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1984-04-12 第101回国会 衆議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十二日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 臼井日出男君 理事 小澤  潔君    理事 谷  洋一君 理事 西田  司君    理事 小川 省吾君 理事 加藤 万吉君    理事 草野  威君 理事 岡田 正勝君       大西 正男君    工藤  巖君       小杉  隆君    左藤  恵君       中川 昭一君    平林 鴻三君       松田 九郎君    山岡 謙蔵君       佐藤 敬治君    細谷 治嘉君       安田 修三君    山下八洲夫君       岡本 富夫君    宮崎 角治君       吉井 光照君    藤原哲太郎君       経塚 幸夫君  出席国務大臣         自 治 大 臣 田川 誠一君  出席政府委員         警察庁交通局長 久本 禮一君         自治大臣官房長 矢野浩一郎君         自治大臣官房審         議官      田井 順之君         自治大臣官房審         議官      津田  正君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君         自治大臣官房審         議官      吉住 俊彦君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         行政管理庁行政         監査局監査官  竹内 幹吉君         文部省管理局私         学振興課長   奥田與志清君         厚生省社会局老         人福祉課長   古瀬  徹君         農林水産省構造         改善局建設部整         備課長     平井 公雄君         林野庁林政部森         林組合課長   山本  徹君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君     ————————————— 委員の異動 四月三日  辞任         補欠選任   大西 正男君     辻  英雄君 同日  辞任         補欠選任   辻  英雄君     大西 正男君 同月四日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     辻  英雄君   工藤  巖君     宮澤 喜一君   左藤  恵君     粕谷  茂君   中川 昭一君     野田  毅君   古屋  亨君     稻葉  修君 同日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     古屋  亨君   粕谷  茂君     左藤  恵君   辻  英雄君     大村 襄治君   野田  毅君     中川 昭一君   宮澤 喜一君     工藤  巖君 同月五日  辞任         補欠選任   藤原哲太郎君     田中 慶秋君 同日  辞任         補欠選任   田中 慶秋君     藤原哲太郎君 同月十一日  辞任         補欠選任   大西 正男君     木部 佳昭君   大村 襄治君     辻  英雄君   工藤  巖君     平泉  渉君   左藤  恵君     山中 貞則君   中川 昭一君     原 健三郎君 同日  辞任         補欠選任   木部 佳昭君     大西 正男君   辻  英雄君     大村 襄治君   原 健三郎君     中川 昭一君   平泉  渉君     工藤  巖君   山中 貞則君     左藤  恵君     ————————————— 四月六日  重度障害者固定資産税非課税に関する請願  (上野建一紹介)(第二一五七号)  身体障害者自動車運転免許証に付される重量  制限廃止等に関する請願上野建一紹介)(  第二一五八号) 同月九日  風俗営業等取締法改正促進等に関する請願外  二件(大塚雄司紹介)(第二二八九号)  料理飲食等消費税増税反対等に関する請願  (簑輪幸代紹介)(第二四〇〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一九号)  地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に  関する法律案内閣提出第三八号)      ————◇—————
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方交付税法等の一部を改正する法律案及び内閣提出地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平林鴻三君。
  3. 平林鴻三

    平林委員 きょうは交付税法の審議の初めでございますので、初めに、昭和五十九年度地方財政対策の眼目がどういうところに置かれたか、その特徴あるいは従来と異なる点をまず御説明いただきたいと思います。  また、昭和五十九年度国税三税の三二%相当額のほかに特例措置を講じておるわけでありますが、その理由もあわせて御説明いただきたいと思います。
  4. 田川誠一

    田川国務大臣 五十九年度地方財政対策の基本的な問題を先に私から御説明申し上げさせていただきます。  今の地方財政は大変巨額な借入金を抱えておりまして、これ以上の借入金への依存は地方財政の基盤を揺るがしかねない状況にあるわけでございまして、今後、行財政改革の積極的な推進と財政体質の抜本的な改善が緊急の課題となっております。このため、経常経費投資的経費を通じて歳出を抑制するとともに、なお、生じました財源不足は完全に補てんをいたした次第でございます。その点に当たりましても、地方財政健全化に資する見地から、交付税特別会計における新たな借り入れ原則としてこれを行わない、当分の間、法律の定めるところによりまして地方交付税総額について特例措置を講ずることといたしました。また、建設公債の活用の幅を抑制したところでございます。こうした措置をとりましたのが今度の地方財政対策でございます。  今、この借入金廃止という制度改革を行ったが、依然として特例措置に依存する状況が続くならば交付税率を見直すべきだという御質問がございましたですか、何かそういうこともお話しになったようでございますが、今の国の財政から見ましてなかなかそういうような状態には至っておりませんので、当分の間、特例措置を講じてやっていく、こういう方針でいるわけでございます。
  5. 平林鴻三

    平林委員 ただいまの大臣お話で、交付税特別会計で新たな借り入れを行わないという原則をおとりになったことは、これは結構なことだと存じます。私も賛成であります。  ところで、今の地方財政というのは、これだけ前年度に比べて財源がふえたからそれを新しい事業にこれだけ向けるとか、そういう時代では全くありませんで、これだけ足りないので始末をしながらまだ足りない、それを借金あるいは交付税特別措置というもので何とかやりくりをつけていくというまことにつらい状態が続いているわけであります。特に、昭和五十九年度地方財政措置というのはだんだんつらくなってまいりまして、私も去年、おととしぐらいは県で予算を組んでおったのでありますが、今はその当時に比べてもまだつらい各府県市町村地方財政状況のように察しております。何とかならないかと思いますけれども、これからさらに地方財政措置について懸命の努力政府の方でもお願いいたしたいわけであります。  そこで、話は交付税特別会計借り入れをやめたということに戻りますけれども、国の財政地方財政も、年度初めに議決されました予算歳入歳出で足りなくなるということがよくあります。ことしもどういうことが起こりますかよくわかりませんが、例えば毎年問題になるのは給与改定のことであります。給与改定をどの程度やるかということはわかりはしませんし、また、やらないかもしれないわけでありますけれども、これを一体今度の五十九年度地方財政計画においてはどのような考え方で見ておるか。また、この年度途中でいろいろな追加財政需要がはっきりしてきましたときに、この交付税特別会計借り入れをせずに新しい追加財政需要に対応する財源措置が一体できるかどうかというようなことが心配なわけであります。  これは将来の問題でありますから、基本方針については大臣からお答えいただきたいと思いますが、どんな感じを持っておるかというようなことにつきましては、担当の財政局長からお話をいただきたいと思います。
  6. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度給与改定問題などに関連して、年度途中の財政需要増加等についてどのように対処するつもりであるか、本年度地財計画上どのような措置が講じられているかというお尋ねでございます。  五十九年度地方財政がどういう推移をたどるか、年度に入ったばかりでありますからわからない面が多いのでありますけれども、最近の経済の動きなどからいたしますと、五十九年度税収見積もりその他について、政府が見通した方向で推移するのではないかという見方が強いわけであります。  ところで、この給与改定の問題でありますが、昨年度の場合と同様に、五十九年度の場合も国、地方とも給与改定については一%の給与改善費をあらかじめ計上いたしております。それから、給与改定だけの財源ということではありませんけれども年度途中における追加財政需要に対応すべく、四千億円の財源をあらかじめ計上いたしております。それで足りるか足りないか、給与改定内容あるいは税収動向等によって決まるわけでありますけれども、いずれにしても、現時点ではそのような措置を講じているということを申し上げたいと思います。
  7. 平林鴻三

    平林委員 私が心配いたしますのは、原則を打ち立ててはみたものの、こういうつらい時期でありますから、追加財政需要あるいは歳入欠陥が生じた場合に、早々とこういう原則を崩してしまうということが心配なんであります。一度立てた以上は、極力努力をしていただいて、交付税特会借り入れというような事態をすぐに招かないように御尽力をいただきたいと思っております。  次は、地方財政の現状と交付税役割といいますか、そういうようなことについての大臣の御認識なり御見解を伺いたいわけでありますが、先ほど来申しておりますように、昭和五十年度以降の地方財政というのは、実は毎年度多額財源不足を生じてきたわけであります。その財源不足補てんするやり方は、年度ごとに若干ずつ異なっておりますけれども、要は地方債を増発する、これが一点であります。要するに、府県市町村でとにかく金を借りておけ、こういうやり方が一点であります。もう一点は、先ほど来申しております交付税特別会計借り入れということで、交付税を膨らまして地方財源措置をしてきたという二点になると思います。  各地方団体、もちろん歳入確保に努めなければなりませんし、また、最少の経費で最大の効果が上がるように、歳出の抑制あるいは効果的な使用に極力努力することは当然のことであります。けれども、同時に、現行地方制度地方団体財源を国が保障することになっております。行政水準を維持するためにも地方団体財源を国が保障する、これがいわば国の責務になっておるわけであります。もちろん、地方自治を保障した現行憲法のもとではこれも当然のことだと思います。でありますから、先ほど申したように、いいかげんな財政運営をしておったら国の方でこれを是正するように指導するのは当然のことでありますが、国が地方財政責任を持つという、この責任意識をどうかひとつ自治省自治大臣も持ち続けていただいて、地方財政改善に御努力をいただきたいわけであります。  そこで、先ほど大臣がちょっとおっしゃっておりましたが、地方交付税国税三税からの繰り入れ率、いわゆる地方交付税率引き上げ問題であります。  実は、この問題は毎年この委員会でも議論になっておるはずであります。また、財政の貧弱な地方団体にとりましては、地方交付税というのはまさにつえとも柱とも頼む財源であります。この財源確保につきまして、恐らくすべての交付団体におきましては、市町村でも府県でも、毎年、何とか交付税の率の引き上げが行えないか、こういう議論を絶えずやっているところであります。それほど各地方団体関心が強い、何とかならないかという気持ちがあるわけであります。実は今、国もお金がない、しかも財政再建の途中だという実情があります。そして、地方も何とか財政をやりくりしなければいかぬという実情の中にあります。また、例の交付税法律議論としていろいろな交付税率引き上げ改定議論が行われているところでありますが、実際問題として非常に難しい。実情がそう簡単に交付税率改定するような実情にないというのが政府でおっしゃっておるところだろうと思うわけでございます。  けれども、五十年度以来の実際の交付税金額国税三税に比べてみますと、今年度は、財政を圧縮して、余裕財源がぎりぎりなくなるくらいのところまで持っていっていろいろなやり方をやった結果、国税三税の三二%程度に実際の金額もおさまっておると思いますけれども、今までやってきたことは、大体三二%をオーバーして交付税措置が行われたわけであります。交付税法定率改正することは難しいとは言いながら、実際問題はそれをオーバーしてやってきておる年度が多うございます。どうかひとつ、ただ難しい、考えると言うだけではなくて、何とかこの議論を推し進めて地方団体の期待にこたえるように御努力を願えないものだろうかと思うわけであります。  繰り返しで恐縮でございますが、大臣のこれからのお考えなり御決意というものを聞かせていただければありがたいと思います。
  8. 田川誠一

    田川国務大臣 平林さんの地方交付税に対する御意見は全く同感でございまして、地方交付税制度地方財政平衡交付金制度から変わった一番の大きな理由は、地方財政平衡交付金が単なる財源補てんですか、そういう制度であったのを、財源保障という性格をもっと強めて、そして安定的な財源を、しかも自主的な財源として地方に与えよう、こういうことで地方交付税制度ができたものと私は認識をしております。  そういう意味から、交付税制度は大事に維持していかなければならない。御指摘のような状態でなかなか地方の皆さんに十分な財源として交付できないということは本当に残念なことであるとは思っております。今後、この地方自主財源確保するという意味から、私ども地方交付税財源を十分に交付できるように努力をしていきたいと思っております。  ただ、私も非常に知識が薄いのですけれども交付税制度の中でもし一つマイナス面があるとすれば、財源を保障されているという安易感地方の中に全然ないとは言えないと思うのです。そういう意味から、地方団体の方々も、単に財源を保障されているということに甘んじないで、地方団体の経営をしっかりとやっていっていただきたいと思うのでございます。  国と地方との関係というのは車の両輪でございますから、今仰せのように中央の財政もなかなか厳しい状態にあります。本来ならこういう地方財政の厳しい状態の中には、先ほどもちょっと申し上げましたように、この際税率を上げなければいけない状態に来ていると思うのです。しかし、たびたび申し上げますように、なかなか今税率を上げるというわけにまいりませんで、今度のような措置をとったわけでございます。  ただ、今度の地方財政見直し措置で評価していただきたいのは、従来の国と地方とのあいまいだった負担区分というものを非常に明確にして、そして安易な借入全体質というものをここで清算をしていく、そして既往の借入金というものをしばらくの間棚上げしてここでひとつ出直していこう、そして将来の展望を切り開いていこうという見直しをしたわけでございまして、こうした意味から、今、平林さんおっしゃったような、地方になるべく御迷惑がかからないように交付税の安定的な確保を今後私どもはやっていく決意でございます。
  9. 平林鴻三

    平林委員 できるだけ早く交付税率引き上げて、地方財政のいわば制度的な安定化を図っていただきたいと私は思うのであります。要するに、今度交付税特別会計借り入れをやめるということは、いわば財政健全化する第一歩であります。こういうことを思い切ってやられたのは結構なのでありますが、これで何とか辛抱してやってくれということで、今後努力を怠られると我々も心配な面が出てまいりますので、これからも引き続いて交付税率引き上げるということを目標に置いて地方財政改善を図っていただきたい、かようにお願いをいたしておきます。  これから税制改正がどのように行われていくか、これもまた非常に関心を持たなければいかぬことであります。この財政の苦しいのに所得税減税をやった。法人税あるいは酒税というものは上げましたから、ことしは地方交付税に関しては税制改正が大きな影響を及ぼすということはなかったかもしれませんけれども、とにかく減税をやる、要するに国税三税の減税をやるというようなことが今後起こりますと、これは直ちに交付税の減収にはね返ってくるわけでありますから、税制改正との関連からいたしまして、交付税税率をどうするかというようなことも絶えず御注意を願っておかなければいかぬ。これは当然のことでありますし、自治省財政局はまさにウの目タカの目でそれをやっておるわけでありますから、私どもそう心配はいたしておりませんけれども、これからいろいろな税制改正が大幅に行われるような時期になってまいりますと、それと交付税との関連づけ、これは非常に細心の注意を払ってやっていただかなければいかぬと思うわけであります。  大きなことを言ってはいかぬかもしれませんけれども、やはり地方財政行政水準を、最低水準を保障するというだけではなくて、地方自治というものを伸ばす観点からいきますと、ある程度の地方が自由に使えるお金ゆとりが欲しいわけであります。地方交付税は自由に使えるとは申しましても、もうぎりぎりいっぱいの財政でありますから、自由に使えるような状態がない、これが実情だと思っております。そこで、地方財政が本当に地方自治を伸ばすために役立つようにするには、そういう意味からも交付税率引き上げて、できれば若干のゆとりというものを交付税の中でも持てるようにしたいものだと思うわけであります。逆に国の方でお金が足らぬから貸してくれと言えば、そのときには貸してあげますよぐらいなそういう時代が来ないものか、地方団体はいつもそういうことを夢見ておるわけであります。これは決して乱費を奨励するわけではなくて、地方自治を伸ばすという創意工夫地方自治の中でやっていくための財源の裏づけを、地方税なり地方交付税でできるだけやっていただきたい、こういう趣旨であります。  そこでお尋ねでありますが、今後の税制改正等に対処して、その交付税措置、特に場合によれば繰り入れ率引き上げるとか、他の税目を、新税ができた場合にこれを交付税の中に取り込むとか、そういうようなことは御検討になっておるかどうか、そこら辺のことを、地方財政の面から、財政局長さんから聞かせていただきたいと思うのです。
  10. 石原信雄

    石原政府委員 ただいまの時点では、御案内のように税制改正について大きな枠がはめられております。いわゆる増税はしない、そういう中で税制見直しということは当然論議されなければいけないし、我々もそういった制約の中であっても地方税源充実強化ということを常に心がけなければならないと思っております。そうして税制改正ということが具体的な日程にのれば、当然その改正交付税あり方とは関連いたしてまいります。さらに言いますと、最近の行政改革流れの中で国庫補助金制度あり方が大きく問われております。国庫補助金一般財源振りかえの問題が課題になっております。さらにまた、その大前提としての事務事業見直しあるいは国と地方役割分担見直し、こういった問題が全部絡んで、いわばその中心といいましょうか、締めくくり的な役割交付税制度が果たすのではないか、このように考えております。  私どもは、ただいま御指摘がありましたように、いろいろな制度改正税制改正流れの中で常に心がけなければならないことは、すべての地方団体が住民の負託にこたえて必要な行政水準を維持していけるようにしなければいけない。それがまさに交付税制度の使命でありますから、その点は常に念頭に置いて考えております。  かつて昭和五十三年、五十四年のころ、大きな税制改正論議されたことがありました。その当時は、独立税強化と関連して新しい税を設けられる場合に、その新税について国税地方税でどう分かち合うか、あるいはその新税交付税対象税目に加えるか加えないかというようなことを我々としては相当真剣に議論したことがあります。私どもは常に、新しい税源が生まれれば、それはまず地方財源に割り当てられるべきだ、こういう気持ちを持っておるものですから、当時は、大幅な税制改正に関連して交付税確保についてのいろいろな論議をしたわけでありますが、先ほど申し上げましたように現在は税制改正について一定の枠がはめられておりますので、五十二年、四年ごろのような論議は具体的な論議としてはありませんけれども税制改正のチャンスがあれば地方一般財源確保しなければいけない、こういう気持ちで取り組んでまいりたい、そういう気持ちで常に世の中の動きを見守り、その対応策を考えていきたいと思っております。
  11. 平林鴻三

    平林委員 これも財政局長から御説明をいただきたいと思いますが、五十九年度におきましては、地方財政計画の上で地方単独事業減額になっております。実は財政が苦しい苦しいと言いながら、何とか今までは地方単独事業確保する、あるいは増額するということで御努力をいただいてきたはずなんであります。ところが、だんだん詰まってきたということもありましょうけれども、ことしは減額だ、こういう結果を招いております。その事情を詳しく御説明をいただきたい。  それから、単独事業総額は落としたわけでありますけれども、新しく市町村まちづくり特別対策事業という、起債事業でありますが、こういうものを設けられた。これはまた目新しい一つ地方自治を伸ばしていく芽になるかもしれぬと思っておりますけれども、このまちづくり特別対策事業というものの事業内容あるいはねらいといったものを、財政局長から御説明をいただきたいと思います。
  12. 石原信雄

    石原政府委員 初めに、五十九年度地方財政計画におきまして単独事業を前年対比で減額している、この点についてのお尋ねでございます。  地方財政計画上、地方団体が自主的に地域環境整備を進める、地域づくりを進められるようにする、そのためには公共事業も大切でありますけれども単独事業も極めて重要である、こういう認識のもとに、これまで私どもは常に単独事業充実強化に努めてまいりました。  ところが、ごく最近の実態を見ますと、地方財政計画上相当大幅な単独事業の増額を図ったにもかかわらず、現実の決算では単独事業がその割に伸びていない、その結果、地方財政計画決算との間に非常に大きな乖離が生じておるわけであります。地方財政計画は、地方のあるべき財政の姿を計数的に示すものでありまして、必ずしも実態にそのまま追随するというものではありません。しかし、一つのガイドラインとしての意味を持つわけでありますから、実態との間に余り大きな乖離があるということは問題であります。その乖離原因等も検討して分析して、場合によっては地方財政計画積算内容を改めるということも必要ではないかと思うのであります。現にそういったことは過去においてもいろんな面で行われてきております。  そこで、単独事業につきまして最近の決算地方財政計画積算内容との対比をいたしまして、年度によって多少の乖離が生ずるのは当然でありますけれども、毎年度引き続き余り大きな乖離が生ずるということについては、やはり地方財政計画の性格上問題があるということで、種々検討の結果、最小限度これはどうしても改める必要があると考えられる額として二千八百億円をいわば規模是正したわけであります。この減額、数字の上では減額でありますけれども実態との乖離を是正したということであります。そして、計画のベースを是正した上で将来に向かって必要な増額措置は講ずる。その手段として、ただいま御指摘まちづくり特別対策事業というものを三千億円増額したところであります。  ちなみに、五十九年度の都道府県の当初予算状況を調べてみますと、この規模是正額を前年度から落とした場合の地方単独事業の増加率と、都道府県の当初予算における単独事業の増加率というのはかなり近い数字になっております。私どもは結局これは減額ではなくて、あくまで積算のベースを見直したという措置、これが実体の予算編成ともある程度符合しているというふうに理解しております。  それからまちづくり特別対策事業内容でございますが、単独事業の積算の仕方といたしましては、従来から、道路整備五カ年計画など各種の公共施設の整備計画の中で単独事業を一定額予定しているものもありますし、各省庁が策定する長期計画とは関係なしに、地方独自の施策として単独事業を想定するというものもございます。今回まちづくり特別対策事業として考えておりますのは後者の系統のものでありまして、財政全体が厳しい中で最小限度魅力ある地域づくり地方公共団体が自主的に主体的に実行できるように、それぞれの地域が知恵を出して事業を進めていただく、そういうねらいで今回三千億円の枠を考えたわけであります。  この事業は、その財源として地方債を予定しております。その地方債の配分につきましては、例えば過疎債とか辺地債などのように、一定の客観的な基準でもって各団体ごとの総枠を配分し、その中で具体的な事業は各団体が中心になって主体的にまちづくり計画をつくっていただく、これについて地方債を許可する、こういうような運用をしていきたいと考えております。この実施細目等については、さらに国会における御論議あるいは地方団体の御意見などを拝聴しながら具体的に詰めてまいりたい、このように考えております。
  13. 平林鴻三

    平林委員 規模是正というのは、結局地方財政計画決算との乖離実情に合わせて直すということだろうと思うわけでありますけれども、これは地方団体側にも大いに反省すべき点があるのかもしれません。せっかく地方財政計画単独事業を組んでもらっておるのに、何かほかのことに使ってしまったということかもしれないわけでありますから、地方団体側も、単独事業をやりたい、やりたいと言いながら、それを地方財政計画以上にやった実績を持たなかったというのは、やはり反省すべきかもしれません。  けれども、私はやはり心配な点があるのです。単独事業というものの枠を多目に盛って地方財政を運営するということが地方団体創意工夫を伸ばす一つのポイントになるわけでありますから、実は一度規模是正はしたが、これからも地方財政あるいは地方自治の発展策として単独事業というものをできるだけ手厚く見るということをやっていただきたいと思うわけであります。  そこで、単独事業に限らず、昭和五十九年度公共事業を含めてのいわゆる建設事業地域的な配分の仕方の問題につきましてお考えを伺いたいと思うわけであります。  現在の国内景気というのを概して大ざっぱに眺めますと、地域的にどんどんよくなっておるところと、相変わらず停滞あるいはマイナス傾向が続いておるところというのが出てきておるようであります。地域によって、景気回復が進んでおるところとそうでないところがあるということであります。  また、気候の問題から考えますと、ことしは例年になく寒い、大雪が降ったというような気候でありまして、もちろんそれでもうけた企業はあるわけでありますけれども、例えば農林漁業といった方面は実はひどい目に遭う。雪の被害というのが、農林漁業の被害はまだはっきり出てきませんけれども、これから春になり、また夏に近づいて、秋に植えつけたものの収穫が一体どうなるのか、これは非常に心配なわけであります。また、春にいろいろなことをして秋にとる作物についても、作付がおくれておるとかいろいろなことがあるわけであります。でありますから、農林漁業のウエートの比較的高い地域では、実はそういう不作といったことがほかの産業にも悪影響を及ぼす、これは当然のことであります。ただでさえ景気が停滞ぎみであるところへ農業の不作が追い打ちをかけて地方経済が困難に陥るということは心配をしておかなければいかぬわけであります。  そこで、公共事業をこれから一体どう配分するか。例の上半期にどれだけ執行するかということと、単独事業地方における執行実施の問題、これは地方の経済、特に公共依存度の高い田舎の方の地方の経済にとってはいわば非常に関係の深いものであります。したがって、今申し上げましたように、政府において景気対策あるいは農業の不作に対する地域経済対策というようなことをこれから御検討いただいて、適切な措置を願いたいわけであります。自治大臣として、そういう地方の景気対策、今申し上げましたような点につきまして、これから政府の中で御配慮いただきたいのでありますが、単独事業あるいは公共事業のことにつきまして大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  14. 田川誠一

    田川国務大臣 御指摘のように、景気動向等には地域的な跛行性が見られるところでございまして、経済対策を進めていく上に当たりましては、地域的な事情を十分考慮していかなければならないと思っております。  今年度における公共事業等の施行方針につきましては、近く政府におきまして最近の経済動向を踏まえつつ決定する運びになっております。恐らくもうごく近いうちに決定することになっておりまして、御指摘公共事業の傾斜配分については、予算執行に当たりまして十分配慮してもらうように、各関係省庁に私の方から要請してまいっております。  地方単独事業につきましては、地方公共団体におきまして、地域の景気動向等に即して今後機動的、弾力的に執行するよう要請していきたい、このように思っております。あわせて、今年度から推進する地域経済活性化対策事業等を有効的に活用してまいる、このように指導していくつもりでございます。
  15. 平林鴻三

    平林委員 ただいまの事業の執行、その配分ということにつきましては、今後もひとつ大臣の御尽力をお願いいたします。  そこで、また単独事業の規模是正の問題に戻るわけでありますが、私の感じといいますか、若干巷間伝えられるような面を整理してみますと、単独事業財源措置地方財政計画に組んでも、それを一部の団体では人件費に流してしまっておるのではないか、こういう話があるわけであります。  地方団体というのはたくさんございます。三千余りありますから、まじめなところもあり、ふまじめなところもあると思いますけれども、まじめにやっているところにとっては、こういう人件費問題で地方財政が不信感を持たれるというのは非常に迷惑なんであります。でありますから、地方団体はお互いに気持ちを引き締めて、人件費のやたらな膨張を招かないようにしなければいけませんけれども、同時に政府の側からも、人件費が異常に高い団体があります。既に自治省でも、それに対する指導方針というのをちゃんと決めておられますけれども、国家公務員に比べて異常に高いような団体があちこちにあるわけでありますから、そういう団体に対する是正のための指導をさらに強力に進めていただきたいと思うのであります。地方自治全体に不信を招くということは、これからの地方財政対策にも困難を招くことになるわけでありますから、まじめにやっておるところはまさに大迷惑、そういうことをひとつ十分お考えいただいて、日本の地方自治全体がうまく発展していくように、異常に高い人件費を支出しておる団体の指導というのをさらに強めていただきたいと思うわけであります。  私も長年地方自治に携わってまいりまして、いろいろなことを見てまいりましたけれども、やはり社会の常識というものがあろうと思うのです。国家公務員に比べてやたらに高い給与を出しておる、それが地方自治なんだからそれでも結構だ、それも善政だというようなことは、私はちょっと非常識だと思っております。やはり適切な公務員の待遇はしなければいけませんけれども、適切さを欠く異常に高い待遇をして、それも地方自治だからと言われたのでは、地方の住民にとってはその分サービスは低下するわけでございますから、よく考えていただいて、地方自治全体の立場から、そういう高給与の団体の給与水準の是正ということにこれからも御努力をいただきたい。既に相当のところはやってくださっているようでありますけれども、なお徹底する方法があるかどうか、そこらの御覚悟のほどをひとつ伺っておきたいと思います。
  16. 中島忠能

    ○中島政府委員 今、先生がお話しになられました認識というのは、私たちも全く同様でございます。私たちもかねがね、そういう団体に対しましては指導をし、是正を呼びかけております。非常に多くの団体が私たちの呼びかけに対しまして是正を進めてきておられますけれども、一部の団体がなお是正を進めようとしないということでございますので、私たちは五十六年の十一月に通達を出しまして、ひとつ計画的に是正を進めてもらおうじゃないかということで、その計画をつくっていただきました。その計画に従って是正を進めておられるところが大半でございますけれども、なお一部のところは是正が著しくおくれておるということでございますので、これからは、今お話しになられましたように、強力に指導を進めていかなければならないと考えております。  今後は、その是正の状況、適正化の状況を見ながら、当該団体の財政を健全に保っていくという観点なども含めまして、いかなる措置をとるべきかをひとつ全省を挙げて検討してまいりたいと考えております。
  17. 平林鴻三

    平林委員 大臣にこんなことを申すのは失礼かもしれませんが、大臣の御出身の東京周辺それから大阪周辺というのは、昔からこれでございます。ひとつ大臣の御留意をいただいて、できるだけ地方自治全体の立場から指導をしていただきたいとお願いを申し上げます。  それから次は、地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案でございます。  これもきょうから審議に入るわけでありますが、地方公共団体には数え切れぬぐらいな使用料、手数料がございまして、それがまた法律で決まっておるもの、政令で決まっておるもの、条例で決めるもの、あるいは条例で規則に委任しておるもの、いっぱいあるわけであります。一体どれがどうなっておるのかというのは、専門家でもなかなかわからない、それぐらい数の多いものであります。  ところが、この使用料、手数料につきましても、別に財政上の観点というだけではなくて、役務の提供に対する適正な対価を徴収するとかあるいは公の施設の維持管理のための適正な使用料金をちょうだいするというようなことは、これは忘れてはならぬことでありまして、実は毎年そういうものの見直しというものはしていかなければいかぬと思います。けれども、毎年というのはなかなか難しゅうございますから、三年なら三年というようなことでやっていただいてもよかろうと思いますけれども、このように法定の手数料を合理化していくといいますか、正しく見直していくということは結構なことだと思います。  このたびの手数料の規定合理化、この法律案はそうたびたび出るものでもなさそうでありますから、ひとつ御担当の審議官の方から、法律の趣旨なり、あるいはその法律の中で金額を決めないで政令に落としたというようなことのいきさつとか、そういうことについて御説明を願いたいと思います。
  18. 津田正

    ○津田政府委員 手数料、使用料の問題は、御指摘のように、いわば一般納税者と特定の行政の受益者との間の公平な負担を図っていかなければならない、こういうような観点から、その適正化、そしてまた財源確保のために適宜適切に見直さなければならない、かように存じておりまして、私ども、いろいろな手数料がございますが、大体三年ごとにローリングで見直す、このようにやってきておるわけでございます。  そこで、今回提出しております法律でございますが、機関委任事務に係ります手数料につきまして規定合理化をお願いしておるわけでございます。この合理化ということは国会の御審議でもかねて出ておるわけでございますし、また政府におきます行政改革本部の決定にもあるわけでございますが、一定額あるいは最高額を、一々その都度法律改正という手続を行っていくのではなく、算定の根拠という考え方を法の縛りとしてきちっと決めておいて、そして具体的な金額、最高限度額等につきましては適宜適切に行政コスト等の変化に対応して決めよう、こういうようなことでございまして、今回御提案しておりますものは、専ら地方関係のございます大麻取締法初め九法律につきまして、手数料の額を「実費を勘案して政令で定める」、こういうように法規定合理化を図っているわけでございます。  御指摘のように、いろいろな手数料がございまして、今回本委員会に提案しておりますのは、地方団体関係する機関委任事務に係る手数料をくくって御審議いただいておるわけでございますが、国と地方団体の双方に係る手数料につきましては、各種手数料等の額の改定及び規定合理化に関する法律案というものを別途提案しておりまして、その改定の趣旨も同様なものでございます。両方相まって地方団体の手数料の合理化が進められる、かように考えておるわけでございます。
  19. 平林鴻三

    平林委員 私も地方の議会の意見をよく聞かされたものでありますが、手数料ということにつきましては、一部の政党の側からは、とにかく物価上昇だとかそういうものに影響するから、手数料というのは安ければ安いほどいいのだ、こういう理屈を聞かされることがあります。私は必ずしもそうは思わないので、やはり地方公共団体でサービスを提供すれば、それに対応する対価というものは受益者負担の見地からいただかないと、これは地方の行政の仕方とか財政の仕方がゆがんでしまう、こういうことを申し上げてきたものであります。ですから、手数料というのは適時適切に見直しをしていただきたい。今三年ごととおっしゃいましたが、三年ごとでも結構でありますけれども、経済あるいは社会の情勢に適応して、余り時をおくらせないように御尽力を願いたいと思います。  今、国の収入になる手数料との均衡というようなことをおっしゃいましたけれども、国も三年ごとというような考え方でやっておるのでしょうか、そこらのことをもう一度御答弁いただきたい。
  20. 津田正

    ○津田政府委員 国の手数料につきましても、大蔵省を中心としまして三年ごとに見直す、こういう基本原則でやっておるわけでございます。  それから、地方団体独自の手数料もいろいろあるわけでございますが、これらにつきましても、私ども、毎年度受益者負担の適正化という観点で見直しを行ってもらいたい、このように指導しておる次第でございます。
  21. 平林鴻三

    平林委員 時間がもう五分ぐらいしかなくなりましたので、大臣にいわゆる行政改革地方自治というような観点のお考えを聞かせていただきたいと思うのでありますが、ちょうど大臣が敏腕な新聞記者として御活動になっておった当時が、いわば昭和二十年代の日本の行政改革時期に当たっておったのではないかと推察をしておるわけであります。例の地方行政あるいは国と地方との関係というようなことにつきましてシャウプ勧告とか神戸委員会の勧告とかいうものが出されて、占領中から独立後にかけまして相当の改革意見が出た。一部分は改革された、けれども中途半端に終わったというようなこともあります。  それから、地方団体が独自に努力をして、もちろんこれは国策として取り上げたわけでありますけれども、戦後の一番大きな日本の行政改革というのをやった。それは何かというと、私は町村合併だと思うのであります。町村合併こそ戦後の一番大きな行政改革であったろうと思っております。  そのようなことを考えますと、それからもう三十年近くたって新しい行政改革を今度は二十一世紀に向かってやろうとしておる。そこで、地方自治の観点から行政改革をどのようにやっていくべきか、これが非常に大切なことになってくると思うわけであります。行政改革というのは、ただ便利にすればいい、能率的にすればいい、むだを省けばいいというものではなくて、我々の住んでおる社会というものをどうしたら住みよくすることができるか、そういう観点からやっていかなければいけませんが、我々の社会を住みよくするためには、地域社会というものを住みよくしなければいけない。もちろん日本が平和であるということも大切であります。これほど大切なことはありませんが、平和を維持しながらこの地域社会というものの住みよさあるいは暮らしよさ、そこにおける行政のやりやすさというものを求めていくべきだろうと思うのです。でありますから、私は、これからさらに行政改革を進めていくについては、地方自治に重点を置いて、地方自治を伸ばしていくという方向での行政改革をすべきである、こう思っておるのであります。ともすれば、今財政が苦しいからむだと思われるものをたたき切るのだ、それだけで行政改革は済むかもしれません。それでは将来に向かっての意味が薄くなる。  この際、当時を思い出していただきたいわけであります。その当時は能率化の原則というのをあれほど高く掲げられましたけれども、同時に地方分権、特に市町村優先ということでいろいろな改革案が出され、それがある程度実行に移されたわけであります。大臣におかれましては、そういう観点から積極的に地方自治を伸ばすという方向で行政改革に取り組んでいただきたいと思いますので、そこら辺のお考えをはっきりとお示しいただきたいと思います。
  22. 田川誠一

    田川国務大臣 今、国、地方を通ずる行政改革ということが非常に強く叫ばれておりますが、平林さん御指摘のように、国の行政改革をやることが地方自治を推進させるもとになるのではないか、私もそのように思っておりまして、地方自治の進展の速度が遅いということは国の行政改革がなかなか思うように進んでいないというところにあるのではないか。ですから、国の行革が本当に実行に移されることによって地方自治の進展を阻害している原因が除かれていくのではないか、そういう意味から国、地方を通じて行革をしなければならぬということでありますけれども、まず国の行革を徹底してやっていくということが大事ではないか。  それから、平林さんに言うのもおかしいですけれども地方分権を推進させる一番の目標は、身近な行政は身近な地方公共団体にやっていただくということが原点ではないかと思うのです。機関委任事務とか必置規制とか事務の再配分とかという問題が、言葉になっているけれども、なかなか解決の速度が遅いというところに障害があるのではないかと思うのです。ですから、そういう意味で、私ども行政改革に当たりましては、このようなことを踏まえて実現をさせていくように努力をしていかなければならぬと思っております。  それから、行政改革のもう一つの難点になっているのは、こういうところで申し上げていいかどうかわかりませんけれども、やはり議会が率先してやりませんと、これは官庁機構を縮小するとか権限を下へおろすということはなかなか難しいと思うのですね。ですから、そういう意味で、中央地方を通じて議会がまず率先してみずから改革するところに手をつけていこう、既得権を少しでも返上していこうという意気込みを見せないと、行政改革というのはなかなか推進できないのではないか、こういうふうに思っております。これはどうしてもやり遂げていかなければならない問題であると思っております。
  23. 平林鴻三

    平林委員 終わります。
  24. 大石千八

    大石委員長 小杉隆君。
  25. 小杉隆

    ○小杉委員 地方交付税の問題に関連して、最初に全体的な問題、次に少し具体的な例について質問をしてみたいと思います。  まず第一に、今度の昭和五十九年度地方財政対策を見ますと、例えば、交付税特別会計において新たな借り入れはやめるということだとか、これにかわる各年度地方財源対策として、当分の間、地方交付税交付金の特例措置を講ずるとかいうようなことも打ち出しておりますし、また、今までの交付税特別会計借入金約十一兆五千二百億円のうち、国庫負担分五兆八千三百億円を一般会計の借入金に振りかえ整理をするということとか、また、五十九年度以降交付税特別会計に残る借入金約五兆六千九百億円の元利償還は地方負担とする、こういうような幾つかの新しい仕組みを打ち出しているわけですけれども、こうした地方財政対策の趣旨及びそのねらいはどの辺にあるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  26. 田川誠一

    田川国務大臣 一番の趣旨は、従来の借入金依存体質をこの際なくしていこう、そして国と地方との分担区分を明確にしていかなければならないということが主眼でありまして、こういうことをやることによって中期的に健全な地方財政の歩みを始めていくことができるだろう、こういうねらいからこうした地方財政見直しをしたものでございます。
  27. 小杉隆

    ○小杉委員 昭和五十九年度地方財源不足は一兆五千百億円ということになっておりますが、今まで財源不足額というのは大体二兆円を超える、特に前年度などは二兆九千九百億円ということでありました。五十九年度に限っては半減したということになっておりますが、その主な理由は何でしょうか。
  28. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度地方財源不足額が前年度よりも大幅に減少した理由についてですが、歳入歳出積算した結果としてこのような数字になったわけですけれども、五十八年度の場合の財源不足額が利子負担分を除いて二兆九千九百億、利子負担を入れますと三兆三千三百四十六億円になります。それが五十九年度は利子負担を入れて一兆五千百億円ですから、半分以下になったわけです。  その原因をいろいろ分析してみますと、歳入関係での状況の変化が主たる原因と思います。例えば地方税収入見込み額でございますが、五十八年度の場合には税制改正後で前年度対比二百五十四億円の減であったわけですけれども、五十九年度の場合には、税制改正後で住民税の減税並びにこれを補てん措置を講じた後の姿で一兆二千九百五億円の増であります。ですから、ここでかなり大きな開きが出てきております。  それから、地方交付税でありますけれども、各種の特例措置を講ずる前の姿で見ますというと、五十八年度の場合には前年度対比で二兆一千二百六十九億円減になっております。その減になった理由は二つありまして、一つは、五十六年度決算国税三税に歳入欠陥が生じまして、その結果として約八千五百億円の減額精算を五十八年度において行わなければならなかった、こういうような事情、それから、国税三税の年度当初の見込み額がやはり前年度対比で大幅に減少した、この二つの理由が重なりまして二兆一千億円余りも現行制度による交付税の額が減ってしまったわけであります。五十九年度の場合も、やはり前年度対比では特例措置を講ずる前の姿で六千五百七億円の減でありますけれども、減り方が違う。ここで二兆円を超える差が出ております。  歳出の方でも幾つか増減要因があるわけですけれども、五十九年度財源不足額が大幅に減少した理由は、このように地方税交付税の前年度対比の増減額が大幅に違ってきた、五十九年度の方が状況がかなり改善されたということによるものと理解しております。
  29. 小杉隆

    ○小杉委員 先ほど私が申し上げたように、今度から借入金方式を廃止しましたが、六十年度以降再び財源不足が拡大した場合に、今度の五十九年度予算では特例措置として一般会計から千七百六十億円を繰り入れてしのいでいるわけですけれども、こういうふうな事態が六十年度以降もないとは言えないと思うのです。そういう場合には、今回と同じように特例措置で一般会計から繰り入れて対応していくのかどうか、まずお答えしていただきたいと思います。
  30. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度地方財政対策を決定するに当たりまして、交付税特別会計借入金による特例増額方式を廃止したわけですが、その理由としては、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、地方財政健全化ということも大きなポイントでありました。しかし、借入方式をやめる以上は、将来に向かってそれが地方財源確保に大きな支障にならないかどうかという検討を当然しなければならないわけです。私どもも、現時点における地方財政の収支の実態及び今後の地方財政の収支についての大まかな展望、国の方で財政収支試算を行っておりますから、そういったことも手がかりにしながら、今後の地方財政状況といったことも当然検討の結果、五十九年度の新しい方式で、少なくとも今の状況が続く限りは対応できるであろうという見通しのもとに新方式を採用したわけであります。  もちろん、経済情勢というものは、国際情勢の変化その他によってどういう状況になるかわからない、過去の経緯からいたしましてもどういう事態が起こるかわからない面が多いのでありますけれども、私どもとしては、今のような経済情勢が今後継続するという前提に立つならば、新しい方式で対応していけるのではないかという見方を持っております。もちろん我々の予測しないような事態が生じた場合どうするんだ、こういうお尋ねであるならば、そのような事態に直面した場合においても地方財政の運営に支障のないような方式、方策というものを考えなければいけないわけでありまして、その必要性を否定するものではありませんけれども、少なくとも現時点で見通される地方財政の将来展望のもとにおいては、今回の方式で対応していけるのではないか、このように考えております。
  31. 小杉隆

    ○小杉委員 特別会計借入金の振りかえ整理によって特別会計に残った借入金約五兆六千九百億円については、利子を恒久的に地方が負担していくということになったわけですが、この利子負担というのは非常にばかにならないものだと思うのです。毎年大体どの程度の利子負担を地方が負わなければいけないのか。そして、その利子を少しでも減らす努力をすべきだと思うが、どんなようなことを考えておられるのか、明らかにしていただきたい。
  32. 石原信雄

    石原政府委員 今度の改正によりまして交付税特別会計が今後負担しなければならない借入金残高は、五兆七千億弱でございます。これについては昭和六十五年度までは一応据え置くということになっておりまして、その金利負担がどのくらいになるか現在の政府資金の金利を前提にして計算しますと、年間ほぼ四千億円が必要になります。したがいまして、元金が変わらない限りはその四千億円の利子負担が六十五年度まで続くということになります。  それから、その利子負担、確かに地方財政にとっては大変つらい事柄であります。相なるべくんば少しでも軽減されることが望ましいと思っております。五十九年度の場合も、国庫当局と種々折衝の結果、事情の許す限り交付税特別会計への先行繰り入れ、国税三税の収納に先んじて国庫から先行して繰り入れを行っていただき、借り入れの実質金利負担を少しでも軽減してもらうべく必要な措置を講じております。こういった考え方は、六十年度以降におきましても、私ども一つ努力目標として今年度の例を踏まえて折衝してまいりたい、このように考えております。
  33. 小杉隆

    ○小杉委員 次に、五十九年度地方財政運営について若干質問したいと思います。  五十九年度地方財政計画を見ますと、地方税が伸びる一方で、先ほど答弁にもありましたように、地方交付税がふえたと局長は言っていますけれども、資料によるとこれは前年度よりも減っているわけです。地方交付税とか国庫支出金あるいは地方債はマイナスになっているわけですね。このために三千に余る地方団体の中で、その財源地方税のウエートの高いいわば財政力の強い団体は比較的楽だと思うのですが、交付税や国庫補助に頼っている弱小団体は大変財政運営が難しく、厳しくなるというふうに思うわけですけれども、こういう点についてはどういう見解をお持ちになっているか、お伺いしたいと思います。
  34. 石原信雄

    石原政府委員 先ほど私御答弁申し上げましたのは、五十八年度と五十九年度財源不足額の比較において、五十九年度の方が財源不足額が小さくなった、約半分になったわけですけれども、その原因としては、地方交付税の本来の法定額と申しましょうか、特例措置を講ずる前の交付税の減り方が五十八年度の場合よりも五十九年度の方が少なかった、減ることは減るのでありますが、減り方が少なかったということを申し上げた次第であります。確かに五十九年度におきましても、特例措置を講じた後の姿におきましても地方交付税はなおかつ三・九%の減であります。減ることは間違いありません。  そこで、御指摘のように、地方交付税が実質的には三年減るわけです。五十七年度の補正で減り、五十八年度の当初で減り、今回また五十九年度で減るわけでありますから、これは地方団体にとっては大変つらい話であります。特に税収に恵まれない、交付税だけが頼りのような財政力の低い団体にとりましては、大変厳しいことは間違いありません。ただ私どもは、その財政の厳しさというものが、財政力の程度によって非常に差があってはいけない、端的に申しますと、税収に恵まれた大きい団体は影響がなくて、田舎の財政力のない団体だけがそのしわ寄せを受けるということであってはいけないと思います。それから、国庫補助金の抑制あるいは減といったことも、確かにその影響は財政力の弱い団体の方が相対的に厳しいと思います。  そこで、五十九年度地方財政運営に当たりましては、地方交付税制度の持っている調整機能あるいは地方債の配分など、私どもの持てる手段によりまして、厳しいことは全地方団体がこれをひとしく受けとめていかなければならない、そういう視点に立ちまして地方交付税の配分や地方債の配分を行っていきたいと考えております。もちろん、地方交付税の不交付団体税収の伸びを直接満度に享受できるという点はありますけれども、残念ながら、現在でも大部分の地方団体地方交付税交付団体になっておりますので、そうした中で、この交付税あるいは国庫補助金の減あるいは抑制の影響が、特定の団体に、特に財政力の弱い団体に集中的に出ないように十分な配慮をしていきたいと考えております。
  35. 小杉隆

    ○小杉委員 五十九年度地方財政計画を見ますと、歳出で非常に著しく伸びているのは公債費でございまして、その伸び率は一一・六%ということであります。  今までの地方債残高の事業別の内訳がどうなっているのか、特に市町村の場合にはどういう傾向があるか、これをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  36. 石原信雄

    石原政府委員 昭和五十七年度決算によるところの普通会計債の残高について主なものの状況を申し上げますと、地方財政全体で最もウエートの高いのは一般単独事業債で、これが全体の二四%余りになっております。その次が義務教育施設整備事業債で一一%余り。それから財源対策債、実はこれの方が大きいのですが、全体の一五%余りという状況であります。  そのうち、市町村だけについて見ますと、残高の最も大きいものが一般単独事業債でありまして、二二・五%であります。その次にウエートの高いのが義務教育施設整備事業債で二一・三%。それから三番目が財源対策債で九%という状況になっております。
  37. 小杉隆

    ○小杉委員 今の御説明によると、市町村地方債残高では一般単独事業債が最も大きなウエートを占めているわけでございます。義務教育の事業債とかあるいは財源対策債などはある程度財源措置があるわけですけれども、一般単独事業債の元利償還費はそうした特別の財源措置がなくて、すべてその地方団体一般財源で償還されることになっているわけでございますから、その償還費が市町村財政に大変大きな負担となると思うわけですが、その点についてはどうお考えですか。
  38. 石原信雄

    石原政府委員 御指摘のとおりでありまして、義務教育債あるいは財源対策債あるいは一般廃棄物処理事業債などにつきましては、それぞれ償還費についても財源措置の道が開かれております。しかし、一般単独事業債はその団体の責任において償還しなければならない。具体的には、地方交付税の算定上、投資的経費財源として包括算入されております基準財政需要額、これと、基準財政収入額に算入されない税収分、いわゆる留保財源部分、この二つによって単独事業債は償還される、理論的にはそういう姿になっていると思います。そういった意味で、いわば一般単独事業債は自前で償還しなければならないというものであります。地方団体としてはそういう事情を念頭に置いてこの一般単独事業債の活用を図ってもらわなければいけない、このように考えております。
  39. 小杉隆

    ○小杉委員 今度の地方財政計画は、全体的に見ますとバランスがとれているようでありますが、今幾つか指摘をいたしたように、歳入歳出内容によってはその及ぼす影響が、県と市町村あるいは市町村間、あるいは市と町村の間でも大変異なるわけですね。影響の受け方、度合いに相当差が出てくるわけでございますので、昭和五十九年度地方財政運営の指導に当たって、これらの点についてどのような配慮を行っていくのか、お答えいただきたいと思うのです。
  40. 石原信雄

    石原政府委員 その点につきましては、税制改正の場合にも御質問がありました。住民税の減税による減収額とその補てんによる増収額との対応関係が、都道府県市町村では違う、府県の方は減った以上に補てんされ、市町村の方は減った額の一部が補てんされない形になっている、どうするんだという御指摘がございました。また、税制改正だけに限らず、五十九年度予算編成に関連して、五十九年度のいういろな施策の財政に与える影響、これは都道府県市町村、大都市、中都市、小都市と町村、それぞれによって違いがございます。  私どもは、こういった違いが最終的な財政運営に差をもたらさないように、税制改正やあるいは補助負担金制度改正あるいは行政施策の改正によって団体間に大きな実質的な負担の差が出ないようにしなければいけない。そういった意味で、例えば地方交付税の算定におきまして、単位費用の積算あるいは各種の補正の適用その他を通じて、先ほども申しましたように、地方団体がひとしく健全な財政運営ができるような形にしていくということで交付税制度の運用その他を図っていきたい、このように思っております。
  41. 小杉隆

    ○小杉委員 ぜひきめ細かい指導をしていただいて、団体間のアンバランスがなくなるようにしていただきたいと思います。  以上で大体総論的な問題は終わりまして、次に、具体的な例を出しまして今の地方財政の問題点というものを浮き彫りにしたいと思うのです。  余り時間がありませんからくどくどしく申し上げることはできませんが、一つ具体的に例を挙げたいと思うのですが、新潟県の北魚沼郡湯之谷村というところは人口約六千人でございますが、ここに各省庁あるいは各特殊法人の補助金をもらっていろいろな施設が乱立している。これは補助金行政あるいは縦割り行政の弊害が集中的にあらわれている具体例であります。これは単にここだけの特殊な例ではないと思います。私はほかの市町村にもこういう例はあると思うのです。  行管庁の方、来てますか。行政管理庁がここの村のことについて昭和五十二年に調査を行ったと思いますけれども、その内容を、本当に概略で結構ですからお答えいただきたいと思うのです。
  42. 竹内幹吉

    ○竹内説明員 先生が御指摘されますのは、我々が五十二年に調査しまして報告書としてまとめました余暇関連公的施設の整備等に関する調査結果報告書のことであろうと思いますが、ここで指摘しております新潟県の湯之谷村の例は、人口六千人余りのところに、半径約五キロメートル、そういった狭い地域内に五つのこういった公的施設がひしめいておるということでございます。その五つの施設は、福祉センター、国民年金保養センター、国民宿舎、生活改善センター、それから国民保養センター、こういった公的施設が集中的に設置されておるという指摘をいたしております。
  43. 小杉隆

    ○小杉委員 既に七年間たっておりますが、その後も続々とこういう施設が建てられまして、例えば、その後老人福祉センターとかトレーニングセンターとかあるいは農村公園七カ所というようなものができまして、この村には今申し上げたほかに武道館とか婦人の家とか老人ホーム、農村集落センター、体育館など、東西約十一キロ、南北一キロの範囲にもう二十カ所ぐらいできまして、そして、こうした類似の公的施設が集中したために、それぞれの施設の利用状況がとみに低調になっている、こういう現況でございます。こうした施設は農林水産省とか厚生省、建設省、環境庁あるいは新潟県という各省庁あるいは地方団体からの補助金で建設されたものでございまして、今や村の財政も非常に逼迫をしている、こういう状況であります。  そこで、この中で、全部挙げるわけにいきませんので、主として三つの施設について私は質問したいと思うのですが、その三つというのは厚生省関係の老人福祉センター、農水省関係のトレーニングセンター及び農村公園、これについて若干取り上げてみたいと思うのですが、厚生省の方来ていますね。  老人福祉センターというのは、これは昭和五十六年の三月三十一日に竣工いたしまして五十七年の四月一日から開館しているわけですが、そもそもこの老人福祉センターの設置目的というのはどういうことにあるのでしょうか。簡単で結構ですから。
  44. 古瀬徹

    ○古瀬説明員 老人福祉センターは昭和三十七年からできておりますけれども地域地域のお年寄りの生活の相談、健康の相談あるいはお仕事の相談、そういった相談業務と、それから教養と申しますか、集いましていろいろ地域のお年寄りが親交を温めるというふうな趣旨が中心でございますが、そのほか、最近ではもう少し小型のもの、あるいは医療関係に重点を置きましたタイプのものもあわせて老人福祉センターとしております。
  45. 小杉隆

    ○小杉委員 この湯之谷村の老人福祉センターというのは特A型ということでございますが、老人福祉センターにはいろいろな種類があって、そのほかA型とかなんとかとありますけれども、特がつくのとつかないのとではどんな差があるのですか。
  46. 古瀬徹

    ○古瀬説明員 特がつきますのは、先ほど概括的にお話をいたしましたけれども、健康相談に重点を置いたものでございます。昭和五十六年から特A型というものをつくっております。したがいまして、この特Aにおきましては、まだ全国的にも数は大ざっぱに老人福祉センターの中では一割弱でございますけれども、検査室でございますとか診察室、そういったものを置くことにしてございます。これが一般のいわゆるA型との相違でございます。
  47. 小杉隆

    ○小杉委員 この湯之谷村の老人福祉センターは、今御説明のとおり、普通の老人福祉センターよりもさらに重要な機能を持たした施設としてつくられたわけですね。ところが、現在この老人福祉センターがどのように使われているかと申しますと、一階はある特定の民間の歯医者さんにそっくり貸して、村の歯科診療所という看板をかけておりますけれども、そして特別会計で村の会計のように行われておりますけれども実態は個人の民間の歯医者さんがやっているのと何ら変わりがないという実態でありますし、また、二階は、この村には八百人の老人がおられるようですけれども、ほとんど老人が使ったという形跡がなくて、むしろその地域の公民館として、しかも公民館として使うに当たって、地元の上ノ原部落というところと貸与契約をして、使用料の名目で五年間で七百五十万円徴収をしておる。そうすると、その住民の人たちは、何にも利用しないのに何で分担金を徴収されるのだというような不満が出ているわけですけれども、こういう今の使用実態を見まして、厚生省がもくろんでおります相談業務とか、特に特A型の場合には健康相談なども加味されているということですけれども、この老人福祉センターが果たしてそうした補助金の目的に合致しているのかどうか。これは資金財源を見ますと、厚生省の補助金として五千六百二十二万円つぎ込まれて、総額一億四千五百万円でつくられているわけですけれども、こういう点に関してはどういう見解をお持ちでしょうか。
  48. 古瀬徹

    ○古瀬説明員 今お話しの新潟県の具体的な施設につきましては、直近の状況を把握をいたしておりませんけれども、今御指摘のように、大変残念ではありますけれども、老人福祉センターの活動がかなり低調なものが全国には幾つかございます。昨年秋に行政管理庁が監察を行われました結果でもそのような指摘がございました。  私どもは、今御指摘の施設が、これは老人福祉センターと申しましても活動は全国さまざまでございますから、例えば児童館と老人福祉センターが併設をされて立派な活動をされているところもございますし、あるいは二階が図書館、三階が資料室といったふうな工夫をされているものもございます。今御指摘のところが、地域におきます歯科医療の実情からいきまして地元のニーズに合ったものであったろうかと思いますけれども、その実態が、老人福祉センターという名目のもとで行われます活動としてもし問題があるというふうなことがございますれば、全国の老人福祉センターの今後の活動にもよくない影響を与えると私は思いますので、県を通じまして実情をよく調査をいたしたいというふうに考えております。
  49. 小杉隆

    ○小杉委員 全国の老人福祉センターの中には、本当にまじめに老人の福祉のために活用されているところがたくさんあるわけで、私はすべてがすべてそうではないと信じておりますけれども、こういう老人福祉センターのあり方というのはやはり問題を残すわけです。  この問題について、これは昭和五十七年の六月十二日付の日刊紙の県内版にも報道されております。そして県の方もこうした実態調査をしたわけですけれども、法的には何ら問題がないというようなことで取り合わない、こういうことですけれども、これは厚生省として、今、課長は実態をまだ十分把握してないので答弁は難しいと思うのですが、こういうものはやはり県に任せないで、厚生省が直接ひとつ調査をするという気持ちがあるかどうか伺いたいと思うのです。
  50. 古瀬徹

    ○古瀬説明員 今御指摘の五十七年の六月の模様あるいは昨年の秋までの模様につきましては、県から事情を聴取をいたしておりますけれども、つい直近におきましてどういう実情にありますか、まず県の方に、よく老人福祉センターの特A型の趣旨にかなっておるかどうか実情の調査をして指導をしていただくというふうに考えております。その結果を待ちまして、必要でございましたら私どもの方から県の方と相談の上、その後の扱い方を考えるというふうになろうかと思いますが、県の方から昨年の秋から最近に至ります間におきまして事情の変更もあるように昨夜伺っておりますので、県の方に当面指導をお願いをしたいというふうに思っております。
  51. 小杉隆

    ○小杉委員 次に、農林水産省の林業構造改善事業として行われたトレーニングセンターについて伺いたいと思うのですが、このトレーニングセンターは国庫補助七千五百六十万円を支出して総額約一億六千万円で建設をされているわけです。これもほとんど地元の林業従事者の使用が行われていないという状況でございますが、そもそも林業構造改善事業としてトレーニングセンターをやった目的というのは何でしょうか。
  52. 山本徹

    ○山本説明員 林業構造改善事業と申しますのは、材価の低迷あるいは山村の過疎化といったような最近における大変厳しい林業情勢に対処いたしまして、林業の振興と活力ある山村地域社会の形成に資することを目的といたすものでございます。  このトレーニングセンターは、森林業構造改善事業の中の林道の開設であるとかあるいは林産物の生産加工施設といったような、各種の施設の整備事業の一部として、林業者の定住化を促進するための健康増進施設として、その事業の一部に入っております。
  53. 小杉隆

    ○小杉委員 この使用実態について把握しておられますか。
  54. 山本徹

    ○山本説明員 このトレーニングセンターの施設につきましては昭和五十七年度に設置されたものでございまして、その利用は、私どもとしては林業構造改善事業の趣旨、目的でございます林業の振興と活力ある山村地域社会の形成に資するという目的に沿って利用されていると考えておりますが、まだ完成後一年余りでもございますので、私どもとしては利用状況を把握いたしておりません。
  55. 小杉隆

    ○小杉委員 それから、このセンターがつくられるときに地元森林組合は反対をしたということですが、それにもかかわらず設置されたと聞いていますけれども、そうしたことを聞いていますか。それともその理由がわかれば……。
  56. 山本徹

    ○山本説明員 このトレーニングセンターを含めまして、湯之谷村の森林業構造改善事業につきましては、まず事業の計画を湯之谷村の村長が森林組合等の関係林業団体の意見を聞いて樹立いたしまして、知事に提出してその認定を受けます。この計画の中には、林道開設とかあるいは地元のワラビ、ゼンマイ、キノコ、木炭等といったような特用林産物の生産関連施設等の事業と含めまして、ただいま御指摘の健康増進施設としてトレーニングセンターの設置が盛り込まれております。  国は、この計画に沿って実施されるトレーニングセンターの設置について、先ほど指摘のございましたように五十七年度に助成を行ったものでございますが、このトレーニングセンターの計画の樹立及び事業の実施に当たって森林組合に反対があったというような事情については、私どもは承知いたしておりません。
  57. 小杉隆

    ○小杉委員 ほとんど実態をつかんでおられないようですけれども、私が調査したところでは、この本来の目的である林業従事者の健康増進の施設としては全く使われていない。余り利用者が少ないので、村の方では旅館業者の方々と契約を結びまして、そしてトレーニングセンターの管理運営組合というようなものをつくってそこに委託をしている。年間八十七万円で利用させている。旅館業者の方はその旅館に宿泊したお客さんの民謡とかカラオケ大会とかそんなことに利用しているということで、林業構造改善事業なんと言ったら全くみんな笑ってしまうような使われ方をしている、こういう事実を私はつかんでいるわけです。  今の御答弁ですと、十分その辺の経過なり現状がわかっていないようですけれども、早急にこれは実情調査を行う必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  58. 山本徹

    ○山本説明員 トレーニングセンターにつきましては、先ほど説明申し上げましたように、まだ設置以来一年余りであることもございまして、私どももその利用の状況について承知いたしておりませんので、先生の御指摘に従って、早急に県を通じましてその利用の実態状況等について調査をさせていただきたいと考えております。
  59. 小杉隆

    ○小杉委員 同時に、農村公園というのも七カ所に設置されておりますけれども、これも、ここは新潟県下でも最高の豪雪地帯でありまして、十一月から四月までは全く雪の中という状態で利用者が非常に少ない。この公園のあるところは山間部と水田の場所でありまして、果たしてここに農村公園というものが必要であったのかどうか、この農村公園を七カ所つくったねらいとかいうものは何だったのか、そしてその現状はどのように把握されているか、ちょっと伺いたいと思うのです。
  60. 平井公雄

    ○平井説明員 農村公園につきましては、昭和四十八年度から農林省で農村総合整備モデル事業というのをつくりまして、それの一環として農村公園の整備を進めておるわけでございます。モデル事業は、農業と農村の健全な発展を図るということで、農業の近代化を図り、都市に比べて立ちおくれている農村の生活環境の整備を推進して、農村の健全な発展を図る、こういうことで、その中の一つとして農村公園があるわけでございますが、そのねらいとするところは、農業集落における居住者の日常の健康増進、それから憩いの場、さらには農作業でほうっておかれた子供たち、児童の遊び場、こういったものを確保するということで、児童公園、運動広場といった形で整備を進めておるわけでございます。     〔委員長退席、西田(司)委員長代理着席〕  それで、湯之谷村の場合に、先生、七カ所とおっしゃいましたが、この事業でやりましたのは六カ所でございます。あと一カ所は、私の方で調べますとちょっと別のものであるようでございます。  それで、これをどういう考えでやりましたかといいますと、都市の場合、公園面積というのは住民一人当たり大体六平方メートルぐらいというのが都市公園の基準として定められておるわけでございますが、我々の方としてはそれほどは要らない。一人当たり約三平米ぐらいを目標に考えておるわけでございますが、湯之谷村の場合には、事業実施前に一人当たりの公園緑地面積が〇・一三平米でございました。これを、集落単位で利用範囲を決めまして六カ所に分けたわけでございますが、事業実施後においてもなお一人当たり一・〇七平米ぐらいしかないということで、面積としてはちょっと足りないのじゃないかと思っておりますが、そういった中で、今おっしゃいましたように、冬の積雪期間というのはいずれにしても運動公園等は利用ができないような状況でございます。ただ、積雪のない時期においては非常に有効に利用されておると聞いておりますし、その公園の維持管理につきましても、地域住民が労務提供等をいたしまして、利用者の間で草取りとかそういった管理をやっておるように聞いております。
  61. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、こういう農村公園というものを決して否定しようとは思いません。確かに健康増進とか憩いの場所とか子供たちの遊び場とかいうようなことで必要性は認めますけれども、やはりその立地を十分考えないと、住民一人当たりの公園面積が少ないから、そこへただつくればいいという安易な発想ではなくて、どこにつくるのが一番その目的に合致しているかというふうにもっとやっていただきたいと思うのです。今の答弁ですと、夏は大変よく使われているということですが、私の調査によれば実態は相当違っているようですから、なお綿密に実情を調べていただきたいと思うのです。  それで、私は今三つの施設だけしか取り上げられませんでしたけれども、こういう老人福祉センターにしても、またトレーニングセンターにしても農村公園にしても、使用目的に合致しているとは思えない。つまり、これは補助金の適正化法に違反している疑いがあると思うわけですけれども、補助金の適正化法に違反していると明らかになった場合には、私は、厚生省も農水省もこの補助金をやっぱり引き揚げるべきだ、返させるべきだと思います。今の段階でそこまで答えられるかどうかわかりませんけれども、そのくらいの意識でやっていただきたいと私は思うのですが、見解を両省から聞いておきたいと思います。
  62. 古瀬徹

    ○古瀬説明員 私どもとしましては、現在得られました情報、県からの情報から判断いたしますと御指摘のような事態にはまずならないと思いますけれども、県に調査を依頼いたしまして、施設の利用目的に合致しているかどうか判断をいたしたいと思います。     〔西田(司)委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 山本徹

    ○山本説明員 私どもとしては、ただいま御指摘のございましたような補助事業については、その事業計画、内容については十分に調査、審査の上で補助金を交付いたしておりますが、ただいま御指摘のように、利用の状況等につきましては早速調査いたしまして、仮に改善すべきような点がございましたら、この補助金交付の本来の趣旨、目的に沿ってこれらの施設が十分に活用されるように、まず指導をしてまいりたいと考えております。
  64. 小杉隆

    ○小杉委員 自治省に伺いますが、各県ごとの行政投資実績というのがありますね。これを見ますと、新潟県というのは非常に多くて、昭和五十六年度の投資実績を見ますと全国第三位ですね。昭和五十五年度は全国第一位。いずれにしても常に五本の指に入っている。しかも、昭和五十年以降すっと行政投資額の伸び率を見ましても、圧倒的に高くなっているわけです。私も地元の方々のいろいろなお話を聞いてみますと、各省庁に補助金を申請すると、もうすぐに補助金がもらえて、それでどんどん施設をつくっていくということで、今までいろいろ実態をお聞きになっておられたと思うのですけれども地方財政健全化とか、あるいは地方行革を推進しなければいけないという今日において、地方実態というものは、先ほど自治大臣が言っていたように、まだ若干緩みがあるように思えます。  これは私はほんの一例、一つの村のことだけを取り上げましたけれども先ほど申し上げたように、これだけの問題ではない。ほかの自治体でもまだまだこういった実態があるということは予測されるわけです。つくるときは各省庁から全部補助金をもらってつくるわけですが、定成した後は各自治体がそれを維持運営をして、人間を張りつけ、また運営費の予算を計上していかなければいけないわけですから、その後の各自治体の負担というのは非常に重くなっていくわけですけれども、見ていますと、もう競って施設を誘致してどんどんつくっていく。それが首長なり議会の功績になるというような実態があるわけですけれども、こういうのは自治省として何とかならぬものでしょうかね。その点についてのお考えを聞いておきたいと思うのです。
  65. 石原信雄

    石原政府委員 御指摘のような現象が全国的によく指摘されております。非常に立派な会館をつくった、音楽堂をつくったというようなことで、できた当座は物珍しさもあってかなり利用されていたけれども、一年たったらもう全く利用されていないというような話を聞くことがしばしばでございます。特に、補助金がつきますとネットの負担が少ないということで、どうしても事業選択が安易に流れやすいと思います。  そこで私どもは、一般的には、毎年度財政運営通達などにおきまして、各種の事業を選択するに当たりましては、本当に将来にわたって必要かどうか、利用が確保されるかどうかという見通しを十分にやってほしい。それから、施設をつくる場合、特にいわゆる箱物と言われるものをつくる場合には、維持管理費が通常非常に高くなります。電気料金、水道料金あるいは運営管理の人件費などなど、運営費が通常非常に多額になるわけでありますし、また、その建物の建設に当たって補助金がつきましても、地方負担については、通常かなりの地方債が充当され、その償還費の負担ということもこれまた大変なことでございます。今新潟県の特定の自治体の例が引用されたわけでありますけれども、私ども、そういった事態になってはいけないということで、常日ごろから、施設の建設に当たっては維持管理、利用、先のことをよく考えて決定してほしいという要請を行っております。御指摘のような事例を踏まえまして、さらに今年度財政運営に当たってもこの点を強く戒めてまいりたい、このように考えております。
  66. 小杉隆

    ○小杉委員 局長の答弁ですけれども、半分以下しか私は納得できないのですね。これは大変難しい問題だと思うのですけれども、本来的には補助金を出した厚生省とか農林水産省などが、つくる前にもっときっちり実情を調べて、本当にその目的に合致するかどうかということを十分把握した上で補助金を交付するというのが望ましいわけです。だけれども、一回つくってしまうと各省庁はもうそこから手が離れてしまうわけですね。結局、後は野となれ山となれ、悪い言葉で言えば産みっ放し、こういうことでございます。  こうした中央省庁の縦割り行政のゆがみによってこういうことになってしまうわけですが、総合調整機能というのは一体どこがやるべきなんでしょうか。市町村なり都道府県に全部任せるといっても、なかなかそうもいかない。自治省地方財政運営を指導監督する立場にあるので、総合的な指導というか調整というか、そういうものは自治省としてできないものだろうか、こう思うのです。
  67. 石原信雄

    石原政府委員 同種類似の補助金が各省庁から支出されて、それを受ける市町村、県の段階では、同じ場所、同じ施設についていろいろな補助金が出されている、そしてその補助金が多岐にわたっているがゆえに、建設、運営管理の面でいろいろ弊害があるというような指摘はよくなされまして、それを何とか総合的に調整すべきではないかというお話があります。私どもも、地方自治体のサイド、これを受けるサイドで何とか総合調整機能というものを発揮しなければいけないという気持ちを常に持っているのでありますが、残念ながら私どもの役所では、各省庁に対してそういうことのないようにという要請をするところまでであります。  今の政府の機構、権限の関係で申しますと、補助金については予算を主管しております大蔵省、行政の管理運営、効率化という面では行政管理庁が各省横断的に責任を持っております。それから、地域の振興等に関連しますと、国土庁がある程度各省との調整を行っております。本来であればそういう地方行政にかかわる補助金その他の調整は自治省が行うべきではないかという意見もあり、私どももそういう励ましというか指摘を受けることがしばしばでありますけれども、残念ながら現在はそこまで至っていない。私どもはあくまで、補助金等を受ける地方団体の立場に立って各省庁に対して物を申しているというところまででございます。  いずれにしても、行政改革が叫ばれ、財政が厳しい状況でありますので、総合調整のあり方等についてはさらに関係省庁ともよく議論し、今のような国民の目、納税者の目から見て明らかにおかしいじゃないかという事例を少しでも排除していきたいというふうに考えております。
  68. 小杉隆

    ○小杉委員 時間がなくなりましたからこれでやめますが、最後に自治大臣に伺います。  地方行革がこれから非常に大切になってくるわけですけれども、今の局長の言葉ですと、権限の問題がいろいろあるというお話でしたが、やはりそこを突破していかないとなかなかできないのですね。今度行管庁でも、昭和五十九年度事業計画の中で機関委任事務とか必置規制について特別に監察をする、こういう動きにもなっておりますし、権限を乗り超えて、自治省が、地方行政改革の足を引っ張るような、それを阻害するような要因については、思い切って行管庁にも国土庁にもあるいは中央省庁にも積極的に働きかけていく、こういう姿勢が望まれるわけですけれども、私は自治大臣決意のほどを伺っておきたいと思います。
  69. 田川誠一

    田川国務大臣 御指摘のような問題を解決するには、思い切った行政改革を実現していかなければならないと思います。幸い行政管理庁長官であります後藤田さんが地方財政に非常に経験の深い方であるのでありまして、密接な連絡をとって、今御指摘のような問題を解決することについて、協力をしながら、少しでも前進できるように努力をしてまいりたいと思っております。
  70. 小杉隆

    ○小杉委員 終わります。
  71. 大石千八

    大石委員長 安田修三君。
  72. 安田修三

    ○安田委員 この地方交付税問題を論ずるときには、先輩委員の方々も繰り返し原則論を今日まで議論しておられるようでありますが、私も、先に原則的なことからお聞きしていきたい、こう思います。  まず、財源不足の原因、わかっているじゃないかと言えばそれまでなんですけれども、端的に言って、これだけ不足原因というものがはっきりしておるならば、対策というものが当然出なければならぬ、そのこともまた論じられてきたところでありますけれども、さて、その原因というのは、今がいつまんで見た場合に、一体どういうぐあいに解釈していったらいいのか、判断していったらいいのか、大臣もかわられましたし、まずそこからお尋ねしたいと思います。
  73. 田川誠一

    田川国務大臣 財源不足地方財政計画から見ますれば、安田さんも既におわかりと思いますけれども歳出面におきましては、給与関係費あるいは公債費、そうしたものを初めとする歳出が非常に伸びている、それから歳入面では、地方税の自然増収の伸びがありましたけれども地方交付税の減が見込まれる、こういうようなところが大きな原因であるというふうに私は見ております。
  74. 安田修三

    ○安田委員 今、大臣おっしゃったのでございますけれども、そういうことでありますならば、これはちょっと近視眼的な見方ではないだろうか、私はこう思うわけであります。  といいますのは、今、給与費の伸びも硬直化の原因にされましたが、これは皆さん御案内のように、既に毎年の財政状況の報告の中にもあるわけですが、給与費の地財計画に占める割合というのは、数年前にピークを示しましたが、これはずっと穏やかな山なりで下がっているわけです。そういう点では、給与費の地財計画に占める割合というのは、決して防衛費のように突出するというような、ああいう異常現象を示して財政の硬直化をなした原因ではないだろうと思います。いろいろ議論のあるところでありましょうが、長期的に見た場合にはそういうことになると思います。後ほどまた給与問題でお尋ねするときに数字等をお示しいたしたいと思います。  それよりももっと、皆さんが見られる場合に、根本原因を見て財源不足問題を論じてもらわないと恒久的対策が出てこない。そういう点では、財政問題が比較的順調であった時代には、国税収入が伸びるわけでありますから、当然国家の予算増になってくる。当然のこととして国の補助事業もふえますし、そのことは補助金もふえてくる。地方にすれば国税収入増が地方交付税増になっていく。当然一般財源が増加いたしますから、国の補助事業もこなしていく、こういうサイクルが続いてきた。このときはこれでよかった。この成長時代財政のサイクルというのは、私が今述べたような前提には立っておられるのでしょうか、どうでしょうか。
  75. 田川誠一

    田川国務大臣 先ほど私が申し上げました財源不足の原因というのは、非常に表にあらわれたいわゆる地方財政計画の面から申し上げたわけでございまして、今あなたがおっしゃったことも、やはり大きな目から見れば一つの原因ではないかと思います。  私は、国、地方とも、今の厳しい情勢から見まして、一体どうしてこういうような厳しい状態になっているかということを長期的に見てみますと、一つは経済成長率が低下した、このために税収が非常に減ったということも一つの原因であると思っております。それから、高度成長期を通じましていろいろな施策がどんどん行われたということも一つの原因である。それから、石油危機の後の経済不況に対処するために、公共事業などを中心にして財政による景気回復を相当図った、これもやはり一つの原因ではないかと思うのです。こうしたことで歳出が激増した、歳入に見合わぬ激増をして、そのギャップが公債発行などで埋められた。こんなようなことが長期的に見ますれば財源不足の原因になったのではないかというふうに見ております。
  76. 安田修三

    ○安田委員 そこなんですね。そこでいわゆるそういう施策、いろいろなことが行われた、仕事を膨張してきた、しかし結果的に国の方では税収が上がらない、結局国債発行に頼っていった、大臣、最後に述べられましたが、結局そのことが今日最も大きい傷跡になってきておるのではないだろうか。国家予算はふえ、補助事業はふえ、そして補助金もふえた、しかし税収増がないから地方交付税がふえない、結局ここに地方財政のアンバラというものが出てきた。  国税三税は国税収入のおおよそ八〇%程度。例えば五十八年度、五十九年度の場合は大体七四・六九、去年もことしも、〇・〇一ぐらい違いますけれども大体七四・六九が国税の中の国税三税の占める率。それを交付税の三二%で換算しますと、大体二三・九%程度。赤字国債、特例国債の発行額から二三・九%程度は本来地方に金が来なければバランスが保てないという財政の仕組みだろうと私は思うのです。ですから、特例国債発行分のうちの大体その程度、二四、五%程度は絶えず恒常的な地方財政の赤字を生むという仕組みになってしまってきた、これがそもそも一番大きな原因ではないか。こういうことが十年間一つのパターンとして繰り返されてきた。  だから、このことからしたときに、地方からすれば財源の手当て問題ということが毎年起きてくるのは当たり前のことでありますし、自治省としても、だから交付税率引き上げその他の要求を大蔵省に出されてきたという経過もあるわけでありまして、大臣先ほどおっしゃいましたが、そこらあたりを皆さんの方できちっとしていただかないと、何か場当たりの毎年の赤字の穴埋めというような対策で終わりますならば、これは将来ますます大きい傷跡を広げていくと私は思うのです。そういう点で大臣の考えをお聞きしたいと思います。
  77. 石原信雄

    石原政府委員 今日の国、地方を通ずる財政危機の根本原因はどこにあるのかというお尋ねだと思いますが、先ほど大臣からも最近の地方財源不足の直接的な原因を申し上げたわけですけれども、さらにその根底には国、地方を通ずるところの要因が横たわっていると思います。  今日の財政危機の根本原因については、税制調査会の答申で指摘していることが最も当を得ているのではないか。それは昭和四十年代の末期から最近までの国、地方を通ずる財政収支の分析の上に立って財政危機の原因を指摘しているわけでありますが、歳出年度別の増加傾向というものをGNP対比で追っかけておりまして、四十七、八年ごろから急速に歳出のGNP対比の率がふえてきております。ちょうどこのころは教育制度や社会保障制度などにおいていろいろな制度改正が行われたということ。それからまた、その四十八年には御案内のように第一次石油ショックが起こって、我が国の経済の体質が大きく変わった。それから、五十年代に入りますと急速な高齢化社会への移行という現象が出てきた、こういういろいろな要因が重なりまして、歳出が四十年代末期から五十年代に入りますと急速に伸びてきております。  ところが租税収入の方は、四十年代の中ごろから最近までほとんどGNP対比では動いていない、年度によって多少上下しておりますけれども、基本的に余り上がっていない。結局、GNP対比の税収の水準と歳出の水準が四十年代末期から五十年代にかけて急速に開いていったという、そこが財政危機の原因ではないか。  そして五十年代の初頭におきましては、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、その生じたギャップを国債の、特に特例公債の発行あるいは交付税特別会計借り入れによって埋めるという措置が講じられた結果として、五十年代の中ごろになりますと公債償還費の増が財政負担として非常に大きくなってきている、こういうような状況ではないか。  結局、これらをずっと通して見ますと、我が国の現状は、今の歳出のレベル、歳出のいろいろな要因に対して我が国の経済の実態に合った租税収入が確保されてない、そこに一番基本の原因があるのではないかという指摘税制調査会はしているわけであります。  それについてどう対応するかについては、歳出のカットで対応するのか、税制改正その他で対応するのかという議論の分かれてくるところでありますけれども、少なくとも財政危機の根本原因の指摘は、私はこの税制調査会の指摘が最も妥当なところではないだろうかと思います。  そういうことを背景にしまして、地方財政だけについて申しますと、確かに地方交付税あり方として、国税三税の三二%だけじゃなくて、さらにその背後には国と地方財源配分の一定のルールというものがあってしかるべきだ。そのルールとしては、地方歳出の増加をもたらすものは、一般財源による国の歳出だけではなくて、特例公債を含む公債発行による歳出も当然地方負担を伴うわけでありますから、この交付税を初め地方に配分されるべき財源総量というものは、特例公債を含めた歳入総額との対比で考えられるべきだという議論があることは事実であります。  例えば、昭和四十一年の地方制度調査会の答申におきましても、これはちょうど交付税率を三二%に引き上げたときの答申でありますけれども、あのとき初めて、四十一年度から国が本格的な国債導入政策に転換したわけですが、その際に、国債を導入したことに伴って歳出がふえる、その歳出に伴って地方の負担がふえる。この地方負担を賄い得るような新しい国と地方財源配分の関係を再構築する必要があるということで、昭和四十一年の秋の地方制度調査会の答申では、国債、特に特例公債、当時は国債としておりましたが、国税プラス国債総額に対して一定の割合を地方財源として確保すべきだ、こういう指摘をいたしております。そういう考え方は今日においてもとり得る考え方だと思います。  そういうこともありまして、私どもは五十二年度、三年度、四年度とずっと引き続いて交付税率引き上げを要求したわけです。国と地方のあるべき財源配分の姿として、地方財政の立場からすれば、現在の三二%では必要な財源が貯えない、これは制度的に解決されるべきだという考え方に立って交付税率引き上げを要求いたしたわけでありますけれども、残念ながら、交付税率引き上げということは、とりもなおさず国の財源を減らす、国と地方の配分割合を変えるわけですから、減らされる方の国の財政が耐えられるかどうかということで、根本的な財政改正ができるまではそれはとてもできる話じゃないということで今日に至っているわけであります。  したがいまして、私どもも、毎年度財政の現象は、いろいろ単年度の要因というものはあると思いますけれども、基本的に、今も申しましたように国、地方を通じて財政支出のレベルと租税収入のレベルの大きなギャップというものが根っこにあって、それが国の財政危機であり、また地方財政危機をもたらしている原因であるという認識は常に持っております。
  78. 安田修三

    ○安田委員 最後にまた租税負担率の関係が出ましたが、これはいろいろ議論はありましょうが、租税負担率は御存じのように毎年上がりっ放しになっているわけです。特に地方の場合にはそういう点ではウエートが高くなっている。問題は、国の支出内容議論の対象になるだろうと私は思います。  これはここで議論してもちょっとかみ合わない議論になりますので、それはおいて、たと言えることは、今歳出問題が出ましたのですが、歳出の純計ベースでいきますと、国のウエートが漸増してまいっております。このことはやはり国と地方との財源の配分問題が一番の要因で、要するに赤字国債の発行がこういう国のウエートを高からしめている、これは地方に行かない金でありますから。そういう点からしますと、いろいろな派生的なことをおっしゃるけれども、国と地方との財源の配分ということについては、やはり自治省はこのにしきの御旗だけはきちっと守っていってもらいたい。そうしませんと、絶えず大蔵省側のいろいろな言い方に押されてくるということになってくるのじゃないかと思います。  そういう点で、今日、地方交付税制度そのものが、地方財政調整とかあるいは地方財源保障というような機能が大変ゆがめられてきておるのじゃないだろうか。交付税必要額に対して交付税額が大きく下回っておるということが続いているけれども金額的には何とかこのつじつまは合わしておる。しかし実際は、今言ったような調整あるいは保障という、午前中の質問でもありましたが、平衡交付金のときと違って固有の財源としての保障ということに変わったんだ。しかし、その保障ということが根なし草のように絶えず揺らぐような時代になってしまった。こういう点で機能が非常に低下してしまってきておるということ、これは皆さんそういうぐあいに考えておられませんか。
  79. 石原信雄

    石原政府委員 ここ三年ほど交付税総額が毎年度減少しております。結局、国の財政との関連におきまして歳出を徹底的に抑制するという前提のもとで地方財源の不足額を算定し、それに対して地方債の活用などを含めて必要な財政措置を講じてきたわけですけれども、それにしても交付税の絶対額が毎年度減少しているわけでありまして、その結果として投資的経費の一部を起債に振りかえざるを得ないという事態になっております。そういった意味では、地方交付税が十分な調整機能、保障機能を発揮していないじゃないかという御指摘はやむを得ないと思います。投資的経費について交付税ではなく地方債によって肩がわりせざるを得ない財政環境にあるという点は否定できません。  しかし私どもは、今日の国、地方を通ずる財政環境の中で、ぎりぎりの選択として、地方団体が最小限必要な行政水準を維持していけるようにするためには、やはり地方債も含めた財政措置で対応せざるを得ない。そしてまた、地方債を含め、地方債交付税と両にらみで各地方団体財政運営に支障がないようにできるだけの措置を講ずるという基本の考え方で五十九年度地方財政対策も組み立てた次第でございます。
  80. 安田修三

    ○安田委員 そういうぐあいに、投資的経費地方債に振りかえるということが機能低下の一つの要因を招いておるということでは、皆さんも機能低下ということは既に認めておられるところでありますが、さらに、例えば大都市の場合でも、一団体以外は全部交付団体になってきておる。もちろんそれがどうということはないのだけれども、ただ、本来調整すべき弱小といいましょうか、本来財政力の指数の弱い小都市や町村の方の分け前がどちらかというとだんだん少なくなっている。大都市は大都市でまた一つ悩みがあります。これは当然また人口急増地区にあっての悩みがありますけれども交付税の今の制度などからしますと、分け前の中では非常にゆがみが出てくる。あるいはまた、今度は財対債の償還費を算入する、こういうこともこれまた地方財源の自主性を交付税みずからが何か一枚ずつはぎ取っていくというようなことになってくるのじゃないか。こういう点で、交付税のそういう財政調整あるいは財源保障という機能がますます薄れていく。  ここで、自治省は本来の姿に立ち戻って、やはり当然自主財源確保という見地で五十九年度は臨まれるべきではなかったか。皆さんはそれは制度改正だからそういうぐあいに臨んでおるのだとおっしゃるのでしょうが、当然この本来の立場を取り戻すべきではなかったのだろうかと私は思うのです。その点どうでしょうか。
  81. 石原信雄

    石原政府委員 地方財政の自主性を強化し、地方行政水準のレベルアップを図る、そのためには、やはり何といいましても地方税源充実強化が基本であることは申すまでもありません。これは税制改正の、地方税法の審議でもしばしば御指摘いただいたところでありますけれども、現在、財政力が最もあると考えられております指定都市が全部地方交付税交付団体になっているという事態は、やはり地方独立税源が十分でないということの何よりのあらわれであるという指摘もなされるところであります。  私どもは、そういう現状から、まず税制改正地方財源強化というものに取り組まなければいけないということで、五十九年度も取り組んだわけでありますが、地方税法の御審議の際にも申し上げましたように、住民税の減税補てんを何としても確保しなければいけないということで精いっぱいでありまして、さらに地方税源を大幅に強化するというところまでは残念ながら行き得なかった。結局、これは税制改正についての大枠というものが決められておりますから、その中での地方税源充実強化ということになりますと、どうしても限界があるわけであります。我々、努力はしなければいけませんけれども、そういう大枠から来る限界があるということは率直に御理解いただかなければならないと思います。  そして、その税制改正を前提にして地方一般財源確保するための地方財政対策に取り組んだわけでありますが、こちらの面でも、残念ながら、御案内のように国の財政状態というものが文字どおり危機的な状況にあります。したがいまして、五十九年度の場合、率直に言って、地方財政の立場だけからいえば、例えば交付税率引き上げその他恒久的な地方財源強化策が望ましいわけでありますけれども、こういったことを持ち出しても、到底これは実現の可能性がないというほど国の財政状態が逼迫している。そういった事態の中で、私どもとしては、しかしそうは言っても地方団体は法令の規定によって住民に対して一定の責任を負っているわけでありますから、その責任を最小限度果たし得るだけのものは何としても確保しなければならないということで、御提案申し上げておりますような交付税制度改正を中心とした財政対策を組み立てたわけであります。  結局、国の財政状態を私の立場から申し上げると、要らぬことじゃないかとおしかりを受けるかもしれませんけれども、やはり現実に予算の折衝、財政対策の折衝を通じまして、国の財政危機というものはこれはどうしても避けて通れない、地方財政対策を立てる上でどうしてもこの点が大きく制約条件になっているということは率直に言って御認識いただかざるを得ないところでございます。そうした中で、私どもとしては精いっぱいの措置をとらしていただいた、このように考えております。
  82. 安田修三

    ○安田委員 局長の先般来のいろいろな答弁、予算委員会とか、いろいろな関係の答弁から見ますと、きょうは何かちょっと調子が違うようであります。要するに、先般来はかなり当然だというよう宣言い方が盛んだった。きょうは、何か少し本音を言われた方がいいような気もするのですけれども、まあ立場もあるのでしょう。  例えば、従来の国と地方との財政関係では、当然国が負担すべきものが今度の場合に地方に負担転嫁、これは皆さん今の話の中で、厳しい財政事情だから、国のことは考えなくてもいいんだろうけれども、そうはいかないと言う。しかし、それは三千三百の地方自治体の、まあどちらかと言えば政府の中の唯一の窓口になっている自治省でありますから、そこはやはり、国の中の機関ではあるけれども、きちっと窓口だけはあけておいてもらわなければならぬ。  そういう点では、地方交付税関係の中では、一つ先ほど局長もおっしゃいました地方交付税減額、しかも二年連続、率の低下、それから、借り入れの是非という問題についてはいろいろな議論のあるところではありますけれども、まあまあとにかくここ数年は財源の不足問題については一応有効な二足の役割を果たしてまいりました交付税特別会計における借り入れ、これが停止されたということ、それから財源対策債にかわる臨時特例交付金がなくなってきた、あるいは交付税特別会計借入金の利子の地方負担がきっちり枠はめになってしまった、あるいはまた、国庫補助金関係でも、児童扶養手当が都道府県の負担になってくる、それから小規模公共事業の採択基準の見直し、あるいはまた児童生徒急増地域の公立小中学校用地取得費の国庫補助割合の見直し、あるいは先般ここで議論のありました消防施設補助の見直し、その他まだありますが、こうして、一般財源化を図って地方財源を本来保障していかなければならぬという問題について、そういうことが行われていない。  これは自治省として、いかに財政が厳しいときであろうとも、こういう地方一般財源として当然裏打ちをしなければならぬ問題については、やはり皆さんは一定の立場というものをきっちり確保していってもらいたいと思うのです。そういう点で、ここらあたりの努力が足らないと私は思いますけれども、どうでしょうか。     〔委員長退席、小澤(潔)委員長代理着席〕
  83. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度予算編成に関連いたしまして、例えば児童扶養手当について、新たな認定分について一部地方の負担が導入された、そのほか、消防施設整備費の補助金について、人口急増団体の一部について実質的に補助率の引き下げが行われたというふうなことは事実でございます。この当否については、私どもももちろんその結論を得るまでには地方の立場に立っていろいろな議論をしてまいりましたが、最終的には、政府全体の立場でぎりぎり制度改正等含めて我々はこれに同意したわけでありますけれども、ただ、その結果として生じます地方の負担増については、これは的確に財源措置をいたしております。  当然、地方財政計画上、その負担増分については歳出に計上いたしておりますし、また児童扶養手当等については、当然その負担額を基準財政需要額に的確に算入することによりまして、個々の地方団体財政運営にそれが不当なしわ寄せとならないように十分な配慮をしているつもりでございます。本体の、もとのそういう改革の当否についての御議論はいろいろあると思いますけれども、私どもは、やはりぎりぎりの選択として最終的に同意したものに係る負担増については、それぞれ的確な財政措置を講じているつもりでございます。
  84. 安田修三

    ○安田委員 財政措置を講じたと言うけれども、それは、交付税関係の方はこれからまだ皆さんと議論のずっと続くところでありますが、補助金関係の方では、全然それは講じたという仲間に入らぬのじゃないかと私は思うのです。例えばこういうことも、何か国の予算地財計画がいかにも整合性あるようにつくっていく、本来はつくりがたいような現在の財政の中身なんでしょうけれども、これを何か整合性あるようにつくらなければならぬという、そういう不自然さというものが四十八兆二千八百九十二億円の枠組みに見えると私は思うのです。そういう点で、別の面からしますと、これは国の予算のつじつま合わせに何か地財計画というものが利用されているという感じがどうもしてなりません。  例えば、先ほど議論のありました地方単独事業の計画と決算との乖離、これは確かに大きい。しかし、今度五千八百億円のカットがなされた。それから追加財政需要額五百億円もカットされてきた。あるいはまた、今までは財源不足額に入っていなかった特会借入金の利子を、今度は財源不足額に入れるという操作が行われてきた。こうして歳出面を何とかかんとか小さくすることによって、今度はまた歳入面での整合性を合わせようとするような感じを受けます。  そして、同様のことは国の予算の中にも行われているわけであって、例えば今年の十月一日以降、特会の国の負担分を一般会計の借入金へ振りかえ、あるいはその元利償還を国債費として計上したということは、従来のやり方と完全に変わったわけですね。そして、それだけ一般歳出減額になった、歳出減という数字上のつじつま合わせを実はやってきた。あるいは、臨時特例交付金は今まで一般歳出であったものが、今度からは特例措置として地方交付税交付金に計上されて、その分だけこれまた一般歳出の減になった。こういう国の、歳出減をやりましたよ、臨調答申に基づいて歳出減をやりましたよという、いかにも歳出減をやったような見せかけが行われておる。ですから、これらを従前の予算計上方法でいけば、逆に歳出は伸びていっておる。  このことは、一番初めに言いましたように地方財政計画の中にも連動して行われておると私は思うわけです。ですから、地方単独事業の計画と決算乖離問題は、確かにそれはそうなんだが、皆さんがこれほど厳しく地方財政について指導勧告等行っておる中に、それは決して単なる乖離が漠然と出たという問題ではなかったと思うのです。今度はばっさり五千八百億円やった、そのかわりに三千億円の別の事業費は組まれましたけれども、そういう点で今度の地方財政計画には何か自然さというものが欠けるように私は思うのですが、皆さんの場合は、組まれた当事者として、そういう感じというのは全然持っておられないのですか。
  85. 石原信雄

    石原政府委員 率直に申しまして、私ども地方財政対策の前提となります地方財源不足額を積算するに当たりまして、一部新聞等でも指摘されたような、国の一般歳出の削減に協力する趣旨で五十九年度の地財対策を考えだということは全くございません。私どもはあくまで、あるべき地方歳出水準あるいは歳入の見通し、こういったものを積み上げた結果として一兆五千百億円の財源不足を算出したわけであります。  その過程におきまして、例えば交付税特別会計借入金の残高のうち国が負担すべき部分を国の一般会計に引き取ってもらうという話が議論の途中で実は出てきた。我々もそれは強く希望し、国の方もこれに応じたわけですけれども、国に引き取った以後は、従来一般歳出の中の地方財政関係費として支出されておりました利子負担額が、十月一日以降は国債費に計上される、その結果として一般歳出がそれだけ減るという効果が出てきたわけですけれども、実はこの議論の過程で、私どもは全くそういうことは意識しておりません。やはり純粋に地方財政の立場から、国が負担することは約束にはなっておりましたけれども、法文上は地方財政状況いかんによっては負担しないこともあるべしという条項つきのこの特会借り入れの残高について、この際国の一般会計に引き取ってもらうということは、いかなる意味でも地方に負担させられる心配はなくなるわけでありますから、我々としては抜本的な改善だ、こういう理解の上に立ちまして、これを強く主張しその実現を図ったわけでありまして、私どもは一般歳出の額を減らす手段としてこれをやったということは全くございません。
  86. 安田修三

    ○安田委員 それで、例えば地方単独事業の計画と決算乖離五千八百億円という額の算定基準というのはどういうことなんですか。
  87. 石原信雄

    石原政府委員 実は財政制度審議会その他の場で、あるいは臨調の場でもそうですが、地方財政計画決算との乖離に関連して、地方自治体の財政運営あり方についてのいろいろな批判がこれまでなされておりました。私は、ある面では地方実態を知らない誤解に基づくものも多々あると思います。しかしながら、ある面では私どももこれはほうっておけないという面もあるわけでございます。それは、この単独事業についての決算と計画との乖離でございます。  御案内のとおり、公共事業につきましては、昭和五十六、五十七、五十八と前年同額で据え置かれたわけでありますが、この間、地方財政計画上の地方単独事業につきましては、例えば五十七年度の場合には八・五%、その前の年には八%、その前の年は七・五%というふうに、公共事業をはるかに超える伸び率で地方財政計画上の単独事業を積算したのでありますけれども、残念ながら、決算を調べてみるとその間全く伸びていない。結局、計画上ふやした分が乖離の拡大になっているという結果が出てきたわけです。     〔小澤(潔)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、私どもは、この問題を放置するということはやはりいろいろな意味地方財政に対する誤解、不信を招く危険すらあるというふうに考えまして、この五十九年度の時点で一遍これは整理しよう、乖離を是正しておいて、そして必要なものは必要なものとして積み上げていくことがとるべき策ではないか、このように考えたわけです。  そこで、五千八百億円の金額の積算の基礎でございますが、五十六年度決算について、地財計画決算との比較を行ったわけであります。そして、単純比較しますと実は乖離は二兆円近いものがあるのですけれども、その中には統計上の計上の仕方からくる乖離、本来単独事業に上げるべきものを補助事業決算上上げてしまっているものがかなりあります。こういった系統のものは一応置き直しまして、それから、一部の団体において選挙あるいは財政難等の事情で極端に単独事業を抑えた団体があります。東京都とか大阪府という非常に規模の大きな団体が、その団体の特殊な事情で単独事業を抑えた結果として乖離が生じている面があります。そういったものは、地財計画のように全国のレベルで物を見るものについては除外した方がいい、こういうことで、統計上の技術的な理由で生ずる乖離とかあるいは特別の団体において生じた乖離、こういった要因を除きまして、それ以外の部分について、どうしても乖離について説明がつかない部分、すなわち地方が我々の期待どおり単独事業を実施しなかった部分を求めて、五十六年度時点でその乖離の最後の説明のつかない分を計算して、それにその後の地方財政計画上の全体の伸び率を乗じて五千八百億円というものを計算したわけです。  したがいまして、この五千八百億円というのは地方財政計画決算との乖離のすべてではございませんで、どうしても説明のつかない、この際乖離是正をした方がいいと考えられる部分、極めて限られた部分の額というふうに御理解いただければありがたいと思います。
  88. 安田修三

    ○安田委員 それから、最近、公募団体における公債償還期間の延長ということが、そんなに多くはございませんが起きているわけでありますけれども、皆さんの方でこうした借換債の実態についてどうかということで調べておられるのは、五十七年度の実績では二千三百九十一億円だそうでありますけれども、全体像というのは調べておられないそうでありますね。  そこで、皆さんの方では、十年債の場合でも、運用上二十年、三十年という場合には、あらかじめ二十年、三十年の期間あるいは利率、そういうものの条件を見て認可をしておられる、こういうことなんでありますけれども、実際の運用とそれから表示期間、利率というものとの相違ですね。なぜこういうことになっておるのだろうか。その点どうなんでしょうか。
  89. 石原信雄

    石原政府委員 御案内のように、地方債の発行に当たりましては、その償還期間の限度とそれから利率の上限、これについては議会の議決を経る、そして自治大臣、都道府県知事の許可を得るということになっております。それは、いわばアッパーリミットを許可しているわけでありまして、それを延ばすことは許されないのですけれども、それよりも短くする、あるいは利率を低く借りるということは可能なわけです。  従来、地方財政計画上の公債償還費を算定するに当たりまして、借りかえの行われているものとそうでないものとがあるわけですけれども、市場公募団体等につきまして、現実にはほとんど借りかえを行っているものについても、計算上は借りかえがないものとしてこれまで算定してきた部分があるわけです。実は、その点については、最近までの地方財政計画決算との乖離をいろいろ分析しておりまして、本来、公債償還費というのはそう差があるのはおかしいわけです。それで、なぜ乖離があるのかということをいろいろ調べてみますと、従来十年で、十年目に一括償還しているという前提で公債償還費を計算しておったもののうち、かなりの部分が実際には借りかえをしている。ですから、公債償還費はもっとなだらかな形で行われているという、そこの乖離がネグリジブルではないほどになってきたということで、これはいつか直さなければいけないと思っておったのですが、たまたま五十九年度に、少し調査もし改めたわけです。  実は、その中でも、例えば財源対策債などに該当するものについては、地方交付税の算定の方では、現実の借りかえをやっているものは借りかえ後の姿で交付税の償還費を算入しておりまして、地方財政計画上はマクロ計算なものですから、便宜一括償還で計算しているという面があったわけです。ですから、そういう意味では、地方財政計画の計算と交付税の実際の財源措置とがギャップがあったというような技術的な問題もありまして、いずれにしても、これは現実に借りかえを行っている団体については借りかえの実態に合った償還費の算入を行うことの方が正しいということで、今回その是正を行ったわけであります。  実は、五十九年度年度について言いますと、その結果、トータルで二百億円余りの減になります。それは、減になるというよりも、それが実態に合うわけであります。そのかわり、六十年度以降の公債償還費の計算では、当然従来の方式よりはふえてまいります。そうして、かつ、それが実態に合うわけでございますから、私どもはこの際実態に合わせる意味で計算方式を変えたわけです。決してこれは五十九年度歳出を抑制する手段として方式転換を行ったのではございませんで、実態に合わせる、また、交付税財政措置とも合わせるという趣旨で見直しを行ったわけでございます。
  90. 安田修三

    ○安田委員 そういうことであると、ちょっと時期が悪かったか。やはり何でも勘ぐりたくなりまして、財源に幅を持たせるためにこういうこともやられたのかなと思いましたのですが、一応総体的にこういう借換債の実態を見て財政の全体像をつかんだということであれば、どうということはございません。とにかくそういうことではこれからは実態に合わせたもので見ておく、こういうことでございますね。  それでは次に、中期的な財政展望についてきょう資料をいただきましたが、私は実は、中期の財政展望ということについて田川大臣の答弁あるいは大蔵大臣の本会の答弁にも盛んに出てまいるものでありますから、中期的な財政展望ということについて皆さんの方で一定のアウトラインを引いておられるのだろうかと思って、あらかじめ、きょう質問してみよう、こう思っていたわけでありますが、先ほど資料、数字をいただきました。  これを見まして、こういう資料をいただくなら、別に資料をいただかなくても、すでに二月閣議決定の中期の財政展望がありますから、これでは全部地方交付税も算定してあるわけでありますし、A、B二つに分けてありますので、これだったら別に大したものでなかったなと実は思っているわけです。  そこで、せっかくいただいたわけでありますのでお聞きしておきたいわけでありますが、A、Bともに通じまして「一般歳出」、この中で単独事業は、五十八年、五十九年、ここらあたりをベースにしてどういうぐあいな展望に見ておられるのか、ここらあたりをお聞きしたいと思います。
  91. 石原信雄

    石原政府委員 けさほどお配り申し上げました「地方財政参考試算」について、この「歳出」の中の「一般歳出」、この中で地方単独事業がどういう計算になっているのかというお尋ねでございます。  実はこの注書きにも書いておりますように、一般歳出につきましては全体として国の中期試算の一般歳出の伸び率と全く同じ率を適用する。トータルとして、地方歳出のトータルに対して同じ伸び率、すなわち、六十年度の場合で申しますと五・二%という伸び率を適用して金額を積算しております。  したがいまして、この内訳は特に示しておりませんので、単純に計算すれば、五十九年度地方単独事業、八兆円ほどでありますが、これに対して五・二%の伸び率が掛かったものが、六十年度の一般歳出四十五兆三千七百億円の中に含まれているという見方もできると思います。実は、正確に申しますと、分けて計算したわけではございませんので、トータルとして計算したわけでございますから、あるいはそういうことは正確でないのかもしれませんけれども、少なくとも、そういう全体の歳出について単純に同じ率で伸ばしたということでございます。
  92. 安田修三

    ○安田委員 極めて単純なお答えでありまして、それだったら、これはもらってもまたあるいは計算されても余り意味のない資料だと私は思うのですね。特に、例えば「歳入」の場合の「その他」でも、ふえているのは——これはあるいは手数料その他のその他収入でどういう展望なのかということもお聞きしたいと思ったが、これも五十九年度ベースでただ数字を合わしただけということになれば、余りお聞きしても意味はないと思うのです。  これは基礎は、中期の経済展望は、昨年の八〇年代の経済社会の展望に基づく経済成長率の平均値、これを中心にして出されたというのが出ておりまして、それから来る数字であれば、一歩も国で出された数値以外に枠は出ません。もちろん枠は出ないことは当然でありますが、ただ、地方財政の展望ということになれば、私は、例えば今ある借金の返し方についても、ここに「公債費」「六十二年度まで」と出ておるのでありますけれども、六十二年度からずっとふえていく。先ほども局長から話がありましたように、借換債等が今度は六十年度からちょっとふえていく関係になってまいります。そこで、借金体質地方財政が一体どういうぐあいに後展開をしていくかということについて、多少は、幾つかの例示があってもよさそうなものだと私は思ったのですね。地方交付税も特会の利子四千億円を引いたんだとここに書いてあります。じゃあ、これを引かない場合にどういう展望になっていくかという自治省独自の発想があってもいいんじゃないだろうか。これは仮定のものですからね。これだったら自治省がつくって示されても何の意味もない数字だと私は思うのです。  例えば、大蔵大臣が本会議答弁で「国と地方財政運営の中期的な展望に立って」、あるいはまた田川大臣も本会議で、「国の財政と同様、節度ある財政運営を求めることとしておりますけれども、これは中期的に見まして」というように、中期的、中期的と絶えずまくら言葉やあるいは修飾詞として出るのですけれども、何にも中身のない言葉であったのか。中期的と言う以上は、少なくとも七年前後の展望というものがあって、それは崩れてもいい、あるいは変動してもいい、一定のそういうめどがあって、それに向かってこうするんだというものがあって、裏打ちがあって、初めて中期的展望なり、中期的視野に立って、中期的立場から財政健全化を求めるという言葉が本来出るものだと私は思うのですけれども、今これを見て、これじゃ何にもない。ただ砂上楼閣の言葉を私たちは本会議やその他で聞かされていたんだろうか。予算委員会でうちの加藤委員が皆さん方と議論しておりますが、すべてこれは砂上楼閣の言葉であったのかと実はむなしい思いをする。  結局その場しのぎの対応策ということがすべてこういうことにあらわれるのだろうかと思うのでありますけれども、そういう点で、せっかくでありますが、この試算というのは本当にこれだけのものでございましょうか。
  93. 石原信雄

    石原政府委員 地方財政の中期的な展望を示す何らかの資料を提出すべきではないかというお尋ねに対して、大臣からも御答弁申し上げましたが、実は私ども、この種のものをつくるについてはいろいろなためらいといいましょうか、疑問というか、そういうものも率直に言って持っておるわけでございます。したがって、それなるがゆえに、五十六年度、五十七年度、五十八年度と、国の方は中期試算を出しましたけれども地方財政については出さなかったわけであります。  出さなかったゆえんのものは何かというと、技術的に前提の置き方等でいろいろな難しい問題がある。国の中期試算は、御案内のように後年度については積み上げでございます。各省庁から提出された歳出の見積もりを積み上げたものでありますが、地方財政についてはそもそもそれが極めて難しい。地方単独事業をどのように行うかは、各地方団体がそれぞれの地域実情によってそれぞれ決めるわけでありますから、それを私どもの立場で積み上げるということはそもそも不可能に近い。  それから、補助事業等について、国は後年度の積み上げで数字をつくっているようでありますけれども、実は残念ながらその内訳は公表されてないのであります。したがって。国の方が一般歳出について事業別内訳を示しておれば、私どももそれによってその地方財政との対応で計算のしようもまたあるのですけれども、一切トータルしか示されてない。内訳は示されていないわけです。そうなると、補助事業についても推計のしょうがない。結局、強いて行うとするならば、マクロの数字で単純に国の一般歳出の傾向を踏まえて地方財政の姿を推定するしかない。  ですから、これはあくまでもそれだけのもの、そういう制約があるものとしてごらんいただくしかないわけです。ですからあの際も、いろいろ問題があるけれども、たって出すべきだという御指摘であるならば研究してみたい、交付税法の審議までに参考になるようなものを何か出してみたいということを大臣から御答弁申し上げたのは、実はそういういろいろな制約があるということがあったからでございます。  さらに言いますと、私どもも、いわゆる計画と名のつくものであるならば、地方団体財政運営もそれによって主導していかなければいけない、また後年度地方財政対策もその数字をベースにして行わなければいけないという、ある意味での拘束力のあるといいましょうか、相当意味のあるものということになるわけですけれども、そういう意味での計画というものは、ただいま申し上げましたようないろいろな制約条件を考えますと到底できない、この短期間につくることは難しいということで、今回御提出申し上げましたような資料をつくってみたわけであります。ですから、そういう制約のあるもの、そういう内容のものという前提でこの表をごらんいただくしかないと思います。  強いて言えばこういうことで、こういう前提に立った場合に、六十年度以降の地方財政の収支じりがどういう傾向を示すかといったことを見る程度の意味しかないのですが、しかしこれとても、その前提の置き方、特に一般歳出のこの前提の置き方について、これでいいのか悪いのか、これは大いに議論があると思います。我々も、地方財政を預かる者として、これからの地方財政のあるべき姿等については常に内部では議論しております。そうした中で、こういった前提以外の前提を仮にとるとすると、収拾がつかないほどの多くの議論が出てきてしまうということで、でき上がったものはこういう非常に単純化されたものになってしまったということでございます。  ただ、この中で、公債償還費だけは現在の発行残高を前提にしてそれぞれの償還条件によって積算しております。単純な率による推計ではございませんで、公債償還費についてはある程度積み上げでございます。ただし、六十一年度以降の公債償還費については、要調整額に見合う部分が何によって財政措置されるのか。これが一般財源財政措置がなされればこれでいいし、この部分にまた再び地方債を活用するとなれば、その地方債の償還費を上げなければいけないという要素は残っております。
  94. 安田修三

    ○安田委員 そこで、とにかくこれでいった場合に、Aの試算で、六十二年度では要調整額なしということになってくるわけですね。大体ここら以降からこういう状態は続くのですか。
  95. 石原信雄

    石原政府委員 六十二年度以降の計算はしておりません。国の中期試算が六十二年度までになっておりますので、これも六十二年度までの計算をしたわけですが、全く同じ前提で六十三年度以降を計算しますとどういう姿になるのか。傾向的には、Aの場合でいきますと、収支の状況はだんだんよくなるという姿になるのじゃないか、Bの場合でも要調整額は減少する傾向を示すのではないかと思いますけれども、ただ、やはりこの六十二年度まででもいろいろ問題があるわけですから、いわんや六十三年度以降六十五年度までを単純に並べた場合、かえって地方財政に対する認識をミスリードするおそれがあるのじゃないか。何か表の上では地方財政が非常によくなるような感じが出てまいりますから、私は実体の地方財政がそうなるとは決して思っておりませんので、その辺は、六十三年度以降の計算をすることによってかえってまた別の議論を巻き起こすのじゃないかということも心配するわけであります。  いずれにいたしましても、今回の参考試算は、国の方で提出されております中期の財政収支試算と同年度のものをつくってみたということでございます。
  96. 安田修三

    ○安田委員 地方自治体富裕論まであるわけでありますから、ここら辺から、地方自治体は金を持っておるじゃないかと言われても困るわけであります。ただし、地方交付税の場合でも、猫の目が変わるようにぐるぐる、財源不足額に対する手当ても、一年たったらぐるりとまた舞台が変わるようなことになりますから、皆さんが出されても、地方財政の場合にそれがそのままいくとはだれも思いもしませず、また局長のおっしゃるように、思うことも困難であります。しかし、財政再建問題と地方歳出という問題、さらにはこれからの歳入をめぐっての地方税なりあるいは手数料その他公共料金の値上げというものがどういうぐあいに絡まってくるかということは、地方自治にとって非常に大きい関心でありますし、また、私たちもそのことをそれぞれ調和を保ちながら議論を進めていかないことには、地方自治の充実ということもございません。  そういう点では、狂ってもいい。財政再建は、例えば歳出地方の場合こういうぐあいにやったらこれだけの金が足りませんよ。それは逆に言えば、国との間に乖離があってもいい。地方の立場から見た場合に、国との間には歳入歳出ともに違いがあってもいい。こういうものだということもまたできてもいいのじゃないかと私は思うのです。だから、国だけのものに合わせてということを逆に言えば、地方の立場からはこういう幾つかの試案が今後の推定の中に出てくるのじゃないでしょうか。しかし、それはもちろん国の予算なりあるいは経済成長率なりその他によって変動することは当然ですよ、地方の場合には乱気流を含んでいるようなものだからという一つの参考資料というものはあってもいいのじゃなかろうかと私は思います。そういう点で、これからこういうものはいろいろ出る時代でありましょうから、皆さんもまたひとつ研究を願いたいと思います。  さて、そこで私は、これからの中期の財政展望という場合に、もう一つお聞きしておきたいわけですが、例えば景気調整のために公共事業あるいは単独事業、こういうものがふえたということは先ほど局長もおっしゃっていたとおり。問題はその財源の対策なんですが、普通、地方債財源対策債がこれらに充てられてきたわけでありますが、後になると、結局、おまえら借金のやり過ぎじゃないか、仕事のやり過ぎじゃないか、いかにも消費が美徳であったようなことのツケが回ったような議論にまで発展しかねない今日であります。  そこで私は、やはり財政運用からすると、こうした景気対応のものについての財政コスト、それから本来的な中長期の地方自治体のあり方からしたところの財政コスト、こういうものを、その年度年度ではわかるわけですが、しかし、国の立場からしたらどこからどこまで景気対策の金であるかということははっきりしない場合があるかもしれません。しかし、自治省としてはそれはある程度区切りはつくのじゃないかと私は思うのです。そういう点では、そういうものの区分をしたような対応があってしかるべきじゃないか。本来、過去にもそういうものがあれば、財源不足額に対しての対応の仕方はもっと違っておる。特会の場合でも、それはおまえのところが持て、いやそれは国の責任だという議論もやはりそういうところにも一部あると私は思いますし、将来的にも、そこらあたりは当然研究しながら、そういう財源の振り分けについてひとつ考えていくべきではないかと私は思うわけです。そういう点でどうでございましょうか。
  97. 石原信雄

    石原政府委員 実は過去におきましても先生の御指摘のような議論を展開したことが幾たびかあります。例えば、昭和四十一年度交付税率引き上げたときも、当時非常な不況から脱却するために、所得税、法人税減税を行う一方、公共投資を非常に増額した、そのために国は公債を発行した、そういう背景のもとで、地方はいわば国のフィスカルポリシーに協力させられたのではないか、したがって、それによってもたらされる財政負担の増については国の責任によって措置さるべきだ、こういう議論を私どもも展開いたしました。そして、これについては国庫当局は、それは景気がよくなれば当然地方税もふえるし交付税もふえるし、結局、国民といっても地方の住民も同じなんだから、そういう分けた議論をするのはおかしいという反論があって、いろいろ議論したのですが、結局そういうような背景もあってあの当時交付税率引き上げが実現した。  それから、当時、特別事業債という地方債千二百億が発行されまして、それの元利償還金は、その後、交付団体分だけですけれども、すべて国費によって措置されたというようなこともあります。  あるいは昭和四十年代の後半、ニクソン・ショックの後だったと記憶しておりますが、あのころの景気対策の際に、公共事業を大幅にふやして、そのために地方負担がふえた分については全額政府資金で措置すべきだというような議論をし、かなり高い率の政府資金を出していただいたというようなこともあります。  これまで節目節目で、私どもは、本来地方財政というものは住民の福祉のためにステディーに行政を行わなければいけないので、国全体の立場のように、景気政策的な意味で、あるときは公共投資を大幅にふやし、あるときはこれを大幅に削減するということには地方財政は本来なじまないのだという議論をしたことがあります。しかし、また同時に、そういうときでも、都道府県市町村の皆さんの御意見を聞くと、削減のときには確かに反対が強いのですが、増額のときには、結構じゃないか、公共投資が非常におくれているのだからこの際大いに国の方針に沿ってやったらいいじゃないかという声があったことも事実であります。  したがって、過去において景気政策的な意味で公共投資の増額が行われ、その際に公共事業が、地方単独事業がふやされたことがあることは事実でありますが、今の時点で、その本来分と景気政策分を分けて必要な措置を講ずるということは、現実問題としてこれをさかのぼって行うということはなかなか難しいと思います。分けようがない。ただ、そのときどきの財政状況によって、いわば地方実情にかかわらず、無理をして景気政策に地方が協力させられるというようなときには、それ相応のその時点での財政措置を我々は要求もし、これまで、ある程度そういった意味合いでの措置が講じられたこともあると私は考えております。いずれにしても、その仕分けというのは、考え方としてはあり得ると思いますけれども、現実にはなかなか難しいわけでございます。  しかし、何はともあれ、その結果として起こされた地方債の償還については、これは地方財政計画上全額歳出に計上して、それに見合う財政措置を講じてきているわけでありますから、私どもはこういった問題については、やはりそのときどきの対応と、それから公債償還費等の適切な算入、これは両面で対応していくべきもの、このように考えます。
  98. 安田修三

    ○安田委員 そこで、私は今度は制度問題で少しお聞きしておきますが、これも毎年繰り返される基礎的な議論であります。  法六条の三第二項の有権解釈は四十七年以来変わらないもの、これは自治省も堅持しておられる、私はこう思っております。後ほど、ひとつその点について御見解を述べていただきたいと思います。今までいろいろな議論が繰り返されて、質問がされ、その中で答弁も、聞きようによってはそのときどきで多少のニュアンスの差があるようにも思いますけれども、大体一貫して、先ほど言いましたように四十七年以来自治省の見解は堅持されておると思っております。  先般、この問題をめぐりまして、制度改正であるかどうかということにつきまして、中曽根総理大臣の本会議の答弁では、制度改正という問題については、それは「地方交付税制度の基本を堅持しつつ総合的な調整、必要な措置を行ったものである」、こういうことで、制度改正であるとかないとかということには触れておりません。予算委員会では、これは田川自治大臣の答弁と竹下大蔵大臣の答弁、両方の答弁に対します我が党の加藤委員の質問に答えて、中曽根総理は、富士山を山梨県側と静岡県側から見たのと同じだということで、これまた明確なお答えをしておりません。  大蔵大臣は、一貫して、地方財政対策の改革に伴う制度改正だと明言しておるわけです。それから自治大臣は、これまた一貫して、地方財政対策見直しに伴う従来の方針にかえて所要の措置をした、こう言って、これまた制度改正とは触れておりません。中曽根総理はこのことも言っておりまして、それは大蔵省は大蔵省の言い方、自治省自治省の言い方でいいのだと、これまた全く風見鶏の答弁をしておるわけであります。  そこで私はここで、例えば大蔵大臣は本会議の答弁で「今回の地財対策の抜本的な改革による結果として、五十九年度予算におきまして一般歳出が減少する一方」と、抜本的改革という抜本まで言っておるわけです。さて、一体これの真意というものはどれをどういうぐあいに受け取ったらいいのか、ひとつ大臣お聞かせ願いたいと思います。
  99. 田川誠一

    田川国務大臣 予算委員会でいろいろ議論がありましたが、私ども地方財政の対策の見直しということを申し上げていることも、それから大蔵大臣地方財政制度改革と言っていることも、私は本質は余り変わらないのじゃないかと思っているのです。大蔵大臣が抜本的云々と言われたのは私もちょっと忘れてしまいましたけれども、これは従来の特会の借入金を思い切って清算するというようなことが従来にない抜本的なことであるというふうな意味で言われたのではないか、こういうふうに思っておりまして、いずれにしても内容については変わりはない。大蔵省の立場で制度改革と言わないとなかなか通らないのではないかというふうにも想像されるわけでございます。いずれにしても同じことではないか、このように思っております。
  100. 安田修三

    ○安田委員 やはりわかりませんね。大蔵省は制度改革と言わぬと通らないじゃないか。じゃ自治省はその点どうなんですか。制度改革でない所要の措置だ、こういうことですか。
  101. 石原信雄

    石原政府委員 一つの御提案申し上げております改正内容について、どういう評価というか、どういう認識を持つかということだと思いますが、私どもは、御提案申し上げております内容、すなわち交付税法附則の第三条、第四条、第五条の改正は、交付税法第六条の三第二項の規定による地方財政制度改正である、このように認識しております。
  102. 安田修三

    ○安田委員 ここで局長は制度改正だ。それでは一体制度というものは恒久的なものかあるいは当面ということか。制度である以上は一つの枠はめがあったものですから、きょう制度があってあす変わる、しかしそれは昔から朝令暮改といって好ましからず。そこで、一体その点どういうお考えなのですか。
  103. 石原信雄

    石原政府委員 交付税法第六条の三第二項の規定を置いたときの考え方は、交付税率というものはそう軽々に変えるべきではないという前提がありまして、しかし、地方財政実態交付税の類とが非常に大きな違いを示した、それもかなり長い期間にわたって示した場合においてもなおかつ交付税率を変えないということになると、交付税財源保障機能が果たせなくなってしまうわけです。そこで、そのためのいわば調節規定といいましょうか、調整規定という意味で第六条の三第二項の規定が入ったわけでございます。  それは御案内のように、普通交付税の額が財源不足額に対して引き続き著しく異なる場合においては、地方行政制度改正もしくは地方財政制度改正または交付税率の変更を行う、こういう規定が置かれております。  そこで、引き続き著しく普通交付税の額と財源不足額が異なる場合ということは、この議論も何遍か本委員会で交わされました。最もこの問題についての突っ込んだ議論が行われましたのは、昭和五十二年度交付税法改正のときであったかと思います。  そこで、この規定の本来の趣旨は、引き続き著しく食い違いが生ずるということは財政制度の根っこに問題がある、いわば構造的に財源不足状態が生じてきているのだ。とするならば、そのための制度改正はやはりそういう構造的に発生している財源不足状態、これはプラスも理論的にあるわけですけれども、要するに食い違いの状態が構造的に発生しているのであるならば、それを長期的に直すような制度改正、まさに制度の名に値するように、将来にわたってその乖離状態が是正されるような改正であるべきだというのが規定の本来の考え方だと思います。私どもはそういうつもりであの規定を立案したわけなんですが、それで、その場合に、その乖離をどういう方法で是正するかということについては、地方行政制度改正、すなわち事務事業見直し、国と地方の間の事務の配分の見直しといったことも含むと思いますが、行政制度改正。それから財政制度改正、一番典型的には税制改正だと思います。税制改正なり国庫補助負担率の改正なりであると思いますが、そのほかこの財政制度改正というのは相当広い意味を持っている。それから、さらに第三番目として交付税率の変更、この三つのことが書いてあるわけです。  そこで、立法当初の想定というか考え方としては、構造的に財政不均衡の状態が発生しているのであれば、その構造的な要因に対応できるような本来的な制度改正によってこの状態が解消される、乖離が解消されることが一番望ましい姿であり、それが制度が本来想定したところである。しかしながら、昭和五十二年度の際には、残念ながらそういう恒久的なまさに抜本的な改革は到底できる状態になかった。地方も大変でしたが、国の方も大変で、結局、本格的な税制改正なり財政改革というものがなければ、その地方財源の不足状態を恒久的に解消するようなことはできないのだということで、初めは五十二年度年度補てん措置について制度化を行ったわけであります。五十二年度の借入額について、その返還額の二分の一を国の方で臨時で措置することを規定した。その単年度改正が六条の三第二項の規定に言う制度改正に当たるか当たらないかということで、本委員会で大変御議論があったわけでございます。  そこで、この点については私どもも、その制度改正というものがどこまで許容されるか、単年度措置制度改正として含まれるのか、あるいは当分の間の措置制度改正として含まれるのか、許容されるのかという点について法制局の見解も求めたわけでありますが、結局法制局も、制度本来の考え方、建前は、先ほど私が答弁したようなことであろうけれども、そのときの財政状況によっては、単年度措置あるいは当分の間の措置について定めたものも財政制度改正として解釈できる、それは制度改正に当たらないのだということではない、あの場合の制度改正というものはかなり広い範囲の選択を認めているのだということを回答してまいったわけです。  そういうことで五十二年度改正を御了承いただいたわけでありますが、引き続き五十三年度については、それにしても五十二年度年度だけの措置では制度と言うにはいかにも問題があるという議論もあり、私どもも将来にわたってのある程度の展望を持って交付税確保措置を講じたいということもありまして、五十三年度からは当分の間の措置として交付税特会の借入額の二分の一を将来にわたって国庫が負担するという制度改正を行ったわけであります。  したがいまして、この制度改正内容は、本来的には税制改正とか交付税率の変更とか、将来にわたって効果を持つような恒久改正が望ましいし、またそれが本来的な改正であろうと思いますけれども財政状況によってはそれ以外の財政措置でも、それ以外の改正であっても、交付税法の目的を達成するための改正であるならばそれはあの改正の中に含まれる、このように私は理解しております。
  104. 安田修三

    ○安田委員 私は、局長何か大変苦しい答弁だと思うのですね。しかも、聞きようによっては非常に珍妙な答弁になってしまっている。というのは、当分の間ということについて、先ほども披露しましたように大蔵大臣は抜本的改革だと言っているのです。全く矛盾しているのですね。今るる御説明のあった経過はそのとおりであります。そこで法制局の見解を持ち出されたのですが、では、法制局の見解はそうだが、国会の論議、見解、皆さんは、立法府の見解は全然受け入れはないのだろうか、それに私は非常に大きい疑問を感じます。それはなぜか。今、我が党だけがこのことを論じて皆さんに迫っているなら何をか言わんですが、事この議論に関しては、与野党一致してこの制度改正問題については毎年繰り返し触れておられるのです。  例えば、これは大臣よく聞いてもらいたいのですけれども、あなたの党の委員も、五十七年四月の本委員会では——大臣、これはそっくり尊重してやってもらいたいと思うのです。読み上げましょう。「本来特例措置とは読んで字のごとく特例であって普通はやるべきじゃない。もうやむを得ずやることであって、そのやむを得ずというのは短時限、たとえば国の特例公債についても本当は単年度で終わるべきものだ。一歩譲っても両年度、二年ぐらいでやめるべきものを毎年毎年、しかも増額して特例公債を発行したなんてはかなやり方をすれば、国の財政がおかしくなるというのはあたりまえの話。」「自治省側は地方団体のために少し大蔵とけんか腰でかけ合うぐらいのつもりでやってもらわなければ、この交付税制度はなかなかよくならないと思うのです。したがって、何とか、今度の改正ではそれは無理でしょうけれども、近い将来、税率改正制度の抜本的見直しかくらい、この大蔵相手にかけ合ってみるような意欲といいますか、大臣どうでしょうか、ありませんか。」大臣の総括される股肱の委員が、この場で大臣に迫っているのです。この中にはっきり言っているのです。局長のおっしゃることと全く相反するのですね。  そうすると、立法府の、しかも毎年毎年公聴会の学者先生方は、事制度問題については、多少ニュアンスの差はあるけれども、全部これは制度改正ではない、制度改正に新たに着手すべきだということをみんなおっしゃっている。法制局と自治省の方だけが、そうじゃない、制度改正だ、制度改正だと。大事な立法府の意見はさらさら受け入れてもらえないというのは珍妙な議論じゃないでしょうか。  局長さんは何遍言っても答弁はその域からは出ないのです。しかし、私はその点改めて大臣にお聞きするのですけれども、今申し上げたのはあなたの所属の委員が二年前この場で議論されたことを申し上げたのです。大臣にこう言って迫っているのですね。今度はそのあなたが大臣になっておられるわけです。そういう点では、今まで自治省というのは、我々は地方自治体の立場で大蔵省に対してこういうことをやったぞというものを、ぱっと音に出して聞こえるようなことをやっているのです。今度はどうも音が聞こえてまいりません。大臣が連立の組閣に入られて早々、直ちに予算編成、議会ということで、まあ大臣の意向が入らなかったのではないか。そうすると、大臣は今度の地財計画は苦々しく思っているのではないだろうかと実は思ったりもするわけでありますが、大臣はそこらあたりはどうでしょうか。
  105. 田川誠一

    田川国務大臣 大蔵省との折衝は、私は就任した直後でございましたけれども、私としては三千三百の地方自治体の住民の福祉向上のために、そういう背景に立って大蔵省と交渉をしたつもりでございます。大蔵大臣との大臣折衝は一回でございましたけれども、人と人との、政治家と政治家との関係でございますから、公式の場は一回でありましたけれども、電話でも数回話し合いをいたしたわけでございます。大蔵大臣も、単に国の立場だけでなく、地方自治体の立場に立って私との交渉をしたわけでございまして、その結果がこのようなことになったわけでございますけれども、その評価はもう皆さん方からいただく以外にないわけでございまして、私といたしましては誠心誠意やったつもりでございます。
  106. 安田修三

    ○安田委員 大臣は人格者でありますから、誠実に、誠心誠意やられたのでしょうけれども、いわゆる音に聞こえてというところが今度の場合にはどうも見えない。そういう点では、自治省としての立場の迫力不足といいましょうか、そのことが結果に及んでないということは非常に残念だと思う。  例えば、歴代大臣の中で、五十六年の折衝では当時の自治大臣はこう言っておるのですね。まず最初に我々が主張いたしましたのは交付税率引き上げた、これは実現しなかった、これは非常に残念に思っている。次善の策として、ただいま財政局長からるる申し上げたような経過をたどって今度の交付税総額は決まったわけでございまするる言ったんだ、こういう要求をしたんだ、だから残念でございます、こう言っているのですね。五十四年当時の自治大臣は、改正なら改正に取り組む、税率引き上げなら引き上げに踏み込むことが適当である、こういうような考え方から今お話しのような糊塗的な便法をとっておる状況であります。要するに残念だ。皆さんが、制度改正じゃない、糊塗的なことをやっておるじゃないかと言うが、まことに糊塗的な便法をとっておる、残念でございます、こう言っておるのですね。最近の世耕大臣も同じようなことを言っておるのですよ。田川大臣だけは、私はこうやってまいりましたと言うだけで、一つもそういう点の、三千三百自治体の思っている無念さというものがあらわれていない。私は非常に残念だと思います。歴代大臣がこれほど自治体の立場に立って、この表現からすれば残念である、便法だ、てんでに、私はこう主張しましたとあからさまに言っておられるのではないかと私は思いますが、今度の場合にはそういうあからさまに言った折衝というのはなかったのですか。大臣、お聞きしたいと思います。  それからもう一つ制度改正ということであなたの所属された党の委員が言っておるんだけれども、あなたはそういうことを指導しておられた方です。今は考えが変わったのでしょうか。
  107. 田川誠一

    田川国務大臣 人の表現の仕方は人それぞれ違うと思います。私は私なりの表現を使って今日までやってまいりました。その表現について御批判があれば甘んじてお受けをいたしたいと思っております。  また私は、今風の予算の折衝の結果について、これが十分だったとかあるいは満足したとかというようなことを一言も申し上げたことはございません。このことだけは明確に申し上げておきます。今安田さんが、残念だということを一言も言わなかったとおっしゃいましたけれども、いやこんなことは百万遍言ったかもしれませんし、ただ、たまたまあなたがお聞きにならなかったことだと思うんです。物事は一〇〇%完成するなんということはありません。私は六〇%、七〇%でも実現できればある程度妥協していかなければならぬ、一〇〇%実現しなければゼロでいいという考え方は私はとらないのでございます。  また、制度の問題については、私は経験不足で大変微力でございまして、勉強不足でございまして、言葉はいろいろ使い方ありますけれども、私は先ほど申し上げましたような考え方でやっておるつもりでございます。
  108. 安田修三

    ○安田委員 その趣旨からすると、大臣制度改正がないように私は考えるのですが、これはお聞きしてもせんない話ですから、この程度にします。  そこで、今度の特例措置のことですけれども、私は今度の特例措置は、どちらかというと、一般会計から今度は特例加算交付金が出る、そういう点では地財の方にすぐ締めつけがきくという装置になったのじゃないだろうか。これは皆さんの方の財政課の財政企画官も、「地方財政」の中にそういう点でははっきり書いております。「巨額かつ弾力的な繰り入れを行うことが困難となり、厳しい抑制を前提に必要な地方交付税の特例加算を行うことになったと考えております。」これはちゃんと、皆さんかどう言おうと書いております。そういう点では、私たちの思っていることと内部の出されているのは全く一緒です。そういう点で、今度の特例措置というのは非常に巧妙な、国の金は出さないで締めていく一つの方法じゃないか。  そこで私は、その根拠が非常にあいまいでありますのでお聞きしたいのですが、今までの実質的な交付税率というのは、五十年度から五十四年度までは約四〇%以上、五十五年度から五十八年度までは三五%以上四〇%以下の間にそれぞれ展開されておりました。ことしは三丁三%です。前年度の三・九%減、二年連続の減少であります。そこで、特例措置一千四百六十億円のうち三百億円の根拠というのは、一体その算出はどういうところから出たのでしょうか。仮に交付税率を実質昨年並みの三五・二%にでも引き上げた、これは実質ですよ、そうした場合に特例加算が多くなって地方債が少なくなる。どちらかというと、この相互の関係というのはたださじかげん一つで決まったのかどうか。何遍聞いても私たちは——私だけがわからぬのならあれはちょっと物覚えが悪い、あるいはのみ込みが悪いというようなことになるのですが、どうもここらあたりどなたに聞いてもわからぬ、役所の方に聞いても余りようわかりません。どうなんでしょうか、その根拠をお聞かせ願いたいと思います。
  109. 石原信雄

    石原政府委員 一兆五千百億円の財源不足が算出されまして、これをどういう方法で補てんするかについて、御理解を得るために、初めから結論に至るまでの私どもの主張と、それから大蔵省側の主張とを若干御披露いたしますと、財源不足が生じました場合に、国の立場からは、御案内のように国の予算においては建設事業費は一〇〇%建設国債を発行しております。そこで、財源不足に対しては地方も国と同様になるべく建設地方債を活用してもらいたい。言うなれば、かつて昭和五十一年度のときは、財源不足対策としていわゆる公共事業系統の地方負担について九五%の地方債を充当し、さらに当時は単独事業についても四千五百億円の充当をしたことがあるわけですけれども、大蔵省の方からすれば、これだけ国も苦しいんだから、公共事業に限らず単独事業についても地方債を活用するということによってこの財源不足額を埋めてもらえないか、こういう主張をいたしました。私どもは、地方財政の将来を考えますと、財源不足はなるべく地方債以外の手段で、一般財源で埋めることが望ましいという主張をしたわけであります。  そうして、結局五十八年度の場合には一般公共事業等に対する地方債の充当率は九〇%であったわけです。いわゆる財源対策債の活用については九〇%であったわけですけれども、大蔵省の立場からすれば、当然五十八年度並みの充当率で起債をまず活用すべきである、できれば国並みに一〇〇%近く地方債を活用すべしという議論もあったわけですけれども、少なくとも五十八年度並みの充当率で地方債の活用をすべきじゃないか、こういう議論がありました。  しかし私どもは、財源不足額が全体として小さくなっているわけです。その小さくなったのも歳出を極力抑制した結果小さくなったわけですから、地方財政実態はかなり厳しいわけです。そういうことを考えますと、地方債への依存というのはなるべく避けたいということを主張しまして、結局、最終的に五十八年度よりも五%充当率を下げる、八五%の充当で地方債を活用するということで、一兆五千百億円のうち一兆二千億円余りを建設地方債の活用で賄うということになりまして、そうしてその残余について交付税特例措置で賄うということにいたした次第でございます。  ですから、初めから財源不足に対して半々とか六、四とか、一定の割合で起債と交付税措置を決めたのではなくて、まず建設地方債の活用がどこまで可能か、また地方財政の現状からどこまでがぎりぎり妥当なものであるか、こういう議論が先行しまして、そうして残余について交付税特例措置を講ずる、こういう筋道をたどったわけであります。  実は、五十年度以降毎年度巨額の財源不足が生じておりますが、これに対してどういう形で補てん措置を講じてまいったかといいますと、やはり、まず建設地方債の活用がどこまで可能かという議論をいたしまして、そうしてしかる後、足らざる分を交付税特例措置で埋め合わせるという行き方をほとんどの年度しております。ですから、財源不足額が非常に大きくなった年度においては交付税による特例措置が大きくなっておりますし、財源不足額が小さくなりますと交付税措置の方が小さくなって、地方債措置は余り変わってないという傾向が過去にも出ております。それは、今申しましたように、公共事業等に対してまず建設地方債の活用がどこまで可能かの議論をした上で、残余について交付税特例措置を行う、こういうやり方をしているからであります。  五十九年度について申し上げますと、今申しましたように途中経過はいろいろありましたけれども、私どもは、国の方が一〇〇%建設国債を発行しているという事実がありますので、一切建設地方債の活用は嫌だというわけにいかなかった。現実のこの財政環境の中で結論を見出さなければいけない、こういうわけでございまして、私どもとしては地方財政の将来も考えながら、ぎりぎり、前年度よりは起債への依存度を引き下げるということで対策を決めた次第でございます。
  110. 安田修三

    ○安田委員 それでは、今局長のおっしゃったように、今後とも建設地方債の活用を先にして、それから特例加算の枠組みを決めていかれることになるのでしょうか。
  111. 石原信雄

    石原政府委員 これまでの財源不足額の処理、対応については、少なくともそういう道順をたどって結論が出てきております。したがって、その金額にもよりますけれども議論としてはそういう過程を経ると思います。ただ、財源不足額の程度にもよりますが、私どもは、気持ちとしては起債への依存はなるべく引き下げていきたいという気持ちでおります。
  112. 安田修三

    ○安田委員 今までそういうもののルール化されたものはどこにもないのです。だからもう何か場当たりで、ただ、こういう話があったらそれに合わせた話をしておられるような感じじか受けません。したがって、仮に、今局長が、これからはそういう建設地方債の活用がまず先に出るんだ、そうしますと、では、建設地方債というのは単年度の仕事の場合に一体どの程度の枠まで許容しながらやった方がいいのかということを議論していきませんと、また困るわけなんです。ですから、今局長は五十九年度とおっしゃったんだが、それは六十年度の場合にもそうであるのかどうか。  それからもう一つ。例えば、今までの臨時相当額は調整されたということになって出ておりますけれども、財対臨時の場合に、ことしは五百億円という、これは私らにとっては全く根拠のわからない話です。こういうものは一体どういう根拠を持って今年の場合はじき出されてきたのか、これも一緒にお答え願いたいと思います。
  113. 石原信雄

    石原政府委員 財源不足が生じた場合に、どういう形で補てん措置を講ずるかについてのルールを初めから決めておいたらどうか、固定的にルール化したらどうかという御提案かと思いますが、それは一つの御提案だと思います。ある意味では望ましい方向と思いますけれども、残念ながら、今の国と地方財政環境のもとで、財源不足が生じた場合に、どういう方法で、建設地方債をどこまで活用し、交付税特例措置をどこまで行うということをあらかじめ固定的に決めてしまうということはできない。それなるがゆえに、今回御提案申し上げておりますように、特例措置を講じようとする場合の具体的な内容は毎年度法律で定める、法律で御審議いただく、そのときの財政状況のもとで最善の方法を選択して御審議いただいて決めていきたい、私どもこのように考えているところでございます。  それから、お尋ねの第二点のいわゆる財対臨時でございますが、五十九年度の場合には千四百六十億円の内訳として五百億円を想定しているわけですけれども、この財対臨時については、もともとこの議論が起こりましたのは、源泉分離課税を選択した利子所得について住民税が課税されてない、こういう事実がありまして、これについて地方の取り分があるではないかということから、我々は、できればこれは税制上の解決をするのが一番望ましいのですけれども、それが技術的なこともあってなかなか解決しない、そこで財政措置で解決しようということでこの問題を持ち出したわけであります。  過去において、例えば五十三年度、五十四年度、五十五年度と、それぞれの年度においては、理論的に算定される、見込まれる分離課税の住民税取り分よりも多くの金額を、そのときの財政環境のもとで財対臨時として措置したこともございます。しかし最近は、国、地方それぞれの財政環境のもとで分離課税相当分を一〇〇%財対臨時の額として確保することができなかったわけであります。  そこで、五十九年度につきましては、積算基礎というほどのことではありませんけれども、そういう事情があるということを背景にしながら、五百億円を措置する、これはまさに財政対策としての特別措置の合意でありまして、事務的に積算基礎でこうなるというものではございませんが、文字どおり五十九年度財政環境のもとで必要な措置として、五百億円ということで両大臣合意を見たところでございます。
  114. 安田修三

    ○安田委員 二時から本会議だそうでありますので、これを議論すると時間が足りませんのでこれでやめます。給与関係もやめます。後、細谷先輩が手ぐすね引いておられますが、もう一問だけ関連してお聞きしてやめたいと思います。  ちょうど地方債の問題が出ましたので、関連して聞いておきますが、例えば新幹線建設で地元負担問題が出ております。法改正をやりました。地元負担というのは、国と地方財政の混乱を来して、これは本来はだめなものだと思っておりますが、たまたま駅舎などの地元負担問題ということが出てきて、その場合に起債の認可を求めてきたら、一体自治省はどう対応されるのか。あるいはまた、仮に自治省はだめだと言っているのに地方が金を出した場合に、最近よく制裁措置ではないと言うところの制裁措置らしきものが出るわけでありますが、おまえのところは金を持っているんだからということで、そういう場合に何らかの対応策というのはあり得るのか、そういうことをお聞きしたいと思います。
  115. 石原信雄

    石原政府委員 新幹線の建設に関連して地元の財政負担が生じた場合に、地方債措置が可能かどうかというお尋ねでありますが、例えば駅舎などのように、国鉄に寄附してしまう、国鉄の所有に属するようなものについて地方債ということ、これはあり得ないと思います。本来その団体の施設の財源としての地方債でありますから、国鉄に寄附してしまうものについて起債措置というものはあり得ないと思います。新幹線の建設に関連して、駅周辺整備など町づくりなどの関係で、本来的にその地域の自治体の守備範囲の施設として観念できるものがその際あわせて整備されるというような場合には、起債措置ということはあり得ると思いますけれども、国鉄本来の施設について公共団体が負担するものについて、起債措置ということはあり得ないと私は思います。  なお、国有鉄道、特に新幹線鉄道というようなものは、本来国土の骨格を形成する施設でありますから、こういったものについて地方負担ということは私はあるべきでないと思うのです。法律上は先般の法律改正によって違法ではなくなりました、負担の道は開かれたわけですけれども財政負担の原則からいって地方の負担ということは私はあり得ないと思います。  ただ、そうした場合に、それじゃ具体的にそういった支出が行われた場合にどのような措置を講ずるのかということにつきましては、私は、その内容、程度等によって個別に判断せざるを得ないと思っております。
  116. 安田修三

    ○安田委員 終わります。
  117. 大石千八

    大石委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十九分休憩      ————◇—————     午後三時八分開議
  118. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。細谷治嘉君。
  119. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 最初に、石原財政局長お尋ねいたします。  「地方時代シリーズ」という一連の本があります。その十二巻目と思いますけれども、「財政非常事態と自治体」という特集があるわけです。その本の冒頭に石原論文が載っております。論文と言っていいのかどうか別として、とにかく巻頭の地方財政に対するあれでありますから論文と言っていいと思うのですが、その論文を読みますと、今日の地方財政実態認識については、先ほど安田君の質問に対しても、例えば国、地方の一般会計の対GNP比、租税収入の対GNP比、その間に大変なギャップがある、こういう議論も踏まえて、かつてない危機に直面している、こういう認識をされております。  ところで、そういう認識については私は全く同感でございますけれども、それではそういう危機に直面する財政をどうやって再建するか、こういうことになりますと、歳出の抑制に急な余りに、歳入の問題については、あれだけの論文でたった十行ぐらいしか書いてないのですよ。先ほど来ちょっとその話も出ましたけれども、その点については全く具体性を欠いておる、これが私の読後感です。石原論文にしてはどうしてだろうかと頭をひねりました。  私の読んだことについて、財政局長として、確かにその点は書きたかったのだが書かなかったのか、あるいは歳出を抑えればそれでもう再建できるという認識なのか、それをまず質問に当たってちょっとお聞きしておきたいと思います。
  120. 石原信雄

    石原政府委員 ただいま引用されましたシリーズの論文といいましょうか、私、たしかしゃべったことを文章に改めたものだと記憶しておりますが、あのとき編集者の話として、これからの地方財政を展望して地方団体としてどう対応したらいいのか、地方財政運営に当たってどういう点に留意したらいいのかというような点を中心に考え方を述べてもらえないかという話があって、述べたように記憶しております。  私自身、今日の地方財政のこの厳しい状況について、その原因なり対策なりについては私なりの考え方を持っております。基本的な今日の地方財政危機の原因については、先ほども御答弁申し上げましたように、国、地方を通じます今日の歳出の水準と、それから国、地方を通ずる税収の水準の間に基本的に大きなギャップが存在する、それがいろいろな形で財政危機としてあらわれてきているのだという認識であります。  そこで、これについてしからばどうするのかという点については、政府税制調査会の答申などでも、これまで多少の変遷はありますけれども、基本的には、歳出見直し税制改正両面からこの現状を改める必要があるということが述べられているように思います。これに対して政府としては、御案内のように、トータルとしての増税は回避しながら財政の今日の状態を少しでも改善していきたい、そのために主として歳出見直しで対応するのだという方針がとられております。そこで、私は地方団体の皆さんに、財政運営上の心構えとして、政府歳出見直しという方針をとっておりますから、そういう方針のもとで、非常に厳しい環境のもとで地方団体がどう対応していったらいいかという意味で、歳出見直しを中心にお話を申し上げております。  しかし、また同時に、今日の国、地方を通ずる財政の危機の実態からするならば、歳入関係を全然度外視してこの危機が乗り切れるかどうかについてはいろいろ議論があると思います。ただ、その点については、これは政府部内の議論、あるいは地方団体財政運営について語る場で歳入議論をすることはいかがなものか。かえって、非常に実現性の乏しいような歳入増強論をバックにして現実の財政運営を考えると、非常にミスリードする危険がありますから、そういう意味で、私はその場では、やはり厳しい環境の中で地方団体財政の健全性を守っていくためには、財政運営上どのような点に心がけるべきかという点に的を絞って議論したように思っております。ですから、勢い歳出論議になっておりますが、それは、今日の地方財政問題を考える上で歳入議論がなくていい、ウエートとして低くていいということを意味しておるわけではございません。私自身は両方の検討が必要であると思っております。
  121. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 私は、本が厚くて持ってきておりませんけれども、その辺にどうもあるようであります。今の点ですが、歳入部分についてはたったこれしかないのですよ。出るを制して入るをはかる、この言葉があって、これが財政原則の転換なのだ、こういうことが一つ。長期的には今後の行政に見合った税制あり方を検討します。これは検討なんですよ。これでは石原さんらしくないのじゃないか。まことに丁寧に歳出の抑制については書いてありますけれども歳入についてはたった十行くらいしか書いてない。これが私の論文を読んだ後の印象でした。まず冒頭に申し上げておきたいと思うのです。  そこで、きょう出されました中期的な財政需要についてでございますけれども、これを見ますと「地方財政参考試算」、これは大蔵省がやりましたAとBにのっとって「地方財政参考試算」A、Bと出ているわけですけれども、「参考試算」というのはどういうことですか。大蔵省のは「財政の中期展望」と銘打っているのですよ。地方の方は「参考試算」というのはどこが違うのですか。
  122. 石原信雄

    石原政府委員 大蔵省が国会に提出した国の「財政の中期展望」は、六十年度以降の歳出については、各省庁の支出予定額といいましょうか歳出の見込み額をそれぞれ積み上げた数字と承知しております。したがいまして、歳出についてはそれなりの積算のしっかりした根拠を持った数字ではないかと思います。そういう意味で「中期展望」という名称が付されていると思います。  これに対して、本日地方財政について一定の前提を置いて計算をした結果について資料を配布申し上げましたが、この資料は、説明申し上げましたように、歳出、特に一般歳出につきましては、内容を具体的に積算するとかあるいは経費内容ごとにそれぞれの推定を行うというものではなくて、歳出、一般歳出をトータルとして、仮に国の一般歳出と同じ率で今後伸びるものとした場合にどういう数字になるかということを示したにとどまるものでございまして、そういった意味で、計画とか展望とかいうにはいささか内容的には問題があるという気持ちから、あくまでこれはそういう一定の前提を置いての単純な計算結果として、こういう姿になりますということを交付税法の御審議の参考に供していただきたい、そういう意味で「参考試算」という名称を付したところでございます。したがいまして、国の「中期展望」との基本的な違いは、一般歳出積算内容が全く違うということでございます。
  123. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 積算内容についてはこの次に議論したいわけですけれども、参考のために、大蔵省が出しました「中期展望」のAときょういただいた「参考試算」のBを比べますと、六十年度は、国の場合は要調整額が四兆三千八百億円、六十一年度が六兆一千億円、六十二年度が七兆四千二百億円、こういうことになってきております。後で、この仮定計算でいつでも、国の場合は、一般歳出が〇%、三%、五%とありますけれども、大体真ん中の三%に近いような推移でいっているわけですが、言ってみますと、要調整額は国のは減らないわけです。一向によくならないのです。財政再建は全く不可能な格好になっております。だから恐らく大型増税か何かしなければいかぬ、これが宣伝だと新聞は勘ぐって主張しておりますけれども、きょういただいた「参考試算」を見ますと、地方の場合は、これはBですが、要調整額が、六十年度は一兆九千七百億円の不足、六十一年度は一兆六千四百億円の不足、六十二年度は一兆七百億円の不足、六十二年度以降は大体どんどんよくなってしまうのですよ。もう一つのAをとりますと、六十二年度になると黒字になってしまうのです。  これを見ますと、どなたも、何だ地方の傷は軽いじゃないか、国の方はもう大変な重傷だ、地方はぜいたくなことを言うな、地方財政について理解のあるなしにかかわらず、そういう結論を持ちますよ。そこで、財政局長は、そういう表面的なことで問題をとらえられては大変だということで出し渋ったのじゃないかと私は善意で見ております。その辺どうなんですか。これを見て、恐らく財政局長は、これは出すと大変なミスリードが起こるという心配をなさったような口ぶりで言っておりますけれども、ミスリードが起こるという心配は、これを出したから、ないというお考えですか、いかがですか。
  124. 石原信雄

    石原政府委員 実は、国の中期財政試算に対応して地方財政についても同様の前提を置いた収支試算を出すべきではないかという御指摘が以前からありまして、これについて私どもは五十五年度につくったきり出しておらないわけです。五十六年度、五十七年度、五十八年度といずれも提出を御容赦いただいたわけですけれども、その背景には、方法論的な意味で我々として踏み切れなかったということと、それから一つには、一応やってみたけれども、どうも出た結果が地方財政の実相といいましょうか、本当の姿に対して誤解を与えることになりはせぬだろうかという心配がありまして、ある意味ではそちらの方が本音に近いかもしれませんけれども、いずれにしても、五十六、五十七、五十八と将来展望を示す資料は提出を御勘弁いただいたわけです。  しかし、五十九年度については、私ども交付税特別会計借り入れ廃止するなどの改正を準備しておりますし、また経済の状態も変わってきたし、国の方も再び六十二年度までの中期展望を提出し、さらに六十五年度までの仮定計算のようなものまで出している、そういうような状況のもとで、地方財政については依然として全く何もできませんということもいかがなものかということで、勇を奮ってこういう前提のもとに資料をつくってみたわけでございます。  しかし、これはたびたび申し上げておりますように、あくまで一定の前提を置いて単純な計算をしたものでございまして、特に一般歳出について地方財政の本当の財政需要というものを的確に捕捉した上での数字ではございませんから、この試算の収支じりをもって直ちに現実の地方財政がどうこうという論議をされることは非常に危険なわけであります。ですから、私どもはこの資料を提出するに当たりましては、やはりその辺の事情、背景、この収支の参考試算の性格について、誤解のないようにできるだけの説明をしてこれを読んでいただくというふうにしていきたいと考えております。  実は、本日この委員会に御提出申し上げましたが、同時に、この内容についてはマスコミの方にも説明いたしております。その際に、そういう一定の制約があるものである、単純に収支じりだけを眺めて国との対比をしてもらっては困るということをるる説明して、誤解のないようにお願いしているところでございまして、私どもは今後、この資料の読み方、見方については、その点を特に注意してまいりたい、このように思っております。
  125. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 大臣、この問題については、予算委員会における私どもの加藤委員の質問に対して、自治大臣が、地方財政においてもぜひ中期展望的なものをつくりたい、こういうことがありました。それを受けまして、私はこの委員会の席上で、大臣の所信表明に対する質問の形で、これをどうするんだい、こういうことをお聞きしたわけです。そのとき私が承った限りにおいては、加藤委員に答えたときは単純明快につくりますということだったけれども、その後に大臣も勉強したために、それは簡単じゃないぞというのが頭の中に入ってきて、私の質問には、簡単明瞭につくります、交付税の審議の際には間に合わせますなんということは、ちょっと口渋っておりました。しかし、努力して出してきました。  そのときに私は大臣に、五十六年度のできなかったときに、当時の財政課長、今大分県の副知事をやっている人が、どうしてつくらないかと言ったら、まともにはっくれないのです、もう壁があってその壁を何とかしない限りは地方財政の収支展望というのはできないのです、これが五十六年度でつくらなかった原因。それから五十七年、五十八年と来て、そして今年度の五十九年度を迎えたわけです。案の定出てきたものは、私の理解するところによりますと、これは参考試算にも値しないものではないか、こう思うのです。言ってみますと、地方財政予算の作成なり運用なりについては参考になるような代物ではない、こう思うのです。どうしてかということについて、私の読んだところについて、若干説明をしたいと思うのです。  五十五年度の際には、大蔵省の、国の方では——ちょっと項目だけ言います。  歳出の場合については、経常部門、この中には、公債費あり社会保障移転支出その他があり、そして経常部門は小計これです。投資部門については、投資的経費はこうであります、その他はこうであります、小計があります。その小計AとBを加えたものが歳出の合計でございます。でありますから、先ほど財政局長が言ったように、この社会保障の移転支出によって地方にどういう負担が起こってくるか推計することはできるわけです。投資部門については、投資的経費がぴしゃっと数字が出ておりますから、専門家でありますから、従来の国、地方との関係からいって、投資部門についての地方の負担分というのはカウントできる、こういうことで歳出が決まった。そして、その歳入については、一般財源はこれこれですよ、国庫支出金はこれこれです、地方債はこれこれです、その他があって、そして歳入歳出を突き合わせてみたところが、要調整額はこれだけある、こういうのが五十五年のときの大蔵省が示した国の試算です、展望です。  ところが、今度国の方が出してまいったのはどういうことかといいますと、これは極めて簡単。言ってみますと、聖域と言われる公債費をまず書く、もう一つ聖域と呼んでいる地方交付税を書く、その他一般歳出、そういう形でありますから、木に竹を接いだより悪いのです。そして、それをもとにして地方財政の中期展望とか試算をしようといったって、もとがないのですから忍術遣いでもできないですよ。  そこでお尋ねしたいことがある。五十六年、五十七年、五十八年、五十九年と、四年目の今日なぜできないのか。問題はここにあるのですよ。国の方がそれを明らかにしなければ、国の財政地方財政というのは車の両輪だと言っているのに、片っ方の輪っぱだけつくって一方の輪っぱをつくらないような、またつくることができないようなことでは困るじゃないかということを自治省は言うべきであります。言ってないのじゃないですか、いかがですか。
  126. 石原信雄

    石原政府委員 国の中期展望に対応した地方財政の試算のようなものをつくるべきだという御議論が国会でも大変ありましたので、私どももそういったものを、オープンにするかしないかは別として、少なくとも内部的には検討の必要があるということで、国の収支展望が出た際に、その中身、内訳、特に歳出の細目についてデータがもらえないかというような話をしたのですけれども、大蔵省の方としては、これはオープンにしてない、内訳は示してない、トータルで見てほしいということで、五十五年度のときのような費目別の内訳というのはいただけなかったわけです。現在も公表していない。  したがいまして、あのときと同じような意味での各費目ごとのよりきめ細かな推計、将来展望というのは今回はできなかったわけでございます。したがって、一般歳出をトータルとして同じ率にした場合にどうなるかという単純計算しかできなかったというのが実情でございます。
  127. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 あなたの方も五十六年度以来苦労して四年目を迎えたわけですから、無理かもしれませんが、こことここだけはこうしてもらえなければ地方の場合算定できず、したがって一方の輪の方ははめることができなくなってしまうのですよということで意見を言うべきですよ。抵抗すべきであります。それを唯々諾々とついてきて、できません、できません。問題点がどこにあるかということを明らかにしないでここまで来たところに、事態を深刻にした点があるのです。私が冒頭あなたの論文を引き合いに出したのも、その辺でどうも自治省は大蔵省に対しては一言も言えないような弱腰じゃないか。弱腰でもいいですよ、しかし地方財政を守る責任はあなた方にあるわけですから、それじゃ困るのじゃないか、こう思うのですよ。大臣、どうですか。
  128. 田川誠一

    田川国務大臣 細谷さんの、地方の立場から御意見を出されていらっしゃることはまことに私どもありがたいと思っております。  事務当局が大蔵省の言いなりになっているとは私は思っておりませんで、昨年の秋から事務当局同士の折衝を聞いておりまして、大蔵省側からも、自治省が非常に強い意見を出している、お互いに激しい議論を続けてきているということを後で聞いております。いろいろ見方はありますけれども、大蔵当局に対して相当の意見を述べ、そして主張するべきところは主張してやっていると私は認識をしております。
  129. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 大臣は、いや大蔵に遠慮していない、主張すべきことは主張したと午前中からも言っているのですけれども、結果は一つもそうなってないのですよ、大臣。  それでは、これにばかりかかっておれませんから、さっきも安田委員から話がありましたが、国の方は地方交付税は三二%という計算で、三二%というのは守っているのですよ。その三二%をベースに借入金の利子四千億円を差し引いてこれを載せてあるわけですよ。これはだれでもできるのです。この全体の参考試算例を見て、めちゃくちゃでこれじゃどうにもならぬじゃないか、何も交付税の効能を発揮してないじゃないかというのは、四千億円を機械的に毎年毎年、元金の方は六十五年まで払わないのだから、その間の利子だけ四千億円交付税から差っ引いているのですよ。これは木に竹を接いだ上に、その間に空気がまざっている、どうにもならぬような事態になっております。  これを少し地方財政の参考試算例的なものにアプローチする一つの手だては、この四千億円は、これは先ほど議論しましたし、私はきょうはこの辺は触れないで行ってしまいますけれども、この辺の問題をどうするかというのも試算例の一つの問題点だということを示してあります。言ってみますと、六条の三の二項というのは、国と地方との財政関係を、地方の三千三百の自治体の財政関係をどう調整するかという問題にかかっているわけでありますから、この問題がどうなるかということがはっきりしない限りは試算もできないのですよ。仮定もへったくれもないと思うのです。その辺が一つの問題点だ、こう思いますが、局長、どうですか。
  130. 石原信雄

    石原政府委員 地方交付税の六十年度以降の見通しの立て方でございますが、国税三税の収入見込み額に対して、現行法の規定による一般会計から交付税会計への繰入額をずっと計算する、その際に金利負担をどうするかということでございますけれども、現在御提案申し上げております改正法案におきましては、六十五年度までは借入元金は据え置く、そして毎年度交付税の計算上は、六条の第二項の法定額から利子を引いた額をその年度交付税とすることにしておりまして、少なくとも当分の間はそういう形で交付税総額が決定されるということを前提にしておりますので、試算においても利子を差し引いているところでございます。
  131. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 この問題についてはそれ以上申し上げませんけれども、木に竹を接いだと申し上げますが、例えば国の展望といいますと、あなたが言っているように、国の予算は、人件費は一四%程度です。国家公務員の数は総定員法で五十五万の内輪ですね。地方財政計画では給与関係費は二九・三%あるのですね。言ってみますと、地方の方が国よりも構成比は人件費だけでも二倍なんです。そして、人数はといいますと、国の方の五十五万に対して、地方の方は二百五十万人おるわけです。この地方財政計画。給与関係というのは、人事院機構がある以上は今度の改定は必至。国会でも議論になった。そして国会の今までの確認事項としては、人事院勧告がなされますと、去年と違って尊重いたしますというのが国会での政府側の約束であります。ところが、予算は一%です。この参考試算例では幾らかというと一%になっているわけです。国の方は一%ですけれども、ほとんど同じような財政規模でありますから、構造的に国の方が一%というのは、地方財政の構造の方には、全体に影響するところは文字どおり二倍にも三倍にもなってしまい、全体が大きく狂っちゃうのです。したがって、この財政に関する参考試算は参考にもならない。少なくとも、つくるのならば、構造が違いますよ、公務員の数も違いますよ、そういう点は当然なこととして、参考試算にしたいというならば、実態を踏まえた手直しをしなければいかぬ。それが国と地方との関係でしょう。それをどうしてやらなかったのですか。
  132. 石原信雄

    石原政府委員 確かに御指摘のとおり、人件費という非常に義務的な色彩の強い経費歳出総額に占めるウエートは、国に比べて地方の方がずっと高いわけであります。  そういう状況のもとで将来の人件費の想定をどうするかということでありますが、少なくとも給与改善費については、国の方が一%の先組みをしておるのに対して地方が別の率で先組みをするということはどうしてもできない、国との整合性ということでできないわけです。最近、毎年度地方財政計画を積算するに当たりましては、給与改善費は国と同じ一%で積み上げてきております。しかし、先生御指摘のとおり、それではそれと異なった給与改定が行われた場合の財政に与える影響は、国と地方では違うじゃないか、それへの備えが全くないのは問題じゃないかということであろうと思います。  そこで、御承知のように、現在、一般行政費の中に追加財政需要という名称で一定の金額を計上いたしております。これは過去、給与改善費としてあらかじめ計上された以上の給与改定が行われた場合には、この追加財政需要によってまず対応し、それでも不足する場合に所要の追加措置等を行ったわけであります。したがいまして、この追加財政需要については、国の方はいわば予備費でしょうけれども、これよりも地方の方を多くしております用地方財政においては、五十九年度の場合四千億円を追加財政需要として計上いたしております。こういったことも実は地方財政体質の特殊性を考えて確保しているわけでありまして、これについては計上の当初から国庫当局は、大き過ぎるじゃないかという意見もあるのですけれども、私ども財政体質の違いということを主張してこの金額をずっと確保してきたわけであります。  五十九年度の場合も、また今回の参考試算の場合も、追加財政需要は五十九年度の根っこに含めておりまして、それをベースにして後年度の推計をしたということを申し上げたいと思います。
  133. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 地方財政計画上は、一般行政経費の中の(2)のところの「国庫補助負担金を伴わないもの」の中に四千億円含まれているということは私は知っているのですよ。知っているけれども、きょう出た試算にはないですよ。この試算を見てごらんなさい。「地方財政参考試算 B」というところを見てみますと、Bのうちのいろいろなものを考えた上で一般歳出、こういうものを見てみますと、伸び率が全く同じなんですよ。国の方と地方、写したように同じ字が入っているのです。どこに見ているのですか。一%以上の給与改定が行われたら、これではやれるものでない、つくったときから狂いっ放しになるということを是認するような、そんなものはどうにもならぬですよ。  その場合に、一%しか組んでないけれども、人事院勧告がこれこれあった場合にはこういう対応をするというものが、国の案の中にも地方の試算の中にも含まれておらなければいかぬけれども、何もないのですよ。国の方はそれでいい、国の方は弾力性がありますね。一般財源というのは地方の方はこの計画では六〇%弱でしょう。国の方はとにかく七五ではだめで、八〇%ぐらい税収がないと安定しないのだと大蔵大臣も言っているでしょう。そういう点で言ってみますと、国の方は抑えるところは幾らでもある、幾らでもあるというか、厳しいけれども弾力性があるのですよ。地方ほど硬直したところはないのですよ。そうだといたしますと、あなたの言葉は私とのやりとりで時間を費やすには役立つかもしらぬけれども、国民を納得させるわけにいきませんよ。どうですか。
  134. 石原信雄

    石原政府委員 私が申し上げましたのは、提出しております参考試算の一般歳出の五十九年度金額の中には、今申し上げました追加財政需要の四千億が含まれておるわけです。その含まれたものに対して一定の率で伸ばしているわけですから、その部分も伸ばしているということを申し上げたところでございます。
  135. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 もう一つ、これはまた夢みたいな話で、地方債、見てごらんなさい。五十九年度には財源対策債がありますから四兆七千六百二億円と書いてある。来年になりますと地方債は、その財対債は丸々ゼロで三兆五千六百億となっている。地方債が翌年度では四分の一近くも減っちゃうなんという、かつてない例となってしまう。こんな現実離れしたものを、国の方の枠の中におさめなければいかぬからやったというところに問題があります。  これはいろいろやっていても時間がたつばかりです。そこで、大臣も含めて、つくった努力は評価します。小学校の生徒なら精勤賞やればおさまるのですよ。三千三百の自治体、そして一億一千万の国民が、地方財政はどうなるのか、それが我々の日常生活、福祉に関係があるんだ、それで見ているわけです。来年はどう動いていくだろうか、再来年になったら見込みがあるだろうかということを注目しておるのですよ。そうだとするならば、ミスリードの心配があるからこれから十分説明すると言ったって、説明しようがないのです、こんな内容は。説明するに足るような内容にするには、自治省としてはここのところとここのところとここのところに問題があるんだから、私が今言ったような点ですよ、それを大蔵とかけ合って直してもらわなければどうにもなりませんよ。こういうことを言う決意をしていただかなければいかぬと思う。大臣、やってくださいよ。一月十九日に大蔵大臣と初めて会って決着をつけたと言いますけれども、これからでも遅くないのですよ。やってくださいよ、問題があるなら。できないところはそこにあるわけですよ。自治省がもっと積極的に取り組んでいただかなければならぬ、こう思います。  そこで、財政局長大臣決意のほどを承って、それが大体納得できれば次に進みます。
  136. 石原信雄

    石原政府委員 私どもも相なるべくんば、できるだけ多くの情報を持って、より的確な地方財政の将来展望をやってみたいと思います。そのために、先ほども申し上げておりますように、例えば国の中期試算における歳出の明細などについてもできるだけ詳細なデータをいただいて、それに基づいて試算した場合どういう形になるのか、こういった点についてはこれまで大蔵省と議論したのですけれども、なかなかこの段階で公表しにくいというお話でございましたけれども、私どもとしては、今後の地方財政を考える上でどうしてもこれは大事なことでございますから、引き続きこの点についてはデータの提供その他の面で協力を要請してまいりたい、そうして私どもも将来の地方財政を守っていく上で必要な勉強を続けてまいりたい、このように思っております。
  137. 田川誠一

    田川国務大臣 中期の試算をつくれという御要望があったときに、事務当局も大分渋ったんですよ。私は余りよく事情もわかりませんで、御趣旨は大変いいことだから、なるべく早くやった方がいいということを言いました。やはりこれはそのときに、なかなか時間もかかるし、相当手数がかかるわけですし、そういう意味が随分あった。先ほどお話しのように、こういうものを公表すれば誤解も招く、そういう心配もあったかもしれませんけれども、それよりも、実際にはかなり手間がかかるという理由があったのじゃないかと思うのです。そういう中に、できるだけ早く出せというようなことで今日このように参考資料としてお出しをしたわけでございます。  しかし、よく考えてみると、やはり実際にいざ展望をつくるとなると、これは国の中期展望とは全く違うと僕は思うのですよ。国のは各省庁からいろいろ積算してやればいいけれども地方の場合は、良心的にそれをやっていこうということになれば、地方財政計画そのものでも大変だと私は思うのです。そういう中に将来計画をつくるというのは、かなり大変なことでないかと想像をいたします。  しかし、難しいからといって手をこまねいているわけにいかない。やはりある程度、三年先、四年先というものを見て地方財政の対策を打ち出していかなければならないと思っております。ですからそういう意味で、余り期日を切られたりされてはちょっと困りますけれども、やはり真剣に、今局長が言いましたように一つの対策、見通しと言うんですかね、こういうものは立てていかなければいけない、このように思っております。
  138. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 私が申し上げておるのは、きょう出したのが評価するに値しないようなものになっているのは、自治省がもっと問題をきちんと把握して、問題点を明らかにしながらこういう計画をつくっていく努力がやや欠けているのじゃないか、こういうことから言っているわけです。それなしにどんなに数字を並べてもこれはだめです。  ですから私は、国と地方財政というのは車の両輪と言われるのならば、両輪が健全に回るように、地方の方はここは問題なんだということを明らかにしつつアプローチしていただく以外にないのじゃないか、こう思います。一気かせいに三千三百のものを積み上げてなんて私は言っているわけじゃない。積み上げてなんということを言っていると、今議論している交付税だって、これは理論上は法律によると積み上げていかなければいけませんよ。十五億なんて積み上げておらぬでしょう。今までの経過からつかんで言っているだけにすぎないのです。そういうことです。ひとつ頑張ってください。  そこでもう一つ。これも私の質問で、おたくの方で「地方財政要覧」というものの編集に携わっておりますか。地方財務協会から出しておる本ですが、「地方財政要覧」というこのくらい厚い本があるわけですよ。その辺にもあります。それはどこが編集しているのですか。
  139. 石原信雄

    石原政府委員 これは地方財政関係のいろいろなデータを収録しているものでございまして、そのデータは私ども財政局、特に財政課が中心になって調製いたしております。
  140. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 何遍も私はここで申し上げているんですけれども、その財政要覧でいつも問題になるところが、あるいは臨調等の場で悪用されかねないというような部分が削除されておるのです。表がいつの間にか抜けているんですよ。  具体的に申し上げますと、その目次でも「地方財政計画決算関係」という項目があるはずです。その表には、「当初の地方財政計画」、それから「年度間において修正された計画」「修正計画案」、そして「決算額」、そして「そこの乖離」というものがきちんと比べられておった。それが少なくとも五十五年以降出なくなっちゃった。その本の値段は変わってないんですよ。どういうわけですか。
  141. 石原信雄

    石原政府委員 ごく最近、決算と計画の対比に関する資料が要覧から落ちておることは事実でございます。  実は、編集に当たってそれを落とした経緯を聞いてみますと、いろんなところでその決算乖離が、地方財政実態というものを十分認識した上でこの乖離内容について論じてもらえればいいんですけれども、そうでなくて、単に一定の前提を持って地方財政について批判し論難するというような場にこれがよく使われているというようなところから、かえってこの資料は地方財政のためによくないんじゃないかということでそれを資料から外したというように聞いております。
  142. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 その局長の姿勢がそもそも誤りで、私な言っている消極的に過ぎるんじゃないか。  残念なことにはその財政要覧にないんですけれども、「国の予算」というのを大蔵省が編集しているのです。その「国の予算」という本の「五十八年度分の国の予算」というところを見ますと、二年前の「五十六年度地方財政計画決算との対比」というのがある。ちょうどその要覧に以前出ておったのと全く同じものが出ておるわけですよ。どうですか。そうすると、全く自治省は憶病で出してないんですけれども、大蔵省は堂々と出しておる。大蔵省はどういう意図があるか知りませんよ。地方のものを洗いざらい明らかにしてやろうという意味で出したのかもしれません。いずれにしても、直接の省が出してないで大蔵省に出されるというのはちょっといかがなものでしょうか、大臣自治省が勉強してないわけじゃないんですよ。ちゃんとつくっておるわけです。
  143. 石原信雄

    石原政府委員 実は先生御指摘のように、ずっと以前からあの要覧にはその表が載っておりまして、実は私、しばらく財政を離れておりまして、帰ってきて見ようと思ったらなかったので、どうなったと言ったら今言ったような話で、実はあれは有害だから外したというような説明があったんですけれども、私も担当になりましてから、しかし議論があってもあの要覧の中ではかなり重要な意味を持つ表でありますし、何よりも時系列といいましょうか、ずっと昔から続いている表ですから、その辺は内容的には十分議論しなければいけないけれども、ともかくあの表をすっぱり落としてしまうのはどうか、復活したらどうかというようなことを、直接、編集作業を担当している職員には私の意見を申し上げているところでございます。  確かに、変に悪用されるというか、悪意に使われるのは困るのですけれども、しかし、そうかといって決算と計画の乖離というのは地方財政を考える上で重要なポイントになる事柄でもありますから、逃げるだけが能ではないので、やはりこの点は考えなければならないことであろうと思っております。
  144. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 少し前向きの話をお聞きしたのですが、言ってみますと、その乖離を悪用するというのには二種類ある。知っていて悪用するもの、知らないで思わず、余りにも乖離が大き過ぎるのはけしからぬじゃないか、こういうのがあると思うのです。後の方が多いと思うのです。そうだとするならば、さっき議論した参考試算と同じですよ。十分知っていただくために情報は出していく、これに徹しなければならぬと思う。これについても、前向きのものだから、財政局長ぜひ考えていただきたい。  大臣、もう一つ。私は毎年言っていることで、これも財政局長から後で前向きの答弁をしていただけたらしていただきたいのですが、かつて昭和三十八年までは、地方財政計画をつくるときには、府県はこういうことです、市町村はこういうことです、そしてその合計はこうなりますというふうに、歳入歳出の大づかみのところが出たのが地方財政計画であったのです。ところが、三十八年までで、三十九年になってからすっぽりこれが出なくて、今出されている地方財政計画には計の部分しか出ていないのです。計の部分だけしか出ていませんから、府県市町村予算編成上本当に地方財政計画が参考にならない。府県市町村財政構造は違うわけですから、参考にするためには——三十八年までやってきたことですから、できないことはないですよ。なぜやらないのかと言ったら、前に財政課長をしておった人が、職員が五人足らぬ、五人おればやります。その次の財政課長は、いや五人なくてもやろうとすればやれるのですと言っている。やる意思はございませんか。少なくとも県や市町村予算編成の骨組みになるための地方財政ならば、やるべきですよ。いかがですか。
  145. 石原信雄

    石原政府委員 若干技術的な問題も関係がありますので、私から初めに御答弁させていただきます。  昭和三十七年度までですか、地方財政計画を道府県分と市町村分に分けて作成しておりました。当時、私は直接担当の課長補佐としてその作業をやっておったわけですが、やめたのも私なんです。  御案内のように、地方財政計画をつくるのは、国の予算編成が終わると同時に、すぐその作業をするわけです。そうしますと、国の各種の補助金を県と市町村に割り振るのが、予算が決まった段階では大きなものはある程度区分けがつきますけれども、詳細なところまでは各省庁とも決まっていないのです。これから四月までかけて割り振りを決めるのだということで、地財計画を積算する一月末の時点では割り振りは決まっていないのです。それを我々は催促して分けてもらっていたのですけれども、非常に忙しい時期でありますから、各省との間にその仕分けについてトラブルが絶えなかった。そして、期限がありますから、どうしてもしょうがないところはある程度推計に頼らざるを得ないという面が出てまいります。それから、作業の上で特に頭が痛かったのは東京都の分でございまして、御案内のように東京都は一般の市の行政を二十三区でやっておりますから、これをどう分けるか、これまた非常に難しい。主としてその辺の技術的な問題と作業能力の問題の両面から仕分けができなかった。  それで私ども、どうも不正確な仕分けをつくるよりは、不正確であるならば一本で御審議いただく方がいいだろうというので、三十八年度以降はこの区分けをやめているのでございます。  先生からたびたび御指摘をいただいておりますし、全国知事会や市長会、町村会から昔のようなものができないかという御指摘を受けていることも事実でございます。しかし、どうもこの辺が自信が持てない、正確を期し得ないという意味で踏み切れないでいる実情を御理解いただきたいと思います。
  146. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 大臣、その辺いかがですか。
  147. 田川誠一

    田川国務大臣 地方財政というのは、国の予算と比べると一般的には非常に難解だ、難しいとどなたもおっしゃるわけです。この辺が地方財政の非常に苦しいところでありまして、だからといって、余り誤解を受けるからといってデータとして書くべきものを書かないということもどうかと思います。  今、地方財政を国民の皆さんに本当にわかっていただくということをもっと真剣に考えていかなければならぬ。地方財政関係者だけで議論されていて、一般の方々、少なくとも経済に少しでも触れていらっしゃる方々にはもう少しわかりやすいようにPRしていかなければならぬ。今これが一番大事な時期ではないか。それじゃ、そういう点を具体的にどうしてやるかということはもう少し勉強させていただいて、これはぜひやらなければいかぬ。そのための一つの方法としては、オピニオンリーダーにもう少し地方財政を知っていただくということです。そういうことで理解を図っていくことが一番大事ではないかと私は思っております。
  148. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 わかりました。  そこで、「国の予算」という本に出ておる地方財政計画決算乖離状況の中で、幾つかの問題点、例えば公営企業繰出金の乖離の問題、地方債との乖離の問題等についてこれから質問してみたいと思います。  この大蔵省の「計画と決算との対比」という表を拝見しますと、五十六年度の公営企業繰出金は、年度の初めの計画額は九千百二十二億円でございます。計画修正後もこの部分の修正はございません。ところが決算はどういうことかといいますと、決算額は一兆二千九百九十億円となっております。三千八百六十八億円、計画よりも四二・四%上回っておる。それだけの乖離があるということであります。おたくの方は発表しておりませんが、大蔵省の「国の予算」に書いてある表は間違いございませんか。
  149. 土田栄作

    ○土田政府委員 計数のとり方が違っておりまして端数が若干違っておりますけれども、大綱的にはそのとおりでございます。
  150. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 違っておるのは、最後の計のとこうの修正額というのがあって、それが三けたの億のところで変わってくるだけであって、あなたと数字は一致しておるのです。それは時間がかかるから言わぬ。  そこで、それじゃ五十六年度の計画と決算乖離だけがそうなのかというと、そうではございません。公営企業の繰出金では、五十年の計画では七四・一%、五十五年は四三%、五十六年はさっき言ったように四二・四%、少しずつはよくなってきておりますけれども乖離は依然として四割を上回っております。こういう乖離を何年も続けているところに問題があるわけですよ。私が申し上げた数字が正しいのならば、どういうふうに改善していくか、それを含めて審議官、答弁願います。
  151. 土田栄作

    ○土田政府委員 御指摘乖離の中で一番大きいのは、実は下水道事業でございまして、下水道事業につきまして年度平均いたしまして二千億ほどの乖離があるわけでございます。この乖離の原因と申しますと、実はこれは第四次の下水道財政研究会において御提言いただきましたように、汚水については私費、つまり使用料負担で賄うという原則をとっておりますが、実際の地方団体が設定しております使用料単位といいますのは、その処理経費の六〇%ぐらいしか設定しておらない、そのために四〇%ぐらい一般会計から持ち出しになっておるという分がございます。それが大体二千億でございます。  そのほかの乖離といたしましては、病院会計におきまして大体五百億ほどの乖離がございますけれども、これは病院の赤字を解消いたしますための一般会計からの任意的な借り入れ、繰り入れでございます。そのほか交通、市場等につきましての繰り入れがございますが、これは計画外と申しますか、地方団体が計画で想定しておりました基準以上に繰り入れているものでございます。私どもとしてはそういうもので差額が成り立っているというふうに分析いたしております。  なお、この差額の分につきましては、それぞれの原因は毎年分析いたしておりまして、適正化を図るべきものは逐次改善に努めてまいりたい、このように考えております。
  152. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 あなたの言葉を聞きますと、ほかの人は、ああ、下水だけが乖離があって、それは特例であって、ほかにはないな、こう思いますよ。そうじゃないのです。交通においてもしかり、ほかの方の上水道でもしかり、みんなあるのですよ。  私がきょうちょっと具体的に質問してみたいところは、交通関係の問題です。私の手元にありますのは、五十六年度は、交通関係地方財政計画は収益、資本合わせて千百七十九億円の繰り入れになっております。それから、決算額はどうかと言いますと千三百六十九億円の決算で、乖離が一六・一%五十七年度は一一・八%乖離がございます。そのとおりですか。
  153. 土田栄作

    ○土田政府委員 そのとおりでございます。
  154. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 今問題になっている一つは、この間新聞に長崎の路面電車のことが出ておりましたが、最近非常に人気がよくなって、一番乗っているのは長崎では路面電車だというのです。新聞に出ておった。そこで、路面電車について、自治省がつくっております「地方公営企業決算の概況」という本を当たってみますと、路面電車について経常収益で二二%、資本的収入で一六・五%、これだけ乖離がおこっているのですね。これは本当ですか。
  155. 土田栄作

    ○土田政府委員 先生おっしゃる乖離と申しますのは、一般会計からの繰り入れという意味でございますか。——そういう意味での助成は確かに全体としてはございます。
  156. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 それでは、路面電車に対する一般会計からの繰り入れは収入に対してどのくらいになっておりますか。
  157. 土田栄作

    ○土田政府委員 これはどの範囲までを繰り入れととるかによってちょっと数字のとり方がいろいろございますけれども、まず他会計補助金というベースでとりますと、五団体の合計では二〇・三%ということになります。それから、負担金その他というものまで入れますと、二二・九%という数字に相なろうかと思います。
  158. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 あなたの方で書いているこの「地方公営企業決算の概況」というものを見てみますと、それの六十三ページの「他会計繰入金の状況」には、路面電車は経常収益に対して繰り入れ率は二二%、こうなっておるのですよ。かなり余計入っておるのですね。路面電車に対する繰り入れは二二%も普通会計から入っておるのですよ。ところが、あたなたの方がつくっている省令としての繰り入れ基準、普通会計からこの路面電車の会計に繰り入れできる基準というのはどういう内容になっていますか。
  159. 土田栄作

    ○土田政府委員 これは路面電車の軌道の撤去に要する費用と、それから軌道を撤去いたしました後の路面の復旧に要する費用というものがございます。それから、再建団体につきましては、財政再建のために所要の経費を繰り入れるというのが繰り入れ基準でございます。
  160. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 あなたの方では、交通路線についての基準は路面電車を撤去する場合の費用だけですと。ところが現実には、撤去しないで動いているところに二二%が普通会計から入っているのですよ。平常動いているのに基準は全然考えないというのは、普通会計と特別会計との関係から見ておかしいじゃないですか。是正すべきではないですか。
  161. 土田栄作

    ○土田政府委員 御案内のとおり、路面電車は非常に衰退産業でございまして、昭和三十年代の初めには全体で六大都市全部交通はやっておりまして、全国では七百九十八キロほどの営業路線がございました。それが現在では非常に衰退いたしまして、東京都、それから札幌、函館、熊本、鹿児島と、この五つが残っているだけでございます。その中でも特に東京都は特別でございまして、東京都は二百十四キロの営業路線がありましたものを、現在荒川線一本十二キロを営業しておるだけでございますが、実はこの荒川線一本の経費のところに、かつて二百十四キロの営業をしておりましたときに仕事をなさっておられて、やめて恩給をもらっておられる方がおられます。そうしますと、そういう方に対します恩給の支払いといいますものはこの荒川線の経費に乗ってまいるわけでございますので、その分を一般会計から繰り入れなければいけないということで、東京都の交通についてはそういう特別の繰り入れがございます。それから札幌と函館と熊本につきましては、これは再建団体でございまして、再建期間中に収支を改善し、財政再建をするための繰り入れがあるということで一時的に多額の繰り入れが行われておりますけれども、それ以外の、鹿児島市は再建団体でない、自主自立でやっておられる企業でございますので、独立採算制で料金をもってやっていただくということで繰り入れが少なくなっておるというふうに理解いたしております。
  162. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 何でもかんでもめちゃくちゃ繰り入れるなんて言ってないのですよ。  路面電車は衰退産業と言ったな、あなたは。その問題を見守っている人が、審議官ともあろう者が衰退産業なんて。全国五つで、過去よりは減ったことは間違いないけれども、衰退産業という言葉は取り消しなさいよ。怒りますよ、一生懸命やっている人は。全国で五カ所あるのですよ。それを取り消してから話を始めましょう。
  163. 土田栄作

    ○土田政府委員 言葉が正確でございませんでした。かつて我が国の高度成長期において衰退し、現在では現状維持しておる産業ということでございます。
  164. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 おっしゃるように、昭和三十五年を一〇〇といたしますと、五つありますけれども、乗客の運搬係数というのは一〇〇に対しての指数は六か七ぐらいになって、まさしく二十分の一ぐらいになっているのですから、あなたがはしなくも衰退という言葉を使ったのは、毎日毎日見守っている、心配しているだけにそういう言葉が出るのだろうというのはわかります。わかりますけれども、簡単に衰退させてはいけない。  今残っている五つはそういう事態に直面していると思うのです。そこの営業収益の状況、営業の状況あるいは乗客の状況というものを、あなたの方の資料なりあるいはこの協会が出している資料等を見て分析しますと、衰退産業なんということで片づけるような状況に今ないということを、私は調べるにつれていよいよ自信を持ちました。  そこで自治大臣、路面電車というのはどうも衰退産業、衰退産業と言って、ややもすると、審議官からそういう言葉が出ますと、受ける方はこれはもうやめさせた方がいいのではないかという、いつの間にかそういう指導がかいま見えるようになるわけですよ。大臣、そういう指導はやめさせるようにしていただけませんか。
  165. 田川誠一

    田川国務大臣 なかなか難しい問題で、趣旨としては路面電車は非常にいい、復活してもいいじゃないかという議論の人もあると思うのですけれども、一方、都市では交通渋滞の問題もある。また、これは路面電車になるかもしれませんけれども、鎌倉のあれは路面電車になるのですか、加藤さん。(加藤(万)委員「路面電車ですね」と呼ぶ)あれなんかは全く復活して、今花形になっちゃっているんですよ。ですから、地域地域によって非常に違うので、一概には言えません。ですから、私は地方の特殊性に応じ、自治体に応じて判断してやるべきではないかというふうに思っております。
  166. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 この間「あすの地方都市と交通」という「高速道路」という新聞を私は切り抜いてあるのですが、長崎の路面電車のことが詳しく書いてある。なるほどなと思いました。大臣の言っているような言葉もあります。  そこで、この間鹿児島の交通を見ました。その際に、これは警察庁の方にお聞きしなければいかぬのですが、私も電車に乗ってみたのです。電車が三百メーターか四百メーターの間隔で走ってきますが、電車のレールに全部マイカーが入ってしまって動けません。そしてラッシュの時期に限って右折してくるのもある。これはマイカーを主体に考えているものですからそうなるわけで、ラッシュのときは大量輸送機関である電車を優先的に走らせるのが妥当じゃないか、こう私は考えてきました。これが一つ。  それからもう一つは、公害とかなんとかということがありますけれども、最近スパイクタイヤの公害問題というのが非常に大きな課題になってきております。これに対する問題が出てきます。電車はそういうのがありませんからね。  もう一つは、国道筋になりますと、自動車縦貫道が国道につながったところで切れて先の方に延びていっておりませんから、高速道をおりたところから今度は全部その国道の方に入ってきてしまう。ですから、ラッシュにさらにラッシュが加わる、こういう事態をつぶさに見てまいりました。  これに対して、長い間の課題になっているけれども、なかなか解決しない。私は、やはりラッシュ時は大型の輸送機関というものを優先的にやるのが妥当ではないか、交通環境を積極的に整備することが当然じゃないか、こう思いました。この辺どうお考えになっているのか。
  167. 久本禮一

    ○久本政府委員 お答え申し上げます。  まず路面電車の問題でございますが、私どもは、路面電車は大量公共輸送機関ということで、都市の交通の処理のためには極めて役割の大きなものだという位置づけをいたしております。都市交通対策の柱というふうに言ってもよろしいかと思います。  こういう点を含めまして、道路交通法におきましては、車両は路面電車の軌道敷内は原則として通行できない。交通の状況によって、例外的に軌道敷内の通行可の規制を実施して入れることができるというふうになっております。したがいまして、私どもといたしましては、単にマイカーを含む車両の通行量がふえたからといって、それだけの理由で直ちに軌道敷の中の通行を許すことは適当でないというふうに考えております。  ただ、一つつけ加えて申し上げなければいけないのは、市電等の大量輸送機関対策を進めるにつきましては、それが真に市民の足として機能するような形でございませんと、優先対策が空回りをするということがございます。したがいまして、運行台数であるとか、あるいは市電やバスの接続状況改善するとかいったような関連施策が十分に並行してとられませんと、車が込むじゃないかという議論も相当最近では重みがございますが、なかなか耐え切れないといったような状況もございます。したがいまして、私どもが軌道敷内における自動車の通行の問題を扱います際には、原則として慎重にということを指導いたしながら、具体的な実施につきましては関係機関等と十分にその辺の協議をして、関連施策を並行的にどう進めることができるかということの中で個別的に解決をしていくことを指導しているところでございます。  それから二番目のスパイクタイヤの問題につきましては、現在スパイクタイヤが粉じん公害等の原因になっておるということで、これに対する関心が大変高まっております。私どもは、道路交通の安全と円滑にあわせまして、自動車交通によって生ずるこういった障害に対しても当然に対応するというのが我々の責務であると考えておりますので、この点につきましては、現在各自治体等とも相談いたしまして、とりあえず不用な時期における使用等については十分に自粛をしてもらうという方向の指導をいたしております。  ただ、この問題の難しさは、スパイクタイヤはそういった公害の問題があるということと同時に、特に冬の道路交通の面におきましてはスリップ防止という大変大きな問題がございます。このために事実上不可欠になっているという面がございます。自動車交通が冬季におきましても一部除雪が進みましてかなり普及いたしましたので、したがって、スリップ防止という問題につきましてもかなり前広に対応しないと、現実に冬の道路交通が機能しないという形にいや応なしになっております。そういう点がこういう問題を生み出したという側面もございますので、私どもはこの粉じん防止が現在の課題であるということを十分に認識しながらも、スリップ防止との兼ね合いを十分に考えて、いろいろな対策を総合的に、段階的に進めることが穏当な処理ではなかろうかというふうに考えて、そういう対応の指導をいたしているというところでございます。  それから、三番目の高速道路の取りつけの問題でございますが、お尋ねにございました九州縦貫道と鹿児島市内における国道三号線との接続の問題につきましては、具体的に県警の対応した形を問いただしてみますと、県警としてもかなりいろいろ気にはしたようでございまして、例えばゲートの場所から国道三号線までの距離にも相当の距離がございますし、また、この接続に伴いまして同時に関係部分の拡幅を図った、これは道路管理者がされたことでございますが、そういった対策がこの接続のときにとられているという面もございます。したがいまして、無反省にそういった処理をしたというものではないと思いますけれども、先生がおっしゃったように、現実に国道三号線と九州縦貫道の両方の交通が接続後の市内に向けての国道三号線の負担になっている。特に、その先に路面電車等もございますので、それが一般の車の交通に対しては阻害要因になっているということも、これは事実でございます。  したがいまして、これは私、事情をつまびらかにいたしておりませんので責任あるお答えはいたしかねますけれども、おっしゃるように、やはり込む時間につきましてはいろいろこの道路におけるアクセス処理等を適切にしていくということのやり方を工夫する必要はあろうかと思います。この点につきましては、一層の着意をもって臨むように県警を指導いたしたいというふうに考えております。
  168. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 要は、今日一番大切なことは、交通環境を積極的に整備していく、こういうことを総合的にやっていくということが重要だと思いますので、ひとつ十分な御配慮をお願いしたいと思います。  そこで、時間もだんだん詰まってまいりましたので、次の質問に移らせていただきます。  けさの新聞にもちょっと出ておりますけれども、一番詳細に出たのは三月二十七日の日本経済新聞だと存じますが、自治省は二十六日に地方債の許可方針を決めて、四月中旬に各地方自治体に示す、こういうふうに報道されておりますが、新聞の記事は事実ですか。
  169. 石原信雄

    石原政府委員 新聞の記事についてということではございませんが、私どもは、例年国の予算が成立し、これと同時に財政投融資計画が国会の御承認をいただきますと、時を置かずしでその年度地方債の許可方針を決定し、これを地方に流しております。そして、この許可方針に基づいて直ちに地方債の配分作業に入っております。五十九年度につきましても、できるだけ早い時期に許可方針を決めたいと思っております。現在検討中でございます。
  170. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 新聞の書いておるところによりますと、その許可方針の中に給与条項というものを入れまして、そして五十九年度からこれを実施する、こういうふうに報道されておりますが、そのとおりですか。
  171. 石原信雄

    石原政府委員 最近の地方財政を取り巻く環境の厳しさというふうなことも踏まえて、地方債の許可に当たりまして従来幾つかの制限条項が列記されておりますが、これに加えて、給与費を含む財政支出の状態が著しく適正を欠くような場合については、地方債の許可に当たってこの点を考慮する趣旨の条項を加えたい、このように考えております。
  172. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 そういたしますと、五十九年度の問題で、五十八年度はそういうことはやってないわけですね。
  173. 石原信雄

    石原政府委員 五十八年度の「地方債許可方針」の中には、ただいま申し上げましたような給与費その他の財政支出云々という条項はございません。ただ、五十八年度の場合というか、これまでも一般事業債の許可に当たっての具体的な判断基準の中に、各団体の財政状況を勘案して決定するという趣旨の規定がございます。この財政状況を勘案して地方債の許可枠について一定の判断を加えたこということは、五十八年度以前でもございます。
  174. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 五十八年度で許可の際に手心を加えたというのは、具体の内容をちょっと教えていただきたい。
  175. 石原信雄

    石原政府委員 五十八年度地方債の詮議に当たりましては、東京都と二十三区につきまして、国を二倍以上上回る給与改定が行われたということをも勘案して、そのような財政状態にあるということで一部の地方債について抑制措置を講じております。  それから、給与水準が著しく高い団体として、給与の適正化を計画的に図っていただきたいということで指定されております団体について、五十八年度までに効果的な適正化措置が講じられなかった団体のうち二十三団体について、一部の地方債について抑制措置を講じております。
  176. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 新聞の報ずるところによりますと、東京都はベースアップを、国家公務員は二・〇三ですか、それを四・五やったということで、三月にやる公募地方債を認めない、こういう措置をとったようでございますけれども、今度市町村の場合には、一定の給与水準、ラスパイレスがこれ以上高いところに対しては、文化会館、美術館、役所の庁舎など、いわゆる箱物の建設財源としての地方債の発行を制限する、こういうふうに報道されております。この報道は本当なんでしょうか。どうなんですか。
  177. 石原信雄

    石原政府委員 五十八年度地方債の抑制措置を講じたものについては、文化会館とか庁舎とか、こういったものが中心でございますが、一部臨時道路債なども抑制措置の対象といたしております。  それから、五十九年度について具体的にどのような運用をするかについては、これから具体策を検討するところでございます。
  178. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 五十九年度のものは、新聞に書いたのよりももっと広範囲にやるという意味ですか。どういうことですか。
  179. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度の運用につきましては、まだ具体的な内容を詰めてない、これから検討するということでありまして、新聞報道の内容を私も正確には承知しておりませんけれども、そういうこととは関係なしにこれから検討してまいりたいと考えております。
  180. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 大臣、よく聞いておいてください。地方債の許可方針というのは、毎年毎年、国の予算ができますと、交付税等が通った五月二十日ごろ前後に財政運営方針という次官通達が出されるのが慣例になっております。その前に「地方債許可方針」というものが普通このくらいの厚い本で出されます。内容はずっと変わっていません。恐らく今のは四十五年ぐらいから変わってないと思います。  ちょっと読んでみますと、「一般会計債については、事業の緊急性、団体の財政状況及び将来の財政に及ぼす影響、国の財源措置状況等を勘案のうえ、重点的に許可するものとする。」こうずっと書いております。それで、「一般公共事業については、次の各号に掲げる補助事業に係る地方負担額、国の直轄事業に係る負担金」並びに「水資源開発公団法第二十六条の規定に基づいて国に納付する負担金を対象とし、枠配分によって許可予定額を決定する」。問題の一般単独事業になりますと、「一般単独事業については、原則として次に掲げる事業のうち、緊急に整備を要し、かつ、当該団体の一般財源をもって措置することが困難なものを対象とし、枠配分によって許可予定額を決定する」。  大臣が、何かの新聞で、大体一件審査のごときは出過ぎだ、大体枠配分であとは地方に任せるべきだという意味の談話を発表したことも新聞で伺っております。  そうなりますと、五十八年度もこれでやったというのですよ。そうしますと、五十九年度に改めて給与条項を入れるということは、五十八年度以上にやるということなんですか。五十八年度のように、とにかく改善の跡がないとかなんとかということで、自治省としては、これはやらせなければならぬということで、今度はもっとエスカレーションする、こういう意図なのかどうか、この辺が聞きたいのです。どうなんです。
  181. 石原信雄

    石原政府委員 五十八年度は、各団体の財政状況を判断して起債の許可額を決定する、その際の財政状況の判断要素の一つとして給与の状態というものを考慮したわけでありますけれども、今後の地方債の運用について考えてみますと、地方財政を取り巻く環境は一層厳しくなっておるということ。それから、このような財政状況の判断要素の一つとして給与の状態を考慮に入れるということになれば、地方債の運用方針としてこれを明示することがより適切ではないかという判断の上に立って、この判断要素としての給与を含む歳出要因の適否についてこれを掲記しようということであります。内容的に一層厳しくする、必ずしもそういう趣旨ではなくて、このような取り扱いをすることをこの際明確にすることが適当であるという判断に立っているところでございます。
  182. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 私の調査したところでは、今局長が言ったように、一般単独事業をねらっておるわけですよ。そして、一般単独事業は箱物だ、こういうふうに書いてあります。だが事実は箱物だけじゃないのです。臨時地方道路整備事業なんというのをやっておるのですよ。  そして、この臨時地方道路整備事業というのは、私の承知しておる範囲においては、公営企業金融公庫の業務の領域を一般会計に広げるために、数年前、仕事を広げるために、自治省がやいのやいのと頑張って、公営企業関係ばかりじゃなくて、一般会計に食い込むような、公営企業金融公庫の領域を広げた際の、臨時高等学校整備事業とか臨時地方道路整備事業というのはそういうものなんですよ。過去に重点的に公営企業金融公庫を地方の需要にマッチするようにということで努力したことまで削っておる。  そうして、しかも、一般会計のうちの公共事業の補助裏の負担については、補助のついたものには一〇〇%完全に有無を言わさず許可している。一般単独事業については切っていっているのです。許可方針には選別はないのですが、このように公共事業と一般単独事業を選別しています。そうなってまいりますと問題があります。  ですから、広げるという意思はないと言うのだから、ないと言うならばあえて許可条件の中にそれを入れるという必要もないのではないか。必要とあってあなたの方はおやりになっているのでしょう。あえてやる必要はないじゃないですか。私は給与が高いというのがいいんだと言っているんじゃないのですよ。それは働いている人から言えば高い方がいいわけでしょう。それは全部聞くわけにいかぬというようなことで話し合いをしているのでしょう。そういう中において給与が高くなっておる。そうしてこれはラスパイレスというのが、一一五とかなんとかということを基準にいたしますと、一年間昇給をさせなくても三ぐらいしか落ちないのですよ。去年の四月一日のラスパイレスは幾らになっていますか。一〇六をちょっと割っていますか、一〇六ちょうどぐらいですか、どうですか。
  183. 中島忠能

    ○中島政府委員 五十七年四月一日現在で全地方公共団体を平均しますと一〇六・一でございます。五十八年四月一日現在のものはまだ計算し切っておりません。
  184. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 もう出ているころですよ。一年前の話でしょう。一〇六を割っているのじゃないですか。今までのあれからいきますと、一年間に大体〇・三から〇・五ぐらいずつ下がってきていますよ、全国平均が。わざと隠しているのじゃないのですか。
  185. 中島忠能

    ○中島政府委員 自治省ではそういうことをいたしません。五十八年四月一日現在の調査につきましては、指定統計の年度に当たっておりまして、その集計には、通常よりも非常に事務量が多うございますので、時間がかかっておるという状況でございます。
  186. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 その辺やりとりをやっても……。  ただ、今までのものでやっていいなんということは——地方債というのは、「当分の間」であって、自治法二百五十条で原則的にはこれは自由なんですよ。それではいかぬというわけで、今法律は「当分の間」。「当分の間」の法律的解釈は永久でもいいのだ、これが石原局長の法律解釈のようでありますけれども、今までの運用で、あえてぎすぎすするような字句を入れなくてもよろしいのじゃないか、こう思います。そういう地方債のあるべき姿からいって、そういう問題を他の方に使うということは許可権の乱用である。  そして、地方財政の計画的運用。聞いてみますと、箱物ですから、もう一年前に五十八年度分は完成しているのですよ。完成しているところへ持ってきて、一遍に地方債をカットされたら、財政運営は計画的にできませんよ。財政運営を計画的にやれというのが自治省の指導でしはう。先を見ながらやりなさいというのが指導でしょう。そして、一般単独事業は積極的にやりなさい、これが指導でしょう。しかし、箱物をやり過ぎるので少し自粛したらどうかということはいいけれども、それを給与と引きかえに処罰する——処罰という言葉はおかしいけれども、それは考えるべき点じゃないか、こう思います。大臣、いかがですか。
  187. 田川誠一

    田川国務大臣 細谷さんのおっしゃることもよくわかります。わかりますが、従来も指導をしていたことをこうして通達の中に入れるというのはいろいろな意味があるわけでございまして、やはり財政支出の状況がかなり適正を欠いている、そしてその是正のための努力を惜しんでいるというような面もあるし、また努力をしたいけれどもできないというような団体も目につくわけでございます。  ですから、従来と同じでありますけれども、こういうものを通達の中に入れたというのは、一つは、自主的にやっていきたい、努力していきたいけれどもできないという団体もあると思います。そういう団体が、自治省からこういう通達もあるしという、にしきの御旗というのですか、そういうようなことも役立つのではないかと思うのです。  もう一つは、一般的なことですけれども、今地方財政余裕論の中に何が原因になっているかというと、先ほど来話が出ていたように、立派な庁舎を建てるとか不必要な建物を幾つか建てるとか、国家公務員に比べて著しく給与が高いというような、ごく一部の団体のことが例になって地方財政余裕論というものが出てくる。そういう余裕論から何がこれから出てくるかというと、法律で規制したらどうかというような、あるいはもっと厳しくやれというようなことが出てくると思うのですよ。ですから、今外と内から見て、従来と同じような指導の方法で、また枠内で指導していくには、この際この程度のことをやっていかなければならないのじゃないか。  よく読んでいただけばわかりますけれども、給与その他財政支出の状況が著しく適正を欠く、そしてそればかりでなくそれを是正するために必要な努力を払わない、こういうことが適用されるということですね。ただ著しく財政支出の状況が不適正だからとやるわけじゃない、努力していればそれなりの努力というものは認めていこうじゃないかということでありますから、賢明な細谷さんのことでございますから、この程度のことをやりませんとかえってきつい統制論というのが出てくるということを御理解していただきたいと思うのです。
  188. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 自治大臣、私が調べたところでは、ある市に行きましたら、ラスパイレスは去年よりも〇・五とか〇・六減っているのですよ。それはやはり努力しているということです。努力の速度が遅いということは言えるかもしれませんけれども、いろいろな事情もあるでしょう。とにかく毎年上がっているのなら、これは努力していないということになりますよ。あるいは上がる方向があるのなら別として、足踏みあるいは下がっていっているなら、やや中長期的な視野で物を見てやらなければならぬのじゃないか。ところが、信用できぬ、あなたのところの市長、ひとつ念書を書きなさい、市長だけでは足りないから議長も念書を書きなさい、こうやっていきますと、自治大臣は、自分のところの配下と言うと言葉が悪いかもしれませんけれども、指導下にある自治体を信用していない、こういうようなことでは立派な地方自治はできませんよ。いかがですか。
  189. 田川誠一

    田川国務大臣 私も、就任いたしましてから、具体的にある自治体の問題について陳情を受けたことがあるのです。私は全く逆であって、今念書を書いているということは、ちょっと誤解があるのですけれども、高給与だ、是正措置をしていなかったというような団体に、枠をはめない、制限させない、そのための措置として、再建計画をお書きなさい、書いてくださいよ、つまり制限をしない一つの指導として財政計画をお書きになってくださいよ、こういうふうにして制限しないでやれたという例も私自身体験しているわけです。  ですから、念書というと何か誓約させるというふうにとられますけれども、そうではなくて、むしろ制限をさせない一つの方法として、考えていることを計画に出してください、こういうことであることを御理解していただきたいのでございます。
  190. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 余り時間がありませんけれども、ある市に行きますと、ラスパイレスというのもさることながら、ラスパイレスという数字は誤りじゃありませんが、それはすべてを言い尽くしておりませんよ。例えば、少数精鋭主義でやった場合には、それに報いるためには高給与をやる。必然的にラスパイレスが高くなりますね。そういうことでありますから、ラスパイレスだけじゃなくて、それは一つの参考資料でありますけれども、給与総額主義、こういうことも重要なのです。そして精鋭主義。  その辺になりますと、あなたの方ではいろいろな定数モデルとかなんとかやっているでしょうけれども、ラスパイレスという問題と少数精鋭主義というものをどう結びつけるか。そういう方法を開発したらどうですか。今たくさんあるでしょう。そういう考えがあるのでしょうから、そういうことでもやったらいいでしょう。何か知らぬが、高等数学みたいなことをいっぱいやってわからぬようなことでなくて、その辺の、ラスパイレスがすべてを語っていないならば、もっとラスパイレスよりも真理を語るような方法を開発して、これでやるのだからこうだというくらいのことをやるべきである。大臣、その点についてあなた、やや権力的ですよ。積極的に指導をするのはいいけれども、その許可方針にまで手を入れてぎすぎすする必要ないですよ。どうですか。
  191. 田川誠一

    田川国務大臣 この前も細谷さんから同様の御要請を受けました。御期待に沿えませんけれども先ほど申し上げましたように、趣旨は、むしろ積極的に是正策を講じようとしている地方団体を助けるということが主眼であり、そして逆に強い統制をさせていくようなことはなるべくやめさせたいというのが念願であるわけでございまして、前にも申し上げましたように、地方起債の許可というものはできるだけ緩やかにしていくべきというのが理想でございます。それだけに、こういうようなことを少しでも前進させていくには、是正策を講ずるような地方団体を守っていかなければならぬ、こういう考えであることをくれぐれも御理解していただくように私の方からお願い申し上げたいのでございます。
  192. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 大臣の言葉を聞くと、あなたやはり予防逮捕論が頭にありますよ。これは泥棒しそうだからあらかじめ逮捕しておこうか、そういうあれじゃだめです。もっと強い、そして正しい気持ちで臨んでいただきたい、こう思います。時間がありませんから、もうこれ以上申し上げません。  まだ二題ばかりあるのですけれども、時間がないようでありますから……。  文部省からいらっしゃっておりますが、今度の交付税で、私学振興については、単位費用等は変わっておりませんけれども、どの程度の私学助成費、これは県関係で大学の方じゃありませんが、どのくらいの需要額が計入される予定なのか、お聞きします。
  193. 奥田與志清

    ○奥田説明員 御説明申し上げます。  先生御案内のように、学校教育におきまして私立学校の果たしております役割は非常に大きゅうございます。そこで、各都道府県とも私立の高等学校以下につきまして応分の私学助成をいたしておりますが、私ども国におきましても、各県におきます。その補助金の一部を補助するということで、昭和五十年度以来補助をしてまいっております。  先生御存じのように、五十九年度におきましては国、地方とも非常に厳しい財政事情でございます。加えまして臨調の答申等もございまして、私どもは要求の段階で対前年度一〇%減、これはシーリングどおりでございますけれども、そういう要求をいたしまして、予算におきましては要求どおり確保したというふうな状況でございまして、数字におきましては、前年度七百九十五億五千万でございましたが、七百十六億を計上いたしております。  なお、この補助金につきましては一教育条件を高めるということと学納金をできるだけ軽減するという大事な役割がございますが、主なところを聞いてみますと、学納金の値上げにつきましても前年よりは抑制するというふうな状況でございまして、各県とも私学助成につきましてそういうふうなことに努力をしていただいておりますし、また、私学の経営者も経営努力をしておるというふうに評価をいたしております。
  194. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 自治省、需要額は幾ら入っているのです。
  195. 石原信雄

    石原政府委員 五十九年度の私学助成に係る財政需要額の算入予定額でございますが、狭い意味の私学助成として二千二百八十二億円を予定しております。これは五十八年度対比で申しますと三・二%の増ということになります。このほか、過疎対策とか広域通信関係等地の費目で算入しているものまで加えますと、五十九年度は二千三百十五億円になります。前年対比の率で申しますと三%の増ということになります。
  196. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 今の交付税の需要額算入は二千二百八十二億というのだけれども、さっきいただいた資料は二千二百二十九億になっているが、どこが違うの。何かちょっと複雑なようだけれども
  197. 石原信雄

    石原政府委員 一般補助と過疎分を加えますと二千二百九十六億でございます。私が御答弁申し上げましたのは、五十九年度の基準財政需要額の見込み額でございまして、これが二千二百八十二億、それから五十八年度の基準財政需要額の計画額が二千二百十二億、実績額は二千二百二十九億ということでございます。
  198. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 数字は八月算定でないとすっきり決まりませんから、大体はその辺だということを頭に入れておきたいと思います。これは過疎があるとか、幼稚園があるとか、小中学校があるとか、数字を突き合わしておったら時間がかかってしまうから、もうやめます。  そこで、文部省来ておりますからお聞きします。  私学振興助成法というのを見ますと、第四条、「国は、大学又は高等専門学校を設置する学校法人に対し、当該学校における教育又は研究に係る経常的経費について、その二分の一以内を補助することができる。」二分の一と書いてあります。九条、「都道府県が、その区域内にある小学校、中学校、高等学校」云々として、「国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、その一部を補助することができる。」それは今年はマイナスシーリングで一〇%マイナスで、さっき言ったように七百十六億しかない。交付税の方は三%ふえている。文部省の方はシーリングを受けて一割減った。これは九条。ある意味では、総額が極めて問題のある交付税の中でも、思い切って、これは計算方式によって生徒数がふえてますからそうなっているようですけれども、三%ふえている。単位費用は変わってない。ところが文部省の方は、一割シーリングでやっている。そうすると、バランスをとりますと、一割シーリングでありますから、去年と比べますと、文部省は八十億ぐらい減っているのですよ。地方の方は三%ばかりふえておって、数字はちょっと合いませんけれども、六十億ばかりふえるようですね。八十億減って、交付税で六十億ふえる。穴を埋めているようですけれども、そういう格好でいいのですか。この方針によりますと、九条というのは国が一方的に府県に対して助成するということでありますから——私は交付税を削れと言っているのではないのですよ。もっと充実してやらなければいかぬ、いかぬけれども、国がちょっと逃げ腰過ぎるんじゃないか。九条の精神と違うのじゃないか、こう思います。いかがですか。
  199. 奥田與志清

    ○奥田説明員 私学助成の重要性にかんがみまして、文部省としましても、大勢の方々の御協力をいただきまして最善の努力をしているつもりでございますが、先ほど申し上げましたように、非常に厳しい国の財政事情、それから臨調答申等ございまして、先生御指摘のような数字になっております。なお、ちなみに、大学につきましては一二%の減になっておりまして、高等学校以下につきましては大学よりも配慮をしているというところがございます。
  200. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 臨調の最終答申の中で、私学は大学も高等学校も削減してしまえ、総額を抑制しろと書いてあるのが大きな壁になっておるようでありますけれども、今日私学が負うておる教育上の位置からいって、穴が出てきたら交付税で穴埋めしてもらう、こういうことではなくて、交付税の方も努力をしていく、国の方も努力しているから文部省も努力をする、こういうことで、両々相まってこの私学振興法の一条の精神が達成できるように努めていただきたい、こういうことを要請をいたしまして、時間が来ましたから、質問を終わらせていただきます。
  201. 大石千八

    大石委員長 次回は、明十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会