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堀委員 国立がんセンターの平山疫学
部長は御出席になっておりますか。——ありがとうございます。
今お配りをいたしました
資料は、実は平山
先生がお出しになりました「予防ガン学 一九八四年」という本の中から
資料として引用をさせていただいたわけであります。時間がかかりますので私の方からちょっと御説明をいたしますが、この
資料というのはそういう
意味では平山
先生のお仕事であるということをまず最初に申し上げておきたいと思います。
これから、健康と
がんという問題について考えていきたいのでありますけれ
ども、最初の表5は「年齢階級別年次別全死亡中に占めるガン死亡の割合 死亡者総数、男女計」ということであります。そこで、一番右の一九八〇年のところを見ていただきますと、全体の死亡の中で、要するにこの年齢の区分、例えば五十歳から五十五歳というところが一番ピークで〇・四四、ということは死亡者の中の四四%が実は
がんで死亡しているということでございます。それでよろしいのでございますね。ですから、それをずっと見ていきますと、どうも最近はみんな長生きするから、そこで
がんの患者数がふえているのじゃないか、死亡数がふえてきたのじゃないかという
考え方が実は言われるわけでありますが、これを年齢別に見てみますと決してそれはそうではなくて、各階層で
がんがふえている。その比較をするために、戦後の方が理解がしやすいと思いますので一九四七年というところと一九八〇年とを比較してみますと、一番ピークだと私の申し上げました五十歳から五十五歳のところは、一九八〇年は四四%になっているのですが、一九四七年にはわずか一七%しか
がんによって死亡していない。ずっと近年へ来るに従ってどんどん
がんの死亡の割合というのは実は高くなっておるということがこれで明らかであります。
その次の表6というのは男性の数値でありますが、ここは主として男性の方が多いものですから、男性は大体こういうことですよ。ですから御
自分の命の年齢のところを見ていただくと、大体
自分と同じぐらいの年齢の者というのはどのくらい
がんで死ぬのか。
私は、母親が
がんで亡くなっておりますので、息子は今巣鴨の癌研究会附属病院に十五年ほどお世話になっておるのでありますが、息子が私に言うのは、おやじさんようやく峠を越したよ、こう言うわけですね。どうして峠を越したといいますと、私は今満六十七歳、この十二月が来ると六十八歳でありますから、この六十五からというところを見ますと男性の場合は三三、こうなるのですね。ですから、もうここから先は七十歳になると二七、その次の七十五歳以上になると二〇と、だんだん減りますので、もう一踏ん張りで大分
がんになる確率が減ると息子が私に言ってくれているので、これはもう
一つ頑張って峠を越せば確率は減るな、こういうことなのであります。
そこで、それはそれとして、その次に「ガンの部位別にみた非
喫煙者の場合を一・〇〇とした毎日
喫煙者の標準化死亡比」というのがございます。これを見ますと、
たばこをのむ者とのまない者で、一番上ですね、横になっている棒グラフでありますが、一番高いのが
喫煙の場合は
喉頭がん、これは一・〇〇に対して三十二倍ですね。すごいですね、
喉頭がん。要するに
池田さんはさっき私が最初に四十六年の
予算委員会で申し上げたように大変なヘビースモーカーでして、私は既に、
池田さんが
総理になられてからの答弁を聞きながら、どうしてあんなに声がひどく傷んでいるのかな、
たばこを吸って、少しこれは問題があるな、こう思っておりましたけれ
ども、残念ながら
喉頭がんで亡くなられたわけです。その次が
肺がんですね。その次が咽頭
がん、口腔
がん、食道
がん、膀胱
がんというのが一・七一で、ここらへ来ると大分のまない人との差が縮まりますけれ
ども、大体この
資料で見ても明らかなように、実は
喫煙が非常に高い影響を持っているということが明らかになると思うのであります。次に女性の分も出してありますけれ
ども、女性は
喫煙者の数も少ないからこうなるのでしょうが、男性に比べると
喉頭がんや
肺がんは著しく低い、こうなっておりまして、これは統計上の客観的な事実ですから、
たばこをおのみの
皆さんはそういう客観的事実があるという
認識をお持ちになる方がよろしいのではないだろうか、こういうふうに思います。
そこで、その次の図は「
喫煙本数別にみた喉頭ガン肺ガンの死亡比」ということでありまして、一体一日に何本吸っているとどういう結果が起こるかという
資料であります。これはいずれも男性でありますが、
喉頭がんの一日
喫煙本数別に見た
資料の図3というのを見ますと、吸わない人が一に対して一日二十五本以上吸っている人は九八・六、ほぼ百倍の死亡率があるわけです。野口さん、よく聞いておいてくださいよ、これは客観的な事実ですからね。そうして、
肺がんの方はこれに比べると、今の二十本から三十本
程度のところは四・九倍くらいで、一番高いのは五十本を超えると十五・三倍になるということでありますから、いずれにしても、
たばこを吸っておるということが
喉頭がんなり
肺がんに非常に大きな影響を持っておるということは、これはもう客観的な事実として証明されておるわけなんですね。
その次に非常に問題なのは、
喫煙の開始年齢の問題なのであります。要するに未成年のところから
たばこを吸っておるということは、実は
肺がんになる確率が大変高くなっているのでありまして、ごらんのように、最初の図7というのは、十九歳までに
たばこを吸っていた人というのは、吸わない者が二三でありますが、一三〇、二十歳から二十四歳までの間に吸い始めた人は一〇八・六、二十五歳から二十九歳までに吸い始めた者が九〇・六、年をとってから吸い始めた人は実は相対的に
がんの死亡率はだんだんと少なくなっている。
その次の「
喫煙開始年齢別一日
喫煙本数別肺ガン標準化死亡率比」というのが最後に出ているわけでありますけれ
ども、これで見ますと、未成年のときから吸おうと二十歳以後になって吸おうと、どっちにしてもやはりたくさん吸ったのが害が多いというのが出ているわけですね。そうして、要するに未成年からのんだのと二十歳以上とを比べるとやや違うが、どっちにしても常に十九歳未満でのんだ人の方が死亡率が高いということでありますから、いかに未成年の
喫煙というものが
肺がんに大きな
関係を持っておるかということは明らかなのであります。
以上が、私がこの「予防ガン学」というのを拝見をして、一番
皆さんに客観的事実としてひとつ頭の中に入れておいていただきたいということなのであります。
これについて、ひとつ平山疫学
部長の方から、今申し上げたことについての
先生のお考えを
お答えいただきたいと思います。