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1984-04-17 第101回国会 衆議院 地方行政委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十七日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 臼井日出男君 理事 小澤  潔君    理事 谷  洋一君 理事 西田  司君    理事 小川 省吾君 理事 加藤 万吉君    理事 草野  巌君 理事 岡田 正勝君       大西 正男君    大村 襄治君       工藤  巖君    小杉  隆君       左藤  恵君    中川 昭一君       平林 鴻三君    古屋  了君       松田 九郎君    佐藤 敬治君       細谷 治嘉君    安田 修三君       山下八洲夫君    岡本 富夫君       宮崎 角治君    吉井 光照君       藤原哲太郎君    経塚 幸夫君  出席国務大臣         自 治 大 臣 田川 誠一君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       太田 壽郎君         自治大臣官房長 矢野浩一郎君         自治大臣官房審         議官      田井 順之君         自治大臣官房審         議官      津田  正君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君         消防庁次長   坂  弘二君  委員外出席者         厚生省児童家庭         局企画課長   土井  豊君         厚生省保険局国         民健康保険課長 阿部 正俊君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部業         務課地方交通課         対策室長    岩田 貞男君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   福渡  靖君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君     ————————————— 四月十六日  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び  納付金に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第七九号) 同日  地方財政の確立に関する請願上田卓三君紹介  )(第二八二三号)  地方財政充実強化に関する請願志賀節君紹  介)(第二八二四号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一九号)  地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に  関する法律案内閣提出第三八号)      ————◇—————
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方交付税法等の一部を改正する法律案及び内閣提出地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉井光照君。
  3. 吉井光照

    吉井委員 まず最初に、五十九年度及び今後の地方財政見通しについて若干お尋ねをいたしたいと思います。  五十二、五十三年度当時の地方財政は、御承知のように歳出増歳入増が追いつかないことによるところの財源不足の発生であったわけですが、五十八年度歳出城歳入滅のもとでの財源不足であったわけです。それで、五十九年度はこの事態というものが一層進行していると思われるわけですが、この点についてはどうですか。
  4. 石原信雄

    石原政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、五十三年度あるいは五十四年度のころが地方財源不足額としては最も大きくなった時期でございますが、その当時は、歳出の方を大幅に伸ばす、ですから地方税交付税がかなり伸びたにもかかわらず、財源不足は大きくなったという状況であったわけです。ところが五十八年度の場合は、歳出を極力抑制したにもかかわらず、地方税交付税、特に地方交付税が大幅に落ち込んだために二兆九千九百億円の財源不足を生じた。そういった意味で、財源不足の額の違いだけじゃなくて、その発生した原因、背景に大きな違いがあったわけです。そういった傾向は五十九年度も基本的には引き継がれている。五十八年度と同様に、歳出については国と同様に極力抑制したにもかかわらず、なお一兆五千百億円の財源不足が生じた。その理由は歳入の落ち込みが大きかったということではないかと思います。
  5. 吉井光照

    吉井委員 五十九年度地方財政計画では、一般財源伸びが三・四%に対して、義務的経費である給与関係経費伸びが三・六%、そして公債費伸びが八・五%といずれも一般財源を上回っているわけです。財政構造はこのような状況で非常に悪化しておるわけです。したがって、このような状況は今後もやはり続くのでしょうか、この点について。
  6. 石原信雄

    石原政府委員 今後の展望につきましては、一応の前提を置いて、先般昭和六十二年度までの地方財政試算について参考資料提出申し上げたわけでありますが、この資料などでもおわかりいただけますように、歳出を極力抑えてもここ当分は歳出に対して歳入が追いつかないという形が続くのではないか、収支不均衡の状況がしばらく続くのではないか、このように見ております。
  7. 吉井光照

    吉井委員 また、国庫支出金は史上初めてマイナス伸びとなったわけですが、地方交付税も三年連続マイナスですね。一方では使用料手数料は七・四%の伸び地方税伸びを上回っているわけです。このように、今後は国庫支出金のような依存財源伸びは期待できない。歳入を増加させるためにはどうしてもやはり住民負担と言われるところの地方税使用料手数料、こうしたものによって自主財源を強化せざるを得なくなるという方向性なのかどうか、この点はどうでしょうか。
  8. 石原信雄

    石原政府委員 国庫支出金につきましては、国の予算編成方針におきまして、普通国庫補助負担金及び投資的経費に係る国庫補助負担金を通じていわゆるマイナスシーリングが設定された結果、五十九年度の場合、前年度よりも減になったわけでございますが、六十年度以降どのような国の予算編成方針がとられるかによってこの事情は変わってまいりますけれども現時点で見通されるところによりますと、国庫支出金は今後とも大幅な増は期待できない、むしろ減少傾向をたどるのではないか、いわゆる「増税なき財政再建」路線が堅持される限りにおきましては、地方公共団体に対する国庫支出金はむしろ減少傾向を続けると考えなければいけないんじゃないかと思います。  一方、使用料手数料その他の雑収入等につきましては、国もそうでありますけれども地方財政におきましても、経費の種類によりましては受益者から応分の負担をちょうだいする、適正な負担を確保していただく、こういう方針がとられております。その結果、五十九年度地方財政計画におきましても、歳出全体の伸び以上に使用料手数料伸びを見込んでいるわけでございます。税制との絡みもございますけれども、やはりこれからの財政のあり方として、受益者負担適正化という方向は今後とも継続される、堅持されることにならざるを得ないのではないか、このように見ております。
  9. 吉井光照

    吉井委員 次に、財政環境改善についてお尋ねしたいと思うのですが、まず、交付税特会借り入れと、この償還額の二分の一国負担のルール、これについては五十三年度に法定化されたわけですが、こうした暫定的制度が講じられた背景、すなわち、当時は国と地方財政環境というものがどのような状況にあったのかについてお尋ねしたいと思います。
  10. 石原信雄

    石原政府委員 五十三年度に、交付税特別会計借入金による交付税特例加算方式がいわばルール化されたわけでありますが、その背景には、五十二年度地方財政対策におきまして、単年度措置として借入金の二分の一国庫負担が法定されたわけですけれども、これでは制度の名に値しないというような御批判もあり、かつまた、五十三年度当時の財政状況を申し上げますと、御案内のように、当時は税収の伸びが著しく鈍化しておる一方、歳出につきましては、景気浮揚を図るという意味と、社会保障関係費教育費などについてその水準の引き上げを国として企図しておりましたので、歳出の方は相当大幅に伸びておったわけです。したがいまして、国も地方も大幅な財源不足になったわけです。  そうして、国の方では、国税の一部について歳入年度所属区分変更を行うというような、いわば異例の措置をとってもなおかつ財源不足がかなり長きに達した、こういう背景のもとで、私どもは当時、交付税率引き上げを含む抜本的な制度改正を期待し、そのような折衝も行ったわけでありますけれども、到底これに応じられるような状況でなかったということで、当分の間の措置として、交付税会計借り入れによって交付税所要額を確保する、そして、この借入金の二分の一を国庫負担するということをルール化いたした次第でございます。
  11. 吉井光照

    吉井委員 では、五十三年度のそのような国、地方財政環境というものが現在ではどのように変わってきたか、その点どうですか。
  12. 石原信雄

    石原政府委員 五十三年度、五十四年度当時と五十九年度財政状態を比較してみますと、歳入関係では、五十九年度についてはある程度地方税あるいは交付税についていわゆる自然増収が期待できる、当時の状況よりは多少改善されている。一方、歳出関係につきましては、五十三年度当時は、ともかく景気浮揚を図るために公共事業を中心に歳出の大幅な増額を図るという機運のもとにあったわけです。そして、なおかつ、こういった事情とも関係があったわけですが、御案内のように当時は税制抜本改正を行う、そして税制調査会はいわゆる大型消費税の導入について具体的な検討を行っておった、そういうような背景があったわけであります。  これに対して、五十九年度状況は、ともかく増税をしないで今日の財政危機を何とか乗り切るというのが政府全体の方針であります。そのために歳出見直しを徹底して行う、歳出を極力抑制することによって収支のバランスを回復するという方針がとられているわけでございます。  そういうようなことから、背景といいましょうか、内容は違いがありますけれども地方財政収支不足額について申しますと、五十三年度、五十四年度当時に比べますと、五十九年度はかなりその差は縮んでいる、収支不足額にして半分以下になっているという状況にあるわけでございます。
  13. 吉井光照

    吉井委員 当時そうした暫定的制度を必要とした財政環境というものが、現在に至るまで依然として悪化を続けておる。したがって、これにメスを入れての改善を図ることなく、単に暫定的制度を取りかえただけだという認識に立たざるを得ないわけですが、どうですか。
  14. 石原信雄

    石原政府委員 今回の交付税法改正によりまして、交付税特別会計借入金による交付税特例加算方式を廃止して、新たにいわば一般会計の枠内での特例措置を講ずるという方式変更したわけでございますが、この改正をどのように認識し、どのように評価するかということについてはいろいろ御意見もあろうかと思いますが、私どもといたしましては、ともかく今日の国、地方財政状況のもとで、これ以上従来のような形での借入金による特例方式を漫然と続けるということは不可能である、財政体質を一層悪化させてしまうという問題意識から、これを五十八年度限りで廃止して、五十九年度からは御提案申し上げているような方向に切りかえることにしたわけであります。もちろんその背景には、いわゆる借り入れによらないで、一般会計の枠内での特例措置方式で今後対応できるという、それなりの見通し背景というものを持って、我々なりの見通しを持ってこのような方向転換をしたわけでございます。  これまでの議論からいたしますと、交付税率引き上げとか税制抜本改正とか、そういった歳入面改正なしに方式変更はいかがなものかという御批判もあろうかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、政府の今日の基本的な試算としては、ともかく増税はしないで専ら歳出見直し制度見直しによって今日の事態を乗り切ろう、こういう考え方の一環として今回の改正を御提案申し上げているところでございます。
  15. 吉井光照

    吉井委員 次に、今回の新しい交付税特例措置の評価についてお尋ねをしておきたいのですが、旧来の制度と今回の新しい制度とでは、地方財政にとってどちらがすぐれているか、これが一つの大きな問題だろうと思います。すなわち、五十年度から五十八年度までの財源不足額というものは、特会借り入れによるところの地方交付税増額財源対策債の増発とで補てんされてきたわけですが、この間の両者の割合はほぼ半々と見ていいのですか。
  16. 石原信雄

    石原政府委員 五十年度以降の財源不足トータルに対する地方債特例措置交付税特例措置との割合は、通してみるとほぼ半々近い数字になるのじゃないかと思います。  ただ、たびたび御説明申し上げておりますように、財源措置の仕方として、財源不足額の半分を地方債で、半分を交付税でという方式を必ずしもとったわけではございません。むしろこれまでのやり方は、財源不足を補てんするために、まず国に準じて建設地方債活用がどこまで可能かという点を議論して、しかる後、建設地方債活用してもなお足らざる部分について交付税特例措置を講ずる、こういうやり方をしてきております。  したがいまして、財源不足額が非常に大きくなりました昭和五十三年度あるいは昭和五十四年度のような場合には、地方債活用にも限度がありますから、より多くの額が交付税特例措置でカバーされたわけです。しかし、財源不足額が非常に小さくなった例えば五十六年度のごときは、地方債活用が主でありまして、交付税特例措置は非常にわずかの額にとどまったというような関係になっております。過去の財源措置トータルで見ますとほぼ半々でありますけれども、その各年度措置は、その年度財源不足額状況地方債活用可能性によってそれぞれ異なっているということを申し上げたいわけでございます。
  17. 吉井光照

    吉井委員 特会借り入れの際には、その都度、将来の償還時にはその償還額の二分の一を国が負担するという約束がされていたわけです。したがって、大まかに言えばこの財源不足額の四分の一以上は国が負担するということになっていたと考えてよろしいですか。
  18. 石原信雄

    石原政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、結果として、過去の財源不足額に対する地方債交付税措置との割合はほぼ半分近くになっている。そうして、交付税特例措置のうち大部分交付税会計借り入れによって措置された。そうして、その借入金償還額の二分の一を国が負担するということは法定されておりますから、そういう意味で、結果として見ますと、トータルとしては財源不足のほぼ四分の一近いものが、国の負担といいますか国による補てん措置の対象になったということは言えると思います。  しかしながら、ただいま御答弁申し上げましたように、これは結果としてそうなったのでありまして、各年度の対応の仕方というのは、それぞれの年度財源不足状況によって、交付税措置の額は大きくなったり小さくなったりしてきているということでございます。
  19. 吉井光照

    吉井委員 しかし、新しい制度による五十九年度措置では、特例加算額が千七百六十億円にすぎません。これは財源不足額に対して一一・七%、従来の四分の一すなわち二五%の半分以下ではないか、こういう見方があるわけですが、どうですか。
  20. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度地方財政対策におきましては、財源不足額が前年度よりも半分以下になった、一兆五千百億円という額に縮小した。そして、建設地方債活用について検討した結果、一兆二千億円余り建設地方債措置する、これも既に御説明申し上げましたように、充当率としては前年度よりも五%ほど引き下げた結果でございますけれども、ともかく一兆二千億円余りのものが地方債によって措置された。その結果として、その残余を交付税特例措置に求めたということでございます。  確かに、結果として過去のトータル平均値平均措置率と比べますと少ないじゃないかという御指摘があるかもしれませんけれども、五十九年度については、そういう五十九年度財源不足に対するいわば従来と同様の地方債及び交付税措置方式を適用した結果として、今回御提案申し上げたような内容に落ちついたところでございます。
  21. 吉井光照

    吉井委員 しかも、実際は一一・七%ではなくして、この千七百六十億の中には六十六年度以降国に返済する三百億が含まれているわけですね。したがって、これを除きますと千四百六十億円、これは九・七%にしか当たらないわけです。さらに、その千四百六十億円も利差臨特等であって、旧制度借り入れによっていたときも、これらの利差臨特等は二分の一を国が負担をするというのではなくて、当然に全額国負担するという性格のものであったわけです。  したがって、五十九年度には国として新たに負担するというものは何もないことになるわけです。このように、新制度に切りかえたといっても、今までの制度と比べて、国の負担は従来と同じどころか大幅に減少して、国は当然に負担すべきものを負担しただけとなっているわけですが、これはどういうことですか。
  22. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度の国、地方のそれぞれの財政状況を踏まえて今回御提案申し上げているような地財対策に決着したわけでありますけれども、御指摘のように、今までよりも取り分が少ないじゃないか、地方の側に立ってみますとメリットが少ないじゃないかという御指摘かと思いますが、要は、今日の国、地方のそれぞれの財政状況のもとで、いかにして必要な地方財源を安定的に確保していくかという見地に立って種々論議の結果、今回の措置に落ちついたわけでございます。  これまでは二分の一負担があったのに今後はないじゃないかということでございますが、その二分の一負担前提となりました借入れそのものが、これ以上借り入れするということは国にとっても地方にとっても耐えられないという判断のもとで今回廃止した。それから、歳出を国に準じて極力抑制するならば、現時点での地方財源見通し地方税地方交付税見通しのもとで、今回御提案申し上げているような措置地方財政運営が何とか支障なくできる、こういう見通しのもとに今回の御提案のような形に落ちついたわけでございます。  もちろん、三百億円については六十六年度以降精算いたします。これは、今後の各年度財政状況によって特例措置を決めるわけでありますが、その特例措置については、六十六年度以降のその時点での国、地方財政状況を見ましてそれぞれ精算する。しかし、これはあくまで地方財政運営支障のないように地方財源を確保する前提の上に立っての精算であります。したがいまして、それらについては、具体的にその内容を定めるときにはそれぞれその時点での法律によって御審議をいただいて結論を出していくというものでございます。  したがって、今回地方にとっては大変メリットが少ないじゃないかという御批判かと思いますけれども、同時にまた、今日の国、地方を通ずる財政環境のもとで必要最小限度地方財源を確保する措置として、今回の改正を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  23. 吉井光照

    吉井委員 こうなるのは当然でして、新制度による特例加算は国の一般会計からの繰り入れを予定するものであるけれども、国が赤字である以上、一般会計からの繰り入れはそもそもできないのじゃないですか。この点、どうですか。
  24. 石原信雄

    石原政府委員 今回の特例措置は、言うなれば一般会計の枠内で行うわけであります。借り入れという方式を原則としてとらないわけでありますから、一般会計財源の枠内で対応することになります。したがいまして、今日の国の一般会計財源事情からいたしますと、非常に厳しい環境のもとでこの特例措置内容を今後議論していかなければいけないということは御指摘のとおりでございます。  ただ、私どもは、どのように厳しくとも、地方財政運営にとって必要な財源は何としても確保していく、そういう決意でこれからも臨んでいきたいと考えております。
  25. 吉井光照

    吉井委員 そこで、この新制度に伴って特会に 残ることとなった借入金利子を今後地方負担することになったわけですが、借入金利子を国が持つというのは、国の地方に対する財源保障責任を果たすという点から見れば当然だと思うのです。また、五十八年度に初めて地方利子負担が導入された際に、単年度限りの措置としたい、こういう答弁があったわけですが、この点、どうですか。
  26. 石原信雄

    石原政府委員 五十八年度から、交付税特別会計借入金利子につきまして交付税会計自身がおおむね二分の一程度の負担をすることになったわけですが、そこに至る議論は、当委員会でも何遍か取り上げていただいております。私どもも、これまでの借入方式による特例措置が採用された背景、経緯、あるいは交付税制度の理念、理想、こういったものから、なろうことなら従来どおり特会利子は全額国庫負担してほしい、負担すべきだということで、五十八年度予算編成に当たって主張もし努力もしたわけでございますが、御承知のように、国の財政状態が極めて深刻になっているという背景のもとで、最終的には、交付税特会借入金元本の国、地方それぞれの負担割合に対応して、利子をそれぞれが負担するという結論に落ちついたわけでございます。  その際も、私どもは、交付税制度の本来の理想からするならば、やはりその利子は国が負担すべきだ、財政調整機能を、地方団体財源保障を行うということは国の責務でありますから、そのための手段として交付税会計借り入れが行われる以上、それは利子負担するのは国の責務であるという考え方で主張し、五十八年度は五十八年度財政状況のもとでやむを得ない、しかし、これはあくまで単年度措置として、五十九年度以降はもう一遍白紙に戻って議論する、こういうことで来たわけでございます。したがいまして、五十九年度地財対策論議に当たりましても、自治大臣大蔵大臣折衝の最後まで残された最大の争点は、この利子負担の問題であったわけであります。  私どもは、なろうことなら、従来どおり、五十七年度以前のように利子全額国負担してほしい、負担すべきだということで大臣にも再々御努力をいただいたわけですけれども、残念ながら、今日の国の財政状態が五十八年度以上に深刻な財源不足状態にあったというようなこと、それから、今回御提案申し上げておりますように、交付税特会借入金残高のうち五兆八千億円余りのものを国の一般会計が引き取る、これで借入金を最終的に整理する、こういう措置との関連において、国の引き取るものは当然元利とも国の責任になるわけでありますが、交付税会計に残るものについては、元利とも地方責任で処理するという結論に落ちつかざるを得なかったわけであります。  そういった意味で、私どもの当初の気持ち、当初の要求からしますと残念な結果であったわけですけれども元本をけりをつけたということ、それから五十九年度の非常に厳しい国の財政状況のもとで今回の措置を決めざるを得なかったというようなことから、交付税特会負担すべき借入金利子については交付税会計負担するということにせざるを得なかったわけでありまして、今日の国、地方を通ずる厳しい財政環境のもとでのやむを得ざる選択であったということで御理解を賜りたいところでございます。
  27. 吉井光照

    吉井委員 この新制度に伴って、先ほどからいろいろ御答弁をいただいたように、地方利子負担というものが、単年度ごと措置ではなくして恒久化されたという点では、これは失敗ではなかったか、このような気もするわけです。  国の財政事情というものが将来好転しても、この地方利子負担というものは続くのかどうか、地方負担は国の財政再建期間中だけとすることはできないのかどうか、この見通しはどうですか。
  28. 石原信雄

    石原政府委員 今回御提案申し上げております改正法案の内容からいたしますと、借入金の残高については六十六年度以降償還するということにいたしておりますから、六十五年度まではその元金全額について利子負担が毎年度発生するわけでございます。ただ、私どもの気持ちといたしましては、今後財政状況が好転するならば、そのときの国の財政状態にもよりますけれども地方財政の方の状況が許すならば何とかこの借入金を早く返したい、そうして利子負担を軽減したいという気持ちは持っております。ただ、現時点では元金を償還できるような状態にないということで棚上げしているところでございます。
  29. 吉井光照

    吉井委員 この特例加算額は千七百六十億で、交付税の中で負担する借入金利子が三千六百三十八億円であれば、交付税の総額が減ってしまうのは、これは当然ですね。事実、交付税の税率が三一・三%、それでこれは法定税率三二%を下回っているわけですよ。そこで、今後利子負担というものが毎年四千億円程度発生する。この地方負担をやめない場合には、この利子負担額以上の一般会計繰り入れによるところの特例加算がない限り、今後とも地方交付税の税率というものは法定税率を下回ることになるのじゃないか、このように思うわけですが、この点、どうですか。
  30. 石原信雄

    石原政府委員 御指摘のとおりでございまして、昭和六十五年度までは毎年度、今のほかの状態が変わらなければ五兆七千億円弱の借入金に対応する利子負担が続きますから、それは法定額から差し引かれる、そういった意味では、結果的には三二%を切ることになるということは御指摘のとおりでございます。
  31. 吉井光照

    吉井委員 では、もう一度根本的なことを聞いておきたいのですが、地方交付税法の第六条第一項で、交付税は、所得税、法人税及び酒税の一定割合、すなわち三二%と法定しているわけですが、この理由は何ですか。
  32. 石原信雄

    石原政府委員 今日の地方団体が、法令の規定その他によって、住民の福祉を守るために行政活動をしなければならない、そのための財政需要を前提にして、一方、今日の地方税法を初め現行制度による歳入を計算して、最終的にその収支のギャップを埋めるために国税三税の三二%相当の交付税が必要である、今日の地方行政水準を維持していくためには、交付税率は三二%が必要である、こういうことで今日の制度ができており運営されている、このように理解しております。
  33. 吉井光照

    吉井委員 地方交付税法の附則第三条に、新たに、「交付税の総額の安定的な確保に資するため必要な特例措置を講ずる」、このように規定されているわけですが、この安定的確保というのはどういう意味ですか。
  34. 石原信雄

    石原政府委員 安定的確保という意味は、毎年度地方財政運営支障なきよう必要な交付税額が確保されるというふうに理解しております。
  35. 吉井光照

    吉井委員 そこで、今回の新しい制度によるところの特例加算というものが、毎年度、国の財政の都合で動く、五十九年度のように実質的に三二%を下回るようなことになってしまうことも生ずるわけですが、これでこの規定の安定的確保と言えるかどうかという問題ですが、これはどうですか。
  36. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度について申しますと、三二%の法定額から利子負担額を差し引いた結果、千七百六十億円の加算を含めても、なおかつ三二%を切っているということでございますが、その安定的確保の意味するところは、利子負担を含めたこの現行制度のもとでの交付税額に対して、実際の地方財政収支状況から必要になってくる交付税の額との差額を確保するということが、安定的確保の意味であろうと思います。したがいまして、五十九年度について申し上げますと、千七百六十億円の特例措置を講ずることによって交付税が安定した機能を果たし得る、このように考えているところでございます。  で、安定的確保という意味は、必ずしも三二%を切ってはならない、あるいは三二%であればいいということではなくて、各年度歳出状況あるいは地方税その他の歳入状況を全部計算した上で、交付税の法定額で足りるのか足りないのか、足りない場合にはどれだけ加算したらいいのかということを決めていく、そうすることが交付税制度が安定した機能を発揮できるゆえんである、このように理解しております。
  37. 吉井光照

    吉井委員 以上のように、新制度特例加算というものは、国の財政の都合によって実際には無理ではないか。この結果、交付税率が変動し、実質的に引き下げられるようになるということから見て、地方団体に対するところの財源付与の点で、その安定性、また国の財政からの独立性という点で、この新しい制度は旧制度よりすぐれているとは言えないのではないか、制度改善にはなっていないのではないか、このような気もするわけであります。つまり、地方交付税制度を一層崩壊させるのではないか、このような気もするわけですが、どうですか。
  38. 石原信雄

    石原政府委員 私どもは、従来のような形で交付税特別会計借り入れを続ける、そして莫大な債務を交付税会計がしようという形は、地方財政にとってもまた国にとっても決して好ましいことではない、それこそまさに国及び地方財政の安定を害する、このように判断いたしまして、今回借入方式を廃止することに踏み切ったわけであります。  今度の新しい方式は、確かに、利子負担しているとかあるいはトータルとして三二%を切り込んでいるとかいった意味で、地方団体の立場からしますと、地方財政にとって決して十分なものといいましょうか豊かなものではない、ある意味では非常に厳しい内容のものであろうかと思います。しかし、私どもは、今回の制度によってともかくも借入金依存体質といいましょうか、従来のような方式から脱却する、そうして健全化への一歩を踏み出す一つのこれがよすがになる、こういうふうに判断しているところでございます。そして、確かに一般会計の枠内での特例措置でありますから非常に制約がある、総額には限りがあるということは十分認識いたしております。  しかし、どういう状態になろうとも、地方財政計画上見込まれる財源不足について、地方債等の活用を図った上でなおかつ不足するものが生ずれば、これは国の一般会計がどんなに苦しくても必要な額は確保していく、必要な特例措置は講じていくという考え方で臨みたいと私どもは考えております。
  39. 吉井光照

    吉井委員 次に、地方財政の健全化という観点から見ますと、まず、今回の新旧制度の取りかえというものは地方財政の健全化の観点から行われた、先ほどからのいろいろな答弁を伺ってもこれは当然だと思うのですが、これは具体的にどのようなことを意味するのか、こういった点はどうですか。
  40. 石原信雄

    石原政府委員 従来のように、交付税会計借り入れをして、それで交付税を特例増額するという方式でまいりますと、当然借入金の返済の問題がついてまいりますが、そのほかに、やはり受け取る側の地方団体とするならば、それは交付税として交付されるわけです。ですから、地方団体財政運営に当たっても、借入金によって交付税が賄われているという意識はどうしてもないのであります。それは無理なわけです。各団体には交付税として配分される。借り入れというのはあくまで国の段階で処理してしまいますから。その点、地方債の場合には、各地方団体の議会において地方債の議決が必要であります。そこで借入金の当否あるいは将来の財政に及ぼす影響等が十分論議される。その過程で地方財政の健全性確保についての論議も高まるわけでありますが、交付税会計借り入れはそういう場がない。もちろん国の場ではその論議が十分行われてきたわけでありますけれども地方団体の場になりますと、これは借入金による交付税なのか本来の交付税なのかわからないわけでありますから、どうしても財政運営の節度という意味でやはり問題が残るということから、今回借入金方式は切りかえた方がいい、このように判断したわけであります。  もちろん、もっと切実な話として、十一兆五千二百億円にも借入金残高がふえまして、これ以上ふやすということになると資金運用部の資金の方でついていけないという、よりせっぱ詰まった事情もあったわけでありますけれども、より基本的には、財政運営の節度、財政の健全性保持という見地から、これ以上借金を続けることは地方財政にとっても決して望ましいことではない、このように判断した次第でございます。
  41. 吉井光照

    吉井委員 今回の特例加算額の千七百六十億、この中には六十六年、六十七年に国に返済するところの三百億の精算額が入っているわけですが、これはどうして必要になったわけですか。
  42. 石原信雄

    石原政府委員 今回御提案申し上げております新しい方式は、ともかく特例措置については、基本的には、地方の方でいわばもらいっ放しということじゃなくて、あくまで交付税率三二というものを基本に置きながら、国と地方財政状況のもとで、地方財源に不足が生じた場合には特例加算をする、また状況によって、事情が許せば特例減額をして留保する、過去においても行った例が何回かありますけれども、そういったことをすることで、この特例措置によって国と地方財政状態を調整して、そうして地方交付税の安定確保を図る、こういうねらいで今度の新しい方式を御提案申し上げているわけです。  ですから、新しい方式は、そもそもいわゆる特例措置というのは、基本的には交付税率三二は変えないわけでありますから、特例加算したものは将来事情が許せばそれを返していく、またもし状況によって特例減額ということが行われれば、それはまた将来交付税会計に返してもらう、そういう意味のプラス、マイナスを想定しているわけでございます。  ただ、今回千七百六十億円の特例加算をするに当たりまして、従来、自治、大蔵両大臣の覚書によって約束しておりますいわゆる各種の臨時相当額、これについては過去の約束でもありますので、精算の際にこれを除外する、こういう扱いにしたわけでございます。したがいまして、過去の経緯によって地方がいわば請求できる部分、これを除いたものは今回の特例措置の本来の趣旨に沿って精算する、こういうことにいたしたところでございます。
  43. 吉井光照

    吉井委員 今回の特例加算の中にはいわゆる財対臨特の五百億が入っていますね。これは従来は一千億を超えていたものなんですね。財対臨特を大幅に減らして、しかも精算額というものをつくったのはどういう意味なのか。精算すべき三百億円は財対臨特とすべきではなかったのか、このような気もするわけでございます。そうしても財対臨特は八百億円で、従来に比べて少ない額となっているわけですが、この点はどうでしょうか。
  44. 石原信雄

    石原政府委員 いわゆる財対臨特相当額五百億円の考え方でございますが、御案内のように、いわゆる財対臨特は、利子所得で分離課税を選択したものについては住民税が課税されていない、所得税のみが課税され住民税が課税されていない、こういう事情がありまして、これについて、いわば住民税相当分を地方に還元すべきだという主張を我々しておったわけですが、この問題は本来財政の扱いじゃなくて税制上解決すべきだという議論が別途ありまして、私どもと大蔵省との間でなかなか結論が出なかったわけです。  しかし、そういう事実があることは間違いありませんので、そこで、昭和五十三年度からですか、この財政対策を講ずるに当たって、そういう利子所得の分離課税について住民税が課税されていないという事情を踏まえて、一定の金額を財政対策上の臨特として措置するという扱いがなされてきております。  率直に申しまして、過去の経緯を申しますと、分離課税による住民税相当額そのものがずばり財対臨特の額になったわけではございません。そのときどきの財政状況によりまして、国の財政に対して地方財政の方がより厳しいときにおきましては、その分離課税相当額以上の額を臨特として交付税会計繰り入れたこともございます。しかしまた、国、地方財政それぞれを両にらみしまして、国の財政が非常に厳しくなった時点においては、必ずしもその額がずばり措置されたわけではないということでございます。  五十九年度について申しますと、いわゆるその分離課税による住民税相当額、恐らくこれは一千億を超す金額になるであろうと思いますけれども、そういう事実が存在する、そういう事実に着目して特例措置を講ずるという点については合意を見たわけでありますけれども、金額については、国の財政状況が従来に比べて格段に厳しいというようなことから、何遍か折衝をいたしたわけでありますけれども、最終的には、そういう趣旨での財対臨特相当額として五百億円にするということで両大臣合意したわけでございます。  したがいまして、これはストレートに利子所得に対する住民税相当額として措置される額ではなくて、あくまでそのときどきの国、地方財政状況をにらんで、いわば折衝で決めてきた額であります。五十九年度におきましてはそういう意味で五百億という金額に落ち着いたわけです。もちろん私どもは、折衝の過程におきましてはさらに大きな額、前年度以上の額を要求したわけでございますけれども、残念ながら、五十九年度財政状況のもとでは五百億円ということで合意せざるを得なかったという経緯でございます。
  45. 吉井光照

    吉井委員 この精算額三百億円は、六十六、六十七年度一般会計に返すもので、一種のこれは借入金ですね。このようなものは六十年以降においても場合によってはあり得るのかどうか、この点はどうですか。
  46. 石原信雄

    石原政府委員 今回御提案申し上げております新しい方式においては、地方交付税の安定的な確保を図るために、必要がある場合には各年度それぞれ法律をもって特例措置内容を御審議いただくことになります。  六十年度地方財政状況がどのようになりますか、先般お示ししました参考試算では、少なくとも引き続き財源不足状態が続くことになっております。したがって、そういう状況であれば、五十九年度と同様地方債活用あるいは交付税、今回の方式による特例措置ということは当然御審議をお願いするようになるのではないか、このように考えております。
  47. 吉井光照

    吉井委員 この精算額は、従来の交付税特会によるところの資金運用部からの借り入れ一般会計からの借り入れというものに形を変えたものでしかないわけですが、そうなりますと、借り入れが依然ずっと続いていることになります。こういうことは借入金依存体質からの脱却といういわゆる健全化の趣旨に反するのではないか、こういう気もするわけですが、この点、どうですか。
  48. 石原信雄

    石原政府委員 今回の五十九年度特例措置額のうち、三百億円については将来減額精算しなければならない、そういう意味では確かに借り入れと変わりないじゃないか、こういう御指摘になるのだろうと思いますが、ただ、借入金の場合には、はっきり借り入れとしてその分について新たな利子負担を伴い、また、何といいましょうか、国、地方を通ずる財政の枠をはみ出して措置されるという格好になります。  今回のものは、将来返さなければいけないという点では同じでございますけれども、やはりこれは国の一般会計との間の特例措置として、一般会計から特例措置として繰り入れられますので、利子負担はございません。完全に一般会計負担での特例措置ということになります。それから、やはりこれは借入金と違いまして、一般会計財政の枠内で措置されるものである。そういう意味で、財政の健全性を守るという意味での一つの歯どめがかかっているという点で根本的に違うのじゃないか、このように考えております。
  49. 吉井光照

    吉井委員 旧制度特会借り入れは、その償還時に二分の一は国が負担するものだったですね。この三百億についても六十六、六十七年度の返済時には二分の一は国が負担する、このようにしなければ古い制度よりもやはり後退することになるのではないかと思うのですが、どうですか。
  50. 石原信雄

    石原政府委員 この特例措置額の将来の扱いについてどうするかということでございますが、私どもは、今回の新しい方式を設定するこの時点での国、地方のそれぞれの財政状況をにらんで、今回の特例措置についてはいわば全額交付税会計負担で精算するということにいたした次第でございます。地方財政の立場からすれば、これについては全部または一部を国が将来とも負担するという形の方が望ましいには違いないのですけれども、やはり今日の国の財政状況のもとでは到底そのような措置がとれない。それほど国の財政状況は厳しくなっているということのあらわれということも言えると思います。  なお、今回の措置との関連で申し上げますと、過去において、昭和四十年代において交付税増額特例あるいは減額特例が行われたことが何回かありますけれども、この時点ではいずれも交付税率、基本税率を変えないで、特例措置額というのは増の場合も減の場合も全額精算された。増額特例について国が一部を負担するというような措置がとられたのは五十年度以降のことでありまして、以前においては、借り入れ等の特例措置については全額交付税会計負担で後で精算されております。  そういった意味で、今回の措置は初めてではございませんけれども、何はともあれ、今の国、地方財政状況のもとでは、今回の特例措置額について国の負担を求めるということは到底できないほどに国の財政状況が厳しいものになっているということを御理解いただきたいと思うのであります。
  51. 吉井光照

    吉井委員 そこで、今回の特例加算の千七百六十億、この中には利差臨特相当額の九百二十五億と地域特例臨特相当額の三十五億が含まれているわけですが、これらは五十二年度の自治、大蔵両大臣によるところの覚書もある関係上、やはり今後も毎年出ると考えでいいのかどうか、この点、どうですか。
  52. 石原信雄

    石原政府委員 今回の新方式への移行に関連して、いわゆる臨時特例交付金というものは制度として廃止されたわけであります。ですから、今後はこういうものは出てまいりません。  しかしながら、附則第三条以下に規定する新方式によって特例措置が講じられる場合、その特例措置内容が、地方財源が不足し交付税特例加算しなければならない、こういうふうな事態が生じた場合には、今回と同様に、その精算に当たっては、過去の覚書に基づく臨特相当額は精算から除外する、こういう扱いになろうかと思います。
  53. 吉井光照

    吉井委員 そこで、地方財政財源不足額を補てんするための今回の新制度による交付税特例加算額が千七百六十億円でしかないわけですね。今後もこれが増加するということは、国が赤字である以上期待できないわけです。そうなりますというと、その不足額の補てんはどうしても建設地方債財源対策債の増発によらざるを得ないわけですが、事実、五十九年度建設地方債の増発によるところの補てん割合というものが七九・八%ですね。五十年度から五十八年度平均の四六・三%というものをはるかに上回っているわけですよ。こうしてみますというと、特会借り入れ地方団体地方債借り入れに変わっただけで、同じ借り入れというものが依然として継続するわけです。したがって、借入金依存体質からの脱却という健全化、こうした方向にはなっていないのではないか、このように考えられるわけですが、この点どうでしょうか。
  54. 石原信雄

    石原政府委員 今回の財源対策を講ずるに当たりまして、建設地方債活用をどうするのか、またどの程度にするのかということが一つのポイントになったわけであります。もちろん、地方財政の健全化のためには、交付税特会借入金依存を避けなければいけないと同じように、地方債依存も避けるべきだ、こういう考え方が当然出てまいります。  私どももなるべく地方債への依存を引き下げて、そして必要があるならば新方式による特例措置方式をより多くという気持ちで臨んだわけでありますが、従来は投資的経費、特に公共事業等の地方負担額については、御案内のように年度によっては九五%、五十八年度の場合には九〇%の充当率建設地方債活用したわけでございます。また一方、国の予算におきましては、御案内のように投資的経費については一〇〇%建設国債に依存しております。このように、今の財政環境のもとでは投資的経費についてはある程度公債を活用せざるを得ない。地方について言えば、国に準じて建設地方債活用せざるを得ないということもまた否定し得ない事実であります。  そこで私どもは、極力地方債への依存を避けたいという気持ちと、現状では地方債依存から全く脱却することができないという現状の前に、ぎりぎりの選択としまして前年度よりも依存割合を引き下げる、すなわち建設地方債への振替の充当率を引き下げるということで、今回は八五%にする、五十八年度の場合九〇%であったものを、八五%に引き下げるということで、その範囲で建設地方債活用を図るということにいたした次第であります。  ですから、たびたび御答弁申し上げておりますように、財源不足トータルに対する地方債割合は、従来の平均値よりも高まっております。それは財源不足額そのものが小さくなったからでありますけれども、しかし内容的には、過去の例よりも、いわゆる財源対策債と申しましょうか、建設地方債活用の度合い、充当率は引き下げているという点を御理解いただきたいと思います。
  55. 吉井光照

    吉井委員 近年地方団体公債費の比率というものが非常に上昇しております。例えば、その比率が二〇%を超している市町村の数が、五十五年度には二百三、五十六年度は三百六十、五十七年度になりますと、これが五百四十五と急増しております。また、起債制限団体が五十七年度には十六、五十八年度には二十五、このような数字が出ておりますが、この数字に間違いはないですか。
  56. 津田正

    ○津田政府委員 最近五十七年度地方財政の決算がまとまって、地方財政白書をまとめたわけでございますが、五十七年度の数字で公債費負担比率の分布状況について申し上げます。  問題のある一五%以上という数字を拾ってまいりますと、一五%以上二〇%未満で九百三十九団体、二〇%以上二五%未満が四百七団体、二五%以上三〇%未満が百五団体、三〇%以上三五%未満が二十三団体、三五%以上になります団体が十団体でございまして、この傾向は逐年比率の高い方に寄っておるような状況でございます。
  57. 吉井光照

    吉井委員 今御答弁いただいたわけでございますが、このように公債費比率が高い団体や起債制限団体というものが増加をしておる、この理由は何ですか。
  58. 石原信雄

    石原政府委員 地方財政全体としての公債費比率が上昇してきております理由は、何といいましても、基本的には昭和五十年度以降の財政危機に当たりまして地方債を大幅に活用した、公共事業の積極的な増額あるいは地方単独事業の積極的な実施に当たって地方債を大幅に活用した、あるいは地方税の減収についていわゆる減収補てん債を発行したなど、いろいろな形で地方債を大幅に発行した結果がこのような形であらわれてきている、このように思います。  それからまた、公債費比率は、同時にその分母になります一般財源伸びが悪いと率が高くなるわけであります。したがいまして、最近における一般財源伸びの鈍化ということも公債費比率上昇の一つの要因、このように考えております。
  59. 吉井光照

    吉井委員 そこで、今後地方財政財源不足額というものをやはり建設地方債の増発でカバーせざるを得ない、こういう状況のようですが、こうしたことは、このような公債費比率の上昇に一層拍車をかけることになるのではないか、また地方団体が地域住民のために行う事業をしにくくするのではないか、このような気がするわけですが、この点はどうですか。
  60. 石原信雄

    石原政府委員 その点は御指摘のとおりでありまして、たびたび御答弁申し上げておりますように、地方財政の現状あるいは将来を展望した場合に、私どもとしては、なるべくならば地方債への依存を引き下げてまいりたい、このように考え、努力をしてきているのであります。  ただ、先ほど来るる御説明申し上げましたように、地方財政対策に当たりましては、国の財政との関連もありまして、ある程度建設地方債活用をせざるを得なかったわけでありますけれども、基本的には、今の地方財政の体質を考えますと、マクロとしての地方債への依存は極力引き下げていかなければならないということは間違いございません。御指摘のとおりであろうと思います。
  61. 吉井光照

    吉井委員 このように、今後の新制度によるところの特例加算は、国の赤字財政のため、一般会計から交付税特会への繰り入れが困難なためにほとんど期待ができないわけです。その結果、どうしても地方債を増発させて、そして地方財政の借金を増加させるものでしかないのではないか。つまり、地方財政の健全化の観点から見ても、この新制度は旧制度に比べてどうしてもすぐれているとは思えないわけです。制度改善とは言えないのではないかというような気さえするわけでございます。  確かに、交付税特会借り入れでは、地方団体において必ずしも自己の借金として意識されないために、歳出合理化が徹底しないということがあります。これは先ほどおっしゃったとおりです。これを地方団体の直接の借金にすることによって、一部の地方団体に見られるところの甘えといいますか、そうしたものを断ち切るという効果は期待できるかもしれません。しかし、現在の地方財政状況は、もう既にこのような新制度を受け入れられなくなっているのではないかという気もするのですが、こういう点、どうですか。
  62. 石原信雄

    石原政府委員 新しい方式が従来の方式に比べてすぐれているかいないかという基本の議論については、立場立場によっていろいろ見方があると思いますが、先ほど来申し上げておりますように、私どもは、従来の方式で借金を、交付税特会借入金を続ける、借入残高をさらに引き続きふやしていくということは何としてもできない。今の国の財政地方財政、両方をにらんだ場合、これは地方財政のためにも決して適当なことでない、このように判断したわけであります。  新しい方式については、今の財政環境のもとである程度建設地方債活用せざるを得ない実情にありますので、胸を張って地方財政健全化に万全を期したとなかなか言いにくい面もあります。しかし私どもとしては、従来の方式よりも財政の健全化に向けて一歩踏み出したという評価はいただけるのではないか。そして、この新しい方式で今後地方財政の健全性を守り、また財政運営の円滑化を期するということでやってまいりたい、このように考えております。  その場合におきましても、六十年度以降地方債活用の面ではさらに制約条件が強まるということもまた間違いございません。公債費比率は傾向的に上昇してきておりますから、それだけ地方債活用の余地というか依存度合いは低めざるを得ないということは、私どもも十分認識して今後の財政運営、財政対策を考えていきたいと思っております。
  63. 吉井光照

    吉井委員 次に、抜本的な地方財政対策の必要性についてお尋ねをしておきたいと思うのですが、地方財政は、先ほどからたびたび御答弁をいただきましたように、五十年度以降毎年度巨額の財源不足を生じまして、その対策というものは、毎年度交付税特会借り入れ建設地方債の増発に頼ってきたわけでございます。つまり、地方交付税の税率の引き上げを行うべき事態になっているにもかかわらず、それをしないで、地方団体に対するところの財源保障は不安定のままに経過をしてきたわけでございます。しかも今回の改正で、その財源保障の方法は、特例措置という名のもとに一層不明確といいますか不安定といいますか、そのようなものになってしまった気もするわけでございます。  したがって、今後地方財政が悪化を続けることが予想される中で、このような新しい制度はあと何年ぐらい続く見通しなのか、この点をちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  64. 石原信雄

    石原政府委員 今回の新方式につきましては、改正法案の附則第三条でも規定しておりますように、まさに当分の間こういう方式でいきたい。当分の間ということは、何年までということが限定できないものですから当分の間という表現にさせていただいたわけでありますが、一つの目標年次としては、御案内のように「一九八〇年代経済社会の展望と指針」におきましては、国の財政再建の目途を昭和六十五年度までと置いております。そういったことを前提にした国の方の財政の将来展望についての仮の計算なども示されております。ということもありまして、今回交付税特会借入金の棚上げを昭和六十五年度まで行うことにしたわけです。  したがって、私どもは、今回の新しい方式による特例措置というものは、一応この六十五年度までに、六十六年度以降償還を開始する、それまでに財政体質改善について最大限の努力をするということを一応の想定にいたしております。しかし、明確に何年度までということは申し上げかねる状況にありますので、ここ当分の間この方式でやらしていただきたい、このように考えている次第でございます。
  65. 吉井光照

    吉井委員 恐らく国の財政再建ができるまでということになると思うのですが、今おっしゃったように、仮に六十五年度までとしても、なお六年間このような不安定な制度が続くことになるわけです。そうなりますと、憲法の地方自治の本旨という点から見て、地方団体に対する財源保障の方法がこのように毎年度国の予算編成が終わらないとわからないという不明確、不安定なもので本当にいいのかどうか。いずれにしろ、地方団体というのは、安定した財政の確保、これは当然です。非常に難しいとは思いますけれども、不明確、不安定のままでは非常に困るんだ、こういう意見もかなりあるようですので、その点はどうでしょう。
  66. 石原信雄

    石原政府委員 その点は御指摘のとおりであろうと思います。本来交付税制度が生まれたゆえんのものも、国税三税の一定割合地方財源として確保し、あとは各地方団体がみずから徴収する地方税その他の収入によって、いわば自前で安定した行財政運営ができるようにというのが今日の制度理想であり、建前であります。そういう意味で、国の財政危機財政難というものの影響を受けないで地方が独自に行政運営ができるようになってほしい、そうあってほしいという気持ちは私どもも強く持っております。  ただ、残念ながら、五十年度以降の財政を見ておりますと、公共事業にしても、社会保障にしてもあるいは教育制度にしても、直接間接に国の財政危機の影響が地方財政にはね返ってきております。そして、一番ポイントになります交付税制度を中心とする国と地方の間の財源見直しの面におきましても、どうしても国の大変な財政危機の影響を遮断できない、これまた事実でございます。  したがって、私どもとしては、ここしばらく国の財政危機が続くようでありますが、その影響が地方に及ぶことをできるだけ遮断して、少なくして、地方が安定した財政運営ができるように、まさにそのために各般の特例措置を講じていかなければならない。本来ならば、そんな特例措置など講じないで、いわば自動、安定的に地方財政運営できるような仕組み、これが理想だと思うのでありますけれども、残念ながら我が国の現状におきましてはそれができない。どうしても国の財政危機の影響が強く出てこざるを得ない。そこで、その影響を少しでも緩和する、そして地方の安定した財政運営を可能ならしめるということに心がけていかなければならない、このように感じているところでございます。
  67. 吉井光照

    吉井委員 今後の国、地方財政環境につきましては、先ほどからるるお話もございましたように、不透明な部分が大変多いということは周知のとおりでありますが、十五年も、悪くするとそれ以上も地方財政の自主性、自律性を失わせることのないよう、また失わせるようなことをしていていいのかどうかという問題。また、地方自治が空洞化してしまわないよう、先ほどおっしゃったように、この際もう少し安定的な、独立性のある地方交付税等の財源保障制度というものをつくるべきじゃないか、そのための検討も開始していいのではないか、このように思うわけですが、この点、どうですか。
  68. 石原信雄

    石原政府委員 私どもの気持ちといたしましては、五十九年度から交付税特会借入方式を転換したことでもありますし、今後の地方税財政を展望して、どのようにして地方財政の安定ある運営を確保していったらいいのか、こういった点につきましては、でき得べくんば地方制度調査会の場等で少し掘り下げた議論をお願いし、今後の改革の一つの手がかりにしたい、このような希望を持っております。  ただ、何分にも、今日の事態の打開に当たりまして、地方税源の充実強化その他地方財源の充実という問題を度外視して解決がなかなか図り得ない。そして、その問題をまたさらに延長していきますと、税制抜本改正の問題とどうしても切り離せない、こういうような事情がございます。したがいまして、税制改正の問題をどう取り扱うのかという問題と、今日の地方財政の不安定な状態を安定化する問題は、どうしても切り離せない問題ではないか、このように感じております。  しかし、税制改正につきましては一定の枠がはめられております。増税をしないという、この大枠の中で地方財源充実強化を図るにはどうしたらいいのかといった点も含めて、私どもの希望としましては、地方制度調査会の場などで掘り下げた御議論をお願いできればありがたい、こんなふうに感じております。
  69. 吉井光照

    吉井委員 では次に、地方交付税の測定単位の数値の補正についてお尋ねしたいのですが、地方交付税の基準財政需要額の算定におきまして、測定単位の数値の補正、これは何のために行われるのか、この点について。
  70. 津田正

    ○津田政府委員 御承知のとおり、普通交付税の算定につきましては測定単位掛ける単位費用、これが原則でございます。この単位費用の積算におきましては、標準団体あるいは標準的な行政規模というものを想定いたしまして、それに所要の一般財源を算定しておるわけでございます。  例えば人口でございますが、市町村でございますと十万人の市を標準団体としておる。しかしながら、現実の財政運営、財政需要から見てみますと、例えば人口五十万の市におきましても市長さんは一人、八口三千人の町村におきましても町村長は一人というような実態がございまして、人口一人当たりに換算いたしますと、人口規模の小さい町村の町村長さんの給料を負担する人口一人当たりの額というものと、五十万で一人の市長さんを抱えております市の人口一人当たりの給与の負担額というものは変わってくる、そこいらを補正しなければならない。  あるいは、御承知のとおり、地域の都市的な態容によりまして、勤務地による給料上の調整手当の差もございます。あるいは積雪寒冷地帯になりますと寒冷地手当というものが出る。こういうようなものを標準団体を基礎にしながら客観的、妥当な補正をしていかなければならないというようなことで、各種の補正を使いまして単位費用を補正しておるような状況でございます。
  71. 吉井光照

    吉井委員 では、どのようなものが補正事項として取り上げられるのですか。
  72. 津田正

    ○津田政府委員 今申し上げた段階の規模によりますものが段階補正と言われるものでございます。それから、寒冷地手当等におきましては寒冷補正、さらに都市的な態容によります行政需要の差におきましては態容補正というものを使っております。  そのほかにおきましては、例えば水産業関係でございますと、内水面といわゆる海での漁業者との行政需要が違う、そういうものを種別補正というもので補正する。さらに、同じ漁業者でございましても、遠洋漁業に行く漁業者と沿岸漁業の従事者、これにつきましては、沿岸漁業の方におきましては例えば人工魚床を設置しなければならない、遠洋漁業はそういう必要がないということで、測定単位につきましても、同じ漁業就業者をとりながら就業者の実態に即しまして補正をしなければならない、こういうような各種の補正を用いまして算定しておるわけでございます。  ただ、この場合問題は、一方におきまして、そのような補正をやりますと非常に算定が複雑になるというような批判もございます。反面におきましては、単に測定単位掛ける単位費用というものでは実態に即さない、こういうような意見もございまして、複雑性を避けながら具体的妥当性を追求していくというようなことで、私ども補正係数をいろいろ検討して採用しているわけでございます。
  73. 吉井光照

    吉井委員 そこで、地方交付税の補正については、毎年地方団体の意見を聴取するほか、各団体の財政需要と地方交付税の算定結果を比較調査をするなどによって、実際に即した改善を図るべきではないか、このように考えるわけですが、この点、どうですか。
  74. 津田正

    ○津田政府委員 御指摘のように、私ども、毎年度交付税の算定結果、それから決算が出てまいりますとその決算の状況というものを比較検討しております。さらに、毎年度地方団体関係者から改正要望意見というものを聴取しまして、個々の団体におきます具体的な財政需要、交付税の算定、これも客観性を保たなければならない、こういう要請もあるわけでありますが、一々チェックいたしまして、補正係数の手直し等、あるいはひいては測定単位のとり方がこういう今までのものでいいのかどうかというような検討を進めておるわけでございまして、今後におきましても引き続き毎年度検討を続けてまいりたい、かように存じます。
  75. 吉井光照

    吉井委員 そこで、現在職員給与費については毎年度改正された統一単価を用いて算定されているわけですが、また、小学校費及び中学校費については、教職員の年齢差、こうしたものを財政需要額に反映させる経常態容補正が設けられているわけですが、職員給与費にかかわる決算額と交付税措置額との格差が大きいわけです。これは、主として人口の増減の停滞している県においては、人口急増県に比較して、職員の新陳代謝が進まないために平均年齢がどうしても高くなってくる、職員の平均給料額は必然的に高くなると考えられるがどうかという問題、また、これらの実態が財政需要額にどのように反映された仕組みになっているのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  76. 津田正

    ○津田政府委員 小中学校の需要を算定する際に、御指摘のとおり、秋田県だとかそういうようなところは教員の年齢構成が高くなる、ところが人口急増の千葉県、埼玉県等では、どんどん生徒がふえ、そのために新たに教員を採用するということで年齢構成が低い、当然給与差が出ておるわけでございます。そういう意味におきまして、現在のところ経常態容補正によってその補正をやっております。  それがどの程度実態に即するかということでございますが、一面の考え方とすれば、先生御指摘のとおり、一般的に、秋田県等生徒増がないところは、新規採用ができないために必然的に年齢構成が高くなるという要素がもちろんあるわけでございますが、余りそれを追いかけますと、新陳代謝をやらないということが出てまいるわけでございます。どうしても新陳代謝が進まないという点は考慮しますが、やらないということをまた交付税上見ることもやはりいかがかというような点もございまして、態容補正係数等の設定に当たりましては両面考えながらやっておるわけでございます。  そこで、給与単価の算入率でございますが、五十八年度におきましては九三・五%、小中学校ともそのような状況になっております。
  77. 吉井光照

    吉井委員 あわせてお尋ねしたい点は、赤字ローカル線の廃止の問題でございますが、これについて大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  78. 田川誠一

    ○田川国務大臣 赤字ローカル線の廃止については、これまでもいろいろ地方からの御要望もございましたし、各党の方々からも御意見を承っております。この問題が地方の住民生活、地域の経済などに及ぼす影響は非常に大きいと私は存じております。  自治省といたしましては、この対策の実施に当たりまして、地域の実情や関係地方公共団体の意見を尊重し、地元の理解と協力の上に立って進めることが必要である、このように考えております。この対象となる地域は現在過疎化がかなり進んでおりまして、その上にまたもしローカル線の廃止が実施されるようになりますれば、その上過疎化が促進するというような状態にもなりますので、関係省庁とも、このような状態にならないようになっていかなければならない、このように思っております。
  79. 吉井光照

    吉井委員 こうした赤字の原因ですが、いろいろな取りざたがされておりますが、結局過疎によるところの人口の減少、これが大きな原因ではないかと思います。しかし、そうした内容をいろいろ考えてみますと、共通にその被害を受けるのは通勤者でありまた通学生、学校に通っている子供です。路線が廃止をされてバス輸送になる、そうなればどうしても運賃が大幅増になってまいります。それでなくても家計に占めるところの教育費負担は年々増加をしているわけです。せめてこうした通学生だけでも何らかの救済措置が、もし廃止された場合講じられないものか。  なるほど、先ほどからもいろいろ論議をいたしましたように、交付税で過疎に対するところの手当ては行われてはいるわけですが、このローカル線の廃止は、膨大な赤字を抱える国鉄にとっては当然かもしれませんけれども、一方で、第三セクターのめども全然つかない、そうしたことによって廃止をされる地元にとっては、いずれにしろ深刻な問題と言わざるを得ないわけでございます。したがって、地元では何とかこれを存続してもらいたい、営業係数も高めたい、こうしたことで全く涙ぐましい努力をしているわけでございますが、こうした努力にもやはり限度がございます。したがって、こうした赤字ローカル線廃止地域に対して何らかの特別な配慮はされないものか、この点、大臣どうですか。
  80. 田川誠一

    ○田川国務大臣 今お話の中にありましたように、第三セクター方式でローカル線を維持していこうという地域もありますし、現にスタートをしているところもございます。地方自治体とよく連絡をとりまして、またその声ができるだけ反映されるように、運輸省とも連絡をとってやっていかなければならない。代替的な交通機関、例えばバスで代替するといいましても、北海道の雪の深いところで果たしてそういうことができるかどうかわかりません。そういうことを考えますと、地域によっては必ずしも国鉄の案をそのままやっていくのもどうかと思う、そういうところもあると思いますので、今後そうした点は極力地元の意見、地元の要望が聞き入れられるように私は努力をしてまいりたいと思います。  また、今の時点で廃止をされなければならない、どうしてもやめなければならないという地点に対しては、何らかの措置を講じていかなければならないと思っております。
  81. 吉井光照

    吉井委員 山口県にも岩日線という対象路線があるわけですが、これは既設の岩国市と錦町の間に続いて、今度は錦町から島根県の六日市間、この区間も既に線路を敷設しさえすれば使える、このような状態になっているわけです。この区間は十六・六キロ、その工事費が約百億かかったと言われておりますが、こうした路線、すなわち第二次廃止対象赤字路線が全国には三十二線ある、このように聞いておりますが、国鉄はこの大きな投資、これをどうしていくのか、このまま放置をするのか。地元においては、国鉄は大きな赤字を抱えておると言いながら、これだけの大きな投資をして全然使わずにそのまま放置されておるといういろいろな声もあるわけです。また、路線が廃止をされれば現在使用中の路線も当然線路を取り払われるわけでございますが、こうした路線の跡地、こういったものは一体今後どのようにしていくのか、その点について運輸省の考えをお尋ねしたいと思います。
  82. 岩田貞男

    ○岩田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から岩日北線の例が挙がって、今後の取り扱いをどうするのかという御質問がございましたので、その例をもとに御説明をさせていただきます。  一般的に、岩日北線もそうなんですけれども、ほかに佐久間線とかいろいろ同じような凍結路線がございます。実はこれらのAB線で凍結されているものにつきましては、実際に今動いている国鉄の地方交通線についても転換を図っていこうということでございますので、それらとの整合性を図る上から工事を凍結しているわけでございます。  それで、こういった凍結路線について今後どうしていくかということでございますけれども、例えば三陸鉄道が四月一日から動いているわけですけれども、これは転換対象路線と、新しく建設中であって、かつ凍結されていたものを合わせて運営をしていこうということが地元の対策協議会で決まり、また工事が再開され、運営されているような例でありまして、私どもとして、そのようにしてください、あるいはしては困りますとかいうあれはないのですけれども、一定の線区の、転換対象線区の転換のために設けられる地元協議会でいろいろ御議論がなされる、その御議論なされた結果、凍結路線をどうするかというような話も出てくるわけでございまして、そのような対策協議会の状況を見ながらこの取り扱いを考えていきたいと思っております。
  83. 吉井光照

    吉井委員 今も御答弁いただきましたように、このような赤字路線については当然地元の意見聴取を行うわけでございますが、もし地元のいろいろな御意見の中で、正当性等があればこのまま存続をするということもあり得るものかどうか。また、地元調査のスケジュール、また第二次路線についての運輸大臣の承認時期はいつごろになるのか。この点が今まで非常にあいまいになっておる嫌いがありますので、この際見通しをはっきりさせていただきたい。この点、どうですか。
  84. 岩田貞男

    ○岩田説明員 お答え申し上げます。  実は、特定地方交通線第二次選定線を先生御質問されているのだろうと思いますけれども、五十七年の十一月に国鉄の方から選定承認の申請がございまして、そろそろ一年半近くたっているわけでございます。その間に一つの手続のステップとしまして各道県さんから御意見をいただく、それを踏まえながら厳正に審査をするということでございますけれども、今まだ全部御意見をいただいていない状況でございます。こういうような御意見をいただきまして、いただいた段階においてそれをよく見まして、関係法令に照らしてなるほどということがあればそれは承認はできない、あるいはほとんどの御意見の中には、存続をされたい、関係法令にこだわらない非常に幅広い御意見もございまして、そういうものについては我々としては関係法令の規定を遵守して判断せざるを得ないということでございます。  それから、今後のスケジュールというお尋ねがございましたけれども、今関係道県が十七あるのですけれども、十をちょっと上回るくらいの県知事さんから御意見をいただいている状況でございまして、今後このような残された道県につきましても早急に御意見をいただきたいと考えており、そのための説得を行っているところでございまして、いつどのような状況になるかということはまだ決めておりません。  ただ、実は昨年の秋にこれらの意見の取り扱いに関しまして全国知事会さんとお約束をしております。それは、これらの意見に基づいて、必要に応じては意見内容についてペーパーだけじゃなくて詳しく関係道県さんから内容を聞き、あるいは必要があれば現地に赴く、現地の調査をするというお約束になってございますので、これについては誠実に守っていきたいと思っております。
  85. 吉井光照

    吉井委員 次に、地方団体への負担転嫁についてお尋ねをしておきたいと思うのですが、近年、国の財政の悪化に伴って、地方団体の事務事業を廃止しないで、国の補助金を廃止したり、また補助率を引き下げたり、また補助対象範囲を縮小したりするケースや、また本来地方団体が権限や責任のない事務事業について、新たに地方団体負担を課するケースが増加しているわけです。  このような負担転嫁は五十九年度には特に目立つわけですが、最も問題なものはやはり交付税特会におけるところの借入金利子負担でございます。先ほどちょっと答弁いただいたわけですが、地方負担を恒久化したことと考えてもいいのか。それと、地方財政審議会の昭和五十九年度地方財政についての意見も、「借入金方式が国の地方財源の保障責任を果たすために講じられた措置であることにかんがみても」これは「適当でない。」このようにしているわけですが、この点についてお尋ねしたいと思います。
  86. 石原信雄

    石原政府委員 交付税特会借入金利子負担についてのこれまでの折衝の経緯、私ども考え方、五十九年度の決着に至った背景などについては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。地方財政審議会などでも、これは本来国が持つべきだという地方の側に立っての御意見をちょうだいしたわけでありますけれども、五十九年度財政環境のもとで、国の大変な厳しい財政状況のもとで、全額利子を国が従来どおり持つということが実現しなかったのは、私どもまことに残念に思っております。  ただ、この利子負担の問題は、他の補助金制度等におけるいわゆる負担転嫁論とはちょっと違った、地方財政対策における財源配分論の延長というふうに私どもは理解しております。内容としては、このような結論にならざるを得なかった点については私どもまことに残念に思っておりますけれども、これは地方財政対策の中の財源配分の一つの議論の延長ではないか、このような理解をしているところでございます。
  87. 吉井光照

    吉井委員 次に、国民健康保険においては、医療保険制度の改革に伴って補助金の補助率の大幅引き下げが行われたわけです。地方財政審議会も、これに伴うところの地方団体への財政負担の転嫁についてこれをすべきではない、このようにしておりますが、国保財政では、退職者医療制度が創設されても保険料の負担増加や一般会計繰り入れが必至と思われるが、厚生省、この点についてはどうでしょう。
  88. 阿部正俊

    ○阿部説明員 お答え申し上げます。  国民健康保険の市町村における状況といいますのは、医療費というものが非常に変動が激しいと申しましょうか、変動する要素を非常に多く抱えた財政需要でございますので、これの動向いかんというふうなもの、それから各市町村における保険税の課税の対象になります所得の状況といったふうなもので保険料負担水準が決まってまいりますので、全国のすべての市町村についてどうなるかということを申し上げるのはなかなか難しいわけでございます。  それはそれといたしまして、全国的に見まして、今回の医療保険制度の改革の一環としての国民健康保険制度改正によります市町村国保に対する影響というふうなものを見てみますと、退職者医療制度の創設だとか、あるいは医療費の適正化といいましょうか、かなり強力に推進するというようなことにしておりますので、そういったふうな点を考慮いたしますと、市町村国保の保険料負担水準といいますのは、全体的に見まして、従来見込まれまする保険料負担水準以上にこれをさらに大幅に引き上げるというふうなことにはならないというふうに私どもは判断しておるところでございます。
  89. 吉井光照

    吉井委員 さらに、児童扶養手当の地方負担二割導入がございます。この問題は、国保の補助金の補助率引き下げと一緒に臨調の第一次答申で指摘されて以来三年越しの問題であったわけですが、ついに五十九年度予算で地方負担導入という形で決着がつけられたわけでございます。  地方財政審議会は、「児童福祉施策のあり方について幅広く総合的に検討すべきであり、安易に地方負担を導入すべきではない。」このように言っておるわけですが、どうして地方負担が導入されたのか、この点についてお尋ねします。
  90. 土井豊

    ○土井説明員 従来、児童扶養手当制度につきましては、母子福祉年金の補完という位置づけでございまして、母子福祉年金と同じように全額国庫負担という形で今日まで運営してまいりました。  先ほどお話がありましたように、数年前からいろいろな議論がございまして、この制度につきまして抜本的な改革を行いまして、そういうことを前提制度のあり方というものを今後どうするかということについての考え方政府として取りまとめたわけでございますが、従来の年金の補完をやめまして、独自の福祉施策として今後は運営していきたい、そういうふうに制度の改革を現在国会に法案としてお願いをしているわけでございます。  したがいまして、福祉制度の一環ということになりますと、国と地方がともに利害を分かち合うというものでございますので、都道府県に対して二割の地方負担を今後はお願いしたいというふうに考えている次第でございます。
  91. 吉井光照

    吉井委員 従来、地方団体は、この問題について、児童扶養手当は年金と同じ性格のものであるから国が全額負担するのが当然である、このようにしてきたわけです。また、福祉施策の一環というのであるならば、類似の児童手当との整合性をとってそのあり方を検討すべきだ、このようにしてきたわけですが、今回の改正でこれらの問題はどのようになったのか。児童扶養手当の性格を何ら変えることなく、また児童福祉施策の中での位置づけを明確にすることもなく、単に安易に地方負担を導入しただけではないか、このような気がするわけですが、この点、どうですか。
  92. 土井豊

    ○土井説明員 児童福祉施策全般の中でこの制度をどう位置づけるかという問題は、従来も、今後とも引き続く大きなテーマであると考えておりますが、私どもとしましては、従来の、この制度のお手本でありました母子福祉年金の受給者が現在は九百人程度になっております、また年金制度の今回の改革で、昭和六十一年度以降これがなくなるというような状況を踏まえまして、この手当としてどうあるべきかという観点から制度見直しを考えたわけでございます。  したがいまして、確かにいろいろな議論があるということは承知しておりますけれども、今回の改正によりまして、年金の補完を切り離して福祉的な施策というふうに考えて、そういう案で国会に御審議をお願いしているということでございます。
  93. 吉井光照

    吉井委員 地方団体は、この問題が予算編成の最終段階で、三年越しの地方団体の反対意見に十分耳を傾けることなく突如として決定されたということに非常に強い不満を持っている、このように聞いているわけです。  では、事前にどの程度の協議が行われたのか、この点についてはどうですか。
  94. 土井豊

    ○土井説明員 五十八年の春から約一年近くかけまして、児童福祉問題懇談会というもので、この問題についてあるいはこの問題を含めまして広く児童福祉施策のあり方につきまして御議論をいただきました。その際、この構成メンバーの中に地方団体関係のメンバーの方にも参加をしていただきました。また、その具体的な議論状況等につきましては、全国知事会等関係の深い地方団体の代表の立場におられる方々にもいろいろと御意見等を伺いながら審議してまいりまして、必ずしも突如として出てきたものではないだろうというふうに私ども考えております。  なお、いろいろ議論がございましたのは御案内のとおりでございますが、最終的には地方団体の御了解も得たというふうに私どもは理解をしておるところでございます。
  95. 吉井光照

    吉井委員 時間も参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、地方への負担転嫁は、国の財政改善されない限り六十年度予算でもまたさらに増加してくることが予想されるわけでございます。中曽根総理も、去る二月二十九日、地方制度調査会で、地方転嫁は自粛する方針であると言明されているわけですが、自治省としても、このような地方転嫁の増加に歯どめをかけるためにひとつ何らかの措置を講ずるなりしていただきたい、このように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  96. 大石千八

    大石委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後三時二十一分開議
  97. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田正勝君。
  98. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 冒頭に大臣にちょっとお尋ねをしたいと思います、やっぱり気になることがあるものですから。  御承知のとおり、二階堂さんが副総裁に御就任というような段階になりました。現在このことを大臣としてはどのように受け取っていらっしゃるか、感想をお聞きしたいと思うのであります。
  99. 田川誠一

    ○田川国務大臣 自民党の副総裁の人事の問題につきましては、私から見ますと他党のことになりますので、あれこれ批評じみた感想を述べるのはどうかと思いますけれども、御質問でございますから簡単にお答えをいたします。  今度の副総裁人事は、昨年末、中曽根自民党総裁が田中氏の影響力を排除する声明を出されました。この声明は、単に自民党内部だけのことではなく、広く世間に発表したものだという認識を持って私は見ていたのでございます。また、自民党の内部におきましても、そういう意味から、いろいろ今度の大事について議論もあるように承っております。そういうことでございますので、私どもも、その声明から見ますと何かちょっと釈然としない、そういう面もあるわけでございます。  そこで、私どもは同志やまた自民党の中でそういうことを心配していらっしゃる方々と相談をいたしましたが、とにかく、人事がこうなったからすぐ総裁声明が無効になったり踏みにじられるというような事態になるとは思えない、だからもうしばらく様子を見たらどうだろう、こういうようなことでございますので、私どももしばらく様子を見ようというような段階にあるわけでございます。
  100. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 よくわかりました。  そこで、いま一つ気になりますのでお尋ねしておきますが、田中氏の影響力を排除するという声明でございますけれども、それは中曽根さんが言ったんだからおれは知らない、こう言ったらまあそれまでですが、大臣といたしましては、やっぱり中曽根内閣の閣僚の一人でありますので、この田中氏の影響力の排除という意味は、田中さんお一人のことなのだろうか、田中派、俗に言う田中軍団といいますか、そういうものをも指しておると思っていらっしゃるか、どちらでございましょうか。
  101. 田川誠一

    ○田川国務大臣 私は他党の者ですから、なかなかその排除声明の真意もよくわかりませんけれども、一つの自民党の中の派閥の影響力とかということではなくて、一審有罪を受けた方が、またいろいろ批判のある方が依然として責任をとらないで政治に直接影響力を持つという意味から、田中元首相の影響力を排除すべきであるというふうに私はこの声明を読んでいるのでございます。
  102. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、この問題の最後にお尋ねをしておきたいと思いますが、若干釈然としないところがあります、いましばらく様子を見てみたい、他党の問題でありますので、こういうのがいろいろ並びましたね。そこで、御答弁を承っております私にとりましては——なるほど党は別個ですね。党は別個でありますが、事国会の中でということになりますと、統一会派をおつくりになっておるわけでありますから、その他党のというのは、何かしら私の方から言うと釈然としない感じがいたしました。  そこで、しばらく様子を見てみるということでありますが、様子を見るというのはどういう意味なのでありましょうか。副総裁として、例えば総裁選挙に威力を発揮する、あるいはその他政治的な影響力を及ぼすというような行為に出たときにという意味なんでしょうか。そのしばらく様子を見るというのは、どういう意味なんでしょう。
  103. 田川誠一

    ○田川国務大臣 最初に他党のことですからということをわざわざ断りましたのは、政党と政党との一つの信義やマナーでございまして、そういう言葉を使わないでいきなり意見を申し上げるというのは、いやしくも公党としてどうかと思う、という意味から申し上げて、当然関心を持つのが当たり前だというふうに思っております。  それから、様子を見ようということは、先ほど申し上げましたように、総裁声明は単なる自民党だけに向けられたものではないということでございますし、また、田中氏の影響力を排除すると言っている以上、それにもとるようなことがあれば、連立を組んだ我々としてもこれはそのまま放置していくわけにはいかない。私どもと自由民主党との間に結ばれた政策合意というものがございまして、これは連立あるいは統一会派の一つの憲法みたいなものでございます。そういうものにもしもとるようなことがあれば、私どもは考えを新たにして対処しなければならない、こういう意味でございまして、しかし、それも私一人で判断をするものではございませんで、公党たる以上、私の行動はやはり我々の同志に相談してやらなければいかぬ、そういう意味で、様子を見ようというのは、排除声明と今回の二階堂問題が何らか矛盾を来すというようなことになれば黙っていることはできない、こういうことでございます。
  104. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 その、矛盾するようなことがあれば黙っておることはできない——私は、政治倫理確立の問題で勇敢に旗を掲げて進んでおるのは大臣の党ではないかと、非常に高く評価をしているのです。でありますだけに、そういう場合には黙っちゃおらぬ、こういうことの決意ですね。その決意のほどはいかん、こういうところですが、いかがですか。
  105. 田川誠一

    ○田川国務大臣 まあ、こういうことは先に大上段に振りかぶって申し上げることではなくて、心にひそかに決意をしているというところに重みがあると思うのでございまして、これからのことについて、ああなったらこうするとかいうようなことは公の席でまだまだ申し上げる段階ではございません。私どもは、いろいろな政治行動に移す重要な問題については、なるべく予言をしないでぱっとやるというところに小さな政党のやりやすい面がございますので、この点は御勘弁していただきたいと思います。
  106. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大変いい音が出てまいりまして、私も非常に感じておるのでありますが、こういうことは前もって予言すべきことでもない、当然であります。当然でありますが、しかし、世間にわかる決意の表明もまた必要ではないか。したがって、断じて我慢できないというような場合は大臣のいすなんかに便々としてはおらぬよ、それだけの決意はおれは持ってるぞということが言えますか。
  107. 田川誠一

    ○田川国務大臣 私は今回の連立には実は消極的でございまして、私の政治生活の中でこうした局面になるということは夢想もしておりませんでした。しかし、閣僚として引き受けた以上はその職務を全力を尽くしてやるというのが政治家であ る。ですから、私は就任早々新聞社からいつやめるんだというふうに随分質問もされたし、現在も会うたびにそれに似たような質問をいろいろ受けますけれども、私は、今は自分の与えられた自治大臣、国家公安委員長としての職務を全力を尽くしてまいるつもりでございます。
  108. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この問題は終わらしていただきます。  それでは、具体的な質問に入りますので、事務当局の方からの御答弁で結構でございます。地方財政状況について何点かお尋ねをしてまいりたいと思います。限られた時間でありますし、前もって質問の内容も通告をしてあることでございますし、十分な御研究ができておるはずでありますから、手際よく、よくわかるように御説明をお願いしたいと思います。  まず第一点は、地方公共団体昭和五十七年度の決算で見た地方財政の特徴をお示しいただきたい。
  109. 津田正

    ○津田政府委員 幾つかの特徴があると思いますが、まず第一点としましては、決算規模の増加率が非常に低いということ。昭和三十年以来の低い伸び率で、非常に緊縮型であるということが第一点の特色かと思います。それから、収支の面におきましては引き続き七千億円ばかりの黒字になっております。しかしながら、地方債あるいは交付税特別会計借入金が約四兆七千億円増加している、そういう背景のもとでの黒字というようなことも考えなければならぬ。  さらに、そういうような表面的な収支状況よりも財政構造という面で申し上げますと、幸いと申しますか、五十七年度については給与改定の見送りがございました。そういう意味で人件費の伸びは少なかったわけでございますが、公債費伸びは一四・二%という二けた台の伸びを続けておりますし、歳出の中に占めます義務的経費の構成比が高まって財政の硬直化が進んできておる。以上が主要な特色かと思います。
  110. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 第二点は、都道府県それから市町村ともに黒字団体がふえてきた、全体に黒字基調にあると言われておりますが、その原因は何でしょうか。
  111. 津田正

    ○津田政府委員 都道府県、市町村ともに確かに黒字団体がふえておるわけでございますが、まず五十七年度の特色的な要因としましては、先ほど申しました給与改定を見送るというようなことで、歳出の抑制、節減、合理化が図られておるわけでございます。それから借入金地方債自体伸びておるわけでございますが、これの一つの大きな原因でございます地方税の大幅な減収に対しまして減収補てん債の発行、あるいは国税三税の減少に対処するものとして交付税特別会計借入金による措置というもので黒字が維持された、かように考えております。
  112. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今お話がありましたように、五十七年度の決算は、人事院勧告の凍結に伴います人件費の抑制、ゼロシーリングに伴う国の公共事業の抑制、そして、五十七年度末の補正予算で講じられました地方税減収補てん債一兆一千六百八十六億円の発行に伴って黒字基調になったものであります。つまり給与凍結という異常な措置を除いてみると、残りは借金によって黒字基調を保った、変な言葉でありますけれども、そういうことになると言えるんじゃないかと思うのでありますが、いかがですか。
  113. 津田正

    ○津田政府委員 おっしゃるとおりでございまして、表面的な黒字基調というものと、その背景として、借入金等による補てん策に支えられ、しかも財政構造的には硬直化が進行しておるということかと思います。
  114. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 五十年以来の巨額の財源不足に対応いたしまして、その多くを交付税借り入れ地方債の増発に求めてきたために、地方公共団体の借金体質の増大と財政の硬直化が、ただいま仰せられたとおり進んでおるわけであります。  そこで、地方債の残高でありますが、昭和五十年度の十一兆三千六百三十一億円に比べまして、五十七年度は三十五兆六千五百三十六億円と、実に三・一四倍にはね上がっております。交付税借り入れ関係は、同じく五十年度で一兆二千八百七十九億円が、五十七年度は九兆六千二百六十一億円で、七・五倍というはね上がり方であります。  また、公債費の比率でありますが、昭和五十二年度五・五%のものが五十七年度八・五%でありまして、年平均の増加率とするならば一五%の伸び率であります。  また、義務的経費の比率でありますが、同じく五十二年度四七・三%が、五十七年度四七・二%でございまして、これも年平均の増加率といたしましては九・三%も伸びてきております。  このような現状をどう見ていらっしゃるか、御説明を願います。
  115. 石原信雄

    石原政府委員 五十年度時点で、第一次石油ショックの後、国も地方も大変な財政危機に陥りました。そこで五十年度につきましては、突然の環境変化であるということで、国も地方も基本的には公債の増発あるいは交付税会計借り入れ、基本的には借り入れによって対処したわけでございます。  その後、私ども地方財政の体質が国に比べても弱いという基本認識のもとに、何とか基本的な制度改正によって地方財源の強化を図りたいということを引き続き主張してまいったわけでありますけれども、同時にまた、国の財政地方財政以上に厳しい状況が続いておりまして、残念ながら、今日までいわゆる税制改正を含む財政の抜本的な改革ができないままに、結局は各年度の対策が地方債の増発あるいは交付税会計借り入れという方法で対処せざるを得なかった。それが今日の地方債残高の増加の原因であり、また交付税特別会計の借入残高の増加の原因であった、このように認識しております。
  116. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大変正直な御答弁で、結構だと思います。  今おっしゃいましたように、五十年度以来の地方財源不足に対しまして、私どもはかねてから、地方交付税法六条の三の二項の規定に基づきまして、地方財政制度の改革かもしくは交付税率見直しといったような抜本的な改革を行わなければだめだと主張してまいりました。自治省においてもそのように主張されたようでございますが、しかしながら、その改革を行わずに、借金借金でその場をしのごうとしてきた、そのことが今日の地方財政の硬直化を招いたものと我々は判断をしております。こういう政府の政策の失敗について、政府はこの責任をどうおとりになるおつもりでありますか。
  117. 石原信雄

    石原政府委員 私どもの立場から政府全体の政策の当否について申し上げにくいわけでありますけれども、ただ、五十年度以降、我々は我々なりに、何とか基本的な改革を実現していただきたいということで、毎年度地財対策の策定に当たって要求し続けてまいったわけでありますが、残念ながら、その後の我が国の財政を囲む環境が年々むしろ悪くなってきておりまして、我々が期待したような基本的な改革はできなかったわけであります。さらに言いますと、その前提としては、我が国の税制のあり方等についてのいろいろな考え方の違い等もあったと思います。  いずれにしても、これまで大規模な税制改正は行わずに、主として歳出見直しによって何とか財政収支の不均衡を解消したいという努力を、国の場合も地方の場合も続けてきたわけでありますけれども現時点においては必ずしも所期の成果が上がってない、引き続き我々としてはこの方向努力せざるを得ない状況にあるというふうに申し上げたいところでございます。
  118. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今お話しのように、歳出の抑制等いろいろ努力を図ったけれども環境が悪くて基本的、抜本的改正ということには及ばなかった。  そこで、この五十九年度地方財政計画において、歳出の徹底的な抑制を行ってまいられましたけれども、なおかつ一兆五千百億円の財源不足が生じております。来年度以降の財源不足額はどの程度と見込んでいらっしゃいますか。
  119. 石原信雄

    石原政府委員 六十年度以降の地方財政収支見通しにつきましては、現時点で申し上げるには余りにもいろいろな前提条件が不確定であります。  そこで、先般お示しいたしましたように、国の財政の中期展望において想定しております前提条件を単純に当てはめた場合の地方財政の姿を見ますと、いわゆる予備枠をとらない場合のケースでまいりますと、六十年度地方財政収支は今年度と同額の一兆五千百億円の財源不足、要調整額になります。六十一年度はこれが七千億円になり、六十二年度はなくなる、こういう結果が出ております。しかし、初めに申しましたように、前提についてはいろいろ不確定な要素が多い、特に歳出の想定について、率直に申しましてかなり無理な面があるのじゃないかという感じがいたします。  そこで、いわゆる予備枠を想定する、国の試算と同様な見地に立って、一・五%、三%、四・五%とそれぞれ予備枠を考慮した場合の要調整額は、六十年度が一兆九千七百億円、六十一年度が一兆六千四百億円、六十二年度が一兆七百億円、いずれも一兆円を超す実質的な財源不足状態が続くというのが一応の計算の結果でございます。  私どもは、この時点で正確な収支見通しについて御答弁申し上げるにはいささか自信がないのでありますけれども、ただ、はっきりしていることは、ここ当分の間、地方財政収支はなお厳しい局面が続くであろうということは申し上げられると思います。
  120. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、三十年代のような高度経済成長が再び来るとかあるいは地方の税収が大幅に伸びるというような事態でもない限り、今お話しのように、今後毎年二兆円前後の財源不足が生ずるものと我々も予想をいたしております。政府も予想しております。そこで、政府はこの場合これに対してどう対処されるのか、そのことについてお答えいただきたいと思います。
  121. 石原信雄

    石原政府委員 私どもの対処の基本的な姿勢といたしましては、与えられた環境条件の中で地方財政の健全性を守っていくためにばどうしたらいいかということでありまして、まず第一に、歳出見直しをさらに徹底して行う、その努力を続ける。これは今日の政府の大方針でございますので、その方向での努力を続けざるを得ないと思います。  しかしまた、地方財政の特質から歳出の抑制にもおのずから限度があります。したがいまして、その場合には交付税あるいは地方税を含めた地方一般財源の確保という面であらゆる努力を傾注しなければならない、このように考えております。
  122. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、毎年二兆円も財源不足が出るという、このような地方財政の危機を救う道というのは、地方財政制度の抜本的な改革と積極的な経済改革への転換というものがない限り、ほかに今考えられるものとしては五つしか方法がないのではないかと思うのであります。  その第一は財政再建の時期を大幅におくらしていく、二つ目は地方債を大幅に発行していく、三つ目は地方交付税増額をしていく、四つ目は歳出をさらに抑制する、五つ目は増税する。政府はこの五つの方法のうちいずれを講じようと考えていらっしゃいますか。
  123. 石原信雄

    石原政府委員 先生御指摘の点は、まさにこれからの財政政策の上で争点になる事柄ばかりでございまして、このうちどれを政府としてとっていくんだということを、今の時点で明確にお答えできる状況にはございません。私どもといたしましては、ともかく与えられた財政環境のもとで最大限地方財政の健全性を守るための努力をしなければならない。  そういった意味で、非常にいろいろ制約、苦しみはありますけれども、まず第一に歳出の抑制、見直し、これは政府全体としてさらに努力を続けざるを得ないと思います。そうして、それだけでは十分でないという状況でありますので、地方交付税を初め地方一般財源の確保に努力をしなければならないと思うわけです。その場合に、地方債の大幅発行については、先ほど来地方財政の現状について御答弁申し上げておりますような状況でございますので、地方債への依存はなるべく引き下げていきたい、私どもはその方向努力していきたい、このように考えております。  また、最後の増税の問題、これは政府全体の大方針の問題でありまして、政府増税をしないで今の財政危機を乗り切るという方針を基本にしておりますので、これは我々としては申し上げるわけにはいかない要件でございます。  いずれにしても、大変難しい状況のもとにおいて選択の道というのは非常に狭いと思いますけれども、我々はその与えられた環境の中で地方財政の健全性を守るための最善の道を模索していきたい、このように考えております。
  124. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、今私が申し上げました細目について、一つずつ詰めてみたいと思うのであります。  財政再建の時期をおくらせるということにつきまして、五十九年度赤字国債脱却という財政再建計画が政府の政策の失敗によりもろくも崩れ去ったように、地方財政制度の抜本的改革あるいは積極的な経済政策への転換ということがない限り、財政再建の時期をたとえ昭和六十五年度までに延長したといたしましても、再建は極めて困難であると思いますが、いかがでございますか。
  125. 石原信雄

    石原政府委員 確かに、昭和六十五年度までに財政収支の不均衡を完全に解消するということにつきましては、非常に多くの困難が待ち受けているものと思います。それまでに再建が可能であるということを、自信を持って申し上げるような状況にはございません。ただ、我々としては政府全体の目標として「一九八〇年代経済社会の展望と指針」に示されておりますように、ともかく六十五年度までを一つの期間として、その間に財政体質改善に最大限の努力をしていくということではないかと思います。したがいまして、この時点で、それまでに再建が可能であるということを申し上げられるような状況にはない、ひたすら努力をするということしか申し上げられない状況にございます。
  126. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 だんだんと心細くなってまいるのでありますが、昭和六十五年度までというのは今回の地方交付税法の改正に当たりましての大方針の一つでございますね。ところが、財政再建いけるかどうかようわからぬ、自信はない、しかし努力をするのである。この努力というのは、だれでも言うのであります。  そこで、その次の問題としては地方債を増発したらどうかということです。この問題が残っておりますが、公債費の比率、いわゆる歳出の構成比は、昭和五十九年度の地財計画では一〇・七%でございます。一〇%を超えていくという状態でありまして、しかも、いわゆる地方債の消化を、主として民間の金融機関にゆだねているのですね。今回の五十九年度地方財政方針政府の資金比率は幾らかというと、たしか四八%になっておると思います。そういう民間の金融機関に求めておるという状況では、自治体の信用力あるいは財政力から見ましても、もう限界に達しているのではないのでしょうか。したがって、地方債をこれ以上発行できますか。
  127. 石原信雄

    石原政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、最近の地方財政公債費比率が逐年上昇しております用地方財政の体質という面から見ますと非常に心配な状況にあります。したがいまして、今後の地方財政のあるべき姿としては、極力公債依存の低下を図っていく、地方債への依存を極力引き下げていくということでなければならないと思います。しかしながら、投資的経費の確保の面で、それを全額一般財源で必要な財源を確保するということもまた現実的に不可能でありますから、ある程度は地方債を節度を持って活用せざるを得ない、このように考えております。  それから、ただいま地方債資金の消化面でいろいろ問題があるではないか、限界に来ているのではないかという御指摘がございました。五十九年度地方債計画におきましては、先ほども指摘がございましたように、五十八年度に比べますと、民間等の資金を大幅に減らしまして政府資金を大幅にふやしております。そういった意味では資金構成はかなり改善を見ております。しかし、それでも政府資金だけの比率で申しますと四八・五%でありまして、公営企業金融公庫資金を含めましても六割ちょっとという状況でございますから、理想からいえばまだまだ民間資金への依存は高いという見方もできると思いますけれども、ともかく、私どもは五十九年度地方債計画の策定に当たりましては、政府資金の増強に最大の努力を払ったつもりでございます。  それから、現時点での民間資金による地方債の消化でございますけれども、これは完全に実行されております用地方債の引き受けが行われなかった、地方債が消化できなかったというケースは一件もございません。しかし、これから引き続き民間資金による地方債がふえていきますと、やはり心配なような事態が起こらないとも限らない。そこで、五十九年度地財対策を決めるに当たりましては、自治、大蔵両大臣の覚書の中で、民間資金による地方債の消化について、金融の責任官庁である大蔵大臣もこれに全面的に協力する、両大臣が協力して円滑な消化を図るということを確認いたしております。
  128. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、これは仮にでありますが、地方債の増発で財源不足に対応していくという場合、これまでの地方債の増発による財政措置が続いた結果、公債費負担が急増しておりまして、公債費負担比率が危険ラインと言われております二〇%を超えておる団体が既に三百六十団体、これは全体三千三百の一一%であります。これらの団体については地方債依存がもう限界にあるという状況でありますが、これを一体どうなさるのでございますか。既に危険ライン二〇%を超えた団体三百六十団体、地方団体全部の一一%、これはまさにもう限界にあると思いますが、この状況をどうするつもりですか。しかも、これ以上の地方債の増加は、全地方団体の三分の一以上がこの危険ラインに達すると予想いたしますが、それでありましても地方債の増発というのを今後も続けていくおつもりでありますか。
  129. 石原信雄

    石原政府委員 これまでのようなテンポで地方債の発行を続ける場合に、全団体の三分の一以上のものが公債費比率が二〇%以上になってしまうのではないかという御指摘でございます。この点は確かに、地方債の発行のテンポと一般財源伸びとの相関でございますけれども、その危険はなきにしもあらずであります。  私どもは、公債費比率が二〇%というのは財政運営上極めて危険な状態でありまして、それなるがゆえに地方債の発行についてこれを制限する一つのラインとしておるわけでありますから、地方団体の三分の一以上がそういう状況に陥るというような事態は何としても避けなければいけない。そういった意味で、地方債活用についても節度を持ってこれから臨んでいかなければいけない、このように考えております。  なお、既に現在二〇%以上の公債費比率になっている団体が先生御指摘のように全体で十数%になっております。これらの団体につきましてはいろいろな事情があります、原因があります。その各団体の公債費比率が上昇した原因というものをよく分析いたしまして、その公債費比率を引き下げるように、事業の実施の抑制でありますとか経常経費を含めた歳出見直し、節減、これによって財政体質改善を図るように指導してまいりたい、このように考えております。
  130. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に、同じ細目でありますが、地方交付税増額ということについて触れられました。この地方交付税国庫支出金増額の問題でありますが、国家財政自体が多額の赤字国債を抱えまして財政再建の途上にある中で、地方交付税国庫支出金の大幅増加が果たして可能であるでしょうか。自治省はこのことについてどういう見通しをお持ちでございますか。
  131. 石原信雄

    石原政府委員 率直に申しまして、国の財政収支試算などを手がかりに今後の国の財政を展望いたしますと、地方交付税あるいは国庫支出金について大幅な増額を期待するということは不可能に近いと思います。  特に国庫支出金につきましては、いわゆるマイナスシーリングによってこれまで毎年度総額を抑えられてきております。新聞報道等によりますと、六十年度についてもこのマイナスシーリングを引き続き実施する、こういう方針のようでありますから、国庫支出金については今後とも非常に厳しい状況になるのじゃないか、厳しい状況が続くのではないかと思います。  同様に、地方交付税についても、今回御提案申し上げております新しい特例措置方式一般会計のいわば枠内でこれを実施するわけでありますから、国の一般会計全体の財源事情が厳しければ、この特例措置の額もおのずから制約される、非常に難しい局面になる、こういうことは否定できないと思います。しかしながら、私どもといたしましては、ほかの財政状況地方税状況とかそのほかの歳入状況あるいは歳出全体の状況をにらみまして、地方財政収支を補てんし得るように、地方団体財政運営に支障を生じないように、必要な交付税の確保には最大限の努力を傾注していきたい、このように考えております。
  132. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この国と同様な手法で、地方自治団体に対しまして自治省の方からゼロとかマイナスシーリングというようなことが指導できますか。
  133. 石原信雄

    石原政府委員 今日、我が国の内政上の非常に大きな課題となっております行政改革あるいは財政の立て直し、これは国、地方を通ずる大きな目標でございます。したがいまして、国の予算において歳出の抑制方針がとられている以上、地方財政についても基本的には同一の基調で財政運営を指導せざるを得ない。そういった意味で、私どもは五十九年度地方財政運営に当たりましても、国と同一基調に立って歳出の徹底した見直しを行っていただきたい、そして行政改革を実行していただきたい、このような御指導を申し上げているところでございます。  もちろん、地方財政内容、行政の内容というものは、国とは違いまして住民の日常生活に密着したものが多いわけでありますから、その節減合理化といいましてもおのずから限度がある、限界があるということは我々も十分承知しております。しかし、そういった限界を前提としつつも、財政運営の姿勢としましては、国と同様に極力歳出見直し、抑制するという、こういう基本的な方向財政運営を行っていただくように御指導を申し上げているところでございます。
  134. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 自治省といたしましても、地方自治団体に対してゼロシーリング、マイナスシーリング、国と同様に歳出の抑制に努めるようにという指導をしておるということであります。  さてその歳出の抑制でありますが、国の支出の地方への肩がわり、一つの例をとって言いますならば、児童扶養手当、これを地方へ転嫁していく、公共事業地方負担の増加などというものがあるのでありますが、国の方でそういうことを進めていることや、地方での民間委託など、この行政改革をやろうと思いましても、国が逆にそれをとめておる、とめると言ったら語弊があるかもわかりませんが、給食等の問題にいたしましても、国の施策がそれを阻害しているというような状況を見ますと、地方における歳出の抑制というのは当然不徹底にならざるを得ないのではないかと思いますが、いかがでありますか。
  135. 石原信雄

    石原政府委員 私どもも、国に準じて地方歳出見直し合理化、効率化を徹底していただくように御指導申し上げているわけでありますが、ただ、個々具体の措置になりますと、いわゆる必置規制の問題等がネックになり、必ずしも地方の行政改革がスムーズにいかない、その原因が国の施策にあるという面がなきにしもあらずであろうと思います。  御指摘のありました事務事業の民間委託、いわゆる民間活力の導入、こういった面につきましても、省庁によっては必ずしも行政改革の方向に沿っていないような考え方を持っておられるところもあります。これにつきましては、私どもは、今日行政改革の推進は国、地方の共通の課題でありますから、その阻害要因を除外するように、具体的な問題がわかればそれを指摘して関係省庁に協力方を要請してきております。今後も同じような姿勢で、少なくとも国が地方の行革を阻害することのないように努力してまいりたい、このように考えております。
  136. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間が足りませんのでその点の念押しは避けておきますが、今までずっと質問してまいりましたけれども、これも無理だ、あれも難しいだろうということばかりの連続でございます。  大臣、そういたしますと、結局最後に残る手段は五つ目の増税しかないのじゃないかということになるのですが、この地方財政の危機を救う道というのは、政府の施策としては、今までの四つもだめ、難しいということになれば、もう増税によるしかないということになりますけれども、この増税について自治省としてはどうお考えでございますか。
  137. 関根則之

    ○関根政府委員 地方税の長期的なあり方につきましては、戦後もう相当長い期間を経過しておりますけれども歳入中に占める地方税割合は、昭和五十七年度でもわずか三六%というところにあるわけでございます。地方自治の進展を図ってまいりますためには、その根幹であります自主財源としての地方税の増強というものが必要であるという基本的な認識は持っております。したがって、将来の地方自治を強化していきますためにも、地方税の拡充強化ということにつきましては、私ども引き続き努力をしていかなければならぬ基本的課題であるという認識でございます。  ただ、もちろん現在の国、地方を通ずる財政危機を克服いたしますための方法といたしまして、現政府は「増税なき財政再建」の基本理念を堅持する、こういう方針に立っておりますので、私どもといたしましては、全体として租税負担率の上昇を来すような税制上の新たな措置は基本的にはとらない、こういう「増税なき財政再建」の考え方に即しまして対処せざるを得ないと考えております。
  138. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 非常に大事な問題でありますから、これだけは大臣にお答えいただきたいと思います。  今の問答をお聞きになりまして、最終的にお答えになりましたことは、難しい、難しい、困難である。しかし、臨調から出ております「増税なき財政再建」、この道は守らなければいかぬ、政府方針であります、したがってこれを守り抜く覚悟であります、こういうふうに事務当局はお答えになりましたね。そこで、その総責任者であります大臣は、この「増税なき財政再建」ということを守り抜くために、地方税においても国民の租税負担率の上昇をもたらすような増税はしないと確約ができますか。
  139. 田川誠一

    ○田川国務大臣 国民の租税負担率が上がらないように、極力努力していかなければいかぬという固い決意を持っております。  自主財源を確保する一つの道でございますけれども、やはり非課税措置というものを見直していかなければならぬということも、なかなか難しい問題ですがやっていかなければならない問題だと私は思うのです。従来、こうした過去の非課税措置を見直そうとしていろいろ問題が出てきますけれども、いろいろな反対も出てきてなかなか実現できない。これは地方税ばかりでなく、国全体もそうじゃないかと思うのですね。ですから、先ほど来お話がありましたように、地方財政の立て直しをやっていくには、同時に国の財政も立て直しをやっていかなきゃできないことでございます。国の財政を立て直していくのもなかなか難しい問題がある。例えば、三Kと言われる問題も解決しなければならぬという宿命になっているけれども、いざこれに手をつければ一方から反対が出てきてなかなか抜本的な改正ができないというところに、国の財政の再建が遅々として進まない理由があるのじゃないか。  ちょっと長くなりましたけれども、そういう国、地方を通じて今までなかなか難しい厚い壁を、党派を越えてぶち破っていく努力をしていかなければならぬ。一遍に全部ぶち破るということは難しいかもしらぬけれども、少なくとも風穴はあけていくことをやっていかなければならない。そういう面で、私は地方自主財源を確保する意味でいろいろのやり方があると思うのです。その一つの方法として、地方税のいわゆる増税、国民の負担率を高めない方法として、今まで非課税になっていてもうそろそろ見直していいじゃないかというところは、やはり勇気を持って見直していかなきゃならぬ。相当な反発があると思うのです。反発はあるけれども、それを押してやっていくことが必要ではないか、このように思っております。
  140. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。その決意を揺るがないものにして現実のものにしていただきたいと思っております。  次に、この地方交付税制度の改革という問題について何点か質問をさせていただきます。  地方財政は、昭和五十年度以降、巨額の財源不足状態が続きまして、今後もこの状態改善されそうもありません。このような状況の中で、政府は今回、資金運用部からの借り入れをやめて、交付税の不足分を毎年国の一般会計から法律によって補てんをする制度改正を行おうとしております。国の財政地方以上に苦境に立っておるとき、今回の改正によって、地方財政財源不足に対応して交付税総額の安定的確保が果たして可能となるでしょうか。
  141. 石原信雄

    石原政府委員 今回の制度改正は、御提案申し上げておりますように、従来の交付税特会借り入れによる特例措置にかえて一般会計の枠内での特例措置を行う、毎年度財政状況をにらんで、その具体的内容は毎年度法律をもってこれを定める、このようにいたしておるわけでありますが、確かに今の国の財政状態は非常な危機的な状態にあると言われております。そうした中でこの一般会計の枠内で必要な特例措置を確保していくということ、これは非常な努力を要することであろうと思います。  しかし私どもは、今回このような方式を御提案申し上げている以上、地方財政の運営に支障のないように必要な交付税総額は確保するという考え方で、そういった決意でこれからも臨んでまいりたいと思っております。
  142. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ただいま局長さんの決意のほどは承りました。だがこれはなかなか大変なことでありまして、国の一般会計からの補てん措置に変えたという今度の改正によりまして、国の乏しい一般会計財源をめぐって国と地方の激しい配分争いというのが毎年繰り返されることになると思いますが、いかがですか。そうなるんじゃありませんか。
  143. 石原信雄

    石原政府委員 結局、従来は資金運用部から短期の資金を借り入れ特例措置を講ずる、いわば一般会計の枠外でありましたからそれだけやりやすかったという面もあるのかもわかりません。しかしまた同時に、それなるがゆえに一般会計の枠を外れて交付税特会借入金が累増してきてしまった。その将来の負担償還ということを考えますと、本当の意味財政の再建にこれはならない、逆行するじゃないかということで今回の改正に踏み切ったわけでございます。  そうなりますと、先生御指摘のように、苦しい一般会計財源の枠内での特例措置でございますから決してこれは楽観できない、非常に厳しい議論をしながら必要な額を確保していかなければならない、そういう今後の見通しについては、私ども全くそのように考えております。しかし、今回の方式変更について我々は国庫当局とも合意いたしまして、その際に、交付税を安定して確保する、必要な交付税は確保するという大前提のもとで今回の方式変更に踏み切ったわけでありますから、私どもはこれは何としても確保していかなければならないし、またそれは、必要最小限度のものは確保に協力していただけるもの、このように考えております。
  144. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 地方自治団体の財政運営に支障をなからしめる、これが地方交付税の設けられている趣旨でございまして、安定した運営ができなくなるようなことはない、安定した運営ができるということが前提だ。その前提のもとで今度の改定に同意したのであるから、大蔵省は必ずや協力してくれると信ずるということであります。私も信じたいんです。だが、毎年これはなかなか大変なことになると思います。大変なことにならなければ結構であります。  さて政府は、今まで借りてまいりました交付税特会における資金運用部からの借入金の残高を国と地方で二分割する、同時に、五十九年から始まることになっておりました借入金償還を六十六年度以降に繰り延べるということにいたしました。しかし、借入金に伴います利子は毎年支払わなければなりませんね。  そこで、地方負担分にかかわる利子はおよそ一年間に三千七百億円ぐらいになろうと思います。この額は、借入金償還が六十六年度以降に繰り延べられたためにいわゆる利子は減っていかないわけです。ずっと払わなければなりませんね。この結果、五十九年度交付税総額が国税三税の三二%を割っている、現実に三一・三%という事態を招来したように、今後交付税総額は地方交付税率を下回ることになりませんか。三千七百億円、これは交付税率の実質的な切り下げを意味しておるのではないでしょうか。お答えください。
  145. 石原信雄

    石原政府委員 御指摘のとおり、今後交付税会計において負担すべき借入金の残高、五兆七千億円弱あります。それについての利子は、六十五年度までは据え置きになりますから、理論計算でまいりますと毎年度ほぼ四千億ほどになります。五十九年度については国庫金の先行繰り入れ等によって利子負担を軽減しているわけでございますが、いずれにしても、この元金借入残高に見合う利子は毎年度交付税の法定観から差し引かれます。したがいまして、その限りにおいて、その国税三税で現実に地方団体に配分される額を割り返しますと三二%を割り込むという事態もあり得るわけでありまして、現に五十九年度はそうなっているわけであります。  その点は我々も十分認識しております。そういう前提で五十九年度特例措置もいろいろ検討したわけであります。六十年度以降も利子負担するという前提で、最終的な交付税所要額がどうなるのか、特例措置の額をどうするのか、これを検討していくことになろうかと思います。
  146. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今お答えがありましたように、五十九年度からいわゆる支払いを始めようというまで、六十五年度まではずっと利子を四千億ぐらい払っていかなければいかぬ。ということは四、六、二兆四千億円、言うならば、いただけるはずの交付税の中からそれがカットされていくということになるわけでありまして、これは大変な負担ですね。  また、元金が減らないために、巨額の利子負担を払い続けるということはむだなことじゃありませんか。これは本来は地方自治団体がもらうべきはずだったものが、いわゆる交付税特会というような妙ちきりんな、制度改正をやらずに目前を糊塗してきたからこういうことになったのでありまして、むだなことだと私は思っております。国民に余計な負担を強いるということになるのじゃありませんか。だから、二度言うようでありますが、実質的な交付税率の低下ということを認めていくことになりはしませんか。
  147. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度以降は、交付税の法定額から利子相当額を控除した額が現実に地方団体に配分される交付税になりますから、御指摘のとおり、その限りにおいて現実の交付額は国税三税に対して三二%を下回るということになります。この点については、これまでもたびたび御指摘もあり御答弁申し上げたわけでありますけれども、私どもとしては、本来国が地方団体財政運営を保障する責務がある、財源保障を行う責務がある、この責務を果たすために交付税会計借り入れということが行われたわけでありますから、そのための利子は本来国が持つべきだという議論を繰り返し主張してまいったわけでありますけれども、残念ながら、今日の国の大変厳しい財政環境のもとで、地方負担分、交付税特会自身の負担分に見合う利子地方負担するということに決着を見たわけであります。  そこで、私どもといたしましては、その利子負担をした後の交付税の法定額で地方財政運営にどういう影響が出るのか、支障があるのかないのか、こういう点を検討し、必要があれば交付税特例措置を講ずる、特例増額を行う、こういう方式に今回変更しようということで御提案申し上げているところでございます。
  148. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 努力をされたことはよくわかりました。  そこで、この地方交付税特別会計の資金運用部からの借入金総額が十一兆五千二百億円、その半分の五兆六千九百四十一億円は地方が六十六年度以降払っていきましょうということになりましたが、国と同様でありまして、借金を後年度に先送りをいたしまして当面の負担軽減を図ったわけでありますが、将来、地方責任で果たして全額返済のめどがあるのでありますか。もし返済が困難という場合は一体どうなさるおつもりでありますか。
  149. 石原信雄

    石原政府委員 今回御提案申し上げております交付税法改正法案におきまして、六十六年度以降のこの返還額をそれぞれ法定いたしております。それによって六十六年度以降の地方財政の運営がどういう状況になるのか、その時点における財政全般がどうなるのかによって具体的な判断をしなければならないわけでありますが、私どもの期待といたしましては、今の時点ではこの借入残高を返還するには、国の財政もそうでありますが、地方財政余りにも厳しい状況にあるということで繰り延べたわけですが、しかし六十六年度以降になりますと、償還額は実額ですから変わりませんが、その返還するもとになります地方財政の規模あるいは地方財源の総量というものは経験的には相当大きな規模になっている、したがって、実質的な負担感といいましょうか、実質的な影響というものは現時点で返還するよりもかなり軽減されるのではないかという期待を持っております。  しかしながら、その時点になって我が国の経済、我が国の財政がどうなっているのか、これは多くの不確定要素がありますので、我々としては、その時点でも、これを償還しても地方財政の運営に支障がないような必要な措置をとらなければならない、このように考えております。
  150. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今のようなお答えをいただきますと、ははあ局長はインフレ期待論かなというような感じがするのですが、そんなことを言っておったら時間がなくなりますから、次に行かせていただきます。  毎年度一般会計から措置する特例措置の額は、どのような基準に基づいて算定していくのですか。これは毎年のことですからえらい心配でありますが、教えてください。
  151. 石原信雄

    石原政府委員 基本的には五十九年度の場合と同じような手順で特例措置額を決定していくことになると思います。すなわち、地方財政計画の手法に基づきまして各年度歳入歳出をそれぞれ積算いたします。そしてその結果生ずる収支の過不足、当分は不足状態だと思いますが、その収支不足額について、基本的には地方債活用交付税特例措置とこの二本立てで対応していくことになると思います。  その場合に、我々は地方債活用は極力抑えてなるべく特例措置の方を多くしていきたい、こういう気持ちでおりますけれども、各年度財政状況、特に国の方の財政状況によって我々の期待どおりにいけるかどうか、これは不確定な要素が多いのでありますけれども、手順としましては、投資的経費についてはまず建設地方債活用する、その活用に当たっても極力地方債は抑制するという方向活用を図っていく、そして残余について交付税特例措置を講ずる、こういう形になろうかと思います。
  152. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そうすると、これはちょっと確認をしておきたいと思いますが、毎年の歳入歳出はそれぞれ抑制をしてまいるのだけれども、なおかつ財源不足が出たという場合は、そのいわゆる不足額を運営に支障のないように確保するということは今約束できますね。
  153. 石原信雄

    石原政府委員 今回御提案申し上げております方式は、まさにその収支に不足が生ずればそれについて必要な措置を講ずるということを前提にしての制度改正でございます。したがいまして、私どもは必ず必要な措置を講ずる、このように申し上げたいと思います。
  154. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大変明確な決意表明でありまして、その意気でやってください。  五十九年度特例措置のうち、既往利差臨特、既往地域特例臨特、それから財政対策臨特、合わせて千四百六十億円は、今後とも特例措置として財源は保障されていくのですか。
  155. 石原信雄

    石原政府委員 今回、特例措置のうち、いわゆる将来精算しない分として千四百六十億円を決定したわけでありますが、この中身のうち、いわゆる利差臨特相当分、それから地域特例臨特相当分、これにつきましては六十年度以降の金額も一応計算がはっきりしております。したがいまして、今後五十九年度と同様の事態が生じますれば、その際は利差臨特相当額や地域特例臨特相当額は、既に決められております、計算上確定しております金額によって必要な措置が講じられることになっております。  ただ、いわゆる財対臨特につきましては、この措置を講ずる根拠として、利子所得について分離課税を選択したものに住民税が課税されていない、こういう事実に着目して、各年度財政状況に応じて、具体的には自治、大蔵両大臣折衝で金額を決めてまいりますから、これはあらかじめ幾らということは決まっていないのであります。したがって、この部分については六十年度以降の各年度状況によって両省の折衝の結果固まってくる、こういうふうになろうかと思います。
  156. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今お答えがありました利子配当所得の源泉分離課税、このいわゆる財対の臨特ですね、これに関連をしてお伺いをするのでありますが、この源泉分離課税を選択したことに伴います地方税の減収を補てんするために国が交付しておる額、五十四年から五十五年にかけては千三百億、五十七年が一千億、五十八年が千百億と、一千億円以上いずれもありましたのに、五十九年度は五百億円しか交付していないのでありますが、これは一体どうしてどかっとこう落ちたのでありますか。この例からもわかりますように、これら特定財源についても今後削減されていく可能性があるんじゃないのかなという心配がありますが、そうではないと言い切ることができますか。
  157. 石原信雄

    石原政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、利差臨特と地域特例臨特は、これは金額が決まっておりますから議論がないのですが、この財対臨特につきましては、過去におきましても必ずしもいわゆる利子所得の源泉分離課税を選択したものについて、それに対する住民税相当額をそのままこの財対臨特の額としたわけではございません。それが背景にありまして、その年度その年度財政状況によって金額を決めてきた、いわゆる財対臨特の額を決めてきたわけでございます。  年度によっては、例えば五十三年度あるいは五十四年度、このころは、そのときの地方財政状況を勘案しまして住民税相当額を上回る額が財対臨特として繰り入れられております。しかしまた、年度状況によっては住民税相当額を下回る額として決定されたこともあるわけでありまして、五十九年度の場合は、五十九年度財政状況のもとで種々議論の結果、住民税が課税されないというそういう事情も念頭に置きながら五百億というふうに決めたわけです。前年度千百億だったものを五百億に決めた。確かに私どもはこの折衝の過程では住民税相当額以上の額を確保したいということで大いに議論したわけでありますけれども、残念ながら、五十九年度の国の財政環境が格段に厳しいということで、五百億ということで最終的に合意せざるを得なかったわけであります。  ただ、この点について我々も折衝の過程で最も意を用いましたのは、この議論を残しておきたい、何としてもこの利子所得で源泉分離課税を選択したものについて、本来住民税の取り分があるというのか、住民税が現在課税されてないという事態についてやはり何らかの財政措置を残しておきたいということで、議論の結果五百億という金額を決めたわけであります。この過程では、こういった措置はもう国の今の財政状況のもとでは対応できないという議論もあったのですけれども、私どもは、やはり分離課税の問題がある以上はこの問題は何としても残したいということで、このような金額に落ちついた次第でございます。  なお、この問題は基本的には税制改正の方で解決さるべきものではないか、本来住民税が利子所得分離課税を選択した利子所得に対しても課税されるように制度を改めることが本筋ではないかということも論議しながら、財政措置としては今回のようなことに落ちついた次第でございます。したがいまして、私どもはこの結果については大変残念に思っております。前年度よりも半分以下になってしまったということについては大変残念に思っておりますが、五十九年度財政状況の中でこれで合意せざるを得なかったという事情を御理解賜りたいと思います。
  158. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ちょっとこれは予定外になりますが、どうも気になってなりませんので。  この源泉分離課税をいたしました、本来からいったら地方自治団体からおれのところによこせやというものですね。これは全国で一体どのくらいになりますかね。
  159. 関根則之

    ○関根政府委員 現在源泉分離課税をしているものについて住民税が課税できない一番の理由は、そもそもそういった利子が全部で幾らあるのか、それがつかめていないということが基本でございますので、したがって、現時点において正確な推計をせよと言われましてもなかなか難しいわけです。ただ、いろいろな前提を置きまして私どもいろいろ推計をいたしておりますが、一千億をちょっと超えた程度というふうに推計をいたしております。
  160. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは全く捕捉が難しい点があるのでしょう。預金にいたしましても、潜った預金がございますからなかなかつかみにくいと思いますが、今おっしゃった一千億円くらいはあるのじゃないかなといった分は、何兆円と見たのですか。
  161. 関根則之

    ○関根政府委員 全体の預金量につきましては国税の方で統計がございまして、個人預金の金融資産で三百兆をちょっと超すような数字が出ておりますが、そういうものをもとにいたしますが、その根っこの預金高だけの問題ではございませんで、その中には当然非課税貯金が二百兆ちょっとございますから、そういったものを除きまして課税預金だけをつかまえているわけです。  しかもそれを住民税に換算いたしますときには、その人の根っこの給与所得等がどの程度あるのかということを一応推計をいたしまして、それが各個人に大体階層別にどの程度利子分が上に乗るのかということを推計をいたします。それで、根っこの、例えば給与所得等が非常に高いところでは税率が非常に高くなるわけですね。県、市町村合わせれば一八%までいくわけです。低いところではわずか二%くらいだということでございますから、それを推計をして置いていきますので正確な数字が出ないということでございます。もとの預金量だけのことからストレートに答えが出てこない、そこに悩みがあるわけでございます。一応もとの預金量は、国税の方でつかんでおりますいろいろな統計の数値をそのまま使って推計はいたしております。
  162. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今回の特例措置の中で純粋に一般会計から交付をする三百億円、六十六年度以降法律により減額精算しなければならない今度一般会計から交付する三百億円ですね。これは六十六年から返していくのでしょう。それはなぜ返すのですか。その根拠は何ですか。それから、今回三百億とした根拠は何ですか。
  163. 石原信雄

    石原政府委員 今回御提案申し上げております新しい方式によるいわゆる特例措置額、これについては、プラスの場合においてもマイナスの場合においても、とにかく六十六年度以降精算する。その精算に当たっては、一応プラスのものは将来減額する、それから、当面は考えられませんけれども、もしマイナスというような事態があれば、それはマイナスは将来プラスする、いずれにしてもこれは全額精算を建前としております。  ただ、五十九年度について申しますと、今回特例措置額千七百六十億円のうち、将来減額精算すべき額をどうするかという議論の過程におきまして、いわゆる利差臨特相当額、これは過去において自治、大蔵両大臣が確認、約束しております額でございますから、この利差臨特相当額、それから地域特例臨特相当額、これについてはもともと地方に臨特として交付するということを覚書で確認しておったものでありますから、今回精算から除外する。それから五百億円については、いろいろ論議があったわけですけれども、分離課税を選択した利子所得に対する住民税が課税されていない、こういった事情をも踏まえてとにかく折衝で五百億と決めた、これも精算対象から除外するというふうに、除外するものが先に決まりまして、それで残ったものが三百億円ということでございます。  初めに三百億円が決まったのではなくて、特例加算額千七百六十億円が決まりまして、その中から、いわば従来の臨特相当額として精算対象から除外すべき部分として千四百六十億円が決まり、残り三百億円が将来精算する、こういうことになったわけでございます。  その三百億円を精算することにしたのは、ただいま申し上げましたように、今回御提案申し上げております新しい方式では、いずれにしても特例措置交付税会計責任において将来精算する、これを原則にするという考え方でございます。
  164. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そうしますと、結局、今後の地方財政財源不足に対して交付税総額の安定的確保というのはどうやら不可能に近いですね。結局、財源対策債というものの発行という、いわゆる形を変えた借金というものに頼らざるを得なくなるんじゃないかと思うのでありますが、いかがでございますか。
  165. 石原信雄

    石原政府委員 六十年度以降の地方財源不足額がどういう状況になりますか、まだ不確定要素が多いわけでありますけれども、いずれにしても、財源不足が生じますと、これについては現実問題として建設地方債活用とそれから今回の方式による交付税特例措置、この両方の方法によらざるを得ないと思います。  その場合に、建設地方債活用について、先ほど来申し上げておりますように、地方財政の体質ということを考えますと、私どもとしては、なるべく地方債による措置額を少なくして交付税による措置額を多くしていきたい、そのことが望ましい、このように思います。しかし、これは相手のあることでございます。国の財政状況との見合いで交付税特例措置も決めざるを得ません。そしてまた、国の方が投資的経費については一〇〇%建設地方債活用している。こういう状況のもとで、我々の方で地方債活用を極力抑えるといいましても、ある程度はやはり建設地方債活用せざるを得ない、地方債に依存せざるを得ない、このように思います。  繰り返しますけれども見通しとしては地方債活用をせざるを得ないと思いますが、その活用の度合い、地方債の依存の度合いは極力引き下げていきたい、これが今後の努力目標ではないかと考えております。
  166. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 地方債に頼ることをできるだけ少なくしたい、むしろ特例措置の方を大幅に措置してもらうように大蔵とかけ合ってみる、こういう決意のほどは結構なんでございますが、しかしながら、いろいろ聞けば聞くほど、どうもこれは特例措置なんというものを大蔵の方から取ってくるというのはますます困難だなあという感じがいたします。そうするともう地方債しかないという感じになってくるのですよ。  そういたしますと、前にも述べましたように、地方公共団体の借金財政体質がますます進行いたしまして、公債費比率二〇%の危険水準を超える団体が今でも三百六十団体もあるというこの現状の中で、地方債の発行ができる状態と思っていらっしゃいますか。それから、地方債の発行を地方団体ができぬようになってくれば政府が引き受けてやるわいということになるんでしょうか。財政投融資の資金が不足しているという中で、これまた政府はそれを保障できるのでしょうか。そのことについてお答え願います。
  167. 石原信雄

    石原政府委員 財源対策に対する措置としての地方債、我々としては極力これを引き下げていきたい、できるだけその分を小さくしたいと考えておるわけですが、しかし現実問題として、六十年度以降もある程度は地方債活用せざるを得ない局面になるんではないかと思います。  その場合に、しからばそのような地方債が果たして発行できるのか、消化できるのか、こういうようなお尋ねでございます。金額にもよりますけれども、私どもは、五十九年度状態あるいは六十年度以降想定される状況を念頭に置きながら、その額を極力小さくすることによって地方債の消化には支障なきを期したいと考えております。特に、地方債の消化の面でいつも問題になりますのは市町村でございます。都道府県はある程度財政規模も大きいし信用力もありますので、民間資金による地方債消化というのは従来からも比較的順調にいっておりましたが、市町村については、確かに財政規模の小さい市町村になりますと地方債の消化に困難を来す局面も考えられます。そこで、従来はいわゆる財源対策債について、一般市町村の場合は政府資金によってこれを引き受けるという方式をとってまいりました。  五十九年度、具体的にどうするか。これから資金の具体的な張りつけの問題になりますけれども、私どもといたしましては、五十九年度の場合も、いわゆる財源対策債のうち一般市町村分については全額政府資金によって消化していきたい、引き受けてまいりたい、そういった考え方は当然六十年度以降も堅持していきたい、このように考えております。
  168. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そうすると、財源対策債の発行ということは、また交付財源の不足を、言葉が悪いかもわかりませんが、利子つきの交付税で肩がわりするということでもありますね。地方自治団体に余計な負担を強いることになるんじゃないですか。いわゆる利子のない交付税をもらうんじゃなくて、利子のついた交付税をもらうというようなことになるのでありまして、そういうことは避けるべきじゃないか。地方公共団体の立場に立たなければならぬはずの自治省といたしまして、このことを何とも思いませんか。
  169. 石原信雄

    石原政府委員 いわゆる財源対策債は、本来であれば、地方交付税の額が十分確保されるような状態であれば、基準財政需要額に投資的経費を算入するという方法で投資的経費財源を確保すべきものであります。  ところが残念ながら、地方交付税の総額が我々の期待するだけ確保できなかった。そのために、いわばやむを得ざる措置として投資的経費の一部を地方債に振りかえる。しかし、その振りかえた地方債償還については、個々の団体の方針、政策によってそうしたんでなくて、国全体の都合でそのようにせざるを得なかった、地方団体にそういうふうにやっていただかざるを得なかったものでありますから、言うなれば、地方財政全体の責任で個々の団体の負担を吸収していくという意味合いで、その財源対策債元利償還につきましては、基本的には基準財政需要額にこれを算入していくという方法をとっているわけです。そういう意味で、確かに先生御指摘のように、それじゃ利子つきの交付税じゃないか、そういう見方もできると思います。  自治省はなぜ地方の立場に立ってそういう妙なものを断らないんだ、こういうおしかりかと思います。この方式をとったのが、五十年度年度途中でありましたが、五十一年度以降いわゆる財源対策債の発行を行っております。私どももなろうことならばこれは避けたい、本来、交付税というすっきりした形で投資的経費財源措置をしたかったのでありますけれども、残念ながら、今日の財政状況のもとで我々が期待するだけの、要求するだけの交付税が確保できなかったために、やむを得ずこのような方法をとった次第でございます。  五十九年度の場合も、我々は、理想論としては、望ましい姿としては、財源対策債というようなことによらずに、きれいに交付税措置したいという気持ちを持っておりますけれども、現実は我々の期待するような形になかなかできない、国の財政状態余りにも厳しいために、我々の期待したとおりの交付税の額が確保できなかった。そのために御提案申し上げておりますようないろいろな措置をお願いしているわけであります。  ただ、私どもは、どうしても個々の団体に迷惑はかけたくない、交付税から起債へ振りかえたことによる個々の団体への不利益というものは何としても避けていきたい、そういう意味で、財対債については、基本的にはその償還費を基準財政需要額に算入していくという方法をとっているわけであります。こういった方法をとったことが、自治省が力が足りないというような御指摘、おしかりを受けるかもしれませんけれども、我々としては精いっぱい努力し、その額を前年度よりも引き下げたつもりでございますけれども、こういった基本的な姿勢、これは望ましくないものであるという基本的な認識の上に立って、今後とも努力していきたいと思っております。
  170. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 せっかくひとつ努力をしてください。これは運動会じゃありませんので、運動会ならそのときだけびりになってもその翌年には一番になる可能性がありますけれども、こういう問題は、事大蔵との関係でありますから、一遍癖がついたら直らぬですよ。だから私は大変その心配をしておるのであります。これは大臣も同じだと思います。せっかくのひとつ努力を願いたいと思います。  次に、国の政策によりまして地方財政需要というものを増加させながら、これは必置規制だとかいろいろありますが、そのための財源保障も行わず、借金でこれを賄えということは余りにも無責任ではないでしょうか。国が責任を持って財源を保障すべきではないんでありましょうか。恐らくそれを主張されたと思うけれども地方自治団体の人々からいったら何とも釈然としない問題であります。国が責任を持って財源を保障すべきではないかという意見について、どう思われますか。
  171. 石原信雄

    石原政府委員 私どもは、毎年度地方財政対策を立てる前提といたしまして、その年度財政需要全体を見積もるわけでありますが、その際には、当然法令の規定その他によって地方公共団体が実質上義務づけられている経費はすべてこの歳出に見積もっております。その上で、現行制度のもとに見込み得る地方税収入その他の収入を計算して、差額として差し引き出てまいりました財源不足額について必要な措置を講じているわけであります。  その際に、確かに、ただいまも申しましたように、国の責任を明確にする意味からするならば、地方債活用ではなくて、投資的経費を含めて、すべて一般財源交付税特例措置によって措置されるということが、わかりもいいし、望ましい姿であろうと思いますけれども、現実はそれができない、国の財政状況からどうしてもできないということで、一部は地方債に依存せざるを得ない。その地方債は、投資的経費財源の一部でございますけれども投資的経費については建設地方債活用せざるを得ないという状況にあるわけであります。この点は確かに、地方団体からするならば、国が十分財源保障責務を果たしていないのではないかという非難もあろうかと思いますけれども、今日の国の財政状況のもとではこれが精いっぱいの措置であるということを御理解賜りたいと思います。
  172. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私どもの党は、昭和五十年以来、地方財政状況は、地方交付税法六条の三第二項に当たる状態だといたしまして、地方財政制度の改革か交付税率見直しを行うべきことを再三にわたり主張してまいりました。しかし政府はこれにこたえず、その場しのぎの対策に終始をしてまいりました。  自治省は大蔵省に対しまして、地方財政制度の改革か交付税率見直しを行えということを真剣に求めてきましたか。やっておるとすれば、いつごろからおやりになりましたか。
  173. 石原信雄

    石原政府委員 今日のような異常な事態に陥ったのは昭和五十年度の補正の段階からでありますが、私どもは、この事態を、先生御指摘のように交付税法第六条の三第二項に規定するようなそういう事態に立ち至ったと判断したのは昭和五十二年度からであります。  そこで、昭和五十二年度財政措置以降は、交付税法第六条の三第二項の規定に基づきまして交付税率引き上げを要求してまいりました。具体的には、五十二年度の場合五%の引き上げ要求、五十三年度は六・五%、五十四年度も同じく六・五%の引き上げ要求を行いました。そして五十五、五十六年度は、財源不足額が若干縮小したという事情もありまして、交付税率引き上げ要求を五%に下げております。そして五十七年度は、当初の段階は一応収支が均衡するというふうに見込まれたために、引き上げ要求はいたさなかったわけであります。しかし、五十七年度の補正の段階から再び地方財政収支が大幅に不足するという事態になりました。そこで五十八、五十九両年度につきましては、やはり地方財政制度改正その他の必要性があるということで抜本的な措置の要求をいたしましたけれども、御案内のように、国の財政状態がこのころから一段と厳しさを増したというようなことで、今日まで、残念ながら交付税率引き上げを含む抜本的な、恒久的な制度改革は実現していないというのが実情でございます。  我々といたしましては、そのときどきの状況によって、要求すべきものは要求し、主張すべきは主張してまいりましたけれども、残念ながら我々の期待するような改革は実現していないというのが現状でございます。
  174. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 よくわかりましたが、自治省といたしましては、地方自治団体が一番熱望しております交付税率見直し、この要求を五十二年からやってこられたと言いますが、この見直しについてこれから後どう考えていらっしゃいますか、どう考えようとしていますか。
  175. 石原信雄

    石原政府委員 六十年度以降の地方財政対策の問題と関連することになると思いますが、私どもは、六十年度地方財政状況がどういうことになるのか、それを見きわめないことには今の段階で具体的な要求内容を申し上げることはできませんけれども、今回御提案申し上げております交付税の新しい方式は、一応当分の間この方式でいくということで御提案申し上げておりますので、これによって必要な交付税を確保するよう特例措置の要求をしていくことになると思います。  ただ、それはそれといたしまして、やはり将来展望した地方財政のあり方ということを考えますと、いろいろな制約、特に「増税なき財政再建」という大きな制約のもとではありますけれども、やはり我々は、基本的には地方税財源充実強化ということを念頭に置きながら、より抜本的な制度の改革を検討していかなければいけない、これを六十年度の予算要求でどうするかは別といたしまして、ともかく中長期的にはそういった問題意識を持ってこれからも引き続き検討していかなければならない、このように考えております。
  176. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 重ねてお尋ねをいたします。  こういう重要な改正を行う時期における私の質問でありますから、もうひとつはっきりお答えをいただきたいと思うのでありますが、こういう特例措置を講じていくという大改正が行われたのであるから、昭和五十二年以来唱え続けてきた交付税率改正見直し、いわゆる上に上げるということ、これについては当分、昭和六十五年末までは行わない覚悟である、こう受け取っていいのですか。
  177. 石原信雄

    石原政府委員 今回御提案申し上げております新しい方式制度改正は、たびたび御説明申し上げておりますように、現在の地方財政状況を踏まえて、交付税法第六条の三第二項の規定による制度改正として御提案申し上げておるわけであります。したがいまして、当分の間ということは、少なくとも六十年度はこの方式で必要な予算要求、必要な特例措置の要求をしていくことになろうと思います。  しかし、同時に、やはり制度の基本的な改正論議というものはそれとは別個に常に行っていかなければいけない、我々は、地方財政を守っていくためにそういった論議は別途常に行っていかなければならないと考えております。六十年度あるいは六十一年度の具体的な予算要求として交付税率の問題を持ち出すかどうかというお尋ねには直接お答えできませんけれども、この交付税率の問題を含む地方税財政制度の抜本的な改革という問題は、地方財政を守るためには常に心がけなければならない事柄でありますので、この問題は中長期の問題として念頭に置きながら我々は検討を重ねていきたい、このように思っております。
  178. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 くどいようですが、もう一度お尋ねをいたします。  今度の改正は六条の三の二項の制度改正に当たるものであって、特例措置関係を御提案申し上げておるのであるということはよくわかりましたが、なるがゆえに、国税三税の三二%という交付税の比率をもっと上の方に上げろという見直し、これは当分の間しないということなのか。それは今回の改正とは全然別です、あくまでも主張してまいりますということなのか。そこら辺が地方自治団体の者としては非常に心配になるところでして、国の財政が厳しいから、当分の間は、交付税率の三二%を上げろなんて言ったって、おまえ気が狂うたかと言われやせぬかとおびおびして引っ込んでいる、こういうふうに聞こえるのですが、その点いかがですか。
  179. 石原信雄

    石原政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、交付税法第六条の三第二項の規定によりまして、必要な地方財政制度改正として今回の方式を御提案申し上げておるわけであります。と申しますのは、今日の事態交付税法第六条の三第二項の規定に該当する、引き続き著しく交付税が不足する事態になっている、このような基本認識であります。そういう認識のもとで、五十三年度以来続けてまいりました交付税特別会計借入金による特例加算方式を、先ほど来御説明申し上げておりますような理由から今回廃止いたしまして、新しい方式に移行するわけであります。したがって、今日の事態のもとでは何らかの地方財政制度改正が必要である、それがなければ旧方式変更できないわけであります。旧方式変更する以上は、同法の規定に基づく制度改正を行う必要がある、そういう考え方のもとに今回新しい制度として御提案申し上げているわけであります。  今の財政状況のもとで、具体的な地方財源の確保、交付税の必要な額の安定確保の道は当分の間この方式で行いますということを申し上げているわけです。ですから、具体的な予算要求、具体的な地方財政措置は、この方式で六十年度も要求していくということでございます。  ただ、そのことが、地方税財政制度の抜本的な改革というものを断念したとか見送ったとかいうこととは別の問題だと思います。私どもは、地方税財政制度の改革というものは常に心がけていかなければならない問題でありまして、具体の予算措置、具体の六十年度の予算要求というものはこの新しい方式で当面行うことになると思いますけれども、それとは別個に、地方税財政制度の基本的なあり方については、常に議論し考えていかなければいけない、このように考えているところでございます。
  180. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 どうも釈然としません。局長も苦しいんだと思うのです。よくわかるのです。  苦しいんだと思いますから、本当はこれ以上言いたくないのでありますが、しかしながら、三千三百の地方自治団体としては耐えられない措置なんですよ。これは今おっしゃったが、交付税法の六条の三の第二項のいわゆる財政制度の改革に匹敵するものである。これをやれとみんなが言っておった。ところが、その大改正たるや、その中身は何であるかと言えば、この中期財政参考資料を見てもわかりますように、毎年いわゆる必要な財源に対して約二兆円ずつ不足していく。その財源不足は、地方財政の運営に支障なからしめるべく補てんをする、それは自治省と大蔵省が責任を持ってやる。その補てんをする金額は一体何ぼですか。不足額の一割しか特例措置として与えておりません。残りの九割は全部財源対策債であります。言うならば、形を変えた、利子を払わなければならない交付税であります。こういうむちゃなことがあっていいんでしょうか。私は納得できません。だからもう一度、くどいようでありますが、六条の三の二項の財政制度の改革に匹敵するべき改革をことしやるんだから、来年からは地方交付税の税率を、今三二%とあるのを、例えば五%上げて三七%にしてもらいたいと自治省は大蔵省に要求しますか。もう地方交付税率のことについては来年からはぴたっと口を閉じるのですか。言うのか言わぬのか、それだけ言ってください。
  181. 石原信雄

    石原政府委員 繰り返しになるようでありますが、六十年度地方財政対策として具体的な予算要求は、今回御提案申し上げております新しい方式で行うことになると思います。
  182. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは大臣に聞いてもいいですか。これは非常に大事なことですから、局長さんも立場上困っておるんだろうと思うのですが、私も本当は聞きたくないのですよ。本当は聞きたくないのですが、しかし三千三百の地方自治団体の諸君が、この地方行政委員会の審議の模様を刮目して待っております。なるがゆえに余りあいまいなことはできない。  だから、私どもはかねてから言っておりましたが、今の三二%の交付税率なんかでごまかしておってはだめなんだ。国は、あれを設けろ、これもやれあれもやれ、人間から何からみんな押しつけてきておいて、それに対する財源が足らない。その足らないというのは、参考資料を見ても来年から後ずっと毎年二兆円ぐらい足らない。その足らないものを、ことしは一兆五千百億でありますが、その一兆五千百億円の足らずじまいを特例措置で千四百億ぐらい。残りは全部財源対策債、これはもちろん利子を払わなければいかぬ。こういうような本来交付税で補てんをしてもらうべきものに、財政の運営に支障なからしめるというこの大原則からいったら、当然そんな利子なんかつけるのはおかしいのである。それを利子つきの交付税というもので措置をするということについて、局長自身も納得してはおらぬと思うのですよ。  国が余り泣くから、あなたもしょうことなしにもらい泣きしておるだけなんだ。それを三千三百の自治団体にまたもらい泣きさせるのですか。だから黙っておれ、おれは言わぬぞということなんですか。この返事の次第によっては、各地方自治体の長あるいは議会は相当な覚悟をしなければならぬときが来るのではないですか。これは大臣、いかがでございますか。
  183. 田川誠一

    ○田川国務大臣 岡田さんが地方自治体の立場に立って切々たるお話、御意見を打ち出されていらっしゃることに対しては、私どもも大変うれしく、また力強く思っております。  先ほど来お話しの地方交付税の税率を引き上げるという御議論は、私どもも気持ちの上では自治省一体となって考えていないわけじゃないのでございます。しかし、これはなかなか地方の立場だけから見て主張できる問題とそうでない問題とあるわけでございまして、むしろ昨今の状態は、国の方の立場から見れば税率を少し下げたいという力さえ加えられていると見てもよろしいくらいでございます。そうした厳しい中で私ども財源対策を講じていかなければならないということをひとつ御理解をしていただきたいのでございます。もちろん我々の気持ちの中には、安定的な地方交付税の確保を図っていく、この気持ちは強く胸に秘めておるわけです。  それから、ちょっと言葉を濁すわけじゃないですけれども、もう一つ、私どもが今度は地方の立場になってやらなければならないことがあるのですよ。それは、やはり今、国の立場、それから一般の世論はどうか。この前も申し上げましたように、地方財政余裕論さえ出ているのです。それは、ごく一部の団体が非常にかけ離れた給与を出している、あるいは非常に派手な行政をやっている、これは本当のごく一部ですよ。警察官のごく一部の者が悪いことをやったからということで警察全体を見られてはかなわないと同じように、私どもも、そういうような一部の団体があるために相当苦しい思いをしながら地方財政のためにやっていることをひとつ御理解をいただいて、もうこの問題は、私どもも相当悲壮な気持ちで来年度、六十年度の予算には臨んでいかなければならない。私も、これは責任回避するわけじゃありませんけれども、この五十九年度の場合はほとんど骨格ができた後こういう立場になりましたが、私は、これからの予算編成に対して相当強い決意を持って臨んでいくつもりでございますので、どうぞひとつその程度で御勘弁をしていただきたい。
  184. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 もうそれ以上言いますまい。大臣の回答は最後でございますから、これ以上質問をすることは酷だと思うので、この問題の質問は取りやめますが、しかし、三千三百の地方自治団体からいったら何ともかんとも割り切れぬ問題であります。この問題は胸に秘めて来年の予算要求においては一生懸命やりたいというようにおっしゃっておるから、それ以上言いますまい。男というものは時によっては顔で笑って心で泣いてなんということもあるわけですから、これ以上は追及しないことにいたしまして、次の問題に入らせていただきます。  次は、今地方交付税を三つの国税で出しておりますね、所得税、法人税、酒税、この国税三税にリンクをしている根拠は一体何なんでしょうか、局長さん。
  185. 石原信雄

    石原政府委員 交付税制度の基本的な理解の問題だと思いますが、現在の交付税制度というのは、所得税、法人税、酒税、この三つの税は国税の基幹税目であります。これは国税総額の七五%ぐらいになりましょうか、基幹税目であります。そしてまた、それぞれの税が非常に伸長性がある、安定性がある、いろいろな特色を備えております。こういった税の一定割合の額を地方財源として確保する、そして地方財政の安定した運営を可能ならしめる、こういうことではないかと思います。  それで、この三税が選ばれた理由については、多分に歴史的な経緯などもあったと私は思います。といいますのは、昭和十五年にできました地方配付税制度のころは、所得税と法人税の一定割合の額が配付税とされておったわけです。そのほかの遊興飲食税や入場税もあったわけですけれども、これはその後地方税になってしまいましたから、結局当時の地方配付税のリンク対象税目は所得税及び法人税であった。こういう歴史的な経緯。  それから、昭和二十九年の交付税法の発足に当たりまして酒税が加わった。これは酒税の安定性というものに着目したものであろうと思いますが、一説には、当時、昭和二十三年ですか、酒消費税という税が地方税としてあったものがその後廃止されまして、それを二十九年の税制改正の際に復活すべきだという意見もあったわけですけれども、地域の偏在その他の事情から、独立の地方税としてはこれは実現しなかった。そういう背景もありまして、この酒税を交付税のリンク対象税目に加えた、こういう見方をする人もいます。  いずれにしましても、地方財源の安定した確保のためには、国税の中で伸長性もある、また安定性もあるこの主要税目にリンクするということがこの目的にかなうゆえんだ、こういう理解の上に立って今の制度はでき上がっておるものと考えております。
  186. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 先ほどの胸に秘めてという部分でありますが、地方交付税三二%を動かさぬといたしましても、所得、法人、酒、この三つ以外に、例えば相続税あるいは物品税、印紙税、非常に地方関係のあるこういう税金を新たに加えてリンクをさせるとか、あるいは国税全体にリンクをさせるというようなことが考えられてもいいのじゃないかというふうに思うのでありますが、政府はこの点をどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  187. 石原信雄

    石原政府委員 ただいまの御指摘の中で、例えば相続税、物品税、印紙税、こういった地方行政にも関係の深い税目をリンク対象に加えるべきだ、こういう議論は確かに昔からございます。この問題は、国と地方が分かち合う税目として何がふさわしいかという意味で、今後とも論議に値する御意見だと思います。  ただ、その議論と国税総額にリンクさせるという議論は少しニュアンスが違うのじゃないかと思います。国税総額あるいは特例公債を含めた国の歳入総額に対して、一定割合地方に分けるべきだという議論があります。これは完全に国と地方歳入分割論みたいな話になると思うのですが、今の交付税制度というのは、それよりも、もっと特定の税目に着目して、それが国と地方のいわば共有の税源だというニュアンスがあるのじゃないかと私自身は思っております。そういう意味で、地方行政と関係の深い税目をリンク対象に加えるというのは一つの御提案かと思います。事実、今日ではタブーになっておりますけれども、いわゆる大型消費税の導入が議論された当時も、これを交付税のリンク対象税目に加えるべきではないかという議論がかなり強く行われました。そういう意味で、御提案のことは今後の検討課題として論議に値する御意見かと思います。
  188. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間が参りましたのでこれをもってやめさせていただきますが、次回にまだ機会が一時間半ほどあるようでありますから、そのときに続けさせていただくことにいたしますが、ともあれ、地方自治団体は、今回の地方交付税法の改正について決して安心もしていないし、満足もしていないし、逆に、どちらかといったら不安の限りであるというような気持ちを持っておるということの一端をきょうは質問をさせていただいたわけでありまして、大臣もこの点は十分にお含みいただきたい。  特に大臣に期待をかけますのは、今回の予算編成大臣には関係なかったですから、次回の予算編成に対しまして大臣にひとつ強力な指導力を発揮してもらうように私は期待をして、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  189. 大石千八

    大石委員長 経塚幸夫君。
  190. 経塚幸夫

    ○経塚委員 まず最初に、交付税関係についてお尋ねをしたいと思うのです。  先ほど岡田議員の質問に対しまして、六十年度はこの特例措置でいく。交付税率引き上げを要求されないかのように受け取れたわけでありますが、再度お尋ねいたしますが、これは本当に要求されないのですか。
  191. 石原信雄

    石原政府委員 六十年度地方財政対策としての予算要求に関連する御質問でございますが、私どもは、当分の間の措置として、ただいま御提案申し上げておりますような方式によって地方交付税の安定確保を図っていきたい。その具体的な内容は、六十年度財政状況のもとで具体的な内容が固まったものについて法案審議という形でお願いすることになりますけれども、ともかく、私どもとしては当分の間の措置として今回御提案申し上げているような方式を御審議いただいているわけであります。これによって地財対策の要求をしていくことになろうと思います。  ただ、先ほども答弁申し上げましたように、交付税率の問題を含めて地方税財源の充実確保というのは、地方財政にとりましては常に心がけなければならない課題でございますから、これは別途、制度の根本的な改革論議として我々は研究もし、検討もしなければならないと思っておりますけれども、具体の予算要求は、現在御提案申し上げておりますような方式でいくことになろうか、こういうように思います。
  192. 経塚幸夫

    ○経塚委員 別途論議はされるけれども、具体の交付税率引き上げは要求されない、特例措置でいく。先ほども答弁の中で六条の三の二項のいわゆる制度改正だとおっしゃられた。そうすると、制度改正と言う以上は、つまり交付税率引き上げにかわるべき制度なんですから、これは当然交付税率引き上げに、かわるべき制度としての内容を持っておらないと特例措置としての意味がないと私は思うのですね。その点はいかがですか。
  193. 石原信雄

    石原政府委員 交付税法第六条の三第二項の規定は、引き続き著しく交付税が不足を生ずるような場合においては、地方行政制度改正地方財政制度改正もしくは交付税率変更ということを義務づけているわけであります。その規定に基づいて、我々としても、地方団体の立場からして一番望ましい姿は、安定した恒久的な財政制度改正、税源の充実でありますとかあるいはそのほか地方財源充実強化とか、さらには交付税率引き上げとか、こういう形が望ましいと思います。  先ほども答弁申し上げましたように、過去において何回かそういった要求もしたことがございます。しかしながら、現在の我が国の財政状況のもとでは交付税率変更を行い得るような状態にない。交付税率変更引き上げということは、とりもなおさず国の方の財源を減らすことを意味するわけでありますから、今到底それに耐えられない、そういった改革に応じられる状況にないというのが今の我が国の財政の現状でございます。そうした制約条件のもとで、しかし、交付税法第六条の三第二項が求めております行政制度改正あるいは財政制度改正、これは何らかの措置を講ずることが政府としての責務であります。そこで、交付税率変更は現状ではできなかったわけでありますけれども、これにかわるといいましょうか、それができなかった、こういう状況のもとで、しかし最小限地方交付税を安定的に確保するための新しい仕組みとして、新しい制度として今回の方式を御提案申し上げているところでございます。
  194. 経塚幸夫

    ○経塚委員 私がお尋ねをしておりますのは、交付税率引き上げにかわる制度改正ということが特例措置だ、そうすると、交付税率引き上げに結果としては内容がなっておらなければならぬでしょう。結果として交付税率引き上げになっておらなければ制度改正とは言えないでしょう。ただの特例措置だったらよろしいよ、それは。しかし、六条の三の二項の制度改正に当たるものだ、それは交付税率引き上げにかわるものだ、こういうことになってくれば、結果としては、内容交付税率引き上げになってなければならぬでしょう。なってないじゃないですか、先ほどの質問の御答弁でも。利子を相殺いたしますと三一・三%という状況でしょう。これが何で制度改正と言えるのですか。ここは幾ら考えてもわからない。幾ら考えても制度改正に値しないと私は思うのですよ。しかも、一方のいわゆる千七百何がしかの内容にいたしましても、これは利差臨特あるいはその他の手当てにいたしましても、もともとは財源不足対策としてとってきた措置じゃないのでしょう。こういうようなものを利子負担分と相殺をすると、三一・三%というふうに事実上交付税率が切り下げの結果になっているのです。なぜこれを制度改正というのですか。私はこれはこじつけだと思うのですが、その点はどうなんですか。
  195. 石原信雄

    石原政府委員 交付税法第六条の三第二項が求めておりますのは、行政制度改正または財政制度改正もしくは交付税率変更でございます。その場合の財政制度改正というのは、交付税率変更にかわるものではなくて、交付税率変更とは別のものでございます。財政制度改正もしくは交付税率変更を行うということでございまして、地方財政の立場から交付税率変更が最も望ましい、地方団体が最も希望しているものであるということは我々も十分承知しておりますが、それができるような状況に現在ない。残念ながら、国、地方を通ずる今日の財政状況のもとでは交付税率変更はできない。  そういう状況のもとで、しからばこの六条の三第二項の要件を満たすために財政制度改正としてどのようなものを行うかということになるわけですけれども、これもたびたび御答弁申し上げておりますように、望ましい姿からするならば、税制改正その他によって恒久的に地方財源充実強化されるようなものがいいと思うのであります。しかし、税制改正についてもいろいろな制約条件がありまして、これが五十九年度の場合で申しますと住民税の減税の補てんが精いっぱいであった、地方税源の絶対値をさらに充実強化するというような改正までには到底今回は至らなかったわけであります。そういういろいろな制約条件のもとで、我々としてはぎりぎりの要件として地方財源の安定確保に資するための交付税特例措置法律規定する、これが交付税法第六条の三第二項の財政制度改正に当たるということで御提案申し上げているわけであります。  今回御提案申し上げている改正内容が、地方財政の立場から望ましくないじゃないかという御批判もあるかと思いますが、五十九年度の国、地方を通ずる財政環境のもとで地方財政の安定した運営を確保するため、私どもとしてはこれが精いっぱいの措置である、精いっぱいの財政制度改正である、このように考えて御提案申し上げているところでございます。
  196. 経塚幸夫

    ○経塚委員 この特例措置の中身が、結果としては三二%を数%上回るというような財源が確保される特例措置の中身であれば、局長がおっしゃるように交付税率引き上げなくてもいわゆる制度改正という特例措置によってその目的は達せられたということになりますよ。しかし、そのとった特例措置の中身なるものが、先ほど申し上げましたように、相殺をすれば結果としては三二%を切っておるというようなことで、何で制度改正内容とした特例措置と言えるのか、こういうことになるのですよ。私はそこの点を聞いておるのです。  だから、これは制度改正内容とした特例措置ではないじゃないか。あえてその点は、それでもなお制度改正内容とした特例措置だと抗弁されるのですか。そこが私は理解できない。これは単なる特例措置なんだ、率直にそうおっしゃればまだしも、六条の三の二項の制度改正内容とする特例措置だとおっしゃるから、それじゃ実際的には、結果として三二%を超えなければならぬじゃないか。超えておらぬじゃないか。これは私が疑問を出すのが無理な話なんですか。これはだれしもが抱く当然の疑問だと思うのですよ。その点、いかがですか。
  197. 石原信雄

    石原政府委員 六条の三の第二項の地方財政制度改正内容は、今日の事態のもとで地方財政の運営に支障なからしめるような財政制度改正を求めているわけです。  今回御提案申し上げております制度改正は、交付税法の三二%の法定額から利子負担を差し引いた額及びその法律で定める特例措置額、こういったものによって交付税総額を決めようということです。要は、それによって地方財政の運営が支障なくできるかどうか、こういうことではないかと思います。そのポイントは、利子負担をするために結果として交付税の法定額三二%を割り込むような額しか地方団体交付税が行かないということになるわけでありますけれども、その利子負担した後の交付税額では五十九年度地方財政の運営に支障があるということで、千七百六十億円を加算する、このことを今回法律でもって規定して御審議をいただいているわけです。それを一体として財政制度改正と御理解いただきたいわけであります。  ですから、今回御提案申し上げております新しい方式による金額が最終的に三二%を超えているか超えていないかということが制度改正のポイントではなくて、今回御提案申し上げている額によって五十九年度地方財政運営支障なく行い得るような形になっているのかどうか、ここに帰着するのであろうと思います。私どもは、いろいろな措置を講じた結果として、今回の特例措置内容、すなわち具体的には千七百六十億円の加算措置を講ずることによって五十九年度地方財政運営支障なく行い得る、このように考えて御提案申し上げているところでございます。
  198. 経塚幸夫

    ○経塚委員 私は、これは重大な御答弁だと思いますよ。特例措置の中身が結果として三二%を上回っておるかおらないかが制度改正のポイントであるかないかではない、こうおっしゃった。そうすると、今後仮に特例措置と称してこれが一円も加算をされない、そして一方では利子負担だけが引き続き継続をされる、そうすると三二%を割る率はさらに大きくなる、そういう状況が生まれたとしても、今の局長の答弁だとまかり通ることになるのですね。だれしもが考えておりました特例措置なるものは、財源不足状態が続いておる、交付税率引き上げよとの声が高い、しかしそうはまいらぬので、それにかわるべき措置として特例措置をとった。だから、かわるべき内容を持っておる、性格を持っておるから、これは六条の三の二項のいわゆる制度改正に当たるのだと解釈しておりますよ。計算をしてみますと、出てきた答えの結果が三二%を割ったとしても、割るか割らないかが六条の三の二項の言っておる特例、いわゆる制度改正のポイントになるかならないかではないのだとあなたはおっしゃる、これは重大な問題だと私は思います。  そうしたら、またもとへ戻ってきますが、何のための特例措置なのか。続いておる財源不足を補うのに、交付税率引き上げることはできない。それにかわるべき、これがみんな制度改正だ、特例措置だ、こう考えていたのですね。これは今後ますます危倶は出てきますよ。三二%をどんどん割っていったところで、これは結果的には、それを超えるか超えないかが六条の三の二項で言っている制度改正内容じゃないのだ、こうおっしゃるのですから。  そうすると、大蔵が言っておるように、この特例措置によって減額もあり得るということが真実味を帯びできますがね。減額もあり得るということに解釈していいのですか。
  199. 石原信雄

    石原政府委員 理論的には、地方税収入が将来非常に伸びて、そして歳出については従来のような抑制基調を続けるということになれば、収支が黒字になることもあり得る、そうした場合には、今の地方交付税が借入残高を抱えておりますから、こういう状況のもとで単年度としては特例措置は減額になる、そして将来の地方財政の安定に資するということも、理論的にはあり得ると考えております。しかし、今の地方財政状況見通しのもとでは当分そういう事態は考えられませんけれども、理論的な問題としては、特例措置内容はプラスの場合もあるし、マイナスの場合もある。要は長期的に地方財政の安定した運営が確保できるかどうかである、このように考えております。
  200. 経塚幸夫

    ○経塚委員 今さらこんなことを引用するのは釈迦に説法になると思いますけれども、六条の三の二項では、「各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなった場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度改正又は」「率の変更を行う」、だから、率の変更制度改正なんですよ。そしてその前段に、各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なった場合、つまり不足額をどう補うかということで、率の引き上げ制度改正なんでしょう。  そうなってまいりますと、局長の答弁は全然違うじゃないですか。この率の引き上げになるかならないかが制度改正のポイントでないとおっしゃるが、まさにそのことこそ制度改正のポイントでしょう。そして、減額もあるとおっしゃるけれども、まさに率の引き上げになるかならないかが制度改正のポイントであるとすれば、特例というのは加算があるだけであって、減額などあり得るはずがないんですよ。そのときの措置は何になってくるかといいますと、交付税率三二%の引き下げのはずなんですよ。そんなところにこの特例措置が生きるはずはないのです。収支相均衡すれば、特例措置は必要なくなるのです。そして減額が必要だという状況が生まれてくれば、三二%を三一に引き下げるとか三〇に引き下げるとか、それこそ交付税率の手直しなんですよ。それが六条の三の二項の正しい解釈じゃないですか。どうです。
  201. 石原信雄

    石原政府委員 六条の三第二項の規定の解釈としては、従来は常に地方財源の不足する状態だけを念頭に置いて論議がなされてきております。現実にはそういう場面で論議されてきたわけですが、法律の意図するところは、異なる場合ですから、これは上も下もあるわけです。だから、交付税の方が余ってしまう場合も、やはり同じように地方行政制度改正財政制度改正交付税率変更がある。交付税率変更ということは、交付税率の引き下げということも意味するわけです。法律の条文の読み方としては、上も下もあるということでございます。ですから、上しかないということではございません。  今回御提案申し上げております特例措置というのは、要は、交付税を安定して確保していくというために単年度状況に応じて特例措置を講ずるということでございまして、その特例措置内容は、現時点見通し得るここ当分の間は加算措置しかないと思います。しかしながら、理論的には、この法文上の意味する内容からくる理論的な帰結としては、財政状況いかんによっては、単年度として特例減額をして長期的な交付税の安定確保に資する、交付税率を変えないで特例減額で単年度の調整をするということはあり得ると思います。しかし、その場合でもやはり交付税の安定確保ということには変わりはないわけです。  ただ、私どもは現在引き下げのことを想定しておるわけではありませんで、今の時点では当面増額しかあり得ませんけれども、言葉の意味あるいは制度意味は、上も下もあり得る。要は、交付税の安定確保によって地方財政の運営に支障なきを期することができるかどうかということでありまして、現実に地方団体に交付される額が、割り返してみて三二%を切れば制度改正ではない、上回れば制度改正だ、こういうことではないと思うのであります。
  202. 経塚幸夫

    ○経塚委員 私は今の答弁は了承できませんね。そういう考え方を自治省が持っておるということであれば、今日の全国の財政困難の状況について一体どの程度の認識を持たれておるのか、疑わざるを得ないのです。  それから、交付税の安定的な確保とおっしゃいますけれども、それじゃお尋ねいたしますけれども、経過と性格から申し上げれば、この利子は明らかに国が負担すべきものなんでしょう。その点、どうなんですか。
  203. 石原信雄

    石原政府委員 この点につきましては、たびたび御答弁申し上げておりますように、私どもは、交付税特別会計借入方式が実施された経緯、背景あるいは交付税制度の趣旨などからいたしまして、特金借り入れ利子全額国が持つべきだ、持つのが筋だ、こういう主張をずっとしてまいりました。  しかしながら、五十八年度地方財政対策におきまして、異例に厳しい国の財政状態のもとで全額利子負担することがもはやできなくなったということで、借入元本のそれぞれの負担割合に応じて利子負担するということに合意せざるを得なかったわけであります。私どもの従来から望ましい姿としては、全額国負担すべきものであった。しかし、現実の財政状況のもとで、この地方負担に係る元本利子地方負担すべき元本に対する利子相当分は交付税会計負担において負担せざるを得なかった。そういうことで合意せざるを得なかった。結局、これは一にも二にもそういうことにせざるを得ないような国の財政状況のもとでこういった結論に到達せざるを得なかったということでございます。
  204. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうすると、国がとるべき責任地方負担をさせられたという点では、これは明らかに交付税制度の後退ですね。どうなんです。
  205. 石原信雄

    石原政府委員 確かに、我々は全額国が持つべきだと主張してきましたし、また、私ども制度の望ましい姿としてそうあるべきだと信じて議論してまいったわけでありますけれども、現実の予算編成の過程で、異例に厳しい財政危機のもとで、元本負担割合に応じて利子地方負担せざるを得なくなった。この点は、我々の当初の理想からすれば確かに後退であるということは否定できないと思います。しかしながら、そういう状態に至らざるを得なかった、そういう点で合意せざるを得なかったほどに、これは今日の国の財政状態、国、地方を通ずる財政状態が厳しくなっているということのあらわれだという見方もできると思います。
  206. 経塚幸夫

    ○経塚委員 一方で、交付税の安定的確保と口を重ねておっしゃる。しかし一方では、局長もお認めになったように、国が負うべき利子地方負担をさせられたということは、明らかに交付税制度の後退である。これはあなた自身書いておられるわけですからね。「このことは、地方団体の計画的な財政運営を保障する地方交付税制度の運用の面で大きな後退を意味します。」とお認めになっているわけですよ。これは理論的に一致しないじゃないですか。 一方では、交付税制度の安定的な確保だとおっしゃる。そして一方では、交付税制度の後退だとあなた自身がお認めになるようなことを書いておる。これは一致しないじゃないですか。
  207. 石原信雄

    石原政府委員 我々は地方財政を預かる立場から物を考え、主張もしております。そして今日、私どもの主張が必ずしも一〇〇%実現し得ないような財政環境になっておることも事実であります。したがいまして、今回御提案申し上げております改正案の内容にいたしましても、それから五十九年度地方財政対策全般にいたしましても、地方財政の立場から最も望ましい、かくあるべしという姿からしますと、そのようになっていない面が多々あると思います。しかし、やはり今日の厳しい国の財政環境のもとで、いろいろな主張があり得る中で、とにかく最終的に調整せざるを得ない。これは自治省のみならず、ほかの省庁でもそうだと思いますけれども、それぞれの立場立場から考えております理想像、望ましい姿というものは、国の厳しい財政環境のもとでいろいろ妥協せざるを得ない、折り合わざるを得ない面が多々あると思います。  その点はまさに予算折衝の問題でありますが、ただ私どもは、その場合においても基本的な一線として、地方団体財政運営に支障なからしめる、国の立てる計画のもとで何らかの方法で収支不足は完全に補てんする、この一線だけは貫いたつもりでございます。その中身が、我々が理想的と考える、地方団体がこうあってほしいと考えている姿とは違っている面が少なくないと思いますけれども、これはやはり今日の国の厳しい財政状況のもとで、ある程度折り合わざるを得なかった面があることは否定できません。  しかし、繰り返しますけれども、国が立てた地方財政収支見通しのもとで、地方財政計画のもとで見込まれる財源不足については、とにかく地方債及び交付税特例措置によって完全に補てんすることによりまして、五十九年度地方財政運営支障なきを期した、この点だけは申し上げたいと思います。
  208. 経塚幸夫

    ○経塚委員 交付税制度の後退に及ぶようなことは断じて許さないというのであれば、話はわかりますよ。しかし、お認めになっておる地方交付税制度の後退だと言われるような点まで妥協しているから問題なんですよ。そして一方では、地方財政運営に支障のないように、交付税の安定的確保のために、その一線は守るとおっしゃる。これは言っていることとやっていることとつろくせぬから私は言っているわけですよ。三二%の線を頑として守っておる、これじゃ足らぬのですから、まだ引き上げなさいということの論議は従来続けられてきておったわけでありますから、国の財政事情財政事情ということで押しに押されて、とうとう三二%も切るという状況になったからことしは問題になっておる、五十九年度は問題になっておるんですよ。  この姿勢でいけば、六十年度は一体どうなるのか、六十一、二年度はどうなっていくのか。国の財政状況が好転する見込みはここしばらくないわけでありますから、だれしもが声を大にして、一体この特例措置の中身はどういうものなんだ、交付税率引き上げにかわるようなものなのか、そうでないのかということの論議が繰り返しなされる背景は、そこにあると私は思うのですよ。  それで、先ほどの答弁でも、できるだけこの特例措置で加算を優先させたいということでありますが、五十九年度は八割までが地方債でしょう。まず地方債負担ありきから出発しているわけでしょう。特例加算ありきからいっていないわけでしょう。財源不足の八割も地方債に肩がわりさせられた例は何回もあるのですか。これも異例のことでしょう。どうですか、その点は。
  209. 石原信雄

    石原政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、財源不足額を補てんする手順としましては、まず、投資的経費について建設地方債活用を図る。国の方が投資的経費については一〇〇%建設国債で対応せざるを得ない、こういう状況のもとでありますから、地方財政についてもある程度地方債活用で対応せざるを得ない、このように考えているわけです。  ただ、その場合においても、地方債による措置は将来の公債費負担等を考えて極力抑えていきたいという気持ちで地方債活用を図る。その活用を図った後の不足額について交付税特例措置を講じているわけであります。その結果として、五十九年度は一兆五千百億円に対して建設地方債活用分が一兆二千億円ほどになった。割合にして非常に高いじゃないか、こういうことでございますが、要は、建設地方債活用に当たりましてこの充当率を従来の九〇%から八五%に下げた、地方債への依存を引き下げた、この点について御理解を賜りたいのであります。  過去においては、例えば昭和五十三年度、五十四年度、この時点ではいわゆる財源対策債充当率は九五%までに引き上げております。その後これを九〇%に下げ、今回は八五%に下げたということでございまして、要は、財源不足額トータルに対する起債措置割合ではなくて、投資的経費、特に公共事業関係経費などの地方負担に対する充当率がどの程度になっているかということではないかと思うのです。そういった意味では、私どもは五十九年度は前年度よりも五%引き下げたということでございます。理想からいえばもっと引き下げた方がいいわけですけれども、これも相手があることでありまして、五十九年度財政環境のもとでこれが精いっぱいであった、このように申し上げざるを得ないのでありますが、いずれにしても、五十八年度よりも地方債充当率は引き下げております。この点を御理解賜りたいと思います。
  210. 経塚幸夫

    ○経塚委員 いろいろと御答弁がございましたが、今日の自治省の姿勢が、果たしてどれほど真剣に全国三千三百の地方自治体の財政を確保するために心血を注いでおるのかという点については、私は率直に申し上げて疑問に思わざるを得ない。と申しますのは、局長が書かれましたこの論文の中で、もし書いてあるような論文の考え方を引き続き地方財政地方自治対策として持っておられるということであれば、これは重大な問題だ、こう考えたからであります。  あなたが、「地方財政の現状と今後の展望」という中で、今後のいわゆる財政再建のための方途として、先ほど来も論議をされておりましたが、いわゆる増税では、今日の中曽根内閣の「増税なき財政再建」という方針から見ても、ここへは踏み込めない。そうすると、残された道は歳出を抑制する以外に方策はない、こうおっしゃっておられる。それは確かに、むだを省く、結構なことだと思います。合理的な財政運営を図る、結構だと思います。しかし、局長が考えておられる考え方は、私がこの論文から承る限りにおいては大変重要な問題を含んでおる、こう考えますので、以下、その点について順次お尋ねをしていきたいと思うのです。  三つの方向が考えられる、こうおっしゃっていますね。一つは直営を民間委託に切りかえる、二つ目には行政対象そのものの見直しを図る、三つ目には受益に見合った負担適正化を図る、こうおっしゃっておられる。  まず最初に、この受益に見合った負担適正化という問題から触れていきたいと思うのですが、たまたま今回手数料改正問題が提案をされております。もう既に、法律で額を決めておったものを政令で変えるとすればどれくらいの手数料引き上げるかということについて案が出ておるようでありますが、これを見てまいりますと、例えば大麻取締法に基づく取扱者の免許などは、五十六年度と比べてみると四〇〇%の引き上げになるわけですね。これは実費が三千九百七十三円だから、それに見合った徴収に改正、こういうことです。建築確認もこれまた、三十万から四十二万とありますから、五十六年度比で四割の引き上げになる、これは大変な引き上げ額であります。  そこで、具体の問題についてちょっとお尋ねをいたしますが、今回改正をされます九項目あるいはそれ以外の項目でも、機関委任事務でありながら、その経費財源として交付税に算入をされておるものとおらないものとありますけれども、一体この違いはどこから出てきておるのか、御説明をいただきたいと思うのです。
  211. 津田正

    ○津田政府委員 手数料は、単位費用の算定の過程におきまして標準団体の歳出額から控除しておるわけでございますが、まず第一段階として、交付税の算定において含めるか否か、これの判断は、普通交付税が普遍的な行政需要に対処するというような性格上、やはり手数料も普遍的に地方団体間である、こういうようなものを算定対象とする。しかも、臨時的ではなくて恒常的にあるというような手数料交付税の中において取り入れておるわけでございます。  具体的に今回の御提案申し上げておりますもので申し上げますと、電気工事士、行政書士等はいわゆる手数料の算入をしておりません。保母試験に関するものは算入してございます。公害紛争処理については算入しておりません。それから、建築確認、開発行為の許可あるいは栄養士の免許、こういうものは普遍的でございますので算入してございます。それから通訳案内業は、これはばらつきがございますので算入しておりません。教員免許手数料は算入してございます。それから宅地建物取引業の登録関係交付税に算入しておる。こういうような区分け。基本的な考え方は、普遍的に団体である、また恒常的にあるという手数料を、普通交付税の性格を考慮しまして、需要の算定において考慮しておるわけでございます。
  212. 経塚幸夫

    ○経塚委員 これは個々具体に比較をしていきますと、今の説明では説明つかないものが出てきますよ。交付税に算入しておるものとおらないものとの差について、同じ試験でありながら、行政書士はついておらないとおっしゃいましたね、それで保母が何でついておるのか、こういう問題が出てきます。それから、電気工事士と保母、これは同じ試験に類する項目で、そして本人の一定の受益にかかわる内容も試験という限りにおいては共通しているわけですね。同じ試験の項目で何でこんな違いが出てくるのか。さらに、申請事務についてもそうですね。建築許可の確認については交付税で算入されておる。しかし、開発行為については都市計画に基づくものだけしか算入をされておらない。それ以外は算入されておらない。公害紛争処理も算入されておらない。個々具体に見ていくと、同じ試験、同じ申請、同じ免許でありながら、どうしてこんな違いが出てくるのか。これは今の御答弁では説明がつきませんよ。その点、どうですか。
  213. 津田正

    ○津田政府委員 まず、行政書士試験についてでございますが、これは大体試験手数料で賄えております。交付税の方の需要では、実は行政書士試験の新聞広告を需要に立てておる。それで、実際の試験の手間に要する経費手数料で両落ち、こういうような考え方をしてございます。  それから保母、建築確認、開発行為等でございますが、これは普遍的にある。ただ、宅造関係につきましては、大都市周辺とかというような地域的なばらつきが割にございますので算入しておらない。特に公害紛争処理の申請手数料につきましては、団体間で非常にばらつきがあるということで、普通交付税の性格になじまないということで、需要、それから収入としての手数料両落ち、このように扱っておるわけでございます。
  214. 経塚幸夫

    ○経塚委員 これは機関委任事務でしょう。そうしますと、交付税がついておらないのとついておるのとの違いも矛盾がありますけれども交付税で算入するということ自身矛盾があるのじゃないですか、機関委任事務なのですから。例えば、同じ機関委任事務でも米穀小売販売業者の登録は負担金で見ているのでしょう。地方財源をどうして機関委任事務の中で食ってしまうのですか。本来機関委任事務という性格から見れば、当然これは委託金、負担金等でその一部を賄うのが妥当じゃないですか。その点、どうですか。
  215. 津田正

    ○津田政府委員 機関委任事務に関する経費の出し方でございますが、これにつきましては、関係条文としまして地方自治法の二百三十二条の第二項におきまして、国はそういうような経費財源につき必要な措置を講じなければならないと書いてございます。これ以上具体的に書いてございませんが、私どもとしましては、国庫補助金、負担金、手数料はもちろんでございますが、そのほかにも、地方税税制改正なり交付税の需要の見方の中でこの機関委任事務の経費についても財源として考えるべきもの、補助金と手数料だけではない、このように考えております。  それから、先生御承知のように、一つの条文の例としましては地方財政法の十一条の二でございますか、あれは生活保護費だとか義務教育費だとか、そういう国と地方との負担区分を定めたもので、地方負担部分については基準財政需要額で算定しなさい、こう書いてございます。基準財政需要額で算定しなさいということは、裏で申しますと、不交付団体でございましたら地方税ということでございますし、交付団体なら交付税ということでございまして、そういう一般財源におきましても国の財政措置においてその分は考慮しなさいということで、一般財源措置を全く除外しておるものではないと考えております。
  216. 経塚幸夫

    ○経塚委員 除外しておるものではないとおっしゃいますが、そうすると、先ほど例を挙げました米穀小売販売業者の登録事務についてはなぜ負担金がついていて、それ以外の機関委任事務はついておらないのか。この矛盾はどう御説明になりますか。
  217. 津田正

    ○津田政府委員 米穀販売業関係につきましては、先生負担金とおっしゃられるので私まだ調べが足らぬわけでございますが、県の農業行政費の食糧管理費の需要を見てみます際には、米穀販売業者許可等手数料、こういうものは特定財源として算入してございます。
  218. 経塚幸夫

    ○経塚委員 よく調べてみてください。同じ機関委任事務の中で、交付税に算入されておるもの、手数料で賄われておるもの、あるいは負担金がついておるもの、これは全くまちまちなんですよ。だから、今回の、法律で額を決めておったものを政令にゆだねるというふうに改正する以前に、事務に要した経費負担区分についてまず明確にすべきだ。それから、その中でさらに機関委任事務として扱っていいものかあるいは地方に移譲すべきものか、事務の整理もやるべきである。この二点。  まず前の水をきれいにさらって、その上で手数料の額をどうするかということを決めませんと、長年にわたる慣例なども含めまして、各省庁の扱いごとによっていろいろあるわけでしょう。なぜ先に機関委任事務の整理の問題なり、あるいは経費についての財源負担区分なりを整理するということをやらなかったのですか。その点、どうですか。
  219. 津田正

    ○津田政府委員 機関委任事務の整理の点につきましては、御承知のとおり、行革推進懇等の意見もございまして、本年度中に整理をするということで検討を進められております。  それから、機関委任事務に要する経費負担区分と申しますか、だれがどのように責任を持つかということにつきましては、特定個人に対する行政サービスは、一般納税者が負担するのか特定の行政で受益する者が負担するのかという観点に立ちますと、原則的には一般納税者に対して負担を求めるべきでなく、特定の行政サービスを受けた者が負担すべきである、私どもとしましてはこのように考えております。原則はそうですが、もちろん政策論としていろいろな配慮が必要かと思いますが、基本的にはそのように考えておる次第でございます。
  220. 経塚幸夫

    ○経塚委員 これは事務の整理を先行させるべきですよ。  さらに重大な問題は、従来法律で決めておったものを政令にゆだねていくということになりますと、どうなりますか。建築確認の申請手数料などは相当の額に上りますけれども、列挙したものを累計いたしますと約百億円でしょう。百億円に上るような手数料の額の決定に当たって、従来法律で決めておったものを政令にゆだねてしまいますと、国会での論議、審議が素通りすることになるじゃないですか。これは私はまさに国会を軽視するものだと思いますよ。むしろ政令にゆだねておったものでさえ額の決定に当たっては法律で決める、国会の論議にゆだねる、こういう議会制民主主義尊重の立場に戻すべきだと私は思うのですが、これは逆行するじゃないですか。こんなことになればもう国会の論議を素通りいたします。国会の論議などという煩わしいものは抜きにして、まあ煩わしいとあなた方は考えておられるかわかりませんが、今まで法律で額を決めておったものを、政令で額が自由に値上げできる、こういうことになりますよ。その点はどうですか。
  221. 津田正

    ○津田政府委員 今回の法案の一番の基本的な問題としましては、先生御指摘のとおり、実費を勘案して政令にゆだねる、こういうような改正でございます。  この議論につきましては、実はかなり経過があるわけでございまして、先生、御意見をおっしゃられたわけでございますが、反面におきまして、毎回定額で書いておるものを一々国会審議を受けるのはどうか、こういうような意見も実は附帯決議等であるわけでございます。それから一方、政府部内としましては行政改革本部の決定におきまして、定額で定めるのではなく、その根拠、考え方というものを法律で書いていただき、その範囲内で政令、行政府にお任せいただくのが、行政改革と申しますか、事務簡素化にもつながるのではないか、こういうような御意見等がございまして、今回の改正をしたわけでございます。  いずれにしましても、その基本でございます実費というものを考えまして、私ども政令で適正に対処してまいりたい、かように存じております。
  222. 経塚幸夫

    ○経塚委員 臨調の答申では「実費を勘案して政令」と、こうなっているけれども、附帯決議は一定の方向を示しているだけであって、法律で額が決まっておったものを全部政令にゆだねなさいと明確に言っておるわけじゃない。その方向を目指すとかどうとか、ちょっとあいまいな表現が使われております。さらに、額の決定に当たっても、あくまでも政策的な額の決定の配慮も附帯決議の中に入っておるわけです。しかし、今回のを見ますと、値上げ案が全部実費どおりなんですね。政策的な配慮というものが全然払われておらない。あくまでも個人の受益に関するものだとおっしゃいましても、これは個々の事務事務によっていろいろケースがあるわけでしょう。  例えば建築確認申請だって、一〇〇%全部家を建てる人の利益に属するとは判断できないでしょう。第一、確認申請の前提になっております建築基準法の第一条では、財産などの保全と同時に公共の福祉ということも言われておるわけです。土地を持っておる人は目いっぱい家を建てたいでしょう。しかし、そんなことになれば隣地とのいろいろな問題だとかこういうことがあって、建ぺい率六〇%とか、いろいろな規制が加えられている。それの必要な手続と、こうなってくる。だから、個人の受益というものとあわせて社会的受益というものも考慮に入れられたいろいろな事務があるわけなんですよ。これを丸々全額、かかった実費は手数料で徴収するという内容になってきているのです。これは問題ですよ。  例えば、全く個人の受益に一〇〇%属するものはないのかといえば、それはあります。いろいろな免許だとかそういうようなものは、それを取得することによって本人の利益に帰してくるわけでありますから。しかし、そうでない、社会的受益も一定度加わったものもあります。だからこそ、政策的な額の決定ということも実費と同時に配慮されなければならぬわけです。そういう点がこれは配慮されておりません。だから、結論から言えば、これはまさに値上げ自由化法案ですよ。こんなものでやられていけば、今後国会議員が知らない間に、いつの間にか手数料がどんどん改定されていっているという状況も起こりかねませんよ。その点はひとつ指摘しておきたいと思うのです。  その次の問題をお尋ねいたしますが、これは石原さん、あなたは、先ほど引用いたしました論文が載っておりました本の中で、磯村さんと対談されて、教育問題、教育費負担問題についてこう言っておりますね。「公立高校の授業料は、経常費の三%ぐらいじゃないでしょうか。昔のことを言ったらしかられるかもしれませんが、旧制の中等学校の授業料は、たしか経常費の四割ぐらいをカバーしていた筈です。」こうもおっしゃっていますね。何で戦前の話がここに出てくるのか。あなたの考え方の中には、もう地方財政がどんどん苦しくなっていく、増税もできない、交付税率引き上げできない、歳出も切り詰めなければならぬ、教育費負担についても、戦前は四割ぐらい持っていたのだからそれぐらいは持たしてもいいのじゃないか、こういうお考えがあるのじゃないですか。それがここに出てきたのじゃないですか。
  223. 石原信雄

    石原政府委員 私は、戦前の中等学校のころはどういう財政負担になっていたのか調べたことがありまして、昔は随分持ったものだなと、私自身も旧制の中学校で五円の月謝をおやじからもらうのに随分文句を言われまして、そういったことをふと思い出して、そこで昔は随分持ったという意味で三割ないし四割ぐらいだったかということを言ったわけです。しかし、それはあくまで戦前の中等学校の話でありまして、現在の高等学校とは進学率も全然違いますし、学校のあり方といいましょうか、位置づけというか、そういった面が違っておりますから、現在においても経常費の三割、四割を持つことが望ましいという意味で申し上げたわけでございません。  ただ、私が磯村先生との対談で申し上げたのは、高度成長期におきまして税収の増が非常に潤沢であった時代においては、私自身も地方での財政担当者をしておった経験もありまして、いわゆる受益者負担と申しましょうか、使用料とか手数料というものは少ないほどいいんだ、なるべく一般財源で賄うべきだという意見が大変強くて、そして、受益に見合う負担適正化するという考え方がどうも余りにも後退し過ぎているんじゃないか、こういう感じがしたものですから、やはり適正な負担をお願いすることが財政上の見地からも必要であるだけでなくて、負担の公平という意味からも必要なんではないかという意味で、磯村先生との対談でそのような議論をしたように記憶しております。  特に私の頭の中にいつもありますのは、高等学校について申しますと、公立と私立の負担の差が余りにも大き過ぎる。今日、私立に通っている子供の授業料の負担と公立の高等学校へ通っている子供の授業料の負担余りにも違う。これが社会的な公平という意味から許されるんだろうか、こういうことがいつも念頭にあるものですから、そこで、授業料負担適正化というものをもっと考えていいんじゃないかという意味で、今引用されたようなことを発言したように記憶しております。
  224. 経塚幸夫

    ○経塚委員 今日、三割とか四割、高等学校の経常費を負担させるということになりますと、これは大変な負担になるのですよ。大体、現在の二倍ないし三倍ぐらいになってくるのですね。あなたが昔を懐かしまれる何かの寄り合いの席上でおっしゃられたということであれば、それは懐古趣味で済まされますけれども、磯村さんとの対談の中で、いわゆる受益者負担のあり方ということの論議の中でこの問題が出てきておるわけですから。  私はこの問題を引き合いに出しましたのは、先ほど申し上げましたように、もう交付税率引き上げられない、増税も期待できない。そうすると、いろいろ歳出をカットしなければならぬ、あわせて受益者負担もこの際思い切ってやらなければならぬ、そういうような考え方の反映がこういう言葉になって出てきたんじゃないか。  これは、あとあなたは保育料の問題についてもおっしゃっておられるでしょう。「お母さんが赤ちゃんを保育所に預けて、そのために得ている収入が一〇万円前後。その赤ちゃんのために、市が市民の税金で負担しているのは一五、六万円というわけです。何か割り切れない感じがします。」こうもおっしゃっているのですね。高等学校の授業料の問題が今言ったようなこと、それから保育料の問題がそういうことですね。これは教育基本法、教育の機会均等で、今日あなたがおっしゃるとおり高校の進学率九四%、戦前とは本質的に変わってきているのです。金の切れ目が教育の切れ目ということにさせてはならぬ。少なくとも地方自治に携わる者は、そういうことも考えていろいろな施策も行ってきた。  保育料の問題だってそうなんです。保育所の建設だってそうなんです。児童福祉法に基づいて、国と地方公共団体責任が明確に定められておる。それに基づいてこれは進めてきたわけでしょう。  厚生省の方、来ておられますか。——ちょっとお尋ねをしたいと思うのですが、私どもの中島議員が質問主意書を出しましたが、それに関して厚生省が回答されましたね。その中で、「児童福祉法に基づき、本人又はその扶養義務者から保育に要する費用の全額を徴収する」、これを原則としておる、こういう回答があったわけでありますが、保育に要する費用の全額を徴収するのを原則だ、これは厚生省の方針なんですか。
  225. 土井豊

    ○土井説明員 ただいまの点でございますが、これは児童福祉法の法律規定でございまして、その中で、全額を保護者から取る、しかしながら取れないような状態にある場合には一定の軽減措置を講ずるという法律規定に相なっております。
  226. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうしますと、厚生省が三十九年から四十七年に通達を出されておりますね。この通達によると、「徴収金基準額は、国庫負担の対象となる基準を示したものであるから、各市町村がその独自の負担において保育単価以上の額を支弁し、又は徴収金を軽減する等児童の福祉を図ることは差しつかえないことである」、しかも、「積極的な努力を払うよう指導されたい」。保育単価以上の額の支弁、さらに徴収金を軽減するなど、児童福祉を図ることは差し支えないからどんどんやりなさい、積極的な努力を払え、こういう通達を出されたのですね。  そうすると、今回の回答は費用の全額を徴収する、これは出された通達と明らかに矛盾するじゃないですか。いつ、どのような理由で変えられたのですか。
  227. 土井豊

    ○土井説明員 ただいまお話しの通達でございますが、確かに四十七年度まではお話しのような事項が入っておりました。私ども、児童福祉法制定後、各市町村における保育の実態というものはかなりばらつきがございまして、例えば無資格の保母さんがいるとか等々、地域によって事情が異なっておりまして、そういう点につきまして、地方の実情に即した保育事業の弾力的な運用ということを指導してきたわけでございます。一方、四十年代の後半に至りまして、国と地方団体における財政負担のあり方でありますとか、あるいは超過負担の問題等々がいろいろと論議をされるような状況に相なりました。  そこで、ただいまの御指摘の事項でございますけれども、四十八年度からは、適当な指導方針ではないという考え方のもとにそういう条項を削除したものでございます。したがいまして、その後は、保育内容につきまして、私どもの方で必要と思われる改善事項、そういったものを講じます場合には、当然のことながら、それに要する経費について国の負担をきちんとしていくというような基本姿勢で対処をしている次第でございます。
  228. 経塚幸夫

    ○経塚委員 国が出した通達、しかも内容が本質的に変わるような朝令暮改はやるべきじゃないですよ。今日、各地方団体の保育の運営の実態を見てみたらわかると思いますが、例えば、私は東大阪の例を申し上げたいと思うのですが、五十八年度、市の運営経費は二十七億八千余万円、国の基準はわずか六億五千四百九十万円、実際の市の運営経費の四分の一しか国の基準としては認めておらない。しかも国庫の補助は二億を切れるわずか一億九千万円。このため、いわゆる市の負担は二十二億一千万円に上っております。  どうしてこういうふうに国の基準と実態とが乖離するのかといえば、国の基準が市の実態に、あるいは地方団体の実態に合っておらぬからでしょう。例えば保母の数でありますけれども、これは国の基準が三歳児未満六人に一人、ところが、実態はゼロ歳については三人に一人、そうでないと保育に責任が持てない。また、障害児加配については、四人に一人というのが国の基準でありますけれども、これまた障害児保育に責任が持てないということで実態は二人に一人。保健婦などは国の基準では見ておらない。ところが、保健婦もおらぬというようなことではこれまた保育に責任が負えないということで、各園ともそれぞれ一人ずつ配置する、こういう状況になっているわけでしょう。  東京都の特別区児童福祉問題審議会の答申としては、「措置費の積算基準で示されている保育水準ではとうてい区民の納得のえられる保育サービスを確保することができない」、こうして実情に即した改善を迫っておるでしょう。本来は、実態に即したように国の基準を変えるべき段階なんですよ。そのことがるる強調されてきた。しかも、四十七年までに、こういう通達があったものですから、地方団体は国のこの通達にも励まされて、そして保育に責任を持てるような保育所の運用と、こういうことでどんどん進めてきた。今度、手のひらを返したようにこれに対していろいろ規制が加えられてくる。これでは地方団体はたまったものじゃないですよ。国の基準を改めなければならないときに、改めようとしないばかりか、どんどんやりなさいと言った通達も急速変更する、こんなことで子供の保育に責任を負える厚生省の正当な態度と言えますか。
  229. 土井豊

    ○土井説明員 保育所における保母等の職員の配置基準の問題かと思いますが、確かにお話しのとおり、特に大都市地域を中心に国の基準をかなり上回ったような実態にあるということは私ども承知をいたしております。ただ、全国的に見まして、私どもの最低基準という形で、厚生省令で、今お話が一、二ございましたような形の内容というものは、私どもとしては妥当性があるものというふうに考えております。  ただ、最近の保育内容の多様化等々の実態に即しまして、例えば乳児加算であるとかあるいは障害児加算であるとか、そういった面につきましては実情に即した対応というものを検討していかなければいかぬ、進めていかなければいかぬというふうに考えている次第でございます。
  230. 経塚幸夫

    ○経塚委員 私は、これは実態に即した国の基準に改めるべきだと思いますよ。  それから局長、保育料の問題についても、使用料引き上げなければならぬ、こう言っておりますけれども、これは厚生省の基準で実費どおり徴収するということになれば、保育料は何と現在の十倍からになるのですよ。一人十四万円ぐらいの負担になるのです。これだったら児童福祉法も何も要らぬわけですよ。国も地方公共団体責任も全然要らぬことになるのですよ。まさかそんなことは考えておるとは思いませんけれども、今日の保育の実態を考えてみれば、軽々に実費に即して保育料も引き上げるべきだというようなことは言える状況にはないと思いますよ。  これは行政管理庁の五十六年九月の調査でありますが、入所辞退児の二〇・九%が「保育料が高いため」、こういう回答を寄せておるわけです。経済的理由によって児童福祉法から子供が排除されるようなことはあってはならぬと思うのです。子供が保育所で保育されるということについては、単に母親が働いておるからその子供を預かるという託児所的な性格というのは過去の話。今は、子供が心身ともに健やかに成長するためには集団の中で育っていくことが最も正しい子供の成長方法なんだということは、もう専門家の見解として明らかにされておるところであります。この問題につきましては、この程度にとどめておきます。  そこで、最初の局長の考え方に戻りたいと思うのですが、改めて局長の論文に触れておきますと、今までの地方団体がやっておった行政サービスの直営方式はできるだけ民間に切りかえていく、大幅に民間委託方式に切りかえる、これをおっしゃっておられる。それから、今後はどうしても行政対象そのものの見直しにまで踏み込む必要がある、こうもおっしゃっておる。老人だとか教育、つまり福祉や教育ですね。これを行政の責任において進めるかどうかについては、行政対象から外すかどうかというような問題まで検討しなければならぬ、こういうことも言っておられる。局長が考えておるようなことをやっていきますと、住民に対する行政サービスは大幅に民間に振りかえていく、あるいは受益者負担の名のもとに手数料使用料は実態に即してどんどん引き上げていく、あるいは今まで行政が責任を持って見ておったものも、今後行政の対象として扱うかどうかも踏み込んで再検討しなければならぬ、ここまでまいりますと、これは一体何のための地方自治なのか。昔のように地方という名前はあるけれども地方自治がないじゃないかという状態にまで地方自治が形骸化しかねませんよ。私はそれを憂えるものです。  あなたは相当な決意でこのことをおっしゃっておられる。これは世界的に例のない壮大な実験だとも言っておられる。恐らくここまで踏み込んだ見解を、全国三千三百の市町村の行政を援助し指導すべき立場にある自治省の、しかも生殺与奪の権を握る財政責任ある立場におる人が論じたということは異例のことでしょう。これはあなたのおっしゃるとおり、世界的に例のない壮大な実験となるでしょう。目標達成のためには、「教育制度、社会保障制度、産業経済制度等々、すべての行政分野にわたって現行の制度を全面的に見直し、また行政のシステムを思い切って改変することが必要です。」とまで言い切っているのです。  私は最初に交付税論議のときに、一体自治省はどこまで真剣に今日の財源不足を補うために創設をされた交付税制度を守り、そして交付税率引き上げるということを大蔵省に対しても政府全体の緊急課題として要請される姿勢があるのかどうか疑わしいと申し上げたのは、後に出てくるあなたの見解がこういうことを平然と言っているからなのです。これがなければよろしいよ。なければ、本当に苦労されているのだな、この財政の厳しい中でいろいろと知恵を絞ってと、同情に値するとは思うのですが、後段で、ここまで踏み切った、地方自治を形骸化するような中身にまで踏み込んだような論議をあなたが展開され、見解を持っているということになりますと、これは大変だと私は思います。その点、どうですか。
  231. 石原信雄

    石原政府委員 今日の国、地方を通ずる財政危機をもたらしている根本の原因とかかわり合いのある事柄でありますが、先日も御答弁申し上げましたように、今日の財政危機の根本の原因は、現在の国、地方を通ずる行政サービス水準と現在の租税負担水準とが大きく開いている、その開きが一向に縮まらないところに財政の苦しさの根本原因があるのじゃないかと私自身は考えております。これは私が個人で考えているだけではなくて、税制調査会の答申でもそのような指摘がなされております。これに対して、どういう方法、手段でこの乖離を是正していくかということが、とりもなおさず今の財政再建の問題であろうかと思います。  これについて政府の基本方針は、増税をしないで、主として歳出見直しによって、行政改革によってこの危機を乗り切ろう、収支のギャップを解消していこう、こういう方針をとっております。そういう大前提のもとで私ども地方財政の運営についても考えていかざるを得ない。もちろん、立場立場によりまして、もっと租税負担引き上げてでも今の福祉や教育の水準を高めていくべきだ、こういう主張も当然あると思います。また、地方自治体の第一線の立場の方々は住民のニーズに直接接しておられますから、住民のニーズを受け入れて、足らざる分を財源の増強で、具体的には租税負担水準の引き上げで対応すべきだという御意見の人も多々あります。事実、私のところにおいでになってそういう意見を述べられる首長さんもたくさんおられます。  しかし、政府の今の方針は、基本的には増税をしないで収支のギャップは歳出見直しで解消していくのだ、こういう方針をとっております以上、私どもは、地方財政の運営に当たりましても、そういう前提で、そういう環境のもとで、最も必要な、最も基本的な住民サービスは確保していかなければいけない、そして財政の健全性を守っていかなければいけないという前提に立ちますと、一つは行政の効率化を図るためにどうしたらいいか、直営よりも民間委託の方が効率的にできる行政分野については積極的にこれを追求していかざるを得ない。それからまた、増税がいけない、そちらの道が閉ざされているということになれば、行政サービスの物によっては直接受益に関連して負担を求めていく、こういった道も必要になってくると思うのであります。これらのことどもに今の厳しい財政環境のもとで地方財政がどのように対応していったらいいかということについて、私は私なりの考え方を述べたわけでありますが、あくまでこれは増税をしないのだという大前提のもとで、そういう枠組みの中でどう対応していったらいいかということについて私なりの考え方を申し上げた次第であります。  そして、その本当のねらいは、真に必要な、真に基本的な住民サービスは確保していかなければいけない、そのために、必要性の劣る住民サービスといいましょうか、行政分野は取捨選択していかなければいけない、そういうことを申し上げたつもりであります。私は、厳しい財政環境のもとで、本当の意味地方の時代と申しましょうか、地方公共団体が住民の負託にこたえていくためにはそういった厳しい選択がやむを得ないのじゃないか、今の政府の大方針のもとではそういった道が避けられないのじゃないか、このように考えております。
  232. 経塚幸夫

    ○経塚委員 政府方針がそうであり、今の厳しい財政状況のもとではそれ以外に活路はない、こうおっしゃいますけれども、自治省なんですから、私どもは一時期、自治省といえば地方の味方だ、何はさておいてひとつ自治省に頑張ってもらおう、こういうことでいろいろ陳情も重ね要請もした記憶がまだ新しいところでございますが、どこかで歯どめをかけないと、国の財政事情、国の財政事情ということでいっておれば、地方自治を守るべき自治省がみずから地方自治の首を絞めてしまう結果になりかねない、しかも今その重大な岐路に差しかかっておるときだけに、私は何度も申し上げますけれども、全国三千三百の地方自治体を援助し指導する、しかも、財政を預かる立場におる、責任ある立場におる人の言動としては、もっと地方自治を励ますようなそういう態度をとるべきだ、かように考えたから申し上げたわけであります。  次の問題に入りたいと思います。  給与の問題でお尋ねをしたいと思うのですが、地方債の許可条件として給与条項を入れたようでありますが、まず最初に、給与について給与条例主義がとられておりますが、これはどういう理由によるわけですか。
  233. 中島忠能

    ○中島政府委員 地方公務員の給与につきましては、法律で給与の決定原則というのがございますが、その決定原則に基づいてそれぞれの地方団体が議会でひとつ決めていただこう、そして、決めたものについては住民の税負担の納得をいただこうじゃないか、こういうことだと我々は理解しております。
  234. 経塚幸夫

    ○経塚委員 それだけですか。
  235. 中島忠能

    ○中島政府委員 そういうふうに理解しております。
  236. 経塚幸夫

    ○経塚委員 あなたの公務員部の方が執筆された「現代地方自治全集」の中で、給与条例主義がとられておるその理由として、こう述べられておる。「給与の負担者である住民の前に明らかにする。労働基本権に制限をうけている職員の給与を条例で保障する」、これが給与条例主義なんです。こう説明をされておりますが、この解釈はそれでいいのですか、それとも間違っておるのですか。
  237. 中島忠能

    ○中島政府委員 間違っていないと思います。
  238. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうすると、この人事委員会の勧告制度は、争議行為禁止の代償制度である、そういう意味も持っておるということである以上は、当然守られなければならぬものだ、こう思いますが、どうですか。
  239. 中島忠能

    ○中島政府委員 できるだけ尊重すべきものだというふうに考えますが、それを実施するに当たりましては、やはり政策の決定権者として全体の行政というものを考えながら対応しなければならないというふうに思います。
  240. 経塚幸夫

    ○経塚委員 できるだけ守られなければならないという程度のものなんですか。  私はちょっと引用しておきたいと思うのですが、これは全農林警職法事件の判決の内容であります。判決の中身をちょっと申し上げておきます。  この判定は三つの理由を挙げておりますが、その三つの理由の中で、第一の理由として、争議行為を禁止したのは、地方公共団体の住民全体の奉仕者であるということ。それから二つ目には、団体交渉による労働条件の決定という方式が当然には妥当しない。なぜかと言えば、議会における民主的な手続によってされるべき勤務条件の決定に対して不当な圧力を加え、これをゆがめるおそれがある。三つ目、ここが重要なんですが、勤務条件に関する利益保障がある、これを挙げているのですね。そして具体には、地公法二十六条、人事委員会の給料表に関する報告と勧告制度、これがあるから地方公務員あるいは公務員の争議行為は禁止されなければならぬ。つまり、これは争議行為禁止の代償制度として、今申し上げました三つの条件の三つ目に明確に挙げておるわけですね。これは裁判所の判例であります。  そうしますと、代償制度でありますから、これはできるだけ尊重する、できなければ尊重しなくてもよろしいという、そんな緩い性格のものではない。代償制度というのは、代償しなければならぬのです。勧告が守られなければ代償にならぬでしょう。その点はどうですか。
  241. 中島忠能

    ○中島政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、勧告を受けた執行当局としては、それを最大限に尊重していくという姿勢でなければならないと思いますが、それを受け取った方の長、執行当局というのは、いろいろな行政需要というのもこれまた抱えておりますから、そういうものを総合的に勘案しながら最大限に尊重するということだろうと思います。
  242. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうすると、もう一つの判例を申し上げておきましょう。これは最高裁判決ですからね。これも国家公務員の事件について違法と判決をされたんですね。その違法と判決をした中で、裁判官の意見としてこう述べているんですね。  「この代償措置こそは、争議行為を禁止されている公務員の利益を国家的に保障しようとする現実的な制度であり、公務員の争議行為の禁止が違憲とされないための強力な支柱なのであるから、それが十分にその保障機能を発揮しうるものでなければならず、また、そのような運用がはかられなければならないのである。」最高裁意見として明確にこう述べているんです。さらに、「もし仮りにその代償措置が迅速公平にその本来の機能をはたさず実際上画餅にひとしいとみられる事態が生じた場合には、公務員がこの制度の正常な運用を要求して相当と認められる範囲を逸脱しない手段態様で争議行為にでたとしても、それは、憲法上保障された争議行為であるというべきであるから」「いかなる制裁、不利益をうける筋合いのものではなく」「処罰することは、憲法二八条に違反するものといわなければならない。」ここまで言い切っているんですね。  これは、代償制度だからできるだけ尊重という意味じゃないのですよ。強力な支柱なのだ。だから、それが十分にその保障機能を発揮し得るものでなければならない、その運用を図らなければならないとだめ押しをしているのです。それでもし守られない場合には、争議行為に出たとしても、それは憲法上保障された争議行為である。これを不当だとかいって制裁するようなことがあれば、逆に憲法二十八条に違反するものだと言わなければならないとまで言っているんですよ。この最高裁の判決の内容についてあなたはどうお考えになりますか。単に尊重しなければならないという程度で済まされる問題ですか。
  243. 中島忠能

    ○中島政府委員 最も最近の最高裁判所の判決の多数意見をとらえて申し上げますと、私が先ほど申し上げたとおりでございます。
  244. 経塚幸夫

    ○経塚委員 最高裁判所の多数意見をとらえて——それじゃ人事院勧告制度は単に尊重すればよろしい、やってもやらなくてもよろしいとそれは出ているのですか、証拠を示してください。
  245. 中島忠能

    ○中島政府委員 私は何もそういうことを申し上げておりません。行政当局としていろいろな行政需要を抱えておる、それを総合的に勘案しながら人事委員会の勧告というのを最大限に尊重しなければならない。やってもやらなくてもいい、そういうことは申し上げておりません。
  246. 経塚幸夫

    ○経塚委員 やってもやらなくてもいいとは申し上げておらぬと言うけれども、私は最高裁の判決の意見を取り上げて、これは守らなければならぬものだ、守らなければ、争議行為に出られてもそれは制裁できない、逆に、制裁するのは憲法違反だ、ここまで言っておるじゃないか。だから、これは尊重するという程度のものなのか、あるいは守らなければならぬというものなのか、ここを聞いているんですよ。  あなたの答弁、何ですか、開き直って。守っても守らなくてもいいものだなんて言ってはしません。——私は、守らなければならぬものじゃないかと聞いているのですよ。あなたは尊重しなければならぬという範囲しか出ないわけですから、そうすると、言葉を返せば、尊重しなければならぬということは、尊重はしておるけれども、そのとおり一〇〇%やらなくてもいいというふうにも解釈できるじゃないですか。何だ、開き直って答弁なんてもってのほかだ。
  247. 中島忠能

    ○中島政府委員 最大限に尊重しなければならない、こういうことでございます。
  248. 経塚幸夫

    ○経塚委員 最大限に尊重しなければならぬとおっしゃいますけれども、自治省のとっている態度はどうですか、局長。  最大限に尊重しようとした地方自治体に対してどういう態度をとったのですか。制裁措置に出たでしょう。これから出ないと約束できますか。
  249. 石原信雄

    石原政府委員 五十八年度地方債の許可に当たりまして、一部の異常に給与水準の高い団体においてその合理化のための努力がなされなかったものについて、特定の地方債の許可額を一部抑制いたしました。この考え方は、このような団体につきましては将来の償還能力というような点でいろいろ問題がある。現に給与水準が非常に高くて、かつ合理化のための十分な努力がなされないということになりますと、経費の中で最も義務的な性格の強い給与費のウエートが非常に高くなっているわけでありまして、これらの団体については財政体質改善がなされていない。その団体が将来の住民の負担になる地方債を発行するということについては、財政上の見地からいろいろ問題があるわけであります。  そこで、従来の許可方針の中で、一般事業債については各団体の財政状況を勘案して地方債の額を決定できる、こういう許可方針に基づきまして、将来の財政負担についても配慮しながら抑制措置を講じた次第でございます。したがいまして、これはあくまで財政上の見地からとられた措置でございます。
  250. 経塚幸夫

    ○経塚委員 公務員部長は、これは最大限尊重しなければならぬと言っておる。その最大限尊重しようということでやろうとしたところに対しては財政的な制裁措置を加えておる。これは自治省自身が一致しておらぬじゃないですか。  五十七年四月八日に、土屋答弁、こう言っている。「ラス指数が高い団体について、それを基準とした制裁的なものを考えていない」「みずから計画を立てて自主的に改善をされていかれることを私どもも希望しており、それが本筋だと思っております。」これはわずか二年前の答弁です。それでしかも事態はどうかといえば、ラスパイの全国平均は、これもこの間から論議されておりますが、悪くなっているのじゃない、改善されていっているのですよ。好転しつつあるにもかかわらず、わずか二年前の答弁を覆されるのですか。  私がきょう見ましたこの起債の中での給与条項の問題ですが、「是正のために必要な努力を払わないもの」こう言っているのですね。払っているんじゃないですか。いろいろ職員団体の非難を受けながらも、あるいは職員団体みずから協力しているところもあるでしょう、さまざまではありますけれども改善努力はそれなりに払っているのですよ。指数がどんどん上がっているというならともかく、二年前に土屋さんが今申し上げましたような答弁をされて、みずから計画を立てて自主的に改善される、これが本筋だと言っている。そうすると、出されております起債の許可の中へ給与条項を入れるというのは、二年前の答弁から申し上げますと本筋じゃないわけです。邪道です。どうですか。
  251. 石原信雄

    石原政府委員 当時の土屋財政局長が御答弁申し上げたように、各団体が自主的にそれぞれ給与の適正化に努めていただいてその成果が上がるということが、私どもが最も期待しているところであります。そして五十八年度地方債の許可に当たりましては、適正化をお願いする指定団体の中で、効果的な適正化措置を講じられた団体については抑制措置は講じておりません。十分な適正化措置がなかった団体について一部の起債の額を抑制したということであります。  私どもは、基本的には各団体が住民の負託にこたえて適正化のための成果を上げていただくことが最も望ましい。そして、地方債の許可に当たりまして抑制措置を講ずるというような事態の生じないようになることを最も希望しております。
  252. 経塚幸夫

    ○経塚委員 大分県、群馬県などの人事委員会が勧告制度の尊重を厳しく求める意見書を議会なり関係方面へ出しておられますが、この文言を見ましても、この勧告制度が確立した制度として維持され尊重されることが、公務における労使関係の安定、職員の士気の保持、公正かつ能率的な公務の運営にとって欠かせない。これは地方団体における労使間の円滑な信頼関係を確立する上からも、そしてそのことがひいては住民のサービスにつながるものでもあるし、この中に不信感を、しかも事もあろうに自治省が財政的な制裁措置によってくちばしを入れていく、強権的な制裁を加えるというようなことは好ましいことじゃありませんよ。指導するのはよろしい。どんどん指導したらいいのですよ。そして自主的にみずから計画を立てて、非難を受けないような形で整合性を図っていく、その努力を促進させ、それを援助する、それは大いにやりなさい。しかし、大臣も廃止しなければならぬとまで言っていたこの起債の許可権を使って、制度としての人勧制度を守ろうというところに対してまで介入をし、制裁を加えるというのは、明らかに行き過ぎですよ。  勘ぐっていけば、これは単に財政問題じゃない。こうして政府地方自治体に対していろいろ介入をしていく、干渉していく、そういう突破口をつくるきっかけにもなりかねない。逆に言えば、住民からのいろいろな批判や不信を逆手にとってそういうことをやりかねないという危倶さえ感ぜざるを得ないわけですね。いろいろ指導するのは結構。しかし、もうこれは廃止しなければならぬと言われておるような起債の許可権を使って、生殺与奪の権を握って締め上げるということはやるべきでないと思いますが、どうですか。
  253. 田川誠一

    ○田川国務大臣 先ほど経塚さんがいみじくもおっしゃったように、多くの地方団体が給与の適正化に向かって非常に努力をしておられる、私もそうだと思うのです。理事者も職員もこの厳しい環境の中に一生懸命やっておられる。しかし、一部の団体でまたそうでないというものもあるわけです。ですから、そういう状態の中に一生懸命やっている団体にこたえるようなことをやっていかなくてはならぬ。もし一部の団体についてそのままそのような状態を認めているんだったら、ましめにやっている団体はどうやったらいいか非常に困ると思うのです。ですから、そういう意味で今度のような通達を出したわけで、むしろ、一生懸命やっていらっしゃる団体は、今まで不満を持っていたけれども、今度の通達でよく言ってくれたと思うと私は予想をしているわけでありまして、今経塚さんおっしゃったように、生殺与奪の権を握るとか強権を発動するとかというものではなくて、やはりイージーゴーイングにやっている自治体に対しては、財政の余裕があるということをはっきり認めて対応をしていかなければ、これはかえって不公平になるんじゃないでしょうか。  それから、先ほど来、いろいろ給与の問題とか手数料のことをおっしゃいましたけれども、やはり私どもは、公務員がどういう方々から財源を得て仕事をしているかということを考えていかないといけない。やはり節約をしていくように努力をしていかなければならぬし、また国の財政地方財政を考えて我慢をしていただくことは我慢をしてもらわなければならぬ。応分の負担もお願いをしなければならぬということが念頭にあって、先ほど石原局長が言ったようにやっているわけで、単にこれを抑えつけるとかなんとかということでないことを、賢明な経塚さんはおわかりの上で質問をしているのではないかと私は思うのです。  経塚さんのお立場はお立場で十分わかりますけれども、今回の措置については、決して単に自治省が中央集権的なような気持ちでやっているのではない。今地方財政を健全化に向かわせるようにしていかないと、先ほど来御議論のあったように、地方財政は裕福じゃないかというような世論がどんどんどんどん出てきてしまうんですよ。今はそういう大事な時期にあるということをひとつ御理解をしていただきたいのでございます。
  254. 経塚幸夫

    ○経塚委員 これは大臣、どこか一部まだ努力をしていないところがあるというふうに受け取れる発言でございますが、これは全体が今努力しているんですよ。これは数字を挙げてみましても、一〇〇以上のところが五十七年には千九百九十五あったのが、千六百六十と三百三十五も減っているんですね。それで、努力はしていてもなお困難なところも幾つかあるんですよ。私どもも、かつて地方議員だったときに、金の卵、中卒生募集のために大阪から九州まで、雇うために議会も走ったことがあるんですよ、なかなか清掃現場へ来てくれる労働者がなくて。そこで、これはもう銭金、背に腹はかえられぬ、こういうことで思い切って給与を奮発して、そして来てもらったという例もたくさんあるんですよ、大都市などは。  そういう経緯などもあって、なかなか計画は立ててもいかないところはあるけれども努力の度合いからいけば、これはみんなやっているわけですよ。だから、それを援助する、指導するというのは、これは大いにやられたら結構ですよ。しかし、どうも財政的な制裁措置ということになりますと、これはやはり一歩踏み込んで地方自治に対する介入、干渉になりかねぬ、こういうふうに考えたからでございます。  時間の都合で次に入りたいと思います。  公務員給与の問題をやかましく言われるのですが、これはやはり同時に守らせるべきことについても、自治省は言うべきことは言う必要があるという角度から、以下ちょっと御質問申し上げたい。  今晩のNHKのテレビでもこれは問題になるようでありますが、ダイオキシン、これは猛毒であります。これがごみの処理場から発生をしておるということが、十一月十八日に愛媛大農学部の環境化学研究室立川教授によって明らかにされた。これは松山とか新居浜とか七市九カ所のごみ処理場を調べた結果だけではありますけれども。このダイオキシンといいますのは、これはベトナムの枯れ葉作戦で散布されて、帰還米兵の子供に奇形児が生まれた。このために政府を相手取って、今米国では訴訟に発展をしておる。さらに、これは発がん性、遺伝毒性、奇形児——地上最強の毒性とまでこれは言われておるわけですね。こういう猛毒がごみ処理場から煙突や機械を通じて発生しておるということが明らかになってきております。  さらに、清掃現場における事故が相次いでおりますね。例えば、これは死亡災害の発生状況ですが、五十四年が二十六人、五十七年は三十八人に上っております。去年の十一月には埼玉県の浦和市の清掃工場で労働者二人が窒息死するという事故も発生した。十二月には大阪門真で清掃会社の労働者がごみの収集車に巻き込まれ、翌日、焼却炉の灰捨て場で焼死体となって発見をされた。七月には大阪市北区で、やはりごみ処理会社の現場主任者が機械に巻き込まれて圧死する、こういうことで、清掃現場の災害事故がふえてきておるわけですね。  そこで、まずお尋ねをしたいと思うのですが、この浦和市の事故について労働省の方で基準局が勧告をされたと思うのですが、その勧告が実施されておるのですか。
  255. 福渡靖

    ○福渡説明員 お答えをいたします。  御指摘の事業所は、浦和市の環境部大崎事業所であろうかと思います。昨年十一月に二名の死亡事故が発生しております。ここについては、従来の監督は昭和五十五年に監督をしておりますし、それから今回の事故の後、災害調査という形で現在調査中という形で進めております。
  256. 経塚幸夫

    ○経塚委員 五十五年に爆発事故が起き、今回また事故を起こしておる。それで基準局は勧告を出されたわけでしょう。その勧告をやっているのかやっていないのか、これを聞いているんですよ。  といいますのは、これは労働安全衛生法によって安全委員会の設置、衛生委員会の設置が義務づけられ、同時に安全管理者、衛生管理者、これを置かなければならぬわけでしょう。義務化されているのでしょう。私ども現場を調査しましたところ、これはやってなかったのです。五十五年の爆発事故で、置きなさいという勧告を受けた。ところが去年、二名の労働者が死亡するという事故が起こったので、我々現場へ行って調べてみると、五十五年の勧告を無視しているんですね。市長にも会いましたけれども、やっておらぬのですね。もし五十五年の勧告を受けて、この現場で労働安全衛生法に基づく措置がそれぞれとられておったとするならば、今回のような不幸な事件が起こらなかったであろうということも十分察知できるんですね。  これは、死亡事故は何で起こったかといいますと、ガスが発生したというので酸素マスクをつけて現場に入った。酸素マスクをつけたまま死亡している。酸素マスクをつけたのに何で死亡したのか。いろいろ調べてみますと、この酸素マスクにも問題がある。つまり誤ってか、逆に酸素発生のパイプを挿入したわけでありますが、逆に挿入しても入るようになっているところにこの酸素マスクの欠陥がありますけれども、逆に入れれば、これは酸素が発生せずに空気を密閉してしまうんですね。だから、みずから自分を死に追いやったという結果になった。安全衛生委員会などがあれば、このマスクの使用方法について十分に検討されたでありましょうし、こういう事故にまで至らなかったということは、これは我々素人の目から見ても明らかなんですね。今回のこの事故が起きた後、この勧告を受け入れて設置しているのですか、どうなんですか。
  257. 福渡靖

    ○福渡説明員 御指摘の勧告につきましては、五十五年に監督署から出しておりますが、残念ながら、向こうからの報告では、改善をする予定であるという報告だけ受けまして、その後改善が行われていなかったというふうに聞いております。  このことについては私どもも大変遺憾に思っておりますが、五十八年の事故の後でもなおかつ安全委員会が設置をされていないという状況が続いております。これについても、現在、安全衛生法違反の疑いということで調査を進めております。
  258. 経塚幸夫

    ○経塚委員 五十五年に事故を起こして勧告を受けて、そして三年後に今度は労働者二人が命を失うという死亡事故を起こしている。そして勧告した。事故が起きたのが十一月であります。もう既に半年近くたっておる。それでもなお勧告を受け入れてないんですか。委員会設置してないのですか。管理者を置いてないのですか。
  259. 福渡靖

    ○福渡説明員 私どもの方は一月、三月に報告を受けておりますが、その後まだ報告を受けておりません。今まで報告を受けた段階では安全委員会が設置されておりませんし、安全管理者の選任も行われていないという状況でございます。
  260. 経塚幸夫

    ○経塚委員 これは大変な問題ですね。これは設置が義務づけられておりまして、これを守らなきゃ罰金三十万円以下の罰則があるのですね。地方自治体がこんなことで果たして労働者の安全が守れますか。  私ども、ついでにいろいろ調査いたしました。浦和の労働基準局、十三事業所のうち十一事業所を調査した結果でありますが、十一事業所のうち、法で定められた安全管理者の選任はたった六事業所、衛生管理者の選任は二事業所、安全委員会の設置は三、衛生委員会の設置は二、まことにお寒い限りであります。  お尋ねをいたしますが、全国の団体の中で、法に定められた委員会や管理者の設置状況は今どうなっていますか。
  261. 中島忠能

    ○中島政府委員 都道府県から町村まで全部申し上げますか、どうしましょうか。市だけでよろしいですか。
  262. 経塚幸夫

    ○経塚委員 市だけで結構です。パーセントで言ってもらったら結構です。数は結構です。
  263. 中島忠能

    ○中島政府委員 お尋ねの件につきまして、労働安全衛生法令に基づきまして総括安全衛生管理者というのが義務づけられておりますが、市では七三・三%、安全管理者は六五・八%、衛生管理者は四九・五%、産業医は四八・一%、安全委員会は六〇・一%、衛生委員会は三六%ということでございますが、労働省の方からも御説明があるかもわかりませんけれども、私たちの方も、事地方団体のことでございますので、かねがねこれにつきましてはいろいろなチャンスをつかまえまして設置を促進するように指導しております。毎年少しずつ設置状況は上昇しておりますけれども、なお低うございますので、これについてはこれからひとつ思い切って指導していきたいというふうに自治省としても考えております。
  264. 経塚幸夫

    ○経塚委員 警察はどうなっていますか。
  265. 太田壽郎

    ○太田政府委員 警察におきましても、職員の健康問題、安全問題、これは基本でございますので、非常に力を入れて取り組んでおるところでございます。警察本部、警察署を通じまして、職員の安全衛生保持に関する各種の対策を強力に推進してきている。安全衛生に関する各種の委員会を初めといたしまして、多数の、これは全国で約千二百人程度でございますが、多数の衛生管理者あるいは産業医、健康管理医等を設置いたしまして、職員の安全と健康を確保し、快適な勤務環境の形成に努めているという状況でございます。
  266. 経塚幸夫

    ○経塚委員 大臣、私ども資料によりますと、衛生委員会と衛生管理者の設置率が非常に悪いんですわ。都道府県、それから指定都市、市区町村を含めますと、衛生管理者は四九・三%しか置いておらないわけですね。それから衛生委員会は三二・四%なんですよ。  最初に申し上げましたように、特に清掃現場ではいろいろな事故が起きているのです。これは公にされない事故も随分あるわけなんですよ。そこへもってさて猛毒が発生するというような状況も昨今問題になっております。そのほかに病院があります、給食センターがあります。こういう現場の労働者は、本当に住民サービスの第一線に危険を冒して立っているわけなんです。せめて快適な環境で労働ができるように、法で定められた委員会の設置だとか管理者の設置は、何はさておいてもやらなければならぬ義務だと思うのですよ。それは給与の問題をやかましく言われるのも結構ですけれども、あわせて働きやすい職場環境保全のために、法に従って自治省としてもこれは指導する必要があるんじゃないかと思うのです。  それで、労働省の方もいろいろ通達は出されておるようでありますが、どういうわけかこれが思い切って改善をされない。浦和市のような例ですね、事故が二度も起きているのにまだ設置しておらぬという状況ですから、一体これは何を考えているのか疑わざるを得ぬのです。  どうです、ひとつ早急に、法に基づいて定められた委員会、管理者の設置が図られるように自治省として指導すべきと思いますが……。
  267. 中島忠能

    ○中島政府委員 御指摘のとおり、人の生命あるいは健康に重大な関係のある問題でございますし、今御報告申し上げたように体制整備というのが非常におくれておりますので、今までよりも一層きめの細かい強力な指導というものをやって、ぜひとも御期待にこたえていきたいというふうに考えております。
  268. 田川誠一

    ○田川国務大臣 公務員部長が申しましたように、強く指導をしてまいります。
  269. 経塚幸夫

    ○経塚委員 ぜひひとつ早急に改善されるように希望を申し上げておきます。  最後に私は、大臣お尋ねをしたいわけでありますが、二時間余にわたりまして地方自治、地方財政の問題をお尋ねしてまいりました。私は、財政局長の考え方からいけば地方自治が形骸化されるんではないか、こういう危倶を抱いてお尋ねをしたわけでありますが、新聞の報道によりますと、近代化協会といいまして、これは何回かにわたりましていろんな意見具申をされておる財界の研究機関でございますが、四月五日、こういう提言を出されております。三点ですが、一つは、人口五十万人以上の市の議員の定数は三〇%減らす。二つ目に、人口五十万以下の市は議員の数を九名ないし七名に減らす。三つ目に、こうして選ばれた少数の議員が一人の支配人を選出をする、つまり市長の公選制を廃止する、こういう提言をされております。  私はいろいろお尋ねをいたしましたが、もし市の直営の事業が大幅に民間に切りかえられていく、手数料ども実費に見合ってどんどん引き上げられていく、公平な負担の名のもとに地方自治体の行政サービスがどんどん低下をされて形骸化されていく。行き着く先は、近代化協会が提言されておるような結果になりはせぬかというふうに危惧をするのは私一人ではないと思います。こういうようなことがあってはならぬと思います。大臣の方では今申し上げましたことは初耳だろうとは思いますけれども地方自治の本旨、議会制民主主義を守る観点からも、このようなことを許してはならないと思いますが、最後に御見解をお伺いしておきたいと思います。
  270. 田川誠一

    ○田川国務大臣 先ほど来経塚さんの論議をずっと伺いまして、地方の立場から、地方自治を充実させていく考え方からいろいろ御論議をいただいたこと、私ども非常にありがたく思っておりまして、今後、地方財政の基盤を充実するために一生懸命やってまいります。  いろいろ御批判をいただいた点がございますが、大分誤解もあるようでございます。私どもは広い立場から、住民の負担をできるだけ軽くしていくことをまず重点に考えていかなければならぬ、こういうことでいろいろな施策や指導をしているのでございまして、御懸念のようなことは毛頭ないことを私はここではっきり申し上げます。  いずれにいたしましても、地方行政委員会でお出しになられましたいろいろな御意見を十分踏まえて今後ともやってまいります。
  271. 経塚幸夫

    ○経塚委員 終わります。
  272. 大石千八

    大石委員長 次回は、明後十九日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十二分散会