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1984-04-03 第101回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月三日(火曜日)     午前十一時一分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 池田 行彦君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 松浦 利尚君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       石原健太郎君    上草 義輝君       大島 理森君    鍵田忠三郎君       菊池福治郎君    月原 茂皓君       林  大幹君    山本 幸雄君       上原 康助君    元信  堯君       渡部 行雄君    鈴切 康雄君       山田 英介君    柴田 睦夫君       三浦  久君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長 中西 一郎君         官)  出席政府委員         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府総務副長         官       堀内 光雄君         総理府人事局次         長       吉田 忠明君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         北方対策本部審         議官              兼内閣総理大臣 橋本  豊君         官房総務審議官         宮内庁次長   山本  悟君         皇室経済主管  勝山  亮君  委員外出席者         宮内庁書陵部長 宮尾  盤君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ————————————— 四月二日  旧満州国官吏恩給改善に関する請願小澤潔  君紹介)(第一八二九号)  旧軍人恩給改定等に関する請願小沢辰男君紹  介)(第一八八四号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願上村千一郎紹介)  (第一八八五号)  同(江藤隆美紹介)(第一八八六号)  同(渡部行雄紹介)(第一八八七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四号)      ————◇—————
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴切康雄君。
  3. 鈴切康雄

    鈴切委員 総務長官まだおいでになっておりませんけれども、やはり宮内庁担当大臣として御出席を願って、きょうは参議院との関係がございまして約三十分ぐらいしか出席がないということでございますが、そういうことで、総務長官が来られてから総務長官に対するいろいろの質問はしたいと思っております。  そこで、今回皇室経済法施行法の一部を改正する法律案提出をされております。今回の改正案は、内廷費及び皇族費定額は四年ぶり改定をする、また賜与とか譲り受けの限度価額は十二年ぶり改定しようとするものでありますけれども、それらの額の改定理由についてお伺いをいたしたいと思います。
  4. 山本悟

    山本(悟)政府委員 お尋ねのように、今回お願い申し上げております内廷費及び皇族費改定は四年ぶりと申しますか、それから賜与及び譲り受けの限度額は四十七年以来の改正ということをお願い申しておるわけでございます。  御案内のとおり、内廷費及び皇族費定額改定につきましては、昭和四十三年以来、物価上昇率及び国家公務員給与改善率勘案をいたしまして、前回定額改定後の増加見込み額定額の一〇%を超えました場合を目途といたしまして改定お願いする、こういうような基本的な考え方に立ちまして、実を申し上げますと、四十三年以来、四十三年を含めまして五十五年の改正まで七回にわたりましてほぼ同じような考え方に基づきまして改定お願いをしてまいったわけでございます。  今回、ただいま御質問でおっしゃいましたように五十五年度に定額改定をいたしまして、既に四年間、同じ基礎のものに基づく定額を使っているわけでございます。この間に、物価上昇率、これは東京都の区部消費者物価指数を使わせていただいているわけでありますが、その上昇率が一八・七%、それから国家公務員給与改善率がその後の率を連乗いたしますと一二・三二%、こういう率に相なっているわけでございます。したがいまして、四十三年以来の改定お願いする際の基本的な考え方からいたしますと、物価においては約一八%強、給与改善率においては一二%強というようなことでございまして、いずれも基礎であります一〇%を超えた場合ということに該当をしているわけでございます。したがいまして、こういう状況に相なっておりますので、やはりこの内廷費あるいは皇族費をもって実際上充てられております内廷職員あるいは宮家の雇っております職員給与改善もする必要もございますし、また御日常の御活動及び御生活に支障のないように物価上昇というものを考えていただく必要がある、こういうようなことになりますので、今回この改善を願うことにいたしたわけでございます。  しかしながら、現下の厳しい経済情勢あるいは国の財政事情等も考慮いたしまして、前回、五十五年度の定額改定お願いしました際と同様に、改定初年度分である昭和五十九年度分に限りましては定額変更による増加額の二分の一に相当する額を節減するものとして算定する、そして六十年度から平年度化する、こういうような改定お願いいたしているわけでございます。これが内廷費及び皇族費定額改定につきましてのお願いをいたします理由でございます。  また、賜与及び譲り受けの限度価額でございますが、御指摘のとおり、四十七年に改定いたしましてから十数年間改定をしていなかったわけでございますが、この間、物価で申しますとやはり二倍強、二・四倍ぐらいになると思いますが、そのくらいの上昇が見られているわけでございます。前回のこの賜与限度額改定の際には物価というものを一番基礎にして使ったわけでございますが、これは限度額でございまして、直ちにこれをもって支出する、あるいは譲り受けを受けるというような性質のものではございません。したがいまして、そう短時間に改定をするというようなものでもないと同時に、しかしやはり社会の実態に合わせた格好での改定お願いしておく必要がある。やはり実績等をとってみますと、既にだんだんと限度に近づいてくるというような状況に、殊に賜与の場合でございますが、そういう状況になっておりますので、この際、もう十年以上もたつものでございますから限度改定お願い申し上げたい。その際も、余り一挙にというようなことでもいかがかと存ぜられますので、通常、経常的な賜与の実績といったようなものもやはり一・八倍程度にはなっておりますので、それをもとにいたしまして約八〇%の限度額の引き上げというものをお願いをしているわけでございます。
  5. 鈴切康雄

    鈴切委員 賜与の過去の実績はどういうふうになっておりましょうか。昭和五十六年、五十七年、五十八年について、内廷グループ宮家グループに分けて御説明を願いたいと思います。
  6. 山本悟

    山本(悟)政府委員 賜与の過去の実績でございますが、限度額内廷の場合には今申し上げましたように九百九十万でございますが、五十六年度の実績が約七百九十万、五十七年度が、これは限度いっぱい近くの約九百九十万弱、それから五十八年度につきましても、まだただいま集計中でございますが、ほぼ五十七年度と同様程度になろうかと存じております。  以上が内廷でございまして、それから内廷外皇族宮家の合計でございますが、五十六年度の場合には成年皇族十二万、未成年皇族一方、限度額を計算いたしますと千百万円になるわけでございますが、五十六年度の実績は約七百七十万、五十七年度の実績は八百八十万程度というようなことでございまして、五十八年度はまだ数字は出ておりませんが、ほぼ同様程度というぐあいに御判断を賜りたいと思います。
  7. 鈴切康雄

    鈴切委員 譲り受けの方はどうですか。
  8. 山本悟

    山本(悟)政府委員 譲り受けの額でございますが、内廷で申し上げますと、限度は三百三十万でございますが、五十六年度で百八十万、五十七年度百三十万ということになっております。内廷外皇族関係でございますが、限度は千百万でございます、同様でございますが、五十六年度の総計が七百七十万、五十七年度が八百五十万という程度になっております。
  9. 鈴切康雄

    鈴切委員 今の御説明を承りますと、賜与についてはほとんど限度額いっぱいに近づいている、それから譲り受けについては多少の余裕があるように、今の数字からいいますとそういう形になりますけれども、それでは譲り受けられるものは、一般的にはどんなものがありましょうか。
  10. 山本悟

    山本(悟)政府委員 譲り受けいたしております物品あるいはその他のものでございますが、いわゆる内廷天皇皇后陛下、それから皇太子御一家というような方々に対する献上につきましては、皇室の御慶事の際の特別な場合を除きましては通常地方行幸啓、例えば植樹祭国体等でございますが、そういった際に、その地方特産品、例えば民芸品といったような特産のものを地場産業側奨励意味からお受けしているのが主なものでございまして、基本的には、財産価値の高いものあるいは宣伝に利用されるといったようなものはお受けしないという方針でいたしております。  御慶事といったようなことを申し上げましたのは、例えば先般の両陛下の御結婚六十周年というような際には、内閣あるいは衆参両院正副議長あるいは最高裁の長官といったような方々からのお祝い品がございましたが、こういうものはちょうだいをいたしておるというようなことでございまして、そういった特別の場合を除きますと、ただいま申し上げましたように、例えば地方行幸啓の際に知事を通じてというものをお受けをするということにいたしているわけでございます。  各宮家の方になりますと、それぞれ宮家の御事情も多少ずつは違うかと存じますけれども、やはりほぼ内廷の場合と同様なお考え方でもって運用されておるものと存じております。
  11. 鈴切康雄

    鈴切委員 賜与及び譲り受けの限度額が定められているわけでありますけれども、譲り受けについては実際の価格の算定をどのように行っておられましょうか。また、年度途中で限度額を超過しそうになった場合には、どのようにされますか。
  12. 山本悟

    山本(悟)政府委員 譲り受けを受けますものの評価の仕方ということになるわけでございますが、内廷で申し上げますと、ただいま申し上げましたように地方行幸啓等の際に知事を通じてというようなやり方でいたしておるわけでございますので、その場合には、それぞれの献上者の方から知事を通じまして言ってきた価格というものを使わせていただいております。宮家の方におきましても、当然のことながら、社交的なものをどう評価するかというような難しい問題はございますけれども、そういったような意味での評価をさせていただいている。  いずれにしましても金品の張るものをいただくという考え方はとっておりませんものですから、譲り受けの方につきまして限度を超過するというような事態は、内廷については今のところはそういった事態に達したことはございません。宮家におきましても、その辺の限度のあるということは十分御承知になって、その上での運用をしていただいているというぐあいに存じております。
  13. 鈴切康雄

    鈴切委員 私の記憶にあるところでは、譲り受けて国会議決を受けた例は、たしか皇太子の御成婚のときの品物の譲り受けてあった。賜与の方が国会議決を受ける例が実は多いように思うのですけれども、そこで、賜与及び譲り受けで国会議決を受けた過去の実績というものはどういうふうになっておりましょうか。
  14. 山本悟

    山本(悟)政府委員 皇室経済法のうちの賜与及び譲り受けについて規定いたしました第二条は、昭和二十七年の四月に全面改正をされまして現在に至っているわけでございまして、現行法のもとにおけるやり方はこの二十七年の改正以来ということになるわけでございますが、この二十七年四月以降に国会議決を受けました案件は、賜与一件と譲り受け一件ということになっております。  賜与は、昭和二十七年十二月に高松宮家が、その御所有になっておりました福島県にありますいわゆる翁島というところにある別邸を県に賜与されました。この際に国会の御議決をちょうだいいたしております。それから譲り受けにつきましては、ただいま先生おっしゃいましたように、昭和三十四年に皇太子殿下の御結婚を祝するための贈与される物品を、「昭和三十四年三月二十一日から同年四月三十日までの間において、内閣の定める基準により、」「譲り受けること」というのを国会の御議決をいただいているわけでございます。  これが現行法になりまして以来、二十七年の改正以来の御議決をいただきました事例でございます。
  15. 鈴切康雄

    鈴切委員 昨年の七月に、国賓として来日する外国の元首が催すお返し晩さん会天皇陛下は今後出席されないことになったという報道がなされたわけでありますが、その後、返礼晩さん会を欠席されて、関係外国理解はどのように得られたのか。その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  16. 山本悟

    山本(悟)政府委員 天皇陛下は現在極めて御健康でございまして、国事行為を初めいろいろな儀式行事等の御公務を積極的におこなしになる御意向を持っているわけでございますが、その件数相当に上るということもございまして、やはり総体としての御公務の御負担を軽くする方向というものは必要なことと存じていたわけでございますが、国賓その他の外国賓客接遇というのもだんだんと件数もふえてまいっておりますし、また国賓の場合で申し上げますと、実を言うと御滞在の日数もだんだん短くなるというようなことでございます。そういたしますと、歓迎行事、御会見、それから宮中晩さん、そうするともうすぐ翌日には、もしもリターンをなさる場合にはお返し晩さんということになって、非常にその辺が詰まってくるというようなこともございまして、御公務全般にわたっての簡素化を検討してきた一環といたしまして、国賓の主催される晩さん会への御出席はお控えいただくという方針が出たわけでございます。  この趣旨というのは、相手の国賓の方の御主催になることでございますので、その十分な御理解をいただかなければならないことは先生指摘のとおりでございますが、その国賓としていらっしゃる際の接遇というようなことに関しまして十分事前の打ち合わせがあるわけでございます。その後、ただいまのような方針になりましてから、パキスタン国大統領アイルランド国大統領及びノルウェー国王といったような方々国賓行事があったわけでございますが、いずれも十分御了解をいただいて滞りなく国賓行事を済まされたという状況になっていると存じます。  なお、これらの国賓の催されますお返し晩さんといいますか、催されます晩さんの際には、皇太子殿下以下皇族、お呼ばれになった方も御出席になって、十分その任を果たされているというように存じております。
  17. 鈴切康雄

    鈴切委員 陛下返礼晩さん会出席しないこととした理由は、やはり御高齢配慮して陛下のお仕事を軽減させるためであると私は思いますけれども、宮内庁は、陛下が八十歳の傘寿を迎えられたのを機に、陛下のお仕事量を減らしていく方針を決めたと伺っております。どのような形でお仕事量を減らしておられるのか、その点をお伺いをいたします。
  18. 山本悟

    山本(悟)政府委員 基本的には、御指摘のようにやはり御高齢という事実は紛れもないことでございますので、御無理がかからないようにという配慮のもとにあらゆる諸行事を考えていくというような考え方に立っていたしているわけでございます。また同時に、天皇陛下は現在も極めてそういう意味では御健康であるし、また積極的に公務に対処されるというようなお考え方でいらっしゃるわけでございますので、そういった基本的な御公務というものはおこなしいただいて、なおかつ、その運び方につきましてできるだけ御負担がかからないようにという配慮宮内庁あるいは側近としてもいたしているわけでございます。  極めて身近な例かもしれませんが、例えば宮中行事といいますといろいろな儀式についての服装その他がある。こういったもののお召しかえの回数を、なるべくその諸行事をうまく配列することによって減らしていくといったこともいろいろあるわけでございます。あるいは行事の場所というものも、宮殿の中も相当広うございますけれども、こっちとこっちというようなことになるべくならないように、うまくアレンジしていくことによってそういった意味での御負担を減らすとか、側近がそういう具体の問題を考えます際にも細かく配慮をいたしているわけでございます。  基本的に、陛下のお気持ちとしては御公務第一ということは常におっしゃっていることでございますので、それには支障のないようにしながら実際上の御負担が減るようにという考え方のもとに、いろいろな行事を考えていっているということでございます。
  19. 鈴切康雄

    鈴切委員 昨年からことしにかけて、皇室に関する一連記事週刊誌雑誌に数回にわたって掲載されたと私は記憶をいたしております。それらの記事については、中には大変に興味本位というとらえ方をしているのではないかというように私は思うのですけれども、宮内庁のとった対応処置について、どのような対応処置をされたか。国民に誤解を与えないためにもやはり事実関係をはっきり公表すべきだと私は思うのですけれども、その点についてひとつ明確に御答弁願います。
  20. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘のとおり、皇室に関する記事というのはいろいろ出ております。もちろんいろいろな種類のものがあるわけでございますが、中には興味本位といったことに走り過ぎているのではないかと思われるようなものもないわけではございません。ただ同時に、今の日本の開かれた社会でございますから、そういったものも皇室のものであるからということで一々あれしているわけにもまいらないと思います。  ただ、実際問題といたしまして、極めて事実に反するあるいは場合によってはいろいろな意味での非常な社会的影響があると思われるようなものにつきましては、やはりはっきりするものはしておく必要があるという考え方を基本にいたしまして対処をいたしているわけでございます。  一、二例を申し上げますと、昨年の秋でございますか、文芸春秋あるいは「プレジデント」といったような雑誌藤原弘達氏が記事なり対談なりをいたしておりまして、その中に、現職の侍従長陛下の御行動についてこう言ったというようなことがございました。こう言ったという内容は、特定の方の姿がテレビの画面に映ったときには消してしまうと入江侍従長が言ったというような記事が出ましたが、このようなことを入江侍従長が言った事実もございませんし、また侍従長自身としてこのようなことを陛下がなさっていたことを見たことも何もないわけでございますので、こういうのはまさに事実に反するということで、侍従長谷でもってそれぞれの関係者のところに事実がないという申し入れをいたしまして、これはそれぞれのところで、次号なり何なりで一応の訂正なり変えた記事が出たと思います。そういうのが一つございます。  そのほか、週刊現代あるいは月刊現代週刊新潮といったようなところに、ことしの初めでございますか、特定の方の一連記事が出たことがございました。一つは、宮内庁において御退位についての具体的なスケジュールが真剣に討議されているといったような内容のこと、一つは、浩宮の妃殿下の極めて有力な候補が絞られて、決定されたに近いような表現での記事がございました。それからもう一つは、三笠宮殿下双子の妹がおられる、こういった記事が出たことがございますが、いずれも事実がございませんので、執筆者並びにそれぞれの発行者の方に事実のない旨を申し入れをいたしました。  これに対しまして執筆者の方から具体の問題、浩宮妃の問題につきましては、執筆に際して留意すべきであったと思うというような意味での返事がございました。双子説につきましては、そういう意味ほどの返事はございませんでしたが、そういう事実はない、宮内庁はあらゆる事実を調べてみてもさようなことは考えられないということははっきりと相手方にも言い、またそういったことを行ったという事実は報道関係の方にも公表をいたしたわけでございます。
  21. 鈴切康雄

    鈴切委員 こういうふうな記事については憶測を生むわけでございますから、そういう点、事実関係については明確に何らかの処置をとっていかなくちゃいかぬだろう。そうしませんと、その記事自体が肯定されてしまっているのだというふうに受けとめられても困るわけでございます。私は何も真実を隠せというふうに申し上げているわけではございませんけれども、一応違うということであるならば、それに対して明確に処置をとられるのが賢明な方策であろうというふうに思います。  特に対応処置をとらなかったものについてはどんな理由があったのか、その内容についてはどうなんでしょうか。
  22. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいま措置をとった例を申し上げたわけでございますが、措置をとらなかったものも多数ございます。  例えば浩宮殿下のお妃問題に関する記事というのは、このごろの週刊誌を見ておりますとそれこそ一年に幾つも出てまいります。去年、おととしあたりとりましても、五十七年くらいから十幾つ、あるいはもっと詳しく見ればもっともっとになるかもしれませんが、そういうような記事が出ている。ただ、これらの記事は、こういうようなことが言われているということで、何人かの方を並べて書いて、これも興味本位といえば興味本位でございますし、書かれた方には随分御迷惑なことだと思いますが、先ほど申し上げました措置をとったものに比べれば断定をしているわけではない。まあそういう話もあるのですね、というような程度のことが出ている。その程度のものであると一々はいたしておりません。  そのほか、宮内庁にもとおった者が書いたりいろいろなことがございます。それぞれのことはございますが、直接両陛下なり皇族なりの方に御迷惑がかかるというようなものでなければそれはなかなか申しません。ある特定の人がいろいろな意味での不満を持っていたことがあらわれてきたといったような程度のものであれば、これに対しての措置というのは事実関係といたしてもしていないというようなことは申せると思います。内容がどの程度影響力を持ち得るだろうか、あるいは断定しているだろうかというようなことを勘案をいたしましてやっているわけでございます。  そのほか、皇室を誹謗したり侮辱する類のものといたしましては、これは要するに特定の分野のアングラですとかミニコミですとか、そういったようなところではいろいろな文章が出たりなんかすることがございます。こういうものはもうごく限られた範囲のものでございますし、一般の方に非常に読むにたえないといったような内容のものであったり、あるいは世論等に非常に影響を与えるというように深刻に考えられるものとはなかなか思えません、泡沫のごとくに消え去っていくといったようなものがそういったものには多うございますので、そういうものには一々対応しないで黙殺するというような態度がいいんじゃないかということで処理をしてきたわけでございます。  やはり、相手方によりあるいは内容により、社会的にも影響があり、ただいま先生御心配いただきましたように、本当じゃないかと思われてしまうというようなものにつきましては、これからも考えていかなければいけないというように思っております。
  23. 鈴切康雄

    鈴切委員 浩宮様の御結婚に関する記事は一昨年ごろから週刊誌等に何度となく載っておるわけでありますけれども、実際には御結婚されても決しておかしくない時期に来ておるわけでございます。また、記事になるというのは、そういうふうな憶測を含んでの記事もあるわけでありますけれども、宮内庁としては少しずつ御結婚に向けての準備を進められておられるのじゃないかというように思いますけれども、その点についてはいかがでございましょうか。
  24. 山本悟

    山本(悟)政府委員 確かに、浩宮殿下も御年齢が二十数歳に達せられておるわけでございますから、御結婚ということも当然考えられなければならないことであると存じます。ただ、御結婚基礎というのは、やはり殿下御自身のお気持ちに沿ったものでなければならぬし、また同時に、お立場でございますから国民から祝福されるようなものでなければならないということも当然のことであろうと存じます。そういう意味でいろいろなうわさも出ますし、いろいろなことが申されますが、もちろん宮内庁といたしましてもそういう事態に対して対処しなければならぬわけでございますが、事が事でございますから、どういうような準備をしているとかどういうことだというようなことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
  25. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、公式にはちょっと申し上げることはできないけれども、実際にはもうそろそろそういうことで宮内庁としても準備に入っておるということでございましょうか。
  26. 山本悟

    山本(悟)政府委員 この辺は準備というものの考え方でございますが、ではこの場をかりて申し上げさせていただきますが、具体のお相手がどうこうであるという段階には全く至っておりません。
  27. 鈴切康雄

    鈴切委員 浩宮様は現在イギリスに御留学中でございますけれども、オックスフォード大学に御留学された理由はどういうことなんでしょうか。また、ロンドンでの生活の様子はどんなふうなことでございましょうか。
  28. 山本悟

    山本(悟)政府委員 浩宮殿下の御就学先をオックスフォード大学に決定されましたのは、殿下の御専攻の分野に対する御関心を考慮いたしまして、イギリスの政府当局とも協議した結果、選ばれたのがオックスフォード大学のマートン・カレッジということになるわけでございます。  現在、殿下は、同大学の大学院生としてマートン・カレッジに籍を置かれまして、ピーター・マサイアス教授の指導のもとに、主として英国を中心とするヨーロッパの中世、近世の交通史の御勉学に励んでおられるところでございます。  同時に、いろいろの英国における御生活あるいはヨーロッパというような地域における御活動というようなこともお願いをいたしておるわけでございまして、先般の冬休みの期間中には、英国内の御旅行のほかに、リヒテンシュタインの皇太子殿下の御招待によりましてリヒテンシュタイン及び引き続いてスイスを御訪問になり、またベルギーの皇帝皇后両陛下の御招待によってベルギーを御訪問になっております。また、現在は春休みを御利用になりましてフランス国内を御旅行、それから引き続いてスイスの方に行っていらっしゃるというようなことでございます。フランスでは、御専攻分野に関連した都市や運河といったような施設や、そういったようなものも随分とごらんになりまして、歴史的な遺産、文化財等の御視察に励まれたというように存じております。
  29. 鈴切康雄

    鈴切委員 桂離宮のことなんですけれども、先般私も、桂離宮のいわゆる昭和の大修理ということで関心がありましたので、行ってまいりました。立派にでき上がっておりますけれども、桂離宮の解体復元の経緯と、もう一つは、現状、多くの国民に一応お見せするということについてはどういう配慮をされていますか。
  30. 山本悟

    山本(悟)政府委員 桂離宮は、御案内のとおり、十七世紀の初頭に建設されました木造建築物でございまして、三百年以上経過して実際は腐朽が著しい状態となりましたために、昭和五十一年度から全面的な解体修理を行いまして、五十七年の三月末に完了いたしたところでございます。修理のためには、この道の権威者を集めまして桂離宮整備懇談会というものをつくりまして、その意見を十分に聴取いたしまして工事を施行いたしました。予算といたしましては、九億二千八百万というような金額をちょうだいいたしまして完成を見たところでございます。  これの公開でございますが、現在、各個人からお申し込みを受けまして、一月ごとに抽せんによりましてまとめまして、一時間に約四十人とか五十人とかぐらいな組を組んでいただきまして、庭上から参観をしていただくというやり方をとっております。ずっと以前には屋内にお上げして参観をしていただいたこともあったわけでございますが、やはりこういった木造建築物に何十人というのが一日に何組というようなことになりますと、先ほど申し上げました学者の懇談会に諮りましてもそれは無理がかかるというような御意見もございまして、また少数の方に丁寧にということも一つでございますが、同時にある程度多くの方に外からというのも一つでございますので、現在はそういった学者の意見も取り入れまして後者の方法によってやらしていただいている、こういうような状況でございます。
  31. 鈴切康雄

    鈴切委員 実は、総務長官が御出席になるということで私、質問に入ったのですけれども、総務長官がおいでになりませんから、私、今総務長官への質問を残しておるわけです。ですから委員長、済みませんが、大体事務的ないろいろのことについてはもうお聞きしたわけですから、あとは総務長官に最終的なことはいろいろ聞かなくちゃならない問題もありますから、ここで私の残余の時間を留保させていただきたいと思います。お取り計らいを願います。
  32. 片岡清一

    片岡委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十九分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  33. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  34. 鈴切康雄

    鈴切委員 総務長官は、きょうは参議院の予算委員会関係があって、今になったわけでありますけれども、残余の質問を大体総務長官を中心に御質問申し上げたいと思っております。  ことし七月に総理府と行管を統合して総務庁が設置されることになっております。栄典に関する業務は新総理府の賞勲局が行うことになっていると思いますけれども、今後、宮内庁、これはどこが所管するのか。例えば総務庁であるのかあるいは新総理府なのか、どちらになるのでしょうか、その点についてちょっと。
  35. 中西一郎

    ○中西国務大臣 宮内庁仕事は総務庁には参りません。新しい総理府ということでございます。
  36. 鈴切康雄

    鈴切委員 いわゆる新しい総理府になりますと、これは外局という形になると思いますね。  総務庁が七月に発足しますと給与担当大臣は総務庁長官ということになると思いますけれども、私は願わくば今現在の総務長官に引き続いて大臣をしていただきたいという気持ちでありますけれども、場合によっては、人事院勧告がなされる前に恐らく閣僚の人事が変わることもあり得るのではないかというふうに考えられます。  そこで、現在の給与担当大臣としての総務長官にお伺いをしておきますが、実は人事院勧告はこのところ凍結されたりあるいは抑制されたりして完全実施されていませんけれども、この状況をいわゆる給与担当大臣としてはどうお考えでしょうか。
  37. 中西一郎

    ○中西国務大臣 五十七年度の勧告は全く実現されませんでしたし、五十八年度は二・〇三%ということで、いわゆる積み残しが四・四四あるいは四三六、いろいろな数字がございますが、と言われておることはもう御承知のとおりでございます。そういった経緯、それ以前にもいろいろな経過がございますが、特にここ過去二年の経過というのは、大変な財政事情のもとでもあり、十分な勧告の実現ということにはほど遠かったというふうに思います。そういった意味で、今度はまた八月に勧告が出ます。そういった時期に当たっては、その勧告を踏まえて完全実施に向けて努力をしたい。人事院勧告という制度の基本は確立しておるわけでございますから、勧告を尊重するという態度は堅持しなければならない、かように考えております。  どういうふうな客観情勢になるか見通しが大変困難でございますが、総務長官を引き受けましたときに丹羽前総務長官からのお話もございました。昨年の参議院の内閣委員会で、異例の措置と心得るという政府見解を発表しておられます。そういったことを踏まえて努力をしてまいりたい、かように考えております。
  38. 鈴切康雄

    鈴切委員 給与担当大臣としましては、やはり人事院勧告の完全実施ということは、これは少なくとも私は完全実施に向かって努力をしなくてはならない問題だ、今も総務長官はそうおっしゃったわけであります。財政が厳しいということはだれしもわかっていることであります。しかし、臨調が言うところの総人件費抑制という問題についても、決して人勧を値切ってよろしいということは書いてありません。むしろ行政改革を徹底して、そしてその中にあって総人件費を抑制すべきであると私は思っておるわけでありまして、第三者機関であるところの人事院が少なくともそれは政府並びに国会に勧告された問題であり、政府が財政事情が悪いからといって直ちに政府の手によって凍結をする、あるいはまた値切ってしまう、抑制をするということは、これは許されない。少なくとも国会というのは国権の最高機関であり、その国会にも報告をされているという以上は、国会の意思というものについても十分に反映されなければこの人勧問題というものは私はむしろ国会軽視だと言わざるを得ない。  担当大臣にお伺いいたしますけれども、五十九年度の人勧は完全実施ということについてお約束できるかどうか、その点についてはどうでしょうか。
  39. 中西一郎

    ○中西国務大臣 現段階で完全実施を約束しろとおっしゃっておるのですけれども、それについてはやはり勧告が出た段階で、これは閣内連帯責任でございますが、十分に相談をする機会が必ずございます。そのときに給与担当大臣としては、丹羽総務長官相当頑強におやりになったようでございますが、できればそれ以上の努力をいたしたい、かように考えておるところでございます。
  40. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこで私は、やはり人事院勧告は完全実施をする、政府はそう決めるべきだと思うのです。決めた上においてそれではどうするか。当然今の行政改革のなまぬるいような状態では総人件費の抑制ということはできるものではない。だから、完全実施はする、そのかわり、やはり新規採用というものについては極力切り詰めて、場合によっては皆さんに大変御苦労をかけるかもしれないけれども、しかし人事院勧告の完全実施ということは第三者機関としての勧告である以上は政府としては守る、だから、そういうことから考えるならば、皆さん方も御苦労であるけれども頑張ってもらいたい、こうおっしゃるのが私は筋道ではないかと思うのですけれども、総務長官どうお考えですか。
  41. 中西一郎

    ○中西国務大臣 きょうは三日でございますが、四月一日に我が総務庁にも新しい入省者がございました。商社ならば倒産すれば新規入社者は全然認めないというような会社もあるようでございますが、しかし行政の継続性というようなことを考えるとそうもいかない。他方、人員整理についても高いっぱい、精いっぱい努力いたしてまいります。  それはそれとして、総人件費の問題をどうするかというのは、臨調から確かにお話を承っております。しかし、これを一年間で完全にどうするというふうにもなかなかいきかねる事情も御賢察いただけると思うのですが、そういったもろもろの客観情勢の中で、ことしの人勧については力いっぱいこれを尊重していきたいという基本方針は貫かなければならない、かように考えておるところでございます。
  42. 鈴切康雄

    鈴切委員 東京都におきましては既に四・五%のベアを決めました。これについてはいろいろの意見があるし、また国としては突出しているのではないかというふうに言われています。しかし、鈴木都政においては、やはり四・五%を出しても行政改革を徹底的にやっていくことによって人減らしをしていくことにおいて、総体的にはそれは必ずプラスになる。だからあえてそういうことを労使の中において合意をとってやるのだということで、言うならばそういうことでやられた。私はそれも一つの賢明なやり方であると同時に、第三者機関としての勧告というものを尊重するという意味においてはむしろ国よりも立派な態度だ、実はそのように思っております。  そのことはそのこととして、とにかく完全実施に向かって総務長官は最大限の努力をしていただくということをお約束いただいたわけでありますから、それでは次に進みます。  ことし両陛下は御成婚六十周年を迎え、歴代の天皇の中では最も御長寿であらせられるということは、国民にとってこれほど喜ばしいことはございません。また、天皇は世界的にも有名な生物学者であり、研究家でもあります。これからも両陛下ともどもに御健在であられるということは国民としても願わしいことだと私は思っております。その意味で、天皇の国事行為が大変な公務である以上、御負担を軽減していただきたいというのは国民の偽らざる願いではないかと思います。  そうした場合、国事行為代行法の趣旨からいうと、あの規定の中には「精神若しくは身体の疾患又は事故」、そういう規定になっております。ですから、それをストレートに適用なんていうことはできるはずはないわけでございまして、私はなかなか難しい問題があると思いますけれども、規定の柔軟な解釈とかあるいは国事行為代行法の若干の手直しということで国民の素直な気持ちを反映することができないだろうか。少なくとも天皇の国事行為内閣の助言と承認によって行うということになっている以上、閣僚の一人として、また宮内庁を担当する総務長官としての、このことについての御見解というものをお聞きします。
  43. 中西一郎

    ○中西国務大臣 鈴切委員今お話しのお気持ちについては、国民の多くの方々が同じようなお気持ちであろうかと思います。他面、時々お目にかかる機会が私自身ございますが、お正月の前、私が総務長官になる前にいろいろ見たりテレビでお聞きしておった当時に比べますと、最近またとみにお元気におなりのような御様子で、喜んでおるところでございます。  今お話しの国事行為臨時代行法の解釈の問題あるいは一部改正というお話でございますが、そこまでやらないで、過度な御負担をおかけしないようにいろいろな細かい配慮ができる部面も相当あるようでございます。宮内庁にいろいろ聞いてみました。それで、そういったことについて宮内庁でできるだけの配慮をしてまいるということで、今先生お話しのお気持ちを体して措置してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  44. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、国事行為代行法というものについては手直しをするとかあるいはそれをいじるというふうな、そんなことは考えていない、こういうことでしょうか。
  45. 中西一郎

    ○中西国務大臣 さようでございます。
  46. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうしますと、今総務長官が言われましたように、国事行為をやられるということは私は大変な公務だと思うのですね。よくこういうところで御答弁されるときには、全く御健康で、こうおっしゃっておられます。しかし、もう八十幾つになりますとやはりそれなりの負担というものがかかるわけでありまして、国事行為代行法というものを変えないにしても、宮内庁はそれに対してどういうふうないわゆる公務の軽減を天皇に図っていただいているのか、また図ろうとしているのか、果たしてそれが軽減に値するかどうか、それはまた国民が判断する問題ですが、どういうふうにされておりますか。
  47. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘のとおりに、陛下は大変御健康でございますが、御高齢であることもまた事実でございます。そういうような面を十分念頭に置きまして、御負担が過剰にならないようにということは宮内庁といたしましても常に考えさせていただいているわけであります。  ただいま総務長官も御答弁になりましたように、皇室典範なり法律なりによりまして、摂政あるいは国事行為の代行というようなそれぞれ法律制度としての要件がきちんと決まっているわけでございます。その辺が境界がおかしくなってくると問題は起こり得るわけでございまして、その辺は避けなければならないのじゃないか。また、陛下御自身のお気持ちを拝察いたしましても、公務優先ということでお務めになっているわけでございますので、その意味からも法律的な云々ということはただいまのところ宮内庁といたしましても考えていないという状況でございます。  ただ、実際上の御公務ということになりますと、法律に基づく法律行為としての国事行為、そういった意味での御行為のほかに、陛下の象徴たる御身位に伴いましての御行動というのもいろいろあるわけでございます。そういったものを、なるべく御負担が一気にかかかるようなことのないようにうまくアレンジするというような方向は大いに考える必要があるのじゃないか。  現在のところ、地方に行幸になります機会といたしましては、毎年恒例的に行っておりますのは、秋の国民体育大会の開会式に御出席になる、それと春の植樹祭に御出席になる、この二つの行事は例年行っているわけでございます。そのほか、春ないし秋に、これは私的な御旅行ということで、軽い、近辺への御旅行というのが地方行幸になる機会ということになっておりますが、そういったような地方にお出かけになる際、私的な御旅行の場合は公的というよりもむしろ陛下のお楽しみの方を中心にした組み方になりますから問題ございませんが、国体あるいは植樹祭といったような地方行幸の際におきましても、びっしりした御日程で御視察場所が重なるというようなことをうまく避けながら、しかも地方の各県民の方々にも、来ていただいたというような雰囲気が十分出るようなぐあいに県当局とも十分協議をいたしまして、そういった諸行事やり方というようなものもいろいろ考えていっているわけでございます。  はっきり申し上げますれば、そういう地方行幸の際の御日程も、例えば五年前、十年前に比べますと、時間的には非常に緩やかなものにだんだんとお願いをしているというようなこともございます。それから、皇居にいらっしゃいます際にも、いろいろな拝謁その他の御要望がございます。これは定例的にいたしているものもございますし、また新規に行事があるときということでいろいろ御要望のあることもございますが、そういったものも、非常に連続して積み重なって御負担になるというようなことのないように、うまくその期間の配分、場所の配分といったようなことを考えながら処理をさせていただいておるというようなことでございます。
  48. 鈴切康雄

    鈴切委員 民法第三条では「満二十年ヲ以テ成年トス」となっておるわけでありますけれども、皇室典範第二十二条では「天皇、皇太子及び皇太孫の成年は、十八年とする。」となっております。ですから、民法の第三条とは違う取り扱いになっているわけでありますが、どうしてそういう取り扱いをされるのでしょうか。
  49. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘のとおりに、天皇及び皇太子の成年は満十八歳ということで皇室典範の二十二条で決められております。民法の原則二十歳とは違うわけでございますが、この立法の理由というのを調べてまいりますと、天皇が未成年である場合には摂政を置く、これは皇室典範によって決められているわけでございます。考え方といたしましては、なるべく摂政というものよりも天皇御自身によるところの国事行為、法的行為が行われますような体制に持っていくことがベターである、それからまた、天皇が特定理由によりまして摂政を置かれるという場合に、摂政になる順位は当然のことながら皇太子は第一順位になるわけでございますが、この場合も、皇太子が未成年なるがゆえに他の方が摂政になるよりも、なるべく一番皇位継承順位の高い皇太子が早い時期に摂政になる方がベターである、こういったようないろいろの配慮から二十歳説をとらず十八歳説をとっておる、こういうことになっているわけでございます。  ただ、民法におきましても、御案内のとおり、営業に関するような行為につきましては未成年でも法律行為をなし得るというような規定もあるわけでございまして、やはりある程度の年齢、この場合には十八歳でございますが、十八歳に達せられた場合には天皇ないし皇太子としては十分そういうような意味での法律行為をなさる能力というものがあり得るのではないか、こういうような考え方、これによりまして、民法の一般原則と違って二歳若い十八歳という制度になっていると存じております。
  50. 鈴切康雄

    鈴切委員 だから、そのことを裏返して申し上げますと、万が一のことを想定して摂政を置く期間を短くしよう、そういう考え方になるんですね。私は、これは大変に不見識だと思うのです。それではあなたの考え方で言うならば、十七歳の方がいいだろうし、さらに十六歳がいいに決まっている、そんなことであれば。私は、それではいけない、非常にこの問題については裏腹を考えると不見識きわまりないことですよ。  民法で成人を二十歳と規定していることは、それは青少年の発育ぶりから見て種々論議のあるところではありますけれども、少なくとも民法では二十歳と定められていることが一般的になっている以上、皇室典範だけが十八歳とすることは筋が通らない。一般国民と同様満二十歳ということにするならするし、また民法の第三条を変えるというなら変える、いずれにしても、天皇の御一家のそういう問題だけは別扱いということはこれは筋が通らぬだろう、こう思うのですが、最後にお聞きしまして質問を終わります。
  51. 山本悟

    山本(悟)政府委員 いろいろなお考えがあろうかとも存じますが、旧典範の時代、それから新典範になります際の立法の御審議、いろいろ調べてみますと、先ほど申し上げましたような諸理由によりまして、現在十八歳ということになっているわけでございます。どのくらいの年齢になれば法律行為としての行為を行う判断力があるかというようなところが、やはり成年というものの決め方であろうと存じますが、先ほども申し上げましたように、やはり一般の二十歳の成年、その法律の行為能力というものに対しまして、営業といったようなものについては未成年であってもその能力ありというような民法の規定もあるわけでございます。そういったようないろいろな判断から、その上にプラスして先ほど申し上げましたような理由というようなことを勘案されまして、皇室典範、新典範制定の際の御議論としましても十八歳説がとられたと存じているわけでございまして、よくよく研究をさしていただきたい問題であるというように存じます。
  52. 鈴切康雄

    鈴切委員 私の持ち時間はこれで一応終わりますので、あと関連で、私の同僚議員である山田英介君がかわって質問いたします。どうも御苦労さまでした。
  53. 片岡清一

    片岡委員長 山田英介君。
  54. 山田英介

    ○山田委員 関連をして若干質疑をさせていただきますが、中西長官お忙しいようでございますので、冒頭で一問だけ御答弁をお願いしたいと思っております。  これは昨年九月の朝日新聞社によります世論調査でございますが、象徴天皇制についての世論調査でございます。その設問の一つに、「あなたは、いまの天皇に対して、どんな気持ちをお持ちですか。」という設問がございました。「何も感じない」という回答がございましたのが四一%。それから「天皇制について、どうお考えですか。」という設問については、「天皇は今と同じ象徴でよい」、そう答えておりますのが八三%。今後とも象徴天皇制は続くと思いますかという設問に対しては、「続く」が七七%。  この象徴天皇制という一つの制度は、国民の間に大体八割ぐらいの回答が出ているわけでございますから、非常に安定をして受け入れられているというふうに見ることができるかと思いますけれども、問題は、冒頭申し上げました天皇に対する気持ちはということに対する答えが「何も感じない」、こういういわば無関心層が予想以上に多いといいますか、四一%ということでございます。しかもその中で、二十代から三十代の前半の人たちが特に無関心というのが圧倒的に多いわけでございます。そういうところから私は、国民に開かれた皇室とか、あるいはまた親しまれる皇室というものを目指しましてやはり今後とも努力をなさるべきであろう、このように思っているわけでございます。  その一環として、いわゆる皇室用財産というものがございますが、可能な限り今後とも一層国民に公開をしていくといいますか、そういう努力というものが私は必要なのではないかと考えるわけでございますが、長官の御所見をお伺いしたいと存じます。
  55. 中西一郎

    ○中西国務大臣 お話しの世論調査についてでございますが、時代の変遷、また歴史的な経過、これから未来に向かってどういうふうになっていくか、いろんな流れの中で意識も少しずつは変わる点があるんじゃないかというふうにも思います。  いずれにしましても、今お話しの結論的な部分について申し上げますと、皇室用財産といいますと、カモ場もございますし御料牧場もございます。そういったようなものについての国民とのかかわり合いというのを、あるいは外国との関係でもいいと思うのですが、それのかかわり合いを適切に、言ってみればできるだけオープンにしていくというような方向での努力はあっていいんではないか。たまたまそういった皇室財産のある地域は限られておりますが、その関係地方公共団体などの知恵もおかりしながらできるだけの努力はした方がいい、かように思う次第でございます。
  56. 山田英介

    ○山田委員 長官の御答弁は、可能な限り国民にオープンをして、それが一つの国民に親しまれる皇室という姿に進んでいけばといいますか、つながっていけば結構なことではないか、こういう前向きな御答弁をいただいたものと理解をいたします。長官、どうぞ。  それで、今の長官の御答弁を踏まえまして具体的に宮内庁の皆様にお伺いをしたいと思っておりますけれども、全国で御料牧場とかあるいは皇居、別荘に当たります御用邸とか、今申されましたカモ場あるいは離宮とか、かなりたくさん皇室用財産というものがあるわけでございます。そのかなりの部分が今日まで一般に広く公開をされて、国民に開かれた親しまれる皇室という存在をつくり上げていく上に極めて大きな役割を果たしてきているというふうに私は理解をしておるわけでございます。  この皇室用財産の公開をされている、参観という形でございますね、公開されている概要について、簡単で結構でございますので、御報告を願いたいと思います。
  57. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘のとおりに、皇室用財産となって宮内庁で管理させていただいておりますもののうち、皇居を初め京都御所、仙洞御所、桂離宮、修学院離宮、それから正倉院の外構、こういった六カ所のところは正式に一部の方に参観を認めているという状況になっております。  その概要をごく簡単に申し上げさせていただきますと、皇居のうち東御苑の部分につきましては、これは特定のあれといいますよりも、一週のうち月曜と金曜を除きました日につきましては午前午後にわたりまして一般に公開をいたしております。そういう意味では特段の制限はない格好でございます。さらに、皇居の実際にお使いになっている部分の方につきましても、一部、団体によりましての参観を認めておりまして、これは午前と午後一回ずつでございますが、一遍に千人までというような大幅な人数で参観をしていただいているということでございます。  京都御所につきましても、これは期間としてはほぼ一年じゅう、一日十四回にわたりまして、一回が三百人以内というような規模でいたしております。  仙洞御所、これは大きさもございますから、個人で一日に二回、午前午後一回ずつ認めている。  桂離宮、これはこのごろ非常に多いわけでございますが、これも団体でいたしますと一遍で埋まってしまいますものですから、個人ということで、応募によりまして現在は一日に八回、一遍が四十人以内というような規模で、約一時間ずつでございますが、そういうような参観になっている。  修学院離宮につきましては、一日五回、五十人以内ということで、これまた桂離宮とほぼ同様の手段、方法によりまして参観を認めている。  正倉院の外構につきましては、一日二回、主として学校の生徒児童を対象にいたしましての団体で認めている、かようなことでいたしているわけでございます。  その他の施設につきましては、カモ場等におきましては一般的に制度としてということではございませんで、個別の問題といたしましていろいろと考えさせていただきますということでございます。
  58. 山田英介

    ○山田委員 もとへ戻るようで恐縮なんですけれども、先ほどの長官の答弁、ちょっとひっかかりまして、天皇に対するあなたのお気持ちはどうですかという設問に対して、実は四一%が「何も感じない」、こういう回答が寄せられております。長官退席されておりますけれども、時代の変遷もあるからと、伺いようによってはやむを得ない部分もあるんじゃないかみたいな、そんなふうにも聞こえたのでございますけれども、次長さん、恐れ入りますが同じ質問、どんな御認識をお持ちでございますか。
  59. 山本悟

    山本(悟)政府委員 朝日新聞の世論調査結果、私どもも拝見をいたしたわけでございまして、確かに時代によって皇室というものが国民の方々の意識に上る機会なり場なりいろいろな事情なりというものが変遷をしてくることは事実であろうと思います。しかしながら、やはり日本国憲法によりまして日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であるというお立場は極めて明確なわけでございますし、かつまた非常に長い日本国としての歴史を持っている制度でございますから、そういう意味ではやはり国民の方々によく御理解をいただき、また親愛の情を持っていただくことが大いに必要ではないかというように存じております。
  60. 山田英介

    ○山田委員 現憲法の枠組みといいますか体制といいますか、そのようなものは維持し発展をさせていかなければならないと考える立場に私はございますもので、そういう意味で、国民から遊離をしたといいますか、あるいは閉ざされたといいますか、そういう皇室のあり方であってはこれはまた大変であろう、親しまれる皇室あるいは陛下、そういうお姿が大事である、私はこのように思っておりますものですから、このようなお伺いの仕方をしているわけでございます。  長官からも次長からもお話が出ましたけれども、具体的に埼玉鴨場というのがあるわけでございます。憲法八十八条を引くまでもなく、すべて皇室財産は国の所有である、国に帰属するものであるということでございますので、当然のことでございますが、その国有財産というのは国民のために維持されあるいは運用されていかなければならないものと理解をするわけでございます。この埼玉鴨場につきまして、一部を除きましては、実質的にカモ場が一般の国民の皆さんに公開をされているとは思えないと思っているわけでございます。一部を除いてと私申し上げているわけでございますが、その公開をされている現状と経緯と申しますか、その辺を、簡略で結構でございますので、お話しください。
  61. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘の埼玉鴨場についてでございますが、昭和四十四年に越谷市から参観の申し入れがございまして、当庁といたしましても、カモ場の管理運営につきましては地元の方々の御理解と御協力をいただくことがぜひ必要であるというような考え方を持っていたことでもございましたので、カモ場の管理運営に支障のない時期を選んでこれを受け入れることにいたしまして、四十四年以降現在まで行っているわけでございますが、やり方といたしましては、カモ猟の行われるシーズンを外して、毎年四月から八月までの間に十一回程度、一回当たり約三十人程度のカモ場参観を受け入れているわけでございます。この受け入れにつきましては、地元市の御企画といいますか御推薦といいますか、そういうことでお願いをしているというような状況で、今日に至っているわけでございます。
  62. 山田英介

    ○山田委員 市を経由してといいますか、市が公募をして、それで市の移動教室というような形で参観が特に許されているという事情があるわけでございます。京都御所なども、京都御所だと思いましたが、間違っているかもしれませんが、きっと京都市が公募なさっている、そういう形はあろうかと思います。ただ、その皇室用財産の種類とかあるいは立地などによりまして確かに違いはありますけれども、片方は年間で何十万人と参観をなさる方がある。カモ場の方は年間でも二百人から多くて五百人くらい、そこに大きな差があるわけでございます。  まるで全く閉ざされているということは言えませんが、そういう形で、埼玉県にある一つの越谷という市の市民に、年間で二百人から五百人。これがいわゆる皇室の財産であり、皇族の皆さんが使われあるいは外国の大切なお客様をそこで接受をなさる大事な役割を果たしている場所であるということで、埼玉県におきましては、あるいはまたカモ場がございます越谷市を中心とした近隣の市町村の多くの皆様が非常に関心を強く持っておられまして、これはよく伺う話なんですけれども、もしかしたら参観できるのかもしれないということで門の前まで行かれる方がかなりあるのでございます。次長も御存じだと思いますけれども、ちょうどあの埼玉鴨場の入り口、門の前に、このカモ場は参観はできませんという高札といいますか立て札が立っている。それを見まして、立派な真っ黒な門がぴしっと閉められておりますので、何かそこで非常に隔絶されたといいますか、親しみを持ちながら参観できるのかなと行っても、その高札がございますがゆえに非常にがっかりして帰ってこられるとか、もしあのすばらしいカモ場が短時間でも見られるのであればぜひ見たいものだ、参観をしたいものだという声が非常に強いわけでございます。そういうことも御配慮いただいて、そういう市を通して月何回とか、決められた一つの形を通らないと参観することもできないという窮屈な形ではなくて、例えば午前中十時半から時間を区切って小一時間なら小一時間、午後もう一回例えば二時半から三時半までの一時間、三十人までとか五十人までとか、そういう人数的にも一つの制限をつけられてもやむを得ないかと思います、大事な野鳥の保護だとか鳥類の飼育だとかあるいはまた研究など、環境庁の皆さんあるいはその他の機関と協力をなされて進められているという大事なお仕事がございますものですから、それらの妨げといいますか差しさわりにならない範囲で、もう少し広く一般の皆さんが気軽にと言ったら語弊がありますけれども、参観ができるような方法が講じられないものか、次長さんにぜひ前向きな御答弁をいただきたいと思っておりますが、どうぞ。
  63. 山本悟

    山本(悟)政府委員 お考えのところは十分にわかるわけでございます。京都におきまして、先ほどございましたように、京都御所の場合には通常ベースでは一日何回というやり方でございますが、一年に一回か、春、秋でございましたか、一定期間四日か五日に限りまして、そのときには無制限という日を置いております。  それから、市を通しましてというのには、修学院離宮、これも通常は限っているわけでございますが、これは市の行事として京都市の市制施行の関係の記念日みたいな、あの辺のところに一定期間、約四千人ぐらい市の方で応募をとりまして市の方で選んで参観を、それは市の協力のもとに認める、こういうようなやり方をやっております。  これは、方向の問題というよりも、技術的ないろいろな問題も実を申しますとございます。やはり市の御協力と市のあれでということを申し上げるのは、カモ場と申しましても埼玉のあれで申せば、宮内庁職員は例のカモ圧といったものを含めまして管理者が数名いるだけでございます。そういった管理の体制、何かの行事をやって開くときにはこちらめ東京の方から行っているわけでございますが、通常ベースでは数人の者がいるだけのところでございます。修学院なんかにつきましてもそういう事情がございますものですから、市の行事としてやるときというのは、警備からいろいろな案内から何から、市の方の協力を得て初めてできるような実情でございます。  そういったようなことをいろいろ考え合わせてまいりますと、今のお気持ち、お考え、極めてよくわかるわけでございますが、直ちにその方向でというところまではなかなか申しにくい。ただ、今のお気持ちとしての方向づけなり何なり、その辺は、方法、技術論といたしましても、今よりもさらにもっと進んだ道というものはないのだろうか、この辺はよく研究をさせていただきまして、やはり今の私の感じから言いますと、地元に一枚かんでいただきませんと、ちょっとうちの方の体制だけでは事柄が非常に難しいのではないかという気もいたしますので、よくよく研究をさせていただきたいと思います。
  64. 山田英介

    ○山田委員 この委員会でせっかく皇室経済法施行法改正案がかかっておるものですから、私があえてこの問題を申し上げておりますのは、次長さんのそういう御答弁をいただきたいと思いまして立っているわけではありませんで、埼玉県なら埼玉県、または所在地の越谷市なら越谷市と宮内庁が、みずからの御判断で、要するに大きく言えば、我が国における象徴天皇制の定着とか、あるいはまたさらに開かれた皇室のあり方とか、そういうものを宮内庁としてしっかりと展望を立てられて、そしてまた、先ほど私は一つの例として朝日新聞の世論調査を引用させていただいたわけでございますが、例えば無関心とか、それから将来天皇制というものが、天皇陛下に対する気持ちというものがますます無関心になっていくだろうと予測する者が大変多いとか、そういう現状も踏まえた上で、宮内庁としてその方針を要するに前向きに積極的に検討なされて、むしろ県だとか市町村の方に積極的にこういう方向を打ち出していきたいのだけれどもどうなんだろうかという姿勢がなければ、県や市の方だって、いろいろな事務を国にかわってやっている分もたくさんありますし、宮内庁がそういう姿勢に立たなければこの問題は前へ出ないのではないか。これは何も、別荘を見せてくださいとか、あるいはお住居を公開してくださいとか、私はそんな僭越なことをお願いしているわけではないわけでございます。その姿勢の問題です。  私は先ほどの次長さんの御答弁は余り納得しておりませんので、もう一度御決意なり方針について、もうちょっと宮内庁として自主性のある見解をお伺いしたいと思います。
  65. 山本悟

    山本(悟)政府委員 お気持ちなり御質問の御趣旨というのは極めてよく理解をいたしているつもりでございますが、実際上の実施というものを頭に置いたものでございますから、なかなか技術的にも難しいような点があることを御説明をさせていただいたわけでありまして、お気持ちといたしましては十分御理解を申し上げたいと存じますので、ひとつ私どもの方としてもよく研究させていただきたいと存じます。
  66. 山田英介

    ○山田委員 一歩前進の御答弁かと思いますけれども、気持ちというか、私の考え方でございます。気持ちというと軽い感じがします。そういう言い方はやめていただきたいと存じます。私の考え方ですから。
  67. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘の点は大変ごもっともでございまして、そのお考え方というものを十分理解してまいりたいと思います。
  68. 山田英介

    ○山田委員 それで結構です。  実際に一般に公開していくとか、それを受け入れていくということになれば、確かに次長おっしゃるように受け入れ態勢は大変でございます。しかし、全体的に、例えば皇居の参観などの場合には、宮内庁職員の皆さんは四名でさばかれておると私は伺っております。それから京都御所、春、秋五日間だけで二十七万ですか、その春、秋だけではなくて、一年を通せばこの数字はもっと膨れ上がるのだろうと思いますけれども、実際には八人で運営をされておると伺っております。あるいはまた、正倉院宝庫の外構というのですか、こちらは年間四万七千人ほど参観の実績があるようでございますが、実際には三名で、案内とかそういう業務と言っていいのでしょうか、仕事をこなされておる。  ですから、次長が先ほどおっしゃったように、それは地元の県なり市町村なりの人的な協力も得てということなんだろうと今私はわかったわけでございますが、埼玉鴨場の場合には職員数五名というふうに伺っております。そうしますと、一年じゅう毎日毎日ということではございません。例えばカモがその地で暮らしているというか過ごす期間が十一月から翌年の二月ごろまでということになれば、そのカモが飛び立った後、例えば三月から、あるいは四月ごろからまた寒くなってカモが帰ってくるまでの間の一定の時期を選んでということですから、これは五名の皆さんでも十分に対応ができる。市町村なりあるいは県なりの人的な協力などが得られれば対応ができるんだろうというふうに私は思っておるわけでございます。  やはり地元のといいますか、各地の皆さんのカモ場をぜひ参観したいという、素朴なといいますか、あるいは率直なというか、そういう気持ちは次長さん、ぜひ大事にしていただきたいと思うのです。小さなことを申し上げるようで恐縮ですけれども、そういう一つ一つの積み上げが、そういう御努力が、私は皇室というものに対する国民の信頼感とか親しみだとか、あるいは宮内庁に対する信頼だとかというものをつくり上げていくことにつながっていくのだろうと思うのです。まさか親しまれる皇室ということで宮内庁の皆さんが宣伝カーを出すわけにいかないでしょうから、可能な限り、そういう一つ一つのものを余りおっくうがらずにあるいはまた面倒くさがらずに頑張っていかれる、こういう姿勢が私はとても大事なのじゃないかと実は思うものですから、このようにこのような場所で埼玉鴨場という一つの事例をとらえてお願いをしているわけでございます。  この問題で三十分終わってしまったようでございますので、ほかの問題に移るのもなんでございますから、次長、そういうことで、私が今申し上げた考え方をもう一度ひとつしっかりと御検討をいただきまして、他の参観を許しているところと、カモ場の特殊性というのを私は十分に承知しているつもりでございますので、よくその辺を比較検討された上で、そして積極的な姿勢をぜひ打ち出していただきたい。いずれまたこの問題はこの委員会の内外で私は御要望申し上げていきたいと思っておりますので、ぜひひとつ前向きに御検討いただきたいと思います。  もう一、二分あるようですから、全く変わりますけれども、一点だけちょっと伺っておきたいと思います。  鈴切委員も先ほどちょっと触れられておりますが、浩宮殿下は二十四歳。宮内庁の方では、皇太子殿下が美智子妃殿下と結婚なさるその経緯におきまして、大体八年ほど前から内々それとなくお妃選びといいますかを始められている。本格的には大体三年か四年ぐらい前から人選といいますか選考を本格化された、そういう経緯がございますので、当然浩宮様のお妃選びも内々に進められておられるだろうというふうに思うわけでございますが、それは先ほど次長から御答弁が出ておりましたので、私も聞いておりましたので結構でございますが、一つ伺っておきたいのは、浩宮様御自身のお考えというのが恐らくあるのだろうと思います。例えば、こういう立場の方といいますか、こういう方をお迎えしたいとか、何と言ったらいいのでしょうか、浩宮様の個人的なお気持ちあるいは御希望というものが私はもしかしたらあるのではないかというふうにずっと思っておりましたものですから、ちょっとそこのところをお聞かせをいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  69. 山本悟

    山本(悟)政府委員 浩宮殿下のお妃問題につきましていかなるお考えをお持ちか、これは私どもも直接お伺いするというあれではございませんので、これはやはり御両親、両殿下なり何なりといろいろお話しになっていると思います。また、時々報道関係とお会いになるような機会にも御質問がいろいろ出たりしておりますけれども、特段にこういう場で申し上げることは私どもとしてはないと思います。
  70. 山田英介

    ○山田委員 終わります。
  71. 片岡清一

    片岡委員長 和田一仁君。
  72. 和田一仁

    ○和田(一)委員 総務長官がお見えになりませんけれども、質問をさせていただきます。  宮内庁の方に、まず最初に、陛下の御近況についてひとつお知らせをいただきたいと思います。  国の象徴であり、国民統合の象徴である天皇でございますけれども、割合と、象徴である天皇の日常の御生活のあり方、こういうものが国民の目に触れる機会が少ないのではないか、こう思うわけです。もっと親しみを持っておるべきはずの国民が、先ほどの統計のお話にもございましたように、無関心というか、知っちゃいないよというような意識が広がりつつあるような感じがしてなりません。もっと積極的に親しまれる皇室陛下というあり方に努力をしていただきたい。これは陛下御自身のお気持ちもそこにあると思うのですが、どうもなかなかいろいろな制約があってですか、国民には知られない面が多過ぎるのではないか。中曽根さんの日常生活なんというものは、朝起きたときから夜寝るまで、大体我々は毎日見ればわかるのですね。あそこまでいかないでも結構でございますけれども、少なくも陛下が日常どのような、あるいは皇室、皇后様もどのような御生活をなされているのか、余りカーテンをかけずにお知らせを願えないものか、こんなふうに日ごろから思っておるわけでございます。  まず御近況について、最近、開会式のときにも手すりが御必要だというぐらいにもう大変お年も召されてまいりまして、国民も陛下の御健康については随分とどんなぐあいかなというふうに思っておるのじゃないかと思います。御高齢でもあるし、こういった中で国事行為あるいは公式な行事、これをこなされておられると思うのですが、どういうふうな御生活かをちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  73. 山本悟

    山本(悟)政府委員 第一に、両陛下の今の御健康の状態でございますが、おととい、きのう、きょうあたりは皇后様がちょっとお風邪ぎみだということを報道関係にも発表いたしました。前にも陛下が、二月ごろでございましたか、ちょっとお風邪になったというようなことはございますけれども、基本的には特段の持病といったようなものを御高齢の割にはお持ちではないわけでございまして、そういう意味ではまさに御健康であるというように存じます。  皇后様につきましては、五十二年でございましたか、お腰を痛められて、その後もそういった意味での御注意というのはいただいておりますけれども、基本的には御健康上は非常にいいというように存じております。     〔委員長退席、池田(行)委員長代理着席〕  御日常は、通常の場合には陛下は、御案内のとおり朝、吹上の御所から宮殿の表御座所にいらっしゃいまして各種の御公務をなさるわけでございますが、御公務のないときのプライベートなお時間といたしましては、御公務の余暇にもっぱら生物学の御研究というのを実際上も続けられていらっしゃいます。通常のベースで申し上げますと、月曜日と木曜日の年後、それから土曜日、これは特段の御公務が入っていない場合には生物学研究所で御研究になるというのが定例でございます。  それから、東宮御一家やお子様である常陸宮御夫妻というような方々とは、週に一遍程度、それぞれ吹上において御食事なり御団らんの機会があるというようなことが定例でございます。  陛下の御公務は、先ほど申し上げましたように、大体毎日九時半から十時の間に表御座所においでになりまして、内閣からの上奏書類や宮内庁関係の書類の御決裁、それから親任式、認証式、信任状奉呈式、勲章親授式等々、いろいろな諸行事をこなしていらっしゃるわけでございます。認証式等も、国会開会中の場合なんかには朝九時からも行われるというようなことで、非常に早い時間の場合もございます。また、夕方に書類がいっぱい来たといったような場合には、吹上にお帰りになりましてからこの書類をごらんになるというようなことも少なからずございます。  それから、先ほど申し上げましたように、生物学側研究所にいらっしゃるのは公務のない場合ということに非常に限っていらっしゃいまして、例えば、そういった通常ベースであれば月曜の午後、木曜の午後といったように御研究所にいらっしゃるときでも、もちろん公務的な御行事が入ればそれを優先なさっていらっしゃる、これは毎回の例でございます。  なお、五十八年の一月から十二月までで書類の件数で申し上げますと、内閣関係の書類が千三十三件、宮内庁関係のごらんになる書類が千六百二十九件、合わせて二千六百六十二件といったような相当な書類をごらんになっていらっしゃる。そのほか、例えば認証の書類というのが、国務大臣その他の認証官の任命が三十五、全権委任状、信任状等が五十七、大赦、特赦等が四十七、批准が二ということで国事行為としての書類がある。そのほか、御署名をいただく書類としては、国会の召集といったような各種の詔書の類、あるいは条約、法律の公布、政令の公布といったことで約六百五十程度、こういうようなことでございまして、いろいろとそういう意味での御活動というのを定例的にきちんとなさっていらっしゃいます。  それから、地方にいらっしゃいますのは、陛下の場合には公的なものといたしまして植樹祭と秋の国体、これには特段のことがない限り必ず地方行幸啓になっておりますし、またそのほか、皇后陛下とともにプライベートの御旅行も年に一度程度は計画されて行っていらっしゃる、かような状況でございます。
  74. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今お伺いしますと、やはり相当な量の行事をこなしておられるようでございまして、国事行為その他公的な、書類を決裁されて判を押されるあるいはサインをされる、そういう欠かせないことばかりだと思いますけれども、そういうものの中にも、宮内庁として何とか合理化とか簡素化とかいうことはお考えになっておりますか。旧来の伝統を守るだけでだんだんふえる一方ではないかというような感じもするのですが、そういう努力は具体的になされておるかどうか、お聞きしたいと思います。
  75. 山本悟

    山本(悟)政府委員 確かに、何も考えておりませんとどんどんいろいろな意味での書類もふえ、あるいはいろいろな御要望に応じて一々おこたえしていますと行事もふえるという傾向にあることは御指摘のとおりだと思います。しかし、それでは御高齢というようなものからいきまして無理が重なってくるということでございますので、その意味での合理化は当然御配慮を申し上げなければならないことと存じているわけでございます。  ただ、当然のことながら、憲法に基づきます国事行為あるいは非常に重要な公的な諸行事への御出席ということは最も優先されるべきものでございますから、そういう点におきましては十分陛下のお考えといたしましても最優先として行っていきたい、そうしてそれによって公務支障のないように努力したい、そのためには健康に大いにみずからも努力をしたい、こういうようなお気持ちのように拝察をしているところでございます。
  76. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私ども、なるべく陛下にお好きな研究のお時間とか私的なお時間をつくってあげて、ゆとりある御余生をお送り願いたいものだ、こう思うのです。  一つちょっと妙な御質問をいたしますけれども、私どもが陛下を拝見するときは、新聞その他でいつも洋服を召していらっしゃる、あるいは公式行事のときには礼装をしておられる。陛下は着物を着られるときはおありなんでしょうか。
  77. 山本悟

    山本(悟)政府委員 陛下はお小さいときからの御慣習と言う以外には言いようがないわけでございますが、日常全部洋服での御生活でございます。これはいつか記者会見の際に、記者団の方から陛下に御質問もしたようなこともあると存じますけれども、やはり子供のときからの御慣習ということでございまして、着物はお着になったことはまずないと存じます。
  78. 和田一仁

    ○和田(一)委員 陛下がお嫌いなら別でございますけれども、着物というのは和服のことですが、どこの国の元首も何かのときには大体そこの民族衣装を着るのではないかと思います。そういう意味で、余りお着になったのを見たことがないのは、一回もお着になっていない、こういうことですね。  そうなると、皇太子も同じようにお育ちになって、皇太子もお着物のときはないのですか。
  79. 山本悟

    山本(悟)政府委員 陛下はどうも全くお着になった御習慣をお持ちにならなかったようでございますが、皇太子殿下の方はお着になるときもあると伺っております。
  80. 和田一仁

    ○和田(一)委員 陛下が葉山等で海兵を散歩されるときに、長靴を履かれたり、いつもネクタイを締めておられるのがネクタイがなかったり、そういう写真を見ると国民は非常に身近に感じるのです。いつもまじめ一点張りの、ネクタイをきちっとお締めになっておられるお姿でない、くつろいだお姿が国民の目にも触れるようなことは、私は親近感を増していく上には大変大事ではないかと思うのですけれども、どうも宮内庁の皆さんは周りでなるべくそういうものは目に触れないようにという逆の努力をなさっているような気がして、たまたま陛下が非常にお好きな生物学の研究のときのような、ああいうリラックスした那須の御用邸のときの写真とか、そういうものを見ると国民は非常に身近な陛下を感ずるわけなんです。私どもはたまたまお目にかかれる機会がございます。お会いしただけで感ずるあのお人柄、私は国民にも象徴たる天皇のあのすばらしいお人柄をなるべく理解していただけるような努力が周りにおる宮内庁としては大変大事な仕事ではないか、こんなふうに思うので、大変な国事の中で少しでもお時間をつくって差し上げていただきたいものだと思うわけでございます。  皇室典範は憲法のもとに定められた法律で、その憲法は皇室典範に二つのことを期待しているのではないかと私は思うのです。一つは、世襲制の中で皇位の継承の順位を定める、いま一つは、摂政が置かれる、そのときの順位をどういうふうにするか、この二つが憲法が憲法のもとに定めた皇室典範に求めているものだ、このように思いますが、間違いございませんか。
  81. 山本悟

    山本(悟)政府委員 皇位の継承の具体的事項につきましては憲法は皇室典範に譲っているわけでございまして、御指摘になりました皇位の継承の順位、それから摂政の場合のその順位、これは極めて重要なる典範に譲られた事項と存じます。
  82. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私どもは、陛下が御高齢で大変な国事に努めていらっしゃるお姿をおうかがいいたしまして、皇室典範の中で、今申し上げたような二つのほかに第四条に、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」こう決められております。これは言いかえますと、陛下は終身皇位をみずからはお譲りになれない、こういうことになろうかと思うのですが、憲法の基本的な自由の権利からいいますと、陛下はこういうふうにはっきり皇室典範で決められておるのでみずからはこれは絶対お口には出さない、どんな大変な国事につかれておっても私はもう次に譲りたいということはこの条項がある限りおっしゃらない、ここは、生前の退位ということになるのですが、その道を考えておいてもいいのではないかという気がするのですが、いかがでございましょう。これは本当は長官にお聞きしたいのですが、副長官いかがですか。
  83. 山本悟

    山本(悟)政府委員 お考えは一つ考え方を代表しているものだろうと存じます。世の中にいろいろな御意見があることは私どもよく承知をいたしているわけでございますが、現在の皇室典範は御指摘のとおり退位の制度を置いておりません。  こういう退位の制度を置かなかったことにつきましては、やはり典範が制定されました当時はいろいろな議論があっていたようでございます。そのとき、現在の皇室典範のように生前の退位という制度を置かなかったその理由といたしまして言われておりますのは、一つには、退位制度を置くことによりまして、我が国の歴史上見られたような上皇あるいは法皇的な存在が出ることによってのいろいろな弊害、これは歴史の判断の問題でございますけれども、いろいろ問題のあったことは事実でございますし、そういった議論があったようでございます。あるいは、必ずしも天皇の自由意思に基づかない退位の強制というようなことについて、これも歴史上の問題でございますが、どう考えるべきなのか、こういった問題、あるいは逆に、今度は天皇が恣意的に退位するというようなことになった場合には、憲法に規定してあります象徴天皇制というものと一体どういう関連になるのかというようないろいろな議論があったようでございまして、こういうようないろいろな議論を踏まえた上での天皇の地位を純粋に安定させるということが望ましいという趣旨から、典範制定当時、退位の制度を置かなかったというように存じているわけでございます。  先生十分御承知のとおりに、こういったような理由の上に、制度といたしましては摂政の制度あるいは国事行為の臨時代行の制度というようなことによって十分そのカバーができるのではないかというような考え方がございまして、ただいまのような典範になっていると存じているところでございます。
  84. 堀内光雄

    ○堀内(光)政府委員 非常に難しい問題でございまして、基本的にはただいま宮内庁次長のお話し申し上げたとおりであると思います。しかし、先生のお話のような問題、各方面で非常に言われていることでもございます。基本的な問題としてのことと同時に、先生からの御質問については長官によくお伝えをいたしてまいりたいと思います。
  85. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今の御答弁では改正というか検討のお気持ちもないようですけれども、天皇というものは、天皇という一つの象徴である以上、私はない、象徴である以上は個人の意思は犠牲にすべきである、そういう建前をはっきりととってしまうならば別でございますけれども、少なくとも天皇であろうとももうこれだけお務めになったのですから、自分でなく典範で決める順位によってそろそろ退位をしたいという御意思がおありになったとしたらどうされますか。これはだめですか。私は、典範は憲法の下位の法律だと思うのです。天皇は私の意思を持ってはならぬというなら話は全然別です。でないとするならば、そういう意思を発動される道を検討するということは、そんなことは絶対いけないのだという立場ではなく、柔軟にお答えいただけるのではないかと思いますけれども、いかがですか。
  86. 堀内光雄

    ○堀内(光)政府委員 先ほど長官も御答弁申し上げましたように、ただいまのところ陛下は、非常に御高齢ではございますが、お元気で御公務におつきあそばされているわけでございますので、そういう問題につきましては現在のところは考える必要はないのではないかと考えております。
  87. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ひっくり返して申し上げます。  今、内閣の助言とあれによって国事がなされますね。もし、そのとおりおやりにならない陛下があらわれた、あるいはそれに反することをなされた、象徴たるにふさわしくないという場合が出たときは、どうされますか。
  88. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいま仮説として御質問でございますが、現在の憲法の考え方といたしまして、さようなことは全く予想もしてないということを申し上げるよりほかにないと思います。内閣の助言と承認によって天皇は国事行為を行うということでございまして、それ以外に行う手段はないわけです。したがって、その行うという中には拒否することも当然入ると思います。したがって、その助言と承認以外のことを国事行為として天皇がするということは、日本国憲法では全く予想してないことというぐあいに私は存じます。
  89. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういう法律論になりますと、私はこの皇室典範はまだまだ不備な法律であると思う。次長はそのようにおっしゃいます。しかし、法律というものはあらゆる場合を想定しておいていいのではないかと思うのですね。それは絶対にあり得ない、助言と承認がなければそのことだけしかできないのだということ、それはそのとおりだと思います。しかし、それをやらなかったということはあり得ると思うのです。これは本当に全く仮定のことでございますけれども、おやりになれない場合、国事行為がなされない場合、これは皇室会議等によっていろいろ御相談があるのだろうと思いますが、そうでなくなった場合には退位の道をつくっておかないと、これは摂政を置いても象徴としてはそのまま残るのですよ。私はそこにちょっと何かひっかかるところがございます。ですからその辺は、そういう意味を大事にするよりは、むしろ逆にそうではなく、これだけ長い間の陛下の余生をいつまでもいつまでも退位できずにおられるという御労苦でなく、解放してさしあげたい、そういう意味合いを強く持ちながらこの道を考えておく必要はないか、こんなふうに思って御質問しているわけです。全然ございませんか。
  90. 山本悟

    山本(悟)政府委員 一つのお考えということはよくわかるわけでございますが、こういう場で制度というものを考えましてお答えをする立場といたしましては、やはり今の憲法はそういうことは予想していないというようにお答えせざるを得ないかと存じます。
  91. 和田一仁

    ○和田(一)委員 これはまた長官出席のときにでも伺ってみたいと思います。  一つ内廷費についてお尋ねしたいのですけれども、内廷費というものは制度上は公表の必要はないと思うのですが、そうなっておりますね。制度上は別に公表されていないわけですね。
  92. 山本悟

    山本(悟)政府委員 内廷費定額をもって支出をされまして、支出されたものは御手元金となって、公金とはしないということでございますから、全くの御内帯の問題ということになろうと存じます。
  93. 和田一仁

    ○和田(一)委員 皇族費なんかも同じでございますか。
  94. 山本悟

    山本(悟)政府委員 皇族費は品位保持のためということで定額によって支出されるものでございまして、内容的には同じでございます。
  95. 和田一仁

    ○和田(一)委員 各宮家皇族費が今度は改定されるわけでございますけれども、宮家職員あるいは内廷職員の身分というのはどういう身分になっておるのでしょうか。
  96. 山本悟

    山本(悟)政府委員 内廷費で雇われておりますといいますか給与の支払われている内廷職員、それから宮家におりましてもいわゆる宮家の経費でもって支出されている者、これは公務員ではないわけでございまして、いわゆる内廷職員と称する者でございます。したがって、それはそれぞれの宮家なりあるいは内廷内で雇用されている使用人という身分になろうかと存じます。
  97. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういういわゆる職員の方の社会保障的なものは十分整っていると思うのですけれども、ちょっと私、数字の上でお尋ねしたいのは、宮家職員等は、あるいは非常にボランティアなお気持ちで仕事をなさっている方も多いのかと思いますが、やはり給料というものはお払いになっているのだろうと思うのですね。そうしますと、例えば高松宮様の職員数が十一人と書いてございまして、そして高松宮家の今度の皇族費改定額が三千五百四十万円になるわけですけれども、この三千五百四十万円の中で十一人の職員の給与は賄われるのでしょうか。私は大変窮屈ではないかと思うのですが、いかがでございますか。
  98. 山本悟

    山本(悟)政府委員 宮家職員の給与の問題といたしまして考えますと、宮家宮家によりましていろいろな事情がございます。通常の、各宮家平均して申し上げれば、一種のお手伝いさんみたいな若い女性といったような方が多いわけでありますが、そういう方も、男性も入りますけれども、大体五人ぐらい程度が普通の宮家でございます。高松宮家の場合には、非常勤の方で、前からのいきさつがございまして多く職員として勤めているというような格好がございますが、宮家の方は内廷と違いまして、皇族費というのは皇室経済法にもございますように品位保持の資として支出されるものでございまして、全部が全部それだけでという体制ではないわけであります。内廷費内廷諸費その他内廷の費用ということでございますから、これは全く他の収入はないという前提での経費になっておるわけでございます。そういったようないろいろな違いがございます。宮家は各宮家によりまして財政の御事情というのも差がございまして、それに応じてやはりお雇いになっている数も違うというようなことになっていると思っております。
  99. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そうしますとこの皇族費だけで賄っておられるのではない、こういうことでございますか。
  100. 山本悟

    山本(悟)政府委員 内廷と各宮家の経済との違いでございますが、内廷の場合には、例えば不動産というのは国有財産以外一切持っておりません。私有の財産というものはそういう意味では何も持っていない、こういう体制でございます。それに対しまして宮家というのは、宮家財政として財産をお持ちのものは幾ばくかございます。それは宮家によって事情が違うわけでございまして、その辺はそれぞれの宮家によって財政状況は違う、こう申し上げるほかにないと存じます。
  101. 和田一仁

    ○和田(一)委員 それでは内廷職員のことについてお伺いしたいと思いますけれども、掌典とか、大変珍しい特殊な職名の職員がいらっしゃいますけれども、こういう職員について、宮内庁のお役人と同じように社会保障だとか定年制ですか、そういうものはしかれておるのでしょうか。
  102. 山本悟

    山本(悟)政府委員 内廷職員では常勤の者と非常勤の者とございまして、それぞれいろいろ扱いが違うわけでございますが、給与は大体公務員に準じて計算をして採用しているというようなことになろうと存じます。もっとも、非常勤の場合には常勤に比べてどういう落とし方をするか、これは国の場合もあるわけでございまして、そういったものを基礎にしながら計算をさせていただいている。  それから社会保障も、宮内庁職員であれば当然共済の適用になるわけでございますが、内廷職員は共済の適用はございません。そのかわり、一般企業の従業員と同様に、社会保険で言えば政府管掌の社会保険に入っているというようなこともございますし、企業年金といったようなものも、保険会社と企業年金保険契約を結びまして、それの適用をさせているというようなこともございます。そのほか、労災あるいは雇用保険といったようなものの事業者負担内廷で持っている、こういう形態によりまして、公務員ではございませんから公務員の制度には乗っかりませんが、民間の会社なり何なりというところの従業員と同じような格好になるように配慮をいたしているというようなことでございます。  それから定年制のお話がございましたけれども、内廷職員という場合は、定年というものは当然適用という格好はございません。
  103. 和田一仁

    ○和田(一)委員 宮内庁職員なるのではないかと思うのですが、雅楽の楽師さんとか、そういう方がおりますね。あれは内廷職員ですか、それとも宮内庁職員なんですか。宮内庁職員であるとすると、ああいう方だとかあるいは陛下のおそばにおられて長いこと仕えておられる高齢になった方でも、むしろ長いことお仕えして気心は知れている、陛下にとってもその方がいいというような方、そういう人がもし宮内庁の方の国家公務員であるとすると、定年になった場合はどうされるのでしょう。
  104. 山本悟

    山本(悟)政府委員 今申し上げました内廷以外の職員は、御案内のとおり大部分は一般職の国家公務員でございます。  一般職の国家公務員ということになりますと、六十年から当然定年法も適用になるわけでございます。御指摘のような雅楽関係職員あるいは古文書の補修をやっておる職員とか、宮内庁というところは職種といたしましては極めて特殊な形態の職員がいるわけでございます。従来、定年法施行前は、こういう者は大体管理職になりますと六十歳、それから特殊な技能あるいは非管理職の職員は六十五歳で実質上の定年ということで運用してきたわけでございますが、今回定年法ができますと、特殊な技能あるいは職務の遂行上特殊なものを要するといったような関係の職種の者につきましては、国家公務員法に基づく人事院規則によりまして六十三歳定年あるいは六十五歳定年といったようないろいろなランクがあるわけでございますが、そういったものに該当する者は該当させてもらいまして、混乱が起こらないように処理をしていきたいと存じておるところでございます。
  105. 和田一仁

    ○和田(一)委員 皇室財産の中に御料牧場がございます。昔は三里塚だったのではないかと思うのですが、今はたしか那須かどこか、高根沢牧場ですか、この御料牧場の利用状況、どんなふうにお使いになっておられるのか、何をされておるのか、ちょっとお聞きしたいのですが。
  106. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御料牧場の一番の目的というのは、やはり御料に供する農産畜産関係の製品をつくるということであろうと存じます。そして、その生産されたものを御料に供すると同時に、国公賓あるいは園遊会といったような各種の行事の際の御料にも供するというようなことが牧場の設置の一番の目的であろうと存じます。  また同時に、ああいった施設でございますので、現在では、毎年春に二回に分けまして在日外交団を招きまして、乗馬、散策、午さんなどにより皇室行事としての接待をいたしておるというようなこともございますし、また昨年四月に英国の皇族のアン内親王殿下が御夫君と御来訪になりました際には同牧場で御接待をするようなことでございますとか、そういう意味でのいろいろな国際親善関係皇室行事の場というようなものにも活用させていただいておるということでございます。
  107. 和田一仁

    ○和田(一)委員 先ほども、皇室財産であるカモの御猟場ですか、ああいうところの開放等、やはりそういう施設のある周辺の国民は、見学もさせていただきたいしあるいは利用もさせていただきたいというような気持ちはあると思うのですね。この御料牧場、大都市の周辺ではないですけれども、相当広大な面積で、馬もおり綿羊もおり年もおり豚もおるというようなことで生産をされておるというお話ですが、外交上にいろいろ利用できるような施設があるとするならば、それらをほかの皇室財産の開放と同じように、何かの機会に一般の国民に開放というか利用の便に供するというようなことはまだやってないのですか。それからまた将来どんなふうにお考えか、ちょっとお聞きしたいのですが。
  108. 山本悟

    山本(悟)政府委員 地域が地域でございますし、目的が目的でございますので、一般にという考え方は今まではとっておりません。  また、皇室財産でもって、例えば桂離宮、修学院といったように、文化財的な意味でもって広く国民の方の参観に供するというのに非常に意味のある施設と、現在実質的に生産をしている牧場というような意味での目的のものと、いろいろな立場も物によって違いがあろうと存じます。しかし、一つのお考え方でございますが、現在のところはまだそこまでは至っていない。やはり相当な広さを持っておりますけれども、それはそれなりに耕しかつ飼育をするということを実際にやっているわけでございまして、その専門の職員がそれぞれいるというような体制でございますので、公開して観光的にするというようなところまではなかなかいきにくいのではないかという感じがいたしております。
  109. 和田一仁

    ○和田(一)委員 よその国からお見えになった方あるいは在日の外交官、こういった方を御案内して外交上の交際の場にできるというような施設だと伺うと、それはやはり何かの格好で、ある程度は国民にも開放というか利用の道は考えていただいてもいいんじゃないかなという感じはいたします。これもひとつぜひ前向きに御検討いただければありがたいと思いますので、御要望いたしておきます。  それから、正倉院の中の御物の方の管理のことでございますけれども、大変な国民的な財産であろうと思うのです。これの補修だとか研究だとか調査、こういったものはなされておるようですが、そういったものをどういうふうにまとめて国民の大変な文化財としてあるものを発表されたりしておるのか、研究者にはどんなふうに開放されるのか、その辺もちょっとお伺いしたいのですが。
  110. 山本悟

    山本(悟)政府委員 御指摘のとおり、正倉院は大変な文化財でございます。また、非常に伝来の長い年月たっているものでございますので、それなりに細心の注意をもって後の世代まで引き継いでいく必要があるというように存じております。  ただ同時に、研究というようなものについても、現在においても必要なものはやっていかなければならない、こういう立場でございますので、いろいろと宮内庁自身の正倉院事務所としての研究者も置いておりますし、あるいは外部のいろいろな研究団体あるいは大学といったようなところともよく連絡をとりながらの調査というものをいたしておりますが、細部にわたりましては、もう少し詳しくは書陵部長から御答弁させていただきたいと存じます。
  111. 宮尾盤

    ○宮尾説明員 正倉院で行っておりますいろいろな宝物についての研究調査の結果の発表の状況でございますが、正倉院の宝物につきましては、毎年秋の宝物点検のときに専門の学者とか技術者等を委嘱をいたしまして学術調査を行いますほか、正倉院の職員自体もいろいろな調査研究を行っておるわけでございますが、こういったものの研究成果につきましては、毎年「正倉院年報」というものを発行いたしておりまして、これに宝物の保存状況あるいは管理、調査等にかかわります正倉院の事務所の事業内容を盛り込んでおるわけでございまして、広く学界に発表いたしております。  それからなお、これまでに正倉院事務所が編集をいたしまして「宝物図録」というものを六冊ほど出版をいたしておりますし、また正倉院自体の調査結果を、例えば書籍とかガラス、楽器、紙、木工というような宝物の種類別にいろいろ取りまとめをいたしまして、それを編集をいたしました一般学術書をこれまで十四冊発行をいたしております。こういったような方法で正倉院の宝物についての調査研究の結果を一般に発表する、こういうことにいたしておるわけでございます。
  112. 和田一仁

    ○和田(一)委員 持ち時間がなくなってまいりましたのですが、総務長官がこちらの委員会にお越しをいただくと聞いておりますので、私の残余の時間は長官出席の機会に譲らしていただきたい、保留させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  113. 池田行彦

    ○池田(行)委員長代理 結構でございます。  この際、暫時休憩いたします。     午後四時十一分休憩      ————◇—————     午後六時六分開議
  114. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。和田一仁君。
  115. 和田一仁

    ○和田(一)委員 総務長官がお見えになりましたので、休憩前に続いて、私、質問をいたします。  皇室経済に関連いたしまして、皇室典範の問題について若干御質問をいたしております。しかし、質疑に御不在でしたので、継続してお尋ねしてもなかなか関連がないと思いますので、別の角度から一点だけ、長官に御質問をしたいと思います。  憲法で定められた天皇の地位、皇位に陛下はおられるわけでございます。この憲法の第三条の精神。これは国民の権利及び義務でございますけれども、この精神は皇位にあられる天皇にも適用をされるものであるかどうか。つまり、特に私は、この第十一条の「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」というこの精神を、これは天皇も享受できる、享有を妨げられない、こうお考えかどうか、この一点を長官にお尋ねしたいと思います。
  116. 中西一郎

    ○中西国務大臣 私、その方の専門ではございませんのですけれども、第十一条に書いてあることは、これは国民全般についての話、そして第三条は、天皇という特殊な地位にあられる方についての規定である。そういった意味で、天皇の地位は特別であるということは国民の象徴等いろいろ書いてありますから当然のことだと思うのですが、その天皇については第三条のことが書いてある、かように思います。
  117. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ちょっとよくわからないのですが、要するに、憲法に規定された皇位にあられる陛下は、憲法の持っている基本的な精神、特にこの十一条の国民の基本的な権利の享有を妨げられるかどうか、これをちょっと御見解を伺いたいのです。
  118. 山本悟

    山本(悟)政府委員 憲法の規定いたします第三章、国民の基本的権利及び義務というような規定が全体として天皇あるいは皇族に適用になるかというのは、いろいろ議論の存するところでございます。ただ、常に憲法で考えられますことは、天皇につきましては、やはり憲法上の日本国及び日本国民統合の象徴としての地位に基づきまして特殊なる地位というものを憲法が既に認めているところでございます。その意味から申しますと、その象徴たる天皇の地位に伴って必要なる制約というようなものは、やはり憲法が既に認めているというように存ずるわけでございまして、そういう意味から申し上げますと、全く同一に十一条が適用になるというような観点ではないんじゃなかろうか。  例えば、極めて端的な例で恐縮でございますが、婚姻というものは、憲法上の国民の基本的権利から言えば両性の合意をもって成立するということでございますが、皇族の場合には、その両性の合意というほかに、皇室会議の議を経るというような意味での別な機関の意思決定というものにかかわらせている。やはりそういう点は憲法で認めている特殊なる地位から発しているものというように存ずるわけでございまして、そういう意味では全く同一ではないというように存じます。
  119. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は、三章の決めている全部ではなくて、その精神は大事だが、特に十一条についてはどうかというふうに長官にお尋ねしたのです。私は、選挙権だとかそういうことまでを求めているのではないのです。というのも、これは今おっしゃったわけですけれども、最初に私がお尋ねしたときに、皇室典範は憲法のもとに定められている、その憲法が皇室典範に何を期待しているかというのはたった二つだ、これを確認したわけですね。であるとすれば、その憲法が決めている皇位にある方も基本的な自由は当然享有を妨げられない、こう理解すべきではないかと私は思うからお尋ねしているのであって、ここは一番大事ですから、私は大分待たされたので、ほかのこともありますのでこれは次回に回します。ゆっくり一遍お考えいただきたい問題だと思っております。ぜひひとつそのときにまた御答弁をいただきたいと思います。  それでは、もう時間もありませんので人勧問題に入りますけれども、人勧問題に入る前に、内海総裁にお尋ねをしたいわけでございますが、新しく総裁になられて、この人事院制度を通して人勧に対するお取り組みの姿勢ですね。私どもは毎年毎年完全実施をお願いしてまいりましたけれども、ことしはこれからでございますが、ここ数年完全実施がないために、今できている較差、当然これを公正適正に勧告していただけるもの、こう私は思っておりますけれども、まず総裁の基本的なお考えをお聞きいたしたいと思います。
  120. 内海倫

    ○内海政府委員 基本的な私どもの人勧制度といいますか、あるいは人事院の機能にもさかのぼらなければならないと思いますが、お答えを申し上げておきたいと思います。  もう先刻御存じのように、労働基本権の制約を受けております公務員について人事院が果たさなければならない機能というものは、公務員の諸般の勤務条件その他についての利益を守らなければいけない。その中におきますいわゆる人事院の給与における勧告につきましては、これは公務員にとってはいわば生活にもかかわりますし、また勤務をしようとする上の士気にもかかわりますし、またいい人材を公務員に得ようとする場合における魅力の問題にも非常にかかわりますし、極めて重要な意味を持っているわけであります。それのいわば代替措置として人勧制度というものが存在するわけでございますから、私どもも勧告するに当たりましては、厳しい資料に基づいて厳しく検討して、調査して勧告を行うわけでございます。今年も私どもはまたそういう考え方に立って勧告をいたすことになろうと思います。  その場合、今御質問にございましたような、在来における積み残しというふうなものがどうなるかという問題でございますが、今申し上げましたようなそういう考え方、そういう方法によります調査によりまして官民における給与較差というものが恐らく出てまいるわけでございますから、その場合に、もしそういうふうなものがありますとすれば当然そういうものの中に反映をしてくるのではなかろうか、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
  121. 和田一仁

    ○和田(一)委員 積み残しにもお触れになりましたが、そういうふうにだんだんと広がってきているのが実態だと思うのです。ことしの勧告は、そういうことも含めながら適正な勧告を出される、もし勧告が実施をされないと、その較差はますます拡大をされていって、この制度そのものが形骸化されてしまい、制度そのものが崩壊していく、私はこう考えますけれども、総裁はいかがでしょう。
  122. 内海倫

    ○内海政府委員 先ほど申しましたように、人事院における勧告制度というものは、いわばいろいろな試行錯誤を重ねながら、最もいいものとして今存立しているものと思います。したがいまして、これにかわるものというのは、今諸外国のいろいろな例を見ましてもこれ以上のものはないと私は思います。したがいまして、この制度は十分に機能するように維持をしていかなければならないと思います。これが継続して機能するかどうかを疑われるようなそういう状態がもし今後も継続して出てくるようであれば、これは極めて重要な問題でございますから、私ども人事院の立場に立つものとしましては、いろいろ財政事情その他の問題はあると思いますけれども、政府及び内閣及び国会におかれまして何とかこれを最大限尊重していただいて、願わくは完全実施ということにつながるようにぜひしていただかなければいけない、このように思います。
  123. 和田一仁

    ○和田(一)委員 よくわかりました。出した勧告は最大限尊重してもらって、完全実施を求める、こういうお考えのようなので、人事院の立場としては当然であるが、同時に、これは大切なことだと思います。  長官、今のように、人事院としては適正な較差を調査した上で勧告をする、した以上は最大限尊重してほしい、完全実施を求める、こういうお立場でございますけれども、いかがでございますか。ことしは当然勧告が出されるものという予想の上で、ぜひひとつこれに取り組むお考えをお示しいただきたいと思うのです。
  124. 中西一郎

    ○中西国務大臣 八月になると、今人事院総裁がおっしゃったように、較差が当然素直に人事院勧告になってあらわれてくるだろうと思います。それを踏まえて私どもは、人事院勧告を尊重するという基本的な立場は堅持してまいりたい。今までも同様でございますが、特に、過去二年というものを経過した三年目であるということを考えますと、なおさらその感を深くするわけでございます。そういった立場で、人事院勧告を尊重しながらその実現に最大限の努力をいたしたい、かように考えるところであります。
  125. 和田一仁

    ○和田(一)委員 最大限の努力というのは——内海総裁も、最大限尊重するように、そしてそれは完全実施だ、こうおっしゃったですね。それを受けて、政府の方としても最大限努力というのは、完全実施を努力する、こう理解してよろしいですね。
  126. 中西一郎

    ○中西国務大臣 最大限の努力をするわけでございますが、完全実施を目途にして頑張りたい、かように思います。
  127. 和田一仁

    ○和田(一)委員 長官は完全実施を目途に努力する、今こういう御答弁をいただきました。これは内閣の中にあっても長官の双肩にかかっている、私はこう思います。これは長官関係閣僚会議の中でその覚悟を踏まえて頑張っていただかないと、だれも頑張る人はいないのです。最大限の努力、完全実施に向かってその信念どおりやっていただくことを私はもう一回ここでお答えいただいて、全公務員の安堵をいただきたいと思います。どうぞひとつお願いします。
  128. 中西一郎

    ○中西国務大臣 丹羽総務長官も大変努力してこられましたが、個人的には力及びません点が多い、尊敬すべき先輩でございます。先輩に負けないように頑張るつもりでございます。
  129. 和田一仁

    ○和田(一)委員 先輩に負けないんじゃ困るのですよ。先輩は負けているのですよ。先輩のとおりではまずいのです、今度は本当に。もう先輩を超えてやっていただきたい。これがもし連続してまたことし何らかの格好で——では長官、絶対に凍結はないですね。制限も、最大限努力の中には入らないですね。私は、凍結なんというのはとても最大限努力の目標には入ってないと思うし、抑制そのものも念頭にない、こう理解してよろしいでしょうか。
  130. 中西一郎

    ○中西国務大臣 ここでお約束するわけにはいきませんけれども、今先生のお話しの熱意は十分私にも伝わりますし、ともかく総務長官という職責を全うするための最大限の努力をいたしたいと思います。
  131. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間がもう過ぎておりますので、これでやめますが、どうぞひとつ、これは特に今やっと景気が回復基調に入りつつある大事なときでございまして、本年この大事な人勧が完全実施されるかされないか、これは景気の動向にも大きく影響し、内需の拡大を図りたいという政府の方針とも非常に関連が深いです。そういうことは、ひいては日本経済の中期、長期の展望にもつながってくるわけですし、同時に国民全体に大きな波及力があるわけなんです。そういうことを勘案していただいて、総務長官としての職務、最大限努力、つまり完全実施に向かって後のない姿勢でやっていただく、このことをもう一回確認して、私の質問を終わります。
  132. 中西一郎

    ○中西国務大臣 私のできる限りの努力をさせていただきます。
  133. 和田一仁

    ○和田(一)委員 何かまたちょっと答弁が後退したような感じなんです。さっきはもう少し完全実施という言葉が出たわけなんですが、私はそのお気持ちが十分ある、そういうふうに信じたいと思います。それ以外に長官、この人勧制度の尊重、本当に行革の精神が求められるような、そういうもののためには、この人勧を尊重するということがなかったら幾らやってもだめです、これは行政改革も。そういう意味で、長官がこれに取り組む熱意というものは、公務員全体あるいはむしろ民間の人たちにも大変大きな影響がある、こういう立場から、これは断固完全実施に向かってやっていただかなければいけないと思います。本当に長官、一言ですよ、完全実施をぜひひとつ御答弁いただきたいと思います。
  134. 中西一郎

    ○中西国務大臣 御要望のとおり答弁できないのははなはだ遺憾でございますけれども、人事院勧告を尊重するという基本的な方針は、これを堅持して努力をいたします。
  135. 和田一仁

    ○和田(一)委員 終わります。
  136. 片岡清一

    片岡委員長 次回は、来る五日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十六分散会