運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-03-27 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十七日(火曜日)     午前九時三十二分開議 出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    村上 茂利君       森  美秀君    山岡 謙蔵君       与謝野 馨君    上田 卓三君       川崎 寛治君    沢田  広君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       堀  昌雄君    柴田  弘君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         国税庁次長   岸田 俊輔君         国税庁税部長 渡辺 幸則君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   藤野 典三君         行政管理庁行政         管理局管理官  神澤 正藏君         参  考  人         (税制調査会会         長代理)    木下 和夫君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 三月二十七日  各種手数料等の額の改定及び規定の合理化に関  する法律案内閣提出第五〇号)  特許特別会計法案内閣提出第五一号)  国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第五二号)  昭和四十二年度以後における国家公務員等共済  組合等からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出第五三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十七日  出資法及び貸金業規制法等改正に関する陳情  書(  第八五号)  たばこ専売制度存続に関する陳情書  (第八六号)  たばこ塩専売制度存続に関する陳情書外二  件(第八七  号)  塩専売制度に関する陳情書外一件  (第八八号)  北海道における燃料手当非課税に関する陳情  書(  第八九号)  公共用地収用交換等に係る譲渡所得特別控除  の拡充に関する陳情書外二件  (第九〇号)  一兆円以上の所得税減税等に関する陳情書外三  件(第九一  号)  勤労者所得税減税等に関する陳情書  (  第九二号)  大型間接税導入反対に関する陳情書  (第九三号)  パートタイマーの所得控除等引き上げに関す  る陳情書(第九四  号)  自動車関係諸税に関する陳情書  (第九五号)  農業用施設用地に対する相続税制等改正に関  する陳情書(第九  六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第一一号)      ――――◇―――――
  2. 瓦力

    ○瓦委員長 これより会議を開きます。  法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、昨日に引き続き、税制調査会会長代理木下和夫君に参考人として御出席をいただいております。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸田菊雄君。
  3. 戸田菊雄

    戸田委員 木下先生、きのうから大変御苦労さまでございます。  四、五点について見解をお伺いしたいと思うのでありますが、その第一点は、今国民の皆さんは大変税に関心を持っておりまして、かつ税に対して大変な不公平感を持っておりますね。同時にまた、大変な重税感を増幅させている、こういう状況だと思うのであります。したがって、税調としまして、今後の税制あり方について根本的に見直しをする必要があるのではないだろうか。  税法の建前は、端的に言いますと、一つは何といっても公平であること、応能分担原則を堅持すること、個人所得等に対しては生活費非課税等々の原則を踏まえて、全般の税制見直しをやる時期ではないだろうかというふうに考えます。したがって、端的に申し上げまして、今の税制は、改正案で若干所得税課税最低限は上がりましたけれども改正前は二百一万五千円、不労所得と言われる利子配当等々は四百四十万ですね、倍以上になっている。これ一つとらえてみても大変な不公平だなということは感ずるわけであります。同時にまた、三年前に与野党一致をして分離課税等に対する総合課税をやろうということで、グリーンカード制度、これで一致したのでありますが、一種のプレッシャーがかかりまして、三年前途凍結、こういうことになっているわけですね。そういった不公平感に基づく各般税制対応というものが、いまだに見直し改善措置をやられていない、こういう状況にあるかと思うのであります。したがって、今後税調としましては、それらの公平な税制確立に一体どういう構想で臨んでいくか、まずその辺から御見解をお伺いしたい。
  4. 木下和夫

    木下参考人 ただいまの先生の御指摘は、全く私ども同感でございます。  ただ、問題となりますのは、税制もやはり社会経済状況の変化に適応して、現実的なものでなければならないという要請が、単に税そのものの理論的な妥当性というもののほかに要請されるわけでございまして、いかに抽象的に理想的な税制であっても、それがうまく働きません場合には、現実の問題としては手を加える必要があろうかと思います。  例えば私などは、古い時代の教育を受けておりますので、所得税万能主義と申しますか、所得に基礎を置く税が最も公平であり、最も担税能力に応じた税であると、今でも確信しておるわけでございますが、最近の諸外国やあるいは我が国の若い租税専門家の中では、所得よりも消費の方がむしろ担税能力というものを的確に把握し得るのだという新説が出ておりまして、ただいま論争の過程にあるわけでございます。  そのように、いわば担税能力そのもの基準をどこに求めるかという問題ばかりでなく、我が国でも、これは既に御承知のとおり、我々の所得水準の上昇とともに、いわば所得分配の姿、資産の分配の姿も以前とは随分変わってまいりました。今日では、先進諸国の中では恐らく最も分配均等化に近づいておる国の一つであろうということを示す資料が、OECDその他の調査から明らかになっております。それから消費水準にいたしましても、従来はぜいたく品だと我々みなしておりましたものが、今日においては必需品化していく傾向が際立ってあらわれてまいりました。こうなりますと、課税対象として従来選んでまいりました基準とか、課税標準とか、課税物件というようなものを見直し、しかも、税全体としての体系現実に即するように改めていくという作業が必要でございます。  しかし、それをどこから手をつけていくか、あるいはどのような具体的な税目を考えていくかということになりますと、これは非常に難しい。慌てて考えましてもなかなかできないことでございます。ゆっくり時間をかけて論議を続けながら、恐らく終戦後に行われましたシャウプによる税制改正以後最も大きな規模の税制改正というようなものが近く必要になるであろう、このように考えております。
  5. 戸田菊雄

    戸田委員 次に、今回の税制改正で、殊にこの法人税改正に対して基本税率一・二%、それぞれ上げたわけであります。この一・二%の引き上げに対して、税調としてはもう限界であるという見解をとっておられたというお話を聞きました。したがって、それにかわる何らかの税目を選定して、それらによって税制改正の諸点の引き上げをやってはどうかというようなことが言われておったと思うのであります。  そこで、五十八年十一月の中期税制答申によりますると、税調答申ではこういうことをお述べになっておられるのですね。税負担率及び歳入に占める税収割合が上昇しなかったことを反省し、増税を目指す新しい税体系の構築、その中心は大衆課税的所得税一般消費税タイプ大型間接税答申しておるわけでありますね。五十八年の十一月であります。これは一体どういう構想のもとに、あるいは今後の見通し、どういうものを考えられてこういう答申をなされておるのか、この辺の見解をひとつお伺いしたい。
  6. 木下和夫

    木下参考人 ただいまお読み上げになりました昭和五十八年十一月の中期答申中身は、私ども答申をいたしました中期答申中身とは全く別個のものでございまして、別の文献から御引用なさったものと想像いたします。
  7. 戸田菊雄

    戸田委員 今言われました「今後の税制あり方についての答申」、昭和五十八年十一月、基本的な考え方所得税部分、それから法人税部分等々、いろいろありますが、今私が質問をいたしました内容というのは、結局「増税なき財政再建」というのは、国民所得に対する税負担率が全体として上昇するような新しい税制上の措置はとらないということであるから、現行税制の枠内での増税を否定したものではなく、だからこそ臨調直間比率の是正という名のもとに、税務行政を通ずる徴税強化を促してきておるわけであります。それに続きまして、税調臨調路線を踏まえながら、なおかつ三年前の中期税制答申以後、税負担率及び歳入に占める税収割合が上昇しなかったことを反省し、前に言ったようなことで、今回の全体の予算委員会等で問題になったのは、大型間接税導入云々の問題がここで出てきたわけでありますけれども、その前哨として、今基本税率をそれぞれ一・二%、一・一%と引き上げをされたわけでありますね。これは税調答申を受けて、大蔵省としてはそういう改正案というものを提案をしてきたというような筋になっていると思うのであります。  それにいたしましても、今まで大蔵大臣等が答弁の中で言ってきたことは、すべて税財源というものは恒久財源でなければいけないということに対して、今回は二年間の時限立法、こういうことになっているわけですね。このこと自体、私たちは将来に禍根を残す一つ改正案ではないだろうかという見解と、もう一つは、二年以後、一体どういう財源措置をとって減税を継続させていくのかというような疑問が残っておるわけでありまするけれども、この辺の見解はどうでございましょう。
  8. 木下和夫

    木下参考人 ただいま先生お話の前半にございましたのは、むしろ私の想像では、私ども中期答申に対する批判的見解の文書の中身を御紹介いただいたものと理解をいたします。  後半の問題でございますが、法人税税率引き上げにつきましては、中期答申にもあるいは年度答申にも出ておるわけでありますけれども法人税負担水準が諸外国と比べて相対的にまだ低いというような認識から、それじゃ、どのくらい上げられるかという話になりますと、やはり我が国企業国際競争力とかあるいは外国における法人課税の実態との比較において、我が国だけが際立って高い税率負担の増加を求めるということは適切ではないというような判断基本にいたしまして、その上で税率の問題につきましては、年度答申におきまして、財政再建の必要がある、それは緊急の課題である現在、ある程度見直しをすることは避けられないということを申し述べまして、法人税については具体的には一・三%程度税率引き上げを行うことはやむを得ない、こういうふうに述べておるわけでございます。したがいまして、先ほど仰せの二年間の時限立法云々という問題は、私ども税制調査会答申には一切出ておりませんので、その問題に対してお答えをすることはできないわけでございます。
  9. 戸田菊雄

    戸田委員 これも税調答申に基づいて、五十五年度でございますが、今後の歳出のいわゆる税収依存度、これは八四年度の予算は六八・三%でございますが、八三年度が六四・一%、八〇年度が六〇%、漸次改善措置はうかがわれるのでありまするけれども税調答申では八〇%程度依存度引き上げていきなさいということを言われておるわけでありますね。しかし、まだその差一一・七%程度ございます。周囲の状況を見ますると、これはなかなか容易じゃないなというような気がいたしまするが、いずれにいたしましても、健全な財政政策ということになりますると、税調指摘をされる八〇%程度まではどうしても引き上げていかなければいけないんだろうと思います。  そういう引き上げに対する今後の見通しと、それから施策について。これ以上国債発行等はちょっと無理だと思います。だとすれば、やはり税収に依存せざるを得ないということになると、何らかの手だてをして増税対策をとらなければいけないということになってくるんじゃないかと思うのでありまするが、その辺の見解はいかがでございましょう。
  10. 木下和夫

    木下参考人 御指摘のとおり、五十五年の中期答申におきまして、私ども共通のめどを一般会計歳出の八〇%程度まで租税等の収入の比率を高めるということを立てまして、現実には五十九年度予算におきまして、先ほど御指摘のように六十数%程度にとどまるという、まことに残念なことでございます。これはいわば財政における歳出サイド歳入サイドとのギャップが依然として埋まらないということでございますので、一方におきましては、歳出面の削減ということに努力をしていただく。と同時に、歳入面におきましても相当思い切った措置を講じなければ、これを八〇というような水準に持っていくことはしょせん期待できないと思います。  それでは、一般会計歳出の八〇%を税で賄うような税の仕組みないしデザインを考えるということになりますと、現行制度の枠内でこれができると見るのか、あるいは現行仕組みではこれは到底不可能だと見るのか、この辺はまだまだ意見の対立があろうかと思います。しかし、要するに、どのような方法をとるにいたしましても、慌てて一両年中にこれを一挙に八〇に持っていくということは、私は財政政策の運営、あるいは租税政策あり方から見て余り好ましくない。ある一定の時間をかけて徐々にそこへ持っていく以外に仕方がないという考え方を持っております。  税制調査会全体といたしましても、今申し上げました私の考え方におよそ近い方が大勢を占めておると思いますが、それでは具体的にどの税でどうするかというようなことについては、まだまだ検討を続けておる段階でございまして、その一部が昨年の十一月に出ました中期答申に出ておる。この方向への努力を今後とも続けていきたい、このように考えておるわけでございます。したがいまして、直ちに先生御要求のような、どういう具体的なプログラムを持っておるかということになりますと、これは時日をかしていただかざるを得ないと御返事するより以外にないわけでございます。
  11. 戸田菊雄

    戸田委員 八四年度の予算で、今後の租税増収率を七・一%と政府は見ておられます。これは私は大変な難題だろうというふうに考えるわけでございます。現下景気回復基調にある、こういうことは言われておりますが、それにしても輸出だけではなかなかうまくいかない。したがって、内需主導といいますか、政府は一貫してそういう政策をここ三年ぐらいとってまいったわけでありまするが、この内需主導中身を検討いたしますと、消費余り伸びておらない、設備投資もかつての勢いが余りない、殊に東北なんかに参りますと冷害、四年間引き続きやられていますから、ことしもどうも何か芳しくない状況だという。非常に景気回復がはかばかしくない。したがって、今の企業各般の商売などをいろいろ眺めてみましても、全法人の五三%が赤字体制でございますね。それから、この五十八年度で既に一定見通しで計算をして二千六百三十億円ぐらいの減収が見込まれる、そういう状況にあるわけでございます。こういう中において、租税増収率七・一%というものは大変困難な状況じゃないかと私は見ているのでありますけれども税調等においてはその辺の見解はいかがでございましょう。
  12. 木下和夫

    木下参考人 ただいまの御質問でございますが、私ども昭和五十九年度の税制改正に関する答申をいたしました段階で、実はどの程度税収の増があるかということは、現在よりももっとぼんやりした形でしか示されておりません。これはことしの一月の段階でございますので、ただいま先生お示しになりましたような、当初比七・一%という数字は、当時はまだ出ておりませんでした。  ただ、しかし、共通に持っておりました認識は、経済の不況というのはもう五十八年度中に片づいて、底を打った。往々にして経済的な指標というのは、私どもの手に入りますのは数カ月おくれになりまして、底はもう既に過ぎて、かなり回復過程に入っておるということを知らされておりました。その場合には、経済成長率がどのくらいになるかは別といたしましても、税収弾性値といいますのは回復期にはかなり高くなるわけでございますから、大体一・三一という弾性値を想定いたしておりますのは、今から四年ほど前の税収弾性値とほぼ似たような弾性値になっております。去年、おととしよりも高い弾性値になっておりますが、これは従来の経験からいたしまして、回復期には弾性値がかなり上に持っていかれるという経験をもとにしたものでございます。名目経済成長率が六%近くになるということにつきましては、現在さまざまの資料を見ましてはぼ確実と言われておりますので、これからいたしますと、先ほど御指摘の当初比の七・一という税収増見通しというものは、少なくとも現在の段階では、私どもはかたい見通しであろうというふうに考えております。
  13. 戸田菊雄

    戸田委員 時間の関係で、若干質問課題がきのう通告をしたものと変更になりまして、申しわけございません。  今回の政府減税案に対して、これはもっぱら臨調答申を土台にして政府案はいろいろやったのでありますが、結局、税収に占める割合四〇%の所得税減税に対して、間接税それから法人税等々六〇%を占めるこの増収によって、それで所得税減税をやった、こういう状況なんであります。しかし、それにしても、所得税住民税減税というものは、これは七年ぶりですね。総額にして一兆一千八百億円、こういうことですが、非常に過少であると思うのです。私はそう考えるのですが、その辺の見解。  それからもう一つは、減税増税をいわゆるパッケージにして、そして景気浮揚に役立つ減税、こういう当初の自民党二階堂幹事長与野党書記長幹事長会談等申し合わせをしたときの約束でありましたけれども、そういうものは今度の減税で吹っ飛んでしまったんじゃないかという気がいたします。  それからもう一つは、所得税住民税最低税率引き上げ間接税自動車税増税などで、大衆課税を一層強めているのではないかという気がいたします。なおかつ、所得税最高税率引き下げで、利子配当総合課税を見送りにし、そして企業優遇税制の温存、こういうことでありますから、税負担の不公平というものは非常に増大をしている。こういう内容が今回の改正案の骨格ではないかというように考えるのでありまするが、その辺に対する税調先生のお考えをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  14. 木下和夫

    木下参考人 申し上げる問題が多岐にわたっておりますので、順を追って申し上げます。  最初は、景気浮揚に資する云々という問題でございます。これは、どのような税制をとりましたら景気浮揚に役立つかという議論と、それから現在の景気状況をどのように判断して、どのような景気浮揚策税制として適切かという問題と二つあろうかと思います。  恐らく、例えば法人税税率アップということは、先生承知のとおり、少なくとも形式的には景気に水をかけるわけでございます。それから所得税減税ということは、可処分所得を増加させ、消費支出を増加させるという経路が円滑に働きますれば、個人最終消費を増加させるという役割を持って景気浮揚に役立つわけであります。それから物品税増税は、あるいは新規の課税範囲拡大ということは、消費対象になります物品価格をそれだけ上昇させる可能性がございます。完全に税額分だけ上積みされるか、一部が転嫁されるかは別問題といたしまして、価格が上昇いたしますので、その分だけ消費支出が削減されるという可能性もあるわけでございます。  今申しましたように、今回所得税減税法人税増率物品税課税範囲拡大等によって出てきます景気浮揚効果は、プラスあるいはマイナスが混在しております。そのプラスあるいはマイナスを相殺いたしましてネットどのようなことになるかということは、これは私どものいわば直観でございますが、少なくとも、わずかであるがプラスであるという判断に立って、五十九年度の税制改正内容を練ってまいりました。もちろんその間には、投資促進税制というものを導入すれば、法人税増率を帳消しにするほど設備投資を増加させる効果があるから、これで景気をもっと悪くするということにはならない、これはむしろ回復するのに役立たせることができるという理屈を主張された意見もございました。  そのようなことを全体総合いたしまして、昨日も経済企画庁から御報告がありましたように、マクロの経済効果というのは少なくともマイナスではない、プラス何がしかというものでございますので、国会で御議論になりました、景気浮揚に役立つという意味に決して逆行するような税のパッケージを選んだということではないと私どもは考えております。できれば、我々が、今日のデータを存じませんので、数カ月後に今日のデータを見ましたときに、景気回復はもっと進んでおって、順調に本格的な回復につながることを期待しておるわけでございます。  それから、さまざまの税の間で実は問題点がございました。例えば、税率引き下げにいたしましても、高所得層に対する税率引き下げに対して必ずしも賛成でないという御意見税調の中にはあったわけでございますし、それから低い所得層税率一〇%というものについても、これは現状維持で行くべきだという御意見と、それから上の方を下げて税率の刻みを大体カープに描きまして、水平に近いようなものへ次第に持っていく。今は非常に急激な累進課税であるから、それを少しでも緩和するように持っていけば、下の方は税率は上がらざるを得ないという議論から支持する方と、それから絶対的に税負担がふえるようなことがあっては困るので、これは現状維持というような御意見もありました。  しかし、結果において考えますと、今回の所得税減税はどの納税者にとっても増税にはならない、全部の納税者にとって減税になるような仕組みを考えていただいておりますので、この点については若干の意見の差は税調内部にございましたことを率直に認めますけれども大勢として答申に書きましたような線になったということを申し上げざるを得ないわけでございます。御承知のとおり、会長並びに会長代理の仕事は、さまざま異なる見解を総合いたしまして、大勢ということに重点を置いてまとめるわけでございますから、中にはさまざまの御意見があり、今先生が御指摘になりましたような意見十分税調の場で闘わした後の結果をああいうまとめた形で表現をしておるというふうに御理解をいただきたいと思います。  その他ございましたら、重ねて御質問賜りたいと思います。
  15. 戸田菊雄

    戸田委員 時間が十五分ごろまででございますから、あと二点ほど絞りましてこの際お伺いをしておきたいと思います。  その第一点は、今もちょっと触れたのですが、結局税率改定ですね。いわば従来十九刻みであったものが、今回十五段階に緩和をした。そして最低税率一〇%を〇・五%上げまして、それで六十万を五十万に引き下げて、そして最高税率七五%を七〇%に下げて、それで十五段階緩和政策をとった。今までの大臣等の答弁によりますると、なだらかに全体として傾斜をして、それぞれ各階級ともに減税措置をとりましたということを言われておるわけでございますが、私がいろいろと計算をしてみますると、必ずしもそうなっておりません。殊に三百万以下の低所得者と言われるそういった階層に対しては、大臣の答弁ですと、約一千億ないし千二百億の増税体制。片や七五%を七〇%に引き下げましたその引き下げによって、八千万超の高額所得者、これに対しては二百億円の減税、総額にしまして。内容を逐一私も調べてみましたが、給与二百万円、これは独身者の場合でありまするけれども、八四年度の所得税額は八万四千三百円になります。現行所得税所得税額でまいりますると七万九千八百円であります。プラス四千五百円増税です。三百万円の扶養標準世帯、これでまいりますると、八四年度所得税額は四万二千五百円、現行税率でまいりますと四万五百円であります。プラス二千円であります。時間がありませんから全部読み上げるわけにはまいりませんが、五百万円の標準世帯でもってプラス三千八百円、七百万の標準世帯でまいりまして、ようやくこの段階マイナス一千四百五十円、こういうことになります。最高税率の五千万でまいりますると、これは三十八万七千二百五十円の減税。一億円でまいりまするとおおむね二百三十八万七千二百五十八円、こういうような順序になっておりますね。明らかにこれは高額所得者に対しては優遇でありまするけれども、低所得者に対しては極めて過酷な増税内容になっているのではないでしょうか。これが第一点でございます。  それからもう一つは、先ほどちょっと聞いて舌足らずで申しわけなかったのでありますが、税調考え方というものは、大体法人税等については基本税率引き上げは限界だ、こういう考え方に立って、中小企業ないし協同組合あるいは公益法人収益事業課税、こういったものが非常に軽減されているのではないだろうか、したがって今後これらに対する見直し合理化を図ってはどうかという御意見を持ち続けておる、こう言うのでありまするが、この法人税等については大体そういう方向でこれから行く考えでございましょうか。  それからもう一つは、今回の物品税その他いろいろ考えてみましても、課税ベースを大変広げてまいっておりますね。したがって、例えば酒税なんかもそうですね。間接税についてビールとかそういった下級酒に対して大変な税率アップ価格アップ、そういうことが行われておるわけでございまするが、こういったものは結局、御存じのように消費者に全部がかってくるわけですからね。そういったものの課税ベース拡大でいって、間接税を最大直間比率云々の名目によってこれから拡大をしていく傾向にあるように考えておるわけでございますが、その辺の見解。三点お伺いしまして私の質問は終わりたいと思います。
  16. 木下和夫

    木下参考人 最初の所得税負担の軽減、増加の状況でございますが、私が当局から得ております資料では、年収五百万で申し上げますと、収入が五%増加した場合の五十八年度と五十九年度の所得税負担状況で、夫婦子二人の給与所得者の場合を前提にいたしますと、税から申しますと二十二万六千五百九十円から二十二万五千四百円になりまして減少しております。それから、先ほどの極端な高い所得層について申しますと、五千万を取り上げて、これも同じような条件のもとで収入が五%増加した場合を考えますと、所得税が二千十一万七百六十一円から二千百五万九千五百円へ増加をしております。したがって、先ほどお示しの数字と私が持っております数字との間に差がございますので、この点は何か、いわば前提の違いその他があろうかと思いますので、もう一度御検討をお願いいたしまして、再度御質問があればお答えをさしていただきます。  それから、法人税につきまして、今後の税調の態度というものがどうであるかということに関連しまして、普通法人とその他の法人との関係についてのお話がございました。これは中小法人の問題もございますし、公益法人等の問題もございます。公益法人等の問題を除きまして、普通法人について申しますと、法人税というのは、現在の仕組からいえば、税率は一本であるべきであろうと思います。ところが、やはりさまざまな政策的要求から、中小法人に対しては軽減税率が適用されておるというふうに解釈をいたしますので、これは一種の政策的な、例外的な措置だという解釈は、恐らく税制調査会のほかの委員の方々もそのように御理解であろうと思います。  公益法人につきましては、これは本来公共部門でやるべき仕事の一部の肩がわりをやっておられる場合もございますし、その他教育や宗教の関係法人もございますので、これは普通の法人とは別個に取り扱うという建前になっておるかと思いますが、年度改正の私ども答申では、その公益法人等の課税範囲につきまして、課税対象となる収益事業の範囲について、現在の実態を見ながら所要の見直しをするということでございます。特に議論の最中に、公益法人等で公益事業に属する金融収益が出ておる場合、これに対してはやはり応分の税負担を求めるべきではないかという意見がかなり強く出ました。この問題につきましては、今後さらに検討するということで宿題にしておるわけでございますので、この辺の問題はいわば普通の法人とは別個に我々は考えておる。実態に即して公益法人課税を的確にやっていこうという考え方であるということを申し述べさしていただきます。
  17. 戸田菊雄

    戸田委員 今の税率改定内容がちょっと違うようでありますから。私は、社会保険料、それからベースが五%アップした場合ということを土台にしていろいろ計算したのですが、もし先生と違うなら、その資料がありましたら、後でいただきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  18. 木下和夫

    木下参考人 はい。
  19. 戸田菊雄

    戸田委員 どうもありがとうございました。
  20. 瓦力

    ○瓦委員長 伊藤茂君。
  21. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 木下参考人に二、三お伺いをさしていただきます。昨日来御多忙の中御参加をいただきまして、まことにありがとうございます。  今の同僚議員の御質問にもございましたが、私は当委員会で審議に当たりながら、本当に今が重大なときという感を深くするわけでありまして、私はまず第一には、どうやって多くの国民の皆様から税に対する信頼と公平を回復するのか、その垣根を一つ越えて、今後の社会と国民なり企業の皆さんの御負担ということをフェアに考えていただけるような時代に入っていかなければならない。今後の増大する社会サービス、その他のニーズを考えましたら、一定負担増は避けられない時代であると思いますが、今のままでは非常に困難だというのがこの数年来の経過であろうと思います。  そんな気持ちを持ちながら二、三お伺いをしたいのですが、一つは、これも木下さんの率直なお気持ちを伺いたいという気持ちなんですが、一般消費税問題その他を含めてこの数年来の経過というものを考えますと、税調のさまざまな御審議と、それから政府、政治と、国民と、この三つが大きくずれて、その後どうしたらいいのか、なかなかめどがつかないような雰囲気があるのではないだろうか。まあ私が申し上げるのもなんですが、税の最も重要なベースは国民の信頼でございますから、どうやっていったらいいのかと思うわけでありまして、そういう意味では長年御苦労されている木下さんも、税調自体のあり方についても、私は総理にレポートを提出するだけでいいというお考えではもちろんないと思いますし、また政治のあり方に対する御希望もいろいろございますでしょう。最初に、その辺の所感といいますか、率直なお気持ちを一言まず伺いたい。
  22. 木下和夫

    木下参考人 改めて今考えておりますが、確かに非常に長い間政府税制調査会関係をいたしましたけれども、私などはその中におきましては極めて軽い存在でございまして、私が意見を申し上げることが税調全体の問題であると直ちに受け取られますと非常に困りますので、ごく限られた私の経験から言いまして、政府税調の役割というのは非常に難しいと思います。しかしこれは言いかえれば、現実に徹底するか理屈に徹底するかという問題として割り切りますならば、政府税制調査会は、むしろ理論家や研究者というような客観的第三者が集まって、そこでかなり長い期間の税制あり方あるいは財政運営と絡みました税制あり方議論するという機関であればいいのではないかという感じをときどき持つわけでございます。しかし、かといって年度年度の改正について税制調査会が知らぬ顔しておるということもおかしな話でございますので、ある程度のいわば意見を述べる。それが党やあるいは法律になります場合にゆがめられても、これは現実の政治の問題でございますから当然のことであり、仕方がないし、そこで腹を立てるというようなことをするのも大人げないことではないかという諦観といいますか、一種のそういう感じになっておるわけでございます。  したがいまして、政府税制調査会あり方を今後どうしていくかということについて、私は格別成案はございませんけれども、年度末などになりますと非常に苦労するということだけは事実でございまして、その苦労を避けようという意味ではございませんけれども、だからといって、それじゃどのような具体的な改善策があるかということになりますと、なかなか見出しがたいというのが実態ではなかろうかと思います。  税の問題は、御指摘のとおり、国民全体に関係する問題であり、かつ政治に直結する問題でございますので、その最終的な判断は、これはもう先生方にお願いする以外にないわけでございます。私どもは、その御判断に役に立ついわば考え方ないし資料あるいは材料というものを提供することに徹するというのではなかろうか。まことに的確な答えになりませんけれども、そのように考えております。
  23. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私も、税と国民、ベースになる信頼というものを考えますときに、一番大きな責任は、野党でございますけれどもどもを含めて政治の責任ではないだろうかというふうに思います。同時に、何といっても政府税制調査会の持たれる国民的な責任というものがあるわけでありまして、税に対する国民の信頼を回復できるそういう活動をどうしたらいいのか、政府税調自体におかれましても、ぜひ真剣な模索をお願いしたいと思います。  具体的なことを一、二だけお願いしたいのですが、一つは、課税ベースの広い間接税をさらに検討を続けられるということになっております。前には、政府の方ではそれを実施に移すという構えの段階もございましたが、今国会での総理や大蔵大臣の御答弁は、学問的研究をしているだけという取り扱いになっておるようでありまして、「空想から科学へ」じゃありませんが、学問的研究と現実はどうなるんだろうかということを思うわけであります。  私の友人の法政大学教授の高橋誠さんが「ジュリスト」に書いた論文を読んでおりましたら、こういうことを書いておりました。御所見を伺いたいのですが、「新税構想とその問題点」ということで、一般消費税問題などを含めた、振り返った総括のようなことを書いておりますが、その最後の方に、今後どうなるんだろうかということを二、三書いてございます。  その趣旨は、いずれにしてもこの新税構想、一般消費税などの構想が挫折をして「増税なき財政再建」による方策に転換した。「しかし、なんらかの増収策を講ずることなしに財政再建が可能と考えるのは、あまりにも楽観的であり、責任のある財政運営とはいいがたい。」高橋さんの意見ですね。それで、それではこの中でどのような形で考えるのかということは、予測は難しいが、広く消費課税対象を求めるという基本方向には変化がないと思う、やや学問的レベルですね。そういう意味からいって三つあると思うという展望が書いてございます。  一つは、「日本型付加価値税の挫折に鑑み、EC型のそれにおいて一般消費税の復活をはかる」。これもEC型は合わないので、日本型一般消費税となった経過からいってなかなか難しい面もある。  それから二つ目は、「より簡素な単段階一般消費税の導入」「製造段階における大規模企業庫出し税の主張」など。これでも、大企業と中小企業との区分をどうするのかという問題があるでございましょう。しかし、それが二つ目です。  それから三つ目には、「現行の個別消費税を新分野において拡大をはかる方向」。その場合には、特に税調の御指摘もございましたが、サービス化、ソフト化などの今日の経済の変化に着目をして、それらの分野への消費課税の創設を図ろうということになるのではないかという三つを挙げてございます。  それで、政府の方では学問的研究と言われておりますが、そういう範囲内で率直に、我が友人の高橋教授はその三つを挙げておりますけれども、これらを今後さらに進められる場合にどういうところが特に焦点となり、あるいは有力となり、日本の条件のもとで考えられるものだろうか。  実は私この間当委員会で、物品税のことでちょっと御質問いたしました。先般の中期答申に、物品税の本来の趣旨に立ち返り幅広くという趣旨の文章がございます。日本における物品税本来の趣旨というのは、言うまでもなく、奢侈品課税を中心に便益品などなどに広めてきたというのが、もうどこの国語辞典を引いても書いてある趣旨でございまして、この文章の意味で言いますと、これは国際的な意味でのいわゆる大型消費税的な意味合いでお使いになったのではないだろうか。そういたしますと、既存の税の性格を大きく変えるということになりますから、憲法八十四条に沿って、これはきちんとしたけしめの議論をしなければならないという考え方を申し上げ、大臣の方からも、政府税調で十分御議論いただくようにしたいという御見解をいただいておるところでございます。  そんなことも含めて、今申し上げた高橋教授の言う第三にも関連いたしますが、その三つを我が友人が挙げておりますので、その辺、今後どういうところに焦点を当ててお考えになるのか、率直な御見解を伺いたいと思うのです。
  24. 木下和夫

    木下参考人 ただいまの高橋さんの御議論は、もう既に間接税の方へ足を踏み込んだ議論でございます。私は高橋さんより年齢が大分上でございますので、まだ所得税に未練があるわけでございます。まだ所得税で何とかいかぬのかな、所得税が日本でどうしてもうまくいかない場合に、ひとつ新たにそういう税を考える余地は出てくるけれども、それを慌ててというのには一歩ためらうわけでございまして、高橋さんの方が私より若いせいか、我慢ができないのでございましょう。  そこで御議論内容でございますが、まさにそのとおりで、大きく分ければ単段階課税、これは製造の段階か卸売の段階か小売の段階が、この三つに分かれるわけです。それからマルチレベルと申します、多段階といいますか、こっちの方では、複数段階でございますから、EC型の付加価値税とか、我が国で提案されたいわゆる一般消費税というようなものがこれに当たると思います。ところが製造段階のカナダの税制あるいは卸売だけのオーストラリアの税制、これはお調べになるとおわかりになると思いますが、特にカナダなどでは、製造者消費税に対してはこれを改革すべきであるという議論が随分長くありますが、一たん採用いたしました税を変えるということはなかなか難しくて、欠陥は露呈されながら動かさない状況で今日まで来ておるという事実がございます。オーストラリアについてもしかりでございまして、どの国でも非常に理想的な税を持っているわけじゃなくて、従来の行きがかり上存続をしておるというので、私どもは今後勉強はいたしますけれども、製造者消費税あるいは卸売売上税というものが、それほど熱烈に勉強するほどの価値があるものであるかどうか。これは当事者に会いますと、もう我々も嫌になっている税を、おまえたちは今ごろなぜ勉強するかといった態度で臨まれた場合もございますので、私どもはその辺でどういう絞り方をして研究を重ねていくべきか迷うわけでございます。  その点からいいますと、小売売上税というのは比較的、単段階でも最終消費者に直結いたしますし、負担の所在も明確になります。取引のプロセスの全体にわたりませんので、いわば税の仕組みとしては比較的簡単にいきます。これは米国流のセールスタックス、売上税でございます。これは原則として米国では州、時には市があわせて課税をしておりまして、ニューヨークなどでは八%を超えるような税率になっておるわけでございますが、これは現地でお買い物をなさったときには直ちにおわかりのとおりでございます。あのような税を国税として採用することが是か非かという問題が出てくると思います。税調でこの議論を正面からやったことはございません。しかし、私自身の感覚から言いますと、小売段階の売上税というのは、地方税には向くけれども国税にはなかなか向きにくいだろうという感じがいたしております。これも論証しろと言われれば非常に困るわけでございますが、こういう種類の税というのは、大体歴史的にもあるいは技術的にも地方税に向くのではないか。ただ、隣の州へ行きますと値段が違う、税率が変わりますれば値段が違うと言って州を越えて買い物に行く云々というような笑い話もございますけれども、そういうことを別にいたしますれば、むしろ地方税に向いておる。  そうすると、だんだん絞ってまいりますが、多段階税の方がよいのではないか。ところが、私、新聞記事で読みましたら、総理はたしか取引の全部に投げ網でございますか、網をかけるような税はやらないということをおっしゃっておられました。それはどの程度理解があるかどうか私は存じませんけれども、恐らく多段階税はどうもおれは好まないということの意思表示だと思いますから、私どもは総理大臣の諮問機関でございますので、総理が嫌なものを積極的に勉強するというのもいかがなものかと思いまして、かたがた私はまだ所得税の方に未練がございます。勉強はいたしますけれども、先ほどの御議論の中で日本型という言葉がございました。実は一般消費税というのは日本型を仕組もうと思って考えてあんなふうに変になったわけでございますけれども、もしEC型の付加価値税というものがいいのだということになりますれば、それはそれでまた別に考えなければいけない。まだそこの段階まで行ってないというのが実情でございまして、税調でどういう勉強をするのかと言われましても、どうにも率直なところ、今の段階でお答えすることは以上のとおりでございます。
  25. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ありがとうございました。
  26. 瓦力

    ○瓦委員長 宮地正介君。
  27. 宮地正介

    ○宮地委員 木下参考人には、連日大変に御苦労さまでございます。  初めに、私は所得税法の改正の問題につきましてお話を伺いたいと思います。  既に御存じのとうに昨年来、所得税改正につきましては、一つはやはり課税最低限の思い切った引き上げをやるべきである。昭和五十二年に改正されて以来今回の改正まで約七年間据え置かれてきた、そのために可処分所得がだんだん低下をしてきた、そういう中で与野党の幹事長・書記長会談の中から何とか景気浮揚に相当する額の所得税減税をやるべきである、こういうことで合意を見まして、国民の皆さんは非常に期待をしたわけでございます。常識的には所得税減税、私は、国民の皆さんは一兆円程度の期待をし、その財源に基づいて、六年間の可処分所得の目減りを何とか歯どめするための課税最低限の相当額の引き上げをすべきではないか、こういう期待があったかと思います。しかし、昨年の年内減税は一千五百億円、そして今回出されてきた所得税法の改正案による所得税減税は、一兆円を割って八千七百億円。もう少し税調が踏ん張って、この国民の期待に対応すべきではなかったか。約一千三百億円のずれがあったわけでございますが、せっかくここまで所得税法の改正内容的に努力されていながら、もう一歩のところでいま、国民はこういう感じを持っておろうかと私は思います。この点について木下参考人の御意見を伺いたいと思います。
  28. 木下和夫

    木下参考人 御質問所得税減税につきましては、税調内部議論いたしました経緯から申しますと、私の記憶では昭和五十九年度に所得税減税をすることに最初から反対する議論もございました。もちろん五十九年度以降適切な財政再建のめどがつき次第所得税減税はやるべきだという意見の持ち主でさえ、五十九年度の所得税減税には反対という御意見でございました。また、一方におきましては、先生指摘のように、国民の要望というものを非常に重要視されて、国会でお決めになったような線で減税を積極的にやるべきだという御意見もございましたが、その場合、国会で各党からお示しいただいておりますところの規模をもっと上回るような減税をやれという御意見はなかったか極めて少数であったと記憶しております。  それから第二の問題は所得税減税あり方でございますが、大きく分けまして、税率の調整をやるというやり方と課税最低限を上げるという考え方、この両者について税調の中の御議論というのは二つに分かれております。かなり多くの方々の、税率調整にウエートを置いた減税をやるべきだという御議論がございまして、先ほど先生指摘のように、国民の全体が課税最低限引き上げることを要望しておるというような声を反映する方は一部でございました。言いかえれば、課税最低限はそのままにしておいても、とりあえず中位の所得層、今一番子供の教育とかあるいは住宅とかその他に困っておる中位の所得層を中心にして税率の調整をやることだ、それの方が先だ。それでまだ余裕があったならば、財源の問題がございますので、財政がもっと豊かであれば何でもできるけれども、今のような財政状況のもとでは、まずやるとするなら税率調整であって、課税最低限引き上げはその次だというような御議論の方が強かったと私は解しております。  しかし、その結果、両方にまたがるような所得税減税のいわばデザインをするということは非常に難しかったわけでございまして、双方の御意見をまとめ、両方の御要求を入れながら、結果として、国税につきまして申しますと、五十八年度中の減税額と合わせますと一兆円を超えますけれども、五十九年度だけで申しますれば八千七百億という減税になったわけでございますが、私ども審議の過程におきましては、どのくらい減税になるという金額とは一応切り離して、各控除、税率その他をどう引き下げるかということに集中して審議をした結果のいわば結論でございます。  したがいまして、今当時の税調の審議の状況を思い出しまして、内容について実態というものを申し上げたわけでございますが、私どもには実は国民の本当の要望というものはよくわかりません。もちろん代表の中には消費者の代表とか、その他労働組合の代表の方がたくさんいらっしゃいますけれども国民の要望というものは先生方がお酌み取りいただいて、先ほど申しましたように課税最低限のアップの方を国民は望んでいる、大多数が望んでいる、税率の調整よりもやるとすればそっちの方が先だということにもしなれば、私ども議論というものもまた変えていかなければならないと思います。その辺のつかみ方というものがなかなか難しいと思います。
  29. 宮地正介

    ○宮地委員 今回、課税最低限引き上げ税率の調整という両面に御苦労されたことは私も承知をしているわけでございます。特に税率の調整について非常に重点を置かれた、こういうふうに今お話があったわけでございまして、私は今回の税率の調整についての御苦労は多としたいと思います。  しかし、その中身について見さしていただきますと、どうも低所得者層よりも高額所得者層の方が優遇されているんではないか。低所得者層につきましては、現行六十万円以下の金額一〇%の税率であったものが、今回五十万円以下の金額一〇・五%と、〇・五%引き上げられておる。そして今度は、今まで六十万円の適用課税所得の方は逆に二%引き上がって一二%になってしまう。また、この税率をずっと見ておりますと、一千万以上の所得の方は非常に税率引き下げられておる。大体二%前後の引き下げをされておる。今お話しのいわゆる中高年層クラスと言われる、例えば五百万所得の方々などは逆に適用課税所得が二四%の税率でありますけれども、今回は二五%ということで一%引き上げることになってしまう。十九段階を十五段階段階を変えるという中で、そうしたひずみも出てきておる。  私は、全般的にこれを見たときに、やはり今回の税率改正、低所得者層よりも高額所得者層に非常に恩恵がある、また、今参考人のおっしゃった中高年層に配慮したといっても、五百万所得の方々は逆に上がっておる。なかなかこの点については税率調整の中で御苦労もあったかと思いますが、やはり国民の生活実感から見ると、この税率改正というものは弱い者いじめになっているのではないか、こういう感じを受けるわけでございますが、この点について木下参考人の御所見を伺いたいと思います。
  30. 木下和夫

    木下参考人 先ほど申し上げましたように、中堅所得層を中心に負担の累増感が高まっている、あるいは多人数世帯というもののゆとりが独身者世帯よりも少ないという判断は全く動いておりません。しかも、先ほどは税率の話でございましたが、税率の調整をいたしましたけれども、そのほかに各控除、人的控除の変更を行っておりますので、さしあたり五百万の給与の収入金額について、給与所得者で夫婦子二人の場合のケースが出ましたが、先生の御指摘は、従来が適用税率二四%であったものが六百万円以下二五%というふうになったので、その二五%が適用されるようになった、税率が二四から二五に上がったという点を強調されたわけでございます。それはまさにそのとおりでございますけれども、その他の人的控除を考慮いたしまして夫婦子二人で計算をいたしますと、これは役所の数字をもらったわけでございますが、現在の税負担が、五百万円の夫婦千二人の給与所得者について二十八万千六百円でございます。改正ができました場合にはそれは二十二万五千四百円になります。軽減額は今の金額の差をとっていただくわけでございますが、軽減割合ということになりますと二〇%の軽減割合になります。したがいまして、税率だけでは御指摘のような事実があるわけでございますけれども、納税額で計算をいたしますと決してふえているわけではございませんで、減税になっているという事実を申し上げたいと思います。
  31. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに、今回の税制改正国民の立場から大変不可解に思えるのは、そうしたいわゆる所得税減税を初めとする減税財源措置、この財源措置がいわゆる見返り増税によって行われる、この点についてやはり国民は、そうした税制改正に対して裏切られたなという感じを持っておるのが率直な感情であろうと私は思います。そういう点について、今回の酒税、物品税、自動車関係税などのこうした大衆増税、これが見返り財源として今回こうした減税が盛り込まれた。税調としてはもっとやはり純粋な税体系見直しというこの基本の筋を通すべきではなかったか。私は、そうしたものについての見返り増税をやらなくてはならないという厳しい財政事情は理解されるにせよ、税調としてはもっともっと謙虚に国民の期待にこたえるべく、こうした見返り増税的なことは考えるべきではなかったのではないか、こう思いますが、参考人の御意見を伺いたいと思います。
  32. 木下和夫

    木下参考人 いわば抱き合わせ増減税というような言葉は一般によく使われておるわけでございまして、私ども、身の引き締まる思いをいたしますけれども、今の財政運営の状況からこれを避けるといたしましたら、ほかにどういう方法があるか。  その一つは、減税分相当額の歳出を減らすということでございます。これは税制調査会がよくするところではございませんので、私どもの関知する問題ではございませんけれども、私どもは主計局からいろいろな情報をとりますときに、税調の席上で、もう切れないほど切ってくれということをたびたび要請をいたしました。しかし、その結果が今度の予算にあらわれたとおりでございまして、切れないというぎりぎりまで切っておるということでございます。これ以上切れない。そうしましたら、財源は今度はどこに持っていくか。  次の問題は、特例債の増発によって減税を行うという方法でございます。特例債の増発によって減税を行うということについては、これは今の財政運営上、恐らく国会におきましても大体共通の御認識というものが出ておると思いまして、特例債の発行によらないという意味に私どもは国会の御意見を了解をいたしております。それでもなお特例債を発行して減税をやれとおっしゃるならば、私どもの作業は非常に容易で楽でございます。もしそれならば、国会でそういうふうな御決断をお示しいただければ、私どもの作業というのは他の増税措置を一切やらないで、減税だけで済むことができたと思います。事実はそうではございませんでした。  第三のとるべき道は、一と二がだめなら、今の税体系の中で何か、どこからか税収をとにかく五十九年度のためにひねり出して——これは中長期の問題ではございません。さしあたっての問題です。大急ぎで五十九年度の現行税制の中からそれだけの財源を生み出さなければならないというので、実は私自身省みていわば安易な増税をやらざるを得なかったと思います。言葉は過ぎますけれども、ある種の安易な増税をやらざるを得なかった。これは、一、二の方法がもし可能でありますれば、こうういうことはなかったわけでございます。  ただ、景気浮揚に資するという国会の御意見がございますが、景気浮揚に資するということからいえば第一の方法、言いかえると歳出を削って減税に向けるという方法は、これは景気浮揚に資する効果としては一番薄いわけでございまして、御承知のとおり、減税分は全部が消費支出に回るわけじゃございませんけれども歳出の削減は一〇〇%が有効需要の削減に回りますので、これは景気浮揚に資する道ではないわけでございます。したがいまして、私どもは実はジレンマに陥ったわけでございます。  景気浮揚に資しながら、しかも赤字債はだめだと言い、そうして減税の財源をどこからか探せという難問は、それは多少の——多少どころではない、大変なおしかりを受けておりますけれども、おしかりを受けるような内容にならざるを得なかったということは事実でございまして、これは私どもはまことに残念だと思います。しかし、五十九年度の予算編成上、支障なくこれを編成するためには、この程度のことをお認め願わないと、この予算は組めない状況になるということは事実でございましたから、その点はお認め願いたいと思います。  それで、税調に対して、謙虚に国民の意向というものにこたえろというお言葉でございますが、先ほどから申し上げますように、国民の意向というのは非常に多様でございます。さまざまの意見がさまざまの形で出てまいりまして、これを全部取り入れるということはもう不可能に近いわけでございます。さまざまの所得階層、さまざまの業種、さまざまの地域から完全に相反するような要求というものが突きつけられた場合、どう処理するかということを決着させる能力というものは、私どもには限界がございますので、その点もお含みおき願いたいと思います。
  33. 宮地正介

    ○宮地委員 税制改正の「基本考え方」、この中に「財政改革を進めるに当たっては、まず、徹底した経費の節減合理化による歳出の抑制に努めるべきであり、その際には単なる経費の節減の範囲を超えて制度、施策の基本にまで立ち返った歳出構造の抜本的見直しが要請されることこれを今木下参考人が、もう切れるところまで切った、切るところはない、そう決めつけているところに問題がある。やはり中曽根内閣の本命である思い切った行政改革、現在の機構の問題、定員の問題など、これからの国家百年の大計に立った思い切った財政改革、こういうものをベースにした中での税制改正が行われるべきである。何か目先の近視眼的に、主計局がもう切るところはない、だからもうこれでおしまいだ、こういう感覚では、今後も同じような処方せんで税制改正をやっていくしかないと私は思うわけであります。そうでなくて、今後の根本的な財政改革、あなた方がこの「基本考え方」に言っている「制度、施策の基本にまで立ち返った歳出構造の抜本的見直し」、これを私はやはり強く訴え、そういう中での税制改正というものをすべきではなかったか、こう思いますが、時間が限られておりますので、簡単で結構でございますから所見を伺いたいと思います。
  34. 木下和夫

    木下参考人 簡単に申し上げます。  先ほどの先生の御発言は非常な誤解でございまして、私は歳出の削減がもうできないと決めつけたような発言をした覚えはございません。私どもは、歳出の削減がどのくらい可能であるかどうかについての資料を一切持ち合わせておりません。また、税制調査会税制議論でございまして、歳出について立ち入ることはできません。したがって、主計局から予算の編成の状況意見を聞くにとどまるわけで、主計局の言ったことが全部正しいと私は思っているわけではございませんけれども、ここまでしか切れないから財源を税の上で考えてほしいと言われたときに、税調としてはそれを受けざるを得ないという苦衷を申し上げただけで、もう切れないよということを決めつけたわけでは絶対にございませんから、その辺はどうぞ誤解のないようにお願いを申し上げます。
  35. 宮地正介

    ○宮地委員 時間がありませんので、次に、いわゆる「増税なき財政再建」の租税負担率の問題ですね。昨日も参考人がおっしゃっておりましたが、いわゆる臨調答申基本の枠を守りながら税調としては審議をしていく、この租税負担率の維持の問題は既に破られております。五十九年度予算ベースの租税負担率二四・二%、五十八年度補正予算ベースで二三・九%と、〇・三%アップになっておる。これは自然増収だからやむを得ないんだ、こう主税局長答弁でございますが、こうした国民から非常にわかりにくい、国民から見ればこれは詭弁的な発言じゃないか。やはり率直に、租税負担率の維持は破られていると見る方が私は常識ではないかと思っておりますが、木下参考人はこの事実をどのように理解されておりますか。
  36. 木下和夫

    木下参考人 私ども税制改正の審議を行いました段階で、答申に盛り込みましたさまざまの税制改正の結果、どのくらいの租税負担率になるかという数字は一切示されておりません。恐らくこれは実際に執行いたしまして後に租税負担率というものは決まってまいるものでございまして、今ここでパーセンテージが〇ポイント幾つというようなことで論争をしようとは夢にも思っておりません。これはいずれは動くことでございます。  ただ、御質問の趣旨は、これが〇・一%でも上がったら「増税なき財政再建」の要求あるいは命題というものに背くじゃないか、それをおまえはどう考えるかというと、背いてもいたし方ないと私は思っております。まことに残念ながら背いてもいたし方ない、そうでないと予算が組めないということでございます。
  37. 宮地正介

    ○宮地委員 いわゆる臨調答申を破ることにはならないか、それでもそういう所見でよろしいんですか。
  38. 木下和夫

    木下参考人 臨調答申については国会で御討議があり、また答申そのものにも触れておりますけれども、幅があるわけでございます。約五〇%あるいはそれ以上という欧米の水準を上回らないように——瀬島さんが参考人においでになった国会での御議論では、四五%くらいは許容限度として我々は考えておるということでございます。それであれば、租税負担率が去年どことしと比べて〇・三%とか上がったということは、私はその許容限度の中に入る、正面から衝突するものではないという理解を持っております。しかしそうではなくて、去年の租税負担率とことし想定される負担率の間に〇・一でも二でもとにかく増加があったら、それは臨調答申と激突するという御解釈ならば、まさにそのとおりでございます。これを否定することはできません。
  39. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一つ国民の税に対する大事な点は、税に対する不公平感を解消すべきである、そういう中で今回特に有価証券譲渡益税、これは非常に難しい問題であります。あるいは退職給与引当金制度見直し、こういうものが五十九年度予算編成の前に、やはりいろいろ論議が国民の間でもありました。しかしこの二つについては、今回改正の中に盛り込まれてきておりません。この辺、今後検討していくということでございますが、この点についての今後の考え方、方向について伺いたいと思います。
  40. 木下和夫

    木下参考人 有価証券譲渡益課税につきましては、現在のところその取引についてこれを的確に把握する体制が十分に整備されてないと思います。これは相当大きな証券会社で短期間に売買譲渡があった場合、しかも本人の正確な名前を出した場合というような場合には的確に把握はできると思いますけれども、キャピタルゲインの発生というのは相当長期にわたる場合があり、しかも証券会社が変わる、住所も変わるというような事態がその間に起こった場合に、一体これをどう把握するかということは、私など実務に疎い人間でも、ただ考えただけでこれは大変な仕事であると思います。これは有価証券譲渡益を受け取った人が正確にそのことを記録しておりまして、自発的に申告をしていただくようなことになれば、非常に前進をいたしますけれども、そうでない場合に、ただ総合課税を行うということになりますとかえって新しい不公平を招く、言いかえればずるい人が逃げていくということになりますので、税制調査会といたしましては、段階的に課税の強化を図っていきましょう、今後どういう改善の方法があるのかひとつ検討を行おうということを、昨年の十一月の答申に明記しておることは御承知のとおりでございます。したがいまして、今後この問題については広い角度から検討してまいります。  それからもう一つの退職給与引当金でございます。退職給与引当金というのは、これは不公平税制の一環として考えるべきでないという考え方を私どもは持っております。これは、今までたびたび改正をやりました上、この昭和五十九年度改正でも、税制調査会では検討課題といたしました。言いかえれば、積立率といいますか、累積限度額を引き下げるということでございますが、五十五年度に実は二割削減をやったわけでございますけれども、五十九年度の改正というのは見送ったわけでございます。  これは私、想像いたしますのに、歴史的経緯からいえば、最初の退職給与引当金の場合は一〇〇%認めておって、次第にこれを削減してきたという経緯がございます。それから、最初の退職給与引当金の創設のころに問題になったのは、社内に留保するのか外部に積むのかという問題まであわせて議論があったと思います。言いかえれば、この退職給与引当金は、引当金として企業のいわば非課税のと申しますか、言葉が悪うございますが、企業の内部留保として非常に有効な金融手段に利用されるということでございますので、やはり、例えば景気余りよくないといったときに限度額をぐっと下げるというようなことは好ましくないという判断も金融上ございます。しかも、この退職給与引当金の限度を下げるから云々といって、退職給与の支払いに支障を来す云々ということとは無関係でございます。そういう問題から私どもは、この累積限度額を引き下げたいという気持ちは絶えず持っているわけでございます。タイミングといたしまして、五十九年度改正ではそれが盛り込めなかったというのが事実でございます。
  41. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が来ましたので終わります。参考人には大変ありがとうございました。
  42. 瓦力

    ○瓦委員長 玉置一弥君。
  43. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 きのうに続きまして木下参考人、大変御苦労さまでございます。先ほどから貴重な御意見を拝聴させていただきました。  今回の所得減税を見ましても、税金が、だんだんと負担率が上がってまいりまして、結果として上がってきた。それが所得の伸びとともに、累進課税率という関係で今回の減税の動きになったわけでございますけれども、私は宮地先生と違って、中間層に厚い手当てをということで今まで主張してまいりました。累進課税率の手直しをしていただいたことは非常に喜んでいるわけでございますけれども、どうも日本人の納税に対する義務感が、所得税はもちろんでございますけれども、いわゆる間接税におきましてもまだまだ不十分ではないかというような感じを持っております。税制改正のときにいつも、環境整備はもちろんでございますけれども納税者の意識、国民の意識、これをもっと義務感として植えつけるようなことをやらなければいけないのではないか、こういうお話をしているわけでございますが、先生は日本人の納税に対する意識をどういうふうにお受けとめになっているか、その辺についてまずお聞きしたいと思います。
  44. 木下和夫

    木下参考人 これは非常に難しい問題でございまして、さまざまな意見の中の一つというぐらいに、余り確定してお聞きにならないように、あの男はそういう意見だそうだというぐらいに軽くお聞き取り願いたいと思います。  私も納税意識について格別調査をしたりなんかしたことはございませんが、心理学者の協力を得て調査をした結果の説明を聞いたことがあります。それから、ヨーロッパの学者で財政心理学とか財政社会学を専攻しておる先生から、まさに玉置先生の御質問と同じことを聞かれたことがございます。そういうことを取りまぜまして申し上げますが、納税意識の調査というのは我が国でも何回かやりました。しかし、税だけを調査をするということが果たしてどういう意味があるか、私は最近は疑わしいと思います。やはり歳出絡みでやらなければいけないと思います。例えば減税したいと思いますが、そのためにどういう経費がダウンする、そのためサービスが落ちますよ、それでよろしいかというような組み合わせが必要でございまして、税だけを取り出しまして高いか低いかというような答えをすること自体が非常に意味がないのではないか。我が国でのアンケートというのはいつもそうでございまして、これは改めるべきで、真の納税意識の調査にはなりにくいと思います。  それから第二番目の、外国人との話でございますが、その外国人は、ヨーロッパを幾つかに分けまして、スカンジナビア型とゲルマン型と、それからイギリス中心にアングロサクソン型とラテン系というふうに分けまして、そして書物の中に書いておるわけでございますが、そのときに私、聞かれたことがあるのですが、私は積極的に答えませんでした。そうしましたら向こうからかまをかけられまして、それではおまえはアングロサクソン型と思うかと言いましたので、いや、確かにシャウプ勧告以後アングロサクソン型の税制はつくったけれども、納税意識はそうであるとは思わないと言いましたら、それじゃラテン系か、こう言われまして、国の名前はあえて挙げませんし、ラテン系と言われる国々の納税水準というものがどんなものであるか私もつまびらかにいたしませんが、ただ、フランスの主税局長の話を前に聞いたことがありますし、それからOECDの税に関する研究所にはしばしば出入りをしたことがありますので、感覚だけはわかりますが、我が国の一般の納税者意識というのは、私も含めましてラテン系に近いのではないかという感じでございます。  ところが、これもただし書きがまたつきますが、それじゃアングロサクソンというのは我々よりもぐっと高い水準にあるかというと、最近はそうでもないらしいです。いわゆるアンダーグラウンド・エコノミーの議論というものが高まりまして、私も各国の調査というものを資料を取り寄せて見ておりますが、どの国も非常に困っております。イタリアなども非常に困っておるということは事実でございます。したがいまして、これはやはり納税意識と関係をいたします。自分だけが別だという議論はできませんので、これは我々ともにその根源にあるものが何かという、問題の立て方が非常に大げさでございますが、納税意識が低いというのはなぜか、悪いのはなぜかという問題から問い直さなければならない問題だと思います。
  45. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 確かに昔の、特に年貢の時代から、取られるものだという意識があったと思うのですね。ですから、取られるんだったらなるべく隠して取られないようにしよう、こういうことがあったかと思います。それと、やはりいろんな租税特別措置なり現行法人税あるいは所得税体系、こういうものがいわゆる捕捉率の不徹底といいますか、これで一つ大きな不公平感というものが生じているわけでございます。逆に、取られない人がいるんだから自分たちもなるべく取られないようにしようというように考える人が非常に多いのではないかというふうに思います。  日本の商取引の中で、例えば間接税というものがあったという仮定をいたしますと、税金というのは納めるものだから商品の代金の中に含まれているものではなく、別に消費者が払うものだ、こういう意識で済めばいいわけでございますけれども、とても日本人の感情としてそういう意識ではなく、逆に、商売に乗じてその納税分まで取ってしまうのじゃないかというような疑ったような目つきといいますか、感覚で商取引きを行う可能性があるのじゃないか。ですから、それを突き詰めていけば、本来消費者が負担をしなければいけないことが、流通の段階なり、あるいは製造の段階、いわゆる前工程の方へ負担をさせるということになるのではないかというような大変な心配をしております。間接税が表面化していないということで、今の制度から見て、国民の意識がなかなか高揚しないのじゃないか。むしろ税金は税金だというふうに明示した、何かこれからの一つのある方向に向けての意識改革というか、こういうことをやっていかないと……。  今のお話を聞いておりますと、木下先生所得税をまだまだ伸ばすべきだ、伸ばすべきというか、所得税負担財政再建なり、あるいはこれからの財政運営をまだやるべきだ、そういうふうに受け取ったのです。しかし、直間比率というのは結果として変わってくるんだというような話がございますし、また税調でも、広い分野に広がった間接税といいますか、そちらをもっと重視するべきだというような答申も出ております。そういうふうに考えていきますと、いずれ間接税に対する国民の意識というのを変えていかなければいけないのじゃないか、そういうふうに思うわけです。この辺について見解をお願いしたい。
  46. 木下和夫

    木下参考人 私は所得税に恋々としております。ただ、所得税我が国負担感がきついことも事実でございます。負担感がきついから下げるという議論があるのですが、私は、逆に負担感があればこそ政府歳出に対するチェック機能が働く、こういうふうに考えております。したがって、所得税を何とかすっきりしたものにしたい。しかもクロヨンとかなんとか俗に言われますようなことをなくしたい。できるだけなくしたいということでございますが、それは納税意識の問題に直結するわけでございまして、何も所得税中心に財政再建をやるということを考えておるわけではございません。所得税税制の中核にあるということは依然として尊重したいという気持ちでございます。  それから、間接税を導入すればその点がうまくいくのではないかという御議論でございますが、私、詳細承りませんとよくわかりませんが、間接税にもいろいろな種類の間接税がございますから、どのような種類の間接税を導入したらいわば納税意識の高揚に役立つかということになりますと、これはなかなか難しい問題で、私、直ちにお答えをすることができませんが、今度の中期答申をまとめますときに、昨年、非常にたくさんの時間をかけまして、数十人の経済学者、財政学者をメンバーにいたしまして、専門委員ということで討議をいたしました。大体その司会を務めてまいりました経過から申しますと、若手の学者の中に、税に対する一つの革命的な考え方が出てきておるということでございます。  それは何かというと、租税負担能力というのは、今まで長い間所得、サイモンズ流の所得概念までが一番理想でございますけれども、そこまではいきませんが、言いかえれば所得中身を分けますと消費プラスの純資産増加、別の言葉で言えば貯蓄でございます。これに課税するよりも消費課税した方が公平なんだ。いわば生涯の所得として考えた場合にはその方が公平なんだという議論が出てまいりました。若手と申しましたけれども、これは実は、皆さん御承知の「レバイヤサン」以来の議論でございまして、「レバイヤサン」の中で、言いかえれば消費課税するのがいわば担税能力に合致するという議論がございますから、もう古い議論でございまして、何も若い人たちが言っているから新しい議論であるわけではございません。  それからイギリスの労働党の有力な顧問であるジェームス・エドワード・ミードが直接消費税というアイデアを出しました。このアイデアはかつて出ました、やはり労働党の顧問として重鎮であったニコラス・カルドアの支出税構想に非常に似たようなものでございますが、消費を申告するという形で、しかも税率累進課税を適用してもいいという考え方でございます。その場合には、貯蓄は非課税になりますから、蓄積された資産に対しては別途課税をしなければ片手落ちになります。  この議論が最近また非常に強くなりまして、世界の各国で議論が起こりまして、我が国でも御多分に漏れず若い学者が飛びついて、私ども老齢の学者をつかまえて、おまえらは古い。非常にひどい言葉でやられましたが、玉置先生も恐らくそういう立場にお立ちではないかと思います。  その場合に、私ども直接消費税という新規の言葉を出しましたが、従来は間接消費税  直接消費税、これが税務行政上うまく機能していくかということについては私は非常に疑いを持っておりますし、理想であるかもしれないぐらいの寛容さは持っておりますけれども、なかなかそこまではいかないだろうと思います。  そうすると、これから間接税あるいは消費税を仕組むと申しましても、問題が非常に多岐にわたっておりますので、御質問内容は納税意識と関連させてでございますが、その間の関係を明快にお答えするということまでなかなか立ち至ってないというのが実態でございます。
  47. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 確かに難しいと思いますね。トライアルする方法というのは、なかなか部分的にというわけにはいきませんので、ある層にだけというと、また逆に、そこに対する不公平感も出てくるわけであります。できるだけ環境整備——今回、所得税改正の中での記帳義務のように、環境整備と言われながら急激に話が持ち上がって採用されるというのもあるわけでありますから、そういうことのないように、十分なれた上での対応ができるような、こういうことをぜひお考えいただきたいと思います。  お話が変わりますけれども、最近サラリーマンの単身赴任という話がマスコミ等を非常ににぎわしておりまして、全国で二十万あるいは三十万という多くの方々が単身赴任あるいは出向という形で、自分の家庭を離れて職場につかれている、こういうことがございます。  それと、土地の税制緩和というものが今までございましたけれども、サラリーマン、特に大都市周辺のサラリーマン、こういう方々にとって何の恩恵もなかったということは、これまた重大な問題だと思うのです。単なる土地の所有者を優遇したということにとどまりまして、値段も下がらなかった。こういうことから考えていきますと、大都市周辺のサラリーマンに対する住宅負担の軽減、これを何らかの形で考えなければいけないのじゃないか。総理府の統計でも、全国を大中小に分けまして、その都市間での住宅費負担というのはかなり格差が出きているということもございますし、また単身赴任につきましては別居手当あるいは一時帰省手当というものを、大体七〇%の企業が支給をいたしておりますけれども、これに対していわゆる所得税がかけられるという扱いになっておりまして、これが実質的な生活、いわゆる可処分所得の減というような形になっているわけで、この辺についてこれからぜひ税調の中でも取り上げて検討していただきたい、かように思うわけでございまして、これに対する御意見を伺いたいと思います。
  48. 木下和夫

    木下参考人 御指摘の問題は二つあったと思いますが、単身赴任手当、帰省交通費等の問題と、それから住宅ローンでございますか。  最初に単身赴任手当や帰省交通費の問題について、税調での審議を中心にして申し上げます。単身赴任手当というものを所得税でどう取り扱うかということでございますが、やはりこれはほかの普通の給与と同じように雇用関係に基づいて支給されるものである。したがって、現在の考え方としては、この手当はやはり給与であって、ほかの種類の給与と別格に取り扱うだけの積極的理由は認めがたいという考え方でございます。  それから帰省交通費と申しますか、自宅と任地の住居との往復の交通費として支給される手当についてでございますが、これは通勤手当と同じように取り扱えという御議論であろうかと思うわけでございますけれども、実態を見ますと通勤手当とは違う。だからこれは非課税になりにくいというのが私ども議論の結果でございます。確かに仰せのとおり、単身赴任の場合にはそれだけの支出増があるということは、これは認められますし、それから、特にこれを促進しておるのは何かというと、どうも最近のそういう連中に会う機会に聞きますと、学校め問題と絡む。学校の転校ができにくいために、どうしても家族を残さなきゃならぬという問題がございまして、単に税の問題だけではございませんし、またそれに対して企業、雇い主側が負担する経費を、言いかえればもう少しふやしてくださって、そして税負担をしても残りがネットその費用と見合うぐらいにまで持っていってくだされば、私はいいという感じがいたしますけれども、手当がふえればそれだけ説もふえるというような御議論がございまして、なかなかいい点を探すことが難しいようでございます。  要するに、そのような余分のかかり経費というものを個別的に所得税の上でしんしゃくするということは極めて困難でございます。これは、給与の支払い側が報酬面での何らかの配慮をしていただく以外に方法はない。言いかえれば、税の方ではとてもこれに対応して特定の措置を講じてあげるということは無理ではないかというのが現在の結論でございます。今後とも御指摘に応じまして、また折があれば検討さしていただくということにさせていただきます。  それから住宅ローンの負担の軽減の問題でございますが、恐らくこれは住宅取得控除をもう少し広げろ、あるいは適用期限を延長しろというようなお話でございましょう。そのように解釈いたしますと、昨年でございますか、昭和五十八年だったと思いますが、税制改正におきましてローン控除の控除率を七%から一八%に引き上げた経緯がございます。また、控除限度を三倍、五万円から十五万円に引き上げるという改正をいたしたことは御承知のとおりでございますが、これはやはりローンを利用しておる中堅所得階層の負担を軽減するために、税制調査会でも答申をいたしましたし、政府においてもそれを受け入れていただいたわけでございます。  ただ、三年間で最高四十五万円の税額控除でございますが、これは客観的に申しまして、金額としては相当いい線まで行っておるのではないかという判断を私とっております。それはとても及びもつかないという御判断であれば別でございますけれども、もしこれをもっと拡大をするというと、新たにまた考えなければならない問題が出てまいります。というのは、所得水準がそれらの人たちよりもっと低くて、住宅取得もできないという人たちがいるわけでございますから、控除だけをどんどん高めていくということは、その間にそれらの人たちとの間の不公平という問題も我々は当然考えなければならない。その点で、現在の水準でまずまずのところではないかと考えておるわけでございます。まだ今後事態の変化、経済状況の変化その他に伴いまして改むべきことがございましたら、今後の税制調査会の審議の課題にしていきたいと思っております。  以上でございます。
  49. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、先ほどの別居手当といいますか赴任手当、これは百万以上を企業が交通費あるいは手当として出しておる。これが結果的にはマイナスに食い込んでしまう、こういう現実でございますから、税制で考えていかないと、幾らふやしても追っかけっこになるというような形になっておりますので、その辺をぜひお考えいただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  50. 瓦力

    ○瓦委員長 正森成二君。
  51. 正森成二

    ○正森委員 参考人がお見えになっておりますので、与党の席が少ないようですけれども、あえてやらせていただきたいと思います。与党に反省を求めておきたいと思います。  今度、法人税法税率がアップになりましたが、異例のことに租税特別措置法で手当てされまして二年の時限立法ということになっております。こういうことが行われましたのは昭和四十五年に一度ございまして、それは二年間で、四十七年に再度延長されて、それは結局本法に組み入れられるということにたしかなったことがあると思います。そういうのを除きますと極めて異例でありますが、我々が国会サイドで考えなければならないのは、この二年が過ぎた後どうするかということなんですね。  それにつきまして、「税務弘報」という本がございますが、その中で泉美え松ですか、たしか税調の委員だと思います。専売の総裁をしておられた方ですが、その人がこう言っておるのですね。「問題は、二年間という暫定措置が終わったら一体どうなるのか、法人税増税分に見合う財源が出てこないと困るではないか、という問題はあるわけです。ですから、今度はその増税期間の終わるころまでに、大型間接税を、どのようにするかという問題を、改めてまた検討されなければならない、ということになろうかと思います。」こう言っておられるのですね。これは極めて重大な発言であります。八四年三月号です。だからこういう考えが政府税調にあったことは事実だと思うのですね。  ところがその後、幸か不幸か三月十三日の衆議院の予算委員会で総理が、私の内閣では大型間接税は導入する考えはない、それは公約と考えていただいて結構だ、こういうことになっているのですね。それについては今同僚委員から、大型間接税というのはどういうものを言うのかということから始まって、木下参考人のいろいろの辞しい御説明をいただきました。  そうしますと、大体政府税調の首脳部が、そういうように総理が嫌だと言うものを勉強する意欲を欠く、自分はオールドと言われましたか、古い学者として所得税に魅力を持っておるといいますか、あるいはもっと考えなければならないというように言われましたが、その関係で私は伺います。  グリーンカード制度が二年前に通過したわけですが、その後三年凍結されました。それが六十一年の一月一日からはグリーンカードの交付とかいろいろなことをやらなければなりませんから、その予算措置は六十年度の予算案で行わなければならないというように言われておりまして、これのタイムリミットが迫っているわけであります。  そこで利子課税について、グリーンカードをあのままの状況にしておくことはできませんので、いろいろ考えなければならないという議論等もございまして、物の本によりますと、八月までには結論を出さなければならないとか、あるいは地方税に付加して課税するということも五月ごろには御意見を承らなければならないとかいうのが出ておりますが、この問題については我が国財政改革との関係で非常に重要な意味を持っておりますので、率直な御意見を承りたいと思います。
  52. 木下和夫

    木下参考人 幾つかの問題をあわせて御指摘いただきましたが、最初の問題で泉税調委員の雑誌の記事というものについては私、読んでおりませんが、御質問がございましたように、こういう考え方税調の全体の考え方であることは絶対にないということを申し上げておきます。  それから、二年間の時限立法ということでございますが、これは私ども年度答申には時限立法という形では出ておりません。少なくとも私は、これはこのまま続くものという解釈をとっております。そのために新しい税を導入する云々というようなことも、そういう引きかえのような条件として、法人税増税のタイムリミットが切れたときに引きかえに新税をやるというような発想も全くございません。  ただ問題は、利子配当課税の問題でございますが、これは昨年中特別部会を設けまして、実はくしくも部会長は泉委員でございます。いろいろな利害関係者に参考人として来ていただき、内部でも非常な議論をいたしましたが、なかなか難しいわけでございます。私自身は別途意見を持っておりますけれども、それを調査会の席上で大きな声で言うというような段階ではございませんので、今後引き続いて検討せざるを得ないと思うわけでございますが、私自身はグリーンカード制度をもう一度という考え方でおります。それでないとどうしても仕方がないという考え方でおりますが、これにつきましてもさまざまの階層、グループからさまざまの論拠でもって反対論が出ておりますので、この処置は、とても十分皆さんを説得するだけの材料も持ち合わせておりません。  それじゃ、我々の多年念願しておった利子配当所得総合課税というのを捨てるのかと言われたら、これは絶対にその旗をおろすわけにはいかないわけです。その旗をおろさないで何か現実的な方法を探すとすれば、現在のように非常に複雑な金融組織あるいは金融活動、それから貯蓄の態様が多岐にわたっておる、こういうものに一律にみんなうまくいくような制度を工夫しろと言ったところで、しかも夏までという期限を設けられましたところで、果たしてうまい結論が出るものかと悩んでおります。その中間にはいろいろな案が出まして、例えば源泉分離の三五%というので全部やってしまえというような議論もございますが、これは所得分配上困る。それから二〇%徴収して、返すものは後で申告のときに返したらいいじゃないか、還付請求を認めたらいいじゃないかと言いますが、ちょっと私、そのために先般、主税局の当該者に聞きましたところ、二〇%の適用税率所得税を納めている人の課税所得というのは大体三百万前後、それより下の人たちが全部還付の請求に来るとすれば、その数は千五百万、二千万というような数に上るというので、医療費控除ところの騒ぎじゃなくなるわけでございます。とても還付請求に応じるということはできない。もちろん給与の支払い者の段階でそのことをやれと言いましても、これは大変な費用を彼らにかけるわけでございますし、現に医療費控除でも、給与の支払い者の段階で医療費控除を認めるということになりますと、これも企業の給与の支払い者が大変困る。  万般考えますと、私は、現在何も成案はございません。今後そういう御下命がありますれば、皆さんの意見を再度詳しく伺って、いろいろな御議論を中心にしてまいりたいと思いますが、先ほど先生指摘のように、実はその一方におきましては、貯蓄には課税しなくていいんだという若手の議論がございます。利子配当とかそういうものも課税はやめろというような議論がございまして、所得税がまるでなくなってしまって、そしてそういう直接消費税というようなものになりましたときには、法人税あり方にも響いてまいります。こういう議論もこなして、利子配当課税の姿を考えなければなりません。大変な作業で、とても私の任にたえないと思いますが、この点については、できれば精力的に検討してみて、何らかの結論をまとめたいという気持ちでおります。  私個人の見解を交えまして、申しわけございません。
  53. 正森成二

    ○正森委員 時間でございますので、もう一問だけ聞かしていただきます。  政府税調の納税環境の整備に関する答申部分を拝見いたしますと、私自身としては納得できない点は多々ございますが、時間の関係で二点だけ御意見を承りたいと思います。  それは、この文書の四十ページのところでこう言っているのですね。「債務者たる納税者は、その所得に関する十分な情報と証拠を持っているのに対し、債権者たる税務当局は、所得の形成原因たる取引関係等からみて第三者であり、しかも、法律の規定に基づき国民全般に対して大量的、かつ、反覆的に課税処分を打っているので、税務訴訟において税務当局に的確な証拠の提出を求められてもその提出が困難である場合が多いばかりでなく、遂には立証できないような場合もある。」こういうように言いまして、それからさらに二ページぐらいたちますと、推計課税について、「ある程度の蓋然性をもって満足しなければならないものであるから、その推計の方法が一般的に合理的であると認められ、裁判所が推計の結果をもって真実の所得金額と合致する蓋然性があるとの心証を得れば、目的が達せられたというべきであろう。したがって、これについては、経験則上一応納得しうる程度の立証でよいとする原則が確立されることが望まれる。」こう言っているのですね。  これは行政府なり何なりとして司法部に対して、そもそも挙証責任を負うべき税務当局が、立証は大体不可能であるというようなことを頭から決めてかかり、だから蓋然性で十分だということを裁判所に認めさせようというようなことを政府税調が言っておることにほかならないので、これは我が国の三権分立の建前からいっても、政府税調はいささか思い上がり過ぎているのではないかということで、政府税調が言ってもよい限度と言ってはならないところのわきまえというものをやはり心得て、答申をなさるべきではないかと思いますが、いかがですか。これで私の質問は終わります。
  54. 木下和夫

    木下参考人 この辺の文章は、申告納税制度に関する小委員会の報告を受けて、そのまま中期答申内容としたものでございまして、私、法律家ではございませんので、先生の前で法律論をぶつという資格はございません。  ただ、私の素人としての感じだけを申し上げさせていただきますが、昨日も御質問に対して申し上げましたけれども、私自身は、立証責任というのは納税者自身が持つのが当然だ、これは非常に過激な議論で済みませんが、そう思います。というのは、どれだけの所得を得たか、どれだけの経費を使ったかということは納税者が一番よく知っているというだけのことでございます。後の法律論はございません。  ところが、その議論を、私の友人の租税法の研究家に聞きますと、さまざまな判例等を引用いたしまして、いや、日本では挙証責任、立証責任を徴税側といいますか、国側に持たせるような判例が大部分だということを聞きまして、なぜだろうと、私は経済学者でございますので、わからないことでございます。私のそういう素朴な印象というものは、まさにここに出ておると思うわけでございます。ただ、それが政府の一方的な強権力に基づくところのむちゃくちゃな租税徴収とか査定とかということにならないように十分な歯どめを持っておけば、こういう考え方でいいのではないか。甘過ぎるとおっしゃれば引き下がりますけれども、そういう考え方でございます。
  55. 正森成二

    ○正森委員 私はあえて参考人と論争するつもりはありませんが、よく知っておる者が立証責任を負うべきだというような乱暴な議論をやれば、公害裁判では公害企業が有毒物質を排出したかどうか一番よく知っているんだから、そこが立証責任があって、不正行為上の立証責任を逆転して証明を負わなければならないとか、あるいはさらに言葉を進めれば、刑事責任において、悪いことをやった者が、やったかやらないか一番知っているんだから、検察官が立証しないでもそういう者が無罪だというのは当たり前だとかいうような議論にまで行く。刑事裁判と民事裁判と違うかもしれません。もちろん違うのですけれども、民事裁判についても軽々に、この問題についてはこの人間が一番よく知っているんだから立証責任だというような議論については、私は断じて法曹としても賛成することができないということを申し上げておきたいと思います。
  56. 瓦力

    ○瓦委員長 木下参考人には、昨日来御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十三分休憩      ————◇—————     午後四時三十二分開議
  57. 瓦力

    ○瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野口幸一君。
  58. 野口幸一

    ○野口委員 竹下大蔵大臣には、御家庭に御不幸がありましたにもかかわらず、国政のためとはいえ、連日御苦労さまでございます。改めて敬意を表します。  先輩、同僚議員が既に言い尽くしている部分もございますが、重ねて私にも御説明をいただき、ぜひ国民の皆さんが納得できる御回答をいただいておきたいと思うのでございます。  まず初めに、大臣からお答えいただく前に、主税局、きょうは局長お留守で、審議官お見えでございますけれども、まことに失礼な質問かもわかりませんが、減税とは一体どういう意味があるのか、また増税とはどういう意味を持っているのか。つまり、国民は直接減税というのはどういう立場でどのように解釈をするか、増税というのはどういう立場でどのように解釈をするものか、ひとつその点を明らかにお答えをいただきたい。
  59. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 御承知のように、日本の税制は英国などと違いまして、単年度単年度で税法を決めていくということでなくて、一度税法を決めさせていただきますと、改正があるまでは続けられるという恒久法主義と言われているわけでございます。したがいまして、施行されております法律、そのままにしておきますと、それに応じましてのいろいろな負担の変化はございますが、今委員御指摘増税なり減税なりという言葉は、こういう恒久法主義的な税制のもとにおきましては、そうした税制制度を変えさせていただくことによりまして納税者負担がふえるあるいは軽減される、これが現在言われておりますような増税なり減税という意味ではなかろうかと思われます。御質問の趣旨に十分お答えしておるかどうかわかりませんが、一応そんなふうに考えておるわけでございます。
  60. 野口幸一

    ○野口委員 私は、少なくとも、国民がみずからの懐から税という名のつく負担が増加する場合は増税、それが減る場合は減税、こういう解釈をいたしておりますが、いかがですか。
  61. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 納税者の方々の御負担は、税制そのものはそのままでございましても、経済的な諸変動あるいはそれぞれの方々の所得なり消費内容の変化によりましても、自動的と申しますか、変化いたすわけでございますので、そうした点は現在の法制の中では織り込まれておると私ども考えておるわけでございまして、その方の所得消費が変わることによりまして税負担がふえるあるいは減る。そういう側面からだけ見ますと、税負担がふえる、減るという点はあろうかと思われますが、私ども税制を担当する者といたしましては、それは直増税であり減税であるというところまでは申し上げてはいないわけでございます。ただ、そうした税制を変えないでも納税者負担が変わる、減ったりふえたりするということにつきましては、税制改正をする際に、そうした社会的な負担の変動があることは十分に念頭に置きまして考えなければいけない、こんなふうに考えておるわけでございます。
  62. 野口幸一

    ○野口委員 それでは、今回所得税法の改正によって課税最低限引き上げられることになりましたが、過去五年間それが据え置かれた。特に給与所得者はベースアップによって若干ながら今日まで給与が上がってきた。課税最低限がそのままでありますから、当然税は負担が重くなる。この場合、増税という言葉は適切でないというお考えですか。
  63. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 確かに昭和五十二年度の改正制度改正を行わせていただいた後、六年と申しますか七年と申しますか、制度改正はなかったわけでございます。その間所得税は、御承知のように、一定の控除を引いた残りの所得に対しまして累進税率課税をさせていただいておるわけでございますので、所得水準が上昇いたします場合には、そこは当然負担額はふえてまいるわけでございます。所得税は御承知のように、ある一時の点をとらえれば、所得の多い人と少ない人では、比例的な負担配分以上の負担を高い所得の方にはお願いするという累進構造をとっておりますので、ある時期それを固定いたしまして、一方所得水準や何かが変化いたしますと、税額は変化するということでございます。そういった点から申しまして、負担がふえるという意味におきましては負担がふえている、増加しているという意味におきましては負担増加。これはある意味では増税というお言葉も使われる場合もあろうかと思われますけれども、これは制度改正によりますところの負担増加ではないという、ある意味では形式的な議論かもしれませんけれども増税ではないというふうには、一応は考えさせていただいておるわけでございます。  しかし、負担がふえているということは確かでございまして、そうした点は一応前提としまして、五十二年以来毎年税制調査会を初めといたしまして議論はあったわけでございますが、とにかく歳出の二〇%、三〇%も国債に依存しているという財政状況と、それから負担水準そのものにつきましてもいろいろな、外国との比較とか、そういった点からいたしますと、なお御負担をお願いをしてもやむを得ない状況ではないかということから、制度改正は行われてこなかったということではないかと思います。
  64. 野口幸一

    ○野口委員 御丁寧に御答弁いただいたわけですが、私の言わんとするところとちょっとニュアンスが違うわけであります。つまり、私どもは先ほども申しましたように、国民の懐から税という名のつく負担がふえること、これは増税だと思っているわけであります。  統計によりますならば、これは古い統計でありますけれども、五十二年から五十七年までの平均給与の伸びが三〇・一%に対しまして、所得税の伸びは七一・二%となっているわけでありまして、倍以上も所得税が伸びているという過去の経過に立っているわけであります。当然これは制度が変わらないのに自然増という形の中で増税されてきた、こういう経過について、私どもはまことに遺憾な状況であったということを申し上げなければならぬと思うのであります。  そこで、今回も実は総理大臣等の御答弁を聞いておりますと、減税の方は減税減税とおっしゃるのでありまするけれども、それに対するいわゆる財源の確保という立場からは増税という言葉をお使いになりませんで、お使いになりますと「増税なき財政再建」等にひっかかってくるという思惑もあるのかもわかりませんが、お使いになっておらないわけであります。まさしく今回、昨日だったか、大蔵大臣の御発言の中には増減税という言葉をお使いになりましたけれども、私は今回もやはりそれに対応して増税を行っていらっしゃる、こう思うのであります。したがって、一方では減税をされた、けれども一方では増税をされたと思っても差し支えないと思いますが、いかがでしょう。
  65. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは増減税抱き合わせとかあるいは増減税チャラとかいう言葉もございますが、私は増税減税というのは、言ってみればいろんな考え方があると思います。現行所得をそのままにして計算した場合に、率等が変わって増税と言えるし、その率等が変わって減税。だから、個々人は生活の態様によって違いますけれども、仮に全く同じような生活をしておった場合、出るものが少なければ減税で、出るものが多ければ増税だ、こういう議論もできるのじゃないか。  今度の場合は、私は厳密に言う増収措置というのは、例えば法人税で還付制度の問題でございますとか、あるいは延納を廃止する問題でございますとか、これは増収措置だと思いますが、あと税率が上がったものは、私は素直にこれは増税だと思って差し支えないではないかというふうに考えております。
  66. 野口幸一

    ○野口委員 そこでことしの場合、今回の法改正によって減税される見込み額と申しますか、増減の見込み額というものが予算委員会提出されておりまするが、これによりますと、いわゆる減税に当たる部分は総額、初年度に当たりましては九千三百二十億、平年度において八千三百六十億に対しまして、いわゆる法人税率の引き上げあるいは酒税の税率引き上げ物品税税率引き上げを初めとしまして、ちょっと先ほど大臣もお述べになりましたが、延納制度の廃止ということを仮に、増税じゃないということでございますけれども、これをそれに入れさせていただいた場合には、それに対する増税部分は実に初年度が九千九百七十億、それから平年度は九千九百三十億となりまして、いずれも増加の部分が多いのであります。  そういたしますと、減税をしたということをおっしゃりたいでありましょうけれども、残念ながらこの数字を見る限りにおいては、本年度は増減は実は差し引きをいしたしますとプラス部分が多いわけでありまするから、減税をしたとは言えないんで、増税をしたということになってしまうのでありますが、この辺の御見解はいかがでしょうか。
  67. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 計数的には今委員御指摘の計算になっておるわけでございますが、先ほど大臣からも御説明ございましたように、九千三百二十億に対します財源措置といたしまして法人税物品税、酒税の引き上げ措置は行わせていただいておりますが、そのほかに法人税の延納制度、欠損繰り戻し制度、そういったもので千四百五十億円の増収措置を計上させていただいているわけでございます。この千四百五十億円部分は、五十九年度だけにつきまして増収となるわけでございまして、あと翌年度以降はまた御負担と申しますか、納税者のお払いいただくものは変わらないという意味におきましては、五十九年度としてはこういった数字でございますが、これを平年度化してみますと、こういったものは除外して考えることができるという考え方からいたしますと、ネットといたしましても減税額の方が、この点につきましては多くなっているというふうには言えるかと思うわけでございます。ただ、石油税の点がまた別途あるわけでございますので、この点につきましてはまた別途の御説明もあろうかと思うわけでございます。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理者     席〕
  68. 野口幸一

    ○野口委員 初年度といいますか、五十九年度におけるところの法人税の延納制度の廃止、確かに七百億、あるいはまた社会保険診療報酬の源泉徴収率の引き上げ等は本年だけに計上されておりますが、平年度に移りましてそれがなくなっても、その数字を見ましても、実はまだ、今度は減税部分が少なくなってくるわけでありますから、当然これまたプラスになるわけでありまして、平年度においても九百七十億のプラスになるということになるわけであります。そういたしますと、今回の措置は、増減税差し引きますと、やはり減税をしたのじゃなくて増税をしたという結論になるのじゃないでしょうか。
  69. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 増税の意味と申しますか定義につきましては、先ほどちょっと触れさせていただいたわけでございますが、そのほか臨調の最終答申でも、同じような趣旨といたしまして、新たな措置として御負担をふやすようなものは増税である、そういう意味での増税はお願いはしていないということでございますが、石油税を除いたところでございますと、初年度といたしましては若干の減税になっておりましても、平年度におきましては減税部分が減る部分がございますのでいプラスになっているという、計数的には二百億程度のものでございますが、計算はいろいろございますけれども、そういう数字には確かになっておるわけでございます。ただ、この点につきましては、全体としての負担率を上げるという程度のものとして二百億なり三百億なりを見るかどうか。この点につきましては、私ども、この程度のものでございましたら、全体としての負担率を引き上げるような税制改正であるというところまでは行っていないのではないかという気がするわけでございます。  それからもう一つ、計数的に機械的に計上し計算をいたしますと、初年度減税額に対しまして、平年度は若干所得税減税は減るわけでございますが、これは全く経済の成長を抜きにした数字でございまして、先ほど申し上げましたように、所得税は累進構造をとっておりますと弾性値も大きいわけでございますので、そういった動態的に計算をいたしますれば、減税額はまたこれより大きくなるという計算もあろうかと思うわけでございます。
  70. 野口幸一

    ○野口委員 いろいろ御説明がありましたが、私はやはりこの五十九年度におとりになった措置は、税制改正によって増減額をそれぞれ検討いたしました場合、少なくとも減税をしたと大見えを切るような状態にはないということだけははっきりと言えるのじゃないかと思うのであります。  昨年でありますが、当時二階堂自民党幹事長から、この減税につきまして、いわゆる景気の上昇を促すに相当する大幅な減税を行う、こういうことをお約束なさいました。それが選挙にもいろいろとキャッチフレーズとしてお使いになったところでありますが、明けてこの五十九年度予算の作成に当たりましてお示しになりました減税というのは、今私ども承知いたしておりますこのような内容であるわけであります。そういたしますと、一体、二階堂さんがお約束になり、あるいはまた選挙等で自民党さん、政府みずからが減税を約束された、いわゆる景気浮揚に役立つ大幅減税というものは、これによってなし遂げられたと思っていらっしゃるのでしょうか、いかがでしょうか。
  71. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはなかなか難しい議論のあるところでございますが、いわゆる景気浮揚に役立つ相当規模の所得税及び住民税減税、こういう各党間の話し合いの中における、この景気浮揚とは何ぞやという議論が、結局ある程度生煮えだったのじゃないか、私はこういう気がいたします。どちらかといえば、私の側では、三・四%の実質成長が危ないじゃないか、だから、これをより確実ならしめるものが、言ってみればこの景気浮揚である。その考え方は、双方の理解の落差が、ある程度個人によって違ったままで今日来ているのじゃないか、こういう感じがいたします。  それは、一つは潜在成長力を何ぼに見るか、こういうところからおのずから差異が出てくるところでありますが、私どもとしては、五十九年度の場合は、言ってみれば四・一%の実質成長ということを念頭に置いておりますと、それをより確実ならしめる下支えにはなっておるという意味においては、景気というものを理解の中に入れておるというふうに考えておるわけでございます。
  72. 野口幸一

    ○野口委員 一面、大臣の説明はわからないわけではありませんけれども、私は考えますのに、今経済成長率四・一%を確保するためにという言葉がございましたが、私は、日本の経済力を考えますと、決して四・一%ぐらいではない、もっと経済成長率を見てもいいのじゃないかとさえ感じるのでありますが、これは見解の異なるところであるかもわかりませんけれども、私は、潜在成長率を政府が引き出さなければならないにもかかわらず、それは施策によってむしろとどめられているというような感じがしてならないわけであります。特に、景気浮揚に役立つということになりますならば、国内需要の喚起ということになりますならば、当然やはり国民所得、あるいはまた可処分所得と申しますか、その部分が増大されて、それから購買力が大きくなっていくということが大事なことだと思うわけでありまして、そういう意味では、まだまだ今回の減税程度では可処分所得が増加をしたという程度にはなかなかなってないのじゃないだろうか、こういう気がしてならないわけであります。  加えて、この四月以降公共料金がメジロ押しに上がってまいります。鉄道運賃を初め消費者米価等々、あらゆるものが上昇機運にあるわけでありますが、こうなりますと、今回の減税ぐらいでは、とてもじゃないが景気回復に役立つという減税には到底おぼつかない数字であると言わざるを得ないと私は思うのであります。大臣、改めてお尋ねいたしますが、その状況を考えてみた場合、改めてもう一遍大減税をやるというようなお気持ちはございませんか。
  73. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、物の見方によって、今回の増減税を含め、あるいは歳出を入れてみましても、経済成長力に対する寄与度はゼロでございますので、言ってみれば下支えの限度にとどまっておる、この御批判は、私はそのとおりであるというふうにも思います。一方、より多くの減税をして、それがいわゆる消費拡大につながって景気回復になれば、自然増収もあるじゃないか、こういう議論になるわけでありますが、貯蓄性向が強いから、かなりのものは貯蓄へ行くでございましょう。  しかし、可処分所得がふえればそれが購買力につながるという論理は、それなりに通る論理でありますが、さてそれじゃその財源をどうするか、こういうことになりますと、それに見合うものが赤字公債であった場合には、やはり市中金融の金利等に影響を及ぼして、いわば企業等の金利が高くなれば、別途設備投資意欲も失われるでございましょうし、それによって入ってくるいわゆる自然増収というものは、発行する初年度で見ますと、定かに数字を覚えておりませんが、発行する公債のほんのわずかな比率しか自然増収そのものにすぐは結びつかない。ということになれば、やはりいわゆる財政の体質をより悪くして、総体的に日本経済全体の足を引っ張る結果になっていくという意味においては、やはり財源問題ということが念頭にあってしかるべきでございますし、また我々としても、そのことを考えると、これ以上の大幅減税というものはまさにちゅうちょ逡巡せざるを得ないという考え方であります。
  74. 野口幸一

    ○野口委員 私はちょっと大臣とそこのところは違うのでありますが、私は、まだまだ減税をする財源は、今大臣がお述べになりましたような措置をとらなくともあるのではないだろうかという気がしてならないわけであります。今回の財源の求め方にいたしましても、酒税だとか物品税だとかいうようなもので取られておるわけでありまして、御存じのように非常に逆進性の強いところで、取りやすいところという意味もあるかもわかりませんが、取られているわけであります。そういたしますと、結果的にはこれは国民負担になるわけでありまして、減税をされても片方で取られてしまうということになりますと、本当の減税の意味というものは半減してしまうわけであります。  私は、もっと大きな減税というのは、まだまだ他に財源を求める方法というものはあるのじゃなかろうかという気がするわけであります。たとえば租税特別措置法の抜本的な見直し、あるいはまた、私は後ほどお話しを申し上げたいと思いますが、地下経済と言われるアングラエコノミーの開発によって、まだまだ取れる部分というのは存在する。むしろ今日の国税当局は、この問題でやっておられるようでありまするけれども、なお足りない部分が存在をするはずであります。そういった徴税努力を重ねることによって、なお私どもは財源確保というのは困難ではないという見方をいたしておるわけであります。これは後ほど、地下経済の問題につきましては時間がありましたら御質問を申し上げたいと思っておるところであります。  さて、若干中身に入りたいと思いますが、そういった経過で今回減税をされたわけでありますが、その中身は、いわゆる所得税法の改正ということによって人的控除の引き上げ、さらには給与所得控除の引き上げ、また税率見直し、特別人的控除の引き上げ等々あるわけでありますが、特に人的控除の引き上げで、基礎控除あるいは配偶者控除等が引き上げられております。いずれにいたしましても、この基礎控除、配偶者控除等にかかわるいわゆる人的控除というものは、その発想は何から始まったものでありましょう。
  75. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 所得税基本的な考え方といたしましては、所得を持っておられる方につきましても一定の基礎的な部分は控除をして、残りの所得につきまして累進的な税率課税をさせていただくというのが基本的な考え方であろうかと思うわけでございます。全体としてそうした人的控除の組み合わせ、その他の控除の組み合わせによりまして、どれだけの水準の方々から所得税をいただくか、それがいわば課税最低限でございますが、この課税最低限をどういう要素の組み合わせで構成をしていくかというときに、その中にサラリーマンの場合でございましたら給与所得控除あり、また、今お話しの人的控除ありでございまして、そうした構成をとっておるというのが所得税の大体の共通した形でございまして、その中の基礎的な部分を控除して課税対象外に置くという基本的な発想の中で人的控除があるということでございます。また、この人的控除の考え方につきましては、いろいろ歴史的にも変遷があるわけでございますが、現時点では家族、世帯の人員一人当たり均等額でできているというのが現状でございます。
  76. 野口幸一

    ○野口委員 税法の中で人約三控除というのは、今おっしゃいましたように基礎控除、配偶者控除、扶養親族控除の三つがありますが、これは最低限度の生活費を意味しているのではないか。それを一つの物差しにして、いわゆる基礎控除、いわゆる人的控除というものが構成されてきたと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  77. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 基本的には委員御指摘のように、基礎的な生計費部分と申しますか、そうしたものは所得税課税の外に置くという意味で、人的な諸控除があるということであろうかと思うわけでございます。
  78. 野口幸一

    ○野口委員 そういたしますと、これが今日まで一人当たり二十九万円という低水準で六年間据え置かれてきたわけであります。今回の措置で三十三万円になるわけでありますが、この年間三十三万円というのは、一月当たりにいたしまして二万七千五百円でありまして、こんな金額でとても生活を賄えるというものではありません。したがいまして、今生活保護基準に照らしてみますと、四人家族で一年間約百九十四万でありますから、所得税法で控除されるのが一人三十三万円なら、四人家族の場合は単純に四倍すると百三十二万円で生活しろということになるわけであります。こちらの方は六十二万円も安い、低いということになるわけでありますが、理論的に少しおかしい。いわゆる生活保護基準に照らしても、この基礎控除額というのは大幅に少ないのじゃないか、こういう考えがわいてくるのであります。とにかくこの数字は、私どもといたしましては、生活保護基準よりも低いというものがいわゆる人的控除の中でまかり通っているということを指摘したいのでありますが、どのようなお考えでこの数字をお認めになっていらっしゃるのですか。
  79. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 課税最低限につきましては、生活保護基準との比較も私ども、時折議論をさせていただくわけでございますが、基本的には所得税課税最低限と生活保護基準とは、必ずしも真正面から比較できるものであるかどうかという点につきまして議論をさせていただいているわけでございます。  生活保護の場合におきましては、その方の年間のフローとしての所得のほかに、資産のあるなし、あるいは扶養関係のあるなし、そういったものを一切考慮し、また、ほかの公的な扶助手段、そういったものも全部動員してなお生活に事を欠くというときに、最後の手段として生活保護がある。一方所得税につきましては、これは年間のフローとしての所得につきまして、どの程度所得水準から所得税の御負担をお願いするかという水準であるということから、必ずしも正面から比較をすることのできる数字ではないというふうに考えておるわけでございます。  そうした議論はさておきまして、御指摘の控除と保護基準との関係につきましては、サラリーマンの場合につきましては、御承知のように今回の引き上げを実現させていただきますれば二百三十五万円になるということから、御指摘の生活保護水準基準は上回っておるというふうに申し上げておるところでございます。
  80. 野口幸一

    ○野口委員 とにかく、先ほどもおっしゃっていますように、議論の分かれるところだということでありますけれども、私どもから見ましても、生活保護基準よりもとにかく所得税の控除と言われる基礎控除的人的控除が下回っているということは、健康で文化的な生活を営む権利を有するという憲法の精神からいいましても違反をしている、考え方が間違っているのじゃないだろうか、少なくとも最低生活の保障というのは税の対象にならないということをきちっと確保すべきであるというのが私の考え方であり、理論であります。いずれにいたしましても、ここのところはこれ以上やってみましても、それは議論の分かれるところでありますからやめますけれども、そういう点は今後とも一層、この人的控除の金額についてはお考えをいただかなければならぬと思うわけでございます。  次に、源泉徴収の問題について若干申し上げてみたいと思います。  源泉徴収というのはなかなかいい言葉が使ってありまして、私も長年給与関係の仕事をしたこともあるわけでありますけれども、「源泉」というのはだれが考えたか知りませんが、「泉のもと」と書いてありまして、本当に自然にわくごとく徴収できる。なかなかいい言葉を使ったものだなと思うのであります。だれが考えたか知りませんけれども、源泉徴収というのは本当に字のごとく、ひとりでに入ってくるようにできておりまして、大蔵省といいますか、政府としては非常にいい制度であると思います。  しかし、源泉徴収義務者というのは全国に約三百万おられると思いますけれども、非常な負担を負っているわけであります。しかし、源泉徴収義務者は国から何らの報酬ももらっているわけではありませんし、むしろ責任だけ負わされているわけであります。  しかし、この源泉徴収の中身をよく見てみまして、各国との比較などいろいろ考えてみますと、日本の国ほど源泉徴収の項目の多いのはないのですね。よその国は、源泉徴収というのはそんなにたくさんやっていないのですね。日本だけが、何もかも源泉徴収で取るように幅を広げてやっておられるようでございます。  それで、特に私がその中で質問いたします争点は、源泉徴収義務者がいわゆる給料が出ましたときに引きました税金は、法によりますならば翌月の十日までに納めればいいと、百八十三条の「源泉徴収義務」に書いてあります。そうすると、例えば一カ月以上ということはないとしましても、仮に毎月給料を十一日なら十一日に払うということがございますと、一カ月間、納めるまでの間猶予があるわけですね。その間は、その金はどういう性質のものなんですか。
  81. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 源泉徴収をしていただいたものは、翌月十日まででございます。その間につきましては、一応徴収をさせていただいているものを国に納めるまでの間としましては、預かり金的なものではないかというふうに考えておるわけでございます。
  82. 野口幸一

    ○野口委員 預かり金というのはどっちから、どこから見た預かり金ですか。国から見て、国が預けているのですか。それとも、いわゆる取られた給与所得者が預けている預かり金なんですか。どちらから預かっているのですか。
  83. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 源泉徴収の法律関係といたしましては、国の側と源泉徴収をされる側とにつきましては直接的な法律関係はございませんので、そういう意味からいたしますと、本来でございましたら即時御納付をいただくというのが、その間いわば国からの預かりというふうに考えられようかと思うわけでございます。  私ども公務員の場合におきましては、給料を支給をされるときに即日振替で国庫納付されますので、そうした場合は十日と言わず即国に納付されると申しますか、振替納付されるわけでございますので、そういう点からいたしますと、これは国からの預かり金というふうに考えられようかと思うわけでございますが、純粋に形式的に法律的に詰めてこうしたお答えでよろしいかどうかにつきましては、ここで即座には申し上げられない点もあろうかと思いますが、一応現時点ではそんなふうにお答えをさせていただくわけでございます。
  84. 野口幸一

    ○野口委員 私も国家公務員だったことがございますので、確かに国家公務員の場合には給与の支給日に即納めておることは実態として知っております。では、それならば、源泉徴収のこの納付すべき税金は引いているのですから、給与の支払いの日に支払わなくてはならないのは当然でありますね。その日に納めて当然でしょう。金がないというわけはないですね、月給でも何でも金があって払うのですから。それでは逆に言いますと、なぜ一カ月も余裕があるのですか。
  85. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 本来でございましたら、お話しのように、国家公務員の場合と同じように即日振りかえていただくところではあろうかと思いますけれども、やはりこれは一カ月分をまとめていただく、源泉徴収義務者に一カ月に一回ずつお納めいただくということで、そこは便宜簡素化させていただいているということではないかと思います。一カ月一回でございますと一日でもいいわけかと思いますけれども、そこは納税者のと申しますか、源泉徴収義務者の御便宜等を考えて翌月十日といたしておるのではないかと考えられるわけでございます。
  86. 野口幸一

    ○野口委員 その辺もわからないわけではありません。例えば給料の支払いを、いわゆる常勤者には定日に払う、しかし日雇い、臨時雇用者というのがありまして、それは月の二十七日に払うという場合もございますから、その場合の源泉徴収を翌月にまとめて一緒にやるんだということです。しかし考えてみますと、この源泉徴収義務者がいわゆる徴税をいたしまして翌月の十日までの間持っていることができるということは、これは私から言わしめるならば非常にあいまいな規定であると思うのであります。私は源泉徴収義務者は大変だろうと思いますけれども、少なくとも徴税をしたら必ずその日のうちに、あるいはまた即刻といいますか、それは支払い金がないというわけではないのですから、源泉徴収の意味から言うならば、いわゆるわいてくる立場から言いますならば、当然それは納めるべきであるということだろうと思うのです。一カ月間余裕があるということになりますと、これを逆に使いますと、給与を払ってから一カ月間はそのまま置いておいて、預金をして、その翌月の十日までに払うということになりますと、この金利は一体どういう形、だれがもうける形になるか。徴収義務者はその金利がもうかることになるわけですね。先ほどあなたのおっしゃるような考え方だと、徴税をしたというときから国のものだということになれば、その一カ月間の余裕を持たした分の金利は当然国に納めなければならないと思うのですが、そうしたらそれはどこに所属すると思われますか。その一カ月間仮に猶予があって、それを持っているとしたらどうなるのですか。
  87. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 お納めいただきますのは翌月十日で、翌月十日までにお納めをいただくということでございますと、そのときに公金となろうかと思われますので、その以前の段階での利子等につきましては、これは源泉徴収義務者の一般の預金利子等と同じ扱いではないかと思うわけでございます。そういう点からいたしますと、国としてはできるだけ早く納めていただく方がいいわけでございますけれども、現在でもこの十日という期限を延ばしてほしいという御要請もときどきあるわけでございますので、これをさらに早めるというのもいかがか。間接税等でございますと翌月末というのが多いのでございますけれども、徴収をいたしておるわけでございますので、そこのところは翌月十日というふうにお願いをしているのではないかと思うわけでございます。  それからまた、徴収をしておりますからお金があるというのは一般的な事情ではございますが、税法のぎりぎりした考え方からいきますと、支払うべき時点におきまして支払ったものとして源泉徴収がされておるというふうに観念をいたしておるわけでございますので、一〇〇%現金と結びついているというわけでもない、しかし、ほとんどの場合はそこは現金と結びついておるというふうに考えて、委員の御指摘のようなことではあろうかと思われますが、法律的に申し上げますとそこは一〇〇%というわけではないということもまた申し添えておきたいと思います。
  88. 野口幸一

    ○野口委員 どうもはっきりしないのですけれども、このいわゆる源泉徴収義務者が徴収をいたしましてから納付の間におけるところの金の性格、このものは一体何かということをはっきりさせなければならぬと私は思うのであります。少なくともこれは徴収した時点から所得税として取られているわけでありますから、国のものであるということになりますならば、当然この間における金利は国に納めなければならないという形になってくるはずであります。ところが、実際は不問になっているわけであります。しかし、考えてみますと、その金の所在というのは、いわゆるサラリーマンにとっては払った日から当然国に納めたと思っているわけでありますし、徴収義務者が一カ月間持っている間に、その金利が、先ほどおっしゃったように徴収義務者の一般の金利に入るんだというような考え方では、少しおかしいと思うのであります。その辺の見解は私はちょっと納得しかねますが、いかがですか。
  89. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 税金以外の場合につきましてもそうでございますが、国庫納付をしていただきます際に代理店に納めていただく、そういった場合にも、代理店からまた日銀本店にお送りいただくという場合には、何日かの余裕を見ているような事例が普通でございますので、源泉徴収したらすぐに国庫納付ということはなかなかお願いしにくいのではないかと思うわけでございます。特に源泉徴収の場合におきましては、通常は翌月十日でございますけれども、中小企業等につきましてはこの期限を弾力化してほしいという強い御要請もございまして、現在一定の規模以下の源泉徴収義務者につきましては、年二回に分けて納めていただくというふうな、委員の御議論からいたしますと若干極端な扱いもいたしているわけでございますが、そういった点は、源泉徴収義務をお願いする国からの立場としては、やはり納税者の御便宜なり何なりを考えてこうした制度にいたしておるというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  90. 野口幸一

    ○野口委員 すっきりしないわけですね。いずれにしましても、源泉徴収をしたその日から納税者は——納税者というかいわゆるサラリーマンは、給料をもらって引かれた日から当然国に払ったものという感覚でおりますし、法律によりますと一カ月以上——一カ月以上ということはないかわかりませんが、その翌月の十日までというような猶予期間における金の所在の問題が明らかになっていないわけであります。  いずれにしてもこの問題はお考えを新たにして、その処置をどのようにするのが正しいか、あるいはまた、私どももせっかく納めているのに、翌月の十日までそのまま置かれていて、そのいわゆる金利というのは、それは小さな企業であればわずかなことかもわかりませんけれども、大企業ともなれば相当な額になるはずでありまして、これが続けば相当な金利がそこに浮いてくるわけでありますから、余裕期間を逆手にとりまして、悪い考えでありまするが、ぎりぎりいっぱいまで持っているんだというようなことになりますれば、これはまた国の徴税義務から考えましてもおかしな話であります。その辺のところは明らかにすべきでないかと思うのでありますけれども、いかがですか。
  91. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 源泉徴収の場合でございますとサラリーマンの場合が圧倒的に多数の場合でございますけれども利子配当の場合、そのほか多々源泉徴収はあるわけでございまして、そういった全体の中で考える必要があろうかと思うわけでございます。  また、間接税につきましては、これは預かり金ではございませんで、御本人の納税義務ではございますけれども、やはり翌月なり翌々月までに納付をしていただく。この間接税の場合は、転嫁をして、実際に売掛金が回収できる期間という意味もあるわけではございますけれども物品、商品をお売りになっておれば代金は入っているという意味からすれば、これはやはりある意味では預かり的な意味もあるわけでございますので、サラリーマンの源泉所得税、それからサラリーマン以外の源泉所得税、さらには間接税、その他もろもろの全体の納付制度の中で考えさせていただかなければならない、かなり大きな問題になりますので、基本的にこれをどうこうするということはなかなか簡単には申し上げられないわけでございますけれども、御指摘の点は私どもとしても念頭に置いてまいりたいと思うわけでございます。
  92. 野口幸一

    ○野口委員 確かにいろんな問題が派生をいたしますから、今直ちにどうしろということは難しいでありましょうけれども、これは研究課題として、どういう帰属になるのか、明らかにお示しいただくのが正しいかと存じます。ひとつその辺はお考えをいただきたいと思います。  次の問題に移りたいと思います。これは少しくまた大きな話になるわけでありますが、いわゆる当初予算におけるところの租税収入の見積額が、その年度の自主申告によります納税によりまして、実収は決算といいますか、そこではっきりしてくるわけでございます。その間、差額といいますか、いつも見積もりの方が多くて、実収が少ない。実収の方が多いときもあるかもわかりませんが、大体その差があるわけでありますが、この十年間、およそどのような状態で推移をしているか、ひとつお調べをいただきたい。
  93. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 税収見積もりにつきましては、これを極力適正なものといたしますよう努力はいたしておるわけでございますけれども、しょせんは見積もりであるという点もあるわけでございますので、必ずしもこれがこのとおりのものにならない。むしろ、多くの場合はこれより不足し、あるいはこれを上回るというのが通例なわけでございます。  昭和三十年代、四十年代におきましては、どちらかと申しますと高度成長時代でございましたので、全体としての経済見通し等も割合下目のものを見込んでおるということも反映いたしまして、予算に対しまして増収になるというケースが多かったわけでございますけれども、オイルショック以後につきましては、これを上回る場合もありますが、まだかなり下回る場合もあるというふうな事例が少なからず出てきておるということで、この点につきましては私ども重々反省をいたしておるわけでございます。
  94. 野口幸一

    ○野口委員 実数はどういうぐあいになっていますか。実数をちょっとお示しください。
  95. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 五十年代に入りましてからの数字で申し上げますと、当初予算に対しましては、五十一年は千三首億のプラス、これに対しまして、五十二年は九千億のマイナス、あと五十三、五十四、五十五年はそれぞれ四千億、二兆二千億、四千億とプラスでございますが、五十六年、五十七年はかなり巨額な不足となっておるわけでございます。五十六年度は当初予算に対しまして三兆三千三百十九億円の赤、五十七年度は六兆一千百二十九億円の不足となっておるわけでございます。
  96. 野口幸一

    ○野口委員 この五十六年、五十七年というのは、いろいろと弁解する政府の御答弁も聞いたところでありますが、見積もりが実収とこんなに大きく違った原因は何なのですか。
  97. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 これは五十四年の暮れに第二次オイルショックがあったわけでございまして、第二次オイルショックの後遺症と申しますか、それを受けまして全体の経済活動が予想以上に低下をいたした。これを受けまして、税収の方も当初予算額をかなり大幅に下回って不足を生じたということでございまして、この点につきましては、こういったことを繰り返すことのないように、私ども重々反省をいたしておるわけでございます。(発言する者あり)
  98. 野口幸一

    ○野口委員 後ろから声がありまして、五十六年は野党は過大だと言ったではないかという話がございますが、それはあったとしても、五十七年度も同じように繰り返しておるわけでありまして、五十八年度はどのような結果になりますか、まだはっきりしないのでありますけれども、いずれにしましても、私、これは一番悪い例えであるかもわかりませんが、どうもこの予算をつくるときに幾らか足りない、どうやっても出てこない、その際は若干徴収見積もりを多くして帳じりを合わせてやっていこうというのが働いているのじゃないかという勘ぐりをするわけでありますが、そういうことはないのでしょうね。
  99. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 やはり歳入を見積もる者といたしましては、赤字を出す、足を出すということは大変遺憾なことでございますので、後はどうなっても、とにかく見積もりのときにふやしておけばというふうなことは全く考えていないわけでございます。
  100. 野口幸一

    ○野口委員 それはそうでしょう、そんなことを言ったら大変なことになりますから。しておられないでありましょうけれども、とにかく過大な見積額をお出しになって、実際は初めから、その予算を組むときから、当然こんな見積もりは無理だろうということを私どももかねて委員会で申し上げたときがございました。でも絶対大丈夫だと言わんばかりの御答弁がございまして、そして後ほどまた修正をなさるというようなことがあったわけであります、これはたしか五十七年だと思いますが。いずれにしましても、そういうことが起こっているということは、経済見通しの誤り等によって起こってきているのでありましょうけれども、少なくとも租税の見積額というものは、念の上にも念を入れて、十分なるいわゆる歳入の予定額というものを出していただかなくてはならぬと思うわけであります。  さて、それではありますけれども、この歳入欠陥を埋めるために、税務職員は日夜努力をいたしまして、非常に多額の歳入欠陥額を埋めるべく調査をいたして、今日まで努力をなさっておるわけであります。調査による追徴税額は法人所得ともに五十七年度どのくらい頑張って取ってきているか、ひとつお調べをいただきたい。
  101. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 五十七年度におきます税務調査等によります追徴税額でございますが、加算税を含めまして申告所得税が千七百六十一億円でございます。また、法人税は三千四百九十六億円でございます。これらの合計で五千二百五十七億円ということになっております。なおそのほかに、源泉所得税が六百四十四億ございます。  以上でございます。
  102. 野口幸一

    ○野口委員 その金額は、当初のいわゆる予算に対して、パーセントでどの程度のものを取り集めておりますか。
  103. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 五十七年度の租税及び印紙収入、一般会計決算額で申し上げますが、三十兆五千百十一億円でございますので、それの約一・七%に当たることになります。
  104. 野口幸一

    ○野口委員 国税庁の五十七年度年間予算はどのぐらいなんですか。
  105. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 五十九年度予算でございますが、四千八十八億五千百万円ということでございます。
  106. 野口幸一

    ○野口委員 先ほどの税務職員によるところの追徴税額、法人所得各税についての総額は幾らでしたか。
  107. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 先ほど申し上げましたのは、申告所得税法人税の計で五千二百五十七億円でございます。
  108. 野口幸一

    ○野口委員 そういたしますと、今の数字をお聞きになったように、国税庁予算というのは、税務署の職員がいわゆる調査をして追徴した税額の方が上回っているわけであります。非常に効果を上げていらっしゃるわけでありますが、この追徴調査結果は、直接的には今言われましたように、国の歳入欠陥に対して貢献をされているわけでありますが、さらにまた、それに関連をしていろんなところに貢献をしていると思いますが、どのようなものが挙げられますか。
  109. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 私どもの職員の努力につきまして大変御理解を賜りまして、ありがとうございます。国税関係のほかに、実はこの追徴税額が地方税に及ぼす影響というものがあろうかと思うわけでございます。  なおそのほかに、ちょっと補足をいたしますと、私どもの職員は直税のほかに間税でも働いているわけでございますし、また申告所得税法人税のほかに相続税、贈与税といったものがございます。ちなみにこういうものを総計をいたしますと、直税の総計では六千五百七十五億円でございます。また、間税を含めますと六千六百九十二億円でございます。
  110. 野口幸一

    ○野口委員 それでは地方税特に事業税に及ぼす影響というのはどのぐらいの金額になっているか、御存じですか。
  111. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 これはなかなか難しいわけでございます。技術的にいろいろな難しい点がございます。と申しますのは、まず所得税の追徴税額の地方税に及ぼす影響でございますが、あいにく両方とも一律の税率ではございませんで、累進税率でございます。またそのほかに課税最低限が違うとか、均等割をどうするとかいうことがございます。しかしながら、そういうことを省略をいたしまして、税額だけで、五十七年の決算額で申し上げますと、国の所得税の総計が十二兆八千四百五十五億円、それに対します地方税の個人関係税が五兆五千七百十八億円でございます。その中身は、個人住民税が五兆四千七百八十八億円、個人事業税が九百三十億円でございます。この比率をとりますと、四三%程度になります。その額から均等割その他を調整をいたしましたものが、はね返りの額であろうかと思うわけでございます。
  112. 野口幸一

    ○野口委員 今地方税に及ぼす部分をおっしゃっていただいたのですが、確定申告のときに納税相談等によりまして納税水準を向上させるというようなものを含んでいないわけでありますから、それらのものを考えますと、いわば徴税というものに対しての相当な努力というもの、これは申告のときに口で言っているわけでありまして、その分は申告で修正をしているわけですから目に見えてないわけであります。当然そこで相当な努力をされていると見なければならぬと思うわけであります。その他、次年度の申告に影響していくとかいろいろなことを考えますと、今日の税務職員の仕事の内容というものの複雑かつ重要さははかり知れないものがあると思うのでありますけれども、これに対しまして、国税庁関係職員に対する定員あるいはまた職員の処遇の実態を今どのように見ていらっしゃいますか。
  113. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 御指摘国税庁の定員の問題でございますけれども、現在税務業務を取り巻きます環境は、先生指摘のように非常に厳しい問題がございまして、事務量が増加しておるという状況で、ぜひ定員を増加していただきたいということで関係方面の御理解も得ております。なおかつ、当委員会の附帯決議もございますので、定員増加のためには年々努力を続けてまいっております。その結果、現在、五十九年度の予算案でまいりますとネットで十六名の増加をいただきまして、十六名を加えまして五万二千八百四十一名でございまして、これを十年前と比べますと五百二十八名の増加になっておる状況でございます。  それから、いろいろな処遇の改善でございますけれども、これも関係方面の御理解を得まして、給与の問題とか、税務職の給与表の水準の格差の拡大とか、それから定数の改善その他につきましても歴年改善をいただいておるというような状況でございますが、今後ともまた、これに対して努力を続けてまいりたいと考えております。
  114. 野口幸一

    ○野口委員 今定員の話がございましたが、大臣もお聞きでありましょうけれども、わずかに十六名増。先ほども申し上げましたように、私どもはもっと減税してほしい。その財源確保のために今いろいろな問題があるわけでありますけれども、反面、隠れている部分について、地下経済の問題も含めましてそうでありますけれども、税務職員が今日懸命の努力をして、歳入欠陥を補おうとしておる努力というのは、大臣もおわかりだろうと思うのです。ところが、ことしの場合わずか十六名の増。十年前の申告納税人員と今日の申告納税人員との格差というのは非常なものがある。これは大臣も、たびたび大蔵大臣もおやりでございますから、わかっておると思うのでございますけれども、今日の定数はいかにも過酷に過ぎる状況であると思うのですが、大臣はどのように理解をしていらっしゃいますか。
  115. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはそういう野口さんの御意見というようなものが私の唯一の支えでございまして、予算編成期になりますと必ず定員をどうするか、こういうことになります。そうすると、一応まず世論として出るのは「隗より始めよ」、こういうことでございます。おれの方は例外だ、なかなか主張しにくいことでございます。したがって、年々議論をして、今おっしゃいましたように、ことしは二けたは二けたでございますけれども、あけてみたら一けただったというようなときには、済まぬなという気が本当にいたします。  ただ、実態として一生懸命努力をしておるのは、最近コンピューターを入れましたり、そういうようなことで、せめてそういう労働過重を減殺しておるということが言えるだろうと思います。したがって、附帯決議をいただいたり、今のような発言をいただいたり、それだけが本当は支えみたいになって、予算編成期のときには攻められる立場ですから、攻められる方が、おれの方は例外だ、非常に難しい問題でございますだけに、そういう御意見があることが——私も十分それを体験させていただきましたが、だれが大蔵大臣になられても、最後のところはそれが一番。だれも支えてくれるような者がないとき、こういう発言とか附帯決議というものでやっと、心の中で煩悶しながら、結果的に、ごらんになれば本当に何だ、そういうことで妥結をしておる事実は、率直に私の感想として申し述べておきます。
  116. 野口幸一

    ○野口委員 ちなみにこの五年間ぐらいでもいいですが、申告納税人員と定員との対比を人員的に、端的にちょっとお示しいただけませんか。
  117. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 ちょうど手元に十年前との比較がございます。先ほど申しました大体の人数の増加と御比較いただければと思いますが、申告所得税での納税人員でございますと、四十七年から五十七年で一・三倍でございます。法人数でございますと一・五倍ということでございます。
  118. 野口幸一

    ○野口委員 言うまでもなく、今大臣が苦衷を述べられましたが、一方ではこういうように申告納税人員自身も大幅にふえているということだけはしっかりと御記憶にあるとおりでございましょうけれども、重ねて申し上げておきたいと思います。それは、今日特に行政改革が提起をされているときでありますけれども、一方、行政改革はなぜやるのかということになれば、国の財政を支えるためにということで始まった議論でありまするから、その意味では、直接関係のある今日の税務関係職員といいますか国税庁職員の定数というものは、そんなに御遠慮なさらなくともいいのじゃないだろうかと思うのであります。切るべきは切るということは結構でありますけれども、ふやすべきところはふやさなければ、前向きのいわゆる徴税体制というものはできないわけでありまして、やはり第一線で働く職員が病気になったりあるいはまた士気が非常に低下をしたりすることが非常に大きな影響を及ぼすことは、先ほど数字をもってお示しをいたしましたような結果でありまするから、もう重々おわかりだと思うのであります。  もちろん大蔵大臣は、各省庁に対していわばその予算を削減しろということでやらなければならない立場にありまして、自分のところだけは人をふやすということについては非常に苦しいということは、わからないことはありません。しかし、今日のよって来る行政改革は何によって出てきたかということから考えますと、これは私は決して身びいきするわけではありませんけれども、大蔵省に関連して、また大蔵省の職員の皆さん方とおつき合いをするようになり、国税庁の皆さん方ともお話をするに及びまして、非常に大変なことをやっておられて、しかもまだその仕事の内容が年々非常に増加をしている、緻密になっている。先ほど大臣も、コンピューター等を入れてということで、何とかして緩和をしよう、労働過重にならないようにということを言っておられますけれども、私ども見ていましてもなかなかそこまで、いわゆる実質的な労働過重をカバーするというところまでには至っていないと思うわけであります。  そこで、人事院お越しでございますか。——それでは人事院にお聞きします。  こういう環境にあるわけでありまするが、士気を保ち、あるいはまた処遇を改善し、公務員制度見直しをする場合に当たりましてどのような配慮が必要か、人事院ではどのようにお考えでございますか。
  119. 藤野典三

    ○藤野説明員 税務職員の給与につきましては、税務職の職務の困難性、それから業務の特殊性、御苦労性等によりまして、一般行政職よりも高い水準の特別の税務職俸給表を設けまして、それを適用いたしますとともに、個々の職員の格付におきましては、いわゆる係長とか補佐とかいう役職ではございませんで、専門性に着目いたしました専門官職といたしまして有利な格付をいたしております。そういう意味で、近年さらにそういう事情でございますので、逐年それの改善に努めているところでございます。  なお、今御指摘のございましたように、今後その見直しに当たりまして、税務の特殊性につきましては十分配慮して対処いたしたいと考えております。
  120. 野口幸一

    ○野口委員 行政管理庁、お越しですか。——行政管理庁さんは、今日行革の中核でいろいろと行政を見ておられますが、特に国税職員の、今私が申しました増員の関係は、これは一応いろいろなところから言われているところでありまして、世論の高まりといいまするか、世論からも決して税務署の職員があり余っているというような声は聞かないわけでありまして、むしろ足りないのだ、もっとしっかりやってほしい、あるいはまたもっと親切に教えてほしいといろいろな問題があるわけでありますが、税務職員の増員を求めているこの態度に対して、どのようなお考えをお持ちですか。
  121. 神澤正藏

    神澤説明員 お答えいたします。  国税庁の職員の増員につきましては、今大蔵大臣からもいろいろその苦衷をお述べになられたところでございますし、国税庁の次長も、ネットで言うと十六人だ、こういうことでございます。これは私どものお答えといたしましては、私毎年大蔵委員会へ呼ばれて、いつもこういうおしかりを受けるわけでございますが、定員削減というのは各省共通におやりいただく、こういうことで事務の合理化を計画的に促進していただく。これは、四十三年以降国税庁でも、定員削減計画ができてから、いろいろ都市局、それからそれ以外の局との定員の再配分、所得税法人税といった第一線の調査部門、それから徴収、管理といった後方支援部隊、これも大事なことでございますが、こういった事務の間の職員の再配分等でいろいろ御努力をいただいている。こういったことも、定員削減計画ということで一つの促進をやっていただく効果はあったのではないかと思っております。  それで、今おっしゃるように、国税庁の職員については従来から、その重要性につきまして行政管理庁でも十分認識しております。五十七年から第六次定員削減計画が始まりまして、御承知のように、政府全体の定員の縮減も五十七年が千四百三十四、五十八年が千六百九十五、それから五十九年が三千九百五十三、こういったことで大幅な縮減に努めているところでございますが、国税庁の定員につきましては、六次定則の前の五十六年は四百人台でございましたけれども、第六次定則になって、今申し上げたように政府全体としての縮減が厳しくなる中で、五百人台の増員ということで努めております。これは絶対数としてはとても足りないじゃないか、こういう御指摘だと思いますが、政府全体の中での相対的なことで御理解をいただきたい。重要性については十分認識して、今後とも策定に当たってはそういう点を配慮してまいりたいと思います。
  122. 野口幸一

    ○野口委員 何か最後の方、ぼそぼそっと言っちゃったので、言葉じりがこまかったのでわからなかったのですが、考えて今後は人員削減についても考慮するということなんですか。
  123. 神澤正藏

    神澤説明員 こういう財政事情でございますので、全体定員については非常に厳しい環境が今後ともまだ続くのではないかと考えますが、そういった中で、国税庁の定員につきましては、さっきも申しましたように絶対的な意味で飛躍ができるとはお約束できませんが、相対的な形で十分配慮してまいりたいと思っております。
  124. 野口幸一

    ○野口委員 再三にわたりまして当委員会におきましても附帯決議を提起いたしまして、この問題については改めて私から申し上げるまでもなく、先輩各位が申されておりまする言葉に尽きるわけでありますが、特に今大臣初め関係国税庁職員の皆さん方もお聞きでございましょうけれども財政再建が叫ばれているさなかにありまして存在は非常に重要なもので、ますますその価値を深めているわけであります。もちろん人員も必要でありまするが、中身の問題として有能な人材、優秀な人を集めて当たってほしいということでございますが、この点について人事院は先ほど、俸給表は特別なものをもって充てているとかいろいろなことを若干言われましたけれども、特に有能な人材を国税庁職員として充てるという、特殊な立場にある職員を育成する手だてといいますか考え方は、新しいものはございますか、どうですか。どういうようなお考えをお持ちですか。
  125. 藤野典三

    ○藤野説明員 先ほど御説明申し上げましたように、俸給表で優遇いたしますとともに、役付にならないと等級が上がらないということではなくて、いわゆる専門性を評価いたしまして、そういう専門官職として係長相当、役付相当の格付をするという形で職員の士気を高め、なおかつそういう優秀な職員を養成するための措置を具体的に講じていきたいと考えております。さらに、この点については国税庁でもいろいろ努力されておりますが、私どもといたしましても、そういう意味においては側面から御協力していきたいと考えております。
  126. 野口幸一

    ○野口委員 そこら辺について、国税庁からも。
  127. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 昨年秋でございましたか、環太平洋の税務長官が東京に集まりました際に、私どもの税務大学校を見学していただきました。その中の例えばオーストラリアの長官なども、我々の教育、組織について非常に感心をして帰り、こういうものをぜひ導入したいというような意見もございます。そういう意味におきまして、私どもは、税務大学校の教育というのは普通科、本科、それから国税専門官の教育、そういうものに対しましては相当の重点を置きまして教育を行うようにいたしているわけでございます。そのほか、内部の研修その他につきましても、予算の許す限り充実をしてまいりたい、その結果、高度の技術を持った優秀な職員を育てたいというふうに考えております。
  128. 野口幸一

    ○野口委員 概括的なお話でございましたが、先ほど来再三申し上げておりますように、当然のことではありますけれども、現下の情勢というのは非常に厳しく、かつまた税務職員に対する期待というものも大きいわけであります。また期待にこたえて今日、数字的に見ましても立派な成績をおさめていられるわけでありますから、これらにこたえられるような、職員の士気がこれ以上悪化をするといいますか、士気が弱くなっていくようなことのないように、十分なお手だてをぜひともお約束をいただきたい、こう思うのであります。重ねて国税庁の方から、その点についてのお約束をいただきたいと思います。
  129. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 私どもといたしましても最大の努力をいたしたいと思っております。
  130. 野口幸一

    ○野口委員 今は国税庁に対して褒めたのでありますが、今度は少しく先ほどの問題にひっかかりましてお尋ねをいたしたいと思います。  時間も余りありませんから、詳しいことはわかりませんが、実は地下経済の問題でございます。その中で今日私が特に取り上げようといたしておりますのはトルコぶろの関係であります。  御存じのように、私は滋賀県の選出でございまして、滋賀県には有名なトルコぶろがたくさんございます。いわゆる雄琴温泉なるものがあるわけでございます。しかし、今日、このトルコぶろに対する徴税の現実面は非常に、言葉は過ぎるかもわかりませんが、なっていないと思われるのであります。国税庁は、現在のトルコぶろに対して余り積極的に税金を取ろうという気持ちがないのじゃないかと思われるほどでございますが、これは苦言であります。  そこで、今、日本のトルコふろは一体およそ何軒あって、年間どのくらいの収入を上げていて、何人ぐらいそれを利用しているか、そのくらいのことは常識的に御存じであろうと思いますので、ひとつお答えをいただきたい。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着     席〕
  131. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 トルコぶろでございますが、私どももレジャー関連業の一つといたしまして、重点業種ということで取り組んでいるわけでございます。ただ、これは今先生おっしゃいましたように、地域的に非常に大きなものが散在するということが多いわけでございまして、全国一律というわけにはまいりませんので、各局、大阪局とか東京局とか、そういうところにおきまして重点業種ということで取り組んでいるわけでございます。私ども国税庁で、各局でどのくらいのトルコぶろがあるか、全体の数は今把握をしておらないわけでございますが、例えば東京国税局で申しますと、トルコぶろの申告件数というものが、五十七年から五十八年の決算分で、法人だけでございます、個人がこのほかにございますが、四百六十三件ございます。  なお、こういうものにつきまして、調査内容についてお尋ねがあればお答えを申し上げたいと思いますが、全国一律の数字は持っておりません。査察の方をいろいろやっておりまして、これは最近三年間におきまして総告発件数が五百五件でございます。脱漏の全体が十八億六千三百万円でございます。この一件当たりの脱漏が一億三千三百万円というような巨額なものになっているわけでございます。
  132. 野口幸一

    ○野口委員 先ほど私が手ぬるいと申し上げましたのは、その査察の件を申し上げておるわけであります。私どもが考えますと、実はこの捕捉をされている部分というのは非常に表面的にすぎないのであります。つまり地上にあらわれている部分だけが捕捉されている。トルコぶろのいわゆる地下部分というのは、ある意味では警察当局と協力しなければわからないわけでありますが、その部分は全く放置されていると言っても過言ではないと思うのであります。  このトルコぶろ、五十七年度の数字でありますが、およそ収入は年間四千億円、利用人員は一千四百万人、こう言われているわけであります。一千四百万人ということになりますと、これは延べ人員でありますから、何回も行っている人があるかもわかりませんが、延べ人員にいたしましても一千四百万人の人間が行っているということになりますと、一億二千万の国民で割りますと、もちろんこの一億二千万人というのは老人から幼児まででありまして、それにトルコぶろに通う年齢層というものを勘定いたしますと相当な利用度になっているわけであります。これで表向きに捕捉されている数字というのを考えてみますと、大体三対二といいますか、四千億円の収入のうち、捕捉されている部分といいますか、査察の対象になってつかまっているという部分が大体一千億円。三千億円というのは地下に潜ったままというのが実態であろうかと私は思うのであります。もちろんこの種の査察あるいはまた調査というものは、警察当局と緊密な連絡をとりながらおやりになりませんと、実効の上がらないことは当然であります。しかし、今日までの実態を見てみますと、どうも査察はそういうところまで及んでいないような気がするのでありますが、その辺はお聞きでございますか。
  133. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 先ほどの答弁で申し上げました告発件数の五百五というのは全体でございまして、失礼いたしました。特殊浴場関係だけでございますと、委員御指摘のようにずっと数が少のうございまして、十四件でございます。ただ、そのほかに、私どもは直税部の、例えば資料調査課とかそういうところを利用いたしまして、調査をいろいろやっておるわけでございます。  御指摘のように、トルコぶろに関しまして私どもの把握、いろいろ難しい点があるわけでございます。第一に現金取引でございますので、なかなか客がわからない。反面、調査と申しましても、お客がなかなかわからないわけでございます。それから、中には新聞紙上でも出ておりますが、コンピューターなどを使いまして入室、退室を管理しておる。しかし、その入室、退室が操作されているというふうな事例もございますし、開廃業が非常に激しゅうございまして、実は税務職員が現況を一応つかんでおりましても、調査に行くころには廃業になってしまう、そういうような状態が非常に多いわけでございます。そういうところでいろいろ苦心いたしておりますが、あらゆる資料を駆使いたしまして、最大の努力をいたしているところでございます。
  134. 野口幸一

    ○野口委員 最後になりますが、先ほどは税務職員の勤勉をお褒めいたしましたし、また努力に対して評価をいたしました。しかし、まだ私は、この地下経済に関する限り十分な手だてがいっているとは思われない。もちろん人的な問題がございます。それはもう申し上げたとおりでございます。しかし、その面も参酌をしながら考えますと、まだまだこの部分については手を入れるといいますか、捕捉をする余地があると思うのであります。バーやキャバレーのお客さんの数をつかむのに、表に立っているというようなばかなことをしないでも、お絞り屋に行って、あそこの店にどのくらいお絞りが出ているかということを調べれば大体一日の客数がわかるというように、客観的にも営業内容を調べる方法というのはあるはずでありますし、場合によっては査察官みずからが客になって行ってもいいわけでありますから、その辺まで踏み込んで査察をすることも、ある意味では必要だと思うのであります。そのくらいの調査活動をやってこそ実効が上げられるんだと私は思うのであります。余りに紳士になって、表向きから「こんにちは」と言って入っていって調べているようでは、この種のものは見つかりません。  とてもじゃないが、やはりある程度踏み込んだ調査をぜひおやりになって、この問題になっている四千億からの所得が地下に潜っている、これはほんの一例であります。その他、これはトルコぶろだけに限らず、あるいはいわゆるいかがわしい旅館業といいますか、ホテルその他、この種サービス業にかかわる部分はいまだに解明されない部分が多々あると思うのであります。国税当局のぜひ一層の御奮起を促してやまないところであります。一言国税当局から答弁をちょうだいをして終わりたいと思います。
  135. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 大変ありがたい励ましのお言葉をいただきまして、ありがとうございます。今のように私ども職員は、実は汗をかいて一生懸命調査をやっておりまして、もう御指摘になりましたようなお絞りでございますとか、あるいはもう処理物まで資料を調べましていろいろと追跡をいたしておるわけでございます。今後ともこういう隠れました所得の把握に対して、最大の努力をいたしてまいりたいと思います。
  136. 野口幸一

    ○野口委員 終わります。
  137. 瓦力

    ○瓦委員長 次回は、明二十八日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会。