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1984-04-20 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十日(金曜日)   午前九時三十分開議  出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       平沼 赳夫君    村上 茂利君       森  美秀君    山岡 謙蔵君       与謝野 馨君    上田 卓三君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    堀  昌雄君       柴田  弘君    矢追 秀彦君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵省主計局次         長       保田  博君  委員外出席者         参  考  人         (財政制度審議         会委員)    宮崎  仁君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  草場 敏郎君         参  考  人         (立教大学経済         学部教授)   和田 八束君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 四月二十日  株券等の保管及び振替に関する法律案内閣提  出第七一号)(参議院送付) 同月十九日  不公平税制是正等に関する請願河上民雄君  紹介)(第二九一五号)  同(沢田広紹介)(第二九一六号)  同(富塚三夫紹介)(第二九一七号)  同(日野市朗紹介)(第二九一八号)  同(前川旦紹介)(第二九一九号)  同(水田稔紹介)(第二九二〇号)  同(武藤山治紹介)(第二九二一号)  所得税大幅減税等に関する請願外三件(藤田  高敏紹介)(第二九二二号)  同(宮地正介紹介)(第二九二三号)  同(渡部行雄紹介)(第二九二四号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願工藤晃紹介)(第二九二五  号)  旧南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の  処遇改善に関する請願奥野誠亮紹介)(第  二九二六号)  同(森下元晴君紹介)(第二九二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置等に関する法律案内閣  提出第三号)      ————◇—————
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。  これより、本案について、参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席をいただきました参考人は、財政制度審議会委員宮崎仁君、全国銀行協会連合会会長草場敏郎君、立教大学経済学部教授和田八束君であります。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、御意見十分程度にお取りまとめをいただき、その後委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず最初に、宮崎参考人からお願いいたします。
  3. 宮崎仁

    宮崎参考人 宮崎でございます。  私は、財政制度審議会委員として、この委員会参考人としての意見を陳述しろというふうに言われたと考えておりますので、財政制度審議会における論議を通じてありました議論というようなものを御紹介申し上げまして、意見にかえたいと思います。  特にこの中で、今度の五十九年度の予算の編成に関連いたしまして、中期財政運営問題小委員会という委員会が設けられまして、ただいま御審議をいただいておりますこの財源確保法内容に関するようなことをいろいろ議論いたしておりますので、この小委員会の話を若干申し上げてみたいと思います。また、別途私は「一九八〇年代経済社会展望と指針」、いわゆる経済計画でございますが、この関係にも参画をいたしておりますので、その辺も加味して申し上げたいと思います。  まず最初に、現在の財政危機が起こった背景あるいは経緯ということに関して、若干申し上げてみたいと思います。  第一次石油危機以来十年、この間に御承知のとおり非常に大きな財政赤字累積をいたしまして、公債累積額が百二十兆円にもなるというような状況になったのでありますけれども、この第一次石油危機以来の我が国経済運営という点で考えてみますと、御承知のとおり、諸外国に比べまして我が国は最もいいパフォーマンスを残したというふうな評価を受けておると思います。すなわち、不況の関係についても、あるいはインフレの克服についても、国際収支の回復につきましても、最もいいパフォーマンスを残したと言っていいだろうと思います。ただ、その結果がこのような非常に大きな財政上の赤字を生じたという点に問題がある、こういうふうに考えております。  このような財政赤字がどういう経緯で生じたかということは、申し上げるまでもありませんけれども経済成長率を上げる、あるいは失業というような問題を考えて財政政策をとっていくということで、昭和五十年度以降数年にわたりまして、大幅な公共投資増加中心に積極的な財政支出拡大を図った、このことが最も大きな原因であると言っていいだろうと思います。そして、このような政策がとられた背景としては、いわゆる世界経済を引っ張る「機関車論」というような関係で、国際的な要請があったことも事実でありますけれども、一面では、こういった財政支出拡大によって成長率を高め、その結果また税収増加としてはね返るというフィスカルポリシーの考え方があったということも考えなければならないと思います。  しかし、このようなケインズ的な財政政策というのは余り有効に働かなかった、公共投資波及効果も予想したほどではなかったというようなことから、需要拡大効果は期待したほどにあらわれなかったということであろうと思います。一方では、高度成長からいわゆる安定成長あるいは低成長と言われる時代に移行していくにつれまして、経済の実体がソフト化サービス化と言われるような構造的な変化を起こしておる、こういうことについてのいわば対応といいますか、見通しが不十分であったために、これに適応したような政策が必ずしもとられなかったということがあろうと思います。特に昭和五十六年度及び五十七年度の税収額の大幅な落ち込みによる歳入欠陥の問題は、単に経済見通しにおける成長率とかあるいは当初予算で予定した名目成長率が実際に落ち込んだというようなことだけでは説明できないと思いまして、結局こういった構造変化によるタックスベースの構造的な変化というようなことを考えなければならないのじゃないかと思う次第でございます。  これは私ども議論の中でも、この経済見通しなり経済計画がむしろ誤っていたためにこういった状態を生じたという意見がいろいろございます。確かにそういう面もあるわけでしょうけれども、それだけで議論をするのはちょっとどうであろうかということで、私の意見をちょっと申し上げてみた次第であります。  そこで、中期的な財政運営の問題でございますが、これについては、昨年夏に、中期財政運営問題小委員会というものが設置をされました。これは委員長桜田財政審議会会長でありまして、あと七人の委員で、比較的小人数で組織をいたしまして、かなり集中的な審議を行ったわけであります。その結果は「中期的財政運営に関する諸問題についての中間報告」ということで、一月十八日に財政制度審議会から報告が行われております。ごらんになっておられると思いますが、この内容で若干議論になった点を少し申し上げておきたいと思います。  この中間報告は、大きく分けまして三つの部分に分かれております。第一が財政改革必要性、第二が財政改革過程における特例公債償還財源問題、今法律で御審議を願ういわゆる借りかえの問題でございます。それから第三に、財政改革を進めていく上での基本的な諸問題として中期的な財政見通しの問題を議論しております。  このうちで、まず財政改革必要性に関連いたしまして、現在の財政赤字というものについてどう考えていくかということで、いろいろの議論がございましたが、特に議論として、中でもかなり熱心な討論が行われました点は、二つほどあったかと思います。  一つは、こういった大きな財政赤字というものがこのまま放置できないということは異論のないところなんでありますけれども、それを今後の経済運営でどういうふうにして克服していくかということに対して、一つ議論としては、むしろ積極的な財政運営をやって、それによって経済拡大していく、その結果として税収増が期待できる、こういうことでむしろ拡大均衡的な措置をとるべきではないかというような議論がいろいろありますが、こういうことについては、やはり先ほど申しましたような乗数効果が下がっておるとか、財政効果というものが予想されたほどにいかないというような状況から見て、これはやはりとるべきではないということが私ども結論であったわけであります。  それからもう一つ議論がありましたのは、貯蓄投資とのバランス論SIバランス論というのがございますが、これについてはやはり我が国貯蓄率が高いのだから、これを有効に使うためには財政赤字を生じて、そして公債を出していくことがいいんじゃないかというような議論もあるわけでありますけれども、これはむしろ事後的な関係因果関係と置きかえた、やや混同した議論だということで、こういう議論はとるべきでないということにいたしたわけでございます。  それから第二の問題で、特例公債償還財源問題でありますが、これは今後の財政需要の面あるいは歳入の面というようなところをいろいろ考えてまいりますと、極端な歳出カットをやるか、あるいは増税をやるというようなことでなければ、とても特例公債を、いわゆる現金償還という形で六十年度以降やっていくわけにいかないということから、やはり借換債発行を行うという方針に切りかえることはやむを得ないという結論になったわけであります。その場合、特例公債償還国債整理基金特別会計でやっていくことがいいのではないかというような結論を出して、そういう報告にいたしております。  それから、今後の財政運営問題については、既に大蔵省の方から「中期展望」あるいは試算が出されておりまして、皆さんもいろいろと既に内容を御議論になっておられると思いますので、私から特に申し上げませんけれども、いずれにしても最近十年間で租税負担率社会保障負担合わせまして七から八%ぐらい負担増加いたしております。  こういう状況で今後どういうふうに考えていくかという場合に、二つ規範があると思います。  一つは、臨調答申の方で、国の一般会計歳出の伸びは名目成長率以下にとどめるということが言われておりまして、もしこれによって運営していけば、負担増加というのはないことになりますが、これが一つの縛りであろう。  それから一方、それでは増税というようなことは全くやらないでやれるのかどうかということについて、これも臨調答申内容でありますけれども租税負担社会保障負担を合わせた全体としての国民負担率現状三五%程度だそうでありますが、これを二十一世紀という若干長い先を考えた場合に、ヨーロッパ水準の五〇%前後まではいかない、それよりはかなり低く、四一%とか四五%とかいう数字が言われておりますけれども、その程度にとどめるべきであるということが言われております。  こういった二つ規範というものを考えながら、今後の財政運営というものを見通してみますと、かなりシビアなものにならざるを得ない。したがって、歳出カットについては今後とも相当大きな努力が必要だというようなことで私ども中間報告も結ばれておるわけでございます。  若干時間を超過して恐縮でございましたが、以上、思いついたままを申し上げまして、意見にかえさせていただきたいと思います。(拍手)
  4. 瓦力

    瓦委員長 ありがとうございました。  次に、草場参考人にお願いいたします。
  5. 草場敏郎

    草場参考人 ただいま委員長から御指名をちょうだいいたしました、全国銀行協会連合会草場でございます。  きょうは、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案に関しまして、私ども意見を申し述べるようにとのことでございます。  そこで、まず五十九年度の予算についてでございますが、歳出面につきまして結論的に申し上げますれば、一般会計から国債費地方交付税交付金を差し引きました一般歳出予算が三十二兆五千八百五十七億円、五十八年度当初予算におきます一般歳出に比べまして〇・一%の小幅とはいえ減額されている点は、財政当局の御苦心がうかがわれるところであると存じております。  一方、歳入面について見ますと、租税印紙収入及びその他収入を加えましても、実に十二兆六千八百億円という大幅な歳入不足が生じます結果、この分を国債発行に依存せざるを得ないこととなっておりますことは、引き受け消化を担います私どもとしましては容易ならざる事態と存じております。  五十九年度におきまして八千七百億円の所得税減税中心に一兆二千億円の減税が実施されますが、しかしこれと見合う増税法人税、酒税の引き上げ、あるいは物品税拡大によって実施されることとなっております。減税幅増税幅がほぼ見合っておりますので、臨時行政調査会答申の言ういわゆる「増税なき財政再建」の縛りが一応は守られたとは言えると思いますが、率直に申し上げまして、どちらかというと取りやすいところから取るというような感がなきにしもあらずと感じております。  今後を展望いたしますと、財政収支バランスを早急に改善することは非常に困難な状況にあるとの感を深めざるを得ないわけでございますが、臨時行政調査会答申の趣旨にのっとりまして、さらに歳出の抑制を図るとともに、長期的な観点に立った財政再建計画を確立されて、昭和六十五年度におきます特例国債への依存からの脱却をぜひ実現していただきたいと存じております。  次に、特例公債発行についてでございますが、五十九年度予算におきます六兆四千五百五十億円という多額の発行は、前年度比では五千二百五十億円減額されてはおりますものの、六十五年度を財政再建目標年度とするための目途であります毎年一兆円の特例公債減額が、今回は実現できなかったことは残念なことでございます。そもそも特例公債発行はあくまで臨時的措置でありますことから、今後は可及的速やかに何とか圧縮、解消を図ることをお願いいたしたいと存じます。  また、前年度に続き今年度も国債整理基金への定率繰り入れ等が停止されますことにつきましては、当面の財源難からはやむを得ざる措置とは存じます。しかし、あくまでも暫定的な措置とすべきであろうと考えております。  さらに、特例公債借りかえ禁止規定が削除されますことにつきましては、これも今申し上げました当面の財政事情にかんがみますれば、遺憾ながらやむを得ざる措置ではないかと存じます。  さて、この機会に私ども立場から、国債に関しまして若干の要望を申し上げさしていただきたいと存じます。  第一は、新規国債円滑消化を図っていく上で最も重要なことは、市中消化額を圧縮することでありますので、このためには資金運用部新規国債引き受け最大限の増額が望まれるわけでございます。  第二は、市場実勢を反映しました国債発行条件改定が望まれます。従来、ともすれば新発国債利回り低下局面では条件改定がスムーズに行われました反面、利回り上昇局面では条件改定が難航する場合が多くございまして、今後ともさらに改善が望まれるわけでございます。  第三は、売却制限の撤廃でございます。公社債市場の中核であります国債に、まだ売却制限が加えられていること自体が不自然と申さざるを得ないからでございます。  第四は、国債最大引受手でございます私ども民間金融機関資金吸収力の強化に、格段の御配慮をいただきたいと存じております。  このことと関連いたしまして、民間金融機関資金吸収郵便貯金等によりまして阻害され、国債引き受け能力が弱められておりますことは憂慮すべき事実でございます。郵便貯金肥大化の要因は、基本的には定額郵貯などの商品、税制面での一方的な優遇措置にあることは明白でありまして、郵便貯金個人預貯金に占めるシェアは、五十年度の二三・一%から五十七年度の三二%へ約八%アップしております反面、全国銀行個人預金シェアは、五十年度の三五・八%から五十七年度には三一・九%に低下しているわけでございます。したがいまして、郵貯懇報告とかあるいは臨調答申におきます郵貯見直し提言を十分に尊重されまして、早急に官業の民業圧迫を抑制されるべきかと存じております。  さて、国債消化をめぐります今後の最大の課題は、借換債消化問題でございます。  なぜこれが問題になるかと申しますと、御高承のとおり、資金運用部と日本銀行以外の満期到来国債保有者には現金償還がなされるわけでございますが、全国銀行などを中心といたします国債引き受けシンジケート団金融機関は、一たん引き受けて保有いたしました既発国債相当部分を、資金繰りの観点から既に売却してしまっております。五十年度以降五十七年度までの八年間に都市銀行引き受け消化いたしました国債累計二十一兆八千億に達しておりますが、五十七年度末の保有国債は六兆二千億円にすぎません。引き受け消化累計額の約七割を売却してしまっております。したがいまして、満期まで保有していた場合に受けられるはずの現金償還現実に受けることは非常に少ない結果となっております。五十九年度と六十年度の二年間に償還を要する国債は全体で十六兆四千億円に達しますが、このうち市中金融機関保有分は二兆六千億円と、全体の一六%にすぎないのでございます。  マクロ的に申し上げますと、借換債消化のための資金満期到来債償還金によって賄われるわけでございますから、プラス・マイナス・ゼロになりまして、消化は一応容易であるように言われております。しかし、ただいま申し上げましたとおり、現金償還を受ける大部分市中金融機関以外の法人個人でございます。一方、国債引き受けシ団を構成する市中金融機関は、新規財源債に加えまして、恐らく借換債引き受け消化にもその中心的役割を果たさざるを得ないことを考えますと、現実には新規財源債と借換債を合わせると、国債引受額は従来以上に巨額となりましょう。  そこで、もし一般法人個人満期国債と引きかえに手にいたしました償還資金が、市中金融機関資金吸収力が弱いために、借換債消化に見合う程度金融機関に集まらなかった場合には、金融機関資金ポジションの大幅な悪化が避けられないものとなるおそれが大きいのでございます。したがいまして、大量の借りかえが必至の現状におきまして、金融機関資金吸収力を強化することには、この際、格段の御配慮をお願いいたしたいのでございまして、この観点から、銀行預金との競合が特に強いと思われます短期国債発行につきましても、十分慎重な検討が必要と存じますので、この点もぜひよろしく御配慮をちょうだいしたいと存じております。  以上で終わります。ありがとうございました。
  6. 瓦力

    瓦委員長 ありがとうございました。  次に、和田参考人にお願いいたします。
  7. 和田八束

    和田参考人 立教大学和田でございます。当面の公債問題につきまして、簡単に意見を申させていただきたいと思います。  公債がかなり大量に累積をしておりまして、しかも大量償還時代を迎えたということにつきましては、今お二人の方からも具体的にお話がありましたし、この辺のところは国民もよくわかっている、共通の認識になってきているところだろうと思います。この国債大量累積の悪い影響というのは、なお具体的にあらわれておりません。インフレーションあるいはクラウディングアウトというふうに影響が言われているわけで、これらが我が国におきましてはまだ表面化していないということは大変結構なことですけれども、今後につきましてはそれほど楽観できないのではなかろうかというふうに思います。  さしあたっては大量償還の問題があるわけでありまして、定率繰り入れが行われてきていたわけですが、この将来見通しは余りありません。それから特別会計余裕金もだんだんなくなってきているということで、償還の問題というのが、財政的面から見ますとかなりシビアになってきているわけであります。  そういう条件のもとで、五十九年度におきましては幾つかの措置が考えられているわけでありまして、第一点といたしまして、特例債の継続的な発行ということになりますけれども、この点について見ますと、かつて大蔵省で算出されました中期見通しによりますと、五十九年度は特例債発行ゼロということで財政再建見通しが立てられていたわけですが、実際には五十九年度は前年度に比べまして五千億円程度減額にはなっているものの、この五十九年度ゼロという財政再建計画目的からいいますとかなり隔たりがあるわけでございます。この辺の理由はどこの辺にあるのか、将来果たして財政再建がなし得るのかどうかということをこの際明確にする必要があるのではなかろうかと思います。  次に、定率繰り入れの問題でありますが、定率繰り入れにつきましては、減債基金を維持するということが基本的な目的でありまして、これによって計画的な償還を行って、そうして赤字国債発行の歯どめにするという、いわば財政健全化ということを基本的な目的にしているわけでありますけれども、元来これは古典的な財政観に基づくものでありまして、諸外国にもほとんど減債基金につきましては例がございません。したがいまして、財政面で大きく犠牲を払ってまで定率繰り入れを続けなければならないという理由はありませんので、定率繰り入れを停止するということは妥当なことだろうと思います。むしろ将来にわたりましても、定率繰り入れ制度自体を見直すといいますか、廃止するということが妥当だろうと思いますけれども、それによる財源というものをどのように使うのか、減税あるいは国民の福祉というふうな積極的な面というものが明示される必要があるのではなかろうかと思います。  次に借換債の問題でありますが、特例債借りかえるということにつきましては、幾つかの側面から問題があろうかと思います。  第一に、財政面からいいますと、当面負担は軽減されるわけであります。現金償還がなされなかった分だけは軽減されるわけですが、将来にわたりましてはむしろ利払い費が増大いたしまして負担が増大するということは、政府仮定計算におきましても見られるところであります。そして、借換債も含めました借換債とそれから新発債との合計の発行額というものも増大いたしまして、これらが利子上昇原因になる。そしてさらに国債費の増大の原因になるということで、かえって財政悪化というものが将来に対して出てくるわけでありまして、当面、ここ一、二年の短期的な観点で長期にわたる財政悪化というものを招来するということになるわけであります。このところはかなり慎重にすべきでありまして、具体的には明確な財政再建計画を立てておかなければ、この点は禍根を残すということに相なろうかと思います。  次に経済面でいいますと、このように国債残高が逆に増大をするということによりまして、従来懸念されておりましたインフレーションあるいはクラウディングアウトの懸念というものがさらに一層増大するということになろうかと思います。  それから制度面といいますが法制面といいますか、こういう面から幾つか問題がございまして、一つは、特例債について借りかえを行わないというのは赤字国債に対する歯どめ策であったわけですけれども、これにかわる歯どめといいますか、これをどうするのかということであります。それから、従来言われてきた特例債と四条債といいますか、あるいは建設国債赤字国債といいますか、この区別を一体今後どういうふうにしていくのか。新発憤におきましても区別がかなりあいまいになってくるわけでありますが、借換債では一体どうなるのか、特例債の借換債は一体何債になるのかというふうなことが甚だ不明確でありまして、この辺のところはやはり制度上も明確にして、借りかえ後も赤字国債は明確にするということが行われるのかどうかということであります。これは例えば借りかえ割合がどれくらいになるのかということがわかりませんけれども、仮に建設債と同じように六十分の五十が借り換えをするということにいたしますと、この六十年間で償還するというのは、従来、建設投資償還背景にしてのものであるというふうに言われてきたわけですけれども、そうなりますと、特例債もやはりそういう実物資産の償還関係があるのかどうかというような問題が出てくるわけであります。  最後に、そのような現状認識がありまして、今後、この問題についてどう考えるべきかという点を幾つか、やや広い観点から申し上げておきますと、第一には、このような事態になった、つまり財政再建計画が、五十九年までの財政再建が行われずに、かえって将来に禍根を残すようになるということについての財政責任を明確化するという意味からも、この際、このような事態がなぜ起こったのかということを国民に明らかにするために、財政白書を政府は出すべきではないか。  その次に、第二点ですけれども財政再建がいつ、どのように行われるのかということを含めた財政計画を立てて、これを閣議決定するという形で、これも将来に対しても責任を明確にする必要があると思います。  それから第三点といたしましては、従来も言われてきていたわけですけれども、行財政改革をやはりもっと徹底するということでありまして、予算制度、税制面にわたる改革を行って、財政再建についての明確な具体策を立てるということであります。  第四点といたしましては、国債あるいは財政問題は、経済成長政策経済政策と大いにかかわり合いがあるわけでありまして、こういう経済政策のあり方というものについて、やはりこれも具体的な政策内容を明らかにする必要があるのではないか。  最後に、経済安定政策といいますか、インフレーションを抑制する、反インフレーション政策というものが今後重要な課題になってくると思いますので、これらについての政策の策定ということが非常に重要な課題になるというふうに考えているわけであります。  以上、簡単でありますけれども、申し上げさせていただきました。(拍手)
  8. 瓦力

    瓦委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 瓦力

    瓦委員長 これより、参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸田菊雄君。
  10. 戸田菊雄

    ○戸田委員 きょうは、参考人の皆さんには御多忙のところおいでをいただきまして大変ありがとうございました。若干の問題について質問をしてまいりたいと思います。  昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案内閣提出第三号)について、目下当委員会審議中でございますが、この法案の趣旨は、皆さんも御承知のとおり、「我が国財政現状にかんがみ、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源確保し、もって国民生活と国民経済の安定に資するため、」ということで、以下、大綱四項目の提案が行われておるわけでございます。その一つは、五十九年度における特例公債発行、二番目は国債費定率繰り入れ等の停止、三番目は日本電信電話公社及び日本専売公社の国庫納付金の納付の特別措置を定める、四番目が、五十九年度以前の各年度において発行した特例公債について、償還のための起債の特例を定めるものとする等々の内容が、現在出されておる提案の内容でございます。  そこでまずお伺いをいたしたいのは、五十九年度の予算の総額というものは、御存じのように五十兆六千二百七十二億円、名目の伸び率が〇・五%であります。これは昭和三十年度。マイナス〇・八%以来の低い伸び率であります。一般歳出、前年度比でもって三百三十八億円、これはいわゆる臨調答申に基づいて政府歳出カットした部分でございます。それから財政投融資計画は二十一兆一千六十六億円、対前年度比で一・九%増、逐年伸び率が低くなってきておるのであります。  以上のように、鈴木内閣以来、財政規模を圧縮することによって財政再建を図ろうというのが、今日までとってこられた政府の態度であろうというふうに見ておるわけでございます。しかし、そういうふうに規模縮小を図ってまいりましても、財政はまさに火の車、こういう状況現状状況であろうと思います。  それから五十九年度の歳入関係を見ますと、租税印紙収入、対前年度比でもって二兆二千八百十億円増、それから国債費は対前年度比で九千六百二十六億円の増、地方交付税交付金、対前年度比で一兆五千七百十二億円、政策的経費と言われる一般歳出に振り向ける経費は税外収入で賄うということで、電電公社や専売等から納付金として確保する、こういう態度で来ておるわけでございます。  それで、これまでの財政再建の足取りを点検いたしますと、毎年度政府が策定してきた財政収支試算あるいは財政中期試算等々では、今日まではおおむね歳出は抑制されてまいりました。しかし本年度の歳入状況を見ますと、極めてこれがかけ離れております。結局、財政再建というものが破綻を来しておるように思われてならないわけであります。こうした点からも、財政再建を実効あるものにするためには、私はここで徹底した歳入構造の見直しをやっていく必要があるのではないだろうか、こういうふうに考えますが、その辺の見解をお三人の参考人の皆さんにお伺いをしたいと思います。  殊に宮崎さんにはそのほか、現在財政制度審議会委員でもありますから、二点ほど質問をしておきたいと思うのであります。  それは、御存じのように租税負担現状の問題でありますが、これは「歳出総額に対する租税及び印紙収入の割合」ということで、大蔵省資料でありますけれども、これによりますと、おおむね四十年に八一・九%、これは歳出総額に対する租税及び印紙収入の割合でありますが、八一・九%。それから五十一年に参りますと六四%に落ちてまいりまして、五十二年、三年、四年、五年というぐあいに漸次微減の傾向にあったわけでありますが、ようやく五十七年ころからこれが漸次上昇いたしまして、五十九年度予算では六八・三%の租税負担、こういうふうになっております。あなたの方の財政審議会の答申によりますと、当面八〇%台までこれを置きなさいということで答申があるわけでありますが、そういうことになりますと、おおむねまた一二%程度の乖離がございます。こういったものに対して、どういうことで今後歳入面の強化を図るようなことになっていくのか、どの程度までいったらそれらを埋め尽くすことができるのか、この辺の見解をひとつ伺っておきたいと思います。  それからもう一つは、五十九年度の経済見通しでありますけれども政府経済見通しによりますると、名目で五・九%、実質で四・一%、殊に増加の寄与度については、内需が三・六%、外需が〇・五%等々、こうなっておる。卸売物価は一%、消費者物価が二・八%、国民総生産すなわちGNPは二百九十六兆円、こういうことになっておるわけでありまするけれども、この内需主導型、ここ五年ぐらい政府もそういう格好で参りましたけれども、一貫してこの内需主導がとれない、結局は外需によって日本の景気が何とかもっておる、こういう状況でございます。そういうところからこの経済摩擦その他が今頻繁に発生しているという状況になっておるわけでありまするが、この辺の内需主導の効果というものに対してどのような御見解をとっておられるか、その点についてまず質問いたしたいと思います。
  11. 宮崎仁

    宮崎参考人 お答えを申し上げます。  まず租税の構造的な問題についての御質問でございますが、私、先ほどの意見でも申し上げましたように、現在までの租税収入の見方の問題、特に財政収支試算等においてとってまいりました経済成長率と租税収入との関係等の見方は、大分従来の考え方を変えなければならぬのじゃないかということを先ほど申したつもりであります。実際に、いわゆる弾性値ということで言われておりますが、弾性値が落ちてまいりまして、最近の状況でいけばまあ大体ほどほどのところに来ているのかなという感じもいたしますが、そういう点を一つ考えておく必要はあるだろうと思います。  そしてまた今後のことを考えます場合に、先ほど二つ規範ということを申しましたが、一つは、一般会計歳出名目成長率以下にとどめろということは、かなり今後考えていかなければならない重要な規範であろうかと思います。そして一方では、租税負担あるいは社会保障負担合わせた国民負担率というものの長期的な見通しというものが、現在よりは若干上がっていくことはやむを得ないとしても、ヨーロッパ水準の五〇%というようなところよりはかなり下にとどめろということでありまして、そういうことでもし今後の財政の運営をやっていくといたしますと、当然に公債による収入の率は減ってまいりまして、そして租税収入の全体の歳入に占める比率が上がっていくという形になると思います。それがどの程度までいくことが適当であるかということについては議論がいろいろあると思いますけれども、一応のめどとして八〇%というようなことが言われておる、こういうふうに私は考えております。  それから、この経済見通しの問題についての御質問がございましたが、確かに従来、ここ二、三年のところでの経済見通し、大体当初の見通しに対して下方修正をせざるを得ないような状況になっております。特にその中でも内需の伸びが落ちまして、輸出は逆にふえるという格好で、当初は内需主導型、これは国際的な問題もございまして内需主導型ということで考えていくということにいたしましたものが、実際には内需が落ちて外需に依存するような形になっておるということで推移してきたことは御承知のとおりであります。  しかし、昨年の下期あたりからアメリカの景気が回復してきたということもございまして、日本の景気も若干上向きになってきておるということから、消費支出の面あるいは設備投資の面等で、内需がある程度盛り上がってきております。ただ、この経済見通しで言うほどに、内需三・六、外需〇・五というような非常にきれいな姿でいくかどうかということについては、私自身は若干疑問を持っておりますけれども、かなり内需主導型にいくであろう、五十九年度については大体そういう見通しを立てていいのではないかというふうに考えることは間違いではないと私は現在思っております。  総体の成長率につきましても、五十八年度の実績三・四と見込んだものは、若干これを上回るような状況のようでありますから、五十九年度も四・一という程度は何とか達成できるのではないか、こういうように考えております。
  12. 草場敏郎

    草場参考人 先ほどの冒頭陳述でちょっと申し上げましたけれども、今度の予算におきまして一般歳出は、五十八年度当初比で〇・一%減に圧縮されておるわけでございます。ただ、そこの中で、物件費などの経常的な経費は原則マイナス一〇%あるいは公共事業などの投資的経費も原則マイナス五%、相当圧縮はされてきておられるように存じております。  ただ、財政再建の元年と言われました例の五十五年度から五年たってきておるわけでございますけれども、その間、やはり増税だとかあるいは歳出の繰り延べ措置が繰り返されまして、本当の意味でまだ私ども歳出構造の改革にそれほどの大きなメスが入っていないのではないかというふうに考えてきました。したがいまして、確かに先生のおっしゃった歳入構造あるいは歳入規模の見直しといったような場合にも、どうしてもまず歳出構造の改革が優先されるべきでありまして、増税を前提として安易な歳入構造の見直しということは、歳出構造の見直しを十分やって後に初めて国民のコンセンサスを得てやるべき課題ではなかろうか、そういうふうに存じております。  以上であります。
  13. 和田八束

    和田参考人 歳入構造ということで大変難しいのですが、この問題を考える場合には、歳入増加させるには増税とそれからもう一つは自然増収をふやすという二点があると思うのです。増税をやらなくても、自然増収がふえるように経済状態がよくなれば、これは一番よろしいわけです。ですから、歳入問題を考える場合にも、そうした点が考慮されなければならぬのじゃないかと思いまして、景気政策的税制、これをどういうふうに図るのかということが第一点としてあろうと思うのです。具体的にはやはり減税政策ということになろうかと思います。これがおっしゃるような内需重視型ということにもなってくるわけでありまして、さしあたり考えられますのは、所得税減税とそれから投資減税というのが有効であるというふうに言われているわけでありまして、それらをどのように組み合わせてどうするのかという、またあるいはタイミングの問題といいますか、これがあろうかと思います。ですから、これによって自然増収を図る、あるいは税収の弾性値の上昇を期待するということになろうかと思います。  それからもう一つは、租税制度上増収を図るということでありまして、従来不公平税制というふうに言われてきた問題でありますけれども、税制の制度上あるいは税務行政上かなりアンバランスがあるのですね。それによって税収としてあるべきものが漏れているというふうな部分があるわけでありまして、利子・配当課税とかあるいは有価証券にかかわる譲渡所得とか等々ございます。そのほかにもあるわけですけれども、そうしたものをもう少し厳密に洗い直して、不公平税制の是正による増収を図るということがやはりさらに推進されるべきではなかろうかと思います。  それからもう一つの問題といたしましては、国税と地方税というふうなものがあるわけです。これをどのように配分するのかというのが歳入面では重要でありまして、この際地方税で有力な財源確保するということが行われますならば、これは国の予算の面においては補助金あるいは地方交付税というものの軽減になるわけであります。地方財政も自主財源中心にして確立できるわけでありますし、国家財政の面におきましても、補助金等によりまして地方財政に移転されていたものが低減されるということでありまして、これは歳入ではありませんけれども歳出の減というものにつながってくるわけであります。したがいまして、地方財政現状ということからいいましても、さらに地方分権型といいますか、地方税重視型の税制改正というものが行われるべきではなかろうか、このように考えておるわけであります。
  14. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それからもう一つは、五十九年度予算編成の主題は、私は検討しまして、どうしても赤字国債発行湖減、こういうことによって財政の対応力を回復しようということに力点を置いておるようです。そういった中曽根内閣財政経済の指針、いわゆる八〇年代の「展望と指針」、ここでは五十八年から六十五年の間で赤字国債から脱却をしましょうということで、一定の計画を持っておるわけです。そういうことで、一応初年度の五十九年度でありまするが、五十八年度赤字国債発行額、大体六兆九千八百億円、これを毎年度一兆円減額していく。そうすると、五十九年度は六千五百五十億円しか減額できなかったわけでありますね。赤字国債五千二百億、建設千三百五十億円。削減目標をはるかに下回っちゃった。そういう限りにおいては、初年度からつまずいたと言うことができるでありましょうが、いずれにいたしましても、そういう状況で、今後やはり六十年以降大体一兆一千億見当減額をしていかなければいけない。私は大変困難な状況じゃないかと考えておるわけでありますが、この辺の見解について一つでございます。  それからもう一つは、先ほど三人の参考人の皆さんから一様にそれぞれ所説が展開をされましたが、赤字国賞の借りかえについて、これは五十年度以来毎年度繰り返し発行されていた赤字国債——いわゆる戦前の戦費調達手段でもって、当時の金で最高千四十億見当、予算の数倍も国債発行高が多かったというような状況。戦後、敗戦によって、インフレで塗炭の苦しみを国民は受けたわけですね。だから、そういう反省から財政法というものを制定して、四条、殊に国債等については発行自体まかりならぬ。もちろん例外、建設国債等の問題はありますが。それを今度は、政府は四十年に補正予算でもって若干の公債発行し、四十一年から本格的に建設公債発行してくる、こういう状況になるわけであります。ことに五十年以降は猛烈に国債発行激増の体制をとってくるわけであります。  そういったことによって、特別立法として、例外の例外として赤字国債については根拠法をつくって、五十年度以降毎年度国会の承認のもとに発行してきたわけでありまするが、その根拠法は、年度によって若干の規定やあるいは条章の違いはありまするが、その中で一貫してきたのが、赤字国債償還のための起債は行わない。言ってみれば現金償還だ。現金償還をやります、十年過ぎたらそういうことにいたしますよ。昨年まで大蔵大臣等も、国会の論議に対してはそういうことを全部言ってきたわけです。ところが、今回これを外したわけですね。こういうことになりますると、十年国債を六回借りかえて償還する建設公債、こういうものが今後もやられるわけですが、これと同じような取り扱いになっていくわけですね。そういうことになりますと、赤字国債償還に対する節度というものは全然なくなってきたんじゃないだろうかという気がいたすわけであります。そういった問題についてどういう見解をお持ちになっておられるか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  15. 宮崎仁

    宮崎参考人 一つの問題として、「一九八〇年代経済社会展望と指針」に書かれました対象期間中に特例公債依存体質から脱却するという議論でありますが、確かに従来、政府が五十九年度に特例公債脱却という目標を掲げてここ数年やってきたことから見ますと、大幅な後退のようにも考えられますけれども、この間における財政事情変化と申しますか、そういう点から見ますと、対象期間昭和六十五年度までに特例公債脱却ということでも、実際の仕事としてはなかなか大変だというふうな見通しがとれると思います。この点は「財政中期展望」とかあるいは「仮定計算例」という形で大蔵省が出しております数字をごらんいただければ、大体おわかり願えるであろうと思いますが、こういう点から見まして、歳出カットにかなり努力をし、また負担の面でもできるだけ工夫をしていくことにいたしまして、やっとこの期間中に赤字公債脱却ということが図れるかどうかというような状況ではなかろうかと思います。  また、そういった見通しのもとで考えてまいりますと、従来の考えのように特例公債を全部現金償還でやっていくということになりますと、昭和六十年度から早速二兆円とか三兆円というような相当大幅な償還が出てくるわけでありまして、これを従来の考え方とおりでやっていこうといたしますと、極端な歳出カットをやるかあるいは増税収入増加を図るか、いずれかをやらざるを得ないのではないかということになってまいります。そういったことが実際問題として可能であろうかどうかということを、私ども財政制度審議会の小委員会でもいろいろ議論いたしましたけれども、どうもこれはちょっと無理があるということから、この際としては借りかえを考えていくことはやむを得ないのではないか、こういう結論になったわけであります。  そうなると、今度は全くこういった赤字公債に対する歯どめがなくなってしまうではないかということが言われるわけでありますが、私どもとしては、この「展望と指針」に言う六十五年度脱却という線を一つのとりでといたしまして、この線に沿って運営していくことによって一つ規範というものがつくられるのではないか、そういう形で今後運営していってもらいたいということでこういうことを申し上げたわけであります。
  16. 草場敏郎

    草場参考人 ただいま先生おっしゃいましたとおり、赤字国債借りかえ問題に関しましては、財政法の精神から、国債そのものを発行しないのが本来の基本精神でもございます。その例外として建設国債発行を認めてまいったわけでございまして、赤字国債というのは財政自体発行を予定していないので、そのために年度ごとに特例法を制定して発行している。こんな経過にかんがみまして、その意味でも赤字国債満期の一括償還を義務づけてきたということは先生のおっしゃるとおりなのでございます。したがいまして、今般の赤字国債借りかえが容認されるということになったのは、確かに当面の財政事情が非常に困難であることも事実でありまして、別の意味でやむを得ないかというふうにも存ずるわけでありますけれども赤字国債発行一つの重要な歯どめであったわけでございますから、これがなくなることはまことに残念だと思っております。  といって、現在の財政事情の中で現金償還をやれば、借金の支払いにまた借金で払うというような形になってまいります。そういう意味でやむを得ないことになったのではなかろうかと思いますが、先ほどの参考人のおっしゃったとおり、「財政中期展望」が出ておるわけでございますし、もちろんあの中には相当な資金不足を展望はいたしておりますけれども、何とか六十五年度までの赤字国債の脱却というものに対して、今後の財政の厳しい運用を私どもはぜひ期待いたしたい、そういうふうに存じております。  以上でございます。
  17. 和田八束

    和田参考人 この点につきましては先ほどもちょっと触れたところですが、なお補足的に申し上げますと、国債経済的性格からいいますと、建設国債といい赤字国債といい、それほど違いがないというふうに考えているわけでありまして、現在四条債ないし建設債と言われているものも、事実上かなりの部分赤字国債としての性格を持っているわけでありますし、また特例債というふうになっていても、実際に国債としては四条債と同様に流通、発行されているわけでありまして、経済的あるいは財政的面からいいますと、それほど大きな違いがないわけであります。  したがいまして、国の発行する公債がどういう期間でどれだけ償還されなければならないかということになりますと、これは現在建設国債でとられているような、六十年を一つの期間にするというのが理論的な裏づけがあるのかということになりますと、必ずしもそうではない。また、十年で現金償還するというのもこれはしなくてもよろしいわけで、早い話が国の公信用を背景にしているわけでありますから、まあモラトリアムということですか、全部償還しない、全部借りかえないし乗りかえで行う、あるいは永久国債的なものでやるということもあり得るわけでありまして、それらについては結局は財政面でのポリシーの問題になってくるのですね。どのようなポリシーがとられるか、どのような財政運営をやろうとしているのかということになってくるわけでありまして、それが現在、特例債十年現金償還という形になってきたわけであります。  これも経済的、財政的理屈からいいますと必ずしも明確ではないにいたしましても、ただそういう国債に対するポリシー、姿勢というものは明確であった、そしてそういう点で一定の承認が得られていたということであります。これを変更するということになりますと、そういう政策面、ポリシー面からいいますとやはりかなり大きな問題であって、なぜそのような変更が行われなければならないのかという理由につきましては明確にされ、その変更が行われた将来にわたる財政見通しというふうなものについても、さらに明確にならなければいけないわけであります。  先ごろ財政の中期的な展望というふうなものを出されました。この程度でありますと従来も出されていたわけですけれども、そのとおりいかなかったということになりますと、いかなかったというだけのことでありまして、どこにも責任がない、とられないということで、ずるずると償還方法なり発行額について変更が行われていく。毎年一兆円以上の赤字国債減額というのも、財政再建にとっては必要でしょうけれども、これがまた財政の他の面、例えば福祉面あるいは国民生活というふうな、財政の目標としなければならない問題を犠牲にしてまで毎年一兆円以上減額しなければならないか、財政だけ健全でいいのかということになりますと、これも問題であります。  しかし一方、減額をせずに累積していって、インフレーションが招来されるというふうなことを放置しておいていいかということになりますと、そうではないわけでありまして、やはり財政というものはそういう国民生活とか経済面と大きなかかわりがあるわけでありまして、一方的に毎年機械的に減額していけばこれでいいんだということにもならないわけであります。また同時に、どんどん野方図に発行すればいいかということにはならないわけで、総合的に財政経済面で判断されなければならない。国債政策につきましてもそういうことが言えるわけですけれども、やはり大事なことは、そういうポリシーがどれだけ国民に理解され得るかということが、財政問題としては大事なところではなかろうかというふうに考えるわけであります。
  18. 戸田菊雄

    ○戸田委員 設題は多く持ってきたのでありますが、時間がありませんので、あと二点ほどで終わりたいと思いますが、結局、今いろいろと御意見を拝聴しましても、五十九年度赤字国債償還、これは額的にそう大きいものではないのですけれども、六十年度以降、これは大変急激なふえ方をするわけです。建設国債借りかえ分、新規財源調達の分、国債、建設赤字分等々が非常に巨額になってまいりまするから、そうすると定率繰り入れを停止しても赤字国債借りかえをやっても、結果は借りかえや消化がスムーズにいくかどうかという保証、これは非常に不安であります。殊にクラウディングアウト、こういうことになりますと、結果的には最悪の日銀引き受け等に行かざるを得ない、こういう状態になってくるのではないかという心配を非常にするわけであります。  私たちも、最近はこの公債等の問題については極めて弾力的に対応しまして、五十九年度の予算修正等については、生活を落とさないために若干の補てん策をやらざるを得ないというところまでやったわけであります。しかし、それにしてもこういった心配が非常にあるわけでありまして、そういう点をさらに御検討いただければ幸いだと思います。  それからもう一つは、何といっても今年度予算を見ますと、国民を非常に困難な状況に追いやっているということが言えると思うのですね。例えばサラリーマン、公務員等の被用者本人の健康保険給付を五十九年九割、六十一年に二割カットしまして八割というようなことになってまいりますし、それから今回の減税にいたしましても、結果は増減税セット方式でありますから、酒税や物品税あるいは自動車関係諸税、こういった増税分は直接大衆重課税に追い込まれていく。あるいは各物価の状況を見ましても、消費者米価四・二%、これは二月から上がっていますね。国鉄運賃八%、これは四月から、国立学校授業料三千円、これは四月予定、私鉄運賃、タクシー運賃、地方自治体等の各種手数料など軒並み上がるような状況になっている。政府見通しては二・八%に抑える、こう言っていますが、これもなかなか難しい状況じゃないか。いずれにしても国民の生活というものはもっとひどい状況になっているのじゃないだろうか。ですから、こういうものに対して、やはり臨調等を通じまして、何か削減方式はそっちの方にばかり追いやられるような状況、これは各般の社会的構成その他からいっても、国民としては極めて了承できかねる事態ではないだろうか、こういうふうに私は考えますから、こういった面の改善策はどんなふうに考えておられるか、その辺が一つであります。  もう一つは銀行の関係ですが、「新規長期国債の業界別引受シェアの推移」あるいは「市中消化状況の推移」等々、大蔵省から資料をいただきましたが、五十八年度都市銀行で二八・六%、それから地方銀行で一三・四%、生命保険会社でもって一二・六%、証券会社で一六・二%、おおむね一〇%以上の対象銀行あるいは会社をピックアップしたわけでありますが、このくらい大量に消化するという状況になりますと、銀行の経営の内容に大変な圧迫になっているのじゃないのだろうか。銀行としては一体どのくらいが消化限度と見ているのか、この辺のことについてひとつ御見解をお聞かせ願いたいと思いますし、今銀行としては、市中銀行、全体もそうですが、大変な資金ポジションで苦労しておるようでございますが、その辺の状況についてどうなっておるか、御見解を伺いたいと思います。  それからもう一つは、銀行の会計上の問題ですが、非常に逆ざやで、今利益を相当上げているのじゃないかと思うのですね。全国銀行協会連合会の集計によりますと、五十七年四月以降五十八年三月の全国銀行の預貸金利ざやは大体マイナス〇・三四%だ、二期連続マイナスだ、こういうことになっているわけです。また、金利ざや、これは〇・二一、わずかのプラスです。すなわち、全国銀行協会の加盟都市銀行十三行、地方銀行六十三行、信託銀行七行、長期信用銀行三行、こういうものの総称になっておるわけであります。しかし、結果的には、五十七年度決算で見ますと、全国銀行は合計で一兆七千五百億円の経営利益を上げておりまして、〇・三四%マイナスであり、二年間それが連続だ、こう言っておるのですけれども、このくらい実際は上がっておるわけですね。そのうち都市銀行は八千九百七十億の利益ですから、その他の行が八千五百三十億円、こういうことになっておるようでありますが、これはどこか会計上の操作の、何といいますか、欠陥があってこういう状況になっておるのじゃないかと思うのですが、その辺はどういう状況でございましょうか。
  19. 草場敏郎

    草場参考人 ただいまの最初国債大量発行によるクラウディングアウトというような問題でございますけれども、確かに市中金融機関国債引き受けが中心になっておりますので、大量の国債を引き受けているわけでございます。したがいまして、私どもの民間の資金の吸収力が弱まったりいろいろな事情の中で、やはりクラウディングアウトということが発生しない懸念は全くないわけではございません。そういう懸念は常時あるわけでございますけれども、ただいま、過去数年間にわたりますリセッションの中で産業界、主として民間産業界の資金需要が低迷しておりまして、そういう意味で現在ではそういった問題は生じておりません。しかし、やはり大量国債の大きな量の圧力という問題によって、将来ともにそういうものが発生する懸念は十分あるのではなかろうかというふうに考えておりました。  それからまた後段の、民間金融機関が利益を出しておるというお話がございましたけれども、別に会計上に何もあるわけでございません。ただ、銀行の収益というものは、一つは預金、貸し金を中心といたしました利ざやの中での利益、それから国債業務、証券業務、それから為替を中心といたしました手数料の問題、利益と申しますか、そういう問題が入っておりまして、すべての収支を預貸金利ざやだけで図るわけにいきませんものでございますから、利ざやがああいう形になっておりますけれども、実体的には、会計決算の中ではすべての利益を出して、そして総体の利益を出すという形になっております。これは現在の商法あるいは銀行法、それらによりまして、それから経理基準によりましてはっきり規定されたものの中で出しておるわけでございます。  もう一つ、若干つけ加えますれば、自己資本が大きければ自己資本の運用による利益も出てくるということも言えますので、私どもといたしましても、懸命に内部留保に努めて自己資本を充実したい、そういう形のことに今努力しておる次第でございます。
  20. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間が参りましたのでこれでやめますが、実は中小企業金融政策等々を含めて、それから和田先生には多くの著者もあるものですから、大分読ませていただいて、多く設題をしてきたのですが、いずれまた機会があったときに御意見を拝聴したいと思います。きょうはこれで終わります。  ありがとうございました。
  21. 瓦力

    瓦委員長 堀昌雄君。
  22. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、参考人の皆さん大変御苦労さまでございます。  最初宮崎参考人にお伺いいたします。  私、宮崎参考人最初にお目にかかったのは、たしか宮崎さんが公共事業担当主計官をしていらしたころだと思いますので、もう二十年以上昔のことだったろうかと思うのでありますが、その後企画庁においでになって事務次官までお務めになって、現在アラビア石油の方にいらっしゃると聞いておるわけですが、財政制度審議会委員として、また民間の企業経営者として——一体今の国の国債発行のあり方というものは、現状の行政改革が求めておるような角度から見て適切なのだろうかという一つの疑問が私はあるわけでございます。国債発行は、昭和四十年に戦後初めて行われて今日に至っておるわけでありますけれども、実は今の国債発行の仕方というものは、それ以来ずっと一般会計で新発債発行する、こういう仕組みになっておるために、予算総則でその年度に発行いたします国債については全部償還計画を明らかにしておるわけであります。昭和五十九年度、本年度予算における国債償還計画表によりますと、要するに六十一年度償還のものが五千億ですね。それから一兆八百億が六十二年度償還、七千億が六十二年度償還、六十四年度償還が二千億で、昭和六十九年度が三兆七千四百五十億、こういうような明細書がつけられて出ておるわけであります。国債発行というものは二月、五月、八月、十一月、こういうふうになっておりまして、大体この時期にこういう国債がこのぐらい出るであろうということは、シンジケートの代表である草場さんがおいでになりますから、大体見当をつけて国債の公募に応じられる。大体、民間の場合に、何か売ったり買ったりという品物の処理をするときに、自分の方の手のうちを全部明らかにして物を売るというような売り方は、私は一方通行の売り方で、やはり売り手買い手対等になるような条件で物を売ったときに、初めて公正な価格といいますか、特に売り手側としては期待しておる価格が得られるのではないか。ですから、私は、今の国債発行のあり方というのは、国はすべて手のうちを明らかにして商売しているということが一つ。もう一つは、経済というのは、これは皆さんにお話ししては釈迦に説法のようでありますけれども、資本主義経済である以上は、循環というのが常に起こるわけでありますから、金利の高いとき低いときというのが必然的に起こってくる。恐らくアラビア石油でも、金利の一番高いときにたくさん長期の借入金をして、金利が安くなったときには短期の借り入れなんということをなさるわけはないと思うのでありまして、常識的に金利の安いときに長期のものを調達をして、もし金利が高いときは短期を転がしながら金利が下がるのを待って、そこでその短期を長期に繰り入れて置きかえるというのが、私は財務に対する本来的な姿ではないか、こう思うのでございます。  ところが、今の国の会計は、前段の方で手のうちを全部見せるだけではなくて、高かろうが安かろうが、決まったときに国債発行して、国民に大きな負担をもたらしておる。これが四十年代初期のように大した量でなければ、そうとがめる必要もなかったんでありますが、今日ずっと大体十四兆円ベースで国債発行している、残高百十兆を超えてくるというようなときに、こういう金利に対する概念のない国債発行なんてことは、私はもう行政改革を片一方でやっていながら、財政当局は一体何をしておるのかという感じがしてなりません。私ども、五十六年の二月に既にこの問題に触れて、実は私なりの提案をしてきました。まだ今日実現に至っていないのでありますけれども、この点について、民間企業の立場にもいらっしゃる、そうして財政制度審議会委員である宮崎参考人は、この二つの問題についてどういうふうにお考えになるか、お答えをいただきたい。
  23. 宮崎仁

    宮崎参考人 ただいま堀先生の御指摘の点は、私どもも非常にごもっともな御意見だと思う点が多いわけでございます。  まず、昭和四十年度以降のこういった大量の国債発行されざるを得ない状況になったということについては、最初に申し上げましたように、特に第一次石油危機以来十年の経済運営というものが、果たしてこれでよかったのかどうかというところが、やはり基本的にはあるだろうと思います。特に、私も若干責任がございますが、第一次石油危機後の経済回復、問題になったのは成長率の低下、それからインフレ問題、それと国際収支でございます。当時経済企画庁長官は福田赳夫先生がやっておられまして、言ってみれば経済政策の大体責任をとられたわけでありますが、当時、全治三カ年ということを言われました。三カ年でこういった成長率、インフレそれから国際収支という面を治そうということで、大体そのとおりに経済運営が行われ、また予算も大体その線に沿って組まれたというふうに私は理解をいたしておりますが、そのために、例えば昭和五十年度あたりにつきましては、公共投資をかなり思い切ってふやすということをやりました。大蔵省相当反対がございましたけれども、ともかくそういったことで、全体の経済の姿を治していくためにはやむを得ぬじゃないかというようなことで、相当強引なことをやった記憶がございます。  こういったこともありまして、その後、第二次ショック後の運営の問題もございますが、一つはやはり高度成長時代にいろいろやっておった政策といいますか制度、そういったものに対する手当てといいますか、そういうものが必ずしも適正に行われていなかったということもございますし、また、経済政策を立てる基本の経済見通しとかそういった面におきましても、従来の形での構造というものを土台にして予測を立てるものですから、やはりそこに誤りが相当あったのではないか、こういう反省をせざるを得ないと思います。  そういう格好で、結局現在あるような非常に大きな国債累積額また毎年の発行額という状況になっておるわけでありますが、さて、こういうふうになってまいりますと、現在の公債発行のあり方というのがこれでいいのかどうか、主としてこれは管理政策ということになると思いますが、そういう面では、私は現在のやり方というのは非常に硬直的である、こういうふうに考えます。また、実際大蔵省でもそういう点はいろいろ議論しておられるようでありまして、この管理政策の弾力化ということで、既に理財局ではいろいろ議論をしておるように伺っておりますけれども、今後ますます特例債借りかえ問題というようなこともありまして公債発行額がふえてまいりますから、そういった面を考えますと、一日も早くこういった管理政策の面の改善を図って、一方では、時期的な問題あるいは銘柄の問題等もございましょう。それから金利の面、こういった面での市場的なマーケットメカニズムというものがある程度働くような仕組み、そういったことをできるだけ早くひとつ解決をしてもらいたい。私どもも実際民間でやっておりましても、そういった点を痛感いたします。
  24. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、今の問題の一つは、新発債一般会計で、借換債国債整理基金特別会計でと、これはもう借換債なんというものが大してなかったときにはそういうような対応も可能であったかと思うのですが、これからの借換債というものは実は大変な額に上ってくるものでありますから、そういう意味では、新しい国債管理政策が今求められておる、こんなふうに私も実は考えておるわけでございます。  そこで次に、草場参考人にお伺いしたいのでありますけれども、実はこの六月からバンクディーリングがいよいよ認められることになってまいります。この間委員会で実は理財局長に、この六月の時点でバンクディーリングの条件になっております期近物二年以内の国債商品というのはどういう姿になっているかというのを尋ねてみましたら、六カ月未満のものが約三兆、一年未満で全体として六兆、一年半未満で十兆、二年未満十六兆、いずれもトータルでありますが、というような状態だというふうに報告を聞きました。  そこで私は、今の新しい国債管理政策というものを考えますときには、ちょっと今申し上げましたけれども借りかえのためにはやはり資金が相当に要りますし、そのためには短期国債というものの発行は避けられない。それは借りかえのために必要な短期国債というふうに位置づけておるわけでありますが、実はアメリカの財務省証券がどういうふうに発行されているかというのをちょっと見てみますと、一九八四年の一−三月でトータル二千五百二十億ドル発行しておりますが、トレジャリービルが千八百九十八億ドルで、ウエートが七五・三%、トレジャリーノートが五百三十九億ドルで二一・四%、トレジャリーボンドが八十三億ドルで三・三%という比重でありますが、言うなればアメリカの財務省証券の発行状態というのは、大体七五%から八〇%程度はトレジャリービルが発行されておるということであります。これをアメリカは下敷きにして、日本にもTB市場を早くつくれという要請が来ているのだと思うのであります。  ところが、私はそう考えているのでありますが、いろいろと書いてあるものを読んでみますと、銀行の皆さんはどうも短期国債発行は反対だというお考えのようだというふうに聞いておるわけです。短期国債発行に反対で、六カ月未満の期近債三兆円もあるもののディーリングには参加をしたいとおっしゃるのは、私ども立場から見るとどうも整合性がないのではないだろうか。少なくともこの六月からは、三兆円の六カ月以内の短期国債というものがディーリングの対象として市場で売買される。もちろん一年未満もございますし、一年半未満もありますが、私は今象徴的に短期国債に絞って伺っておるわけであります。ですから、銀行として、例えば三カ月、六カ月の短期国債というもののディーリングをおやりになるということと、そのディーリングの材料となる短期国債が新発債ではまずいので、既発債ならいいのだという、何らかの論理的なお考えがあれば承りたいと思うのでありますが、どうも、新発債は反対だが既発債ならやむを得ない、大量にこれから半年以内のものが月を追うごとにどんどん出てくるわけでありますから、そういう意味では、私はちょっとこの点理解に苦しむものですから、ひとつ草場参考人からその点のお考えをちょっと承りたいと思います。
  25. 草場敏郎

    草場参考人 堀先生の御質問、大変難しゅうございますが、ただ、確かに満期償還額が大量に一時点に集中するという問題から、今国債発行手段の多様化と申しますか、その意味で短期国債も考えておられるというふうに聞いてはおりますが、まだなかなかここらの問題に関してのコンセンサスができておるわけでもございません。  ただ、確かに調達側にすれば、前回の六・一国債暴落時点でも国債の多様化をということを申し上げて、それ以来国債が非常に多様化されてきたわけでございますけれども発行側から見れば、調達手段としては極めてやりやすい方法であろう、便利であろうと思っております。それからまた、平準化等にも役に立つという意味で、確かに一つの意義のあるやり方ではあろうと思うのでありますけれども、ただ、私どもにとりますと、一番の問題は、短期国債というものが市場に相当出てまいりますという問題につきましては、これはちょうど銀行預金とか、金融機関のほぼ一年ぐらいの定期預金とか、そういった銀行預金との競合が真っ正面から起こるという意味で、どうしても短期国債は自由金利商品でございますし、少なくとも現在の段階では、銀行預金というものが規制金利の中に入っておりますので、とてもこれは国債に太刀打ちできない。したがって資金シフトも避けられない。そういった意味で、資金調達能力が低下して、ひいては民間金融機関国債の引き受け能力も低下し、産業資金の供給も支障を来す。  そういう意味で、金融秩序に非常に大きな混乱を起こしかねないというふうに私どもは感じておりますので、いろいろな意味で、今度の金融、金利の自由化問題と絡めて、何とか整合性を持った形の中でのそういうものを、発行側あるいは民間側とのコンセンサスをつくった中で対処していきたい、そういうふうに考えておりますし、そこらの合意が得られればあえて反対するわけではございませんけれども、ただ、短期債、特に一年未満の短期国債借りかえをやっていきますと、今度は償還期限が非常に短くなってまいりますから、さらにまた借りかえに追われるというようなことでございまして、そこらも相当はっきりした節度を持った発行がされなければいかぬのじゃなかろうかというふうに考えております。  それから、先ほど先生おっしゃった、期近債の問題はいいのかとおっしゃるのでございますけれども、確かに、特に来年度から一年未満の、過去に発行いたしました国債の期日が到来してまいります。ただ、今の段階で、ちょっとこれは先の予測がつかないのでございますけれども、一年未満の期近債というものは、今ほとんど大部分を企業あるいは国民個人の皆さんが持っておられるわけです。あと一年未満の段階で果たして市場に大幅に売りに出てくるであろうか、そういう市場が相当大きくつくられるであろうかというのには、私どもは非常に疑問に思っておりまして、例えば定期預金といえども、今一年定期預金が銀行預金全体の中の約五〇%を占めている。残存期間一年未満の国債が大量に市場に出回って、それの売りが出て、しかもそれによって得たお金が本当の意味でもう少し高い金利に有効に一年以内で運用できるかどうかということもございますので、そこらはそれほど大きな問題ではなかろうと思っております。  それからディーリングの問題に関しましては、これは主として大口の機関投資家相手でございますから、これは期近物でございましても、今現在でもほとんど三十日、六十日、九十日以内で動いておる市場でございますので、その問題は余り問題はなかろう、そんなふうに考えております。
  26. 堀昌雄

    ○堀委員 短期国債の問題も、大蔵省はどう考えているかは別ですが、私は、アメリカのトレジャリービルは十三週が中心で、そんな長い二十六週、五十二週なんというようなものはどうもそんなに出てないようでございまして、やはりクォーター別に国債償還なり借りかえが行われるということになれば、九十日サイトぐらいのものの処理で十分なのではないか。そういう場合には一年定期との競合なんということは問題はないのではないか。ですから、日本銀行は合いわゆる大蔵省の蔵券の問題についてTB市場というものを考えていられるようですが、やはりこの新しい借りかえに用いる短期国債、これは国債ですから、公募で処理をするということに当然なるべきでありまして、それで初めてTB市場というのができていくのではないだろうか。このTB市場があるということは、少なくとも金融政策の上ではオープン・マーケット・オペレーションが可能になってくるわけでありますから、広範な金融政策に対する手段が多様化されてくるという面では、私は、単に国債の問題というだけではなくて、日本の今後の金融政策に大きな役割を果たしてもらいたいという気持ちで考えておるわけでございます。  時間がございませんので、和田先生にお伺いをいたします。  実は、今私どもニュー社会党と申しておりまして、委員長のあいさつをかりれば、少なくとも反対をするときは対案があるいは修正で対応をしたい、これまでは当面の問題も中長期も皆一緒くたにいろいろ政策を考えていた、そこは当面の問題、中長期と分けて考えるというふうにした方がいいのじゃないだろうかという御提案がありました。私は、かつて政策審議会会長をいたしておりますときから、今の委員長がおっしゃったと同じ考えで対応しておったのでありますけれども、そこで、実はさっき和田参考人もお述べになったのでありますが、今度の特例債借りかえ問題であります。私もいろいろ考えてみまして、この特例債借りかえは、実は最初発行のときには条件がついてなかったのです。当時私どもは、ともかく特例債というようなものはできるだけ速やかにやめさせるということを考えたものですから、そこで十年でともかく満期償還して、以後は発行するな、これは一つの歯どめ政策として私どもは強く要求して、それがその次の特例債に書き込まれることになったのでありますが、今日ここまで来てみますと、実はもう歯どめ政策なんというものはちっとも役に立たないというのが現状ではなかろうか。  特に、今の政府のやり方が大変人為的な国債減額政策をやっておりまして、最近のところで見ますと、要するに五十五年度は十四兆二千億、五十六年度は十二兆二千億、五十七年度は十兆四千億というふうに、当初予算では二兆円ずつぐらい減額をしてきたのであります。ところが、御承知のように五十七年には四兆のギャップができて、逆戻りをして十四兆に戻って、五十八年が十三兆三千億で五十九年が十二兆六千億であります。そしてこの十三兆三千億とか十二兆六千億というのは、要するに税外その他の収入、今法案として出ております、これをかき集めて実は予算を組んでおるわけでありまして、この税外その他の収入というのを予算ベースで見ても、実は五十五年度が一兆九千億、五十六年度二兆二千億、五十七年度二兆六千億、五十八年度四兆七千億、五十九年度三兆三千億。これは予算ベースでございますけれども、いずれもそういうことで、ともかくも、何か国債減額していると言うのですが、実際ちっとも減額になっていないのですね、財政全体から見ますと。どこかあるところから無理やりに金を集めて取ってきて、そして国債減額した、これだけで、私は実は人為的な国債減額財政再建じゃないという認識なんです。  要するに経済政策拡大方向に持っていって、その結果、経済成長に伴って法人事業収入個人所得もふえて、税収がふえることによって赤字が減らせるというのが財政の基本でなくてはならない。それを、人為的に無理をして一生懸命国債を減らそうとしても減らせないというのが、五十七年の例で非常に顕著にあらわれてきた。十兆で予算を組んでおいて、後で結局例の国債整理基金からも借り入れて十四兆の処理をしたなどということは、いかにそういう人為的な赤字を減らすということがまずいかという典型的な問題としてあらわれている、こういうふうに思っております。  そこで、そういう問題を勘案いたしますと、かつて私も当初の発行のときから、当委員会予算委員会で論議をしてきたのでありますけれども、私ども国債というものを当初考えたものとは、随分実体が変わってきたわけでありますね。当初こういう状態を考えていなかった。我々は、国債発行財政インフレが起こるぞ、こう言ってきたのでありますけれども、最近の日本の貯蓄性向は依然として高いものですから、昨年の十二月末の個人貯蓄は残高が四百十三兆七千億円、前年から三十八兆六千億円個人貯蓄だけがふえておるわけでありますので、私は昨年党の政策として、これまでは特例債は徹底反対、こう言っていたのでありますけれども、徹底反対の前に、我々の目的というのは国民生活を最も望ましい姿にする、その望ましい姿にするために経済政策があるので、その経済政策に基づいた財政政策がある、順序は国民生活優先だという発想で、実は党の政策を考えました。  今の政府のやっておるのは、財政再建国債を減らすことが第一で、その国債を減らすために、それに伴う予算を組んで、その予算を組むことによっての国民生活の犠牲は我慢しろ、こういう順序になっております。国民生活優先というのが一番の政治の要請であって、財政再建なんというものは時間がかかったって構わないのです。ですから、まず最初の鈴木さん、余り経済にお詳しくないものですから、五十九年に赤字国債発行をやめたいなどと、我々専門家から見たら、これは頭がどうかされたのではないかというふうに思うほどの非常識な御発言が実はあったわけですね。そして今度は、今の中曽根さんは例の「展望と指針」で、六十五年をめどにひとつ赤字国債をなくしたい、これもできませんね。少なくとも私の過去からの経験から見て、これもできないのです。そこで私は、できるような財政政策というものを、昨年選挙前に我が党の政策として問題を提起してまいっておるわけでありますが、そういう観点から、今後のそういう国債政策というものに対して、ともかく過去の発想で、赤字国債は悪である、国債を減らした方が財政のためにはいいんだ。しかし、財政が大事か国民が大事かということになると、私は、国民の方が大事だ、こういう認識なものですから、そこらの点についての和田先生のお考えを承って、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  27. 和田八束

    和田参考人 先ほども財政再建という言葉で私も申し上げたわけですけれども財政再建というのは何かということは必ずしもはっきりしていないわけでありまして、通常言われておりますのは、一般会計での特例債発行がゼロになるというのが一つの目標になっているようでありまして、これも一つの目標ではあります。しかしながら、今、堀さんの方からもお話がありましたように、財政バランスを考えていく上ではいろいろな策が最近とられておりまして、税外収入もそうでありますけれども特別会計との間の資金の融通関係とか、あるいは債務負担行為とか、そういうふうないろいろな策がありまして、特別会計の方へどちらかといいますとしわ寄せをして、一般会計でのバランスをとろうというふうなことが考えられているようでありますけれども、それ自体がうまくいっていないということであります。したがいまして、一般会計だけでバランスして財政再建と言えるのかどうかという問題が、これはやはり言えると思います。また、特例債だけ減額していいのかどうか。四条債と言うものの、実体上は赤字部分もかなりあるのではないかという問題もあろうかと思います。  そういう点で言いますと、財政再建というのはやはり厳密にもう少し皆さんの方で議論してみる必要があるわけでありまして、これはまた単なる財政バランスの問題だけではなくて、財政経済との関係というものもありますし、それから歳出の中身というふうなものもあわせて考えなければ、バランスだけとっても財政が必ずしもよくならないというふうなことでありまして、やはりいま一度財政再建というものについて国民的合意が必要ではなかろうかという感じがいたします。  大体赤字国債発行する目的といいますのは、それによって景気が上向きになって税の自然増収が増加する、その結果赤字国債償還されて財政が黒字に転化するということが期待されている、いわばマクロ政策の手段として考えられてきたわけであります。したがいまして、赤字国債を十年で現金償還するというのも、大体そういう景気循環のワンサイクルというところからいえば、一、二年のずれはあるにしても、概して妥当なところ。赤字分が後で戻ってくるということになりますので、結果的に国民経済的な観点からバランスがとれるということになって、そういうことが期待されていたわけですけれども、どうも最近それがうまくいかなくて、第一次オイルショック、第二次オイルショックというものが影響としてかなり大きかったということなんだろうと思います。一時的には第二次オイルショックの前には自然増収が若干ふえまして、これでうまくいくのじゃないかという感じもいたしましたけれども、そこへ来てまたぱたんといかれたということで、とても十年ではちょっともとへ戻らなかったということじゃないかと思うのですね。  ですが、そういう経済状態が非常に難しいということはわかるのですけれども、一方ではやはり財政の秩序とか責任とかいう点からいいますと、できるだけそういう財政秩序というものを維持して、責任ある財政運営をするということが政府の責任であり、また国民としてもなし崩し的にこの問題が処理されていくということについてはかなり大きな不安を持たざるを得ない、こういうふうに考えるわけです。
  28. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  29. 瓦力

    瓦委員長 柴田弘君。
  30. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 どうもきょうは、各参考人には大変御多忙のところをお越しをいただきまして、貴重な御意見をいただきまして心から感謝を申し上げる次第でございます。ありがとうございます。  私も若干の質問をさせていただくわけでございますが、まず第一に、財政再建問題につきましてお伺いをしておきたいと思います。  今いろいろな御意見をお述べになったわけでございますが、政府の今日までとってまいりました財政再建策、三木内閣以来赤字国債の脱却を目標に掲げてまいりました。特に、鈴木内閣におきましては、五十九年度赤字国債脱却に政治生命をかける、このようにまで公言をいたしまして、結局それが成らなくて自爆をした格好であります。今回もまた中曽根内閣は、六十五年度を目途に赤字国債を脱却する。しかしこれも私は、今日のような、次から次へと財政再建の歯どめ策を外していくような財政再建策では恐らく無理であろう、こういうふうに考えざるを得ないわけであります。しかも、それ以外に、グリーンカード制度の凍結の問題ですとか、あるいはまた増税を行わないと言いながら、五十九年度大増税を行ったという問題。そしてまた、今回のこの赤字国債借りかえの禁止規定の削除というのは、国民立場からすれば、これは本当にこのままの状態で財政再建ができるであろうか、ますます政府財政再建に対する信頼というものは失われてきた。信頼が失われれば、当然それに対する協力というのは得られないわけでありまして、私は非常にそういう点で憂慮しておるわけであります。  そういった観点で、本当に六十五年度赤字国債を脱却をするというのであれば、あるいはまた大型間接税を導入をしない、このように公約をするのであれば、しからば六十五年度に至るいわゆる財政再建の方途と手順というもの、言うなれば財政再建計画と申してもいいと思うのでありますが、こういったものをやはりきちっと国民の前に提示をして、信頼と協力というものを得ていかなければいけない、こんなふうに考えているわけでございます。また財政再建法というものも必要になってくるかもしれませんが、この財政再建の手順と方途、この辺につきましてのお考えがありましたら御意見をいただきたいと思います。これは、宮崎参考人和田参考人にひとつ御意見をいただきたい、このように思います。いかがでしょうか。
  31. 宮崎仁

    宮崎参考人 お答えを申し上げます。  財政再建計画あるいは財政計画というようなものがここ数年いろいろ議論になっておりまして、確固たるそういった計画的なものを持って財政の再建というものを進めていかなければいけないんじゃないかということが言われておることは私もよく承知をいたしておるわけであります。財政制度審議会におきましても、こういった問題をどういうふうに考えるかということで、実は、財政計画等特別部会というのが中につくられておりまして、私は、大変僣越でございますが、部会長をやっておるというような立場でもございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  今までやってきたことがどういうことかというのは御承知のとおりでありまして、計画と申しましても、なかなかこれは、財政の面だけ計画的にやろうといってもそう簡単にはまいりません。経済運営そのものがいわゆる計画経済というようなことになれば、それに応じたように財政部門を書くということはできるだろうと思いますけれども、自由主義経済を建前としてやっている限りはなかなかそう簡単にはいかないということで、従来の作業は一応経済計画として決められているものを土台にして、それを財政の面に当てはめてみた場合に、将来の財政支出がどうなるか、後年度負担方式ということを言っておりますが、現行制度をそのままにして推計した場合にどうなるかというようなものを出しまして、それを財政収支試算とかあるいは展望という形で国会にもお出ししておるというふうに承知をいたしております。  ただ、これもしかし、私が先ほど申しましたように、現在の経済計画あるいは経済見通しをつくる予測手段というものが、かなり問題がございます。成長率一つをとってみましても、翌年度の経済見通しとして描いた成長率なりあるいはインフレ率というものがなかなかそのとおりにはならない、時には大幅に狂うというような状況でありまして、それを五年あるいは三年先を見通すというようなことは、実際問題としてはなかなかできないというのが本当であります。経済企画庁では相当大型のモデルを使って、従来随分いろいろと勉強してきたわけでありますけれども、なかなかそういった意味で計算的に見通しを立てるということが、実際問題としては非常に困難があるというような状況であります。  そういうことから、やはり通常言われる計画というような形での見通しを出すことは非常に困難であるということでありますけれども、それでは、何の見通しもなくて一体財政再建問題というような、中期あるいは長期の問題を議論できるかということで、本年度も出しておりますような中期的な展望でありますとか、これは後年度負担方式を使ったものであります、それから「仮定計算例」、これは単なる仮定計算でありますけれども一般歳出の伸びを三%とか五%伸ばすということにした場合にどういう姿になるか、こういうことを計算として出しまして、そういうものを見て御判断を願う、そのことによって、一体これからやらなければならない歳出カットというのがどの程度厳しいか、あるいは場合によってはこれを増税というような格好で埋めていかなければならぬとすれば、どのぐらいのものが問題になるかということがおわかり願えるわけであります。そういう上に立って議論をしていただくということで、こういう資料が提出されておるということだと思います。  本当の意味で計画と言われるような、必ずそのとおりやるというようなものを出せということになりますと、これは来年度以降の予算の姿そのものをここで一応想定して決めてしまえということになってまいりまして、国会との関係その他いろいろまた別の問題が生ずるということもございまして、私は、今出しておる程度のものが、非常に不十分ではございますけれども、一応見通しとしては、これはごらん願える最大限のものではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  32. 和田八束

    和田参考人 財政再建につきましては、先ほどもちょっと申し上げたところでありますけれども昭和五十年代における日本の財政というのはかなり難しい局面であったということは否定できないわけでありまして、この第一次オイルショックから第二次オイルショックに至る経済に対する一定の財政の対応というものの後遺症がかなり残されているということにほかならないわけでありまして、自然増収の増加によって財政赤字が解消されるという、従来考えられてきた政策結果というものが、そのとおり実現するのが非常に難しくなっているということだろうと思うのです。したがいまして、そこではそのままいわば財政の方が自然治癒的によくなる、再建されるということはどうも期待できないのではなかろうかというふうに考えるわけでありまして、そこでかなり強力な対応というものが行われなければならないのではないか。そこで行政改革という問題も出されているわけでありますけれども、私は、さしあたって順序からいいますと、行政改革はこの際非常に重要であろうというふうに考えておるものであります。ここ二、三年はマイナスシーリング、ゼロシーリングというふうな形で予算の全般的な圧縮というものも行われておりますけれども、これはある程度効果はあるにしても、それ以上というのは難しいんじゃなかろうか。それ以上を考えるとすれば、やはりもう少し全体として予算改革あるいは歳出面の改革というものも含めた行政改革がどうしても必要なわけですけれども、その点がなお十分ではないのではないかという感じを持ちます。  財政面でいいますと、例えば補助金などにつきましても、一定の抑制がなされているにいたしましても、もう少し補助金財政そのものの体質に踏み込んだ改革といいますか、これが必要ではなかろうかというふうに考えるわけであります。そういうふうな制度面、歳出面にわたる対応によって、早い時期に、少なくとも特例債発行というものがなくなるということ、そういうふうな状態がつくり出されないと、なかなか次に財政面から経済に対するマクロ政策というものの効果が十分にあらわれないというふうに考えるわけでありまして、したがいまして、減税政策なりあるいは公共投資政策なりを行っても、直ちにそれがこの財政再建に結びついてこないという非常に難しい状態ではなかろうか。一度そういうふうな、いわば戦後考えられてきたケインズ的な政策が有効になるような局面というものをつくり出すということが、この財政再建のねらいといいますか、目標にならなければならないのではなかろうか、こんなふうに考えているわけです。
  33. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 私、この財政再建計画の問題について申しますのは、先ほど宮崎参考人からいろいろお話があったわけでありますが、要するに、政府の出したいわゆる「財政中期展望」あるいはまた「仮定計算例」、これはこれで国民に選択を迫れ、こう申しましても、やはりこれは宮崎参考人に申すまでもなく、まさに白紙の選択じゃないかと私はこう思いますね。じゃ、果たしてこれで、コンピューターにインプットしたものだけで、あるいはまた現行制度をこのまま存続すると六十二、年度にはこうなりますという、こういった「財政中期展望」、一体何を選択しようというのか。まあ、歳入の不足額というものをこういった手法によって埋めていくんだ、歳入の問題あるいは歳出の問題、例えば歳出の問題にいたしましても、制度、施策の根源にまでさかのぼってやる。じゃ、福祉の問題、教育の問題というのは、国民生活の立場から見て一体どんなような水準に落ちつくのか。あるいは歳入の見直し、端的に申して増税という問題でございますが、こういった問題。国民負担という問題は一体どのような具体的な負担になってくるのか、こういった中身のあるものがやはり必要じゃないか、私はこんなふうに考えて申したわけでございまして、ここは議論をする場じゃなく御意見を聞く場でございますから、これ以上このようなことは申しませんが、そういった観点で申し上げているということをひとつ御理解をいただきたい、こう思います。現実に、昨年十二月二十九日の臨時行政改革推進審議会でも、そういった財政再建の方途と手順というものを示す必要があると申しておりますし、やはり大蔵省といたしましても、先日大臣も答弁いたしておりましたが、できる限り定量的なものへの努力もしたい、こうしたことも申しておったということも御理解をいただきたい、このように思います。  そこで、次の質問をさせていただくわけでございますが、今回のこの赤字国債借りかえの禁止規定の削除、果たしてその財政に対する歯どめというのは一体何であろうか、そういうことを私は考えます。それで、この国債依存度の問題でありますが、かつて財政審におきましては、いわゆる一けた、一〇%未満というのを提言をしておったのではないか、このように考えているわけであります。しかし、今回のこの財政改革あるいは「展望と指針」におきましても、ただこの依存度を下げる、こういうことは言われておりますが、いわゆる確たる数字的な目標値というものは設定をしていない。また大蔵省も、いわゆるGNPに対する国債残高の低下、こういうことを言っているわけでありますが、その具体的な数値も示されていないというふうに思うわけであります。やはり私は、国債依存度あるいはまたこの残高を下げるというならば、それは今日の経済のキャパシティーの問題からいって、GNP対比をするということも一つの指標になり得ると思いますが、それをただ下げるというだけでは一つの歯どめにはならない、こう思うわけであります。こういった点についての御見解をお聞かせをいただきたいと思います。ただ単にこの精神規定だけでは本当の財政再建というのはできないであろう、私はこんな感じを持っているわけでございます。よろしくお願いいたします。
  34. 宮崎仁

    宮崎参考人 ただいま御指摘の点は私もそう考えます。  結局、この財政再建ということも、我が国経済運営あるいは国民の生活というようなものをどのような形に持っていくべきか、そういった政策の課題があって、それを達成していくために、このような財政状況ではとてもだめだ、そこで財政の面の再建をしなければならぬ、こういうことで考えるべきものでありまして、先ほど堀委員がこの点御主張なさっておられましたが、私もその点は全くそのとおりだと思うわけであります。  しかし、ではそういった大筋の、言ってみれば経済運営あるいは社会政策の目標と申しますか、社会福祉の水準とかそういったことに対しての大筋の合意というものが将来に対して得られておれば、むしろそれをまず前提として掲げて、それをやっていくためにどうするかというような政策展開ができると思うのでありますけれども、こういうものになってまいりますと、例えば社会保障一つをとってみましても、非常にまた議論がいろいろ分かれるところであろうと思います。したがって、財政面から見ていった場合には、現行制度あるいは現状というものを延長していった場合にどうなるか、そういうものはなかなか今の財政状況からいくと将来賄っていけませんよというようなことが問題として出されてきて、それをではどう改善すべきか、こういうことで今この議論が展開されていると思うのであります。  そういう意味では、この「中期展望」なりあるいは「仮定計算例」で要調整額というような形でそのギャッブを出しておりますけれども、これを埋める方法は、結局歳出をまたもう一段カットをするのか、あるいは収入増加を図っていくのかということしか方法はないわけでありまして、その選択といいますか、それはこれから国会なりあるいは国民の皆様方の意向というものを取り入れてやっていかなければならぬ、こういう道筋であろうと思います。  そこで、再建というものを考えていく場合に、どういうものを目安にしてシナリオをつくり、方向を決めていくかということになると、例えば一般会計における公債依存度をこの程度に下げろというような見方もあろうかと思います。あるいは、公債発行残高のGNPに対する比率というのも一つの目安になろうと思います。しかし、こういうものはあくまで目安でありまして、これを目標としてどうするということを決めるということはかなり無理がある、こういうふうに私は考えます。  したがいまして、今度の「展望と指針」において示されているように、一つは、特例公債というものは、だれが見ても、こんなものをいつまでもやっておってはいかぬということはわかっておるわけでありますから、一応六十五年度という、経済計画といいますか、「展望と指針」の対象期間中にはそれをやめようではないかということが、一つ政策として打ち出されたわけであります。それから、四条公債もありますから、公債依存度そのものをできるだけ下げた方がいいということでこの「展望と指針」に書かれたと思うのでありますが、そういった政策をどう考えるか、これはひとつ国会でも大いに御議論をいただきまして、大体こういう方向でいいのか悪いのかというところで各党の御意見もうまく調整して方向を出していただければ、それに応じてまた施策の展開を図っていく、こういうようなことになるのではないかと思う次第でございます。
  35. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 続いて御意見を賜りたいわけであります。  財政審では、赤字国債償還方法につきましては、六十年償還ということとかいろいろ議論してください、こういうことをおっしゃっているわけでありますが、そういった方向が有力なように感じられるわけであります。現実に今回の法案も六十年償還、これは全く建設国債と同じでございまして、赤字国債と建設国債は明確に区別するためにも、まず毎年度、予算編成のときにできるだけ赤字国債現金償還に努力して、そしてその償還額を歳出で明示して、その上でどうしても借りかえなければならない額を示して、法律によって毎年度毎年度処置をしていかなければいけないんではないか、こういうふうに私は考えているわけであります。特例公債発行するときはきちっと毎年度法律で規定をされているわけです。今度借りかえる場合に、六十年償還よろしい、こういうことはいかがなものか。やはり国会の責任、行政府の責任、特に私ども立法府の責任として、こういうことが必要ではないかというふうに私は考えております。これが一つ。  それからもう一つは、また予算法律によって毎年度赤字国債現金償還に取り組んでいくためにも、六十年度赤字国債借りかえ、六十年償還、これでよろしい、こういうことだけではなく、例えば五十年度の分の赤字国債は、六十年度に借りかえた場合には七十年度までには償還するという返済に対する節度、これは例えばの話でありますけれども、そういった節度というものを持っていくべきではないかという考え方も持っているわけでございます。行政と立法との関連におきまして、この辺の御意見をひとつ宮崎参考人、それから和田参考人にも御意見がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  36. 宮崎仁

    宮崎参考人 御指摘になりました特例公債償還の場合に、借りかえの場合のルールでございますが、これは実は小委員会でもいろいろ議論がございました。現在の四条公債と同じように六十年ということで考えていくことがいいのか悪いのか、もっと短くてもいいんじゃないか、五十年とか四十年でなぜ悪いのかというような議論もございました。これを短くすればまた借りかえの意味が余りなくなってくるということもございまして、その辺をどう見るかはかなり議論が分かれたところでございますが、この中間報告では、そういうことを踏まえましてこういうふうに書いてございます。「最小限、既に確立している四条公債償還ルールと同様、」つまり六十年を基本とすることが考えられる。「しかし、この場合であっても、六十年償還と固定的に考えるべきでなく、毎年度の財政事情を勘案した上、特例公債についてはその残高をできるだけ速やかに減少させる」ということで考えていくべきだ、こういうふうにこの中間報告に書かれておるわけでございます。したがって、今お話がございましたように、この辺については、これからの展開に応じてできるだけ早くこの残高をなくすことが望ましいわけでありますから、そういった運用をしてもらいたい、こういうふうに考えております。  また、返済に対する節度の問題、これも非常に大事だろうと思います。この辺についてどういうふうなやり方があり得るか、これは私どもの中での議論も、必ずしも一つのまとまった方向は出しておりませんけれども、これから検討していかなければならない課題である、こう思っております。
  37. 和田八束

    和田参考人 財政再建のめどとしてはいろいろなものがあるかと思いますけれども、さしあたっては、特例公債発行をできるだけ早くやめるという目標を立てることは必要なことだろうと思いますね。  借りかえの問題で、先ほども少し申し上げたところですけれども特例債というものの性格からいいますと、借りかえをしないというのがやはり望ましいわけであります。また、借りかえが行われたといたしましても、六十年償還という、建設国債と同じ期間をとるということの根拠は必ずしも明らかではないわけであります。建設国債そのものも、六十年償還の根拠というものは必ずしもはっきりはしていないわけでありまして、一つ償還年限であるという点が従来の説明であったわけですけれども、それが六十年でなければならない、七十年、八十年ではまずい、あるいは五十年にならないのかということになりますと、六十年というのもそれほどの根拠があるわけではないわけであります。したがいまして、そういう点からいいましても、特例債借りかえの場合には六十年というところが最大限といたしましても、必ずしもそれにとらわれることなく、もう少し早い時期に現金償還を進めるという目標が立てられるべきではないかというふうに私は考えるわけです。  同時に、国債整理基金特別会計の問題でございます。従来は減債制度として考えられていたわけでありますけれども、どうも減債制度としての性格というものが果たして有効かどうか、あるいは十分に機能を果たしているのかどうかという点についても問題があるわけであります。もう少し別の角度からの国債管理政策のあり方というものが、この際とられるべきではなかろうかというふうに思います。
  38. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 次は、歳出の抑制の問題につきましてシーリングの問題、特にマイナスシーリングの問題について御意見を伺っていきたいと思います。  御承知のように、五十九年度一〇%マイナスシーリングをやりました。恐らく六十年度予算の編成の時期ももう間もなく来つつあるわけでありますけれども、やはり厳しいマイナスシーリングというのは避けられないところであります。問題は、防衛費等に見られるように、いわゆる異常突出がある。一方においては福祉、教育というもの、特に教育の私学助成の場合は人件費等の問題がありまして、私立大学の場合はマイナスの一二%という予算でありました。こういったことを考えてまいりますと、今日までとってまいりましたいわゆる一律削減方式というものが果たして妥当であるかどうかということを私は考えております。そういった中で、来年度予算編成に向けてやはり一律カットのマイナスシーリングというのを見直していかなきゃならない。少なくとも一つ一つの項目を洗い出すということも大事でありますけれども、やはり政策の優先順位をつけたいわゆる歳出の削減、シーリングというものが必要ではないか、こんなふうに考えまして、それこそ国民の理解と協力を得られる、そういった方向での予算編成のシーリングというものが今後とも必要ではないか、こんなふうに考えているわけであります。この辺、宮崎参考人に御意見を伺いたいと思います。
  39. 宮崎仁

    宮崎参考人 シーリング問題というのは、昭和三十年代の半ばごろからこの制度が取り入れられたと思いますが、財政の本来の機能として、資源配分を適正に行うということがある以上、こういった一律のシーリングで抑えるというようなやり方はむしろ異例であるというふうに考えるべきだと思います。本来であれば、やはり個々の事業ごと、項目ごとに十分に国会で御議論をいただいて、そして額が決まっていくというのが本来の姿であろうと思いますが、ただ、比較的短期間に予算を決めなければならないという作業上の制約から、合理化政策としてこのシーリングというものが取り入れられたというふうに私は理解をいたしております。  それがだんだんシーリングが下がってまいりまして、最近ではマイナスシーリングということが出てきております。これはこういった非常に厳しい財政状況のもとで、大蔵省が各省との間で話をつけていく場合に、なかなか甲乙はつけにくいということからこういったことが行われるようになっておるのだと思いますし、その事情が決してわからないわけではございませんけれども、やはりこういったものをどんどん進めていって、マイナス一〇%、マイナス二〇%にしてもいいというようなものではないであろうと思います。やはり本来の機能である資源配分ということも考えますと、こういったシーリングというもので抑えていく政策というのは限界がなければならぬ。そういう意味では私自身、個人としてはこのマイナスシーリングというようなものはいかがなものであろうかというふうに実は考えておるわけであります。  来年度以降も財政状況の厳しいことはもう言うまでもないわけでありまして、また同じようにマイナスシーリングがあるいは取り入れられるかもしれませんけれども、そういった際には常に、本来の資源配分という面から見ておかしくないかどうかということを一方において十分に検討して、このシーリング政策をとるならばとるで実施していってもらいたい。つまり、各省なりあるいは各方面の意見というものを、こういったシーリングをとるに当たって、どういうふうな配分方式がしかるべきかというようなことを十分聞いてもらいまして、その上に立ってこのシーリングの制度というものを考えていくということが必要なのじゃないかと思っておる次第でございます。
  40. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 次は、草場参考人にいろいろお尋ねをしていきたいと思います。  金利の自由化の問題です。とにかく金融の自由化あるいは国債の大量発行時代を迎えまして、最大の焦点は金利の自由化であろう、私はこう思います。そこで、その最大の障害になっているのは八十三兆円の郵便貯金ではないかというふうに私は理解をしております。この問題につきましては、先ほど草場参考人もいろいろと意見陳述の中でお述べになったわけでありますが、さまざまな意見があります。郵貯はどうしても保護しなければならない。あるいはまた、一方においては定額貯金を見直していかなければならない、そして肥大化を抑制していかなければならない。あるいはまた、金利決定に当たっては市場金利を優先し、便貯金利はあくまでも追随するルールというものを確立しなければならない、こういうさまざまな御意見が今出ているわけでありますが、私がお聞きしたいのは、国民生活を守る立場あるいはまた我が国国民経済的な視点に立って、今日の郵貯問題というのはどういうふうに対応していったらいいか、こういった問題であります。ひとつそういった意味での御意見を賜れば、このように思います。
  41. 草場敏郎

    草場参考人 ただいま先生の御意見がございましたとおり、金融の自由化は現在の世界の情勢の中で日本も、これは外圧ではございませんが、どうしても自主的に進めていかなければならぬ一つの大きな方向であろう、そういうふうに考えております。ただ、そこの中で、今御指摘がありましたとおり、郵便貯金というものが非常に大きな問題になっているというふうに私たちは考えておるわけでありまして、特に昭和四十五年ぐらいのときには各預貯金の中でのシェアが一九%ぐらいでありましたものが、既にことしの三月末には、急速に膨張いたしまして、約三二%というような、国民個人預貯金の三二%を一つ政府機関である郵便貯金が持っているということが、やはり今後の金融、特に金利の自由化、規制金利の自由化の中に大きな問題を来しているのではなかろうかというふうに思っております。  なぜかと申しますと、一つは昨年の十月、公定歩合の変更時に、再三にわたって、約二カ月以上にわたって民間の金利が下がったのにかかわらず、郵便貯金がなかなか下がらないといったように、そういった一つの金融政策の有効性に極めでいろいろな影響を与えている。  もう一つは、こういった郵便貯金だけが極めて激しいふえ方をしていきますと、公的資金が肥大化していく。そして、その意味で政府資金による民間への関与の度合いが強まってくる。そういう意味で自由主義経済の中における適正な資源配分が極めてゆがめられてしまうということが起こっておると思っております。  それから三番目に、郵貯は独自の立場で金利を決定するというようなことがまかり通りますと、いわゆる郵貯金利がプライスリーダーとなる。そういう形になりますと、コストと申しますか、官営でございますから、民間と違いまして、コストであるとか資金の需給であるとか、そういった問題と関係なくて一つの金利が決定されるということになりますと、私ども民間の現在の金利自由化の中における小口預金分野での自由化が非常に困難になってくると思っておるわけでございます。  そうしたら、どうしたらいいかという問題なんでございますけれども郵貯というものは、郵便貯金法の第一条にありますとおり、簡易で確実な少額貯蓄の手段を国民にあまねく提供するというのが本来の趣旨でありまして、しかもその集められた資金は、財政金融政策との整合性を持って一元的に運用する、資金運用部資金法にも出ているとおり、資金運用部に全額預けるというのが、一つの一元運用をするという意味で、いろいろな特典を与えられてきたわけであります。  例えば国が、郵便貯金に関しては元本を保証する、あるいは郵便貯金はすべての税負担を免除する、それから準備預金、預金保険、そういったすべてのものを免除する。そういった、政府そのものでございますから、政府がいろいろな特典を与えている。したがいまして、郵便貯金で集めた節度ある預金をすべて資金運用部に出して、そしてそこの中で国の政策金融をやる、あるいは海外援助をやる、そういったような低利で政策運用をするための原資として郵便貯金があるのだという根本的なことを十分わきまえてあるべきであろう。したがいまして、特典を利用していわゆる商品をどんどんよくしていくとか、あるいは限度管理をルーズにするとか、いろいろな形の中で民業を圧迫して郵便貯金のみが肥大化するということは、私は、国民経済にとって大変な問題であろう、そういうふうに感じているわけでございます。  また、そういう意味で、政府そのものでございますから、相当膨大な、現在までも三千五百億余りの累積赤字も生じておりますし、とてもそういった、本来の民業ではございませんから、政府そのものという形の中で、コスト意識が極めて薄いという中で民業と競争するということが非常に無理があるし、またそれが金利自由化を非常に困難にしている。これも再三にわたって、今申し上げたばかりでございませんで、いわゆる総理大臣の郵貯懇の報告であるとか、第二次臨時行政調査会答申であるとか、すべてにわたって官業は民業の補完に徹すべきであるとか、あるいは定額郵貯の商品性の見直しを図るべしとか、あるいは貯蓄総額の制限の据え置きであるとか、あるいは限度管理の厳正化、資金運用の統合運用の維持あるいは金利決定の一元化、そして三大臣合意の遵守、いろいろそういう形の中でありますので、今後の、将来避けて通れない一つの金利自由化の中で、郵貯が本当の意味での官業としての節度を持って、やはり官業は民業を補完する、金利は民間の金利に追随する、そういった実効ある体制をぜひ国民的な合意の上でつくっていただきたいと私たちは念願しておる次第でございます。  以上でございます。
  42. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 どうもありがとうございました。  時間になりましたから、私の質問は終わります。
  43. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 米沢隆君。
  44. 米沢隆

    ○米沢委員 参考人の皆さん、御苦労さんでございます。先ほど来いろいろと議論がありますから、重複する部分があるかもしれませんが、御勘弁いただいて二、三質問させていただきたいと思います。  まず最初に、三人の参考人の皆さんに簡単にお聞かせいただきたいのでありますが、御案内のとおり、六十五年に赤字国債をゼロにするという方針を新しく決定されましたが、果たしてその赤字国債が六十五年にゼロになるのか、実現できるかどうか、この問題でございます。御案内のとおり、歳出カットを従来以上にやれとか増収措置を考えるとか、あるいはこの併国策しかないだろうというように抽象的にはよく語られるのでございますが、御承知のとおり、政府も税調も財政審も、いわゆる自然増収を多くするような積極拡大策は今のところ放棄されておりますから、従来のいわゆる歳出カットの延長あるいは増収措置しか今のところ考慮の中に入れられない、そういう状況ですね。歳出構造の見直したって、今やっておるように、国民や地方自治体にツケを回すようなやり方だったら、それは簡単でしょうけれども、我々が求めておるのは、少なくとも不要な仕事はもうやめる、あるいは肥大化した組織にメスを入れて、少なくとも中二階的な組織はやめてもらおう。そういうことをやってもらわないと、実際歳出構造の見直しにはならないと僕らは思っておるのですね。  ところが、これはお役人の抵抗が強くて、そう簡単にうまくいかない。同時にまた増収措置だって、抽象的には、租税負担あるいは社会保険料負担を合わせたものが先進国並みになるといけないから、今のところ大体四〇%前後ぐらいに抑えよう。今三五、六%でございますから、五%上げたら大体十兆円近い増収になると思います。しかし、先進国がこうだからおれたちも出さねばならないという議論にならないですね。やはり日本の制度の中で国民は物を考えるのですから、そういう意味で非常に難しい一面があるだろう。そうなりますと、大型間接税を入れないで六十五年に赤字国債ゼロにするなんていうのは本当にできるのだろうかという疑問が何回も語られるけれども、余り答えが出てこない問題ではないかと思うのです。  そこで、三人の参考人の皆さんに、常識的に言って、大型間接税を導入しないで果たして六十五年赤字国債発行をゼロにすることができるとお思いですかということを聞きたいのでございます。
  45. 宮崎仁

    宮崎参考人 非常に端的な御質問でございまして、なかなかお答えしにくいのでございますけれども、この「仮定計算例」等で示されておるものを見ますと、今後一般歳出を仮に五%ずつ伸ばしていくとした場合に、昭和六十五年度における、いわゆる要調整額と言っておりますが、ギャップ、何とかして歳出カットかあるいは歳入増かで埋めなければならぬものが約十兆円あるということになっておるわけですね。五%ずつ伸ばしていくというのはどの程度の厳しさであるかということは、この「中期展望」で見たってわかりますように、これは後年度負担推計というもので、要するに現行制度をそのままにして伸ばしていった場合に大体どの程度になるかという推計でございまして、これで見ると、六十年度は五・二%、六十一年度三・九、六十二年度三・一と、大体五から三ぐらいのところで伸ばしていければというところが一つの目安になっておるのだと思います。そういう目で見ますと、三%ずつ伸ばせば、さっき申しました六十五年度のギャップは五兆円。五兆円から十兆円ぐらいのギャップを何とかして埋めねばいかぬ。  では、これを歳出カットでやれないかということになれば、この五十七、五十八、五十九年度と、ほとんど一般会計の伸び率はゼロにしてまいったわけでありますから、そういうことを続けていけば、計算上も六十五年度には大体特例公債というものが脱却できるという姿になっておるわけです。しかし、ここ三年間歳出カットで抑えてきておりますけれども、もう相当無理が重なっておる。社会保障の面、その他いろいろの面で無理があるということから見ると、なかなかここまで抑え切ることは恐らくできないのじゃないか。この三ないし五%ぐらいのところで考えるのが常識的か。そうなりますと、これを一体どうするかということになりまして、結局社会保障も含めた租税負担国民負担ということにある程度お願いをするようなことにしなければならぬのじゃなかろうかと私自身は思うわけでございます。  そこで、先ほど規範という言葉を使いましたけれども臨調答申で言われておるような、現在社会保障負担租税負担合わせて三五%ぐらい、これを、欧米水準というものは五〇%ですが、二十一世紀という相当長い期間を見ました場合に、そこまで上げるのはちょっと行き過ぎかもしれませんが、ある程度上げることはやむを得ないのじゃないかという一つの指針が示されておるわけであります。ですから、その辺の長期的な見通しというものを考えながら、何か今後の問題を議論していくというのが比較的常識的じゃなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  その場合、もし増収ということではどうやるのか。租税の内訳として大型間接税がどうのこうのということになりますと、これは私も申し上げる意見は特にございません。今申しましたような大局的な見地に立ってやっていくというようなことで御議論を願ってみたらどうであろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  46. 草場敏郎

    草場参考人 私も、大変難しい御質問で、御返事が非常に申し上げにくいわけでもありますし、また、申し上げにくいほど少し難しい問題ではなかろうかというふうに感じております。  しかし、一応少なくとも六十五年の「中期展望」を出したのでございますし、また、今後の国債発行量を見ていっても、やはりどう考えても少し多過ぎる。特に、五十九年度ですら約十兆円近い、九兆数千億の利払い資金があるのでございまして、そういった一般会計の中での恐らく二〇%弱ぐらいの利払い費があるということは、余りにも一つの国家の財政として不自然だ。その意味で、非常に難しい問題ではありますけれども、行政の簡素化を中心として、どうしてもやはり歳出の削減をいろんな意味で、いろんな角度でやるのが筋だろう、その上で歳入の見直しをやっていくという形の中で、国会の先生方を中心にしまして、政府ともども、そしてしかも国民のコンセンサスを得て、少なくとも「中期展望程度の問題は何とか実現していただきたいということを切に念願しているという次第でございます。
  47. 和田八束

    和田参考人 六十五年度に特例債ゼロにするという目標は不可能であるというのが、先日の大蔵省ですか、出されました財政見通しといいますか、「展望と指針」の結果であろうと思うんです。つまり、ゼロにした場合には要調整額が最大十兆円ぐらい出るわけですから、その十兆円を埋める手だてというものがないわけでありますので、結局は、このままの制度なり現状を維持する限りは無理だというのが結論だと思います。私も大体そんなようなことだろうというふうに判断しているわけです。  したがいまして、その十兆円を埋めるのにはどうすればいいかということになりますと、第一には増税をするということであり、第二には歳出の削減を図るということであり、第三にはその他の収入を考えるということであって、そういう何かあった上で自然増収が比較的順調に行われた場合には、大体可能だろうと思うんです。しかしながら、今後自然増収をほとんど特例債減らしに持っていって、なおその上で十兆円の要調整額を埋めるだけの手段があるのかどうかということになりますと、大変難しいわけでありまして、従来のゼロシーリングといいますか、マイナスシーリングというんですか、こういう予算編成方式だけでは難しい。今後それを続けて大幅に歳出を削減していくということは、もうほとんど難しいだろうと思います。  あと残るのは増税か行革か、他の収入を図るかということであります。他の収入というのは、巷間言われておりますように、例えば電電公社等公社を民営化した場合の株式売却益というふうなものがどれぐらいあるかわかりませんけれども、そういうふうなものに期待するというふうなこともあるわけであります。しかし、これはすぐ現在具体的に考えられるものではないわけであります。  あとは増税か行革かということでありまして、増税ということであれば、最終消費支出に対する一定の割合での税を考えるといたしますと、最終消費支出大体二百兆円程度であろうと考えれば、その五%で十兆円程度の計算がなし得るわけでありまして、そうなれば、比較的期待し得る収入を図れるということになるわけでありますけれども、それによる弊害、これは国民所得に対する租税負担率が急速に高まることによる経済的あるいは国民生活上の弊害というものもありますし、それから、一たん増税はいたしましても、財政の体質が変わらなければ何にもならない。また次の手を考えなければならない。一回限りのカードになってしまうわけでありますので、これも次の、一回カードではないという先の見通しが立たなければ、このカードを使うということは避けなければならない。  したがいまして、やはりここで基本になりますのは、非常に困難であっても、今後ここ何年かの間で行政改革といいますか、歳出面でどれだけ切り込みができるのか、根本的な財政体質あるいは国と地方との財政関係というものをどれだけ変えられるかというところにあるわけでありまして、それがやはりいろいろなほかの面につきましてもスタートになるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。
  48. 米沢隆

    ○米沢委員 次は、宮崎参考人にお伺いしたいと思うのでありますが、例の特例公債償還方針の転換の問題でございます。  もう御案内のとおり、特例公債の借換債発行しないというのは、昭和五十年以来の基本方針でございました。六十年度から次々にそれを今度は償還しなければならぬということで、余りにも多額の金額でございますから、結局は特例公債償還に当たって借換債発行することを認めようという財政審の御判断のようでございます。  しかし、宮崎参考人に言うのもちょっと酷かもしれませんが、こういう状態になるということは、かなり前からわかっておった事実ですよね。ところが、政府の方は、昨年まで、借換債はやりませんと言って国会で答弁してきたたちのものでございまして、今になってから、もうどうしようもありませんから借換債発行させるようにしてくれ、こういうようなことになっておるわけですね。どうも物の考え方が、現状を見た場合、どうしようもないから何とかしてくれ、こういう発想でございまして、それを受けて財政審も、わかったわかった、かくかくしかじかでございますからと言って、財政審もわかりましたから私たちもやらしてもらいますという形で、かなり安易にこのあたりを考えられておるのじゃないか、そこらが我々の欲求不満の一つでございます。本来ならば、財政審というのは、確かに政府から諮問されたものについて分析をし、そしてそれぞれの意見を述べられるといったちのものかもしれませんが、少なくともやはり政府法律を守り、あるいはまたいろいろと歯どめ措置専決めておるわけですから、歯どめ措置を守るように注文をつけるのも皆さん方の重要な仕事ではないか、そんな感じを持つわけでございます。  だから、どうしようもないから変えましょう、どうしようもないから変えましょうでやっていきますと、歯どめ措置をつくることも、法律をつくることもこれは無意味になってしまうんですね。今度新しい法律の中で借換債発行せざるを得ない場合にも、「その速やかな減債に努めるものとする。」なんという努力規定を入れたなんて言っておりますけれども、こんなもの実際はむなしく聞こえますね。本当にむなしく聞こえるのでございまして、まともに議論したくないような感じでございます。  そういう意味で、財政審のあり方ですけれども、私は、ただ単に大蔵省から諮問されたものについていろいろと検討なさる際には、やはり今までの法律、歯どめ措置なら歯どめ措置をきちっと守らせるというこの注文は、かなり厳しくやってもらうのが皆さんの立場ではなかろうか、そう思うのでございます。その辺をどういうふうに財政審の一員としてお考えになっておるか。  それから、今回の措置で、いわゆる公債残高の増大とか公債発行額の増大に歯どめがかからなくなるのじゃないか、こういうような心配がいろいろなところから出されております。しかし、今までの歯どめ措置そのものが、まじめにやろうという気持ちが全然なかったから、結果的には、借りかえ禁止の規定があったとしても、それが歯どめがなかったからこういう状況になったわけでございまして、今後こういう措置をすることによって歯どめがかからないであろうという問題については、財政審としては、もっと実効が担保できるような、歯どめ措置みたいなものの注文が出されてしかるべきであろう、こう思うのでありますが、そのあたりはどういう議論がなされたのか。以上、お答えいただきたい。
  49. 宮崎仁

    宮崎参考人 財政審の運営も含めた非常に厳しい御批判でございますが、確かに財政再建問題について、五十九年度特例債依存体質から脱却ということについては、既に二、三年前から、これはとても無理じゃないかというような議論は、審議会の中でもいろいろと出されておりました。むしろ、その実情というものを早く明らかにして、そしてこれを転換するなら転換すべきであるというような議論がいろいろあったということは、ここで御紹介をいたしておきます。私自身から見ましても、やはりこの五十六、五十七年度の歳入欠陥問題というのが明らかになってきた過程で、これはとてもできるものではないということは感じておりましたし、そういう議論もまた、実際審議会の中でも出たわけであります。  もともと、審議会の使命からいきますと、何も政府政策をそのまま支持するという立場ではないわけでありますから、当然これを批判をし、あるいは意見を言うということでやっていかなければならぬわけでありまして、そういう意味では、現在の審議会の運営もかなりそういう点では厳しい意見が多く出ておると思います。会長の桜田さん自身が、そういう意味では非常に厳しい方でございまして、大臣に対しても、あるいは大蔵当局に対しても、相当思い切ったことを、あるいは注文をつけられるというようなふうになっておることを御紹介しておきたいと思います。  そうは言いながら、現実には見通しを間違って、そしてどうにもならなくなって特例債借りかえというようなことになったじゃないかと言われますと、全くその点は、どうも我々としても弁解のしようは余りないわけでございます。しかし、この段階まで来てみますと、ここでいわゆる現金償還ということで、今まで決めた制度とおりにやっていくことが果たしていいのか悪いのかという判断をせざるを得ない。そういうことをもし強行しようとすれば、六十年度以降相当大幅な増税をやるのか、あるいはこのまま無理があってもとにかく歳出を切ってしまうというようなことで対処していくのかということで、先ほど申しました中期的な財政運営に対する小委員会というようなところでこの議論をしたわけであります。これは七人の委員でやったわけでありますが、内容は公開をいたしませんけれども、中ではかなり厳しい議論がございました。そういった過程で、しかしどうもこの段階まで来てしまうと、ここで現金償還ということを押し通していくことはやはり無理があるということから、借りかえという問題はやむを得ないという結論に結局なったわけであります。  その場合に、ではそうなると全く歯どめはないかというと、私はそうは思っておらないわけでありまして、一九八〇年代経済社会展望と指針」、これはいわゆる経済計画にかわるものとしてつくられたものでありまして、当然閣議決定になり、政府を拘束しておるわけでありますから、この中で昭和六十五年度に特例公債依存体質から脱却をするということを一応掲げた以上は、やはり政府はその大筋に従ってこれから財政運営をやっていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。そのためには、思い切って歳出カットするのか、あるいは若干の負担増ということで国民のコンセンサスを得ながらやっていくのか、結局道はその辺になってくるわけでありますけれども、毎年度の予算編成あるいは予算の執行という面を通じて、そういったことを実現していく最大の努力をしていかなければならぬと思うわけであります。  行政改革の問題なんかにいたしましても、結局これはその段階、その段階ごとの努力の積み上げでできていくわけでありまして、財政についてもやはりその点は同じであろうと思います。これからの政府の努力をしっかりとやっていただかなければならぬと思いますし、財政制度審議会としては、これを見守っていって、必要な意見なりあるいは建議をいたしていきたいというふうに考える次第でございます。
  50. 米沢隆

    ○米沢委員 時間ももうなくなったのですが、和田参考人一つお聞かせいただきたいのは、最近、経済ソフト化とかあるいはサービス化とかということが言われまして、こういうような経済構造の変化に既存の税制がついていけない、対応できないというような問題が指摘をされます。先ほど宮崎参考人の方からもそのような話がちょっとありました。そういうことで、ソフト化に関連して地下経済も云々されておりますから、そういうものに対する我が国の税制はどういうふうに改められたらそういうものに対応できていくのか、その点をちょっと聞かしていただきたいと思うのでございます。これに対応するために、よく一般消費税の導入等が言われますが、果たして消費税だけで万能なのかという、そのあたりを税制の専門家として、余り時間もありませんが、簡単に御答弁いただきたい。  それから、草場参考人一つお願いしたいのでありますが、御案内のとおり日米円ドル特別委員会等が、第三回も終わりまして、急速に円の国際化、金融自由化あるいは外国金融機関の日本への参入等々が始まってくると思います。そういうものを金融界としてどういうふうに受けとめていらっしゃるのか。その際、日本の銀行のいわゆる国際競争力というものをどういうふうにお考えなのか。話によると、アメリカの西海岸あたりはもう日本の銀行が占領するだろうなんて言われておりますから、今までだったらかなりの競争力があったのだろうと思いますが、事ここに至って、かなり開放度が強まってまいりますと、日本の銀行そのものが国際的に太刀打ちできるのかどうか、そこらは大変重要な問題ではないかと思うものでございますから、そこらを簡単に御答弁いただきたいと思います。
  51. 和田八束

    和田参考人 お話のように、ソフト化サービス化というのはかなり進んでいるというふうに言われているわけでありまして、それに伴っていわゆる地下経済なるものも形成されているという話も聞くわけですけれども、それがどの程度であってどうなっているのかというのは、まさにアンダーグラウンドであってわからないということでありまして、じゃ、それに対してどう対応するのかということは、私は、なかなか難しいのではなかろうかと思います。これは我が国だけではなくて、ヨーロッパ諸国においてもかなりそういう地下経済部分が多いというふうに言われているわけですけれども、やはりそれに対する十分な対応というのがなされるのは非常に難しいという実情を聞いているわけであります。したがいまして、既存の税制というのはどうしてもサービス経済というものに対しては不十分でありますので、できるだけ徴税その他の税務行政上も、あるいは制度的にも見直してみる必要はあるわけでありますけれども、かなり限界があるのではなかろうか。現在の例えば地方税であります料飲税などは一種のサービス業に対するものでありますけれども、やはり相当漏れの部分も多いというふうに言われているわけでございまして、それを直撃するような税をつくっても、十分に対応できなければ何にもならないのじゃないかと思うわけです。  いわゆる一般消費税でありますけれども一般消費税は消費一般にかかるわけでありますので、例えそういう直接税の課税から逃れている部分であっても、あるいは地下経済部分であっても、最終消費がなされる段階で一定の割合では課税がなされるということでありますので、現在直接税の負担が全然ゼロのところでも消費税によってある程度はカバーできる、こういう効果一般消費税の場合には言えると思うのです。しかし、それ以上に現在の直接税とそれからサービス関係あるいは地下経済負担との均衡を図るということは、非常に難しいのではなかろうかというふうに思います。
  52. 草場敏郎

    草場参考人 今回日米円ドル委員会が開かれまして、金融の自由化、円の国際化というものが今進展している状況でございますが、ここ数年来、やはり世界の趨勢といたしまして、各国ともある程度自由化が進んできている。その意味で、私どもとしては自由化というものが何かということを考えますときに、やはり自由競争という問題の中で一つの金融の効率化に役立っている、あるいは資金の効率的配分にも役立っている、そういう意味で、やはり自由化はみずから自主的に推進していかなければならぬということは、ここ二、三年来私どももやってまいったわけでございまして、したがって、そういう意味で今の自由化という問題がどうしても、漸進的にではありますが、進んでおったところに、一つのアメリカサイドからの要請もあった形になって、少し加速化されてきたかな、そういうふうに感じているわけでございます。しかし、やはり一国一国の独自の風土、慣行、制度がございますので、その中で本当に世界の慣行にそぐわないような競争制限的なものは排除していかなければいけませんが、やはり自主的に慎重に対処していかなければいかぬ。  特にユーロ円市場の拡大の問題等に関しては、これは、キーカレンシーであるドルはなるほどユーロダラーという大きな市場を持っておりますけれども、フランス、ドイツ、スイス、すべて自国通貨のユーロ市場はやはり制限をしているというような問題がございまして、日本だけがユーロ円市場を野放しにすると言うとおかしいのでございますけれども、決済通貨あるいは準備通貨として、円がその実力に応じて信認されて世界に広まったものはよろしゅうございますが、この際余り人為的に拡大するのはいかがか、やはり慎重に対処すべきではなかろうかというふうに私は考えております。  また、日本の銀行の国際競争力という問題でございますが、漸次、日本の銀行は、本来国内が主体で業務を営んでおりましたものが、日本の各産業が世界に進出した中で追随して出て、そこである程度の実力を養いながら、今度はオイルショック以来の世界の資金のリサイクリング、いわゆる仲介業務で米国の大手銀行あるいは西欧の大手銀行と一緒になってやってきたというような問題で、確かにある程度従来はよくなりましたけれども、この前の累積債務国の問題以来、米英の銀行に比べますと、過去の蓄積力といいますか、内部資本の充実力が違います。その意味で、やはり今後の日本の銀行の国際競争力というものは非常に厳しくなってくるだろうと私は見ております。  またもう一つ、その意味で、アメリカあるいはドイツ等、各国いろいろ事情は違いますが、日本よりは、アメリカは一つの持ち株会社があって、銀行、証券、保険等が一緒にやるとか、ドイツは銀行と証券が一緒にやるとか、アメリカはまた、銀行と信託が初めから一緒であるとか、いろいろ制度が違いまして、その意味で非常に難しい問題がございます。  特に累積債務国に対する膨大な資金の仲介業務といいますか、今の貸付残高に関しましては、これは金融恐慌を来しますので、世界が協調して対処しなければいけませんものの、それに対する各国の貸出金に対する内部留保と申しますか、引当金といいますか、手厚い引当金をアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスはやっているわけでございまして、そういう意味でもやはり私どもにも漸次そういうものを、もう少し強目な内部留保をさせていただきたい。そうでないと、過去の蓄積の多い米英銀行に伍して、本当の意味での世界の経済あるいは日本の経済を進展させるということは可能でなくなってくる可能性がある。そういう意味で、今後私どもも大いに効率化に努力してまいりますが、そういう御配慮もまた今後も賜っていきたい、そういうふうに感じております。  どうもありがとうございました。
  53. 米沢隆

    ○米沢委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  54. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 正森成二君。
  55. 正森成二

    ○正森委員 宮崎参考人に伺います。  宮崎さんは財政制度審議会委員でいらっしゃいますし、また「八〇年代経済社会展望と指針」をつくられました経済審議会でも重要な役割を果たしておられると承知しております。それで、その両面についてこれから少し伺わせていただきます。    〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  財政制度審議会では何回も報告を出しておりますが、その中で、今ここに持ってまいりましたのは昭和五十七年十二月二十四日の「昭和五十八年度の公債償還財源の繰入れについての報告」でございます。この考えは最近では終始貫かれていると思いますが、そこでは、定率繰り入れの取り扱いについて「特例公債発行しながら償還財源を積み立てることは、結局は、それだけ特例公債の増発をもたらすこととなり、それはまた、将来の負担によって将来の償還のための財源を、利子を支払いつつ蓄えることにほかならず、不合理であるという意見がある。」云々と言われまして、結論として「特例公債発行せざるを得ない五十八年度において、定率繰入れを停止することはやむを得ないものと考える。」こうなっております。  この考えはその後も引き継がれているわけですが、いよいよ昭和六十年度から特例債についても借りかえを行わざるを得ないということで、今財確法案が提案されているわけですね。そうしますと、財政審のこのお考えからいえば、いよいよ定率繰り入れを続けるということは合理性がないといいますか、困難であるというお考えにならざるを得ないのではないかと思うのですが、それについてのお考えをまず一点。  ただし、これまでは、それをやめても国債償還に対する財源国債整理基金の中にあるから構わないという意見であったのですが、昭和六十年の後半には国債整理基金が枯渇するという問題になります。それは必ずしも定率繰り入れを全額行わなくても賄えるわけではございますけれども、私がこの間の当大蔵委員会で資料として出したものを御参考にしていただきますが、それの右側から二番目のところが定率繰り入れを停止した場合の財源不足額ですね。六十年は五千三百億。一方、左から二列目には定率繰り入れの額が一兆八千七百億。そうすると、その差額が一兆三千四百億、これが一番右側の数字ですね。ということになるわけで、政府の「財政中期展望」でも、来年の要調整額が三兆八千億円前後と言われているところから見ますと、全く繰り入れを行わないというのでは国債償還に支障があるでしょうけれども、一定の割合だけを繰り入れるということであれば、償還にも支障を来さず、要調整額を減らすことにもなるということにもなりますので、恐らくこれらの問題は財政審でも当然御論議になっていると思いますが、財政審のお考えもしくはそれが御無理なら宮崎さん個人の御見解についてお述べいただければ幸せと思います。
  56. 宮崎仁

    宮崎参考人 この定率繰り入れにかかわる問題は、財政審の中で実は法制部会というのがつくられておりまして、そこでいろいろ議論をされております。私は、申しわけないのですが、その法制部会の方には参加をいたしておりませんので、したがって、どういう御議論があったのかということを申し上げるわけにはまいりません。またしたがって財政審としての議論ということはちょっと申し上げかねるわけでありますけれども、いずれにしても六十五年度あたりまでの今後の財政収支の見込みというものを見てまいりますと、現在あるこの定率繰り入れ制度、この減債制度というものを規定どおりに実施していくということは非常に困難だというふうな見通しになるかと思います。そういうことから見れば、むしろこの際もうこういった減債制度はやめてしまうということも、一つ議論としてはあると思うのですけれども、これも明治以来の長い歴史のある制度でございますし、やはり今後とも国債というものを出していく場合に、減債制度というものを一方に持っておるということが、負担の平準化の問題、あるいは行き過ぎを是正する問題その他の面から見まして重要であるということから、恐らくこういった形で制度そのものは残す、しかし、やむを得ざるときにはこれを変えてもいい、こういうふうな方式に切りかえたのだと思います。  私も、この考え方そのものは大体常識的ではなかろうかと思いますが、実際問題として、では定率繰り入れ制度というものがすぐに復活できるような状況かというと、少なくともここ数年の間では到底そういったことにはならないのじゃないだろうか、こういう感じを持っております。
  57. 正森成二

    ○正森委員 和田参考人に伺います。  和田先生は、たしか昨年でございましたか、学陽書房というところがございますか、そこで、「行政改革と税財政」という国民税制調査会編の書物の中の「国債問題の新しい課題」というところで論文をお書きになっております。  この論文を見ますと、定率繰り入れというものはこの際取りやめてしかるべきであろうという意味の御意見をお述べになっております。さらに、借りかえの問題について御意見をお書きになっておりますが、その借りかえの中で、「特例国債短期国債で借換えるという考え方が出されている。」というところで、「大蔵省証券と同様に日銀引受けにつながる可能性が大きい」という御意見あるいは危惧を述べておられます。この二点について、先生のお考えを伺いたいと思います。
  58. 和田八束

    和田参考人 定率繰り入れについてはやめた方がいいのだろう、財源難財政危機だと言われているのに、無理に積み立てる意味がない。定率の率そのものの考え方も必ずしも明確でないわけでありまして、建設国債の場合についてはある程度理屈づけが行われているわけですけれども、これとてもそれほど根拠のあるものではないわけでありまして、今日の財政観からいいますと、こういう古典的な形での国債管理は必要ないだろうということであります。  それから、借換債につきましては、この借りかえ時点での国債の保有がどのようになっているかということは毎年違うわけでありますけれども、主として私が聞いておりますところでは、日銀保有のものについては乗りかえが行われるというふうに聞いておりますので、この限りでは日銀引き受けと同様な経済効果といいますか、経済作用を生じるということになるわけであろうというふうに私は考えるわけで、今後特例債について六十分の五十になるか、あるいはどれぐらいの割合になるか知りませんけれども、かなりの部分借りかえが行われるということになりますと、やはりここで通貨管理の問題あるいはインフレーションという問題が、従来よりももっとシビアに出てくるのではなかろうかという感じがいたします。
  59. 正森成二

    ○正森委員 次に、もう一度宮崎参考人に伺います。  失礼でございますが、宮崎さんがおいでになりますので、御経歴をちょっと勉強させていただきましたら、経済企画庁で非常に重要な役割をお果たしになりまして、五十一年に次官でおやめになっておるようでございますが、その前の四十七年から四十九年まで、総合計画局長の地位におられたようであります。この時期は、ちょうど田中内閣時代でございまして、「経済社会基本計画」、期間昭和四十八年から五十二年度、五カ年間の政策策定が行われたのが四十八年の二月でございますから、まさにこの計画を作成されるいわば実務的な最高責任者であったと思いますが、間違いございませんか。
  60. 宮崎仁

    宮崎参考人 そのとおりでございます。
  61. 正森成二

    ○正森委員 それからもう一方、現在「一九八〇年代経済社会展望と指針」、五十八年の八月に出ましたが、その経済審議会の委員の名簿を見ますと、総合部会というところに宮崎さんのお名前が出ております。さらに、公共投資委員会というのがございまして、そこでは小委員長をされておられます。ですから、こういう問題については非常に御造詣が深いと思うのですが、試みに、あなたが実務上非常に重要な役割を果たされました「経済社会基本計画」というのを見てみますと、これはもっともなことなんですけれども、非常に率直に、社会保険負担率、そのころは社会保障と言わないで社会保険負担率と言っておったのですが、それが昭和四十五年度の四・六%から五十二年度は七・三%、あるいは税及び税外負担率、税外負担で日銀納付金等も入っておりますから、税負担率と今言われておるものよりは大分、二、三%上になっておりますが、それは四十五年の二一・七%から、経過期間中に対国民所得比三%程度上昇というように数字が出ております。あるいは政府固定資本形成では、これは五年間に累積投資額は九十兆円というように出ておりまして、これは輪郭の部分ですが、その末尾に参考表というのが出ておるのですね。この参考表を見ますと、実に詳細に出ておりまして、例えば公共投資のところでは、部門別に環境衛生とか公共賃貸住宅とか、あるいは道路等々出ておるわけですね。それからそのほかにも、一々申しませんが、ここへ持ってまいりましたが、出ているわけです。私は、これが本当の姿だと思うのですね。  今度は総理の御意向で「一九八〇年代経済社会展望と指針」というようになりまして、今までの七カ年計画とか五カ年計画とかいう、「計画」という言葉をやめたわけです。しかし「計画」という名前であろうと「展望と指針」であろうと、政府の今後の、五年ないし七年の経済運営の姿を示すものには違いないですね。そのときに、あなたのおつくりになった「経済社会基本計画」でももちろんそうでございましたが、「一九八〇年代経済社会展望と指針」以外は全部、租税負担率がどのくらいになり、社会保障負担率がどのくらいになり、公共投資はどのぐらいであり、社会保障移転はどのぐらいであるという数字が入っているのですね。それは入るのが当たり前で、これこそまさに政府の責任において日本経済影響を与える事項であるからですね。ところが、今度の「経済社会展望と指針」では、そういう数字を一切明らかにされないで、しかもそれらの数字を含めなければ予測できない名目成長率国民総生産でどうであるとか、あるいは失業率がどうであるとかいうことだけが書かれているのですね。  これは素人の方に申し上げるのではなしに、あなたのように経企庁の次官までされた方に率直に申し上げたいと思うのですが、政府が関与すべき、今私が挙げましたような数字が出ないで、全体の国民総生産の姿が出るなどということは考えられないわけですね。今のように、戦後の財政史上初めてという特例国債についてまで借りかえを実施する、そして六十五年までに特例国債をゼロにするというようなことをやらなければならないときこそ、和田参考人が五つほどの政府のなすべきことの中の二番目に挙げられましたが、財政再建をいつ、どのように行うのかということを明示しなければ、国民の間に信頼感が持てないわけですね。  そこであなたに、両方に関与されたわけですから、「八〇年代経済社会展望と指針」あるいは「経済社会基本計画」という両面を踏まえて率直な御意見を賜りたいと思うのですね。あらかじめ申し上げておきますが、中曽根総理にしろあるいは企画庁長官にしろ、リボルビングとか見直しとか、そういうことをやらなければ幾ら計画を立ててもだめなんだということを言われるわけですね。しかし、率直に言いまして、リボルビングとか見直しとかいうのは、何らかのもとのものがあってそれを見直すことができるので、もとのものがなければ、見直すといっても見直しょうがないのですね。ちょうど多少顔のまずい人が整形外科へ行く場合でも、目が二つ、鼻が一つあるから、それを二重まぶたにするとか鼻を高くするとか整形手術ができるので、それがなければ、目玉を三つにするとか、目の全然ない者にどうこうするなんという整形手術はできないのですね。政府の「経済社会展望と指針」というのは、まさに初めから目玉も鼻もなしにリボルビングをやる、見直しをやるというようなもので、国民にとってこんな無責任なものはないというように思わざるを得ないのですが、あなたの率直な御意見を承りたいと思います。
  62. 宮崎仁

    宮崎参考人 経済計画の性格というものは、釈迦に説法でございますが、我が国のように自由主義経済をとっておる国で、いわゆる計画というものが本当にできるのかどうかという議論はあるわけであります。今お挙げになりました、私が局長のときにつくりました計画もそうでありますが、経済企画庁が八回ほどつくってまいった経済計画というのは一体どういう意味があるのかということになりますと、結局いろいろの施策を展開していく場合に、単年度だけでは判断ができないというものがたくさんございます。ある程度の長期の見通しを持ちたい、そういうものとして一体今後五年なり三年なりあるいは七年間の見通しというのはどうなるだろうかということについて、経済審議会等を通じていろいろの議論をいたしまして、そして大体一致したものを「計画」という名前で決めよう。しかし、これはあくまで制度的には、それをもって民間の部門まで統制していくとか、そういうものではないわけでありまして、したがって、この計画に書かれておる施策なりあるいは見通しというものは、民間部門に対する一つの誘導的なものあるいは見通し的なものとして利用していただきたいということで使われておるわけであります。  ただ、政府の分野につきましては、これは計画的に決めようと思えばできるわけでありまして、したがって、そういうものはできるだけ政府の施策をこれで決めていこう。その一つの例が公共投資の問題であります。御承知のように、現在、法律によりまして道路とかその他いろいろなものがいわゆる五カ年計画というような長期計画を法律的につくらなければならないことになっております。その際の根拠となるものは何かというと、やはり経済計画のようなもので国全体の投資として決めていくことが適当であろうかということで、ちょうど私も公共事業の主計官をやっておりましたころからそういった議論をいたしてまいりまして、そして「所得倍増計画」、昭和三十六年から公共投資の配分ということで決めるようにしたわけであります。  ところが、昭和四十六年ごろから日本経済成長のテンポが変わりまして、いわゆる安定成長、低成長ということになってまいりますと、どうも経済計画で使っておるマクロモデルなり、あるいは各種の指標からつくった見通しというものが、実績と対比しますと実績の方が下回るというような状況になってまいりました。そうなりますと、公共投資のようなものは結局一〇〇%できなくなってまいります。これはかえって弊害があるというような議論もだんだん出てまいりました。四十九年ごろにはまだまだ私どもも少し考え方が甘うございまして、今一応成長率が少し下がりましたけれども、またある程度盛り返すであろうというようなことを考えて、そして従来型の計画というものをつくってまいったわけでありますが、そういった惰性でその後の「昭和五十年代前期経済計画」あるいはこの前の「新経済社会七カ年計画」というふうにやってきたと思うのでございます。  つまり、この「七カ年計画」ぐらいになりますと、実績と計画との乖離というものは非常に大きくなりまして、しかも経済の構造そのものが大きく変わっておるというような認識も出てまいりました。かえってこういった数字を決めることが、その数字がひとり歩きして、そしていろいろの弊害を残すこともあるというような反省も大分出てまいりまして、今度つくる計画、まあ実際は「展望と指針」という名前になりましたが、これでは、そういった数字を示すことを中心として考えるのではなくて、むしろ施策をどうするかというようなことを考えていく、そういうことによって経済計画にかわるものをつくっていくことが適当ではないか。これは総理の御意向もあったようでありますが、そういうことからこの「展望と指針」というものはつくられたということであります。  この中では、したがって公共投資の配分のようなものはやめました。これは、この数年間公共事業が伸び率ゼロというような状況になっておりますから、このままでいくということはないと思いますけれども現状を踏まえてやっていけば、ほとんど伸びがないようなものを配分として決めることが一体いいか悪いか。これはやはりかえって弊害があるのではないかというようなことからやめることにいたしましたし、それから租税負担率等につきましても、それだけを決めるということはとてもできません。もちろん、経済成長率なり物価なり何なり出すときには、何らかの数字が仮置きされていることは間違いないと思います。しかし、それを一つの計画としての目標、あるいは政策をぜひそこに持っていくのだというふうに考えるべきものではないということから、私はこういった数字が今回のこの「展望と指針」では落とされた、こういうふうに考えております。  こういう形で一体経済計画と言えるかという議論は一方にあろうかと思いますが、将来に対する経済見通しの問題、これは現在非常に難しゅうございます。私は今石油屋でございますが、この三年間、石油の消費が毎年減るというような状況は全く予測できなかったのでございます。大変申しわけないのですが、そういった状況もございます。これは素材産業全般について言えると思います。こういう大きな変革のときに、かえって従来の型のモデルや何かを使って数字を出すことは必ずしもよくないというようなことから、今回のような政策がとられたと思っておるわけであります。
  63. 正森成二

    ○正森委員 時間でございますので、草場参考人に伺おうと思ったことが聞けなくなったことをお許し願いたいと思います。  最後に一問だけ。それじゃ、国民負担率ですね、率直に言って、将来の姿としてどのぐらいと考えておられるのですか。それだけで結構です。
  64. 宮崎仁

    宮崎参考人 先ほど規範という言葉を使って申し上げました。この「展望と指針」の作業のときにもその考え方を基本としたと思うのでありますが、これは臨調答申で言われました、要するに社会保障負担租税負担を含めた現行三五%ぐらいのものが、二十一世紀には五〇%近く、あるいは四五か四〇か知りませんけれども、とにかくある程度上がっていかざるを得ない。しかし、その上がり方というのは非常に緩い。その辺を一応考えに置きながら大体議論をしていくべきではなかろうか、私は個人的でありますが、そういうふうに考えております。
  65. 瓦力

    瓦委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  次回は、来る二十四日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時散会