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木下参考人 ただいまの高橋さんの御
議論は、もう既に
間接税の方へ足を踏み込んだ
議論でございます。私は高橋さんより年齢が大分上でございますので、まだ
所得税に未練があるわけでございます。まだ
所得税で何とかいかぬのかな、
所得税が日本でどうしてもうまくいかない場合に、ひとつ新たにそういう税を考える余地は出てくるけれ
ども、それを慌ててというのには一歩ためらうわけでございまして、高橋さんの方が私より若いせいか、我慢ができないのでございましょう。
そこで御
議論の
内容でございますが、まさにそのとおりで、大きく分ければ単
段階の
課税、これは製造の
段階か卸売の
段階か小売の
段階が、この三つに分かれるわけです。それからマルチレベルと申します、多
段階といいますか、こっちの方では、複数
段階でございますから、EC型の付加価値税とか、
我が国で提案されたいわゆる一般
消費税というようなものがこれに当たると思います。ところが製造
段階のカナダの
税制あるいは卸売だけのオーストラリアの
税制、これはお調べになるとおわかりになると思いますが、特にカナダなどでは、製造者
消費税に対してはこれを改革すべきであるという
議論が随分長くありますが、一たん採用いたしました税を変えるということはなかなか難しくて、欠陥は露呈されながら動かさない
状況で今日まで来ておるという事実がございます。オーストラリアについてもしかりでございまして、どの国でも非常に理想的な税を持っているわけじゃなくて、従来の行きがかり上
存続をしておるというので、私
どもは今後勉強はいたしますけれ
ども、製造者
消費税あるいは卸売売上税というものが、それほど熱烈に勉強するほどの価値があるものであるかどうか。これは当事者に会いますと、もう我々も嫌になっている税を、おまえたちは今ごろなぜ勉強するかといった態度で臨まれた場合もございますので、私
どもはその辺でどういう絞り方をして研究を重ねていくべきか迷うわけでございます。
その点からいいますと、小売売上税というのは比較的、単
段階でも最終
消費者に直結いたしますし、
負担の所在も明確になります。取引のプロセスの全体にわたりませんので、いわば税の
仕組みとしては比較的簡単にいきます。これは米国流のセールスタックス、売上税でございます。これは
原則として米国では州、時には市があわせて
課税をしておりまして、ニューヨークなどでは八%を超えるような
税率になっておるわけでございますが、これは現地でお買い物をなさったときには直ちにおわかりのとおりでございます。あのような税を国税として採用することが是か非かという問題が出てくると思います。
税調でこの
議論を正面からやったことはございません。しかし、私自身の感覚から言いますと、小売
段階の売上税というのは、地方税には向くけれ
ども国税にはなかなか向きにくいだろうという感じがいたしております。これも論証しろと言われれば非常に困るわけでございますが、こういう種類の税というのは、大体歴史的にもあるいは技術的にも地方税に向くのではないか。ただ、隣の州へ行きますと値段が違う、
税率が変わりますれば値段が違うと言って州を越えて買い物に行く
云々というような笑い話もございますけれ
ども、そういうことを別にいたしますれば、むしろ地方税に向いておる。
そうすると、だんだん絞ってまいりますが、多
段階税の方がよいのではないか。ところが、私、新聞記事で読みましたら、総理はたしか取引の全部に投げ網でございますか、網をかけるような税はやらないということをおっしゃっておられました。それはどの
程度御
理解があるかどうか私は存じませんけれ
ども、恐らく多
段階税はどうもおれは好まないということの意思表示だと思いますから、私
どもは総理大臣の諮問機関でございますので、総理が嫌なものを積極的に勉強するというのもいかがなものかと思いまして、かたがた私はまだ
所得税の方に未練がございます。勉強はいたしますけれ
ども、先ほどの御
議論の中で日本型という言葉がございました。実は一般
消費税というのは日本型を仕組もうと思って考えてあんなふうに変になったわけでございますけれ
ども、もしEC型の付加価値税というものがいいのだということになりますれば、それはそれでまた別に考えなければいけない。まだそこの
段階まで行ってないというのが実情でございまして、
税調でどういう勉強をするのかと言われましても、どうにも率直なところ、今の
段階でお答えすることは以上のとおりでございます。