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1984-07-12 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十二日(木曜日)    午後二時一分開議  出席委員   委員長代理 理事 中西 啓介君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中村正三郎君 理事 伊藤  茂君    理事 野口 幸一君 理事 坂口  力君       大島 理森君    熊谷  弘君       小泉純一郎君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    村上 茂利君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       川崎 寛治君    沢田  広君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       堀  昌雄君    柴田  弘君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵省主計局次         長       的場 順三君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         国税庁次長   岸田 俊輔君         国税庁税部長 冨尾 一郎君  委員外出席者         防衛庁経理局会         計課長     田中  寿君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長の指定によりまして、私が委員長の職務を行います。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本日、参考人として税制調査会会長小倉武一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  5. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 税調会長、御苦労さまでございます。  最初に、大臣にお伺いしたいのですが、先ほどの本会議でいわゆるパート減税成立をいたしまして、話が決まってから今日まで随分長かったなと思いますが、喜んでおります。つきましては、私ども当初は、これは当然ですが、所得税法本則改正、また別表、付表ございますが、この間減税で変えたばかりで御苦労さまですが、有能な主税局皆さんがやればすぐ済むと思いますから、それが一番きれいな形だなと思いましたが、さまざまございまして、私どもは、たくさんの人が心配していることですから、極力早い方がいいということで租税特別措置という形で合意をいたしました。  ただ、当然ですが、外側の形というのは、政府においても私どもの方も常に見直しをやって、内容を審査をしていくという形で考えているわけでありまして、極力早い機会に本則に移しかえるというのが適切な形であろうと思います。法的に適切な形であるだけではなくて、三百万余と言われるパートタイマー皆さんにとりましても親切なことではないだろうかと思うわけでございまして、先ほど理事会におきましても、全会一致で、可及的速やかに、極力早く本則に移行するようにということで合意をした次第でございます。政府の方も同じ御見解だと思いますが、いかがでございましょうか。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、先ほど本会議全会一致成立をいたしましたことは御同慶の至りであります。  本法組み入れの問題でございますが、パート問題につきましては、国会審議でも、いわゆる世帯の手取り額の逆転の問題、それから内職者とのバランスの問題、そうしたいろいろの観点から今日までも御論議をいただいてきたところであります。  本来、この問題は税制面だけで部分的、応急的に対処するには余りにも大きな論点を含んでおりまして、労働法制を含めて幅広い角度から基本的な検討が加えられるべき問題と考えております。しかしながら、今年度の予算審議等の過程を経て、とりあえず給与所得控除最低控除額を二万円引き上げることで合意された経緯につきましては、これは十分承知しておることでございますので、したがってこれが尊重されて先ほどの本会議で議了をいただいたということに相なろうかと思います。  したがって、今回の措置を速やかに所得税本法に組み入れるべきであるという御指摘につきましては、ただいま申し上げましたパート問題についての基本的に検討すべき問題が残されていること、それから、給与所得者全体を通ずる給与所得控除体系改正については、他の人的諸控除を含めた所得税制の枠組みのあり方の一環として検討を要すると考えられること等からいたしまして、問題があると考えます。所得税負担あり方につきましては、税制調査会答申においても、「数年に一度は、適宜その見直しを行う必要がある。」とされておるところでありまして、今回の措置の本法組み入れにつきましては、このような所得税負担あり方の基本的な見直しの時期に検討されるものと考えております。  なお、今回の措置の適用を受ける方々については、租税特別措置法に定める場合でも、所得税法本則に定める場合に比べて手続的に負担とならないような配慮はいたしていかなければならぬというふうに考えておるところでございます。
  7. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大変論理のハードなお答えがございました。  重ねて一言だけお気持ちを伺っておきたいと思いますが、確かに、今行政上からいたしますと、そういう建前のことになるでございましょう。ただ、前提として言われましたパート立法とか、あるいは今後の所得税体系全体の見直しの問題とか、これは数年に一度という政府税調の御答申もございますので、私ども承知をいたしております。  ただ、情勢からいたしますと、私の理解は、パートの問題もごく一部分社会的存在ではなくて、今日の第三次産業部門が急激にふえる、パートタイマー皆さんは何も第三次産業部門だけではございませんけれども、そういう中で就業構造の不可欠の部分として組み入れられておる。それに対してまだ社会的、法的さまざまの体制がとられていないというふうな問題がございますし、その中では、大臣言われましたように、内職との関係その他さまざま複雑な問題も整理をしなくちゃならぬということも事実であります。何か今のお話をじっと伺いますと、相当の時間がかかるのかなと思いますが、そういう社会的要件全体からいたしましたら、与党も含め与野党一致で望ましい、極力、可及的速やかに移行するようにという合意をいたしたわけでありまして、政治家竹下さんとして、その辺の理事会合意気持ちはどう受けとめておられますか。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 本委員会におきましても、問題の所在点はたびたびの議論の中でお互い明らかにしておるところでございます。しかし、諸般の情勢から、ただいま全会一致をもって租税特別措置の姿においてこれが衆議院会議を議了したことでございますので、これに参画された皆さん方、なかんずくこれを各党を代表して御議論をなすった理事方々は、これが本則の中へオーソライズされることを期待しておられるという気持ちは私も十分理解できます。したがいまして、事ほどさように詳しい皆さん方でございますから、また私の申しましたことも詳しく御理解をいただいておるところではなかろうかという期待と希望を持っております。
  9. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣、随分答弁がうまくなってあれなんですが、気持ちはわかっていただけると思います。  ちょっと念のために主税局長一つだけ確かめておきたいのですが、私どもこう理解しております。租税特別措置法でございまして、法案内容を見ますと、年末調整を含むさまざまな措置をとっていくということになります。例えば九十万までということですから、またその先は相当上まで行かないとプラスにならないというボーダーラインもございますね。ですから、一定の方々にとっては、例えば十月まで働いて九十万の収入を得た、ところが、そこでおやめになるわけですから、九十万まで働いた部分というものを明年の確定申告か何かのときに、平均すれば一人二千円か二千円足らずですよね、その部分だけで見れば申告しなければならぬというふうなことではない処理をきちんとやっておられるので、租税特別措置法という形で譲歩をして合意をしたということですが、それでよろしゅうございますね。税の処理としては、十月あるいは九月に九十万働いておやめになった方も、その時点でこの法律に照らして全部精算をされ、適用されるということでよろしゅうございますね。
  10. 冨尾一郎

    冨尾政府委員 ただいま先生の御指摘になりました、年の途中で九十万を超えないということにするために退職されるという場合の問題でございますが、そういうふうに退職申し出があった場合には、退職の際に、最後に給与を受ける場合に年末調整をさせていただいて、その段階調整をするというように措置をいたしたいと思っております。また、こういう形で奥様が配偶者控除を受けられるという形になります場合には、御主人の方では、給与所得者扶養控除申請書というのを勤務先に出していただければ、勤務先の方で御主人の方の毎月の源泉徴収あるいは年末調整の際に配偶者控除が受けられる、このようなことになるわけでございます。私どもとしては、以上のような取り扱いを、今回の措置に伴いまして、源泉徴収義務者の方に十分周知をさせて、そごのないように、手続的に負担にならないようにというふうに配慮してまいりたいと思っております。
  11. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 よろしく措置をお願いいたします。  このことに関連をして、小倉会長一言だけ御要望を申し上げておきたいと思いますが、五十九年度の税制についての答申がなされ、それを中心にして今日まで当委員会でも法案審議をいたしてまいりました。その経過からいたしますと、小倉さんのところで御審議をなさって出された答申にプラスして、今国会でこういう問題が生まれたわけでございまして、マスコミとか世上では、何か政治妥協とか予算審議する中での妥協点とかいうふうな評論もございましたが、私どもは、まじめに考えて、先ほど申し上げたような多くのパートタイマー皆さんが今置かれている厳しい状態、そういう中で、やはり少しでも可能な温かい手当てというものを考えられないかというふうな気持ち考えているわけでありまして、何か取引の結果とか、妥協の結果生まれた狭い意味での政治的な産物という理解ではなく、実はまじめにこの問題を受けとめている。さらに、今後も、先ほど大臣も言われましたが、パートタイマーその他全体のことを、当大蔵委員会が主管ではございませんけれども、社会的に必要な手は打っていかなくちゃならぬというような気持ちで、立法を先ほど衆議院段階では成立をさせていただいたということでございますので、そういう私ども気持ちを受けとめていただいて、今後の対応をお願いしたい。これは要望でございます。  次の話題に移らしていただきたいと思いますが、まず最初に、私ども社会党、公明党、民社党三党が要望をいたしまして、政府並びに与党に対しましてお願いしてきた問題がございます。改めてその経過は詳しくは申し上げません。ただ、詰めの段階ですから一言だけ申し上げておきますと、税法審議関連をいたしまして、たしか三月十五日だったと思いますが、私ども三党の理事が連名で、さまざまの改善措置政府並びに大蔵委員長あて文書要望をいたしました。それに対しまして、たしか三月二十一日だったと思いますが、御回答がございました。その御回答の中の第二項目に、税法改正にわたることはできないけれども、それ以外のことで当大蔵委員会審議を通じて改善をすべき諸問題ということがあれば誠意をもって対応したいという御回答がございまして、それらの回答も踏まえまして、幾つかの問題意識を持ちながら当委員会での法案審議に当たってまいりました。そういう上に立ちまして、先月また私ども社公民三党で文書をもって、このような確認ができないかということで数項目お願いをいたしました。そういう経過で、いよいよ法案審議最終段階の今日ということで結論を見たいというわけでございますが、その内容を四点大蔵大臣に申し上げまして、まず全体の御回答あるいは見解などについて所見を伺いたいと思います。  まず第一が、所得税負担についての見直しについて今後どうお考えになるのか。  二つ目には、現物支給食事代、深夜勤務に伴う夜食代。いずれも通達事項でございますし、当委員会でも私ども三党でそれぞれ議論をさしていただきまして、前向きの御回答をいただいてまいりましたが、それらについての非課税限度額をどのように是正するのか。  三つ目には、これもいろいろ審議話題になったわけでありますが、通勤手当非課税限度額について。これにつきましても是正すべきであるということを繰り返し要望をいたしてまいりました。その是正についてどのようにお考えになるのか。  それから四つ目には、パートタイマー内職とのアンバランスということがいろいろ指摘をされておりますが、内職収入に対する課税上の改善、これについてどのようにお考えになるのか。  その四項目の御回答をいただいて、私ども前向きの成果を得たいと考えておりますので、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 要望をいただいております四項目について、正確にお答えをいたします。  まず、所得税負担についての見直しについては今後どう考えていくのか。これにつきましては、昨年十一月の中期答申に述べられておりますように、「負担の急激な増加や歪みをもたらさないよう、社会経済情勢変化対応して、数年に一度は、適宜その見直しを行う必要がある。」このように述べられております。これと同意見でございます。  第二番目は、現物支給食事代、深夜勤務に伴う夜食代についての非課税限度額をどう是正するか、このお尋ねでございます。現物支給食事代、深夜勤務に伴う夜食代についての非課税限度額については、最近の民間企業食事支給状況等にかんがみ、五十九年九月支給分から引き上げるよう、所要の措置を講じさせることとしたい。この詳細は事務当局から御説明をいたさせます。  第三番目の、通勤手当非課税限度額についての是正の問題であります。通勤手当の全額を一律的に非課税とすることは、その性格から見て適当でないと考えるが、現行非課税限度額一カ月当たり二万四百円については、民間企業通勤手当支給状況等を踏まえて、今後とも適宜見直しを行っていきたいと考えております。  次は四番目の、パート主婦とのバランスを図るため、内職収入に対する課税上の改善についての問題であります。雇用契約に基づくパート収入内職収入とでは、おのずから性格も異なり、現行制度のように割り切らざるを得ないと考えるが、今後パート問題を基本的に検討する際には、パート主婦内職者とのバランスの問題についても念頭に置いていかなければならないと考えております。  以上の諸点につきまして、詳細な点は事務当局からお答えを申し上げます。
  13. 冨尾一郎

    冨尾政府委員 ただいま大臣から御説明がありました食事現物給与及び夜食代についての非課税限度の問題でございますが、これにつきましては、ただいま大臣から御説明ございましたのを補足して申し上げさせていただきますと、私どもの方で、最近民間企業食事支給状況実態調査を行いまして、この結果などを踏まえまして、食事代につきましては、現行月額二千五百円まで非課税となっておりますのを月額三千五百円までに、また夜食代につきましては、一回二百円となっておりますのを三百円にそれぞれ引き上げることにさせていただきたいと思っております。なお、この実施を本年九月からというふうにいたしておりますのは、源泉徴収義務者などへこの改正事項を周知徹底させる必要がございますので、若干の時間的御猶予をいただきたい、かような趣旨でございます。
  14. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それぞれ前向きの御回答大臣からいただきましたが、幾つかちょっと確かめさせていただきたいと思います。  一つは、第一項目所得税の問題でございますが、今御答弁のございました文言は、政府税調中期答申に述べられている言葉と全くと言っていいほど同じでございまして、また、振り返ってみますと、税法議論のときあるいはまたそれを集約して附帯決議をつくるときにも、政府税調も言われておるようなこういう言葉ですから、総理任命をされている権威ある方々が御議論した結果まとめられている報告書内容でございますので、そのまま、できればさらにそれに前向きに加味して附帯決議を付する。いいんではないかと思いましたが、与野党意見がまとまりません。というのは、与党の方でそこまで言うことはないという御見解がございまして、もうちょっと内容の薄い表現になって今日まで参りました。私はそのような経過をたどっていると思いますが、このような御回答はまことに結構だと思います。  問題は、そういう経過を振り返りますと、政治としての対応姿勢といいますか、そういうことを非常に感ずるわけでありまして、やはり極力、税の公平のための努力、そういう理解を各分野の専門的な御研究あるいはその成果を受けた上に立って、政治の面でどのように国民合意を得るように、税のベース国民の信頼ですから、どうそれを広めていくように努力するのかということが私どもの大きな使命ではないだろうか。したがいまして、現実を見ましても、タックスペイヤーマジョリティー給与所得者。税額においても大きな比率を占めている。そういう方々合意をどう形成するのかという、常に前向きの真剣な努力ということが必要ではないだろうかという気がするわけであります。  それらの立場も踏まえて、単なる文言ではないそういう姿勢を持った御努力をなさることが、この御回答、私ども要望を踏まえた今後の努力のあるべき姿ではないだろうか、そう思うわけでありまして、与党政治家としても、また財政、税制を担当なさる大臣としても、そういう政治家としてのお気持ちを、関連してひとつ伺っておきたい。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 政府税調におきまして、総理大臣任命諮問機関、そしてこの政府税調に対しましては、三年に一度、いわゆる国税、地方税あり方についてという、まさに大所高所に立った諮問を申し上げるわけであります。その間、本院において行われた議論等を正確にお伝えし、そして、自主的な運営の中に問題点をいろいろ選び出し、なかんずく昨年十一月には中期答申を賜ったところでございます。これは我々が将来にわたって、行政府の者としての一つの方向を示唆していただいた。そういう線に沿って、それがいかに現実政治の中に行政面として機能していくかということについては、お互い政治家立場に立って、各方面、なかんずく国会議論等を踏まえながらその精神が生きるように実現に移していく、これが私どもに与えられた役目ではなかろうかというふうな認識を持っております。
  16. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私が申し上げたのは、政府税調でも同じ文章を答申されております。附帯決議をつくるあるいは税法審議についての問答をする、そういう中でも、これよりも以上に慎重な姿勢対応されておりまして、さまざま議論をして今日このような政府税調文言と同じものが出てきているという経過になっているわけであります。それらの経過を私ども振り返りますと、どれだけ公平のために、あるいはタックスペイヤーマジョリティーである方々理解をいただくのか、そういう姿勢、構えが大事なことではないかと思うわけでありまして、そういう気持ちをお伺いしたかったわけであります。  第二番目の問題、通達改正の問題になるわけでございますけれども現物支給食事代につきましては所得税基本通達三十六—二十八、それから同じく個別通達という形で二百円が三百円というふうな通達措置をとられるというふうに思いますが、三つお伺いしたいのです。  一つは、私ども消費者物価指数の八年間の変化、まあ四〇%か四〇%強ぐらいですかになるんじゃないだろうかという気がいたしますが、三千五百円というお話がございました。その辺の物価指数からの計算。  それから、実態調査をなさったそうでございまして、大変御丁寧な措置でありますけれども、その辺の特徴的な状況ですね。どういう把握をなさったのか。  それからもう一つは、この二つ通達改正をなされるということでございまして、すぐなさって九月からというお話のようでございますけれども、それらが税収に税の額でいってどの程度の影響を与えるということになるのか。実際的な問題ですが、いかがでしょう。
  17. 冨尾一郎

    冨尾政府委員 ただいま三点御質問がございましたので、順に御答弁を申し上げさせていただきます。  最初に、物価指数との関係はいかがかという御質問だと思いますが、私どもとしては、今回の食事支給企業での実態ということをベースにして、これを三千五百円に改定させていただくということにさせていただいたわけでございますが、一方、昭和五十年からの消費者物価指数、これを食料品について見てみますと、おおむね今回の金額改定率とほぼ同じ程度ではないかというふうに私ども考えておりまして、ほぼ物価指数に沿った改定ではないかと考えております。  それから、実態調査でございますけれども、私どもといたしましては、従業員規模の大きいものから小規模な企業まで、合わせて約百社ほどの八万人ばかりの従業員を対象に、これを抽出いたしまして実態調査をいたしたわけでございますが、その結果は、最近一カ月当たり食事代企業負担額、それに従業員負担額合わせたところで申し上げますと六千八百円程度でございます。したがいまして、この食事代非課税限度につきましてはへ従業員が半分以上持つということが原則でございますので、これを半々ということで半分程度のところで計算をさせていただくと三千五百円程度ということになりますので、この引き上げでほぼ妥当ではなかろうかというふうに判断をさせていただいておるわけでございます。  それから、これに伴います減収でございますけれども法人税及び申告所得税の減少がございますが、合わせて約四十億円というふうに私ども一応推定をさせていただいております。
  18. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 あと二つ伺います。  一つは、これは全民労協関係皆さんが、この支給される食事代非課税限度引き上げについて強く前から要望されておりまして、私どもいろいろ実態を伺ってきたわけでありますが、その方々要望の中では、こういうことが言われております。限度額を超える場合、根元から全額課税されるということは不合理ではないか。ですから、限度額を超える場合には超過部分金額のみに課税するよう課税方式を改めてもらいたい。これについては、ほかの同様の問題もあると思いますが、どのような御判断ですか。  それから、今二千五百円から三千五百円と、実態調査、それからCPIの変化などを見て妥当な線というお話がございました。ただ、考えてみますと、これは八年間ですね。私どももいろいろ調べまして、こういうことを発見をいたしました。皆さん方の方から、法律の修正にわならない問題では前向きに検討しましょうということでございますので、これも発見したわけでありますが、問題にしない場合には十年、十二年になったかもしれません。そういう問題があるということは、税に対する関心が非常に高まっている折から、大変いかがなものかと思うわけでありまして、今日八年目にこうでございますが、適正な形でといいますか、社会的に常識上当然、あるいは行政から見ても当然のルールと思われる形で今後ともやはり見直しをやっていくという姿勢が当然必要ではないかと思いますが、二点、いかがでしょう。
  19. 冨尾一郎

    冨尾政府委員 ただいまのお話でございますが、この食事現物給与夜食代についての非課税の取り扱いは、本来、筋としては、食事代でございますので食事をなさっている御自身の方が負担をすべきものということでございますが、使用者が負担をする食事代が一定金額以下の場合に、少額不追求という趣旨からこれを執行上の扱いとして非課税というふうにしておるわけでございまして、その条件といたしましても、先ほどちょっと触れましたが、使用者とそれから給与所得を受ける方で、少なくとも給与所得を受ける方が半分以上負担するというのが私どもとしてはやはり基本的なラインではないかというふうに考えておりますので、こういうところで今後ともやらせていただくしかないのではないかというふうに考えております。  なお、ただいま食事代などの非課税限度については、私どもとしても、今後とも給与の支給の実態等を踏まえまして、必要に応じ検討を行うということが適当であるというふうに考えております。
  20. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 通勤手当のことで一つお伺いいたします。  今日二万四百円。今までの慣例では、たしか人事院勧告があり給与法が改正をされる、その時点でこれに関連をする公務員の改善措置が行われる、そのときにスライドして、これに対する若干の改善措置給与改正のタイミングで行われてきたというのが慣例であると思いますが、間もなく人事院勧告あるいはまた給与法の改正に当然なるわけでありますが、これらについては、先ほどの答弁、それから今までの慣例含めて、当然ですが、おやりになるということでよろしゅうございますか。
  21. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 通勤手当非課税限度額につきましては、ただいま御指摘になりましたように、現行の一月二万四百円という限度額は昨年十一月に改定させていただいたわけでございます。  今後のあり方につきましては、これは冒頭に大臣答弁がございましたように、民間企業の支給の実態等をにらみながら適宜見直していくという従来の方針に変わりはないわけでございます。従来、民間企業の支給の実態一つの指標として、あるいは主要な参考資料として、人事院勧告によります国家公務員の通勤手当限度額を参考にしてまいった経緯は御指摘のとおりでございまして、そういった経緯にもかんがみながら、先ほど大臣答弁にございましたように、適宜適正な水準に見直していくという考え方でございます。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 内職の問題で伺います。  先ほどの大臣の御答弁見解表明の中で、パート問題が議論される際には両者のバランスも十分念頭に置いていかなければならないという御趣旨の御発言がございました。これはいろいろな意味で、今までも当委員会でも随分議論されてまいりましたし、私どもももっともっと勉強して、これからの社会の構造の中で、あるいは当面する現実状況の中でどうしたらいいのか、そのための合理的な方法を考えていかなければならぬというふうに考えておりますが、現実には内職パート、税金の大きな差が出るということでございます。  これは国税庁だと思いますが、ちょっと実態的なことを伺っておきたいのですが、六月二十六日朝日新聞夕刊にこの問題の大きな記事が出まして、その中に「国税庁は数年前から、「内職パート課税バランスを図るよう」全国の税務署に指示しているが、徹底はむずかしいのが実情だ。」また、税制も絡み、実情は複雑であるというふうな内容がございます。大きな新聞ですから、お読みになった方から何か問い合わせがあったり、どういうことかというふうなこともございます。中の記事を見ますと、これは渡辺前直税部長の談話で、「税務署に相談に来てくれれば対応もできるが、申告書を郵送されると、内職とわからず課税し、正直な人が“損”をしている可能性もある」などという実態のことも述べられております。その辺はどういう指導、処理をなさっておりますか。
  23. 冨尾一郎

    冨尾政府委員 内職パートバランスの問題でございますが、私どもとしては、いわゆる内職による所得につきましては、これは事業所得等になるわけでございますが、これにつきましての取り扱いは、昨年の三月に予算委員会の第二分科会で直税部長答弁をしておりますが、基本的に内職の場合には事業所得でございますので、給与所得控除のように一定額が初めから控除されるということでないだけに、その実態に応じまして無理のない必要経費を認めるということで対応していくということを基本にいたしまして、内職実態に合わせて無理のない課税ということで、納税者から御相談があればそのところは適切に対応していくということを各税務署に指示をいたしておるわけでございまして、現在のところ、この問題について特に深刻な問題というのは起きているわけではないというふうに考えております。
  24. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今までの問題は、私どもと公明党の皆さん、民社党の皆さん共同で御相談してまいったことでありますから、私は以上で関連する発言は終わりまして、次の話題に入りたいと思います。  次に、六十年度のシーリングについての御見解幾つか伺いたいわけであります。  例年にない活発など申しますか、複雑な議論を呈しておりまして、与党の内部でもマイナスシーリング断固反対という声が高まっている。また、公共事業の拡大ということが何か大きな要求になっているようにも報道で伺っております。また総理も、しばらく前でございましたが、厳しい状況だから枠組みは簡単に崩せないけれども、いつまでも厳しいだけでは政治にならないみたいな趣旨の御発言があったようにも伺っております。また、昨日は、臨時行政改革推進審議会の瀬島さんのところの行財政改革小委員会の報告なども報道で伺っております。例年にないさまざまな議論になっているわけでございまして、考えてみますと、ゼロシーリング、マイナスシーリング、またマイナス一〇%、また一面では、今後の経済、税収見込みがどうかとか、さまざまの議論がある中でございますから、そういう議論が出るのも一つの時期かなというふうな感じもいたします。  しかし、それだけに、今後のかじ取りをどうしていくのかということもまた非常に重要であろうというふうに思うわけでありまして、さまざま見解及び意見も述べながら御見解を伺いたいと思いますけれども、まず前提に、大蔵省としてはどのような考え方で対応されようとしているのか。主計官会議をおやりになったり、いろいろと発言などもニュースでは伺いますが、どういう対応、あるいはまた、当然ですが、予算編成のスケジュールからいたしましても、八月末の概算要求締め切り、七月中には当然シーリングが閣議決定をされる。六月中におやりになった場合もございましたが、もう七月中旬になりまして、いよいよめどをどうつけるのかという時期に立ち至っているというふうなことではないかと思います。ずっと前、一月も前でしたらまだ一般的なお話だけだと思いますが、もう七月の中旬に入り、あと十日か二週間か、それくらいのうちにはめどをつけなければならぬ。大蔵省また大蔵大臣としても非常に重要な、大事な決断をしなければならぬと思いますが、どのように進んでおりますでしょうか。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 高齢化社会を迎え、また国際社会の進展に対応するために、財政改革を推進してその対応力を回復する、こういうことで、六十五年度までには特例公債依存体質からの脱却に努めますとともに、それに対して毎年最大限の努力をするということをいつも申し上げておるわけであります。したがって、毎年度の予算編成に当たりましては、厳しい概算要求枠というものを設定して、これを出発点として歳出の節減合理化に努めてきたところであります。昭和三十六年からでございます。それで、五十五年がプラス一〇%、五十六年がプラス七・五%、五十七年がゼロ、それから五、経常部門一〇、投資部門五というのが五十九年、こういう経過をたどるわけであります。したがって、六十年度も、今日の状態から見まして、引き続いて制度の根本にまでさかのぼった改革を行うという構えで、歳出歳入両面にわたってぎりぎりの努力をしなければならぬということであろうと思っております。  そこで、その概算要求枠すなわちシーリングの決定の時期ということになるますと、各省の要求づくりの時間というものを当然考えなければなりません。したがって、何とか月内には決めたいと考えておるところでございます。具体的な内容ということになりますと、各方面の意見を伺いながら、もう少し、今おっしゃいましたとおり七月末までずっと勉強しておるというわけにもいくものじゃございません。私も、また多くの担当者も、国会にも今出かけさせていただいておるところでございますので、いましばらくの勉強の時間をちょうだいしたいというふうに思っとおります。しかし、いずれにしても、あらゆる分野に聖域を設けない、そして歳出全般にわたる徹底した節減合理化、その規模の抑制を図るという厳しい概算要求枠を設定する必要があろうというふうには考えておるわけであります。
  26. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今までのシーリングをめぐる、例年にない大変きまざまの論議というものを見ながら、感想がございますので、幾つか私の意見を含めて御所見を率直にお伺いしたいと思いますが、その前に、税収の見通しとも絡んで、最近話題があるようであります。五十八年度の決算でも、私ども伺っているところでは相当な額の税収増という数字を伺っております、四千五百三十九億ですか。また、景気も大分回復をしてきた、それを反映している。今後を考えますと、政府経済見通しよりも実質、名目ともにより高目のものになるのではないだろうかということが言われているわけでありますが、五十八年度の決算から五十九年度に入った全体の状況というものを、大蔵当局としてどうお考えになっておりますでしょう。
  27. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十八年度の税収の実績でございますけれども、決算が確定いたしますのはこの月末でございますが、現在概数で、ただいま御指摘のありましたように、補正後の見積もりに対しまして四千五百億円余の増収の見込みでございます。  そこで、五十九年度の税収が一体どうなるか、五十八年度のこの勢いを受けて、五十九年度の予算で見積もりました額を相当上回るのではないかという議論が一部にあることを私どもは承知しておるわけでございますが、この四千五百億円余の五十八年度の増収額を子細に見ますと、税目で一番大きく寄与しておるのは法人税でございます。約三千二百億円強でございます。その次が源泉所得税でございまして、これが一千億円強、そのほか最近の証券市場の活況を反映いたしまして有価証券取引税が数百億増収に寄与しているわけでございますが、この源泉所得税部分は、少し詳細になって恐縮でございますが、利子所得の源泉分が、ことし一月の預金利子の改定に伴いまして利払い分が一時的にふえたという背景がございます。したがって、いわゆる経済の実勢という観点から税収の見積もりを論ずる場合には、やはり結局、今後法人税収をどう考えるのかということに相なるかと思うわけでございます。  ただ、五十八年度の税収の法人税増収の三千二百億円をどういうふうに考えるかという点でございますが、一つ指摘できますことは、いわゆる電力会社の三月期決算が非常に好調であったということでございます。これはことしの冬の天候の状況等が非常に大きく寄与しておるということはもう言われておる点でございまして、こういった点を除去いたしますと、五十八年度の自然増収分、つまり予算の見積もりを上回ります四千億分をいわば土台の増として今後の税収を占うというのは、必ずしも適当ではないのではないか。五十九年度の法人税収につきましては、いつか当委員会でも御披露申しましたように、既に昨年の段階で各企業のヒアリングを通じまして、かなり大幅な自然増収見積もりで策定をさせていただいておるわけでございます。ただ、五十九年度の税収が本格的に始まりましたのは六月の税収からでございまして、実は六月の税収が判明いたしますのがまだもうしばらく時間がかかるという時点でございますので、必ずしも確定的に申し上げられる段階ではございませんけれども、私どもは、五十九年度の予算におきます税収見積もりが、今日における経済の実体から見て必ずしも過小なレベルではないというふうに考えておるわけでございます。
  28. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 まあ前の福田さんのときあんなことがございましたから、いろいろな意味でかた目に確実にということで税務当局もお考えになるということだと思いますし、それが悪いわけではありませんが、私は、これからのことを考えますと、やはり経済、財政、税制それぞれの対応策を含めまして、総合的な判断がますます大事になっているというふうに思います。まあ景気回復のテンポがどうなるのかということ、それから、為替レートも含めまして国際関係の持つ比重が非常に大きいということもございますし、いずれにいたしましても全体を含めてこれから先を考えますと、ことしも政府見通しよりはやや高目の伸び率になるのではないだろうか。これから先を考えますと、ことしよりは高目の、あるいは中程度の伸び率で経済成長を維持をしていく。そのために、財政は大変ですが、さまざま可能な経済対策をとっていくということが必要であろうと思います。国際的な、あるいは南北問題も含めた視点からも、そういう視点が指摘がされているというふうなのが現状であろうと思います。  ただ、私は、そうだからといってマイナスシーリング反対、公共事業ふやせというふうな議論をするつもりはございません。やはりいろいろな意味で転換点ではないだろうかと思うわけでありまして、その視点を二、三お伺いしたいのです。  一つは、この一律マイナスシーリングという方式ですね。いろいろな意味でもう限界に来ているのではないだろうか。その限界ということのあらわれが、さまざまの発言になってあらわれているということではないだろうかというふうな気がいたします。  実体から見ましても、さまざまな特別枠がございます。これはもういろいろな委員会指摘をされたことですから申し上げませんが、五十九年度予算の場合でも、実際にマイナスシーリングのマイナス一〇%の対象となったのは、経常経費は四兆二千億円と言われております。マイナス五%対象の投資経費も六兆七千億、全体の予算枠から見ますと小さい比率にとどまっている。また、さまざまの特別枠の要求も政策的にございました。六十年度を考えますと、さらにそういうマイナスシーリングの対象となる額は狭まってくる。恐らくは経常経費でも三兆円前後ぐらいしかマイナスシーリングの対象——マイナスシーリングをとる場合でも、対象はそうなるのではないだろうか。いずれにいたしましても、実体として一律という形でしかないということで今日まで来たのでありましょうが、実体論として財政再建、歳出抑制の一つの旗印、旗が立っているという形にすぎないように、形骸化をしてきているという状況が顕著ではないだろうかと思うわけでありまして、何か新方式を考えなければならない。新聞の報道などを見ておりますと、大蔵省の関係者もそういう認識は一致しているが、なかなか名案が出てこない。竹下大蔵大臣は、一律シーリング方式にかわる概算要求のやり方を研究するように指示をしたけれども、なかなかうまい知恵が出ないということなのだというふうなことかどうか知りませんが、報道などもなされております。この一律マイナスという問題、率直なところ、どういう所見でおられますか。
  29. 竹下登

    竹下国務大臣 私も幾たびかの経験の中で感じておりますのは、予算編成、これは十二月に行うわけであります。十二月になりますと、少なくとも九月決算あるいは九月税収等々まではおおむね実体が明らかになる。したがって、概算要求の八月末というのは、言ってみれば、その以前の時点からいいますと五十九年度、ことしに例を例えれば、いわば六月税収もわからないときから作業に入っていくわけでありますから、したがって、歳入とかあるいは景気の将来の見通しとかをどう見ていくかというのには、やはりおのずから限度があるのじゃないかと思うわけであります。  今も御意見を交えての御質問でございましたが、確かに五十八年度は、三・四%が結果として三・七%、こういうことになるわけであります。したがって、それだけのげたを履いてみますと、四・一は少し低目じゃないか、上方修正してもいいじゃないかとかいうような議論が各研究機関等からも出ておることは、私も承知しております。  そうして、一方また考えてみますと、諸般の諸指標と、それから昨年の十二月時点でございますけれども、いわば個別積み上げによって法人税等は二けたを超す伸び率を予定しておるわけでございますから、必ずしも大きな伸びを期待できる客観情勢には今日の時点はない。  そうなると、概算要求というのはどういうふうに位置づけるかと申しますと、結局いわゆる各省ごとの、全体としての概算要求総額の限度額ということであって、その限度をどうして算出するか、いわば予算編成の事務手続の一こまでないかというふうな位置づけになるではないかというふうに考えるわけであります。そうなると、今までの例で申しますと、人件費、年金等につきましては、その経費の硬直的な特別の性質に着目して例外的に増加分を加算した、それから生活保護とか医療費とか利子補給等、いわゆる義務的経費については削減率を掛けなかった。そうすると、今伊藤委員がいみじくも御指摘なさいましたように、残余の経費に削減率を掛けたわけでございますが、四兆数千億に対する一〇%、それから投資的部門の人件費を外したら七兆数千億ですか、これに五%というものを掛けた概算要求総枠の算出の技術的な計算方法というような位置づけではないかなと、こういうふうな考え方であります。  そこで、その総枠の中であらかじめ経費ごとにその政策の優先順位を検討して、あるものには厳しく、あるものには配慮するといった、言ってみれば政策の優先順位を検討して設定したというものではなく、あくまでもそういう計算に基づいた概算要求の総枠であるという位置づけにすべきものではないかな、最近そういう議論をたびたびしておるわけでございます。その中では、従来私どももよく言いました、指名手配方式とか申しましたが、そういう考え方でなしに、一番お詳しいのは原局の皆さん方でございますから、その原局の皆さん方がその限度額の範囲内において優先順位の厳しい選択等を行って、そして概算要求というものが八月末に法律、政令に基づいて出てくるという性格の位置づけとすべきではないかというふうに考えるわけであります。  ただ、シーリング問題というのが、今伊藤さんがかみ砕いてお話ししていただきましたが、国民全体の中には、あるいは五十兆全体が一割ずつ切られるんじゃないかとか、あるいはまた、仮に国債費と地方交付税を残しまして、あと三十二兆ぐらいになりましょうか、少なくともそれは一律ではないかというある種の誤解というものもあろうかと思うのであります。したがって、これから私どもは、今伊藤さんからのかみ砕いた御意見を交えた御質問があったような形で、国民の皆様方にも周知していただかなければならぬというふうに考えるわけでございます。が、それ以上にシーリングというものに国民の関心が集まったということは、かつての五〇%増のシーリングのときは余り集まりません。やはり厳しくなったから余計集まって、何か予算全体がシーリングのときが勝負であるというふうな印象をいささかお与え申し上げ過ぎておるのではなかろうか、こういう反省にも立ちまして、今かみ砕いて言っていただいたような問題を、これからも折に触れ、国民の皆様方にも周知するような努力を我々も重ねなければならないなと、こういうふうに考えておるところであります。
  30. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、いずれにしても、今の大臣お話を伺っても思いますが、いろいろな意味で枠組み、シーリングということについての新しい知恵を出さなければならぬ、それは国民の皆様に御理解いただく意味でそういうことが必要でもございますし、また、今後の深刻な状況の中での予算編成作業にとってももちろん非常に大事ではないだろうかということを感じます。  大臣もおっしゃいましたように、マイナス一〇%というと、全体が縮こまってしまうといいますか、そういう意味での心理的な問題を含めた大きな影響がございます。対象となるものは少なくて、その枠外の方が大部分ではないかという指摘もございますけれども、私どもは、枠外になっている問題でも、これはごもっともだなと思うこともありますし、もっともでないなと思うものもございます。また、枠組みを決めることが必要であり、政策順位、政策選択、それはそれぞれの原局と申しますか、各省庁間で研究していただきたいというふうな気持ちもわかりますけれども、今の状況からいいますと、やはり一律というイメージから、内容の選択あるいは政治的な選択、政策の判断、厳しい中ですから、これからの社会に求められるものということを、国民の御理解をいただきながら編成をするということではないだろうかと思います。  この間だれかうまいことを言っておりましたが、今まではパイが大きくなる時代でしたから、それを分けてあげればカバーできた。これからはパイは大きくならない。そうなりますと、いや応なしに、十の要求があっても二か三しかできない。それが大事なんだということを理解していただく。そういう意味での政策的、政治的指導性が問われる時代、それがニューリーダーの条件であろうというふうなことを何かで読んだ覚えがございますけれども、そんな気がするわけでございます。  私は、二つだけ具体論を言いたいのでございますが、一つは、与党内でも大きな焦点になっています公共事業の問題でございます。私は、一定の水準はこれは必要だと思います。そうそう減らしていくというわけにもいかないという現実だろうと思いますが、やはりその問題は中身だろうと思います。今一部にあるように、一気にこれを拡大をするということについては私は問題があると思いまして、内容をもっと吟味をしていく。今最も効果の大きい、役に立つもの、あるいは今後の日本社会にとって大事な分野、経済性からいっても効率的な問題などを考えていく。私ども意見は、生活基盤のおくれた方向への社会資本の充実ということが、社会的効果として最も大きいのではないだろうかというふうに思います。  例えばでありますけれども、非常に巨額のお金がかかるものなどはひとつ検討したらどうか。新幹線整備五線などもあります。私なども地域では関係する分野でありますが、東京湾横断道路、一兆円ぐらい。その前に、そういうものは将来の効果のためにも東京湾湾岸道路を早くやってもらうことが先決ではないかと言っているわけでありますが、原子力船、さまざま言われている、そういう問題もあります。私は、それらについて政策判断を持って、一般的に公共事業をふやせ、そのためにマル優を全廃して財源をつくろうなどというよこしまな考え方ではなくて、今必要な中身をよく吟味をする、そういうことを財政当局から関係官庁に厳重に注文をつける。内閣全体の意思統一かつ党議でもそういう方向を目指すように努力をしていく。与野党間の協議もあるいは意見交換も設定をされておるようでございまして、そういう意味での前向きな与野党間の意見交流もあっていいんじゃないかと思います。例えば公共事業についてもそう思います。特に公共事業をふやせという声が非常に大である。それがマイナスシーリング反対論となるという状況でございまして、そんな感じを持っておりますが、財政当局としてはどのような気持ちをお持ちになりますか。
  31. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり財政当局として考えますことは、当然のこととして、予算というのは各般のバランスをとっていかなければならぬものであるという認識は持っております。したがって、公共事業一つに限ってコメントをいたしますことは、私も建設大臣の経験者ではございますけれども、いささか私の範疇を出たような感じがいたすわけであります。  ただ、いろいろ私どもの方へも世上言われておりますのは、今伊藤さんも経済効果、効率、いろんな角度からもおっしゃいましたが、確かに、例えばダムというのは水がたまって初めてダムである、それがたまるまでは穴である。あるいは下水道というものも水が通って初めて下水道である、それまでは単なる側溝である。そういうようなものが、厳しい予算の中で中途半端に放置されておるというのは効率性がないじゃないか。さようしからば、重点的に一つ一つ解決していった場合は、地域全体に対するいわゆる公共事業の持つ景気対策の点から見ればアンバラができるのではないか、こういうような議論もあるわけであります。生活関連あるいは暮らしの問題につながる。されば公園の予算というようなことになると、それは八〇%は土地代ではないか、これはいわゆる経済効果とか景気とかという問題とは著しく逆行する方向にいくではないか。まあ一つ一つについていろいろな御議論を私どもなりにも承っておるわけでありますが、相対的に見て、日本の公共事業費そのものは、人口から申しましてもあるいはGNPから申しましても、他の先進国に比べればそれは多いわけでございますけれども、例えば下水道のごときは、お互いジャン・バルジャンを読んだ時代から下水道がありますが、私の島根県はまだ下水道の普及率はゼロでございますので、確かにジャン・バルジャンの時代にまでまだ行ってないという恥ずかしさもございましょう。  そういうようなことを考えますと、やはりそういう重点的な施策こそ、あるいはその地域地域の問題ももとより勘案しながらも、原局で政策の優先順位というようなものはおのずから考えてこられる問題ではなかろうか。余り大蔵省の方からああしなさいこうしなさいというようなことは、差し出がましく言うべきことではない。総合的な調和をとるというのが我々の仕事ではなかろうか。ただ、今のような、いわば歳入委員会のベテランが財政的立場からお述べになったような問題は、私どもとしても関心を持ち、その都度原局等に対してそういう意見を伝えていくというのはまた必要ではなかろうかなというふうに考えております。     〔中西(啓)委員長代理退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  32. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 このところマイナスシーリング反対、公共事業をふやせという大合唱ですか、声が非常に与党の中でも強いようでありまして、大蔵大臣は大変難しい立場だなと思うわけであります。そういう意味で、私も見解を申し上げましたが、国民の汗の結晶の税金を使ってどのように社会のためにやるのかという意味で、筋の通った御発言をむしろ声を大にしてきちんと言われるぐらいでないと、大変だろうという気持ちを持ちながら申し上げたわけであります。  時間もあれですし、また、税調会長もお待ちいただいておりますので、もう一つだけ関連をしてお伺いしたいのですが、防衛費の問題であります。その他、福祉、教育、行革審の答申などを含めまして申し上げたいことがあるのですが、それはまた別途といたしまして、防衛費の問題。  新聞を見ますと、いろいろと来年はふえるだろう、ふやす要求と出ておりまして、八%から九%ぐらい要求しなければならぬ、そうでないと、日本の安全は守れないし、日米間の円滑なあれも守れないというふうな報道が出ておりまして、非常に気になるわけであります。細かい御説明は結構でございますから、課長さんお見えになったようですので、防衛庁としては、これからシーリングなり概算要求に向けてどのように見ておられるのか、大まかな指標だけお聞かせください。
  33. 田中寿

    田中説明員 六十年度の概算要求枠につきましては、防衛庁といたしましては五六中業、これは五十八年度から六十二年度までの五カ年を対象期間といたします中期業務見積もりでございますが、これの第三年目といたしまして、着実な防衛力の整備を図っていきたい。それからまた、他方では練度の向上、こういうことも着実に図っていきたいということで、これらに必要な最小限のシーリング枠をお認めいただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  世上、いろいろ新聞等で報道されていることは存じておりますが、ただ、防衛庁といたしましては、来年度、六十年度には、五十九年度でお認めいただきました後年度の歳出化額、六十年度における歳出化額が、ざっと今のところ見積もりますと九百三十億ふえるとか、あるいは来年度には退職者が急増するというような事情等、いわばこういう義務的経費の増額等を含め、先ほど申し上げましたような着実な防衛力の整備を図っていきたいということで、具体的な計数につきましては目下検討中でございまして、申し上げる段階には立ち至ってはございません。そういうことでございます。
  34. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 会計課長さんが数字を言えぬというのですから、これは商売になるかならぬかわかりませんけれども会計の担当の課長でも言えないのかもしれませんから、結構でございます。  大臣二つ所見を伺いたいと思います。先ほど、あらゆる分野で聖域を認めないというお話がございました。しばらく前でございましたが、防衛費のGNP一%問題が予算委員会での大きな焦点になりまして、関連をして御所見を伺いましたら、竹下さんは、これは一大蔵大臣だけで決められる問題ではございませんということで、大変がっかりいたしました。最近の報道を見ましても、日本経済社会の将来を倍増論という形で宮澤さんが論じられる。また、今の外務大臣は世界に向けてさまざまな構想をなさる。我々大蔵委員会の一員としても、竹下さんは、日本の税、財政を含めて骨格にした将来像を論ぜられるぐらいのことがあってもいいと思いますし、野党側でも、そういうものに対応して活発に将来日本の設計図を議論する、そういう政治的な議論が大いに活発に起こることが、国会の権威を高めることであろうという感じがいたしておるわけであります。防衛費といえども聖域は認めないということを渡辺大蔵大臣当時も繰り返し呼号されておりましたが、結果はなかなかそうはまいりませんでした。新聞を見ますと、何か防衛庁の方は八%、九%を要求しなくちゃならぬという大きな見出しが並びますし、また別の新聞を見ますと、シーリングは五%増以下にしなくちゃならぬ、大蔵省押さえ込み、防衛庁と激しい攻防戦なんという記事も出されております。まだ具体的な数字が出ておるわけではございませんけれども、シーリングの時期は近づいておる。大まかな姿勢はもちろんお持ちになって、さまざまの対応なり、お考えなり、あるいは調整なりなさっている、御苦労なさっているところではないだろうかと思います。  その辺はいかがかということと、GNP一%問題も、間もなく来月、国会が終わる前ですか終わった後ですか、人事院勧告が出てまいります。後藤田新総務庁長官の御発言をニュースを通じて聞いておりますと、公務員の皆さんに大きな積み残しをいつまでも残しておくわけにはまいらない、こういうものはきちんと処理をしなくちゃならぬ。ことしすぐできるかどうかは別問題と言われておりましたが、一定の打開は関係閣僚の間で御相談になってまいるでありましょう。そうなってまいりますと、一つは、GNPの伸び率がわりかしいいようでありますから、全体の分母がどうなるのかという問題もございます。これは来年春の話。それから人勧が出てくる。それをどう処理するのかは、閣議の御相談あるいは給与法の改正の問題になるなどの状況が進んでまいります。何も二つに分けなくても結構なんですが、それなりの対応姿勢、御判断、いかがでございましょうか。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 仮に、昨年の防衛費の例をとって申しますならば、国際条約による国庫債務負担行為の歳出化、あるいは先ほど来も申しました人件費等々の問題は、概算要求枠設定に際して、政策としての優先度を検討して特別に配慮したものではなく、あくまでも国際条約に基づくところの結果として、特別な硬直的な性格に着目して例外的な増加事項として認めておるということでございます。いずれにいたしましても、専門家でございます会計課長さんも今検討中だとおっしゃいまして、私どもの方へ御相談があるのは大分先の話ではなかろうかと思っております。そういう枠組みの問題は別といたしまして、私どもの方で、概算要求の際、初めから政策としての優先度の中でこれを特別扱いしていくとかという考え方はございません。  同時にまた、一%の問題が論じられました。お互い国会でフランクな議論を闘わすことはまことに結構なことでございますけれども、私も天下国家というふうな大それたことを考えるほどの能力もございませんし、万事控え目にいたしておるところでございます。ただ、一%問題というのは、たびたび総理が申し上げておりますように、昭和五十一年、ちょうど私が建設大臣をしておった当時でございますが、一%という三木内閣の決定を守っていくという方針が別に変わったわけではございませんので、そのことだけを申し上げておきます。そうして、今GNPの実質成長三・七ということを申し上げましたが、物価が超安定しておりまして、名目は四・一というようなことでございますので、名目の伸び率対比で予算を見ていく場合、超物価安定の場合には名目では必ずしも大きな伸びはないものだということを最近実感として感じておるわけであります。  それから、人事院勧告の問題でございますが、私も給与関係閣僚の一員でございます。もちろん給与担当大臣は総務庁長官ということでありますが、いつも申し上げますように、この問題は人事院勧告が出された段階において、国家的見地から、また法の趣旨を尊重して対応すべきものでありまして、今から私が閣僚の一人として予見を持って申し上げるような筋合いのものではなかろう、こういうふうに考えておるところであります。
  36. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 人勧のことは、今大蔵大臣お答えになったらかえってこちらも困るので、どうせ厳しい財政事情ということを言わざるを得ない立場でございましょうし、これは新任大臣の後藤田さんを中心にして御判断をいただければというふうに思います。  予算のシーリングに関連をしてもう一つだけ伺っておきたいと思います。概算要求が進んでいく過程で、この数年来そうでございますけれども、六十五年赤字公債脱却と言われたものは一体どうなるのかというようなことが恐らく世間からは強く問われる、そういう声がますます強くなると思います。  そこで、前に財政法の議論のときに、赤字公債を一兆円減らしますか、一兆円強でなければならぬわけですが、と聞いたらそれはアプリオリにやるものではなくて、さまざまな計算の結果、それに対応する一定の数字が生まれてくるというふうな意味のお答えがございました。それでは、これから六十五年まで、五回も十回も予算編成があるわけじゃない、何回かの間ですから、初年度つまずき、二年目できなければ、もうだめだということになりますよというようなことをたしか申し上げた覚えがございます。この段階になってまいりますと、間もなく世論に大きく問われる問題でもございますし、一兆円以上になりますが、六十五年赤字公債脱却に対応できるような枠組みというものをお持ちになっているのか。  それに関連をして、大きな銭目からいいますと、定率繰り入れの問題がございます。新聞でも、大蔵大臣はしないとか、六十年度もできないとか、写真入りで大きく報道されておりますが、金額からいたしますと大きな問題でございます。細かいことは別にいたしまして、そういう枠組みの主要な判断について、現段階ではどんなお気持ちでいらっしゃいますか。
  37. 竹下登

    竹下国務大臣 平均でいきますと、おっしゃいますように一兆八百億弱を毎年減していかなければいかぬ理屈になるわけであります。初年度つまずいたではないか、確かに五千数百億にとどまっておるわけであります。五十八年を振り返ってみますと、結果として三千億円ほど出さなくて済んだと言うとちょっと表現がおかしゅうございますが、当初予定しておった出納整理期間発行の赤字公債を三千億円だけは出さなくて済んだ、こういう結果になって、そういうごとも引き続いてあればいいことだなと思っておりますけれども予算が今、四、五、六と歩いたばっかりのとき、出さなくて済むかもしらぬなどということを予測することもできるはずのものではございません。したがって、アプリオリに毎年確実に何ぼと決めていくことは、それは確かに諸般の経済、財政状態が年ごとに違いますので難しい問題でありますが、やはりこれは六十五年度の努力目標達成のために、いかに困難であろうとも、これに対しては精いっぱいの努力をしていかなきゃならぬ。決して容易なことではないと私も自覚をいたしておりますが、その平均値が一兆八百ということになりますので、したがって、今度はいよいよ予算編成のときに——一遍五十五年度予算に、「初めに一兆円の減額ありき」、こういうことでやってみました。その後五十六年は「二兆円の減額ありき」でやりましたが、世界同時不況でそれは結果としては狂いました。だが、どういう手法で十二月取り組んでいくかということは、これからの経済、財政状態などを見ながら決めていくことですが、いわゆる概算要求枠の設定の際も、そういう厳しさそのものは出ていなければ容易ではないというふうな事実認識は私もいたしております。  それから、定率繰り入れの問題でございますが、この問題につきましては、財政制度審議会等でも御議論をちょうだいして、やっぱり減債制度というものの基本は守るべきだ。そのとおりだと思います、実際問題として。しかしながら、三年間定率繰り入れをしないで御理解を得てきた。したがって、六十年度予算、やっぱり基本的にはそのことを、財政審の答申等も踏まえながら、そのときどきの財政事情の中でどう対応していくか、難しい問題だなと。いつも伊藤さんから御議論いただいているように、仮に残額が少なくなっても六十年そのものは困らないじゃないかという議論がありましても、六十一年に対してはまた相当なことになるわけでございますから、その辺の考え方をどういうふうに煮詰めていくかということで、概算要求のところまでは総体的な歳入とか景気の見通しとかというものは別次元の問題といたしましても、それからかかる六十年度予算編成に当たってはやっぱり重要なポイントである。今のような御議論を聞きながら、これは精いっぱい努力しなきゃならぬ課題だなという認識は私もいたしております。
  38. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いろいろお伺いしましたが、まあ正直言って大臣にとってもお答えにくい時期でございましょうし、私どもも、ただ問いただすか、あるいは文句をつけるかという姿勢は持ちません。今、私ども社会党も、これからの財政あるいは税制全体を含めまして、現実に正面から取り組み、しかも、私どもの理想に向かうような方向をどうするのか、堀さん、武藤さんを中心にして鋭意勉強を開始をいたしたところでありまして、ニュー社会党にふさわしいプランをつくりたい、そしてまた、そういうものをお互いにぶつけ合って議会の権威を高めていくという努力もしてまいりたい、そういう中でさまざまこれからの一般質問その他もやってまいりたいというふうに考えております。  税調会長に随分お待たせをいたしまして恐縮でございました。  マル優について伺いたいと思うのですが、これも八月の末までに、自民党税調でも政府税調でも結論を出す目標でスタートをしたという段階でございますから、断定的な会長個人意見を申し述べるということも難しい時期であろうことは私も承知をいたしておりますが、さまざまな報道がたくさんなされまして、また、新聞にも雑誌にもいろんな形で、週刊誌まで報道されております。ですから、一般庶民にとりましてもどうなるのか、私の貯金している四百万円の利子がどうなるのかしらとか、いろんな意味で心配になっているというふうな状況ではないだろうかと思いますので、現段階で率直に御発言いただけるお考えを例えればありがたいと思うわけでございます。  一つは、私は、この問題の経過から実はこう思って、こういう感じがいたします。これは、申し上げるまでもなく、グリーンカード制が数年前に税法改正で決められました。あのときには税の公平のために総合課税を目指して、また、きちんとした限度管理をやり、ダーティーな部分がないようにしようということでできたわけでありますが、停止になりました。あの過程を見ましても、グリーンカードつぶしというふうな経過でございまして、政策論もない、それから税の公平その他に向けたきちんとした対案もない、さまざまの理屈を設けてグリーンカードつぶしと言われたような状況というのは、これは政治の分野では非常に恥ずかしい問題ではないだろうかという気持ちで今も振り返っております。だめだというならば、それにかわる、また国民世論にも税制の正式なルールにも耐え得るものを提起してなさるのが当然であろうというふうに思いますが、今日の段階になっております。私は、今議論をスタートされておられるそのベースに、こういう考え方が経過上から見ても必要なのではないだろうか。少なくとも、グリーンカード問題の当初のねらいであった、あるいは当初の目標として考えた税の公平、金持ち優遇を是正するように、そういうふうな観点はきちんと据えて今後の審議に当たらなければならない。これはだれしもそうではないだろうか。  先ほど申し上げましたように、最近マイナスシーリング反対、公共事業をふやせ、そのために財源がないとすればマル優を全廃すればいいのではないか。私は市民政治としては暴論だと思いますけれども、そういう議論も声を大にして実は出ているというふうな状態であります。そういうことを考えますと、まずこの財源確保から、あるいは財源調達論から始まってこの利子・配当課税見直し考えていくというのは全く筋違いで、原点を忘れたものではないだろうかと思うわけでありまして、つい数日前の新聞を見ましたら、小倉政府税調会長は、読売新聞ですか、「本社に語る」というようなことで、大幅増税は無理であり、マル優廃止は反対であると筋論を語っておられました。正確かどうかは別にして、私は一般的姿勢としては賛成ではございますけれども、どういうことに決着をするのかということは言いにくいと思いますが、経過を振り返りながら、姿勢としてはそうあるべきではないかと思いますけれども、御所見はいかがでございましょう。
  39. 小倉武一

    小倉参考人 マル優の取り扱い方その他を含めまして利子・配当課税あり方につきましては、従前のことになりますけれども、御説にありましたように、できるだけ総合課税に持っていく、またマル優、郵貯等については適正な限度管理をする、こういう趣旨のもとに導入を進め、グリーンカード制というようなことになったことはそのとおりでございます。  そこで、その後の事情を踏まえて顧みてみますと、どうも利子、配当については、厳格に総合課税することについては非常に困難な問題がある、また、理論の上でも、利子、配当の所得はほかの所得と少し違って、区別してもいいんじゃないかという意見がその後生じてまいっております。これは税調の中でもそうですが、外でも恐らくはそうかと思うのであります。今まではほとんどそういう議論はなくて、全会一致でグリーンカード制は税調の中では通ったわけですけれども、その後の事情を見ますと、少し様子が変わってきているように思います。  それからもう一つ、マル優、郵貯につきましては、これは以前から廃止論というようなものが内外にあったわけでありますけれども、今お話しのように、利子・配当課税の所得課税とあるいは別の考え方かもしれませんけれども、郵貯を含めて税金をかけたらどうかという議論も片や生じてきております。これは最近政治的にそういう発言がおありになっているということの御紹介もありましたし、新聞紙上でそういうふうなことも拝見しておりますが、税調の中では特に増収、増税ということを目的にして利子・配当課税考えるというような考え方は、考え方としては必ずしもとっていなかったわけですけれども、無論、利子、配当についての税制を適正にしていくということによって、あるいは何ほどかの増収になるということはあり得るかと思いますが、初めから幾ばくかの増収を目的としてこういう利子、配当の課税をするんだというような考え方はしていなかったわけです。恐らく今後もそうだろうと思いますが、これはしかし、委員相当数もおかわりになった次第でありますし、世の中の意見のこともるるありますので、今後ともそういう方針が堅持されていくのかどうか、にわかに判断できません。したがって、それ以上申し上げるわけにもまいりませんのですが、できるだけひとつ、難しい問題ですが、すっきりした答申ができますように努めてまいりたい、こう思います。
  40. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 現在の時点ではなかなか、会長御自身もいろんな信念をお持ちの方ですから、お考えはあると思いますが、明確に私見というレベルでも発言しにくいというふうな御事情は理解いたします。今の訥々としたお話を伺いましても、新聞のとおりかどうかは別にして、経過からしても、あるいは国民に公正をきちんと説明できるという視点からしても、やはり今までの現実経過を踏まえた、原点を忘れたことではいけないのではないだろうかというお気持ちは十分お持ちになっているように受けとめておりますが、これは非常に複雑な事情が絡んで審議がなされるようでございまして、ぜひ国民の目から見てなるほどと思えるような御努力をなさるように要望をさしていただきたいと思います。  これは主税局長の方にちょっと伺いたいのですが、私は、個人的にはこう思っております。原則的には、グリーンカード制をやめたのが悪いので、あれをきちんとやりなさいというのが私どもが変えていない方針であります。現実今の対応考えてみましても、確かに政策論として貯蓄優遇という政策がいいのかどうか、さまざま御議論もございますでしょうし、あるいは金融界から山田さんのような御意見もございます。また、そういうレベルと同時に、現実一般市民の立場あるいは勤労市民の立場からいたしますと、マル優限度いっぱいお金を持っている、それ以上に架空名義でやっているなどというような人はごくわずかになるわけでありまして、多くの人からいたしますと、年間何万円か、二万円か五万円か税金にいくのか、今までどおりなのかという、本当に庶民の気持ちという現実が多数の方々というふうなことであろうと思います。また、大口のお金を持っておられる方々は、金融自由化あるいはCDの単位も三億から一億へとかさまざまな変化がございますから、金かゼロクーポンに行った前の例ではありませんが、大口の方々は、マル優が全廃になっても自由な運用があるかもしれませんけれども、小口の方々はそうはいかない。結局損を見るのはそういう零細庶民というふうなこともいろいろと思いたくなるわけであります。  私は、もちろんこのマル優全廃については反対でありますし、やはり今必要なことは限度管理を徹底していく。これは銀行、郵貯も含めまして十分な努力をさらにやっていただく。さらには分離の税率の方も、現在の三五%を四〇、四五とか上げていくような手配をなさることが現実的な手配である。また、限度管理のためにいわゆるマル優カードというのも一つの方法ではないだろうかというふうに私も実は考えているわけであります。  けさも、ここへ、共同の記事でしょうか、地方版の地元の新聞を読んでおりましたら、大蔵省のが載っておりまして、「マル優廃止し一律10%課税大蔵省利子配当見直し検討」などという記事が出されております。政府税調小倉さんも言われましたように、さまざま議論が始まっているけれども、大蔵省としては一律一〇%、マル優廃止を検討しているというふうな記事もございました。これに類する報道も何遍か実はなされている。意図的にアドバルーンを揚げられているのか、勝手に書いているのか、世論を誘導しているのか、巧みな大蔵官僚ですから、私はいろいろなことがあるのだと思いますが、こんなことで一体——今までのマル優問題でフェアルールを忘れたという国民気持ち、多くの国民の声、新聞の社説なんか見ますと、やはりそう書いてあります。一定の良識と書いてございますけれども、それと違うというだけではなくて、とにかく原点を忘れて、税の公平の視点を忘れて財源確保、財源目当てを優先にしてやっていこう。きょうの毎日新聞には、全体としてのシーリングは厳しい、公共事業は若干考えるというようなこと。それと符合して考えますと、何か筋違いの声だなというものに大蔵省も十分配慮しているのかというふうな気も私どもはするわけであります。きょうの新聞だけではなくて、何回かそういうこともございましたので、どのようにお考えになっておりますか、ざっくばらんな本心のところを言ってください。
  41. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子課税の問題につきましては、先ほど小倉税制調査会長のお話にもございましたように、新しい政府税制調査会でまさにこれから御審議をいただきまして、私どもといたしましては、でき得れば、ことしの年度答申にもお触れ願いましたように、八月をめどに御結論を賜りたいということを期待申し上げているわけでございます。  ただ、ここに至りますまでの経緯につきましては、昨年の中期答申の作成の段階でかなりの時間をかけてこの問題を御審議いただいたわけでございますけれども中期答申段階におきましても、課税貯蓄それから非課税貯蓄を含めましてさまざまな議論が展開をされておりますが、まだ一つ議論に集約される段階には至っていないという経緯をたどっておるわけでございます。これらの経緯につきましても、先ほど小倉会長がお触れになったとおりでございます。  たまたま、税制調査会長の任期が五月末で切れるという段階の最後の総会におきまして、会長の談話というものを総会でおまとめになったわけでございますが、そこの中では、特に、今お触れになりました非課税貯蓄につきましては、やはりこれは中期答申からの議論の延長であるわけでございますけれども、貯蓄奨励税制としての評価をどう考えるかという問題でいろいろ議論があるわけでございます。これは理論的にも現実的にも大変な議論があるわけでございますが、その問題と、それからやはり乱用の問題というのは、これはもう郵貯、民間のマル優を含めまして無視できないような現状にある。これも従来から指摘されておることでございます。それともう一つは、金融機関相互間あるいは金融資産相互間のバランスをどう考えるかという広範な問題があるわけでございまして、まさに、今後どういうふうにおまとめいただくかというのは、これからの税制調査会の御審議にまつ段階でございます。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕  税制当局としていろいろなもくろみを考えておるとかあるいは具体的な検討をしておるというふうな報道も間々なされるわけでございますけれども、これは私ども大臣からの強い指示を受けておりまして、この問題につきまして税制調査会の御審議を私どもは忠実に見守って、大方の国民各位の御意見の集約されるところでもってこの問題についての税制当局としての態度を確定するということでございまして、現段階で、課税貯蓄、非課税貯蓄すべてを含めまして、六十年度において税制当局としてこの問題についてこうするんだというふうな結論を持っているわけでもございませんし、具体的な方向について個別の検討に入っているという事実も一切ございません。
  42. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私から申し上げるべきであろうと思っております。  その一つには、あのようにしていわゆるグリーンカード制の問題の御答申をいただきました。そのときの税調会長小倉先生であります。そしてそれを国会に提案した責任者は時の大蔵大臣竹下登でございます。本院でも共産党を除き賛成をしていただいた法律でありますが、その制度そのものが国民理解されるに至らなかったということで、それをいわば凍結という表現が適当でございましょうか、いたしました。そのときもまた私がお願いをしたわけであります。  そこで、そうしておいて今度税制調査会の方へいかにすべきかというようなことを御審議いただくということは、ある意味においては一事不再議だと言われてしまえば一体どうしようかと本当に思いました。しかし、国会の各般の議論等、正確にお伝えしましたところ、税制調査会においてこれを検討してやろう、こういう自主的な御決定をいただいたわけであります。したがって、そういう歴史的経過——歴史的経過と言うと少しオーバーな言い方になりますが、時間的な経過の中で物を考えてみますと、それこそ各方面の議論を正確に税調へお伝えするという任務に徹すべきであって、予見をお与えするような発言は厳に慎しむべきであるということを、これは部内にもきちんと申しておりまして、そういう姿勢で我々は御検討の推移を静かにと言うか、とにかくまじめに見守っておるという考え方であります。
  43. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 厳粛箝口令みたいな意味で大臣お答えございましたけれども、私が申し上げているのは、やはり個人的な見解でありますけれども、マル優全廃、財源づくりという考え方には反対、限度管理をきちんとしてきれいに明朗会計でいく、そのためにはマル優カードも一つの方法でございましょう。それから分離分については課税の率を高めるというようなことで、当面の対策としては総合課税に早く移行するのが望ましいと思いますが、現実問題、今の段階ではそういう手配が必要ではないか。それの是非は別にいたしまして、前段の姿勢として、ベースとしてはやはり筋違いの見解ではなく、税の公平のために金持ち優遇税制と言われないように、アングラマネーその他を押さえて明朗会計にするようにという趣旨で言うわけですから、現状に口出せませんとか物言えませんというのではなくて、そういう姿勢お答えをいただくというのが深いかかわり合いを持たれました竹下さんとしても筋ではないか。よろしゅうございますね。
  44. 竹下登

    竹下国務大臣 今のお言葉も、正確に伝えるまでもなく小倉先生に聞いていただいておりますし、私も非課税貯蓄であれ何であれ、「伊藤登」があったり「竹下茂」があったりすることはいけないことだと思っております。     〔熊川委員長代理退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  45. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これはこれからも引き続いて話題になると思いますが、時間もわずかでございますから、せっかく税調がいらっしゃいますので、ちょっと個別のことを二つお伺いいたします。  一つは、この間、七月三日の朝日新聞の記事を見てびっくりしたのですが、入場税の免税点の引き下げ検討、これは見出しは「大蔵省」ですね。出ておりまして、実はびっくりいたしました。なぜびっくりしたかというと、当委員会税法のときに私取り上げさせていただきまして、もう時間がございませんから詳しくは申し上げませんが、昭和五十年、現在の税率、その他の制度ができまして、あれから八、九年たってまいるわけであります。当時、当委員会の森美秀さんが大蔵政務次官でありまして、やはり文化を大事にする、それから文化を楽しめる日本にしなくちゃならぬ。そういう意味では、今後の物価動向その他を見ながらこれは改善をしていくというのは当然でありましょうというふうに御回答になっているわけでありまして、今時に舞台の関係方々からいろんな俳優さんや演劇人関係、切実な声が上がっております。先般、大臣がちょっといらっしゃらないときでございましたので、大臣がいないと審議をしないというルールに反しますけれども、堀之内大蔵政務次官とそれについて問答いたしまして、政務次官の方からは、それはもっともであると思うということで政府税調の方にもきちんとお伝えをして御検討いただくようにしていきたい。その議事録を関係者に送りましたら、非常に期待を持ちまして、いい方向が出るんではないかと思っていたようでございます。ところが、こういう新聞が出たということでびっくりしまして、緊急にまた議員会館に大勢の人が集まりまして、こういうことがないようにということをされたようであります。  実は、そのときに申し上げたのですけれども、財政は厳しいけれども、何かやはり、極力国民に明るさと温かさをということは、大臣もいつもお考えになっていると思いますよ、政治家として当然ですから。文化予算で見たら、フランスが国民一人当たり二千円、イギリスが国民一人当たり千四、五百円、日本が三百四十何円だそうでありまして、非常に恥ずかしい思いがいたします。また、本来でしたら国会の冒頭から我が党首も含めて文化問題を取り上げるとかいうふうなことでないと、これからの社会にしても恥ずかしいんじゃないだろうかという気が私はしているわけでありますが、国会の御答弁とは全然逆の新聞記事が出ましたので、大変びっくりしているわけでございます。その辺、税調としても当然、堀之内次官そうお答えになりましたから、税調に御出席主税局長はそういう意見があったことを政府答弁どおりにお伝えになっていることだと思います。それから、こういう記事がなぜ出てくるのかということも非常に不可解でございます。また、申し上げましたような趣旨の方向でぜひやはり——大きな額の問題ではありませんし、それから、先ほど冒頭に御回答いただきました食事代に対する税制の問題でも八年目でございまして、これも五十年以来のことでございますから。一方ではとにかく物価指数あるいは物価が上がれば上げてもらって税金も上がっていく、他面では是正すべきものを是正しない。これは勝手というものだろうというふうに思うわけでございまして、こういうことは事実ないと思いますが、お答えをいただきたい。
  46. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 新聞の報道が大蔵省の検討という報道だそうでございますので、私の方から最初お答え申し上げるわけでございます。  現在の入場税の免税点、昭和五十年に改定になった当時大幅に引き上げられたわけでございまして、現在におきましても、例えば映画の免税点が大体ロードショウの普通席ぐらいの水準、空ものになりますとその倍の水準で、三千円を超えるというところになりますとかなり高い演劇の入場料という水準にあろうかと思います。  一般的に入場税はサービス課税ということでございますし、各国ともこれに似たような税制は大体持っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、昨今報道されましたような免税点を具体的に引き下げるとかあるいは引き上げるとかいった、そういった点も含めまして、現在六十年度の税制問題として具体的にそういうことを検討しておるという事実はございません。すべてこの税目も含めまして六十年度の税制につきましては、今後政府税制調査会での御審議をいただきまして結論を得るという手続で進めさせていただきたいと考えておるわけでございます。
  47. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 主税局長、取り扱い極めて実務的にお答えになりましたが、中身の方をきちんとお伝えいただいて、前向きの御審議をぜひお願いしたいというふうに思います。映画その他ございますが、特に舞台関係方々からは切実な要望でございまして、一つの工夫とまた努力で多くの方々に明るさを持っていただけるというふうなことではないだろうか、あるいは五十年という時点からのさまざまの意見その他の経緯からいたしましても、当然のことではないだろうかというふうに思います。これは一党一派のことではございませんで、櫻内先生を会長とする音楽議員連盟の副会長を私はいたしておりますが、歌はからきしだめなんですけれども、その中でも日ごろ集まっては文化のためにということで要望しているのでございまして、よろしくお願いしたいと思います。  また、税調会長にあと二つ伺いたいのですが、一つは、今のことで税調にも御報告がございますでしょうか、あるいは御感想があったら伺いたい。  もう一つは、またぼちぼちいろいろな動きになっています物品税のことでございます。この間当委員会議論をいたしまして、大蔵大臣からも、物品税のあり方、将来について、税調にも御審議をいただいて、十分解釈を詰めていきたいという御答弁をいただいたところなのでございますけれども、実は私も困るのは、物品税というのは、対象と取り方は決まっているけれども大臣答弁を聞きましても、税の性格というのは法律にはないわけですね。御説明は、申し上げるまでもなく、ずっと前から奢侈品課税ということで説明をされてきた。その後便益品などが加わってじわじわ広がっている。  実は、私そのとき大分声を大にして恐縮なんですが、申し上げましたのは、小倉さんのところのこの中期答申に、物品税本来の趣旨といいますか、に立ち返り、幅広く、という文章がございまして、本来の趣旨というのは、この法律ができるとき、たしか満州事変か何かのあたりだったと思いますが、そのときから担当大臣が毎度お答えになっている奢侈品課税というのが日本では本来なんだと。ところが、こういうことになってくると、今まで国会で御説明になってきた法律の解釈、意義づけというものと全く逆のことになってしまう。大上段に憲法まで言ったのですが、御承知のとおりに、税制性格その他を変えるときには議会の審議、議決が必要であるという憲法の条文がございます。ちょっと心配の余り声を大にした問答をしたわけでありますが、私は、これらの取り扱いについて、あり方その他も含めてきちんとしないと、当委員会でも多くの議員から御発言がございましたが、事実上の大型消費税に発展をしていくという懸念が深まっていくことになるのではないかと思うわけでございまして、税制の権威でもあり、また文化にも御理解のある、と思います会長に、先ほどの入場税の問題を含めて御見解を伺いたいと思います。
  48. 小倉武一

    小倉参考人 税調におきましては、入場税については特に審議を最近していないと思います。物品税とサービス課税という項目でもって、ちょうど今先生が御指摘になりましたような文章でまとめておりますので、先生のお話とは少し違った角度から取り上げておって、むしろ増税の方向を考えておる項目に入っておるわけで、はなはだお気に召さない文章になっているかと思います。と申しますのは、ちょっと申しにくいことですけれども、恐らく、一般消費税という考え方がなかなか受け入れられない、しかも増収措置はある程度考えておく必要があるということになりますと、本来はどうかわかりませんけれども、物品税をひとつよく検討して、でこぼこがないようにすると同時に、新しく品目を取り入れていくという方向が一つ考えられるのじゃないかということが一つ。  それからもう一つ、入場税を含めましてのサービス課税につきましては、どうも物品の生産あるいは消費よりは、サービスの生産といいますか、消費というか、そういうものが非常に大きくなってきているので、サービス課税を充実することが必要ではないかという意見の方が税調では強うございまして、税を軽減するという角度からの議論は、どうもほとんどなかったのではないかという気がいたします。しかしながら、国会での御議論のあるところは当然、役所を通じて、また今日直接お聞きしたわけでありますから、来年度の税制改正の際には、大きく御議論のあったこと、御意見のあったことも念頭に入れて、税調で審議を進めるということになろうかと思います。
  49. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう時間ですからあれですが、小倉さん、こういう気持ちなんです。要するに、増税か減税か、重くなるかどうかということは別において、税制というのは、国民の御理解を得るためにも、きちんとした運用がなされるためにも、やはりどういう性格の税金であるかとかいうことがなし崩し的に変わっていくということになりますと、非常にまずい。それらの論理的な位置づけということを含めまして、そういうことを中心にいたしまして申し上げたようなことなので、当委員会法案審議に二月以来追われてきまして、時の問題を十分議論するのは久方ぶりのことでございますから、法案審議が終われば、これからそういうことについても、大蔵省との間でもさらに大蔵委員会審議をしていきたいというふうに思っております。  恐縮ですが、ちょっとだけ銀行局にお伺いして終わりたいと思いますが、サラ金の問題についていろいろな大きな変化がございました。詳しくはまた小委員会でもいろいろな議論をしていきたいというふうに思いますが、二つだけお伺いしたいのです。  ヤタガイの問題その他いろいろなことがございましたが、そういう経過を見ても、やはり私どもが新法の議論のときに言ったことの主要部分が、今現実の問題となっているのではないだろうかという気がいたします。ひとつ金利を、あのテンポではなくて急いで下げるということが、当面まず必要ではないか。現実もそういう実勢に急激になってきているし、大手の方はことしじゅうに四〇%にしますというふうに言っている。それによっていろいろな意味での摩擦や淘汰もあるでございましょう。しかし、これは社会的にしようがないといいますか、方向づけとして、もう勇断をしてこれを進めていく、法改正の時期を早めるということが必要ではないだろうか。  もう一つは、社会的問題が全然減っておりません。それから、将来像といいますか、を考える必要があるだろうと思います。統一信用法とかあるいは包括的な信用規制法とか、答申も読ましていただきましたが、ここまで参りますと、これから普通銀行の庶民金融がどうあるべきか、現在のようなサラ金業界がどのような方向で将来安定してやっていくような姿になるのか、あるいはクレジットローンなどを含めてどう運用されていくのか、いろいろな意味で、長期に安定できる一つの将来像を描いていく、そういう将来像を念頭に置きながら業界の問題に当たっていく、今までとはちょっと段階を違えた対応策ということになってきつつあると思いますし、必要なのではないだろうかと思いますが、時間をちょっと恐縮でありますが、その二つだけ伺って終わりたいと思います。
  50. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 まず第一の御質問は、金利の引き下げを促進すべきではないか、かつ、そのためには法改正をなすべきではないかという御質問と承りました。  確かに、現在の法律では、先生御承知のとおり七三%、五四・七五%、それからその後は四〇・〇〇四%に引き下げるという過程を考えておられまして、本則は四〇・○○四%になっているわけでございます。そこで私ども、まさに先生のおっしゃいますとおり、ユーザーの保護という点ではこの金利引き下げが最も大切な点の一つであろうかと存じております。そこで、この貸金業二法の趣旨を踏まえまして、貸金業者に対しまして五十八年九月に銀行局長通達を出しまして、改正出資法に定められました上限利率の、先ほど申し上げました金利の段階引き下げの期日がそれぞれあるわけでございますけれども、その段階の期日の到来を待つことなく、みずからの経営努力によって、可能な限り速やかに本則の利率であります年四〇・○○四%以下に引き下げるよう、指導を昨年九月に図ったばかりでございます。これは資金需要者の負担の軽減という見地でございます。この結果でございますが、先生ただいま御指摘のとおり、例えば今般サラ金専業の大手四社はことしの秋から貸付金利を四〇%以下に引き下げるということに決めたと私ども聞いておるわけでございます。これは出資法本則に規定する四〇・○○四%の金利を先取りして行うものでございます。私どもといたしましては、これを機にいたしまして、今後このような動きが消費者金融市場全般に浸透していくことを期待しているわけでございます。  法律改正でございますけれども、金利引き下げについては、今申し上げましたようにサラ金二法が昨年施行されたばかりでございますし、このような通達で指導しておるところでございますし、見ておりますと徐々にその効果が上がりつつあると考えられますので、引き続きその動向を見守ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから第二の御質問でございますけれども、サラ金に限らずクレジットカードあるいは割賦販売等々、消費者信用についてビジョンを持って、場合によっては総合立法ども考えてはどうかという御質問でございました。これにつきましては、まさに私どもの方におきましても、去る三月二十七日でございますけれども金融問題研究会、これは銀行局長の私的懇談会でございますけれども、そこで提言されたわけでございます。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕  その提言におきましては、まさに委員指摘のように、消費者信用市場の健全な発展と消費者保護の徹底を図るために、その消費者信用に関する総合立法の制定を早急に検討する必要があるという御提言でございました。そのビジョンについては、今後内容につきましての具体的な検討は広範で各種の問題を含んでおりますので、まだまだこれからでございますけれども、私どもといたしましては、関係する省庁も多岐にわたっておりますので、関係省庁とも協議しながら、前向きながらも慎重に検討を進めてまいりたいと考えているわけでございます。  問題点の所在、ビジョンを持つ必要につきましては認識しておるつもりでございます。今後とも御指導願いたいと思います。
  51. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ありがとうございました。
  52. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 坂口力君。
  53. 坂口力

    ○坂口委員 小倉会長には、大変お忙しい中を、きょうはありがとうございます。長くお待ちいただくのは大変失礼でございますので、小倉会長にお聞きをすることを先に済まさせていただきまして、御退場いただきたいと存じます。  今、伊藤議員から各般にわたっての質問がございまして、かなり重複するところがございますが、お許しをいただきたいと思います。  まず最初に、先ほどもマル優の話が出ましたけれども、私もこの問題に少し触れさせていただきたいと思います。  先ほどの議論にもございましたとおり、これをどのような方向に持っていくかということにつきましては、既にいろいろの議論も実際にはあったろうと思いますし、また、そんなに多くの方向があるわけではなくて、大体二、三の方向にこの問題は集約ができるのではないかというふうに思っております。一つは、非課税貯蓄の限度額管理だけにいわゆるグリーンカード方式の「マルU手帳」の導入をするかどうかという問題。それからもう一つは、利子に一たん天引きで課税をして、年末調整などで非課税分を還元するいわゆる少額利子控除制度の導入ができるかどうかという問題。それからもう一つは、非課税貯蓄制度を廃止もしくは一時停止をして、一律に低率な分離課税を導入するかどうか。大体この三つぐらいに要約できるのではないだろうかというふうに思っております。しかし、二番目に申しました年末調整等の問題は、かなり事務的に煩雑になるということも考えられますので、現実には大変難しいのではないだろうかというふうに予測をするわけでございます。  そういたしますと、最初の「マルU手帳」——英語のUの字をお使いになりましたけれども、「マルU手帳」の導入あるいはまた最後の廃止もしくは一時停止というような案がクローズアップされてくるわけでございますが、新聞等で小倉会長のインタビューその他を拝見をいたしますと、どちらかといえば一番のお気持ちに近いのではないかな、そんな気持ちがしてならないわけでございます。  新聞のインタビューにおきましても、グリーンカード制度につきましても、そのまま読ませていただきますと、「グリーンカード制度は死んだ訳ではない。このまま放っておけば六十一年一月には生き返る。現状のまま再凍結も理論上は可能だが、いつまでも非課税貯蓄の不正利用を放置していていいわけがない。」と明確におっしゃっている記事が出ているわけでございまして、これらの点を加味をいたしますと、そうしたお気持ちではないのかな、そんな勝手な予想をいたしておりますが、御意見賜ることができましたらお願い申し上げたいと思います。
  54. 小倉武一

    小倉参考人 マル優につきましては、今お話しのように限度管理をする、そして存続するという意見は非常に有力じゃないかと思います。ただし、まだそれで税調としての意見が固まりそうだという段階ではございません。新しく再編成されました税調では、これまでの経緯その他の資料の説明があっただけで、意見の開陳はまだどなたからもございませんので、大勢がそうなるかどうかということもよくわかりませんが、これまでの経緯からいえば、どうもそういう考え方が有力だったというふうには申し上げられるかと思います。
  55. 坂口力

    ○坂口委員 わかりました。その辺どまりにさせていただいておきます。  それで、この「マルU手帳」の問題が一方で出るということになりますと、もう一方におきましては、先ほどこれも出ましたが、利子・配当課税の問題が残るわけでございまして、これも小倉会長が「不公平税制の最たるものが、利子配当所得に認められている分離課税だ。」とお述べになった記事がございますけれども、一方におきまして利子・配当所得に対する分離課税が残るわけで、これをどうするかということも議論になるだろうと思います。いわゆる総合課税方式でいくのか、それとも分離課税を存続させて、それに改革を加えていくのかということになるのではないだろうかなと、これも勝手な予測でございますけれどもいたしておりますが、その辺につきましてももし触れていただくことができましたら、一言お願いを申し上げたいと思います。
  56. 小倉武一

    小倉参考人 総合課税に移行するかどうかということについては、従来の考え方からいきますと、不公平税制の最たるものと言えるかどうか、金額からいうと最近なども最たるものだというふうに言い得るかと思いますが、したがいまして、それを是正するというのが従来の税制調査会考え方であり、そういうことで今日まで来ているわけですが、グリーンカードで挫折するといいますか、あれが凍結になるというようなことになりました後におきましては、税制調査会委員の方の中にも若干ずつ異なった意見をお持ちになっている方が出てまいっておるわけです。グリーンカードのときには全員賛成されたわけですから、これは全員が総合課税に賛成された。異論は一つもなかったと言っていいと思うのですが、今仮に、そういうことをいたしませんけれども、一人一人の意見をお聞きしてやると、一体どの程度グリーンカード的な総合課税に賛成される方がおるのか、ちょっとこれは判断しにくいわけです。  利子あるいは配当については総合課税という思想は捨てるべきではないと思いますが、しからばといってそれをどうするかということについては、もう少し具体的に検討する。先ほど伊藤先生の話におありになったかと思いますが、例えば源泉徴収率を少し上げるとか、それによって多少は総合課税の趣旨を生かすというふうなことも一つ考え方として恐らく出てくるんじゃなかろうかと思います。また、その他いろいろ考え方があり得ると思います。また今後出てくると思いますので、それらのことについては今後十分審議をしていただきまして、できるだけ総合課税の趣旨を生かせるような努力はすべきだ、こう考えます。
  57. 坂口力

    ○坂口委員 大臣にも一言お伺いをしておきたいと思うのですが、グリーンカードの歴史的経緯につきましては大臣の方からるるお述べをいただいたとおりでありまして、このグリーンカードのときは、全体の所得把握を目指していたわけでございます。その点、もし仮にマル優カードということに、これが選択されることになったと仮定をしての話でございますけれども、このマル優カードということになると、分離選択課税を残したままでマル優貯蓄だけに限定するということになるわけでございます。そこに格差が生まれる可能性もあるわけでございまして、その辺のところを大臣としてはどのようにお考えになっているのか。  それから、グリーンカードは先ほどお話しになりましたような経緯で冬眠状態にあるわけでございますが、小倉会長のインタビューの言葉をおかりするまでもなく、まだ死んだわけではなくて冬眠状態でございまして、このままほうっておけば生き返る可能性もあるわけであります。可能性があると申しますよりも生き返るわけでありまして、このままで何ら手が加えられないということになれば六十一年には生き返るわけでありますが、一度こういうふうな経緯を踏みました以上、そのまま前の姿で生き返るということは客観的には大変難しい環境にあるのであろうことは私も想像にかたくないわけでございます。その辺も含めて、ひとつ御意見を賜りたいと思います。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 理論的に、坂口委員のおっしゃいました第一の問題についても、私は坂口委員の理論はそれなりの正しい理論だと思います。  それから二番目の理論、ほっておけばそのまま生き返る、これも私もそのとおりであろうと思いますが、それ以上のコメントは、やはり今は差し控えるべきではないかな、こういう感じがしております。
  59. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、これ以上お聞きをすることはこちらは控えさせていただきたいと思います。  それでは、小倉会長にもう一点だけお聞きをしておきたいと思いますが、これも先ほど出ました入場税の問題でございますが、私もちょっとお聞きをしようときょうは思っておったわけでございます。私の手元の方にもたくさんの演劇俳優等の皆さん方から声が寄せられておりまして、一度機会があればお願いを申し上げたい、こう思っていたわけでございます。きょうはお会いをさせていただいてこの質問をさせていただく機会を与えていただいたものでございますから、せっかくの機会でございますので、私の方からもお願い申し上げておきたいわけでございます。  これは議論がございましたように、五十年の七月以降そのまま変化なく今日を迎えているわけでございまして、演劇、演芸、音楽、舞踏等につきましては三千円を超えるものにつきましては一律一〇%の課税が行われているわけでございます。先ほど主税局長からお話が出ました映画の方は千五百円ということになっておりますけれども、こうした入場税がそのままになっているわけです。一方におきましてグリーンカード等が凍結をされておるわけでございますので、今一方においてグリーンカードを凍結をしておきながら、一方においてこの入場税を改正をして免税点を引き下げようというようなことは、我々にとりましてはどうしても許しがたいことに思えるわけでございます。  日本古来からと申し上げてもいいと思うのですが、文化の薫りの高い国でありまして、今や世界をリードしなければならない文化国家になりつつあるわけであります。そんな我が国にとって、この入場税の問題はただ単に入場税だけの問題ではなくて、日本の文化水準に対する評価を左右する問題ではないかというふうにも考えております。後世に日本の伝統を継承するために、国は支援こそすれそれを妨げることがあってはならないと考える一人でございまして、先ほど御意見を承っておりますと、税調におきましても現在のところそうした議論はされていない、少なくとも免税点を下げる、あるいは上げるにいたしましても、そうした議論はされていないという御発言でございましたが、ぜひこれは税調においてもお取り上げをいただきたいということをお願いを申し上げる次第でございます。しかし、お取り上げをいただいた上で、新聞情報のように免税点を下げるというようなことになりましたら、このお願いを申し上げたかいがなくなってしまうわけでございますが、お取り上げをいただいて、ぜひひとつそうした人たちの希望を少しでもかなえてあげる方向で御検討をいただきたい、それをお願いを申し上げたいと思います。ひとつお気持ちをお聞かせいただければ幸いでございます。
  60. 小倉武一

    小倉参考人 この入場税の問題ばかりでございませんが、こういうふうに国会での御意見を賜ったものは、役所を通じまして税調に報告がございますので、重要事項については、来年度の税制改正審議する際に、問題事項として恐らく主税局の方から提示されると思います。したがって、御議論は当然税調でもしていただくことになると思います。結論がどういうふうになるかということは、税調の委員の大勢の方の御意見によるところでございますので、ここでどうこうということは、従来余り議論をしたことのない項目でもございまするので、申し上げるわけにはまいりませんけれども、そういったような気持ちで処置したいと思います。
  61. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  それでは、小倉会長、私の質問はこれだけにさせていただきます。長い間どうもありがとうございました。  では、引き続きましてお聞きをしたいと思います。内々でございますので、今度はひとつ、少し調子を上げてやらせていただきたいと思います。  これも先ほどシーリングの話がございまして、既に議論になったところでございますが、先ほど大臣から、聖域は設けないというお話がございましたが、政党政治であり、そして行政の中心であります限り、予算にアクセントがつきますのは当然のことだというふうに私は思うわけでございまして、そういうふうな意味で、中曽根内閣そして竹下大蔵大臣のお考え方によって、この予算に当然アクセントがついてくるものだというふうに考えております。  聖域を設けない、あるいはまた節減合理化、そして一律の物の考え方、そうしたことにつきましては先ほどお話をお聞きしたわけでございますけれども、例えば厚生省の関係を見ましても、社会保障関係費は、当然増といたしまして厚生省が試算をいたしておりますものを見ましても約七千億、こう言っておりますが、どうしてもこれはふえてくる。これはもういかんともしがたい額でございます。昨年は、そうした中で医療費の方で六千二百億円、これは医療費に押しつけたと言っては少し言葉が過ぎるかもわかりませんけれども、そういう形で健保が今重大な局面を迎えているようなわけでありますけれども、大変な議論を呼んだということになります。ことし六千億円当然増しということになってまいりますと、これはまた切れるかと言えば、常識的に考えてなかなかそうはいかない問題ではないかというふうに思うわけです。これに対してどんなふうにお取り組みになるのかということをまず一つお聞きをして、そして議論を深めたいと思います。
  62. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる当然増経費と一般的に言います。そうしたものが、私にも理解できないわけのものではございません。  まだきちんと決めたわけではございませんが、昨年の決め方を振り返ってみましても、人件費とか年金とかODAとかあるいは国際条約に基づく債務負担行為とかなどなどがございます。あるいは石油特会への繰り入れでございますとかそういうものがありますが、一方やはり医療費、生活保護費単価等の増は認めながらも、いわゆるゼロシーリングで対応してきたものもございます。  それこれを調整しながら、健保に例をとりますならば、まさに私はこれをして内なる改革と申しておりますが、原局の方が本当に工夫、検討されて、二十一世紀までの医療を考えて、今御審議が山場に来ておる法律をおつくりになったわけであります。それによって、結果として六千二百億でございますか、七月は過ぎましたから一月五百億円、一日十七億円の変動はございますけれども、そういう工夫をなされてきたわけであります。したがって、今の考え方から申しますと、よしんば当然増的性格のものでも、その施策、制度の根源にさかのぼって勉強していただかなければならぬものがまだあるではなかろうか。どれとどれだというようなことを言いますと、これまた指名手配方式みたいになりますから、それらのことを、社会保障によらず、各省庁におかれまして工夫していただけるものではなかろうかという期待を持っておるところでございます。まことに一般論のお答えになって申しわけありませんが、概算要求の説明とかヒアリングとか、まだそういうところまでも来ており史せんので、一般論としてそういうお答えをすべきことではなかろうかというふうに考えるわけであります。
  63. 坂口力

    ○坂口委員 内なる改革という立派な言葉を使われましたが、いささかことしの改革は、特に厚生省の改革は押しつけられた内なる改革という感じがしないでもございません。  予算編成のときになりますと私いつも思うわけでございますが、制度そのものをそのままにしておいて、そうして財源だけを切り捨てていくという行き方にはもう限度があるのではないだろうか。例えば今話が出ましたので、健康保険なら健康保険、医療保険を例にとらせていただきますと、先日来与野党との間でいろいろの健保の修正の話が詰まっております段階でも、医療保険の一元化の話が出ておりました。これは先日健保の連合審査のときにも実は申し上げたのですが、大臣ちょっとお見えいただけなかったのでお聞きいただくことができなかったわけですけれども、現在、例えば医療保険の経費なるものはどれだけかかっていますかということをお聞きしましたら、これは各医療保険総トータルでございますけれども、五十七年度で千八百十一億というお答えでございました。多分、現在でございましたら千九百億くらいになっているのではないかと思いますが、それぐらいな額がかかっているわけで、これは保険の統合ならば統合ということが行われれば全部要らなくなるというわけでは決してございませんで、半分になるのか三分の一しか減らないのか、これはよくわかりませんけれども、そうした制度の改革なるものを行うことができれば、そこから当然何らかの額が浮いてくることだけは事実でございます。そうした制度改革というものを伴うことなしにマイナスシーリングというのは、大変厳しい時代を迎えているのではないかというふうに、私自身は一般論といたしましても考えている一人でございます。そういう意味で、これは総理府のお仕事の範囲に入るのかちょっとよくわかりませんが、そうしたことを含めたお話し合いというのは、大蔵省がシーリングをされますときの前提としての話題になるのかどうか、その辺、一遍機会があればお聞きをしたい、こう思っておりました。せっかくの機会でございますので、その点ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 予算審議の際に、いわば参考資料等々としてお出ししております「中期展望」ないしはそれに伴う仮定計算等を見ますと、おおむね現状の施策、制度をそのままにして後年度負担推計で要調整額をお示ししておる、こういう手法をとっておるわけでございます。したがって、私はシーリングの段階においては、言ってみれば概算要求枠の計算上の一つの手法でございますから、その中で意図して制度改正を財政当局からお示ししておるということではないではなかろうか。その枠内で各省庁におかれて政策の優先順位を御決定になるときに出てくるものが、ハイカラな言葉で申しまして、いわゆる内なる改革というものではないか。だから事前に制度、施策の改正をシーリングの段階で念頭に置いて各省庁にお示しするという性格のものでは、原則的にはないではなかろうかというふうに考えます。——間違ってないそうでございます。
  65. 坂口力

    ○坂口委員 全体像を見ましたときには、しかしそうしたことが今後必要になるのではないかという気持ちを強く持っておりましたので、意見として申し述べておきたいと思います。  それから、サラ金の問題でございますが、これはきょうの新聞に経企庁の記事が出ておりまして、経企庁の方もこのサラ金の問題に真剣に取り組んでおみえになることは私は知らなかったのですが、経企庁の記事として金利下げを指導をするという記事が出ておりまして、確かめていただきましたら、そんなに新しいものではないということだそうでございますので、あるいは緊急に最近取り上げられたものでないのかもしれません。しかし、その内容を見させていただきますと、かなり突っ込んだ議論もされているようでございまして、金利下げとそれからただ単にサラ金、いわゆる消費者金融だけではなくて、割賦販売等々も含めて消費者信用適正化研究会を発足をさせて、その中で法律も一本化をしていってはどうかという御意見のようでございます。確かに御意見としては、なるほどそのとおりと私も思う一人であります。  先ほどの御意見を聞いておりますと、去年この新しい制度ができ上がってまだ日もたっていないが、だんだんその効果はあらわれてきているというふうな御答弁でございましたけれども、しかし世上騒がしております、このサラ金を原因とするところの自殺でございますとかいろいろな出来事というのは決して減ってはいないという数字も出ているわけでございまして、昨年つくりましたあの法律ではどうもこれは間に合わないのかな、もう少し考える必要があるのではないかという気持ちを私たちも強く持っておりまして、先日社会党さんとの間で社公の共同の修正案を出させていただいたところでございますが、政府の中にも、ひとつ割賦販売等も含めて一本化をした法律をつくってはどうかという動きもあるやに聞いておりますけれども、その辺も含めましてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  66. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 最初に、経済企画庁で昨日あたりから新聞に出ました「消費者信用に係る当面の施策」ということでございますが、私どももこの作成に参加しておるわけでございます。その中で、例えば金利引き下げの問題も出ておることも事実でございますが、企画庁でなさっておられますのは、消費者保護という観点からの、五十八年十一月八日に決定した消費者保護会議のフォローアップの一環として取りまとめられ、公表されたものでございます。したがいまして、例えばその金利の引き下げの部分は、先生先ほど私の答弁を聞いていただいていたようでございますけれども、大蔵省の銀行局長通達に基づく金利引き下げの一層の促進ということで、今までの措置の取りまとめの状況をまとめていただいたというふうに私どもとして観念しておるわけでございます。  そこで、もう一つ御提起いただきましたのは、ことしの四月御提案なさいましたサラ金規制法に関する改正案でございますが、この点につきましては、大蔵省といたしましては、中にございますのが過剰貸し付けの禁止の規定の追加とか、任意に支払った場合のみなし弁済規定の削除等々というふうに観念しております。当時、坂口委員がまさに御提案になったものを私も拝見いたしたわけでございますけれども、大蔵省といたしましては、警察、司法当局、自治省、都道府県、経済企画庁等の関係省庁と協議いたしながら、貸金業規制二法及び通達を厳正かつ的確に運用いたしまして、サラ金禍の減少と利用者の保護に努めているところでございます。御提案のものの中には具体的に御規定されておられるところもございますが、一部につきましては既に銀行局長通達で、例えば貸付限度の問題あるいは取り立て規制の問題、その中には取り立ての時間の問題なども入ってございますが、それを具体化するような方向では、私どもとしても同じ方向と同じ精神かというふうに考えられますので、私どもといたしましては引き続き貸金業規制二法及び通達の運用に努力を払い、今後の改善状況を見守っていきたいというふうに考えるわけでございます。  それから総合立法の点でございますけれども、まさにこの点につきましては私どもとしても金融問題研究会などで御勉強をお願いいたしまして、その方向といたしましては、消費者信用市場の発達と消費者保護ということの観点からも統一立法が必要であろうという御提案があったわけでございます。これはサラ金に限らず、いろいろと機械化などとも関連いたしましょうし、情報化とも関連いたしましょうし、そういうようなことで種々の消費者信用の部門の発展並びに変化が予想されますので、私どもといたしましては、その具体化についてはいろいろの難しい問題があろうかと思いますけれども、かつ関係省庁も多うございますけれども、今後ともその方向で御示唆のような検討を続けさしていただきたいというふうに思っております。
  67. 坂口力

    ○坂口委員 ぜひひとつ検討を続けていただきまして、早く結論を出していただきたいと思いますし、私どももまたいろいろの提案をしたいと思っております。  それから、国税庁の方にひとつお聞きをしたいと思いますが、きょうは私、朝起きましたら、同級生が医学部の教授になったというニュースが入りまして、大変喜びまして、しばらくしまして新聞を見ましたら、今度は病院のごまかし所得の記事が出ておりまして、私も医師会に片足を入れておる人間といたしまして、大変肩身の狭い思いをしてきょう新聞を見た一人でございます。この記事を見ながら、大変残念なことだというふうに思うと同時に、非常に御努力をいただいている税務署の皆さん方にも、私はその御苦労を多とする一方において、率直な疑問も実は一つ持ったわけでございます。  と申しますのは、ここに出ておりますが、例えば病院、パチンコ、貸金業、これはワーストスリーになっておるわけでございますけれども、この調査件数というのがそこにも書いてございます。しかし、その調査をされます、例えば病院なら病院、パチンコ店ならパチンコ店、貸金業なら貸金業の母集団というものがあるわけでございまして、その中で均等にと申しますか、ピックアップをして、そしてそれがどれだけごまかしているかということを比較をしたのであるならば、この順位というものはより科学的になるわけでございますけれども、ねらいを定めてお調べになったものを表にされて、そしてその順位をつけられるということになりますと、どうも科学的ではないという気がしてならなかったわけでございます。医師会に片足を入れておりますので弁解をしようなどという気持ちはさらさらございません。ただ、素朴な気持ちといたしまして、そうした思いをいたしたわけでございます。  例えば「一件当たりの申告漏れ所得」という所得の順位にいたしましても、全体の大きな金額を扱っておられるところはどうしても額というのは大きくなる。全体の扱っておみえになります額、全体の所得が非常に小さいということになれば、当然その中での申告漏れというものも小さくなってくるだろう、こう思うわけでございます。そうした意味で、全体の所得の中でそれが何%に当たるのかというこの比較でございますと、この比較が大変わかりやすいわけでございますけれども、一件当たりの申告漏れ所得のこの額の順位でございますと、これは大きいところの方がより大きくなるという感じがするわけでございます。ひとつこうした問題はより正確に発表していただきたいという気持ちも含めて、率直なそういう疑問を持ったわけでございまして、もしこれからの参考にしていただくことができ得れば幸いだと思いますし、御意見があればお聞かせをいただきたいと思うのが一つでございます。
  68. 冨尾一郎

    冨尾政府委員 先生が御指摘のように、きょう新聞に出ておりますのは、昨五十八年中に所得税関係調査をした事績でございます。  私どもとしては、大多数の納税者の方々は適正に申告をしていただいておりますが、一方で過少申告をされている納税者のあることも事実でございます。こういう方に対しまして、できるだけ効率的に調査を進めていくというのが私どもの基本でございます。このため、税務調査当たりましては、収集をした各種の資料情報とか過去の申告状況を分析、検討いたしまして、申告内容に問題のある業種に重点を置くとともに、多額の脱漏所得、申告漏れがあると見込まれる方から調査をするということを基本にいたしております。したがいまして、調査対象の選定の段階からある程度業種的に濃淡をつけた調査を進めているということは御指摘のとおりでございます。  ただ、これを結果として私ども見ますと、そのようにある程度濃淡をつけてやった結果でございますけれども、そのような業種につきましては単に申告漏れの納税者の件数が多いということばかりではなくて、一件当たりの申告漏れの所得が高額であるとか、ないしは申告漏れの割合が高いということになっておるのも事実でございまして、調査結果から見る限り、私どもとしては、そのように業種に着目をした調査を進めていくということもあながち的外れではないのではないかというふうに考えております。  ただ、私どもとしては、この調査結果の発表に当たりまして、一方で申告漏れの金額の多い業種のいわばランキングというのも申し上げておりますけれども、他方、申告漏れ割合の高い業種ということも、一方で私ども情報として差し上げてございますが、どうもやはりマスコミ等では金額の大小ということを議論される傾向が強いようでございまして、結果として病院ないし医療関係の方が上位に出てくることになっているのだろうと思います。ちなみに、申告漏れ割合というところから見ますと、病院を初め、いわゆる医師の方々の申告漏れ割合は、なべて一けた台のパーセントということに実はなっておるわけでございます。  今、業種的に云々ということを申し上げましたけれども、私どもとしては、申告内容に問題のある納税者から順番に調査するというのが基本でございますので、そのような業種に属しておられる方がすべて低調な申告をしておるということではなくて、冒頭に申し上げましたように、多くの納税者はむしろ適正な申告をなさっていただいているというふうに私ども考えておるわけでございます。
  69. 坂口力

    ○坂口委員 立場上、一罰百戒の意味も込めて報道をしていただかなければならないこともございましょうし、いろいろな立場はあろうかと思いますが、ただ、そこには危険性がなきにしもあらず。意図的にこの業種についてひとつもう少し注意をしてもらおうというお気持ちはわかるにいたしましても、そのことが表現上過ぎますと、非常に現実とは違ったイメージを与えることもあり得るという危険性を私は感じた一人でございまして、我々、自然科学の中におりました人間でございますので、こういうデータの出し方になりますと、大変厳しく先輩から言われまして、おまえのつくったこのデータは真実を反映していない、発表するに値しないとよくしかられた経緯がございます。そうした目で見ますと、こうした発表の仕方には大変問題があるということを感じたわけでございますので、あえてきょうは申し上げたわけでございます。御努力をいただいておりますことにけちをつけているわけではさらさらございません。ひとつお許しをいただきたいと思います。  けちをつけたわけではございませんが、意見を言わせていただきましたので、今度はひとつ皆さん方のバックアップの方も言わせていただきたいと思います。  国税職員の皆さんの処遇改善の問題でございますが、これは当委員会におきましてもしばしば取り上げられまして、定員の増の問題、紋別定数の問題あるいは旅費の増額の問題等々、これまでも何回か取り上げられてきたところでございます。今さら私が申し上げるまでもなく、この二十年ほどの間に、法人の数にいたしましても、あるいはまた所得税の対象の人にいたしましても、二倍ないし三倍と大変な倍数になっているわけでございます。しかし、一方におきましては、国税職員の皆さん方の数というものが変わっていないことはもう御承知のとおりでございまして、そうした厳しい中でお仕事をしていただいているわけでございますので、何とかその皆さん方に少しでもお報いを申し上げて、そして元気にお仕事をしていただくことができればと願うのは私だけではないと思います。そうした意味で、きょうは人事院の方はお見えいただいておりませんけれども大臣の方から、そういう状況を踏まえて今後の対応をひとつお考えをいただきたいということを注文を申し上げたいと思うわけでございます。  先ほど数字を申しましたが、昭和三十年代後半からの高度経済成長による日本経済の発展拡大というのは納税人口を急激に増加させたわけでありまして、この十七年間で増加割合は、申告所得税の納税者数におきまして二・一倍、法人数におきまして二・二倍、源泉徴収義務者数にしまして二・六倍強、間税関係の納税者数にしまして一・六倍、合計いたしまして二・三倍、こういう数字でございます。どうかひとつこうした点を含んで、この人たちがより張りを持って仕事に取り組んでいただけるような環境づくりというものに御努力いただきたいと思うわけでございます。ひとつ大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  70. 竹下登

    竹下国務大臣 税務職員の皆さん方の問題となりますと、まず一つは定員の問題、一つはまさに処遇改善の問題、こういうことになろうかと思うのであります。  私も、毎年終わりました後、みずからを省みてじくじたるものを感じますのは、これとこれとは別の問題という判然たる割り切り方をしながら対応しましても、一方、大蔵大臣としてまず隗より始めよ、こういう人員とかそうした問題に対しては無言のプレッシャーがあります。しかし、その問題をめぐって、本当にみずからこれとこれとは別問題として、私もこの問題に対応してみますが、なるほど減員ではないけれども結果としては一けただった、こういうことになりますと、まさにじくじたるものを感じます。したがって、この定員問題についても、これから不断の努力を続けていかなければならぬ課題だという認識の上にまず立っております。  それから次は、いわゆる待遇改善、こういう問題であります。重要で複雑困難な税務の職責を負う職員の皆さん方の処遇につきましては、ポストの新増設あるいは税務職俸給表、また等級別定数の改善、これらについて私も人事院へ、これはなかなか出向いて陳情するというわけにもまいりませんので、電話ではございますが、事務当局からきちんとした要請をした後、必ず私からも人事院総裁にお願いして格別の配意を今日までも続けておる。そのときの相手方、すなわち人事院の皆さん方の感触とでも申しましょうか、それは大変私どもの主張に対して耳を傾けてはいただいておるわけでございます。厳しい諸般の情勢の中で、これからもこの問題、やはり無言のプレッシャーを排除してでも自分として対応すべき課題であろうということを、みずからに絶えず言い聞かしておらぬといけませんから。そんな気持ちでございます。
  71. 坂口力

    ○坂口委員 ぜひひとつよろしくお願いを申し上げます。  少し早いですが、終わらしていただきます。
  72. 熊川次男

  73. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 先ほど伊藤議員の質問の中で話題に上っておりましたサラリーマンの食事代非課税限度額引き上げに関して質問させていただきたいと思います。  この問題は大蔵委員会でも常々話題になってきたことでございますが、サラリーマンが会社から支給される食事代非課税制度は、昭和五十年に創設されて以来九年間据え置かれている、その間の消費者物価、食事代の大幅な値上がりもあり、この限度額を上げてくれという問題でございます。今まで野党の方からこの問題を再三提起しておりましたが、自由民主党としてもこの問題に不熱心であったわけではないんでございますけれども委員会審議時間等の問題もありましてなかなか質問の機会が得られませんので、きょうはぜひそのフラストレーションを一気に解消さしていただきまして質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  先ほども伊藤議員の御質問に対して、二千五百円の現物支給食事代非課税限度額を三千五百円に上げていただける、また深夜勤務者に対する夜食にかえて支給する食事代非課税限度額二百円を三百円に上げていただくというお答えがございまして、常々お願いしてきたことに対してこれをやっていただいて大変多とするものでございますが、実は自由民主党の中にサラリーマン問題議員連盟というのがございまして、ここでこの問題を長年協議をし、大蔵当局にもお願いをしてきたわけでございます。  その中で、我々の研究によりますと、民間調査機関の基礎資料等を推計したものでございますが、昭和六十年では夜食一食の総コストは四百六十九円である、二十二日出勤といたしまして月額一万三百十八円になる、半額を勤労者が負担するとすると会社負担は約五千円となる、それくらいのことはやっていただいていいんじゃないかということを常々主張してきたわけであります。  また、この夜食にかえて支給する食事代の方でも、昭和五十年にはラーメンが一杯二百円、親子どんぶり四百円でございましたが、総理府小売物価統計調査報告を見ますと、昭和六十年ではラーメン四百円、親子どんぶり六百円程度考えられるので、非課税限度額を五百円程度に上げていただきたいというお願いをしてまいりました。今度やっていただいたことは歩といたしますが、今後に向けてさらに一層こうしたことを進めるように考えていただきたいと思うのでございますが、このことに関しまして御所見を賜りたいと思います。
  74. 冨尾一郎

    冨尾政府委員 お答えさせていただきます。  現物給与食事代と夜食の非課税限度引き上げにつきましては、今先生御指摘のように、私どもとしても本年いろいろと実態調査をさしていただきまして、その結果をもとに引き上げをさしていただくということに相なったわけでございまして、私どもとしては今後ともそういう企業の中での職員に対する食事代、夜食のそういう現物給与実態等を十分にチェックをしていきながら、引き続き実態の把握に努めまして、この問題をフォローしながら今後とも対応さしていただきたい、このように考えております。
  75. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 ぜひ自由民主党サラリーマン問題議員連盟の主張もお忘れなくお願い申し上げたいと思います。  次に、本委員会において昨日起草いたしまして、本会議をきょう通過いたしましたいわゆるパート減税の問題について質問させていただきたいと思います。  給与所得控除最低控除額を二万円引き上げるということでございましたが、これは内閣提出の法律案に続いて上乗せして二万円引き上げるということでございます。これが成立いたしますと、具体的にどれくらいの減税額になるかということをちょっと確かめさしていただきたいと思うわけでございます。配偶者控除の適用を受けられるパート主婦給与収入限度は九十万円以下となるわけでございますが、例えば妻のパート収入が九十万、夫の給与収入二百十万、世帯の給与収入が三百万ということでございます。またもう一例、妻のパート収入九十万、夫の給与収入四百十万、世帯収入が五百万という例ではどれぐらいの減税になるか、お伺いしたいと思います。
  76. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今御指摘になりました御設例、モデルで計算したもので御報告申し上げます。  まず、両方の場合とも試算の年収が九十万ということでございますが、御主人が二百十万で世帯で三百万の収入という世帯で申し上げますと、現在では、御主人と奥さんの所得税を合計して、年額一万九千七百四十円の所得税負担しておられるわけでございます。今回の御処置によりまして、この世帯類型では所得税負担額はゼロになります。それから、夫婦二人だけの世帯でございますと、現在の所得税負担額が九万三千九百六十円。今回の御処置によりまして、世帯合計の所得税が五万二千二百九十円ということでございますので、およそ四万二千円の減税になります。四割強の軽減になります。  それから、五百万円の類型の世帯で、まず夫婦子二人でございますが、現在の所得税負担が十八万一千七百二十円。今回の御処置によりまして、これが十三万三千八百六十円ということでございますので、およそ四万八千円の減税になります。減税割合が二六%強。夫婦二人だけの世帯でございますと、現在の世帯の所得税負担額が二十七万九千百六十円。今回の御処置によりまして二十二万五千八百二十円でございますので、およそ五万三千円強、軽減割合にいたしまして二割弱の減税になります。
  77. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 ありがとうございました。  今お聞きしますと、相当減税の効果があると思うわけでございます。また、これはそれだけの必然的な税収の減ということを伴うのであろうと思うわけでございます。もとより政府におかれましては、この四月に所得税について本格的な減税をされたわけでございます。この本格的な減税は、給与所得控除、人的控除また税率、所得税制の体系の見直し等広範なことから考えられて、相当思い切った減税所得税見直しをやられたわけでございます。基礎控除配偶者控除等も二十九万から三十三万。そして給与所得控除も、今度のものも入れますと最低五十七万円になるわけでございまして、夫婦子二人で考えますと、基礎控除で三十二万、配偶者控除で三十三万、扶養控除で六十六万。これを足すと百三十二万になります。これに社会保険料控除十四万七千円を足しますと、百四十六万七千円。これにさらに給与所得控除、最低でも五十七万が引かれる。大変な大盤振る舞いと言うのは表現が悪いかもしれませんが、相当思い切った減税措置に全体としてなるわけでございます。そして、この前段の内閣提出によります減税法案をいろいろな角度から最善の案としてお出しになっていたところに、また降ってわいたように給与所得控除の最低額を二万円持ち上げるという話が出たのですから、恐らく大蔵省はびっくりしたのではないかと思うわけであります。  これはもとより与野党書記長・幹事長会談で話が出たものでございまして、三月十三日にその与野党書記長・幹事長会談の結果を国会対策委員長会談でまとめまして、文書も残っているわけでございますが、減税については、給与所得控除制度の基本的枠組みを害さない範囲において、その引き上げ方について協議し、その結果を議員立法により措置する、引き上げ幅は二万円である、議員立法は今国会中を含め五十九年内に成立を期すること、こういうふうになっていたわけでございます。それが、その後のいろいろな国会対策上と申しますか、話し合いによりまして、これを今国会中に大蔵委員会処理をしようという約束が三月二十一日になされたわけでございます。  こういう経緯から見ますと、今度の二万円の上乗せは、パートの方の税負担が少なくなるということは大変結構なことではございますが、税体系とか税法、また税の当局から考えますと、まさに青天のへきれきであり、びっくりされたことであると思います。そういうことを考え合わせて、各党の幹部の方も、大変頭のいい方がそろっていらっしゃいますから、給与所得控除制度の基本的枠組みを害さない範囲においてということをわざわざ付して国対委員長会談でも約束をされたのだと思うわけでございます。このような現状で二万円上乗せされたものでございますから、これはまさに異例、特例の措置であると思うわけでございます。きょう大蔵委員会理事会でこれを税法本体に入れることを頼もうというような話し合いもございましたので、私は大蔵委員会理事という立場を離れて申し上げさせていただきたいと思うわけでございます。こうした話し合いを踏まえて租税特別措置法で処置をされたわけでございますが、こういうことを所得税法本法に入れるということも、大変なことだと思うわけでございます。国の基幹的税金である、また広く国民生活に直結する所得税についてこのような措置がまた重ねられるようなことがあったら、これは大変なことではないかと思うわけでございます。そういう問題について今後どのように対処されるか、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 パート問題につきましては、今お話がございましたように、幹事長・書記長会談で基本的枠組みを害さない範囲で、こういうことを仰せられたわけでございますが、なかんずく本歳入委員会皆さん方はまさに税制の専門家の方ばかりでございますので、種々なる角度から御検討なすって本日衆議院の本会議を議了した、こういう経過をたどるわけであります。  パート問題につきましては、国会審議でもいわゆる世帯の手取り額の逆転の問題あるいは内職者とのバランスの問題、いろいろの観点から本委員会においても御議論をいただいたところでございます。本来この問題は、税制面だけで部分的に、応急的に対処するには余りにも大きい論点を含んでおる。したがって、労働法制を含めて幅広い角度から基本的な検討が加えられるべき問題である、お互い議論の中である種のそういう事実認識をしながらも、お互いの衆知を絞ってこられたところでございます。予算審議の過程を経て、とりあえずは給与所得控除最低控除額を二万円引き上げることで合意された、この経緯につきましては私どもも承知しております。したがって、今回の措置については、そういうところから、内閣意見は事前に閣議の了解をとらなければならぬ課題でございますので、その表現等についても、先例等を調べまして、諸般の事情にかんがみ、やむを得ないものと考える。そういう内閣意見を昨日の当委員会でも申し述べたところでございます。  今後のパート問題の取り扱いにつきましては、以上申し上げましたように、パートをめぐりますところの基本的な問題について今後検討を進める必要があろうと私も思っております。各種の人的控除あるいは給与所得控除さらには課税単位の問題など、所得税制の基本的な枠組みのあり方との関連検討する必要があるということは、濃淡の別はございましょうが、問答の中でお互い事実認識をしておるところでございますので、今後は慎重に検討を引き続いて行っていかなければならぬ課題であろうというふうに素直に受けとめるべきではなかろうかと私は考えておるところでございます。
  79. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 ありがとうございました。  私どもも税体系だとか税制あり方ということと違った方面からのパワーといいますか、ということで税のバランスが崩れないようにしていくということは、私ども自身がこれからよく考えて肝に銘じていかなければいけないことではないかというふうに感じているわけでございます。  また今度のパート減税の実施に当たりましても、これはいろいろな問題があるわけでありますが、例えば妻のパート収入が九十万円をちょっとでも超したらいきなりオール・オア・ナッシングで、いわゆる控除は受けられない。そうすると、こうした段階給与収入に対して税のいわゆる逆転現象が起こっていくということもございます。また内職者とのアンバランス。実は先ほどもお話が出たのかもしれませんが、いわゆる事業所得とみなされるようなものについては今回の恩典は全く行き渡らない。また今度のことがパートパートと言われておりますが、結果的には、給与所得控除最低限の引き上げということで行われたために、減税は悪いことだとは言いませんが、パート以外の人にも全体にそれが行き渡っているという大変ないろいろな問題を含んでいると思うわけでございます。今後この内職者とのアンバランスだとかそういったいろいろな問題について、時間がございませんので今一々御提起は申し上げませんが、御所見がございましたら大蔵省のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  80. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今問題の御提起がございました逆転現象とかあるいは内職者とのバランスの問題についての基本的な考え方については、先ほど大臣答弁で触れられたとおりでございます。  税制調査会中期答申をごらんいただきますと、この逆転問題につきましても税調内部でいろいろな議論が行われた結果、結局基本的な枠組みといたしましては、現在の配偶者控除の適用限度と給与所得控除の組み合わせで対処していかざるを得ないという結論になって、五十九年の所得税改正問題を御提案申し上げたわけでございますけれども、この問題を基本的に解決するためには、先ほど大臣答弁にもございましたように、各種の人的控除あるいは課税単位にまで広がる基本的な枠組みの問題をもう一度見直さなければならないという問題になろうかと思います。  それから、内職者とのバランスの問題でございますが、これは税制の建前といたしまして、給与所得と事業所得の相違というところで、現行の制度のもとではそれぞれ別個のものとして割り切らざるを得ないわけでございますが、国税当局におきましても、内職者の方の課税当たりましては実態に即するように各種の工夫をいたしておりますけれども、制度論といたしましては、やはりパート主婦の問題も含めまして、将来の課題になっております所得税の基本的な見直しの中において内職者とのバランスの問題を検討さるべきであろうと考えるわけでございます。
  81. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 ぜひ不公平感のない、バランスのとれた税制になりますように御検討をお願い申し上げたいと思います。  また、財源措置についてお伺いいたしますが、この二万円の上乗せによりまして約百五億円の減収を伴うということでございますから、財政面からの検討が必要であると考えられますが、今回の財源措置はどういうふうになさるのか、お伺いしたいと思います。
  82. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回の御措置によりまして当然減収額が生ずるわけでございまして、財源面での検討をしなければならないわけでございます。ただ今年度はまだ、本格的な税収が始まりましたのが六月からでございますので、年度内に財源措置をどうこうするということを今にわかに考えておるわけではございませんけれども、少なくとも六十年度の税制改正検討をする段階においては、この財源問題は十分念頭に置いてやらせていただきたいと考えております。
  83. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 最後にお伺いしたいと思います。  税体系のあり方について今後検討していく御姿勢をひとつ教えていただきたいと思うわけでございますが、日本では世界の先進国の中で一番高い累進税率がとられていると思うわけでございます。今回の四月の税制改正で最高税率七五%を七〇%にお下げいただいたわけでありますが、それでもアメリカの最高税率五〇%、イギリス六〇%、西ドイツ五六%、フランス六五%よりかずっと高い。そして今度の一連の減税措置によりまして、今まで課税最低限はフランスが一番高くて日本がその次であったわけでございますが、これが今度は逆転して日本が課税最低限の一番高い国になりました。すなわち所得の低い方が先進国の中では一番優遇されている国になったわけでございます。アメリカでは課税最低限百七十六万円、イギリス百万円、西ドイツ百二十六万円、フランス二百十七万円、日本は今度は二百三十五万円までかからないということになってまいりました。そして税収全体に占める納税者の割合をちょっと見てみますと、一千万円を超える納税人口は、日本においては六・七%でございます。この六・七%の納税者が六七%の所得税を担っております。そして二百万以下の収入の方は、納税人口比率では三二・七%でございますが、わずか四・二%の税収を賄っているわけでございます。  私は、こういう現象は、やはり世界のいろいろな先進国に比べても累進税率が高過ぎるのではないか、こうした所得の低い方の優遇措置も必要でございますが、このような措置を進める場合にはやはり国民の活力をそがないように、こうした高額所得者とのバランス考えて進めなければいけないと思うわけでございます。日本はこうした先進国の中で特異な税制をとっているわけでございますが、今後の検討課題として、こういうことについて御所見がございましたら承りたいと思うわけでございます。
  84. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 五十九年の所得税改正をさせていただいたわけでございますが、その基礎になる考え方が昨年十一月の政府税調答申でも触れられておるわけでございます。これはただいま中村委員が御指摘になった方向とあるいは同じような方向の問題指摘かと思うわけでございますけれども、結論から申し上げまして、諸外国との比較等から見て、かつ所得水準の平準化の動向等にかんがみ、中堅所得階層の負担の緩和にも配意しつつ、全体としてなだらかな累進構造とする方向で所得税制を見直すべきであるということでございます。五十九年の所得税改正の基本的な考え方はそこにあるわけでございますが、今後我が国の基幹税たる所得税についてどういう方向に持っていかせていただくかということは、今後におきます所得水準の動向と各般の状況を見ながら検討することになるかと思いますけれども、昨年十一月の政府税調中期答申に示されました方向は、政府税調のこれから御審議いただく場合にも基礎になる考え方であろうと私どもは受け取っておるわけでございます。
  85. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 ありがとうございました。  日本において所得の低い方が大変税金で優遇されているということを御指摘申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  86. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 次回は、明十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会