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1984-07-20 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 米沢  隆君       大島 理森君    小泉純一郎君       中川 昭一君    東   力君       平沼 赳夫君    村上 茂利君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    堀  昌雄君       柴田  弘君    宮地 正介君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         国 務 大 臣         (経済企画庁長 河本 敏夫君         官)  出席政府委員         内閣官房長官 水平 豊彦君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         内閣総理大臣官         房審議室長   吉居 時哉君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁調査         局長      横溝 雅夫君         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       亀井 敬之君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁次長   岸田 俊輔君         国税庁税部長 冨尾 一郎君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    根本 貞夫君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局参事官   佐藤 孝志君         警察庁刑事局保         安部保安課経済         調査官     清島 傳生君         総務庁行政管理         局管理官    陶山  晧君         総務庁恩給局恩         給問題審議室長 鳥山 郁男君         経済企画庁調整         局調整課長   田中  努君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第一課長   里田 武臣君         経済企画庁総合         計画局計画課長 谷口 米生君         経済企画庁調査         局審議官    田原 昭四君         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         文部省教育助成         局財務課長   菴谷 利夫君         厚生省保健医療         局管理課長   羽毛田信吾君         厚生省社会局保         護課長     清水 康之君         厚生省社会局老         人福祉課長   古瀬  徹君         厚生省児童家庭         局児童手当課長 浅野 楢悦君         厚生省保険局医         療課長     寺松  尚君         農林水産省農蚕         園芸局企画課長 日出 英輔君         食糧庁長官官房         総務課長    芝田  博君         食糧庁管理部主         計課長     鈴木 久司君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      細川  恒君         運輸大臣官房国         有鉄道部財政課         長       秦野  裕君         運輸省地域交通         局自動車保障課         長       福島 義章君         建設大臣官房政         策課長     伊藤 茂史君         建設省都市局下         水道部長    中本  至君         自治省財政局財         政課長     小林  実君         自治省税務局企         画課長     湯浅 利夫君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         日本国有鉄道経         営計画室長   前田喜代治君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 七月十七日  間接税増税反対等に関する請願(田中美智子君  紹介)(第七九〇〇号)  間接税増税反対所得税大幅減税に関する請  願(田中美智子紹介)(第七九〇一号)  同(横山利秋紹介)(第七九〇二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 瓦力

    ○瓦委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  3. 沢田広

    沢田委員 昨年の暮れの総選挙が終わりまして以来、当委員会としてはまさに二十一本の法律案審議に追われまして、多年というよりも今日に至るまでたくさんの課題があったにもかかわらず、一般質問が今日になったということは極めて遺憾なことでありまして、これからより精力的に、一般的な国民の期待にこたえられる条件整備するために、政府側においても、自分の方の問題を解決したら後はいいんだということではなしに、我々これから主張する諸事項についてひとつ誠意を持って対応して臨んでもらいたいということを、まずもって望んでおきたいと思います。  最初に、来た順で順不同になりますが、お許しをいただきたいと存じます。まず、人事院の総裁にというよりも、給与局長においでをいただいておりますので、若干給与問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。  一つは、昨年からの持ち越しの分については次年度において対応します、こういうのが今までの国会答弁でありました。そのことについては変わりはありませんか。
  4. 斧誠之助

    斧政府委員 お答え申し上げます。  昨年私たちが勧告いたしましたのは六・四七%、こういうことでございました。実際に実施に移されましたのは二・〇三%、こういうことで、昨年の四月時点における官民較差というのは、埋め切れていないわけでございます。したがいまして、本年、勧告を行います場合に、本年も従来どおり四月時点におきます官民給与比較というものに基づきまして勧告をいたすつもりでおりますが、その場合には、昨年埋め切れていない分が本年の勧告官民較差として反映してくるというふうに考えております。
  5. 沢田広

    沢田委員 一般的に景気の回復という言葉も言われておりますけれども、今年度の物価の上昇あるいは民間賃金上昇からして、四%内外のいわゆる上昇ということは、客観的に見て、常識的に見て、大体言われている数字だと思うのであります。これは低く見てそう言えると思うのであります。大企業においてはもっと大きくなると思いますが、このことは、一般予算に与える影響から見ますと、自然増としては極めて大きいものがあります。しかし、人事院はそういうことを考慮する必要はないわけでありますが、大体予定どおりの期間に、これは従前のものを上乗せをしつつ、大体いつごろ、九月ごろかあるいは八月末が、予定としてどの時期を目指して提起しようとなさっておられるのか。特定の事情がない限りは例年どおりと解釈をいたしますが、いかがでありましょうか。
  6. 斧誠之助

    斧政府委員 現在、勧告に向けまして精力的に作業を続けております。大体、現在までの進行状況でいきますと、例年どおり進捗状況でございますので、八月上旬までには勧告できるのではないかという見込みを立てておるところでございます。
  7. 沢田広

    沢田委員 人事院が政治の介入とか干渉なしに、独自の立場政府に勧奨をしあるいは勧告をする、これはスト権代償ですし、予算委員会等において至言い尽くされている議論ですから、私は余り多くをここでは申し上げませんが、やはり素直な状態、自然体、今まで言われていた総理言葉をかりれば自然体人事院勧告がなされて、それが実現されることを期待するわけです。  そこで大蔵省にお伺いするのでありますが、前年度の切り下げ、あるいは今年度どの程度出てくるかわかりませんけれども、こういうやり方というものがいろいろな問題に波及して、公社との関係とかあるいは公団との関係とか、あるいは年末手当で操作するとかというようなことで、大変行政上のいろいろな問題を惹起する、こういうことが今までの経緯でありました。私は、素直に、若干の無理があっても、これは大蔵省としては自然増、こういうふうに見て処理していくことが極めて大切なことだ、こういうふうに思いますので、自民党にも積極財政論者もおられるようですが、これは積極じゃなく通常ということですね、これを自然体で守るということは。そういうことが望ましいと思いますが、次官並びにこれは官僚側の方の答弁もあわせて、次官は政治的な発言、官僚の方においては事務的な答弁、それぞれひとつお願いをいたしたいと思います。
  8. 平澤貞昭

    平澤政府委員 人勧の問題につきましては、先ほど人事院の方から御答弁がございましたように、まだ五十九年度の勧告は出ていないわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、五十九年度の人事院勧告が出ました場合、その取り扱いにつきましては、その勧告が出た段階で、人事院勧告制度尊重基本姿勢に立って、かつまた厳しい財政事情等を含め、国政全般との関連において政府においても検討してまいりたいと考えております。
  9. 堀之内久男

    堀之内政府委員 ただいまは先生の御指摘のとおり、スト権代償としてこの人事院勧告は毎年行われておるわけでございますが、この制度の、人事院勧告尊重という基本姿勢については今日までもずっと守る立場で進めておるわけでございますが、何分厳しい財政事情でございますので、今後とも国政全般との関連について十分前向きに検討を進めていきたい、こういうように考えておるわけであります。
  10. 沢田広

    沢田委員 もし新聞報道の書き方をすれば、前向きに善処するというところだけを抜き出して一段抜きで書きたい、こういうふうに思いますから、次官もそういうつもりで、前の方よりも後半の前向きに善処する、その方に力点を置いて受け取っていきたいと思います。  そこで、人事院、ちょっと内容は変わってくるわけですが、給与本来のスタイルが六十五年までこのままいけるかどうか、これは非常に疑問ですね。宮澤さんのような資産倍増論というものも出ておりますし、中曽根さんのような「増税なき財政再建」も出て、「おしん」の時代もまだ続くぞ、一方にはこういうものも出ておるというようなことで難しいと思うのですが、給与そのものもある程度見直されなければならない段階に来たのではないかという気がいたします。  それで、具体的に一、二を言いますと、一つは、私も十三次の給与審議会委員まではやっておりましたから、その当時の地域給の計算なり、それまではやっておりました。その後CPSの関係地域給がだんだん本給に繰り入れられて、全国的なバランスがとれたということになっておりますけれども、逆にそのことが生活のアンバランスをつくっているのではないのか。逆に、言い方は悪いのでありますが、東京へ来ると苦しくなる。我々も当時よく言っていたことでありますけれども、隣のうちにお茶を飲みに行ってもただだけれども、ちょっとここへ来ると三百五十円コーヒー代を取られる、こういうことになるので、結果的に都市生活者は楽なようでいて大変厳しい。しかも精神的ないらいらも非常に多い。そういうようなことを考えると、地域的な給与差というものもある程度必要になってきているのではないだろうか。民間賃金とのバランスをとっていくということの中には、なぜ民間企業地方地方にと移動するかといえば、地方労働力が安いから、地方労働力によって支えていく、こういう基盤があるわけであります。ですから、そういう意味における偏差値というものを給与の中に考慮する必要性はあるかないか、あるいは必要じゃないのかということが一つ。  それからもう一つは、私の長年の主張でもありますが、ラスパイレス方式がいつまでも採用されていることは望ましいものではないというふうに言っているわけでありまして、ラスパイレス方式よりもかえって二次方程式の一部修正の方が妥当な賃金水準を示すものだというふうに思います。もちろん、この二次方程式でいってみても年功序列賃金形態があるわけでありますから、そのこと自身にまた一定修正値を与えなければならぬだろうということも、私も否定はいたしません。しかし、ラスパイレスが何か万能のように扱われていることは、かえって賃金体系それ自体を過つもとだというふうに思われます。  以上二点について、今までと同じ作業を続けているのかどうかわかりませんが、御検討をいただけるかどうか、この際ひとつお答えをいただきたいし、あるいは見直してもらえるという条件が必要ではないのかというふうにも思われますが、いかがでしょうか。ひとつ人事院給与局長としては、個人的な見解でも結構です、人事院と言うとなおかた苦しくなりますから、給与のベテランとしてひとつお考えをお聞かせいただきたい。
  11. 斧誠之助

    斧政府委員 お答えを申し上げます。  最初にお断りしておきますが、公務員給与水準そのものにつきましては、官民均衡させるということで、この基本は変えるつもりはございません。そういう中で公務員制度に見合う給与体系のあり方はどうかという点は、いろいろ問題があろうかと思うわけでございます。  今例示されました調整手当の問題でございますが、これは地域以来の古い歴史を持っておりまして、人事院は四十二年に都市手当ということで勧告を申し上げたわけでございますが、このときに修正がございまして、調整手当という制度で現在に至っておるわけでございます。このとき国会附帯決議がございまして、地域はいじらないことということがございましたので、その後の調整手当改正東京、名古屋、大阪という大都市を八%、それから九%、こういうふうに上げてきたわけでございます。その面では、今先生のおっしゃいました都市生活困難性に対して一応対応してきた、こういうことでございますが、なお現在時点で見ますと、地域事情というのはいろいろ変化しております。それから今先生申されました賃金事情というのも、非常に都市地方の格差がございます。これをひとつ、給与制度見直しということを提言いたしましたので、この機会に調整手当も一緒に見直してみたらどうかということを実は提言しておるわけでございますが、これは職員団体それから各省からも調整手当見直しということの要望がございます。実は、ことしが三年目になるわけですが、いろいろ地域事情の、特に賃金事情中心として調査をしております。大体ことしで三年間の資料がそろいますので、それがそろいましたら関係方面にもひとつそういう資料を提示して、御意見を伺いながら検討を進めてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。  それからラスパイレスですが、ラスパイレス方式というのは原資計算としては非常にすぐれた手法でございまして、二次方程式方式ですと結果として原資が幾ら出るかというのはなかなかわかりにくい話でございます。日本賃金というのは、もう御存じのとおり、残念ながらまだ学歴が相当物を言っていますし、年齢が物を言っていますし、職務段階というのが物を言っていますし、それから今の地域性というものが非常に物を言っておるわけでございます。こういうものをそれぞれ比較する手法というのは、人事院が長年いろいろ比較方式を模索した結果、三十五年以来現在の方法でやっておるわけでございますが、なお検討の余地があるかどうかというのは、これは絶対無二というわけのものではないと思っておりますので、人事院賃金専門家としての研究は続いてやっていきたい、こういうふうに思っております。
  12. 沢田広

    沢田委員 人事院の方、大変御苦労さまです。とにかく公務員があすへ希望を持って働けるように、いじけないように、ひとつ伸び伸びとした給与勧告をされることを期待いたします。今ちょうど行革行革でいじけちゃっているときですから、あすに希望を持って、よっしゃやってやろうという気持ちに公務員が奮い立つような人勧が出ることを心から期待して、毎日の御苦労に心から敬意を表して、きょうの質問はこれで終わりにいたします。お帰りいただいて結構です。  続いて銀行局の方にお伺いいたします。  大蔵委員会の各位のお骨折りもいただきながら、週休二日制がともかく一歩前進をして、銀行法改正一つめどをつけた、それまではよかったのでありますが、その後のCDの備えつけ状況、これをひとつ回答してくれませんか、どういう金融機関がどの程度水準に達しているか。
  13. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 お答え申し上げます。  週休二日の実施前でございますけれども、CD設置状況は、全体で申し上げますと、信託、都銀、地銀、相銀信金労金信組農協漁協まで合計いたしますと二万四千六百四十四台でございます。設置店の率で申し上げますと、トータルで三五%でございますが、その中で中小の関係信金労金信組農協漁協の順で申し上げますと、設置店率で申し上げますと五六・一、八・三、三・四、二・一、ゼロ、おのおのそういう形になっております。トータルでは、今申し上げましたように、設置店率で申し上げますと、民間金融機関でございますが、三五%ということになるわけでございます。  それが週休二日制実施後でございますと、その三五%がトータルで四四・六%、具体的な設置台数で申し上げますと三万三百六十九、こういうことになるわけでございまして、それを今申し上げました相銀信金労金信組農協漁協の順で申し上げますと、八一・六、七四・一、一五・〇、八・七、六・四、〇・〇で、かなり設置努力が払われているような兆候にございます。
  14. 沢田広

    沢田委員 現状はわかりました。しかし、そのテンポで、それこそ今の農協じゃありませんが、これはまさか最小自乗法を適用するわけにいかないですから、そのままのテンポで進んでいったと仮定をすれば、昭和なんという時代は通り過ぎちゃって何の時代がわかりませんが、どの程度時代になったら一〇〇%になると見込められますか。
  15. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 ただいま申し上げましたように、民間金融機関の各業態ごと設置率区々ばらばらでございます。それで、いつごろまでということを申し上げるのはかなり困難ではないかと存じますけれども、いずれの業態におきましてもCD設置のために大きな努力を払っているということは言えると思いますが、いつごろ実現するかというのは、各業態ごと自分自身努力しているということで、まだ申し上げられるような段階ではないと思っております。
  16. 沢田広

    沢田委員 それぞれの関係金融機関が大変お骨折りをいただいている、心から敬意を払うわけでありますが、だからといって、これをめどなしに一世紀も待っているということも、これはとても世界的にも許されない。ですから、ある一定の限度で自然体発車、自動的に動き出します、そのめどだけは決めていったらいいんじゃないのか。例えば向こう三年後とか二年後にはあるものは使いあそばせよ、ないところはないでそれで御勘弁をいただきますよ。やはりある程度経過年数を置いて、いつまでもそこに、目の前にぶら下がっていながら、一般の市民としてはこれが使えないでいるということは——一月の問題が一番大きかったと思うのですね。一月十四日の場合が一番反響があったわけです。ですから、同じ形態が今度起きるかどうかはわかりませんけれども、もう一回起きたらおさまらなくなってしまうだろうという気もします。だからといって、もしこれが後退したら、これは世界的にも大変な、より一層の貿易摩擦を起こす原因にもなりかねない。ですから、今の情勢から見て、せめて遅くとも三年、できたら二年で見切り発車で、二年間ひとつ努力をしてください、そして二年たったら見切り発車でそれぞれ使わせますよ。そのかわり日曜日は休みにして閉店にいたします。今も閉店ですが、今度は職員も同じように閉店にします。この間の、長銀とかその他も、何か全部週休二日制に踏み込んだようですね。きのうかおとといの新聞にはそのように出ておりましたが、その事実はあなた方は御承知なのでしょうね。
  17. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 今最後に、新聞に出たというお話の件でございますけれども、それは恐らく、私どもで知っておりますのは、ある全国紙政府系公庫が十月から第二土曜休業にする方針を固めたという事実での御指摘だと存じます。  政府関係金融機関のうち、輸銀及び開銀については、既に昨年八月から第二土曜休業ということで、民間金融機関並み実施をしておるところでございます。それで、ほかの政府系公庫については、第二上体実施しても支障がないか否かということは現在検討中でありまして、国民公庫中小公庫等その他の政府系公庫でございますけれども、その検討のためには土曜日の客の来店状況などを見たいということではないかというふうに承知しております。そこで、新聞報道はそういうことでございましたけれども、一部の公庫で第二上体実施するとの方針がただいまのところ固まったという段階ではないと存じておりますが、非公式に検討しているということだと思います。(沢田委員「三年、二年」と呼ぶ)  最初の方の御質問は大変難しい御質問でございます。確かに、沢田委員にもその点は前からも御心配していただいているところでございます。そこで、御指摘のとおり、週休二日制をさらに拡充していくということのためには、やはりCDがどの程度設置されていくかということが非常に大きなポイントであることは御指摘のとおりでございます。  それで、その点につきましては、昨年の経験に基づきまして、関係四省庁でも既に労働省中心といたしまして協議を開始しておるわけでございます。その協議の最も大きな検討課題は、CD早期稼働のための条件整備ということでございます。そこで、この労働省主催のもとの関係省の間での協議を精力的に進めていくということが、何年でできるかというめどの模索と申しますか、そのためにも必要かと思いますが、ただいまのところ、今すぐに二、三年——それは大変望ましいことだと思いますし、それから確定することがやはり展望を開く道だとは存じますけれども、ただいまの段階ではそういう協議を重ねていくという段階でございますので、御了承いただきたいと思います。
  18. 沢田広

    沢田委員 今、方法は二つあると思いますね。一つは、それぞれの機関がどういう計画を立てて、いつごろまでに整備をするか、みずからその計画大蔵委員会に提出をしていただく、こういう自主的な方法一つあります。順序としてはそれがいいんじゃないかという気がするのです。それぞれの関係機関に、きょうの会議の結果こういうことで、自発的に何年度までにCDが備えつけられるか……。それから第二は、CDがなくとも、週休二日制の実現のためにはある程度出発しても私の方はやむを得ません、そういう意思表示ができるかどうかということが問題だと思うのです。それから第三は、当局にといいますか政府にお任せいたします、とてもそれは向こう十年、十五年ではできません、全国津々浦々まで整備することは困難でありますから、これは後はやむを得ません、できればその間は今までどおりであってほしいと言うでしょう。言ってくるのは言ってくるでしょうが、世界情勢は許さないですから、そう言いますと見切り発車ということになってくる。それから見切り発車を二年にするか三年にするか、その意思を尊重して決めていく。三つ言いましたけれども、大体考え方はこの二つの方法だと思うのですよ。  まず、今までできなかったから、各機関に一回来てもらって述べてもらうこともいいのですが、いつごろまでにこれを整備する意思があるのか、整備がなくとも見切り発車もやむを得ないのか、その辺の意向だけ当局としては聞いていただく用意はありますか。
  19. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 まず、三つの方法の御示唆がございました。それぞれ御示唆に富んだ御提案であると思います。  具体的に申しますと、例えば労働金庫は本年四月にオンライン提携が開始されたということに伴いまして、設置台数が増加するというふうに見込まれています。これはオンライン提携ということが一つの契機で、これが増加する要因にもなろうかと思います。例えば信組におきましては、電電公社からのリース方式によってCD設置を進めているということで、設置台数の増加は希望が持てるということではないかと思うわけでございます。ただ、そういう計画につきまして私ども常に聞いておるわけでございますが、ただいまのところ、先ほど申し上げました台数の増加にも示されたように、かなりの大きな努力を払っているということは、今までの進捗率から見ますと週休二日制も認識しながら進めているという努力の跡がうかがわれるのではないかという意味では、私どもその努力についても敬意を表しているところでございます。  それは計画関係のところでございまして、そこは我々も熱心にヒアリングするなり助言もしていっていいと思うわけでございますが、第二の、強行して——強行という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、もうなかなかめどがつかないから、一部はCDが十分にないままにさらに週休二日制の拡充に向かっていくというようなことになりますると、例えば中小金融機関あるいは農協漁協などは一部の職員が出勤するというようなことにもなりかねないという事態も予想されますと、かえって週休二日制のもとから崩壊につながりかねないという懸念も持たざるを得ないということでございます。  そこで、今申し上げました機関でございますけれども、信組大蔵省所管、しかし仕事としては県に移管している、労金は大蔵、労働両省共管、農協は農水省所管、郵便局は郵政省所管ということで各省にまたがっていることもあれでございますので、労働省、農水省、郵政省と相談しつつ検討していくというような今の体制を進めていくということで御容赦いただきたいと思います。私ども大変意識はございますけれども、割り切るにはなかなか難しい問題かと存じております。
  20. 沢田広

    沢田委員 そうだと思いますが、情においては、おっしゃるとおり私もちっともそのことは変わりはないのです。しかし、便々とこれを待っていたのではかえって消極的になってしまうという危険性の方が大きい。あえて憎まれ口を私はきいているわけです。事によれば、国会の他の議員の御同意をいただければ、そういうことによっていずれ小委員会等も開かれるでしょうが、ある一定の期限で見切り発車する。それまでにお互いに努力していこうじゃないか。努力しないで、いつかはなるだろうということで待っているわけにはいかない問題であるというふうに思いますので、あえて私もそういうふうなことで、国会でもそういう意見が出ている、これは容易ならぬことだぞ、我々ももっとスピードを上げなければ世論の流れに追いつかない、そういう意識を持ってもらうことが大切だと思うのですね。今の状態の御努力は御努力として、このままでは一世紀待たなければ全部つき終わらない。そういうことで、はい、ようござんすというわけにはいかないので、その意味における何らかの措置を我々はこれから検討しなければならぬ。こういう課題であると思いますので、きょうは、それぞれ今後もひとつその積極的な方向を切に要望しておきます。そこで具体的な方は委員長なりと相談して、委員長もえらい決意を持って臨んでいるようですから、その気持ちで週休二日制の方にも臨んでいただいて、実現を図っていきたいと私は思います。  続いて次のサラ金の問題で、一番の問題が遅くなったのでは困るのですが、我々も五、六年かけて皆さんにいろいろ文句も言われたりなんかしながら、ともかく大蔵委員会でサラ金法はできた。産んだ子供がそれぞれ成長して効果も上げたり、あるいはマイナス面も出たりということで今日来ておる。我々もその一端を担った者として心配をしている一人であります。なるべくこれが健全に成長してもらいたい。だから、それを妨げるものについてはやや憎まれ口もきかなくちゃなるまい、こういうふうに思います。七四なんという高金利を決めだというのは、何も零細な預金者の金を使って、言うなら一般庶民がサラ金を借りている人間の首を締めて、お互いに国民同士が締め上げているような状態をつくらせるなんということは、毫も考慮の中には入れていなかった要素であります。ですから、生命保険から金が出るとか、金融機関から出るとかいうのは道義上許すべからざる行為である。そんなことだったら、そこからもし融資ができるならば、そんな高い金利でやることはないので、せいぜい一五%くらいでも十分である、こういうことにもなるわけなんです。  七四だとかいう数字を決めているゆえんは、やはり零細な金を集める、そういう金融機関や生保から金が来ないことを前提としているわけであります。そういうことは道義を破る行為であるから、それは厳格に取り締まらなければならぬことだし、大蔵省としても金融の秩序を乱すものである、そういうことで何らかのペナルティーをつけなければいかぬ、私はそういうふうに思う。「泥棒に追い銭」という言葉があるが、まさにそのとおり。泥棒に金をくれてやるようなものだ。だから、そういう法の盲点をくぐって悪質な金もうけをしていく、こういうことは許されることではない。その考え方として許されないと思うでしょう。まずそこの原点をお伺いしておかないと、そういうことで結構ですと銀行局が言うようならこれはまた話は別ですが、よもや言うことはないでしょう。絶対それは許されることではないと言うだろうと思っていますが、一応念のため、今のままじゃわかりませんので、ひとつお答えいただいて、それからいきます。
  21. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 まず、消費者信用についてどういうふうな考え方を持つべきかということだと思います。消費者信用というのは庶民のニーズがある、こういうことではないかと思いますが、そのニーズに適正に対応してもらえるということが必要である。そういたしますると、私どもといたしまして、まず金融機関が消費者信用の拡充に注力してもらうということが一つ大切である。それから第二に、健全で良質なサラ金がある、これを維持していくということではないかと思うのです。  そこで、御指摘のとおり、私どもといたしましては、金融機関の融資の件につきましてはサラ金業者の経営実態を十分に把握して、もともとは全体としては金融機関の自主的判断にゆだねられることではございますけれども、その実態を十分に把握して、「利用者の利益を不当に害する行為を助長するおそれがあると考えられる場合には、」サラ金業者への融資を厳に抑制するよう、昨年の六月に通達を発して指導しているところでございます。そういうことでございますが、先ほども申しましたように、金融機関が適正な業者に対して良質な資金を供給すること、それは消費者金融業の健全性を確保していくことにもなりますので、そこは金融機関の役割の一つではないかなというふうに考えておるわけでございます。ただし、社会的批判を受けるとか金利規制——国会でお決めいただきました法律では金利規制、取り立て行為等々について厳重な規制がございます。ですから、それを守っている業者あるいはそれに努力している業者に対してなるべく良質な資金を供給することも、一つは消費者信用を漸次よくしていく道ではないかというふうに考えております。
  22. 沢田広

    沢田委員 じゃひとつ金融機関がサラ金の方に融資をしている一覧表は、そちらで調査したものは提出していただけますか。
  23. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 金融機関のサラ金向け貸出残高につきましては、サラ金業者に向けて融資したものと、それからサラ金業者の関係会社向け融資につきまして、五十八年九月末の時点におきましての金融機関業態別の数字は把握しております。それは提出させていただきます。
  24. 沢田広

    沢田委員 こういうことはどうですか。例えば金融機関が良質なサラ金業者に金を融資した場合は金利は三五以下にしなければいけない、金融機関から金が出たサラ金業者の金利は三五%以下とする、そういう行政指導をする。金融機関から出るのは、金利はそんなべらほうに高いわけじゃない。その半分以下でしょうから、そうだとすれば、せめて三五%以下の金利で貸し付けるというふうに、絶対にこれが撲滅できないとすれば、かえってその方が効果的になる。こういうことにもなるわけですから、私は一つの案として、もし局長が言う良質なというものが金融機関から出された場合は、その貸出金利は三五%以下とする、そういう行政指導。まあ三五という数字がどうこうということじゃなくて、大体その程度以下にするというぐらいの行政指導はとれないでしょうか、どうでしょうか。
  25. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 金利を、ある一定水準を頭の中で観念いたしまして、それ以下のものにしか貸すな、こういう指導はできないかという御趣旨だと存じます。  これはなかなか難しい問題かと思います。概して、ただいま国会でお決めになった法律では、簡単に申しますと、細かな数字は別として、七〇%、五〇%台、それから四〇%台というふうに、本則を四〇%とされながら、今の現実の情勢を踏まえられて、七〇、五〇、四〇、こういうふうになさって決めていただいておるわけでございます。それは国会でお決めになった金利でございますので、本則は四〇ということは、四〇になるべく努力しろという精神はその本則の中にあると存ずるわけでございますけれども、私どもが国会でいただいた権限以上のことで、一定の金利をして行政指導をすることはやや問題があるし、あるいはどの金利が正しいのかを私どもが決めること自体には若干疑問を持っておりますので、先ほど御答弁申し上げました趣旨に沿って、厳正に、金融機関がよいサラ金業者に限ってやっていくというような態度を持するように指導してまいりたいというふうに考えております。
  26. 沢田広

    沢田委員 一生懸命答弁していることの誠意は感じますよ。誠意は感じますが、だから三五と私が言ったのは、安い金利で持ってくる金融機関、生保の金ですからね。裏取引で、やみで、役員か何かに一〇%ぐらい裏リベートを払っておるかもしれないですよ、大体そんな程度だと私は思う。思うというのは想像ですから、これはまだわかりませんけれども、そういうことが行われる裏には、裏取引というのが大体くっつくのが常識です。だから、それを考えて、それを入れても例えば四〇なら四〇でいいですよ。そういうところから金が入った業者は少なくとも四〇にはする、そういうのが道義心の最低のレベルではないのか。そういうような低利の金が入るのですから、潤沢に低利の金が入ってきたものを七四だ、五〇だというのじゃなくて、せめてそれは最低の線で決めてある四〇以下にするようにするというぐらいの道義心はあっていいんじゃないのかというふうに、私は素朴に考える。  いずれまたこれも委員会の問題になると思いますが、もしそういう金を入れちゃいかぬというならいかぬで割り切る、もしどうしてもやむを得ず入ってくるのだとしたらば、それは金利で十分その分をカバーしていくようにしなさい、ぼろもうけはいかぬというふうに思いますよ。やはり正当な利益を得るという意味における秩序というものは確保されなければならぬのじゃないか。もう一回答弁を聞いて、これはまた次回に譲っていきたいと思うのです。
  27. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 いかなる金利が最も正しいかとか、何か私どもで判断することは差し控えたいと思っておりますけれども、先ほど申し上げました、金融機関のサラ金業者に向けての貸し出しにつきましては、社会的な批判を受けるような行為を助長するような業者はだめですよ、こういうふうに申し上げていると同時に、金融機関がサラ金業者に出す場合には、当然のことながら金融機関の融資の健全性確保ということのほかに、サラ金業者が行う貸し付けの条件等の改善に配意して、そして当該融資がサラ金業者や消費者金融全体の健全化に役立つように配慮することというような基本的な精神をもちまして指導をしているところでございます。
  28. 沢田広

    沢田委員 まだこれから後、資料等いただきまして、この問題は我が党等野党からも修正案も出ていることでありますから、また後日、それぞれ審議をする場合もあると思いますので、きょうはこの程度にとどめておきたいと思います。  続いて、今度は国鉄の問題に入らせていただきます。  現在、専売が終わりまして、電電が今最後の山場というか、大体山場を越えたという状況でありますが、その次は国鉄問題であります。累積赤字は今幾らあるのですか。
  29. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 先生今お話のありました累積債務と累積赤字とございますけれども、累積債務につきましては五十九年度末で二十二兆円に達する予定でございます。それから累積赤字につきましては、過去二回にわたりまして債務整理特別勘定の方へ五兆三千億円余りを移管をいただきました。その後発生いたしております累積赤字額は、現在のところでは約七兆に達しておるという状況でございます。
  30. 沢田広

    沢田委員 大蔵省はこれについては、これは昭和二十四年から借り入れが始まっていて、三十九年から赤字が始まってきているという情勢なんですが、大蔵省としてはこういう状態、まあ病気だったら相当慢性悪化という状況に経営的にはなってきているわけでありますが、どういう注意なり配慮を財政当局としてはなされてきたんでしょうか。今までとってきたようなものがあれば、累積赤字と債務は若干数字が違うと言いますが、とにかく債務二十二兆というものについての見解をひとつお聞かせいただきたい。
  31. 平澤貞昭

    平澤政府委員 国鉄財政の厳しい状況については、財政当局といたしましても重々認識しているところでございます。したがいまして、この問題につきましては、従来からもいろいろ国鉄当局あるいは運輸当局と御相談しながら各般の措置をとってきたわけでございますけれども、先ほど答弁がございましたように、依然として多額の累積赤字あるいは長期債務を抱えているというのが現状であるわけでございます。したがいまして、このような状況に対処するために、御存じのように、五十七年九月にいわゆる緊急対策十項目が閣議決定されました。これに従いまして、その後新規採用の原則停止等の各般の措置がとられているところでございます。さらにまた、御存じのように、国鉄問題を各方面から議論していただくために監理委員会等も設置されて、現在精力的にこの問題について御検討を願っているわけでございます。  したがいまして、我々といたしましては、十項目の実施をより一層確実なものにするために、各般の努力をいたしますとともに、この委員会等が提言されることが予想されます方策を踏まえて、さらにこの問題について精力的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  32. 沢田広

    沢田委員 借入金の内容は、資金運用部から四兆四千百七十八億、簡保から七千六百十八億、一般会計から千十一億、民間の借入金が五千七百四十七億、鉄道債券が六兆八千六百八十一億、あとそれ以外に資金運用部で五兆五百九十九億、こういうことなんですね。これらはやはり大蔵省を通らなければ借りられるものではないのでしょう。国鉄なり運輸省が勝手にやれるものではないですね。そういうことでしょう。それぞれ予算を組み、それぞれその分野を通じて出ているわけでしょう。それでいいです。そういう資金なんだから、大蔵省も、その当時から何とかしなければならぬ条件にあるということはわかっていたのではないかということを実は私は言いたかったので、お伺いしたのです。それはいいです。  そこで、私の調査では、これは二十四年から借入金がありますが、もう時間がありませんから、違っていたら言っていただきたいのです。昭和四十四年から五十八年度までで十一兆六千億、四十三年までに一兆九千億、ここで合計十三兆五千億という数字になっているのです。この以前のものと中身がわからないのでありますが、主な工事は東北新幹線に二兆八千億、東海道、山陽新幹線に一兆二千億、これに伴う車両が一兆七千億、線路増設が一兆二千億、踏切、公害対策が五千億、電化、CTCが四千億、建設の関連利子が九千億、その他三兆六千億、こういうふうに言われているわけであります。それから四十三年度までで一兆九千億、今読み上げた合計は十二兆三千億であります。それ以外に改良工事が九兆六千億というのがあります。要すれば二十二兆の内訳を明らかにしてもらいたい。これは別途でいいのですが、いかがでしょうか。こういうふうな形のもので、二十二兆の内訳は何なのか、その内容をひとつ明らかにしていただけないだろうか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  33. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 ただいま先生からお話が出ました数値は、多分五十八年度末におきます状況ではなかろうかと思っております。私ども、その後五十九年度予算を前提にいたしまして、五十九年度末では大体どういうことになるであろうかという数値を持ってございます。細かい点については後ほど差し上げることにいたしたいと存じますけれども、ただいまのところでは、今お話に出ましたように、赤字に伴う累積債務が十二兆四千億円でございます。このうち五兆三千億円につきましては、五十年度、五十四年度末におきまして棚上げをいただいております。増強改良工事等のために要する資金のための借入金は九兆七千億円ということでございます。内訳につきましてはまた後ほどお手元へお届けしたいと思います。
  34. 沢田広

    沢田委員 この増強改良工事の中身はなんですか。どういう種類のものか、一、二例示をしていただけますか。
  35. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 このうち例えば東北新幹線の建設に伴うものが二兆九千億円ございます。それから東海道、山陽新幹線、これは改良工事を含めてございますけれども、一兆三千億円。それから、大都市付近の線増も含めて、線路増設全体として一兆三千億円。これは内容の一部でございます。
  36. 沢田広

    沢田委員 それから、調査によりますと、これは五十八年度末でありますが、長期債務二十兆三千億の中で赤字による資本不足六兆八千億、こういう言葉で表現されている中身は何ですか。私の言っている意味がわかりませんか。わかったらお答えいただきたいと思います。
  37. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 ただいまの六兆八千億円でございますが、予定といたしましては、五十九年度末になりますと、これが七兆九千億になる予定でございます。これは償却前の赤字相当部分でございますので、いわゆる運転資金に要しております借入金であるということになろうと思います。
  38. 沢田広

    沢田委員 そこで、主要な内容が公共的なものであるということで、若干途中の経過を省いて先に行ってしまうのでありますが、私が試案としてつくったものでは、これは大蔵省の方で聞いてもらいたいのですが、国鉄が自前でやっていくのには三兆円でやっていかなくちゃならぬ、運賃収入が三兆円ですから。私は、できれば三兆円の増収を図るように努力をしていただきたい、こういうふうに思っている一人であります。これはそちらにも差し上げでありますが、もしも三兆円の中で組んだとすれば、人件費を大体幾らに見る、退職金を幾らに見る、それから追加費用を幾らに見るということで細かい数字を挙げたわけであります。そのかわり学割、身障者割引、追加費用それから特別退職手当の費用、三千億の踏切改良、僻地のバスの補助金、こういうものは国の段階予算を見てもらえないかという発想なんであります。そのかわり国鉄の借入金は今後一切認めない。あくまでも運賃収入で賄っていく。そのかわり今申し上げた公共負担に属するものについては国が考える。細かい数字は別です。考え方の問題として、そういう方向で大蔵省なりが考えられないか。  今の国鉄にとっては、そういう考え方が必要なのじゃなかろうか。その中でどういうふうな方法をとっていくかの処方は別です。何だったら本社も三十何階ぐらいのビルに建てかえるなり何かするなりして貸して、自分の費用は持ち出さないで済むようにするなり、あるいは売るなり、方法を考えてみた方がいいくらいだ。今はなりふり構わないで何とかしなければ、国民の前へ顔見せできない。国鉄もこれだけ頑張っていますという姿勢を国民の前に示さないと、累積赤字を赤字国債に切りかえるにしても何にしても、諸般の状況はなかなか許してくれる状況にはないだろう。それには、国鉄が真剣な態度で、これだけ努力しているんですが、いかがでしょうという姿勢を示さないと、なかなか理解してもらえないのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。細かい数字の方は後にしましたけれども、そこのところ、その姿勢なり考え方なりをお聞きしたい。  梅田も聞きました。錦糸町の土地の売買の話も聞きました。いろいろそういうことをしてもたった千六百億。これじゃどうにもならぬ。この二十二兆の中で国鉄が純粋に必要な金、返済しなければならぬという金は、私の方の計算では四兆四千億というふうに二〇%に見たわけであります。この数字の違いは今後別問題といたしまして、二十二兆のものを全部そのまま国鉄が返せる能力もない。しかし、このままやったんでは、人を削ったってゼロにしたってどうにもならない。どうにもならないんですから、例えば二十兆を六%の金利にしたって一兆二千億。三兆円の運賃収入の中で一兆二千億払って、それはどんなにやってみたって採算が成り立つはずはない。ですから、成り立つためには長期債務の問題を何とか片をつけて身軽にしてやって、そのかわり自分でも自助努力をしなさい。やはりこういうむちとあめじゃないですけれども、その両方は必要な条件になっているんじゃなかろうか、こういうふうに思いますので、その点ひとつ国鉄当局から聞きたいし、今の考え方について、再建委員会も来ておられると思いますから、要すれば、三兆円で賄うものは何であるか、それから公共的に割引をしている学割、身障者割引、それから地方ローカル線などの赤字の問題、本四橋の問題、青函トンネル、東北新幹線、これで千七百億も赤字をつくっているわけですから、そういうものについてはやはり国がきちんと補てんする義務を持つ、そして長期債務については財産問題と兼ね合いを持って処理していく方向をとる、こういうような一つの発想の転換をしなければこの危機を乗り越えられないんじゃないか。大蔵省が管財人になったみたいな格好で、財産の処分は大蔵省がやっていくということで、全部国有地に切りかえるなら切りかえてもいい、そして使用料をどうするかの問題は別問題としてやる、こういうことが一つの方向として考えられるのではないのかという気がいたします。これは国鉄の方から、監理委員会の方から、運輸省からとそれぞれ簡単に方向づけについて、提案に対してひとつお答えをいただきたい。
  39. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 先生御提案の内容について詳しく検討させていただいたものではございませんけれども、先生のお考えは一つの御見識なんではないのかというふうに思います。あくまでもこの国鉄の財政の再建という問題は国民のお力によって解決する、それがないと解決できない問題だと思いますし、そのためには国鉄みずからの自助努力というものを国民の皆様に評価をいただかないと難しいということは、十二分に認識をいたしております。  そこで、今の会計的な問題でございますけれども、実は私どもも、従来のように国鉄を一本の会計内容でとらえておりますと問題の所在がどうも非常に不明確だということでございまして、今の経営改善計画につきましても若干不十分な点はございますけれども、いわゆる幹線という部分と地方交通線あるいは特定人件費、特に後の二つの区分につきましては国鉄だけの努力では——当然努力は必要でございますけれども、それのみをもってはどうにも解決ができないということで、三つの分野に分けて、国鉄の経営努力の結果というものが少しでもはっきり出てくるようにということを願いまして試算表をつくったわけでございます。そういう趣旨からいたしますと、やはり構造的な部分の措置というものはどうしても明らかにして対処していく必要はあると考えているわけでございまして、先生の御提言もそういう線に沿ったものではなかろうかと私ども考えるところでございます。
  40. 秦野裕

    ○秦野説明員 ただいま先生から御指摘ございましたように、三兆円の収入で人件費その他の経費が賄えるという形になることがもちろん一番望ましいわけでございます。ただ、いずれにしましても、収入に対して現在国鉄の人件費は、例えば特定人件費を除きましても六割五分以上というような形でございますから、当面の問題としましては、極力そういった人件費なり物件費なり諸経費の節減ということに努めていく必要があろうと思っております。  それから、先生もう一つ指摘がございました構造的問題あるいは長期債務の問題は、おっしゃるとおり非常に重要な問題だと思いますし、現在政府でも構造的問題を中心にして一定の助成をしておるわけでございますが、二十二兆という非常に巨額の長期債務でもございますので、この点は監理委員会において今抜本的な検討が行われております。その結果を尊重して適切に対処していきたいと考えております。
  41. 佐藤孝志

    佐藤説明員 今お尋ねございました国鉄の長期債務の問題につきましては、国鉄再建監理委員会におきましても、国鉄の事業再建を図る上でどうしても解決しなければならない重要な課題であると考えております。ただ、この問題につきましては、これだけを単独で処理するのではなくて、国鉄の赤字体質を改めるための抜本的な対策と一体的に取り扱うことが必要だと考えておりますので、当委員会としましては、今後効率的な経営形態の確立などの基本的な問題とあわせまして、また各界のいろいろな御提言、御意見を参考にしながら総合的に検討いたしまして、今後具体的な方策をまとめてまいりたいと考えております。
  42. 沢田広

    沢田委員 ちょっとあなたの今おっしゃった言葉で、国鉄を効率的にするということは、要すればもうけるという意味ですか、採算を合わせるという意味を効率的と言っているんですか。その効率的と言った中身だけ、あなたのところではどう考えているのか、効率的というのは何を言おうとしているのか、ちょっと言ってくれませんか。
  43. 佐藤孝志

    佐藤説明員 効率的な経営と申しますのは、鉄道の特性を発揮し得るような経営形態、そういう経営ということで考えております。
  44. 沢田広

    沢田委員 それでは経理とか収支とかいうことはどっちでもいいという意味ですか。あるいは公共的な面の方をウエートを高く見るんですか。ただ効率的と言った意味の中身を、だれのために、何が効率的なのか、その主語をはっきりしませんとわからなくなってしまうので、もう一回ひとつ。そういう答えが出てこないから困る。
  45. 佐藤孝志

    佐藤説明員 先ほどの答弁、ちょっと言葉不足だったかと思いますけれども、鉄道の特性を発揮し、かつ経営的に見ましても収支の面から見ましても問題がないような、そういう経営というふうに考えております。
  46. 沢田広

    沢田委員 大体そういうことだと思う。  そこで、大蔵省、せっかくおいでになっておるのですから、私は思い切って港湾や道路と同じように財産は全部国有財産に切りかえて、行政財産と普通財産にかえて、二十二兆円の担保として、今ここにある数字は帳簿価格六千八百九十九億円、これは昭和三十年の評価額ですから十倍にすると、三十年ですから土地はもっと上がっておりまして六百八十兆ぐらいになるのじゃないか。少なく見ても六十八兆ぐらいになる。二十二兆円の累積赤字にしてみればそう損はない取引じゃないか。取引じゃないかと言うと恐れ多いんですが、国としてもそう損害を与えたということにはならない。やはりここで身軽にするためには、二十二兆円はそのかわり国民の皆さんに御負担をいただく、そして公共負担は公共負担として国がきちんと整理をする、そのかわり、今後国鉄運営については、民間資金を借りる借りないは別にして、いわゆる支払い能力のない借金はさせない、こういうことが基本だと思うのですね。支払い能力のない借金はしない、こういうことで国鉄が立ち直り得るように処置をしていかなければならぬのではないか。  これは大蔵省から見た国鉄再建への視点という立場で、私は財産は全部空港と同じように国の所有にして、国が管財人になって、不必要であるかどうかの判定も任せますから、必要でない土地は、売るものは売る、処分するものは国民の財産として処分する、こういうことで、当分の間はその形態を継続する。で、再建ができるような状況になって、それであとどうするかはまた相談をすればいいんではないのか、こういうふうに思いますが、私も具体的に言いにくいことまで言って提案しているわけでありますから、ひとつ率直に大蔵省としての見解もお聞かせいただきたい。
  47. 平澤貞昭

    平澤政府委員 ただいま委員の方から、大変幅広い観点から問題点の御指摘あるいは御提言をいただいたわけでございます。大蔵省の方といたしましても、国鉄をいかに立派に再建していくかという点では全く委員と同じ気持ちでおりますので、今のような御提言を踏まえ、かつまた国鉄再建監理委員会で現在鋭意この問題について検討しておられますので、その提言をも十分に念頭に置きながら、いい方向へ持っていくように我々としても努力してまいりたいと思います。
  48. 沢田広

    沢田委員 それをよく大蔵大臣と——監理委員会、わかったかね、今大蔵省の言っている意味を。監理委員会の方で何かなまじっかなことをやられると余計混乱を起こすもとになるので、素直にいけばこういう形になると思うのですよ、余りいじくり回さなければ。やっぱり結果的には職員にやってもらわなきゃだめなんですし、また国民に理解を求めなければだめですし。ただ幾人かの人間でこうだああだということで粘土細工のようなわけにはいかないわけですから、やはりこういう問題は天下の大道を歩んでいくという方法が必要だと思うのです。ですから、その問題においては国民に理解を求め、国鉄が自分自身でいわゆる裸になって国民の前にわびながら、これを再建するために努力しますという決意を表明をする、国は国においてやはり適法な処置を講じて再建のために処置をする、そういうそれぞれの責任分担を明確にすることが再建の道だと思うのですね。ですから、そういう意味においてはひとつ再建監理委員会も、今言われたことを大蔵大臣にもちゃんと言っておいてくださいよね。  もう一回聞くことになろうかと思います。これはまだ半熟の卵にもいかないので、本当はもう少し聞きたかったのですが、次の問題にいかざるを得なくなってきたので、どうも残念なんでありますが、要すれば一般会計と公共会計、それと累積債務会計に分けて、公共会計大蔵省に責任を持ってもらう——さっきの東北新幹線の赤字は三千六百四十六億です。これは間違いでしたから直してください。そういう学割、身障者割引、東北新幹線、本四橋、青函トンネル等々の、いわゆる国の命令によってやむなく赤字が出てきている、そういうものについて国鉄に負担をさせることは間違いである、そういうことで、きちんと分けていかなきゃならぬだろう。そういうところをきちんとしながら、累積赤字は土地と等価交換ということになりますが、結果的にはそういう形で、国の財産としながら、累積債務の肩がわりをしながら、自前で運転できるという形をとっていくように配慮を願いたいと思います。細かいこれからの詰めはまた後の、別の機会にいたします。  もう一つだけ、せっかくおいでをいただいておりまして、申しわけございません。保険の問題でありますが、自賠償の値上げがこの前新聞にも出ておりましたが、自賠償の保険というのは、我々にとっては実は不可解きわまる話だというふうに考える。交通安全対策特別委員会でしばらくやっておりましたから、大分この問題については大蔵省の保険の方にも食いついてはいるのでありますが、健保が改正されまして、今度は自賠償による保険給付の方はそのまま野放し、こういう格好になります。今まででも自動車の医療請求は八倍掛け、十倍掛けというのが世間相場。次官、そういう話題を知っていますか。次官がそのことを知らなくちゃ話にならないですから、そこから聞きましょう。自動車保険の医療請求は八倍掛けから十倍掛け、こういうのが世間相場なんです。一般の医療機関でかかったものよりも大体八倍から十倍、これが自賠償保険の医療請求の実態なんですから、まずその御認識、試すとかなんとかいう意味じゃありません、失礼なことは考えておりませんから。次官がどういう御認識をお持ちになっているか。
  49. 堀之内久男

    堀之内政府委員 私は、数字的にはどれくらい高いか存じませんが、非常に高いらしいということだけはよく承知をいたしております。
  50. 沢田広

    沢田委員 いや、もう立派な御見識で、それは次官ですから、ここで何倍掛けだなんて軽率なことは、私だってその立場になれば言えないでしょうから、それはそうだと思うのです。しかし、世間相場よりもとにかくでっかい話になってしまっている、こういうことだけ御認識いただいて、安易に自賠償保険を上げるという形のものは、これはやはり避けていかなければならぬ。こういうものを上げますと、自動車保険が上がれば今度は石油税だとか揮発油税だとかガソリンだとか、いろんなそういうものに波及していくわけですね。ですから、今度の社会保険の値上げと同じように、もっと基本をきちんとして、ルールをきちんとしていって、もう一回自動車保険の値上げについては見直しをする、こういう姿勢が必要である、こういうふうに考えるわけです。  これは警察当局と運輸省においでをいただいておりますが、特に生命保険の問題についても、一番甚だしいのは、加害者もそらぞらしいのですね。加害者も、下手まごつくと人を殺しておいて葬式にも行かない、いわゆる代理屋が行って焼香するというぐらいで、自動車で人を死亡に陥れても何ら罪の感覚がない。今だんだんそういう傾向が強くなってきている。そしていわゆる代理屋さんが動き回っている、こういう形は皆さんの付近にもたくさんあると思うのですね。ぶつけた人は全然来ない、保険会社が来る、あるいは代理屋さんが来る。そして、亡くなられても葬式一切をそういう人たちがやって、下手まごつくと殺した運転手は来ない、こういうぐあいに道路交通のモラルが非常に乱れている。  それを助長するような自賠償の保険の値上げということは、より慎重に扱っていかなければならぬ。足りなくなったから上げればいいんだ、請求するものは勝手に請求する。いわゆる火事場泥棒式にいくような方向もなくはない。これは事務当局に聞いてもしようがない。時間の関係がある。でも、せっかく来てもらっているのですから、運輸省と警察、そういう情勢の認識についてまずどう判断をされているか。非常にアバウトな話になってしまったのですが、そういう情勢の認識について、僕の話がまるきりうそだと思って聞いているのか、やはりその辺の実態はそのとおりだから、何かしなければならぬ、そういうふうな気持ちでいるのか、その辺を含めてお答えをいただいて、最後に次官から聞いて私の質問は終わりたいと思います。
  51. 福島義章

    ○福島説明員 お答え申し上げます。  医療費の問題につきまして先生の方から御指摘ございましたけれども、自賠責保険の場合におきましては、社会保険の診療というものが大体一四%くらいで利用されておりまして、その他につきましては自由診療という形で行われている場合が多いという結果になっております。したがいまして、先生指摘のように、自由診療の場合は社会保険診療と違いまして一点単価が若干高くなるということで、社会保険診療の場合に比べまして単価といたしましては大体二倍くらいの状況になっております。  我々としましても、自賠責の保険事故がございました場合の医療の問題につきましては、いろいろと努力はしておりますけれども、必ずしも十分な成果が上がってないという面もあろうかと思いますので、引き続きこの件については努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  52. 加茂文治

    ○加茂説明員 自賠責保険の問題についてお答えいたします。  自賠責保険の収支は、自賠責の保険の保険料が昭和四十四年以来約十五年間ほぼ据え置かれております。また、この間におきまして保険金の支払い限度額が三回にわたり引き上げられました。また、査定単価も隔年ごとに引き上げられておるということ。それから三番目といたしましては、最近におきまして交通事故が急増しておる。このような事情を背景にいたしまして、単年度ベースで見ますと五十三契約年度から赤字に転じておりまして、この赤字幅は拡大傾向にございます。また、累積の収支額も五十七契約年度から赤字となっておりまして、五十九契約年度におきます累積赤字額は約四千五百億円に達する見込みとなっております。したがいまして、このような状況から、料率の引き上げを早急に行う必要があるというふうに考えておるわけでございます。  それから、先ほど先生指摘になりました医療費の問題でございます。この問題につきましては、先ほど運輸省の方から答弁がございましたが、我々としても、いろいろな問題についてチェックをいたしております。例えば診療費の明細書の義務づけを行うとか、あるいは自算会に医療費の調査部を設けまして、その出先機関である調査事務所において医療費調査担当者が診療費のチェックを行いまして、高額請求事案あるいは濃厚過剰事案と思われるものにつきましては、顧問医の助言を得ながら問題のある医療機関に照会する、あるいは改善の依頼を行うというような適正化に努めておりますが、今後ともこのような医療費適正化につきましては努力してまいりたい、このように思っております。
  53. 沢田広

    沢田委員 次官の前に、事故のモラルの問題。あなたの言っていることはマイナスの方の話ばかりで、プラスの面で自動車の車両もどんどんふえているのですからね、それから傾向的に馬力もふえてきているのですし、そういうことで、マイナス面だけの問題じゃないので、その点はもっと正確に答えてもらいたい。あなたの場合は官僚なのだから、プラスの面もあればマイナスの面もあるということで答えてもらわなければ、マイナスの面だけ並べられたのでは、何か保険を上げるための代理人みたいなことになってしまうじゃないですか。もっと国民的な立場答弁してもらいたいと思います。もう時間がないですから、それ以上言いませんけれども、あなたの方は慎重に対応してください。  これじゃもう一回やらしてもらうようにお願いしますが、最後に次官から聞いて終わります。
  54. 堀之内久男

    堀之内政府委員 先ほどからいろいろ答弁させていただいておりますが、私どもも、近辺で、交通事故の発生においては大変いろいろトラブルがあることも承知をいたしております。今委員から御指摘のありましたとおり、私は、やはり被害者と医療機関とのモラルの問題だ、こういうように思っております。こうした問題は、自由診療という立場にあるから、そしてまた全部が保険で賄える、あるいは加害者が全部責任を負うというような立場もありますので、そうした面で大変な支出になってきておるのだろう、かように存じます。  ただいま御指摘いただきました点を十分踏まえて、今後我々も十分勉強をさせていただきたい、かように考えております。
  55. 沢田広

    沢田委員 非常に良心的な御答弁をいただきまして、感謝を申し上げます。その威令が職員に伝わるように祈念し、また、時間を若干延ばしていただきました同僚に心からお礼を申し上げて、質問を終わります。
  56. 瓦力

    ○瓦委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時十三分開議
  57. 越智伊平

    ○越智委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、経済企画庁長官にも御出席をいただいて、当面する日本経済の今後の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  最初に、現在の日本の経済状況の現状認識ということを、企画庁長官と大蔵大臣からお伺いをしたいと思うのであります。  現在、日本はアメリカ経済と不可分な形で動いておるというふうに一般に考えられておりますが、私もその問題を否定するわけではありません。現在のアメリカ経済の最大の問題点は、何と申しましても財政赤字、異常な財政赤字がいろいろと論議はされておりますけれども、引き続き続いておるわけでありまして、その財政赤字に伴って実はアメリカの金利が非常に高くなっておる。急速な景気回復という問題が片面にありますし、クラウディングアウトその他の問題も出てきて、FRBとしてはどうしてもこの景気を長持ちさせるためには、インフレに陥らないようにするために引き締め基調で対応したいというふうであります。その結果はドル高となって、これがはね返って、貿易収支は赤字になり、経常収支はさらに大きな赤字を現在続けておるというのが、アメリカ経済の現状として認識していいことだろうと思うのであります。  日本はちょうどこれの裏側に当たるような格好で、まずアメリカのドル高、これがはね返って円安になる。円安になるということは、やはりそれだけ輸出環境がいいわけでありますから、貿易の黒字がふえ、同時にアメリカの金利高に伴って資本収支は実は大幅に赤字になりつつありますけれども、経常収支は依然として黒字基調が拡大をする。そうしてそういう中でようやくこの一—三月から景気が上昇に転じた、こういうのが現在の状態だと私は思っているわけであります。  そこで問題は、今のようなこのアンバランス、このアメリカの経常収支の赤字がだんだん拡大をし、日本の経常収支の黒字がますます大きくなるというアンバランスがそのまま進行するということは、アメリカと日本の経済関係において決して望ましいことではないのではないか。やはりこれに適切な対応をしながら調整をしていくことが、アメリカ経済と日本経済の両者がうまくやっていけるための非常に大きな要素になるのではないか、こういうふうに私は考えておるわけであります。  そこで本日は、後からずっと伺いますけれども、まず最初に、こういう現状認識について一体どういうふうにお考えになっておるのか、その現状認識に対する対応はいかにあるべきかという問題について、経済企画庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  59. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 日本の経済の一番大きな特徴は、貿易の黒字と経常収支の黒字が、この一月に政府が見通しておりましたよりもはるかに大きな黒字になっておるということでございます。まだ正確な数字はわかりませんけれども、相当大幅に一月の政府見通しを上回る、このように判断をいたしております。  それから第二は、民間の設備投資がやはり当初見通しよりもやや上回っておる、これが一つの特徴であろうと思います。  それから第三は、個人消費が政府見通しを下回っておる。ふえてはおるのですけれども、その伸びが弱い、こういうことであります。実質国民所得がふえないものですから、なかなか個人消費が伸びない。したがって、GNPの六割弱を個人消費が占めておりますので、内需全体としての力が大変弱い。ここが大きな特徴であろうと思いますが、いずれにいたしましても、ことしの我が国の黒字というものは、世界の歴史にかつてなかったような巨額の黒字でございまして、これがずっと続くということになりますと、日本の巨額の黒字が引き金になりまして、世界に保護貿易的な傾向が再び頭をもたげてくるのではないか。そうなりますと、世界全体に大変迷惑をかける、こういうことにもなりますので、この点は私どもも大変心配をしておりまして、もう少し内需を拡大いたしまして、バランスのとれた経済成長に持っていくことはできないものだろうかということを目下研究しておるところでございます。
  60. 竹下登

    ○竹下国務大臣 堀委員の、いわゆる日米両国の今日の経済情勢の分析、これは私もそう考え方が違っておるとは思っておりません。  それで、私どもなりに考えますのは、少なくとも五十八年度三・四と言っておりましたのが三・七。ただ、私どもが最初考えておったのと、内需と外需の比率は大変な相違がありまして、一・九と一・八。わずか内需の方が上、こういうことでありますが、当初からいたしますならば外需の方は三倍ぐらいになっておるわけでございますから、そういう点は輸出に支えられた状況であったという認識は私どももいたしております。  それで、大きな黒字をもたらすのは保護主義の台頭になりかねないというおそれは、私どもも十分あります。と同時に、この間の、通産省でございましたか、貿易白書をちょっと拝見いたしましたときに、私どもがかねて考えておって、まとまって役所として整理したものじゃございませんけれども、今日、他の先進国あるいは中進国から見た場合に、資本提供国としての日本の位置づけというものが、新しい感覚でひとつ注視されておるではないか。その資本提供国としての我が国のあり方というものについては、やはり私どもは、世界経済全体の中でどう位置づけていかれるべきか。それが、提供国先が非常に多様化しておればまことに結構だと思うのでありますが、どちらかといえばアメリカにシフトしておるという形になっておるところに問題があるだけに、どのような対応策が必要かというようなことは、やはり折々私どもとしても勉強していかなければならぬ課題だという事実認識はございます。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 今お二人から現状の認識について伺いました。そうして企画庁長官からは、この最近の情勢について、やはり問題は、貿易の問題について何らかの対応を考える必要がある、それには内需が拡大することが一つ方法だ、こういうお考えのようであります。大蔵大臣の方は、ある意味での資本輸出といいますか、そういう面で少し問題を発展をさしたらどうかというお考えのようであります。  そこで、実は私は、このアメリカとの関係で、それではアメリカが今後、今のままの状態でいくかというと、必ずしもそうではない。恐らく、大統領選挙が終わりますと、アメリカも何らかの変更をしなければ、こうどんどん貿易赤字、経常収支の赤字がずっと引き続いて、アメリカ経済が安定的に成長できるかというと、そうはいかないという認識は、これはもう、この前やめた経済諮問委員長もそういう考えのようでありますし、ボルカーさんもそういう考えのようでありますから、当然何らかの手がここで打たれるようになるだろう、こう考えます。その結果、一九八四年は順調に経済は拡大するでありましょうが、一九八五年になるとやや収縮ぎみに動いていくというふうに見るべきではないのかと私は今見ておるわけであります。  しかし、日本の方は、少なくとも潜在成長力というものは十分、五%程度あるわけでありますから、ここで輸出が減ってきても、内需にこれらの部分がシフトして、成長が持続的に維持されることが、日本国民生活にとっては極めて重要な課題だ、こういう認識を持っておるわけでありまして、そのためにこそ私たちは、五十九年財政、六十年財政というものを、アメリカ経済の変化に対応できるような財政運営、経済運営にしていかなければまずいのではないか、こういうのが私の今の認識でありますが、長官、いかがでございましょうか。
  62. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 アメリカの経済の動向につきましては二説ございまして、アメリカ政府は、ここ数年景気は持続できる、こういうことを言っておりまして、ことしはとりあえず上方修正をしております。しかし、民間その他では、早いところは、来年以降落ち込むのではないか、遅いところでも、再来年以降落ち込むのではないか、こういう説が多いように見受けます。アメリカ政府の言い分を聞いておりますと、最近は民間の見通しは当たらないのだ、アメリカ政府の見通しがよく当たるのだ、こういうことを言っておりますけれども、ただ、選挙の結果、政策が変わる可能性もなしといたしませんししますから、そこらあたりはよほど慎重に展望する必要はあろう、このように思います。  特に、先ほど輸出が大幅に拡大をしておる、経常収支の黒字も大幅に拡大しておるということを言いましたが、その対象が全部アメリカでございまして、アメリカ相手の貿易が拡大しておる、こういうことでございます。したがって、アメリカの経済が弱くなりますと輸出の方も当然減少をいたしますので、そうすると日本経済が大幅に落ち込むということにもなりまして、それでは困りますから、やはりそういう場合も想定をいたしまして、ある程度アメリカに依存せざるを得ませんけれども、アメリカの経済が落ち込んで日本経済がその影響でがたんと落ち込んでしまう、こういうことはできるだけ避けなければならぬ、このように思います。そのためから考えましても、やはりある程度内需中心の経済成長ということは望ましい、でのように考えます。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 今大蔵大臣はちょっと御用がありまして外しておられましたが、要するに私の今の認識も長官の認識もおおむね、時間の差はこれはわかりませんけれども、このままアメリカ経済がどんどん拡大するというのはやはり無理でありましょうから、やがては必ず横ばいになり、横ばいが少し下り坂の傾向になるということは、自由主義経済の中では避けられない循環の一つの過程だと思うのであります。そこで、要するにそうなったときに日本は、それじゃアメリカが下がれば日本も下がっていいのか。そうはいかないのでありまして、私は、日本の場合には十分潜在成長力があるので、この力を活用することこそ政治の中における経済政策の大きな部分である、こういうふうに考えております。  そこで、引き続きちょっと長官にお伺いをいたしますが、最近民間もかなり経済見通しの修正を出してまいりました。特にこの一—三月というのは、これは私どもも非常に興味がある計算が出てまいったわけでありますけれども、実質国民総生産で見ますと前期比一・八%というのは、少なくとも瞬間風速で七・二%・の成長率を実はこの一—三月はやっておるわけでありまして、その後の鉱工業生産やその他の出荷の状態等をずっと見ておりましても、この一—三月の状態は、どうも四—六も引き続き拡大路線の上に乗っておるような感じがするわけであります。民間の七社が出しております資料を平均してみますと、当初実質成長率で平均四・五%になっていたのを、今回五・一%に〇・六%上方修正しました。名目では六・三%を六・七%で、〇・四%でありますが、実質では実はかなり大きな修正をして発表をいたしておるのであります。経済企画庁としても、本年度まだ始まったばかりでありますから、そう急激な対応は難しいかとは思いますが、長官の感触としては、五十九年度の成長というのは、やがては修正をなさることは間違いがないにしても、どの程度の成長を感触としてお持ちかをちょっと伺いたいと思います。
  64. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 一—三月の成長は、うるう年でございますから、年率に換算いたしますとやや低く見る必要があろうかと思います。私どもは、一—三月の力は、年率に直して大体五%台の成長ではなかろうかと思っております。四—六の数字はまだわかりませんけれども、先ほど申し上げましたように、貿易が非常に伸びておりますし、設備投資もやや強調であるということから、この勢いがこのまま持続いたしますと、相当高い水準の成長が可能になるのではないか、こういう感じがいたします。正確なことをまだ申し上げられませんけれども、五%を若干超える可能性もある、このように考えております。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 私が今ちょっと申し上げました各研究所等の平均値も、実は実質で五・一%と言っておりますので、私も大体ここら辺だろうという感じがしておるわけであります。  そこで、これはさらに難しくなるのでありますけれども、五十九年度が五%程度やや上目の成長になったときに、六十年度というのは五十九年度の経済運営が非常に関係をしてくる。さっき申し上げましたように、アメリカの状態には変化が起こる予測があるけれども、そのまま貿易がどんどん引き続き拡大をするというのは無理かもわかりませんが、それにしてもそんなに経済条件の急激な変化はない、こう考えていきますと、五十九年度に対する我々の今後の対応によって、六十年度経済も五%程度少し上向きの経済成長を確保することはそう困難ではない、私はこう考えておるのでありますが、長官はいかがでございましょうか。
  66. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政府は昨年の八月に、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものを明らかにしておりますが、それによりますと、一九八三年、昨年から一九九〇年、昭和六十五年までの八年間、平均四%成長をする、こういうことを目標にしておりますが、その場合に、条件の悪いときには二、三%成長しかできませんが、条件のいいときには五、六%成長ができる、そしてその平均が八年間四%、こういうことだと考えます。したがって、幸いに、ただいまのところは世界情勢の条件がいいわけでございますから、こういうときには、平均よりも相当高目の成長が十分可能だし、またそれをしませんと平均の四%にはなりません。そこで、ことしに引き続いて来年も、平均より高目の成長が望ましい、このように考えております。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 私も今の長官の御意見と全く同感なのでありまして、要するに経済循環の上り坂にあるときには、運営がうまくいけば、この上り坂の惰力を十分に活用しながら、できるだけ高い成長の方に下からてこをかけていく、それが可能な範囲でてこをかけるということが、私は経済運営についての非常に重要な課題だ、こう考えているわけであります。  そこで、仮に今の実質成長率を、五十九年度を丸くしまして五%としましょう。六十年度も丸くして五%、こうしたときに、税収は名目で出るわけでありますが、最近は物価も非常に安定しておりますから、そういう意味で税収は一体どういうふうになるか、ちょっと大蔵省の方から答えていただきたいと思います。
  68. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十九年度の税収につきましては、先般五十八年度の決算の概数を発表させていただいたわけでございますけれども、額にいたしまして、予算に対しまして約四千五百億強の税収増が見込まれる状況でございます。ただ、この税収増の主要な部門を占めておりますのは源泉所得税とそれから法人税でございますけれども、それぞれ子細に分析いたしますと、いわゆる経済基調の上向きかげんを反映した部分と、すべてその部分を読み取るわけにはいかないという部分もございまして、現時点におきましては、経済成長率についての見方はいろいろあるかと思いますけれども、私ども、目前に控えております年度の税収の見積もりというのは、あくまで税目別の積み上げによって見るべきであるという基本的な立場をとっております。そういたしますと、これからの税収動向を大きく左右いたしますのは、いずれにいたしましても五十九年度、六十年度とも法人税収であるということでございまして、五十九年度につきましては、少なくともマクロのGNPの伸び率、いろいろの御議論はあるにいたしましても、今の時点では私どもは、五十九年度私どもが予算で見積もりました税収の見積額はそう過小ではないという見解をとっておるわけでございます。  そこで、それを土台にいたしまして、六十年度一体どうなるのかということでございますが、既に「中期展望」でお示ししておりますのが、五十九年の予算額から七・一、二%の伸び率でございますから、まあ今の委員の御指摘ではGNP成長率五%、五%という前提の御議論でございますけれども、我々としては、六十年度の「中期展望」でお示ししておりました数字、あの額のやはり前後ぐらいに落ちつくのではないかということでございます。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 まだ年度が始まったところですから、そうあなた方も甘い観測ができるとは思っておりません。  そこで、ちょっと企画庁長官に量初にお伺いして御退席をいただきたいと思うのですが、今主税局長は、五十九年度も大体見通しどおり、六十年度も七・一%ぐらいというふうに見ている、こういうことでありますが、私は私なりの試算をしてみますと、どうも当年度で七千億ぐらいは現在の税収見積もりよりはふえるだろう。そうして六十年度は、今私が申したような前提ならば一兆二千億円ぐらい、そういうふうに増加はしてくる、こういうふうに私なりの計算をしてみておるのですが、仮にここで増収が出たときに、増収の出るのは十月ごろになれば大体見通しが立ってくると思うのでありますが、そのときに、さっきから私が申し上げておるように、より高い成長を維持するためには、これを、行革審でありますか何かでは、増収があったら全部赤字国債の償還に充てろ、こういうことのようでありますが、私は、財政再建というのは日本の大きな経済サイクルの中のごく一部分の問題であって、それがすべてで、国民生活やあるいは経済の運営が可能なのに、その可能性までも否定しようというやり方は適切でない提案だ、こう見ているわけであります。  最近、私どもと同期の天野光晴さんがこの間、土光さん以下、瀬島さんたちとお会いをしたときにこういう発言をしたということをこの間私は聞きました。皆さんは、我々と一緒にあの世界大戦に参加をされた方々です。あの世界大戦を起こしたのは何か。あれは当時の軍部が政党を無視し国会を無視して、そうして自分たちの意思を貫いた結果あの戦争が起こったんだと自分たちは認識しておる。あれこそ、まさにファッショである。しかし今や行革審というのは、確かに答申をされるところまでは我々も当然だと思うけれども、その答申の実行を政党や国会に迫るというやり方は、あのときの軍部と変わらないんじゃないですか、まさに行革審ファッショではないですか、こういうことを私は土光さんや瀬島さんたちの目の前で言った。それについては何一つ答弁はなかった、こういうふうに天野光晴さん言っているんですね。私は同期の政治家でありますから、いや天野さん、なかなかあなたの言うこと筋が通っておるよ。要するに政治というのは、国民の負託を受けた国会の私どもが、そうして政党が責任を負っておるのであって、言うなれば、皆さん方はそういう意味で答申をなさることは私はそれなりに意味があると思うけれども、その答申の実行をやるために一々介入してこられるということについては、私も天野さんと全く同意見なんであります。  そこで、経済企画庁長官は、本年度仮に七千億自然増収があったと仮定をした場合に、それを一体どういうふうに使うことが五十九年度の財政をさらに拡大する、言うなれば補正予算でそれを実行に移すという意味でありますけれども、そうして同時にそれは全部をどうするかということではありません、お考えは、そのうちの一部はこういうふうにしたらということでありましょうが、補正を組んででも五十九年度の経済を高めに運営しながら六十年にこう連ねていくということが、今日のこの時点での我々の問題認識として重要なことではないか、私はこう考えますので、その点についての長官のお考えを承って御退席をいただきたいと思います。
  70. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど私は、もう少し内需の拡大が望ましいということを申し上げましたが、内需の拡大を考えます場合に、一つは、先ほども個人消費の問題に触れました。所得がふえないというところに大きな問題点があるということを言いましたが、それからもう一つは、やはり我が国は貯蓄過剰という言葉がよく言われますけれども、これはある意味では投資不足、こういうことでもなかろうか、こう思うのです。投資が不足するから金が余る、こういうことでなかろうかと思いますが、投資ということになりますと、民間の設備投資と社会資本投資に分けられると思いますが、この社会資本投資につきましては、今十五の五カ年計画がございます。道路、港湾あるいは下水その他、合わせて十五の五カ年計画がございまして、それらは政府が正式に決めまして既にスタートしておるものでございますが、その計画が非常におくれておる。政府が正式に決定をして発表したわけでございますから、いわばこれは国民に対する公約だと私は思っておるのですけれども、これが大変大幅におくれておる。  そこで、最近公共事業の拡大とか社会資本投資の拡大というのは、むしろこの十五の計画を早く軌道に乗せなさい、経済の状態が悪いときには万やむを得ないけれども、経済や財政の状態が幾らかでもよくなれば早くこれを軌道に乗せるべきではないかというのが最近の議論ではないか、私はこのように考えております。したがいまして、自然増収が出るとか出ないとか、そういうことにかかわらず、投資不足というこの状態から考えまして、やはり民間の設備投資をもう少し拡大をする、それから社会資本投資をもう少し拡大をする、そしてこれを内需振興の大きな柱にする、こういう政策が大変望ましい、このように考えております。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、御予定がございますでしょうからこれで御退席をいただいて結構でございますが、大臣の御発言は私もおおむね同感でありまして、ともかくも潜在成長力を引き出して、そのことが国民生活全般に対する問題で、要するにパイを大きくしない限り問題は解決しない。そのパイをどうやって大きく維持していくか。そうして、財政に余り大きな負担をかけないでやっていくということを前提に考えれば、私は今の長官の御意見に賛成なのであります。どうぞ御退席いただいて結構でございます。  そこで大蔵大臣、今の経済企画庁長官の御発言を下敷きにしながら、先般、健康保険法の改正案で実は合同審査にも出席をいたしました。たばこの法案で、当委員会で議論もさせていただきました。要するに私がしょっちゅう申し上げることでありますけれども、私たちのこの社会というのは、これは人間の社会でありますから、人間がいかに幸せになるかということが政治の基本的な目的でなければなりません。  同時に、私が今第二臨調、行革審の問題に触れましたのは、どうも今いろいろな政治の問題というのが非常にミクロの方に向いて、マクロで物を見るという感覚が非常に薄れているのではないのだろうか。政治の問題について、国家百年の大計という吉葉が日本にありますね。国家百年の大計ということは、五年、十年の問題ではなくて、要するにこれからの日本民族の将来に向けて、その健康に向けて、百年の大計を考えながらそれを進めていく、それが当代の政治に携わる者の責任ではないのか。ミクロの、赤字国債が幾らになったとか、幾ら減らしたからよかったとか——ちっともうまくいっていませんね、二兆円ずつ減らすとか言ってみたけれども。そうしたら財政ギャップがどかっと出て、また国債の発行をするとか。要するに経済は生き物ですから、その生き物を今の第二臨調的構想によって、ともかく数字的に抑え込もうとしてみてもうまくはいかないのでありまして、もっとナイーブに、経済の持っておる特性を生かしながら政治の問題というのは考えなければいかぬのじゃないか。  その中で非常に重要なのは、これは大臣、我々人間は空気がなければ第一生きていられないのです。空気の中から酸素をとらなければ生きていけない、これは第一ですがね。二番目は大臣、何だと思われますか。これがなくては生きていけない二番目の重要な要素。
  72. 竹下登

    ○竹下国務大臣 空気の次は水であると思います。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 御答弁のとおり、実は水なのであります。我々は要するに水が切れたら命はなくなるものですから、今十分水を口からとれない者には点滴その他の方法で、昔からリンゲルというような方法で、新しい工夫が開発をされて実は命が保たれているわけですね。水なくして生きていけない。この水の問題を私は今日の最大の課題としてひとつ考える必要があるところに来ているのではないか、こういうふうに思いますが、大臣の認識はいかがでしょうか。
  74. 竹下登

    ○竹下国務大臣 水の問題というものは——空気というものは、これはいわば近代工業社会の中で汚染していく、それを防止するということだと思います。水ももとより汚染もございますが、したがってこれを浄化する、それはある意味においては公共事業の中でこれを論ずれば、上水道であり下水道である、こういうようなことじゃないかな。極めて常識的なことを申し上げて申しわけありません。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、申しわけありませんとおっしゃったですけれども、政治で一番大事なのは、私は、その常識的なことだろうと思うのですね。意外と常識的なことがなおざりにされて、何か専門的、特殊的なことが非常に重要視されるというのは、私は間違いだと思うのでありまして、今大臣がおっしゃるように、空気の汚染についてはいろいろ公害防止で努力をしてきておる。その次は、やはり今やらなければならないのは、私は実は水だと思っているのです。湖沼法という法案が成立をしたようです。しかし、その法案の背景になる財政の問題というのは極めて不安な状態ということが指摘をされておるわけでありますが、きょうは、ですからそういう問題について少し具体的に議論をさせておいていただこうと思っているわけであります。     〔越智委員長代理退席、中西(啓)委員長代理着席〕  そこで、私は自宅が兵庫県の尼崎市というところにありまして、これは琵琶湖からの水を引いた阪神上水道という水で生活をしておるわけです。ところが、最近御承知のように、琵琶湖の水が次第に実は汚染をされてきておる。それだけではなくて、この阪神上水道が取水をしておる淀川の水というのは、京都市の下水道も、浄化をしたとはいいながらここへ流れ込んでおるわけです。言うなれば、私ども大阪、阪神間、神戸に住む者は、この人口というのは四百万以上あると思うのですけれども、この四百万人は、京都市のし尿をこして飲んでいるということですから、これはちょっと東京の水のように、いろいろ、多少は汚染をした水もあるかもしれないけれども、これほどの水を飲まされておる地域というのは実はないのです。  それで、私はかつて財政制度審議会の桜田さんと御一緒にいろいろ話をしたときに、私が、早急にひとつ琵琶湖周辺に流域下水道をきちっとつくってほしい、そうしてそういう工場排水や生活排水は全部その流域下水道で受けとめて、それを京都の下水も一緒にしてひとつ海に流す処理をしてもらいたい、そうしてきれいな琵琶湖をつくることによって、このきれいな琵琶湖の水を京都市民も、それから大阪、阪神間、神戸の市民も飲めるようにすべきではないでしょうかということを申し上げましたら、堀さん、それは大変な卓見だ、私も財政に携わる者の一人であるけれども、自分はあの琵琶湖の北側の方に日清紡の工場をつくったが、これは水のきれいなところでなければ紡績事業はうまくいかない、しかし最近の琵琶湖の汚染は目に余るものがあります、堀さん、それは大変重要な問題提起でしたと言っていただいたことがあるのです。大変なお金がかかることですから、それが一遍にできるとは思いませんが、要するに、今のうちに手を打たなければならないそういう湖や沼が非常にたくさんあることは、もう大臣もよく御承知のとおりですね。  そこで、建設省の下水道部長に入ってもらっておりますので、さっき長官も五カ年計画はどうも十分にいってないということなんですが、簡単に、一体どういう形でこの下水道の問題が停滞をしておるのか、そこらの問題についてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  76. 中本至

    ○中本説明員 お答え申し上げます。  下水道整備計画は、昭和五十六年度を初年度といたします第五次下水道整備五カ年計画を発足させまして、この総投資額が十一兆八千億でございます。調整費を除きましても十一兆二千百億でございまして、この計画によりまして全国の下水道普及率が四四%、かような目標を持ちまして進めてまいったわけでございます。  しかしながら、途中段階におきます事業抑制あるいは下水道特有の特別地方制度によります。その償還がたまたまピークが参りまして、非常に事業費が落ち込みまして、昭和五十九年度末におきまして進捗率が五八・二%、そういう状態になりまして、この進捗でいきますと、もし仮に六十年度が五十九年度並みの事業費であるとするならば七〇%前後にしかならない。そういうことでございまして、私ども効率的執行とかいろいろなことをやっておりますけれども、いかんせん事業費不足のために、先生今おっしゃったような全国各地の湖沼あるいは河川等の汚濁防止がなかなか思うようにならない、そういうようなことでございます。  今後とも、六十年度最終年度でございますけれども、何とか事業費確保あるいは効率的執行のもとに全国の湖沼、河川等の水質浄化を図ってまいりたい、かように考えております。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、そこで今自民党の内部でも公共事業を拡大しろという声がありますね。私も今の公共事業というのは、民間設備は民間でやっていただければいいことでありますが、どうしても財政に関係しますから、そこにはおのずから最近の財政の状態としては厳しいものがあろうか、こう思うのでありますけれども、さっき私が申し上げたように、本年度自然増収の出る見込みというのは、大体十月を過ぎると九月決算の模様が明らかになってきますから、そこでさっきの主税局長答弁のように、法人税の趨勢がわかれば税収の見通しがかなり立ってくる。ですから、今からやることはやや無理があるかもしれませんが、少なくともこの後半で税収がふえる見通しが立ては、年末に通常国会の召集とともに補正予算を組んで、これらの公共事業の中で特に今の公共下水の問題というのは優先順位として一番上にしていいのではないか、こういうふうに私は感じているわけであります。  社会資本の整備についての世論調査というのを総理府広報室が調べておりますけれども、これを見ても、一番要望が多いのは下水道の問題だというのが、実はデータの上で明らかになっておるわけでありまして、国民も下水道の完備を望んでおるし、同時にそのことが国家百年の大計である水をきれいにするということに非常に重要なかかわりを持っていて、これは道路がおくれたからとかいうような問題ではない、私はこういうふうに認識をしておるものですが、ひとつその点についての大臣の御見解を承りたいと思います。
  78. 竹下登

    ○竹下国務大臣 あれは昭和四十五年当時でございましたか、この水道というものに対する大変な国民的要望と、それからもう一つは建設省内で真剣に検討をなされて、そのとき下水道の計画でございましたか普及率でございましたか忘れましたが、ゼロのところが佐賀県と私の島根県、こういうことでありました。当時私もそうかなという感じで見ておりました。それから下水道というものに対して国民の関心も集まり、ある種の進度を持って進んできたと思います。それが財政状況の中で、したがって総トータルが、公共事業二百四十兆でございましたか、そういう目標まで政府が置いておった時代ではございますけれども、それを百九十兆に下方修正して、今は、この「八〇年代経済社会の展望と指針」では公共事業の数字も上がっていないというのが実情でございます。したがって、この優先順位ということになりますと、当然のこととして下水道という問題が取り上げられるでありましょうが、私もその後五十一年に建設大臣をやっておりますけれども、やはり公共事業の優先順位ということになりますと、今は私は大蔵大臣で、ちゃんと建設大臣もいらっしゃいますし、そういうところでそのプライオリティーはお決めになるべきものでございましょうから、私からこれが一番だろうとか二番だろうとかいうことを申し上げるのは適当でなかろうと思います。  この間もわが党の中の議論を聞いておりましたら、言ってみれば水の通らない下水道というものは単なる側溝である、あれは水が流れてこそ初めて下水である、ダムというものは水がたまって初めてダムであって、水のたまらない間は単なる穴にすぎない、こういうような議論がありました。それから総理と政調会長のお話の中にも、いわば今日の概算要求基準は別として、九月以後大蔵大臣等々と綿密な連絡を行うべしという種の合意がなされたというようなことも、あるいはそういうことを念頭に置きながらお考えになったのではないかなというふうに私は推測をいたしておるところでございます。  したがって下水道というものは、恐らくこれは堀さんの御主張でもございましょうが、要するに他のものに比べればいわゆる用地費率の少ない公共事業でもございますし、景気そのものにもトタでつながるのではないかとか、いろいろなこともあり、また我が国のシールド工法も随分世界の水準の先端をいくぐらいなことになった。考えてみますと、私どもがジャン・バルジャンの小説を読みますとジャン・バルジャンは下水道に逃げておりますから、よその国には大変昔から下水道というものがあったのだなというような感じを持ちながら、ただ感想を述べただけで申しわけありませんが、そういう印象を持っております。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 確かに予算の問題というのは、私はかねて櫻内さんが政調会長のころに政審会長をしておりまして、要するに予算請負制という問題を提起をして、それが今日だんだんと、いわゆるシーリング問題の過程の中で各省の主体性が生かされるようになってきたということは大変結構だと私は思っているのです。そういう意味では、きょうは下水道部長しか出ていただいておりませんけれども、建設省内部でも、最も効率的な公共事業、要するに土地を取得する必要もないし、同時に工事そのものはすべてが、要するに今の大臣の、水が流れないのは下水道じゃなくて穴があるだけで、下水じゃありませんのでね。中途半端になったままでは、これは下水として国民生活に有効に働かないので、全国の自治体ではかなりの自治体の長が何年までにこうしますという公約をしておるというお話でありまして、私の住んでおる尼崎市でも実は市長が公約していますが、とんと公約どおりにはいかないわけでありますが、これは全国の自治体の長の皆さんも大変頭の痛い問題であろう、こう考えているわけであります。  きょうは自民党の出席が悪くて、委員長代行を含めてただ一人しか聞いてないというのだからこれは全くひどい、こう思うのでありますけれども、ともかくもこれは、私は与野党とかなんとかという問題じゃないと思うのですね。要するに、国民生活を向上させるためには、これは与野党挙げて取り組まなければならぬ重要な課題だ、こう考えておりますので、そういう意味では、主計局の次長も入っておられますから、今度の概算要求基準は基準としてそれはいいのでありますけれども、要するに、今大臣がおっしゃったように、基準の後にアローアンスがあるようでありますから、その際には、公共事業の中では、皆さんも問題認識としては国家百年の大計に基づいて、空気の次に大事な水を考えるという意味で、主計局の次長の答弁を求めておきたいと思います。
  80. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今のお話はじっと拝聴させていただきましたので、大変厳しい予算編成でございますが、そういう中で必要なところにはつけるというめり張りをきかせながら、予算査定をしてまいりたいと思います。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで今度はひとつ、けさの新聞にも出ておるのでありますけれども、大蔵省は概算要求基準に関連して補助金を削減をしたい、こういうのが報道されておるわけですね。私どももかねてから補助金の削減ということでいろいろと要求してきましたけれども、現在の補助金というのは、一つは法律による補助金であり、一つ予算による補助金でありますけれども、なかなかガードがかたくてこの補助金削減ということは前に進んでいないようでありますが、けさの新聞を見ますと、要するに法律の問題にも触れて補助金の削減をやりたい、こういうことのようであります。  私は、補助金を削減するのは大変結構である、こう思うのでありますが、その補助金の削減が赤字国債発行を減らすための穴埋めにだけ使われるのでは、国会はなかなかそういう法律的な補助金削減ということに簡単に合意ができにくくなる、私はこういうふうに感じるのであります。ですから、補助金の削減をして浮いた部分は、それに伴う事業にそれが生かして使われるという形になるのならば、自治体といえども、国民といえども、また私どもといえども、それがより合理的に効率的に、そこで浮かした資金が前向きに使われるということになるのならば、これは多くの皆さんの賛成するところになるのではないか、私はこんなふうに思うのです。ですから、補助金のそういう削減については賛成、ただ、それは条件つき。その条件は、それを単に赤字国債の穴埋めに使うということではなくて、前向き、効率的に、そうして自治体の要望する線の方向でこれが還元されるということを私は望んで、補助金の削減について賛成をしたい、こう思っておるのでありますが、大臣、この点についてはいかがでございましょうか。
  82. 竹下登

    ○竹下国務大臣 補助金、十四兆幾らでございますか、そうしますと、今堀委員おっしゃいましたように、法律に基づくものが約八割、予算補助が二割。これを今度別の角度から地方自治体を通して出るもの、これがまた約八割、そうでないものが二割。それからもう一つは、公共事業と文教、福祉、この三つの補助金がまたちょうど約八割、あとが二割。だから、そのものをくくってみました残りというものは大変少ないものになる。だから、補助金にもいろいろな補助金がありますだけに、いわば財源問題から考えましたときには、補助金を減らしたものを赤字国債の減額に充てるということではなく、赤字国債というものを減らすということは大前提の中にあって、補助金を含む総体を厳しく律することによってその中へ何とか調整して押し込めていこう、こういう作業を行うわけでございますから、この面の補助金は、切ったものをその同じ性格のものに新たに充当して、これを補助金として使用するということは、一律的には難しい問題じゃないかな。  例えば公共事業であったといたしますならば、これも、公共事業も直轄以外は多くのものが補助という形になっておりますだけに、いわば補助率等が変化して減ったものが、補助率によって浮いたものが、たまたま総体的な事業量のアップにつながるというような工夫はあるいはあり得るかもしれませんが、一般的にこの補助金の中で、生活保護も補助金でございますから、そういうものが仮に実行段階で落ちたものが同じ性格のところへまたシフトしていくというようなことは、あるいは技術的に難しい問題もあろうかと思いますので、一概に、はい、そうでございますというお答えはちょっとしにくい課題ではなかろうかと思います。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 私が言っておるのは、例えば公共事業のところで浮いたものは、それじゃ全部公共事業へ持っていけということを言っているわけではないのです。しかし、少なくともみんな取り上げてしまうという話では、これは縮小均衡になるだけでして、余りプラスはない。結局、問題は、自治体の方でそれだけ負担がふえる、こういうことになるだけですね。ですから、私は、そういう意味で、ただ単に国の負担を自治体にシフトするということのために補助金を削るということは、これは筋道としてはおかしいんじゃないかということなんです。だから、結果的には、その補助金が削られた部分は、自治体としてどうしても必要なものに使えるように何らかの道が必ず講じられるということならば、自治体側にもそう大きな不満はないでありましょうし、全体の地方財政と国の財政との関係においてもそう大きな問題はないと思うのですが、そこのところを補助金を削ることによって自治体にしわ寄せをするというこの発想は、これはやはり慎重を要するのじゃないだろうか。もし、多少そういうことが起こるならば、それは別途もう少し工夫があってしかるべきではないかと思うのです。  さっき下水道部長答弁をいたしました特別債の処理というものが導入をされたのですが、たまたま公共事業予算というのが逆に減らされる方向へ来たものだから、この制度は大変どうもうまく機能しない格好になったようであります。これが少しずつでも、例えば公共下水予算が伸びるという見通しが立つならば、私はそんな大きなことをやってはまずいけれども、少なくとも、この特別債の考え方というのは生かし方もあるんじゃないだろうか、こう思っておるわけなんです。財政当局でそれをちょっと答弁できますか。
  84. 平澤貞昭

    平澤政府委員 下水道事業につきましては、御存じのように昭和五十年度から特別の地方債を発行いたしまして、生の国費を一定量充てるとともに、それ以外は地方債で財源を調達してやっていくということで、事業量をずっと確保しつつ参ったわけでございます。そういう意味では事業量を確保できるという長所があるわけでございますけれども、これを長年やっておりますと、当然のことながら債務の方を返していくという部分がだんだんふえてまいりますし、その債務につきましては利子補給をしておりますので、これもまたふえてくるということで、しばらくたちますとそっちの方からの財源の制約が出てくるという問題もあるわけであります。したがいまして、この制度はそういう長所と、それから今申し上げたような制約もございますので、そういう中でできるだけ長所を生かしながらこれからも考えていくということではないかと思っております。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、地方が債券を出し、それは運用部の資金がその他でありましょうけれども、しかしそれによって事業が進捗して、言うなればさっき大臣もお話のありましたように、水が流れればこれは値打ちのあることでして、ある程度まで来ているけれども水が流れない下水道というのは、もう負担金取られ、いろいろしていて、住民にしても大変問題があるのです。ただそうだからといって、それを先送りにすればいいということではないのですけれども、公共下水がずっと伸びてきてこう下がってきた過程のところに今の債務が重なるものですから問題が難しいのです。やはり財政当局として、少なくとも国家百年の大計、そして人間にとって二番目に重要な水をきれいにするという問題認識に立って、少しずつではあっても伸ばしていこうという姿勢がとられるならば、これは六十年で第五次下水道整備計画が終わるわけですが、さっきから私が言っているように五十九年経済、六十年経済、六十一年経済と、何とかひとつこれから日本経済を五%程度の軌道に乗せていこうという見通しが明らかになれば、当然そういう社会資本の充実ということは重要な政策課題になってくる。そういう展望もにらみ合わせながら、最初にやったような安易なやり方ではないにしても、十分ひとつ建設省とも相談をしながら、自治省とも相談をしながら、非常にその下水道の完成を望んでおる、完成といったって全市が完成する必要はないので、ある一定のところを管渠を掘ってやってきたけれども、いつまでたっても水が流れないというのではこれは問題でありますので、単位ごとに問題が解決するような方策については、ひとつ主計局としても建設省と十分相談してやってもらいたい、こう思いますが、そういう点、大臣いかがでございましょうか。
  86. 竹下登

    ○竹下国務大臣 よくあることでございますけれども、私どもも反省しなきゃならぬのは、いわば新規箇所数を厳しく抑制しつつも、やはりそれを精いっぱい採択していく。そうすると限られた予算の中でございますので薄目に配分される。だからそれをある意味においては一つ一つ、これは水が流れた、では次はこの地域に水を流そう、そういう予算執行の上での工夫もやはり必要だと思います。ただ、公共事業が下水道を含むいわば景気のてことして使われた際には、勢い均てんにばらまくことによって、それが景気のてこだけの役割として考えがちな年も私はあったと思うのであります。恐らく今後私どももそういう重点施行といいますか、一つずつやっていくというようなこともまた考えの中には持たれることではなかろうかというふうに思っております。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、ちょっともう時間がありませんので主税局長にお伺いをいたしますが、電電公社が本日の本会議で参議院に送られることになりまして、新たに来年の四月一日から民営化の方向に、まだ参議院がありますが、進む模様であります。この問題について、新聞が何か電話利用税の問題についてまた報道しているようであります。国税としては、この問題については過去にいろいろな経緯もありましたので、検討課題とはしておられないだろうとは思うのでありますが、ちょっとひとつ主税局長から明確な御答弁をいただきたいと思います。
  88. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 委員御案内のとおり、昨年十一月に出ました政府税調の中期答申では、今後の消費のサービス化というような状況にもかんがみまして、サービス課税について広く勉強すべきであるというふうな御提言もいただいておりまして、常々私どもいろいろな勉強はしておるわけでございますけれども、ただいま御指摘のありました電話利用税といった具体的な新税につきまして、その導入について検討しておるという状況にはございません。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵省の方は検討していない、こういうことでありますからはっきりいたしましたが、新聞が伝えるところでは、自治体にこの電話利用税を導入したいというようなことでありますので、この件についてちょっと自治省の税務局長の方からお答えをいただきたいと思います。
  90. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 電話の利用に関する税負担の問題については、いろいろまた御議論があろうかと思います。まだ政府税調で具体的な御議論が行われておる段階でございません。私どもの方としても、そういった税を地方税として考えるという具体的な検討を行っておることはございません。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 今のお話で主税当局も地方税の当局も検討していらっしゃらないということであります。これは大衆課税でありまして、今広く電話というのは国民がコミュニケーションの手段として大量に使っておるものでありますから、ともかくもそういう大衆課税をストレートにやるということは現在の時点では適切でない、私はこう思っておりますので、その点は十分ひとつ国税も地方税においても意を用いてもらいたい、こう思うのであります。  そこで、ちょっと行政改革に関連して、もう十五年くらい前になりますが、提案したことがあるのです。今の地方税の中の県民税、市民税というのは課税標準を国の所得水準に合わせて取っておりますね。かつて私がこの問題を当委員会でやりましたら、労働組合の方から御注意がありました。しかし、私考えてみるのに、県なり自治体が自分調査をして課税標準を決めて徴収されるのならば何も言う気はないのでありますが、課税標準そのものは、国が所得税で取ろうとしておるものを基準にして使っておられるということであるならば、行政改革という面から見ても、ひとつこれをある意味で国税庁に各自治体が地方税の徴収委託という格好で、国の税金を取るんじゃないんですよ、地方税を取るんですが、便宜上税務署で一遍に——どうせ納税者は来るのですから、所得税を納めない方でももちろん地方税がありますから、それはまた別個に考えていただくとしても、主たるものは国税の納税義務者であることに間違いはありませんから、そういう形で国の方で一括というと表現が悪いんですが、国税は国税、県税は県税、市民税は市民税という形で、一年おくれの問題はありますが、やり方としては同じでありますから、それを税務署で取って各自治体に渡していく。要するに地方税徴収を国にやってもらうということになると、全国の自治体の県民税、市民税を担当しておる職員はかなりすくのではないか。そのすいた人たちを、現在は自治体も人員をふやすなといってやられておることでしょうから、それをより有効な部分に使って、要するに自治体の本来の機能を果たしてもらえば、これこそ私は効率的な行政改革ではないか、こういうふうに思うのですが、税務局長、私のこの問題提起についてはどういうふうに思われますか。
  92. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 所得税、住民税の徴収の一元化の問題、以前から、御指摘のとおり、御議論のあるところでございます。  おっしゃられますとおり、課税標準につきましては、現在住民税を納めております方々の大部分はこれは所得税を納めておられる方でございますので、その基準となります課税標準は、これは別々にその調査をするということなく、同じものが使われておる。したがいまして、納税者の方の立場から申しますと、現在、国税、地方税間の税務協力によりまして、所得税の申告をしていただいた方は住民税の申告は要らないということで、これを市町村の方が税務当局から通知をいただいて、それを課税をするということになっておるわけでございますから、そういう意味では、納税者の方々の方の御不便は現在のところなかろうと思っております。  ただ、問題はその次の段階、すなわち徴収の段階の問題だろうと思います。この徴収につきまして、これは例えば国税当局に一括委託してやってはどうかということでございますが、行政改革の観点全体から考えますときに、国、地方、それから国民経済と申しますと大げさであるかもしれませんが、全体の見地からこの問題を考えてみた場合には、結局地方税でございますから、この地方税をそれぞれの市町村ごとにやはり分別をしていかなければならないという問題が常にあるわけでございます。そのための手間暇というのが、仮にそういった形にした場合には、その一括徴収をされる機関において今度は分別のための手間暇が生ずる。あるいは特別徴収義務者、企業とか官公庁、そういったところにおいて、そういった事務の手間暇がそちらの方に今度はいってしまうというような問題等、いろいろあろうかと思うわけでございます。  私どもの方としては、おっしゃるように事務の簡素化ということは大変大事なことでございますので、国税、地方税間の協力についてできるだけこれを緊密化いたしまして、例えば五十八年の申告からは、住民税用の複写紙の枚数をふやして、できるだけ事務が簡素に進むように、こういった工夫も国税当局との間で御協議を申し上げてしておるところでございます。そういった点については、なお今後一層努力を重ねてまいりたいと考えておる次第でございます。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 今、思いつきではなくて、かつても問題提起をしてきておるのですが、十分研究をされて、やり方によっては分別その他の非常に簡単な処理ができるし、第一、取っておるところ、税務署というのは地域で取っておるわけでして、国税庁が全部一括して取るわけではないのですから、そういう意味では、国税を取って調整ができれば、私はより合理的な処理が十分できるのではないか、こう思いますので、今後一層検討を進めていただきたいということを要望しまして、私の質問を終わります。
  94. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 御苦労さまでした。  柴田弘君。
  95. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 きょうは私は、六十年度予算編成方針につきましていろいろとお尋ねをしていきたい、こう思います。  そこで、先般自民党の政調会長と中曽根総理との間に四点の合意がなされました。六十年度予算編成の手順ということでございまして、マスコミの報ずるところによりますと、一つは、概算要求に当たっては五十九年度並みの方針のもとに概算要求基準を設定することとし、シーリングという言葉は使わない。二つ目には、九月から十二月までの間、大蔵大臣は予算編成の状況を常に党に報告をすることとし、党と大臣との協議のもとに作業を進めていく。三つ目には、十二月の予算編成は党主導で重点的な調整、編成を行う。四つ目には、臨時行政改革推進審議会が二十五日に提出する意見書については、従来どおり最大限に尊重し、実現に努める、こういうことであります。  それからまた、同日総理は、内閣記者会との懇談におきまして、六十年度予算編成の進め方については、一つは、概算要求段階では財政事情も厳しいので、五十九年度並みの厳しい方針で臨む。二つ目には、十二月の予算編成では税収の問題、税外収入のファクターにも目を配り、党主導の重点編成を行う。つまり、予算編成に対して二段階方式で臨む、公共事業などの重要事項の決定は事実上年末まで先送りする、こんなようなことであるわけであります。  そこで、まず第一にお尋ねしたいのは、大臣、今までの予算編成の手順と今回は違うのかどうか。特にこのシーリングという言葉は使わなくて、概算要求基準を設定する、いわゆる要求基準という言葉を使うということであります。この点につきましては、自民党政調会長は、シーリングというのはこれ以上要求を認めない、こういうことであるけれども、基準であれば、これを上回る要求も認められる、こういうふうに御説明をなさっているそうでありますね。ところが中曽根総理は、いや、この基準というのは単なるいわゆる言葉のレトリックというのですか、それにすぎないんだ、これまでと変わらぬ、こういうことをおっしゃっているのですが、これは大蔵大臣としては一体どういう見解であるのか。違うのか違わないのか、そして例年の予算編成のいわゆる年末にかけての手順と今回は違うのかどうか、この二点、まず御説明をいただきたいと思います。
  96. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず第一の問題でございますが、シーリングという言葉は、実際問題は、この文書の中に、何年度予算概算要求について、ですか、というのを閣議了解して、で、最初段階は官房長会を開きまして、主計局長からそれを言うわけで、その文書の中に二度もシーリングという言葉そのものは使われたことはございません。が、一般論として、昭和三十六年以来ひとり歩きしておる言葉ではございますが、やはりいろいろな議論がございまして、日本予算をつくるのにそんなに英語を使わぬでもいいじゃないか、こういう言葉もございました。そうなれば、やはり一番適切な言葉とは何ぞやということになると、この基準、こういうことになろうかと思いますので、そういう言葉を使わせていただくことにいたした方がよかろう、これは私もそう思いました。したがって、シーリングというのは本当は天井という意味でございますけれども、この使いなれたシーリングと基準という言葉が性格的に異なっておるというものではないと思っております。だから、正確にはやはり基準、こういうふうにことしから、今から申し上げようと私も思っておるところでございます。  それから、いわば今日までもやりましたのは、法律、政令に基づいて八月末に概算要求が出てまいりまして、それを九月から十二月までにかけまして——それは各省八月までにある程度中身の精査をされますが、今度は大蔵省も調整機能を発揮しながら九月からずっと毎日詰めていくわけでございます。それで、十二月最初できますのが大蔵原案、こういうものができていくわけでございます。だからその段階において、上下といいますか、一つ一つ課ごとの予算とかとってみれば、当然のこととして、幾ばくかのでこぼこは今日までもあったであろうというふうに私は思っております。常識的に考える問題は、いわば人件費などは現状でやりますから、そうすると人件費比率の多い課あるいは省とそうでないところのでこぼこというのは、やはりそういうごく単純な問題でも、あるいは過去にもあったんではなかろうかというふうにも思っております。だから基本的にこの四項目——「四カ条の御誓文」と私ども申しておりますが、より党と密接な連絡をしながら予算編成に臨みなさいよというお諭してはないかなと思っておるところでございます。
  97. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 わかったようなわからぬような御説明ですけれども、大臣、今性格的に変わらぬとおっしゃいましたね。ところが、少なくとも政調会長がおっしゃっているのはやはりシーリング。シーリングという言葉は公用語ではないということでありましょうが、これは要するに今までは一つの一律削減方式でぱっとかぶせられれば、それ以上の要求は各省庁認められなかった。ところが基準であればこれを上回る。だから、九月から十二月までの間に大臣と党とがよく相談をして作業を進めろ、そして十二月の予算編成は党主導で重点的に調整を行う、しかも中曽根総理は今後の税収の問題、税外収入のこういった問題にも目を配りながら、要するに重点編成を行って、いわゆる二段階方式で臨んでいくんだ、こういうことでありますか。どうもわかりませんが、どうなんですか、政調会長が言っていることが正しいのか、この込もう一遍お聞きをしたいと思います。どうですか。
  98. 竹下登

    ○竹下国務大臣 第一条の「六十年度予算概算請求については、昨年並の方針の下に、概算請求基準を設定する。」これは昨年並みにやれ、こういうことでございますので、全く昨年と変わったものではございません。しかし、これは厳密にいいますとまだ閣議決定したわけでございませんので、月内には何とか閣議決定をしたいと思っております。昨年並みの基準でお願いをする、こういうことであります。概算要求の基準であります。  二段階方式とおっしゃいましたが、従来はそれから概算要求が出まして、それでずっと各省間といろいろ折衝を重ねて、厳密に言えば従来も、年末が二段階と言えば言えたかもしらぬなと思います。年末には与党の意見等も聞きながら、編成権は法律上政府にございますから、それを酌み取って最終的には政府原案、こうするわけです。その間に野党の政策担当者との話し合いもまた起ころう。だから、そういう意味の表現をすれば、従来ともいわゆる二段階方式であったと思います、政府原案になりますと概算要求とは変わってまいりますから。しかし、それをなお九月から、こういうときだからより綿密な党との連絡をとってこれをやるべし、こういう御指示であるというふうに受けとめておりますから、そういうようにやっていかなければならぬなと思っておるところでございます。
  99. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 そうしますと、まずこの手順ですね。今大臣おっしゃいましたように、概算要求基準を七月末に閣議決定をされる。それで八月にまたその閣議決定に基づいて各省庁の概算要求というものを出してもらう。そして十二月までの間にまたいろいろと大臣中心に御相談になる。それから政調会長がおっしゃるように、上回る要求についてはやはり十二月の予算編成のときにまた対応していくんだ、こういう理解でいいんですか。
  100. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大筋第三項の「十二月の予算編成においては、党主導の下に重点的な調整及び編成を行う。」従来も調整は行っておるわけでございますが、恐らく今先生おっしゃるのは二項の問題でございます。従来どちらかといえば九月は休んでおったという傾向にあると思います、政府部内の各省間の作業は一生懸命でやられておったといたしましても。が、「九月より十二月の間、予算編成につき、大蔵大臣は党にその情況を報告する」ということは、概算要求は概算要求でありますが、その後いわば総理がおっしゃっております景気の状態がどうなっておる、あるいは歳入の状況はどうだとか、あるいはこういういわゆる歳入の財源論争が行われておるとか、そういうことを逐一報告しながら、党と大蔵大臣が協議しながら作業をずっと続けてやりなさい、こういう意味であるというふうに理解しております。
  101. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで、この七月末の概算要求基準の決定に向けて各省庁の官房長会議をやる。これは大臣も今官房長会議についてはお話があった。それで、経常部門はマイナス一〇%、投資部門マイナス五%程度の基準を示すということであるそうでありますが、この辺がどうかというのが一点ですね。これははっきりと答えていただきたい。  それから二つ目には、人件費、年金、恩給の増加分の問題、あるいはODA、防衛費、エネルギー関係費、科学技術関係費の六項目については別枠とするかどうか。  大臣、意味わかりましたか。この二点、閣議決定でどういうふうにされるのですか。
  102. 竹下登

    ○竹下国務大臣 きょうの二時から官房長会議をやるように、こう言っておきました。ちょっと今手元にありませんが、それは恐らく今の柴田さんが御質問になっております四項目合意とはこういうものだというような説明ではないかな、二時から官房長の方にお集まりいただいて主計局長が説明する、こういうことでございます。  それで、今おっしゃいました中身の問題は、これは閣議決定を得ないと——今おっしゃいましたのはまさに昨年と同様のことをおっしゃったわけでございますが、私は閣議決定する前にそういうことを閣議決定しようと思いますと今言うわけにもまいりませんけれども、昨年並みという言葉で象徴せられるように、今おっしゃいましたこと等を建前として閣議決定はお願いをしようと思っておるところでございます。
  103. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 こういった方向で閣議決定が今月末に行われるであろう、こういうふうな考え方でよろしゅうございますね。  それで、今堀先生の方からもいろいろとお話がありました。私も全く同感でありまして、感銘を受けて今聞いておりました。  それで、税収の問題。これは今、五十九年度あるいは六十年度幾らになるか、こういうやぼな質問はいたしませんが、私どももいろいろと試算をしてまいりました。御案内のように、五十八年度の税収増は四千五百三十八億円ございます。この結果、五十八年度の純剰余金は二千四百九十億円ぐらい出るのじゃないか、こういうぐあいに言われております。先ほど経企庁長官からもお話がございましたように、五十九年度の景気は拡大基調である、四・一の政府見通しを上回って五%台にいくんじゃないか、そんなようなことでございまして、実質経済成長率が四・一から五%程度、仮に五・一%となるとしますと、約一ポイント高くなるわけであります。租税弾性値一・一、こういうように見ましても、計算をしてまいりますと、少なく見積もっても三千八百億円ぐらい五十九年度の税収はふえる。当然勢いが増せばより一層税収はふえる。でありますから、この五十八年度の剰余金を使うことにした場合には、少なく見積もっても六千五百億円の財源が出てくる、こう思っております。しかも、今後の税収動向が好調であるならば、余裕財源も、五十八年度の純剰余金二千四百九十億円と足しますと一兆円以上出てくるのじゃないかな、こんなふうに考えておるわけであります。  そこでお尋ねしたいのは、いわゆる「財政の中期展望」の六十年度の税収部門というのは、五十九年度の税収見通し三十四兆五千九百六十億円に名目成長率六・五%、弾性値一・一によって機械的に計算されたものであると考えております。その中にあって、「中期展望」の計算は実質成長率を「八〇年代の経済社会の展望と指針」によって四%台と見ておるわけであります。ところが、一%以上実質成長がある。当然これは税収増をもたらすということになるわけであります。でありますから、要するにこういった計算の基礎となる歳入部門で大きな変化が出てくると思いますね。これはいいことだと思います。しかし、こういった古いデータで税収予測を行って予算編戒を行うのは現実的ではない、私はこのように考えております。この辺、大臣うなずいておみえになりますから、答弁は要りません。  そこで、これからが大事でありまして、問題は、こういった自然増収といいますか、税収増を最もよい方法で使っていかなきゃならない、こう思います。国債減額を優先する、こういう大蔵省の言い分もわからぬでもありません。あるいはまた、これは人勧実施の財源ということも考えるでありましょうし、また減税の財源あるいは公共事業の財源、いろいろと考えられると思います。とにかく一番問題なのは、今日の景気、今堀先生からもいろいろお話がありましたが、五%台の経済成長、これをどうしても持続をしていかなきゃならない。私は全く同感であります。  先ほど来お話がありましたように、アメリカ経済というものが今大体六%程度の経済成長であると聞いております。ところが、大統領選が終わりまして来年度になれば、OECDやIMFの指摘にありますように、これは六%程度から三%程度に半減するんじゃないか。これは当然日本も影響を受けざるを得ない。でありますから、私は、税収増を、五%台を維持していくための景気対策に使うことも非常に大事だなと思う。今企画庁長官がくしくもおっしゃったわけでありますが、内需拡大というのは一番大事である。個人消費が伸び悩んでいる。それから、貯蓄率は高いが投資不足である。でありますから、民間投資あるいはまた社会資本投資をふやす。社会資本投資が特におくれているわけであります。だから、こういった問題の対応策というものを考えていかなきゃならない。これは税の自然増収があるかないかという問題以前の問題だということも経企庁長官の方からお話がありまして、私も同感だと思います。せっかく自然増収が予定されるわけでありますから、五%台の経済成長の達成をしていくような内需拡大策を六十年度はとっていかなきゃならないであろう、私はこういうふうに考えるわけであります。これは財政運営の基本であり、予算編成の基盤でなければならない、私はこんなふうに思っているわけであります。その辺のお考えはいかがでしょうか。
  104. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私は、柴田委員に論争を挑むという考えを全く持っておりません。が、一つの考えとして申し述べますならば、ことし、おっしゃいますような自然増収が見込めました。そして結果として二千四百九十億の剰余金。この剰余金をどうするか、こういうことになりますと、一応法律では半分国債整理基金に入れなさい。それが、大平大蔵大臣のときの答弁から全額を入れますといって、特別な法律上の手当てをしていただいた。近いところで過去二回ございますが、それ以外は全額入れさせていただいておるということであります。ただ、そういう自然増収等々、いろいろございましたので、三千億円ほど出納整理期間内の赤字公債を発行しなくて済んだということも、ある意味においては国債減額ということになるでございましょう。したがって、その意味においては、五十八年は発行予定のものを三千億円発行しなかったわけでございますから、いわば公債減額に充てだということが言えるのかなと思います。剰余金の問題はこれからの問題としまして。  ただ、私は予算編成するたびごとに思いますのは、建設公債であれ赤字公債であれ、きょう一兆円発行いたしますと、六十年間で返します。金利と手数料を計算しますと、二兆七千億になります。元金を合わせますと三兆七千億。したがって、百二十二兆の残高があるというのも、計算をしますと、もうかなり返しておる分もございますが、恐らく三百兆以上ぐらいになるんじゃないか。そうすると、後世の国民に百二十二兆の残高を負担せしめておるのじゃなく、三百兆を負担さすということになるわけであります。したがって、そういう考え方を持ちますと、四十年までは建設公債の発行もしなかった。五十年までは赤字公債の発行もしなかった。そうすると、その限りにおいては、この二十年間随分悪いことをしたなというある種の反省に立つわけであります。  そこで、第一目標はとにかく六十五年までに赤字公債の発行だけは何とかやめるようにしますということを、今いわばお約束を申し上げておるわけです。そしてその後には何とかして残高を滅していきます、こういうことを申し上げているわけでございます。そういうことを考えると、ちょうど公債を発行してから二十五年で仮に赤字公債の発行がなくなったとすれば、少なくともあと二十五年で返さぬことには、後世の国民に対して申しわけないなという論理も、私は二十五年というのはたまたま申し上げた数字でございますけれども、一つの論理として考えなければいかぬな、一兆で三兆七千億ということになるわけでございますから。したがって、原則からいえば、自然増収等がありましたならば、それはそのまま後世の負担の軽減にたとえわずかでもなるように、これは赤字公債の減額に充てるべきだというのが一応一つの論理として存在すると思うわけであります。  それからもう一つの論理というのは、今意見としておっしゃいますように、少なくとも「七、六、五抜きの四、三、二、一」という数字がある。が、四という数字は四程度であって、平均が四%であるから、五の場合もあれば、現に五十八年度は三・七にすぎないわけでございますから、五の場合があってももちろんいい。私も五%程度が維持されていくというのは最も好ましいことだと思っておりますが、そのためには内需を拡大すべきだ。しかしその内需も、いわば財政負担を伴わない民間活力等、知恵を絞って経済運営に当たっていくというのをまずは本来的な考え方として踏まえていかなければならないではないかな、こういうふうにも考えておるところでございます。  非常に窮屈なお話をいたしました。
  105. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 そういう御答弁だと私も予想しながら質問したわけです。ところが大臣、なぜ五%成長を達成しなければならないか。これは大臣もあえて否定をしておられるわけではないと思いますけれども、今日のいろいろな経済情勢を見てまいりますと、やはり一つは雇用の問題があります。二月には二・七%を上回る完全失業率、百七十一万人の失業者がいるわけです。  それから二番目には、一万九千件以上に及ぶ、二万件になんなんとする中小企業中心とする倒産。景気は業種別あるいは地域別に非常に跛行性があるという問題ですね。  三つ目には、今大臣がまさしくおっしゃった、後世に負担を残さないために、つまり財政再建をしていくためにも、五%の経済成長は達成をしなければならぬ。  四つ目には、先ほど来議論がありましたように、内需拡大で経常黒字を抑制し、保護貿易主義が台頭しないために、これは自由主義国、GNP第二位の日本の責任だと私は思います。しかもアメリカ経済が下降線をたどるであろう。  それで、もう一つ言えることは、これは二月でしたか三月でしたか、本会議において大臣に、要するに循環赤字と構造的赤字という質問をいたしました。それは別々にとらえるんじゃないんだ、一緒にとらえるんだ、こうおっしゃったのですが、経済企画庁ははっきりと構造赤字、循環赤字ということを言っているわけです。循環赤字は四割、これは景気低迷からくる赤字であります。それから構造的赤字というのは行政の肥大化、非効率化からくる赤字。でありますから、私どもは決して行政改革をやっちゃいかぬということは言ってない。どんどんと行政改革はやっていかなければいけない。やはり行革と景気とが両立できるいわゆる均衡型、拡大型予算編成をしていかなければならない。そのためにはどうしても五%経済成長を達成していくことが必要であるということを申しているわけであります。  この点を含めて大臣、今の党主導、党主導の予算編成ということは私は非常に気になっておるわけでありますが、我々野党議員も真剣になって、我が国の財政のためにもあるいは国家国民のためにも、こうして委員会審議していろいろと大臣に提案を申し上げておる、あるいはまた予算要望等もやります。昨日は自民党との協議もあったわけであります。こうした我々野党の意見というものもよく聞いて、六十年度の予算編成にも臨んでいただく、これはもう当然のことだと私も思っておるわけであります。少なくとも私どもも国民の代表であるという考え方に立っておるわけであります。  ちょっと質問があちこち飛んだわけでありますが、この二点、ひとつお聞かせをいただきたい。
  106. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず野党の意見を聞けという方から申し上げますが、これは当然のことでございます。国民各界各層の代表として衆議院にあっては五百十一名、参議院にあっては二百五十二名が、それぞれ選挙という極めて民主的な手続によって選ばれてきて、国民各界各層のそれぞれの意見を体でもって吸収しながらお互いが議論するわけでございます。ただ、たまたま今マジョリティーが我が党にあるということで政権を担当しておるということでございますので、その謙虚さは持ち続けていなければ、多数になった方が勝手にやれということになれば、四年間勝手にやって国会は要らぬじゃないかという議論にも、極端に言うとなりますので、一番慎むべきはそのことであろうということでございます。  それから、その前の御意見を交えての御質問でございますが、確かに倒産は多うございます。倒産が月に千七百ぐらいございますか、恐らくその七百ぐらいが建設業関係かな。ところが数が減りません。ここはまた問題は別でございます。したがって、数が減らないものが構造不況業種であるかどうかという議論は、別の時点では議論のあるところではございますけれども、この倒産は平常からいうと、かつては千五百がアッパーリミットだと言っておった。それがいろいろな数え方からして千九百までだろうかとかいろいろな議論がございますけれども、これは少ないがいいにこしたことはありません。  それから、失業率は二%程度といっております。おっしゃいますように二・七五ぐらいになるわけでございますけれども、これはただ、かつてと違いますのは、今会社が倒産し失業状態にあるということじゃなく、働きたい意欲のある者で今働いていない人も全部失業者の中へカウントするわけでございますから、十年前とは若干質的な相違は出ておると思います。例えば、私どものように、普通ならば定年でございます。それがまた働きたいという意欲を持っておるだけでも失業者にカウントされるわけでございますから、OECDと共通の計算方法によってそうなりますが、諸外国に比べれば半分とか三分の一とか、そういうことでございますので、質的変化が少ないにこしたことはありませんが、私は質的変化があっておることは事実であると思います。  それからもう一つ大事なことは、お互い、私を含めて高度経済成長になれてきております。したがって一〇%成長なんというのが普通で、四%なんというのは不況のうちだ、こういう意識転換も必要ではないかな。とにかく先進国の中では最高水準の安定成長をしておる日本でございます。したがって、これがある種の意識転換を必要としなければ、例えば仮に、いろいろ議論されますが輸出の問題をとってみましても、日本と同じ購買力のある国民は世界に五億七千八百万ぐらいしかおりません、数えてみますと。わずか一三%でございます。一人当たり所得が日本の半分の国民でも八億ちょっとになります。五百ドル以下の国民が四十三億の人口の中で二十三億おりますので、その人たちにも購買力がつくことによって初めて私どもの工業製品もまた需要が増していくという意味において、最近の貿易白書にちょっと書いてありましたが、またサミットでされておりました議論の中で、私も最近どうして論理づけようかと思っておりますのは、いわば貿易黒字でございますが、資本提供国として購買力をつける一つの役割を日本が果たしておるんじゃないか、こういう議論ももう少し詰めてみなきゃならない議論だなと私も思っておるところでございます。したがって、貿易黒字の議論のほかに、いわゆる経常収支の黒字結構だ、もっと資本提供国なるべし、まあほかの国より大体三倍貯蓄率の高い国民でございますから、そういう期待感も出てくるではなかろうかというふうに思っております。  内需拡大の問題につきましては、私もこれを否定する考えは全くございません。ただ、そこに財政が出動する余力があるかどうかというようなところが議論の分かれ目じゃなかろうかな、こういうふうに考えておるところであります。
  107. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 そこで、経企庁長官がおっしゃいました内需拡大、これは個人消費の問題がありますね。伸び悩んでいるからこれを何とか拡大をしていかなきゃならない。それから投資不足に対しては民間投資、社会資本整備、この二つに分けられましたね。社会資本整備はおくれている。具体的に個人消費拡大のためにはどういう政策をしていったらいいのか、あるいは投資不足に対しては、民間設備投資に対してどうしたらいいのか、社会資本整備についてはどうしたらいいのか、お教えをいただきたいと思います。
  108. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはお教えするほどの能力も持ち合わせておりませんが、まず社会資本の投資の問題でございますけれども、対GNP比あるいは対国民一人当たりに割りますと、先進国の中で大体倍くらい公共投資はしております。公共投資をしておりますが、確かに先ほど来の御指摘のように、下水道ぐらいおくれたものはないと思います、ジャン・バルジャンの時代と今日と比べてまだおくれておるわけでございますから。だから、社会資本の投資の必要なことは、これはだれしも認めるところでございます。  それから民間投資というと、勢いすく感づくのはいわゆる投資減税、こういう問題が出るだろうと思いますが、私は、投資減税等の租税特別措置を考えるたびに思いますのは、いわば払うべき税金を払わないで済むということは、これは租税支出という言葉に置きかえるならば、補助金をもらっていると同じことであるという論理も、一応議論の中に入れていただかなきゃならぬ問題だな、そういうふうに思います。  それから消費支出というのは、消費を刺激するためには所得減税と、それから所得がふえていけばそれは消費に回ると思います。日本人の性格上、多くの部分が貯蓄にも回ると思いますけれども。しかしながら、それは今やれる財政状態の環境の中にあるだろうか。やっぱり民間活力の中で財政というものの出動を期待の外に置いて、経済が活発化していく中で内需が拡大していくというのが一番好ましいことではなかろうかというふうに考えます。
  109. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 所得税減税ですが、やはり個人消費拡大というのは、もちろん物価が安定をしているということも一つ条件であると思いますね。これは大臣がいつもおっしゃっている、否定するものではありません。  私どもで試算をいたしました。物価調整減税というような考え方でこれをやったわけでありますけれども、五十二年度以降据え置かれていた減税の物価上昇分を取り戻す、こういった一つの私どもの考え方ですね。五十二年度から五十八年度の物価上昇、これは二六・六%。五十九年度が二・八%、六十年度は恐らく三%程度であろう、こういうふうに見ておるわけです。そうすると三二・四%になります。五十二年度当時の課税最低限が二百一万五千円でございまして、これを一%引き上げる財源というのは約五百億円、こういうふうに計算しました。これは試算です。ところが、五十九年度減税がありました。八千七百億円の所得税減税がありました。それで物価上昇率を計算してまいりますと一七・四%に相当する。そうすると、三二・四から一七・四を引きます。そしてそれに一%、五百億、こういたしますと七千五百億円ぐらいが、五十九年度減税をやりましてもやはり物価調整減税という意味を兼ねれば妥当な数字じゃないか、これは一つの前提条件がありますから。  ところが、どうも所得税減税は六十年度は、先日私も総理質問をいたしましたが、難色を示して、それどころじゃないじ中ないか、こういうことですね。それは一つのこういう試算があるわけですよね。だから私どもとしては、まだはっきり決まったわけではありませんが、住民税減税を含めて、二千五百億円住民税減税をプラスして一兆円ぐらいの減税をやっていくべきじゃないかという考え方を一つしております。それから投資減税も、自民党政調会長も非常に乗り気であるわけですね。経企庁長官のお話がありましたように、やはり民間設備投資を拡大をしていくというのは、私は投資減税の拡充じゃないか、こう思います。あるいはまた社会資本整備。これは確かに今大臣がおっしゃいましたように民間活力、これをどんどん導入していくということも大事でありますが、やはりこれは公共投資の上積みである、こういうふうに思っておるわけであります。  でありますから、これについてどうだこうだということは私は申しませんが、我が党の一つの意見としてお聞きをいただきまして、六十年度の予算編成に対応していただきたい。そして、二段階方式という予算編成であれば、やはり九月から十二月までのそういった中で、あるいは我々の意見もこうあるということをよく御認識をいただいて、十二月の予算編成はやはり自然増収分の対応とあわせて——決して私は国債減額を否定しているものじゃありません。ただ、それだけに使っていいものかどうかという問題なんです。やはり財政再建をしていくためには、少なくとも五%程度の経済成長というものは達成をしていかなければできませんよ。ですから、要するに行革と景気とが両立できる六十年度の予算編成というものはこれは十分できるわけである、私はこういうふうに考えておりますので、どうかひとつそういった点を考えて、これは最後の結論でありますが、編成をいただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  110. 竹下登

    ○竹下国務大臣 示唆に富んだ御意見をちょうだいをしまして、私、しみじみと思います。大平大蔵大臣が、剰余金は全額国債整理基金に入れますというのは、この国会の追及に対してお約束した。今はみんな入れなくても、考えてもいいじゃないかとおっしゃるほど、いわば相互の実体認識が変化しておるな。これは与党も野党も、その時の推移に応じて変化していくのはまた一つ当然のことだろうと思っております。  それから、私も三回予算編成をやらしていただきました。その中でいつも各党の政調関係者の方とは議論をして、そうかみ合わない点はございません。例えば防衛費。我々は防衛費、あるいは共産党の方は軍事費。軍事費は全部こうやってこうやるという議論になりますと初めからかみ合いませんけれども、そうでない議論は、すべてがかみ合わない議論ではない。そこで融合調和して、反対、賛成の投票の行方は別として、予算が今日までつくられてきておるんだな、だから十分聞く耳を持つのは当然でございますので、教える口をもっと持っていただいて結構だと思っております。
  111. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 私が今いろいろ申しましたが、十分念頭に置いていただいた予算編成をぜひお願いをしたいと思います。  それで、あと簡単に聞いていきますが、防衛費はまたことしと同じように、六十年度は異常突出されるかどうか、そして閣議決定のGNP比一%は守られるかどうか、この二点、どうでしょう。
  112. 竹下登

    ○竹下国務大臣 三木内閣の閣議決定は守るということを総理大臣がたびたび当委員会等においても言明しておりますので、それは守ります。  それから、異常突出がどうかというのは、どこを見て異常かという、そのスタンダードがどこにあるかというのはなかなか難しゅうございますので、この点につきましては、その都度の経済、財政状態全体の中で、国全体の調和をとってやらなきゃならぬ。ただ、私ども、いわば最初から聖域に置くという考えは、まだ概算要求の段階でございますけれどもございません。
  113. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 異常突出というのは五十六年度七・六%、五十七年度七・七五%、特に五十八年度の六・五%、社会保障費の伸び率〇・六に対して六・五%、それから五十九年度六・五五、社会保障費の伸び率二・○、こういうことですね。これはもう一般歳出に対しても異常突出だということが言えます。  先回も私は総理に申しましたが、要するに、この二年続きの防衛費の異常突出に対しては、マスコミ等の世論調査によっても、七〇%から八〇%の人たちはやはり反対である、こういうことなんですね。そういった意味の異常突出なんですよ。いかがですか。
  114. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そういう意味における柴田さんの定義は私もよくわかります。  ただ、私はいつでも思いますのは、やはり長期に、将来も、過去も振り返ってみたらどうかな。昭和三十四年、私が出ましたときの予算が一兆四千百九十二億、「イッチョウヨイクニ」という予算でありました。その予算は四十倍になり、そして社会保障は実に七十七倍になり、防衛費は十七・八倍、そういう比較の方法もまたあるのかな。これはただ、私自身の勉強のためにそういうことを調べておるだけでございます。
  115. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 勉強のために調べていただいたのは結構ですけれども、私の言った異常突出はわかりますね。異常突出はさせないのですね。聖域を設けない、こうおっしゃったのですが、いいですね、これはもうくどいですが……。
  116. 竹下登

    ○竹下国務大臣 聖域視することはいたしません。異常突出という意味、柴田さんの標準からする異常突出という意味は、私は理解をいたしました、こう申しておるわけです。
  117. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 六・五五、これは異常突出ですよ、防衛庁はどうも八%から八・五%概算要求する、こういうことでありますけどね。  それから、昭和三十八年以来の義務教育の教科書無償制度、これは大問題なんです。憲法二十六条の無償の精神あるいはまた教育基本法の無償化の精神、そしてまた昨年の六月には中教審においても、「廃止等を含め検討する」という臨調答申を受けて、これはもう総理大臣が尊重するとおっしゃっておるわけでありますが、その存続の必要性を明らかにした答申が行われている。これは私も予算委員会において森文部大臣に質問をいたしました。とにかく命ある限りこの無償制度は守っていく、こういうのが文部大臣の決意であったわけであります。恐らく予算編成に向けて大蔵大臣と文部大臣との話し合いがある。これはもう絶対、断固として、私はこの無償制度は続けていただきたい。この無償制度こそが、本当に次代を担う児童生徒と国が心を通い合わせる一つのきずなであるというふうに私は思っているわけです。この辺の大臣の決意、御見識をお伺いいたします。  それからもう一つは私学助成。この問題も、五十九年度は大学でマイナス一二%、私立高校等ではマイナス一〇%のいわゆる減額をやられた。もう全国の私学関係者は、本当にこの問題で頭にきているわけであります。愛知県におきましても、三百五十万人の人が来年度予算に向けて私学の助成の増額を求めた署名をとって、国会に請願、陳情している。聞くところによると、全国で約千七百万人の人が署名をしたということであります。これはやはり私学を守っていく、公私立の父母負担のいわゆる格差の是正を主張していくということと、ただそれだけでなくて、本当に日本の教育を守っていくというのですか、今の我が国の教育において私学というのは極めて大事であり、大きなウエートを私学にお願いをしておるわけでありまして、これはことしのようなマイナスは絶対させてはならない、増額していただきたい、これが要望でありますが、この二点、ひとつ大臣の決意なり御見識をお伺いをしたいと思うのであります。
  118. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、見識と言われますとちょっと困ってしまいますが、教科書無償、昭和三十八年、私どもそのとき議論いたしました。憲法の精神の義務教育無償の原則とはすなわち授業料を取らないというのが限界じゃないか、こういうような議論もいたしましたが、とにかく無償制度が今日まで来ております。この予算をして「二、三、四、五、六」と申します。すなわち小学校が二千二百円、中学校が三千三百円、締めて四百五十六億というので「二、三、四、五、六」、こう覚えておりますが、要するに、負担能力のいかんにかかわらず多数の受益者に少額の給付を一律に行うというような意味で、財政資金の効率的使用という観点から問題があって、財政審や臨時行政調査会から指摘を受けておる。財政当局としても、これらの指摘を踏まえて今日まで有償化を主張してきているわけです。そしてこの問題は、教科書制度のあり方や他の文教施策の関連等、幅広く検討すべき事柄であるので、これらの基本問題とあわせて引き続き検討をしようということに今日時点でなっておりますので、財政当局の私といたしましては、そこまでがお答えの限界である、こういうことになります、残念ながら。  それから私学助成も、これをやりますときに、憲法の八十九条でございましたか、公の支配に屈せざる慈善、宗教、教育等の団体に公金を支出してはならない、こういう言葉があるから、私学助成そのものが憲法違反だ、こういう議論もいたしました。したがって、財団をつくって、そっちへほうり込んでそこから行く、憲法上の措置からそういう議論をいたしたのでございますが、本来、私学というのは、その私学の持つ学風にあこがれてみんな入るわけでございますから、私はノーコントロール、ノーサポートであるのが一番いい。コントロールしてはいけない、サポートしてもいけない。そこを割り切りまして、ノーコントロールだがサポートだけしよう、こういうことになったわけですね。  ところが、いろいろな問題がその後出てまいりまして、今柴田さんがおっしゃいますが、私どもの論理を整理する中で一番整理しやすいのは、いわば国公立にかわって教育を担当しておる、そこでやっと気持ちの中で整理がつきまして、それで私学助成というのは今日続いておるわけでございますが、いろいろな変な問題があるからという意味でなく、私学助成というものを十分認識しつつも、これまた聖域とすることなく厳しく対応していかざるを得ない。そういうことで、やはりここで柴田さん、承知いたしましたと言える立場にはないということは御理解をいただきたいと思います。
  119. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 意見として言っておきますけれども、私学ですね、今大臣がおっしゃいました、もし例えば私立高校がない場合に、それじゃ国がどれだけ財政支出をしなければならぬかといいますと、これは五十六年度ベースで一兆三千七百十八億円でしたかね、大臣もよく知ってみえると思います。それだけ必要なんですよね。だから、私学の建学精神にあこがれて行った、こういうことですけれども、そうでもないのですよ。公立へ入りたいなと思ってもやはり私学へ行かざるを得ないことが、特に高校の場合、あるわけです。愛知県も、いろいろ調査しましたら、七年間ずっと調査しているわけでありますけれども、私立高校へ行っていらっしゃる家庭ほど公立よりも低所得者である、そういった調査もあるわけであります。やはりそこら辺のところもひとつ認識をしてください。  それから教科書無償配付、これはもうもし有償化云々ということがあれば、私どもは断固として最大の抵抗をしてまいりたい、こういうふうに考えていますから、よくひとつ胸のうちにおさめていただきたい。  あと時間がわずかになってまいりましたので、がらっと趣を変えまして、ぼけ老人の問題でいろいろ聞かしていただきたい。このぼけ老人は、今県や市、地方自治体の方が非常に熱心なんです。いよいよ二十一世紀の高齢化社会を展望して、これはもうぼけ老人対策をしっかりやっていかなければならない。きょうも毎日新聞を見ておりましたら、全国社会福祉協議会が痴呆性老人の処遇に対する研究会を発足させた。この処遇基準なんかも決まっておりませんので、これについていろいろ議論を重ねていこう、こういうことでありますね。それで、ぼけ老人対策、厚生省もいろいろとやりつつあるわけですが、厚生省のこの問題についての対応策は全くまだおくれておる、特に制度的な対応がおくれておる。しかも、ぼけ老人は施設へ入ろうと思ってもなかなか入れない、在宅介護がこれはほとんどなんです。いろいろ聞きますと、全国で約五十六万人ぐらいいらっしゃる、そのうちの五十万が在宅介護だ、こういうことなんですね。やはりこういった対策を今後しっかりと進めていかなければならない、こういうふうに私思います。  それからもう一つ、先般もやはり毎日新聞でありますが、読んでおりましたら、ぼけ老人に初の保険、こういうことで、いいことだなと思っておるわけですね。私も将来ぼけ老人になるかもわからぬから早速入っておこうかなと思っておるわけですが、こういったいろいろな施策を通してぼけ老人の対策というものを、国として制度的にしっかりと考えていくときに来たんじゃないか、こういうふうに私は思います。  それで、最初に厚生省の今後の対応の充実という点について簡単にお聞かせいただきたい。厚生省、いらっしゃいますか。  それから、あわせて大臣から、この保険制度の申請があった場合に、許可、認可する方向で行くのかどうか。ぼけ老人の認識というものについてもあわせてお聞かせをいただければありがたいと思います。簡単で結構です。
  120. 古瀬徹

    ○古瀬説明員 御指摘のように、いわゆるぼけ老人の問題は老人福祉対策の中では最も緊急かつ重要な課題だと考えております。今五十六万人とお話しのとおり、専門的な治療を要する方々は現在既に精神病院において治療を受けておられます。それから、特別養護老人ホームにおきまして三万人ばかりが専門的な介護を受けておられるわけでございます。  私どもは愛知方式と言っておりますけれども、このぼけ老人の対策は、老人福祉対策全体を活用いたしまして当たってまいらないと対処できないというふうに考えております。すなわち、第一には基礎的な研究でございます。それから、この問題につきます啓蒙活動があろうかと思います。それから、相談をするところを充実するということがございます。そのほか、愛知県の方の体系的に整理をされておりますものを参考にいたしますと、現在進めております家庭奉仕員の制度、あるいは一日お預かりをいたしますデーサービスというものがございますし、一週間程度お世話するというショートステーもございます。それから、老人ホームにおきましてお世話するということでございます。老人ホームの処遇は、ここ二、三年のことでございますが、大変進んでまいりまして、愛知県でも福寿園というのが大変取り組んでおられますように、ここ数年各地におきまして、取り組みにつきまして大変関心がわいてきたというふうに考えております。
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私からまずお答えいたしますが、ぼけ老人保険、今おっしゃいましたように、まだ申請があっておるというわけでもございませんけれども、私ども非公式には聞かされておる問題でございます。これはやはり出ました段階で、いわゆる保険数理学というものもございますでしょうし、もちろん国民のニーズ、そういうものに対応して検討すべき課題であろうというふうに考えております。今柴田さんもぼけ老人なんておっしゃいましたが、私は六十でございますので、間もなくぼけ老人になりそうでございます。(笑声)
  122. 加茂文治

    ○加茂説明員 いわゆるぼけ老人保険につきましては正式な認可申請が出ておるわけではございませんが、ただ、このような保険ができないかというような照会のようなものは、非公式にあることは事実でございます。  一般論として申し上げますと、人口の老齢化が進み、高齢化社会の到来を控えておる今日、将来の生活の安定を支えるために、民間の生命保険会社が国民の多様なニーズにこたえて検討していくことは必然のことであろうと考えておるわけでございます。個別の商品の認可の方針の問題でございますが、そういう状況でございますから何とも申し上げにくいわけでございますが、仮に申請が出ました場合には、国民のニーズ、さらには社会福祉施策との関連について十分配慮しながら、契約者の利益の保護、さらには保険の健全性の維持の観点等から慎重に検討してまいりたい、このように考えております。
  123. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 いずれにしても、今の問題を含めて、対策はしっかりと今後とも充実させていただきたいと要望しておきます。  最後に相互銀行の問題。私は金融の自由化についていろいろお伺いをしようかと思いましたけれども、これは時間が参りますので後に譲ります。いろいろなデータを見てまいりますと、相互銀行、これは昭和二十六年からいわゆる相互銀行法によって設立されたわけでありますが、最近普通銀行、大銀行が中小企業の分野にだんだん食い込んできておる。そこで、これは五〇%以上が都市銀行で占めている、こういうデータもあるわけです。また、相互銀行そのものが普通銀行と業務、機能面でほとんど変わらなくなってきている、こういうふうに私は思うわけであります。それで、今日まで金融制度調査会で過去何回となくいろいろとその問題について審議もされてきたと思いますが、やはり金融の自由化を控えまして普通銀行への転換のときが来ているのじゃないかなという認識を私は持っておるのが一つ。  それから、ディーリングですね。やはりこれも認可していく方向で検討すべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、ここら辺、大臣、どうでしょうか。前向きに取り組んでいただくというお考えはないのかどうか、これをお伺いをしたいと思います。
  124. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 相互銀行と金融自由化というような関係から相互銀行も苦しい立場にあるのじゃないか、それから中小企業金融に都銀などが進出してきているのではないかというお考えがあって、相銀の普銀転換を認めるべきではないかという御質問でございます。  確かに金融の自由化が進展しているわけでございます。かつ国際化も進展しておるわけでございますので、競争が激化することは事実で、金融機関の経営の悪化をもたらすおそれもございますが“競争の促進ということで金融の効率化をもたらす等の効果もございます。相互銀行だけが苦しくなるかどうか。業態別に見てみますと、ほかに信用組合とか農協とか漁協など、自由化の前にやはりいろいろの今後対応すべき課題を控えている業態もあろうかと思いますので、必ずしも相互銀行だけが自由化等の苦境に立っておるとは考えておりません。  そこで、普銀転換のことにつきましては、先生が御指摘のように、確かに同質化も進んでおるわけでございますけれども、今相互銀行は、すべての銀行の普銀転換を前提としておるわけでございまして、これにつきましては、中小企業金融制度制度論のいわば根幹にかかわる問題でございます。  実は三年半ばかり前に、金融制度調査会で、相互銀行を中小企業専門金融機関として位置づける旨の答申が出されたところでございます。そこで、本件議論は、もし結論を出すためには、先ほど申しましたような制度論と、それから三年ばかり前に金融制度調査会自体がそういうふうに位置づけたことでございますので、再度金融制度調査会の審議にゆだねる必要があると考えるわけでございまして、私ども、いま少し見きわめる問題があるのではないかというふうに考えております。  ディーリングにつきましては、昨年、いわゆる大臣の私的諮問機関と申しますか、三人委員会の御結論を踏まえまして、大蔵省としては、ディーリングというのはやはりかなりの証券の知識あるいは経験、それから金融機関の健全性というような問題等を踏まえて、いわゆる都銀、長期信用銀行、それから信託、農中、地銀というようなところもありましたが、事実、相銀が今のところその御意見の中には入ってございません。それはやはりディーリングというのは高度の証券知識を有する、あるいは国債の経験を有するものを選ぶべきだというお考えのもとに、ある程度の限度をつけて三人委員会も御結論を出されたのだと存じます。  ただいまのところ、やっとことしの六月でございますか、六月からそういう一部の金融機関からディーリングを開始して、かつ、それらの金融機関も期近債、二年物からまず一年間勉強してみてから長期債の方のディーリングまで入っていくというふうな、慎重な姿勢が入ってきておるわけです。これはそのほかにも証券界との激変緩和という考え方もございまして、かなりいろいろと議論した結果のことでございます。そこで、私どもといたしましては、やはりそういう問題を含んでおりますので、そういういろいろの経験を積んでから、相銀についてもディーリングを認めるかどうかというようなこと。その場合には三人委員会とも御相談申し上げることかとも存じておりますので、なお見きわめる課題だというふうに考えております。
  125. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大臣、最後の質問になりますけれども、マル優制度見直しですね。今政府税調で論議をされているわけでありますね。私も大臣と、今までずっとグリーンカード制度問題について、ここ数年いろいろと質問もさせてもらいましたし、議論も積み重ねてまいりました。本来なら、私はグリーンカード制の復活が第一だと思います。やはり総合課税、これは不公平税制の是正の最たるものである、こういうことを私は考えているわけであります。今回の税調の見直し、いろいろな御論議があるかと思いますが、先般も小食会長は、要するに非課税貯蓄は残す方向である、あるいは総合課税の方も決して立ち消えたわけじゃないんだ、こんなことを当委員会で参考人として御出席になっておっしゃっておりました。グリーンカード復活第一だという議論の中に、いよいよ税調の答申を受けて、マル優制度をいろいろと見直されて利子・配当課税されるわけでありますけれども、私は、基本線はいろいろあるかと思いますが。私なりに考えて、やはり一つは何としてでもできる限りの不公平税制の是正というものは図っていかなければならない。  二つ目には、今日までマル優が進めてまいりましたいわゆる政策的な問題。今日の日本経済の発展というのは貯蓄率にあったわけです。しかも国民の皆さん方は、やはり老後の蓄え、あるいはまた結婚資金ですとか教育費ですとか、そういったものに使うためにせっせと貯金をしてみえた。そういった方たちに対するいわゆる政策的な配慮というものがなければ、やはりこのマル優の見直しについては、どうのこうの言っても理解と納得は得られないと思います。そういった政策的配慮もなされなければならぬ。  それから三つ目には、見直しによって資金の異常なシフトが起こって、そして金融秩序が混乱し、日本の経済が混乱をしてはいけない。  ほかにもいろいろあろうかと思いますが、そういった三点は、少なくともやはり必要な基本的な条件ではないかなというふうに私は考えております。イエスかノーかで結構でございますが、私のこういった考え方についての大臣の御意見をひとつお聞かせいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  126. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まずグリーンカード問題ですが、これは柴田さんおっしゃったような、最初の出発はそもそも世に言う不公平税制、総合課税制度ということであったと思っております。したがって、これが国民に理解を得られる熟度が遅くて、そしていわば凍結をお願いした。だから可能性としては、凍結解除ということもそれはあり得る、論理的にはあり得るということになろうかと思っておりますが、その問題は別といたしまして、この問題につきましては再三申し上げておりますように、せっかく精力的にやってやろうといって税制調査会で特別部会をつくっていただいた。したがって、本委員会等において議論されたことを素直にお伝えして、結論を静かにお待ちしておるというのが私どもの基本的な考え方でございますので、予見めいたことを申し上げるわけにはいかないであろうというふうに考えております。  それから、老齢化社会への対応や住宅問題解決等の政策的配慮の問題、これをおっしゃいました。それから金融商品間のイコールフッティング、金融秩序に混乱を与えないような、いわば特定の商品にシフトしていくとか、そういうことを与えないように、こういうことをおっしゃいました。確かに私どもも、利子・配当所得の発生の大量性とその元本である金融資産の多様性、浮動性の特異性を踏まえながら、実質的な公平が確保されることが必要であるという基本的観念を持っております。そして金融資産相互間の制度の取り扱いの面の権衡にも十分配意していかなければならぬということが第二点。  それから、御指摘にありました老齢化社会への対応というようなことで、住宅問題でございますとか政策的配慮とかいうことがございましたが、これは年金課税のあり方とか住宅税制のあり方といった問題を踏まえて、幅広く検討していくことが適当であるということ。  そして、いろいろな商品がこれから開発されてまいります。それに対しては、我々としてもそれが整合性というものを保っていきませんことには、特定の商品にシフトしていくとかいうようなことに対しては、慎重に対応するべきであるということは当然のことだと考えております。
  127. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 時間も参りましたので、終わります。
  128. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 米沢隆君。
  129. 米沢隆

    ○米沢委員 ことしも予算編成の季節になりましたが、七月三十一日に予算請求枠が閣議決定され、八月には事務折衝がなされ、十二月までホットな論争が続いていくわけでありますが、私も今の柴田委員と同じように、六十年度の予算編成に関連いたしまして、今話題になっておりますいわゆるシーリング問題、また先ごろ発表されました行革審の行財政改革小委員会がまとめました「昭和六十年度予算における行財政の改革の推進方策」への対応の仕方等を中心にいたしまして、我が党の意見を交えながら、関係当局の見解をただしてみたいと思います。  まず初めに、これから始まる六十年度予算編成に向けて、大蔵大臣はどのような姿勢で臨まれるのか、現状の財政状況を踏まえた上で、基本的な編成方針といったものを、大まかで結構ですから明らかにしてもらいたい。できれば骨格、規模、経済成長をどれぐらいに見込むのか、あるいは増税の措置等々、できる限りで結構でございますから、お示しいただければと思います。
  130. 竹下登

    ○竹下国務大臣 最初お断りを申し上げなければいかぬのは、規模、いわゆる成長の見込み等を、五十九年度予算が歩いたばかりで、六月税収もまだわからないというときに、言ってみれば勘でお答えすることは、これはむしろ非礼でもあるし、いわば今行政当局の責任者としては差し控えさせていただかなければならぬ問題だなと思っております。ただ、この四・一%の五十九年度の成長見込みは達成されるものであろうという期待を持っておることは事実でございます。したがって、先ほども申しておりましたが、我が国の財政を見ますと、私は五十九年度末の百二十二兆ということは、結論からいうと三百兆以上のものを後世の納税者の負担にゆだねることだというのは、やはり認識の一つとして持っていなければならぬと思っております。  そうして第二番目には、利払い費がことしこそ一八%でございますが、さらにいわゆる国債費の占める比率というものに対する認識も十分に構えておらなければならぬ問題だと思います。それから、税収割合が六〇%程度ということについても、やはり踏まえていなければならぬということが一つございます。すなわち、異例に厳しい状態であるということでございます。  一方、二十一世紀に向かって、老齢化社会は、これは好むと好まざるとにかかわらず、必然的にやってくるという社会経済の変化ということも認識をしていなければならぬというふうに思っております。したがって、やっぱり財政改革というのは、これはやり遂げなければならない、避けて通れない政策課題だということを自分に毎度言い聞かしておるというところでございます。したがって、やっぱり歳出面に対してどうするか。当然アクセントという問題はわかります。が、私どもといたしましては、政府と民間、あるいは政府地方、そういうあらゆる分野調整というようなところからしても、制度の根本にさかのぼった対応をしていかなければならないではないか。  で、第一段階が今お話しになりました概算要求基準の設定、こういうことでございますが、これは昨年並みの方針のもと一これはまだ閣議決定しておりませんので、数字を昨年並みというのは、私どもは昨年同様というふうな理解の仕方でこれに対応するということであろう、第一着手はそこから出発するであろうというふうに考えるわけでございます。したがいまして、それに第一着手で当たりますと、六月税収も若干わかってきたり、そうして十二月になりますならば九月決算もわかってくる、こういう状態でございましょう。その中で財政事情等を考えながら、いわば税そのものも絶えず関心を持って見ていなければなりませんし、さらに税外収入も特別なものはかなりはいでしまいましたので、そう大きなものは期待できないと言われようとも、やはり税外収入ということについても、これからも目を皿のようにして対応していかなければならぬ。  いずれにしても、今後各方面の、国会の議論等を聞きながら、それこそ幅広い視野に立ちつつも、厳しい概算要求基準を出発点として予算に取り組んでいかなければならぬ。暑い暑い夏であり、秋であり、冬である、こういうふうに思っております。
  131. 米沢隆

    ○米沢委員 御答弁を聞いておりますと、すべて今からだという感じでございますが、少なくとも大枠等については、大蔵省がことしの二月につくりました「財政の中期展望」の試算がございますね。そういう予算のフレームとしては大体そのあたりが出発点で、それから少々の足し算あり、引き算ありというぐらいのところから出発する、こういうふうに理解してよろしいですか。
  132. 竹下登

    ○竹下国務大臣 やはりお示ししましたフレームというのは、今おっしゃいましたようにプラスマイナス、アクセント、それぞれあるでございましょうが、予算編成に当たって私どもは念頭に置くべきものである。ただ、仮定の計算に基づいておりますので、例えば名目が下がりまして実質が上がったというのが五十八年の結果でございますけれども、そういう推移に対しても絶えず注視しておらなければなりませんが、やはり一つのお示ししたものは手がかりになるものであるというふうに理解しております。
  133. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほども柴田委員が取り上げておられましたが、例の概算要求枠の決定に関しまして、去る七月十七日に中曽根総理と自民党の藤尾政調会長との間で、六十年度予算編成の概算要求枠の取り扱いということに関し四項目の合意がなされた、こう伝えられております。先ほど大蔵大臣の答弁によりますと、さほど昨年と変わらない、特別の意味合いを持った合意ではない的な話があったんでございますが、昨日、政策協議という形で、私も民社党の一員として横に座って聞いておったんでありますが、藤尾政調会長の話によりますと、何しろ予算編成のやり方を変えるんだ、こうおっしゃっておりました。しかし大蔵大臣は、先ほどの答弁では、余り変わらないというようなことで、何かちょっとしっくりわからないのでございます。もし変わらないのであったならば、わざわざ中曽根総理と藤尾政調会長が会って四項目を合意したなんということ自体が、そんなことをする必要がないと私は思うのでございまして、何らか変わるんだろうと僕らは一面は期待をして見ておるのですけれども、大蔵大臣はあの四項目の合意をどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、そして再度、本当に予算編成のやり方は全然変わらないのか、その点についていかがでしょうか。
  134. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、あの四項目の第一は、私はまさにいわゆる概算要求の作業について、シーリングという言葉は今までもそれは文書の上では使ったことはございませんが、正確に概算要求基準として位置づけられた。したがって、その基準に基づいて、まずはこの概算要求から始めていくということは、私は去年そういう言葉がなかったから比較のしようはございませんが、基準という言葉が設けられたということは、変わったとも言えるでございましょうが、いずれにしても昨年同様厳しい対応をしていく概算要求作業であるというふうにこれは位置づけしております。  それで、やはり第二項目というのが、合意の中では非常に重要なことではないか。従来も私どもは、いわば党との連絡等をしていないというわけのものではもちろんございませんが、絶えず大蔵大臣が財政事情等を党へ報告をして、そして一体となって詰めていこう。だから、従来もやっていなかったと言えばこれは私どもの責任になりますが、従来より以上に緊密な連絡をとってその作業に当たりなさいよ、こういうことであると思っております。  第三項目は、十二月でございますから、これは従来も最終的には政府・与党一体の責任において編成しておりますから、アクセントの相違はあっても、やることそのものは、私は別に変わったことをやるというふうには考えておりません。  四項員は、かねて政府も申し上げておるとおりのことである。したがって、もっと濃密にやって、国民大衆の意見を、皆さん同様選挙を経て出ておる者は皆、肌で感じておる、それに対する濃密な意見交換をやれというところに一番大きなアクセントがあるんじゃないかというふうに私は理解をしております。
  135. 米沢隆

    ○米沢委員 今までのシーリングという言葉言葉としてなかった、それはそれにいたしまして、いわゆる使われていたシーリングという問題は、どうも天井感があり過ぎる。大蔵サイドが一方的に何か予算編成を支配しておるといいましょうか、指揮しておるといいましょうか、そういう感覚がちょっと濃厚であった。したがって、そういう大蔵流の一律カット方式ではなくて、概算要求基準という、その基準という言葉の中に、シーリングの天井感から今度はいわゆるまさしく基準を中心にして、党としてプラス・マイナスをかなり濃厚につけるんだ、そういう意味でシーリングという言葉を使わず、概算要求基準をつくるというふうに我々は理解もし、藤尾政調会長の話もそういう話だったと、私は昨日のことですからよく覚えておるのですが、その大蔵サイドで仕切られる予算編成というものに対する反発、そのあたりを変えるんだというふうに私は受け取ったのです。  同時にまたおっしゃいましたように、党と政府との意見調整をもっともっと綿密にやり、あるいは野党の方からもいろいろな御意見を聞く、それはそれで結構でありますが、最後の段階でも、特に重点項目等については党が主体性を持って調整あるいは編成を行う、そのときには大蔵の役人はちょっと離れておる、そういうぐあいの話だったのです。  そしてまた、例の第四項目の、行革審の答申等については尊重するというのは、うるさく頼まれたから入れたというふうに私は聞いたのですが、どうも大蔵大臣の理解の仕方と私どもが実感として受け取っている理解とちょっと違うような気がするのですが、再度その点、どういう御見解をお持ちですか。
  136. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは政党人同士がそれぞれの立場で話し合いを行うという環境と、私が国会の場において、いわば行政当局の責任者として米沢さんと一問一答を行う場合と、言葉等についてはかなり差があると私も思います。が、まずいわゆるシーリングという用語は、従来一般的に使用されておりますが、公式的には使用されていなかったものでありますが、今回は概算要求基準という用語をきちんと用いることになったわけであります。したがって、概算要求というものは、私どもとしてはその基準を設けて、そして内なる改革を期待しながら、その中で八月末の概算要求が出てくるわけでございますから、これにつきましては手法が変わったというものではないというふうに御理解をいただいて私は結構だと思っております。  そのシーリングという言葉からくる天井感、もともと天井という意味ですから天井感があるのは当然でありましょうが、あるいは日本予算をつくるのに日本語を使えばいいじゃないか、こういうような議論もございましたが、行政当局がシーリングという用語を公式に使ったということもありません。むしろ概算要求基準という正確な言葉の中で、私どもは概算要求には従前同様の手法、こういうことで作業を進めさしていただくということになるわけでございます。  それから、今もおっしゃいましたが、二番目の事項というのは、これはもっともっと政府——大蔵大臣がと言われておりますのは、恐らく大蔵大臣は今日議院内閣制で議員の一人でもあるし、選挙にも出ておるという意味でございましょうが、党に対して濃密な連絡をやりなさいよということだと思っております。  第三番目の問題につきましては、例年も最終的に政府・与党一体でやるわけでありますが、事務当局を入れないでといいましても、我々がやりますと、時に単位も違ったりしますと人ごとでございますので、それはそういう構えを示されたのであろう、構えは結構でございますが、私自身もよく単位を間違えたりしますので、その点は注意しながらも、そういういわば政党人としての高度な政策論議をやってという意味に受けとめて、私どももそれに対応していかなければならぬと思っておるわけであります。  四番目は、頼まれていたかどうか、それは私は存じませんが、従来どおり私どもとしてはそれを尊重するという立場が法律で決まって、いわば臨調、そうして行政改革大綱、それのフォローアップをしておられる行革審でございますから、それは法律で決まった仕組みでございますので、最大限の尊重をするという建前は、もちろん私ども、従来同様に守っていくつもりでございます。
  137. 米沢隆

    ○米沢委員 第一項目の、来年度は昨年並みの方針のもとで概算要求基準を設定するというこの内容は、予算規模ではなくて、いわゆる経常経費をマイナス一〇%、投資的な経費をマイナス五%に厳しく圧縮する、そういうのが昨年度並みという意味ですね。
  138. 竹下登

    ○竹下国務大臣 厳密にいえば、昨年と同様引き続き厳しく対応する、こういうことであろうと思っております。  概算要求基準というものは、引き続き極めて厳しい財政事情でございますので、私があえてそういうことを申しておりますのは、閣議決定前に、そうですと言うことに対してはいかがかと思って言葉を選んでおるわけでございますが、昨年以上に厳しい状態でございますので、昨年同様の手法で引き続き厳しく対応していく、こういうことでございます。
  139. 米沢隆

    ○米沢委員 今までの予算編成の際に使われた一律マイナスシーリング方式というのは、現実的にはそうでもしないと予算の圧縮は難しいという現実的な手法であっただろうという感じは私も持っておりますが、反面、予算総体の中での政策の優先度のつけ方あるいはいわゆる省庁の縦割り行政が非常にうるさ過ぎるほどある、したがって、各省庁を超えた予算のめり張りをつけるというのは非常にてこずった、あるいはまた後で述べますように、財政赤字の要因でも、構造的な赤字の部分と循環的な赤字の部分がある、我々はそう判断もし、したがって、財政赤字の中でも、構造的な赤字については徹底的なメスを入れたらどうだ、しかし、循環的な赤字についてはもっと機動的に財政は対応すべきではないかということを主張してまいったわけでございますが、いわゆる一律マイナスシーリングというのが、そういう意味ではいろんな——現実的にはそうやらないとやりにくかっただろうとはわかるけれども、しかし、そのことをとることが、結果的に予算全体の中では多くの矛盾を抱え込んだというふうに思っておるのでございまして、したがって一律マイナスシーリングというやり方は問題だ、そう指摘もし、その是正を私たちは求めてきたつもりでございます。  したがって、先ほどの議論に重なりますけれども、私は、概算要求基準という、その基準という言葉の中に、財源次第によっては、あるいは政策選択の重要度によっては柔軟に対応するという意味が、逆に込められてしかるべきだ、そういう感じがするのですが、その点はいかがなんでしょうか。
  140. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、おっしゃいますように、一般論として一律マイナス、こういうことを言われております。昭和三十六年がたしかプラス五〇%シーリング、私が五十五年度予算編成をさせていただいたのも、まだプラス一〇%シーリングでございます。その後プラス七・五になり、ゼロになり、それでマイナス五、マイナス一〇、というところから、シーリングという問題の厳しさを、いわばこの予算編成に携わる者みんながより強く感じたというふうに思います。今おっしゃいましたように、かつて、かなり古い話になりますが、一省一局削減、そうすると、わずか四つしかないところも一局だ、十あるところも一局だという、いろいろな矛盾がありましたが、それしかとりあえずはないじゃないか、こういうので、あれは木村元帥、お亡くなりになりました方がおやりになったことがございます。確かに、現在の縦割り行政の中で一律に、もちろん例外事項は御案内のように残しますけれども、四兆数千億のいわば一〇%マイナスシーリング対象、あるいは七兆数千億のいわば五%マイナスシーリング対象という限りにおいては、確かに一律ということになっておるわけでございます。その手法があったから、ある意味においては内なる改革というものがいろいろな意味において出てきたのではないかという評価は、私なりに今しておるところでございます。したがって、ことしも、いろいろ議論をいたしましたが、概算要求というものの段階は、いわゆる内なる改革に引き続き期待をして、いわゆる政策の優先順位というものを財政当局側から指摘するということはなしに、あくまでもその内なる改革の中に政策の優先度をそれぞれ厳しく検討していただこうということで行わんとするところでございます。
  141. 米沢隆

    ○米沢委員 私も、一律マイナスシーリングでないと、現在の各省庁の縦割り行政の中では厳しいカットはできないであろう、現実的にはそう思うのです。しかし、例えば五十五年からゼロシーリング、五十六年がマイナス五%シーリングでしたか、五十七年、五十八年と、どんどんシーリングのマイナス率が高くなってくる。その間には各省庁とも、それぞれめり張りをつけて行革を、切り込まれたところもあり、まだ残っておるところもある。だから、五十五年からそのシーリングで予算を厳しくやってきて、各省庁間にはでこぼこがあると思うのですよ、僕は。でこぼこがある段階でまた一律何%カットとなれば、まじめにカットするのがばかばかしくなるという省庁も出てくるのではないか。あるいはそういう部門も出てくるのではないか。そういう意味で、今後マイナスシーリング等を使われるといたしましても、一律という画一的なやり方そのものが非常な矛盾として今から噴出するであろう、そう考えるわけです。  したがって、六十年度の予算編成の段階では、確かに精神は一律何%シーリングみたいなものであったにせよ、各省庁ごとにやはりめり張りをつけないと、まじめにやるところは何かばかばかしくなるという感じのやり方ではおかしいではないか。したがって、そういう意味では、予算編成の手法というものを、概念は一律何%で結構、しかし具体的なやり方としてはめり張りをつけるという予算編成のやり方が、これから先は大事ではないだろうかということを申し上げておるのでございまして、大蔵大臣もそういう意味で対処してもらいたい、こう思っておるのでございますが……。
  142. 竹下登

    ○竹下国務大臣 おっしゃる意味はすべて私わかります。そこで、したがいまして今日までも、概算要求をやりました後、今度はその省として五%の減が立った場合にはその半分を返すとか、そういうところで、何といいましょうか、今はかばかしくなるという御表現でございましたが、著しい不均衡が生じないような手当てをしてきたわけでございます。  そこで、お考えと私の考えとの、若干といいますか、あるいは基本的といいますか、差とすれば、まだ私どもは制度、施策の根本にさかのぼった厳しい対応の仕方で原局にそれぞれ優先順位を求めてもらう、あるいは制度、施策の根本にまでさかのぼっていただく余裕がある。余裕という言葉はいけませんが、そういう余地を、余裕あるなしにかかわらず見つけていかなければ、財政改革そのものが画餅に帰してしまうという懸念を持っておることも事実でございます。だから、今米沢さんのおっしゃった論理の上に立って編成ができる状態に財政の対応力をどうして返すかということではないかなと思っております。
  143. 米沢隆

    ○米沢委員 ということは、六十年度の予算編成の段階でもやっぱり一律という感じのカット方針を強制されていく、こういうことですか。従来の、行革の各省庁の進行度を見ながら、例えばマイナス五%でも、それにプラスもありマイナスもあるというようなシーリングの仕方をするのか、その点どうですか。
  144. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる概算要求基準に基づく概算要求決定、これは今おっしゃった考え方で対応していく、こういうことになろうと思います。
  145. 米沢隆

    ○米沢委員 さて、先般行財政改革の小委員会が、六十年度予算における行財政改革の推進方策をまとめて報告がなされました。これは正式には二十五日に臨時行政改革推進審議会の意見書として提出されるということだそうで、内容については若干の微調整があるとは聞いておりますが、大枠としてはほほ小委員会の報告どおりのものが内容に盛られるのではないかと私たちは考えております。そこで、今回出されました行革審の報告書、二十五日になると意見書になるわけでありますが、この意見書については、先ほど御答弁がありましたように、大蔵大臣としては最大限尊重するという立場にあろうと思うのです。しかし、さきに行われました例えば自民党と行革審との意見交換、あるいは新聞紙上で打ち上げられます自民党首脳等の意見等を聞いておりますと、報告書の厳しい歳出削減というその提言に対していろいろと異論がある、いろいろと欲求不満が噴出しておる、こういうふうに聞いておるのでございまして、今後の予算編成の段階で、大蔵大臣はこの意見書を最大限に尊重するという立場であっても、かなりすったもんだの議論が出てきて、最大限に尊重されないものになってしまうのではないかということを危惧するのでございますが、そのことはいかがでしょうか。
  146. 竹下登

    ○竹下国務大臣 それは、最終的には政府・与党一体、そして内閣の責任で予算書は提出しなければならぬわけでございますから、その過程においてはいろいろなことがあり得るであろうということは私も十分覚悟をいたしておるところでございます。やはり、法律に基づいて、いわゆる第二臨調の精神を酌んだ行革大綱、そのフォローアップの中に出てくる行革審の意見というものは尊重すべきものであろうというふうな基本認識に立って、私どもはこれに対応していかなければならぬ課題だ。中間答申、これは米沢さんも言葉を選んでおっしゃいましたが、若干の微調整はあるかもしれません。が、私どもは、したがって先般コメントを求められましたときにも、熱心な議論が行われたことに対して敬意を表し、尊重すべきものだと思う。それが完全にオーソライズされるのは今度の意見書でございましょうから、それは当然政府立場としては最大限尊重して当たるべきものだというふうに理解をいたしております。
  147. 米沢隆

    ○米沢委員 例えばこの報告書について、河本長官が十七日の閣議後の記者会見で、「五月中旬に聞かれた政府・自民党の行政改革推進本部の常任幹事会で、行革審の作業は臨調のときと違って自民党に相談なく始められたので、その報告がまとまっても党として関知せず、参考にとどめることを確認している」、こういうような発言があった。これは新聞記事でございますから、私は現場にいたんじゃないからはっきりこうお話しになったかどうかはわかりませんが、少なくとも、報告書は参考程度だ、こうおっしゃっておる。私も、政府と党とは違いますから、政府がこの報告書を求めて、そしてそれを最大限に遵守しようという気持ちに対して、党側としてはいろいろな異論があったり発言があることは、逆に自然だろうと思いますが、河本長官というのはこれは内閣の一員でございまして、ましてや政府としていわゆる行政改革推進審議会をつくり、そして今度は六十年度予算編成については何か提言はありませんかと政府として諮問をして、御答申をいただいた内容に対して、閣僚の一員がこんな感じで物を言うというのは、これは閣内不統一も甚だしいものであって、それゆえにまた、本当に最大限尊重されるようになるのかどうか。言葉は今大蔵大臣がおっしゃったようなことでありましょうけれども、実際はそんなにうまくいくのかな、こんな感じがするのですね。  だから、きょうは官房の水平さんに来ていただいておりますから、そのあたりを一体官房としてどう考えておるのか。あるいはまた総務庁の方にも聞きたいのでございますが、少なくとも政府として、内閣として、臨時行政改革推進審議会を設置しようとし、そしてそれに基づいた行財政改革小委員会の報告、そして報告書ができ上がれば、そんなのは参考程度で、余り聞く必要もないということを言われること自体、重大な問題だと私は思うのですね。そういう意味では総務庁にも聞きたいのだけれども、この審議会ができた経緯は一体何だったのか。そして六十年度の予算編成について提言でもしていただきたいとお願いした筋は一体どこで決まったのか。内閣で決まってないのか、ただ総務庁の恣意的な行為として、こんな答申を書いてくれと議論をしたのか、あるいは大蔵省予算編成をやりやすいように、何かうまく書いてくれというような私的な諮問だったのか、そこらをはっきりさせてもらいたいと私は思うのです。
  148. 水平豊彦

    ○水平政府委員 お答えいたします。  臨調答申を最大限尊重するということを基本姿勢に置いて、政府が鋭意行政改革に努力をしてまいりましたことは御理解いただけると思いますし、また、そのフォローアップをする機関でございますこの行革審でありますから、同じ態度で対応していきたいと思っております。     〔中西(啓)委員長代理退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕  先生指摘のように、ただいま行革審における小委員会が中間発表ということで意見をお出しいただいておるのでございますから、一応めどとしては今月の二十五日、これまた御指摘のとおりでありますが、二十五日を目途として本答申が得られる。したがって政府の具体的な姿勢というものは、本答申が得られた段階において明確に態度を示したいと思っております。  また、先生指摘の、閣内不統一云々の話がございましたけれども、私どもは一切それは聞いておりません。したがって、本答申が出た、意見提出がなされました時点において、これからも政府の責任において、先生の御指摘なされたことのないように、官房長官を通して厳に対応してまいりたいと思っております。先ほど大蔵大臣が仰せられたとおりでございますから、ひとつ御理解をいただきながらお見守りを賜りたい、こう思っております。
  149. 陶山晧

    ○陶山説明員 行革全体を取りまとめる立場として御説明申し上げます。  ただいま副長官から御答弁のとおりでございますが、若干補足をさせていただきますと、臨時行政改革推進審議会は、副長官の御答弁にもありましたとおり、臨調答申の推進機関、こういう位置づけで発足をしたものでございまして、今回の小委員会の報告書につきましては、五月の七日、後藤田当時の行政管理庁長官審議会に御出席になりまして、来年度の予算編成に関する当面の具体的な推進方策及び地方公共団体における行政改革の推進方策の二点について、当面緊急な御意見をちょうだいいたしたいという要請を申し上げたことは事実でございます。七月の九日と十六日に二つの小委員会から小委員会の報告書として審議会に提出が行われまして、以降審議会においては、ほぼ連日両小委員会の報告を基礎にしながら御審議が進められているところでございます。二十五日に審議会としての御意見が提出されることが予定されておりまして、政府としては、審議会の御意見をいただいた段階で対処の方針を考えていくということになろうかと考えております。
  150. 米沢隆

    ○米沢委員 そのような正式な手続を踏んでお願いをし、そしてその結果出てくる意見書ですから、それなりに重みを持ってもらわねばならない。にもかかわらず、そのように閣内でいろいろととやかく言うということは、これはまさしく閣内不統一のそしりを免れないわけです。  実はこの臨調答申だって、既に答申を出しておるわけです。あとは、臨調答申の中身について、政府として今度はそのうちからどれとどれを六十年度の段階でやりたい、そう言うのが本当であって、臨調答申を出させた上に、また今度は六十年度は何をしたらよろしいでしょうかなんというのは、そのあたりに政府の姿勢の弱さがある。そして出させたら、今度はそれにいろいろといちゃもんをつける。これじゃ行革審のメンバーの皆さんには失礼ですよ、こんなのは。そういう意味から、臨調答申の中身の中で特に六十年度対処しなければならぬ問題は何かというような気持ちでの諮問だと思いますが、これは本当は道なんでして、答申は既に出ておるわけですから、今度は政府としてみずからこれとこれをやる、それで行革審の皆さん見てくださいというぐらいのことでなければ、何か手法が逆転しているんじゃないかという気がするんですね。大蔵大臣、どうですか。
  151. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる行革審というものに対して、私は、過去に行ってきた問題のフォローアップということが一つはあろうかと思っております。それと同時に、必要に応じ六十年度予算の考え方あるいは地方の考え方、これから政府がやらんとするものに対する意見を聞かせてくれ、こういうことではなかろうか、こういうふうに思います。したがって、予算を緩くやろうと思うのでと言って聞いているわけじゃございませんから、あくまでも、厳しい対応をすることについての我々の考え方に対しての意見を求めたわけでありますし、地方の問題について、これは私の範疇の外にございますが、これから取り組まんとすることに対する取り組む姿勢を示した上での意見を求めたわけでございましょうから、私どもも、それはそれなりに総務庁として正式におとりになった措置であるというふうな事実認識をまずいたしております。  だが、行革審に対して今日まで御苦労いただいたことに対して、より政府が積極的な指針を示して、その上でいろいろな御審議を賜るという積極姿勢がもっと望ましいという主張は、それはそれとしていただける主張であるというふうに考えております。具体的に私も正確な文章を今記憶しておるわけではございませんが、行革審に対して非礼なことがあってはならぬというふうに私どもも考えております。
  152. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほど申しましたように、少なくとも内閣は統一してまじめに尊重しようという気持ちでやってもらいたいということだけお願いをして、官房副長官、御退席願って結構です。  しかしながら、党としてあるいは政治家として、この報告書に対していろいろな意見を持つのは当然のことだろうと思います。そこで、確かに最終的には意見書の形になっておりませんが、大筋この物の言い方が変わらないとするならばということが前提でございますが、私たち民社党はこういう考えを持ちました。ここに提案されております行財政改革の徹底によって「増税なき財政再建」と六十五年度赤字国債依存の脱却を基本目標とする、これは当然のこととして、我々大賛成です。また、具体的な方法として、行政の責任領域の見直し、補助金の総額抑制と制度見直し、国、地方を通ずる行財政の合理化を提唱しておることは、高く評価しなければならないと思います。しかしながら、この基本目標の実現のために、六十年度予算について、先ほど議論いたしましたように、「経常・投資両部門を通じて厳しいシーリング」を求めるということにはいささか疑問を持たざるを得ない。  先ほども申しましたように、政府が構造的な赤字と循環的な赤字というものを峻別せずに、一律にそこらにシーリング枠をはめるものですから、今日の経済、財政、国民生活の危機を招いたことは紛れもない事実であるという認識を我々は持っておりまして、したがって、行革審の言う一律シーリング方式、従来のとおりのやり方を継続することは、再び同じような過ちを犯すのではないか、そういう感じを持ちました。したがって、報告書で言われておりますような基本目標実現のためには、構造的赤字解消のため歳出全般を見直すということは賛成。しかし循環的赤字解消のために公共事業の機動的な実施、投資減税の推進など積極的な経済政策を推進することが不可欠なんであって、そこまで一律に抑え込むということは問題だというのが私たちの見解でございます。大蔵大臣は、今申し上げました私たちの考え方に何か異論がございますか。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる構造的、循環的、そういう区分をした議論が行われておるということは私どもも承知しております。ただ、政府部内の議論の概念としては存在しても、実質、手法としては、その循環的赤字というものの前提条件等が非常に難しいので、正確な手法としてこれを使ってはいないということは言えると思いますが、概念上今の米沢委員の御質問を私なりに消化すれば、構造的な問題については全く意見を同じくいたしております。そしていわゆる循環的問題につきましては、いわば財政の対応力自身が既に失われておるという認識に立っておりますだけに、財政の出動以外の手法によっていわばこの循環的問題については対応をしなければならぬというのが、極めて大ざっぱな考え方でございます。
  154. 米沢隆

    ○米沢委員 確かに百二十兆を超えるような国債残高を持つ。したがって、財政の対応力が極めて厳しいという状況は我々もわからぬわけではありません。しかしながら、この循環的な赤字を解消するために、ただ一律に緊縮予算をとるということは、逆に循環的な赤字をふやしていくことにつながりはしないか。そのあたりはもう少し研究しなければならぬのじゃないかということを我々は言っておるわけでございます。  五十五年から御承知のとおり財政再建の期間に入りましたが、一体五十五年から五十九年にわたって、今努力中でありますが、どれだけ財政再建が達成されたのでございましょうか。少なくとも、いろいろとデータを読みますと、「増税なき財政再建」と言いながら、五十五年から五十九年まで、一兆四千億程度増税が行われている。所得税減税はずっと先延ばし、引き延ばして、やっとことしにたどりついた。公共投資も連続ゼロシーリングになっている。その結果、五十六年税収三兆、五十七年度税収六兆円のマイナスを生じて、実質経済成長はわずか三%。五十七年、五十八年、五十九年と定率繰り入れをやっておりますが、これだって赤字国横の変形みたいなものでございまして、それがトータル四兆二千億円。表面はいかにも財政再建、いわゆる赤字国横の量を何とか減らそうという努力は見えますが、このようなものをみんな引っぱがしてみますと、財政再建とは言いながら逆に財政は悪化しておる。その間、構造的な赤字についてはいろいろと努力もされた。しかし、循環的赤字についての対応策が、財政的な対応力がないからできないというその一言で片づけられて、結果的には税収欠陥構造を持ってしまっておる。このところをなぜ政府は問題にしないのか、我々はこう申し上げたいのでございます。  例えば自然増収という形でどれくらい経済が自然増収を生み出す力があるか、そういう観点から過去のデータ等を調べてみますと、昭和五十年から五十九年までの数字をいただいたわけでありますが、例えば五十年、五十一年の段階では、租税及び印紙収入というのは、これは決算額で十三兆から十五兆程度でございました。そういう段階自然増収を生み出す力というのは、大体一兆九千億とか一兆七千億という力があったんですね。今は五十七、八、九と、約三十兆くらいの税収の中で、自然増収を生み出す力というのは、わずか一兆八千億とか二兆円という前後のものである。逆に税収額と比較をしてみますと、例えば五十年、五十一年ぐらいは今の税収の半分ぐらいですから、半分の力の中で約二兆円前後の自然増収を生み出す力があったということは、これを数を比較して計算し直しますと、大体今の段階からいいますと四兆円ぐらいの力があった。ところが、今やそれが二兆円と半分に下がってしまっておる。  そういう意味で、確かに財政再建の途上の厳しい状況ではありますが、日本の経済そのものが自然増収を生み出す力が、五十年前後ぐらいから半分になっておるというこの事実を我々はきちっと受けとめて、そのための対策を打たない限り、単に構造赤字だけに対処し、循環的赤字もそれと道連れにカットするという方式では、日本の経済が生み出す自然増収力みたいなものは一向に立ち直らないではないか。今のような調子でいきますと、六十五年の財政再建増税なしには絶対に無理ではないかと考えざるを得ないんですね。そのあたり、少しぐらいは方針転換をやってもらったらどうなんだという気持ちが我々にはあるということなんですが、大蔵大臣の見解を聞かせてもらいたい。
  155. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の数字上で申されたことに対して、私もそれを否定する考えはございませんが、考えてみますとこの四十年、まあ四十年は必ずしも建設国債と定義づけられてはおりませんが、いずれにしても四十年までは国債発行はなかった。四十年から発行されたものは、名称は別として、言ってみれば建設国債であった。しかも四十八年の暮れでございますか、第一次石油ショックがございました。しかしながら私は、建設国債というものがいわば財政の出動し得る効き目として最高の効き目をしてきたのが大体そのころではなかったかと思うわけであります。そうしてやはりそこに第二次石油ショックがやってきたということが一つあろうかと思います。これは五十六年、五十七年の二年度にわたっての大きな歳入欠陥をもたらした要因であります。したがって、税収の規模はおっしゃるような規模に広がっております。しかし、あのときは、財政が出動し得る対応力があったから、したがってそれがいわば経済の活力を加速いたしまして自然増収につながった。今日は、国債費の占める比率そして残高等を見ました場合に、税収そのものが対応力として稼働しておるとは思えない。そこに私は当時の状態と基本的な違いがあろうかと思っております。  もう少し中間的なことを申しますならば、さらにはこの公債政策というものが有効に機能したのは五十四年ぐらいまでが最後ではなかったかなと私は思うわけであります。五十四年には既に四〇%弱の公債依存度でありましたが、結果としては、決算面ではそれは大きく下回りました。すなわち、自然増収に支えられて発行すべきものを発行しなくて済んだということであります。五十五年はぎりぎりであったのではないか、四百八十四億でございますかの剰余金が出まして。この五十五年を、私はたまたま大蔵大臣でありましたが、これを財政再建元年に位置づけようと思いながら、それだけの自己評価をすることができなくて、クリスマスにイブがあるごとく、財政再建元年の前晩にすぎないという自己評価をしたわけであります。  そこで五十六年度に、「まず初めに二兆円の減額ありき」というところから進んだわけでありますが、この五十六、七年というのは、やはり世界同時不況というものに対して逆らって進むだけの力は既に失われておった。したがって、五十八年度からいま一度いわば締め直してこれに対応していくわけでございますので、いわゆる国債費の占める重圧とか残高の占める重圧とか、そういう背景が当時と違ってきておるということ。私は現状認識として、好むと好まざるとにかかわらず、その認識の上に立っていかなければならないのではなかろうかというふうに思います。したがって当時の、仮に一兆円の持つ乗数効果と今日の乗数効果にもまた大きな差異が生じておるということも念頭に置かなければならぬ、こういう考え方であるわけでございますので、今の数字上の分析を一つも否定するものではございませんが、その中の構造自身が既に変わってきたということにもやはり留意しなければならないのではなかろうかというふうに考えます。
  156. 米沢隆

    ○米沢委員 この議論はやればやるほど難しい議論になるかもしれませんが、少なくとも我々は日本の経済力として、自然増収が大体四兆から五兆ぐらい出し得るような経済をつくることも念頭に置いて予算編成が行われない限り、よく言われますように、家庭の赤字を消すのと国の赤字を消すのとでは手法が違う、家庭の赤字は使わないように努力すればいい、しかし国の方は手を打たなければ、その分だけ入ってくる実入りも少なくなっていくという、これは易しい言葉でございますが、経済の本当の姿だろうと思うのです。そういう意味で、今度の六十年度の予算編成においても、少なくとも循環的な赤字というものもある、それに対してはでき得る限り機動的に対処できるような対応をするという方針を、一面政府の中に柱を立ててもらいたいということを私は再度お願いをしたいのでございます。財政再建といっても、いわゆるその経済的な本質上からいっても、実体経済の動きと切り離して考えられないのは事実だと私は思うのです。  経済企画庁の方、来ておられますか。今政府は、意識としては構造的な赤字、循環的な赤字というのはあるけれども、やはり一律緊縮財政でなければならない、そうやらざるを得ないというような話をされましたが、循環的な赤字というものの認識があった上で、やはりそこにもずっと緊縮財政という方針を貫いていくということは、財政再建の上からは非常に問題があるのじゃないか。そういう分析をされたことはありませんか。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕
  157. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 お答えいたします。  構造的赤字と循環的な赤字の問題でございますけれども、まず構造的赤字というのは、現行制度を前提とした上で労働力の完全雇用それから設備のフルキャパシティー、完全利用、このもとで生ずべき収入に対して歳出がどれだけオーバーしているのか、こういう問題でございます。したがいまして、これは制度が変わりますと、同じような経済状態でありましても、それによって構造的赤字の大きさというのは変わる、こういうことだと思います。  それに対しまして循環的赤字でございますけれども、循環的赤字というのは何かと申しますと、これはいわば景気の自動安定装置、こういうものがございます。いわゆるビルトイン・スタビライザーでありますけれども、このビルトイン・スタビライザーの作用によって、景気が悪くなったときに赤字がふえる、あるいは景気がよくなったときにその赤字が減り、あるいは黒字化する、こういう性質のものを循環的赤字あるいは循環的黒字、こういうふうに呼んでいるというふうに私どもは理解しております。この自動安定的な動きという効果は、現在もなお十分生かされている、こういうふうに思います。  それに対しまして、裁量的な景気調整政策につきましては、先ほど大蔵大臣からも御答弁がございましたように、財政の対応力が衰えているということは事実だと思います。しかしながら、こうした裁量的な景気循環対策、景気対策、こういったようなものも、例えばことしの公共事業の執行に当たりまして、景気回復のおくれているような地域を選びまして施行の促進をする、こういったような形で、できるだけの範囲内で裁量的な対応がなされている、こういうふうに私どもは理解しております。
  158. 米沢隆

    ○米沢委員 今の考え方は、大蔵省予算編成の方針を認めた上で、しかし何も公共事業がゼロになったわけじゃありませんから、認められたものについて裁量的な投資をすれば、ある程度の効果があり得るというような話でしたね。僕はもっと経済学的に、今の大蔵大臣の方針の上に立った理解の仕方とは別に、循環的な赤字というものに対して緊縮財政が持つマイナス効果みたいなものがあるはずだろう、そのあたりはどんなものですかと聞いておるわけです。
  159. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 経済学の理論でございますと、いろいろ具体的な経済条件、こういったようなものが捨象されております。したがいまして、他の条件において等しければ、その上でなおかつ裁量的な政策が大幅にとられれば、その方が景気がよくなる。これは当然の理屈でございますけれども、それを具体的な経済の条件のもとに適用する、こういうことになりますと、かなり単純な理論どおりにはいかない点もある、こういうふうに理解しております。
  160. 米沢隆

    ○米沢委員 この議論は、予算編成の方針そのもの、大蔵省の物の考え方が変わらない限り非常に難しい問題だろうと思いますので、これはまた引き続き今後議論を重ねていかねばなりません。  そこで、我が国の経済の現状をどう見るかということで、経企庁の方に御質問をいたしたいと思います。  御案内のとおり、ことし一月から三月期の実質経済成長率は、前期に比べて年率換算で七・四%と、六年ぶりの高い伸びを示したという報道がなされております。しかしながら、これはうるう年という特殊要因によって水増しされた部分もあるのだそうでございまして、それを除外すると五%程度の伸びだそうでございます。  この成長のうちの約四割が外需に依存、内需主導による我が国経済の潜在成長力の顕在化というものにはちょっとまだほど遠いという感じが否めません。特に個人消費は、昨年四月から六月期以降一進一退を続けておりまして、昨年来の政府の、減税をする、そのかわりその原資増税でというような、こういうやり方がまだパンチが効いてないということであろうと思いますが、昨年持ち直しておりました民間住宅建設も、ことしに入ってまた再び伸び率マイナスに転じておる。そういう意味で、なお低迷傾向から脱し切っていない。さらに、企業倒産件数は過去最高記録、そして雇用情勢も依然として厳しい状況にある。景気がよくなった、よくなりつつあるという話はよく聞きますけれども、現実的に実感としてはまだまだ好況感が出てこない。その意味では、我が国もまだまだ、景気はよくなりつつあると言われながらも、なお依然として懸念すべき材料を多く抱えており、当面の景気回復の兆しをもって楽観視することはできないという考えを我々は持っておりますが、経企庁は現在の景気、経済状況をどのように見ておられるか、あるいは現状の景気の上昇気流を眺めたときに、五十九年の経済は最終的にはどういうようになっていくと推測されておるのか。
  161. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 景気の現状を、私どもは次のように理解をしております。  まず、外需と内需を分けて考えてみますと、先ほど御指摘がございましたように、ことしの一—三月実質成長率に対しまして外需の寄与が三六%ぐらい、こういうことでございます。実質GNPの構成比という形で外需のGNPに対する比率を見ますと、最近では大体七、八%。七、八%のものが三六%を押し上げている、これはやはり外需に依存する度合いが多い、こういうことだろうと思います。しかしながら、内需もまた六割以上の寄与がある、こういうことでございます。  そこで、内需のどのあたりが今伸びておるのか、これを私どもの、ことしの最初につくりました政府見通し、経済見通しと比較してみてどうだろうか検討してみますと、まず設備投資を中心といたします企業投資が、このところの企業収益の回復、これが背景となりまして伸びております。これに対しまして、これも御指摘のございましたように、個人消費は私どもが当初予想したものよりは伸びが低い、こういうことかと思われます。外需の伸びが非常に大きい、それに依存する度合いが大きいということでありますが、最近の輸出の伸びを見てみますと、一年前に比べまして二割の伸びになっております。そのうちアメリカに対する輸出の伸びというのは五割に及んでおる、こういうことでありますと、こうした状態がこれから先続くということはやはり期待できない、多少は鈍化をするであろう。それに対しまして、生産活動の回復に伴って輸入の伸びはふえていくだろう、こういうふうに下期まで通じて五十九年度を考えてみますと、外需の動向はそういうことになるのじゃないか。  それに対しまして内需の方でありますけれども、現在消費の伸びが私どもの期待よりはややおくれているというのが事実であるというふうに申しましたけれども、これは消費が所得の関数である、こういうことだと思います。この場合の所得というのは、生産活動が活発になる、そういうことで国民の所得がふえてくる、そうすればそれに応じて消費もふえてくる。景気の段階というのを、私どもとしては、景気の回復から拡大の局面への移行の入り口に入っている、こういうふうに現在理解をしておりますので、今後の生産活動の増加に応じて所得もふえていくだろう、こういうことからして消費の伸びもこれから着実になっていく、こういうふうに見ております。  そういうことで五十九年度を詰めてみますと、最初に大蔵大臣からもお答えがありましたように、四・一%というのは達成する見込みである、こういう状況ではないかと思います。
  162. 米沢隆

    ○米沢委員 マクロの経済としてはかなり順調にいくようなお話でございますが、もう皆さんも御承知おきいただきますように、業種間とかあるいは地域間、あるいは規模間では、いまだにかなりの跛行性が見られる。平均的には上昇しつつあるけれども、個別に見れば逆にギャップが大き過ぎて、上の方は過熱するぐらい、いい。しかし、下の方はかなり冷え込んでおる。合わせて見ればちょっとはよくなっておる。しかし、経済というのはそれぞれ生き物ですから、マクロ的にいいものか結果的には隅々までいく可能性はありますが、そのギャップが大き過ぎますと、いつまでたっても、トータルはよくなりつつあるが、実際、我々はまだまだだ、こういうのが残る。しかし、この残った部分に対して個別に対策を持っておかないと、やはり経済というものの政策としては本物ではないのじゃないか、そう思うわけです。  そういう意味で、例えば六十年度の予算編成等にも配慮していただきたいことは、地域間格差あるいは業種間格差、このあたりをどう是正していくのかという問題がやはり大きな柱でなければならない、こう思います。そういう意味で、経企庁としてそれらの効果的な政策立案みたいなものが進んでいるのかどうか、その点大蔵大臣はどういうふうなお考えを持っておられるのか、その点をちょっと聞かしてもらいたい。
  163. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 ただいま御指摘のありましたように、平均的な姿としては回復から拡大へ、そういう局面へ移行するという意味ではある程度の成果が上がってきているけれども、業種間、地域間あるいは規模間の跛行性があるではないか、これはおっしゃるとおりだろうと思います。例えば公共事業に依存する割合の多い北海道などの地域は景気回復がおくれておりますし、さらに業種別に見ましても、建設業でありますとか造船、海運、こういったようなところの景気回復はおくれている。規模別に見ましても、中小企業——輸出に依存する部分、ME、そういったような先進的な技術分野に関連する部分、これは非常にいいわけでありますけれども、個人消費に関連する部分については、景気の回復にいま一つという感じがある、こういうことだろうと思います。  こうした状況に対しまして、私どもとしてはどういうふうなことをこれから考えていくのかということでありますけれども、一つは先進技術につきましての開発投資、研究開発、こういったようなものを促進していく必要があるではないか、こういうふうに考えております。現在先端技術の分野を中心といたしまして先進国の間で激烈な開発競争が起こっている、こういうときにそれに乗りおくれるようなことでは、日本経済の成長力、これから先の競争力を損なうことになる、こういったことをやっていく必要がある、そういう形で経済の活力を強めていく、その過程で跛行性というものをなくしていく、こういうことだと思います。さらに地域別の点につきましては、先ほども申し上げました、本年度の予算の執行について考えられましたような配慮というものも考えていく必要がある、こういうふうに思っております。これから六十年度の予算編成に向けまして、私どもとしても研究を続けてまいりたい、こういうことでございます。
  164. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今赤羽局長からお話がありましたように、それは適切なる御指摘であると思っております。地域別、業種別、規模別、三つのばらつきがあるということでございます。それは確かでございます。  したがって、この地域別の問題につきましては、先ほどのお答えのように、私は建設大臣とか農林大臣ではございませんで、たまたま公共事業執行に関する閣僚会議の議長であるという意味において申しますならば、よく言われます傾斜配分でございますとかそういう機能を発揮さすことによってのばらつきの是正ということは、今後とも念頭に置いていかなきゃならぬ課題であるというふうに思っております。  それから、この業種別の問題の中には、確かに自然にいわば国民のニーズの変化あるいは国際競争力で、開発途上国等の追い上げ等によって漸次縮小されていく分野もあるでございましょうが、それらの雇用をまた吸収する意味において、国際競争力を持ち、そしてなおこれからそれをつけていかなければならないところへそれらが吸収されていくということも、政策判断の中に入れるべき問題である。  そして規模別の問題につきましては、最近のべンチャービジネスとかいうことになりますと、あるいは規模別の問題は議論する外に置かれる場合もあり得るでございましょうけれども、総合的な中小企業対策というような中で対応していくべきものではなかろうかというふうに私も考えております。
  165. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、この際六十年度税制改正において、企業の設備投資を促進させるための投資減税をぜひ考えるべきだという観点から、当局の見解をお聞かせいただきたいと思うのであります。  昨日も藤尾政調会長はかなり前向きにこの議論をされておりましたので、かなり有望株として浮上しつつあるかなという感触は持ちましたが、大蔵省の抵抗も大変あるだろう、こういうことで御見解を聞いておきたいと思うのであります。  御案内のとおり、今世界的な規模で先端技術産業の技術革新競争が繰り広げられております。我が国もこれから世界に伍して経済的に伸びていくためには中長期的に国際競争力をつけていく、そのための投資も必要であろう。やはり技術立国として生きるしかないわけでありますから、そのあたりを念頭に置きながら、ここらで投資減税というのが必要ではないかな。同時に、御承知のとおり、設備の新しさというものが今までの日本の活力を生んできたものでございましたが、今や伝えられるところアメリカあたりがかなり新しくなって、日本は逆に古くなりつつある。これからまた日ごとに技術革新が重なっていくわけであります。何せ一日サボったらもう次は新しいものが出てきておるというような状況でございますので、国際競争力ということを考えた場合に、日本の先端産業あたりがもっとどんどん投資ができるような環境をつくっていくことが、百年の大計を考える場合には大変大事なことではないか。そういう意味で、財政も厳しい折からではありますが、長期的な観点からもっと投資減税というものに配慮が欲しいと私たちは考えておるわけでございます。そういう意味で、ことしは大々的な投資減税をやってもらいたいと思うのですが、経企庁、通産省、大蔵省等の見解を承っておきたいと思います。
  166. 赤羽隆夫

    ○赤羽(隆)政府委員 これは分析屋の立場から申し上げることでございますけれども、設備投資の動きをとってみますと、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、企業の利益との相関が非常に高いということがございます。したがいまして、企業が利潤を上げ得るような状況を前提とした上で、それをさらにプラスアルファとして一歩進める、こういったような税制上あるいはその他の援助措置というものがとれればそれは非常に有効であろう、こういうふうに考えております。企業にとりまして、いわば奨励策というのと、その反面におきまして非常に競争が激しくなる、その競争の中で生き残りをしなければいけない、こういったような面での激しい競争によるところの強制力、こういうものが企業の設備投資努力、革新努力に有効に結びつく、こういったような点についても何か研究ができないか、こういうふうに考えております。  これは私どもの大臣もしばしば言っておられるわけでありますけれども、先端技術開発におくれをとらないためのいろいろな促進策、そういうことに関連いたしまして、アメリカの投資減税、これが参考になるということは確かにそのとおりだろうと思います。これを参考にして私どもは勉強したいと思いますけれども、その一方では規制の緩和、こういったようなことがございます。企業が設備投資をし、その生産能力を新鋭化する、その上でいろいろな規制というものがこれを妨げている面はないだろうか、そういったような面についても研究していく必要がある。そういう面でアメリカの実績というものはまた参考になるのではないか、こう考えている次第でございます。  私どもとしても、問題意識は先生の問題意識と非常に共通をしておりますので、できるだけ有効な、効率のいい税金の使い方、そういう意味で効果の上がる方法を研究してまいりたいと考えておる次第でございます。
  167. 細川恒

    ○細川説明員 技術開発の重要性、特に基礎技術、応用技術の開発の重要性につきましては先生指摘のとおりでございまして、技術開発をどのように進めるか、いろいろな角度から検討をしてまいりたいと思っております。  ただ、設備投資減税について見ますと、我が国の民間設備投資は昨年の年央以降増加に転じておりまして、ことしに入ってから、一—三月期では年率一二・四%の増加を示すなど、中小企業中心に順調に増加をしておるわけでございまして、したがいまして、本年度厳しい財政事情のもとではありますが、エネルギー利用効率化等投資促進税制、中小企業新技術体化投資促進税制などの投資促進税制を創設したところでございます。当省といたしましては、今後その十分な活用を期待するとともに、当面その効果を見守りつつ検討してまいりたいというふうに考えております。  なお、構造不況業種の活性化対策といたしましては、五十八年度から活性化のための設備投資に対する税制上の措置を講じております。加えまして、法定耐用年数につきましては、現実の基本的な枠組みに関連する問題、いろいろございますので、そういう観点から慎重な検討が必要だと思っております。
  168. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 現在から昭和六十年度にかけまして、景気の局面あるいは設備投資の局面をどういうふうに実体を認識するか、これはいろいろの立場もございますし、今後いろいろな政策の論議が行われるだろうと思いますから、その問題は、今後の政府部内はもとより、各方面の論議に譲ることにいたしまして、私ども税制当局といたしまして、投資減税について持っている問題点を率直に申し上げたいと思うわけでございます。  投資減税と一言で言うわけでございますけれども、どういう型の投資減税を念頭に置いて議論されているかということは非常に問題でございまして、例えばアメリカ型の投資減税といいましても球、投資税額控除のタイプのものを言っておられるのか、あるいはACRS、つまり加速度償却のような形のものを念頭に置いて言っておられるのか。前者の場合の一般的な投資減税については、財政資金のコストベネフィット、それから学説上いろんな効果の議論はありますけれども、実際、税制として組みます場合には、その税制によって追加された部分の投資というのは事実上区分けがつかないということになりますと、その年度に行われますグロスの投資に対して税のフェーバーを与えるものでございますから、財政資金のコストベネフィットの観点からいいますと、アメリカ型の、特に投資税額控除型の税制というのは政策効果が非常に疑問である。お金がかかる割に疑問でありますから、特に我が国のような現在の財政事情のもとでは、租税政策としてはああいう投資減税というものはよほど慎重に考えないといけないというふうに考えておるわけでございます。  それから、部分的な投資促進策につきましては、先ほど通産省からの御議論もあったわけでございますけれども、新規にどういうものを考えるのかということは、これからの六十年度の税制改正あるいは各種の政策形成の過程で論議が行われるわけでございますけれども、我々といたしましては、現下の財政事情あるいは投資の各局面からいいまして、この問題についてもよほど慎重に考えるべきであろうというふうに考えております。
  169. 米沢隆

    ○米沢委員 それぞれ各省庁のニュアンスは違いますが、私が申し上げたいことは、景気もある程度上昇局面にありますから、単に景気対策としての投資減税というよりも、これから日本の経済社会の百年の大計を考えたときに、今手を打っておかなければ後顧の憂いを残すようなことになるんじゃないかという意味から、投資減税を利用して、技術立国として生きていけるような基盤をつくってもらいたい、こういうことを申し上げておるのでございますから、その点、誤解のないように今後の議論を重ねていただきたい。これもここで結論の出る問題ではありませんので、議論は先送りいたしますが、その点をぜひ御配慮いただいて御検討いただきたい、そういうふうに思います。まあ財政の厳しい折柄でございますから、そう簡単に税源があるとは思いませんが、今は当面中曽根内閣はもったといたしましても、将来、日本の技術立国としての立場が危うくなるということであればやはり問題であろう、そういう認識があることを御理解いただきたいと思います。  それから、時間もかなり追ってまいりましたが、小委員会の報告書を見ますと、かなり厳しいことが書いてあります。総論の中では、御承知のとおり、今後適度の経済成長が持続をし、厳しい歳出抑制努力をすれば、六十五年には赤字国債依存体質から脱却することは必ずしも不可能ではないというような書き方がしてありますが、先ほどからの議論を踏まえる限り、私はそう簡単にいくはずがないという今の結論です。  そのことは別にしまして、一つぜひ考えてもらいたいことがあります。財政再建といいましても、どうもみんなとらえ方が違うのですね。とらえ方が違う、理念が違うものだから、いろいろなところからまた問題提起がなされて、何か教育論議みたいな感じがするのですね。それぞれ理屈があって、それぞれおまえの言うことは間違いとは言えないというくらいに価値観が多様化するほどに財政再建という概念はおぼろだ。そこにやはり問題が錯綜するゆえんがあるような気がします。そういう意味で私は、この財政再建という問題を、一体どういう状況であれば財政再建が成ったというふうに理解をするのかという理論づけみたいなものがこの際必要ではないか、そんな感じがしてなりません。例えばGNP比に対して国債残高がどれぐらいなら健全だとか、あるいはまた予算の中でどれくらいの構成が妥当だとか、あるいは預貯金の残高に比してどれぐらいならまだいいだろうとか、もっと国民にわかりやすいあるいは納得性のあるような財政再建とはこういうものだ、こういう状況を達成したならば財政再建は成ったと言われるような理論づけをして、それをPRしていく、そのために協力を求めていくということがなければ、何となく六十五年——五十九年が裏切られましたからね。六十五年だって政治的に決まったようなもので、それはもうできるかできないかわからない。  今国会はいつもその議論で終始してきた。だれも信じる者はいなかったと私は思っているのです。やる気を出すには、目標としてはいいかもしれないけれども、現実的にできるかどうかの議論は、私は、少なくとも議論を聞いている限りはだれも納得していなかった、そう思います。そういう意味で、財政再建というものをもっと、どういうものだということを理論づける必要がある。そのあたりはやはり経企庁は勉強してもらわなければいけませんし、大蔵省としてもそのあたりははっきりさせていただくことが、これからの財政再建論議でスムーズな協力を求めるゆえんではないか、こう思うのですが、両者の見解を聞かせてもらいたい。
  170. 平澤貞昭

    平澤政府委員 財政は本来の機能があるわけでございます。いろいろ学説によって違うわけでございますけれども、景気を調節する機能と資源ないし所得を再配分する機能というものがあるわけでございますが、こういう機能が円滑に発揮でき、国民経済なり国民社会等々に財政としての役割を十分に果たせる状況になることが、やはり財政再建の一番大きな目標ではないかというふうに考えるわけでございます。これは個人的な意見でございますけれども。その際に、先ほど委員が御指摘なさいました構造的な赤字の問題もどうするか、構造的な赤字がほぼなくなったときに財政再建が成ったという考え方もあるいはあるかもしれないというふうに考えております。
  171. 谷口米生

    ○谷口説明員 お答えいたします。  財政再建という理念のお話でございますけれども、いろいろ考え方はあろうかと思います。まさしくそこが問題であろうかと思います。  で、昨年私どもがつくりました「展望と指針」におきましては、財政再建という言葉の意味といたしまして、単に財政収支の均衡ということにとどまりませんで、国と地方の役割の見直しでございますとか、国の行政のあり方の範囲の見直し、より広い問題としてとらえておるわけでございます。そういったところにつきまして歳出を徹底的、に見直しまして、六十五年、対象期間中でございますけれども、その期間中に特例公債依存体質から脱却する、と同時に公債依存度の引き下げに努める、これが私どもの財政再建についての考え方ということでございます。
  172. 瓦力

    ○瓦委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  173. 瓦力

    ○瓦委員長 速記を始めて。  米沢隆君。
  174. 米沢隆

    ○米沢委員 委員長に言われれば、もう質問を続けるような意欲はなくなりましたが、今の話ですね、経企庁も大蔵省もそういう話をされてきましたけれども、依然として財政再建とは何ぞや、財政に対応力ができるようにするといっても抽象的でしてね。実際は、物の考え方によってはどんなにでも解釈できるわけですね。とりあえず六十五年には赤字国債をゼロにするということだけは目標でありますから、余り深刻な議論ではないのかもしれませんが、財政再建とはどういう状況を達成したらそう言えるのかというものは、やはり数字で、あるいは目で見て物が考えられるような状況のものが一つの共通の理念としてないと、どうしてもやりっ放しになるような気がするんです。そういう意味で、難しい話かもしれませんけれども、六十五年時点の赤字国債をゼロにするというのが第一の目標。しかし、財政再建とは一体どういう状況かというのは、もっと我々のぼんくら頭でもわかるように理論づけしてもらいたい。そうでないと、共通の認識がないと議論は行ったり来たりしまして、みんな言うばっかりです。だから僕は、この財政再建というものは教育論議とよく似ておるなという気がしますので、ぜひ今後の検討課題として勉強もしてもらいたいと思います。  きょうは行革審の報告書に基づいて、各省庁ごとしはどうやるんだということを聞こうと思って、各省庁にたくさん来ていただきましたが、残念ながら時間がございません。また二十七日ぐらいにやりましょうかと思っておりますので、お忙しいところを御参席いただきました皆さん方に心からおわびを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。どうも済みませんでした。
  175. 瓦力

    ○瓦委員長 正森成二君。
  176. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、どうも遅くまで御苦労さまです。また、委員長初め各官庁の職員の方も御苦労さんです。ただ、大分任務を解放された方が多いようですので、私もほっとしております。大分遅くなりましたが、ここにおられる同僚委員は比較的少ないですけれども、法案がすべて通った後の一般質問で、六時を超えれば、それはいない人を責めるよりも、むしろここにおられる方々の奇特な志を褒めるべきであるという精神で、これからできるだけ要約して質問をさしていただきたいと思います。  それで、まず第一に伺いたいんですが、昨年の十一月からサラ金二法が施行されたわけでありますが、それにもかかわらずサラ金をめぐる被害というのは後を絶たず、むしろ報道されている面では激化されているような状況もあります。  例えば七月の二日ですか、静岡県の藤枝市に貸金業規制法の疑いで逮捕されたサラ金業者がおりますけれども、それは、両親の留守の間に家に訪れて、中学二年の長男と小学校四年の長女に、「この家にある金を全部出せ。親が金を返さないからお前らは泥棒の子供だ」「学校の本を焼いてしまうぞ」云々ということのおどし文句を並べて、長男の貯金箱にあった千四十六円をとったとかというようなことが報道されているわけであります。そこで、きょうは警察庁に来ていただいておりますが、この逮捕された事件の被疑事実及びその後の処置について、まず最初に説明をしていただきたいと思います。
  177. 清島傳生

    ○清島説明員 お答えいたします。  お尋ねの件は、静岡市内にあります貸金業グリーンシティのことだと思いますが、事件の概要はおおむね新聞報道ないし今先生のお話しのとおりでありまして、本件につきましては貸金業規制法第二十一条の取り立て規制違反といたしまして従業員二名を逮捕いたしまして、検察庁に送致をしております。
  178. 正森成二

    ○正森委員 今答弁があったのですけれども、報道されているところでは、「ハシでインコの目や腹を刺せ。いやならお前の目を刺してやる」「学校で借金をしていることをバラして、学校をやめさせてやる」というようなおどし文句を並べたというのですね。さすが新聞も「サラ金“鬼畜の取り立て”」という見出しになっているわけであります。  あるいは、挙げれば切りがありませんが、三和ファイナンスというサラ金業者は、神奈川県小田原市内の三十五歳の主婦を裸にさせて返済を迫ったほか、同県の足柄上部の会社員の自宅に押しかけて、金を返せないならと、寝ていた布団や御飯が入った電気がままで持ち去ったということで、二月に逮捕され、三月に起訴されたということになっております。  あるいは、茨城県土浦市に本社を持つ相当な、中規模より上のサラ金業者の店長が、お通夜の席まで取り立てに来て「葬式をぶち壊す。香典から金をよこせ」、こうおどかして警察に逮捕されるという事件を起こしております。  あるいは、武富士と言えば一流中の一流ということになっているんですが、そこの従業員が三名熊本北署に告訴されまして、顧客十七名の名を使って再貸し付けしたように見せかけ、計八百五十万円を不正に支出して着服、横領したということになったんですが、調べてみるとこれは一円なりとも自分の懐に着服しておらない。それは貸し付けのノルマを上げろ、上げろあるいは回収のノルマを上げろ、上げろと言われるので、やむなくそういうからくりを行った。これらの人たちは自分のポケットマネー、家族、さらに他のサラ金などから金を借りて未収金分の立てかえをしたりしていた。「回収の厳しいノルマを達成できないと、福岡支社から脅迫の電話があり、口答えすると退職させられそうになった」というように報道されているのですね。  そして、こういうことで解雇されたわけですが、「賃金を支払わずにすむ解雇予告除外認定を熊本労基署に申請した。しかし、同労基署は三月三十一日、その理由としている架空貸し付けについて「二人だけの問題ではなく、会社側の管理にも手落ちがある」として、この申請を認めなかった。」つまり解雇予告手当を払えということになったと報道されているわけであります。  あるいはさらに、この間事実上倒産ということになりましたヤタガイでは、社長室長がサラ金業者から借金し、返済が滞って会社に督促の電話が入った。ところが、その督促の電話を受けたのがヤタガイの社長であったという笑い話のようなことがありました。何の因果か、このヤタガイの社長はサラ金が大嫌いだという社長だそうでございまして、社員を採用するときには必ずサラ金の個人情報機関ジャパンデータバンクに照会して、一件でもサラ金からの借金があれば不採用とするということが報道されておるのですね。これなどは笑い話でありまして、相当大きなサラ金の社長が、おれのところの社員は少なくともサラ金から金を借りるな、借りている者は解雇であるということで、データバンクで調べよる、こう言うのですね。しかも、悪質でありまして、よそのサラ金から借りておる者を怒りつけまして、全部会社が立てかえて返してやる。そこまではいいのです。ところが、大手の場合は四〇%台で借りているのを、自分の会社で立てかえて払ってやるといって、今度は年率六〇%の金を貸し付けるということをやっておいて、おれはサラ金から借りるやつは嫌いてあるから解雇するというようなこと。こんな会社は倒れるのが当たり前と言ってもいいわけですが、そういう状況であります。  それで、経済企画庁の国民生活局の皆さん方がいろいろお調べになりましたデータを見ますと、「サラ金苦を原因とする犯罪(殺人、傷害、強盗、脅迫)及び自殺、家出」、これの調査表がありまして、五十八年の七月から十二月までは、自殺が八百十三人、家出が七千九百三十二人。五十九年一月から三月までは、自殺が三百六十九人、そして家出が三千二百五十一人。こういうことを警察庁がお調べになっているようであります。つまり、昨年の七月から十二月までで見ますと、一日に自殺が四・四人、家出が四十三・一人ということになるわけであります。  そこで、警察庁にもう一度伺いますが、私が今挙げた数字は誤りがありませんか。もし一月から三月まで以降、例えば四月、五月、六月の調査結果もありましたら、答弁していただきたいと思います。
  179. 清島傳生

    ○清島説明員 ただいまの件数はそのとおりでございます。  新しい資料で申しますと、実は法の施行前と施行後ということで分類してとっておりますが、法の施行前、つまり昨年の七月から十月まででございますが、自殺が五百九十二人、家出が五千八百二十人、犯罪が八百六十四件ということになっております。十一月以降五月末まで出でございますが、自殺が八百三十一人、家出が七千二百八十五人、犯罪が千三百三十五件ということになっております。
  180. 正森成二

    ○正森委員 いずれにせよ非常に大きな数でありまして、このことは、昨年十一月に施行されたサラ金二法はそれなりの取り締まりの効果を上げたのでしょうが、極めて不十分なものであったということを如実に示していると思うわけであります。  そこで伺いますが、銀行局長の私的諮問機関金融問題研究会というのがあるようでありまして、五十九年三月二十七日に「我が国における消費者信用のあり方」というのをまとめておられます。それに基づいて大蔵省銀行局調査課長の秋山さん、ここにおられるかどうかわかりませんが、その方が「わが国における消費者信用のあり方について——金融問題研究会のレポートより——」というのを一九八四年五月の「金融」という雑誌に載せておられます。これは銀行局調査課長がそれなりにおまとめになったもので、ただ、意見にわたる部分は私見である、という留保がついておりますが、これを読ましていただくと、こう書いてあるのですね。「いわゆるサラ金問題については、行政ないしは立法面での対応が遅かったためにより大きな問題になったとして政府に反省を求めている。」というくだりがあります。  それから、今後どうするかというような点についてお触れになった点で、種々ございますので一々は申しませんが、私が読ませていただいて非常に注目すべき点だと思いましたのは、金融機関がもう少し消費者金融に乗り出すべきで、それには一定の制約になっている金利を「利息制限法等の上限金利について再検討を行うことが必要であるとする意見が多く出された。」という意見。あるいは新しくできた法律の四十三条のことを意味していると思いますが、「同法の登録業者については、債務者から任意に支払を受けた利息につき、一定の要件の下に利息制限法の適用が除外されている。その結果、規制にアンバランスが生じており、報告書では、こうしたアンバランスは決して望ましいものではなく、基本的にはこれが解消される方向で検討されることが適当であるとしている。」これはグレーゾーンの問題を言っておられることであろうと思います。  それからさらに金利の点については、「遅くとも五年経過後、直ちに年率四〇・〇〇四%に移行することが望ましいと、かなりはっきりした考え方を述べている。」こう言っておるわけであります。つまり五年たったらもう一遍相談しようというようなことではなしに、遅くとも五年後には直ちにそうしろ、できればそれより早くという意見であります。さらに「貸金業者は、できるだけ早く貸出金利を年率四〇・〇〇四%に引き下げるよう努力すべきであり、同時に、行政当局もかかる方向で指導していくことが望ましいとしている。」こうなっております。つまり五年を待たずに行政指導でそうしろ。そして「消費者信用に関する総合立法の検討」という提案をしておりまして、諸外国ではこういうものができておるのに、我が国はそれがおくれておるということを言っているのですね。  そこで私は、まず大臣に、ちょっと中座されておりましたので、お聞き漏らしの点がございましたら先に局長お答え願ってもよろしゅうございますが、サラ金の被害がかくも大きいこと、あるいは銀行局長の私的諮問機関である金融問題研究会がいろいろ提言をしておること、あるいは関係の七つほどの官庁の部が総合的な消費者信用法といったものをつくる必要があるのではないかと提言されておること等についての大臣の御所見を承りたいと思います。
  181. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 御指摘のとおり、銀行局長の私的諮問機関の勉強会と申しますか、そこで去る三月二十七日に、消費者信用市場の健全な発達と、それからまさに先生が今問題にされております消費者利益の徹底的な保護のためには総合的な立法が必要であるという提言を銀行局長にしております。この問題につきましては、貸金業あるいは割賦業、クレジットカード業、それぞれ広範に消費者信用あるいは住宅ローン、もしそこまで含まれるなら住宅ローンまでも考えられると思いますけれども、そこまで横断的に相当広い範囲のものでございます。関係省庁もかなり多いと思われますので、私どもといたしましては、今後関係省庁と協議しながら慎重に検討を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  182. 正森成二

    ○正森委員 まだ非常に抽象的な答弁にとどまっているようですが、五十九年の七月に経済企画庁の国民生活局が「消費者信用の適正化に関する総合調査」という文書を発表しております。経企庁にもおいでを願っておりますので、報道によりますと、この秋にはヨーロッパに調査団を派遣したいとかいろいろ考えておられるようですが、こういうサラ金問題についてのいろいろな被害や世論の高まりから考えて、どういうような手順を考えておられるのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  183. 里田武臣

    里田説明員 お答えいたします。  先ほど先生が御指摘になられましたのは、実は五十八年度の消費者保護会議で二百八十項目にわたります消費者の施策を決めておりますけれども、その実施状況並びに今後どうするかということについて、最近の状況につきまして取りまとめたものの中の消費者信用の部分ということでございます。これは先生にもごらんいただいておるかと思いますけれども、幾つかの項目にわたっておりまして、関係各省と調整をいたしましてまとめたものでございますけれども、貸金業二法の適正な運用であるとか、今度改正されました割販法の施行体制を整備する、あるいは業界の指導を強化する、個人信用情報機関整備する、高金利を是正していく、苦情処理、被害対策等の促進に努めていく、消費者被害の救済の促進に努めていくというかなり広範な対策をまとめてございます。私どもは、こういったことを関係各省で協力して推進していきますれば、今後かなりの効果が出てくるのではないかということを期待しておりまして、当面こういう施策を着実に遂行していくことが大切ではないかというぐあいに考えでございます。  ただ、私どもとしましては、同時に消費者信用の適正化につきまして一層の努力が必要だというぐあいに考えてございまして、そのためにはまず実態をもう少しはっきり調べる必要があるのではなかろうか。先生も幾つか重要な点を御指摘いただきましたけれども、実はこの被害の状況を適切に把握するということはかなり難しい問題でございまして、そういう意味で被害の実態が必ずしも十分に把握し切れてないという面があろうかと思います。したがいまして、私どもは、こういう被害の実態、トラブルの実情につきましてもう少し詳しく調べさせていただこうというぐあいに考えております。  それから、海外の状況につきましてもあわせて調べさせていただこうと思っておりますが、同時に私どもの庁内に研究会を設けまして、こういう被害の実態等を踏まえつつ、今後さらに消費者信用の適正化を図っていくためにどういうことをやったらいいかということにつきまして、幅広く検討していただこうというぐあいに考えております。そういうことで、一応三月をめどに研究会を開催したいと思いまして、そういう検討結果も踏まえまして今後の対応も考えさせていただきたいと思います。
  184. 正森成二

    ○正森委員 大臣、今事務の方からいろいろ答弁があったのですが、大臣として、こういう実態を踏まえて統一的な消費者信用法の制定とかあるいは消費者金融にもっと力を入れるとか、そういう点について御感想あるいは御所見を簡単にでも承りたいと思います。
  185. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはサラ金二法が審議されておる当時から私考えておりましたが、一つは、金融機関そのものに消費者金融に対する取り組み万をもっと積極的にやらすべきだ。背景は多少違いましたけれども、労働金庫、信用組合等の員外貸し付けの問題、あれも私はいいことだなと思って、実はそのことを認めたわけでございます。  だから、基本的にはそこからやっていかなければならぬ。そして今の保護立法の問題につきましては、私、大変な関心を持っております。あのことを承りましたとき、まさに経済企画庁をつくりますときに国民生活局というのが必要だ。たしか今の中西大臣が局長になられまして、そのことをもってやはり国民生活局あたりの関心の持たれることだな、しかし金融機関そのものの監督機関である私どもとしても、注意していかなければならぬ問題だなという感想を持ったことは事実でございます。
  186. 正森成二

    ○正森委員 大臣が本当は六時半に御用があるのに残っておられるようでございますから、あと一問だけ伺って、それ以外は事務方がおられれば結構ですから、お帰り願って結構でございます。  実は新聞を見ておりますと、大蔵省が来年度から劇場や映画館の入場税の免税点を引き下げるという報道新聞に出ておるわけです。それで、この問題は既に当委員会で、たしか伊藤委員だったと思いますが、四月に質問をされ、あるいは関係の文教委員会でも何人かの方が質問されております。あるいは通告が漏れておったかもしれませんが、常識的にお答えになれることなので、伺っておきたいと思います。  私のところにも文化人から陳情が七月五日付で来ております。この点でどう書いてあるかといいますと、   戦費調達のための一種“ぜいたく税”として設けられた入場税が、未だ生きのびていることは驚異であります。ということを書いておりまして、   我々は、舞台芸術を国民の人間的、文化的生活に必要欠くべからざるものと考え、芸術創作活動および舞台芸術鑑賞に対して、国の文化政策として優遇措置が採られることを常に希望してきました。しかし、国の文化予算昭和五十五年度をピークに減少しはじめ、本年度予算にいたっては一般会計プラス一・四%に対し、文化予算はマイナス五・六%と大幅に削られました。そしてこの入場税。昭和五十五年度以来、平均してプラス十五%もの率で税収を伸しております。   九百万人を超える舞台芸術入場税担税者、さらに五千万人を超える観客、聴衆、舞台芸術家、製作者、劇場など舞台芸術愛好者は、明日の舞台芸術の発展を心から願っております。云々。途中省略しましたが、そういう趣旨であります。  そしてここに「不思議なお話」というような、さすが芸術家らしいパンフがございまして、杉村春子、宇野重吉、中山悌一、森下洋子などそうそうたる方が訴えておられます。  そもそも入場税は一九三八年、昭和十三年に戦費調達のために支那事変特別税法として成立したものですというように言われておりまして、入場税になったのはたしか昭和十五年だったと思いますが、それが昭和五十年に免税点の大幅引き上げが行われたときに、大蔵省の主税局も、実質的には入場税の廃止に近い大幅な減税だというように「時の法令」で書かれていたようであります。ところが、それがもし今度上げられるということになれば、これは非常に重大な問題であるということで、昭和三十七年に水田大蔵大臣は答弁の中で、入場税は税として悪税と思う、将来は撤廃すべきものと考えるという答弁をされたということが引用されております。  さらにまたこれは、きょうはおられないのが非常に残念でありますが、本大蔵委員会の尊敬すべき堀之内政務次官は非常に協力的な御意見を述べておられまして、「昭和五十年改定以来そのまま据え置きということはやはり一考しなければならぬ。非常に財政が厳しいとはいいながら、今後の文化発展を図るという立場からは、両方から検討していかなければならぬと思います」、今後検討すると言い、「政府税調にも御諮問申し上げます。取るべきだけが大蔵省というわけではないわけであります。」こういうように答えておられるんですね。  堀之内さんが特に文化水準が高いからこういう御答弁になったのか、あるいはより一層文化水準が高いと思われる大蔵大臣は、なお一層よい御答弁をいただけるのか。それで、ある意味では大臣、政務次官の文化水準についての評価も定まると思いますので、それだけを御答弁願いまして、御予定があるようですから、御退席願いたいと思います。
  187. 竹下登

    ○竹下国務大臣 どうも相済みません。  いわゆる税制調査会の物品とサービス等の答申の中にサービスのところがずっと書かれてありまして、運輸、通信等に対しても、こういう意見があったという指摘にとどまっておりました。入場税の問題というのは、別に今部内でそれを議論した事実はないというのが実態のようでございます。  文化の薫りということになると、これは第三者の批判にお任せすべきものである。私自身、そう文化人だとは思っておりません。
  188. 正森成二

    ○正森委員 それではあとの問題は、大臣がおられればよいにこしたことはありませんが、事務的な問題でございますので、局長以下に伺いたいと思います。  まず主税局長に伺いたいと思います。  主税局長は、この間の所得税法等の一部を改正する法律案、これでいろいろ私からも承ったわけでありますが、二百三十一条の二の「事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等」という項目について、この本文では「これらの所得の金額の合計額がその年の前年十二月三十一日において三百万円を超えるもの又はその年の前年分の確定申告書に係る当該合計額がその年の三月三十一日において三百万円を超えるもの(これらに準ずる者として大蔵省令で定める者を含む。)」という点についての私の質問に対しまして、時間を省略する意味から引用させていただきますが、昭和五十九年三月二十三日の議事録であります。「二百三十一条の二の第一項にございますように、ここの三百万というのは「確定申告書に係る当該合計額」が三百万ということでございます。」というようにお答えになり、その次のところでは「三百万円という決定を受けた人、それから確定申告の申告納税額が三百万の人、こういうことでございます。」この「申告納税額が」というのはこの速記録のとおりでいいのか、ちょっとわからないわけですが、ともかく「確定申告書に係る当該合計額」というように書いておられるのですね。この意味を御説明願いたいと思います。
  189. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御質問は二百三十一条の二の第一項でございますが、委員会委員にたしかお答え申し上げたとおりでございまして、その年の前年の十二月三十一日において三百万円を超えるもの、またはその年の前年分の確定申告に係る当該合計額がその年の三月三十一日、つまり申告の時点において三百万円を超えるものと、あのときの委員の御質問はたしか、三百万というこの基準がその義務を課する上の基準になっているわけですから、当該納税者にとってその基準が非常に不安定じゃないかという御質問に対しましては、ただいま御引用になりましたような答弁を申し上げました。
  190. 正森成二

    ○正森委員 そこで念のために伺うのですが、法文でも、あるいは主税局長の御答弁でも「確定申告書に係る当該合計額」というようになっておりますから、例えば事業所得と不動産所得と山林所得というものがございまして、事業所得が三百五十万である、ところが山林所得とか不動産所得がマイナスで、合計所得額が例えば二百五十万になったというような場合には、これは二百三十一条の二の事業所得等を有する者の帳簿書類ということで、この義務は発生しないんじゃないかというように答弁からは思われるわけですが、いかがですか。
  191. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 結論からいいますと、いわゆる赤字の部分についてはこの合計額の場合に算入いたさないわけでございます。と申しますのは、合計所得金額ということでございますから、所得金額というのはあくまで黒字の概念でございますので、三つの所得を通算いたしましてというふうな、赤字と黒字を通算するという手続はとらないわけでございます。
  192. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、その点が非常にわかりにくくて、我々の通常の概念からすれば、事業所得では仮に三百五十万、四百万あっても、ほかの所得でマイナスになって、申告するときには二百万とか二百五十万ということになれば、局長答弁では記帳義務は発生しない、二百三十一条の二でそう読んでおったのですね。ところが、赤字の場合には、足し算は足し算でもマイナスの足し算をしないでゼロの足し算をするということになるのですね。これは我々の質問の過程で非常に心配したことであって、それでは一般の期待から反してくるのですね。我々のところにも問い合わせがありまして、実はなぜこういう質問をするかというと、国税庁は既に知っておられるでしょうが、国税庁から五十九年版「改正税法のすべて」というのが出ておりますね。その中に、所得税関係の五十三ページのところに今答弁されたようなことが載っておるのですね。だから私が局長の前の答弁との整合性はいかがなものであろうかというようにお聞きしたわけです。それは皆さん方では赤字の場合はそんなものマイナスにするか、ゼロにするんだというのは常識かもしれませんけれども、しかし、一般国民にとっては、こういう議事録を見て合計額ということになっておれば、これはプラス・マイナスをするんだ、こう思うのも無理はないのですね。そうすると、どれか一つでも超えておれば、それが三百万超であればこれが適用になるんだというように答えた方が正確かつ適切だったと思うのですね。そうでないから、いろいろなことが私どものところへ問い合わせに来るということになるわけで、その点についての御所見をもう一度承りたいと思います。
  193. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 あのときの正森委員の御質問につきまして答弁をいたします私は、むしろ時点的に確定しないという点の御質問ということで、仰せのとおり合計額について赤字部分はゼロとしてカウントされますというところまでの周到な答弁をいたさなかったということは事実でございます。
  194. 正森成二

    ○正森委員 もちろん私は三百万円超でなしに、「これらに準ずる者」とありますので、その不確定な範囲を特定しようと思って聞きましたら、更正決定とかそういうような場合だけで確定するんだというところが中心で、私も三百万の合計所得金額というところに重点を置いたわけではなかったので、その点お互いに食い違いがあったと思いますが、今となってはそういう点についても疑問が出てきて、これはえらいことだ、赤字があって相殺すれば三百万以下だから大丈夫だと思っておったのが、やはりつけなければいかぬか、こういうことになってきているわけで、私としては、質問者としてもその点をさらに確かめておけばよかったと思いますけれども、今の答弁を聞いて、念には念を入れる必要があったというように思っておるわけであります。  そこで、次の質問に移りますが、この帳簿を備えつけておりますと、今度は大蔵省が、二項に「同項の帳簿を検査するものとする。ただし、当該帳簿の検査を困難とする事情があるときは、この限りでない。」という規定がございまして、私はこの「当該帳簿の検査を困難とする事情」というのはどういう場合を言うのかということを確かめたつもりであります。そのときに、要約いたしますが、物理的にないとか、非常に遠くへ行っておるということと、それから平穏に調査することができない状況というようなことを言われて、その具体的な内容については国税庁というものが実際には判断するであろう。一々答弁は読みませんが、そう大きな間違いはしていないと思うのです。  そこで、失礼ですが、主税局長はもう結構です。国税庁に伺いますが、国税庁にそのときに伺いまして直税部長が出てこられて、私の記憶では、帳簿をお見せ願って調査に御協力が得られないとか、あるいは渡辺さんは「従業員とか税理士以外の第三者の方が税務調査に立ち会うことにつきましては、納税者の秘密の保持といった観点もございますし、また税理士法違反のおそれの問題もございますので、遠慮させていただいておるところでございます。調査の場に第三者が立ち会うような場合には、納税者に、その第三者の退席を求めることにいたしておるわけでございます。」云々というようにお答えになって、私が住吉税務署等の例を挙げて、住吉税務署では、青色の方が帳面を前に置いて、見てくれ、こう言うのに、横に民主商工会の事務局員がおるから見ない、それが嫌ならこれをそのまま税務署へ持って帰って見てくれと言うのに、なおかつそれを見ないで青色を取り消したというような事案について、国税庁にけしからぬではないかと言い、あるいは本人はもちろん異議申し立てをするということになりましたら、青色の取り消しを取り消された。これは、渡辺さんは、初めとんちんかんに間違えて、「青色取り消しをいたしまして、」というように答えて、私から指摘されて、その部分を読みますと、「失礼いたしました。御指摘のとおりでございます。青色の取り消しを取り消しておるわけでございます。」というように答えたわけですね。私がさらにそれに対して、だから平穏な状態で帳面を見てくれと言うのに、ただ民商事務局員が横におるというだけで青色を取り消してみたり調査をしないというのは間違っておるということを主張したのに対して、それについては反論がなく、異議がなかったように聞いておるわけであります。  そこで私は申し上げたいのですが、税理士法が制定されましたので、税理業務の独占ということが税理士に行われて、代理とか代行とか、あるいは課税所得、こういうものに直接影響がある主張や陳述というのは税理士でなければできないし、場合によっては罰則というようになっておるわけですが、ここに速記録を持ってまいりましたが、当時の福田審議官の答弁によれば、大島委員やあるいは安田委員質問に対して、「財務諸表の説明、事実の説明というものは含まれない」というように二度、三度にわたって明確に答えているのですね。そうしますと、帳簿などの記帳に実際上関与した者がおるというだけで、いやその調査はしないとか、ましてや帳面を税務署に持ち帰ってもいいと言うのに持ち帰らないなどとかいうのは、もってのほかの違法な法解釈であると言わなければならないと思うんですね。  そういう点について、私は、税理士法そのものの制定のときにも反対しましたから、その法律が正しいとは思っておりませんけれども、悪法も法なりといいますが、悪法も法なりという立場を仮にとるとすれば、第三者が立ち会って何でもできるということを主張するのは行き過ぎでしょうが、少なくとも福田審議官が、それは税理士以外の第三者でもできることでありますと言うことをやる範囲内であれば、これは民商事務局員であれ何であれ、第三者が立ち会っておるから調査を拒否するということは許されないはずなんですね。それについて、次長になるのかあるいは直税部長になるのか存じませんが、御答弁をお願いしたいと思います。
  195. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えをいたします。  ただいま先生が御指摘になりましたことは、税理士法改正の際の当時の福田政府委員の御答弁からの引用だと思いますが、当時の福田政府委員の御答弁の趣旨は、税理士法との関係において、帳簿内容の説明等をするということについては税理士法の違反ということではない、先生指摘のように、課税内容について意見を述べたり主張したりするということは税務代理になるんだ、こういう御説明だったと私は理解しております。  そういう意味で、税理士法との関係におきましては、記帳内容の説明というのは税理士法に違反しないというのは前回そういう形で御答弁したとおりでございますが、今第三者の立ち会いということで先生がおっしゃいましたのは、私どもとしては、それにつきまして従来から、調査がそういう場合には平穏にできないんだということを申しております理由は、一つには、納税者のプライバシーと申しますか、取引上の秘密につきまして、私ども税務職員としてはいわゆる守秘義務がございますので、それに基づいて調査の過程で、納税者御自身の問題やないしは納税者と取引をしております取引先との関係で、単に取引金額ということだけではなくて、取引の条件など、いろいろやはり秘密にわたる問題があろうかと思います。ですから、一般的にそういう調査の場において第三者に立ち会いを求めることはお控えいただきたいというのが私どもの基本的な主張でございます。  ただ、私どもとしても、先生指摘のように、記帳代行というか帳簿をつけることを第三者にお願いするということは現行法上何の制約もないわけでございますので、私どもといたしましては、調査の過程で、調査担当者が必要と認める場合には、帳簿の実際上の処理をした担当者の方に同席をお願いして記帳の内容なりを説明していただく、その限りにおいて同席をしていただくということはあり得るというふうに考えておる次第でございます。
  196. 正森成二

    ○正森委員 随分限定的に言われたのですけれども、今あなた方が民主商工会などとトラブルを起こす二つの点のうちの一つの税理士法違反の点については、私の言うたような限度では違反の問題は起こらないということは認めたわけであります。  そうすると、残る一つとして、私ども税務職員には守秘義務というものがございますのでと言っておりますが、これは私が税務署等へ参りましてしばしば言っておることですが、守秘義務というのは公務員だけに課されるのですね。だから、あなた方が聞いたことをよそで言う場合には守秘義務違反だけれども、民間の人は守秘義務違反などということは全然頭から問題にならないのです。しかも納税者が、自分を補助してくれた人だということで話をするときには、そもそも自分ではこの人に対しては秘密とも何とも思っていないわけですから、そういう人に対して守秘義務違反の問題がありますからなどと言うのは、公務員に特に課せられている義務を不当に民間の人に押しつけて、納税者の権利を侵害するものにほかならないというように言わなければならないのですね。そういう理論は国税庁の中では通用するかもしれないけれども、裁判所等では絶対に通用しない理論ですね。我々民間人が法違反に問われるのは、そういうことを公然とよそで言った場合に、それが万一信用棄損罪とか名誉棄損罪とかになった場合にのみ法律上の違反という問題は起こるので、守秘義務違反などというのは、公務員以外には一般的に成立する余地がないわけであります。それを理由にして立ち会いを認めないなどということはもってのほかであるというように言わなければならないのですね。  しかし、その点については、限定された範囲ではありますけれども、立ち会いをしていただく場合があるというように言われました。私は、自分の方が特に必要と認めて立ち会いを認めたら、それから入ってこいという態度ではなしに、記帳等に関与した者であれば、納税者が、この人がよく知っているんだということを言った場合には、平穏な対応である限り、調査を拒否したり、ましてや新しい所得税法に基づいて帳簿等について検査をするというようになっておるわけですから、そういう検査を妨げることのないようにしてもらいたいと思います。  そこで、そういうことを前提にして、国税庁の直税部の所得税課は、昭和五十九年五月二十四日に事務連絡と称して「記帳制度等の執行体制に関する当面の応答要領」というのを各税務署の所得税第一部門統括国税調査官殿あてに出しましたか。
  197. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 ただいま御指摘のような文書を出しております。
  198. 正森成二

    ○正森委員 それを私は読ましていただきましたが、この中に「「検査を困難とする事情」(その一)」というような応答がありまして、「(問二十五)「検査を困難とする事情があるとき」とは、具体的にどのような事情があるときをいうのか。」こういう問いに対して「(答)」というわけで、いろいろ書いております。  その中で、二番目に「平穏に調査が行えないような状況にある場合」こういうように書いておりまして、「(注)第百一国会衆議院大蔵委員会議録(別紙)参照。」ということになっておりまして、「昭和五九年三月二三日(第百一国会) 衆議院大蔵委員会質問者〕正森成二(共)」共産党のことですね。「〔答弁者〕梅澤主税局長 渡辺直税部長」ということで、自分らに有利なところだけを引用しているじゃないか。そして、私が今言うたようなこと、ここに速記録を持ってきておるけれども、往吉税務署などの例を引いて、そういう立場はおかしいじゃないかということを言い、あなた方が「失礼いたしました。御指摘のとおりでございます。青色の取り消しを取り消しておるわけでございます。」といって謝って、そしてその後私が、つまりこういうことだなと言ったことについても全然反論もしておらないのに、自分たちの都合のいい、前の部分だけを引用して、しかも私の質問の初めの部分だけを引用しているじゃないか。これはまさに詐欺的な引用じゃないか。だれでもこれだけを見れば、正森成二はこういう質問をして、あなた方はあなた方の主張の税理士法違反などということがあるので、第三者の人は一切立ち会いを御遠慮願っておるという答弁だけをやり、それが正森成二にも了承されて、そしてこれが解釈になっておると、だれでも誤解するじゃないですか。  しかも、この当面の「応答要領」を見たら、相当分厚いものであります。私は今この関係部分だけを縮刷して持ってきているのです。その応答は随分あるけれども、大蔵委員会の議事録を質問者の名前まで引用して載せておるのはこれ一つなんです。そのことはなぜかといえば、こういうものが当てはまるのは民主商工会との関係が多いから、そのときに共産党の正森成二でさえこういう質問をして、こういう答えをして、それに対しては何ら異議がなかったということで、税務署をだまくらかそうとする詐欺的な引用じゃないか。なぜこんなことをやるんだ。けしからぬじゃないか。これを載せるなら、なぜあなた方が謝った部分を載せないのだ。また、謝った部分を載せるのが嫌なら、私の部分を詐欺的にこんなところへ載せるということは、全部削除したらいいじゃないか。自分らの主張だけを書けばいいじゃないか。なぜそんなことをするんだ。  こういうことをやられたら、私の名誉が傷つくのですよ。あなたのところの正森議員もこういうぐあいに言って認めているじゃないか、そんなことが民主商工会初め全国に広がってごらん、正森成二というのは、演説していることはうそなのか、こんなことを認めたのかということになるのですよ。しかも、現場の第一線の税務署は一々本物の議事録を見ないから、こんな議事録が載っておれば、こういうやりとりがあったと思うのは当たり前じゃないか。ふざけておるじゃないか。だから私は、今の答弁にもあるように、きっちりとした立場をこれに載せるか、少なくも私のこの質疑応答の部分は削除するということを出し直すことを求めます。そんなことをしなければ、何を一生懸命この委員会で聞いたかわからないじゃないですか。
  199. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 ただいま先生が御指摘の議事録の取り扱いにつきましては、確かに一部分だけ載せているということは事実でございます。私どもとして、決してそれでもって税務署の第一線の職員に誤解を与えるという意図を持って行ったことではないと私、確信をしておりますけれども、そういう意味での御指摘がございましたら、その取り扱いにつきまして、客観的に事実を第一線に伝えるような形でどのように対応をとったらいいか、検討させていただくようにいたしたいと思います。
  200. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたのでこれでやめますが、その検討した対応をできるだけ早く私に知らせていただくように求めたいと思います。  これは本来なら私の手に入らないものなのが、「天網恢々疎にして漏らさず」で、私のところへ入ったから問題になるのですよ。こんなものが手に入らなければ、私の選挙区までこれではっとあなた方はやるのですよ。そんなことをやって、とんでもない話じゃないですかということを指摘して、私の質問を終わります。
  201. 瓦力

    ○瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時六分散会