○前川参考人 五年間やってまいりまして、その間に、今御
指摘のように、環境は非常に変化してまいりました。国内では大量国債償還期を迎える、借りかえ時期を迎える。海外では自由化あるいは国際化という問題になってまいりました。そういう中で、
金融政策の効果をどうやって発揮していくか、
金融政策の有効性をどうやって確保していくかということが、これからの最大の問題であろうと思います。基本的には金利機能を活用していくということが、これからどうしても必要であろうというふうに思っております。なかなか統制、規制ということでは対処できませんので、これからは金利政策、金利機能を活用していくということであろうと思います。
そのためには
二つのことが必要であろうと思いますが、
一つは、金利が自由に動く、金利の自由化を進めるということでございます。もう
一つは、
金融政策の効果が波及するような環境を整備する。端的に申しますると、短期の
金融市場をさらに整備する、この
二つが必要であろうと思います。
第一の金利の自由化につきましては、既にいろいろやってまいりましたけれ
ども、さらに残っておりまするのは、預金金利の自由化ということもどうしても進めませんと、金利機能が十分に発揮されないということになると思います。この預金金利の問題につきましては、中小
金融機関の経営の問題あるいは郵貯の問題といろいろ問題がございまするけれ
ども、ぜひこれは進めなければいけないことであろうと思います。
環境整備の短期の
金融市場の問題につきましては、だんだん企業の手元資金も潤沢になってまいりましたので、短期の
金融市場も非常に
拡大してきておるわけでございまして、
金融機関だけでなくて企業も短期の
金融市場に入る、あるいは証券も入ってくるということになってまいりました。そういう短期の
金融市場を今の市場よりもさらにオープンなものにして、
金融機関も企業も証券も全部そこで取引ができるというようなオープンなマーケットを育成していく必要があろうというふうに
考えております。
そこで、そういう市場ができますれば、日本
銀行がそこにオペレーションなり何なり介入いたしまして、その効果がほかの市場に波及するということが、
金融政策の有効性を確保する上において一番必要であろうというふうに
考えておるわけでございます。この短期の
金融市場につきましては、いろいろの
金融資産が取引されることになると思います。市場言われておりますBAも結構でございます。ただ最も適当な
金融資産は恐らく
政府短期証券であろうと思いまするので、私
どもはそういうふうな
政府の短期証券の市場をぜひ育成してまいりたいというふうに
考えております。
もう
一つ、
金融政策のこれからの課題といたしましては、日本経済の地位がこういうふうに世界経済の中で非常に強くなってまいりましたので、円相場ということをどうしても
考えなければいけない。特に国際収支が黒字のときに余り円相場が安くなることは、さらに貿易摩擦等を激化さすことになりまするので、円相場を維持していかなければいけない。円高の
方向に安定させていくということを常々私は申しておるわけでございますが、それが国内の物価安定のためにどうしても必要であろうというふうに
考えております。
金融政策の新しい課題としては、そういう問題も出てきておるわけでございます。
そういう面につきまして、五年間いろいろやってまいりました。必ずしも思ったとおりにはまいりませんけれ
ども、これからは今申し上げましたようなことをさらに推進いたしまして、日本
銀行の本来の使命である物価安定ということに努力してまいるべきであろうと
考えております。