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1984-02-22 第101回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月十六日(木曜日)委員長の指名 で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  税制及び税の執行に関する小委員       熊谷  弘君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩島  大君       中川 昭一君    中村正三郎君       平沼 赳夫君    山中 貞則君       上田 卓三君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    坂口  力君       矢追 秀彦君    玉置 一弥君       正森 成二君  税制及び税の執行に関する小委員長                 中村正三郎君  金融及び証券に関する小委員       熊谷  弘君    笹山 登生君       塩島  大君    田中 秀征君       中西 啓介君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    森  美秀君       伊藤  茂君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    柴田  弘君       宮地 正介君    米沢  隆君       簑輪 幸代君  金融及び証券に関する小委員長 中西 啓介君  財政制度に関する小委員       熊川 次男君    小泉純一郎君       椎名 素夫君    平泉  渉君       宮下 創平君    村上 茂利君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       伊藤  茂君    沢田  広君       野口 幸一君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       簑輪 幸代君  財政制度に関する小委員長   熊川 次男君  金融機関週休二日制に関する小委員       越智 伊平君    田中 秀征君       中川 昭一君    藤井 勝志君       宮下 創平君    村上 茂利君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       川崎 寛治君    沢田  広君       野口 幸一君    坂井 弘一君       坂口  力君    安倍 基雄君       正森 成二君  金融機関週休二日制に関する小委員長                 越智 伊平君     ————————————— 昭和五十九年二月二十二日(水曜日)     午前九時四十一分開議 出席委員   委員長 瓦   力君    理事 越智 伊平君 理事 熊川 次男君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       熊谷  弘君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       村上 茂利君    森  美秀君       山岡 謙蔵君    与謝野 馨君       上田 卓三君    川崎 寛治君       沢田  広君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       堀  昌雄君    坂井 弘一君       柴田  弘君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    中川利三郎君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  堀之内久男君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁税部長 渡辺 幸則君         国税庁間税部長 山本 昭市君         農林水産大臣官         房審議官    田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    中野 賢一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君  委員外出席者         厚生省児童家庭         局企画課長   土井  豊君         農林水産大臣官         房参事官    須田  洵君         農林水産省経済         局保険業務課長 原  昭夫君         農林水産省経済         局統計情報部作         物統計課長   小坂 隆雄君         通商産業省機械         情報産業局電子         機器課長    島  弘志君         気象庁予報部長         期予報課長   渡辺 正雄君         労働省労働基準         局補償課長   佐藤 正人君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   福渡  靖君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 二月二十二日  辞任       補欠選任   簑輪 幸代君   中川利三郎君 同日  辞任       補欠選任   中川利三郎君   簑輪 幸代君     ————————————— 二月八日  農業共済保険特別会計における農作物共済及  び畑作物共済に係る再保険金支払財源不足  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一号) 同月二十二日  酒税法及び酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出第五号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  六号)  石油税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号) 同月十五日  消費生活協同組合共済事業に係る税制改善に  関する請願城地豊司紹介)(第二号)  同(稲葉誠一紹介)(第六号)  同(島田琢郎紹介)(第七号)  同(城地豊司紹介)(第八号)  同外一件(野口幸一紹介)(第九号)  同(武藤山治紹介)(第一〇号)  同(井上一成紹介)(第二二号)  同(川俣健二郎紹介)(第二三号)  同(清水勇紹介)(第二四号)  同(堀昌雄紹介)(第二五号)  同(沢田広紹介)(第四七号)  同(藤田高敏紹介)(第四八号)  同(大出俊紹介)(第五九号)  同(川崎寛治紹介)(第六〇号)  同(戸田菊雄紹介)(第六一号)  同(伊藤茂紹介)(第一〇〇号)  一兆円以上の所得税減税等に関する請願伊藤  茂君紹介)(第九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業共済保険特別会計における農作物共済及  び畑作物共済に係る再保険金支払財源不足  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一号)  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 瓦力

    瓦委員長 これより会議を開きます。  農業共済保険特別会計における農作物共済及び畑作物共済に係る再保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案議題といたします。  まず、政府より趣旨説明を求めます。竹下大蔵大臣。     —————————————  農業共済保険特別会計における農作物共済及  び畑作物共済に係る再保険金支払財源不足  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました農業共済保険特別会計における農作物共済及び畑作物共済に係る再保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和五十八年度におきまして、北海道地方を中心として低温等による水稲、小豆等の被害が異常に発生したことに伴い、農業共済保険特別会計農業勘定の再保険金支払いが著しく増大するため、この勘定の再保険金支払い財源不足が生ずる見込みであります。本法律案は、この勘定の再保険金支払い財源不足に充てるため、昭和五十八年度において、一般会計から、百十五億六千二百七十六万三千円を限り、農業共済保険特別会計農業勘定に繰り入れることができることとしようとするものであります。  なお、この一般会計からの繰入金につきましては、後日、農業共済保険特別会計農業勘定におきまして、決算上の剰余が生じた場合において、この剰余から同特別会計の再保険金支払基金勘定へ繰り入れるべき金額を控除して、なお残余があるときは、この繰入金に相当する金額に達するまでの金額一般会計に繰り戻さなければならないことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 瓦力

    瓦委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 瓦力

    瓦委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  6. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣の方はまだ他の委員会の関係があって退席されるようでありますから、若干質問なり意見なりを述べて、お聞きをしておきたいと思います。  予算委員会の中での、我々他の情報で得るわけでありますけれども、このいろいろな歳入歳出予算大蔵委員会として審議するに当たって、六十年度、六十一年度、そういう展望が、ある意味においては国民の前におぼろげながらでも、意見の若干の差はありましても大体出てきております。そういうことについて、一つは、三十四万円しかないんだから、五十万円の世帯をやっていくのは大変なんだからどうにもならぬじゃないかという論理、それから三十四万円の収入をうんとふやして、五十万円の生活生活でやっていくんだという論理、それぞれ行われてきているわけですが、私は、財政には二つ、一つ緩急というのがあると思うんですね。人間でもそうですが、詰めて詰めて詰め抜いて、どこまででも押し詰めるという徳川幕府のようなやり方もなくはないですけれども、それじゃ人間希望も夢もなくなっちまうんですから、あるときは緩め、あるときに強めという、やはり緩急というものが必要なんだと思うんですね。  だから、今までの予算委員会その他で、時間が短いせいもありますけれども、それぞれ言われている内容を考えてみると、きょうの農業共済もそうでありますけれども、我が国のよって立つところの一つの基盤でありますが、そういう意味においての緩急というものが一つある。それから、強めるときには、どうしても弱いところへひずみが偏る。農業共済もそうなんですが、どうしても弱いところへ弱いところへとそのしわ寄せが自然にそうなっていってしまう。何か制度を変えてみても、一生懸命に政府は努力をするんでしょうけれども、結果的には弱いところがつぶれたり、あるいは離散したりという形になってくる。ですから、財政についてのその緩急財政再建あっての国民生活ではない、国民生活あっての財政再建である、この基本はすべての、一つの方針になっていかなきゃならぬじゃないか、私はこういうふうに思うんでありますが、その点の見解を承って進めさせていただきたいと思います。
  7. 竹下登

    竹下国務大臣 今、沢田さんからおっしゃいましたように、基本的に一番最後におっしゃった、国民生活あっての財政再建である、私もこれはだれしもそうあるべきであると思っております。したがって、そういう財政再建財政改革の進め方について、政府としても中期展望あるいは仮定計算の形でそれなりの審議の手がかりとなるようなものをお出しした。各党におかれても、それと成長率の見方とかいろいろ違うものの、これを提示した。そういうことからして考えれば、当然それにも緩急度合いがあってもしかるべきではないか、こういう御趣旨だと思います。  確かに、緩急度合いをなくして、あらかじめ固定的に非常にリジッドな計画で事を進めるということは、私どもとしてもとるべき施策でない。それが一つは、例えば昨年お出ししました場合の中期展望で見れば、六十五年までに一兆円ずつ赤字公債を減額しましょう。しかし、ことしの場合、ぎりぎり詰めて、結果として五千億台にならざるを得なかったというのも、やはり一つ緩急というものを配慮したからとも言えるではないか。いま一つはやはり借りかえ問題。これは当然当委員会において御審議いただいて、大きな議論をいただくことになろうかと思いますが、それにいたしましても、本来借りかえをしないという前提のもとにきておった、償還財源を得るための借りかえをお許しいただくという形でお願いするということも、いわば緩急の綾の方に対応する一つ施策ではないかな、こういうふうにも思うわけであります。  したがって、あくまでもその緩急度合いというものを考えながらこれに対応していかなければならない。それにはもろもろ施策制度改革にもまた、いわゆる激変緩和措置とか、当分の間の措置とか、そういうものがとられておるのもその一つではないかな、こういうふうに思います。やはり今沢田委員の御指摘されたように、財政再建のための国民生活であってはならぬ、国民生活あっての財政再建である。したがって、現実非常に緊縮財政と言われておりますものも、考えようによれば、せっかく景気がある程度上向きかげんに定着しつつある今日であるだけに、むしろこの機会にある程度の財政再建の素地を固めるのも一つ考え方だという形で、全体的には緊縮予算の形をとり、そしてもろもろ借りかえ措置でありますとか、あるいは当初考えておった一兆円に満たなかった減額措置とかいうものも、その緩急の一環としてお考えいただくべく、これから本委員会等議論を重ねてみたいというふうに考えております。
  8. 沢田広

    沢田委員 そういう抽象的な表現ではほぼ言うようなことですが、そういうことであれば、例えば減税法案を先に、これは政府に関することですが、出して、国民にやはり幾らかでも希望を与える。先にこうぶんのめす、ぶん殴るような増税を提案をしてきて、後から小出し減税を出すというのは、今の緩急論理からいきますと、国民にこれだけ厳しい生活を強いているのだから、まあひとつ減税を先に出して、皆さんこれでひとつ一服してくださいと、それでしかし、これでもなお足らないのだからこうだという出し方の方が本筋なんじゃないのか。先にどうも増税法案出して、今やり切れない中にさらにやって、その次にこれらを小出しに出す。これは政府の今の緩急度合いからいったら逆さまなんではないか。これは大蔵大臣どうにもならない問題ですが、やはり論理としては、減税を先に出して国民希望を幾らかでも与える。あの減税が完全だとは私も思いませんけれども、少なくともそういう姿勢が、その緩急の場合の度合いから見て、去年苦しい生活をやってきたのですから、ここは減税を出して、そして国民に一服してもらう、それが足りる足りないは別として。それで次に、いい悪いは別にして出すものは出すという、おぜんの出し方が間違っているんじゃないですかね。先に握り飯を出しちゃってから後に刺身を出してくるようなもので、これは話が逆さまなんじゃないのか、こういう気がします。これは時間がありませんから意見だけ述べて、もし閣議等があった場合は、今さら取り返しが効くか効かないかわからぬが、これはやはり論理としては逆さまだったんじゃないのか。大蔵大臣はどう思っておられるか、ひとつ財政を預かる者の立場お答えをいただきたい。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 減税問題というのは、昭和五十七年三月から、いわば本委員会における減税小委員会というようなものからスタートをいたしまして、やっと昨年選挙前にそれの方向が示され、それの第一弾として年内千五百億円減税というような形が実現して、これが今日また御審議いただく減税法案に結びついていくわけであります。  その中で、本委員会における小委員会においても、いわゆる財源赤字国債によってはいけないということ。したがって、これについては残念ながら各党意見はまとまらなかった。それを引き継いで各党で御協議いただいて、言ってみればぎりぎりのところ物品税、酒税、そして法人税の若干の手直しをもって差し引き増減税チャラという形で御審議をお願いする。こういうことになりますと、今の緩急の問題でございますが、最初減税案を出して、経済学とは心理学である、したがって、それで国民に明るさを示して後、それの財源はこうでございますと言って出すのが筋ではないか、こういう御意見でございますが、これも考え方によりますと、事務的手続の問題は別として、これを始末してもらえば後に減税がありますと。これもまた緩急度合い心理的影響がいずれにあるかというのは、各個人個人において違うのであろうと思いますが、私どもおとなしゅうございますので、これが先でないと食い逃げされちゃ困るとか、そういうおこがましいことを考えるほど私も決して愚か者ではない、こう思っております。
  10. 沢田広

    沢田委員 時間が来たようですから、あとはまた別な機会にお尋ねをして、これは序論の序ということにして申し上げておきます。  この間、水田編成法律ができました。そのときに、私はこの前のときにも述べたのでありますが、国会で議員が立法した法律、あえて言うならば三権分立の中においての立法府がつくった法律は最高の権威を持つものでなければならない。こういう大原則というものは、これは立法府権威として守らなければならぬ。これがまず第一なんです。原点に返ると、第一の原則なんです。  ですから、水田編成減税措置、一時所得の問題は、大きな立場から見ればわずかなものであるかもしれないけれども国会が決めた法律権威というものの立場から見れば、行政府はその法律についてはまさに拳々服膺して、十分に調査して立法府の意思にこたえる、こういう基本的な態度がなければならぬ。残念ながら大臣はいなくなりましたけれども、これは行政府職員あり方として、立法府に対する権威というものを尊重してもらう。それに対して、水田編成を十年やっているけれども、何らまとまった資料一つもない。こういうことで行政府職員国会を、あえて言えばなめている、こういうことにもなるわけなんで、どういう法律であろうと、立法府がつくったものについては——行政府がつくった法律には一生懸命資料だ何だと言ってつくるけれども国会がつくった法律についてはほったらかしにしてある。こういうことでは立法府権威が守れないのでありまして、そういう意味においての資料要求をきちんとしていかなければいかぬということをもう三年にわたって言ってきた。それが今年においてもできていないということで、あえて我が党の理事からも主張してもらった。  ところが、特にこれはあえて申し上げておくのだが、これはきょうは言うだけですよ、もう法律は通ったことだから。農林委員会行政府は一生懸命頼み込んで、大蔵委員会の方で文句言っているから何とかおさめてくれないか、こういうような情けない姿勢じゃなくて、もっと自分でつくるものをつくって、そうして大蔵の人の言っている主張に対して回答していく、そういう姿勢がなければならぬので、委員長になってからこういう悪弊が出たのかどうかわからぬけれども行政府に対して、委員会あり方としてひとつ注意をし、今後そういうことのないよう厳重にこれは申し上げておきたいと思いますから、こういうことは再度繰り返さないということで委員長、善処していただきたいと思います。いいですね。委員長に善処を要請しておきます。
  11. 瓦力

    瓦委員長 さきの理事会において、各党間で協議を続けていくことにいたしております。
  12. 沢田広

    沢田委員 それで、これは当局の皆さん方農業共済の再保険について順次、五十二年のときから実はいろいろと質疑をしている点があるので、それを再確認をしながら新たな問題に入りたいと思います。  第一、これは五十二年に行ったときの質問中身だったわけですが、そのときには、これは個人の場合ですね、自営業加入の場合で揚水ポンプ場に従事する人あるいはみずから揚水ポンプ場を行っている者は入っておるけれども排水の方のポンプ場に入っている者については、回答としては不明の点もあったわけであります。その点については改正されたやに聞き及んでますが、この答弁のときにはそういうままで政務次官、当時山崎さんでしたか、善処するようにしますということで終わっているわけでありますが、その点は間違いなく入っていると解釈していいのかどうか、これは労働省の方からお答えをいただきましょう。
  13. 佐藤正人

    佐藤説明員 お答えいたします。  御質問の件でございますが、実はこの指定農業機械制度は四十年に創設されておりまして、現在まで十六の機種が指定されております。御質問排水機の件でございますが、その用途とか機能から見ましても、すでに指定しております動力揚水機に含まれるものというふうに理解しております。
  14. 沢田広

    沢田委員 動力揚水機の中に含まれるということは、これは何か通達とかそういうものは出ておりますか。それとも今の答弁をもってというか、運用としてそう措置していたということなんですか。あるいはきょうのこの応答の中の速記が、言うならば念を押したということになるわけですか。その三つのどれになりますか。
  15. 佐藤正人

    佐藤説明員 お答えします。  従来の取り扱いが必ずしも十分ではなかったということにかんがみまして、直ちに私ども通達等におきまして地方局署に指示をしたい、このように考えております。
  16. 沢田広

    沢田委員 それは了解いたしました。  それから、続いてこれは、十六種類は自家の農業従事者がその適用を求めた場合。農協あるいは土地改良区等、農協ポンプ場を持っているとは思えませんが、ポンプ場じゃなくてもいいんで、ガソリンスタンドやってたりなんかしますから、当然危険物も扱っているわけでありますが、そういう意味において、労働者災害補償法の面における人的災害補償について、土地改良区及び農協、こういう農林団体等については当然強制的に加入する条件に入るんですか、それとも任意的な加入条件に入るんですか、どのような扱いをされているのか、その点お伺いをしておきたいと思います。
  17. 佐藤正人

    佐藤説明員 現在の災害補償保険法で申し上げますと、適用が除外されておりますのは国の直営事業等三つぐらいに限定されております。それ以外のものにつきましては、すべて労災保険法適用がある。したがいまして、職種のいかんを問わず適用があるということを申し述べておきたいと思います。
  18. 沢田広

    沢田委員 そうしますと、四十三年の一月二十六日に「土地改良区が行なう事業に従事する組合員等労働安全衛生等の確保および当該組合員等に対する労働者災害補償保険法適用について」、こういう通達が出ております。これの中身を見ますると、「土地改良区が自ら農民等を雇用して工事を行なう場合」、それからもう一つは「労働者を雇用して行なう土地改良事業工事はこういうふうに表現されております。非常に回りくどい言い方なんでありますが、この内容は、これは農林から聞きたいのですが、農林一般的解釈は、今の労働省解釈の範疇に含まれる。今のは政令でしょうから、これは通達で、当然政令に拘束されるという法律論はありますけれども、包括される、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  19. 中野賢一

    中野政府委員 御指摘のとおりでございます。
  20. 沢田広

    沢田委員 そうすると、そういう各種のものも強制加入となる。これは、農林省としてはやはり何らかの通知を出す予定はありますか。
  21. 中野賢一

    中野政府委員 ただいま先生からお話ございましたように、土地改良区につきましては、先ほどお読みになられました通達をもって各土地改良区の方に、内容につきましてお知らせをしておるわけでございまして、当然法律に基づき、政省令に基づきまして強制適用のあるものは強制適用、任意適用のものについてはその普及の促進に努めるということでございます。
  22. 沢田広

    沢田委員 これはひとつ、四十三年と今とは時点が違いますので、労災法が変わってから以後の通達が出ませんと、法律上は労働省の出しているこれは政令ですから、もちろん優先権はその方があるわけですが、しかし農林団体に対する通達というものはそれから間接的に知る以外に道がないので、それはやはり改めて何らかの機会に内部通達というか内部伝達をしておいてほしい、こういう政令に労災法は直ったということを伝える方法を講じておいてほしい、こういうふうに要望をしておきます。回答は要りません。  続いて、次に参りますが、この任意加入強制加入との割合、それからこれは農林省の白書ですが、この中に、災害関係に対してはきわめて甘いというか、ほとんど何もないと言ってもいいくらいな白書なんです。それで二千億からあるいは三千億、いろいろまだ千七百億残っておるという状況の中で、災害に対する要すれば国民的な認識、そういうものに対する意図といいますか、意識、そういうものが少し欠けておるのではないのかというのが一つ。  それから、農業共済としては、これは内部に入り込みますが、やや任意よりも強制がより強化されないと、これからの時代の対応には、賄ってという言葉がいいのかどうか、対応していけないんじゃないか。たとえば社会保険などについても、それぞれ範囲が五名以下まで及ぶようになってくるし、年金関係もそういうような格好になってくる。要すれば国民皆年金というものが同じレベルに上がってきている。そういう状況を考えると、共済制度についても、同じような意味において、零細農家だけが外れていってしまうというような今のシステムである。それで、零細農家はもらう金も少なければ損害も大きい。しかし零細農家の生活はそれだけ厳しい。こういう状況で、この共済の中身全部は要りませんけれども、そういう扱いにいった場合に、任意と強制の割合、あるいは強制と任意の取り扱い、こういうものについて再検討をする時期に来ているのではないのか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  23. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 農業共済制度の強制と任意との仕分けの問題でございますが、一つは、ただいま先生の御指摘でございますが、実は任意というのは共済制度加入する道を封ずるわけではございません。任意にするということは、特定の者に共済制度の恩恵を享受することを排除するという意味ではございませんので、まずその任意というのは何か非常にいじめるためにやっておる制度であるというふうに御理解いただくことは御容赦いただきたいと思います。  それで、強制と任意との境目をどうするかということでございますが、現在強制でやっておりますのは水陸稲、麦というような、元来主食に属する系統のものが強制加入というやり方で行われておりまして、それ以外のものが任意というのが大別した分類になっております。それで、現在私どもに提起されております問題は、むしろ強制加入制度自体、兼業化の進展の中で、農業がその人の生計あるいは家計の上から見て非常にネグリジブルな比重しか持たないようになってしまっている人を、いつまでも強制的に共済制度加入をさせておくということはいかがなものであろうかという、そういう形での問題が私どもに提起されておる現状でございまして、私どもの認識といたしましては、どうも強制加入の範囲を広げていくという方向で検討をすべき状況であるというふうには思いにくいと思っております。  ただ個別に申しますと、よく従来から御議論を賜っております例えば果樹共済のように、共済制度に対する加入率が低過ぎるために制度の運営が健全に行われていないという、その原因が加入率の低さによる、それを克服する早道は強制加入である、そういう御議論のある種類の共済制度が存在することは事実でございます。沢田先生の問題提起も恐らくそういうものを念頭に置かれての御趣旨だと存じますが、私どもはこの種の、例えば果樹でございますが、そういう場合につきましては、やはり個々の農家の間の技術水準の差あるいはそれに伴います災害に対する危険の度合いの差というのが非常にばらつきが大きくて、それがどうも高い加入率をなかなか達成しにくい事情の根底にあるというふうに思っております。そういう問題をどうも強制加入という方法で処理をしてしまうということにつきましては、逆に、そういうことにいたしますと、共済制度の恩恵を十分感じていない人たちを無理無理入れてしまうわけでございますから、どうしても共済制度に対する不満というのをかえって高めてしまうという危険があるように存じまして、どうもなかなか踏み切りにくい問題であるというふうに思っておるのが私どもの偽らざる心境でございます。
  24. 沢田広

    沢田委員 例えば今度の貿易摩擦でオレンジとかあるいは牛肉とかいろいろ対象になってきて、これからの日本の食糧の自給率の向上とかという問題も大きな課題になり、いわゆる食糧安保という言葉すら今日出ている状況です。  任意と強制というのは、運がいい悪いという議論で分かれさせるような形はとるなということが私の趣旨なんです。警察はいないけれども、警察の取り締まりみたいに、捕まった方が運が悪いという、政治不信につながるようなことで解決をしていく道は政治の道ではない。そういう意味で、損害が起きたときにああ損した、起きなかったときにも損した、こういう論理で割り切っていく形が、今の農民というか農業政策の一つの方向である。これはやはり改めた方がいいというのが今言っている立場なんですよね。  それで、あえて続いて聞きますが、無事故還元、たとえば我々年金でもそうですが、三年生き延びていれば元が取れるというのが大体の相場。国民年金であろうと何であろうと、大体そういう状況になっている。三年以内に死んでも遺族年金があれば、六年になれば大体元が取れるという勘定になる。この一五%でなぜ無事故還元を打ち切りにしてあるのか。これは任意と強制もそうなんですが、もし全部強制にしても、例えば無事故があった場合の還元率を六割に高めるとか、そういう方法にするならば、当然そのことによって、事故がなければ幸いなんですけれども、一五%しか無事故還元はしないぞ、それで強制加入だ、これはむちゃくちゃになる。だからそういうのは、やはり無事故還元というようなものとの相対的な立場に立って考える。共済というのはお互いが助け合うというのが趣旨ですからね。その原点に立って考えていくべきではないのか、こういうふうに思いますが、別に無事故還元の方を引き上げる、それをまずスタートにしてみたらどうか。そうすれば農民の方の意識の方も、還元率が高いんなら安全のために入っておこうか、こういう気持ちも出てくるけれども、どうも無事故が続いても一五%しか返ってこないんじゃこれは割に合わない、金利にも合わない、こういうことになるのだから、この一五をやはり変えることが先決なんですね。これはいかがですか。
  25. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 まさにただいま先生御指摘のようなお考えを私どもも取り入れまして、三年間連続無事故という場合には農家掛金分の半分以内ということで、一五%を超えて無事戻しができるような制度に変えさせていただいておるのでございます。
  26. 沢田広

    沢田委員 ですから、それを私の言うように無事故還元というものをより強めて、そして例えば任意が強制に変わろうが変わるまいが、これは別問題としても、損はしない、そういう形にしていく方向でさらに強化する、こういうふうに解釈してよろしいですか。これは採算の問題があるんですから、限度はもちろんあるだろうと思いますし、事務経費もあるでしょうから、それを七割までは還元するとか六割までは還元するとか、ここは断言できないにしても、できるだけそういう方向でひとつ無事故還元は強化する。その方がやはり全体的なレベルアップにつながるわけですから、当然そういうことで考えていただける、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  27. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 果樹共済につきましては、ただいまお答えいたしましたように、三年無事故の場合に半分というところまで無事戻しを強化したところでございますので、そこから先何ができるかということにつきましては、ちょっと私どもも歯切れのいいお答えをしにくいところなんでございますが、先ほど来申し上げておりますように、私どもとしては、個々の農家の経営技術水準に対応したリスクの度合いに差があって、それに対応した差別化が適切に行われない限りは適正な加入率を達成することが容易でないという認識を持っておるということでございますから、そういう意味では、先生の今提起されておる問題というのは、十分承知はしておりますということでございます。  ただそれで、今お答えいたしました無事戻しが一つの方向でございますが、それ以外にも、経営技術水準に応じまして特定事故だけをカバーするやり方とか、あるいは経営の態様に応じたリスクの差別化の手法というのは、この前の五十五年度の改正でいろいろやったところでございますので、先生が今提起されました問題点については、私どももそういう問題意識は十分持っておりますというふうにお答えさせていただきます。
  28. 沢田広

    沢田委員 問題意識を持っておれば、これからの貿易摩擦ますます激しくなるわけでありますから、農民の人が安心していわゆる再生産に——今再生産なんというところではなく、原価補償程度なんでしょうが、再生産に見合っていける体制というものを農林の方もつくるように配慮していただきながら、無事故還元の強化を図ってもらう、これは強く、それぞれおられますから要請をして、次の問題へ行きます。  次にホップ。これは特に政令で定める一つのものになって、百二十条の十四に、ホップだけは政令で定めてあります。このホップの取り扱いの内容について、若干細かい——わずかの時間ですから、どういうふうに扱うのか、お答えいただきたいと思います。——じゃ、次の問題、いいですか。  この問題をやっている間に次の問題、大蔵の方へちょっと聞いておきます。大蔵の方には、この共済の補償金は税法上はどういう扱いになるのか。一時所得としてこれもなるのか。損失補償として、あるいは日照補償等と同じように相殺されるものと言えるのかどうか。  それからもう一つ農業共済の時効についてです。これは農林なのか大蔵なのか、両方に関係すると思いますが、時効が三年であったと思うのでありますが、その点についてひとつお答えいただきたい。
  29. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 ただいまのお尋ね、税法上の取り扱いの件でございますが、農業災害補償法に基づく共済金につきましては、共済目的の別に応じましていろいろ扱いが違うわけでございます。  まず第一に事業所得、すなわち農業所得とされるものがございます。これはどういうものかと申しますと、例えば農作物共済の共済金。例えば水稲とか麦が風水害、干害によりまして生じました損害について受ける共済金、これについては事業所得になっております。同じような取り扱いが蚕糸共済の共済金。それから、家畜共済のうち減価償却資産に該当しない家畜、これはまあ肉豚等でございますが、そういうものでございます。それから、果樹共済のうち全部ではございませんので、温州ミカンとかナツミカンとか、そういう収穫共済の分が同じような扱いになっております。また、畑作物共済の共済金も同様でございます。それからまた、園芸施設共済のうちのメロンとかトマトとか、そういう農作物に係ります共済金、これも同様でございます。  それから、二番目の扱いといたしまして、これは事業所得の経費といたしまして損失をどう見るかという問題がございますが、いずれにいたしましても、災害によりまして損失が起こっておるわけでございます。その損失をカバーするために共済金をお受けになるわけでございますが、その場合に、その損失の計算上控除されるものといった扱いがございます。これは、例えば家畜共済のうち減価償却資産としての家畜に係る共済、乳牛でありますとか種牛でございますが、そういうものが死亡いたしました、あるいは疾病によりまして起こりました損害につきましてはこのような取り扱いをしているわけでございます。それから果樹共済のうち樹体共済、温州ミカンとかナツミカンの果樹が倒れたとか、そういう損害につきまして受けるもの。それから施設園芸に供するビニールハウスとか温室とか、そういうものが風水害、ひょう害によって生じた損害について起こるもの。それからまた任意共済のうちで農機具とか倉庫とか、そういった減価償却資産に関します共済金、それについての取り扱いがこういうことになっております。いずれにいたしましても、私ども事業所得に関連させておるわけでございまして、一時所得になっておるものはございません。
  30. 原昭夫

    ○原説明員 ホップの共済につきましてでございますが、ホップにつきましては畑作物共済の対象といたしまして、昭和五十六年から六県について実施しております。
  31. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  前回当委員会沢田先生御指摘がございまして、その後私どももいろいろ調べてみたのでございますが、まず共済金の支払いにつきまして消滅時効が完成してしまったということは、これはほとんど絶無に近い問題でございます。ですから、問題は共済掛金の方だと存じますが、共済掛金の方につきまして私どもが調べたところでは、現在共済掛金が徴収不能になっておりますのは大体〇・〇一%ぐらいなものでございまして、現在のところ、共済掛金の徴収が思うようにいかないために困るという事態ではないというふうに思っております。それでも〇・〇一%ぐらいはあるわけでございますから、私どもといたしましては三年間の現在の時効期間を延長するという方向で検討するよりも、むしろさらにこの残った〇・〇一%のようなものも発生しないように、債権管理に一層努力をしてもらうという方向で対処をする方が望ましいのではないかというふうに考えております。
  32. 沢田広

    沢田委員 前の方で、補償は税法上は事業所得として扱う。その中はなかなか複雑な解説をされておりましたが、その細かい解説は私は今のところは要らないので、事業所得となると申告義務が発生する、こういうところに問題が出てくるのじゃないかという気がするのですが、それは当然申告義務は発生するのだ、こういうことになりますか。
  33. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  34. 沢田広

    沢田委員 それで、損害の場合ですから、これは補償という性格が強い。ですから、ある一定の金額というか、現在の農業共済の危険率と、それから得べかりし所得というものとの計算でいきますと、先ほど言ったように完全な再生産に見合う補償ではない。言うなら原価補償よりもまだ足切りされた下の補償である。とすれば、当然損害の以内に該当する金額なのではないのか。そうすると、当然損害に見合った分の補てんということであって、これはいわゆる補償料であるということになると思うのですが、このことだけできょう議論が終わるとは思わないけれども、そういう要素が多いということはどうですか。農林大蔵と両方答えてください。そういう要素が多いのだ。損害があって、それが補償されたというものであって、事業所得に挙げなければならぬものなのかどうかということについては、現在、若干問題があるのではないのか。昔の金額ならいいけれども、今の金額なんかでいったらますますいわゆる低水準になっておるということになると、これはもう相殺されるべき性格のものなんではないか。私自身はそう思っていますが、税法上の取り扱い、農林大蔵、ひとつ一言ずつ言ってください。
  35. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 まず私ども立場から見ますと、支払われる共済金は当然のことながら被害金額を下回ることはまず疑いのないところでございまして、どれだけ下回るかというのは、ただいま先生がおっしゃいました足切りとかなんとかいう、そういう要素の分だけ下回ることは間違いないと思っております。
  36. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 お尋ねでございますが、仮にこの共済金の方が損害額を下回ると先生御指摘のような場合には、その損失額として残りますものは、当然私ども事業所得の計算上損失となるわけでございます。  それからまた一時所得との関連でちょっと補足させていただきたいのでございますが、一時所得の方は、私ども所得税法上、営利を目的とする継続的な行為に関連するものといったものは除いておりますので、そういった関連で事業所得になるわけでございます。
  37. 沢田広

    沢田委員 だから、事業所得にはなるかもしれぬけれども、損失の補てん、しかも一割から三割までそれぞれ足切りをやっているので、その足切りの中で補償されれば、再生産に見合う分なんというもの、あすの生活費、今度はあすの種代、そういうものにまでは全然及んでいないのですね。それも現状をとにかく補償する、こういう状況なんであるから、当然この事業所得として扱うこと自身に問題があるのではないのか。例えば日照補償、日影補償というようなもの、あるいは騒音補償というようなもの、あるいは振動補償というようなものと同じじゃないか。塀にひびが入って、それで補償料をもらったからといって——河川で工事をやろうが、土木で工事をやろうが、それは申告しないですね、今。やってないでしょう、どこだって。建設省がやっている工事で。今相当田舎の方へ行かなければないかもしれぬが、水が出なくなったからといって、その補償はやってないでしょう。水道管に切りかえたって、それはそのままなんでしょう、現物補償ですから。当然それは事業所得原則ではなくて、そういう一面を相当考慮する対象であるということは間違いないでしょう。どうですか。
  38. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 御指摘でございますが、所得税法の基本的な考え方といたしましては、売り上げとか、原価とか、経費とか、そういったものを差し引きましたいわばフローとしての所得と、それから資産がございますが、そういった資産についての増減を見るわけでございまして、この資産の方の損失を埋め合わせる保険金あるいは共済金といったものには、先ほど申し上げましたような扱いで臨んでおるところでございます。
  39. 沢田広

    沢田委員 あなた、担当者として疑問を感じていませんか、どうですか。事務官として、法律上解釈されることはそれは結構ですが、どうですか、解釈として疑問を感じませんか。そういうことで、事業所得だからといって全面的にこれは申告義務があるんだということで強制していくことについて、抵抗を感じませんか、いかがですか。
  40. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 損失の範囲内におきましては、共済金が払われましても、計算上これは課税になるということではないわけでございます。相殺されました限度におきまして、その一方において損失が生じ、片っ方において共済金の収入が入っておりますので、課税ということではその限度でないわけでございます。  あと申告義務のお尋ねでございますが、これは、事業所得ということで明細をこういう場合に明らかにしていただくということは、私どもとしてこれはしていただいていいことなんじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  41. 沢田広

    沢田委員 そうすると、これは補償額が少ないから、法律上はそういうことになって義務があるけれども、もらってもどっちみち赤字なんだから、まあ出さなくとも同じことだ、こういう部類に属するものだ。あなたがイエスと言おうと言うまいと、現実的にはそうならざるを得ないということになって、政務次官、大体そういうところで意見が一致するようですね。これは政治家の話になりますから政務次官に。結果的には、どうやって計算しても赤字になってしまう。だから出してみても同じだ。出す義務は法律上はあるかもしれぬ。しかし、どうせ赤字になってしまうものを出してもらっても、税務署の方も迷惑だとは言ってないけれども法律上は出す義務があるけれども、出されなくてもどうせ赤字になるから、かえってその方が損金として落とせるという場合もありますという説明ですから、そういう意見においては政務次官も同意されると思うのですが、いかがですか。
  42. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 ただいま直税部長が申しましたように、私は、やはりこの農業共済というものは、何も例えば水稲なら水稲だけが今回共済を受けても、ほかの方の作物というものが黒字が出ておるわけですから、あるいは場合によっては農家として合算して申告した方がまだ経費が、赤字が見られる場合もあるし、あるいはまた共済が必ずしも即損害ばかりにはならないのです。米の共済あたりは非常に補てん率が高いわけですから、したがって単収を余計見た共済を掛けているというところは大幅な補てん金がもらえますので、合算すればある程度課税をしなければならない場合もある。こういうように思いますので、せっかく沢田先生の御指摘でありますが、一応やはりそうして申告をしていただくということの方が農家のためにもベターじゃないか、こういうように思います。
  43. 沢田広

    沢田委員 だから、得な人は申告した方が得である、こういうことの意味だと思うのです。でなければよほどの大農の方なんで、あれは水稲で言えば補償対象は田植えのときから収穫時期までという時期になっているんですね。そうしますと、得べかりし収入というものが、結果的には田植えのときに台風でも来てだめになれば、それは得べかりし反当で言えば十俵とれるところもあるが、八俵なら八俵がゼロになるわけですね。ですから、得になるという論理はどこにもないと私は思うのです。もし得になるという方法があるのなら、ここで一言御教示をしていただきたいと思う。それは必ず、収穫時期でつぶれればこれも損をする、田植えの時期にやられてもこれは損をする、こういうことなのです。プラス、再生産に見合う分まで補償されている場合は別なんですよ。ところが今の制度では、法律はそうなっておるけれども、再生産に見合う分の補償料には行ってない。一〇%から三〇%まで足切りがあるわけですから、いや応なしにその分だけはマイナス。さもなければ評価会がだらしがないということですよ。あるいは評価会の、共済金そのものの額の算定が不当に間違っているということなんです。もし正しく評価されておる限りは、損失は当然起きているはずなんです。ですから政務次官、時間がなくなりましたから、これはひとつそういうことで、得は絶対ない。だからそれが小農であれば小農であるほど、もう出稼ぎに行かなければ生活ができなくなっておる。大農の場合は幾らか他の部分がプラスになる、こういうことなんであって、その点の認識はひとつ改めていただきたいし、ひとつもう一回御検討をいただきたい。これは税務署の方も形式どおりのことを言っているようだったから、そういうことで理解をして次にいきたいと思う。  次に、ホップの問題と葉たばこ、それからビニールハウス、時間がなくなってきたからそれを詰めたいのですが、ホップについてはどうなっているのですか。それから、葉たばこはどうなりますか。その辺の国営的なもの、それから片っ方ホップはビール会社との契約栽培をやっているわけです。それをこの農業共済で補っていくものと、ビール会社で補っていくものと、それから葉たばこはもう国営でやっているものである。その辺をそれぞれちょっと説明してください。
  44. 原昭夫

    ○原説明員 ホップにつきましては、特にビール会社と私どもとを区別しておりませんで、普通の作物と同じように引き受けて、損害評価をして支払っているということになっております。  葉たばこにつきましては、私ども専売公社の方の保険制度の方にお願いしておりまして、私どもの方では共済の対象にはいたしておりません。
  45. 沢田広

    沢田委員 もう時間的に厳しくなりましたから……。  ホップは言うならば契約栽培なんですね。あるビール会社とそのホップの耕作面積が契約されて、そこで行われているわけです。それが国の農業共済補償されていくということになれば、これはビール会社は契約しておっても全然損害をこうむらない。ビール会社は利益を得ているわけです。今度ビールの値上げもあるのだけれども、例えば契約栽培等においては契約者がその損害を補償する。もうけるときもあるのだから。だから、そういう原則に返って、国が補てんするのでなくて、ゼロか一〇〇の議論じゃなくても、例えば二分の一は契約者が払う、二分の一は農業共済が払う、少なくともそういうような方向にならなければおかしいのじゃないか。これからは日本もだんだんそういうふうになってくるのじゃないかと思うのですけれども、ビール会社は、損をしたときには国の方で面倒見てもらって、得したときにはビール会社の収益になってしまう。こういう一方通行という話はないわけで、そういう意味において、このホップの場合は特に百二十条の十四ですか、わざわざホップだけを挙げているという意味は、恐らくそういう意味だと思うのです。だから、時間がないですから、これはひとつ再検討してもらって、いわゆる契約者側の責任というもの、義務というもの、それと国の果たす役割、義務の調整を図る必要性がある、こういうふうに私は思います。葉たばこは、今言ったように、そういうふうなことで専売公社がその立場で処置をしているわけですから、ホップの方はそれから除かれて、たばこの方は国、これはやはり通る話ではないというふうに言っておきます。  最後に、ビニールハウスの問題でありますが、もう時間がありませんから……。農林大臣の定める金額というふうになっていますが、農林大臣の定める金額と、それから園芸施設のいわゆるビニールハウスの程度まで金額を一応言ってみてください。  それからもう一つ、これは農林省に特に注意して、農林省ばかりじゃない、まあ政務次官もよく理解してもらいたいのですが、地下水の汚染というものが極めて危険を増しておる。きょうは建設省を呼んでおりませんけれども、地盤沈下対策も含めて地下水の汚染というものが——日本の誇れるものは水だ、こう言われているくらいでありまして、水をわざわざ缶詰にして売っているところもあるくらいですから、要すれば地下水の汚染というものは、建設指導によって地下還流方式を建設省はやっておる、そのことによって今後地下水の汚染が非常に進んでいく可能性が今日強い。まさかシンガポールの二の舞になるわけじゃないだろうと思うけれども、そういう危険性をはらんでおるというふうに思いますので、これは農林省としては、この白書の中にわざわざ地下水対策を入れているわけですから、その結果について後で御報告をいただきたい、こういうふうに思って、以上三点で終わります。
  46. 原昭夫

    ○原説明員 先ほどの園芸施設共済の主務大臣の定める金額というのは、現在二千万を定めております。(沢田委員「最高額ですね」と呼ぶ)はい。
  47. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 地下水の問題につきましては構造改善局の所管に属することでございますが、先生の御指摘は承りましたので、帰りましてよく申し伝えておきます。
  48. 沢田広

    沢田委員 では、その結果を報告してほしい、こういうことを要請したわけですから、以上で終わります。
  49. 瓦力

    瓦委員長 坂口力君。
  50. 坂口力

    坂口委員 最近の農業共済に対する一般会計からの繰り入れの額を見てみますと、五十一年度に四百五十億円、五十五年度に一千三百八十億円、そして五十六年度には四百七十億円、こういうことになっていると思います。もし間違っておりましたら、後でひとつ御訂正をいただきたいと思いますが。それから、この一般会計からの繰入金は、剰余金が生じました場合には、今度は逆に一般会計からの繰り入れ相当額を返済することになっておりますから、その返済の方を見ますと、五十五年度に二十六億円、それから五十八年度に六十三億円、こういうふうになっていると思います。  この数字を見ますもと、かなり一般会計から繰り入れの額の方が多くて、農業勘定からの返済額の方が非常に少ないという形になっておりますが、現在のこの状況をごらんをいただいて、どういうふうにお考えになっているかというところからひとつお聞きをしたいと思います。
  51. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今委員がお話しになりました数字のとおりでございます。繰入額及び繰り戻し額ですね。それで、現在繰り入れと繰り戻し額の差額が約千八百億円ございます。  そこで、これほど多額の金が繰り戻されてないということでどう考えるかというお話だと思いますが、この制度が始まりましてからの推移を見てみますと、例えば四十八年、四十九年、五十年では、この繰り戻し未済額がゼロになっていることもございます。それからその後ふえまして、四百五十億程度になったわけでございますけれども、五十四年度には二十六億と、また減っております。その後ふえまして、現在のような状況になっておるということでございます。といたしますと、この農業共済制度は、御存じのように二十年の長い期間で計算しておりまして、その間、最近のように異常な気象状況が続いて農業災害がふえるというようなときには、一時的には多額の繰り入れが出てくる。しかし保険設計としては二十年でやっておりますので、その辺のところは、先ほど申し上げましたようにゼロになることもあれば、若干の、二十六億というようなこともあるということでございまして、全体としては、長い目で見れば大体とんとんになるようにできておるというふうに我々は考えております。
  52. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 ただいま大蔵省から御答弁のございましたとおり、私どもも過去にかなりの期間、一般会計からの繰り入れ残高がゼロであった期間があるわけでございまして、たまたま近年連続して凶作の年がございましたために御心配をおかけしておりますが、制度としての健全性というのは、これは信用していただいていいものというふうに思っております。
  53. 坂口力

    坂口委員 これは災害に基づくものでありますから、一般会計からの繰り入れも、これは私もやむを得ないと考える一人であります。しかし、今大蔵省からお聞きをいたしますと、二十年の保険設計ということだからこれは一時的な現象であって、そして二十年を一つのサイクルとして見れば、それはうまくおさまる制度だ、こういう大変理解のあるお話でございますし、また農林省の方としても、制度としてはこれはもう立派なものである、こういうふうなお話でございますが、そこでもう少し立ち入って、ひとつお聞きをしていきたいと思います。  先ほど申しましたように、私も、これは農業災害補償法の基本精神から見まして、災害に基づくためのものでありますからやむを得ないとは思いますけれども、できればこれは保険制度でありますから、一般会計からの繰り入れがなしか、あるいは少なくて済ますにこしたことはない、災害があったときに間に合うようにできているのがこの保険ではないかという気もまたするわけであります。やむを得ないとはしながらも、しかしこの保険制度としても、これからもう少し詰めて、そして確立をしていかなければならない点があるのではないだろうか。今農林省からのお話でありますと、制度としては十分に確立をされている、こういうことでございますし、また大蔵省からのお話のように、これは一時的な現象であって、二十年間を通して見れば問題がないんだ、こういうことであれば私も何も言うことはないわけでありますけれども、現在までの経過を見てみますと、どうも保険として何かその中に体質的に問題を抱えていはしないだろうか、そういう危惧を持つ一人でございます。赤字国債ではございませんけれども、これで大丈夫だ、大丈夫だと言いながら、十年たってみたら大変なことになるというようなことにもなりかねない。そのときになって、これは体質的に問題があったというのでは、私はいけないのではないだろうか、そんなふうに実は思うわけでございますが、現状を見て体質改善をする必要があるのかないのか、あるとしたらどういう点を改めていったらいいのか、その辺をどうお考えになっているかをひとつお聞きをしたいと思います。
  54. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私、農業勘定につきましては割に安定性のある制度であるというふうに思っておりますが、農業災害補償制度全体につきまして、確かに先生御指摘のような心配がないわけではございません。特に私どもが気にしておりますのは、比較的歴史の新しい果樹共済でございます。果樹共済につきましては、残念ながら従来の実績の数字を見て御信用いただきたいというふうに申し上げられるような実績であるとは言いかねるところがございます。ですから私どもといたしましては、共済制度の中で財政面から見て特に心がけるべき点、気づいておる点はないかというお尋ねをいただきますと、まず最初に思い浮かぶのは果樹共済でございます。これにつきましては一応五十五年の改正で、私どもとして試みてみたいと思っておりましたいろいろな改善措置をやらしていただけるように法律改正をやらしていただきましたので、その効果が十二分に顕現するように努力をしていくということが、私どものまず第一になすべきことではないかというふうに存じております。
  55. 坂口力

    坂口委員 先ほども若干議論が出ておりましたけれども、この加入者の数が現状のままで果たしていいのか、もう少しこの加入者を拡大していく必要があるのか、あるいはまた加入をする人が少ないというのは、そこに何か魅力がないから加入をしないということもあるんだろうと思うのですが、その辺のところには問題はないのでしょうか。
  56. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 御指摘の点につきましても、私どもまずすぐ脳裏に思い浮かぶのはやはり果樹共済の場合でございまして、果樹共済の場合につきましては、率直に申し上げましてまだ加入率が不十分であるというのは一つの難点であるというふうに思っております。それから、果樹共済の加入率の低さにつきましては、先生ただいま御指摘ございましたように、特に技術水準の高い専業的な農家にとってみますと、平均値的農家に合わせて設計をされている保険制度というのはどうも十分には食欲をそそらないということが、一つの問題点としてあるのだろうというふうに私どもも認識をいたしております。
  57. 坂口力

    坂口委員 認識の違いもあると思いますが、私がこの質問をいたしておりますのは、二十年という一つの期間を区切ってあるとはいいますものの、すでに今までに何年たったのですか。半分はたつことになるのでしょうか。すでにかなりな年月を経過しているわけでございまして、この間に、先ほど御指摘のありましたように千八百億円という一般会計からの繰り入れ超過になっているわけであります。したがって、ここに何らかの問題がありはしないかということを考えて今後にも対処をしなければならないのではないだろうかという私の趣旨質問でございます。  今お聞きをいたしますと、果樹共済あたりに問題があるということでございますが、ただ一つ果樹共済だけが問題で現在のこの状況が来ているのではなくて、もう少し農業共済そのものの体質にかかわるところに問題がありはしないだろうか。例えば先ほど申しましたように、全体の加入数の問題でございますとか、体質が非常に弱いというのはそういうところにありはしないだろうか。もしその辺がありとするならば、共済制度としてその体質は改善をしながら、そしてなおかつ特別な災害のありますときには、再保険でもってそれを処理をしていくというのが順序ではないかというふうに私は思うわけでございます。したがって、そういう意味でもう少し突っ込んだお話というものがあってしかるべきではないかというふうに思いますが、その辺のところ、もう少しひとつお聞きをしたいと思います。
  58. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 今の先生の御指摘は私どもも思い当たるところがございます。と申しますのは、これは共済制度の問題であるというふうに把握すべきものであるかどうかよくわかりませんが、最近凶作の年が続いておりますというのは、気象上の問題もございますけれども、兼業化の進展でございますとか、あるいは農村の混住化の進展、そういう環境変化の中で我が国の稲作というのがどうも何か欠けておるところがあるのではないか。そういう危惧は実は私どもも感じておるわけでありまして、その稲作についての基本的な技術をもう一遍見直してこれをきちんと励行していただく、言うならば初心に返った稲づくりをするとでもいうふうに申したらよろしいのでしょうか、たくましい稲づくり運動というのを今始めておるところでございます。それが共済制度の問題であるというふうに思うかどうかということはさておきまして、ともかく今我が国の稲作が一つの問題状況に直面しておるのかもしれないという私どもの危惧の念を反映しているものでございまして、そういう意味で、ただいま先生が提起されました御懸念に対応するものであろうというふうに私どもは思っております。
  59. 坂口力

    坂口委員 そうしますと、その今懸念をしておみえになりますことを、農業共済立場からどのように今後改革をしていったらいいかというふうに結びつけていかないといけないと思うのですが、その辺をどういうふうにお考えになっているのかということをもう一つお聞きをしたいのと、それからことしも非常な雪害でございますが、野菜等に対する影響も非常に大きくて、最近は野菜も大変値上がりをしている、こういう状況が続いているわけであります。このままでいきますと、稲作がどうなりますか、これはよくわかりませんけれども、ことしもかなりの災害ということで、また共済の方との関係が出てくるのではないだろうかと心配をしている一人でございます。そういうふうに毎年毎年いろいろの災害が起こりまして、こういった問題が出てまいります。もうそれならばいっそのこと、この法律案をこういうふうに毎年毎年出してこずに、農業共済保険特別会計への一般会計からの繰り入れ措置というのは、大災害が発生したたびにこう出すのではなくて、もう少し恒久化をしておいたらどうだという議論も出てくるわけでございます。この辺についてどうお考えになっているか、ひとつお聞きをしたい。
  60. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 まず前段の、仮に稲作に問題ありという状況であった場合に、それが共済制度の問題とどういうふうに結びつくかというお尋ねでございますが、この点につきましては、共済の掛金率というのは一応過去二十年間のデータを使って計算をするわけでございますが、三年ごとに新しいデータを加えて計算をしていくわけでございますから、最近のような共済金の支払いの大きい年が続きますと、またそれに見合った掛金率が計算をされて、それで共済掛金収入の水準が上がってくるという形で財政の復原機能が働いていくということになるわけでございます。  その次に雪害の関係でございますが、雪害の関係では現在共済加入の施設で被害を受けましたのが、熊本、香川、佐賀、愛媛等九県で六千四百棟に及んでおりますが、今までのところ施設園芸の関係の共済金の予算につきましては、その雪害が始まります前までの事故が非常に少ないものでございますから、これはたっぷり残っておりますので、かなり大きな雪害ではございますけれども、今年度について、雪害のために施設園芸の共済の金繰りがおかしくなるということはまずないだろうというふうに存じております。  それから、この制度を恒久化するかどうかということにつきましては、大蔵省からお願いいたします。
  61. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この制度につきましては、保険という観点からいろいろ考えておりまして、本来長期間、今二十年間にわたって結果的には収支が相償うべき仕組みになっているわけでございます。しかし、先ほど来御議論がございますように、場合によりましてはいろいろな天候不順その他によりまして異常な災害があるというようなときに備えまして、御承知のように、この特別会計の中に再保険金支払基金勘定というのを設けております。そこである程度そのような異常な災害に対して対処する方法が組み込まれているわけでございます。  そこで、それ以上の激甚な災害が起こった場合どう処理するかということでございますが、それにつきましては、今回法案をお出しいたしましたように、やはりあくまでもこの異常、激甚な災害、特例的な災害でございますので、このようにその都度法律でお願いして繰り入れるというのが、私たちといたしましてはどちらかといえば制度としていいのではないか、そのように考えて法案をお出ししているというわけでございます。したがいまして、従来からもこのように毎度毎度法案をお出しして御審議願っているということでございます。
  62. 坂口力

    坂口委員 次官からひとつ。
  63. 堀之内久男

    ○堀之内政府委員 ただいま佐野局長並びに平澤次長からも御答弁申し上げたとおりでありますが、先ほどから先生のお話しになりました加入率の問題につきましては、これはやはり私も農村におりまして農家の心理というのはよくわかるのでありますが、今度三年連続東北地方がこうして災害が起こりますと、農家の加入率というのは非常に上がる。果樹共済というのは最近ようやく発足をした制度でございまして、私の一つの例をとりますと、宮崎県が四年前に大寒波に襲われた。それがほとんど入っていなかったのが、寒波の被害を受けたから、今度はどっと加入率が上がる。あるいはまたミカンというのはほとんど災害はないものと大体ミカン農家が思っておったところに、ああいう異常災害が来ましたので加入率が上がる。あるいは施設園芸の共済制度が恒久化して発足したのは今から五年前だったと思いますが、その間約十年近く試行として農林省が試験をやってまいりましたが、たまたまそのときに、また十月ごろになって相当の災害がございまして、施設園芸が相当な被害を受けまして、宮崎県の場合は非常に加入率が上がった。やはりこの共済というのは、農家に普及をいたしましても、加入そのものがなかなか率が上がりませんが、一たび災害が起こりますと、この共済制度保険制度というもののありがたさというか、それが再生産につながるという形で大変喜んでおられる。これもやはり一回災害を受けなければと言うと、これは語弊がございますが、その辺の行政指導が足らないと言われればそこまでですが、我々も常にそうした共済制度のよさというか、将来に備えてのことについて、政府挙げてこれは今後も努力はしなければならぬと思っております。  そこで、今次長から申し上げましたこの繰り入れ制度の恒久化ということでありますが、まあ財政節度の観点からいって、やはりこうして異常災害が発生したたびに繰り入れるということにおいて国会でいろいろ御審議賜り、そしてまた今後の御注意もいただきながらやっていくという方がかえっていいんじゃないかというように私どもも考えておりますが、こうして毎年毎年出てくるということになれば、あるいは今後保険制度を検討する段階において、先生の御意見等も十分参考にしながら、その機会にまた検討をさせていただきたい、そういうように考えております。
  64. 坂口力

    坂口委員 時間がなくなってきましたのでこれだけにいたしますが、私も農業地帯に住んでおる一人でありまして、いろいろ話を聞きますと、いま政務次官が御指摘になりましたように、ふだん余り災害に遭っていないということもあるのだろうと思いますが、やはりこの制度に対する魅力を感じていない、そういうことがございまして、なかなか加入しようとしない人がいるわけでございます。そうした面を考えますと、この制度が存在をして、そして一般会計からの、災害とは言いながら再々この繰り入れをしなければならないという非常に弱い体質の現状を考えますと、問題点としては、この共済保険制度がやはり弱さを抱えているのではないだろうか、体質的な弱さがあるのではないだろうか、もう少し加入率の問題でございますとか、あるいはまた種目の拡大の問題でございますとか、いろいろの面から検討を加えていかなければならない、そういうことを含んでいるのではないだろうかというふうに考えている一人でありまして、あえてきょうはその点を指摘をした次第でございます。ありがとうございました。
  65. 瓦力

  66. 玉置一弥

    玉置(一)委員 今回もまた農業共済保険特会への繰り入れということになったわけでございますけれども、どうも最近異常気象が非常によく続いておりまして、ことしは例年になく雪が多いということもございますし、夏には必ず集中的な水害がある。むしろ台風被害よりも、従来と変わった形での農業への影響というものが出始めているようでございまして、そういう面から考えまして、今までの生産技術ではどうも太刀打ちできないのではないかというような気持ちを持っております。  そこでまず、気象庁においでをいただいていると思いますけれども、我々自身どうも最近の天候が従来と大分傾向が変わってきたのではないかという気持ちも持っておりますので、統一見解を得るために、今までのというか今現在の状況、これが平年に比べてどうなのかということと、そして今後の長期予報ですね。まあ農家の方で特に農政関係をやっておられる方が、気象庁の長期予報が狂ったためにというのが時々あるわけですけれども、そういうことでなく、まずこれからの話を進める上での統一的な見通しというものをぜひお示しいただきたいと思うのです。
  67. 渡辺正雄

    渡辺説明員 それでは先生の御質問に対しましてお答えいたします。  まず最初の第一点につきまして、昭和五十五年から年別に順を追ってお答えいたします。  昭和五十五年は全国的に気温が低く、特に東北、北海道地方は強い低温年となりました。七−八月の平均気温は北海道七地点、旭川、札幌、寿都、函館、帯広、根室、網走、これの平均では平年より一・九度C低く、東北六県では二・七度C低いというかなりの低温でありました。  次に、昭和五十六年の五−六月の平均気温は、北海道では平年より一・三度C低く、東北地方では一・八度C低くなりました。また、七−八月の平均気温は、東北、北海道とも平年より〇・二度C高く、ほぼ平年並みでありましたが、盛夏期は台風や前線の影響を受けまして悪天の日が多くなりました。  昭和五十七年は、地域的には中部日本以西で低温と悪天に見舞われ、大阪、豊岡、潮岬、この三点の七−八月の月平均は平年より一・二度C低くなりました。なお、北日本は平年並みの気温に推移しました。  昭和五十八年は、過去三年と趣を異にしまして、六月に最も強い低温に見舞われました。六−七月の平均気温は、東北地方では平年より二・〇度C低く、北海道では二・七度C低くなりました。八月は全般に天候が回復し、北日本でも気温が平年より高く、西日本ではかなりな高温となりました。  以上が、昭和五十五年から四年間の天候の経過でございます。  それからもう一点、二番目の御質問に対するお答えをいたします。この異常気象は、今後はまたどうなるのかということの御質問であろうと思います。近年の天候の経過を見ますと、変動が大きく、かつ地域差の大きな状態が出現しております。この傾向はなおしばらく続くものと見ております。  大体以上でございます。
  68. 玉置一弥

    玉置(一)委員 その地域とかそういうのは全然わからないわけですね、気象庁。
  69. 渡辺正雄

    渡辺説明員 具体的なことはもう少し調べないとわかりませんけれども、非常に雨の多いところだとか気温の低いところ、まあ気温が低くて雨が多いというところは大体一致しているのです。それから大体北日本の方が雨が多くて、日照が少なくて、気温が低い。それが北日本の冷害型で、それから西日本ですね。関西から西の方では、気温はむしろ若干あるんですけれども、前線が停滞して、台風が接近して雨が多いというようなパターンになっているのが大体四、五年の傾向だと思います。日本では大体そういう大きな傾向でございます。  以上でございます。
  70. 玉置一弥

    玉置(一)委員 それでは農林省にお伺いをいたしますけれども、例年ですとある周期をもって災害が発生し、また、あくまでも会計の方から見ておりますと、ある時期になると異常に災害の被害が増大をする、そしてここ数年は珍しく続いているというような言い方をされております。我々は、例えば災害あるいは事故等がありますと必ず再発防止ということを考えるわけです。少しでも増大をしてまいる傾向がありますと、やはり今までの対策がどうもうまくいってないんではないか。特に農家に対する生産指導とかあるいは品種、いろんな技術開発というものがあるかと思いますけれども、災害農家に対してどういうことを今までやってこられたか。逆に言えば、なぜ効果が出ないのかということもお聞きしたいと思います。
  71. 中野賢一

    中野政府委員 先ほど気象庁の方からお話がございましたように、四年連続の不作の経緯を見ますと、例えば東北でございますが、五十五年の七−八月の低温というのは百年に一遍の異常な低温でございます。それから五十六年の、これも東北の太平洋側でございますが、六月に非常な低温があったわけですが、これも百年に一度というようなケースでございます。それから五十七年、これは関東が七月に低温に見舞われておりますが、これは五十年に一遍。五十八年でございますが、北海道の六−七月の低温はこれもまた百年に一遍というふうに、いわゆる異常気象としては発生する頻度が非常に低い、まれなケースでございます。したがいまして、四年連続の不作というのも、基本的には気象が原因であるというふうに理解していいのだろうと思っております。  ただ、具体的に各地域の実態等を見てまいりますと、先ほども議論があったわけでございますが、兼業の深化の問題であるとか担い手の高齢化、それから作業が少し粗放になっているのではないか。そういったこともございまして、農家間の技術格差が目立ちまして、そういった条件がこういう気象の不良条件のもとにおいては一遍に出てくる、当然作柄も落ちてくる、そういった傾向があるということはやはり事実として認めざるを得ないのではないかと思います。  したがいまして、先ほども議論があったわけでございますが、何といいましても米の生産の基本技術でございます適品種の選定、それから健苗を適期に移殖する、それから適時適切な肥培管理を行う。もう一つ肝心なことは、地方を増強するということが一番の基本であろうかと思いますが、それと生産組織を育成しまして技術の平準化を図る必要がある。そういったことが必要でございまして、今まで農業改良普及員等を通じましていろいろ御指導をいたしておったわけでございますが、さらに今度新しい農林大臣の御指示もございまして、たくましい稲づくり運動というようなことを始めておりまして、さらに今申し上げましたような基本技術の励行の指導を徹底してまいるつもりでございます。
  72. 玉置一弥

    玉置(一)委員 大体農作物というのは一年一年植えかえですね。収穫して新しいものを植えていくということでございまして、今の百年に一回がここ三年くらいで二回もあるということで、これはまさに百年に一回ではなくて二年に一回というくらいに見ていかないといけないと思うのです。気温、これは平均でございますけれども、二度から三度。普通二度から三度というとそんなに影響あるのか。これは素人の考えですけれども、そういうように見ていきますと、例えば稲作にしても低温ぎりぎりのところでやられているような感じがするわけです。そういう意味から見て、非常に悪い状況でそのまま継続をすることになると思います。  ですから、いま水田再編、いろいろやられておりますけれども、そういう制度を利用して、単なる耕地面積全体の一律低減ではなくて、思い切った大転換をやるようなことを考えていかなければ、異常気象だと言っている間に、例えば過去五年間のうち四年間異常だと、それが今度は標準になるわけですから、そういう面で考えていきますと、異常だ、異常だと言っておれない。要するに海流の関係とかいろいろな気象の関係がそういう方向に変わってきているのかということもあるわけで、二度か三度ぐらいの違いで異常な状態になるということ自体が、非常に限度きりぎりにやられているのではないかというふうに思うわけです。そういう意味でもっと余裕のある、幅のある、温度に適した品種にいろいろな作物を、特に稲ですけれども、変えていかなければいけないと思いますけれども、いかがですか。
  73. 中野賢一

    中野政府委員 平均の気温で今一度ないし二度というような数字も出ておりましたのですが、結局、作物に影響いたしますのは、ある一定期間の積算温度でございまして、技術的になりますが、仮にある月が一度下がりますと、全体としては三十度下がる、それが響くわけでございます。ですから、一度、二度という数字は一見少ないように見えますが、非常に大きなものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、今御指摘がありましたように、冷害に強い品種の育成等も今一生懸命やっておるわけでございますが、確かに先ほど申し上げましたように、地域に適しました品種の選定、それから水の管理、地方の問題、そういったことを、基本を細かく忠実に履行するということがやはり稲作技術の基本であると思います。今後そういった技術がちゃんと行われますように、より強力に指導してまいるつもりでございます。
  74. 玉置一弥

    玉置(一)委員 品種に余り深く突っ込んでいきますと全然わかりませんので、この程度にしますけれども、普通から見て積算、要するに成長期に低過ぎる、よくなってきたら高過ぎるという、五十何年でしたかありましたけれども、ああいうのも大変な被害、逆にやけてしまうというか、そういう状況になるそうでございます。ですから、なるべく条件の合ったところ以外はつくらないというのが本当は一番いいと思うのですけれども、余りそれを言いますといろいろ問題があると思うので言いませんけれども、やはり適品種、適地、これももっと明確に打ち出すべきじゃないかというふうに思います。  今回の共済制度をずっと見ておりますと、大体被害に遭われる地域というのはいつも一定をしておる。これ共済制度とは言いながら、むしろ災害被災者相互扶助みたいな、そういう感じを受けるわけですね。ですから、災害を受けない人はほとんど入らないというような感じになっているかと思います。任意加入のものについては加入促進が進まないというようなことで、母体がなかなか大きくならない。ですから、総額としてすぐはみ出てしまうというような状況が続いているかと思うのです。  この辺についてちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、今回の共済は、これは災害でございますけれども、今度で大分品種が昔よりも拡大されました。品種は拡大されましたけれども加入率がなかなか伸びない。その加入を高める方法というのは、我々もやはり母体を大きくしなければいけないというふうに思うわけでございますけれども、どういう方法があるか。これを余りやりますと時間がないわけですけれども、今まで加入を促進するためにどういうことをやられてきたかということをまずお伺いしたいと思います。
  75. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  加入率をいかにして高めるかというのは一般論としてもございますが、私ども特に問題としておりますのは果樹共済の場合でございます。  果樹共済の場合につきましては、私どもは基本的には果樹栽培農家の間のいろいろな経営技術水準の格差、それに伴って生ずるリスクの格差というものと共済の制度がうまく対応関係にないというところは問題であろうかというふうに思いまして、五十五年度の制度改正におきまして、特定の被害だけをカバーする制度でございますとか、あるいは無事戻しの制度、先ほど沢田委員のお尋ねで議論がございました、そういう制度を導入いたしました。それからさらに、これは制度ということとはちょっと違いますが、果樹共済につきましては集団加入促進のための運動、キャンペーンのようなものもやっておりまして、おかげさまで新制度、五十五年度の改正後、五十七年度は統計のわかっておる一番新しい年でございますが、二七%ちょっとという、おしかりを受けるかもしれませんが、果樹共済としては初めての二七%の大台を突破するというところまで来ました。さらに、新制度になってから日も浅うございますので、そのメリットをできるだけ生かしながら普及に努めて、加入を促進していきたいというふうに思っております。
  76. 玉置一弥

    玉置(一)委員 確かに、先ほども申し上げましたように、被害を受ける地域、あるいは技術的にも品種的にも集中をしているというようなことが言えるかと思います。今お聞きしますと、二七%ですか、五七%ですか……(佐野政府委員「二七でございます。二七・二だったと思います」と呼ぶ)ですから、三分の一の方も入ってないということになるわけでございます。  そこで、農政関係で今近代化営農資金とかいろいろな制度がございますけれども、農家の方はいわゆる融資はもらうけれども共済には入らないというようなことになっていると思います。これは何か法律的に禁止をされているというような話を聞きまして、共済受領金の譲渡禁止条項というのがあって、このために任意共済なりあるいは強制加入の共済についての担保といいますか、逆に加入促進の材料に使えないというような感じを受けているわけでございますけれども、実際問題として、融資をすると本当は確実な担保をとるというのは、民間の金融機関でありますとほとんどがやっているわけでございます。農業の場合には産業育成といいますか、そういう観点からやっておられるので、そういうかたいことはないわけですけれども、まあ保証人程度になっている。ところが、我々から見ると、せっかくこういうものがあるじゃないかという気がするわけです。ですから今後、その融資の担保として共済制度加入をしていただくということが考えられないか。そのためには法律改正等をやらなければいけないと思いますけれども、その辺について、一つの方法として考えられないかということについてまずお伺いしたいと思います。
  77. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 先生御指摘のように、確かに農業災害補償法八十九条によりまして「共済金の支払を受ける権利は、これを譲り渡し、又は差し押えることができない。」という規定があることは事実でございます。ただ、私どもといたしましては、これはあくまでも、せっかく国も相当のてこ入れをして運用をしております共済制度の利益が、高利貸し、サラ金まがいの人に横取りをされることを防ぐというのが本旨でございまして、元来は組合員である農家の皆さん方を保護するために設けた規定でございます。  それで、これがあるために、せっかく共済制度がありながら、農家の信用力を高める上での効果が減殺されておるではないかという御批判であろうかと存じますが、請求権の譲渡及び差し押さえは禁止されておりますが、ともかく共済制度があるということは、借金をした場合の農家の償還能力を裏打ちしておることは事実でございますので、そういう意味で信用力を支えるという効果がこれによって無に帰してしまうというわけではないと思いますのと、それから私どもの方では、別途また農業信用保険制度、農業信用基金協会とかという制度を運用いたしておりまして、農家の受信力不足のために融資が円滑に行われないという事態については別途の手当てをすることにしておりますので、本来からいえば、そちらの方の信用補完制度によって農家の受信力をカバーしていく方が筋なのではないかというふうに存じております。
  78. 玉置一弥

    玉置(一)委員 毎年災害対策や何かで各地へ行きますと、まずお話が出てくるのは各農家が借りております融資金の返済、これの繰り延べをやってほしい、あるいは再融資をやってほしいという話が必ず来るわけです。ですから、当然共済掛金も払えなくなるというような状況にもなりますし、そういう意味で損害金をまず受け取らなければいけない、そして今度は返済を続けていかなければいけないというふうになるわけです。こういうことから考えると、やはり連係をさせた方がいいではないかというふうにつくづく思いましたので、ぜひ検討いただきたいと思います。  それから、先ほど申し上げましたようにほとんど被害がない、めったにないというところはまず入らない。何年かに一回被害を受けるというようなところとか、あるいは少なくとも周りがほとんど被害を受けて、たまたま自分だけが免れているというふうな方が入れられるというふうに考えていきますと、どうも被害者ばかりが入って母体が広がらないという感じがいたします。それと、特に果樹共済などになりますと、一つの地域で大きな被害があって、その年の出来高が非常に少ないということになりますと、まさに被害に遭わなかった方だけがもうかるというような形になりまして、何とかそのもうかるところから取れないかというような発想から二段階制度にしたらどうか。ふだん比較的被害がない方、そういう方でもやはり一律に入ってもらう、そしてそれをもう強制にしてしまう。もう一つは被害の常時起きる方、要するに今入っておられる方々、そういう方々に対しては任意加入といいますか、そういうふうな制度を導入できないかというふうに思うわけです。きょうは余り時間がありませんので、一応こういう考え方はどうだということで提言だけはしますので、御答弁は結構ですから、それについてぜひお考えをいただきたい。  時間も参りましたのでこれで終わります。どうもありがとうございました。
  79. 瓦力

  80. 中川利三郎

    中川(利)委員 政府は米の作況あるいは農業共済の基準収穫量を出すに当たりまして、統計情報部の一・七ミリの網目をベースにして割り出していますが、一方米の生産者、農家は、良質米づくりをやれという国からの働きかけだとかあるいは産地間競争などもありまして、大方は一・八ミリまたは一・八五ミリの網目でふるいにかけている、そういう実態がございます。そのためいつでも問題になるのは、政府がこれだけの米が生産されているはずなんだ、こう言いましても、農民の側からは、政府はない米まであると言っておるというぐあいに、政府の言う作況と農民が実感として受けとめる作況とのずれがございます。私はどっちの網目がいいか悪いかはともかくといたしまして、少なくともこの両者の間にこういう大きな乖離、隔たりがあるということをお認めになる以上、実態に近いものに改めるべきだと思いますが、この点についての政府の認識をお伺いしたいと思います。
  81. 須田洵

    ○須田説明員 お答えいたします。  収量調査に使用されますふるい目が、実際に農家が使っておりますものと若干相違があるということで、国の収量調査におきます収量と農家の間におきまして、確かにある程度の差が出ておるというようなことは考えられようかと思います。  そこで水稲収量調査のふるい目につきまして生産、流通の実態に合わせるべきではないかという御指摘だろうと思うのでございますが、これにつきましては、生産者が用いておりますふるい目というものにつきましては、今先生も御指摘されましたように米の産地間競争とも関連いたしまして、地域によりまして、また時によりまして、時にと申しますのは年によって多少変わるわけでございますが、非常にまちまちであるということでございます。ある一定の、例えば一・八ミリなら一・八ミリということで固定して考えてやっておるということではございませんので、そういうふうにまちまちであって、また年によってもこう動くようなものについて収量調査で取り入れていくということになりますれば、もろもろの混乱も出てまいります。そういったようなことから見ますと、先生の御指摘ではございますけれども、今後現地におきます動向につきましてよく見きわめていくということはもとより必要であろうというように考えてはおりますが、現時点におきましてふるい目につきましての基準といいますか、それを変える必要はないのではないかということに考えておる次第でございます。
  82. 中川利三郎

    中川(利)委員 農民の一・八ミリあるいは政府の一・七ミリ、このふるい目について若干の差が出ているとあなたはおっしゃいましたけれども農林水産省が五十七年度の宮城県産米で網目の違いと作況指数の相関関係を調べた資料があるわけです。それによりますと、網目の〇・一ミリの違いが作況指数の中では四ポイントから六ポイントの違い、こういう差となってあらわれております。一ポイント違えば十万トン、五ポイント違えば五十万トン、わずか〇・一ミリの網目でこれだけの差があるのです。このことはお認めになると思いますが、同時にあなたはもう一つ、一・八ミリとは言っても全国地域でばらつきがあるとおっしゃっているわけであります。しかし、ばらつきがあるというのは、一・七でやっているのは例えば近畿地方の小粒米ですね。ほんのわずかしかないです。いまライスグレーダーがどんどん普及いたしまして、例えば米をえり分ける米選機。この出荷の八〇から八五%はほとんど一・八ミリその他で、政府の一・七ミリでやっているところはないのです。いわば大宗がそういう方向になっているということです。したがって、そういう現実もこのままでいいわけありませんから、当然実態に近いように見直すというのは当たり前の話ではありませんか。ですから、その点について再度お答えをいただきたいと思います。
  83. 須田洵

    ○須田説明員 御指摘のいわゆる実態との差の問題でございますけれども、先生今御指摘されました収量の差といいますか、その問題について若干御説明させていただきますと、確かに、いわゆるふるい目につきまして、一定の試験等におきましてやった場合に、一・七ミリと、仮に一・八ミリとかということで試験をいたしまして、これは完全に時間をかけましてふるい切ったベースでの差としましては、あるいは今御指摘の四%程度の差は出ようかと思いますけれども、実際に、今の農家の実態といいますか、ライスグレーダー等で選別しております実態から見ますると、一、二%ないしは非常に小さいものではないか。四%というような、そのふるい切りの状態とは実態的にやはり違う面があるのではないかと考えられます。  それからもう一つは、実際に今度ふるいをかけた後の、ふるいをしたものにつきましても、一部は再選別されまして流通の実態に回っていくという面もございまして、その辺の差をどういうふうに見ていくかということでございますけれども、我々も、そういった点は、実態等については十分見ていくつもりはございますけれども、何分、先ほど申しましたようなことで、確かに、実態的には一・七ミリというものを使っている地域は比較的少ないのではないかという感じはいたしております。今までの経過等も考えますれば、直ちにこれは見直しをしていくというふうには、実態的になかなか難しいのではないかと考えますが、我々といたしましても、御指摘の点も含めまして、この問題についての内部的な検討は十分考えていきたいと思っております。
  84. 中川利三郎

    中川(利)委員 内部的な検討は考える、しかしなかなか難しいというような答弁でありましたが、あなた方、若干の差はあるというような見方、若干というのはほんのわずかというふうにとられがちですけれども、おたくの資料でさえもそういう状況で、実態調査した結果が出ているわけです。  もう一つの例で言いますと、五十七年の宮城県の作況、平年収穫四百九十五キロに対して四百四十九キロしかとれない。作況指数が九一でございましたが、網の目が一・八ミリであった場合、作況指数は八七であったろうし、一・九ミリまで広げれば、作況指数は七六まで下がってしまう、そういうことなのですね。これは重大な問題なのです。したがって、これは若干で済ませるわけにはいかない。だから、検討するということを言うたと思うのですけれども、現にこれは不都合だということで、私が聞くところによりますと、皆さんの部内では、今までの統計の頭はかたかった、これは全然問題にならなかった、これはどうしても官房その他が中心になって見直ししなければならないという検討会、これが公式のものであるかどうかは別にいたしまして、そういうものを持たれているということでございますが、この事実があるかどうかということと、先ほどあなたは、そういう一・八ミリ以下の、実際は流通しない米でも再選別されて流通しておる、こういうような言い方をしておるから、このことは何でもないのではないかということの言いかえだろうと思うのです。しかし、実際農家は、自主流通米の産米競争のもとで一・八ミリだとか一・八五ミリなどの幅広い網目を使わされているのですね。これは、良質米つくれつくれと言うから、本当は政府米として立派に販売できる米までくず米同然の値段で売らざるを得ないというのが今日の姿なのですね。だからといって、再選別したところで、それは政府集荷に回らないで横流れしているでしょう、実態は。この網目競争によって生ずる誤差というのは四十万トンあるいは五十万トンとも言われているのですよ。これは即刻実態に近いようにやらなければ、将来、農政そのものの問題としても大変大きい問題になってくると私は思うのですが、いま一度お答えいただきたいと思います。
  85. 小坂隆雄

    ○小坂説明員 ふるい目が〇・一ミリ違う場合、作況がどのように変わるのか、こういう御指摘でございます。  私ども統計の、実際のふるい目によりまして一定の方法ではかりますると、先生の御指摘のような四%前後、こういうことになるわけでございますが、実態問題として、農家等が実際にライスグレーダー等で選別する場合については、完全にふり切らなかったというようなこともあって、その差というのはかなり減るのではないかということが実情ではないかと思うわけでございます。  なお、作況指数にどのように影響するのか、こういうことでございますが、私ども作況指数を出す場合には、いわゆる平年単収に比べまして、それで収量がどうなったのか、こういうことでございます。平年単収自体が一・七ミリをベースにして収量の基準にしておるわけでございます。したがいまして、仮に一・八ミリとかそのようにする場合におきましては、当然ベースとなる平年単収自体も変わらざるを得ない。こう考えますると、作況指数自体につきましては、仮にそのような状況になってもこれは変わらないというふうに御理解を願いたいと思います。
  86. 中川利三郎

    中川(利)委員 今、大体のやりとりをしたわけですが、問題は、一・七ミリの、政府の共済その他基準単収を出す場合の、このベースが妥当なものかどうか、これで正常に機能しているのかどうかということですね。これをどう思っているかということをいま一度はっきり——したがって、妥当であればこのままでいいわけですから。しかし、やはり不都合であれば、これは将来的にも見直すべきものなのか、そこら辺の考え方をひとつ聞きたいと思います。
  87. 小坂隆雄

    ○小坂説明員 私ども、統計の収量基準といたしまして一・七ミリを使っておるわけでございますが、これはいわゆる食糧に供し得る、精米となる米の粒が通常一・七ミリ以上である、こういうこと、さらにまた、政府買い入れ規格の最低基準に合致する、このようなことから定めておるわけでございます。  先生御指摘のように、現実問題として、自主流通米等で上位選別でやられている、こういうことは承知いたしておるわけでございますが、これらにつきましては、地域それから場所、そういったものによって差がある。このようなことから見ても、やはり基準としては一・七ミリということにするのが適切ではないか、直すことはかえって混乱を招くのではないか、かように考えております。
  88. 中川利三郎

    中川(利)委員 一・七ミリの米でも政府が買うから、これは大丈夫なんだ、一・七ミリで結構だ、こうおっしゃるわけです。しかし、そのことがいかに農民の実態に合わなくなっているかということですね、問題は。だから、一・七ミリの三等米、農民からするならば、やはりいい米をつくりたいうまい米をつくりたい、値段の高い米をつくりたい。農林省自体がそれを勧めているわけであります。ところが、あなたは、良質米をつくれつくれという一方のかけ声と同時に、もう一つは、一・七ミリでも構わないのだ、実際は一・八ミリ以上で農民が全部競争しているときに、それだって買うのだから同じじゃないかという言い方は、省内に二つの流れがあって、皆さんの部内に相反する一つの——そうした農民が今一句を基準に米をつくったらいいかわからなくなるのじゃないですか。  そういうことで、余り時間がございませんからあれですが、この点はやはり当然、実態に合わせて見直すべきだということを、私、結論的に申し上げるわけでありますが、なぜ、あなた方がそうかたくなな態度をとるかというと、網目の〇・一だとか二とかいうのは、本当に小さい問題でありますけれども、この問題が即日本の農政の根本にかかわる、例えば作況指数と実際の生産量の問題にも関与してきますし、共済のそういう被害補償の問題にもかかわってくるわけでありますし、あるいは政府の農業の見通しそのものにも関連してくる。つまり、大変重要な問題がそれに関連してあるから、なかなかガードがかたいというふうに、私、推測はしているわけでありますが、だからといってこのままで通すということは、やはり将来に大きい禍根を残すことになることを指摘しておきたいのです。  きょうは時間の関係がありますから、この点は後日に譲るといたしまして、最後に、共済掛金の問題についてお伺いするのは、今、一・七ミリを基準に共済の掛金が掛けられているわけですね。ところが、実際は、日本の農民の大方は一・八ミリ以上のふるい目でやっているわけですよ。ですから、農民にしますと、一・七と一・八の間のその部分の、つまり収穫しない米に対して、共済の掛金が払わせられている、こういうことに理論的になると思うのです。これは行政の整合性という点からいいましても、私はやはりひとつ問題じゃないかと思うのです。そのかわり君、一・七でやれば共済被害の救済のされ方はよくなるんだ、こういう言い方もあるかもしれませんが、それはそれとして、行政の整合性という面から見た場合、収穫しない米の分まで掛金を取られているということはやはり不合理だと思うのですが、この点についての御所見を承りたいと思うのです。
  89. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 現在、農業共済においては統計情報部と同様一・七ミリを使っておりますが、これは私どもの方では基準収穫量にもこれを使っておりますし、損害評価のときにもこれを基準にしてやっておりますし、それから掛金の算定基礎になります被害率も一・七ミリということにしてあります。それで、こういうすべての要素に首尾一貫して一・七ミリというのを用いておれば、掛金が納め過ぎであるとか納め足りないとかという問題は起こらないはずだというふうに思っております。
  90. 中川利三郎

    中川(利)委員 いろいろその問題についても議論のあるところでありますが、いずれ……。  先ほどの、農林省の部内で、正規のものであれ何であれ、やはり網目の問題について再検討しなければ実態に合わなくなるということで、まあ有志であるかもわかりませんが、そういう検討会を開いているという確かな筋からの情報を私は得ておるわけでありますが、同時にいまの答弁をお聞きいたしますと、いまのままでいいんだということになるわけであります。公式と裏側のいろいろ間があると思いますが、その点についてのお答えがなかったので、その点のお答えをお伺いして私の質問を終わらしていただきます。
  91. 須田洵

    ○須田説明員 先生の申されましたことについてでございますが、我々米の需給の問題というものをやはりいろんな面から多面的に検討していかなければということは当然の義務でございます。そのような意味で、例えば生産数量あるいは収穫数量、流通数量といったものにつきましての見方というものを極力適切に行っていく。そういう見地から、あるいはそういう検討の一環としまして、こういったふるい目の議論も、先生のように中でいろいろございますので、やはりそういった問題も含めて、我々はいろんな討議を省内的にはしなくちゃならないというふうに考えておりまして、そういったようなあくまでも一環として、これについての担当者を集めましてのフリートーキングというようなものは当然やっております。しかし、それは形式的な形での、検討会というほどのものではございません。しかし、やはりそういったような検討をほかの米の需給全体との関連でなおいろいろ考えていくということは、我々行政の立場としては避けられないことであり、考えていかなくてはならないことではないか、そういった姿勢で取り組んでまいりたいと思います。
  92. 中川利三郎

    中川(利)委員 まだ大臣が来ないというので、もう一問ぐらいというお話もございましたので……。  いま内部的な検討会では確かにそういう問題も部分的には含まれているのだ、こういうことですが、それがすべてではない。しかも正規のものではないというお話もございました。しかし、その網目の問題が討議の俎上に上っているというそのこと自体、正常じゃないのだ。やはりこれは実態に近づけるように、あるいは網目をいじることができないとするならば基準単収をどうするかという問題がまた一つあると思うのです、実態とそぐわないものですからね。基準単収の方で知恵を絞るとかなんとかいうことが今農民のほとんどの叫び、要求になっているわけでありますから、網目をもし今のままとするならば、基準単収は網目から出てくるわけでございますけれども、それにしても何らかの格好で基準単収のとり方をどうするのかという問題は大きな課題であると思うのですね。その点についてもやはり討議しておるのか、討議しておらないのか、このことをお伺いしたいと思うのです。
  93. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 私どもとしては、基準単収は現在一・七ミリで一等米から三等米に該当することになるわけでございますので、一・七ミリのままで特に不都合はないというふうに存じております。  それから、農家との関係で御損をかけておるかどうかという問題につきましても、あらゆる要素について全部一・七で統一してやっておれば、損得という問題は起こらないというふうに思っております。
  94. 中川利三郎

    中川(利)委員 後ほどまた改めて舞台を移してやります。終わります。
  95. 瓦力

    瓦委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  96. 瓦力

    瓦委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  農業共済保険特別会計における農作物共済及び畑作物共済に係る再保険金支払財源不足に充てみための一般会計からする繰入金に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  97. 瓦力

    瓦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 瓦力

    瓦委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  99. 瓦力

    瓦委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ————◇—————     午後四時六分開議
  100. 瓦力

    瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  101. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣に一般的な所見を伺いたいと思います。  その前に一つだけ正確に確かめておきたいのですが、先ほど本会議質問中に我が党の渋沢議員に対する総理の御答弁の中で、財源確保、減税財源問題については与野党間の話もありのような答弁がございまして、若干混乱をいたしたわけであります。何か今回の増税法案についても、野党も共同の責任を持っているかのようなニュアンスに受けとめられるわけでありまして、私どもとしては極めて心外であります。正確に経過をたどってみましても、減税問題についての五党幹事長・書記長会談のさまざまの確認、あるいはまた最終的な昨年九月九日の五党幹事長会談、そこにおける当時二階堂幹事長の回答とか、あるいは、これは大蔵大臣誤解なんだろうと思うのですが、五十七年の当委員会に設置をされました減税問題に関する特別小委員会のことも触れられました。後で総理から別途言い直しがございましたが、あの五十七年の当委員会における特別小委員会で長期間議論をいたしましたその報告書を見ましても、財源策については遺憾ながら意見の一致を見るに至らないということで、打ち切りの報告を福田議長にまで提出をしているという経過になっているわけであります。  私は思うのですが、大蔵委員会税制に対する専門の委員会ですから、小委員会であろうと本委員会であろうと真剣率直な議論を闘わす、国民生活や国の財政の将来を真剣に考えて議論をする。当然のことでありますし、またそういう趣旨で特別小委員会の御議論もあったというふうに、私は振り返って思っているわけでありまして、何かそういう真剣に議論をした経過が、政府が提出をする増税法案の言いわけの一つ、てこに使われるみたいなことでは、委員会の今後のプロダクティブな議論も進まないというふうにも思います。総理から訂正の御発言がございましたが、大臣からそれについて承っておきたいと思います。
  102. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私もかなり気をつけて、それから従来の文章を読みながら申し上げました。  私が、減税小委員会ができました当時の幹事長代理であります。したがって、その経過を見てみますと、五十七年の三月七日にいわゆる「議長見解」が出されて「大蔵委員会に小委員会を設置し、中長期的な観点に立って、所得減税を行う場合における税制の改正並びに適切な財源等について検討を行うこと。」ということ。それを受けて、それからは、中身の問題は非公式な会談でございますので、一切いわゆる公式な席で申し上げないということになっておりますが、それを集約されて山中小委員長名で福田議長に十一月十九日、赤字公債によらないことで意見の一致を見た、しかし議論をしたが財源は見つからなかったということ。それからそれを受けまして、今度は十二月の二十四日に村山小委員長から福田議長あてに、種々の財源対策と税目を対象に真剣な議論をやりました、しかし意見の一致を見るに至りませんでしたという正式な報告書がございます。  それから今度、五十八年の三月一日に幹事長・書記長会談が行われまして、そのときに、減税問題と人勧問題とあわせてでございますが、継続的に協議を行う、こういう見解がありまして、それを受けまして今度三月二日に予算委員会で官房長官から、景気浮揚に役立つ相当規模の減税を実施するための財源を確保して、所得税、住民税の減税についての法律案を今国会中に提出するとの確約があったことを承知しておるという裏打ちを行ったわけでございます。そのほかもう一つ参議院の予算委員長見解がございますが、それは別といたします。  それから、きょう私も正確に申し上げましたのは、九月九日の五党幹事長・書記長会談回答事項というのがございまして、これには十月下旬に提出させるということと、それから景気浮揚に役立つ大幅規模とするということと、実施は年内とするという二階堂進サイン、こういうのがございます。少なくともこの九月九日には「財源」という字はありません。私は後から行って、財源という字は入れたかと言ったら、忘れたとこうおっしゃっておりましたので、間に合いませんでした、私の側から申しますならば。全くこれはそういうことはございません。  で、きょうお答えいたしましたのは、要するに流れの中でその後大蔵委員会あるいは参議院の予算委員会等において、各党から俗に言う不公平税制の是正をも含めた各種の提案もあっております。これは熱心な前向きの議論でございます。そういう流れを受けて財源問題というものに対応をしてきた。しかし、最終的には政府の責任で財源問題はやるべきだ。確たる申し合わせではなかったわけでございますが、政府の責任においてやらなきゃならぬということになると、従来の経過から見て赤字公債だけは避けようということで種々考えた結果、きょう提案理由の御説明を申し上げました物品税、酒税、そしてまた法人税等々の問題を、減税額に見合う財源として今日御審議いただいておるという経過になるわけでございます。  したがいまして、きょうの答弁は、最終的に総理が、大蔵大臣が申したようにという前提で再答弁がございましたことによって大体整理されたんじゃないか。ただし、いささか喧騒の間でございましたので、各人各人によって耳のぐあい——耳のぐあいというのは別に耳が悪いという意味じゃございませんが、喧騒の間でございましたので、皆さんが正確にこの文章どおり受けとめておられない嫌いもあるんじゃないか。したがって、今私が正確に経過から申し上げたということであります。
  103. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は言葉の端々を云々するつもりはありません。ただ、こういう大事なときに我が大蔵委員会では、やはり日本の将来を考えて率直な、また真剣な議論を大いにやらなくちゃならぬ。その結果合意をすることもあるかもしれませんが、それはその場合。それから政府の責任だとする場合は政府の責任。また、政府を代表する官房長官の御発言と書記長・幹事長会談という政党レベルの合意とごっちゃになることのないように、大いにフェアな議論を闘わしながら、政治家としてフェアな対応をしていく、これをお願いしたいと思います。  幾つかお伺いしたいのですが、そのまず一つは、財政改革財政再建、それを進めるに当たっての基本的な考え方を伺いたいわけであります。  どういうことかといいますと、昨年の国会にも「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」という文書が出されております。今度も大蔵省から「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」が出されております。昨年の記憶をたぐりながらことしの分を読んでみたわけでありますが、非常に奇異に感ずる点がまず一つあるわけでございます。  どういうことかといいますと、昨年のこの文章の中には、財政再建ではない、財政改革である、そういう意味合いを前提に込めながら、財政改革を進める基本的な考え方として「新たな時代に適合した財政とするようその改革を図り、」さまざまの作業を進めていくんだということが書いてあります。単なる収支論ではなくて、新しい時代に適合した財政をどう構図をつくっていくのか、そういう財政改革論、私は考え方は賛成であります。ところが、ことしの文章を見てみますと、そういうところは一つもありません。最初から収支論が書いてございます。  もうちょっと関連をいたしまして、きょうこの「ファイナンス」の二月号が配られております。巻頭に大臣の文章が書いてございます。昨年も同じようなことがございました。考えてみますと、たしか昨年の場合には「「勇気」と「希望」をもって」というようなタイトルで「財政再建は、単に「赤字をなくす」といった消極的なものではなく、より積極的に将来の日本の発展の基礎を築くものでなければならないと考える」。大変御立派な考え方が述べられておりました。ことしの大蔵大臣の年頭のあいさつを読んでみますと、「財政改革」「行政改革」「財政中期展望」などなど、幾つかの項目が書いてございますが、それに対応するような勇気のあるといいますか、将来社会を展望した大蔵大臣としての気概と申しますか、余りございませんで、大変ニュアンスを含めて書いてあるのは、「日本の国に生まれ育ってよかったなとか、そういうほのぼのとした幸せ感を感ずるようなことを念頭に描いた場合、」「財政の受け持つ役割りというものも、まず自助努力」というようなことが書いてあるのですね。  「「勇気」と「希望」をもって」という大臣からほのぼの大臣に変わっちゃったのか、あるいは財政の受け持つ役割りは、まず自助努力というんですから、財政では面倒見れないから自分のことは自分でやりなさいというふうにお考えが変わったのか。私はある種の共鳴を去年の場合には感じたわけでありますが、ことし大臣の年頭の職員に与えられた訓示、それから公式に出されました基本的な考え方、これを見ましても、何か大事なことを去年ちょっと考えられていたのに、ことしは欠落をしているというふうな気がしてなりません。私は、基本的な財政の将来を考える場合に大事な哲学だと思いますので、その後大臣、去年よりはえらくトーンダウンしたんですか、そうでないんですか。いかがでしょう。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、一つは、昨年「財政再建」という言葉が中曽根内閣になって「財政改革」という言葉になってきた、そのことは、財政再建と言えば、今いみじくもおっしゃった赤字を解消するとかいうこと、究極的に言えば、財政の経済に対する対応力を回復するということだと思うのでございますが、それに対してはまさに勇気を持って当たらなければならぬ。それが一つの経過の中に、今度いささか自己評価いたしましたのは、「内なる改革」という、いささかきざっぼい言葉でございますが、そういう空気が醸成されてきたのではないか。すなわち、相当な、ある種の蛮勇を持って、いわば指名手配的に、各省に存在する予算一つ一つ大蔵省が査定していくというような考え方でもって当たらなければならないと思いつつも、それは余り適当ではないという考え方も幾らかありました。しかし、結果として見ますと、厳しいシーリング。考えてみますと、五十五年度予算がそれまでおおむね一八%弱の伸び率を示しておるのを、プラス一〇%のシーリング枠、それから五十六年がプラス七・五%、それから〇%、マイナス五、マイナス一〇、こうなったわけですから、そういう厳しいシーリングの中で、言ってみれば原局の方が一生懸命努力して予算編成に当たられるようになった。それがいわば制度改革に結びついたゆえんのものであるということになれば、これは外からの圧力というよりも、むしろ内なる改革というものがいささかでも進んできた傾向にあるではないかという認識に立ちますと、その内なる改革に対して、財政当局というのはどういうふうな姿で調和をとりながら対応した方がいいかということ、去年考えておった指名手配的に何でもかんでも取り上げてというよりも、自発的な内なる改革にどう財政当局が調和していくかというのがこれからのあり方ではないかという基本的な考え方を持っておりました。  それと、一つは、選挙がございますと、演説しますとほのぼのとした演説をしますので、どうしてもほのぼの調が出たのかなというふうに感じておるわけでございます。しかし、財政当局としてはまさに勇気とそして将来への希望を持ちつつも、ただ、内なる改革という芽がせっかく開きつつある今日、それを助長するような姿で対応していくべきではないかという考え方を、今年度予算を編成しつつ、つくづくと感じましたので、あえてそういう御批判も当たるのではなかろうかと思っております。  それからいま一つは、おれについてこいというような時代は大体過ぎ去ったのではないか。私を除き、世界一民度の高い国民でございますから、そういう最大公約数がどこにあるかという調和点を求めるのが、むしろ新しい意味におけるリーダーシップではないかという一つ考え方を持っておることも事実でございます。
  105. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 昨年、ことしの連続したものがどうなのかよくわかりませんが、もうちょっと具体的に伺いましょう。  財政の将来を考える改革といいましょうか、再建といいましょうか、去年の「基本的考え方」の文章にもございましたが、これからの社会は大きく変わります。産業構造も変わります、税負担その他いろいろな面を含めて変わらなければならないと思いますし、あるいはまた社会的ニーズも大きく変化します。そういう中で財政の役割を一体どう構築するのかという視点なしには、収支論、収支改善論を幾らやっても構造は変わらないと私も思うわけでございまして、どう具体化をされるのかということになるわけであります。  例えばでありますが、六種類の仮定試算が出されております。こういうものの計算というのは、一定の仮定試算を置いて、そして何種類か計算をするわけですから、そう難しくなくできるものだと私は思います。この場合にはこうなりますよと言うことはできると思います。また、視点を変えて、予算委員会でも、我が党の武藤議員から、二十一世紀初頭を展望したさまざまな試算もして議論をされました。私どもも、それとは違ったさまざまの議論も、モデルをどう描くのかということも勉強しているわけであります。  そういうことをやってみますと、いろいろなモデルをどう描くかという試算などをいたしておりますと、大蔵省が出した出し方というものは、要するに増税追い込み論ですね。これだけ足りません、これだけ足りませんということを今までもう三年、四年とやってきました。結局負担の増大は避けられないという形に追い込んでいく。財政税制の民主化とか、財政構造の民主化とか、将来社会への適応とか、そういうことは鮮明な形で出されたことがない、そういうことを感ずるわけでありまして、各種委員会のいろいろな議論もございますけれども、これから法案審議にも入っていくわけでありますが、少なくとも我が大蔵委員会は、担当のところでありますから、本音の議論をしなければならぬと思います。今日、こういう時代になっても、本音の問答があり、そしてまた、本音でこの事態をどう乗り切るかという気迫がなかったら、これは国家的不幸という問題ではないだろうかというふうな気がするわけであります。  そういうことを考えてみますと、先ほどの本会議でも幾つか質問がございましたが、今後の税財政展望をどう考えるのか、予算委員会からきょうの本会議まで拾ってみますと、中曽根総理は「増税なき財政再建」を堅持と、きょうも言われています。しかし、非常に厳しいということも言われております。竹下大臣は、削減だけではできません、非常に困難な事態です、というような意味合いのことも言われております。渡辺幹事長代理は、大蔵大臣を二回なさった経験者ですが、何か来年からは増税しなければならぬ、早速その議論を始めようというふうな提唱をなさっておるようであります。また、同じく元大蔵大臣の村山達雄さんのところで、一切の今までの条件とか拘束なしに、財政再建のフリーな議論を党内でするようにというふうな動きもあるやに報道で聞いております。また、企画庁長官の河本さんは、御承知のとおり、「エコノミスト」の論文その他を読ましていただき、国会答弁も伺いましたが、積極経済、そして削減コースで財政の将来が何とかなるとは思えない、減税についても四兆円規模というふうな発想を言われているわけであります。これも自民党の中では、同調する意見の方もいらっしゃるようでありますが、多数ではないようです。しかし、今や削減コースだけで財政再建ができるという考え方を持たれる人は、本音の立場で言えば、ほぼないのじゃないか。そういうばらばらな意見政府のしかるべき責任者からそれぞれ言われているというわけであります。しかし、その面の一番専門の責任者は大蔵大臣だろうと思いますが、どういう方向に、何を、率直に本音で国民に語ろうとするのか、それが大事ではないだろうか。  というような思いをしながら、先ほどの年頭訓示の文章の後ろの方を読んでいましたら、「私、竹下登が将来、政権担当者を仮にもし目指すならば、皆さん方のそういう知恵を土台にして、大きく論文を発表してやろうというような、」云々とございました。ニューリーダー大蔵大臣ですから、それくらいの気概を持たれるのは当たり前だと思いますが、そういう気概を込めて言われるとすれば、五種類も六種類も自民党・政府の責任者が言われるという中で、一番担当の大事な責任を持たれる方としては、本音の議論としてどう思われるでしょうか。
  106. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、年頭のところで、政権担当のときに大きく言ってやろうというほどおこがましい人間ではございませんと、こう申したわけでありまして、あれは非常に否定的に申したつもりでございます。あのころいろいろ議論されておりましたから、そういう発言が翌日の新聞記事でどうなるかということを予測しながら、これはこの際明確に否定しておいた方がいいと思って、事ほどさようにおこがましい考えは持っておりませんということを申し上げてから申したわけでございます。  それはそれといたしまして、本音の議論ということは、まさに歳入委員会でございますから、それらの本音の議論がなされて結構だというよりも、それが当然のことであろうと思っております。私も、おととしになりますか、就任していろいろ考えましたのは、一つは、例の「新経済社会七カ年計画」で二六カ二分の一という租税負担率を定めて、その下敷きになっておるものは、いわゆる一般消費税(仮称一というようなものが下敷きにあったからあれが出し得たのかな、こう思いました。しかし、その際、その考え方国会決議等をもって否定されて、そうして新たなる八〇年代の「展望と指針」を経済審議会で出されるということになると、あの七カ年計画の反省からして、そのようなあらかじめリジッドなものを出すということは、ある意味においては国際的な同時不況というようなものがあったという弁解はできるにしても、かえって国民に政治不信みたいなものを与えるのじゃないかということから、そういう中期展望は、まさに数字といえばいつでも申しますように、「七、六、五抜きの四、三、二、こという数字以外は余りないようなものに変わってきた。それを受けて、さればそれの経済全体の一部である財政というものもなおのこと、固定的な、定量的な考えを示すことは非常に難しい。さようしからば、政府として出すときには非常に責任もございますから、いろんな仮定のもとに立った資料を提出して、それを我々も財政再建の将来の手がかりとして、そして御審議いただく先生方にも審議をするための手がかりとして、その中で本音の議論がいろいろ交わされる中で、おのずから国民の合意というものが那辺にあるかということを見出すという方法が、遠回りのようで一番近いじゃないか、こういう考え方に立ったわけであります。したがって、そういう考え方に立って中期展望なり仮定計算なりをお出ししながら、国会の問答等を通じてある種のコンセンサスを得ていくことがやはり最も適切ではないか、こういう考え方に立っておることは事実であります。したがって、このモデルの描き方等も前提条件によって皆違ってまいりますけれども、ああして武藤さんからも出していただいたり、これから恐らく先生方、こういう前提のもとにひとつ試算をつくってみると言われたら、大蔵省全体でお手伝いしてつくろうじゃないか。そういうものをみんなが持っておる間に、議論の中におのずからなるコンセンサスができてくるというのが一番早道だ、こういう感じになっておることは事実であります。  ただ、それにしても、おまえの言うこと、総理の言うこと、前大臣の言うこと、村山さんはまだ言っておりませんけれども、あるいは河本さん、それぞれニュアンスの相違があるじゃないか。人それぞれ確かにニュアンスの相違はございますが、これもある意味においていろんな考え方を出し合った中にコンセンサスを得ようという、いかにも自由民主党的な風景だな、こういうような感じも持っております。これは本音の、本当に素直な感じを申し上げたわけであります。
  107. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 前から引っ張っていく時代じゃないということを大臣は言われております。それなりの一つ考え方でもあろうと思いますが、しかし多くの国民あるいはマスコミの予算その他についての論評、数々の専門家の発言などを聞いておりますと、じれったい思いという形の方が多いのじゃないだろうか。そして、何か信頼性がある方向を真剣に模索している。これはもう政府は一国民じゃないですから、そういう気迫が欲しいという声が私は多数の声ではないだろうかというふうな気がいたします。そういう意味では、次の時代を担われるニューリーダーらしい積極性を欲しいというふうな気もいたします。  もう一歩突っ込んで、ちょっと三つの設問をします。  一つは、この六十五年をゴールにした仮定試算、そのベースは八〇年代経済展望指針ということになっているわけでありまして、これは政府として確認をした一つの経済政策全体のペーパーだから、となるでありましょう。それから、さっき申し上げたような総理、大蔵大臣などなど、各般の御発言を伺っても、そこに確信を持っている、昭和六十五年までにやるんだ、やれるんだというふうな姿勢を持った御発言は、総理を初めどの大臣にもないという感じで受け取らざるを得ない。そうなりますと、なぜ六十五年なのか。六十五年というものがたまたま一つのベースとして政府の文書に、ペーパーにあるからそうだというだけでは、財政の、あるいは経済の将来責任を持った姿ではないのではないか。なぜ六十五年かという、そういう単に経企庁が中心になってまとめたここにあるからというのではなくて、もっと現実、本音で対応できる、取り組みをするという発想があるのが当然ではないだろうかと思います。いかがでしょうか。それが一つです。  それから、今も大臣言われましたが、二つ目の設問は、六種類の仮定試算が出されています。私は、大臣もおっしゃいましたが、いろいろなモデルが描けるだろうと思います。多様なモデルを描いて、そこでこれからの国民生活にとって日本経済、どれが望ましいのかという選択をする、そういう議論を私はしなければならないと思います。政府の側がそれに消極的であってはならないと思います。  御承知だと思いますが、私ども社会党も財政再建財政改革、これらについては、六十五年ではなくて十五年タームの一つの姿を提起をいたしております。今までは、例えば五十九年までに赤字国債を脱却をしますか、政府は責任を持ちますか、総理大臣は責任を持ちますかと追及したんですが、ニュー社会党でありまして、現実日本の将来を我々はこう構想するということで出しているわけであります。第一段階、五年間のうちに依存率二〇%まで、これは現実可能だろうと思います。その後五年間さまざまな改革をする中で一〇%まで、それから五年以後なるべく早い時期に一つの構図に持っていく、節目、節目を置きながらそういう構図を描いていきたい。しかも基本的立場大蔵省がとっているような、あるいは臨調路線で言っているような第一財政再建、削減コース、デフレの危険性ではなくて、第一国民生活、第二日本経済、その結果として第三に財政改革がなされるという発想が必要ではないか。武藤議員が出された一つの試算表もそうでありますが、そういう観点から学者の中でも出ておりますし、私ども平和経済国民会議とか、勉強しているところでもやっておりますし、私どももさまぎまの計数を入れて将来図を考えてみるわけであります。  そういう問題について、やはり多面的なさまざまのモデルというものを考えて、大蔵省が出しているビジョンの思想がなくなった、これだけをベースにしてくださいというのじゃなくて、やはりそういう議論政府の方も積極的に考えて、今後将来社会に向けて英知を結集する、この難局を乗り切っていくという発想を持たれるべきではないか。二つ目の設問であります。  まとめて恐縮ですが、もう一つ。最近ちょっと心配なんですが、前から、予算委員会議論が始まって数日したあたりから急ピッチで増税キャンペーンが始まっているといいますか、そんな懸念がしてならないわけであります。例えば渡辺幹事長代理の発言、それから大蔵大臣のニュアンスその他、新聞の見出しにもそう書いてあります。しかもその中身を見ますと、総理の答弁の中でも、政府税調も自民党税調も、四月からさまざまの検討をする、その中心はグリーンカード、利子配当課税となるわけでありますが、そういうものと兼ね合わせてやっていきたい。そういたしますと、予算成立直後四月から、もう国会でさまざまな議論をされたこととは別にと言ってはなんですが、国会はここで乗り切っておいて、その直後から猛然と始めていくような、そして政府税調が出している課税ベースの広い間接税というものをどう具体化するのかというふうなことに何か随分急いで入っていく。またそれがないと、ことしの七月ごろに来年の数字が組めないという気持ちがあるのかもしれませんが、そんなことを最近の論議を見ながら懸念をするわけでありますが、簡単にそのお考えを伺いたいと思います。
  108. 竹下登

    竹下国務大臣 まず第一の設問でございますが、六十五年、これは確かに経済の中期展望というものから見まして、やはりそれを受けた形で六十五年というものを描いて設定したということに結論はなると思っております。ただ、理論的根拠が全くないわけじゃもちろんございません。現行の制度施策を前提とした場合の一般歳出の伸びが六十年度で五・一%、それに予備枠というものをとって六・六%となっております。したがって、いわば自然体における一般歳出の増加圧力が極めて強いということが中期展望には示されておるわけでございます。財政の対応力を回復するということになりますと、財政の対応力を回復することによって国民生活の安定向上を図るということが緊急な課題である。財政の努力目標としては、そういう意味において六十五年度というのはやっぱり適切な一つの設定ではないかと思っております。  ただ、これについて、六十五年に脱却できなかったら政治責任をとりますとかいうような表現をしておりませんことも御指摘のとおりでございます。困難な問題であるが全力を尽くして取り組みますと申しておりますのは、やはり第二次——第一次もさることながら、特に第二次石油危機というものから来る余りに大きなそういう見通しとの乖離というものは、先ほども申しました、国民に不信を抱かすことの一つにもなるし、また、なお予見しがたい問題が特に国際経済社会の中に存在しておるという認識を持てば、私が、六十五年に脱却できなかったら大蔵大臣をやめますと言うのは、これは簡単なことでございます。これは政権がそのとき野党政権、今日の野党の皆さん方の政権になっておるのかどうか別として、それは簡単なことでございますけれども、やはりそういう不透明さ、流動性から来て、政治生命をかけますとかいう表現は、私も積極的に使っていないということを率直に認めます、これは。  それから二番目の、多様なモデルの中から選択するという考え方で、特に日本社会党におかれて、いわゆる五、五、五のことで一つのモデルが示されておりますが、私も読ましていただいて、それにどういう方法で取り組むかということについては、おのずから議論の過程において若干の差は出てくるかもしれませんが、しかし、傾聴すべき一つのモデルだと思って、参考にさしていただかなきゃならぬと思います。ただ、強いて言うならば、いささか六十五年よりも緩やかでございますので、その緩やかということが、例えば今度のレーガンさんの一般教書等々をめぐるいろいろな議論の中にもありますように、あそこはまあ国会の圧力が歳出削減をなかなかさせ切らなかったということもございましょうけれども、緩やかな問題がかえって一層のいわば財政赤字の累増というようなものをもたらして、中期的に見て大きな負担になるという情勢にもなってはいかぬなという気持ちはございますが、参考にさしていただけるモデルであると考えております。  それから次の増税キャンペーンじゃないかという議論でございますが、税制調査会の答申を、いつも答弁する際には正確にまず読み上げまして、どちらかといえばそれをもって答弁にかえているような感じがございます。したがって、税調で税というものは絶えず見直しをしていけと言いますと、考え方の中に「初めに増税への恐怖ありき」という状態の中で、それが増税志向オンリーにとられるように聞こえないように、私どもも言葉の使い方なども配慮しなきゃならぬなと、伊藤さんに指摘を受けると同じように、マスコミ等からも指摘を受けるたびにそのようなことを考えております。ただ、歳出削減とあわせて歳入面の合理化、適正化も考えなきゃいかぬということだけを平たく申し上げる際に引用する税調答申等の言葉を余り大きな声でやりますと、そっちの方へとかくニュアンスとして受け取られがちなことに対する反省は、絶えずしていかなきゃいかぬなと思っております。
  109. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大変慎重な御姿勢というふうに受け取るわけでありますが、さっき申し上げたように、こういう状態になりますと、いよいよのっぴきならないところまで来た。これ以上の削減コースで、試算ではゼロ%の場合がございますけれども、そんなことは現実的にもあり得ないというふうな認識が多いのではないだろうか。そういうのっぴきならないところまで来た。それではどうするか、何かもっと指導性——強力な指導性とまでは言いませんけれども、また大臣も井上準之助、高橋是清などという名大臣の当時とは時代が違うんだということを前に伺ったことがございましたが、それは時代観でございましょう。それにしてもやはり一つのリーダーシップは発揮してもらいたいし、それがないのがまだるっこいというのが今日の時代ではないだろうかというふうな気がいたしますし、私は、そういう場合に、ごく簡単に社会党の五、五、五のことを申し上げましたが、その中身としては、あるべき行政改革内容の柱でなければなりませんし、それから私どもなりに中期の経済成長モデルというものは中期的な展望の中での福祉型成長として考えておりますが、経済成長のモデルを一体どういう手段で描けるのか、その場合の戦略的な中心になる産業部門をどう設定してどうするのかとか、そういう内容まで含めて、これは政府の場合もそうでしょうし、私どもの場合も勉強いたしているわけであります。  そういうことを目指しますと、今までしばらくの総理、大蔵大臣の中でも、私ども立場は違いますけれども、それなりに非常に勉強され、また、そういう問題意識を持っておられたのは大平さんですね。亡くなられた後にあのプロジェクトの作業が完成して読ましていただいておりますが、やはり将来社会への展望、その中での社会システムの転換も含め、さまざまの展望をするということが実はあったわけでありまして、私はそういうものを考えますと、何かそういうものを議論するためにもひとつシステムチェンジの発想がないといかぬじゃないだろうか。まだるっこいと申し上げましたが、国民の目から見ればそのとおりなんで、例えば財政再建改革か、こういうことについても、予算ができた後、主計局の一部のパートのところで試算表がこういうものをおつくりになるとかなっているだろうと思いますが、私はやはり、これだけの難局ですから、本来ならば総理が中心になって内閣の責任で、主要経済関係閣僚会議をしょっちゅう開いているのですから、半年なら半年かけて責任ある議論をみっちりやり、そのもとで数々のモデル、数々の議論その他を自由濶達にやってみるとか、それをやらないと国民からは不信感が強まるばかりじゃないでしょうか。ですから、今の財政審の作業とか方々がいい、悪いではありません。そういう時代じゃないだろうか、そういう発想を持たなければ政治の責任にはこたえられないんじゃないだろうかという気がいたします。  また片面、政府税調に私は非常に不満であります。今の人事、会長その他を延長されました。こういう時代ですから、私はやはり、今の方々が立派であるかどうかという議論をするつもりではありませんで、それぞれ立派な方でありますけれども、今の時代にふさわしい人材、ふさわしい構成——そして活動を見ましても、何か諮問事項に対して総理大臣にリポートを持っていくということだけが写真に出ます。さまざまな議論をして、そしてまた密室の議論ですから国民にはわからない。それを総理大臣にリポートを届けに行く、それだけでいいんだろうか。国民に語り、国民とともに考えるという姿勢がなかったら、税に対する信頼は生まれないでありましょうし、税の基本は、言うまでもなく、これは国民の信頼にあるわけでありまして、やはりそういう積極的なものが必要ではないだろうか、そこに向けて脱皮する姿勢、またシステムチェンジの姿勢をぜひとも今持つべきではないだろうかと私は思うわけでありますが、いかがでございますか。
  110. 竹下登

    竹下国務大臣 党で村山さんにお願いしてというお話、私もまだ正確に聞いておりませんが、やはり今伊藤さんのおっしゃったような問題、税に限らずいろいろ議論してくれぬか、こういうことを政調会長がおつしゃっておるではないかなというふうに私は思っておりますが、これはまだ、時間もございませんので、正確にお聞きしたというわけではございません。  私どもも、税調一つとってみましても、三年に一遍とにかく国税、地方税のあり方についてという大諮問をして、そうして国会議論等をお伝えして議論を進めていただく。部会を設けたり小委員会を設けたり。それが、普通の場合、間々その年度予算編成に際しての答申をいただくと開店休業になる嫌いがある。したがって、たまたまグリーンカード問題からする利子配当課税等の問題もございますので、やはり中長期的というか、短中期的という言葉も最近使ってみておりますが、議論をしてもらった方がいいなと私も思っております。  それをどこで議論した方が一番適切か。私ども公務員たる者は国民に対する奉仕者でございますから、したがって、国会等の議論、特に国会等から要請された作業あるいは提出した資料、そういうようなものが、ある意味において、議論を積み重ねていくためには一番国民次元に近い議論になるのじゃないかという感じも率直にいたします。したがって、まだるっこいような感じでございますが、「急がば回れ」で、それが一番現実的な手法ではないかなという考え方に立っておるわけであります。私どもといたしましても、なおこの国会等を通じていろいろな議論が行われ、そこにある種の実りが生じてまいりますものをよりフォローしながら、国民皆さん方と一緒に議論しながらも、可能なことならば半歩ぐらい前を進むような一つのものを描いていきたいな、こういう希望は私も持っております。
  111. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私ども大蔵委員の一人として今日の状況をいろいろと勉強いたしておりますと、在来型の延長線ではないさまざまの発想、さまざまの努力の仕方が今必要だという気がいたしてなりません。政府の方もそうでございましょう。それにこたえられるような、やはり国民が注目をするさまざまの実験、努力というものをしていただきたいと思います。また、議会でもこうやって、一人しかいない大蔵大臣にあっちでもこっちでも質問しているというだけではない、やはり議会人としてのさまざまな各党間の議論もあってしかるべきだろうという気がいたしますし、いろんな意味で従来型の延長線ではない、国民の心配を解消するような真剣なアプローチをしなくちゃならぬと思うわけでありまして、また今後いろんな議論の中でもお尋ねをしてまいりたいと思いますし、私どもも努力しなくちゃならぬというふうに思うところであります。  総括的な所見を伺う機会でございますし、時間もそうございませんから、あと二つ一緒に伺いたいと思います。  その二つとも本音ではっきり国民の前に言われた方がいいんじゃないかということなんですが、一つは、今回の減税の性格づけてあります。細かいことは、これから法案が提出をされてから議論いたしますが、さっき本会議大臣が読み上げられた文章の中にも、当時の二階堂幹事長のサインで、減税は景気浮揚に役立ち得る大幅規模とすると書かれております。しかし、だれが考えてみても景気浮揚に役立つという内容ではないわけであります。予算委員会の我が党の田邊書記長に対する大臣のその点についてのお答えも、何か持って回ったように、上手に逃げられておりますけれども、こういうことは率直にはっきり本音で言って、現在こうなんです、政府としてはこうしますということの言い方をやはりなさるべきではないだろうか。予算自体が景気に対して中立と言っているのですし、また減税、増税抱き合わせですから、どっちにしたって景気に役立つという理屈は出てこないわけでありまして、できませんでした、景気に役立つような大型のという中身は非常に困難ですというのが現実となりましたと。  それでは、次は何か。ささやかであっても、長年たまった不公平是正、不公平感を解消する。重税感というのは、これはまあいろいろありますから、せめて不公平感をまず解消する、それに取り組みますということになってくるのじゃないかと思うのですが、その不公平感の方にいたしましても、ちょっと計算をしてみますと、例えば所得税、法人税のこの二十年来、三十年来のウエートの置き方の変化などを見ましても、河本さんの四兆円をやらなければ公平感は出てこないというふうな気がいたしますし、あるいはまた平年度にすると、減税額の六五%ぐらいは大衆課税、法人税でいってしまうというふうな感じがいたします。しかも、そっちの財源の方は租税特別措置の方へいって、法人税の本格的な改正ではない。減税の方は恒久立法でしているが、財源法人税の手当ての方は、財界の抵抗が強かったのでしょうけれども、二年間。一体、後はどこで賄うのですか。法人税の方はもう二年間でやめるのですか。それから、数々大蔵省が話題としたものがございました。退職給与引当金の問題もそうでございますし、その他幾つか大蔵省が話題として提起した問題もございます。退職給与など、これらを今あるべき、本来望ましい水準にすれば、酒の値上げの三千五百、ちょうど大体三千か三千五百億ぐらいになると思います。何で酒の方を選んで、不公平税制の是正の方を選ばなかったのか。  いずれにいたしましても、総理の答弁その他もそうでありますが、極力努力をいたしました、本格的減税でありますなんて言っているのですけれども、やはり担当の大蔵大臣としては、率直に、今回の減税の性格はここまでしかできませんでしたがこういう意味合いでありますとか、そういうことはやはりわかるように言わぬと、ますます不安と疑問とが高まってしまって、税に対する不信感が拡大するのじゃないだろうかと思うわけであります。それが一つ。はっきり言っていただきたい。  もう一つは、防衛費のGNP一%論争がございました。それについての大蔵大臣としてのお考えを伺いたいのであります。  予算委員会で、私から申し上げるまでもなく、三木内閣の閣議決定の方針は守ってまいりますと言われました。その後、新しい歯どめも将来の問題として研究しなくちゃならぬということも総理は言われておりまして、どうもわからぬ話になるわけでありますが、しかし、それをどうするのかということはもう遠い将来の話ではないわけでありまして、もう間もなくやってくるわけであります。八月には人勧が出る。七月、早ければ六月の末か何かには六十年度のシーリングに入るわけでありましょう。もう目の前。予算が通ったらすぐその作業をしなくちゃならぬ。来年、再来年のことではないのです。さまざまな細かな、人勧のあれがどうなるか、防衛費はどこが削れるかとか、うちの田邊書記長が言った三つの選択になるわけでありまして、細かい点までは今は詰めません。しかし、大蔵大臣としてどう詰められるか。というのは、私は、大蔵大臣というのは本来軍縮論者であるべきところだろうと思います。NATOやその他を見ましても、NATOの防衛費の強化の義務、三%だ、四%だと決められますが、まじめに守っている国は余りないのじゃないかと思います。この間も西ドイツなんかへ行って聞いてみますと、何といったって国民生活と経済が第一ですよということを言われますね。ですから、防衛費の突出と言いますが、これは国内的にも他の費目に比較して突出をしているのです。それ以上に国際的に突出をしている。それが今日の状態ではないだろうかというふうな気がいたしますし、さっき申し上げた名大蔵大臣として歴史に残る井上さん、高橋さんとかそういう方々の場合でも、人生の最後の難問がそれでございましたけれども、デタントの傾向もやや強まっている、何となく生まれてきている。そういう中で我が日本は、世界経済のGNP構成一〇%以上を占める大きな影響力を持った国でありますし、あるいはノー・モア・ヒロシマ、ナガサキ、全世界に平和のアピールをするプライドといいますかビヘービアを持った一つの国であります。また皆さん方は軍事同盟とか西側同盟と言われますが、これはシチュエーションからいって、日本は東西南北全体の接点にある貴重な存在、そこから軍縮を説いていく。むしろ大蔵大臣は、結果論として防衛費突出に貢献されるのではなくて、そういう気概を持たれるのが今日の財政当局の国民に対するあるべき責任ではないだろうか。そういう意味合いも込めながら、もう遠い先ではありません、目の前何カ月か、何カ月というよりも三、四カ月後に一つの判断を迫られる。人勧やあるいは六十年度シーリングやその他生まれてくるところに、お考え、決意があれば事前の対応もあると思いますし、どういう姿勢財政当局の責任者としては対応されますか。  その二つをお伺いして、終わりたいと思います。
  112. 竹下登

    竹下国務大臣 ありがとうございました。  まず最初の問題でございますが、確かに景気論争というのが、景気浮揚に役立つという点において、私はお答えでも申し上げましたように、率直に言って若干生煮えじゃなかったかと思います。私の方は、どちらかといえば政府見通しにあります三・四%をより確実ならしめるというのが景気だ。一方、いやそういう成長率を見込むことそのものが低過ぎるのだ。こういうかなりの乖離というものが完全に埋められないままに時日が過ぎていったという意味において、生煮えじゃなかったかというふうに申し上げておるわけであります。しかし、私といたしましては、あのときの経済対策から見て、いわゆるインフレなき安定成長を期するという建前からすれば、当時の三・四%をより確実ならしむるということが景気論争の中心に置かるべき問題である、こういう理解の仕方でございましたが、素直に申し上げましたように、少し乖離があって、それを近づける議論は生煮えのままに終わったというふうに感じております。  したがって、今度は本格減税であるのかどうかということになりますと、やはりあのときの約束で、途中には若干荒っぽい議論もあります、課税最低限だけが主張されて、それが書き物になってみたりしたこともございますけれども、課税最低限というものがいじられて、そしていわば所得税の刻み自身がいじられたということは、本格改正であるという定義の範疇に入るではないかというふうに私は思っております。  そこで、今度は法人税の問題等について、追給とかそういう問題もメニューとして出しながら、結局ことしは見送ったじゃないか、こういう議論もございました。が、あの法人税というのにお願いして、それを二年の暫定措置としたということ、これは従来の経緯から見て二年というものが適当ではないか。今までも二年間やって単純延長して、その次は本則にしたりいろいろなことがございますが、この際はやはりそれが適当ではないかというふうに考えたわけであります。  酒税の場合は、私もささやかな酒造業者でございますが、三年間ほうっておきますと、言ってみれば従量税である限りにおいては、小売価格等が上がってまいりますと全体の税率は低くなっておりますので、それを取り戻していく必要はあるだろう。しかし、その取り戻しの中ででこぼこ調整をやって、その取り戻し分を少し上積み取り戻しをさせていただいておるという批判は、これは甘んじて受けなきゃならぬことだなと思っております。  それから物品税につきましては、かつての物品税考え方と、税調等でも指摘されておりますように変わってきておりますので、新しい製品が出た場合、それが担税力があるという判断をした場合にはそれを積極的に取り入れていくという従来からの方針の中で、わずかでありますがその方針で取り組ませていただいたということになるではないかと思います。ただ、素直に申し上げておりますように、いずれにしてもやむを得ざる措置として御理解をいただきたいということを絶えず申し上げておるわけであります。  それから、次の防衛の問題でございますが、これになりますと、この間総理が申しておりますように、一財政当局を預かる大蔵大臣が、それは見直しますと言えるものでもございません。総理から申しましたように、五十一年の三木内閣のときに決めました、当面一%を超えざることをめどとしてということを貫いて考えていかなきゃならぬ。その場合に、田邊書記長さんの質問というのは、三つの選択があるがどれをとるかというぎりぎりした詰め方をされますれば、いわば三つとも不確定要素でございますので、その時点においての経済、財政、あらゆる他の施策とのバランスを考えながら対応しなきゃならぬ課題であるというふうにお答えせざるを得ない。  それから、新しいめどの問題でございますが、これも財政当局者がうかつに言える問題ではないと思います。ただ、私どもとして今日反省してみると、あのめどというものがあったことが、財政当局の立場としては、毎年の予算編成の際大きな一つのよすがになったなあということだけは素直に言えるのじゃないかなと思っております。  大蔵大臣は元来軍縮志向であらねばならぬということでございますが、それは一%ということを考えれば、ことしの名目成長率五・九%なら、毎年名目成長率以内の伸び率にしておけば永遠に一%、こういうことにもなるわけでございますけれども、それは、主管の存するところがどこにあろうと、結果は政府、内閣一体の責任において予算を決めるわけでございますので、私が軍縮論者であるとかあるいはリベラリストであるとかないとかという議論は別として、これは一体として、ことしの予算を諸般の事情とのバランスを勘案しながら作成をいたしましたという責任を正面からお受けすべきであるというふうに考えております。
  113. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 終わります。(拍手)
  114. 瓦力

  115. 戸田菊雄

    戸田委員 いま同僚の伊藤委員が主として財政関係で質問してまいりました。私は、税制上の問題に力点を置いて若干の質問をしてまいりたいと思います。  本論に入る前に、前提として四点ほど伺っておきたいのでありますが、その第一は、今度の税制改正、これは結局増税増収によっているわけですね。それから、この増税増収は現行の制度の枠組みの中でということで専ら改正を進めてまいっている、こういうふうに理解をいたしておるのでありますが、その点が第一点。  それから第二点は、日本の税収の税目ごとの割合でありますが、所得税は主に四〇%、こう理解をしておるわけであります。ほかに間接税が三〇%、それから法人税関係がアバウトで三〇%。だから、結局今回の減税所得税四〇%の減税法人税アバウト三〇%と間接税の三〇%で負担をした、こういうことになると思うのでありますが、この辺の理解。  第三点。税調では、歳出の八〇%程度、これをいわゆる税収で賄うことが健全な財政だ、こういうことを指摘をされておるわけです。ところが、各年度見てまいりますると、一般税収依存率が五十五年は六〇%、五十六年度が同じく六〇%、五十七年度まで大体六〇%ですね。五十八年度が六四・一%、五十九年度が若干上がりましたけれども、現行六八・三%。しかし、税調が指針を示している内容とは一二%程度乖離がありますね。どういうことで今後埋めていく所存か。各般の中期試算等々いろいろ見てみました。確かにふえていってはおりますけれども、依存度についてはどうも埋め尽くすというようなことはなかなかできかねる、こういう状況になっているのじゃないかと思うのですが、この辺の見解はどう考えておるか。  それから第四点は、今次予算で税収を七・一%増収、こういうことで見込みを立てておりますが、これは見通しどおり大体いくのかいかないのか、この辺の見解が第四点でございます。等々についてまず質問をしてまいりたい。
  116. 竹下登

    竹下国務大臣 若干梅澤主税局長から補足してもらうことがあろうかと思いますが、大要を私から申し述べてみたいと思います。  確かに、現行の枠組み内の増税あるいは増収措置によって行いましたか、そのとおりですということを言うべきであると思います。だから、大きく租税負担を変更するような新たなる措置はとらなかったということに尽きるかな、こういう感じでございます。  それから、二番目の四〇、三〇、三〇アバウトの話でございますが、今度の場合、法人税の増税増収がございますので、間接税に手をつけておりますが、結果としては、今日の見通しては直間比率はむしろ直の方が若干ではございますが上がる、こういう傾向になろうかと思います。  それから、健全財政が仮に八〇%としたら、徐々に努力して近づけつつあるとはいえまだ六八プロくらいじゃないか。要するに、公債依存度が下がることによって租税の比率は上がってくるわけでございます。税外収入がそう一遍一遍大変取れるものでないといたしますならば。そうすると、その問題こそがまさに各種仮定計算等においてお示ししておるところ、どういう形でそれを減していくか、その要調整額をどう埋めていくかというのが、それこそ今日のような議論をしながら、最終的に国民の選択はどこにあるかということを見定めていかなければならぬ課題だというふうに思っております。  それから四番目の、税収七・一%見込んでいるが……。確かに個別税目の積み上げによりまして一応そういうことで見込むわけでございますが、これは歳出と違いまして、あくまでも見込みでございます。これも乱暴な言い方でございますけれども、去年あたりから申しておりますのは、一%は誤差のうちなんということを言っております。確かに今度の、きょう本院を通過さしていただいた補正予算を見ましても税収の減を立てておりますが、当初予算に対して、さあいまの段階では誤差のうちには入るではなかろうかという期待をしておるということでございますので、来年の問題も、一%は誤差のうちというようなことをよく言いますが、その問題は別といたしまして、世界景気の回復、国内景気の上昇等から考えれば、あの五十六年、五十七年のようなむちゃくちゃな歳入欠陥が出ることはなかろうというふうに思っております。  若干専門的なことがございますので、以上で一応私のお答えとします。
  117. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまの大臣の御答弁で御質問の点についてはほとんど尽きているかと思いますが、一、二補足することをお許し願いますと、先ほど委員が御指摘になりましたように、五十九年度の所得減税を中心といたします、税制改正によります税収減を何によって補てんするかということでございますが、これは現行税制の枠内でこれを処理せざるを得ないということになりますと、御指摘になりましたように、現行の我が国の税体系の税収構造の中でほぼ三割を占めております法人税、それから同じく三割を占めております間接税があるわけでございますが、ただ問題は、間接税のうち一割以上は特定財源なり関税のウエートが占めております。それからもう一つ、非常に細かい話になって恐縮でございますが、残余の税目の中で若干のウエートを占めております印紙税がございますが、これは五十六年に非常に大幅の税負担の引き上げをお願いいたしました。その結果、結局間接税の中では酒税と物品税、これがほぼ一割でございます。したがいまして、所得税を中心といたします減収財源のうち半分以上は現行税制の枠内で対処するとすれば法人税、企業課税に財源を求めざるを得なかった、結果としてそうならざるを得なかったということでございます。  それからもう一つ、税収見積もりでございますが、これも先ほど大臣答弁にもございましたように、本日衆議院でお認めを願いました補正予算で、五十八年の所得減税千五百億のほかに約二千六百億。これは石油関係諸税それから源泉所得税、これはどうしても減額を見込まざるを得ないということで補正減額をしたわけでございます。この点につきましては、いずれ決算期が参りますが、私ども何とかこの補正減額後の見積額を達成できるのではないかと考えておりますけれども、現在判明いたしております十二月末までの税収から見ますと、対前年の同期との比較で見ますと、補正後の私どもの見積もりよりも足取りはやや悪い感じでございます。したがいまして、今後五月末に入ってまいります三月決算、これがかなり期待できますので、恐らく何とか達成できるのではないかということでございます。  それから五十九年度の税収の見積もりでございますが、これも先ほど委員御指摘になりましたように、総額で三十四兆五千億程度の税収を見積もっておるわけでございますが、基本的な特徴といたしましては、久方ぶりに法人税の自然増収をかなり見込むことができるということでございまして、その結果、五十六年、五十七年、それから五十八年と、実体経済を反映いたしまして税収の伸びが非常に低調でございましたけれども、自然増収の伸び率なり現在の政府の経済見通しにおきますGNPの見積もり、伸びの予測値に対します弾性値等から総合判断いたしますと、五十九年度の、私どもが今予算で御審議願っております税収見積もりは、自然の勢いとしてはほぼ五十五年度に近いような勢いに回復してきておるというふうな感じで申し上げられるのではないかと考えております。
  118. 戸田菊雄

    戸田委員 それじゃ、漸次本論に入りまして質問をしてまいりたいと思いますが、第一点は、今回の減税は、率直に言って五十八年度予算の衆議院通過の際、議長裁定を実行する、こういうことだと思うのですね。当時各与野党間の幹事長・書記長会談等で、二階堂幹事長が景気浮揚に値する減税、こういうことを言われたと思うのですね。そういうことを言われて減税が出発をしたわけですから、当然景気浮揚に向けての減税対応ということになるのではないかと思うのですが、そのねらいは何でしょう。その点をまず伺っておきたいと思います。
  119. 竹下登

    竹下国務大臣 これが私もいろいろな機会に申し述べておるところでございますが、要するに当時の総体的な議論を振り返ってみますと、政府見通しの三・四%は危ないのではないかというような環境に基づいてのいろいろな議論が行われておったのではないか。したがって、私どもとしての基本的な考え方は、政府が見込んでおる三・四%をより確実ならしめるものが景気というものに対する認識だという考え方。それから一方では、大体高度経済成長になれておることもあるにしても、その三%台の景気などというものでもって国民が満足するわけはないじゃないか、もっと潜在勢力はあるという考え方に基づく考え方のギャップを、いろいろ議論して埋めないままに時間が過ぎ去って、結局三・四%をより確実ならしめるということが念頭に置かれて措置した減税ということになったのではないか。この議論は、本当のところぎりぎりこの乖離を埋める議論をしたかどうかということになりますと、お互いに選挙も近くなってもおりましたし、結局抽象的な議論が先行して具体的な議論はいささか生煮えであった。言葉が適切であるかどうかは別といたしまして、未熟であったとでも申しましょうか、生煮えの形で過ぎ去ったな、こういう印象は私も持っております。
  120. 戸田菊雄

    戸田委員 結局減税中身を見てみますると、国税で所得減税が八千七百億円、増税額が九千五百十億円、実質八百十億円の増税ですね。それから、政策減税分六百二十億円、これを差し引いてもなおかつ二百億円の純増税です。こういうことになっているのですね。だから、総体、大綱的に見まして、景気政策重視でいったと言っても、実質的にはこれは増税ですからね。そういうものは増税と減税のいわばセット方式で来ているわけですから、効果というものは全部相殺されてしまうんじゃないでしょうかね。
  121. 竹下登

    竹下国務大臣 この議論、確かにあるところでございます。私は所得減税というものがあり、そうして現在いろいろな指標を見ておりますと、景気の上昇がなだらかながら続きつつあるという前提の上に立った場合、設備投資の状況を見てみたり、それに伴う減税措置として投資減税等も行われ、そして金融はどちらかといえば緩んでおるという状態の中から見ますと、やはり私は今度の減税は景気に対して、いわゆるこれからの経済に好ましい影響を及ぼすものであろうというふうに考えております。仮にもしこれが赤字公債の増発等において行われておるとしたならば、それが金融市場における金利上昇の要因ともなりますので、かれこれ勘案してみますと、やはり好ましい影響を及ぼすことになるのではないかと思います。  それと、具体的な御指摘の問題の一つは、石油税の問題を加えますと確かに増の方が多いわけでございますが、これは特定財源ならいつでも上げてもいいかという議論につながるとは思いませんが、言ってみれば、原油価格の下落に伴う、まあ従価税でございますので、それの減収に対して将来の石油及び石油代替エネルギーの必要最小限のものに対する、財源が特定されたものとしての措置として、これを仮に除外していただくと、あとの問題は、今おっしゃった二百数十億の問題になります。これは一時的な増収措置でございまして、言ってみれば、中期的に見た場合においては、負担する側から見れば、差し引き増税になるものではない。  ただ繰り戻しの問題につきましては、これは私、説明が下手でございます。延納措置の問題というのは、これは説明が割に簡単でございますけれども、いわゆる繰り戻しの問題につきましては主税局長が上手に説明いたしますので、その方から説明をさすことにいたします。
  122. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま大臣から申し上げましたとおりでございますけれども、初年度ベースで申し上げますと、税収計算といたしまして、五十九年度所得減税、それからその他の政策減税を含めまして、トータルの減収額が九千三百二十億円でございます。私どもの、これはいろいろ論争に係る問題でもあるわけでございますけれども、実質的な税負担の引き上げを伴うものといたしまして法人税、酒税、物品税、これを合わせますと七千八百五十億円でございますので、なお千四百七十億円財源的に補てんする必要があるということで、法人税の延納措置、それから欠損金の繰り戻し還付制度適用の停止、それから社会保険診療報酬の源泉徴収税率、今五%の特例でございますが、これを本則の一〇%に引き上げるということでございまして、これらの措置を全部合わせますと一千四百五十億円、ほぼ減収財源と見合うということでございますが、ただいま申しました一千四百五十億円は、大臣答弁にもありましたように、実質的な税負担を伴うものではございませんで、いわば法人税の延納でございますと、納期が早まる、たまたま六十年度に所得すべき歳入が五十九年度に入ってくるというたぐいの問題でございます。社会保険診療報酬課税の源泉徴収税率についても同じでございます。  それから欠損金の繰り戻し還付の制度でございますが、これは若干技術的な説明になって恐縮でございますけれども、青色申告法人が当期に赤字が出ますと、二つ選択できることになっておるわけです。一つは、前年度黒字で法人税額を納めております場合に、当期、それを限度にいたしまして還付を受けるというやり方と、それからその赤字を向こう五年間繰り越しまして、後年度黒字が出てまいりましたときの法人税負担の軽減に向ける、どちらかの選択ができるということになっておるわけでございます。先進国の法人税制もほとんどいずれもの制度を認めておるわけでございますが、今回この制度を二年間停止させていただきましたのは、やはり先ほど申しました何らかの形で財源の補てんを必要とする、その場合に、なるべく実質的な税負担を伴わない措置としまして、法人税の延納制度の廃止とともにこの還付の制度を二年間停止をするということでございます。これは二年間の停止でございますけれども、先ほど申し上げましたように後年度五年間繰り越しができるわけでございますので、完全平年度という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、そういうふうに考えますと、ほとんど実質的には税負担を伴わないという措置でございます。したがいまして、私ども、この制度につきましては実質的な税負担を伴わないという意味で、法人税の延納制度の廃止と同じような考え方で処理させていただいてもいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ増減収見込み額で平年度六百億円と表示をさせていただいておりますのは、これは二年間の措置でございますので、仮にこれを六十年度の税収についてどういう反響があるかという観点に立ちますと、全額繰り越しということになりますと相殺されるわけでございますけれども、二年間の暫定措置として、六十年度の平年度といたしましてはその半分くらいが繰り越しによって減殺されるだろうという過去の計数に基づきまして、見込み額として六百億というふうに計上させていただいておりますけれども、本来各企業にとりましては、四年とか五年のタームで判断していただきますと、ほとんど実質的な税負担は伴わない措置であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  123. 戸田菊雄

    戸田委員 これはかって五十年度でございましたでしょうか、そういう措置をやったときがあるような気がするのでありますけれども、いずれにしても、今回法人税の基本税率を四二%から四三・三%、一・三%アップ、中小企業税率が三〇%から三一%、一%アップ等々で二年の期限つきとしているわけですね。これがまず一つけしからぬというのと、それから法人税の欠損繰り戻し、今説明を受けたもの、これも二年なんですね。ですから、結局減税がそのまま継続されていくわけですから、そうすると、二年後になって一体どういう処置をとるのか。大型間接税導入か、一般消費税導入か、こういうことを考えなければ、またこの減税の補てん策というものをどこかの法人なり物品税なり間接税等々何らかの形で操作していかなければ減税が継続できないわけでしょう。だから、この辺の見解を私は非常に奇異に感じているのですよ。それはもちろん財界のいろんなプレッシャーがあったかもしれませんよ。しれませんが、こういった税制改正は将来に禍根を残すと思いますね。この点が一つでございます。  それと、大体物品税に運動具の一部とかビデオ製品の一部、決してぜいたく品ではないだろうと思うのですね。そういう庶民生活の主要品目にまで、何といいますか大衆重課税へと課税ベースの範囲を今回ずっと広げておりますね。  東京国税局で最近いろいろ毛皮製品とかあるいは宝石類等々の問題について、私の記憶ですと三千有余点の税務調査をやって、その結果、脱税措置その他で十五億円見当徴収をしたということを知ったわけであります。その関係で国税局からちょっと資料をいただきました。貴石製品とか真珠製品とか貴金属、べっこうあるいは毛皮、じゅうたん等々は文字どおりぜいたく品に入るかと思いまするけれども、今回物品税のいわば課税範囲というものを拡大していった運動具の一部とかビデオ製品というものはどうでしょう。大衆消費品として数多く使われている、そういうものですから、こういうものに課税することは一体妥当かどうか、私はこれも非常に疑問に思っておるわけです。その辺は一体どうお考えでしょうか。
  124. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御指摘が二点あるかと思います。  まず第一点でございますが、今回の法人税率の引き上げ並びに欠損の繰り戻し還付制度を二年間の暫定措置とした理由ということでございますが、これは先ほど別の委員の御質問に対して大臣から御答弁申し上げたわけでございますので、私から繰り返して御説明を申し上げますと、法人税率につきましては、ただいまおっしゃいましたように、基本税率を一・三ポイント引き上げる、ただし中小法人等の軽減税率の引き上げについては一%の引き上げにとどめるということでございます。税制調査会等の議論におきましても、我が国の法人税の現在の実効税率を国際水準と比較いたしました場合に若干なお引き上げの余地はある。しかし、その場合も、国際競争力等の観点から考えて十分慎重に対処しなければならないという問題があるわけでございますが、今回の一・三%ポイントの引き上げは実効税率で見ますと五二・九二という数字になるわけでございます。これは、戦後一番法人税率の高かった昭和二十七年から二十九年、これが実効税率がちょうど五二・九〇でございます。それから近年、四十九年から五十年にかけまして例の会社臨時特別税が法人税に併課されたときがございますが、このときの実効税率が五二・七強というふうな水準でございますので、今回の一・三%ポイントの引き上げというのは、恐らく戦後我が国の法人実効税率が一番高くなったという水準になるわけでございます。もちろん諸外国でこれよりまだ高い国もございますけれども、そういう水準になったということも関連いたしまして、とりあえず二年間の暫定措置としてこれを今回はやらせていただく。二年後一体どうするのかということにつきましては、これは先ほど大臣からの答弁にもございましたように、二年後の財政事情なり経済の動向等を考えながら、改めてその時点で、税制全体の中で一体どういうふうにこの法人税率を扱うのかというふうな問題ではなかろうかということでございます。  それから物品税の問題でございますが、これも昨年十一月に政府税制調査会の答申がまとめられておりまして、基本的な考え方といたしましては、我が国の物品税はいわゆる個別消費税でございまして、なるべく生活必需品でない、それから遠い奢侈品とか高価な便益品とか趣味・娯楽品、そういうものに限定して課税していくという考え方で従来やってきたわけでございますけれども、最近時点におきましては所得水準が非常に上がっております、それから所得も平準化しておるという背景もございまして、消費も多様化しておるし均質化しておるということでございますので、往時のように高級な奢侈品それから大衆消費品というふうな区分がだんだん難しくなってきているという背景の中で、やはり今の時点での消費の実態を見ながら、課税物品の範囲を基本的には広げていくべきではないかという御示唆をいただいておるわけでございます。  ただ、五十九年度の税制改正におきまして新たに課税物品として取り上げさせていただきましたものは、従来課税されている物品、その後市場でいろんな商品が開発されまして新商品が出てまいります、それとのバランスから見て、当然新商品としてかけてもそうバランスが崩れないのではないかといったものに限定をさせていただいておるわけでございまして、ただいま委員の御指摘のありました例えばスポーツ用品ということでございますが、恐らく今回お願い申し上げております課税物品の中でサーフボードとか、それからハンググライダーとか、あの種のものを御指摘になっていると思いますが、例えばサーフボードというのは、今若者が随分あれでスポーツをやっておるわけでございますが、現在でも小型のモーターボートとかヨットのたぐいは、もう既に課税をさせていただいておるわけでございますので、その種の新しい物品が出てまいりました場合に、それとのバランスから考えて、今お願いしておるような物品は必ずしも従来の考え方から著しく離れたという意味では、私どもは考えてないわけでございます。ただ今後の問題として、例えば事務用品のようなものに課税範囲を広げてはどうかという議論が残っております。私どもは問題意識として持っておるわけでございますが、今回の物品税の改正においてはそこまではまだお願いをしていないわけでございます。
  125. 戸田菊雄

    戸田委員 いろいろ説明がありましたけれども、結局は取りやすいところから税金を取っていく、全体を見てどうもそういう印象が深いのです。まあいろいろ御努力はなされているのでしょうけれども、そういう印象が非常に深い。ですから、我々としてもこれから検討はいたしますけれども、そこで、今多くの国民皆さんは、まず不公平税制を直してくれないか、そういう中で今回の減税財源というものを何とか調達できないのだろうかというのが、私は国民の一番の関心事だと思うのですね。だから我が党は、この所得減税財源については明確に昨年も、五十八年度の予算組み替え動議というものを出しまして、でき得れば大企業法人税率をもう少し上げる余裕があるのじゃないか、今の増益、それから資産蓄積その他からいって大体上げでもいいのではないかという気がして、提起をいたしました。それから有価証券取引税の税率引き上げですね。そういったものはまだ捕捉がどうのこうのということを言っておりまするけれども、真剣に取り組めば、何とかもう少し前進をするような形になっていくのじゃないだろうか。あるいは給与所得控除の頭打ちの現行制度というものは廃止したらどうか。あるいは退職給与引当金等、あるいは貸倒準備金等、こういったものを総体的に洗い直して何とか率を下げるとか、こういうこともまだ残されているのではないだろうか。だから、こういった物品の課税ベースを広げる前に何かやることがあるのではないだろうか、いまの税制全体を見直しして。そういう点をもう少し私は検討していただきたいと思います。  それから、今回十九段階の税率刻みを十五段階にいたしました。最も悪いと思うのは、従前最低税率一〇%、これを一〇・五%と、〇・五%アップをしました。それから従前は六十万円以下ということだったのですが、今度は五十万円以下と、額も十万円下げちゃった。そういう状況ですね。これで増税が一千億です。予算委員会大蔵大臣等が答弁をなされておるとおりだ。それから最高税率は、今度逆に七五%を七〇%と五%下げた。これで大体百億円の減税でしょう。  ところが、大蔵省の民間給与の実態調査によりますと、年間一千万円超のサラリーマンは三十七万五千人しかいない。総体の一・一%ですよ。所得階層別に見てみますと、年収三百万円以下が五八%おります。三百万円超五百万円。以下が三〇%も、おります。大多数はいわゆる五百万円以下で、八八%を占める、こういう状況だと思うのです。かつて大臣は、その各階層ごと全体に今回の税率緩和、それから課税最低限の引き上げ等によって全部軽減措置をやりましたという話をされておりましたが、私が調べていきますとそうはなっていない、全然なってないですね。むしろ、ごく限られた高額者優遇、これは確かにあるかもしれません。しかし、その他はほとんどだめです。  例えば、これは政府減税効果モデル表というものを最初つくったのですが、社会保険料控除を五十二年度のまま据え置きましたし、それからベースアップを見込んでいない。そういうことのために再計算をやれとこう強く要請されたと思うのであります。それでやった各般のモデル結果を見ますと、年収五百万円で、国税、地方税合わせて九万四千四百円と当初政府減税になる額を言っておったが、再計算の結果四万六千八百円しかされておりません。それから、ことし春に仮に五%ペースアップになったということで仮定をいたしまして、いろいろ納税額を各階層ごとに調べてみましたが、それを見ますと、一番負担の重いのは前年収入が二百五十万円の独身者で、これが一万二千百二十円税金がふえますよ。納税額の減るのは、前年年収三百万円の標準世帯、六千九百四十円しか軽減されません。こういう状況です。あとは各階層とも全部一様に税金がふえてくる。これが今回の減税措置の実態なんですね。だから、こういう状況では、国民が要望するいわゆる負担の公平とか、あるいは何とかそういうものから不公平を直した上で税源調達をやってくれないかという要望は、全く内容的にはゼロだということになる。むしろマイナス。こういう格好になっていると思いますから、ぜひひとつ今後さらに来年度等に向けて、私たちの方もやりますが、この負担の公平、そういう部面からいって、やはり今のところ資本蓄積が非常に多くて、資産所得その他の問題について一回洗っていく必要があるのじゃないかという気がいたします。  そこで、三つほど提案するのでありますが、一つは最低税率の〇・五%、これは現行据え置きにいきませんか。六十万円一〇%、そして最上限の七五%、これも据え置き。そうするとこれで百億浮くでしょう。一千億のうち幾らか減収になりますから、それが百億でもって相殺をされるかどうか、それは私も計算してみなければわかりませんけれども、その辺の取り扱いを何とかやっていただけないかどうか、これが第一点であります。  それから第二点はパートの課税最低限ですが、現行、従来は七十九万円でありましたが、今回、九万円上がって八十八万円。これは恐らく、私が当たったところですから余り多く当たっていませんけれども、本問題については、当該パートの人たちは通勤手当をもらっておりませんね。結局、七十九万以内の収入の中で自分で出している。だから、これに対して月一方、年間十二万円、これを税金で見てもらうわけにいかないでしょうか。今例えば私ども地方で塩釜というところがあるのですが、主としてかまぼこその他の加工業が非常に多いのです。付近の農村地帯からパートをいっぱい頼んでくる。そうすると、だんなさんを持って扶養控除の対象になっている人は、七十九万をオーバーしたら休んでしまう。そうすると、事業主も困ってしまうのですね。雇用政策上、これはやっぱり困る。だからそういう問題を含めて、月一万円の通勤手当を税金で見てもらって、八十八万ですから、十二万円プラスすれば百万円、これに一体できないかどうか。現行の政府の案というものは、基礎控除を上げてきたから、この人的控除をやって、その結果、はね返りとして連動してこれは上がっていったわけでしょう。だからそういう面からいけば、この面の手当ては何とかやれないものか。確かに課税最低限全体を見ますと、独身者の課税最低限の改善、これは八十四万円ですから、それよりはちょっと上回るような状況ですけれども、これは私が調べたところでは、大体今六千三百万人の稼働人口の中でパートで働いている人がおおむね一千九百万人、そのうちの三三%が三十五歳以上の方です。いわゆる親離れ、子離れをしている、そういった人で働ける人はもうほとんど出ている。そうすると、おおむね六百万人くらいが三十五歳以上の方だ。だから、そういう状況の中で七十九万円で課税をされると、結局月平均にしまして六万五千円見当ですから、六万五千円を超すと扶養控除の対象から外され、二十九万吹っ飛ぶ。こういうことだったらだれも働きませんね、それなら遊んでおった方がいいわけですから。だから、そういう意味合いからいって、この問題について通勤手当として月当たり一万円税金で面倒を見る、こういうことはできないものでしょうか。大臣、どうでしょう。
  126. 竹下登

    竹下国務大臣 具体的な問題は主税局長からお答えを申し上げますが、今もろもろの御意見を交えての御質疑あるいは提案であったわけであります。  まず不公平税制の問題。これは確かに人それぞれによって主観的に非常に相違するところがございますが、引当金制度あるいは受取配当益金不算入制度とか、あるいは有価証券取引税の問題とか、あるいは法人税の累進税率導入の問題もおっしゃいました。これらについては今日までいろいろ議論した結果、いわゆる税法上不公平とは言えないもの、あるいは今後検討をすべき課題のもの、あるいは実施が現段階では不適当であるもの、いろいろ区分がございます。が、これについてはいずれ御議論をいただけることだと思います。  それから今の御提案でございますが、私どもが税調の答申を見ますと、要するに最低税率は大変に低い、それから最高税率は高い、簡単に言うとそういうことに着目をして、それをより平均して中堅層によくなるような、なだらかな累進構造にしていこう、今度こういうことでもろもろの作業を進めてまいりました。  それで、一〇・五というのは、これは私の考えは間違っておるかもしれませんが、要するに最初は一一とか一二とかを考えてみたのであります。ところがその場合に、基礎控除以外何もない人で、たまたま例示をとるのは非常に悪いのですけれども、ひとり者さんで屋台の夜泣きそばか何かやっている人、その個人そのものが実体面としては何人いらっしゃるかわかりませんが、一一である場合はやはり理論的に増税になる。それで何人も増税というのがないような方法はないかというのでいろいろ議論した結果が、一〇・五という半端な数字とでも申しましょうか、そういうふうになったわけであります。  それから最高税率の場合は、やはり私どもが基本的に考えなければいかぬのは、この自由主義経済下において一つのフィロソフィーとして持っていなければならぬのは、努力と勤勉と創意の結集が報酬につながるといった場合において、その原則を貫くということは、世界で一等高い課税、いわゆる最高税率というものをある程度下げていって均衡をとることではないか。この方々は、またそれは赤い羽根も余計お買いになるでございましょうし、あるいは社会事業等に御寄附もなされるでしょうし、政党へ寄附されるかどうかは別といたしまして、そういうところに努力と勤勉と創意の結晶というものがあった方がいいのじゃないかなという基本的な一つ考え方がございます。  それからパート問題は、去年以来一生懸命で勉強いたしましたが、結論からいいますと、おまえさん要するに人的控除、基礎控除を連動させたにすぎないじゃないか。連動さすこと自身も、考えてみると専業主婦の場合等一体どうなるかとかいう問題もいろいろ議論がございますので、この問題は現行の仕組みでしか今日のところ名案が出なかった。パートとはというところから議論をしてかからなければならぬ問題だ。社会通念上私もよくわかる、感覚的にわかる問題でありますが、現実にそれを税制の中で眺めた場合に、議論すればするほど非常に難しい問題がある、私はこういう認識を持っております。  具体的には、主税局長からお答えした方が正確であろうと思います。
  127. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず最低税率、最高税率の問題でございます。  これはただいま大臣答弁があったわけでございますが、これも昨年の秋の政府税制調査会の答申でかなり詳しい分析がされておるわけでございますが、御案内のとおり、現在の我が国の所得税の税率構造というのは、先進国の中でも一番累進構造が急であると言われております。特に現行の限界税率六〇%以上のところは、昭和四十五年から放置されておるわけでございます。したがいまして、今回の基本的な見直しに当たって、この間におきます所得の平準化というふうな実態と、それから現在の先進国の所得税制を見ましても、既に七〇%台の最高税率の所得税制というのはないわけでございまして、そういったところから引き下げる方向で検討すべきであるという答申が既に秋に出ておりまして、今回いろいろな観点からこれを六〇%台にという議論もあったわけでございますけれども、当面最高税率を七五から七〇に引き下げるという御答申をいただいたわけでございます。  一方、最低税率の方でございますが、これは戸田委員には釈迦に説法でございますけれども所得税制というのは所得の超過累進構造になっております。したがって、最低税率といいますのは課税が始まる一番最初の部分の、所得の担税力に見合った税率であるということになるわけでございますが、今回の所得税の抜本的な見直しによりまして、人的控除を各四万円引き上げておるわけでございます。したがいまして、その結果課税最低限は今や先進国の中で、従来はフランスより若干低かったわけでございますけれども、それも追い抜くという非常に高い水準になったということになりますと、課税が始まります最初のその単位である所得の担税力というのは、理論的には高くなっておるわけでございまして、それは従前の税率より引き上げても、そこは増税ということは、税理論としては非常におかしいわけでございます・  ただ問題は、ではその一〇%を何%に引き上げるかということでございますが、これは先ほどの大臣答弁にもございましたように、理論モデルであらゆる階層につきまして改正前と改正後で税負担の増加が起こらないという限界点が実は一〇・五%。一〇・五%より若干上でございますけれども、一〇・五%ということで設定したわけでございます。先ほどベースアップがあって、あるいは給料が上がった場合に税負担が上がる、その場合に独身者については増税になるという御議論があったわけでございます。これもいろいろ論争にかかわる点かとは思いますけれども所得税は累進構造を持っておりますから、所得がふえれば税金がふえるというのはこれは実は自然な姿でございまして、それを増税と見るか見ないか、そういう問題はあろうかと思います。  それからパートの問題につきましては、これももう大臣答弁で尽きておるわけでございますが、政府税調の中でも、パートについて特別の控除を考えるというふうなことではどうかという議論もあったわけでございますけれども、一体パートとは何かということからしてそもそもここの議論をきちんとやりませんと、税法の中にそれは入ってこない。当然税の執行にもならないという問題がございます。それから、こういうことを申し上げるのは非常に口幅ったいわけでございますが、今のパートの非課税限度額といいますか、あるいは配偶者の控除の対象になる所得の限度額、収入限度額と申し上げた方が正確かと思いますが、これが一種の免税点的な働きをしておる。したがいまして、この壁がパートの労働力の供給の壁になったりという議論があるわけでございますけれども、果たしてそういうふうに考えるべき問題であるのかないのかということでございますね。たまたま今委員が御指摘になりましたように、通勤手当分ぐらいは見てはどうかとおっしゃったわけですけれども、通勤手当になりますと、月一万円というのは今の所得税でも税金はかからないわけでございます。だからそれはパートを雇用する側の、使用主の賃金政策と申しますか、そういうものにも関係する問題でございますので、税だけでこの問題の基本的な解決を求めるというのはなかなか難しい問題があるということは御理解願いたいと思います。
  128. 戸田菊雄

    戸田委員 若干時間がなくなってまいりまして、あるいはちょっと延びるかもしれませんけれども、申しわけありません。これでやめますけれども、できるだけ時間内におさめるようにします。  今のものは、確かに主税局長大臣がおっしゃられるように、各般の行政にまたがる問題も含んでおります。その点も私たちは承知をしておるところであります。ですから、労働省関係に対しましても、本問題の検討はこれから推し進めていくつもりでありますが、ぜひ検討していただきたいと思うのであります。  国税庁で来ておられますが、これは時間がありませんから要点だけ話します。  VOL一八、ナンバー一〇の「ファイナンス」の三十五ページ「主要国の税務行政の現状—在外駐在官の報告—」。英国の長野さんが書かれております。これを見ますと、今英国では大変な、地下経済というのですか、ブラックエコノミーということであって、日本語で言うと「地下経済」といってここには表現されているわけですが、結局対象は窃盗とか売春とか麻薬、こういった犯罪行為等に基づいていろいろ現金取引をやられている脱税が、英国で日本円に直して大体六兆円見当あるのじゃないか、こう言われておるわけです。日本も英国の人後に落ちないぐらいこれはあるような気がするわけです。こういった税収の捕捉その他について、今後の対応措置と現状、日本の場合どのくらいあるのか、その点、あったらひとつ教えていただきたいと思うのです。  それからもう一つは国債管理政策の問題で一点だけ。これは後で法律が正式に出てまいりまするから、その際にゆっくりとやりたいと思っているところで、資料は十分持っております。  ただ、ここでどうしても聞いておかなくてはいけないのは、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案、その第六条二に、「政府は、第二条第一項の規定及び前項各号に掲げる規定により発行した公債について国債整理基金特別会計法第五条の規定による償還のための起債を行った場合においては、その速やかな減債に努めるものとする。」極めて精神文章ですけれども、こういう努力をしておる。それから、借りかえを導入するということはもう決まって、法律が出ているわけでありまするが、この点について、今までいろいろな年度ごとに、特例公債発行の際の法律というものは毎年出されてきているわけでありまするけれども、そういう中で一貫してこの特例公債の特徴として守ってきたものは、いろいろな規定の仕方、条章の違いはあったけれども、現金償還をいたします、こういうことだったのですね。これだけは、年度ごとにいろいろな法律が出されて内容が変わっても、ここだけは一点通ってきた。それが特例公債というものの特徴だった、建設公債と比較をしまして。こういうものに対して、今回は外して、そして借りかえ導入をやっていく、そして六十年間で返還をしていく、こういうことになるわけですね。これ、どうでしょう。民間同士の借財関係でやったら、これはとてもじゃないが、そんなことは直ちに訴訟事項だと思うのですね。  いろいろありますが、後でやりますので、一体この点についてどういう歯どめを今後考えておられるのか、その辺、一点だけ聞いて終わります。
  129. 竹下登

    竹下国務大臣 アングラマネーの問題は後ほど国税庁の方から。  私の方は、どうせ、今も時間をかけてとおっしゃいましたが、しっぽりと御議論いただく問題が、それこそ借りかえ問題というのにはあると思います。  ただ、基本的に、借りかえというのは、現金で償還するための手段として借りかえを行うわけでございますので、言ってみれば、民間取引の場合における手形のジャンプというものではない。しかし、おまえはそうは言っても、毎年毎年特例公債を出して、それは借りかえませんということを一項入れて、国会の承認を受けているじゃないか。その議論はそのとおりなんですが、それができない状態になりましたので、借りかえをすることもあり得るという法律の改正をやり、今おっしゃいましたが、一方、訓示規定、精神規定を設けてみずからの身を律していく、こういうことになりますが、これはまた後ほど議論になることだろうと思っております。(戸田委員「改めてやります」と呼ぶ)
  130. 渡辺幸則

    渡辺(幸)政府委員 地下経済の件につきまして、国税庁の方から御答弁申し上げます。  ただいま御指摘になりましたように、私どもも英国でこのアンダーグラウンドエコノミーということについて大変議論がなされているということは承知をいたしておりますし、また、ほかの国でも似通った御議論があるわけでございます。  我が国の地下経済についての推計というようなお話で、既にこの委員会でも過去に御議論になった場合もございますが、いろいろな推計があるようでございます。ただいま私どもの手元にありますのは、例えばGNPの九・七%であるとか三十兆円であるとか、いろいろな推計が学者の方によってなされております。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕 ただ、私どもは地下経済と申しましても、これは別に統一的な定義があるわけでもございませんので、あるいは麻薬だとか売春だとか、そういう非合法な経済活動、それから合法、非合法を問わず税務当局の追及を逃れておる経済活動、これを一般的に論じておるものだと承知しておるわけでございます。ただ、その範囲について必ずしも明確ではございません。それからまた、捕捉されていないからアングラマネーだという原則もあるわけでございまして、これを計量的に推計をいたしますことはかなり難しいことでございまして、私どももそういう点での地下経済の規模といったものについての把握はいたしておりません。  どういう対策あるいは措置が必要かという点でございますが、私ども税務当局に関します限りは、調査によりまして、こういった税務当局の追及を逃れている所得につきましては厳正に対処していくということでございます。いわゆる調査事績から見まして、私どもは巷間言われているほどの把握漏れはないのではないかと思っておるわけでございますが、確かに申告しなかったりあるいは申告漏れがあったりということは事実でございます。今後とも私どもといたしましては適正な課税が行われるように、納税環境の整備とかあるいは地方税当局との協力とか、そういうところを通じましてひとつ努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  131. 戸田菊雄

    戸田委員 終わります。ありがとうございました。
  132. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員長代理 坂口力君。
  133. 坂口力

    坂口委員 今いろいろと御議論がございましたが、とりわけ特例法のお話になりまして、大臣のお話が核心に触れてまいりましたら、いいところは次の機会にというような形で逃げられた形になりましたので、では、私はその後を受けまして、もう少し、その部分から入らせていただきたいと思います。  いわゆる特例法、今回は財確法というふうに言っておみえになりますが、まだこの法律案は提出をされておりませんで、内容につきまして触れることはいささかどうかと思います。しかし、その法律の形態等につきまして、若干異議のあるところがございますので、この際に触れさせてもらいたいと思います。  先日、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案要綱をちょうだいをいたしまして、これを拝見をいたしますと、この六番のところに「特例公債の償還のための起債の特例」という部分がございます。その小さい三番のところに「昭和五十一年度から昭和五十八年度までの各年度における特例公債の発行の根拠となった各法律中、当該年度において発行する特例公債について国債整理基金特別会計法第五条の規定による償還のための起債は行わないものとする規定を削除すること。」こうなっているわけでございます。そういたしますと、昭和五十一年から五十八年までの間、その前に五十年の補正はございましたけれども、いわゆる特例法第五条のこの「償還のための起債は、行わないものとする。」という規定のございましたところの法律を毎年提出されまして、そしてこの大蔵委員会におきましては毎年夜遅くまで議論が続いたわけでございます。ところが、今回のこの要綱を拝見いたしますと、その部分を削除するということになっておるものでございますから、そうするとこれは五十一年から五十八年までに出ました法律のその項目をとってしまうということに理解して間違いございませんか。
  134. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 そのとおりでございます。
  135. 坂口力

    坂口委員 簡単に「そのとおり」とおっしゃいますけれども、この大蔵委員会におきまして毎年この特例法につきましては熱心な議論が繰り返されてまいりました。私もどんな議論があったかともう一度振り返りまして、実は読ませていただいたのですが、膨大なものになっておりまして、私も全部読み切れませんけれども、しかしたくさんの方がいろいろの角度から、実はこのいわゆる特例法についての議論をしておみえになるわけであります。  その先輩の皆さん方議論をなすった内容を見てみますと、赤字国債を発行するに当たって、将来果たしてそれが大丈夫だろうか、償還できるんだろうか、そういう疑問点を持ちながら、したがって償還計画というものをぜひきちっと出すべきじゃないかという議論をなすっておみえになるわけであります。それに対しまして政府側の答弁といたしましては、大蔵大臣初の政府委員皆さん方は、その償還計画というものを出さなければならないということはよくわかるけれども、いろいろの不確定要素があって、十年間という長きに及ぶ償還計画というものを出すことはなかなか困難である、しかしこの特例法という法律の中の五条には、借りかえはいたしませんという一項がございます、だからひとつ政府を信じてもらいたい、信頼してもらいたいというのが皆さん方の御意見でありました。信頼をしてもらいたいというバックボーンでありましたところの特例法の、そのバックボーンを後になって抜くということでございますから、それならばこの大蔵委員会において長い間議論をしたことは一体何であったんだろうか、そう私は思わざるを得ないわけでございます。この辺で、ひとつお話を伺いたいと思います。
  136. 竹下登

    竹下国務大臣 坂口さん、ちょうど私が大蔵大臣時代に議論をして、お互いこういう政治家でございますから毀誉褒貶はございますが、今度お会いするときにまた私がここにおりました。お互いにとって、ある意味においては大変うれしいことでございます。  そこで、まず借りかえ問題でございますが、本当に私自身振り返ってみますと、元来、大平大蔵大臣時代かと思うのですが、借りかえ禁止規定をつけるべきだ、こういう議論に基づいて借りかえ禁止規定がついた。そしてそれが、私どものときに考えましたのは、どうせ出さなければいかぬのなら、当分の間といって法律を一遍に出せば済むんじゃないか。かつての話になりますが、こういう安易な考え方も私なりの思考の過程においてなかったわけでもありません。しかしこれは一年、一年出して、しかも借りかえ禁止規定をつけることによって、みずからの身を律するためにはこの方が正しいという国会議論等を通じながら結論に達して、毎年毎年借りかえ禁止規定をつけたものをお出しして御議論をいただいた、こういうことになるわけです。  そこで、私は五十六年、五十七年、この二カ年間にわたる予期せざると言うと、見通しが甘かったと言われればそれまででございますが、国際不況等からくるところの大変な歳入欠陥、そういうことから五十九年度赤字公債脱却ということをギブアップして、そしていささか国民経済の関係等を考慮しながらソフトランディングとでも申しますか、軟着陸というような形で、八〇年代の経済の展望に基づいた六十五年を脱却の努力目標として設定した。そうしまして、あの当時議論しておったまさに六十年、いわば本当に大量の償還の始まる年度が目睫の間に迫ってきたわけでございます。そこで、いま一度議論し直してみた。そして、言ってみれば既発債というものは今日までの国民の貯蓄を対象として発行したもの、あるいは国民の投資がそこに置かれておるわけであります。新発債は今後伸びていく貯蓄等を当てにするわけでございますが、従来の資金の中に埋め込まれておるものであるとしたら、差し引きはゼロではないかというようなことを考えれば、この際やはりある意味において勇気を持って従来の方針を変えさせていただかざるを得ないじゃないか。  その議論をするときにも、私どもも記憶しておりますが、さようしからば、その年度に到達したものを年度ごとに借りかえをお願いするということが、政治姿勢として、かつて一年一年出したのですから、その方が正しいではないか、こういう議論もしてみました。ところが、今年度お願いするものに借りかえ規定がないものをお願いする。それが、過去のものは借りかえ規定が残っておる。そうすると、法律の整合性から言えばこれはやはりおかしいじゃないか、こういう議論にもなりました。そこで、目いっぱい身を引き締めて対応するためにというので、いわば精神規定というものを盛り込んでお願いせざるを得ない、こういう結論に到達したわけでございます。  したがって、私どもとしまして、これは将来にわたって、金融全体から申しますならば、よく言われますように、民間の資金需要が強いときは、民間の資金需要に民間の金融はこたえたらいい。民間の資金需要が弱いときには、政府がむしろそれを借りた方がいい。いわばよく言われるISバランスでございますか、投資と貯蓄というものは、当然のこととして、バランスがとれておるならば、将来はそういう選択ができる力を持つべきが当然でございますが、今日の場合そこまでの対応力はない。さようしからば、やはりまずは新発憤、すなわち新しい国民の貯蓄等を対象にして発行するものをできる限り減額することを第一義とし、そして第二段階として、このいわゆる公債残高そのものを、対GNP比でもよろしゅうございます、すべてのそうした基準に対して下げていくということを考えるべきではないかというのが、財政改革を進めるに当たっての考え方にもそのような姿勢で書いて、御審議をいただいておるわけであります。だから、おっしゃる意味は、あれだけ厳しくみずからを律するために、一年一年借りかえ禁止規定をつけて出したじゃないかということからすれば、まさにコペルニクス的——天動説が地動説に変わったほどではないかもしれませんけれども、事ほどさように大変な変動であるという認識で、御批判をいただくことに対しては、やはり甘んじてその御批判には耐えていかなければならぬ課題だというふうに理解をいたしております。
  137. 坂口力

    坂口委員 私も、現在直面しております財政状態というものを考えましたときに、考え方は違いますけれども、そうしたお考えに到達されるのもまあある意味では無理からぬことではあるかな、そういう気持ちもしないではないわけです。しかし、そのこととこの法体系の上での話とは別でございまして、これから後者さん方がもう借りかえはしないという項目は外すんだ、こうおっしゃるのなら、それはある意味では話が理解できるわけでございますけれども、五十一年にさかのぼって、いままでの議論の中心であったところをなしにいたしますというのは、余りにも過去の議論に対する冒涜ではないだろうか、それが実は私の主張でございます。法制局に、そういうふうな、過去にさかのぼって法律を変えるということが今まであったのかどうかということをお聞きをしてみましたが、施行前の法律を改正した若干の例というのはございます。例えば、公認会計士法の一部を改正する法律でございますとか、あるいは商法の一部を改正する法律でございますとか、あるいはまた医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律でございますとか、これらは施行の日を、初め決まりましたものを一時延期をいたしまして、その延期をしておる間に改革をするとか、あるいはまた廃案にするとかというようなことが実はとられているわけでございます。しかし、今回のように、一番法律の核になっていた部分を、八年間さかのぼってそこをなしにするということ、これが法律上果たして許されるんだろうかという大きな疑問を実は持っているわけでございます。あわせて、法体系上の問題とともに道徳的に見ましても、先ほど大臣が少し触れられましたけれども、これはその年その年、一年一年この議論をすべきものであって、そして八年間さかのぼってその部分を削除をするというようなことは、余りにもこれは逸脱をしていることではないだろうか、実はそういうふうに思えてならないわけでございます。したがいまして、あえて私ここに質問をさせていただいたところでございます。  まだ六十年が来ないのだから、実質的にはこれは未施行法律ということも言えるのではないかという議論もあるわけでございますけれども、実際には二年国債でございますとか五年国債でございますとか、こうしたものは既にもう出ているわけでございまして、そして、二年国債や五年国債につきましては既にもうかなりな償還がなされているわけでございます。調べていただきましたら、二年国債の方は一兆十四億円でございますか、それから五年国債の方は三千六百六十億円償還をされているわけでございますから、この法律が実質的な未施行法律と言うこともでき得ないと私は思うわけであります。そういたしますと、既に施行されております法律を、前にさかのぼってその重要な部分を削除をするというのはいかがなものか、許されるのだろうかという気がしてならないわけであります。もう一度、ひとつ事務当局からでも結構でございますが、お伺いいたします。
  138. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この問題につきましては、先ほど大臣の方からその背景その他について御説明申し上げたわけでございます。こういう措置を今回の法律でお願いいたしましたのは、財政運営についての政府考え方をこの際明らかにしたいということでやっておるわけでございます。  しかし、一方、国民の保有する国債について、満期が到来した場合、個々の保有者に対して全額現金で償還するということは、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、これは当然でございます。したがいまして、借りかえというのは、その償還財源を借換債の発行によって賄うものであるということでございまして、その意味では国債の保有者にとりまして何ら不利益を与えるものではない、こういうことでございます。したがいまして、この法案の審議の際にも、まさに今お話がございましたような点につきましても我々といたしまして十分議論いたしましたが、結論といたしましては、満期が到来するものはまだ残っておりまして、それが到来するまでの間においてこのような改正を行うことは法律上問題がない、こういう結論に達しまして、この法案を提出した、そういうことでございます。
  139. 坂口力

    坂口委員 先ほども言いましたように、私は考え方を言っているわけではないわけでありまして、この法律あり方を実は言っているわけであります。今いろいろの議論の中で法律的には問題ないという結論になったというお話でございます。しかし、これは常識的に考えまして、末行の施行の日を変えるとかなんとかということならばそれはいざ知らず、一番中心的な課題について後になってこれを変えるということは、これは許されることではないのじゃないだろうか、私はそういうふうに実は痛切に感じる一人でございます。  こういう例がいいか悪いかわかりませんが、そのときの与党が、例えば保革伯仲であった。そういたしますと、保革伯仲のときには野党の方にも色よい形の法律を出しておいて、そして自分のところの勢力がうんと大きくなったときに、後日その法律を骨抜きにするようなものをまた出すというようなことにもこれはなりかねないわけでありまして、これは委員会及び国会あり方の根幹にかかわる問題ではないかと私は思うわけであります。簡単に、いろいろ議論をしたけれども法律的には問題ないという結論になった、こうおっしゃいますけれども、そう簡単にこれは結論の出る問題ではない、非常に重要な問題を含んでいるというふうに私は思うわけでございます。その議論の中で、今までそうした八年間あるいは九年間議論議論を重ねてきた、その過程のことが一体問題になったのかならなかったのか、その辺も含めてもう一遍お聞きしたい。
  140. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この問題につきましては、先ほど大臣から申し上げましたような背景のもとで、我々としてもいろいろ議論をいたしました。特に第二次石油危機という状況のもとにおきまして、従来予期しなかったような事態が発生したわけでございます。そういうもとで税収の伸びも急激に鈍化するなど、我が国経済、財政を取り巻く環境にいろいろ大きな変化が生じたという中で、財政の状況も非常に厳しいという環境になったわけでございます。  そういう中におきまして、それでは具体的に、今後特例公債の償還が参りますが、実額で申し上げますと、六十年度に二兆円、その後三兆、四兆とふえてまいりまして、ピークになると七兆円になるというような事態になってまいるわけでございます。そういうときに、それでは借換債によって財源を調達しませんで、その他の方法によってこの財源を調達してこれを償還しようといたしますと、大幅な歳出カットかあるいは税収の増を図るかという方法になるわけでございますが、そういうことをいたしますと、財政の経済に与える影響というのは非常に大きいわけでございまして、そういう面からいろいろ問題も生じてくる。それから国民生活の面でも、歳出の大幅カットというのは問題があるではないかということもございまして、いろいろ考えた末、大変遺憾ではございますが、こういう結論に達したわけでございます。  そこで、御質問の中で、今後一つ一つというお話があるわけでございますけれども、今回この財源確保法案を出した際に、従来と違いまして特例債の借りかえ禁止という規定を外すわけでございます。そういうときに、それでは従来のやつをどうするかという問題が当然起こるわけでございますけれども、今回お出しします財源確保法案でございますか、そこにございます法律によりまして発行する特例債は十年先に償還が来る。将来、十年先に来るものについて禁止規定を入れないと、その前に来るものにつきましてそれでは手当てをしないのはどういうことかというような御議論もいろいろ出てくるわけでございまして、そういう意味もあわせまして、先ほど申し上げましたようにまとめて今回お願い申し上げているということでございます。
  141. 坂口力

    坂口委員 何度か申し上げますけれども財政の厳しさを私は今問題にしておるわけではない。また、この借りかえの問題を今私はいい悪いということを言っているわけではないのです。その問題は私もいろいろと意見があります。しかしそれはまた後日この法律案が出ましたときにするとして、私は今そのことを問題にしているわけではないのです。財政の厳しさとか借りかえの問題ではなくて、この法律あり方を私は今言っているわけなんです。そして、端的に言えば、余りにもこの大蔵委員会を侮辱したつくり方ではないかと私は言っているわけなんです。今の御答弁は、こういうふうにあのときには決意をしてやってきたけれども、だんだんと財政的に厳しくなって今日を迎えてやむを得ないんだというお話であって、そのことは我々との意見の違いはあるとしながら、それはそれとして私はお聞きをしたいと思いますが、この法律あり方がそれでいいかということの答弁ではないのですね。
  142. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほど申し上げたこととかなりダブるお話になるかもしれませんが、財政審におきましても、我々としてはこの問題は御議論いただいたわけでございます。そこで今後の厳しい財政事情を考えれば、五十九年度特例公債について、先ほど申し上げましたように借りかえ禁止規定を置くことは極めて困難であるということからこういうことになったわけでございます。しかし、それではまさに委員のおっしゃいますように、従来禁止規定を置きながら今回この禁止規定を置かないというのは、考え方として問題があるのではないかという御指摘も当然あろうかというふうに、我々としても十分その辺は認識いたしております。したがいまして、この法案の中で、今後できる限り借換債の発行を行わないように努めるものとするという旨の努力規定を置かせていただくということにいたしておるわけでございます。そういう意味で、従来の考え方そのものは我々としても十分尊重しながら、現実が今申し上げましたように非常に変わってきた中で、法案を今回のような形でお出しした、こういうことだと我々としては思っております。
  143. 坂口力

    坂口委員 これは何度申し上げても同じことになるわけでありますので、私もこれ以上申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、現在までの経過を考えましたときに、余りにも現在までのこの大蔵委員会における議論を踏みにじったものではないかというふうに思わざるを得ないわけでございます。議事録を拝見しまして、先輩議員の諸氏が与野党ともに本当に心の底から議論を尽くしておみえになったその内容を今見るにつけまして、それが何であったのだろうか。その議論の一番中心になるところ、その中心の中のもう一つの中心の部分の一つが、借りかえをしないというその一項であったのではないだろうか。今日に至ってそれが難しいということで、これからはその法律を努力目標に改正をしたいという、そういう法律案ならば、それは私もそれなりに納得はでき得ます。しかし、その以前に真剣な議論になった、一番てこになった部分を、あれはやめにいたします、あのてこは取りますと、この期に及んでそういう法律案を出すということは、余りにもこの大蔵委員会を侮辱した法律ではないか。あるいは大蔵委員会だけではなくて、予算委員会におきましても議論をされたと思いますし、国会全体に対するこれは挑戦ではないかと思われるほどの重要な部分がこの中には含まれている、そういうふうに私は思えてならないものですから、きょうはこの問題を取り上げさせていただいたわけであります。大臣からお話を伺って、次の問題に移りたいと思います。
  144. 竹下登

    竹下国務大臣 私自身が部内で議論するときにした議論が、今坂口さんがおっしゃった議論であります。一遍一遍出すことに対して、まあ便宜的に考えればあの出すときに、当分の間こういうものを出しますというのをやめたのも、やはりみずからを厳しく律していくために一本一本毎年やった。したがって、今度はこの借りかえで、いわゆる禁止規定を外すのも、その償還年度が来たときに一本一本やるというのがむしろ厳しい姿勢ではないかという議論をいたしました。確かに法律上はさかのぼることも、現実行為が行われていないわけでございますからいいといたしましても、いわば、かねての審議の経過の中ではそういう姿勢の方が、厳しさを理解していただくために、また、みずからを厳しく律していくためにもいいではないか、こういう議論もいたしました。が、今後発行するものに禁止規定を設けないでおいて、過去に発行して現実償還の到来するものは禁止規定をそのままつけておくということの方が、むしろ法的には不自然ではないか。だから、そこに何かそういう厳しさを出せるものがないかという議論がいわゆる精神規定というもの——精神規定という言葉がいいか悪いかは別といたしまして、そうしたものに変わってきたというふうに御理解をいただかざるを得ない。私もこれを仕上げていく段階でいたしました議論を振り返りながら、そのような説明で御理解をいただかなければならぬではないかというふうに考えております。
  145. 坂口力

    坂口委員 まだ納得できたというところまで至りませんで、この問題はまた後日引き続きやらせていただきたいと思いますし、純法体系上にも問題があるようにも思えてならないわけでございます。その法体系上、この方が矛盾がないというふうに言われますが、私は現在のこの法律案要綱の方が矛盾があると思えてならないわけでございまして、ぜひひとつこの問題はもう少し詰めさせていただきたいというふうに思います。  そこまで考えられてつくられたものであるということはよくわかりましたが、それならば、努力目標なるものを掲げてはございますけれども、これはあくまでも努力目標でありまして、どこまでそれが実現をできるか。たとえできなくても、それはやむを得ないということになってしまうわけでございますので、ずるずるとこの問題が将来に向かって歯どめがなくなってしまう可能性もある。いままでもう毎年毎年真剣な歯どめをかけてきても、なおかつ歯どめがかからなかった。その歯どめを今度は外して努力目標にするわけでありますから、さらに歯どめがかからなくなる可能性というものはまた大きいと思わねばならないわけでございます。そこで、それならば、これに変わるべき努力目標というのは、どういうふうにこれからみずからを律していこうというふうにされるのであろうか、その辺をもう少し詰めてお聞きをしておかなければならないと思うわけであります。  いままでの御答弁の中にも若干はございました。しかし、ただ単にこういうふうにするつもりでございますと言うだけではいけない。いままでの歯どめを外したのなら、それにかわるべき厳しい歯どめというものをみずからやはりつくらなければならないんじゃないだろうか。その結果において、一生懸命努力をしてもなおかつそれが達成できないということが、あるいは起こるかもしれない。しかし、それはやはり歯どめというものはつくっておかなければならないんじゃないだろうか、そう思いますが、ひとつその辺につきましてもう少しお願いを申し上げます。
  146. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 いわゆる特例債の今後六十五年度までの努力目標といたしまして、新規財源債といたしましてはこれをゼロとしていくということを「基本的考え方」で明確にお示ししているわけでございます。そこで、その新規財源債を、まず第一段階といたしまして六十五年度までにゼロという努力目標を掲げまして、その後引き続き、この特例債の残高がございますので、これにつきましては、その「基本的考え方」にございますように、できるだけその残高も減らしていくということで努力していこう。具体的には国民総生産に対する公債残高の比率について、これを極力低くとどめるように努力するというふうにお示し申し上げているわけでございます。したがいまして、第一段階といたしましては新規財源債を六十五年度までにゼロにするよう努力する、その上でさらに公債残高そのものも減らしていくということでやっていきたい、こういうふうに考えておるのであります。
  147. 坂口力

    坂口委員 大臣から、もしございましたら。
  148. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほども申し述べましたが、これは直接の御質問ではございませんでしたが、大体第一段階、第二段階と……。第一段階をどこに置くかというのは、まず六十五年度脱却を努力目標としよう。これは新発債、いわゆる新規財源債でございます。したがって、それがまず先だ。言ってみれば、国民の投資対象、あるいはこちらから言えば対象となる貯蓄の新しく伸びるもの、対象とするものをまず減していこう。新規財源債を減していくというのが第一目標である。もちろんその間、経済ですから固定しておるわけではございませんが、それに努めながら、第二期の目標としては、相対的に、予算の中に占めるというよりもGNPに対して占めるところの公債残高を減していこうというのを第二段階に出していこう。それを私どもは、第一期というと少しリジッドになり過ぎるかもしれませんが、それが六十五年度めどで、第二期が、言ってみれば対GNP比公債残高を減していく時期である。だから、それが減せるだけの歳出歳入両面にわたっての体質改善をその間にしていかなきゃならぬ。  されば、どの年度で、言ってみれば対GNP比どれぐらいにいくかという議論になりますと、これは今日本透明な国際経済社会の中にあって、それこそきちんとした年次目標を立てる条件にはない。したがって、そのときどきの経済財政事情を勘案しながら、第二目標としてのその問題に努力をしていきたい、こういう筋のことを申し上げておるわけであります。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 坂口力

    坂口委員 それではこの問題はまた法律のときにやらせていただくとしまして、次の問題に移りたいと思います。  もうあと余り時間がございませんが、「増税なき財政再建」、余りにも有名になり過ぎた嫌いがございますが、このことについて質問をしておきたいと思います。  臨調が「増税なき財政再建」ということを申しましたが、その「増税なき財政再建」というのは、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にとらない、こういう立場をとって、そして「増税なき財政再建」ということを言っていることは御承知のとおりでございます。ならば、租税負担率が上昇しないのであろうか。そのことを見てみますと、「税制改正の要綱」など、この政府資料によりましても、五十九年度予算ベースでの租税負担率は二四・二%というふうになっております。この数字は五十八年度当初ベースの二三・七%はもとより、補正予算ベースの二三・九%よりも上回っているわけでございます。五十八年度補正予算ベースに比べまして、五十九年度の租税負担率が〇・三%上回っているということに、これは政府側の資料をもとにいたしましてもなっているわけでございまして、国民所得比でその金額を試算をいたしますと、七千百十九億円に相当するのではないかというふうに思います。この七千百十九億円と申しますのは、政府のこの法人税の税率アップによりますところの増税額四千三百億円とそれから酒税の増税額三千二百億円、合計いたしまして七千五百億円にほぼ匹敵する額になっているわけでございます。租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置をとらないという公約からするならば、この七千億円規模の増税は、これはむしろ撤回をすべき筋合いのものであるというふうに思います。  まとめてまたお答えをいただくといたしまして、この「増税なき財政再建」に反します租税負担率の上昇が、それだけではなくて、六十年以降さらに租税負担率の上昇が続くのではないかというふうに我々は考えております。政府税制改革案は、六十年度の所得減税額七千六百五十億円に対しまして、法人税及び酒税の方で七千四百三十億円、先ほど申しましたようにほぼ同額でございます。  それから、所得減税財源法人税、酒税の増税で補てんしたことになるわけでありますが、近年の、昭和五十六年度までの五年間を見ましても、名目経済成長率に対する税収の伸び率を示しますところの租税弾性値が、所得税、法人税、酒税の三税の中では所得税がもちろん最も高いわけでございます。この傾向は六十年以降にも続くと思われますし、所得税は自分の力でこの減税分を取り戻しまして、その上に法人税と酒税の増税分を上乗せすることは必至であろうというふうに思われます。  昭和五十四年度決算から五十八年度の補正予算ベースまでの国民所得所得税、法人税、酒税、その金額の伸び率の推移を見ましても、その増加額と伸び率を単純に年平均をして見てみましても、国民所得は増加分が八兆八千五百七十五億円、伸び率で五%でございます。所得税は八千五百四十六億円で九・二%の伸び率でございます。法人税は四千二百二十二億円で五・七%、酒税は七百九十八億円で五・五%の伸びになっているわけでございます。したがいまして、所得税が九・二%ここで伸びているわけでございますので、これからの経済的な状況等によりましてはいろいろの変動がございましょうけれども、しかし、租税負担率というものはかなり伸びるというふうに思って差し支えないのではないかと思います。そういたしますと、この臨調の言いますところの「増税なき財政再建」の核心でございます、租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置をとらないというその内容とはかなり反してくるのではないだろうか。増収という言葉をお使いになりますけれども、これは実質的には増税にならざるを得ない、こう思いますが、いかがでございますか。
  150. 竹下登

    竹下国務大臣 具体的な問題については主税局長から補足をしてもらいますが、確かに、例えば今度お出しした展望を見ましても、名目成長率に弾性値を過去十年間の平均値である一・一を乗じておりますので、毎年〇・一ずつおおむね租税負担率としては上がってくるということになるわけでございます。一番いい例は、五十七年が最初見ておったのが二五・四、それが結果としては二三・九になりまして、だからこの場合は三角の一・五落ちたわけであります。過去を見ますと、高度経済成長期におきましてはおおむね一・四一、一・五八、一・三五、一・三八、一・九二、これは石油ショックで大変物価が上がって、名目が効いてきたわけでありますが、したがってちょうど五十六、五十七年度の歳入欠陥のときは〇・五八、〇・八〇というふうになるわけでございます。  だから、私どもといたしましては、租税負担率をやはり大きく変えるような税制上の新たな措置という点に臨調のお考え方もあるであろうという認識のもとに対応してきておるわけでございますが、この弾性値そのものも、これはたとえば直接税と間接税で言えば大変な相違もございますし、したがって、そのときどきの経済情勢の推移の中で、ある程度の変化が生ずることはやむを得ないじゃないか。したがって、私ども財政改革を進めるに当たっての考え方としては、いろいろあちこち工夫して取り上げたのは、国民負担が全体としてヨーロッパの水準よりもかなり下回るところに位置づけるべきである、こういうところでお示ししておるわけであります。したがって、租税負担率の議論というのは、実際問題「新経済社会七カ年計画」のときには二十六カ二分の一というのを一応示したことがあるわけです。それが結果として著しく乖離したということになると、これは定量的に位置づけることは非常にむずかしい問題だということで、やはり定性的にヨーロッパをかなり下回る——かなりとは何ぼやということになると、これからまた議論のあるところでございますが、そこへ位置づけをした、こういうことにならざるを得ない。  若干専門的な問題になりますので、主税局長から補足してもらいます。
  151. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 臨調の答申で述べられております租税負担率との関連で、私ども税制当局としての率直な頭の整理の仕方をこの機会に申し上げることをお許し願いたいと思うのでございますけれども、ただいま大臣の御答弁にもございましたように、現実に租税政策を展開いたします場合に、例えば五十九年度のトータルとしての租税負担率を具体的に何%と設定いたしまして、それで税制を組むということは、これは政策の作業概念にはならないわけでございますね。先ほど大臣のお話にもございましたように、例えば近年の経験でございますけれども、五十六年、五十七年、いずれも当初予定いたしました租税負担率よりも実績が大幅に下がっているわけでございます。そういたしますと、租税負担率という概念は余り意味がないのかというと、そうではありませんで、事後的にと申しますか、国民所得の実績が出、それから税収の実績が出ました段階で、租税負担率というものは、これは学問的にもそうでございますし、実際に租税負担のあり方を御議論いただきます場合に、政策論議の大きな一つの物差しにはなると思うわけでございます。租税負担率というのは恐らくそういうものであろう。ただ、これを事前的に租税政策を展開する場合に、具体的に率を設定して、それで租税政策を仕組むという作業概念にはなじまない。  したがいまして、臨調答申を考えます場合にも、あそこに書いてございますのは、全体としての租税負担の上昇をもたらすような新たな措置を講じないというのは、当年の税制改正を予定することによって、それが税負担の上昇要因になるような税制改正をしてはいけない、こういうふうに考えますと、それ自体としては十分作業概念になる。従来も臨調等におきましても、そういう解釈をしておられるということでございまして、そういうことを踏まえまして、五十九年度の税制改正におきましても、所得税の減税を含みます減収額と新たに税制改正で負担増をお願いいたします部分、それから税収増を伴います部分、これはきちんと計量的に見ましてはみ出すことはないということで税制改正を進めさせていただいておる、こういうことでございます。
  152. 坂口力

    坂口委員 時間が参りましたので、これで終わりますが、ひとつこの問題、また引き続きまして議論をしたいと思います。
  153. 瓦力

    瓦委員長 米沢隆君。
  154. 米沢隆

    米沢委員 私は、目下我が国にとりまして緊急かつ重大な政策課題であります財政改革の問題一本に絞って、大臣並びに当局の見解をただしてみたいと思います。この問題は既に本会議予算委員会やまた当委員会におきましてもいろいろな議論が出されておりますから、重複する部分があるかと思いますが、御容赦賜りたいと思います。  さて、今回大蔵省は、今後の財政再建の指針となります「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」と、六十五年度までの財政収支を展望した試算結果を発表されたわけでありますが、その資料を読みますと、今さらながら財政改革の容易ならざることを痛感するのであります。  ところで大臣は、この試算結果等の資料に関連いたしまして、この資料はあくまでも参考的なものであって、最終的には国民皆さんの選択の問題であり、国民の代表である国会議論を通じて決まることになろうという趣旨のことを何回となく述べられております。政府はあくまでも白紙の状態に今立っておるというような感覚で受け取れるのでありますけれども、そういう物の言い方そのものが、逆に国民の間には増税等を中心にして疑心暗鬼を招いて、一番国民皆さんに理解と協力を得ねばならないこの財政改革というものを大変わかりにくいものにしておると思われるのでありますが、まず最初に大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  155. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに米沢さんの御指摘、国民の多数の中には同じような感じを持っていらっしゃる人がいらっしゃるのじゃないかと私は率直に思います。ただ、私どもとして考えてみると、かつての「新経済社会七カ年計画」のときに、言ってみればあるべき姿としてのリジッドな、二十六カ二分の一というような租税負担率を前提に置いたものをつくったわけですね。が、それが結果として余りにも大きな乖離を生ずるようになったということになると、経済というものが絶えず国際情勢なりに応じて動くものである限りにおいては、むしろ定性的な考え方をお出しして、国民の皆様方に、まあ下世話な言葉で言えば議論の中へ入っていただいて、そうしてその方途を模索すべきじゃないか、こういう考え方に立ったわけであります。  したがって、おまえは言ってみれば仮定計算はうんと出した、しかし一体どれが手ごろだと思っておるかとかそういう質問も受けます。米沢さんでなく、もっと——もっと庶民というと、米沢さんも庶民でございますが、いろいろな友人等からも。それが出せないところが今日の難しさだな。だから、これを六十五年まで、こういう姿でどうしたらいいでしょうかと言っておってはならぬという気持ちは私にもございます。この間も大内委員からも一つ仮定計算を出していただきましたが、例えばそうしたものに対しても、国民に対するサービスをする公務員としての立場から、いろいろな前提のものに対しての資料作成に協力をしながら、お互いそれをベースに議論をし合う中で模索して、一つのコンセンサスを生み出すような努力をしよう、こういうような手法でございますので、端的な御質問趣旨のようにお感じになっている国民の皆様方もかなり多いな、こういう認識は私も持っております。
  156. 米沢隆

    米沢委員 大臣がおっしゃるように、非常に不確定な要素がたくさんありますから、定量的には物が言えない、定性的な物の考え方しか言えないというのもよくわかりますし、あるいは当局の立場もよくわかるのでございます。しかしながらこの試算結果等を見ておりますと、多くの人が指摘をしておりますように、結局財政改革は、歳出カット等のいろいろな努力をいたしましても、最終的な解決はいわゆる大量の財源を考えなければうまく達成できないんだということを、これはもう行間にもにじみ出てよくわかるように説明がしてあるような感じがするのですね。したがって、アバウトで本当に漢としてわからないような段階でのものではなくて、こういう資料をおつくりになった結果、定量ですべてを議論せよとは言いませんが、やはり定量で言えるものがかなり煮詰まってきておるのではないか、そういう感じがしてならぬのでございます。  例えば今度の五十九年度予算編成でも、歳出カット等を大変御苦労なさいましたが、六十年度一体どうするかとなったときに、歳出削減の限界がある程度見えておると思うのですね。そこらは一体定量的には物が言えないのか。あるいはまた不公平税制を含めて既存税制の手直しをする。いろいろな項目はありますが、年次のずれはあったとしても、ある程度の定量的な把握はできないはずはないと思うのですね。そういう組み合わせによって、最終的にはどれぐらいの新たな増収措置が必要なのか、新税が是なのか非なのかという、もっと議論のしやすいようなことを政府みずからが言っていただかないと、全然手がかりなしに、政府のみずからの考え方も余り示さないで、白紙のままで国民に選択しろなんて、これは冗談じゃないという議論につながっていくのではないか、私はそう思うのでございます。  したがって、この際、このような試算結果を前提にして、政府としてみずからの——国会議論をしないとは言いませんよ。しかし、みずからの財政改革の本音のところの処方せんを少しぐらいは国民の前にはっきり提示して、協力を求めるところは求めるという姿勢に立つのが政府の責任ではないかと私は思うのでございますが、いかがですか。
  157. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃる意味は私も理解できます。まず当面、今度五十九年度予算を編成して、その予算編成に当たる考え方、そうすると早速私どもは、少しでも近いところにでも、ある種の定量的なものでも示せないかとなると、六十年度予算編成、その概算要求のときかな、こう思うのであります。  それで、私もたびたびの質問に対していつも言葉に窮するのでありますが、歳出削減一生懸命でやったな、しかし、これ以上おまえ本当にやれるのか、こう言われる方たくさんございます、率直なところ。しかしながら、考えてみると、たまたま私がその編成の責任者であった五十五年度予算というのが、前年度に対比してプラス一〇%のシーリング、それから七・五、ゼロ、マイナス五、マイナス一〇、その都度自分なりに、私は玄人じゃございませんけれども、感じたことは、一体来年の予算組めるだろうかと思いながら今日までやってきた。したがって、ここでもってもうこれ以上はとてもやれぬぞよと、こういう心境になることほど危いことはないなと身を引き締めて、さようしからば、じゃ六十年度予算の概算要求のシーリング、一体この次は一五%でもやるんかと仮に聞かれても、はいそこまでやりますと言う、もとより今日の段階で自信もない。そうすると、この問題は結局、無責任であると言われようとも、やはり国会議論を通じる中でおのずから概算要求、まずは第一着手概算要求になりますが、この際の方途を見出すしかない。が、やはり今日までの削減努力の積み重ねの中で内なる改革もいろいろ出てきておりますので、もうこれ以上やれないという感じを持ったらおしまいだな、こういう自己認識をしておるところでございます。
  158. 米沢隆

    米沢委員 同時に、この財政改革をわかりにくくしておるものの中で、今大蔵大臣の方から、予算編成される立場の苦衷を述べていただきましたが、各委員会等での議論の中で、例えば「増税なき財政再建」をやるとか、あるいは大型間接税の導入は考えてないとかいう答弁がありながらも、また一方では、国民の負担率の上昇は避けられないとか、あるいは六十年度からの大型間接税を導入するかのごときそぶりがわかるような、にじみ出たような答弁が時々出てくる。一体、国民はどれを政府の方針として信じていいのか、そのあたりがわからないところに、やはり財政改革というものに対する国民の理解の仕方が、ぶれが大き過ぎるという問題が出てくるのではないか、こう思うのです。  そこで、この際、大変初歩的な話でございますが、改めて定義を、今の政府の統一見解的なものを示していただきたいと思うのであります。  一つは、改めて「増税なき」というのは一体何か。二番目には、「増税なき財政再建」というのは財政改革が終わるまでの公約だと思っていいのかどうか。第三番目は、「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」の中に、先ほどからも議論がありますように、国民負担率の中長期的な方向については、今後、高齢化社会の進展などにより、現状よりは上昇せざるを得ないとありますが、この上昇せざるを得ないという意味は、財政再建期間中において、いわゆる全体としての租税負担率を引き上げるような新たな税制上の処置も考えねばならないのだなという意味での増税を考えているのかどうか。もしそうであったならば、「増税なき財政再建」というスローガンはもういいかげんに破棄したらどうか。この四点についてはっきりと御答弁をいただきたい。
  159. 竹下登

    竹下国務大臣 「増税なき財政再建」というものは、やはり私は財政改革を進めるに当たってのてこである、そして、その定義はということになりますと、今日の場合、臨調で言われておる、大きく租税負担率が動くような税制上の新たなる措置というものは控えなさいよというお諭し——お諭しというのはちょっと表現がおかしいのですが、そういうことではないか、一つはそう思います。  それから次が、財政改革が終わるまでの公約がということになりますと、財政再建というものは、あの当時はそれなりに定義づけが、対応力を回復するために赤字国債を脱却する時期、そういうところまででございましただけに、財政改革ということになると、それを行うためにはもろもろ財政制度施策の根源にさかのぼって改革を行わなければそれができないということになると、本当は言葉の上では財政改革はこれで済んだというときはないんじゃないか、私もこういう気がしております。  それから、その次の負担増、いまおっしゃいましたように歳出カットか負担増かということになりますが、国民負担率がヨーロッパよりもかなり下回るという議論はだんだんだんだん煮詰まっていく議論になるんではなかろうか。その際、要するに公共サービスを負担するのも国民、受益者も国民でございますから、その辺の兼ね合いというものがどの辺にあるものであるかということは、今にわかに、臨調等々で四〇%とか四五%とかいう議論が出たという話は聞きつつも、私にはそこまで踏み込む自信も、また国民の理解がそこまではいくであろうという確信も持てない、いま少し議論をしてみなければならぬ課題ではないかなというふうに思っております。
  160. 米沢隆

    米沢委員 先ほどからも議論になっておりますように、例えば昭和六十五年の時点で国民の負担率あるいは租税負担率あたりがどのあたりになるであろうか、これは大変興味のある一つの指標だと思うのです。先ほどからの御説明を聞いて、少なくともまず租税負担率を決めて、あるいは国民負担率を決めての議論は難しい。私もそれは同感でありますが、この前、梅澤主税局長が、一般歳出の年平均伸び率を五%と仮定した場合に生ずる六十五年度の歳入不足額九兆九千億を増税で埋め合わせるとすると、租税負担率は二七・六%に達するというような答弁をされておりますね。ですから、今からもし一般歳出が五%の伸び率で予算がいったときに、すべて増税でやったら二七・六%の租税負担率でございます。その間に歳出カットだとかその他のいろいろな財政再建のための方策が入れられるわけでありますから、これ以上にはなり得ないですね。したがって、現在の社会保険料負担を大体一〇・八ぐらいを加えますと、三八・五前後になりますね。ですから、昭和六十五年における国民負担というのは大体三九以下でおさまるというふうには理解していいですね。
  161. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今米沢委員の御指摘の点は、租税負担率それから社会保障負担率を入れました国民負担率というべきものでございますが、そういうものとしての目標値とか予想値というものを一義的に計数的に申し上げるというのは非常に難しい問題である。ただ、先般提出いたしました仮定計算を前提にいたしまして、しかも、あそこに出しましたケースa(1)の数字で仮に機械的にはじいてまいりますと、先般予算委員会で、大内委員の御質問だったと思いますが、お答えした数字になるわけでございまして、ただいま米沢委員がおっしゃいましたケースのとおりになるというふうに一義的に私どもは申し上げているわけではございません。ただ、あの辺の数字というものが、いろいろなケースがございますけれども、これからいろいろ御論議をいただく場合の手がかりになる数字であろう、こういうことでございます。
  162. 米沢隆

    米沢委員 深追いした議論はしたくありませんが、少なくとも五%以上にひょっとしたら一般歳出が伸びる可能性もありますから、そう一概には言えないと思いますが、大体資料から推定するところ四〇%以下くらいでおさまる。それが六十五年度において財政再建がほぼ完了した時点の姿であるというふうに理解をさせてもらいたい、こう思います。  前語りはそれくらいにいたしまして、具体的な問題について順次質問したいと思います。  まず第一に、これも伊藤委員の方からも話題になっておりましたが、六十五年赤字国債発行ゼロという目標年次のセットの問題であります。  御案内のとおり、鈴木内閣のときに五十九年赤字国債ゼロが自爆をして、今回新たに六十五年度という目標年次がセットされたわけでありますが、これは単に「展望と指針」の最終年次に合わせたものにすぎないそういう軽いものなのか、それとも将来の財政状況等をできるだけ検討された上で、六十五年度には少なくとも赤字国債発行ゼロくらいにしなければならないという、財政当局の意欲と不退転の決意みたいなものを込めた年度なのか、そのあたりをちょっと聞かしてもらいたい。
  163. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに「経済社会の展望と指針」の中にも「このような努力の積み重ねによって、対象期間中に特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引下げに努め、財政の対応力の回復を図る」こととする、こう書かれてあります。これはまさに、経済企画庁が中心になられたとはいえ、政府の責任でお示しした「展望と指針」でございます。したがって、財政改革の努力目標としてこれをとらしていただいた。  ただ、そこのところで度合いがどうかということになりますと、ならなかった場合は切腹しますとか、まあ努力目標であることは事実でございますが、いわゆる経済社会の変化が、なかんずく国際的に余りにも今日までの体験上不確定要素が多いだけに、これがまさに絶対であると言われると、私も絶対のものであると言うだけの自信はない。しかし、これを努力目標として、不退転の決意で臨むべきだということに対しては、そのような考え方に立って対応すべきだというふうに思っております。
  164. 米沢隆

    米沢委員 先のことですからだれもそれはわからないと思いますが、しかし中曽根総理あたりの答弁等を聞いておりますと、努力目標の努力の方にかなり力点が置かれて、目標の方はどうもアバウトになりつつあるというような感じがしてなりません。それがもし本音ならば、赤字国債発行ゼロの最終年次を含めて、財政改革の方法などいろいろなバリエーションがあるわけです。例えば歳出カットの仕方だって、あるいは増税のあり方だって、最終年次のセットいかんではどんな考え方だって出てくるわけであります。そうなると、財政改革をしなければならぬ、やれ歳出カットだ、やれ増税だとひいひい言って議論するのがばかばかしくなって、まじめに議論しておれないなという部分があるような気がするのですよ。したがって、いろいろな経緯で六十五年が出てきたにせよ、少なくとももっと政府を拘束する、あるいは強制力のある政治公約的な年次であるというふうに私は大臣に答えてもらいたいと思うのです。
  165. 竹下登

    竹下国務大臣 結局、この各種試算についていろいろな議論をいたしてみますと、やはり何を基準にとるかということで、一番議論の分かれるところは、潜在成長力を何ぼに見るか、それに伴う名目成長率をどう見るか、こういうことであります。したがって、それの見方から議論をいたしますと、潜在成長力という問題は、とにかく一つは資本あるいは設備投資、一つ労働力、一つは技術革新等三つの要素を組み合わせてみても、技術革新等がどういうふうに変化していくかということから、きちんとしたものが非常につかみにくいというのが現状のおよそ共通した認識だと思います。  ただ、米沢さんの御指摘になる、国民に理解を求めるためのいろいろな数値を出すのはそれなりにいいとしても、政府はこの道を選びたい、だから六十五年はまさに政治公約だという形の方が国民によりわかりやすいではないかということは、私も理解できます。そうしたものをつくるまでの間にこのような問答が必要じゃないか。ひきょうなようでございますが、私もまだ数年生きておりますし、米沢さんはもっともっと長らく生きておられる方でございますから、その辺で一層議論を詰めてみたいところだな。本当に、つい笑いましたけれども、正真正銘天地神明に誓ってそういう考え方であります。
  166. 米沢隆

    米沢委員 その議論とまた別に、今日の段階におきましても、もう御承知のとおり、官界にも政界にも財界にも、各界において赤字国債発行の解消をもっと時間をかけてやったらどうだという議論が実在していることは事実ですね。その論拠は、簡単に言うならば二つあると思うのです。  一つは、先ほど出されました試算を見る限り、例えば借換債を発行して一般歳出伸び率ゼロにしないと解消できないような数字なのであります。その他のケースを見ましたら、みんな六十五年度における要調整額、いわゆる財源不足額は最高で十四兆五千億、最低でも三兆四千億に達するように試算ができておりますから、もうこの「増税なき財政再建」という看板は打ち捨てない限り、こんなのができるはずがないじゃないかという意味で、六十五年度説は余り根拠がない。その上、自然増収をふやすような財政上のてこ入れを今の段階では政府はとろうとしてない。ますますだめになるだろうという意味で、六十五年なんか延ばしたらどうだという議論。  もう一つは、いつも議論になりますように、赤字国債ゼロを余り急ぐ余り、結果的には今政府がとろうとしておられる財政縮小均衡政策がこれからも続く。そうなった場合には、過去の経緯から見てもわかるように、税収不足は慢性化して、赤字国債削減に回すような税収は減りこそすれふえない。六十五年度目標を強行すれば、角を矯めて牛を殺すような危険があるというところまで言う人もおる。  そういうことで、結局赤字国債をゼロにしていく手段、方法論の違い、考え方の違いによって、赤字国債発行ゼロの時期を時間をかけて延ばしたらどうだ、この二つの論拠をもってそんなことを言う人がおると思うのです。これは今大蔵大臣にとっては異論だと思いますが、そういうものについてどういう反論をなさいますか。
  167. 竹下登

    竹下国務大臣 政府の責任において八〇年代後半における経済社会の展望をお示しし、努力目標が設定された限り、今この旗をおろすわけにはいかない。今米沢委員の御指摘のような御議論は、基本的にはやはり潜在成長力を何ぼに見るかということに発想の原点があるような気がしております。それを仮に過大に見積もった場合、時に取り返しのつかないことになる。  私は、よく企業経営に対して考えるのでございますが、企業経営の場合だったら、今借入金に依存をして設備更新をした場合、それが果実を生むのは数年先であるかもしらぬ。が、財政の場合は、財政の持つ単年度主義からして、言ってみればその間は赤字国債増発のままで過ごします。仮にそれが理解を得たとしても、経済社会の変動によってその先それが不首尾に終わった場合のリスクというのは余りにも大き過ぎるんじゃないか。そうなると、やはり国民の理解と協力を得ながら、確かに行政需要も年々、なかんずく高度経済成長期にどんどんふえておりますから、それの施策制度の根源にさかのぼってまずは締めて、そして財政の対応力をとにかく回復したその時期を一時期と画してそれに邁進すべきではないか。だから縮小均衡と言われます。私の顔は鏡で見ても余り縮小均衡みたいな顔はしていないけれども、拡大均衡と言ってくださる人は一人もいない。これも世の宿命かなとも思いながら、そういう拡大均衡路線で、例えば今少し景気が上向いたから、この機を逸せず活用すべきだという議論と、私どもが主張しておる、若干上向いた時期だからこそ財政改革に絶好な時期としてこれをとらえるべきだ、こういうところの分かれというものがあって、それもさかのぼってみますと潜在成長力の見方によって考えが分かれてくるのかな。しかし議論をすればその問題は、おのずからのコンセンサスというものは出てくる。そういう議論が、いっぱい試算を出したから余計のことこのようにして起こるようになったということは、ばらばらいっぱい出して不安を醸成したという見方も成り立つが、ばらばらいっぱい出したから、お互いの議論が始まってだんだんコンセンサスを得る。二度三度使った言葉ですが、急がば回れみたいな感じになっているのかな、こういうような感じがしております。
  168. 米沢隆

    米沢委員 私も大臣がおっしゃるように、潜在成長力をどう見るかという問題に最終的には帰着する問題だ、そう思います。企業の設備投資に例をとられて今お話をなさいましたが、それはそれでよくわかるのでございます。しかし一方では、例えば家計の赤字削減と国の赤字削減とは違うという論も、これはやはり説得力があるような気がするのですね。過去五年間の我が国の財政運営あるいは経済運営を見てみますと、景気動向から見て大変大事なときに、財政収支を図るために増税をやるとか、あるいはまた減税を放置するとか、あるいはまたただ機械的に赤字国債を減らしていって、最終的には税収不足をつくったとか、確かに一方では石油ショックによる経済の変動もありましたが、やはり一面では政策不在によって税収欠陥をつくったということもある程度反省を込めながら、やはり反省の糧に入れることが大事ではないか、私たちはそう考えておるのでございます。  そういう意味で今度の試算結果はまさに試算結果でございますが、少なくとも我々は、その試算結果の中にそのような反省が、あるいはまた政府の新しい展望の中にそういうものが少しぐらい加わってもおかしくないのではないか、そういう気がしてならぬところに、どうも大臣のおっしゃるところがわかりにくい面があるのではないかと私も考えております。いわゆる財政の役割を果たしながら赤字国債をゼロに持っていくというその視点が、どうも今度の試算結果等を見ても、そんなのは完全に排除されてあのような試算になっておる。ですから、量的にも財政は身動きできませんという資料にはなっても、やり方いかんによってはもっと財源不足は減りますよというようなところも、一つか二つぐらいは資料をつくられて提示されるということの大事さをわかってもらえないだろうかと思うのです。
  169. 竹下登

    竹下国務大臣 その話はようわかりました。私ども、基本的に潜在成長力をどう見るかというところに帰結するというのは、今の試算の根拠になっておるいわば名目成長率、そしてそれを、今度の八〇年代の後半の「展望と指針」は、私よく言う言葉ですが、「七、六、五抜きの四、三、二、一」、数字はまさにそれしかない。すなわち名目成長率六ないし七%で五がなくて、四の実質、三の消費者物価、二の失業率、一の卸売物価と、まさに「七、六、五抜きの四、三、二、一」。この間豪州の総理にその話をしましたら、手帳につけておられましたから、まんざらでもないな、こう思ったのですけれども、そういうことで、悪く言えば議論を吹っかけているわけですね。  その中で、今おっしゃいましたように、さようしからばそれを支える公共投資というものをこうやるんだといって、それの財源は建設国債だとか、こう言いながら、この間お出しになった、貴党の大内試算というものが出てきたわけですね。それはなるほど、私どもがお出ししているものよりも公共事業に対する政策意図があらわれているから、それはつやはついています。しかしその場合、やはりそれがいわゆる金融市場に対して金利を押し上げることにどういうふうな作用をしてくるのかな、こういうことと、それから、かつてと違いまして、公共投資というものがだんだん土地代に対する吸収とか、いろんな面があって、乗数効果がかつて我々が考えたときほどは効かないじゃないか、こういう議論も出てくる。そういうものをお出しいただいたから、私もここでそういう議論ができるのであります。  したがって、もう一つ考えていった場合、言ってみれば野放し——野放しとは申しませんが、ある種の潜在成長力等あるいは名目成長を高目に見た場合の調整インフレ的な問題にこれが転移していったら、これは終戦という大ショックを受けた後であったから、国民はあのインフレを精神的にも吸収し得たが、安定社会になったときの調整インフレ的なものを吸収するということが現実可能であろうか。やはり物価のいわゆる安定、インフレなき安定成長ということからすると、そこまで踏み切るのもいかがかな。そうなると、それはどこで判断するかということになると、毎年度毎年度の予算編成の際に、景気動向を見ながら判断していかなければならぬ問題かなというと、私もまた自己矛盾を感じて、それなら何でおまえ大蔵大臣やっているんだとみずからの心に言い聞かしたり、いやまた今難しいところだから、希望者がないからやっているのかなとも思ってみたり、悩み多いところを率直に申し上げます。
  170. 米沢隆

    米沢委員 ある新聞記事に「六五年度赤字債めぐり中・河不一致鮮明に」というような見出しで書いてあるのです。何も閣内不一致を喜ぶようなものではありませんが、明らかに今大蔵大臣がおっしゃったような物の考え方と河本さんの考え方は、突き詰めれば一緒のところはあるかもしれませんが、ちょっと考え方が違う。  そこで、ちょうど十七日の国会論議で河本長官が、いわゆる公共事業の大幅繰り上げや大型補正による事業量の追加など財政金融政策の機動的運営、それから所得減税や投資減税も含めた税体系の見直しなどによる内需拡大策で、景気刺激と税収の自然増による財政再建を図る方向で、大蔵省や自民党に検討を求めたことを明らかにした、こう書いてあるのですね。その点は、私も現場を見ておるんじゃありませんからわかりませんが、少なくとも河本長官としては、河本流の物の考え方で、一回財政改革みたいなものを考え直してみることも必要ではないかという投げかけをされたのではないかと私は思っておるのです。  その明くる日の新聞に、これは先ほど伊藤委員もおっしゃっておりましたが、いわゆる巨額の歳入不足が必至である六十年度以降の財政対策を考える上での財政哲学をまとめてもらう、第二臨調の「増税なき財政再建」路線や、六十五年度赤字国債発行ゼロという財政改革の新目標などの条件や制約を考慮しないで、白紙の立場から中長期の財政再建プログラムを一回検討してみてはどうかというようなことを自民党の首脳が語った、藤尾政調会長が村山元蔵相に対してそのような依頼をしたというようなことが書いてありました。  あわせて考えてみますと、先ほどの議論とは別に、やっぱり河本さん流の物の考え方で、財政再建というものを根本的に一回検討し直して、新しいプログラムができないものかどうか、そういうものを考えてみようではないかということが自民党の中でも広がっているやに感じるのでございますが、実際は、先ほど申しましたように、大蔵省が出された試算結果、それはそれでそれなりの資料でありますが、同時に、もっと自然増収をふやすような方向で財政再建を考えながら、財政改革を考えるというような視点で一回計算し直そう、計算してみようではないかという動きがあるのではないかと思うのだけれども大臣はそのあたり、実情について、わかったら教えてもらいたい。
  171. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、河本経済企画庁長官、これは経済運営の政府の責任者であるわけであります。その河本大臣から、政府・与党連絡会議の席上で、今度大臣になった、で、例えば税の問題は、昨年の千五百億のときからの継続したものとして、これをすぐさま手直しすることはできない、が、中小企業投資減税等については、通商産業省からも要望しておるようだが、そうしてやった方がいいじゃないか、こうした趣旨の発言がありまして、それからなお、そうした税の問題をも含めて、財政金融、これは予算を決めた段階で公式に決まっておるわけでもございますが、その機動的な運用ということについてはお互い心しなければならぬぞ、こういう趣旨の御発言をされ、大蔵省においても勉強してもらいたい、党においても勉強してもらいたい、これは公式に本会議場等でも御答弁なすっておるところであります。経済運営の責任者からの御提言でございますから、当然私どもも勉強しなければならぬし、そうして税調等にも報告しなければいかぬ課題だ。  そこで、私もこうして毎日忙しいものですから、なかなか連絡の機会ございませんが、藤尾政調会長も、どこかでだれかのフリートーキングから始まって、税制に限らず、総体的な財政運営の問題について勉強すべきじゃないかという考え方はあると思っております。これは平素の対話の中にそれが感じられます。ただ、どういうふうに決まったかということは、まだ正確に把握しておりませんので、申し上げるとミスリードしてもいけませんから控えておきますけれども、そういうところで私どもがいつも勉強してきた問題としましてはどういうことかなあというと、金融の機動的な運用ということは、少し遅かったとか早かったとか、早かったと言う人は余りおりませんでしたけれども、公定歩合が下がって、だんだん実勢金利が下がり、そうして、どちらかと言えば金融は緩んでおる、だから、これは機動的に運用されつつある現状が今の現状ではないかなあというふうに思います。しかし、例えば、時として中小企業三公庫等の資金不足を来すようなことがあれば、当然弾力的にこれには対応していかなければならぬ問題だ。  そこで二番目、二番目というよりか、先におっしゃいましたが、今度は財政運営の弾力化、こういうことになりますと、公共事業執行というのは、これは一つの大きなポイントでございます。これは私もその係、そういう担当を党内におるときに随分しておりましたので、それをどういうふうに対応していくかということになれば、やはり諸情勢をよく見なければならぬ。例えば、たまたま私が前回大蔵大臣でありました昭和五十四年は、物価が上がり過ぎまして、景気が過熱したというよりも物価が上がり過ぎて、国会開会中に、五十五年の二月、三月、公定歩合を上げさせてもらった。これは一つ金融の弾力的運用。そうして公共事業は後倒しをさせていただいた、それと同じようにまた前倒しをしたこともある。  そこで、きょう衆議院を上げていただいた五十八年度の補正予算、ここに、俗に私どもがゼロ国債と呼びますが、債務負担行為というものを含めたものが中身にある。これが景気をどのような形で作動させるであろうか。これはいわば債務負担行為でございますから、契約が行われてそれが発動されたら、実質上の上期、第一・四半期でございましょうね、そのある程度の下支えにはなっていくであろう。そうすると、全体としての上期をどれぐらいにするかというのは、本当は予算審議の過程において、それが通ったことを前提にして、どれぐらいにするというのを正式に部内で議論すべき課題ではないかもしらぬが、私どもなりには考えておかなければならぬ課題であるなあ。後倒しにする——後倒しにはなかなかできぬでしょうが、いわゆる自然体でいくのか、あるいはやや前倒し型でいくのか、相当な傾斜をかけるのか等々をも含めながら、諸般の事情を見ていかなければならぬなあ。これはやっぱり財政の弾力的な運用の問題だと思うのです。  それで、それがいきなり補正予算までに飛び込むということは、本当は、従来本予算を審議していただいておるときには、仮定としては申し上げることがあっても、本予算を審議しているときに補正予算を口にしたら、その途端に、されば修正してこい、こういう議論が出てくるから言わないことがいい、タブーであるというしつけを、私も幼少のころから受けてきたわけでございます。そういうことを考えながら、補正問題は別として、公共事業財政運用の問題については、民間が若干息づいておるときでありますから、過熱させる要素になってはいかぬとも思いつつ、諸般の情勢を見ながら、それこそ米沢さんの話を聞いたりしながら詰める精神的作業は行わなければならぬな、こういう感じがしております。
  172. 米沢隆

    米沢委員 時間ももう少ししかなくなりましたが、最後に六十年度の予算編成に関連した問題をちょっと触れてみたいと思います。  六十五年赤字国債ゼロという目標を是とした上で、問題は、達成可能性だとか、あるいは実現の方法いかんという問題について入ったかったのでございますが、時間がございません。  そこで、当面、五十九年度は御案内のとおり大変苦労をなさったけれども、初年度から年額一兆円程度の国債減額という目標は大きく崩れているわけでありまして、六十年度を見てみましても、本格的な国債の支払いが始まりますので、今年度より格段の厳しさがあるような数字になります。五十九年度は自然増収分が二兆二千億。この増加分を国債費と地方交付税の増加分、合わせ二兆五千億で食いつぶしてしまって、三千億ぐらい足りないという状況で御苦労なさったのですが、同じようなことで六十年度を見ますと約一兆円足りませんね。そういうことで、五十九年度の予算編成以上に六十年度は厳しかろう、こう拝見しておるのでございます。  そこで、これは第二年度になるわけでありますから、少なくとも第二年度からは、試算によると一兆八百億ぐらいの減額をするのが一応の目標みたいになっておりますから、一体そういうのができるのかどうかというのが第一点。また、それをするために歳出抑制を今後も引き続いて頑張っていただかねばなりませんが、六十年度にはどこに力点を置かれるのか、あるいは増収対策として六十年度はどこに力点を置かれるのか。例えば、広告税の新設だとか公益法人の課税の範囲を拡大するとか、引当金の圧縮だとかマル優の見直しとか、あるいは利子配当課税等の議論だとか、いろいろと出ておりますけれども、当面、これから議論になる問題ではありますけれども、今大蔵省として、歳出抑制の力点の置き方、いわゆる増収対策としての力点の置き方、どのあたりに力点を置いて今後検討を進めていかれるのか、具体的な検討課題を例示しながら大蔵委員らしい御答弁をいただきたいと思っております。
  173. 竹下登

    竹下国務大臣 これはなかなか難しい問題です。それで一兆八百億、言ってみればこれは去年一兆で六十五年のものをことし五千数百億でしたから、その不足分を等差で積んで一兆八百億、こういうことになるわけです。弾力的運用としては、私は等差の議論というのは必ずしも適切ではないと思います。が、今のところ仮定計算で置くとすれば、やっぱり等差でやらざるを得ないな、こういうことで等差で置いておるわけであります。したがって、これは一つの念頭に置かなければならぬ問題意識だと思っておりますが、きょう大体こういうふうになるだろうと言うだけの自信はちょっとありません。  それから二番目、それをやるにしても一体どこに歳出削減の力点を置くのだ。そしてもう一つ、三番目は、増収措置はどこに力点を置くのだ、こういうことですが、歳出の問題につきましては、率直に言って、たゆまずうまず制度施策の根源にさかのぼって努力しなければならないけれども、今予算審議していただいておるさなか、もうこういうところに力点を置いてということは、それじゃ、ことしもっと力点がそこへ置けたじゃないか、こういう議論になりますね。それだからなかなか難しいかな。そうして今度、増収措置の方はどうだと言われますと、税制というのは絶えず見直しを行っていかなければならぬということでございますので、先般、中期答申でいただいたような点すべてを念頭に置いて勉強はしなければいかぬ。しかし、その勉強する責任者が今みんなこっちへ来て貴重な意見を拝聴しているわけですから、その意見を拝聴して、国会が済んだらいよいよ本格的に取りかかる。だから最初も申し上げましたように、概算要求のときが問題だな、こう思っております。  正確な答弁になりませんでしたけれども、正直者でございますので、正直な心境を申し上げたというわけであります。
  174. 米沢隆

    米沢委員 終わります。
  175. 瓦力

    瓦委員長 箕輪幸代君。
  176. 簑輪幸代

    簑輪委員 まず最初に、本会議でもお尋ねした大型間接税の導入問題ですけれども、総理大臣は今考えてないというふうな答弁でございましたが、大蔵大臣はいささか違うようにも思える前もないことはないということで、今までのいろんな論議を聞いておりますと、大体政府は建前と本音を使い分けているというような言われ方もしているわけですね。ここでは本音でぜひ率直に御答弁をいただきたいと思います。  総理大臣はともかくとして、大蔵大臣としては、よりコンセンサスが得やすい環境が逐次整備されてきているというようなことをお述べになっていらっしゃる場所もあるのですね。大型間接税導入問題、課税ベースの広い間接税という問題について、環境が逐次整備されてきているというその具体的な中身、どういう状況のもとでなら導入できる、それで今どんなふうに環境が整いつつあるというふうに認識していらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  177. 竹下登

    竹下国務大臣 建前と本音という話がございましたが、本会議では建前で委員会では本音なんでいったら私、除名されますので、それはいけないことだと思っております。いつもいつも誠心誠意本音でお答えしなければならぬと思います。  そこで、大型間接税の問題で機が熟したとか、そういう表現はしたことないのですよ、私も。それは言葉を選ぶことはかなり慎重な範疇に入る人間だとみずからを位置づけておりますので。私が申しておりますのは、五十八年、去年の十一月ちょうだいした中期答申で、「課税ベースの広い間接税につき、当調査会は、」「避けて通ることのできない検討課題であり、引き続いて論議を重ねることが適当である」こういうふうに調査会でなされております。そして「社会経済情勢の変化を踏まえ、間接税体系の合理化を図るため、物品、サービス等に係る課税ベースの拡大等について検討を続けることとすべきである。」こうされておる。したがって、三年に一遍お願いして国税と地方税のあり方、こういうことで税調の偉い先生方に諮問するわけでございますから、その中期答申というものは尊重して勉強をしなければならぬ課題だと思っておるわけでございます。  そこで、総理がおっしゃっております大型間接税をやる考えはない、それは私も内閣一体の責任でございますから、私も大型間接税をやる考えかと聞かれれば、総理からお答えがあったとおりでございます、こういうことになるわけですね。ニュアンスの相違があるんじゃないか、こういう御議論でございますけれども、別にニュアンスの相違はございません。これからまた税だけの議論をしますと、大型とは、私も困りまして、中型ないしは小型でないものが大型だと答えてみたものの、みずからに言い聞かしてふまじめであったかなと思いつつも、それしか答えようがないかなと思ってみたりしておりますので、いわば税というのは絶えず見直しの対象にあるべきものだという考え方を申し述べたのであって、総理と考え方が違うというふうに御理解をしていただかない方がいいというふうに考えております。
  178. 簑輪幸代

    簑輪委員 総理は、導入するかどうかと言ったら導入しないというふうに言われるわけですけれども、税務当局としては将来展望を踏まえながら準備をしていかなければならないという責任もあるわけですよね。そういう点でいろいろと論議の中で、一方では導入はしないと言いつつも、避けて通れない課題だと言いながらだんだんなれさせていくといいますか、そういう役割をば大蔵大臣が果たしながら、だんだんと導入の心構えを国民にさせていくというふうな、そんな感じで受けとめているわけですね。  そして、あちらこちらで論議をされる中で、課税ベースの広い間接税ということになると、直接税と違って税痛感といいますか痛税感といいますか、そういう税の痛みというものが少ないものだけに取りやすい税金である。したがって、安易にそういうことをしてはならないと言いながら、避けて通れない検討課題ということを繰り返しておられるわけで、その点で避けて通れない検討課題ということと慎重にということとの中で何か準備がどんどん進んでいくような気がしてならないわけです。直接税と比較して税痛が少ないということにならないような環境を熟させていかなければならないということを、大臣はあるところで言っておられるわけですけれども、その中身がちょっとわからないものですから、教えていただきたいと思います。
  179. 竹下登

    竹下国務大臣 世論誘導を巧みに行っておるというほど賢くないです。これは皆さんの方がはるかに頭がいいですから、とてもじゃないが、世論誘導する能力があるとうぬぼれてはおりません。  それから、痛税感の問題ですけれども、今まで使われた回数としては少ない言葉なんですよね。私がかねてから直接税と間接税というものを議論する場合に、間接税はどういうところがいいのかといったら、選択の自由があるじゃないか。それと同時に、もう一つの欠点というのは、私は痛税感という言葉でそれを呼んでおるわけです。直接税というのは簡単に言いますと、いわゆる課税される人と払う人とが同じ、これが直接税でございますね。間接税の場合はそれは違うわけでございますから、したがって、どうしても痛税感、税に対する痛みというものがなくなると、いわば歳出を監視する厳しさが失われていく。  それで、ヨーロッパのある国等を考えてみると、言ってみれば、その痛税感が失われたために租税負担率がどんどん上がって、かつては、私、国会に出て二十六年目ですが、二十五年前のあれを見ると、日本の一人当たり所得の倍あった。それが十年前にはほぼとんとんになって、今や日本の六割ぐらいに下がったり八割になったりしておる国等があることを見ると、私は一つの見方として、痛税感の足りなさというものが歳出に対する厳しさを失わしめたことではないかなという、これは私なりの感触でございまして、大蔵省としての統一した、痛税感とは何ぞやという答えにはなりませんけれども、そういうことをかねて申し上げておるわけでございます。特に、これは国会議員じゃございませんが、間接税主導型の議論をされる人もたくさんいらっしゃいますわね、日本には一億二千万もの人がおるわけですから。その方々に対して間接税万能論に対するある種の警鐘として、私が痛税感というような言葉を使っておるということで、余り学問的な言葉じゃございません。
  180. 簑輪幸代

    簑輪委員 安易に税が取りやすいところから取る形になるということが間接税論議の中でも言われるわけですので、そういう意味で税の痛みを感じるということの方が秋本来のあり方ではないかということは、前にもこの委員会でも議論されたことがあるわけですね。ですから、この点では私どもの方としては、今後こういう痛税感という言い方ではないにしても、税の負担感という言われ方をすることもあります。そういう言い方をしても、税の負担感はない、あるいは少ないにしても税の負担はあるというところのごまかしというのがしばしばあるので、私どもはこういうふうな大型間接税の導入というのは、非常に危険な税制として果てしなく広がっていく重要な問題指摘だということで論議さしていただいたわけです。何としても、この大型間接税導入は五十九年度だけでなく、今後もやめて、国民の願いにこたえていただきたいというふうに思います。時間がないので、私はきょうはちょっと……。  物品税の改正に絡んで、今回OA事務機器などについても論議されたようですけれども、結局これは検討課題ということで今後に延ばされたように聞いております。このOAというのが今非常に大きな問題になっていまして、さまざまな問題が投げかけられておりますけれども、きょうはコンピューターの端末機VDTに関する健康障害の問題についてもぜひ大臣に御理解をいただき、後ほど御感想もお尋ねしたいというふうに思います。  私は、昭和五十七年二月二十七日の予算委員会の分科会でこのVDTの健康障害の問題を取り上げて、行政面で適切な対策をとるように求めてまいりました。その時点よりも急速にこのVDTは普及していますし、健康障害もはるかに大きく広がっているというのが実態です。  この問題を指摘しますのは、一つは、こういう機械を取り入れるところというのは銀行とか金融証券保険、新聞、航空業界などを初め、官庁にもどんどん入ってきている。大蔵省にも入ってきているわけですね。国税庁などでもこのコンピューター問題というのは重大な問題になってくるわけですが、こういうところで特に婦人労働者が従事している割合が大変高いという問題でも黙視できない問題だと思います。特に健康障害というのは労働者本人だけでなくて、婦人の場合は流産とか障害児の出産というような問題なども出ているというふうに諸外国では報道されている、大変重大な問題になりつつあります。  で、こうした問題指摘を踏まえまして、一昨年に私が論議をした以降、一体どのようなふうに進展しているのかということをまず最初にお聞きしたいと思いますが、通産省では五十七年から情報処理技術者問題総合調査の一環として、人事管理体制等について労働省の代表も含めた調査研究を進めるというふうに御答弁をいただいておりましたけれども、それがどのように取り組まれているのか。それから、今後この調査の結果を踏まえてどのように取り組んでいかれるのかという点についてお尋ねしたいと思います。
  181. 島弘志

    ○島説明員 一昨年でございましたか、先生に御指摘いただきまして、早速関係の工業会等を指導いたしまして文献収集等に当たってまいったところでございます。さらに昨年になりまして、私ども局長の私的な諮問委員会でございますけれども、機械安全化・無公害化委員会というのがございます。そこの中にVDT分科会を設置をいたしまして、各界の有識者の方々にお集まりをいただきまして、現在鋭意調査検討を行っているところでございます。  検討の視点でございますけれども、もちろん今御指摘のVTDの作業と健康障害という一点に大きな焦点を当てておりますけれども、同時に、御指摘のように、VDTというのは情報化時代の代表的なマン・マシン・システムでございまして、機械と人間との接点に位置するものでございます。そういう意味では、より使いやすい、あるいはより人間らしいといいましょうか、要するに人間にとって違和感を感じないような、そういったVDTというものを目指すという視点も大事ではないか。そういった視点も踏まえまして、現在総合的に検討を進めているところでございます。  私どもといたしましては、この検討結果を踏まえまして、関係各省とも御相談をしながら、関係業界の指導あるいは技術開発の促進等々、所要の措置を講じてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  182. 簑輪幸代

    簑輪委員 そのVDT分科会で調査検討しておられるということですけれども、いつごろ取りまとめが出されるということなんでしょうか。
  183. 島弘志

    ○島説明員 検討を始めますと、なかなか複雑でむずかしい問題もございますし、それから今申し上げましたように、単にミニマムな、どうこうということ以上にいろいろ考えていかなければいけない視点もあるということで、もう少し時間がかかるかと思っております。五十九年度中には結論を出したい、そういうような方向で現在検討しておるところでございます。
  184. 簑輪幸代

    簑輪委員 その五十九年度中に結論というのは、何らかの指針みたいなものが出されるという意味でしょうか。
  185. 島弘志

    ○島説明員 そういうことも含め、なおかつ技術開発の方向等々も考えてまいりたい、かように考えております。
  186. 簑輪幸代

    簑輪委員 それについては労働省ども参加して進められているというふうに承ってよろしいのでしょうか。
  187. 島弘志

    ○島説明員 労働省の研究所の方、研究者の方に御参加をいただいております。
  188. 簑輪幸代

    簑輪委員 それでは次に労働省の方にお尋ねします。  直接労働者の健康障害を防いで安全な職場をつくっていくためには、労働省が非常に責任が重いと思いますけれども、一昨年に私が問題を指摘をしまして以降、労働省としてどのような取り組みをされたのか、お尋ねします。
  189. 福渡靖

    ○福渡説明員 お答えをいたします。  御承知のように、昭和五十八年度から三カ年計画ということで、VDT作業による健康影響の問題ということを解明する調査研究を始めております。御承知のように、VDT問題というのはOA化が進む中で一つの大きなシェアを占めるということで、五十八年度にはこのVDT作業による健康への影響というものを中心にして進めてきております。それで、五十八年度は、そういう観点から、現在約千事業所を対象にいたしましてアンケートによる調査、それから引き続きまして個人調査に入って、現在調査中というところでございます。
  190. 簑輪幸代

    簑輪委員 三カ年の計画で調査をするということでしたけれども、それは、どこがどんなふうな調査をするということでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  191. 福渡靖

    ○福渡説明員 労働省の附属機関である産業医学総合研究所と、それから関連機関といいますか、大学である産業医科大学に調査研究を委託しております。
  192. 簑輪幸代

    簑輪委員 それぞれの研究のテーマとか、特に重点的にこのような点について調査をされたいというような指摘をされた上で、委託研究か何かという形になっているのでしょうか。
  193. 福渡靖

    ○福渡説明員 おっしゃるとおりでございまして、OA化に伴う作業環境や労働態様等の変化が労働者の健康に及ぼす影響ということでお願いをしておりますが、先ほども申し上げましたように、五十八年度から手がけておりますのはVDT作業に限るというような形で、そこに焦点を絞ってお願いをしております。
  194. 簑輪幸代

    簑輪委員 この二つの機関は、同じことを同じように調査されるのでしょうか。
  195. 福渡靖

    ○福渡説明員 産業医学研究所の方は、労働の現場の実態に即した問題を取り上げる、それから産業医科大学の方は、学問的にそれを解明をする部分を担当するという形で分担をし、共同するという形で研究を進めるということにしております。
  196. 簑輪幸代

    簑輪委員 三年計画ですけれども、途中で何らかの経過報告なり中間報告なり、あるいはその段階での提言なりというようなことは予定されているのでしょうか。
  197. 福渡靖

    ○福渡説明員 当初から三カ年計画ということでございますので、一応三年間まとめて報告をいただくというのが建前でございますが、御承知のように緊急的に対応しなければいけないようなときには、またその時点でそれぞれの委託機関にお願いをして取りまとめをいただくこともあり得るというふうに私は承知をしております。
  198. 簑輪幸代

    簑輪委員 そうすると、そのいずれの機関からも近々に何らかのものが出るという段取りにはならないのですか。
  199. 福渡靖

    ○福渡説明員 今のところはしておりません。
  200. 簑輪幸代

    簑輪委員 それでは、それだけでなくて、ほかにまだいろいろと労働省が取り組みをされていると思いますけれども、特に中央労働災害防止協会に設置されているOA化等に伴う安全衛生対策研究委員会というのがあるようですが、ここでどんな問題を取り上げて、今後どのような提言がされるか、その話をお聞かせください。
  201. 福渡靖

    ○福渡説明員 今御指摘がございました中央労働災害防止協会に、学識経験者による研究委員会を設置しております。これはもちろん中央労働災害防止協会が設置をしておるわけでございますけれども、私どもの方も、三カ年計画という基本的な調査研究を進めて帯いる傍ら、できるだけ急ぐべき対策があるとするならば、どういう点でどういう対応をするかという面も十分に考えていかなければいけない。こういうことで、その中央労働災害防止協会に設置をされております研究委員会に、今問題になる点は何なのか、それに対して今までどのような報告がなされているのか、それから、そういう報告を集約をすれば、どのような考え方労働衛生管理を進めるのが今の時点で一番いいのかということを御検討いただいております。  それで、行政としても、活用できる資料はできるだけ早く活用していきたいと考えておりますので、その研究委員会での研究報告書、これはできるだけ年度ごとに出していただきたいと申し上げておりますので、それがいつ、どのような形でまとめられるか、これは向こうの問題ではございますけれども、私どもの方も、昭和五十九年度にもその結果が十分に活用できるような形にしていきたいと努力をしているところでございます。
  202. 簑輪幸代

    簑輪委員 ことしの三月末までにこの研究委員会から結論が出されるというふうに聞いておりますけれども労働省もそのように把握していらっしゃるのでしょうか。
  203. 福渡靖

    ○福渡説明員 私どもも、そういう形で結果が活用できれば大変ありがたいという希望は持っております。
  204. 簑輪幸代

    簑輪委員 聞くところによりますと、ここと常時連絡をとって作業を進めておられるというふうに思いますし、また労働省としては、一日も早くこの対策について何らかの指針となるようなものをつくらなければならない必要性は痛感しておられると思うのです。だから、せっせと督促をされるだろうと思いますし、それに基づいて近々にも、労働省としての安全基準の指針づくりみたいなものが行われるであろうと新聞でも報道されております。労働省としては大体どこら辺をめどにそういうものをおつくりになる御予定ですか。
  205. 福渡靖

    ○福渡説明員 先ほども申し上げましたように、労働省は五十八年度から調査研究を委託して行っております。その結果を踏まえて労働省としての基準をつくりたいと思っておりますが、御承知のように、今も御説明いたしましたように、その途中であっても、行政として活用できる資料は十分に活用していきたい、そういう立場で行政指導の参考になるものは適宜、しかもできるだけ早く取り上げて活用していきたいと考えております。
  206. 簑輪幸代

    簑輪委員 何か非常にのんびりした御答弁ですけれども、とにかく事態は刻々と進行しておりまして、一日も早くそういう基準を出されるようにと労働者の中からも強い要望が出ておると思うのです。諸外国では既にそれぞれの実態を踏まえて安全基準も出されていたり、あるいはまた労働組合が労働協約なんかを結んでいろいろな規制を行っているということもどんどん進んでいるわけです。ことしの二月十四日にマスコミ・文化共闘会議というところからも、VDTの操作に伴って生ずるさまざまな健康障害を防止するためにということで、VDT機器の構造等の規格というものやVDT作業者の作業基準ということで研究調査、そして工夫をした綿密なものがかなり出されているわけですね。ですから、労働省としても、とにかく一日も早くこういうものをつくって、労働者の健康障害を未然に防止するという積極的な姿勢が求められているというふうに思うのです。ぜひ早急にそのような安全基準及びその指針と申しましょうか、そういうようなものを出していただきたいと強く要望しておきたいと思います。  大臣もこういう問題について、今たくさんの職場で障害が起こっている、それからこういう機器について税金をかけようとか、いろいろな問題があるわけですけれども労働者に与える健康障害というものを十分踏まえていろいろな対策をとっていただきたいと思いますが、大蔵省あるいは国税庁を所管する大臣として、ちょっと御感想をいただきたいと思います。
  207. 竹下登

    竹下国務大臣 OAは、この間勉強しておりますので言葉は知っておりましたが、VDTというのはビジュアル・ディスプレー・ターミナルだそうでございます。大体今度の予算を見ましても、バイオテクノロジーから、ソフトノミックスから、ハイテクから、テクノポリスから、片仮名の予算が大変ふえまして、私も難解でございましたが、今勉強させてもらってやっとわかりました。しかし、いずれにいたしましてもこうした問題につきましては、もちろん今労働省からもお答えいただいておりましたように、いわゆる健康管理という問題は大変大切な問題でございますし、また雇用の問題から見たならば、こういう問題で、機械化が雇用関係に及ぼす影響などというものもございましょう。したがって、私どもといたしましても、いまおっしゃったような御議論を体して絶えず対応していかなければならぬ問題だなという認識はさせていただきました。
  208. 簑輪幸代

    簑輪委員 ちょっと時間がないので、あと、五十九年度予算の中で歳出削減というのをせっせとやられて、特に大蔵省の方がマイナスシーリングというようなことを指示される中で、大蔵省があれこれ言うのではなくて、各省庁が自主規制するようになってきて非常に結構だみたいな話があるのですけれども、自分たちで制度施策の根本にまでさかのぼって改正とか手だてをとってくるようになったという感想を大臣は述べられたりしておりますけれども、その結果、私どもから言えば、いろいろな制度改悪というのが今回盛り込まれているわけです。福祉に関する制度で、本当に健康保険の改悪、そのほか年金の問題、奨学金の問題やらいろいろありますけれども、きょうはちょっと児童扶養手当の問題だけを簡単にお聞きしたいと思います。  今回児童扶養手当制度というものを改めるに当たって、所得制限の強化、それから父の所得による支給制限、それから支給期間の有期化、それから費用負担を都道府県に押しつけるといいますか、そういうようないろいろな改革といいますか手だてがとられるわけですけれども、こうした中で今回制度を変えることによって、従来の制度のままで支出していった場合と比べて財政的にはどれだけ節約できることになるのか、それをちょっとまずお聞かせいただきたいと思います。
  209. 土井豊

    ○土井説明員 今回の手直しによりまして、五十九年度におきましては約八億円の財政の節減効果があるだろうと見込んでおります。  なお、将来の問題でございますけれども、最近の離婚がどんどんふえている動向をどう見るかということによって不確定でございまして、現在、将来の推計につきましては検討中の段階でございます。
  210. 簑輪幸代

    簑輪委員 あれこれ手だてをとって節約できる財源はわずか八億円なわけですね。だけれども、これによって児童扶養手当をカットされる母子家庭にとっては本当に死活問題だということを考えますときに、これくらいの財源問題であるならば、こういう制度を変えるのではなく、従来の制度のままで、子供の人権問題、福祉の問題ということを考えてみましても、こうしたことはぜひやめていただきたかったと私は強く思うわけです。  そして、今度の問題の中で、例えば父の所得による支給制限というのがございまして、離婚時夫の年収が六百万程度を超えるときは支給しないという新しい制限を加えたわけですけれども、これは非常にひどい仕打ちだと思うのです。離婚のときに夫がどの程度の年収であろうとも、その後の母子世帯の生活と直接かかわり合いがないという場合もしばしばあるわけで、離婚のときにいろいろ取り決めた問題、例えば養育の義務も果たしてすべての人が果たしているかというと、現実はそうではないと思うのです。厚生省として、離婚後養育の義務を果たしている夫が一体どれだけあるのか、ちゃんとつかんでいらっしゃるのでしょうか。
  211. 土井豊

    ○土井説明員 離婚後の養育義務の関係でございますけれども、最高裁判所の調停離婚、審判離婚等の場合では約七割が父親が養育料を払っている。それからまた、これはちょっと古いデータでございますけれども、協議離婚の場合は夫から受けている者が約二二%、それから父母ともどもにやっているというか、両方合わせて約三割ぐらいの状況でございます。
  212. 簑輪幸代

    簑輪委員 調書でどのように定められようとも、現実にそれが履行されているかどうかということが明確ではないわけですね。それは最高裁判所の方も全部現実に履行されているかどうかまでを把握した数字ではないと思いますし、そういう点で母子家庭は大変厳しい状態です。離婚のときに六百万程度ということであったとしても、離婚後夫の収入が減ってしまったり、あるいはなくなってしまったりという事態も当然予想できます。そういう場合には一体どうやって母子家庭の福祉を確保していくことになるのか、それをお聞かせください。
  213. 土井豊

    ○土井説明員 離婚の際にはいろいろな経済的な取り決めが行われるだろうと思っております。例えば一時金的にお金を渡すとか、住んでいる家を資産分与として渡すとか、あるいは将来養育料を毎月幾ら払うというふうにいろいろな取り決めがあるだろう、そういう取り決めの内容は離婚時における経済状態そのものによってセットされるであろうという考え方が、今回の所得六百万という趣旨の導入でございます。確かに、例えばその取り決めの一つとして養育料を払うというふうに決めた場合であっても、おっしゃるようなケースというのは起こり得るだろうと我々は思っております。したがって私どもとしては、夫の所得が変動するからこの制度をどうこうするということは考えておりませんが、真にやむを得ない事情で気の毒な母子家庭が出てきた場合には、これが何らかの形で救済できるような規定を整備したい、そういうふうに考えておるところでございます。
  214. 簑輪幸代

    簑輪委員 端的に言いますと、離婚時六百万であっても、その後下がった場合には資格があるということになるわけですか。
  215. 土井豊

    ○土井説明員 下がったから直ちに救済するということは考えておりません。
  216. 簑輪幸代

    簑輪委員 それはとっても間違った考え方だと思うのです。そしたら、別れるときで将来の運命が決まってしまう。その後の変動を考慮されないということになると、生活はその後ずっと続くわけですから、これは非常に不届きな考え方だと私は思うのですね。  時間がありませんが、こういうようなことで、非常に母子家庭の実態にそぐわない冷たい仕打ちだというふうに私は思います。それで、こんなにまでして削る必要はさらさらなかったのではないか、児童扶養手当は従来どおり支給していくということでやってもよかったのではないかと思いますが、最後に大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  217. 竹下登

    竹下国務大臣 これは簡単に申しますと、児童扶養手当制度の社会保障政策上の位置づけをまず抜本的に見直して、いわゆる児童の健全育成を図ることを目的とする福祉制度というものに改めることであるというふうに、概念を私なりに規定しております。したがいまして、他の福祉制度と同様に、国と地方が応分の負担を分かち合うということになったものだ。これは厚生大臣と自治大臣がお話し合いをなさいまして、私もそこへ入れていただきまして、最終的に決着した問題でございますが、これとて私は、いささかきざな言葉でございますが、内なる改革一つだなあということをそのときにしみじみと感じました。
  218. 簑輪幸代

    簑輪委員 厚生大臣、自治大臣がどのような取り決めをされて、大蔵大臣が了解なさったとしても、結果を受けるのは母子家庭でございまして、そういう点で言うならば、今みんながこれは納得できないというふうに言っているわけですから、内なる改革というものがどんどんと進められることによって、いつも被害を受けるのは弱い者ということになる、けしからぬということを申し上げて終わりたいと思います。
  219. 瓦力

    瓦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十四分散会      ————◇—————