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1984-05-09 第101回国会 衆議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月九日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 梶山 静六君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 渡辺 秀央君 理事 城地 豊司君    理事 水田  稔君 理事 長田 武士君    理事 宮田 早苗君       甘利  明君    加藤 卓二君       粕谷  茂君    金子原二郎君       木部 佳昭君    岸田 文武君       高村 正彦君    辻  英雄君       仲村 正治君    野上  徹君       野田  毅君    原田昇左右君       深谷 隆司君    奥野 一雄君       後藤  茂君    中村 重光君       浜西 鉄雄君    横江 金夫君       和田 貞夫君    渡辺 嘉藏君       木内 良明君    中川 嘉美君       日笠 勝之君    福岡 康夫君       青山  丘君    小沢 和秋君       工藤  晃君  出席国務大臣         通商産業大臣 小此木彦三郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         中小企業庁長官 中澤 忠義君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ――――――――――――― 委員の異動 五月八日  辞任         補欠選任   小沢 和秋君     田中美智子君 同日  辞任         補欠選任   田中美智子君     小沢 和秋君 同月九日  辞任         補欠選任   奥田 幹生君     金子原二郎君   日笠 勝之君     近江巳記夫君   野間 友一君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     奥田 幹生君   近江巳記夫君     日笠 勝之君   工藤  晃君     野間 友一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 梶山静六

    梶山委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青山丘君。
  3. 青山丘

    青山委員 私は最初に、中部地域における産業実態中部地域産業の今後の展望についてお尋ねをいたします。     〔委員長退席渡辺(秀)委員長代理着席〕  八〇年代に入っての我が国経済は、七〇年代から引き続く不況の影響を受けてきました。特にエネルギーの分野で相当な制約を受け、貿易摩擦が発生をしてきた、こういう事情もあって、産業界においては生産面における量的拡大への期待はもはや持てなくなってきておって、低成長時代への対応を余儀なくされてきたわけであります。しかし、最近ようやくアメリカ経済回復をしてきた、そういうことから、我が国経済にもやや明るい兆しが見え始めてきておるという状況ではありますが、ただ、それでも地域経済地場産業等においては回復への立ち上がりがまだおくれている。地域経済社会を取り巻く環境はまだ厳しい状況に実はあるわけです。  こういう情勢の中において、東京大阪の二大都市圏に挟まれている中部地域経済は、工業出荷額全国比一五%強となっているようでありますが、中部地域における産業実態をどう受けとめておられるのか、今後の中部地域産業経済展望をどのように受けとめておられるのか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  4. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 中部地方あるいは東海地方をカバーしております名古屋通産局でございますが、最近管内景気動向について調査をいたしました。その結果によりますと、自動車などの加工組み立て産業が順調に推移しておりますとともに、一部の基礎素材産業も好転してきているとの報告でございます。全国的に景気回復しつつある中で、地域的にやや跛行性がございます。先生指摘のとおりでございますけれども、この中部地方については、大阪地区と並びまして、東京に次いで明るさが増している地域でございます。  若干、業種別に触れてみますと、自動車につきましては、乗用車に加えてトラックも回復しつつございます。それから工作機械家電等加工組み立て産業が大半順調に推移しております。アルミあるいはセメント、土木建設関連がちょっとまだ回復しておりませんけれども基礎素材関係についても持ち直しの傾向にございます。
  5. 青山丘

    青山委員 中部地域の中で、工業製品出荷額について少しお尋ねしておきます。  東京大阪の中間にある中部地域大都市圏一つでありまして、中部地域産業については、自動車産業などの輸送機械が実はその中心になっております。その他主要工業製品についても、生産出荷とも全国的にシェアは非常に大きいわけであります。  中部地域と言っても幅広いわけで、東海、特に愛知岐阜三重三県、この東海地域における主要工業製品生産量出荷額及びその対全国比シェアを伺っておきたいと思います。
  6. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 中部地方あるいは名古屋通産局管内等数字がございますが、今先生指摘東海地方、たまたま私、岐阜、静岡、愛知三重の四県の数字を今持ち合わせておるわけでございます。工業出荷額、五十七暦年の数字を申し上げます。四十一兆七千億円でございまして、全国が二百三十兆でございますので一八・二%と、かなり大きなシェアを持っております。  業種別に見ましても、先生指摘のように、自動車関係など輸送機械あるいは陶磁器中心とした窯業などが全国的平均よりもかなりウエートが高い、こういうことでございます。
  7. 青山丘

    青山委員 大臣、突然の質問でちょっと恐縮ですが、実は私、中部地域経済全般についてまずお伺いして、その後陶磁器産業について触れたいと思っているのですが、中部地域経済といえば何といっても自動車中心とした輸送機械分野が非常に重要な位置を占めております。  実は、三年間自動車自主規制をやってきた、さらに一年加えてきた。きょう全く突然なんで恐縮ですが、大臣の御見解をちょっと伺っておきたいと思うのは、昨日自民党で、さらに自動車自主規制をやってほしい、やるべきだというような考え方が固められたようです。ただ、しかし、私の立場から考えていくと、ある意味ではアメリカ自動車業界は相当回復してきておりますし、大型車需要もぐっと伸びてきておりますし、ローカルコンテント法案について先般お尋ねしたこともありますし、一連の動きを見てまいりますと、さらにブッシュ大統領発言等も考慮してまいりますと、政権政党として自民党が、さらにまた自動車自主規制を進めていくというのはさてどうか。実は私は、けさのテレビ、新聞の報道を見て意外に思ったのです。全く突然にお尋ねするのであれかもしれませんが、大臣の御見解を一言述べていただけませんか。
  8. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 最近アメリカの国内で自動車輸出に絡む問題でいろいろ発言があることが報道されていることは私ども聞いておりますし、その報道も承知いたしておりますけれども、しかし、それはいずれも個人的な見解でございまして、私としても、また通産省としてもこれを静観いたしておるところでございます。  昨日自民党首脳発言がございましたけれども、それはあくまでも集中豪雨的な輸出というものを今後行ってはならぬという考え方基本であると私どもは理解いたしております。
  9. 青山丘

    青山委員 日本自動車業界にとっても、自主規制が必ずしも全面的に大きなマイナスであったというふうには受けとめておらないと思います。しかし、今のような状況売り手市場が続いていきますと、将来激しい競争時代が再び訪れてまいりまして、競争力をなくしていってしまうのではないかということで、高い次元で考えてみますと、やはり自動車業界における深刻な不安というものは私はあると思うのです。それだけに、集中豪雨的な輸出は、これは大臣が心配しておられるとおり私もそうだと思うのです。ただ、しかし、自由な競争の中に経済に活力をと考えていきますと、さっき私はブロックさんと申し上げたかブッシュ大統領と申し上げたか、ブロック代表発言等も、三年自主規制をして、そして、さらに一年日本は自主的に規制をしてきた、この日本努力を認めていくというようなことを聞きますと、そろそろもうこれは時期が来るなという見方です。自由競争になることは必ずしも日本自動車業界にとって私はそうたやすいものだとは思っていません。しかし、基本的にはそういう自由競争になっていかないといけないという考え方を持っておりますので、ぜひその辺をひとつ十分配慮して取り組んでいただきたいと思います。  そういう意味では、今申し上げた中部地域における産業のうち自動車産業の占める比率が非常に高い、中部地域における中心的な産業になっておる。これの取り組み、そう自主規制さえすればいいんだという単純なものでないということをぜひ受けとめておいていただきたい。  こういう経過から、中部地域における自動車輸出が気になるところですが、中部地域における主要望品輸出現状、今後の動向について伺っておきたいと思います。
  10. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 地域別輸出につきましては正確な統計がございませんけれども中部地方あるいは東海地方の主要な輸出港である名古屋港、それから四日市港の数字がございます。五十八年の通関輸出実績で見ますと、前年に比べまして五・三%増でございます。全国平均が五・八でございますから、ほぼ同程度伸びでございます。それから、最近名古屋通産局管内企業からヒアリングをいたしましたところによりますと、自動車工作機械陶磁器等、総じて米国それから東南アジア向け中心に順調に推移しております。今後輸出につきましては順調に推移するところが多いと報告を受けている次第でございます。  なお、この二つの地域全国でどのくらいのシェアを占めているかということでございますが、名古屋港、四日市港の通関輸出実績全体をとってみますと百六十七億ドルでございまして、全体の一四%を占めております。その中で先生指摘自動車中心にした輸送機械などが多いわけでございますが、自動車だけをとってみましても七十三億六千万ドルでございまして、前年度伸びが三・五%となっております。
  11. 青山丘

    青山委員 中部地域における主要産業一つに実は陶磁器産業があるわけで、愛知岐阜三重の各県の陶磁器全国的に大きなウエートを占めておりまして、陶磁器産業に従事する関係者も非常に多くなってきております。なってきておるのではなくて多いわけです。もとより陶磁器産業というのは、繊維産業などとともに地場産業の典型的な分野でございまして、古くから発達してきた伝統的な産業です。実は私はそういう陶磁器の町で生まれて育ってきた関係でよく存じ上げておるのですが、陶磁器産業というものは今日もう成長型産業ではなくなってきておる、今日の段階では成熟型産業になってきておる、そういうふうに受けとめておりまして、あすへの展望もそうたやすいものではない、むしろ厳しい状況にあると実は受けとめておるのです。  そこで、まず第一にお尋ねしたいのですが、我が国における陶磁器産業現状産業政策の中での陶磁器産業位置づけ、どのように受けとめておられるのか御説明いただきたいと思います。
  12. 黒田真

    黒田政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、陶磁器産業というものは我が国において既に長い間確立された産業でございます。事業所数も五千以上を数えておりますし、そこで働いている人たちも十万人近いということで、工業出荷額六千億を超える大変大きな業種でございます。しかしながら、その出荷額伸びは、先生指摘のように、成長産業というよりは成熟産業というべきものでございまして、製造工業全体の伸びを若干下回るというようなテンポで拡大をしているというのが現状だろうと認識しております。しかし、その出荷額の二七%を輸出するというようなことで、我が国はなお世界屈指陶磁器生産輸出国でもございます。また、その産業に従事しております九九・五%の企業中小企業である。また、それぞれ特定地域産地を形成するというようなことで、それぞれの地域における経済活動を支えます非常に重要な業種というようなことでございます。  したがいまして、私ども産業をお預かりする立場からは、この陶磁器産業が今後いろいろ努力をされ、発展の道を模索していかれるということについて全面的に支援をさせていただきたい、かように考えておるところでございます。
  13. 青山丘

    青山委員 ありがとうございます。  そこで、我が国の主な陶磁器産地というのはどんなところなのか、それから、その生産状況を少し御説明いただきたいと思います。
  14. 黒田真

    黒田政府委員 陶磁器の主な生産地域というものを出荷額の多い順で県別に申し上げますと、愛知県が一位でございまして、全体の三分の一ぐらいの非常に大きなシェアでございます。次が岐阜、これは全体の四分の一ということでございます。次いで佐賀三重、滋賀、長崎ということでございますので、先ほど来ございます愛知岐阜三重という東海三県をくくりますと、実に全国出荷額の三分の二以上というものが、この地域から生産をされているということかと思います。愛知の場合には特に非常に大きな産地でございまして、非常にカバーしている、生産品種のカバレッジといいましょうか、多岐にわたっておりまして、ほとんどの陶磁器製品生産している状況にございます。しかし、特に工業用と申しますか、電気用あるいは医学、理化学用品といったようなものに特化している、あるいはノベルティーと呼んでおりますが、置物とか玩具というようなものにおいて特に強いということが特徴がと思います。  これに対して岐阜の場合には和洋の飲食器あるいはタイルというようなものに特化をしている。三重の場合には比較的小さな産地でございますが、家庭用品というようなものを扱っている、かように言えるかと思います。
  15. 青山丘

    青山委員 いま説明していただきましたが、愛知全国シェア三分の一ぐらい、全国第一位、そういう意味では生産出荷ともに非常に高い位置にあるわけで、今お話が出ましたが、例えば内地物和食器和飲食器、これらの出荷額東海地域食器類を見できますと、大衆品が多くて、比較的付加価値も高くない、低い。そういうところから見ていきますと、消費者の嗜好というのがだんだん高級化多様化してきておりますので、どうもシェアがだんだん縮小傾向にある。特に東海地域陶磁器産業現状をどう受けとめておられるのか、少し御見解を示していただきたいと思います。
  16. 黒田真

    黒田政府委員 ただいま御指摘ございましたように、和食器あるいは和飲食器というようなカテゴリーで考えてみますと、東海三県のシェアは過去十数年の間に七割ぐらいであったものが五割を切るというふうに相当大きく低下をいたしております。これは最近の消費需要高度化と申しますか、多様化と申しますか、比較的付加価値の高いものというようなものに消費者需要が向いているということで、従来どちらかといえば大衆品生産をしてまいりました愛知中心とする東海三県のシェアが顕著に低下をいたしまして、その分をどちらかといいますと付加価値のあります、まあ中級品程度というふうな格付になろうかと思いますが、佐賀県あるいは長崎県というような産地シェアがその東海地域の減少したシェアを食っているといいますか、置きかえているというような形で上昇しているということが非常に顕著な状況かと思います。  しかしながら、その他の陶磁器製品でございますタイル、あるいは先ほど申しました置物玩具等ノベルティーあるいはその他の工業品というようなものにつきましては、東海三県のシェアは極めて高いわけでございまして、総出荷額というふうに全部をくくってみますと、五十七年、五十八年となお上昇は続けているというのが現状でございます。
  17. 青山丘

    青山委員 愛知といえば瀬戸、常滑が中心になっていくのであろうと思います。私は実は瀬戸物瀬戸、ああ青山さんは瀬戸が、瀬戸内海か、こう間違えて言われるとがっかりするのですが、瀬戸物瀬戸というのは瀬戸内海と違うので、名古屋の東、陶磁器名産地瀬戸物瀬戸をひとつぜひ御認識していただきたい。  瀬戸陶磁器産業我が国陶磁器産業の中でも陶磁器総合産地、今御説明いただいたとおり、輸出型産地でもあり、また、大都市近郊立地型産地、こういう意味で、種々の条件を整えた比較的恵まれた特質を持ってきました。  ただ、昭和五十八年における瀬戸陶磁器産業現状は、出荷ベース全国比九・二%、以前ですと昭和四十二年全国比一二五%あった、昭和五十五年になると一〇・四%に下がってきている。昨年、昭和五十八年では九・二%と徐々に下降線をたどってきておりまして、今後に一抹の不安を実は持っております。こういう現状に対する通産当局の御見解を伺っておきたいと思います。
  18. 黒田真

    黒田政府委員 ただいま御指摘ございましたように、瀬戸産地陶磁器というもののシェアは全体として見ますと低下をしてきております。これをまた品種別に分解してみましても、タイルを除いては低下傾向にあるということが言えるかと思います。しかし、今御指摘もございましたように、全国シェア九・二%、五百七十億というような出荷額を有する非常に大きな産地でもございますし、また、アメリカ景気回復してきたということで、ノベルティー関係輸出も増加するということで、五十七年から五十八年にかけましては五%程度生産伸びているというような状況もございます。また、特にファインセラミックスというふうに最近脚光を浴びております、そういう分野に属すると考えられます電気用品分野におきまして非常に伸長が著しいというようなことでございますので、確かに全般的にはやや低下のムードはございますが、その中に将来の発展の大きな芽はある、かように言えるかと思います。     〔渡辺(秀)委員長代理退席委員長着席
  19. 青山丘

    青山委員 そこで、もう一問だけお尋ねしておきたいのですが、瀬戸陶磁器は非常に長い歴史と伝統を持っておりまして、実は相当なノーハウも持っております。したがって、急激な変化というのを実はそんなに心配はしておらないのですけれども、今一種の見通しを示していただいて心強く思っているのですが、ファインセラについては次に質問させていただくとして、瀬戸陶磁器の地位、瀬戸陶磁器産業の今後の見通し、これらについていま一度御見解を示していただきたいと思います。
  20. 黒田真

    黒田政府委員 瀬戸が一割近いシェアを持つ大きな産地としていろいろ検討をしているところでございます。私どもといたしましても、産地中小企業対策臨時措置法というようなものの指定もいたしまして、現在、産地では産地振興ビジョンというものを策定いたしまして、これに基づきますデザイン面開発を主とした新製品開発PR用のカタログの作成、展示会開催、あるいは人材を養成するための技術講習会開催というようなことを着々と実施しているというふうに承知しております。また、技術開発の面でも、省エネルギー型の焼成炉開発というような技術開発を進めているということでございまして、このような方向で産地方々努力をされますならば、瀬戸陶磁器産業というものも明るい展望が開けてくるということが言えるように思います。
  21. 青山丘

    青山委員 ありがとうございます。  さて、中部地域におきましては、今後の大きな課題の一つファインセラミックス生産導入とその普及対策があります。  そもそもファインセラミックスについては、産構審の八〇年代の通商政策ビジョン、これを受け、まして、名古屋通産局の方で、五十六年八月に、八〇年代の東海北陸地域産業ビジョンを発表しまして、その中にニューセラミックス研究開発の促進が実は打ち出されております。そして中部地域においては、それ以後急速にファインセラミックス研究開発が進められてきているのであります。  そこで質問の第一は、名古屋通産局における、五十六年九月に設置されましたニューセラミックス懇談会、この懇談会活動状況について伺っておきたい。それから、資料を見ますと、ニューセラミックスとかファインセラミックスとかいろいろ出てくるのですが、これは一般的に同じものだと受けとめてよろしいものかどうか。
  22. 黒田真

    黒田政府委員 まず用語の問題でございますが、新しい素材であるということで、ニューセラミックスファインセラミックスなどいろいろ呼ばれておりました。名古屋通産局が五十六年にこの懇談会を発足させました当時、東海地域ではニューセラミックスということでこの新素材を打ち出したというような事情がございます。しかしその後、私どもいろいろな方々と御相談をいたしまして、通商産業省としては、この新しい素材ファインセラミックスと呼ぼうということで、実は生活産業局の中にファインセラミックス室というようなものを設けだというような歴史的経過をたどっておりますものですから、当初、東海地区ではニューセラミックスという形で新しい素材を呼んでおりましたが、現在ではすべてファインセラミックスというふうに統一をしております。したがいまして、これらは同じものを指しているというふうにお考えいただいていいと思います。  今御質問のございました名古屋通産局におきます、当初ニューセラミックス懇談会として発足をいたしました現在のファインセラミックス懇談会というものでございますが、これは我が国の代表的な陶磁器産地を擁します東海北陸地域におけるファインセラミックス研究開発の推進、応用分野拡大に努めることによって、ファインセラミックス産業及びそれに関連いたします産業の育成、振興を図り、同地域発展に寄与することを目的とするということで、五十六年九月に名古屋通産局が設けたものでございまして、その後、地域技術地域産業振興という観点から、ファインセラミックス産業の今後の方向づけ、研究開発体制づくり地場産業への導入策というようなものを検討して、五十八年、昨年の三月に報告書を取りまとめております。その中で試験センターの設置というようなものが提唱をされているということは御承知のとおりでございます。
  23. 青山丘

    青山委員 いま少しファインセラミックス概要現状について御説明いただきたいことと、それからもう一つは、ファインセラミックスの海外の開発状況について御説明いただきたい。特にアメリカ、西ドイツでは相当な開発が進んでいると聞いておりますが、その概要について伺っておきたいと思います。
  24. 黒田真

    黒田政府委員 ファインセラミックスとは何かということでございますが、従来陶磁器、ガラス、耐火物というようなものは窯業製品、ある意味セラミックスの一種でございますが、これはいわば伝統的な窯業製品でございます。これに対して、ファインセラミックスと申します際には、その機能に着目した新しい素材でございます。例えば電磁気的機能機械的機能、熱に対する機能というような、特定機能というものを最大限に発揮するように原料を精製し、調製し、そしてそれを固めた固体の無機材料、ファインセラミックスはこういうふうに定義できるかと思います。  このファインセラミックス応用分野というものは極めて広範でございまして、今申しましたような各種の機能を利用いたしましてIC、集積回路の基板、ICのパッケージあるいは各種のセンサー、切削工具、メカニカルシール、ポンプの部品、耐熱耐食部材、触媒の担体、キャリアでございますが、それから人工の号とかあるいは歯あるいは歯の根、歯根というようなものに使用されるところでございます。  私どもファインセラミックス生産状況というものを昭和五十八年末の時点で調査いたしましたところ、昭和五十七年の出荷額は五千百三十億というような数字を一応把握しておりますし、この数字は五十八年には六千三百十億というような推定を行っておるところでございまして、非常に急速に拡大しつつあるということが言えようかと思います。  諸外国の開発状況でございますけれども、欧米先進国でいろいろな研究開発が進められております。特にアメリカ、西ドイツというようなところでは資源政策、エネルギー政策という観点から、国が中心になりましてセラミックスエンジンの開発を進めているというふうに承知しております。  アメリカでは、オイルショック以後エネルギー省が自動車ガスタービン開発計画というものを実施しておりますほか、基礎的な技術開発を推進しているというふうに承知しておりますし、また西ドイツでは研究・技術省あるいは航空宇宙研究所というところが中心になりまして、一九七四年以降自動車ガスタービン計画というものが進められている、かように承知しております。
  25. 青山丘

    青山委員 瀬戸、常滑、多治見等の全国有数の陶磁器産地を抱えております中部地域では、鉄、プラスチックに次ぐ第三の素材としてファインセラミックスヘの期待が相当膨らんでおります。  聞いておりますと、まだ五十七年に五千百億円、五十八年には六千三百億くらい、こういうことですけれども、将来には数兆円の需要が見込まれておるという状況の中で、ファインセラミックスの試験研究機関をぜひ誘致したい、先ほどそんな御答弁もありましたが、中部地方ではそういう気持ちが非常に強い。実はファインセラミックスの研究機関を誘致して、新産業の一大センターにこの中部地域を仕立て上げていきたい、非常に夢多き構想もあります。  しかし、熾烈な開発競争が繰り広げられております先端技術の分野でありまして、なかなか容易ではないと思うのですが、ことしに入って二月の末「ファインセラミックスフェア84」これは大成功をいたしました。非常に関心が高い。それから中部経済連合会ではファインセラミックスセンターの誘致を図っていきたい、そういうことから四月二十六日、先月末にファインセラミックスセンター設立準備協議会の設立総会が開かれた、こういう一連の動向通産当局はどのように受けとめておられますか。
  26. 黒田真

    黒田政府委員 ファインセラミックスにつきましては、ただいま御指摘のように、民間におきましても研究開発のための熾烈な努力競争が行われているところでございます。そしてまた、将来の産業を担う新材料ということで、その需要も飛躍的に拡大するだろうということが期待をされているわけでございます。  今後の発展というものを考えますときに、私ども、やはりそれを統一的に評価するといいますか、新しい材料でございますから、でき合いの規格、基準というものがあるわけではございませんし、それぞれの方々がそれぞれの機能に着目しながら開発を進められておるという状況もございますので、これらをある意味で統一的に、しかし効率よく試験をする、機能に対する客観性を持たせるということがこういった素材発展のためには非常に必要なことだろうというふうに考えているわけでございます。そのような観点から先ほど申しました名古屋通産局懇談会が、試験センターというようなものがこの産業発展のためにはぜひ必要なんだけれども、それをひとつ中京地区に設立しようじゃないか、こういうようなことを提言されたわけでございます。そういう意味ではまことに時宜を得た御提案だったというふうにも考えております。  御指摘のように、最近ファインセラミックスセンター設立準備協議会というものが中京地区に発足をいたしまして、今申しましたような試験センター機能とともにフェアの開催あるいは中小企業者へのコンサルティング機能、情報の収集というようなものを今後進めていきたいということで、ファインセラミックス関係の業界団体と申しますか経済界、地方公共団体あるいはさらには学界までも網羅したファインセラミックス協会というものが別途ございますが、こういうところと協力をいたしまして、今後いろいろな具体的な構想を固めていくというふうに進められるものと理解しております。
  27. 青山丘

    青山委員 ファインセラミックスそのものは大いに期待される産業でありますが、まだ非常に若い産業でありまして、そのためにどういう利用、開発がされているのか、実態がまだつかめておらない状況だと聞いております。そして将来的な展望を考えた場合でも、今お話しいただいたとおり技術的にまだ未開発分野もかなり残っておりますし、それの調整、整理によってどうなっていくのか、まだ不透明な分野でもあります。ファインセラミックス産業として伸ばしていくためには産業基盤の整備も同時に図っていかなければなりません。  そこで一つは、今お述べになりましたように材料の試験方法、材料自体の規格化、これを進めていかなければなりませんし、もう一つは、複雑多岐にわたっていくこの試験研究を効率的に進めていくことのできる施設の開発が必要になってきます。例えば一つの材料をつくる場合に、それがどういう強度を持つものか、あるいはどれぐらいの寿命があるものなのか、その評価がなされないことには実際の工業製品には実は使えないわけで、ファインセラミックスの場合こういった試験方法についてはまだ十分に確立されていないものもありますし、統一化されていないこともあって、それぞれ各社ばらばらに独自の方法でやっているのが現状であると受けとめています。  こういう状況のまま推移していきますと、必ずユーザーとメーカーとの間に不都合が生じてくる。こういう事態は実は明らかなわけで、そこでどうしても統一化された試験方法の策定が必要だ。御理解をいただいておるところでありますが、実はもう一点、大企業が取り組む場合は大量生産ラインに乗せて相当な研究もできるし、試験も設備も資金的にも人的にも能力を持っているわけですが、多品種少量生産になってきますと、どうしても中小企業の参入が必要になってくる。将来多くの中小企業が参入してくるということが見込まれますので、そうなってきますと、中小企業では試験装置を完備していくというのは資金的になかなか困難です。そういう点では、どこか共通の施設があれば効率的に研究開発ができる。こういった点から、試験センターの設置は私はぜひとも必要だと考えているのです。その点で、試験センターについての御見解を伺っておきたいと思います。
  28. 黒田真

    黒田政府委員 御指摘のように、新しい材料ということで非常に注目を集めておりますけれども、今後これが発展をしていくというためには、素材の客観的な評価というものの方法の確立ということは不可欠だと思います。でき合いの規格というものがあるわけではございませんし、また今後国際的な規格というようなものもつくっていかなければならないというようなこともあるわけでございまして、材料の試験、検査というものを効率的かつ統一的に、しかも全国的規模で行うということで、試験センターが必要だということについては全く御意見のとおりに考えております。  また、御指摘がございましたように、大企業は大企業として、それぞれある程度の研究試験設備というものをみずから調達することは可能でございますけれども、非常に特殊なものに特化をしようとする中小企業者が、それらの特性をすべて試験をするための試験設備というものをそれぞれが整えるということは極めて困難でございます。そういうような観点から、まさにこの産業発展のためには試験センターというようなものがぜひ必要なのではなかろうかということが従来つとに指摘されたところでもございますし、私どもも同様な認識を持ったということで、実は五十九年度の予算の中にファインセラミックス試験センター調査研究費というものをちょうだいをいたしたわけでございます。  この調査研究費というものを活用いたしまして、試験センターの組織、業務内容、他の機関との有機的な連携体制のあり方あるいはその規模、設置の場所というような具体的な構想づくりというものを五十九年中に進めたいというふうに考えているわけでございまして、その際、中部地区で従来からございますいろいろな動き、そして最近ございました設立のための準備会議というようなものが十分そこの検討の中に盛り込まれることは当然だというふうに考えておりまして、もし順調にまいりますならば、五十九年度中に調査研究というものを一応終えまして、六十年度以降、民間が主体になると思いますけれども試験センターというものの建設のための詳細設計というようなものを行って、最も早くいきます場合には六十年度の後半にも実際の建設に着手することに持っていけるのではないかというふうに期待をしているところでございます。
  29. 青山丘

    青山委員 ありがとうございます。  それじゃ急いで質問させていただきますが、ぜひ今御答弁いただいたような姿勢で取り組みいただきたいと思います。ただ、ファインセラミックスがまだ若い産業ですので、どんな利用がこれからなされていくのか、どんな開発が可能なのか、その実態が十分把握できておらないというのがございます。そういう点では将来展望についても一抹の不安があるかもしれませんが、しかし地域経済にとって非常に大きなテーマだ。しかもそれは前向きに取り組もうという基盤も持っておりまして、中部地域においてはこれが将来の一つ産業になっていくであろうと思います。そしてファインセラミックスの将来展望について少しお述べいただきたい。  それから最後になりますが、ファインセラミックス技術開発を推進してきたのは、実は通産省において工業技術院でこの技術開発が進められてきていると聞いております。工業技術院でファインセラミックス技術開発が進められておりますが、開発分野と進捗状況について少し御説明いただきたいと思います。
  30. 黒田真

    黒田政府委員 ファインセラミックスというものは、従来の金属材料あるいは有機材料には見られませんような耐熱性、耐環境性等のすぐれた特性、機能というものを持っております。現在我が国が抱えておりますエネルギー問題、資源問題というものに対応していくためには非常に重要な材料だというふうにも考えておりますし、また今後九〇年代以降期待されます、いわゆる先端産業というふうに考えられます石油代替エネルギー産業、航空宇宙産業、バイオインダストリー、エレクトロニクス産業というような先端的成長産業発展を支える材料として期待されております。  この新しいファインセラミックスというものの出現、発展によりまして、既存の素材産業あるいは既存の諸産業高度化、活性化ということもまた可能になり得るのではないだろうかと考えられているわけでございます。現在までのところの発展は、主として電磁気的な機能というものに着目した機能ファインセラミックスというものによるところが大きいわけでございますが、今後は熱あるいは機械的な機能というものを生かした構造用のファインセラミックスというものがさらに研究開発が進められますならば、その需要は大きく伸びていくというふうに予測をしているところでございます。  しかし、御指摘もございましたように、いまだ揺籃期でございますし、技術的にもまだ未確立の部分も多く、将来像について、一方では極めてバラ色の展望もございますが、また不安がないわけでもございません。そういうような状況を踏まえまして、実は私どもといたしましても、昨年の六月に生活産業局長の私的諮問機関という形をとりましたが、ファインセラミックス基本問題懇談会を設置いたしまして、関係産業界方々あるいは学界の方々にお集まりをいただきまして、専門的かつ総合的に将来についての展望というものを現在進めており、また、それに伴って必要となる施策の方向というものについても御検討いただいておるわけでございますが、近々中間取りまとめというようなことをお願いできるということでございますので、これができましたならば、ある程度一つの現在における展望の集大成されたコンセンサスというものがお示しできるのではないかというふうに考えております。  技術開発に関する通産省の現在進めている状況についての御質問でございますが、私どもも、今後の技術開発の重要性ということにかんがみまして、いろいろな制度に乗せて研究開発の支援を行っております。次世代産業基盤技術研究開発制度というものがございますが、この中で構造用ファインセラミックス研究開発を行っております。また、工業技術院が持っております各種研究所の中の特別研究というところで、このファインセラミックス研究開発の対象に取り上げておりますし、また、産業活性化技術研究開発費補助金制度というようなもとで導電性無機加合物の研究開発を進めております。重要技術研究開発費補助金制度という制度を通じましても研究開発を進めるなど、通産省が持っております技術開発に関する各種の支援制度というものをフルに利用いたしまして、この新しい素材発展を全面的にバックアップしているということでございます。
  31. 青山丘

    青山委員 きょうは種々日本陶磁器産業についてお尋ねしてきましたが、何といっても成長型産業ではなくて成熟型産業、将来展望もなかなか厳しい、そういう中で第三の素材として、新しい波として非常に大きく期待されておるファインセラミックス研究開発、実用化等々について通産省が本当に力強く取り組んでいただいていることを私は高く評価しております。ただ、世界各国もこれらについては相当な研究開発が進められているようでありますので、国際的な競争も容易ではないという状況でありますので、我が国は技術立国としてこれからぜひやっていかなければいけない、技術立国として総力を挙げて取り組んでいただくことをお願い申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。
  32. 梶山静六

    梶山委員長 次に、工藤晃君。
  33. 工藤晃

    工藤(晃)委員 昨年の倒産件数が戦後最高を記録して、その大部分が中小企業だったわけでありますが、これは五十七年版の中小企業白書を見ましても、いわゆる倒産件数の統計に入ってこない小さな中小小売業の廃業ですか閉店とか廃業、それについてある統計が出ております。これは一人から四人の規模で、特に七八年から八一年をとりますと開業が一〇・四%に対し廃業が一一・〇%で、開業の率よりも廃業の率がこの時期に上回った、これまでと違った状況が出てまいりました。これは明らかに一つの重要な問題を提起していると思い良して、小売商の営業が非常に押し詰められてきていることだと思います。 さて、その原因は何か。私の考えでは、一つは、言うまでもなく、よく指摘されております今の消費不況、衣食住関連の消費が非常に滞っているということがあると思います。もう一つは、大きな店、ビッグストアとか量販店とかの進出がここに響いてきているのではないか。今言った廃業のうちの何%がとか倒産件数の何%がそれだということは言えないまでも、大きいのではないか。それを示すのも私が申しました中小企業白書の五十七年度版に出てくるわけでありますが、中小企業景況調査というのがあるわけですが、小売商にとって最大の問題点は何かというのを見ますと、八二年について言いますと、「購買力の流出」一六・九、「大型店の進出による競争の激化」が一六・七、ほとんど変わらないわけですが、少なくとも八〇年、八一年、八二年の三年連続で見ますと、やはり「大型店の進出による競争の激化」ということが最大の関心事になっている、こういうところからもうかがわれると思うわけでありますが、こういう私の見方についてどうお考えでしょうか。
  34. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  近年の中小小売商の倒産件数の増大というのは確かに一つ傾向でございます。特に五十八年の倒産件数を見てまいりますと、全体では一万九千件余でございますけれども、中小小売商の倒産がそのうち三分の一と申しますか、三五%程度を占めておりまして、小売商の倒産が非常に目立つということは言えると思います。  ただ、この内容を見てまいりますと、一つには、五十八年の年央から景気回復しておりますけれども、個人消費と申しますか、小売が依存しております消費が伸びない、内需の低迷という事情がございまして、それがこの中小小売商の倒産に拍車をかけておるということかと思います。原因別を見ましても、販売不振というのが倒産理由の相当部分を占めておりまして、いわゆる不況型倒産ということが一番の原因かと思います。さらに申しますと、中小小売商につきましても、流通問題の革命と申しますか、革新という傾向一つの問題になっておるということは御指摘のとおりだと思います。  ただ、中小小売商の段階につきましても、やはり個性的な性格を生かすと申しますか、サービスを十分に考えまして、その店の特色を出すというような中小小売商の生き方も一つの新しい流れとして出ておるわけでございまして、流通構造の改革の中で中小小売商の生きていく道がそのような形で将来の展望があるということも白書の中で指摘しておるとおりでございまして、中小小売商の倒産対策といたしましては、一つは内需の拡大という問題と、一つは新しい流通の流れに沿った販売のあり方、そういうものに対して流通のビジョンを持っていくということが中小小売商の新しい生き方として大事であると考えております。
  35. 工藤晃

    工藤(晃)委員 今、流通革命という言葉で言われたわけですが、その中には、大スーパーとか大型店がどんどん出てくるという問題も入ると私は理解しておりますが、時間も余りございませんので、もう少し具体的な問題として家電商の問題について伺いたいのです。  これは全国電器小売商業組合連合会がアンケートを行ったものがあります。過去三年、売り上げがどうか。答えて、低下というのが五〇%、横ばいが二六・七%、大多数がこういう状況で、粗利に至りましては低下が五四・六%、横ばいが二六・七%ということになっております。  この原因をもう少し探ってみたいわけで、私のこういう見解が正しいかどうか後でお答え願いたいのですが、一つは家電商一店当たりの人口を見ますと、例えば七〇年から八二年という期間に一店当たり二千六十人から千六百六十五人、世帯数で見ますと五百八十世帯から五百十七世帯、このように一店当たりの世帯数や人口が随分減っているわけですね。そういうことに加えまして量販店、量販店は横文字でNEBAという形で言われる組織ができているわけですが、NEBA自身の資料によりましても、ちょうど七九年から八三年、ごく最近の時点に店舗が千二百九十三から千八百八、この期間に約四〇%ふえているわけですね。  それから、売り上げのシェアも一七・二から二三・一%、わずか四年間でこの期間に六%もふえている。もちろんこれだけでなしに、スーパーその他大きな店がありますから、このNEBAの店だけでもこれだけ急激にシェアがふえているということが、さっき全国家電商のアンケートに出てきたような結果になっているのではないかと思いますが、その点どうでしょうか。質問時間が限られておりますので、なるべく簡単にお答え願いたいと思います。
  36. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 ただいま先生からお話がございました資料、私の手元にNEBAの資料がございますけれども、他方の小売店連合会ですか、資料がちょっと手元にございません。私の手元にございますのは、商業統計と、それからNEBAの資料でございますけれども、いずれにいたしましても商業統計の資料で見ますと、これは四十七年から五十七年にかけまして一般小売店も含めての数字でございますけれども、店舗数が四十七年の約五万二千から、五十七年の約七万一千三百というふうにふえておりますし、年間の販売額も一応順調にふえてきておるということでございます。おっしゃるように、NEBAの会員における店舗数あるいは売上高もおっしゃるようにふえているわけでありますけれども、いずれにいたしましても、総じて見ますと全体として日本の家庭電気製品の小売業と申しますのは、普通の小売店、それからいわゆる量販店を含めまして順調に伸びてきているというふうに見られるのではないかというふうに思っております。
  37. 工藤晃

    工藤(晃)委員 どこもここも順調にいっているのではなしに、私が言ったように、NEBAの比率がこの間高まったということはお認めになりますね。そうすれば一般の小売店が減るということになりますから、そこのことだけ簡単にお答えください。
  38. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 統計の制約がございますので、何でございますけれども、例えばその商業統計とNEBAの統計、これはそのまま突き合わせていいかどうかという点、統計上の問題があろうと思います。ただ、仮にそれを割り切ったとして、この商業統計の年間販売額からそのNEBAの販売額を差し引きまして計算をいたしてみますと、おっしゃるように、このNEBAの売上高の伸びに比べまして、そのNEBA以外の商業小売店の販売額の伸びというのは確かに低くなっております。そういう意味で多分シェアが上がっているということは一つの推測としてできるのかなというふうには思っております。  ただ、いずれにいたしましても、NEBA以外の小売店の販売額も、この今申し上げたような仮定の算定をいたした場合もやはりかなりの伸びを示しているわけでございまして、確かに差はあるにしても、全体として伸びでおるということは言えようかと思っております。
  39. 工藤晃

    工藤(晃)委員 やはりNEBAの比率が高まったということは認めたわけでありますが、ただ、全体として伸びていると言いますが、やはり全国電器小売商業組合連合会がこういう資料を出していますから、せめてここのアンケートぐらいは見ておいてほしいと思うのです。 それでもう少し具体的な話に入っていきたいのですが、例の業界を扱っている新聞で電波新聞などを見ますと、昨年一年間新聞を繰ってみても、全国各地で量販店の進出というのは大変物すごい勢いで、これは東京の周辺だけでなしに関西でも、あるいはもう全国各地でそれが大きなトラブルを起こしているわけです。  それで一つ具体的な東京の例を挙げたいのですが、立川、それから昭島でそれぞれ上新とそれから第一家電の出店をめぐってずっとここのところ地元の家電商の反対が続いておりまして、この進出というのが死活の問題になってきているということです。  これはぜひ通産大臣も聞いていただきたいのですが、そこにどういう背景があるかと申しますと、一つは全体として、さっきはNEBAの会員だけなんですが、家電なんというのはもっと大きないろいろなスーパーやなんかでもどんどん売っているわけですから、全体としての大型店の店舗の占有率を見ますと、立川市だけで既に六七・七%になっているわけですね。それから昭島も間もなくモリタウンというのがオープンされますとイトーヨーカ堂が出てきて六四・二%、六〇%を超えるようなシェアになってきている、こういう実情が一つあります。  それからもう一つ、これは立川や昭島でそれぞれ実際に業者の皆さんが自分たちの実情を調べた調査があり、これは大変貴重な資料で、これはぜひ通産省としても見ていただきたいのですが、昭島市で二十四店、平均しますと八一年から八三年に売上高が九・一%落ちております。従業員数は七十二名から六十八名へ減っております。立川市の十一店舗についての調査、これは八〇年から八三年に二四・四%売り上げが落ちており、従業員数は三十人から二十人というふうに急激に落ちているわけです。  倒産、廃業、閉店数を見ますと、昭島の場合は、これは七五年からでありますが十三店、立川の場合は七五年からですが二十四店、特に八二年から大変ふえております。これは御存じだと思いますが、立川駅に駅ビルのWILLというのができまして、そこに量販店が多く入ってきたという関係があるわけです。このほかいろいろ問題がありますけれども、こういう事情があって、特に立川や昭島の家電商が、量販店がさらに進出するということに対して死活の問題だと考えている理由がこのようにあるということがおわかりいただけると思うのですが、これは家電商だけではなしに、地方自治体も取り上げているということもちょっと申し上げておきたいと思います。  それで、立川の市議会が八二年の七月、出店反対ということを決議しておりますし、同じ月に昭島の市議会も自主規制を求め、対応しなければ出店を凍結するという決議も行っております。そういうときに第一家電が決議を無視して工事を強行したというようないきさつがあり、業者が工事中止を求めてデモをしたり座り込みをするという、まさに大変画期的な運動ということもあったんですが、それぞれ上新電機、第一家電に対しまして八三年九月、八三年六月、協定書を取り交わしまして話し合いを行う、それが行われない限り出店しないという精神で協定書や確認書が取り交わされたわけであります。  御存じだと思いますが、昨年の三月に我が党の小林政子議員が予算委員会でこれらの問題を取り上げて、やはり小売商を脅かすような量販店の出店に対しては、法の精神に基づいて規制すべきではないかということに対しまして、時の山中大臣がこういう答弁をしております。そこの個々のトラブルの問題は、やはり法の精神と通達の趣旨を守ってもらう。大きな店、大きな会社にはみずからを律する倫理が社会的になければならない。力ずくで押しまくるということは、そのようなやり方はあってはならぬと思うというふうに答えられたわけでありますが、小此木大臣も今も通産省としてそういう基本姿勢を守っていただけると思いますが、いかがでしょうか。
  40. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 一般的な問題としてお答えいたしますけれども、大型店の出店調整問題につきましては、消費者の利益の保護に配慮しながら周辺中小小売商の事業活動の機会を適正に確保することが必要と思うのでございます。特に周辺の中小小売商の関係者の意見も十分に聴取いたしまして、適正かつ円滑な調整を図ることが必要であると通産省といたしましては認識いたしております。  このような観点から、先般発表いたしました措置、その運用に万全を期してまいる所存でございます。
  41. 工藤晃

    工藤(晃)委員 大臣、先ほど、山中大臣がお答えになられました大きな店が力ずくで出店するというのは、今までの法の精神や通達の趣旨からいってもこれは好ましくない、あってはならないと思う。そういう点は確認していただけたと思いますが、その点よろしいですね。
  42. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 あくまでも周辺の中小小売商の皆さんの意見を十分聴取して、円満な調整を行うという考え方でございます。
  43. 工藤晃

    工藤(晃)委員 力ずくの出店があってはならないということをもう一度はっきり言っていただきたいわけでありますが、ここで一つ問題になりますのは、さっき意見をよく聞いてと言われましたけれども、地元の店としては、量販店やなんか出るにしろ、共存共栄ということが成り立つならば、そういう条件でいろいろ考えましょうと言っているわけであります。しかし、今話し合いの中で出てきている問題としましては、これは上新の一つの例ですが、共存共栄なんというのはあり得ないという立場も時々言われるかに聞いているわけですが、やはりこれはちょっとまずいですね。さっき言ったように、中小企業、小売商の倒産が大変ふえている、それから、特に家電商の場合の閉店、売り上げ減が相次いでいるというときに、だからその話し合いをするにしろ、やはり共存共栄ということを量販店の方も念頭に置いて、その条件のもとでいろいろ協議を行うということでなければならないと思いますが、大臣いかがでしょうか。
  44. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 先般発表いたしました措置の万全の運用ということは、もちろん先ほど申し上げましたように、周辺の小売商の皆さんの意見を十分尊重して、共存共栄ということが可能になるように調整するということが含まれるわけでございます。
  45. 工藤晃

    工藤(晃)委員 共存共栄ということで含まれて調整するということを聞きましたので、はっきりしたと思います。しかし、先ほど言いましたように、話し合いの中で共存共栄なんかあり得ないよというようなことを時々言われるかのように聞いておりまして、これは重大だと思って今伺ったわけであります。  さて、そういうことで、今の上新と第一家電の場合は一応念書を取り交わしまして、そして話し合いの最中ということでありますが、この話し合いの最中に強行出店を一方的にするということはもちろんあってはならないことだと思います。同時に、これは商調法の規定によりまして、上新もそれから第一家電も一応商調法の中の大企業者ということに当てはまるし、したがって、もう少し先の段階で、あるいは商調法に基づいてこの問題のあっせんを知事が行うということも可能であるというふうに考えますが、これはいかがでしょうか。
  46. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 商調法に基づきまして、中小小売商業者あるいは大企業者いずれかが申請いたしますれば、都道府県知事によりますあっせんまたは調停を行うという手続に入ることは可能でございます。
  47. 工藤晃

    工藤(晃)委員 今の第一家電と上新は大企業者に当てはまりますね。
  48. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 私どもが調べております事実でございますと、資本金あるいは従業員数とも商調法の規定で決めております大企業の方に該当するというふうに承知しております。
  49. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これからの質問は、きょう公取の高橋委員長もおいでになったので聞いていただきたいわけでありますが、これは昨年十二月、全国電器小売商業組合連合会のトップの方とメーカーのトップの方との会談がありまして、その中で竹村章副理事長が、甚だしい仕入れの格差が諸悪の根源ではないかということを指摘したということがあります。  一つの例をそこで竹村氏が挙げているわけですが、量販店の多くはエンドユーザーに売るだけでなく、バッタ屋にも売っている。冷蔵庫百台なら五十二掛けという条件が出たとすると、自分のところの流通能力はそれなのに、二百台くらい仕入れ、百台はバッタ屋に流してしまう。それでも得だ。百台なら五十二掛けなのに二百台なら四十八掛けというような条件が出てきていますからね。これは業界のトップの方がこういうところでお話しになっていることなんです。  実はこの仕入れ格差が量販店の場合と一般の小売店の場合で相当大きい。これは今の話でも相当大きいとおわかりいただけると思います。また、三月十五日、都議会で河合労働経済局長の答弁も、大体一五%から二〇%くらいだというふうになっております。今まで指摘されたのも大体そのくらいの数であります。さきに小林政子質問が行われたときに、通産大臣として、この問題を調査するということだったんですが、その調査の結果はどうなんでしょうか。これも簡単にお答え願いたいと思います。
  50. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 昨年の予算委員会で小林先生からそういう御要望がございまして、調査をいたしました。調査の項目は、そのときの小林先生からの御要望といたしまして、小売店の実売価格の実態と仕入れ価格の実態と二つでございました。今先生のお尋ねは、むしろ仕入れ価格の方のお尋ねでございますので、そちらの方に限定してお答えいたします。  私ども、そのような小林先生からの御指摘の後、調査をいたしたわけでありますけれども、その場合に量販店と一般地域小売店との間の実仕切り価格について調査をしたわけです。その場合に、月商の規模の差というものを考慮いたしまして、そういう規模別に調査をいたしました。その結果、簡単に申しますと、一般的に申しまして月商販売額、月商仕入れ額でございますね、この規模に応じましてある程度の差が見られます。ただ、ある程度の差が見られるわけでありますけれども、いわゆる商慣行として通常認められておりますボリュームディスカウントというようなことを考えますと、それは、それをもっておかしいということを一般的に言えるというような差ではないというふうに私どもは思っております。  なお、一つだけ数字を申し上げますと、量販店と一般小売店との間の差でございますけれども、規模の大きい一般小売店と規模がそれほど大きくない量販店との間の差というものをとってみますと、平均数%くらい、場合によっては一般小売店の方がむしろ安いという場合もございますし、あるいは規模の小さい一般小売店と規模の大きい量販店と比べますと、おっしゃるように一一、二%の差が出てくる、こういうような実態でございました。
  51. 工藤晃

    工藤(晃)委員 そういう答えだというのですが、通産省の行った調査も、私の聞いたところではどこかに委託された調査であろうと思いますし、リベートを乗せないで調査をした場合と、乗せた実態とまるっきり違うのですね。それからもう一つは、さっき言った冷蔵庫ですが、百台か二百台かで格差が出てくる、そういうことをきちっとつかんだ上で、実際に仕入れた価格かどうかで、これはちょっとしたアンケート調査ではなかなか出てこないわけです。  それで、公取の方で出されました「流通系列化に関する独禁法上の取扱い」、八〇年三月十七日の報告書がありますが、この中にも、例えば松下電器のリベート体系というのが一種類から七種類ありまして、一種類と二種類だけでも七%に近いリベートがある。これを一々読んでいると大変なんですが、一種類というのは契約リベート、取扱高に比例する累進リベート、現金払いリベート、これが一種類と二種類なのですが、あと占有率リベートだとか七種類ありますから、これを合わせると十数%くらいになる可能性があるのです。ですから、一般的に言って数%といっても百台か二百台でさらに数%上乗せするであろうし、各種リベートを合わせると大体十数%から二〇%、こういう実態になるということが容易に推測できるのです。  実は私、公正取引委員長に対してもちょっと苦情を申し上げたいのです。せっかく家電の調査をされているのですが、もとの資料は何かというと、公取自身の調査ではなしに、電波新聞とか週刊エコノミストとか日経流通新聞、そういうたぐいのものに依拠した調査であって、公取らしい調査というのがない、通産省は通産省でどこかに委託してさせた簡単な調査に終わっている、これはちょっとまずいのじゃないかというふうに考えるので、この仕入れ価格差、これが諸悪の根源だと小売商の団体の代表者も言っていることでありますから、再度これをもう少し調査してほしいのです。  もう一つ申し上げたいことは、先ほど流通革命ということを言いましたが、アメリカでの独禁法の体系と日本での独禁法の体系はもとより違うのが当然かもしれませんけれどもアメリカでは三つある法律の一つのクレートン法の二条というのが、アメリカで物すごい量販店の攻勢があった三〇年代にロビンソン・バットマン法というもので改正が行われました。これは量販店とかスーパーというのがメーカーから安く仕入れてくる、そうするとパパママストアは完全に困ってしまう、そういう差別価格は絶対許さない、専らこういう内容になっています。同時に、メーカーがそういう量販店とかスーパーに対して販売促進費だとかいってどんどんいろいろな援助をやる、これはリベートなどがそうですが、それも禁止するということになっていて、いわゆる流通革命の中で量販店だとか大スーパーが安く仕入れることによってまるきり一般の店と違う競争条件を持つ、これを抑える役割を果たしているのです。しかもその場合、先ほど何かコストというのは量の差とかいうふうに言われてしまいましたけれども、本当に量の差としてこれだけのコストの差が出るのか、そのメーカーがちゃんと証明しなさい、それを証明しなければ違法であるということをはっきり出しております。それから販売促進費でも、さっきの松下の例のように、多く売ったら販売促進費が一%から二%、三%になるというように、率を上げることは絶対にいけないというように禁止されています。そのくらい厳しくなっているわけです。  我が国の独禁法の中にも、差別の禁止ということはもちろんちゃんと入っているわけでありますし、そしてまた、先ほどもお答えになったいわゆる流通革命とか言われる状況が現に起きているわけでありますから、やはり仕入れ価格差が本当にコストに見合った差なのかどうか、リベートを含めて実際上これまでの小売商の競争を阻害し、営業を苦しめるようなことのないようにする、これが我が国の独禁法の精神になると思うのですが、そういう点で、これは公取委員長にお答え願いたいのですが、やはり価格差別の問題というのは、今の新しい時点でもう一歩踏み込まなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  52. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 アメリカの制度についてのお尋ねがございましたので、まずその点からお答え申し上げたいと思います。  仰せがありますように、クレートン法の二条で差別価格の規制が行われておるわけでございます。同等、同質の商品の異なる購入者間で価格を差別することは、それによって競争を実質的に減殺することになるか、または独占を形成するおそれがある場合においては違法になる。また差別価格を故意に誘引または享受することも違法となる。これが原則でありますが、ただし、いわゆるコスト差を正当に反映しているコストジャスティフィケーションがある場合、それから品質が劣化したとか季節外れ品など正当な理由がある場合またはいわゆるミーティングジャスティフィケーションというか競争者の低価格に善意で対抗する場合、これは外される、こういうふうになっております。  最近におけるその運用の実例を見てまいりますと、もちろん日本アメリカは仰せのように経済社会情勢が異なるわけでございますけれどもアメリカにおきましても、競争の維持よりも、クレートン法による差別価格に対する規制はむしろ競争者の保護になっているのじゃないか、そういう批判がございまして、反トラスト当局の運用は最近消極的になっているというふうに聞いております。  ところで我が国でございますが、今五十五年の私どもの方の流通系列化の報告についての御批判がございましたけれども、いろいろ国会での御議論等を通じまして問題点が指摘されておりますので、私どもとしても、できる範囲で自分で調査をいたしておるわけであります。先ほど機情局からお答えがありましたけれども、取引数量別に見て非常に規模の大きいものと一番小さいもの、その間の仕入れ価格の差は大体六、七%というふうに私どもは把握しております。これはやや古い五十六年ごろの調査でございます。量販店と一般小売店の間の仕入れ価格は取引数量なり取引条件の関係もあって、どこになりますと不公正な取引方法として指定されておるいわゆる差別代価に当たるか、なかなか判定しにくい問題もございますけれども、さしあたりいわゆるヘルパーの問題、大型店におけるヘルパー派遣というものの実態調査をやって、その自粛の指導を現在してきておるわけであります。系列化、寡占化というような状況にあります家電業界における流通競争市場の維持ということに私ども非常に関心を持っておりますので、引き続いて適切な指導を行ってまいりたいと思いますし、今御指摘のありますように、流通系列化のもとでどういう取引条件の差が現実にあるのか、必要に応じて調査もしてまいりたいというふうに考えます。
  53. 工藤晃

    工藤(晃)委員 時間が参りましたが、最後一問だけお願いしたいのですが、さっきロビンソン・バットマン法のことについては、アメリカの場合コストはいわゆる挙証責任はメーカーの方が負っていて非常に厳しいということ、だからコストが実体でなければいかぬということ、このことはちょっと確認していただきたいのです。  最後に、やはり家電商の皆さんも地域でもっと合理的な商売をしようとして、例えば組合をつくってメーカーから条件をよくして仕入れたい、いろいろ運動があるのですが、こういうことに対して、これから通産省としてもいろいろ援助すべきではないか、こう思うわけです。  というのは、今のメーカーの姿勢というのを私は見ますと、海外ではそれこそ猛烈な輸出攻勢をかけていろいろ問題になったのですが、国内でも明らかに量販店などを使ってそういうことをやっている形跡、形跡どころかはっきりした実態になってきているわけです。さっき言った第一家電の場合は東芝系列がはっきりしておりますし、それから上新の場合もいろいろ流通の関係から見ますとナショナルとの関係が非常にはっきりしていて、いわば大企業が実際にそういうことをやっているようなことになっているのです。そういうときに、小売商のそういう運動をメーカーとしても責任を持って支持するとか改善を図る、その辺ではどうしても通産省出てやっていただきたいと思いますが、通産大臣いかがでしょうか。
  54. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問でございますけれども、私どもといたしまして、この取引関係というのはやはりできるだけ自由に当事者間の話し合いにゆだねるべきである、それが最も適当だというふうに思っております。ただ、いずれにいたしましても、その間において不公正な取引方法が行われるとかいうことがあってはいけないということで、そういった点につきましては、私どもとして、従来から公正取引委員会とも御連絡をとりながら、そういうことが起こらないように、いろいろ指導もしてまいっているところでございます。  また、もう一つのお尋ねといたしまして、量販店の出店問題に関連してメーカーに対する指導ができないかということでございますけれども、私の考え方といたしまして、そういった地域経済地域における利害関係の調整問題というのは、そういうものに対するいろいろな制度があるわけでありますから、そういう制度の枠組みの中で対応していくのが適当ではないかというふうに思っております。
  55. 工藤晃

    工藤(晃)委員 さっきの答弁は私の質問のお答えになりませんでしたが、一応時間が参りましたので終わります。
  56. 梶山静六

    梶山委員長 次に、水田稔君。
  57. 水田稔

    ○水田委員 ソ連との貿易関係の問題についてお伺いしたいと思います。  これまで数年間にわたっていろいろ事件がありまして、日ソの関係というのは極めて冷たい関係にあった。そういう中で我が国経済措置と、こう言っておりますけれども、実際は経済制裁ということをやってきて、そういう中で日ソの貿易関係というのがマイナスの傾向を示してきたわけです。  そこで、そういうことをやって経済措置をするということは、それによって何らかの効果が出てくるということを期待してやっておるだろうと思うのです。そういう効果が本当にあったのかどうか。むしろ見方によっては、やったことによって我が国の方が輸出が減っていく、そういう現実があったんではないだろうか。そういうように思うわけですし、特にことしの二月十五日に大蔵省がまとめた貿易統計によりますと、対前年比で二三・四%の減、五年前の水準に逆戻りしておる、こういう統計もあるわけです。一方では、昨年の第三・四半期までを見てみますと、ヨーロッパの諸国ではフランスが一九%、イギリスが一二・五%、イタリア六%、フィンランドに至っては二三・六%増大、これに対して日本がマイナス一七・五%ということになっておるわけです。  ですから、これは国家対国家の関係、いろいろありますけれども、そういう中で、経済だけで考えてみると、日本アメリカやECとの間では経済摩擦ということを大変攻撃されるわけです。ここではそういう問題はないのです。むしろ我が国一つの政策として、そういうことを行っていったということになっておるのではないか。こういうぐあいに思うわけですが、一つは、そういう措置をしたことによって外交関係での転換、いわゆる相手方の態度が変わったということが本当にあるのかどうか、むしろこういう数字から見ると、我が国の方が貿易関係だけで見ればマイナスをかぶったことになっておるのではないか。そのことについてどのようにお考えになっておるか、まず伺いたいと思います。
  58. 柴田益男

    ○柴田政府委員 我が国の対ソ貿易につきましては、八〇年からアフガン問題に関連いたしまして経済制裁措置をやっておりますし、またポーランドに関連しまして八二年から対ソ経済措置をとっておるところでございます。その効果はどうであったかというのが最初の御質問かと思いますけれども、我々といたしましては、今度の経済措置につきましては、西側諸国と協調してやったというところに一つ意味があるというふうに認識しておりますし、ソ連に対して西側の反応が一致している、そこに評価を認めるべきだと思っております。  最近数年におけるソ連との貿易の数字先生もいろいろお示しになりましたけれども、確かに八一年、八二年とソ連の貿易は伸びておりましたけれども、八三年は若干減少しております。また西欧諸国につきましても、OECDの統計を見ますと、伸びておるところもありますれば若干減っておるところもあるわけであります。日本について申しますと、昨年減りましたのは経済制裁措置というよりも、むしろソ連との貿易の輸出の消長は、ソ連の開発計画に依存するところが多いわけでございまして、昨年は特にソ連の第三次極東森林開発プロジェクト、これがピークを超えたというようなことでございまして、従来、日本からソ連に出ております機械類の中でも、建設機械あるいは荷役機械、こういう輸出が減少したことによって昨年は日本輸出が減った、そういうふうに認識しておるわけでございます。
  59. 水田稔

    ○水田委員 今の答弁で、西側と同一歩調というのですが、西側はアメリカだけではないわけです。数字をごらんになったらおわかりのように、アメリカが去年の第三・四半期まででマイナス五九・〇%、日本が一七・五%、その他はほとんど二けた、一けたもありますが、二けたの伸びを示しておる。そういう点では日本がいわゆる隣国ですから、その間で、日本列島を引っ張って太平洋の真ん中に持っていくわけにはいかぬわけですから、そういう関係では軍事は別にして、経済的な問題では、そのことがいわゆる外交上も経済的なつながりを深めていくというのも、西ヨーロッパの国はそれを思うから、経済制裁と言われる中でも、アメリカ輸出しなければ、かわるものをフランスや西ドイツが入れていったわけです。それがこういう数字に出ておると思うのです。  もう一つは、日本はそういう点では気がよ過ぎると思うのは、例えば残念なことに、いまだに解決しておりませんが、大韓航空機事件というのが昨年の九月一日に起きたのです。その直前に米ソの穀物協定が調印されたわけです。しかしアメリカはこの穀物の輸出をとめなかった。これは厳然たる事実ですね。それからそのときに、九月に事件があって十月にアメリカはモスクワで農業機械見本市を開いておるわけです。そして、ここでは百九社もの企業が参加をしておるわけです。ここで、その会議の副会長をやっておられるアンドレアスという方がこういうことを言っておるわけです。「アメリカ政府のとった対ソ禁輸経済制裁は結局効果を示さず、何十億ドルという損害のみをアメリカ企業はこうむっただけであり、外国貿易におけるみずからの権威とソ連市場での地位を失うという間接的損害に至っては値踏み不可能である。」こう話っておるわけです。これは政府の見解ではないわけですが、百九社も参加しておるわけですから相当大きな見本市でしょう。そういうアメリカ財界、経済界の代表の方の発言があるわけです。  日本はそれに一緒になって経済制裁をやったことによって、数字ははっきりしませんが、輸出をとめたのは五億ドルとも十億ドルとも言う。これは減ったわけです。アメリカの中にもこういう見解があるわけですが、こういう見解あるいは私の質問申し上げたことに対して、局長もさることながら、基本的なことですからできれば大臣から、今のアメリカの財界の方の御見解についてどのようにお感じになるか、御見解を伺いたいと思うのです。
  60. 柴田益男

    ○柴田政府委員 先生指摘のように、アメリカは穀物の関係あるいは見本市の関係でいろいろ進めておるわけでございます。また、アメリカの財界人からいろいろ批判が出ているということも我々も承知しているところでございます。ただ、日本といたしましては、ソ連との経済関係は従来から互恵の見地から進めてきているわけでございまして、政府としては、日ソ関係は政治経済等の分野を含め全体としてとらえるべきであるということでございまして、無原則な政経分離はとらないという方針でございます。先ほども申しましたように、アフガンとかポーランド問題に対しましては、西側諸国と協調して対応してきたところでございます。  今後とも連帯と協調で対処していくところでございますけれども、この経済問題につきましては、現在までも幅広い国益に立っての判断というものは通産省としてやっているわけでございまして、例えば公的信用供与につきましても、これは全部やめるということではなくて、ケース・バイ・ケースでここ三年も実績が積み重ねられておりますが、やってきております。そういう意味で幅広い国益の見地に立ってやっているところでございますし、あるいはソ連との対話の継続ということも必要だろうという認識のもとに、昨年来政府レベルでも、割合に低いレベルでございますけれども、対話の継続をやっているということでございますし、あるいは財界人同士の接触についても注目してウォッチしているということでございます。
  61. 水田稔

    ○水田委員 私の質問の答えになっていないわけですね。アメリカの民間の人ですけれども、相当大きな、百九社も行っておるわけですが、その代表がそういう見解を持っておるわけですね。米ソの関係というのは、きょうもロサンゼルスのオリンピックに参加しないということになる、それほど激しい対立のあるその国の企業の代表の人がこういう見解を持っておる。  では、全然別のことでお伺いしますが、例えば去年の大韓航空事件で、日本の公務員はできるだけ日本航空を使ってアエロフロートを使うな、乗るな、こういう制裁をやりましたね。そして、その後十五日間両方とめましたね。日本航空だけ使えというのはどういう効果があるとお考えですか。アエロフロートを使わずに日本航空を使えとあのときお役所が指令を出したのです。一つの制裁措置ですよ。どういう効果があったとお考えですか。
  62. 柴田益男

    ○柴田政府委員 アエロフロートを使うなということは、一つの姿勢を示したものと理解しておりますけれども、その結果、具体的に数字的な効果がどうであったかというのは承知しておりません。
  63. 水田稔

    ○水田委員 これは日本航空へ皆日本の公務員なんか乗るのです。日本航空が人を油を使ってモスクワまで運ぶのです。そして、中で食事も出すのです。それで運賃が入りますね。これは両方の航空会社がモスクワ-成田間を運んだ収入は折半で割ることになっています。日本航空だけ乗れば、アエロフロートは空で飛んでも一つも痛くないのです。損をしたのは日本航空なんですよね。だから、さっきから言うのは御存じないでしょう。通産省も、政治経済は分離できぬ、そういう感覚でおられるのです。だからこの問題、先ほど私が申し上げたことも、アメリカでさえ経済界ではそういう反省がある。日本があれによって制裁をしたというのなら効果がなければならぬ。ソ連の外交姿勢が変わったということがなければならぬ。そんなことはないのですよ。損をしたのは日本だけじゃないのですか。アメリカでも相当経済的な損をした、こう言うのです。そうでしょう。だから、そのことについてアメリカでもこういうぐあいに言っておられるが、そこらはこれからのいわゆる貿易関係では考えるべきことではないか、私はそう思うから申し上げておるのです。それはいかがですか。
  64. 柴田益男

    ○柴田政府委員 対ソの経済措置につきましては、日本側といたしましては、あくまでも政経分離の原則はとらないということでございますし、西側諸国と協調してやるというところに意味があるわけでございまして、一つの姿勢論として評価していただきたいと思います。
  65. 水田稔

    ○水田委員 アメリカだけじゃなくて、ヨーロッパ、フランスや西ドイツを含めて全部が同じなら、私はそんなことを言いません。局長が言われるけれども、西ドイツやフランスは違っておるでしょう。そのことは」どうなんですか。もう少し日本経済ということを考えながら、そして政治絡みでもいいですよ。  ただ、例えば外交的に打開できないならば、経済なり文化なりそういう点から少しでも、それは政治絡みですよ、そういう点での関係を深めていくということも、国家間の外交関係を前進させることになるのじゃないですか。ドイツもフランスも全く日本と同じ姿勢をとったのですか、いかがですか。
  66. 柴田益男

    ○柴田政府委員 アメリカの場合もあるいはポーランドの場合におきましても、日本だけが経済措置をとっておるわけでございませんで、アメリカもあるいはECの各国も日本とほぼ同様な措置はとっておるところでございます。
  67. 水田稔

    ○水田委員 具体的に例えば石油の掘削から、バム鉄道の問題から、あるいはプロジェクトの問題から、パイプラインの問題から、現実には全部進んでいったわけですよ。そういう中で、日本アメリカと同一歩調をとったけれども、西ドイツやフランスというのは、そういう点では協力していったわけでしょう。  では、別の点から言いますと、もう一つは、昨年の九月にモスクワでソ連側主催で科学機器の見本市というのが開かれたわけですね。世界の二十カ国約四百社が参加したわけです。アメリカもここへは出しておるわけですね。ここでコンピューターつきのグラフィックディスプレーを出しておるのですね。コンピューターつきの機械をアメリカはたくさん出品しておるわけです。これに対して日本の参加したメーカーが、通産省に同じようなものを出品したい、こういう希望を出したわけです。これはココムに違反するからだめだ、こう言われて出せなかった、こういう不満を漏らしておるわけですね。ですから通産省の姿勢は、先ほど来局長の話を聞いておって、えらいかたくなな、敵国だからとにかくそんなところにプラスになるような相手だけじゃない、日本もプラスになる。貿易というのはそういうものなんです。相互主義であれば当然なんです。そういう点で日本だけが、日本航空の例に見られるように損をする。同じことを通産省がやっておるのですよ。このココムの解釈についても、アメリカが出しておるわけですよ。それを日本は出してはならぬ、こう言った。これは恐らく認められぬかもわからぬけれども、持っていった企業は、通産省でそう言われて持っていかなかった。行ってみたらアメリカはいっぱい出しておったのです。そういうことをして日ソの貿易が進むわけがないと思うのですよ。だからそのことを一体どういうぐあいに今お考えになるのか。  例えば自由度三以上のいわゆるロボットは出しちゃならぬ、こういうぐあいになっておる。ところが、ソ連では自由度四のものを既につくる能力があるわけですね。それに対して日本がかたくなにココムのいわゆる解釈を通産省がしておるというところに一つは問題があるんじゃないか、そういうぐあいに思うのです。そして今ココムのリストの検討がされておる、こういうぐあいに言われておるのですが、それは一つは前段の質問と、それからもう一つは、ココムリストの検討がどういうぐあいに今話し合いが進んでおるのか、その二点をひとつお答えいただきたいと思います、
  68. 柴田益男

    ○柴田政府委員 ただいま先生から、昨年九月のモスクワの科学展の話がございましたけれども、御指摘のようにこの科学展は、九月六日から二十日間開催されまして、二十カ国四百企業が参加したわけでございます。我が国においても商社等を含めて約二十社が参加いたしております。ただ、これには政府関係機関は出展していないというふうに聞いておりまして、我が国といたしましては、企業の出展については差しとめたという事実はございません。  ココムの点については貿易局長から御答弁いたしたいと思います。
  69. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ココムの点について御質問ございましたので、その部分に関して私から御答弁申し上げたいと思います。  私ども、ココムの会議に参加し、実際にココム規制を担当いたします場合に、二つの立場をうまく調和をしてやっていきたいということを考えているわけでございます。  その一つは、ココム規制の目的でございます西側諸国の安全の確保に支障を来さないという点でございまして、私どもが西側諸国の一員に属している限りにおいてこれは当然のことかと思われますが、ただ、それだけではなくて、第二の点は、ココム規制と申しますものが我が国輸出入を著しく不必要に阻害をすることになってはいけないという点でございまして、こういった二つの立場を踏まえまして、従来からココムの会議、具体的にはリストレビュー等では日本立場を主張してまいったわけでございます。  最近時点では、ココムリストの改定作業はまだ決着がついておりませんで、現在なお協議中でございます。従来からココムの慣例といたしまして、協議中の事項に関しましては一切公表は差し控えるということを申し合わせておりますので、今先生からお尋ねの点についても、ここで具体的にコメントをさせていただくことは差し控えさせていただきたいと存じますので、お許しをいただきます。
  70. 水田稔

    ○水田委員 大臣、今のやりとりを聞いていただいて、私はこの質問は大体二カ月前にやろうと思って用意したのですが、その間でもいろいろ変わってまいりまして、けさの新聞、テレビを見ると、ロサンゼルス・オリンピックヘ参加しないという米ソの対立というものが出てくる。そういう中でも、例えば大韓航空機事件の処理でも、日本政府もアメリカ政府もソ連との関係を決定的に破局に持っていくことは避けたい、これはもう基本的な政策なんですね。それをやる場合に、外交的にやるものと経済的にやる、あるいは文化的に、あるいは技術協力でやるとか、いろいろな面のつながりがある。外交というのはそういうものだと思うのです。  それに対して一つは、私の質問に対して、アメリカでさえも、去年見本市に行った代表が、制裁、制裁とやることがアメリカ経済にとってもそんなに得ではないという見方をしておる。日本でも、恐らく大臣の耳に入っていないかもしれませんが、あれをやったことによって日本航空は、金額は大したことないでしょうけれども日本がとめたことによって、むしろ向こうから入るものよりも出るもので、五億ドルという見方もある、十億ドルという人もありますね、これは輸出がそれだけ減ったわけです。これは貿易摩擦に全くならぬ国ですから、それが減ったというマイナスを受けておる。そしてココムの解釈の問題にしても、現実には、向こうで商社として活動をやっておる連中は、日本の通産省のかたくななココムの解釈が西ヨーロッパに対してどうしても負ける、そういう感覚を持っておることは間違いないわけですね。  ですから、確かに自由諸国との貿易とは違った面があることは私も否定しません。けれども、こちらがかたくなになるということは必要ないんじゃないか。今や外務省も、いわゆる高級事務レベルの会談あるいはまた外務大臣を来てもらいたい、こういう形での日ソの関係の改善の動きがあるわけですから、そういう中で貿易関係を所管する通産省が、相互主義、結構です、それでもいいです、向こうもそうでしょう。そういう中で、もう少し本気で取り組んでいこうという姿勢が今の答弁ではどうしても感じられないわけですね。私の質問に対するお答えを聞いておられたのですから、そういう点で大臣の、日ソ貿易に対する基本的なお考えなり気持ちをこの際聞かしていただきたいのです。
  71. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 国家対国家との問題が損得、利害、打算だけでもって済めば私は簡単なことだと思うのでございます。外交的な問題、経済的な問題等々において損得を度外視しても、ある意味において筋を通さねばならぬことが起きてくることも私は無理なことではないと思うのです。  いろいろ例を挙げられましたけれども、大韓航空の問題について、ソ連側はソ連側なりの言い分があるでしょうけれども日本では日本としての、たくさんの不幸な犠牲者を出したということの事実もあるわけでございまして、そのようなことの結果、先ほど水田委員がおっしゃったような、日航があのことをやって得していないのだ、むしろ損しているのだということは、実は私は初めて聞きまして、なるほどそうかなと思いましたが、しかし、それにしてもある意味において日本側が筋を通したということは私は言えるのではないかと思うのでございます。  しかし、先ほども局長が答弁いたしましたように、日ソの経済関係というものは基本的にはそのようなかたくななものではなく、旧来から互恵の見地に立って経済関係を行っている、無原則な政経分離という方針はとらない、政治経済というものを一体としてとらえてお互いにやってきておる。しかも、その中に西側との協調と連帯との配慮を行って、新しいソ連政府の出方というものを見ながらケース・バイ・ケースの立場に立って、広い国益の見地からこれを将来とも行っていくということでございまして、決してかたくなな考え方を持っているわけではないということを御理解願いたいのであります。
  72. 水田稔

    ○水田委員 ソ連は計画経済をやっている国ですから、ある程度長期的な展望で貿易関係を考えなければならぬと思うのです。  これはゴスプランが明らかにした最近の話なんですが、ウラル以東ですからシベリアが大半でしょう、ここにおけるヨーロッパ諸国とのプロジェクトで成約段階に達したものが八件ある、商談が進行中のものが五件ある、こういうぐあいに言っておるわけです。この中には、日本も加わって、日本もこれをとれるかもしれないといって、日本では懸案中というぐあいに考えているものも幾つかあるわけですね。それらも全部西ドイツやフランスやイギリスなどと商談が進んでいる、こういうぐあいに発表されておるわけです。  距離的に考えれば、シベリアに対してはヨーロッパに比べれば日本が一番近いわけですから有利なわけであります。そして技術的にも、今ソ連が求めているそういうプロジェクトでおくれをとるようなものは全くないわけですね。それにもかかわらず、こちらが期待しておるものも西欧諸国にほとんどとられかけておるという状態だろうと思うのですが、その点についてはどういうぐあいにお考えでしょうか。
  73. 柴田益男

    ○柴田政府委員 先生指摘のように、日本とソ連との間におきまして、いろいろな資源関係開発プロジェクトが検討されていることは事実でございます。現在も大きなプロジェクトを三つ確保しておりますし、ヤクート天然ガス開発みたいにアメリカが手を引いて、今ちょっと中断状況のものもございますが、幾つか進行中のプロジェクトがございます。しかし、これが割合にはかばかしく進みませんのは、政治的理由というよりも、むしろ資源開発関係でございますので、日本需要家たちが今十分に原材料の手当てが終わってしまっているということもありまして停滞している、そういうふうに認識しておるわけでございます。日本側のそういう経済情勢が長期的に改善されてくれば、また徐々に話も進んでいくのではないか、そういうふうに考えております。
  74. 水田稔

    ○水田委員 我が国の貿易関係を考えるときに、一番問題は今国内経済では国内消費をどう回復するか、これは河本経済企画庁長官が、減税と増税を一緒にやっても経済効果はない、こう言われた、まさにそのとおりだと思うのです。  もう一つは、輸出自動車とかVTRとかどんどん輸出するものを出していけばこれは問題になる。そこで、いわゆるプラントというもの。これは、今イランとイラクの戦争で中東地域におけるプラント輸出がとまっておるということも一つはマイナス要因として存在しておる。ですから、ソ連へ行くものは大体プラントなんですね。後で触れますけれども、もちろんそれに対する輸入すべき物が物としてということもあるかもしれませんけれども、そういうものが今、ほとんど全部西ヨーロッパに取られていますよ、そのことを、日本国内で輸入する物がないからということだけで通産省はお考えになっているんですか。進めていこうと思えばやはり向こうが欲しい物、そしてココムのリストに関係ないものについてはやっていけるんじゃないですか。通産省はとにかく成り行き任せというのだったら、通産省は余り役に立たぬようなことになりはしませんか。いかがなものでしょうか。
  75. 柴田益男

    ○柴田政府委員 一つには、先ほど申しましたように国内の業界の需要がもうひとつ盛り上がってこないということが基本的にあるわけでございますけれども、そういうものの見返り輸入を前提としたプラント輸出につきましては、一つは西欧諸国と非常に競争が厳しくなっているという事実がございます。そこで、なかなかプロジェクトが取れない、プラント輸出が取れないという問題がございます。それからまた、ソ連側の要求します金利水準が非常に低いということもございまして、プラント輸出がなかなか進んでないというのが現実でございます。
  76. 水田稔

    ○水田委員 いみじくも言われたのですが、一つはさっきも言いましたようにココムリストの適用の厳しさ、そして日本の政府のとっておる姿勢に問題がある。もう一つは、相手は計画経済の国ですから、そのときに物が要るから、あるいはそのとき単発的にこのプロジェクトを一会社がやりたい、そういうことはないわけですね。例えば第何次五カ年計画でどういう開発をしていく、それに対するプロジェクトは何が必要、そしてそれに対してできた物、石炭はあるいは天然ガスはどういうぐあいに引き取ってくれる、こういう長期的な協定の問題なんですね。これは御承知だと思うのですが、イギリスは一九七四年から十カ年協定をしておるわけですね。西ドイツもそうですし、フランスもそうですね。ですから、そういう計画経済の国を相手にする貿易関係というのはそういうものが一つ必要じゃないか。  それからもう一つは、今言われました金利の問題を含めて、いわゆる輸銀の信用供与の枠の問題ですね。物は持ってこなくても、とにかく信用供与をすれば買えるという条件は向こうにあるわけですね。そして金利の問題、これは国の発展度合いによってABCのランクがありますからそう勝手にはできませんが、この金利もヨーロッパと日本は同じ条件です。日本とソ連、西ドイツとソ連あるいはフランスとソ連は同じような条件です。にもかかわらず、その運用は極めて融通がきくわけですね。  だから、日本がプロジェクトを取るのに競争できないのは、一つは長期協定がないこと、一つは信用供与が余り厳しく、経済措置ということで個別の審査ということをやったんでしょうが、そういうものが今ない。だから、進めようと思えば信用供与の問題。それからもう一つは、ヨーロッパに負けておるのは金利の点では日本は厳密にやるから一番高い金利になる。それで競争すれば当然とのプロジェクトというのも全部フランスや西ドイツあるいはスウェーデンに取られることになっておるわけですね。その実情は御存じなんでしょう。だからそういう点を、問題はどこにあるのか、その点を解消する努力というものが必要ではないだろうかと私は思うのですが、いかがですか。
  77. 柴田益男

    ○柴田政府委員 先生のただいまの御質問、二点にわたろうかと思いますが、最初の長期協定の必要性につきましては私から答弁申し上げますし、信用供与の点につきましては貿易局長の方から答弁申し上げます。  確かにソ連との間で西欧各国は、米国、西ドイツ、英国等価カ国か長期の経済協力協定を結んでおるところでありますが、日本の場合を考えてみますと、昨年は例外でございますけれども、八〇年以降最近時点においては貿易が順調に伸びておるわけでございます。そういう伸びている実績がございますので、今すぐ長期協定の必要性はないと思いますし、また政治的にも、平和条約というのが未締結だという問題もございまして、長期的な課題だろうと思っております。
  78. 杉山弘

    ○杉山政府委員 御質問のございました二点目の、輸出信用の供与、特に金利の問題について御答弁申し上げたいと思います。  先生御案内のように、OECDで輸出信用ガイドラインというのがございます。これの運用につきまして、特に日本だけが厳しくしていて、そのためにということではないというふうに思うわけでございます。  ただ、私どもが問題と感じておりますのは、ガイドラインの中で日本は特に低金利国ということで金利について特別の規定を受けております。最近では長期プライムレートプラス〇・一というのが日本が供与できる輸出信用の金利ということになります。実際には日本の市中金利は長期プライムを割るようなものも相当出てきておりますが、このガイドラインの長期プライムプラス〇・一という水準に縛られて、安い金利をオファーできないという問題があることは事実でございます。  この点につきましては、従来から私ども外務省、大蔵省とも協力をしまして、OECDのガイドライン協議の場におきましては、この点についての改定を提案いたしております。つい最近も行われましたガイドラインに関する各国の協議の中でも、この点日本の実情を詳しく申し述べまして改善の提案をしたわけでございますが、輸出信用ガイドラインと申しますのは、各国の利害が辛うじて一致して今のような形になっているわけでございますので、日本側だけの提案を日本側だけの有利な格好に改善することについては、また各国の賛成がなかなか得られないというのも事実でございます。  残念ながら、最近の会合では日本側が提案いたしましたが入れてもらえるところになっておりませんが、この点につきましては、私どもも大きな問題であるということは重々承知をいたしておりますので、これからも引き続きこの点については加盟国の理解を得るように努力をいたしたい、かように考えております。
  79. 水田稔

    ○水田委員 最後に大臣にお答えいただきたいと思うのです。  私も、経済だけが独立してもうかればいいというものではないということは十分承知しておるわけです。逆な見方をすれば、ですから一つは平和条約を結んでいくための地ならしをしていくというのは、それに至る過程の経済の交流もあれば、技術交流もあるし、文化交流もあるというぐあいな物の考え方を私もしているわけです。そういう中で特にけさの明け方のああいうことがありまして、むしろ米ソの関係が険悪になるということは国際関係上本当に好ましくないことで、我が国我が国で生きていくという立場で、いわゆるアジアの一番隣国で問題が起きないような努力を、やれることはやった方がいいだろう。  そういう中で、幸いなことに一つは、国会議員レベルの交流も中断しておったのに、福永議長の御努力で実現する運びになってきた。それから先ほども言いましたように、外務省も事務レベル、そして高級事務レベルの会談までいくようになった。それが即、平和条約へいくとは思いませんけれども、そういう中での通産行政としての日ソの貿易の関係というのも、先ほど申し上げましたように、一つは、ヨーロッパ、アメリカ日本が全く同じことをやっておるなら同じ条件ですけれども、結果的には、とにかくヨーロッパがどんどん入っていく。日本が一番近くにありながら、そこではほとんど新しいプロジェクトからはみ出していくということになっている。これは民間の業者の人たち、大変努力をしておるのですけれども、そういう結果になっておるということをこの際、外交的にも文化的にも、あるいは経済的にも少しでも前進させるという、そういう形での取り組みをぜひしていただきたい。  それが一つと、それからもう一つは、これは四月に行われる予定であった民間での日ソ貿易経済会議というのが、残念ながら、永野さんが亡くなられたために、これは四月か六月でやれるということになっていたのですが、当分見通しがなくなったわけですね。そういう点では通産省が主導すべきものではないでしょうけれども、それが若干おくれてでも、実現できるように、ぜひお願いをしたい、そういうぐあいに思うのです。その点を大臣にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  80. 小此木彦三郎

    小此木国務大臣 よっぽど突発的な現象さえなければ、国家と国家が思想、体制がどんなに変わっておりましょうとも、平和的な交流というものは必要なことでございます。国会においてそのような意欲を持つ先輩の方々が、それをリードしてこれを行うということは非常に結構なことでございますし、また、政府としても怠りなくそのようなことは絶えず努めておるところでございます。  また、四月に行われる会議が永野さんの突然の死去によってそれが延び延びになってしまったということでございますけれども、実は永野会頭がお亡くなりになる二十日ほど前に、全快したということのいろいろな意味を込めて私のところにごあいさつに来られたことがございます。そのときに日ソ間の問題をいろいろお話しなさっておりまして、これは自分の生涯の仕事としてやらなければならぬというような向きをおっしゃっておられましたけれども、突然あのようなことになりまして、後がどういうことになりますか、現在のところでは私どもは判断できませんけれども、いずれは立派な後継者が出まして、それを受け継いでいただけるということを期待いたしておる次第でございます。
  81. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  82. 梶山静六

    梶山委員長 次回は、来る十一日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十三分散会