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野口参考人 三池炭鉱職員労働組合組合長の
野口であります。
去る一月十八日に
発生いたしました
有明鉱災害につきましては、
石炭対策特別委員会の諸
先生方には多大な御迷惑をおかけいたしました。また、国内
石炭産業全体及び
地域社会に重大な影響を与えましたことを重ねておわび申し上げます。
私
どもは、御
承知のとおり
保安技術職員を抱える係員
組織組合でありますが、特に
保安面、
生産面において直接的に関与するのが実際の
任務であります。したがいまして、今次
災害につきましては、私
ども組合員七名の
殉職者を含め大きなショックとその責務の重さを
痛感している次第であります。
石炭政策も第七次を数えまして、政策の基本であります厳しい自助努力とその遂行、そして石炭をめぐる諸情勢によりまして一層の奮起を求められておるところでございますが、私
どもも労使を挙げて自然
条件の悪化に伴いますコストアップを
自分たちのいわゆる自助努力で吸収することを
決意し、三池、砂川、芦別、いわゆる
三井石炭三山における合理化、省力化等に
協力してまいり、また取り組んでまいりました。
三井石炭の
保安成績は近年向上の一途をたどり、特に三池におきましては、
昭和五十六年暦年でありますが、百万人当たり
災害率七一・二、
昭和五十七年六〇・八、
昭和五十八年四八・五、この年、
有明鉱だけで申しますと三六・一と、従来に比べて驚異的な好成績を上げてまいったわけであります。これを私
どもは、人命尊重を基本理念といたしまして、
災害ゼロを目指し、明るく活力ある安全職場
確保に努力し取り組んでまいった成果として、
保安技術職員並びに
坑内に働く全
労働者の努力の成果として一定の評価を得てきたところでありました。それだけに、今次
災害は返す返すも残念でならないわけであります。
しかしながら、現実に
有明鉱災害が起こったことは事実であり、私
どもも予想される
災害原因については幾つかのケースを想定し、考えられる
対策については実施してきたのでありますが、先般、
事故調査委員会の
中間報告が取りまとめられ、その
内容にありました
火災発生の
早期発見、
連絡、指令、
消火活動、
退避及びその訓練、
保安諸設備の改善につきましては、
組合としても労使交渉の場に出した問題でもありますし、
中間報告の中に十分網羅されておりますので、その後これに添った
対策改善を行っているわけであります。
しからば、二度とこのような
災害を起こさないために
保安技術職員として今後どうあるべきかという点でありますけれ
ども、先ほど申しましたとおり、厳しい自助努力を遂行しているものの、やはり私
たちの手でやれるものとその限界を超えるものが残念ながらあるのであります。例えば技術的
要因と人的
要因に分けてみますと、技術的
要因といたしましては、
災害発生箇所に
煙感知器等
保安機器が
設置されていなかったことが指摘されておりますが、御
承知のとおり、
坑内におきましては採炭、掘進現場が常に移行しているわけでありますから、万全の
保安対策を施すとなると
保安機器及び
エアハウス等、
坑内のそれぞれの
箇所の
状況にマッチした措置をとっていくということでなくてはなりません。しかし、
坑内全般の一定の
保安対策に加え、どうしても第一線に働く人
たちが稼働いたします切り羽重点の
保安を私
ども組合としましても優先的に考え、また
組合員に対する啓蒙をやってきたわけであります。したがって、今度のような人のいないところで起きた場合のトラブルをどうやって
早期発見し対処するかにつきましては、改めて深く
反省を求められるところであります。
それには、従来にも増して各種センサー等の適正な
配置及びセンターにおけるデータの処理能力さらには情報を的確に伝達する技術やシステムの確立が必要であり、その裏づけとしての
保安補助金等の充実が全国的な課題であると考えるのであります。
また、三池におきましては深部移行、奥部展開に伴います薄層化、異状盤圧、断層、高温等、自然
条件が悪化する方向にあります。これらに対する危険予知技術の開発を初めとする
保安技術開発も推進いていかなければなりません。
こうした現状を踏まえ、今次
災害の類似
箇所のみならず
坑内全般にわたり
保安監視の目を光らせ、仮に
事故が
発生した場合の
退避及び
連絡方法につきましてはあらゆる角度から万全にしておかなければならないという、まさに私
どもにかかる責務と守備範囲は拡大し、これに対応する技術向上そのものが強く望まれているのであります。
次に、こうした技術の進歩に対応する人的
要因が問題になってくるわけでありますが、幾ら技術が進歩し
保安機器が完備しても、基本的にはそれを操作し知覚するのは人間の五感に頼る部分が大きいのであります。また
保安確保の大前提として、やはり働く人
たち全員のチェックの目が一番確実であると私
どもは受けとめているのであります。
そのためには自然
条件や
保安技術の進歩に的確に対応し得る知識、技能の充実が必要
条件となってまいります。この種の教育については従来からも労使間で話し合い、充実
強化を図ってまいりましたが、近年若年
労働者の第三次産業志向という世の中の傾向や工業高校における石炭
関係の
専門課程もないという実態からいたしまして、資質あるいは人材
確保の面からいうと企業内教育主体すなわち実際の
作業の中で並行的に技術教育をしていかなければならないという現状であります。現時点では何とか維持しておりますものの、将来の
保安管理要員としての人材
確保を考えますときに一抹の不安を隠せないのであります。したがいまして、この点における石炭会社と公的教育機関及びこれに準ずる教育機関としての連携の中で、こういった人材育成
強化のための施策を諸
先生方に
お願い申し上げる次第であります。
私
ども組合としましては、厳しいエネルギー情勢の中で生き残るためには、全
組合員一致
協力して、発想も新たに徹底的なコスト低減努力を図り、内外炭格差による需要
確保と炭価問題、
炭鉱間格差と財源問題、
労働力
確保問題さらには外的圧迫
要因であります鉱害賠償並びにボタ捨て問題等、当面する緊急課題につきまして、
石特委の諸
先生方を初め需要業界及び
関係各位の理解と
協力を得ながら、安定化の道を切り開き、エネルギー
確保の一端を担うという使命に燃えまして今後とも鋭意頑張ってまいりたいと
決意する次第でありますので、何とぞよろしく
お願いを申し上げます。
どうもありがとうございました。