変化ということが大変大きな状況でございますけれども、私ども貯金の募集ということから見まして、ボーナス期というのは一つの大きな山場でございます。例えば冬のボーナスというものを昨年の場合眺めてみたわけでございますが、ボーナスの支給状況が伸び率が二%台ということでございまして、昭和五十年以来の低い伸びにとどまったということでございまして、こういった情勢がやはり大きく響いておるということでございます。中でも高利回りの商品が預金以外のものにかなり出てまいっておりまして、そちらの方にシフトしているということも預貯金全体の伸びが伸び悩んでいる一つの大きな原因ではなかろうかと考えられるところでございます。
  171. 渡部行雄

    渡部(行)委員 郵便貯金の年度別増加目標額を見てまいりますと、昭和五十八年度が七兆九千億円、昭和五十九年度は六兆九千億円と一兆円も下がっておるわけでありますが、一兆円下がったということは何が主に原因をしておるのでしょうか。
  172. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 先生指摘のように、昨年度の目標が七兆九千億でございます。今年度の目標が六兆九千億ということで、一兆円減少いたしているわけでありますけれども、この一兆円の減少といいますのは、最近における郵便貯金の増勢ということをいろいろ総合的に勘案をいたしまして算出いたしたところでございます。  一般的な要因等につきましては先ほど来申し上げているような状況でございますが、経済の安定成長への移行とか、あるいは一般的に所得の伸びが低下をしている、あるいはローンの家計に占める割合が増加をしているというようなこと、あるいは自由金利商品としての高利回り商品に、金利選好というような高まりの中で預金の方からそちらの方にシフトをしているというようなことでございますけれども、五十六年度が八兆九千億という目標でございましたけれども実績が七兆六千億というようなことで、未達成になったというような状況もございました。したがいまして、五十八年度七兆九千億というふうに目標自体を下げざるを得なかったということでございますが、昨年度の状況を見ましても、どうにか目標は達成はいたしましたけれども、この一年という状況を眺めた場合に大変厳しい状況にあるということで、目標額を一兆円減少せざるを得なかったということでございます。
  173. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、昭和五十八年度末の資金運用部資金残高総額は一体どのくらいになるのか。この答えによって後で五十七年度と比較して検討したいと思います。また、郵便貯金の残高はどのくらいであるか、そして総額に占める貯金残高は何%になっておるのか。この辺の数字を明らかにしていただきたいと思います。
  174. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 郵便貯金資金は全額大蔵省の資金運用部へ預託をしておりまして、財投の主要な原資となっていることは御承知のとおりでございますが、五十八年度末における資金運用部資金の残高は約百三十九兆円ということだと思います。このうち郵便貯金資金が約八十五兆円ということで、その割合といいますか、シェアというものが六一%を占めているということでございます。
  175. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、昭和五十七年度の資金運用部資金原資残高が総額で約百二十六兆円、正確に言うと百二十六兆九千三百十一億円で、郵便貯金資金は七十六兆三千二百七十二億円、こういうふうになりますから、五十八年度は若干伸びておるわけです。伸びておるけれども、この原資総額に対する貯金資金の割合というのは、五十七年度は六〇・一%、五十八年度が六一%と、貯金資金の比重というものはますます増してきておるわけでございます。  そこで、こういうふうに資金運用部資金の中の郵便貯金資金が六割以上になってきているということは、いかに郵便貯金が大切であるか、こういうことが言えると思います。そういう点で、これに対して大蔵省はどういうふうにこの傾向を見ておられるのか、お答え願いたいと思います。
  176. 水谷文彦

    ○水谷説明員 先ほど郵政省の方から資金運用部の動向を御説明いただきまして、また、ただいま先生から御指摘ございましたように五十八年度は六一・〇%でございますので、前年度の五十七年度六〇・二%に対しまして約一%弱増加をいたしております。  ただ、たまたま私、五十五年度以降の数字を持っておりますけれども、五十五年度が、郵貯の残高は約六十一兆でございまして、六〇・五%でございました。つまり五十五年度以降、六〇・五、六〇・二、六〇・二、六一・〇という形でほぼ安定的な数字を示しているのではないかというように考えております。いずれにいたしましても運用部原資の中で六割という大宗を占めているわけでございまして、財投原資として大変重要なものであると考えておるわけでございます。  私どもは、今後の郵貯の動向につきましては直接はかり知れない点がございますけれども、いずれにいたしましてもこれが民間とバランスをとりながら増加していくことを期待しているわけでございまして、かつ、そういった貴重な原資でございますので、できるだけ公共的に、かつ、効率的に運用させていただく必要があるのではないかということを考えているわけでございます。
  177. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今、数字の上では郵便貯金が上がってはおりますが、ただ、前年度比で考えると、先ほどもお話し申し上げましたように郵便貯金は減少傾向にあるわけで、これは直ちに資金運用部資金原資に影響を与えるばかりでなく、今ほども言われました財政投融資計画に対しても非常な圧迫をするわけでございます。  そこで、この資金運用をより合理的に、より強化する意味で考えるならば、今後の郵便貯金に対する対策というものは、それこそ最重点的にここに皆さんの英知を注がなければならないと思います。そういう点で、これからの郵便貯金行政について郵政大臣はどのようにお考えなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  178. 奥田敬和

    奥田国務大臣 郵貯は、国民生活に密着した貯蓄制度として随分長い沿革を持ってまいりました。今日、御指摘のように、非課税制度という一つの制度を根幹といたしまして、貯蓄残高八十五兆という巨額の資金を、全く国民の汗とあぶらの結晶である、しかも中長期性の貯蓄としてお預かりいたしておるわけでございます。他方、それが今御指摘のような財投原資として広く国民の生活、社会資本の充実等々に大きく貢献しておることも事実でございます。  したがいまして、今日のような情勢下におきましては、金融の自由化、金利自由化という趨勢の中でこの郵貯の根幹を守りながら預金者の利益をいかに確保していくかということは、私にとっては大変重要な、責任を伴う使命でもございます。そういうことから考えますと、今後とも市場実勢に対応した金利、それが金利の自由化の方向でございますけれども、私たちも常に市場実勢に対応した資金運用のあり方ということも前向きに検討してまいらなければならぬと思っておるわけでございます。したがいまして、財投資金の運用面によって公的な大きな使命を果たすと同時に、他方、こういった金融の自由化に対応いたしまして、何とか市場実勢に従った自主運用の面も切り開いていただくように大蔵当局とも折衝を重ねておるところでございます。
  179. 渡部行雄

    渡部(行)委員 財政投融資というのは、私から言うまでもなく、特に最近一般会計の中で公共事業費が凍結というか伸び率ゼロということになっておる中で、その財政投融資計画の与える経済的、社会的影響というものは非常に重要になってきておりますし、また、ここがむしろ公共事業等に積極的な役割を果たしているのは御案内のとおりでございます。これを大蔵省側から眺めれば、資金運用部資金というものは非常に重要な位置づけにあるものと私は思います。  そこで、その中核をなすところの郵便貯金をこれから一層発展させていくにはどうあるべきかというのが当然大蔵省において考えられていいのではないか、こんなふうに思うわけです。今も大臣自主運用の面をずっと大きくさせていくように折衝しておると言われましたが、そういう問題を含めて大蔵省はどのようにお考えなのか、お聞かせ願いたいのであります。
  180. 水谷文彦

    ○水谷説明員 ただいま御指摘がございましたように、一般会計と財投とはそれぞれ目的、機能、つまり守備範囲等は違いますけれども、それぞれの性格に即しまして、あたかも車の両輪のように補完し合いながら、国民生活の安定ないし国民経済の成長等のために大きな役割を果たしているということは御指摘のとおりでございます。  それで私どもといたしましては、財投の中では資金運用部資金が中核になっているわけでございますけれども、この資金運用部資金というのは、郵便貯金を初めといたしまして各種の年金等、つまり国の制度、信用を通じて集められてまいります各種の資金は、資金運用部資金として統合的に一元的に管理運用するということが最もすぐれた運用の仕組みであると考えております。これはとりもなおさず各種の政策的な必要性に応じまして資金をバランスよく配分をする、あるいは私ども所管させていただいております財政金融政策との整合性をとりながら適正な配分をし効率的な運用をするためには、統合運用の仕組みあるいは一元的な運用の仕組みというものは、臨調答申にもございますように堅持をさせていただきたいと考えているところでございます。  ただいまお話もございましたように、今後の郵便貯金の動向というのは私ども直接はかり知れない点がございますけれども、いずれにいたしましても財投の原資として重要なものでございますので、私どもとしましては、これが今後とも民間の補完として、民間の貯金とバランスをとりながら増加をしていくことを期待しているわけでございます。
  181. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今も自由化の話が出ましたが、特に最近金利の自由化を含む金融の自由化が強く叫ばれておるわけです。これはどうしても避けることのできない国際的な、かつまた、歴史的な潮流だと思います。  そこで、この自由化を前にして、為替貯金事業の取り組むべき課題について明確な方針を国民の前に明らかにすべきものと考えるわけですが、これに対する大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  182. 奥田敬和

    奥田国務大臣 金利自由化の趨勢は、先生指摘のように避けられない傾向にあると思います。したがって、先ほども申しましたように、郵便貯金もこれらの趨勢に対して無関心でおるわけにはまいりません。特に今日、少額預貯金者の金利を守っていくという至上課題を持っておる立場としては、これらの動静には重大な関心を持っております。しかも金利の自由化、金融の自由化ということは、一口に申せば大体日銀のガイドライン、そして今金利調整法に基づく形での市中金利の設定の方式、これらの枠が取っ払われるということを意味すると思います。そういうことになりますと、郵便貯金だけがそういった市場実勢の赴く流れの中からひとり外れていくというような形では、郵貯の存立の基盤が侵されてくるということになります。したがって私たちも、市場実勢というものの動向、もちろん国際的な金融の動向等々も踏まえて、先ほど来運用面も市場実勢に従っていかざるを得ないであろう、そういうことになりますと、私たちは今日の大蔵当局に財投原資としての預託、そして公的な使命を果たしている半面、そういった趨勢にも対応できる前向きな対応策というものを持つ必要があろう、そういうことから、一部の自主運用を含めて預貯金者の金利の確保ということにも前向きにこれから対応してまいらなければならぬと思っておるわけでございます。
  183. 渡部行雄

    渡部(行)委員 一口に金融の自由化と申しますが、しかし今、日本の金融業界を含む郵政事業者に対してもそうですが、何が迫られているかというと、この自由化の波に対応する体質をどうつくっていくかという点が一番私は大事ではなかろうか。そしてこの目まぐるしい社会的、経済的変化に即応できる体制をどう整えていくか、こういう点が真剣に討議されて、それに対する一つの方向が明らかにならないと、なかなか大変な問題だと思うわけであります。特にこの郵政事業は、今日までひたすら大蔵省の金稼ぎというか、大蔵省にお金を納める仕事が主であったわけでございます。そういう点では、自主運用、つまり自主性というものが形式的なものだけで、実質的なものとしてはほとんどなかったと言っても過言ではないと思います。このような条件を背負ったまま、金融の自由市場にさらされたならば、これはちょうど手足を縛られて海の中に投げ込まれたようなものに等しいと思うのであります。そうすると、郵政省は全くおぼれ死にする以外にない、こんなふうに危惧されるのでございますが、今も大臣が、自主運用をもっと広げ強化するよう努力したいと言っております。しかし、これは郵政省だけでできるものではなくて、大蔵省がこれにあうんの呼吸でこたえてくれなければ何にもならないわけであります。そういうことを考えますときに、一体その点はどのように今後やっていかれるおつもりか。これはひとつ両省からお答えを願いたいと思います。
  184. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 金融革新あるいは金融革命と言われている大変変化の激しい今日の状況の中で郵便貯金が金利の自由化にどう対応していくかということについて、対応の必要性、またその場合における資金運用面においても自主運用ということで適切な対応をしていかなければならないということについての必要性につきましては、先ほど来大臣から御説明申し上げたとおりでございまして、日本全体の金融の自由化、金利の自由化のためには、資金的にもかなりウエートの高いものを持っている郵便貯金ではございます。特に個人の小口貯金という面につきましては、我が国においては小口の貯金というもの自体が全体の個人の貯蓄の中でも六割を占めるというような状況でもございます。その中でもまた八十五兆あるいは八十六兆というような残高を持つ郵便貯金でございます。  そういった意味で、個人の預貯金の金利の自由化に対応するためにも、金利の自由化自体が市場実勢を反映する、そしてそれを支えるためにも運用面についても市場実勢が反映できるような仕組み、入り口あるいは出口ともに市場の実勢が反映できる仕組みというものをぜひともつくる必要がある。むしろこれを制限いたしておりますと、大もとになる郵便貯金の原資自体がどこかに雲散霧消してしまうということになれば、これは財投原資自体に大変大きな影響を与えかねないわけでございますので、関係の向きと十分意思疎通を図りながら理解をいただくようにこれからも努力をしてまいりたいと考えております。
  185. 水谷文彦

    ○水谷説明員 この点は、大変恐縮でございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、郵便貯金初め各種の公的な資金というのは、統合運用させていただいて初めて全体としてバランスのとれた資金配分あるいは財政金融政策との整合性のある運用というものができるのではないかと考えておりまして、その点は臨調答申等も指摘するとおりでございます。郵便貯金につきましては、これまでもそうでございましたけれども、国が提供いたします簡易で確実な少額貯蓄制度として、民業の補完としての役割を果たしながら、民間とバランスをとりながら増加していくことを期待しているというわけでございます。私どもの基本的な考え方でございます。
  186. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、簡易保険、郵便年金事業についてお伺いいたします。  まず第一に、昭和五十三年度以降の保険料収入の推移を見てまいりますと、年々落ち込んで、昭和五十七年度はついに八・九%と二けたを割ってしまったわけでありますが、この主な原因と、こういう傾向に対する対策についてはどのようにお考えですか、明らかにしていただきたいと思います。
  187. 奥田量三

    奥田政府委員 簡易保険事業におきましては、業績はこのところ年々着実な伸びを示してはおりますが、ただいま御指摘のように、一両年前までは保険料収入は二けたの対前年伸び率を示しておりましたものが五十七年度以来一けた台の伸びにとどまっている状況でございまして、ある意味で伸び悩みの兆候を示し始めていると言えようかと思うわけでございます。  この原因といたしましては、一般的にいわゆる経済の低成長、それによる可処分所得の伸び悩みということが基礎にあろうかと思いますが、あわせて、実はここ一両年の新契約の状況では件数が伸びるほどには保険料が伸びないという状況もございまして、これについては、簡易保険の加入限度額がここ七年間一千万円で据え置かれているということも原因の一つではなかろうかとも考えられる次第でございます。  ところで、我が国の現状を見ますと、一方では急速な高齢化の進展がある、一方ではそれに対応する社会保障について財政事情その他からいろいろな問題が発生しているというような状況の中で、国民の自助努力、その手段としての保険、年金の役割は一層大きくなると考えられるわけでございまして、簡易保険事業としてはこの使命を深く認識いたしまして、ただいま申し上げました加入限度額の引き上げ等を初めとする制度やサービス改善に努め、また一方では事業経営の効率化あるいは資金運用の改善等に努めて、より一層国民の期待にこたえ得るサービスを提供してまいらなければならないと考えているところでございます。
  188. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただいまも述べられました保険金最高制限額が昭和五十二年以来一千万円に据え置かれている、それがまた非常に問題であるという御指摘でございましたが、これは、今日までの物価上昇、最近の国民生活の水準等々に対応しながら簡易保険が生命保険として機能を保持していくためには、この保険金最高限度額というのは当然引き上げられなければならないと考えられるわけでありますが、これに対する大臣の御所見をお伺いいたします。  しかし、もちろんこれについては競合する民間、特に従業員の方々の立場を考えるとき、これらを窮地に陥れないような配慮と積極的な対策が必要だと思います。それらの調整等を含めて、これを抜本的に改善していくには、やはり政策そのものをもっと積極化していくことが重要だと思うわけですが、その点も含めて御答弁をお願いいたします。
  189. 奥田敬和

    奥田国務大臣 先生御存じのように、簡易保険は民間の保険と著しく違っている点がございますそれは、一つは、今言われましたような、無診査、しかも限度額制限ということで抑えられておるわけでございますが、貯蓄性向が非常に高い。一方民間の方は、無診査、診査を含めていろいろな制度がございますけれども、これは全くある意味においては保障性と申しますか、万一に備えて非常に巨額保障ができるという面において、保障性向の強い民間、貯蓄性向の強い郵便簡保と言うことができるのじゃなかろうかと思います。  ただ、先生も御指摘いただきましたように、この限度額が決められてから相当時間の経過がございます。考えてみますと、実勢から申しまして一千万の制限という形は今日の経済実勢にそぐわないのじゃなかろうか。もうちょっと魅力のある限度額の引き上げ、制限額の引き上げという形が私たちの近々の課題として上っておるわけでございます。したがいまして、五十九年度の予算編成の際にも大臣折衝までもつれ込んだという経緯もここにあるわけでございます。  私たちも民間生保との競争市場にはございますけれども、あくまでも本質的な特質というものを外さないで、しかも、先ほど局長も申しましたけれども、今日の高齢化社会に対応する自助努力と年金の補完、そういった重要な政策的な意味も持っておるわけでございますので、何とかして魅力のある、現在の物価水準、また老後の補完資金として等々のことを勘案いたしまして、何としても制限額の引き上げということを強く要望してまいりたいと思って努力しておるところでございます。
  190. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、昭和五十八年の簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律改正がなされた際に、参議院で、保険金最高限度額の引き上げ方についての附帯決議というものがなされておるわけでございます。これに対しては大蔵省はどのようにお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  191. 藤原和人

    ○藤原説明員 ただいま御指摘のございましたとおり、参議院の逓信委員会におきまして簡保の限度額の引き上げを図るよう附帯決議が行われたということにつきましては、私どもも十分承知をしております。  五十九年度の予算編成過程におきましては郵政省から限度額の引き上げの要求がなされたわけでございますが、昨年の三月に臨時行政調査会の答申というのが出されまして、そこにおきましては「保険金額の最高制限額については、小口で簡易という役割及び貯蓄性が強いという面を考慮すれば、差し当たり引き上げることについては問題がある。」といった答申が出されました。また、五月には臨調答申を最大限に尊重する旨の閣議決定がなされ、さらに、十二月でございましたか、臨時行政改革推進審議会というところが五十九年度予算編成についての意見書というのをお出しになりましたが、そこにおきましても、臨調「答申の趣旨に照らせば、昭和五十九年度予算編成においてこれら制限額を引き上げることは適当ではなくこといった意見が出されたというようなこともございまして、先ほど郵政大臣がお答えになりましたとおり、五十九年度予算編成過程のぎりぎりまで持ち込まれたわけでございますが、最終的に五十九年度予算において簡保の限度額については引き上げないということになったわけでございまして、このような事情を御理解いただきたいと思っております。
  192. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今まで保険事業というものは、民業補完という立場が非常に強調されてきたようであります。私は、金融の自由化の中では、むしろ民業と一緒になってというか、またこれと対抗できる地方をつける、こういうことの方がより重要になってきたのではなかろうかと考えます。ところが、今のやり方を見ておりますと、自由を束縛して自由に競争せよと言われているような矛盾を感じるのでございます。こういうことでは自由な競争に勝てるはずはありません。  そこで、大蔵省の考え方が、この郵政事業というのはあくまでも民間補完でいいのだというならば、それではその枠をはっきりとつくって、そしてその枠の中で十分民業並みにあるいは民間並みにすべての権利や利益というものを保障してくれる、こういうものがないとなかなかこの問題というものは説得力に欠けるのじゃないか、私はこんなふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
  193. 藤原和人

    ○藤原説明員 先ほど来の先生の御議論は、金融の自由化が進む中で保険への影響も当然あるわけでございますが、その中で簡保事業はどういうふうにあるべきかという観点のお話かと思います。  御指摘のとおり、金融の自由化ということで保険事業の自由化も今後さらに進んでいくということは予想されるわけでございます。他方で、いわゆる個人所得の伸び悩みでございますとか隣接業界との競争が激化するといったようなことで、保険事業を取り巻く環境が厳しくなってきているということも事実でございます。したがいまして、そういう中にございまして、民保、簡保がそれぞれ国民に対して良質のサービスを行っていくために地方をつけて、競争力をつけていく必要があるという御指摘は私もそのとおりだと思うわけでございます。  ただ、ひとつ御理解をいただきたい点は、先ほども話がございましたが、この簡保と民保では存立の基盤が異なるという面があるということでございます。例えば医的診査と申しましょうか、民間の保険でございますと原則としてお医者さんの診断を受けてお入りになるということでございますが、簡保の場合には告知書扱いということになっております。それからまた、簡保は小口で簡易ということで国営企業でやっているということもございますし、税制面で優遇されているといったような面もあるわけでございまして、私どもこのような存立基盤の相違ということを踏まえた上で、民保と簡保とが相競い、刺激し合って国民の期待にこたえていくということが最も望ましいことではないかと考えているわけでございます。
  194. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そのお話はよくわかるわけですが、民業、官業が相競い合ってともに生きられる方向としてやっていくことはごもっともな話ですけれども、しかし、郵政省にはお金に関する限り自主性が持たせられない、いつも大蔵省とのかかわり合いの中でやっていかなければ実行ができない、こういうところに問題があると思うのです。その点については、大臣、どうでしょうか。実感を話していただきたいと思います。
  195. 奥田敬和

    奥田国務大臣 先生も先ほどちょっと例えてお話しになりましたけれども、私は手足をくくられて海の中へドボンというような危機感は持っておりません。しかし、片腕ぐらいは縛られてリングの上に上がっているなというくらいのハンディキャップは感じます。これは今大蔵当局からも話しましたように官業のよって来った沿革。しかし、考えてみれば民間も無診査の枠というものはちゃんと同等に持っておるわけでございますし、診査は診査で魅力のある形での商品というか制度を持っておるわけでございます。ですから私たちとしては、そういったよって来った沿革も含めて、一千万という簡保の制限額が果たして現在の現実的な経済社会に対応し、魅力のある制度としてのものであるかどうかということに力点を置いて先生方の御理解を求めておるわけでございます。  幾らの金額が適当であるかという形の論議は別といたしましても、今日の実勢から申しますと、一千万という制限額の上限はもっと上積みをしていただくのが当然であろう、そういう魅力のある形で、しかし無審査という一つの聖域も確保しながら、公的な資金として御活用も願うという形から、ぜひそういう方向で努力いたしたいということでございます。
  196. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで私は、資金運用制度の改善というのが非常に重要になってきているのではないか、こんなふうに考えるわけであります。簡易保険及び郵便年金資金は、将来の保険金、年金等の支払いに備えた加入者の共同準備財産と言われておりますから、こういう貴重な財産についてできるだけ有利に運用しなければならないことは言をまたないところでございます。しかるに現在の積立金の運用範囲というものを見ますと、民間生命保険はもちろん、国家公務員共済組合と比較してもなお著しく狭いのであります。さらに、余裕金は資金運用部へ低利で預託する以外に運用ができなくなっているため、運用利回りの面で民間生命保険との間に格差が生じていることも事実でございます。しかも最近の我が国経済は、国際化の進む中で、高利回り商品の開発が相次いでおります。金融、経済環境は大きく変化をしておるわけでございまして、これらの情勢に即応していくにはどうしても資金運用制度の改善が絶対に必要不可欠であり、かつ、緊急の課題であると思うわけでございます。そこで、まず郵政大臣の所信のほどを聞かせていただきまして、その後で大蔵省のお考えを明らかにしていただきたいと思います。
  197. 奥田敬和

    奥田国務大臣 後で補足的に政府委員から説明させていただきたいと思います。  今の先生の御質問で、非常に私も答弁に苦しむわけでございます。孝ならんとすれば忠ならず、忠ならんとすれば孝ならずといういわば二面的な立場で、他方、預金者の立場、そして市場実勢に応じた金利の確保という面、他面、国の公的な財政運用等々で果たしている大きな役割、こういった形の中で非常に大きな問題点としてそれが指摘されるわけでございます。  しかし、現在の預託率七・一%でございますけれども、こういった形がいずれにしてもある程度中長期的に維持され得るか否かという形が今非常に微妙な段階になっておる、そこにまた郵貯簡保資金のそういった運用をめぐっての危機感があるということでございます。今日、現時点だけで申せば七・一%は、今郵便貯金の最高利率が五・七五くらいでございますから、ある意味においてはコストの安い形で運用してまいりますと、今までの、従来の郵便貯金は赤字でも明年度からは単年度黒字にも転化いたしますし、六十一年度では完全に赤字も解消する、そういった意味合いでは、今の段階においての時点だけで考えますと非常にうまくいっておる。しかし、この状態が果たしてこういう国際化、自由化の波の中でどういった方向にいくだろうかということを、市場実勢を考えるときに、私たちはこの資金運用に関しましても重大な関心を持って見守っておるということがお答えできると思います。
  198. 奥田量三

    奥田政府委員 ただいま大臣がお答えしたとおりでございますが、簡保資金の運用について一言補足させていただきます。  簡易保険、郵便年金の資金は郵政大臣がその運用の任に当たっているわけでございますが、運用に関する法律におきまして、一方では加入者の利益のために確実、有利な運用を、かつ、あわせて公的な資金であるという性格から公共の利益に役立つようというふうに運用の原則が定められております。それに基づきまして現在、簡保資金の三分の二強に当たる部分は財政投融資に協力をいたしておりまして、その余の部分につきまして、社債等のいわば有利運用と契約者に対する貸し付けというものを行っているわけでございます。  財政投融資に対する協力は、先ほど申し上げました運用法の精神からいたしましても例えばどの程度の割合が適当であるか、あるいは現在の受け取る利率が適当であるか等の問題はあるにいたしましても、財政投融資に協力をしていくというのはこれもまたある意味で当然と存じますが、それでありますだけに、その余の社債等の運用部分について、できるだけこれの利回り改善を図って加入者に還元をするということが我々の大きな責務であろうというふうに考えているところでございます。そのような意味で、五十九年度の予算編成の過程におきましても資金運用範囲の若干の改善について提起をいたしましたが、政府内で合意に達しておりません。これにつきましては、今後もただいま申し上げたような趣旨で引き続き努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
  199. 水谷文彦

    ○水谷説明員 先ほどから御答弁申し上げましたように、国の制度、信用を通じて集められる各種の資金というのを資金運用部に統合して、一元的に管理運用さしていただくというのが私どもの基本的な考え方でございますけれども、そういった中で、歴史的な経緯等もございまして、簡保資金の積立金につきましては郵政大臣の分離運用ということになっております。そうした中で、先ほど局長から御答弁いただきましたように、かなりの部分を財投の方に回していただいております。その財投の金利につきましても、私どもはできるだけ高い、有利な運用先に充てさせていただいているわけでございます。また余裕金につきましては、これは運用部の方に預託をいただいておりますけれども、これにつきましても特別に高い金利をつけさせていただいているということでございます。  いずれにしましても、このような資金というのは、一方におきましては預託者の利益に配慮すると同時に、公的な資金でございますのでできるだけ公共的な運用ということに配慮しなければいけない。したがって、その調和点をどこに見出すかということがポイントになろうかと思いますけれども、その調和点を見出すというのが今まで郵政省とのお話し合いによって現段階になってきているわけでございまして、私どもはこの辺のところがほどほどではないかと考えているわけでございます。
  200. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、大蔵省にお伺いいたします。  来年度の税制改正でマル優や郵便貯金などの非課税貯蓄制度を全面的に見直す方針ということが報じられております。その具体的な内容について明らかにしていただきたいと思います。これが第一点であります。  さらに、庶民金融の重要性にかんがみ、郵便貯金の三百万円限度を大幅に引き上げ、またマル優の限度額を五百万円に引き上げるなどのお考えはないでしょうか。そういうものに対する方策を明らかにしていただきたいと思います。  さらに、かつて総合課税移行の実効を期すとともに、仮名預金の防止を図り、非課税貯蓄制度の運用の適正化を図るためということでグリーンカード制の導入を決定しましたが、これは自民党などの反対で昭和五十八年三月、この実施時期を三年延長されたわけでございます。その期限の解除が昭和六十一年一月一日に迫っております。そうすると、六十年度予算の概算要求が行われる八月末までにはこれらの結論を出す必要に迫られていると思うわけでございます。一体どのようになさるおつもりか、お聞かせ願いたいのであります。  また、これとあわせて利子配当課税の抜本的見直しについても御説明願いたいと思います。
  201. 伊藤博行

    伊藤説明員 お答え申し上げます。  四点御質問をちょうだいいたしましたが、まず第一点の、六十年度の税制改正でのマル優あるいは郵貯などの非課税貯蓄の制度改革の方向はいかんという点でございますが、これは第四番目の議論あるいは三番目の御質問と相関連しておろうかと思います。したがいまして、非課税貯蓄の限度額の問題とその他の三つの問題とに分けてお答えを申し上げたいと思います。  三者に共通いたします問題といたしまして、先生指摘のようにグリーンカードの制度は、当初の予定が本格実施は五十九年一月一日、ただしその移行期としてその一年前からカードの申請、交付を行うということで予定されておりましたグリーンカード制度が、それぞれにつきまして施行が三年間延期されております。したがいまして、本格実施について申し上げますならば六十二年一月一日から、それからカードの交付等につきましては六十一年の一月一日ということに相なっておるわけでございます。  この三年間の延期についての議論の経緯等も踏まえまして、私どもも税制調査会に利子課税のあり方をどう考えたらいいだろうかということで再度御審議をお願いしております。審議自体は昨年の夏からスタートしておりますが、秋に中期答申、それから年が明けまして、ことしの一月に年度答申の際にその部分に関しても御議論をいただいております。ただ、大まかな方向といいましょうか問題点指摘等はございますけれども、今後の具体策については現在までのところまだ一つ考え方には集約され切っておりません。新聞等でいろいろ報道されておりますが、考え方としてはいろいろな御意見がまだ並列しておるというのが実態でございます。利子所得というものの特異性にかんがみましてかつての分離所得税的な考え方から利子所得課税を考えるべきではないだろうかという考え方を片一方の極といたしますと、むしろ総合課税をより徹底するという方向での議論をなお一層追求すべきであるという対極の議論、その中間にはいろいろな考え方がまだ併存しておるというのが現状でございます。  今後の審議の段取りといたしましては、先生も御指摘のように、一番早い時点で考えてみますと、六十一年一月一日からのグリーンカードということでございますから、もしそのまま施行するのであればそれに見合った執行予算、それからもしそれにかわるべき方策をとるのであればかわる方策に見合った執行予算ということで、国税庁の執行予算の関係で申し上げるならばこの夏の概算要求のときには一つの方向が出ているのが望ましいということで、税制調査会自身もこの一月の年度答申におきましては夏ごろまでに結論が出されるのが望ましいということを述べておられます。私どもも、そういった答申の線に沿ってといいましょうか、タイミング的な線に沿って税制調査会での御審議も進めていただけるものと期待はしております。  ただ、制度自体について申し上げますと、今申しましたのは執行予算の概算要求という観点ですが、制度自体は冒頭申し上げましたように六十一年一月一日ということでございますから、その時点になるまでにはしかるべき法制化がなされていないといけない、もしグリーンカードでないとするならばそれにかわるべき何らかの法制度ができていなければならないという意味でのタイムリミットというのは、別途ございます。  それから、非課税限度額、マル優の限度額を含めまして現行の三百万円を五百万なりもっとそれ以上上げたらどうかという点でございます。この点につきましては、二つの点からいかがなものかなと考えております。  第一点は、マクロ的な観点での非課税貯蓄の問題でございます。現在の非課税貯蓄の割合は個人貯蓄総体の約六割を占めております。非課税貯蓄制度の理念につきましてはいろいろな議論が行われておりますけれども、一つの所得種目の六割が非課税になってしまうというのは、これはマクロ的に見ていかにも大きいなというのが第一点。  それからもう一つ、ミクロで見てまいりましても、非課税貯蓄の限度は郵便貯金の預入限度の三百万を合わせまして九百万、財形貯蓄を入れますと千四百万でございます。現在の貯蓄動向調査等で見てまいりますと、実際の預金残高といいますのは、定期性預金で、勤労者世帯五十七年の時点ですが、二百八十万程度でございます。郵便貯金その他を含めましてその辺が平均値になっております。そういったような実情等から見まして、今、現行の三百万をさらに引き上げるということについてはいささか消極に解しております。
  202. 渡部行雄

    渡部(行)委員 非課税部分を正確にとらえるということでグリーンカード制が一方で考えられている。そうして貯蓄というものをさらに発展させるという点でこの非課税制度が考えられているわけです。ところが、グリーンカード制は延期はするわ、今後どうするかまだその方法さえ確定していない、そうして一方で、この放置されている仮名預金の部分についてはどうするのかということなしにこれの限度額を引き上げるということは、それは不可能ですよ。そんなことをすれば大変なことになるということはだれでもわかることなので、そうでなくて、庶民の貯蓄というものをどう見ていくか、ここに目を移すべきだと私は思うのです。特に郵便貯金というものは九九・何%、三%だと思いましたが、今正確な数字はちょっと部屋に置いてきましたからなんですが、とにかく対象が、ほとんど大半が個人なんです。そこへいくと、全国銀行の預金というものを見ればこれは約六割くらいが法人なんです。こういうふうに貯蓄の質が違っておる。こういうことを考えて対策を講ずるのが大蔵省のあるべき姿ではないか、こんなふうに私は思うわけです。そういう点で非常に矛盾を感じております。一言簡単にお答え願いたいと思います。
  203. 伊藤博行

    伊藤説明員 利子課税の問題はいろいろな問題を含んでおろうかと思います。非課税貯蓄の限度額はどうかというのも一つの大きな課題ですけれども、先生おっしゃるように、仮に今の制度を前提にした場合の名寄せなり本人確認といった管理の的確化を図っていくというのも非常に重要な課題だと思っています。グリーンカードももちろんそのための一つの有力な方策であるということで法律が制定されまして、その後不幸にしていろいろな御議論ございましたけれども、私どもといたしましては、具体的にこういう方向でという方策までは現時点持っておりませんけれども、先生おっしゃるように、限度管理的なそういう観点も十分問題意識の一つとして念頭に置いて今後検討していかなければいかぬだろうという気持ちでおります。
  204. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この問題は、本当はこれだけでも三十分くらい、あるいはそれ以上議論しなければならないほどの問題なんですが、時間がありませんので次に移らせていただきます。  昭和五十八年の三月に臨調最終答申が出されて、郵政省組織について御指摘があったわけです。それは全部読むと時間がありませんから読みません。問題は、今度の設置法の改正も、つまの高度情報化社会に対応する体制をどうつくっていくか、こういうことに集約されると思うのです。  そこで、この大前提である高度情報化社会とは一体何なのか、こういうふうに考えてまいりますと、どの本を読んでもなるほどこれかとすっぱりと留飲が下がるような書き方をしておるのはないわけでございます。一体どういうものが想定されているのか。当面の問題で結構ですから、高度情報化社会とは一体何なのか、これについてひとつ御説明願いたいと思います。
  205. 小山森也

    ○小山政府委員 高度情報社会は何かということを一言で言うのは、先生のように御勉強なさっている方でも難しいのでございますから、私から申し上げるのはなかなか難しい話でございますけれども、ただ、電気通信という面から見た場合の高度情報社会ということについて若干、非常に至らぬ説明でございますけれども、考え方を申し上げたいと思います。  私ども今ちょうど高度工業社会と高度情報社会の接点にいる、こう言われているわけでございますけれども、高度工業社会の特性は何かと申しますと、生活面では豊かな物質というものであろうと思うのです。それを支えているのが高度な技術と高度な社会管理技法である。これによって満たされているものは何かと申しますと、私どもの個人的なレベルにおきましては、類型的な欲求と申しましょうか、お隣りのうちがテレビならばうちもテレビ、自動車なら自動車ということでございますが、そこに極立った特性を持った欲求というものではなしに、比較的同じような形の欲求というものを満足する、そういうことによって一応の社会的なレベルでの満足感を個人が持つというような社会が一応今の高度工業社会であり、またそれが物質的な豊かさというものによって支えられていると思うのでございます。  これに対しまして高度情報社会は何かといいますと、より欲求というものが非常に個性的になってまいりまして、隣のうちの自動車と同じ自動車じゃどうも気に入らないというようなことで、非常に特性化されてくる、そうでなければなかなか個人の欲求というのは満足しない世の中ではないか。そういたしますと、今度はそういうような個人的な欲求の満足度をいかにして得られるかといいますと、まず第一に個人の欲求というものを、何が自分自身の欲求であるかということをまず確定しなければならない。それについては、多くの情報の中から検索して自分自身の欲求というものを、個性的な欲求を確定してくる。それからまたさらに、今度はそういった個性的な欲求を満足させるための手段、これも多くの情報から検索してこなければならない。そういった検索をする方法は何かと申しますと、高度工業社会においてありましたコンピューターというものが、各個人の端末というようなところから個別に個人が欲するときに入手してこなければいけない世の中になってくるのではないか。  そういった場合において果たすのは、電気通信という役割というもので果たされる。すなわち、私どもの社会というのがネットワーク化されてきた、そのネットワークに加入することによって初めて高度情報社会における個人の欲求というのは満足させられる。したがって、私どもとしての電気通信の役目というのは、社会先導的な役目がそこに課されているのではないか。いろいろ高度情報社会の説明の仕方もございますけれども、私どもの電気通信に携わる者からいたしました位置づけというのはそのように考えている次第でございます。
  206. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、いわゆるINSシステムと申しますかネットワークと申しますか、こういうものが問題になるわけでございますが、このINSシステムが完成した場合、これはどこの端末機もそのネットワークの中に参入する、また参入することができる。そうした場合に、その情報の大衆化と申しますか全体化と申しますか、そういうふうになっていく傾向は避けられないと思うわけです。  そこで私が一番心配するのは、一つの端末機でどこの情報でも入手できる、取得できる、こういうことになると、これは場合によってはアメリカの国防総省の資料だって上手にやっていけば手にすることができるということになるわけです。あるいは企業の秘密に属する書類も、これが一つのキャプテンシステムを通して文字になって、それがコピーされて出てくる、こんなふうになることも実際に予想できるわけです。この間の文芸春秋にもありましたように、「コンピュータ少年の犯罪」ということで出ております。これなんか読むと本当に背筋がぞっとするくらいになるわけで、そういう場合、これはただ国家秘密とか企業秘密だけでなく、個人のプライバシーの問題にも及んでくるわけでございます。  そうした際に、これに対しては一つの方法としては法律的な措置が考えられるけれども、しかし法律というのはとかく罰したりあるいはその刑の軽重を確定する程度のものであって、既に刑の対象になったときは遅いのです。そのときはその秘密の情報は皆流れてしまっておる。こういうことに大きな問題があるわけです。そこでこれを技術的に防護できないかというと、私は、これも最終的にはできないと思うのです。一応できる技術を開発すると、さらにその技術を飛び越える技術がまた開発されてくる、鬼ごっこのように次から次へと垣根を乗り越えてくる、こういう現象が普通だろうと思います。そういうことを考えると、今新聞を見ても雑誌を見てもテレビを見てもこの高度情報化社会という言葉が非常に安易に使われておりますが、その中身をもっと行政は整理をし、そしてこれを秩序立てていくにはどういうことを考えなければならないか、こういう点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  207. 小山森也

    ○小山政府委員 先生の御指摘に正確に答えられますかどうですか、非常に内心じくじたるものがあるのでございますけれども、確かに私どもこれから向かうであろうと思われるのですが、どのような形に向かうかということは非常に不透明な社会でございます、高度情報化社会というのは。ただ、不透明ではございますけれども、何か変わった社会が来るであろうことは確かであろうと思います。現にその入口に立っております中で、プライバシーの問題というのは確かに重要な問題であろうと思います。  実は、このたびの法案等におきましても、法制的な保障をするというようなことをいろいろな点でやっておりますけれども、これは先生がおっしゃいましたように、そのときは発生してしまった後の、事後の措置でございます。ただしかし、その効果としましては、二回発生することについての、多発への抑制というものには効くでありましょうが、発生してしまったものに対しては、ほかの物質的な損害と違って非常に回復不可能に近いものがあることは御指摘のとおりでございます。そうしますと問題は、個人の情報あるいはいろいろな社会全体の情報というものをどこまで集積することがよいのか悪いのかということも一つの問題になろうかと思います。すなわち情報集積することの是非とか情報集積の許容範囲の検討であるとか、情報公開の範囲はどうするか、情報利用のルールとルール違反、こういったものに対してはどんな対策が必要か、また、そういった秘密確保のための技術面、法制面、管理面をどうするかというようないろいろな面があろうかと思います。  ただ、これにつきましては、本当はここで明快な御回答を申し上げたいところでありますけれども、まさにこれから私ども、そういった社会に向かっための政策の課題として至急に検討していってそれに対する対応策を考えるべき課題である、こう心得ておる次第でございます。
  208. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間がありませんので、若干私が通告した質問要旨とは違うかもしれませんけれども、御了承願いたいと思います。  いよいよキャプテンシステムというのが開発されて、これが現実の日程に上りつつあるわけでございます。そこで、このキャプテンシステムによるホームショッピングとかあるいはホームバンキング、そういうことが行われるようになった場合、そこでいろいろな実例による疑問がわいてくるわけでございます。  というのは、例えばテレビを見て電話で商品を注文するという場合、その売買契約が法的に成立したという時点ほどの時点をもってみなすのか、そういう問題もあるわけです。しかも、電話で注文をした時点なのか、あるいはそのことを受けて商品を持って家庭に届けて、そこで注文者と売り子との間で商品売買を確認した時点をもって契約とみなすのか、そういう点が整理されないといろいろな問題が出てくると思うわけです。あるいはまた、テレビで見たときには非常に画像が鮮明できれいだった、これはいいと思って買ったところが、持ってきたものは大分テレビの画像とは違う、こういう場合に、もうこれらは要らないという返還がきくのかどうか。今売買だけを取り上げて言いましたが、これが今度ホームバンキングとなるとまた別な面がどんどん出てくるのではないか、こんなふうに考えられるのですが、その点はどのように整理しようとお考えなのか。  最後に一つ、電信電話株式会社の問題ですが、この電信電話株式会社は、郵政省の監督下に置かれていくのか。しかしこれは、将来民間会社として機能していくためには、まあ全体が電波とかいろいろな問題で郵政省の監督下にあることは当然考えられますが、そういうものでなくて直接的な関与は不可能になってくると思うのです。そこで、最初の会社設立の際に社長は一体だれにしようと考えておるのか。株式会社法にのっとって発起人等もその定数を決められると思いますけれども、そういう点が第一点。  もう一つは、株の総額でございます。今のところ私が拝察する限り、この株価というのは、例えば固定資産の場合は固定資産評価額、あるいは有体動産の場合は一つの競売価格のような形で査定される可能性が出てくると思うのです。そうなると株の総額は、実際の電電公社の財産の何十分の一という形に収縮された表現になってくると思うのです。ところがこの何十分の一という株が今度株式に上場されて自由に売られるような段階を迎えたとすると、そのときの会社の株を持っている人たちは大変巨額な財産を手にすることになるわけで、言いかえると、国は国民の財産を最も安い価格で財界にこれを手渡そうとしているのではないか、これが本音ではなかろうかと考えるのですが、その辺に対するお答えをお願いしたいと思います。
  209. 小山森也

    ○小山政府委員 まず最初の、キャプテンシステムにおいていろいろな売買をしたときはいかなる一つの契約というのが成り立つかということでございますけれども、これにつきましては、一般法によるところのいわゆる売買の場合の諾成契約というような形で成立するものであろう、こう考えますけれども、ただ、先生も申されておりますように、確かにキャプテンシステムは手にとって物を見るということがございません。色ぐらいがせいぜいでございまして、それによってやわらかいか、かたいかというようなものは全く感じられないということでございます。  したがいまして、これが一般に言われるところの売買とどのような形でもってかかわるかということにつきましては、これは郵政省だけではなかなか決められない問題でございまして、それと同時に、やはりそういった当事者の自主的な一つの倫理とかコードというものとか、それからこれに携わります諸官庁によりますクーリングオフとか苦情処理をどうするかということでございまして、これにつきましてなかなか郵政省だけということでございませんので、まさにこういった媒体ができましたことによる実際的な生活への影響というのは、これからの研究課題として考えていかなければならない思っております。  それから、今度は会社のことでございます。社長の人事とか株の総額というようなことでございますが、これにつきましては、形式的には設立委員によって決められることになっております。設立委員は、これは前例でございますけれども、国際電電が今から三十年前につくられたときの例を申しますと、二十五人の設立委員がおりまして、この中におきまして株の総額を決定したり、次の役員の選任についての手続をしたりということになっております。  そうなりますと、当然考えなければならないのは、私どもといたしましてもそれを認可するわけでございますから、これにつきましてただ設立委員がやるからいいのだということは言えません。それにつきましては、やはり公正妥当な形で常に中立性を保った、大きな電信電話株式会社というものを運営するにふさわしい方がなることを願っておる次第でございますし、それから株の総額にいたしましても、純資産というものを正確に判断し、それに配当金額というものを考慮し、さらに退職給与引当金というようなことの積立額をいかにするかというようなことから、株の総額は決まってまいろうかと思います。  それから、株を売却することによってその取得した方たちが利益になるというようなことのないように、私ども注意してまいらなければならないと思っております。
  210. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最後に、大臣、一言。
  211. 奥田敬和

    奥田国務大臣 役員の選考は、今言いましたように設立委員によって適正な人選が行われることを期待いたしますし、また株の売却に当たっては、そういった御批判のないように、言いかえれば国民の総資産によって形成されてきた会社であるという経緯にかんがみましても、そういった形の御批判を受けないような形で適正に当たってまいりたいと思っております。
  212. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間が参りましたので、最後に一言。  ただいまも議論に出てきましたように、特にこれから電電二法というものは大変な問題をたくさん含んでおるわけでございまして、これは余り急ぎ過ぎると後で取り返しのつかないことになろうかと思います。  そこで、これは設置法とはなんですが、今後、郵政大臣の御指導のもとにぜひひとつ慎重に取り扱っていただきたいことを希望いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  213. 片岡清一

  214. 松浦利尚

    松浦委員 私は十一番目の質問者で、一番最後です。もうほとんど出尽くしておりますが、その中でどうしても聞いておかなければならない幾つかの問題について質問をさせていただきたいと思います。  その一つは、大蔵省、きょうは残念なことに参議院の財特法の審議がありまして、政府委員がおいでになっておられないわけでありますが、大蔵省は、御承知のように、何かというと必ずと言っていいほど金融制度調査会の問題を取り上げて、金融制度調査会がこうだああだということを発言をしてこられるわけであります。昭和五十一年、もう大分前になるわけでありますが、金融制度調査会が、銀行はもっと競争をすべきだ、金利は弾力化を持たせるべきだ、市場原理を導入すべきだ、こういう金融制度調査会の中間報告というものが出されておるわけでありますが、これを今日まで銀行局としてあるいは大蔵省としてどう受けとめ、どのようにしてこられたのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  215. 日吉章

    ○日吉説明員 先生ただいま御指摘のように、金融の自由化は現在は国際的にも国内的にも避けて通ることのできない大きな流れでございます。ただいま御指摘のように、金融制度調査会でもかねてよりそのような御指摘をいただいております。したがいまして、私どもはそういう大きな時代の流れ、金融の自由化につきましては積極的に対応してきているつもりでございます。例えば金融機関の業務の多様化にも対応してきているつもりでございますし、その中でも金利の自由化につきましては、例えばCDの発行を認める、さらにはその発行条件を弾力化する、あるいは外貨預金の限度の撤廃を行うというような形で、漸次自由金利商品の拡大を図ってきているところでございまして、今後ともこのような方向で金融の自由化、金利の自由化を金融経済秩序に混乱を生じさせない形でソフトランディングさせていきたい、かように考えております。
  216. 松浦利尚

    松浦委員 五十一年のこの答申というのを大蔵省当局がもっと早く真剣に受けて努力をしておれば、外圧というものは余り受けなかったと思うし、外圧による混乱というのもなかったと思うのでありますが、現実にアメリカから、ロン・ヤス会談ではありませんが、金融の自由化と通信の自由化という問題が、昨年の暮れレーガンが日本に来られたときに最大の焦点として議論をされて、もう避けて通れない状況になってしまっておるわけであります。  大蔵省は、昭和二十二年に制定をいたしました臨時金利調整法、これは今後どうするつもりでありますか。ガイドラインを決めて、護送船団と言われて今日までいろいろなことを言われながらも、二十二年のこの法律が臨時という二字がついておるにもかかわらず今日まで存在をしておる、このことについて大蔵当局はどう考えておられるのですか。
  217. 日吉章

    ○日吉説明員 先生既に御存じのように、アメリカにおきましても金利の自由化が叫ばれましたのは一九七〇年代に入ってからでございますが、金利が完全に自由化されましたのは昨年の十月でございまして、その間十年の歳月を経ております。我が国におきましては、低成長下になりましてから国債の大量発行、さらには内外の資金交流の活発化という国際化を控えまして、ここ数年に至りまして金利及び金融の自由化の必要性が高まってきたわけでございます。そういうふうな状況を背景にいたしまして、私どもは預金金利の自由化につきましては前向きに対応していく必要があると考えておりまして、ただいま御指摘の臨時金利調整法につきましては、その規制を漸次緩和する方向でいかなければならない、かように考えております。  ただし、ただいまも申しましたように臨時金利調整法を直ちに撤廃してしまうというようなことになりますと、金利水準の激変を招くというようなことなどによりまして、企業の投資意欲を沈滞させるとかあるいは中小企業金融とか農林漁業金融に支障を来す、こういうふうな悪影響が及ぶことも懸念されるところでございます。また一方では、急速なる自由化によりまして競争が過度に激化いたしまして、一部金融機関等の経営に悪影響を与え、預金者に不測の損害を与える、こういうようなおそれもあるわけでございます。したがいまして、私どもは、金利の自由化を進めていくに当たりましては、今後の我が国の経済、金融に悪影響を及ぼさない、こういうふうな点に配慮いたしまして、その手順なり環境整備なり等について十分な検討を行いながら、ただいまも申し上げましたようにソフトランディングを図っていきたい、かように考えているわけでございます。
  218. 松浦利尚

    松浦委員 だから、五十一年の答申を受けたときから私はもっと真剣に大蔵省は取り組むべきだったというふうに思うのです。今日、金融の自由化、金利の自由化というのは避けて通れない道だということだけははっきりしておる。ソフトランディングで進みたいという言い方もよくわかりますけれども。  ここで、公正取引委員会から佐藤経済部長、忙しい中をおいでいただいて大変恐縮ですが、この問題というのは公正取引委員会でも再三取り上げられてきておる問題だと思うのです。御承知のように高橋公取委員長が先般でしたか、ガイドラインの問題について、新聞で拝見をしたのですが、価格協定のおそれがあるという意味で公取の見解を発表しておられるわけでありますね。しかしこれは歩積み両建てというものが現存をしておるということを前提にしての談話ですけれども、公正取引委員会は既に政府規制問題について、OECDの勧告を受けて「政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直しについて」ということで各省庁に対して指示をしておられるわけでありますが、今の日吉総務課長と私とのやりとりを含めて公正取引委員会としての見解を承りたいと思います。
  219. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)政府委員 御説明申し上げます。  ただいま先生からも御指摘ございましたように私ども政府規制の問題につきまして検討を進めておりますが、政府規制につきましては、その産業の基づくいろいろな社会的な問題あるいは経済的な問題から政府規制が必要になる場合ももちろんあるわけでございますが、競争政策の立場からしますればできるだけ政府規制はない方がいい、あるといたしましても、できるだけ緩い手段といいますかそういうことでやっていただくのが結構であるというぐあいに私ども考えております。  お尋ねの金利の問題につきましても同じように考えておりまして、金利規制というのは、預金者保護でございますとかあるいは金利政策あるいは金融秩序というようないろいろな観点から政府規制がなされておるわけでございますが、基本的には、やはりできるだけ公正かつ自由な競争を通じまして資源の適正な配分や消費者の利益の確保を図るという、私どもの担当しております独占禁止法の精神が生かされるということが望ましいというぐあいに考えております。  今御指摘がございました、五十七年八月に私ども「政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直しについて」という報告を出しておりますが、その中で金利規制につきましても、企業間で決めますもの、例えば貸し出し金利なんかそういうことになりますが、そういうのは自由にまず決めてもよろしいんじゃないか、預金金利につきましては、例えば小口零細預金者保護の観点から規制が必要であるとしましても規制は最小限度にとどめることとし、できるだけ自由化の方向で検討する必要があるということを申し上げ、この点は大蔵省にもお伝えして御検討をお願いしておるというところでございますので、今後とも、ただいま日吉総務課長の方からお話がございましたが、できるだけ自由化の方向で進めることを強く期待しておるわけでございます。
  220. 松浦利尚

    松浦委員 国内的に見ましても、もう既に公取あるいは調査会、あらゆるところが市場原理を導入した金利の自由化政策を求めてきておる。ところが、たまたまレーガン大統領が登場してきて、昨年の十一月ですか、日本においでになって以来、我が国金融市場・金利の自由化、そして通信の自由化という問題が急激に取り上げられてきておるのです。  そこで大蔵省にお尋ねをいたしますが、「金融自由化の展望と指針」というものがつくられておるはずでございますが、なぜ資料要求したときに私たちにもらうことができないのか。これは四月十四日の日経新聞でありますが、「金融自由化の展望と指針」の内容ということで極めて具体的に発表されておる。これは原文を見なければ書くことのできない記事であります。そして、四月十四日にアドバルーンを上げておいて十六日、十七日と二日間ワシントンで円ドル委員会が開かれておるわけですね。私は、この日経新聞の展望と指針の内容について大蔵省に提出を求めました。私の手元には来ておりません。新聞には発表するが国会議員にはくれない理由、そのことをはっきりさせてください。     〔委員長退席、池田(行)委員長代理着席〕
  221. 日吉章

    ○日吉説明員 先生ただいま御指摘の某新聞に出ました展望と指針なるものの記事は、私も承知いたしております。ただ、これにつきましてはかねがね総理の方から、金融の自由化が不可避な趨勢である以上、大蔵省、金融政策をつかさどる役所としましても一種の展望のようなものを描いて今後の自由化を進めていく必要があるのではないか、ひとつ勉強してみろというふうな御指示をいただいているわけでございまして、私どもはその作業をいたしておるのは事実でございますが、まだそれができ上がっておりません。それも事実でございます。したがいまして、そこに発表されました新聞は、私どもが総理の宿題として受け取っております展望のようなものとして作成したものではございません。私どもは、そういうものはまだ完成いたしておりません。完成いたしました段階におきましては、総理に御説明を申し上げるとともに、もしお許しがいただければ発表もいたしますし、先生方の求めに応じましては提出いたしまして、いろいろな御批判を賜りたいと考えております。
  222. 松浦利尚

    松浦委員 今の答弁では納得できない。これは明らかに日経新聞に対して大蔵省のだれかが展望と指針の内容を見せたから、こういうふうに詳しく各条ごとに書いてある。どんな敏腕な記者でもこれだけ書くことは不可能です。  さらに、おとといの新聞では、円ドル委員会において二十項目について合意に達したという報道が出た。この資料についても持ってこいといってお願いをしたけれども、この合意事項についても私たちの手元にはもらえない。ところがきのうの夕刊では、円ドル委員会の二十項目の合意について賛意を表するという談話がワシントンから送られてきておる。なぜ合意した二十項目の内容について我々国会議員に大蔵省は出すことができないのですか。ホワイトハウスの方では既に賛意を表明しておる。ここは国権の最高機関だ。今からこの郵政省の設置法について、小口預金問題について私は議論を進めたいと思うのだけれども、この大蔵省の展望と指針あるいは二十項目の合意事項、こういったことがここに出されなければ議論にならない。なぜ国会に出すことができないのですか。国会に出せない理由をはっきりさせてください。
  223. 日吉章

    ○日吉説明員 まず、展望と指針について申し上げますと、私どもは先ほども申し上げましたように総理の指示に基づきまして金融自由化の展望のようなものをつくるべく作業を進めているのは事実でございますが、まだでき上がっておりません。したがいまして、でき上がっておりませんためにそれを提出することができないというわけでございます。ただ、私どもは作業の過程におきまして、いろいろな作業をいたしておりますので、そのある時点のある部分が新聞等に漏れておる部分がございますことは非常に残念に思っておりますが、完成したものはでき上がっておりません。  それから、日米円ドル委員会についての御質問でございましたが、私はこれを統括している立場にございませんので御答弁申し上げるのはあるいは適当でないのかもしれませんが、私の承知している限りにおきましては、先般の東京におきます会議におきまして、サブスタンスにつきましておおむねの了解が得られたというふうに聞いておりまして、その具体的内容あるいは報告書の文章等につきましては今後なお引き続き交渉する余地があるように承知いたしております。そして、日米間の話し合いでございます関係上、日米双方まとまるまでその内容等につきましては両者間においてなおしばらく検討しようということになっているというふうに聞いております。そういう意味におきましても、しかとしたものがまだ合意に達し成文としてでき上がっているというふうには聞いておりませんし、それは事実だと思います。
  224. 松浦利尚

    松浦委員 今の答弁では私は納得いたしません。二十項目合意事項の中に、一面のこれだけの見出しで「大口預金二−三年内に金利自由化」と書いてある。小口預金については書いておらない。  大口預金について二、三年内に金利の自由化をするのだ、新聞にこういう方向が明確に打ち出されておる。新聞社に教えて何で国会議員に教えないのですか。しかも、金利の自由化という問題は小口にとっても極めて重要な問題なんです。再三にわたって私は資料を持ってきてくださいと大蔵省に要求した。そのたびごとに今のような答弁ですよ。納得できないですね。出してください。そうでなければ議論できないじゃないですか。委員長、出させてください。新聞には出ておるのですから。
  225. 日吉章

    ○日吉説明員 先生の御納得が得られないことは非常に残念でございますが、まだでき上がっておりません。したがいまして、出すことができないわけでございます。
  226. 松浦利尚

    松浦委員 でき上がっておらないおらないというけれども、二十項目について合意した、しかもワシントンでは賛意を表したという報道が日本にも出されておる。なぜその合意した事項だけでも出せないのですか。  あなた方は国会というのはどういうところだと考えていますか。我々はこの新聞で議論をするのですか。大蔵省が新聞で議論しなさいというのなら新聞で議論しましょう。しかし、そのことは正確でないでしょう。  大臣、二十項目の合意事項の中で、郵政省の小口預金はどうなっているのですか。
  227. 奥田敬和

    奥田国務大臣 存じておりません。
  228. 松浦利尚

    松浦委員 私は非常に遺憾に思いますね。大臣も知らないことがなぜ新聞に載るのですか。先ほどの展望と指針にしたって、いつも大蔵省のやることはこういうことなんだ。円ドル委員会が開かれる直前にアドバルーンを上げてみて、アメリカの反応を見る。まずいと引っ込める。必ずやる手なんだ、大蔵省は。前から、私が大蔵委員でおる時代からこうなんだ。そして資料をくれないんです。納得できませんね。出させてください、委員長
  229. 池田行彦

    池田(行)委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  230. 池田行彦

    池田(行)委員長代理 速記を起こして。  松浦君。
  231. 松浦利尚

    松浦委員 それでは新聞によって質問してくださいということですから、おかしなことだけれども、もしこの新聞と同じような内容であったときには私は大きな政治問題になるということを前提にして質問さしてもらいます。  それではお尋ねいたしますが、大口預金は二年三年内に金利の自由化をすると、こう書いてありますが、小口預金はどうなるのですか。  それから、この四月十四日、円ドル委員会前に出された展望と指針、内容によりますと、大口預金については全面的な規制の撤廃ということがうたわれておりますが、小口預金金利の自由化は検討すると、こう展望と指針には書いてあります。こちらの方にはありません。小口預金の金利の自由化についてはどのようになっておるのかをお答えいただきたい。
  232. 日吉章

    ○日吉説明員 私どもの今後の金利の自由化の進め方につきましては、大蔵大臣の諮問機関であります金融制度調査会が昨年の春、金融の自由化の総論的な取りまとめといたしまして中間報告を私どもにちょうだいいたしております。その中に金利の進め方につきましてのある種の考え方が示されておりますので、それに基づいて私どもは金利の自由化を進めていきたい、かように考えております。したがいまして、総理の宿題の展望も、おおむねその金融制度調査会の中間報告の延長線上にあるものとして処理をしていきたい、かように考えております。  その金融制度調査会の中間報告によりますと、金利の自由化を進めていくに当たりましてはやはりソフトランディングを図っていくことが必要でありますので、今既に存在しております大口預金の自由金利商品の幅を広げていくということから徐々に金利の自由化を進めてまいりまして、その結果影響するところ等を勘案しながら徐々に小口預金金利に及ぼしていく。ただ、小口預金につきましては基本的に、究極の状態におきましても小口預金の金利を自由化することが果たして望ましいのかどうかという基本的な議論も金融制度調査会の中であったのは事実でございます。したがいまして、とりあえず大口預金の自由金利商品の幅を広げていく、厚味を増していくというところから私どもは金利の自由化を進めていきたい、かように考えております。
  233. 松浦利尚

    松浦委員 この円ドル委員会の合意事項の見出しを見ますと、「小口預金金利の自由化は長期課題とする」というふうになっておる。こちらの方の展望と指針は「検討」。その「検討」が「長期課題とする」と、こうなっておるのです。  小口預金の最大の預金を集めておられる郵便貯金を担当しておられる郵政大臣がこうした円ドル委員会の内容について御存じない。しかも、小口預金については長期的な展望に立って検討を加えるというふうに自由化の枠外に置かれておる。このことについて、大臣どう思われますか。
  234. 奥田敬和

    奥田国務大臣 今の日米間でやっておられる極秘の交渉内容であるとは存じますけれども、何か蚊帳の外に置かれておる立場で、まことに遺憾でございます。  ただ、今日の金利の自由化論争の傾向から見ておりますと、私は、先生の今お持ちの新聞を読んでないということをまず最初におわびしなければいかぬわけですけれども、大口から始めて小口について、しかも長期課題として検討を行うといった方向に対しては全く不満でございます。大体小口預金が預貯金の六割を占めておるという現状、しかもその小口預金の中でも八十五兆という巨額の資金を持っておる郵貯、こういった形を圏外に置いての自由化というのは、私は理屈としては非常に不満でございます。小口預貯金の金利の自由化を後回しにしてソフトランディングを図るということでございますけれども、それでは小口の利用者がいつまでも不公平な扱いを受けることになるのじゃなかろうかという懸念もございます。小口だけを長期課題で置き去りにしておく形によって、やはり預貯金は有利な資金の方へシフトしていきますから、そういった形を懸念するわけでございます。このような点を踏まえますと、大口と小口の自由化に長期的なそういったタイムラグを置くということは私は適当でないと考えております。
  235. 松浦利尚

    松浦委員 アメリカでも漸進的に小口預金については金利の自由化をするという方向をとってきたけれども、現実に失敗をしておる。これは野村総合研究所の「財界観測」五月号の中にも載っておるとおりで、これは大蔵省は常に見ておられると思うのですが、これは見なくたって知っておられるように、アメリカでは小口預金金利の自由化について失敗をした、見通しを誤った。なぜ見通しを誤ったかといえば、これは当然小口を置き去りにすると、今大臣が言ったように金利の有利なところにシフトする。ビッグとかワイドとかあるいは期近債ですか、期近債の残高の推移を見ましても、残存一年未満の十年債が五十九年度で十兆六千億、あるいは残存二年未満のもので二十三兆五千億、金利が七・八%。銀行に預金しておくよりもこっちの方にシフトした方が小口預金者はよっぽどましなんだ。あるいは信託とか、そういったところにどんどんお金を持っていく。あるいは中期国債ファンド。金利の高いところに小口預金者が全部シフトをしていくんですよ。銀行の預金が伸びないはずですよ。これを置き去りにしてごらんなさい。小口預金だけ金利を規制してあとの市場を自由化していったら、どんどんそちらの方にシフトしていくじゃありませんか。  大臣、これは大臣が見られたかどうか定かではありませんけれども、総理府統計局が貯金の実態調査をしている。この貯金の実態調査を見たら、今でも貯金と保険、郵便貯金、簡易保険は若者に魅力がない。二十五歳未満あるいは四十五歳から四十九歳、そういったところは全部銀行、生命保険会社等の民間に進んでおる。簡易保険とか郵便貯金に回ってくるのは六十歳から六十四歳、あるいは六十五歳以上。若者に魅力がないのですよ。これは今度総理府が出した五十九年三月の統計局の貯蓄動向調査報告速報を見れば一目瞭然。今ですらこうです。小口預金を置き去りにしてごらんなさい。若者たちは有利な方に、有利な方に全部シフトしていきますよ。幾ら笛吹いて、郵政大臣が、さあ貯金してください、やあ簡易保険に入ってくださいとどなり回ったって集まりませんよ。なぜ一緒にやらないのですか。しかも、先ほどの質問者にも答えておったように、この貯金、保険のお金というのは財投資金に回っていくのです。なければ片一方で困るのです。お金が集まってこなければ困るにもかかわらず、それを魅力のないものに置き去りにしようとする、これは明らかに政府の矛盾じゃないですか。これは同時にやるべきですよ、アメリカですら失敗したのですから。  私は、円ドル委員会の結論がどのような方向に進もうと、郵政大臣は勇気を持って小口の預金の自由化についても当然主張すべきは主張すべきだと思うのです。なぜ大蔵省が小口預金の自由化をしないか、それはもうはっきりわかっておる。先ほどから大蔵省がくどいように答えておるように、自由化をしたら郵貯の自主運営郵政省に認めなければならないようになるのです、これは自由化されたら当然の結果として。だから小口預金を置き去りにしようとするのじゃないですか。もう大蔵省には聞きません。大臣どうです。
  236. 奥田敬和

    奥田国務大臣 確かに、そういった御指摘の方向にあるということは私もそう思います。ですけれども、先生も金融、財政にはひときわお詳しい、勉強なさっておるお立場ですから、この郵貯が財投の大きな資金原資であるという実態にかんがみまして、国の大きな財政政策全般にかかわる、根幹にもかかわる問題でありますだけに、私たちも単純な形での自由化は望むべくもまだ今の段階ではありませんけれども、やはりこういった市場実勢に従って、置き去りにされていく金融政策に関しては郵政大臣として預金者の金利を守っていくという立場から敢然として主張すべき点は主張してまいろうと思っております。
  237. 松浦利尚

    松浦委員 私は、小口預金者の保護という立場と同時に、やはり郵貯自主運用の枠を拡大していくというのは郵政省の悲願だったと思うのですね。金利の自由化を目の前にして、その段階で仮に置き去りを食らったら、これから郵便貯金の金利自由化という問題は長期間にわたって間違いなく規制されていきますよ。たまたま奥田郵政大臣がおられるときにこういう状況が生まれたのが、非常に激変をする過渡期の大臣であったという立場もおありだとは思うのでありますけれども、将来の郵政省という問題を考えると小口預金についてのみ置き去りにされるということは絶対あってはならない。そのことは閣議でもぜひ強く主張していただきたいと思いますし、これが事実かどうかは別にいたしまして、五月の末には恐らく発表するでありましょう展望と指針の内容で、小口預金を検討するとかあるいは長期にわたって検討を加えるとか、こういう字句が挿入されないように、大臣の覚悟のほどを承っておきたいと思います。     〔池田(行)委員長代理退席、委員長着席〕
  238. 奥田敬和

    奥田国務大臣 郵政大臣といたしまして、郵貯が魅力なき形で置き去りになっていくというような事態というものは何としても阻止してまいりますし、また、自由化の趨勢に対して自主運用という、そういった大蔵との折衝においても、今先生の御指摘のような御趣旨も踏まえまして、大臣としての職務を全ういたしたいと思っております。
  239. 松浦利尚

    松浦委員 ぜひ努力していただきたいと思います。  それから、大蔵省の日吉課長さんにお尋ねをいたしますが、CDの小口化ということもこの展望と指針の中に書いてありますし、合意事項の中にも書いてありますが、現在の三億円を一億円にするということについては間違いありませんか。
  240. 日吉章

    ○日吉説明員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのCDの小口化につきましてお答え申し上げます前に、私は大口預金金利から自由化をしていきたいというふうにお答え申し上げましたが、若干舌足らずでもございましたので、その物の考え方を実は御説明させていただきたいと思います。  大蔵省といたしましても、小口預貯金金利をも含めました預金全体の自由化につきまして検討しないあるいは自由化を行わないと言っているわけではないことを御理解いただきたいと思います。その自由化の手順といたしまして、大口預金金利から実施していくことが適当ではないか、かように考えているわけでございます。  その理由を簡単に申し上げますと、金利の自由化は、市場で自由に金利が形成されることが重要でございます。そういう意味では、既に市場の形成されております大口の取引から自由にしていくということがごく自然ではないかというのが一つでございます。そういうふうな物の考え方に立ちまして、先生指摘のように、アメリカにいたしましてもあるいは西ドイツにいたしましても、既に金利を自由化しております先進主要国はすべて大口の市場金利から自由化をしてきております。ただ、その過程におきまして、先生が御指摘のように、大口、小口ということではなくして同じような預金者に対して自由金利商品と規制金利商品とが併存しますと混乱が生ずるというようなことがございますので、その点は十分配慮しなければいかぬと思います。  なお三つ目には、市場に金利をゆだねますと、金利が経済情勢によりまして乱高下することが予想されます。その場合に、果たして小口零細預金者の預金金利が乱高下することがいいのか悪いのかという問題がございます。ここらあたりにつきましては、市場を見ながら安定的な金利をつけた方がいいというふうな考え方もあるわけでございます。  最後に、日本の特殊事情としましては、先生も御指摘のように、個人預金の三〇%以上を占め、八十兆以上を占めます郵便貯金の金利がどういう形で決められるかという点につきましてのコンセンサスが得られなければならないという日本国有の特殊事情があろうかと思います。そういう点を種々勘案しながら、私どもも小口預金金利の自由化について検討していきたい、かように考えているわけでございまして、決して小口預金金利をそのまま据え置いておきたいというふうに考えているわけではございません。  それからCDの最低発行単位の問題でございますが、CDは御存じのように、四十年代から五十年代初めにかけでであったかと思いますが、自由金利商品として創設をいたしたわけでございますが、最初は五億円という非常に大口なものから発足いたしました。ただ、これもかなりなじみが出てまいりましたので、ことしの一月からは三億にしたわけでございます。したがいまして、今後はこの発行単位を徐々に引き下げていきたいというふうに考えているのは事実でございまして、これをいつから、どのように引き下げていくか等についてはまだ確たる方針を固めておりませんけれども、このような点につきましてアメリカ側も関心を抱いているというのは事実でございます。
  241. 松浦利尚

    松浦委員 ちょっと今のお話を聞いておってぽっと私は思ったのですが、今の預貯金金利は一元化ですか、二元化ですか、大臣。今、答弁しなくてもいいのにいろいろ言われたのをちょっと聞いておりまして、今の預貯金金利は一元化ですか、二元化ですか、どちらですか。
  242. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 現在の預金金利の決め方でございますけれども、民間金融機関の預金金利は臨時金利調整法のあれに基づきまして決定されているということでございます。郵便貯金の金利につきましては郵政審議会の答申を得て郵政大臣が政令を通して決める、こういうことになっているわけでございますので、ある意味では二元方式という言い方ができるのではないか、こう思います。
  243. 松浦利尚

    松浦委員 間違いなく二元方式ですね。それは確認していいですね。二元方式ですね。
  244. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 一元的に決められていないということで、決めるところが二つ方法があるということで、そういう意味で二元ということを申し上げてもいいのではないか、こういうふうに考えております。
  245. 松浦利尚

    松浦委員 自由化するというのは多元方式だ、こういうことになるわけですね、金利の自由化をするということは。そうでしょう。
  246. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 金利の自由化の形といいますのは、昨年の十月にアメリカにおきましても金利の自由化がほとんどできたわけでありますけれども、あるいは諸外国において自由化が進んだところがございますけれども、これを見た場合に、各金融機関がもちろん市場実勢というものを踏まえて合理的な金利をつける、それぞれの機関がそれぞれの判断に基づいて決めるということでございますので、どこかが統制的に決めるということではないということが金利の自由化であろうと思っております。
  247. 松浦利尚

    松浦委員 ですから、郵政大臣と大蔵大臣で、かつて二、三年前でしたか、一元化、二元化で大分論争がありましたけれども、もう金融の自由化は目の前だし、先ほどの銀行局の日吉課長さんのお話を聞いても、もう二元化で結構だ、多元的な方向に進むわけですから、その点ははっきり腹に据えてこれからの預貯金金利の運営については当たっていただきたい。いいですね。——いやいや、大蔵省はいいですよ。あなたが要らぬことを言うからだよ。もういい。  それからCDの問題について、日銀が出した経済統計月報、これは古いのですが、五十八年十月の内容ですが、五億円を三億円、三億円を一億円というふうに下げてこられましたけれども、これを調べますと、一億円の預金者の口数というのは十五万八千七十七件で、圧倒的に法人が多いのですね。ですから、CDを三億円小口化して一億円にしても、実質的には法人だけに利益が回る。  それで、これは政策的な問題に入りますけれども、こうしたCDを小口化することによって得た利益というものを小口の預金者に配分をする、配当をする、そういったことは考えられませんか。考える余地はないですか。
  248. 日吉章

    ○日吉説明員 お答え申し上げます。  結論から端的に申し上げますと、先生の御示唆に富む御提案のような案を編み出すことは非常に難しいのではないかと思います。やはり自由金利の市場におきましては、大口で簡易な手続によりまして預金が調達できるといいますことは、それだけトータルとしてのコストが安いということでございまして、したがいまして、金利を自由化してまいりますと、大口預金者につきましては高い金利が付され、小口預金者につきましては低い金利しか付されない、こういうふうなことになるわけでございまして、金利自由化の当然の帰結といたしまして、大口預金には高金利が付され、小口預金には相対的に低金利しか付されないというのが経済原則ではないかと思います。  しかしながら、私どもはこういう点につきまして、先生の御指摘のような点も踏まえまして、今後の方向課題といたしましては、例えば現在ございますようなCDの億単位のものではない、それよりも幾らか小口の千万単位の、五千万とか何千万とかというようなものに対しまして、金利の点ではある程度CDの金利なり手形レートよりも低い金利で、しかしながら小口の規制金利よりは高利回りの金利、かつ市場に連動するというふうな商品を中間的な商品として大口から小口に金利の自由化を進めていく過程において編み出せないか、こういうふうなことを検討しているわけでございます。  それから、先ほど答えるに及ばないという御指摘がございましたけれども、実は多元化がよろしいと私は申し上げたわけではございません。一元化、二元化、多元化はまさに言葉の定義でございまして、金利の自由化といいますのは、市場にイコールフッティングの立場で市場関係者が参加することからおのずから価格、金利が決定されるという市場を金利の自由化というのではないかと思います。その場合に、個人預金者の中の三分の一程度のシェアを占めまして、なおかつ国営企業という国の信用力をバックにいたしました郵便貯金が、果たして平等な立場の市場参加者として参加し得るのかどうか、参加する場合にどういうふうなことに留意する必要があるのか、そこらあたりを十分検討する必要があるのではないか、かように考えております。  なお、金(かね)につきましては、先生御案内のように、形も色もございません。したがいまして、自由化するとはいいましても、他のものに比べまして一物一価の原則が非常に容易に貫徹できやすい商品ではないか、かように考えております。
  249. 松浦利尚

    松浦委員 今のお話を聞いておって、郵政省側はどうですか。要するにプライスリーダー的な役割を果たすという問題を含めて、検討を加えなければならぬと御親切に大蔵省が郵政省のことまで考えていただいておるわけなんですが、今の大蔵省の答弁について、どういうふうに思われますか。
  250. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 金利の自由化になったときの金利の決め方ということで、かねてからいろいろ言われておることは私どもも承知をいたしております。金利の自由化になっても一元化が必要であるとか、あるいは民間金融機関に追随する仕組みが必要であるというような議論があることは承知をいたしておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、金利の自由化になった場合は、それぞれの機関がそれぞれの判断で金利を決めていくというのがまさに金利の自由化であり、それに対応する現在というのは、商品の企画あるいは価格、利率でございますが、こういったものまで統制するということ、この統制を外していくというのが自由化でございますから、一元化とかあるいは追随という概念というのは自由化になじまない概念であろう、こういうふうに考えているわけであります。  また、民間金融機関に追随するということではございますけれども、民間金融機関もそれぞれ商品性というものも差が出てくる、多様化してくるわけでございましょうし、何に追随する、どこの金融機関に追随すればいいのかなとというような問題も出てこないとも限らないわけでありまして、そういう時代において、追随ということを仕組みとして設けるということは、これはやはり真の自由化というものからかけ離れた仕組みであろうと思うわけであります。  いま一点の、郵便貯金が八十五、六兆というような額を持っているということから見て、プライスリーダーになるんではなかろうかという御懸念を抱く向きもあるようでありますけれども、むしろ私ども考えておりますのは、運用の面において現在は政策的に非常に低利に抑えられておるわけですから、これでは到底自由化に対応することはできない、したがって運用のサイドにおいても市場実勢が反映できるような仕組みをつくる必要があろうということではございますが、しかし、国の資金という性格もこれあり、また今日までのいろいろな経緯等もございますので、郵便貯金資金を民間金融機関と同様な形での運用ということが直ちに行えるあるいは行うことがよいかということにはいろいろ問題があろうと思います。これからもさらに財投としての意味合いというものはやはり存続するでありましょうから、そういった形での資金調達という観点は踏まえた形で自由化対応をせざるを得ないであろうと思うわけであります。したがいまして、私ども考えておりますのは、国債というようなものを中心にしたものでございまして、これが民間金融機関の運用利回りと比較いたしまして決して高くなるわけはないわけでありますから、これをもとにした資金運用というものを中心に行うにいたしましても、郵便貯金がプライスリーダーになって日本の金融市場というものが混乱するというようなことは、これは単なるお話であろうというふうに私どもは考えておるところでございます。
  251. 松浦利尚

    松浦委員 今度はちょっと大蔵省にお尋ねをしておきますが、五十九年三月二十八日から長期プライムレートを〇・三%引き下げて、七・九になりました。中小企業の三機関の基準金利でありますが、プライムレートが〇・三引き下げられたのでありますから、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫も当然〇・三%引き下げられるべきだと思うのでありますが、この部分については〇・二%しか引き下げなかった。商工中金の標準金利は〇・三引き下げた。これはなぜこういうことをしたのか。  従来は中小企業金融公庫と国民金融公庫の基準金利は〇・一低かったわけですよ。にもかかわらず、今回は〇・三引き下げたのにこの分野だけ〇・二しか引き下げなかった理由、しかも中小企業は今非常に倒産件数等が多くて、金利が下がるということはそれだけでも経営に非常に大きなメリットが出る、にもかかわらずこの分野だけ〇・二で抑えたという理由を明らかにしてください。
  252. 松田篤之

    ○松田説明員 先生指摘のとおり、この三月の引き下げにおきまして国民金融公庫並びに中小金融公庫が〇・二%の引き下げを行って、七・九%になったわけでございます。政府関係機関と申しますのはもともと民間金融機関を補完して金融を行うという役割でございまして、民間金融機関の最優遇レートでございますいわゆる長期プライムレートで貸すのが原則でありますが、そういう意味では、この引き下げ後の七・九%という水準が民間金融機関の最優遇と同じ水準でございますので、いわば原則に戻った状況になるわけでございます。  それではその前はどうだったかと申しますと、金利が高い時代、八%を超えている時代というのが昭和五十四年ごろから続いておりますが、この四、五年間は特に民間金融機関が高かったこともございまして、政府関係機関の国民、中小の両公庫は民間の長期プライムレートよりも、非常に高いときにはかなりの幅で、最近におきましては〇・一%の幅で低い状況に据え置いて、特に政策的に低く決めたわけでございます。  そういったこともございまして、この両機関は損益の内容が大変に悪くなっておりまして、両機関とも、五十八、五十九年度を見ますと、一年間でそれぞれ百億円を超す赤字が出るような状況でございまして、これ以上特別に引き下げた状況を続けることは非常に難しいという状況の財政的な事情にあり、しかも一般会計からもこれ以上の補給金を加えることはなかなか困難であるということもございましたので、今回の引き下げに際しまして、民間金融機関並みという基本原則に立ち返った水準にしたわけでございます。  それから商工中金のお話がございましたが、商工中金は、〇・三%引き下げた結果、民間金融機関と同じような水準になっているわけでございまして、国民、中小公庫よりもさらに低い水準になっているわけではございません。なお、商工中金は国民、中小公庫と違いまして、いろいろな民間機関と同じような債券あるいは預金といったものを原資として貸し付けを行っている関係上、常に民間金融機関と同じような水準で金利設定がされているのが原則でございます。  以上でございます。
  253. 松浦利尚

    松浦委員 私はやはりもとに戻すべきだと思いますね。いろいろ理由はあるだろうと思います。言っておられることも決して否定はしません。しかし、現実的に今までそういう措置をしてきたにもかかわらず、今回から極端に言うと冷たい扱いをするということになったわけですからね。しかも預託金利ですからね。そういった意味では、金に困っておる、借りたくても借りられない、したがって高金利のサラ金に手を出していく、結果的に倒産をするという状況現実にあるわけだから、決めたものをまたもとに戻すということはなかなか難しいことだと思いますけれども、今後の問題としてぜひもう少し御配慮をいただきたいというふうに私は思っております。  これで大蔵省に対する苦情その他はもう申し上げません。これからは郵政省に対する苦情になるわけですけれども、その前に、目標を一兆円下げた。先ほど言ったように、結局若者に魅力がないのですよ。これを見られたらおわかりでしょう。一目瞭然です。ですから、もっと若者に魅力のある簡易保険あるいは郵便貯金というものについて検討を加える必要があるんじゃないですか、お年寄りばかりじゃなくて。そういう点のことを配慮なさったことが実際にありますか。先ほどちょっと申し上げた、政府機関の総理府統計局がせっかく見事に描き出しておる貯蓄動向調査報告書というものをもっと検討を加えて分析をしていけば、おのずからどこに焦点を求めて募集をすべきかというのは出てくるはずなのです。そういう点について、これは大臣に聞くほどのこともないですから、局長さんから答えてください。
  254. 奥田量三

    奥田政府委員 松浦委員指摘のとおり、簡易保険の加入者の年齢構成から申しまして、比較約二十未満のお子さんとか学生さん、そして四十歳以上の方の加入が多く、二十代、三十代の加入率が相対的に低いというのは事実でございます。これは、先ほど大臣がお答えいたしました、現在の商品構成といたしまして簡易保険は比較的貯蓄性の保険にウエートがかかっているというようなことも関係しているかと思いますが、そういう状況でございます。  したがいまして、こういうことでは簡易保険としてあまねく国民皆さんのお役に立つという意味合いからいかがかというふうに考えまして、いろいろ研究をいたしました結果、一つの施策として昨年の秋から十倍型の特別養老保険というものを発売をいたしました。これは簡単に申しますと、比較的安い掛金で、もし被保険者に万一のことがあった場合に高い保障、高い保険金が受け取れるという性格の保険でございまして、まさしく世帯形成層から社会の中堅という方々に向いた保険であろうかと思います。  そのような工夫をいたしまして、昨年来十倍型の特別養老保険の発売、またその普及に努めているということでございますが、まだまだ先生指摘のような点で不十分なところもございますので、今後のいろいろな商品やサービスの研究開発の中でその点には一層留意をしてまいりたいと考えているところでございます。
  255. 澤田茂生

    ○澤田政府委員 郵便貯金の関係につきましても先生指摘のとおりでございまして、私どももヤング層に何とか郵便貯金についての関心と理解を深めたいということで努力はいたしているつもりでございますが、なお実績が上がっていないというのはまことに遺憾に思うわけでございます。  私ども、実はこの三月にやっとオンラインネットワークが完成をいたしたわけであります。そういう意味で、民間金融機関に比べてずうたいが大きいものですから、完成までには時間がかかったということではございますが、やはり若年層に人気のあるキャッシュカードだとかあるいは総合通帳というようなオンラインサービスを中心にした商品の普及増進に努めて、若年層の利用拡大に今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  256. 松浦利尚

    松浦委員 もう時間があとわずかですが、さらに今度は簡保資金の運用についてお尋ねをいたします。  簡保資金が自主運用の名のもとに国際資本市場に乗り出しておられます。外債を買っておられるわけでありますが、五十九年度の目標は幾らですか。
  257. 奥田量三

    奥田政府委員 ただいま御指摘のように、昨年の五月に簡易保険の資金運用法の改正をしていただきまして、新たに簡易保険資金で外国債への運用の道が開かれたわけでございます。その運用法の中におきまして、簡保資金の外国債への運用につきましては、資産の安全性確保等々の見地から積立金総額の一〇%を保有限度とすることが定められております。また、当面の運用の考え方でございますが、内外の経済情勢あるいは金融の動向等を考慮しながら、さしむき一年度間、一年においては積立金の増加額の一〇%の範囲内をめどといたしまして、慎重にかつ漸進的に運用をしていきたいと考えております。  五十九年度の具体的な運用額につきましては、ただいま申し上げましたような今後の内外の債券相場の動向あるいは為替相場の状況等も見ながらやっていくということでございまして、現時点で確定的に幾らということは決めておりませんが、順調に推移いたしますならば、ただいま申し上げましたように新規の増加額の一〇%と申しますと、五十九年度の運用計画において新規資金の増加を約二兆七千億円と見ておりますので、その一割、つまり二千七百億円に近い程度に達するものと考えております。
  258. 松浦利尚

    松浦委員 大臣、ぜひ知っていただきたいと思うのですが、国際資本市場に乗り出すということになりますと、国内における金融の自由化、金利の自由化等ですら大変な体質改善を銀行は迫られるし、いろいろな意味で今必死になって体質強化を図っておるのですけれども、仮に一〇%だといたしましても、やはり国際資本市場に乗り出すということになると金融の専門官というものが絶対に必要だと思いますね。こんなことを言っては大変失礼ですが、現在の郵政省に金融の専門家というのが果たしておられるのかどうか。あるいは情報というものが非常に必要になってきますね。世界各国の情勢、金融情勢というものがすべて把握されなければならない。そのために、今自由化を目の前にして各銀行は大変な設備投資をして情報網をつくりつつあるわけですね。ですから、そういったことを考えると自由世界の市場を郵政省が監視していかなければならぬ。日本が夜のときロンドン市場は開いておるわけですね。日本が祭日のときには相手国は祭日でないのですよ。ですから二十四時間監視体制をしかなければならない。そういった意味では、確かに自主運用をするということは、法律郵政大臣に任せられておる事項ではありますけれども、私が先ほどから大口、小口の自由化は一緒にやれという主張を盛んにしたわけですが、それは小口預金者のためになるからこそそう言ったのです。しかし、それに即応する体質の強化というのは郵便局側にも郵政省側にも求めなければならない。  これは三井銀行の五月の調査月報であります。これの二十五ページを見ますと、金融の自由化によりまして、米国の金融機関は、取引相手が個人であれ法人であれ、金の流れ、物の流れ、情報の流れすべてに関与するという状況になってきておるのですよ。アメリカの銀行ですらそうしなければ金融の自由化に対応できないのだ。それで日本の金融自由化を目の前にして、今各銀行は必死になって体質強化を図っておる。ですから郵政省側は小口預金の自由化も一緒にやりなさい。簡保の資金運用で国際市場にも進出いたしますが、それに伴った体質強化というものをどうしてもしなければ預金者、保険者の保護にならないですね。こういう問題について計画的に対応しておられるのかどうか。そういう問題について大臣から的確にお答をいただきたいと思います。
  259. 奥田敬和

    奥田国務大臣 私の答弁の補足はまた政府委員からさせていただきますけれども、先生の言われるのは、自由化体制必至の形勢とはいえ、もしそうなった場合、果たして国際金融等々の波に耐えていけるかどうか、またそれに対する対応策いかんと言われるように承ったわけですけれども、確かに今すぐ、ではおまえ自由化になった場合に、そういう巨額な資金運用を含めてやれるという体制は完備しておるかと言われれば、残念ながら今の体制では完全自由化体制にまだ対応していけないと私は率直に思っております。それはやはり今言われましたように、金融の流れに対して迅速に情報を収集して対応していくという体制、エレクトロニクス時代のコンピューターを含めるそういったシステムも、目下整備中の段階と言った方がいいと思います。  また、人的な面においても、今度の機構改革で、今御審議願っている面と違いますけれども、これは内部的なスクラップ・アンド・ビルド方式でやるわけですが、経営企画という形の部門を強化いたします。そして語学にも堪能な国際担当の人員も補強する、人材を登用してやるという体制も目下着々進めております。簡保においては一足先にそういった形での一部の自主運用を含めて相当な効果も上げて、体制も整備されておるというのが現状でございます。しかし、結論から申しまして、今後のそういった激動する金融情勢に迅速に対応して、預金者の利益というものを確実に把握するという体制には、これからまだ真剣に取り組んでいかなければならない課題だと思っております。
  260. 松浦利尚

    松浦委員 行政改革ということを盛んに言われますけれども、その一方でこうした新しい金融の自由化とか金利の自由化という問題が出てきておるわけですから、私は、それに対応できるものは積極的に取り組むべきだ、そういった意味で、今大臣が率直に正直に言われましたので、目の前に来ておるそういった問題をまともに受けて沈没しないように、体質強化のためにぜひ人材も資金も注ぎ込んでいただきたいということを希望として申し上げておきたいと存じます。  それでは、もう時間が来ましたから、最後に電電公社関係の問題についてお尋ねをいたします。  大蔵省の方も長い間お待たせをして恐縮でしたが、実はこれも新聞で知ったのであります。三月十三日の朝日新聞がすっぱ抜いたのですが、三月十二日にアメリカ側から、VANの全面自由化等を含めて具体的な電電関係三法案についてのクレームが来ておるわけです。この資料がどこから来たかということは申し上げませんが、二月十六日に郵政省が「電気通信法体系の改革について」というのを発表したら、すぐアメリカ側から担当官が、二月二十一日に郵政省に直接法案の内容について説明を受けに来たはずであります。この二月二十一日に、米国政府の担当官、これはだれだったのか、説明をしたのはどなたなのか、明らかにしてください。
  261. 小山森也

    ○小山政府委員 二月十六日に郵政省といたしまして、電電株式会社法案と電気通信事業法案のそれぞれの骨子を各党に御説明したわけでございますが、その後ちょうど第七回日米高級事務レベル協議のために来日いたしました米側担当者が、この骨子につきまして説明を依頼してきたわけでございます。これは御指摘のとおり、二月二十一日でございます。  そのときの出席者ですが、こちら側は郵政省が説明しておりますが、郵政省側からは次長の富田、そのほか課長二名、それから在アメリカ日本大使館の国広公使、北米第二課の北島首席事務官が出席しております。米側からはUSTRの代表補のマーフィー、商務長官顧問のプレストウィッツ、そのほかUSTR、商務省のNTIAというようなところの事務官並びに国務省の国際貿易課長、それから大使館の一等書記官等合わせまして九名が米側では出席しております。
  262. 松浦利尚

    松浦委員 外務省にお尋ねをいたしますが、いかに日米通商条約があるとはいえ、日本の政府がまだ大綱という形だけであるにかかわらず、こうした説明を大挙して我が国の政府に求める、そういったケースというのは、我が国の場合再三あるのですか。
  263. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になりましたようなケースというのは通常ございませんで、通常は、例えば新しい法律を審査する場合には、その手続に従いましてしかるべき段階のときに説明をするということになっております。
  264. 松浦利尚

    松浦委員 郵政大臣、このことは我が国の主権に対して、いかに日米友好とはいえ、まだ大綱であって固まってもおらないものについて説明を求めてくる。こういう会談があるということについては恐らく大臣は知っておられたと思うのですが、そういうことについて大臣の感想を求めたいのです。  我々は野党の国会議員でありますから、大綱について説明を受けたのは二月二十一日以降であります。自由民主党といえども二月二十一日以降であります。一番最初に説明を受けたのはアメリカ。これは今度の電電公社法改革三法案の性格というものを如実にあらわしておるじゃないですか。大臣、感想を求めます。
  265. 奥田敬和

    奥田国務大臣 そういったアメリカ要路の人たちに担当の幹部が対応して説明をしたという報告は受けております。しかし先生、大体骨子ができて各党の皆さんに御提示申し上げたのは十六日という形で私は報告を受けておりましたから、当然そういう各党に骨子も提示しないうちに、アメリカがいかに法案の行方に関心を持っているかということは理解しますけれども、各政党間にしっかり骨子の御説明もしない前にしたということは聞いておりませんし、また記憶にございません。私は、事後に、二十一日かの日に、定かに記憶しておりませんが、たしか各党に提示申し上げて、相当、一週間ほどたった後にアメリカ側からそういう関心を示してきた。説明を聞くという程度なら、それだけ関心事でもあるなら説明してあげたらよかろうという程度で承諾したことを覚えております。
  266. 松浦利尚

    松浦委員 我が党に説明があったのは二月二十三日の逓信部会です。二月二十三日です。しかも、これに対してアメリカ側から三月五日、この新聞の発表は三月十二日に明らかになった、こうなっておりますが、アメリカ側からは三月五日に日本政府に対して「以下のとおり明確な意見を述べる。」という形で、電気通信事業法案については、「重要論点」として「料金規制と競争」とか「(技術)基準」、それから「明確にすべき点」など、また日本電信電話株式会社法案については、「調達」外幾つか挙げて、「禁止規定は、ある特定の企業における外国人株主への制限を排除するとの日本国政府の声明と矛盾するかもしれないと思われる。」とかいった、各条文ついて極めて詳しい——この朝日新聞の翻訳は、外務省でなさった翻訳があるところから漏れたのだそうであります。意識的にあるところが漏らしたんだと私は理解をいたしております。それはどこかということは申し上げません。  しかし、いずれにしても三月五日のこういった厳しいアメリカ側の要求に対して、以降アメリカ側とこの条文個々の内容について外務省が立ち会った場合もあるし、あるいは郵政省が独自に話し合ったこともあるんだそうでありますが、何回ぐらいアメリカとの話し合いをしたのですか、この回答について。
  267. 小山森也

    ○小山政府委員 先ほどからの日にちの問題でございますけれども、先ほどの御質問に対しましてちょっと申し上げたいのでございますけれども、二月十六日の午前十時に説明いたしております。これで、ほかのところは十一時になっておりまして、骨子を説明するに当たりまして、私どもとしては非常に神経を使いまして、時間まで記録している次第でございまして、ぜひその辺はよくお調べをいただきたいと存じます。  それから、何回ぐらい会ったかということでございますけれども、こういった形での会い方はこの一回でございます。あと、個人的にこの点はどうかという説明を求めたことに対するコメントというものは二、三回あったかと思いますけれども、これは極めて個人的な形でございまして、先ほど申し上げました二月二十一日の状況のようなことはございませんでした。
  268. 松浦利尚

    松浦委員 外務省にお尋ねいたしますが、二月二十一日に説明をして、三月五日にこれだけの厳しいアメリカからの要求が出て、この個々の要求について、今郵政省が言われたように全くアメリカ側とは話し合いをしないまま、法案作成というものがなされたのですか。
  269. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  ただいま郵政省の局長の方から説明がございましたように、外務省といたしましても、二十一日、日米高級事務レベル協議における説明と、それから郵政省における説明、それ以外には同様の説明をしたという記憶はございません。
  270. 松浦利尚

    松浦委員 太田さんの言っておられる意味がわからないのですが、二月二十一日のような、そういう形のアメリカ側に対する説明はなかった、こういうことだけれども、具体的にこれだけのアメリカ側からのクレームがついているのですね、三月五日に、個々の問題について。これについては全くアメリカ側と話ししなかったのですか。絶対に話ししなかったと断言できますか。公式であれ非公式であれ、個人的には話し合ったけれども、具体的なこの内容については全く話をしなかった、そういうふうに理解していいですか。
  271. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  二月二十一日は、先ほどから……(松浦委員「それはいい、その後よ」と呼ぶ)その後、法案の内容自体について日本側でいろいろな検討が加えられまして、当初の案から検討の過程でかなり変わってきております。それにつきましては、必要に応じまして、ワシントンのアメリカ大使館等を通じましてアメリカ側に説明はいたしてきております。
  272. 松浦利尚

    松浦委員 だから、さっきからそれは何回ぐらいやったのかと、こう聞いておるのですよ。
  273. 小山森也

    ○小山政府委員 何回かということにつきまして、正確ではない、二、三回ということでございますけれども、二十一日に骨子を説明したわけでございますが、その骨子について不明の点があるので、これはどういうふうに理解したらいいのかということを私どもの方に照会がありまして、二回か三回、個人的にコメントを求められて説明したということでございます。無論そういったときには、先ほど申し上げましたように、米側が九名の代表、日本側多数の代表というような形のものではございません。
  274. 松浦利尚

    松浦委員 私は、さっきから言うように、公式的に二月二十一日のような姿を言っておるのじゃないのです。アメリカがこれだけ注文をつけてきておるのですよ。しかも、この注文に沿って電電法案というのができ上がってきておるのですよ。骨子からアメリカ側の意見が入って修正されていっておるのですよ、内容が全部。そのことを私は問題にしておるのです。  日本の政府が日本の主権にかかわる通信という問題を、それはアメリカと日米通商条約があることもよく知っております、通信の自由化を経済摩擦の一つとして求めてきたことも知っておりますよ、しかし、法案作成過程で事前にアメリカ側と話し合いをして、しかも骨子が変わっていく、こういうケースが過去日本の政府にありましたか。まさしく日本の主権は侵されているじゃないですか。アメリカにおける議員立法等について、ロビイストを使っていろいろ工作することは日本もあるでしょう。しかし、日本の政府が作成をする法律に事前にアメリカ側がクレームをつけて、しかもそのクレームどおりに法案がつくられていく。一体こういう姿は、内容のいかんは別にして、あっていいことですか。我々国会議員がここで議論をして法案を修正する、あるいは自民党の政調の中で与党として修正をしていく、そういうことはあるでしょう。しかし、アメリカ政府が事前にこういうクレームをつけてきたからといって法案の形が変わっていくということは、あってはならぬことなんだ。私はそのことを指摘しているんです。  大臣、新聞は通産省と郵政省の争いだというふうにおもしろおかしく書いておる。しかし内容はそうじゃないんですよ。アメリカ自身がこういうクレームをつけてきておる。しかも、これが経済摩擦の一つとして利用されておる。主管大臣としてどう思われますか。しかも、外務省がさっき言いましたように、こんなことは今回が初めてなんだ。二度とあってはならないことなんだ。法案を作成するという日本の主権にかかわる問題だ。いろいろ理屈はあるでしょう、ぜひ大臣から答弁してください。
  275. 奥田敬和

    奥田国務大臣 先生の御指摘の件は、恐らく三月五日付で私の手元に届いたブロック書簡の問題を指しておられるのかと思います。確かにブロックさんからの書簡は受け取りました。通産大臣と外務大臣にも同様の書簡を届けたということも明記してございました。私も精読いたしました。いろいろな形の問題点指摘されておりましたけれども、これは全体の流れからいってあくまでも、アメリカ側が多大の関心を持っておる外資規制を含む問題点について、できるだけ緩和した方向で努力していただけないかという要望であるという認識のもとに受け取りました。  したがって、私は先生の御指摘の点について反論というのじゃなくて、法案作成の過程においていろいろ手直しの面もございましたけれども、これはあくまでアメリカ側のそういった要求にこちらが屈したという問題ではなくて、論議の過程において、外資規制をできるだけ排除し多彩な情報社会での競争原理を活用しようという我が方の自主的な判断において行ったことでありまして、内政干渉がましい要求という形で私は受け取っておりません。
  276. 松浦利尚

    松浦委員 大臣が今そのようにとっておられないと言うけれども、現実に二月二十一日の姿は、外務省から言わせれば過去になかったケースです。しかもここに書いてある内容は「明確な意見を述べる。」こういうふうになっておるんですね。  もう時間が来ましたからこれ以上の追及はいたしませんけれども、この電気通信関係の法案は国家主権にかかわる極めて重要な問題なんです。この問題は逓信委員会で十分議論をされていくでしょうし、本内閣委員会でも議論をさせていただく場があると思うのでありますが、何としてもこうした外圧は排除していかなければならない。私は、過去のことを今とやかく言ってみても仕方がありませんからこれ以上追及することはやめますけれども、二度とあってはならないことだということだけは、ぜひ大臣から明確にお答えいただきたいと思います。
  277. 奥田敬和

    奥田国務大臣 しっかりした答えにならないことはまことに残念でございますが、先生の御指摘の経緯によって法案ができたということに関しては、私は理解していただけないのがまことに残念でございます。我が国の通信主権に関する問題でもあり、あくまでも我が国の自主的な政策判断によって今度の法案審議をお願いしているという原点は、私ははっきり先生の前で断言できるわけでございます。そういったアメリカの要望、期待表明はございましたけれども、私たちはあくまでも自主的な判断によって政策選択を御提示申し上げておるということでございます。
  278. 松浦利尚

    松浦委員 二度とあってはならないことですよ。過去のことをもう言わない。あってはならないことじゃないですか。そのことをお聞かせください、こう申し上げておるのです。
  279. 奥田敬和

    奥田国務大臣 そのとおりでございます。あってはならないことでございます。
  280. 松浦利尚

    松浦委員 外務省にお尋ねをいたしますが、本問題が最終的に法律案として国会に提出されるという状況になったときに、安倍外務大臣からブロック米通商代表に対して書簡か何かを出されたやにお聞きをいたしておるわけでありますが、その事実はありますか。
  281. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  法案が四月六日閣議決定を見た日に、ただいま御指摘のように安倍外務大臣からアメリカのブロック通商代表あてに書簡を発出いたしました。
  282. 松浦利尚

    松浦委員 これは最終的に先ほど出てきた三月五日のアメリカ側の要求の締めくくりとしてブロック米通商代表に書簡として出されたものと理解をするのか、それとも安倍外務大臣が何らかの形で出さざるを得なかったのか、その点はどちらですか。
  283. 太田博

    ○大田説明員 お答え申し上げます。  先ほども御説明をいたしましたように、この法案自体日本がみずから決めるものでございますけれども、アメリカの要望にも十分耳を傾けた結果、こういう法案になったということをアメリカに説明するのが主な趣旨でございました。
  284. 松浦利尚

    松浦委員 安倍外務大臣は、先ほど言ったこの要求に対して十分耳を傾けて法案をつくった、こういう書簡をブロック米通商代表に出しておるのですね。関係なければそこで全文読み上げてください。私がいただいた資料は書簡の骨子でありますから、書簡そのものはやはり外交文書ですから公表することは差し控えられるでしょうけれども、骨子はいいんではないですか。骨子を読み上げることについては、外務省どうですか。それでもだめだというなら、これをいただきましたから、あえてこだわりませんが、何ならやはり委員皆さん知っておった方がいいでしょうから、書簡の骨子として読み上げていただきたいと思います。
  285. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  ただいまの安倍大臣のブロック通商代表あての書簡の骨子の主なものでございますけれども、先ほど申しましたように、大臣から、この法案の策定の過程において米側の要望には十分耳を傾けて我が国として取り入れ得る点は取り入れる、そういう考えのもとに最善の努力を払った、本法案は我が国政府がみずからの権限と責任において策定したものであるという点が盛られております。  それから、この法案の基本的な原則として、内外無差別を原則としているということを指摘いたしまして、特別第二種事業については許可制を排して登録制を採用した、これによって基本的にだれもが登録を受けて自由に事業活動ができることになったということを説明いたしております。それからさらに、日本政府は、許可、登録、届け出等の手続につきましては、政令あるいは省令におきまして極力透明性または簡素化あるいは明確を確保するように努力する所存であるという見解を述べております。それからさらに、三年以内にこの法律の施行状況を検討して、右に基づきまして必要な措置をとるという規定もあるという説明もいたしております。  それから、日本側の感じといたしまして、通常は十年以上もかかるような電気通信市場の開放という大事業が、この法案によって日本におきましてはこのような短時日のうちに導入されたということは注目すべきものと言っていいのではないかということを指摘して、これから日米両国で電気通信サービス分野において積極的に協力していく条件が熟したものと確信しているという点を述べております。  なお、先ほど先生指摘の、本件のようなアメリカの内政干渉がましいことということでございますが、御指摘のとおり、この種の法案というのは日本日本の国益を考えて独自に制定すべきものであることは言うをまちません。ただし、最近、特に経済、科学技術の分野におきまして国際化というのが非常に進んでおりまして、一国のとる政策がほかの国に非常に大きな影響を与える場合にはどうしても関係国の意見も十分徴するということが国際的にますます行われるようになっておりまして、今度の場合は、日本がアメリカの言い分に十分耳を傾けたケースでございます。逆に、例えば最近の例で申しますと、アメリカで輸出管理法の改正法案というのが今議会にかかっておりますが、我が国、それから欧州諸国も、このアメリカの輸出管理法案で日本あるいは欧州諸国に害を及ぼすような条項につきましてはこれを再検討してくれという申し入れを行っておりまして、内政干渉というのはあくまで排すべきでございますけれども、他方、最近の国際間におきます相互依存度の著しい高まりを背景といたしまして、大いに関係国間で意見を言い合うということは行ってしかるべきではないかというふうにも感じておりますので、加えさせていただきます。
  286. 松浦利尚

    松浦委員 都合の悪いところは読まれなかったのですが、それはそれで結構です。  しかし、いずれにいたしましても、この最後にも書いてありますように、国家主権にかかわるような重要なもの、通常ですと十年以上はかかるのですね。安倍外務大臣もそのことは認めておられる。それを電気通信市場の開放という大事業を短時間にやったということは注目すべきだ、こういうことを書いておられるのですね。しかし、国民の側にしてみれば、そう簡単にこの法案がつくられ、しかも国家主権にかかわるような通信事業という問題ですからもっと慎重であってほしかったと思うのですが、いずれにしても国会に上程されております。国会を通じて内容等についてはまだ改めて郵政大臣あるいは小山局長と論戦をさしていただくつもりですから、きょうは以上のことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  287. 片岡清一

    片岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  288. 片岡清一

    片岡委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  郵政省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  289. 片岡清一

    片岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  291. 片岡清一

    片岡委員長 次に、内閣提出臨時教育審議会設置法案を議題といたします。  趣旨の説明を求めます。森文部大臣。     —————————————  臨時教育審議会設置法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  292. 森喜朗

    ○森国務大臣 このたび、政府から提出いたしました臨時教育審議会設置法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  我が国の教育は、国民のたゆみない努力により著しく普及し、その水準は国際的にも高く評価され、我が国の成長と発展に重要な役割を果たしてきております。特に、戦後においてその急速な普及充実が図られ、国民全体の教育水準の向上に大きく寄与してきたところであります。  一方、近年における社会の急激な変化、教育の量的拡大等は、教育あり方に対しても大きな影響を与えており、今や教育改革の必要性が各方面から指摘されるに至っております。  このような教育改革に対する国民の要請を踏まえ、今後とも我が国が活力ある国家として安定した発展をしていくことができるよう、二十一世紀の我が国を担うにふさわしい青少年の育成を目指して教育全般にわたる改革を推進していくことが緊急かつ重要な課題となっております。  そこで、政府全体の責任において、長期的展望のもとに教育改革に取り組む必要があると考え、このたび、各界の人格、識見ともにすぐれた方々を委員にお願いして、臨時教育審議会を総理府に設置することとし、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の内容の概要について申し上げます。  まず第一に、今後における社会の変化及び文化の発展に対応する教育の実現を期して、教育基本法の精神にのっとり、各般にわたる施策につき必要な改革を図ることにより教育の目的の達成に資するため、臨時教育審議会を総理府に置くこととしております。  第二に、審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、教育及びこれに関連する分野の諸施策に関し必要な改革を図るための方策に関する基本的な事項について調査審議して答申するとともに、意見を述べることをその所掌事務としており、また内閣総理大臣は、この答申または意見を尊重しなければならないこととしております。  第三に、審議会は、文部大臣の意見を聞いて内閣総理大臣が任命する二十五人以内の委員をもって組織するとともに、文部大臣の意見を聞いて内閣総理大臣が任命する専門委員を置くことができることとしております。また、審議会の事務を処理させるため、事務局を置くこととしております。  このほか、審議会は、国の関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができることとしております。  なお、この法律は、施行の日から起算して三年を経過した日に失効することとしております。  以上がこの法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  293. 片岡清一

    片岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  294. 片岡清一

    片岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。深谷隆司君。
  295. 深谷隆司

    深谷委員 日本教育を長期的な問題として取り上げて大きな改革を行おうとする臨時教育審議会の設置法案が、本日から委員会でいよいよ本格的な論議に入れますことを大変うれしく思います。また、担当大臣森文部大臣は、私にとりましてはかっての早稲田の同級生で、ともに雄弁会に籍を置いて教育問題に深い関心を持っていただけに、頼もしく存ずるとともに大きな期待を抱いておりますので、どうぞ頑張っていただきたいことをまず冒頭申し上げたいと存じます。  教育は国家百年の計であることは私どもから申し上げるまでもないことであります。たとえ今日の時代、その国がどんな大きな問題を抱えておりましても、教育がきちんと行われておればその国の将来は必ず繁栄するものであります。我が国の教育皆さんの英知と努力によって順調にきょうまで進んでまいりましたが、時代の移り変わりあるいは今日までの歩みを振り返り、反省しなければならない点も多いことは確かであろうと思います。そこで、臨時教育審議会を設けてこれらの問題を広い視野から検討しようという考えは、私はまことに時宜に合った適切なお考えであろう、こう思うのであります。  しかし、これから開かれようとする臨時教育審議会、これが設置された場合に、一体どういう問題を諮問し議論をしてもらうのか、このことを明らかにしていくということは極めて大事なことだと思うのであります。今までこの法案が出されておりませんでしたからやむを得ないと思いますけれども、文教委員会その他での文部大臣の御答弁を見ましても、どういう中身に触れるのかについては定かではありません。臨教審の委員の方々にお任せする、広い立場から、あらゆる角度から議論していただく、そのことはもちろん大事なことでありますけれども、教育改革を内閣全体で取り上げようとしておられるわけでありますから、せめてどういう視点に立って議論をしていただくかについては文部大臣のお考えを明らかにしていく必要があるのではないかと思います。諮問の内容についてすべてまだ決まっているわけではないと思いますが、どうぞ主なものでも結構でありますから、基本的な視点はこういう立場に立って諮問しようと考えているのだという御意見を承りたいとまずお願い申し上げる次第です。
  296. 森喜朗

    ○森国務大臣 久しぶりに深谷さんのお話をここで承っておりまして、二十数年前の学生時代を思い出しました。学生時代、あなたが堂々として弁舌を振るっておられましたことを、当時私はまだ初めて弁論部などというものに入りまして、本当にそんなことを深い感慨とともに今あなたのお話を伺っておりました。(発言する者あり)  お互いにちょうど小学校の最初のころに終戦になって、そして戦後の教育を私たちは体験をしてきたわけであります。そういう意味で、私たちの年代は戦前、戦中、戦後の教育というものをある程度体を通して体験をしてきておりますだけに、今深谷さんからいろいろ御指摘をいただきました、これから二十一世紀を担ってくれる子供たちのために、我々の世代が責任を持って教育全体を真剣に見直していくというこの大事業にみんなでぜひ努力を傾けていくことが政治家としての大事な努めではないか、こんなふうに私も率直に感じまして、特にこの内閣委員会でこうして臨時教育審議会の設置法案に対して御審議をいただきますことを心から感謝を申し上げて、各党各会派の皆様方に、日本の将来にとってお互いに子供たちのために何を残しておくのか、そういう意味でぜひ御議論を続けていただきたいな、こんなことをまず冒頭にお願いを申し上げる次第でございます。  御指摘がございましたように、教育改革全体に立ちましては、これから新しく設置させていただきます臨時教育審議会の委員皆さんに幅広く自由濶達な論議をしていただくわけでございますので、諮問内容につきましては、このような観点からこれからも十分検討していかなければならぬことでございますし、この委員会でこの設置を認めていただきますまで、所掌事務や目的やその他が国会の御議論の中でまとまってから初めて考えなければならぬということは当然だろうと思います。そういう意味で、審議会自身に御検討いただくことが必要であろうということを私はこれまで予算委員会やあるいは文教委員会等でお答えを申し上げてきたわけでございます。しかしながら、今あえて深谷議員からお尋ねでございました、どのような視点で物を考えていくのかということにつきまして、私の考えとして幾つか申し上げさせていただきたいと思うのです。  私は、要は子供たちが目的を持って、主体性を持って伸び伸びと教育を受けてもらいたいな、このことが一番の切なる願いでございます。そして基本的には、教育というものは本来、先人が築き上げてまいりました規範やあるいは知識というものを継承していく、そしてそれをまた次の世代に継承させていく、そのことがやはり教育の一番大事な使命だろうと私は考えておりますので、人間形成の基礎を確実に身につけられるようにすること、これが私は教育の改革の一番大事な視点でなければならぬと思います。  第二は、能力や適性や興味関心に対応する教育をやはり推進していかなければならぬ。そういう意味でやはり一人一人の個性の伸長を目指すこと、このことが私は第二の視点だと考えます。  そして第三は、生涯にわたる学習の機会を充実させていくことであろうと思います。人間生まれましてから生涯にわたりまして、やはり教育を受けることによってお互いに人間として成長し、そして生活を続けると同時に、次の世代へ自分たちの国の文化あるいは文明を残していく、このことがやはり人間としての最も大事な生きざまだろう、こう考えますだけに、生涯あらゆる場面において、どのような場面でも、どのようなときにでも学ぶことができる、そのための教育の環境を充実させておく、このことが、具体的な大事な教育改革に対する私自身の考え方である、こういうことに申し上げておきたいと思います。
  297. 深谷隆司

    深谷委員 臨教審に基本的な視点を示して議論をしていただく、今の文部大臣の三つの御意見は貴重であろうと思いますから、それにさらに枝葉を添えて十分な諮問が行われるようにお願いを申し上げたいと存じます。  そこで、私は、ただいま文部大臣が言われましたけれども、それらの背景について、一つ一つお考えを伺ってまいりたい、こう思うわけであります。  まず最初に申し上げたいことは、戦後三十九年流れました。第二次世界大戦で戦いが終わって焦土と化した日本は、私ども子供のころの印象の中にも、本当に再起できるであろうか、そういう不安と絶望の中にあったと思うのであります。戦後のあの混乱期を迎えた多くの国民は、ことごとくそう思ったでありましょうし、世界の国々も、今日のような復興と発展をなし遂げるとは夢想だにしなかったというのがあの当時の状況ではなかったろうかと思うのであります。わずか三十九年の間に、経済的にも文化的にも社会的にも、たくましく日本は復興と発展をなし遂げてまいりました。経済的にも本当に世界の注目を集めるような繁栄ぶりを今示しておりますけれども、その原因は何かと問えば、もちろんいろいろありましょうけれども、日本教育が行き届いていたということにほかならない、そう思うのであります。民主的な教育の現場で、あるいは文部省その他の機関を通して国民に等しく教育を与えてまいった、国民もその教育を受けながら、一人一人の英知と努力によって今日の繁栄を築き上げてまいったわけで、そういう意味で私は今日までの日本教育というものを高く評価いたしておりますが、大臣はどのようにお考えでありましょうか。
  298. 森喜朗

    ○森国務大臣 戦後の我が国の教育は、今深谷さんからお話しございましたように、何といいましても、機会均等の理念のもとに義務教育年限を延長いたしましたそのことによって、いわゆる中等、高等教育の普及等を通じまして量的な拡充と国民教育水準の向上に大きな役割を果たした、私はこう考えております。  戦前の教育は、御承知のようにいわゆる家柄制度あるいは身分制度というものを打破して人の和、人の力、総合力を生かす、そのことが近代化日本への大きな役割を果たしてきた。そして戦後は、今申し上げましたように、その基本的な考え方を、義務教育の年限を伸ばすことによってさらに大きな活力を得るような、そうした日本の大きな推進力をつくり上げてきた、こう考えます。そして同時に、戦後は自由と平等、そして平和というものを大事にしてきた、国際社会の中に大きな日本の位置づけを示してきた。資源に乏しい我が国がまさにこうして国際社会の中に大きな役割を果たし得るということになったのは、深谷さんの御指摘のとおり、戦前戦後を通じての日本教育が大きくそのことの源泉をつくり上げてきたものである、私もこのように承知をいたしておるところであります。
  299. 深谷隆司

    深谷委員 日本教育の中でその求める理想といいましょうか、教育の理想は、私は知育、徳育、体育、三位一体のものをどう具現するかということではないかと思うのであります。この三つの教育を今日まで行ってまいったわけで、大きな成果を上げたことは確かでありますが、同時にしかし、静かに振り返ってみますと、反省をしなければならない問題点が数多くあるようにも思えるわけでございます。  例えば知育の面で申し上げれば、人間として当然知るべき知識、知恵、良識、教養、そういうものを身につけさせていくことであることはもちろんでありますが、昨今の状態を眺めてまいりますと、学校教育の中で特に大きく問題として提出されていることは、受験戦争に勝ち抜くための、いわば試験に備えての、あるいはマル・バツ式で合格すればいいような、そういう意味での詰め込み主義に変わっていきつつあるという嫌いがあるのではないか。本当の知識とか知恵というような、人間として必要なものをきちんと教えるということよりも、どういう事柄を暗記させれば、どういう訓練をさせれば受験のときに合格するであろうかといったような方向にむしろ走り過ぎているような嫌いがこのごろ見受けられて、非常に残念に思っているわけであります。知育というものがそういうものであってはならない、こう思うのでありますが、今日の現状を大臣はどうお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。
  300. 森喜朗

    ○森国務大臣 知育、徳育、体育、いわゆる知徳体調和ある人間形成を教育の中心的な課題に据える、これは文部省の一貫した教育の基本的なスタンスでございます。しかしながら、今深谷さんから御指摘のとおり、確かにどうも受験競争ということが教育の中に入り込み過ぎる、この受験競争の過熱によって中等教育の段階で人間形成に悪影響を及ぼしていることが今一番社会の中で心配の大きな種だろう、こう私は思うのです。  特に十五歳から十八歳というのは、人間の生涯にとって最もいろいろな意味での幅広い経験を身につけなければならぬ、そういう段階だろうと私は思うのです。多くの仲間や先輩や、そして先生の教養に触れてもちろん学問や知識を教えられることも大事でありますが、同時に先生の人柄や先生の経験や知識、そういうことに触れ合うことによって教育基本法に示されておりますようないわゆる人格形成をそこの場で一番培養していく、そのことがこの十五歳から十八歳の年齢段階であろうと私は考えておりますだけに、そういう意味では、今御指摘のような点が大変心配をされている、そういう点で教育全体になぜそういう受験競争が過熱になっていくのかということの全体的な原因も調べなければなりませんし、社会全体がそういう方向に持っていったという今の制度を見直してみる必要がある、私はこう思っているのです。  そういう意味では、知徳体、こうよく言いますが、私はかねてから、文部省はできれば徳体知にしたらどうかな、あるいは体徳知にしたらどうかな、これくらいの気構えがこれからの文部省に必要なのじゃないか、私はこういうような考え方も持っているわけでございます。
  301. 深谷隆司

    深谷委員 私はある私立の高校を訪ねて、校長、学長と話をしたことがあるのですけれども、まず受験でいろいろな書類が入ってくると一番最初に見るのは、その前の学校で出席日数がどうであったか、それから次にどういう体育クラブに入っていたか、これを先に見るんだ、こうおっしゃった指導者がおりまして、大事なことだな、こう思いました。今あなたが、体を上に持ってきたい、こうおっしゃった。まことに結構なことでありますが、そういうものをどうぞ具体的に教育の中に生かすように頑張っていただきたいと思います。  今受験戦争という言葉がございますが、子供にとってまことに熾烈な戦いであります。受験に熱心な学校の生徒は、宿題からたくさん山積みにして持って帰る、さらに学習塾に通う、個人教授につく。近ごろ、子供のスケジュールの方が親よりも忙しいぐらいの状態ですね。一番大事な人間形成のときに、一体このままでいいんだろうかという心配をいつも私たちは抱くのであります。  そこで、考えなければならないのは、現在の六・三・三・四制、この制度の面から検討を加えるということが必要ではないかという点です。つまり一貫教育をある程度することによって、たび重なる受験戦争の機会を少しでも減らしていくということは大事なことではないだろうかと思うのです。臨教審の設置法案を通して書かれていることを見ますと、教育基本法にのっとり、こう書いておりますね。また今までのさまざまな議論を伺っていますと、教育基本法は変えないということもおっしゃっておられた。しかし六・三・三・四制という制度をもっと一貫した教育にしていくための方途というものを考え出そうとするならば、そういう問題も含めて検討していく必要がありはしないかと思うのです。一貫教育の重要性、今のこの六・三・三・四の仕組みというものがこれで大丈夫だろうか、そこいらの大臣の御意見を承りたいと思います。
  302. 森喜朗

    ○森国務大臣 御指摘のような中高一貫教育というのは、私は一つの重要な課題だろうと思いますし、先ほど申し上げましたように、ちょうど大事な年齢期にもその教育の期間が遭遇するわけでございますから、私はもう少しいろいろ多様的に考えてみる必要があるだろうと考えます。基本的には、設置していただきます新しい機関におきまして当然こうしたことも御検討いただくことを私はむしろ期待しておるところでございますから、そういう意味では、今ある制度が最善のものだという形で新しい可能性の開発とか実施を拒む考え方は全く持っておりません。  ただ、これも予算委員会の御論議の中で随分出たことでございますが、基本的には教育基本法の精神の中で教育改革を進めていきたい、しかし、御論議をいただきます先生方にはその枠を余りはめ過ぎるということはいかがなものかと私は思っているのです。もちろん御答申をいただくこと、あるいは取りまとめをしていただく会長のお考え方、当然教育基本法の基本の精神、理念は大切にしていただかなければなりませんが、今深谷さんがおっしゃるように、例えば六・三・三・四をいじり義務教育九年に仮にさわっただけで当然これは教育基本法に触れてくるわけでございますから、やはり御論議をいただくためにはそうしたことも踏まえながら、良識ある皆様方でございますから、そうしたことも自由濶達に御論議をいただいて、ちゅうちょされずに果敢に制度全体についても十分なお考えをまとめていただきたいな、こう私は期待をしているところでございます。  ただ、深谷さんのお話の中から、受験戦争があるから、受験の機会をできるだけなくするために三・三の区切りはしない方がいいのじゃないか、こういう御指摘もよくあるわけでございますけれども、そのところは、受験戦争の問題がもし解決をしていくなら、受験戦争のためだけで三・三という区切りを解消するのではなくて、一番大事な年齢期の中等教育はどのような観点で勉強していくことが大事なのか、そういう角度で議論をしていただきたいな、私はそんなふうにも思っているわけでございます。
  303. 深谷隆司

    深谷委員 大臣、私は受験戦争を適正な競争まで否定するものじゃないのです。いろいろな能力の人も含めて全部同じように進んでいくということがこういう社会の中でいいか悪いか、これは議論があるだろうと思います。私は、適正な競争がなされているという面がきちっとされておるならば、そんなに受験戦争の問題を取り上げて文句をつける気はないのですが、余りにも極端でございますからね。例えば義務教育を九年間で考えると、六年間で勉強して三年間につなげていくということなら文句はないのですが、中学でほかの分野に進んでいこうと思うともう小学校の四年か五年あたりから受験戦争になってしまう。中学をいいところを選ぶことがイコールいい高校に入ることであり、いい大学に入ることになるというような仕組みの中で、一貫性がないではないか、そういう教育を改めていく検討が必要ではないか、こういうことを申し上げたいわけですね。それから、偏差値というのがあります。あれも不思議なものだと私は思うのです。偏差値で子供の値打ちが定められて、それがそのまま一生に影響するようなことになったら大変だと私は思います。  ですから、これからの入試制度の問題を考える場合に、例えば内申書をもっと重視するような受け取り方はないだろうか、あるいは推薦制度というものをもっと広く考えていく方法はないだろうかとか、いろいろなそれにかわる状況をつくり上げていく必要があるのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  304. 森喜朗

    ○森国務大臣 御指摘のように、現在の高等学校の入学選抜のあり方については、確かに教育をゆがめるという面からも大変大きな論議があるわけでございまして、文部省といたしましては、昨年十二月に有識者による検討会議を発足させまして、六月中にはできるだけ取りまとめをしたいということで今御論議をいただいているところでございます。そして、この御論議が大体まとまりましたら、文部省といたしましてもそれに応じました新しい仕組みを少し考えてみたい、こう思っているところでございます。  要は、今深谷さんがおっしゃったように、学校の先生も大変な過重負担だろうと私は思うのです。それぞれの中学校の単位で集まってきて、Aの学校とBの学校はどの程度にどう違うのだろう、これは先生もなかなか評価しにくいだろう。そういうことで、本来は好ましいと思わないけれども、ついつい偏差値に頼らざるを得ないという学校の先生の立場というものを十分考えてあげなければならぬ。  ですからそういう意味で、先ほど冒頭に申し上げましたが、二十一世紀を豊かに生きてくれる子供たちのために人間の価値判断というものを何に置くのかということ。学力だけに置くのではなく、スポーツもあるいはボランティアも、旺盛な人間性というものをもっといろいろな角度から評価してあげられるような社会をつくることが、この教育改革の一番大事な視点でなければならぬというふうに私は思っているわけです。  そういう意味で、高等学校の進学、選抜の方式等についても、今先生お話しのとおり、推薦入学ということも十分加味しながら、要は学力だけで選考するということになるから偏差値が大事になってくるわけで、偏差値というものを結果的には無意味なものにしてしまうという考え方というのを仕組みとしてはやはり考えていくべきではないか。もちろんこのことは県の教育委員会等に十分お考えをいただかなければならぬことでありますので、文部省としてはこの検討会議の答申を踏まえてこれから指導をしていかなければなりませんけれども、できれば学力の面も別の面ももっと多様に子供たちの人間性というものを十分に引き出してやれるような、そういう人間の視点といいましょうか、能力の視点というものをもっと多様にしてあげる、そのことが社会にも必要だし学校の選抜の方式にも必要だ、こういうふうに考え、できるだけそうした方向を、柔軟に多様な仕組みをこれから工夫してみたい、こんなふうにも考えているところです。
  305. 深谷隆司

    深谷委員 大学の入試問題などを見ましても、大学の受験の状況などをつぶさに検討しましても、例えば試験の内容においては今や国公立大学と私立大学とほとんど変わりがない。何点取ったかという成績だけで学生を採るという仕組みになっているわけです。ですから、私学の特徴というものが今だんだんに失われつつある。早稲田大学といっても、大隈老侯の建学の精神いづこにありやという感じであります。  私たちが学んだ時代というのは、ちょうど安保の問題が起こる少し手前、全学連華やかなりし時代で、学生運動が強烈に起こった時代で、私たちも私たちなりに、例えば自民党の学生部をつくってみたり、いろいろ動いたわけです。あのときを考えてみると、集まってきた学生の諸君というのは、各大学によってそれぞれ感じが違っていた。自分の大学のカラー、自分の大学の建学の精神をそれぞれ誇りとして、その別々なカラーの人々が集まって、切磋琢磨してさまざまな運動をやってきたというふうに記憶しているわけでございます。右にしても左にしても、あの当時の学生は、自分たちの行動が国家や社会にかかわりを持ち大事な役目であるということに誇りを持ちながら、青春の血を燃やしたりしたものであります。  今は国公立大学、私立大学全く同じ受験の状態、試験の制度、一体こういう状態でいいだろうか。私立大学というものが、その特色を失い、建学の精神を忘れ、国公立の大学と同じようになるということが一体いいだろうかと、私は非常な疑問を持っておりますが、大臣はどうお考えでしょうか。
  306. 森喜朗

    ○森国務大臣 この前、ちょうど国立大学の入試の発表がありました日の夜、テレビを見ておりましたら、東大に入った方にインタビューをして、ちょうど東大の構内でみんな万歳万歳して、胴上げをしているのをやっておりました。残念ながら一敗地にまみれた青年もいました。そこにインタビュアーが、あなたはこれで浪人ですかと言ったら、いや僕は慶応大学に決まっています、慶応へ行くんですかと聞いたら、慶応に入るんだけれども来年もう一遍東大にチャレンジします、それまで慶応に籍を置いておいて、来年東大に入ったら慶応をやめて東大に行きます、こういうやりとりを学生とアナウンサーでやっておるのを見ておって、何か悲しかったですね。慶応大学はばかにされているんじゃないかなという感じを持ったのです。  それで、いろいろ数字を調べてみたら、具体的な名前を言うのは余りよくありませんけれども、慶応大学の工学部の建築科に入って、入学金も皆納めて、そして東大、京大に入ったら、やめて東大、京大に行くのが約七割だというのですね。ついでに早稲田大学の理工学部の建築科を調べてみたら——偏差値では大体一番高いところなんです。その早稲田の理工学部の建築科に入って、何十万の入学金を払って、東大、京大に決まったら出ていくのが半数だというのです。私は早稲田の西原総長と慶応の石川塾長に申し上げて、悔しいという気持ちになりませんかと言ったら、そう思うんだけれども、やむを得ませんねというお話でございました。  私学や国公立のそれぞれの大学の機能あるいは目的、求めるものというものは、今深谷さんがおっしゃるように形骸化してしまったなという感じは否めないと思うのです。それだけに子供たちにとって学問を進めるということの目標、目的は何なのかということが、まだ高等学校の間に理解がされてない。ただ、いい大学に行ったらいい会社に行って、いい就職ができるんではないかという、私は、本人よりも特に親の過大な気持ちがあるんじゃないだろうか。  昔、名古屋大学の工学部に入った学生に、何んで工学部に来たのかという学校の中の調査では、目的意識を持っているのは一割もなかった。親が行けと言ったから、学校の先生が行けと言ったから来ましたということです。それも年齢の面においては今の時代はいろいろな意味でふぞろいなところがありますからやむを得ないのかもしれませんが、さっき申し上げたように、もう少し将来の目標や目的によって自分の進むべき道、また学ぶべき学問というものを選ぶような教育環境をつくってあげること、それには多様な人間の価値判断をするということ、そういう面から見ると、大学全体の大学像というものもこの際もう一遍みんなで考えてみる、そういう段階に来ておるのじゃないか、そんなふうにも私は思っております。
  307. 深谷隆司

    深谷委員 今、大臣がおっしゃっしゃったような受験戦争、特にどの大学でもとにかくエリートコースであればいいといったような感じ方を子供たち、とりわけ親たちが持つというのは、やはり社会全体が学歴偏重だからなんですね。これは大きな問題ですからここで議論しても時間がありませんけれども、やれる範囲で改良する方法はないわけじゃないですね。  例えば就職する場合、会社が学校を指定するわけです、この学校の生徒以外は採用いたしませんと。指定校制度というのは、もう入り口から閉ざしてしまう。これははっきりやめさせてもらうような方法はないものでしょうかね、あるいは、お役所のことを言っては申しわけありませんけれども、官庁の中にもやはり東大優先とか学歴を重んずるという風潮があるように思えてなりません。そういうものを一つ一つ解決をしていく。大きいことを言ってもなかなか始まりませんから、可能性のあることから一つ一つ変えていくということが今非常に大事なことではないだろうか、こう思うのでありますが、大臣、ひとつこれからどんなふうに改良していこうかということの御決意を含めて、お話をお伺いしたいと思います。
  308. 森喜朗

    ○森国務大臣 教育改革の視点、あるいはまた先ほど御質問がありましたいわゆる入試制度についても、人間の能力あるいは価値というものをもっと多様な面から見てあげてほしい。そういう意味で受験制度を変えることも大事でしょうし、もう一つやはり大学も多様に価値判断をしていく時代だろうと思いますし、もう一つ社会全体も、試験勉強だけで人間を採るのですよということになれば、ちょっと言いづらいことになりますが、東京大学に入る人たちは逆に言えば体力検査をやったら案外みんな落っこっちゃうのじゃないかと思うのですね。  ですから、学問をするという面も見るけれども、もう一つは、高等学校時代どんなことをやったんだ、ボランティアは何をやったんだ、スポーツは一体どれだけのクラブの体験があったんだろうか。今よく、いじめっ子だとかいじめられっ子といって、学校の現場で先生方が大変苦労しておられる。いろいろな面はあると思いますけれども、先生になられる方々というのは、先生になるために大変勉強を続けてこられた。やはりクラブ活動などで人間の葛藤する場面の体験というのは乏しいわけです。人間関係がどうあるべきなのか、先輩、後輩はどうあるべきなのか、そんなことを体験し得ないままに先生になってしまわれた方がかなりいらっしゃって、そして子供たちのそういう考え方をまとめてあげることがなかなかできない。つい逃げてしまう。すべてだとは言いませんが、こういうこともある。そういう意味での先生の立場もとてもつらい面がある。そういう面からいっても、評価する判断の視点、基準をもっと多様にしていくということは大変大事だと思いますから、試験制度もそうあるべきだろうし、社会が人を求めていくということもそうあるべきだろうと思う。  そういう意味では、今御指摘がありました官庁などは特定の大学がどうもウエートを占めている。試験をするとこれはやむを得ない。私も何とかならぬのかと言って、事務当局で調べてみると、試験した結果がそうなってくるということになれば、点数が高いという基準で試験をするんじゃなくて、別の角度の試験をやるということも考えてみてもいいんじゃないか。こんなことも大変大事な問題で、いずれにいたしましても受験戦争の過熱の背景は、やはり学歴が必要以上に重視されている社会的風潮があるということは否めない事実でありますから、そのところもやはりどうしても改革をしていかなければならぬ。  そういう意味で、単に文部省だけで物を考えていくのでは現状の社会全体を直すということは非常に難しい。長期的な視野で、内閣全体の責任においてこうした問題を考えていただきたいというのが今度の設置審議会の一番大事なポイントでございますので、先生から御指摘いただきました点を十分踏まえて、こうした社会の風潮というものをぜひ打破しでいくことにみんなが努力していかなければならぬ、そういう大事な状況であろう、事態であろう、こういうふうに受けとめているわけです。
  309. 深谷隆司

    深谷委員 大事なただいま申し上げたような問題について、設置された審議会で十分な検討がなされて、一つずつ具体的な解決策が生まれることを心から期待してやみません。  二つ目の教育の重要な部分は、徳育であります。  人間としてあるべき姿、日本人なら日本人としてあるべき姿、それを培っていくのが私は徳育だと思います。ところが、例えば国を愛する心、こういうことを教育の現場でどのように教えているのであろうか、甚だしく私は疑問に思うのであります。国旗を掲げ国歌を歌う、その国民にとっては当然の姿でありましょうが、今学校の現場ではこれがどうなっているのでありましょうか。私は、日本の伝統を顧みて、日本人たる自覚を抱き、日本民族として感激と生きがいを与えるような教育が学校でなされなければならぬ、こう思っているわけであります。私は、国に対する奉仕、言いかえれば愛国心というものは、本来言うと教育基本法の中にもともと書かれていてもよかったのではないだろうかな、こう思います。  ソビエトの国民教育基本法というのを読んでみました。一九七三年七月十九日に採択されたものであります。この中には、ソ連邦の国民教育の目的は、マルクス・レーニン主義の思想で育てられ、ソビエト法と社会主義法秩序の尊重、労働に対する共産主義的態度の精神で育てられた共産主義社会の積極的な建設者で、社会主義祖国を献身的に守る、そういう人々を養成するものである、こう明確に書いているのであります。愛国心と言うとすぐ保守反動だと言う人々が支持しているソビエトでさえこうなんですから、日本教育基本法の中にもっと積極的に国を愛する心をうたってもいいのではないかと私は思っているのでございますが、大臣はどうお考えでしょうか。
  310. 森喜朗

    ○森国務大臣 教育基本法第一条には、国民が身につけるべき基本的な徳目を示しているわけであります。これは先生御承知ですから省きますが、その精神から見まして、愛国心とか家族敬愛というようなことは、普遍的にも、基本的にも十分身につけさせていくということは当然その趣旨の中に盛り込まれているわけでございます。  そういう意味で、先ほどちょっとどなたかにやじられたわけですが、私と深谷さんはちょうど小学校二年あるいは三年のときに終戦になる、そしてずっと我々は大学を出るまで、学校教育は戦後の新しい学校、特に混乱した状況でございました。教科書は全部墨で塗られましたし、我々が学校への通学のときに頭を下げた二宮尊徳まで取り去られた、そういう時代でした。だから、今まで教えられていたことがみんなだめなんだよ、こう教えられた。私たちは確かに、修身教育あるいは道徳教育というのは現実には小中高を通じて学んでいないのです。ですが、基本的にはそのことは父や母や社会から教えられた、私どもはこう自分なりに振り返って考えることができるわけです。  そういう意味で、必ずしも教育基本法にかくかく具体的にこう書かなければならないものだとは私は思わないのです。今日の教育基本法は、戦後のいろいろな事情はあったといたしましても、日本国民が選択した道であります。その教育基本法の中で十二分に今道徳教育も愛国心もあるいは親や先生に対する敬愛、そういうことも教えているわけでございまして、例えば小学校の指導要領におきましても明確にそのことは明記をしております。「日本人としての自覚をもって国を愛し、国家の発展に尽くそうとする。」こう指導要領には明記しておりますし、中学、高校、発達段階において十分そのことは教えられるようにいたしておるわけであります。  私は、今一番道徳教育などでいろいろな問題が出てくるということは、やはり学校で教えるべき先生や家庭の中でそのことを子供たちにきちっと教えていく世代の大人たちが、道徳教育などがどちらかというとちょうど無視されていた時代教育を受けてきている人たちが非常に多いということに一遍注目してみる必要があるのじゃないか。道徳教育は何をやっているのだと、よく国会の予算委員会でも随分御質問を与野党ともにいただきました。しかし、道徳教育を学校の徳目の教科にしたのは昭和三十三年からです。したがって、その前の段階で学校を出た人たちは残念ながら道徳の学問などはやっていないということになるわけです。そういうことが今日、道徳教育自体をどうしていいのかなということでみんな煩悶している、そういう日本時代的な、歴史的な背景というものを十分考えてみなければならないのではないかというふうに私は思うのです。  そういう意味で、今度の教育改革の大事な視点は幾つかございますが、国際社会の中に日本人は国際人として恥ずかしくないそういう人間性を持たなければならぬ、こう私は思うのです。そういう意味で、今御指摘ありましたソ連のそうした考え方というのも一つの国の考え方でございましょうが、むしろ自由で濶達な論議ができる自由主義国家の日本の国が、もっともっとそういう中で国を大事にし、そして人間関係を大切にしていこうという、自由主義社会である日本の方がもっともっとこれからの国際社会の中に十二分に役に立つ子供たちを育成できる背景であろう、私はこんなふうに考えておるわけであります。
  311. 深谷隆司

    深谷委員 愛国心ということを教育基本法の中で書いていないけれども、それは十分に今の教育基本法で読み取れるという意味合いで大臣お答えなされた、こう思います。ならば、教育の現場において本当にそういう愛国心が子供たちの教育の中で教え込まれているかというと、甚だお寒い限りでございまして、指導の中にはそのように文部省やっておられましょうが、それはむしろ形の上でやっているということであって、現実においてはなかなかそういう状態ではありません。これはひとつ厳重に、せっかくそうお考えをおっしゃられたのでありますから、積極的に国を愛することを教えるような教育をするように御指導いただきたい、こういうように思います。そして歴史や伝統を振り返り、誇りを持ち、感激をもって国を支えようとする日本人を生み出すための教育をぜひやっていただきたいと私は思います。  それから、徳育について、今大臣がおっしゃったように学校だけでこれを求めることは無理だろうと思います。私もいろいろな学校の会合に出るときもありますけれども、学校の先生に向かって、うちの子供はニンジンを嫌がりますから食べるようにしてくださいとか、随分親としての責任を捨ててしまったような言い方をする場面に出っくわしたことがあります。本当のしつけというのは家庭の中で本来なされるべきものだと私は思うのです。親が自分に誇りを持って子供をきちっと育てられるような状態が望ましいのでありますが、なかなか容易ではないというような感じがいたします。かといって、家庭の教育に政治や行政が介入するということもこれは大変難しいことだと思います。しかし、現実に家庭教育の荒廃があるわけでありますから、ここいらをどうやって進めるかということは大変難しいことだとは思いますが、考えなければならない仕事だと思います。大臣、どうお考えでしょうか。
  312. 森喜朗

    ○森国務大臣 青少年の徳育の充実は、今深谷さんから御指摘のように、学校だけではなくて社会や家庭の役割は極めて大きいと私も考えます。しかし、家庭教育というのは親の子に対する私的な教育でありますから、親の自由にゆだねられるのが本来のスタンスだろうと思いますが、同時に家庭は社会の基礎単位ということを考えなければなりませんので、子供の社会性を伸ばす役割は十分家庭にはあるんだ、こう考えておかなければならぬと思うのです。そういう意味で、子供の人間形成は家庭教育が極めて大きいわけでありますから、思いやりのある人間あるいは人間的な信頼感を育ててあげる、そして何といっても社会人として必要な基本的なしつけ、人間として一番大事な守るべきこと、正しいことと正しくないことの判断、こうしたことはやはり家庭でしっかり身につけさせることが大事だと私は考えます。  もちろん、文部省といたしましては家庭教育社会教育を通じながらいろいろな施策を講じておりますけれども、今後ともその施策は十分積極的に取り組んでいかなければならぬ大事なことでございますが、本来、文部省や国が家庭や社会教育について余り口うるさく言わなくてもいいような社会を実現する、それは子供たちの自覚にあることだろうと思いますし、今私や深谷さんが冒頭から議論をしております大事なことは、つまり二十一世紀を担う子供たちが家庭の中心的人物になるのだということ、そういう意味でゼロ歳からずっと生涯にわたる教育は、よき社会人、もっとかみ砕いて言えばいいお父さん、お母さんをつくるということが教育の一番基本的な大事な認識でなければならぬと考えておりますので、学校教育と同様に家庭教育社会教育の中にも文部省としては十分な施策を講じていくことが重要であろう、こういうふうに私は考えております。
  313. 深谷隆司

    深谷委員 同時に、徳育の問題で言うと、社会全体がその責任を負わなければならぬと思いますね。非行化の問題一つ取り上げましても、社会全体が包んですくすくと直して差し上げる、伸ばしてあげる、そういう仕組みが大事でありますが、非行防止の声はかなり大きく出ておりますが、現実にはその原因となるものを除去したり解決しようとはしておらないという現状であります。  私は、秘書に中学生、高校生が読んでいる本を買ってこいと言って何冊か買わして、中を見て愕然といたしました。とても説明できるような内容ではありません。こういうものがはんらんをしているのが現実です。もちろん、言論の弾圧とか言論の自由とかいうことを考えると容易なことではないと思いますが、目に余るようなものが放置されていて社会の中で徳育ができるというふうに考えることは大いに誤りだと思います。きょうせっかく総理府においでをいただきましたが、時間がありませんから、どうぞそういう問題も深く検討して、どうやったらそういう問題を排除して立派な青少年が育成できるかということに四つに取り組んで頑張っていただきたいということだけ申し上げさせていただきたいと存じます。  知育、徳育いろいろな問題がありました。体育も同様であります。  だんだんに戦前と比べると、例えば今の子供たちは筋力がない、頭でっかちのもやしっ子が多い、大臣や我々は体力には自信がありますけれども。高校野球、今大いにはやっております。しかし、その野球でも選手の集め方など、多くの問題があるわけでございます。調和のとれた体育の指導、本当に心身ともに健全な子供たちを育てるための新しい体育のあり方、ここいらもこれから設置される審議会で大いに検討していただいて、具体的な成果が上がるような御努力を文部省を中心にやっていただきたいと思います。  時間がありませんので、先ほど説明のございました事柄について、もう一つ伺います。  法案の趣旨説明の中で、二十一世紀の我が国を担う青少年の育成を目指して教育全般の改革を推進していくんだ、こういうお話をなさいました。二十一世紀というのは我々がかつて経験しない、予想できない不確実な時代だと思うのです。一体どのような時代になるのか、これを想定することは容易なことではございませんが、例えば一つ私なりに考えてみますと、二十一世紀というのは科学技術が猛烈に驚くほど進歩した、そういう時代になるであろうことは確かだと思うのですね。実験の段階でありましょうが既に始まっている、会社に出勤しなくてもコンピューターを利用して自宅でボタンを押せば仕事になる、そういうような時代も来るでありましょうし、ロボットで代表されるような、省力化ということから起こってくる機械効率性を追求した人間疎外の時代に入っていくのではないかというおそれを私は抱いているわけでございます。  例えば一つの品物をつくる場合に、かつてであれば何年もかけて、しかも全工程を勉強しながら頭で考えて一つの品物をつくってきたのであります。これからの時代というのは、例えば自動車一台つくるのでも、今でもそうでありますけれども、ボルトをつくるのはボルトの係だけ、タイヤはタイヤだけ、全部ばらばらに工程が区分せられて、その部分だけで仕事をしていくということが二十一世紀の労働ということになってまいりますと、全体を考えていくという、人間は考える葦だと言いましたが、そういうものがなくなって、生きがいのない、働きがいのない、人間疎外の時代が起こってくるのではないだろうか、そういうふうに心配するのであります。同時に、家庭も核家族に分かれて、だんだんに人と人が寄り添うように生きるという時代から、うら寂しい、砂漠のような精神状態時代に変わっていくおそれがある、そういう時代が二十一世紀の一つの特徴ではないだろうかというふうに私は思えてならないのであります。  そういう二十一世紀を担う青少年の教育とは一体何だろうか。言いかえれば、まさに今までやってきた人間教育をどう継続させてこれを完成させるかということではないだろうか、私はこう思うのであります。いたずらに、二十一世紀というのは科学万能の時代だから、それに対応できるような目先の技術を身につけさせるような教育をもしやっていったとするならば、先ほどの受験戦争のような大きな禍根を残すことは明白であります。知育、徳育、体育、三位一体の人間を中心とした教育をどう継続させ、これを完成させるかがまさに二十一世紀の教育の課題ではないかと考えるときに、今まで大臣と議論をしてきたさまざまな問題の中からその欠点を明らかにし、それに改良を加えていくということにこれからの力を注いでいくべきではないだろうか、私はこう思うわけであります。  全体を考えて人間中心の二十一世紀の社会をどうつくっていくか、いわば哲学ともいうべきこれからの教育の重要な課題があるわけで、そういう問題をじっくり考えていただくというのが臨教審のありようでなければならない、こう思うのですが、いかがでありましょうか。
  314. 森喜朗

    ○森国務大臣 二十一世紀に視点を据えて、一体どういう社会が実現してくるんだろうか、非常に難しいお話です。  ちょっと長くなって恐縮ですが、二十一世紀、まずは一番先に頭に置かなければならぬことは高齢化社会だと私は思います。働いて税金を納めるという生産者人口に比べて、いわゆる非生産者人口と言われる年金受給者の率が高くなっていくということでありますから、これは今、国会全体で大変大きな問題として御検討いただいているわけです。したがって、制度だけではない、金だけではない、やはり新しい高齢化社会というのは自助努力、子供たちにたくましさというものが必要だろうし、自分がやるんだという気概が必要だろうし、もう一つは、子供たちが優しさ、薄幸な人たちに対して優しいいたわりと思いやりを持つ心というのが大事だ、こういうふうに思います。  もう一つは、先ほどもちょっと触れましたが、国際化社会の中で日本人は生きていかなければならぬ。今までは追いつけ、追い越せ型近代化社会だ。これからはまさに世界のトップランナーになった瀬古のようなものだ。その日本はこれからどう走って、世界全体にどういう役割をしていくのか、このことを考える子供たちになってもらわなければならぬ。  第三点は、今先生がおっしゃった、いわゆる科学技術時代だろうと思うのです。まあ、我々の学生時代のときに、まさか試験管で精子と卵子が受精卵になって、それをまた子宮内に挿入して子供ができるなんてちょっと考えもつかなかったことが、現実の問題として行われて、生命科学はいかにあるべきかということが今、国会の中でも議論として出てくる。恐らく大変な事態に遭遇してくるだろうと思うのです。  総理と二月に仙台の太白小学校というところを視察したのです。新しく七年ほど前にできた近代的な学校でした。とてもいい学校でしたが、そのときに一年生の教室に行ったら、いわゆるワープロというのでしょうかコンピューターというのでしょうか、テレビゲームみたいなものを子供たちがみんな机に置いてぱっぱっぱっぱっとやっているわけです。総理も私も何をやっているのかわからないのです、校長先生から幾ら説明を受けても。しかし、あの子供たちは何のちゅうちょもなくそうしたロボットやコンピューターに飛び込んでいける。そういう社会に対応できる子供たちを教育している意味では、これはある面ではいいことなのかもしれないけれども、僕はそのとき、この子供たちがボタンを押すことにもっと恐ろしさを知ってほしいな、ボタンを押すことによって、例えば時計あるいは計算機——特定の銘柄を言っていいかどうかわかりませんが、カシオミニでボタンをぽんぽんと押すと、考えないで足し算、引き算の答えが出てくる。そろばんは、一つ、二つ、三つ、四つとたたいて、もう一つの玉がなくなったから上の五の玉をおろす、そのかわり四つの玉を下へおろすんだ、六を足すと小さい玉と大きい玉が上へ重なるから大きい玉が次の台へ行く、こういうことを考えながらやるそろばんと、ボタンさえ押せば計算はしなくても出てくるんだということを考えると、やはりボタンを一つ一つ押すことに大変な意義があるんだという考え方を基本的に学んでいかなければならない。そういう意味で、今あなたもおっしゃったように、人間として一番大事な、基本的な読み書きそろばんというものを中心にし、当然人間性というものを一番求めていく、そういう大事な対応を子供たちにしておいてもらわないと、二十一世紀というのはむしろ暗黒の社会になっていくのじゃないだろうか。  そんなことを子供たちに責任として押しつけるのではなくて、ちょうどその太白小学校に行ってみて思ったのは、とてもすばらしい冷暖房の完備された学校だけれども、我々の子供たちの時代は、吹雪の吹きすさぶ中でお互いに押しくらまんじゅうをして暖を求めた、そんな時代から見ると教育の条件はよくなったのかもしれない、環境は整ったのかもしれぬが、この子供たちに風雪に耐え抜くということを一体いつ、だれが教えるんだろうか、教えてもらわなかった子供たちの責めを問うのではなくて、やはりそのことを教えなかった大人がむしろ責任を持っていかなければならぬ。  そういう意味で、二十一世紀はどういう社会になるかということは本当に私どもははかり知ることはできませんが、どういう事態になっても人間として一番大事な人間性、文化の問題、そして先ほど言った一番大事な基本のことだけはしっかり学んでいけるように、そのことを考えていくことが二十一世紀に対応する教育の原点ではないか、私はこんなふうに考えているところであります。
  315. 深谷隆司

    深谷委員 今大臣もおっしゃったように、高齢化社会というのは紛れもない事実であります。そういう時代に、長生きしたけれども幸せな人生であったと思うようにしていくためには、いたわりの心を青少年たちが持つことが大事でございます。高度な科学技術の時代に、機械に追われてコンピューターあるいはベルトコンベヤーで流れてくる仕事だけをやるということではなくて、考えるということにもっと重きを置いた教育も大事になってまいります。先ほど申したように、今日まで行われてきた人間教育、つまり知育、徳育、体育の完結完成を目指すのがまさに二十一世紀の青少年を育てるための教育だ、そういう問題についてひとつじっくり誤りなきように、国家百年の大計でありますから、臨教審で考えてもらいたいと思うわけであります。  さて、そうなってまいりますと、どういう委員で構成するかということは大変難しい問題だと思います。だれが見ても、国民各層から選ばれた公正な人々でなければならぬのであります。この臨教審の設置法がまだ正確に出ない、内容もわからないうちに頭から反対だといったような偏った団体代表は、私はだめだと思っていますね。あくまでもそれぞれの分野日本現実と未来というものを見きわめて国家のために語れるような人物、政党政治、一党一派に偏することなく、イデオロギーに偏らない人々を選ぶということが委員の選び方であろうと思うし、それが臨教審が成果を上げるゆえんであろうと思いますが、どういう選び方をなさるかのお言葉を聞いて、私の質問をとどめたいと思っております。
  316. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほどからるる申し上げてまいりましたように、教育改革は国民全体にかかわる重要な課題でございます。臨教審の委員につきましては、広く国民各界各層の意見が反映できるような幅広い分野からぜひ委員をお願いいたしたい、これが政府の基本的な考え方でございますが、現在のところは、どのような方をどのような形で選ぶかということは、この臨時教育審議会設置法案審議、ぜひできるだけ早く成立をさせていただきたいなというのが政府の希望でございまして、その審議の発足を待って十分に慎重な検討で選出したい、こう考えておるわけです。  御指摘がございましたように、教育現場の声とか父母の声でありますとかというものは十分に反映させなければならぬということも大事なところだ、こう私は考えておりますが、特定の組織の団体が、お互いにその利益団体の代表であるというような形で集まってくるというのは、基本的にはそういう方向はとらない方がいいのではないか。結果的にいろいろな立場の方が出てこられることだろうというふうには考えられますけれども、先ほど申し上げましたように、幅広いいろいろな分野の中からぜひ慎重な選考をしていきたい、こんなふうに私は考えているところでございます。
  317. 深谷隆司

    深谷委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  318. 片岡清一

    片岡委員長 次回は、来る十七日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会      ————◇—————