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1984-05-09 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月九日(水曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩島  大君    田中 秀征君       谷  洋一君    中川 昭一君       東   力君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    宮下 創平君       村上 茂利君    山岡 謙蔵君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    坂井 弘一君       柴田  弘君    宮地 正介君       森田 景一君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房審         議官      橋本 貞夫君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      稲葉 威雄君         文部省管理局企         画調整課長   福田 昭昌君        郵政省電気通信        政策局監理課長 五十嵐三津雄君         参  考  人         (社団法人日本         証券業協会会         長)         (日興証券株式         会社取締役会         長)      渡邊 省吾君         参  考  人         (社団法人公社         債引受協会会         長)         (野村証券株式         会社締役社         長)      田淵 節也君         参  考  人         (東京証券取引         所理事会議長)         (大和証券株式         会社取締役会         長)      千野 宜時君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任       補欠選任   山中 貞則君   東   力君   与謝野 馨君   谷  洋一君   柴田  弘君   森田 景一君 同日  辞任       補欠選任   谷  洋一君   与謝野 馨君   東   力君   山中 貞則君   森田 景一君   柴田  弘君     ————————————— 五月八日  旧南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の  処遇改善に関する請願小里貞利紹介)(第  四〇五九号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願愛野興一郎紹介  )(第四一四三号)  同(岡田利春紹介)(第四一四四号)  同(齋藤邦吉紹介)(第四一四五号)  同(渡辺省一紹介)(第四一四六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  株券等保管及び振替に関する法律案内閣提  出第七一号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 瓦力

    ○瓦委員長 これより会議を開きます。  株券等保管及び振替に関する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として社団法人日本証券業協会会長渡邊省吾君、社団法人公社債引受協会会長田淵節也君、東京証券取引所理事会議長千野宜時君の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、御意見は、委員からの質疑お答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 時間が少し経過をいたしましたが、株券等保管及び振替に関する法律案について質疑を行いたいと思います。  私は、昭和三十五年の一月から大蔵委員会に参ったわけでありますが、たしか四月ごろだと思うのでありますけれども大蔵委員会皆さん証券取引所の視察に出かける機会がございました。証券取引所でいろいろなお話を聞いておりますときに、実はこの振替決済制度の問題が話題になりました。顧みると、二十四年たっておるわけでございます。  振替決済制度そのものは、私は大変合理的な処理だ、こう考えておりましたけれども商法関係その他いろいろな関係する分野が多かったものですから、大変長い間実は法案の作成に時間がかかったと思うのでありますけれども、ようやくここに来て法律案として当委員会に提案されたことは、私は今の二十四年の歴史的な経過から見ても、やや遅きに失したと思いますが、今回、この法律が提案されたことは大変結構である、こう思っておる一人であります。  そこで、きょうは法律案については、私の後で沢田委員から詳しくお尋ねをする予定になっておりますので、私はちょっとこの法律案の問題では諸外国、少なくともドイツなりフランスは、非常に古い歴史的な経過によってこの制度が行われておるのでありますが、我々は、日本では今度が初めてであります。そうしますと、一体日本でこの問題を処理するときには、我々は未知の対応をするわけでありますし、もちろん証券のあり方なりいろいろなことが、ドイツの場合には銀行証券業を兼ねておるという問題もありましょうし、各国において、それぞれその国における証券関係沿革なり構造なりに違いがありますから、ドイツフランスがやったこの問題についてのいろいろな、当初予想しなかったような問題が起きておるとか、そういうものを改めていったとかという試行錯誤の経緯がそのまま日本に当てはまるとは思わないのでありますけれども、少なくとも同じような資本主義の形態をとっておるこれらの国で、古くからやっております西ドイツフランスについて、どのような問題点がその過程の中にあり、どういうふうな対応がされたのかということを、ひとつ大蔵省事務当局の方からお答えをいただきたいと思います。  この振替決済制度というのは、私どもシコバンという略称で実は承知をしておったわけでありますが、このシコバンというのはまさにフランス制度略称でございますから、そういう意味では、この問題がこれらの国で多くの法律の運用やその他について参考になってきたことは間違いがないと思いますので、これらの国において、昔のことはともかくも、うまくスムーズに運営されておるのかどうか。トラブルが、細かいトラブルは、これは人間に属することだと思いますけれども制度としての問題点としてはどういうものがこれまであったのかをちょっとお尋ねをしたいと思います。
  4. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 主要の三カ国について申し上げますと、一番古いのはドイツでございますが、これは今から百年ほど前に事実上スタートしておりました。ドイツは、銀行証券業も兼ねておりますので、銀行間取引についてこういう種類制度がスタートしたわけでありますが、戦後一九三七年に制定されました有価証券寄託法というのに基づいて、現在では、フランクフルトカッセンフェラインという会社等銀行保管業務を行っているわけであります。そういった百年の経緯の中で特別の問題が生じたという話は聞いておりませんが、いずれにしてもその百年の間に、最初はごく小規模で始まったものがだんだん拡大をしていった。大きければ大きいほど制度効果が大きいということが、その百年の経緯の中であったように思います。  それからフランスでございますが、フランスは戦時中に設立されました保管振替機関、これも事実上スタートしたわけですが、これを一九四九年にシコバンという御指摘会社が引き継ぎまして、今も業務を行っております。これもシコバンができてから非常に拡大を見ております。  それからアメリカが一番新しいわけでありますが、ここも初めはニューヨークの取引所子会社が、取引所取引についてやっておったものを、その後一九七三年からDTCという会社が引き継ぎまして、全国的な規模で始めるようになっております。  これらの国の株式についての制度なり慣行、これは我が国と若干違いますので、補足的に御説明させていただきますと、ヨーロッパ大陸では無記名株式が主体でございます。したがって、日本の場合のように名義書きかえという行為が余り起こらないという特徴がございますが、それにしても、配当でありますとかいろいろなことがあるわけでございまして、そういった点で特に法律手当てをその面でしなくても、こういう業務ができる素地があったわけでして、したがって、百年とかそういう昔から行われているわけでございます。  アメリカの場合は、無額面株が中心ではございますが、一応記名式ということになっております。しかし、記名式ではありますが、実際の株主感覚としましては、日本のように会社所有者という感覚は非常に薄いわけでございまして、したがって、ノミニーという特殊な慣行がございます。このノミニーというのは、株券を一応証券会社なり何なりに寄託をいたしまして、その寄託を受けた者の名義発行会社登録をしておく、実際の配当金等はその証券会社を通じて実質株主に送られるというやり方が定着をしております。  それらの国を通じて我が国と非常に違いますのは、いわゆる株主総会における権利行使についての考え方がかなり違う。一種の債券に近い配当金付有価証券という感覚が非常に強いわけです。したがいまして、特段に商法とかそういった系列の法律手当てをすることなく業務ができた。我が国の場合は、そこのところの感覚が非常に違うものですから、配当受領権なり株主権行使についての手当てをしないとこの制度が始まらない。したがって、御指摘のように二十五年前から議論しながら、今日まで実現を見なかった。ただ、その間に、御承知と思いますけれども、東証の子会社である会社が部分的にはやっておりますが、それにしても、決算期になると名義を書きかえなければならないという障害があって、今日までこういう状態で来てしまったという実態がございます。いずれにしても、外国の場合、特に大きな障害があったというふうには聞いておりません。
  5. 堀昌雄

    堀委員 参考人においでいただいておりますが、本日は、参考人には非常に重要な他の問題を伺うのでありますけれども、この法案については、各参考人はどういうふうにお考えになっておりますかを、お一人ずつちょっとお答えをいただきたいと思います。
  6. 渡邊省吾

    渡邊参考人 お答え申し上げます。  この制度は、証券会社を初め、株券受け渡し事務を行っております証券取引所株券保管担保取引を行っております銀行、さらには株主発行会社、いずれにも非常に大きなメリットがあるというふうに私ども見ております。特に、我々証券会社にとりましても、現在の受け渡し決済では、券面を持ち込んだり、あるいは券面精査を、一々事故株のチェックなどをやりますし、それから株券を輸送しなければなりません。当然のことですけれども、その保管もいたしますし、名義書きかえの作業は手作業でやるといったようなことで、大変厄介な精査事務になります。  さらに保険をかけてもおりますし、時間と費用を費やしておりますが、この制度が実現いたしますと、これらの事務が効率化されまして、コスト面での節減効果も期待されますし、現業部門コンピューター化もさらに一層進展するということで、我々のサイドにも非常に大きなメリットがあるということでございますので、先生お話のように二十五年近く前からの悲願でございましたけれども、今日ようやくこういう形で御審議がいただけるということで、大いに期待しておる次第でございます。
  7. 田淵節也

    田淵参考人 私の考えも、ただいま渡邊協会長がおっしゃられたことと全く一緒でございます。毎日大量の株券を大勢の人間で勘定して、それでトラックに積んで取引所に持っていったり持って帰ったりということが、ほかの業務がどんどんコンピューターによりまして合理化されてきております状況下において、この株券保管振替問題に関して非常におくれておりますので、何とかこれを合理化するという法律でございますから、ぜひともこの法律は通していただきたい、そういうふうにお願いいたします。
  8. 千野宜時

    千野参考人 お答え申し上げます。  ただいまのお二人の、渡邊会長並びに田淵会長の御返事と同じでございますが、いささかつけ加えさせていただきます。  日本株式市場のボリュームは、ヨーロッパEC諸国十カ国の合計したものよりも大きくなっております。アメリカに比べますと三分の二、時価によりますけれども、三分の一ぐらいと、非常に大きくなっております。EC全体よりも証券売買量は大きくなっております。したがいまして、事務量も飛躍的に増大しておりまして、御賢察のとおり、二十数年前より逐年我々が当面しております事務量パンク寸前にまで来ておりまして、ぜひこれはアメリカ流の、あるいはフランス流の、あるいはドイツ流決済制度をさしていただくことによって、日本資本市場国際的な資本市場として各国からの負託にこたえられるという点で、どうしてもやっていただきたいものだと思って、ぜひお願いいたしたい、こう思っております。よろしくお願いいたします。
  9. 堀昌雄

    堀委員 大臣、お聞きのように、実は日本では振替決済制度は約二十五年間かかったけれどもできたわけですが、証券問題というのは、昭和三十九年に当時の田中大蔵大臣に私が、——いろいろとトラブルがありまして、登録制証券会社であったのですが、正会員である登録業者が、ともかくも顧客がよくわからないものですから、預かった株券信用取引抵当証券のようにして使っちゃって、次に証券会社へ行ったら一つもない。その方たちが私の部屋へおいでになって、私は実はアメリカで二十年仕事をして帰ってきました、年をとって最後は日本でと思って帰ってきた、アメリカ証券会社というのは非常に権威のあるもので、そんなことが起きるなどとは想像もしなくて実は証券を保護預かりでお願いをしておったところが、今度そこへ行ってみると私の株券一つもなくなっている、それが正会員である登録業者だと。  私はこれを聞いたときに、トラブル随分ありましたが、私がいろいろやっていたものですから私のところへ話が多かったのですが、これはどうしても日本証券業をまともにするためには免許制にする以外にはないと強く考えて、実は当委員会証券免許制の問題を取り上げました。当時証券部長というのは加治木さん、二代目証券局長でありますけれども、どうしても役人の皆さんは新しい変革にはやや消極的になりがちでありまして、大臣のそばで、大臣慎重にお願いしますと盛んにゼスチャーを込めてやっておられたのですが、田中大蔵大臣は、ただいま内閣委員会証券局設置法をお願いしておりますので、もし証券局設置法が通過をいたしましたら、証券局最初仕事として御提案の免許制に取りかかりますと。ここで四十年の証取法改正問題がスタートをした、こう考えておるわけであります。  当時の私の問題意識というのは、御承知のように証券問題が非常に複雑になってきておりまして、その後に証券恐慌が来たわけでありますから、業務の分離という問題に私は当時非常にウエートをかけておりまして、要するにブローカー業務、それからディーラー業務アンダーライターという業務は、ごちゃまぜでやっておるから非常に複雑な問題が起こるので、業務分野を明確にすべきだということを強く主張をして問題の処理をしたのでありますが、そのときに私は、どうしてもこの免許制の問題で重要な問題を考えなければならない、こう思ったわけです。  この問題をきょうは主要な課題としてちょっとお尋ねをいたしたいわけでありますが、大臣に伺いますけれども、今の日本経済というのは市場経済というシステムで行われておるわけでありまして、市場経済は公正な競争を求めておる、こう思いますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、国際的と国内的と言わず、市場経済のよって立つ基盤はまさに競争原理だと思って、私も認識は同じだと思っております。
  11. 堀昌雄

    堀委員 競争原理の点では、大臣と私は問題意識は同じだ。そうしますと、その競争原理というのは、少なくとも公正な条件競争するのでなければ、競争原理が正しく行われているということにはならない。ですから、今私は公正な競争という言葉を使ったわけです。競争原理はもちろん重要なんですが、その競争があくまで公正であるということがもう一つ重要だ、こう考えますが、大臣、いかがですか。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 競争というものは当然のこととして公正あるいは平等というのが土壌にあってしかるべき問題だと思います。
  13. 堀昌雄

    堀委員 今アメリカから資本市場開放問題というのが提起をされておるのでありますけれども、今大臣最初におっしゃったように、公正な競争というのは国内だけではなくて国際的にもそうだ、こうおっしゃっているのはまさにそのとおりでして、市場経済である限り、今各国から要請してきておる日本資本市場に対する公正な参入ということは、私たちも当然考えなければいかぬことである。要するにこれは、競争原理としてのイコールフッティングということが基本になければこの公正な競争原理というものは成り立たない、こういうふうに私は思うのです。  そこで、この間から当委員会アメリカとの関係の問題で幾つか論議をしてまいったのでありますけれども、その前提になるのは、大臣国内における公正な競争というものであって、国際はその役なんですね。国内の公正な競争条件等整備をした後で、どうぞ外国皆さんもこの公正な国内における競争に参加をしてくださいという門戸を開くのが今後の日本金融行政基本でなければならぬ、私はこう思いますけれども大蔵大臣、いかがですか。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 当然、国際的に公正な土俵の上に立って競争が行われる環境の前には、国内にそういう環境が整うことが必要である。私ども、最近の問題で感じますのは、私ども国内環境整備というものと整合性を持った、国際的、平等な競争原理の中に定着させなければいかぬ。が、時によって、国によっては国際競争のあらしの中へさらされて、そのことがむしろ刺激になって国内の公正、公平な競争原理環境がより整うじゃないかというような意見意見としてございますけれども、原則的にはやはり国内体制環境整備がまず第一義的なものであるという認識では等しくしておるつもりであります。
  15. 堀昌雄

    堀委員 そこで私は、今度は法律の問題になるのですけれども、要するに、今のイコールフッティングというような問題は、これは経済立法では欠かせない重要な課題だ、こういうふうに思います。大蔵大臣、もし仮に法律によって公正な競争が阻害されておるということが客観的に認識されるときには、大蔵大臣ならどう対応されますか。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 法律的には平等の原則は確立されておる、しかし長い歴史的な経過商慣行等の中で、それが実態として機能していないという状態は間々存在するではないか、私は最近そのような感を深くしております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 そこで、確かに今のシコバン法律の問題でも、日本には日本の特有の環境がありますから、それを調整をしながらやらなければならぬということは、私はそのとおりだと思うのですし、これから問題を取り上げる証券取引所の問題においても、日本における歴史的な沿革というものがありますから、それを直ちにきょうからどうするということになるかどうかは別の問題でありますけれども、少なくとも今日対外的に要求が来ておるものを我々は正しく受けとめて、日本が世界における金融市場として、さっき千野参考人お話では、株式取引ではEC全体に匹敵するという非常に大きな資本市場株式市場になってきておる、これからは、今度は債券の問題についても、この六月から銀行法改正に伴う新しいバンクディーリングという問題が導入をされてきますから、債券取引においても非常に大きな市場日本にはもたらされるということになると私は思うのです。そういう時期には、私は、過去における慣習なり沿革だけにこだわっていたのでは、この問題の処理は難しい、こう思うのですね。  私は、今から二十年前に証取法改正の問題を提起したときも、要するに証券会社が単に登録会社というような権威のないものではなくて、大蔵省からライセンスを受けて、さっきの、アメリカから帰った方が私に言われたように、アメリカでは銀行証券会社金融機関としての格差はありませんよ、国民はひとしく信頼している、日本では、銀行は信頼できるけれども証券会社は信頼に足らない機関ではないですか、これは先生、何とかしてもらわなければ困りますよというこの問題提起は、私は極めて重要に受けとめて、そうして証取法改正に当時の証券局長でありました松井さんといろいろ相談をしながら取り組んで、証取法改正ができたという歴史的な経過があるわけですね。  そこできょうは、少し具体的にこの問題についてひとつお答えをいただきたいと思うのです。  まず証取法第一条、目的、「この法律は、国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため、有価証券発行及び売買その他の取引を公正ならしめ、且つ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的とする。」今私が申し上げておる公正な取引ということを、この証券取引法第一条は規定をしておるわけであります。  そうして第二条の八項で、「この法律において証券業とは、銀行信託会社その他政令で定める金融機関以外の者が左に掲げる行為の一をなす営業をいう。」一番最初に一として「有価証券売買」こうあるわけでありますから、証券会社にとっての一番大きな業務というのは証券売買であるということを、第二条で規定をしておるわけであります。  そうして今度は第二十八条で営業免許、「証券業は、大蔵大臣免許を受けた株式会社でなければ、これを営むことができない。」「前項の免許は、次に掲げる四種類とする。」「一 有価証券売買を行なう業務免許」以下二、三、四と、要するに媒介その他、あるいは引き受けその他、こういう私が申し上げた証取法改正基本になる業務免許というものがこの項目に書かれていますが、その一番目に「有価証券売買を行なう業務免許」というのが掲げられているのでありますから、証券業にとって最も重要な業務というのは有価証券類売買であるということは間違いないと思うのですが、大蔵大臣、今までの問題についてあなたの御認識を承りたいと思います。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 今、堀さんが段階を踏んでの御議論、私もそのとおりだと認識しております。
  19. 堀昌雄

    堀委員 そこで第八十条、「証券取引所は、法人とする。」「証券取引所は、会員組織とする。」あとちょっと細かいことがありますが、こうなっております。これは当時の、今大臣お話しになった歴史的な沿革で、証券取引所会員制でありましたから、それをそのままここで法律として「証券取引所は、会員組織とする。」こうなったわけであります。  今度は第九十条、「証券取引所の会員は、証券会社及び政令で定める外国証券会社に限る。」こういうふうに会員の資格を規定をいたしまして、ここが実は問題なのであります。有価証券市場における売買取引をなすことができる者、第百七条、「有価証券市場における売買取引は、当該有価証券市場を開設する証券取引所の会員に限り、これをなすことができる。」これが実は一番大きなこの法律問題点なんであります。  当時、私はこの法律の作成に参加をした者の一人として、この正会員、非会員というシステムは、これは当時の慣行としてやむを得ませんし、それは単に日本だけではなくて、よその国もそうなっているのが多いのでありますからそうでありますが、免許制という問題に関して、ライセンスを渡して、同じライセンスを持ちながら最も主要な業務取引上差別があるということは、免許の性格にかかわるのです。そこで私は、当時の証券局皆さんに、甲種免許、乙種免許と二つの免許にしなければ法律的に問題が起こる。甲種免許は会員であるから、この免許の者は要するに今の取引所の手数料そのままでいい、乙種免許の者についてはさらに条件を緩めて、そのかわり取引関係については差別が設けられるということならば、免許という法律体系から見て問題はないけれども一つ免許でくくっておいて、そうして主要な業務取引である証券取引売買について差別があるということは、免許制という制度の問題として瑕疵があるというのが私の強い主張であったのでありますが、当時の証券局の幹部の皆さんは、まあここでひとつ勘弁してくれということでありました。  要するに、いろいろこういう問題を議論いたしますときには、今日的課題で議論してないんですね。これから十年、二十年の先を見て議論をしておるわけです。今のアメリカからの会員権の問題、これは当然あるべきことなんですが、後で東証の議長にもお伺いをいたしますけれども、この今の会員問題という制度がある限り、外国証券会社日本取引所のメンバーになることは不可能だ、私はこう思っているんですね。そうすると、私があの証取法改正の問題のときに第二ラウンドとして強く要求をしたことは、もしあなた方がこの免許一つだということにするのなら、取引所は公益法人取引所にして、免許業者はすべて対等、平等、この法律に言うように公正な取引に参加できるようにしなければならぬぞ、いいな、そうしますというのが実は当初の話であったわけです。まあ今、松井さんや加治木さんはあれですが、一遍またお越しいただいて、そのころの議論をしてもいいと思うのでありますが……。  そこで、第二ラウンドは必ず公益法人取引所に変えますよ、それを前提としてならあなた方の言う、今のこのままで行きたいというやつで了承しましょう。ところが、法律案が成立をしてから加治木さんが私のところへ来て、これだけの法律をつくって、またすぐというのじゃ、私どももとてももちませんので、しばらく時間をかしてください。そのかわり、東京証券取引所の理事長に森永さんに入っていただいて、先生のお考えのような、より公正な取引所の運営にしたい、公益理事もふやしますから、しばらく時間をかしてくださいというのが当時の証券局幹部の意向でありましたから、私も、非常に重要な問題を処理をしてもらったところではあるし、その後証券恐慌その他大変な問題がありましたので、実はそのままで今日まで来たわけであります。  そこで、ちょっと内閣法制局に伺いますが、私が今ここまで触れてきた問題で、要するに憲法十四条は法のもとの平等ということをうたっていますね。この法のもとにおける平等というのは、「国民はことこうなっているのですが、法人について法のもとに平等というのは、憲法上ではどうなりますか、ちょっとお答えください。
  20. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいま憲法第十四条第一項の、法のもとの平等の適用関係の問題についての御質問がございましたけれども、憲法第十四条第一項は「国民はこというふうに書いておるわけであります。これは国家と国民との関係、こういう形でこれが適用されている、こういうことでございます。その国民ということの中には、いわゆる自然人が含まれるのは当然ですけれども、それ以外にもいわゆる法人というようなものも、その趣旨として含まれておるというふうに理解して差し支えないというふうに考えております。
  21. 堀昌雄

    堀委員 今の憲法十四条から見ても、この法律規定の仕方は問題があるというふうに私は思います。  そこで銀行局長に伺いますが、銀行局所管の法律で、ライセンスを与えていますね、信用金庫、相互銀行それから銀行、長期信用銀行、皆ライセンスを与えていますが、ライセンスが与えられていて、そのライセンスに基づく最も主要な業務について、ライセンスの中で差別があるような法律が現行法でありますかね。
  22. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 同一の法律の中ではないと思います。
  23. 堀昌雄

    堀委員 先般、いろいろ問題がありましたけれども、私も協力をさせていただいて新しい銀行法ができました。私は、長く当委員会に置いていただいたおかげで、日本のそういう金融立法の中の主要な立法である証券取引法改正銀行法の改正にコミットをさせていただく機会を得てきたわけでありますが、今銀行局長の答弁のように、銀行関係においてはそういう例はないということなんであります。  証券局長、現在正会員と非会員は東京証券取引所に——全体で言うと大変ややこしくなりますから、東京証券取引所に限っては、正会員が幾ら、非会員が幾ら、取引上の差別というのは何%ぐらいになっているのかをお答えいただきたいと思います。
  24. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 ただいま東京証券取引所のメンバーである証券会社の数は八十三でございます。それで取引所の会員である会社と非会員である会社の手数料の差は、答えだけ申し上げますと、二七%を会員に実費という形で払うということで差が出るわけでございます。
  25. 堀昌雄

    堀委員 非会員の数は。
  26. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 関東に本社が存在する非会員ということでよろしゅうございますか。(堀委員「はい」と呼ぶ)全部出しておりますので、どちらがいいのかなと思って申し上げなかったのですが、関東に存在する会社で非会員業者は三十九社でございます。
  27. 堀昌雄

    堀委員 東京証券取引所で、こちらに本社があるものは三十九でありますが、要するに他の証券取引所のメンバーであっても、東京証券取引所のメンバーでなければ非会員なんですね。東京証券取引所に限っていえば非会員。そういう意味では、今の証券業免許を受けておる者は二百幾らですか、そのうちで一体何社が東京証券取引所については非会員になるかを、ちょっとあわせてお答えをいただきたい。
  28. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 二百三十九社証券会社が存在しますから、これから八十三を引きますと百五十六社になります。
  29. 堀昌雄

    堀委員 そこで、私はもう一つちょっと証券局にお伺いをしたいのですけれども、実はだんだんとコンピューターが発達をしてきて、主要な証券会社は全部オンラインで全国の店舗をつないでいるということですね。もちろん電話も即時通話ですから、何も大阪の投資家が大阪の取引所取引をしなくても、東京の取引所取引をすればいい。本来、証券市場における最も公正な価格形成というのは、最も大量の国会いによって売買が成立するときに生まれる、こう考えますが、証券局長、どうですか。
  30. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 もちろん一つ考え方としてそういう面はあると思います。ただ、これはやはり通信手段とかそういったものの発達の程度によって、何カ所かに分かれたら必ずしも公正でないということは、一概に断定的には言えないと思いますが、そういう側面があることは事実だと思います。
  31. 堀昌雄

    堀委員 大変どうも奥歯に挟まったような答弁ですが、ちょっと日本証券業協会長に伺いますけれども、現在、東京、大阪、名古屋までは取引所としての体をなしておる、私はこう思うのでありますが、それ以下の取引所は、率直に言って、一体独立して取引所としての機能があるのかどうか。大分前、十年ぐらい前からこの問題は何回も論議をしてきておるのでありますけれども、大変私は疑問を持っておるわけでございます。たしか取引所の職員も、現在三十名内外というようなことになっておるようでありまして、その主要な収入というのは、大手証券会社がこれらの取引所に払っている場外取引手数料というのですか、要するに、例えば福岡にある、おたくの場合でいうと日興証券福岡支店が、本来福岡の市場に出してくれればいいのだけれども、東京へつなぐときには、それに伴う手数料を福岡へ払う、こういうことになっているのじゃないかと思うのですが、渡邊参考人、いかがでございましょうか。
  32. 渡邊省吾

    渡邊参考人 お答えいたします。  そういう実情は御指摘のような面がございます。全国の取引所の、特に一部のところに、先生の御意見は存在理由があるのだろうかといったような意味の御質問かと思いますけれども、確かにシェアは随分開いておりまして、かつて、今から十数年前、四十五年ですけれども、東京が約七五%、大阪が二〇%、名古屋が三%、残りの五の取引所で一・四%でございましたけれども、これが昨年には、東京が七五から八五というふうに、小数点以下をちょっと省略して申し上げておりますが、大阪が二〇%が一一%に下がった。それから名古屋が先ほどのように三・一が二・八に下がった。残りの五取引所を合わせまして一・四でございましたものが〇・九という数字になっておりますので、御指摘のようなことは、この数字からもある程度裏づけられるということではないかと存じます。  ただ、これは取引所における株式売買のシェアでございまして、当然取引所基本的な機能ではございますけれども取引所が持っております機能はそれだけにとどまりませんで、その地域の経済一般の一つの中心になっているとか、あるいはそれぞれの財界とのつながりとか、あるいは地方企業の育成、資金調達の方だとか、そういった取引所として売買だけから判断しかねるという面もございまして、そういうファンクションを地方の取引所は持っておるという点もあわせて御検討いただくべきではなかろうか。特にそういう面から申しますと、それぞれの取引所は非常に長い歴史を持っておりまして、背景とのつながりがいろいろの地方事情にございます。その辺をあわせて御判断いただければ大変ありがたいと存じます。
  33. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣、そこで、私は今の五つの地方取引所をやめなさいということを言う気は実は毛頭ないのです。ただ、システムとして、要するに東京証券取引所という会員制のものがある。大阪証券取引所、名古屋、ずっと証券取引所がありますね、会員制の。私はこの際、日本の将来の資本市場を展望するならば、かつて、二十年前の証取法のときにペンディングにしてきた、要するにこの証取法免許制証取法として完結させるためにも、そのとき第二ラウンドとして予定をしていた、公益法人日本証券取引所というものを、この際法制的に処理をする段階に来た、こう判断をするわけであります。そうして、もちろん今の日本証券取引所の中に大阪フロア、あるいは名古屋フロア、福岡その他をフロアという形で包括をする。そうなりますと、さっきお話のありました二百三十九の免許を得ておる証券業者は、すべて実はこの公益法人取引所の中では、この法律が定めておるように、公正な取引に参加できる道が開かれ、証券取引法というものが瑕疵のない法律として一体化するというふうになる、私はこう考えているわけであります。そうして、今東京証券取引所は新たな建物の改築をやっておられ、同時に機械化の問題を進めておられるわけであります。  で、この問題の中で問題が残りますのは、それでは現在の会員というものの関係がどうなるかというところが今後の難しい一つの問題になるだろう、こう思うのであります。しかし、私は最初の前段で大臣と確認し合った、これから外国証券会社もどうぞ日本に来て、資格要件の整ったものは免許を出します、免許を出した外国証券会社日本証券会社と公平、対等、平等に新しい公益法人日本証券取引所売買に参加をしてもらいますということになれば、今後の日本は、アメリカなりECに対して、金融問題の処理の中で最もおくれておるこの資本市場問題に大きな転換が図られることになって、胸を張って、どうぞいらっしゃいと言えるようになるのではないだろうか。  きょうは、この振替決済制度が二十五年の歴史を持ってここに提案されたことを私は大変満足に思うのでありますが、同時に、日本法律の中で、今のこの証取法は瑕疵があると私は見ているわけです。この、今の法律のあれを見て、さらには今の法制局の答弁を聞いても、これはどうしてもどこかで改めておかなければいかぬ、こう考えておりましたけれども、別に私は外圧を利用する気は毛頭ありません。外圧があるなら、国内の方を先にきちんとしましょう、そうして、どうぞおいでくださいと言えるように、国内体制整備をすることは極めて重要だ、こう考えるわけです。  ですから、ひとつ大蔵大臣日本証券業の歴史的な転換点に当たる今日、日本における証券取引所というものをまず公益法人日本証券取引所にする、そして大阪も日本証券取引所大阪フロアである、あるいは名古屋フロアである。それはそのまま存置運営して問題はない。ただ問題は、その取引所の会員の皆さんに対する処遇の問題は、これはひとつ証券局事務方の皆さん証券業協会あるいは東証議長の皆さんがいろいろ御相談をして、問題のないような処理をお考えをいただく。私はその既得権を侵す気はないが、取引という問題についてだけは、公正な取引を守るということにおいては一歩も妥協ができないというのが、私の今日的問題意識なんです。まず大蔵大臣から、この私の考えについての御見解を承りたいと思います。
  34. 竹下登

    竹下国務大臣 外圧という表現をお使いになりましたが、外圧という言葉は別といたしまして、私が就任いたしましてからも、いわゆる外国証券会社から東京証券取引所の会員になりたいというような希望が出ております。そういうところから、私も少し古い——古いと言っても、堀さんが審議された法律ですから、別に明治時代のものでもございませんけれども、そういうところからやってみまして、端的な表現で申しますと、このコンピューター化した時代において、いわゆる情報伝達は極めて迅速化しておるし、したがって地域性というのはだんだん薄れていく。そうなれば、全国的な一体性というものから見れば、考え方としては一つの見識だというふうに私はそれを位置づけて、それから今度は、人間でございますから、自分のことで振り返ってみると、私の管轄といいますと広島でございますが、あそこらは結局無形文化財か何かとして保存するしかないのかな、こういうような冗談を部内の協議のときにも話したことがございます。  いずれにせよ、あの時代にまず大蔵省内において大きな組織の改廃、いわば証券局ができて、その次この法律がきちんとなった。しかし、あのきちんとなったときにも、あの当時の問答を読んでみますと、やはり取引所というのは、まさにこれこそ歴史的な経過を経て、会員さんの自主的ないろいろな創意工夫を重ねながらつくられたものである。そこにある種の既得権とかそういうものもあるわけでございましょう。そういうことになると、いまの考え方は傾聴に値する、まさに全国の一体性からしての考え方でございますが、好ましくそれが進展していくとすれば、それぞれの取引所の中で自主的にそういうコンセンサスが得られる、コンセンサスが形成されていくという方向で解決の方向に進むのが一番妥当じゃないかな、極めて現実的にそういう感想を率直に持ったわけでございます。  その他労務問題でございますとか、あるいは歴史的に見れば、地場産業を育成した一つの場所であったとは思いますだけに、無形文化財なんという表現は非礼なことでございますけれども、地域におる者としてはある種のノスタルジアみたいなのは感じながらも、原則的には私は傾聴すべき説として位置づけていくべきであるという事実認識をいたしております。
  35. 堀昌雄

    堀委員 誤解がないように申し上げておきますけれども、私は今の八つの取引所のどこかをやめましょうという話は全然していないのです。というのは、私は神戸の取引所問題というのにかかわりを持ちまして、あんなにごたごたすると思っていなかったのですが、実は大変ごたごたして、結局取引所問題というのは、物の考え方よりも労務問題に非常に問題があるなということを認識しておりますから、それを変えようと思っていないのです。ただし、独立した取引所としての機能はもうない。それはさっき私が証券業協会長に伺ったように、要するに場外取引手数料ですか、そういうものが相当なウエートを持って何とかなっている。しかし、その取引所に上場しておる会社もあるわけですから、それはそのまま残しましょう。  ただ、今の私の発想は、そういう新しいシステムにすることによって、要するに免許業の証券会社はいずれも、どこのフロアを使おうと自由になる。ですから、現在、東京証券取引所から見れば非会員である人が、さっきのお話で全国に百五十六でありますか、あるわけですが、今度は公益法人日本証券取引所となれば、非会員とか会員というのはなくなりますよ。その証券業者がどのフロアを使うかは任意選択です。どうぞ、どこでもお使いください、こういうことになる。ただ、今東京に本店のある大手の証券会社が地方取引所を維持するために払っておるような、私から見ると効率的でない費用の負担というものはもうやめて、これから証券業というのもより競争が厳しくなるわけですから、そういう外国証券との競争にも耐えられるようにするためには、合理的な根拠のある費用の負担は当然としながらも、ある取引所を維持するために余分のコストを払うなどということは、今日の時代で許されるべきことではない。  そうすると、私が問題提起しておるのは、システムを変えましょう。行政改革という問題について、私は何回も当委員会で言ってきましたけれども、システムを変えることによって新しい条件が生まれて、それがより効率的にその関係の部分で働いてくるというのが行政改革の基本的な考え方であるべきだ。私はこう思っておるわけですから、そういう意味で決して今のローカル取引所をやめようというのではなくて、フロアとしてそのまま存置しますが、全体を包括した公益法人取引所というものに取引関係は全部いたします。しかし、持ち分その他については当然現在の会員の皆さんの既得権がありますから、それらの問題の処理は、これから伺う証券業協会の自主的な検討によってそれに対応していただくようにお願いをしたい、こういうことでございます。  そこで、証券業協会会長初め三人の証券業界の幹部の方がおいででございますから、私の今の構想、要するに現在の証券取引法における免許制の問題について、資格要件がすべて同一である証券業者が、その資格要件が同一であるということについて一つのライセンスを得ていながら、主要な業務である証券取引について二三%差別があるということ、これは証取法をこのままにおけない。違憲訴訟を起こせば違憲訴訟が成り立つ、私はこう考えるぐらいのものだと思っておるのであります。成り立つかどうかはわからぬ。それは私が思っているだけだから。しかし、さっき法制局も言っているように、これは非常に重要な問題をはらんでおる。それを私が妥協したのは後の問題を考えていたからだ、こういうことがあったのです。  そういう意味で、渡邊参考人を初めとしてお三方から、きょう突然申し上げたのですから、感想だけを伺いたい。その感想、大臣もなかなか賢明でありますから、構想は傾聴に値する、しかし現実的対応は慎重にと、竹下さん、大蔵大臣三年目なものですから、大変答弁がうまくなっている。そつがない答弁なんですが、皆さんはお立場がございますから、どうぞお立場を含めて御答弁をいただければ結構です。しかし、これから外国証券会社もどうぞいらっしゃいと言えるシステムにすることについては、皆さんもそう御反対はないだろうし、同時に、今の取引所のそういう問題というのを本来的な、効率的なものにするためにも、基本的にはそんなに御反対はないだろう。要するに会員の皆さんに対する対応の問題、私もここが一番難しい問題だと思うのでありますが、ひとつ三人の参考人からお答えをいただきたいと思います。
  36. 渡邊省吾

    渡邊参考人 堀先生のただいまの日本証券取引所構想と申しましょうか、今後の証券取引所のあり方について、まことに示唆に富んだ御意見であるというふうに拝聴いたしました。ただ、先ほどもここで申し上げましたように、各地の取引所はそれぞれ長い歴史的な、伝統的な背景を持っております。また地元の企業の育成というようなことに存在意義もございますので、今後考えていく場合に、売買執行の面で今のお話のようにフロアを使わせるというような御指摘がございまして、一つのお考えだと思いますが、今申し上げましたような機能も総合的に勘案しながら、関係者で十分検討していくことが必要ではないかと思いますし、その際の貴重な御意見として十分頭に置いて議論を進めたいと存じます。
  37. 千野宜時

    千野参考人 千野でございます。  要約させていただきまして、会員、非会員、特に非会員の問題、地方の取引所の問題についての感想を述べろというふうに受け取らせていただいてよろしいでしょうか。——正直なところ、日ごろから考えております問題で、なおかつ結論が出ておらない問題でございます。  ただ、私どももロンドンでは非会員業者として扱われているわけでございます。したがいまして、ロンドンでは、ロンドンの株式売買いたしますときには、必ず非会員業者としてしかるべきコミッションをイギリスの業者に払っております。それはイギリスの業者がロンドン取引所を維持し、運営し、約定執行その他機械化についての費用を分担しているということに対する対価といたしまして、幾らか私はちょっと知りませんけれども、払っております。先生のおっしゃる、同じ免許を持っているのだから主たる売買業務については同じでいいではないかという御趣旨、極めて論旨明快に承りました。が、渡邊協会長お話し申し上げましたとおり、私どもがロンドンで払っておりますように、取引所のいろいろな費用、経費その他について会員が分担しておりますので、それに対応します実費もしくはプラスアルファのものを非会員の方からちょうだいしておる、こういう形でございまして、売買そのものにつきましては、時間的差とか、非会員からの注文だから劣後にするとかいうことは一切ございませんで、チャンスにつきましては非会員のお客であれ、正会員のお客であれ、全く同様でございます。  それから、各地の取引所問題につきましては、これまた非常に多くの機会に議論されておりますが、やはり取引所は一種の歴史的な役割を果たし、またその地域地域におきましてステータスシンボルであると思うのです。地域産業の資金調達の場でもありますし、また有価証券の報告書のディスクロージャー、閲覧などについても唯一の場所でございます。それから証券知識の普及、個人株主が低下しておりますけれども、そのような個人株主市場復帰に対して非常に有効なPRの場所でもあり得るわけでございます。また事実そのように活用しております。そのようなことで、地方取引所は単に売買量が小さくなったからウエートが小さくなったというのではなくて、本来的な意味での新しい時代に即応した役割も果たしておるということについて、どうぞ御理解も賜りたい、このように考えます。  どうぞよろしくお願いいたします。
  38. 田淵節也

    田淵参考人 田淵でございます。  ただいま堀先生日本証券取引所論というのを初めてお伺いしまして、なるほどそういう御意見というのはあるものだなと、大変興味を持ってお伺いしたと言うと失礼でございますが、勉強しなくちゃいかぬなと思いながらお伺いしたわけでございます。  先ほど来、堀先生からのお話もございましたが、何せ会員制度というのは明治百年来、免許制というのはおよそここ二十年ぐらいの問題でございますが、片方は明治百年来続いていて、会員権というものに、実にデリケートないろいろなものがいつの間にか付加されているといいますか、財産権的な要素も相当大きくなっている。それが、今海外から会員権をよこせというようなことの非常に障害になっているのでございますが、それと、確かに全国の東京以外とそれから大阪、名古屋というものがあって、またそれ以外、ここら辺はいつも非常に頭を痛めております。せっかくある取引所でございますから、何とか活性化して、国民経済のためにより役立つ方向ということはそれなりにいつも考えております。しかし、何か考えますと、とかく短絡的に取引所の統廃合につながっていくという議論になりがちでございますので、先生の御意見参考にいたしまして、今後さらに慎重に考えたい、そう思っております。
  39. 堀昌雄

    堀委員 私は実は、方向としては間違ってないと思うのですよ。この今の証券取引法というものの作成に参加をした者の一人として、方向としては間違ってない、どこかでやらなきゃいけない。あとは決断の問題なんですね、大臣。  私は問題を提起したときに、すぐやりなさいというようなことを言っているわけではないのですね。この前の委員会で例の国債特別会計論、昭和五十六年の二月に問題提起をして、何年かかったのですかね、三年かかっているわけですね。問題提起してから三年。これは大蔵省だけでやれる問題ですから至極簡単なんですが、今度のは、今三人の参考人がおっしゃったように既得権の問題があります。取引所がなくなるという発想ではないということ、フロアとして残すという意味は、要するに取引所の形態その他はちっとも変わらないのですから。ただ、要するに今の会員、非会員の関係取引関係を整理をするためには今のような構想だということでございますので、よその取引所をもうやめましょうという構想は私はありません。ただ、さっき申し上げたように、合理的でない費用の負担をやめて、その範囲でいける形でおやりになった方がいいんじゃないですかということですから。ローカル取引所をやめましょうという気持ちは毛頭ありませんから、それは証券局を含めて十分確認をしておいていただきたい。  ですから目的は、免許制という制度とのかかわりにおける——さっき千野参考人が、要するに手数料以外については機会均等ですとおっしゃったことはそのとおりだと思うのですが、商行為の中で手数料というのはやはり非常に大きな問題ですし、同時に、では新しい公益法人日本証券取引所のメンバーというのは費用を負担しなくていいか、そんなことないのです。要するに日本証券取引所が行いますいろいろな費用については、二百三十九の業者がおのおのの参加の度合いによってその費用を負担していただかなければ、公益法人日本証券取引所も成り立ちませんから、それは当然そうなんでして、ただ、ここのところで過去と未来とを断ち切って、新しい発想のもとにみんなで負担をしましょうという格好になるということでございます。そのみんなの負担というのは、より公正な負担ということで、今のローカルのものも全体として日本証券取引所のメンバーだとなって、その人たちは、今の取引所の利用度その他に応じて全体に配分した負担は当然持っていただくということになるのでありますから。  アメリカの場合には、きょう御出席になっておる三人の業界の代表はいずれも証券会社の幹部でおられるわけですが、たしか今の三社はアメリカのニューヨーク証券取引所のメンバーになっておられるんだと思うのですが、いかがでございましょうか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  40. 渡邊省吾

    渡邊参考人 御指摘のとおり、ニューヨークの会員になっております。
  41. 堀昌雄

    堀委員 結構です。三社ともですね。——きょうはそういう問題提起をいたしました。大蔵大臣証券局長を含め、特に私はきょう参考人に御出席をいただいたのは、この問題は役所だけでできる問題ではございませんで、要するに業界の皆さんのコンセンサスがなければ役所側も法律にすることはできません。しかし、外からの力というのはこれから何年も、五年も十年もたってという話にはならない、私はこう判断をいたしておりますから、そういう時間的なターゲットもお考えいただいて、そして東証が新しく生まれ変わり、機械化も完成するという、新しい時代にふさわしい日本証券取引所というものができて、それが日本証券業界の発展のために役立ては私は大変幸いだ、こう考えておりますので、この問題で今の問題を終わります。  そこで最後に、ちょっと時間が十分にないのでありますが、いよいよ六月から、銀行法の改正に基づくバンクディーリングが行われるようになります。  そこで、公社債引受協会長であります田淵さんにお伺いをいたしたいのでありますが、これまでは証券業だけでディーリングをやっていらした、今度は新たに銀行が、何社だったかちょっと覚えてないのですが、参加をしてディーリング業務が行われるようになる。これについて、証券業のディーリングはこっちの方であって、銀行のディーリングはこっちの方であってというのではどうもまずかろうな、やはりこれは全体としての視野の中で、そういうものが多少交差をしながらも、公正な競争原理によって行われるということが大変重要ではないかな、こういうふうに考えるわけでありますが、ちょっとこの問題について田淵参考人のお考えを承りたいと思います。
  42. 田淵節也

    田淵参考人 お答え申し上げます。  いわゆるバンクディーリングの導入そのものについて、今さら過去のことを申し上げるつもりはございません。この際はむしろバンクディーリング導入を評価して、ひとつ前向きに対処していく、こういう考え方で参ろうと存じております。今後銀行がこの分野に参入してくることによりまして、この分野においては競争が一段と熾烈化するわけでございますが、このことは、投資家サイドにとりましては、情報の重なり質なりスピードなり、また売買そのものの迅速性、正確性などが向上することを意味するはずでございますし、またそうならなければ、せっかく銀行を参入させた意味がないと考えております。  ただ、問題は、銀行が今後公共債のディーラーになりましても、やはり依然として巨大な投資家という地位も銀行は兼ねておりますので、果たして銀行証券との間で公正な競争が期待できるかという点でございます。特に価格形成はどうかということでございます。この点につきましては、さきに大蔵省から通達が出されて鳴りまして、これによりますと、銀行の商品勘定とそれから投資勘定との間に厳格な分離をする、また銀行業務とディーリングをセットしないというふうに、御当局の配慮も相当にうかがえるのでございますが、この点はまさに先ほどから堀先生のおっしゃられておる、常に競争は公正でなくてはいけないということでございますから、どうか厳正な運営をお願いいたしたい、そう思っております。  また、お願いということにもなりますが、公正な競争の前提となります競争条件整備といたしまして、例えば現先取引に係る取引税、これをぜひ撤廃していただきたいということをいつもお願い申し上げておりますが、証券会社債券の在庫ファイナンスというもの、これは現先取引と非常に大きなかかわりがございますので、その点に関して特段の御配慮をお願いしたい、そう思っております。  よろしくどうぞ。
  43. 堀昌雄

    堀委員 あわせて、この間から当委員会でいろいろと公社債関係の問題を含めて議論してきたわけですけれども、前回の銀行法改正のときの附帯決議として、私の考えとしては、将来的に短期市場はもう証券銀行も相乗りで、そこで今の公正な競争を行うことが望ましいのではないか。要するに、中長期になりますとこれはまた全然性格が変わりますから。  私は、銀行法改正の一番最初の発言として、昭和五十四年の十二月二十六日でありましたか、金融制度調査会の佐々木会長に来ていただいていろいろと議論をいたしました。そのときに、直ちにバンクディーリングを認めるという発想は問題がある、しかし短期のTBのようなものならば、実は九十日サイトならば、幾らディスカウントしても九十日持っていればもとへ戻るから、短期のものについて銀行がディーリングをやることについてはいささかも反対をしないという問題。  さらには、今田淵参考人がお触れになりましたけれどもアメリカは商品勘定と投資勘定を区別してきちんとやっておる。ですから、そういう問題が整理をされなければ、今の——あのとき六・一国債の問題で、暴落をして、原価法、低価法という問題すら処理をされるという時代であったわけでありますが、私は、銀行法改正問題の経緯を通じても、短期の市場証券銀行相乗りでいい、こう考えておるわけですね。ちょっと先に大臣からこの私の考えについてのお答えをいただいて、引き続き田淵参考人からお答えをいただきたいと思います。  では大蔵大臣、先にどうぞ。
  44. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる短期市場、TB、これにつきましてはかねてからの御議論を承っておりますが、今日私どもが蔵券、糧券、為券、こう言った方が適切かと思いますが、これについては、制度上今日まで成り立ってきたということは、やはりまさに歳出のための財源を調達する一時的金繰りであるという性格から、これを短期市場への商品として位置づけることについては、やはりなお部内で徹底的な議論をさせていただかなきゃならぬ課題だという事実認識であります。
  45. 堀昌雄

    堀委員 今の短期市場というのはTBだけの話じゃないのですよ。要するに、さっきちょっと出ておりますけれども、現先もあればCDもありますし、今度はバンクアクセプタンスも出てくるし、いろいろな問題がこれからどんどん出てきますので、そういう意味で、銀行証券が相乗りで公正な競争をする方が短期金融市場としてはいいのではないかということを承ったので、TB問題はそれの一部でありますから、ちょっとその証券銀行相乗り問題についての感想を大臣から伺いたい。
  46. 竹下登

    竹下国務大臣 垣根論争と申しましょうか、だんだん垣根が低くなっていくという、これは一つの時代の趨勢だと思っております。  今田淵参考人から機会をとらえてお話のありました現先の問題等についても、かねてからの問題ですが、これは私は笑いの話だと思ったのでございますけれども、最近の金融問題というのは、言ってみれば非常に英語が多い。CDに対する現先という問題はなかなか難しい問題だという言葉を私があるときに申しましたら、現先というスペルはどういうスペルでございますか、こういう質問がありまして、そういうお話が出ること自身も、問題点がだんだん理解される過程としてはいいことだと思ったわけでございますけれども、これには基本的なまた別の問題がございます。きょうはそれをお答えする考えももちろんございませんけれども。  だから、これはやはり、すべての問題を大蔵省はどっちかといえばソフトランディングとでも申しましょうか、そういう形で進めていきますだけに、慎重な検討課題としての認識にとどめさせていただきたいとお願いをいたします。
  47. 田淵節也

    田淵参考人 短期金融市場と申しますか、短期資金市場と申しますか、ただいまの御質問にお答え申し上げます。  短期資金市場整備改善ということは、これは一つは投資家に対する多様な資金運用、調達機会を提供するということ。二つ目は、大量国債、特に借換債の円滑な発行、消化。三つ目は、金融政策の有効性の確保。四つ目は、現在の円の国際化などの諸点に照らしても、これは早急に取り組まなければならない非常に重要な課題だと思っております。特に、我が国の短期資金市場は、アメリカに比べてその規模はちょうど十分の一、二十数兆対二百数十兆、こうなっておりまして、甚だ貧弱であります。中核になっておりますTB、今お話があったTBを初めコマーシャルペーパー、それからBA、バンクアクセプタンス、そういうものが日本にございませんので、いわゆるイシスツルメントの不足ということの現状でございます。  そこで、具体的な整備拡充の方向についてでございますが、まず第一は、これは短期国債の発行だと思います。いわゆるTBじゃございません、短期国債の発行でございます。御高承のとおり、国債の本格的償還、借りかえをスムーズに行い、また同時に、短期の商品に対する内外投資家のニーズにかなうものとして、その導入が必要だと思っております。  それから第二は、円建てBA市場、バンクアクセプタンス市場の創設、それから証券会社がその円建てBA市場並びに現在の国内のCD市場ペディーラーとして参入するということだと思います。  我が国企業の貿易取引の円滑化を促進し、円の国際化を図るため、円建てBA市場の創設が検討されているというふうに仄聞いたしておりますけれども、その際、同市場において、より良質で安定した資金を確保するためには、アメリカの場合と同様に、内外に幅広い最終投資家を擁する証券会社をディーラーとして参入させることが不可欠かと思います。同様に、国内のCDマーケットにつきましても、深くて厚みのあるマーケットとするために、同じく証券会社の参入が必要な時期に来ておると判断いたしております。  第三は、先ほど申し上げました現先取引にかかわる有価証券取引税を撤廃していただきたい。現在、CDの残高七兆円ですが、現先の残は四兆円と伸び悩んでおりまして、現先取引の機能低下は、国債の円滑な流通、消化に支障を来しかねないという状況でございます。有取税のかからないCDとのバランスを図るという観点のみならず、国債管理政策の観点からも、ぜひ現先取引に係る有取税を撤廃されるように要望いたします。  第四は、最近日本銀行総裁が記者会見でもおっしゃっておられますが、日銀保有政府短期証券、これはTBでございますが、日銀保有のTBを通年売却していただきたい。本格的短期国債の導入を控えて、市場整備拡充のために常に市中に政府短期証券が存在するよう、日銀保有分の通年売却を希望いたしております。  最後は国内CP、コマーシャルペーパーの創設でございます。先ほど堀先生お話にもございましたが、五十六年五月の銀行法案に対する附帯決議にも、国内CPの前向き検討が盛り込まれておりますが、残念ながらいまだ実現いたしておりません。証券界といたしましては、企業の短期資金調達手段の多様化のために、国内CPの早期創設に真剣に取り組みたいと考えております。先生方の一層の御理解、御支援を賜りたくお願い申し上げます。
  48. 堀昌雄

    堀委員 もう一つ、最近の企業の社債の起債状態というのが、国内の起債よりも海外における起債が多くなってきておる。これは大臣、いろいろな問題が背景にあると思うんですけれども、ちょっと常識的に考えるとおかしいと思うんですね。なぜかというと、本来、金利の全体から見ると、国内の金利決してそんなに高くはないんですね。ところが、いろいろな制約があるものだから、企業側は外債ということになっていくわけですね。私は、外債はそれでいいと思うんですけれども、ここもやはり外債が発行できる条件国内条件との間に格差があるということがこういう形のシフトをもたらしておる、こう思うんですね。  ひとつ田淵参考人に、社債発行についての一種のハンディキャップといいますか、要するに、外債と国内債との違い、端的には有担保原則という問題が一番大きなウエートをなしているのじゃないか。考えてみると、社債というのは、過去の歴史があって多少やむを得ないとしても、転換社債というのは、転換すれば株式ですから、株式に担保が要るかなんということは、これはだれが考えてもおかしい話なんで、転換社債についてまで担保などというのは、どうも状況を正確に踏まえてないんじゃないかなという感じがするわけです。これらを含めて、国内の社債がより資金調達が可能になるために一体どういう方法があるのか、田淵参考人から伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  49. 田淵節也

    田淵参考人 今甚だ頭を痛めている問題を御指摘されたわけでございます。  日本の企業の債券発行というのがどんどん海外で行われておりまして、既に過半数が海外に行っております。特にユーロ円市場の自由化措置に伴いまして、また国内起債市場が一層空洞化するのじゃなかろうかと懸念いたしております。これは発行条件がよくないというような単純なことだけじゃなくて、国内起債市場において種々の制約があるということに起因していることが非常に大きいと思います。  まず、何といいましても有担原則というのがぐあいが悪いわけです。有担原則というのは日本だけと言ったら言い過ぎかもしれませんが、先進諸国では、これはむしろ無担保が原則でございます。おっしゃられるように、転換社債に担保を取るということは、だれにも理解ができません。したがって、日本の企業も、転換社債に一々担保を取られちゃかなわぬということで、海外で転換社債を発行するというようなことになっておるわけでございます。おっしゃられるように転換社債はエクイティーでございますから、株式に担保をつけるはずがないというようなごく単純な議論でも理解できようかと思います。したがいまして、この有担原則をぜひ緩和しなくちゃいかぬ。  それから年限あるいは種類、こういうものをどんどん多様化しなくちゃいかぬ、そう思っております。例えば分離型ワラント債などを導入していただきたい。さらには五年未満の中期債の発行というようなこともぜひやらなくちゃいけない、そういうふうに考えております。  証券界といたしましては、国内起債市場の活性化を図るべく、ただいま申し上げたようなことを一層努力をいたして実現していきたい、そういうふうに考えておりますので、よろしく御支援を賜りたいと思います。
  50. 堀昌雄

    堀委員 きょうは、振替決済制度とあわせて、今後の日本資本市場の公正な競争を確保するための新しい日本証券取引所問題の提起をさせていただきましたし、これからの公社債の問題を含め、今の社債の問題を含めた論議をさせていただきました。  参考人には、長時間にわたりまして御苦労さまでございました。  大蔵大臣、ひとつきょうのいろいろな論議を踏まえて、日本の将来のために大蔵大臣としての決断を要望いたしまして、私の質問を終わります。
  51. 瓦力

    ○瓦委員長 午後一時四十分より再開することとし、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十五分開議
  52. 瓦力

    ○瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沢田広君。
  53. 沢田広

    沢田委員 大臣、また関係参考人皆さん、御苦労さまであります。  最初に、この法案に関連して、今臨調行革が言われているわけでありますが、こういう機会にまず、なぜ公益法人をつくらなければならないのか、また理事長は大蔵大臣が任命するというような答申にもなっているようですが、そういうようなことになれば天下りをまたふやすということにもなるし、どう考えても時期的に適切な提案とは言いがたいのじゃなかろうか。我が党もこれには賛成することにはなっていますが、どうもその辺は、「良薬口に苦し」という意味で、そういう点を明らかにしていきながら進めていきたい、そういうつもりでそれぞれ関係者のお答えをいただきたい。公益法人をふやしていく筋道は商法改正の中ではできなかったのか。なぜ今日の段階で出すようになったのか。その点ひとつ先にお答えいただきたい。これは大臣から答えてもらわなくちゃ困ると思うのです。
  54. 竹下登

    竹下国務大臣 同じような質問が実は参議院でもございました。いわゆる公益法人の数を減らせというような主張の中に、新たに公益法人を設けるということは、いわばタイミングとしては必ずしも適切ではない、行革という観点のみからこれを見ました場合。しかし、考えてみますと、この法律のよって立つところ、これが実行された場合には、まさに我々としていわゆる事務の合理化、効率化というようなものであるだけに、それは行革の時代にまた極めて適合した問題ではないか、こういうような御議論もいたしたわけであります。  そうしてさらに今度は人事の問題にも触れられまして、もちろん今日、今素案があるわけじゃございませんが、今天下り云々という御発言もございましたが、中にはまた、第三者的な立場における人を得るためには、俗称天下りの方が適切ではないかというような議論も行われまして、私もその問題等につきましては、今後関係方面の意見を聞きながら決めていかなければならぬ課題だというふうに、素直にお答えをしてきたところでございます。
  55. 沢田広

    沢田委員 一つの合理化ならばこういう形によってもいいということで、例えば一歩退いてそれが妥当であるとするならば、一方で合理化をされた益、プラスになった面は何であるのか、その点ひとつお答えいただきたいと思います。
  56. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お答えいたします。  この制度が実施されますことによって生ずるプラスというのはいろいろあるわけでございますが、一つには、まず証券会社が現在株券の現物を保管し、それから取引が起こりますと、同一の証券会社内の場合は現物の移動は起こりませんけれども証券会社を異にする場合には現物は動いていくわけであります。これは取引所についても同様でございまして、現物は動いていく。そういうことは現在行われているわけでありますが、午前中にも御質問がありましてお答えしたのですが、諸外国ではこの点を、何らかの組織をつくることによって、現物の移動を伴わないで帳面のつけかえだけで行えるような仕組みをとっております。そうなりますと、まず第一に保管のために必要なスペース、施設、それからその移動に必要といたします労力が非常に減ってまいります。これが第一のプラスでございます。  それから二番目には、発行会社あるいは投資家にとりましても、そういった全体のコストが減ることによって、かかってくる経費が観念的には低減をしてまいります。これが二番目のプラスだと思います。  そのほか、数え上げればたくさんありますけれども、大きなメリットはそういうところではないかと思います。
  57. 沢田広

    沢田委員 ちなみに、でき上がりますセンターの大体の建設費、各社に分担さしてつくるんでしょうが、センターの建設経費及び通常の従業員数、そういう点、また年間の予算規模、概略でいいと思いますが、ひとつお答えいただきたいと思います。
  58. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 実は今回御提案をし、御審議をいただいております法律案は、そういう法人をつくることが可能になるような法的な基本条件整備を中身にしておりまして、具体的にどういう組織をつくっていくかという具体案まではまだ固まっておりません。したがいまして、今御質問がありましたような点につきましては、具体的な数字でお答えすることは不可能な現状でございますが、いずれにいたしましても今の状況は、保管についていえば、それぞれの証券会社あるいは銀行が、倉庫といいますか、あるいはかぎのかかる金庫といいますか、そういった部屋をつくって保管をしておるわけでございます。これが一カ所になるわけでございまして、それに伴って流通の合理化が同時に行われますので、大券が主体になります。今の千株券とか一万株券というものにかわりまして、もっと大きな単位の券が主体になりますので、量的には、今の証券会社銀行が持っている倉庫を合わせたものよりもかなり少ないスペースのもので済むようになるとは思いますが、具体的な数字はまだ持っておりません。
  59. 沢田広

    沢田委員 政府からは補助は出すのですか、出さないのですか。
  60. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 事業の性格が民間の企業あるいは若干公的な色彩はありますけれども取引所仕事、こういったものの効率化という事業の内容でございますので、これはもともと当事者の負担で行われるべき事業であると考えております。したがって、補助金その他国の支出を予定はしておりません。
  61. 沢田広

    沢田委員 今お話がありまして、御三方のどなたでも結構ですが、この法案ができるまでには少なくともそれぞれ相談をされて、どの程度に会員の人が負担をしなければならないか、どの程度のメリットをその中から見出すか、また極端に言えば、どのぐらいで償却をしていくのか、そういうことは当然考えて企画されるものだと思うのですね。あとは何ができるかわからないけれども、とりあえず法律つくったんだという答えは、それは中学生だってもっとまともなものを考えるだろうと思うので、ちょっとうなずけないのですね。あっても言えないのか。せめて、この法律を出すときにはこの程度を考えた、常識的にはそういうものは持っていたんじゃないのか。ただ法律つくるだけであって、あとは業界の方が勝手につくるんです、金も政府は出しませんし、民間の方でやるのです、だからおれたちは知らないんだ、そういう話で国民が了解すると思いますか、こういう法律をつくるのに。
  62. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 ちょっと長くなりますがお許しいただきまして、今の点、少しお答えしたいと思うのでございますけれども、実は午前中も堀先生から御指摘がありましたように、二十五年前からこの制度の必要性というのは言われてきたわけです。実際に東証の子会社で部分的にやってみたりしたことがあるわけでありますが、実際にやろうといたしますと、必ずぶち当たる壁が一つございました。それはどういうことかというと、これも申し上げましたように、商法の特例をつくらないとできないわけです。したがって、そこのところの手当てができませんと、具体的にどういうシステムで、どういうやり方をしていくかという検討の段階に入れないわけでございます。したがって、今回商法の特例、それからこれを取り扱いますための公益法人の設立ができるという二つの手当てを主体にして、法律の御審議をお願いしているわけでございます。
  63. 沢田広

    沢田委員 それにしてもね。  じゃ、順不同で申しわけありませんが、渡邊さんには実はこれは聞く予定じゃなかったのですが、渡邊さんはこういう法律ができることは事前に御承知だったんですか。
  64. 渡邊省吾

    渡邊参考人 御質問は、この法律ができることを事前に知っておったかという御質問でございますね。——証券界としましても、けさほども申し上げましたように、こういう制度の確立は、各国の例から見ましてもぜひ望ましいことであるという意味で、もう既に二十数年前から、また我が証券業協会では十年前から、業務委員会でこの問題をずっと検討しておりましたので、今日こういう法案の形で御審議をいただけるということは、けさも申しましたように、我々のまことに意を強くするところでございます。事前に知っておったかと言われますと、それ以上はちょっとお答えしにくいのですけれども、よろしゅうございますか。
  65. 沢田広

    沢田委員 知っているがごとく、正式には知らざるがごとくのようでありますが、しかし実際には知っていた。大体要望していたんだから知っていた、こういうことなんで、知っていたとすると、やはりその規模等についてはある程度、どういう内部的な面の充実を図るか、投資家に対してどういう保護を与えるか、あるいはどういう業務運営の能率を上げるか、それぞれ会費を納めてもらう会社にはどういうメリットがあるのか、そういう点はやはりきちっとせんければ、ここへもなかなか出にくかったんじゃないかという気がするんですね。ですから、当然そういうものができることによってそれぞれの会社証券会社証券会社なりの利益は、どの程度の会費を納めるか、出資金を出すかわからぬけれども、この程度が見合うものだというそろばん勘定はされて出てきているんじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点は全然白紙なんですか。それとも、頭の中に大体描いているものといいますか、この程度は考えていた、あるいはこの程度は覚悟していたというようなものはあるんですか。いかがですか。
  66. 渡邊省吾

    渡邊参考人 私、具体的な数字は今まで知らなかったものですから確かめました。あしからず。  当面どんなお金が必要かということになりますと、この振決機関の財政的基礎となる出資金でございますね。それからコンピューターを必要といたしますから、その導入の資金。それから維持運営等の資金というようなことでございまして、当初は、これも非常に具体的な内容と関連いたしますので、しかとした数字はありませんけれども、例えば十数億円といったようなスケールで考えられるようでございます。  当初はそういう費用がかかりまして、その償却あるいはその負担増といったようなことになるわけですが、その後は、市場のこの機能が発揮されますと、投資家のメリットあるいは発行会社メリット等がございますので、それによってそういった費用が、むしろ考えようによると償却されていく、回収されていくというふうに考えていいと思うのでございます。したがって、当初費用はある程度かかりますけれども、その後は大した費用にならないように運営されるべく努力しなければいかぬのだと思います。  しかし私どもも、具体的なその内容について詳細に見積もった話は聞いたことございません。まあしかし、民間といたしましては、そういったものについて無鉄砲に出ていったことはいまだかつてございませんので、必ず詳細な検討をし、財政収支計画を立てて検討の上、実行に移すということになると存じます。
  67. 沢田広

    沢田委員 結果的には、四日以内の名義の書きかえがあるし、証券を受け渡さなければならない、こういう商法上の規定の中から、その中の便宜を図るためにこの法律改正をされた、しかもそこにはセンターができて、そこに保管することによって本人に渡したものとみなす、こういうことの利便を考えるんだ、大ざっぱに言えばこういうことですね。だからそこのメリットはあった。  そこでその理由として、発行量と流通量、この二つをこの中では例示をされておるわけです。発行量については、歴年の発行量は確かに伸びてはおりますけれども、五万円券になった場合とそれから現在の五百円、五十円、こういうものとかを比較をいたしますと、五万円券に移行するのは時間がかかる。しかし、株券が五万円券、すなわち単位株券になることによって、総量は二十分の一程度に減ってくるのじゃないか、私の今の大ざっぱな、アバウトな計算なんですが。そうすると、今の流通量から二十分の一になったとすれば、果たしてそんなに大騒ぎをするほどの手数というものほかかるのであろうか、そっちを先にすべきではないかという気がするのです。だから五万円券に全部切りかえをしていけば、恐らく発行量は二十分の一程度に減るのじゃないか。いかがですか、その考え方について。
  68. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 先生御質問の趣旨は、恐らくその単位未満株の整理という新制度ができたことによって相当枚数が減るのではないか、それと大券に移行することによっても枚数が減るのではないかということかと思いますが、そうなりましても、個人の株主等を見ますと従来から千株券とか二千株券を持った株主はたくさんいるわけでございまして、今回の措置で初めて全部が千株券以上の株券に移行するわけではありません。したがいまして、新商法になってまだわずかな期間しかたっておりませんから、正確な動向というのは掌握しがたいわけですが、ごく最近の株式数とその発行枚数の伸び方の違いを見ますと、昭和五十年と五十八年と比べてみまして、株式数では六一%増加しております。これに対しまして株券の枚数は三一%の増加となります。商法改正はこの五十年の後でございますから、必ずしもこの趨勢をもってその全部を推しはかることはできませんけれども、おっしゃられたように、全部が単位株券になれば二十分の一になるということにはならないのではないかと思います。
  69. 沢田広

    沢田委員 二十分の一にこだわられても困るのでありますが、ただ、そういう五万円券が普及されてくることによって、少なくとも株券の数、これは年報は五十八年度版でありますが、二千三百七億の株、これの少なくとも二十分の一となるかどうかわかりませんが、二百万くらいの株券数、若干余計見ても三百万くらいの株券数に減ってくる。常識的に金額は同じかもしれませんけれども、その程度に株券数は減ってくるのじゃないか。そういうことを考えると、今大騒ぎしてこれをつくったとして、これは法務の方で現行商法をつくったときに経過規定はありますけれども、だんだん五万円券になっていくことによって、総量としては結果的には、端株という言葉がいいかどうかわかりませんが、そういうものが五万円券に統合されることによって量そのものは、金額は別として減ってくるのではないのか、そういう条件考えられないのか。それから、いつごろになったらそれが実現をするのか、その辺の見通しはどういうふうに判断されておるわけですか。
  70. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 端株の整理が進んで、それから市場における実際の取引の一単位当たりの量がだんだんふえていく、そういったことによって、従来よりもかなり大券の発行のウエートが高まっていくことは事実そのとおりだろうと思います。それによって株券の枚数がどの程度減るかというのは、なかなかにわかには予測しがたいわけでございますけれども、それにいたしましても、他方では会社の数そのものがふえてまいりますし、一つ会社当たりの資本金の額もふえてまいりますので、そういった増加要因も他方にあるわけでございます。それらの結果、今申し上げましたように、今度商法改正に非常に近い時点で五十六年と五十八年の数字を比べてみますと、株券発行枚数はほぼ横ばいでございます。ですから、そのことによって非常に極端に枚数が減ってくるということは、今までのところは少なくともなかった。  他方、本制度のねらいといたしますところは、株券の枚数が減れば解決するということではなくて、取引が非常に多量に行われますと、それは株券の一単位当たりの株式数が多くなっても、その取引に伴って株券の移動をしなければならないとか、あるいは名義書きかえのために持っていかなければならぬ、そういった点は残るわけでございまして、この点の解決は、やはり本制度のような仕組みを考えませんと、どうしても解決をしない問題であると考えております。
  71. 沢田広

    沢田委員 私は何も反対はしていないんだけれども、減ること自体は減るでしょうというんです。言いわけ言うのがおかしいと思うのです。五万円券が普及をされることによって総体の枚数は減るだろう、その事実は認められるでしょう。幾枚減るかは別問題として、減ることは事実上そうなるのじゃないですか。
  72. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 その要素だけとらえてみれば、明らかにそれは減少すると思います。
  73. 沢田広

    沢田委員 その次には需給量の問題。これは経済情勢の変動によって非常に変わっていく。今のままでいきますと、それぞれが若干ずつふえていくことは事実です。需要と供給は、売りと買いじゃありませんけれども、今のところは買いの方が多い。特に中期国債なんかの問題があって、それだけ需要が増しておる。しかし、あしたのことはまだわかりません。わかりませんけれども、そういう状況の中にあることは認めます。しかし、それとても、今申し上げたように、業界も今度はそれによって手数が省ける。数字でいえば、大体三百二十兆の全体の株の動きの中で、税金は二千七百億から二千八百億ですね。三百二十兆の中から今国民に還元されているものは二千八百億程度である。このように便利になり、企業も楽になり、一般投資家も楽になるとするならば、税制の上においても若干考慮して、法人税として上がってくる分はさておいて、取引税だけでは二千八百億くらいですから、それも幾らか上げてもらって国民に還元してもらう、そういうことにならないと国民的な法律とは言えないのじゃないか。だから、そのことによって税収は果たしてふえるのか、その点ちょっと教えていただきたいと思います。
  74. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 大変難しい御質問で、どうお答えしていいかちょっと戸惑うのですけれども、この制度を実行することによりまして、先ほど来証券会社だけが議論になっておりますけれども、このほかに大口としては銀行とか、それから発行会社もあるわけでございます。それから投資家も当然ございます。それらの人が全体としてはかなりの負担の軽減になると思いますが、これは一義的には、私どもはまず利用者である投資家に還元されるべきものではないかというふうに考えております。このことによって証券会社の利益が仮に増大をすれば、法人税という形で国の懐にも入ってくるわけですけれども、このことによって証券会社の利益が拡大するような、そういった収支を予定すべきではないのじゃないかというふうに考えておりまして、したがって結果としては投資家に還元されるということになると思います。
  75. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、株というものは、資本主義社会の中において全体的に見ますと、株主二千十六万人、法人五十五万。これは五十八年度の段階における人たちの数ですね。基本国民あっての資本主義でしょうから、また国民あってのそれぞれの会社であり、国民あってのそれぞれの企業でもあると思うのです。ですから、最終的には国民に還元されていくという道筋は、法律のどこかに流れていかなければいかぬのじゃないか。単なる便宜的な企業の合理化のための法律であるというものだけではないだろう。そのことによって乗って、国民の福祉に、あるいは国民の生活に及ぼしていくものがその法案の中ににじみ出ていなければならぬ。  細かいことは時間の関係で省略しますが、短絡的に申し上げて、法律とはそういうものだ。これは手段であるけれども、最後はあくまでも国民の福祉につながっていく。そういうつながりを明らかにするところに法律たるゆえんがあるのだろうと思っているのです。そういう意味において、単に合理化を図るだけです、それは投資家に還元されるだけです、一般の国民には何ら関係ないのです、こういう言い方といいますか、考え方というものについては、若干問題があるのじゃないかと私は思う。こうやって議論しているのも、結論は、国民が幾らかでもそれによって救われてくる、生活が楽になる、向上する、そういうものにつながらなければならぬのではないのか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  76. 竹下登

    竹下国務大臣 これはなかなか難しい問題でございます。投資家はもちろん国民でございますし、投資家保護あるいは投資家により便宜を与えるということも、国民に対する一つのサービスでありましょう。そして合理化、効率化されることによって各会社がより多くの利益が上がるとすれば、またこれは法人税とか有価証券取引税として還元されていく。そういう中で、総合してこれは投資家保護、投資家サービスに対する法律であっても、全体としてそれによって国民への還元分が減らされていく要素はない法律じゃないかという意味においては、やはり賛成を前提として御質問をいただいていることに対して、心から感謝を申し上げます。
  77. 沢田広

    沢田委員 だから、そのためには苦言も呈し、それだけの範囲にとどまらず、より広く国民にその幸せを分け与えるという言葉がいいかどうかわかりませんが、やはり広がっていけるような道を開くことを考えてほしいということを私は述べているわけであります。だから、間接的に法人税が上がってくるからいいだんべ、あるいはそれによって投資家が保護されれば、またそれが間接的に還元されるからいいだんべというのではなくて、やはり直接的にも国民のどこかにその恩典が届く、法律にはすべてそういう配慮が必要だ。これは要望だけにしておきます。これでまたお答えいただいても時間がなくなりますから。  それから、野村なら野村、山一なら山一に四十七兆円ぐらい保護預かりをお願いしている人たちがいるわけですね。それは、それぞれの企業の信用を尊重して預けているのだと私は思うのです。今度そういうセンターができたときに、その信用というものはだれが担保になるのであろうか。これは何とかセンターというのができて、そこに持っていくことになれば、今までは会社に対する信用として預けていたものが、いわゆる無性格なるところへ預けることになる。そのことによって、預ける側の信頼度というのは、私は少なくとも当初は相当低率と思いますね。ですから、加入割合はどの程度と考えておられるのか、ちょっとお答えいただきたいと思う。
  78. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お答えいたします。  今度の制度株券保管を帳簿の上で整理いたしますが、これは二段階に分かれております。まず証券会社の例を言いますと、証券会社の段階で顧客の口座がつくられます。今度は新しくできますセンターといいますか法人の段階では、証券会社ごとの口座がつくられます。したがって、証券会社とお客の関係でいえば、従来の保護預かりが今回の保管に形が変わるだけでございまして、証券会社とお客との間でいえば、従来と同じような信頼関係が保たれるのではないかと思います。  それから、二番目の御質問の、どの程度の人が利用するかという点、これも今回は特に任意参加を前提としておりますので、なかなか推測が難しいのですが、欧米の例でいいますと大体六割から九割ぐらいの方が利用しているというのが実態のようであります。
  79. 沢田広

    沢田委員 若干時間が過ぎましたので、ほかの問題からまた戻らしていただきます。  今の問題に一つだけあれしますが、このいろいろな統計書類から見ると、事故が起きているのが大体八十件から百件、百二、三十件。そういう事故をシステムとしてどう予防するか。これはきょう答えてもらわなくて結構です。第三セクターなんかができて持ち寄り世帯になってくれば、どうしても責任体制というものは甘くなる。そのことがまたコンピューターを使っての犯罪をよりふやすということにもなりかねない。この制度ができたらば、信頼が最大のセンターの使命だと私は思うのですよ。だから、もしセンターに信頼がなくなったら、この制度はもう本当に灰じんに帰してしまう、水泡に帰してしまう、そういうことになるだろうと思うのです。ですから、そういう意味においては情報公開の限界、それから情報公開との関連性、これもはっきりしてほしいと思うのです。  普通なら、株主はその会社株主名簿を閲覧することができる。これはそういう権利を保有するわけですね。ですから、そこに行けばそこの会社株主名簿は、そこの株主であれば提示を求めることは可能である。これは法律上そうなっているから、そのとおりと理解していいですね。首を縦に振っているから、そのとおりと解します。しかし、他のものについての情報公開は果たして可能なのかどうかということはどうですか。
  80. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 株主名簿の点につきましては首を縦に振りましたが、それは発行会社の方に、この部分については実質株主名簿という、従来とはまた違う株主名簿がつくられまして、これは従来の株主名簿と同じように株主の閲覧ができるということで、そこは手当てをされております。  そのほかに、センターの名簿のうち、お客さんの持っている株券に係る部分については写しをもらうことができるということで、見れるようにはなっております。ただ、それ以外の部分につきましては、これはほかのお客さんの取引の問題ですから、公開をするべきものではないというふうに法律は仕組んでございます。
  81. 沢田広

    沢田委員 法務省来ておりますから、一つだけ。  この写しは法律上の証拠物件となり得るのかどうか。いわゆる株主の保有の証拠物件となり得るのかどうか。それだけ簡単にお答えください。
  82. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 この写しにつきましては、今証券局長からお答えがございましたように、法律上の権利として参加者あるいは顧客が請求することができるわけでございます。それに対して、交付された株、その写しについてもし虚偽の記載がある、あるいは写しの交付を妨げる、拒むというようなことがございますと、百万円以下の科料に処するということにもなっておりますし、証拠力は担保されていると考えております。
  83. 沢田広

    沢田委員 まだこれはいいかげんなのもあるのですが、これだけ商法なり、割合いろいろ規則で縛られているわけですが、学校法人とかその他の公益法人は、その辺は極めて甘い。  ここで一つの例を出しますが、学校法人昭和大学、品川にあるのですが、何と一年間役員なしていろいろな仕事をしてきているという謄本になっておる。五十八年三月三十日にやめまして、その後はもう役員ゼロ。それから五十九年の四月二十日に改めて——また学校で役員の問題でいろいろごたごたしているらしいのですが、これは文部省に来てもらっているんですけれども、こういうことは、かえって利害に関係する企業の方は一生懸命になって整備をするし、一般の監視も行き届く。ところが、こういうところは監視も行き届かなければ、全く野放しの状態。この間の役員の執行した、判こを押したものは果たして有効かといえば、無効ですね。登記されてない、第三者への対抗要件を具備していないのですから、当然無効。しかも、こういうところへ、どういう理由によるのか知らぬが三百九十億も、これは資産の合計が三億八百二十八万円なんです、それに対してここの資産の総額が三百二十億になっているが、貸し付けは三百九十億になっております。学債が九十億、こういう貸し付けを文部省はやっておる。どういう根拠でこういうところへこういうものが出ていくのか。株とは関係ないようだけれども、極めてこれは安易だと思うんだね。  今の議論を聞いていて、文部省、少し何か気持ちの上で、気持ちが悪くなったんじゃないかと思うくらいなのですが、ちょっとお答えいただけませんか。どういう根拠で三百九十億という金の貸し付けが行われたのか、役員も全然いないということを知ってたのですか、知らないのですか。
  84. 福田昭昌

    ○福田説明員 まず理事の件でございます。  昭和大学では、理事の任期が昨年の三月末で切れたわけでございますが、後任者の選任が円滑に行われずに、任期切れのままの状態が続いておったわけでございます。これは、昭和大学では理事のうち、卒業生の中から選任する者があるわけでございます。その者につきましては、選任手続として、まず同窓会が候補者を選び、これを大学側に提出することになっておるわけでございますが、同窓会内におきまして候補者選出が円滑に行われないというようなことで、大学に候補者の推薦がなされなかった。こういうことで、大学では理事の後任者選任をやむなく延期していたということであると承知しております。  文部省としましては、理事の任期が切れたままにあるということは、おっしゃるとおり遺憾なことでございますので、同大学に対しまして早急に後任の人選をするようにということを指導したわけでございますが、同大学におきましては、同窓会からの推薦者があるまでの間、当面の措置として前理事をもう一度再任をするというようなことで、本年三月二十七日にそのまま選任をいたしまして現在に至っているというふうに承知をいたしております。
  85. 沢田広

    沢田委員 承知しているとかしてないとかいうことじゃない。こういうことが公の席で認められるかということなんです。しかも、その間、ない時期に四十億もの金が出ていっているでしょう。これをごらんになってください。そういうことが許されるかどうかということを私は言っているのです。
  86. 福田昭昌

    ○福田説明員 その間、理事の任期が切れたわけでございますが、役員が任期満了の後につきましては、後任者が選任されるまでの間はその理事が職務を行うということが寄附行為の上で規定をされておりまして、そういうことで職務は理事が行っておった、こういうことでございます。基本的には、もちろんそういうことは遺憾なことでございますので、先ほど申し上げましたような指導をしてきたわけでございます。  なお、先ほど御質問ございましたこの学校の借入金でございますが、五十七年度決算によりますと三百三十五億ございます。このうち学債が八十九億余り、それから建物等を建てるための長期、短期借り入れ、これが二百四十五億ほどございます。先ほど先生がおっしゃいました私学振興財団からの融資、貸付金、これは五十七年度末の残高で二十八億九千万ということになっております。
  87. 沢田広

    沢田委員 それ以外はどこですか。
  88. 福田昭昌

    ○福田説明員 市中銀行等だろうと思います。
  89. 沢田広

    沢田委員 いずれにしても、中身として不明朗といいますか、それからその間、一年間残任期間があるにせよ、登記上はゼロなのですよ。いいですか、その点、間違わないでくださいよ。これは五十八年三月三十日付で役員は全部辞任してしまって、その次の就任は五十九年四月二十日。その間は役員ゼロ。幾ら残任期間といったって、これは登記上からはゼロなんですよ。そうでしょう。その点はあなたのおっしゃっていることは間違っていますから、これは登記の間違いなのかどうかわかりませんが、現実的にはそういうことになっているのだ。  これは今の問題とは関連ないようだけれども、文部省のやっている行政というのは少しどうも、この中の役員なんかも文部省の天下りが行っているようだが、そういうところに結果的にはどんどん私学振興資金が流れていってしまうということにもなっているから、こんな借金が、金融機関も含めて相当どうにもならないような状況になっておる。こういうことなのですが、この間、登記上役員のいなかった期間に執行した措置はどうするのですか。ただ、慣行上としては許される、それは私も認めますよ。登記上ない場合の執行業務の効力について伺いたい。
  90. 福田昭昌

    ○福田説明員 適当か不適当かという意味で申し上げますと、もちろん遺憾なことでございますけれども理事の職務として、任期切れの後、後任が選ばれるまでの間その職務を行うという規定に基づいて職務が行われたわけでございますので、理事の行った職務自体は有効であるというふうに思っております。
  91. 沢田広

    沢田委員 だからそのことは、慣行上としてあれだけれども、登記上されてないから、法律上第三者への対抗要件を具備していない、こういうことを言っているわけで、要すれば、だらしがないからもう少しえりを正してきちんとやりなさい、こういうことなので、言いわけを聞いているわけじゃない。事実は事実なんだからね。それはそうでしょう。——そういうことで肯定されておりますから、この問題はやめます。  ただ、私が今言っているのは、株の問題と関連をしてだけれども、そういう何もないところの方がより若干ずっこけている点が起きておるということを私は指摘をしておいたわけです。  続いて罰則について、これは大蔵省ですか。このセンターが行われていく、犯罪が百件くらい起こっておる今まで例年の慣例からいったら、この法律に定める罰則というものは極めて甘いのじゃないか、甘過ぎるのじゃないか。もう少し信用を得ていくまでの間厳しく、虚偽の報告その他で十万円だなどというような程度の、しかも最後の方は過料ですね。罰金。じゃない、過料。そういう程度で済ませていくべき筋合いのものではないのじゃないか、やはりもう少し厳しくあっていいのではないか。  参考人の方、私の時間はもうあと十五分しかありませんが、次の方の質問に入りますから、その間どうぞ休憩されて結構です。差し支えなければ、こんな質問でも聞いていていただければ、それでも結構です。  答えてください。
  92. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘になっておられます百件という事故のかなりの部分はいわゆる証券事故でございまして、この法案が意図しております制度と直接に関係をしてこないようなたぐいのものも入っているかと思いますが、中には関連のあるものもあろうかと思います。そういったものに対する過料なり罰則の規定が軽過ぎないかという御指摘でございますが、一応法律的にいろいろ検討しました段階で、他の法律とのバランス等々を考慮いたしまして現在の案にしておりますので、そういった意味で、決して軽過ぎるあるいは重過ぎるということはないのではないかというふうに考えております。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
  93. 沢田広

    沢田委員 罰が重くなるばかりがすべてではないと思うのですけれども、やはりえてしてこういう機械類の事故——事故という名称がいいかどうかわかりませんけれども、犯罪を起こす場合に、今までいろいろ行われているコンピューターを使っての犯罪というものは激増しておることは事実ですね。一般の素人にはなかなかわからない。チェック機能が、言うならば不十分である。そういう意味においては、やはりこれは、法務省来ておりますけれども考え方を改めていく必要がある。要すれば、一般の素人にはだんだんチェックする場所というか、チェック機能がない。また、会社皆さん来ておりますが、恐らくそれぞれ皆さん方も——皆さん関係ないことを言っているんですよ、チェックするということはなかなかできない。後で大騒ぎして、とんでもないことがあった、こういうことになるのが通常です。これからもこういうふうに機械化が進んでいけば、私はやはりそういうところで詰めていかないと、なかなかチェックがしていけないんじゃないか、こういうふうに思うんです。  これは法務省どうですか。いろいろの法令の関係はあるだろうけれども、こういうようなところから改めていくという段取りが必要なんじゃないのか、こういうふうに思います。これは要望ですから、ちょっと感想だけ言っておいてください、今直せるなんて言えっこないということはわかっているから。
  94. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 御指摘のように、機構が複雑になるにつれて、一般人がこれをチェックするのが非常に難しくなるということでございます。この機構の場合には、そのために、無過失による補てん義務という二十五条の規定を置いておりまして、これによって、もし事故がございましても、投資家には損害をかけないという仕組みになっております。そういう補てん義務が負わされている結果として、それを担うものとしての保管振替機関あるいは連帯責任を負います証券会社等の参加者は、やはり制度をきちんと守るように行動するであろうというふうに考えているわけでございます。  それとあわせて、罰則の点の御指摘でございますけれども、これは制度上の横並びの議論がいろいろございまして、先生御案内のようになかなか一朝一夕に改まるというわけにはまいらないわけでございますが、御趣旨を体しまして、今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  95. 沢田広

    沢田委員 証券の方、これは非公開の株式、例えば大きいのではサントリーなどもそうですが、非公開株についての取り扱いというものが、やはりこれからの——恐らく全部の中で隠れている方が多い。法人でも百八十万の中で、税金を納めているのは八十万ぐらいですからね。そのぐらいに法人の数はあるけれども、非公開株というものがある。  この前のアイデンでしたか、第三者割り当て制度の見直しもしなければならぬだろう、こういうふうに思うんですが、非公開株については、今後何らかの取り扱いを検討すべきじゃないか。これはやはり企業の市場競争の原理というものと、あるいは活性化ということも含めて、いつまでも温かく自分だけで、同族だけで温めているんじゃなくて、ある程度社会の監視、あるいは社会の協力、そして社会の恩恵、そういうものをお互いに確立をしていく、そういう方へ踏み出していくべきではないのかというふうに思います。その点はどういう方法があるかの手段は別ですが、考え方としてそういう方向があるのかどうか、その点だけお答えいただきたいと思います。
  96. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 必ずしも完全なお答えができるかどうかわかりませんが、前回、第三者割り当て増資で御質問をいただきました。そのときにも若干補足してお話をしたわけでございますけれども、非公開会社の場合に、建前からいいますと、私ども仕事は、公開の市場を適正に運営するという建前でやっておりますので、一応外にあるわけですが、ただ、非公開会社の中にも、例えば社債を発行して資金を調達しますとかそういう行為がありますと、これは有価証券報告書を以後継続して出すことになる。そういったことから、副次的に企業内容の開示が行われるという仕組みが現在でもあるわけでございます。一切そういうことがない、株式も公開してないし、資金調達もオープンな形ではしない、そういうものについての企業内容の開示の問題については、これは証取法といいますよりは、むしろ商法規定しております一般の事業会社について、どの程度企業の内容をオープンにさせるかという問題であろうかと思います。  この点については、私が考え方を申し上げるのはやや職務権限の外に出ますので、法務省の方からお答えいただく方があるいは適切なのかなというふうに思いますが、私どもとしては、この前の第三者割り当てのときにもお話ししましたように、何かきっかけがあれば、そのきっかけを利用して、できる限り企業の内容についての情報の確認をする、そういうつもりでいることだけを申し上げておきたいと思います。
  97. 沢田広

    沢田委員 じゃ、大臣、この非公開株というものが今後の日本の経済に与える影響、プラスもあり、マイナスもあり、いろいろありますけれども、だんだん成長するのと同じように、ある一定の限度からはある程度公示に切りかえて、公にしていくというような段取りというものをつけていく時期に来ているんではないのか。いつまでもこういう状態に置いておくことは、これからのいわゆる資本の自由化や金利の自由化などが入ってくる場合に、なおさらそういう隠された部分が多過ぎるということは必ずしもプラスではない。やはりある程度明らかにしていく。株まで明らかにしろとまでは私は言ってないんですが、少なくともそういう内容を公示するシステムを前進させる、進めていく、そういう点については考慮すべきではないのか、こういうことです。大臣、いかがでしょう。
  98. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 御質問の御趣旨をあるいは取り違えているかもしれませんので御容赦いただきたいのですが、いわゆる非公開会社は、確かに国民経済の中でいろいろな活動をしております。その活動の中には、金融・資本市場にかかわる部分も出てまいります。出てまいりますれば、それはその出てまいった側面から、ある程度のアプローチは現在の状況でも可能なわけでございますが、そういう公開の金融市場なり資本市場との接触を一切断っている非公開会社が仮にあったといたしますと、それはもはや証取法とかあるいは銀行法とか、そういった法律に基づいて行われる行政の範疇の問題ではなくて、商法上設立されている会社の内容をどの程度開示をさせるかという商法の問題になっていくのではないかと思います。したがいまして、大臣もちょっとその点はお答えしにくいのじゃないかと思いますので、私が僭越ですがお答えしたものです。
  99. 沢田広

    沢田委員 法務来ているから、この前も商法のときにいたんだし、お答えできるでしょうから、ちょっと……。
  100. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 非公開会社のディスクロージャーをどうするかというのは大きな問題でございまして、現在、商法改正の一環として、大小会社区分立法あるいは公開、非公開会社の区分の問題というのを取り上げて、法制審議会で検討しております。  その中で、先生指摘のように、かなりの大きさに達した非公開会社というのは、社会的に非常に影響が大きいわけでございます。先ほど証券局長からお話がございましたように、その大きな会社であっても、公開の資本市場から資金を調達していないという場合には、これは証取法の関知するところではないわけでございまして、もっぱら商法が関与するわけでございますが、そういう社会的な影響の大きい大会社、大非公開会社については、やはり公開会社並みの何かの規制をかけるということは、商法の立場からいっても考えなければならないのではないかということで、現在検討しているところでございます。
  101. 沢田広

    沢田委員 検討されるようでありますから、ぜひひとつ検討していただきたいと思います。  これはどこになるかと思いますが、証券局じゃないのです。今の会社との関係です。  一つ例を出すのですが、同じ役員が三つの会社を持っておる。登記上は、これは名前は言っても言わなくても、今は税務署の方で調べてもらうようにということになるのでしょうが、とにかく同じ役員で千葉に成田に東金で土地の不動産業をやっておる。ところがこの三つの会社は三千万ずつで役員は全部同じなんだ。一緒に行動をしておる。しかし決算は三社別々だ。三社に分散して決算しておる。そういう形で、内容の細かいことは省略しますけれども、従業員四百名、年間これでも五十九年度百億ぐらいの売り上げを上げておるわけですね。そういう形が、だんだんとふえていくアングラマネーじゃないけれども、裏の舞台で動いていく。そして、この株の内容はその五人が全部持っちゃって三つの会社を運営している。こういう形で、従業員は全部一緒なんです。そして決算のときだけ操作をして、結果的には三つに分けて決算をする、こういう仕組みまでとにかく起きている。しかもこの二つは知事の不動産許可をとってない。東京都ですかね。そして堂々とやっておる、こういうようなこともある。  しかも、この人は大したものなんですね。那須でも倒産をし、その前はどこかな、那須の前は仙台でも倒産をした。それを借金を全部返済しちゃっている。よう金が生み出されたものだな、こういうふうに私たちは思うのですが、私のところへわざわざ持ってきた人がいるわけです。そして、こういうことを許していいのか、おまえも発言をする機会があったら、これはどうしても一回言っておいてくれ、こう私は言われておるのです。しかもこれは無記名でない。ちゃんとした記名だから、あえてこの機会に申し上げて、これは法務局であるか証券局か国税局であるかと思うのですけれども、とにかくこういうことを許しておいて社会の道義が許されるか。これでの被害者で泣いている人も大分いる。これはその人の一人なんです。私の名前は出してもらって結構です、こう言って持ってきたので、あえて私もこれを一回言わなければ申しわけないですから、ちゃんと言っているわけなのでありますが、そういうことで、これについての内容は改めてまた口頭でも申し上げますけれども、やることが非常にえげつない。えげつないし、中身もあれだから、よほどこれはひとつ調査をしてもらいたい、こういうふうな期待を持ちます。  法務局、これは証券局へ言ってもだめなんだし、大蔵大臣は言いにくいだろうけれども、国税庁は呼んでないですから、とにかくひとつ大蔵大臣お答えいただかなくちゃなりませんが、法務局と両方にお答えをいただいて、私の質問はまだちょっとありますから、もう一つやるかわかりませんが、まずお答えいただいておきます。
  102. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 法務省はそういう実際の執行というところをやるわけではございませんで、専ら制度の仕組みをつくって、あと制度をどういうふうに運用するかということについては、関係私的自治と申しますか、私人間の交渉で行う、そして最後は裁判所が決着をつけるという仕組みでございます。そういうことで、私どもとしては余り積極的にそれを調査するというふうには申し上げられおいわけでございますが、もちろんそれが不動産業のことでございましたら、あるいは不動産の監督をやっております行政庁に取り次ぐということはやってもよろしいかと思いますが……。
  103. 沢田広

    沢田委員 あと、大蔵大臣
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 個別案件になりますと私も実体を定かに承知しておるわけでもございませんので、沢田委員から個別の案件としてまたお聞かせいただいた上で、私なりには判断をするしかないのかな、こういう感じでございます。
  105. 沢田広

    沢田委員 ちょうど時間ですね。以上で私の質問は終わります。  ただ、第三者割り当ての新株発行価格は、発行価格決定時における旧株の株価を基準として、これに新株発行に伴う諸要因を加味して決定されるべきであるとした判例が出ています。きょうはもう時間の関係がありますのでその判例は読みませんけれども、そういうことによって、あのときのような五百円を二百五十円でやるというような第三者割り当て株の割り当て制度については見直す段階に来たということをつけ加えて、三人の方におつき合いをいただきまして、関係者の皆さんには心からお礼を申し上げます。  以上をもって、時間になりましたので、私の質問は要望で終わります。どうもありがとうございました。
  106. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 矢追秀彦君。
  107. 矢追秀彦

    ○矢追委員 最初法律案の中身について御質問いたします。  本法律案の提案理由の中に、株券等保管受け渡し面では合理化がおくれているため、発行量や流通量の増大に伴い事務量が極めて膨大なものになってきており、このままでは株券等の円滑な流通が阻害されるおそれがある、とありますが、発行量や流通量の推移を含め、現状はどういうふうになっておるのか。それから、本システム導入後の合理化というのはどのようになるのか、これを御説明いただきたいと思います。
  108. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お答えいたします。  まず初めに発行量でございますが、上場会社発行済み株式数は、昭和五十年千五百十二億株でございましたが、五十八年には二千四百四十億株、六一%増加をいたしております。これは株数でございますが、株券の枚数で見ますと、五十年には一億八千六百万枚。これが五十八年には二億四千四百万枚ということで三一%の増加になっております。  他方、流通量でございますが、全国の証券取引所で五十八年中に売買された株式数は千二百二十三億株で、これは五十年の六百二十九億株に比べますと九四%増、約倍になっております。このうち同一証券会社の中での売りと買いは相殺をされますので、これを差し引きまして、取引所決済がされる株式の数は、約四五%に当たります五百五十三億株でございます。  この五百五十三億株のうち、東証が現在子会社で簡易な決済制度をつくっておりますが、それで処理されるものが約百億株ございまして、差し引きまして、実際に株券が移動するものが四百五十億株ぐらい存在をするというのが現状でございます。  そこで、御質問の第二番目の点でございますけれども、この四百五十億株に相当する株券取引の都度移動するわけでございます。これがまず必要がなくなるというのが一点。  それから、最初に申し上げました同一証券会社内で決済されるものを含めて、年間に取引をされる千二百億株ほどの株券というのは、実はお客さんが自分の手元に引き取るものは非常に少のうございまして、証券会社等に保護預かりという形で預けているものが多いわけでございます。銀行等の大手の機関投資家は自分で持って自分で保管をしているわけですが、いずれにいたしましても膨大なスペースの保管場所が必要になってくるわけでありまして、この保管場所が今度は大券化することによって非常に少なくなるというメリットが第二にございます。  それから第三番目には、現在そういった東証の子会社で簡易な決済制度をやっておりますが、名義書きかえの場合にはどうしてももとの名義に戻さなければなりませんので、そういう手間がかかりますが、今回はそれが帳簿上の記帳でできる。それから、実質株主への配当金の送付という手当てができることによって、そういった行為が必要なくなる。これが第三番目のメリットかと思います。  大きく言いますと、そのくらいのメリット考えられるわけでございます。
  109. 矢追秀彦

    ○矢追委員 本制度は、株券保管振替システムの導入と、そのシステムをコンピューターの導入によって効率的にやる、こういうふうに理解をしているわけですが、まずそれでよろしいですね。
  110. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 実体的にいいますと、コンピューター処理を前提にしなければ、これほど大規模な処理は不可能でございますので、そういった意味で、実体的にはコンピューター処理と裏腹の関係にあると思いますが、ただ、法律そのものがコンピューターを前提にしているかというと、それはそうではございませんで、法律そのものは、手作業でも物量さえかければできるような仕組みを規定をしているというふうに申し上げた方がいいかと思います。
  111. 矢追秀彦

    ○矢追委員 したがいまして、今言われた問題なんですが、要するに制度の変更と、いわゆる今回のこういう制度を導入することと、コンピューターの導入ということはどちらが効果的か。今裏腹とおっしゃいましたけれども、その点はいかがですか。
  112. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 この法律の条文が四十数条ございますが、その中身が、大きく分けて二つの部分に分かれております。一つは、商法規定しております議決権の行使とか配当の送付とか、そういった点の特例を定めている部分でございます。この特例というのは、従来の商法によりますと、株主名簿に記載された株主が権利者であるという規定でございますが、それに対しまして、本制度にのった場合には、振替機関の、あるいはそこの証券会社の帳簿上に記帳された者を実質株主として、そういう権限はその者が執行する、名義はその振替機関名義会社登録をされる、それでよろしいという部分がございます。この部分は、実はコンピューターとかそういったこととは関係がないわけでございますが、午前中にも申し上げましたように、この部分がないとこの制度が動かないという意味では非常に重要な部分でございます。  そういった手当てを前提といたしまして、今度は実際の振替機関規定が何条があるわけでございますが、ここの仕事の仕組みにいたしましても、法律上はコンピューターと直接関連づけているわけではございませんが、実体的には、先ほど申し上げましたように、コンピューター処理を前提として、非常に事務が簡略化をされる。しかし、先ほども申し上げましたように、保管場所が少なくて済むというようなこととか、実際に株券をトランクに詰めて持ち運ばなくても済むといったことは、コンピューターとは関係のない部分でございますので、実際に中で処理をされる帳簿上の処理、これはコンピューター化によって非常に軽減をされる、こういうふうに御理解いただければよろしいのではないかと思います。
  113. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今も言われたように、コンピューターというのはあくまでも裏腹といいますか、後で来たものでして、コンピューターが導入されなくてもできるわけでして、既に西独では百二年前から、フランスでも四十三年も以前から行われたわけでございますから、結局、証券会社の方でこういうパンフレットを出しておられますけれども株券が富士山の十三・二倍に積もっておる。さっき沢田先生の質問で、知っていたのか知らなかったのかとおっしゃっていましたけれども、既にこういう立派な宣伝パンフレットができて、私も今ここで勉強させていただいたわけですけれども、要するに、こういう証券界の皆さんの要求でできてきたわけです。私がこういうことを聞いている理由というのは、そんないいものなら、さっき堀先生も質問で、二十五年前から検討してきたのだとおっしゃいましたけれども、何がネックで、どうして今までおくれたのか、その点はいかがですか。
  114. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 必要性が十分認識をされながら、二十五年間かかってやっと日の目を見るようになった原因というのは、突き詰めますと一つになるわけですけれども、それはやはり、これも午前中申し上げましたけれども日本株式についての株主認識が、諸外国に比べますと、株主権という点に非常にウエートがかかっている。つまり、株主総会出席をして議決をする、あるいは配当を受け取る、こういった実質的な株主権についての価値評価が非常に高い。西欧の場合は、これに比べまして、ヨーロッパは大体無記名株式でございますし、アメリカ記名式ではありますけれども、実際にはノミニーというような形で、無記名式に近いような形が今でき上がっております。  そこの点が一番障害でございまして、したがって、今回お願いしたような商法上の特例の手当てをいたしませんと、どうしても制度が動かない。途中の段階で日本でもテスト的にやってみたらどうかということで、東証が子会社をつくりましてやってみたわけですけれども、やはり決算期になりますと、配当を受け取るために名義書きかえをしなければならない。それから、株主総会で議決権を行使するためにはどうしても名義書きかえをしなければならない。そのために株券を実際に移動させなければならない、名義書きかえも行うということで、そういうことですと余り大したメリットはないものですから、なかなかできなかったというのが、二十五年もかかったことの一番大きな原因だろうと思います。  もう一つつけ加えますと、実はこの制度、午前中から証券会社の問題を主体にして議論しておりますけれども、実際には関係する人というのはもっと多方面にあるわけであります。証券会社はもちろんでございますが、そのほかに取引所、それから大量に株券を持っております銀行銀行は持っておるだけではなくて、担保として株式を取ったり返したりしますので、そういった取引面での動きもかなりあるわけであります。それから発行会社、それに最近では名義書きかえを代行する会社というのがございます。代行会社。信託銀行の一部がこの代行業務をやっておりますが、そういったさまざまな関係者がおりまして、必ずしもこれらの方の利害は完全に同じではございません。したがって、ごく最近の数年間は、これらの多くの関係者の間の利害の調整に若干時間がかかったというのが第二の理由でございます。
  115. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今局長いろいろ言われましたけれども、要するにいろいろな利害の対立もある、その前に国民性ということをおっしゃいましたけれども、では国民が、今度のこれだって、どれだけの人が知っているかということですよね。余り御存じないと思うのです。正直言って、私だって、この法案が出てくるようになってから勉強したような次第で、いろいろな議論があったことはちらちら聞いていましたけれども、本気になっては、出てくるまでは、やはりどちらかというと関心もそんなに、私も余り株を持っていませんので、余計株券というのがよくわからぬせいもありますけれども。だから、にっちもさっちも動かなくなってきてから結局やったような気がしてならぬわけです。  参考人の方、大変長時間縛りまして申しわけありません。実際は休んでいただいて結構だったのですけれども、お座りになっておりますので、この問題、皆さん方が大変希望されておりながら今日までおくれた。今局長の答弁、私はちょっと不満なんですけれども、実際やる気になればもっと早くてきたのではないか。一番遅いイギリスでも五十四年からやっているわけですね。アメリカも四十三年からやっている。どうして日本が五十九年になってしまったのか、強烈な反対、例えば先ほど言われたいろんな面で実際抵抗があったのか、その点はいかがですか。どなたでも結構ですから。
  116. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 業界の方の前に、ちょっと私が申し上げた方が適当かと思いますので申し上げますが、株主権についての評価が西欧と非常に違いますということを申し上げました。これはいい悪いを言っているのではなくて、そういった状況を積極的に評価する面も確かにあると思います。ただ、この制度に関する限りは、その点が障害になって実現がおくれたということでございます。  実は、外国の中でもアメリカは非常に遅かったわけですが、アメリカの場合は無記名ではなくて記名式であるわけです。記名式であるために、この制度がなかなか実現しにくかった。しかし、それを乗り越える方法として、これも午前中申し上げましたが、ノミニーという慣行でやっていたわけですが、法律ではなくて、事実上無記名式に近いような慣行を確立していったわけでございます。我が国でもそういう行き方はあるのではないかという議論もあるわけですけれども、なかなかそれがうまくいかない。そこで法律手当てをしようじゃないかということに最後踏ん切ったわけでございまして、後の方で申し上げました、関係者が非常にたくさんありましたという話は、法案の提出のごく直前の調整の問題でございますので、これは余りウエートを置いて考えていただく必要はないと思いますが、そういったことでございます。
  117. 矢追秀彦

    ○矢追委員 参考人の方、どなたか……。
  118. 渡邊省吾

    渡邊参考人 今局長からお話がございましたとおりでございまして、我々としては強くそういうことを期待しておりましたけれども、いろいろとそういったような法律的な問題、それから同時に、最近では関連する業界の方々も非常に多かったものですから、お話し合いに少し時間がかかったということであります。それ以外の理由はないと思います。
  119. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大臣、この問題大臣はどう認識されておるかわかりませんけれども、やはりいいものは積極的にむしろ政府あるいは国会が先取りしてやっていかなければいかぬわけですね。どうしようもなくなってからやる、調整に手間取ったという点はわからぬでもないですけれども、二十五年間議論してようやく、しかも主要国の一番最後で、ドイツフランス、それからアメリカ、イギリス、あるいはオランダ、それに次いでやっておるわけですから、そういう意味では最後ですよね。そういう点は政府だとか、これは国会も責任あると思いますけれども、なかなか先取りというか、先にやるものって少ないんですよね。何かもう後追いですよ。この間の借換債にしても、にっちもさっちも動かぬようになってからやる。こういう問題などは、本当に新しい時代に対応してやっていかなければならぬものですから、私はもっと早くてきたのではないか、政府に大きな責任があると思うんですが、この点、大臣いかがですか。
  120. 竹下登

    竹下国務大臣 元来、商行為を伴うものについては、基本的な法律は存在しても、それぞれの業界等々が、その目的が例えば預金者保護、投資家保護、被保険者保護というようなものに沿うものならば、自主的な仕組みの中で行われていくというのが望ましいであろうというふうに私ども考えます。  しかしながら、この問題については、実は私も最初説明を受けましたときに、これは参議院先議案件であったわけでございますけれども、実体がわからぬで一体自分で答弁ができるだろうか、率直にそう思いました。だんだん聞いているうちに、やはりいわゆる公権力と申しますか、法律という形の中で環境整備してあげる方が好ましいという最終的な結論に達するまでには、いわば自主的にそういう仕組みができないかというようなところの議論がかなり先行しておったんじゃないかというふうに私なりに理解きしていただいて、それで中身について勉強さしてもらったわけであります。  本来、業界もさることながら、いわゆる投資家保護というようなもの、投資家に対する利益を少しでも還元するというような形になるものは、すべて業界の監督とか指導とかという立場にある者が先見性を持って対応するという基本的な考え方は、私もそれでいいと思います。そして今おっしゃいましたように、それは歴史的な淵源からしておくれた部分があるとはいえ、今世界に冠たる先進国家として大きな経済を動かしておる我が国において、すべての仕組みにおいて他の国よりも後追いするということは、監督の立場にある者として余りみっともいいことじゃないなという感じは、私も素直にいたしておるところであります。
  121. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それでは次に、本制度の一番中枢である保管振替機関について伺いますが、これも先ほど来議論が出ておりましたが、公益法人にされた理由はどこにあるわけですか。
  122. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 この制度はもともと民間の株式の流通なり振替を円滑化するというねらいを持つものでありますから、本来民間で行う事業を一つのセンターにまとめて行うという性格を持っておるわけでございます。  ただ、しかしながら、非常に数多くの投資家あるいは直接的には銀行証券会社から株式を預かり、かつ、そこで行われる帳簿上の移動が商法によって法的な効力を持つ。そういう事業を営むという意味では、若干公的な監督なり規制が必要な部分が出てまいります。同時に、こういった合理化によってそこから出てくる金銭上の効果、これはできるだけ投資家に還元しなければいかぬ。そういったもろもろの観点からしまして、最小限の公的な監督、規制は必要であろう。  そういった両側面を考えますと、法人形態を考える場合にいろいろなタイプが当然ございます。認可法人というような形のものが常識的にはあり得るわけでありますけれども、この点は最近の行革問題、そういった問題等も考えまして認可法人でない形の方がいいのではないか。もうちょっと民間の創意が生かせるような仕組みの方がいいのではないか。そこへ大蔵大臣なり法務大臣の規制、監督をかけられるような仕組みということでいろいろ勉強しました結果、民法上の公益法人であって、それに必要最小限の規制、監督を加えていくという行き方が、本事業の目的からいたしまして最も妥当なのではないか、そういう結論に達したわけでございます。
  123. 矢追秀彦

    ○矢追委員 システムは各国少し違うかもわかりませんが、諸外国はどうなっておりますか。
  124. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 諸外国の場合、西ドイツフランスは当初自然発生的にできてきて株式会社という形で行われているわけで、現在でも会社の名称を見ますと株式会社という名称がついているわけでございます。これに対していろいろな形、国によって若干の差はございますけれども、やはり規制、監督を加えておりまして、実体としては今回私どもが御提案申し上げている公益法人に近いような規制、監督が加えられております。
  125. 矢追秀彦

    ○矢追委員 法律ではこの保管機関の設立が複数でも認められるようになっておりますね。第三条で「業務の全部を適正かつ確実に行うことができると認められる」そういう場合「事業を行う者」と指定できるわけですが、これは実際複数が出てきた場合どうされますか。あるいはまた、複数になるとちょっとまずいんじゃないかとも思いますが、その点はいかがですか。
  126. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 二つ問題がございまして、一つは、本制度が当初予定しておりますのは、株券ないしはそれに類似した債券でございます。まあ転換社債程度まででございますが、それらについて全体として一つ法人処理をするか、あるいは例えば上場株式と店頭株式、これは別の主体で処理をした方がいいのか、その辺はまだ若干問題点として残っていると思います。したがいまして、そういう意味で観念的にも複数の可能性が全くないわけじゃない。しかし、最近のコンピューター処理実態からいいますと、処理をする量が多ければ多いほど効率的でございますから、実際問題としては恐らく一つ法人の方が好ましいんだろうと思います。  それじゃ実際にどうなるかといいますと、この仕事は営利を目的とするわけではございませんし、それから、その関係者間の調整もこれから後センターがやっていくわけでございますから、そういったたぐいの法人が複数設立が企図されるということは、まず事実上起こり得ないのではないかと思います。そういった意味で、法律的には複数の可能性は残しておりますけれども、予測といたしましては当面一つのものが出てくるのではないかというふうに考えております。
  127. 矢追秀彦

    ○矢追委員 可能性としては少ないと言われることもわからぬでもありませんが、仮に利害の対立するところから複数のものが出てきた、こういうことがあるかないかわかりませんけれども、例えば証券会社銀行とが対立関係にあるということで両方から出てくる、あるいは東証と地方の取引所との間で両方から出てくる、こういったことは考えられるような気もするわけですけれども、そういった場合はどういうふうにされますか。
  128. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 御指摘のような銀行証券会社あるいは取引所単位でこういった組織が仮にできたとしますと、これは著しく制度効果を減殺するわけです。つまり、銀行証券会社との間で起こります取引については従来と同じようなことを行わなければならないということになりますので、非常に効果が減殺される。したがって、法人の設立までの間には当然準備委員会といったようなものがつくられて、そこで話し合いが行われていくわけでございますが、これには私どもも指導の立場にある者として、当然参画はしていくと思います。そういうことの起こらないようにしたいと思っておりますが、法案提出前におきましても、先ほどちょっと申し上げましたように、そういった意味の関係者の調整は若干しておりまして、そういった意味でも複数のものが出てくる可能性はないと思います。  ただ、先ほど申し上げましたのは、上場株式と店頭株式と申し上げましたが、これはややあり得ない話なんで、もう一つ別の例を引かせていただきますと、現在国債については日銀が主体になってブックエントリーという似たような制度をやっております。これは全部をカバーするわけではありませんが、かなりの部分がカバーされているので、この法律では国債その他の債券については当面予定はしておりません。しておりませんが、将来国債を初めとする債券についても、流通の状況によっては、この法律に基づいた主体をつくって処理をした方がいいという状況があるいはあるかもしれません。その場合には、株式債券とはあるいは別のものの方がいいかもしれないというような点は確かにあると思います。そういった意味で、複数の可能性も全く否定し切れないというふうに考えております。
  129. 矢追秀彦

    ○矢追委員 したがいまして、先ほどちょっと触れましたこの第三条の「適正かつ確実に行うことができると認められるときは、」、この「適正かつ確実に行う」という基準というものはどういうふうに——実際これは大蔵大臣が指定するわけですから、大臣、この基準というのは今おわかりになっていますか。現実に出てきた場合どうするかということです。
  130. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 具体的な基準は法案が成立いたしましてから考えることでございますが、例えば今先生から御指摘のあった銀行証券会社が仮に二つのものを別々につくるというようなことになった場合には、法案のねらいといたします趣旨そのものが余り生かされてないわけでございますから、そういうものについては大蔵大臣が指定をするということはあり得ないだろう。そういった程度の大筋の基準といいますか考え方は、頭の中にないわけではございません。
  131. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今基準がないわけではないとおっしゃいますけれども、大体ある程度のことを決めておかないと、それこそ二十五年間議論してきたわけでしょう。通ってから考えるというのはいかにもちょっと……。何もこれ我々反対法案じゃないんです。きょう委員会採決が行われる予定ですし、すぐ本会議も、あしたかかるかどうかそれはわかりません。それは急転直下何かもめて、まだ会期延長問題もありますから、いつどうなるかわかりませんけれども、そういう法案が通過してから考える。大体大蔵大臣長い政治歴をお持ちですから、こういうことが割合多いんですよ。頭に描いていることを今もしここで答弁をやって、それでもめてこの法案がぶっ飛んでしまう。こうなればこれはまた別ですけれども、ある程度の基準はこうなんだ、今のようなものが起こったって指定しませんとおっしゃいましたけれども、そういうことが我々国民の前にこの国会の議論で明らかにされないと、とにかく法案だけ通してくれ、あとで考えます、これではちょっとまずいんじゃないかと思うのですよ。だから私なんかひっかかるようですけれども大蔵大臣、いかがですか。
  132. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 重ねて恐縮でございますが、実はこの法律の中で商法の特例の部分は前提条件でございますので、これがありませんと具体的な詰めになかなか入れない部分がございます。したがって、確定的な意味で新しくできる法人の具体的な姿をここで申し上げるような段階にまだ来ておりませんけれども法案提出に先立ちまして関係の業界の方とはもう随分議論をしております。そういった議論の過程で、おおむねおぼろげながら一つの姿というものは皆さんの頭の中にイメージとしてあると思います。それはやはり証券会社銀行取引所、そういった人たちが参加者になってセンターを構成していく。実際の仕事は、枢要な部分はセンターでやりますが、一部は現在あります代行会社等に委託をしていく、それから発行会社は別の形でこのセンターに関与してくるという大体の姿は皆さんイメージとして持っておられるわけでありまして、そういった意味で実際に複数のものができ上がって承認を求めてくるという可能性はほとんどあり得ないというふうに考えているということを申し上げたわけでございます。
  133. 矢追秀彦

    ○矢追委員 さっきお見せしたパンフレットだって、もうからっとでき上がっておるのですよ、非常に見事に。私悪いと言っているんじゃないですよ。だから、ある程度こういった議論のときにはしてもらいたいと思うわけです。  それでは次に、公益法人の出資者ですけれども、大体証券取引所証券会社あるいは銀行等が主たるものになると思いますが、そう理解してよろしいですか。それから、これはかなり多くの参加者が必要だと思うのです。あればあるほどいいんじゃないんですが、少なかったら効果が出ないと思います。  そういった意味で、これは参考人の方にお伺いしたいのですが、大体証券界等の意向は、大手はもちろんお入りになると思いますけれども、中小も含めて大体どんな動きになっておるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  134. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 御指摘のとおり、出資をいたしますのは証券会社銀行取引所といった参加者が主体になると思います。多くの者が参加するのが望ましいという点も先生指摘のとおりでございまして、ただ法律上の構成としては任意参加ということになっております。したがって、参加をしないという投資家あるいは発行会社もあるいは出てくるかもしれないんです。投資家の側からいいますと、やはり自分は株券を持っていたいという人は確かにいるだろうと思います。ですから、若干こぼれていくものは出ると思いますが、今度は会社のサイドから見ますと、会社株主のうちのかなりの部分がこの制度に参加をしたいと言えば、会社も任意参加ではございますが、参加者にならないわけにはいかないという側面がございます。そういった意味でかなり多くの方が参加するのではないか。午前中申し上げましたように、ヨーロッパなんかの例でいいますと、六割から九割が参加をしておるというのが実態でございますし、証券会社についていえば、ごく小規模のものは別にいたしまして、ほとんどが参加をするのではないかというふうに私どもは見ております。詳細には業界の方のお答えがあると思います。
  135. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今の問題、参考人にお伺いしたいんですが、大体証券界の意向といたしまして、かなりたくさん入られるのかあるいは大手だけなのか、その点、現状についてもしおわかりになっておりましたら。
  136. 渡邊省吾

    渡邊参考人 お答えいたします。  いろいろなメリットがあるという点から見まして、まず発行会社にとりましては、発行費用の軽減や名義書きかえの減少によりまして株主管理費用の減少、さらには市場の機能が強化されることによりまして資金調達の道が一層広がるというメリットがございます。それから株主にとってはどうかといいますと、株券保管がより安全になりまして、名義書きかえの手続中の売却ができないという今の不便もなくなりますし、名義書きかえや保護預かりなどのコストも軽減されるというメリットがございます。また証券会社にとりましては、先ほど来お話がありますように株券保管受け渡し事務の合理化によるメリットがございます。こういうふうに考えますと、これは三者から十分に受け入れられる制度であるというふうに思います。  それから、その費用の負担と参加見通し、特に今証券会社大中小というお話がございましたが、新しい制度でございますから、それなりに一時的な開発費用がかかりますけれども、この費用負担は、先ほども申し上げましたように、合理化のメリットに応じて負担することを前提にして、今後関係者間による事務処理方法を固める過程で費用分担を決めていくということになるのだろうと思います。そういう意味で、発行会社、投資家、証券会社にとってメリットのある制度でございますから、ほとんどの上場会社や店頭会社及び多数の投資家が、制度発足後数年間には参加するであろうと思いますし、証券会社大小ほとんど参加するものと私ども考えております。
  137. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今、費用負担のことをちょっとお触れになりましたけれども、これはこれから詰められて、今から何百億かかるかというのを聞くのは無理だと思いますけれども、大体どれくらいの構想といいますか、費用になるのか、大手証券会社であればどれくらい出さなきゃならぬのか、それは会社にとって、ちょっと合理化との絡みをおっしゃいましたけれども、相当重い負担なのか、余り重い場合には、それが投資家にはね返ったりする場合もなきにしもあらずで、その点は保管の費用等の負担という問題も出てくるわけですから、その辺は大体どんな構想を描かれ、そして各出資の出資金というものもスムーズにいけると判断されておるのか、その点はいかがですか。
  138. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 この仕事にかかります費用を大きく分けると二つございまして、当初費用とそれから毎年の運営費ということになると思います。毎年のランニングコストの部分は、先ほど来御説明しましたいろいろな機能からいいまして、明らかに現在のものよりもかなり少ない費用で済むと思います。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕  問題はその当初費用でございますが、当初費用の中にも建物とか倉庫のお金のほかに、一番お金がかかると思われますのは、システムの開発を含めたコンピューター関係の費用であろうと思います。これが一体どのくらいになるかというのは、なかなか現在の段階で申し上げる自信がないのですけれども、恐らく数十億のオーダーにはなるであろう、あるいはもう一つゼロが余計つくのかもしれませんけれども、そういったオーダーの数字になると思います。これを先ほど申し上げました参加者の拠出によって賄う、出資によって賄うということになるのだろうと思います。
  139. 矢追秀彦

    ○矢追委員 ぜひお願いしたいことは、今も言いましたように、投資家にはね返って、結局、特に個人といいますか、そういった方の負担がふえるようなことのないように、むしろ今の金庫へ保管をするよりも安くなるということは聞いておりますので、ぜひそういった点ではね返らないような形をとっていただきたいと思います。  それから主務大臣ですけれども法律によりますとこの権限が非常に強いわけですね。これはやはり大事なものでありますから、ある程度、これくらいの権限があるのはやむを得ないと私は思います。ただ、問題は、主務大臣が二人おるわけですね。これは商法との絡みがあるので来ているのでしょうけれども大蔵大臣と法務大臣が対立した場合は一体どうなるのか、そういうことはあり得ないのか、これは大蔵大臣、いかがですか。
  140. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 御指摘のとおり、商法の特例の部分がございまして、これはセンターの業務にも商法の特例の部分が及びますので、全体として、主務大臣として大蔵大臣並びに法務大臣という共管になっております。  実際に共管で仕事をする例というのは幾らもあるわけでございますが、そういう場合に、初めから意見が一〇〇%一致する場合ももちろんありましょうけれども、若干意見が異なる場合ももちろんあるわけでございまして、そういった場合は、通常今までのいろいろな業務におきましても、しかるべき調整を経た上で、最終的には共菅大臣意見の一致を見て行為をしているわけでございますから、本件についても全く同様だと思います。ただ、窓口は、恐らくセンター関係については大蔵省が窓口になるだろうと思いますけれども……。
  141. 矢追秀彦

    ○矢追委員 対立はないと信じておりますけれども、やはりきちんとその辺のルールをしておかないと、混乱が起こるといけませんので、その点はむしろ、大蔵大臣が中心的になるならそれをやはりきちんと、法律には書けないにしても、そういう取り決めないしはそういうことをしておかないと、何かのときに問題が起こるのじゃないかと思いますが、この点はきちんとされますか、大蔵大臣、いかがですか。
  142. 竹下登

    竹下国務大臣 これは元来、法律というものの基本的な問題については、法務省というのは、商法とかそういう基本法については、当然、法制審議会とかあらゆるところに対する連絡をも密にしながら法制上処理していただいて、そしてそれの実施官庁については、実施官庁が従来からの関係の中においてそれに適切に対応していくというようなものの性格であろうと思うのでございますが、なかんずく、やはりこの問題につきまして、両省が共管しておることでもございますので、意思の疎通を図らなければならないことはもとよりのことでございますし、それが執行に当たりましては、その辺は十分配慮して、また、私はたまたま今大蔵大臣でございますが、相手の方もまた配慮していただけるような問題ではなかろうかというふうな事実認識を持っておるところでございます。
  143. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、コンピューターを導入して株券の管理を行うことになるわけですが、コンピューターは確かに非常に強力な武器ではございます。ただ問題は、使用法によっては非常に恐ろしい機械でもありまして、最近、コンピューターの犯罪もございますし、特に守秘義務について規定はされておりますけれども、もちろん、株券処理だけだからどうということないというふうな議論があると思うのですが、私は、そういう認識は非常に怖いと思うのですね。要するに、コンピューターによるデータ処理というのは、そのデータそのものが使い方によってはどうでもなるわけですから、株券保管あるいは債券保管というものは、今後、その使用法によっては、犯罪も含めまして大変な問題が出てくる可能性もなきにしもあらずです。  だから、この法律に書かれているような守秘義務だけで果たしていけるのかどうか、あるいはまたもっと細かい政令とか何かの取り決めでそういった守秘義務が厳重に守れるような、もちろん保管機関の方には個人の名前は出てこないのですけれども、それはつながっているわけですから、何とでもなるような気がするわけです。そういった息で、この守秘義務というものについて、果たしてどういうふうな網をかぶせていかれるのか、その点をお伺いしたい。
  144. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 先生御質問の中で触れられましたように、センターの段階ではお客ごとの株式数等は出てこないわけでございますが、証券会社とかいったそういう参加者の名簿と総合すれば、そこが挙がるようなことであるわけです。したがいまして、顧客の財産権の問題にもかかわるところから、守秘義務をどうするかという点についても十分事前に議論いたしまして、御提案申し上げているような守秘義務をセンターの段階でかけておけば、従来以上に秘密が保たれないということはないだろう。  証券会社の段階があるわけでございますが、これは従来も、証券会社はお客さんの名簿というのは中に持っているわけでございまして、これについてはむしろ、法律上の問題というよりはモラルの問題として、お客さんの財産上の秘密は漏らさないということでやってきておるわけでございまして、その点は、従来と同様に考えておるというふうに御認識をいただければよいかと思います。  ただ、お説のように、コンピューターは使い方によっては非常におかしなことが起こり得るわけでございまして、その点については、これからシステムの設計をする際にできるだけそういう事故を防ぐように、いろんなシステムもあるようでございますから、そういった点も勉強して事故を最小限のものにとどめるような努力はしていきたいというふうに考えております。
  145. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、株券その他の有価証券、こういうふうに扱うものがなっておりますが、主務大臣が指定したものということになりますが、当面は株券だけでしょうけれども、将来はやはり債券、社債あるいは国債、こういったものが対象になってくる可能性がございますけれども、大体どういうスケジュールといいますか、どういうふうなめどでやっていかれるのか、その点いかがですか。
  146. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 さしあたって考えておりますのは、御指摘のように株券と、新株引受権というのが株券とほとんど同様に取引されておりますので、この二つは、当面対象にするつもりでおります。  次に、転換社債でございますが、これも取引所に上場されておって、しかも株式に近いものとして取引がされておるわけですが、本質はあくまでも債券でございますので、これはすぐ対象にするかどうか、これからちょっと検討さしていただきたいと思っております。  その次に出てまいります国債その他の債券類、これについては、先ほど申し上げましたように現在、国債については日本銀行が主体になってブックエントリーという類似のシステムをやっておって、ほとんど障害がない。したがって、この仕組みに乗せる需要が現在ないものですから、今のところは取り入れるつもりはございません。ただ将来の問題としては、もっと流通量がふえてきて、今のシステムだけでは賄い切れなくなるような事態もあるいはあり得るかもしれませんので、そういった意味で、法律上はそういったものも可能なような規定になっているわけでございます。
  147. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今の問題について参考人の御意見をお伺いしたいのですが、今国債は需要がないということですが、将来の社債ですね、その点いかがですか。
  148. 田淵節也

    田淵参考人 お答えいたします。  現実には全く株券で毎日苦労いたしておりまして、何とかこの法律を通していただいて合理化さしていただきたい、こういうことでございます。国債の方は証券局長がおっしゃられたように、日銀を中心にして振替決済制度と似たようなものが現実に行われておりますので、そう困っておりません。転換社債が次の問題になってくると思いますので、株券保管振替制度がこのセンターができて順調に推移していった後、転換社債はぜひ考慮していただきたい、そういうふうに思っておりますけれども、今具体的にどうということは考えておりませんし、要望もいたしておりません。  以上でございます。
  149. 矢追秀彦

    ○矢追委員 実際具体的にこの機関が動き出すのは大体何年後と考えておられますか。
  150. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 法律が成立いたしますれば、直ちに準備委員会と申しますか、そういったものを設けて設立の準備に入っていくと思いますが、やはりセンター設立までに二、三カ月ないしは数カ月が必要になるかと思います。センターを設立いたしまして、そこから今度はコンピューターの設計でありますとかいろんな作業をやってまいりますので、やはりどうしても準備段階に一年くらいはかかるんじゃないか、したがって、両方合わせますと一年半から二年くらいの間には具体的に仕事が動き出す、こういう段取りになるのではないかと思っております。
  151. 矢追秀彦

    ○矢追委員 この問題、最後に結局、この制度の実際の運営というのは、保管振替機関が中心になって機能していくことになると思います。結局、この制度国民経済制度として我が国に定着していくかどうかについては、この保管振替機関を中心とした運営がいかに公正に、そして効率的に機能していくかにかかってくると思うのですね。そういう点について今後、特に公正かつ効率的運用をぜひ期待をしたいわけでございますが、そういったことに関しての手順といいますか方途といいますか考え、これを大蔵大臣も含めてお伺いして、この法律に関してはここで終わりたいと思います。
  152. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 大臣お答えの前に若干お話しをしておきますけれども、この機関、本来ならば業界が行うような仕事一つのセンターが行うわけでございますが、多数の業界が関連してまいりますし、それから投資家の大事な財産を預かる仕事をするわけでありますから、そういった意味で、センター自体が公正な、しかもどこの業界にも偏らない中立的な運営がされることがぜひとも必要であろうと思っております。そういった観点でセンターの組織なり運用のあり方、そういったものは今後詰めていくつもりでいろいろなことを今検討している段階でございます。
  153. 竹下登

    竹下国務大臣 せっかく御賛同を得てこの法律を通していただく。そうすると、やはり所期の目的に沿うような実効を上げなければいかぬことは、私もそのように理解をいたしております。それだけに、非常に中立的な機関でありますだけに、各方面の意見を聞きながら、各方面それぞれ数も多いことでございますけれども、正当な形で、まさに法律そのものの趣旨が生かされる形で、これが実現に向かってのもろもろの準備について、我が方は我が方として、やはりお手伝いを誠心誠意やっていかなければいかぬ課題だというような考え方を持っております。
  154. 矢追秀彦

    ○矢追委員 この際でございますから、ちょっと法案と離れますけれども証券の問題一般についてお伺いしたいと思います。  東京の証券取引所は連日にぎわいを見せておるわけでございますが、私の地元の大阪及び地方はだんだんシェアが低下する一方で、昔は大阪三割だったのが、今は一割、こういうふうになってしまっておりますが、こういった現状をどうお考えになっておるのか、これをどう打開するのか。大阪の場合、御承知のように大証では新二部をつくったわけでございますけれども、これもどれだけ効果があるか、私自身またよく勉強はしておりませんけれども、地方の時代と言われているにもかかわらず、やはりますます中央、中央というふうなことになってきているわけでございまして、この地方の証券の活性化というものについてどういう方途を講じようとされておるか、お伺いしたいと思います。
  155. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 地方取引所の問題については、午前中にもいろいろ御議論がございました。御指摘のとおり、ここ十年ぐらいをとってみましても、東京対大阪の関係で見ますと、かつては東京の三割とか二割とかいうウエートがあったものが、現在では一割ちょっとぐらいまで低下をしてきている。最近ちょっと持ち直してきて二割近い数字になる力もございますけれども、そういった状況でございます。いろいろな議論がありますけれども、現実にそういった地方取引所が存在をしている以上、やはりこれの活性化というのは、当面の問題としては考えていく必要があろうかと思います。  そんなこともあって、昨年、証取審の御検討もいただいた上で、大阪の市場につきましては特別の上場制度をつくるとか、いろいろな手は打ってきておるわけでございます。従来、全国に八つございます取引所については、規模は非常に違うにもかかわらず、比喩的に申しますと、大きい人も小さい人も同じ形の洋服を着ていたわけですが、ちょっと違う帽子ぐらいのことかもしれませんけれども、違う形の上場制度を大阪については今やっておるわけでございます。これは、ただ地方取引所の活性化という観点だけではなくて、同時に関西は、例えば京セラみたいな会社のように非常に特殊な会社が発生をしてくるような素地がございます。そういったものをまず大阪の取引所で育てていただくというような点も含めまして、ああいった制度をやってみているわけでございまして、効果がどの程度あるかについてはいましばらく様子を見ないと何とも言えませんけれども、少なくとも現在の段階ではこういった点も含めて、大阪の対東京のシェアが若干上昇しているという実態は生まれてきているわけであります。
  156. 矢追秀彦

    ○矢追委員 ぜひ地方の方もお願いしたいと思いますが、次に証券取引審議会の、五十八年六月一日に提出された「株式市場の機能拡充について」、この答申がございます。簡単に説明していただきたいのですけれども、この答申の趣旨を生かしていくべきであると思いますし、特に技術革新の著しい今日、ベンチャー企業などを育てるためにも、こういった答申の趣旨は生かすべきであるし、特に上場の基準あるいは店頭市場などを改革していかなければならぬし、またそういった方途がどういうふうに描かれておるのか、これは参考人にもついでに、ベンチャー企業などの育成をどういうふうに業界として考えておられるのか、この点お伺いしておきます。
  157. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 御指摘の証取審の答申は、内容的には次のような考え方で株式市場における制度的な措置を提言したものでございます。  その考え方といいますのは、株式市場の持っている機能としては投資家に適切な投資の場を与えるという意味合いと、それから企業に資金調達の場として適切な場を提供するという二つの機能を持っておるわけでございますが、それらの点について戦後一貫してとられてきた考え方は、大きな企業ほど安全な投資先であるという考え方が主体になっております。ところが、ここ十年ほどの日本経済の推移を見ますると、必ずしも大きい企業がいい企業だというふうには言い切れない。その一番典型的な例がベンチャービジネスのような企業等でございます。そういった企業に資金調達の機会を提供するという点も含めて、従来とられてきた上場基準あるいは店頭の仕組み、そういったものについて再検討して、もう少しそこを弾力的にしたらどうかというのが御指摘の提言のおおよその内容でございます。  これを受けまして、昨年、一つは各取引所の上場基準の手直しをいたしました。その中の一つが、先ほどお答えした大阪の新二部でございます。これはかなり思い切ってそういった小型の、しかし将来性のある企業に上場の道を開いたわけでございます。  もう一つは店頭市場整備でございます。これは昨年の十一月から着手をしておりまして、まだ実際に実行に移ってから時日も浅いのですが、量的にはかなり拡大をしております。
  158. 渡邊省吾

    渡邊参考人 御質問に対しまして、店頭市場の状況を申し上げてお答えしたいと思うのです。店頭市場は今、日本証券業協会がこれの管理責任を負っておりますので、そういう意味で協会から申し上げたいと思うのです。  お話ございましたように、昨年の六月の証取審の答申に基づきまして、証券業協会では店頭市場の、それまでも店頭市場はございましたけれども整備、それから拡充の具体的な改善策を講じまして、十一月からスタートいたしました。昨年十一月に発足以来、現在までに新規登録を承認した銘柄は、この五月から売買予定されております一銘柄を含めてまだ三銘柄でございます。しかし、その中には、制度改善によって認められました新規登録時の公募増資を行う会社も一社含まれておりまして、制度改善の効果が徐々にあらわれてきているということが言えるかと思います。三銘柄というのをまだ非常に少ないようにお感じになるかもしれませんが、十一月にスタートしたばかりでございまして、この公開のための準備ということもかなり時間がかかりますので、各証券会社とも優良なベンチャービジネスに対してそういった登録の準備を進めておりまして、今後かなりの数の登録会社があらわれるのではないかと私は期待を持っております。  ただ、証券業協会といたしましては、いろいろな点でもう少し改善すべき点もございます。これは例えば気配の伝達を今電話なんかでやっておりますけれども、その機械化をやりたいとか、いろいろそういった改善もこれからの私たちの務めかと思います。  いずれにいたしましても、まだ緒についたばかりでございますが、今先生お話しのように証取審からスタートしておる問題でございますので、期待が非常に大きいという点から考えましても、今後発行者、それから投資家のニーズにこたえるようにこの市場を大事に、そして着実な改善、発展を図っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  159. 矢追秀彦

    ○矢追委員 もう時間も余りありませんので、次に個人株主の問題でちょっと伺っておきたいのです。  これから金融が自由化されて、銀行あるいは証券また生保業界はこの自由化に対していろいろ勉強もされ、対応も講じられてきておるわけですが、証券界の一つ課題として、個人株主がこれから自由化になってきた場合、今でも非常に減ってきているわけですが、ますますそれに拍車がかかるのじゃないか。やはりたくさんお金を持っておるところがどうしても強くなる、そういうような感じがするわけでございますけれども、いわゆるこの個人投資家をどうやってもう少し育てるといいますか、この個人株主の増強はどうお考えになっておりますか。これは参考人にもお伺いしたいと思います。
  160. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 御指摘のとおり、個人株主の比率は戦後一貫して低下をしてきておりまして、最近は二八%というかなり低い数値になっております。こういう状態が今後も続きますると、市場の活力の点でも若干問題が出てくるのではないかということで、一昨年証取審がこの問題を主体に審議をいたしまして、その結果出てまいりました提言の一つが先ほど申し上げた提言でございますが、もう一つ、いわゆる公募増資のあり方についての御提言を、これは一昨年の十二月だったと思いますが、いただいております。  公募増資につきましては、これをいたします企業のサイドからしますと、額面増資に比べて非常に多額の資金が得られるというメリットがあって、なかなかこれを既存の株主に還元することを嫌がる向きがあるわけでございますが、そういったことが個人株主減少の一つの要因にもなっておるわけでございまして、そういった意味で公募増資による取得資金の既存株主への還元のあり方、そういった点について御提言をいただいて、これはその後業界で実施に移されております。そういったことと、それから先ほど申し上げました市場に魅力のある投資物件を提供するという市場の改善とあわせて、現在個人株主の増強といいますか、これ以上の低下を来さないという方向でいろいろ努力を続けているわけでございます。
  161. 渡邊省吾

    渡邊参考人 ただいまの証券局長お話と同じようなことになります。  申し上げるまでもないわけですけれども証券市場は、いろいろな判断を持っている投資家が多数参加することによりまして、公正な価格形成と円滑な流通ということが確保できると思いますので、先生の御指摘の個人株主の減少というのは非常に重要な、深刻な問題というふうに考えて、従来もその対策に長い間取り組んできたわけでございます。  例えば法人株式保有の行き過ぎを是正してもらうとか、株式投資に魅力を回復する、あるいは投資者保護の徹底といったようなことについて従来も取り組んでまいったわけでございまして、今後も証券取引審議会の答申を踏まえまして、証券知識の普及や、それから配当政策を重視した配当政策を企業に要請する、そういうものを勧める、こういったような点について地道な努力を続けるつもりでございます。何か一つの方策で、一つだけで非常に顕著な個人株主増大策というのはございませんと思います。いろいろな政策を地道に組み合わせて、長いこと努力するという以外にはどうもなさそうに思います。  ただ一つ申し上げますと、税制の問題が一つございまして、配当の二重課税といったような問題が個人株主問題点一つでございます。我々、インピュテーション方式による二重課税の排除ということを希望しておるわけでございますが、税制の問題でございますので、今後もそういう主張を続けてまいりたいと存じますが、どうぞひとつ、その辺につきましても御理解をいただければ幸いだと存じます。
  162. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それでは最後に、これはアメリカの圧力といいますか非常に強い要求で、けさも出ておりました例の東証の会員の問題ですね、八十三社。これは私はちょっとアメリカの方の言い方が身勝手といいますか、むちゃではないか。大阪や名古屋があいているのだから、そこへ入っておいて、そして時期がたってから東証に出てくる。日本だって、まだいっぱいなりたい人がいるのになれない。また向こうは個人であるし、こっちは法人である、そういう風土、歴史、生い立ちが違う。日本がニューヨークヘ初めから入っていたか。そうじゃなくて、ボストンとかそういう地方から入っていって、今ニューヨークヘやっと入った。そういうことは棚に上げて、今ニューヨークに日本が入っておるのに、どうして東証へ入れないんだ、こういう非常に、言うなれば何か日本敵視とまではいかないにしても、こういうふうなことを私も感じます。  もちろん国際的なこういったいろいろな自由化というものは、流れとしてはやむを得ないと思いますが、何でもかでもそういうことを表にして、私はアメリカもかなりむちゃなことを、貿易だけではなくていろいろな面で——私もアメリカの方とはいろいろ議論をすることもございます。言いたいことを言い合って、よくけんかしておりますけれども、そういう点はやっぱりきちんと言うべきことはしっかり言っていただいて、実情を認識させる、そういう態度でないと、何か流され流され、結局アメリカの、極端に言うと身勝手な戦略の中に組み込まれてしまうと、やはり日本経済にとってマイナスもある。もちろん国際協調も必要です。その点、この会員権の問題、これはひとつしっかりした見識を持って向こうと交渉してもらいたい。要望も含めまして、大蔵大臣に御答弁いただいて終わります。
  163. 竹下登

    竹下国務大臣 外国証券会社によります東証会員権の取得、これは二年前の取引所定款の改定によって、制度上既にその道が開かれておる。内外証券会社間の差別は解消しておる、制度上は確かにそうなっておるわけであります。まず、その制度上このようになっておりますよというような相互理解というものも必要ではなかったか。その理解はある段階までできた。しかしながら定数枠にあきがないということからして、事実上加入ができないという指摘が、今度は第二段階として出てくるわけであります。  この問題は、きょうも議論がございましたが、国内的にもいずれは何らかの検討が必要ではあろうという問題意識を持っております。しかし、現実問題としてはまさに取引所自身の問題としてお取り上げ願わないと、私どもの方からとやかく、何と申しましょうか指図をするような問題ではない。したがって、この四月十九日でございますが、私からまず東京証券取引所の理事長さん、そして千野さんが今議長さんでございます。だから、いわば執行機関と議決機関の代表の方に対しまして、いろいろな角度から検討をしてみてくださいませんかと、要請と申しましょうか、私自身もお話しする場合は要請というものなのか、ある意味において陳情かな、こういうような感じも持ちながらお話しをしたところでございます。  それで、やはり東証自身の問題は、執行責任者と議長さん、あと、きょうお越しいただいておりますようないわゆる業界関係の方という形で、翌日また、こういうことを東証と同議長さんに対してお願いをしたところですということを重ねて申し上げ、したがって、私どもの方からすれば、検討すべきかすべからざるかというところから御議論をなさっていただいてもそれはいい問題でございますが、それに対して東証自身の問題としてお取り組みいただけるというような期待を持って、今その推移を私どもの方としては正確に言えば見守っておる現状ということではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。
  164. 矢追秀彦

    ○矢追委員 千野参考人、もし御意見がありましたら。
  165. 千野宜時

    千野参考人 大変温かい御質問で、大変恐れ入ります。  確かに、日本アメリカ、同じ会員権と申しましても、向こうは個人会員権でございます。こちらは法人会員権でございます。私どもが、ニューヨークの会員でございますが、フルに証券業を向こうでやろうとしますと、個人会員権を最低十人は買わなければ、立会場の中で立ち会いの手を振れないわけでございます。一人の会員権五千万円ぐらいかかりますから、十人買えば五億円かかるわけです。ところが、向こうがこちらの会員権を買いますと、それは一たん買ってしまいますと法人会員権でございますから、場立ちは十人でも十五人でも追加料金なしに場に出すことが可能なんです。その点が、同じ会員権でも、メンバーシップという英語でございますが、根本的に違うわけでございます。  そういうわけで、今大臣からお話がありましたとおり、東京の会員権の加入に関しましては既に自由化されておるわけでございますけれども、まだ事実問題として買収が行われておらないというだけでありまして、買おうと思えば買えるということでございます。ただ、大臣から私ども及び理事長に言われましたことは、外圧からこういう問題が言われて検討するということではなくて、国内問題としても一回研究してみてくれないか、してみたらどうだというようなお話がございました。それを受けまして、日本会員制度というものはこのままでいいのかどうなのかということをこれから研究しよう。  しかし、るる申し上げましたとおり、明治以来、この取引所会員制度の上に立っておりまして、複雑な利害が重なっております。また、非常に多くの貢献を会員の皆さん、その先輩たちがしてきておりますので、一朝一夕にこの問題が結論が出るというわけにはいかないと思いますが、御指摘のとおり、国際的な大市場として国際的な責任も果たさなければなりませんので、何らかの形で結論を出さなければならないかとも思うのですが、拙速で結論を出すということは非常に難しいのではなかろうか、このように考えております。しかしながら、とにかく御指摘の点につきましては十分に会員の御意見を承りながら歩を進めていきたい、このように考えております。  大変御丁重な御示唆を恐れ入りました。ありがとうございました。
  166. 矢追秀彦

    ○矢追委員 参考人、大変御苦労さまでした。終わります。
  167. 瓦力

    ○瓦委員長 安倍基雄君。
  168. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 前の方々がいろいろなことを聞かれましたものですから、できるだけ重複をしないようにお聞きしたいと思います。法案そのものにつきましては、今の矢追委員から逐一話がございましたので、これを機会にちょっと一般論的なものをお聞きしたいと思うのでございます。  私、前回、金融小委員会出席いたしまして、その際いろいろの議論をお聞きいたしました。その中で一番大きな問題となりましたものは金利の自由化、これは金利の自由化とともにいわゆる業務の自由化というものが並行をされていかないと困るよという話でございました。それで、御承知のようにこれから銀行の窓販も始まる、また証券関係銀行業務へ逐一乗り入れていく。この前のお話でも、やはり証券プロパーの業務銀行プロパーの業務と、それはもうそれぞれはっきりしている。グレー地域と申しますか、グレーエリアと申しますか、こういうものが一番問題となってきたわけでございますが、何か一つの問題が起こるたびに銀行証券が綱の引き合いをする、そしてグレーゾーンがだんだんと両方から乗り入れになっていくというような感じを受けるのでございます。  これにつきまして、私この前、渡邊参考人の御意見も承りました。これは大蔵省がどう考えているのか、そして結局、グレーゾーンというものは最後には両方の乗り入れみたいな格好でいってしまうことはいいと考えていらっしゃるのか、あるいはある程度そのときそのときで少しずつ変えていくんだ、最終的なその形はどうなるんだろうかと非常に疑問に思っておるわけでございます。これにつきましての大蔵省の御意見、そして参考人の最終的ないわばビジョンと申しますか、見方と申しますか、それについてちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  169. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 業務分野の問題ですから、必ずしも私からすべてお答えするのが適切かどうかわかりませんが、まず私のサイドから考え方を幾つか申し上げさせていただきますと、確かに、銀行証券の間のいわゆる重なり合う分野が広がりつつあるというのは御指摘のとおりだと思います。  これは大きな要因が二つあると私は思うのですが、一つは、窓販あるいはディーリングが象徴的なものでございますけれども、公共債に係る証券業務、これは証取法の六十五条でもともと銀行がやってもいい仕事。それについての銀行法上の手当てが何年か前に行われて、今回実現をすることになったわけでありますが、この点については、両業界の垣根問題というようなとらえ方が世の中でなされている側面はございますけれども、私は、むしろそうではなくて、これだけ大量に国債が発行され、市場の中で流通をしていく、その引受手として銀行が非常に大きなウエートを持っている、それからその転々流通する際の当事者として非常に大きな主体になっている以上、やはりこれを積極的に市場の中に取り入れていくことが、日本の公社債市場の将来のためにはいいのではないか。そういう観点からこの銀行証券業務への参入というものは行われたと思うのでありますが、そういった大量の国債を中心とした公社債流通市場あるいは発行市場拡大という要素が一つあると思います。  それからもう一つは、いわゆる国際化でございますが、御承知のように証券銀行というものを分離している法体系をとっておりますのはアメリカ日本でございますが、アメリカにおいても既に日本ほど厳然とした区分はしておりませんで、かなり両業界が重なり合って仕事をしている実情にございます。今後、我が国銀行なり証券会社というのは、もちろん国内仕事をしているわけでありますが、同時に世界的な規模で業務をやっていくわけであります。その際に、余り国によって制度が違いますと、実際に参加できる業務分野が限定されてくるわけでございますので、そういった意味で、もともと法律的に基本的に固有の分野は別といたしまして、その周辺の部分については次第にお互いに重なり合って仕事をやっていくという部分がふえてくる。これも必然的な流れでありますし、そういたしませんと、国際場裏での、金融・資本市場での業務に支障を来す、こういう側面があると思うわけであります。したがって、非常に長い目で見れば、両業界の固有の分野は別といたしまして、両者の間に存在をいたします分野については次第に相互の乗り入れといいますか、重なり合いが深まっていくのではないかと思います。  ただ、何度もいろいろな方から申し上げておりますように、そのやり方なりあるいはテンポにつきましては、これは無用の混乱や摩擦が国内で起こりませんように、段階的にいろいろ気を使いながらやっていく、そういった必要があろうかと思っております。
  170. 渡邊省吾

    渡邊参考人 ただいまの証券局長お話とほぼ似たことを申し上げることになるかと存じますけれども証券界の業務の弾力化、あるいは銀行の方もそうですが、銀行証券の周辺業務分野では相互に競争していく、例えば非常に似た仕事あるいは同じような商品を開発していくといったような面がだんだんふえていくように思います。日々そういう報道にも接するわけでございます。そういった分野、先ほどのお話でいわゆるグレーゾーンとおっしゃいましたが、そういうものが広がっていくと思うのでございます。しかし、それはフリクションとか、そういったような意味で受け取っていただくよりは、むしろそういう新しい分野で機能的にもあるいは社会のニーズにもこたえられていくといったような、そういう進歩、発展といったような意味でこれをとらえていただくのがいいのではないかというふうに、私ども仕事をしながら考え、そういう努力をしているわけでございます。  ただ、こういうグレーゾーンのところでは、お互いに競争をするわけでございますから、けさでしたか、公正な競争というお話がございましたが、そういう分野ではぜひイコールフッティングを確保していただきまして、そういうグレーゾーンの公正な競争を実現していけるようにしていただきたい。そうすれば、さらにそういったものの進歩、発展という形で、先ほど申し上げましたようなことが実現できるのではないかというように思います。  しかし、今もお話がございましたような、銀行証券にそれぞれ固有の業務がございます。例えば預金とか決済機能というのは銀行の中核の業務でございましょうし、また株式や社債の引き受けとか売買あるいは投資信託といったような業務証券固有の業務でございます。こうした中心の部分とか核となる分野では、やはり両業界お互いにそれを尊重し合うということが大切だと思います。その上で、その固有の分野がそれぞれ意味を持ってまいりますが、それを組み合わせるみたいな形で新しいニーズにこたえられるという、これは両業界の提携という形になるのじゃないかと思うのです。したがいまして、先ほどのグレーゾーンによる競争というのと違って、固有の分野ではお互いの提携というような形が出てくるのじゃなかろうかというふうに思います。  以上のように、今後銀行証券関係では、お互いに本業を尊重しながらその面では提携をし、あるいは周辺の業務では公正な競争をすることによって商品やサービスの機能をさらに高めていく、社会のニーズに、あるいは顧客のニーズにこたえていくといったような方向が考えられるのではないか、現にそういう方向に向かっているのではないかというふうに考えます。
  171. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この問題は大きな問題でございますけれども、そうすると日本証券と分けておる、米国もだんだんとあれがあいまいになってきておる。最終的には米国型みたいなことを目指した形になるのでございましょうか。これはちょっと証券局銀行局どちらが答えていいのか、あるいは大臣お答えになるのかでございますが、いかがでございましょうか。
  172. 竹下登

    竹下国務大臣 これはなかなかお答えしにくい問題であろうかと思うのであります。私どもはそういう分野で先進国の方々とお話しいたしますと、最終的には荒っぽい議論になりますが、少なくとも金融・証券世界共通法でもつくらなければ、現実問題として本当の意味における相互主義とでも申しますか、そういうことにはならぬのではないかという感じすらいたすわけでございます。何分にもよって立つ歴史的淵源等に大きな差異がございますから、したがって現状においては、まず各国間における制度施策の淵源にさかのぼっての、いわば相互理解というものを徹底的に進めていかなければならぬ問題ではないか。  そこで最終的にどういう方向で行くかということになりますと、今本業というものが厳然と存在しておる、そうしてグレーゾーンとかグレーエリアとかいろいろな言葉があるでございましょうが、そういうものではまた公正な競争原理が働いていかなければならぬ。現実問題として公共債の窓販から、あるいは海外CD、CPの国内販売等から、そうしてこの六月からは公共債のディーリングの取り扱いが行われる、こういうことになりますと、確かにそういう点が多くなってくる。そこに一方また今いろいろな商品が開発されてまいりまして、今大変いい言葉だと思いましたが両者の提携、そういうものが進んでいくこともあり得るであろう。そうすると最終的に描かれる姿というのはどういうふうになっていくかということになりますと、私としておよそこういうものになるんじゃないかということをにわかに即断するほどの先見性も能力も持ち合わせていないというのが現実の自己採点であります。
  173. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 えらい御謙遜な御答弁でございますけれども、ただ現在少なくとも世界共通法ができてない状況で、私ちょっと一つ問題と思いますのは、新聞などで報ぜられております信託業務の問題でございます。これはきのうも何かいろいろ質問があったようでございますけれども、私、相互主義というのは、それぞれいわば内国民待遇を与えるという意味で相互主義でいいのではないかな、向こうで両方やっているからこちらでもやらせろというのはいささか行き過ぎなんじゃないかなという気がするのでございます。そして、例えば外国でそういった会社を買った日本銀行がどうなるとかそういう話もございますけれども、もし外銀の乗り入れを認めていきますと、都銀の参入も最終的には認めざるを得ないのじゃないか。  一次的には恐らく外銀だけとすれば、今のところ影響力は大したことはない。しかし、それを外銀に認めたら、国内でも認めようじゃないかという話に当然発展せざるを得ない。そうなりますと、相互主義というのは、こちらのいわば内国民待遇を与えておけばいいのであって、向こうが両方やっているからこっちもやらせろというのは、いささか相互主義を逸脱しているのじゃないかという気がするのでございますけれども、これについての見解と、将来日本の都銀というのをどう考えるのか。これはいわば証券法案のときにはちょっと飛ぶかもしれませんけれども、信託との関連でお聞きしたいと思います。
  174. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきまして、率直に言って米国の企業が我が国において資金の運営に参入することについて要望が強いということを、米国政府側から我々は聞いておるわけであります。ただ、この問題は、我が国の金融制度や信託銀行の経営にも影響するところが大である。したがって、勢いそれは慎重に検討せざるを得ないということになります。  今、それを敷衍しておっしゃいましたいわゆる相互主義という問題ですが、相互主義というのは、言葉としては相互の主義でございますけれども、本当の意味の相互主義というのは一体いかなるものかということになりますと、世界共通法にすれば別といたしまして、なかなか個々にわたってかくなることが相互主義だと、先ほど来の議論じゃございませんが、まさに時々錯覚を感ずるような……。したがって、今おっしゃいました、いわば内国民待遇さえ与えればそれで一つの形は整うのであって、我が方の向こうに出た銀行が仮に米国の内国民待遇において信託業務を行っておるということは、向こうの中におけるいわゆる内国民待遇であり、こちらはもともと今日の状態の中においては信託銀行、いわば専門銀行としてのみこれを認めておる、その限りにおいて内国民待遇さえ与えれば、俗に言う相互主義というものは議論の外に置かれるじゃないか、そういう議論も確かにございますし、私どももいたしてみたことがございます。  したがって、相互主義という言葉そのものは、人それぞれによってきちんと定義づけるという点は難しい問題であろうと思いますけれども、いわゆる全体の国際化あるいは自由化の中において、さてこの問題をどう扱うかということになりますと、昨年の中曽根・レーガン会談の後、いわゆる円ドル委員会ができまして、それが第一回、第二回、第三回と、この間もホノルルで専門家会議をやりまして、またあした、あさって東京でやるというような状態の中で、報告書としてどのような結論を出していくかという問題が現実の問題としてあるわけでございますので、この問題につきましては円ドル委員会——私も円ドル委員会については複雑な立場にあるわけであります。その報告を受けるのは私と米国のリーガン財務長官が受ける。そしてその円ドル委員会をやっておるのは、両者に最も近い専門家のキャップがお互いやっているわけです。したがって、現状においては、建前からいえばあくまでも私どもは報告を受ける立場にある、そして報告書提出までに何らかの方向が出ていく、そういう会談が今続けられておるさなかだという理解の上に立たざるを得ないではないか。そうなると、論理的に今度は都銀の参入の問題が出てくるのじゃないか。これもたびたび議論がなされておるところでありますが、今日、信託銀行というものの歴史といえば、比較的新しいわけであります。そういう専門分野における問題というものが今まさに金融行政の中に、言ってみれば一つの定着した姿になっておるという意味からいえば、なおのことこの問題は慎重にならざるを得ない課題ではないかという事実認識の上に立って、現実の問題にまさに対応しておるというさなかでございます。けさもブッシュ副大統領とお会いいたしましたが、そのときには別に具体的な問題として信託業務への参入という話が出たわけではございませんけれども、世界で第一位と第二位のいわゆる経済力を持つこの二国間が、それぞれおのがじしそのところに従いつつも自由化、国際化へ努力しなければならぬという相互認識というものは一応あるわけでございますので、まさに専門家会議の検討の推移を見守っておるというのが現状そのものの姿であります。
  175. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 中曽根総理とこの前ここでもやはり金融の自由化問題を論議したのでございますが、それをもう一遍やる前に、最近京都信用金庫が一定額以上の預金を中国ファンドですか、それで運用するという制度を始めようとしているというのが報じられているわけでございます。これはいろんな信用金庫がそれを見詰めておりまして、どういうことになるのか非常に関心が深い。これはある意味からいいますと、預金者にとっては実質的にいい金利がもらえるという動きになるかもしれませんけれども、いわゆる小口預金の自由化というのに少し慎重であるべきであろうという議論が今までもなされておる。そうすると、これは一つが始めると争ってやり始めるかもしれないな。そうすると小口預金の自由化に非常に拍車がかかってくるのではあるまいか、そういうふうな懸念がございます。  こういった小口預金の自由化について慎重であるべきだという私の議論の根底には、いわゆる中小金融機関が随分ある。日本の国は中小企業が随分大きな役割を持っておる。これが中小金融機関を通じて生きているというので、このいわば新しい商品についての大蔵省考え方、これをどんどんとオーケーしていくのかどうか、これについてのお考えをお聞きしたいと思います。
  176. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 今御指摘の信用金庫と証券会社業務提携商品でございますが、先ほど来お話が出ておりますように、金融機関同士の業務提携あるいは金融機関の中の業態を超えた業務提携、さらには金融機関と周辺業界との業務提携、これらは当然国際化、自由化、それからさらに機械化の進展とともにすべて環境上そういう業務提携というものが進捗するということは時の流れでございますし、またそういうものに前向きに行政的にも対応していくのが私ども課題ではないかというふうに考えておるわけでございまして、基本的にはこういうものについては前向きに対応したい。  それからもう一つは、先生指摘のように、確かに小口預金については郵貯問題等もございますし、また極めて小さな小口預金について、完全に金利を自由化してしまうことがいいかどうかにつきましては、日本でも随分意見があるようでございまして、慎重に考える必要がある。したがって、大口預金の自由化から進めてまいりたいということで、いろいろその環境づくりを今やっておるところでございます。  ただ一方で、大口預金の自由化が進みますと、大口預金者だけが有利になるじゃないかというような議論もございます。したがって、そういう小口預金を規制しておかなければいけないような段階においては、やはり小口預金者に対しても有利な商品が提供できるという意味で、こういうふうな証券と金融との業務提携商品なども、やはり我々としては前向きに考えていけばいいんじゃないかというふうに考えているわけです。  ただ問題は、先ほど来話が出ておりますように、そのことによって金融と証券との基本的なところを侵食し合うということになりますと、これはやはり問題が出てきますので、本業は本業としてかっちり守っていくというふうなルールをつくっていくことが必要じゃないか。それからまた、こういう商品を認めることによりまして金の流れが急激に変化してしまうというようなことも、これは避けなくちゃいけないんじゃないだろうか。それからまた、こういう商品を認めることによりまして、個々の金融機関なり証券会社の経営に非常に大きな影響を与えるというようなことがあってもいけないんじゃないかということでございますので、こういう新しい商品を認める際には、やはりこれもひとつ軟着陸といいますか、ソフトランディングといいますか、できるだけ金融の秩序に悪影響を与えないような形で認めていくということで、一応のルールづくりをしているわけでございます。  今回のこの業務提携商品につきましても、例えば普通預金の残高は必ず三十万円が必要だ、あるいは中国ファンドの解約は最低十万円以上とするとか、あるいは普通預金と中国ファンドの間の資金の移動につきましては適正な手数料を取るとか、あるいは逆に金融機関証券業務まがいのことをやるようなことがあってはいけないとか、いろいろな交通整理、ルールづくりをしながら順次認めていくというふうな方向で対処しているわけであります。
  177. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いわゆる金利の自由化についていろいろ議論があるのでございますけれども、確かに今大口預金と小口預金とのアンバランスもございますが、やはり緩やかにやっていかなくてはいかぬのじゃないか。と申しますのは、これは余り言われていないのでございますけれども銀行協会の方といろいろ話をしますと、私の持論でございますが、日本は低金利でもってどうにか来たんだ。一般的にアメリカの国と日本の国を比べるときに、アメリカはいわゆるエネルギーコストが非常に安い。これが基本的にアメリカ経済の活力の基礎になっている。いろいろな面ではおかしな点がございますけれども、それが非常に地方をつけている。日本の場合にはそうではない。エネルギーコストは高い。しかし資金コストが安かった。これが非常に大きな力であったのじゃないか。高い貯蓄率と、そしてそれが信用のある金融機関で吸収されて、低利の良質の資金が産業界に供給されてきた。自由化、自由化というと非常にいいのですけれども、現在アメリカのいわゆる赤字財政、クラウディングアウト——アメリカのレギュレーションQがやめられたのも、結局は高金利でもって、逆に預金金利を抑えておくと資金が集まらぬというような要素もあったかと思います。  こういった情勢を見ますと、中曽根さんがレーガンと約束した、約束したと言うのが、これは単なる牛肉、オレンジというような問題ではなくて、日本の経済体質の根幹にかかわる問題を約束してきているのじゃないか。それも、実体を知らずして譲歩したのじゃないかという気がしてならないのでございます。これは先日中曽根総理ともここでお話ししたのでございますが、これは大蔵大臣もいろいろ専門家同士が話しているということでもございましょうけれども日本経済アメリカ経済の体質の相違から、こういった金利の自由化が日本の金利上昇を一般的にもたらして、それが今までの日本の優位性を失うことになるのではないか。  それから、例えば今までの財投というようなものをどう考えていくのか。財投の運用についていろいろ問題がございますでしょうけれども、それはそれなりの低利の資金をいろいろな部門に供給してきたという機能はあるわけでございます。銀行の連中に聞くと、郵貯との資金の奪い合いというようなことがすぐ問題になるのでございますけれども、それはさることながら、そうすると、金利の自由化をしていくときに財投をこれからどう考えていくのか、それが産業に対する影響力はどうだったのかということも含めて考えていかなくちゃならぬじゃないか。  そういう意味合いにおきまして、私は、中曽根さんがレーガンと約束したこの面が、本当に事の本質を理解した上でやっておるのか、何となく自由化ということがいいという話で来ているのじゃないかという懸念が非常にあるのでございます。これは何度もこの席でお話ししたことでございまして、これから大臣が円ドル委員会の問題をまた聞かれるとしても、その辺についての、中曽根さんにはいわゆる「中圧」とこの前言いましたけれども、それをはね返していただくような形で考えていただきたいと思っておりますが、いかがでございますか。
  178. 竹下登

    竹下国務大臣 日米両国の間の基本的な問題としてエネルギーコスト、それからもう一つは土地資本のコスト、この二つは確かに前提として大変な違いがあると思います。それを支えた一つの要因として貯蓄率が高いということと、言ってみれば良質な低金利の資金を供給したことによって企業の国際競争力が今日できておる。  それから、いま一つ言えることは、アメリカの場合が高金利であったという前提の上に立っても、自己資本比率というのが日本の企業は低いということも一つございましょう。が、しかしながら、中曽根・レーガン会談というものでは、言ってみれば一位と二位の経済大国として国際的に果たすべき金融・資本市場等における役割というものをお互いが認識しようということであって、両国だけの問題でなく、グローバルな問題としての話がそこに存在しておって、そうなれば円ドル委員会などはまさにアドホックな問題として専門家で議論をしたらどうだというようなことになっておるわけでありますので、言ってみれば両国だけで一つの特定目的を持って話し合いがなされ、合意に達したというものではなく、世界全体の中に果たすべき役割という前提の中でそのような議論がなされたということから、今日その下請としてのアドホックグループによりますところの委員会が続いておる、こういう現状であります。  そこで、この間安倍さんのそうした議論を承りながら、一方その翌日、言ってみれば、金融の自由化といえば最終的には金利の自由化というものではないか。そうなった場合に、よってもって立つ日本の投資家保護、預金者保護、被保険者保護、あるいはアメリカの場合は自己責任主義、こういう土壌の相違はあるにしても、常識的に考えると、一時的にでもあろう、永久にそうなるとはあえて申しません。もちろん金融でございますから、そのときどきの情勢によっての相違はありますが、少なくとも金利の高とまりとでも申しますか、そういうことになったら、日本の預金者という立場から見たならば、それはまたより一層、いわば勤倹貯蓄と申しますか、そういうことに対するメリットを与えることになりはしないか。だから企業の競争力の点からのみ論ずることなく、やはり預金者そのもののメリットという立場からも別に議論をしていかなければならぬではないか、こういう議論もございました。  しかしながら、その問題は一時的にどうなるかということをにわかに判断はできませんが、あるいは高とまりということもあり得るかもしらぬけれども、総体的にはこれは需要と供給のバランスの中で決まるわけでありますから、一概に断定することはできないであろう。しかし、国際的な流れの中で自由化、国際化ということは避けて通れる問題ではない。こういう事実認識の上に立ちますと、今議論としておっしゃいましたとおりの、いわば郵便貯金を主たる原資といたします、今日まで政策金融の柱としての役割を果たした財投の問題は一体どうなるか、こういうことになるわけであります。人によっては、それこそ民間金融からそれを調達して、そして場合によっては、政策金融であるならば一般財源で利子補給して財投と同じ役割を果たさしめればいいではないか、こういう乱暴な、という表現は適切ではないかもしれませんが、荒っぽい議論をする方もございます。  我が方といたしましては、財投というものの果たした役割、なかんずく戦後高度経済成長期を経て今日の段階に至るまでの役割というのは非常に大きな役割であって、それもまた我が大蔵省が所管をし、一方民間金融の自由化、国際化等々の問題も大蔵省がこれを担当し、そうすれば当然大きなシェアを占める郵貯の問題というもの、これは郵政省の担当ではございますが、その問題と、一体総合的に青写真をどう描いていくかということは、私は議論を避けて通る問題ではないという事実認識はございますので、これから部内でもまさにそういう面から将来の青写真、一つ一つの自由化の展望とかいろいろ出してまいりますが、総合的な検討というのは絶えず続けていかなければならない課題だという認識の上に立って冷ます。
  179. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 続いて証券の方に若干問題を移しまして、前回の金融小委員会でいろいろ出た中で、一つはユーロ円債についての幹事会社外国証券会社に認める話、これは業界としてはできるだけ我が方でやりたいという御希望がございました。また通貨主権の問題、ドイツの場合通貨主権を主張しているというような問題の話がございました。その際に、私ども大蔵省の御意見を承ってなかったのでございますけれども、伝え聞きますところによりますと、これも何か「中圧」かレーガンのあれか知りませんけれども、譲歩したと言ってはあれでございますが、向こうの要望をのんだというぐあいに聞いておりますけれども、その点、通貨主権との関連において大蔵省はどう考えていらっしゃるかお聞きしたいと思います。
  180. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答えを申し上げます。  今日までユーロ円債は非居住者、しかも国際機関あるいは外国政府について、公募債について発行を認めておりまして、今日まで二十六件のユーロ円債公募債が出ているわけですが、これらのユーロ円債の主幹事につきましては、私どもユーロ円債発行実態を把握するという立場から、日本証券会社に主幹事を限ってきたわけでございます。ユーロカレンシー債の実態を把握し、通貨主権の立場からこれを見ていくときに、いかなるコントロールの仕方があり得るのか。一つは、イギリスとかドイツがやっておるような、そしてまた私どもがやっておるようなリードマネジャーを、少なくとも自国の法人証券会社によって間接的にコントロールしていくというやり方と、それからまた直接的なコントロールのやり方があるかと思います。  我が国の場合、直接的なコントロールとしては、外為法上ユーロ円債の発行につきましては、非居住者の発行のものについては許可を要しますし、それから居住者の発行につきましては審査付事前届け出が要ることになっているわけでございます。通貸主権の立場からいいますと、居住者が日本の円を使うことについては通貨主権云々という問題は起こらないかと思いますが、非居住者が円を使用する、その辺について通貨主権の立場からどう言うか。今日、今申し上げましたような外為法上の直接的な許可制度もございますし、それから非居住者ユーロ円債発行の主体がどういうふうになるのか。やはり回数、金額の大きいのは国際機関あるいは外国政府であろうかと思いますが、日本が加盟しております国際機関の場合には、その加盟国の通貨を使う際には加盟国の通貨当局の同意を要するというふうに協定上なっておる。それから外国政府の場合も、これは国際的な慣行としてその通貨当局の了解を得るというようなことになっておる。したがいまして、問題は日本が加盟していない国際機関、これらの場合も、機関によりましては儀礼的に当該通貨当局の了解を得るというようなことをする機関もございます。問題は民間債ということになろうかと思いますが、それらにつきまして、私どもは現在の法律を遵守していく考えでございます。  したがいまして、この主幹事の問題につきましては、今後ユーロ円債のガイドラインを全般的に見直しをすることにしておりますが、そういうような一環として今後検討していくつもりでございます。
  181. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 午前中ちょっと問題になりました、いわゆる海外で発行する社債がふえてきた、転換社債など、これはむしろ海外の方が多いというような話が出てきております。  ここで、無担保原則か有担保原則がという国内への波及の問題がございますけれども、これは企業によっては、余り外国株主のシェアが大きくなり過ぎでは困るという企業もあると思いますが、転換社債の相当の部分がむしろ国内でなくて海外で出されるというような話になってきたときに、その辺の、いわゆる株主をちゃんと国内株主にしておくというような関係はどうなっておりましょうか。
  182. 酒井健三

    ○酒井政府委員 海外における転換社債の発行の主たる目的は、株価の上昇による利益、キャピタルゲインを目的としているものが多く、株式への転換の直後に、株式の市況にもよりますが、株式を売却してキャピタルゲインを実現するという場合が多いかと思います。  私ども、海外における転換社債の発行につきましては、外為法上審査付事前届け出制度となっておりまして、外資による企業支配がもたらされまして我が国経済の円滑な運営や国の安全等に支障を生ずるおそれがある、そういうような場合には発行の中止等の勧告、命令を行うことができるような制度になっておりますので、御指摘のような事例が生ずれば、そういうような措置をとることを検討するということになると思います。
  183. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは銀行局と証券局とまた引っ張り合いになると思いますけれども、転換社債が国内でも大変評判がいいのですが、海外での方が多いというような話になってくるといささか問題で、有担保原則という問題をどうするか。これについて、なかなか銀行界の反対もございましょうけれども、これは、やはりある程度信用のある企業については格付みたいな形で考えていかざるを得ないんじゃないかという考えもございますが、これについての大蔵省考え方をお聞きいたします。
  184. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お説のとおり、事業債あるいは転換社債の発行につきまして、現在その有担保原則というのをもっと緩和すべきではないかという御意見が各方面にあるわけでございますが、そういったことも受けまして、特に転換社債については近時かなり大幅に無担保で出せる企業をふやしてきております。ただ、完全に規制がなくなったわけではない状態でございますが、この点については今後も、一方で投資者が投資の際に判断する材料として、例の格付の問題もございますし、そういった問題も含めて関係者間で研究をしていくということで今やっております。  その際、見落としてならないことは、我が国の特に事業債あるいは転換社債も含めてでございますけれども、やはり長年の間有担保ということを背景に発行されてきた。そのために、投資をした債券が突然その値打ちがなくなるという事態が現実に過去には起こらなかった。そういうことが、投資家が一種の安心感を保持できる一つの要因ではあったという事実も全く無視はできない。  そういった両サイドの問題を含めて、これからやはり次第に緩和をしていく方向で検討していくべき問題ではなかろうかというふうに考えております。
  185. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間が余りございませんから簡単にしますが、今回の改正に関連いたしまして、いわゆる保護預かり手数料とかあるいは名義書きかえ手数料、この辺の扱いで、さっきも、投資が相当ある、これを利用者、投資者に負担させてはいけないという話もございました。  ただ、反面、こういった投資的なものは出資金で賄ってもしかるべきものでございまして、経費が節減されるというのが基本だと思います。これについても、保護預かりの手数料とかその辺を変えていくのかどうか、手数料全体の見直しもあるのかどうか、その辺の感触をちょっとお聞かせ願いたい。
  186. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 今回この制度が実施されます場合に直接的に関連をしてまいりますのは、御指摘の保護預かり料とそれから名義書きかえ料でございますが、これらについては、保護預かりそのものあるいは名義書きかえそのものが利用者にとりましては必要がなくなるわけでございますから、その限りではそれはなくなるわけでございます。  ただ、その反面、今度はその保管のための経費が必要になってまいりますので、名称は変わって保管料というような形のものは若干いただくことにはなると思いますが、朝来御議論いただいておりますように、総体としてのコストは確かに軽減されるはずでございます。初期の投資はかなりかかりますけれども、これは償却資産でございますから、かなりの期間をかけて償却をしていく。したがって、総体としてみれば費用は軽減をされる。それは利用者の保管料が従来の保護預かり料に比べて軽減をされるという形で利用者に還元をされる、そういうふうに期待をしておりますし、そうでなければならないというふうに考えております。
  187. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いろいろ聞きたいことがたくさんあるのですけれども、私の時間はもうじき切れてしまうので、最後に、これからの中小証券会社——大証券はなかなかいい、また、一説によると非常に小さいものはそれだけにまた小回りがきく、中堅が非常に困ってくるのじゃないかという話もございますので、その辺について、大蔵省としてどう指導していく、と言ったら変ですけれども対処していくのかということをお聞きしたいと思います。
  188. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 中小証券問題というのは、証券行政の中でも長年課題になってきている問題でございまして、いろいろな手は打ってきております。  基本的な考え方を申し上げますと、小証券の場合は大証券に比べましてかなりきめの細かいサービスができるわけでございまして、そういった意味で、大証券にはない、特色のある営業をやるということが一つの方向だと思います。ただ、それだけではなかなかやっていけない面もございますので、最近、機械によって処理がなされる中国ファンド等の信託を含めて累積投資業務というのがございますが、これの基準を緩和をいたしまして、中小証券も大証券と同じように、そういった大量の商品を扱えるような方向で昨年来いろいろ基準を緩和してきております。これらによって中小証券も、最近の市場の好調という要素もございますけれども、直近の収支状況で見ますと、かなり好転をしてきております。
  189. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では最後に、これはちょっと話が飛ぶのでございますし、この間玉置委員からも話があったのでございますが、電電のいわば民営化に伴う電電株の上場の問題。これはやはり私どもの方にもいろんなところから、これは非常に慎重にやらなくちゃいけないのじゃないか、特に政治的な絡みもあるし、含み資産を全部吐き出しても困るし……。証券界、これは何と申しますか、今の議論からいえば喜んで消化すべきものかもしれませんけれども、それについていえば、郵政省はどの程度今考えているのか。そして、ひとつ大蔵大臣にお願いしたいのでございますが、これがいろんな問題を起こさないような形でしていただきたいということで、私の質問を終わらせていただきます。
  190. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 現在のところ、新しくできます電電の新会社株式をどういう形で民間に放出していくか、具体的な案ができているというふうにはまだ聞いておりませんので、余り具体的なお答えはできないのでありますけれども、実際に市場に放出をされていく場合には、当然のことながら、幹事会社というものが絡んでまいりますし、そういった幹事会社の判断のもとに、市場に混乱を起こさないようなやり方、あるいは手順を踏んで行われることになると思いますので、御趣旨の点は十分体して、これからもし関係してくる側面があれば対応してまいりたいと考えております。
  191. 五十嵐三津雄

    ○五十嵐説明員 この国会に日本電信電話株式会社法案を提出いたしておるわけでありますが、この会社の発足は、法案の制定の内容からは六十年の四月一日というのを予定させていただいているところでございます。今お答えがありましたように、新会社株式というのは、発足当時は政府が全株を保有するということにいたしております。したがいまして、これを処分していくということに当たりましては、その限度数につきまして、国会の議決を経るというようなことで慎重に対処していく必要があるというふうに考えておるところでございます。  なお、具体的な処分の計画につきましては、今後の検討課題であるというふうに認識しているところでございます。  なお、先生から御指摘がございましたように、政府の保有するこの新会社株式を具体的に処分するに当たりましては、株式市場全体に与える影響あるいは混乱というようなことも十分留意しながら、慎重に行う必要があるというふうに考えているところでございます。
  192. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これをもちまして質問を終わります。
  193. 瓦力

    ○瓦委員長 蓑輪幸代君。
  194. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 振替決済制度そのものは、具体的には昭和四十年代後半から東京証券取引所では、関係当事者間の契約に基づきまして、部分的に既に実施されている。そして現在、日本証券決済株式会社がその業務を行っているということでございます。今回、本法案では保管振替機関が公益法人として発足することになるわけですけれども、この新しい公益法人保管振替機関日本証券決済株式会社との関係というのは一体どんなふうになって、どういうふうに推移していくのだろうかということを最初お尋ねしたいと思います。
  195. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 現在、東証の子会社でありますいわゆる日証決が行っている業務のかなりの部分が、本制度がスタートをいたしますと新たにスタートをいたします機関業務の方に移ると思います。若干本制度に加入しないものがあって、その部分が残るということはあるかと思いますが、多くの部分は移行していくことになると思います。ただ、新しくできます機関が自分自身の手でどの程度現実の業務処理していくか、どの程度これを委託していくかということは、これから具体的な検討の段階で決めていくわけでございますので、その委託の一つの対象として、日証決も観念的には考えられるんではないかというふうに思っております。
  196. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうしますと、この日本証券決済株式会社というのはそのまま残っていって、そして公益法人との新たな関係を持っていくという方向になるような感じもして今お伺いしたのですけれども業務のかなりの部分が移行していくということになって、そうしますと、労働者の雇用問題というのは一体どうなるのだろうかというのが一つ不安材料としてあるわけです。身分の点でも違ってくるようにも思いますし、そういう点で、従来の株式会社の労働者の雇用問題ということで不安のないようにしていただかないといけないと思いますが、その辺の配慮はどうなるのでしょうか。
  197. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 最前お答えいたしましたとおり、日記決の方も本制度に加わらない現物部分が残りますので、会社としては存続することになると思います。ただ、業務量の変化というのは当然起こるわけでございますので、御指摘の雇用問題等は、日記決に限らず、これによって業務量が変わってきます取引所等と共通の問題として出てくると思います。それらについては、できるだけ混乱が起こらないような方向で関係者の間でよく相談をしながら、業務の配分とか職員の配置の問題であるとか、今後煮詰めていくべき問題であると考えております。
  198. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今お話しの、この日本証券決済株式会社だけにとどまらず、取引所でも仕事の変化に応じて労働者の雇用問題というのは起こってくるというお話ですけれども、これに関連して、東京証券取引所の方でも何らか特別な配慮をしていただかなければならないということもあるかと思いますが、その点に関して千野さんの方からでも、心構え等についてひとつお伺いできればありがたいと思います。
  199. 千野宜時

    千野参考人 お答えいたします。  新しい制度ができますときには必ずどこかで雇用問題が起こってまいりますので、雇用問題を顧慮することなしに新しい制度が展開することはあり得ないと思っております。したがいまして、今どこでどうということは、かくかくしかじかということについて御確約はできませんし、またそれほど賢くもありませんけれども、雇用問題への顧慮なしに新しい制度改革があることはありません、革命でもない限りなかなかできないことでございますので。  お答えになりますかどうかわかりませんが、十分頭の中に入れております。
  200. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 大変深刻な問題であろうかと思いますので、ぜひ適切な対応をお願いしておきたいというふうに思います。  それから次に、保管振替機関業務について、第四条の二項で、「業務の一部を、主務大臣の承認を受けて、他の者に委託することができる。」というふうにしておるわけですけれども、どのような業務をどんな機関に委託するのか、そしてその際の委託の基準などについてはどのようなものが考えられているのか、お伺いしたいと思います。
  201. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 お答えいたします。  具体的にこういう業務はどこにということを申し上げられる段階にございませんけれども、ごく一般論として申し上げますと、この業務の中心部分は商法の特例的な措置との関連をかなり含んでおりますので、そういった中心部分は、今度できます新しいセンター自体で処理をする必要があろうかと思います。それ以外の機械的な処理の部分、これは現在そういった業務を行っております、先ほど言及された日証決を初めとして、証券代行会社でありますとか証券代行業務を扱っている会社、そういったところにできるだけ委託をしていきたいというふうに、一般論としては考えております。
  202. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 この保管振替機関が公益法人として大臣の監督のもとに置かれるということになるわけですけれども、それがいろいろな意味で委託、委託で、結局しり抜けになってしまっては何もならない。したがって、最も肝心な部分といいますか、特にプライバシーの問題等にもかかわることが間々起こってくるだろうというふうに思うのですけれども、そういう点でのプライバシーの保護というようなことについては十分御配慮をいただけるものと思いますが、その点について確認的にお伺いしたいと思います。
  203. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 本来商法の特例的な部分、つまり本質的な部分の業務はセンター自身で処理をすることを考えております。そのセンター自身の処理いたします業務の中に、御指摘のように個人の財産に関する部分があるわけでございまして、その点については法律上センターに対しまして守秘義務を課して、御指摘のような懸念がないように対処をいたしております。
  204. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 次に、参加者の問題ですけれども、六条で参加者が一項に掲げられておりますけれども、ここでは「証券会社」「銀行」というふうに書いてあるわけで、証券会社は、参加を希望すれば、その規模あるいは内容等にかかわりなく、すべて参加が可能であるのかどうか、あるいは何らかの制限が設けられるのかどうか、その点ちょっとお伺いしたいと思います。
  205. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 法律上、証券会社が希望すれば全部参加できるようになっておりますが、ただ当面スタートの直後、非常に小規模の証券会社の場合に、直ちにこのセンターとの間で、センターが予定しておりますような事務処理を行う能力のない小さな地方の証券会社もあるわけでございます。そういったところは、直接参加者にいきなりなるよりは、私ども間接参加と言っておりますが、どこか東京の大きな証券会社を通じて参加していただくというやり方も検討した方がいいのではないかなというふうに考えております。しかし、将来的には全部参加をしていただくということで、そういった事務能力を備えていただくという方向で指導してまいりたいと思っております。
  206. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうしますと、法文上は別に参加資格に制限はなくて、ただ事実上要求される事務がこなせない中小業者は参加ができなくなろう、そしてそういうところへの救済といいますか、事実上の参加が可能であるようなふうにするには間接参加ということをお考えになっているというふうですけれども、建前上可能であるということならば、実際上そういう事務ができるように条件を整えていくということが肝心であって、できない中小業者は参加を間接参加だけに限られてしまうということになると、現状でも中小はなかなか競争の中で取り残される危険が大きいのに、ますますコンピューター化が進む中で一層取り残されて、経営危機に陥るということになりはしないか。したがって、そういう参加が可能であるような条件づくりというものを、業界全体でどう担保していくかということも要請されるのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  207. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 ちょっと先ほどのお答えが舌足らずであったかと思いますが、事務処理能力の問題と同時に、反面直接参加をいたしますためにはそれ相応の費用がかかります。小規模の証券会社の場合には、お客さんの数は少のうございますので、そういった費用を払うよりは、間接的に参加をした方が安い場合があり得るわけでございます。しかし、あくまでも間接参加というのは変則的な形でございますから、先ほども申し上げましたように、できるだけ必要なコンピューター等も整備をして、直接参加していただくことが望ましいと私どもも思っておりますし、そういった方向で業界においても指導はされていくと思いますが、直ちに最初からそういった機械を完備してかなりのコストをかけて参加するよりは、むしろ安い経費で間接参加の方がいいという段階があるかと思います。将来的には全部参加していただくということで考えております。
  208. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうしますと、将来すべての証券会社が参加者としてこの制度の利益を享受することができるという方向に向かっていくためには、中小の場合、暫定的な措置というのはあろうかと思いますが、業界として証券業協会の会長さんは、業界全体がこういう制度に参画していくための中小への援助措置等について、考慮していくというようなこともお考えになられるのかどうか。証券局長さんの方はそういう方向で指導するというふうにおっしゃいましたけれども、協会としての受けとめ方はいかがなんでしょうか。
  209. 渡邊省吾

    渡邊参考人 ただいまの御質問でございますけれども、先ほど申し上げましたように、これは投資家、発行会社あるいは特に我々証券会社にとって非常にメリットのある制度でございますので、私、実は先週あたり地方の証券会社とも懇談をいたしましたが、昔この法案の成り行きに非常に関心を持っておりまして、もちろん参加したいという強い意思を持っておりますので、特別なことなしにでもかなりのメリットがありますから、皆熱心に参加するものと思います。もちろん具体的な問題がはっきりしませんから、そういう意味では抽象的なといいましょうか、そういうことではございますけれども、参加意欲は非常に強うございます。
  210. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 意欲があるということで、あとはそれにふさわしいだけの手だてがとれるかどうかということであろうと思いますので、今後希望者にはそういうことが可能になるように積極的な施策をお願いしたいと思います。  それで、これに関連してほかの点を幾つかお聞きしたいと思っておりますけれども証券事故に関連してですが、最近は幾らか減少しているというようにも報告されておりますけれども、それでも年に百件前後ということで、この証券事故の内容というのが、発表されているものだけを見ましては非常に明確ではないわけで、この際、証券事故の内容についてもう少し詳細に公表されるべきではなかろうか。見てみますと、大ざっぱなまとめみたいなものはあるのですけれども、どんな内容で事故が起こっているのが多いのか、あるいはどうすればこの事故防止が可能なのかというようなことまではちょっとわかりかねる部分もありますので、できればこの証券事故全体について詳細を明らかにすべきではないかというふうに考えますが、証券局としてはどうでしょうか。
  211. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 証券事故を減少させるための努力あるいは対策というのは私どもの重要な仕事でございまして、かねてから力を注いできておるわけでありまして、その結果として、多少ではございますが、減少はいたしております。ただ、経済規模が大きくなったために、一件当たりの金額がかなり大きくなっていく傾向がございまして、金額的に見ますと必ずしも減少はしていないという状況だと思います。  しかしながら証券会社自体も、内部管理体制の確立も含めまして非常な努力をしておりまして、かつての一時期に比べますと、証券会社そのものに対する社会的な信用もかなり向上してきているのではないかと私どもも思っております。しかし、まだ完全になくなっているわけではないわけでございまして、これからも事故をできるだけ減少させるべく、いろいろな手だては講じていきたい。  私ども一番頭が痛いのは、一つは電話が非常に発達をいたしまして、電話で商売をするということが多いわけでございますね。そうしますと証拠が残らないものですから、電話で注文をして、うまくいったときは何も問題が起こらないのですが、結果が悪いと、頼んだとか頼まなかったとか、売れと言ったとか言わなかったとか、そういうたぐいの事故がかなりふえてくるわけでございます。  事故の中身についてもうちょっと詳細にというお話でございますけれども、これは企業自体の、あるいはお客さん自体の財産の内容にもかかわる問題でございますので、おのずから限度がございますが、例えば抽象的なケースとしてどんなケースがあるのかというような御説明であれば、御要求があればまた担当の者を先生のところに伺わせるようには配慮したいと思うのですが……。
  212. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 「証券局年報」を見ますと、事故の内容については「顧客口座等を利用した自己思惑売買や受渡しのため顧客から預かった有価証券等の横領等で、事故の動機としては、事故者本人の自己思惑売買の損失補填のため、成績向上あるいは遊興費捻出のため等があげられる。」というふうに記述してあるわけですけれども、大体何件ぐらいがそういうものに当たるのかというようなことも、これではちょっとわかりかねるわけで、一番多いのは一体何なのか、それをなくすために抜本的な手だてというのは何なのかというようなことも、ちょっとこれだけではうかがい知れないわけですね。いろいろ聞いてみますと、過大なノルマの設定というような問題も指摘されておりますし、大衆投資家の意向を無視した回転売買というようなものも言われて、そんなものが証券事故発生の原因のかなりの部分を占めているのではないかというふうにも思われるわけです。  そこで、一九八三年の二月に全国証券労働組合協議会というところが、「営業の在り方に対する提言」というのを発表しております。ここでは「目標管理(ノルマ)について」、それから「「新商品」の販売について」「労働時間について」「異動と転勤について」ということで、それぞれ幾つか述べられておりますけれども、「目標管理(ノルマ)について」というところでは、「過大な目標設定や、その「目標」の納得のいく実現方法を示さない現在の「目標」管理をやめること。」とか、それから「事実上投資家の意向を無視した回転売買・仕切り販売をしなければ達成できないようなノルマの押しつけをやめること。」「営業マンの自主性を無視したノルマ達成のための個人責任の追求や、人事権を利用した脅迫的言動や人格を傷つける暴言をやめること。」「証券事故については、まず会社の責任で当該顧客との折衝をおこなうなど解決を図ること。」など提言がされているわけです。  これについては証券局としても御存じかと思いますけれども、まず最初に、証券業協会の方としてはこの提言をどのように受けとめておられるのか、お聞かせいただけたらありがたいと思います。
  213. 渡邊省吾

    渡邊参考人 これは証券業協会の非常に大切な課題でございまして、年々この問題については文字どおり真剣に取り組んでおります。法令等の規制のほかに、自主的に証券従業員に関する規則という諸規則を制定いたしまして、従業員の規律の高揚を図っております。そしてまた、機会あるごとに注意を喚起しておりますし、社員研修というのを業界の手で行いますし、それから投資勧誘態度、ただいま御指摘がございましたようなそういったものの適正化、従業員としてのモラルの高揚ということに努めておる次第でございます。  証券会社各社におきましても、社内の管理体制を強化いたしまして、内部牽制組織を充実させる。それから証券受け渡し保管管理の適正化というようなことが事故防止の上に非常に有効であるということで、それに力を入れておるわけでございます。  当然のことでございますけれども証券界としては信用を基盤にする仕事でございますので、今後とも投資家本位の営業姿勢を一層徹底いたしまして、今御指摘のノルマといったようなことは、現在は各社ともそういったやり方をとっておりません。投資家本位の営業ということで、着実に営業を進めていくという方針をとっておりますので、今後も引き続き証券事故の防止に努めたいというふうに考えております。
  214. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 これに対する証券局としての御見解も伺いたいと思います。
  215. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 もちろん最前から申し上げておりますように、証券事故をなるべく少なくしていく、仮に事故が発生いたしましても、できるだけ早期にこれを発見いたしまして厳正に処理をしていくということが、証券会社に対する信用を増大させる道でもありますし、同時に投資家の保護に通ずることだと思っております。したがいまして、一方では、たしか四十九年ごろ通達を出したと思うのですが、御指摘になりましたようなノルマを課して営業活動させるというようなことは自粛するような通達を出しておりますし、それから内部管理体制の確立ということで、できるだけ早くそういうものを発見できるようにする。発見されやすくなれば、そういう行為も減るわけでございますので、そういったことで今後も努力は続けていきたいと思っております。  同時に、外務員の資質の向上というのも必要だと思いますので、その辺は証券業協会の仕事として、外務員登録のあり方の問題、今後も一層努力をしていっていただきたい、こういうふうに思っております。
  216. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 次に、再三言われておりますように、地方地場証券市場というものの地盤沈下が進んでいる。この問題についても、昨年の二月に全国証券労働組合協議会は、「中小・地場証券の経営と労働者の生活を守るために」という提言をやはり発表しているわけです。ここでは、中小・地場証券の経営危機の原因、それから危機打開の方向、そして危機打開のための提言ということで分析がされております。経営危機の原因というのはさまざまあると思いますけれども、協会としてどのようにそれを受けとめ、その危機を打開して振興策をどうしていくべきか、それから証券局としてはそれをどのようにお考えか、順次お聞かせいただきたいと思います。
  217. 渡邊省吾

    渡邊参考人 お答えいたします。  地方証券会社は、従来からもそれぞれの地域に密着した営業活動を行っておりまして、それぞれ特色のある経営を行っていると思います。特にこういった会社につきましては、近年累積投資業務ですね、さっきちょっとお話が出ておりましたが、それから累積投資の代理業務というものを認められまして、そういったような仕事で、今までの仕事にさらに業務拡大するというようなことも実現しております。  私ども証券業協会では、従来から、全国に十の地区協会がございますが、その地区協会の正副会長で構成しております地区懇談会というのがございまして、地区正副会長懇談会と申しますが、その地方の証券会社や中小証券に関する地場の証券会社の問題につきまして、各地区から非常に細大、細かいのもございますけれども、要望や希望を集めまして、これは毎月やっておるわけでございますが、いろいろな改善策を講じて、先ほど申し上げました累積投資の代理業務等も実現しているということでございますし、また要望を大蔵省に取り次いたりして、いろいろ苦心しているわけでございます。  しかし、これからいろいろな変化がございましょうから、地方やそういった地場証券環境は非常に厳しくなるというふうに思いますけれども、そういう点につきまして一層配慮をいたしまして、非常に小さな、経営基盤のまだ弱いといったようなところも事実上ございますから、その人たちの身になって問題を考えていって対処したいというふうに考えておるわけでございます。
  218. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 協会長のお話に大体尽きていると思いますが、そういったようなことで、いろいろな手は打っております。  株式の委託売買で見る限り、本省管理会社がいわゆる大証券、それから中小証券は財務局管理会社でございますが、その二つに区分をしてシェアを見てみますと、十年前と今日とで、株式売買に関する限りはシェアは動いておりません。ですから、特に地場証券のシェアが低下しているということはないわけであります。ただ、証券業務全体の中で株式以外の業務のウエートが高くなっております。その点については、協会長から申し上げましたように、累積業務について中小証券が参加する方途を講ずることによって、何とか地盤の沈下を食いとめたいというふうなことで考えております。  しかし、いずれにしても、証券の業界だけではなくて日本経済すべてそうでありますけれども、すべてが東京に集中をしているという傾向が顕著でありますので、その点は午前中にございました問題提起も含めて、非常に大きな将来的な課題として考えていかなければならないのかなというふうに考えております。
  219. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 最近、株式手数料の自由化問題がいろいろ論議されておりますけれども、大きな証券会社あるいは機関投資家というところでは、大変切実な問題として論議をされております。その際に、中小証券会社等がどのような影響を受けるのかというようなことも問題になるでしょうし、一般的にで結構ですが、時間も余りありませんので、簡単に株式手数料の自由化問題について、関係者と証券局がどのようにお考えか、一言ずつお聞かせいただきたいと思います。
  220. 佐藤徹

    佐藤(徹)政府委員 余り簡単に申し上げますと誤解を生ずるので、ちょっと時間をいただきたいのですけれども、手数料の自由化の問題、最近時々新聞や雑誌で議論されておりますが、これは二つちょっと申し上げたいと思うのです。  最近の議論は、金利の自由化が行われるのだから、イコール手数料の自由化ではないかという問題の提起があるわけでございます。これはある意味では当たっている部分もございますが、必ずしもイコールではないと私ども考えております。と申しますのは、金利の自由化が今なぜ求められているのかといいますと、これは金利が市場の商品を規制をしている、したがって市場の商品の弾力性をかなり失わせているという側面があって、そういった面もあって自由化が求められているのだと思いますが、証券会社の手数料の場合は、証券業界の商品も、これは金利で動いているわけでございまして、その意味では既にかなり自由になっておるわけでございます。ですから、手数料の問題は、証券会社自体の収入のあり方の問題、これは金利もそういう側面を持っていますから、その限りでは共通の側面があるわけでございますけれども、必ずしも全体としてイコールではない。  そこで、今の日本の手数料体系についてどう考えるかという次の問題になりますが、アメリカが何年か前に自由化いたしました。その結果として、全体の水準は確かに若干下がりました。しかし、階層別に見ますと、大口の取引についての手数料はかなり低下をいたしましたが、逆に、小口のものは上昇いたしております。そういったこともあって、手数料の完全自由化についての評価は、アメリカでも必ずしも画一的ではない状況でございます。  さはさりながら、大口の機関投資家のなるべく手数料を安くという御要求、これは当然のことでございますので、過去においても、そういった点も踏まえまして、証券会社の収入の状況も考えながら、手数料の見直しというのは何回かやっております。これからも、そういった意味での手数料の見直しというのはやっていかなければならない、そういうふうに考えておりますが、必ずしもそれが、完全な自由化がいいのかどうかという点は若干問題があるのではないかというふうに私は考えております。
  221. 渡邊省吾

    渡邊参考人 私の申し上げようと思ったことを証券局長がずばり言ってくださいまして、同じことを繰り返すような感じでございますけれども、自由化の問題、手数料の自由化と手数料の見直しとは全然別でございますから、その点をはっきり申し上げたいと思うのです。  手数料の見直しというのは戦後五回もいたしております。それは環境の変化や市場の状況によって見直されておるのでございますね。しかし、手数料の自由化と申しますのは、全く御承知のように、これは繰り返すまでもありませんが、証取法で手数料は固定的になっておりまして、取引所の受託契約準則で表ができております。その手数料を徴収しなければならないというふうになっておりまして、それの違反の禁止規定までございます。御存じのとおりでございます。したがって、それを見直すということは、今まで五回もやっておるわけなんですけれども、自由化と申しますのは、欧米で実現しましたように、これは随分長いこと、十年がかりでアメリカなんか自由化したわけですけれども、その結果は投資家にとっても、ただいまのお話がございましたように必ずしもよくなかったという面もあると思うのです。非常な混乱を招いたということと、それから小口の投資家なんかの手数料はかえって上がっておりますですね。そういう点もございますから、いろいろの批判の余地があるのじゃないかと思います。  それともう一つは、やはり欧米の場合には独禁法の問題からスタートしてそういった自由化が進んだという点も違っておるわけです。日本は独禁法適用除外でございますから。そういう点もございまして、自由化問題については必ずしもメリットばかりではないんじゃないかというのが率直な感じでございますが、今、日本の手数料は、大口の方も割引になるようになっておりますけれども、その割引の度合いなんかについて議論があれば、これは議論の余地があるのじゃないかとは思いますけれども、繰り返しますが、自由化と手数料の見直しとは別のものでございます。
  222. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 ありがとうございました。手数料自由化問題については今後論議が進められるというふうに思いますので、またこれからも論議したいと思います。  最後に大臣、一言だけお伺いしたいのですけれども、今度の新しい制度のもとでいろいろとメリットが言われておりますけれども、同時に、先ほど来私がちょっと申し上げましたように、労働者にどういう影響があるのか、あるいは中小証券にどういう影響があるのか、それから個人投資家にどんな影響があるのかというようなことを考えてみますときに、もろ手を挙げて万々歳ということばかりでもないようにも思います。そこで、そういう方々の利益、権利等々にも十分配慮しながらこの運用を図っていただかなければならないと思いますので、その点に関しての大臣の御決意を伺って終わりたいと思います。
  223. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに本法律が通って、そうしてそれが実行に移されれば、投資家に対してもメリットはあるだろう、関係者に対してもメリットはあるだろう。しかし、いつの場合でも、こういう変化の際には、特に労務問題等に対していろいろ問題が起こります。そういうものが十分この新しい制度の中でまた消化していけるような工夫は、当然関係者の皆さん方と協議していかなければならない問題でありますし、その他個人投資家あるいは中小証券等に対する影響についても、十分関心を持って対応すべき課題であるという認識をいたしております。
  224. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 参考人の方々、遅くまで本当にありがとうございました。終わります。
  225. 瓦力

    ○瓦委員長 参考人の皆様には、長時間にわたり御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  226. 瓦力

    ○瓦委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  株券等保管及び振替に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  227. 瓦力

    ○瓦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  228. 瓦力

    ○瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  229. 瓦力

    ○瓦委員長 次回は、来る十一日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十一分散会