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宮崎参考人 宮崎でございます。
私は、
財政制度審議会委員として、この
委員会に
参考人としての
意見を陳述しろというふうに言われたと考えておりますので、
財政制度審議会における論議を通じてありました
議論というようなものを御
紹介申し上げまして、
意見にかえたいと思います。
特にこの中で、今度の五十九年度の
予算の編成に関連いたしまして、中期
財政運営問題小
委員会という
委員会が設けられまして、ただいま御
審議をいただいておりますこの
財源確保法の
内容に関するようなことをいろいろ
議論いたしておりますので、この小
委員会の話を若干申し上げてみたいと思います。また、別途私は「一九八〇年代
経済社会の
展望と指針」、いわゆる
経済計画でございますが、この
関係にも参画をいたしておりますので、その辺も加味して申し上げたいと思います。
まず
最初に、現在の
財政危機が起こった
背景あるいは
経緯ということに関して、若干申し上げてみたいと思います。
第一次
石油危機以来十年、この間に御
承知のとおり非常に大きな
財政赤字が
累積をいたしまして、
公債の
累積額が百二十兆円にもなるというような
状況になったのでありますけれ
ども、この第一次
石油危機以来の
我が国の
経済運営という点で考えてみますと、御
承知のとおり、諸
外国に比べまして
我が国は最もいい
パフォーマンスを残したというふうな評価を受けておると思います。すなわち、不況の
関係についても、あるいはインフレの克服についても、
国際収支の回復につきましても、最もいい
パフォーマンスを残したと言っていいだろうと思います。ただ、その結果がこのような非常に大きな
財政上の
赤字を生じたという点に問題がある、こういうふうに考えております。
このような
財政赤字がどういう
経緯で生じたかということは、申し上げるまでもありませんけれ
ども、
経済の
成長率を上げる、あるいは失業というような問題を考えて
財政政策をとっていくということで、
昭和五十年度以降数年にわたりまして、大幅な
公共投資の
増加を
中心に積極的な
財政支出の
拡大を図った、このことが最も大きな
原因であると言っていいだろうと思います。そして、このような
政策がとられた
背景としては、いわゆる
世界経済を引っ張る「
機関車論」というような
関係で、国際的な要請があったことも事実でありますけれ
ども、一面では、こういった
財政支出の
拡大によって
成長率を高め、その結果また
税収の
増加としてはね返るというフィスカルポリシーの考え方があったということも考えなければならないと思います。
しかし、このようなケインズ的な
財政政策というのは余り有効に働かなかった、
公共投資の
波及効果も予想したほどではなかったというようなことから、
需要拡大の
効果は期待したほどにあらわれなかったということであろうと思います。一方では、
高度成長からいわゆる
安定成長あるいは低
成長と言われる
時代に移行していくにつれまして、
経済の実体が
ソフト化、
サービス化と言われるような構造的な
変化を起こしておる、こういうことについてのいわば対応といいますか、
見通しが不十分であったために、これに適応したような
政策が必ずしもとられなかったということがあろうと思います。特に
昭和五十六年度及び五十七年度の
税収額の大幅な落ち込みによる
歳入欠陥の問題は、単に
経済見通しにおける
成長率とかあるいは当初
予算で予定した
名目成長率が実際に落ち込んだというようなことだけでは説明できないと思いまして、結局こういった
構造変化によるタックスベースの構造的な
変化というようなことを考えなければならないのじゃないかと思う次第でございます。
これは私
どもの
議論の中でも、この
経済見通しなり
経済計画がむしろ誤っていたためにこういった状態を生じたという
意見がいろいろございます。確かにそういう面もあるわけでしょうけれ
ども、それだけで
議論をするのはちょっとどうであろうかということで、私の
意見をちょっと申し上げてみた次第であります。
そこで、中期的な
財政運営の問題でございますが、これについては、昨年夏に、中期
財政運営問題小
委員会というものが設置をされました。これは
委員長は
桜田財政審議会会長でありまして、あと七人の
委員で、比較的小人数で組織をいたしまして、かなり集中的な
審議を行ったわけであります。その結果は「
中期的財政運営に関する諸問題についての
中間報告」ということで、一月十八日に
財政制度審議会から
報告が行われております。ごらんになっておられると思いますが、この
内容で若干
議論になった点を少し申し上げておきたいと思います。
この
中間報告は、大きく分けまして三つの
部分に分かれております。第一が
財政改革の
必要性、第二が
財政改革過程における
特例公債の
償還財源問題、今
法律で御
審議を願ういわゆる
借りかえの問題でございます。それから第三に、
財政改革を進めていく上での基本的な諸問題として中期的な
財政見通しの問題を
議論しております。
このうちで、まず
財政改革の
必要性に関連いたしまして、現在の
財政赤字というものについてどう考えていくかということで、いろいろの
議論がございましたが、特に
議論として、中でもかなり熱心な討論が行われました点は、
二つほどあったかと思います。
一つは、こういった大きな
財政赤字というものがこのまま放置できないということは異論のないところなんでありますけれ
ども、それを今後の
経済運営でどういうふうにして克服していくかということに対して、
一つの
議論としては、むしろ積極的な
財政運営をやって、それによって
経済を
拡大していく、その結果として
税収増が期待できる、こういうことでむしろ
拡大均衡的な
措置をとるべきではないかというような
議論がいろいろありますが、こういうことについては、やはり先ほど申しましたような
乗数効果が下がっておるとか、
財政の
効果というものが予想されたほどにいかないというような
状況から見て、これはやはりとるべきではないということが私
どもの
結論であったわけであります。
それからもう
一つ議論がありましたのは、
貯蓄と
投資との
バランス論、
SIバランス論というのがございますが、これについてはやはり
我が国は
貯蓄率が高いのだから、これを有効に使うためには
財政赤字を生じて、そして
公債を出していくことがいいんじゃないかというような
議論もあるわけでありますけれ
ども、これはむしろ事後的な
関係を
因果関係と置きかえた、やや混同した
議論だということで、こういう
議論はとるべきでないということにいたしたわけでございます。
それから第二の問題で、
特例公債の
償還財源問題でありますが、これは今後の
財政需要の面あるいは
歳入の面というようなところをいろいろ考えてまいりますと、極端な
歳出カットをやるか、あるいは
増税をやるというようなことでなければ、とても
特例公債を、いわゆる
現金償還という形で六十年度以降やっていくわけにいかないということから、やはり借
換債の
発行を行うという方針に切りかえることはやむを得ないという
結論になったわけであります。その場合、
特例公債の
償還は
国債整理基金特別会計でやっていくことがいいのではないかというような
結論を出して、そういう
報告にいたしております。
それから、今後の
財政運営問題については、既に
大蔵省の方から「
中期展望」あるいは試算が出されておりまして、皆さんもいろいろと既に
内容を御
議論になっておられると思いますので、私から特に申し上げませんけれ
ども、いずれにしても最近十年間で
租税負担率、
社会保障負担合わせまして七から八%ぐらい
負担が
増加いたしております。
こういう
状況で今後どういうふうに考えていくかという場合に、
二つの
規範があると思います。
一つは、
臨調答申の方で、国の
一般会計の
歳出の伸びは
名目成長率以下にとどめるということが言われておりまして、もしこれによって運営していけば、
負担の
増加というのはないことになりますが、これが
一つの縛りであろう。
それから一方、それでは
増税というようなことは全くやらないでやれるのかどうかということについて、これも
臨調答申の
内容でありますけれ
ども、
租税負担と
社会保障負担を合わせた全体としての
国民の
負担率は
現状三五%
程度だそうでありますが、これを二十一世紀という若干長い先を考えた場合に、
ヨーロッパ水準の五〇%前後まではいかない、それよりはかなり低く、四一%とか四五%とかいう数字が言われておりますけれ
ども、その
程度にとどめるべきであるということが言われております。
こういった
二つの
規範というものを考えながら、今後の
財政運営というものを
見通してみますと、かなりシビアなものにならざるを得ない。したがって、
歳出の
カットについては今後とも相当大きな努力が必要だというようなことで私
どもの
中間報告も結ばれておるわけでございます。
若干時間を超過して恐縮でございましたが、以上、思いついたままを申し上げまして、
意見にかえさせていただきたいと思います。(拍手)